チート吸血鬼の怪奇事件簿 (モヘンジョダロ)
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事件簿No.1:吸血鬼の館(前編)

安心感のあるホラーを目指しております


労働者が行き交うビルの一つが、ある怪談の舞台となっていた。

 

曰く、扉を開けたら吸血鬼の館に転移してしまう。

 

勿論、こんなモノはただの噂話でしかない。

 

だが実際に何人もの労働者がそのビルで失踪してしまっているのだ。

 

被害者はバラバラで、自分から失踪したとは考え辛かった。故にこのビルには噂通りの怪異が出没するとされた。

 

当然そんなビルに入ろうとする会社は殆ど存在せず、安さに惹かれた会社も従業員が失踪する為に長続きしない。

 

そんな窮状に知ったビルの管理人はある事務所へと駆け込んだ。

 

名は、リーテシア探偵事務所。

 

 

 

 

「成程。そういう事情でウチの事務所に。」

 

苺のショートケーキを食べながら目の前の依頼人に問う。

 

年齢は50代、身体は引き締まっていて日々鍛えられていると分かる。

 

威圧感が半端ない。前世の私なら恐らく緊張して身動きが取れなかっただろう。

 

尤も今となっては今世が長すぎて前世の事など殆ど忘却しているが。

 

「そうだ。以前君に依頼をした人間の中に友人の知り合いがいてね。フリーの祓呪者の中では最高峰だと称賛していたらしい。」

 

「それは光栄。だが国の祓呪者には依頼しないのかい?」

 

「既に依頼してある。が、下位の祓呪者では少しばかり不安が残る。」

 

聞く限りだと浅域の怪異。殺傷能力も発生源の噂から推測するに吸血鬼任せだろう。

 

吸血鬼と戦闘するなら下位では不安が残るのだろう。扉の怪異を解決するだけなら下位の祓呪者でも充分だろうが、吸血鬼が付いてくるなら中位は欲しい。

 

それ故に私に依頼が来たという訳か。まあ吸血鬼なんぞ私にとっては敵ではないし寧ろ愉しみだ。

 

それにしても最高峰と称賛されていると少し気恥ずかしくなってしまう。

 

祓呪者と私ではシステムが根本的に違うからチートを使っているようなモノだがそれでも褒められるのは嬉しいものだ。

 

「了解しました。その依頼を受けさせて頂きましょう!」

 

 

 

 

そして私は依頼先のビルで下位の祓呪者の娘とエンカウントした。

 

私はフリーの祓呪者だから公務員である彼女にとっては余り気持ちの良いモノではないだろう。

 

その上である程度有名で強いと評判ならば尚更。

 

うん、まあそれを知ってて態とエンカウントしたの私だけど。

 

「こんにちは、お嬢さん。此処には一体何用で?」

 

「惚けないで下さい。貴女についての情報は既に把握しています。協会の情けで見逃されている事を忘れないように。」

 

辛辣。私に良い感情を抱いていないとはわかってたが、これ程までに辛辣だと心にダメージが通る。

 

チラリと彼女の装備を見る。素戔嗚尊系列の加護であろう刀と鎧に天照系列の聖光付与。

 

下位ならば天照か素戔嗚尊のどちらか、或いは両方の加護が中位の段階に到達していないのだろう。

 

やはり均一化された加護と厳格に管理された階級というモノは効率的だ。戦力の把握がやり易い。

 

「まあ協力してやろうじゃないか。素戔嗚尊の武装作成は何処まで出来るんだい?」

 

「協力を拒否する程子供ではありませんよ。素戔嗚尊様の加護は鎧と刀、そして弓と矢です」

 

「標準装備が手厚い。」

 

素戔嗚尊の方の加護が中位にギリギリ到達してるくらいか。だとしたら天照の方は下位止まりと言った所かね?

 

吸血鬼を相手にするなら天照の加護の方が役立つが、それでも素戔嗚尊の加護も武器を無尽蔵に作れるのだから凄まじいモノだ。

 

戦闘経験がなくても武器で加護纏わせて殴るだけで騎士程度の怪異なら殺せるのはやっぱり強いわあ。

 

「懐中電灯を持って来たの無駄だったかな?」

 

「いえ、私も天照様の加護を使い続けるられる訳ではありません。一応私も懐中電灯を持って来ていますが、多いに越した事はありませんから。」

 

真面目な子だあ。かなり安心できる。加護の力に溺れて対策を疎かにする祓呪者も極稀に居るけど、今回は安心できそうだ。

 

見たところ自分の力量についての理解も深いし、慎重な所も見受けられる。

 

それに下位にも関わらず怪異以外の呪いと戦わせようとしている。上層部としても経験を積ませたいのかね。

 

吸血鬼と戦闘させるのは心もとないかもしれないが、もしもの時のフォローとして私に依頼が来たのかな?

