ありふれたチートで世界最強 (脳散らすノーチラス)
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キャラ図鑑 (見たくない人は見なくてもオッケー)

(オリキャラ)

読原 大我 (よみはら たいが)

主人公。オリキャラ。クラスではボッチではないもののそこまで人気でもない生徒。遠藤と特に中が良い。転移前から「遠藤の存在に人より多少気づきやすい」という力があったが、あくまでも多少なので、他の人と大差ない。それでも、普通の人なら2日ほど忘れたままの場合でも、彼なら1日半で気づくことが可能。

「物真似師」という天職により、他人のスキルや技をコピーできるが、性質や力などは劣化する。なので器用貧乏で弱いと思われていたのだが、派生した「完全贋作」による全く同じレベルのコピー、「付属品創造」によるアイテムの作成、「精度操作」による再現レベルの支配などにより、最強の能力と化す。ただし完全に再現するとデメリットなども完全に再現してしまうので、その点には注意。好物はマカロン。

 

八重樫 雫 (やえがし しずく)

今作のヒロイン。小学生の頃あるきっかけから読原のことを意識し始めた。読原と合流後、旅に同行することに。原作より強くなる。性格は原作に比べ多少デレやすいが、やはり奥手。

 

南雲 ハジメ (なぐも はじめ)

原作よりツッコミ量が増える。ハーレムメンバーは原作より1人減ってる。読原と行動をともにする。こいつも原作より多少強くなってる。

 

 

ユエ、シア・ハウリア、ティオ・クラルス、白崎 香織(ゆえ、しあ・はうりあ、てぃお・くらるす、しらさき かおり)

原作より多少は強い。

 

天之河 光輝 (あまのがわ こうき)

主人公と敵対する。原作と変わらない強さなので、瞬殺される。本編より心が弱く、闇落ちが簡単になってる。

 

登場スキル・アイテム等一部紹介(登場させるつもり、というだけ)

 

・螺子と「大嘘憑き(オールフィクション)

原作 めだかボックス

使用キャラ 球磨川 禊

物事を「なかったこと」にする能力。自分の死すらなかったことにできる。完全再現すると、言葉遣いなどに球磨川禊感が出てしまう。ちなみに読原はジャンプの熱狂的なファンではないが、この状態だとジャンプを馬鹿にすると怒る。新選組を馬鹿にしても怒る。

 

・「捕食者(クラウモノ)

原作 転生したらスライムだった件

使用キャラ リムル=テンペスト

捕食者なので、完全再現してもデメリットはない。ただ捕食したものはスキルコピーと自身の魔力貯蓄にしか使えない。よってパラメーターは弱いまま。だがそれがとあるスキルを使う上でメリットになる。

 

・ちぇりお!

使用キャラ とがめ

ツッコミで使う。スキルで完全に再現する必要はない。ちなみに本当の言葉は「チェスト!」なのだが、使用キャラであるとがめは「ちぇりお!」と間違えて言っていた。ちなみに本編で出るかは分からない。

 

・キャンプセット

使用キャラ ポケモン剣盾の主人公など

いつでもどこでもキャンプができる。カレーも作れる。きのみも作れるのでレアなきのみ入れ放題のカレーができる。酸っぱ口とか渋口とか苦口のカレーってどんな味なんだろう。



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1話 始まりとステータス

スタートです。


どうしてこうなった。俺、読原大我は、痛みと疲労に襲われていた。

 

 

話はだいぶ遡る。

高校に進学し、スクールカースト中位ぐらいのポジションを取っており、生活は安定していた。

「お!遠藤じゃん!来てたんだ!」

昼食の時間、彼はクラスメイトの一人に話しかける。

「読原、気づいてくれてありがとう。だけどなあ、朝から俺はいたんだよ…」

表面上はなんてことなさそうだが、話しかけられたクラスメイト、遠藤の声には感謝と悲しみの色が出ていた。「…ごめん」

読原は申し訳無さそうに謝る。

「いや、いいんだ。今日も朝から誰にも話しかけてもらえなかったから、気づいてもらえるだけで嬉しいんだよ。」

遠藤の声は依然として悲しそうである。

その後、しばらく遠藤と雑談をしていると、急に足元が光り始めた。

「は!?なにこれ!」

「嫌な予感しかしないんだけど!」

光は強まっていき、彼らを教室ごと飲み込んだ。

 

 

 

目覚めたら、彼らは洋風な城の中にいた。

「遠藤、もしこれが夢でないとしたらさ。」

「夢でないとしたら?」

「異世界転移だよ。」

どうやらクラスメイトも皆巻き込まれたらしい。おそらくクラスまるごと召喚のタイプだな、と読原は検討をつけた。

見ればわかることだが。

しかし、そのぐらいのことに気づかないほど動揺していたのは事実である。クラスメイトが慌てふためいているのを見て、落ち着きを取り戻す。

周りを見渡すと、どうやら自分たちは台座の上に立っているようだ。台座の周りには、30人近い法衣のようなものを着た人々が台座の前にいた。全員が、跪き、両手を胸の前で組んでいる。

その中で、特に豪華できらびやかな衣装を着ており、烏帽子のようなものを被った老人が進み出てきた。そして、自分たちに話しかけてきた。

 

彼の話を要約すると、

・ここは「トータス」というらしい

・トータスには人間、魔人、亜人の三大勢力が存在している

・人間と魔人族は200年戦争し続けている

・この世界には魔物や魔法がある

・自分たちを召喚したのは神である「エヒト様」らしい

・帰還は不可能

・異世界転移の特典で我々を救ってくれ

とのこと。

担任教師である愛子先生は生徒の戦争参加に反対していたが、光輝が「世界を救う!」と発言してしまい、それに賛同するものもいて、結局俺らは戦争に参加することになってしまった。

 

 

場所は変わり、王宮。いま自分のいる「神山」の麓の「ハイリヒ王国」の王宮である。そこで俺らは歓待を受け、翌日から訓練と座学を始めるのであった。

 

 

まず最初に、銀色の「ステータスプレート」を配られた。身分証明にも使えるらしい。便利だな。どうやらこれは、神代のアーティファクトで、現代の技術では作れないらしい。血を垂らして所持者を登録するらしいので、指に針を突き刺して、登録を行った。

俺のステータスは、

 

読原大我 十七歳 男 レベル1

天職:物真似師

筋力:20

体力:20

耐力:20

敏捷:20

魔力:20

魔耐:20

技能:物真似+肉体変化・言語理解

 

全体的に低めだった。特に運動をしていたわけでもないので、当然である。昔水泳教室やサッカー教室に通ったりしてたのになー、というか物真似師ってなんだろなーなどと現実逃避をしていると、ステータスプレートの説明をしてくれたメルド団長が近づいてきて、ステータスプレートを覗き込んだ。

「物真似師、か。他人の技能を真似ることができる職だ。能力の劣化があるぶん、様々な場面で仲間のサポートができるぞ。」

良く言えば万能型、悪く言えば中途半端、という感じか。読原は少し落ち込んだ。

「まあ、鍛錬次第でうまく運用できるだろうし、頑張れ!」

メルド団長に励まされていた。

ちなみに光輝が勇者になったらしい。だろうな…と思いながら、今後の方針について考えるのだった。

 

それからはひたすら特訓し続けた。なるべく多くの人の技能を複製するために、クラスメイトだけでなく、兵士やメイド、街の人まで様々な人の「物真似」をし続けた。それと並行して、体力づくりもした。そうして二週間がたった。

その結果が、これだ。

 

読原大我 十七歳 男 レベル1

天職:物真似師

筋力:23

体力:23

耐力:23

敏捷:26

魔力:23

魔耐:23

技能:物真似+肉体変化+手札記憶(new!)・言語理解

 

刻みすぎだろ、というのが本音である。なるべく多くの人の物真似をするためにまちなかを走ったりしたので、敏捷は他より3だけ高い。天之河光輝はステータスが全て100から全て200となっているのになんでこっちは伸び率低いんだろうと悲しくなった。おそらく勇者特典だろうな、と結論付けて、また鍛錬を再開した。

 

その日の夜、明日から「オルクス大迷宮」にて実践訓練をする、と通達があった。




このあとに投稿する話からはもう少し短くなっているかと思います。(今のところは)

使ってほしい能力ありましたら、感想から教えて下さい。

ちなみに技能ですが、
物真似…近くにいる他人の技能を真似ることで他人の能力を劣化した状態で使える。近くに真似したい人がいないと使えないが、一度真似すれば真似をやめない限りずっと真似たままでいられる。使える能力の劣化率は、技能によるが2割〜3割は再現できない。つまり、オリジナルの7、8割ほどしか力を使えない。
肉体変化…自分の肉体を弄り、顔や骨格、声帯などを変えることが可能。刀語の真庭蝙蝠の骨肉細工みたいなもの。
手札記憶…真似した人を3人まで保存できる。保存したものは、近くにオリジナルがいなくてもその場でコピー可能。ちなみに現在は天之河、メルド団長、遠藤の3人を保存している。


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2話 迷宮とベヒモス

やっと迷宮に入れた…


今日は迷宮に入る日。どうやら檜山が南雲を怨念のこもったような目で睨んでいるな。何かあったのだろうか?

 

 

迷宮攻略は、順調に進んだ。途中何人かが怒られていた。迷宮の中での戦闘は色々気をつけないといけないんだな。俺?ちゃんと働いてますよ。勇者の物真似で何匹か屠りました。最初は躊躇いがあったものの、冒険者や騎士団の人の物真似をしているうちに慣れてしまったようだ。

しばらく進んだところで出てきたゴリラのような魔物「ロックマウント」相手に光輝が天翔閃を使い、そのせいで壁が崩れた。するとそこに、青白く発光する水晶があった。

「ほぉ〜、あれはグランツ鉱石だな。大きさもなかなかだ。珍しい」

そんな珍しいものなのか。

「素敵…」

と白崎がつぶやいた。しかしこれが悲劇を呼んだ。

「だったら俺らで回収しようぜ!」

檜山がグランツ功績を得ようと近づいた。あ、これはやばい。

「こら!勝手なことをするな!安全確認もまだなんだぞ!」

だが悲しいかな、檜山がグランツ功績に触れた瞬間、鉱石を中心にトラップが作動した。俺たちは閃光に包まれ、一瞬の浮遊感に襲われた。転移したのは、巨大な石造りの橋のようだ奥には上階に続く階段が見える。それを確認したメルド団長が、険しい顔をしながら指示をした。

「お前達、すぐに立ち上がって、あの階段の場所までいけ!早く!」

皆がワタワタと動き出すが、橋の両サイドに魔法陣が描かれた。一方の魔法陣からは、骨だけの体に剣を携えるモンスターたちが現れた。トラウムソルジャーだ。しかし、反対側のほうがもっとやばい気がする。

予感はあたった。反対側の魔法陣から出たのは巨大な魔物。鋭い爪と牙を打ち鳴らしながら、頭部の兜から炎を放っている。

「まさか……ベヒモス……なのか……」

メルド団長が冷や汗を搔いている。それだけで相手の危険性がわかった。

ベヒモスが咆哮を上げる。その方向で正気に戻ったメルド団長が矢継ぎ早に指示を出す。

「アラン!生徒たちを率いてトラウムソルジャーを突破しろ!カイル、イヴァン、ベイルは全力で障壁を張れ!やつを食い止めるぞ!光輝、お前たちは早く階段へ向かえ!」

「待ってください、メルドさん!俺たちもやります!あの恐竜みたいなやつが一番やばいのでしょう!俺たちも……」

光輝はメルド団長に助力しようとしているがそれは得策ではないだろう。俺は口を開いた。

「天之河、お前は勇者だ。勇者が死ぬと国の方に混乱が起きる。それにお前はスペックが高くても技術がまだまだだろ。邪魔になる。」

「な、何だよお前は!」

「お前が死んだときの影響とお前を戦闘に加えるメリットでは、前者のほうが大きい。」

話していると、ベヒモスが突進してきた。が、兵士たちの「聖絶」により弾かれた。

光輝以外の生徒たちは半ばパニックになりながら階段を目指す。しかし、途中で南雲が引き返した。俺も続いて引き返す。

「南雲くん!?」

「南雲!?」

「おい、読原も!」

他人を無視してベヒモスの方に向かう。

「光輝を連れ戻す。リーダーがいないとどうしようもない。」

光輝のもとに行くと、南雲が説得していた。

「一撃で切り抜ける力が必要なんだ!皆の恐怖を吹き飛ばす力が!それができるのはリーダーの天之河くんだけでしょ!前ばかり見てないで後ろもちゃんと見て!」

「ああ、わかった。すぐに行く!メルドさん!すいませ「下がれぇー!」」

障壁が砕け、衝撃波が俺たちを襲う。南雲が石壁を錬成するも、あっさりと砕かれる。光輝が神威の詠唱を始めた。龍太郎と雫が詠唱のために時間を稼ぐ。詠唱が終わり、聖剣が輝く。

「神威!」

極光がベヒモスに直撃する。

「これなら……はぁはぁ」

「はぁはぁ、流石にやったよな?」

「だといいけど…」

 

しかし、目の前には無傷のベヒモスがいた。

ベヒモスの頭部がマグマのように燃えたぎる。攻撃態勢だ。

「ボケっとするな!逃げろ!」

メルド団長の叫びにあわてて光輝たちが回避する。

「メルドさん、一個案があります。」

南雲がメルドに話しかける。

「僕が錬成で時間を稼ぎます。天之河くんをみんなのもとに連れて行ってください。」

それなら俺も手伝えるだろう。

「南雲、俺もお前を手伝うよ。お前の物真似で多少でもサポートする。」

「……ふたりとも、やれるんだな?」

「「やります」」

メルド団長は笑みを浮かべる。

「まさか、お前らに命を預けることになるとはな。必ず助けてやる。だから……頼んだぞ!」

「「はい!」」

ベヒモスがこちらに突っ込んでくる。

「「錬成!!」」

ベヒモスが石牢に囚われて、壊しても錬成され、直される。しかし、こちらにも魔力の限界がある。最後の錬成を終えた瞬間、急いで退避した。石牢から開放され、目に怒りが満ちているように見える。今にも襲いかかりそうなその時、あらゆる属性の魔法が流星のように飛んできた。これなら行ける!とおもい全力で走り逃げる。しかし、その直後、目の前に巨大な火球が飛んできた。

着弾の衝撃波を俺はくらい、吹き飛ばされる。更に魔の悪いことに、ベヒモスが橋を攻撃した。橋は崩壊していく。俺は南雲ハジメとともに、奈落の底へと落ちていくのだった。自分たちを助けようとする白崎の声と八重樫の声が聞こえたような気がした。




次回でチートを使えるようになると思います。
ちなみに読原の魔力の色は銀色です。


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3話 覚醒と食事、そして雫の「きっかけ」

読原大我は、転生者である。元の世界で高1の6月にとあるウイルスによる病でなくなった、書本 真(かきもと   しん)。しかし彼は死んだと思ったら、小学四年生の読原大我の体に憑依していた。

 

 

俺は気づくと、地下深くにいた。

「ここは、どこだ…?」

あたりには人影どころか、生き物すら見えない。あたりを調べてみると、目の前にウサギが現れた。次の瞬間、ウサギが俺の腹に蹴りを入れてきた。蹴りの威力で面白いようにふっとばされる。なぜウサギがここまでの力を、と思う暇もなく追撃。骨が折れ曲がった。

「ぐ、ぎ、がはっ」

痛みを必死にこらえながら、物真似をする。真似るのは手札記憶にある遠藤だ。なんとか気配を殺し、近くの小さな部屋の中に逃げ込む。そのまま意識が途絶えた。

 

 

 

 

痛みで目を醒ます。体が痛み続け、餓えも感じる。喉も乾いた。しかし、ここにはなにもない。そのまままた意識が落ちた。

 

痛みで目覚める。飢餓と渇きと痛みに苦しむ。意識を落とす。また痛みで目覚める。飢餓と渇きと痛みに苦しむ。意識を落とす。また痛みで目覚める。飢餓と渇きと痛みに苦しむ。意識を落とす。これがずっと続く。繰り返すたびに飢餓と渇きと痛みが強くなる。考えられなくなっていく。

 

段々と考えられるようになってきた。感覚が麻痺しただけでも構わない。

自分は何をしたい。

何をしたい?

 

生きたい。

 

生きたい。脳が、体が、生きたいと叫ぶ。

 

生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい生きたい!

 

その時、自分にある力が宿ったのを感じた。。そして、その能力の使い方を理解する。これがあれば、生きられる!

 

一匹の蹴りうさぎが、迷宮内を歩いていた。すると、ニ尾狼が視界に入った。食事をしようとそれに向けて攻撃をしようとした瞬間、二尾狼の姿がかき消えた。次の瞬間、自分の意識も消えた。

 

やっと食べ物が手に入った。新しく得た力でこうも簡単に倒せるとは。これで飢えが満たせる。そう思いニ尾狼の肉に噛みつこうとしたが、あることを思い出した。

「魔物の肉は人体に毒」

なんてことだ。せっかく得た食べ物が食べられないとは。しかし、これは困った。水も食べ物もないから、どうしようもないな…と思ったが、1つの案を思いついた。ものは試しだ、やってみよう。

 

「いやー、うまいなあ。」

俺の手には木の実とペットボトルに入った水。能力で作り出したのだ。

「しかし、おいしい水って本当に美味しいな。のどが渇いていたのも一因が?」

俺の今のステータスはこうなっている。ステータスプレートをなくしていなくて本当に良かったな。

 

読原大我 十七歳 男 レベル3

天職:物真似師

筋力:24

体力:24

耐力:24

敏捷:28

魔力:24

魔耐:24

技能:物真似+肉体変化+付属品創造+想像真似+精度操作・言語理解

 

想像真似は素晴らしい。リムル=テンペストの「捕食者(クラウモノ)」を使えたり、付属品創造との組み合わせによるポケモンのきのみやおいしい水の作成ができた。というか無から有(厳密には魔力を使用しているが)が生み出せるのは素晴らしい。そのままキャンプキットを作り出し、今日はそのまま寝ることにした。




〈ショートストーリー〉 八重樫雫の話
私、八重樫雫は、読原大我が好きだ。きっかけは小学生の頃。学芸会の役決めで、彼がしてくれたことにある。

学芸会の役決めで、騎士役と姫役を決めることになった。立候補制なので、姫役をやろうとした。そう話したら、親友の香織は「じゃあ私騎士役をやって雫ちゃん救うね!」と言ってくれて嬉しかった。しかしあるクラスメイトが私には姫役は似合わない、と言った。姫役は香織、騎士役は光輝でやってほしいのだと。たしかに自覚はある。お姫様の役をしたくても、私には騎士の役のほうが似合う。やりたかったけどしょうがないなとおもい、騎士役を選ぼうとしたときに、読原君のつぶやきで場が固まった。
「なんだ。立候補制じゃないのかよ。そういうことは先に言ってくれよ。」
私に姫役が似合わないと言った彼女の顔は、怒りに満ちていた。
その一言で結局立候補制、他の人からの推薦はやりたい人がいない場合のみとなり、私は姫役をできたのだった。彼はその女子を始めとする人たちからから恨まれることとなったが、当の本人は気にしていないようだった。





〈あとがき〉
技能紹介
付属品創造…小道具、大道具、衣装、有機物すら作成が可能なスキル。「想像真似」と組み合わせることでフィクションの武器や装備なども作れる。
想像真似…手札記憶の進化系。自分の知っている物や存在なら何でも真似できる。フィクションの存在だとしても。
精度操作…真似のクオリティを調節可能。スキルの攻撃力などが落ちる分、デメリットも減らせる。


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4話 穴掘りと迷宮攻略

南雲と違い読原は神水を飲んでないので、落ちて2日目で苦しみ、スキル獲得してます。3日目まで行くと死んでしまうので。そのへんはご都合です。


「さて、これからどうするか。」

これからどうしようか。今ある案は2つ。「上に進む」か「下に進む」だ。「上に進む」のメリットは、皆と早く再会できる点だ。だが下に進めば、自分がどこまで強くなったか確かめることができる。どちらを取るか、本当に悩む。

「よし。進むか。」

 

 

 

 

『あなをほる』!!

