スライム狂による幻想王国建国記 (クロマ・グロ)
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建国!スラバッカ王国! その1

新しい小説を連載開始させて頂きました。
クロマ・グロと申します。

以前東方とモンハンのクロスオーバーを投稿していましたが、一段落して本編完結となりましたので平日は毎日二話、12時と午後5時30分にこの小説を投稿し、土日や自分の休日では12時に以前の作品の後日談を一話ずつの投稿をする予定です。

コメント等をくだされば基本的に全てを返信させて頂きますのでぜひ遠慮無くくださるとありがたいです。

評価があるとマグロが狂喜乱舞して周囲をなぎ倒します。

それとちょいちょい誤字るんで容赦なく誤字報告してくださるとすげぇ助かりますw

これからどうぞよろしくお願い致します。


 

諸君、私はスライムが好きだ。

諸君、私はスライムが好きだ。

諸君、私はスライムが大好きだ。

 

スライムが好きだ。

スライムベスが好きだ。

メタルスライムが好きだ。

バブルスライムが好きだ。

ドラゴスライムが好きだ。

スライムナイトが好きだ。

キングスライムが好きだ。

スライムタワーが好きだ。

スライムエンペラーが好きだ。

 

平原で、森で、洞窟で、火山で、塔で、遺跡で、山で、海で、空で、異次元で。

 

この世界に存在するありとあらゆるスライムが大好きだ。

 

 

スライムが群れて合体するのが好きだ。

合体して誇らしそうにプルプルとする姿には心踊る。

 

スライム達の知恵と勇気が好きだ。

スライムが巨大な乗り物に乗って戦う時などその知識と勇気によって強敵を倒した時など胸がすくような気持ちだった。

 

新しいスライムを見つけるのが好きだ。

各種恐ろしい程豊富な種類のスライムがいるが、新種は見つかった時などその生命の神秘に感動すら覚える。

 

スライムが肉を食べてプルプルしてる姿などもうたまらない。

肉を食べすぎて体が伸び、動けなくなってる姿も最高だ。

 

哀れなスライム以外のモンスターが立ち向かって来てそれをスライム一体で無双した時など絶頂すら覚える。

 

スライムに深く関わるモンスターが好きだ。

同じ大戦車であるスラリンガルがスライム系なのに対してエリスグールが物質系なのはとてもとても悲しいものだ。

 

スライム達が負けて涙を流す姿も好きだ。

雑魚として倒されその悔しさに涙を流す姿には自分も屈辱を覚える。

 

諸君、私はスライムを、スライムの為の王国を望んでいる。

諸君、私に付き従う最高のスライム諸君!

君達は何を望んでいる?

 

更なる繁栄を望むか?

広大で自分のやりたいことが出来る土地を望むか?

スライムが国を埋め付くし、そこら中に存在する楽園を望むか?

 

『スライム!スライム!スライム!』

 

よろしい、ならば建国だ!!

 

 

 

 

_________________________________________________

 

 

 

 

私の名はスィラ、スィラ・ムスキーと言う。

 

私はこの世界に存在するマルタ王国という所にモンスターマスターとなるべく召喚されたちょっと特殊な人間なのだが、私はこの世界に来て運命の出会いをした。

 

一目惚れだった………。

 

つるんとした流線的なボディ、プルプルと柔らかいそのさわり心地、シンプルな姿ながら愛くるしいそのフォルム!!

 

そう、私はスライムと運命的な出会いをした。

 

私はスライムを強くし、更に新たなるスライムを集めるべくありとあらゆる時間をスライムに費やした。

 

時には魔王を作ってでもスライムへの配合に費やした。

 

私は自他共に認めるスライム狂いだ。

この国でライバルとして共に研鑽を重ねるイルとルカという双子のモンスターマスターとよく交流を重ねていたが、友人として付き合ってはいるもののやはり私はおかしいらしい。

 

だがそれで良い。

それで良いのだ。

 

ちょっとマルタが滅亡の危機に陥りかけたりはしていたがまぁそこは些末なことなので気にしたら敗けだろう。

 

そして私が新たなるスライムを求めて不思議な鍵と呼ばれる異世界へと繋がる鍵を用いて旅立とうとしていた時だった。

 

「おおーい!!スィラ!待ってくれよー!」

「む?カメハではないか。」

 

突然この国の王子でもあり、私の友人でもあるカメハに呼び止められ、私は振り返った。

 

「お前の夢は確かスライムの王国を作ることだったよな。」

 

「む?あぁ、そのために土地を購入する資金集めや他国との交渉などを進められるように勉学にも励んでいるが。」

 

「ならちょうど良い、この鍵をやるよ。」

「………これは?」

 

カメハから渡されたのは端にリボンの付いた裂け目の中に目玉がいくつもある不気味な飾りが付いた不思議な鍵だった。

 

「そいつはわるぼう曰く『幻想の鍵』っていう代物らしい。」

「ふむ、『幻想の鍵』とな?」

「あぁ、俺やイル達で一度その世界にも行ってみたんだがモンスターも生き物も何も居ないないんだよ。」

「む?それでは何故私にこれを?」

「お前の夢はスライムの国を作ることだ。

それにその鍵の世界には鉱山も海も山も建国に必要な資材になりそうな物が全て揃っている。

更に他国からの干渉もない誰も開拓していない土地と来た。

お前に一番ちょうど良いんじゃないか?」

 

なんと!それはありがたい!

私は思わずカメハに抱きついた。

 

「カメハよ!私は最高の友を持っている事を神に感謝しよう!」

「うぐぉ!?折れる折れる!?

はぁ………とりあえず何も整備とかもされてないし資材も自分で集める必要はあるがそれでいいな?」

「あぁ!私達の団結力を舐めて貰っては困るな!

それに城にするのにちょうど良いモンスターも居るではないか!」

 

そう、スライム系ではないがスライムに関係するモンスターであり、ちょうど良いモンスターを私は仲間にしていた。

 

「ん?あぁ、あいつか。

確かお前デカくしてたよな?なら国の象徴としても良いかもしれねぇな!」

「建国の暁にはカメハを一番最初に誘うことを約束しよう!!」

「おう、楽しみにしてるぜ!」

「あぁ!ではまた会おう!!」

 

そして私は不思議な鍵を起動し、世界を渡る。

 

スライムだけの楽園を作るために仲間のモンスターを全て連れて。

 

 

 





自分が以前書いていた
『かりちゅまより吸血鬼らしい爵銀龍の幻想入り』
もよろしければ読んでみてください。
それではこれからもよろしくお願い致します。


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建国!スラバッカ王国! その2

ドーモ=皆様

マグロです。
今回から本格的にストーリーが始まります。
ついでに主人公は基本的にはイルルカSPのスライム系とスライムに関わるモンスターを全部入手しており、牧場から全員連れ出してる形となっております。

さて、国がどのような形で作られるのか、どのような形で幻想入りを果たすのかお楽しみ下さい。


 

 

幻想の世界~始まりの大地~

 

 

どうやらようやく鍵の世界に付いたようだ。

『幻想の鍵』から取ってこの世界の名前は『幻想の世界』と言った所だが確かに旅の扉が設置してある祠の外にモンスターの反応がない。

今回は超大型モンスターも多数連れてきており、祠が扉以外破壊されたりしてはいる為にモンスターがいれば必ず何処かざわめくものなのだが………。

 

とりあえずまずは居城にする予定である城型モンスター、『ヘルクラウド』を設置する場所を確保するとしよう。

 

ヘルクラウドは基本的には宙に浮いているのだが内部は元々城であった物がモンスターとなっただけな為普通に王城として使っても違和感がない物となっている。

 

探索をしているうちにカメハの言っていた鉱山や海等を発見しており、確かに資源は豊富そうだ。

 

だが海には魚や貝すらもない。

 

生物の居ない世界、だからこそ幻想となりかけていたのだろうか?

 

とりあえず開けた土地を見つけてヘルクラウドを設置し、周囲の開拓を進めることにした。

建材を作る方法等はしっかりと調べており、とりあえず家に関してはレンガを中心に使う予定だ。

 

この周辺の土が粘土質な物が多いのもあり、建築用のレンガにするのにちょうど良かったというのもある。

 

とはいえ周囲が木々に囲まれており、これでは建築所では無いのもあるのでまずはダークナイトを中心としたスライムナイト部隊に伐採に出て貰っている。

 

ダークナイトとは少々大型のダークスライムが玩具のスライムナイト(悪魔)を背中に乗せたモンスターであり、本体はあくまでもスライムだったりする。

 

武器に関してはちょうど斧なのもあり、伐採にちょうど良かった。

 

レンガの焼成についてはスライムベス等の炎を得意とするモンスターに任せている、とはいえメラだと瞬間的な火力は出せるがレンガがせっかく焼けても砕けてしまいかねないのもあり、炎ブレスによって焼いている。

 

他にも鉱山の方の石材を切り出す為にスライムジェネラルに石の切り出しを頼んである。

 

スライムジェネラルはかなり大型の個体の髭が生えたスライムにキングスライムの王冠を被せ、髭を生やした将軍人形を背中に乗せて武器に巨大な双剣を用いるスライムだ。

 

彼ならば石をその双剣で切り出すのも容易だろう。

 

木材も薪で使うのもあるが建材として用いるために一度乾燥させて使いたいので、切り出した物は一度ヘルクラウドの倉庫に預けてあり、それが乾くまではしばらくかかるため、短縮の意味も込めてマグマスライム達に見て貰っている。

 

マグマスライムは溶岩地帯に生息する特殊な姿をしたスライムであり、体がマグマのような高温のスライムで、常に体が少し溶けているがスライム特有のプルンとした感触が失われていない不思議なスライムだ。

彼の高温の体で倉庫の温度を上げて乾燥を速めるのが目的でもある。

 

他にも食糧の確保は野菜や山菜、海藻くらいしか期待出来ないのもあり、マルタの国に何度か戻って食用に適する魔物、『あばれうしどり』、『おおにわとり』、『ポグフィッシュ』を複数連れてきて養殖を始める準備を進めている。

 

まぁ、そんなこんなで開拓をしていき、とりあえず最低限生活出来るまで開拓を続けて一年の年月がかかった。

 

銀行に預けきれない程の金額を預けていていたのが助かった。

 

どうしても食糧がかなり必要になる為に養殖がちゃんと出来るようになるまでのエサ代はなんとかなるのだ。

 

とりあえず目標はスライム一匹一匹に自分の家を与える事だが、さすがにまだ建築が間に合ってないのもあり、今は集団住宅に済んで貰っている。

一匹に付き一部屋しか与えられてないのが悔やまれるがな。

 

とりあえず城下町と最低限言える規模の物はなんとか揃えた。

 

魔法工房等は大型の物を用意して魔法を主に使う『まどうスライム』や『グランスライム』と呼ばれるモンスターに研究を行って貰っている。

 

『まどうスライム』はクラゲ型のホイミスライムの近い見た目のモンスターであり、頭部の形状が魔法使いの帽子のような形状であり、その触手で杖を持って回復ではなく攻撃呪文を扱うモンスターだ。

 

『グランスライム』はかなり大型のスライムであり、とても立派でふさふさとした髭を生やし、常に浮遊したスライムだ。

頭にある冠は尖った形状で、攻撃なも用いられる。

 

他にも鍛冶屋、農場等さまざまな物を今は開拓している。

 

ご飯は皆で食べているのでなかなか癒される。

 

こんな日々を続けながらいつか国と呼べる物になれば友人を招きたい物だ。

 

そう思っていた時だった。

 

「ピキーッ!!ピキーッ!!」

 

スライム達がざわめき始めた。

 

「ッ!?何があった!!」

 

そしてこの城の警備を任せており、『ホイミスライム』の相棒兼おもちゃの『さまようよろい』達が姿を表し、報告をする。

 

「スィラ様!報告致します!

現在幻想の世界全域にて空に異変が起きております!

突如として紫色の空間に飲み込まれ、その空間には大量の目玉が付いておりスライム達が恐怖に怯えております!」

「なんだと!?」

 

スライムを怯えさせるだと!?許さんわ!!

それにその模様に当てはまるのは………

 

この鍵か!!

 

「総員!!全国民を『大戦車』とこのヘルクラウドに避難させるんだ!!

一匹も犠牲を出すなよ!!」

 

「「「ハッ!」」」

 

 

そしてスライム達が全て避難してしばらくした後に、この国は大地震に襲われた。

 

 

 

地震が終わった後、外に出てみると空の様子は戻っており、なにもなかった海の向こう側に………

 

陸地が現れていた。

 

そして鍵は消滅し、もしマルタに戻った場合せっかく開拓したこの地を捨てる選択を取らなければならなくなったのだった……………。

 

 

上等だよ…………

私は…………愛するスライム達を守るためにこの地に残り、国を守り続けてやるよ!! 

 

私は海の向こう側から感じる膨大な力を感じさせる気配達にそう誓うのだった。

 

 

 

後にかの地にて、王国異変と呼ばれる大異変の始まりである。

 

 

 




正直主人公がオリキャラなのもあってちょい書きにくいなw


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幻想との出会い  その1

今回は幻想郷側の視点となります。


 

 

~博麗神社~

 

 

 

今、神社の結界を維持している石碑の前でこの神社の巫女である『博麗 霊夢』と幻想郷の創設者にして管理者であるスキマ妖怪『八雲 紫』が二人揃って結界の調整をしていた。

 

 

「はぁ………ほんとに何も居ないんでしょうね?」

「だからそう言ってるじゃない。

今回幻想入りさせる土地は出来る限りこの幻想郷に影響が出ないようにいろんな世界を見てきて1年半前に見つけて第一候補にした程の土地なんだから!」

 

八雲 紫は今、幻想郷を広げようと新たなる土地を幻想入りさせようとしていた。

 

「良い?あの土地というか世界にはそもそも生き物が一匹も存在しない世界なのよ。

それに出来る限りあの世界を他の存在が見つける事が出来なくなるように鍵もかけたのよ?

それこそ私見たいに世界を渡る事が出来る者でもない限り来れない上にこの世界を発見する事が出来なければ誰も来れないわ。」

 

「でも完全に来れない訳じゃないんでしょ?今回のは私嫌な予感がするんだけど。」

 

霊夢は先程から胸騒ぎが止まらなかった。

 

「もぅ、霊夢ったら心配性なんだから。

大丈夫よ、マルタの国っていう所が不思議な鍵という世界を渡る力を持った鍵をいくつも生み出すそうだけど少なくとも隠蔽をかけてる幻想郷の鍵が無いのは把握してるわ。

同じ隠蔽をかけたあの世界は大丈夫よ。」

 

八雲 紫は己の力を過信気味なのもあり、油断していた。

 

実はスィラがカメハ王子から貰った幻想の鍵とは、既に2年程前からマルタの国で産み出されており、他の鍵の世界を回っていたのや、国が滅亡の危機に陥ったりもあって初めて起動するまでにかなりの期間が空いていたのだ。

 

だがマルタの国は基本的にモンスターマスターの育成に力をいれている為にモンスターの反応がないこの世界はどのみち後回しだったのだ。

 

カメハ達がこの鍵を発見したのも完全に偶々だったりもする。

 

八雲紫が結界を張った際に鍵が変異したりしていたが、それには誰も気付かなかったのだ。

 

「ヨシッ!準備完了よ!

さぁ!幻想郷を広げるわよ!これで海水浴も出来るし海に生息するタイプの妖怪も呼べるわ!!」

 

「はぁ………ほんとに大丈夫なのかしら?」

 

これにより幻想郷が一時的に大地震に見舞われるが、これは想定されていた事でもあった上に混乱を避けるために天狗達の新聞を活用して既に告知してあったことだ。

 

故に誰も気にしなかったのだが…………霊夢だけが唯一それと同時にとてつもない気配が一緒に入ってきたのに気がついていた。

 

だが紫は己の隠蔽結界によって阻まれてこれを感知していない様子だった。

 

「ちょっと!!紫!!」

「へっ!?なになに!?どうしたのよ霊夢ったら?」

「あんた気が付かないの!?この強大な気配に!?」

「へ?どういう……こ……と……よ……………なっ!?」

 

紫は霊夢の言葉に疑問を感じてスキマを開き、新しく入ってきた土地を見る。

 

そこには人の気配が全く無いのだが城下町と言って良い程整備された町に加え、とてつもなく巨大な城が立っていたのだ。

 

さらに海沿いには港があり、可愛らしい見た目の船と、漆黒の竜を象った船が停まっていた。

 

そう、明らかに何者かの手によって整備され、発展しているのだ。

 

「嘘ッ!?」

「何も居ないんじゃ無かったの?

明らかにこれは誰か住んでる上に町を作れる程開拓するようなやつがいるわよ?

それにあんたがここを見つけたのは1年半前ならここはたった一年ちょっとでここまで整備したってことになるわ。

 

明らかにかなり多くの存在が紛れ込んだわよ。」

 

「これは………私の失態ね。

幻想郷は全てを受け入れるわ。

とはいえ町単位の生命を入れてしまえばこの世界の幻想の力のバランスが弱まってしまう。

だけど土地を広げるのはそう何回も出来ないし…………ここに住む者達を可愛そうだけど元の世界に戻すしか無いわね………。」

「ねぇ、それ聞いてまた私嫌な予感が止まらないんだけど。」

「………霊夢が感知出来て私が結界越しとはいえ感知出来ていない強大な存在………下手をしなくても大妖怪クラスが相手になるでしょうね………。

でもこの幻想郷を守るためよ。

ここを開拓してた人々には戻って貰わないと。」

「ねぇ………この町から全く人の気配を感じないわよ?

異形の存在の気配ばかりしかないわ。」

「そんなはずは………だってここまで発展してるのよ?妖怪だけならここまでの整備は不可能よ、例え人が一人で指揮していても異形は己より弱い存在を基本的に認める事は無いのよ?

流石に無茶があるわよ。

それに人が強かったら流石に私でも気付けるわよ。」

 

人と妖怪はそもそも力の性質が違う。

人は同族の気配を仲間意識から感じにくく、妖怪は己より強い存在だったりすれば感知しやすいが、何かに阻まれていれば感知しにくい。

逆の力を感知するのは、己とは全く違う性質の力なのもあり、簡単に分かるのだ。

 

 

「とりあえず様子見で私と霊夢で向かうわよ?」

「………仕方ないわね………でも本当に嫌な予感が止まらないわ。

気を付けて行くわよ。」

 

己の力を過信した幻想は魔物達の王国へと足を踏み入れようとしていたのだった。

 

 

だが………既に魔物達の主は既に軽く怒り狂っていた。

 

スライム達を怖がらせたというその事実に対して。



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幻想との出会い  その2

 

 

~スラバッカ島~『スラバッカ王国』

 

 

私達二人は早速幻想入りさせた島に向かった。

 

近付いて見ると分かったのだが城下町に存在する家等の建物、どれもこれも入り口が異様に大きかったり小さかったりする。

 

どれもこれも人間サイズでは無いのだ。

 

「…………たしかにこれは人が住んでる感じではないわね。

だけど人の気配を少しだけ感じるわ。」

 

「・・・家の中から城の中は全部妖魔の気配だらけだけどね。」

「えぇ………もしかしたら追い出さずとも影響は無いかも知れないわね。」

「どうするのよ?」

「どうするも何も来てしまった以上は一度確認しておく必要があるでしょうね………それに結界の中に入ってようやく感知出来たのだけど……この城も外壁付近にある二つの砦も海に停泊してる二つの船も全て妖魔のようね。」

 

「建物型の妖魔ね…………少なくとも妖怪ではないのよね?」

「えぇ、私達とは気配が違うわ。

どちらかと言うとパチュリー達側の存在に近いわ。」

「成る程ね………」

 

そして霊夢は城の中の気配に異変が起きたのを感知した。

 

それと同時にとてつもない怒気が一瞬だけ現れたのも感じたが………ほんの一瞬だったために気のせいだと思う霊夢であったが………。

 

「………ッ!?城の中の大量の気配が慌ただしく動き始めたわね………」

「えぇ………確実にこっちに気付いたわね、ついでに唯一いると思われる人の気配が城の上に移動しているわね。

 

それとさっきから気配を調べたりスキマを使って調べたりして気付いたのだけど………ここにいる人間はたった一人のようね。

ただ人間の方にスキマ開こうとすると近くの妖魔から攻撃を貰ったから多分護衛もいるわ。」

 

「そうなると………」

「えぇ、人間がたった一人でこの数の妖魔を支配していることになるわ。」

 

「………勝てる?」

「どうでしょうね、私には魔力とかの量が分からないのもあってどれ程の強さか………」

 

そして城の上部に存在する入り口から人の姿が見えてきた。

その姿は全身に青い宝石と金が縁取られ、白銀の金属質なローブをその身に纏い、頭部には王妃のティアラを思わせるかんむり、右手には同じような装飾が施された王の彫刻のような形をした杖を手にしている。

 

これは魔物達の世界で、スライム達にとっての至宝とされる装備であり、メタルキングのローブ、メタルキングのかんむり、メタルキングの杖と呼ばれるものであり、魔王を倒したとされる英雄が用いた装備に並ぶ程の伝説級の代物であった。

 

出てきた人間の後ろから玉座が用意され、人間はそこに腰をかけて、口を開き始めた。

 

「侵入者よ、ようこそ我が国へ、此度はなに用でこちらに?」

 

「私はこの幻想郷の管理者である八雲 紫というわ、こっちは幻想郷を守護する博麗の巫女たる博麗霊夢。

あなたの名前を聞かせて貰っても?」

「ふむ、良かろう。

私はスィラ・ムスキーと言う者だ。

この国の王である………と言いたい所だがまだここは建国とその為の整備が終わっていなくてな、現状はこの城下町の長であると言っておこう。」

 

「スィラ殿、まずこちらの要件を話す前にひとつ。

まずあなた方の世界をこちら側に呼び寄せたのは私達です、突然の事で混乱されていらっしゃると思いますがもう既にここはあなた方のいた世界ではなく、その世界が新たに組み込まれた違う世界、幻想郷という土地になります。」

 

するとスィラと名乗る人物は紫の話を最後まで聞く前に顔を伏せて全身に力を入れ始めて震わせていた。

 

「そうか………貴様らか………」

 

「あ………あら?」

 

突然見せたその様子に紫は困惑していたが、私は嫌な予感が強くなってきていた。

それに冷静に考えれば相手からすれば世界が取り込まれたことによる地震になど対策をしているはずもなく、普段の生活をするどころか生活を出来るようにする準備をしてる段階でいきなり赤の他人なよって町が危険な目に合わされた訳だ。

 

つまり…………

 

「貴様らが………貴様らが我が国民!私の愛するスライム達を怖がらせた元凶かぁ!!!!!

よくも我が臣下であり我が友であり、我が子でもあるスライム達を怖がらせてくれおったな!?

八つ裂きにしてくれるわ!!」

 

案の定スィラは激昂していた。

霊夢が想定していたのとは違うパターンで………。

 

「あー、紫?これ一度こいつを鎮めないと話聞いて貰える形になりそうにないわよ?」

「あー、やっばり?」

「それに………こいつの激昂にあわせて多数の妖魔達が怒り狂ってる気がするわ。」

「つまり………こいつをこの町の妖魔全ての攻撃を潜り抜けて倒すなりして怒りを鎮めないとダメね。

それにあいつらは船もあるから下手したら幻想郷側に乗り込んでくるわよ?」

 

「今ここに開戦の狼煙を上げてくれるわ!!

『イオグランデ』!!!」

 

 

そして私達の間に嫌な気配が集中する。

 

「紫!避けるわよ!」

「ッ!?危ないわね!?」

 

その気配が収束を終えるととてつもない威力の大爆発を引き起こした。

 

「相手はモンスターマスターでは無いのであればこちらも戦力を小分けにする理由もないわ!!」

 

その声に答えるかの如く突如として地響きが起こり、町の後ろにある大地が大きく盛り上がり始めた。

 

少しするとスィラが考え込んだような表情をして口を開いた。

 

「…………君だけでやるつもりなのだな?」

 

その声に反応するように更に地面が隆起する。

 

「では私が育て上げたその力を見せてやれ!!」

 

そして地面から巨大な黄金の蟹が姿を表す。

しかし蟹の部分は殻の鎧であり、中身には………

 

巨大化したどこぞの飲兵衛ロリオーガよりも大きいスライムが入っていた。

 

 

 




次からいきなり戦闘に入ります。
つか最初の辺りからはしばらく交戦状態に入ります。


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黄金の輝き  その1

 

 

スラバッカ王国~『ヘルクラウド内部』

 

 

 

スィラは今この現象についての考察は粗方終わっており、スライム達が怯えているこの状況に対して激しく怒り狂っていた。

 

それも当然だろう。

 

そもそも不思議な鍵とは、世界その物の存在を意味する鍵であり、その鍵その物がその世界と言っても過言では無い。

 

その為世界に対して大きな改変が行われた際には鍵にも変化が現れたりはする。

 

だが今回は鍵その物が消滅してしまった。

 

これに対する理由の考察として考えられるのは実はそんなに多くない。

 

何故なら、鍵が消滅するパターンは二通りしかないからだ。

 

一つは『世界その物が消滅する』パターン。

 

これは以前にも例があり、有名な物だと幻魔王デスタムーアが倒された際に、デスタムーアが作り上げた夢世界が崩壊した事だ。

 

実を言うとこの世界にも不思議な鍵が存在していたのだが、デスタムーアの消滅と同時に鍵も消滅してしまったのだ。

 

そしてもう一つは『世界その物が、別の世界へと取り込まれた』パターンだ。

 

これについては天魔王オカマげふんげふん。

天魔王オルゴ・デミーラの世界をバラバラにして封印した際の現象が当てはまる。

 

世界がバラバラにされた際に、その各世界の不思議な鍵も生成されていたのだが、その封印が解ける事に封印されていた地の鍵が消滅し、世界を吸収した側の鍵に変化が起きていた。

 

そしてこの幻想の鍵の世界には特に消滅等の傾向が見られない為に当てはまるのは後者のみとなっており、これには基本的に他者が介入しない限りこのような事態が引き起こることは確実に無かったりする。

 

つまり………

 

 

『この世界を吸収させた存在がいてそいつらが原因で世界の結合による地震が引き起こされた上に魔物達を怯えさせるあの空を一時的に発生させていた。

 

……………やったやつを八つ裂きにして回復させてからまた更に八つ裂きにしてくれるわ!!』

 

スィラはかなり激昂していた。

 

彼は基本的には冷静で観察眼と高い判断能力等を持っているのだが…………スライムが関わるとかなり性格が変わる性質を持っている。

つまり今の状態は……………一度でも犯人の話をすればまともに会話出来るような状態ではなかった。

 

辛うじて幻想の地からやってきた二人の人物を魔物達が発見し、それに対応しようと王としての衣装で用意したメタルキングのローブシリーズを装備したのだが………案の定怒り狂ったのがオチである。

 

こうなってしまうと彼はスライムの言葉しか聞こえなくなるのだが………スライム達もスライム達で軽く怒っていたのもあって誰も止められなくなっていた。

 

もはや戦いは避けられないのだ。

 

 

 

_________________________________________________

 

 

 

『ピキィィィィィィイイイイイイイ!!!!!!』

 

 

隆起した地面から現れた黄金の蟹を鎧としたスライムは、とても可愛らしいが周囲を吹き飛ばす威力を持った『おぞましいおたけび』を放つ。

 

「ぐっ!?あぁぁあああ!?」

「これは………精神にも影響する攻撃!?

霊夢!心を強く持ちなさい!飲み込まれたら動けなくなるわよ!?」

「ぁぁぁぁあああああ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!

はぁ……はぁ……はぁ……

いきなりやってくれたわねあの蟹モドキ………あの甲羅を売り飛ばして神社のお賽銭にしてくれるわ!!」

「はぁ………冷静になりなさいな霊夢、あいつの力は確実に大妖怪クラスはあるわよ。

とりあえず…………スキマボッシュート♪」

 

紫は突如として目の前にスキマを作り出し、その下から何故か紫色のモヤsげふんげふん、紅魔館の魔法使いである『動かない大図書館』ことパチュリー・ノーレッジが落ちてきた。

 

「きゃぁぁぁぁあああ!?!?

なんなのよもう!?

って紫に霊夢、世界の吸収をやってたんじゃないの?」

 

流石パチュリーと言うべきかいきなり空に落とされてもすぐに飛行魔法を使って空を飛び、地面への激突を回避した。

 

「あー、パチュリー?

その落ち着いて聞きなさいよね?

…………新しく住み着いてた奴等に気付かなくてこっちのやったことバレてるのもあって相手が激昂してる………。」

「………なにやってんのよ………せめて確認くらいしなさいよ………。

それで要件は………どう見てもあの『スラキャンサー』ね。」

「『スラキャンサー』?あの蟹モドキの種族ってこと?」

「えぇ、ずいぶんと厄介な奴がいるわね。」

 

パチュリーは呆れてはいたが、何か忌々しそうにスラキャンサーを見ていた。

 

「とりあえず貴女を呼んだ要件なのだけど………」

 

紫はパチュリーに要件を伝えようとするがパチュリー自体が言いたいことは粗方察していたのもあり、すぐに答えてくれていた。

 

「あの魔物のことでしょ?

まず大前提からいくけどあれはおそらく新生配合によって強化された個体ね、通常のスラキャンサーとは格が桁違い過ぎるわ。

まぁ大魔王級かしらね?」

 

「その大魔王級というのが基準が良く分からないけどとりあえずどういうモンスターかだけを教えて頂戴?」

 

パチュリーは軽く溜め息をついて接続を始める。

 

「かなり甘く見てるわね………多分勝てないと思うけど教えるわ。

まず注意するべきはその恐るべき魔法耐性よ。

少なくとも雷、火、閃光、風、氷、爆発等各種属性の攻撃は物理魔法問わず反射されるわ。

唯一闇や地の攻撃が普通に通るけどそもそもの殻が堅すぎてまともにダメージが入らないわね。

それに新生しているならたしか受け流しによる物理攻撃の反射も行えるから柔らかいスライム部分を狙うしか無いでしょうね。

それと状態異常には軒並み弱いのだけれど………新生しているなら少なくともモンスターマスターによって育てられてるしまともに入らないでしょうね。

気を付けなさい。」

 

するとスラキャンサーは完全にその全身を表して襲い掛かってきたのだった。

 

 

 



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黄金の輝き  その2

 

 

~スラバッカ王国~『上空』

 

 

私達の話が終わった頃にスラキャンサーは動きだし、私達に襲い掛かり始めた。

 

 

とりあえず私達はまず、通常弾幕による牽制で様子見をする。

 

だが…………スラキャンサーに攻撃が当たると私達のいる方向に弾幕が反射されたり、バリンッという金属質な音が響いて完全に弾幕が消滅したりしている。

 

「堅すぎる!?それに攻撃が完全に弾かれたりこっちに跳ね返ったりしてるんだけど!?」

 

「くっ!?これが受け流しによる反射ね………物理だけじゃなくて遠距離の攻撃すらも弾けるなんて!?」

 

「霊夢!紫!せめてスペルカードとかじゃないと確実に跳ね返るわよ!!受け流しは物理攻撃の反射が定義だけど遠距離からの何も効果の無い攻撃も跳ね返す対象になるわよ!!」

 

「厄介な………。」

 

「それに受け流し以外のタイミングで攻撃が完全に弾かれてるわ!おそらく『ギャンブルボディ』も持ってるわよ!!」

「なんなのそれ!?」

「攻撃を受けて発動すると受けるダメージが上昇するか、受けるダメージを完全に0にする効果を持つモンスター特有の特性よ!!」

「はぁ!?それ下手したらスペルカードすら無効にする可能性あるじゃない!?」

 

すると霊夢の横から巨大な黄金の鋏が現れた。

 

「っ!?危なかった…………お返しよ!

霊符『夢想封印』!!!!」

 

霊夢はスペルカードを宣言して膨大な霊力によって生成される巨大な弾幕を複数生み出してスラキャンサーの巨体へとぶつける。

 

しかし…………スラキャンサーに直撃した直後バリンッという金属質な音がする。

 

「っ!?ダメージがない!?早速弾かれた!?」

 

スラキャンサーはすると二重に重なる魔法文字の輪が現れて光がスラキャンサーを覆い始めた。

 

 

「霊夢!!スラキャンサーが『バイメリト』を発動させたわ!!

ギャンブルボディの発動率が倍に跳ね上がってるから攻撃を無効にされやすくなるわよ!!」

 

「あぁもう!?堅すぎんのよ!!

つかパチュリー!あんたも攻撃すんの手伝いなさいよ!!」

「無茶言わないで頂戴!私は魔法特化だからほぼ全部反射されるわよ!!」

 

「くっ境界『二重弾幕結界』!!」

 

バリンッバリンッバリンッバリンッバリンッバリンッバリンッバリンッ

 

ちょくちょく直撃してスラキャンサーにダメージを入れてるのはたしかなのだが、かなりの両親の弾幕がギャンブルボディにより弾かれておりダメージが殆ど無いようだ。

 

スラキャンサーは反撃と言わんばかりにその巨大な黄金の鋏をこちらに向けて開き、その内部にある砲身から光の砲弾による弾幕を放つ。

 

「その程度!!」

「待って紫!何か嫌な予感がするわ!警戒して!」

 

霊夢と紫は簡単に避けて見せるが、避けられた光の砲弾は遥か上空で静止して他の砲弾を取り込み、一つの小さな太陽と化した。

 

小さな太陽は破裂し、無数の閃光による矢が上から霊夢達へと襲い掛かる。

 

「『シャイニングボウ』よ!!上から来るわよ!!」

 

「っ!?夢符『二重結界』!!」

「境界『二重弾幕結界』!!」

 

霊夢達は咄嗟の判断で結界系のスペルカードを発動して自分の身を守ろうとする。

 

だが閃光の矢による威力は凄まじく、霊夢達の結界ですら、矢がかするだけで消し飛ばされる威力となっており、防ぎきれないと悟った二人は避けに専念する。

 

だがスラキャンサーは霊夢達の下、つまりシャイニングボウの着弾地点に移動しており、当たらなかったシャイニングボウがスラキャンサーへと向かっていく。

 

「自分の攻撃を受けてみなさい!!」

 

しかしスラキャンサーはそこまで甘くはなかったのだ。

 

「馬鹿!反射来るわよ!!」

 

 

するとスラキャンサーに当たったシャイニングボウは…………霊夢達の元へと反射され、上下からの波状攻撃へと変化する。

 

『シャイニングボウ』は扱いとしてはメラ、デイン属性の斬擊特技となっており、メラとデインの二つの属性は、スラキャンサーは反射耐性を持っている。

 

これにより自分が受けたシャイニングボウすらも反射しているのだ。

 

これに加えてスラキャンサーは1度ひっくり返ってブレイクダンスを行いながら、その黄金の脚と鋏を忙しなく動かして緑色の飛ぶ斬擊による舞による追撃を行う。

 

 

「『ゆうきの斬舞』!?

気を付けて!次の攻撃の威力が大幅に上がるわよ!!」

 

『ゆうきの斬舞』の効果は敵に複数の斬擊の嵐を浴びせると共に自分を含む味方全員のテンションを上昇させるといった効果を持つ。

 

スラキャンサーはテンションが上がり、興奮状態となっており、次の一撃はまさに必殺の一撃になろうとしていた。

 

更にヘルクラウドから見ていたスィラはいつの間にかスライムのはっぴとスライム型サイリウムを両手に持って、頭部にはハチマキを巻いており、ヲタ芸を行っている。

 

 

だがこれも意味のある行動であり、スラキャンサーの興奮度合いがさらに上昇した。

 

『おうえん』

 

味方のテンションを上げることが出来る行動であり、これによって今スラキャンサーのテンションが二段階上昇していた。

 

 

 

スラキャンサーは必殺の威力となった『アイアンブロー』を振り放とうとしていた…………。

 

 

 

 



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黄金の輝き  その3

うんぷてんぷさん。

星9評価誠にありがとうございまぁぁぁぁあす!!!

この作品も以前に投稿した作品同様100話まで頑張りますのでよろしくお願いします!!




 

 

~スラバッカ王国~『城下町の外』

 

 

 

スラキャンサーの黄金の爪が金属質な輝きをさらに増しており、その爪に渾身の力が込められている事が分かる。

 

『アイアンブロー』

 

この特技を習得可能なスキルを本来所持するのはたった一体のみ。

かつて『ブレイクワールド』と呼ばれた世界にて大魔王マデュラージャと言う名前の魔王が存在していた。

 

だが大魔王マデュラージャと争っていた神獣達は大魔王と共に記憶を失い、ノチョーラという種族となって共に過ごしていたのもあり、マデュラージャは争うのを戸惑ってしまっていた。

 

さらにそこへと一緒に苦楽を共にしてきたモンスターマスターがマデュラージャを倒し、マデュラージャは争うのを止めた。

 

そのマデュラージャが己の強さを求め『進化の秘法』という手段にたどり着き、身も心も強く美しく成長した存在。

『魔界神マデュラーシャ』と呼ばれるモンスター。

 

『アイアンブロー』とはこの『魔界神マデュラーシャ』と呼ばれるモンスターのスキル抽出して、それを用いてのみ習得可能な最強の威力を誇る無属性斬擊特技である。

 

 

ブローなのに斬擊?と突っ込んではいけない。

突っ込んだら敗けだ。

 

「あの威力の攻撃貰おう物なら一撃で死ぬわねこれ…………あいつの境界を弄って能力を下げないと………」

 

紫は流石に次の一撃がヤバイのを理解していた為か己の能力でスラキャンサーの能力を下げようとする………これが例えば魔王等であれば通用したのだがスライム相手では………

 

「馬鹿!スライム相手に能力を下げたりなんてしたら!」

 

パチュリーからの警告がきたがもう遅い。

 

「へっ!?」

「ピキィィィィィィイイイイイイイ!!!」

 

スラキャンサーの力が更に貯まる。

 

『スライムバーン』

 

所謂『系統バーン』と呼ばれる物であり、そのスライム系の扱う物が『スライムバーン』となる。

 

発動条件は………『自分を含めた味方の能力の低下』であり、効果はテンションを上げることである。

 

いくら能力を下げても3段階上がったテンション、つまりテンション50相手の攻撃だと焼け石に水なのである。

 

『アイアンブロー』

 

その黄金の爪が今、振り下ろされる。

 

「不味いっ!?霊夢!パチュリー!今は引くわよ!!」

 

紫は己の下と霊夢、パチュリーの下にスキマを作り、なんとか避難する。

 

流石にあれだけの一撃を貰えば大妖怪である八雲紫ですら一撃で消滅してしまう。

 

黄金の爪は誰も捉えることはなく、地面に叩きつけられた…………

 

まるで隕石が落ちてきたかのようなクレーターが生まれるのだった。

 

_________________________________________________

 

~マヨヒガ~

 

 

 

 

「あべしっ!?」

「うぐぉ!?」

「むきゅー!?」

 

 

藍の上にスキマが開き最初に霊夢が、次にパチュリーが出てきて藍の上に落ちてくる。

 

藍は完全に巻き添えを食らって潰れているが更に上から紫が出てきて三人を踏み潰した。

 

「「「ウボワァァァアアアア!?!?」」」

 

 

「ふぅ………危なかったわね………」

 

「とりあえず私達の上から退きなさいよ…………あと藍が可哀想だから早く私も退きたいんだけど?」

「むきゅー!?むきゅむきゅー!?むきゅー……ガクッ」

「パチュリーなんか何言ってるかわからないんだけど………」

「へ?あ、ごめんなさいね?おほほほ」

 

そして上から順に紫、霊夢が降りて、パチュリーは気絶しているためそのまま退けて藍が立ち上がる。

 

「一体なんなんですか紫様………」

 

「藍、ちょうどいいわ、貴女も来なさい。

流石に今回は緊急事態よ。」

 

「はい?」

 

 

 

紫、霊夢は藍に今回の件の説明を行い、パチュリーが目を覚ますのを待ってから今後の対策を練る事になった。

 

当然その事について藍が説教をする事になったのだが、その膝に5stと書かれたとてつもなく重い上に鋭いトゲの生えた鉄球が乗せられており、紫の脚から血が出まくって居たのは霊夢は気にしないことにした。

 

というか見なかった事にした。

 

説教が終わった辺りでパチュリーが起床し、とりあえずはスラキャンサーの対策を練る事にはなったのだが……。

 

「はぁ………だから勝てないって言ったのよ。

そもそもモンスターマスターで新生配合を行える人物ってのはどれもこれも化物みたいなモンスターを作れる人物なのよ。

それにアイアンブローまで使える時点であいつは恐らく最上位トップクラスなのは確定だし。」

 

「どう言うことよ?」

 

「良い?モンスターマスターと魔物使いという職業の人物はいるけどこの違いは割と大きいわ。

 

魔物使いは魔物を使役する程度、でもモンスターマスターは魔物同士を配合して新たな魔物を生み出すことが出来るの。

そしてその究極にあるのが新生配合。

これは魔物が持つ固有の特性を新しく生まれる魔物へと引き継がせる事を可能としているわ。」

 

「つまり………どういうことよ?」

 

「まぁ簡単にいえば炎のブレスを得意とするドラゴンの特性を適当にチルノにでも新生配合で引き継がせるとしましょうか。

そうすると炎ブレスも得意なチルノが生まれるわ。

新生配合は新しいモンスターではなくモンスターを生まれ直させて他のモンスターの特性を取り込み、ただのスライムとか妖精を神々の最上位クラスまで能力を引き上げれるのよ。」

 

霊夢は嫌な予感がずっと止まらなかった原因が分かってしまった。

 

強すぎるのだ、どれもこれもが。

あの街による妖魔の気配がやたらと濃いのも頷けた。

 

「なんなのですか………それは………」

 

そして藍は戦慄する、その圧倒的な力へと。

 

「まぁ対抗出来なくはないけどそうね……敵は幽香が何人もいると思いなさい。

とりあえず彼処にいたモンスターだけでも対策ををしておきましょう。」

 

 

そしてマヨヒガで巻き込んでしまった強すぎる者達への対策を皆で考えることになったのだ。



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動き出す王国  その1

 

 

 

~スラバッカ王国~『王城ヘルクラウド』

 

 

逃がしたか………

どうやら判断力はあるようだ。

 

だが許すかどうかは別問題だ。

我らスライム属の怒りを思い知らせねば。

 

少なくともスラキャンサーから逃げるくらいの実力なら全力を出さずとも問題は無さそうだ。

主力モンスターは王国の護衛に残しネタ育成モンスターによる進行を始めるとしよう。

 

だが相手は海を隔てた向こう側にいる以上空を飛べるか海を泳げるモンスターじゃないと向こう側には渡れない。

スラリン船、スライバ船に乗せられるモンスターにも限りがある。

メガサイズモンスターは重すぎて何体も乗せられないのだ。

 

精々2体が限界だ。

だがそうするとスタンダードボディ、スモールボディの小さなモンスターがそこまで乗せられない。

 

最低でもギガサイズ以上は空を飛べないと無理だろう。

 

だが…………ギガサイズを超える超ギガサイズならばその大きさゆえに海を渡れる。

だがこれは最終手段だ。

簡単に使ってしまってはつまらない。

 

スィラは確かに激昂はしているが、相手の実力がどれくらいかを見分けるその目は確かであり、自分より格下と判断した場合、その実力に合わせたネタモンスターで戦うクセがあった。

これはスィラ自信が一方的な戦いと言うものを大きく嫌っているのもあり、先程のスラキャンサーの戦いもそこまで面白くは感じなかった。

 

常にギリギリの戦いを楽しむ。

それがスィラのバトルスタイルなのだ。

だがネタ育成だからといって舐めていると痛い目を見るだろう。

 

なぜならスィラの育成したスライムはどれもこれも『悪魔の書』というモンスターを用いた配合を行い能力の個体値を最高の理論値まで引き上げており、レベルも限界まで育て上げ、新生配合によりかなり強力な特性を引き継いでいる。

 

 

 

するとなにかを決めたスィラは背後にて控えていた"9人"の魔物に声をかける。

 

「よし!決めた。

初手はお前達に任せる。

移動手段にはメタルスターを使え。」

 

「「「「「「「「「ハッ!」」」」」」」」」

 

そして9人の魔物はその身を薪に変えて姿を消した。

 

「よろしかったのですか?貴方の怒りはその程度では済まないと思っていたのですが。」

 

その後、背後から一匹のスライムが姿を表してスィラへと問いかける。

 

「無論この程度じゃ済まさない。

だが全力を持って叩き潰してはつまらないではないか。

それに…………二つの世界が激突する戦いだぞ?

こんなのはマルタじゃやれない戦いだ。

簡単に終わらせてなるものか。」

 

「はぁ………また貴方の戦闘狂ですか。

ですが…………今更ですね。

良いですよ、我々は貴方に付き従い信頼している。

私に至っては貴方がモンスターマスターになったばかりの頃からの付き合いだ。

最後まで付き合いましょう。」

 

「ありがとう………スラリン。」

 

そしてスラリンという名のスライムは玉座の間から去る。

その圧倒的に濃い強者の気配を残しながら。

 

「負けるわけが無いだろう?

俺達を止められるのは………イルとルカだけだ。」

 

スィラは唯一のライバルである双子を思い浮かべ、覚悟を更に決めた。

 

「スラブラスターを起動しておくか。」

 

そしてスィラはその玉座の間から立ち去るのだった。

 

 

 

_________________________________________________

 

 

~マヨヒガ~

 

 

紫達は新しく幻想郷へと組み込んだ土地、スラバッカ王国に対抗するための対策を練るために会議をしようとしていた。

 

「とりあえず結論から言うわ。

これは地底、天界、地獄、白玉楼、命蓮寺、妖怪の山、紅魔館、永遠亭、全戦力を導入しないと勝てないわ。」

 

パチュリーは会議が始まって早々それを伝える。

 

「なっ!?それだけの戦力だと言うのですか!?」

 

藍は思わず声を荒くする。

 

「貴女達も見たでしょ?あのカニ擬き『スラキャンサー』の圧倒的な強さを、でも真にモンスターマスターが全力をかけて育てたモンスターはあの程度ではないわ。」

 

「………やっばりね。」

「霊夢?」

 

霊夢は納得が言ったような表情をして答える。

 

「あのスラキャンサーってモンスター、あそこにいたモンスター達の中だとかなり力が小さいのよ。

上手く隠蔽されていたけどあの城の中からもっと圧倒的なモンスターが少なくとも4体はあのスラキャンサーとは桁が違うわよ?」

 

「ッ!?…………仕方ないわ、全戦力に連絡を入れましょう。

こうなってしまった以上は会話による交渉は難しそうだし戦うしか無さそうね。」

 

そして対策を練るためにパチュリーに相手の持つモンスター、スライム系で最も注意するべきモンスターについて説明を受ける。

 

どれもこれもが想像を絶する程の力を持つモンスターばかりであり、メタル系に至っては鬼しか倒すことが出来ないという結論に至り、紫は早速幻想郷の全戦力に向けて協力をして貰うために手紙をスキマを使っておくっている。

 

今、幻想郷は未曾有の危機に陥っていたのだった。



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動き出す王国  その2

その日、新しく幻想郷に加わった土地からかなり大型の飛行物体が現れた。

 

それは簡単に海を渡り、妖怪の山を通過し(なぉ喧嘩を売った天狗を全て返り討ち)人里へと向かっていた。

 

鋼鉄の惑星メタルスターはついに霧の湖上空で静止し、姿を消したのであった。

 

しかしその鋼鉄の惑星へと乗り込む⑨が一匹。

 

9人の魔物達はそれぞれ幻想郷中へと散り、八雲紫と博麗霊夢、ついでにパチュリーの捜索に動き出したのであった。

 

全ては犯人を八つ裂きにするために。

_________________________________________________

 

 

~マヨヒガ~

 

 

今回は八雲紫のスキマにより

地底からは覚妖怪であり、地底の管理者である『古明地さとり』及び鬼代表の『星熊勇儀』

地獄から代表として閻魔である『四季映姫・ヤマザナドゥ』(テレワークなう)

天界から代表として『永江衣玖』(主は役に立たないので置いてきた。)

紅魔館から代表として『レミリア・スカーレット』、そしてモンスターの知識を持つ『パチュリー・ノーレッジ』

永遠亭より『蓬莱山輝夜』(ゲーム中だったのに連れてこられた)

妖怪の山代表として『東風谷早苗』(なお天狗勢は軒並み気絶中)

白玉楼から主人である『西行寺幽々子』(ただしテーブルには山盛りの料理)

 

これに博麗霊夢と八雲紫を加えた11人によって今対策会議が開かれていた。

 

 

 

「スキマで確認してたけど早速動き出したわね。」

 

八雲紫は真剣な表情で呟く。

 

「殺すのではなく気絶まで押さえてる辺り関係ないやつは殺すつもりは無いのかしら?

その考えなら私は可能性として殺られそうだけど霊夢とそこの元凶のスキマは八つ裂きにするつもりよねこれ。」

 

パチュリーがそのスキマから見ていた光景からスライムの王国が何をしたいのかを考える。

そしてそれにレミリアが続けて話す。

 

「運命を見る限りでは私達とそいつらの戦いは避けられそうにないわね。

怒りを鎮めろ…………といった感じの未来ね。

何の怒りなのやら。」

「まぁ今回ばかりは私達側に一方的に責任はあるけどまずはどうするかよ。

天狗共は自業自得として攻撃が一切効かないとかどう対象するのよ。」

 

霊夢は天狗達の挑んだ戦いにて、メタルスターに傷一つつけられていなかったことについて言う、しかしこれの原因も割と単純だったりするのだ。

 

「言ったでしょ?メタル系には物理以外効かないって。」

 

パチュリーはそう伝えると全員が驚く。

 

「あれもスライムなの!?」

「あれがメタル系かい、確かに硬そうだが………言うほど厄介なのかい?」

 

「それについても言ったでしょ?メタル系は魔力、霊力、妖力問わず物理以外の全てを弾くのよ、唯一の例外として精神的な攻撃と耐性を下げる魔法なら入るわよ。

だけど基本的にそれを許す程モンスターマスターは甘くないわ、確実に耐性が完全に埋まってるでしょうね。」

 

パチュリーはやけにモンスターマスターを警戒してるように見えた。

 

「そうなるとやっぱり勇儀しか無いかしらね?」

「いや、物理のみ効くなら私の所の門番、美鈴も使えるわ。」

「そうなると二人係で倒すしかないわね。」

 

「だけどたった一体だとは思えないわ。

メタルスターはメタルスライム達の母星として作られるモンスターだから中にモンスターが入っていてもおかしく無いのよ。

実際あの城も魔物だったわけなのだから。」

 

そうパチュリーが警告する。

 

「問題は何が入ってるかよ。

それ次第では数の暴力で簡単に負けるわよ?

それと一つ聞きたいんだけどパチュリー、あんたは何でそんなにモンスターマスターについて詳しいのよ?」

 

霊夢が疑問に思ったことをパチュリーにぶつける。

 

「うぐ………それは………」

 

「前に実験でモンスターマスターを呼び出して従えさせようと戦ったらズタボロにされたみたいですね。

しかも相手は子供だったようですよ?」

 

言いずらそうにしていたパチュリーだったがそれを許す程さとりは優しくなかった、容赦なくちょっとしたトラウマになっていることを突かれた。

 

「つまり一度痛い目に合っていたと………」

 

「ええそうよ!!子供相手にボコボコにされたわよ!!

仕方ないじゃない!!魔法が一切効かないメタル系が他のモンスター庇って庇われたモンスターがバカスカ強力な攻撃使ってくるし!?

勝てるわけ無いじゃないあんなの!?

悔しくていろいろ調べたけど相性悪すぎて基本私じゃ勝ち目無かったわよ!?」

 

そして全員が涙目のパチュリーを哀れみの目で見ていたがすぐにパチュリーの反応が変わった。

 

「っ!?侵入者用の結界に反応………紅魔館に誰かが入ったわね………人数が多い………少なくとも魔理沙じゃないわ!?」

「っ!?スキマで今紅魔館を映すわ。」

「なっ!?美鈴が壁にめり込んでやられてる!?

侵入者は………なっ!?速い!?」

「彼らは………どうやら八雲紫と霊夢さん、パチュリーさんを探しているみたいですね。

関係ない者は巻き込むつもりは無いみたいですが天狗のような突っかかってくる者達は別と考えてます。」

 

「・・・つまり?」

「いけ!」

「むきゅっ!?」

「ちょっ!?」

「なにすんのよ!?」

 

レミリアがパチュリー達ををスキマの中へと放り出した。

結局の所今回悪いのは確認を怠った側であり、パチュリーは完全に巻き込まれているだけなのだが容赦なく放り込まれたのだった。

 

 

 



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VS スラ忍衆  その1

ジアスさん。星10評価
蛮野天十郎さん。星7評価

大変誠にありがとうございまぁぁぁぁす!!!

これからも投稿を頑張っていきますのでどうぞよろしくお願い致します。


 

 

~紅魔館~

 

 

 

 

「むきゅ!?」

「ぐべっ!?」

「うぐぉ!?」

 

 

紫(元凶)、霊夢(ちゃんと止めた)、パチュリー(とばっちり)の三人が紅魔館に監視用に開けていたスキマから放り出される。

 

順番としてはパチュリー、紫、霊夢の順に落ちてきてまたパチュリーが潰される事になっていた。

 

だが大きな物音がした為か自分達が体勢を建て直す頃には既に侵入者である9人の魔物が集まっていた。

 

その姿は忍びのようにも見えるが、何故か全員がヘルメットを被り、その腕にはナイフやチャクラム、爪や手甲等様々な武器を両手に一つずつ装備していた。

 

そして最大の特徴としてドイツもこいつもカラフルな為にどう見ても忍ぶ気がない。

 

外の世界で言う戦隊と言うものに酷似している見た目をしていた。

 

にしては些か人数が多いような気もするが。

 

すると目の前にいつの間にかこの紅魔館のメイド長である『十六夜咲夜』が現れた。

霊夢達は慣れているために特に驚かないが

向こう側にいた青いのが警戒するように構える。

 

「むっ、何奴!?」

「それはこちらのセリフなのですが?不法侵入者殿?

そしてパチュリー様に霊夢、スキマは確か会議に出ていたのでは?」

「簡単に言えばそいつらがその会議にかなり関係する奴らなの。多分霧の湖に今止まっている奴から出てきたわ。」

「成る程、丁重に御面無死(オモテナシ)した方がよろしいですか?」

「舐めてかかると痛い目に合うわよ?

こいつらどいつもこいつもかなり魔力が高い。」

 

すると戦隊の中で中央にいる赤い奴が口を開く。

 

「お主らの顔、服装からして我らが殿の怒りを買った者でござるな?

確か名前は博麗霊夢、八雲紫でござったな。」

「えぇ、出来ればあんたらの名前を教えて貰えるとありがたいんだけど?」

 

すると何故か全員がフォーメーションを取るように一定間隔で並び、赤いのから順にポーズを取り始めた。

 

「ふむ、我らが一方的に知っていては不公平でござるな。

よかろう!我らが名を貴様らの魂に刻むと良いでござる!

赤き闘魂はスライムベスの如し!『スラ忍レッド』!」

「青き魂はスライムファングの如し!『スラ忍ブルー』!」

「黄色の翼はドラゴスライムの如し!『スラ忍イエロー』!」

「緑の体はスライムつむりの如し!『スラ忍グリーン』!」

「橙の模様はぶちスライムの如し!『スラ忍オレンジ』!」

「ピンクのチャクラムはエンゼルスライムの如し!『スラ忍ピンク』!」

「黒き輝きはスライムボーグの如し!『スラ忍ブラック』!」

「茶色の肉体はストーンスライムの如し!『スラ忍ブラウン』!」

「紫の威厳はメタルカイザーの如し!『スラ忍パープル』!」

 

「9人揃って!!」

「「「「「「「「「スラ忍衆!!!!」」」」」」」」」

「殿とスライム達の日曜日の朝は我らが守る!!」

 

何故か背後が爆発したような幻覚が見えた上に突っ込み所が多かったがキリがないのでスルーしたのだった。。

 

するとパチュリーが頭を抱えて呟く

 

「よりによってこいつらかぁ………かなりきつい………。」

「どうしたのよパチュリー、もしかしてかなりヤバイ?」

「新生さえしてなければモンスターとしてのランクはDとかなり低いわ。

でもこいつらの厄介な所は全員が全ての魔法全反射させるマホカンタを常に発生させてる『つねにマホカンタ』持ちか全ての物理攻撃を発生させるアタックカンタを常に発生させてる『つねにアタックカンタ』持ちなのよ………

しかも厄介すぎる能力として新生してるなら全員が『亡者の執念』を持ってるから死んだとしてもしばらく動けるわよ?

それとかなり素早いから気を付けなさい?」

 

「死んでも動く上に全員が物理か魔法を全部反射って………」

「とりあえずつねにアタックカンタ持ちは私達でなんとかするしかないわ。

咲夜とスキマにはつねにマホカンタ持ちをお願いするわ。

茶色、ピンク、紫、黄色が貴女に押さえて貰う必要があるわ。」

「押さえるだけでよろしいので?」

「いくら貴女達でも4人の相手は厳しすぎるわ、下手したら止める前に攻撃されると思いなさい。」

「かしこまりました。」

 

「それではよいでごさるか?

ピンク!イエロー、ブラウン!パープル!あえて奴らの作戦に乗るでござるよ!我らが殿もそれを望んでおられよう!」

「「「「任された!!!!」」」」

 

するとスラ忍衆はあえて有利を捨てて『つねにアタックカンタ』持ちを霊夢、パチュリーの元へと『つねにマホカンタ』持ちを咲夜、紫の元へと分ける。

 

「あえて有利を捨てるなんて何を………」

「我らが望みは殿の望み、殿が望んでおられるのは対等な力を持つ者と戦わせて勝利を勝ち取り、主らを最低でも二回八つ裂きにすることでござる!」

「そういう事か………つまりは舐められてるのね?」

「我らが殿が全力で戦うのは己と同格と認めた者のみでござる。

殿は一方的な戦いを嫌い同じ強さの者が全力で戦い、その果てで勝利を掴むことを好んでおられる故にな。

殿を全力にさせたければまずは我々を退けれねば話にならんぞ!」

 

 

そして第一の刺客であるスラ忍衆との戦いが始まるのだった。



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VS スラ忍衆  その2

白竜王さん。
星7評価誠にありがとうございまぁぁぁぁぁぁああああす!!!

どんどん評価が増えてきてマグロのテンションは50くらいまで上がってきております。
この調子でどんどん書いていくのでお楽しみにしていてください。


 

 

 

~紅魔館~(霊夢&パチュリーside)

 

霊夢とパチュリーの前には『レッド』、『ブルー』、『グリーン』、『ブラック』、『オレンジ』の五人が立ちはだかっていた。

 

問題としてパチュリーが一番懸念していたのは新生配合による継承により『つねにマホカンタ』まで継承されていた場合勝つ手段が何もなくなるという事だ。

『つねにマホカンタ』と『つねにアタックカンタ』の両方を所持するモンスターというのは実はそれなりにいる。

それらに対する攻略法としては反射されないブレス攻撃、アタックカンタの判定外である体技を使う、最後にしか行動出来なくなる上に一回しか動けないかわりに反射等を無視するアンカーナックル等、いくつかの攻略法は存在している。

だがパチュリー達にはそんな事を出来る人物が存在しない。

 

美鈴が入れば話は別だったのだが今はこの二人でなんとか5人を倒す必要がある。

 

「霊夢、通常弾幕だけは絶対に使わないで頂戴。」

「まさかそれも反射するの?」

「ええ、『つねにアタックカンタ』の反射判定は物理攻撃及び通常攻撃よ。

その通常攻撃はどのような物でも容赦なく反射してくるわ。

全部スペルカードでの攻撃で仕掛けるわよ!」

「厄介ね………。」

 

「拙者らの特性がわからず攻めあぐねるか。

それでは殿も満足せぬ上に我らとしても興が冷めるな。

よって我らが力をお教えしよう。

我らは自らが仕えし『九神将様』より『秘めたる力』を、さらにスキルも我ら固有の物に加えて『九神将様』の物とその中でも我らと相性の良いスキルを引き継いでおる。

 

拙者は『スラ忍レッド』、『九神将』、『もっこす』でござる。」

「拙者は『スラ忍ブルー』、『九神将』、『どさんこソウル』。」

「拙者は『スラ忍グリーン』、『九神将』、『うみんちゅハート』。」

「私は『スラ忍オレンジ』、『九神将』、『みやび』。」

「私は『スラ忍ブラック』、『九神将』、『ねむりネコの夢』。」

 

「パチュリー………。」

 

それを聞かされても分からない霊夢はパチュリーに問いかける。

するとパチュリーはさらに顔色を悪くして言う。

 

「赤いのは炎、青いのは氷、緑のは風、オレンジ色のは雷、黒いのは闇を得意としていてそれに完全特化した技を会得してるわね。

それに加えて全員が強力な斬撃をほぼ全て会得してるわ。

知覚出来ない程の素早い動きでこっちに攻撃する『しっぷうづき』には気を付けなさい。」

 

すると霊夢は周囲に陰陽玉を浮かべて戦闘態勢に入る。

 

「とりあえず近距離だけ警戒すればいいのね。」

「呪文も最大威力の物ばかりだけどスラ忍衆は基本的に全員物理アタッカーだから呪文の威力に関わる『かしこさ』はそこまで高くないわ。

私でもなんとか相殺は出来るわ。

私は防御に集中するから攻撃をお願い。」

「分かったわ。」

 

「作戦を立て終えたでござるか?

ならばいざ尋常に!勝負!!」

 

「出し惜しみは無しよ!神霊『夢想封印 瞬』!!」

 

霊夢が高速で周囲を飛び回り、通った後に無数のお札を残して移動する。

しばらくするとその札がスラ忍衆を追いかけ始め、さらに霊夢の陰陽玉から高速で弾幕が発射される。

威力こそ低いがかなりの回数が当たるシャイニングボウにも近い技であった。

しかしその手数は桁が違う。

 

ありとあらゆる方向から攻撃が飛んでくるのだ。

 

しかしスラ忍衆は持ち前の素早さであっさりと避けていく。

 

だが避けきれない者もおり、ちょくちょく当たってダメージを受ける者も出ていた。

 

「ぬぅ!?やりおるでござるな、ではこれはどうでごさるか?『しんらばんしょう斬』!!」

 

スラ忍レッドが力を貯めてそのナイフを横に振ったかと思えば空間が切り裂かれるような亀裂が入り、紅魔館の壁に切り裂かれた痕が出来た。

 

「なんつう威力してんのよ!?」

 

「霊夢!確かに威力は全員高いけどスラキャンサー程の高さも無ければ耐久はかなり低いわ!

そのまま畳み掛けて!」

 

だがそれを簡単に許す程スラ忍衆も甘くない。

 

「させぬわ!『海破斬』!!」

 

スラ忍ブルーの爪が白く光り、振るわれた瞬間津波が起きたような痕が見える斬撃が飛んでくる。

その爪痕によりパチュリーの用意した防御結界が複数破壊されたがなんとか霊夢は持ちこたえた。

 

「不味いわね、今結界の再生成するから時間稼いで頂戴!」

 

「やらせるか!『空裂斬』!!」

 

スラ忍グリーンのドリル状のクナイが暴風を纏い、振るわれた瞬間巨大な竜巻となって霊夢とパチュリーへと襲いかかる。

 

「それはこっちのセリフよ!夢境『二重大結界』!!!」

 

霊夢がパチュリーと自分へと来る攻撃を全て防ぐために最強の防御力を誇るスペルカードで相殺する。

 

「確かに威力はかなり高いけどギリギリ相殺は可能ね………全力じゃないと相殺出来ないのがきついけど。」

 

「「私達を忘れては困ります!『てんいむほう斬』!」」

 

スラ忍ブラックとスラ忍オレンジが畳み掛けるように手に持ったコンセント状のクナイと斑もようのクナイで重ねるような斬撃を放ち、その痕にはオーロラが出来ているような幻影まで見える。

 

これにより霊夢の二重大結界が完全に破壊されたが、霊夢は完全に態勢を立て直せていた。

 

「霊夢、あいつらが継承している秘めたる力は勝負が長引けば長引く程能力が大幅に上がるわ、注意しなさいよね。」

「こいつら相手に短期決戦って……… 」

 

「さぁ!まだまだ勝負は始まったばかりでござるよ!!」

 

 

スラ忍衆のコンビネーションを前に霊夢達は立ち向かえるのか………。

戦いは続く。



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VS スラ忍衆  その3

 

 

~紅魔館~『咲夜&紫side』

 

 

「さーて、私達側のが基本的には人数少ないわけだけど全員が魔力、妖力、霊力による弾幕が反射ってなによそれ………。」

「結論から言ってスペルカードはほぼ無効、物理的な効果を持つ私のナイフくらいじゃないとまともにダメージは入りそうに無いわね、せめて美鈴が入れば………でも恐らく物理反射の奴らに攻撃を反射されてやられたのでしょうけど。」

 

 

「残念ながら不正解でござるよ。

美鈴とは恐らくあの居眠りしておった門番のことでござろう。

奴は我々が起こしたら何故か侵入者と判断して攻撃してきたでござるが我々への攻撃を反射されて気絶しておるでござるよ。」

 

「…………あのバカ………とりあえず回復は割と速そうね………紫、悪いんだけどここに持ってきて?」

「………ええ、スキマボッシュート………」

 

すると天井付近の高い所から美鈴がボッシュートされて落ちてきた。

 

「うぐぉ!?!?頭が…………ぬぉぉぉぉぉおおおおお!?!?!?」

 

美鈴は頭から床に激突してその激痛により眼が冷めたようだが激痛によって床を転がり回っている。

 

「ほら!さっさと戦闘準備!」

 

咲夜はナイフを一本投げて美鈴の頭に突き刺さった。

 

「あいた!?痛いじゃないですか咲夜さん!?」

「なんと面妖な………頭にナイフが突き刺さっても死なぬとは………あやつは不死身でござるか!?」

「あー、確かにあいつがほぼ不死身なのは同意するわよ?基本居眠りしてたら咲夜のナイフが飛んでくるようだしこの間なんかナイフが頭に突き刺さってるのに気が付かないで居眠りしてたの見たわよ?」

「恐ろしや………この世界のあやかしはそのような存在まで………」

「なんなら不老不死とかも普通にいるわよ?」

「なんと!?」

 

『あれ?会話が普通に成立してる?もしかしてこいつら………話通じてる?』

 

「とりあえずこちらの話先に聞いて貰っても良いかしら?」

「なんでござろう?」

 

するとパープルが普通に返事をしてくれていた。

他のスラ忍達は咲夜がいまだにしばき続けても普通に生きてる美鈴に対して戦慄していたが。

 

「私達が貴女達の世界取り込んだ訳についてよ。」

「あぁ、殿がぶちギレたあれについてでござったか。

確かにあれは今の殿に話しても聞かないでござろうな。」

「元々あの世界私が見つけた頃には誰も居なくてこの幻想郷に住む者が増えてきたのもあってこの世界を広げる為に無人だった世界を取り込んだのよ。」

「しかし気が付いたら我々が住んでいて殿がぶちギレたと。

まぁ確かに納得出来る理由でもござるしちゃんと伝えれば殿は分かってくれると思うでござるが多分八つ裂きは変わらんでござるよ?」

「あー、やっぱり?」

「まぁ確かに拙者らがあの世界に国を作り始めたのは一年前からでござるが招く前に一度覗くなりした方がよかったというのもあるでござる。

それに殿がぶちギレてるのは世界を吸収したことではなくて空が目玉だらけの空間に覆われて地震が起きたことにより多くのスライムが怯えたことについてでござるゆえ。」

「…………それってこれよね、地震については世界を吸収した影響ね、私達は事前に知っていたけど貴方達からすれば突然ですものね。」

 

そして紫が能力を使ってスキマを開く。

するとパープルは納得するように手を叩きスキマについては聞いてくる。

 

「あぁ、それそれ、それでござるよ。

しっかしその面妖な空間はなんなのでござるか?」

「これはスキマ、私の能力で出来るものなんだけど……そうね、空間と空間の間に出来る物……と言えば分かるかしら?」

「ふむ、そうするともしや我々の世界を飲み込んだのは世界ごと空間の狭間に一度飲み込んでから吐き出したといった感じでござるか?」

「ざっとその認識で間違いないわ。

何よ………話通じるじゃないのよ………。」

「まぁとりあえず殿には話してみるでござるが恐らく戦闘続行は変わらないでござるよ?」

「話が通じない相手と戦うよりマシよ………」

「ふむ、それもそうでござるな。

では失礼。

もしもし?ゴールド殿、殿は居られるか?」

 

するとパープルはスライム型の通信端末を取り出して耳に当てて通話する。

 

そしてしばらくパープルが通信相手のゴールドという人物と話し、通話を切った。

 

「とりあえず話はしてみたでござるが殿曰く『理由は納得出来るがスライム達を怖がらせた事は変わり無いしそちらの不手際なのもある。

よって最低限一回はそなたら三人を八つ裂きにさせてもらう。』との事でござる。」

 

紫は頭を抱えるがまぁ分かっていた上に自分が悪いのも確かにあるために了承せざるを得なかった。

 

「あー、とりあえずあそこの紫のもやしっ子については全く関わってないからやめてあげて………それと私達もこの世界の面子があるから簡単にやられるわけにはいかないのよ。」

「ふむ、紫の者については拙者からも伝えておこう。

そして面子が重要なのも道理でござるな。

まぁ安心なされよ。例え死んでも蘇生の魔法があるでござるからそこまで時間経ってなければミンチでも蘇生可能でござるゆえ。」

 

「なんの心配よそれ………しかも八つ裂きって文字通りなの?とりあえず始める……と言いたいけど随分とあっちは派手にやってるわねぇ………」

 

「さすがに館の主の迷惑になりかねないでござるからどちらかが全滅したら修繕部隊と蘇生部隊を要請しておくでござる。」

「ありがとう………」

 

 

 

霊夢達はかなり派手に戦いあっていたがこちらは普通に平和だった。

しかし戦いは結局避けられない。

果たして勝利はどちらが勝ち取るのか…………



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VS スラ忍衆  その4

さくら咲くさん。
星8評価誠にありがとうございまぁぁぁぁぁあす!!!


