歌姫と闇の仮面騎士 (青は澄んでいる)
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黒竜

この小説の冒頭の始まりは劇場版ゴーカイジャーvsゴセイジャーに似た感じだと思ってください。










 

 

「うわああああああっ!」

 

とある海岸。

 

そこには6人の歌姫と1人の少女がネフィリムという怪物との戦いを終えた筈だった。

 

しかし突如として現れた敵によって元々限界だった体で戦った彼女達はアッサリと追い詰められていた。

 

そして最後の1人、立花響も現在は纏っている鎧。ガングニールと呼ばれるシンフォギアを纏って戦うが元々多大なダメージが蓄積していた為にまともに動かす事も難しかった。

彼女の周りには他の5人のシンフォギア装者がギアを解除されて倒れていた。

 

「くっ、ここに来て…新たな敵とは…」

 

「畜生、不意打ちなんてしやがって…」

 

シンフォギア装者である風鳴翼と雪音クリスは目の前の存在を睨みつけながら悔しそうに言う。

 

が、目の前の存在、腰にベルト“Vバックル“にサイのレリーフがあるカードデッキを嵌めた“仮面ライダーガイ“というサイと西洋の甲冑が合わさったような戦士はつまらなそうに右手の武器“メタルホーン“を撫でながら呟く。

 

「はぁつまらな。折角ライダー以外と戦えると思ったからわざわざあの化け物倒すまで待ってあげたのに、シンフォギアってのはその程度なの?」

 

「…してですか」

 

「あ?」

 

たった今、ガイにやられて解除こそされてないがボロボロになった響は砂浜の砂を握りつぶすくらいに強く拳を握りながらガイに話しかけた。

 

「どうしてこんな事をするんですか!私たちが貴方に何かしたんですか⁉︎」

 

「ううん、何も?」

 

響の問いかけにガイは何の感情も見せずに簡潔に答えた。

そのあまりにもあっさりとし過ぎている返答に響は思わず絶句せずにはいられなかった。

 

「何そんなにマジな顔になってるわけ?馬鹿らしい。

俺はね、ただゲームをやりたいだけなんだ。だから他の“ライダー“と戦う前の準備としてオタクらを練習台にしたんだけどさ、さっきの化け物に使った力使わないからつまらないよアンタら」

 

「そ、そんな事の為に?というかライダーって…」

 

「どうせ死ぬんだから知っても意味ないでしょう。そんじゃバイバーイ」

 

ガイはメタルホーンを構えて響に近づく。

他の装者は立ち上がって止めようとするがネフィリムと目の前のガイとの戦いで既に立ち上がるだけの力など残ってなかった。

 

「ダメッ!」

 

『⁉︎』

 

止めを刺そうと近づくガイにもうダメだと目を瞑ろうとした響の目の前に1人の少女が乱入してきた。

 

「未来⁉︎」

 

「響逃げて!」

 

目の前の少女、小日向未来はガイを押しのけようとしたのか体当たりを仕掛けるが砂浜なので少しぐらつきはしたが全く効果がない。

しかも未来はシンフォギア装者ではない。だからこんな行為は自殺行為にしかならなかった。

 

「何なのお前。邪魔だよ」

 

「響達は殺させない!」

 

「戦えもしない癖に何強気になってるわけ?ほら邪魔」

 

「キャッ!」

 

「未来っ!」

 

ガイはつまらなそうにそして煩わしそうに未来の服の襟を掴んで投げ飛ばす。

思いの外強い力だった為未来はアッサリと引き剥がされて砂浜の地面に倒れる。

 

「っ!」

 

それでもすぐに立ち上がってはガイの妨害をする。

 

「⁉︎何なのお前、いい加減うざいと殺すよ?」

 

「殺させない…響達は…」

 

「だーかーらー」

 

ガイは今度は片手の拳を握り未来の頬を殴る。

 

「ぐっ…」

 

「未来!」

 

「邪魔なんだよお前。ハァもういいよ、そんなに死にたきゃ」

 

ガイは腰に巻かれているベルト“Vバックル“にセットされたカードデッキから一枚のカードを取り出し肩にあるバイザーに器用に投げて読み込ませる。

 

 

《ADVENT》

 

 

そんな無機質な機械音が鳴ると、海から“全く濡れてない“状態で人型のサイの怪物“メタルゲラス“が現れた。

メタルゲラスは響達を見定めるとまずは未来に近づいていく。

 

「ソイツの餌にでもなれば?よく考えたらこれで俺も強くなれるし一石二鳥でしょ」

 

ガイは最早響達を自分の手で殺すのが面倒になったのかそのままメタルゲラスの好きにさせて自分は砂浜に腰を下ろして事を見守る。

一応響達の異常を察知して彼女達の組織が救援には駆けつけてるがこれだともう間に合わない。

 

「み、未来!逃げて!」

 

響は体に鞭を打ち立ち上がろうとするがメタルゲラスはもう未来の目の前に立ち彼女を捕食しようとしていた。

 

「(ごめんね響。さようなら)」

 

未来は自分の親友への別れを胸の内に仕舞いこれから来る痛みに少しでも耐える為に硬く目を瞑る。

 

 

 

《ADVENT》

 

 

 

そんな死を覚悟した彼女の耳に先程と同じ言葉、しかし音は先程より低い機械音が聞こえてきた。

 

『⁉︎』

 

その音声と共にまたもや海から出てきたものに今度は響達だけでなくガイも驚いた。

何故ならそれは細長い体の黒い龍だったのだから。

 

その黒い龍の出現にメタルゲラスも動きを止めたとき“ドラグブラッカー“はメタルゲラスに向けて体当たりを繰り出しその巨大にぶつかられメタルゲラスはたまらず後退させられる。

そしてドラグブラッカーは体を旋回させると今度は尻尾に付いている剣のようなものでメタルゲラスを切り付けてガイのところまで後退させた。

 

威嚇の咆哮を浴びせられながらガイは目の前の龍の登場で動揺を隠さずにいた。

 

「ど、ドラグブラッカー⁉︎」

 

「ドラグ…ブラッカー?」

 

ガイの口から出た名前に響だけではなく装者達もその龍の名前だと理解する。

 

「何故奴がここに………まさか!」

 

 

 

「そのまさかだよ、仮面ライダーガイ」

 

「⁉︎」

 

突然背後から聞こえてきた声にガイは慌てて振り向く。

 

 

そこにはガイと同じベルトに黒い龍を思わせるレリーフが刻まれたカードデッキが嵌められた黒い鎧の騎士のような存在が立っていた。

その存在はどこか龍を思わせる仮面と鎧をしており右手にはドラグブラッカーの尻尾と同じ形の剣“ドラグセイバー“が握られており、さらに仮面からは赤い複眼が不気味に光は無いがまるで不気味な笑みを印象付ける。

そして左手には黒い龍の頭を模ったガントレットの様なものが装着されていた。

 

「ま、また新しい鎧の騎士?」

 

「な、なんだか怖い…」

 

「し、しかもデッカい龍を出したデスよ」

 

新たに現れた仮面の騎士にマリア・カデンツァヴナ・イヴ、月読調、暁切歌の3人は各々の感想を口にしその騎士にも警戒の色を見せる。

 

「か、仮面ライダーリュウガ………死神か!」

 

「死神?」

 

ガイの口から発せられた言葉に響達は困惑するがガイとリュウガと呼ばれた仮面ライダーは構わず会話を続ける。

 

「俺の事を知ってるなら話は早い。さっさと始末してやるよ」

 

「ま、待て!お前は自分を襲ったライダーしか殺さない筈だろ⁉︎なら俺を襲う理由は無いはずだ!」

 

「は?馬鹿かお前は」

 

リュウガはドラグセイバーの切先をガイに向けた。

 

「お前はライダーバトルに関係ない奴らを襲ってあまつさえ殺そうとしたんだ。

ライダーバトルを終わらせる事を目的とした俺としては、なるべくライダー以外の犠牲は無いようにしたいんだよ」

 

「だ、だったら俺がアンタに協力、いやアンタに従う!これなら殺すより生かした方がメリットが」

 

ガイは目の前の存在の恐ろしさは理解していた。

だからこそ戦う事ではなく生き延びる手段を使ったが、生憎目の前のライダーには意味がなかった。

 

「そんなの、お前を殺してそこのメタルゲラスと契約すれば良いだけの話だ」

 

「っ!させるかそんな事!」

 

リュウガの口から出た言葉にガイはこの後の展開を察しメタルホーンを構えてリュウガに殴りかかる。

 

が、リュウガはそれを難なく躱し当たりそうになった攻撃をドラグセイバーで受け止めるなどを繰り返す。

 

「くっそ!」

 

「おっと」

 

ガイは当たらない事に苛立ち今度は角のような部分で刺そうとするがそれも剣で受け流されガラ空きになった胴体に蹴りを入れられる。

 

「ぐっ⁉︎」

 

「ほらほら今度はコッチの番だ!」

 

「ガッ!!」

 

リュウガは腹を押さえて後退したガイの隙を見逃さずドラグセイバーでメッタ切りにする。

ガイはメタルゲラスの援護がない事は分かっていたが、現在はドラグブラッカーと交戦中だった。

 

「畜生!さっさと助けにこいよ役立たず!」

 

「モンスターの特性も生かさず尚且つ人間を喰わせようと態々カード使ったのが仇になったな」

 

「チッ!舐めるな!」

 

ガイはカードデッキに手を伸ばして素早くカードを取って肩のバイザーに装填する。

 

 

《CONFINEVENT》

 

その音声が聞こえるとリュウガの手からドラグセイバーが消える。

 

武器を失ったリュウガを見てガイは仮面の下から笑みを浮かべる。恐らく武器が無くなれば一方的に攻撃できると考えたのだろう。

 

だが、その認識が間違っていた。

 

「オラァッ!」

 

「グハッ⁉︎」

 

リュウガは剣が消えても構わずにガイの顔面に拳を打ち込む。

その後も隙を与えないように鎧の隙間なども狙って打撃を加える。

 

「そのカードは俺じゃなくてドラグブラッカーに使うべきだったな」

 

「くっ、だったらもう一枚………ぐっ⁉︎」

 

ガイは恐らくもう一枚先程のカードを使おうとしたのだろうが激しい熱さと衝撃、そして足が動かなくなった事によりそれを中断せざるをえなかった。

 

「あ、足がっ…」

 

ガイが慌てて横を見ると、そこにはドラグブラッカーに巻きつかれたメタルゲラスがおり口から炎を吐いた直後のドラグブラッカーが居た。

そして自身の足を見下ろすと腰から下が石で固められて動かなくなっていた。

 

「これでゲームオーバーってやつだな」

 

「ッ、お前何を…」

 

リュウガはガイの質問に答えずガイのカードデッキをバックルから引き抜く。

 

するとガイの変身は解除されて30代位の羽織の良い男が足を石で固められた状態で現れた。

そしてガイのカードデッキを見つめるリュウガを見てこの後何をするつもりなのかを悟ったらしい。

 

「お、おい馬鹿な真似はやめろよ…で、デッキを返せよ!」

 

「断る」

 

リュウガは無慈悲にもそのデッキを握りつぶす。

ガイのデッキは音を立てて砕けリュウガは再び手を開くとその砕けたデッキを砂浜に落とす。

 

「お、お前なんて事を!」

 

男は狼狽しメタルゲラスを慌てて見る。

そこを見るとドラグブラッカーが拘束を解いてメタルゲラスはコチラを見ていた。

 

「それじゃ、あの子達がこれから辿るはずだった末路を味わいな」

 

「ま、待ってくれ!助けて!」

 

リュウガはその場を離れ男は手を伸ばして助けをこうが既にメタルゲラスはまた鼻の先にまで迫っていた。

 

「や、止めろメタルゲラス!お、俺はお前の契約者だぞ⁉︎」

 

「デッキが無くなったんだからもう契約は解除だろ」

 

メタルゲラスは男をまるで御馳走の様に見てゆっくりとにじり寄ってきた。

男は来るなと手を払うがメタルゲラスはそれに構わずに“男に食らいついた“。

 

 

うわぁああああああっ!!

