宵と明星の二重奏 (野良ノルス)
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序幕 セカイを超えて
0時、セカイを知って。


皆様どうも、野良ノルスです。
今回は、本編開始よりちょっと前の奏真のお話です。
皆様、お待たせしました。生まれ変わった「宵と明星の二重奏」をお楽しみ下さい。


 

昔から、俺の周りでは不幸な事がよく起きていた。

 

それには、いつも俺と親しく関わった人間が巻き込まれていた。

 

幸い、命に関わる様な事は無かった。

 

だが、巻き込まれた者達は、口を揃えて、俺の事を厄病神だと蔑み、突き放した。

 

勿論、そう言わずに関わり続けてくれた親友もいる。

 

それでも、自分のせいで、親しく関わった人達が不幸な目に遭っている。

 

まだ幼かった俺は、そう思うしか無かった。

 

そうして、人との関わりを拒み、消えたいと塞ぎ込んだ俺を、

 

一人の幼馴染の曲が、救ってくれた。

 

初めて作った物なんだと、恥ずかしそうにそう言って聴かせてくれた曲。

 

彼女の父親の曲によく似た、優しく包む様なメロディーに

 

俺の心の傷は、確かに癒えていき、消えたいと思うことは無くなった。

 

それから少し経って、俺を救ってくれたあの曲の様な曲を作りたくて、作曲を始めた。

 

その幼馴染は、寝るのも忘れて曲を作る俺を心配しながらも、出来上がった曲を「素敵な曲だね。」と褒めてくれた。

 

 

・・・・・・そこから先は、残念ながら覚えていない。

 

 

彼女の顔も、名前も、俺を救ってくれたメロディーすらも、全く思い出せない。

 

だが一つ言えるのであれば、

 

あれから時は経ち、作曲家となって23歳を迎えた今。

 

俺は、自分の曲で人を殺した。

 

 

 

 

 

事を知ったのはつい昨日。ニュースを見て、俺は唖然とした。

 

『少女が自殺、原因は動画サイトの楽曲』

 

都内某所にて、女子高生の死体が発見されたらしい。そして、捜査の結果自殺と断定された。

自殺か他殺かの区別がついた警察が次に行ったのは、自殺の原因。

 

どうやらその女子高生はいじめを受けていたらしく、自殺しようにもする勇気が無かった。

だが、そんな時に聴いた一つの曲が、自殺する決意をさせた。・・・・・と、その女子高生の遺書に書いてあったそうだ。

 

それが俺の作った曲だったなんて、笑えもしないだろう。

 

「俺には、お前みたいに誰かを救う事は出来ねぇみたいだぜ?なぁ、。」

 

零した呟きに、ふと懐かしい名前が聞こえた気がした。

 

何度も、何度も呼んだ、懐かしい名前。

誰の名前だったかはもう覚えていない、その名前。

 

「・・・・・外、歩くか。」

 

白紙の写真立ての隣に並ぶ時計を見れば、今は深夜25:00。夜とは言え夏なので暑い。数分で着替えを終え玄関に出た俺は、スニーカーを履いて街へと繰り出した。

 

目的も無くただ歩く事数分、通りがかった横断歩道の真ん中に、少女が立っていた。

 

こんな夜中に、何をしているのかと疑問を抱く。すると、向かいの歩道から女性の声が聞こえた。

 

「やめなさい!そんな事したって、お母さんは喜ばないわよ!」

 

少女の眼前には、トラックが迫っている。今もちらちらと雨が降っており、道路はまだ濡れていて滑るだろう。少女とトラックの距離は10mを切っているから、急ブレーキをかけたとしてもきっと間に合わないだろう。

 

女性の言葉に、少女は言葉を返す。

 

「お姉ちゃん、私ね、疲れたんだ。」

 

「先に行っちゃうけど、許してね。」

 

「・・・・・ごめんね、お母さん。」

 

少女の声を聞いた俺の胸に、えも言われぬ感情が湧きあがった。

 

罪の意識、と言うのが最も正しい表現なのであろうその感情は、全身に広がって、通り過ぎようとした俺の足を固めた。

 

その言葉を、俺は昔聞いた。

 

名前はまだ思い出せないけど、俺の大事な人が、昔こんな風に死んでいくのを・・・・・

 

俺は、確かに見た。

 

『奏真、ちょっと疲れちゃったんだ。わたしには・・・・・・・・もう、作り続けられないよ。』

 

『一人にしちゃうけど、許してね。』

 

『・・・・・ごめんね、奏真。』

 

風にたなびく長い銀髪、澄み切った青空の様な瞳、紡がれる鈴の音の様な声、同年代と比べると少し小さい背丈、そして・・・・・

 

それを無慈悲に吹き飛ばした、一台のトラック。

 

その情景と眼前の光景が重なって、俺の足は自然と動き出した。

 

あんな惨めな思いを、誰かにさせてたまるものか。

 

大切な人を守れず、ただ見る事しか出来なかった無力感を。

 

あんな想いをするのは、俺だけで十分だろう。

 

ガードレールを足場に飛ぶと、俺は少女を突き飛ばした。

 

「「え・・・・・・!?」」

 

少女とその姉であろう女性が驚きの声を上げる。

 

トラックが急ブレーキをかける音とほぼ同時に、重い衝撃が体中を走り・・・・・・

 

俺の意識は、体と共に吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「ん・・・・・・。ここは、何処だ?・・・・・・あぁ。」