 

 

~紅魔館~『霊夢&パチュリーside』

 

 

 

『あぁもう、結界系のスペルカードが毎回毎回数秒で破壊される上に全員が天狗並みの速さとか洒落にならないわね………それに加えてどんどん速さも結界を突破する時の火力も上がり始めてる。

そろそろいい加減不味いわよ?』

 

霊夢は焦っていた。

自分の実力は自分が一番理解していると自負している。

 

だからこそ分かってしまうのだ。

これがどれ程厳しい戦いなのかを。

 

通常弾幕すら使えないのもあってこちらの消耗は著しい。

さらにパチュリーは相手の数とその素早さによって防戦一方になっており、こちらのサポートが限界となっている。

 

さらにパチュリーについても下手に弱体化をかけてしまうと相手のテンションが上がり、逆にこちらが不利になるのが見えていた為にこちらへの強化と結界による防御が限界となっている。

 

そしてなにより………。

 

『秘めたる力とやらが厄介すぎる!?』

 

するとスラ忍衆がさらに加速する。

また『秘めたる力が発動したようだ。』

 

『埒が明かないわね………消耗きついから出来れば使用は押さえたかったんだけど………』

 

すると霊夢は懐から一枚のスペルカードを取り出す。

 

 

「各自散開するでござる!」

「「「「ハッ!」」」」

 

そしてスラ忍衆は巻き込まれる事故を防ぐための手段として全員が一定の距離を離すことによって周囲からの被害を最小限に押さえようとしていた。

 

「それは好都合よ!『夢想天生』!!」

 

「ぬっ!?させぬでござるよ!!」

 

霊夢の周囲をいくつもよ陰陽玉が回り、霊夢が放つ膨大な霊力がはじけ、その姿が薄く感じるようになった。

スラ忍レッドがこれから来るであろう攻撃を止めるために霊夢へと突撃する。

 

「喰らうでござる!!『火炎龍』!!」

 

スラ忍レッドが印を結び、地面に手を付くと地面から炎の龍が何匹も現れて霊夢の周囲を蹂躙する。

普通なら人間はこの龍から逃れる事は出来ずに焼き付くされていただろう。

 

だが………。

 

「なぬ!?効かないでござるか!?

いや、当たってすらいないでござる!?

一体なにが起こってるでござるか!?」

 

スラ忍レッドの放った火炎龍は確かに霊夢を飲み込んだ。

だが霊夢を飲み込んでもそれに当たって炎が弾かれている様子が一切無い上にすり抜けていたのだ。

 

「神技『八方龍殺陣』!!」

 

霊夢の全方向に無数の御札による線が放たれ、これにより横や後ろへの逃げ道が完全に封鎖される。

 

「ぬぉ!?」

 

スラ忍レッドはそれに巻き込まれて吹き飛ばされ、戦闘不能となる。

 

「レッドがやられたでござる!?」

「よそ見してる暇………無いわよ?」

 

霊夢がそう言い放つと御札による線がゆっくりと動き出し、霊夢の周囲にさらに無数の弾幕が生成される。

それが育ちきると限界を迎えて発射された。

 

「ぐぬ!?」

「避けきれぬでござる!?」

「ぐっ!?」

「ぁぁぁああ!?」

 

残る四人のスラ忍立ちもその密度の圧倒的に高い弾幕により次々と倒されていった。

 

「ふん!次私と戦いたいならお賽銭でも入れてきなさい!!」

 

霊夢が、その力を存分に見せた戦いだった。

 

 

_________________________________________________

 

 

咲夜&紫side

 

 

 

「派手にやってるわねぇ………」

「そうでござるなぁ………」

 

一方その頃スラ忍パープルと紫は………お茶をしながら一息ついていたのだった。

 

勝負は始めようとしたが、咲夜の時間を止めるというその凄まじい能力によりなす術無しと判断してすぐに敗けを認めていた。

だが咲夜としては実際かなり危なかった。

能力を発動した頃には、敵の獲物が素手の目と鼻の先にあり、もし『秘めたる力』が効果を発揮していた場合は負けていたと考えると咲夜はゾッとしていた。

 

とりあえずの勝負は決まった為に霊夢達の勝負をお茶をしながら見ている。

 

「お?これは勝負は付いたかしらね。」

「ぬ?どういうことでござるか?」

 

「あのスペル、夢想天生は霊夢の切り札とも言えるスペルであり。

これが遊びではない場合誰も勝つことは出来ないわ。」

 

 

それが例え妖怪賢者たる紫であろうともそれはかわらない。

 

「攻撃がすり抜けているでござるなぁ。ズズッ」

「あれのせいで私も使われると何も出来ないのよねぇ……

ズズッ」

 

「さてと………」

 

すると紫は飲み終わったお茶の器をおいて話し出す。

 

「貴方に提案があるのだけれど。」

「なんでござろう?」

「ちょっと取引しないかしら?

貴方達の本来の任務は私達を探すためとこの世界での情報収集よね。」

「いかにもそうでござる。」

「なら私達は呼び出されればこっちからそちらへと言って勝負は受けるしなんなら幻想郷についてもある程度教えてあげるわ。」

「ふむ、こちらとしては願ってもない提案でござるがそちらの要求は如何される?」

「簡単に言えばこっちに戦いを挑むモンスターの情報を事前に欲しいのよ。」

「成る程、対策を立てたいのでござるな?」

「そう考えて貰っても構わないわ。」

「ふむ、しばし待たれよ。

一時帰還して判断を仰ぐ必要があるゆえ。」

「わかったわ。」

 

「とりあえず修繕部隊と蘇生部隊は呼んであるので先にそちらが来てからでござるな。」

 

 

そして紫は幻想郷についてパープルへと教えてゆき、霊夢の戦闘が終わるのを待っていたのだった。



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情報収集  その1

_( _*`ω、)_スヤァさん。
星0評価それなりに痛いですがありがとうございます。

しかし自分のライトメタルボディなメンタルはこの程度ではくじけません!

やっぱりまだまだな部分も多く、人によってはかなり読みにくい作品になってる部分も多いと思います。
こうすれば読みやすくなるんじゃないか、自分は読みやすい等の意見があれば遠慮なくコメントしてください。
これから頑張っていきますのでよろしくお願いします。


 

 

~紅魔館~

 

 

 

霊夢のスペルによって常にアタックカンタ組のスラ忍衆が全員吹き飛ばされて勝負が決まり、紫とスラ忍パープルがお茶を飲みながら一息ついてピンクとイエローが咲夜と女子トークをして何故か馴染んでいた事に気付いた霊夢は紫達に言い寄る。

 

「ちょっと紫!?何一緒にお茶飲んで一息ついてるのよ!?そいつら敵なんじゃなかったの!?」

 

「あら、霊夢。

それなりに苦戦してたみたいじゃない。

こっちは普通に話通じたから少し話をしてから咲夜がすぐに勝負終わらせたわよ?時間を止められるから流石に勝ち目が無かったらしいわ。」

「いえ、時を止めるのがあと0.1秒遅ければ私の首が飛んでいたでしょうから結構ギリギリでしたよ。」

「いやぁ、タイムマスター以外にそんなことを出来る者がいるとは驚きでござったよ。」

 

すると愉快そうにパープルが話に参加をし始める。

「あんまり悔しそうにしないのね。」

「いやぁ、普通に悔しいでござるよ?

でも拙者らは殿に仕え、殿の為に全力を尽くした。

拙者らにとってはそれが一番重要なのでござる。

それに拙者らは殿が生み出した魔物の中では比較的弱い部類でござるゆえ。」

「ふーん、って今なんつった!?」

「ぬ?殿の為に全力を尽くs」

「そこじゃなくて最後よ!?これだけの強さがあって比較的弱い!?」

「あぁそっちでござったか。

その通りでござるよ?まぁ我らが弱い最大の理由は異常や動きを封じるといった攻撃に極端に弱いからでござるな。

異常は仕方がないにしてもマインドに耐性が無いのは致命的な弱点となるゆえ。

それに我ら結構打たれ弱いのでござる。」

 

そして最初に直撃を貰って戦闘不能になったレッドが起き上がる。

「あー、なかなか痛かったでござる。1~2発ならまだスライム殿の攻撃のが痛いでござるがあの量で受けると流石に耐えきれんでござるよ。」

「なっ!?あれ受けてピンピンしてるし………」

「いや?普通に致命傷でござるよ?骨が数本折れたでござる。」

「なんでそんな状態で立てるのよ………」

「慣れでござる。

我らの試合は基本的に死合形式でござるし。」

 

するといつの間にか美鈴と組手をしているスラ忍ブラウンが話に入ってくる。

 

「我らは魂さえ無事であれば肉体が消しても周囲のマ素から肉体を再構成するでござるからなぁ。」

「まぁ時間が立ちすぎると復活も出来なくなるでござるがな。

いやぁ、この間の試合でイル殿のグランエスターク殿に挽き肉にされたのが懐かしい。

あの時は真の意味で死を覚悟したでござるよ!」

 

基本的にスィラ達の世界では人は魂の強度があまり高くないのもあり余程精神を強く持っていなければ人間は死んでも生き返ることが出来ない。

それこそ絶望してしまったら蘇生は不可能となるのだ。

魔物と違って死んでも肉体の器は残るため、それを回復さえすればあとは魂を戻すだけだがそれが一番難しいのだ。

 

逆に魔物は何度も転生を繰り返す性質を持っており、配合により以前の肉体を捨てて新しい肉体を生成してそれに転生するといった形を取ることが出来る。

その為か己の肉体が消滅するのには慣れており死んだ程度では魂が消滅することはまず無い。

だが力の強すぎる魔物は自分が強者としての自負があるために負けて殺されると魂までも敗けを認めてしまう事が多く、魔王などの個体に至ってはそれを世界を管理する神に付け入られて魂を何分割にも別れさせられて別々の世界へと封印される。

 

とある天使が守護する世界に存在する宝の地図の魔王等も同じ理屈だったりする。

 

そして別れた魂は新たな肉体を生成する器となり、特定の魔物の配合により器へと己と関係のある魔物の力が注がれて魔王が配合により生まれることがある。

だがこれは魂が器へと変化してるため魔王の意思は欠片も残らないので己を生み出した主人へ従う性質を持つのだ。

 

そして魔物の魂は死んでもしばらくは残り続け、モンスターマスターが使役する魔物などはスカウトリングへと魂が戻り、己の肉体の再構成を待つのだ。

 

他にも配合に用いた親の魔物の魂は記憶を消して転生し、また違う器で生まれ直し、またモンスターマスターへと魂の繋がりを見出だす。

 

モンスターマスターとモンスターは魂で引かれ会う運命にあり、再度仲間になった際に以前の記憶を思い出すのだ。

 

唯一絆を失った場合は魂がモンスターマスターの元へと帰ることは無くなるが基本的に主の元へと帰ろうと己を維持するモンスターの魂はとにかく特殊なのだ。

 

その為かモンスターはいくら倒しても世界から存在を消すことなど不可能であり、何度でも自然に生まれなおすというのが人間達の結論である。

 

この話を実際に魔物として生まれているスラ忍衆から聞かされた霊夢達は驚きを隠せずにいた。

 

「妖怪も肉体としての器は仮初めに過ぎないけれど精神どころか魂で存在が可能だなんて………妖怪や妖精よりも肉体を捨ててるわよそれ………」

「まぁ否定はしないでござるよ?我らも何度も生まれ直している上にこの度に種族も変わってるでござるし。」

「実際スライム系じゃない時はスライムに生まれ直す為に自分から配合されに行ったのが懐かしいでござるよ。」

「あぁ、わかるでござる。

純粋に羨ましかったんでござるよなぁ。」

 

魔物とモンスターマスターはモンスターを何度も消滅させる必要のある関係だ。

だが魔物との間には絶対的な絆があるのだ。

 

 

「あんた達にとってあいつはそれだけ大事なのね。」

 

「そうでござるよ?全ての魔物にとって強者は憧れでごさるからな。

っとそろそろ蘇生部隊と修繕部隊が来るでござるな?」

 

そして窓から大量のスライム達がメタルスターの周囲を回る乗り物にのって現れたのであった。



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情報収集  その2

 

 

~紅魔館~『会議室』

 

 

 

とりあえず戦闘が終わり、スラ忍衆の言っていた修繕部隊と蘇生部隊が到着した。

修繕部隊はスライムボーグを中心に編成された機械に詳しい魔物や、ホイミスライム系の触手のあるスライム、スライムファングのよう手を持つスライムによって構成されていた。

 

ただ霊夢達が一番驚いたのが蘇生部隊だった。

 

来たのはホイミスライム系の魔物やエンゼルスライム等回復を得意とするモンスターばかりだったのだが…………

 

「デカすぎやしないかしらあれ?」

「蘇生部隊の隊長である『キングホイミスライム』殿でござるよ。」

 

それは、ホイミスライム系には見えるのだが、豪華な装飾品に身を包み、ヨーロッパの貴族のような髪型をして頭に神聖な輝きすら放つ冠を被っている。

 

そして何よりも…………大きい。

大きさとしては紅魔館と同じくらいには大きかったのだ。

 

「あのカニ擬きと同じくらいの大きさはありそうね……。」

「ちなみにキングホイミスライム殿よりも大きい同胞は何体かいるでござるよ?」

 

「………それ、どう考えてもあの国に入る大きさでは無いわよね?」

「まぁそうでござるなぁ。基本戦わない時は元の大きさに戻るかもとから大きい魔物は地面に潜ったり空を飛んでたり主のスカウトリングの中にいて主と共に過ごしていたりするでござるな。」

 

「ピキィ…………」

 

するとキングホイミスライムがこちらにやってきて紅魔館の中に雨を降らせる。

 

「お?『アモールの雨』でござるな。

体の傷や骨折、体力が治るので浴びとくでござるよ。」

 

「これは………心地いいわね。

だけどこれカーペットに染みない?」

「しばらくすれば消滅するのですぐに乾くでござるよ?」

「便利ね。」

 

 

そして紅魔館の壊れた所を修繕部隊が直しているのを確認して紫は会議室の椅子の上にそれぞれスキマを作る。

 

そしてそのスキマからどんどんマヨヒガに集めていた幻想郷の重鎮達が落ちて綺麗に席についていく…………のだが。

 

ブスリッ!

 

「痛っ!?誰よ!?私の席に画鋲なんて置いてたの!?」

 

レミリアが落ちてきた席にはどうやら画鋲があったようで尻に突き刺さってしまったらしい。

 

レミリアは立ち上がって尻に刺さった画鋲を抜いて捨てていた。

 

「あらやだ。日頃の行いが悪いんじゃないかしら?」

「白々しいわよこのスキマ!これどう見てもあんたの嫌がらせじゃない!?」

 

「ピキィ………」

 

ちょっと可愛そうに思ったキングホイミスライムが『アモールの雨』を降らせるのだが………

 

「ぎゃぁぁぁあああ!?溶ける溶ける!?」

 

だがこの世界の吸血鬼には聖なるものや流水に弱いのだ。

 

「うぉ!?冥界の霧が発生してるわけでもないのに回復特技でダメージとは何事でござるか!?」

 

「あー、貴方達まだ知らなかったのね。

この世界の吸血鬼って流水とか聖なるものに極端に弱いのよ。

ただぶっかけられるだけで体が溶けるほどにね。」

「ふーむ、やはり情報収集に出たのはいいのでござるが情報を得られる場所を知らないでござるからこの辺はどうしても手探りなのでござるよ。」

 

すると紫はスキマを開いて手を突っ込み一冊の本を取り出す。

 

「まぁ貴方達に色々と教えて貰うって言うのもあるから貴方達にはこれをあげるわ。

このくらいなら私としては問題ないと思うし。」

 

これをパープルへと手渡してパープルはその本について聞く。

 

「この本は…………ってか読めぬでござるな。」

 

「あー、文字がやっぱり違うか………

その本は『幻想郷縁起』、まぁこの世界にいる妖怪の情報をまとめてある本よ。

まぁ作者側の偏見もあるから完全に参考になるとは思わないけどね。

それでも無いよりはあった方がいいと思うわよ。」

「かたじけないでござる。

とはいえ文字が違う以上解読は必須、どこか文字を学べる所はないでござるか?」

 

するとぷしゅうううううと煙を発生させながらキングホイミスライムにベホイマをかけて貰って回復させて貰っていたレミリアが復活したのか会話に参加する。

 

「ぁぁぁあああひどい目に合ったわ。

ったくなんでこんな目に…………とりあえず文字なら人里で学べるには学べるけど人里に危害加えたら少なくともしばらく妖怪お断りみたいな感じになるから何も基本的に人には手を出さないで頂戴。」

 

「ふむ、殿に伝えておくでごさるか。

して、その文字を学べる場所に名前はあるのでござるか?」

 

「寺子屋と言うわ。

一応慧音には伝えておくわ。」

「かたじけないでござるな。

とりあえず会話可能で触手に色々と持たせたり出来る魔物である『まどうスライム』の派遣を要請しておくでござるよ。」

 

「とりあえずこの手紙を持たせて慧音の元へと訪ねて見て頂戴。

地図も渡しておくわ。」

 

「いただくでござる。

とはいえ我らが世話になってばかりでは不公平でござるな。とりあえず何か聞きたいことがあればなんでも答えるでござるよ。」

 

「あら?なら私としては聞きたいことがあるので聞いても良いかしら?」

 

すると興味本位から輝夜がスラ忍衆へと訪ねる。

 

「貴方達の中で最強の存在ってどんな魔物?」

 

 

「…………………我らがスライム族最強でござるか…………やはりあの二人でござろうな。」

「そうであろうな。

結論としてはメタル系の頂点にして最強のスライムの女神であり系統の王、『メタルゴッデス』殿と原初の殿の仲間にして全ての原点にして最強の魔物スライムの『スラリン』殿であります。」

 

 



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情報収集  その3

 

 

~紅魔館~『会議室』

 

 

「『メタルゴッデス』に『スライム』ね、パチュリー、貴方は知ってる?」

「えぇ………魔物を調べたら嫌でも目にする名前よ。

一応スライムは全ての魔物の中でも一番弱いとされている魔物だけど成長の幅がとにかく大きい魔物よ。

中には魔王を倒したスライムさえいる程のね。

そして全てのスライムの原点となる魔物とされるわ。」

 

「最弱の種だからといって舐めてかかると一撃で死ぬでござるよ?

何せ殿の育て上げたスラリン殿は殿が初めてスカウトした最初の仲間であり、今に至るまでずっと転生配合を続けてきた魔物であり、その回数は500は軽く超えるでござる。」

 

「500………それは肉体としての性能はもう限界まで上がってると考えても良いのかしら?」

「肯定するでござる。

少なくともスライムという種で完全な理想の肉体となっているでござるよ。

さらに三つの動作を同時に行う事を得意としており、『一族の誇り』を持っているでござるから能力が下がればほぼ確実にテンションバーンが発生するでござる。」

 

すると一度戦った紫が疑問に思ったのか問いかける。

 

「あのテンションバーンって発動しないこともあるの?」

「あるでござるよ、でも一族のほこりがある以上ほぼ発動するでござる。

そして最も恐ろしいのが他の魔物と組んだ時に真の力を発揮することでござるね。」

「どういうことかしら?」

「単純な話でござるよ。

主殿のスライムは他の魔物とのコンビネーション重視した戦い方を行い、他の魔物がスラリン殿をサポートし、スラリン殿の一族のほこりが能力を下げにくい状況を生み出すのでござる。」

 

するとパチュリーが納得が言ったように答える。

 

「成る程ね………モンスターマスターとしての力を限界まで生かした育成ね。」

「どういうことかしら?」

「モンスターマスターっていうのは基本的に1~4体の魔物を同時に指示を出して戦うのだけれどおそらくスィラってやつの一番強い戦い方が4体を使ったほうなのでしょう?」

「正解でござるよ。

殿の主力はいくつかあるでござるがはぐれメタル殿、スピンスライム殿、スラリン殿、モントナー殿が主力でござるな。

その中でもスライム殿の火力がずば抜けて高いでござるよ。」

 

「成る程ね………もう一体の『メタルゴッデス』と言うのは?」

 

するとパチュリーは少し苦い顔をして答える。

 

「種族として見るならすべてのスライム系の魔物の頂点であり、スライム系を統べる『系統の王』よ。

でもそれは割とどうでも良いわ。一番厄介なのは『メタルボディ』よ。」

 

「そういえば『メタルボディ』は魔法使いの天敵なんだったかしら?」

「えぇ、『メタルボディ』持ちは全て攻撃魔法や炎や氷のブレスといった属性を持つ攻撃ほぼ全てに対して完全な耐性を持ち、"ダメージが常に1/3"まで減らされてその肉体の硬さその物もダイヤモンド並の硬さをしているわ。

でも『メタルゴッデス』はそんなのとは比較にならないのよ。

全ての魔物の中で一番硬い体を持ち、『メタルボディ』としての特性はさらに強化されて"ダメージを常に1/5"まで抑えるわ。

そして常に3~4回は同時に動くことが出来る上にその神々しさを持つ体その物から『いてつくはどう』が放たれているから能力を強化してもすぐに打ち消されるわ。

それに………速すぎるのよ。」

 

「速すぎるって?」

 

「『メタル系』は結構狙われることが多いから逃げるのにも特化しててその動きの速さも全ての魔物の中で一番なのよ。

しかも『メタルゴッデス』は大きさだけでいえば下手したら妖怪の山より大きいわ。

それだけの大きさなら普通は攻撃の的でしかないけど『メタルゴッデス』には当たらないのよ。」

 

「接近戦をしようにもそもそも追い付けないって訳ね。」

「さらに言えばその魔法の威力も下手な賢者や大魔法使い、大魔王程度じゃ比較にならない程の威力を誇るわ。」

 

「おお、よく知ってるでござるな。

その通りでござるよ、ただ殿のメタルゴッデスは通常の個体より1/3程度の速さでしか動けなくなってる上に物理的な力も1/3になっているでござるが変わりに体力が倍になるHPバブルSPという特性を持ってるでござるからめちゃくちゃ硬いでござるよ?」

「地味に厄介な………」

「どういう事よ、遅くなってるんでしょ?」

「メタル系の素早さを1/3にしたところであのマスゴミくらいの速さはあるわよ。

それにメタル系は全員共通して物理的な力がかなり弱いから意味ないわ。

それに体力が二倍ってことはダメージが1/5になるメタルゴッデスの特性『超ハードメタルボディ』と合わさって実質10倍の数値で体力が増えていくのよ。硬いなんて次元じゃないわ。

どうせ傷も勝手に回復するでしょうから勇儀でもまともにダメージを入れられるかもわからないわ。

早い話幻想郷の住人じゃ傷一つ負わせられるかもわからないわ。」

 

「ついでにメタルゴッデス殿の周囲は空間が大きく歪むでござるから余程小さい体でなければまともに動けなくなるでござろうな。」

 

 

「最強の奴らの情報は貰ったけど…………これ勝てなくないかしら?」

 

輝夜が呆れた様子で言い放ち、周囲も考え込むのであった。



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第二のスライム  その1

あ、一応ゆかりん視点です。


 

 

~紅魔館~『会議室』

 

 

全員が最強のモンスターに対して考え込んでいた所、話題を変えるために私はスラ忍衆に質問する。

 

「そういえばスィラは段階的に刺客を強くしていくのよね?

次は何が出てくるのか分かるかしら?」

「次でござるか?うーん、正直候補が多いのでなんとも言えないのでござるが…………そうでござるね、恐らくはスイーツスライム軍団が相手になると思うでござるよ?」

 

なんか一気に美味しそうな名前のが出てきたわね………

 

「そのスイーツスライムってのは?」

「『ピーチスライム殿』、『レモンスライム殿』、『ライムスライム殿』、『チェリースライム殿』、『ベリースライム殿』、『ホイップスライム』殿、『プリンスライム』殿の計7匹の魔物で構成されたスライム軍でござる。」

 

するとまたパチュリーが顔をしかめる

 

「うーわ………これまた厄介な………」

「え?そいつらのことも知ってるのパチュリー?」

「ええ、比較的知名度は高いわ。

それでスイーツスライム達だけどはっきり言ってかなりヤバいわよ?」

「どういうこと?」

「まずこいつらが共通して持つ特性、スキルを教えるわ。

まず特性だけれど共通なのは『スモールボディ』、『スイーツカーニバル』、『いきなりピオラ』、『星のおくりもの』、『神の躍り手』を全員が共通して持つわ。

まぁ全員がほぼ同じ特性を持つからスラ忍衆程考えて戦う必要性はないわよ。

とりあえずスモールボディはスライムが多く持つ特性で身体が小さいっていう特徴によってこちらの攻撃が当たりにくいわ。

その代わり一匹一匹の能力はちょっと低いんだけど正直誤差ね。

だけど一番厄介なのは兎に角速くなるのよ。

さらに空間が歪んでようが影響を一切受けないわ。」

 

「それって………」

 

「ええ、メタルゴッデスが生み出す空間の歪みを無視して動けるからまずその速さをどうするかね。

そして『いきなりピオラ』、戦闘が始まると無詠唱で速度強化呪文のピオラがかかるわ。

これにより素早さは倍になってさらに速くなる。

『星のおくりもの』は戦闘中に自身が危機に晒されると自身の攻撃力、防御力、素早さ、賢さのうちいずれかをかなり強化するわ。

速い話最後まで油断できなくなる特性になるわ。

そして『神の躍り手』、向こうの世界にある躍りの特技って相手を動けなくしたりとか即死させたり、魔力を吸い取る特技もあるのよ。

これはそれに対する耐性を下げて効果を与えられるわ。

んで一番ヤバいのが『スイーツカーニバル』よ。」

 

「それの何が一番ヤバいのよ?名前だけ見れば割と危険性は無さそうだけれど。」

 

霊夢ははっきり言うわね………いやまぁ私も同意見なのだけど。

 

「はっきり言うわ。

これを攻略出来なければ勝ち目は完全にゼロよ。」

「…………そんなに?」

「ええ、効果としては自分達にこの特性を持つ魔物が何体いるかで決まるわ。

一体なら仲間全員にマホカンタの付与、二体ならアタックカンタ、三体ならぎゃくふう、四体ならリザオラルがかかるわ。

マホカンタとアタックカンタはもう説明してるから割愛するけれど『ぎゃくふう』はブレスを反射する効果、リザオラルはこれが付与されている魔物は死亡してもその場ですぐに蘇生されるという効果を持つわ。」

「なっ!?死んでも蘇るってどこの焼き鳥よ!?」

「焼き鳥………ぷぶぷ………」

 

輝夜は笑ってはいるけど実際に事態は深刻ね。

 

「まぁ、速い話一回殺したくらいじゃ勝負付かないので二回殺す必要があるでござるよ?

でもただでさえ速い『スモールボディ』がさらに速くなってるでござるから倒すのは結構骨が折れるでござる。」

「んでスキルのスイーツカーニバルだけれど………躍り系と笛系の特技ばっか覚えるわ。

特にこの中で一番警戒する必要があるのは………やっぱり『星降りのサンバ』であってるかしら?」

「んー、惜しいでござるな。

『青天の霧』もあるでござるよ?」

「ああぁ…………最悪過ぎる………」

 

するとパチュリーは顔をさらに青くする。

 

「ちょっと、どうしたっていうのよ?」

「『星降りのサンバ』は自分が速ければ速いほど威力の上がる攻撃系の躍りよ。

『いきなりピオラ』のあるスイーツスライム達と相性が良すぎるわ。

それに加えて『青天の霧』は本来与えられるダメージの上限を超えたダメージを与えられるようになる特技よ。

つまり威力が限界を迎えている技の威力を跳ね上げるわ。

とりあえず予想としてはひたすら踊りまくる形であってるかしら?」

「正解でござるよ。

攻撃、状態異常、バインド、即死、様々な躍りを使いこなし、凄まじい速度で相手を翻弄するのがスイーツスライム軍団でござる。」

「はぁ………とりあえず私は巻き込まれなくなるから良いけど………あんたら二人だとかなりキツいと思うわよ?」

「うぐっ………痛い所を………」

 

すると蓬莱ニートこと輝夜が手を挙げる。

 

「………良いわよ?私が一回だけ手伝ってあげるわ。

ちょうど興味もあったしね。」

「………確かにあんたの能力なら速さでは負けないけど………良いの?」

「えぇ………一回死んでも蘇る?別に問題無いわ。

真の不老不死の力を見せてあげるわ。」

 

輝夜はそう自慢げに答えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、スイーツスライム軍団はメガザルダンスもあるでござるから最大8回は生き返るでござるよ?」

「え゛?」



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第二のスライム  その2

真見無目桃さん。
星5評価ありがとうございます。
これからもどんどん更新するつもりなので是非見ていってください。


 

 

~スラバッカ王国~『王城ヘルクラウド』

 

 

玉座の間に一匹のまどうスライムが入り、スィラの前でゆっくりと床に降りて口を開く。

 

 

「主よ、スラ忍衆から定時報告です。」

「了解だ、繋いでくれ。」

 

用件がなにかをすぐに理解したスィラは玉座にあるスイッチの一つを押してとある機能を作動させる。

 

すると壁の一部がアームによって飛び出し、それが裏返ってモニターが現れる。

スィラはモニターを作動させるとそこからスラ忍衆がキメポーズをキメながら待っていた。

 

「やぁスラ忍衆達、任務の方はどうだった?」

『殿、申し訳ございませぬ。

我らは敗北致しました。』

「あらま。

あいつらあいつら思ってたより強いのね。

まぁそっちは次の部隊送っとくから情報共有しといて。」

『承知、それと情報収集の件でいくつかご報告が。

とりあえずこの世界、幻想郷と呼ばれているので今後はこれに合わせるでござるが、魔物は確かに居ないのでござるがそれに近い種族が確認されたでござる。

その存在はこの幻想郷では『妖怪』と呼ばれ、人の恐怖によって生まれ、それを得ることにより存在を維持しているようでござる。

さらにある一定の強者となると人の形を持つようになる者が多く、それぞれが異能を持っていたでござる。』

 

するとスィラは興味深そうにする。

 

「へぇ………妖怪に異能ね………。

それに妖怪か………確かに魔物とは異なるけどだいぶ近い存在みたいだね。」

『それぞれその異能は『~程度の能力』と呼ばれており、基本的には己の種族や生まれる際に出来た伝承に合わせた物が多いらしいのでござるが人間でも一部の強者がこれを所持するようでござる。

とはいえ強者でなくても持っている者はそれなりに居るようでござる。』

「成る程ね………まどうスライム、後で全員に相手が人間に見えても人間ではなく妖怪という種族であり、特定の異能を持っている可能性が高いから注意するように伝えてくれ。」

「畏まりました。」

「さて、次の報告を聞こうか。」

『承知したでござる。

パープルが今回敵側に取引をしてこの世界、幻想郷の情報を教える代わりにこちら側の情報をある程度教えるという条件で契約を結んだのでござるが、どうやらこの世界には隣接する異界が複数あるようでござる。』

 

スィラは未知の世界という点でかなり興味深そうにしている。

スィラは不思議な鍵を使って様々な世界を旅していたのもあって新しい世界というのはどうしても知りたくなるのだ。

 

「へぇ………どんなとこ?

それとその契約は問題ないと伝えといてくれ。」

『『冥界』、『天界』、『魔界』、『仙界』、そしてこちらは少々特殊なのでござるが『月』があるでござる。』

「月ってあの月?」

『その『月』でござる。

それぞれに住人が住んでおり、冥界には一度死した者が訪れる場所であり、転生までの間に生前の罪を裁き、その罪に応じた罰を与えている場所との事でござる。

逆に善行が多い場合は天国なる浄土にて転生まで平穏な暮らしが約束されているとの事でござるよ。

『天界』は天人と呼ばれる人の上位種族を自称する者達が住んでおり、基本的に他を見下す傾向が強いそうでござる。

『魔界』は魔界神である『神綺』なる人物が作り出した異界であり、ちょっと特殊な異界になるとの事でござる。

『仙界』は仙人と呼ばれる寿命をなくし、欲を出来る限り無くした者が作り出した世界だそうでござるよ。

最後に『月』は玉兎なる種族と月人なる不老の者達のまう土地のようでござるな。』

 

するとスィラは少し考え込む仕草をして答える。

 

「成る程、報告ありがとう。

引き続き情報収集お願い。」

『承知、ああそれとどうやら最初に現れた三人のうち一人は他二人にただ巻き込まれただけのようでござる。』

「え?そうなの?ならしばく理由は無いけど………あ、それって最後に来た紫色のパジャマみたいなの着てたやつ?」

『それでござるな。』

「分かった、伝えておくとしよう。

さすがに無関係の者を巻き込むわけにもいかんしな。

とはいえ見た感じあいつ………私達の世界の知識を持っているな?」

『左様にござる。

我らの特性もほぼ全て見抜かれていた上にその効果全てを当てていたでござる。』

 

「へぇ………よし、次の攻撃役のモンスター達にカメラマンとしてメタルスライムを派遣する。

戦闘が始まったら私も観戦させて貰おう。

どうもキャンサーとは相性が悪すぎてうまく動けて無かったようだからな。」

 

スィラは自分が相手を見誤っていた事に若干悔しさを感じるが勝負や戦いへの熱意に燃えている。

 

『承知。あの者達にもその事を伝えてもよろしいでござるか?』

「問題ない、むしろスライムが戦い以外に理不尽な理由で傷つけられなればそれで良い。

戦いはスライムの強さを見せ付ける絶好の機会だから逃さないがな。」

『承知したでござる。

して次の攻撃役は………』

 

するとスィラはニヤリと笑って答える。

 

「予想はどのみちしてたんでしょ?

『スイーツカーニバル』だよ。

それとまず月への偵察としてスラブラスター飛ばすからメタルスターとも情報共有しておいてくれ。」

 

 

さーてと、面白くなってきたな………

 

だが八つ裂きは変わらん………一回しばき倒す………

 

 

 

 



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第二のスライム  その3

 

 

~スラバッカ王国近海~『スラリン船内部』

 

 

 

幻想郷へと向けて海を進むスラリン船、その甲板の上では数多のスライム達が集まり、話し合いをしていた。

 

「ピキーッ!(そろそろ幻想郷に到着しますよー。)」

「ピキッ?ピキピキー!(お?割と早かったな。)」

「ピキィ~(まぁそこまで距離は無いですからね。)」

「ピキィ………ピキピキ(それで降りる方法は………発射ですか?)」

「ピキッ!(YES!)」

「ピキィ………(相変わらずスライム使いが荒い船ですね………)」

 

幻想郷近くの海岸へと到着した頃、甲板にいた7匹のスライム達が一斉に大砲へと装填されていく。

そして…………

 

「ピキーッ!!!!(発射ァァァァァアアアア!!!!)」

 

「「「「「「「ピキッィィイイイイれ!!(イヤッホォォォォオオオ!!)」」」」」」」

 

 

7匹のスライム達が次々とに発射され、その影は妖怪の山へと向かってどんどん激突していくのだった。

 

 

 

これによって妖怪の山に大きなクレーターが出来たのであった。

 

 

_________________________________________________

 

 

~妖怪の山~

 

 

「天狗戦闘員!第一種戦闘準備!」

「また向こうの島から攻めてきたぞ!!」

「今度こそ天狗の力を思い知らせてやれ!!」

 

天狗は前回ただ通りがかっただけであったメタルスターに対して侵入者として排除しようといらぬちょっかいをかけており、その際に軽くしばかれていた。

 

今回は天狗たちは雪辱を果たす事に燃えてこそいたが…………相手が悪すぎた。

 

相手のスライムたちはその圧倒的過ぎる機動力により天狗達の放つ段幕を悉く回避して次々に天狗を動けなくしていく。

 

「ぐぁぁ!?」

「まて!?俺は味方ぎゃ!?」

「く、なんで味方がこっちを攻撃して!?」

 

さらに天狗達は"こんらん"して味方をも攻撃する程だ。

 

「なんだ!?空から星形の段幕が!?」

「ぬわぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!?!?!?」

「なんだこれは!?一撃で天狗達が!?」

「あややややや!?私よりも速すぎるんですけど!?」

 

天狗達が簡単に蹂躙されていく。

幻想郷最速の天狗ですらその"すばやさ"には全く勝てない。

すばやさに特化したモンスターの速さは人に知覚できない程の速さで動く事が出来るのだ。

さらにこの速さによってまるで"3匹"に分身する程の速さでそれぞれのスライムが三つの行動を同時に行っている。

 

しかし天狗側には死者は誰一人として出てはいない。

 

これはスライム達が死者を出さないようにかなり手加減しているからだ。

 

それ程までに天狗達とスライム達には絶対的な差があるのだ。

 

だがスライム達からすれば良い迷惑であった。

何故ならスライム達にとってはまたただ通りがかっただけなのだから。

 

「ピギー………?(メタルスターからの通信にもあったけどなんでいきなり襲いかかってくるんだろ?)」

「ピキー(さぁ?実力がわからない訳じゃなさそうだけどねぇ、一部僕たちの半分くらいの速さで動けてるやつがいたから完全に弱い訳じゃないけど。)」

「ピキキ(まぁでも僕達の目的はこいつらじゃないしさっさとこの山を抜けようよー!)」

「ピキーー(そうだね、早く紅魔館とやらに行こうよ。)」

「ピキキピキキ!(後で情報貰えそうだし持ってこうっと。)」

 

こうしてスライム達は妖怪の山のほぼ全ての天狗を蹂躙して先へ進んだのであった。

 

なお一匹がマスゴミのカメラを持っていっていたが誰も止めることを出来なかったのである。

 

「ピキ、ピキイ!(あ、そうだ!人里ってとこ寄ってこうよ!)」

「ピキィ?(メタルスターからの情報にあったとこ?)」

「ピキィ!(そうそう、主様からは行ったとしてもそこで暴れるなって言われてるだけで行くなとは言われてないもん。)」

「ピキィ……(確かに言われてないけど………目的忘れちゃわない?)」

「ピキピキィ!(大丈夫だって!主様優しいもん!敵には容赦しないけど………)」

「ピキィイ……(はぁ……まぁいいか。)」

 

 

基本的にスライム達はきまぐれだったのだった。

 

 

 

_______________________________________________

 

 

~人里~

 

 

「な、なんだこの妖怪?幻想郷縁起にこんな妖怪いなかったはずだし……新種か?」

「「「「「「「プルプル(ぼくらはわるいスライムじゃないよ?)」」」」」」」

 

「んー、まぁいいか。

特に害も無さそうだし。

多分やったとしても"すねこすり"みたいな悪戯しかしないだろ。

ちょっとまってろ、隊長に許可証貰ってくるから。」

「「「「「「「ピキー(わーい。)」」」」」」」

 

 

人里の警備は割とザルであった。

 

とりあえず許可証を付けられる場所が無いため、紐を付けて頭のとんがりに引っかける形で許可証を下げ、人里にあっさりと入ったスライム達であった。

 

「ピキッ!?(あ、お金どうしよ!?)」

「ピキィ……(ゴールドしかないや。)」

「ピキ、ピキイ!(僕さっきの天狗?ってやつらからお金巻き上げといたよ!)」

「「「「「「ピキィ!!(ナイス!!)」」」」」」

 

スライム達は今日も可愛さ全開であった。



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人里とスライム  その1

 

~人里~『甘味所』

 

 

 

スイーツスライム達は人里に入ると自分達に近い甘い匂いに誘われて甘味所へと入っておやつを食べていた。

 

「ピキィ~♪(あまぁ~♪)」

「ピキピキィ!(うまい!うまい!)」

「ピキィ♪(しもふりにくのが好きだけど美味しい~♪)」

「ガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャ」

「ピキ!(おかわり!)」

 

「あらあら、よく食べるのね貴方達、私も嬉しいわぁ。」

 

甘味所のおばちゃんが団子を沢山食べるスライム達に頬を緩ませている。

スライム達はその愛らしさから愛されることの多い魔物だ。

特に何かを食べるのに夢中になっている時が一番人気があるらしい。

 

「それにしても貴方達、果物みたいな甘い香りがするのね。

何かの果物の妖怪かしら?

でも一匹だけなんか鉄の匂いがするのよねぇ。」

 

おばちゃんはスライム達が漂わせるスイーツの香りに果物の妖怪と勘違いしていた。

 

「ピキィ?(お会計これでいい?)」

「え?あぁ、お会計かい?

えーっとはい、ちょうど頂きました。

ありがとうね、また来ておくれ!」

 

「ピキー!(美味しかったよー!)」

「ピキ!(ごちそうさまでしたー!)」

「ピキピキィ!(美味かった!)」

 

スライム達はおばちゃんにスライムの言葉ではあるがお礼を言って甘味所を後にする。

 

一列にならんで跳ねながら移動するスライム達に人里の人間達は物珍しそうに見ていたがその愛らしさに皆が頬を緩める。

中には子供の人間等はスライムを抱きに行ったり撫でたりしてる者もいる。

 

スライム達はその愛らしさから人々を次々に魅力していた。

 

すると人里の寺子屋の前で子供達と遊んでいると一人の脇の空いた巫女が姿を見せる。

 

「あ………」

「「「「「「「「ピキ(あ………)」」」」」」」」

 

そしてその脇の空いた特徴的な服装からスイーツスライム達は本来の目的を思い出し、今の状況等も合わさってとてつもなく気まずい雰囲気になる。

 

「えーっと………あんたらが次の相手………で良いのかしら?」

 

「ピキー……………ピキ(あーー……………うん。)」

 

スイーツスライム達としても一応本来の目的の対象が目の前にいるが、今いる場所を思い出して気まずそうに頷く。

 

「あー、えーっととりあえず立ち話もなんだし場所変えないかしら?」

「………ピキ(………そうだね。)」

 

「ちょっとまって頂戴、通訳呼んでくるから……」

「ピキ?(通訳?)」

 

そういって霊夢は一度寺子屋の中に入り一人の人物を呼び出す。

 

「どうしたのでござるか?霊夢殿?」

 

そこから出てきたのは偶々情報収集に寺子屋で授業を受けに来ていたスラ忍イエローだった。

…………凄く目立ってたが気にしては負けな気がした。

 

 

_________________________________________________

 

 

 

 

「あら、いらっしゃ………おや?昼間の果物の妖怪さんかい?お友達を連れてまた食べに来たのかい?」

 

「ピキ!(ちょっと落ち着いて話したかったんでまた来ました!)」

「ピキキ!(あと果物じゃなくてスイーツです!妖怪じゃなくて魔物です!!)」

 

「ピーチスライム殿が話をするのにちょうどよいのでまた来たと言っているでござる。

それとプリンスライム殿が我らは果物ではなくスイーツであり、妖怪ではなく魔物であると言っているでござる。」

 

「あら?黄色ちゃんこの子達の言葉が分かるの?

それにすいぃつ?ってなんだい?」

 

「拙者は正確にはイエローなのでござるが………まぁいいでござる。

一応ちゃんとわかるでござるよ、種族は違えど同じ系統のスライム仲間でござるから。

それとスイーツとは甘い菓子でござるよ。」

 

「あぁ、菓子の事を言ってたのかい。

ってことをお菓子の妖怪って訳かい。

あ、でも妖怪じゃなくて魔物?なんだったっけ?」

「いかにも、我らは魔物。

妖怪とは違ってマ素から生まれ、恐怖等無くとも特に問題無く存在を維持出来る生き物でござるよ。

まあでも分かりやすく言うならば人を襲ったりする必要のない妖怪とでも認識して貰えれば良いでござる。」

「はぁ……なかなか凄い子達なんだね……」

 

甘味所のおばちゃんはよく分かっては無さそうだがどういう存在なのかおおざっぱに理解したようだ。

 

「あ、でもこのメタルスライム殿だけはお菓子の魔物ではなく液体金属の魔物でござるよ。」

「あ、やっぱりそうなのかい?

さっき来たときもこの子だけ甘い匂いじゃなくて鉄みたいな匂いだったから気になってたんだよ。」

「こんな見た目でもこの方々は皆拙者よりも強いのでござるよ。」

「まぁ!?そうなのかい?

この間ここで暴れようとしてた妖怪をなにもさせずに倒した黄色ちゃんが勝てないくらい強いのかい!?」

「正直傷一つ付けられれば御の字でござるよ。

このスライム殿は皆とてつもなく速いのでござるよ?」

「まぁ!天狗とどっちが速いのかしら?」

「ピキキ!(あ、天狗なら今朝襲われたよ!)」

「ピキ!(確かにちょっと速いのもいたけど僕達のが速かったよー!)」

「おや?どうやらこっちに来るまでに妖怪の山を通ってちょうど襲われたようでござるな。

まぁ見たところ傷一つ無く蹂躙したみたいでござるが。」

「はぁ…………あいつら喧嘩を売る相手の実力くらい見なさいよ………見た目に騙されるからこうなるのよ。」

「あらあら、随分と凄いのね貴方達。」

 

 

魔物達は割と人里で馴染みはじめていた。

 

 

 



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人里とスライム  その2

 

 

 

~人里~『甘味所』

 

 

とりあえず新しい刺客であるスイーツスライム達とスラ忍衆から聞いていた現場中継役のメタルスライム?というスライムと甘味所に入って話をすることにした。

 

というか昼頃にスライム達が一度来ており、何故か甘味所のおばちゃんとかなり仲良くなっていた。

どうやら可愛らしい見た目とよく食べる上に満足そうな表情を見せるその愛らしさに負けたらしい。

それに加えてスラ忍イエローもこの店に定期的に来ており、以前人里というかこの店で暴れようとして処罰対象となった妖怪を無力化して捕らえたのも彼女らしい。

 

他にもレッドは子供人気が高かったり、

グリーンは何故か幽香と仲が良くなっていたり、

ブルーは人里の漁師の護衛について周辺の川から魚を一緒に釣ってたり、

オレンジは里の八百屋でバイトしながら情報収集してたり、

ピンクは怪我人を片っ端から治していたり、

ブラックは妖怪の山の河童達と交流を持っていたり、

ブラウンは里の大工を手伝っていたり、

パープルは稗田家に入り浸っていたり、

とやけに幻想郷に魔物達が馴染み始めていたという事実に驚きを隠せなかった。

 

「とりあえず人里に来た理由聞かせて貰っても良いかしら?

一応私も立場的にここを守らなきゃいけないのもあるから。」

「ピキ、ピキィ!!」

「ホイップスライム殿はメタルスターからの報告にあった場所であり特に戦闘の必要もないので興味があったからこっちに寄ったみたいでござるな。

ちょっと本来の目的忘れかけてはいたそうでござるがちょっとした情報収集もかねてたみたいでござるよ?」

「ピキピキ!」

 

ホイップスライムは自慢げに言ってはいるがまだ疑問はいくつかある。

 

「んじゃ次の質問といくわよ。

その金はどこで稼いだのかしら?」

「ピキッピキピキィ!」

「進路上にあった妖怪の山ってとこで天狗が大量に襲いかかってきたから全員気絶させて金を巻き上げたそうでござる。」

「あー、それは実力を見誤ったあのバカラス達の自業自得ね。」

 

 

「とりあえず最後に聞いておくわ。

貴方達は人里に何かするつもりはある?」

「ピキ!ピキキピキィ」

「特に無い、子供達と遊ぶのは楽しいしお団子も美味しい、普通に一匹のスライム一族として馴染むつもりだそうでござる。」

 

はぁ、まあ大丈夫そうかしらね。

 

「まぁあんたらは人に危害を加えそうもないしとりあえずは良しとしておくわ。

それであんたらとの戦いだけど……今はやれる雰囲気でも無いわね、それに私の霊力の回復も待たなきゃいけないし……明後日でどうかしら?」

「ピキピキ!」

「問題無いそうでござるよ。」

「分かったわ、とりあえず場所は迷いの竹林でやりましょうか、あそこなら被害が出てもすぐに再生するわ。

明後日になったら私があんたら連れてくわ。」

「ピキ!」

「了承しているでござる。」

 

「まぁどうもここの子供とかがあんたらを凄く気に入ってるみたいだから仲良くしてやって頂戴。」

「ピキ!」

 

「さて、私も小腹がすいたからお団子を食べるとしましょうかね。

んぐ……やっぱりこの味ね~♪」

 

ここの味は昔から変わらないのよねぇ。

 

「おや、真面目な話しは終わったのかい?」

「えぇ、それと今日もお団子美味しいわ!ありがとう。」

 

「あらやだ、嬉しいこと言うじゃない。

霊夢ちゃん、貴女自分の生活も苦しいはずなのに定期的にここにお団子食べに来るのよね。

私としては嬉しいけどちゃんと自分を労りなさいよね?」

「うん、ありがとう。おばちゃん。

さて、小腹も埋まった所だし、あんたら時間はある?」

「ピキ!」

「大丈夫だそうでござるよ。」

 

すると意外な言葉を霊夢は口にする。

 

「そう、なら私の家、博麗神社にくる?」

「ピキ?」

「神社、たしか妖怪の山の上に建ってた建物?と言っているでござる。」

「えぇ、それであってるわ。」

「たしか神を奉る場所でござったよな。

我ら魔物が神を奉る神聖な場所に行ってもよいのでござるか?」

「別に問題無いわよ、神といってもここでは人の姿を取るし例え神と段幕ごっこで私に敵うやつなんていないもの。

あとうちの神様はもう昔にどっか行っちゃって今は居ないから問題無いわよ。」

「それはそれで問題あると思うのでござるが了承したでござるよ。」

「「「「「「「「ピキ!」」」」」」」」

「スライム殿達も大丈夫のようでござるな。」

「とりあえず紫にも連絡しないといけないわね。」

 

するとレモンスライムの後ろからスキマが開いてババァーンと八雲紫が現れる。

 

「あら、それなら大丈夫よ、私も聞いてたから。」

 

しれっとレモンスライムその場で抱きしめながら話す。

 

「はぁ、相変わらずね。」

「ふふふ、それにしてもスライムちゃん達随分とプニプニしてて気持ちいいのね。

撫でても良いしプニプニしても可愛いし、ずっと触っていたいわね。」

「全く………あんたはそれと戦わなきゃいけないんだからね?まぁ私もなんだど。」

 

スライム達は終始プルプルしており霊夢も理性を捨ててすぐにでもなで回したかったがなんとか理性で耐えたのであった。



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人里とスライム  その3

 

 

~博麗神社~

 

 

 

甘味所で団子を食べ終わったスライム達は霊夢の後に付いていき博麗神社へと訪れていた。

 

「はい、お疲れ様。

着いたわよ、ここが私の住む場所であり、この世界の結界の一つを維持していて現代と幻想郷の狭間に位置する博麗神社よ。」

 

霊夢は"割と後から到着"したスライム達を見てそう声をかける

 

「「「「「「「「ピキー……ピキー………」」」」」」」」

 

そしてスライム達は既に満身創痍になっていた。

 

本来博麗神社は人の足で来るには筋肉痛を覚悟する量の階段を上り続ける必要がある。

 

そしてスライム達は………基本的に飛行能力を持たないのだ。

勿論空中への攻撃手段はいくらでもある。

だが飛ぶことはそもそも出来ないのだ。

 

つまり人の足で筋肉痛を覚悟する量の階段を一段ずつ飛び跳ねて移動する必要があるわけだ。

 

つまり……………

 

「スライム殿達全員が死ぬかと思ったと言っているでござる。

というか拙者もかなりキツかったでござるよ………。」

 

スラ忍イエローは人の形をしているので比較的マシだったようだ。

 

「しかし、それにしても確かに神が居たというだけあってかなり神聖な気配が強いでござるな。」

「ピキ~!」

「あぁ、確かに『ダーマ神殿』に近いと言えば近いでござるな。」

「ダーマ神殿?なによそれ?」

「あぁ、ダーマ神殿とはこことは違う世界にある大きな神殿で、人々はそこで『転職』をして己の『職業』を決めて強くなれるのでござるよ。

例えば『まほうつかい』は魔法に関する知識を得て、魔力を高めることが出来るでござるよ。

とはいえ代償に己の身体能力が大幅に弱ってしまう欠点もあるのでござる。

逆に『せんし』ならば身体能力が大幅に上がり、近接武器が得意となるでござるな。

ただ逆に魔力量が大幅に落ちてしまうため物理攻撃以外の手段がほぼ取れなくなってしまうでござる。」

 

「へー、便利なものがあるものね。

一応神殿ってことは神を奉ってはいるんでしょ?」

 

「一応いるには居るのでござるが全く姿を見せないタイプの神でござるな。

職業の試練を与える職業神レオダーマ様と同一の存在なのではないかとも言われてるでござるが結構謎が多いのでござる。

というか転職事態が殆ど神官の仕事でござるしな。」

「身も蓋もないわね。

そういえばあんたらの所の神ってどんなのがいるのよ?」

「そうでござるね。

戦いの神である『闘神レオソード』、そしてそれが肉体を乗っ取られて堕ちた『邪神レオソード』、破壊と創造の輪廻のうち破壊を司る『破壊神シドー』、闇を司る神である『暗黒神ラプソーン』そして同じく闇を司る神であり竜でもある『闇竜シャムダ』。

他にも『創造神グランゼニス』や『精霊神ルビス』、ステテコパンツや一発ギャグが地味に強い『かみさま』、全てを天から見通す竜の神『マスタードラゴン』人間から魔物となり神へと至った『魔界の王ミルドラース』、魔族から神へと存在を昇華させた『創造神マデサゴーラ』、さらに霊夢殿達が軽く説明を受けているであろう『魔界神マデュラーシャ』、破壊と殺戮の神『ダークドレアム』、そしてそれがいくつもの世界を滅ぼし、その魂を糧に進化した魔物の究極形『マジェス・ドレアム』、我らスライムの神である『メタルゴッデス』など上げればキリがないでござるな。

たぶんまだ半分も言ってないでござるよ。」

 

「それ下手しなくても幻想郷に来ている神よりも多いわね………つか『かみさま』ってそのまんま過ぎないかしら?それに厄介なのがステテコパンツと一発ギャグってなによそれ?

あと物騒な神が多すぎないかしら?」

「まぁ神にも人……というより神それぞれなのでござるよ。

それに神といっても元から神として生まれる者が少ないのもあるでござる。

今となっては魔物から神へと進化した存在が大半でござるな。

まぁ殆ど滅ぼされてるでござるけど。」

「殆ど滅ぼされてるって………」

 

神ってそんなに簡単に殺されるっけ?

 

「まぁだいたいの邪神は勇者や他の神に喧嘩を売ってるでござるからなぁ。

それに神が神でない者に滅ぼされるなんて割と普通でござるよ。

天使が堕天して創造神を屠ったりしてるでござるし。

まぁ神は簡単には消滅しないのでバラバラになった部位が魔物になって神の意思を継いで人間を滅ぼそうとして全員封印されたりしてるでござるが。」

「創造神っていうかほぼ邪神じゃないのそれ……」

 

創造しておいて滅ぼすって………

 

「まぁ概ね合ってるでござるよ?しかも堕天した天使に至っては裏切られたと思い込んでいる上に最愛の者を殺されてるでござるし。

まぁ堕天使となったその者から世界を救うために天使の理を捨てて人間へと堕ちた者によって一度倒されて魂だけの存在となってまで再会しようとした堕天使の恋人と再会して救われているでござるがな。」

「ふーん………って何でそんなに詳しいのよ?」

「本人……というか本魔物から聞いたでござる。

消滅したり倒されたりした魔物ってその力の欠片が割と残るのでござるよ、その欠片に関係する特定の魔物同士の配合で知識としてその記憶を持った魂が別のその魔物が生まれるのでござる。」

「え……つまりそれ………増えない?」

 

同じ姿の同じ神が何体もいるってことになるんじゃないのそれ?

なんか嫌ね…………

 

「増えるでござるよ?

まぁ実際の本体より若干弱いみたいでござるが育てる者によっては本体より強くなるでござるな。

お陰でこの手の話は良く書物等に物語として乗っているでござるよ。」

 

「「「「「「「「ピキー……zzZZZ」」」」」」」」

 

そして話に飽きていたスライム達はいつの間にか固まって寝ていたのであった。

 

 



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星降るスライム  その1

 

 

~迷いの竹林~

 

 

スイーツスライムとの対決当日。

私は即死対策に身代わりの護符をいくつも用意して迷いの竹林の開けた場所に来ていた。

 

ただ迷いの竹林に入った辺りから感じていたのだが………

 

「見られてるわね………紫?出てこないなら人里にあんたの実年齢ばらすわよ?」

 

すると目の前にスキマが開いて慌てた様子の紫が出てきた。

 

「ちょっと霊夢!?それはシャレにならないから!?」

「うるさいわよ、こそこそ覗き見しようとするあんたが悪い。」

「地味に言い返しにくいことを………。

それで霊夢、貴女は即死に対する対策はきちんとしてきたのでしょうね?」

「当たり前よ、流石に即死なんかは貰ったら即アウトだから身代わりの護符をそれなりに作って持ってきたわ。

それで?あんたはどうなのよ?」

「私は幽々子に即死避けをして貰ってきたわ。

あの子死を操る能力だから逆に即死とかに対する保護も出来るみたいなのよ。

まぁ基本やらないみたいだけど。」

 

なるほど………あいつそんな器用な能力の使い方出来たのね……

でも後は………

 

「やっほー、来たわよー。」

「輝夜………一応聞いておくわ。

即死対策は?」

「即死対策?する必要ないでしょ?

どうせ死んでも生き返れるし即死といっても確定じゃないでしょ?」

 

 

……………私はもうしらないわ。

これはどうにもならない。

 

この時点での霊夢達のザキ耐性をゲーム的に表示するとなると………

霊夢:ザキ無効

紫:ザキ無効

輝夜:ザキ軽減

となる。

 

だが………

 

「あんた………あいつらの能力聞いてなかったの!?」

「へ?めちゃくちゃ素早くて踊り系の攻撃や即死とか使ってくるってだけじゃないの?

あと生き返るってやつ。」

「あぁぁ………頭が痛くなってきたわよ。」

「なによ!?私は蓬莱人だから死なないし簡単な即死程度なら退けられるわよ!?」

「『神の踊り手』の効果……あんた聞いてないでしょ?」

「『神の踊り手』?ただ踊りがめちゃくちゃ上手くなるってだけじゃないの?」

 

霊夢と紫はその様子に呆れていた。

この戦いにおいて確かに素早さを生かした攻撃は厄介だ。だがそれ以上に『即死』や『バインド』、『こんらん』はこの戦いにおいて致命的過ぎる弱点となり得てしまうのだ。

 

何故なら『即死』してしまえばそれまででもう戦いに参加は出来なくなり、『バインド』を受けてしまえば身動きを封じられて一方的にやられてしまう。

さらに厄介なのが『こんらん』であり、これは敵味方の判断もつかなくなり、自分がなにをすれば良いかすらも分からなくなって味方や自分を攻撃するパターンが多くなってしまうのだ。

 

そして『神の踊り手』は…………

 

「『神の踊り手』は踊りに関する特技の相手への耐性を下げる、つまり実質的に状態異常や即死への耐性を削られて受けやすくなるのよ?」

「それが?元からある程度耐性あるんだから少し下がった程度で問題無いわよ。」

「ハァァァァァアアアアア………………紫、あんたと二人でどうにかするわよ?」

「ええ…………早速一人脱落ね。」

「ちょっと!?なんなのよ!?

いきなり失礼にも程があるんじゃないかしら!?」

「戦力外よ………恐らく貴女は一度でも即死すればあとはずっと動けないわよ。」

「いくら復活出来ても復活直後に死んだらどうするのよ……それになんの代償も無い訳じゃないでしょそれ……」

「なによ!?受ける前に倒せれば問題ないでしょ!?」

「はぁ………もう良いわ、とりあえずスキマを紅魔館に繋いで観戦してるやつらに戦闘を見れるようにしてっと……

じゃあ呼ぶわよ?」

「えぇ………こいつは何言っても聞きそうに無いからさっさと始めちゃいましょう。」

「そうね………それじゃ……スキマボッシュート♪」

「うわキッツ……」

 

紫に軽く睨まれるが紫も自分の歳を考えなsスミマセン。

 

そして紫が開けたスキマから8匹のスライムが落ちてきた。

 

「「「「「「「「ピキーーー!?!?」」」」」」」」

 

全員が頭頂部の角?の部分から落ちて地面に刺さる。

 

「あれって柔らかそうな見た目なのに地面に刺さるくらいには硬いのね………ちょっと残念。」

「「「「「「「「ピキー!ピキー!」」」」」」」」

 

ものすごい頭部?が伸びたり曲がっているがスライム達は必死に抜こうとしている。

あ、抜けた。

 

「「「「「「「「ピキィィイイ!?!?」」」」」」」」

 

すると全員が一斉に後ろにコロコロと転がっていった。

ずいぶんと可愛いわね。

 

「あーそのー………大丈夫?」

「ピキッ!」

 

紫は軽く心配して声をかけるがスライム達はやる気に満ち溢れている様子で返事をする。

 

「ピキピキッ!ピキ!ピキッ!」

「え?なんて?」

 

するとスキマから声が聞こえてくる。

 

『大丈夫だけど寝てる時にいきなり落とすのはやめて欲しい、驚いて固まった状態で落ちて地面に刺さって抜けにくくなってしまった。

と言っているでござる。』

 

「えっと………ごめんなさいね?

それと翻訳ありがとう、結構それ助かるわ………。」

『大丈夫でござるよ。

それでは健闘を祈るでござる。』

 

今第二の刺客との戦いが始まろうとしていた。



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星降るスライム  その2

 

 

~迷いの竹林~

 

 

『ごほん!それでは勝負開始でござる!!』

 

メタルスライムは一瞬で後方へと移動し、安全な所からカメラを構える。

さらにホイップ、ピーチ、プリンスライムの三匹が後方へと退避して傍観する。

 

「あら?そっちの三匹はなにもしないのかしら?」

『あ、伝え忘れていたでござるな。

我らは基本的に最大四体までのパーティーでしか戦わないのでござる。

その為後方に下がった者達はスタンバイとして待機しているのでござるよ。

そしてモンスターマスターである主のスカウトリングの力により我らはスタンバイとして待機している間だけは如何なる攻撃であろうとダメージを受けず、効果もないでござる。

ただこちら側からもなにも出来ないので安心してそちらの四体に集中すると良いでござるよ。』

 

舐めてくれるじゃない………良いわよ!やってやるわ!

 

するといきなりスライム達からお菓子の甘い香りが漂い始め、スライム達のいる地面から緑色のオーラが出てきてスライム達に定期的に纏わりついている。

そしてスライム達の頭部から天使の輪が現れ、それから神聖な光が溢れ出す。

 

「早速出たわね………恐らく緑色のオーラが『いきなりピオラ』によって発動した加速魔法、天使の輪がさっき香ったスイーツカーニバルのリザオラルね。」

「とりあえず動きを制限するわよ!!

出し惜しみは無しよ!大結界『博麗弾幕結界』!!」

 

霊夢は己の持つ結界系のスペルカードの中でも最も強く拘束力もある『博麗弾幕結界』を発動する。

 

霊夢を中心に2つの正方形の結界が広範囲に広がり、外への逃げ場を無くした。

一つ目の結界は己の弾幕のみを打ち消すものではあるがその結界の外側にもうひとつの巨大な円形の結界が生み出される。

霊夢から放たれる弾幕は一つ目の結界を境に消滅しているがそれを繋ぐように同じ紅白の弾幕が外側の結界から放たれて弾幕同士を繋ぐ。

円形の結界はどんどん範囲を狭めながらさまざまな方向へと動いてそれに引き寄せられる形で弾幕の線が引き寄せられる。

さらに、霊夢は己の全方位を弾幕で囲んでおり攻防一体の攻撃をしていたのだった。

だが………。

 

「ちょっと!?確かにこれなら素早さを生かしにくいでしょうけど私達も避けるの大変なんだからね!?」

「ナイスよ霊夢!私はスキマにいれば当たりにくいから何も問題ないわ。

そこの蓬莱ニートはほぼ戦力外だから遠慮なく巻き込みなさい!」

「ちょっと!?」

 

輝夜はちょくちょく弾幕に当たりながら傷を再生してスライム達の迎撃を行おうとする。

だがスライム達は……。

 

「ピキッ!ピキッ!ピキィッ!」

「ピキピキピキピキィ!」

「ピキッピキッピキッ♪」

「ピキィィイイ!?!?」

 

一匹を覗いて余裕で避けていた。

どうも一匹は弾幕がこれ程とは予想していなかったようで、想定を大きく上回る量の攻撃にその動きをうまく封じられていた。

 

そう思っていた直後だった………。

突如としてスライム全員が3匹に分裂する程の速さで動き、三つの分身がそれぞれ違う踊りを行う。

二匹の分身全てがそれぞれ全て違う踊りを行い、一匹ずつの計4匹が同じ踊りを行う。

 

『ゆうきの斬舞』、『つるぎのまい』、『呪いのルンバ』、『超さそう踊り』、『メダパニダンス』、『死の踊り』、『タメトラ踊り』、『マホトラ踊り』

 

さらに全員からだめ押しとばかりに『星降りのサンバ』。

 

輝夜達に

無数の斬撃が、

呪いが、

バインドが、

幻惑が、

即死が、

気力の吸収が、

魔力及び霊力や妖力の吸収が、

最後にとてつもない量の流れ星が襲いかかる。

 

 

「ぐぅううう!?