 

「ッ⁉︎」

 

男は断末魔を上げてメタルゲラスに食われ始める。

 

男の断末魔と肉と骨が食われる音に響達は思わず目を逸らす。

 

たす、けて………お母さん

 

そして男の声は段々と聞こえなくなり最終的には何も聞こえなくなった。

メタルゲラスがそこを退くと、そこには石に埋まった男だったものの足の断面しか見えなくなっていた。

 

響達がその光景に戦慄しているとリュウガは一枚のブランクカードカードデッキからを手に持ち満足げなメタルゲラスに近づいた。

 

「メタルゲラス。俺と契約しろ」

 

メタルゲラスはリュウガの方を見ると今度は襲いに来るのではなく、ゆっくりと近づいていきそのカードに吸い込まれていった。

 

そしてリュウガの持っていたカードはブランクの状態からメタルゲラスの絵が描かれているカードへと変化した。

 

「これでまた1人、ライダーが消えたか…」

 

リュウガはもうここには用はないと言わんばかりにその場を後にしようとする。

 

「ま、待ってください!」

 

「?」

 

立ち去ろうとしたリュウガに後ろから声がかけられる。

 

リュウガが振り向くとそこには未だダメージが回復しきってない響がリュウガに話しかけてきた。

 

「助けたくれた事には感謝しています…でもどうして殺したんですか!」

 

「それをお前が知る必要はない。心配しなくても、お前らは殺さねえよ」

 

「そういう問題じゃありません!どうして同じ人間なのに、あんなに簡単に人を殺せるんですか!」

 

「殺したのは俺じゃないんだけどな〜」

 

実際メタルゲラスが殺したので間違いではないが過程からしてそう仕向けたリュウガの言葉には全く説得力がなかった。

 

「そんな心配しなくても、もう会う事は無いと思うよ」

 

リュウガがそう言うとリュウガの後ろに灰色のオーロラの様な物が現れた。

 

「!待て!貴様は一体」

 

「だから知る必要は無いっての。

そんじゃあな、今度はライダーに関わることがない事を祈ってるよ」

 

そこまで一方的に告げるとリュウガの姿はオーロラに飲み込まれて消えていった。

 

「待って!」

 

響の静止も虚しく、オーロラが消えた頃にはリュウガの姿はここには無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜???〜

 

「終わったぞ」

 

「お疲れ様です、黒崎将輝さん」

 

とある真っ白な空間には黒尽くめの青年と白装束の美しい女性が対面していた。

青年こと黒崎将輝。彼こそがつい先程リュウガに変身していた正体だった。

 

「で?次のライダーはどこにいる?」

 

「そう慌てないでください。残りのライダー達の居場所は既に調べてあります」

 

白装束の女性は目の前に1つのモニターを展開した。

 

「残ったライダー達は全てたった今貴方がガイを仕留めた世界にバラバラにですが存在する様です。

しかも中には組織に所属している者もいる様です。恐らくライダーバトルを有利に進めるためでしょう」

 

「数の有利を作って敵対するライダーを袋叩きってわけね。これじゃライダーバトルじゃなくてライダー戦国時代の幕開けだな」

 

「我々と同じ神の所為で行われた事とはいえ申し訳ありません」

 

「良いよ別に。その代わり、これが全て終わった時の報酬は忘れるなよ」

 

「勿論です。では将輝さん、ゆっくり休息を」

 

そこまで言うと白装束の女性はその場からまるで風景に溶け込んだ様に姿を消した。

 

 

将輝と呼ばれた青年はその空間で用意されたソファーに座って天を仰ぐ。

 

「もう少しだ。もう少しでまた会えるぞ、だから待っててくれよ皆」

 

 

 

 

 

 

 

「全てのライダーは、俺が倒す」

 

歌姫達の世界に本来はあるはずの無いバグが混ざり始めた。

 

歌姫と闇の仮面騎士はどの様な物語を紡ぐのか、それは彼らにもわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ここまで読んでくださった皆様ありがとうございます!

しかし最近新しい仮面ライダーのギーツが始まりましたね!
龍騎を思わせる世界観や銃を主武器として使う珍しい主人公ライダーのこれからの展開が楽しみですね。

あ、それとこの話が気に入ってくれたら感想や評価お待ちしてます。
今後とも頑張っていきますので、期待しないで待っててください!






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時の管理者

今回はタイトルの通りあのライダーが登場します。

しかし、本当に平成は良い時代でした……。
















 

 

 

俺は黒崎将輝。いわゆる転生者だ。

 

俺はとある理由で死んでしまい、ふざけた神からライダーバトルとかいうふざけたものをやらされてる。

しかし現在その神は行方知れずでとある理由で俺の元に現れた女神と名乗るやつが俺にダークライダーの力を授けてくれた。このふざけた戦いを1秒でも早く終わらせるために。

 

「しかし美味いなこのドーナツ」

 

だが、いくら戦いの真っ定中でも甘いものは必要だ。

俺は今、好物のドーナツ(ポンデリングが特に好き)を頬張っている。

 

ちなみにここはこの世界の拠点として女神が用意してくれた俺の家だ。

しかも生活費を毎月送ってくれてる。俺は神は嫌いだが彼女には頭が上がらない。

それからこの家の住人は俺だけでは無い。

って………。

 

「おい黎斗、人のドーナツ勝手に取るなよ」

 

「そう言うな、私のクリエイティブな作業には甘い物が必要不可欠なのだ」

 

この人の名前は檀黎斗。

仮面ライダーゲンムでありエグゼイドの世界のダークライダーだ。

 

「なら私はこれを貰おうかな」

 

「おいレモン味取るなよ、珍しいから楽しみにしてたのに」

 

黎人とは逆方向から俺のドーナツを引ったくりやがったのは戦極凌馬。

彼は仮面ライダーデューク。仮面ライダー鎧武のダークライダーであり科学者だ。

 

2人とも優秀な頭脳の持ち主で俺の持つライダーシステムは彼等に見てもらっている。

 

〈おい将輝、甘いもんばっか食ってんじゃねえぞ。この間作った唐辛子大盛りの坦々麺また作れ!そして俺に食わせろ!〉

 

〈その前に甘い物ばかりじゃなくてコーヒーも飲みな。なんなら俺が作ってやろうか?〉

 

「はいはい後で作ってやるから落ち着けカゲロウ。それとエボルト、お前のコーヒーはクソ不味いからノーサンキューで」

 

頭に響く2つの声はカゲロウにエボルト。

片方は言わずもみんな知ってる地球外生命体。もう片方は俺の中にいる悪魔で本編とは違い俺が更にガラ悪くなった姿をしている。

ちなみにビルドとリバイスのダークライダーだ。

あとここにはいないが他にも協力者はいる。

 

彼らは女神が俺の協力者として一緒に住まわせてくれた存在だ。

ご覧の通り自由な奴らだけど、それでも彼らの存在は俺にとってかなり頼もしい。

 

「そういえば黎斗、凌馬。次のライダーの居場所は分かったのか?」

 

「そこは現在調査中だ。ミラーモンスター達も頑張ってくれてはいるが、奴らもここまで勝ち残ってきたのだから馬鹿では無いのだろう」

 

「それと“アレ“はまだ確認されていないが、遭遇するのも時間の問題だろう」

 

「あっそ」

 

ライダーが見つかってないのなら俺の仕事はしばらくは休みか。

それに敵は転生者だけじゃ無いしな………。

 

「とにかく、俺達の目的は変わらない。ライダーの転生者は殺す。そしてこのふざけた戦いを終わらせる、いいな」

 

「ああ、分かってる」

 

「偶には今の人類のままも面白いかもしれないしね」

 

〈良いなぁ、ぶち殺してやろうぜ♪〉

 

〈やれやれ、こりゃ俺もしなきゃいけないパターンだな〉

 

随分まとまりがない様に見えるが今までの世界でも何度も協力してくれた彼らにとってこれが普通なので今更ツッコむ気は無い。

 

「おや?」

 

「ん?」

 

そう思ってると凌馬が何やら気になることを呟いたと思うと笑みを浮かべてコチラに目を向けた。

 

「どうやら次のターゲットが見つかったらしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 [F.I.S]が引き起こした[フロンティア事変]と呼ばれる出来事から数ヶ月。

[フロンティア事変]において月の遺跡を起動し、月の地球落下を未然に防いだ知られざる英雄、ナスターシャ教授の遺体とその異端技術を回収することであった。

 

立花響、風鳴翼、そして雪音クリスの3人は大気圏から落ちてくるシャトルを何とか無事に地上に送り届けようとシンフォギア を纏い行動を起こす。

しかし、いかに現在存在するどの兵器よりも強力なシンフォギア であろうと巨大なシャトルを難なく止めるには質量などの差が大きすぎる。更には大気圏に突入して更にスピードが増した事でそれは更に困難な物となっていた。

 

 

『K2への激突コース、避けられません!』

 

『直撃まで一キロを切りました!』

 

そんな彼女達の前に世界2位の標高を誇ると言われる山[K2]が立ちはだかる。

このまま行けば、間違いなくシャトルは激突しただでは済まない。

 

(仕方ねぇ、このままじゃ激突する。山を吹き飛ばすしか無い!)

 

クリスは目の前に迫る山を見てそう判断する。

 

 

しかし彼女が行動を起こそうとする前にそれは現れた。

 

 

 

《スカイライダー》

 

《J》

 

『⁉︎』

 

突如聞こえたその後に3人は一瞬固まる。

 

そして次の瞬間、シャトルは突然伸びてきた“巨大な手“にキャッチされる。

 

「な、なに?なにっ⁉︎」

 

「お、おい馬鹿………」

 

「立花。う、後ろ………」

 

 

「え?………ってえぇえええええええっ?」

 

 

翼とクリスに言われて響は背後を見る。

 

 

そこに居たのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”巨大な巨人の様な鎧の存在で顔には赤くライダーと刻まれていた”。

 

 

 

「よ、鎧の…巨人!?」

 

「おい」

 

「喋った!」

 

「落ち着け馬鹿!」

 

「立花、雪音!構えろ!」

 

突然の事についていけない響はそのままで翼とクリスは直ぐに切り替えて目の前の鎧の巨人”仮面ライダーバールクス”に向かって刀と銃を構えた。

 

「落ち着け馬鹿ども。こんな所でおっぱじめてシャトルの人間危険に晒す気か。オマケに俺がこうやって止めなかったら、お前ら今頃あの山崩落させて余計な被害出たろうが」

 

「「うっ…」」

 

バールクスの指摘に翼とクリスは何も言えなかった。

実際のところ、このままバールクスが介入しなかったら巨大な質量を誇るシャトルを止める為に山を破壊し森を切り裂くなどの手段を取る羽目になっただろう。

それを考えるとバールクスのいう事は何も間違えていなかった。

 

「とにかくなるべく安全な場所に降ろしてやるから、変なことするなよ?」

 

「あ、ありがとうございます巨人さん!」

 

そんなどこか気が抜けるやり取りをしている2人を翼とクリスは呆れが混じった顔で見ていた。

そしてその時、3人の無線に通信が入った。

 

『3人とも、ここは目の前の巨人の言う通りにしておけ。それに、彼と友好的な関係を気付ければ以前現れたリュウガやガイについての情報が得られるかもしれない』

 

「「「了解(です)」」」

 

 

司令官である風鳴弦十郎の指示により3人は取り合えず着陸はバールクスに頼む形となった。

 

 

 

 

 

そしてシャトルはK2から少し離れた林の辺りで降ろされ装者3人もシャトルの上から降りシャトルのパイロット2人は安全が確立され救助が来るまではシャトル内で待機の指示が出された。

 

バールクスは巨人サイズから人間サイズまで縮小した。

 

「おわっ小さくなった!」

 

「これが元のサイズだわ」

 

「えぇ!?巨人さんが私たちに合わせて小さくなったんじゃないんですか!」

 

「この世に巨人サイズの人間がいてたまるか。お前さては馬鹿だな?」

 

「よく気づいたなお前」

 

「クリスちゃん酷い!」

 

「立花、雪音。今はそんな事をやってる場合では無いのだが……」

 

翼はいつも通りの響とクリスに対して若干の呆れの感情を向けるが、直ぐに立て直しバールクスに向き直る。

 

 

「さて、自己紹介が遅れたが先ずは礼を言わせてくれ。貴方のお陰で任務を大きな被害無く遂行できた」

 

「別に気にするな。それに、自己紹介なら不要だ」

 

「?それはどういう意味だ」

 

バールクスの発言の意図がイマイチ理解できなかった。それは響とクリスも同様だったがそれはバールクスの次の一言で解決される。

 

 

「”まさかまた会う事になるとはな。あの浜辺以来か”?」

 

「「「!」」」

 

バールクスの発言に装者3人は思わず飛びのく。

それも無理も無い事だろう。何故なら3人だけでなく現在は拘束されてこの場に居ないマリア達を含めたシンフォギア装者たちは直接では無いとはいえバールクス、前回はリュウガに変身していた正輝が人を殺した瞬間を目の当たりにしているのだから。

 

「おいおいそんな反応されると傷つくぞ?俺泣いちゃうぞ?」

 

「えっ!?えっとぉ……ごめんなさい?」

 

「謝ってんじゃねえよ馬鹿。というか、この前あんな光景見せつけといて警戒すんなってのが無理な話だわ」

 

「それはごもっとも」

 

正輝はバールクスの姿で泣き真似したりこの場の雰囲気に合わぬ口調でマイペースな感じだが、その雰囲気とは違い警戒は怠ってない。

それは響たちでも感じる事が出来る程だった。

 

「まあ丁度いい。仮面ライダーリュウガ、それとも死神とでも呼んだ方が良いか?」

 

「お好きな方をどうぞ」

 

「ではリュウガと呼ばせてもらおう。貴様には聞きたい事が山ほどある。我々が以前会ったガイという鎧の戦士とお前が共通して名乗る”仮面ライダー”とは何だ。お前が口にしていたライダーバトルとはどういうものは何なのだ」

 

翼は刀を正輝に向け後ろでクリスもクロスボウを構えていたが、正輝はそれに怯むことなくそれを見据えた。

 

「それは以前にも言った筈だ。お前達が知る必要は無い」

 

「そうはいかない。我々はもうガイという仮面ライダーに襲われた上にお前の口ぶりを振り返るに他にも仮面ライダーは居ると我々は考えている。以前の様な事を未然に防ぐのもそうだが貴方の身に着けているその鎧についての情報も欲しい。ここは大人しく同行してもらえないだろうか。我々とて形はどうあれ一度助けてもらった恩人に対して刃を向けたくはない」