迷宮の床を掘り進んでいく。というか、迷宮の床を貫き、落ちて、どんどん下の階まで進んでいく。10階ほど下に行った時点で一度掘るのを辞める。

すると、近くにいた岩に包まれたようなトカゲが襲いかかってきた。

「捕食!」

襲われる前に『捕食者(クラウモノ)』を発動し、空岩トカゲ(仮)を捕食。。ちなみに喰った魔物たちは「胃袋」の中に入れていたのだが、ふとした思いつきで「解析鑑定」してみると、スキルが手に入り魔力も少し回復した。それ以来、魔物と会ったら積極的に喰らっている。まあ、魔力なんて実質無限みたいなものだし、スキルももっと強いものがあるんだけどね…念には念を、万が一のため、というわけだ。

しかしこの辺の魔物もまだ弱いな。もっと掘り進めるか。

『あなをほる』!!

 

 

10階ほど掘っては近くの魔物を喰い、10階ほど掘っては近くの魔物を食いを繰り返していたら、最下層まで来てしまった。そのまま道を適当にぶらつき、最奥の間につながってそうな大きな門を見つけた。

「おじゃましま~す」

眼の前には、かつてのベヒモスを呼ばれたとき以上のサイズと複雑さの魔法陣。何が出てくるのか、少し恐怖を感じる。魔法陣が光始め、そこから巨大な化物が現れた。体長30メートルほどはありそうだ。6の頭を持つトカゲのようなモンスター、ヒュドラだ。6の頭のうち、赤の頭がこちらに魔力を収束した砲撃を食らわせてくる。だが残念なことに、俺には効かない。それどころか、別の頭、黄色い頭にダメージが入る。

「『不慮の事故(エンカウンター)』、強くね?」

蝶ヶ崎蛾々丸の『過負荷(マイナス)』、『不慮の事故(エンカウンター)』は、自分が受けた攻撃を他の場所へ押し付ける能力。これを発動させて、ヒュドラとの距離を詰めていく。全ての頭が別々の技を繰り出してくるが、全てを押し付けていく。だがヒュドラの体に傷が増えていくものの、白い頭が回復させてしまい、決定打にならない。なので手に螺子を持ち、ヒュドラに突き刺し、1つの宣告をする。

「『大嘘憑き(オールフィクション)』。『僕が敵である』という認識を無かったことにした!」

次の瞬間、ヒュドラは攻撃をやめた。俺を敵として認識していないからだ。そうして俺は先に進んでいくのであった。それにしても、他の過負荷(マイナス)を真似ても性格などに影響はないのに、『大嘘憑き(オールフィクション)』を再現すると、口調が球磨川風になるのは何故なのだろうか。

 

 

 

「おじゃましま〜す!」

というわけで、ヒュドラのいたエリアの奥の部屋にいます。意外と快適そうたな、ここ。部屋の中を探索していると、魔法陣と死体を見つけた。魔法陣に近づくと、魔法陣が光りだした。するとそこにあった死体だったものが、生きている人間に変わった、と思ったが、魔法による映像投影のようなものみたいだ。すごいなー、この魔法再現できないかなー、と考えていると、元死体から声が聞こえた。

「私の名前はオスカー・オルクス。反逆者、といえば分かりやすいかな?」

どうやらオスカーさん曰く、

・エヒトはこの世界で何度も戦争とかを起こさせて遊んでいたらしい

・そのことを知った人間がエヒトを殺すためにグループを結成、そのグループの人達は神に歯向かう「反逆者」と呼ばれるように

・反逆者は「神代魔法」を使えたが、結局エヒトに負けた

・他にも大迷宮があり、そこに行けば神代魔法が手に入る

・ここの迷宮クリアの特典で、「生成魔法」プレゼント!

 

とのこと。エヒトは怪しいと思っていたけど、やはりクロだったか。それにしても神代の魔法、生成魔法か。本来なら喜ぶところなんだが、おそらく真似れば持ってなくても使えるんだよな。まあいい、一応もらっておこうかな。と思ったら、もう渡されたようだ。仕事が早い。

 

 

 

それから俺は、ここでしばらく生活している。なぜって?すごく快適だからさ!作物もあるし、安全だし、料理できるし、風呂もあるし、天之河いないしでもう一生ここに住もうかな、ってぐらいに快適。落ちてから数ヶ月たったが、未だに出ようと思えない。しかしそんな平穏は破られることとなったのだ。

この隠れ家とヒュドラがいた部屋の間を遮るドアが開き、ボロボロの少女がボロボロの男を必死に運びながらやってきた。

 

あれ?ボロボロの男、南雲じゃね?




次回、ようやく南雲と読原が絡みます。ユエもいます。

能力説明
・捕食者(クラウモノ)
転生したらスライムだった件のリムル=テンペストより。今現在では暴食者は捕食者より制御しづらい、暴食之王や虚空之神は使いこなせないという感じです。
・あなをほる
ポケモンより。岩盤掘れるポケモンもいるし、いけそうじゃね?と思い採用。
・不慮の事故(エンカウンター)
めだかボックスの蝶ヶ崎蛾々丸より。めだかボックスのスキルの中でトップクラスに強い気がする。
・大嘘憑き(オールフィクション)
めだかボックスの球磨川禊より。完全再現すると性格が球磨川に近くなるという悪夢のようなデメリットがなぜか存在する。



もし出してほしいスキルありましたら、スキル名と出典を教えてもらえれば出せるかも(あくまでも、「かも」なので、確実ではないです)しれないです。


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5話 治療と脱出

最初は三人称視点で進めていきます。


迷宮に長らく封印されていた吸血鬼ことユエは、南雲ハジメとともにヒュドラの討伐に成功した。しかしハジメは気絶しており、ユエがヒュドラのいた部屋の奥の扉を目指し運んでいる。

「今さっきのが最後のボスなら、この先はきっと安全なはず…」

ユエはそうつぶやき、扉を開いた。するとそこには、見知らぬ男がいた。

「あなたは誰?敵なら、容赦しない。」

ユエがそう尋ねると、男は

「読原大我、敵じゃない。質問はあとにしてくれ、南雲に死なれたら困る。」

そう答えた。ユエは驚いて目を丸くしたが、すぐにハジメが前に語っていたことを思い出す。

『俺の他に、もう一人落ちたやつがいるんだよ。もしかしたら、そいつも生きてたりするかもな。』

「もしかして、ハジメと共に奈落に落ちたのってあなたなの?」

読原に寝室へ案内されながらユエが尋ねる。

「ああ、そうだ。落ちたあとでスキルが進化してなけりゃ死んでただろうがな。そう言えば、アンタと南雲はここまで正攻法でやってきたのか?」

「正攻法って…もしかして、道中の穴はあなたが?」

「そう。穴をほって、スキップしたのさ。」

何かの罠かと警戒し、近づかないようにしていたが、もし穴の中に入れたらショートカットできたかもしれない。そう考えると、先に知りたかったな…というのが彼女の今の気持ちであった。

 

 

〜読原大我side〜

南雲をベッドに寝かせ、スキルを発動する。真似るのはクリミアの天使、狂戦士の看護師。

「初めて使うが、うまく使えるか不安だな…まあいい。宝具発動!すべての毒あるもの、害あるものを絶ち!我が力の限り、人の幸福を導かん!『我はすべて毒あるもの、害あるものを絶つ(ナイチンゲール・プレッジ)』!!」

室内を名雲を癒やすための空間に変え、治療を開始する。ちなみに金髪の子には出ていってもらった。

「アスクレピオスのほうが良かったか?まあ癒えればいいんだし、どうでもいいか。」

そうして治療も終了し、真似をやめた。

「おーい、終わったぞ。もうすぐ目を覚ますだろうし、心配はない。」

外に出て、金髪の女に南雲の無事を告げると、彼女はホッとしたような表情を浮かべた。

「そういえばあんた、名前なんて言うんだ?」

そういえば聞いてなかったなと思い、彼女に聞いてみる。

「…ユエ。ハジメのつけてくれた名前。」

「じゃあユエさん。南雲の見舞いに行ってくれ。」

「…言われるまでもない。」

そう言うと彼女は南雲のもとまで行ってしまった。

「…南雲、お前よくこんな場所で彼女ができたな。」

俺はそう呟いたのだった。

 

 

しばらくして、南雲がユエを連れてやってきた。

「よお南雲。怪我は治ったのか?」

そう尋ねると、南雲は

「おかげさまでな。ホントに助かった。」

そう答えた。

「南雲、色々話したいことがあるが、まずお前をある場所に連れていきたい。話はその後だ。」

そう言って俺は、彼らをオスカー・オルクスの死体の前に連れて行った。そこで彼らに神代魔法とメッセージを受け取ってもらう。

「へえ。そんなことがあったとはね。」

これが彼がオスカーの話を聞いて発した第一声だった。

「で、お前らはこれからどうするんだ?神を殺すか、殺さないか。この世界に居座るのか、元の世界に帰るのか。」

そう尋ねてみると、彼は不敵な笑みを浮かべ、

「俺は元の世界に帰る。途中で神が邪魔するようなら、神殺しも辞さないが、こちらから神を殺す気はないぞ。ちなみに、今のところは情報収集も兼ねて他の大迷宮もクリアしていくつもりだ。」

彼の態度と目から、その決意が相当なものと感じる。

「なるほど。ちなみに俺も迷宮攻略をするつもりだ。」

「ならお前も一緒に来るか?」

南雲の誘い。せっかくだが、こちらはある理由で参加できない。

「いや、今のところはノー、だ。もし今後旅の最中で会えたら、また誘ってくれ。そん時なら、一緒に行っても良いかもしれん。」

「…そうか。まあいい。また旅の途中で会えたら、誘うことにするよ。」

「悪いな。…さて、俺はそろそろ地上に戻るとするよ。新婚生活、楽しんでくれ。」

「新婚生活って…」

「ハジメ、私と結婚したくないの?」

ユエが悲しそうな顔で尋ねる。

「いや、そういうわけじゃ…」

早くこの修羅場から逃げ出したいなあ。(そこまで修羅場っているわけではない。)

「じゃあ俺は先に行くわ。後のことは二人で頑張れ!」

それからオスカーの指輪を1つ俺がもらったから、とハジメ達に伝え、俺は迷宮から脱出するのであった。




次回から他の大迷宮に進んでいきます。

能力説明
・ナイチンゲール
Fate Grand Orderより。殺してでも癒やす星5バーサーカー。ちなみに私は持っていません。


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6話 ミレディと螺子

三人称視点のほうが書きやすいことに気づいた。


「……さて、これからどうしようか。」

俺は今、夜のライセン大峡谷で悩んでいた。

「グリューエンの火山…あとはフェアベルゲンにある樹海…海底遺跡もあるのか…どこから行ったものか…」

大迷宮から盗…譲り受けてきた「神代魔法の在り処」の書かれた紙を持ってきたのだが、ライセン踏破後にどこへ行くべきか悩んでいた。あ、南雲に教えるの忘れてた。まあいいや。

「とりあえずライセンの迷宮行ってから考えよう!」

迷ったときはまず行動。そう考えて、迷宮を目指し始めたのだった。

 

 

「…ここか?」

リムル=テンペストの姿を真似て、「万能感知」を発動して探したのだが、本当に解放者の迷宮なのか疑わしい物が見つかった。見つかってしまった。なぜ疑わしいものなんだって?

『おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪』

本当に大丈夫なのか不安になってくる。そこはかとなく不安になってくる。けれども挑まねば。というわけで壁のようになっているドアから入場…したら床が坂になっていた。滑らぬように「魔力操作」で少し浮きながら進んでいく。そこから先は「万能感知」を使って最奥の間まで進むのだった。

 

 

「あっけなかったな…」

「万能感知」を使ったのであっという間に最奥の間と思われる球場の部屋にたどり着けた。途中ゴーレム達が襲いかかってきたが、すべて「黒炎獄」で焼き尽くしながら進んでいった。

「おーい、ボスとかいないんですかー?」

直後、奥から巨大な何かが飛んできた。慌てて躱し、たが、当たったらそれなりにダメージを負ったのではないだろうか。

その何か、は猛烈な勢いで上昇してきた。それは瞬く間に俺の頭上に出てきて、ギンッとひかる眼光を俺に向けた。

「ラスボスもゴーレムか。デカけりゃ強いっていうこの迷宮を作ったやつの頭は単純なのかな?」

そうつぶやくと、ゴーレムからいきなり声が聞こえてきた。

『なんだと~!!この天才美少女魔法使いことミレディ・ライセン様になんてこと言うんだ~!!』

中に人居るのかよ!!というか何で創設者が生きてるんだよ!!

「おまえをぶっ壊せば迷宮クリアってことか?」

「そうだけど~、君に勝てるかな~?そんなちっぽけな体でこの最強天才美少女魔法使いミレディ・ライセンに勝てるのかな~?」

よし、決めた。このクソうざいゴーレムをただの石ころにしてやろっと。

今回真似るのはあの過負荷(マイナス)裸エプロン先輩(球磨川禊)

「じゃあ、喰らえー!」

そうさけび、螺子を投擲する。しかしその頑強な体に弾かれてしまった。

『あれー、全然聞いてないよ〜!先程の威勢はどうしたんだ〜い?口だけだね〜!プギャー!!』

うわウッザ。

『じゃあ今度はこっちから行くよ〜!ミレディ・パ〜ンチ!!』

ロケットパンチが飛んできた。あれありなの!?まあ、動きは充分避けられるほどのスピード。おそらく様子見だろう。しかし俺は避けることなくぶつかり、そのまま肉片になってしまったのだった。

 

 

 

〈神視点※エヒト視点じゃないです〉

『うぇぇ?』

ミレディは自分のパンチが当たったことに驚いた。ついさっきまで余裕ぶった面を見せていたのだし、迷宮内でもゴーレムたちの攻撃を華麗に躱して壊していたのだ。これぐらい避けられるはずだと思っていたのに。

「おいおい、最初から殺意MAXの攻撃かよ。まったく、解放者っていうのはそんなに粗野で、野蛮で、無責任な前時代的な人間なのかい?」

読原大我は死んでいたはずなのに生き返ってきた。挑発付きで。しかしそれより気になったのは、彼の存在だった。姿を見ていると、声を聞いていると、何故か気分が悪くなるような気がするのだ。

「それともあれかい?君が暴力的で、差別的で、自己中心的なだけなのかい?」

『さっきから挑発がうざいよ!あんまりミレディさんのことを怒らせるのは得策じゃないと思うけど?』

パンチを食らわせるも、読原はすぐに何事もなかったかのように復活する。

「怒る必要はないじゃないか!それは君の立派な個性なんだ!!無理に変わろうとせずに自分らしさを誇りに思おう!君は君のままでいいんだよ!」

否定してきたかと思えば肯定してきて調子が狂う。しかも声を聞いてると気分が悪くなってくる。このままでは相手のペースに乗せられてしまうと思ったミレディはここで切り札の一枚を切る。

『あぁもううざいなぁ!これでも喰らえ!!』

彼女が呼び出したのは小型ゴーレム軍団。小型といえど、その戦闘能力は中々のもの。

『ほらほら、いくら復活できると言っても攻撃され続ければ意味ないでしょ?今謝って『ミレディ様先程のご無礼を謝ります本当にすみませんでしたお詫びに私めはあなた様の下僕になります』って言ってくれたら許してあげないこともないかな〜!』

「ミレディ様先程のご無礼を謝ります本当にすみませんでしたお詫びに私めはあなた様の下僕になります」

『言っちゃうの!?』

言うはずないと思っていたので驚きを隠せないミレディ。その隙を逃さず、小型ゴーレムたちを螺子で壁に貼り付ける読原。そのままミレディへ攻め込んでいく。ミレディは近くの瓦礫や石を彼女の魔法で動かし読原に投げるが、それらは読原の投擲した螺子に砕かれる。そのまま読原は人間の心臓に当たる部分に螺子を突き刺そうとする。が、ガキン!!と音がして、読原の持つ螺子が折れる。

『ざんね〜ん!!これは『アザンチウム鉱石』って言って、世界一硬い鉱石で出来てるんだよ〜!ただのネジじゃ、この体は傷すらつけられないよ〜!』

「問題ない、螺子伏せてやるさ!」

読原は何処からともなく螺子を取り出し、再びミレディの体に突き刺す。すると今度は、あれほどまでに硬かったゴーレムの体が怖いぐらいに脆く崩れたのだった。

『え!?なんで!?』

大嘘憑き(オールフィクション)硬さをなかったコトにした(・・・・・・・・・・・・)!!」

彼の螺子はそのままゴーレムの核を貫き、破壊したのだった。




アンケートよろしくお願いします。


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7話 ミレディ(アフター)といつの間にかフェアベルゲン

時雨沢恵一さんみたいなあとがき書いてみたい。まあ、無理なんですけどね!!


「ふ、ふふ、まさか、私の、迷宮を、クリア、する、なんて、ね…」

核を破壊されたミレディは死力を尽くしながらもそう言った。

「あ、言っとくけど近いうちにまた挑戦者が来ると思うよ。大丈夫なの?」

「まだゴーレムは、残ってるし、大丈夫。…あぁ、もう終わりが近いみたい。じゃあね、攻略者さん。」

大嘘憑き(オールフィクション)、君の核の損傷をなかったコトにした!!」

「ふぇ!?」

大嘘憑き(オールフィクション)で死にかけ(?)のミレディを蘇生してみた。

「成功だ!ねぇどんな気持ち?かっこよく消えていこうとしたら生き返らされてしまった気持ちを教えてくれないかい?」

先程までの仕返し(煽り)である。お、ミレディ怒ったんじゃね?