これは……呪い!?霊力が削れる!?

斬撃の嵐や流れ星はよけれるけど霊力と気力が!?」

 

霊夢には呪い、マホトラ、タメトラが入ってその凄まじい量の霊力を大きく削られる。

 

「うそ!?スキマ越しに!?

う………動けないかなり耐性をつけてるはずなのに!?

それに呪いで妖力が削られる上に気力が!?」

 

紫にはバインドと呪い、タメトラの三種類が入れられてしまっていた。

 

「ぐふっ!?」

 

そして輝夜には……………………

 

「ちょ!?」

「言わんこっちゃないわね。」

「…………………ハッ!?」

 

即死が入っていたが輝夜はすぐに甦る。

不老不死の蓬莱ニートは伊達ではないらしい。

 

耐性を大きく持つ霊夢と紫に呪いの状態異常が、即死に対して軽い耐性を持つ輝夜がなんの抵抗も無く即死したのにはスイーツスライム達の持つ『神の踊り手SP』にある。

 

新生配合により強化されたスイーツスライム達には、それぞれ紋晶というアイテムにより持っている特性を大幅に強化されていた。

 

そして『神の踊り手』によって下げられていた耐性はSP特性となっていることでかなり大幅に耐性を下げられていた。

 

ゲーム的に言うならば

霊夢と紫は『呪い激減』、『即死無効』

輝夜は『呪い無効』、『即死軽減』といった所だが、『神の踊り手SP』により無効未満の耐性は全てが例外無く二段階耐性を減少させられる。

 

これにより激減→半減→軽減→耐性無し→弱点となる耐性が二段階下がり、霊夢と紫は『呪い軽減』。

さらに輝夜は『即死弱点』まで耐性を落とされていたのだ。

 

果たして霊夢達はこの地獄のような状況を覆せるのか。

 

 

 



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星降るスライム  その3

 

~迷いの竹林~

 

 

「アーーーッ!?」

「こんなもの………こんなものぉぉぉお!?」

「ぬわぁぁぁぁぁぁぁあ!?」

「ウソダドンドコドーン!?」

「オマエノソレモカラカ=ゾーイ!?」

「ウボワァァァァアアアア!?!?」

「オ・ノォォォオレェェェェエエエエ!?!?」

 

蓬莱ニートこと『蓬莱山輝夜』は妙な奇声をあげながら即死を食らいまくっていた。

 

そう、即死が弱点耐性となったことにより輝夜はひたすら即死を貰っていた。

即死弱点となったことにより『死の踊り』の即死確率は実に50%、かなり死にやすくなってしまっていたのだ。

これに加えて『超さそう躍り』も弱点となっているために80%の確率でバインドを貰っていた。

 

いくら人の認識出来ない時間を動けても、人の認識が出来ない程の速さで動くスライム達相手には相性が悪すぎたのだ。

 

確かに霊夢の大結界『博麗弾幕結界』によってスライム達の動きはかなり阻害されており、紫の弾幕による支援を避けきれずに被弾している様子も見受けられる。

しかし被弾によって与えたダメージもあまり効果が高くは無いとはいえ『ハッスルダンス』という特技により回復されている。

 

これに加えて周囲の空間を満たすように青白い空色の霧が発生しており、本来の威力を大幅に越えた威力の攻撃がいくつも飛んでくる。

輝夜が即死で動けなくなっている間にこれに当たり、肉片になってしばらく復活するまで時間が空いてしまうことが度々起きていた。

 

基本的に復活手段が幻想郷には存在しないため即死=アウトなのである。

 

「博麗弾幕結界でかなり動きを阻害してるのにここ動きの速さ………結界なかったらどうなってたか分からないわね………」

 

「とりあえず避けれないよいに弾幕を重ねていくしかないわ。

てもまだ相手の復活を削れてないのと回復が間に合っているこらかなりキツいわね。」

「呪いはかかってもなんとか私のお祓いで祓えるけど力を吸われるのがきついわ。」

「霊力や妖力なら相手の魔力回復に利用されてるみたいだけど気力は相手に加算されて相手の攻撃が激しさを増しているの怖いところね。」

「そんな状態での攻撃なんて貰おうものなら………。」

「一撃でひき肉でしょうね、というか私もアウトね。

消耗が想定以上に厳しいからあまり使いたく無かったけどいくわよ!弾幕は弾幕で防ぎなさい!

境界『二重弾幕結界』!!」

 

霊夢の博麗弾幕結界と同じ位置に結界を重ね、避けきれない程の弾幕の嵐を生み出す。

 

「ピキッ!?」

「ピキィィイイ!?!?」

「ピキー!?」

「ピキィッ!?」

 

スライム達はその素早さですら避けきることが出来ないでいた。

 

『ハッスルダンス』『ハッスルダンス』『ハッスルダンス』『ハッスルダンス』『死の踊り』『メダパニダンス』『超さそう躍り』『ゆうきの斬舞』『星降りのサンバ』『星降りのサンバ』『星降りのサンバ』『星降りのサンバ』

 

すべてのスライムが同時に三つの行動を行い、回復、妨害と補助、攻撃のそれぞれを同時に行う。

だが回復と妨害、攻撃を同時に行っている為に魔力を吸収して回復する余裕が無いのだ。

だが魔力を吸収しようとすると攻撃、回復、妨害のいずれかが疎かになる。

回復を減らせばダメージが上回り、攻撃を減らせばより余裕が無くなってしまうのだ。

 

今回のスライム達の最大の失敗は結界に完全に囚われたことにより自分の最大の強みである素早さを封じられたことだろう。

そして『いきなりピオラ』も永続するわけではなく効果時間は有限だ。

 

ついにその強化は切れる…………

魔物世界の補助魔法は能力の上がり幅が異常なレベルで高い代わりに効果時間があまり長くないため定期的にかけ続ける必要がある。

 

しかしスイーツスライム達は短期決戦を想定して配合されているために補助効果を持続させる手段がないのだ。

魔力の切れる個体が現れ、回復させるために『マホトラ踊り』を使い始めるが回復が間に合わなくなりついに………

 

「ピキィィイイ!?!?」

 

初の脱落者が出始めた。

 

だがリザオラルの効果により死亡してもその場ですぐに蘇生する。

だが『死の踊り』を行う余裕も減り始め、輝夜も攻撃に参加できるようになり始めていた。

 

「だぁぁああ!?やっと攻撃する余裕が出来た!?

死んでる途中でミンチになったの含めれば28回は殺されたわよ!?」

「あんたもあんたで良くそれで復活し続けられたわね。」

「伊達にもこたんと殺し合いしてないわよ。

あいつと殺し合う時は最低でも50回死ぬまでは殺し合いをするからね。

このくらいならなんとか復活しても動けるわよ。」

 

だが一度死んで体力がかなり減ったからか攻撃にかなり強力な物を使い始めるようになった。

 

『てんびんのタンゴ』

 

「ぐぅぅうあぁぁぁあああ!?!?」

「なにこれ!?攻撃を受けてないのにダメージが!?」

「いったぁ!?」

 

『てんびんのタンゴ!?霊夢!紫!ニート!追い詰めすぎずに一気にトドメを刺しなさい!さっきのは自分の体力と相手の体力に差があればあるほど威力が高くなるわよ!!相手の受けたダメージの半分がそっちにも行くと考えなさい!!』

「なによそれ!?」

「とはいえ私達は動けない、輝夜!」

「分かったわよ!まかせなさい!」

 

 

果たして霊夢達はこの踊りを攻略出来るのか………。



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星降るスライム  その4

『てんびんのタンゴ』
『相手の残りHP』-『使用者の残りHP』÷2のダメージを与える。

つまり400程あるHPの相手に使用者のHPが100しかなかった場合は400-100=300になり、300÷2で150ダメージを与える攻撃になります。
基本的にイルルカだとHPバブルやメタルでもない限りHPに大きく差が出ることはないのでほぼほぼ受けたダメージの半分くらいを与えますね。
ついでにサイズが違うとミスになります。


 

 

~迷いの竹林

 

 

「ぐっ!?避けることが出来ないのが痛いわね、つかわざと当たって発動させてるせいでこっちの体力が!?」

「不味いわ!輝夜!どんどん一撃で仕留めて!!」

「あぁもう!?そう言われても接近戦仕掛けるくらいしか当てる方法無い上に私の能力使ってもこいつら普通に速いのよ!?」

 

状況はすこぶる悪くなっていた。

自分達の回復をしようにも回復した瞬間に『てんびんのタンゴ』によって回復量の半分近いダメージがすぐに来てしまい、回復が殆ど効果が無いものになってしまっている。

さらに自分から弾幕に当たって己を削ることによっててんびんのタンゴの威力を上げている個体もいる程だ。

 

体力の少ない個体に輝夜が能力で加速して近接戦を仕掛けようとした瞬間、死にかけとなっており、リザオラルの切れているチェリースライムが始めて見せる踊り系統の特技を行う。

結果としてチェリースライムは輝夜の一撃によりトドメを刺されたが、踊りの効果がギリギリで発動してしまった。

 

輝夜の上から地獄から現れたかのような穢れを持った呪いが降りかかった。

突如として現れたそれに輝夜は反応出来ずに直撃してしまい、業火に焼かれて輝夜は焼死してしまった。

 

 

『じごくの踊り』

 

使用者の減っている体力に、使用者の残り体力の0~5%を加算してそのまま相手に与えるという一発逆転を狙った踊り系最強の威力を誇る特技だ。

 

そしてモンスターの肉体強度は例えスライムだとしても鍛え上げれば大妖怪にすら負けない強さとなる。

そのダメージがそっくりそのまま輝夜に押し付けられたとすると凄まじいダメージとなるのだ。

さらに輝夜は確かに不老不死ではあるが、基本的にニートなのもあり肉体強度はかなり弱い。

実質的な即死攻撃とも言えた。

 

「死 ん で たまるかぁぁぁぁぁあああああ!!!」

 

しかし輝夜は焼死にはかなり慣れており、むしろライバルの同じ蓬莱人である妹紅以外の炎でやられるなどバカにされかねないと考えていたため、気合いですぐに蘇る。

 

「ぜー!ぜー!ぜー!危なかったわ………」

「いや危ないもなにも死んでるんだからアウトよ。」

「うるさいわよ!とりあえず一体は倒したわよ!」

 

すると後ろで控えていたピーチスライムが前に出てきて戦闘に加わった。

 

「ピキー!」

 

「ちょっと、結界を張っていたんじゃ無かったの?」

「外からの制限まではしてないわよ。

どうせ来るのなら結界を破られて入ってくるよりそのまま入って貰った方が良いもの。

速い話この結界は一方通行なのよ。」

 

ピーチスライムが分身を行い、他のスライムと同様に三つの行動を同時に行い始める。

だがここで紫があることに気付く。

 

「あら?新しく入ったスライムに加速魔法も自動蘇生も発動した様子が無いのだけれど……」

『あ、補足しておくでござるが『いきなりピオラ』及び『スイーツカーニバル』はあくまでも戦闘開始時にしか効果を発揮しないのでござる。

だからスタンバイからの途中参戦では効果がないでござるよ。』

「ふーん、そうなると今自動蘇生があるやつを先にまとめて倒しておいた方が良さそうね。」

 

だがそう簡単には事が進まない。

 

「「「ピキー!!!!」」」

 

『ハッスルダンス』『ハッスルダンス』『ハッスルダンス』

 

どうやら『星降りのサンバ』が弾幕によって大半消滅して輝夜以外に当たらないのを冷静に判断してかピーチスライムは全力で『ハッスルダンス』による体力回復を行う。

これによってかなり優勢だった戦況を大きく覆されてしまった。

 

相手は状況を持ち直す為に……

『マホトラ踊り』『マホトラ踊り』『マホトラ踊り』『マホトラ踊り』『マホトラ踊り』『マホトラ踊り』『呪いのルンバ』『呪いのルンバ』『超さそう踊り』『超さそう踊り』を行う。

 

「まず!?霊力が!?」

「こっちも妖力が………結界の維持が………」

「二人とも、これ飲んどきなさい!『八意ののみぐすり』よ!」

「なにこれ?」

「霊力及び妖力回復用の薬よ、デメリットとして翌日は力が回復しないから気を付けなさい。」

「成る程、つまりは前借りするのね。」

「そう言うことよ。私は霊力完全に切らしてる上に能力のみで戦ってるから大丈夫だけどあんたらはそうもいかないでしょ?」

「一応聞いとくけどこれ使ったらそっちもなんか使うとかある?」

『別に問題ないでござるよ。

こちらも本格的な試合以外では道具の使用を禁止してはいないのでござるから。』

「ありがとう、でもあっちも今度から何か使う可能性が出てきたわね。」

 

すると何か思い付いたのか輝夜が紫と霊夢に対して聞いてくる。

 

「あんた達、特定の攻撃にのみ反応して反射するみたいな結界をつくれる?」

「反射?出来なくはないけど多分自分にしか使えないわよ?」

「ええ、あくまでもそっくりそのまま相手に返す、つまりは相手の攻撃の勢いを完全に反らさなければいけないからそこまで範囲があるものは無理よ。」

「十分よ。」

「でもこれはあくまでも攻撃として反応するものが……そういうことか。」

「何?紫、何が分かったのよ?」

「なんであのスライム達が攻撃や妨害の手を緩めて一気に霊力や妖力の吸収をしようとしたかわからないの?」

「そんなの私達の結界を………いや!?まさか!?」

「そういうことよ。

あの踊りは魔力を使う儀式魔法に近いものよ。」

「それなら!」

「ええ、一気に覆すわよ!!!」

「一旦私も防御に回るわよ!!」

 

霊夢達の反撃が今始まった。

 

 



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星降るスライム  その5

 

 

~迷いの竹林~

 

 

「とりあえず踊りによって放出された魔力を解析する必要があるわ。

私が二重弾幕結界一時的に解除して解析に集中するから輝夜は能力使って動きを止めて頂戴。

あと『死の踊り』だけは絶対に阻止しときなさいよ?」

 

「分かっているわよ。

さすがにあんだけ殺されたらどれが『死の踊り』なのかは分かるわよ。

だけどそれ以外はまだ把握しきれてないからバインドとかはたまに貰うわよ?」

「それは私も喰らうから問題しかないけど問題ないわよ。」

「どっちよそれ………まぁとりあえずできる限り動きは封じるけど多分そこまで阻害は出来ないからそこは勘弁してよ?ってやば!?」

「ピキッ!?」

 

輝夜はスライム達の中で一匹だけ『死の踊り』を使おうとしていたのに気付き能力を全開にして全力で防ぐ。

だが踊りはまだ9回分飛んでくる。

 

「うげ!?バインドと呪い貰った!?」

 

「……………ピキッ?」

「あら?一匹だけ首を傾げてるけど………」

「魔力の動き的に輝夜に向かって3つ目の踊りが飛んでたけど直撃して効果が無かった感じよ?効果自体は発動してるわ。」

「………確か輝夜霊力カラで戦ってたわよね?」

「…………あぁ………『マホトラ踊り』が飛んでいったけどそもそも吸収するものが無いから発動しても効果無いのね。」

「そういうkぎゃぁぁぁぁあ!?!?!?」

 

輝夜は会話により一瞬油断してしまい『ゆうきの斬舞』によって首を斬り飛ばされる。

だが首だけになっても普通に喋ってる辺りもはや『ゾンビ系』にしか見えなかった。

 

輝夜は斬り飛ばされた首を何故か動く身体の両手で掴み首にパイルダーオンする。

一瞬輝夜の目が光ったような気がしたが気のせいだろう。

気のせいだと…………思いたい。

「ピキィ!?」

 

そして首を斬り飛ばしても胴体側も頭部もちゃんと動くという驚異にスライム達が軽くビビる。

まぁ見た目は普通の人間とわからないのに『死の踊り』により即死してもミンチになっても首を斬り飛ばしても平然と生き返ってくる上に腕だけや身体だけ、首だけになったとしても普通に動いてくるのだ。

ここまでくるともはや『くさったしたい』や『がいこつ』よりもゾンビしているのだ。

 

すると紫の雰囲気が代わり始める。

新たに結界を構築し始めたのだ。

それに気づいたレモンスライムが阻止するべく超さそう踊りを始める。

結界を構築する途中でバインドを貰って動けなくなってしまえば折角構築した結界も破綻してしまう。

完成後であれば術者が拘束されても解除しない限り自動的に発動されるのだが今このタイミングでバインドを受けてしまうのは致命的になりかねなかった。

 

「そこの黄色いの!やらせないわよ!!」

「ピキー!!!」

 

レモンスライムは思わず踊りを中断して『攻撃』による反撃を行おうとするが……

 

「遅いわよ!!」

「ピキッ!?」

 

能力を全開にした輝夜の方が僅かに早かった。

確かにピオラが発動していれば輝夜がスイーツスライムに追い付くことは出来ず、一瞬で離れて踊りによるカウンターを受けていただろう。

だが今はそれの効果が切れており、素早さがかなり落ちてしまっているのだ。

これによって輝夜の反撃でレモンスライムは捕まれてとてつもない速度でライムスライムに向けて投げられる。

 

「「ピキィ!?!?!?」」

 

二匹はとてつもない速度で激突したことによって大ダメージを浮けてしまう。

とはいえ仕留め切れているわけではなくまだピンピンしており、また踊りによって動きを封じ、妖力、霊力を吸い付くして妨害をしようとするが………

 

「間に合ったわ!『舞踏反射結界』!!」

 

紫はついに踊りを反射させる結界の構築に成功した。

とはいえ完全した事に油断した輝夜が即死を貰って残りの踊りが飛んできたのだが…………

 

「「「「ピキッ!?ピキィ!?」」」」

 

四匹全員が拘束され、さらにリザオラル状態のスライムが全員即死して残ったスライムは魔力を吸われて紫の妖力へと変換された。

 

「まず!?霊力が切れた!?」

 

だが同時に霊夢の大結界『博麗弾幕結界』が解除されてしまう。

 

「霊夢!私の結界は使える?」

「これね…………霊力的にはギリギリだけど足りるわ。

でももう弾幕すら使えないわよ?」

「とりあえず踊りさえカバー出来れば十分……よっ!!」

 

「「ピキッ!?」」

 

紫はリザオラルによって復活したスライム達へと弾幕の雨を浴びせる。

スライム達は復活直後を狙われてすぐに倒されてしまう。

さらに輝夜が最後の一匹にトドメを刺してスイーツスライム達は残すはプリンスライムとホイップスライムだけとなった。

 

プリンスライムの上にホイップスライムが乗っており、ちょっと可愛いが霊夢達は油断しない。

何を使ってくるかわからないからこそ警戒しているのだ。

例え踊りのみだとしてもあの速さでの通常攻撃は霊夢や紫では避けるのは不可能だからだ。

 

だが最後に三人は意表を突かれることになる。

 

プリンスライムが2本の紫電を纏った剣携えて力を貯めており、ホイップスライムがまるで太陽と見間違う程巨大な炎を貯めていたからだ。

 

そう、この二匹は最初からスタンバイから出てきて戦闘することを想定して配合されていたのだ。

 

 

"轟"く"雷"によって相手を"滅殺"する"剣"と

世界に"終末"を告げる為"の炎"が今、霊夢達へと襲いかかる。



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轟く雷と終末を告げる炎

 

 

~迷いの竹林~

 

全てを滅殺する威力を持った紫電が轟く雷の剣が今振り下ろされる

 

 

「まずっ!?『八意ののみぐすり』!

神宝『サラマンダーシールド』!!」

「なにこれっ!?輝夜が相殺してる余波だけで……結界が!?」

 

さらに天より終末を告げる太陽が地面へと降り注ぐ。

 

「やらせないわよ!スキマ転移!!霊夢!貴女は離脱しなさい!」

「ちょっ!?」

 

 

 

咄嗟の判断でスキマを開いてここから少し離れた地点へと攻撃を転移させ、霊夢をマヨヒガへと送る。

 

だが………

 

「っ!?結界が!?うぁぁぁあああああ!?」

「嘘!?距離を離したのに私の結界が余波だけで壊されるなんて!?」

 

世界に終末を告げる太陽はスキマにより少し離れたところに落ちたが、地面と激突した瞬間全てを焼き付くすかのようなとてつもない熱波と共に竹林を焼き付くし、なぎ倒していった。

紫の結界が中への攻撃を防ごうとするがその威力は凄まじく、簡単に結界が破られてしまう。

 

「スキマに体の殆どを隠してたからある程度大丈夫だったけどそれでも全身火傷ね………輝夜は………炭になってるじゃないの………」

 

『轟雷滅殺剣』

 

『マジェス・ドレアム』と呼ばれる全ての配合の頂点に君臨する最強のモンスターのスキルによってのみ習得可能な最強クラスの斬撃である。

 

敵全員へ全てを滅ぼす雷の剣を振り下ろし、属性のない純粋な物理ダメージを二回与える攻撃である。

この特技の真に恐ろしい所はこれがほぼ固定ダメージであるということである。

絶大な威力を持った固定ダメージであり、威力上昇系の特性の効果を受けることが出来る。

さらに属性がない純粋な物理攻撃でありながらアタックカンタを貫通し、メタル系すらも貫く事が出来る。

ただしメタルボディによるダメージ軽減は有効な為その分与えるダメージは減るが十分即死する威力である。

 

特に恐ろしい点としては固定ダメージゆえに攻撃力、賢さに関係なく超高火力を出せる事と、防御力を完全に無視するという点にある。

 

ただしここまで強力過ぎる特技に何も欠点が無いわけがなく、一つ目の欠点として一度力を溜める必要があるため、すぐには使えないという点にある。

だが二回以上の行動を同時に出来る者であればすぐに使うことが出来てしまう。

そして最大の欠点は………

 

使用する度に己の体力の1/4を生け贄に捧げる必要があるということだ。

 

「ピキィィイイ!?!?」

「っ!?使用者側にも大ダメージが入るなんて!?

どれだけ反動が大きいのよ!?」

 

「ピキッ!」

 

さらにホイップスライムによる『終末の炎』が準備される。

それに引き続きプリンスライムまでまた紫電の剣を構えて力を溜め始める。

 

『不味いわね………紫電の走ってる剣の方は多分溜めなくても凄まじい威力になるわ。

下手に近付いて止めようとしたら真っ二つ……いえ、三枚おろしか四分割にされるわね。

なら………』

 

「さすがにもう一回は使わせないわよ!

廃線『ぶらり廃駅下車の旅』!!!」

 

 

「ピキッ?」

 

ホイップスライムの横からとてつもなく大きなスキマが現れる。

ホイップスライムは『終末の炎』を溜めているために動けない。

 

 

『終末の炎』

 

ロトゼタシアと呼ばれる世界にて『大いなる暗黒の力』として代々語り継がれてきた邪神の用いる特技だ。

頭上に火炎系最強の呪文であるメラガイアーを大幅に上回る程のとてつもなく巨大な火球を生み出し、それにさらに力を溜めて放つ最強の炎属性体技である。

本来『邪神ニズゼルファ』がその両腕を天に掲げ、魔王すらも滅ぼす威力を込めて使うのだが、配合によって習得可能な物はそれの簡易版であり、威力こそ下がってはいるが溜めに必要な時間が短くなっていたりする。

そして少しでも貯まれば割とすぐに使えるために中断されたり自爆することはそうそう無いのだが………

 

「ピキィィイイ!?!?!?!?」

 

スキルから巨大な鉄の方舟、電車が現れて凄まじい速度でホイップスライムを引いていった。

これによりホイップスライムは『終末の炎』の制御に失敗してコントロール不能となった。

 

もうひとつ現れた巨大なスキマを通って完全に電車が姿を消した頃には頭上にある巨大な火球は地面に降りてきており………

 

「ピキィィィィィィィィィイイイイイ!?!?!?!?」

 

案の定ホイップスライムへと激突して盛大に自爆したのだった。

 

 

なお、件の『邪神ニズゼルファ』も、勇者との戦闘にて終末の炎を溜めている間に腕を破壊されて支えきれなくなり自爆させられ、致命的な隙を見せてさらに大ダメージを負うドジをやらかしている。

 

『終末の炎』は色々とネタとしてしか使われない特技となっていたのだった。

 

プシュゥゥゥゥゥゥウウウウウ

 

 

さらっと炭になっていた輝夜を巻き込みながら自爆したホイップスライムはさすがの威力に耐えきれずに戦闘不能となっていた。

ただ輝夜は炭から灰へとランクアップしていたが、それでも煙を出しながら再生している辺り下手な魔王やどこぞの破壊神よりも不死身なのではないかとスライム王国で観戦している全員から思われていたのだった。

 

普通は全身が灰になるまで燃やされれば魔王ですら普通に死ぬのである。

 

 



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決着

 

 

 

~迷いの竹林~

 

 

「いやぁ、見事に自爆してったわね………」

『ゆ………紫殿?

お仲間の輝夜殿も巻き込んで灰になっているのでござるが………』

「ん?どうせ生き返るから問題ないわよ?」

『『亡者の執念』以上に亡者してるでござるな………』

「ピキッ!」

『ん?プリンスライム殿の言葉を翻訳するでござるよ。』

「ピキピキッ!ピキッ!ピキー!」

『私達を相手にここまで追い詰めるその実力にまずは敬意を表する。

そしてホイップスライムは今焼き菓子の香りを漂わせて死んではいるがこいつの油断が原因の上に後で蘇生するので気にすることはない。

さて、私としてはこれ以上泥沼の戦いをしても殿につまらない戦いを見せるだけだ。

メガザルダンスを使えば当然全員を瞬時に蘇生する事が出来るがそれではつまらない。

そこで提案するが………お互いの最高の一撃を持って勝負をつけないか?と言っているでござる。』

 

「お互いの最高の一撃………あなたの場合はその剣ね。」

「ピキー!」

『肯定する。

私の轟雷滅殺剣はすでにチャージを完了している。

お互い同時に撃たないか?と言っているでござる。』

 

「………いいでしょう。

私にも幻想郷を管理する者としての意地もあります。

その勝負、受けてたちましょう!」

「ピキー!!」

『承知したでござる。

プリンスライム殿は拙者にタイミングを任せると言っているでござる。』

「そうね、その方が公平ね。

私からもお願いするわ。」

 

私は己が持ちうるスペルカードの中でも一番の強度を持ち、火力もある最強の結界を用意する。

 

プリンスライムも己が持つ『轟雷滅殺剣』をいつでも撃てるように構える。

 

『それでは双方準備は良いでござるな?』

「ピキ!」

「えぇ!」

『それでは………………開始でござる!!!』

「ピキィィイイ!!!!!(轟雷滅殺剣!!!!!)」

「『深弾幕結界-夢幻泡影-』!!!!」

 

全てを滅ぼす雷の剣が十字に振るわれてプリンスライムの前にあるものを何もかも凪払って滅ぼしていく。

紫の前に何枚もの結界が発生し、そこから無数の弾幕が周囲を囲むように発射されて全てを滅ぼす雷の剣を受け止める。

 

「ぐうぅぅぅうううう!!!!」

 

強い………

なんとか受け止められてはいるけれど結界が軋みをあげている。

 

「だけど!!!」

 

私は結界の枚数を少し無茶をして更に増やしていく。

そこから更に無数の弾幕が飛び出していき、ついには剣を押し返し始める。

だが…………

 

 

ピシッ

 

「っぅうぅぅううううううう!?!?」

 

結界にヒビが入り始める。確かに剣を押し返し始めてはいるがこれでは完全に押し返し切るのと結界が破壊されるのとでどちらが早いかわからない。

 

「けれど!こちらにも譲れない物があるのよ!!!!」

 

そしてついに…………

 

「ピキィィィィィィィィィィイイイイイイイイ!?!?」

 

轟雷滅殺剣を完全に押し返してプリンスライムへと直撃させたのだった。

 

ピシャァァァァアン!?

 

「ごふっ!?」

 

結界が破壊され、無理をした反動で紫は軽く吐血する。

この状態ではしばらく弾幕すらも使えないだろう。

だけど………

 

「勝ったわよ…………かなりヤバかったけどね…………」

 

「ピキッ………ピキィイ…………(バタンッ)」

 

『一本!

お見事でござる!

この勝負の勝者は幻想郷!八雲紫殿にござる!!』

 

すると紫の横から人が出入りできるほどのスキマが開く。

 

「紫様!」

「ゆかりしゃまーー!!」

「おーい、無事なの?」

 

スキマからは紫を心配してきた式である『八雲藍』とその式である『橙』が出てきており、更に後ろからかなり疲れきっている様子の霊夢が出てくる。

更に後ろから幻想郷の住人とのコミュニケーションを任務として受けていた『スラ忍パープル』がメタルブラザーズ型の通信端末で通話をしながら現れる

 

「…………えぇ…………承知…………了解したでござるよ。

紫殿、まずはお疲れ様でござる。

今回復班を呼んだでござるからその者達に治療して貰うとよいでござるよ。」

「えぇ、ありがとう。」

「それにしてもまさか『轟雷滅殺剣』を弾くとは。

威力上昇系の特性を一切使ってない素の威力とはいえすごいでござるな。」

「ふふふ、これが妖怪の賢者の実ry……なんですって?」

 

紫は急に顔を真っ青にして『スラ忍パープル』の言った言葉について聞き返す。

 

「あれが何も威力を上昇させてない素の威力って今言ったわよね…………」

「そうでござるよ?」

「まさか………あれを大きく上回る威力を使える奴がいるというの!?」

「え?普通にいるでござるよ?最大の威力ならば普通に倍近い威力を出すでござる。」

「眩暈が……………」

「ちょ!?紫様!?紫様しっかりしてください!?」

「あぁ、それと殿から伝言でござるよ。

『一度我が国を見ていけ。

貴女方にも譲れない物があるように私達にも譲れない物がある。

我が国を見て……スライム達を見て………私達が譲れない物を一度感じてくれ。

貴女方との次の勝負はしばらく休む事にするため万全の状態にしておくといい。』とのことでござる。」

 

紫達は勝負に勝利し、スライム達の国へと招待されたのだった。



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スライムの国  その1

 

 

~境海~『スライバ船』

 

幻想郷とスラバッカ王国との境目にあるそれなりに大きな海の一部、幻想郷と新たな土地との境目というのもあり『境海』と名付けられたその海の上。

そこではスライバ船と呼ばれるスライムが船長として乗る船にスラバッカ王国に興味のある者や招待されている紫、霊夢等が乗船していた。

 

「ねぇ!この辺の海にはあんた達魔物は住んでいるの?」

「あぁ、海に住む魔物や湖に住む魔物というのも珍しくない。

そこら辺にも『スライムカルゴ』、『パールスライム』、『しびれくらげ』、『アクアスライム』等のモンスターが泳いだり住みかとしているはずだ。」

「ちなみにその子達はどんな特徴があるの?」

「『スライムカルゴ』はカタツムリの殻を住みかとして背負うスライムだな。

野生だと殻はスライムと共に成長して大きい個体なら人間が入れる程大きくなるらしい。」

 

カタツムリって向こうの世界にも居るのね?

 

「『パールスライム』は大型の二枚貝に住むスライムで完全な球体の体を持っていてそこそこ硬い。

たまに洞窟とかに顔を出して壁に本体をぶつけて遊んでる様子が見られるな。」

 

「それ………痛くないのかしら?」

「別に問題ない、壁の方が脆いからな。」

 

「『しびれくらげ』はホイミスライム型のモンスターで見た目こそスライム系だが実は自然系のモンスターであり、スライムではない。

だが見た目が同じゆえに主が捕獲して住まわせている。

その触手などから放たれる電撃で相手をしびれさせて襲う事があるから地味に危険性のある魔物だな。

こいつらは何故か仲間には出来なかったな。」

 

「やっぱり基本的に貴方達の主人ってスライムしか仲間にはしないの?」

「いやそういう訳でもない。

スライムに関係さえしてれば他の系統のモンスターでも仲間にするし魔王等をスカウトしたり配合で作って一時的に仲間にしてスライムへと配合したりしてるな。」

「結局スライムが一番なのは変わりないのね。」

「それはそうだろう。」

 

「それで?『アクアスライム』って言うのは?」

「ん?それならそこを泳いでるぞ?」

「へ?……………これ?」

「これ扱いしてると主に殴られるぞ?

まぁ水中での活動に特化したスライムであり魚と同様に海を泳いだりしているな。」

「ほんといろんなスライムが居るのね………陸の方が見えてくればかなりの種類がまだ居るぞ?」

「へぇ………ちなみに貴方も配合で生まれたスライムなの?

『スライバ』さん?」

 

紫が先程まで話していた紺色の体に赤い角を付けた漆黒の兜を被ったこの船の船長『スライバ』に己が気になっていたことを聞いた。

 

「ふっ、俺は配合で生まれたモンスターじゃない。

あいつのしつこいスカウトに折れたって所だ。

だがこの俺の船『スライバ船』は俺と強く繋がりのある船で半ばモンスター化していてな。

こっちは主による配合で大幅に強化されている。

それの影響で繋がりのある俺にもとてつもない強化が入っているがな。」

「へぇ………でも貴方から感じる力からしてあとひとつくらい繋がりのある存在があるんじゃないかしら?」

 

紫はスライバを霊的な視点で見た際にこの船以外にも、今向かっているスラバッカ王国方面にも繋がりがあるのを感じ取っていた。

 

「ふっ、伊達に賢者とは呼ばれていないということか。

確かに俺に繋がりのある物はもう一つ存在する。

俺の一族が代々受け継いできた城であり、機動兵器。

伝説の勇車『スラリンガル』と双璧をなす大戦車『エリスグール』だ。

あいつもこの船同様に強化されている。

そのうちお前達を俺が相手する事もあるかも知れないから後のことはお楽しみに取っておけ。」

「…………と言うことは貴方もこの国の戦士……と言った所なのかしら?」

 

するとスライバはフッとニヒルに笑う。

 

「この国のスライムは全員戦士だ。

主を守り、主を慕い、主の為に戦う。

俺たちは主の事が大事であり、主にとっても俺たちは大事なのさ。」

 

そして声にはそれは嬉しそうであり、なおかつ照れ臭そうな雰囲気を感じた。

 

「へぇ、とても愛されているのね………」

「まぁな………俺の話ばかりなのも少し不公平だな、お前らの話も聞かせてくれ。

航海をする身としては未知の島や大陸の話というのはとても興味をそそられる。」

「ふふ、良いわよ。

そうね………そもそも幻想郷はね………」

 

 

紫はスライバとの話に夢中になっており、気が付いたらもう向こうの大陸が見えていた。

他のメンバーもスライム達との会話に花を咲かせており、強者に対して強い興味を持っていて"無理矢理"付いてきた幽香なんかは植物としての特徴を持つスライムと言うのに特に興味を持っていた様子だった。

 

霊夢は金やダイヤモンドで出来たスライムと言うのに興味を持っていたのだが……………目にお金という文字が見える。

 

わざわざ永遠亭から来た永琳に至っては向こうの世界の医療等が気になっており、船医として船に乗船していた『ベホマスライム』という赤いスライムとの話に夢中の様子だ。

 

スライム達の国まで後少し…………

 

 



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スライムの国  その2

 

 

~スラバッカ王国~

 

 

「着いたぞ!俺達の暮らす国『スラバッカ王国』だ!!」

 

そこには巨大な………そう、幻想郷にあるどの建物よりも圧倒的過ぎるまでに巨大な城が佇む特徴的な町だったのだ。

 

「そういえば紫、貴女確かこっちにスキマ開けたわよね?

なんでスキマ使って来なかったのよ?」

「あぁそれ?なんか対策されてるみたいでスキマがここにだけ開けないのよ。」

 

そう、実は紫はあれから何度かスィラに対してコンタクトを取ろうとしていたのだがスラバッカ王国に対して一切スキマを開けなくなっていたのだ。

 

「それならおそらく主がこの国の空間に鍵をかけたのだろう。

主は世界を渡る不思議な鍵の持ち主だ。

この世界の鍵を持ってなくても一定の範囲なら鍵をかけることが出来る。」

「………それ下手したらこの世界に住むうちに『~程度の能力』になるかもしれないわね。」

「なに?『~程度の能力』はこの世界の存在でなくても習得可能な物なのか?」

「出来るか出来ないかで言えば可能よ。

ただこればかりは自分から習得するのは無理である程度才能がないと不可能な上にどの能力が定着するかもどのタイミングで習得出来るかも分からないのよ。

大体は元々能力持ってたりするとそれが『~程度の能力』として定着するパターンが多いわね。」

 

幻想郷に来る外来人は割と『~程度の能力』を手にいれる場合が多かったりするがそれは純粋にそのパターンが多かっただけであり、実際に外来人だから『~程度の能力』を持つという訳でもなかったりする。

 

「ふむ、しかし主は装備や道具ありきでの能力な上に本人だけだと特に特技を使えないからなぁ………

あまり期待しすぎないでいるとしよう。」

「それが懸命ね。

さて、皆~!一度船から降りるわよー!」

 

「了解~!」

 

霊夢はまだ目をお金にして……いや、小判に変わっていた。

 

「やっと着いたのね。」

 

永琳はずっとウズウズしており、かなり楽しみにしている様子だ。

 

「んー、肩凝ったわね。」

 

到着までずっと日傘を指していた幽香はその身体を伸ばしている。

 

「ふぁー、眠いわね。」

 

到着までずっと寝ていた輝夜は更に眠そうだ。

 

「輝夜………お前ずっと寝てたじゃないか。」

 

妹紅は呆れた様子で輝夜に言う。

 

「だから蓬莱ニートって言われるんじゃないの?」

 

ずっと咲夜に日傘を指して貰い、本人はベンチに腰かけてずっとつくろいでいたレミリアは人の事があまり言えないことを言う。

 

「うるさいわよこのかりちゅまが!?」

「なんですって!?」

 

「はぁ……霊夢。」

「仕方ないわね……………フンッ!」

 

「あべしっ!?」

「ワザマエ!?」

 

霊夢は陰陽玉を取り出して全力で二人の顔面な激突させる。

心なしか顔面が陥没している気もしなくはないが全員気にしないことにした。

 

 

「最初来た時は気にする余裕が無かったのだけれど…………

全体的に建物は割と小さいのね。

人が入れないくらいの大きさかしら?」

「ふ、そうだな。

我々は見ての通りかなり小さいからな。

我々が自宅に住むとなるとどうしても家が小さくなる」

「まぁ道理ね。

これについてはどうしようもないわよね。

むしろ家が大きすぎると落ち着かないんじゃないの?」

「まぁそうだな。

っと案内役が来たようだな。」

 

すると声をあげてこちらに近づいてくるスライムが居る。

 

「おーい、スライバー!」

「ふん、遅いぞ。」

「えーと貴方は?」

「俺か?俺の名前はミイホン!この国で特に力強いホイミスライムさ!」

「ふん、勇者だなんだと言わなくなった辺り身の程でも知ったか?」

「うるせいやい!?

ここの人たちめちゃくちゃ強い大魔王クラスや創造神クラスのやつらばっかなんだから勝てるわけねぇだろ!?」

「お前の戦い方が正直過ぎるだけだ。

もう少し駆け引きと言うものを覚えろ馬鹿者が。」

「うるせ!?ばくれつけんぶつけんぞ!?」

「当てられる物ならな、それはともかく仕事をしたらどうだ?」

「ぐぬぬぬぬ。」

 

どうやらスライバとこのミイホンと言うホイミスライムは知り合いでそれなりに仲が良さそうだ。

 

「はぁ………とりあえずこの国の事についてはこれから俺が案内させてもらうよ。

とりあえず付いてきてくれ。」

「ええ、分かったわ。」

 

道すがら霊夢はずっと気になっていたことを聞く。

 

「ねぇ、ここってどのくらいの魔物が住んでるの?」

「んー、そうだな。スライム系だけでざっと1000匹ちょっと。

養殖させる為に連れてきた魔物が3000くらいってとこか。」

「ずいぶんと多いわね…………しかもスライムは全員真面目に育てられているのでしょう?」

「そうだな、最大で8匹くらいを同時に育て続けて5年だしなぁ、それに主は基本ぶっ倒れるまで育成に付き合うからこの度に回復してやってるせいか24時間ぶっ通し程度じゃ疲れなくなってんだよ。」

「本当に人生その物を賭けてるのね。」

「まぁそれが主だよ。

だがまぁこの間『狭間の闇の王』が復活した時は大変だったなぁ…………スライムの一部が怯えちまって主が今回みたいにぶちギレてヤバかった………。」

「あぁ………前例があったのね………。」

 

紫は割と遠い目をするのだった。

 



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スライムの国  その3

 

 

~スラバッカ王国~『海岸エリア』

 

 

私達はミイホンと名乗るホイミスライムの案内でまずは一番港から近い海岸エリアと呼ばれる居住区に行くことになった。 

 

「この辺は俺達みたいな『ホイミスライム』型とかあそことかにいる『スライムつむり』、『スライムカルゴ』、『パールスライム』、『アクアスライム』それとこの辺に生えてる木も『トロピカルスライム』っていうスライムの一種だな。

それに加えて『リーファ』とか『スライムツリー』とかも住んでるぞ。」

 

「あの気が全部『トロピカルスライム』なの?」

「あぁ、あいつらの見た目って本来は擬態なんだけど主は全てスライムに植え替えたんだよ。

それとあいつらの根はほぼ足として機能しているから普通に歩いたりして日当たりの良い所を探したりしてるぞ。」

「へぇ………それじゃああの頭の角?の部分が植物になってるピンク色のあの子は?」

「ん?あぁ、あれがさっき言った『スライムツリー』だよ。

あいつらも日光浴が好きでな、基本『トロピカルスライム』と一緒にいることが多いぞ。

それと主に葉っぱを撫でて貰うとよく喜んでるな。」

「へぇ…………うん、あの子達から感じる幸福感、確かにスィラという人物は貴方達を深く心から愛しているようね。」

「ピキー♪」

「ピキッ♪」

 

幽香はとても嬉しそうにしながら『スライムツリー』と『トロピカルスライム』を撫でている。

 

「おお、珍しいな。

あいつらが知らないやつにあっさり懐くなんて。」

「あぁ、あの子は花の妖怪なのよ。

だから同じ植物仲間としてあの子達の声や感情を読み取れてるんだと思うわよ。

確かひまわりとかも会話したり出来るみたいだし。」

「へぇー、あのねーちゃんおっかない気配する割に可愛いとこあんだな。」

「…………貴方やっぱり幽香の実力にある程度気付けているのね。

やはり伊達を配合で強くなってないということなのかしら?」

「ま、そういうことだな。

あんたらの中でもめちゃくちゃヤバい気配を漂わせているのにはすぐ気付いてたよ。

………だが俺達の方が強いさ。」

 

ミイホンの雰囲気が一瞬だけ変化し、力強さを感じさせる気配を漂わせた。

 

「へぇ………貴方も自信があるのね。」

「この国のやつらはどいつもこいつも強いからな………次の刺客には覚悟しとけよ?」

「えぇ………でもまずはここの観光ね。」

「おっと、そうだったな。

つかなんならこの辺の住人とふれあってみるか?」

「あら?良いの?

確かに私達としても気になってはいたけど。」

「大丈夫さ、あいつらは比較的人にも慣れてるからな。

むしろ撫でたりとかしてやれば喜ぶと思うぜ?」

「ふふふ、じゃあお言葉に甘えましょうか。

皆~、この辺のスライム達と触れあっても良いそうよ。

あんまり無い機会でしょうから触らせて貰っときなさい~?」

 

 

 

「……………………(ナデナデピカピカキュッキュツ)」

「ピキ~~~♪」

 

霊夢は『パールスライム』を無言でただひたすらピカピカに磨いている。

『パールスライム』の真珠のごとき美しさを持ち、堅さを兼ね備えたそのボディは更に輝きを増しており、『パールスライム』もとても嬉しそうにしている。

だがなぜだろう……………霊夢の目に宝石が見えるのは。

 

「へぇ………やっぱり繋がっているこの貝殻も身体の一部としてしっかりと定着しているのね。」

「ピキ~~?(ビヨーン)」

「ピキッ♪(ビヨーンピヨーン)」

永琳は『スライムカルゴ』や『スライムつむり』の背中や頭部に存在しるヤドを掴んで持ち上げ、重力にしたがってスライムカルゴとスライムつむりのスライム部分がぶらぶらと揺れている。

なんだか割と楽しそうだ。

 

「ふらふら~♪」

「ピキピキ~♪」

 

船ではずっと寝ていたフランは今では起きており、リーファと何故かフラダンスをしている。

だがなぜだろう…………見ているとすごく殺されそうな雰囲気を感じる。

 

「…………お手。」

「ピキッ!」

「おかわり。」

「ピキッ!」

「ばくれつけん!」

「ピキキキキキキキキ!!!!!」

「ホアタタタタタタタ!!!!!」

 

同じく紅魔館組からフランに付いていた美鈴は一匹のホイミスライムに目を付けてしばらく見つめあい、お手とおかわりをさせる。

ホイミスライムは何故かしっかりと美鈴の手に触手を乗せており、美鈴の『ばくれつけん』の声でいきなり組手が始まっている。

おそらくあのホイミスライムから武道家としての雰囲気を感じ取ったのだろうか?

一緒にとても楽しそうにしながら組手をしていた。

 

「ピキピキッ、ピキキピキィ!」

「へぇ………貴方達の魔法はそんな感じなのね。

本で見るのと実際の術者から聞くのじゃやはり違うわね。

私達『魔法使い』って種族の扱う魔法だと…………」

 

船酔いによってグロッキーになってたパチュリーは復活しており、たまたま海岸エリアにいた『まどうスライム』と魔法談義に話を咲かせている。

何故かピキッ!としか喋れないスライム達と会話を成立させているのが少し謎だった。

 

 

そして紫は…………

 

「皆馴染むの早すぎよ………今の状況ちゃんと分かっているのかしら?」

 

軽く胃にダメージを受けていたのだった。。



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スライムの国  その4

 

 

~スラバッカ王国~『山岳地帯』

 

 

海岸地帯でスライム達と戯れた後、今度は山岳地帯を案内して貰うことになった。

 

「着いたぞー、ここら辺が山岳地帯だな。

ここいらだと鉱山とかに住む魔物が多く住み着いてるな。

例えば『ストーンスライム』とか『メタルスライム』、『スライムボーグ』あとは宝石系の『クリスタルスライム』や『ダイヤモンドスライム』、『ゴールデンスライム』や『スライムマデュラ』、他にも足のある『スライムファング』や『スラッピー』なんかもいるな。」

 

「ゴールデン………ダイヤモンド………ゴクリ………」

 

霊夢が金に目が眩んでいるのが全員分かったが…………もはやスルーしていた。

 

「へぇ、鉱山にも結構色々と住んでいるのね。」

「あぁ、あとこの鉱山の地下には火山地帯へとつながる道もあるから『マグマスライム』とか『スライムタール』とかも見られるはずだぞ。」

「あら?あの一つ目のあの個体は?」

 

すると永琳が山岳地帯を転がっている全身が岩に包まれた一つ目の魔物を指差す。

 

「ん?あぁ、あいつが『ストーンスライム』だよ。

スライムだと唯一の単眼の魔物だな。あいつらはああやって転がるのが好きなのもあるんだが転がりながら自分の体を磨いてるんだよ。」

「へぇ………あら?あのフサフサの毛の生えた足のあるやつは?」

 

今度はレミリアが崖の上で跳ねたりしてるオレンジ色のフサフサした毛を生やして鋭い鉤爪のある足を持ったスライムを指差す。

 

「あぁ、あれが『スライムファング』だな。

スライム系の中だと結構気性が荒い部類の魔物だ。

鉤爪による攻撃も可能だからスライムの中だと危険度はそれなりに高い部類だな。」

「へぇ………色々といるのね………ん?」

 

すると霊夢が一匹のスライムが目に留まり硬直する。

 

「ん?霊夢?そこに何かいるn…………んん?」

 

紫も釣られて霊夢の見ている方向を見るが思わず硬直する。

 

「ん?どうした?

 

あぁ、あいつが『スラッピー』だよ。

スライムの中でも大型な種類だな。」

 

「い………いえ、大型なのはいいのよ………えぇ………だけど………」

「スライムに…………蛙の足?

それに………色が………」

「ん?あぁ、そういうことか。

あいつ何故か人間受けはあんまりしないんだよなぁ。

本人が気にしてねぇから問題ねぇけど。」

「そ……そう……………」

 

 

『『い………言えない………見た目が気持ち悪いなんて……』』

 

 

霊夢と紫の心の中が一時的にシンクロしていたのだった。

 

「んで鉱山の中だな。」

「あら?この辺はずいぶんとストーンスライムが多いのね。」

「あぁ、そりゃストーンスライムはここで鉱石とか喰うことで体を構成する石を溜め込んで堅さを増すからな。」

 

「ピキ!(なんか良い鉱石ある?)」

「ピキピキ!(今日は鉄が多いかなぁ、たまに銅とか鈴とかあるけど脆いしなぁ)」

「ピキピキ~♪(お?プラチナ鉱石見っけ!いただきまーす♪)」

「ピキィ!?(あ!?ずりぃぞ!?)」

「ピキピキ………ピッ?(うーーーむ…………お?)」

「ピキ?(何かあったの?)」

「ピキ(タングステンがあった、うまうま………)」

「ピキキィ(そんな重い金属ばっか喰ってたらそのうちメタルスライムになっちまうぞ?)」

「ピキィ(大丈夫だ、問題ない。一番良い金属をくれ。)」

 

「…………なにかしら?今一匹が盛大にフラグを建てたような………」

 

すると先に進み始めていたミイホンが止まっていた紫に声をかける。

 

「ん?なにしてるんだ?先に進むぞ?」

「え、えぇ………今いくわ。」

 

そして鉱山のさらに奥深くへと進んでいくと…………

 

「ぐへへへへ………じゅるり。」

「ずいぶんと宝石や水晶、金の塊が多いわね。」

「あぁ、この地形もあって宝石系のスライムとか、『ゴールデンスライム』とかの金のスライムが住みやすい環境なんだよ。」

「へぇ…………見た目で大体何がどのスライムか分かりやすいわね。」

「まぁそれのお陰で人間とかに良く狙われるんだよなぁ、こいつらは。」

「霊夢?」

「別に何もしないわよ何も…………じゅるり。」

 

涎を滴しながら言っても説得力が無かった。

 

「はぁ…………あら?あれが『ダイヤモンドスライム』かしら?」

「ダイヤモンド!?何処何処!?ぐべっ!?」

 

すると紫がブリリアントカットされた宝石の形をしたスライムを見つける。

それによって霊夢は暴走気味になっていたが、紫によって物理的に黙らされたのであった。

 

「ん?あぁ、似てるけどちょい違うな、あいつは『クリスタルスライム』だ。」

「似てるけど?ってことは色違いなのかしら?」

「いや、姿が似てるんだよ。

そうだなぁ…………見て貰えりゃ早いんだが………あぁ居た居た。」

 

するとミイホンが指輪のようなスライムを指差す

 

「あれは…………」

「まるで巨大なダイヤモンドの結婚指輪ね。」

「随分と大きいのね………」

 

思わず見とれてしまう程の輝きを放つダイヤモンドスライムに、全員がうっとりしているのであった。

 

「ピッ?(どうしたの?)」

「相変わらずお前は人気だよなぁ?」

「??」

 

 



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スライムの国  その5

 

 

~スラバッカ王国~『城下町』

 

 

 

「とりあえず最後はやっぱりここだな、他にも洞窟やらなんやらエリアは多いんだが全部やってると時間がかかりすぎちまうんだ。

わりぃんだが残りは次は個人的にここに来て見ていってくれ、主から好きに見ていってくれて構わないと聞いているからな。」

 

私達は海岸や山岳、鉱山などの色んな所を周り、この国に住むスライム達の様子を見てきた。

どのスライムも精一杯生きており、その人生を楽しそうに皆語っている。

特に多かったのが自分達の主であるスィラについての話だ。

分かりきっては居たがこの国のスライム達は自分達の主であるスィラの事を大変愛しており、一番楽しそうに話している。

そしてスィラもこの国のスライム全てを把握しているらしく、彼のスライム愛は本物と言えた。

 

「ミイホンさん?彼はモンスターマスターとしてはどのくらいの実力だったのかしら?」

 

紫は今後を考える上で一番重要となる実力について聞く。

 

すると突如として全員の後ろからその返答が帰ってくる。

 

「全ての世界から最強のモンスターマスターを決める大会、『星降りの大会』というのがある、私はそれでベスト4になんとか入れる程度だよ。」

 

そして全員が後ろを振り向くとそこには………

 

前回見たローブ姿とはうって変わって全身をローブと同じ材質と思われる材料で作られ、同じような装飾の鎧に身を包んだスィラの姿だった。

 

「お?主じゃん、今日はメタキンの鎧かぁー、ほんと相変わらずとんでもないの持ってるよなぁ。」

「私のスライム愛を舐めないで欲しいものだな、どれだけ時間がかかろうともスライムに関わるものは手にいれる。

これはそれで手にいれたものに過ぎないからな。」

「そうは言うけどよー、これ普通に伝説級の装備だからな?」

 

ミイホンは主であるスィラとの雑談に花を咲かせる。

だが霊夢達はそれよりも気になることがあったが先に紫がスィラに謝罪する。

 

「スィラ殿、今回の件は本当にすまなかったわ。」

「別にいい、君たちは君たち、私には私の譲れないものがあるだけの話だ。

八つ裂きは諦めんがな。」

 

「あんた………全ての世界のモンスターマスターって言ったわよね?」

「あぁ、その通りだ。

毎度毎度ライバルとタイジュの国最強のマスターのどちらかに倒されるから上手く上がれて2位が限界だったがな。」

 

「つまり………あんたは自分の世界どころか異世界含めた全ての世界でのトップクラスという訳なのね………。」

「そうなるな。」

「少なくとも…………嘘では………無いと思うわよ………ゲホッ!?」

 

今度は上から今回は置いてきたはずのモヤシの声がする。

 

「パチュリーじゃない!?どっから来たのよ!?ってかどうやって来たのよ!?」

「そんなの………飛んできたに………決まって………ゲホッケボッ!?

ぜー………ぜー…………」

 

もはやパチュリーは満身創痍であり、喘息を起こして軽く死にかけている。

 

「全く………何………相談も………無しに…………置いて………くんのよ………。」

「ご、ごめんなさい?貴女の事だからどうせ今回も留守番だと思ってたのよ…………」

「身から出た錆びね。」

「返す………言葉も………無いわね。

ふぅぅぅぅううう、ここまでルーラで移動するのはきつすぎるのよ…………」

「成る程な、そこの八雲紫っていう処刑対象の警戒でこのスラバッカ王国の空間を弄れなくしたがルーラならば問題なく素通り出来る筈だな。」

「やっぱり八つ裂きは確定なのね…………それで?

そのルーラ?ってのはなんなの?」

「ルーラは長距離移動用の魔法よ、一度訪れた場所なら天井がない限り瞬時に移動することが可能よ。

ついでに世界を隔てていても移動可能だったりするわ。」

「なによそれ………世界の壁を無視して移動してるじゃない………」

「でも貴方達の世界なら割とありふれているんじゃないかしら?」

「………まぁそうだな、旅をするような奴なら割と誰でも覚えとくような普通の呪文だな。」

「そんなのがありふれている世界って……………」

「あんまり気にしてたらキリないわよ?

貴方の名前だけど………これに乗ってたわね。」

 

「そいつは…………星降りの大会の出場時リストとその勝敗を書いた新聞だな。

なんでそんなとこに?」

「私が知る限りこの世界はモンスターマスターは一切関わってない世界だったと記憶しているが?」

「ええ、確かに一切関わってないわ。

だけどこの世界……幻想郷は忘れ去られた物がたどり着く世界、ついでに言うと条件もそれなりに緩いから無くしてそのまま忘れたとかでも簡単に入ってくるのよ。

恐らくこれはなくしたはいいけど新聞で特に要らないからそのまま放置されてこっちに来たのね。」

 

「それで?結果はどうなってるのよ?」

「結果としては準優勝ね、決勝でタイジュの国代表のテリーという子に負けたみたいね。」

「それにしても貴方の世界の代表………全員がベスト4とはね、イル、ルカ、そして貴方の三人、相当な強豪なのね。」

 

すると思い出を振り替えるようにスィラは答える。

 

「だからこそ私達は強くなれた………とも言えるけどな。

あの時は折角ルカにギリギリで勝てたのにタイジュ最強のマスターに負けた、ライバルに会わせる顔が無かったな。」

「随分と楽しそうに言うわね。」

「楽しいさ………私達はモンスターマスターはモンスターを育て、戦わせることが生き甲斐だからな。

強い相手との戦い程燃えるものはない。

だからこそ先に伝えておこう、私達のスライムを一軍まで倒せるのなら倒してみたまえ!

私達はまだまだ最強の札を欠片も使っていないぞ!」

 

「ふふ、望むところよ………私としても八つ裂きになりたくないもの。」

 



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大型の魔物  その1

 

 

~スラバッカ王国~

 

 

「さて、ちょっとした挨拶も終わったことだ。

次の対戦相手を紹介しておこうじゃないか。」

 

「次の相手ね………一体何が来るか………」

「今回は二体だけだ。

だが生半可な実力では倒せないぞ?」

「たったの二体………今までは数で来ていたけど今回は質ってことね。」

「概ねその解釈で問題ない。

だが事前情報無しだと恐らく詰むからな。」

「成る程………それだけ自信があるのね。」

 

 

そしてスィラは口笛を吹いて合図を送る。

すると遥か上空から二体の大きなスライムが落ちてくる。

 

地面に激突するすれすれの所で二匹は"浮遊"しており、地面にぶつかる事はなかった。

 

そしてその姿にパチュリーは驚愕する。

 

「なっ!?『グランスライム』に『メタルカイザー』!?メガボディの中でも強力な魔物を………」

「パチュリー貴女やっぱり分かるのね……どれだけ調べたのよ………。

それで?メガボディって?」

「……モンスターには5段階のサイズが存在していて『スモールボディ』、『スタンダードボディ』、『メガボディ』、『ギガボディ』、『超ギガボディ』が存在するわ。

 

基本的に後者になるに連れて強大な力を持つようになってギガボディ以上はただ殴るだけで周囲を吹き飛ばす程の衝撃波を放ってしまう程よ、ただの攻撃ですら全体攻撃になるほどの大きさなのよ。

一応『スモールボディ』と『スタンダードボディ』は同じサイズとして扱われるのだけれど後者になるにつれてモンスターマスターが扱う制限が増えるわ。」

「ほう、よく知ってる見たいだな。もしかしてモンスターマスターと戦った覚えが?」

「えぇ、苦い経験よ…………とりあえずその制限っていうのがモンスターマスターのパーティーに入れられる数の制限よ。」

 

スィラは肯定するように続ける。

 

「その通りだ。

私達モンスターマスターは最大4匹までを戦闘に同時に参加させられるが『メガボディ』、『ギガボディ』とかに関しては入れた場合使えるモンスターの数に制限がかかる、なぜなら『メガボディ』は二匹分、『ギガボディ』は三匹分、『超ギガボディ』は1パーティー分にカウントされるからだな。

だがこれは制限がかかる程強いという証しでもある。

サイズが上がるにつれてモンスターの能力は大きく上昇し、覚えられるスキルの数も増えてサイズが上がるにつれて特性も増えていく。」

「これによってモンスターの評価が大きく変化する魔物も多いわね………大きくなることで化物みたいな強さになる魔物は多いのよ。

………うげ」

 

すると一匹のスライムを見て青い顔をし始めたパチュリーに対してスィラはなにかを悟ったのかパチュリーに聞き始める。

 

「さては『ぶちスライムベス』と戦ったな?」

「…………………………………えぇ。」

 

パチュリーは、思い出したくも無いのかすごく嫌な顔をして肯定する。

 

「『ぶちスライムベス』?どんなモンスターなのよ?」

「この子だな。」

「~~♡ピキッ?」

 

レミリアは友人であるパチュリーがここまで嫌な顔をする魔物が気になったのか質問する。

するとスィラは足元で甘えていたスライムの一匹を抱える。

そしてその時に気付いたのだが…………スィラの足元がスライムまみれになっていた………。

 

「…………可愛いわね。」

「プニプニしたいわね………」

「…………ゴクリッ」

 

レミリア以外は『ぶちスライムベス』より、むしろそっちが気になっており、スィラの足元に群がって甘えるスライム達に物凄く萌えていた。

 

「それで………その子の何がパチェのトラウマになってるのよ?」

 

スィラが抱えているのは、以前見たスイーツスライムよりちょっと大きく、青い身体にピンク色のまだら模様というなんとも言いがたい色合いをしたスライムだった。

 

「この子はの強い所はその異常耐性の優秀さとサイズが上がるにつれて覚えるとてつもなく強力なスキルな数々だな。

耐性はザキ、マホトラ、マインド、麻痺、毒、眠り、等即死含めた各種状態異常を根こそぎ無効にしており、大きくなれば行動がとてつもなく早くなり最大三回まで同時に動く。そして最大の強さこそ………」

 

「『ノリノリ』でしょ?」

「正解だ。

この特性『ノリノリ』は戦闘開始した後定期的に発動さて条件は自信の体力が最大、つまり無傷であることな。

効果としては発動すると自信に『魔法強化』呪文『インテ』と『筋力強化』呪文『バイキルト』が発動してSP特性にしていた場合さらにテンションが上がるからまぁちょっとした魔王くらいなら一撃で倒せるぞ?」

「なんなのよそれ……………」

 

「サイズというのの違いはそこまで戦況を左右するんだよ。」

「成る程………ならそいつらを倒せばGサイズ………

もしかしてあのカニ擬きもそうかしら?

それになるのかしら?」

「まぁアタリだな。スラキャンサーは確かに『ギガボディ』であっているよ。

そして私が『ギガボディ』を使うかはお前達次第だな。

よき戦いを期待させて貰おう、戦いの準備が出来たらまた訪れるといい。

それまでは回復に専念しておいたほうが良いだろう。」

「ええ、望むところよ………」



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大型の魔物  その2

 

 

~マヨヒガ~

 

 

「はーい、じゃあ対策会議っていうか今回の相手の説明を始めるわよ。

ただ先に聞いておきたいのだけれど………戦いたい奴いる?」

 

スラバッカ王国への見学が終わった後、霊夢達は幻想郷へと戻り、前回と同じメンバーを召集して次の相手に対する作戦会議を行っていた。

 

すると二人、手を上げる者が現れる

 

「あたしは戦わせて貰うよ?

あんなに熱い戦いを見せられて鬼が黙っていられると思ってるのかい?」

「私も戦います、スラ忍衆の時は何も出来ませんでしたからこのままではいられません。」

 

鬼の代表である『星熊 勇儀』と紅魔館の門番(笑)である中国こと『紅 美鈴』であった。

 

「勇儀と美鈴ね………まぁちょうどいいわね。」

「ん?どういうことだい?」

「忘れたかしら?今回の相手の名前を。」

「あん?確か『グランスライム』に『メタルカイザー』………そうかメタルか!?」

「そう、名前の通りメタル系が相手よ。

特徴はこの間説明した通り基本的に物理以外は無効、他にも細かい特徴としてこれはメタル系全てに共通するのだけど『防御力』、『素早さ』、そして呪文等の魔法の威力に関わる『かしこさ』、魔力量を表すマジックポイント、通称『MP』が下手な魔王よりも高いわ。

ただ体力は極端に低い上に全ての特技に使用する魔力量が倍以上になるデメリットを持っているわ。」

 

「つまりめちゃくちゃ硬い上に魔法の威力が凄まじい、それに加えてめちゃくちゃ早いが持久力はそこまでないって感じかい?」

 

勇儀は細かく覚えるのは苦手な為に自分の認識がこれでいいかかなり噛み砕いて特徴を答える。

 

「そう解釈して貰って構わないわ。

でもだからといって持久戦を挑むのは悪手よ。

モンスターマスターはその魔物のデメリットを残すような事は基本的にしないわ。

それに野生ならともかくモンスターマスターにとって体力が低いというデメリットはメリットになる場合が多いのよ。」

「それはどういうことだい?

