大惨事スーパーロボット大戦α (猫者)
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使命
パイロット・機体状況


 

 ※マコト・ヒノがこの世界の名称表記としては正しい。

  =のように表記がぶれるのはウィンキースパロボの後遺症。

 

 

主人公名 :マコト・ヒノ  愛称:シン

ヴァース名:マコト・ゼファー・ヒノ

   爵位:伯爵(侯爵)

 漢字表記:日野真(ひの まこと) 

 

 戸籍:地球(関東地域(出身)→九州地方)→オーヴァンコロニー

      →ノーラ → (幾つかを転々とする)→地球

      →火星(ヴァース帝国)

 成績: 操縦技術:B 戦術:C+ 修理:C+ 潜入・工作:S

 

 

 研究者の家系に生まれるも、残念ながら知能は今一歩足りず。

 一族から冷遇されるだろうという事で、それを危惧し

 両親は九州に転勤した後に、種子島経由で

 宇宙へ上がっている。その後、オーヴァンのUE襲撃時に死亡。

 しかし、両親の死に際の言葉に従い。これについてはUE 

 ヴェイガンを恨みを抱くのをやめ、生きるも

 一度の許しを経て二度めの裏切りに遭う(デシルに)

 しかし、ユリンとフリットの平和を考えて和平を考えるとも

 やはりその平和への思いはあっさり裏切られ

 妹と思っていた少女は肉体を調査名目でさんざん弄りまわされた

 上に最悪の形で殺された(デシル・イゼルカントに) 

 

 三度許すはずもなく、立派なヴェイガンキラーに成長した。

 

 

 犠牲者、復讐者。数あるたとえはあれど、人柱という言葉が最も近い男。

 ヴェイガンに奪われ、ヴェイガンを憎みその果てに死にかけて

 冷凍睡眠送りになり、最近再生手術と蘇生処置を受けて解凍された。

 

 記憶を失っていたが最近戻った。人格と記憶の統合先は現在のシンなので

 厳密にはかつての彼ではない。かつてはムードメーカだったらしいが、

 現在はよく心中で零す様に自信の無さからくる焦りや不安を抱える

 弱さが前面に出ている事が多い。

 

 

 しかし、”絶対に後で後悔すると考える事は目の前から残さない”

 という昔から心に根付く根幹的ものの存在により

 考えた瞬間に大体、覚悟が終了しているので状況適応能力が高く

 機転が利く。逆にいえば、決まった道筋のある型にはまったものへの

 集中力が低いため、戦術と修理については苦手とした。

 

 

 ただ、応急処置については対ヴェイガン時代の怪我の多さから

 自分で処置することも多かった故に裂傷すらプロ顔負けの縫い方をする。

 

 

 精神が砕けている間に勝手に英雄に祭り上げられ、侯爵位まで与えられ

 王族のみ許されたヴァースの文字を一部『ゼフ(ァ)ー』を与えられた

 

 というか本来はもうヴァースを名乗らせようとしたのだが、

 ぽっと出のほぼ死体にそれを許可すると他の貴族の不評を買うかもしれない。

 という事で、戸籍上は伯爵位。マコト・ゼファー・ヒノになっている。

 だが、 権限自体は侯爵に相当し有事の際はヴァースの意思を代行できる。

 

 

 

 

 

ガンダムBSD(バースディ) 爆散

 

 

AGE-1のパーツと補助パーツでくみ上げられたAGE-1の兄弟機。

といっても、AGE1時代が素の状態では骨董品であり、

ザクといい勝負。

 

そのパーツでくみ上げられているので、チューンされたとはいえ

マグネットコーティングが施されたRX-78-2程度の性能しかない。

 

シンがデシルに組み付いて自爆して爆散。

BSDシステムとそれを移植されたコックピットはクルーテオが回収しフリットの元に移送されている。

 

 

BSDシステム

 

本来はフリット・アスノが開発したBreak Soul discharger

記憶喪失や激しい心傷を受けているものの医療用に制作されたもの。

治験の過程でわずかに設定をかえるだけで心の奥底の闘争心を倍増し

死を恐れず、かつ命令に忠実な兵士を制作できる事がわかり、方向の軌道修正を求められた。

 

計画に反対したフリット・アスノを更迭し完成。

 

 

 

KG-6 スレイプニールINHカスタム 電気伸縮式特殊樹脂製人工筋肉損傷

                      電子機器類全滅。

                      ※実質、廃棄処理

 

教導として使用されていたスレイプニールの1機。通称、いなほカスタム

当初は修理の教材として使用されていたが、

全員が一先ずの合格をもらったあとに、クラスの共同企画として

最高の1機を制作する、という課題の元に作られた。

 

コンフォーマルパワーアシストという機体の強化パワードスーツを元に

伊奈帆が設計し、クラスで作成された。

小型ミサイルを多数搭載し、下部の車輪を大型から小型のものに変更しさらに増設。

安定性とある程度の高速の移動が可能になった。

しかし増設した武装と装甲のせいで速度が予定の70%になり、結果的に

当初計画していたコックピット周辺の装甲を排除する、という事に落ち着き。

硬いが(コックピット付近は)やわらかい鉄の棺桶と揶揄されたスレイプニールに回帰してしまう。

 

武器の一部は溶接され、副腕で強引にはぎ取るようにして使う。

また副腕での一斉射撃が可能だが、機体の照準アシストの適応外の為、

マニュアル射撃となり、安定性にはかけ、

コンパットナイフの取り出しが射出して手で受け取るという教官からは「曲芸」と評価され

全体的な評価点数としては55点になっている。

 

 

ライブレード・B

 

クロスゲートを抜け、出現した呪われた騎士型兵器。

全長22Mという巨大兵器が改良を受け、31Mにされたと思われる。

全体的に黒いボディカラーが特徴的で

背部の翼の様なブースターで高速の移動も可能。

さらに高速形態を持つがプラーナの消費が激しい。

操縦席が2つあるが、背部の席は高度なサプコントロールユニットが可能している。

 

内部で発見された日記から、

内乱と戦争で滅びてアガルティアと

呼ばれる世界から漂流した存在であることが分かった。

 

操縦者の心で操縦し、

ラ・ギアス製魔装機の動力機関であるフルカネルリ式永久機関と似た機関を持ち

操者のプラーナ(精神エネルギー)を、動力として活用する変換機。

プラーナコンバータなどを内蔵するが本来は2人で操縦するものを1人で動かすため

負担はすさまじく命に関わる。

 

シンは副動力として装着された負の感情をエネルギーにする

謎の動力装置のおかげでかろうじて生命の危機を免れている。

 

 

つまり、現状は恨みつらみ渦巻くものしか乗れないメンヘラ用特機である

改造によってGSライドを装着したが勇気の力なんてものを扱え切れる男であるわけもない。ガオガイガーの腕と脚をパクっているため

ヘルアンドヘブンも可能だが漏れなく爆散する可能性が高い

 

 

 

武器

 

・ゼイフォニック・ブラドラー

・ブラン・ダイガード(剣ビーム)

・暗黒霊剣ダイフォゾン

 

 

特性

・バーストプラーナ

 高ぶった感情のまま生命力を機体に注ぐ。

 機体はとても強くなる。操縦者はとてもやばくなる。

 というか、下手すりゃ死ぬ

 

 

合体技

・ラムダアタック

 

 『宗助との合体技。飛行形態に騎乗した宗助のアーバレストが

  ラムダドライバ―を展開しながら体当たりを繰り出す。

  合間に『憎しみを解放しろ!』『くそ虫をつぶせ!』

  の様にヴェイガンを煽るコメントがあるので適度にやる気も出る』

 

 

 

 

 

装着強化パーツ

 

・プラーナコンバータ

 

効果:運動性+25、照準値+15 パイロット能力値の上昇アップ

 

 

説明:人の生命力から生まれる意志の力がオーラならば、

   生命力そのものはさらなる力、プラーナといえよう

   生命力そのものを消費するとはいうが、基本的には

   体力を消耗するという考えでいい。しかし、時に過剰な

   稼働を試みて命を失うものもいる。

 

 

 

・ザーツバル

 

 

効果:負念のバックファイアを2割削減する

  (眠らされているザーツバルムに流し込んでいる。彼は悪夢だと思っている)

 

説明:地球人への恨みが根深く、使えるのではないか?

   という宗助の提案により戦闘のたびに副操縦席に気絶させたうえで

   簀巻きにして副操縦席に固定されている。

   最近は待遇が少し改善され通常時は自室である程度の自由が与えられ

   出撃時におむつを装着されるようになった。

 

 

 

ライブレード・SIN

 

クロスゲートを抜け、出現した呪われた騎士型兵器。

深紅のボディーカラが特徴的。

背部の翼の様なブースターで高速の移動も可能。

さらに高速形態を持ち、2体に分離可能。

操縦席が2つあるが、背部の席は人工精霊により運用されている。

操縦者の心で操縦する。

ドリルガオーであった部分は改良され、大型化している。

ここに内臓された機構によって疑似的な重力ブレーキにより

急旋回を行う事が可能になりさらに機動力を増した。

 

プラーナコンバータを持つが通常時は低出力で機体とのリンクのみで

他の動作は副動力が補っている。また、その出力補佐も

サブパイロットシステムが担う。

サブ動力は、リチュアルコンバーター、GSライド、アルドノアドライブ。

それぞれ通常時は兵装、機体の稼働、推力の動力を担当している。

アルドノアドライブの特性はEMP。

 

ただし、ガオガイガーの

EMトルネード(Electromagnetic Tornado)に近く、

捕縛を目的とした使用に使われる。

 

 

 

 

 

 

 

武器

 

・ゼイフォニック・ブラドラー・レイ

・ブラン・ダイガード(剣ビーム)

・精霊大剣ダイフォゾン

・グラヴィトンキャノン2砲

・オメガブラスター

 

 

 

 

 

 

 

 

装着強化パーツ

 

・プラーナコンバータ

 

効果:運動性+25、照準値+15 パイロット能力値の上昇アップ

 

 

説明:人の生命力から生まれる意志の力がオーラならば、

   生命力そのものはさらなる力、プラーナといえよう

   生命力そのものを消費するとはいうが、基本的には

   体力を消耗するという考えでいい。しかし、時に過剰な

   稼働を試みて命を失うものもいる。

 

 

 

・人口精霊

 

 

効果:疑似的にライブレードの操縦者2人のプラーナの交差により

   出力を爆発的に高めるという特性を使用できる

 

 

説明:副動力炉で成長していた人工的な精霊。

   属性としては負念を糧にしていたため、闇に当たるが

   闇から光が生まれたという創造の流れにならう故か光の属性も持つ。

   



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い”き”だ”ぁ”い”!”!”!”!

ハズレ転生者専用掲示板


――――――――――――――――――――――――――――――――――


この掲示板はハズレ転生(1000万分の1で選ばれる地獄難易度世界)

の転生者以下、”ハズレ転生者”の支援のためのものであり

以外の閲覧行為を一切、禁止するものとします


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この掲示板におけるテーマは『生存』です


日頃、生きるか死ぬかの連続な彼らは経験豊富ですが

その反面、娯楽に飢えています。

なのでヘルプを出せば戦闘中だろうと対策を考えてくれるでしょう。

雑談の流れを切っても気楽に相談してもいいですし新スレを立ててもいい

それでは今日も生き残りましょう。生存戦略!


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また掲示板とスレの進行ルールなどは随時、
管理者の神。副管理人の女神が改定する場合があります予めご了承ください。

以下、よく聞かれる質問と回答

Q:転生者1人でなんとかできるの……?

A:ほっておいたら滅ぶし、転生者1人でどうにかなるの? とよく聞かれますが
ぶっちゃけわかりません。でもできることはすべきです。
やってみなきゃ……わかんねえ!!

Q:チートは?

A:特典事業が諸事情によりつぶれました。最低限はなんとかします

  だから、ないです

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い”き”だ”ぁ”い”!”!”!”!

 

 

 

1:学生兵

たすけて!! 敵に追われてるの!!!  女の子つれて!!!

一度はあこがれるシチュエーションだったよ!!!

でも実際にやってみると大分辛い。死ぬ!!!! 助けて!!

 

 

2:赤肩のハズレ転生者 

初めての書き込みでデフォルトから名前変更できてる上にスレ立てできて偉い

初心者は慌てていて他のスレに書き込んじゃう子が多いからなぁ~。仕方ないけどね

 

 

3:光と闇の狭間のハズレ転生者 

ラブコメ乙

 

 

4:蒼穹のハズレ転生者 

服脱いだ

 

 

5:無色のハズレ転生者 

>>4 まて、まだ早い。エロゲ世界かもわからない

 

 

6:名無しのハズレ転生者 

>>2-5

マイペースのこーーーーんなのが掲示板開設からの

最古にして最強の生き残りなの草ぁ!

 

 

7:名無しのハズレ転生者 

なんでここの新人の登場っていつも命の危機なの?

 

 

8:名無しのハズレ転生者 

>>7

そら、手を尽くして考えて考えて考えてって時にふと、気づくからだろ。

俺はそうだった。むしろ気づかず死んでいく奴の方が多いまである。

だからマニュアルぐらい用意しろ! 

 

9:赤肩のハズレ転生者 

たし蟹

 

10:光と闇の狭間のハズレ転生者 

ならば俺はえび

 

 

11:蒼穹のハズレ転生者 

海老フライカレー作った

 

 

12:無色のハズレ転生者 

蟹と海老食いたくなったわ。誰か召喚してくれ

 

 

13:学生兵

いつもこんな感じなん……?

 

 

14:名無しのハズレ転生者

雰囲気のせいで逆に落ち着いてきてて草

んで、どしたの? 状況を整理して話してみ

 

 

15:学生兵

整理して話すっていってもえっと……

 

 

16:赤肩のハズレ転生者 

回想モードを使うといい。話したい範囲を思い浮かべると

自動で俺らにその日見た記憶が送られる。でも全部まるっと送られるから多用は厳禁だ。

ちなみにナレーションしてくれる。今日は青野武さんボイス

 

 

17:蒼穹のハズレ転生者 

回想モードで地獄を見た人、だーれだ! 俺!

 

 

18:名無しのハズレ転生者

彼は知るだろう……己の自慰を配信してしまった悲しみを。しかも男のナレーション付き

 

19:名無しのハズレ転生者

蒼穹ニキが逝った時のルドラァ!!!!って小杉十郎太ボイスが未だに記憶にこびりついてる

 

20:学生兵

すいません、なんか落ち着いてきたしこの機能は永遠に封印させてください

 

21:蒼穹のハズレ転生者 

それがいいよ

 

22:名無しのハズレ転生者

んで、どういう状況なんだよ。ある程度高速化されてるから余裕はあると思うぞ

 

23:学生兵

あ、すいません。えっと、まずは俺らは前回の戦いの余波で校舎が損壊した為、

都立陣代高校の空いてる教室と近くの訓練場を借りてて

 

24:名無しのハズレ転生者

フルメタ?

 

25:学生兵

で、俺らはえーと……連邦のパイロット候補とかっていうか

徴兵受ける可能性がある学兵に近いのかな。

俺らみたいにロボの演習が必修科目の所は多いけど違うところもあるし

でも使ってるのもモビルスーツじゃないんだよな。なんだっけ……

 

26:名無しのハズレ転生者

あれ、ガンダム?

 

27:学生兵

なんだっけな。まぁ、思い出しながら続けるわ

で、そもそもなんで間借りしてるかっていうと今はとりあえず一時撃退に成功して

収まってるけどその前に恐竜帝国に校舎ぶっこわされちゃって

 

28:名無しのハズレ転生者

ゲッター……いや、これはまさか

 

29:学生兵

悪魔帝国とライディーンが訓練施設で戦っちゃってそこも半壊してて

あ、でも今は襲撃は収まってるんだよ。マジンガーとかライディ―ンとか

ゲッターの活躍で一時的に。

 

30:名無しのハズレ転生者

>>28

その予想はあってそうですね! そういうことですね

 

31:赤肩のハズレ転生者 

そういう……ことでしょうねぇ(諦)

これはベースはαぁ……ですかねぇ

 

32:光と闇の狭間のハズレ転生者 

次は、良い奴に生まれ変われよ……

 

33:蒼穹のハズレ転生者 

またな!!

 

34:学生兵

おい、なんで急に諦めるんディスカ!?

あ、そうだ。そう! カタフラクト! カタフラクトね! 俺らの訓練機

 

35:名無しのハズレ転生者

αに関係ないアルドノア。間違いない。

 

闇 鍋 ス パ ロ ボ

 

36:光と闇の狭間のハズレ転生者 

話だけ聞いてるとスパロボαっぽいね

闇鍋で地獄化してるだろうけど

 

37:無色のハズレ転生者 

 

大惨事スーパーロボット大戦α、開幕です!

さーて、果たして彼は何日生き残れるのかぁ!!

 

 

38:学生兵

微塵も期待されてなくて草

 




リハビリに好き勝手やり、好きかって力尽きる。
そういう感じにやろうと思う。


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鋼鉄のギチギチコックピット


日野真(ひの まこと) 愛称:シン


精神コマンド:自爆(1) 集中(10)

精神ポイント:21 


出撃機体:ホバーパイルダー(兜甲児)

味方援軍

グルンガスト弐式(クスハ)


敵機体

飛行要塞グール(あしゅら) 
ガラダK7(AI)
ダブラスM2 (AI)
ブラディ1(ギル・バーグ)
アイザム・ザ・サード(?)
???(?)
タルシス(クルーテオ)





 

突然の攻撃。

炎上する街中で逃げ惑う人々の雑踏と叫び声だけが周囲を覆いつくしている。

その中で立ち尽くしていた。

何をすればいいのか分からず、ただ困惑だけが思考を染め上げて何もできないでいた。

 

「まだ、生きてるぞ!」

 

 

誰かがそう叫んだ。

爆発の余波で歩道橋の傍で横転したリムジンから

小さな女の子が誰かの腕をつかんで引きずりだそうとしている。

だが、その女性はどこかぐったりとしている。

 

 

 

(しんでいる……そうだ、無駄だ……)

 

 

だから、諦めなきゃいけない。ここまでしたんだ。追撃だってくる筈だ。

 

 

「逃げ……」

 

 

ーーーだれか、助けて

 

 

そんな声が聞こえた気がした。

 

 

 

「……くっ、そぉーーーーー!」

 

 

彼は歩道橋から飛び降りた。

 

 

「ヅッ……!!」

 

 

教官の教え方がよかったのか、運よく。あるいは悪く彼の足は折れなかった。

といっても鈍い痛みが脳をたたき続けている以上、皹ぐらいは可能性がある。

だが、十分に動ける。なら、彼が止まれるはずもない。

全力でリムジンに向かって走り寄ると幼い少女が彼を見た。涙をぼろぼろと流しながら。

 

 

「俺が引き出す!! お前は……祈ってろ!」

 

「で、でも……!」

 

「できることがないだろ!! それしか……うおおおおおお!」

 

 

緊急時だ。女性という事を考慮してなどいられない。

手を伸ばして腋に手をかけ一気に引き出す。運がよかった。

防弾仕様にチューンされていたおかげかフレームが変形せず体が挟まっていなかった。

引き出した女性―――アセイラム姫を背負う。

 

 

「シン! 次が来てるぞ!!!」

 

その声を合図にするかのように弾ける様に走り出し

 

「こちらです!」

 

少女が呼ぶ方向。地下への入り口に飛び込んだ。

 

瞬間、背後で爆音が響いた。

 

 

■■■■■

 

 

55:学生兵

 

整理すると大体、そんな感じ。アドバイス頼みもうす。

特に最古の生き残りの人たちとやら

 

 

56:名無しのハズレ転生者

 

多分、もういないよ

 

 

57:名無しのハズレ転生者

 

常駐して眺めてるタイプじゃなくてある程度たまってから読むタイプだからね彼ら

 

 

58:学生兵

 

ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛!゛

 

 

59:名無しのハズレ転生者

 

切実な叫びで草

 

60:名無しのハズレ転生者

 

宇宙世紀のカイジ

 

61:名無しのハズレ転生者

 

αだと新西暦じゃね

 

62:名無しのハズレ転生者

 

歩道橋から飛び降りても怪我一つ負わない無敵ボディ

 

63:名無しのハズレ転生者

 

お母さんが丈夫な体で産んでくれてよかったねカイジくん

 

64:学生兵

 

そうだな。病名忘れちゃったけど治せないからって冷凍されてて

目が覚めたら数十年で家族はもういないらしいけど。そこは感謝かもしれない。

風邪はあるけどインフルとかは1回もない

 

65:名無しのハズレ転生者

 

ごめん.

 

66:名無しのハズレ転生者

 

ごめんなさい

 

67:学生兵

 

昔は気にしてたけど今は慣れてきたからいいよ

 

68:名無しのハズレ転生者

 

暴言ななしちゃん、根は良い子ちゃんで草&草

で、今地下?

 

69:学生兵

 

いや、上に出た。避難先の地下シェルターに逃げようとしたけど

何かをきっかけにバレてそこに追撃されたら人死の数豪いことになるよねって組み伏せられながら言われて

 

70:名無しのハズレ転生者

 

助けた相手に襲われてて草.

 

 

71:名無しのハズレ転生者

 

まぁ、状況的にしゃーない。

 

 

72:学生兵

 

ちょい話して謝ってくれたしええわ、許したる

 

73:蒼穹のハズレ転生者 

 

それを利用して後で……という事ですね!?

 

74:名無しのハズレ転生者

 

最低

 

75:名無しのハズレ転生者

 

最悪

 

76:名無しのハズレ転生者

 

SHINE.

 

77:学生兵

 

終戦後に殺されるだろ!!! 俺が!!! てか、ニキ!! ニキいた!!

どうすればいいかな!!!

 

78:蒼穹のハズレ転生者 

 

もう料理終わって並べる所だからすぐ切るよ

でもまぁ、そうだなぁ……とりあえず箇条書きでいいからわかる範囲の世界史頼む

 

79:学生兵

 

 

あ、はい。真面目な馬鹿なんでわかる範囲だけで

 

 

・宇宙飛び出して2世紀ぐらい新西暦187年

・100年前?人を募り、チャレンジするも火星入植失敗

 火星の病気、マーズレイとやらが原因。移民全滅

・5,60~年前に月で独立運動してたやつを逮捕

・慈悲をかけるという名の人気稼ぎで火星に寺してこいと追い出す

・寺は機材不足などで難航。というか、彼らはどうやらそもそも逃げだす算段だったっぽい

 追放者は地球の監視をなんとかやり過ごし逃走

・途中で見つかり追われる。

 以降、彼らの最後の足取りは木星付近で途絶える。上と同じく全滅と判断

・火星と行き来できるゲートが発見されて3回目の移民計画スタート

 ゲートを使えるため、資材や機材をコンスタンスに運べて無事寺化

 でもなんやかんやで独立されて戦争になる

・月、3分の1ぐらい吹き飛ぶ。ゲートも吹き飛ぶ

・宇宙から謎の宇宙船おっこちてくる

・ジオンとドンパチやってた時期がなんやかんやでおわる。

・いろんな奴が地球を狙ってくる。わりと最近。

 地球上では恐竜帝国や悪魔帝国が現れ、襲撃した。「マジンガーZ」

「ゲッターロボ」「ライディーン」の活躍により、壊滅。一部の奴は逃げる

 

・ミサイル落ちてきたわ NEW!

 

 

80:名無しのハズレ転生者

 

寺……テラフォーミング?

 

81:名無しのハズレ転生者

 

一生懸命勉強はしてるけど理解しきれなくて微妙にダメな子なの

節々からしみだしてて草

 

82:名無しのハズレ転生者

 

さんぎょう

 

83:学生兵

 

む"り"ぃ"""!"!"

 

83:蒼穹のハズレ転生者 

 

テラフォーミング2回失敗。3回目で成功。恨んでる組織は最低でもこの時点で2つ

ジオンとの戦いは多分、落ちてきた宇宙船(マクロス)に対する対策の強化を理由に止まった

地球の戦いはひと先ず落ち着いたから火星が正式に和平に来た。でもその疲弊した時を狙ってきた

 

 

84:学生兵

 

え、これって和平の代表者の火星の姫さんを狙ってきたのが火星…ってコト!?

 

85:名無しのハズレ転生者

 

僕の名はエイジ。地球は狙われている!

 

86:名無しのハズレ転生者

 

それはイッチですら理解できてる

 

87:学生兵

 

あぁ、ギリギリ多分……きっと?

 

 

88:名無しのハズレ転生者

 

馬鹿じゃないけどアフォの子にだいぶ寄ってる.

 

89:名無しのハズレ転生者

 

90:学生兵

 

ところで、なんか続々と敵がきてるんだけどどうしたらいい

 

 

91:名無しのハズレ転生者

 

うげ。火星人?

 

92:名無しのハズレ転生者

 

 

俺、αやってるけどこのタイミングなら機械獣だよ。

でももうアルドノア混ざったしな。じゃあ、敵は

 

 

93:学生兵

 

あ、オープンスピーカーで火星人と機械獣とバンカーっていってる

 

94:名無しのハズレ転生者

 

 

95:名無しのハズレ転生者

 

 

96:名無しのハズレ転生者

 

宿敵兜を倒すために一部の隙も見せない幹部の鑑。天晴、あしゅら男爵

 

97:名無しのハズレ転生者

 

(戦場)冷えてるかぁ~?

 

98:名無しのハズレ転生者

 

悲惨な死に方だと融通してくれるらしいよ。爆心地に行かないか?

 

99:学生兵

 

俺が生きることをあきらめないで!!! あ、でも!! なんかロボ出たよ!!

輸送機は2機落ちたけどそっから1体ロボ出て7対2……いけるな!

 

100:名無しのハズレ転生者

 

万全のマジンガーならともかく、パイルダーなんすよ

グルンガストに乗ってるだろう子も素人なんすよ、まだ

 

101:名無しのハズレ転生者

 

ガッチャ! 楽しいスレだったぜ!

 

102:学生兵

 

あば、あばばばばばば”

 

103:名無しのハズレ転生者

 

ハズレ転生名物、初手詰みBADエンド

次は運を磨いてきてくれよな!

 

104:学生兵

 

次は人以外で頼む。俺は猫がいいです

 

105:名無しのハズレ転生者

 

犬がいい(死を目前にしてる)

 

106:名無しのハズレ転生者

 

オコジョ(死を目前にしてる)

 

107:名無しのハズレ転生者

 

からあげぇ~~~!(死を目前にした最後の晩餐)

 

108:名無しのハズレ転生者

 

ピンチのスレ主とピンチの読者

 

109:名無しのハズレ転生者

 

あるある(追跡者から隠れてる)

 

110:蒼穹のハズレ転生者 

 

運次第だけど助かる方法あるよ。なんでもする?

 

111:学生兵

 

はい!!! はい!!!!!

 

 

112:名無しのハズレ転生者

 

あ、キリ番!! 報告しろよ!

 

 

113:名無しのハズレ転生者

 

古代文明かよ

 

114:蒼穹のハズレ転生者 

 

んじゃ、墜落した輸送機は見える範囲だと思うけど……

激戦区になるであろうそこに突っ込もうか

 

115:学生兵

 

お、処刑かぁ~?

 

 

■■■■■

 

 

「こんな……こんな……」

 

 

燃え盛る街を見つめ、狼狽えるアセイラム。

目立つドレスから途中でお店から借りてきた(意訳)から今すぐ着替えろと

渡された服に黒髪のカツラを被せられている。

シンもなるべく芋っぽくて目立たないものを選んだつもりだがそれでもなお、隠せぬ魅力というものはある。

 

 

「この襲撃は……」

 

 

従者エデルリッゾと名乗った幼女が呟く。しかし、アセイラムを見つめながら

口から出ようとしていた言葉を上書きするように、そして、同意を求めるかのようにシンを向く。

 

「……いえ、機械獣、そして、バンカーとやらが計画したのでしょうか……」

 

 

「いや、三者の協力だとみるべきだろ。どう考えてもな」

 

 

「そんな!? ……うっ」

 

 

「姫様!? あなた、言葉が過ぎますよ!」

 

 

「っ……なら!!!!」

 

 

 ―――あいつらはなんで並び立って戦場にいる

 

 

「あしゅら男爵はバンカーと協力していると言った!

 後からきた、あの……火星人の機体も! 一言二言交わしただけで戦う気配もないく高空に上がって待機に入った! ヴァースはまだわかる!

 姫を殺され、報復に来た! 理由は筋が通る! だけどこれだけの事が立て続けに起こったのはどうだ!?」

 

 

「それは……! ……それは」

 

 

 彼女は賢った。だからこそ、理解してしまった。

 これらがすべて仕組まれたという事を。だが、だからこそ……

 

 

「なら、余計に止めなければなりません。この愚行を」

 

 

 誇りあるものとして、立ち向かうことを選択した。命を賭して。

 

 

「なら、協力してくれ……早速で悪いが誰か車運転できる? 俺、自信ナイ……」

 

 

■■■■■

 

 

129:学生兵

 

という感じだったけど、車運転できる自信ナイ

って言ったら目がテンになっちゃった。

 

 

130:名無しのハズレ転生者

 

急にシリアル切れでボケるな

 

131:名無しのハズレ転生者

 

ボケてるんじゃない。これ、素がボケ野郎なんだな

 

132:名無しのハズレ転生者

 

で、どうなん? 運転は?.

 

133:学生兵

 

従者の子が命令されて放置された車をガチャガチャして電源入れた

今、乗ってる。

 

134:名無しのハズレ転生者

 

口だけでなんもしてなくて草

 

135:学生兵

 

そうなんだ。ごめんね……

 

136:名無しのハズレ転生者

 

ガチへこみで草

 

137:名無しのハズレ転生者

 

ごめん……そこまでへこませるつもりは

 

138:名無しのハズレ転生者

 

どっちも素直かぁ~?

 

139:名無しのハズレ転生者

 

良い奴から死んでいく……ってのはハズレ転生の法則

 

140:名無しのハズレ転生者

 

救う気はあるから、善よりの良心持ってる奴が放り込まれるのバグでは

 

141:名無しのハズレ転生者

 

(くそ野郎だったら、自分の保身だけで世界救わないから)だめです

 

142:名無しのハズレ転生者

 

あ、そっかぁ……

 

143:名無しのハズレ転生者

 

悲しいなぁ……

 

144:蒼穹のハズレ転生者 

 

で、輸送機にはつきそう?

 

145:学生兵

 

おっす! イニDばりの運転にシェイクされながら向かってます!!

 

 

■■■■■

 

 

「これは……カタフラクト?」

 

 

「いや、ガンダムだ……多分、おそらく」

 

 

「もっと自信をもってしゃべってくれますか?」

 

 

「遠慮なくなってきたな。まぁ、いい……」

 

 

 開いたコックピットに登っていくシンを見上げながらアセイラムは疑う様に口を開く。

 

 

 

「これがここにあると知っていたのですか?」

 

「いや……ただ、墜落の衝撃でも原型をとどめている輸送機。

 そんな頑丈なものなら何かはある筈。とは思った。それは相手も同じ筈だ

 だから攻撃してこなかった。手に入れたいからだ。そして、何かあるならそれは……」

 

 

―――機動兵器だ

 

 

 

「このまま町の破壊が続けば兜は間違いなく人々の命と引き換えに降伏する。そういう奴だ。

 だから生き残るだけなら、隠れてればいい。避難所にな。でも、アイツが死ねば今はよくても世界に先がない」

 

 

「だから、戦うのですか?」

 

 

「あぁ……(震え声)」

 

 

「分かりました。私も乗せてください。人間として扱わず荷物としてで構いません」

 

 

「姫様!? やめましょう! 彼の話を聞きましたか! ひと先ず隠れておくかここにいれば……」

 

 

「無事でしょう。でもそれでは届かない。遠くからでは心まで通わせられない。

 同じ目線で立ってこそ、人は心を通わし理解できるのです」

 

 

―――だからこそ、私は地球に来たのだから

 

 

「中のサブシートを出してワイヤーも下ろした、早く乗れ! ちょっとあまり戦況もよくないぞ!」

 

 

「はい!」

 

 

「うぅーー……私も行きます!」

 

 

 なんかかっこいい感じの会話で引き伸ばしてる間に見つけた説明書を読みながら電源を入れる。

 少しして二人が押し込むようにコックピットに入ってくると初期設定が完了しOSが立ち上がった」

 

 

「G……ガンダム、ですか?」

 

 

「そのあとのBSDってなんの略称でしょう」

 

 

「(OSRならわかるんだけど)衛星放送かぁ?」

 

 

『バースディ……と呼んでいる』

 

 

「うぉ! びくっとしたぁ! あいてーーーー!」

 

 急に機体に入った通信に驚き体を浮かばせると閉まり始めていた扉に頭をぶつける。

 

 

『付近の通信施設を経由しながらサポートする。操縦席はほぼカタフラクトから移植した。

ただ、BSDシステムの関係でコックピットやや大型化されているが、

 今の状況ならむしろそれは助かる筈だ。的という意味では不利だが、

 OSと機器の相性のせいで遠隔操縦はオミットした。できればよかったのだが……すまない』

 

 

「まるで、俺に戦わせたくないみたいだな……」

 

『……誰もが戦わない世界が欲しかった。私も、息子も、君も……さぁ、準備を

 兜甲児が降伏してもクスハ・ミズハが死んでも世界は終わりだ』

 

「あぁ、わかってる(狭い……女の子と一緒だとか興奮してる場合じゃない)」

 

 

『頼むぞ、シン!』

 

 

「分かってる! ガンダムBSD(バースディ)、出るぞ!」

 

 

 

ガンダムBSD。それは魂を解放するガンダム

 

 

 




リハビリとは好きなように書いてガンガン投稿して完結させることだと
思っているので目標は1~2日間隔の投稿です

短かったら長かったりすると思います。本当に申し訳ない(メタルマンおじさん)


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違います! 海賊版じゃありません!


ハズレ転生者専用掲示板 アップデート情報 Ver 11.375


――――――――――――――――――――――――――――――――――

・神界を巻き込んだ戦いの復興作業でさら、さらにさらに

人員が削減されてまじで女神と神の2人しか管理者がいなくなってしまったので

掲示板を旧システム。チャットモードに変更しました


・スレをチャット部屋に名称変更しました。

・ログデータは変換、移植済みです

・現在、中指を立てて追加人員を募集し対応中です。
次回のアップデートをお待ちください


 

参加者:たくさん(名無し)

 


名無しのハズレ転生者>草


名無しのハズレ転生者>いや、草


名無しのハズレ転生者>荒らされたりID偽造とかでIDすら消されたのに

         ついに掲示板機能までボッシュートは草


神>ごめん>ALL


女神>本当に申し訳ないです>ALL


名無しのハズレ転生者>あ、いや。別に責めてないっす!! すんません!