「いや、隣の部屋にあるゴーレムが本体だから何もしなくても無事でしたけど?それほどまでにミレディさんに生きていてほしかったんだね?いや〜ミレディちゃん罪づくりな女!」

「もちろん生きていて欲しかったに決まっているだろう。『死人の墓荒らしで得たもの』の所持は非合法だが『持ち主から譲り受けたもの』の所持は合法だしね。」

数刻、ゴーレムとにらみ合う。

その後しばらく口喧嘩をしたことについてはまた別の機会に。

 

 

その後ミレディの迷宮から帰還し(ゴーレム作成の手伝いぐらいはやっておきましたとも。私はできる人間ですので。アヴィケブロンの力良いね。)、ハルツィナ樹海へ。ここの大迷宮を攻略しようとしたのだが、樹海にいたエルフの長老いわく、「樹海の迷宮は条件をクリアしないといけない」とのこと。残念だが仕方ない。しかし一個収穫があった。ハジメとユエはまだ生きているらしい。彼はシア・ハウリアという新しい仲間も連れて、迷宮を攻略しているようだ。向こうも迷宮攻略をしているなら、合流しておきたいな。ちなみにシアは兎人族らしい。彼女の家族あたりならハジメの行き先を知っていると思ったが、ここには何故か彼女の家族がいない。ハジメについて知っているか聞いてみたかったが、「ハウリア」と言った瞬間に何人かの兵士が怯え始めた。何故だろうか。結局会えなかったので、そこだけが残念だ。

俺はしばらくフェアベルゲン(樹海の中の亜人達の国)にいながら、ハジメ捜索部隊(即席の使い魔)でハジメとの合流を目指すのだった。

 

 

数日が経ち、彼らの居場所がようやくわかった。フューレンでの裏世界の組織「フリートホーフ」がフューレンにある冒険者ギルド支部の支部長お抱えの金ランク冒険者、南雲ハジメによって壊滅させられたという情報とともに。このニュースに俺は思わず、食べていたマカロンを落としそうになった。ちなみにこのマカロンはミレディがゴーレム作成のお礼にくれたものだったりする。

「アルフレリックさん、ハジメと合流するからここを出てくことにしますよ。色々ありがとうございます!」

面白そうだし、やっぱりハジメ達についていこうと俺は決意を固めた。

「分かった。実力者であるのはわかっているが、死なぬようにな。」

「大丈夫。命大事に生きるつもりですし。それじゃあ、またいつか!」

こうして俺は、ハジメの元目指して旅立っていく。

 

その先で待ち受ける再会など知らず。




なんで最後にマカロンが出てきたのか知りたい?



…アンケートでマカロンが他の選択肢の倍ぐらいの差で多かったんだよ。

次回ハジメと再合流します。


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8話 合流と南雲ハーレム

今回は長め
勇者パーティと魔人族の戦いは長かったのとほぼありふれた職業で世界最強のストーリーと同じなので略


「どうすればいいんだ…」

「なんとかして逃げないとこのままじゃ殺されちゃうよ!」

天之河光輝率いる勇者パーティのメンバーは、絶望の中にあった。

話は少し前に遡る。

 

 

勇者パーティはついにオルクス大迷宮の90層到達に成功した。しかし、90層には魔神族の女が魔物を従えて待ち構えていたのだった。全員が対抗するも、彼女の従える魔物に惨敗し、光輝の『限界突破』すら通用しなかった。彼らは一時撤退し、魔人族に気付かれず逃げ出せる可能性のある浩介を逃して助けを呼びに行かせ、彼らは迷宮内で魔法を使って小部屋を作り、必死に隠れるのだった。ほとんどの勇者パーティのメンバーの心が折れかける中、ある二人はまだ希望を抱いていた。

「こんなとこで、負けてられない…!」

「絶対に生き延びてみせる…!」

皆が絶望の中にあっても白崎香織と八重樫雫の二人は、生き延びるための手段を必死に考えるのだった。

 

〈読原大我side〉

やっとハジメを見つけた!フェアベルゲンから出て数日、懐かしきホルアドにいた。迷宮に入る前日に立ち寄った町。多くの店で賑わっていたのを思い出すなぁ。ちなみに町中には不法侵入である。ステータスプレートをオルクスの迷宮内に落としてしまっていたのだ。それにしても南雲のやつ、新たに二人もハーレムメンバーを増やすとは…ちなみに一人は地球では小学校にも行ってないような小さい子供である。これはいけない。後でO・HA・NA・SHIしなくては。

 

 

南雲を追って入った建物は、冒険者ギルドだった。中で屈強な男たちが何人も倒れている。何も見なかったことにして、南雲に声をかける。

「南雲、おひさ!元気にしてたか?」

「読原、久しぶりだな。」

「久しぶり。」

「この人がハジメさんの言っていた『もう一人の落ちた人』ですか?あ、はじめまして。シア・ハウリアと言います!」

「ほう、この人間が、か。我が名はティオ・クラウスじゃ。迷宮でご主人を助けてくれたことに感謝するぞ。」

「この人、パパの知り合いなの?ミュウなの!よろしくなの!」

懐かしい顔と新顔が2:3。それより、今の発言には無視できない言葉があったぞ。

「南雲、『ご主人様』ってどういうことだ?それと、『パパ』って…」

「話はまたあとでする、先に頼まれた仕事だけ終わらせるから待っていてくれ。」

色々問い詰めたいところだが、ひとまず置いとこう。南雲の仕事を待っている間何していようか、そう思っていたらカウンター横の通路から全身黒装束の男が床を滑りながら猛烈な勢いで飛び出てきた。というか見覚えがある男だ。

それは友人、遠藤浩介だった。

「遠藤!久しぶりじゃねーか!!」

「よ、読原!?なんでお前がここに!?つーか生きてたのかよ!?」

遠藤のの慌てぶりが面白い。愉悦。

「落ちたあと頑張って生き延びた。ここにいる南雲もだ。」

「南雲も!どこだ?どこにいる?」

「…俺だよ、俺」

どうやら南雲の見た目が変わりすぎているので気付けていないみたいだ。

「で、慌ててどうしたんだよ?」

そう俺が尋ねると、遠藤は今まで以上に悲痛な表情で懇願してきた。

「頼む、一緒に迷宮に潜ってくれ!!お前ら、自力で迷宮から脱出できるぐらい強いんだろ?一人でも多くの戦力がほしいんだ!!健太郎も重吾も死んじまう!頼む!!」

「ちょ、ちょっと待てよ。天之河がいるし、メルド団長だっているんだろ?なら大丈夫だろ。」

「勇者がいればどうにかなるんじゃねえの?天之河とメルドさんでで事足りる敵じゃねえのか?」

浩介はメルド団長の名前が出た途端、酷く暗い表情になり膝から崩れ落ちた。そして、押し殺したような声で一言呟いた。

「…んだよ。」

「何だって?」

「…死んだって言ったんだ!メルド団長もアランさんも他の皆も!迷宮に潜ってた騎士は皆死んだ!俺を逃がすために!俺のせいで!死んだんだ!死んだんだよぉ!」

「…そうか」

「…まじかよ」

狂ったように「死んだ」と繰り返す遠藤に南雲と俺は何も言えなかった。あのメルド団長が死んだというショックに何も言えなかった。迷宮に落ちる前に色々話し相手になってくれたこともあったし、悲しいな。一度ぐらい何か恩返ししておくべきだった。もっと早く。と、そこまで考えたところで一つ思いつく。

あれ?生き返らせれるんじゃね?

リムル=テンペストの「反魂の秘術」だったり球磨川禊の『大嘘憑き(オールフィクション)』だったり、色々生き返らせ方があるじゃないか。

「で、何があったんだ?」

「それは…」

ハジメが何があったのか尋ね、そのことについて事の次第をはなそうとする。と、そこでしわがれた声による静止がかかった。

「話の続きは、奥でしてもらおうか。そっちは、俺の客らしいしな」

声の主は、ガタイのいいおっさんだった。年齢は推定六十過ぎ、左目に傷跡あり。支部長かな?そうこうしているうちにハジメが場所を変えようと動いたので、俺もついていくのだった。

 

 

 

話を聞いて。

「魔人族、ね…」

「わーお…」

魔人族の襲来、魔物の使役、天之河光輝(最終兵器)が通用しない。やばいね。ミュウちゃんがクッキーをもぐもぐしている。あーかわいい(現実逃避)

「つぅか!何なんだよ、その子!何で、菓子食わしてんの!状況理解してんの!?みんな、死ぬかもしれないんだぞ!」

「ひぅ!?パパぁ!」

あ、浩介がキレた。

「てめぇ……何、ミュウに八つ当たりしてんだ、ア゛ァ゛?殺すぞ?」

すげーな南雲。娘を守る父親じゃないか。というか誰との間の子なんだ?

「ひぅ!?」

浩介、さっきのミュウのような悲鳴を上げてやがんの。愉悦。

「さて、ハジメ。イルワからの手紙でお前の事は大体分かっている。随分と大暴れしたようだな?」

「まぁ、全部成り行きだけどな」

気になるけどそれはまた後で聞くかな。

「手紙には、お前の金ランクへの昇格に対する賛同要請と、できる限り便宜を図ってやって欲しいという内容が書かれていた。一応、事の概要くらいは俺も掴んではいるんだがな。…たった数人で六万近い魔物の殲滅、半日でフューレンに巣食う裏組織の壊滅……にわかには信じられんことばかりだが、イルワの奴が適当なことをわざわざ手紙まで寄越して伝えるとは思えん。……もう、お前が実は魔王だと言われても俺は不思議に思わんぞ。」

そんなことしていたのかよ。すごいな。

「バカ言わないでくれ……魔王だなんて、そこまで弱くないつもりだぞ?」

「ふっ、魔王を雑魚扱いか? 随分な大言を吐くやつだ……だが、それが本当なら俺からの、冒険者ギルドホルアド支部長からの指名依頼を受けて欲しい」

「……勇者達の救出だな?」

「そ、そうだ!南雲!一緒に助けに行こう!お前がそんなに強いなら、きっとみんな助けられる!」

「……」

多分二人の間に『魔王』について認識の違いがあると思う。さて、南雲が助けに来てくれるかどうか、か。俺はメルドさんを助けるつもりだから行くけどハジメは…性格歪…変わっちゃったからな…

「おいお前いま失礼なこと考えなかったか?」

「イエナニモミジンモオモッテオリマセンハイ」

ハジメ鋭いな。読心系スキルでも持ってるのか?

「どうしたんだよ!今、こうしている間にもアイツ等は死にかけているかもしれないんだぞ!何を迷ってんだよ!仲間だろ!」

「……仲間?」

おっと、そいつは聞き捨てならないな。こちらも「メルドさんへの恩返し(一回だけ)」でメルドさんとその配下(可能なら)を救出に行くつもりなのに。天之河?助けたところでデメリットしかないし、見殺しにしたいんだが…

「あ、ああ。仲間だろ!なら、助けに行くのはとうぜ…」

「勝手に、お前等の仲間にするな。はっきり言うが、俺がお前等にもっている認識は唯の『同郷の人間』程度であって、それ以上でもそれ以下でもない。他人と何ら変わらない。」

「なっ!?そんな…何を言って…」

「俺もぶっちゃけ天之河を仲間認定するのはな…あいつのご都合主義思考嫌いだし。メルド団長ならまぁ一度ぐらいは助けてあげてもいいけどあいつを助けるのは嫌なんだよな…」

助けられなかったことにして見殺したいぐらいなんだよな…殺っていいかな?

「白崎は…彼女はまだ、無事だったか?」

「あ、ああ。白崎さんは無事だ。っていうか、彼女がいなきゃ俺達が無事じゃなかった。最初の襲撃で重吾も八重樫さんも死んでたと思うし…白崎さん、マジですげぇんだ。回復魔法がとんでもないっていうか…あの日、お前が落ちたあの日から、何ていうか鬼気迫るっていうのかな?こっちが止めたくなるくらい訓練に打ち込んでいて…雰囲気も少し変わったかな? ちょっと大人っぽくなったっていうか、いつも何か考えてるみたいで、ぽわぽわした雰囲気がなくなったっていうか…」

「……そうか」

ハジメが白崎さんについて浩介に尋ねたを聞いて、彼女の存在を思い出す。白崎と仲の良い、天之河のブレーキ役こと八重樫雫の存在。そう、それは転移前のこと。何度か天之河の暴走に巻き込まれたときに助けてくれた八重樫さんである。メルド団長に恩返しをする、というのなら、俺は彼女にも恩返しをしに行かなくてはならない。他の生徒とは最低限の付き合いで済ましていたから助ける義理などないけど、彼女とメルド団長は助けておかないと。浩介に二人は助けてやることを伝えようとしたら、ハジメがユエ・シア・ティオ・ミュウ(ハーレムメンバー)の方を向き口を開いた。

「神に選ばれた勇者になんて、わざわざ自分から関わりたくはないし、お前達を関わらせるのも嫌なんだが…ちょっと義理を果たしたい相手がいるんだ。だから、ちょっくら助けに行こうかと思う。まぁ、あいつらの事だから、案外、自分達で何とかしそうな気もするがな。」

あのハジメが他のメンバーを助けに行くと。すげー、器広ーい!

「なあ、ハジメと浩介。俺も義理果たしたい奴が二人いるし、俺も行くわ。」

方針転換?笑いたければ笑え。これは漢のプライド(しょうもない)なのだ。

「え、えっと、二人共。結局、一緒に行ってくれるんだよな?」

「ああ、ロア支部長。一応、対外的には依頼という事にしておきたいんだが…」

「上の連中に無条件で助けてくれると思われたくないからだな?」

「そうだ。それともう一つ。帰ってくるまでミュウのために部屋貸しといてくれ」

「ああ、それくらい構わねぇよ。頼む。で、そこにいるお前は何か要望はあるのか?」

「帰ってきたらハジメを尋問したいから、そのための部屋を用意してくれたら助かります。」

「…分かった。お安い御用だ。」

これはロア支部長の声。

「ハア!?」

これはハジメの声。しょうがないじゃん。教えてくれないんだし。というわけでハジメ、あとでO・HA・NA・SHIしような!!強制参加!!

「よし、じゃあ迷宮に行くか。転移するから来い、二人共。」

「「は?」」

俺はハジメと浩介を掴み、リムル=テンペストを真似て、空間転移の準備をする。ユエとシアが慌ててハジメの服を掴み、そのまま5人で迷宮入り口に転移するのだった。




次回、天之河ファンはブラウザバックを。ようやく八重樫雫を旅メンバーにできる…!


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9話 魔人族戦と天之河戦

「やっちまいな、アハトド!」

魔人族の命令に従い、亀型の魔物・アハトドの拳が雫を吹き飛ばす。

「あぐぅう!!」

剣と鞘を盾にしてもなおその力は凄まじく、雫の体はピンボールのように吹き飛んで壁にぶつかったあと地に伏した。すでに光輝は応戦中に使った「限界突破」の派生技能「覇潰」を発動させた代償により動けなくなってしまい、他のメンバーも満身創痍。メルド団長に至っては、決死の覚悟で自爆用アーティファクトを発動しようとしたところで魔力をアハトドに奪われたあとふっ飛ばされ、いつ死んでもおかしくない状態である。

「雫ちゃん!」

香織が焦燥を滲ませた声で名を呼ぶも、雫はうずくまったまま動かない。その時、香織の頭から、陣形や自身の魔力が尽きかけていること、自分がそこにいても意味などないことなどの理屈の一切が綺麗さっぱり消え去っていた。あるのはただ「大切な親友の傍に行かなければ」という思いだけ。香織は衝動のままに駆け出す。魔力がほとんど残っていないため、体はふらふいて足元がおぼつかない。背後から制止する声が上がるも、香織の耳には届かなかった。ただ一心不乱に雫を目指して歩みを進める。当然、無防備な香織を魔物達が見逃すはずもなく、情け容赦のない攻撃が殺到する。が、それらの攻撃は光の壁によって遮られる。

「やっぱり、一人は嫌だもんね。」

それを成したのは、結界師の谷口鈴である。魔力があまり残っていないことを気にもとめず結界を作り続ける。彼女は、既に悟っていたのだ。自分達はもう助からないと。ならば、大好きな友人達を最後の瞬間まで一緒にいさせるために自分の魔法を使いたい、そう思ったのだ。当然、その分他の仲間の防御が薄くなるわけだが…。鈴は内心で「ごめんね」と謝り、それでも香織と雫のために結界を張り続けた。

鈴の結界によって雫のもとにたどり着いた香織は、雫の体をそっと抱きしめ支える。

「か、香織…何をして…早く、戻って。ここにいちゃダメよ。」

「ううん、どこでも同じだよ。それなら、雫ちゃんの傍がいいから。」

「…ごめんなさい。勝てなかったわ。」

「私こそ、これくらいしか出来なくてごめんね。もうほとんど魔力が残ってないの。」

雫を支えながら眉を八の字にして微笑む香織は、痛みを和らげる魔法を使う。雫も、無事な左手で自分を支える香織の手を握り締めると困ったような微笑みを返した。彼女たちの目にはアハトドが血走った目を向けているのが映る。アハトドが腕を上げた。

「あーあ、ハジメくんに会えなかったな…」

「私も、好きな人に自分の思いぐらい伝えておけばよかったわ。」

そんな会話をしつつ、最期のときを待ち、目を閉じて歯を食いしばる。

 

 

メロンアームズ!天下御免!

その直後に聞こえたのはガキン!!という何かが硬いものにぶつかった音。そしてパン!という弾丸が放たれたかのような音。恐る恐る目を開くと、アハトドは手を振り下ろそうとする姿のまま額から血を流し、動かなくなっていた。そして腕を受け止めているのは、黄緑の鎧を着た侍のような人間だった。

「やあ、八重樫さんに白崎さん。間に合ったようで良かったよ。」

鎧武者から妙に馴れ馴れしい声が聞こえてくる。しかし雫にも香織にもそんな声の持ち主との交流はない。

「あれ?あーそうか、声まで変わるんだっけ。」

「当たり前だ。姿を変えてるだけなら分かるが、お前は今完全に力を再現してるんだろ?喉の形まで変わってるぜ、()()。」

後ろから別の声が聞こえる。そちらは聞いたことのある声。多少低くなっていて、口調も変わっているけども分かる。

「ハジメ、くんなの?」

「よお、白崎。それに八重樫も。お前ら、ホント仲いいな。」

そう、それは南雲ハジメだった。香織が求めていた存在、彼女が大迷宮攻略をする理由とも言える南雲ハジメである。

香織が涙を浮かべる一方、雫の顔は驚愕に染まっていた。先程南雲ハジメの言った言葉の中にある、無視できない単語。小学生の頃に助けられて以来、何度も自分を助けてくれた彼。それ以来、ずっと片思いをしてきた彼。

「読原!?…もしかして、読原くん?」

彼女の問いに、

「お、おう。声も見た目も変わっているが、正真正銘の読原大我だ。」

鎧武者、もとい読原大我はそう答えたのだった。

 

 

 

危なかったー!南雲の「大きな魔力を感じてきた」とか言うのを信じてここまで来てよかった。あと少し遅れていたら彼女たちが帰らぬ人になるところだった。いや、死んでも生き返らせれるけどさ。死ぬ経験などして欲しくはないのだ。

「あんたら、誰だ!」

魔神族の女が叫ぶ。当然だろう。あと少しで勇者パーティを殺せるというところで邪魔が入ったんだ。

「読原大我。恩返しのためにここに来た。」

「おい、魔神族相手に名乗っていいのか?」

「いいだろ、減るもんじゃないし。」

南雲の問にそう返す。

「ユエ、悪いがあそこで固まっている奴らのまもりを頼む。シア、向こうで倒れている騎士甲冑の男の様態を見てやってくれ。」

「ん…任せて。」

「了解ですぅ!」

南雲が二人に指示を出し、彼女たちはそれに従う。

「そこの女。今すぐ去るなら追いはしない。死にたくなければさっさと消えろ。」

「…なんだって?」

ハジメの忠告を魔神族が聞き返す。普通は煽りとして捉えられるだろと思わずにはいられない。

「戦場での判断は迅速にな。死にたくなければ消えろといったんだ。分かるか?」

魔神族の答えは…

「こいつらを殺せ!」

俺等を殺せという魔物への命令だった。だと思ったけど!俺は変身を解除し、真似も解除する。そして、別の存在を真似る。

「変身」

紅のスピーディジャンパー!ラビットラビット!ヤベーイ!ハエーイ!