体力が低いんならすぐにやられちまって意味がないだろう?」

 

パチュリーはさらに苦い顔をしながら答える。

 

「向こうの世界のモンスターの特性に『亡者の執念』っていうのがあるのよ………。

これはスラ忍衆も持っていたからそんなに説明は要らないでしょうけど上手いモンスターマスターっていうのはこの『亡者の執念』とメタル系の持つ低い体力を合わせる人物がいるのよ。

これをされるとメタル系が『みがわり』という特技で味方の受ける攻撃を全て肩代わりして物理以外のダメージを基本的に無効にする上に強力な物理持ちだと一撃で倒すのだけれど倒してもみがわりを続けてそのたタイミングで仲間に『リザオラル』を使わせるのよ。」

「それするとどうなるんだい?」

「結論から言えばほぼ詰むわ。

『亡者の執念』が発動してから『リザオラル』をかけられた場合は亡者の執念が終わった瞬間に蘇生されてまた『みがわり』のループになって抜け出せなくなるのよ。

発動前に使わせれば倒された瞬間に蘇生されて『亡者の執念』が発動しない上に『みがわり』を再度行うまで少し時間がかかるからそこが狙い目だけれどそれは相手に一度好き勝手殴られなきゃならないのよ。」

 

「かー、それはキッツいな、んで?今回の相手はそれを使ってくると思うかい?」

「いえ、今回は2体だけ。

そうなるとこの手を使うには火力が不足しがちになるわ。

それにこの二体はこの戦法に向いてないのよ。」

 

するとなかなか進まない話に痺れを切らした霊夢が聞く。

 

「そうなるとどういうのが来るのよ?」

 

「そうね、正直私にもどう来るかは完全に読むことは出来ないわ。

だからこの可能性が高いというだけなのを理解して聞いて頂戴。

 

とりあえず来る可能性として高いのは3つくらいよ。

 

一つ、呪文主体の魔法特化型。

メタルカイザーが物理にあまり向かないのもあるのだけれど両方とも魔法に特化した能力をしているのよ。

特に『グランスライム』は『デインブレイク』による雷への耐性ダウンと『デイン系のコツ』による雷系の消費魔力軽減に加えてそれなりに強力な威力の上昇補正があるわ。

だから『グランスライム』で確実に言えるのは雷特化でしょうね。」

 

「要は片方は雷に特に注意しろってわけかい。

近付けば問題なさそうかい?」

「熟練の魔法使いはたとえゼロ距離でも自分へのダメージが無いように直撃させるわ。

避けるのが速いわね」

「あー、やっぱそうなるか。」

 

「二つ目は体技特化、こっちはあまり自信の能力に影響しない技が多いから物理的な攻撃手段として普通に持たせてる可能性もあるけど二体ともMPがかなり多いから手数で攻める場合メタルカイザーは特にこっちの可能性が高いわ。

ただグランスライムの場合は魔法と両方搭載してる感じでしょうね。」

 

「つまり一つに特化させてるわけではない可能性が高いのね。」

「そういうことになるわ。

 

それで三つ目だけど…………正直今までのパターンから見て意表を突いた物理型。

この可能性も無いわけではないわ。

でも可能性としては物凄く低い、けれど警戒はしたほうが良いと思うわ。」

 

パチュリーはスィラという人物をスライム達の話を聞いたり、今までの戦いからの推察でどういう魔物で戦うのが好きかを調べていた。

 

 

 

 

結論からいうとスィラは……………ネタや一発芸とされるような編成のスライム達で戦うのが好きな可能性が出てきていたのだった。



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大型の魔物  その3

今回は実況と解説風でお届けいたします。


 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

結局こちら側の参加者は

『博麗 霊夢』

『八雲 紫』

『星熊 勇儀』

ちゅうごk………『紅 美鈴』

 

この4人となった。

これならばモンスターマスター側でも普通の1パーティーとしても認められる。

 

そして相手側のモンスターは

 

『メタルカイザー』

『グランスライム』

のメガボディが二体。

 

普通に考えれば数的な不利のある戦いであり、あまりフェアではないように見える。

たがそれを簡単に覆すポテンシャルを持つのが『メガボディ』や『ギガボディ』といった大型の魔物だ。

 

『さぁ始まりました!

新世界『幻想郷』と我々『スラバッカ王国』の戦い!

実況はわたくし『ホイミスライム』一族一番のやかましいスライムである『ベホイミン』、解説には我々『スラバッカ王国』から近距離戦闘の教官である『ホミロン軍曹』!!』

 

ベホイミンの横に座る赤いベレー帽を被ったホイミスライムが触手を組ながら立ち上がる。

 

『皆!よろしく頼むのである!』

 

『そしてもう一人、『幻想郷』から種族『魔法使い』である紫もやしこと『パチュリー・ノーレッジ』さんです!』

 

『誰が紫もやしよ!?』

『まぁまぁ落ち着くのである紫もやし殿』

『やかましいわ!?それで弄るように伝えたの絶対レミィでしょ!?』

『紫もやし殿のご友人である『レミリア』殿からは存分に紫もやしで弄ってやってくれとの事でございましたので。』

『レミィィィィィイイイイ!?!?!?!?』

『まぁそれはさておきホミロン軍曹、この戦いはどうなると思われますか?』

『そうであるな、あまり勝負のネタバレになることは避けるべきなのである。我輩としてはあの者達が如何にして『メタルカイザー』殿を突破するかが勝負の鍵になると思っているのである。』

『紫もやs……パチュリー殿はどう思われますか?』

『誰が紫もやしよ………

そうね、私もホミロン軍曹に同意見よ。

私達は基本的に魔力や妖力、霊力といった力を弾幕という形にして攻撃するものが殆どであまり物理攻撃を多用する者はほんの一握りしか存在しないわ。

でも物理攻撃に特化した者の破壊力は弾幕を多用する者よりも比較的高い傾向があるわ。

問題としてはそれで『メタルカイザー』、つまりメタル系を倒しきれるかね。』

『成る程、御二人ともありがとうございます!

そして大変長らくお待たせしました!これより『幻想郷』VS『スラバッカ王国』による対決『幻妖武闘大会』!

Dランクの戦いを始めます!』

『えっちょっと待って今のでDなの?』

『はい!スィラ様が相手の実力に合わせて闘うために8段階ある強さのうち一番低いFランクのパーティーから始まります。

『スラ忍衆』はFランク

『スイーツスライム』はEランク

『じい様's』はDランクのパーティーとなります!』

『ちょっと待ってあのコンビそういうパーティー名だったの!?』

『本人達からの希望によりこの名前になっております。

さて、紫もやし殿によって脱線してしまいましたが試合開始の合図を我らが王であり主である『スィラ様』にして貰いましょう。』

 

すると闘技場の上に設置された特設スペース、そこに『スィラ』が現れて観客のスライム達が盛り上がる。

 

『ピキー!ピキー!ピキー!ピキー!』

『観客の方々!お静かに願いまーす!』

『………………』

『ごほん、それでは!

試合開始!!』

 

 

『ピキィィィィイイイイイイイ!!!!!!!!!!!』

 

するとスライム達の声援により凄まじい量の鳴き声が周囲を包み、新しい試合が始まるのであった。

 

 

 

そして『メタルカイザー』が真っ先に動きを見せる。

 

『おおっと幸先良く先制攻撃ィ!!

『メタルカイザー』殿のイオグランデが炸裂するぅ!!』

 

『メタルカイザー』の爆裂系最上位呪文『イオグランデ』により闘技場に大爆発を引き起こす。

 

『しかし避けられたぁ!?

しかも全員だぁ!?どうなっているんでしょうか!?』

 

だが霊夢達はあっさりとかわし、傷一つ受けている様子はなかった。

 

『私達は弾幕ごっこという決闘方法を用いるのだけれどルールが基本的に弾幕に一度でも当たればアウト、そして相手の残り人数分当てて残機を全て削ったほうの勝ちというルールの都合上全員が避けることに特化しているのよ。』

『成る程、常にHP1の状態で闘っているような感じなのでしょうか?』

『まぁそれに近いわね。

にしても厄介ね『こうどうはやい』の特性は。』

『む?パチュr…………紫もやし殿は『メタルカイザー』殿の特性を理解しているのであるな?』

『えぇ『こうどうはやい』

己の素早さを無視して優先的に動き、誰よりも早く動くことの出来る特性。

さらに言えばこの特性最大の特徴はその決断力の高さね。

この特性は副次効果として物事の判断が早くなるというのもあるわ。

だからこそあんな早く動けるのよ。

でも………私達幻想郷の住人をあまり舐めない方が良いわよ?』

『はぁ………っと!?ななな!?なんとぉ!?『メタルカイザー』が吹き飛ばされたぁ!?

そしてそこに立っているのは…………『幻想郷チーム』の『星熊 勇儀』だぁぁぁあ!?!?』

 

 

幻想郷の鬼が今………動き出した。



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大型の魔物  その4

 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

『ピッ!メタルカイザー の 『イオグランデ』

しかし当たらなかった。』

 

『あら?今のは?』

『あぁ、解説の紫もやし殿は初めてでしたね。

今のは魔界の決闘で完全決着を決める際に良く用いられるジャッジという機械系の魔物を仲間の『スライムボーグ』が分析し、決闘等での戦況を分かりやすく把握するために新機能として装着したものです。

実際には我々の前にいる審判の『スライムボーグ』が使っております。』

『へぇ、なかなか便利なのね。

あと紫もやし言うな。』

 

「全くあいつらは呑気に…………にしてもなんつう威力してんのよ。」

 

霊夢は呑気に解説をしているパチュリーに対して一瞬イラついていたがすぐに状況を把握して次の行動へと移そうとしていた。

 

だが『グランスライム』の方が"素早く"行動する。

たしかに『メタルカイザー』よりは遅い、だが速さだけで見れば幻想郷の上位陣に迫る動きをしているのだ。

グランスライムは己に電撃が走り、ダメージを受けているが先程よりも力強さを大きく増しており、かなりの威力の攻撃を放とうとしていた。

 

『ピッ!グランスライム の 『暴走機関SP』 が 発動!

グランスライム の テンション が 5 上がった。

グランスライム の 攻撃力 が 上昇した。

グランスライム に 200 のダメージ!』

『なななんとぉ!?グランスライム選手が本来持たない特性、『暴走機関SP』が発動して攻撃の威力が大幅アップゥ!?』

 

グランスライムは雷の弓矢を作り出して天へと撃ち小さな太陽を生成する。

 

さらにその太陽は破裂し………

 

「っ!?全員上から来るわよ!!避けなさい!!」

「おわっ!?なんだこりゃ!?」

「っ!?あの『スラキャンサー』の使った『シャイニングボウ』!?」

「太陽か真上にあるせいで見えづら………ぐぁぁぁあああ!?!?!?」

「美鈴!?」

 

『美鈴選手に直撃だぁ!!これは痛いィ!』

 

ちょうど太陽と重なるようにして放たれた『シャイニングボウ』は霊夢達を襲う。

だがそれに簡単に直撃する程霊夢達も甘くなかったが、美鈴は太陽と完全に重なるように撃たれた矢に気付かず一本だけ直撃を受ける。

 

『ピッ!グランスライム の 『シャイニングボウ』!

紅 美鈴 の 弱点 を 突いた! 125 のダメージ!

グランスライム の テンション が 元 に 戻った。』

 

「美鈴ー!!無事!?」

「ええ、すみません。

油断して一撃貰いました。」

「この試合なら死なない限り大丈夫よ。

それで?あいつが弱点って言ってたけどどうなの?」

「私は雷にはある程度耐性がある方なのですが………どうも一撃で耐性を貫いている辺り弱点まで耐性を落とされていたのかと。

紫もやし様の説明にあった『デインブレイク』という特性が原因と思われます。」

 

『ちょっと!?聞こえているわよ美鈴!?』

『まぁまぁ押さえてください紫もやし殿。』

『戦場に立つ者はこの程度で心を乱してどうする紫もやし!我輩のように精神面め鍛えるのだ!』

『やかましいわ!?ゲホッゲホッ!?』

 

「っ!?油断しないで!?

次が来るわよ!?」

 

霊夢はその勘により、『グランスライム』が次の攻撃を行おうとしていることに気付いた。

 

「ピッ!グランスライム の 二回行動 !

『ギガクロスブレイク』!」

 

『おおっと!?これはぁ!?

グランスライム選手の両側に強大な雷の剣が産み出されたぁ!?』

 

するとグランスライムはその剣を振りかぶり十字にクロスさせて放つ。

 

「あっぶな!?」

「スキマダーイブ!!セーフ………それで?他の皆は!?」

「さっきは受けてしまいましたが今度はそうは行きません!!」

「あぁ!?もうしゃらくせぇ!オルァッ!!」

 

勇儀は己の拳に全力の力を込め一撃を『ギガクロスブレイク』へとぶつける。

 

『おおっとぉ!?グランスライム選手な『ギガクロスブレイク』を受けて立ち、まさかの弾き返したぁ!?』

 

『ピッ!グランスライム の 『ギガクロスブレイク』 !

しかし当たらなかった。』

「オルァッ!!」

「ムォ!?」

 

勇儀 は そのままの勢いでメタルカイザーを殴りつける。

だが…………………

 

「ダメージはどう!?」

 

ピッ!メタルカイザー に

……………………………

25 のダメージ!』

 

「うぐっかってぇ!?なんつう硬さしてんだよこいつは!?」

 

だが周囲はざわめく、魔物でもない者がメタル系の防御力を貫いたのだから。

 

『なななんということでしょう!?

まさかの魔物でもない存在が!?

メタル系の防御力を僅かとはいえ貫いたァァァアアア!?!?』

『あ、勇儀~?メタル系で一番の硬さを持つメタルゴッデスは最低でもそれの1.5倍は硬いと思いなさい?』

 

「「「「なんじゃそりゃ!?」」」」

 

そう、力自慢である鬼、その中でも『怪力乱心』で知られる勇儀の一撃ですらほんの少しのダメージしか入っていないのである。

 

これよりも圧倒的な硬さをしているとなれば霊夢達の反応が重なるのも当然と言えた。

 

「あれ?そういえば最初ってたしか勇儀が吹き飛ばしていたわよね?

あれはどうなのよ?」

 

すると霊夢の疑問に審判の『スライムボーグ』が答える。

 

 

『ミス!全然効いていない!』

 

「「「「っ!?」」」」

 

全員が息を飲む。

今までとはベクトルが大きく異なるその強さに…………

 

 

果たして霊夢達は勝てるのか………。

 



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大型の魔物  その5

今回はちょい短め


 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

「霊符『夢想封印』!!」

 

霊夢から複数の大型の弾幕が生成されてグランスライムへと飛んでいく。

しかし……………

 

「ムッ!ヌンッ!」

 

『メタルカイザー』がまるで"みがわり"になるように自分からぶつかりに行く。

 

『ピッ!博麗 霊夢 の 霊符『夢想封印』!

メタルカイザー が グランスライム の みがわり になった!

メタルカイザー には全然効いていない!』

 

『出たぁ!!!みがメタ戦法炸裂ゥ!

チャレンジャー達はこの鉄壁の防御をどうやって突破するのでしょうか!?』

 

「ぐぬぬぬぬぬ!?」

 

霊夢の夢想封印は物理ではなく霊力による魔法攻撃に近いものである為に攻撃魔法に対する完全耐性を持っている『メタルカイザー』には全くと言って良いほど効果がない。

ダメージの通る『グランスライム』に当てたくても『メタルカイザー』がみがわりになって自分から当たりに来てしまうからだ。

 

すると勇儀が『グランスライム』へと突撃していく。

 

「任せな!鬼符『怪力乱神』!!!」

 

「ムッ!?ムフォ!?」

 

『メタルカイザー』がまたみがわりになって『グランスライム』への攻撃を肩代わりして勇儀の渾身の一撃をもろに受けてしまう。

 

『ピッ!星熊 勇儀 の 鬼符『怪力乱神』!

メタルカイザー が みがわり に なった!

かいしんのいちげき!!

メタルカイザー に 253 の ダメージ!!』

 

『なにぃぃぃぃいいい!?まさかのかいしんのいちげきぃぃいい!?

我らが『メタルカイザー』がすこぶる弱い一撃が入ってしまったぁぁあああ!?』

 

「勇儀!!」

「っし!手応えあり!だが真面目に拳が潰れかねないぞ?

出来ればあと数発で倒したい所だな。」

 

 

そして一度戦闘が膠着したその時だった。

 

なんと『メタルカイザー』と『グランスライム』の傷と魔力がみるみる内に回復していた。

 

「なっ!?」

「なによそれ!?」

 

『ピッ!メタルカイザー の 特性『自動HP回復sp』『自動MP回復sp』 が 発動!

メタルカイザー の HP が 50 回復した。

メタルカイザー の MP が 150 回復した。』

『ピッ!グランスライム の 特性『自動HP回復sp』『自動MP回復sp』 が 発動!

グランスライム の HP が 200 回復した。

グランスライム の MP が 150 回復した。』

 

『『自動HP回復』と『自動MP回復』が発動したぁ!!!強力なスキルにはだいたい付いているスキルで追加出来る特性だぁ!!

メタル系は体力が少ないが受けるダメージもかなり少ない!だが回復された時の影響は計り知れない!!これは強力だぁ!!』

 

「っ!?勇儀!?」

「あぁ!さっさと仕留める!」

 

『ピッ!星熊 勇儀 の 四天王奥義『三歩必殺』!

勇儀 は 一歩脚を踏み込む!』

 

「1歩……………」

 

「マッ!!」

 

『ピッ!グランスライム の 『暴走機関SP』 が 発動!

グランスライム の テンション が 5 上がった!

グランスライム の 攻撃力 が 上がった!

グランスライム の らいじん斬り!!』

 

『グランスライム』の冠のトゲに稲妻が走る。

雷神の雷を思わせるその雷鳴を纏ったトゲは勇儀を止めるために突撃する。

だが………

 

「スキマカウンター!!」

 

『ピッ!八雲 紫 の スキマカウンター!!

グランスライム の 攻撃 が ずらされた!』

 

紫が『グランスライム』の目の前にスキマを広げ、突撃してきた『グランスライム』をそのままワープさせる。

そしてワープした先には…………

 

「マッ!?」

「ムッ!?」

 

『メタルカイザー』が居た。

そして激突させられた。

 

『グランスライム の らいじん斬り は メタルカイザー に当たった!

メタルカイザー には全然効いていない!』

 

 

勇儀はこの隙にさらに一歩踏み出す。

 

『ピッ!星熊 勇儀 の 四天王奥義『三歩必殺』!

さらにもう一歩踏み込む!!』

 

「2歩…………」

 

「マッ!!マッ!」

 

一切ダメージを受けてない『メタルカイザー』が勇儀を止めるために『マヒャデドス』を放つ。

 

「紫!美鈴!」

「えぇ!」

「わかりました!」

 

「夢想封印!」

「弾幕結界!」

「ホアチャァァアアア!!!」

 

霊夢は夢想封印で巨大な氷塊を粉砕し紫が弾幕結界を用いて砕けた氷をさらに細かく砕いて勇儀への影響を押さえる。

 

美鈴は弾幕を使うよりも物理のが強い為に全力の飛び蹴りを『メタルカイザー』へと御見舞いする。

 

「むっふぉぉぉぁぉぉお!?!?」

 

『メタルカイザー』は思わず吹き飛ばされる。

 

『ピッ!紅 美鈴 の 飛び蹴り!

メタルカイザー に 5 のダメージ』

 

そして今、勇儀の三歩目が踏み出される!

 

「いくぞぉぉぉぉおおおお!!!!

四天王奥義『三歩必殺』!!!!!!」

 

今、勇儀が必殺の一撃を放つ。



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大型の魔物  その6

 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

 

「四天王奥義『三歩必殺』!!!!!!」

 

「ムフォァァァァアアアアアアアア!?!?!?!?」

 

勇儀の渾身の一撃、四天王奥義『三歩必殺』は見事メタルカイザーに直撃した。

 

『ピッ!星熊 勇儀 の 四天王奥義『三歩必殺』!

メタルカイザー に 999 の ダメージ!』

 

 

『まさかのカンストダメージィィィィイイイイ!?!?

メタルボディによるダメージ1/3すらも貫き限界である999ダメージを与えたぁぁぁ!?!?

メタルカイザー殿もこれにはたまらず………たまらず……たま………』

『ん?どうしたのよ?さすがにやられ…………まさか!?』

 

『ピッ!メタルカイザー の 特性 『くじけぬ心』 が 発動!

メタルカイザー の ベホマズン!

メタルカイザー の HP は 999 回復した。

グランスライム の HP は 999 回復した。』

 

『危機一髪ゥ!!運良く『くじけぬ心』が発動してメタルカイザー殿は己の耐えきれない威力の攻撃を耐えたぁ!!』

『うむ!ナイスガッツであったぞ!!』

『しかもさらっと完全回復までしてったわよ………』

 

「マジか!?アタシの三歩必殺を耐えやがった!?」

「直撃してたわよね………。

そうなると……やっぱりさっき発動したってなってた『くじけぬ心』ってやつが原因と見るべきじゃないかしら?」

 

『なかなか察しが良いじゃない。

正解よ。『くじけぬ心』はかなり低い確率ではあるけど自身が死亡する攻撃を受けても発動したら確実に耐えきる特性よ。

ついでに言うと発動の制限回数は無いから運が悪いとめちゃくちゃ発動しまくるわよ。

だけど攻撃を受けた一回一回に発動するかどうかの判定があるから連続で攻撃を叩き込みながら倒せば発動したとしても倒せるわ。

発動しても残りの体力は石ころをぶつけられただけで死にかねない程しか無いから発動したのなら回復される前に倒しなさい。』

 

「好き勝手言ってくれるじゃない………それが簡単に出来るなら苦労しないわよ………」

「まって、『メタルカイザー』の様子がおかしいわ………」

 

すると紫が『メタルカイザー』の異変に気がついて全員がそちらへと視線を向ける

 

「ムフォォオオ……………ムフォォオオ…………」

 

『メタルカイザー』は呼吸を大きく乱しており、かなり疲れているようだ。

 

「息切れしているようですね?」

「おそらくかなり状況としては相手もギリギリだったんじゃないかしら?

それにあんな強い『特性』が簡単に発動出来るとも思えないわ。、根性で耐えるのなら相当量のスタミナと精神を持っていかれてるはずよ。

ねぇ勇儀、あいつに三歩必殺を直撃させた時手応えがあったって言ってたけどどんな感じだったの?」

「んぁ?んー、なんつうか外側はアホみてぇに硬いんだがそれを力で無理矢理貫くと拳が一気にめり込むような感覚がしたんだよ。

んで内側はこの間に何度も触ったスライム特有の柔らかい感じが残っててそれで手応えがあったと思ったんだよ。」

「内側が柔らかい…………ちょっと試してみたいことがあります。

足止めをお願いしても良いでしょうか?」

 

美鈴は勇儀の話を聞いて何か思い付いたのか霊夢達に足止めを頼む。

 

「ええ、どうせ私じゃ攻撃しても防がれるのが落ちだから時間稼ぎならやってあげるわよ。」

「準備が出来たなら言って頂戴。

スキマを『メタルカイザー』の背後に開くわ。」

「わかりました。

………すぅぅぅぅぅぅ覇ァァア!!!」

 

『ピッ!紅 美鈴 の せいけんづき の 構え』

 

「ムフォ!?」

「ヌンッ!?」

 

『メタルカイザー』が妙に怯えた様子を見せる。

まるで過去に食らって何かあったような反応だ。

 

だがその疑問の答えは解説が勝手に答えてくれていた。

 

『なっ!?なんですとぉぉおおお!?

まさかの『せいけんづき』!?

防御力を完全に無視する最強の物理系体技を出そうとしているゥ!?

『メタルカイザー』殿逃げてぇ!?超逃げてぇ!?』

 

そう、身体の外側ではなく内側に大きくダメージを与える『せいけんづき』とは、向こうの世界では全ての防御力を貫き、メタル系にさえもその一撃に耐えることは難しいのだか。

 

何よりもスィラが『メタルゴッデス』を使っていて負けるときはだいたいせいけんづきで防御力ごと貫かれて倒されているのが大きい。

 

その為にこの国にいるスライム全てが『せいけんづき』の恐怖をおぼえているのだ。

 

というかスィラも若干苦い顔をしている。

 

 

「美鈴!アタリよ!」

 

「ム!?ムフォ!!!」

 

『ピッ!グランスライム の ジコスパーク!』

 

 がさがさ

グランスライムの目の前に地獄の雷が呼び寄せられ、霊夢達へと浴びせられる。

美鈴へと向けられた雷は霊夢達がとっさに美鈴を庇った為に霊夢達はたまらず強烈な一撃を受ける。

 

『ピッ!霊夢達のパーティーに平均480のダメージ』

 

霊夢達は紫色の雷にやられてかなりキツそうだ。

だが…………

 

「紫殿!お願いします!!」

「ええ………やった………るわよぉ!!」

 

美鈴の目の前とメタルカイザーの背後にスキマが発生する。

そして美鈴は突撃してがら空きとなっているメタルカイザーの背中に………

 

「ム!?ムフォア!?」

「覇ァァァァアアアアア!!!!!!!」

 

『ピッ!紅 美鈴 の せいけんづき!!』

 

果たして美鈴の一撃はどうなるのか………。



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大型の魔物  その7

 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

『ピッ!紅 美鈴 の せいけんづき!』

 

『なんとぉ!?美鈴選手がいきなりメタルカイザー殿の背後にぃ!?!?メタルカイザー殿超逃げてぇぇぇぇぇぇええ!?!?!?』

 

「ムフォァァァァアアアアア!?」

 

『………………メタルカイザー に 500 の ダメージ!』

『耐えきったぁぁぁああああ!!!!メタルカイザー殿の体力はせいけんづきの最大威力よりもほんの少し高かったぁ!!!』

 

そう、『メタルカイザー』は配合によって自身の低い体力を補うために大幅に体力を増強する『HPアップSP』のスキルを所持していた。

 

これによって新生配合してもそこまで高くない『メタルカイザー』のHPは数値としては500を上回り、せいけんづき一撃では仕留めきれない体力となっていたのだ。

 

「不味い!?仕留めきれなかった!?」

 

 

だが『メタルカイザー』は消費MPが倍になったベホマズンのMP消費がだいぶ堪えているらしく呪文を唱える余裕がない。

その為とある体技を使うことにした。

 

『メタルカイザー』を中心に闇の力と爆発の力が集中する。

その力が溜まって臨界を迎えたその時………

 

『ピッ!メタルカイザー の ビッグバン!』

 

全員を巻き込む程の大爆発を引き起こす。

 

「うぐ………うぁぁぁぁぁぁぁあああああ!?!?」

「美鈴!?きゃぁぁぁああああ!?」

「なにこの攻撃範囲!?避けられない!?」

「うぐぁぁぁぁぁぁあああああ!?!?」

 

『全体に平均240ダメージ!』

 

先程の爆発に加え、グランスライムから受けたジゴスパークのダメージが大幅に残っており、霊夢達は息絶える寸前まで追い込まれる。

何せジゴスパークに至っては『デインブレイク』によって耐性が弱点まで下がっているのもあり、直撃した際のダメージが兎に角大きかったのだ。

 

ビッグバンを行った後、『メタルカイザー』はMPが完全に切れたようでその場に降りる。

 

「うぐ………せぇぇいやぁぁぁあああ!!」

 

『ピッ!紅 美鈴 の はっけい!

メタルカイザー の 防御力 を 無視!

メタルカイザー に 86 の ダメージ!

メタルカイザー は 息絶えた!』

 

美鈴の一撃で死にかけになっていたメタルカイザーへ美鈴はお返しとばかりにとどめの一撃を放つ。

元々MPの消耗が激しく、一度でも使えばとてつもない量のMPを盛っていかれるベホマズンも使ってしまっていたのもあり、ほぼ枯渇していた。

それによって避ける余裕すらなく、美鈴のはっけいによって硬度のある肉体の外側ではなく内側に気を送り込まれることによりその防御力を貫き、柔らかい内側にダメージを受けたのだ。

 

これによって『メタルカイザー』は倒れたのであった。

 

『なななんとぉ!?メタルカイザー殿が!?鉄壁の防御を誇る我らがメタルの皇帝がやぶれたぁ!?

まさかの防御無視の攻撃のオンパレードによりたまらず死亡ーーー!?

グランスライム殿ーー!!頑張ってくれぇぇぇええ!?』

 

「ヌォォォォオオオオ!!!」

 

『ピッ!グランスライム の シャイニングボウ!』

 

グランスライムはその怒りをぶつけるかのごとく己の特性『暴走機関SP』を全開にして己の最強の威力を誇る『シャイニングボウ』を放つ。

 

だがそれだけに限らず己の本来の種族のポテンシャル、それを最大限に生かす為に魔力を全て注ぎ込む。

 

『不味い!?霊夢達!!地面から離れなさい!?』

『ちょっと紫モヤシ殿!?戦闘中のそういうタイプのアドバイスは厳禁ですよ!?』

『禁止行為は許さないである!!ホミロンばくれつけん!!』

『サラダバーッ!?』

 

天から降り注ぐ光の矢によって霊夢達は常に上を警戒しなければならない状態となっており、地面に異変が起きていることに気がつかなかった。

 

だが紫モヤシの言葉によって美鈴が地面に『グランスライム』のすべての気が集中していることに気付く。

 

「皆さん!?『グランスライム』の気が全て地面に移ってます!?何かとんでもないのが来ますよ!?」

「そうは!?言われても!?この矢を!?避けるのが!?精一杯よ!?ってまず!?『夢想天生』!!」

「スキマに入っ………ぐっ!?」

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄…………」

 

『ピッ!博麗 霊夢 の 夢想天生!

博麗 霊夢 は 世界 から 存在 を 浮かせた。』

 

美鈴は傷付いた体に鞭を打つように己の肉体に無理を聞かせてなんとかシャイニングボウを避ける。

霊夢はシャイニングボウをなんとか飛んで回避し続けていたがとてつもなく嫌な予感がして咄嗟に切り札である『夢想天生』を発動させる。

紫はスキマに入ってやり過ごそうとするがシャイニングボウがスキマに入って直撃を受ける。

勇儀は己の拳で全て叩き落としていた。

 

だがシャイニングボウは囮に過ぎない。

地面の近くにいた霊夢以外の全員が引き寄せられ、グランスライムの全ての魔力が暴走する。

 

「マ ダ ン テ!!!!」

『喋れるのね………』

 

思わず復活したモヤシがツッコミをいれるが…………

 

『ピッ!グランスライム の マダンテ!

八雲 紫 達 に 平均 999 のダメージ!

八雲 紫、星熊 勇儀、紅 美鈴は死亡した。』

 

 

グランスライムの持つ膨大な魔力を全て用いた爆発により紫達は避けることすら許されず直撃を受け、死亡する。

 

だが………

 

「『夢想封印』!!!!!!」

 

「ムフォァァァァアアアアアアアア!?!?!?!?」

 

魔力を全て使い果たして無防備となった『グランスライム』に霊夢の渾身の一撃が叩き込まれた。




メタルカイザーのスキル
・ダイヤモンドスライム
・グランスペルSP
・エリスグール
・HPアップSP

まさかの耐性全く盛ってません!w


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妖と魔の違い。

 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

「夢想封印!!」

 

危なかった………夢想天生を使っていなければ確実に私も死んでいた。

紫達妖怪ですら一撃で殺しかねない威力の攻撃………

いくら蘇生して貰えるとはいえ知り合いが目の前で本当に死ぬのを見るとゾッとした。

 

………ホントに蘇生して貰える………のよね?

 

私は実際に死んだあいつらを一瞬見て不安に駆られてしまう。

 

だがそれよりも………

 

「あんたを倒す方が先!!」

 

『ピッ!博麗 霊夢 の 霊符『夢想封印』!

かいしんのいちげき!!

グランスライム に 500 の ダメージ!

グランスライム に 500 の ダメージ!

グランスライム に 500 の ダメージ!

グランスライム に 500 の ダメージ!

合計 2000 の ダメージ を 与えた!

グランスライム は 息絶えた!』

 

 

『き…………決まったァァァァァアアア!!!

勝者!幻想郷!!!!

ってか蘇生班急いで~!!』

 

するとどこからともなくホイミスライムの群れが現れて死亡した者全てへと『ザオリク』をかけていく。

 

死者蘇生呪文『ザオリク』によって今回死んだ全員が光の球に包まれて宙に浮かぶ。

光の輝きが更に増してみるみる内に死んだ全員の肉体が再生して目を覚ます。

 

だが…………。

 

「あいた!?」

「あべしっ!?」

「いってぇ!?………酒酒………」

 

蘇生された三人は意識を取り戻した瞬間いきなり浮力を失って地面に叩きつけられる。

 

しかし感心のメタルカイザー達はと言うと。

 

「ふぇっふぇっふぇっ」

「ふぉっふぉっふぉっ」

 

地面に叩きつけられることもなく慣れているように普通にしていた。

というかなんなら愉快そうに笑っているようにも見える。

 

「Dランク撃破おめでとうと言わせて貰おうか。」

 

すると上からスィラの声がしたので全員が振り返ったのだが………

 

「えぇ、ありがぶふぅ!?」

「撃破ってことは霊夢がやったのね………とりあえずありが…………ぶふっ!?」

「いやぁ不覚を取りました。

とはいえ死んで蘇生されるという貴重な体験をぉぉおぶふぉ!?」

「あっはっはっはっはっは!!!ないだいそりゃ!?

アタシ達を今度は笑い殺すつもりかい!?

あっはっはっはっはっはっは!!!!」

 

そう、降りてきたスィラの服装は…………

頭は大きな緑色のスライムの被り物。

服は橙色のスライムとそのしたに普通の水色のスライムの着ぐるみ。

さらに片手にはスライムの形のトレイが盾のように取り付けられ、もう片方には光るスライムの棒を持っていた。

更に靴にはスライムのスリッパを履いており、その体を支える玉座となるような形で無数のスライムが集まり、スィラを自分達の上に座らせて世話をしたりしていた。

 

もはや全力で笑わせに来ていた。

 

「ぶふ………なんで……くく………そんな………状況に………もうダメ……あっははははははははは!!」

「ヒッヒッフー!ヒッヒッフー!」

「ヒー!?ヒー!?」

「あつははははははははげほっ!?げほっ!?」

 

全員が笑いによって悶絶しており、生き返ったばかりの三人に至ってはもはや呼吸すら難しくなってまた死にかけていた。

 

「ん?あぁ、こういうスライムの服みたいの着てる時はスライム達がより仲間意識を感じるみたいでな。

やたらと世話をしに来るのだよ。

私としては無くても良いのだが着なかったら着なかったで凄く残念そうにされるのでな。

たまに着ている。」

 

「ヒー!?ヒー!?ヒー!?げほっけほっげほ!?

ふぅ…………と、とりあえず蘇生については礼を言わせて頂戴。

本来私達の世界なら死んだらやり直せないから貴方達の決闘の常識が通用しないのよ。

でも死んだら死んだで復活出来るとなればここで力を付けようとする者も多くなるでしょうね。

ただ出来ればこの事は口外しないようにお願いしたいのだけれど………良いかしら?」

「構わない。

私達は確かに蘇生を頻繁に使うが蘇生の無い世界でそんなことをすればどうなるかは目に見えているからな。

さすがに私達はその辺はわきまえているさ。

 

だが中にはそれを平然と破るバカもいる。

そういう奴らを成敗するのも私達の役割だ。」

 

「助かるわ………しっかしさっきのはなんだったのよ………スキマに逃げて結界を何重にも用意して守ったのに根こそぎ破壊されて文字通り『八つ裂き』にされたわよ…………」

 

そう、八雲 紫 はスキマに戻り、その入口を何重にも用意した結界によって己を守っていたのだが『マダンテ』がそれを悉く破壊して紫の体をバラバラにする程破壊していた。

 

実を言うと紫達は完全に息の根が止まっていなかったりしたさ。

そう、妖怪にとって肉体とはただの器に過ぎず、大事なのはその魂の方だったりする。

とはいえ器が無いのでは妖怪はその世界で顕現することが出来ずに結局死に至るので体が真っ二つ程度なら自力で復活出来ないわけでもないのだ。

 

だが今回は割と命の危険だったので蘇生して貰って助かったようだ。

 

「ふむ、まぁ八雲 紫はちゃんと八つ裂きになったようだし私としてはこれで文句はない。

とはいえ霊夢殿、貴女にはまだ戦いを挑ませて貰うがな。」

 

「うぐ………の、望むところよ!」

「はぁ………出来るだけ私が一度殺された事実を知られないようにしないと…………」

 

紫はこの全員の中で唯一胃に穴が空きかけていたのだった。



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妖と魔の違い。  その2

 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

「さて、そろそろ本題である次の相手の紹介に移らせて貰おうかね。

来てくれ!スライダーズ!」

 

すると上から三人の魔物が降りてくる。

 

一人目は全身をスライムと同じ水色に金の装飾、さらに同じ金の装飾にスライム型の装飾が施された鎧に身を包まれ右腕は銀色の装甲に包まれ、その先端はオレンジ色で槍のようにとがっている。

更に赤いマフラーを首に巻いてかなりヒロイックな印象だ。

 

二人目はは全身を黒と一人目と同じような金色の装飾に同じくスライム型の金の装飾が施された鎧に身を包み、背中には黒に金の縁取りと装飾が施された輪のような装備が背中に浮かべている。

更に背中にはスィラが鎧姿の時に持っていた剣、『メタルキングの剣』を浮かべている。

更に腕には一人目の槍と同じオレンジ色の手甲に包まれており、手甲にはスライムの顔が付いている。

更に指が出ない形の手甲となっており、何かを持つことが出来る形状ではない。

だが見る者に恐怖を与える威圧感を放っており、死神のように見える。

 

三人目はリボンやハートをあしらったライダースーツに身を包み、メタルスライムのようなかなり大型のエアバイクに乗っている。

バイクにはピンクの装飾が施されており、可愛らしさがある。

 

「紹介させて貰おう。

まず青色のこの子は『スライダーヒーロー』。

見た目こそスライムらしさがあまり無いのだが一応れっきとしたスライム族だよ。

 

黒いこの子は『死神スライダーク』

彼もれっきとしたスライム族であり『スライダーヒーロー』と対になる存在だ。

さらに背中には『メタルキングの剣』を装備しており攻撃力は折紙付きと言えるだろう。

 

ピンク色のこの娘は『スライダーガール』

彼女も一応スライム族であり本人はこの通り普通に人と同じ大きさだが一応バイク含めて『メガボディ』のモンスターとして扱われる。

 

次のCランクの戦いにおける相手はこの子達になる。事前情報ほおそらくそこの紫もやし殿が知っているだろう。」

「誰が紫もやしよ……………」

「おや?すまない、実況席では紫もやしで通っていたようだからこちらで呼ばせて頂いたが可笑しかったか?」

「レミィィィィイイイイ!!!」

 

パチュリーは恨みを込めた視線をレミリア達のいる観客席に向ける。

 

「むー!」

 

するとよく見たらスライダーガールが頬を膨らませて嫉妬するような視線をスィラに向ける。

 

「む?」

「あっ………」

 

遅れてスライダークとスライダーヒーローがスライダーガールの視線の意味に気付く。

 

だが割と手遅れだった。

 

「主の………」

「ぬ?」

 

スライダーガールは肩を震わせてバイクをフルスロットルにしようとする。

 

「主の浮気者ーー!!!!」

「あっ………」

 

スライダーガールはそのバイクでスィラをさらって城へと全速力で帰っていったのであった。

 

「「主ィィィイイイイ!?!?」」

 

いつの間にかエアバイクに簀巻きにされて連れ去られたスィラにスライダーヒーローとスライダークは叫びながら追いかけるのであった。

 

 

だが場に残された者達は…………

 

 

「………浮気者?」

「ほほーう、こいつは良い酒のツマミになりそうだな(ニヤニヤ)」

「ねぇ、ホミロン軍曹………だったかしら?

彼女って………」

「あー、紫もやし殿の想像してる通りであっていると思うよ。」

「紫もやし言うな…………ってことはやっぱり………。」

「うん、スライダーガール殿は…………主に恋愛感情を持つ数少ない者の一人で割と嫉妬しやすい傾向にあるよ。」

「へぇ………数が少ないのね………って貴方そんな話し方だったかしら?」

「うぇ!?そそそ、そんな事はさておきだ!確かに主に対して恋愛感情を持つ魔物はこの国だと少ない傾向があるぞ!

我輩が知る限りでも5人もいないと思うぞ!」

 

ホミロン軍曹はパチュリーに痛いところを突かれて慌てて喋り方を無理矢理直して話を戻す。

 

「正直意外ね、あのスライム達に対する溺愛ぶりならもっと恋愛感情を持つ娘がいても可笑しくないとおもうのだけど…………」

 

「あぁ、それなら簡単な話だよ!

確かに初恋が主ってパターンも多いんだけど…………そもそも僕達卵生だし姿も大きく違うから皆諦めちゃうんだ。

でもスライダーガールとかスラ忍衆って人と同じ姿を持ってるでしょ?

だからずっとその恋心を持ったままになってるんだ。」

 

「へぇ…………スラ忍衆もね………あの子達そんな様子見せなかったのに………。

ってやっぱり口調違うわよね?」

 

「うぇえ!?あぅ…………

スラ忍の皆は忠誠心が物凄く高いから任務とかがあるとそっち最優先になって基本そういうの表に出したりしなくなるんだ。

だからこそ主の信頼も結構あるんだけどそれで主にはあんまりアピール出来ない感じだよ?」

 

ホミロン軍曹はついに口調を取り繕う事をやめてホイミスライム特有の優しい性格を表に出したような可愛らしい様子で話す。

 

そしてあわてふためいて結局諦めて拗ねたように話すホミロンに皆は………

 

『可愛い……』

『可愛いわね……』

『可愛いです……』

 

割と萌えているのだった。

 

 



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妖と魔の違い。  その3

 

 

~マヨヒガ~

 

 

一同は戦いが終わり、次の相手との顔合わせ?が終わった後、幻想郷へと戻ってまた対策会議を開いていた。

 

「じゃあ次の戦いに出てくる奴らの情報共有しとくわよ。

 

まずは『スライダーヒーロー』

こいつは『スタンダードボディ』のモンスターで戦う感覚としてはスラ忍衆と戦うのと同じ感覚で戦えると思うわ。

ついでにスラ忍衆の持っていた常に反射系の特性も無いから比較的やりやすい部類なのは間違いないのだけど……。」 

 

「何か懸念があるの?」

 

するとパチュリーはこめかみをつまんで頭を痛そうにしながら答える。

 

「えぇ、スライダーヒーローには貴女達が痛い目に合わされた原因の一つである特性、『くじけぬ心』がある上に『こうどうはやい』を持ってるのよ。」

 

すると二つとも戦っている霊夢と紫は苦い顔をする。

 

 

「そして新生配合によって追加されるであろう特性はあのスィラってやつのこれまでの傾向から察するに………『ラッキー』ね。」

 

すると霊夢は疑問を口にする。

 

「『ラッキー』?なにそれ?

運でも良くなるというの?」

「えぇ、言葉通りの意味で運がよくなるわ。

発動条件は自身の体力が1/4以下になった時。

具体的な効果としては………

 

・避けられる攻撃は絶対に当たらなくなる。

・すべての攻撃が会心の一撃となる。

・確率で発動する物が全て必中及び確定で発動する。

 

これによって産み出される恐ろしい効果としてはまず即死が完全に無効となって居なかった場合確定で即死させられるわ。

他の状態異常も同様ね。

当たりにくい攻撃は必中になって会心の一撃、さらにこの効果は自分の特性にも作用するわ。」

「結局何がいいt……………まさか!?」

 

霊夢はパチュリーの言おうとしているその事実に気付き、驚愕する。

 

「理解したようね………何が起きてしまうか。」

「『くじけぬ心』が………絶対に発動してしまう!?」

「そう、確率が低いから発動したのなら連続攻撃を加えれば割とすぐに突破できる『くじけぬ心』だけど『ラッキー』はこれを確定で発動させてしまうわ。

ただ『ラッキー』自体は確実に発動する訳ではないからなんとか発動させずに済めばなんとも無いのだけれど………」

 

するとパチュリーは言い淀む。

しかしさとりはそんな彼女の思考を読み取って代わりに告げる。

 

「その確率を上げる手段があるのですね。」

 

「…………えぇ。

確率倍加呪文『バイメリト』これはしばらくの間味方全員の有利になる特性のみの発動確率を二倍にするわ。

もしこれが発動されて『くじけぬ心』で耐えきられたらまず勝ち目は無いわ。

…………でもそこは私が何とかするわ。

今回は多分私しか対処出来るのが居ないから参加させて貰うわ。」

 

「いいの?今回はあんたは巻き込まれた側でそこまで関わる必要は………」

「別にいいわよ、流石に知り合いに何度も死なれるのは寝覚めが悪いのよ。

ただでさえ美鈴が死んだのは生き返るとはいえ心臓に物凄く悪かったのだから………。」

「感謝しとくわ………流石に博麗の巫女として一度殺されてしまえば妖怪達やあいつらへの抑止力が効かなくなる所だもの。

とはいえ全戦力で攻め込まれると確実に勝ち目はないのだけれどね。

 

しかし………妖怪と魔物………似ているようでずいぶんと違うわね。」

 

妖怪とは人の恐怖や信仰、伝承等から生まれ、人の恐怖を糧に生き続ける形無き幻想の具現化。

 

魔物とは魔に属する者達、自然と産まれる者も入れば誰かによって産み出される者もいる。

更には神や邪神、破壊神といった者達も魔物と定義されるため様々な者達が属する形ある者達。

 

妖怪は人の恐怖や認識を得られなければ自然と消滅してしまうが魔物にはそれが必要ない。

彼らはそこに生命として生きているからだ。

 

「ええ………彼らは私達で言うところの動物や人間に近いわ。

もしかしたら彼らの認識を得ることでも私達は糧を得ることが出来る可能性があるわね。

 

さて、脱線したわね。

次は『死神スライダーク』よ。

そうね………特性とかを考えればこいつはスライダーヒーローよりは警戒する必要は無いわ。

とはいえまれに複数回行動する上にギャンブルカウンターという発動確率こそ低いけれど発動した場合通常の二倍の威力で反撃して確実に当ててくる攻撃を持っているわ。

これはたしかバイメリトで確率が増えるはずだから気を付けなさい。

あとは…………恐らく新生配合で『常にマホカンタ』を習得させてカウンターの発動出来る物理攻撃をメインに使わせてくる可能性が高いと思うわ。」

 

「なぁ、そいつってもしかして物理攻撃が元から強かったりするのかい?」

 

鬼の代表として出ている勇儀が気になっていた魔物の物理的な攻撃力について質問する。

 

「えぇ、たしかスタンダードボディだとそれなりに高い部類ね。

その威力が二倍で帰ってきて回避も不可能だから受けるなら貴女達鬼のような強靭な肉体が無ければ無理でしょうね。」

「あぁ、だが私はすでに一回殺されてるからな。

萃香に話を通しておくとするよ。」

「わかったわ。

 

 

それで最後に一番警戒するべき相手…………

 

 

 

 

それは『スライダーガール』よ」

 



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妖と魔の違い。  その4

 

 

~マヨヒガ~

 

 

「それで一番警戒するべき相手………

それは『スライダーガール』よ。」

 

 

「あいつが…………そういえば『メガボディ』なんだったわね………」

「確かに『メガボディ』というのも強い理由の一つではあるわ、でもスライダーガールの一番強い点は持ってる特性が強力過ぎるところなのよ。」

「どういうことよ?」

 

「まずスライダーガールの特性で一番ヤバイのは主に二つ。

 

一つは『ロケットスタート』

戦闘が始まってからしばらくの間全ての攻撃の威力が桁違いに跳ね上がるわ。

ただデメリットとして時間が立てば立つ程効果は失われていき最終的には威力がどんどん下がっていくから出来るだけ時間稼ぎをしておくのを勧めるわ。

 

二つ目は『超こうどうはやい』

これはスライダーヒーローとかが持ってる『こうどうはやい』の上位に当たる特性で異常系統の耐性が大幅に下がる代わりに『こうどうはやい』よりもとてつもなく早く判断、行動を可能とするわ。

この特性を持つ相手に対して先手を取るのはまず不可能と考えなさい。」

 

「要は時間稼ごうと対策取る前に動かれるって訳ね………

威力が上がるのもあるから結界だと封じきれそうにないわね。」

 

「他にも己の愛らしさで相手を『魅力』して動きを封じてくる『ラブリー』。

これはもしも食らった物が紋晶で強化された『ラブリーSP』の場合思考をぐちゃぐちゃにして敵味方の判断を不可能にする『こんらん』も付与されるわ。

さらに死亡時、低い確率で勝手に蘇生する『てんしのきまぐれ』。

他にもたまに味方全ての『テンション』を上げて能力を上げる『おうえん』

最後にまれに2~3回の同時行動を可能とする『1~3回行動』よ。」

 

「妨害にサポートに攻撃にスピード…………厄介すぎるじゃない………それで?新生配合ってやつで消して新しくするとしたらどれ?」

 

今まで戦ってきた魔物は"全て"が『新生配合』による強化を受けており、肉体のポテンシャルを大魔王以上にされた上にモンスターが持っている種族的な特性を入れ替えられていた。

 

霊夢達としてもそれを何回も見せられれば今回の魔物がこの特性が全てではなく、一つが入れ替えられていると気付いていたのだ。

 

「そうね、入れ替える特性としては確実に『てんしのきまぐれ』を捨ててくるわ。」

 

そして紫が質問する。

 

「その根拠は?」

 

「簡単な話よ。

『てんしのきまぐれ』は別にスキルを使っての後天的な獲得が可能なのよ。」

 

「スキル………確か魔物が特技を習得したり能力を上げたり特性を習得する為に得る能力よね。」

 

「そうよ。

今回はメガボディだから4つのスキルを備えてくるわ。

 

そして魔王や神、それらに匹敵する強さをもつ魔物とかにはだいたいその種族特有の『スキル』を持っている場合が多いわ。

 

そしてそれには必ずといって良い程最上位の特技が付いてくるのだけど高い確率で『てんしのきまぐれ』が混ざっているわ。」

 

「それって実質的に交換で捨てた特性は0になるじゃない。」

 

「えぇ、実質的にそうなるわ。

でも今までの傾向的に一番採用してきて怖いスキルは『スライダーガール』の固有スキルである『スライダーガール』ね。」

 

「スライダーガール自身も持っているのね。」

「えぇ、でも真面目なモンスターマスターならまず絶対に採用したくないスキルね。」

 

「どういうことなのよ?能力や特技が増えるのでしょう?」

 

「えぇ、一際『スライダーガール』のスキルは異質でまず『特性』を6つ獲得する事の出来るスキルよ。

特性を獲得出来るスキルの中では耐性アップ系を覗いて最多ね。」

 

「なっ!?さらに6つも増えるの!?

なら何で採用しないのよ?」

「その特性のデメリットが大きすぎるのよ。

『スライダーガール』で獲得する特性は

 

『攻撃力ギャンブル』

『守備力ギャンブル』

『素早さギャンブル』

『かしこさギャンブル』

『HPギャンブル』

『MPギャンブル』

 

この合計6つになるわ。

 

これらの特性は該当する能力を戦闘が始まると戦闘が終わるまでの間ランダムな倍率で上げ下げして最大で1.5倍、『SP特性』となると2倍に増やしてくるわ。」

 

「はぁ!?二倍!?強すぎるじゃない!?」

 

「えぇ、メリットだけで考えればね。」

 

「つまりはデメリットとして下がった場合が不味いのね。」

 

「えぇ、デメリットとしては下がった場合は最大で能力の半分、『SP特性』なら最大1/10まで下がるわ。」

 

「1/10って…………ほんとにそれギャンブルじゃない………」

 

「恐らく今回の編成のコンセプトは『運』よ、上手く幸運を引き当てれば良いのだけどね……………」

 

「運……………となると。」

 

 

すると全員が永遠亭の代表である永琳の方を向いて彼女の後ろにスキマが開く。

 

何をするべきかを察した永琳はその腕を殴るように突っ込んでナニカを『アイアンクロー』で掴んで引っ張り出す。

 

「ギャァァァァァァアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!」

 

おぞましい悲鳴を上げて引っ張り出されたのは永遠亭に住む『う詐欺』こと『因幡てゐ』であった。



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恋する乙女達  その1

 

 

~マヨヒガ~

 

 

「ぬぉぉぉぉぉぉおぉぉおおおおお゛お゛お゛お゛お゛お゛!?!?!?!?!?」

 

 

とても目の前の少女が出しているものとは思えないうめき声を出して永琳によって引っ張り出された てゐ はあまりの痛みにうずくまっていた。

 

「はぇ?師匠?ってかここどこなのよ………つかなんで私師匠にアイアンクローされたウサ!?」

 

人に幸運を与える能力を持つ彼女だが………何故か彼女から感じるのは幸薄そうな雰囲気だった…………。

 

「えーっととりあえずこいつの能力でなんとか最低値を引きずり出すってことで良いの?」

「異議なしね。」

「はい、というわけでてゐは強制参加ね。

私が許すしてゐに拒否権は与えないわ。」

 

「ちょ!?

ってか誰か説明してウサァァァアアアアア!?!?」

 

 

そして結局永琳によって戦闘強制参加が決定されてしまったのだった。

 

 

 

 

「そういえばパチェってあいつらがここに幻想入りする前からやけにモンスターマスターの事調べていたわよね。

確か召喚した奴らに何度も負けたってのは聞いているけれど具体的にどんな奴らだったのよ?」

 

するとパチュリーは顔を真っ青に染め上げて涙目になって呟く。

 

「子供よ……………」

 

「ふーん……子供………って………へ?」

 

レミリアがあまりの事実に思わず聞き返してしまう。

 

 

「だーかーらー!!子供よ子供!!人間の子供相手にぼろ負けしたのよ!

何度も何度も何度も何度も!!

ゲホッゲホッ!?」

 

パチュリーは思わず興奮して叫びながら答えて喘息を引き起こす。

 

「一人目は青色の服とバンダナ付けた子供!

二人目と三人目は緑色の服に緑の帽子を被った男女の双子よ!!」

 

パチュリーはまだ興奮した様子でまた叫んで話すが、緑の双子という言葉に反応するようにパチュリーの後ろからスキマとは違う綺麗な円形の真っ黒な空間が開き、そこから水色の鱗を持った龍の魔物が覗き込むように顔と手を出して、そこから続くように中からスラ忍パープルも一緒に姿を表す。

 

「うぉ!?どっから出てきてんのよ!?」

「私のアイデンティティーが……………」

「グフッ(吐血)」

「ちょっとパチェ!?」

「はい、胃薬ね。」

「もぐもぐもぐ。」

「はぁ………頭痛くなってきました………」

『(仕事中)』

 

霊夢は素直にいきなり現れた魔物とスラ忍パープルに驚く。

 

紫は数少ない己のアイデンティティーであった神出鬼没なスキマという物が被ってしまい、ショックによって軽く崩れ落ちて落ち込んでいる。

 

パチュリーはいきなり現れたその魔物が何かを理解して胃に穴を開けてしまい吐血。

 

そんなパチュリーを心配するレミリア。

 

そしてそのパチュリーに対して冷静に無駄に回復能力の高い胃薬を無理矢理飲ませる永琳。

 

周囲を気にせず食事を続けている幽々子。

 

あまりにもな惨状と心から流れ込む声に頭を痛めるさとり。

 

本当なら説教の3つや4つしておきたい所だが仕事中でそれどころではないテレワークで繋げている映姫。

 

場は一瞬で混沌とした空間へと切り替わった。

 

「おや?どうしたでござるか?」

「なんで…………なんで『じげんりゅう』なんてもんを………」

「あぁ、『じげんりゅう』殿であれば特殊な空間用の移動手段として殿がスカウトした魔物でござるよ。

あぁそうそう、もしやパチュリー殿が相対した双子とやらはこんな双子ではござらんかったかな?」

 

するとパープルは懐から写真を取り出して笑顔で魔物達と笑い合う双子(なお魔物達の面子と顔面は凶悪な模様。)の写真を見せる。

 

するとパチュリーは既に青い顔をもはや白く染めて答える。

 

「えぇ…………そうよ…………私はかいつらに負けたのよぉぉぉおおおおお。」

 

「あぁ、やっぱりでござるか。

緑の双子と聞いてもしやと思ってたでござるがやはりイル殿とルカ殿でござったか。

そういえば大分前に不思議な体験をしたと言っていたでござったな。」

 

「なによ?知り合い?」

「おお霊夢殿。

あの双子殿は我らがライバルでござるよ。

妹のイル殿は魔王を主に使うモンスターマスターで兄のルカ殿は超大型モンスター使いでござるな。」

 

「へぇ…………ってことはあの時スィラが話していたライバルってのがこの二人って訳ね………。

んで二人からのスィラへの関係は?」

 

「ルカ殿は純粋にライバル兼友人として。

イル殿はそんなルカ殿をいつも心配して付いてくる家族思いな…………というのは建前でスィラ殿への好意を持ってどう関係を狭めようかと頑張る乙女でござるな。」

 

「へぇ……………もぐもぐ…………ちなみにスィラ君はもぐもぐ……………その子の気持ちとかにはもぐもぐ………気付いてるの?もぐもぐ…………」

 

幽々子が野次馬根性で食べながら聞くがその様子に紫が突っ込む。

 

「食べるのか聞くのかどっちかにしなさいよ……………」

「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ………」

 

幽々子は平常運転であった。

 

 

 



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恋する乙女達  その2

今回は紫もやし視点です。


 

 

~召喚用魔法空間~『パチュリー過去』

 

 

 

私は今回幻想郷に入ってきた書物に載っていたモンスターマスター、その存在を従えて魔物という存在に対して研究するため私は自分で作った魔法空間へと移動していた。

 

情報によると魔物という存在は大きい物だと山よりも大きい存在もおり、それを従えるモンスターマスターも居るらしいので念のための警戒だ。

 

魔物という存在に興味を持った私はその力を限界以上に引き出せるモンスターマスターを手元に置いておきたいと思ったのだ。

しかもモンスターマスターは異世界を渡り歩く者が多いらしい。

 

問題は私が勝てるかどうかだがこの世界の戦いの都合上手数の少ない魔物側には有利は取れるだろう。

 

そして私は用意した召喚魔法陣を起動する。

 

 

すると魔法陣が光輝き中から現れたのは…………

 

「いててて…………井戸に入って地下階層に降りたはずだけど…………なにこのエリア?メタルエリアみたいな異界に繋がっちゃったのかな?」

 

青い服に青いバンダナ姿の少年であった。

 

 

「君がモンスターマスターで良いのかしら?」

「ふぇ?おねーさん誰?」

「そうね、私から名乗るべきだったわね。

私の名前はパチュリー・ノーレッジ。

まぁ魔法使いという種族よ。」

「種族?人間の魔法使いじゃなくてそういう種族の魔物たなの?」

「魔物………まぁそれに近いものと考えて貰えれば良いわ。

申し訳ないと思うけど貴方を私の魔法で呼び出させて貰ったわ。」

「おねーさんが僕をここに呼び出したの?

すごい………召喚って確かわたぼうもあんまり頻繁に出来ないって言ってたのに。」

 

少年は尊敬の眼差しでパチュリーを見つめる。

どうやら彼らの世界の召喚魔法はあまり発展していないようだ。

 

「伊達に100年以上生きてないというだけよ。

さて、無駄話はこれまでにしましょうか。

貴方には私に従って貰いたいのよね。

私は魔物という存在、そしてそれの力を限界以上に引き出す貴方達モンスターマスターの存在に興味があるのよ。」

「うーん、ごめんなさい。

僕は姉さんを助けるためにまだ旅を続けなくちゃいけないんだ。

星降りの大会で優勝する為にも、タイジュの国の皆の為にも…………だから………」

 

少年は覚悟を決めた様子でその指に持つスカウトリングに触れる。

 

「そう………一つ良いことを教えてあげるわ。

この空間は私が作り出した魔法空間よ。

ここから出る手段は私が自分から出すか私を倒すしかないわ。

私は貴方を従わせたい、貴方はまだ旅を続けたい。

なら答えは一つよ。」

「パチュリーさんに勝って僕はもっと先に進む!

おいで!わたぼう!エグドラシル!!」

 

するとスカウトリングから二体の魔物が現れる

 

一体は真っ白な綿の精霊のような愛らしい魔物。

 

「わたわた………また大変なことになってるね。」

 

そしてもう一体は………………

 

「グォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!」

 

まるで世界樹と見間違う程に巨大な樹木の獣だった。

 

「なっ!?なんつう大きさしてるのよ!?

火符『アグニシャイン』!!」

 

パチュリーは先手必勝とばかりに炎による弾幕で攻撃する。

植物系の妖怪も魔物も基本的には火が弱点の物が多いため普通なら有効と言えよう。

だが………………

 

「あっついわた!?」

「…………………………(平然としている。)」

 

「殆ど効いていない…………いえ、効いてはいるけど耐久力が高過ぎるのね。」

 

「わたぼう!エグドラシルにバイキルト!」

「わたぁぁあああ!!」

 

わたぼうが少年の指示によって、補助呪文である『バイキルト』を発動させてエグドラシルを強化する。

 

「エグドラシル!海破斬!!」

 

エグドラシルがその顔や足の姿を変えて巨大な一本の世界樹へと変貌する。

 

そして変貌を遂げたと同時にとてつもない衝撃波が発生し、まるで"海を割るような"水の刃を発生させて周囲を蹂躙する。

 

その衝撃波の範囲はとても避けれるような範囲ではなく、魔法空間に亀裂を入れながらパチュリーへと襲いかかる。

 

「ま、魔法結界ッ!」

 

パチュリーは自身の防御に全魔力を集中し、150枚にも渡る防御結界を生成する。

だが…………

 

「嘘ッ!ガッ!?」

 

その一撃はその結果を全て破壊し尽くし、威力が大きく弱まった一撃がパチュリーを襲う。

だがパチュリーを昏睡状態にさせるには十分過ぎる一撃であり、パチュリーは意識を手放し、魔法空間は消滅して二人は本来いるべき場所へと戻されるのであった。

 

 

なお紅魔館の図書館にて気絶して倒れている所を小悪魔が見つけて軽く騒ぎになっていたらしい。

 

 

_________________________________________________

 

 

………以上が彼女のトラウマのようですね。」

 

「いっそ殺して…………」

 

モンスターマスターと既に戦った経験のあるパチュリーだが、その時の様子を全く話そうとしないのでさとりによってトラウマを映像にされて投影させられ、余計なトラウマ含めて暴露されたパチュリーであった。

 

なおさとりはかなり楽しそうにしていたらしい。



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恋する乙女達  その3

 

 

~マヨヒガ~

 

 

「面白くなってきました。

このまま召喚したという残り二人のモンスターマスターのトラウマもほじくりかえしますか。」

 

さとりによるパチュリーのトラウマ鑑賞会はさとりが面白くなってきたという理由で更に続けられていた。

 

パチュリーからすればズタボロに負けた所ばかりを映される羽目になる為に割と洒落になっていなかったりする。

 

「さぁ………どんどん行きますよぉ!」

 

 

そしてさとりはさとりでテンションが最高にハイって奴になっているのもあってとても楽しそうにトラウマをほじくろうとしている。

 

「お?皆さん、次のモンスターマスターとの戦いがありましたよー!」

 

さとりん………いやさ"ど"りんは先程のように己の想起を用いてその時の場面を見た目だけ再現する。

 

 

 

_________________________________________________

 

 

 

 

最初に召喚したモンスターマスターにズタボロにされてからと言うもの、パチュリーら悔しさからモンスターそれぞれの固有の能力等を調べあげて自分の魔力を増やし、魔術の腕を鍛えて再度モンスターマスターの召喚を行おうとしていた。

 

 

 

「ワンチャンさっきのモンスターマスターがとてつもない実力を持ったトップクラスのやつを引いた可能性だってあるわ…………大丈夫………ダイジョーブ………」

 

 

パチュリーは召喚魔法陣を起動させようとしてはいるのだが、以前ズタボロにされた少年を思い出して軽く体が震えていた。

 

だがその恐怖を無理矢理押さえ込み召喚魔法を起動させるのであった。

 

 

そして中から現れたのは…………

 

 

「………ィラさん!次はこっちを見に………あれ?」

 

一本の方向を指差してとても楽しそうな笑顔を"していた"少女だった。

少しお洒落をしており、三つ編みの赤毛に白いエプロン、緑色の大きなベレー帽と長袖のワンピースを着ている。

 

「初めまして、私はパチュリー・ノーレッジ。

モンスターマスターと魔物という存在を少し研究させて貰いたくて召喚した魔法使いよ。

早速で悪いのだけれど貴女には…………」

 

すると少女の雰囲気が大きく変わる。

 

「………………のに」

 

「はい?」

 

少女はまるで怒りに震えているようにも見えた。

 

「せっかくの……せっかくの"あの人"とのデートだったのに……………かなり苦労して鈍感なあの人とのデートチャンスを作れたのに…………」

 

「あら………デート中に呼んでしまったのね。

でも悪いとは思うのだけれど私の研究をちょっと手伝って貰いたいのだけど良いかしら?」

 

「早く戻してください!」

「残念ながらここを出るなら私が許可するか私を倒すしかないわよ。」

 

すると少女の様子が少し凄みのある笑顔へと変わる。

 

「そうですか…………なら………力ずくで戻して貰います。」

「そんなにデートとやらが楽しみにしていたのね………」

「ええ………人の恋路を邪魔する悪い人はゾンビにやられて反省してください!!

バラモス!バラモスゾンビ!!」

 

一体はネックレスとマントのついた豪壮な衣装をまとった大トカゲのような獣人のような姿で、角ともトサカともつかない一本角と牙がない口はシワの寄ったプテラノドンのようにも見える。

指は3本しかなく、見ようによってはカバに見えなくともない。

 

二体目は、一体目の魔物をそのままエグドラシルと同じ大きさにまで成長させ、肉体の一部が朽ち果ててゾンビとなった姿の魔物だった。

 

更に朽ち果てた体の中からはドロリとした液体が漏れており、紅く光る瞳と周囲を包む強大な死の気配と合わさり、見た物へと恐怖を刻み込む。

 

「『そなたのはらわたを喰らい尽くしてくれるわぁ!!!』」

 

小さい方のバラモス、でかくて腐っている方のバラモスゾンビは主の願いを叶えるために魔王としての力を、それが死してゾンビとなっても、衰えぬその力をパチュリーへと向ける。

 

「ゾンビって事は光とか炎に弱い。

つまりは太陽とかにも弱いってことでしょう!

日符『ロイヤルフレア』!!!」

 

前回の戦いで様子を見ようとしたらあっさりとズタボロにされてしまっているのでパチュリーに"油断"はない。

 

だが相手の実力ばかりはべつなのである。

 

「バラモスゾンビ!耐えてなさい!

バラモス!『マダンテ!』」

 

バラモスは己の魔力を根こそぎ全て解放する。

地面が周囲の物を引き寄せてまたもや空間を揺らす一撃が引き起こる。

 

「またなんて威力してるのよ!?

それにあの巨大なゾンビ………耐久力がとてつもない………?

いえ…………周囲を取り巻くこの悪霊みたいなやつ………まさか『亡者の執念』!?」

 

「バラモスゾンビ!リザオラル!」

 

少女の指示によってバラモスゾンビは己に自己復活呪文を付与して同時に凄まじい速度でその巨大な爪を振り下ろして飛んでいるパチュリーを叩き落とす。

 

「ガハッ!?か、体が………」

 

パチュリーは地面に叩きつけられると同時に体が麻痺して動けなくなってしまう。

 

さらにバラモスゾンビは『いきなりバイキルト』の特性を持っていたのもあり、一撃で満身創痍処か粉砕骨折をさせりていた。

 

そしてバラモスゾンビは力尽きて消滅しようとしていたが事前に付与していた自己復活呪文が発動してすぐに行動出来るほどに回復していた。

 

「い………いやぁぁぁぁぁぁああああああ!?!?」

 

哀れ、パチュリーは一度殺されて蘇生されたのだった。

 

 

 

 



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恋する乙女達  その4

すんません予約投稿の時間調整間違えたw


 

 

~マヨヒガ~

 

 

 

「パチュリー………さすがに返してあげなさいよ…………デート中にさらうってあんた…………」

 

霊夢は信じられないものを見る目でパチュリーを見て言う。

 

「あの時はモンスターマスターを従えたかった上に前回負けたのが悔しくて頭に血が上っていたのよ…………」

 

「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んでしまえとは言うけどゾンビに殺られて死ぬのはさすがに嫌ね………」

 

永琳は辛辣な言葉をかける。

 

「え、えーっととりあえず今のがスィラ殿のライバルである双子の片割れて良いのよね?」

 

紫はパープルに対して聞く。

 

「合っているでござるよ。

殿とのデートの時に途中からやけに機嫌が悪そうだったのはこれが原因だったのでござったか。」

 

「とりあえずパチェ………さすがに自業自得としか言えないわよ。」

 

 

するとさとりがイルに対するトラウマが複数あることに気が付いた。

 

「おや?どうやらそこのもやしは懲りずに何度も召喚してイルさんをあまり良くないタイミングで何回か呼んでるようですね。

兄のルカさんの戦いもありますけどどうします?