 

だとしたらあの依頼人もグルか?でも協会に私にも依頼する事を告げたからこの娘が派遣されて来たのかもしれんし。

 

まあ細かい事は考えなくても良いや。

 

「取り敢えず今回の任務は吸血鬼の館からの被害者の救出です。それは貴女も同じですね?」

 

「私に依頼されたのは事態の解決だね。どっちかと言うと吸血鬼の討伐かな?」

 

怪異は基本的に噂だけでは発生し得ない。本当であると信じ込まれるだけの証拠があって噂は怪異へと昇華されるのだ。

 

今回の場合は吸血鬼の館に転移するという噂からして吸血鬼が首謀者だろう。

 

若輩の実体を持つ呪い共はインターネットに適合して望む性質の怪異を生み出す事がある。

 

私としてはそのようなやり方は非効率に感じられるが、そんな事は良い。

 

兎も角そんな経緯で生まれた怪異の解決法は噂を絶てば良い。

 

例えば今回ならば吸血鬼をブチ転がした上で脱出できるようにする。なるべく元の場所へ戻るようにしておけば良いだろう。

 

失踪者が出なくなれば浅域程度の怪異は消えるだろう。その為にも邪魔になる吸血鬼は排除すべきだろう。

 

「……被害者の方は私が救出しておきましょうか?」

 

「いやあ、流石に吸血鬼のテリトリーで単独行動は不味いでしょ。救出したら直ぐに離脱して貰って、私が吸血鬼を討伐するよ。」

 

「分かりました。」

 

「……あれ?もっとこう、一人では危険です!みたいな反応を期待してたんだけど?」

 

「行きましょう。」

 

「待って待って!どうやって突入するかの打ち合わせを、」

 

「片っ端から扉を開けます。」

 

「気が合うね!」

 

この後滅茶苦茶扉を開けた。

 

 

 

 

黒い廊下を突き進む。扉を開く事139回の末に私達は吸血鬼の館に到達した。

 

暗い屋敷を懐中電灯で照らしながら進む。見る限りでは屋敷は大分可笑しな様相を呈していた。

 

色は黒い部分もあれば白い部分もある。赤い部分もあれば青色の部分もある。

 

「館自体が怪異の産物なのでしょうか。」

 

「そうだねえ。イメージが混ざってる。本来は館なんて持たない吸血鬼かね?」

 

同行者の少女に同意しつつ心の中で首謀者であろう吸血鬼を嗤う。

 

実体を持つという性質上、怪異以外の呪い共は中域に到達するまで隠れ潜むのが当然だ。

 

にも関わらず家を持たない。吸血鬼の、否。実体持つ呪いの集団の慣習から首謀者の境遇に思い至り口元が吊り上がる。

 

突如前方の暗闇から奇襲してきたゾンビの頸を祓呪者ちゃんが断つ。すごい達人っぽい。剣術は特に必要ないから習ってなかったが恐らく素人技ではないだろう。

 

いや、まあ自信はないが。大体剣技とか見る前に殺してるから達人というモノが分からない。

 

後ろから強襲して来た動く腐乱死体を殴り飛ばす。衝撃で拳を当てた心臓付近が纏めて消し飛ぶ。

 

同時にゾンビの穢れた血が撒き散らされるが、当たるつもりはない。バックステップで降って来た血を避ける。

 

「あ、ありがとうございます。」

 

青褪めながら祓呪者ちゃんが感謝してくれる。恐らく私が拳でゾンビを完全に沈黙させた絵面がダメだったのだろう。

 

だが私にしてみれば彼女の使う天照の加護の方が余程エゲツない。慣れているから表情には出さないが、正直ドン引きモノである。

 

不浄を焼き滅ぼす神の威光。再生を許さないエンチャント。呪いに対して呆れる程に有効な攻撃手段だ。

 

「どういたしまして。先に進もうか。」

 

「そうですね。失踪者の場所に心当たりは?」

 

「ないなあ。()()()吸血鬼の心とか解らないからね。」

 

「そうですか……。では一つずつ確かめて行きましょう!」

 

 

 

 

一つ目の扉。なんかシャンデリアがあってカーテン付きのキングサイズベットが置かれている部屋。

 

吸血鬼の館の寝室のイメージがこれなのはなんか納得がいかない。

 

私こんなに良い生活してないんだよなあ。そもそも寝室にシャンデリアとか置かないし。

 

まあイメージが混ざったって事なんでしょう。多分現代社会を生きる人々の大半は吸血鬼の館とか行ってないし。

 

まあ行ってたらそれはそれでヤバイからこれが正しいのだろうが。

 

因みにベットには棺桶が入っていた。中とかかなりふかふかで怪異じゃなければ持ち帰りたかった。

 

今度この棺桶を参考に新しい棺桶を創るのも良いかもしれない。

 

 

二つ目の扉。食堂らしき場所に髑髏と蝋燭とシャンデリアが飾られていて、人間を模した何かが食卓に置かれている。

 