名無しのハズレ転生者>IDは返してほしいけどあれも死んだと思ってたレッドショルダーニキが

心肺蘇生で息を吹き返さなかったらわからなかったからな


名無しのハズレ転生者>固定ID式なの逆手にとってIDを偽造して全方位誰も信用できない地獄を作り出しISくん&妹失って狂ったウサギのコンビ


名無しのハズレ転生者>俺は最近来たからわかんないんだけど、今どうやって判別するんだっけ


名無しのハズレ転生者>.PLEASE


システム>この素晴らしい世界に祝福を! 難易度SSS+


名無しのハズレ転生者>.PLEASE


システム>BLEACH チャン一没収


名無しのハズレ転生者>.PLEASE


システム>シンフォギア×ボーボボ


名無しのハズレ転生者>これで自分の世界が出る様になった。でもどういう世界かな?

           って世界を考察するまで楽しみとしてワンセットだからあまり使われない


名無しのハズレ転生者>100%同一にはなりえないという因果律。

           それを利用して防御策にしてるけど原作当てゲームという一つの楽しみを失った感も微妙に感じる。すぐアドバイスしたい時はコマンド!打て!になるから


名無しのハズレ転生者>でも固有ID返却した結果、第2のISニキが出てまたそこに生きてる奴ら全滅とかされても困るしな


名無しのハズレ転生者>いや、待ってくれ。しれっと流したけどとんでもない奴がいたぞ!? 


『学生兵』が入室しました


学生兵>.PLEASE


システム>スーパーロボット大戦α123×OG123×その他複数  熟練度限界突破


学生兵>オ"ボロ"


名無しのハズレ転生者>こうなる可能性もあるので推奨されてないはある


名無しのハズレ転生者>遅すぎた警告。お帰り


学生兵>勝ったよ


名無しのハズレ転生者>疲れ切ってて言葉なくなってて草


名無しのハズレ転生者>過程がないだろ、過程が!!!!! 一番大事な所は!?


学生兵>あ、すんません。疲れてるんで回想モード使っていい


名無しのハズレ転生者>使わないって言ってたのに疲労に負けて草

 

 

 

■■■■■

 

 

「最初の攻撃で倒せていれば儲けだったが、やはりそうは甘くいかなかったようだな、兜甲児

 まぁ、いい。マジンガーが出撃できないのは調査済だ。まぁ、あったところで今日のイベントで外を出歩いている人間は多かろうな」

 

 

「なんだってぇ!? 盾にする気か! あいも変わらずきたねぇ野郎だ……やい、あしゅら男爵! 

 俺を倒したいのなら、正面からきやがれ! それともマジンガーすらない俺にびびってるのかぁ!?」

 

 それは甲児なりの精一杯の挑発であった。まだシェルターに避難できていない人間も多い。

 少しでも自分に攻撃を集中させるべきだ。そして、マジンガーがなくともパイルダーの機動性ならそれが可能だ。

 あしゅら男爵は怒りやすい。これで何とかなるはずだ。そう思っていた。 

 

 

「ふっ、ふふふっ……懐かしいなぁ、兜甲児。そうやってお前の口車に乗り、ひどい目にあってきた。そうだ、認めよう。お前は……いや、お前たちは強い。幾度もの敗北で悟ったのだ。己の慢心をな」

 

 

 ―――だからこそ、お前の弱点ではなく。自らの弱点を埋めて戦いに挑むのだ

 

 

その言葉と共に3体のロボットが空より舞い降りた。

反り返り、強大さを誇示するかのような肩パーツを持つ黄色と赤のロボット。

そして、そこから少し離れた場所に巨大な体躯の持つ青いロボットがその足よりも大きな腕を地に伏せ

2体にこうべを垂れるかのように着地した。

 

「あ、あのロボットは見たことがあるぜ! 半年以上前に新宿を破壊したロボット……未確認の異星人」

 

「よくぞ起こしくださいました、バンカー殿。お名前を拝見しても」

 

「俺は四天王ギル・バーグ。赤い機体はパイ様。黄色い奴はその従者のランバ。そして……お前がドクター・ヘルの言っていたあしゅら男爵か」

 

「はっ……」

 

「おいおい、そんなやつを仲間にする気かぁ~? 寝首をかかれるぜ!」

 

「かもしれんな……野心と悪心に満ちた人物なのがここまで近くにくれば嫌でもわかる」

 

 

―――だが、そういうものが苦汁を舐めて従う間はせいぜい協力してやる

 

 

「忠誠と絶対的な信念こそバンカーが重視するもの。忠告感謝しよう。だが、今は無用だ」

 

「こ、こいつ……」

 

 

 兜甲児は成績はよくない。しかし、馬鹿ではない。だからこそ、相手の挙動をすべて見ていた。

 その機体がどう降りてくるかすら見ていた。だからこそ、目の前の男。ギル・バーグを挑発した。

 付き従うように、しかしそれを不服とするかのような降り立ち方を。

 

(あしゅら男爵もそうだが、それ以上に完成されてやがるぜ……まいったな)

 

 

 ダンガイオーにいくどもの敗北を与えられながら、復讐心と自分こそが最強であるという信念のもとに成長したギル・バーグ。そして、慢心を捨てた怪人。あしゅら男爵が今、兜甲児の目の前に立った。

 

 「行け!! ガラダK7! ダブラスM2!」

 

 

 「今日は性能テストと御守とのことで戦闘は禁じられているのでな。

  その活躍、見せてもらうぞ……行くがいい。ランバ、パイ!」

 

(くそぉ、通信網が混乱してて避難の状況が確認できねぇ! 今は逃げ続けるしか!)

 

 

「ふっ……逃げて時間を稼ぐのか? 助けなど期待しても無駄だぞ……」

 

 

「なに! ……いや、そうか。アセイラム姫が殺されたとありゃ、軌道上の部隊はもう降下してる筈。

 それに対応してるなら軍はこれるわけねぇ……俺としたことが……馬鹿だ。いいぜ、ここで決着つけてやらぁ!」

 

 

 (あぅ!! ……兜くんが特攻しようと……死を覚悟したっていうの!? そんな事、させるわけにはいかない! )

 

 

(うっ! そ、そうなのか? でも俺になんかできるのかぁ?)

 

■■■■■

 

 

 


名無しのハズレ転生者>今気づいたけどお前、クスハちゃんの心の声受信してるじゃん


学生兵>受信はしたけど正直、どこいったら逃げられるかなぁ。みたいな思考だいぶあった


名無しのハズレ転生者>正直で草


名無しのハズレ転生者>それにしてもあしゅらくんも多分、ドクヘルくんも慢心を消してつよつよで草


学生兵>ほんまそれ


名無しのハズレ転生者>ヘルはマジンガーにスクランダーついたらやばいから、その前にころすべ!とかいってるころもあったけどまさかあしゅらくんも進化するとはなぁ……


名無しのハズレ転生者>忠誠している間は助けてくれるバンカーくんとかいうホワイト。


名無しのハズレ転生者>ギルくんも本編後の一皮むけてつよつよバージョンやんけ


名無しのハズレ転生者>地球は狙われている(絶望)


名無しのハズレ転生者>よく勝ったなお前。てか勝ちの算段あったの?


学生兵>覚悟した後は最初はあしゅらの戦艦に組み付いて自爆して落とせばワンちゃんあるかなとは思ってたよ。兜はああいうけど援軍が絶対こねぇって事はないと思うしさすがに


名無しのハズレ転生者>ロリとぱっきん少女乗ってるんですけどぉ?


学生兵>いや、ほらさ。スパロボちょこっとだけやったことあるの! でもぽんぽん自爆するじゃん! だから脱出装置的なの。あるかなって!! なかったよ! だからやめたよ!!


名無しのハズレ転生者>いうほど自爆する……?


学生兵>F


名無しのハズレ転生者>うぃんきぃーー! ふっる!? 前世何歳だお前!?


名無しのハズレ転生者>Wメンバは気楽に精神コマンドに自爆持ち込むのやめろ


学生兵>まっ、まま……一通り悩んだけど俺も思うところがあるわけよ


名無しのハズレ転生者>スナック菓子の様に命を使い捨てる理由がぁ? 言ってみろ!


学生兵>この町には友達がいるから


名無しのハズレ転生者>はい


名無しのハズレ転生者>思った以上にストレートだった

 

■■■■■

 

 

 

「クスハ、近接があるのはわかるが距離を持って戦え。今のお前じゃカチあった瞬間オダブツだ! でも助かったぜ!!」

 

「う、うん! 兜くんも武器を使って! もう避難は終わっているわ!」

 

「へっ、そりゃあいい話だぜ! たくっ、その機体のパワーだ。機械獣2体だけならなんとかなったってのによぉ! 」

 

 

 硬いながらも連携でなんとか戦う2人。しかし、ガラダK7とダブラスM2の連携に加え。バンカーのロボット2体を加えた相手の戦力の差は大きく。常に紙一重の戦闘が続いていた。

 

 

「うっ、囲まれる!」

 

 

「っ! パイルダー、ミサイル!」

 

 

 機械獣に囲まれかけたクスハを助けるためにミサイルを射出する甲児。

 残弾1。唯一、敵に通用する武器である以上、節約すべきだが……命にはかえられない

 

 

(ちくしょう……もう1機の輸送機からも援軍が……ってのは都合がよすぎかぁ!?)

 

 

「よかったな、今回ばかりは都合がよかったぜ、兜」

 

「なっ!?」

 

 ビームライフルが発射されたパイルダーミサイルを打ち抜き、爆発。巻き上がった煙が周囲を一瞬、覆い隠した。

 

 

「っ! ブーストナックル!!!」

 

 

「な、なんだとぉ!」

 

 

 一瞬の隙をつかれブーストナックルに貫かれたガラダK7とダブラスM2が爆発する。

 強力なコンビネーションを繰り出すゆえに近くにいたことが結果的に彼らの敗北を招いた。

 最も、あのままではそれは起こり得なかった隙だ。

 

 

「なにものだぁ!」

 

 

「俺はガンダムだ!!! ガンダムだ!! あ、違う……いや、ガンダムだぁあああ!」

 

「なんだと!? 名を名乗れ!!」

 

 

「シン!? 「日野くん」」

 

 

■■■■■

 

 


名無しのハズレ転生者>お前は何者だ!!


名無しのハズレ転生者>俺はガンダムだ!!


名無しのハズレ転生者>草


名無しのハズレ転生者>いや、草でしょこんなん


学生兵>かっこいい名乗りがしたかったけどぱっと出てこなくて機体名だけいっちゃった


名無しのハズレ転生者>いっちゃったじゃない


名無しのハズレ転生者>てか、やっと機体が見えたけどこれ……AGEかぁ?


名無しのハズレ転生者>AGE1……に近いかなぁ。でも胸部のユニット違うね


学生兵>なんかこれがBSDシステムらしい。効果は近距離の意識的な共有領域をこうちくかくちょうし


名無しのハズレ転生者>理解しないまま喋ってるのわかる


名無しのハズレ転生者>トランザムバァーーーストォ! の簡易版てきな


名無しのハズレ転生者>瞬間的にクスハが連携できたのはその感応を念動力がサポートしてて瞬時に動けたからか。すごいな


名無しのハズレ転生者>で、これ誰運んできたの?


名無しのハズレ転生者>フフフさん?


名無しのハズレ転生者>フフフさんではなさげ。T-リンクぅ!はついてなさそうだし


学生兵>んで、とりあえず5VS3になったからこの辺でひとまず自爆は完全に思考から追い出した。でも、バンカーさんのロボめっちゃ強いのは感じてたからやべぇなって……でも援軍きて助かったわ


 

 

■■■■■

 

 

 

「急接近する反応、地球人の援軍か? ……いや、この機影! これは!?」

 

「ハイドロイレイザーぁああああああああああ!!」

 

「くっ!」

 

 ギル・バーグはとっさの判断でブラッディー1からコアロボットを射出。

 

 瞬間、ブラディ1に命中した光線は瞬時にそれを吹き飛ばした。

 

 

「生きていたか……ダンガイオー!!」

 

 

「ダンガイオー……見参! ギル・バーグ! 仲間を返してもらうぞ!」

 

「……ロールかい。あんたもいきていたんだねぇ」

 

「パイ! そっちはランバか! だが、意識が感じられない!」

 

 

「敵と仲間に別れても仲間に会えるのはうれしいものだよ。でも……でも、ここで死んで貰うよ」

 

 

「恐れながら……パイ様。あしゅら男爵、撤退を進言させていただきます」

 

 

「……どういうことだい?」

 

 

「通信が入りました。状況が変わりました。今、情報をそちらに」

 

 

■■■■■

 

 


名無しのハズレ転生者>ダンガイオー、見参!


名無しのハズレ転生者>ダンガイオー・urで草


名無しのハズレ転生者>あ、そういえばタルシスいねぇな。一緒に降りてきたんでしょ


名無しのハズレ転生者>あ、そうね。そういえば。なんで町燃やしてないの。アイツらひゃっはーでしょ


名無しのハズレ転生者>いや、燃やせんでしょ。戦闘の真っただ中横切って走って輸送機までいったんだろ、アイツ。なら絶対見えてるじゃん。変装してても気づくでしょ


名無しのハズレ転生者>あ、姫様


学生兵>そういう事だったんですねぇ


名無しのハズレ転生者>気づいてなくて草


名無しのハズレ転生者>んで、状況が変わったってなんなんだよ?


学生兵>いや、今思うと生還の可能性ありって事が伝わって指揮が割れて各地の火星人の進行止まったのかも。でも当時、俺は別の事考えてたっていうか……


 

 

■■■■■

 

 

 

「……なるほど、これなら立て直すしかないね。一度補給を受けてバンカーに戻るよ」

 

 

「東京の大部分の制圧がすでに終わりました。新宿で補給を受ければよろしいかと」

 

「わかったよ、ギル。あしゅらもよくやった……それじゃあ、ロール。ここまでだ!」

 

「待て!!」

 

「いいのかい? 本気でやりあえばこの前の新宿の比じゃないことになるよ。ミアが喜ぶかねぇ」

 

「ぐっ……」

 

「それから、そこの……名前はわからないけど機体は覚えたよ。次はつぶす。覚えておきなガンダムタイプ。そして、グルンガスト……そっちは欲しかったんだけどね」

 

 

そういって彼らは撤退していった。疲弊していたこちら側はそれを追う気はなく。

ただ、遠ざかっていく背中にそれぞれ複雑な何かを抱き。眼が彼らの影を離すまで、見つめていた。

 

 

「……なんで撤退を。今は地球は大混乱の筈じゃ」

 

 

『ふっ、そうでもない。運がいいことに今は荒れているよ。通信がな。何より、始まったのだ……では、またな』

 

 

「あ、おい。通信切らないで! 意味深なことだけ残して!」

 

 

―――ピィーーーーー

 

 

「あれ、また通信? どこから……あれ、これ一方的だな。なんでだ」

 

 

『弄らないで、そのまま聞いていて。イレギュラーによりサブプランが展開されたわ。よって、一時的に私たちが保護します。集合場所はー――です。繰り返す、集合場所はー――です。私たちは……』

 

 

 

―――私たちは、ソレスタル・ビーイング

 






ミサイルへの照準はBSDの補佐ありです。

ごく短期間ニュータイプみたいなぴきーんができたので当たった

的な解釈でおなしゃす


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しばしの休息。あるいは戦いの前の静けさ

ハズレ転生者専用掲示板 アップデート情報 Ver 12


――――――――――――――――――――――――――――――――――

・掲示板機能を復活しました

・動画の投稿スペースを開設しました(R-18、18Gの投稿はお控えください)

・掲示板コマンドに前回までのあらすじ機能を実装しました(.Kaiou)

 ※スレ名+コマンドで


※根本のシステムが変更になったので管理者側でスレを立て直しました。

 チャットログは>>1にはってあります


 

大惨事スーパーロボット大戦 2スレ目

 

 

31:学生兵

オッスオッス。掲示板戻ったんだね

ところなんかスレ数めっちゃ減ってない? なんで?

 

 

32:名無しのハズレ転生者

あ、報告日か。今月の死傷者リスト上がってるね。イッチも見ておけ。気を引き締めるためにこ↑こ↓

 

33:名無しのハズレ転生者

そういや、昨日が締め日だったか。これでイッチも新人卒業だな

 

34:名無しのハズレ転生者

新人(スレ時間3日)

 

35:名無しのハズレ転生者

ブラック会社みたいな響で草。で、何人よ?

 

36:名無しのハズレ転生者

新人165人に対して死亡者140人

 

37:名無しのハズレ転生者

うげぇ

 

38:名無しのハズレ転生者

うわ、エロRPGスレのイッチも名前上がってるじゃん。スレ立て変わったばっかだろ。

パーティ構築も終わって順風満帆だったのにどうしたんだ?

 

39:名無しのハズレ転生者

ヒーラーがタンク無視して軽傷の僕ばかり治療して困るとイッチがこの前言ってたろ

で、ピンチの時にやっぱ同じ事した。まずタンクを治療して立て直すべきどころでそれやって

大怪我。血の量にびびって神官がフリーズ。それでアタッカーが隠してた上級ポーションでタンクと自分を治療して逃げて終了。

 

40:名無しのハズレ転生者

うわぁ、ついてねぇな……あれに関してはあのスレのイッチも毎回、注意してたらしいけどダメだったか

タンク放置はあかんでしょ

 

41:名無しのハズレ転生者

原作あろうとなかろうと、世界の人間は”生きてる”訳だから。俺らと同じ

もうこういう部分は仕方ねぇつーか……まじであれは最初のhmって煽られたPT選出が正しかったかも

 

 

42:名無しのハズレ転生者

「とりあえずさっき話しかけてきた男の傭兵とPT作れ。世界は違うと思うが経験則的に奴隷は依存度が高く後々怖い」

っていうアドバイスか。スレ民の総意は何度も出戻りになってる気弱な神官なら安かったし

短期傭兵なら2人雇えて4人PTが作れるだったんだよな

 

 

43:名無しのハズレ転生者

結果論だけど、傭兵と2人が正しかった気がする。奴隷神官ちゃんはエロゲイッチに依存しちゃったんだろうな

好感度稼ぐしかねぇ!とかいって結構かまってたし……でも俺は愛玩動物扱いにも見えた

 

 

44:名無しのハズレ転生者

結局、目の前の人間をモノとして扱い始めるのが一番ダメなんだろうな

でも地獄で擦れてきてそうなっていってしまう奴は多い。そして、死ぬ

 

45:名無しのハズレ転生者

わりと初手ですでに詰んでてあとあとそれが分かるパターンも多いよな。で、イッチくんは?

 

46:学生兵

 

 

ほーん

 

 

い”き”だ”ぁ”い”!”!”!”!.Kaiou

 

 

~前回までのあらすじ~

 

 

都立陣代高校の一室を間借りしている

芦原高校の高校生、日野真(ひの まこと)『愛称:シン』 は

和平の代表者であるアセイラム・ヴァース・アリューシア(以下アセイラム姫)

の歓迎パレードを友人たちと見学に来ていた。

突如、襲撃される歓迎パレード。彼は(から)くもアセイラム姫を助け出すことに成功し

侍女エデルリッゾの導きにより一時、襲撃を免れるも話を合わせていたかのように出現した。

あしゅら男爵、宇宙海賊バンカー、ヴァース帝国のタルシス。

町は瞬く間に火の海へと姿を変えていく。

 

それを止めるために兜甲児は無謀と理解しながらも単身、ホバーパイルダーで出撃。

そして、援軍として現れるクスハ・ミズハのグルンガスト二式。戦いの状況、なお劣勢なり……

シンは意を決し、友と戦うためにもう戦場を横切り1機の輸送機へと向かう。

それを目撃した37家門の騎士の一人、クルーテオ伯爵は目を見開く。

彼の視界に映ったのは変装中の―――怪我を負いながらも生存しているアセイラム姫であった。

クルーテオは状況的に内部で抗争が発生している事を理解しさらなる情報を集めるため、

占領が終わり、仮設基地の展開が始まった新宿へと引き上げる……

 

起動するガンダムBSD(バースディ)

システムの照準補正によりミサイルを射撃、それを煙幕として利用したクスハの攻撃により機械獣を撃墜。

全てを俯瞰し理解していたかのような連携のつながりに困惑を抱く2人だが

息を突かせぬバンカーの追撃が彼らに襲い掛かる。

 

そして、舞い降りるダンガイオーUr。

 

ロールの声はかつての仲間に届かず、撤退するバンカー。

疲労の中で彼らはただ、遠ざかっていく敵の背中を見つめる事しかできなかった……

 

 

47:名無しのハズレ転生者

The Beckoned Foreigner流れてて草

インパクトとかMXの曲じゃなかった? 確か

 

48:名無しのハズレ転生者

バトルホラー淫夢だと判明したイッチのあらすじBGMはunicorn(泣ける淫夢アレンジ)

だったからあえて少しずらしてる可能性

 

49:名無しのハズレ転生者

世界当てゲームを盛り上げようとする管理者の鑑

 

50:名無しのハズレ転生者

チートください

 

51:神

(上の奴らが100個も200個もあげすぎて神界時間であと1万年かけないとチート回収できないため)ないです。 余裕ある時にたまにおまけぐらいはあるんですけど。

 

 

52:名無しのハズレ転生者

悲しいなぁ……

 

53:学生兵

ところで多分、俺も念動力てきな何か持ってるよねこれ。チートつけてくれたの神様?

 

54:神

いえ、それそのものなのか近しい力なのかは不明ですがあると思います。詳しい事は……

我らはあくまでバタフライエフェクトを起こしうる人選をして送る所までで。

ただ、念動力者。ニュータイプ。あるいはイノベーター。それは全て、近しく。

しかし同一ではない。併せ持っている。あるいは亜種能力であることも念頭に入れるべきでしょう

 

 

55:学生兵

特技欄とか見れればいいだけどなぁ。まぁ、ありがとうございます

 

 

56:名無しのハズレ転生者

そういえば、あの後。女の事は~? 仲良くなれたかな!

 

 

57:学生兵

ずーーーといてぇなぁ!って思ったらがっつり足にみっちり皹入ってて

再生治療装置的な奴の中だったんで会ってないよ。でもよく寝れたわ。寝てる間に1戦終わった。

……いや、本当ごめん。兜、クスハちゃん。

 

58:名無しのハズレ転生者

 

59:名無しのハズレ転生者

 

60:名無しのハズレ転生者

 

61:名無しのハズレ転生者

あ、そうだ(唐突)

イッチってどの辺までスパロボとかロボット知ってるの?

 

62:学生兵

俺、多分α外伝と携帯機しかやってないからがばがばだよ

 

63:名無しのハズレ転生者

多分?

 

64:学生兵

解凍されて1年半ぐらいだし、長期間のコールドスリープの後遺症って奴。

まだ記憶も歯抜けの部分多い。少なくとも、こっちの15、6年はぬるっと抜けてる。

正直な話、前世の記憶も全部持ってるっていいきる自信はない

ただ、多趣味で広く浅くだった様な……知らないことの方が多いんでねぇか?

 

65:名無しのハズレ転生者

あぁ、家族の話があいまいだったのはそういう

 

66:名無しのハズレ転生者

家族いないのに不安感とかもない様子だったしな。生活は?

 

67:学生兵

リハビリもあったおかげで1年は病院とジム往復してたよ。

コールドスリープがそもそもテスト運用だったおかげで治験扱いで口座にお金いっぱいあった

 

68:名無しのハズレ転生者

ほー、しっかりしてんだな

 

69:名無しのハズレ転生者

歴史の中で学んだんでしょ

 

70:名無しのハズレ転生者

戦いの歴史が正常化に一躍買うって皮肉すぎて草

 

71:学生兵

でもまぁ、豪遊できるほどでもないよ。

あと、出身が地球→コロニーみたいな動きをしてた結果、いろいろ疑われたわ。戸籍復元の時

 

72:名無しのハズレ転生者

あぁ、ジオンの事とかあるしスパイかもって警戒されるか

 

73:名無しのハズレ転生者

異星人とか地下組織の奴かも、ってのもあるしな

 

74:学生兵

多分、そうなんかな。学校もなかなか受け入れ先見つからなくて

訓練課程にカタフラクトの操縦がありますし、実戦配備もありうるけども……でなんとかって感じ

 

75:名無しのハズレ転生者

ロボ主人公の導かれるような道筋が全くない、この……

 

76:名無しのハズレ転生者

完全にお仕事系の作品か弁護士ドラマの題材のような人生

 

77:学生兵

んっ……あっ、自室に連絡来たわ。艦長が挨拶したいらしい

 

 

78:名無しのハズレ転生者

あれ、プトレマイオスに艦長っていた?

戦術予報士じゃないの?

 

79:名無しのハズレ転生者

サブプランって言ってたし、状況がだいぶ違うのかもしれねぇ

ガンダムマイスター全滅してます、とか集まってません!は勘弁してほしい

 

 

■■■■■

 

 

 

『失礼します』

 

「あ、どうも。どちらさまでしょう」

 

 真顔でシンが言うと、女性は微笑を浮かべ

 

『乗船の時に名乗りましたが、まぁ、疲労した様子でしたしね。ご挨拶しても?』

 

「……あ、すいません。とりあえず、自動ドア開けます」

 

 自動ドアのロックを外し、ボタンを押して開閉する。

 

「スメラギ・李・ノリエガです、戦術予報士をやっております。

日野真さん、体調に問題がなければ艦長のもとにお連れしたいのですがよろしいですか?」

 

「大丈夫です。自慢じゃないですがよく寝ましたしね……いや、寝すぎかぁ」

 

「脳波に異常はありませんでしたし、精密検査もしましたが足以外にありませんでしたよ」

 

 安心してください、といって精密検査の結果をシンに手渡すスメラギ。

 そこでシンは考えるBSDシステムが負担になったのか、

 はじめての実戦に疲れたのか。いずれにしろ、数日も眠っていたという話は異常に感じる。

 

 

(疲れた、気はしなかった……初めてという感じも……いや)

 

 パイロットだったというデータはない。なら、それがBSDの力なのかもしれない。

 

(限定された空間での疑似的な意識の共有。

 そして、蓄積された戦闘データに沿って動ける、とか?)

 

 

 すごいといえばすごい。しかしそれは指揮能力の高いものが乗れば、という事

 十全な能力は自分では発揮でないかもしれない。

 

(特にパイロットによるロックみたいなのはなかった、なら預けてここで降りても……いや)

 

 

 ―――今更それは、気持ちが良くない

 

 

「時に……肉体は豊満な方だと思っており自信があるのですが

 そこまで興味のなさそうな表情をされるといささか、女としての自信が揺らぎますね」

 

 

「……あっ、すいません。いや、それは俺も思います。

 ただ、今。エロに割り当てる余裕がないというか……っ!」

 

 

「ふふっ、それはよかったです。では、案内人としてはご満足していただけそうですね」

 

「いえいえ、それはもう…………あっ」

 

 スメラギは緊張をほぐしてくれようとしてくれたのだ。

 戦術とは関係ない様に思える。何より、関係者でもない自分にそんな時間を割いてくれた。

 

 (人間味がある、当然だ。人間なんだから……忘れちゃいけない。

  俺も、皆も。生きている。だから、戦うという事は……そういう事なんだ)

 

 

「考えるのは良い事です。ですが、到着点のない思考は絡まった毛糸のようなもの。

 解こうとして、余計に絡む……だから、もったいなくても適度に捨てましょう」

 

 

「アドバイス、ありがとうございます。では、案内をお願いできますか」

 

 

「えぇ、喜んで」

 

(やっぱ美人だな、おっぱいも大きい。髪も長い……そうか、これが俺の失われた性癖)

 

 くだらない事を考える余裕を取り戻したて、彼はブリッジへと向かうのだった。

 

 

■■■■■

 

 

「艦長、お連れしました」

 

「うむ」

 

 そういって2人を迎えたのは白髭を蓄えた老人だった。

 しかし、老人といっても衰えた様子は見えない。立ち方はしっかりしているし、

 服で見えないがそれなりに鍛えられているようにも見える。

 

「ありがとう、スメラギくん。この臨時ドッグ03にて各部との連絡待ちだ。大がかりな戦闘を行う予定はない。現在時刻より他の人員と同じ様に休息を認める……

 なるべく睡眠を阻害しないようには務めるが……もしもの時はすまないが」

 

「もちろんです。配慮、ありがとうございます。

 ですが、差し支えなければお話に同席させて頂いても?」

 

「ふっ、確かに廊下でずいぶん楽しそうに雑談をしていたな。

 構わん、彼も緊張がほぐれるだろう……さて、日野……いや、堅苦しいな。

 シンでいいだろうか……そう、呼ばれていたと聞いている。無理にとは言わんが」

 

「あ、いいっすよ。じゃなかった、いいですよ」

 

「普段通りで構わんさ。私は今は軍人ではないのだから……さて、紹介させて頂く」

 

 

 ―――私は、フリット・アスノ

 

「本艦、プトレマイオスの艦長の任は今は受けているものだ。

 フリット、艦長。好きな呼び方でいい。それでは……現状の説明をさせて貰う」

 

 そのうえで、選んでくれればいい。

 そういって、彼は用意した椅子を自分の席の隣に並べて手で着席を促した。

 隣り合ったその場所は、なぜか懐かしさを感じた……




リハビリなんで最低でも1日に1話書いてあげていきますが
止まったその時がエターな気がします。なので頑張ります

定期的にチラシの裏だったり、浮上したりしてますが
1評価を狙ってる人は隙を伺ってください。基本的にチラ裏です




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幕間 インターミッション1『慟哭』

ハズレ転生者専用掲示板 アップデート情報 Ver 12.01


――――――――――――――――――――――――――――――――――

・ISニキの残していた時限ウイルスの削除に成功しました



 

 

117:名無しのハズレ転生者

アップデート不穏すぎだろ!!

 

 

118:無色のハズレ転生者 

意識データをウイルスに変換して潜伏してたらしい

他の奴に協力してクリプスを経由して召喚してこっちで破壊した

大悪魔より怖いねあの人……今度こそケリがついた

 

119:名無しのハズレ転生者

では、ここでISニキの死に際の呪いの言葉をどうぞ

 

120:名無しのハズレ転生者

『理解しきれる世界が憎い」

 

121:名無しのハズレ転生者

『理解してくれない世界が憎い」

 

122:名無しのハズレ転生者

『だからすべてを無に帰すんだ」

 

123:名無しのハズレ転生者

あぁはぁ……って笑顔も怖かった

 

124:名無しのハズレ転生者

言葉も表情も裏ボス

 

125:名無しのハズレ転生者

あの騒動の同期の生き残りっていたっけ

 

126:名無しのハズレ転生者

赤肩ニキ。爆発した機体に弾き飛ばされたショックで

一時、心臓停止。蘇生処置の後に意識不明になってた

 

127:名無しのハズレ転生者

同期の死んでる奴のIDを取得→生きてるロールプレイ

有名コテにする→他スレで最初はまともな助言する→自分に依存させてゆっくり死に追い込む→

ID取得→育てて有名コテにする

 

 

128:名無しのハズレ転生者

屍の軍。

 

129:名無しのハズレ転生者

個人の固定IDは魂と紐づけの筈だし、

それをどうやって搔い潜ったのかもわからない……まじで恐ろしい事件だった

 

 

130:学生兵

動画上げたけどくっそ便利。話すの手間だから多用したくなる。

 

131:名無しのハズレ転生者

ルドラァ!!!(一般男性072ライブ配信事件)

 

132:学生兵

やめるわ。

 

133:蒼穹のハズレ転生者 

ライブ形式や動画は楽だけどミスると……ね?

 

134:名無しのハズレ転生者

当事者の言葉の重みよ……で、皆、大体動画見たと思うけど

 

135:名無しのハズレ転生者

フリットくん、なんで艦長してんの?

バリバリキリングマンでしょ君

 

136:名無しのハズレ転生者

ヴェイガンと木蓮は最初の話聞いた段階でいそうって話してる奴他スレにいたね

 

137:名無しのハズレ転生者

まぁ、マイスターにヘイト向けて意思を一つにするってのはもう崩れてるけども

サブプランとフリット乗船はまだよーわからん

 

138:名無しのハズレ転生者

天才の思考、われらにわかるはずもなく

 

139:名無しのハズレ転生者

どうも、馬鹿です

 

140:名無しのハズレ転生者

おう、お前もか

 

 

 

■■■■■

 

 

 

200:学生兵

んでま、状況説明はいずれ誰かまとめておいてくれるとして……

とりあえず、残るよ。残るんだけど放置し続けてる案件があって

 

 

201:名無しのハズレ転生者

兜くんとクスハちゃんとは何時でも話せるけど、

ヴァースの姫様と侍女

 

202:名無しのハズレ転生者

まぁ、せやね

 

203:光と闇の狭間のハズレ転生者 

ラブコメとかふざけてるの!?

 

204:名無しのハズレ転生者

日刊世界の危機、イライラで草

 

205:名無しのハズレ転生者

月刊→週刊→日刊と仕事がハイペースになったからね

1日に2回ぐらい世界救ってそう

 

206:名無しのハズレ転生者

愛するたびに失うのに闇落ちしないで頑張ってくれてるの本当な

でもすっかりラブコメアンチに

 

207:名無しのハズレ転生者

でも女性に対する扱いの助言一番うまいし、本当に困ると助け舟たすよね

 

208:名無しのハズレ転生者

漫画の先生の如きライトサイド

 

209:学生兵

正直な話、そういうのはないと思うんだよね

火星が揉めてるなら、早々にお帰り願った方がいいよ

 

210:名無しのハズレ転生者

帰したら狙われるだろ!!