今回真似たのは桐生戦兎、仮面ライダービルドである。

「喰らえ!」

俺はラビットラビットによる高速攻撃で、次々に魔獣を殺していく。ちなみに南雲は魔人族の魔法や魔物への指示を邪魔しつつ銃で魔物を減らしていく。1分も立たないうちに、魔物は全滅したのだった。

 

 

 

「…結局シアさんとユエさんに活躍の機会は来なかった、というわけで。君の負けだね。」

「…化け物め。」

魔人族が俺を罵る。

「化け物?いやいや、ただの偽物、紛い物さ。ハジメの方なら本物って感じかな。おっと話がそれた。さて、南雲さんや、こいつをどうします?」

「俺が尋問するさ。」

南雲がやってくれるようだ。ありがたい。こちとら経験がないからね。拷問慣れしているのを真似ようかと思ったが、力の消費は少ない方がいい。

「さて、普通はこういう時、何か言い遺すことは?と聞くんだろうがな。生憎、お前の遺言なんぞ聞く気はない。それより、魔人族がこんな場所で何をしていたのか…それと、あの魔物を何処で手に入れたのか…吐いてもらおうか?」

「あたしが話すと思うのかい?人間族の有利になるかもしれないのに?バカにされたもんだね!」

魔人族は嘲笑するように鼻を鳴らした。すると南雲が手を銃に伸ばして…撃った。

「あがぁぁあ!」

両足を撃たれ、魔神族の女は悲鳴を上げて崩れ落ちる。情け容赦ないように見えたのか、背後でクラスメイト達が息を呑んだ。

「ま、予想はつく。本当の大迷宮の攻略、だろ?」

魔神族の顔に動揺が見られる。

「あの魔物達は、神代魔法の産物…図星みたいだな。なるほど、魔人族側の変化は大迷宮攻略によって魔物の使役に関する神代魔法を手に入れたからか…とすると、魔人族側は勇者達の調査・勧誘と並行して大迷宮攻略に動いているわけか。」

「どうして…まさか…」

推測のことごとくが図星で、魔神族の女は悔しそうに顔を歪める。

「いつか、あたしの恋人があんたらを殺すよ。」

魔人族の言葉に、南雲は不敵な笑みを浮かべる。

「敵だというなら神だって殺す。その神に踊らされている程度のやつじゃあ、俺には届かないさ。」

南雲が銃口を魔人族の頭部に向ける。しかし、いざ引き金を引こうという瞬間に大声で静止がかかる。

「待て、待つんだ、南雲!彼女はもう戦えないんだぞ!殺す必要はないだろ!」

勇者(笑)の天之河だった。

「捕虜に、そうだ、捕虜にすればいい。無抵抗の人を殺すなんて、絶対ダメだ。俺は勇者だ。南雲も仲間なんだから、ここは俺に免じて引いてくれ!」

勇者が面倒くさい。ここは俺がなんとかしようかな。

「南雲、勇者がこう言っていることだし、俺に任せてくれないか?」

「? …ああ、いいよ。」

南雲が快く魔人族を譲ってくれた。

「さっさと殺せ!」

魔人族がなんかほざいているが、無視する。

「なあ勇者、こいつはお前らを殺そうとしたのに、生かしていいのか?」

俺がそう言うと、天之河は

「確かに許せないが、人殺しはやってはいけないだろう!?お前ならわかるんじゃないか!?読原!」

そう返してきた。それなら、こちらとしてはやっておきたいことがある。君の心を折らせてもらおう。俺は別の存在のマネを始める。真似るのは大活躍の球磨川禊。

「なあ、読原。さっきから見せているその変身は何なんだ?」

「能力の派生だよ、派生。」

勇者の疑問を適当に流しつつネジを取り出す。そしてそれを、ためらいなく魔人族に突き刺した。

「読原、何をやって!?」

「何言ってるんだい?天之河くん。()()()()()()()()()()()()()?」

先程ネジに貫かれたはずの魔人族は、戦闘で追った傷すら全治していた。気絶していたが。

「でも、お前はさっき魔人族を…」

「何を言うんだ、証拠もないのに人を疑わないでくれ!それとも君は、そうやって何もしていない人間を「なんかこいつ犯罪犯しそうだから逮捕する」みたいなノリで冤罪をかけるようなクズだったのかい!?」

「そ、そういうわけじゃないが…でも…」

「そうか、君はそんなにも無責任で酷いやつなんだね。人に冤罪をかけることを悪と認識できず、自分が全て正しいと思っているんだ。」

「ヒ、ヒィ!」

天之河の口から情けない悲鳴が溢れる。いくら勇者(プラス)でも過負荷(マイナス)には勝てなかったようだ。

「大丈夫。君はそのままでいいんだよ!そうやって何人もの人に冤罪をかけ、何人もの人生を狂わせ、自分だけのうのうと生きる。それが君の生き方であり、個性なんだから!」

「や、やめろ、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は、俺は」

あーあ、折れちゃいそうなぐらい心が弱ってる。可哀想に。俺は真似を解除し、天之河を向いて告げる。

「天之河、お前はダメだ。俺等にしろと言われているのは戦争なんだよ。現実見えてんの?現実を見ることができないと、すぐに死ぬぞ?それも大切な人達を巻き込んでな。」

俺はそう言い、南雲のもとに向かう。道中で魔人族を隠し針で刺殺して。

「これで恩も返したし、うざいやつに許育もし終えた。やることを全部終わらせたし、じゃあ帰ろっか。」

俺はまた真似を発動して、皆を空間転移で地上に送るのだった。クラスメイトは、皆黙ったままだった。

 




次回、ようやく地上へ、旅仲間追加。ボッチ旅から脱却です。

《今回真似したキャラクターたち》(過去に登場したやつは省略)
・仮面ライダー斬月 メロンアームズ
出した理由 防御に特化したやつとかいないかな~?→思いつかないや、ハーメルン読もっと→鎧武のクロスオーバーおもろいな→よし、斬月出そう
仮面ライダーほとんど出番なくてすんません。
・仮面ライダービルド ラビットラビットフォーム
出した理由 大量に敵倒せるやつやつとかいないかな~?→多すぎるな、ハーメルン読もっと→ビルドのクロスオーバーおもろいな→よし、ビルド出そう→ジーニアスは出せないけどハザード使いたくないしな…→ラビラビでいいか!


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10話 修羅場と想定外

「パパぁー!お帰りなのー!」

迷宮の入場ゲートのある広場に幼女の元気な声が聞こえる。各種の屋台が所狭しと並び立ち、迷宮に潜る冒険者や傭兵相手に呼び込みをする商人達の喧騒にも負けない声を張り上げるミュウちゃんに、周囲にいる冒険者や商人たちも微笑ましいものを見るように目元を和らげていた。ステテテテー!と可愛らしい足音を立てながら、南雲へと一直線に駆け寄ってきたミュウちゃんは、そのままの勢いで南雲へと飛びつく。

「ミュウ、迎えに来たのか?ティオはどうした?」

南雲が、ミュウちゃんが怪我をしないように衝撃を完全に受け流しつつ受け止め、彼女に質問をする。

「うん。ティオお姉ちゃんが、そろそろパパが帰ってくるかもって。だから迎えに来たの。ティオお姉ちゃんは…」

「妾は、ここじゃよ。」

人混みをかき分けて出てきたのはティオさん…だっけ?

「おいおい、ティオ。こんな場所でミュウから離れるなよ。」

「目の届く所にはおったよ。ただ、ちょっと不埒な輩がいての。凄惨な光景はミュウには見せられんじゃろ。」

「なるほど。それならしゃあないか…で?その自殺志願者は何処だ?」

「いや、ご主人様よ。妾がきっちり締めておいたから落ち着くのじゃ。」

「…チッ、まぁいいだろう。」

今のやり取りでだいたいわかった。おおかた、ミュウちゃんにちょっかいをかけようとした奴がいたのだろう。で、ティオさんにシメられた、と。そこまで考えたところで、急に後ろから悪寒を感じた。慌てて振り返ると、そこには全く笑みのない目で笑っている…白崎さんがいた。何?あんな怖い姿見たことないんだけど!?白崎さんはゆらりゆらりと歩みを進めると、突如クワッと目を見開き、南雲に掴みかかった!

「ハジメくん!どういうことなの!?本当にハジメくんの子なの!?誰に産ませたの!?ユエさん!?シアさん!?それとも、そっちの黒髪の人!?まさか、他にもいるの!?一体、何人孕ませたの!?答えてよ、ハジメくん!」

あちゃー。完全に誤解してますわ。おそらく衝撃の事実ラッシュ+度重なる死闘+死地からの生還で正常な思考ができていない。南雲の襟首を掴みガクガクと揺さぶりながら錯乱する白崎さん。南雲は誤解だと言いながら引き離そうとするが、白崎さんは、何処からそんな力が出ているのかとツッコミたくなるくらいガッチリ掴んで離さない。白崎さんの背後から、「香織、落ち着きなさい! 彼の子なわけないでしょ!」と八重樫さんが諌めながら羽交い絞めにするも、聞こえていないようだ。そうこうしているうちに、周囲からヒソヒソと噂するような声が聞こえて来た。

「何だあれ? 修羅場?」

「何でも、女がいるのに別の女との間に子供作ってたらしいぜ?」

「一人や二人じゃないってよ」

「五人同時に孕ませたらしいぞ?」

「いや、俺は、ハーレム作って何十人も孕ませたって聞いたけど?」

「でも、妻には隠し通していたんだってよ」

「なるほど……それが今日バレたってことか」

「ハーレムとか……羨ましい」

「漢だな……死ねばいいのに」

どうやら南雲は、妻帯者なのにハーレムの主で何十人もの女を孕ませた挙句、それを妻に隠していた鬼畜野郎という事になったらしい。ザマァ見やがれ。未だにガクガクと揺さぶってくる白崎さんを尻目に天を仰ぐ南雲は、不思議そうな表情をして首を傾げる傍らのミュウちゃんの頭を撫でながら深い溜息をついていた。

 

 

 

時は流れ。

白崎さんが、顔を真っ赤にして雫の胸に顔を埋めている姿は、まさに『穴があったら入りたい』の体現だった。冷静さを取り戻して、自分がありえない事を本気で叫んでいた事に気がつき、羞恥心がマッハになっているようだ。「大丈夫だからね~、よしよし。」と慰める八重樫さんの姿が、完全にお母さんにしか見えない。俺達は、現在、入場ゲートを離れて、町の出入り口付近の広場に来ていた。南雲の漢(男、じゃないよ漢だよ)としての株が上がって社会的評価が暴落した後、南雲はロア支部長の下へ依頼達成報告をし、二、三話してから、いろいろ騒がしてしまったので早々に町を出ることにしたとのこと。ちなみにその時南雲を尋問して、大体の経歴を聞くとともに、彼とその仲間の今後の旅について聞いた。…色々言いたいことはあるけど一番言いたいのは、「樹海の皆さん、うちの南雲がすみません。」だ。なんだよ最弱部族を強化して首切り集団にするって。涙を流して笑みを浮かべる獣人の姿が幻視できた。樹海でハウリアについて誰も教えてくれなかった理由がよく分かったよ。そして今後の旅については、グリューエン大火山の迷宮を攻略して、ミュウを母親のもとに連れ帰る予定らしい。数ヶ月一人で旅をしてみたが、大勢のほうが賑やかで楽しそうだし、オルクス大迷宮では断ってしまったが面白そうなのでやっぱり自分もついていきたいと南雲に頼んでみたら、なんとオッケーだった。迷宮に落ちても、南雲の心は広かった。おっと、話を戻して。何故か後ろでは光輝達がついてきている。何故なのかは分からないが、おそらく白崎さんか光輝関連だろう。白崎さんは南雲に、そして光輝は俺に言いたいことがあるだろうし。いや、でも光輝に関しては心ボロボロにしてやったし言ってくるかな?と思ったところであることに気づく。そう、南雲がいなくなっている。

「すみません、ティオさん…でしたっけ。南雲がどこに行ってるかわかります?」

近くにいたティオさんに聞いてみる。

「おお、読原じゃったか。御主人様は今ミュウに手を出そうとした者たちの粛清をしておるぞ。」

さすが親バカ。手を出した人たちもついてないねぇ。南雲が何をやっているのかは聞きたくもない。なんか怖い感じがする。俺はティオさんに礼を言い、南雲を待つのだった。

 

 

「また、容赦なくやったのぉ。流石、ご主人様じゃ。女の敵とはいえ、少々同情の念が湧いたぞ?」

「いつになく怒ってましたね。やっぱり、ミュウちゃんが原因ですか?過保護に磨きがかかっているような気がします。」

「…ん、それもあるけど…シアのことでも怒ってた」

「えっ!? 私のために怒ってくれたんですか? えへへ、ハジメさんったら…有難うございますぅ!」

「…ユエには直ぐに見透かされるな」

「んっ…当然。ハジメのこといつも見てるから」

「ユエ…」

「ハジメ…」

戻ってきて早速二人の世界を作り始めた南雲とユエさんにシアさんがツッコミを入れ、ミュウさんが構ってくれと南雲に飛びつき、ティオさんが変態発言をしてハジメに冷たくされてハァハァする。これが彼らの今の日常なのだと思うと、少し羨ましくなった。そして、そんな枠に近づく者が2人。それは、白崎さんと八重樫さんだった。彼女たちは目配せしあうと、別方向に進み始めた。白崎さんは南雲たちの方へ、そして八重樫さんは…俺の方へ?

「ハジメくん、私もハジメくんについて行かせてくれないかな?…ううん、絶対、ついて行くから、よろしくね?」

「読原くん。私、もしあなたが良ければあなたの旅に同行させてもらいたいの。お願いできる?」

 

「「…は?」」

 

完全に想定外のことを言われ、うっかり南雲と言葉が被ってしまうのだった。




今回で雫の同行まで進めようとしたのにうまく行かなかった…


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11話 告白とイタイ勇者(笑)

やっと…やっとここまでこれた…
今回天之河への残酷な描写が嫌いな方、天之河のファンの方はブラウザバックを。

感想や高評価があるとよりモチベが高くなります。


「読原くん。私、もしあなたが良ければあなたの旅に同行させてもらいたいの。お願いできる?」

は?え?どういうこと?南雲じゃなく、俺?

「…読原くん。あなたのことがずっと前から好きでした。私と…私と付き合ってください!!」

予想外の言葉にフリーズしてしまう。付き合う?店か何処かに一緒に来てほしいってこと?それとも恋愛的な意味で?やばい、初めて告白されて頭の中がパニックだ。落ち着け、素数を数えるんだ。1、2、3、4、5、6…ってこれじゃあただ数を数えてるだけだー!

 

 

隣で南雲が何かプチパニックを起こしているのを見て落ち着きを取り戻す。人がパニックを起こしているのを見ると冷静になれるって本当らしい。

「えっと、まず旅について来たい、ということについてだけど。」

緊張しながらも話し始める。

「…俺の旅って結構過酷だよ?目的が『大迷宮突破』である以上キツくなるだろうし。それに、もしかしたら白崎さんともう会えなくなるかもしれない。クラスメイトとも二度と会えなくなるかもしれない。そうなったら困「問題ないわ。」るでしょ、って即答!?」

八重樫さんが即答する。

「私は確信してるの。大迷宮を全て突破して、みんなのもとに帰る未来を。会えない未来なんて、認めないわ!」

八重樫さんの強い意志を感じる。

ああ、そうだった。君はそういう人だったよ。天之河から助けてもらったときから、ずっと。格好良く、美しく、自己犠牲的で、優しくて、強靭で、そして堅い意志を持つ人間。それが彼女、八重樫雫という存在なんだ。

「…本当に、ついてくる気なのかい?今なら引き返「ついて行くって言ってるでしょ。」そうですか。」

では俺も、自分の気持ちを伝えるとしますか。俺は八重樫さんの目を見据え、口を開く。

 

「こんな俺で良ければ、付き合ってください!」

 

八重樫さんの目から涙がこぼれ落ち、破顔する。そしてすぐに頬を赤らめ、俺に質問する。

「それは『旅について来てほしい』っていう意味かしら?それとも『彼女になって欲しい』っていう意味?」

彼女の問いかけに俺は答える。

「もちろん、両方。あ、そうだ。俺の旅についてくる以上、ちょっと魔改造させてもらうよ!」

魔改造、と聞いて八重樫さんの表情が少し引き攣る。

「…何するつもりなの?」

「そりゃあ一人で勇者(笑)10000人の軍に勝てるほどの強さを持ってもらうつもりだよ?」

「ふふっ、それはたしかに魔改造ね!」

俺が質問に答えると彼女が笑い声をこぼす。

「で、八重樫さん…旅の準備はできてるの?」

「すでに準備してあるわ。」

「…まさか、俺が断るという選択肢を考えていなかったのかい?」

「断られてもついていくつもりだったからよ。もしかしたら、香織の突撃癖が伝染っちゃったのかもね。」

「あははっ!なんだよそれ!」

「あはは!」

俺はそうして八重樫さんと笑い合った。

この日、俺には目標ができた。大した目的を持たずにその場のノリや周囲の人間によってやること思うことが定まらない人間の俺だが、この目標は常に定まり続けて、揺らぐこともないだろう。

 

『迷宮を踏破して、皆のもとに戻るまで八重樫雫を守り続け、そして彼女を強くする。』

 

これが俺の、この世界での目標だ!