シャンデリアは二回目だ。まあ確かに私も欧州の屋敷だとシャンデリアが多いイメージはある。

 

他の吸血鬼にはまあまあ嫌われてるから特に欧州とかには滅多に行かないので実物を見たのは数百年位前なのだ。

 

いやでも日本ても数十年前にシャンデリアを見た気がしなくもないな。

 

まあシャンデリアの話題は置いておこう。人間を模した何かについては明らかに人間の死体を模しているのに本物とはかけ離れているのが逆に不気味だ。

 

人間の死体を鮮明にイメージ出来る人間がいないからこその気持ち悪さだろう。

 

誰もが人間の死体とイメージしながらも本物とは似ても似つかない贋作になるというのは平和の証明だろう。

 

「…此処で吸血鬼が食事をしたのでしょうか?」

 

「その死体は怪異だよ、間違いない。」

 

「……死体が見た事があるので?」

 

「言い訳をさせてくれないか?医学書で記憶しただけなんだ。」

 

祓呪者ちゃんが嘘吐きを見るような眼で見つめてくる。実際嘘なのだが本当に私は人間を殺した事なんて無いのだ。

 

寧ろ割と人間は好きな方なのだ。娯楽を生み出してくれるし、一眠りした後に散策すると色々変わっていて楽しいのである。

 

故に私は断じて人間を殺した事はない。無力化なら何度もしたが、それも正当防衛だ。

 

「信じますよ?」

 

「信じてくれ。私無実ネ。」

 

そんな風に祓呪者ちゃんを誤魔化して先へと進む。実際はもっと長くてもっと必死の言い訳をしたが、態々不様を晒す事もあるまい。

 

 

三つ目の扉。鉄格子で阻まれた牢屋の中に人骨らしき何かが散乱している。

 

「これも怪異でしょうか?」

 

「そうだね。吸血鬼の館から派生したイメージだと思うよ。」

 

吸血鬼の館と聞いて牢屋を思い浮かべるのは少数派だと思うがな。寧ろ何故牢屋を思い浮かべたのか問い質したくなる気分だ。

 

近くにある扉はこれで全て見終わった。残っているのは途方も長さの廊下だけだ。

 

全く以てこれだから怪異は嫌いなのだ。いつもなら影に沈めるが今回は同行者がいる。

 

私は憂鬱な気分でこの途方もない道のりを歩む為に一歩踏み出した。




浅域:発生から百年未満の呪い。一度倒されたらリポップしない

怪異:呪いの種別の一つ。種ではなく単体で完結した実体のない呪い


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事件簿No.1:吸血鬼の館(中編)

屋敷も持たない下級未満の吸血鬼の館を進む。

 

吸血鬼の館というイメージによって形作られたモノなのだろうが、実際にこの館に住み着いている吸血鬼が何処かに失踪者を安置しているのだろう。

 

或いは既に全員亡くなっているかもしれない。尤もその可能性は低いだろうが。

 

何せこの館の吸血鬼は親からの支援を受けていない。餌も自給自足しなければならない以上、食い散らかす事はしない。出来ない。

 

吸血鬼というのは量に関係なく定期的に血液を摂取しなければならない呪いだ。

 

勿論、多くの量の血液を吸えば吸う程に貯蓄は増え吸血鬼としての能力は上昇するだろう。

 

だが幾ら吸血鬼として高位に至ろうとも飢餓衝動によって暴走する。これは私自身の経験則だから間違いはない。

 

そして今回の首謀者である吸血鬼は襲い続けるのではなく他の怪異を使役、或いは寄生して餌となる人間を確保している。

 

今回の怪異では確保できる人間の数に限りがある。ビルを使う人間がいなくなればこの館に飛ばされる人間もまたいなくなる。

 

日本の夜は祓呪者による巡回が常に行われている。()()()()太陽か昇っている間しか活動できない吸血鬼には厳しい国だ。

 

夜に襲えないからこそ、生き延びる為には少しずつ血を吸わねばならない。故に失踪者は未だ生存していると考えられる。

 

……初期に失踪した人達はちょっと厳しいかもしれないけど。

 

「あの。リーテシアさん、リーテシアさんは何故フリーで祓呪者を?」

 

沈黙に耐え切れなくなったのか祓呪者ちゃんが私に問い掛けてくる。勿論警戒は保ったままの状態でだ。

 

「何故と言われても。単純に祓呪者協会に入るデメリットが大きくてねえ。」

 

彼女のような通常の人間にとってみれば意味不明な言葉だろう。

 

祓呪者協会に入るだけで二柱の神種から破格の加護を授かれるのだ。

 

更に依頼だって協会の方で精査してくれて、適切な依頼を寄越してくれるのだから私の言葉は普通ならば戯言として受け流されるだろう。

 