 

211:学生兵

でも守ってくれる奴もいるでしょ。

少なくとも、地球人が手を出したっていう大義名分は消えるよ。

偽物だって反発する奴もいるだろうけど、地球を狙う勢力は減る

 

212:名無しのハズレ転生者

急に賢くなるな

 

213:名無しのハズレ転生者

馬鹿にもど~れ

 

214:学生兵

うんこ

 

215:名無しのハズレ転生者

よし

 

216:名無しのハズレ転生者

まぁ、でも……おそらく無限機関のアルドノアドライブ。

それを味方にできたらわりと解決する事案は多い

 

217:名無しのハズレ転生者

あるかぁ?

 

 

218:名無しのハズレ転生者

イージス計画の問題点であるエネルギー問題。

OGも混ざってるならその範囲は地球全体だし、これで宇宙勢力は一気に除外できる

 

 

219:名無しのハズレ転生者

あー、なるほど……しかもエネルギー問題は強力な政治カードか

 

220:名無しのハズレ転生者

ヴァースの立場も一気に良くなる。

 

221:学生兵

イージスが惑星規模になってるのか。

俺はエネルギー解決するから両方向に作って!ぐらいの気持ちだった。

そうなると宇宙の勢力が影響力を持つとうかつに近所の

コロニーに悪さできなくなると思うし酸素税も結構すぐ無くなりそうな

 

222:名無しのハズレ転生者

 

字音くん「大義名分返して」

 

223:名無しのハズレ転生者

最低限しか戦わないスパロボαは草

 

224:名無しのハズレ転生者

68話が半分ぐらいに圧縮されそう

 

225:名無しのハズレ転生者

汚職野郎はいるけど宇宙世紀よりマシだからこそできる裏道

 

226:名無しのハズレ転生者

でも地球無事でもそれだとコロニー襲われるじゃん

 

227:学生兵

あっ

 

228:名無しのハズレ転生者

 

229:名無しのハズレ転生者

 

230:名無しのハズレ転生者

まぁ、とりまイッチはあの2人と一度話しておけよ

良好な関係は微妙でも正直に話しておいたほうがいい

 

231:学生兵

はい

 

232:名無しのハズレ転生者

素直で草

 

■■■■■

 

 

 

コン…………ココココココココココココ

 

 

「んっ……」

 

 

エデルリッゾは夜、不審な音に目を覚ます。

時計を見れば20時。まだ睡眠には少し早かった筈だがドックに入港し

とりあえずしばらくの安全が確保されたことに安心して眠ってしまったらしい。

 

見まわしてみるが、主の姿はない。

どうやら自分の上にかかった毛布と解いて整えられた髪は彼女……

主であり敬愛するアセイラム姫によるものらしい。

机の上には「歓談室にいます」という書置きが残されていた。

フリーハンドで描かれた地図が添えられている。

侍女失格だ。準備をしてすぐ向かうべきだろう。

 

 

(……不覚! 不覚です! よりにもよって地球人のいる場所で居眠りなど)

 

「……でも助けてくれたのも地球人なのです」

 

 

真っ先に駆けつけてくれた、わが身を顧みず。

死ぬかもしれなかった、いや、彼が生きていたのはたまたまだ。

あと少し、ほんのわずか地下に逃げ込むのが遅れていれば

横転した車両に降り注ぐあのミサイル爆心地にいたのは間違いなく、自分たちと彼なのだ。

 

 

「地球人など、信用できません……」

 

苦労し、死の星を人の生きる大地に作り替えた。そんな自分たちの星を

無限の力を持つアルドノアドライブ内臓した超兵器アルドノア。

それが発見されるや否や、地球はそれを手に入れるために火星に兵糧攻めを行った。

度重なる貿易摩擦の果てに、ジオンと協力関係を結んで行われた戦争も休戦という形に終わった。

 

だから、ヴァースは地球を憎んだ。歴史を学んだエデルリッゾもまた地球を憎悪した。

同じように姫もそう感じたと思った。でも違った。彼女は言った。平和を求めようと。

子供ながら、その気高さと誠実さに感銘を受けた。

そして、いつか彼女が受け継ぎ掲げる王冠に。ヴァース帝国に仕えるのが夢だった。

 

 

―――でも私たちは、自分たちの国に弓を引かれた

 

 

あそこまで物事が重なれば嫌でも理解する。

自分と、姫様は戦争の口実にされたのだ。いや、今も……され続けている。

そして、本来なら死んでいた。不調を語った姫に行われた迅速な治療すらも

あの手暑さも……いや、厚いの面の皮だ。

医者の顔を思いだしながら心の中でその顔に吐き捨てた。

少しはしたない気もしたが、心が少し和らいだ気がした。

 

(もう、誰を信用すればいいのかわかりません。でも……)

 

 

何時かお礼を言わねばならない相手は一人いる。

 

 

コン…………ココココココココココココ

 

 

「あれ、まだする……」

 

 

船を修理している音かと思った。しかし、どうやら違うらしい。

音に耳を向けるとその音はとても近くから聞こえる。

 

 

コン…………ココココココココココココ。ゴゴゴゴココココココ

 

 

「…………扉の前?」

 

 

扉の開閉ボタンを押す。

すると、拳を裏に固まる男性がいた。

 

 

「何を……?」

 

 

「あ、部屋にどうやって連絡すればいいのか聞きわすれてな。ノックしてた」

 

 

「はぁ……なるほど……」

 

 そんな彼を見て、とりあえずアホなので危険はなさそうだな。という認識をした。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「すまん、寝坊した。まじごめん」

 

「まったくだぜぇ。次は気を付けてくれよなぁ」

 

「次は10時間睡眠で済ます」

 

「ハハハッ!! そりゃあ、寝すぎだぜ」

 

笑いながらシンの背中をバシバシと叩く甲児。

シンはそれを受けながら、「すまんすまん」と笑い返した。

 

 

「甲児さんと彼は仲がいいのですね」

 

「甲児くんは誰とでも仲がいいですよ。でも、勉強の一環だって

 カタフラクトの整備にも参加していましたから、彼とは特に会う機会が多かったんです」

 

「クスハさんとは?」

 

「ブリットくんと彼が友人なので、その縁ですかね。昼食は3人で何度か食堂で……」

 

 そういってどこか遠い所を見つめる様な顔をした。

 アセイラム姫はそのブリットという男性が彼女の恋人で

 まだ安否が知れないなのかもしれないと思った。だが、切っ掛けとなっちゃ当事者としては

 少しばつがわるい。

 

「気にしないでね……状況はなんとなく把握したから」

 

「そうだぜぇ、姫ちゃん! 全てはあんたを利用した奴が悪い。何度も言うけどよ。

 それにブリットなら多分無事だぜ。新宿の事件の一件で避難通路はそこら中にできたからな」

 

「……はい」

 

 優しくされればされるほど、どこか申し訳なさが募る。

 誰もが悪人ではない。こういう人たちがいる星なのだ。もっと、うまくやれたのかもしれない……

 虚しさと悔しさが募っていくのだ。犠牲になった人たちの声がすぐそばで囁いている気すらする。

 無意識にきつく唇を結んだその様子を見て、エデルリッゾは声を上げた。

 

「あっ、あの、姫様! 申し訳ありません! 眠ってしまいました」

 

「……ふふっ、気にしないで。いつもありがとう。彼を、つれてきてくれたこともね」

 

 そういって、目を閉じて一度息を整えるとアセイラムはシンに向かい合う。

 

 

「アセイラム・ヴァース・アリューシアです。お救い頂いて感謝しております。

 もう一度お名前をお聞きしてもよろしいですか?」

 

 

「日野真(ひの まこと)。まこと、まこ。が同じクラスにいて

 シンと呼ばれる事が多い。学校も大体、それで通ってた。怪我は?」

 

 

「再生医療を施していただきましたので。シンさんは?」

 

 

「あぁ、なんかのショック症状だったけどもう大丈夫。悪いが早速、頼みたい事がある」

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「話は理解しました。確かにそれが最善でしょう」

 

 

「ひ、姫様!? でもあなたは今、母国にも狙われているのですよ!」

 

 

「皇帝であるおじい様は違和感を感じている筈です。今の地球側に親善大使を殺す理由がないと。

 何より、思想のねじれたテロリストの犯行にしても物事の動きが速すぎると……

 おそらく、37家門の一部が画策したものでしょう。生存が知れれば、

 かなり高い確率で影武者を立てて、作戦を続行させてくるでしょうが派閥を割る事はできます」

 

「信頼できそうな奴はいるか?」

 

 

「スレイン……それと、クルーテオ。彼は信頼できます」

 

 

「分かった。そう艦長にも進言してみる」

 

 

「まてまてまて! イージスシステムなんて都市伝説じゃねぇか! 

 百歩譲って実在するとしてもヴァースと和平を結んで、

 それが結果的にコロニーの立場を保証するものになるとしてもだ……なぁ!?」

 

 

「コロニーに外宇宙の敵を擦り付けることになるよ。

 何より政府の中枢に食い込んでるティターンズはコロニーの独立。それを許さないよ」

 

 

「……じゃあ、教えてくれよ」

 

 

どうすればいい

 

 

握りしめ震える右手を隠すように左手で包み込むとシンは壁に顔を向けた。

 

 

「ある程度情報が出そろったそうだ。

 フリット艦長が詳しい説明をしてくれると思うが地球は今、どれだけの敵に矛を向けられてるかわかるか? 両手の指で収まればいいな! 俺は理想や空想を語るほど幼稚でもない!」

 

 

「……あぁ、そうかい! 俺は見捨てねぇぜ、地球も宇宙もな! 

 聞かせてもらうまでもない。今すぐ聞きに行ってやるぜ! あばよ!」

 

 

 走り去る甲児。残されたクスハはシンの背中を見つめていた。

 

(死にたくない……いや、それ以上に死なせたくない?

 心がとても、震えて怯えて……シンくん? これは君の心なの?)

 

「……私も話を聞いてこようと思います。ブリットくんの安否もわかるかもしれませんし」

 

 

そういってクスハもまたその場を立ち去る。

残されたのは壁に顔を向けたままのシン。そして、アセイラム姫とエデルリッゾ。

 

 

エデルリッゾは自分がここにつれてきたせいで

友人同士が喧嘩になったかのようで居たたまれず、どうすればいいか分からなかった。

思わず、縋るようにアセイラム姫の顔を見てしまう。

しかしその姫もまた、考え込む様に閉じた瞼を震わせていた。

 

 

誰も、正当など。わかるはずもなかった……

 

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「君は、私にとっての兄だった……戦場でも背中を預ける仲間でもあった」

 

 

「唐突ですね、フリット艦長」

 

 

「隠しておけば揉める事だ。だから、話すのだ。

 君から記憶を奪ったのも私なのだから……だが、返すつもりはない」

 

 

「……それはどうして? 機密に接触してるからとかですかね?」

 

 フリットは自嘲的な笑みを浮かべて天井を仰いだ。

 

 

「彼女と、私の分も、多くの復讐を君は背負った。憎しみだけの人生を与えてしまった。

 今更そんなもの。取り戻してほしくはない……BSDも君の最低限の戦闘力を

 記憶から引き出すように設定されている。あれは、もともと医療用に作ったのだ」

 

 

 ―――壊れた心を魂を解放し、取り戻すために……

 

「まことの力を取り戻すならば記憶を紐解く事になる。しかしそれは憎しみをも解き放つ。

 君はあの頃も心をすりつぶして、四肢が引き裂けるまで戦った。もう、あの君は見たくない

 できれば、今度こそ平和の中で人生を終わってほしい。その夢はもうかなわないが……」

 

 そういって、ふぅ……と大きく息を吐きだすと懐から電子手帳の様なものを取り出した。

 

 

「BSDデバイス、解放に至る鍵だ。スロットはモニター下部だ。今度確認しておくといい。

 AGEシステムによるサポートがあれば使わせずに済んだだろう

 ……だがあれは連邦に接収されている。だが、できれば使わないで欲しい」

 

 

「……これが、俺の過去」

 

 

手に持ったそれは冷たい機械の感触がした。

しかし、同時にその中で何かが解放の時を待ちながら怨嗟の叫びをあげているようにも感じた。

 

 

 

 ……シル……デ……

 

 

   コロス……………

 

 

 

 

 

『BSDデバイス』を入手しました。

 

 BSDデバイス:武装にリミッター解除が追加される。

 

 

分岐が発生しています

 

 

①クルーテオに接触を図る   ②アーガマに合流する

 

 




都合よくチートだけで乗り切れないスパロボみたいなもの

過程で世界観の一部だけ組み込まれて機体がでない
というのはよく出てきそう。毎日書ければ今月には終わる。

世界的には1部完

作品的には完結って感じかと。リハビリですのでそこを目指したい


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近く、しかして限りなく遠く

ハズレ転生者専用掲示板 アップデート情報 Ver 13


――――――――――――――――――――――――――――――――――

・時間同期によるリアルライブ機能を実装しました

 ※レスは音声としてスレ主に届きます


 

「説明を求められたものには話したが、現在の敵対勢力と判明しているものは主に」

 

 

『地上』

 

 

アマルガム

 

多数のテロ行為、紛争に関与したと思われる組織。

かなりのテクノロジーを持ち、人体実験を行っているという情報がミスリルより提供

 

BF団

国際犯罪組織。多数のテロ行為を行ったが近年は活動が緩やかに

国際警察機構のジャイアントロボと横浜で交戦中

 

 

使徒

第三新東京でネルフが対応に当たる

 

 

Dr.ヘル一派

各勢力と協調が見られ、脅威レベルが上がっている

 

 

ムゲ・ゾルバドス帝国

極東支部のダンクーガが迎撃に当たる。

新規の地下勢力と思われる

 

『地・宇』

 

バンカー

各地に出現するがダンガイオー(所属不明)が対応に当たる

 

 

ティターンズ

地球連邦軍内部のエリート部隊。内部が掌握されつつある。

 

OZ

ロームフェラ財団をバックにした

トレーズ・クシュリナーダ率いる特務部隊。ティターンズとは対立。

ウィング。死神、ピエロなどと呼称されるガンダムタイプと交戦あり。

 

 

混成異星人勢力 『エアロゲイター』

試験運用チームがAGX-01 バグス、AGX-02 スパイダーと交戦

回収機体からボアザンなどの断片的データが回収され、

最低でも3星。あるいはそれ以上の勢力であると思われる

 

ヴァース帝国

アルドノアの奇襲により新宿に臨時基地。長野県第2新東京完全制圧中。

および諸外国を占拠。領土と宣言を行う

 

 

ネオ・ジオン

ジオンを前進としたもの。トップはギレン・ザビ

その補佐としてキシリア。過度な弾圧を受けた宇宙移民者たちの代表を名乗る

 

 

ブルーコスモス ※現在、資金、武器提供以外は動きなし

両者に資金提供の流れあり。スペースノイドや

プラントのコーディネーターを忌諱の傾向ありと思われる

直接的脅威は現在なし

 

 

 

「以上。引き続き、ツテを使って情報を集めているが

地下組織が復活する可能性、敵対組織が増える可能性はかなり高い。また、水面下で調整されていた

機動兵器の合流計画もとん挫している。そこで……」

 

 

スクリーンに2つのプランが表示される。

 

 

 

「連邦政府の下部組織、対異星人部隊。ディバイン・クルセイダーズ(通称DC)が

 離反しアーガマに合流した。これを機にプトレマイオスを合流させるか」

 

 

「シンくんの立案通り、

 戦闘になった場合が危険だがヴァースの貴族。クルーテオに接触するかです。

 こちらはヴェーダの監視データを元に私が形を整えさせていただきました」

 

 

「言い方は悪いのですが……外交的カードとして生かすならば、

 アーガマに保護を求めていただいた方がよろしいのではないでしょうか」

 

「クスハくんの提案は最もだ。しかし、現在のエゥーゴに加盟しているアーガマでは

 彼女が本物であると認められない可能性が高い。

 反政府組織によるプロパガンダは世の常だからだ」

 

 

「情報のソースを明確にできないもので扇動されるのは市民だけって奴か……」

 

 甲児は思い当たることがあるかの様な苦い顔を浮かべた。

 マジンガーによるヘルとの戦いの裏で彼もいろいろあったのかもしれない。

 シンはいつもの一直線な男が意外と繊細な部分を持っている事を感じた。

 

 

「……艦長、行きます。行かせて頂けませんか」

 

「それはこちらから頼むことだ。むしろ、君には酷な事をと思っている。

 緊急時の脱出手段はなんとか確保に動いている。間に合うかはわからんが……スメラギくん」

 

 

「はい、艦長。よって、今回は片方、ではなく。この2つの作戦を同時に実施ます。

 プトレマイオスによりグルンガストおよび、マジンガーチームを移送」

 

 

「ガンダムBSDは偽装した燃料輸送用のトラックに収容。

 アセイラム姫は彼らの元に向かっていただく」

 

 

■■■■■

 

 

299:学生兵

 

という感じで今、コックピットでおやつ食べてる

 

 

300:

自分の秘密が明かされた後でもマイペースすぎるだろ

 

301:

そういう男だよこいつは

 

302:

ドイツだ

 

303:

オランダ

 

304:

懐かしのテンプレ

 

305:

転生民は時代もバラバラだからなぁ

 

306:

てか、顔バレしない?

 

307:

変装用ホログラムでちょちょいよ

データ弄る必要はありそうだけど

 

308:

まぁ、それはフリット爺ちゃんならなんとかしそう

 

309:

なんとかなったからの作戦なんやろなぁ

 

310:

メインプランとサブプラン(捨て石)

 

311:

かつての友にも容赦ない

 

 

312:学生兵

本当かはわからんでしょ

まぁ、本当な気はするけど。嘘吹き込む理由はないし懐かしい感じはした

 

 

313:名無しのハズレ転生者

フリットの分をキルキルしてたなら

イッチはXラウンダー……ってこと!?

 

314:名無しのハズレ転生者

スパロボ世界だから、ニュータイプかもだしイノベイターかもしれないし

念動力のせんもあるし、ライディーン乗ってるあの人の様になぜか無限力を扱えるエスパーかもしれない

 

 

315:名無しのハズレ転生者

早くリミッター解除試そうぜ! わくわくしてきたぜ!!

 

316:学生兵

使って記憶戻って俺が消えましたとかやだから

持ち込んではいるけど使いたくない。今、そっと偽装の一部あけて捨てていい?

 

 

317:名無しのハズレ転生者

 

318:名無しのハズレ転生者

 

319:学生兵

いや、だって……よぉ?

俺が俺なので、何もないなりに頑張ってきたのに……

 

 

320:名無しのハズレ転生者

そういわれると……

 

321:名無しのハズレ転生者

まぁ、使わん様にそこそこの戦いをするしかない

削り担当として生きていこう

 

322:名無しのハズレ転生者

自爆、集中ときて加速。補給。

挑発、熱血みたいになりそうな奴にメインアタッカーは無理だしな

 

323:名無しのハズレ転生者

リアルなのにボスキラーばっかするアの字とかがおかしいだけど

 

324:名無しのハズレ転生者

そういえば、BSDの武装は?

AGEみたいに換装できんの?

 

 

325:学生兵

 

AGEってのは種のストライク的な認識でいいの?

 

326:名無しのハズレ転生者

大体。ただ、格闘型だと装甲とかと引き換えに機動力犠牲になるとか

めりはりがだいぶはっきりしてる

 

327:学生兵

なるほ。予備パーツで組んだっていってたから皆、似てるって言ってたし

できるんじゃね。でもパクられてるAGEシステムとかいうのなしにできるの?

 

 

328:名無しのハズレ転生者

むりだよ

 

329:学生兵

この話はここで終了DA

因みに武装はライフル、バルカン、ビームサーベル。あと短距離のビームピストル。

 

 

330:名無しのハズレ転生者

圧倒的余ったもので作りました感。

 

 

331:学生兵

てか、クルーテオとかいうハリポタの呪文みたいな人はまじで信頼できるの?

 

332:名無しのハズレ転生者

それは大丈夫。アイツはまじで姫様命だから。

 

 

■■■■■

 

 

ピッ……ピッピッ……

 

 

(武装は最低限。あえていうなら、

 増設されたバーニアで機動力は高くチューンされてるってぐらいか。

 直接戦争は避けたい所だな。地上戦を想定したカタフラクトと勝手も違う)

 

 

「…………モニター下部。このスロットか。差し込めばいいのか

 なんか古いノーパソのLANカードを思い出すな。

 あれ、今いちしっかり入らないし試しに……いや。試していいもんじゃないわ」

 

 やめやめとノーマルスーツのポケットにしまうと、トラックの外のカメラに接続する。

 通り過ぎていく景色の中に時折映る詰まれていくブロック状の建材。お手軽な基地制作キットとは恐れ入る。

 

 

(種子島の時も撤退されなければ一瞬で前線基地かされてたかもな。

 伊奈帆に今の状況を含めて話を聞きたいもんだな。俺よりはましな仕事をしてくれる筈)

 

 

 いないよりはマシだが、いても何か劇的な変化が起きる訳でもない。

 過小評価といわれるかもしれないが、我ながら正当な評価だとは感じている。

 もっとも、だからといって何もしないという選択肢はないのだ。

 やれることはやる。無謀からは一歩、身を引き。ちまちま戦力削りマンと化す。

 毒の針で一撃を狙うのではなく、裁縫針で小突く一寸法師の如くである。

 

 

『5分後に到着します。もしもの時はよろしくお願いします』

 

「うぉ、びっくりした! 

 急に金髪のマッチョマンにイケボで下手に対応された」

 

『たとえ変装でも姫様の美しさを汚すことはできません』

 

「長身のいやみっぽい顔ぉ。裏切りそう……」

 

『裏切りません!』

 

『変装用ホログラムは背格好すら合わせられます。ただ、元の大きさより剥離すると

 ふとした時に空間がぶれる可能性もありますのでなるべく短期ですませたいと思います』

 

「空間の埃とかが透過してしまうもんな……最強に便利な諜報アイテムだと思ったのに」

 

『どんなものでも穴はあるものです……っと、検閲に入ります』

 

「了解。通信終了、電源を落とします」

 

 厳重に燃料車としてカモフラージュしてあるとは言われたが念には念をだ。

 通信の切れて沈黙の訪れたモニターに、コックピット内部の光源が反射して顔を映す。

 

 黒い髪、四白眼のせいで視界が定まってないようにも見えるブラウンアイ。

 一般高校男性の顔だ。茶髪か金髪ぐらいの冒険はしてよかったかもしれない、なんて考えながら動力を落とす。

 

 体は地球人で、心は転生したとはいえやっぱり地球人だ。

 いるべき場所にいる筈なのに、なのにこんなにここが遠い場所の様に感じる。

 ずっと、そうだった。そして、それはきっと……

 

 

「……でも記憶と引き換えに消えたくはない」

 

 

 自分を失うなら、死ぬ方がマシだと思える。

 次はないだろう。次があったのが奇跡だったのだ。

 でも、それでいい。死ぬならば、自分でありたい。

 それがふと、自分の中に芽生えた思いだった。

 

 

■■■■■

 

 

「クルーテオ、伯爵! どうか! どうか御止めください! 地球を攻撃すれば姫が!

 姫は生きておられます! 陛下は騙されて……これは軌道騎士の謀略!」

 

 廊下でクルーテオにそう言い放ったのは、スレイン・トロイヤード。彼の使用人である男。

 その出自から地球人と罵られて、冷遇的対応を受け続ける彼は己の主に縋っていた。

 

「謀略……よくも言ってのけたものだ! 陛下はご決断された。

 我らが姫を奪った地球を灰塵にせよと! お前のその言葉は陛下を否定するもの、恐れ多い!」

 

 

 バァン!!!と力強い男が響き、スレインが弾き飛ばされる。

 

「この犬は飼い主の私が直々に躾を行う。

 1時間ほど近づくな、いいな。近づいたものは命がないとおもえ」

 

「はっ……」

 

「は、伯爵……」

 

「諄い!!!」

 

 

 そういって自分の部屋のドアをあけ、その床にスレインをたたきつける。

 そして、クルーテオは静かにドアを閉めた。

 

 

「根拠はなんだ」

 

 

「げ、現地のかろうじて回収できた映像記録です。

 おそらく、誰かが落とした携帯端末のメモリー……地球人が助け出す所が」

 

「そうか、スレイン……私もまた、あの方を見た。アルドノア越しだがな。

 変装用ホログラムのデータを照合したが間違いないだろう」

 

 

「な、ならば!」

 

 

「うむ、命じる」

 

 

―――お前はここで死ぬがよい

 

 

その言葉を聞き、スレインは歯を食いしばって拳を握りこむ。

しかし、痛めつけられた体に殴りかかるだけの力は残っていない。

無力さ、無力さだけがあふれ出してくる。

 

「あなたも……あなたも祖国を裏切っ……」

 

「30分後。名誉の宇宙葬としてお前を艦から投棄する。

 だが、棺桶ではない。使われなくなった脱出カプセルだ。

 お前にはそれで地球へ降りて貰う。連絡は取った。まずはアーガマに迎え」

 

「……! ど、どういう事ですか」

 

「詳細はカプセルの中にある。お前が長々と説明を受ける時間はない。

 いいか、うまくやれば取り立ててやろう。よいな、”スレイン”。私は新宿に戻る」

 

 スレインは目を見開く、いつもの横暴な主ではない。

 自分の名を呼んだこともそうだが、いつになく真剣な様子に彼は一つの結論に至った。

 

「……まさか、あの方と!?」

 

 

 静かにうなずくクルーテオ。

 

 

「侍女の通信が入っている。幼いが賢いものだ。

 通信時間は数秒ずつ。定型文のみだが、通信の時間がヒントだったのだ。

 それに沿って複合すれば「ヒメサマ」 「シンジュク」 「0100」になる」

 

「で、では……ここへ連れ戻すのですね」

 

 

「そう、うまくはいかぬ。何せ、敵は内にある。

 信頼するものすら敵であるやもしれぬのだ……

 だがお考えは聞く。全てはそれからだ。わかったな、スレイン。では……頼むぞ」

 

 

「はっ……!」

 

 

 クルーテオはスレインの頭部に強く、強く杖をたたきつけ。その衝撃でスレインは意識を失い地に伏す。

 すぐに通信を開くと部下を呼びつける。

 

『伯爵様、何の御用でしょうか?』

 

「しつけに耐えきれず駄犬が死んだ。せめて、栄誉ある宇宙葬をしてやれ。

 だが艦の備品を使う事は許さん。~の未整備のポットに押し込んで流してやるがいい」

 

 

(同志を、見つけねばならぬ。なるべく多く。

 軌道騎士とその関係者は疑ってかかるべきだ……ふっ、戦の才なきことが悔やまれるな。まずは)

 

 

「下賤の血で汚れた。しばらく私にかまうな……

 それは予定通りにせよ。生きを吹き返しても構うな……では、浴場へ行く。任せたぞ」

 

『はっ……確かに承りました』

 

 

 

■■■■■

 

 

372:名無しのハズレ転生者

まだ寝てるのかな、報告がないぞ

 

373:名無しのハズレ転生者

他のスレはもっとまめな報告があるぞ! 起きろ!

 

374:名無しのハズレ転生者

ほうれん!

 

375:名無しのハズレ転生者

孫ーーーーーー!!!

 

376:名無しのハズレ転生者

ピッコロさん!?

 

 

377:名無しのハズレ転生者

 

まじでねてんのかな。ありえそうだけど

 

 

378:学生兵

たすけて!! 敵に追われてるの!!! 一人で!!!

 

死ぬ!!!! 助けて!! なんでぇ、俺は宇宙に飛ばされてぇ! こんな事してるのぉ!

 

ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ !!!

 

 

379:名無しのハズレ転生者

久しぶりだね、カイジくん……

 

 

380:名無しのハズレ転生者

一人はもう無理だよな。諦めよう!

 

381:名無しのハズレ転生者

世界が包囲して全力でころしにくるのハズレらしいね。安心したよ

 




疲れて寝てました。

寝て勝手に引退するところでした。
すいません。まことに申し訳ない

誤字脱字推敲できてないので明日、さらっと確認します


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呪われし復讐者

ハズレ転生者専用掲示板 アップデート情報 Ver 13.3


――――――――――――――――――――――――――――――――――

・暇なときのお絵かき機能を実装しました

・しばらくはバグ取りだけだと思います


400:学生兵

 

ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!

 

どっ゛ち゛が上゛な゛ん゛だぁ゛ぁ

 

 

401:名無しのハズレ転生者

落ち着け!! 宇宙でその辺気にしてもしょうがないだろ!

 

402:名無しのハズレ転生者

でも上も下もない。全方位使って戦うって正直びびるよ

俺も慣れるまで時間かかったもん。

 

403:名無しのハズレ転生者

まぁ、確かにそう

 

404:名無しのハズレ転生者

想像つかない

 

405:名無しのハズレ転生者

>>404 

海の中で戦うと考えろ。しかも光すら届かずまだ底が見えない

 

406:名無しのハズレ転生者

怖すぎてやろ

 

 

407:名無しのハズレ転生者

てか、なんで急に宇宙にいんだよおめぇはよぉ

揚陸城にでもひっついて上にきたんかぁ!? アスレチックじゃねぇんだぞ!

 

408:学生兵

それがなぁ……

回想モードにしておくから俺が落ち着くまで見てて……

 

 

■■■■■

 

 

ヘブンズ・フォールと巨大な宇宙戦の落下によりなし崩し的に

終わったジオンとヴァースとの戦争の後に

37騎の居城と揚陸艦を兼ねた宇宙要塞、揚陸城は軌道に浮かんでいる。

地上への降下能力と同時に宇宙への浮上能力を持つそれは、あの後調べた限りでは19機降下し

18機は軌道上に待機している。そして、どうやら新宿を占拠していた1機はすでに軌道に戻った。

 

(政治中枢部の様な首都機能は第2に移動されたけど

 産業的な意味ではまだまだ第1東京が中心。いずれ第3に変わられるとしても……

 実際、タワー以外で稼働している軌道エレベータはあのアメノミハシラ)

 

 

「どうして第2にを狙わずと思ったけどそれを狙っていたと考えるなら曲者だ……

 揚陸城を戻したのもそこが確保できている限り、問題がないという采配だ」

 

 

 伊奈帆なら勝手にわかりやすくまとめてくれるだろうに、

 などと考えながら輪ゴムで頭にはりつけられてペンライトでモニターにベタベタとはられた付箋に書き込む。

 

(わかる範囲で完全制圧)

 

東京

北京

上海

成都

 

 

「ユーラシアはアメリカは筆頭とした大西洋連邦とは対立してるんだよな

 で、ユーラシアはどことどこだっけ……あぁ、わからん。

 まぁ、多分。情報が途切れてるって事は潜伏状態にあるんだろう」

 

 シンは考える。初動で一気に降下してきた揚陸城は4機。

 残りは協調を合わせる様に来た。彼らを立てるために遅れた可能性もあるが”ノリ気”でない

 という可能性もあるのではないだろうか。

 

 

(マジンガー、ライディーンたちの戦いを見ていて地球と宇宙の潜在的リスクを

 理解している奴もいる筈。そういう理由から遅れたとは考えられないか?)

 

 

 ―――まぁ、わからんのだけども

 

 

 そう、分からない。自分の思考をこれだと自信をもつことはできない。

 それに、命令があれば結局、それに従うしかないのだろうから。

 それでも、そう、それでもなのだ。考え、悩む事だけは間違いない筈だ。

 意思を持たない機械ではない、意思を持つ人間なのだから。

 時間はないけども、悩んででも時間は進む。だから悩みだからでも進むしかない。

 

 

(でも、アセイラム姫が帰るべきだってのは自信があった。

 それは戦略的な意味もあるけど何より……うん、そうだな)

 

 

 本当の故郷などわからないものだからこそ、

 帰るべき場所があるものは帰るべきだと思ったのだ。

 

 

■■■■■

 

 

 

「おぉ、姫……! このクルーテオの身は今、歓喜に打ち震えております。

 申し訳ございませぬ。地球を行きをお止めしておれば……」

 

「いえ、治療でうごける程度まで回復したのでしたら休む訳にはいきません。

 ですが……その私の意地が地球を争いに巻き込んだのでしょう……」

 

「……それは違います。このパレード自体が入念に仕組まれた計画だったのです。

 いかずとも、影武者の殺害を理由に戦いは起きたでしょう。そして、本物のあなたは消されていた」

 

 瞼を閉じ、クルーテオはしばし思考に沈む。

 今ならわかる、身内に敵がいるとわかった今ならば……

 姫を逃がそうとしても自分は撃たれ倒れると共に、輝きを失ったアルドノアドライブは

 揚陸城を地へと落とすだろう。そうなれば……結果的に、(裏の)姫の死因が変わったにすぎない。

 

 

「エデルリッゾ、姫をお救いしたのはお前か?」

 

「……いえ、地球人です」

 

「地球人……だと?」

 

 明らかに不機嫌な顔になるクルーテオ。

 

「しかし、クルーテ……」

 

「それでもあの方は! 来てくれたのです!!!」

 

 それは反射的な行動だった。

 エデルリッゾじゃそこにいる誰かの盾になるかのように、前に歩み出る。

 

「助けて、戦って……守ってくれました! 

 地球人は、地球人は信じれないけど……でも……」

 

 必死に言葉を紡いだ。しかし、自分の立場と歴史が

 それをせき止めているようだった。ただ、そこから辛うじて

 あふれた感情が涙だけを浮かべさせていた。

 

 そんな彼女を胸の中に抱きしめると、アセイラムは口を開く

 

「クルーテオ、私たちと地球の歴史は決していいものではありません。

 始まりは支援こそあれど口減らし。火星の遺跡が見つかれば、それを奪うために

 貿易を制限し、アルドノアを渡せと迫ってきた。そして、ジオンと組んだ戦争……

 確かに、私たちは苦しめられ虐げられ失った命も多い。しかし……」

 

 

 

    私たちもまた、地球の人々を大勢殺したのです

 

 

「私たちを苦しめたのは地球の、力を得た権力者です」

 

 

「そうです、姫!! だからこそ地球人は!」

 

「今の私たちに、彼らを非難する資格があるのですか!!!」

 

 

 クルーテオは息を飲んだ。気づいた。いや、分かっていた。

 しかし目をそらしていたことを、直視しないようにしていた事実を。

 ただの一言で引き出されてしまった。見たくもない、真実を。

 しかし、自分を見つめるその瞳はそこから逃がすことを許してはくれなかった。

 

 

「普通の人々はそう思っていたのでしょうか。アルドノアを、火星を攻めるべきだと。

 恐れる人も多かったでしょう。でも知ろうとしないだけできっと守ろうとした人もいた」

 

 

 地球、火星を。地上と宇宙を。繋ごうした人たちは居たのに。

 

 きっと、私たちはそんな人々まで殺してしまった。

 

 

「時間も余裕もなかったのは事実です。でもそれでもやるべきでなかった。

 地球は、確かに火星に償うべきでしょう。

 ですが、同時にあの戦いは、我々ヴァースが末代まで背負う罪!」

 

「ハッ……申し訳ありません。この、クルーテオが未熟でございました。

 長い悪夢から目が覚めたかのような気持ちでございます……わずかの間に美しくなられ……」

 

 

『クルーテオ様!! 揚陸城が謎の勢力に襲撃されています!!』

 

 

「なんだと!? くそ、今、この場に駐留しているものたちを……いや、ダメだ!