 

「それ、遠回しに断れば実力で捕まえるって言ってるじゃん」

 

「分かってんじゃねえか。大人しく着いてきてあのサイ野郎やお前含めた変な野郎等の情報を話してもらうぞ」

 

「おおこっわ」

 

「ご、ごめんなさい!でも、私たちどうしてもリュウガさんの事知りたいんです!」

 

「君は友好的だからまだ話しやすいよ。けど悪いけど、正直君たち助けたのってオマケみたいなもんなんだよね」

 

「「「え?」」」

 

「俺が本当に用があるのは……ふんっ!」

 

「ぐあっ!」

 

正輝はそう言うと背後に向かって回し蹴りを放った。

すると、まるで光学迷彩が無くなった様にその姿が現れた。そこに居たのは、ガイとリュウガと同じVバックルにカメレオンのレリーフがセットされ、鎧もカメレオンを思わせる仮面ライダーだった。

 

 

「ようやく見つけたぞ、仮面ライダーベルデ。まさか姿消してこんな所に隠れてたとは」

 

「くっ、バールクス。しかも死神かよ!」

 

「きゅ、急に新しい仮面ライダーさんが!?」

 

「今度はカメレオン野郎かよ!」

 

「緒川さんと同じ忍術の類か?」

 

突然現れたベルデの出現に3人は驚愕するが正輝はそれを気にせずにベルデの襟首を掴み無理矢理立ち上がらせる。

 

「ぐっ…」

 

「俺の目的はこれで半場達成されたな。ここじゃ何だし場所変えるか」

 

正輝はベルデを掴んだまま灰色のオーロラ。”オーロラカーテン”を展開してベルデをそこに引きずり込む。

 

「ま、待て!」

 

「待ちませーん」

 

「クソッ!離しやがれ!」

 

有無も言わせずベルデごと正輝はオーロラカーテンに飲み込まれた。

翼たちはそれを止めようとするがあまりの展開についてこれずに反応が遅れ結局そのままオーロラカーテンは消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っく」

 

「さーて、折角見つけたんだ。逃がさねえからな、”リボルケイン”!」

 

オーロラカーテンの先は周りが崖になっている某特撮の聖地に似ている場所に出て正輝はジクウドライバーから鍔の風車部分をよく見ると、周囲の装飾は変形したカタカナで「リボルケイン」と書かれた剣”リボルケイン”を取り出してベルデに向けて構えた。

 

「ふ、ふざけんな!死神、しかもバールクスなんて相手してられっか!それに俺お前に手出した覚えねえぞ!」

 

「決まってるだろ。ライダーバトルなんてやってんだから、ライダーは倒さなきゃだろ」

 

「くっ、だからってここで死んでたまるか!」

 

ベルデはカードデッキから素早くカードを引き抜きそれを左大腿部に装着しており、バイザーからカメレオンの舌のように伸ばしたワイヤーの先端のクリップの様になっているバイオバイザーに読み込ませる。

 

 

 

 

 

 

 

《CLEARVENT》

 

 

 

 

機械音が鳴るとベルデの姿は周りの風景に溶け込む様に消えていった。

 

「クリアーベント。カメレオンらしいカードだよなー」

 

「余裕ぶっこいてられるのも今の内だ死神!」

 

 

 

《HOLDVENT》

 

 

その音声がすると正輝の体に衝撃と少しの痛みが襲う。

 

「くっ……」

 

その攻撃は不可視の攻撃となり正輝の変身するバールクスを襲う。

大きなダメージこそ負ってはいないが、それでもうっとうしいのは変わりない。

一応リボルケインで反射的に防いだりはしているが所々にダメージは入っていたよ

 

 

「ハハッ!やっぱ見えないで戸惑ってる奴をいたぶるのは気分が良いな!」

 

「やっぱ今までの奴もそれで殺してきたのか。よっぽど相性が良かったんだろうな」

 

「そんな余裕ぶっこいて俺の姿はバールクスじゃ見えねえだろ!変身するライダー間違えたな死神!」

 

「っちぃ!」

 

ベルデの煽るような言葉にもそうだが、姿の見えない敵からの一方的な攻撃にも苛立つ正輝。

だが実際反撃出来てないのは事実だし一撃入れる度に移動しているのでイマイチ位置を絞り込み難い。

 

が、それは普通ならの話だ。

 

 

「調子に乗るのもそこまでだ。なんてな」

 

「何!?」

 

 

 

《バイオライダー》

 

 

 

「!?」

 

 

正輝がリボルケインを地面に突き立て時計型のアイテム”ライドウォッチ”を起動させると体が液状化しベルデの攻撃が当たる度に体を突き抜ける。

 

「さらに、隠れてる敵を炙り出すのにはこれだな」

 

正輝はさらにライドウォッチを起動させる。

 

 

 

 

《ストロンガー》

 

 

 

 

「エレクトロウォーターフォール!」

 

 

正輝は電気を操るストロンガーのウォッチを起動させると拳を地面に叩きつける。

すると正輝を中心に稲妻が地面から吹き上がり周りに攻撃する。いくら姿を消しているといっても存在を消している訳では無い。

 

つまり必然的に。

 

 

「ぐあああああああっ!!!」

 

ベルデはその全方位の電撃を避けきれずに大ダメージを受ける。

 

そして余りにも大きいダメージだった為かベルデの透明化が解除される。

 

そこには煙を上げて倒れるベルデが居た。

 

 

「ぐっ、この……ストロンガーのウォッチ使うとか……卑怯だろ…」

 

「じゃあ姿消して一方的にボコるのは卑怯じゃねえのかよ」

 

「う、うるせえ…主人公のおれが…絶対なんだ……お前みたいな、モブは…大人しく……やられてや良いんだよ…」

 

「はぁ、お前みたいな転生者は決まって自分の事を主人公主人公って…俺やお前らは所詮ライダーの力を持っただけの、言わばアナザーライダーと言っても良い存在なんだ。

そんな俺らがどんだけ頑張った所で本家に成り代わる事なんて出来ないしする資格何てねえよ」

 

「だ、黙れぁ……」

 

ベルデは正輝の言葉が気に喰わなかったのかボロボロの体を無理に立ち上がらせる。

だがその体は到底戦闘を続行できる様子ではなく今にも倒れそうだった。

 

が、それで手心を加える事など正輝はしない。

 

「もう面倒だし、さっさと片付ける」

 

 

正輝はため息交じりにジクウドライバーのD‘9スロットにセットされたバールクスライドウォッチにスイッチを押す。

 

 

 

 

《FINISH TIME》

 

 

 

 

 

そしてドライバーの上にあるライドオンリューザーを押しロックを解除。ドライバーを一回転させる。

 

「ふっ」

 

そして跳躍して飛び上がり、キックのフォームを作る。

 

 

《BARLCKX TIMEBREAK》

 

 

 

 

「はぁあああああああっ!!」

 

 

「ちっくしょおおおおおおお!」

 

正輝の放った赤いエネルギーを足に纏ったバールクスタイムブレイクという必殺キックをベルデは最後のあがきなのか拳で迎え撃とうとする。

 

しかし、そんなのが逆転に繋がる筈もなかった。

 

 

「ぐあああああああああっ!!!」

 

 

ベルデは何も拮抗することなくそのままキックをまともに受けて爆発四散する。

 

 

 

最後に残ったのは先程までベルデが立っていた爆発地点と、キックの残心の体制でいるバールクスの姿の正輝の姿だった。

 

 

 

すると正輝の目の前に”鏡が現れ”そこからカメレオンが人型になったミラーモンスター”バイオグリーザ”だった。

 

 

「バイオグリーザ、俺と契約しろ」

 

正輝は前回メタルゲラスにやったのと同じカードを使った。

するとやはりと言うべきかバイオグリーザはそのままカードに吸い込まれていった。

 

バイオグリーザの絵柄が描かれたカードを見て正輝は一息つく。

 

「これでまた一人だな。(にしてもバールクスはオーバーキル過ぎたか?確かコイツって平成ライダーだったらオーマフォームとかいうイレギュラーやオーマジオウみたいな問答無用の力持つ奴が居なければ平成ライダーだと基本太刀打ちできない筈だからな)」

 

正輝の思う通り、バールクスというライダーは規格外であり平成のライダーでは太刀打ちできない力を持つ。

ベルデは仮面ライダー龍騎という平成ライダーシリーズの1つに出て来たライダーである為、ベルデ1人で太刀打ちできる筈もなかった。

 

 

「ま、目的は果たしたから良いか」

 

正輝はそれで満足したのかオーロラカーテンを開いてその場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





今回もここまで読んでくれてありがとうございます!




・・・・・・今回はこれだけです!それではまた次回!


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ライダーとは

 

 

 

 

 

「響くん、翼、クリスくん。今回の任務ご苦労だった。

本来は労いの言葉をかけて直ぐに解散にしたかったが、どうやらそうもいかなくてな」

 

「気にしないでください師匠。リュウガさんの事ですよね」

 

ここは潜水艦に設置された基地の中。

響達はシャトルを救出する時に国連からの許可を得て国外にも活動ができる超常災害対策機動部タスクフォース[S.O.N.G.]へと再編された。

主な活動はノイズと呼ばれる災害が無くなったことで主に災害地域の救助などになっていたが、現在はその範疇に収まらない事態が発生していた。

 

「申し訳ありません司令。リュウガを取り逃してしまい」

 

「気にするな。そもそも予想外の彼の登場に新たな仮面ライダーとやらの出現もあったんだ。無理もない」

 

彼らは将輝が変身したリュウガやバールクス、そして前回と今回で現れたガイやベルデを含めた仮面ライダーについて話し合っていた。

 

「今回翼さん達が遭遇したのは以前遭遇したのとは別の姿のリュウガ。翼さん達が聞いた会話によるとバールクスという名前の仮面ライダー。

そして、カメレオンの様に消える事ができるベルデというライダーですね」

 

「いきなり現れた時はビックリしたぜ」

 

「ベルトはガイや前回のリュウガと同じものですね。恐らくガイと同じくカードを使うのかと」

 

「でも翼さん、今回のリュウガさんは違うベルトを使ってましたけど」

 

「確かに……で、緒川。仮面ライダー達について有力な情報は?」

 

S.O.N.G.司令官、風鳴弦十郎は隣に立つスーツの男、緒川慎次に話しかける。

 

「はい、現在の段階では彼らのあの力がシンフォギア のフォニックゲインとは全く違う力で成り立っていると言うことしか分かりませんね」

 

「しかし、どうやら仮面ライダーは世界中でその姿が確認されている様です」

 

「何?」

 

「一般で隠れて撮影された画像や動画があちこちに見受けられましたので、モニターに出します」

 

弦十郎達にS.O.N.G.構成員、藤尭朔也と友里あおいの2人が端末を操作して巨大モニターに、その映像が映し出される。

 

そのモニターには様々な姿やベルトの仮面ライダーが互いに武器や拳を使い攻撃しあっているものが殆どだ。

 

中にはクローバーの様な杖を使い戦う者。

中にはAの仮面をしたまるでバイクを思わせる者。

また中には青い狼の様な姿で銃を使う者までいた。

 

「これ全部、仮面ライダーさんたちなんですか?」

 

「思ったよりいやがったな………」

 

「しかもどの映像でも仮面ライダー同士で戦ってる様だ」

 

「しかしこんなに映像があって、何故我々は知らなかったのだ?」

 

「どうやらこの映像は最初は手の込んだ特撮の撮影か何かだと思われていた様で政府も気に留めてなかった様ですので」

 

藤尭は端末を操作しながらその動画に対する一部のコメントを表示する。

その全てがこの映像が作り物だと思ってるもので、つい最近になってそれが本物だったという声もあった。

 

「………」

 

「立花?」

 

「おいどうしたんだよ」

 

「へ?…あっいえ何なでも無いんです!ただ………この映像のどれも皆んなが争っていると思うと、なんだか心苦しくて」

 

「はぁ、またいつものお人好しか。

一々他の奴らの事で苦しんでちゃ身が持たねえだろ。お前はもう少し簡単に考えりゃ良いんだよ。馬鹿なんだから」

 

「クリスちゃん………」

 

口は悪いが自分を気遣って言葉をかけてくれている事は響は分かっていた。

それでも、今まで人と手を取り合ってきた彼女からしたら映像に映っている光景は少し堪えるものがあった。

 

「しかし日本だけでなく世界中でこの様な事が行われていたとは」

 

「政府に中々見つかってないところを見るに普段は人気のない場所などで行われている様ですね」

 

「しかも、その度に互いに退くなら兎も角…どちらかが死ぬまで戦う……」

 

『……』

 

あおいの発言にその場の空気が重くなる。

響たちシンフォギア装者たちだけでなくS.O.N.G.のメンバーは少なくない人の死を見てきている。

だから戦いによって失う命にはある程度の踏ん切りや覚悟などはしていた筈だった。

 

しかし自分たちの知らないところでこういった戦いによって失う命があると考えるとどうしても他人事で片付けることは出来なかった。

 

 

「兎に角、この仮面ライダー達は以前リュウガが呟いていたライダーバトルというものと何かしらの関係があるとみて間違いないだろう」

 

「いったい何なんでしょう、そのライダーバトルというのは」

 