イルさんの方はまだ戦いの範疇ですけどルカさんのはただの蹂躙ですよ?」

 

「……………蹂躙の方も気にならなくはないけどとりあえずこれ以上はパチュリーが可愛そうだからやめときましょうか。」

「そうですか…………そうですかぁ…………」

 

さとりはとても残念そうにしていた。

すると霊夢が嫌な予感がしたのか紫に訪ねる。

 

「ねぇ紫…………今猛烈に嫌な予感がしたのだけど………」

「やめて………これ以上幻想郷のバランス崩さないで………とりあえず一応聞いておきましょうか………」

「これ…………その双子がこっちに来る可能性って………」

「さすがに結界で隠蔽しているし私達幻想を認識していなければ………」

 

すると全員の視線がパチュリーへと向かう。

 

「ま、まぁ流石に余程自分から探そうとしなければ……………」

「ねぇ、さっきのイルって娘………スィラが好きなのよね?」

「そうでござるが?」

「スィラって私達が無理矢理こっちに引きずり込んだ上にあの世界の鍵って消滅してるから扱いとしては行方不明者よね………」

「そうでござ………………(ダラダラダラダラ)」

 

パープルは霊夢が何を聞きたいのかを完全に理解し、そしてそこから何が起こるかを考えて予測する。

そしてそこから導き出される答えに大量の冷や汗をかく。

 

「幻想は認識されているから隠蔽の効果が薄い。

しかも世界を渡り歩き異なる世界をいくつも旅するモンスターマスター。」

 

「…………もし向こうで私達の世界の鍵が見つかったら…………。」

「確実に来るわよ…………。」

「ま、まぁ膨大な数ある世界の鍵からこの世界の鍵を見つけるなんてそう簡単には………」

「待って………パープル、あんたなんでそんなに顔を反らしているの?」

 

「……………………(ダラダラダラダラ)」

「……………どうやら鍵を管理する王族の中に彼らの友人であり、無駄に行動力と幸運を持ち合わせた人がいるようです。」

「ま……まぁでもそう簡単にィ゛イ゛ッ!?」

 

紫がいきなり妙な声をだす。

 

「ど………どうしたのよ?」

 

すると紫は胃をさすりながら言う。

 

「え…………えーっとね………その………幻想郷じゃないのだけど…………私のスキマ世界の鍵があったみたい………。」

「って事は?」

「私のスキマの中に双子と例の鍵を管理する王族の子供に精霊が来ちゃった…………」

 

「「「「「へ!?」」」」」

 

_________________________________________________

 

~マルタの国~『鍵の保管庫』

 

 

 

「お兄ちゃーん!それっぽい鍵そっちにありそう~?」

「うーん、こっちじゃなさそうだなー。」

 

二人の子供の声が響く。

一人はスィラに恋する少女、『イル』

もう一人はその双子の兄である少年『ルカ』

 

「少なくとも鍵が消滅したんなら一番考えられるのは世界の統合だー。

世界の消滅についてはあのスライムバカがやられるとは思えねぇし確実に幻想の鍵に近い特徴の鍵があるはずだーー!」

 

するとピンク色の目付きの悪い綿のような精霊が双子に声をかける。

 

そして遠くにはいろんな鍵を漁っている褐色の肌に金の装飾が施された衣服を着ている少年がいた。

 

そして……………

 

「おーい!この鍵なんか関係してるんじゃないかー?」

 

褐色の少年、カメハ王子は数多ある鍵の中からスィラ達へと渡した『幻想の鍵』と同じような装飾、目玉の生えた『スキマ』の装飾が施された鍵を見つける。

 

「そいつは………『スキマの鍵』だな。

確か数百年前からあった『ふしぎな鍵』の一つだな。

だがそいつは確か床が無くてまともに探索することが出来ない世界だったはずだぞ?」

 

「でも確かに鍵の装飾は似てる……………」

 

「うーん、イル?

一回その世界を見て探してみるか?」

「うん、わかったよ!お兄ちゃん!」

「俺もついてくぜー!」

「ヲイコラカメハァ!お前また勝手に!?」

 

そして三人と一体はスキマの世界へと入っていくのであった。

 



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恋する乙女達  その5

 

 

~スキマの世界~『ゆかりんの秘密エリア』

 

 

スキマ空間の中に突如として巨大な扉が生成されて開き、中から双子の兄妹である『イル』と『ルカ』、それに加えてマルタの国の王子であるかめはめhげふんげふん、『カメハ王子』、マルタの精霊である『わるぼう』が現れるのであった。

 

「うぉ!?ホントに床が無いんだな………って思うように進めないなこれじゃ。」

「お兄ちゃん、これやっぱりモンスターに連れてって貰うしかないと思うよ?

おいで!『大魔王デスタムーア』!『大魔王の右手』!『大魔王の左手』!」

 

『イル』は己のスカウトリングから赤紫色の肌をしており、頬の後ろには青い毛を大量に生やしており、その頭部からはとても巨大な角が生え、皮膚が伸びて出来たような角や髭を幾つか持った顔"だけ"の魔物が現れる。

 

さらにその横に同じく赤紫色の右手"だけ"の魔物と左手"だけ"の魔物が現れる。

 

『大魔王デスタムーア』

 

別名:幻魔王とも呼ばれる世界を支配した大魔王の一柱であり、自らが恐れて封印した悪夢によってコテンパンにされてその生涯をあっさりと終えた魔王でもある。

 

「デスタムーア!私達を乗せて移動して貰っても良い?

ここだと歩けるところが無いから浮いて移動できる貴方が頼りなの!」

「乗り物扱いは少々不服だがやむを得ないか。

ルカはどうするのだ?」

「俺か?俺はこいつに乗ってくからいいや。

来てくれ!『聖竜ミラクレア』!」

 

 

するとルカのスカウトリングからは青紫の羽毛を生やし、美しい白さを持つその鱗によって包まれた桁外れの大きさの竜が現れる。

 

だが…………

 

 

 

『ぐぶっ!?』

 

出てきたら思ったよりも空間が狭いのかミラクレアが大きすぎるのか………どこか壁を無理矢理押し退けたような感じがした。

 

その瞬間に空間に響くように胡散臭そうな雰囲気を持った声が響くが全員が気のせいだろうとスルーした。

 

 

 

_________________________________________________

 

 

~マヨヒガ~

 

 

一方その頃、先程の空間の主である八雲紫が腹痛を訴えるように腹を押さえて軽く吐血している。

 

「ヒッヒッフー………ヒッヒッフー………」

 

見ようによっては妊婦に見えなくもないが今の八雲紫の腹は赤子が入るような大きさでもなければなんならいつもの胡散臭さが漂う姿ではなく幼女の姿となっていた。

 

「ゆ…………紫?」

「ス……スキマで………ふぐっ!?………と…………とんでもない大きさのぉぉおお゛お゛!?魔物なんて………出されたらアーッ!………流石に………キャパシティが…………ヤバイイイ………ふぐぉぉぉおおおお!?!?」

 

下痢に悩まされているようにも見えるが実際の所としては、紫の体内とも言えるスキマ空間はそれ自体が紫の一部でもあり、それが無理矢理拡張されるということは人にとって胃袋や腸を内側から無理矢理広げられているのと同じ感覚なのである。

 

「永琳、この絵顔がいろいろとアウトなこいつをどうにか出来ない?」

「私としても薬で直せる代物なら友人としてすぐにでも直す所だけどこれはキャパシティ超えてるのが原因だからスキマからこいつらを出すしか無いわよ?」

「流石に………お゛お゛ぉ゛ぉ゛お゛………これ以上は………ぜーぜー………きついぃ゛ぃ゛ぃ゛い゛い゛い゛い゛」

 

すると紫はマヨヒガの外側に尋常じゃない大きさのスキマを作り出して腹痛の原因を押し流し始めた。

 

_________________________________________________

 

 

~スキマの世界~

 

 

「う~ん、やっぱりミラクレア窮屈?」

『正直物凄く狭いと言いますか………無理矢理体が入るまで拡張しました。

ただ力ずくで空間を広げたので何が起こるか………』

 

実際の所ミラクレアは体を丸めている状態で身動き一つ取れなくなっていた。

ミラクレア本人もかなり窮屈そうだ。

 

「むぅ………もしかしたら不味いかもしれんな。」

「どうしたの?デスタムーア?」

 

すると何か心当たりがあるような事を呟くデスタムーアにイルが聞く。

 

「オリジナルの記憶にもあった知識から推測したことなのじゃが空間を無理矢理広げた時に聞こえたあの声………それに定期的に聞こえるうめき声のような物の正体……恐らくこの世界の主なのだろうな。

それを無理矢理広げたという事はこの世界の在り方によっては内臓を無理矢理広げたようなものじゃ。」

 

「つまり?」

 

「空間の主から追い出されるであろうな。」

 

すると真下にとてつもなく大きく、ミラクレアですら入ってしまう程大きな空間の裂け目が生まれる。

 

そして全員がその裂け目によって吸い込まれてしまうのだった。

 

 

「うわあぁあ!?」

 

ルカがまず最初に落ちていき、しりもちをついてしまうう

更に上からカメハ王子、イル、わるぼうの順番で落ちてくる。

 

わるぼうは幸い自力で飛行可能な上に体重もわ軽い。

 

だが…………

 

「ぐべっ!?」

 

上からカメハ王子が落ちてきて『ルカ』は踏みつけにされるのだった。



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乙女の逆鱗に触れることなかれ  その1

 

 

~マヨヒガ~

 

 

「ぜー………ぜー…………ぜー…………」

 

紫はまるでナニかを出し切ったかのように急に脱力しており、苦しさから一気に解放されたかのような解放感を得ているような感じだった。

 

「えっと…………大丈夫ですか?」

 

スキマから追い出されたルカがかなり疲れを見せて四つん這いになっている紫を見つけて駆け寄る。

 

「なにやってくれてんのよ…………」

 

「へ?」

 

「なにあんなバカデカイの出してるのよ!?

お陰で死ぬかと思ったわよ!?

無理矢理体内とも言える私の空間拡張されたら内臓を内側から無理矢理押し広げられてるようなものよ!?」

 

急にキレる紫にルカは今目の前にいる人物が先程の空間の主であることに気付く。

 

「ふぇ!?あー………そのー……ごめんなさい…………」

 

「やっぱり超巨大モンスターはめちゃくちゃキツいのでござるか?

我々の国は海ごと移動させられたでござるが。」

「場所移すのと空間に入れるのじゃ全く違うのよ…………

移動させるだけなら早い話場所と場所を繋いでるだけだから通すだけで済むけどスキマ空間は密封した私の荷物袋みたいなものなのよ!?

いきなり膨張なんてして破裂させられたら洒落にならないわよ!?

ぜー………ぜー………」

「いや……ほんとなんかごめんなさい………。」

「全くお兄ちゃんは…………ってあれ?貴方は……スィラさんのスラ忍パープルですよね?」

 

そしてイルはそのパープルの声の特徴がスィラの使役する魔物と一致する事に気が付く

 

「そうでござるよ。

だいぶ久方ぶりでござるな。」

「やっぱり!!ってことはスィラさんも!」

「イル殿は相変わらずでござるな。

勿論殿もいるでござるよ。」

「ほんとですか!良かった………良かったよぉぉおお。」

「イッテテテ………何かしら関係してるんじゃねぇかなとは思ってたけどいきなりアタリとは俺様も運がいいな。」

「ほんとお前は変なところの運は無駄に良いんだよなぁ………ちょいちょい余計なことしてるけど。」

「うるせいやい!」

 

後ろからカメハ王子とわるぼうがこちらに来ながら会話している。

 

「それで!スィラさんは!いまどこですか!?」

「わかった!?わかったでござるから!?イル殿落ち着いてくだされ!?」

 

イルはパープルの首もとを掴んで前後に振り回して聞く。

パープルはこの状態では首が締まって話すどころではないのでイルに落ち着くように伝える。

 

「あ……ごめんなさい。」

「いやいや、しばらく会ってない上に行方不明となってしまったでござるから仕方ないでござるよ。

とりあえず今殿ならヘルクラウドの中に居るはずでござるよ。

まぁちょいちょい嫉妬心燃やしたガール殿に拐われてるでござるけど。」

 

パープルはなんとなく火に油………いや、ガソリンを注いだ。

理由としてはなんとなく面白くなりそうだからだ。

パープルは確かにスィラへの忠誠心はあるにはあるが………それ以前にスィラの引き起こす修羅場が大好物だったりする。

 

「パープル………あなたって………」

「くっくくくく………まことに愉快愉快。

殿は相変わらず拙者を楽しませてくれる。

くくくくく………………」

 

仮面で顔こそ見えないが…………全員がその仮面の下にあるであろうゲスい笑みを幻視した。

 

流石の紫もこの様子のパープルに対して軽く引いている。

 

「へぇ……………」

「あ、やべ!?」

「俺はもう知らん………」

「ん?どうしたんだ?ワルぼう?カメハ?」

 

イルはその笑みに何か黒いものを感じさせるようになり、カメハはそれに気付いて震えている。

わるぼうは自分は関係ないとばかりに全身を背けて頭を抱える。

そしてルカはそんな二人に疑問を持つ。

 

「ちょっと…………どうするのよ………」

「なに簡単な事でござるよ。

紫殿、スキマは使えるでござるか?」

「あと少しで使えるくらいには回復するけど………」

「なら後で港に繋いでおいて欲しいでござる。

殿にはこの間頼んで港側だけ結界を緩めて貰ったでござるから。」

 

すると紫はパープルの後ろにゆっくりと近付いてくる小さな影に気が付く。

 

「……………なんとなくやりたいことはわかったけど貴方も生け贄よ?」

「へ?いったいそれはどういう……………ア゛ッ!?」

「パープルさん…………案内…………頼めますよね?」

「アッハイ………でござる。」

「スィラの居るとこの港にスキマ繋いであげるわ。

場所はパープルに案内して貰いなさいな。

はい、ここを通れば行けるわよ。」

「ありがとうございます!この恩はいずれ!」

「紫殿ぉぉおおお!?謀ったでござるな紫殿ぉぉおおお!?」

「余計なことを言う貴方が悪いのよ?」

 

スラ忍パープルはどこぞのお坊っちゃんのような断末魔を上げてイルによって引きずられていった。

 

「おーい、イル?どこいくんだよ?」

「お兄ちゃんはちょっとここで待ってて……………」

「ちゃんと戻って来るのか?」

「うん、大丈夫よ。……………ダイジョウブ」

「ならわかった。

まぁこの人にも迷惑かけちゃったみたいだし話を聞くついでにいろいろ手伝っておくわ。」

「ありがとう!お兄ちゃん!」

 

イルは黒い笑みを浮かべながらスキマへと進むのだった。

 



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乙女の逆鱗に触れることなかれ  その2

 

 

~マヨヒガ~

 

 

「えーっと…『ルカ』君で合ってたかしら?」

「はい、俺が『ルカ』でさっき入っていったのが双子の妹の『イル』です。

んでこっちの慢心してそうな金色が………」

「扱いが雑上にいろいろ余計なんだよルカは………俺様はマルタの国の王子であるカメハだ。」

「だっていつも余計なことばかりしてるし。

それでこっちのわたあめが………」

「誰がわたあめだ!?

ごほん、俺はマルタの国の精霊であるワルぼうってんだ。

よろしく頼む。」

 

見たところ彼らはまるで腐れ縁の幼馴染みのような関係に見える。

 

「えぇ……貴方達の事は少し知っているわ。

そしてこの世界………というか私のスキマの中に入ってきた理由もね。」

 

すると彼らは少し驚いたような表情をしたが少しした後に納得したように頷いた。

 

「あぁ、たしかスィラがいるんだったね。」

「えぇ、というか私がこちら側に招いてしまったからね。」

「ん?どういうことだ嬢ちゃん?」

 

現在紫の姿はエネルギーを節約する為のロリbb(ピチューン)

幼女形態であり、ワルぼうから嬢ちゃん扱いされても文句は言えない姿であった。

 

「じょ……嬢ちゃん……久しくそんな呼ばれ方されなかったから新鮮ね………

とりあえず先に私の自己紹介といきましょうか。

 

私の名前は『八雲紫』。

 

この世界である『幻想郷』の創設者の一人にして管理者といった所かしら。

あと私は人間ではないわよ。」

 

「世界を創った………八雲……さんは神様なんですか?」

 

「ふふ、そんな凄い存在じゃないわよ。

まぁ確かにこの世界にも神々は多く住んでるけどそこまでの力を持つ神は殆ど居ないわ。

それに言ったでしょ?創設者の"一人"って。」

「ってことはこの世界は嬢ちゃんを含める何人かで世界一つ創ったってわけか。

十分すげぇ存在じゃねぇかよ。」

 

ワルぼうは世界を渡り歩くモンスターマスター達の行く世界の鍵を管理する精霊であり、マルタの国そのものの化身とも言える。

そんな彼だからこそ世界を創るという事がどれだけ凄いことなのかを一番理解しており、紫を正当に評価していた。

 

「世界といっても惑星と言うわけでもないし私達がやったのはその一部を世界として切り取って結界で保護しているだけよ。」

「いいや、それだけでもその結界の内部は世界として十分成立する条件を果たしている。

更に言えば独立した空間ならばこの通り鍵が生まれているからな。」

 

するとワルぼうは懐?から陰陽玉の刻印が彫られた鍵を取り出す。

 

「こいつの名は『幻想と妖魔の鍵』、元々は『妖魔の鍵』つー名前だったんだが最近変化が起きてな。

時期を調べたんだがそれが『幻想の鍵』が消滅したのと同時な上にこの名前だ。

お嬢ちゃんは察するに世界の統合、つまり『幻想の鍵』の世界を吸収合併したんじゃねぇのか?」

 

するとワルぼうは己の管理する鍵の変化とその関係についての考察を語り、紫に問う。

 

「なあワルぼう、そんなこと簡単に出来るもんなのか?」

「カメハ………お前はこの嬢ちゃんの力を察せないのか?

確かに軽く隠してはいるが相当な力を持ってるぞ?

お前の部下のムドーより普通に強いぞ?」

「うげっ!?マジか!?」

「ちなみに俺は普通にこの人が強いの分かってたよ?

ざっとSSランクの下位くらいかな?」

 

「下位なのね………それじゃ話を戻すけどまずワルぼう殿の考察はあっているわ。

元々あの世界は誰も生き物が居なかった上に幻想郷には無かった海があったから今までこっちに呼べなかった海に住まうタイプの妖怪を呼ぶために取り込んだのよ。」

 

するとルカは疑問を紫にぶつける。

 

「ちょいまった、妖怪って何?」

「貴方の目の前にもいる存在よ。

私達は人の恐怖や伝承によって生まれる存在。

人が居なければ存在することが出来ず、人に完全に忘れられたり幻想を完全に否定されれば存在を保つことの出来ない。

そちらで言う魔物に近い存在よ。」

「へぇ………スカウト出来るかな?」

「さぁ、例がないから分からないわ。

さて、続きだけれどあの世界を呼ぶために余計な存在が住み着くと面倒だったのもあったから私の結界を使って世界自体を隠蔽していたのだけど…………」

 

ワルぼうがその事を聞いてなんとなく結末が想像出来てしまった。

 

「あー、一応世界の鍵で渡る俺達にはその手の隠蔽は対して効果無いからなぁ………」

 

「そうみたいね………まぁ世界の統合をする時に確認をしっかりしなかった私にかなり大きな責任はあるのだけど……」

「んで世界の統合と同時にスィラ達も巻き込んじまった訳か。

あいつそれはぶちギレたんじゃねぇの?」

「……………えぇ、最初は問答無用で殺しにかかってきたわ。

ただ最近はどんどん決闘形式になってきてちょっとしたお祭り騒ぎね。

まぁ私達の世界じゃ宴会とかを好む奴らも多いから問題無いのだけどね。」

 

するとSっ気を隠す気も無さげに小五ロリが近付いてくる。

 

「ですが文字通り一度八つ裂きにされて殺されているのは幻想郷の管理者として問題では?」

「うぐっ!?」

「更に言えば今回は完全に貴女の不注意による物ですよね?」

「ぐふっ!?」

 

小五ロリによる口撃はしばらく続き紫は軽く落ち込むのだった。



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乙女の逆鱗に触れることなかれ  その3

 

 

~スラバッカ王国~『王城ヘルクラウド』

 

 

 

スィラは拐われて紫達と分かれた後ちょいちょいガールによって自室に連れ込まれかけながらもスラ忍衆によってなんとか無事だった。

 

そして今は城の執務室にて国の管理を行っていた。

 

「主~!畑の収穫の結果置いとくよ~。」

「了解、後で目を通しておこう。

まどうスライム、こっちの区画整備を建設班に頼んどいてくれ。

報酬に骨付き肉を用意しておこう。」

「わかった~伝えとく~。」

 

すると執務室にスラ忍レッドが突如として出現する。

 

「殿、パープルから伝言が。

イル殿、ルカ殿、カメハ殿、ワルぼう殿がこちらの世界に来たようです。

正確には紫殿のスキマ世界に繋がったようですがその中でルカ殿が超巨大モンスターを出してしまい紫殿によってこっちの世界に出された模様です。」

「あいつは…………探索するなら超Gはやめとけと何度も伝えてるんだがな…………。

それで?あいつら今どうしてるの?」

「イル殿がパープルを引きずりながらこちらに向かっているそうです。

他の方々は残って紫殿から話を聞くと共にルカ殿が軽く迷惑をかけた為に何か軽く手伝ってくるとのことです。」

「パープル………また余計なことをした感じか?」

「…………拙者としては火に燃料を投下したとしか………後はご自分でご確認された方がよろしいかと。」

「パープルは相変わらずだな……まぁそこが面白いんだが。

お前達は俺が自分で気付くべき事はあえて教えないようにしているよな。

そういうとこが私にとって助かっているよ。

王は全てを頼っていては成長出来ないからな。」

 

確かにスラ忍衆はスィラが成長するために伝える情報を選ぶようにスィラ自身から命じられてはいた。

だがこの時のレッドの心情としては…………

 

『殿……………相変わらずそっちの方向は鈍いのでござるよなぁ………というか恋愛とかするくらいならスライム愛でたいと言うような御人でござるからなぁ………。

出来れば我らの女性衆が報われるようにしたいところでござる。』

 

何だかんだでスラ忍衆は仲間をとても大事にしており、パープル以外は仲間の女性衆がスィラとくっついてくれないかなぁと思っていた。

 

しかしパープルだけは場を引っ掻き回すのが大好きだった。

 

「とりあえず城に着く頃にはパープルの回収とこっちへの案内頼む。

あ、アクアスライムはポグフィッシュの養殖場なんだが個体数もうちょい増やしといてくれ。その次の世代を食用としておこう。

スライムブレス、そっちの牧場のおおにわとりの繁殖も頼んだ。」

 

 

何だかんだでスィラはかなり真面目に王としての役割をこなしていた。

 

_________________________________________________

 

 

~スラバッカ王国~『城下町』

 

 

…………ァァァァアアアアア゛ア゛ア゛ア゛!?!?!?」

 

港方面から一人の魔物が悲鳴を上げながら引きずられていく。

だがこの国の魔物達からすればこの幻想郷に取り込まれる前までは割といつもの事であり、『またやらかしたか』と思う者達と懐かしく思う者達で別れていた。

 

「おや?イルちゃんじゃないか!久しぶりだねぇ!元気してたかい?」

 

パープルを引きずりながら王城へと進むイルに商店街のおばちゃんのような雰囲気のクイーンスライムが話しかける。

 

「クイーンスライムさん!お久しぶりです!元気じゃなきゃこの世界を見つけられてないですよ!」

「あっはっはっは!そりゃそうか!とりあえずスィラ様の所に行くんだろう?これを持っていきな!」

「これは………あ!スライムまんじゃないですか!良いんですか?」

「いいよいいよ!むしろそれ王様に持っていって一緒に食べてきな!」

「ありがとうございます!」

 

すると違う店から今度はメタルキングが現れる。

 

「おお、久しぶりだなぁ。

どうだい?王様をデートに誘うついでにワシの所のスライムチョコレートは!」

「デ………デートなんてそんな………でも頂きます。

いつも相談乗ってくれてありがとうございます!」

「良いってことよ!王様が誰かとくっついてくれればワシらも安泰だからな!がっはっはっは!」

「もう………そんな大声で言わないでくださいよ!恥ずかしいじゃないですか!」

 

そう、幻想郷に取り込まれる前まではイルは毎日のようにこの国に通っており、スィラとの仲を進展させるために城下町のスライム達を軽く味方に付けていた。

イル自身が友として接しているのもあったが、イルとルカの双子はモンスターにとても好かれやすい性質だったのもあって皆イルを応援していたのだ。

 

「ちょっ!?呑気に話してないで助けて欲しいのでござるが!?」

 

引きずられるパープルは助けを求めるが。

 

「そんだけ元気なら大丈夫だって!」

「なんだ?また何か余計なことやったのか?」

「達者でなー!」

 

街の皆からすれば割といつもの事なのでスルーされる。

 

「ちょぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!?!?!?」

 

パープルは悲鳴を上げるが無情にも無駄な抵抗となっており、どんどん引きずられていったのだった。



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乙女の逆鱗に触れることなかれ  その4

 

 

~スラバッカ王国~『王城ヘルクラウド』

 

 

スィラがイルが来るまでの間に仕事を軽く片付けているととある一つの書類に目が止まった。

 

「城下町、他の野生エリア全員からの要望で幻想郷を見学しにいきたい………か。

八雲 紫にでも相談するべき案件だな………

スラリン、この書類は一旦保留にするが優先的に片付ける案件にしとく。

一応決まったらさすがに数が多いので何回かに分ける形で人数を割り振ってくれ。」

「あぁ、任された。」

「とりあえず後はなんとかなるか………」

 

すると扉をノックする音が聞こえる。

 

「入ってくれ。」

「失礼します。

城にイル様が御見えになりました。」

 

中に入ってきたのは警備を任せているスライムナイトだ。

 

「そうか、とりあえず適当に庭に連れていってくれ、私も軽く身支度を整えてから向かおう。」

「かしこまりました。」

 

スィラは久々に出会うライバルであり友であるイルとの再開に密かに心踊らせていたのであった。

 

 

_________________________________________________

 

 

 

私はスライムナイトさんの案内で中庭の庭園へと訪れていた。

引きずってきたパープルは気が付いたら他のスラ忍衆によって回収されてブラウンによる『スクリューパイルドライバー』?と言うお仕置きを受けていた。

よくあんな動きができるなぁと常々思う。

やっぱりスィラさんは魔物の育て方がどことなく違う気がする。

でも押さえていたとはいえあんな複雑な動きを決められる程に技術を鍛え上げているスィラさんにはやっぱり学ぶところも多いなぁ………

 

すると城の方からスィラさんがやってきた。

どうやら今日は普段着で会いに来てくれたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

でも全身にスライム一杯なのはいつも通りだけど。

 

 

 

 

 

「スィラさん!無事で良かったです!」

「うおっと、危ないぞ?そんな急に抱きついてきたら。」

「えへへ、ごめんなさい。」

 

私はスィラさんにようやく再会出来た喜びでついつい抱きつきにいっちゃった。

スィラさんはそんな状況でもやっぱり私を子供として見ている節があるからちょっと残念だけど。

 

「私が行方知れずの間探してくれていたようだな。

礼を言わせてくれ、お陰で私は故郷であるマルタにいつでも戻れる。」

「あれ?ちょっと疑問に思ったんだけどルーラで戻れないんですか?」

「確かにルーラを使えば帰るだけならなんとかなる。

問題はこの世界に戻れない、つまり今作っているこの国に戻れず放棄せざるを得ないことだな。」

「ふぇ?なんでなんですか?」

「早い話この世界は結界で隠蔽されているからルーラで外から対象にすることが不可能なんだ。

結界の内側なら全く問題無いが外側だとそもそもの対象が見つからなくなるわけだからな。」

「へぇ…………って今気付きましたけどよく私達がずっと探してたの知ってましたね。」

「あぁ、それは『じげんりゅう』が君より先にこっちに帰還して報告していたからな。」

「あぁ、そういえばスィラさんスカウトしてましたね。

………もっぱら移動手段の乗り物として。」

「むしろ私がスライムに関わる魔物以外を限界まで育てるとでも?」

「…………………無いですね。」

 

相変わらずだなぁ…………スィラさんはいつもの事ではあるけどスライムに関わる魔物以外の魔物の扱いが割と雑なんだよね。

まだ移動手段や伝令として使ってもらえてるだけ『じげんりゅう』はマシなんだろうけど…………

 

まぁSSランクの魔物を顎で使う辺りさすがスィラさんと言うべきなのかそれとも呆れるべきなのか迷う所だけど………

 

 

でも確かキラーマジンガが畑の案山子代わりに使われてたからなぁ…………

 

 

「そういえばスィラさんはこっちの世界に来てから何を?」

「ん?いつもの(勝負)」

「…………相変わらずバトルが好きですよね。

ちょっとこっちの世界の人達が可愛そうに思えてきました。」

「なに、こちらが迷惑をかけられた上にスライム達を怖がらせたからな。

とりあえず主犯は全員八つ裂きにするつもりさ。

まぁ二人の内一人はすでに一度死亡させたからだいぶ気は収まったがな。

だかもう一人はちょっとそれなりに強くてな。

久しぶりに燃えているよ。」

 

スィラさんが勝負に燃えているのは本当に珍しい。

それはそれだけ相手に可能性を見いだしているという証拠だからだ。

 

「へぇ………スィラさんが燃える相手なんて珍しいですね?

私の時は確かまともに相手してもらえたのって確かマルタのへそを何とかした後くらいからでしたっけ?」

「あぁ、その辺りだな。

私は既に『しんせいの宝珠』を持っていたから先に『新生配合』を自力で可能としていたしな。」

「スィラさん配合とかそこら辺も全部自力でやっていたから凄いですよねぇ………」

「何が必要かとかはあらかじめ全て調べ上げていたからな。

後は達成出来るまで努力するだけだな。

君の主力な魔王達だってそうして生まれたものだろう?」

「まぁ確かにそうですね。

結局どこまで努力したかになりますよねぇ………エスタークを仲間にするのもかなり大変だったなぁ………」

「くく、だろうな。

はぁ…………やはり楽しいな、君とこうして話すのは。」

「そうですね………私もその………嬉しいというか……」

 

 

だいぶロマンチックな雰囲気になってきちゃった………

 

「その………スィラさん………ってあれ?」

 

私はもっと距離を詰めようとする………だが何やら城内が騒がしくなっている事に気付く。

すると城から『ももんじゃ』の『シドもじゃ』さんが慌ててやってきた。

 

「た、大変だもじゃ~!?!?

スラブラスターが月から大量の攻撃を受けているもじゃ~!?!?」

 

あうぅ………せっかくのチャンスが……………



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スライム型機動衛星スラブラスター  その1

 

 

~幻想郷衛星軌道上~『スラブラスター』

 

 

スラブラスター

 

スライム型の攻撃衛星でありそのボディは『つねにマホカンタ』と『つねにアタックカンタ』の二重の防御機構なよって守られており、呪文も近接攻撃すらも効かない鉄壁の防御力を誇る。

 

反面ブレスや体技等は対策することが不可能であり耐久力も他の巨大モンスターに比べて低いという欠点を持つ。

だがスィラからすればその欠点も別に問題ないとばかりに育てられ、多くのモンスターマスターに恐れられる存在となっていたのだった。

 

 

 

_________________________________________________

 

 

 

「スラブラスター、衛星軌道上で静止。

この高度を維持します。」

「資源探索用ドローン射出、映像出ます。」

 

すると内部のモニターに複数の画面が写し出される。

これはスラブラスターから射出されるプラズマによる攻撃と資源収集による自己回復を目的としたドローンから送られてくる映像だ。

 

「1番から4番ドローン、情報にあった月の都市を探すべく行動開始します。」

「5番から8番ドローン、月の監視を開始。」

「9番から12番ドローン、補給用の資源採掘開始。」

 

スラブラスターの乗員であるホイミスライム、ベホマスライム等の触手を持つスライム達がスラブラスターのドローンを操作し、月の探索へと乗り出した。

 

今回のスラブラスターの目的は地上の監視を行えるようにスラブラスターを衛星軌道上で静止させること。

第二目的として情報にあった月面都市の捜索、可能なら情報交換という所であった。だが彼らは月へ移住した者達がどれだけ排他的となっていたかを知る術は持ち合わせていなかった。

それがこのような惨劇を生み出すとは誰も想像していなかったのである。

 

 

 

 

 

_________________________________________________

 

 

 

~月~『月面都市』

 

 

「ツクヨミ様、地球から人工衛星と思われる物体が飛行して衛星軌道上で静止しております。

如何致しますか?」

「あちら側から接触が無い限りスルーして構いません。

こちらの情報はあちら側も持っているでしょうから接触してこないという事は完全にこちら側と関わらない物という事でしょう。

それに攻撃に備えているという可能性も否めませんので目的とその性能が分かるまではこちら側からの攻撃は行わないでください。」

 

月へと移住した者達を統率する『夜と月の王』であるツクヨミは報告に来た月人へそう冷静に判断して伝える。

 

「かしこまりました。

しかしあれは地上の物である可能性は………」

「恐らくそれは無いでしょう、確かに地上の技術は我々の住まう月へとたどり着く程進化はしていますがこの短期間であのような衛星を作る余裕など無いはずです。

恐らく幻想郷側からでしょう。」

「成る程………っ!失礼。

あぁ………あぁ………そうか、報告しておこう。」

 

ツクヨミへの報告をしていた月人はまた観測所からの連絡を受けとる。

 

「ツクヨミ様、例の衛星から探索及び資源採掘用ドローンの射出が確認されました。

4機が周囲の衛星から資源採掘を、4機が例の機動衛星の周囲を回り監視を、最後の4機が月面の探索に乗り出したようです。」

「妙ですね………幻想郷側が月面を探索する意味はあまり無いはずですが………幻想入りした新しい住人の者とも考えられますが少なくとも地上の技術で作れる代物ではありませんね。」

「コンタクトを取ってみますか?」

「…………月面都市への接触をしそうならお願いします。

ただ気掛かりなのは…………」

「過激派の動き………ですか。」

「えぇ、最近軍部の過激派が妙な動きを見せています。

彼らがあの衛星への攻撃をしないように言い聞かせておいてくだs……」

 

するとツクヨミが話している途中で部屋のドアがバタンと力任せに開かれて慌てた様子の玉兎が入ってくる。

 

「何事ですか!」

「ほ、報告します!軍部過激派が攻撃用レーザー施設のシステムを勝手に起動。

現在交渉中ですが軍部の中でも特に階級の高い者が付いており、その命により『綿月豊姫』様と『綿月依姫』様が護衛に付いており強硬姿勢を崩しそうにありません。

あのお二方も上司からの命令の為に逆らえない模様です!

あの様子では例の衛星への攻撃を仕掛けると思われます!!」

 

「緊急事態ですね。

伝令!例の衛星へ攻撃される可能性ありと伝えなさい。

恐らく通信施設も乗っ取っている可能性も考えられるのでポッドを使用して向かってください!

我々はこのまま攻撃施設のシステムをダウンさせて向かいます!」

 

するとレーザー施設から月の無限とも思えるエネルギーを攻撃に転用した『魔法』と科学を融合させたエネルギーレーザーが射出される。

 

「間に合わなかった!?」

 

そのレーザーは衛星へと直撃コースを取って衛星は避けることも出来ずに直撃する…………かのように見えた。

 

「衛星の防御システムによりレーザー消失………いえ、エネルギーを吸収して反射されています!

レーザー施設へと直撃します!!」

 

 

そこにはレーザーをいとも容易く反射して無傷のまま攻撃用レーザー施設を破壊した鉄壁の衛星が君臨していた。



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スライム型機動衛星スラブラスター  その2

 

 

~衛星軌道上~『スラブラスター』

 

 

「月面から魔法エネルギー反応。

攻撃来ます!」

「魔法反射システムの調子は?」

「問題ありません。」

「対ショック姿勢!」

 

スラブラスター内部のスライム達は効かないとはいえ攻撃の衝撃だけは内部に影響するために近くの固定用のバーを掴み攻撃の衝撃に備える。

 

「3……2……1……今!」

 

そして"それなり"に大きい衝撃がスラブラスターを襲う。

 

「魔法反射システム発動します。」

 

そしてスラブラスターは受けた攻撃のエネルギーをそのまま攻撃してきた方向に"正確"に跳ね返す。

 

「攻撃箇所の特定急ぎます。」

「ドローンからの映像出ます。」

 

攻撃してきた方向へとドローンのカメラを向けてその映像を写し出すがその方向には月面が映るだけで何もない。

 

「反射エネルギー消失。

しかし散ったエネルギーを確認出来ず。

不可視の結界がその方角にあると推測されます。」

「主に報告を、月面からの攻撃あり、対応の指示求む。」

 

スラブラスターの司令官である『スライムジェネラル』はすぐに自分達の主であるスィラへと報告を出して対応を求める。

しかしその対応に副官のまどうスライムが疑問を持つ

 

「よろしいのですか?我らのルール的に考えればこれは不意打ちによる敵対行動。

問答無用で反撃しても構わないと思うのですが。」

「この世界が我らがいつも旅するような魔物世界ならば別に問題なかったのだがな、ここはその手の世界ではない。

下手に滅ぼそうものなら我らのこの世界での立ち位置がどうなるか分かったものではない。

それゆえに特殊な対応が求められる故に何か行う際は必ずスィラ様へ報告をする必要があるのだ。

我らの独断で行える事は今はそこまでないと思え。」

「ハッ!了解しました。」

 

スラブラスターのクルーはスィラによって軍隊式の訓練を受けており、その中でも判断力の高いエリートを選りすぐって搭乗させていた。

 

不意の攻撃を受けようとも冷静に状況を判断して主に報告をして指示を待つ彼らの姿勢は流石と言えた。

 

「主から指令が入りました。

『人的被害は出来るだけださずしばき倒せ』との事です。

殺さなければ半殺し程度なら許可するそうです。」

「了解した。

スラブラスター第一種戦闘配備。

主砲の整備怠るなよ!

結界方向へ『凍てつく波動砲』の用意を!」

「主砲、目標月面攻撃施設。

『凍てつく波動砲』いつでも撃てます。」

「よろしい。

エネルギー充填開始!」

 

『凍てつく波動砲』

 

スィラがとある世界で『スーパーキラーマシン』という魔物の扱う特殊な特技である『スーパーレーザー』と言う凍てつく波動と共にダメージを与える特技に加えて、

どこぞの別世界の究極兵器の扱う波動砲を参考にスラブラスターでそれらを統合した攻撃を行えるように訓練した結果生まれた攻撃である。

 

だがこれは特技として習得する事は叶わず、通常攻撃判定となるので『アタックカンタ』を行われた場合あっさりと反射されて凍てつく波動だけが相手に届くようになる。

 

これは簡単に言えば『凍てつく波動』と通常攻撃を複数回行動により同時に使う攻撃なのだ。

 

「エネルギー充填完了。

発射します。」

 

 

_________________________________________________

 

 

~月~『月面都市』

 

 

スラブラスターの『常にマホカンタ』によって反射されたレーザーにより破壊された攻撃施設跡にて今回の騒動を引き起こした軍部の過激派リーダーはスラブラスターの異常な性能に存在を認めることが出来ずにいた。

 

『あり得ない………我ら月人の技術力を持ってしてもかすり傷さえ入れられないどころか反射してくるなど!?

認めてなるものか…………穢れた地上の技術力が我ら月の技術を上回るなど!!

断じて認めてはならん!』

 

「貴様ら!あの衛星を破壊しろ!!

軍部のドローンもパワードスーツもいくら使っても構わん!

我らの月を穢そうとする穢れた者達を皆殺しにしろ!!」

「し、しかし………」

「口答えを許した覚えは無いぞ!」

「はっ!申し訳ありません!」

「早くあれをスクラップにしろ!」

 

すると護衛としてレーザー施設入り口を命令で守らせていた『綿月姉妹』がこちらにやってくる。

 

「将軍殿!なぜいきなり攻撃を仕掛けた!?

不意打ち等という野蛮な行為、これでは穢れた者達と同じではないか!!」

 

綿月姉妹の妹の依姫は過激派リーダーである将軍へと詰め寄る。

 

「黙れ!貴様らは大人しく私の命令に従えばいい!

貴様らもあの衛星を早く破壊しにいかないか!

穢れた者達の技術が我らの技術を超えている等認めてなるものか!!」

 

将軍はあまりにも興奮しており話が通じる様子ではない。

 

だがその瞬間こちらへと巨大な砲身を向けた衛星がとてつもない光を放ち、その主砲から月のレーザー攻撃を大きく上回る威力のレーザーが照射される。

 

そしてそれは月面の結界をいとも容易く貫通して攻撃施設を再度破壊して月面都市の隠蔽をする結界含めた全ての術式を根こそぎ破壊したのだった。

 

「キャアァァァア!?!?」

「姉上!?うぐぁぁああ!?」

 

その衝撃によって綿月姉妹は吹き飛ばされ、スライム達による宣戦布告が同時に行われるのだった。



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スライム型機動衛星スラブラスター  その3

 

 

~月~『月面都市』

 

 

スラブラスターの主砲により月面都市全域に『いてつくはどう』の効果が発揮される。

 

主砲の直撃と同時に月面都市の主電源が落ち、結界が強制解除され、魔法は根こそぎ解除された。

 

「ツクヨミ様!緊急事態です!

あの衛星からの報復攻撃により月面都市の全結界が消滅、主電源は発電期間が破損、さらに魔力炉の魔力が消失しました。」

「…………幻想入りの方でしたか………今の幻想郷にここまでのことが出来る者はいません………。」

 

実をいうとツクヨミはちょいちょい永琳と連絡を取り合っており、過激派の動向を教えたりしていた。

その際に前回の連絡で紫の失態により強力な人物が幻想郷に閉じ込められる事になったという事だ。

 

「スィラ………確か永琳はそのような名前と伝えてましたね。」

「ツクヨミ様、現在綿月姉妹が迎撃のため出撃しております。

なお過激派のリーダー格である八幡(やばた)尼炎(にえん)将軍が死亡しました。現在被害は多く出てこそ居ますが死亡者はあの者のみとなっております。

過激派のメンバーは現在順次拘束中でございます。」

「至急綿月姉妹を呼び戻してください。

降伏の準備を」

 

ツクヨミの言葉で月人達がざわめく。

当然だろう、圧倒的な技術力を持つはずの彼らが敗けを認めざるを得ないのだから。

 

「なっ!?降伏すると言うのですか!?」

「はい、我らのレーザー施設による攻撃で傷一つ付かないどころか反射された上に先程の主砲による攻撃で都市部の機能が軒並みダウンしました。

これ以上被害を増やすわけには参りません。

それに加えて非は全てこちらにあります。」

「くっ………わかり………ました。」

 

「報告!通信障害が発生しており綿月姉妹との通信途絶!先程の主砲により通信施設をサブ電源のみで無理矢理稼働させた為に影響が出たと思われます。

なお最後に確認された綿月姉妹の座標は衛星内部と思われます。」

「…………間に合えば良いのですが……」

 

_________________________________________________

 

 

~衛星軌道上~『スラブラスター内部』

 

 

 

『侵入者あり!迎撃せよ!迎撃せよ!

侵入者あり!迎撃せよ!迎撃せよ!』

 

「姉上、今回は非は全てこちら側にある!

出来るだけ捕縛だけに止めてください!」

「そうは!?言われても!?兵士の実力が高すぎます!?」

 

「スライムナイト部隊!これ以上進めさせるな!

メタルライダー部隊!持ち前の素早さを生かして撹乱をせよ!ダークナイト部隊は体技準備!」

 

綿月姉妹は姉の能力によるワープでスラブラスター内部へと直接乗り込むという行動に出ており、先程から通信が出来ない為に慎重に動こうとしていたのだがすぐに発見されてしまい、防衛部隊の攻撃を耐え忍んでいた。

 

防衛部隊の指揮をスライムナイトの転生モンスターである『ハートナイト』が取っており、そのハートナイトにはスライムナイトが4体、メタルライダーが4体、ダークナイトが4体従っており、ハートナイトがある魔法を使ってからと言うもの全員の"れんけい"がとてつもない頻度で行われていた。

 

魔法を避けようとしても避ける方向に斬擊が飛んでくる。

豊姫が能力を用いたワープによる回避をしても移動する場所をある程度予測しているかのように全域をカバーする範囲攻撃が飛んでくる。

 

「スライムジェネラル殿の元へはたどり着かせるな!

居住区避難急げ!」

 

ハートナイトは非戦闘員達の避難指示も同時に取っており動きを見せない。

 

「ジェネラル………将軍!姉上!」

「えぇ、私が貴女を守りながら無理矢理移動するので将軍の元へと早く!」

「しかしそれでは姉上が!?」

「良いから行きなさい!このままでは私達二人とも拘束されるか殺されるのがオチです!」

「くっ………わかりました!」

 

「ダークナイト!『ビッグバン』準備!」

 

会話を軽く聞いていたハートナイトはワープによる移動が来ると予測し、広範囲を攻撃する体技での迎撃を狙う。

 

「行きますよ!」

「頼みます!姉上!」

 

豊臣によるワープで二人はハートナイトのいる方向に移動する。

その先にスライムジェネラルがいると予測した為だ

 

「「「「ビッグバン」」」」

 

そして四発のビッグバンが四方をカバーするように放たれ、その内の一発に豊臣は直撃してしまう。

 

「きゃぁぁぁあああ!?!?」

「姉上!?」

「良いから!貴女は!先に行きなさい!」

 

豊臣は自分を囮とする為に自分を残して妹の依姫のみを先にワープさせる。

 

そのワープによってハートナイトの防衛部隊は依姫を見失ってしまう。

 

「モニター室!先程もう一人はどこに行きましたか!?」

 

ハートナイトはワープにより消えた依姫を探すべく、スラブラスター内部の監視を行うモニター室へと通信を繋げる。

 

「っ!?スライムジェネラル殿の所だと!?」

 

豊姫は一か八かの賭けで天井の上へとワープさせたのだが、どうやら運良く『スライムジェネラル』の所へとワープさせる事に成功していたようだ。

 

だが彼女の周りには13体の騎士が囲んでおり、状況はすこぶる悪くなっていたのだった。

 

『依姫………任せましたよ。』

 

綿月姉妹がこのスラブラスターに無理矢理乗り込んだ理由、それはこのスラブラスターを操る司令官を捕縛、もしくは一騎討ちを挑む事によってなんとか被害を押さえようとしていた。

そして囮となることによりこれ以上攻撃をさせず避難する時間を稼ごうともしていたのだった。

 



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スライム型機動衛星スラブラスター  その4

 

 

~衛星軌道上~『スラブラスター内部』

 

 

姉上が自分を囮にして私をワープさせたお陰でなんとか迎撃に来たあの騎士達から逃れることが出来た。

 

だがあの様子では姉上だけで逃げ切れるか………

 

姉上のワープも万能という訳ではなく長距離を移動するには長い時間集中する必要がある。

だが戦闘中にそんな集中をするのは不可能であり、やれたとしても視界に移る範囲が限界となる。

 

周りの風景から察するにどうやら今回は壁か床、天井を抜けたワープを行ったようだ。

ダメージ覚悟でなおかつ自分ではなく私をワープさせたから上手く行ったような物だが慎重に動かないと姉上の覚悟を無駄にしてしまう。

 

そう思った途端背後から強大な気配がする。

 

「ッ!?」

「ほう、悪くない反応ではないか。」

 

すると背後には迎撃に来た騎士と似た姿をした人物?がいた。

違う点としては騎乗している巨大な毬のような妖怪がとても大きく、髭を生やしてマントを付けている(どうやって付けているんだろうか………)

そして上に騎乗している騎士はこれまた立派な髭を生やしており、頭には王冠を被っている。

迎撃に来た騎士達は片手剣と盾だったが、この者は両手に一振りずつバスターソードを持っていた。

 

「先程まで気配すら感じず姿も見えなかったのですが………」

「ファッファッファ、簡単な事よ。

我が主も使えるステルスという呪文よ。

これは気配も姿も完全に消すことが出来る。

攻撃しようとすれば見えてしまうがな。」

 

騎士………いや、騎士王とでも言うべきその人物は愉快そうに笑いながら話す。

 

「成る程………しかしそのような情報を簡単に教えてしまって良いのですか?」

「なに、問題ないとも。

我らが一方的に貴様らの情報を知っていては不公平だからな。我らは力の拮抗した戦いを望む。」

「私達の事を知ってる………ということは幻想郷の者ですか………貴方達のような妖怪は確かあそこには居なかったはずですが………」

「それも簡単な話よ。最近主共々国ごと引きずり込まれただけであるな。」

 

ということは幻想入り………国ごとということはやはり……

 

「八雲紫の仕業……ですか。」

「まぁ元凶じゃの。

とはいえ一度しばき倒しておるから我が主含めてもう怒りは収まっておるがな。」

「八雲紫を………倒した………」

「さて、自己紹介といこうかの。

我が種族名は『スライムジェネラル』名前は『クラウン』と申す。

もっぱら種族名か冠じいさんと呼ばれておるがな。」

 

スライムジェネラル………早速目的の人物と遭遇しましたか……。

 

「私の名は綿月依姫、月面都市の防衛や地上の監視の役割を持つ月の使者のリーダーの一人です。

とはいえ軍部では階級としてはそこまで高くないので悪しからず。」

「ふむ、して綿月殿はこの『スラブラスター』に何用で参ったのかな?」

「私には姉がおり、そちらも綿月なので依姫で結構です。

目的としましてはこれ以上の攻撃をやめてもらうべく交渉する為に参りました。」

「ふむ、これは失礼。

だが依姫殿、先に攻撃してきたのはそちらではないか。

我らはそれに対する反撃と報復の一撃を行わせて頂いたが自分達の戦況が悪くなり降伏するのではなく攻撃を止めてくれとは………いささか勝手が過ぎるのではないか?」

「ええ、それを承知で来させて頂きました。

まともに交渉させて貰うだけの事をしていないのは百も承知です。

ですが私達としてもこれ以上月面都市に被害を出すわけにはいきません。」

 

するとスライムジェネラルはしばらくの沈黙の後に大きく笑い始める。

 

「がーっはっはっはっは!!

危険も無理も百も承知か!誠に愉快愉快。

我らは貴様らのような人物はとても気に入っている。

そうじゃな、ではどうするべきか………答えは依姫殿も分かっているのではないか?

いや……………それを覚悟してこちらに来たのではないか?」

 

やはりお見通しのようですね。

 

「ええ、こちらとしてはこれ以上の攻撃をやめて貰い、こちらの謝罪をしっかり受けて貰いたい。」

「我らとしては喧嘩を売った相手に灸を据えたい。」

「「お互い敵同士であり、意見が食い違うのであれば決闘にて決めるのが筋というもの!!」」

 

「お互いに刀剣を扱う剣士同士。」

「これで燃えぬわけが無し!」

 

すると部屋のモニターに一匹のスライムが現れ、部屋のスピーカーから機械的な音声が響く。

 

『READY・>

 

スラブラスター・・決闘システムオートスタート。

ヤりあうなら・・僕二・・被害が出なイようにしてください。>』

 

すると部屋の内部にかなり強大な防御結界が発生する。

 

「おお、すまぬなスラブラスター殿。

この部屋への配慮を忘れておったわ。」

「スラブラスター!?

まさかこの攻撃衛星そのものとでも言うのですか!?」

「そういうことじゃな。

元々このスラブラスターは我らスライム族が作り出した兵器の一つなのだがな………いつしか魔物となったのだよ。」

「魔物…………」

「まぁそなたらの言う妖怪と似たようなものと思って貰えれば結構。

それでは………………始めようか。」

『READY・>』

 

月の命運をかけた戦いが始まろうとしていたのだった。

 



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対決!スライム将軍!  その1

 

 

~衛星軌道上~『スラブラスター内部』

 

 

私は刀を構える。

同時にスライムジェネラル殿もその両手の二振りのバスターソードを構える。

 

 

…………隙が少ない………むしろその少ない隙が誘導する為にわざと作られた隙だと思う。

 

あれ程の御仁が隙の無い構えを出来ないはずもない。

 

「ふっ、やはり動かぬか。」

「ということはやはり罠でしたか………」

「ふっ、正解だ。

だがワシは己の特性ゆえに自分から先に動くことは出来ぬ。

だからこそ先手は依姫殿に譲るとしよう。」

「特性…………何かハンデを背負っているのですか?」

「ふっ………ハンデか………確かにこの特性をハンデと呼ぶものもおる。

だが…………一流のモンスターマスターによって育成された魔物は如何なる特性であろうともそれを全て強みとする。

主によって種族の限界を超えた力を授けられた我が剣技……………果たして依姫殿に受け止めきれるかな?」

「モンスターマスター………ですか。

まぁまた気になるものがかなり増えましたが……受けて立ちましょう!『祇園様の力』を今ここに!」

 

私は床に刀を突き刺して自身へと呼び出した祇園様の力を発動させる。

 

スライムジェネラル殿の周りに無数の刃による檻が発生して動きをまず封じる。

 

「ふむ、まずは動きを封じるか。

悪くない選択だな。」

 

スライムジェネラル殿は動じてすらいない。

まるで"慣れている"ようだ。

 

「『愛宕様の火』!参ります!」

「ほう、腕に火を………体技も使えるという訳か。」

「ハァァァァアア!!」

 

私はあえて見せている隙のある場所ではなく隙の一切無い正面から戦う。

『祇園様の力』によってスライムジェネラル殿は少しでも動けば祇園様のお怒りに触れてその刃によって体を切り刻まれる。

 

だが……………

 

「ふんぬっ!!」

「なっ!?刃の檻を一撃で!?くっ!?ぁぁああ!?」

 

そう簡単には破壊できない祇園様の力によって産み出された刃の檻はスライムジェネラル殿がその場で回転しながらバスターソードを振るう事によって根こそぎ破壊されてしまい、その風圧で私も怯んでしまう。

 

スライムジェネラル殿の回転は更に速度を増していき、巨大な竜巻を引き起こした。

その竜巻はやがてスライムジェネラル殿の元を離れて私の方へ向かっていく。

 

「『石凝姥命』様!!」

 

私は石凝姥命様の八咫の鏡を用いて竜巻を跳ね返す。

とはいえ………

 

「甘いわ!『ふうじん斬り』!!」

 

スライムジェネラル殿は暴風を纏わせた剣で斬りかかってくる。

なんとか避けてはいるが避けても暴風の刃が後から発生して軽く体を刻まれる。

 

「くぅ!?愛宕様!」

 

私は腕の炎を刀に纏わせて反撃を行う。

炎による熱風で暴風を多少相殺させる事に成功しており、なんとかつばぜり合いまで持っていけている。

 

「ほぅ!熱風で逆向きの風を作りこちらの風を多少弱めるか!

だがまだまだじゃ!!」

「ぐぅぅう!?」

 

スライムジェネラル殿が更に力強く刃を振るう事によって更なる暴風が発生して私も吹き飛ばされる。

 

「まずはその厄介な炎を消させて貰おうか!

『いてつくはどう』!!」

 

すると衛星が放った凍てつく空気を持った波動をスライムジェネラル殿も放ってくる。

そして…………

 

「っ!?愛宕様が!?」

 

まずい、愛宕様の力を私から追い出された!?

 

「『しんらばんしょう斬』!!」

 

スライムジェネラル殿がその2振りのバスターソードの柄同士を合体させて両刃の薙刀へと変化させてその場で回転させる。

するとその薙刀が月を思わせるような輝きを放ち始め、やがてそれが振るわれる。

 

あれを受けるわけにはいかない!?

 

「なっ!?」

 

咄嗟の判断で振るわれる刃の直線上から離れたが正解だった。

振るわれた刃が空間ごと斬り裂いて一時的とは言え空間がズレていた。

 

「ほう!初見であれを避けるか!

なかなかやるではないか!」

「空間ごと斬り裂いて見せるなど………後で教えてください。」

「がーっはっはっはっは!!素直な奴は嫌いじゃないぞ!この戦いが終われば教えてやろうとも!」

 

燃えてきた。

あれを教えて貰えれば私はもっと己の近くにある者達を守れる!

そして確信した。

一本間違えば即死するような攻撃を行ってきてはいるが彼らは私達を殺すつもりはない。

 

とは言え私も少しでも油断しようものなら私とて一撃で殺されてしまう。

 

「『火雷神』!!」

 

私は雷雨を作り、何頭もの雷の龍と共に突撃する。

 

「面白い!面白いぞ依姫殿ォォオオオオ!!!

『てんいむほう斬』!!!」

 

スライムジェネラル殿がその両刃の薙刀を回転させながら投げ飛ばしてブーメランの如く投げ飛ばす。

 

その薙刀の描く軌跡はオーロラを発生させて飛んでくる。

 

「貰った!」

 

だけど私はなんとか体に少し無茶な動きをすることでそのオーロラの剣をギリギリ回避して私は獲物を失ったスライムジェネラル殿へと攻撃する。

 

「ふっ、私が剣だけと思うたかぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!」

 

するとスライムジェネラル殿がその両腕を前に出して闘気の塊を産み出して………

 

「『獣王げきれつしょう!!』」

 

とてつもない威力を誇る闘気の竜巻2つが捻れ合いながらこちらに迫ってきた。



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対決!スライム将軍!  その2

今回は豊姫サイドになります。


~衛星軌道上~『スラブラスター内部』

 

 

依姫は無事にこの衛星を指揮する人物と遭遇出来るかしら………。

 

それに私としてもなんとか脱出したいところなのだけど………………

 

「隊長~!とりあえず何縛りでいきます?」

 

「んー、普通に手足を結んで棒にくくりつけて運んでもでもいいんだが簀巻きにして脚の方持って引きずるってのも………」

 

なんか………能力一時的に封じられた上にどうやって縛るか、そして引きずるかの相談をされてます………。

 

「あの………せめて普通に運んで貰えませんか?

流石にここまでされれば逃げる気も起きませんし………」

 

何故かマホトーンとやらをかけられてから魔力や妖力といった類いが一切行えなくなってしまった。

 

私のワープは確かに能力による物だが、それ以外にも魔力等をサポートに用いているのでこの状態ではどうあがいても逃げられなかったりする。

 

殺し合いになるまで交戦するつもりも元々無いのでちょうど良かったとは思いますが………

 

「ん?普通に運んだ方がいいか?

しゃーない、とりあえずモニタールームにいくぞー。」

「「「了解でーす!」」」

「「「了解~」」」

 

………思ったよりもなんか緩い感じがしますね………。

 

 

しばらく彼らに付いていって情報収集目的で彼らが何故月へとやって来たのかを聞くことにしました。

 

「貴方達は何故この月へとやって来たのですか?」

「へ?何故来たか?

んー、一応主であるスィラ様の指示で月の都とやらが本当にあるのかを確認するのが一つ。」

 

スィラとやらが今回この者達を差し向けてきた張本人と言うわけですか………。

 

「あとは本当にあったのならどんな生活をしているのかとかそこら辺を調べたり現地の民と交流するのが一つ。」

 

ふむ………その辺りを聞く限り本当に月面都市があるかどうかは半信半疑で調べに来た様子ですね………あの将軍がちょっかいさえ出さなければ………

 

「あと単純に旅行したかった。」

 

あれっ!?いっきに台無しになっちゃいましたよ!?

 

「メタルスターとか空に浮かぶ島とかモンスターの体内で寝泊まりしたことはあったけど月とかの宇宙での寝泊まりは今まで無かったよなぁ~。」

「そうそう、天空の世界に関しても海があるかどうかくらいでしか違い無いもんなぁ………。」

「マンモデウスの体内は臭かったなぁ………」

 

あれ………どうしましょう……本当に旅行客か何かにしか見えなくなってきたのですが………。

 

「あ、そうだ。

こっちも聞きたいんだが………そちら側の月面都市は何故こちらをいきなり攻撃してきたのさ?

こっちまだなんもしてなかっただろうに。」

 

う……やっぱり気になりますよねぇ………今回ばかりは完全にこちらに非がある上に返り討ちにされてますから取り繕うことも出来ません………。

 

「あー、今回は私達が乗り込んだのはその非礼を詫びるというのも目的の一つだったのです。」

「へ?なら何でこそこそしながら来たのさ?

こっちとしても普通に来るようならちゃんと交渉の席を設けたと思うぞ?」

 

確かにその手も無いわけでは無かったのですが………

 

「流石に貴方達を完全に信じるわけにはいきませんでしたし………素直に指示を出す司令官の役割を持つ者に接触出来るか怪しい上にこちら側が圧倒的に不利な条件を提示されても文句を言えない立場でしたから。」

 

するとリーダーと思われるピンク色の騎士が納得するように弾む。

 

移動途中に聞き出したのだが………あくまでもこの騎士達の本体は下にいる丸くプニプニと愛らしい妖怪、スライム?と呼ばれる愛くるしい見た目の子達がらしい。

逆に上の突起にに乘つまかて皆この乗っかっている。

 

そしてこの騎士の部分なのだが………驚いたことにあの鎧は中身は完全な空な上にオモチャらしい。

 

そのオモチャ相手に簡単には負けてる私達って…………

実際に考えてみるとかなり精神的にきついのでさっさお話を進めることにした。

 

「今回私達が攻撃を仕掛けた………というか仕掛けさせてしまったのは軍部の過激派の暴走が原因なのです。」

「過激派?仲間割れでもしてるのか?」

「………身内の恥を晒すようなものですがそうなります。」

 

するとピンク色の騎士、『ハートナイト』殿が首を傾げる。

 

「ふーん………なんで人間とかってそんな簡単に仲間割れするんだろなぁ……俺達魔物は主に絶対の信頼を寄せているから喧嘩くらいはするけど仲間割れなんてしないのに。」

 

………彼らは絶対的な主に従い、同じ主に自分から付いていくからこそその信頼関係が生まれるのでしょうね…………

我々は自分達以外は基本的に認めようとしない程傲慢で排他的ですからね………

玉兎達の地位をもう少しどうにかしてあげられたら良いのですが………

 

「お?どうやらあんたが逃がした娘っ子がスライムジェネラル殿に決闘を挑んでるみたいだぞ?」

「っ!?本当ですか!?」

「あぁ、なんなら一緒にモニタールームで見るか?

流石に事情をもう少し聞きたいのもあるから縄は外せないけど。」

「はい………姉としてあの子の事が気になりますから………」

 

依姫………無事で居てくださいね………




こい


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対決!スライム将軍!  その3

 

 

~衛星軌道上~『スラブラスター内部』

 

 

スライムジェネラルの両手から闘気の塊が生成されて渦を巻く。

やがてその渦は竜巻となって放出され、二つの竜巻が二重の螺旋を作り出して全てを凪払う暴風となる。

 

『獣王げきれつしょう』

 

とある世界のピンク色のワニが生み出した体技であり、己の闘気を両手に集中してバギとベタン属性での大ダメージを与える体技である。

 

元は『獣王会心撃』または『獣王痛恨撃』という片手で一つの竜巻を作る技だったが、それを進化させて生まれた技がこの『獣王げきれつしょう』になる。

 

そしてその二重螺旋の竜巻が今依姫へと襲いかかろうとしていた。

 

「っ!?」

 

依姫はその激しい竜巻を避けるために反動の強い弾幕を横に無理矢理放ちながら移動し、その反動による加速することでギリギリ回避する。

 

しかしその無理矢理使ったことによる反動は決して小さくなく、片腕が軽く上がりにくくなっていた。

 

「ぬぅ、確実に当てられるように誘導したがあの土壇場で避けるとは………。」

「かなり………あぶなかった………ですよ………。」

「とはいえその様子………何か無茶をして避けたと言った所か。」

「そうですね………それなりの無茶はしましたよ。

でも………直撃するよりはマシです。

それに………貴方相手にはダメージを覚悟してでも無茶を通さなければ勝ち目などありませんから!」

「イイゾ!イイゾ!もっとだ!もっと私達を楽しませろォ!」

 

 

スライムジェネラルはさらに闘志を燃やしてテンションを上げている。

 

「愛宕様!祇園様!」

 

依姫は己の力を限界を超えて使うことで二つの神を同時に扱う。

しかしこれは己の限界を無視しているために使えば使うほど反動でダメージを受ける。

 

しかし強い特技とは基本的に反動が付きやすい物だ。

その反動とどう付き合うかによってその個人の実力は大きく伸びるといっても過言ではない。

 

依姫の力によって炎を纏った剣による檻が出来上がる。

それは中にいるものの動きを封じながらその炎の熱でダメージを与え続け、動いた者は祇園様の怒りを買って炎の剣によって体を刻まれる。

 

「ガハッ!?」

 

依姫は反動で血を吐くが根性で堪える。

 

「ふぅ………ふぅ………剣を投げた状態で………簡単に抜け出せますか?」

「ぬぅぉぉぉぉおおおおお!!!舐めるなぁ!!」

 

スライムジェネラルは呪文を唱えながらその場で高速回転を行う。

スライムジェネラルを中心として風が渦を巻き始めて巨大な竜巻を生み出し、極大暴風呪文『バギムーチョ』と合わさって全てを凪払う暴風を生み出す。

 

二回行動の利点は二つの動きを同時で行えるという点にある。

その二つの行動を一つの行動に集約させた場合、その力は想像を絶する物となる。

 

これは強いていうなら本来の半分しか動けなくなるという反動を抱えた技であり、モンスターマスターの本気で育てた魔物はこれをいかに使いこなすかが勝負の鍵になりやすいのだ。

 

その巨大な竜巻は祇園様の剣を全て吹き飛ばす。

しかしこれによりスライムジェネラルは祇園様の怒りを買って吹き飛ばされた剣は全てスライムジェネラルへと向かう。

 

これによってスライムジェネラルの上にいる将軍は全身に剣を生やしたオブジェとなる。

だが依姫はこの真実を知らなかった。

 

「私の本体はこっちだぞぉぉぉおおおお!!!『空裂斬』!!!」

 

そう、スライムジェネラルは下のスライムが本体であり、上の将軍は人形なのである。

そして地面に突き刺さる己の獲物を抜き取って暴風を纏った剣による空を切り裂く一閃『空裂斬』を放つ。

 

これにより『トルネード』『バギムーチョ』『空裂斬』による風による"体技"、"呪文"、"斬撃"の全てによる攻撃が合わさって更に『空裂斬』に含まれる爆裂の呪文、『イオ』による爆発的な加速によって音を捨て去る攻撃となる。

 

「ガハッ!?ぐぅぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!?!?」

 

依姫はその一撃を避けることは叶わず直撃する。

それにより全身はズタズタにされて暴風によるとてつもない風が依姫を壁に押さえつける。

 

だが依姫の目は今だ闘志を燃やしていた。

 

「『火雷神』!!」

 

依姫はその動けなくされた体で『火雷神』をその見に宿し、スライムジェネラルへと雷を放つ。

 

「ぬぐぉぉぉおおおおおおお!?!?」

「まだ…………まだぁぁぁああああ!!!!」

 

更に7頭の炎の竜の首がスライムジェネラルを襲う。

スライムジェネラルはその口に掴んだ剣で次々と凪払うが、全てカバー仕切れずにどんどん噛みつかれて炎に包まれていく。

 

「ぐぬぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!?!?!?」

 

スライムジェネラルはダメージを受けすぎて暴風を思わず解除して倒れてしまう。

依姫はまだ油断せずにその刀によるトドメを刺すために突撃する。

 

するとスライムジェネラルは突如として復活して依姫へと突撃する。

 

『てんしのきまぐれ』

 

これもSSランクの固有スキル殆どに付いており、これによってとてつもなく低い確率ではあるがまれに死んだとしても蘇るのだ。

 

「ハァ!!!」

「セイヤァァァアアア!!!」

 

一閃が二人を貫く。

そして立っていた者は……………依姫だった。



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対決!スライム将軍!  その4

 

 

~衛星軌道上~『スラブラスター付近』

 

 

ツクヨミ達月の代表達は謎の機動攻撃衛星の付近まで出向いていた。

 

「ツクヨミ様、まもなく敵機動攻撃衛星付近となります。」

「うむ、了解した。マイクの準備を。」

 

すると家臣の一人である玉兎がマイクを差し出す。

 

「ご苦労、総員はいつでも防衛だけ出来るように準備しておいてください。

決して反撃だけはしないようにお願い致します。」

 

「「「仰せのままに」」」

 

「それでは…………『機動衛星、この声が聞こえているなら返答を願います。』」

 

『READY・>

 

 

ボクは・・スライム型機動衛星『スラブラスター』

アナタ方ハどちら様でしょうカ?』

 

月の面々は驚愕していた。

確かに何かしらの反応はあるとは思っていたが、反応をしたのがその機動衛星自身であり、その人工知能が自分達の予想が正しければかなりスムーズに受け答えを出来る程に進化したその人工知能は月の技術を上回る可能性を持っていたからだ。

 

『私の名はツクヨミ。

この月面都市の代表と認識してもらって構わない。

貴殿は………その機動衛星の人工知能と認識で合っているだろうか?』

『ソの認識デ構いまセン。

ではゴ用件をドウゾ』

『ではスラブラスター殿、単刀直入に伝えさせて頂きます。

我々月は降伏致します、その為現在貴殿の内側で起きているであろう戦闘行為を中止して頂きたい。

そして貴殿へと侵入した二人の月人の現状をお教え頂いても?』

『・・・・・・エ?』

 

するとスラブラスターは想定外過ぎる事態に思考が少々乱れる。

 

『如何されたか?』

『・・・・少々想定外ノ事態が発生しテおりまシタので。

少々マスターに連絡を入れても構わないでしょうカ?』

『マスターというと貴殿の生み出した者で大丈夫だろうか?