 そんな事をすれば地球軍に攻撃される可能性がある。危険を伝える訳には……どれだけ持つ!」

 

 

『高機動のMSタイプの小隊です。対空砲とミサイルの弾幕だけでは長くは!』

 

「くっ……(見捨てる訳にはいかん。我が臣下を! 

      だが……目立たないために軌道エレベーターを使ったのだ。タルシスは船だ)」

 

 クルーテオは頭を振る。頭に浮かぶ最悪の結末を散らすように。

 もう手段は一つしかなかった。

 

「姫……お力を。せめて私が船に戻るまでの時間を稼ぐために。

 あなたを保護する勢力の力を! 1機でもいい、お願いたします!」

 

 

「今は……戦えるのは彼しか……でも」

 

 

「いるのですね! ならば……」

 

 

「クルーテオ様! あの人は訓練を受けたとはいえ、

 まだ実戦経験が少ないのです! 何より彼は姫の命の恩人なのですよ!」

 

 

「なっ!? ……くっ…………」

 

 

 もう手段がない、クルーテオは涙した。

 せめて、己の命で彼らの魂に悔いるしかない。

 

 

「すまぬ……我が……我が……」

 

 

 膝を落とし項垂れるクルーテオを前に。

 アセイラムは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

『感度調整完了。モニター脇のダイヤルを回せ。

 偽装機能だ。最も、背部装甲の一部を肩に装着し

 そこから特殊な粒子を噴射してカラーリングを黒にするぐらいのものだ』

 

「了解。偽装開始」

 

キリリリリ……

 

 

瞬間、通常時は肩部バーニアを保護している装甲が浮き上がり回転。

肩に装着され、そこから噴射するものが機体を黒く染め上げる。

しかし、背部には伝わりが悪いのかその色を灰色に近づけるのみだ。

 

 

「十分。事がことだけにどこの勢力かはばれたくないし……。

 ごまかしの余地はあった方がいい……宇宙用の感度調整ありがとうございます」

 

 

『最初は困惑するだろうが落ち着けば大丈夫だ。

 君も、かつてはそこを飛び交っていたのだから……では、無事の帰還を信じる』

 

 

 通信が切れると静寂と共に恐怖が戻ってくる。

 手にささっと唾液で『神』と刻みそれを飲み込む。

 

 

「……自分の為じゃなく、誰かのために戦うのって初めてだな……。

 よくもまぁ、そんな事に命を賭ける……惚れた、惚れられたって訳でもなく」

 

 

 ただ、そうするべきだと思った。だから、やる。

 不思議なものだ。頼られるのが気持ちいとかでもない。

 勝てるという自信があるでもない。うちに渦巻く恐怖はその証だ。

 

烏滸がましいのは理解しています。地球のためでなく火星の為に戦って欲しいなんて

 

 

「そうでもない。これが和解の切っ掛けになるなら地球の為にもなるさ。きっとな」

 

 相手の言葉の一つ一つをかみしめて、それに話しかける様に。

 これは覚悟を決める準備……。

 

 

……助けてください。明日の平和への道を途絶えさせないで。

 

 

「任せてくれよ……時間稼ぎでいいんだろ。

 貴族のおっさんが張り付くまでそいつらを引きはがせばいい。なんてことないさ」

 

 

 任せろよ。縁の下の力持ちぐらいなら、やって見せる。

 

 

「転生するなら、冒険者がよかったなって思った。

 そんな小さな夢は今日、叶ったな…………」

 

 

 

 

 俺は今日、冒険をする(命を賭ける)

 

  

 

 

■■■■■

 

 

 

425:名無しのハズレ転生者

そこまでシリアスにやっておいて貫けないの草

 

426:名無しのハズレ転生者

軌道エレベータの資材運搬用のリニアレールの中で覚悟はしたけど

いざ宇宙に出たらメッキがはがれたんやろなぁ

 

427:名無しのハズレ転生者

メッキにメッキを重ねろ

 

428:名無しのハズレ転生者

メッキ×メッキで2倍パワーメッキ!

そこに3倍の虚勢を重ねて6倍! 

 

429:名無しのハズレ転生者

結局、吹けばはがれそうで草

 

430:名無しのハズレ転生者

実際、はがれてるわけで

 

431:名無しのハズレ転生者

おい、バーニア全部切れ

んで深呼吸しながら1機ずつ入れてせめて姿勢を正せ

とりあえず自分が逆さになってない時が上。逆さが下だ。雑だけど

 

 

 

432:学生兵

>>431

いや、分かった。十分わかった! 戻った! 落ち着いたしいけそう! いけます?

 

 

433:名無しのハズレ転生者

いや、それは聞かれても困るわ

まぁ、ライブモードにしてくれよ。仕様は違うだろうけど

そっち見えればサポートできる奴は俺以外にもいる

 

434:学生兵 『LIVE』

 

んぁあああああああ!!! 敵きてりゅううううううう!!

 

 

435:名無しのハズレ転生者

ヴェイガンで草

でも機体はわからないですねぇ……

 

436:名無しのハズレ転生者

AGEはそこまで有名ではないし、限定的人気にとどまったからな

 

437:名無しのハズレ転生者

なんでもいい!! ヴェイガンは殲滅だ!!

 

438:名無しのハズレ転生者

まぁ、イッチにしちゃ因縁の相手かもだけど記憶ない今は他人だからな

 

439:名無しのハズレ転生者

近寄ったりアウトレンジまで離れてたりで時間を稼げ。クルおじはよ!!!

 

■■■■■

 

 

 

 

「どこの誰が来たかと思えば、気に入らない顔だなぁ! 

 ガンダムタイプ。しかもアスノ一族のAGE系列……再生医療のツケを味あわせてやるよぉ! ついてこい!」

 

「「了解!」」

 

 

 

「! カスタムされたゼダスMが2機と指揮官機。Xラウンダーの混合部隊か!! 

 今、俺はなんていった……いや、それはいい! やれるのか!?」

 

 

接近されるな! 

 

 

「忘れてない……ぞ!! こうか……よし!」

 

 

 宙に翻るような動きで背後を向くとそのまま移動を開始する。

 自分が出てきた低軌道ステーションを盾にできればいいが、そんなものを気にする相手じゃない、アイツは

 

 

「アイツ……? くっ!!」

 

 盾代わりに拝借してきた装甲材を投げて、それが弾頭にぶつかり爆発した。

 容赦ない弾幕にやはり、ステーションを取りに来たわけでもない。

 偵察部隊の暴走か、とひとまずの結論を出し離れる。装甲を犠牲にして機動力は増している。

 ライフルを臀部に固定し脛の予備武器チェンバーからビームピストルを2丁取り出し両手で連射しながら距離をとる。

 

 

 

「こちら、軌道エレベータ駐留軍。アリノ・ハマグチ中尉!!

 貴殿の所属を名乗られたし!! 繰り返す、貴殿の所属を名乗られたし!!

 ここでの戦闘はバチカン条約で禁止されている! 繰り返す!!」

 

 

「嘘がバレないと思っているのか! 焦りが伝わってくるんだよぉ!」

 

 

 再びの連射。しかし、ただの弾幕ではない。

 三方向から放たれるそれは、レンジギリギリでありながら装甲をかする。

 まるで、少しずつ檻の中に追い立てられるようなその動きは未来が見えている様すら感じる。

 

 

「フリットに負けた。殺したけどアイツには怯えて、アセムにも負けた。俺には居場所がない。

 でも逆に考えた。でもよぉ、わかっちゃったんだ俺はぁ。

 どん底ってことはもうあとは上がるだけって考えたらさぁ……楽になった。楽になったんだよぉ!」

 

 

(苦しい……揚陸城に近寄って弾幕をりようすれば……。

 ダメだ、今。貴族さんがもう上まできて近づいてるかもしれない。

 そいつがしんだらアルドノアが動かない。揚陸城も落ちる……苦しい……)

 

 

視界から1体消えたぞ!

 

 

「!?」

 

 

多分、下か上だ。当たらなくてもいい。打ちまくれ!

 

 

「うおおおおおおおおお!!」

 

 

ビームピストルを連射する。下でかすかな気配があった。

弾の切れた左手のピストルを投げ捨て、それを右手の最後の一発で射貫く。

その爆発で相手の視界を遮り、再び距離をとった。

 

 

 

(BSDの補佐のおかげでなんとかなった。自力だったら多分、あたらんぞ)

 

 

荒い息を吐きだしながら追いかけてくる敵を見た。

 

 

(次の接触多分、回避できない……あとはビームライフルでひたすら弾幕をはって

 限界まで時間を稼ぐ……そのための温存。でも……)

 

 

―――その先に俺の生きる道は

 

 

 カチカチと鳴る歯を噛み占め、シンは懐を見つめた。

 

 

おい、そいつはダメだろ!!

 

 

「……わかってる! 俺だって、消えたくない! でも……」

 

 

―――死にたくもない! でも逃げられない。逃げたら、皆死ぬ!

 

 

「可能性は……これしかない!」

 

 

 シンは胸のポケットを引きちぎってBSDデバイスを膝に落とし、それをモニターに差し込んだ。

 

 

 

 ……シル……デ……

 

 

   コロス……………

 

 

 

 瞬間、胸の中に差し込んでくる冷たさ。いや、これは冷気ではない。

 暗く、暗い―――殺意だ。そう、そうだ……

 

 

 

「ユリン、フリットの幸せ……ウルフさんも……あぁ、わからないけど分かるよ

 お前を殺すために、俺は生きていたのかもしれない……そうだ、そうだ……」

 

ヴェイガンを殲滅する!!

 

 

 

「そして、お前もここで殺す!! こんどこそ、塵にしてやる!! デシルぅうううううううう!!!」

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

ドクン……

 

 

「ば、馬鹿なまさかお前は! 死んだ筈……」

 

 

 一瞬だった。異変を感じ取り、デシルが追撃を一時やめた瞬間だった。

 その行動により、後続の視界が一瞬途絶えた所にビームが降り注ぐ。

 デシルは当然、殺意を感じて回避するがデシルに重なって視界を確保できなかった1機の機体が貫かれて爆発した。

 

 

「き、きさまぁ!」

 

 

 すぐさまもう一人の兵士が攻撃に移り、ビームライフルでBSDのビームライフルを射貫いた。

 すぐ手を放し難を逃れたが主武装を失った機体はビームサーベルを装備しきりかかるも回避され、

 返し刃で肩口から右腕を切り飛ばされる。

 

 

「終わりだぁっづ」

 

 

 決めにかかった機体が、

 開いたままであった脛の副武装チャンバーに挟んだビームサーベルを

 膝打ちするかの様な格好でコックピットに打ち込まれるパイロットが蒸発して機体が爆発した。

 

 肩口から右腕を失い。右足を失い。

 浮かんでいる。ただ、不気味にそれは浮かんでいた。

 

「あ、あぁ……」

 

 

「くれてやったんだ……その機体を相手するには重すぎる気がしたから……」

 

 

「あぁーーーーー!!」

 

 

 恐怖のまま逃げようとするも追いつかれる。その通りだった……

 機動力自体はわずかにBSDの方が上だった”余分な”ものを落とした分。追いつくのはたやすい。

 

 

 その腕が、頭を、メインカメラを握る。

 

 

「うわああああああああ! 見えない、見えない、見えないぃいいい!」

 

 

「セット……3second」 >デモリッション

 

 

『自爆執行。3カウント。2,1』

 

 

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」バンバンバンバン

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

500:名無しのハズレ転生者

はっ、何!? ライブきれたよ!?

 

501:名無しのハズレ転生者

自爆ぅ!? 精神コマンドにあったけど!

 

502:名無しのハズレ転生者

いや、機体にもあったらしい。

機密保護とかでつけてたんじゃね。フリットじゃなくて発注元が

 

503:名無しのハズレ転生者

え、死んだ? デシル

 

504:名無しのハズレ転生者

いやぁ、どうだろ。あれでイゼルカント様はそこそこだったから

脱出装置ぐらいありそうだよ

 

505:名無しのハズレ転生者

イッチは死んでそう

 

506:名無しのハズレ転生者

(スレ)冷えてるかぁ~?

 

507:名無しのハズレ転生者

冷え冷えよ。 いや、やっば……

 

 

508:名無しのハズレ転生者

まじで呪いの装備だったな。お疲れした。

残念な決着だ……





(BSDシステムも、イッチも)いきてまぁす(ネタバレ)

3機如き、しかも逃げ出してるの1機と
相打ちとかフリット、アセム見習ってどうぞ



例のごとく寝て起きてから急いだので後で誤字脱字確認します


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幕間 インターミッション2『流浪』

ハズレ転生者専用掲示板 おしらせ

――――――――――――――――――――――――――――――――――

今日で1か月も終わりです。

無事、生き抜いた皆さんはおめでとうございます

残念ながら亡くなってしまった方々。
できる限りの事はさせていただきます。

また、今回は最後まで生き抜いて天寿を全うした方も
久しぶりにいました。お疲れ様でした


15日間の新人は122名でした

15日間の死亡者は133名でした


以下、死亡者を魂先着順でスレ名で表記


・【艦これ】激戦地で資材が初期値 3スレ目【詰んだこれ】 

死因:爆死(やわらかな表現)


・555だけど質問ある? その2

死因:(転生者の首の骨が折れる音)


・世界樹にきたけど低レベルファーマーしか仲間にいない4スレ

死因:道順ミスでF.O.Eとごっつんこ


・どれかのFE転生 たぶんラスト  

死因:老衰

・光と闇の狭間のフォースを行くスレ ×××

死因:不明









 

大惨事スーパーロボット大戦αAGE 3スレ目

 

 

40:名無しのハズレ転生者

うーん、ついに狭間ニキもいったか

 

41:名無しのハズレ転生者

あれ、立て変わっとるやん!? 生きてんの!

 

42:名無しのハズレ転生者

らしい。でもダルマで意識不明とか

記憶喪失で普通に生きてる場合でも生きてりゃ立て変わるから

 

43:名無しのハズレ転生者

怖い事言うなよ!!

 

44:名無しのハズレ転生者

でもまぁ、2週間無反応なわけで

 

45:名無しのハズレ転生者

ダルマなので書き込みは引退します はまじであった事例だけに怖

 

 

 

■■■■■

 

 

「揚陸城は戦闘の被害確認の為に降下。

 その中で紛れ込んでいたスパイが輸送船を奪取、逃走。

 という筋書きになる……彼の機体の一部も中だ。

 エデルリッゾ、彼には感謝していたと伝えてくれ」

 

 

「それは……本心ですか?」

 

 

「あまり言ってくれるな。今日の明日で過去を捨てられる様な器用な男ではない。

 それなら、ずっと前にアセイラム派から主戦派に乗り換えていた……」

 

 

「……なら、言いません。感謝の言葉はいつか自分でお伝えください。

 私も、そのつもりです。気持ちにケリがついて、自分で言おう。そう思っています」

 

 

「そうか……(ふっ、子供は強いな。そして、すぐに成長する)

 忠言、しかと受け取った。よくぞ我が間違いを正してくれた。感謝する……ではな」

 

 

■■■■■

 

 

 

「ぬぉ……知らない。いや、天井なんて皆、天井だわ……いつつつ……」

 

 まだ頭の中で鐘が鳴り響いている気がする。相当強く打ったのか。

 戦いはどうした、まぁ、生きてるなら終わったのだろう。

 などと1人で結論を出しつつ、起き上がるの諦め、シンは寝転がった。

 

 

「お目覚めですか? どこか痛い所は?」

 

 

「あー、アセイラムさん。あ、頭ぁ……」

 

 

「脳震盪だそうです。あと、軽いたんこぶと。複数の痣。

 脱出の為に射出されたコックピットが爆発の強い衝撃で激しく揺れた結果だろう、と」

 

 

「……んー、ダメだ。思い出せない。あの……」

 

 

「ありがとうございます……無事ですよ」

 

 

「……そっか」

 

 

 それだけでひとまずは役目を果たせた事を察する事が出来た。

 ほっとした。そうか、自分にもできることはあったのか。

 

 

「これで2度目になるのでしょうね……そして、3度目もあるのでしょう

 ……何も返す事ができない。申し訳ありません……」

 

 

「体で、とかは言い出さないでくださいよ。それ、俺がゲッスィ野郎になりますし。

 魅力的ではありますけどね。この年代には……まぁ、借りは……ゆっくりでいいですよ」

 

 

 ―――結構、長生きするつもりなんですよ、俺。今度こそ

 

 

「姫様も長生きしてください。そしたら、たまにお茶でもせびりにいきますよ。

 お土産もって。んで、会場とお茶とおやつは姫様持ち。そしたらそのうち勘定があいます」

 

 

「ふふっ……それではいつか貴方の方が借りになってしまいます」

 

 

「そしたら、お土産の量は2倍にしますよ。そんなんでいいじゃないですか……」

 

 

「……えぇ、そうしましょう。楽しみにしていますね」

 

「アハハハ! 今、楽しみされちゃうと参りますよぉ! 

 ……まじ何にしよ。すいません、姫様の侍女と相談させてください」

 

 

「ダメです」

 

 

「く、くそぉ……頑張りますよぉ!

 

 数年後はもうちょい陽キャにならなきゃ。さて……」

 

 

 ふと、記憶を思い返す。コックピットで死にたくないとデバイスを握った所までは記憶にある。

 使ったのだろう。そして、生き延びたのだ。詳しい事は後で聞けばいい。

 機体が大破したっぽいのは今聞いたから、それ以外を。

 と、なると状況の整理の為にフリット艦長に連絡を取るべきだろう。

 地面が動いているのを感じる。おそらく、輸送機だ。

 なら、操縦席に……と思うも体がとても重い。シンはやっぱり諦めた。

 

 

(うぅ……体が重い。精神ポイントぉ……

 まさかまじで使ったの? いや、あるならありで便利だけど俺だけはこうなるのかぁ)

 

 

「あ、待ってください。数日安静……いえ、数日たっていますね。

 今、医療物資の確認をしている先生に連絡を……」

 

「いや、それはあとで。すいません、艦長と連絡を取りたいので操縦席に。

 てか、運転は誰が……? そういえば、姫様の侍女のあの子……」

 

 

「えぇ、その侍女がまさに」

 

 

「えぇ、すっご……もうMSとか以外はなんでも動かせそう……」

 

 

 火星産の幼女の有能さに感心してしまうシンであった。

 

 

■■■■■

 

 

75:名無しのハズレ転生者

しかし、意外と元気にやってんじゃねぇか

 

76:名無しのハズレ転生者

え、シロー・アマダさんみたいに

死亡偽造で駆け落ちすか!?

 

77:名無しのハズレ転生者

それはいくら転生者でも

 

78:名無しのハズレ転生者

人のめぐりあわせがよくなる

という補助はあるらしいけど結局は本人しだい

 

79:名無しのハズレ転生者

はー、陽キャにうまれたかったなぁ。俺もなぁ~

 

 

80:学生兵

全くだな

 

81:名無しのハズレ転生者

いや、しれっと混ざるな

 

82:名無しのハズレ転生者

おい、生きて戻ったらほうれんそう! だろ!

 

83:学生兵

オッス

 

・ガンダム吹き飛んだ(お前が自爆させたんやろって怒られた)

 

・スレ読み直してたけどライブ配信してる時の記憶は断片的

 

・昔の記憶の受け入れがちゃんとできなかったんだろう、ってことらしい

 俺の中には入ってるらしいけど全く馴染んでないので俺は覚えてない。

 同じ敵か命の危険時は多分、暴走するだろうねって言われた。怖い

 

・フリット艦長に聞いたら外せないけど自爆装置入ってるのは知ってた

 ので、BSDシステム搭載ガンダムを艦に入れた時に

 脱出機構備えたそっくりなコックピットにすぐ換装してた。

 

・よくネットで見たセーフティなんちゃらはないので

 衝撃波でコックピット内でバウンドした。それで気絶したらしい。

 

・よく寝てた。3日ぐらい寝てた。そのあとは身を隠してた。

 あと単純に疲れ切ってた。精神コマンドあって使った疑惑ある。

 チートと一瞬喜んだけどMP式なのか使うと死ぬほど疲れる。だめだこりゃ。

 

・敵の勢力の援軍きたけどヴァース貴族のクルーシオ?がケチらした

 

・脱出した敵のパイロットは回収されたらしい

 

・俺も装置ごと奪われかけたけど

 宇宙に上がってきたアムロとカミーユの2人が

 ぼこしてなんとかなった(撃墜数は5機と2機。戦闘時間は俺の4分の1)

 

 

84:名無しのハズレ転生者

カミーユも強いけどブランクあけの癖に天パくんはさぁ……

 

85:名無しのハズレ転生者

適度に剥離してきたな、αと

 

86:名無しのハズレ転生者

そうだな。このタイミングで宇宙にあがってるし

 

87:学生兵

もうそれは気にしててもしょうがないと思う。

とりま、一度、第2新東京アーガマに合流してから考えるわ

あそこで今、彼らは整備を受けてるらしい

 

88:名無しのハズレ転生者

多分、首都移動の準備はしてるがまだ少し先の話になる

という公式の情報しか手に入れてなくて、重要機密のEVAについては

ネルフの内部に入れなかったから不明だったんだろうな。

 

 

89:名無しのハズレ転生者

だから、ひとまず軌道エレベータのある第一か。運がよかったな

揚陸城が第2に振ってきてたらアルドノアで蹂躙されて終わってたわ

 

90:名無しのハズレ転生者

ドクターヘルとかだったらエヴァ奪われてさらにひどいことになってたわ

 

91:名無しのハズレ転生者

機械獣の応用でエヴァの魂の問題とか簡単に蹴飛ばすやろなぁ、アイツは……

 

92:名無しのハズレ転生者

んで、イッチは今。何してんの?

正直、ガンダムBSD壊れた(自分で吹っ飛ばした)ならもう戦わなくてもいいんじゃ

 

 

93:名無しのハズレ転生者

機体スペックに頼れない今、何乗ってもモブ兵だもんな

 

94:学生兵

じゃあ、もう戦わなくていい……ってこと!?

 

95:名無しのハズレ転生者

ざけんなや ようやく始まり ぼけなすが

 

 

96:名無しのハズレ転生

直哉おるやん

 

 

 

■■■■■

 

 

「あの……さっき、お話していた「いーじす」というのは?」

 

 操縦桿を握りながら、ぐったりと隣で椅子によりかかるシンは力をしぼるように

 「ふっ!!」っと息を吐きだし、レポート用紙に図を記入した。

 

 

「都市伝説だ。だが、都市伝説だと思われていたが実在しているものがある」

 

 

「AS……アームスレイブですね。ヴァースで話を聞いた事があります。

 陸上戦では一級品の量産兵器だと……MS以上にコストはかかるらしいですが」

 

 

「技術の根幹が違うから量産ラインが別ものなんだ。

 ほぼどんな地形でも時速100km以上の速度で移動できる脚部というだけで以上だろ。

 人間の様な動きで跳ねながら襲ってくるってのは脅威だろ」

 

「汎用性を突き詰めたものと、特化したもの……という事なんですね」

 

 

「そう、そしてそれはかつて存在しないものだと思われていた。

 だが、故障したものがおそらく、なんらかの事故で流出し実在することになった。

 と、なれば惑星防衛シールド、イージスの存在もありうる」

 

 

「軌道騎士の監視があったのは軌道上。コロニーで作成されている可能性もありますね」

 

「むむっ、なんと卑怯な……」

 

「卑怯言うなや」 

 

 

 ちきゅうとかいた球体を覆う網の様な絵を見せる。

 絵心はないんだよなぁ、今度、練習するわ掲示板で……なんて事を言いながら図を指さした。

 

 

「フリット艦長も軍人時代に聞いた事はある、って言ってた。

 つまり内部的には企画はされてたんだ。凍結されていたものが

 DCやあの宇宙艦からもたらされたテクノロジーで再開されている可能性は高いと思う」

 

 

 なぜなら、地球と宇宙を遮断すれば戦いやすくはなるから

 

 

「えーと、宇宙と地上を遮断し地上を平和にした後に宇宙へ、という事ですね。

 でも姫様。この規模なら相当なエネルギーが必要なのでは……」

 

 

「だからこそ、必要なのですね。和解が……」

 

 

「それしかない、ともいえる」

 

 

 そうだ、それしかない。他に考えがあるとしてもそれは、

 敵味方に多数の死者を出す過程を経た決着だ。そして、この状況でそれは

 地上での勝利を取るか、宇宙での勝利をとるかの2択になりうる。

 

 今の勝利と引き換えに未来を失う。

 そして、地上の敗北はやがて宇宙と人類全体の敗北につながるのだ。

 

 地上と宇宙は、手を取り合うべきなのだ。

 

 

「はーーーーーー! 俺にめちゃんこ最強の乗り換え機体がねぇかなぁ~~~~」

 

 

 そんなありもしないものにすがる程度に、それは難しい事であった。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

100:名無しのハズレ転生者

そんなもの、クロスゲート経由しないとわんちゃんないよ

 

101:名無しのハズレ転生者

神様仏様ガンエデン様

 

102:名無しのハズレ転生者

女神でいいのあれは

 

103:名無しのハズレ転生者

もう地球覆ってもらうか、一度。

あれも超科学の超文明が残した超イージスみてぇなもんでしょ

でもアイツらは地球以外は敵! コロニー敵! とかいって超攻撃するし……

 

104:名無しのハズレ転生者

超めっちゃ強調するじゃん

 

 

105:学生兵

なんだよ、そんなんあるのかよ。

じゃあ地球はそれでコロニーは距離をとってイージスでええやん

 

106:名無しのハズレ転生者

ところで、全く動きがない多分いるであろう木蓮くん

なんか静かですねぇ……

 

 

107:名無しのハズレ転生者

木蓮「パァンパァン!(漁夫の利)」

 

108:名無しのハズレ転生者

そういや、バッタ一つ飛んでこねぇ

 

109:名無しのハズレ転生者

エアロゲイター(バルマー)と接敵してすでに戦いになってて

吸収されました、とかだったらやばいですねぇ……これはまずい……




20話 決戦、第2新東京市


主人公の機体:シミュレーター(お留守番)


ガンダム? 彼は死んだよ……


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同調者 上

ハズレ転生者専用掲示板 おしらせ

――――――――――――――――――――――――――――――――――


メジャー、マイナーアップデートを繰り返しましたが

人員が4人に増えたことで比較的安定しました。家にも帰れてます

さて、しばらくは要望の整理をしてそのアップデートの検討中です。


少しずつ新人が増えてくる季節ですが、すでに半数死んでます。
次回は掲示板への誘導機能がつけられるかもしれませんので
それまでは頑張ってください。





 

 

「よくぞおこしくださいましたな、写真と違いますが

 あなたがアセイラム様ですな。冬月コウゾウと申します。そちらの2人は?」

 

「一応、変装ホログラムを展開させて頂いておりますが間違いなく

 こちらの2人も身分は私が保証します。さぁ、名乗って……」

 

 

「侍女エデルリッゾと申します。

 こちらは元パイロット、日野真さんです」

 

「……元?」

 

「敵を追い返すために組み付いて自爆しました(又聞き) 

 つーわけで、現在無職です。いや、学生だしアルバイトだったのかぁ?」

 

 

「……ふははは。それはなるほど、確かに。

 乗る機体がなければそうなりますな。いや、失敬。

 君にも指示が来ているよ。信頼できるものを案内に寄越す」

 

 

 ただ、そんな面白い男とは思わなくてな。とカラカラと笑いながら

 IDを差し出す。真っ赤なカードだった。 

 

 

「仮IDなので迎えが来たら中で正式な登録手続きを受けてくれ。

 では、姫は一応、そのままで……侍女殿はそうですな……これを」

 

 

「飴……?」

 

 

「年若く未熟な事を恥じているのが見て取れる。

 だが、老婆心で言わせていただくがそれも強さになりうる」

 

 IDを差し出し、それをエデルリッゾが受け取ると、振り返り進みだす。

 

「油断を与える見た目を利用しなさい。黙すこと、

 騙すことができないならば飴玉を咥えておけばいいのだよ。

 子供が菓子を食べながら言う言葉は粗末な事と切り捨て覚えておらんだろう」

 

 

「確かに……!」

 

 

「貴方が納得しないでくださいよ!!」ポコポコポコ

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

200:名無しのハズレ転生者

これは冬月ガーゴイル先生

 

201:名無しのハズレ転生者

歴戦の凄み(副指令+戦闘能力なし)

 

202:名無しのハズレ転生者

そして、残されゆくイッチ

 

203:名無しのハズレ転生者

イッチは無職なんでね

 

204:名無しのハズレ転生者

無職wwwwwwwww

 

205:名無しのハズレ転生者

ちょっと自爆しただけだから

 

206:名無しのハズレ転生者

死ぬほど痛いぞ(コックピットバウンド)

 

207:名無しのハズレ転生者

飴玉もらっておけばよかったとか考えてそう

 

 

208:学生兵

それは思う。黒あめだったかもしれん。

あるいは飴の中にガム入ってるあれだったかもしれん……くそぉ

 

209:名無しのハズレ転生者

まじで後悔してて草

 

210:名無しのハズレ転生者

こいつはこういう奴だよ。イッチが

手を振るだけのチート無双系おり主だったら馬鹿やって死んでたと思う

 

211:名無しのハズレ転生者

ところで、お迎えさんは?

 

212:学生兵

ガーゴイル先生が10分後っていってて

今、10分になるかならないかだしもうしばらく後じゃ……いやきたな!? まじで10分だな!?

んー…………あれ? 伊奈帆(いなほ)!?

 

 

■■■■■

 

 

 

「どう?」

 

「どうってお前、そりゃ俺のセリフだけど……

 まぁ、2戦してとりあえず生きてる。機体は壊したけど」

 

「それなら上出来だよ。僕もシンも学生でしかなかったんだし」

 

 

「お前は成績優秀だったろ。学力も軍事教練共に首席だったし……でもまぁ、よかったよ」

 

 

 よかった、一言だがそれがすべてだ。

 勝手に走って、分かれて。あやうくそのままお別れになるところだった。

 何より、あの後も機械獣の攻撃は続いていたし無事かはわからなかった。

 今更ながら、それを調べるという余裕もなかったのだと、シンは気づいた。

 

(再会が葬式とかになるなくでまじでよかった……泣くどころか吐くわ)

 

 

「無事だよ。でも、一緒には居ない」

 

 

「そっか、皆、避難をとったか。そうだな、戦う理由がない。いなほ、お前は?」

 

 

「今ならまだなんとかできると思った。軌道騎士の足並みがまだ揃いきらない。

 それは大義名分が揺らいでいるから……はい、更新終わったよ」

 

「相変わらずキレものだよ、お前は。

 ……まぁ、知り合いが残っているのはありがたい。ありがとな」

 

 そういってカードをかざし扉を開ける。

 

 

「麗しのベニビア様と教官は?」

 

 

「軍属になるのは反対されたよ。教官になんとかしてもらった

 疲れてるかもしれないけど、このままつれてこいって命令なんだ。大丈夫?」

 

「今ので少し元気が出たよ。大丈夫だ」

 

 

「うん、じゃあこのままこのエスカレーターに乗ってて」

 

 

「あ、あぁ……」

 

 

 ふと、力が抜けたからか眠気が押し寄せる。

 皆は無事でいなほもいる、2人もいる。姫と侍女は無事。

 なら、もう十分だ。主人公を気取る必要なんてない。

 

 

(もう、いいかな……頑張らなくても)

 

 

 ―――ユリンちゃんも、許してくれるかな

 

 

「……誰だろう。それ……」

 

 

 ふと浮かんだ名前はどこかに消え、

 残ったのは意識が落ちる瞬間に聞こえた言葉だけだった。

 

 

 

誰もが許しても、お前自身は許さない……弱いお前を、あの時弱かったお前を

 

 

■■■■■

 

233:名無しのハズレ転生者

いなほくんの圧倒的強者感

 

234:名無しのハズレ転生者

天才だよ、精神コマンド以外は

 

235:名無しのハズレ転生者

αは熱血安売りだからついてるかもしれんだろ!!

 

236:名無しのハズレ転生者

あっても使えないんですが

 

237:名無しのハズレ転生者

イッチ見てる限り、パイロット技能と連動してるし

使えば使うほど疲労する。つ、つかえねぇ

 

 

238:名無しのハズレ転生者

プラーナコンバーターのサイバスター、さらに疲弊しそう

 

239:名無しのハズレ転生者

精神ポイントを使いながら使う機体。

必殺技はサイフラッシュだ!!