 

目を覚ました俺は、まず真っ白な天井に違和感を覚えた。

 

少し遅れて、俺がトラックに轢かれた事を思い出す。

 

体は・・・・・・動く。

 

どうやら無事だったらしい。あれで無事だったのはほぼ奇跡だ。

 

どれだけ経ったかはわからないが、怪我が完治している所を見ると、相当時間が経っているのだろう。

 

「起きて、周りに喜んでくれる奴もいねぇなんて、俺史上最高に寂しい目覚めだぜ。全くよ。」

 

起き上がり横を見ると、誰も座っていない椅子。

 

花瓶などが置いてある棚の上には、白紙の写真立て・・・・・・

 

「・・・・・・ん?今何か見えて・・・・・・。」

 

今一瞬だけ、いつも何故かある白紙の写真立てに景色が映った気がした。

 

鮮やかな群青色の空の下で、学校の制服の様な黒い服を着た少女四人と少年一人が楽しそうに笑っている景色が。

 

手に取り目を凝らすと、錯覚だったのかと思う程真っ白に戻っている。

 

「・・・・・・気のせい、か。」

 

棚の上に写真立てを戻すと、同じ棚に乗せられていた着替えが目に留まる。

 

誰かが看病してくれていたのだろうか。

 

ベッドから降り、着替え用のの服に袖を通す。

 

首を軽く鳴らして、病室の扉を開けた。

 

流石に正式な退院手続きとかはした方が良いか。

 

つい昨日までぶっ倒れてた(はずの)奴が急に病院からいなくなったら、きっと大変だろうし。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

目覚めてから数日経った9月30日。

 

退院した俺はすっかり夏の気配が消えた空を見上げて、秋の初めの空気を胸いっぱいに吸い込んだ。

 

「ふう。今年の夏は病院暮らしでエンドかよ・・・・・。」

 

がっかりする気持ちを吐き出して、俺は家へと向かった。

 

帰宅した俺は、約2ヶ月ぶりにくる自分の家に、懐かしさを感じていた。

 

棒立ちすることたっぷり10秒。やっと動き出し、一つ思い出す。

 

「そういや、こないだ海斗がゲームの配信日だとか言ってたっけ。」

 

歌坂海斗は俺の親友で、昔からバンドやったりアイドルやったりしてる爽やかイケメン野郎。

 

俺のせいで不幸な目にあっても離れなかった、大切な友人だ。

 

そんな海斗が、この前会った時に

 

『今月末にボカロの音ゲーが出るんだけど、良かったら一緒にやらない?』

 

と言っていた。

 

どんな感じか興味はあるし、どうせスマホも空き容量が滅茶苦茶余ってるし、ちょっと遊んでみよう。

 

「確か名前は・・・・『プロジェクトセカイ』、だっけ?」

 

インストールが完了し、アプリを開く。

 

名前入力画面に入り、俺は少し考えた。

 

RPG等と違って、音ゲーの名前は決めるのに苦労する物だ。

 

しかし、今日は案外すんなり頭に名前が浮かんだ。

 

「"Sei"・・・・・・かな。」

 

名前を入力して決定すると、ロード画面に入る。

 

どんなキャラがいるのかわからないので、出てくるキャラの名前を軽く読んでみる。

 

しかし、なぜかその名前には聞き覚えがある物が多い。

 

そして、最後のグループの名前と、そのグループメンバー1人の名前を見た時、深い懐かしさと鋭い痛みが、俺の胸を満たした。

 

「『25時、ナイトコードで。』・・・・・・宵崎、奏?」

 

頭の中の空白に、最後の1ピースがパチリと嵌まる音が聞こえた。




次回は前回のプロローグをリメイクしたものです。
まだこれの投稿頻度を決めてないので、アンケ取ります。
君の夜をくれ神曲すぎだろ。鬼リピするぞ。
次回「1時、宵との再会。」


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1時、宵との再会。

どうも、能と愛が無い人です。
プロセカの近況報告はする気が起きないので割愛します。
第1話です、どうぞ。



 

プロジェクトセカイを始めた事で奏の事を思い出した俺は、ひどくプロセカにのめり込んだ。

 

もっと奏の事を知る、いや思い出す為に。

 

しかし、1年半経った今でも、俺は奏の事を少ししか思い出せない。より深く思い出そうとすると頭の中にノイズが走る。

 

一つだけわかるのは、俺は奏やみんなが居たあの場所とは、全く別の所に居る。と言う事。

 

そうでなければ、確かに存在していた皆が、奏が、ゲームのキャラであるはずが無い。

 

確かにこの世界に居たのだから。俺の世界に、俺の現実に。

 

「そう。でも、貴方はその現実を、そのセカイを拒んだの。」

 

俺の耳に、無機質な女性の声が響いた。

そう言えば、先程から変な感じがする。俺は部屋で寝っ転がってた筈だ。なのに、足に地面の固い感触がある。

 

目を開くと、そこは俺の住む世界ではなかった。

 

地平線まで広がる、温度の無い白。それ以外何も無い、真っ白なセカイ。

 

目の前には、声の主と思われる白いワンピースの少女。

ツインテールにされた髪は白く、目は灰色だ。

 

俺はこの少女を知っている。俺の知るそれとは全く容姿が違うが、確かにそうだ。

 

「もしかして、ミク・・・・・なのか?」

 

俺の問いに対し、少女は目を伏せて答えた。

 