「どっちにせよ、殺し合いをしてるんだ。穏やかじゃない事だけは間違いねえ」

 

「このままでは、最悪の場合一般人が巻き込まれる恐れがあります。一刻も早くリュウガをこちらに引き入れるべきと考えますが」

 

「で、でもリュウガさんがどこにいるのか……」

 

「おい、そもそもまだアイツが味方かどうかも分かってないんだぞ」

 

「どちらにせよ、リュウガがライダーバトルについて何か知っているのは間違いない。今後彼と接触したらこちらに来てもらう様に説得してくれ。現在この場に居ないマリアくん達にも同じように通達しておく」

 

『了解です』

 

こうして彼女達はノイズという脅威が去って直ぐに仮面ライダーという未知の存在への対処にも追われる様になった。

しかしこの時の彼女達は知らなかった。

 

自分たちが直面すべき問題がまだ別にあるという事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~???~

 

「た、頼む!見逃してくれ!」

 

人気のないどこかの廃工場。

そこには一人の男が這いつくばって目の前の”紫のコブラの様な仮面ライダー”相手に命乞いをしていた。

 

「あぁ~。折角会えたライダーだってのにライオトルーパーとかふざけんじゃねえぞ。俺のこの高揚した気持ちをどうしてくれんだ?あぁ?」

 

「ひっ」

 

「……はぁーーーーーー。もう良い」

 

紫のライダーは目の前に手を翳すと目の前に人間1人分はあるであろう大きさの鏡が現れた。

 

「喰え」

 

すると鏡からは巨大な紫のコブラが現れ男にその大きな口を開き一気に食らいつく。

 

「や、やめっ……」

 

男は最後の断末魔らしきくぐもった声を上げながら体を咥えられそのまま鏡の中に引きずり込まれていった。

 

 

その異常な光景を目にしたとしても紫のライダー

”仮面ライダー王蛇”は落胆した様子のままでいた。

 

 

そんな彼に声をかける1つの声が突然聞こえたのはその数秒後だった。

 

 

「いやはや相変わらずの容赦の無さ。君、本家王蛇に負けず劣らずの凶暴さだよね♪」

 

「……クソ神か」

 

「ひっどぉーい。こんな美人な神様に付いてもらえてるんだからもっと喜びなよ!」

 

王蛇に話しかけた黒装束の女は大げさな動作でいかにも傷つきましたな感じを出して抗議する。

 

「喜ぶか。それより何でライオトルーパーとかハズレまで与えた?俺の楽しみが減るだろうが」

 

「それはね……楽しいからさ!」

 

王蛇の質問に女は今度は楽しくてたまらない様子でまたもや大げさな動作でくるくると回り始めた。

 

 

「量産型ライダーなんてハズレくじを引いてそれを使った奴がどんな絶望を出すのか、あるいはどんな奮闘を見せるのか!

私はそんな人間たちのあがきが見たいんだ!

あ、そういえば君にとびっきりのニュースがあるんだー」

 

「はっ、なら早く言って消えろ。俺お前苦手なんだよ」

 

「酷い!私とは遊びだったのね!?」

 

「殺すぞ」

 

「ごめんごめん♪じゃあ言いまーす

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

君の待っていた死神。どうやらこの世界に来たらしいよ」

 

「!」

 

死神、つまり正輝の事を聞いた瞬間、王蛇は仮面に隠れて見えないがそれでも分かる位に驚愕した。

 

「……確かなんだろうな?」

 

 

「間違いないよ。現にガイとベルデの力を持った奴らが殺されてるし、痕跡からして彼に間違いないよ」

 

 

「……」

 

女のもたらした情報に王蛇はしばらく黙り込む。

しかしその沈黙はほんの少しの間だけですぐに小さな笑い声が漏れぎ超え始めた。

 

「はははっ!良いねぇ!退屈すぎるこの日々にはもうウンザリしてたところだ!」

 

「おお喜んでくれて何より!」

 

「おい!早く俺を死神のところに連れて行け!奴と決着をつけてやる!」

 

「まーまー落ち着いて。物事には順序というのがあるんだ。君だって、折角の死神との勝負をただ終わらせるのも嫌だろう?」

 

「…ちっ」

 

女の言葉に王蛇は舌打ちしそのまま背後に開かれたオーロラカーテンを潜りその場を後にした。

 

1人残された女は空を見上げ楽しそうな顔を崩さずに笑みを浮かべていた。

 

「これで役者がそろったかな?まあ何にせよ退屈だった私の日々にようやく終止符を打ってこんな面白い祭りを開いたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

精々私を楽しませる道化を演じてくれよ。人間ども」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王蛇はオーロラカーテンの先で変身を解茶髪の革ジャンの男になり獰猛な笑みを浮かべた。

 

「早く戦いてえなぁ死神。いや死神だけじゃねえ、このライダーバトルに参加する全てのライダーに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~???~

 

 

「いよいよ実行の時が来たな」

 

「そうですねぇマスタ~」

 

そしてここはどこかの建物の中。そこには金髪の少女とその少女に寄り添うように立つ青いドレスの人型。

そして彼女達の目の前には赤、黄色、緑の人型の人形が独特なポーズを取ったまま待機していた。

 

「俺の託された命題の為にシンフォギアどもにエルフナインをレイアに追い詰めさせる。ガリィ、お前は手はず通りにしろ」

 

 

「了解でーす」

 

青い人型の人形はバレリーナのような動きでふざけながらも少女にたいして返事を返す。

 

 

「お前にも働いてもらうぞ。”秋人”」

 

少女がそういうと彼女達の目の前に”青いドラゴン”の複眼が鏡合わせになった様な仮面ライダーが現れた。

 

「ああ」

 

「しっかり働けよ?マスターのお陰で生きてる事、忘れてんじゃねえぞ」

 

「分かってる。拾ってもらった恩は忘れないよ」

 

青い竜のライダー

”仮面ライダークローズ”は目の前の金髪の少女に膝を突く。

まるで忠誠を誓う様に。

 

「秋人、お前の役割は他の仮面ライダーどもに俺の計画を邪魔させない事だ。お前が勝ち残りお前の願いを叶える為のライダーバトル、存分に戦うがいい」

 

「ああ、キャロルの計画は絶対に成功させる。その為に僕は、死神を……全てのライダーを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~正輝side~

 

 

正輝は夜の街をビルの屋上に立って缶コーヒーを飲みながら眺めていた。

 

 

「ふぅ、この世界に来てまずは龍騎のライダー達から倒して戦力増強としてはまずまずってとこか」

 

「(今までの世界のライダー達もそうだがこの世界でもやっぱりライダーの力を自分のモノだと思い込む奴が多かったがこの世界でもそうだったか)だがそれだけじゃない」

 

正輝は気付いていた。

この世界に今まで相手にしてきたライダーとは違う異質な気配が多くその中に覚えのあるものがあると。

 

「待ってろよ”アベル”、この世界に残るライダーもろとも貴様を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「殺す」」」

 

 

 

今ここに、歌姫たちの世界で本来の歴史では無かった遺物たちが入り込み血みどろの争いが巻き起ころうとしていた。

 

その先にあるのは希望か絶望か、破滅か再生か。

 

それとも別の何かか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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始まる動乱

 

 

「ふんふふ~ん♪」

 

どこかの空間で黒装束の女、アベルは鼻歌を歌いながら目の前に展開した光の端末を見ていた。

そこにはいくつもの人物の顔と名前が載っておりその多くに赤い罰が付けられ〈LOST〉と表示されておりその中には正輝の姿もあった。

 

「残るライダーはこの世界に居る奴だけ、当たり前だけど強い人が残るよねー。例外もいるけど……

しかし、折角の最後の正解での戦いっぽいのに何にも無いのはアレだよねー。うーん……

ん?」

 

アベルは考える風な仕草を見せると何か感じ取ったのか立ち上がる。

 

「この感じは……あっ!そうだ!」

 

彼女は安易を考え付いたのかまるで子供のような無邪気な笑みを浮かべながら楽しそうにステップを踏む。

 

「そうだそうだよ利用すればいいじゃん!この世界にいるシンフォギアって奴らを!そうすればライダーだけじゃない、奴らも巻き込んだ面白い祭りが始まるじゃん!アハハハハハハハハッ!!!」

 

 

アベルは笑う。楽しそうに、愉しそうに、面白そうに。

 

そこにそれ以外の感情などなかった。

 

「神の力は封じられたけど、この身も存外に悪くないかもね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は今夜の街をただ歩いていた。

あのベルデ以来ライダーを発見することは出来ずただ平穏な時間が流れていた。

 

平和なのは良い事だ。

しかし、俺にとっては全てのライダーを倒すまではこれは本当の平穏なんかじゃない不気味な時間でしかなかった。

 

「おい見ろよ!風鳴翼とマリア・カデンツァヴナ・イヴのロンドンライブの中継だ!」

 

「マジか!」

 

「?」

 

なにやら周りの人々が騒がしく建物に設置された1つの大モニターに釘付けにされていた。

 

正輝も流石に気になりそちらを見ると大画面の向こう側で歌う2人の歌姫の姿があった。

 

「風鳴翼…マリア・カデンツァヴナ・イヴ…あの海辺で会った奴らの中にいたな」

 

〈シンフォギアだったか?俺は直に見てないが少し興味はあるな〉

 

〈流石は火星を滅ぼした地球外生命体、人間の女に興味でもあんのかよ?〉

 

「お前らあんまり頭の中で騒ぐな、違和感が凄い」

 

頭のなかで口論に発展しそうな会話をしていたカゲロウとエボルト。

正輝は頭を手のひらで軽く叩き気持ち的に黙らせる。

 

そしてライブの中継はクライマックスに差し掛かり画面向こうのステージは空に流れ星が煌めき観客の熱狂はこちら側からでも分かる程に熱狂に包まれていた。

 

「歌…か」

 

正輝は画面向こうの楽しそうに歌っている2人の歌姫を暫く見つめた後その場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして暫くふらついて辿り着いたのはどこかの住宅街。

 

「っと、いつのまにかこんな所に来ちまった」

 

〈おいおいしっかりしてくれよ。このまま迷子になってお巡りさんのお世話にでもなるのか?〉

 

〈そいつは滑稽だな、おい試しに”ママー”って叫んでみろよ〉

 

「ぶちのめされたいのかお前ら」

 

しかしフラフラと何も考えずに街へ出た俺も俺なわけで特に2人に反論する言葉も見つからないのである。

 

 

そんな時だ、突然遠くに炎の光が見えたのは。

 

「!?」

 

〈おいおいこんな時間に火事って人様の迷惑考えろよ、何時だと思ってやがる〉

 

〈いや火事に時間帯もクソもあるかよ〉

 

2人がそんなふざけた事を言っていると俺の持っていたスマホに電話がかかって来た。

 

「はいもしもし」

 

【つながったね。正輝、君は今何処にいる?】

 

どうやら電話の相手は黎人の様だ。

 

「へ?えーっと、第7地区辺りだな。丁度今火災が近くの建物で発生した」

 

【成程ならば丁度いいか。

実はその辺りでライダーの反応を探知した】

 

「!正確な位置は分かるか?」

 

【残念ながらそこまでは分からないね。だが、その付近にいるのだけは確かだ】

 

「了解した」

 

俺はそれだけ聞くと電話を切り走り出す。

ライダーの気配なら何となくだが分かる。今回もどうやらそれをあてにするしかないらしい。

 

〈おい正輝、今回は俺を使えよ?いい加減暴れたいんだ〉

 

「相手の相性次第でな!」

 

ごねるカゲロウを一旦無視しつつ俺はそのライダーを探す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁーーー!!!」

 

私は今、第7地区で発生したという火災現場に一緒に出動したクリスちゃんとは一旦別行動をとって逃げ遅れた人達の救助に当たっていた。

火は幸いな事に現在はこの建物にしか出火していないらしく私は身にまとっているシンフォギアガングニールの拳で壁をぶち破りながら逃げ遅れた人達を探しては避難させていた。

 

でも、折角皆と翼さんとマリアさんのライブ中継を見ていたのに急な出動で少し落ち込んでいます。

 

「逃げ遅れた人達ですね!早くこっちに!」

 

でも私が出来ることは今目の前の人達を助ける事だけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それが神の奇跡でないのなら、人の身に過ぎた悪魔の力だ!』

 

『裁きを!浄罪の炎で、イザークの汚れを清めよ!』

 

とある男性が火炙りにされている光景を思い出す少女。

 

『パパ!パパ!パパーッ!』

 

黒い服を着た男達に捕まえられて泣き叫ぶ自分…過去の自分を思い出す。火炙りにされている男性は少女の父親だ。

 

『キャロル…生きて…もっと世界を知るんだ…』

 

『世界を…?』 

 

『それがキャロルの…』

 

その言葉を最後に彼は火炙りの刑で処刑されてしまった。炎を見る彼女の目には涙が浮かんでいた。

 

「パパ…」

 

「消えてしまえばいい思い出…」

 

少女は目の前の火災現場の炎を見てそんな事を呟いた。

 

「そんな所にいたら危ないよ!」

 

そんな時、少女は突然避難作業の途中だった響に話しかけられ、ハッとする少女。

 

「パパとママと離れちゃったのかな? そこにいたら危ないからお姉ちゃんが行くまで…「黙れ。」」

 