 

240:名無しのハズレ転生者

エネルギーと精神ポイントを使うことでしか

許されないあのマップ技感はある。

 

241:名無しのハズレ転生者

宇宙怪獣に対抗しうる男、マサキ・アンドー&サイバスター

 

242:学生兵

そろそろ僕の能力についても語って

 

243:名無しのハズレ転生者

ニュータイプのなりそこないのなりそこない

 

244:名無しのハズレ転生者

使ってるものだけは主人公

 

245:名無しのハズレ転生者

機体はもうないから一般兵以下

 

246:名無しのハズレ転生者

切り払えないエリート兵

 

277:名無しのハズレ転生者

シャアの株をさらに上げた男

 

248:学生兵

ひで。 あ、なんか検査始まったわ

 

■■■■■

 

 

 

「クワトロさんはニュータイプではないと思うとおっしゃれていましたね」

 

「その通りだ。赤木博士。そして、この数値を見る限り。念動力者でもない……

 と思っているのだが……数値が通常レベルでもない。妙だ。どう思う、ギリアム」

 

「ESPであるか、か? さてな……だが違和感はある。

 記録データをすべて並べてくれ。この1時間の間にとったものすべてをだ」

 

 

 指示通りに羅列されたデータをギリアムは見つめる。

 

 

「1時間前はリュウセイくんが休暇前にT-LINKシステムの調整をしていたな。

 40分前はクワトロ大尉が確認に顔をだし、5分前は……近くで何かあったか?」

 

 

「……入港しているプトレマイオスが主機の調整をしていた、ぐらいか」

 

「つまり、平常時はやや強い脳波を出し

 そこに引っかかった何かがあった時に一瞬だけ反応している……ですか?」

 

「きわめてリラックスした状況でだ。

念動力者、ニュータイプ。彼はやはりいずれでもない

 あれらは反応時に強いストレスを発するからな」

 

「それがお前の結論か。なるほどな……

(Xラウンダーの様な希少な技能でもない。サイコドライバーでもない。

 脅威にはなりえないが危険と断じて消すには確定材料不足……) 赤木博士は?」

 

「……彼は今、自分を探しているのでは?」

 

 何かになろうとして、常に揺れ動いている。

 しかし、それは違うと反応するのをやめてしまった。

 

「何にも慣れた? ということか?」

 

「あるいは、ニュータイプも、念動力者と呼ばれる彼らもまた

 逆の適正もあるのかもしれません。同調するものによって形をかえただけで」

 

「素体。いや、同調者(チューナー)という所か……」

 

 

■■■■■

 

 

 

250:名無しのハズレ転生者

ひかりさすみちとなれ……

 

251:名無しのハズレ転生者

シンクロ召喚!

 

252:名無しのハズレ転生者

我が魂、レッドデーモンズドラゴン!!(違

 

253:名無しのハズレ転生者

でも絶対レベル中途半端で使い道に困る奴だよ。

こんなんデッキに入れたくないよ!!!!!

 

 

254:名無しのハズレ転生者

うるせぇ!! もう勝手に入った!!! ドン!!!

 

255:名無しのハズレ転生者

寄生虫パラサイトおるね

 

256:名無しのハズレ転生者

同調者(あとはサイコドライバーとか

    ライディーンとかぐらいなのでもう同調先なし)

 

257:名無しのハズレ転生者

シンクロ召喚もできない。何にもなれない!

ターンエンドをしろ、虫けら!!

 

258:学生兵

これじゃあ、戦っていけないよぉ!

どーーーしようーーーーかなーーー!!  まじでさ

 

259:名無しのハズレ転生者

イッチ……お前、船を降りろ

 

260:学生兵

いやぁ、でもまじでその方がいいんでは

 

 

■■■■■

 

 

 

「ゲッター線と光子力エネルギーの仲立ちができるのはトロニウムエンジンのみ

 だからこそ、ゼーレのシナリオではここでトロニウムを消費する筈だった……どうする、碇」

 

 

「アルドノアドライブを積んだデューカリオン。

 その起動因子のマスターともいうべきものを持つ姫もここにいる。必要ない」

 

「だが、それは欠けた記述に残る、謎の2つの存在をより完全に復活させかねない

 さらに新たな存在を招く可能性もあるのだぞ? いいのか?」

 

「構わん。計画の前に人類は滅びて貰っては困る……

 軌道修正はあとでいくらでもできる。今までだってそうしてきただろう」

 

 

 今はまだ、人が滅びず月の民と神話の門の眠りさえ妨げ(さまた)なければいい……

 

 

 

■■■■■

 

 

 

300:学生兵

ネルフくんから治験的な扱い~ほにゃららで

お金入ったので安価します下3

 

301:名無しのハズレ転生者

ご当地グルメハンター

 

 

302:名無しのハズレ転生者

ネルフ本部破壊工作

 

 

303:名無しのハズレ転生者

至高のエロ本探し

 

 

304:学生兵

わかったけど至高の判断誰がするんだYO!!!!




改訂すれば面白くなる場所はあるなぁ
とか思う部分はありますが、それがそもそもの沼なので完結させて
次回に生かしたいと思います。
かろうじてある良い所。たくさんある悪い所、作者が一番見えるのです。


でもまず、完結できるの? 20時からはじめてギリギリ
とりあえず投稿して誤字脱字の見直しと表現修正が終わったのは今です(1時)

こうなるならゆっくり時間かけてもいいじゃんと感じると思いますが
ある種の強引なリハビリなのでその辺はこちらの都合です。ごめんなさい


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同調者 下

 

600:名無しのハズレ転生者

なんだ、この加速具合。たまげたなぁ

 

601:名無しのハズレ転生者

エロ本トークがかつてないkskを見せたの草生えるんですよね

 

602:名無しのハズレ転生者

IDで年齢バレて買えなかった時にしれっと出てきた

正義の味方。ありがたかったよね

 

603:名無しのハズレ転生者

どこの世界にも優しいおじさんはいる

 

604:学生兵

SMとかのニッチ性癖が真っ先に消されて

デッドヒートしてたのがロリと巨乳って両極端で草

 

605:蒼穹のハズレ転生者

なんでや!! 純愛はニッチやないだろ!!

 

606:名無しのハズレ転生者

まぁ、ニッチではないけどメジャージャンルからはちょいずれた位置っつうか

 

607:名無しのハズレ転生者

ランキング上位は大体、無理やり

 

608:蒼穹のハズレ転生者

地獄やこの世は

 

609:名無しのハズレ転生者

てか、イッチは自分のかってなかったな

 

610:学生兵

俺はエロ本も買うけど友人が来た時の

隠蔽スペースが限られてるからえっちな電子データ派

便利な時代ですな

 

611:名無しのハズレ転生者

怖いか、電子エロ本の新時代が!(

 

612:名無しのハズレ転生者

汚すぎるシャンクス

 

613:学生兵

まっ、とりあえずページ欠けてないか確認ついでに

中身も読むか。使えると思うけど

 

614:名無しのハズレ転生者

道の真ん中でエロ本読みながら歩くのは

性なる春の学生でも狂ってるでしょ

 

615:学生兵

これはなかなか……あっ

 

616:名無しのハズレ転生者

どうしたイッチ、使えなさそうなのか

 

617:学生兵

曲がり角でぶつかったらクスハちゃんと甲児だったわ。やっべ

しまったなぁ、最悪を想定して玩具屋のある通りからきたのに

 

618:名無しのハズレ転生者

自爆で草

 

■■■■■

 

 

「…………」ツカツカツカ

 

 

「話は聞いてたけど街中で堂々とエロ本とはぶっとんでんなお前……

 もう5分ぐらいクスハ黙ったままだぜ」

 

 

「落丁あるかの確認ついでに楽しんでただけだろ!!!!」

 

 

「俺でもさすがに部屋で確認するぜ」

 

 

「まぁ、でもこの年齢の子に

 女性を気にしたり、デリカシーを考えろというのは無理かしら……」

 

 

「それいうなら、お姉さんこそチャイナじゃなくて

 漢服とか来るべきじゃないかな、と思うんだな」

 

 

「くっ、国際警察に正面から正論を……!」

 

落丁の確認が終わり、数冊の本を鞄にしまうと

一冊をビニールにしまってぐるぐと袋を縛って甲児に投げ渡す。

 

 

「それはともかく、甲児。先生の新刊だぜ」

 

「なんだってぇ!? ありがてぇ、こいつがあれば俺もマジンガーも無敵だぜぇ!」

 

「(はぁ……ブリットくんも仲良かったしやっぱり、こういう部分が……)

 それはともかく、シンくん。こっちにきてたんだね……いなほくんとは?」

 

「さっき、会ったよ。んで、そっちの2人は?」

 

 

「国際警察機構のエージェント銀鈴さんにSRXチームのリュウセイだ。

 さっきまではあと数人いたがお前は……なんて紹介すりゃいいんだ?」

 

 

「無職学生の日野真です。

 機体はちょっと前、宇宙で敵に組み付いて自爆したのでないです」

 

 

「すげぇ、どんなロボットアニメでもここまで雑に

 パワーアップ前に初期機体失う奴いねぇよ……強烈だぜ」

 

「これは強烈というか狂ってる部類なんじゃ……?」

 

 

■■■■■ 

 

 

「戦争が国家間の交渉の一手段……」

 

 

「えぇ、だからアセイラム姫には責任はない。利用されただけなんですから。

 まぁ、シンが生きている以上。彼女も無事なんだろうけど」

 

 

 自販機の前で並んで会話するのは界塚 伊奈帆(いなほ)とホログラムで変装したアセイラム姫。

 ことのきっかけはたまたま、飲み物の買い方が分からない彼女にいなほが話しかけた。

 という流れだ。休憩所のニュースを見ながら、ふと口から出た「戦争の終わらせ方」というテーマだ。

 

 

「戦争の終わらせ方は2つ。目的が果たされるか、

 あるいはコストとして存在する兵士の人的被害が利益に見合わぬものになるか」

 

 

 それは暗に、そんな悲しい顔をしても部外者の君には何もできない。

 という遠回りなやさしさだったのかもしれない。

 しかし、それは瀕死のものにナイフを突き立てるようなものだった。

 

 そんな時、また一人。誰かがやってきた。

 金髪の少年はアセイラム姫の隣に座ると、不機嫌そうな顔を浮かべている。

 

 

「違う……戦争が起きるのは戦う相手が居るからだ。

 戦うとして、牙を剥きだす……敵がいるからだ

 だからすべてを……倒さなきゃいけない。そうだろ」

 

 

「……スレイン!?」

 

 

 お久しぶりです、と呟いて会釈をすると立ち上がり。いなほの前に出た。

 

 

「貝塚伊奈帆、それじゃ何も終わりはしない。

 その形での停戦は火種を燻ぶらせるだけだ。目的が果たされ併合されたとしても

 クーデータだってありうる。今の戦いだって、そうだ……永遠に戦い続けるつもりか!!」

 

 

「スレイン・トロイヤード、有用な情報を提供してくれたのは感謝してる。

 でも戦争に理想や敵味方なんていう感情も入り込む余地はない。

 ヴァースもやがて戦闘を再開する。

 他の組織もそうだ。僕らは結局、戦い続けて耐え忍び。

 相手が上げた手を下ろすまで待つだけだ」

 

 

「それじゃあ、姫様の思いは全て。無駄だったとでもいうのか!?」

 

 感情が揺れ動かない瞳でいなほはスレインを見上げた。

 

「あぁ、その通りだ。だからこそ彼女に非はない。」

 

 

「っぐ……お前!!」

 

 

「やめなさい、スレイン!!」

 

 

「……くっ!」

 

 

 拳を下ろし、いなほの前で立ち尽くすスレイン。

 いなほはひと段落ついたという様子で紙パックに再び口をつける。

 アセイラムは肩を落とし、悔しそうに握るスレインの拳を優しく両手で包み、解いた。

 

 

(その通り、なのでしょう……どうにもならなかった。

 私は結局、ただの小娘だったのですから……)

 

 

 アセイラムは思う。主戦派はいた、だがゆっくりと変えていけばいいと思っていた。

 だが、違う。事はもっと深刻だったのだ。

 ヴァースもまた、かつては捨てられたものたちだった。

 満足な準備もなく異星移民という放逐を繰り返す地球の犠牲者。

 しかし、血と汗を流し。マーズレイを克服し、自らの故郷へと変えた。

 捨てられたものたちは、生まれ変わった。自分の星という、誇るべきものを掲げる人間に。

 

 だというのに、地球はアルドノアを見た途端。それを奪おうとした。

 完全な自給が不可能な火星の貿易を停滞させ、兵糧攻めをかけ放棄させようとした。

 それを許せなかった。自分で作り上げた故郷を、土足で踏みにじる。そんなものたちを。

 知るべきだったのは、戦いがまだ。続いていたという事だったのだ。

 

 スレインが貝塚伊奈帆と呼んだ少年の言葉は正しい。アセイラムは思った。

 

 

(でも……それだけじゃない)

 

 

 地球のすべてがそれを望んだ訳ではないように、

 ヴァースのすべてがそれを望んだ訳ではない。

 自分の心を押しとどめても、信じてくれた男が、クルーテオがいたように。

 

 

 何より……

 

 

―――だれか、助けて

 

 

 諦めかけた時にこぼれた、小さな少女のようなその声に

 駆け出してきた少年がいたように……

 

 

「スレイン、貝塚伊奈帆さんは正しい」

 

 

「!? で、ですが……」

 

 

「ですが、それは極論。教科書にかかれた歴史をなぞるようなものです

 いうなれば、過ぎた歴史が突き付ける。結果論なのです……貝塚伊奈帆さん」

 

 

「……なんですか?」

 

 

「繰り返します。あなたの言葉は正しい。全く持ってその通りだと痛感します。ですが」

 

 

私、個人として。その結論は嫌いです。何もできないからあきらめる、その言葉は……

 

 

「個人の可能性、それがあまりにも勘定に入っていない。

1人の人間を助けるより100人殺すべきだ、という事でしょう?」

 

 

「……そうです」

 

 

「ならば、1人を救う行動は無駄ですか?」

 

 

「無駄です。僕は感情を戦いに持ち込まない。はっきりと断言します」

 

 

「いえ……それは違う」

 

 アセイラムは思う、戦火の中で命を救ってくれたのは、

 自分の命を顧みず、飛び込んできた。たった一人の人間だった。

 

 死ぬかもしれない戦いに一人、出向いて揚陸城を護ったのもまた……。

 

 今、ここにある可能性は私の存在が紡いだものだ。

 間違いない。だが、違うとアセイラムは繰り返した。

 大事な事は、”それじゃあない”

 

 彼が示したのだ。これは、常に『自らで選び続けた彼が起こした波紋なのだ』

 

 

「今、はっきりとわかりました。戦いを止めるのは個人の”意思”です

 

 人が一人一人が平和への意思を持つ事」

 

 

「無駄です。多くの人はバイスタンダーエフェクトから逃げられない。

 傍観者でいることが絶対的安全だと理解を…………」

 

 

「貝塚伊奈帆。なら、なぜお前はここにいる」

 

 

 スレインが口を開く。

 

「多元的無知な人間なんで本当は少数だ。

 何かしたくても責任分散と評価懸念がちらつきやがて足を止めていく。

 それでも、心の中ではずっと残ってるんだ。忘れられやしない。

 ……そして、足を止めないものもいるんだ。僕や、この人のように……何より、君の様に」

 

 

 傍観者をやめて、意思を持って立つ人がいるじゃないか。

 

 

 

「人は、強い人ばかりじゃない」

 

 

「……少し前まで嫌味な奴だと思ってた。ずいぶん、ひねた優しさだったんだな。

 そうだな。その通りだ、でも、今。気づいたんだ……正解を求める自分の浅ましさに」

 

 

 頭をガシガシとかいて、そのまま椅子に座り正面を見つめた。

 

 

「行動ばかりが物事じゃない。考えることもまた戦いだ。争いへの反抗なんだ

 確かに、結果には結びつかない。でも、今、ここに結びつかせようとしている女性もいる」

 

 

 僕も、考えてみたい。僕なりの平和の作り方を 

 

 

「誰かに従属するのでもなく、その志にしがみ付くのでもない。

 

 だからこれからは、考えて考えて。それだけじゃなく言葉に出して問いかけるよ。君に」

 

「構わない。でも自分で言うのもなんなのだけど、きっと手ひどく言うと思う」

 

 

「自覚してるなら、たまに怒るぐらいは許してほしい。しばらくしたら僕も反省する」

 

 

 スレインは右手を差し出す。

 

 

「すべてはすぐに捨てられない。だからまずは、手をつなぐ事から……どうかな、いなほ」

 

 

 いなほはその手を握り返す。

 

 

「感情を考えに含めないとはいったけど、僕に感情がない訳じゃないよ……スレイン」

 

 

 その2人の様子をアセイラムは見つめる。

 これから彼らは憎しみと、怒りと、確執を乗り越えていくのだ。

 自らの意思によって……。

 

 

(あなたは、どうしますか? できれば、一緒に私たちと歩いてほしい。

 でも、もう。あなたに頼るわけにはいかない……守ってもらうわけにはいかない)

 

 

 

■■■■■ 

 

627:学生兵

どこかで、結構骨太ぉ~なドラマがあった気がする

 

628:名無しのハズレ転生者

そりゃあるよ。でも君は

 

629:名無しのハズレ転生者

機体爆散させた無職ははよ学生に戻れよ、ホラホラ!

 

630:学生兵

おいおい!! 俺だって思うところはあるんだぞ!!

第2新東京ってなんかの舞台なのかな、ぐらいは!

 

631:名無しのハズレ転生者

エヴァ知らなくて草

 

632:名無しのハズレ転生者

スパロボαは第2新東京だよ

っていってもわかんなそうだな

 

633:学生兵

ほーん。俺が知らんのか、俺の世界になかったのか

まぁ、どっちにしろ知らん。

 

634:名無しのハズレ転生者

イッチはどうするんだよ。スレ進行的には引き続き

 

635:学生兵

ぶっちゃけ、アーガマチラ見してスーパーロボットの数々見たら

おいいらんくね? とはなった。スパロボに必要なのは政治力だよ

恐竜帝国をあの辺の島を隔離して君の国とする、とかすぐらいの政治できる奴

 

 

636:名無しのハズレ転生者

いるわけないでしょ!!!

 

637:名無しのハズレ転生者

まぁ、でも正直、ここまでキャリアしてきたなら十分な感じもある

俺はそう思う。α詳しくないけど

 

638:名無しのハズレ転生者

 

多分、アルドノアドライブでヤシマ作戦をする。

本来、ここで使いつぶされる新型ゲッター炉。

光子力反応路のテスト品が残るから

ゲッター、マジンガーの開発がスムーズに進む+ トロニウム1個余るから上出来

 

639:名無しのハズレ転生者

ほーん、余るのか。

なんならSRXチームもう1小隊できるな。

どっかでウルフとかも合流してきそうだし?

 

640:学生兵

ん-、まぁ、とりま1回。家に帰るか。

そっから考えるわ。

 

 

 

その日、デューカリオンの艦長にアセイラム・ヴァース・アリューシアが着任し

 

地球が手に入れた初の稼働しているアルドノアドライブのエネルギーにより行われた作戦により

 

エヴァンゲリオン初号機は使徒を撃墜した。

 

 

そして、その1時間後。1台のヘリが第2新東京から離れていった……

 

 




今回は深夜まで誤字確認したり
書き直す余裕がないので明日やります。


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交わるデッド・バイ・デイライト

 

700:学生兵

都立陣代高校、休校

 

701:名無しのハズレ転生者

よく考えるとそりゃそうだ

 

702:名無しのハズレ転生者

いなほくんとあんな会話しておいてさっさと帰った上にこの始末

 

703:学生兵

 

仕方ねぇ。それじゃあ、高校のツアーでもす

 

704:名無しのハズレ転生者

す?

 

.

.

.

.

.

730:名無しのハズレ転生者

おい、帰ってこないぞ!!

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

スパーーーーーーン

 

 

「何をする千鳥」

 

 

「何をするもくそもないわよ!! アンタ、転校初日も……

 『動きが素人のそれではない、何者だ!』

  ってフラッシュバンで鎮圧して銃を突き付けた相手に二度同じ事を!」

 

 きもちのいいスナップをきかせてハリセンを振る長髪の女生徒は千鳥かなめ。

 叩かれている仏頂面の男子学生は相良宗介。

 この風景も、事の内容はともかくよくあることだ

 

 

 

「全く分かっていないな。同じではない、よくみろ。これはワイヤートラップだ。

 俺も学習した。一般人を巻き込むことを想定して爆薬は最小限だ。

 殺さなければ尋問もできる一石二鳥、だったな。偉人が残した言葉をなぞり……」

 

 

スパーーーーーーン

 

 

「そういう事じゃなく、一度迷惑かけた相手に二度目迷惑かけんじゃないって言ってんの!」

 

 

「何を言う! 諜報部によればヴァースは超高性能のホログラムを持つという

 この町から引いたとはいえ、油断はできん! 念には念を要するべきだ!」

 

「姿や背格好までかえるって!? んな技術あるかぁーーーーー!」

 

 

スパーーーーーーン

 

 

 

「やれやれ、二度もこんな被害にあったのは君ぐらいだろうね。

 まだ傷は痛むかい、日野くん? 一応、見様見真似で治療はしてみたのだが」

 

「いえ、大丈夫です。林水生徒会長」

 

 オールバックに似つかわしくない、真鍮製の眼鏡。

 そして、特注の天然素材製の白い制服に身を包んだシンの目の前の男は林水 敦信。

 現生徒会長である。

 

 

「しかし、よく考えれば休校ですよね。あんな事があったあとだし……皆、疎開済みですか?」

 

 

「いや、残るものも多い。

 避難先の生活が心配だというのも確かだが、故郷から離れたくないものも多いのだ……君は?」

 

「お恥ずかしながら除隊を申請しました。

 二度の実戦で機体を大破させまして、誰かを護るのが精いっぱい。自分は守れぬと悟りました」

 

「確かに兵士は第一に自分の命を護る技能が必要だ。的確な判断だろう」

 

 

 

スパーーーーーーン

 

 

「痛いぞ、千鳥」

 

 

「ここはどう考えても『君は悪くない』とか慰めてやる場面でしょ。とどめを刺してどうする!」

 

「しかし、事実を自認させることは大事だ」

 

「自認してるから、戻ってきたんですけどぉ……」

 

 よく見ていた風景だが、自分が巻きこまれていると思うと、

 一刻も早く逃げ出したくなる。いつまで続くのか分からない。

 

「まぁ、それはひと先ずおいておこう。

 見ての通り今日から休校で我々もその準備をしていたのだが何用かね?」

 

 

「いや、急な事だったんで無断欠席はまずいなって思って報告に。

 あるいは休学届を出すのも検討して一先ず、って感じでした」

 

 

「ま、まともだわ……」

 

「なぜ、俺を見る」

 

「人に迫る前に、あんたも自認しなさい。全く……」

 

 

「フム……」

 

 持っていた顎にあて、しばし悩むと林水生徒会長は口を開く

 

「LIVEに一瞬、映っていたガンダムヘッドは君が操縦していたものだな。

 一時、失踪していたのはそれに関係するものと考えていいかい?」

 

「多分。落下していたカメラで流れていたんですね

 はい、そうです。口止めもされていません」

 

「わかった、信じよう。父親の意向で真っ先に避難した

 美樹原くんと同じように出席については私がごまかしておこう」

 

 

 ―――だから、ひと先ずは休みたまえ。

 

 

「そうだな……人が安らぎを得るのは日常の中だ。

 君にとって今、残るそれは学生としての生活。といえよう。

 我ら以外に人がおらず、寂しいかもしれんが学校で過ごすのも悪くはない」

 

 

「……ご厚意ありがとうございます」

 

 

 頭を下げると、シンは足早に生徒会室を出ていく。

 外から扉に手をかけ、その扉を閉めていく。

 

 

「それから、販売所にコッペパンが残っていた

 そう多くはないが一つ持っていくといい」

 

「……はい」

 

 

 そう返して、その場を後にした。

 わずかな沈黙を経て、千鳥が『以外だったわ』と宗介に語り掛けた。

 

「……実は敵前逃亡は重罪だ、くらい言うと思ってた」

 

 

「あの様子なら、仲間を置いて逃げた訳ではない。命を賭けて戦いを抜けた先で

 無力か、あるいは命の惜しさを悟ったのだ。

 よくあることだ。恥じることでもない……閣下! 私くしめもコッペパンを頂いても!」

 

 

「うむ、許可する。君は普段、よく働いてくれている。2つまで許そう」

 

 

「はっ!!! ありがたく!! 千鳥、君もいるか?」

 

 

「私はお弁当があるわよ。さっさと取ってきなさい。

 大丈夫よ(監視はクルツさんかマオさんがいるだろうし)」

 

 あ、でも……と嫌な想像をした顔をしたあとに

 

 

「もう校内でもめ事はやめてよね……みんなの帰ってくる場所だし」

 

「了解だ。ここは俺の帰る場所でもある。最善を尽くそう」

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

 

750:学生兵

というわけで、今いった感じで襲撃されまして

 

751:名無しのハズレ転生者

草。

 

752:名無しのハズレ転生者

2回目で草

 

753:名無しのハズレ転生者

てか、せっかくの探検だしライブしてくれよ

 

754:名無しのハズレ転生者

更衣室たのまい!!

 

755:天使

犯罪、あるいはそれに類するものの誘導はBANです

 

756:名無しのハズレ転生者

対応めっちゃ早くなってて草

 

757:名無しのハズレ転生者

まじで環境改善したんすねぇ……

 

758:学生兵

屋上……は鍵開かないからぶらっとして部室でいい?

コッペパンも帰りにもってかえるか。

 

759:名無しのハズレ転生者

はえー、部活。

何部? 

 

 

760:学生兵

料理部。だから、部室っていうか家庭科室だけど

部員だからいつでも入れるよ。鍵あるし。

 

 

761:名無しのハズレ転生者

!?

 

762:名無しのハズレ転生者

???????????????

 

763:名無しのハズレ転生者

そんなん想像できるかよ!!

 

 

■■■■■

 

 

「……お、あったあった」

 

 

 鞘に自分の名前入りの包丁を取り出し、それを鞄にしまう。

 銃刀法違反になるので人がいなくてよかったな、などと考えながら

 箸、菜箸、砥石、計量スプーンをしまった。

 ついでに冷蔵庫の中も確認するがさすがに空だった。

 だが、あわただしく整理したのかコンセントは抜けていない。

 やや強引に足にひっかけて抜くと、黒板の下の教壇を漁る。

 すぐに『日野真くん 課題進行状況』という紙が見つかった。

 シンはそれをクリアファイルに入れて鞄にしまう。

 

 

「日野真、出身は地球。以後、コロニー(不明)に転居。

 のちにさらにコロニー、ノーラに転居。訓練兵ながらもUEとの戦争に参加。

 生還するも、すぐに延命の為にコールドスリープへ。

 数年前に解凍、治療を終えるも長期冷凍睡眠の後遺症により記憶を失う」

 

 

「何が言いたいんだ、相良」

 

 

「諜報部の結論として、不明慮な部分はあれど敵ではない。

 俺、個人としても……パレードでの行動を見てお前を敵だと判断することはできない」

 

 

「相良、俺は何が言いたいかって聞いてるんだが」

 

 

「……失礼した」

 

 一歩下がって頭を下げると、懐に手を入れる。

 

 

「率直に聞く。お前の持つ情報が欲しい。

 もめ事はやめろと釘を刺されているのでな。平和な交渉したい。これでどうだ」

 

 

 そういって差し出したのは……コッペパン

 

 

「お前、百円ちょっとのこれで交渉するのか」

 

 

「生憎、装備の新調で金欠でな。現物でいいなら数十万相当の……」

 

「いや、いい。俺は庶民感覚なんだ。急に6桁のものとか飛んでくると困る」

 

「では、契約成立だな」

 

 そう言って何事もなかったかのように椅子を2つ並べる相良宗介。

 

 シンはまたこんな流れかぁ、と思いながらも並べられた椅子に座り向かい合う。

 

 

「なぁ、まずは相良は敵じゃない。間違いないな? むしろ、見た感じ千鳥が重要人物でその護衛。当たってるか?」

 

 

「肯定だ。俺はある組織から派遣された傭兵。一先ず、そこまでにしてくれ。

 機密に接触しすぎると拘束しなければならん。許可が出ているのは此処までだ

 アセイラム姫をお前が救出し、第2新東京まで送った事はわかっている。その以前で頼む」

 

 

「了解。あーえーと。そうだな……」

 

 

 シンは話した。ガンダムに乗った事。その道中の事を一部。

 ヴァースとの和解の可能性。宇宙に上がってみたどこの組織とも違う機体。

 そこで記憶が途切れていて、自分が暴走したであろうこと。

 

 

「感謝する。収集した一部の情報と合致する。宇宙で接敵したのはUEだろう」

 

 

「異星人の敵がまた1人か……てか、こんな断片的な情報で?」

 

 

「我々とて死角がある。それを埋めるための情報が必要だった。

 ヴァースの侵略が総意ではなく、軌道騎士の反逆であり、本当に和解の可能性があるかも重要だった」

 

 

 宗介は「聞いていたな、あとは頼む」と呟くと

 緊張を解くように息を吐きだして口を開く。

 

 

「感謝する。礼というのもなんだが先ほどの補足をさせてほしい。

 先ほどの発言は、つまり……その。罵倒したわけではない」

 

 

「分かってるよ。俺も不器用な友達がいてな。

 すごく、遠回りなんだ。でも優しい奴だ。だから理解してるんだ」

 

 

「……カタフラクトは運動性ではMSに劣り、単体飛行はできない。

 地上戦では走れず、ASに劣る。使用できる火器もジェネレータの問題で少ない。

 あれの利点は実戦配備の習熟がMSより格段に早い事と換装のしやすさだ。だが」

 

「スーパーロボットたちの集団とそれに匹敵する敵との戦い。それは、

 よっぽどのエースパイロット以外じゃ生き抜くこともできないか?」

 

 

「……肯定だ」

 

 

 そういって気まずい間をごまかすようにコッペパンを齧る宗介。

 そんな彼を見つめながら、シンも袋をあけてそれを頬張る。

 しばらく教室の中でパンの租借音だけが響いた。

 やがてそんな静かな食事も終わり―――

 

 

「すまない、もう行く。千鳥の傍に戻らねば……日野、お前は?」

 

 

「日常は十分に楽しんだよ。家で部活の課題でもこなしながら考え……」

 

 

 グワン……

 

 

 不思議な感覚だった。空間自体が揺れるかのような……

 覚えのない感覚ではあるが、これは……

 

 

「相良!! 何かが来る!」

 

 

「何、何を言っている……なんだ、クルツ? ……円系の、巨大構造体? なんだそれは!?」

 

 

「相良、屋上だ! 状況を確認しろ(ってスレ民が)! 会長に言えば開けて貰える!」

 

「必要ない! 閣下の手を煩わせるのも問題だ! 緊急事態だ、爆破する!」

 

 

「へえっ!? なんだって!?」

 

 

 走り出した相良を追いかけるシン。

 早い、とても速い。一瞬でかなりの差がつけられた。

 訓練は真面目にしてたんだけどなぁ、とこんなところでも少しへこむ。

 同時に、鈍い炸裂音。その音の先、屋上の扉に到着する。

 

 

「えぇ、これどうすんの……」

 

 

 吹き飛んだ屋上のドアだったものを見つめながら、シンは呟いた。

 いや、いい。俺がやったことじゃない。見なかったことにしよう、とひとまずの結論を出す。

 

 

「ちょ!? 宗介、何このありさま…………あれ、クロスゲート」

 

 

「千鳥、折檻は後にしてくれ。緊急事態だ。

 日野、ここからでも見える……確かに巨大な構造体……いや、待て!? 千鳥、分かるのか!」

 

 

「……え、えっと……ごめん! 近すぎるのかノイズがあるというか

 ごめん、私が分かるのは……あれが時空間ゲートの子機、みたいなものってこと」

 

 

「何?」

 

 

「……そうか! 時空間ゲートか!! 相良、敵が来る!!」

 

 

 ゆっくりと構造体の中から現れる巨大な蕾の様な機械。

 その蕾が開く、ゆっくりと……

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「木蓮のチューリップを使えば、

 負念の影響を避けた上で小ゲートが使える。

 正しかったようだな……使い捨てになってしまったが……これが、地球か」

 

 

 いい場所だ、という男に喜びはなかった。

 両の瞳を覆うマスクはどこか、一年戦争時代のシャア・アズナブルを思わせる。

 

 

「各員に継ぐ……いや、自動だったな。命令だ。目的を遂行しろ。

 感知されたジャンパー。そして、アマルガムの交渉材料にウィスパードを確保する

 センサーの感度を最大にしろ。確保対象は殺しては意味がない。いいな! なお……」

 

 

 

 ―――証拠をあまり多く残すな、だったか。街は全て破壊しろ。

 

 

 その命令と共に彼の後ろに控えていた

 虫のようなロボットたちが目を赤く殺意に輝かせた。

 

 

 

 

■■■■■

 

「クルツ! 何分でこれる! 10分だと! 遅い、5分にしろ! ……くそ!」

 

 

「……増設された地下区域にメンテナンス講習で使っていたカタフラクトがある。

 実弾換装して俺が出撃する。悪いが、時間稼ぎ程度だ。後は頼むぞ」

 

 シンはそういって相良の肩を叩く。

 

 

「待って! 日野くん!」

 

 

「悪いな、手短に」

 

 

「あんた、生きたくて帰ってきたんでしょ!

 役に立たないとわかって、死にたくないから! 量産の型落ちカタフラクトじゃ、無理よ!」

 

 

 生きたくて帰ってきたのに、死んじゃ意味がないじゃない! 

 

 

「敵意を感じた気がする。何もしなければ死ぬ。

 相良の仲間が間に合うかもわからない。

 間に合っても、その間に人がいっぱい死ぬ。だから俺は行くよ。自分の意志で」

 

 

「無謀よ!」

 

 

「それでも……恐怖に震えて膝を抱えたまま死ぬよりマシだ。

 何かできたのにと、後悔を抱いて生きるのも俺は嫌だ。だから、俺は……行く」

 

 

 シンは宗介を見た。

 

 

「千鳥と、会長を頼む。すぐ逃げてくれ。

 本当は学校も守りたいけど……できる自信はないんだ」

 

 そういって彼は走り去った。

 

 

「千鳥、閣下の避難を誘導する。お前は俺と来い。

 敵がお前を狙っている可能性もあるからな……」

 

 

「そ、それは理解できるけど……! いいの!?」

 

 

「彼の意見が最善だ。カタフラクトは習熟難易度が低い。

 だが訓練なしに動かせる機体でもないのだ……

 俺では扱えん。彼が適任だ。無論、努力はする」

 

 

 努力はする。それは彼なりの精一杯のやさしさだった。

 どうにもできない、そうは言えなかった。

 

■■■■■

 

800:名無しのハズレ転生者

どうにかできるんか?

 

801:学生兵

いや……

 

802:名無しのハズレ転生者 

いくんか?

 

803:学生兵 

それ以外ないだろ

 

804:名無しのハズレ転生者 

お別れか?