 

 

 

八重樫さん、そして香織さん(こちらは南雲についていくらしい。)の二人が勇者パーティから抜けることとなったことを勇者パーティーのメンバーに伝えに行く。彼女たちが勇者パーティーのメンバーに伝えたときの反応は様々だった。女性陣はキャーキャーと騒ぎながらも頑張れとエールを贈ってくれた。男子は野村・永山の2人は気にするなと苦笑いしながら手を振った。遠藤は「お前が羨ましいよ!」と嫉妬の言葉を贈りつつも「大迷宮攻略、頑張れよ!」と応援してくれた。

問題は勇者(笑)だった。

「嘘だろ?だって、おかしいじゃないか!雫と香織は、ずっと俺の傍にいたし…これからも同じだろ?2人は、俺の幼馴染で…だから…俺と一緒にいるのが当然だ。そうだろ、2人共!」

天之河の主張に2人は、

「えっと…光輝くん。確かに私達は幼馴染だけど…だからってずっと一緒にいるわけじゃないよ?それこそ、当然だと思うのだけど…」

「そうよ、光輝。香織も私も、別にあんたのものじゃないんだから、何をどうしようと決めるのは私達自身よ。いい加減にしなさい!」

と拒絶。幼馴染の二人にそう言われ、呆然とする天之河。その視線が、スッと南雲と俺へと向く。南雲は、我関せずと言った感じで遠くを見ていた。俺は逆に真正面から睨み返す。南雲の周りには美女、美少女が侍っているし、あの中に自分のものだと思っていた白崎さんが入ると思うと、怒りなり嫉妬なりそういった感情が渦巻いているのだろう。目が段々と吊り上がっているのがわかる。そして、衝動のままに、ご都合解釈もフル稼働するだろうな。

「香織。行ってはダメだ。これは、2人のために言っているんだ。見てくれ、あの南雲を。女の子を何人も侍らして、あんな小さな子まで…しかも兎人族の女の子は奴隷の首輪まで付けさせられている。黒髪の女性もさっき南雲の事を『ご主人様』って呼んでいた。きっと、そう呼ぶように強制されたんだ。南雲は、女性をコレクションか何かと勘違いしている。最低だ。人だって簡単に殺せるだろうし、強力な武器を持っているのに、仲間である俺達に協力しようともしない。香織、あいつに付いて行っても不幸になるだけだ。だから、ここに残った方がいい。いや、残るんだ。そして雫、読原はさっき無抵抗の魔人族を殺したし、平気で人の心を踏みにじるような悪人だ。人の心を弄び、破壊することに悦を見出すような狂人に違いない。あいつはきっと君のこともメチャクチャにするはずだ。いや、そうに違いない!例え2人に恨まれても、君達のために俺は君達を止めるぞ。絶対に行かせはしない!」

光輝の余りに突飛な物言いに、白崎さん達が唖然とする。もちろん俺も。しかし、ヒートアップしている天之河はもう止まらない。説得のために向けられていた白崎さんと八重樫さんへの視線は、何を思ったのか南雲の傍らのユエさん達に転じられる。

「君達もだ。これ以上、その男の元にいるべきじゃない。俺と一緒に行こう!君達ほどの実力なら歓迎するよ。共に、人々を救うんだ。シア、だったかな?安心してくれ。俺と共に来てくれるなら直ぐに奴隷から解放する。ティオも、もうご主人様なんて呼ばなくていいんだ!」

そんな事を言って爽やかな笑顔を浮かべながら、ユエさん達に手を差し伸べる天之河。八重樫さんは顔を手で覆いながら天を仰ぎ、白崎さんは開いた口が塞がらない。そして、天之河に笑顔と共に誘いを受けたユエさん達は…

 

「「「……」」」

 

もう、言葉もなかった。天之河から視線を逸らし、両手で腕を摩っている。天之河をたちの悪い幻覚とでも捉えたくなったのだろう。俺だってそうしたくなる。よく見れば、ユエさん達の素肌に鳥肌が立っていた。ある意味、結構なダメージだったらしい。あのティオさんでさえ、「これはちょっと違うのじゃ…」と、眉を八の字にしている。…いまいちティオさんのツボが分からない。そんなユエさん達の様子に、手を差し出したまま笑顔が引き攣る天之河。視線を合わせてもらえないどころか、気持ち悪そうに南雲の影にそそくさと退避する姿に、若干のショックを受ける。そのショックは誰に向けられるのかというと、俺達である。天之河は俺達を睨みながら聖剣を引き抜いた。天之河は、もう止まらないと言わんばかりに聖剣を地面に突き立てると俺達に向けて指を差し宣言した。

「読原大我と南雲ハジメ!どちらか俺と決闘しろ!武器と技能は禁止だ!俺が勝ったら、二度と香織と雫には近寄らないでもらう!そして、そこの彼女達も全員解放してもらう!」

「…イタタタ、やべぇよ。勇者が予想以上にイタイ。何かもう見てられないんだけど。」

「南雲、お前この世界でカウンセリングの専門家とか知らない?あれは末期患者だよ…素人じゃ無理無理!」

「何をごちゃごちゃ言っている! 怖気づいたか!」

おそらく武器をおいたのは南雲の銃を警戒してだろう。そして技能禁止は俺の能力を恐れてだね。…あいつ本当に勇者?正々堂々とかけ離れてない?

「南雲、どちらがいく?あとでマカロン奢ってくれたら俺出るけど?」

「マジ?奢るからよろしく〜!」

交渉終了。八重樫さんのために、マカロンのために。あいつをボコします。

「おい勇者。そこ立て。ボコボコ(笑)にしてやんよ!」

 

 

互いに対峙し、睨み合う。

「スタート!」

遠藤(暇そうにしてたから審判に)の開始の掛け声と共に、天之河が走って突撃してくる。あっという間に俺の立っているところまで来て、俺をぶん殴る…直前に真似をして姿を変え、拳を片手で受け止めてもう片方の手で腹パンする。

「カハッ」

そのまま彼は元いた位置よりも遠くまでふっとばされる。

「お、お前!技能は禁止だろうが!」

さすが勇者。虚刀流の技ではないとはいえ、鑢七花のパンチを食らってもすぐ動けるとは。と思ったが、よく見たらあいつ鎧つけてるじゃん。そこまで硬くないのかよ。残念。それにしても「技能は禁止」ね…

「天之河。俺は()()()()()()()とか()()()()()()なんて一言も言ってねえんだよ!」

あくまでも俺は、「彼をボロボロにする」事しか言っていない。勘違いしたのは向こうだ。

「卑怯者!」

「ねぇねぇ勇者くん。もしかしてだけどさぁ、

あれ、ノせられちゃった?

「読原ァァァァァ!!」

挑発に乗せられ、天之河を、

「俺さぁ、お前に苛ついてるんだよね。いつものご都合主義もそうだけど、俺の()()()()()に俺以上に馴れ馴れしくしやがってさ。だから食らってくれ!虚刀流・木蓮

虚刀流の技の一つである飛び膝蹴りでの攻撃・木蓮を食らわせ、ダウンさせたのだった。




今回真似したキャラクター

鑢七花
刀語
刀を使わない剣士。虚刀流で戦う。本来はもっと色々技がある。とがめのちぇりおを期待していた方々、本当にすいません。


次回、(おそらく)八重樫雫強化回。


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12話 スキルと厨二病

暴走した勇者(笑)を虚刀流で気絶させ、俺と八重樫さんは南雲ーズと共に旅の仕度を再開をしようとしたのだが、新たな邪魔者が現れた。檜山たちである。なんでも、白崎さんと八重樫さんの抜ける穴が大きすぎる。今回の事もあるし、2人が抜けたら今度こそ死人が出るかもしれない。たがら残ってくれ、とのこと。彼らはしばらく説得するが、勿論彼女たちは断り続けた。彼らは白崎さんと八重樫さんの決意が固く説得が困難だと知ると、今度は、南雲と俺を残留させようと説得をし始めた。過去の事は謝るので、これからは仲良くしようとのこと。俺とも今後は仲良くしていきたいとほざいてきた。ぶっちゃけ学校にいた頃のように「クラスメイトのうちの1人」ぐらいの関係で不自由も不都合もないし、何より俺の彼女をくれてやるつもりなどない。『仲よくする』なんてそんなこと微塵も思っていないだろうに、馴れ馴れしく笑みを浮かべながら俺達の機嫌を覗う彼等に、南雲と俺だけでなく、南雲のハーレムメンバー達や八重樫さんも不愉快そうな表情をしている。このままだと口論になりそうだし、天之河みたいに気絶させてやろうと思っていたら、南雲が檜山に話しかけた。何を言ってるのかは声が小さくて聞こえなかったが、檜山の顔はあおく、そして誰もいなくなったその後白っぽくなっていった。南雲は白い顔になり黙ってしまった檜山から離れ、容赦なく告げた。

「お前等の謝罪なんざいらないし、過去の事を気にしてもいない。俺にとって、お前らは等しく価値がない。だから、何を言われようと俺の知ったことじゃない。わかったらさっさと散れ!鬱陶しい!」

南雲の物言いに怒りをあらわにする檜山以外の白崎さん・八重樫さんの離脱反対派達だったが、

「檜山ぁ。お前ならわかってくれるよなぁ?」

と南雲が檜山に満面の笑みで言うと、ビクリと体を震わせた檜山は無言で頷き、他の人間達にもう止めるよう言い出した。豹変ともいえる檜山の態度に訝しそうな表情をする彼らだったが、檜山が感情を押し殺した尋常でない様子なのを見て、渋々だが、説得を諦めた。

 

 

 

邪魔者が今度こそいなくなり、旅の準備も終了する(檜山達が八重樫さんと白崎さんが荷物を取りに行くのに付いていこうとしたが、南雲の威圧により止められた)。

出発直前になり、八重樫さんが南雲に話しかけた。

「何というか…いろいろごめんなさい。それと、改めて礼をいうわ。ありがとう。助けてくれたことも、生きて香織に会いに来てくれたことも…」

そんな言葉に、南雲は失笑する。失笑に対し八重樫さんは「一体何?」と視線で問いかける。

「いや、すまん。何つーか、相変わらずの苦労人なんだと思ったら、ついな。日本にいた時も、こっそり謝罪と礼を言いに来たもんな。異世界でも相変わらずか…ほどほどにしないと眉間の皺が取れなくなるぞ?」

「…大きなお世話よ。そっちは随分と変わったわね。あんなに女の子侍らせて、おまけに娘まで…日本にいた頃のあなたからは想像出来ないわね。」

「あんたも彼氏ができてんじゃねえか。日本ではあんなに告白を断ってきたのにも関わらず。つーか、俺が惚れているのは一人だけなんだがなぁ…」

南雲の言葉に頬を赤くして答える。南雲、ナイス!

「…私が言える義理じゃないし、勝手な言い分だとは分かっているけど、出来るだけ香織のことも見てあげて。お願いよ!」

ハジメは答えない。遠い目をしている。どこに遠い目をする理由があるのかわからないんだが…

「…ちゃんと見てくれないと…大変な事になるわよ。」

「?大変なこと?なんだそれ…」

「『白髪眼帯の処刑人』なんてどうかしら?」

「…なに?」

「それとも、『破壊巡回』と書いて『アウトブレイク』と読む、なんてどう?」

「ちょっと待て、お前、一体何を……」

「他にも『漆黒の暴虐』とか『紅き雷の錬成師』なんてのもあるわよ?」

「お、おま、お前、まさか……」

突然、わけのわからない名称を列挙し始めた八重樫さんに、最初は訝しそうな表情をしていた南雲だったが、彼女が南雲の頭から足先まで面白そうに眺めていることに気がつくと、その意図を悟りサッと顔を青ざめさせた。

「ふふふ、今の私は神の使徒なのよ?私の発言は、あっという間に広まってしまうわ。ご近所の主婦ネットワーク並みにね。読原くんにさっき教えてもらった『南雲に有効な武器一覧』、あなたは耐えられるかしら?さぁ、南雲君、あなたはどんな二つ名がお望みかしら…随分と、名を付けやすそうな見た目になったことだし、盛大に広めてあげるわよ?」

「待て、ちょっと、待て!つーかなんでそんなポンポン思いつくんだよ!」

「香織の勉強に付き合っていたからよ。あの子、南雲君と話したくて、話題にでた漫画とかアニメ見てオタク文化の勉強をしていたのよ。私も、それに度々付き合ってたから…知識だけなら相応に身につけてしまったわ。確か、今の南雲君みたいな人を厨二びょ…」

「やめろぉー!やめてくれぇ!」

「あ、あら、想像以上に効果てきめん…自覚があるのね。」

「こ、この悪魔めぇ…」

生まれたての小鹿のようにガクブルしながら膝を突いているハジメ。

「ふふ、じゃあ、香織のことお願いね?」

「……」

「ふぅ、破滅挽歌(ショットガンカオス)復活厄災(リバースカラミティ)…」

血紅雷の滅世帝(ブラッドカイザー)混沌創破神(ザ・ファーストワン)

「わかった! わかったから、そんなイタすぎる二つ名を付けないでくれ!っていうか読原何テメェも参加してんだ!」

「彼氏が、彼女の願いを可能な限り叶えてあげたいって思うのはおかしいかい?」

南雲が青筋を立てる。お前もユエに対しては真顔でそういうこと言うだろおい…

「ということで、香織のことお願いね?」

「……少なくとも、邪険にはしないと約束する。」

「ええ、それでも十分よ。これ以上、追い詰めると発狂しそうだし……約束破ったら、この世界でも日本でも、あなたを題材にした小説とか出すから覚悟してね?」

「コミカライズもしてやるからな!」

「おまえら、ホントはラスボスだろ? そうなんだろ?」

羞恥心に大打撃をくらい発狂寸前となって頭を抱える南雲。そんな南雲を少し離れたところから見ていたユエ達や他のクラスメイト達は、圧倒的強者である南雲を言葉だけで跪かせた八重樫さんに戦慄の表情を浮かべた。

「さて、じゃあ出発しますか!」

こうして俺らはホルアドの町を後にした。

 

 

 

 

「というわけで!読原大我による〜、ワクワク・八重樫さん強化ターイム!」

「…」

冷たい目で見られた。ごめんなさい。ちょっとテンション高くなりました。夕方、南雲ーズは野宿の準備中である。俺らはキャンプセットがあるので(byポケモン)一瞬で準備できるので時間があり、その時間を利用して彼女を強くしようという魂胆だ。

「今のままじゃ八重樫さんは…そこまで強くない。だから強くなってもらう!」

「足手まといなら足手まといとちゃんと言って…事実だからしょうがないんだし。」

見抜かれてしまった。

「とりあえず、まずはスキルを得てもらうよ。何か欲しいスキルとかある?」

「スキルの作成!?」

俺の言葉に八重樫さんが驚く。まあそうだろう。この世界で言う技能的なものを与えられると突然言われりゃ動揺する。スキルについては知らないものの、異世界転移・転生系のことを白崎さんと学んでいればどういうものかは知っているだろう。

「え、えっと…デメリットがないものとか、剣技と組み合わせられるものとか?」

彼女の要望を受け取り、だいたい作るスキルは考えついた。

「了解。じゃあ作るね。」

そう言って俺は真似を行う。今回真似をするのはめだかボックスの不知火半纏、「スキルを作るスキル」の持ち主だ。

数十秒ほどスキル作成を行い。

「よし、これでOK!」

八重樫さんの手に触れて、スキルを与える。その後真似をやめ、スキルが彼女に残っているか確かめる。……大丈夫、残ってる。残っているのが確認できたので、俺はスキルの説明を始める。

 

 

 

「…っていう感じ。とりあえずこの3つだよ…って八重樫さん?聞いてる?」

「…はっ!き、聞いてるわよ!(い、言えない…手を触られて動揺で全然聞いてなかったなんて!)」

「聞こえてるよ…」

俺が指摘すると彼女は顔を真っ赤にしてしまう。やべえ、超かわいい。

「ご、ごめんなさい。」

「こちらこそ勝手に手、触っちゃってごめん。」

「い、いえ。別に私達は…その、恋人同士だし…別に構わないというか…もっと触れていてほしいとか…」

「わ、分かった。」

八重樫さんの頼み通り、彼女の手に触れてみる。少しひんやりとしているが、暖かさが、彼女の優しさが感じられる。

「その…他の女の子みたいに奇麗な手じゃなくてごめんね?マメや傷跡やらだらけで。」

「何を謝る必要があるんだ?」

「え?」

彼女が目を丸くする。

「八重樫さんが今まで必死に努力した証じゃないか。俺は他の女性のただ奇麗な手なんかより、……八重樫さんの手の方がとても美しいと思うよ。」

俺の言葉を聞いて、八重樫さんが笑みを浮かべる。その笑みが美しくて、俺はこの笑顔を守りたい、改めてそう思った。

「さて。じゃあスキルの説明をしようか、八重樫さん「その…名前で、読んでくれない?」え?」

驚いた。なんとかして名前呼びをしてもらおうと思ってたらまさか向こう側から名前呼びを提案してくれるなんて。お、落ち着こう。マジか。よし、このチャンス、絶対逃しはしない!

「じゃあ、その………し、雫。」

彼女は笑みを浮かべ答える。

「何?た、大我?」

2人とも緊張と恥ずかしさでつっかえてしまい、それがおかしくて2人で笑ってしまった。

「あの2人、もういちゃついていやがる…」

「さすが雫ちゃん!」

「……それに比べ香織はダメダメ。ダメダメガール。」

「……やるの?ユエ。」

「かかってこい、香織。」

「放置プレイ……素晴らしい!」

南雲ーズは大変賑やかだったようだが、俺がそのことを知る由もなかった。

 

 

 

「じゃあそろそろスキルの説明しないと。雫、いい?」

「もちろん、大我。」

名前呼びにも慣れてきて、ようやくスキルの説明に移る。

「まずは、持った剣の性質を完全に把握し、最適な使用方法を瞬時に思いつくスキル『全刀用(ハウトゥユーズ)』。剣の性質を持った瞬間に理解できるから、すぐにどのように扱えばいいかわかるよ。」

「なるほど、サポート系ね。」

「そして2つ目。一度見た剣技を十全に使えるようになるスキル、『完成形変体刀技(ジエンドオブソードアーツ)』。後で優れた剣技を持つ存在のマネをするからそれを見て使えるようにしてね!」

「…これ本当に私が持ってて大丈夫?このスキル1つで戦力バランス的なものが壊れそう…」

「そして3つ目。刀身に触れていると体力を回復するスキル『疲れ知らず(イグノランスヒルト)』」

「継戦能力上昇ね。というかどの能力も強すぎない?複数持ってたら戦力過剰だと思うんだけど…」

「なーに、原典の方では1京を超える数保有している人外もいたんだ、3つぐらいなら誤差だよ誤差。」

「……私疲れちゃったのかしら?1京を超える数?聞き間違いよ。そうに決まってる……」

 

 

 

「へー、雫ちゃん、強くなったんだ!」

「ええ、まあズルのようなものだけどね。」

「……その能力、知らない人にも力を譲渡可能?」

「ユエさん、気になるのかい?……スキルの譲渡か。多分触ればできると思うよ。」

南雲ーズが野宿の準備を終え、皆で食事をする。最後に大勢で食事をしたのはいつだっただろうか。ああ、温かい食卓だ…

 

「読原、誰にでもスキルを与えられると言うなら、俺にも1つ作ってくれよ。」

食事を終えると、南雲が俺にそう言ってきた。

「ああ、いいよ。」

俺はそう言い、再び真似を発動する。数秒ほどでスキルを完成させた。

「ほい。」

南雲の手に触れ、能力を渡す。

「ハジメさん、どんな能力なんですか?」

シアがハジメさんにスキルの内容を聞く。それに対し南雲は、

「ふむ、奴より与えられしこの権限は他者の聴覚に呪的状態異常を与えるよう、だ……?」

いつもの口調と打って変わって、香ばしい言葉で話す南雲にシアは、

「その口調どうしたんです?何か口調がおかしくなってませんか?」

多少のおかしさを感じつつも彼に問う。どうやら南雲にも自分の言葉が香ばしくなっているのが理解できたようだ。

「よ、読原よ!我が身に悪しき権限を付与しおったな!この漆黒の暴虐たる我が身に働いた愚行、即刻頭を垂れ!!」

「「「「「「プッハハハハハ!!」」」」」」」

ミュウ以外の全員が吹き出す。ミュウは「みゅ?」と疑問顔。こ、香ばしさがたまらない!見た目も相まって完全に厨二病の末期症状でしかない。

「ちょっ、ちょっと大我!な、南雲くんに何の能力を与えたの!?」

雫の問いに俺は正直に答える。

「自分の言葉を厨二病的に翻訳して話してしまうようになるスキル『厨二句厨勢(デヴィイルパワー)』。」

「やめて!厨二句厨勢(デヴィイルパワー)の能力で、厨二病っぽい言葉しか話せなくなってしまったら、元から厨二病っぽい見た目の南雲くんのの精神まで燃え尽きちゃう!お願い、死なないで南雲くん!あなたが今ここで倒れたら、ミュウちゃんやユエとの約束はどうなっちゃうの? ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、スキルを解除してもらえるかもしれないんだから!」