しかし彼女はどうも違うようだ。遭遇した醜い妖精、邪悪な精霊であるゴブリンを斬り倒しながら私に更に問いを投げ掛ける。

 

「貴女が強いのは分かっています。ですがやはり協会に所属した方が楽なのではないですか?」

 

「いやあ、私って加護を得られない体質だから。その代わりに身体能力が高いのよね。」

 

嘘は言ってない。加護を得られないのは本当だし、身体能力が高いのも本当である。

 

襲ってくるゴブリンの頸を捩じ切って投げ捨てる。同時に脚で足元に群がるゴブリンの上半身を吹き飛ばす。

 

雑魚共が鬱陶しい。一般人よりちょっと上程度の身体能力しか持たない塵風情が煩わせるな。

 

苛立ちを籠めて塵共を蹴散らす。祓呪者ちゃんの方を見れば何体かのゴブリンが剣に串刺しにされて死んでいる。

 

それ以外にも胴体を両断されて息絶えているゴブリンもちらちら見受けられる。

 

素戔嗚尊の加護だ。身体の何処からでも武装を生やせる加護、見る限りだと踵に剣を生やして薙ぎ倒したと言った所か。

 

やっぱ便利だな加護。対呪いの天照と対人の素戔嗚尊。ロマンで一つの能力を極めたけど多彩な能力を使いこなすのもやっぱロマンだよなあ。

 

私にも加護くれる神様とかいないかな?でも私が交流ある神種って大体邪神だし私の醜態見て嘲笑う奴らばっかだもんなあ。

 

そんな風に恐らく下級未満の尖兵である下級未満に相応しい強さの身の程を弁えない塵を掃討する。

 

ゴブリンではあるがゴブリンではない。妖精ではなく怪異に近しい存在だろう。

 

妖精メイド?とか言う存在を同じ妖精という括りで変異させてゴブリンモドキに仕上げたか。

 

これ位の改造なら土台が整っている呪いにとっては然程難しいものではないのだろう。

 

無論、誰でも簡単に習得可能である訳ではない。もしそうならば私は既に習得してるしきっと使いこなしている。

 

だが実際の私は"天姫"の異能との類似性から推察して改造だと確信する程度の能力しかない。

 

自分が創造したも同然である怪異の中の、イメージの産物である泡沫の存在という条件が整った上で、やっと近似している存在へと変異させられるのだろう。

 

吸血鬼の館に妖精メイドとやらが現れるのも大分不思議ではあるが。まあ怪異なんぞにそんな事を言っても仕方あるまい。

 

しかし妖精メイドか。私も妖精を雇った事はあったがその日の内に喰った気がする。

 

基本的に家事や雑用はまあまあ普通になってくれて便利なのだがいかんせん悪戯好きなのが玉に瑕なのだ。

 

雇ったその日の内にお気に入りの棺桶を壊されて衝撃のままに命を奪ったわら、私は悪くないと思う。

 

まあ彼だが彼女だかも忘れたがソイツは私の中で今も生き続けているだろうからそんなに気にしなくとも良いだろう。

 

……大分機嫌というか気分は下がったが、別に機嫌や気分が上がってもやる事は変わらないのだ。

 

早く終わらせて事務所に帰る為にも私達は長い廊下を進み終わり。失踪者が居るであろう部屋へと到着した。

 

 

 

 

見る。

血を吸われたのか衰弱して目の焦点すらも合っていない人々。スーツのまま立ち竦み、中には倒れ伏したミイラさえも存在している。

 

見る。

青褪めた肌、蝙蝠の羽、赤い瞳、鋭い牙。間違いなくこの館の主であろう吸血鬼。

 

見る。

今朝初めて会ったばかりのフリーの祓呪者。興味がなさそうな顔で拳を構えている。

 

私が殺すべきなのだろう。リーテシアさんは加護を持てない体質だと言っていた。

 

なら吸血鬼の再生能力を突破できるのは私しかいないのだ。私がやるべきなのだ。

 

怖い。初めて呪いを前にそんな感情が湧いた。

 

怪異なら何十体も倒してきた。襲ってくる怪物を退けた事もあった。

 

でもそれとは違うのだ。目の前の怪物には悪意がある。明確な目的を持って此方を殺そうとしてきている。

 

心を落ち着かせる。いつも通りに戦えば負ける要素はない。剣を構える。天照様の加護を付与する。

 

 

浅域男爵位鬼種

UNKNOWN

 

 

怪物が一歩踏み込む。それだけの動作で床が破砕され、衝撃波が伝わってくる。

 

私に向かって一直線に突っ込んで来る怪物に加護を纏わせた剣で斬り掛かる。

 

速度は追えない程ではないし、一定の速度を維持したままである。故に計算して斬撃で迎撃すれば良い。

 

落ち着いて刀を構え、突っ込んで来た怪物に加護を纏わせた刀を抜き放ち斬り伏せようとして。

 