 

805:学生兵

うん

 

 

 

 

 





すいません、読みたい漫画があって
読んでたらギリギリになってました


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漆黒の霊機

806:名無しのハズレ転生者

 

おそらく、旧型だけど新型バッタがいても

ディストーションフィールドはビーム兵器に強い

でも実弾の掃射抜ける可能性はかなり高い

レーザー砲、バルカン、ミサイルが主武装で足は速い。

線では面で制圧しろ。

 

 

807:学生兵 LIVE

 

街への被害は避けられないか……

分かった、それじゃあな

 

 

 

 

 

 

『状況は?』

 

 

「ジャンパーと思われるもの数名の回収を完了。チューリップの護衛を継続します。しかし、イゼルカント様。本当に護衛が必要でしたか?」

 

 

『何も起こらず”資源”を根こそぎ回収できるなら構わん。

 それに護衛を頼んだのは奴らだ。まぁ、単なる実験だろうがな。

 だが、ゼハード。お前は必ず帰還するのだ。部下を随伴させなかったのだからな」

 

 

「理論だけの兵器で同胞を危険に晒す訳にも行きませんでした。

 杞憂で済んだとはいえ、それは結果論です。曲げる訳には行きません」

 

『お前が無事に戻ればすべては許す。

 制限時間を守れ。メインゲートがまだ封印されている以上、長くはもたん」

 

 

「はっ、了解しまし……」

 

 

 ……ドクン

 

 

「訂正です。努力はします。敵が来たようです」

 

 

 静かにビームライフルを数発撃ち、ミサイルを破壊する。

 しかし、彼以外の回避できなかった。あるいは迎撃に失敗したバッタが

 一気に自分のモニターから消えたのをゼハードは確認した。

 

 Xラウンダーの超感覚は今もなお、敵意を捉えている。

 カメラを望遠に切り替える攻撃の行われた場所を探す。

 左右に開いたグラウンドに昇降機が立ち上がり、

 今、まさに何かが上がってきた所であった。

 

 

『何!? アーガマもほかの部隊もここにはいないぞ!」

 

 

「スレイプニールが1機残っていた様です。ただ、宇宙任務についていたデシルの件もあります。

 油断はしません。それでは……」

 

 

■■■■■

 

 

「……この急に通信と共に送られてきたデータ。この町のマップに着色されてる。

 突貫工事みたいだが、多分。青が疎開済み。

 黄色は居残り、赤は……ここまでの相手の攻撃で推定死亡か。10割として4:3:3。送ってきたのは相良か?」

 

 

『肯定だ。もはや、避難の時間はない。黄色い場所を避けて

 青の施設を遮蔽物として戦え。特に大型のものだ。いいな。合流は急ぐ』

 

 

「なるべく頼む。俺も覚悟はしたが死にたくはない」

 

『……了解だ。交信終了』

 

 

「行くぞぉ!!!」

 

 

 踏み込み、一気に脚部の車輪を回転させ、肩部のエンジンを吹かせた。

 

 通常より一回り大きい姿に成長したその機体は

 スレイプニール用オプション装備を纏ったもの。

 『武器運搬用』コンフォーマルパワーアシストユニット。

 またの名を「侵攻作戦用弾薬輸送補助大型外骨格機」

 戦うための装備ではない、前線への火器弾薬の運搬用。つまり、後方部隊用のカタフラクトの装備である。

 積載能力とそれを補助するため与えられたた機動力。

 つまりは、本来は戦うための装備ではない。

 

 

「体中武器庫の荷物運びマシン。

 その上、機動力はピーキー。かつ方向転換は肩部エンジンとワイヤーアンカー。

 いい所は硬い……そして、こいつはそれに大型の移動用脚部車輪と副腕を追加した、

 演習のノリで作られた世界で1つのワンオフ機。武器の多さぐらいで能力はかわらねぇけどな……」

 

 

 シンは武器を見た。

 ミサイル残弾0。

 

 75mmサブマシンガン

 120mmライフル

 75mm狙撃砲 

 75mmハンドガン

 コンバットナイフ

 サブマシンガン装着用グレネードランチャーおよび弾頭

 

 

 体に怒りが満ちるのを感じた。あの赤い、何かを守るかのように直立したMS。

 それを見つめるたびに黒い感情が心の中を満たしていく。

 抵抗はできない……否。

 

 

「抵抗は……しない!!!」

 

 

 宇宙で自分が敵を倒したというなら、もはや縋るものはそれしかない。

 ただ、一つ。敵を強く、強く瞳で射貫く。

 憎悪が、守るものまで火に変えぬように願いながら……そして、シンは手放す。

 

 

 ……ドクン

 

 

 

「ヴェイガン……殲滅だ」

 

 

「これは……私を。いや、ラウンダー能力を写し取っている!? 

 

 ふざけた真似を日野真! 所詮、出来損ないのミラー。真のラウンダーには及ばない!」

 

 

 主腕と副腕。合計8本の腕が武器を構える。

 そして、その腕が一斉に攻撃を放つ……殺意と共に。

 

 

 

「その通り。だが、何も問題ない。ここで、死ね。ゼハート・ガレットぉおおおおおお!」

 

 

 

 

■■■■■

 

 

「街中であれだけの火器を……大丈夫なの!?」

 

 

「いや、町の残った者たちの家や施設には辛うじて着弾していない。

 時間の問題かもしれんがな。何より……

 それ以外は悲惨な状況だ。最初のミサイルですでにかなりの建物が吹き飛んだ」

 

「ちょ、ちょっ!?  いいの!?」

 

「分からん。だがあの小型の兵器も3分の2は吹き飛んだ。

 機動力を生かす前につぶすためのミサイル攻撃だったのだろう。仕方ない」

 

 

「仕方ないって! あんた、不味いでしょ! 

 ……って言ってられる場合でもないかぁ! それはわかってんのよぉ!」

 

 

「その通りだ。同じように奴らのミサイル攻撃で生き残りがすでに3分の1近く殺された。

 なぜか人間を回収してる様子も見られた。そして……こちらにも数体はりついた。飛ばすぞ」

 

■■■■■

 

 

 

 撃つ、撃つ、撃つ! そして、逃げる。

 

 あるだけ打ち続ける。両手の銃で。

 副腕は使わない。基本的にリロードの為にある。

 無論、電子制御を経由して一応の射撃はできるが精度はお粗末だ。

 これに関しては見事に落第評価を受けている。だが、それでいい。

 そんなことは向こうには分からないのだ。

 最初に副腕を使って一斉射撃を行ったのは、パイロットに対して脅威としての印象付け。

 

 シンは考える。バッタは無人機だ。”高性能”の無人機である。

 カメラだけではない。レーダーやセンサーのデータを複合して敵を見つける。

 人間の様に視界を遮れば言い訳ではない。強敵である。

 

 

「でも、お前らは群れる!! なら、的がでかいのと同じだ

 だからこれがお前らに対してのみは有効だ!!」

 

  

 二度目の一斉掃射。逃げながら引き付けた敵にすべてを打ち込む。

 爆発炎上するそれにまきこまれるように玉突き事故の如く消えていくバッタ。

 

 しかし、敵の軌道パターンも一つではない。

 

 

「……横!?」

 

 爆発でシンの意識から自分たちを隠し、左右からバッタが迫る。

 

「身を切る!!」

 

 

 バルカンの掃射を両手を纏うように装着された巨大な腕。

 アシストユニットを盾にして防御。その下に隠された本来の腕で

 ハンドガンを打ちこみ敵を撃破する。同時に穴だらけになったそれを排除。

 取り出しが間に合わなかった武器をいくつか巻き込みながら爆発した

 

 

「こっちも弾切れか!」

 

 

「落ちろ!!」

 

 

「くっ!!」

 

 

 脚部ユニットに収納されたコンバットナイフを2本残してすべて射出する。

 教官に曲芸と称されたそれも、極限状態の威嚇攻撃としては十分だった。

 

「こんなもの!」

 

 敵意に敏感に反応するその先読み能力は、

 きわめて反射的に攻撃を迎撃する。

 シンのコピーし劣化した偽物のそれと違う、極められた能力故に発生する弊害だ。

 

 

 そのタイミングでワイヤーアンカーをビルに射出。

 左右の肩部ブースターを緩急つけて点火し回転をつける。遠心力を利用し機体を遠くに投げ飛ばした。

 高性能なバーニアを持たない陸戦ユニット故の荒業で機動力を得るしかない。

 動きに耐えきれず、機体からちぎれとぶワイヤーを尻目に残っている副腕で取り出していた狙撃砲を撃つ。

 

 

 体勢とスピードから先ず当たることはあり得ない。これでいい。接近させないためなのだから。

 だが、それでもしっかりと狙う。一撃の威力が違うこれをほかの場所に打ち込む気はない。

 

 地面が近づいていく。同時に別のビルが見えた。左腕にコンバットナイフを持ち、ビルに差し込む。

 減速と体制を整える方法をとっさに思いつけなかった。

 その衝撃を一身に引き受けた左腕をずたずたにしながらビルを引き裂き機体が静止する。

 

 すぐにスモークを射出した後に、グレネードを装填して構えた。しかし

 

 

「……いない!?」

 

 敵を感じ取れない。

 

 

「Xラウンダーの力を自分の奥底に封じ込めた、一時的に!

 全くこちらの感応に反応しない男がそれを利用して兄弟を倒したのを思い出したのだ!」

 

 

 ―――そして、お前は写し取るものがなければ何もできない!!

 

 

「くっ!!」

 

 

 背後に回っていた敵には間に合わない。

 ビルにグレネードを放つ。

 

 

 

 

 

 

 崩れる瓦礫を縫うように進んでくる敵。

 一方、シンはただ落下するだけだ。もはや、無鉄砲にサブマシンガンを放つしかない。

 弾切れ。すぐに背部のパラシュートユニットを前方にマウント。

 強引に溶接されて張り付いた最後のライフルをちぎるように取り外し撃つ。

 それは一応は敵への威嚇にはなった。

 だが、機体の能力もはるかに相手が上だ。

 その弾幕すら敵はすり抜けるように迫る。

 

 

「まだだ!」

 

 弾切れの銃を投げ捨てコンバットナイフを右腕に装備しようとする。

 

 

「なるほど、電磁装甲を読んで残していたか! だが無駄だ!」

 

 

 しかし、両掌から放たれるビームバルカンはナイフごと腕を破壊した。

 

 

「ならせめて、組み付いて……アラート!?」

 

 

 突如、発生した熱源反応が肩部のエンジンを吹き飛ばした。

 

 

「バッタをすべて破壊したと思っていたようだが……

 最初の爆撃で生き残った数体をスリープモードにしていたのだ。作戦だよ」

 

 

 

―――付け焼刃にしてはよくやったが、本物には勝てない。後ろに目をつけておけ

 

 

 

 75mmサブマシンガン 

 120mmライフル

 75mm狙撃砲 

 75mmハンドガン

 コンバットナイフ

 サブマシンガン装着用グレネードランチャーおよび弾頭

 

 

 

「ない、もう。武器も……くそぉおおおおおお!!」

 

 

 スレイプニールとシンは全てを失い、地面に叩きつけられた。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「私の力、その一部とはいえ写し取った能力。

 気にはなるがここで始末させて貰う……さらばだ、日野真

 我がゼイドラに挑む存在として、お前には荷が勝っていた」

 

 

 仰向けのスレイプニールに向けて

 ゼイドラの胸部にエネルギが集まれ、ビームバスターが放たれる。その瞬間。

 ゼイドラは、弾き飛ばされた。

 

 

「な……パラシュート!?」

 

 

「うぅぅおおおおおおおおお!」

 

 

 ガアアアアアアアアアアアアアアアン!!!

 

 

 脚部の車輪を回転させながらどてっぱらに蹴りを打ち込み。

 ゼイドラの胸部が損傷を受ける。しかし、そこまでだ。

 

 

 empty

 

 

 アシストユニットはエネルギーの消耗が凄い。だからこそ前線に使えない。

 いくつかの機能を追加しただけで継戦時間はさらに削られて3分。

 何より、コックピット周りの装甲が薄いカタクラフトが落下時にシンに与えたダメージは大きい。だが、その意識だけは今も、自分を射貫いている。

 

 

「なんという執念。そこまで憎いか……なぜ」

 

 

「なぜ、なぜだと! 理由なんていくらでもある! 俺の家族を奪った、俺の第2の故郷を奪った! いくらでもだ! だが、いい。俺は許した、許したんだよ!!」

 

「な、なに……?」

 

 

 ゼハードは聞き返した。

 理由をしり、理解し、家族を奪われ。そのうえで”許した”といったその考えもしない言葉に。

 

 

「お前らにも理由があるって、知ったから!! 分かり合おうとしている奴も、いたから」

 

 

 

でも、お前らは……殺した

 

 

 

「ユリン・ルシェルを殺しただろ!! 自分の仲間を殺しただろぉ!!

 

 俺の友達の愛する人を。俺の友達を愛する人を奪っただろ!!!

 

 切り刻んで、実験道具にして蝕んで! 殺しただろ!!!」

 

 

 

 コックピットを開く、震える腕で銃を構え引き金を引く。

 乾いた銃声だけが響く。当然だ、そんなものでMSを倒せるわけはない。

 だが、銃声と共に。憎悪が、憎悪だけがゼハードに伝わる。

 

 

「きっと、憎しみだって越えられた。平和だって作れたかもしれない。

 なのにそんな、そんな事をするお前らは人間ですらない、化け物だ。

 だから殺す、殲滅する。お前らは……生かしておかない!!」

 

 

 

「う、うわあああああああああああああああ!!!」

 

 

 

 ゼハードはゼイドラの腕を振り上げる。

 その行動は本能からくる、圧倒的な殺意に対する行動だった。

 

 

 だが、その攻撃は止められた。

 

 

「な、なっ、なんだ……この機体は」

 

 

 2対の翼の様なものを持つ黒い、黒い機体だった。

 

「どこから……いや、まさかクロスゲートから……はっ!」

 

 

 背後に飛びのく。そして、銃撃で陥没する地面。

 

 何かに銃撃された。だが、その居場所が分からない。

 

 

「この黒い奴だけじゃない、援軍か……

 イレギュラーが多すぎる。此処は……退かねばならないようだ……」

 

 

「待て、待て、ヴェイガン!!! まてえええええ!!!」

 

 手を伸ばす、その命を摘み取ろうと、心臓を握りつぶそうと。

 

 黒いロボットがそれに呼応するかのように同じ動作をした。

 

 

「目的は半分は完了した。所属もバレた以上、これ以上いらぬ情報を与えたくない」

 

 

 チューリップと呼称していた装置の内部にゼハードの機体と残ったバッタが収まるとそれは口を閉じ、沈んて行く。そして、その巨大な蕾が沈み切ったと同時に構造物も消えた。

 

 

 

「待て、行くな! 戻れ、戻れぇえええええええええええ!!!」

 

 

 ただ、無力で空しい男の叫びだけを残して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 




誤字脱字の報告ありがとうございます。

ただ、ちょうど直してる時に書かれたりしたら
なんか気まずいな。と返信してないだけです(1回ありました)


報告ありがとごうざいます。
今回も誤字あります。見つけました。でももう寝ないとまずいので明日、直します


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幕間 インターミッション3『海の旅人』

 

シンは眠っている。しかし起きていた。

 

体力の限界を迎え、搬送中に意識を失ったのは確かだ。

しかし”意識を失った後も意識”は続いていた。

不思議なこともあるものだと考えたが、そもそも自分が不思議の塊である。

しばらく考え、オカルトとリアルが入り混じる硝煙の世界で不思議という単語を

辞書に起こしておくのがナンセンスという奴かもしれない、とシンは

考えを止めた。

いっそ、もう何も考えるのをやめてずっと、こうしていようとすら思う。

 

 

『なぜ、目を覚まさない?』

 

誰かが囁いた。いや、ささやいたというより語り掛けている。

ずっと遠くで、しかし近くに感じる。

戯れに、返事をしてみようとシンは思った。

 

「起きても、やることがないからだ。思い出しちまった。俺の夢はずっと前に終わっていた。平和な夢だった。なんてことない。友達の愛の行方を見守りたかった。

弟と、妹の様な存在だったから。でも、そんな幸せはもうない」

 

 

『戦う理由はある筈だ』

 

 

「憎しみだけだ。憎しみしかない……ダメだとわかってる。でももう俺はきっと、二度とアイツらを許せない。でもそれを2人が望まないのもわかってる。

 だから、こうして何もしないのが一番いい……」

 

 ユリンは優しい子だった。きっと、恨んですらいないかもしれない。当時はずっと、けわしい顔の少年だったフリットもやわらかい表情の老人になっていた。

 彼は乗り越えた。あるいは、乗り越えかけているのだ。

 強い男だ。自分よりはずっと。だから、シンはこうしてこのまま自分を牢獄の様なこの暗闇の中に閉じ込めているのが一番なのだと。

 だが、声の主は語った。

 

 

『だが、お前が何も波を立てなければ

 この世界は終わるだろう。それがお前の使命の筈だ』

 

 

「な、何を……」

 

 

『オムニスフィアを通路とする、

 リミピッドチャンネルで意識を互いに交わす相手に隠し事の必要はない。

 お前もまた、私の存在を理解できる筈だ」

 

「ソムニウム……ラミア。人類の免疫抗体」

 

 

『念、ニュータイプ。人類が超常と定義したもの。

 全ての力はオムニスフィアに通ずる。彼らはそれを持ち出す

 専用の鞄を持つようなものだ。お前は、それを持たない。しかしそれを真似る』

 

 

「あるいは鏡……」

 

 

『我らが免疫である様にお前は帆だ。人類を助けよ。それが使命。

 邪戒思念が日を増すごとに強まっている。目覚め、戦うのだ……

 その魂砕けるまで、すべての終わりに安らぎはある……終わりにしか安らぎはない』

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

「迷子中に拾って協力者になった、マサキさんの話によれば

 魔装機のメカニズムが使われているのは間違いないそうです。特に最後に整備されたと思われる、右腕部は間違いなく彼の乗騎、サイバスターと同質」

 

 

 でも、切り飛ばされたとかそういう事はないそうです。と付け加えて、

 ミスリル作戦部西太平洋戦隊総司令官、大佐。

 テレサ・テスタロッサ(テッサ)はパッド型の端末を目の前の女性、メリッサ・マオ少尉に渡した。

 

 

「よくメリダ島が分かったわね……アイツ、とんでもない迷子だったでしょ。

 アメリカで教えたらイギリスの方にいって、イギリスで教えたらブラジルで……」

 

「そうね。だから、通信機を取り付けて、その予備を5つぐらいあげたの。

 それぐらいしないとダメだと思って……まぁ、案の定だった訳なのだけど」

 

「おうおう、貴方をいつも見つめていたい、っていう情熱的なアプローチだねぇ」

 

 金髪の三枚目、クルツ・ウェーバー軍曹はにやけながら、テッサを見た。

 それにテッサは「ち、ちがいますからね相良さん」と焦りながら対面の宗介に詰め寄った。

 

 

「……そ、それではあれはマサキと同じようにラ・ギアスで作られた兵器なのですか、大佐殿」

 

 

「いえ、彼の知り合いに連絡を取って確認してもらったのですがこの機体の技術は

 ラ・ギアスの技術を参考に派生した近しいもの、という結論に至りました。また、懸念もあります」

 

 

「懸念とは?」

 

 

「負の念というものが渦巻いている。との事です。

 私たちの言い方で言えば呪われている。処分は危険で一先ず補完しておくしかないでしょう」

 

 

 ため息をつきながら、どこか遠い目をするテッサには疲労が濃く映っている。

 宗介はそんな彼女を見つめながら、彼女に言う。

 

 

「大佐殿、提案です。日野に運用させるのはどうでしょう」

 

「……相良さん、根拠は?」

 

「はっ……俺の攻撃により撤退したあのMSの攻撃より日野を守ったのは

 あの黒い機体です。ならば、運用も高い確率で可能なのではと……

 現状の世界情勢で機体を余らせておくのも損です。何より、奴には機体が必要です」

 

 

「彼は戦いたくなくて逃げた筈ですが?」

 

 

「しかし、戦った」

 

 テッサは銀髪の三つ編みの先で鼻先をくすぐると

 端末を操作し、被害レポートという項目を映した。

 

 

「今回の戦いの重軽傷者は1176人。行方不明者は120名。

 うち、83名は相手に誘拐されたものです。そして、死亡者は557名。

 このうち55人は……彼の攻撃の直接的要因、あるいは間接的なものです。これは重軽傷者にも含まれます。彼は……暴走していた。危険です」

 

 

「だが、奴が戦わねばすべてが灰になっていた筈です。

 奴が出撃に要した時間は1分です。

 言い換えれば、わずか1分で83名が誘拐され、500人以上が死に

 1000人以上の被害者が生まれたという事です。

 そして、俺のM9が現場に到着したのは5分33秒」

 

 

 ―――何もしなければ無抵抗の街が灰になるには十分な時間です

 

 

 テッサは目を逸らし、壁際に一度目をやると。

 クルツ、マオと一人ずつ見つめて、宗介の瞳に目を向けた。

 

 

「それはここの誰もが理解しています。問題は安全性の事なのですよ」

 

 

「機体に自爆装置なり爆弾なりをいくらでも取り付ければいい。

 それで足りないなら奴にも。暴走による安全性の問題ならそれで済みます」

 

 

「おいおい、ソースケ! そこまでして俺らがリスクを背負う必要は……」

 

「そうね……でもメリットもある」

 

「マオ姉さんまで! だめだめ! 絶対ダメだよ!? しかも男は狼なんだぜ!」

 

 クルツは断固拒否、という様子でバッテンを腕で作り宗介に突き付ける。

 宗介はそれを無視しながら会話を続ける。

 

 

「厳重な監視体制下に置くなどの条件付きで再考をお願いします、大佐殿」

 

 

「……相良さん、なぜ彼に入れ込むのですか?」

 

 宗介は「個人的なものですが」と前置きをした後に告げた。

 

 

「借りがあるのです。できるならば返したい」

 

 そう一言だけ告げた。

 しばらくきょとんとした顔をした後、テッサはくすくすと笑った。

 

 

■■■■■

 

 

 

大惨事スーパーロボット大戦 3スレ目

 

 

51:学生兵 LIVE

 

すいません、生きてました。

ソムニウムのラミアとかいう人に死ぬまで戦い続けろってそれがお前の使命だ!!

とかいうブラック企業の上司みたいな事言われました

前世でももう少しマシだったぞオイ!?

 

 

52:名無しのハズレ転生者

人類の抗体なのにいう事が癌みたいで草

 

53:名無しのハズレ転生者

メンタルヘルス行にならない強度なのを良いことにムチャ言われてて草

 

54:名無しのハズレ転生者

孤立無援。休息無用。

 

55:名無しのハズレ転生者

てか、イッチ。ずーーーとLIVEつけっぱだぞ。

意識途絶えると普通はきれるんだけどな。寝配信か?

 

 

56:学生兵

 

あ、申し訳ナス。切りました。

 

57:名無しのハズレ転生者

不具合かぁ? 神様、残業だよ

 

58:神

ヴォエ

 

59:女神

ヴォエエエエエエエエ!!!

 

60:天使

すいません、倒れたので運んできます

 

61:名無しのハズレ転生者

ごめんなさい

 

62:名無しのハズレ転生者

謝れるうちは許してくれるよ。謝れるうちはね

 

63:名無しのハズレ転生者

あ、そういえばあのへんな機体は?

 

64:名無しのハズレ転生者

てか、今どこにいんの?

 

65:学生兵

潜水艦らしい。

機体は……操縦席の隙間に読めない言語の日記があってな

荒れる感情のまま書いてるらしくてすげぇ悪筆なんだけど

途中で日本語がでてきて、RayBladeっていう書き込みがあった

 

66:名無しのハズレ転生者

ほーん、レイブレード?

日記の内容は

 

67:学生兵

内乱、鎮圧不可能、滅亡、憎い みたいな

因みにレイじゃなくてライブレードらしい

 

68:名無しのハズレ転生者

機体のカラーに恥じない怨念の塊で草

 

69:名無しのハズレ転生者

でも、新しい機体だね。よかったね☆

 

70:学生兵

二人乗りです……

 

71:名無しのハズレ転生者

はっ?

 

 

72:名無しのハズレ転生者

はっ?

 

 

73:学生兵

テストで乗らされた。プラーナコンバータうんぬんカンヌンの

2人の相乗効果でほにゃらら~とかいうよくわかんないマシンを

僕は1人のりでぜいぜいしながら使います……使います……

 

 

74:名無しのハズレ転生者

 

 

75:名無しのハズレ転生者

よし、自爆して乗り換えるぞ! まちきれねぇな!

 

 

76:名無しのハズレ転生者

機体を損壊させて死にかけると新機体が届くシステムとか斬新ですね

 

 

 

 




余裕があれば誤字確認とかいろいろします。

今日はもう、つかれてるぅ……


因みにライブレードはかつて知り合いに10人で1人以外は
「はっ? 知らん」という反応だったので
掲示板民たちの世界は

「ウィンキーがサイバスターとかの版権で揉めず
 ライブレードを作らなかった世界という事になっています」


私も資料消失してた。なので過分になんか盛って
とりあえず動く、ぐらいの事にします

アガルティア王国は滅んでるという筋でいきます


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平和の祈り、宇宙へ 上

ハズレ転生者専用掲示板 アップデート  Ver 14

――――――――――――――――――――――――――――――――――


・現在、潜在的に進行しているものを
 一部、イベントフラグとして可視化できるようにしました。

・初心者ハズレ転生者に掲示板告知が届くようになりました





90:名無しのハズレ転生者

待ちに待った機能きたな……

 

91:名無しのハズレ転生者

これで犠牲者が減る(確実)

 

92:蒼穹のハズレ転生者

オナニーを意図せず実況してしまう犠牲者は

 

93:名無しのハズレ転生者

確かに君の様な人は増えるかもしれない……

 

 

94:学生兵

俺がガンダムAGEだよ、そこって説明された時も

ユリンちゃん死ぬ直前だったな。もう少し早くあればよかったんだが仕方ないね

 

95:名無しのハズレ転生者

悲しいなぁ……

 

96:赤肩のハズレ転生者

まさか同期のAGEニキだったとはな

全然分からなかったわ。まぁ、そりゃそうか。

 

97:名無しのハズレ転生者

ほーん、イッチってどんな話してたん?

 

98:赤肩のハズレ転生者

荒れて消える雑談スレがある前だったからな

最初は色々な事喋ってたけどすぐにキルボックスをどこに作ったとか

ヴェイガン撃墜数カウントするだけのbotになったよ。でも急に消えたし死んだかと

 

99:名無しのハズレ転生者

怖っ……

 

 

100:学生兵

心は死んでたよ。機体と操縦技術補う方法とか

キルボックスの作り方を考えるのとヴェイガン始末するだけが生きがい

今もこの時代の日常を平和に過ごした記憶がなければやばかったかもなぁ

 

101:名無しのハズレ転生者

ランボーみたいな壊れ方やんけ

 

102:学生兵

明日、起きたら今の記憶をなくしてそういう風に戻ってるかもしれない

まぁ、だから目を覚ましたくはなかったんだけどしゃーない。しゃーないわ

さて、飯も食ったし今日も始めるか。ちょくちょく実況する

 

■■■■■

 

 

 

「どうだ?」

 

 

「どうだと言われてもいつも通りだけど

 この赤い玉に触ってれば動くぞ。思い通りに……はい、右手上げて……回します」

 

コックピットをあけたまま、機体の腕をぐるぐると回す。

 

 

「俺も誰もそれで動かせていないから聞いている。

 それにひどく気持ち悪くなった。2,3日寝込んだ奴もいる」

 

 

 何かをメモしながらそういうと、宗介の腕の時計からアラームが鳴り響く。

 

 

「むっ、時間か。今日はこれで終わりだがどうだ、体の様子は?」

 

 

「疲労はあるけどまだ機体は動かせる。

 今日はスクワットとか石を動かせとかこの演習場でやらされてねぇからな」

 

 

「アーバレストとの戦闘演習の時は限界がもっと短かったぞ」

 

 

「あれはすげぇ激しい動きしてたろ。俺も、お前も……違うか?」

 

 

 肯定だ、と言いながら宗介はペンを走らせ、サインを記入した。

 

 

「操縦桿もなく意識で動かすか、想像もできんな。

 ラムダドライバよりずっとオカルトに近い。いや、呪われているともすればそのものだ」

 

 

「本音を言えばこうして近づきたくもないか?」

 

 

「肯定だ。こんなものは兵器として信用できん。あのポンコツと同じだ。そもそもだ……」

 

 

 ブレーキが壊れ方のようにアーバレストとラムダドライバへの愚痴が始まる。

 もともとの不機嫌に見える仏頂面をさらに不機嫌な顔にして語る宗介の言葉を

 シンは適度に「うん」とか「そうだな」と相槌を打ちつつ聞き流す。

 

 

(こうして目覚めた以上は戦う。俺は決めた)

 

 

 

 シンは思う。ヴェイガンと協力している以上、木蓮もヴェイガンであると。

 ヴェイガンがアマルガムとかいうやつらと協力するならそいつらもヴェイガンであるし

 バンカー、ジオンも水面下で協力関係にあるなら、あいつらもヴェイガンなのだ。

 ヴァースは和解の意思を見せている奴らがいる。ギリギリ除いてやってもいい。

 でもほら、世界は邪悪(ヴェイガン)に満ちている。少し、キレイにすべきだ。

 そう考えるとやる気が湧いてくる。

 

 

全て、殺す。殺しつくし滅ぼす。ヴェイガンは全滅だ 

 

 

 

「ふふっ……」

 

 

憎しみに呼応するように、ライブレードの眼が一瞬、赤く輝いた。

 

 

 

「そういえば、諜報部から連絡があった。 

 EOT(エクストラ・オーバー・テクノロジーの略称)である

 Alien StarShip-1を改修した母艦が動きを見せた。

 解析が進み、今はEOTから外れかけていて、マクロスと呼称する船なのだがアーガマと合流した」

 

 

「……お前らの組織、ミスリルってあの艦長さんは説明してくれたが

 秘密の傭兵部隊なんだろ。どうするんだ。資金提供元の意向次第か?」

 

 

「ダナンは潜水艦で、宇宙には上がれずアーガマに追従はできん。

 だが、ダナンの後継機が破嵐財閥の支援を受けて建造中であり、宇宙に行くという話もある

 ともかく、眉唾な話はひと先ず棚上げだ。俺たちは一度、そこでアーガマと合流する」

 

「理由は?」

 

 

「護衛だ。敵が狙っているという報告はずっとあったしな。

 それに、宇宙に行くならいけばいい。俺たちとしてはさっさと宇宙に上がってくれた方が助かる」

 

 

 最も、俺たちが護衛するのはマクロスではない。

 そんな前置きをして、相良は携帯端末を日野に投げ渡した。

 

 

 

「……おいおい、何やってんだ」

 

 

 

アセイラム姫、生存か!? 数日後、記者会見

 

 

 

 そこには多数のニュースサイトにリークという名目で

 写真と共に記事が上がっていた。この時代、この手の情報の伝わりは早い。

 SNSもすごい流れになっていた。

 

 

 

「マクロスは中立区。いわば、この星で唯一、政府からも遠い場所だ。

 そこからの発言ともなれば、誰も無視はできない。

 マクロスは未確認の対異星人部隊として中立を真っ先に宣言していたのだからヴァースも驚いているだろう」

 

 

「そこら中から狙われるぞ!!! これじゃ!

 こんなの中立を投げ捨てたと同じだぞ! 」

 

 

「地球圏の紛争には関与しないとは言ったが見捨てるとは言っていない。

 最高のタイミングでマクロスというカードを切った。なかなか優秀な男だ……」

 

 

■■■■■

 

 

110:名無しのハズレ転生者

手の込んだ自殺かな?

 

111:名無しのハズレ転生者

進宙式を利用して

生存と平和を宣言するとはたまげたなぁ……

 

112:名無しのハズレ転生者

メンヘライッチと

相棒のメンヘラ大好きライブレード

そして、それに助けられたアセイラム姫はキチガイ

 

 

113:名無しのハズレ転生者

お前にかかわると皆、狂っていく!!

いなくなれ!!(KMYBDN)

 

114:学生兵

なんでや!!!

狂ってるのは俺だけでしょ!!!!

 

 

115:名無しのハズレ転生者

自認は草

 

 

116:名無しのハズレ転生者

マクロスくんの周りは敵だらけになりそう

 

 

 

 

 

 

 




7000ぐらいになりそうだけど
微妙な長さだし少し考えたいので分割した前編のみ

今すぐ寝て、一段階のアラームで目覚め
奇跡的に早起きできたら朝に2話。無理でそのまま出かけたら夜で


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平和の祈り、宇宙へ 下

 

 

「ひゅー、さすが地球連邦軍特別宇宙軍(SDF)なんて名前かかげてるだけはある。

 最高のショーだったぜ」

 

 と、衛星回線を勝手に拝借してるテレビを見ながらクルツ。

 映っているのはマクロスの進宙式。簡単に言えば起動を祝うパーティである。

 

 

「だな、本当すごかった。乱入してきた奴もなかなかだったよな!」

 

 

 と、シンが興奮気味に言えば、

 

「分からん。だが、良い腕をしていた……無名という事はないだろう」

 

 宗介は興味深そうにそう答えた。

 

 

「男組はああいうの好きねぇ、私はさっぱりよ……てか、クルツ!