「そうであり、そうで無い存在。貴方のセカイの住人である"初音ミク"の『可能性』。」

 

「俺の・・・・・・セカイ?」

 

セカイ。その単語には聞き覚えがある。プロジェクトセカイに存在する、誰かの想いから生まれた場所。存在する5つのグループの物語で、鍵となる重要な場所だ。

 

そして、プロジェクトセカイに登場するグループのセカイには、全てに名前と景色がある。

 

Leo/need(教室のセカイ)にも、ワンダーランズ×ショウタイム(ワンダーランドのセカイ)にも、Vivid BAD SQUAD(ストリートのセカイ)にも、MORE MORE JUMP!(ステージのセカイ)にも、25時、ナイトコードで。(誰もいないセカイ)にも、俺の知る全てのセカイに、それぞれの風景があった。

 

だが、このセカイにはどこまでも空虚な白が広がって居るのみで、とてもではないが風景と呼べるものでは無い。

 

「このセカイに、名前はあるのか?」

 

「"可能性のセカイ"。全てがあるが故に何も無い、出来損ないのセカイ。」

 

ミクが言った出来損ないと言う単語が引っかかるが、名前はある様だ。

 

セカイは、名前によって風景が変わる。そして、個人の感情から生まれたセカイはその人間の望む風景を映し出す。

 

俺は、このセカイの風景を知らないし、俺の心は多分ここまで殺風景では無い。

 

考えていると、ミクが教えてくれた。

 

このセカイは、俺の想いから出来た物ではあるが、ミクを含むあらゆる要素が未完成であるが故に出来損ないのセカイである事。

 

このセカイは、何故か俺の関わる全ての並行世界へ干渉出来る事。

 

本当の想いを俺が見つけた時に、このセカイは完成する事。

 

可能性と言う名の虚無で出来た、白紙のセカイ。それが、この場所なのだ。

 

「そう。そして、この白紙のセカイに景色を描くのは・・・・・・あなた。」

 

ミクは俺をピタリと指差すと、そう言った。

 

「あなたの想いで、このセカイは新たな可能性を生み出せる。その可能性から、結末を捻じ曲げる事ができる。」

 

俺が知っている奏は、雪を救えていなかった事を知ったあの日、自らの命を絶った。だが、プロジェクトセカイでは、消えようと誰もいないセカイへ行き、ミクの言葉で雪の為に曲を作る決心をしている。

 

俺があの日見たものは、"奏が自死を試み、俺がそれを止めれなかった可能性"なのだろう。

 

その可能性が実現した結果、奏が死ぬと言う結末が確定してしまった。

 

その結末を捻じ曲げる事は、この場所からは出来ない。

 

だが、新たな並行世界を生み出し、その並行世界でその可能性を消せば、結末は変えれる。確定した未来を捻じ曲げれる。

 

理屈はどうあれ、そう言う事なのであるのなら・・・・・・

 

「なら、作ってくれ。奏が死んでない世界を。救える可能性を。」

 

「わかった。貴方がどんな想いを見つけるか、ここで待ってる。」

 

そう言うと、ミクは右手を振った。

 

次の瞬間、俺は足下から迸った光に包まれた。

 

「いってらっしゃい。」

 

そうミクの言葉が聞こえ、俺は光の先にいるミクへ言葉を返した。

 

「あぁ。本当の想いを見つけたら、また来るよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ま・・・・・・そ・・ま・・・・・・・奏真!」

 

名前を呼ばれ、瞼を持ち上げた俺の眼に真っ先に映ったのは、つきっぱなしのパソコン。

そして、声の聞こえた方を向いた俺を見ていたのは・・・・・・

 

俺が知るより少しだけ幼さのある銀髪の少女の、明るい光を湛えた蒼い瞳だった。

 

「あ、やっと起きた。おはよう奏真。・・・・・・また遅くまで、作曲してたんだ。」

 

心配する様な声で奏にそう言われ、俺はパソコンの画面に目線を戻した。

 

開いていたのは、前の世界でも良く使っていた作曲アプリ。

 

どう見ても、作曲の途中で寝落ちしたとしか思えない光景だ。

 

再び奏の方を見て、俺は俺の知る奏との違いに気付いた。

奏の着ている物は、プロセカでもよく見たジャージ姿では無く、制服。

 

つまり、奏の中学生時代まで戻って来たらしい。

 

声色が明るい所を見るに、奏の父親は倒れていないのだろう。

 

奏の幼馴染である俺も・・・・・・中学生なのだ。

 

道理で体に違和感があるわけだ。中学生の時の俺の体に戻っている。

 

「まぁそんなとこだ・・・・・・。おはよう、奏。一応聞くけど、本物・・・・・・だよな?」

 

「え?うん、そうだよ。・・・・・・ふふっ、もしかして、偽物のわたしが出てくる夢でも見た?」

 

そう言って楽しそうにしている姿を見て、俺の中の決意はより確かなものになった。

 

俺が、奏を救うんだ。今度こそ。

 

「・・・・・・その為に、俺はここに戻ってきたんだからな。」

 

「ん?なにか言った?」

 

呟きが聞こえたのか、俺にそう聞いてくる奏に微笑みかけると、俺は起き上がって答えた。

 

「いや、なんでもねぇよ。それより、今日学校なんだっけか?」

 

「あ、そうだった!奏真急いで!遅刻しちゃうよ!」

 