怪物が寸前に踏み込んで上へ大きく跳躍する。怪物の跳躍によって足場が不安定となった状態で斬撃を放ったせいで私の体勢が崩れる。

 

上から怪物が爪を振り下ろそうとしているのを察知し、頸から刀を出現させて怪物の手を貫く。

 

それと同時にリーテシアさんが飛び膝蹴りで怪物を吹き飛ばして壁へと叩き付ける。

 

壁を凹ませる勢いで衝突した怪物がのろのろと立ち上がる。衝突した時のダメージが残っているのかフラフラしている。

 

「リーテシアさん、遠距離から矢で祓います。足止めを頼みました。」

 

「了解!」

 

素戔嗚様の加護で武器を形作る。鏃に天照様の加護を纏わせて、矢を引き絞り照準を付ける。

 

リーテシアさんが蹴りで怪物の刀が突き刺さっていない方の腕を粉砕する。というか弾き飛ばす。

 

爆発と見紛う程の衝撃が叩き込まれた腕が飛散する。血や肉片が辺り一面に降り注ぐ。

 

鎧が血で穢れそうになる。万が一、怪物の血に毒が含まれていた場合を考慮して鎧に天照様の加護を纏って血を浄化する。

 

しかしリーテシアさんは加護を持っていないのに大丈夫なのだろうか?フリーの祓呪者とはいえ死んだしまったら目覚めが悪い。

 

私が受けている任務に協力して血を浴びてしまったのだから任務後に浄化してあげよう。

 

そんな事を考えていると怪物の後ろに回り込んだリーテシアさんが腕と首を絞めて怪物を拘束してくれる。

 

有難い限りである。そのまま私は引き絞った矢を放って怪物の心臓を貫いた。

 

『オオオオオオオオ、オオオオォォォ!!!』

 

絶叫を上げながら怪物が悶え苦しむ。リーテシアさんもトドメが刺された事に安堵したのか手を離した。

 

怪物を倒せた事に安堵する。実体を持つ呪いとの戦闘は初めてだったが、何とか勝利する事が出来た。

 

被害者を救い出せた事を実感して。達成感と共に緊張が解れて身体を弛緩させる。

 

『マヌケメ!』

 

その瞬間。さっきまでの苦しみ様が嘘だったかのように怪物が起き上がり、即座に被害者の方へと疾走する。

 

咄嗟に弓に矢を構える。リーテシアさんも床を蹴って怪物に追いつこうとしている。

 

……その踏み込みで館自体が揺れた気がしたが、流石に錯覚だろう。寧ろ錯覚であって欲しい。

 

だがリーテシアさんが怪物に追い付くよりも早く、怪物が被害者の男性の首に爪を当てる。

 

被害者の男性は衰弱した様子で気絶しており、抵抗が出来ない状態にあった。

 

いや、下手に意識があるよりはよかったかもしれない。パニックになっていれば状況は更に悪化していた。

 

怪物が爪を首元に当てたまま、ゆっくりと後退する。眼は忙しなく動き、私とリーテシアさんを交互に見ている。

 

そしてリーテシアさんから5m以上距離を取るとゆっくりと口を開いて喋り始めた。

 

『オレヲミノガ』

 

「死ね」

 

そしてリーテシアさんが投げた床の破片が超高速で怪物の頭蓋を粉砕した。

 

速すぎて眼に追えなかった。床の破片だと気付いたのも怪物の頭を吹き飛ばした衝撃で破片の一部が私の足元まで転がって来たからに過ぎない。

 

そして今さっき怪物を圧倒したばかりのリーテシアさんが私に向き直って話し掛ける。

 

「吸血鬼も倒した事だし、一旦帰ろっか。」

 

「え、えぇそうですね。」

 

「被害者の救助はお願い。私はこの怪異を処理するから」

 

「分かりました。皆さん、着いて来て下さい!」

 

リーテシアさんから離れて、被害者を誘導して館の道を進む。

 

懐中電灯だけでは少し危険な道だが天照様の加護を使えば問題はない。

 

神の加護をこんな事に使うのに罪悪感を感じてしまうが、懐中電灯しか使わずに被害者を危険な目に遭わせる訳にもいかない。

 

ゴブリン一匹見当たらない道を進み終え、道祖神の加護を用いて回収に来た祓呪者の方に被害者を引き渡す。

 

「初めての実体を持つ呪いとの戦いはどう?」

 

「怪異とは異なり、明確な目的意識を持っていると感じました。」

 

私を気遣ったのか優しく質問してくれた祓呪者の先輩からの質問に返答する。

 

そうだ、あの怪物は知性を持っていた。リーテシアさんではなく私を真っ先に狙い、被害者を人質に取ろうともしていた。

 

怪異のように目の前の全ての人間に襲い掛かったり、条件に合致した人間にランダムに攻撃を仕掛けるような事はしていなかった。

 

……そこで私はふと気がついた。私達が交戦した怪物は一回も再生していなかった。

 

アレは本当に吸血鬼だったのか?