それとも貴殿へと指示を出す権限を持つものという認識で大丈夫だろうか?

それと連絡はしてもらって構わないんだがとりあえず戦闘行為がまだ行われているようならば先に中止して貰いたい。』

『・・・決着ナラ付いておりマス。

個体名:綿月豊姫は確保、ただし個体名:綿月依姫は現在ボクの指揮をしていた者は個体名:綿月依姫によって撃破されております。』

『なっ!?それは本当でしょうか!?』

『ハイ、その為アナタ方の降伏を受け入れるべきがどうか少々ワタシには判断しかねマス。

とりあえずは停戦ト言う形でワタシが通信ヲ終えるまで双方の代表者がお互い監視シ合いながら情報のすり合わせを行っては如何でしょうカ?』

 

『ふむ、承った。

場所は………そうだな、貴殿達によって跡形もなく消滅しているレーザー攻撃施設跡地で如何だろうか?』

『了解しましタ。

今回の指揮官である『スライムジェネラル』ヲ蘇生させたら向かわせまショウ。

とりあえず綿月姉妹をソチラに引き渡しますノで少々お待ちくださイ』

 

するとスラブラスターの口の部分のシャッターが開き、中から体を大砲の砲身の中に押し込まれた綿月姉妹が姿を見せる。

 

『3・・・2・・・1・・・Go!』

 

そして二人は凄まじい威力で発射されて月面へと突き刺さった。

だか何故か二人には傷一つなかったのはどういう技術なのか気になって仕方がなかったツクヨミだった。

 

_________________________________________________

 

 

~月面都市~『レーザー施設跡』

 

 

消滅したレーザー施設跡にはツクヨミ、綿月姉妹、その他数人の月上層部の者達が用意された席に付いていた。

その正面にはスラブラスター内部にいた指揮官のスライムジェネラル他、副官のまどうスライム、防衛隊長のハートナイト、メカニックのスライムボーグがいた。

 

スラバッカ王国では、どうしても大型の機械の魔物が多かったり、建築作業も手が足りないのもあって建築及び整備、メカニックとして多くのスライムボーグが仲間となっており、魔法関連の技術や資料の作成、整理等には知能の特に高いグランスライムやまどうスライムが重宝されていた。

 

その為何かしら交渉等があるとだいたいこの二匹のどちらかは確実に居たりする。

 

「いやぁ、まさか一度殺されるとは思わなかったわ。

私もやはりまだまだと言った所であるな。」

「いえ、正直かなり僅差の戦いでした。

私も一歩間違えば簡単に殺されていたと思いますから。

それにしても……………その…………」

 

依姫とスライムジェネラルは一瞬で意気投合しており、お互い武人気質な物もあり、とても良い関係を気付けていた。

そして依姫の………いや、ほぼ全員の視線がスライムジェネラルのとある部分へと向いていた。

 

「その騎士の部分はそれで良いのですか?」

 

そう、スライムジェネラルの騎士部分は依姫によってズタズタに切り裂かれており、いろいろともげたり穴が開いたり裂けたりしていた。

 

「問題しかないから帰ったらスペアに変えて修理に出すぞ?」

 

そう、スライムジェネラルの今の騎士は…………セロテープや絆創膏等で応急処置だけしたなんとも可哀想な状態となっていたのだった。

 

 

心なしか全員の目には騎士の部分が泣いているように見えたそうだ。



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モンスターマスター同士の戦い

 

 

~スラバッカ王国~『ヘルクラウド:中庭』

 

 

スィラは懐に入れていたスライム型携帯端末を取り出して仲間のスラブラスターから連絡と相談を受けていた。

 

「あぁ……あぁ………そうか。

とりあえず痛み分けという形にしておいてくれ。

降伏は受けなくていい、どちらも負けた形だ。」

 

降伏?負け?どういう意味だろう?

 

「あぁ………とりあえずそういう形で頼む。」

 

するとスィラは通信を終えて私の方に向き合う。

 

「その…………何かあったんですか?スィラさん?」

「いや、大丈夫だ。

月に向かわせていたスラブラスターに喧嘩を売られて痛み分けで終わったってだけだ。」

「へっ!?スィラさんのスラブラスターが負けたんですか!?」

「いや、中にいた指揮官のスライムジェネラルがやられたみたいだね。

ただ向こう側もそのタイミングで降伏してきたからスラブラスターも扱いに困ったらしい。」

「…………へ?」

「どうも向こう側は降伏する動きを見せていたみたいなんだが独断で乗り込んできた二人組がうまいことスライムジェネラルに決闘を申し込んでギリギリで勝てたみたいだね。」

 

あれ?そのスライムジェネラルって………

 

「そのスライムジェネラルって………竜巻さんですか?」

「うん、正解。」

「竜巻さんって…………全力でネタに極振りした構成でしたよね。」

「そうだな。」

「なんで指揮官なんですか!?」

「ここの住民そんなに強い人いないからこのくらいじゃないと良い戦いにならないからな。

知っているだろう?私が白熱した戦いが好きな事を。

スラブラスターの録画してくれた戦いを見るのが実に楽しみだよ。」

 

はぁ………相変わらずだなぁこの人………

でもそんな所も好きなんだよなぁ………

 

「なぁイル…………」

「ふぇ?は、はい!」

「私達も久しぶりにやりあわないか?」

「へっ?」

「この世界の奴らは確かに個々の能力はそんなに高くない。

だがな、どいつもこいつも戦闘が極端に上手いんだよ。

戦い方が、避け方が、能力の使い方が。

だからこそ今私は闘志を今も燃やしていられる。

私達モンスターマスターは魔物を育て上げることを目的とするがその過程で己の育て上げた魔物同士をぶつけ合い、どれだけ強くなったか。見るのも醍醐味の一つと言えるだろう。

私はな…………今全力で戦いたくてウズウズしているのだよ!」

 

あちゃー、ついに我慢の限界来ちゃったかぁ………

スィラさんの全力の指示があると弱いモンスターでもかなり化けるからなぁ………あんまり指示出しちゃうとちょうど良い戦いにならなかったんだろうなぁ。

 

「はぁ………いいですよ。

フィールドは?」

「闘技場以外にあるとでも?」

「デスヨネー、でも本当に久しぶりです。

スィラさんが居なくなる前はいつもこんな感じでしたもんね。

まぁだいたいお兄ちゃんがスィラさんと戦ってたけど。」

「確かにイルとは戦った回数が少なかったな。

だからこそ私に見せてくれ!君の成長を!努力を!」

「はぁ………ほんとこうなるとキャラ変わるなぁ………でも、望むところですよ!」

 

 

_________________________________________________

 

 

~霧の湖~

 

 

「ぐぁ!?」

 

巨大な『つなみ』によって自称最強の氷の妖精が吹き飛ばされる。

 

「チ、チルノちゃん!?」

 

氷の妖精、チルノの親友である大妖精は吹き飛ばされたチルノが心配になって駆け寄る。

 

幸いチルノにはダメージはない。

それどころか吸収したようだ傷が回復しているようにも見える。

だがいくら吸収して回復出来るとはいえ限界はある上にその衝撃波までは吸収しきれないのだ。

 

「うぐぐぐっ!?

あたいはサイキョーなんだ!

こんなデカイ蛇に負けてられないんだ!」

 

チルノは無謀にも己よりも圧倒的なまでの巨体を誇る蛇に再度突撃する。

 

そしてその蛇は湖を全て凍らせかねない程の超巨大な氷塊を生み出して叩きつける。

 

チルノは吸収して回復するがまたしても吹き飛ばされる。

 

「なぁ、君はなんでそこまで最強になりたいの?」

 

蛇を使役する少年はチルノへと問いかける。

なぜそこまで頑張れるのかが気になるからだ。

 

「決まってるよ!勝ちたいから!あの脇の開いた巫女や白黒に負けないくらい強くなって大ちゃんとかを守りたいもん!

あたいはサイキョーなんだ!このくらいでへばってられないんだ!」

 

「君は………強くなって家族を守れるようになりたいんだね。」

「家族?ううん、友達!むしろ親友!でも大ちゃんはそんなに戦ったりが好きじゃないからあたいが守るんだ!」

 

「そっか。

ならちょっとだけ一緒に来ない?君を僕達モンスターマスターの力で強くしてあげられるよ。」

「っ!でも大ちゃんが………」

「大丈夫、かなり真剣な育成ではなくこの世界でトップになれるくらいならそんなに時間はかからないだろうからね。」

「っ!あたいは…………ついてく。

だからあたいを強くして!」

 

「わかった、じゃあチルノちゃん。

君にはこの『リバイアさま』の力をあげるよ。

この世界でモンスターの力を持った妖怪とか凄く面白そうだ!

スィラ!待ってろよ!俺はこの世界の妖怪を育てて挑むぞ!」

 

少年は楽しそうにしながら霧の中へ消えていったのだった。



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モンスターマスター同士の戦い  その2

 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

『さぁ!始まりました!幻想入りして久しく出来ていなかったモンスターマスター同士の戦い!

今回のエキシビションマッチには特別席に幻想郷の皆様をお招きしています!!』

 

結局スィラさんとの対決は闘技場に国民………というかスライム達と特別席にじげんりゅうを使って呼ばれた幻想郷側の皆さんをお招きして始めることになった。

 

スィラさんとの戦いはかなり久しぶりだから少し緊張するなぁ………

 

『実況はワタクシ!幻想郷一やかましいスライムこと『ベホイミン』、解説には毎度お馴染み『ホミロン軍曹』と幻想郷から無駄に我々に詳しい『紫もやし』殿でお送り致します!』

『誰が紫もやしよ!?

つか無駄にってなによ!?無駄にって!?』

 

あの人………何度も私達を召喚しては返り討ちにあってた人よね………ここの世界の人だったんだ。

 

『さて、スカウトリングから飛び出して貰うのも盛り上がるので良いのですが今回は全モンスターがSサイズなのもあり、スィラ様からの提案によって選手のモンスター達には順番に入場してもらい、我々で軽くモンスターの説明をしてからのバトルとなります。』

『スィラ曰く幻想郷の住人はこれから出る魔物が全くわからないだろうからとの事よ。

まぁ妥当な判断だとは思うわよ?』

『うむ、やはり観客がなかでやっていることがわからないのでは見世物はつまらないであるからな!』

 

見世物って…………まぁスィラさんからしたらショーでもあるのは事実か。

 

『それでは早速選手に入場して貰いたいと思います。』

 

「皆!準備はいい?油断したら多分速攻で死ぬから気を付けるよ!」

「ガゥ!」

「クカカカカ!滾るではないか!」

「フハハハハ!我々がそなたに勝利をもたらそうではないか!」

「ぐぎゃぁああああ!!」

 

『それではチャレンジャー!イル殿の入場となります!』

『出場モンスターは『闇竜シャムダ』、『大魔王マデュラージャ』、『真・魔王ザラーム』、『名も無き闇の王』の合計四体であるな。

名も無き闇の王以外は元々『ギガボディ』、さらに名も無き闇の王は元々『超ギガボディ』を持ったモンスターである。

どれも世界を崩壊させかけた大魔王クラスの魔物である上に『名も無き闇の王』は我々の元々いた世界含めて複数の世界を同時に滅ぼしかけた存在、それをSサイズまで小さくしたみたいであるな。』

『うそ…………魔王使いとは聞いていたけどこんなの化物過ぎるわよ………』

『この編成の最大の特徴とは何になるのでしょうか?解説の紫もやしさん?』

『誰が紫もやしよ!?

はぁ………とりあえず全員が複数回行動持ちであり『闇竜シャムダ』以外は2~3回行動、『闇竜シャムダ』は二回行動という圧倒的な手数でしょうね。

それに『大魔王マデュラージャ』の『ときどき黒い霧』と『闇竜シャムダ』の『いきなり黒い霧』でひたすら呪文を封じてくるから蘇生をメインに立ち回ったりとかはしにくいでしょうね。』

 

ホントによく知ってるなぁ………だいたい当たってるから割と作戦バレになるけど………

まぁスィラさん相手だと見ただけで何してくるかだいたいわかっちゃうだろうからそんなに問題はないけどね。

 

『わかりやすい解説ありがとうございます!

続いては我らが主スィラ様の入場です!』

 

すると向かい側の門が開いてスィラさん達が入場して………

 

「うげ!?」

「ぎゃ!?」

「ぬぅ!?」

「ぎょ!?」

 

私のモンスター全員が反応する程のトラウマ編成だった。

というか私も割とトラウマなんだけど………

 

『ななななんとぉ!?!?スィラ様割と全力で潰しに来たぁ!?

メンバーは『スライム』のスラリン殿、『スライムベス』のスラみ殿、『ドラゴスライム』のドラお殿、そして我らが『ホイミスライム』最強のミイホン殿だぁ!?!?』

『え?あいつそんなに強かったの?』

『うむ、主の最強編成の一員であるな。』

 

よりによって最強の編成使ってくるなんて聞いてないんですけどぉ!?

 

「イル!久しぶりの勝負だ!手加減はいらないから全力でかかってくるといい!!」

 

むしろこっちが手加減して欲しいです!?

 

『さて、パチュリー殿はスィラ様の編成をどう推察しますか?』

『だからむr………合ってるわね。

とりあえず種族的なランクだけで見れば全員が元々Fランク、つまり最弱の部類に入る種族だけれど確かに種族として覚える特性を見るとかなり強力な物が多いわね。

スライムが『ジャミング』系統の妨害、ドラゴスライムとスライムベスがメインの火力』、ホイミスライムが回復特化もしくは呪文アタッカーの兼任かしら?

どのみち編成が想定外過ぎて読めない要素が多いわね。』

『素晴らしい回答ありがとうございます!

それでは答え合わせは試合中に行うとしましょう。

それでは!勝負開始!』

 

「シャムダ!!」

「スラみ!!」

 

「グァァァアアアア!!!」

「ピキィィイイイイ!!!」

 

シャムダからは黒い霧、スライムベスからは赤い霧が吹き出し始め、フィールドを覆い尽くして激突する。

 

そして相手の霧を押し退け合い、片方の霧がフィールドを支配する。

 

試合の始まりを告げるのは…………

 

『赤い霧』となった。



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モンスターマスター同士の戦い  その3

 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

『やばいっ!?霧合戦取られた!?』

 

魔物達にはフィールドを支配するタイプの特性を持つ魔物が複数いる。

 

斬撃を使えなくする『赤い霧』

呪文を使えなくする『黒い霧』

体技を使えなくする『白い霧』

回復をダメージにする『冥界の霧』

素早い者程動きを遅くし、遅い者程動きを速くする『リバース』

周囲の空間を無差別に歪ませて動きを大きく阻害する『シャッフル』

 

この周囲のフィールドを支配する技を特性により発動することが出来る魔物が存在する。

 

そしてモンスターマスター同士の本気の戦いはこれを如何に維持して自分の有利な状況を維持するかによって変わってくる。

 

そして戦闘開始直後で発動するこの特性によるフィールドの奪い合い、霧系統がメインとなるために霧合戦と呼ばれる。

 

これに負けた場合大きく動きを阻害されやすくなるため、かなり状況は悪くなりやすいのだ。

 

『おおっとぉ!戦闘開始直後の霧合戦!まずはスィラ様の赤い霧がフィールドを支配したァ!』

 

「取られたものは仕方ない、多分スライムが速攻で妨害に来るから警戒し………まずっ!?」

 

魔物達に警戒をしろと伝えようとしたその瞬間すでに私の魔物達の後ろにはスライムが移動していた。

 

『超こうどうはやい!?』

 

超こうどうはやい

 

状態異常等の耐性が致命的なくらいに下がる変わりに行動がとてつもなく速くなり、思考速度が跳ね上がる特性であり、こうどうはやいの上位に当たる特性である。

 

イル達の魔物の中で唯一反応出来るのは

 

「ぐぎゅああああああ!!!」

 

『名も無き闇の王』のみだ。

 

「甘い息!」

「作戦封じの息!」

 

僅かにスライムの方が速く、"2種類"のブレスを魔物達は受けてしまう。

 

『不味い!?作戦封じの息でこちらの指示が届かなくなる………もう一種類は何?』

 

作戦封じの息

 

これは魔物を興奮状態へと陥らせてモンスターマスターの指示を聞けなくする特技である。

さらに身代わりを行っている場合、その興奮作用によって身代わりを解除させる効果も持っており、一度やられると細かい指示を与えることが出来なくなるので大きく動きを阻害されてしまう。

 

「ぐぎゅああああああ!!!」

 

『おっとぉ!スラリン殿!ジャミング系のブレスを二種類直撃させて反撃の甘い息によって眠ってしまったぁ!』

 

名も無き闇の王による『甘い息』をもろに直撃してしまい、スライムは眠り状態へと陥ってしまう。

しかしスライムが移動したのは自分達の仲間の反対方向に挟み込む形の為に他のモンスター達には当たらない。

 

だがそれが致命的なまでの効果を生み出した。

 

『スライムベス』、『ドラゴスライム』、『ホイミスライム』の全員と眠っているスライムが己を昂らせる。

 

『系統バーン発動!!スライムバーンだぁ!!』

『系統バーンはその魔物が属する系統によって発動条件が違うのだけれど同じ系統の魔物が味方に複数入ればいる程発動確率が上がっ戦闘において特定の行動が起きた場合にテンションを上げる効果があるわ。

スライムバーンの発動条件は妨害を受けること、これが私が最初に一番警戒していた能力ね。

しかもスライムには『一族のほこり』という特性が備わっているからスライム四体によるパーティーなら妨害が一度でも入れば全員が発動するわね。』

 

「ぐぎゃぁああああ!!」

 

名も無き闇の王は追撃とばかりに『邪竜神のさけび』と『おぞましいおたけび』を加える。

 

「ちょっ!?」

 

『おおっとぉ!『邪竜神のさけび』と『おぞましいおたけび』の合わせ技だぁ!』

 

「ぴきっ!?」

 

スライムはこのおたけびによって大きくダメージを受けるが向いている方向が方向なので他の三匹には当たっておらず、さらに最悪な事にスライムが起きてしまい、呪い、こんらん、マインドの全てにかかってしまう。

 

イルの『名も無き闇の王』は特性で『超ガードブレイクSP』を持っており、これは消費するMPが2.5倍に跳ね上がる変わりに相手の全ての無効以外の耐性を弱点まで下げる効果がある。

 

そしてスライムは『超こうどうはやい』の代償で状態異常耐性が下がっており、状態異常を"とてつもなく"受けやすい。

 

これによって発動されてしまう効果は………

 

『スライムバーンがさらに発動だぁ!!

テンションがみるみる上がっていく!!

5!25!50!100!スーパーハイテンションだぁ!!』

 

テンションは上がれば上がる程攻撃の威力が上がっていき、最大の100つまり『スーパーハイテンション』状態の時の威力は驚異の四倍となる。

 

「猪口才なぁ!!」

 

真・魔王ザラームによるステルスアタックが発動し、ザラームは姿を消してスィラさんの方にいる三匹へと攻撃を行う。

 

ステルスアタック

一回目の行動で姿を消して二回目の行動で全体へと強力な攻撃力依存の体技ダメージを与える特技である。

だが相手はかなりばらけており、スライムには攻撃が当たらない。

 

『ピッ!真・魔王ザラーム の ステルスアタック!

スライム以外 に 999のダメージ!』

 

でもやっぱり簡単に耐えられてるか!

しかも今回は3回目の行動が出来ていない!?

 

『おおっとステルスアタック!良いダメージだぁ!』

 

そしてスライムベスが動き出してしまう。



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モンスターマスター同士の戦い  その4

 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

「ドラお!『青天の霧』!」

「ピキィィイイイイ!!!」

 

スィラの指示によりドラゴスライムからフィールド全体を覆い尽くす程の空色の霧が発生する。

 

これによりフィールドを覆い尽くしていた『赤い霧』は全て上書きされて封じられた技が使えるようになる。

 

そして青天の霧によってフィールドが支配され、新たな効果を発揮する。

 

S、M、Gサイズのモンスター、つまり『スモールボディ』、『スタンダードボディ』、『メガボディ』、『ギガボディ』持ちの魔物が相手に一撃で与えられるダメージというのは限界がある。

己の力のみでは突破できない限界であり、『超ギガボディ』のみが条件無しで突破可能な壁である。

 

しかしこの青天の霧はその限界の壁を無くし、敵味方関係なく限界を越えたダメージを与える事が可能になるフィールドを生み出す。

 

しかしこれはダメージ上限に到達する程の威力を元々持っていなければ意味がない。

 

だが今スライム達全員がテンション100となってすべての攻撃の威力が4倍となっている。

 

つまりこれが何を意味するかと言うと………。

 

 

「ピキィィイイイイ!!!」

 

「やばっ!?れんごく火炎!?」

 

『ピッ!ドラゴスライム の れんごく火炎!

スーパーハイテンションによりダメージ4倍適応!

闇竜シャムダ 大魔王マデュラージャ 名も無き闇の王 に 480 ダメージ!

真・魔王ザラーム に 960 ダメージ!

ドラゴスライム の テンション が 戻った』

 

「ピキ!ピキィィイイイイ!!!」

 

さらにドラゴスライムは緑色のブレスを吐き出して全員を攻撃する。

 

『ピッ!ドラゴスライム の ゆうきの旋風!

闇竜シャムダに反射された!

ドラゴスライム に 96 の ダメージ!

大魔王マデュラージャ に 全然効いていない!

名も無き闇の王 に 全然効いていない!

真・魔王ザラーム に 68 の ダメージ!

ドラゴスライム の テンション が 5 上がった!』

 

ゆうきの旋風はバギとドルマの息系統攻撃だから殆ど効かないけどテンション上がったのきついなぁ。

それにさっきのれんごく火炎でザラームは耐性無いからすごいダメージ受けてるし………他が半減無かったら不味かった………。

でも一番やばいのがまだ動いてないしシャムダとマデュラージャは特性で素早さがものすごく下がっちゃってるから先に行動出来ない………。

 

「スラみ!轟雷滅殺剣!!」

 

やっぱりそれ使ってきたぁ!?

 

スライムベスの左右から全てを滅ぼす必殺の剣が現れ、力を貯めた後に振るわれる。

 

そしてその一撃はとてもイルの魔物達が避けれるような一撃ではなかった。

 

「「グギャァァァァア!?!?」」

「ぐはぁぁぁぁぁ!?!?」

「ウボワァァァァァアアア!?」

 

『ピッ!スライムベス の 轟雷滅殺剣!

全てを滅ぼす必殺の剣が登場!

スーパーハイテンション により ダメージ 4倍 適応!

ロケットスタートSP が 発動!ダメージ 1.4倍 適応!

スタンダードキラーSP が 発動!ダメージ 1.5倍 適応!

全体 に 平均 2035 ダメージ!

全体 に 平均 1996 ダメージ!

『大魔王マデュラージャ』、『名も無き闇の王』、『真・魔王ザラーム』死亡!

スライムベス の テンション は 元に戻った!

スライムベス は テンション を 5 溜めた!』

 

「シャムダ!!」

 

シャムダホントによく耐えた!?

というか常にアタックカンタ無かったらそのまま三回目の攻撃でやられてた!?

 

そしてシャムダは精霊に語りかけるように聖なる歌を歌い始める。

 

 

 

 

 

…………絵面がかなりシュールではあったが。

 

『ピッ!闇竜シャムダ の せいれいのうた!

『大魔王マデュラージャ』、『名も無き闇の王』 の HP が 999 回復 して 復活!

闇竜シャムダ の ワンダーバーン!

闇竜シャムダ の テンション が 5 上がった!』

 

ザラーム復活しないの痛いなぁ………

 

「ミイホン!ベホマズン!」

 

「いくぜぇ!!」

 

『ピッ!ホイミスライム の ベホマズン!

全体 に 平均 999 回復!

テンション が 元 に 戻った!』

 

ホイミスライムはしっかりと育成することによって高い賢さを備えており、さらに種族としての特性により『回復のコツ』を持っている為に凄まじい回復力を誇る。

アモールの雨という技を使えば賢さなどに関係なくかなり大きな回復を望めるが、アモールの雨は2回分の行動を必要とするのもあり、回復力で言えば総合的に見れば呪文型の方がおおききいのだった。

 

「まだまだぁ!光の波動!」

 

ミイホンからも全てを包み込んで癒す優しい暖かさ持つさ持った光はスラリンの身体を癒す。

 

「ピッ!ホイミスライム の 光の波動!

スライム の 状態異常 が 全て なおった。」

 

これによりスラリンは再度凄まじい速度による行動を可能とした。

 

 

「マデュラージャ!」

「任せろ!ぬぉぉぉぉおおおおお!!!」

 

するとマデュラージャの身体から黒い霧が吹き出始め、周囲のフィールドを支配していく。

 

これにより呪文を全て封じる特殊なフィールドへと上書きされた。

 

「まだまだいきますよスィラさん!!」

「あぁ!簡単に終わってくれるなよ!!イルゥ!!!」

 

あぁもうホントに勝負の時のスィラさんの威圧感強いなぁ………

 

 

どこまで耐えれるかなこれ………勝てる気しないよぉ。



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モンスターマスター同士の戦い  その5

 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

「スラリン!」

「名も無き闇の王!」

 

多分スライムは確実にあれを使ってくる!

なら私が指示するべきことは!

 

「作戦封じの息!」

「まどいの息!」

 

二匹のブレスがぶつかり合う。

どちらも効果としては正気を失わせるものだ。

 

作戦封じの息は興奮させて命令を聞けなくして正気を失わせる効果。

 

だがまどいの息は………

 

『おおっと!お互いのブレスが直撃しあったぁ!!』

 

『ピッ!スライム の 作戦封じの息!

名も無き闇の王 に 効果あり!

名も無き闇の王 は 興奮状態 と なった。

名も無き闇の王 の まどいの息!

スライム は こんらん した!』

 

こんらん

 

幻覚作用と思考をぐちゃぐちゃにすることによってまともな行動を出来なくしてほぼ動けなくする効果である。

 

具体的な効果としては怯えたり仲間を攻撃したりするようになる場合がある。

 

ただ作戦封じと違って高い耐性を持つ魔物がそれなりにいる上に攻撃を受けると高い確率で解除される為に一概に良いというわけでも無かったりする。

 

さらに言えば作戦封じの息とまどいの息、この2つの特技には付与率が大きく違う点もあり、まどいの息の方が付与確率はひくかったりする。

 

しかし名も無き闇の王による耐性ダウンと超こうどうはやいによる耐性ダウンが合わさりこんらんが弱点になるまで耐性が下がっているスラリンに対しては………

 

 

「ピキ!?ピキィィイイイイ!?!?!?」

「いて!?いててててて!?オイコラ!スラリン!?

ちょっまっ!?いてえつってんだろぉ!!」

 

スラリンは案の定こんらんによって思考を乱され幻覚によって敵味方の区別が付かなくなり、ミイホンへと突撃しまくっていた。

 

さらに今回は幸運なことにスライムバーンが発動していない。

 

しかし案の定ミイホンによって殴られて正気を取り戻す。

 

「ぐきゅぁあああああああ!!!」

 

『ピッ!名も無き闇の王 の ギガ・マホトラ!

 

・・・しかし発動しなかった!』

 

ちょぉ!?今黒い霧発動してるの忘れてる!?

 

「ドラお!絶対零度!」

「いくっすよ!!ピキィィイイイイ!!!」

 

『ピッ!ドラゴスライム の 絶対零度!

全体 に 平均 217 の ダメージ!』

 

「さっむ!?」

 

しまった!?マデュラージャは吹雪ブレス弱点だった!?

しかもテンション上がってるから地味に痛い!?

 

「もう一発っす!!ピキィィイイイイ!!!」

 

『ピッ!ドラゴスライム の れんごく火炎!

全体 に 平均 159 の ダメージ!』

 

「まだまだぁ!!ピキィィイイイイ!!!」

 

まずい!?三回行動!?ステータスダウンのデメリット緩和の為に確定行動じゃなく2~3回…………いえ、1~3回行動にしてたということ!?

 

同時に行動出来るという能力の都合上複数行動の特性というのは火力が必然的に上がる特性であり、基本的にはこれがあるかどうかでだいぶ動きやすさが変わってくら魔物も数多くいる。

 

しかし特性としてかなり強力なこれがデメリット無しで使うことなど出来るはずもない。

 

複数回行動の最大のデメリットは………個体の能力上限が下がってしまうことにある。

さらにスィラ達の編成は『スモールボディ』によるデメリットでさらに能力上限が下がっており、実を言うと能力だけで見ればかなり低い部類なのだ。

 

しかしスィラは二重に下げていると耐久力に問題が出てくるのでその能力上限低下の効果を許容範囲に押さえるために行動回数を押さえていたのだ。

 

そして行動回数が多ければ能力上限は確かに下がる。

だがそれを外した際の能力上限はかなり高いものになる。

 

この辺りの調整にはモンスターマスターの腕がかなり問われているのだった。

 

『ピッ!ドラゴスライム の オーロラブレス!

全体 に 平均 306 の ダメージ!』

 

かなりきついなぁこれ、削られ過ぎてる………。

 

「マデュラージャ!」

「任せよ!!『獣王げきれつしょう』!!!」

 

マデュラージャが闘気を滾らせて両手に2つの渦を作り、それを竜巻としてねじれ合わせながら発車する。

 

「ぬぐぉぉぉおおおお!?!?」

「吹き飛ばされるっす!?」

「負けるもんかぁぁぁあ!!!」

「ピ…………ピキィィイイイイ!?!?」

 

『ピッ!大魔王マデュラージャ の 獣王げきれつしょう!!!

全体 に 平均 327 の ダメージ!』

 

よし!四匹全部に直撃!あとはこのまま倒せれば………

 

「ぬぉぉぉおおおお!!『がんせき落とし』!!」

 

マデュラージャは地面に拳を突き刺して超巨大な大岩を掘り出す。

 

マデュラージャは軽く助走を付けてからそれを勢いよく投げ飛ばす!

 

「いってぇぇぇぇぇええええ!?!?」

「ぎゃー!?さすがにあれは避けきれないっす!?」

「こうやって避ければ良いでしょう!」

「ピキ!落ち着け!」

 

スライムとスライムベスに避けられた!?これだか、スモールボディは!?

『大魔王マデュラージャ の がんせき落とし!

全体 に 平均 240 の ダメージ!』

 

「スラみ!トドメだ!」

 

あ゛……………

 

『ピッ!スライムベス の 轟雷滅殺剣!

全てを滅ぼす必殺の剣が登場!

全体 に 平均 480 の ダメージ!

全体 に 平均 461 の ダメージ!

チャレンジャーのチームは全滅!

勝者はスィラとなります。』

 

 

 

スライムベスの火力高すぎるって…………

 



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モンスターマスター同士の戦い  その1(幻想郷side)

 

 

 

 ~スラバッカ王国~『闘技場特別席』

 

 

霊夢や紫達幻想郷の主要人物とマルタの王子であるカメハ、精霊のワルぼう達はそれぞれじげんりゅうに乗ったスラ忍衆によって招待され、スラバッカ王国闘技場の特別席へと来ていた。

 

「モンスターマスター同士の戦いね………何気私たちは初めて見るのよね………」

「ん?あぁ、この世界にはそもそも魔物がいないからモンスターマスターが居ないのか。」

「えぇ、だからこそモンスターマスターとしてのスィラの実力は未だ未知数だったからスィラがどう動くのかが気になるところね。」

 

「んー、そうだなぁ。

育てる側で見たスィラの印象はまぁいわずもがな溺愛なんだが………いざ勝負となるとあいつは平然とえげつない行為を容赦なく使ってくる。

速い話全力で殺しに来る上にあいつの相棒であるスライムのスラリンがスィラの思考を完全に読んでるから命令無しでもスィラのバトルスタイルを使ってくる上に他の仲間に指示するんだよ。」

 

「容赦なく……ね。」

 

「まぁそれもあって相手が割とあっさりとやられちまうのが多いからスィラはわざとネタに全力で走った育成をした魔物を使って腕試しするのさ。

つっても限界まで育成されているのに変わりないしめちゃくちゃ強いんだがな。

 

ついでに一部のネタ枠はガチの戦いなら使い物にはならないが上手く嵌まっちまうとどうあがいても死ぬしかなくなったりなにもさせて貰えなくなる。」

「つまり基本的に容赦ないのは変わりないのね………」

 

カメハの目は軽く遠い目になっていた。

なにかあったのだろうか?

 

するとワルぼうが口を開く。

 

「あー、そのだな。

俺が実際にあった出来事なんだがな………

スィラはスライム系なら全部欲しいっていうようなやつだろ?んでそのライバルのルカは超巨大なモンスターが好きでそればっか使ってるやつでな。

そんなわけで二人の期待に応えられるようにとある世界に伝で向かってスライム系の超巨大モンスターを同じ種族で二匹程つれてきた………というか自分達の主にふさわしいか試させて欲しいってんで闘技場で戦わせてやったのよ。」

 

語るワルぼうこめかみを押さえながらあまり思い出したくない記憶を語るように話す。

 

「それで?…………ってなんか結末が予想出来てきたような…………」

 

「あー、まぁとりあえずその超巨大モンスターってのがメタルゴッデスっていうスライムという系統すべての頂点に立つ存在だったんだが…………まぁ悲惨だったよ………

 

スィラに挑んだ個体はグレイトハックっていう特技で耐性を無効や吸収ですら下げられた。

最終的に弱点まで耐性が下げられてすべての魔力を消費して放つマダンテという呪文により一撃でやられていたよ。

 

まぁマダンテの怖さはお前らも見てるんだっけか?」

 

「うぐっ…………そうね、私はその呪文で文字通り八つ裂きになったわよ…………」

「まぁ御愁傷様としか言いようがねぇな………話を戻すんだがスィラは限界までマダンテに特化したスライムを何体か作ってるんだがこいつらの怖いとこって耐えたとしても同じレベルのダメージが平然と飛んでくることなんだよ………」

「…………もしかしてやられたやつ戦闘中に蘇生でもしたの?」

「あぁ、察しがいいじゃねぇか。

蘇生してから自慢のメタルボディをダメージ軽減ありで一撃で死ぬ威力の攻撃を貰ってやられてたよ………。

あれはオーバーキルなんてもんじゃねぇ………」

 

「ホントに容赦ないわね…………」 

 

「ちなみにルカは基本的に脳筋でな、あいつの倒し方は実にシンプルだったよ………」

「まさか圧倒的な攻撃力で瞬殺だった………とかじゃないわよね?」

「それだけならまだ良かったんだがな…………『せいけんづき』ってのを使われて己の防御力すら活かせずに防御力無視で一撃だったよ………スィラは事前準備してただけマシだがどのみちえか。。

 

こいつらに至っては種族的な利点すら活かせずにやられた訳だしな。

 

ちなみにこいつらは二人のうち片方が方へと付スィラとルカの魔物達のエースに組み込まれたりしてるんんださ。」

 

「え?つまりなに?私がくらったのって割と手加減された攻撃だったっての?」

 

「手加減とはちょいちげーと思うぞ?

マダンテは術者の魔力量に依存して威力変わってくるからな。

 

スィラは『超ギガサイズ』に使わせてさらっと一撃で倒してたがな…………っと始まるぞ?」

「そう、さてなに………がっ!?」

「っ!?」

「なによ………これ!?」

「ひっ!?」

 

すると霊夢達は入場門から感じる4つのとてつもない威圧感を放つ存在の気配を感じとる。

 

「あぁ、お前さんらは魔物に限りなく近しいやつが多いから本能が察しちまったんだろうな。

世界を滅ぼす事が可能だった魔物の魂の欠片に。

 

そう、あれが闇に属する者達の頂点にたった種族。

『大魔王』や『闇の神』といった存在の魂の欠片から誕生した同種だよ。オリジナルはこんなもんじゃねぇぞ……。」

「貴方は………本物を………!?」

「あぁ、つかこのバカが封印解いた。」

 

 

そして周囲の視線はすべてカメハ王子へと向くのだった。

 

「余計な事言うんじゃねぇよ!?」

 



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モンスターマスター同士の戦い  その2(幻想郷side)

 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

「おっと、スィラのやつかな。ガチで殺しに来たな?」

 

え?

 

するともう一つの入場門からスィラと四匹の小さなスライムか現れる

 

「・・・・あれ?スィラのスライム達…………威圧感こそあの魔王達より弱いけど………存在としての強さがあいつらに比べて桁違いに強くないかしら?」

「お?霊夢って言ったっけか?お前さん気付いたか?

その通りスィラのスライム達とルカの魔物とじゃ存在としての格が大きく異なる。

特にスライムのスラリンのは桁違いなんだよ。」

 

「えぇ………でもどういうこと?存在としての格は確かに桁違いだけど気配が………」

「隠蔽してるんだよ。

あいつそもそも種族は最弱の魔物スライムでありスラリンという個体もスィラと出会った当初は本当に弱かったからなぁ。

それこそ同族にすら負けるくらいに。」

「それがなにをしたらあそこまで存在としての格を強く出来るのよ………下手な神よりも上じゃないの。」

「んなもん簡単な話だよ。

配合を数百と繰り返し、試行錯誤し、戦いに戦いを重ねて強くなったんだよ。

 

そしてスィラがある世界で見つけた秘法によってあいつは複数の身体を持てるようになった。

 

それからというものあいつの配合回数は桁外れに増えてな………おそらく全ての世界で最も同じ魔物を配合しているのはあいつだと俺は断言するぜ。」

 

複数の身体と聞いて霊夢は変なTシャツヤローを思い浮かべたがすぐに首を振って考えを捨てる。

 

「にしてもパチュリー………すっかり紫もやしで定着したわね………それで?悪ふざけの原因さんはどう思ってるのかしら?」

 

すると元凶であるパチュリーの友人のレミリアは全力で顔を背けている。

 

「同情するぜ………俺は一応パチュリーと呼んでおくか。

さすがに可哀想すぎる………。」

 

悪戯好きなワルぼうですら同情する程の弄られ具合に霊夢も哀れみの目を向けるのだった。

 

『それでは!勝負開始!』

 

「おっ!始まるぞ!まずは霧合戦だな!」

「霧合戦?それって………」

 

すると闘技場から二匹の叫び声が響き渡る。

 

『グァァァアアアア!!!』

『ピキィィイイイイ!!!』

 

「お嬢様と同じ赤い霧!?」

「あれはレミリアが出したのとはかなり性質が違うわね?」

「えぇ、あれは私が出した霧とは封じるものが全く違うわね。

私があの異変で用いたのは吸血鬼の弱点である日光を防ぎ、神聖な物の効果を薄めるって所だけどこれは全くの別物よ!」

「あれは『スライムベス』のスラみが持っている特性『いきなり赤い霧』で発生した『赤い霧』だな。

斬撃系統の特技を全て使えなくする性質がある。」

 

「ェ゛?」

 

妖夢はその剣士殺しとも言える効果を聞いて軽く固まってしまう。

 

「あらあら、あれじゃ妖夢が相手したとしたらなにもさせて貰えなくなるわねぇ~?

これはいい加減剣術以外の部分も鍛えた方が良いんじゃないかしら?」

「ぜ………善処します………」

 

そして主である幽々子はそんな妖夢に嬉々としてトドメをさしていく。

 

「ずいぶんと容赦ないわね………まぁ同感だけど。」

「へっへー!やっぱり魔法だよ魔法!こいつさえありゃ弾幕ごっこだってちゃんとした戦闘だってこなせるぜ!」

 

そんな妖夢を煽る魔理沙であったがこの煽りが墓穴を掘ることになる。

 

「あー、そうそう、あっちのドラゴン、『闇竜シャムダ』が出してる黒い霧なあれは特性『いきなり黒い霧』で発生させているやつで効果としては赤い霧と違って斬撃じゃなく呪文や魔法といった物の発動を全部封じちまうぞ?」

 

「んなっ!?」

 

「要はもっと手数増やしとけって事よ。

一つだけに特化してたらそれ一つ対策されたら終わりでしょうに。」

「う、ううううるせー!そういう霊夢はどうなんだよ!?」

「私?そうね、ねぇワルぼう?

これ赤い霧とか黒い霧で使えなくなるかしら?」

 

すると霊夢はあるものを袖から取り出して宙に浮かべる

 

「ん?そいつは………普通に物理的な効果を発揮するもんだし斬撃じゃなくただ飛ばしたりしてるだけだから引っかかんねぇな。

それにそれ何かしらの術使ってるんじゃなくて確か霊力?だっけか?あれで直接操ってるだけだろ?

ならどれにも引っかかんねぇよ。」

 

そう、霊夢が取り出して宙に浮かべていたのは『封魔針』、『御札』、『陰陽玉』と呼ばれる霊夢の武器であった。

 

霊夢は基本的に状況にあわせて武器を使い分けているのもあり、この手の封印対策は割としっかりしていたのだった。

 

「あー、でもその玉が魔法とかの類を使ったりするなら話は別だな。

まぁ物理的にぶつけたり火を吐かせたり冷気を吹き出させたりするもんなら問題ねぇだろうが。」

 

「あんたの陰陽玉の印象どうなってるのよ!?

玉がそんな火を吐いたり冷気を吹き出したり普通しないでしょ!?

つかもしかしてそういうこと出来るやつがいるの?」

「あぁ、魔王の一体にデスタムーアってやつがいてそいつの人間形態がお前さんみたいな玉使ってる。

あとは杖の先にある玉を取り出して飛ばして物理攻撃として用いるやつも多いぞ?」

 

霊夢は自分と似ている戦い方をした魔王が居るのを知ってかるくショックを受けるのであった。



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モンスターマスター同士の戦い  その3(幻想郷side)

 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

戦闘が始まってすぐにスィラが動きを見せた。

 

「っ!?速い!?もう背後を取った!?」

「あれって………『こうどうはやい』?であってたかしら?」

 

永琳はパチュリーから聞いた情報にある『こうどうはやい』という特性には注目していた為にスラリンがどうやってあの動きの速さを見せたのかを見抜く。

 

「あってるっちゃあってるんだがちょい惜しいな。

『こうどうはやい』って実はこれの上位特性があってな、まぁ詳しい説明は省くがデメリットがデカくなる代わりに更に速く動ける『超こうどうはやい』ってのがあんだよ。

スィラが採用してるのはこっちだな。」

 

「デメリットってたしか妨害を受けやすくなるのよね。

それはそれで致命的な弱点じゃないの?」

 

「そうだな、スィラから聞いた話なんだがよ。

あいつがあれを採用する理由はいくつかあるんだが………

まず大前提としてモンスターマスター同士の戦いってのは特に『超ギガボディ』のモンスターと相対する時に先手を取れなかった場合一撃で全滅なんてことが普通にありえちまうんだよ。」

「んな!?私達が戦ってあれだけ苦労したような奴らよりも強いのに一撃!?」

「そう、『超ギガボディ』を持ったモンスターの一番恐ろしい所はたった一撃で相手を壊滅させる可能性のあるその火力の高さにあるんだよ。

ただ弱点も多いから先手を取られた場合普通に辛いってのもある。

だからこそモンスターマスターは小さいサイズの魔物を採用する時はこういう特性を使ってでも絶対に先手を取ろうとするんだよ。」

 

「『超ギガボディ』………たしか私のスキマに出てきた飛んでもない大きさの奴らよね?」

「あぁ、確かにミラクレアも『超ギガボディ』を持ったモンスターだな。

だけどあいつは比較的小さい方だ。」

「はっ!?」

「でかいやつはあいつよりももっとデカイ。

体内がちょっとしたダンジョンになるやつもいるからな。

さて、話を戻すんだが別にデメリットがあるっていってもモンスターマスターはそれをメリットに還元する方法はいくらでもあるんだよ。

基本的役割をしっかりと分担出来るように育成するのが今のトップマスター達で汎用性を高めようとするのはだいたいアホ呼ばわりされるな。」

 

「っ!話し込んでる間にだいぶ動いてるわね………って何であのなまずみたいな奴だけスラリンに注意を向けてるの?」

「あぁ、あれは作戦封じ状態になってやがるな。

あーあーあー、スラリンにそんな状態異常ぶつけてしらねぇぞ…………」

「へ?それはどういう…………ん?スライム………妨害…………あ゛………」

 

そう、紫は気付いてしまった。己がスィラに対して最初に戦った時のスラキャンサーの事を…………

 

「気付いたか?系統バーンだよ。

ついでにスラリンの持つ一族の誇りはこれを引き起こしやすい。

んで今スラリンが受けた妨害は四種類

猛毒、眠り、こんらん、呪い

つまりスライムバーンの発動出来る最大回数は4回。

んでテンションは4段階。

こりゃイル詰んだかもしれねぇな。」

 

するてやかましい実況席から状況の解説か軽くされていつた。

 

「スーパーハイテンションになるまでテンションがあんだけあがっちまったら下手してらこの次の一撃で全滅もあり得るなっと『青天の霧』か」

 

今度はドラゴスライムから青い霧が出て来はじめる。

 

「基本モンスターマスターの戦いは如何にしてフィールドをこちらの物にするかだがな。

別に霧の取り合いで先手とる必要はそんなにねぇんだよ。」

「それってどういうこと?」

「あの霧は特性とかによるものじゃなく特技なんだよ。

まぁ特性と違ってほぼ確実に取れるのもあるからマスターにもよるが自分で特技として使って手もある。

霧は上書き事態は簡単だしな。」

 

そしてドラゴスライムの『れんごく火炎』が炸裂する。

 

「なっ!?熱戦吐いたと思ったら直撃した地面から灼熱の壁が現れるとは………なんだそれは!?

あれは妹紅の炎とは比べ物にならないぞ!?」

「落ち着きなさい慧音。

あれはテンションが上がった状態だからあんな威力になってるのよ。」

「ま、そういうことだな。

だがテンション無くても熱戦とそこから吹き出す炎の壁はテンション関係ないがな。

スーパーハイテンションで使ってるからダメージは通常の四倍ってとこだな。」

 

 

霊夢達はテンションという現象の恐ろしさを思いしらされる。

さらにスライム達と戦ったメンバーだと下手に弱体化させられない分スライム系がどれだけ恐ろしいのかを実感していた者も多い。

 

そして続けてスライムベスによる絶大な威力の『轟雷滅殺剣』が発動する。

 

 

「「「「………………」」」」

「な…………によ…………あの威力………」

 

「うっわーえげつねぇ………カメハ?喰らってみるか?」

「いやどうあがいても死ぬだろ!?

ミンチ通り越して塵も残さず消滅しちまうよ!?」

「まぁ、あれがスィラの本気だな。

つってもイルの悪手が入りすぎてたから本来なら威力はもっと低いな。」

 

霊夢は今初めてその絶対的な強さに恐怖したのだった。



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サイキョーのアタイ  その1

オリジナル特性とかが今回から出現します。


 

 

~マルタの国~『星降りのほこら』

 

 

「なーなー!ルカ!このはいごう?ってのをやればアタイはサイキョーになれるんだよね!」

「あぁ、新生配合によって君の力はとてつもなく跳ね上がるんだ。

君の妖精としての種族限界を超えた力が君に手にはいるんだ。」

 

「おお!ルカよ!もう帰ってきたか。

スィラはどうじゃった?」

「うん、向こうでも割といつも通りっぽかったよ?

それと今回はモンスターじいさん、あんたにまた配合を頼みに来たんだ。」

「ほう………となるとそこにいる少女は向こうでスカウトした魔物なのかの?」

「なんか魔物とは微妙に違う種族みたい、でも多分配合は大丈夫だと思うよ?」

「ぬ?少し不安になるの………少々鑑定させて貰うとするぞ?」

「カンテイ?どうでもいいからアタイははやくサイキョーになりたいんだ!」

 

チルノは話についていけないらしい

 

「ほっほっほっ、元気なお嬢さんじゃな。

どれ…………むむむ、どうやら魔物と配合すれば配合した魔物を吸収する形で力を得る性質がありそうじゃの………神獣配合に近いタイプのようじゃな。」

 

神獣かぁ………そうなるとキングとかみたいにSランク以上との配合が必要になるかなぁ。

 

「となると一回姿を進化させる必要がある?」

「そうなるな、少し進化のを調べさせて貰うが………うーむ、どうも条件を満たすのはリバイアさまだけじゃの。

どうもこの子が真に望む魔物が条件と見える。」

「そっか、じゃあ一回リバイアさまと配合してからもう一体超ギガボディとの配合?」

「お前さんのいつものやり方ならそうなるの。

よし!チルノと言ったかの?ちょっとこちらにいらっしゃい、ルカもリバイアさまをこっちに。」

「ん?そっちに行けばハイゴー?ってのをしてくれるのか?」

「あぁ、主人格は恐らく君になるじゃろう。

どうやら魂としての存在は君の方が上のようじゃ。」

 

するとチルノは頭がパンクしたようで頭をかきむしる。

 

「あー!もう!アタイは難しいこと分かんないよー!」

「ほっほっほっほっ!すまんすまん。

さぁ、配合をしてあげよう。

君はこの部屋に入ってくれ。」

「ん!分かった!」

「さて配合を………特性は……『スタンダードボディ』、『ヒャド系のコツ』、『ヒャドブレイク』、配合値+25によって『どく攻撃』、+50で『どくブレイク』、+99で『最強の証明』、サイズを大きくした場合の特性は『アンチみかわしアップ』、『全ガードブレイク』、『4回行動』といった所かの。」

 

「完全に二人の良いとこ取りって感じの特性だなぁ。

って『最強の証明』?

初めて聞く特性だけどどう言うもの?」

「うーむ、これはワシも初めて聞く特性じゃの………

効果は………」

「へぇ………そうなるとスキルは………」

 

「にしてもよくこのような魔物となれる存在をスカウト出来たものじゃな………人の恐れや伝承から生まれる存在か………」

「魔物にも同じようなのがいるからいけるんじゃと思っったんだ。」

「まぁ確かにそうじゃの………ただどちらかと言えばこやつは光に属する物らしいの。」

「あー、まぁ妖精って聞いてるしどっちかと言えばそっちのが近いんだ。」

「より詳しく言うならば自然系よりじゃがな。

どうやら自然とは密接な繋がりがあると見える。」

 

自然系の氷使いの魔物かぁ、海に関係ない魔物でそういうのいたっけなぁ?

 

「へぇ…………って毎度思うけどモンスターじいさんなんでそういうことまで色々と分かるの?」

「ほっほっほっ!」

「笑っても誤魔化されないよ!?」

「おお、そうじゃ、お前さんの両親から特製のパイを貰っておったんじゃった。

ルカよ、お前さんも食べるかの?」

「食べr……………るけど話は聞かせてよね!?」

「誤魔化されなんだか………」

「俺は確かに子供だけどそんなのにはそんなに引っ掛からないよ!?」

 

確かに母さん特製のパイは食べたいけどさ!?

 

「ほう?つまりはたまに引っ掛かると………」

「うぐ…………」

「ほっほっほっ、良い良い。

人はそうやって成長していくものじゃからの。

ルカよ、お前さんも安心して成長すると良い。」

 

むー、じいさんに良いように言いくるめられた気がする。

 

「さて、配合まで少し時間はかかるがそろそろ力を取り込む頃かの?」

 

_________________________________________________

 

 

身体が溶けそう………

 

熱い………

 

なんか………変なのがアタイに入って………溶け合って………

 

大ちゃん………アタイは………もっと強くなるよ……

 

大ちゃんを…………皆を守れるようになるよ…………

 

だから…………

 

_________________________________________________

 

 

「配合が終わったようじゃの。」

 

配合を行っていた部屋から新たな姿を得たチルノが現れる。

 

「気分はどうかの?なにぶん新たな試みじゃから何かあったらいかん。」

「アタイは………」

「ぬ?」

「アタイは必ず強くなるんだ。」

「ほっほっほっ、どうやら種族が変わったことで少し好戦的になっておるようじゃがその違和感もそのうち消えよう、配合を初めてした魔物は皆そんな感じの違和感を持つのじゃからな。」

「…………ルカは?」

「いるぞ?おーい、ルカよー!」

「はーい、あ!チルノ!無事配合が終わったみたいだね。」

 

チルノは不安そうにルカに問いかける

 

「これでアタイは強くなるんだよね?」

「うん、でももっと強くなろうよ!僕と君のライバルを超えられるようにさ!」

「うん………お願い!」

「分かった。

君の新しい種族は『海魔の氷精チルノ』

 

海の世界の守り神とも言える魔物、リバイアさまの力を継いだ新しい種族だ!」





ルカ 「さて、次はリバイアさまと同じ大きさにしないと………」
チルノ「ヤダ!」
ルカ「ェ゛」
チルノ「アタイあんなおっきくなりたくない!
    攻撃避けられないじゃん!」
ルカ「えぇ………」


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サイキョーのアタイ  その2

 

 

~魔法の森~『魔理沙の家』

 

 

あの戦いの観戦が終わったあと私達はとりあえず一度帰って考えることにした。

魔法だけに特化していてはそれ用に対策された魔物には勝てない。

物理だけに特化しても同じ。

 

何かしら別の手段での攻撃方法を模索するべきか……………。

 

「『悪夢のよびごえ』って言ったっけか?」

 

魔法をメインに戦うまどうスライムって奴らに片っ端から聞いたんだが、魔法を反射したり吸収するやつ相手にはどう戦っているのかという問いに対して殆どのやつらが答えたのが『悪夢のよびごえ』を使うっていう奴らだった。

一部『呪いの鉄槌』という技を使って倒すというのも聞いたんだがあれはどうやら自分の全魔力を使うのであまり私のスタイルには合わなそうだ。

 

そして『悪夢のよびごえ』という特技はどうやら魔法の威力に関わってくる『かしこさ』という能力が高ければ高い程威力が上がる技であり、これは魔法でも物理でもなく『ブレス』や『笛』といった属性の為にほぼほぼ対策出来ないらしい。

 

魔法の威力が上がれば上がるほどこの『悪夢のよびごえ』の威力も上がるためにかなり私向きの能力だと思ったんだが…………

 

 

「あぁぁぁ~~!?!?どうやったら使えるようになるかわっかんないんだよなぁ!!!」

 

パチュリーのとこから盗………借りてきた本にはそれらしいのはないしもしパチュリーのとこにあったとしてもどうせ見せてくれないだろうからなぁ(自業自得)

 

「おや?どうされましたか?魔理沙殿?」

 

すると隣で私の家の魔術書を読み漁っていたまどうスライムが話しかけてくる。

 

向こうで話してたらとある一匹とかなり意気投合したもんで私の家に誘った所あっさりOKしてくれたのだ。

スィラにも確認を取ったんだが『まどうスライムが望んでるならそれを阻む理由は欠片も無い』とキッパリ言われた。

 

ちなみにこいつは♀の個体で名前は『マドレーヌ』らしい。

 

「あぁ、どうにかして『悪夢のよびごえ』ってやつを覚えられないかなぁって思ったんだがどうにもそれらしい記述のありそうなのが無くてなぁ………。

お前らの所の図書館も見てみたんだが配合?ってのを頼るくらいしか方法が無さそうなんだよ。」

「ふむ………確かに『悪夢のよびごえ』は本来魔物しか覚えない特技であり、その習得方法も基本的にはスキルを頼るか己の肉体で使えるように訓練するしか無いですからなぁ。

とはいえスキルを用いれば例え手足が無くとも斬撃やパンチ等を行えるので配合の可能性は無限大とも言えます。」

 

ほんとどういう原理なんだか………ついでにマドレーヌ達にも分からないらしい。

 

「確か魔理沙殿は種族としては人間でしたな。

そうなると配合を頼るのは危険かと思われます。」

「あー、やっぱりか?配合関係も調べて見たんだがもし私を母親に雄の魔物と掛け合わせて新しい肉体を産み出すとなると私の魂その物に悪影響が出そうな感じがあったからなぁ。」

「その予想は概ね合ってますよ。

魔物は基本的に大半が魔に属しているためにそのエネルギーを肉体、魂に取り込みすぎてしまうと精神に何かしらの異常を起こします。

まぁ狂人の類いであれば元々イカれてるので気分が良くなる程度で済むのですがね。

とはいえ魔物は基本的に闘争本能があるのでどうしても好戦的になってしまうので人格を完全に保つのは人間やそれに近い種族以外になりますね。」

 

あー、やっぱりそうなるよなぁ………

 

「妖怪とか妖精はどうなんだ?」

「妖怪でしたら我々魔物と性質がほぼ同じなので全く影響は出ないかと。

なんなら我々よりも肉体を捨てかけているので人格も確実に妖怪側になるでしょうね。」

「ん?肉体を捨てかけてるってどういうことだ?」

「魔物は霊体とかそういうのを本体にする魔物もそれなりにいるのですが結局肉体その物が無い魔物っていないんですよ。

たとえばゴーストとかも棍棒で殴り倒されますから。」

 

「幽霊が棍棒でって………こっちだとすり抜けるだけなんだよなぁ。

まぁ霊力とか込めてりゃ普通に殴れるけど。」

「我々魔物はそういうの抜きで殴れてしまうのですよ。

なんなら子供にゴーストが倒されるなんて割と普通ですね。」

「ほんとどういう世界なんだか…………」

「ただ妖怪は肉体をそもそも持たない上に憑依した物が攻撃を受けてもダメージを負うのは憑依された側だけ、しかも認知されなければ消滅してしまう。

そして己の伝承を否定されればどんどん弱っていく。

魔物にはこんなのいませんよ………ただ恐怖や絶望を主食とする魔物はそれなりに居ますけど。」

 

ほんと似てるようで違うよなぁ。

 

すると玄関からゴンゴンとドアをノックする音が聞こえる。

 

「なんだ?叩きかたをチルノっぽいけど……ってか力強いんだよ!?」

 

あれ?そうなると鬼の連中とかそこら辺か?

 

「はいはいどちら様だ…………ってチルノ………なのか?」

 

目の前に居たのはチルノが少し成長したような少女であり、背中の氷の羽根は割れてそこから水が吹き出しているように見える。

耳の部分が魚のヒレのようになっており、その腰には膜が水が吹き出すことによって出来た背びれと尾びれの付いているかなり長い尻尾。

 

そして腕には蛇を模したような盾を付けていた。

 

「久しぶり魔理沙。

さっそくで悪いけど………アタイと勝負してくれない?」

 

ほんとにこいつチルノか?




紫モヤシ「そう言えば向こうの図書館の本は盗まなかったの?」
ドスメラルー「本が全部魔物になってたんだよ…………」
紫モヤシ「あぁ、『悪魔の書』と『悪魔の黙示録』の中身のページに他の本の内容を移したわけね。
確かに良い泥棒対策ね。」
ドスメラルー「借りようとしたら手を噛み千切られると思う………」
紫モヤシ「貴女の場合は借りるじゃなくて狩りるでしょうが………」


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サイキョーのアタイ  その3

 

 

~魔法の森~『魔理沙の家』

 

 

「はぁ?いきなり来て勝負って…………つかその姿はどうしたんだよ?」

「どうでもいいでしょ?アタイはあんたにこの新しい力をぶつけてみたい。

いつも魔理沙には負けてたけどアタイはもう負けない!」

 

チルノは何か強い覚悟を持っている気がする。

 

「魔理沙殿~?どうしましたか~?っておや?」

「ん?マドレーヌか、いやまぁチルノが弾幕勝負しに来ててさ………ただなんかいつものチルノと姿がめちゃくちゃ違ってるんだよ………」

「………リバイアさまの盾…………大魔神像グランエスタークの四種の神器の一つ…………どうやらリバイア様と配合された、もしくはその力を与えられたと言ったところでしょうか?」

「ん?あんた誰?」

 

んー、やっぱり何か精神的な年齢も成長もしている気がするんだよなぁ。

 

「おっと、申し遅れました。

私はスィラ様の魔物であり魔理沙殿の友人としてここに住み込みました『まどうスライム』のマドレーヌと言います。」

「ふーん、魔理沙の友達なんだ………とりあえずさっきの質問なら最初のが正解。

アタイははいごう?ってやつでサイキョーの力を手にいれたんだ。

もう魔理沙や霊夢には負けない、負けられない。」

 

あ、今のアホっぽい所で確信したわ。

こいつやっぱりチルノであってるわ。

 

だけどなんでこんな好戦的に………

 

「ふむ…………おそらく配合の影響で魔物の闘争本能の影響を軽く受けてますね。

魔理沙殿、受けて差し上げたほうがよろしいかと。」

「あー、やっぱりそういうことか。

分かった、弾幕ごっこやるぞ!チルノ!」

「魔理沙ァ!!」

 

私たちはすぐに上空に登って弾幕を展開し始めるって!?

 

「弾幕が氷だけじゃなく水だと!?」

「アタイは強くなったんだ!もう大ちゃんに心配させないんだ!!」

 

チルノは水を反射させたり、いくつかを融合させて氷にして急速に落とす。

 

「なんだこりゃ!?いつものチルノの弾幕とは全くの別物じゃないか!?」

「いくよ魔理沙!!海魔『たいだるふぇいぶ』!!」

 

するとチルノの背後から大津波が現れ、その中は氷の弾幕が流れている。

そしてその大津波が私をチルノごと巻き込んで飲み込んでいく。

相変わらずだなぁ、そんなことしたらチルノだって………っ!?

 

「ブクブクブクゥッ!?(チルノがあんな素早く泳いでやがる!?)」

 

そう、チルノは新しく生えた尻尾巧みに使っていつも空を飛ぶより素早く移動していた。

私は空気を操る風の魔法でなんとか呼吸出来るようにして必死に弾幕を避ける。

津波の流れが強すぎてこちらの弾幕すら流されてしまう。

 

さらにチルノが泳ぎ去った後には水が凍りついてから砕けて私は狙いで流れを無視して飛んでくる氷の弾幕へと変わる。

 

「狙いが分かりやすいんだぜ!」

 

自分狙いの弾幕はかなり正確にこちらを狙ってくるので常に動き続けていれば当たらないのだ。

あとは津波で流れてくる弾幕に気をつければ………

 

「ふぅ………やっと終わったか………。

チルノのやついつの間に耐久スペカなんか………」

「まだまだ!氷魔『まひゃでどす』!」

 

するとチルノは氷の山と見間違う程超巨大な氷の塊を産み出す"魔法"を使う。

 

「なっ!?チルノが私よりも強力な魔法だと!?」

 

その氷解は粉々に砕けて私に降り注ぐ。

しかしこの弾幕………見覚えが……!

 

「アイシクルフォール(easy)か!」

 

なら真正面で迎え撃つ!

 

「マスタースパーkってあぶねぇ!?

後ろから!?」

 

危なかった、私がマスタースパークを撃とうとしたら一番警戒していなかった真後ろから弾幕が飛んできたのだ。

 

見てみたら私とチルノを囲む形で正方形の結界が発生しており、チルノの弾幕がその結界に触れた瞬間そこから氷の塊が発生して砕け散り、他の所へと飛んでいる。

その飛んだ弾幕ももう一回氷の塊を生み出して砕け散り、最後に消えている。

複数回反射する上に砕け散った弾幕の飛ぶ方向がランダムとなっており、時間の経過ともにどんどん避けにくくなっていく。

 

「くそっ!?四方八方から!?」

「いつものアタイと思ってたら全身氷漬けになるんだから!!」

 

こいつ!?めちゃくちゃ強くなってやがる!?