少女は涙を拭うと光の陣を作り出し、そこからエネルギーを放ち、地面に穴を開けた

 

「うわぁぁ!」

 

少女が放った突然の攻撃に響は反射的に躱す事でダメージにはならなかった。

 

そんな時、通信機からクリスの声が聞こえた。

 

【敵だ!敵の襲撃だ!そっちはどうなってる!】

 

「敵……?」

 

「キャロル・マールス・ディーンハイムの錬金術が…世界を壊し、万象黙示録を完成させる……!」

 

キャロルと名乗る少女は右手に緑色の陣を4つ作り出し、響に向ける。

 

「世界を…壊す?」

 

「オレが奇跡を殺すと言っている」

 

キャロルの言葉の真意が理解できず困惑している響に対してキャロルは再びエネルギーを響に向けて放った。

 

 

「あっぶね!」

 

「え?きゃあっ!」

 

 

その攻撃が直撃しそうになる瞬間、響は突然割り込んできた正輝に抱えられその直撃から逃れる。

 

 

「ふぅ間一髪。しかしこの世界どうなってんだ?」

 

「(この世界?言ってる意味は分からないけど)あ、あのありがとうございます!」

 

「あ?あぁー気にすんな」

 

 

「何者だ?貴様は」

 

「そっちこそ、そんな恰好してるわいきなり魔法っぽいもん放つわ。魔法使いか何か?」

 

「魔法使い…俺の錬金術をそんな奇跡に頼るものと一緒にするな!」

 

正輝の言葉にキャロルは逆上し再びエネルギーを放つ。

 

「おっとやっべ!」

 

「え!?」

 

正輝は響を横抱きにしてそれを躱す。

 

「えぇぇぇぇ!」

 

「騒ぐな舌噛むぞ!」

 

正輝はキャロルからの攻撃を紙一重で躱しきった。

 

「ったく危ねえな!」

 

「あ、あの!早く逃げてください!ここは危険ですから!」

 

「それ俺に横抱きにされて言っても説得力ないけどな」

 

「確かにそうでした!それはそうとこの体制は恥ずかしいので下ろしてください!」

 

正輝と響はそんなやり取りをしながら響は正輝から降ろされる。

 

「貴様ら、オレを舐めてるのか!」

 

 

 

「キャロル」

 

 

「ッ!秋人か」

 

「「!?」」

 

キャロルに話しかける青年の声が聞こえ正輝と響はその方向を見る。

 

そこにはキャロルの隣に突然現れた青い上着に黒いジーンズといった格好の20代位の男が立っていた。

 

 

「お前は…」

 

 

「やっと会えたね。黒崎正樹、死神」

 

 

「え?死神って、それってリュウガさんが呼ばれてた」

 

 

秋人と呼ばれた青年の口から出た名前と呼びなに響は思わず正輝の方を見る。

 

 

「その呼び名知ってるって事は、お前もライダー?」

 

「そうだと言ったら?」

 

正輝は響が見ているのも構わず懐に手を入れて黒とマゼンタ配色のカメラの様なバックル”ネオディケイドライバー”を取り出して腰に当てる。

秋人と呼ばれた青年も今度は黒と赤の配色で横に出っ張っているハンドルが着いたドライバー”ビルドドライバー”を腰に当てる。

 

「殺す」

 

「奇遇だね、僕もだよ」

 

 

2人はそれぞれマゼンタのバーコードのカード”カメンライド ディケイド”と青いフルボトル”ドラゴンフルボトル”を構える。

 

「来て、クローズドラゴン」

 

秋人は自分に向かって飛んできた小型のドラゴンメカ”クローズドラゴン”をキャッチして頭と尻尾を折りたたみボトルをセットする。

 

 

 

《Wake up!》

 

 

そしてそれをビルドドライバーにセットし正輝もカードを開いたドライバーにセットする。

 

 

《CROSS-Z DRAGON!》

 

 

 

《KAMEN RAIDE》

 

 

 

秋人がドライバーのレバーを数回回す。

 

 

《Are you ready?》

 

 

まるでその問いかけを合図にしたかのように正輝はドライバーの両サイドに手をかけ閉じ秋人はファイティングポーズをとる。

 

 

「「変身」」

 

 

 

《DECADE》

 

正輝の周りには20の幻影が重なり数枚のプレートが彼の頭部に突き刺さる、その後灰色だった体がマゼンタに色付きそれが終わると頭部に備え付けられたシグナルポインターが黄色く、緑の複眼ディメンションヴィジョンが緑色に輝いた。

 

 

《Wake up burning! 》

 

《Get CROSS-Z DRAGON! Yeah!》

 

秋人の周りににはスナップライドビルダーが展開されどれが挟み込む様にして秋人の体に装着され遅れてまるで羽織るようにドラゴライブレイザーが装着される。

 

 

かうて9つの世界をめぐり破壊者と呼ばれたライダー”ディケイド”

 

青いドラゴンのライダー”クローズ”

 

そのライダーに変身した2人が向かい合いそれぞれの得物、ライドブッカーソードモードとビートクローザーを構える。

 

 

 

 

「えぇぇぇぇぇぇぇ!仮面ライダーさんが、2人!?」

 

「秋人、戦うのは構わんがあまり時間はかけるな」

 

「分かった。

それじゃ、始めようか死神」

 

「ああ良いぜ、遊んでやる」

 

ディケイドに変身した正輝が剣を撫でるような仕草をしてクローズに変身した秋人はビートクローザーを構えて正輝に向かって飛び降りた勢いを咥えて剣を振り下ろす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その様子は現場の様子をモニターしていたS.O.N.G.の指令室でも確認されていた。

 

 

「響ちゃんのいる現場に2人の仮面ライダーの出現を確認!現在交戦を開始しました!」

 

「響ちゃんは現在シンフォギアを纏っていません。クリスちゃんも謎の敵と交戦中です!」

 

「ぬぅ…」

 

弦十郎は火災発生地区の救助活動から一変して混沌とした現場を見てどうするべきかを考えた。

 

しかも響とクリスのいる現場だけでなく、現在ロンドンにいる翼とマリアの元にも敵が発生しており更に混沌とした状態へと追いやられていた。

 

「しかしリュウガの正体が今映っていた青年とは」

 

「ああ。そこにも驚きだが、まさか新たな敵が出て来ただけでなく向こうにも仮面ライダーが居たとは」

 

弦十郎達の目は現在戦闘を始めたディケイドとクローズに向けられていた。

 

「どちらにせよ、この状況では満足に指示も出せん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!」

 

「シィッ!」

 

ディケイドとクローズはお互いの武器での剣劇を繰り広げていた。

 

「くっ、やるな。今まで相手にしてきたライダーとは大違いだ」

 

「僕をあんな自分の欲を満たすだけの存在と一緒にするな。

僕のこの命も力も、キャロルの為に!」

 

「大切なモノの為にか、そいつは良いな!」

 

「ぐっ」

 

ディケイドは鍔迫り合いになっている状態から蹴りを入れてクローズを後退させる。

 

 

「そっちがクローズなら、コイツでいってみるか」

 

 

ディケイドはライドブッカーから1枚のカードを取り出してベルトに装填し閉じる。

 

 

《KAMEN RAIDE》

《BUILD》

 

《鋼のムーンサルト》

《ラビット タンク Yeah!》

 

 

 

ディケイドの前と後ろから赤と青の鎧が挟み込む様に装着され赤い兎と青の戦車の鎧を身にまとった戦士”仮面ライダービルド”に変身した。

 

 

「ッ、ビルドか…」

 

「少し安直だがこんなもんだろ。

それじゃ行くぞ」

 

「!」

 

ビルドに変身したディケイドは左足のホップスプリンガーを使い一気にクローズとの距離を詰めて右足のタンクローラーシューズで蹴りを入れる。

 

「くっ」

 

「よく受け止めたな。ならこれはどうだ!」

 

キックはクローズに当たりはするが直ぐに掴まれる。

しかし、足の裏に備えられた戦車の車輪の様な物が動き出し受け止めて密着していた胸の装甲を削る。

 

 

「ぐああああああああっ!」

 

「ッらぁっ!」

 

「ぐぅっ…」

 

急なダメージで腕の力が緩んだところをディケイドはもう片方の足で蹴りつけることで距離を取る。

 

 

「まだまだこんなもんじゃないぞ!」

 

「ちぃっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦ってでも欲しい真実…?」

 

一方響はディケイドとクローズが離れたその場所でキャロルと対面し話をしていた。

 

「そうだ。お前達にだってあるだろう? だからその歌で月の欠片が地上に落ちるのを防いだ。その歌…!シンフォギアで、戦ってみせた!!」

 

「違う! そうするしかなかっただけで…そうしたかった訳じゃない…私は、戦いたかった訳じゃない!シンフォギアで…守りたかったんだ!!」

 

 

「…それでも戦え」

 

 

戦いたくないと言う響にキャロルは冷たい視線と言葉でそう言い放つ。

 

「お前達シンフォギアと仮面ライダーに出来る事をやってみせろ!」

 

「人助けの力で戦いたくないよ…」

 

その言葉にキャロルが反応する。

 

 

「人助けをして殺される口なのか!?」

 

キャロルは更に陣を作り出す。

 

この映像を見ていた弦十郎は相手が人間を炭化させるノイズでないのならと出ようとするが指揮系統が麻痺してしまう理由で迂闊に出られないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だって…さっきのキャロルちゃん…泣いてた…」

 

「!!」

 

響の言葉にキャロルが反応する。

 

「だったら…戦うよりも、その訳を聞かないと…!」

 

響はキャロルを説得しようと更に言葉を続けようとするが、その言葉は続かなかった。

 

 

「見られた…! 知られた…! 踏み込まれた…!」

 

 

 

キャロルは陣からエネルギーを増幅させる。

 

 

 

「世界ごと!!」

 

 

 

キャロルが指を鳴らす。そして…

 

 

 

 

 

 

 

ぶっ飛べぇぇぇぇぇーーーーッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

閃光と共に強烈なエネルギー波が響を襲った。

 

空間に歪みが起き、未確認のエネルギーと称させる。響に友里が必死に呼びかける中、呆然とする弦十郎。

 

 

 

 

 

 

そして土煙が晴れ、息を切らすキャロルは吹き飛ばした後を見る。

 

「ハァ…ハァ……っ!?」

 

 

キャロルの攻撃で出来たクレーターをキャロル自身が見て目を見開く。

 

そこに響の姿は無く、代わりにクレーターになってない地面に響と響を抱えて下ろしている黒い仮面ライダーが居た。

 

 

「あ、貴方は…」

 

「許さん」

 

「え?」

 

「そうやって無謀な行動で命を落とすなど、ゲームマスターの私が許さん!」

 

「え!?え、えぇっと。ごめんなさい!」

 

響は目の前のライダー”ゲンム”に怒鳴られ思わず謝る。

 

そして新たに現れたライダーの登場にキャロルは舌打ちする。

 

「ちっ、新たな仮面ライダーか」

 

 

「キャロルちゃん…どうして…世界を…」

 

響はゲンムに手で前に出ない様に静止されながらキャロルに問いかける。

 

 

「父親に託された命題だ。お前にだってある筈だ」

 

「お父さんに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「め〜んどくさい奴ですねぇ〜。」

 

 

 

高所で座っていた少女の声にキャロルが反応する。

 

「見ていたのか…性根の腐ったガリィらしい。」

 

ガリィと呼ばれた少女はキャロルの元に飛び降り、バレエの様に動くガリィ。

 

「や〜めてくださいよ〜。こういう風にしたのはマスターじゃないですか〜。」

 

「想い出の採集はどうなっている?」

 

「順調ですよ。でもミカちゃん大喰らいなので足りてませ〜ん!!」

 

ガリィはわざとらしく泣き真似をする。

 

「なら急げ。、こちらも出直しだ。秋人もそろそろ戻って来る頃だ」

 

「りょうか〜い! ガリィ頑張りま〜す☆」

 

ガリィはピンク色の宝石の様な物を取り出すと、地面に落とし、魔法陣を展開。バレエのポーズをして姿を消した。

 

「今日はこんな所だな。次は戦え。でないとお前らの何もかもを打ち砕けないからな。それから、新たな仮面ライダーよ。名は何という」

 

「……仮面ライダーゲンム」

 

「ゲンムか。お前と死神を含めたライダー共は秋人が必ず葬り去る」

 

キャロルがそこまで言うと彼女もガリィと同じ方法でその場から退去する。

 

 

「ライダー以外に、面倒な敵が現れたか。おい、シンフォギアとやら、無事か?」

 

「託された…私にも…でもお父さんから貰った物なんて…何も…」

 

「ッ!?おい!」

 

響は何か呟きながらゲンムに助けられたとはいえ先ほどのエネルギーによる衝撃と火災で逃げ遅れた人々の救助作業による疲労で気を失ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方ディケイドとクローズの戦いはディケイドの優勢で進んでいた。

 

「(これが……死神の実力)」

 

「(コイツ、今までのライダーと違ってちゃんと戦う奴の動きだ。一応倒せない事はないが、向こうの手札が分かってない状況であまりカードの乱用は控えたいんだが…)」

 

2人は互いに距離を取って次の一手はどうするか、どうすれば目の前のライダーを倒せるかを模索していた。

 

〈おい秋人〉

 

「!」

 

〈オレの用事は取り合えずは済んだ。お前も死神とやらとの戦闘を切り上げて戻ってこい〉

 