 アンタ、さんざん敵にしてたでしょ! なんなのその距離は!」

 

 

 どことなく疎外感を感じたマオがクルツに八つ当たり気味に言う。

 

 

「おいおい、姉さん。俺はシンの安定と機体の危険性を問題視しただけで 

 こいつに別に恨みがあるわけじゃねぇんだぜ? 別に険悪になる必要もねぇよ。

 機体に自爆装置は積んでも、本人に爆弾巻くのは反対に入れたしな」

 

 

「え、俺。まじで爆弾巻かれる所だったの?」

 

 

「肯定だ。頸椎と胸部、心臓付近。足、腕の4か所が提案した。確実性がある」

 

 

「確実は確実でも死ぬ奴でしょ!!」

 

 

スパーーーーーーン

 

 

「痛いぞ、千鳥」

 

 

「あら、カナメ。おはよう。

 どうかしたの? 進宙式ならこの馬鹿3人の前のテレビでやってるけど」

 

「いえ、そっちは別に……

 ただ、こっちのリークの方が気になって」

 

 そういってカナメが取り出したのは

 少し前に宗介がシンに見せたものと同じアセイラム姫の記事である。

 

 

「あぁ、アセイラム姫のスピーチが行われるっていうあの……まぁ、事実でしょうけどね」

 

 

 マオは考える。一斉に他紙とソーシャルメディアに情報が拡散された所から、

 誰かしらの介入があったのは間違いない。だが、SDFがそれを飲むとは思えない。

 

 

「私、パレードは見に行けなかったのでこっちは見たいなぁ、なんて……どう、やってる?」

 

 

「いや、まだだ。だがおそらく平和な会見といかんぞ」

 

 

「え、どうしてよ?」

 

 

「軌道上に動きがある。最低でも2つは揚陸城……奴の戦略基地が

 5時間以内にはマクロスの直上に到達すると思われている」

 

 

 かなめはそれを聞いて、どこか悲しそうな顔をする。

 

 

「平和一番望む人が、どうしてここまでそれを邪魔されるのかしら……」

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「自分で提案したこととはいえ、よく了承してくれましたな。なぜ? とお聞きしても」

 

 

 フリット・アスノはマクロスのブリッジから進宙式の会場を見下ろす、

 艦長ブルーノ・J・グローバルにそう問いかけた。

 

 

「SDF。そして、マクロスは対エアロゲイター。

 あるいは、今は銀河のかなたで宇宙怪獣と戦う、タシロ提督を補佐する。

 それが使命でした。そう思っていた。でも、実の所、私は逃げたかったのでしょうな」

 

 

「逃げたかった?」

 

 

「あらゆる争いが満ちるこの星より、逃げたかった。

 もう私にはかつて、貴方の下で使命に燃えていた頃の私ではないのでしょう……ですが」

 

 

 懐から出したパイプを咥え、空を仰いだ。

 

 

「答えになるかわかりませんが、今、この星と宇宙の為に戦う若い力を見て、思ったのです。 

 SDFを、マクロスを逃げ道にしてはならない。戦わねばならない。そう思ったのです」

 

 

 

―――この星の為に

 

 

 ふぅーと、息を吐き出し。

 グローバルは振り返って、フリットを見た。

 

 

「ですが、会見は当初リークした通り。3時間後。

 まずは今から行う、進宙式を見に来た5万人以上のものたちの送迎という名の避難。

 それを優先させていただくことになるでしょう。よろしいでしょうか、フリット中将」

 

 

「もはや、軍籍ははく奪されて久しい。フリットで構わん」

 

 

「あこがれていた。そんなあなたにそんな軽口は言えませんよ」

 

 

 そういって、グローバルはふっと笑みを浮かべた。

 

 

「艦長、ここは禁煙ですよ」

 

 

「むっ……」

 

 

作業に没頭していたオペレータの一言に、グローバルは困ったように唸った。

 

 

■■■■■

 

 

 

200:学生兵

はえー、作戦室で見てるんだけど

エヴァくんってすげぇシールドすねぇ。3機でマスドライバー防ぎましたよ

 

201:名無しのハズレ転生者

のんきに鑑賞してて草

 

202:学生兵

全長、俺の機体の3分の1ぐらいのアーバレストとかいうASにボコされてる

俺がなんかできるわけないだろ!!!! 馬鹿にしてるのか!

 

203:名無しのハズレ転生者

相良くんまじでプロで草

 

204:名無しのハズレ転生者

時速100キロが出るパワーを持つ脚部を持つし

陸戦機動力だけならダントツやなぁ、ASくん

 

205:名無しのハズレ転生者

ペイント弾かなんかでやったと思うけど1回ぐらい勝ったの?

 

206:学生兵

1回腕撃ったよ

 

207:名無しのハズレ転生者

全敗で草

 

208:名無しのハズレ転生者

で、進宙式っていつなの

 

209:学生兵

今見てる。そろそろ終わるんだけど

人いっぱい集まって盛り上がってる所でジオンくんが

「マクロス渡せよ、あくしろ! マスドライバー撃つぞ!」って

今、エヴァに防がれたけど

 

210:名無しのハズレ転生者

原作とちがって撃つんすね

 

211:名無しのハズレ転生者

いろんな勢力入り混じってるし、

明確に敵だと示すことでジオンとしては安全を得ようとしたんじゃね

 

212:名無しのハズレ転生者

あれ、でもそろそろブービートラップが

 

213:学生兵

あ、マクロスがなんか主砲そらに撃ったわ

 

 

214:名無しのハズレ転生者

ブービートラップやな。エアロゲイターが自分以外で

強大な戦力を持つ宇宙人を察知したら砲撃するように細工して地球に落とした

今頃宇宙でゼントーディっていう巨人型宇宙人の船が沈んでる。これで敵対+1や

 

 

215:名無しのハズレ転生者

そういや、直上にヴァースもきてなかった

最悪のコンボやんけ

 

 

216:学生兵

ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛

 

 

■■■■■

 

 

 

「デフォールド反応!! 敵機来ます」

 

 

「クローディアくん、民間人の避難、マクロスへの収容状況は?」

 

 

 グローバル艦長は冷や汗を額に浮かべながらも、

 きわめて冷静に装った。不安はほかの人物にも伝播するからだ。

 

 

「エヴァ3機によるマスドライバー作戦後も継続しています。

 まもなく100%に到達します。あと数分ください」

 

「アームド1、アームド2にも連絡。

 本艦の反応路の出力もあげろ。予定よりかなり早いがマクロスを発進する。

 ……アセイラム姫。すまないが……計画は中止に」

 

 

「ステージにまだ、マイクとカメラはありますか?

 損壊状態をすぐに調べていただきたいのです」

 

 

「姫様、それは今すぐ私が確認してきます!」

 

 

 そういってエデルリッゾはその場を離れた。

 

 

「姫、それは無謀が過ぎますぞ」

 

 

「無謀、結構。命を賭さねば手に入らぬものもあります。

 そして、今という期を逃せばそれは永遠に無へと帰すでしょう。

 ……マクロスはただ、中立の存在として発言に信頼感を与えてくれました、十分です。では」

 

 

 ゆっくりと優雅にドレスをなびかせて進んでいく、アセイラム姫。

 グローバルはその姿にどこか、覚悟と共に戦地へ赴き帰ってこなかった者たちと同じ背を見た。

 

「艦長、いいのですか?」

 

 

「彼女は動かん。覚悟したものとはそういうものだ。

 己が使命のために命を賭ける。それは私にはついぞできなかった事かもしれん」

 

 

「分かりました……艦長!? さらに降下してきます。揚陸城です」

 

 

「くっ! 準備、急がせろ!!」

 

 

 

■■■■■

 

 

「計算しましたが、ダナンの航行スピードでは合流は厳しいでしょう。

 近隣の海域をマクロスの情報を集めようと集まってきていた潜水艦などが

 多かった、というのが一番の問題です。和平の可能性を残すために

 アセイラム姫を守るつもりでしたが……こちらは不可能と判断しマクロスを防衛します」

 

 

 スクリーンに弾道ミサイルにM9とアーバレストを搭載し射出する図が表示される。

 

 

「エアロゲイターの脅威は理解していますが、

 現状。ダナンは地上戦力しか対処できません。急な変更になりますがよろしくお願いします。

 ライブレードは……どうしましょう。正直、扱いに悩んでいる部分も」

 

 

「はっ、大佐殿。発言の許可を頂けますか」

 

 

「はい、なんでしょう相良さん?」

 

 

「ライブレードがあのサイバスターに近い機体ならば、

 サイバード形態に近しいモードがあるのでは? あれなら、姫の防衛も間に合います」

 

 

「なるほど……どうですか、日野さん?」

 

 

「相良」

 

 

「なんだ」

 

 

「ライブレードは意思で動かす。五体をリンクさせるというのに近いかもしれん。

 んで、相良……人がどうやって鳥になるんだ? 教えてくれるか。参考にする」

 

 

「…………」

 

 

 だらだらだらと冷や汗を流しながら、相良宗介はその場で考え込んだ。

 

 

「わ、わからん。非現実的だ……」

 

 

「俺も、そう思う……空はこう、天使とか悪魔のパタパタするイメージのおかげでなんとか」

 

 

 鳥ってどうするんだろう。

 鳥、人が鳥になる時はどうするのか。

 作戦室が困惑で満ちた。

 

 

■■■■■ 

 

 

 

 

233:学生兵

という事で今、悩んでる

 

 

234:名無しのハズレ転生者

そら悩むわ。

 

235:名無しのハズレ転生者

貝になりたいね……

 

236:名無しのハズレ転生者

えびぃ!

 

237:学生兵

翼はあるけど鳥にはなれないよ!!

 

238:名無しのハズレ転生者

寝るか、諦めよう

 

239:赤肩のハズレ転生者

まさにそれでいいんじゃね。

ただし仰向けじゃなくてうつぶせ

 

 

240:名無しのハズレ転生者

あー、なるほど……確かにそれっぽい

 

241:学生兵

とりあえず、それでやってみるか……

今、やってみますって言ってちょっとだけ浮上してくれって頼んだわ

 

 

■■■■■ 

 

 

 

「姫様、カメラは動きそうです。

 少し遠くですでに戦闘が始まっています。

 また、ザーツバルム様の降下を許してしまったと

 クルーテオ様の連絡が……来ます、急ぎましょう!」

 

 

「ふふ、強くなりましたね。では、はじめましょう」

 

 

 とんとんとマイクを叩いて音が響く確認をすると、

 エデルリッゾが3からいきます! と指を掲げた。

 

 

「3,2,1、0!」

 

 

■■■■■ 

 

 

 

「中口径荷電粒子ビーム砲×2

 小口径レーザー対人機銃×2

 小口径レーザー対空機銃×2

 近接戦闘用自己誘導小型ミサイル×24

 近接戦闘用多弾頭大型ミサイル×4 の武装を確認」

 

 

『了解、分析に感謝する。マスタング2-2

 敵は機動力に難がある。避難は終わった。建造物を最大限に利用せよ』

 

 

「っていってもよぉ、艦長。 

 船の数もどんどん増えてる。物量で押し負けるぜ! 援軍はねえのか!」

 

 

 そういってブライト艦長に獣戦機隊、ダンクーガのパイロットの忍はくってかかる。

 

 

『マクロスの準備ができ次第、我らも撤退予定だ。

 トゥアハー・デ・ダナンの援護もある。それまで耐えてくれ」

 

 

「いつまでだよ、ブライトさんよぉ!! すげぇ数だし

 バッタみたいにぴょんぴょん跳ねてて狙いずらい……」

 

 

「男が泣きごと言ってんじゃないよ、忍!」

 

 

「何、誰が泣きごとだぁ!?」

 

 

『こちら、マスタング2-3。

 揚陸城が落下してくる! アルドノアが来るぞ! 伊奈帆、迎撃できるか!』

 

 

「スレイン、対象の情報をできるだけ多く。どの揚陸城だ?」

 

 

『ザーツバルム伯爵だ。ディオスクリアはコアロボットと5機のロボットが合体している。

 使用能力も複数。全ては不明だが、僕は1つ知っている。次元バリアだ

 接触した攻撃やものを文字通り、飛ばして消してしまう。つまり近寄るのは危険だ』

 

 

「……了解。艦長、敵が到着次第飽和攻撃を。

 バリアがすべてを覆っているとは限りません。足元を含めてスキャンを」

 

 

 最も、計画が鈍足化している以上。ヴァース帝国は地球を

 一気に制圧するために兵力を強化している可能性もある。

 その場合、弱点など当に消え失せている可能性もあるといなほは思った。

 

 

(加速度的に増えていく謎の敵にアルドノア。

 アーガマの部隊だけじゃなくグラン・ガランのオーラバトラー。

 そして、マクロスの可変戦闘機バルキリー。それでもなお、この兵力さ。 

 僕らは何もできないかもしれない……)

 

 

 静かに蓄積していく疲労に、すまし動かぬ表情にすら汗の粒が浮かんでいく。

 その瞬間、けたたましい轟音と共に漆黒の体躯を持つ

 巨大なヴァースの機動兵器。アルドノアが降り立つ。

 

 

■■■■■ 

 

 

 

「ザーツバルム卿……!」

 

 

「地球人、偽物をしたて我らが結束を崩そうとは……許せん!!

 その存在ごと消してやろう!!」

 

 ディオスクリアが展開した、次元バリアが急速に迫っていく。

 

 

「姫様!」

 

 エデルリッゾがアセイラム姫の前に立った。

 無駄だとわかっていても、それでもと。

 その中で、アセイラム姫は目を見開く、前を見つめていた。

 

 

「もう、何も諦めない……どんな時でも私は……平和を叫び続ける」

 

 

 

 

これが、私の戦争の終わらせ方なのだから!

 

 

「ざれごとぉ! 消えろぉ!  ……なにぃ!!」

 

 

 急速に飛来した何かが”衝突”し、ディオスクリアを大きく後退させた。

 

 

 

 

■■■■■ 

 

 

 

 

「馬鹿な!! 接触したものを消滅させる力場だぞ!!」

 

 

 

「やれるものだな……俺はラムダドライバを起動できるか不安だった」

 

 

『肯定。貴方は何度も起動にも失敗をしています』

 

 

「口の減らない奴だ。日野、まだ持つか!」

 

 

「俺がお前の意識の増幅役にもされてんだぞ。

 長く持つと思ってるの!? 無理だよ!! ここまで飛ぶのさえしんどかったよ!」

 

 

「泣き言をいうな。あの姫様の演説が終わるまで何度でもだ。

 最初に助けたのはお前だ。最後までやり切れ」

 

「くそがよぉ……いくぞぉ!」

 

 

 飛行形態に変形したライブレードに”またがった”アーバレストが

 斥力力場を展開しディオスクリアに再び衝突する。

 

 

「こ、後退させられる……! なぜだ!」

 

 

「悪いが物理は基礎しか理解していない。

 神か仏か。あるいは妖精の仕業とでも思っておけ。オカルトだ」

 

 

 

「あれは……」

 

 

 アセイラム姫はその様子を見上げた。

 

 そして、不思議と理解した。

 

 

「ありがとう」

 

 

 三度目の奇跡に感謝しながら、マイクをとった。

 

 

 

 

―――私は、ヴァース帝国の第一皇女。皇帝レイレガリアの孫娘

 

「アセイラム・ヴァース・アリューシア。

 この顔、この声を記憶の奥底に葬っていたものたちは今、この瞬間のみ不義を許しましょう。

 それは、ザーツバルム。貴方もです。わかりますか……」

 

 

「姫の顔をして、我らを語るな! 姫を殺した地球人が」

 

 

 

「……火星の民よ、騎士よ。聞きなさい。

 私を助けてくれたのは地球人でした。よく考えなさい。

 あの場、地球が私を殺して得があったのか。無論、かつての大戦。

 その憎しみを今も抱くものもいる筈。ですが、彼らも理解はしているはずです 

 私を殺し、恨みを晴らしても火星の憎しみが地球を焼くことを」

 

 

「猿に、理性などあるもの……ぬぉ!」

 

 

「ならば、お前は曲芸師か。ずいぶんお粗末なタップダンスだな」

 

 

 三度目の衝突。さんざん苦労したものをたやすく使える事に興が乗ったのか。

 宗介はどこか楽しそうだった。

 

 

(煽るな煽るな煽るなぁーーー! むりぃーーー! 

 プラーナ全部すわれちゃうーーー! 俺の精神ポイントあとなんぼですかぁーーー!)

 

 

 

「そう、理解したものも多い筈。私を殺そうとする理由があるのはむしろ、火星側。

 領土を欲し、戦火を欲し。地球を傘下に収めたいという欲心を持った軌道騎士の一部。

 それが私を狙ったのです……違うというならば、今すぐ矛を収めなさい」

 

 

「さえずる……うおおおおおお!!」

 

 

「歌を歌おうとしたのか? アル、採点してやれ」

 

 

『0点です。知性を感じられない歌詞です。

 何より声量不足。よほどだらしない生活を送ってきたのでしょう』

 

 

「あ、見えた。残り精神ポイント……2!? 2で何分!? ねぇ!」

 

「知らん。無くなっても絞り出せ」

 

「ミイラになるわ!!!」

 

 

「アセイラム・ヴァース・アリューシアの名において命じます……軌道騎士よ、目覚めよ!」 

  

 

「い、意識が遠く……てか、光が……いや、これ光ってるな!?」

 

 

■■■■■ 

 

 

 

「浮上する時間はない………クローディア君! 本艦はこれより空間転移に入る!」

 

 

「まだテストも済んでいません。危険ですわ!」

 

「このままでは全滅する。まずは敵の意表突く。

 目標、衛星軌道上M203ポイント! 島の上空でフォールドし敵陣を叩く! 急げ!

 未沙くん、通達を急げ!」

 

「りょ、了解。デルタ1より後方のリーンホースJrおよび各艦へ。これより衛星軌道上へ空間転移を行い、敵主力部隊と叩きます範囲内に……入りました!」

 

 

「艦長、姫と従者の方の近くで戦闘が! 不明2機も確認」

 

 

「敵と戦っているならば味方と識別する!

 オープン回線でフォールドの事を伝えて2人も回収させろ!

 範囲を少し伸ばせ! ついでにアルドノアも半分だけ運んでやろう!

 全艦、緊急フォールド突入!」

 

 

■■■■■ 

 

 

 

250:学生兵

というわけで宇宙に吹っ飛んで急いで2人回収したんだけど、

しっかり怨念にやられて寝込んでるよ。

火星人たちにサンドバックかなぁ?

 

251:名無しのハズレ転生者

バレたらしのう。それまで隠せ

 

252:名無しのハズレ転生者

急いで地球に戻ろう、イッチくん!

 

253:学生兵

僕も寝込んでるんですが、それは

相殺になりませんか?

 

 

 

254:名無しのハズレ転生者

所で緊急フォールドに巻き込んでアルドノア粉砕するのやばいでしょ。

ガオン!じゃん。

 

 

 

 




誤字脱字と修正をしたんですけど

まだありそうですし完結させやすいように展開もいじるかもしれませぬ

明日帰ってきたらシナリオマップ的なのを少し引きます


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幕間 インターミッション4 『永遠の囚人』

 

 

300:学生兵

俺もついに強化パーツデビューしました

ザーツバルムっていう火星人型の補助電池です

 

 

301:名無しのハズレ転生者

 

302:名無しのハズレ転生者

いや、草

 

303:名無しのハズレ転生者

フォールドに巻き込まれて機体大破したんやろなぁ

とは思ってたけど電池扱いは草

 

304:名無しのハズレ転生者

捕虜への扱いは色々問題になるだろ!!

 

 

305:学生兵

ヴァースは勝手に攻めてきたからなぁ

いまいち、扱いが難しいんだけど公式的には戦争してる事にはなってない

実際、まだ全く話聞かれないけど外交メインで攻撃もしてないしなこっち

よって、ザーツバルムは人権はく奪強化パーツ扱いでおk

 

306:名無しのハズレ転生者

とんでもねぇ暴論で草

ところで、今はどうしてんの

 

307:学生兵

数回出撃して寝込んでるよ☆

 

■■■■■

 

 

 マクロスの格納庫は中々の大きさである。

 元はエアロゲイターが敵国の技術を得るために

 鹵獲し改造した別の敵の船ではという予想が立てられている。推定では巨人型だと言われているが

 実際にそこまで多い存在が地球外にいるのか、というのは想像できない。

 いろいろと考えてみたが、そもそもSFを読んだことがあるからその想像力を養えるというわけでもない。

 大人しく、未知に白旗を振って着陸態勢に入る。

 搬入口はバルキリー隊の為に増設された通常口ではなく別の場所を使う。

 バトロイド型のバルキリー、全長12.68mが通っても余裕であるその場所は、

 エアロゲイターの機動兵器の出入り口だったと考えられるが使えるなら問題はない。

 といっても30mをこえるライブレードともなるとそこそこ苦労はするのだが……。

 

 

 

『ライブレード、整備を行う機体が多く少し渋滞気味だ。

 フルメンテは受けたばかりだし変形して帰還してくれ」

 

 

「えぇ……あれはなんかこう。苦労するんだけどなぁ

 うつ伏せうつ伏せって考えてなんとか変形するけどまだ少し時間かかるしな……」

 

 

「もごぉ! もごぉ!」

 

 

「あ、おじさんトイレだって? まいったなぁ。

 麻酔切れちゃって起きたからめんどくさいや(ハイライトの消えた眼)」

 

 

「ピィ……」

 

 ザーツバルム、もと軌道騎士である彼はフォールドで分割して破壊された機体と共に

 彼らの元へつれてこられ、捕縛された。以降は

 

《地球人への恨みが根深く、使えるのではないか?》

 

 という宗介の提案により戦闘のたびに副操縦席に

 気絶させたうえで簀巻きにして置かれている。

 

 

「大丈夫、君はまだヴェイガン確定じゃないから殺さないよ

 でも世界の平和を奪い幸せを破壊するのはヴェイガンだから君は半ヴェイガンだよ

 全ヴェイガン確定したら容赦なく、宇宙空間に投げるからその時はよろしくねぇ……」

 

 

 

「もがぁああああああ。もががああああああ!!(助けてくれええええええ! こいつは狂ってるぅうう!)」

 

 

 変形、減速しつつゆっくりと入口へ入る。接地したのを確認し、機体の出力を切る。

 

 

「今日はメンテの機体が多くて偵察も一人だったからつかれたぁ! かーえろ!」

 

 

 バタン

 

 

■■■■■

 

 

 

『生体エネルギーであるプラーナ。それは、オーラとは似て非なる力ですわ」

 

 グラン・ガランの主、青髪の女王シーラ・ラパーナはそういった。

 

『オーラはいわば、心の強い意志によって発せられる力。

 しかしプラーナは心の力そのもの。使えば疲労してしまう。オーラコンバータでは……』

 

「ふむ……ギリアムくん、イングラムくん。どう思う?」

 

 

「艦長、こうなるとおそらく他の動力で補う事は不可能だろう。

 彼に適度な休息を与えつつ、戦うのが得策だろう。後はGストーンか?」

 

 ギリアムがイングラムにそう問いかけると

 しばらく考えた後に、イングラムは「あぁ」とうなずいた。

 

 

「精神と密接に関係するとなると、宇宙開発機構が持つGパワー……

 つまり、Gストーンとそれを触媒にしたGSライド。それが可能性があるがこれらは彼らの独占技術」

 

 

「ふむ、ではしばらくは適度な休憩を入れて貰うしかないか……。

 マクロスの出力問題はどうかね、クローディアくん」

 

 

「デフォールド後、フォールドシステムの消失の確認後。

 浮上、航行用の重力制御システムが甲板を突き破って飛び出しました。 

 回収はしましたが、同じことが起きるだろうと思われ対策を考えています。

 また、反応炉の大部分を推進部に取られ出力は低下しています」

 

「いやあ……ひどい艦だなあ……まいった」

 

 と、グローバルが愚痴をこぼせば

 

「拾った物を使うからです」

 

 

とオペレーターの未沙がそう返した。

 

 

「いや、全くその通りだ……」

 

 

「ただ、艦長。こちらの場合はなんとかなりそうですわ。

 現在、アセイラム姫が協力を申し出てくれましたので」

 

 アセイラム姫は一歩前に出た。

 

 

「はい、現在。出力を補うために

 デューカリオンの協力の元、

 ディオスクリアのアルドノアドライブの一部を移植中です」

 

 

「か、火星の秘匿技術をよろしいのですかな?」

 

 

「構いません。マクロスは対エアロゲイター戦のための兵器。

 地球と火星には関係ない機体です。何より、ご協力をしてくださいましたので」

 

 にこっと笑顔をグローバルに向けると彼はパイプを咥えてため息をついた。

 

 

「こりゃあ、しっかり姫を火星にお返ししないとですなぁ……」

 

 

「艦長、ここは禁煙です!」

 

 

「分かっとる。咥えているだけだ」

 

 

 

■■■■■

 

 

「とりあえず、他に身体的異常はないわ。

 でも点滴もう1本と今日明日休みなさい、と先生がおっしゃったわ」

 

 

 ベッドの上のシンにそういったのはクスハ。

 今は看護服に身を包んでいる。

 

 

「そうする。すごく疲れてる……。

 クスハちゃんも戦闘要員と看護兵を兼任とか大変だな……」

 

 

「私は進路もこっちを志望してたから大丈夫。

 むしろ、その練習になってると思えば」

 

 

「俺にはできん事だ。素直に尊敬するよ。終戦後は寝て過ごしたい」

 

 

「アーガマのメンバーでもかなり忙しい人生を送ってると思うのだけど、

 その人からそういう言葉が出てくるのは意外ね……所でさっきから何を見てるの」

 

 

 手の中で携帯端末を操作しながら、スクロールを繰り返すシンに

 怪訝な顔でクスハが問いかける。

 

 

「俺が街を守るために街でぶっぱなして死んだ、負傷した人のリスト。

 写真のデータは自室のパソコン。多いからいつもこうやって眺めてる」

 

 

 ―――忘れていいもんじゃないからな。

 

 

「ゼハードは街をすべて灰にするつもりで、

 俺はそれを防ぐために命を取捨選択した。

 間違いなく、悪の方面の人間だよ。だから機体も黒いの」

 

 

 それは……と言葉を出した所でクスハは言葉がつまってしまった。

 自分にはそんな経験はなかった。

 しばらくして、クスハは端末を取り上げて電源を切った。

 

 

「あっ」

 

 

「せめて、今日は頭も心も休めて……お願い」

 

 

 端末を差し出しながら泣きそうな顔で彼女は言う。

 シンは瞼を閉じ、何かを考えるように数分唸ってから……。

 

 

「分かりました、クスハ先生。今日は休みます

 なので、点滴の交換もお願いします」

 

 と、苦笑を浮かべながら端末を受け取った。

 クスハはその返答に「はい!」とはじけるような笑顔を浮かべた。

 

 

■■■■■

 

 

 

「節約しながら動いてた筈なんだけどなぁ……」

 

 

 夜間シフトに切り替わり、照明の明度が落ちた廊下を歩く。

 グローバルの指示らしい。民間人も多く、なるべく朝と夜のリズムを保つことで、

 少しでもストレスの軽減をしようという事なのかもしれない。

 噂によると、市街地の建設もマクロスに寄贈されているカッペとかいう土木マシンで行われているらしい。

 

(俺は見てないけど)

 

 そう、見ていない。忙しかったから。

 

(俺は見てないけど!)

 

 修理と移動場所を決める会議の間はフル偵察任務だったので見ていない。

 

「頭痛がする。吐き気もだ。めまいも加わり、ディオ様の気持ちが良くわかる

 彼氏持ちの女の子に付き添い頼むのも悪いと感じたからとか見栄を張るべきじゃなかった」

 

 ガラスに手をあてて、外を見ると黒い闇の中に人影が流れる。

 いや、何かに流されるように。あるいは時にそれに逆らうように。

 その動きは躍るかの様と表現すると適切なのかもしれない。

 

 

(ライブレードに乗ってから、ああいうものがはっきりとわかるようになった。

 あれは宇宙を、いや、世界を漂う人の魂。死霊……負の念だ)

 

 

 ライブレードはあれを食う。いや、その表現は正しくない。

 取り込んだ彼らの絶望の嘆きを糧にして、それを生み出した。

 戦い続けようとするものたちを殲滅する。

 しかし、絶望の中で死んだ死霊の声は際限などない。

 

 痛い。苦しい。時にはお前のせいだと叫び続ける。

 

 その中でなお、自我を保つものでしか扱えない。呪われた機体。

 

 

(お似合いだ。実に。できれば末永く付き合いたいね)

 

 

 

バッドエンドまであとライブレード2回撃墜だにょ~☆

バッドエンドまであと機体破壊2つだにょ~☆

 

 

「ふふふっ……こわいこわい。こわい(涙目) 

 ……ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛」

  

 

 ガラスにはりつくように項垂れる。

 世界の行く手は他の人に委ねられてるだろうが、

 世界の終わりは自分に委ねられていた。あまりにもハズレすぎる。

 

 

「…………あいつらとつながった時の間隔。

 ウルフさんを、って言ったな。俺は。そうか、死んだか……。

 グルーデックさんもいないんだろうな。フリットとは、もう年齢が離れすぎたし」

 

 

 体はここにあるのに、魂の深い所はいまだ、過去に囚われたままだった。

 

 

「死んでも死にきれない、ヴェイガン。お前たちを殺し尽くすまでは……」

 

 

 シンは宇宙を彷徨う魂たちを見つめた。思い出してからたまに許してほしい、と思う時はある。

 だが、そんな言葉は口が裂けてもいえないのだ。

 どの口が「俺が平和を作るだの」「お前たちが幸せになれる未来を創るだの」

 偉そうなことを言ったんだと思ってしまう。あの頃は、自分が世界に選ばれた気がして、

 勢いだけで口にしてしまった。嘘ではない、夢だった。それは間違いない。

 

「もう叶わない、夢か……」

 

 平和の夢を喪った。だからこそ、平和の夢を追う少女を護り続けた。

 遠ざかる意識の中で空に向かって砕けた夢のかけらを探すように、光に手を伸ばす。

 だけど、何もできなかった自分はそんな権利すらないと彼は思った。

 光をさけるように握り込んだ拳には掬った闇だけが渦巻いている様な気がする。

 目を背ける。光から遠ざかり闇の中へと落ちていく。

 もはや、自分の閉じた瞼から零れていく涙すら汚れた汚泥だ。

 自分の泥で世界が汚れない様に、できた事は倒れる時に天井を見上げるだけだった。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「すいません、教官」

 

 

「きにすんな。PTSDが多少マシになったとはいえ、

 デューカリオンの護衛が精いっぱいだ。このぐらいの荷物運びはする……。

 もっとも、これは荷物というには重すぎるがな」

 

 

 

 そういなほに答えたのは鞠戸 孝一郎。シンや彼の教官である。

 現在はアニレオンの宙間装備に換装待ちで暇を持て余している男である。

 

 

「それは、シンがですか……それともシンが背負っているものがですか」

 

 

「……わかるんだよ。俺だけはきっと、理解できる。

 全てを取り戻した。取り戻しちまったんだ、こいつは……忘れていれば笑顔で生きられた

 無力と、自己嫌悪と、悲しみと憎しみを煮詰めて固めたような最悪の感情を死ぬまで背負う」

 

 

 いや、死んでも背負う

 

 

「許せるのは自分だけだ。俺は……もし、ヴァースとの平和とやらが実現するなら

 許せるかも、しれねぇな……だがよ、フリット艦長が説明してくれたあれが

 全部……いや、事実なんだろうな。じゃあ、無理じゃねぇか……もう終わっちまってる」

 

 

 過去に置き忘れたそれは取り戻せない。

 死んだ人間は生き返らないし、何もできずただ、時間が過ぎた事も事実。

 

 

「いなほぉ……お前はこうはなるな。情けない俺の様にもなるな。

 心に従い、後悔せず生きろ。いいな……それじゃあ、俺はこいつを届けてくるからよ」

 

 

 眠りを妨げない様に、静かに彼を背負いなおすと孝一郎は静かな廊下を歩いていった。

 その姿がかすれたころに、いなほは頭をふって呟いた。

 

「……僕は、貴方が情けないと思った事はありませんよ

 教え受け継いだ力も僕の誇りです、教官」

 

 いなほは時計を見た。就寝時間にはまだ1時間ある。

 いくつかのプランをスレインと打合せするために、彼の部屋に向かおうと思った。

 

 

「……あと、シンが無理をしない様に誰かにも見張って貰いたい。

 ユキ姉……は教官を探して合流するだろうしやめておこう」

 

 

 そのぐらいの気を回す神経ぐらいは彼にもあった。

 

 

「……兜くんは無理だし、クスハさんは看護師。

 ……もしかして僕を除くとあとは誰もいないの?」

 

 

 こう考えると以外と彼を知る友人が少なかったのを理解した。

 なら、この大きな共同生活は彼の為にもいいかもしれない。

 

 

「とりあえず、フリット艦長に連絡してみよう」

 

 

 無難な所を選択することにした。

 願わくば、いつか彼を支える人が現れることを。

 

「ペニビアより、テティスの様な愛情深い女性がいいけど」

 

 

 かつての学友を思い返し、該当者がいないことに気づくと

 めずらしいため息をついた。

 

「全部終わる前に見つけたいな。

 シンは誰かが手をつかんでいないと沈んでいきそうだ」

 

 

 必要とあれば、カルネアデスの板を彼はたやすく手放す。

 教官と同じように、それをいなほだけは理解していた。

 

 

■■■■■  

 

 

348:学生兵

まぁ、ざっと説明すると起きた説明はこんな感じなワケダ

で、Gストーンって?

 

349:名無しのハズレ転生者

あぁ、それってハネクリボー?

 

350:名無しのハズレ転生者

富野節みたいなGX会話やめろ!

 

351:名無しのハズレ転生者

生きる意志を力に変える!! 光り輝く緑の石!

 

352:名無しのハズレ転生者

まさに、勇者の力!!

 

 

 

353:学生兵

ざけんな。ぜってぇ光らないじゃん。

むしろ黒く渦巻くやん!!!!!

 

 

354:名無しのハズレ転生者

お前には悪役のゾンダーメタルがお似合いだよ

 

355:名無しのハズレ転生者

突き放すようで浄化されてストレス楽になれってやさしさで草

 

356:学生兵

浄化されたらライブレード動かないだろ!!!!

馬鹿にしてるのか!!! 怨念で戦ってるの!! 

いなりじゃなくて負の念がないやん!!!

 

357:名無しのハズレ転生者

悲しいなぁ……

 

358:名無しのハズレ転生者

そういえば、ブラック企業。ソムニウムは?