「本当だ。じゃあ急いで準備しないとだな。・・・・・・取り敢えず着替えたいから、部屋出てくれないかな。」

 

他愛のないやりとりを交わし、俺は学校へ行く準備を開始した。




投稿遅れて申し訳ないです。
ストーリー自体はある程度完成していたのですが、修正をしていたら遅れました。
序幕の終了と同時に設定集を投稿するので、セカイの設定が分かりにくかった方はそれを見て頂けると分かりやすいと思います。異論があれば感想欄でボコボコに書いて頂くと主の心が儚く散ります。
質問等も有れば感想欄でお聞かせ下さい。ストーリーに活かします。
次回はもう少し早くに投稿したい所。

次回「2時、束の間の"当たり前"。」


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2時、束の間の"当たり前"

どうも、野良ノルスです。
定期更新にしてないと本当に亀更新ですねコイツ(他人事)。
大変申し訳ございません。お待たせしました。
悩みに悩んで書いた日常回です。

更新を待つファンの方が確かにいる!その事実だけで俺は戦える、この小説に魂を、込める価値がある!!



準備を済ませて、俺は奏と共に家を出た。

 

「行ってきます!」

 

「行ってきます。」

 

起こされた時に奏が元気だった所から推測した通り、奏の父親はまだ倒れていない。しかも奏に聞けば今は中学3年生。スマホを見れば今日は10月2日。

 

つまり、奏の父親が倒れた時期と思われる二月九日までまだ結構日がある。

 

それまでの期間は、嬉しい事に元気な奏と平和な学園生活を送れる訳だ。

 

勿論、奏を救うと言う目的は忘れていない。

 

だが、せっかくの機会を楽しむ権利も、幾許かはあるだろう。

 

どうやらこの世界でも俺の両親は既に他界していて、俺は奏の家に住まわせて貰っているみたいだし。

 

「奏真、早くしないと遅刻しちゃうよ?」

 

「え?あぁ、ごめん。」

 

いつの間にか立ち止まっていたらしい。不覚・・・・・・。

 

その後、若干駆け足気味で学校に着いた俺と奏は、ギリギリ間に合っていた様で先生に軽く注意される程度で済んだ。

 

間に合いこそすれ、遅刻しかけた原因は俺なので、ホームルームの後で席が隣な奏に怒られてしまった。

 

「奏真、もうちょっと早くに起きてよね。起こすわたしも遅刻しちゃうんだから。」

 

「そう言われても・・・・・・俺が寝付き悪いの、奏も知ってるだろ?」

 

「それでも、わたしに任せっきりじゃダメだよ。」

 

「わかったよ・・・・・・。」

 

そう言いつつも、プロセカのストーリー内で他のメンバーに「ちゃんと寝て?」とまで言われていた奏に睡眠のことで注意されて、不満を隠せない俺なのであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

授業等は特に何も無く終わり、下校となった。

 

今日は部活も無く、剣道部所属であるらしい俺は帰宅部所属な奏と帰路に着いていた。

 

「奏真、晩御飯のお買い物したいんだけど良い?」

 

「あぁ、別に良いけど。」

 

記憶によれば、宵崎家のキッチンは俺と奏の交代交代で回してるらしい。

 

あの奏がキッチンでちゃんと料理してるって考えるとちょっと感動なんだけど。

 

いや、ストーリーでも中学生の頃の奏は自分のお父さんに晩ご飯作ってたし、珍しい事では無いのか?

 

買い物は特に会話も無く終わり、家に帰ってきた。

 

「ただいま〜。」

 

返事が来ない所を見ると、奏の父親は部屋で作業しているのだろう。

 

最近忙しそうにしている。と奏が心配していた。

 

取り敢えず荷物を部屋に置きに行って、着替える。

 

10月の初めなのでそれなりに寒いが、それでも長袖一枚で事足りる位だ。

 

白い長袖の柄シャツに黒い長ズボンと言う格好でリビングに行くと、ソファに腰掛けた奏が本を読んでいた。

 

読んでるのは俺が貸してる漫画だ。先週貸した(らしい)のに、もう5巻まで読み進めている。

 

「奏、読むの早いな。俺そこまで読むのにもうちょっとかかったぞ?」

 

「そう?夢中で読んでるからあんまり気にして無いんだけど・・・・・・。」

 

奏は顔を上げて俺の言葉にそう答えると、時計を一瞥して再び本を読み始めた。

 

俺も時計を見ると、時刻は6時を回っていた。そろそろ夕食の準備をしなければならない。

 

「そろそろ晩飯の時間か。・・・・・・奏、今日はどっちが作る?」

 

「わたしが・・・・・・って言いたいけど、奏真お願い・・・・・・。」

 

はっきり言うと、奏は料理が下手だ。苦手では無いようだが、何故か作った物は悉く世界の真理を感じる(全てを悟る)味になるのである。

 

「はいはい、任せな。じゃあ、奏は洗濯物入れといてくれ。・・・・・・本読むのはその後な。」

 

「うぅ・・・・・・、わかった。」

 

そう言って本に栞を挟んで机に置くと、庭に出てせかせかと洗濯物を入れ始める。

 

それを見届けて、俺もキッチンへ向かい、晩飯の支度を開始した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「奏〜、晩飯出来たぞ〜。」

 

「え?あ、わかった。じゃあ、お父さん呼んでくるね。」

 