「〈ッ、了解〉死神、この勝負預けるぞ」

 

「あ?」

 

クローズはビートクローザーを逆の手で逆手に持ち替えるとキャロルとガリィが持っていたのと同じジェムを取り出し地面に叩きつける。

 

そして展開された陣によってその場からキャロルたちと同じ方法で退去する。

 

 

「…ちっ、逃がしたか」

 

ディケイドは敵を逃した事に苛立ちつつも、先ほど響がいた場所に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?どうしてくろ…ゲンムが居るんだ?」

 

「少し嫌な予感がしてね。来たら彼女と謎の少女が対面していて攻撃されそうになったところを止む負えず変身して助けたといったところだ」

 

響のところに戻ったディケイドに戻った正輝はそこに居たゲンムこと黎人がいた事に困惑しながらも説明を受けて納得した。

 

ゲンムは気を失った響を近くに合った被害が無かった建物に背中を預ける様に座らせた。

 

「で、ライダー以外にも厄介な奴らが出てきてるみたいだが」

 

「分かってる。たった今クローズと戦ったからな、どうやらこの世界でのライダーバトル。一筋縄ではいきそうにないな」

 

ディケイドとゲンムは互いに向き合い先ほど遭遇したキャロルとクローズについて話し合った。

 

「まあここで色々言っても仕方ない。もう少しでこの子の所属している組織の仲間が来る頃だ、戻るぞ」

 

「ああ」

 

ディケイドとゲンムはディケイドが開いたオーロラカーテンの先に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









戦姫絶唱しないライダーフォギア


「そういえば、シンフォギアって歌いながら戦うんだよな?
だったら戦いの途中で煙とか苦しいんじゃないのか?」

「大丈夫です!平気へっちゃらですから!」

「というかそっちの司令官霊長類最強とか言われて、しかも腹ぶち抜かれてもピンピンしてるって聞いてるけど?」

「師匠は強いですからね!」

「……マネージャーの癖に忍者みたいな奴もいるって聞いたんだが?」

「緒川さんは凄いですからね!」

「何でもかんでも一言で済ませようとするんじゃねえ!お前らの組織頭可笑しいやつ多すぎんだろ!」









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ライダーバトルとは

 

錬金術師にして今回の事件の首謀者である”キャロル・マールス・ディーンハイム”の襲撃からしばらく。

 

響を含めたシンフォギア装者たちは現在S.O.N.G.の本部がある潜水艦の中にいた。

そこでは今回の事件の状況報告がされており、そこでは今回の被害が甚大でありあろうことか風鳴翼と雪音クリスのギアが先の戦いによって損傷してしまった事も報告されていた。

 

彼女達が遭遇した敵は響が目撃した青い少女の様な見た目の敵、オートスコアラーと呼ばれる人形と同じ存在であった。

しかも、彼女達がギアを破損する要因となったのはオートスコアラーだけでなく新たに現れたノイズ”アルカ・ノイズ・と呼ばれるものによって分解されてしまい、今となってはギアを展開できる機能が損なわれている状態だった。

 

現状で戦闘に参加できるのは”LiNKER”と呼ばれる薬品の投与を必要とするシャルシャガナの装者”月読調”とイガリマの装者”暁切歌”。そして以前の戦いから未だ破損したままの状態のアガートラームの装者の”マリア・カデンツァヴナ・イヴ”を除けばガングニールの装者である響しかいなかった。

 

 

そんな彼女達の元に現れたのがクリスが戦っていた場所で発見されたキャロルと瓜二つな顔つきのホムンクルス”エルフナイン”だった。

彼女はキャロルに命じられるがままにとある巨大装置の建造に協力してきたが、ある日、詳細は不明だがその装置を使う目的が世界の分解という恐ろしいものだと知りキャロルの元を脱走。

そしてエルフナインのもたらされた情報により、キャロルの目的がアルカ・ノイズの万物を分解する力を世界規模で講師するための巨大装置”チフォージュ・シャトー”を使った世界の解剖という事。そして、アルカ・ノイズ相手には今のシンフォギアではまず勝てないという事で、ギアの強化をする方向で話が進められた。

 

だが、S.O.N.G.にとってはまだ気になっている事があった。

 

「エルフナインくん。そのキャロルという今回の首謀者の大方の目的については理解した。

だが、もう一つ教えてほしい。響くんがキャロルと遭遇した際に彼女の隣にいたという仮面ライダーについて。そしてライダーバトルというものについて、知っている事があるのなら話して欲しい」

 

「はい、元々皆さんにはそれも含めてお話するつもりでしたから」

 

そもそもエルフナインの言うキャロルの計画の阻止には、どうしてもオートスコアラーとキャロルと一緒に居た仮面ライダークローズも含めてどうにかしなくてはならない。なので、彼女の持っている情報はとても重要なのだ。

 

 

「まず、キャロルと一緒に居る仮面ライダーの名前はクローズ。

ボクも詳しく聞いた訳では無いので、力の詳細は分かりませんがどうやら青いドラゴンをイメージした仮面ライダーみたいです。

そしてクローズの名前は”園崎秋人”。彼はどういった経緯かは不明ですがキャロルに拾われそれに恩義を感じた彼はそれ以来キャロルの為にその力を使うと誓いました」

 

「園崎秋人…」

 

「名前からして日本人だよな。けど拾われたってどういう事だ?」

 

「雪音、今は分からない事を言っても仕方がない。

それより立花、お前もそのクローズとやらと対峙したのだ。武装については何か分かるか?」

 

「へ?」

 

翼にクローズについて聞かれた響だったがどうやら考え事をしていたようで翼の質問にも直ぐに答えられなかった。

 

「おい話聞いてたのか馬鹿」

 

「響さん、どうしたんですか?」

 

「もしかして、そのキャロルって奴に何かされたデスか!?」

 

彼女の後輩であり最近仲間になった調と切歌は彼女の身を案じる。

 

「う、ううん!大丈夫!少し考え事してただけだから!」

 

「大丈夫か?もし体調が優れない様であれば」

 

「本当に大丈夫ですから!

その秋人さんって人が使ってた武器ですよね。確か、剣みたいなのを使ってたと思います」

 

「そ、そうか?なら良いのだが」

 

響の様子に違和感を覚えた翼だが今はエルフナインから仮面ライダーについて聞き出すのが先決と判断した。

 

「話を続けます。

秋人さんが変身するクローズを含めた複数人の仮面ライダーが殺し合うのが、ライダーバトル。命をかけたバトルロワイヤルだそうです」

 

「その、ライダーバトルとやらは何なんだ?

我々も既に他のライダーからは死神と呼ばれているリュウガというライダーには遭遇したのだが」

 

「ッ!?死神!死神と言ったんですか!?」

 

弦十郎はエルフナインからライダーバトルについての情報を聞き出そうと話ていたが、彼が出した死神というワードに彼女は過剰に反応してきた。

 

「お、おう。確かに言ったが…。どうしたんだ?」

 

「あっ。ご、ごめんなさい。

実は、シャトーで聞いた事がある名前だったので」

 

「知ってるの!?エルフナインちゃん!」

 

「はい」

 

 

響に質問されて、エルフナインは一呼吸置いてから説明を始めた。

 

 

それは、エルフナインがまだシャトーの建造に関わっており仮面ライダークローズこと園崎秋人がキャロルに拾われて間もない時の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

~回想~

 

「よし秋人、早速話してもらうぞ。

お前の言うそのライダーバトルについて。まさか、答えたくないとは言うまい」

 

「そんな事思ってないよ、ちゃんと全部話す」

 

チフォージュ・シャトーの玉座の間で、キャロルは自身の身の丈は優に超える玉座に座り見下ろす形で秋人の話を聞いていた。

彼らの周りには今は待機状態の4体のオートスコアラーたちが居り、丁度その時エルフナインも話を聞いていた。

 

 

 

「ライダーバトルっていうのは、僕を含めた仮面ライダーの力を持った奴らが最後の一人になるまで殺し合う文字通りのバトルロワイヤルだ。

しかも僕はまだアタリの分類だけど、そうじゃない奴らは戦い抜くのも難しいハズレの量産型ライダーを与えられるんだ。そしてそのライダー達はこの世界だけじゃなく他の世界にも送られてそれぞれの世界も巻き込んで戦っている」

 

「…」

 

「やっぱり信じられない?」

 

ありのままを話した秋人だったが、キャロルは少し目を見開いたままで何も言わなかった。

だが、それもほんの少しの時間で彼女は直ぐに気を取り直して話す。

 

「いや、済まない。規模が大きすぎてな。

だが、お前の持つその力とこの前始末したライダーが持っている力が別の世界から来たものだと言われればある程度の納得はいく。

それより、お前の話では相当な数のライダーが参戦していると聞く。一体そのライダーバトルとやらは何の目的で行われている?まさか、勝ち残れば永遠の命が与えられるとでも言うのか?」

 

「…大体合ってる」

 

「…は?」

 

適当に答えた考えがまさか当たっていた事にキャロルは思わず間の抜けた声を上げてしまう。

 

「正確にはそれ以上の物なんだ。

ライダーバトルで勝ち残った最後の一人は、どんな願いでも叶える権利が与えられる(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)んだ」

 

「なぁっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どんな願いでも叶える権利だぁ!?」

 

エルフナインの話に出て来た内容に、途中にも関わらずクリスは声を上げる。

いや、クリスだけでなく彼女以外のシンフォギア装者だけでなくS.O.N.G.のメンバー、更には弦十郎までも驚愕した顔をしていたのだから。

 

「おいおいおい!話が大きすぎんだろ!

ライダーバトルってのがヤバイやつだって分かったのは良いが、その景品とやらの内容がとんでもなさすぎるだろ!」

 

「落ち着け雪音」

 

「だが、クリスくんの反応も最もだ。

エルフナインくん、その秋人とやらは確かにそう言ったのか?」

 

「はい、秋人さんは確かにそう言いました。

ライダーバトルで勝ち残れば、永遠の命どころか巨万の富も、名誉や地位も、自分の望む理想の世界も

 

 

 

 

 

死者の蘇生さえも可能だと言っていました」

 

 

「「!?」」

 

 

その言葉にその場にいた全員、特に翼とマリアは更なる驚愕に襲われた。

何故なら、翼は自分のかつての相棒でありガングニールのシンフォギア装者だった”天羽奏”を、マリアは自分の妹でありアガートラームの装者であった”セレナ・カデンツァヴナ・イヴ”を失ったからである。

そんな彼女達にとって、死者の蘇生など到底聞き逃せる単語では無かった。

 

しかし、そんな彼女の言葉に待ったをかけたのは調と切歌だった。

 

「ちょ、ちょっと待つデスよ!話が大きすぎるデス」

 

「それにそれが本当だとしても、そんな事出来るのは神様でもなくちゃ…」

 

「皆さんが驚くのは無理も無いです。何故なら、本当に神様が開いたゲームだそうですから」

 

「なっ!?」

 

 

 

 

 

「秋人さんが口にしたその神の名前は、”アベル”」

 

 

「アベル…アブラハムの宗教における、聖書の創成期に出て来たと言われる人物か」

 

「そのアベルと同じかは分かりませんが、アベルという神が言ったそうです。

『ライダーバトルに勝ち残れば、どんな願いでも叶えてやる』と」

 

「ちょっと待って!

そのアベルというのが本当に神様か分からないのに、その仮面ライダーになった連中はそれを信じて殺し合いなんてやっているの!?」

 

マリアの疑問も最もだろう。

何故なら、普通であれば神を名乗る人物など怪しさ以外の何物でもない。しかもアベルが要求しているのは殺し合い。

普通に考えればそんなものを信じてこんな戦いに参加する事など、普通じゃないと思わざるを得ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「信じるしかなかったそうです。

何故なら、ライダーバトルに参加した人は全員、一度死んでいるんですから」

 

 

 

 

 

「ッ!」

 

エルフナインの言葉に、今度は全員の表情が凍り付く。

中には両手で口を押えている者もいた。それほどまでに今の言葉は信じがたかったからだ。

 

 

「ま、待て待ってくれ。

君は今、何と言ったんだ…」

 

「驚かれるのも無理はありません。

ですが、アベルと呼ばれる神は秋人さんを含めた一度死亡した人達を蘇生させて仮面ライダーの力を与えたそうです。秋人さん曰く、ライダーの中には”生き返って人生をやり直したい”という人達も居たらしいですから」

 

「・・・」

 

最早その言葉に口出し出来る者は誰も居なかった。

それが本当なら、彼らは一度死んで生き返ったにも関わらず自分の願いを叶える為再び死ぬかもしれない殺し合いの場に参加したという事になる。

だが、いつまでも黙っていては話が進まないので弦十郎は何とか持ちこたえて話を続ける。

 

「…成程、ライダーバトルについてはあらかた理解した。

では、もう一つ。君は死神という単語に反応を示したが、それはどういう事だ?」

 

「はい…」

 

 

 

 

「死神というのは、彼の事を恐れた他の仮面ライダー達によってつけられた異名です。

死神は、複数の仮面ライダーの力を使い他の仮面ライダー達を次々と葬っていると。だから秋人さんも、その死神を特に警戒していたようでした」

 

成程、と弦十郎は納得する。

複数の仮面ライダーになれる事は既に確認済みである上に、他の仮面ライダーの様子から死神は特に異様な存在であるという事も把握出来た。

 

そんな中、エルフナインに質問してきたのは翼だった。

 

「エルフナイン、そのリュウガ…死神について他の情報はあるか?