雫が有名な次回予告のような言葉で南雲にフォローを入れる…と思いきや意外と彼にダメージが入っている。

「読原!その愚行に我が天罰を下してやろうぞ!!汝の身に深淵より来る災いよあれ!!」

おー、苛ついてやがんの。さて、締めますか。

「次回、『南雲死す』。デュエルスタンバイ!!」

「ふざけるなァァァァァァ!!」

南雲の悲痛な声が辺りにこだましたのだった。

 




〈今回登場したスキル〉
全刀用(ハウトゥユーズ) 持った剣の性質を把握し、最適な使用方法を瞬時に思いつくようになるスキル。元ネタは「前頭葉」の語句を変えたもの。多分異常。
完成形変体刀技(ジエンドオブソードアーツ) 一度見た剣技を完成させた状態で使用可能。剣技限定の完成(ジエンド)みたいなもの。元ネタは「刀語」の完成形変体刀を少しもじったもの。 多分異常。
疲れ知らず(イグノランスヒルト) 刀身に触れると体力を回復可能なスキル。元ネタはめだかボックスの安心院さんのスキルのうちの1つから。多分異常。
厨二句厨勢(デヴィイルパワー) 南雲に(冗談で)渡したスキル。厨二な言葉しか喋ることができなくなる。元ネタは「中肉中背」という言葉と、「devil」+「ill」から作った。悪魔の力だし、悪魔じみた所業に見舞われる力。絶対過負荷。

〈真似したキャラクター〉今回は一人。

・不知火半纏 「スキルを作るスキル」の持ち主。スキルを与える描写がないので「相手の体に触れなければ与えられない」という力を追加。そのせいで南雲に傷を追わせた。


イチャイチャが書きたかった。さて、次回はいつ書き終わるのか…下手したら半年とか?(それ以上かかるかも。)


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13話 刀と砂漠

Q、久しぶりに更新になった理由を答えよ。
A、ポケモンSVやってた。

ポケモンSV(自分はV)、ストーリーがとても良かったです。ヌシルートとラストのルートが特に良かった。

「オレモヌシーー!!」


「読原、勇者相手にしたときのお礼のマカロンやんねーから。」

「すまんすまん、雫に与えたのとは別系統のスキルも与えられるか実験したかったんだよ。すまんな。後でいいスキルあげるから。」

「……正直に言うと」

「見た目も中身も完全に厨二病にしたかった。反省も後悔もしていない。」

「マカロンの件は無しだ。」

「申し訳ありませんでした南雲様!」

勇者(笑)の相手をしてあげたのにマカロンを手に入れられなかった。

「あたりまえだろ。」

あと、人を実験台にしている時点であげる気とかねぇから。ハジメにそう言われてしまった。おのれ南雲。後でもう一度厨二句厨勢(デヴィイルパワー)与えてやるかね。

 

閑話休題。そして翌日。

「すまないが後1時間程時間をくれないか?」

雫用の武器を造っていたのだが、能力の付与が完全に済んでいないのでそちらを済ませておきたいのだが……こちらは南雲ーズの旅に同行している身なので、彼に許可だけ貰わなくては。

「別に構わないが……何をする気なんだ?」

「雫の武器に能力付与を。」

「……戦力が増えるのはプラスだ、それに自衛手段はあったほうがいいしな。」

南雲から許しをもらえたので、早速付与をし始める。何をつけようか……どうせなら概念魔法も組み込んでみようかな。

 

 

「その結果できたのがこの刀、その名も名刀電光ま……ではなく、名前のない黒刀です。勝手に名前つけちゃって。」

というわけで、雫に刀を渡した。

「ありがとう……ねえ、なんかこれ、ものすごく危険そうな雰囲気漂っていない?」

「ああ、その刀の性質だから気にしないで。」

性質?と、雫が首を傾げる。

「まず人型・竜・無生物・神・植物・吸血鬼・獣などへの特効。それから切った対象から魔力を奪い取る魔力吸収能力、勝手に飛び道具を落としたり攻撃から身を守ったりしてくれる自動迎撃能力、刀が増殖して雫の指示で相手に襲いかかる増殖・疑似軍隊化能力、オーラを出して一定以下の力の魔物を追い払う能力、あとはまあ刀身がデカくなったり疑似ブラックホール的なものを出して相手が攻撃を躱せないようにしたり斬撃を飛ばせたり勝手に刀身が修繕されたり斬った相手に100種ぐらいのデバフをかけたり……」

「ちょっと待ちなさい!」

雫に止められた。もしかして能力が弱かったのだろうか。あと10個ぐらい増やそうか?

「あのねぇ!いくらなんでも能力多すぎよ!使いこなせないって!そしてサラッと特攻対象に吸血鬼とか人型とか竜とか入れてるのって、ハジメ君達も倒そうとしてるじゃない!何考えてるのよ!!」

「いやぁ、あいつらが暴走したら止めれるようにしないといけないし、だとしたら雫にも手伝ってもらわないといけないからさ?あいつら耐久力あるしかすり傷で3日3晩苦しむぐらいだから大丈夫だ痛ッポカポカ殴るんじゃないちょっとやめなさい落ち着けって」

ポカポカポカっという擬音が聞こえてきそうな感じの攻撃。地味に痛いんで止めてもらえません?

結局特効は威力低めにして再調整した。その代わりに半径5キロメートル内の魔法をオートで分解(敵味方問わず!)する能力を仕込んどいた。ユエが「発動した魔法が掻き消された、そちらの方向から反応があった」と連絡が入ってしまい、雫にまた怒られた。

 

 

 

「で、次はどこの大迷宮に行くんだ?」

出発準備を終え、南雲に聞いてみる。

「あー、言ってなかったっけか。グリューエン大火山だ。」

「うーわ、暑そう。南雲、エアコン作ってくれよ。錬成師だろ?そんぐらいできるだろー?」

俺の言葉を聞いた南雲のこめかみに、青筋が浮かぶ。怒り抑えきれてないの草。

「……お前、本当にキャラ変わったよな。」

「お、落ち着いてハジメ君!」

「……ハジメ、冷静になって。」

「深呼吸してください、ね!」

白崎さん、ユエさん、シアさんに宥められて、ようやく南雲が落ち着いた。

「全く、近頃の若者は……儂が若い頃はもっと落ち着きを持って「ちぇりお!!」グハッ!?」

追加で煽ったら、雫に頭を叩かれた。迷惑をかけるな、だってさ。解せぬ。

 

 

 

「それにしても砂砂砂……砂しかないなここ。」

「まあ、砂漠だからね。というかこの車、一体何なの?」

今現在、俺達は砂漠を移動していた。あたり一面砂、砂、砂。赤銅色の砂が大気の色すら赤銅色に染め上げ、視界は最悪だ。その上照りつけるような太陽と大気からの熱気が強烈で、さっき気温を調べてみたら50℃だった。笑わせてもらいます。

「笑わせてもらいます。アッハハハハハハハ!!」

「大我、大丈夫?あとこの車が何なのか教えてもらえてないんだけど……」

まあ特に問題があるわけではない。

「ねぇ大我、この車結局何なの?」

「あれ?説明してなかったっけ。」

風景に絶望していたため、雫からの質問に気づけなかった。

「よくぞ聞いてくれた!この車は特殊装甲車・リボルギャリー!性能は南雲のよりずっと上!高馬力と高い耐久性!しかもデザインも素敵!さらに3台のバイクも収納しているというおまけ付き!ありがとう仮面ライダー!!」

南雲のよりずっと上、ここ大事。仮面ライダーの巨大マシーン舐めんな!

「……テンション上がっている大我、意外と可愛いわね。」

「き、急にどうした?」

急に雫から可愛いと言われた。というか可愛いって言われたのなにげに初めてだな。

「いやいや、雫のほうが可愛いし、美しいし、しっかりとしているし、とっても素敵だよ。」

「ちょっと、恥ずかしいからやめてよ。」

そう言いつつも、雫は満更でもなさそうだった。このあとも暫く互いに褒め合い(世間では『いちゃつく』と言われる)、たまにリボルギャリーに襲いかかろうとするサンドワームのような魔物を雫に気づかれぬよう消し炭にしつつ砂漠を進んでいった。南雲たち?俺らの少し前の方を南雲自作の車で進んでいる。お陰で後ろ側の魔物退治だけで済むんです。ありがと南雲、愛してはいないが助かってる。しばらく時間が経ち、異変が訪れた。南雲達の乗り物が急に停止したのだ。

『南雲、大丈夫か?』

『ああ、大丈夫だ。人が倒れていたから助けに行くって、白崎が。』

どうやら乗り物や搭乗者(ハーレムメンバー)のトラブルではなかったようだ。というか、人が倒れているのか。なにか大迷宮の情報を持っているかもしれないし、会いに行きますか。そう考え俺はリボルギャリーから降りて南雲たちの元へ向かった。雫?寝ていたのでそっとしておきました。

 

 

 

 

 

「南雲ハジメ……彼女は俺のものだ……お前なんかにやるかよ……」

好きだった人を奪われたある男は森の中、南雲ハジメへの恨みを呟いていた。

「香織、雫。なんであいつらなんかを選んだんだよ……」

ご都合解釈を繰り返してきた勇者は、今にも道を踏み外しそうになっていた。

「……南雲、くん。」

一人の教師は、1人牢の中である生徒に思いを馳せていた。

「イレギュラー2人の駆除、主がお望みなのであれば。」

神に作られし人形は、創造主より新たな命令をを賜っていた。

「『錬成師』と『物真似師』、か。まあいい。グリューエン大火山に向かっていると言うなら、そこで始末しよう。」

ある魔人族の男は、相棒の竜を撫でながらそう呟いた。

 

『錬成師』と『物真似師』、彼らの知らぬところで、様々な思惑が動いていた。




   亀亀亀
  亀   亀
     亀
    亀
 亀亀亀亀亀亀亀
 亀  亀  亀
 亀亀亀亀亀亀亀
 亀  亀  亀
 亀亀亀亀亀亀亀
    亀
亀亀亀亀亀亀亀亀亀
亀   亀   亀
亀亀亀亀亀亀亀亀亀
亀   亀   亀
亀亀亀亀亀亀亀亀亀
    亀
    亀     亀
    亀亀亀亀亀亀亀





(深夜テンション。許して。ちなみに「亀更新」って書いてあります。)

今回の刀について、さらに詳しく追記(読み飛ばし可)
・刀は究極の金属(ヒヒイロカネ)製(転スラ世界最高クラスの金属)
・鍛冶はクロベエ(転スラ)の鍛治の技術スキル「神職人」+四季崎記紀(刀語)の技術と全完全変体刀の性質付与+千子村正(Fate)の技術etcetc……
・雫か大我以外がもつと持った人間の肉体と精神と魂にダメージを与えると同時にどちらか(優先度は雫が高い)の元へテレポートor高速移動(一度南雲が刀を解析しようと触った結果、半日生死を彷徨ったとのこと。)
・「危険そうなオーラ」はオフにしてある。というか半分以上の能力がオフにしてある。
・掠っただけで天之河の聖剣の刃が柄と離れるぐらいには切れ味が鋭い。


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14話 行き倒れと救助

「まず、助けてくれた事に礼を言う。本当にありがとう。あのまま死んでいたらと思うと……アンカジまで終わってしまうところだった。私の名は、ビィズ・フォウワード・ゼンゲン。アンカジ公国の領主ランズィ・フォウワード・ゼンゲン公の息子だ。」

ハジメ達が助けた(と言っても治癒したのは白崎さんなのだが)人物は、大物だった。アンカジ公国……どういう国だっけ。後でナグえもんに聞いておこう。

「南雲ハジメ。これでも金ランクの冒険者だ。」

「……私はユエ。」

「シア・ハウリアです!」

「妾は、ティオ・クラルスじゃ。」

「ミュウはミュウって言うの!よろしくなの!」

「白崎香織です。異世界から召喚されました。」

「読原大我。同じく異世界から召喚されました。」

ビィズさんの治療後に互いに自己紹介をした、のだが。

「これは神の采配か!我等のために女神を遣わして下さったのか!」

とか言い出して天に祈り始めた。うん、怖かった。というか女神って誰のことだ?白崎さんかね。色々考えているとナグえもんがビィズさんに何があったのか説明を求め、ビィズさんが話し始めた。ビィズさん曰く、こういうことらしい。

 

 

 

四日前、アンカジにおいて原因不明の高熱を発し倒れる人が続出したらしく、それは突然のことで、初日だけで人口27万人のうち3000人近くが意識不明になり、症状を訴える人が2万人もいたそうだ。当然直ぐに医療院は飽和状態となり、公共施設を全開放して医療関係者も総出で治療と原因究明に当たった、が、白崎さんと同じく進行を遅らせることは出来ても完治は出来なかった、とのこと。

そうこうしているうちにも、次々と患者は増えていく。にもかかわらず、医療関係者の中にも倒れるものが現れ始めた。進行を遅らせるための治癒術が使用可能な人材も圧倒的に数が足りず、なんの手立ても打てずに混乱する中で、遂に、処置を受けられなかった人々の中から死者が出始めたのだ。発症してからわずか二日で死亡するという事実に、国中に絶望が立ち込んだ。

そんな中、一人の薬師が、ひょんなことから飲み水に『液体鑑定』をしたところ、その水に魔力の暴走を促す毒素が含まれていることが分かったのだ。直ちに調査チームが組まれてアンカジのオアシスを調べたところ、やはりオアシスそのものが汚染されていた。しかし何が原因なのかは知識人達をもってしても全く分からなかった。だが代わりに、患者達を救える方法が見つかった。それは、『静因石』と呼ばれる鉱石を利用した方法だ。静因石は、魔力の活性を鎮める効果を持っている特殊な鉱石で、砂漠のずっと北方にある岩石地帯か『グリューエン大火山』でのみ採取できる貴重な鉱石だ。魔法の研究に従事する者が、魔力調整や暴走の予防に求めることが多い鉱石で、これを粉末状にしたものを服用すれば体内の魔力を鎮めることが出来るだろうというわけだ。

しかし、北方の岩石地帯は遠すぎて往復に少なくとも1ヶ月以上はかかってしまう。また、アンカジの冒険者、特にグリューエン大火山の迷宮に入って静因石を採取し戻ってこられる程の者は既に病に倒れてしまっているし、生半可な冒険者では、グリューエン大火山を包み込む砂嵐すら突破できないのだ。それに、仮にそれだけの実力者がいても、オアシスの水が汚染されている以上、安全な水のストックが圧倒的に足りないので、王国への救援要請は必要だった。

だがその救援要請にしても、総人口27万人を抱えるアンカジ公国を一時的にでも潤すだけの水の運搬やグリューエン大火山という大迷宮に行って、戻ってこられる実力者の手配など、容易く出来る内容ではない。それも、なるべく早く、だ。公国から要請があると言われれば無視することは出来なくとも、内容が内容だけに一度アンカジの現状を調査しようとするのが普通だが、それでは遅すぎるのだ。そのために強権を行使可能なゼンゲンさんか代理人の資格を持つビイズさんが直接申請をする必要があったのだが……。

 

「父上や母上、妹も感染していて、アンカジにストックしてあった静因石を服用することで何とか持ち直したが、衰弱も激しく、とても王国や近隣の町まで赴くことなど出来そうもなかった。だから、私が護衛達とアンカジを出発したのだ。その時、症状は出ていなかったが……恐らく感染していたのだろう。多分だが、発症までには個人差があるのだろう。家族が倒れ、国が混乱し、救援は一刻を争うという状況に……動揺していたよとは。万全を期して静因石を服用しておくべきだった。今、こうしている間にも、アンカジの民は命を落としているというのに……情けない!」

最後は悲痛な叫びに変わっていた彼の話を聞きながら、俺は近づいて捕食しようと地中を潜るサンドワームをこっそり迎撃していた。あいつら、説明中なのにもかかわらず容赦なくこちらを食おうとしてるんだもの。空気読めないミミズってホントキライ。空気読めるミミズがいるかは知らないが。

「……君達に、いや、貴殿達にアンカジ公国領主代理として正式に依頼したい。どうか、私に力を貸して欲しい!」

そう言って、ビィズさんは深く頭を下げる。領主代理が、そう簡単に頭を下げるべきでないことはビィズさん自身が一番分かっているのだろう。が、降って湧いたような幸運を逃してなるものかと必死なのだろう。

全員の(俺も含めて)視線がハジメンを向く。ユエとティオ以外は、皆、その眼差しの中に明らかに助けてあげて欲しいという意思が含まれていた。特に、香織は治癒師としてこの事態を見逃したくないのだろう。懇願するような眼差しが向けられている。ミュウは、もっと直接的に、

「パパー。たすけてあげないの?」

そんなことを物凄く純真な眼差しで言ってくる。ハジメなら、何だって出来ると無条件に信じているようだ。そんなミュウとどこか期待するような香織の眼差しに、ハジメは「しょうがねぇな」と苦笑いしつつ、肩を竦めた。

「分かっ「分かりました。その依頼、受けさせてもらいます。」読原テメェ言葉を被せるな!」

ハジメンが怒鳴る。おお怖い(棒読み)。いや、ハジメンが余りにも格好いいからついやっちゃったんです。悪気は無いの。怪感しか無いの。

「ゴメンね、ハジメン。つい格好良くて仕方ない(お前で遊びたい)から、被せちゃったの♪」

「何が『被せちゃったの♪』だ!!それとお前本心と建前真逆じゃねーか!!少しは隠せ!!」

というわけで、鬼ごっこ(相手は銃を撃ってくるのでリーチ的に不利)が始まった。

「えーっと、アレは……。」

「直に終わるかと。ハジメ君と読原さんがすみません。」

そんな会話が、あったとかなかったとか。ちなみに鬼ごっこは、起きてきた雫とユエさんを始めとする女性陣により終了させられました。

 

 

遅れてやってきた雫が挨拶をしたあと。

「ハジメ殿が金クラスなら、このまま大火山から静因石を採取してきてもらいたいのだが、水の確保のために王都へ行く必要もある。この移動型のアーティファクトは、ハジメ殿以外にも扱えるのだろうか?」

「まぁ、香織とミュウ以外は扱えるが……わざわざ王都まで行く必要はない。水の確保はどうにか出来るだろうから、一先ずアンカジに向かいたいんだが?」

「どうにか出来る? それはどういうことだ?」

数十万人分の水を確保できるという言葉に、訝しむビィズ。当然の疑問だ。しかし、水は何も運搬しなくとも手に入る方法がある。それは、水系魔法で大気中の水分を集めて作り出すという方法だ。まあ俺の場合は魔力で水を作り出したり、水の精霊を呼び出したりと他にも色々

な方法でできますが。

もちろん、普通の術師ではおよそ不可能だろうが、ここには魔法に関して稀代の天才がいる。そう、ユエさんだ。しかも、彼女ならば、魔力をすぐさま回復する手段も多数持ち合わせている。主に南雲の血とかハジメの血とかナグえもんの血とかハジメンの血とか。ビィズさんなりゼンゲンさんなりがアンカジに残っている静因石をしっかり服用し体調を万全に整えて、改めて王国に救援要請をしに行くくらいの時間は稼げるはずだ。南雲がその辺りのことを掻い摘んで説明すると、最初は信じられないといった風のビィズだったが、どちらにしろ今の自分の状態ではまともに王国までたどり着けるか微妙だったので、神の使徒たる白崎さんや俺と雫の説得も相まって、アンカジに引き返すことを了承した。ちなみにビイズさんは、こちらの乗り物に乗ってもらうことになった。そのついでに、乗り物もリボルギャリーから別の乗り物に変えてみた。全てはナグえもんに『あっれ~?こんぐらいのこともできないの~?錬成師なのにその程度しかできないんだ~。へ~。意外と大したことないじゃ~ん』とマウントを取る(ハジメンの反応を見たいというしょうもないくだらない理由での煽り行為である)ために!人の物でマウントを取るなって?