洗濯物を入れ終わり、本の世界に入っている奏の肩を軽く叩くと、集中状態が解除された奏が彼女の父親の部屋へと向かった。

 

少しして、奏の父親がリビングに来たので、3人での夕食が始まった。

 

奏の父親はやはり忙しい様で、さっさと食べて部屋に戻ってしまったが、俺と奏はゆっくりと談笑しながら箸をすすめた。

 

食事が終わり、片付けも済ませてリビングでココアを飲む俺に、同じくリビングで録画したアニメを観ていた奏が聞いてきた。

 

「そういえば奏真、作った曲ってどうしてるの?」

 

「んえ?・・・・・・どうって、そりゃまぁ・・・・・・」

 

目を彼方に向け、口籠る。

 

言える筈もないのだ。奏の誕生日に向けて作曲してるけど、どんなの贈ろうか迷って色々作っては違うってファイルの海にポイしてる(らしい)なんて。

 

「・・・・・・ファイルの海にポイ捨てしてますハイ。」

 

「もったいないよ、折角作ってるのに。・・・・・・寝ずに作曲の勉強してたの、知ってるんだから。」

 

俺の言葉に、振り向いてそう言った奏は、俯いてまた何かを言い、見ていたアニメを止めてテレビの電源を切ると、立ち上がった。

 

「どんなの作ってるのか、聴かせて?」

 

「えぇ?いや、でも・・・・・・まだ全然出来てねぇし・・・・・・。」

 

予想外の提案に驚きながら返していると、いつの間にか目の前に来ていた奏が顔を近づけて、

 

「ならちょっとで良いから。ね?」

 

微笑んでそう言った。この時の俺、絶対顔赤くなってた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

俺の部屋は、散らかってる訳でもなく、かと言って物凄く整頓された部屋という訳ではない至って普通の部屋だ。

 

しかし、そんな部屋で異彩を放つのは、机に置かれたシンセサイザーにコンデンサーマイク、そしてpcとヘッドホンだろう。

 

奏に聞けばこれらの物は自分で買ったものらしいので、当時の俺の経済力にはただただ驚くばかりだ。

 

ヘッドホンを取ると、奏に渡す。

 

「本当にちょっとだけだからな。・・・・・・一応、聴いたら感想聞かせてくれ。」

 

「うん。」

 

布団に腰掛けている奏がヘッドホンをつけたのを確認し、ファイルアプリを開く。

 

練習用にいくつも作り、題無しのまま放置された曲達の中に、一つだけ名前のある物があった。

 

それは、あの日初めて作った曲を改めて作り、歌詞をつけてブラッシュアップした曲。

 

マウスカーソルを合わせ、タブルクリックをする。

 

プレイヤーが立ち上がり、出てきた再生ボタンにカーソルを合わせる。

 

「・・・・・・流すぞ。」

 

奏にそう言うと、俺は再生ボタンをクリックした。

 

 

 

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side奏

 

「・・・・・・流すぞ。」

 

奏真の言葉と共に、わたしの付けたヘッドホンに音が流れる。

 

 

──────人の努力を笑った事 自分は努力しなかった事

 

 

ピアノの温かな音色に乗せて紡がれる、後悔と悲しみに溢れた歌詞。

 

奏真の優しい低音と相まって、どうしようもない儚さを抱えた歌になっている。

 

一音一音が心に沁みていき、4分程度の曲があっという間に感じられた。

 

曲が終わり、ヘッドホンを外したわたしは、未だ消えぬ曲の余韻に浸りながら奏真に聞いた。

 

「この曲の名前って、何?」

 

「名前?え〜っと・・・・・・『贖罪』、かな。」

 

不思議と、その曲名はすんなりと胸に落ちた。

 

しばらくの沈黙が流れ、奏真が口を開いた。

 

「どうだった?」

 

そう言えば聴く前に感想を聞かせてくれと頼まれていた。

 

奏真の群青色の目を見つめながら、ゆっくりと口を開く。

 

「凄く、良い曲だったよ。」

 

具体的なものでは無かったが、奏真は微笑むと

 

「そっか。」

 

とだけ言った。

 




一ヶ月以上も更新が空いてしまいまして、本当に申し訳ないです。

今作は前作よりも奏真くんがシリアスしてます。なので日常回と言っても前作ほどほのぼのしてる気がしませんが悪しからず。

奏パパが倒れた日付ですが、完全に主の推測です。すいません。
次回はもう少し早く出せる・・・・・・と思います。というか意地でも出します。

次回「3時、崩れ始める日常。」


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3時、崩れ始めた日常。

どうも、そろそろ週一投稿に戻そうかなと思い始めた野良ノルスです。
前回チラッと出て来た、奏真くんの寝付きが悪い設定について。
こう言うどうでも良い位小さな設定って、キャラの細部まで形作るのには必要だよねって言う物なのですが、実は物語にそれなりに絡んでくる重要な設定・・・・・・だったりするかもです。

ちょっと待って・・・・・・?わんちゃん奏バナーとバースデー被る?ソウナッタラオレハオシマイダァ・・・・・・。



 

この世界に来てから俺は、奏との何気ない日常を過ごしていた。

 

変わった事と言えば、前の世界での出来事が思い出せなくなった事。

 

トラックに轢かれた事や、可能性のセカイの事などは思い出せる。

 

しかし、退院してから可能性のセカイを見つけるまでの一年半がまるきり思い出せない。

 