例えば性格や奴の目的などが分かっているなら教えてほしい」

 

「翼さん…」

 

「立花、お前が奴を信じたい気持ちは理解している。

だが、我々はキャロルという錬金術師だけでなくその仮面ライダー達をも相手どらなければならない。

ならば、まず死神についての情報を知る必要がある」

 

「先輩の言う通りだぜ、こんな訳の分かんない状況で恐らく一番敵に回っちまったら厄介な奴の情報を知れるかも知れねえんだ。この機を逃す手は無いだろ」

 

「…」

 

翼とクリスの言葉は響も理解している。

実際に実質的に戦える戦力がS.O.N.G.側は響しかいない状況だ。だから、少しでも周りの情報を得て手を回すに越したことはない。

しかし、立花響という人間の行動原理はいつだって人助けと誰かと手をつなぐ事だった。

彼女は、死神ともその手を取り合えないかと願っている。例えそのライダーバトルで彼が他の仮面ライダーを何人も殺していたとしても。

 

「皆さんの質問ですが、残念ながらボクが知っている情報の中で死神の行動原理や目的などは把握していません。

ですが、ハッキリと言えるのは死神は自身に向かって来る敵やライダーバトルの参加者は容赦なく叩き潰す事。

そして、キャロルたちを止めるにあたって死神の様な仮面ライダーの味方は秋人さんを抑えるのに必要不可欠という事だけです」

 

 

『・・・』

 

エルフナインのその言葉に、皆はそれぞれ何を感じただろう。

恐れだろうか、それとも不安だろうか。

 

しかし、全員の中で一致しているのは”この戦いは今までの物とは違う異質なものになる”という考えだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

響たちS.O.N.G.がこれからの方針を練っていたそのころ。

件の死神こと黒崎正輝は、現在自身のこの世界にある家の地下にある地下室に居た。

 

そこでは、幾つものバイクと”黒いスポーツカー”の様な車。そして恐らく整備途中なのだろう、幾つかケーブルに繋がったベルトが置かれていた。

 

「どうだ?ベルトさんと他のドライバーの状態は」

 

「問題ない、この調子であれば今日までにはこの世界のアルカ・ノイズという怪物相手にも戦える筈だ」

 

「後はこの世界のシンフォギアと呼ばれる連中とその敵対してきた者たちの戦闘データを組み込み、尚且つライダーシステムと干渉してバグを発生させないようプログラムすれば完成だ」

 

その部屋のデスクに備えられたパソコンなどを操作している黎斗と凌馬はケーブルに繋がれたドライバーのアップデートを行っていた。

本来であればライダーバトルの参加者はこの世界に適合し、例えノイズと当たっても分解される事は無いようになっているのだが、正輝の様なイレギュラーはそれが適用されず一からその世界に適合するようにアップデートしなければならなかった。

 

「いつもの様に重加速対策なども怠らずに頼む。

それから、他のシステムのメンテナンスも」

 

「分かっている、この程度の作業。我々にとっては何の苦でもない」

 

「そうだ。だから君は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「我々のクリエイティブな時間の邪魔をするなぁあああああああああっ!!!!」」

 

 

 

 

「煩っ!?というか、凌馬!お前明らかにそんなキャラじゃなかったよな!

完全に楽しんでんだろ!」

 

「おっと、これは失礼。つい」

 

「…兎に角、君は上で休んでいたまえ。

ここぞという場面で倒れられては困る。ブレイブの様に甘い物でも食べてればいい」

 

「そうしておく」

 

2人の恐らく今後も慣れる事のない(凌馬に関しては完全な悪ノリだが)対応に少し退きながらも、彼らの提案を飲んで大人しく上の部屋に戻って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

「はぁ、アイツ等完全に遊んでないか?

黎人に関してはまあアレがデフォなのは分かっているが…」

 

 

一階のリビングで正輝はソファーに座っていた。

彼は先程の黎人達の豹変っぷりに少しグッタリしていた。

 

「(ま、あの2人性格に難ありだけど腕前は確かで今までの世界も助けてもらったから、俺も強くは出られないんだけどな)」

 

そう、今までの世界でも彼らに正輝は助けられた。

そもそも彼らが居なければ、この世界でアルカ・ノイズと戦った際には成すすべなく分解されそれ以前に訪れた世界でも情報を操作して思う様にも動けなかっただろう。

 

「さて、今は黎人に言われた通りにゆっくり休憩でも取るかね…」

 

 

彼らに提案された休息を取ろうとした彼は、ふと今までの世界で葬って来たライダーの事を思い返していた。

 

 

「これで4つ目の世界…この世界での戦いを終えればようやく終わる…」

 

彼は他のライダーから恐れられる死神として戦って来た。

しかし、その中には手に掛けた事を後悔したライダーが居ないかと言われれば嘘になる。

 

何故なら、このライダーバトルの参加者の内何割かは”自分の意思で参加したのではない”のだから。

 

けど、もう止まれない。

彼はもう、後戻りできない所まで既に来ていたのだから。

 

「あともう少し…もう少しなんだ…」

 

まるで自分に言い聞かせる様に、正輝は片手を顔の上に置きながら呟く。

 

〈〈・・・〉〉

 

 

そんな彼の様子を、彼の中に居るエボルトとカゲロウは今回は何も言わずにそのままにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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シンフォギア CM風短編

今回の話は、偶々見たシンフォギア CMの動画に影響されて書いた本編とは全く関係ない話です。
CMのオープニングは皆様の好きな曲を脳内再生してお楽しみください。


 

その一(黒崎将輝)

 

「幾つもの世界を巡ってきたかと思ったら、今度は歌姫だの錬金術師だのたちを相手にしなきゃいけねえのかよ。

しかも調べてみたら月は一部欠けてるわ、最近全国ネットでアイツらの戦いが配信されてたらしいわと。この世界、ライダーの世界よりツッコミありすぎじゃないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

その二(立花響)

 

「新たな敵は錬金術師、そして仮面ライダー⁉︎

あーもう色々ごちゃごちゃしてきたよ〜!

しかも私、この物語始まって早々に倒されてるしスプラッターな光景見せられたりして、私一応原作主人公だよね⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その三(園崎秋人)

 

「初めまして、園崎秋人です。

某半分こライダーのラスボスの名字に似てると言われますが、偶然ですからね?

それにしても、流石は業界一過酷と名高いシンフォギアの現場ですね。

初っ端から人が死んだりシャトルを巨人が受け止めたり、最終的には神様が現れたり。

まあ、これ以上に濃ゆいメンバーは現れないでしょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その四(マリア&セレナ)

 

「マリア姉さん、私…出番が欲しい」

 

「待ってセレナ!原作だと貴方の出番は後半にあるから!

それに、この話が始まって私なんて初っ端から浜辺に倒れたり本部で少しセリフが出てきたくらいだから!

出番を欲しがるにはまだ早いわ!」

 

「…それ、全然安心できない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その五(某英雄志望&某自称神。ついでにタヤマに爆走バイク)

 

「宣伝だと?冗談じゃない!

友達以上英雄未満である僕の出番さえまだなこんな作品の宣伝なんて、してたまるか!」

 

「ふっ、哀れだな。

私は、恐らくこの先はずっと出番が約束されている。矢張り、神と英雄擬では差がありすぎると言う事だ!」

 

「ええい黙れ!

裏切られて消されたと思ったらギャグ風に出てきて、更には最初の静かさはどこに行ったのかと言わんばかりにバグった貴様に言われる筋合いはぬぁい!」

 

「何だと!ではどちらがこの宣伝を印象深くできるか勝負といこうではないか!」

 

「望むところどぅああぁ!」

 

「ヴゥェハハハハハハハハ!!!」

 

「ウェハハハハハハハハハハ!!!」

 

「「煩い(煩ぇ)!」」

 

「「キュッ」」←カメラ目線で口を閉じる2人

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その六(切歌&調)

 

「………」

 

「調ぇ!これ宣伝デスよ⁉︎早く何か言わないと!」

 

「………」

 

「どうして今回に限ってはあの「ジー…」が無いのデスか!」

 

「………出来ない」

 

「へ?」

 

「この小説のタイトルには…Gが無い」

 

「あっ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その七(小日向未来)

 

「こんにちは、小日向未来です。

この話が始まって、最初の登場から今のところ殆ど出番がありません。

私一応原作だと主要キャラの筈なんだけどなぁ。

しかも最近は響が仮面ライダーさんについて色々巻き込まれて私との時間が減る始末………。

おのれ仮面ライダー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その八(ソウゴ&ウォズ)

 

「祝え!」

 

「うぉっ⁉︎どうしたのウォズ」

 

「決まってるじゃないか我が魔王。

シンフォギアXDで仮面ライダーとのコラボを実現した時のための祝いの練習さ」

 

「いやまだ決まってもないじゃん。

というかXDってゴ○ラとかガ○ラとかの怪人だけじゃなくて、ULT○AMANだったりついには戦隊でキ○メイジャーとかともコラボしてるのに、いまだに仮面ライダーとのコラボが無いよね」

 

「もう他の特撮作品には手を出してると言うのに、何故ライダーだけ…」

 

「そこは悲しい大人の事情とか色々納得するしかないね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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3人の仮面ライダー

 

〜シャトー 王室〜

 

玉座に座り見下ろすキャロルの視線の先には、彼女によって作られた4機のオートスコアラー“終末の四騎士(ナイトクォーターズ)の内のガリィ、ファラ、レイアの三機が現在活動状態で佇んでいた。

そして、キャロル陣営に所属する仮面ライダーである秋人もそこにいた。

 

そして、まだ動いてない赤いオートスコアラーにガリィは近付く。

 

「それじゃ、いきまーす」

 

ガリィはそのオートスコアラーの唇に自らの唇を重ね合わせる。

すると彼女達の口の間を光が行き来したかと思うとガリィは少ししてから唇を離す。

 

「ん…んぅ?」

 

すると、先程まで動かなかった赤いオートスコアラーが動き始めた。

しかし、起動し始めたばかりだからか動きがぎこちなくそのままその場に座り込んでしまう。

 

「ミカを起動させる為の思い出の採取に、思いの外時間が掛かった様だな」

 

「嫌ですよ、マスター。これでも頑張ったんですよ。なるべく目立たずに事を進めるのは大変だったんですから~」

 

「まぁ、いいだろう。これでオートスコアラーは全機起動。計画を次の階梯に進める事ができる。

秋人、何度も言う必要は無いとは思うがお前の役割は…」

 

「仮面ライダーに“オートスコアラーを一体も破壊させるな“。でしょ?

大丈夫、ちゃんと覚えてるし計画の邪魔もさせない」

 

「ならば良い」

 

「うぅ〜………」

 

現状の再確認を行なっていると、突然ミカの口から何か不満な声が聞こえてきた。

 

「………どうした?ミカ」

 

「うぅ…お腹が空いて、動けないゾ………」

 

「…ガリィ」

 

「あーはいはい、ガリィのお仕事ですね」

 

「ついでに一仕事こなしてくるといい。

秋人、お前も万が一に備えてついていけ」

 

「分かった」

 

ミカと呼ばれたオートスコアラーは他の三機より高出力で戦闘に特化しているが、その為オートスコアラーのエネルギー源である“思い出“の消耗が激しい上に、ミカ自身にそれの採取機能が無いのだ。

だからその機能を持ち尚且つ他のオートスコアラーへ譲渡できるガリィがミカへの補給を担当する事になっていた。

 

「足引っ張んじゃ無いわよ秋人」

 

「分かってる。僕がやるべき事はライダーの排除と、ガリィのサポートだから」

 

「分かってんなら良いわ。

あ、それとマスター。エルフナインは連中に保護されたみたいですよ?」

 

「把握している」

 

ガリィがキャロルに報告すると、確認が終わった彼女は手にテレポートジェムを持って秋人がちゃんと隣にいるか確認する。

 

しかし秋人は、ガリィの隣に来る前にミカの方に片膝をついて頭を撫でていた。

 

「うぅ〜、お腹空いたゾ〜…」

 

「大丈夫。ガリィがもっと思い出獲ってきてくれるから、もう少し我慢しようか」

 

 

 

「…ほら、行くわよ」

 

「うん」

 

ガリィは何か言いたげな様子だったが、直ぐに彼が隣に来たの確認を取るとガリィはテレポートジェムで秋人と共に自らの仕事をこなす為に転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

響と未来はその日いつも通り授業を受けて、クラスメイトである3人と一緒に帰宅していた。

そこで流石に先日本部に訪れたエルフナインや仮面ライダーについて話すわけにもいかないので、響は1人その仮面ライダーについて悩んでいた。

 

どうすれば彼らの戦いを終わらせられるのか、どうすれば死神と呼ばれた彼と手を取り合えるのか。

 

「………」

 

「ねえビッキー聞いてる?」

 

「えっ⁉︎な、なな何?」

 

「今日の授業に出て来た確率の話ですよ」

 

「またぼーっとしてたでしょ」

 

「あ、あはは…そうだっけ?」

 

どうやら彼女はここ最近心ここに在らずといった感じであった。

未来は少し不機嫌な調子で響に問い詰める。

 

「………この頃ずっとそんな感じ」

 

「……ごめん、色々あってさ」

 

響は謝るが未来はどうやら許してくれそうもない。

すると、2人の雰囲気から察したのかクラスメイトである坂場弓美が慌てて話題を変える。

 

「あ、あー!