……元ネタが他人でも俺が作った奴を自慢してるからヨシ!!(現場猫風)

 

 

 

 




オリ主はいい感じの南雲の呼び方を模索中。そして『南雲の反応見たいから』って、好きな子にちょっかいかける小学生か!?とか思いつつ書きました。因みに男主はホモではない。断じて。

オリ主をこういうキャラにしたのはあんただろうが、だって?私がこの小説を書いているのではない、小説が私に書かせているのだ!

と言い訳したい。

さて、新しい乗り物とは何なのだろうか。黄色い、デカい、六輪です。ヒント:宇宙、仮面、変形が関連語かな


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15話 入国と挑発

遅くなりました。今回は少し長め。


というわけでやってきました、アンカジ!! えー、前方に見えます光り輝く巨大な門、砂の侵入を防ぐ目的から門まで魔法によるバリアが貼られています(ガイド風)。どうやらここを通って入国するようだ。通る途中門番を見かけたが、南雲の魔力駆動四輪やこの機体に驚きはしたものの、アンカジの現状が影響しているのか暗い雰囲気で、どこか投げやり気味だった。ここに次期領主がいるんだが、もしそれに気がついたら、どんな反応になるんだろうかねぇ……(ニッコリ)。

アンカジの入場門は高台にあった。ここに訪れた者が、アンカジの美しさを最初に一望出来るようにという心遣いらしい。確かに、美しい都なんだろう、平時では。

だが今は、暗く陰気な雰囲気に覆われていた。通りに出ている者は極めて少なく、ほとんどの店も営業していないようだ。誰もが戸口をしっかり締め切って、まるで嵐が過ぎ去るのをジッと蹲って待っているかのような、そんな雰囲気だ。

「……使徒様やハジメ殿にも、活気に満ちた我が国をお見せしたかった。すまないが、今は時間がない。都の案内は全てが解決した後にでも私自らさせていただこう。先ずは、父上のもとへ。あの宮殿だ」

というわけで、俺たちはビィズさんの先導で宮殿に向かうのだった。

 

 

 

「父上!」

「ビィズ! お前、どうし……いや、待て!?どうしたんだ!?」

ビィズの顔パスで宮殿内に入ったら、そのまま領主ランズィの執務室へと通された。衰弱が激しいと聞いていたのだが、彼はどうやら治癒魔法と回復薬を多用して根性で執務に乗り出していたらしい。

そんなランズィさんは、一日前に救援要請を出しに王都へ向かったはずの息子が帰ってきたことに驚きをあらわにしつつ、その息子の有様を見て、ここに来るまでの間に宮殿内で働く者達が見せたのと全く同じ様に目を剥いた。

無理もない。現在ビィズさんは、南雲によって宙に浮かされているのだから。

 

正確には、宙に浮く十字架(クロスビット)の上にうつ伏せに倒れる感じで乗っかりつつ運ばれているのである。ビィズも衰弱が激しく、香織の魔法で何とか持ち直し意識ははっきりしているものの、自力で歩行するには少々心許ない有様だった。それを見かねた香織が肩を貸そうとしたところ、ビィズが顔を赤くして「ああ、使徒様自ら私を…」等といって潤んだ瞳で香織を見つめ始めたので、嫉妬したハジメが、クロスビットを突貫させて無理やり乗せると、そのまま運んで来たのである。

もっとも、本人は「第2第3の天之河や檜山を生みたくない」と否定していたが。

クロスビットにしがみつきながらという微妙に情けない姿でありながらも、ビィズさんは事情を説明する。話している間に執事らしき人が持ってきた静因石の粉末を持ってきて、それを飲んだビィズさんの顔色が良くなり、白崎さんに回復魔法を掛けられ、動けるまでに復活した。

 

 

 

「じゃあ、動くか。香織はシアを連れて医療院と患者が収容されている施設へ。魔晶石も持っていけ。読原、治療を手伝ってもらえるか?俺達は、水の確保だ。領主、最低でも二百メートル四方の開けた場所はあるか?」

「うむ、農業地帯に行けばいくらでもあるが……。」

「なら、医療班以外はそっちだな、なるべく早く終わらせるぞ。」

というわけで南雲の指示で医療班になりました。まあ医術ならナイチンゲールかアスクレピオスかな……と考えていたが、今回の病気の治療法的に()()のほうが向いているだろう。

 

 

 

医療院にて。

本来なら静かなはずのこの場所に、男の声が響いていた。

奪命掌(スティールライフ)!! 」

男がそう叫びつつ顔色の悪い人の手首を握ると、触れられた人の顔色が良くなっていく。顔色が良くなった人は礼を言って帰っていき、代わりに別の顔色が悪い人がやってくる。

「次!! 奪命掌(スティールライフ)!! 次!! 奪命掌(スティールライフ)!!次!! 奪命掌(スティールライフ)!! 次!! 奪命掌(スティールライフ)!! 次!! 奪命掌(スティールライフ)!! 」

男が次々とやってくる人達の手首を掴んでは別の人の手首を掴んで(一応消毒を間に挟んでいる)を繰り返す。そんな彼の治療にに女性陣は

「……医療院で『奪命掌(スティールライフ)』って、縁起悪いと思うのだけど。」

「雫ちゃん、私もそう思うよ。なんで『命を奪う掌』とかいう技を使うの……」

「あの技、私もマスターしてみたいです!!」

「「えっ!?」」

1名を除き不評だった。なんでさ。

というわけで先程の奇声を上げているのは、俺でした。今回真似をしたのは転スラのユウキ・カグラザカの究極能力(アルティメットスキル)、『強欲之王(マモン)』。今回の病気、治療法が体内で暴走する魔力を奪い取って沈静化させるという方法なので(それでも一時的な治癒になるので、完全な治療には静因石が必須)、「奪う事」に特化したこの能力が適しているかな、とか思って使用してみたのだが……やはり技名が良くなかったか。でも原作の方と違い命奪ってないからいいと思うんだけどなぁ。『奪命掌(スティールライフ)』ならぬ『不奪命掌(アンスティールライフ)』、といったところか。勿論『強欲之王(マモン)』を全開にして医療院の人間という人間から魔力を奪うという時短テクも考えたのだが、初めて使うのとフルで稼働させるとコントロールできない可能性があるので、安全第一を考えての『奪命掌(スティールライフ)』なのだ。

まあそんなこんなで片っ端から魔力を奪い尽くし(奪い尽くしているわけではない、3分の2ぐらいだ)、奪った魔力を魔石にチャージしシアさんに持っていってもらう(ぶっちゃけ魔力なんて真似ればほぼ無限に生み出せるが)。ちなみに雫は俺と白崎さんのサポートだ。数時間ほど魔力を奪い続け、その後は広範囲に最上級回復魔法を重ねがけし、ついでに他の病気にかかっている人も治癒し、さらに医療院を清掃・殺菌・消毒し……あっという間に時間が過ぎていったのだった。

 

 

 

「おーい、北雲!!」

「北雲じゃねえ、俺の名前は南雲ハジメだ。」

「失礼、噛みました。」

「いや違う、わざとだ。」

「噛みまみた。」

「わざとじゃない!?」

「神はいた!」

「邪魔するなら神だって殺す……って、やっぱ噛んでるんじゃねーか!!」

有名作品のテンプレートを終えまして。

「オアシスはどうだ?」

「元凶のバチュラムを倒した。水は汚染されたままだが。そっちは?」

「放置してもあと一週間ちょいは問題ない。その合間に火山から静因石取って来れば良いさ。」

ついでに大迷宮も攻略できるだろうしな。というかバチュラムって何?

「分かった、だがミュウをどうしたものか……」

しかし南雲には懸念点があるようだ。ミュウちゃんか。戦力にカウントできそうにはないし、ここに置いておくしかなさそうだが……。

「決まったのか?」

「ああ、香織に見といてもらうとするよ。そっちこそ、八重樫はついてくるのか?」

「いや、今回はパスだ。なぁに、本人が望むのであればまた取りに来るさ。」

雫は今回、お留守番である。ぶっちゃけ今の能力やスキルなんかを使いこなせれば、攻略も楽だとは思う。だが、今回は渡したスキルや刀がまだ馴染んでないだろうし、待機してもらうつもりだ。というか本人が「力がまだ馴染んでいない今現在、焦って迷宮攻略に参加しても良くて達成不可能、最悪死ぬ可能性もある。今回は香織の治療の手伝いをするつもりよ」と待機に賛成だった。そんなわけで、俺と南雲、そしてユエさんシアさんティオさんの計5人で火山へと向かうのだった。

 

そしてその道中。

 

俺は道中サンドワームを蹴散らしつつ、今後のことや大火山についての情報について、南雲から話を聞いていた。

『というわけで、耐熱装備が必須だから初心者の冒険者は火山に行かない。そのため静因石は普段でもそこまで安くはないんだとさ。』

『何だお前、生死を彷徨っている人相手に金策でもするのか?』

『…んなことするかよ。第一俺は最上位の冒険者なんだ、もっと楽に稼ぐ方法なら他にもある。何なら知識チートとかだって『錬成師』だからできちゃうんだぜ?』

『おーすげー。』

『棒読みするなよ…』

とまあ。軽快なトークをしばらく続けていた。

 

『という経緯でコイツを造ったわけだ。「そういえばハジメさん、この四輪っていくつの機能が搭載されているんですか?」「……私も気になる。」』

『シアさんとユエさんかな、今の声は?確かに俺も気になるな。南雲、幾つの機能を仕込んだ?』

俺の質問に、南雲が通信機越しに答える。

『最終的に変形して人型汎用兵器ー巨大ゴーレムになる、と言いたいとこだが、流石にそんな機能はついてねえよ。憧れはするがな。「でもハジメさんならいつかホントに造りそうですね!」「そうじゃな。御主人様ならできそうじゃのう。」』

南雲といえども、まだ変形システムは造れていないようだ。では彼が完成させる前にお見せしましょう。彼の憧れる変形を!!

『南雲、じゃあ俺が見せてやろうか?』

『「「「へ?」」」』

気の抜けたような声が通信機越しから聞こえる。

POWER DIZER

無機質な音声とともに、俺の乗る巨大な乗り物が変形していく。数秒ほどで変形は終わり、黄色の巨大な四輪は無骨なロボットへとその姿を変えた。

『な、何だよそれ……俺に対する当てつけか?』

『うん』

『すぐ認めたな!!「す、凄いです!」「……ハ、ハジメだってこれぐらいできる。」「しかし人型になる利点は無いような気が……。」』

怒りを顕にする南雲、驚くシアさん、対抗するユエさん、一部の人を敵に回しかね無いティオさん。反応はバラバラだ。

『…で、性能はどうなんだ?』

『見てろ、ガワだけじゃねーんだよ。』

近くに来たサンドワームに拳を一発。それだけでサンドワームの頭が弾け飛び、辺りに肉片が飛び散る。勿論サンドワームの頭があったところにはもう何も無く、その下に伸びる胴体がまだ動いていた。

『頑張ってこのレベルのロボットを造ってね☆』

『テメェ煽りやがって……「ハジメ、いつか見返そう。」ユ、ユエさん?』

余談だが、南雲はこの後変型機能を造ろうと努力するのだが、結局パワーダイザー並みのものは造れなかった。当然の結果なのだが。まあ他人の物を盗作した奴が何を偉そうに言ってるんだ、という話だが。



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16話 火山と魔族

やっとリクエストに応えられる……
というわけでまず一人。


 

グリューエン大火山内部には様々な魔物が存在する。それもマグマ内を自由に泳ぎ回る魚のような魔物や全身に火炎を纏うサイのような魔物、全身が高熱により赤白く光っているコウモリのような魔物など、強く厄介な魔物が多数生息し、一攫千金を夢見る冒険者達に敵意むき出しで襲いかかるのが普通だ。しかし今この場に、魔物は一体もおらず、辺りは静寂に包まれている。さらに、ここは大火山内であるというのに、何故か辺り一面が凍りついていた。

先程「魔物はいない」と言ったが、訂正だ。ここに一匹、魔物に近しい存在はいた。しかしそれを魔物と呼称するものは誰一人いないだろう。

()()は、魔物と言うにはあまりにも大きく、そして常人では恐怖で意識を失いかねないレベルの凶悪な威圧感を発していた。漆黒の体を持ち、全身が逆鱗で覆われている巨大な龍が、この凍てついたグリューエン火山の内部にて鎮座していた。

黒き太陽闇夜に輝く幽冥の星神をも恐れさせる最強の古龍といった様々な異名を持つ恐ろしき龍。

煌黒龍 アルバトリオン

本来魔物だらけの火山内に魔物がいないのは、その龍が火山内部の多種多様な魔物共を屠り、殺し、消し飛ばし、蹂躙の限りをし尽くしたからであった。

 

なぜそんな存在がここにいるのか。話は少し前に遡る。

 

 

 

「やっと着いた!!」

「入り口を先探すぞ。さっさと終わらせよう。」

「あたり一面、石だらけであまり景色は良くないですね……。」

「あぁ……早く火山に入って暑さで身悶えたい……」

「……ティオ、ドMを抑えて。」

我々は無事に火山の頂上に着きました。ドMを解放しているティオさんは放っといておきまして。取り敢えず内部への入り口を探さないと……と、ナグえもんが見つけてくれました。流石ナグえもん、仕事が早いね!

火山内部への入口になっている、アーチ状の岩石の下の階段を降りると、そこはとんでもない場所だった。

マグマが空中をうねりながら流れていくのだ。しかも、壁のあらゆるところからマグマがいきなり吹き出してくるのだ。突然な上、事前の兆候もない。そして何より地獄のような暑さ。はっきり言って帰りたい。真夏の昼の赤道付近の気温よりはるかに高いのではないだろうか、まあ行ったことないんだが。気分は熱したフライパンで焼かれる卵、このままじゃ目玉焼きor卵焼きになっちまう!!

早く静因石を探して帰ろう。と、そう思っていたのだが、話は簡単に進まない。残されている静因石の殆どが小指の先未満のサイズ。やはりというか仕方ないというか、上層部の静因石は殆ど取り尽くされているようだ。

「ナグえもん、ここらの小さい石を集めて固めて塊にすることってできない?」

「それができれば苦労してないし、それにここの大迷宮も攻略しないといけないから、結局最深部まで行くことになるぞ。」

南雲がマグマから飛び出てきた魚のような魔物を撃ち殺しつつ答える。まあそんな簡単に行くわけないよな……

しょうがない、早く帰るために蹂躙するか!(脳筋)

「南雲ーズよ、俺の近くから離れてくれ。」

取り敢えず南雲達には離れてもらう。真似る対象のサイズが大きいので、巻き込んでしまわないように。まあ彼らなら回避行動ぐらいとれると思うが、念の為。

「おう。」

「……了解。」

「了解ですぅ!!」

「何か考えがあるのじゃな?」

南雲達が離れたのを確認し真似をスタート。

『うっし、殺りますかぁ!!』

「……その見た目で喋れるのな。」

今回真似したのはモンスターハンターに登場する竜、アルバトリオン。アルバトリオンはモンハンに存在する属性を全属性扱えて、また討伐難易度もとても高いモンスターだ。何人のハンターが初見攻略に失敗したことか……。今回はこの巨体から放たれる即死級の攻撃で魔物達を消し飛ばそうという算段だ。というわけで、

『消し飛べぇぇぇ!!』

氷弾と雷撃をひたすらに発射する。炎は火山の魔物には効かないのでこの2つがメインになる。

『邪魔だ邪魔だぁ!!有象無象共、消え失せろぉ!!』

全身が凍てつきオブジェになるもの、雷撃により感電死するもの、そして俺の振り回す尾のスイングで吹っ飛ばされるもの。魔物達は次々に死んでいき、そこら中に魔物の死体が転がるという悲惨な絵になってしまった。しかし、それらに目を向けていては時間のロスだ。人の心を忘れたのかって? ヴァカめ、俺は人外(モンスター)だ、んなもんねえよ!!

てな感じで、動物愛護団体が抗議してきそうなことを考えつつ先に進む。道中も雷撃や氷弾の連射で魔物を屠りつつ。そしてしばらく魔物を倒し続け、ついに!!

 

「読原、お前静因石の入手忘れてないか?」

『すんません忘れてましたごめんなさいっ!』

南雲に怒られました。完全に忘れていました。アンカジ?何それ?ってなってました。

「まあそんなことだろうと思って、道中で回収しといたぞ。」

南雲よ、お前は神か。

南雲が静因石を確保してくれたので心置きなく火山の攻略ができる。というわけで……

『ヒャッハー!!環境破壊は気持ちいいZOY!!』

「お前キャラおかしいぞ!?」

 

道中の魔物達を片っ端から倒しまして。何度、何十度も階段を壊しながら進んで、ようやく最下層に到着しましたー!!地面はほとんどマグマで満たされており、所々に岩石が飛び出していてそれらが数少ない足場になっていた。まあ俺は飛べるから要らないが。だが、1番注目すべきなのは、マグマの海の中央にある、岩石でできた小さな島だ。ただの小さい島なら、ほかの足場より大きいというだけで注目する必要がない。島の上をマグマのドームが覆っているのである。まるで小型の太陽のような球体のマグマだ。きっとあそこに神代魔法があるのだろう。

『よーし、あとは神代魔法をゲットするだけだ!!』

「あぁ。……つーか俺、全然活躍していないような気がするんだが。」

「……ハジメ、次は活躍しよう。」

「まあ神代魔法を使えるようになるなら問題ないと思いますぅ!」

「これで終わりか?もう少し戦闘なり試練なりがあってもおかしくはないのう。」

『やっぱまだありますか……』

次の瞬間、目の前のマグマから大口を開けた巨大な蛇が現れた。反射的に尾で薙ぎ払うも、頭だったところが溶岩となり飛び散っただけだった。今までの大火山内の魔物達は、基本的にマグマを身に纏ってはいたが、それはあくまで纏っているのであって、肉体がきちんとあった。断じて、マグマだけで構成されていたわけではない。しかしこいつは、体内の核をベースに全身が溶岩によって構成されている。最後の守護者だから特別、ということか?