セカイでミクに聞いてみたら、「可能性を変えるには、別の可能性を知っていてはいけないから。」と無機質な声で答えてくれた。

 

が、それ以上は聞いても答えてくれなかったので、思い出せない原因は謎のままだ。

 

そのままクリスマスを経て年を越し、二日間ある期末テストの一日目を終えた二月八日。

 

俺と奏は出された提出課題を二人で片付けていた。

 

それなりの量ある課題になんとか一区切りをつけ、晩飯の準備を始めようと俺が立ち上がった時に、奏が声をかけてきた。

 

「奏真、晩ご飯終わったらわたしの部屋に来てくれない?」

 

「え?別に良いけど、なんか用か?」

 

「うん。実は・・・・・・」

 

曰く、最近奏のお父さんの元気が無いから、昔みたく曲を作って贈ろうと思っている。でも、完成したは良いがテスト勉強の合間で作ったから上手く出来てる自信が無い。

 

「で、俺に聴いて欲しいと。」

 

「うん。奏真すごい曲作ってるから、感想欲しいなって。・・・・・・ダメかな?」

 

そう言って不安そうにこちらを見ている。

 

確かに、奏のお父さんの曲がcmで流れ始めてからは、部屋から怒鳴り声の様なものも聞こえた。

 

晩御飯の時も来ない事が増えているし、忙しいのだろう。

 

「ダメとは言わねぇけど、今更俺がアドバイスすることなんかねぇ気がするぜ?」

 

「それでも良いよ。じゃあ、晩御飯になったら呼んで。」

 

「りょーかい。」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

二人での晩飯を終えて、俺は奏の部屋に来た。

 

俺の部屋と同じく、散らかっている訳でも整ってる訳でも無い、作曲用の機材がある事を除けば至って普通の部屋だ。

 

「全部流すから、聴き終わったら感想聞かせてね。」

 

「おう。」

 

曲が流れ始めて、俺は真剣に聴き入った。

 

音の一部一部に、奏が曲に込めた想いが伝わってくる。

 

真っ直ぐな優しさが。

 

やはり、奏の曲は心に響いてくる。

 

あの日と同じ様に。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

曲を聴き終わり、ヘッドホンを外すと、奏が不安そうに聞いてきた。

 

「どうだった?」

 

少しばかり考え、俺は言葉を返した。

 

「良い曲だな。奏のお父さんも、きっと喜んでくれると思うぜ。」

 

そう言うと、奏は顔を綻ばせて、

 

「本当に!?良かった・・・・・・。じゃあ、お父さんに聴かせてくるね!」

 

と言うと、嬉しそうに部屋を出ていった。

 

「さ、俺は風呂にでも入ってくるかな。」

 

つきっぱなしのパソコンの電源を落とし、照明を消した後首を軽く鳴らして、俺も部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

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side奏

 

お父さんに曲を聴いてもらい、お風呂も済ませたわたしは、布団の中で考えていた。

 

『奏はすごい才能を持っているよ。きっと、音楽に愛されてるんだ。』

 

そう言われて、わたしは素直に嬉しかった。でも、その先の言葉を言ったお父さんの顔が、頭から離れない。

 

『奏はこれからも、奏の音楽を作り続けるんだよ。』

 

『きっと奏の音楽は、たくさんの人に受け入れられて、喜ばれて・・・・・・必要とされるはずだから。』

 

曲を聴いた後のお父さんは、褒めてくれたけど、どこか様子がおかしかった。

 

まるで全てを理解して、何かに絶望したかの様な表情をしていて。

 

そんなお父さんを見てしまった後では、手放しで喜べない。

 

もしかしたら、わたしはお父さんを苦しめてしまったんじゃ・・・・・・。

 

「ううん、大丈夫・・・・・・だよね。」

 

頭によぎった不安を振り払う様に呟いたわたしの言葉は、真っ暗な部屋へと溶けた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「んぅ・・・・・・ふわぁ〜。」

 

翌朝、目が覚めたわたしは軽く欠伸をした。

 

昨晩は、あまりよく眠れなかった。

 

お父さんの事で頭がいっぱいいっぱいで、眠気がいつまでも来てくれず、結局眠りに落ちたのは1時を回ってからだった。

 

今日のテストは副教科が殆どだが、休み時間は眠たくなりそうだ。

 

顔を洗い、制服に着替え、今日は珍しく早起きな奏真と朝食を済ませて部屋に戻ったわたしは手早く準備を終えるとリビングへと戻った。

 

しかし、そこにお父さんの姿は無かった。

 

「奏真、お父さんは?」

 

奏真に聞いてみると、少し真剣な表情になって答えてくれた。

 

「そう言えば・・・・・・確かに見てねぇな。部屋でまだ寝てるんじゃねぇのか?」

 

「そっか。それなら、起こしてから学校行った方が良さそうだね。」

 

「・・・・・・だな。」

 

わたしの提案に、奏真は表情を戻すと頷いた。

 

「じゃ、先に出てるぜ。」

 

「うん。」

 

立ち上がり、鞄を背負い直した奏真は、そのまま外に出た。

 

わたしもお父さんを起こしに行くべく、部屋へと向かった。

 

扉をノックするが、返事は来ない。やはりまだ寝ているのだろうか。

 

「お父さん、もう朝だよ。そろそろ起きないと・・・・・・え?」

 

そう言って扉を開けたわたしが見たのは、部屋の真ん中で倒れる、お父さんの姿だった。

 

「お父さん・・・・・・っ!」

 

 

 

 

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side奏真

 

昨日の夜に奏の曲を聴いてからずっと、嫌な予感がしている。

 

嫌な予感がする時のみではあるものの、俺の予感は結構当たる。

 

今日は二月九日。何故か、カレンダーに二重丸があった。

 

期末テストの終わりの日という事以外、なんら特別な日では無いはずだ。

 

でも、何だか嫌な予感がして、昨日はずっと寝付けなかった。

 

今日のテストはさっさと済ませて残りの時間で寝こけてやるとするか。

 

などと呑気な事を考えていた俺の耳に、奏の声が届いた。

 

 

 

─────お父さん・・・・・・っ!