そ、そういえば最近噂になってるヤツあるよね!

えーっと、仮面ライダーってヤツ!いやーまさかアニメみたいな連中が響達以外にも居たとはねー!」

 

「あ、それの動画なら私も気になって見たよ。

何か出来のいい特撮の動画かと思って最初はびっくりしちゃったよ」

 

「そんなに凄いんですか?」

 

「そうなの!

何なら後で見て見なって!」

 

「………」

 

3人は最近噂の仮面ライダーの話をして弓美の狙い通り響の様子の話から逸れはした。

 

だが、今響が悩んでいるのはその仮面ライダーについてであり彼女の顔色は更に辛くなる。

 

未来もその仮面ライダーという単語と響の顔色から何となく彼女が何で悩んでいたのかを察したらしい。

何故なら彼女も以前にその仮面ライダー達と会った事があるのだから。だが、いくら友人達といえど気密事項なのでそう簡単に話には出せないのだ。

 

 

するとそんな彼女達の会話が急に止まる。

 

「ね、ねえ………あれ…」

 

その原因は響達も直ぐに分かった。

 

「なに…ッ⁉︎」

 

 

 

 

彼女達の目の前には血の気が失せ倒れている何人もの人間。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その中心に立つ青いバレリーナの様な人形とそんな人形の隣に立つ1人の戦士だった。

 

 

「聖杯に思い出は満たされて、生贄の少女が現れる」

 

そこに立つ青いバレリーナ。

先日響が遭遇したキャロルと一緒にいたオートスコアラー。ガリィは性根の悪い笑みを浮かべ、その隣に立つキャロルの仮面ライダークローズこと秋人はそんな彼女の隣で変身した状態で響達を見据える。

 

「キャロルちゃんの仲間…だよね」

 

「そして、貴方が戦うべき敵」

 

「違うよ!私は人助けがしたいだけ!

戦いたくなんて無い!」

 

「…チッ、コイツは」

 

「予想よりめんどくさそうだね」

 

響の戦意のなさに、ガリィは悪態をつき秋人は呆れた様子で彼女を見る。

しかしガリィは直ぐに気を取り直し、いつのまにか持っていたジェムを辺りに撒き散らす。

 

すると、辺りに魔法陣が展開されそこから無数のアルカノイズが現れる。

 

「そんな…ッ」

 

「ノイズ⁉︎」

 

再び現れた人類の天敵に未来達の顔色は恐怖に染まる。

その反応も当然だ。何故ならノイズは、以前の事件の際にバビロニアの宝物庫でネフィリムと共に燃え尽きた筈なのだから。

 

「貴方みたいに面倒くさい相手を歌わせる方法はよ〜く知ってるの」

 

「コイツ性格悪っ!」

 

「あたしらの状況も良く無いって!

しかもアイツの隣にいるのって多分仮面ライダーだよ⁉︎」

 

「このままじゃ…」

 

「頭の中のお花畑を踏み躙ってあげる。

ほら、アンタも行くのよ秋人」

 

「分かった」

 

ガリィの指示にクローズは素手のまま、しかしそれでいて威圧感のある歩みではは達に一歩一歩近づいてくる。

 

 

「立花響、だっけ?

さっさと歌った方が良いよ。ボクも、可能なら君の友達まで巻き込みたくはないからさ」

 

「待ってください!

どうしてこんな事をっ」

 

「その理由を君が知る必要は無い。君はただ、歌えば良い。

じゃないと、君の友達を1人ずつ殺すよ」

 

「ッ!」

 

クローズは本気だ。

目の前の仮面ライダーの殺気からそれを理解した瞬間に響は、首にかけたギアペンダントを掴み聖詠を口にする。

 

 

 

 

 

しかし、それは出来なかった。

 

 

「げほっ…けほっ………ッ⁉︎」

 

「響?」

 

歌を口にしようとした彼女は咳き込むだけで、一向に歌う気配がない。

そんな彼女の異変に気づいた未来は怪訝そうな目で彼女を見て、ガリィは更に苛立つ。

 

「いい加減、観念したら?」

 

 

 

 

 

 

 

「ガングニールが…応えてくれないんだッ…」

 

「何?」

 

ギアを纏えないと言う響に、秋人は仮面の下で少し目を見開きガリィも予想外の事態に直ぐに策を巡らせる。

 

(ギアを纏えないコイツと戦ったところで意味はない。

ここは、試しに仲良しこよしを粉ひいてみるか?)

 

ガリィは目的の為に響を何とか戦わせようと活策し始める。

それは秋人も同じで、脅し目的の攻撃を放つ構えをする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だぁ?随分と賑やかだな」

 

「「「「「「「⁉︎」」」」」」」

 

そんな緊迫とした状況の中で、気怠げなそれでいて異質な何かを感じる男の声がその場の全員の耳に聞こえて来た。

 

全員が弾かれるようにそちらを見ると、茶髪の20代から30代くらいの男で茶色の革ジャンを着ているいかにもな風貌の男が居た。

 

しかもその男は周りのノイズを見ても怯える事なく、寧ろ獰猛な笑みを浮かべていた。

 

「ノイズが一、二、三、四、五…お?何だよちゃんとライダーも居るじゃねえか。

しかも、あの“クソ神“が言ってたシンフォギアまでいやがる」

 

「なっ⁉︎」

 

男の言葉に響は驚愕する。

男が仮面ライダーについて、そして自分がシンフォギア装者だと言う事を知ってたからだ。

更に、今彼の口から出て来たクソ神という言葉。

 

「(この人もしかして、ライダーバトルを開いた神様について何か知ってる⁉︎)」

 

「ね、ねえまた変な人が出たんだけど…」

 

「それより、ちょっとそこの人!早く逃げた方が良いって!」

 

「そうです!早くお逃げください!」

 

突然の男の登場に驚く一同だったが、周りのノイズと仮面ライダーの存在がいかに危険かを理解している3人はその男にそう呼びかける。

 

 

 

「あ?煩えガキどもだな黙ってろ。

折角ライダーにシンフォギアに会えたんだ。祭りは楽しむもんだろ?」

 

 

男は獰猛な笑みを更に深めると、懐から黒と赤の配色で正面にモニターの様な物があるドライバーを取り出す。

 

「ッ、それは…」

 

「お?やっぱりライダーなら分かるか。

じゃあ、俺が何に変身するか。分かるよな」

 

男はそのドライバー“デモンズドライバー“を腰に当たるとベルトが巻かれ装着される。

そして、懐から蜘蛛のレリーフが掘られた“スパイダーバイスタンプ“を取り出し、スイッチを押しドライバー上部のパッドに押し当てる。

 

《スパイダー》

 

《Deal…》

 

「ハァ〜。…変、身」

 

禍々しい待機音が流れ始め最後の工程として、スタンプをモニター部分に押し当てる。

 

 

《Decide Up!》

 

 

すると彼の横からどこからか降りて来たのか糸から垂れながら銀色の蜘蛛が降りて来た。

 

《Deep. (深く)Drop. (落ちる)Danger. (危機)》

 

《(仮面)Rider.Demons‼︎》

 

 

銀色の蜘蛛が糸を吐きながら跳び回り糸が男を包み込んでスーツが形成する。そして、蜘蛛が右肩に取り付き、上半身がクモの巣状の意匠に覆われ、変身が完了した。

 

「そのライダーは…」

 

「仮面ライダー、デモンズ。

さあ、楽しもうぜ」

 

デモンズに変身を完了した男は声からも分かるくらいに上機嫌で、それでいて油断なくクローズにゆっくりと歩み寄る。

 

普通なら助かったと思う場面だが、男の雰囲気から並々ならぬ危険を響達は感じていた。

 

「ね、ねえあの人も仮面ライダーなの?

何だか怖いんだけど…」

 

「そ、それに味方って割には雰囲気が変だけど…」

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔しないでもらえるかな?

僕たちはそこにいるガングニールの女に用があるんだ」

 

「あ?何だ、お前そこのシンフォギアとも戦いたいのか?

なら早く言えよ」

 

デモンズの男はクローズの言葉に何を考えたのか標的をクローズから響達に変更した。

 

「おい、お前も早く纏えよ。シンフォギアってヤツを」

 

「え?」

 

「お前も戦えるんだろ?

あのクソ神の言葉通りなら、ライダーと堂々かそれ以上の力を持つって聞いた時から戦いたくて仕方なかったんだよ」

 

デモンズは手を広げながら響に戦う様促す。

しかし、それを彼女がはい分かりましたと言うわけもなかった。

 

「どうして…どうして戦うんですか!

ライダーバトルというのが、どんな願いも叶えるからなんですか⁉︎

だとしても、他の人を殺してまでどうしてそこまで簡単に…」

 

 

 

 

 

「そんなもん知るか。俺は戦いたいから戦ってんだよ。

それを一々どうこう言われる筋合いも無え。

にしてもさっさと纏えって言ってるだろ?どうしても纏わないなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の隣にいるガキ共から殺してやろうか?あ?」

 

「ッ!」

 

「ひっ」

 

 

デモンズの殺気に響はたじろぎ、未来達に至っては悲鳴を上げる者もいた。

 

 

 

 

 

「あらあら♪想定外だけど願ってもないチャンスじゃないの。

秋人、下手に手を出すんじゃないわよ」

 

「…分かった」

 

ガリィはまさかの事態に多少驚きはしたものの、それが自分の狙い通りのシチュエーションだったのでこのまま傍観する事にし、秋人もそれに従う様だ。

 

 

 

「ほらほらほら。早くしねえと、本当に殺しちまうぞ?

………ん?」

 

 

デモンズがあと数歩で響達の元に辿り着くといったところで、何かを察知したのか響達とは別の方を見る。

 

 

すると、その方向からデモンズとクローズ。そしてガリィとアルカ・ノイズ達目掛けて紫の光の弾丸が放たれて来た。

 

「!」

 

「なっ⁉︎」

 

「ちぃっ!」

 

その攻撃をデモンズとクローズは腕で防御し、ガリィは咄嗟に氷の障壁を展開して防ぐ。

しかしアルカ・ノイズ達はその光弾に貫かれ全て赤い塵となって崩れ去った。

 

突然の攻撃にその場の全員が驚愕してその方向を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ。ようやく見つけたぞ、悪魔野郎」

 

その方向からは、右手にチェーンソーと銃口がゲーム機のような物と一体化したアイテム“ガシャコンバグヴァイザーを装備した将輝が主にデモンズを睨みつけて現れた。

 

「リュウガさん!」

 

「ッ!あの人が⁉︎」

 

響の言葉に以前仮面ライダーリュウガを見た事があり名前を知っている未来は反応する。

 

 

 

「………くくく、くははは、グハハハハハハハハッ!!

あぁ、ようやくか。会いたかったぜぇ、死神ぃ!」

 

「ああ、俺もだよ。お前をぶっ殺したくて仕方なかったからな」

 

デモンズは突然狂った様に笑い出し狂喜と呼ぶに相応しい声で将輝を見る。

そんな将輝は、側から見ても分かるくらいにデモンズに殺気を向けていた。

 

「嬉しいなぁ、俺の事を覚えててくれるなんて」

 

「忘れてたまるかよ。あの日、あの場所で、あのクソ神のくだらない暇つぶしでお前に“全てを奪われた“あの瞬間を」

 

「(奪われた?)」

 

将輝の言葉に響はどう言うことかと疑問を持つが、そんな彼女の事など知る訳もなく将輝は腰に蛍光グリーンの本体に蛍光ピンクレバーの付いたドライバー“ゲーマドライバー“腰に装着する。

 

 

「ここで会ったが100年目とでも言えば良いのか?

お前をここで倒して、あのクソ神の事を聞き出すだけ聞き出した後に、削除してやる」

 

 

懐から取り出した紫のゲームカセットの様なアイテムを取り出し起動させた。

 

《マイティアクションX》

 

「グレード2。変身」

 

起動させたそのガシャット“プロトマイティアクションX“をドライバーの左側の右スロットにセットし、レバーを開く。

 

《ガシャット!》

 

《ガッチャーン! レベルアップ!》

《マイティジャンプ!マイティキック!

マイティアクショーンX!!》

 

開かれたドライバーから1人のライダーの絵柄が飛び出すと同時に将輝の周りに何人かのライダーのセレクト画面が展開される。

そしてその中にある黒いライダーのアイコンを素早く選択すると、紫色のゲートの様に先程の絵柄が将輝に重なる。

 

すると彼の体は紫の光に包まれやがてその姿は、以前響が遭遇した仮面ライダー。

仮面ライダーゲンム。アクションゲーマーレベル2へと変わった。

 

「アレはっ!」

 

 

「へぇ、ゲンムか。

面白いじゃねえか」

 

「面白がってられるのも今の内だ。

お前を削除してやる」

 

 

 

 

 

 

「ちっ、面倒なのが増えやがった。

秋人、そいつらさっさと始末しろよ」

 

「分かってる。ライダーは、僕が全員倒す」

 

 

ここに、3人のライダーが集結した。

戦いの火蓋が、今切って落とされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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