男爵位:24時間の間に200人以上300人未満の人間を殺害できる呪い。感染性の怪異などが多く該当する。


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事件簿No.1:吸血鬼の館(後編)

祓呪者ちゃんが館から出て行ったのを確認して、さっきから私の事をじろじろと不躾に見ていた下郎を影から引き摺り出す。

 

『痛ぇ!』

 

コイツが今回の首謀者である吸血鬼で間違いないだろう。

 

先程の怪物。コイツの使い魔はゾンビの亜種でしかなかった。

 

何せ再生能力が存在しない。祓呪者ちゃんも多分現実世界の方で気付いた頃だろう。

 

吸血鬼という種族が持ち合わせる催眠術。洗脳が可能な出力まで達していないから思考誘導でもしたんだろう。

 

更に使い魔で人質を取って、見逃されればそのまま逃亡。見逃されてなくとも思考誘導で吸血鬼を討伐したと思い込む。

 

使い魔もなるべく多くのリソース()を使って強化に違いあるまい。

 

コイツ自身は子爵位程度の力しか持たないというのに使い魔は男爵位に到達していた。

 

使い魔を強化するのは当たり前の事だが、自身の位階の一つ下まで強化するのは余り例がない。

 

考えられるのは影武者役にする事くらいだ。尤もコイツの場合は弱すぎて影武者にすらならなかったが。

 

狡猾であるのだろう。悪辣ではあるのだろう。だが策謀に頼る時点で怪物ではなく人間だ。

 

「滑稽よなあ。貴様は何処で追放されたのじゃ?」

 

『俺を馬鹿にしているのか。』

 

「無論馬鹿にしているとも。吸血鬼に相応しくない貧弱さだ。」

 

追放。そう、追放。或いは放逐とも呼ばれる実体持つ呪いの慣習だ。

 

弱い個体を排斥し淘汰する、群れを構築した呪い特有の行動だ。

 

目の前のコイツも吸血鬼としての能力の乏しさから追放された奴だろう。

 

浅域の子爵位でしかないコイツどうやって海を渡って日本にやって来たから些か疑問ではあるが。

 

もしや日本に私が知らない吸血鬼の集団でもいるのか?今度少し調べてみるようかな。

 

『貴様も俺を見下すのか?俺の努力を嘲笑うのか?』

 

「そうだな。貴様よりも私の方が強いからなあ。」

 

『………俺はいつもこうだ、いつもいつも』

 

「すまんが長話に付き合う気は毛頭ないぞ。さっさと私の、妾の糧となれ。」

 

周囲に掛け続けていた催眠を解く。違和感なく容姿に注意させなくする精神操作を放棄する。

 

"ソレ"を例えるならば妙齢の女性、というよりは幼い童女であろうか?

 

情欲の一切が掻き立てられない雰囲気を纏う可憐で美しい永遠の少女。

 

月光を溶かし込んだかの如き銀髪がたなびく。踵まで伸びているというのに等しく輝きを放っている。

 

雪のように白い肌。一欠片の穢れも存在しない、存在し得ない絶対的に無垢なる皮膚。

 

一点の曇りもない紫水晶(アメジスト)の瞳。オークションにでもかければ数億は下らないであろう至高の宝石の具現化。

 

紅い唇は花のように魅惑的。自然と眼が惹きつけられる埒外の魅力を放ちながら、奥に隠れた鋭い牙を覆い隠している。

 

優雅にして絢爛たる姿。一片の欠けもなく、天上にて輝く満月を想起させる容姿。

 

祓呪者の間では呪いは世界に深く根を張る為に深ければ深い程に純粋な存在として顕現するとされている。

 

その指標の一つが肉体、或いは容姿である。

 

実体持つ呪いは容姿が完全に近しければ近しい程に深く純粋な呪いであるのだ。

 

美しければ美しい程に。可憐であれば可憐である程に。美しい薔薇には棘があるが、呪いとは寧ろ棘が鋭ければ鋭い程に美しく育つのである。

 

そして私の容姿はコイツにとって致命傷であったのだろう。知識を持つが故に私という存在を理解できたのが最大の不幸と言っても過言ではあるまい。

 

深域王権鬼種複合亜人種

リーテシア

 

『あ、あ、あああああァァァアアアァァァ!!!』

 

『煩いぞ、妾の許可なく口を開くでない。』

 

口の中に生じる影を支配・使役してコイツの喧しい口を縫合する。

 

細かい作業は余り得意ではないが、この程度の操作ならお手の物だ。

 

肉体強度的にコイツ如きの声量では妾の鼓膜にダメージを与えるなど不可能である。

 

だがそれはそれとして叫ばれると不愉快なので強引に口を閉ざすのが妾にとっては正解なのだ。

 

『怪異と貴様で残機が二つ。じゃが貴様も当然残機は溜め込んでおろう。』

 

別に妾の残機が足りない訳ではない。寧ろ使う事が他の諸王と戦う時くらいしかないから有り余っているくらいである。

 

だが使わないからと言っても残機はあればある程お得な物。貯めれば貯める程に吸血鬼としての基本性能が向上するのだ。

 

妾も貯めまくった結果として日光如きでは妾を打倒し得ぬ程の再生能力を手にしている。

 

残機の一つ一つの向上量は微弱でも塵も積もれば山となるのである。

 

というかコイツさっきから反応しないのう。妾に対して不敬じゃないか?