 

 

その声音に明らかな動揺の響きを感じ、急いで奏の父親の部屋へと向かう。

 

開けっぱなしの扉の向こうに居たのは、部屋の真ん中で倒れている奏の父親と、必死に呼びかけている奏だった。

 

 

やっぱり俺の予感は、悪い時だけよく当たる物らしい。

 




そろそろ奏真くんが奏に救われた時のお話も書くべきだな〜と思いながら筆を進めている今日この頃。
一話でまとめようと思ったけど、なんか長くなると嫌なので二話に分けまする。
後、4時以降の話で何書いて欲しいかアンケ取ります。(一応一話は決まってる。)

次回、「4時、いつか絶望の底から。」


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番外編(後で移す)
記念番外編、平和な25時に。



いいニーゴの日なので、記念番外編です。
序幕が終わったらほのぼの&イチャイチャ主軸の番外短編集書くので、そっちに入れるお話です。
尚この話の時空では既に救済完了している模様()
もちろんネタバレは無いと信じたいです。


 

25時、ナイトコードで。雑談用

 

チャットログ 11月24日 25:00〜

 

Amia:みんな、今セカイに集まれる?

 

K:どうしたの?今課題済ませてるから、それの後なら。

 

Sei:俺もKと同じかな。

 

えななん:ていうか、急にどうしたのよ。前みたいに毎日作業してる訳じゃ無いんだから、要件位は言ってくれないと私寝るわよ?

 

Amia:待ってよえななん!明日、て言うか今日はちょっと特別な日みたいでさ。なんでも、「いいニーゴの日」なんだって。

 

Sei:なんじゃそれ?詳しい説明が聞きたい所だな。しばし待たれよ、今から課題の答え調べるわ。

 

K:Sei、そう言う事して、先生にバレたら成績落ちちゃうんじゃない?

 

Sei:バレなきゃあ、イカサマじゃあねぇんだぜ。なんで問題はナシ!

 

K:ふ〜ん、じゃあ明日先生に言っておこ〜っと。

 

Sei:すいませんでした。なんか甘いもの奢るから許してK。

 

K:よろしい。

 

えななん:はいそこ、グループチャットでイチャイチャしない。

 

えななん:そう言うのは個人チャットでやりなさいよね。

 

Sei:悪ぃえななん。

 

K:あ、ごめんえななん。

 

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side瑞希

 

「奏真、奏。急に呼んじゃったのに、来てくれてありがとう!」

 

「面白そうだったからな。」

 

「うん。瑞希、絵名はまだ来てないの?」

 

ここは誰もいないセカイ。今は寝ているのであろうもう一人の少女の想いで出来た場所だ。

 

このセカイと言う場所には、「untitled」を再生する事で入る事が出来る。

 

そして、セカイの持ち主が本当の想いを見つけると、そこから歌が生まれ、その曲の名前がuntitledに上書きされる。

 

このセカイに入るための「untitled」もまた、「悔やむと書いてミライ」と言う名を冠している。

 

ボクの目の前にいる二人は、「25時、ナイトコードで。」の作曲担当でありリーダーの宵崎奏と、その恋人で同じく作曲担当の明星奏真だ。

 

奏は、前よりかは短くなった銀色の長髪に、彼女の幼少期を想起させる切り揃えられた前髪と、前までの彼女からは想像出来ない程イメージチェンジしている。

 

変化は髪だけでなく、ジャージしか着ていなかった彼女が、今は紺色のパーカーに身を包んでいる。

 

性格までも、前までの物静かな性格から元の明るい性格へと戻っている。

 

正直ボクも、最初見た時は誰かわからない程だった。

 

「うん、まだ来てないみたい。」

 

「誰が、まだ来てないの?瑞希。」

 

奏の問いに答えたボクの耳元に囁き声が聞こえた。感情を感じない、無機質な声。

 

しかし、今のそれは前とは違う、ただただボクを脅かそうして出した声だ。

 

「ふぇあっ!?」

 

「あははは。───やっぱり瑞希は脅かし甲斐があるなぁ。」

 

仕掛け人である彼女の予想通りのリアクションで慌てて振り向くと、やはりそこに立つのは、もう寝ていると思っていた朝比奈まふゆだった。

 

奏や絵名、それにボク自身も昔と比べれば大分変わっている。しかし、内面の変化で言うならばまふゆが最も変わっているだろう。

 

今のまふゆ浮かべている笑みは、決して上辺のものではない。正真正銘、彼女の本心からの物。

 

そして、その変化をもたらしたのは他の誰でもなく、奏の隣に立つ少年、────明星奏真だ。

 

「お、起きてたんだねまふゆ。グループチャットに返信なかったから、寝ちゃったと思ったよ。」

 