 

「くそっ!」

 

私は通常弾幕を使ってなんとか反撃を試みる。

真後ろから飛んでくる以上私のスペカじゃあカバーしきれない。

 

『霊夢なら簡単に対処してみせるだろうな…………くそっ!』

 

「くっ!?」

 

チルノはその腕に付けている巨大な盾でそれをあっさりと防いでいく。

衝撃までは防げて無さそうなんだが盾その物には傷一つ付いていなかった。

 

『厄介なんだぜ…………』

 

そしてなんとか砕けた氷塊が全て消滅するまで耐久する事に成功する。

 

「まだまだ!氷剣『ぶりざーらっしゅ』!」

 

するとチルノはその手にとてつもなく巨大な大剣を生み出して突撃してくる。

更に通った後には氷の道筋が発生して砕けていき、私狙いで飛んでくる。

 

「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

するとチルノが突撃すると翼から弾幕が横に跳弾しなかこちらへと向かう。

 

一体なにがどうなってやがるんだぜ…………



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サイキョーのアタイ  その4

 

 

~魔法の森~『上空』

 

 

「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

チルノは羽根から水の弾幕を噴射して急加速しながら突撃する。

羽根から噴射された水の弾幕は途中で凍りつき、氷の刃となりながら結界内部を反射し続けてこちらへと向かってくる。

 

「当たってたまるか!」

 

私はすぐに上へと飛び去る。

横に移動するとおそらく水の弾幕の方が避けきれないからだ。

 

そして案の定チルノは突撃しか知らないようで避ける私を追うために方向転換しようとはしない。

 

そのまま結界にまで激突したと思ったその瞬間………

 

「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃぁぁあ!!!!」

 

チルノが結界に突き立てた剣の先端から間欠泉のように一瞬で水が大量に吹き出してそれが瞬時に凍って巨大な氷塊となり、砕け散る。

更に砕け散った後にまた水が間欠泉のように吹き出しを高速で繰り返していた。

 

これによって大量の氷の刃が周囲を跳ね返り続け、先程の弾幕とは比べ物にならない難易度になっている。

 

チルノの場合狙って当てるという事をどうしても苦手としていたのだが、そんな中ルカがこんなアドバイスをしていた。

 

『むしろ狙って当たらないなら跳ね返るような攻撃をあえて狙わずにばらまいてれば予想外の所から攻撃が来るだろうからそのうち当たると思うよ?』

 

そしてこれは弾幕ごっこというルールの使用上直撃=アウトな為にかなり刺さる。本当の戦闘であれば、いくら避けにくいとはいえ当たっても大したダメージにはならないので意味はないのだが………弾幕ごっこに限って言えば威力は一切関係ない為に本来威力に割くべき力を全て分散させて手数に割くことが可能となるのだ。

 

これによって魔理沙は回避にとてつもない集中力を必要としており、徐々に消耗していた。

 

「ヨイショッ!ぬおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!」

 

しばらく氷の弾幕を出した後にチルノは剣を引き抜いてぐるぐるとコマのように回転し始める。

 

この回転によって羽根から噴射される弾幕がさまざまな方向へと飛び散りながら回転を更に加速させる。

 

「くらぇぇぇぇぇえええええええ!!!」

 

チルノはその回転を維持しながら魔理沙へと突撃していく。

 

「ぬぉっ!?あぶねっ!?」

 

魔理沙はまたしてもギリギリで回避する。

しかし全方位から無差別に襲いかかる氷の刃は数を減らすどころか増えてすらいた。

 

「くそっ!このままだとじり貧なんだぜ………。

ならリスクは高いけど………恋心『ダブルスパーク』!!」

 

魔理沙は得意のマスタースパークを二発同時で発射しながら向きを変え続ける。

これによって結界内部を跳弾し続けていた氷の弾幕が次々と凪払われて少しずつ姿を消していく。

だが二方向にしか撃てないというこのスペルの特性上どうしても死角となってしまう場所が複数出来ており、魔理沙はダブルスパークの反動を押さえるのに力を使っていてあまり大きく動けない。

その為体を捻る等してなんとか避けていた。

そしてそのダブルスパークによる攻撃がチルノにも一部当たっており、チルノはついにこのスペルを解除してしまう。

 

「うし撃破!かなりあぶなかったんだぜ。

それで?まだやるか?」

「まだだよ!『りばいあさん』!」

 

チルノがそう叫んだ瞬間、彼女の背後からまるで島すらも飲み込めてしまいそうなとてつもなく巨大な海蛇ようなの竜が現れる。

 

『ギュァァァァァァアアアアアアアアア!!!!』

 

あの竜こそが『みずの世界の守り神』、『海の海竜リバイアさま』である。

 

 

 

 

 

 

"さん"ではなく"さま"なのである。

 

「始海『かいはざん』!!!」

 

チルノは配合によって氷結と状態異常に特化した性能となっており、今のチルノは己が元々持っていたその氷結の力と配合によって得たリバイアさまの氷結の力を合わせて所持している状態で戦っていたのだが、リバイアさまの盾に眠るリバイアさまの力を解放する事によって氷結よりも海の力が強くなり、状態異常に特化するようになる。

 

そして最初に出していた大津波を再度発生させてからチルノはその手に掴んだ巨大な氷剣を更に巨大化させて振りかぶる。

 

「げっ!?」

 

「アタイはもう負けないんだぁぁぁぁぁぁああああ!!」

 

チルノによる"海"を"破"裂させて"斬"り裂く一撃が大津波へと直撃する。

 

これによって津波がとてつもない勢いで弾かれながら凍っていき、全てを飲み込んで凍てつかせ、"毒"を与えて"麻痺"させて"眠り"に誘い"こんらん"させる大津波が二つの方向から襲いかかる。

 

「魔砲『ファイナルスパーク』!!!!」

 

魔理沙は己の使える最大威力のスペカを持って対抗するが、その弾幕すらも大津波は飲み込み、凍てつかせる。

 

「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

チルノは己が新しく手にいれた力をごり押し気味に使って魔理沙の最大火力を上回ったのだ。

 

「魔理沙殿!?」

 

マドレーヌが咄嗟の判断で物理以外の耐性を全て上昇させるマジックバリアと、防御力を大幅に向上させるスカラを魔理沙に付与する。

 

「ぐっ!?うぁぁぁぁぁぁあああああああ!?!?!?」

 

魔理沙は全てを凍てつかせる大津波へと呑まれたのだった。





⑨「アタイ最⑨!!」


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サイキョーのアタイ  その5

 

 

~魔法の森~『上空』

 

 

「魔理沙殿~?生きてますか~?

まぁ死んでても蘇生しますけど。」

 

「勝手に…………殺すな………だぜ………」

 

 

魔理沙はチルノの大津波に呑まれた後氷漬けにされて麻痺を貰っていたが、マドレーヌが咄嗟に付与したマジックバリアによって毒やこんらん等はなんとか防いでおり、氷によるダメージも全身への霜焼け程度で済んでいた。

 

 

「やったー!かったぁぁぁぁあ……………」

 

そして勝者であるチルノはというといきなり脱力して地面へと落下していく、どうやら何もかもを使い果たしていたようだ。

 

そして落下していくチルノは光の玉へと変化して一人の男の指輪に吸い込まれていく。

 

 

「あー、言わんこっちゃない。

まだリバイアさまの力を使いこなせないはずなのにあんな無茶やって………むしろ気絶だけで良く済んだなぁ………」

「おや?やはりルカ殿の仕業だったか。」

「お?まどうスライムってことは君はスィラの所のスライム?」

「その通りです。

今は魔理沙殿と友人付き合いをしていましてここに住み込みで魔術の勉強をしています。」

「ははっ、相変わらずスィラの所のスライム達ってストイック

「我々は全員が戦闘の技術を向上させることを最大の美徳とするからな。

一応非戦闘員はいるにはいるがそれでも下手な魔王よりは強いはず。」

「ほんとそれのどこが非戦闘員なんだよ…………」

 

ルカは顔をひきつらせながらツッコミを入れていた。

 

「まぁそんなことはさておき、やはりリバイアさまとチルノと呼ばれるあの少女を配合したのはルカ殿だったか。」

「え?あぁ、なんか強さを求めていたみたいだから話を聞いたりして最終的にリバイアさまと配合することにした。」

 

マドレーヌは少し考え込むように触手を腕組みのように絡ませると半ば確信しているように聞く。

 

「…………それ多分予備のリバイアさまですよね?」

「むしろ時間かけてスィラとの戦い用に育てたやつを使うとでも?」

 

そう、ルカはリバイアさまに限らず同じ種の超ギガボディのモンスターを複数仲間にしており、本来サイズが違う魔物へ超ギガサイズの特性を移植するために何体も予備を用意していたのだ。

 

「まぁでもスキルはかなり真面目に選んでいるから強さは本物だよ。

ただこの子思ったより我慢とか待つのが苦手みたいで配合終わってからまだ育てきってない状態で飛び出しちゃったんだよ。

一応今の限界まで育ったら仲間から外れて友達の所に帰る予定。」

「ルカ殿のお節介もいつも通りのご様子で。」

「あっははは、いつもいろいろ巻き込んでごめん………」

 

そう、ルカは生粋のトラブル体質でありながらかなりのお人好しでお節介を頻繁に行う性格だった。

 

ただ自分がトラブルを引き起こすのではなくてトラブルに巻き込まれやすい方の体質なので地味に質が悪く、良く一緒になりやすかったイルやスィラを巻き込んでは事態の解決に力を注いでいたのだ。

 

そしてスィラが巻き込まれた事態はというと…………

 

「さすがにもう狭間の闇の王とか超ギガボディ関係にばかり巻き込まないでくださいよ?

貴方が巻き込むやつ何故世界を滅ぼしかねないようなやつらばかりなのですか………」

 

「あー、ほんとごめんなさい………」

 

そう、ルカは狭間の闇の王での超ギガボディ達との戦いの殆どにスィラを巻き込んでおり、その巨体にびびったスライムを見たスィラがキレて超ギガボディのモンスターごとルカをしばいていたのだ。

 

しかし今となっては実力はかなり拮抗しており、お互い良いライバルとして力比べを良くする仲ではある。

 

ただスィラは積極的に関わると巻き込まれるのが分かっているのであまり自分からルカに関わってはいないのであった。

 

「つか……そもそも……リバイアさまって………なんなのぜ?」

 

魔理沙は氷漬けになりながらも魔法で移動して痺れた体のままルカに問いかける。

 

なお氷は現在進行形でマドレーヌがメラで溶かしていた。

 

「水の世界に生息する守護神みたいな立ち位置のモンスターで一応一代目は元人間だったみたいだよ?」

 

「もしかして………最後に出た………蛇みたいなやつって………」

「リバイアさまになりますね。

まぁ本来のサイズよりかなり小さいですけど。」

「あれで………小さいのかよ………ってやっとしびれがとれたんだぜ!?」

「あ、まだ氷溶かしているのであまり動かない方がいいですよー?焦げます。」

「おー、わかった。」

 

魔理沙はルカにツッコミをいれて少しした後に麻痺から復活してようやく普通にしゃべれるようになるのであった。

しかし氷はまだ溶かしており、マドレーヌとしても下手に動かれると魔理沙にメラを当ててしまってやけどをさせかねないので割と集中力を使っていたりする。

 

まともスライムのマドレーヌの場合ただのメラでさえ人間の魔法使いが使うメラガイアーより下手したら威力が上なのである。

 

「あ、ちょっとミスった。」

「あっちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!?!?!?!?」

 

魔理沙は結局尻を焼かれるのであった。




第一の滅びの使者出現
↓スィラ巻き込まれる
闇の衣アリでひたすらボコす(なおお互いダメージ無し)
↓大魔神像到着
イルとルカが倒す。

この流れを4回ループしてますw


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VSスライダーズ  その1

 

 

~マヨヒガ~

 

 

前回のモンスターマスター同士の戦いから数日後、魔理沙以外のいつもの面子がマヨヒガへと集められていた。

 

なお今日も映姫はテレワークでの参加になり、代表として代わりに小町が簀巻きに"拘束"されて参加"させられている"。

 

すると霊夢はすぐに人が不足してる事に気がつく。

 

「ちょっとまって、魔理沙は今日居ないみたいだけど何があったのよ?」

 

すると永遠亭の代表として出ている永琳がその問いに答える。

 

「あぁ、魔理沙なら今はうちで療養中よ。

症状は全身霜焼けってところね。

状況を聞いたら全身氷漬けにされたらしいから凍傷を起こしてないだけマシね。」

「全身氷漬け………いったい何が………」

 

霊夢は魔理沙に何があったのかがとても気になっており、恥ずかしくてあまり口にはしないのだが霊夢は霊夢なりに魔理沙の実力を認めており、そんな魔理沙が簡単にやられるとはとても思えなかったのだ。

 

「あー、霊夢?悪いのだけどその件についてはこの戦いの後にさせて頂戴、おそらく集中しきれなくなると思うから。」

「…………緊急性はそこまでないのね?」

「えぇ、現状そこまで問題になることは少ないと思うわ。」

「言い切れないってわけね…………分かったわ。

だけど戦いが終わったら教えなさいよね?」

「ええ、一応完全に放置仕切れる問題でもないから今は監視に止めているから安心して頂戴。

 

とりあえず想定外の脱落者が出たけれどCランクのチーム、スィラ曰く『スライダーズ』という名称があるそうだからそれを使わせて貰うけれどそれへの対策を始めるわ。

 

まず最初に誰が出るかの最終決定だけど………」

 

「私が参加しないわけにはいかないのでしょう?」

「えぇ、霊夢は最期まで参加して貰うわ。」

「ちょっと待ちなさい、今言い方おかしかったわよ?」

「あー、そのね………霊夢が一度殺られたらスィラとしてはしばきたい一捻り全員しばいたって認識になるらしいからその後は自由参加になるわ。」

「…………いいわよやってやるわよ…………」

 

霊夢からなぜか陰陽玉の代わりに水晶玉を二つ宙に浮かべたピンク色の肌をした老人の幻影が見えた気がしなくもないが全員気のせいだろうとスルーすることにした。

 

「それで肝心のてゐだけど………」

「もちろん強制参加させるわよ?

あの子に拒否権は無いわ。」

「…………そ、そう。

ならとりあえず決定ね………。

次は………」

 

全員がてゐを不憫に思ったが、数人がてゐによって罠に嵌められた経験があるため何も突っ込まなかった。

そして次の人員を決めようとしたその時々、映姫を移したモニター側から声がかかる。

 

『今回は小町を出させて貰います。

私は業務が無い日であれば出来れば直にスィラという者と話をしたいのでこちらとしては戦うタイミングは私の休日に合わせて貰えると助かります。

あ、鬼井さんはその書類を人事の方へ回しておいてください………それから…………』

 

映姫は忙しい身であるはずなのにちゃんとテレワークでのビデオ擬き通話越しとはいえ出席する辺り律儀であった。

 

「むぐぅぅぅぅううう!?!?(映姫様ぁぁぁぁあああ!?!?)」

 

哀れサボり魔は強制参加二人目となったのだった。

 

「それで最後の一人なのだけど………」

「私が出るわ。」

「ェ゛………」

 

ここで全員が予想していなかった人物、風見 幽香が自分から参加すると発言したのだ。

 

「なによ?なにか文句でもあるのかしら?」

「い、いいえ、こっちとしては願っても無いことだけど………ホントに良いのかしら?」

「えぇ、前のあの戦いを見ていて興が乗ったわ。

むしろ身体が疼いて仕方ないのよ………あれ程の強さを直に感じてみたいのよね………

それと…………自信満々のやつらが負けるのを見るのは楽しいじゃない♪」

 

『『『『あ、スイッチはいってるわこれ………』』』』

 

幽香は基本的に花を粗末にする者にはトラウマを与え、調子に乗ってそうなやつには親切にお灸を据えてトラウマを刻み込み、自分と同等の強さの者には挨拶代わりにマスタースパークを使うような性格をしていた。

そして妖怪として最上位にいる者は比較的闘争本能がかなり強い傾向にあり、あれ程の戦いを見せられてかなり身体が疼いていたのだ。

 

それ故に一部の者達からはUSC、アルティメットサディスティッククリーチャー等と呼ばれているが、一度でも呼ぶとトラウマを植え付けられるのであった。

 

「とりあえず今回のメンバーとしては霊夢、てゐ、小町、幽香の四人で決定ね。

映姫様、貴女の予定日を聞かせていただいても?」

 

『そうですね、来週の日曜日でしたら有給が取れますのでその日にしてくださるとありがたいです。

あ、鬼義理さんはその書類を他の十王へと回してください。

貴方は…………』

 

「とりあえず次の対決は来週の金曜日よ。

戦う準備なりは今のうちに済ませておいて頂戴。

じゃあ今日は解散させて貰うわね、ここから人里に繋いでおくから皆そこから今日は帰っておいて頂戴。

あと幽々子はもう食べるのをやめなさい。」

 

「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ…………」

 

結局ピンクの悪魔はいつも通りなのだった。

 

 

 

 



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VSスライダーズ  その2

 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

『さぁ始まりましたぁ!スィラ様への挑戦Cランクの部!

実況は毎度お馴染みこの国一番にやかましいスライムこと『ベホイミン』、解説は本日もお馴染み紫もやしこと『パチュリー』さん、そしてスィラ様と先日デートされていた『イル』様になります。』

 

『ちょっと!?余計なことを言わないでくださいよ!?』

 

『あいたぁ!?イル様良い一撃をしてますね!?』

 

余計な一言を言ったベホイミンはイルによってコークスクリューブローを貰っていた。

だが普通に自業自得なのであった。

 

『誰が紫もやしよ…………』

 

『さてさて今回の闘いはCランクチーム、スライダーズと幻想郷の闘いになりますが………解説の紫もやしさんは今回の試合はどうなると思われますか?』

『そうね、ラッキーをどのくらい発動させてくるかってとこじゃないかしら?あれ発動されると割と壊滅させられかねないでしょうから。

あと毎度思うけど試合というより死合の間違いでしょ。』

『あははは、確かに間違いじゃないですね。

割とポンポン死にますし。』

『成る程、ありがとうございました。

さて、今回は大幅なメンバー変更が行われたようですがこれはどのような考えがおありなのでしょうか?』

 

『約二名は強制参加で一人は自分から戦いに参加したわ。』

『…………へ?』

『強制参加の二人に関しては多分お仕置きも視野に入れてるから容赦無くしばいて構わないわよ。』

 

「ちょっ!?」

「ひどいウサ!?」

 

『さて、まずはチームスライダーズの入場です。

スライムの子供達の憧れである『スライダーヒーロー』と『死神スライダーク』、そして我らがアイドル『スライダーガール』です!』

 

 

「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」」」」」」

 

そしてスライダーズが入場した瞬間会場全体が沸き上がる。

スライダーズはこの国ではとてつもない人気を誇っている証拠であろう。

 

そしてベホイミンは"スキマ"から渡されたカンペを取り出して実況を続ける。

 

『さて、続きましては幻想郷チームの入場となります。

ここ一週間の平均業務時間は30分、仕事のほほ全てをサボりに費やす幻想郷一の怠け者『小野塚 小町』!』

 

「ちょっ!?なんてことばらすんですか!?こんなの映姫様に知られたら………知られ……た………ら………」

 

そして小町は今日映姫がスィラと話す為に有給を取ってこの闘技場に来ていたことを思い出す。

 

「ヒェ!?」

「小町………後でOHANASHIがあります。」

 

映姫は終始笑顔を見せてはいたが目は笑っておらず、背後に阿修羅が見えた。

 

『続いて存在その物が詐欺の塊、人に幸運をもたらすとされる癖に人を罠に嵌めるのが大好きなウ詐欺さん。

『因幡 てゐ』!』

 

「ちょっと酷いウサー!?」

 

『そして毎度お馴染み楽園の素敵な脇の巫女、ぶちギレた時は鬼へと姿を変える第二形態があるとされる幻想郷一の守銭奴『博麗 霊夢』!』

 

「あ゛?」

 

霊夢から幻魔王デスタムーアを思わせるとてつもない威圧感が発せられる。

 

『ヒェ!?最後に趣味はお花を育てることと他人を苛める事、得意な事は花との対話と苛める事、親切でする事は半殺しに苛める事。

幻想郷一のドエス・サディスト!アルティメット・サディスティック・クリーチャーこと『風見 幽香』ってあぶね!?』

 

「そのカンペはスキマの仕業ね………」

 

幽香は自慢の傘をベホイミン目掛けて振り抜いており、そこからマスタースパークを放っていた。

 

『いやぁ、マホカンタが無ければ危なかったですね。

さて、それでは両方の選手が揃いました。

にしても幻想郷側のメンバーの個性もなかなかとんでもない事になってきました。

脇の空いた鬼へと変化する巫女。

存在その物が詐欺のう詐欺さん。

仕事のほぼ全てを居酒屋と寝ることに費やすサボり魔

ただ全てを苛めるぬく為だけに存在する究極のドS

って危ないじゃないですか!?』

 

「うっさいわよ!?誰が脇巫女よ!?そんで鬼に変身するとか誰よそんなガセネタつかませたやつは!?」

「いい加減にしないとカンペ読んでるだけとはいえ殺すわよ?」

 

霊夢からは陰陽玉が、幽香からは亜音速の大岩がベホイミンへと飛んでいくが、ベホイミンに付けられた常にアタックカンタによってはじかれていた。

 

「なっ!?私の一撃をあんないとも簡単に………」

「へぇ…………面白そうじゃないの………」

 

幽香は肉食獣のごとき獰猛な笑みを浮かべて闘いに望もうとしていた。

 

『そして最後には我らがスィラ様のお言葉わ賜りたいと思います。

スィラ様、開始のお言葉をお願いいたします。』

 

『あー、おほん、今回の試合でもお互い死力を尽くして戦ってほしい。

そして血沸き肉踊る闘いを我らに!

此度の闘いのコンセプトは運!

幸運の女神が微笑むのは君たちか!それとも我々か!

イルと戦ってから私は疼いて仕方ない!今回は私が指示を出してスライダーズを動かさせて貰おう!』

 

『スィラ様、ありがとうございます。

それでは!試合開始ィィィィイイイイ!!!!!』



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VSスライダーズ  その3

月末の仕事量えぐいてぇ(ヽ´ω`)
(本日の仕事量通常のざっと3倍な上に休憩時間を半分削って仕事しても定時までに2/3も終わらない)


スラバッカ王国~『闘技場』

 

『試合開始ィィィイイイイ!!!!!』

 

ベホイミンの試合開始の合図をきっかけにスライダーガールの背後に6つのルーレットが現れて回り始める。

 

倍率としては1/10~2倍と大きく触れ幅があり、どうやらこれにより能力の数値が決まるようだ。

 

「てゐ!」

「うぅ………分かったけどどうなっても知らないウサよ?

運を操作して極端に上げたり下げたりするとすぐに逆の現象が起きちゃうから。」

 

「それでもやらないよりマシよ、これで全部の能力上がられたら洒落にならないわ!」

 

「ウサー………ほい、霊夢の運が一時的に上がったウサから多分1~2個くらいは極端に低いのを引くと思うウサ。

一応死なない程度に運を使ったウサけどしばらく霊夢の運が悪くなるウサよ?」

 

そしてルーレットは回転速度を徐々に落としていき、針が止まっていく。

 

針が止まったマスに書かれていた数字は…………

 

 

HP:1.8倍

 

MP:0.9倍

 

攻撃力:2倍

 

防御力:0.5倍

 

素早さ:0.5倍

 

賢さ:0.8倍

 

 

という数字であった。

 

「ふざっけんじゃないわよっ!?!?」

「あーあ、早速発動したウサ………日頃の運がただでさえ悪いのにあんな無茶に上げればこうなるウサよ………まぁ最低値複数引いてて全体的なステータスは大きく下がってるウサから妥当な結果ウサよ。」

 

霊夢は軽くぶちギレていたが、実際てゐはこうなる事をある程度予想しており、日頃の運が悪い者の運を極端に上げたとしても物欲センサーが発動して『違う!そうじゃない!』となるのは経験上かなりの回数があったのだ。

 

そして今回のステータスギャンブルの結果としては…………

 

HP:超UP

MP:多少下がったが影響ほぼ無し

攻撃力:最大強化

防御力:半分になってはいるが対して影響無し

素早さ:そもそも超こうどうはやいの為に意味無し

賢さ:呪文をサブウェポンにしていたのならそれなりに痛い

 

 

という結果となったのだった。

 

「うっわぁ………いつも勘だけは無駄に良いのだが極端に運だけは悪いんだよなあぁ」

 

運というのは分かりやすく例えるなら霊夢の持つ陰陽玉に近いものであり、光ある所に闇があるように運にもバランスを取るための代償というものがあるのだ。

そして霊夢がいなくなっては確実に能力の全体的な総合値はもっと上がっていただろうが、逆に言えば霊夢がいたからここまで極端な数値になったといっても過言ではなかったりしたのだ。

 

 

そう、霊夢は運が悪いのがデフォルトなのだ!

 

 

『おおっとぉ!ステータスギャンブルの結果はなかなかの物が出ましたァ!全体的な数値は大幅に下がりましたが攻撃力がまさかの二倍だァ!!!!

これは幻想郷側かなりキツイか!?』

『うっわ…………霊夢の運に任せたのが間違いだったかしら………でも早苗とかに任せるよりはマシなのでしょうね………』

『なんてピンポイント………』

 

するとスライダーガールの乗っているエアバイクからブロロロンとエンジンをかける音が響き渡る。

 

「あぁ………主の命令で動けるなんて幸せ………」

 

スライダーガールは頬を赤く染めて興奮をエアバイクに伝えるように激しくエンジンをかけている。

 

「フッ………お前達は運が良いのか悪いのかよく分からないな。

まぁ良いだろう。

そこの鎌を持った貴様も私と同じく『死神』らしいな。

ならば死神は死神同士で勝負を決めたくないか?」

 

『おおっと、スライダーク殿から直々にタイマンを使命されたぞ!!

小町選手は受けるのでしょうか!?』

 

「どうする?霊夢、あたいとしては別に受けても構わないよ?

もし実力がめちゃくちゃ高そうならあたいの能力で時間稼ぎくらいは出来るはずだけど。」

「そうね、ここで一人押さえられるならそれに超したことはないわ。

それに多分特性的な問題であんたはあの『スライダーガール』との相性は悪いと思うからそっちをお願い。」

「わかった。

さて、こっちのリーダーの許可も取った事だし私としては大歓迎だよ。」

「ククク………そう来なくてはな。」

 

『小町選手承諾ゥゥゥ!!!

幻想の死神と我らスライムの死神、果たして勝つのはどちらなのでしょうか!?』

 

「ふーん、1対1というのも面白そうじゃない。私もその蒼いのとやらせて貰おうかしら?」

「蒼いの………改めて名乗らせて頂こうか。

私は『スライダーヒーロー』、スライム族の英雄であり!

守護者だ!」

「ふふ、私は風見 幽花、お花の妖怪よ。

スライムツリーやトロピカルスライムといった植物とも関係あるスライムとお話させて貰ったけど貴方も健気よね?」

「な、なんの話を………」

「貴方………自分の主であるスィラってやつと一緒にヒーローショー?ってやつやれないか検討してていろんなスライムに相談しているみたいじゃない。」

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!?!?!?

恥ずかしいから主にはばれたく無かったのに!?」

 

『おおっとぉ、早速ドSが発動だぁ!

ちなみにスィラ様としては?』

『予定に組んどくよ。』

『予定に組み込んでくださるそうです!

良かったですね!』

 

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!?!?!?!」

 

スライダーヒーローは恥ずかしさから発狂したのだった。



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VSスライダーズ  その4

 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

「さて、アタイ達は早速やりあうとしようか。」

「良いだろう、どちらが強い死神か勝負といこう。」

 

すると勝負開始の合図と共にスライダーガールが詠唱した呪文が発動して全員へ星が地面から上るような状態変化が訪れる。

 

「バイメリトってやつかい?」

「その通りだ。確率上昇呪文。

こいつは効果こそ単純だがそれだけにかなり強力な呪文だ。

例えば10%の確率で発動するもんならせいぜい2割の確率で発動ってとこだがただそれだけでも十分すぎる効果を発揮する。

だがこれの恐ろしい所は発動する特性の発動確率が元から高ければ高い程効果を発揮する。

50%、つまり1/2の確率で発動するものなら確定になるからな。」

 

「うげぇ………そりゃきっついな。

でもあんたは確かカウンター系くらいじゃなかったかい?」

「さてどうかね。

貴様らも新生配合がどのような効果を持っているかどうかくらい知っているだろう。

我らは特性を一つ入れ換えられる。

色んな攻撃をしてみてはどうだ?」

 

スライダークは小町相手に軽く挑発をして見せる。

 

「へぇ、じゃあお言葉に甘えさせて貰うと………しようか!!!」

 

すると小町は跳躍したと思った瞬間に姿を消してスライダークの背後に出現する。

 

「ちょいさ!」

 

小町は"反対方向"からスライダークに向けてその自慢の大鎌を回転させながら振りかぶる。

 

「スライダーク、ステルスアタック!」

 

スィラはスライダークに指示を出した途端スライダーク自身も姿を消した。

姿を消したスライダークに向けて放たれた大鎌は空を切り裂き外れてしまう。

 

「消えた?どこに………」

「ここだ。」

「ッ!?」

 

するといきなり小町の背後から気配も音もなく現れその剣を振りかぶってくる。

小町は能力を使いギリギリで回避するがそのまま空振って地面へと叩きつけられた剣はとてつもない衝撃波を産み出して小町へと再度襲いかかる。

 

「ぬぐっ!?

なかなか面白い技を使うじゃないか………声をかけられなかったらヤバかったよ……。」

「この程度でやられて貰ってはつまらないからな。」

「言ってくれるじゃないか!」

 

小町はまたしても挑発に乗るかの如く能力を使って突撃していき、大鎌による連撃を叩き込む。

しかしスライダークはそれを持ち前の剣と両手にあるスライムの手甲でいなしている。

 

「ほっ!はっ!てぃ!せりゃ!」

「どうした!こんなものか!」

 

するとスライダークは小町の攻撃を"受け流し"ながら蹴りによる強烈な一撃を叩き込む。

 

「ぐっ!?」

 

『ピッ!小野塚 小町 の こうげき!

死神スライダーク の 受け流しSP が 発動!

小野塚 小町 に 379 の ダメージ!』

 

しかし小町もただではやられない。スライダークの後方へ受け流された大鎌を自分が蹴られる時にわざと自分も後方へと跳躍しながら引く。

 

『ピッ!小野塚 小町 の 反撃!

死神スライダーク に 197 の ダメージ!』

 

小町が吹き飛ぶ勢いを利用して引いた大鎌はスライダーク右肩を大きく切り裂く。

小町は肉を大きく切り裂く手応えを感じてはいたのだが、骨まで届いたような感触はなく、そのまま通り抜けたように感じる。

 

「っ!?お前さん骨を持たないわけか!」

「ふむ、油断した。

なかなか面白い攻撃をしてくれる。

次から鎌を使う相手には攻撃を"受け流し"た後も警戒しなくてはな。

そして俺が骨を持たないかという質問対しての答えとしてはYesでありNoだ。

俺は確かにスライム族だから本来骨という物を持たないが肉体を圧縮して強度を持たせる事で擬似的な骨格を産み出してこの人形の鎧を動かせる。

つまり骨を斬ろうとしても肉体を戻せばダメージはあるがそのまますり抜けると言うわけだ。」

 

するとスライダークは切り裂かれた肉体を徐々に戻していく。

例え切り裂かれてもくっつけるだけの為にあまり切断によるダメージを期待できそうにない。

 

「ふーん、しかしそんな情報簡単に教えても構わないのかい?」

「問題はない、モンスターマスターの中ではある程度スライム系との戦闘経験がある奴らは皆知っているだろうからな。」

「かー、きっついねぇ………」

 

『ちなみに情報交換を出来ていない辺り紫モヤシ殿は知らなかった形ですか?』

『紫モヤシ言うな。

私の場合まともなダメージを与えられた試しがない上に物理的な攻撃じゃなくて魔法攻撃しか出来ないからそこまでは分からなかったのよ。』

『成る程、つまり攻撃力は文字通りモヤシくらいしか無いわけですね。』

『うっさいわよ!?』

 

「いやぁ、向こう側は賑やかじゃないか。アタイも出来ればあっち側のが良かったんだけどねぇ………」

「ふっ、では貴様は何故この場に立っているのだ?」

「うちの鬼上司に出るのと給料0とどっちが言いかと聞かれて泣く泣く参加したんだよ。

ほんっとあのロリ上司は………」

 

すると余計なこと呟く小町にすさまじいオーラが小町へと放たれる。

 

「ぴっ!?」

『こ ・ ま ・ ち ・ ?

後でさっきの話で貴女には話があります。』

「ちょっ!?映姫様!?お慈悲を!?お慈悲を!?」

『ギルティ』

「ノォォォォォォォォォォオ!?!?!?」

 

閻魔に慈悲などは無かった。



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VSスライダーズ  その5

 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

試合開始の合図と共にスライダーガールのバイメリトが発動する。

 

星が昇るような光と共にスライダーズにバフをかけていく。

 

 

「さて、私と踊って貰いましょうか?」

「ヒーローとしてドSに正義の鉄槌を与えてくれよう!」

「ふふふふふ、いくわよ………」

 

幽香はいつも霊夢達を相手する時とは打って変わって真剣な表情で自慢の日傘を構える。

 

いつもの幽香であれば常に『強者のよゆう』を見せており、なかなか底を見せようとはしない。

だが今の幽香にはそのいつもの余裕が見えず、決して隙を見せないように構えている。

 

対するスライダーヒーローはその右腕の槍を構えてその自慢のマフラーを揺らしながらもいつでもどの方向に動けるように構えていた。

まるで"自分よりも圧倒的に速い相手"に慣れているようにも見える。

 

「まずは挨拶代わりよ!」

 

先に動いたのは幽香だった。

幽香はその華奢な見た目からは想像も付かない程の飛んでもない力で地面を蹴り飛ばし、音を置き去りにする程の速さでスライダーヒーローへと接近する。

そして幽香は誰も認識出来ないほどの速さでその傘を横凪に叩きつける。

 

だがスライダーヒーローはその一瞬の間に動いて右腕となっている槍を傘へと構え、その次の瞬間に槍は白銀の輝きを持つ最強の盾へと変貌を遂げる。

 

『ピッ!風見 幽香 の痛恨の一撃!!

スライダーヒーロー に 763 の ダメージ!!』

 

幽香の放った日傘はその盾によってあっさりと防がれる。

審判のスライムボーグが扱うジャッジ機能によってスライダーヒーローがとてつもない痛手を受けたのは確実だ。

しかしスライダーヒーローには未だに余裕の色が見て取れる。

 

「良い一撃です。

だが!私の方がまだ良いダメージを入れられますよ!

『まねまね』発動!」

 

するとスライダーヒーローは幽香のと全く同じ動きをしてその槍を彼女へと叩きつける。

 

「ぐっ!?」

 

彼女はスライダーヒーローによって壁まで吹き飛ばされて軽くめり込む。

己の全力の一撃をあっさりと耐えきられて全く同じ動きで己以上の一撃を叩き込まれたのだ。

幽香は動揺によってうまく受け身を取れず吹き飛ばされたのだった。

 

『ピッ!スライダーヒーロー の 『まねまね』!

スライダーヒーロー の 痛恨の一撃!!

風見 幽香 に 999 の ダメージ!』

 

そう、スライダーヒーローは元から様子見のつもりで一撃をわざと受けてその上でまねまねによる反撃を狙っていたのだ。

これはスィラから試合開始前から言われていた指示であり、そこから直撃させたのは純粋にスライダーヒーローの実力でもあった。

 

スライダーズ達は日頃から己とは圧倒的に強い存在との戦闘はそれこそ文字通り死ぬ程経験していたのだった。

スライダーヒーローは基本に待ちのスタイルとなっているのだ。 

 

すると壁に叩きつけられていた幽香が一気に飛び出しながらその日傘をスライダーヒーローへと向けてとてつもない出力な魔力砲を放つ。

 

その強力な一撃は炸裂したこうげきによっての発生した衝撃によって大量の土煙が舞っており、スライダーヒーローは幽香の一撃に気付くのに少し遅れて咄嗟に受け身を取るがもろに直撃してしまう。

 

『ピッ!風見 幽香 の マスタースパーク!

スライダーヒーロー に 634 の ダメージ!』

 

幽香はどちらかと言えば魔力による攻撃よりも物理による攻撃の方が威力が高く、魔法は物理よりも威力を上げるとなると『ダブルスパーク』のように多少の準備が必要とのる技を使う必要があり、今回の戦闘のように速さと一撃の強さを求められる戦闘には向いていなかった。

 

だがその攻撃の範囲はとてつもない範囲となっており、至近距離で使う場合は近接攻撃よりも有効打となりやすくなっていた。

 

「ぐっ、中々効いたな………まさかたった二発、それもガードや受け身越しでこんなに削ってくるとは想定外だ。

だけど私は自分よりも圧倒的に火力が高い魔物を相手に戦った経験は腐るほどあってね、この程度じゃまだ倒せないぞ!

『リザオラル』!!」

 

そして天使の輪がスライダーヒーローの頭上に出現する。

幽香は情報を軽く共有こそしていたが、呪文などについてはそこまで聞いていなかったのもあってリザオラルがどのような効果を持つか知らない。

だがこれが致命的になることを幽香はまだ知らなかった。

 

「受けてみよ!我が正義の矢を!『シャイニングボウ!!』」

 

スライダーヒーローは右手の槍を天へと掲げるとそこから光の柱を産み出す。

その柱は空中にて止まり小さな太陽となって収束する。

 

光の柱が消え去ると同時に大量の光の矢が小さな太陽から放たれる。

 

その矢は幽香へと全て吸い込まれるように動いて避けようとする幽香を追いかけ続ける。

 

「ええい!鬱陶しいわね!!」

 

そして幽香はその日傘を用いてとてつもない速さで連撃を放ち、矢を全て叩き落としていく。

 

だがその次の瞬間スライダーヒーローが光を放ちながら十字を切る動作を行い呪文を放つ。

 

「『グランドクロス』!!!」

 

聖なる十字は前方の全てを浄化せんと幽香の元へと向かっていくのだった。

 

 



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VSスライダーズ  その6

 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

試合開始の合図と同時にスィラの指示がスライダーガールにへと出される。

 

『スライダーガール、バイメリト。』

 

「喜んで!」

 

スライダーガールは呪文を唱えるとスライダーズ全員へと星が昇るような光が発生する。

 

さっそく使ってきたわね………

 

そしてバイメリトを発動した直後スライダーガールが飛んでもない速さで加速しながらそのエアバイクで突撃してくる。

 

「さすがにそれに当てられたら死にかねないから当たるわけには行かないわよ!」

「うさぁぁぁぁぁぁああああ!?!?」

 

霊夢は急旋回するのは難しいと読んで横へ飛行することであっさりと避けていく。

てゐはがむしゃらに避けてこそいるが当たる様子は無さそうなので放置で問題ないだろう。

 

私は追尾性の高い御札を用いた弾幕でスライダーガールを狙って攻撃する。

どうもスライダーガールの急加速は攻撃にしか使えないらしく上手く加速出来ずに次々と弾幕が当たっていく。

 

 

『ピッ!博麗 霊夢 の 攻撃!

スライダーガール に 258 の ダメージ!』

 

やはり威力が低すぎてダメージがあまり通ってないわね……

 

 

霊夢は弾幕ごっこと言う勝負において最強とも言える強さを誇るが弾幕の威力そのものは一部を覗いてそこまで高くは無いのだ。

面での制圧力が兎に角高くとも一点突破の火力にはどうしてもかなわないのである。

 

その為にどうしても火力だけは魔理沙に負けているのだが、霊夢の最も強い面はその弾幕の制御能力にあった。

 

霊夢は弾幕ごっこという決闘方法を用いる者達の中でもずば抜けた制御能力を持っており、弾幕を適切に放ち続けて常に的確な位置から攻撃をし続けていた。

 

その為霊夢は弾幕の無駄撃ちが少なく、継続戦闘能力がかなり高い人物でもあるのだ。

霊夢に勝機を見出ださせるとするならばどれだけ無駄を減らせるかが勝負を握るかぎとなるだろう。

 

 

「霊符『夢想封印』!!」

 

霊夢から様々な色の巨大な弾幕が現れてその全てがスライダーガールを追尾する。

 

『スライダーガール、海破斬!』

 

スライダーガールのエアバイクが縦に割れて開いていき、中から砲身が現れる。

スライダーガールはどこからともなく黒いスライムを取り出して砲身へと詰めるとエアバイクにあるスイッチを叩いて発射する。

 

砲弾にされたスライムがかなりジタバタと暴れており可哀想に見えたが霊夢にはそれを気にする程の余裕は無かった。

スライダーガールから放たれた砲弾は夢想封印の弾幕を全て切り裂きながらこちらへと向かってくる。

 

何故スライムを発射して斬撃になるのかはどうしても謎であった。

 

霊夢は冷静に観察して弾幕が横に切り裂かれているのを見つけて上に避ける、しかしスィラ達はそれを読んでいた。

 

『スライダーガール、ベタン!』

 

「お任せください♪」

 

スライダーガールの詠唱により霊夢の周辺の重力が何倍にも増える。

『ベタン』は重力で相手を押し潰す事で割合ダメージを与える呪文であり、全体化した『ベタドロン』という呪文もあるのだが、それよりも重力を増やし一人に集中させるために与える割合も多くなっていた。

だがこれは地面に叩きつけられなければ上手くダメージを与えられない技でもあった。

 

「っ!?まさか重力まで操るなんて………」

 

霊夢は自分に感じる違和感に瞬時に気付いて回避行動を取ることで重力による被害を最小限に抑えてダメージを回避する事に成功していたのだった。

 

『へぇ、ベタンを避けるとはさすがじゃないか。

まだまだ行くぞ!』

 

しんらばんしょう斬!!てんいむほう斬」

 

空間ごと切り裂き、オーロラを産み出しながら霊夢へと(ついでにてゐにも飛んでいるが)飛んでくる。

特に空間ごと切り裂くいている為に霊夢の夢想転成ですら無傷でいられるかは五分と五分と言った所であった。

 

どちらも横へと切り裂いているのに気付いている霊夢はまたしてもあっさりと避けていく。

常日頃から弾幕ごっこで鍛えられてとてつもない強者と何度も戦って勝利をもぎ取った霊夢にとってこの程度の全体化した攻撃を避ける程度ならそこまでむずかしくはないのだ。

 

結果としてどんどん霊夢の弾幕が一方的に当っており、逆にスライダーガールに至ってはの攻撃があまり当たっておらず、軽くイラついていた。

 

だが霊夢は油断しない。

メガボディの魔物がの恐ろしさは身をもって知っているからだ。

 

するとスライダーガールが動きを見せ始める。

 

『ステルスアタック!』

 

突如としてスライダーガールの姿が消え去る。

 

だが気配も感じられなくなっており、霊夢は発見するのが難しくなっていたのだが、咄嗟に全方角へと弾幕をばらまき始める。

 

するとダメージを浮けながら弾幕が消滅しているかしよを発見する。

 

『ピッ!博麗 霊夢 の無差別攻撃!

スライダーガール に 156 の ダメージ!

因幡 てゐ に 153 の ダメージ!』

 

「うっさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!?!?!?!?!?」

 

あ、う詐欺がいるの忘れてたわ。



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死神と死神

 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

上司からの死刑宣告を食らった小町は大きく落ち込みながら戦ってはいたが、その一撃一撃が命を狩り取る死神の一撃としてスライダークに襲いかかる。

 

対するスライダークは小町の鎌を使った巧みな連撃に多少苦戦しており、ある程度受け流したりカウンターを入れているがその度にスライダーク自身も直撃を貰っていた。

 

すると自身の横を何かが吹き飛ばされたような強風が横切る。思わずスライダークと共に目で追うと吹き飛ばされた者の正体は風見 幽香であり、小町は驚きを露にする。

 

「んなっ!?あの風見 幽香がパワー勝負で吹き飛ばされたのかい!?」

「おそらく今のはスライダーヒーローの『まねまね』だな。

あいつの攻撃力であそこまで吹き飛ぶとなれば痛恨の一撃でも出したかそれだけとんでもない威力の攻撃をその幽香という者が出したのだろう?」

 

驚く小町に対してスライダークは冷静に状況を見極めていた。

これもスライダーズ達が己よりも圧倒的に強い魔物と連戦に連戦を重ねた結果身に付いたものであり、この国の魔物はほぼ全てがどのような状況においても冷静に状況を判断することが出来るようになっていた。

とはいえ突然の事にはまだ弱い個体も多く、パニックになる時は普通になるので完全とは言えないが。

 

そして小町はゆっくりと足を後ろへと動かし後退しながら能力を使ってスライダークの背後に突如として現れる。

だが……

 

『スライダーク、まわしげり』

 

全体の状況を把握しながら指示を出していたスィラの的確な指示により最高クラスの威力を誇る物理体技の一つである『まわしげり』を放つ。

 

突如として放たれる『まわしげり』に小町は鎌をなんとか構えて受け止めるが大きく吹き飛ばされる。

直撃はしなかった上に武器でガードした為にダメージこそ無いのだが武器で受け止めた際に受けたダメージは相当なものであり、とんでもない衝撃を腕を伝って浮けてしまい、小町の腕はかなり痺れていた。

 

「うっわ的確だねぇ…………スィラってやつの目と頭のなかはどうなってるんだい?」

「愚問だな、今の主にはこの闘技場の戦闘フィールドの情報以外なにも受け取っていない。

己の意識の何もかもを全て戦闘に集中している故な。」

 

さらに追撃とばかりにスィラは続きの指示をスライダークへと出す。

 

『スライダーク、ばくれつけん。』

 

その指示に従うスライダークは己の拳を叩き込むべく一瞬で小町の目の前へと移動して四発強烈な拳を小町の腹部に叩き込む。

 

小町はその攻撃を貰って壁に叩きつけられる。

 

「ぐぬっ!?」

 

すると咄嗟の判断で小町は目の前に能力を使って距離をとてつもなく長くする。  

 

これによってスライダークはとんでもない速度でこちらへと突撃してきていたが小町が能力を用いた空間に入ると同時に止まる。

いや、移動はしているが完全に動きを留めている。

この理由は実はそんなに難しいわけではなく、小町の能力にある『距離を操る程度の能力』にある。

 

これは死神としての種族的な能力でもあるのだが小町は死神達の中でも特に戦闘での能力の扱いに長けており、一部の空間の距離を伸ばすことにより敵の移動を妨害したり、逆に直線距離を大きく短くすることにより擬似的な瞬間移動を行う。

その為に死神としての腕"だけ"は確かなのだが………サボり魔気質がどうしても邪魔をしており、度々説教を食らっている。

 

だがそんなサボり魔が今はその能力を全力で用いる程に本気で戦っている。

この理由は何故か。

 

 

それは…………

 

『なんとしてでもこの戦いで活躍して少しでも説教の時間を短くして貰う!』

 

この一つに尽きた。

 

だが本気を出した小町にスライダークは徐々にではあるが翻弄され始めていた。

 

スライダークが突撃しても能力によって近付けず、逆に小町はスライダークが認識出来ない速度で近付いてくる。

 

だがスィラはそんなスライダークに的確な指示を飛ばしていたのもあり小町は中々決定打を出せずにいた。

 

さらに小町が弾幕を出そうとしてもスライダークが定期的にマホカンタという魔法反射結界を作り出して弾幕を全てこちらに跳ね返してくる為に接近戦に持ち込む他無いのだ。

 

そして状況は動き出してついに小町の大鎌がスライダークへと直撃したその時だった。

 

「っ!?」

「よし!これでどう?」

 

『ピッ!小野塚 小町 の 攻撃!

死神スライダーク に 349 の ダメージ!』

 

するとスライダークの目が怪しく輝き切り裂かれた腕でその鎌を掴んで今までの倍の威力を誇る蹴りを入れる。

 

「ガッ!?」

 

『ピッ!死神スライダーク の 特性 ギャンブルカウンター 発動。

小野塚 小町 に 999 の ダメージ!』

 

小町は全てを粉砕するかのような威力の蹴りを貰って鎌の柄を真っ二つにへし折られ、肋を数本持っていかれた。

 

「がっ………がはっ!?

警戒しろ……とは………言っていたけど………なんつう威力………」

 

小町は死神として生と死の狭間に存在する種族の為に粉砕骨折程度ならまだ戦闘続行可能なのだがしばらくは回復に力を裂く必要が出てきてしまった。

 

果たしてこの勝者はどちらの手に………



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死神と死神  その2

 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

『小町』

 

スライダークの強烈なカウンターを直撃してしまった小町に対して観戦席にいた映姫は声をかける。

 

『まだ………やれますか?』

 

「っ!はい!」

『そうですか………では勝てたのなら………ボーナスとして休日を1日だけ差し上げます。』

 

その言葉を聞いた瞬間小町は爆発的な加速を見せてスライダークの目の前に現れて自分の妖力を限界まで注ぎ込んだ大鎌を高速で振り回す。

 

そして映姫の言葉に反応するように叫び始める。

 

「映姫様……………1日だけって短すぎませんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!?!?!?」

 

そんな小町の顔には涙が浮かんでおり、直接戦っているスライダークとしてもとても微妙な気分となっていた。

 

『無茶を言わないでください。

ただでさえ冥界は人手不足です。

休日を1日上げるだけでも感謝してください。』

「ありがとうございますよコンチクショォォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオ!?!?!?!?」

 

小町はヤケクソ気味に鎌を振るってはいるがスライダークはかなり苦戦を強いられていた。

 

何故ならスライダークがへし折ったはずの大鎌は小町の妖力で完全に繋がっており、さらに刃の外側には実態の刃とは別に妖力で作られた刃が発生していてリーチが読みにくくなっているのだ。

 

『ピッ!小野塚 小町 の つるぎのまい!

死神スライダーク に 200 の ダメージ!

死神スライダーク に 200 の ダメージ!

死神スライダーク に 200 の ダメージ!

死神スライダーク に 200 の ダメージ!

死神スライダーク に 合計 800 の ダメージ!』

 

 

尚この時小町は気が付いていなかったのだが、小町のヤケクソの攻撃は特技として判定されており、この時始めて幻想郷の者が魔物世界の特技を習得した瞬間でもあった。

 

さらに限界を超える量の妖力を注ぎ込まれた大鎌は徐々にヒビが入ってはいるのだが、その隙間に入り込んだ妖力が力強くくっ付けて例え折れても持てるようになっていた。

 

更に言えばつるぎのまいで出せる一撃のダメージで壁である限界ダメージを出せており、もしもこれで最大回数である7回直撃をしていた場合ダメージは1400というスモールボディのモンスターではとても耐えられない量のとてつもないダメージとなっていた。

 

「ぐっ!?がっ!?このっ!?」

 

更に言えば踊り系特技であるつるぎのまいに対して受け流しは発動することが出来ず、ギャンブルカウンターはこの連撃に対して一回の攻撃と判定される為に発動がかなりの低確率となっている。

 

何故小町がここまでの頑張りを見せているのか。

それはこの一つに尽きた。

 

冥界には閻魔である映姫含めて土日や祝日の休み等存在せず週に一度の休みしか取れないのである。

 

冥界の人手不足が深刻となる最大の理由、それは………人手不足によって減らさざるを得なかったこの休みによって就職を希望する者が余りにも少ないからである。

 

この時の小町の心の中はというと………

 

『休みをサボりとは別に1日貰えるだけマシ』

 

小町はとことんサボり魔ではあるのだが切実な話ちゃんとした休日は欲しかったのだ。

 

『スライダーク!てんぺんちい!』

 

スィラはこのままでは攻撃をまともに当てるのも難しいと判断して固定ダメージを与える超広範囲の体技を用いる。

 

空から巨大な隕石が複数落ちてきてスライダークを巻き込みながら大爆発を引き起こす。

 

小町はこれを避けることが出来ずに直撃を貰ってしまい身を守る為に振るったその大鎌に更に大きな亀裂が入る。

 

『ピッ!死神スライダーク の てんぺんちい!

小野塚 小町 に 256 の ダメージ!

博麗 霊夢 には 当たらなかった!

風見 幽香 には 当たらなかった!

因幡てゐ に 267 の ダメージ!』

 

何故かてゐが巻き込まれてはいたが自分ごと巻き込んだはずのスライダークには一切のダメージがない。

 

どうやらスィラはギャンブルカウンターによって死にかける程の痛手を一度負った小町を確実に倒すために基本的に避けられない攻撃を用いて止めを刺すつもりのようだ。

 

だが小町は倒れない。

今の小町は休日という貴重な日をなんとしても手に入れる為に覚悟を決めていたのだった。

小町は確かにサボり魔だ。

普通ならば即クビにしてもおかしくない程の事をずっとやらかしてはいるのだが、まだクビにされずに働けているのには理由があった。

 

そう、本気を出した小町には例え映姫であったとしてもかなりの苦戦を強いられる程に小町は冥界において強者として知られているのだ。

確かに仕事はサボるしよく説教されてはいる。

 

だが強さだけで見れば小町は間違いなく閻魔殿で二番目の実力者であり、冥界でも指折りの数少ない実力者の一人なのだった。

 

そして命を狩り取る死神の大鎌がついにスライダークを捉えた。

 

『ピッ! 小野塚 小町 の アサシンアタック!

死神スライダーク は 即死しなかった。

死神スライダーク に463 の ダメージ!』

 

ついに小町はスライダークに致命傷を負わせたのだった。



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ドSとヒーロー

 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

スライダーヒーローと幽香によるパワー勝負は未だに続いていた。

 

単純なパワーだけならスライダーヒーローに軍配が上がるのだが、スピードと耐久力ではどうしても妖怪である幽香に遅れを取っていた。

幽香は持ち前の脚力と飛行の合わせ技によってスライダーヒーローを圧倒する程の速さで動き、的確にスライダーヒーローへとダメージを蓄積させていた。

 

だがスィラの指示によって状況を一気に覆す程の効果を持った呪文が発動される。

 

『スライダーヒーロー、アタックカンタ』

「承知!」

 

するとスライダーヒーローを覆うように球場の目に見えない結界が生成される。

 

「アタックカンタ………たしか物理反射結界だったわね。」

 

幽香は威力を無視して反射する"カンタ"系、限定的ではあるがカンタ系では反射不可能な攻撃すら反射する"よそく"系の特技だけは印象に残っており、警戒していた為に物理攻撃をやめて弾幕による牽制とマスタースパークを中心とした高火力スペルカードによるダメージを中心に戦いを始める。

 

だがそんな幽香のマスタースパークすらも………

 

『スライダーヒーロー、呪文よそく』

「承知。」

 

スライダーヒーローは己の右腕の槍を盾へと変形させて身を守る。

マスタースパークの範囲であればただ身を守る程度では全身を妖力と魔力による高出力の砲撃に呑まれるので意味がないのだが………

 

「まずっ!?」

 

『呪文よそく』と呼ばれる特技は全ての呪文、魔法を威力や効果を無視して全て反射するという反則級の特技であった。

 

幽香は反射されるマスタースパークをその身体能力と飛行能力を最大限活かしてなんとか回避することに成功する。

 

「やってくれたわね………まさかその物理反射を維持しながら別の反射系を使うなんて………アタックカンタとやらを使ってから動く様子が無かったから動けないと思っていたのに……」

 

「事前に主と作戦を決めていたのだよ。

せ世界の住人は私達の世界の特技の情報をそこまで知らないからこそ普通に考えれば刺さらないこの戦法が刺さるのではとね。」

 

そう、スィラはわざわざ植物系の魔物や花等がない所を選んで作戦を軽く練ってきており、その時に提案された作戦がちょうどこれに当たるのだ。

 

本来モンスターマスター同士での戦いにおいてカンター系の呪文はハッキリ言って"意味がない"。

何故ならばモンスターマスター同士での戦いでは確実にいてつくはどうを覚えさせている為にバフとして扱われる為にいてつくはどうを使われてしまい、一撃でカンタ含めてすべての補助効果を問答無用ではぎとられてじう。

一部例外こそあるが、基本的にモンスターマスターの戦いとはにらみ合いであり、如何に敵を術中に嵌めるかを与えるも戦術の一つと言える。

そして幽香はアタックカンタのとマホカンタの両方がある場合の攻撃方法も一応考えてきてはいた。

 

幽香は突如傘を持つ手とは反対のその手にナニカを掴んで、スライダーヒーローへと急接近してから傘を目の前で"わざと"構えて………

 

「マスターっ!!」

『呪文よそく!!』

「来るがいい!!

また反射してくれる!」

 

「スパーク!!」

 

と言いながら傘を持つ手とは反対のナニカを掴んだ手をスナップを効かせながらゼロ距離で投げつける。

 

「へぶっ!?!?」

 

スライダーヒーローは間抜けな声を出しながら後ろへと吹き飛ばされる。

 

そう、幽香がその手に掴んでいた"ナニカ"とは………拳に掴んで砕いていた"石つぶて"だったのだ。

 

『ピッ!風見 幽香 の 石つぶて!

スライダーヒーロー に 167 の ダメージ!

スライダーヒーロー の くじけぬ心 が 発動!

スライダーヒーロー は こらえた!』

 

今の一撃により元々ある程度死にかけになるまで削られていたスライダーヒーローの体力が完全に削られたのだが、スライダーヒーローから金色のオーラが現れてなんとか耐える。

 

そして………

 

「あら?反射してくれるんじゃなかったのかしら?

それにもう虫の息みたいだけど大丈夫なのかしら?」

 

思いっきり煽ってくる。

 

「侮辱してくれるな………『ギガクロスブレイク』!!」

 

スライダーヒーローは挑発に乗ってしまい盾を槍に戻して雷を纏わせてから十字に斬る。

 

斬ると同時にX状に生成された雷の刃が幽香へと襲いかかる……………のだが…………。

 

「その程度じゃ当たらないわよ!!」

 

 

弾幕ごっこに慣れている幽香相手に遠距離から面や量での攻撃ではなく範囲の狭い十字での攻撃は悪手だった。

 

幽香はひらりと回避してまた石つぶてをぶつけると見せかけて傘ではなく手からマスタースパークを放つ。

 

「なにっ!?」

 

この一撃によりスライダーヒーローは体に大穴を開けて死亡した…………だが天使の輪が現れてスライダーヒーローの死体を浮かび上がらせてスライダーヒーローは復活する。

 

「なっ!?」

 

そして復活したスライダーヒーローには星のが体から溢れるようなエフェクトが付いていた。

 

『ピッ!スライダーヒーロー の 特性 『ラッキーSP』 が 発動!

スライダーヒーロー は ラッキー状態 に なった。』

 

スライダーヒーローの本領が今発揮される。



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ドSとヒーロー  その2

今回はちょい短め。


 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

「ラッキーSP…………本領発揮といった所かしら………」

「あぁ………この状態の私は………決して倒れない!」

 

するとスライダーヒーローはこちらに急接近して蹴りを入れてくる。

 

「甘いわy………っ!?がはっ!?」

 

幽香はその蹴りを避けたと思っていたが突如突風が発生する。

この突風はどうやらスライダーガールの攻撃が地面が激突した瞬間に発生したようだ。

その突風に吹き飛ばされたスライダーヒーローの攻撃が幽香の鳩尾に突き刺さる

 

ラッキーの必中ってそういうこと!?

 

『ピッ!スライダーヒーロー の 攻撃!

ラッキー状態 の 効果 により 必中!

ラッキー状態 の 効果 により 会心確定!

会心の一撃!風見 幽香 に 999 の ダメージ!』

 

 

そう、『ラッキー』という特性はどのような状況であれ避けられる攻撃はどのような状況でも回避し、こちらの攻撃が外れる事は絶対に無い。

さらに確率で効果を及ぼすタイプの技も必中となるのだ。

 

「ガッ!?……かハッ!?………げほっげほ……」

 

幽香の肉体強度とスタミナは妖怪の中でも桁外れな程に高い。

だがさすがにダメージの限界に激突するような攻撃を二度も受けてしまっては如何に幽香といえど洒落にならないダメージとなっていた。

 

だが幽香にも勝機はあると言えた。

何故ならばラッキーSPは制限時間があり、発動確率もバイメリトが無ければ安定しない程でしかない。

更にスライダーヒーローのバイメリトは先程死亡した際に解除されており、スライダーガールが再度付与しようとも今は霊夢の相手に集中しているために難しい。

 

スライダーヒーローの攻撃が終わったことによりラッキーSPは一時的に解除された。

再度発動するかは運によるのだが…………

 

 

シーーン………………

 

 

早速不発となっていた。

 

「あっ………」

 

自信満々で調子に乗っていたスライダーヒーローは大量に汗をかきながら幽香に視線を向ける。

 

ニコッ♪

 

幽香は可愛らしい笑みを浮かべていた。

ただその目には……………嗜虐の色を浮かべておりこれからどう調理してやろうかという笑みを浮かべていた。

 

『スライダーヒーロー、リザオラルかけて気合いで耐えろ。』

「主ぃ!?」

 

スィラとしては他の反射系の特技で耐えさせていたら別の技で殴られる為に生き残る確率を少しでも高くする為にスライダーヒーローにリザオラルを唱えさせる。

 

スライダーヒーローに天使の輪が現れて再度自己蘇生効果が付与される。

だがそれはちょっとした死刑宣告となっていた。

 

「死になさい?花符『幻想郷の開花』」

 

とてつもない量の弾幕が一発一発殺意を込めて放たれる。

そして蘇生したばかりで体力を回復していないスライダーヒーローにとってはその弾幕一つ一つが即死するには十分過ぎる威力を持っており、基本的に攻撃は受けて耐えきるスタンスである魔物がこの弾幕を避けるのはハッキリ言って不可能と言えた。

 

「Noooooooooooooooooo!?!?!?!?!?」

 

『ピッ!風見 幽香 の 花符『幻想郷の開花』!

スライダーヒーロー に 342 の ダメージ!

くじけぬ心発動!スライダーヒーロー は 耐えきった!

スライダーヒーロー に 316 の ダメージ!

くじけぬ心発動!スライダーヒーロー は 耐えきった!

スライダーヒーロー に 327 の ダメージ!

くじけぬ心発動!スライダーヒーロー は 耐えきった!

スライダーヒーロー に 339 の ダメージ!

スライダーヒーロー は 死亡 した。

リザオラル 発動! スライダーヒーロー は 蘇生した!

スライダーヒーロー に 347 の ダメージ!

くじけぬ心発動!スライダーヒーロー は 耐えきった!

スライダーヒーロー に 337 の ダメージ!

くじけぬ心発動!スライダーヒーロー は 耐えきった!』

 

もはや拷問であった。

いくら即死する火力の攻撃を受けても無駄に運が良いので簡単には死なずに耐えてしまう。

しかし耐えたらまた次の一発を受けて死にかけるがまた耐える。

やっと死んだかと思えば自身の付与したリザオラルにより復活して、直後に大量の攻撃を受けてまた耐える。

 

いくら特性で耐えれるとはいえ痛いものは痛いのだ。

しかもわざわざ弾幕が突き刺さったら体から中々抜けないように返しが付いている鋭い弾幕が混ざっており、耐えた時に余計に刺さるようになつて更に痛い。

 

「こ………このドSめぇ………………」

 

スライダーヒーロー はは無慈悲に大量の弾幕を無理矢理耐える羽目になっていたのだった。

 



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紅とピンク

 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

「ぐっ!?」

「そこよ!」

 

霊夢はう詐欺を巻き込みながら全方位への無差別攻撃を行うことによりスライダーガールのステルスアタックを対処することに成功していた。

 

本来ステルスというのは呪文の一種であり、姿、匂い、気配、音といった全ての要素を一定の時間消し去るというとんでもない効果を持ってはいる。

だが実態を消せるわけでは無いために物理は避けられても広範囲のブレスや呪文等と言ったものを避けることは不可能なのだ。

 

そして場所がわからないだけで実態があるのならその場所を探る簡単な方法が無差別に全方位へ攻撃することであり、"味方を巻き込む"という点さえ無視出来るなら確実に奇襲されなくなるという利点がある。

 

霊夢は周囲の空間を結界により支配して空間の外側と内側からの攻撃を行うことにより逃げ場を無くすといった事も可能な為にステルスアタックは霊夢にとっては全くの驚異にすらならない技となるのだ。

 

『スライダーガール、接近戦では分が悪そうだ。

シャイニングボウ!』

「わかったわ!」

 

すると何匹ものスライムをどこからともなく取り出して変形して砲身を露出させたエアバイクに詰め込めるだけ詰め込む。

 

その後空高くまで飛行して天へと砲身を向けてスライム達を射出する。

 

スライム達は光を纏って空高くに止まって合体し、地上を浄化する勢いで大量の矢を放ち、スライダーガールもそれに続いて光の矢の一部となる。

 

『たいあたり!』

 

スライダーガールは霊夢に激突するかのように見えた………だが………

 

「さすがにそう簡単に当たってられないのよ!

『夢想天生』!」

 

霊夢は己の能力が持つ最強の力。

周囲の空間からも浮き、攻撃には絶対に当たらなくなる切り札である『夢想天生』を使っていた。

 

これによりスライダーガールは霊夢をすり抜けて地面へと激突する。

 

この際にとてつもない爆風が発生してスライダーヒーローと幽香を巻き込んだのだが、スライダーガールとの対決に全神経を研ぎ澄ましていた霊夢は気付いてはいなかったのだった。

 

「すり抜けたぁ!?なによそれ!?」

「私の切り札よ、ものすっっっごく疲れるから使いたく無かったんだけどね。

さすがにあれは避けきれないしまともに貰ったら挽き肉じゃ、済まなそうだったから回避させてもらったわ。」

「ぐぬぬぬ………」

「いい加減畳み掛けさせて貰うわよ!

霊符『夢想封印』!」

 

霊夢から七色の弾幕が発生してスライダーガールを追尾し始める。

スライダーガールは何とか回避しようとエアバイクをフルスロットルで動かすが、素早さギャンブルによって素早さが大幅に下げられた事によって弊害が起きており、元々かなりの素早さだったのだがそれを行かすことが出来ずに弾幕を引き剥がせないでいた。

霊夢へと押し付けようにも霊夢は今空間から浮いており、攻撃が当たることがない。

ならばどうするべきか……。

 

「っ!これならどうよ!!」

 

スライダーガールは霊夢をすり抜けた直後にバイクに刺してあった黄金の杖『ひかりのつえ』を取り出して掲げる。

 

ひかりのつえを用いた場合の効果は周囲にいる敵は全ての付与された効果を引き剥がす『いてつくはどう』を引き起こす。

 

この効果は例え魔王や神であろうとも防ぐことが出来ず、自己蘇生、自己強化、テンション、といったありとあらゆる効果を剥がすことを可能としていた。

 

もちろん………霊夢の夢想天生すら簡単に剥がしてしまうのだ。

 

全てを凍てつかせ、威圧する波動を放つ。

これによって身体を呑まれてしまった。

 

そしてこれが霊夢の最大の誤算となり、己をまも最も最強な防具が全くの機能不全を起こして解除されてしまう。

 

「っ!?うそっ!?『夢想転生』を強制解除っ!?

ってまずい!?」

 

霊夢はいきなり自分の切り札が完封された事に驚き、一種隙を見せてしまう。

 

そしてスライダーガールを追っていた弾幕が霊夢に直撃する寸前にスペルカードを解除することにより難を逃れる。

 

『スライダーガール!バイキルト!』

「行きます!」

 

スライダーガールはギャンブルによってただでさえ2倍になっている攻撃力を更に跳ね上げた。

 

『地面に『アイアンブロー』!』

「発射!!」

 

スライダーガールは地面にそのとてつもない攻撃力でのアイアンブローを叩き込む。

 

これにより闘技場のフィールド全てを粉砕して大量の瓦礫と土煙を空へと巻き上げて視界を塞ぐ。

 

「ウサァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアア!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

ついでにう詐欺もまとめて吹き飛んでいた。

 

『攻撃全部耐えてステルスアタック!!』

 

そして己の気配を完全に消して捨て身のごとくスライダーガールは突撃する。

 

霊夢は対処しきれるのか…………



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決戦!スライダーズ!