 

あ、妾が口を縫い付けておったんじゃった。今から解いておけば威厳とが残るか?

 

『…改めて聞こう。貴様の残機はどれ程だ?』

 

『教える訳がないだろう!悪食の"影災"なんぞに。』

 

『貴様の命が妾の掌の上だと忘れぬようにな。』

 

答えないなら答えないで愉しみようはある。

 

と言ってもどれだけ命を蓄えているのか見当をつけて、ピッタリ当たればラッキーの運試し。

 

大雑把に百単位でしか解らないから実質的に百分の一の確率での籤引きを愉しめる。

 

吸血鬼以外の呪いではこのような遊びが出来ぬから吸血鬼限定の遊びだ。

 

尤も吸血鬼の殆どは妾と遭遇しないように気を使っているからこの遊びは十年に一度あればラッキーである。

 

昔はこの遊びがやりたくて吸血鬼狩りをしていた時もあったが、うっかり他の諸王にこの遊びを教えてしまって吸血鬼の数が激減したせいで余り出来なくなってしまったのだ。

 

そんな悲しい事件から学んで、最も吸血鬼狩りを愉しんでいた"嵐禍"と一緒に吸血鬼保護の協定を結ぶに至った。

 

そんな事を思い出しなからも影を操って首謀者であった吸血鬼を拘束しようとする。

 

名前も聞いていないが、まあ妾が憶えておく必要性へ皆無なのだし聞かなくとも良いだろう。

 

手をゆっくりと吸血鬼に向けて伸ばそうとする。その瞬間、吸血鬼が自ら妾に向かって突撃、否。特攻してくる。

 

『御照覧あれ!このデヴィット、最期に一花咲かせて見せようぞ!!』

 

浅域子爵位鬼種複合亜人種

デヴィット

 

……誰に見て欲しいと言っているのだ?妾か?妾に見て欲しいのか?

 

突進してくるデヴィットなる吸血鬼を見ながらそんな疑問が頭を過る。

 

コイツの武器なんぞ爪ぐらいだろう。その爪も格上に対しては通じるかどうか怪しいモノだ。

 

だが、まあ拘束する手間が省けたと考えれば良いだろう。

 

折角自ら妾の糧になろうとするのだ。それなりに丁重な扱いをしなくてはな。

 

両腕を広げて抱き締めるようにデヴィットとやらのの爪撃を受け入れる。

 

妾の肌へと突き立てられようとした爪が粉砕される。当たり前だ、鋼鉄すらも切り裂く爪だろうが妾の肌はその程度では傷一つ付かない。

 

無理矢理にでも傷を付けようと力を籠めた所で逆に自壊するだけである。

 

そして残機が再生に充てがわれないように速やかにデヴィットとやらの首筋に噛み付き、命を奪う。

 

別に脊髄を噛み砕くとか頭蓋を握り潰すとかそういう意味の命を奪うではない。

 

蓄えた残機を吸い上げるという意味での命を奪うである。

 

うっかり殺してしまったら命が勿体ない故に殺さないように細心の注意を払いながら命を奪わなければならないのだ。

 

吸血鬼でなければ影に取り込んで消化して終わりで良いのだが、吸血鬼相手だと命を奪う為に妾が直々に吸わねばならない。

 

首筋に突き立てた牙から血と命を吸い尽くす。正直雑草を磨り潰して十日位放置したスムージーみたいな味がするけどそこら辺は我慢するしかない。

 

今回は百三十七にしておこう。二百以下という条件で適当に選んだ数だが、それなりに自信はある。根拠はないが。

 

『俺が、薄れてゆく……。ァァ』

 

貪る。存在全てを妾の中に取り込む。雑味が多いが栄養価はそれなりに高い。

 

吸血の対象が純粋であればある程に妾達吸血鬼にとって美味に感じるという説を思い出す。

 

知人から聞いただけではあるが、それ故に吸血鬼は年若い人間の血を好むのだとか。

 

だが質という面においては呪いに優るモノはないというのが妾の自説じゃ。

 

今さっき貪り尽くした此奴の命も、人間に換算すれば小さな村一つ分にはなろう。

 

子爵位程度でこれなのだから、人間を襲うよりも他の呪いを襲った方が幾分か効率的だ。

 

最初は人間の血を吸うのが嫌で始めたのだが、今では寧ろ積極的に呪いを食べに行く始末だ。

 

デヴィッツだがデイビットだがの命を喰らい尽くして合計で百三十一個の残機の追加が行われた事を認識する。

 

妾が予想していたより少なかったが、館の怪異も喰らえば百三十二。五個程度なら誤差だろう。

 

運試しの結果は上々。子爵位の吸血鬼による浅い汚染も妾の中に在る内に上書きされるだろう。

 

己の中で魂を拷問にかけて怨念を捻出する吸血鬼もあるようだが妾にはそんな小細工など必要ない。

 

妾によって消費されるまで安穏の微睡みに溺れよ、人間。

 

 

………所でこの死体どうしよう?