南雲が一発弾丸を放つと、溶岩の蛇はただの溶岩になりそのままマグマの中に沈んでいった。どうやら先程の弾丸が蛇の核を砕いたようだ。

しかし溶岩蛇(仮称)は一匹ではなく、次から次にマグマから現れる。

「久しぶりの一撃じゃ!存分に味わうが良い!」

ティオさんが両手を前に突き出し、魔力を収縮。それが次の瞬間一気に解き放たれ、溶岩蛇を纏めて消し飛ばす。

ティオさんによって消し飛ばされた蛇達はマグマの海へと消えていったものの、すぐに先程より多い蛇がマグマから現れた。

「おいおい、魔石が吹き飛んだ瞬間は確認したぞ?倒すことがクリア条件じゃないのか?」

南雲が、訝しげに表情を歪める。どうやらティオさんがブレスによって溶岩蛇をその核ごと消し去る瞬間を確認したようだ。目良いな。(小並感)

「ハジメさん、見て下さい!岩壁が光ってますぅ!」

「何!?」

岩壁を見てみると、その一部が拳大の光を放っていた。オレンジ色の光は、岩壁に埋め込まれている何らかの鉱石から放たれているようだ。

「今現在倒したのが10匹、壁に埋め込まれた鉱石のうち10個が発光。発光してない鉱石は……190個ってとこか。こりゃ蛇を200匹倒して全部光らせるのが条件っぽいな。」

「……この暑さで、あれを200体相手にするってのは迷宮のコンセプトにも合ってる。」

『じゃあ蛇を片っ端から潰すってことでOK?』

「ウッサウサにしてやんよ、ですぅ!」

「では、蹂躙じゃ!」

そして、大虐殺(最後の試練)が始まった。南雲は新たに開発した兵器で、ユエさんとティオさんは大規模な魔法で、シアさんは彼女の武器であるハンマーを振り回して、それぞれ蛇を撃破していく。向こうでハーレムメンバー達が南雲を取り合う声が聞こえるようだがきっと幻聴だろうそうに違いない。え、俺は何してるのかって?氷弾と雷撃の連射で蛇達を消し飛ばしてます。

数分ほどで鉱石が全て光り、その瞬間小さな島を覆うマグマが消えた。

『これで攻略完了だな!神代魔法取りに行くぞ!』

小島へ行こうとした次の瞬間、

 

眼の前が真っ白に染まり、続いて大気が悲鳴を上げるかのような爆音が聞こえた。

「読原!!」

南雲の叫び声が聞こえる。そして、ヤワな攻撃では傷の付かない、頑丈なはずの禁忌の龍の鱗が焼ける感覚。

 

どうやら俺は、強烈な一撃をモロに食らってしまったようだった。



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17話 魔人族と帰還

今回は短め。


敵の攻撃が命中し、アルバトリオン()の体が焼き尽くされる。そしてそのまま地に伏すことになる……

『なんてな! そんな攻撃が古龍に効いてたまるか!!』

「無事なのかよ!?」

わけがない。南雲からのツッコミが入る。俺は無傷さ、と言いたいところだが割と痛い。仮にも古龍(偽)の体だというのにダメージを与えるとは、やるじゃねーかあのドラゴン。俺がアルバトリオンを完全に真似をできていないのもあるが。

「まさかこの一撃を耐えきるとは。ここで待ち伏せていて正解だった。」

上空から感嘆半分呆れ半分の声が聞こえた。そちらに目を向けてみると、そこにはおびただしい数の竜達と純白の巨大な竜が飛んでおり、白竜の背には赤い髪と浅黒い肌、そして尖った耳を持つ男がいた。

『魔人族か、テメエ?』

「あの魔竜、まさかウラノスの吐息(ブレス)が直撃しても倒せぬとは……そしてあの男、報告にあった未知の武器の使用。女どもも厄介な力を隠し持つ。貴様ら、何者だ? いくつの神代魔法を持っている?」

こちらの質問に対し(おそらく)魔人族は質問で返してきた。質問に質問で返すのは良くないなぁ。

『質問に質問で返すんじゃねえよ。魔人族の軍人さんは戦い方以外何も知らないんですかぁ? まるで魔物みたいだな!』

「……貴様の戯言など聞く必要がないだけだ。」

挑発に対し冷静に答える魔人族。どうせならもっと煽りたい、そう俺の本能的な何かが叫ぶ。

『配下がこんなならきっと上も酷いんだろうな! なあ、やっぱり魔人族の王って、猿型の魔物だったりするのかい?』

「……楽に死ねると思うな。己の発言を後悔して死ぬがいい!」

自分の仕える王を侮辱され、やっと魔人族がキレてくれた。人が感情に飲まれる姿っていいよね、南雲然り魔人族の男然り。でも魔人族の方は割と冷静だからつまらない。俺に煽られた魔人族が俺を睨みつけてきたのでスマイルを返す(0円)。次の瞬間、魔人族の男が巨竜に乗ったまま突っ込んできて戦闘が始まった。

「俺のこと忘れてんじゃねーよ。遠藤か俺は。」

南雲はスネていた。

 

 

 

 

『燃えろ!!』

巨大な火球を竜にぶつけてみるが、ブレスで掻き消された。

「貴様の攻撃など効かん!」

魔神族の男が無感情にそう告げる。しかし彼は次の瞬間、何故か竜から飛び降りた。直後、彼が先程まで居た場所に禍々しいオーラを纏った弾丸が通り過ぎた。

「まあそう簡単にいかねえよな……」

南雲が狙撃銃(名前がついていたはずだ、確かクラーケンだっけ?)片手にそうボヤく。どうやら魔人族の注意が俺に向いてるのを見て狙撃を試みたらしい。

「……貴様も中々にやるようだな。余り使いたくは無かったが、仕方ない。」

彼がそう言うと、辺りに無数の魔法陣が現れる。そしてそこから、様々な魔物達が出現した。亀・鳥・蛇・狼・蝶・蜘蛛etc……様々な魔物たちがこちらへ突き進んでいく。

「見た感じ迷宮内の魔物と同レベルだが数が多いな。重機関銃(メツェライ)でゴリ押せれば良かったが……弾丸が足りないな。作っておけばよかったな……」

『南雲、雑魚はこっちで片付けるから魔人の方頼む!』

「おう、任せとけ。」

南雲に魔人の相手を任せつつ、俺は周囲の魔物達の場所を把握しながら体に宿るエネルギーの制御をする。数だけ多い雑魚敵の対処は、大技ブッパで一気に殲滅が一番楽だ。

『喰らえ!! エスカトン・ジャッジメントォォ!!』

自身のエネルギーを一気に放出し、辺り一面が急激に冷え込む。ここが火山なのが信じられないぐらいに。そして近くまで来ていた魔物達は、凍りついてその命を落とした。

『初使用にしてはいい感じに運用できていたんじゃないか?』

「……私達まで巻き込まれたんだけど。」

「あと少しで氷漬けの兎になるところでしたよ!」

「できれば忠告の一つや二つ、欲しかったのう……」

成功に喜んでいると、南雲の嫁たちから怒られてしまった。謝りつつ撃ち漏らした敵を氷弾と雷撃で撃墜する。偶に魔人に氷弾を発射して牽制しつつ。そして暫く魔人族にチマチマと攻撃しつつ魔物達を撃墜していると、魔人族は捨て台詞(内容は聞き取れなかった)を残して帰っていった。謎の魔法陣を使って。

 

いや、もう一つ残していったものがあった。

 

火山の噴火。

 

南雲曰く「要石を壊して噴火でお前ら皆殺し」(超意訳)と魔人族が言っていたそうだ。でも残念だね、こちらは空間転移ができるんだよ。解放者の隠れ家だったと思われる小島に急いで向かいつつ、真似を解除する。

「室内には何もないな。ミニマリストってやつか?」

「読原、さっさと神代魔法覚えて帰るぞ。」

南雲に急かされ魔法陣の中へ踏み込んだ。

 

 

 

「空間操作か。いらんな。」

「まあ、お前はな。」

「……さっき魔人族が逃げたのはこの魔法。」

「未来視がないと厳しかったですね。」

「無事に空間魔法も使えるようになって、本当に良かったのう。」

魔法の習得を終え話をしていると、カコンと音を立てて壁の一部が開いた。更に、正面の壁には文字が輝いて浮かび上がった。

『人の未来が自由な意思のもとにあらんことを切に願う』 『ナイズ・グリューエン』

 

「……すごくシンプルな言葉。部屋の中も何もない。」

「ナイズさんは、魔法以外、何も残さなかったみたいですね」

「オスカーの手記に、ナイズは凄く寡黙なやつだと書いてあったな。」

「さて、そろそろ戻りますか。雫に会いに行きたい。」

「そっか、じゃあ頼むぞ。」

リムル=テンペストの真似をすることで空間転移を発動、アンカジへと「空間転移」するのだった。

 




使徒戦で他のリクエストに答えようかと思います。どちらも対人戦向けなんで。


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出発と花見

今回キャラ崩壊ありです。というかキャラ崩壊祭りってぐらい崩壊します。


「お帰り、大我!」

「ただいま、無事に戻ってきたぜ。雫はどうだ?スキルや新しい刀には慣れたか?」

「ええ。次の大迷宮からは私も攻略に参加するわよ!」

アンカジに戻ってきたら、雫が出迎えに来てくれた。遅れて後ろから白崎さんとミュウちゃんもハジメの元へ向かい……白崎さんはユエさんに吹き飛ばされた。恐ろしく速い風魔法、俺でなきゃ見逃しちゃうね。

「治療も無事終わったし、オアシスの水もあと数日あれば元の水質にまで戻ると思うわ。」

「早めに戻して、次の大迷宮に向かおう。行き先は……多分エリセンになるだろうな。ここから近いし、ミュウちゃんの母親がそこにいるってナグえもんが言っていたしな。」

「その南雲くんなんだけど、確認しに行かなくていいの?」

「雫、俺は自殺志願者じゃないんだ。あんな危険地帯行けるわけ無いだろ。」

因みにハジメは今、般若(白崎さん)雷龍(ユエさん)に挟まれて顔面蒼白状態。シアさんとティオさんとミュウちゃんは安全のため3人から距離を取っている。

「ハジメは私の物。バカオリに渡す気は無い。」

「渡す気も何も、私のものなんだから!」

「シア、ティオ、助けてくれ!八重樫、読原、目を逸らすな!」

……ハジメ、君のことは忘れない。

そう言い残し俺達はその場から退散したのだった。

 

 

 

そして。

「テメェら、よくも昨日は見捨ててくれやがったな?」「恋人とイチャつける幸せ(死あわせ)な時間を邪魔するわけにはいかないだろ?」

「漢字違わなかったか?」

「イエソンナコトハナイデス。」

出発の準備中にハジメと一悶着あったが、オアシスの水は無事浄化に成功(ハジメの浄水器とか真似とか色々使って時間を短縮)し、アンカジを出発することに。ビィズさんとランズィさんを始め国中の人が見送ってくれた。

次なる目的地は海上都市エリセン。大迷宮攻略のため、そしてミュウちゃんを母親の元まで送り届けるために俺達は道を急ぐのだった。と言ってもそこまで急いで進む訳ではなく、偶に寄り道とか花見とかをしていたのだが。

だがその花見で一悶着あったようで……というのもその時の記憶が一部無くて、後から南雲に聞いた話なんだが。良ければ聞いていってくれませんかね?つうか聞け(命令)。

事の発端はミュウちゃんの一言だった。

 

 

 

「パパ、パパ!お花見するの!」

「え?えぇ、マジか?別に木の下で飯食って適当に雑談するだけだぞ?」

「それでもいいの!してみたいの!」

旅の道中で桜に似た木(以下桜モドキ)を見かけた南雲が「桃色の花の木、か。……桜を思い出すな。」と何気なしに呟いた。そしてそれを聞いた、白崎さんを除く南雲ハーレム(ユエさんシアさんティオさんミュウちゃん)が反応、桜やお花見についての説明を受けるとミュウちゃんがそんな事を言いだした。ちなみに白崎さんが「私はハジメくんとお花見したことあるけど、ユエはないもんね〜!」とユエさんを徴発、二人……と何故か巻き込まれていた雫の三人は少し離れたところでバトルを開始。俺?女子会に男子が参加するのはさ、良くないじゃん?(背後で鳴り響く爆発音や魔法から発される光を決して見ない様にしつつ)

「……ん。いいと思う、お花の下でピクニック。丁度時間もお昼だし。」

少しして戦闘から戻ってきたユエさん(辛勝)の発言で南雲も花見をする気になったようだ。エリセンに到着してしまえばそこでミュウちゃんとはお別れだから、それまでに思い出を作ってやろうという考えも元からあったのだろう、「オッケー、準備するわ。皆手伝ってくれ。」と言って支度し始めた。シアさんはいつもより手の込んだ料理を作り、ティオがその手伝いにまわる。俺と南雲、それからミュウちゃんは桜モドキの近くで会場設置に勤しむ。ユエさんと白崎さん?ユエさんが先程の発言のあと「何より、ハジメと香織だけが共有する思い出なんて、あってはならない」と言ってしまったために戦闘を再開している。綺麗な雷竜だな……あっ、真っ二つに切り裂かれた。誰樫雫さんが切ったのだろうか……。

約三十分程で桜モドキの木の下にはふかふかの大きなシートとテーブル、そしてその上に所狭しと料理が並ぶ。

戦闘を終えたユエさん(今回は敗北)が指をぴんっと伸ばして言霊を囁くと風が発生し、桜モドキの花が空を舞う。素敵な演出しますねぇ。

「わぁ、きれいなの〜!」

ミュウちゃんの素直な感嘆の声。そんなミュウちゃんの鼻先に一枚の花びらが落ちてきた。あわあわしながら、しかし花びらを落とさぬよう視線だけ泳がしていて、皆がほっこりした一幕もあった。()()()()()()()本当に穏やかな時間だったそうだ。俺はこれ以降の記憶がないので、ここから先は南雲から聞いた話になる。

 

 

 

〈南雲side〉

ホッコリとしていたあの時から約一時間後。俺、南雲ハジメは頭を抱えずにはいられなかった。

「ちょっとハジメさん!私はですねっ、今、とっても真面目にゃ話をしているんれすよ!そもそもハジメさんはれすねえ……」

「ご主人様よ、お主の側は心地よいの。なぁ、もう少しだけ側によっても良いかな?」

「……ハジメぇ、どうして視線を逸らすのっ。こっち見てぇ、ぎゅってしてぇ!」

「ハジメくんの馬鹿ぁ!どうして女の子ばっかりに囲まれてるの!私はこんなに想ってるのにぃ!うわぁああああんっ!!」

顔を真っ赤にしてウサミミをピンと立てたシアが桜モドキに向かって延々と説教をし、普段からは想像できないほどしっとりとしているティオが甘えてくる。そんな彼女達に目を向けると、さっきからひっつき虫となっているユエが涙目で駄々をこね、香織は号泣しながら杖による高速の突きを繰り出す。原因はその辺に転がる何本もの空の酒瓶。

「これは酷いな……というか流石に予想できねーよ……」

本来は消毒用のはずだった度数の高い上物の酒を折角だからと飲んだところ想像以上に美味しくて皆飲みすぎてしまい、皆が悪酔いしてしまった。勿論愛する娘(ミュウ)は木の上に避難させてある。酒も一口も飲ませていない。今は……ドン引きした目でユエ達を見ている。

「そういえば八重樫と読原は……?」

彼等も実は酒を飲んでない。委員長気質で真面目な雫は「アルコールは……まだ未成年だから。」と断り、読原は「雫が飲まないなら俺も辞めておくよ。」と拒否した。自分だけ酒を飲んで楽しむことをしないというのは八重樫のことを大切に思っていることなのかなと思い感動した、のだが。読原がどこからともなく取り出したのは琥珀色の液体で満たされた瓶。「アルコール度数/Zero!だけど酔った気分が楽しめる!異世界産謎飲料!こんな事もあろうかと買っておきました。雫、飲んだことあるんだろ?じゃあ問題ないね!」

とだけ言って飲み始めた。さっきの感動返せ。雫も「す、少しだけ飲もうかしら。」とか言って飲み始めた。真面目どこいった。

その後は特に気にかけていなかったのだが、今はどうなっているのだろうか。ミュウの教育に悪いことをしないでほしいんだが……と思った次の瞬間、ドガンッ!と爆音が響いた。音の鳴った方を見ると……

 

「アッハハハハハハハハ!!汚え花火だ!綺麗だが!爆発は芸術だぁ!」

「しずく、もっとおっきいのみたい!やってやって!」

 

友人が山を爆発させ、その彼女が幼児退行していた。もう辛い。頼むから助けてくれ。メルド団長でも畑山先生でも天之河でもかまわない、助けてくれ……。とそんなことを考えていると読原の姿が変わった。学生のような見た目……誰を真似たかはよくわからないけど物凄く嫌な予感がする。

「喰らえ知らねぇ山ぁ!!マテリアル……」

「やめろォ!!」「バーストォ!!

慌てて走り出すも彼を止めることはできず、その瞬間山の頂上を起点に大爆発が起こり、目の前が閃光で真っ白に染まる。閃光が収まり目を開くと、山があったはずの場所は平地になっていた。

「ハ、ハハ、ハハハ、ハハハハ、ハハハハハ、ハハハハハハ、ハハハハハハハ!!素ッ晴らしい!!アッハハハハハ!!」

「何やってんだテメェ!?」

「ナグモンよ素晴らしいだろこれが芸術だ!」

「芸術じゃなくて環境破壊だ!」

読原を止めるためクロスビットを総動員させ動けぬように封じ込んだが、それでも笑い声が止むことはなかった。

そして読原を止めに動いたということは他のところに手が回らなくなるというわけで……

「ハジメェ、こっち来てぇ!」

吸血鬼の威厳とかイメージとかそういうのを壊しかねないぐらい情けなくその場で駄々を捏ねジタバタするユエ。

「うわぁあああん!ハジメくんの馬鹿ぁ!!」

まるで新選組一番隊の某隊長みたいな三段突きを繰り出す香織。

「ハジメしゃんはそんにゃことしちゃらめなことぐらい分かりましゅよにぇ?まったく……」

妄想の世界でひたすらハジメ(実際は桜モドキ)に説教するシア。

「ご主人と既成事実だけでも作れれば……」

不穏な発言とともに服を脱ぎだすティオ。

「ハハハハハハハハハハハハ‼」

「しずくもっとみたい!!ねーえ、もっとおっきいばくはつやってぇ!!」

狂ったように笑い続ける読原と未だ幼児退行したままの雫。

「パパぁ〜、お姉ちゃん達がぁ〜!」

「ミュウ、覚えとけ。酒は飲んでも飲まれるな。お姉ちゃん達みたいになっちゃだめだぞ!」

「分かったの〜!でも飲ませていたのはパパだと思うの〜〜!」

「そのとおりだ、ごめんなさい!」

このあと彼女達を落ち着かせて片付けるのに物凄く時間をかけた。ミュウの応援がなきゃ心が折れていたかもしれない。こうして花見は酷い終わり方をしたのだった。




魔法科高校の劣等生ファンの人すみません。
原作によると南雲は酒を毒耐性で無効化するので酔わないらしいです。帝国編で記述がありました。

一応言っておきますが、未成年の飲酒は日本では違法です。


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