すみません今日もちょい短め。


 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

「視界が悪い………これじゃ弾幕を放っても場所が把握できない………」

 

それでも弾幕を全方位に放って策敵を行う霊夢だがどこかで弾幕が消えるのは感知出来るが視界で確認することが出来ない為に場所の把握に失敗していた。

 

 

 

『ここで夢想天生を使ってもまた強制解除がオチね………

ならば………』

 

霊夢は周囲に結界を構築して周囲への警戒を最大にする。

 

すると結界をなにかが通り抜けるのを感知する。

 

『まだよ………もっと引き付けないと………』

 

通り抜けた何かは霊夢が幾重にも張った感知結界を徐々に通り抜けて行き背後に出現する。

 

そして後少しで激突するその時………

 

「『夢想天生』!!」

 

霊夢は直撃するギリギリのタイミングで夢想天生を発動して通り抜けようとしたスライダーガールのいる方向へと飛行する。

 

もし通り抜けている途中で解除されれば重なっている部分の霊夢の身体がどうなるかわからない。

その為スライダーガールの進行方向とは逆を行くことで早くすり抜けを終えたのだ。

そしてすり抜け終わった瞬間に霊夢は反撃に出る。

 

「夢想封印!」

 

すり抜けた方へ向けて己の全力の霊力を込めた夢想封印を叩き込む。

 

「うそっ!?」

 

スライダーガールはギリギリのタイミングで攻撃を対処されたことに驚いて反応が遅れていた。

スライダーガールは霊力を持たない上に感知できるのは魔力のみの為に霊夢の結界には気付きようが無かったのだ。

これによってスライダーガールは霊夢の夢想封印を全て直撃してしまう。

 

 

『ピッ!博麗 霊夢 の 霊符『夢想封印』!

スライダーガール に 300 の ダメージ!

スライダーガール に 300 の ダメージ!

スライダーガール に 300 の ダメージ!

スライダーガール に 300 の ダメージ!

スライダーガール に 300 の ダメージ!

スライダーガール に 300 の ダメージ!

スライダーガール に 300 の ダメージ!

スライダーガール は 合計 2100 の ダメージ を 受けた!』

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!?!?」

 

霊夢の強烈な一撃をただでさえ防御力半分の状態で受けた為に本来なら出ないようなとてつもない威力のダメージを受けてしまう。

 

だがメガボディはただでさえ耐久力も高く、ギャンブルによってその体力はとてつもない高さとなっていたのもあり、スライダーガールは平然と耐えている。

土煙が収まった後にスライダーヒーローが吹き飛ばされてスライダーガールへとぶつかってくる。

 

「きゃっ!?もう何を………っ!?」

 

そしてスライダーガールはスライダーヒーローの鎧がほぼ砕けており、中のスライムが溢れていることに気が付いた。

そう、スライダーヒーローは死亡していたのだ。

 

慌ててスライダークの位置を確認してみれば相手の死神と共に共倒れしていることに気が付いた。

 

「そっちは倒したみたいね。」

「正直認めたく無いのだけどかなり危なかったわよ。」

「そこまで強かったの?」

「ええ、危うくこちらの肉体の何処かが欠損するところだったわ。

何とか耐えれたから良かったのだけどね…………」

「あんたも分かったんじゃない?今がどれだけの事態なのか。」

「えぇ、いつもの異変だと舐めてたけど………魔物世界と言ったかしら………相当強者と戦うのに慣れてるわね。」 「そんなもの当然よ……私達は主の魔物なのよ……。

必然的に泥棒猫やルカ様と戦う機会がただでさえ多い。

私達は殆どがチームで組むことで強さを最大限発揮するように配合されているけど泥棒猫やルカ様の魔物はたった一体で状況をひっくり返す事すら可能な超ギガサイズやギガサイズの魔物が多いのだから。」

 

「ギガサイズ…………」

 

霊夢は最初に戦って惨敗した相手である『スラキャンサー』を思い浮かべる。

圧倒的巨体と耐久力、地形を簡単に変化させる程の攻撃力。

あれを相手に戦うのなら相当な覚悟がいるだろうと霊夢は感じていた。

 

「とはいえこれ以上戦うのは不毛かしら………主!」

『そうだな、スライダーヒーローがやられてしまっては編成ではまともに戦うには難しい。

スライムボーグ、判定を頼む。』

 

『ピッ!スィラ様リタイア。

よって勝者は幻想郷チーム!』

 

するとスライムボーグの勝利宣言と同時に空からう詐欺が降ってくる。

そしてそれは………………

 

「ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!?」

 

落ちてきたう詐欺はとどめと言わんばかりに小町の肋骨が折れまくった胸部へと吸い込まれていったのであった。

 

「結局最後まで閉まらないわね………」

 

 



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超G⑨襲来  その1

 

 

~スラバッカ王国~『闘技場』

 

 

『さて、Cランクへの勝利おめでとう。』

「素直に受けとりたいところだけど何で途中で止めたのよ。」

 

スィラは勝者である霊夢達へと祝いの言葉を贈るが霊夢としてはいつものどちらかが全員死ぬまで続ける戦いが急にリタイアで終わった事についてどうしても疑問に残っていた。

 

『簡単な話さ。

スライダーヒーローやスライダークが残ってるんならまだしもスライダーガール、それもロケットスタートが効果切れ起こし始めている状態で戦うとなればまともにダメージが入らなくなり不毛というわけだ。』

 

「つまりスライダーガールじゃなくて他の二体が片方でも残ってれば戦闘続行ということかしら?」

 

『そういうことになる。

私の育てた魔物は一部を除けば例え瀕死の重症を追っていても勝機は生み出せる。

だがロケットスタートはダメージその物が無くなっていくからどうしようもない。

ギリギリの勝負は好きだが痛ぶったりとかは嫌いなのだよ。』

 

「スラキャンサー……………は痛ぶるというか全力で殺しに来てたわね………。

まぁ納得出来たわ。」

『さて、次の相手であるBランクのチームを紹介…………と行きたかったんだがな………』

 

するとスィラの後ろから現れたスライムナイトが何かをスィラに伝えるとスィラはめんどくさそうな顔をしながら言い澱む。

 

「何かあったのかい?」

『海から超ギガサイズの魔物と思われる者が接近中らしい。

というかこんなことをする馬鹿者は私は一人しか知らない。』

『お兄ちゃん…………あとで説教しなくちゃ………』

 

すると観客席にいた紫が全員の前に隙間を生み出してこの国を上から見下ろした視点を移す。

 

するとこの国に向かってくるとてつもなく巨大な人の形をした魔物が見つかる。

するとこの魔物に対して美鈴が反応する。

 

 

「あれ?この魔物………良く見たら霧の湖の氷妖精ではないですか?だいぶ姿が変わっていますけど。」

 

すると紫は何か知ってるような口振りで話す。

 

「えぇ、これはルカという人物がチルノとリバイアさまと呼ばれる魔物を配合して生まれた新しい姿のチルノよ。

一応人格はチルノみたいだけど魔物化した影響でだいぶ好戦的になっているわ。

 

でも………………前に発見した時はこんなに大きく無かったはずなのだけれど…………」

『おそらくもう一体超ギガサイズの魔物と配合して超ギガボディの特性を移植したのだろう。』

 

すると霊夢が紫を疑いの目で見始める。

 

「ねぇ………紫あんた最初から知っていたの?」

「言ったでしょう?魔理沙が入院した原因よ。

誰かまでは言っていなかったけどここまで見れば分かるでしょ?」

「………以前発見した時はって言っていたけど監視をしてたんじゃないの?」

 

紫は溜め息をついて頭を抱えながら答える。

 

「はぁ………それがどうも魔物世界の方にルカという子と何度も行ってるみたいで監視を結構抜けられているのよ。

ルーラでの世界間移動だから何処に行ったかまでは追えなかったのよ………。」

「………わかったわ。

とりあえずどれくらいの事を知っているのよ?」

 

すると紫は苦い顔をしながら言う。

 

「小さかったチルノがどれだけの攻撃を行っていたかと言った所だけど………おそらくあまり参考にならないと思うわよ?」

「どういうことよ?」

 

『私としても同意見だな。

Sサイズか超Gサイズになったのなら前のサイズでの戦闘能力は比較対照にすらならない。』

 

「だからどういうことよ?」

「霊夢、貴方はサイズが上がることによって発生するメリットについて聞いていましたか?」

 

すると映姫が霊夢にそう問いかける。

映姫はテレワークで忙しそうには見えていたが、実は毎回やっている作戦会議その物の内容はちゃんと聞いており、自分が何時でも有利に動けるようにするために作戦会議の内容は全て把握していたのだ。

 

「サイズが上がることによって発生するメリット?

確かサイズが上がると1段階につき一つずつスキルと特性が………ってそういうこと!」

 

霊夢はその言葉でこれが何を意味するかを正しく理解したが基本聞いていなかった幽香は霊夢や他の者だけが理解しているこの事態に疑問を持つ。

 

「どういう事なのよ、そっちだけで納得してないでこっちにも教えなさいよ。」

「あんたやっぱり聞いてなかったわね………」

 

『サイズはS、M、G、超Gの四段階あってサイズか上がる毎に追加可能なスキル、更に特性が増えるのよ。

今回はS→超巨大なったパターンだからスキルが倍になって特3つ増えるわ。

だけど一番恐ろしいのはその能力がとてつもなく上がる事よ。』

『超ギガサイズの魔物を我らモンスターマスターに一体ずつしか戦いに出せない最大の理由が単体でのその異常を遥かに越えた強さが原因だ。

たった一体で戦況すらも覆し兼ねない魔物下手に中途半端な魔物で数を揃えたところで話にならない。

最低限限界まで育てた魔物を4体分揃えなければ戦いにすらならないのだからな。

今回は私が出るとしよう。

あの馬鹿者め………一度しばき倒してくれるわ。』

 

紫もやしとスィラが説明の補足をした後にスィラは自分がどうにかすると告げる。

 

幻想と魔物のハイブリッドとスライムキチガイの戦いが始まろうとしていた。



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超G⑨襲来  その2

 

 

~スラバッカ王国~『近海』

 

 

山を軽々と超える巨大な妖精が海を渡る。

あまりにも大きすぎるその巨体は海を歩いて渡れる程だ。

 

超ギガボディとなったチルノは単体での力もとてつもなく増しており、歩く度に海が凍りついている。

 

「おぉぉぉぉぉいいい!!スィラ!!勝負しに来たぞ!」

 

スィラはそんなチルノの肩に乗る一名のバカに対して青筋を浮かべる。

 

「ルカァ………貴様どうやら死にたいらしいな…………」

 

「あ、あれ?スィラはなんでそんなに怒って………」

「前にも貴様に話さなかったか?超Gに乗ってこの国に来るのは止めろと。

前回貴様のアホが原因で何が起こったかをもう忘れたらしいなぁ………」

 

スィラは瞳に殺意を込めてルカを睨み付ける。

ルカはそんなスィラを見て前回やらかした事を思い出す。

 

「あ、やべ!?」

「そうか忘れてたな?そうだな?良いだろう全力で叩き潰してくれよう!」

 

天高くから高温で赤く染まる物体が急速に降りてくる。

それはスライム型の攻撃衛星であり、スィラの最強のモンスター、スラリンの相棒の一体。

 

「スラブラスター…………やばいこれ勝てるかな………」

 

ルカはひきつった笑みを浮かべてこれから起こるであろう戦いに震える。

するとスィラの肩にスラリンが飛び乗り、スカウトリングから新たにスライムが出現する。

 

だが新しく出たスライムは死んだように動かず、呼吸をせず、反応もしない。

スィラは続いてなにか呪文を唱え始め、それが終わるとスラリンが凍りついたように眠りにつき、新しく出たスライムが目を覚ます。

目を覚ましたスライムはスラリンと全く同じ声で言葉を発し始める。

 

「この馬鹿者には何度お灸を据えれば良いのだろうな……」

「そんなもの私が知りたい。

ヤれるな?スラリン?」

「任せてくれ。」

 

スィラは新しく出したスライムをスラリンと呼ぶ。

ならば今眠りについたスラリンはなんなのか?

その答えはパチュリーが知っていた。

 

「うそ………ウソウソウソウソ!?なんであいつ『凍れる時間の秘法』なんて使えるのよ!?

あれは確かある魔王が悪用していた秘法中の秘法で今は完全な封印処理がされて新たに覚えられる者は誰一人として居なかったはず!?

それに今は日食なんてっ!?」

 

この『凍れる時間の秘法』とは肉体の時間を止めてありとあらゆる変化を受け付けなくなるようにする秘法であり、本来であれば皆既日食にしか使えない術でもあった。

ただし生物が使えば思考や生命活動も停止するために本来は封印に用いられるのだが、とある世界の大魔王はこれを悪用して己の肉体を2つに分けて片方の全盛期の力強さと若さを保った肉体を『凍れる時間の秘法』で一切の変化を受け付けない身体として配下に操らせ、己の肉体は知恵と魔力を全て引き継いだ肉体としてそのまま使っていた。

 

そしてこれはスィラが封印前にある世界の鍵を見つけてそこにあるとあるダンジョンの奥深くでサクッと覚えた術でもある。

スィラは配合する際に本来消える肉体の片方にスキルと能力を全て残して術をかけ、残す肉体側の魂ともう片方の魔物を配合することで配合前の肉体わ残しながら新たな肉体を配合で作り出すことに成功していた。

 

そしてスィラがどのようにして皆既日食の問題をクリアしたのか、それは実を言うと簡単だったりする。

 

全員が空を見上げるとそこには小さな太陽の魔物と巨大な月の姿をした魔物がいる。

 

太陽のような姿をした魔物は全身に刺々しいトゲを生やしており、終始笑顔を浮かべており若干怖い。

さらにその太陽の周囲をぐるぐるとなにか更に小さな太陽がまわっていた。

 

もう片方は嘆いてるように見える表情を見せる月であり、その周囲には雲が渦巻いている。

 

これらも両方と魔物の一種であり、太陽の方はシャイニングと呼ばれている太陽の魔物である。

もう片方は嘆きムーンと呼ばれる月の魔物であり、スィラは昼夜を好きに出来るラナルータという呪文を扱うこと可能としていた。

 

スィラはこれを使って『凍れる時間の秘法』を何度も使ってスラリンの肉体を量産していた。

そして今スィラが取り出したスラリンの肉体に移植されていた特性は『最後のあがき』であり、己の体力を大きく超えるダメージを受けた時、その超えた分のダメージをランダムな割合で全体に与える事が出来る。

 

基本的に一撃が重い超ギガボディの攻撃で発動した場合は基本的に9999ダメージを覚悟する必要があるだろう。

 

するとスィラは青筋をさらに増やしながら言う。

 

「神様にお祈りは? 部屋のスミでガタガタ震えて命ごいをする心の準備はOK?では死ぬが良い!!」

 

異常な耐久能力を持ったスラブラスターと死ぬことを前提としたスライム、果たしてどうなるのか…………



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超G⑨襲来  その3

 

 

~スラバッカ王国~『近海』

 

 

「うわぁ…………スィラさん本気で叩き潰しに来てる………。

あの編成確かスラリンさんを犠牲にする事前提だからなりふり構わない時にしか本来使わない編成なんだけど……」

 

イルはこれから八つ裂きにされるであろう巨大妖精と自分の兄を哀れむ。

 

するとなにかイルの言葉に違和感を感じた霊夢が問いかける。

 

「ねぇ、イル?だったかしら?

それってどういうことなの?貴女があいつと戦った時のやつは本気じゃなかったってこと?」

「いえ、スィラさんは全力でしたしパーティーも本気で作った編成でしたから半分あってます。

ただスィラさんは自己犠牲とか生け贄とか、そういう類いの戦い方があまり好きではないんです。

 

私達が用いる戦法の一つにみがメタや亡者みがわりというものがありまして、

 

前者がメタル系のその圧倒的堅さと耐性を利用してほぼ妨害されずに物理以外ほぼ効かない壁にして味方を守りながら戦うというもの。

 

後者が亡者の執念のしばらくの間死んでいる状態で残り続けるという特性を利用して絶対に死なない盾として仲間を守って戦う戦法。

 

こんな感じで犠牲にすることを前提とした編成ってそこそこ多いんです。」

「話聞く限りあいつはそういう戦法が反吐が出る程嫌いってこと?」

「そうなります。

あの編成のコンセプトはひたすらスラリンを殺させて最後のあがきでダメージを稼ぎつつ、スラブラスターがその耐久力を生かして耐久しながらスラリンの蘇生をすることですから。」

「ちなみにあのスラブラスターってどれだけ堅いの?」

「えーっと特性だけで見れば確か物理魔法を常に反射してすべてのダメージを1/5までカットして体力が2倍以上で自動回復もあったかと………。」

 

霊夢はスラブラスターが持つその圧倒的過ぎる耐久性能に思わず絶句する。

 

「………………それ倒せるの?」

「スィラさん曰く燃費が悪いそうです。」

「つまり持久戦をしろと………」

「一応残存魔力量が足りなくなったらギガ・マホトラっていう呪文でこっちの魔力をたった一発で空になりかねないくらいに吸ってきます。

マホトラ系の対策してないと根こそぎ持ってかれますね。」

「ちなみにそれ相手にして勝てたやつっているの?」

「誰も居ませんよ?」

 

霊夢は必要以上に刺激するのは本気で止めようと心に誓うのであった。

 

 

_________________________________________________

 

 

一方ルカはスィラがガチギレしているという事実に大量の冷や汗をかいており、震えている。

更にその背後にはチルノを応援しながらも心配する大妖精に似た少女がいた。

 

大妖精は結局チルノが配合を受け入れた事により自分も一緒か良いとルカに相談してフェアリードラゴンと呼ばれる魔物と配合して貰っていた。

 

なおルカはチルノと同じ超ギガボディが欲しいか聞いたところ流石にあそこまで大きくなりたくないですと即答したらしい。

 

「よーし!負けないぞぉ!!」

「チルノちゃーん!あんまり怪我しないでね!!」

 

超ギガボディを手にした事によってとんでもない巨体を得たチルノは海水と氷によって刃を形成した巨大な剣を産み出し、両手で持って上から振り下ろす。

だがまだ力の調整が上手く行っていないようで力加減を間違えて氷で出来た柄を握りつぶしてしまい、手から巨大な剣がすっぽ抜ける。

 

海水と氷の剣は海に突き刺さり、巨大な氷山を産み出してスラブラスターとスラリンを巻き込んでいく。

 

スラリンはその一撃によりあっさりと力尽きて死亡し、スラブラスターは一撃目の剣の直撃をバリアによって反射したは良いものの氷山による攻撃が何故かバリアを貫いて直撃する。

 

「追撃が反射出来ない………なんか妙な特性を見つけたようだな。」

 

すると力尽きたスラリンの肉体が光を発し始めて少しすると大爆発を引き起こしてチルノを巻き込んでいく。

 

「ぬわぁぁぁぁぁぁぁあああ!?!?まだまだぁぁぁあああ!!!」

 

チルノは『最後のあがき』によって大きく消耗するが、超ギガボディは最大ダメージの最後のあがき数発程度ではびくともしない。

 

そして突如としてスラブラスターが呪文を唱え始め、聖なる魔方陣を生み出してスラリンが宙に浮かび上がる。

すると驚いたことにスラリンが蘇る。

これに加え最強クラスの回復量を誇るベホマズンによってスラブラスターに至っては僅かに傷付いた程度だったキズを完全に修復する。

 

「うおりゃぁぁぁぁぁあ!!!」

 

チルノは海水を持ち上げて物理的な津波を引き起こす。

津波に呑まれたスラリンとスラブラスターはそれなりにダメージを受かるが、スラリンは死んでおらず、スラブラスターも軽く装甲にキズがついた程度だ。

 

チルノは果たしてどれ程までスィラに食い付いていけるのか…………




チルノの特性『最強の証明』

・常に魔神攻撃
・攻撃時攻撃力の0.25倍の威力でヒャド属性の耐性無視での追撃
・め い れ い で き な い


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超G⑨襲来  その4

すんません、今日は眠気がやばすぎて朝の執筆辛いのでちょい短めにします。


 

 

~スラバッカ王国~『近海』

 

「まだまだこっちは攻撃出来るぞぉぉぉぉおおおお!!」

 

 

チルノはスラブラスターに全くダメージを与えられていないという事実に多少の焦りを見せていた。

 

自他共に最強とも言える個としては圧倒的過ぎる力を持ったにも関わらず殆ど効いていないからだ。

 

今度は頭上に巨大な氷山を産み出してそれを掴み、投げつける。

投げられた氷山は途中で砕け散り、大量の氷の刃となってスラブラスターへと襲いかかる。

 

だがスラブラスターの装甲をある程度凹ませるのが限界であり、スラブラスターは瞬時に回復する。

 

「うおりゃぁぁぁぁぁあ!!!」

 

とはいえチルノは基本的に諦めが悪い、今度は美鈴の見よう見まねでせいけんづきを行う。

すると突き出された拳から海水と氷を纏った衝撃波が発生してスラブラスターを飲み込もうとする。

 

「スラリン」

「みがわり!」

 

だがその一撃はスラブラスターに届く前にみがわりとなったスラリンによって全て受け止められてしまった。

 

スラリンは当然力尽きるがそれと同時に大爆発をおこしてチルノにダメージを与える。

 

「ぬわぁぁぁぁぁぁぁあああ!?!?」

 

チルノはそのダメージによる衝撃でひっくり返るが海に身体が激突することでまた大規模な津波を引き起こす。

 

スラブラスターはザオリクを唱えようとするが津波によって詠唱を邪魔されてしまい、少しだけ中断する。

 

二回目の詠唱を行おうとしたその時だった。

チルノは飛び上がって起きようとしたが勢い余ってスラブラスターを蹴り飛ばしてしまう。

 

スラブラスターは常にアタックカンタを持っている為に当然ダメージはチルノに跳ね返るのだが、スラブラスターの攻撃力が低すぎてチルノには、全くダメージが入っていない。

反射による衝撃でチルノは空中で1回転するがちゃんと足から着水しており、すぐに耐性を立て直す。

 

逆にスラブラスターはダメージこそ無いものの常にアタックカンタでは衝撃までは反射出来ず、蹴りの衝撃で大きく仰け反っていた。

 

チルノは知らず知らずのうちにスラブラスターのザオリクを何度も妨害することに成功していた。

 

ルカはチルノに指示を出したいところだがチルノは己の特性の効果によってモンスターマスターの出す指示を基本的に聞かない。

 

「チルノ!冥界の霧を使え!そうすれば回転も復活も出来ない!」

 

ルカはチルノに勝つために特技の指示を出すがチルノは………

 

「めーかいのきり?

なにそれ?」

 

自分が使える特技を細かく覚えられるはずもなかった……。

 

チルノは今までの技をほぼ感覚のみで使っており、自分が何の特技を使えるか等をまともに覚えてすらいないのである。

 

今度はチルノの背後にある氷の羽から大量の海水が溢れ始めて海水の翼膜を形成してそこから無数の海水の弾幕と氷の弾幕を出して攻撃を開始する。

 

どちらも扱いとしては体技となっており、スラブラスターへと弾幕はガンガン直撃していく。

チルノ程の巨体こそ持ってはいないが、スラブラスターはギガボディをもっていたのでとても避けられる弾幕の密度ではなく、何度もスラブラスターの装甲へ直撃し、スラブラスターはまた飲みにチルノ程のは氷の塊を作り出してその両手にもってひたすら連続で投げつける。

 

投げつけられた氷の塊はスラブラスターを通り抜けて海に直撃したものに関しては氷塊を中心として大きく凍りつく。

 

いつのまにか、チルノとスラブラスターの周辺が氷によって囲まれており、逃げ場を完全に断っていた。

 

スラブラスターはザオリクを唱えきれればまたチルノに大ダメージを与える手段が出来るのだがチルノはがむしゃらに攻撃してくるのもあってなかなかスラブラスターのザオリクが唱えきれない。

果たしてチルノはこのまま削りきれるのか…………



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超G⑨襲来  その5

 

 

~スラバッカ王国~『近海』

 

スィラはバカにしたような戦いに更に苛立ちを募らせており、額には先程以上の青筋が浮かんていた。

ルカも全く指示を出す様子がないどころかモンスターは指示を聞かない。

事情を知らない側からすれば舐められてるとしか思えない光景なのだ。

 

だがスラブラスターは超ギガボディ相手だと実はあまり相性が良くなかったりする。

 

超ギガボディのモンスターはとてつもない攻撃力を誇るモンスターが多く、例え『超ハードメタルボディ』という特性を所持していても全く油断できないのだ。

 

そしてチルノは戦い方こそアホっぽいが反射されにくい攻撃を的確に出しており、スラブラスターはザオリクをなかなか使えていない。

特に超ギガボディモンスターの最大の特徴はその圧倒的過ぎる異常耐性にあり、基本的に『毒』、『麻痺』、『眠り』、『混乱』、『マインド』といったほぼ全ての状態異常に対する完全耐性を保有しており、対人向けに育成される個体はほぼ確実に耐性を下げる効果を持つ『ハック』及び魔力を奪う『マホトラ』にも完全耐性を持っている為に行動の阻害はほぼ不可能となっている。

 

更に超ギガボディの魔物は全体的に異常に攻撃力が高い個体が多く、例え防御力に特化したメタル系の防御力さえもあっさりと突破する魔物も多く存在する。

 

超ギガボディへの対策らしい対策は大きく分けて2つ存在している。

 

一つは同じ超ギガボディをぶつけて真っ向から叩き伏せる。

圧倒的な能力に加えてダメージが限界を突破する超ギガボディ相手ではスタンダードボディ等の耐久力では一撃で倒されてしまうのだ。

 

そしてもう一つの方法としては…………

 

 

 

_________________________________________________

 

 

 

 

 

スラブラスターは何度目かの正直でザオリクの詠唱に成功してスラリンを甦らせる。

同時にキズを付けすぎてしまっていたのでベホマズンを用いてスラリンごと完全回復を行う。

 

チルノは復活したスラリンごと倒すために氷と海水の弾幕を放つが当たらない、スモールボディの特性を持つスラリンは攻撃が当たりにくく、弾幕のように小さい攻撃を大量に放つタイプの攻撃は特に外れやすい傾向にある。

 

だがチルノにとってこれが致命的な隙を生み出す最大の原因となる。

 

「スラリン!『たいあたり』!!」

 

「ピキィィィィィイイイイイ!!!!!」

 

スラリンは体を棒のように引き延ばし、ゴムが縮む際の反動で吹き飛ぶような形で己を吹き飛ばしてその小さな身体で超巨大なチルノへと『たいあたり』を仕掛ける。

 

本来ならばそんな攻撃痛くも痒くもないと言いたい所なのだが魔物世界における『たいあたり』とは対巨大モンスター最強といっても過言ではない威力を誇っており、その効果は……………

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!?!?!?」

 

己の体力の凡そ8割を犠牲に小さな魔物には現存体力の3~6割、巨大な魔物には現存体力の3~4割の割合ダメージを与える体技の一種であり、キラー等のダメージ倍率増加系の特性が乗ってしまう恐ろしい特技でもあった。

 

特に超ギガボディに対しては『ギガキラーSP』を保有していた場合2倍のダメージを与えてしまうのもあり、これ一つが乗っただけで6~8割の割合ダメージとなり、『ロケットスタートSP』を持っていた場合はこれにさらに1.4倍、で7.2~9.6割、モントナーという特殊なモンスターの極一部が保有する『しれいとうSP』があるとさらに1.5倍となり、8.7~11.6割と完全な即死攻撃となり得てしまうのだ。

 

今回のスラリンはギガキラーSPのみの為にダメージとしては6~8割となるため、たった一撃貰うだけで致命傷となる。

 

「あ、やば!?」

 

ルカの場合は超ギガボディを好んで使うのもあり、たいあたりと呼ばれる体技がどれ程恐ろしいのかを身をもって理解しており、この時点で自分がどれ程ヤバい状況かをすぐ理解する。

 

「チ、チルノちゃぁぁぁぁぁぁぁあああんんん!?!?」

 

大妖精はフェアリードラゴンと配合した事によって得たその大きな羽でたいあたりによって倒れたチルノのもとへと向かう。

 

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ、まだまだぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!!!」

 

チルノは己が受けたダメージを周囲の海水を吸収することによって回復する。

リバイアさまとの配合によりチルノは海と氷の妖精へと性質が変化しており、己の肉体を構成するものに海水わ利用出来るようになっていたのだ。

 

そして苦し紛れに先程スラリンによって防がれたせいけんづきをスラブラスターへと御見舞いしてスラブラスターのその驚異的な耐久力を大幅に削る。

 

魔物世界における『せいけんづき』は相手の堅さを完全に無視する性質を持っており、チルノはスキルによってこれを習得していたこともあり、メタルボディの装甲をいとも容易く貫く氷の拳がついにスラブラスターへと突き刺さる。

 

スラブラスターはその一撃により主電源を破壊されて落ちるのだった。



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スライム族の女神  その1

すみません最近仕事疲れがなかなかとれなくてしばらく朝の投稿分は文字数を減らさせていただきます。


 

 

~スラバッカ王国~『近海』

 

 

スラブラスターが海に墜ちていく、蘇生は可能とはいえ耐久自慢のスラブラスターがあんなあっさりと落とされるとは思わなかった。

 

スラブラスターは属性耐性はあまり高くない、だからこそ体技にはめっぽう弱いのだが超ハードメタルボディを貫通する手段はそこまで多くない。

 

そしてどうやらあのチルノという妖精は全ての攻撃にヒャド属性が勝手に付与されているらしい。

 

ならば使う魔物は一択だな。

 

スィラはスラリンを下げて己の持つ最強の魔物の二体目、全てのスライムの頂点、全てのメタル系の最上位に位置する系統の王でありスライム系を統べる最強の女神。

 

「来い!『メタルゴッデス』!!」

 

スィラのスカウトリングが凄まじい極光を発してチルノと同等の大きさの魔物が出現する。

 

その姿はまるで巨大な剣、もしくは玉座にも見える。

剣の刀身が縦に割れて横へと移動して行き巨大な鋼の翼として固定される。

剣の根本にあった4枚の翼が開き、剣の翼とあわせて6枚の翼が開かれる。

そしてその中央には巨大なメタルスライムの姿がある。

彼女はその瞳を閉じており、全体の神々しさをより強調していた。

メタルスライムの下には剣の柄のような装飾と四つの不死鳥の羽根が吊り下げられている。

 

女神であり主の剣、鋼鉄の戦女神が幻想の地に舞い降りた。

 

スラバッカ王国のスライム達は彼女が現れた途端に己の信仰を示すべく祈りを捧げる。

 

幻想郷の神々に取って信仰とは力であり、己の存在を明確にするための物である。

この地に降臨したメタルゴッデスはその巨体と彼女自信が放つ圧倒的過ぎる強者のオーラは幻想の地に居た者達全てに観測される。

 

その神々しさは人間すらも信仰に目覚めさせ、聖なる物を弱点とする妖怪には恐怖を植え付ける。

 

チルノは彼女のその姿を見て萎縮していた。

己が目指していた最強の、たどり着いた強さのなんてちっぽけな事か。

 

全てを蹂躙する最強のスライムが今動き出そうとしていた。

 

「う…………うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!?!?!?!?」

 

チルノはその圧倒的過ぎるプレッシャーに負けないためにがむしゃらに攻撃する。

 

全てを飲み込む大津波が、大地を凍てつかせ悉くを貫く氷の刃の雨が、山すらも切り裂く氷と海水の剣が、火山すらも凍らせる程の強大な絶対零度が『メタルゴッデス』を飲み込む。

 

だが彼女の鋼鉄の体には傷一つ付かない。

 

メタル系の王である彼女にはありとあらゆる属性攻撃が通用しない。

『炎』も『氷』も『雷』も『風』も『大地』も『爆発』も『光』も『闇』も何もかもが通用しない。

状態異常に限っても同じで『毒』も『眠り』も『麻痺』も『混乱』も通用せず、唯一メタル系が共通の弱点としていた精神攻撃、耐性低下の異常もスィラによって育て上げられた彼女は克服している。

 

メタルゴッデスはお返しとばかりにその翼を一度顔の前に折り曲げてから勢いを付けて開き、鋼鉄の剣刀身は段々と閉じていき、再び巨大な剣へと姿をかえていく。

すると周囲には大量に極光で作られた聖なる剣が成績されており、それが次々とチルノに刺さっている。

 

メタルゴッデスはその姿を元に戻しら今度は一度その場で回転して呪文を唱える。

 

全てを飲み込む剛炎の火柱がチルノのいた位置から発生してただでさえ巨大だったチルノを覆い尽くしてしまうのだった。

 

「ち、チルノちゃぁぁぁぁぁぁぁあああんんん!?!?チルノちゃぁぁぁぁぁぁぁあああんんん!?!?」

 

大妖精の悲鳴がその場に轟いたのだった。



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スライム族の女神  その2

 

 

~スラバッカ王国~『近海』

 

 

「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ…………」

 

チルノはメタルゴッデスの放つメラガイアーを必死に耐えていた。

 

本来の氷の妖精としてのチルノであれば炎というのは存在その物が最大の弱点となり得る致命的なものであり、温度次第では一撃で消滅する危険もあるのだが、リバイアさまと配合されたことによりリバイアさま側の耐性がいくつか優先されてチルノの最大の弱点とも言えた火炎属性は耐性無し程度まで上がっていたのだ。

とはいえ弱点ではギリギリ無くなった程度でしかなく、呪文の威力に関わる『かしこさ』も異常な高さを持つ『メタルゴッデス』相手では焼け石に水と言えるだろう。

 

だがチルノには他の妖精や妖怪、人間や魔物よりもとある点でだけは圧倒的なまでに優れている点があった。

それは…………

 

 

「アタイは……………アタイはサイキョーだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!!!!!!」

 

自分は最強だと思い込む事による自己暗示、最強はこんなものではやられない、どんな困難があろうとも立ち向かう度胸と根性。

 

チルノはメンタル面だけで言えばそこらの大妖怪よりも上と言えたのだ。

更にチルノはどんなにやられようとも存在を消滅させられて復活しようとも決して諦めない。

 

自分が最強であると盲目的に信じ、そして諦めたら自分が弱い事を認める事になるとわかっているからだ。

 

チルノは心の奥底では自分がどれだけ弱いのかを理解していた。

だからこそ自分は最強だと思い込む事で、決して諦めない事で自分に自信を持ち続けて妖精を引っ張れる存在になろうとしていたのだ。

いつしかその自己暗示が自分の性格となり、アホが加速していったのだがチルノは諦めようとしなかった。

 

 

「っ!」

 

メタルゴッデスはその閉じていた目を見開く。

己が相対している者の覚悟がどれ程の物かを悟ったのだ。

 

スィラと、スィラに従うスライム達はある一部において共通する好みがある。

 

一つは正々堂々。

もう一つは仲間。

 

そして最後の一つは…………

 

「ルカのバカめ、今回ばかりはルカをしばき倒してやろうと思っていたが気が変わった。

良い覚悟だ!良い闘争心だ!

私が仲間と戦うのにこれ以上無いくらい燃える相手じゃないか!!」

 

覚悟

 

 

スィラとスライム達は何よりも覚悟を決めた相手との戦いを一番好んでいた。

死んでも蘇生されるという環境はどうしても戦いにおいて気の緩みを産み出してしまう。

負けても仕方ない、まだ次がある。

そういう精神的余裕があるからこそどうしても詰めが甘くなる。

 

だが覚悟を決めた魔物やマスターは決して違う。

どのような絶望的な状況でもそれを覆すだけの力を手に入れる。

どれだけ追い詰められても決して諦めず一矢報いてくる。

少しでも隙を見せればそれを的確に突いてくる。

そんなギリギリの戦い。

 

だがスィラ達はそのギリギリが、相手の必死さが、その緊張感を最も好むのだ。

 

「メタルゴッデス!!!全力で耐えろよ!!詠唱開始!」

 

「ッ!!!!」

 

メタルゴッデスは空高く舞い上がりいくつもの文字列によって構成される呪文の輪を何重にも重ねて自信が持つ膨大すぎる魔力の全てを集中し始める。

 

「やらせるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

チルノも飛行してメタルゴッデスのいる高度へとたどり着き、その拳や盾、剣、蹴りを全力で叩き込む。

 

メタル系は純粋な物理攻撃を無効にすることは不可能だ。

故に殴打やただ斬りつけるだけといった攻撃はいくらメタルゴッデスとはいえどダメージを受けてしまう。

 

だが………

 

「マ!」

 

詠唱は一段階進み、その膨大過ぎる魔力が目視で見れる程に集中し始める。

 

メタルゴッデスは軽く表情を歪ませており、決定打とは言えないながらもチルノの攻撃は有効打を与えていた。

 

「そりゃぁぁぁあああああ!!!」

 

「ッ!?!?ダ!」

 

チルノの腰の入ったせいけんづきがメタルゴッデスに突き刺さる。

メタルゴッデスの装飾に軽く罅が入り、メタルゴッデスは大きく顔を歪ませる。

とはいえそんなダメージを受けても詠唱は止まらない、更に一段階進み、周囲の重力が歪み始める。

 

「うぉぉぉぉぉおおおりゃぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!!!」

 

「ッ!!!!!ン!」

 

チルノの剣による全力のフルスイングが勢い良く突き刺さる。その強力な一撃はメタルゴッデスの横にある剣の翼に直撃してその翼の片方を切り離す。

 

メタルゴッデスはそのとてつもない痛みに耐えながらも詠唱を更に一段階進める。

 

魔力によってとある箇所にチルノは凄まじい吸引力で引き寄せられ、周囲の空間が完全に固定される。

 

「こなくそぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!」

 

チルノはその手に持ったリバイアさまの盾を海水によるジェット噴射で加速させながら投げつける。

噴射された海水はまるでリバイアさまの身体のごとき姿となり、メタルゴッデスの本体に突き刺さって噛みつく。

 

そして………………

 

「テ!!!!!」

 

全ての魔力がチルノの引き寄せられた地点へと一度に集まり、収束し、炸裂する。

 

 

 

魔王すらも消滅させる最強の一撃が発動されるのだった。

 

 

 




女神様「マダンテ!」
マグロ に 9999 の ダメージ!
「自動MP回復SP!」
女神様 の MP が 150 回復した!
女神様「呪いの鉄槌!」
マグロ に 9999 の ダメージ!
「自動MP回復SP!」
女神様 の MP が 150 回復した!
女神様 「呪いの鉄槌!」
~以下無限ループ~

このコンポを本当にやれてしまうからゴッデスは怖い………


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スライム族の女神  その3

 

 

~スラバッカ王国~『近海』

 

 

「マ ・ ダ ・ ン ・ テ !」

 

メタルゴッデスの持つ全ての魔力が収束する。

 

あまりにも膨大な魔力が一ヶ所に集まることで周囲の重力が歪み始める。

臨界に近付くに連れて魔力の収束点へとチルノは強く引き寄せられていく。

 

メタル系の共通の能力的特徴として

 

HP:低

MP:超高

攻撃力:低

防御力:トップクラス

素早さ:トップクラス

かしこさ:トップクラス

 

という極端な能力値となる。

 

とある一体だけは攻撃力も高いのだが、基本的にほぼ全てのメタル系はこのような形になるのだが、スィラのメタルゴッデスは行動回数を減らすことによってステータスを大幅にあげており、MP量がとてつもなく多く、例え超ギガボディの魔物の体力でも一撃で死亡、もしくは致命傷を与えられる威力のマダンテを放てるように調整されていた。

 

元々マダンテとはとある魔法都市で生まれた究極の攻撃呪文であり、全ての魔力を解き放ち、わざと魔力暴走を引き起こす事で魔王にすら致命傷を与えられる固定ダメージを叩き出すハイリスクハイリターンな呪文だった。

とある魔王はそのあまりの威力に恐れて封印したのだが、その呪文の封印はかなりあっさりと解除されて各世界へと伝わったのだ。

 

本来は人間が唱えるために産み出された呪文であるために魔物側が習得するのには時間がかかり、人間は唱えればすぐに発動するのだが、魔物は育ち方によっては人間の持てる限界の魔力の9倍近い量を持ててしまうために人間の許容力を越える魔力で放つとなると時間がかかってしまうのだ。

 

あまりに膨大過ぎる魔力の暴走は諸刃の剣であり、自分すらも巻き込んでしまう危険性もあるのだ。

 

だがマダンテは属性としては魔物が放つ炎ブレスと同じ属性となっており、メタルゴッデスは炎ブレスを無効化する!

 

 

暴走した膨大過ぎる魔力はメタルゴッデスごとチルノを巻き込んで極大爆発を引き起こす。

 

その日、幻想郷の海の一角が一時的に消滅した。

爆発が起きた跡地にはボロボロになりながらも神々しく羽ばたくメタルゴッデスの姿と…………黒焦げになりながらも元の大きさと姿に戻った氷の妖精と小さい蛇の姿があった。

 

なおチルノはどうやらマダンテにより死亡まではしなかったらしく、風前の灯火となりかけては居たもののしっかりと生存していたらしい。

 

実は爆発の瞬間にリバイアさまの盾がメタルゴッデスから引き抜かれてチルノを庇うようにマダンテの爆発を受け止めていた。

とはいえメタルゴッデスのマダンテを耐えるには強度があまりにも足りずに盾は崩壊してしまい、マダンテの威力を大きく減衰するのが限界だったようで、チルノとの配合で融合していたリバイアさまは核となる盾が崩壊した事によって一時的に融合状態が解除されてチルノは元の姿に戻ってしまっていた。

 

とはいえ完全に戻った訳でもなく、リバイアさまはもはやチルノの一部となってしまっており、チルノはいつでも融合した姿に戻れるようになっていたらしい。

 

とはいえマダンテのダメージはとてつもなく大きく、妖精としての肉体が崩壊しかけており、今は永遠亭で魔理沙と共に仲良く入院となっていた。

その病室には毎日のように大妖精と、妖精の翼と細長い嘴を持った少しファンシーな小竜が御見舞いに来ていたらしい。もはや小型のヘビくらいにサイズを落としたリバイアさまも状態はチルノとリンクしているらしく、チルノが元気になるにつれて少しずつ大きくなっていた。

 

そして元凶のルカはと言うと…………

 

「まってまってまってまって!?!?俺が悪かったから!?俺が悪かったから魔物無しで超ギガボディのぶちスライムベスとタイマンは許してよぉ!?!?」

 

 

スィラとそのスライム達によるお仕置きフルコースを受けており、1週間は満身創痍となることが確定した。

 

なおルカの魔物達は………

 

「自業自得です。」by聖なる竜

「あのバカには良い薬だな」byオアシス背負った竜

「少しは反省してください。」by海蛇

「日頃の行いじゃな。」byマンモス

 

との事だった。

 

ルカの魔物達は、ルカの育成の速さや戦闘のセンス、正義感等は好ましく、認めてはいるのだがたまに天然でアホな事をやらかして周囲に迷惑をかけていたので全体的に自業自得と見ていた。

 

スィラのお仕置きによってしばらくの間幻想の地ではルカの悲鳴とスィラの怒鳴り声、イルの呆れた声と甘ったるい砂糖の気配がしたと言う。

 

 

 



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スィラの地獄のお仕置きフルコース  前菜





 

 

~スラバッカ王国~『戦車バトル場』

 

 

スラバッカ王国はいくつかのエリアに別れているのだが、大戦車と呼ばれる大型モンスターを駆動させて戦うのに最も適したエリアもあり、ミイホン等の元々大戦車で戦っていた者は感覚を忘れないために定期的にスライバと戦車バトルをしていた。

 

だが今回は趣向を変えてスィラのお仕置きを手伝う事になっていたのだった。

 

 

『ほれほれ!まだ1時間はあるぞー!もっと走らないと引かれるぞー!』

「ぎゃー!?!?死ぬって死ぬって!?ホントに悪かったから許してって!?」

『聞く耳持たん!5分追加!』

「鬼ィ!?」

 

 

ルカはスィラの所有する二体の大戦車の片方、『勇車スラリンガル』によって追いかけられており、スラリンガルはその口にある二つの砲身から火炎瓶や剣や鉄球、石板やドリル、イオナマイトと呼ばれる爆裂呪文の力を込めた爆弾、ばくだんいわ、メラゾーマや隕石等を発射している。

他にもたまにとうがらしを発射して砲身から火炎放射を行ってルカを追い詰めていた。

 

「あっつ!?」

 

ルカは空から分裂して降り注ぐメラゾーマに軽く焼かれてはいるが逃げる足は止めない、いや、止められなかった。

 

止まればスラリンガルによって引かれて潰されるのが目に見えていたのだ。

 

他にも質が悪い事にまれにラーの鏡を発射してきており、これにぶつかってしまうと自分の向きが全くの反対方向を向いてしまうので下手したら自分からスラリンガルに突っ込むことになってしまう。

ならばスラリンガルに捕まるなり侵入すれば良くないか?と思ってはしまうがしっかりスィラによって対策されており、スラリンガルに触れれば防衛システムによって電流を喰らわされる仕組みとなっていた。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおお!?!?」

 

「ルカ殿~頑張ってくださいね~」

「ミラクレアァァァァアアアア!?少しは助けてよぉぉぉぉおおおお!?!?」

「あ、このスライムまんはなかなかイケますね。」

「なに呑気に食べてるの!?!?」

 

ルカがお仕置きを受けている傍らルカの手持ちの魔物として一緒に来ていたミラクレアは元々人間の賢者であった時の姿に戻ってスィラから試供品としてスライム型のお饅頭である『スライムまん』の新しいフレーバーを受け取って食べていた。

 

「お饅頭ばかりでは口の中の水分を奪われてしまうでしょうから緑茶もいかがでしょうか?

あと幽々子様食べ過ぎです。」

「あら、ありがとうございます。

それにしても…………」

「ガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツムシャムシャガツガツ…………」

 

「その………良くお食べになりますね………」

「すみません………うちの主が本当にすみません………」

 

ミラクレアは幻想郷から招かれた白玉楼の二人組のうち妖夢から緑茶を貰い、すぐとなりのテーブルでもはや山脈のように積み重なった皿をみるみるうちに成長させていく幽々子に対して遠い目で見つめながら軽く引いていた。

 

今回はルカのお仕置きもあるのだが、スィラの城の料理長である『こんぺいとう』という星形のスライムが新しい味の料理をいくつか作ったので試食してもらって味の感想を貰うというのが目的の一つ。

それに加えて、魔物やスィラ達の味覚には合っていても幻想郷側の住人の味覚には合わない可能性があるために料理を作っていてなおかつ味にはうるさそうな人や良く食べる人………つまり妖夢か咲夜の二択のどちらか片方だけでも誘おうという話になり、最終的に咲夜はメイドとしての仕事も多いために比較的鍛練などで自由に使える時間の多い妖夢が招待された。

その際に幽々子が話に食いついて着いてきた形になる。

 

今となってはあまりの食欲にこんぺいとうと幽々子のどちらが先に倒れるかの勝負となっているが、流石に城の食材だけでは足りなかったので次々に買い物や山菜採り、狩りに出掛けるスライムがいるくらいである。

 

「しかしスライムの剣術というのも勉強になります。

本体が下部にしかないので人形である騎士にはいくら攻撃を当てても無駄、しかもある程度なら魔力とやらで操ってコンビネーション攻撃を仕掛けられる。

私の剣術は実践経験がどうしても足りていないので良い経験になりました。」

 

そして妖夢も妖夢でこの国のライダー系モンスターと試合を満喫したりしていた。

 

そうしてお仕置きを受けているルカを忘れていた一同だがついに…………

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!?!?!?!?」

 

ルカがスラリンガルによって引かれたのだった。




ルカ は ダイイングメッセージ として 『スライムキチガイ』 と 残した。

スィラ は ダイイングメッセージ を 発見 した。

エリスグール が 出撃 した。

ルカ は ペラペラ に された。


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スィラの地獄のお仕置きフルコース  スープ

 

 

~スラバッカ王国~『近海』

 

 

スィラ達は地獄のお仕置きフルコースは二つ目のお仕置きへと移行するために今度は海へと来ていた。

 

今回は海の環境が水の中に生息する妖怪にとって問題ないか確認するために河童一行とわかさぎ姫、命蓮寺一行、それと八雲紫が招待されていた。

 

紫がこの地を幻想郷へと受け入れた最大の理由が今まで幻想郷に存在していなかった海を幻想郷に取り入れる為というのもあり、たまたま河童が誘われてるのを見つけて都合が良かったので乗っかった形となる。

 

命蓮寺一行については村紗水蜜が水難事故を引き起こす妖怪、つまり海に関わる妖怪として招かれておりそれに他の者達が乗っかった形だ。

 

ちなみに一行の格好は流石に海なので全員水着を着ており、わかさぎ姫だけは常に湖の中にいるのもあり、普段着で来ていた。

 

河童達の格好は何故か全員スク水となっており、全員が背後にとてつもなく巨大なバックパックを装備していた。

紫は砂浜にパラソルと寝転がれるベットを用意してとてつもなく満喫しており、目的を忘れてないか疑問を感じるが彼女は彼女でちゃんと仕事をしており、海水の成分分析や妖怪と魔物の生体の違い等を調べてはいた。

 

 

 

 

式を使ってではあるが。

 

 

そして肝心のスィラとルカはと言うと………

 

「撃ち方よーい!」

「撃ち方よーい!!」

「魚雷3、えいゆうのヤリイカ射出!」

「魚雷3、えいゆうのヤリイカ射出します!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!?!?!?!?まってまってまってまって!?!?」

 

ルカは全力で海を泳いでおり、後ろからはスラリン船とスライバ船が少しずつ近付いてきており、その砲身からは凄まじい破壊力を誇る魚雷3と速度重視のえいゆうのヤリイカが発射されており、全ての玉が海に着水してからルカの元へと泳いでくる。

 

ルカはなんとか気合いで避けてはいるが魚雷3は触れれば爆発、えいゆうのヤリイカはルカの泳ぐ速さを軽々と超える速度でルカへと向かってくる。

イカとはいえど頭部はえいゆうのヤリという実際に勇者等が使っていたとされる強力なヤリと全く同じ材質となっており、刺さればひとたまりもない。

 

とはいえギリギリで全てのタマを避け続けているルカを見てスィラは軽く機嫌が悪くなる。

 

「メラゾーマ用意!」

「メラゾーマ用意!!」

「装填完了!」

「イオナマイト用意!」

「イオナマイト用意!!」

「装填完了!」

「撃ち方始め!」

「撃ち方始めぇ!!!!」

 

 

スィラは無慈悲にも天からメラゾーマによる炎の雨と水面付近にイオナマイトによる連続爆発を引き起こしてルカが水面にほぼ出られなくした。

 

「あっつ!?いって!?がぼごぼぼぼぼぼぼぼぼ!?!?!?!?」

 

 

「うーん、流石に私の力でもあの船は沈められそうに無いなぁ………」

「あら?そうなのですか?」

「あ、聖~。

あの船は見た感じやろうと思えば空も普通に移動出来るみたいだから沈めようにも飛ばれて意味ないし船底に穴でも開けようとしても多分強度高過ぎて全く効果無いと思う。

そもそもあんな馬鹿げた威力の玉………玉?で常日頃から戦闘演習してるみたいだし生半可な強度だと簡単に壊されるんじゃないかな?」

「………確かにまれに大爆発や炎の玉?が分裂して大量の炎の玉になっていたし、今は大量の爆発が起きてるし…………」

 

「あれ…………下手しなくても私見てなあれって私達って、あれで死ねる?」

「威力わ見る限り私でもあのヤリイカを止めるには難しいとと思います。」

「パワーゴリラの聖でも受け止めきr…………

ピィ!?」

「  ぬ  え  ?な  に  か  言  い  ま  し  た  か  ?」

 

「な………なんでもないです。」

 

そうこう話しているうちにルカの悲鳴が響き渡る。

 

アーーーッ!!!!

 

 

スィラのお仕置きはまだまだ続く。



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スィラの地獄のお仕置きフルコース  メインディッシュ

あまりに眠すぎて投稿先間違えた(ヽ´ω`)


 

 

~スラバッカ王国~『火山地帯』

 

 

 

 

 

今回は幻想郷の地底に住んでいる者達を招き入れており、ルカへの拷mげふんげふん、お仕置きをさどりnげふんげふん、さとりが手伝ってくれる事となっていた。

 

 

 

とはいえ他の人達も見ているだけでは退屈だろうとスィラは熱に強く、抱き締めても問題無い体温をしているスライムベスを呼び寄せて古明地こいしとそのペットであるお燐、お空の相手をさせていた。

 

 

 

一応スライムの中でも熱に強い個体は他にもいるにはいるのだが………マグマスライムは触れれば人間では火傷で済まない上にスライムタールは体液が燃料その物の為に危ない。

 

 

 

必然的にスライムベス一択となったのだ。

 

 

 

なおスィラには自分が火傷する等毒になるといったものは一切関係なく、どのようなダメージを受けようともスライムを可愛がるのでたまにマグマスライムや、バブルスライム、バブルキングに群がられて死にかける時がある。

 

 

 

まぁ死んでも蘇れるので割と皆気にしていなかったりする。

 

 

 

そしてルカはと言うと……………

 

 

 

「あつっ!?あっつい!?あついって!?あつっ!?」

 

 

 

軽くダンジョンと化している火山の中を一人で走り抜けており、その背後には多数のマグマスライム、スライムタール、ストーンスライムが追いかけてきていた。

 

 

 

ルカとしては追いかけられるだけならまだマシなのだが、案の定スライム達は呪文を詠唱しながら追いかけてきており、スライムタールはメラゾーマを乱射しており、マグマスライムは行く手を阻むようにベギラゴンによる炎の壁を作っている。

 

転がって来ているストーンスライムは罠としてジバルーナを何ヵ所にも設置してきており、下手に移動しているとそのまま地響きを起こされて脚を取られて転んで追い付かれるのがオチである。

 

さらにルカが今走り抜けているのは火山の内部であり、その床には溶岩地帯がちらほらと見受けられる。

 

ルカの来ている服は今まで回ってきた世界のイカれた環境に耐える為に幾度も改良に改良を重ねられており、溶岩に触れる程度ならば火傷することはない。

 

とはいえ熱を完全に遮断することは不可能なので溶岩を踏みつければとてつもない熱さが襲ってくる。

 

だがルカはいままでの人生経験で死にかけるような修羅場は何度も潜り抜けており、妖怪の熱による痛み程度なら普通に耐えれる。(なぉやせ我慢)

 

 

 

だが……………

 

 

 

「何で所々ドラゴスライムがれんごくかえんで網を張ってるの!?」

 

 

 

ルカの行く先々には何匹ものドラゴスライム数匹がれんごくかえんを網状に配置してきており、ギリギリルカが通れなくもない程度で、モタモタしていれば追い付かれ、逆に焦り過ぎて通り抜けに失敗した場合は体をれんごくかえんによって焼かれ、そのまま追い付かれるだろう。

 

 

 

スィラは割とガチ目に殺しにきてはいたが一応逃げ道を用意する当たり手心は加えてはいたのだった。

 

 

 

「ぬぉぉぉおおおおおおおおお!?!?焼かれてたまるかぁぁぁぁぁぁあああああああああ!?!?!?!?」

 

 

 

ルカはそう叫びながら走り抜けてはいるのだがそのズボンに軽く火種が付いていることに彼はまだ気付いていない。

 

 

 

 

 

_________________________________________________

 

 

 

 

 

「うーん、このモチモチとした感触が堪らないねぇ。

 

スィラはこんなに気持ちいいのに毎日囲まれている訳かい?」

 

「確かにスライムベスのこのモチモチとした肌触りは堪らないがもっと見るべき所はあるぞ。

 

スライムベスはスライムの上位にあたる種族で炎に特化した性能を持っているからか少し体温が高めでな、冬とかにこの子達を抱きながら眠るのが特に気持ちいい。

 

それにスライムというのはモチモチプルプルだけでなくこのストーンスライムのようにゴツゴツとした肌触りのスライムやスライムタールのように粘り気のあるスライム、ダイヤモンドスライムやゴールデンスライムみたいに硬く美しいスライム等多岐に渡る。」

 

「へぇ~、いろいろと、いるんだねぇ。」

 

「だからこそ面白いのさ。

 

私はスライムには無限の可能性を見出だしている。

 

 

 

あ、スライムタール、そろそろ『メラガイアー』使っていいぞ。

 

マグマスライムも『火炎竜』と『ギラグレイド』を許可する。

 

焼き払え!汚物は消毒だ!!」

 

 

 

「誰が汚物だぁぁぁぁぁああああああ!?!?

 

あっつぁぁぁぁぁぁあああああああ!?!?」

 

 

 

「うっわぁえげつな………あれアタイやお空の炎よりもよっぽど火力高いじゃないか。」

 

 

 

スィラ達の目の前にはまるで太陽と見間違うような巨大過ぎる火球がいくつも現れており、とてつもなく巨体な火柱をいくつも生み出しては炎の竜が現れて周囲を蹂躙していくつもの熱線が周囲の壁を貫通しながら発射されていた。

 

 

 

「にぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!?!?!?!?」

 

 

 

そして丸焦げにされたルカはさとりによって猿轡をされて縛られた上でマヌーサで幻覚を見せられながらトラウマをほじくりかえされていたという。

 

 

 

さとりは心なしか艶々して満足そうにしており、スィラはお仕置きは済んだのでルカを解放したのだが、ルカはかなりのトラウマを刻まれる事となったのだった。



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人里馴染み始めたスライム達

本日の午後の更新で丁度100話となるため一度完結とさせていただきます。

一応要望が多そうなら続編を書くつもりなのである程度コメントで続いて欲しい等の要望があれば次の作品完結後に続編を執筆させていただきます。


 

 

~人里~

 

 

幻想郷で唯一人が集団で生活する人里。

そこでは最近日常になった物の一つに里の子供達とスライムのおいかけっこがある。

 

「わーい!」

「まてまてー!」

「ピキィィィィィイイイイ!?!?!?」

 

人里はスィラ達のスライムがちょくちょく訪れるようになってから徐々に変化を見せていた。

 

スライムは基本的に愛くるしい見た目の者が多く、その何れもが人に危害を加えないので純粋に受け入れやすかったというのもある。

 

特に子供達には大人気であり、たまに誰が抱き上げるかで争いが起きる程だ。

 

今回それに選ばれたのはメタルスライムだが、メタルスライムは魔物にも人にも狙われやすかった種族なのもあり、兎に角逃げ足が早く、臆病だ。

 

人に抱き上げられようとすれば流石に逃げてしまう。

でもそんな子供達も逃げるメタルスライムを捕まえようと追いかけてしまう。

 

そうして鬼ごっこが始まってしまうのだ。

 

するとお茶場で団子片手に四本ずつ持ちながら休憩するスラ忍イエローの姿が見える。

 

「あ、黄色のおねーちゃん!」

「黄色のねーちゃんこんにちわー!」

「こんにちわ~」

「おや、道具鍛冶屋の息子の鍛蔵殿に食事処の娘の鈴殿、農家の娘の菊子殿ではないか。

今日は如何された?」

 

スラ忍イエローは情報収集ついでに人里の住人と交流を多く交わしており、いろんな所と仲良くなっていた。

 

「えっとねーえっとねー!」

「スライムとおいかけっこしてた!」

「抱っこしようとしたら逃げちゃったんだー!」

「逃げたでござるか?もしかしてそれは銀色の鉄みたいなスライムでござったか?」

 

すると一発で当てられた事に子供達が驚く。

 

「あれ?おねーちゃんなんど知ってるのー?」

「そうだよー!銀色の鉄みたいなスライムー!」

「おねーちゃんみたいにすっごく速かったよー!」

 

するとイエローは苦笑いしながら伝える。

 

「一応同じスライムでござるからな。

その子の名前はメタルスライムと言うでござる。

他のスライムに比べてかなり臆病な性格をしているでござるから抱き上げようとしたお主達を怖がってしまったのでござろうな。」

「そっかー、残念。」

「やっぱり硬いの?」

「何であんな速いの~?」

 

すると子供達はすぐに次の疑問を聞く。

好奇心旺盛な子供達は少しでも気になることがあるとすぐにでも知ろうとするので、イエローは今日1日質問責めに合う覚悟をするのであった。

 

_________________________________________________

 

 

~人里~『寺子屋』

 

 

「え?我々『魔物の歴史を子供達に教えて欲しい』でござるか?」

「あぁ、魔物達も幻想郷に馴染んできて常駐するスライムも増えただろう?ならばお互い理解するならばお互いの歴史を知るのも良い機会だと思ってな。」

 

子供達の質問責めから解放されたイエローは寺子屋に寄った際に、人里で勉学を教えている慧音からそう伝えられる。

 

「別に良いでござるが………いかなりどうしたでござるか?こんな藪からスティックに?」

「それを言うなら藪から棒だな。

なに、お前達の世界でどういう事があったのかとかそこら辺が気になっててな。

ちょうど良い機会だと思ってな。

「まぁ別急にすつもりはないのでござるな?」

「あぁ、じっくり考えておいてくれ。」

 

そしてイエローはやはり忍者なのもあり、しっかり諜報としての活動もしっかり行っており、人里の犯罪率はかなり減っていたのだった。

 




悪・速・イオグランデ!!


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エピローグ 魔物と幻想

 

 

~幻想郷~『博麗神社周辺』

 

「ゴラァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアア!!!!!私の大事なだいじなダイジな賽銭箱をよくもぶっ壊してくれやがったわね!?!?」

「ぬぉぉぉおおお!?!?霊夢!?悪かったからそれ止めろぉ!?!?」

 

 

 

朝から霊夢と魔理沙の叫び声が響き渡る。

魔理沙はいつも霊夢の家にいく時は襖を粉砕しながら箒で突撃することが多く、いつもの事でなれていたので軽く説教する程度で済ませるのだが、今回はマジギレしていた。

 

理由としては今回は魔理沙が粉砕☆玉砕☆大喝采をしてしまったのは霊夢の唯一の収入源であり、この世で一番大切にしている博麗神社の賽銭箱。

 

通称サーセン箱である。

 

これを魔理沙が突撃して粉々にしてしまい、修復不可にまで追い込んでしまったのが原因である。

 

ただ目の前で起きているのは霊夢と魔理沙の弾幕ごっこではなく…………

 

真っ黒なボディに金や赤の装飾が施され、背部には巨大なメタルキングの剣を四本背負っている。

サイズとしては霊夢がギリギリすっぽり入る程度の大きさであり、魔物達風に言うならばスタンダードサイズに分類される鎧。

 

そう、霊夢はスタンダードサイズまで小さくしたスライダークロボに搭乗していた。

 

ちなみにこれはスィラが何度も挑みに来る霊夢に対して楽しませてくれた礼として霊夢用に調整した魔物であり、自我は霊夢をサポートするために最低限だけ残している。

 

基本的にボディの主導権は霊夢に任せられており、己の霊力を魔力に変換して攻撃を行う。

 

ただ変換をする際に一緒に増幅までするために霊夢の弾幕は大幅な威力アップをしていた。

 

霊夢はアーム部分を回転して砲身から一発で木をへし折る威力を持った弾幕を放つ。

 

「うぇ!?あぶねっ!?ちょっ!?うぉ!?」

 

魔理沙は霊夢と同じように異変解決にも何度も赴いており、実力はかなり高く、霊夢の放つ弾幕をことごとく避けていた。

 

だが霊夢は容赦しない。

 

「お、おーい、霊夢?

その………なんだその光る剣は………」

 

霊夢はスライダークロボを通してメタルキングの剣に自分の霊力をたっぷりと注ぎ込む。

 

「『夢想封印・斬』!」

 

マジギレした霊夢は本来七色の巨大弾幕を複数放つスペルだが、今回はそれをメタルキングの剣四本にすべての集約していた。

 

その威力は…………

 

「ちょっ!?」

 

剣を振るだけで風圧が全てを切り裂く刃となって魔理沙の箒を真っ二つにした。

 

「霊夢っ!?ちょっ!?誰か助けて欲しいんだぜーーー!?!?!?」

 

_________________________________________________

 

 

~マヨヒガ~

 

「よし、隔離完了。

まどうスライム達もお疲れ。」

「悔しいけどその手の隔離結界の腕は勝てそうにないわね。

戦ってる本人達が気がつかないように外見だけそっくりにした異空間に閉じ込めて勝敗が着いたら戻すタイプの結界ね………」

「これがないと巨大な魔物を暴れさせるのに周囲への被害がとんでもないことになるからな。

ギガボディ以上の魔物を仲間に加えたモンスターマスターにはこれの習得が義務付けられている。」

 

八雲紫が隠れ家として用いているその拠点にはスィラとまどうスライム達、紫一行の姿があった。

 

「それにしてもごめんなさいね、うちの幻想郷側の者がバカやらかしたせいで貴方に負担をかけてしまって。」

「問題ない、霊夢にスライダークロボを私たち私にも責任はあるからな。

それに今は同じ地に住まう者同士ではないか、海一つで隔てられてはいるがな。」

「そう…………ねぇ、貴方はこの幻想郷をどう思うかしら?」

 

紫は嬉しそうに呟いた後にスィラへと問う。

 

「………良い意味で歪だな。

この世界はバランスとしてはかなり極端な世界だ。

だがその極端さは私達の居た魔物の世界と似通う物も多い。

それにこの地は全てを受け入れるそうじゃないか、それが残酷な物だとしてもお互いに受け入れ安いこの地を私はとても気に入っている。」

 

「そう………それは良かったわ。」

 

紫はそれは嬉しそうに頷いていた。

 

「だがそれはそれとして個人的な恨みもあるから霊夢は一度しばきたおす。」

「あら?八つ裂きじゃなかったの?」

「死なれては困るのだろう?ならば9割殺しで勘弁しておこうと言うことだ。」

「それもそれで十分困るのだけど………まぁ死なれるよりマシね………」

 

スィラはキレると周りが見えなくなり、まともな判断をする余裕など皆無なのだが、一度冷静になると現状をしっかりと理解し、他の者にとって利益になることはなにかを先に考える為に紫とは意外とあっさり和解していた。

 

更に言えば基本的にスライムをバカにしたり、悪事を働いてたり等しなければスィラは普通に好青年な為に紫としてもスィラをあっさりと受け入れられたのだ。

 

とはいえ一度殺されていたので一発弾幕をゼロ距離で当てて仕返しはしたのだが……………

 

スィラのその時の服装はメタルキングのローブだったので普通に無傷だったりする。

 

そんなこんなで幻想郷には新しい勢力がどんどん受け入れられていたのだった。

 

 

 

 

なお背後には嫉妬の視線を向ける者が数人いたとか居ないとか………

 

「この美しくも残酷な楽園に……」

「新しく受け入れたこの素晴らしい国に……」

「「乾杯」」

 

スィラと紫はお互いのグラスをぶつけ合い、乾杯するのだった。

 




一旦この話でこの作品は完結とさせて貰います。
次の作品は
ポケモン世界にモンハンのモンスターで旅する作品を予定しております。
タイトル等はまだ未定ですが明後日には投稿予定となります。
それと流石に明日は更新を休ませていただきます。

ここまで御愛読頂いた皆様、ありがとうございました!


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