 

 

 

 

『眷属よ、来たれ。』

 

静寂の中で奏られる言霊。それに呼応して影が不気味に蠢き始める。

 

『我が血を与えられしモノよ。我が呪いを賜りしモノよ。』

 

影が水面の如く細波を立て始める。波紋が館中の影に次々と広がってゆく。

 

一つや二つではない。数十にも届く程の数だ。人間のみの力では再現できない道理を無視した怪奇現象。

 

『妾が赦しを与える。影から現世に滲み出るが良い、鴉共。』

 

影に生じた波紋に泡が混じり、昇っては弾ける。紅い瞳が不気味に輝き影の中から世界を睥睨する。

 

常人がこの場にいたなら即座に命を絶つだろう。下位の祓呪者がいたならば決死の覚悟を固めるだろう。

 

それ程の恐怖。それ程の威圧感。子爵位の吸血鬼ですら比べ物にならない。

 

『契約を忘れたとは言わせぬぞ。妾の元へ疾く馳せ参じよ』

 

詠唱が唱え終わる。同時に影から影の如き翼を羽ばたかせて黒い鴉が一斉に飛び立つ。

 

一匹一匹が伯爵位。一日もあれば三百人以上は殺害可能な呪いの大群。

 

その中でも一際大きい統率個体に至っては侯爵位の中でも上澄み。公爵位にすら届くかもしれない怪物の中の怪物。

 

更に恐ろしいのはこの悍ましい呪い鴉の群れが直接戦闘能力ではなく諜報能力に特化されている点である。

 

異能は全て影の世界を飛翔するという単一の目的の為に費やされ、肉体性能も攻撃力や筋力よりも耐久力と速度に割り振られた上で人間相手なら無双できるのだ。

 

そんな魔群を率いる鴉が主である吸血鬼へと用件を尋ねる。

 

『我らが主人。同族狩りの吸血鬼。忌まわしい影の王。一体我らに何用でありましょうや?』

 

『あれを喰え。』

 

『どうやら拒否を赦されぬ御様子。ならば喜んで処理させて頂きましょうぞ!』

 

途端に鴉が吸血鬼の死体に群がり啄み始める。時には押し退け、時には持ち去る。

 

瞬く間に吸血鬼の死体が解体され、分解されて鴉達の腹の中に収まってゆく。

 

『喰い終わったら帰れ。』

 

『食後の余韻すら愉しませてくれぬとは。何たる悲しみ!ですが御命令とあれば仕方ありませぬ。誠に残念ですが今回はこれまで、という事にて。また何かあればどうぞ何時でも仰って下されば幸いで御座いm』

 

『長いわ戯け。』

 

強制的に影の中へと鴉達が沈められる。だが鴉達はそれに対して一切の抵抗をしない。

 

寧ろ自ら積極的に影の中へと入り込む鴉も存在している。

 

『……では次は貴様だな、怪異。』

 

次の瞬間。館に存在する全ての影が空間の主、否。空間そのものである怪異へと叛逆を開始する。

 

侵食して、更に影が溢れ出す。音はなく、然れども慈悲もなく。

 

音一つ存在しない静寂。影に館が沈み、埋め尽くされてゆく。

 

十秒も掛からない。僅か数秒で吸血鬼の館は存在としての終わりを迎えた。

 

 

 

 

「やあ祓呪者ちゃん!何分ぶりかな?」

 

「如月 天華です。それとあの館の中にはまだ吸血鬼が潜んでいる可能性があって…」

 

「あ、名前教えくれる感じなのね。後吸血鬼の方は大丈夫だよ、私が然るべき対処をしました!」

 

「そうですか…。無事で良かったです。」

 

「じゃあ依頼も終わった事だし。お姉さんが何か奢ってあげましょう!」

 

「回転寿司行きたいです。」

 

「割と素直だね君。まあいいけども。今車とか持ってる?」

 

「持ってません。私は車買う趣味はないので。」

 

「やっぱ協会の祓呪者は儲かっているな。まあタクシー使えば良いか。へいタクシー!」




呪いの諸王:人類と非友好的な王権の呪い。"影災"、"凍海"、"覇獣"、"嵐禍"、"死冥"、"天姫"の六柱が存在している


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