「暇な瑞希達と違って、私は受験勉強してるんだよ?スマホは通知音オフにしてるんだから、そんなすぐに返信出来ないよ。」

 

そう言いながら苦笑するまふゆに、奏が反駁する。

 

「暇じゃないよ。奏真はともかく、わたしはちゃんと勉強してるもん。」

 

頬を膨らませながらそう言う姿からは、以前の大人びた雰囲気はすっかり抜け落ちていて、彼女の同年代と比べて低い身長も相まって年下に見えてきてしまう。

 

「そうだそうだ・・・・・・ん?待って奏今俺はともかくって言った?」

 

奏の言葉に奏真が乗っかるが、何かに気づき奏の言った事にツッコミを入れている。

 

「だって奏真、答え見ようとしてたじゃん。」

 

「してただけで見てねぇだろがぁッ!?」

 

奏の冷静な指摘に、何故だ。と言いたそうな顔で奏真が反駁する。

 

このセカイは、以前の張り詰めた空気もすっかり消え失せ、こんな平和な会話と温かな空気に溢れている。

 

「全く、人を夜更かしさせてるって言うのにあんたらは楽しそうで良いわね・・・・・・。」

 

そうして居るうちに若干不機嫌な絵名も来て、賑やかな談笑が始まった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

side奏真

 

瑞希から説明を聞いた所、どうやら今日は11と25の語呂合わせで「いいニーゴの日」らしい。

 

ピクシェアにもニーゴ関連のイラストが投稿されてるんだとか。

 

自分の描いたイラストが違う絵柄で描かれてて新鮮だ。と、絵名が喜んでいた。

 

そして、記念に全員で何かしたいとの事で、久々にステージで歌う事になった。

 

「歌うにしても、何歌う?」

 

言い出しっぺの俺にまふゆが問いかけるが、当然の如く決めてない。

 

「なんかいい曲募集!出来ればミクと一緒に歌えるやつ!」

 

俺の投げやりな言葉に全員呆れ顔を作るが、すぐに真剣に考え始める。

 

数分後、奏が何かを思い出したように呟いた。

 

「『Journey』・・・・・・。」

 

「Journey?なんだ、それ?」

 

思わず疑問を返すと、奏が話してくれた。

 

どうやら、九月末に一歌、みのり、こはね、司、奏の五人でミクと一緒にステージで歌う夢を見たんだとか。でその時に歌った曲が良かったから一緒に歌いたいらしい。

 

ミク含む全員が名前はおろか歌詞までわかるようなので、歌はそれに決まった。

 

更に、瑞希が衣装を考えてきてくれた様で、紙に描いた物ではあるものの、お披露目となった。

 

奏達は、教会の聖女を思わせる服装。俺は、なんだか神父っぽいデザインの服装だ。

 

このセカイの持ち主であるまふゆがそれを強くイメージすれば、俺たちの体はその衣装に包まれた。

 

自分で作った衣装を見ながら、瑞希は嬉しそうに呟いた。

 

「うんうん、我ながら完璧な出来だね!」

 

「私のおかげだからね。」

 

「うん!ありがと、まふゆ!」

 

そんなやり取りを横目にステージの先を見渡すと、様々な色の光で埋め尽くされている。

 

再びステージに目を戻し、俺はみんなに言った。

 

「さ、観客も待ち侘びてるっぽいぜ。なんせこれは、ニーゴのラストを飾る歌なんだからよ。」

 

「ううん、終わりじゃないよ奏真。むしろ、これから始まるんだから。」

 

俺の手を柔らかな温もりが包み、隣からそんな声がして、目線をそちらへと向けると、奏は微笑んだ。

 

その笑みの中にはもう、贖罪の為に曲を作り続ける少女(K)の面影はなく、

 

めんどくさがりで怖がりで、そして最高にかわいい、俺の大好きな幼馴染(宵崎奏)がいた。

 

「あぁ。・・・・・・そうだな!」

 

俺の手を握る奏の手を優しく握り返し、俺は叫んだ。

 

「お前らも、準備はいいか!それじゃあ歌うぞ、『Journey』!」

 

俺の声と共に曲が流れ出す。

 

そう─────、

 

救済の物語は確かに幕を下ろした。だが、まだ終わりではない。

 

これから俺たちは、それぞれの夢を音に乗せ、走り出していく。

 

たとえ、その先にあるのが後悔と言う名のミライでも。

 

この先も、笑って生きていける様に。

 

 

人生という一つの旅の中で、俺達はいつだって、音を奏でていこう。

 

25時、ナイトコード(この場所)で。

 




ほのぼのしたニーゴを描きたかった。ただそれだけだ。
祝えなかった二周年もついでにお祝いじゃあッ!!
この時空の五人はLINE的なチャットツールで会話してます。

皆はニーゴの二周年衣装着てます。奏真の服はオリジナル。
なんだか最終回チックになっちゃったけど、実は本編は高校生で終わらなかったりします。
ダメな所はダメと指摘して頂けると、この話がもっと良くなります。

アre?番外短編集の報ノ自壊余国ヲ火口とオモッタら、NANIKÅオカシイな。
直ン無さそウだKAら諤・縺?〒譖ク縺上h?
谺。蝗槭?√?悟ケシ鬥エ譟薙→驕雁恍蝨ー縺ァ蛻昴ョ繝シ繝医?ゅ?


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