 

359:学生兵

1回電話きたよ。

「消滅に導くもの。暁の欠片迫る。注意しろ」みたいな

詩人だね。俺からは連絡できないから1ミリも理解できなかった

 

 

360:名無しのハズレ転生者

宇宙怪獣だと思うYO

 

361:学生兵

あ、まじ……物量で押しつぶしてくるくそじゃん……

やだなぁ……ちょっと喋って寝なおす予定が

一応、準備しておくか……

 

■■■■■

 

 

「……よし、2時間は寝たな。頭は動かんが動ける。つまりいけるということです」

 

 

 無敵の新次郎節で自分を鼓舞し立ち上がる。

 極限状態こそ、命は輝く。今はまさにギリギリ限界の状況なので=最強である。

 

 ライブレードの武装は謎の大体斬れる、暗黒霊剣ダイフォゾン

 ゼイフォニック・ブラドラーというための長い強い肩ビーム。

 ブラン・ダイガードという中範囲を薙ぎ払う剣ビームの3つ。

 

(弱い……対応力がヨワイ……宇宙でどうするんだ。

 相良を乗せてラムダドライバで体当たりしてる方が強いかもしれない)

 

 

 とても悲しい目になった。

 

 

 

(アーガマにつないで貰ってアストナージさんがいるだろうし

 ビームライフル……は無理かぁ。まあ、バズーカーとかでいいか汎用武装貰おう)

 

 

 とにかく急げと誰かが言った。

 やることなすこと早い方がいい。遅いと間に合わないというのは経験からくる事実だ。

 

(死なない程度に休めばいい。

 助かることにこの世界は医療が進んでる。即死じゃなければいい)

 

 壁をなぞり、扉の開閉ボタンを探し自分に気合いを入れるようにそれを強く殴った。

 

 

 念じて精神ポイントを確認した。

 記憶の回復で上限が上がっている。最大120。現在、65。 

 

 

「よし、動かせるな。強化パーツを積んで準備するかぁ!? あぁ、あべし!!」

 

 

 回転し、床にしたたかに叩きつけられてシンは意識を失った。

 

 

「姫様、本当にいい動きをしてらっしゃいますね……」

 

 

「いえ、今のは油断してたのを狙っただけなので。

 どうでしょう、気絶してますか? 気絶してればこのまま医務室に運んで朝まで寝かせます」

 

 

「…………あ、はい! 首の骨は大丈夫で心臓は動いてますです!!!」

 

 完璧に決まっていただけにしっかりと確認してから

 エデルリッゾはホログラムで茶髪になった自分の主にそう報告した。

 

「ありがとうございます。よいしょ……と」

 

 

 アセイラム姫は大型のBOX型の配膳用のカートに枕を入れ、それにシンの頭の下におくと

 少し背を丸めさせ、彼をその中にしまい込んだ。

 

 

「本当は背負えればいいのですが、流石に彼の体躯だと

 私でもこの子でも難しいので……許してくださいね」

 

 

「姫様、一緒に押させて頂いても?」

 

「助かります。男の人は重いですから」

 

 

 ややサイコな響きである。

 

 

「女の人って、こわいや……」

 

「いや、本当だぜ……」

 

 親睦を深めようと、不器用なりに散歩に誘った忍と、

 それに勇気を出して乗ったシンジはその様子を見て、背筋が震えるのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 




とりあえず、ばーーと書いて起きたら修正します。


ギャルゲ専用機で永遠に悪霊とランデブーしていきたい。
絶望こそが君のパワーだ派と

いや、ヒロイン候補みたいなのいてもよくない? 派が心でせめぎ合う様な


今、9(絶):1(愛)ぐらい


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隠されない殺意

ハズレ転生者専用掲示板 アップデート  Ver 14.1

――――――――――――――――――――――――――――――――――


・現在、恋愛に発展しうる好感度を持つ人物を表示できます .love




 

 

400:学生兵

.love

 

 

>該当者はおりません

 

 

401:学生兵

しにます…………

 

402:名無しのハズレ転生者

世界はいつだってこんな事じゃなかった筈ばかりなんだ

 

403:名無しのハズレ転生者

俺、聞いてきたんだけどライブレードの2人乗りって

恋愛的好感度がないと乗れないらしい

もう詰んだようなもん

 

404:名無しのハズレ転生者

永遠のロンリーソルジャー

 

405:名無しのハズレ転生者

お前、何かのきっかけでライブレード浄化されたら終わりじゃん

 

406:学生兵

皆は知ってると思うけど俺は憎しみでしか強くなったことないから

正当なパワーアップって何? って話なんだけど

 

407:名無しのハズレ転生者

た、確かに……

 

408:名無しのハズレ転生者

敵幹部みたいな強化方法しか知らないは草

 

 

■■■■■

 

 

「記憶はないけどなんか寝落ちたらしい。おかげで具合がいい……」

 

「いい傾向だ。眠れん奴はいつまでたっても眠れず壊れる。

 適応能力が高いのはいい。あとは警戒しながら眠る事を覚えるといい」

 

 

「(僕はアセイラムさんに運搬されてるのを見てたけど)そうだね」

 

 

 地球組の中でも持前のコミュ能力の低さとつながりがシンと、それを介してしか繋がりのない宗介といなほの3人はマクロス内に作られた市街地のカフェで寛いでいた。人と話しているより自分のペースで生活する方が楽な奴らが集まれば、自然と会話はなくなるが3人互い、それを良しとする辺り相性は悪くない。

 

 シンが肩肘をついて視界を街中に流すとドラム缶の様なロボットと角ばったロボットが工事をしている。話を聞くと、あれがプライヤーズというらしい。

 マクロスに宇宙開発機構から寄贈された整備ロボットらしい。

 街の建造計画は避難民の話を聞きながらなので、ペースに限りはあるが

 それでも指示されたものは人間の数十倍の速さでくみ上げているので、

 そこはやはり優秀といえる。

 

 

「見事だな。あれが本格投入されれば戦後の復興はだいぶ捗るだろう。しかし、なぜマクロスに?」

 

 

「EOTの塊であるマクロスは整備にも時間がかかるし、移民船としての役割を持つ側面もある。だから移住先の星ですぐに生活が始められるように、じゃないかな」

 

 

「チュウウウウウウ……なるほど、理解はできる。モキュモキュモキュモキュ」

 

 

「めっちゃ租借するな、宗介……それ飲み物だったよな?」

 

 

「わはらん。おほらく、でんぷんを固へたものだろう。

 腹に溜まる。水分補給と食事。同時にでひるのは効率的だ。モキュモキュモキュモキュ」

 

 

「そ、そうか……」

 

 

 まぁ、見た目はハムスターみたいだが本人は満足しているのだからいいかと

 シンはパッド型端末を開いた。ライブレードの解析できた範囲のデータだ。

 

 数度のスキャンと修理のために繰り返した分解の結果、一つの結論に達した。

 

 

(ライブレードは大幅な改修を受けた機体、か)

 

 

 負の念をエネルギーとする装置がサブ動力炉のわりに大型でメイン動力関係のものより明らかに巨大なだった所から、それを搭載しつつ本来の性能と仕様を変更しないために、大型化されたという結論が出ている。予想算出データでは本来は22Mほどである。現在は31Mほど。フレームもそうだがかなり各部が弄られた事になる。

 

 

(スレ民の話なら、本来は2人で動かす機体か。ふふっ……無理ですけどね)

 

 

 恋愛的感情というものが双方向性である以上、該当する女性はいない。

 そこそこ普通の学生をしてきたつもりだが、クラスメイトはいなほに夢中。

 次にかかわりがあるクスハは彼氏持ちで、いなほの姉は教官に夢中。

 天下のアセイラムは姫でその従者はロリ。

 暗黒剣士的なジョブルートで生きていこう、深く誓った。

 

 

 

「……ごくん。そういえばアーバレストの宇宙装備はそちらの宙間ユニットを改良したと聞いた。すまない、助かった」

 

 

「構わないよ。むしろ、使いものになった?」

 

 

「試乗したがなんとかなりそうだ。カタフラクト系列の複雑な機構を限界まで省いているという汎用性の高さが幸いしたようだ。ミスリルのぽんこつとは違う」

 

 

「お前、自分の機体とサポートAIに対して言うねぇ」

 

 

「ぽんこつはぽんこつだ。個人の技量でなんとかなる問題ではない機器を積んでいる事がそもそもナンセンスだ。頭が痛くなる」

 

 

「そうだね」

 

 

 短くも、確かな強い同意。シンの心からの思いだった。

 

 

「君たちは苦労しそうだ。これからも」

 

 

 いなほはティーカップを置きながら特機だけは乗るまいと誓った。

 

 

ブィイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!

 

 

 

『敵機発見!! 味方である宇宙怪獣対応部隊の戦闘艦エクセリオンが攻撃を受けている。

 パイロットは至急、第一種戦闘配備に入れ。複数の敵を確認。UEに鹵獲されたと推定される機体も……』

 

 

「…………ハァアアアアアアア!!!(歓喜)」

 

 

 

■■■■■

 

 

 

『Xラウンダーとジュピトリアン混成部隊。宇宙怪獣の群れ。それに挟まれてあなたたちは何分もつのかしら? 1分、2分? 絶望の中で死んでいきなさい!』

 

 

「ぬぅうう、一方的なオープン回線で死刑宣告か。

 副長、バニシングモータの出力は回復できんか!」

 

 

「砲撃の出力を保つのが精いっぱいです!

 これ以上はバリアとして利用しなんとか攻撃を防いでいる

 イナーシャルキャンセラーの消失すらありえます!」

 

 

「マシン部隊の損耗率も上がっています!

 彼らも人型機動兵器との実戦は想定していません!」

 

 

「なぁんてこったぁ! この宙域では援軍は期待できんぞ!」

 

 

 

「不明機急速接近! ……艦長!

 マクロスからも通信! こちらに向かっていると!

 そして、あれは一応、味方機だそうです!」

 

 

「何、一応かね!」

 

 

「UEと思われる機体には近づくな。繰り返す、UEと思われる機体には近づくな。殺される、だそうです!」

 

 

「何!?」

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「ウッソ、大丈夫か!」

 

 

「う、すいません。武装をライフル以外やられました。

 ジュピトリアンから逃げたのに宇宙怪獣まで現れるなんて……」

 

 

「F91のエネルギーも厳しい。せっかく、エクセリオンに合流できたのに……

ここまでなのか!? ……!! なんだ、この殺気は!」

 

 

『2人とも、至急艦内に戻れ。巻き込まれるぞ!』

 

 

「艦長! それは……」

 

 

『急げ!! もうここにたどり着く!』

 

 

「シーブックさん、艦長の言うとおりにしましょう。

 僕らの機体は厳しい状況ですし、先に合流した皆も心配です。

 何より、この感覚……とても、とても恐ろしい。怖いんです」

 

 

「あぁ、俺も怖い。わかった。エクセリオン、合流する。ハッチを!」

 

 

「逃げられるつもりなの? 思い知れ、私の覚悟をぉおおおお!」

 

 

その時、飛来するビームが彼女の脇に控えた2体のデナン・ゾンを溶解させた。

 

 

 

 

―――お前こそ、生きて帰れるつもりなのかヴェイガン?

 

 

 

 

「な、なに!? それは言葉の様な殺気だった。

 強い憎しみが籠った、それにジラード・スプリガンは意識を集中する」

 

 

 お前こそ、生きて帰れるつもりなのかヴェイガン?

いや、今。お前らは生きているのか? 無駄に空気を使い、無駄に餌を食らい無駄に繁殖する

 殺した分だけ増える気か。なら、俺らもお前らを殺した分の4倍は増えるとする。

 あと何体いる? あと何千、何万体だ? 名前のかわりに数で自分を呼称してくれ。

 どうせ殺す相手に名前はいらないだろ? 数の方がカウントしやすい。お前らもわかりやすい

 なるべく端から順にしてやりたいが、よく考えると数えやすさを考慮する必要はない。

 そんな優しさをかける必要もないし、そもそも人間ではないし。

 いや、お前それよく見るとGエグゼスに似てるな。

 なんだ、お前。ウルフさんたちのデータを流用してる機体を奪ったのか?

 あぁ、そう。そうなんだ、ふーん……

 

 

「な、なにを……!」

 

 

「獣に長い言葉は難しかったな。死ね」

 

 

肩部の機構が展開し、強力なビーム兵器。ゼイフォニック・ブラドラー”が放たれる。

しかし、本来の太いビームではない。細く長い、黒い羽根にみえるそれを連射する。

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ! なんだ、なんだこいつは!」

 

 

 

Xラウンダーの能力とそれを十全に利用できる

専用機としてチューンされたおかげでジラードはそれをなんとか回避する。

しかし、かわすことすら楽しんでいるかのようにすら見えた。

 

 

「なんだ、なんだお前は!」

 

 

「俺は……」

 

 

真っ赤な目をぎらつかせて、Xラウンダーの能力を同調しジラードを見つめる。

同時にヴェイガンに流され続けた人々の血の中に沈んでいくように髪の色が真っ赤に染まった。

 

 

「お 前 た ち を 殺 す も の だ」

 

 

 

瞬間、ライブレードから闇が溢れた。

 

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

 

「ジラード、ジラード・スプリガン……なぜ、逃げた。

 勝てる自信がなかった? 機体のスペックが足りなかったか?」

 

 

 

「か、勝てる自信はありました! 機体は過不足ありません!!」

 

 

 

「ならば、なぜだ?」

 

 

 

 ゼハードはジラード・スプリガンを正面に捉え、見つめる。

 しばらくして、彼女はゆっくりと口を開く。

 

 

 

「あれは……あれは死神です!! フリット・アスノだって 

 ヴェイガンの歴史を知り、少しは同情を覚えていた!!

 でも、違う! あれは……あれは違う! 我々を人間だとすら思っちゃいない!」

 

 

 ゼハードは冷や汗を流した。覚えがある。

 

 

「怒りも、憎しみも、時が忘れ去ってしまう。

 だから私たちは時が過ぎるのが怖いのにあれは違う

 蓄積している。あれに、あれに怒りと憎しみが集まるように!!」

 

 

―――あれはヴェイガンの死神だ!! 

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

 

「いやぁ、参るぜ。強度、数、攻撃力。

 あれが宇宙怪獣か……しんどかったぜぇ、なぁ、洸」

 

 

 神妙な顔をするライディーンのパイロット、ひびき 洸の肩を甲児は笑顔で叩いた。

 彼なりの緊張のほぐし方である。

 

「……宇宙怪獣、恐ろしかったですね。

 でも、彼らに敵対的なライディーンの出力が上がっていたのでなんとか」

 

 

「たまにくるライディーンの警告、って奴か?」

 

 

「今回は特に、激しかった。でも、俺がもっと気になるのは

 破壊的な宇宙怪獣の念より、あのライブレードから感じたもの……」

 

 

「……奴もライディーンの警告対象だったのか?」

 

 

「違う。でも……でも俺は怖かった!」

 

 

 眼をとじ、汗を浮かべながら震える拳を握りしめる。

 大きく息を吸い込み、恐怖を押し込むようにしてから洸は口を開く。

 

 

「あの機体に注がれるパイロットのエネルギー、プラーナというそうですが

 それと憎しみが、爆発的に増幅して機体に注がれていた。ライブレードも

 それを受けてパワーアップしていた。でも、あれは、あれはダメだ……」

 

 

「何がダメなんだ?」

 

 

「命です。命が消えかけた。あれはやっていい戦い方じゃない!

 はじけるように、そう、いわばバーストプラーナ。あと一歩で死んでいたかも……

 なんで、なんで彼はそんな戦いができる。教えてくれ、ライディーン。

 俺も、あんな覚悟が必要なのか! 答えろ、ライディーン!」

 

 

(シン、お前に何が起こったんだ……)

 

 

 甲児が知る、友の戦い方はどこか死ぬのを恐れているような。 

 可もなく、不可もない。そういう安定的な動きだった。

 今、目の前の戦友が放つそれにあの頃の面影はない。

 

 

(もしかすると、アイツは……死からじゃない。

 自分から、逃げて。逃げ続けていたのかもしれない……)

 

■■■■■

 

 

 

 

 

550:学生兵

戦闘、楽しんでいただけたかな?(3日昏睡)

 

 

551:名無しのハズレ転生者

ヴェイガン構文やめろ

 

552:名無しのハズレ転生者

戦うたびにホラー映画の再上映みたいな事になるな

 

553:名無しのハズレ転生者

もう戦闘ライブやめてください!!!!(懇願)

 

554:名無しのハズレ転生者

ヴェイガンが悪いよ、ヴェイガンがー……

 

 




ヴェイガン
ジュピタリアンは近年、ひそかに外交的手段でエアロゲイター(バルマー)に
吸収されてます。


まぁ、そんな感じで。
誤字修正します


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幕間 インターミッション5 『なぜなになんとか』

 

561:学生兵

 

そういえば、寝てる間に起きた事ちらっと聞いたんだけど

あらすじ機能でいい?

 

562:名無しのハズレ転生者

あれ長いからイッチ視点でまとめてくれ

 

 

563:学生兵

・ナデシコが来た

(ヴァースとやがて和平を結ぶ予定の休戦時、

 火星のさらなら開発の為に地球から誘致した企業

 をまとめて都市みたいなものを作ってたからそこの人間の救出目的)

 

・なんかイングラムとかいうあったこない人裏切ってた

 

・そもそもSRXチームとかかわりがない(リュウセイとは少し話した)

 

・そもそものそもそも、前回の戦い方で回りにめっちゃヒカれてるって聞いた

 

・というわけで、航路は火星に向いた。というか今、いるらしい

 

・4日目ですが精神ポイントがまだ24ぐらいまでしか回復しないので気が重い

 

564:名無しのハズレ転生者

ヴェイガンを倒すことと引き換えに寝込む男

 

565:名無しのハズレ転生者

途中で敵が逃げただけであのままだったら死んでたんちゃう?

 

566:学生兵

ナデシコに乗って合流してきたマサキくんが

バーストプラーナは死ゾって言ってたらしいから確かに死んでたらしい

 

567:名無しのハズレ転生者

草。まじであのままだと終わりだったんか。

でも死んでも悔いなさそう

 

568:学生兵

いや、まだ滅ぼしてないから悔いはあるでしょ(キレ顔)

怨霊になっても機体動かして滅ぼしたるわ

 

569:名無しのハズレ転生者

いや、まじでこいつはそれやるな……

 

 

■■■■■

 

 

「あー、してみて」

 

 

「あー……」

 

 

 起きて早々、金髪の女医を名乗る人に診察を受けるシン。

 寝てる間に移動されててリアルに知らない微塵も知らない天井になっていた。

 まぁ、露骨に距離を取りたがってるという話はあるので仕方ない感はあった。

 

 

「身体的な不調はないようね」

 

「めまいとかはありますけどね」

 

「それはシステムに由来する精神エネルギーが枯渇しかけた事が理由なんでしょう? 全ては理解できなかったけど」

 

「部分的に理解したってんなら、十分天才だと思いますよ女医さん。

 ところで、今の状況を説明してほしいんですけど……どうなってるんですかね?」

 

 

「!!!!……説…明……?」

 

 

「あっ」

 

 シンはとんでもない地雷を踏むどころかけりつけた気がした。

 逃げようとは思ったがそもそも、体が上手く動かなかった。

 

 

 

 

 

 3・2・1・どっか~~~~~ん!

 

 

 

「「みんな、あつまれ~なぜなにナデシコの時間だよ~~」」

 

 

「こんにちは、イネス・フレサンジュです」

 

 

「(Rとかで知ったからすぐ気づけなかった)しくじった……」

 

 

 病室で始まった謎の生ライブに目頭を押さえて、シンは天を仰いだ。

 

 

 

「お兄さん、お兄さん。そもそもお兄さんは

 アセイラム姫暗殺に至る前の火星の状況って知ってる?」

 

 

 と、幼児服のホシノ・ルリが問いかけてくる。

 

 

 

「えっ? あ、えーと……確か、ヘブンズフォール?の後に

 休戦協定を結んだ時、ゆっくりと和平を結びましょう。

 という事で将来的に公平な貿易を取り戻すために

 企業誘致とかをして、定期便もあって、確か申請通れば民間人も住めた……ような?」

 

 

「えー、そうなんだ。でもよくわからないや。

 ウサギだしー。つまり、今ってどういう状況~?」

 

 

 と、着ぐるみをきたミスマル・ユリカが言うと待ってました!と

 ばかりにイネスがせり出してくる。シンはってでも逃げ出したくなった。

 

 

「では、説明しましょう!」

 

 

「わー(棒)」ぱちぱち

 

 

「わー!」ぱちぱち

 

 

 

「前大戦。火星は物資を止められ、貿易を不安定化されたのが戦争の理由でした

 というのも、火星はテラフォーミングにようやく成功したものの

 まだ彼ら単体では生活していくことができず、それを理解していた地球が

 アルドノアドライブを自分たちに有利な条件で手に入れるためでした。はい、どうなる!」

 

 

「えっ?」

 

 

「えっ、じゃない!! 皆、見てるのよ!!!!」

 

 

■■■■■

 

 

 ~トレーニングルーム~

 

 

「へぇ、中々愉快な事してるわねぇ。この艦。ねぇ、宗介?」

 

 

「肯定だ。情報をわかりやすくまとめようという理解が見て取れる」

 

 

「いや、俺はアイツを心配してあげるべきじゃないかなって

 思うけどね……不憫ねぇ、シンは。運がなかった」

 

 

 ウルズ小隊はトレーニングルームで給水しながら

 それ(映像付きの館内放送)を見上げていた。

 

 

『あー、うん。アルドノアドライブは火星の独立を保つ防波堤でもあった。

 それをとりあげ切り崩し管理下におかれてしまえば、緩やかに地球に併合される……?』

 

 

『そう、コロニーが酸素税によって苦しみ。過度な地球の連邦の干渉により

 憎悪を生み。被抑圧者階級であるという自覚が反抗的なジオン生んだ。

 連邦はこの歴史から悪い意味で学んでいたの。だから、そもそも行動する足と腕を削ごうとした」

 

 

『ごはんがないと動けないもんねぇ~』

 

 

『でも、地球と火星を結び、ハイパーゲートが当時はあったじゃないですか』

 

 

 

 ~歓談所~

 

 

 

 

『そうね、そういう意味では地球は【武力的な反抗はしてこない】と高を括ってていた。

 というのも、当時地球はアルドノアをアルドノアドライブを搭載した機動兵器ではなく

 とてもつない出力を持つ動力としか認識していなかったの。これは火星の策だったのね』

 

 

 

「え、そんなこと書いてあったっけ?」

 

 

 自販機のジュースをアスカと綾波に渡したながらシンジはそういった。

 

 

「教科書にはないわ」

 

 

「ばっかねぇ……あの教科書を管理してるのがそもそもどこだと思ってるのよ

 地球圏を統合している地球連邦政府お墨付きって事はそういうことなの」

 

 

 

 

~食堂~

 

 

 

『2度の失敗を経て、成功したテラフォーミングの成果をいつか奪いに来る。

 だから、提供する情報も断片的だったって事か……そういう水面下の情報戦

 それを前提として考えると、そもそも休戦後の企業誘致も人質みたいだな」

 

 

『その通り。火星で自給しきれなかった食料をはじめとした各種……etc。

 そういうものの生産企業と技術を現地に渡す。何より、それを担う人員。

 これは平和の人柱。その引き換えに電気伸縮式特殊樹脂などをヴァース帝国は提供した』

 

 

「そ、それは……! でも……!」

 

 

「スレイン、良いのです。事実ですから」

 

 

「……でも、それはしょうがないじゃないですか」

 

 

■■■■■

 

 

 

 

「まぁ、まとめると……こう」

 

空間ディスプレイに文字が箇条書きで並ぶ。

 

 

①テラフォーミング期

 

 権力をちらつかせた地球連邦に対抗し、

 発掘されたアルドノアドライブを利用し、エネルギーの完全自給化などで

 急速に自立を進める。しかし、その力に目をつけた地球により貿易を止められ

 兵糧染めの様な状況に追い込まれ、ジオンと協力関係を結び開戦。

 機動兵器アルドノアの存在が地球側に知れ渡る。

 最終的にマクロスの落下により、双方が甚大な被害を受け休戦。

 

 

②休戦期

 

 ヴァースは技術提供。

 地球はヴァースが自給できていなかった

 物を現地で生産できる設備と機材を提供と人質として人員を渡した

 この時、火星に地球人と一般階級火星人の混合街がうまれる

 

 

「2の段階ですでに双方は戦う意思をなくしていた。

 だって、さらに力を持つ巨大な勢力がいるのを理解したからね。

 殺気立ってたのはジオンぐらい。だから、こそ……

 正式な和平でアルドノアを兵器として参入させたかった。でも……」

 

 

③反乱期

 

アセイラム姫を暗殺(未遂)により開戦。

首謀者は軌道騎士。

皇帝の状況は不明。前回の会見以降、軌道上に戻った騎士もいる模様

 

 

「人間は複雑ですね。私、ちいさいからまだわかんない(棒)」

 

 

「数年前、秘密裏にエアロゲイターに参入したジュピトリアンと違い

 火星にエアロゲイターがこなかったのは2の通り、

 地球との結びつき自体が強かったのがあるわ。過去はともかく、双方は妥協したの。しかし」

 

 

「しかしぃ?」

 

 

「内の怒りを抑えられる人間だけじゃなかったって事だよ」

 

 

 

 

 

 

その言葉に、宗介とスレインだけが小さくうなずいた。

 

 

■■■■■

 

 

 

 

「というわけで、理解していただけたかしら?

 ちなみに今、この艦ナデシコはその街の近くに待機しています。私はここで合流したわ」

 

 

「んで、ヴァースに向かうってことか……でもよく軌道降下できたな……」

 

 

「それは私の作戦です! 本艦、ナデシコは電子線に部類の強さを誇る艦でもあります。

 この艦のジャマーシステムとウルズ小隊のECS*1で電子警戒網を突破しました。 

 ちなみに、このルリちゃんが作戦実行を統括したMVPです。ぱちぱち!」

 

 

「わーい」

 

 

 独自のゆるくふわっとした空間に悩まされつつ、シンはゆっくりと布団をかぶりなおした。

 

 

 

「説明ありがとうございます。おやすみ……」

 

 

「あー、だめだめーーー! ヴァース帝国の謁見は日野真さん、

 貴方にも参加してもらうんですからーーー! おーーきーーて!」

 

 

「あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ ゛揺゛ら゛さ゛な゛い゛で゛く゛れ゛よ゛ぉ゛お゛」

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「というわけで!!!」

 

 

 じゃかじゃかじゃーん、という軽快なBGMが背後に鳴り響きかせながら、

 艦長席に上ったミスマル・ユリカ。そのそばでは死んだ目のシンが栄養剤を啜っている。

 

 

「誰が同行するか、決めましょう! ナデシコは人員の収容でうごけません。

 相良さんとオーラ―バトラーの皆さんももしもの場合のバリア要因でうごけません!」

 

 

「あの、それならエヴァも……」

 

 

「大丈夫です、シンジくん! 

 エヴァにも残っていただきますが2体で結構です!

 なので1人は同行していただきます! はい、しゃかしゃかーーーどうぞ!」

 

 

 

■■■■■

 

 

 

600:名無しのハズレ転生者

で、クジはどうなったの?

 

601:学生兵

厳密に誰が同行してたのか忘れたけど

分かる範囲はモビルスーツチーム、ウルズ小隊、エヴァ組。

んでくじの結果は綾波ちゃん、クルツ、シャア。エステバリスチームも何人か。

そこに、ヴァース帝国組。いなほ。んで、俺

 

602:名無しのハズレ転生者

シャア(呼び捨て)

 

603:学生兵

シャアは呼び捨てでいい。

クルツは絡みやすいからつい、タメでしゃべるけど年上だし悩む

 

604:名無しのハズレ転生者

シャア(私も年上なのだが……)

 

 

*1
ECS(Electromagnetic Camouflage System、電磁迷彩システム。ホログラムをジャマーを始めとするさまざまな機能を組み合わせることで透明化を可能にしている。この場合、ECSにつかわれている対電子装備を利用した、というのが正しいだが、ユリカは詳しい作戦の説明は時間がかかり、体に負担がかかると理解し大幅に省略した




間に合ったらもう1話あげます。
でも時期が一つにつながっているため、次。
その次と一気に続けて終わらせたいため、難しいかもしれません


訂正は後日


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今を生きる 上

 

 

 

 銃口を向けるアサイラム姫が苦し気に笑った。

 

 その先の男性、レイレガリア・ヴァース・レイヴァースもまた、笑った。

 

 

「可愛げのある姫であったと思ったが、いつ女王となったのだ?」

 

 

「地球で、あの日。あの地獄を生き抜いたからでしょうか……。

 だから、おじい様。あの人の様に……平和の為に犠牲になると誓った。

 私も全てを捨てる覚悟を持ったのです。味方すらも、故郷すらも」

 

 

 どこか凍える様な寒さを感じる引き金をアセイラム姫は―――

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「おい、おい……大丈夫か?」

 

 

「ん、あぁ……大丈夫だ。疲労が取れなくて寝てたらしい。

 気にしてくれてありがとうな。えーと……あの艦長に張り付かれてた」

 

 

「テンカワ、テンカワアキト。

 コックだ……まぁ、パイロットもやってるけど……ほら、起きろよ」

 

 

 ありがとう、といってアキトの手をとって起き上がる。

 あまり長く寝てなければよいいのだけどと思いながら眠気を飛ばすために眼がしらにぎゅっと力を入れた。

 

 

「てんかわあきと……あまのがわに明るい人、でいいのか?

 えーと、天河 明人(てんかわ あきと)」

 

 

「あ、あぁ! そうそう! 他の人にもわかりやすいように

 今じゃカナ表記が基本だから、なんか自分の呼ばれるとくすぐったいな……はっ」

 

 

 ちょっと、恥ずかしそうに頭をかきながら笑うアキト。

 優柔不断だなんだの結構言われてたらしいが素直に良い奴だと思った。

 

 

「あと、2、30分ぐらいらしいぜ。

 綾波ちゃん、クルツさん、クワトロさん、ガイは一応。機体で待機してる。

 まだ第二種状態で警戒しておけってぐらいなんだけど仕事熱心だよな……

 ほら、豚汁。お前は少しでも栄養取っておいたほうがいいぜ。顔色がさ」

 

 

「……ん、そんなわるいか。わかった。貰っておくよ、さんきゅ」

 

 

 そういって受け取ると、アキトが暗い顔をしているのに気づく。

 

 

「今は少し復興してるけど、アルドノアの到着が遅れてさっきの街……まぁ、俺が暮らしてた所なんだけどあそこに正体不明の敵がさ……

 ほんの半年前まではあそこにいたんだぜ、俺。でもなぜか地球にいてさ」

 

 

「潜在的ESP……アキトはテレポータって奴だったのか?」

 

 

「って可能性があるらしい。色々調べられたな。でもその時も視線がなぁ

 この手の模様。IFSっていうナノマシンで直感的に動かせる。

 火星で最近、開発されたものなんだけどこのせいでヴァース、ヴァースってさ 

 肩身が狭かったよ。俺としちゃ、火星人のつもりなんだけど……」

 

 

 まぁ、火星人ってヴァース帝国とかわらないかもしれないけどさ。

 

 

「俺の街の人は地球人と、ヴァース帝国と色んな人がいたけどさ。

 早く和平が叶うといいね、とか言っててさ。みんな……

 あ、ちょっと会ってきたんだ! やっぱ皆、そうだった。嬉しかったな」

 

 

 へへ、ちょっと喋りすぎた。緊張してるんだ。

 といって鼻をこする。シンはわからなくもないと思った。

 自分も新兵時代はそうだった気がする。

 

 

「アセイラム姫、話し合えるといいな。

 でも、さっきちょっと様子が変だったな。何が、っていうとなんだけど」

 

 

「変……?」

 

 ふと、先ほどのイメージが頭をかすめる。

 ただの悪夢だと思っていたが不安が湧いてくる。

 

「あぁ、IFSって実害はないんだけどちょっと副作用がな。少し怒りやすくなるとか、近くで強い電子機器。ECSみたいなの使われるとぴりっとする……」

 

 

「……アキト、機体に急いでくれ」

 

 

「きゅ、急になんだよ」

 

 

「戦いがあるかもしれない。

 でも止められる可能性もある……お前のおかげだ!

 あと、ありがとう。これうまかった!」

 

 

 シンは豚汁を飲み干し、水筒を返すとブリッジに走っていく。

 息をきらせてたどり着くと、いなほ、スレインが地形から考えられる戦闘時の逃げ場所の進路などを話していた。

 アセイラム姫は、椅子に座り。正面から視界を動かさない。

 

 

「シン……どうしたの?」

 

 

「何!? この人がアセイラム様を助けてくれた!? すまない、ありがとう!」

 

 

「その感謝は後で受ける! ……失礼!」

 

 

 そういうと、シンはアセイラム姫の顔に手を押し付ける。

 

 

「なっ!? ホログラム!?」

 

 

「……エデルリッゾだな。

 本当のアセイラム姫はどうした」

 

 

「…………」

 

 硬く口を結んだまま言葉を発さない。

 今にも吐き出しそうな思いを押し込めるように。

 

 

「皇帝を……殺しにいったんだな。

 自分が女王となり、すべてを止めるために」

 

 

「!? どうしてそれを」

 

 

「……俺を連れて向こうでひそかに入れ替わるつもりだったか……

 確かに目撃者がいて、姫が傍にいればだれも疑わない……くそ。いなほ、ライブレードを! ザーツバルムをつれて……」

 

 

 世界が揺れる。

 

「あ、危ない!」

 

 エデルリッゾが咄嗟に立ち上がりシンの腰を抱きしめて椅子に押し付ける。

 転倒こそ避けたがまだ幼いエデルリッゾにはそれが限界だった。

 だが、それで完全にホログラムが解かれてしまう。

 

 

(まだバーストプラーナのダメージがあるのか。くそ、回復に数日かかる……ダメだ、高速飛行形態になんか、とても……)

 

 

「急がないと……急がないといけないんだ……」

 

 

「シン。急げば間に合う?」

 

 

「やってみなくちゃ、わかんねぇーーーーー!!

 でも俺はやらないまま後悔なんでごめんだ。

 いちかばちかだ……途中で堕ちるかもしれないが変形して……」

 

 

「なら、行こう……スレイン、協力してほしい

 思い付きでつくったものだから操縦手が2人いる」

 

 

「いなほ、スレイプニールの代わりに搬入したあれか?」

 

 

「ダイダリオーンを出す。今のシンをライブレードに乗らせるわけにはいかない」

 

 

 

■■■■■■

 

 

 

 

 

「レイレガリア・ヴァース・レイヴァース、陛下。

 侍女、エデルリッゾ 。ここに帰還いたしました」

 

 

「警備からはなんの連絡も受けていないが

 ふっ、まぁ、おぬしにとっては此処は庭。どうとでもなるか

 そもそも、戦争になり警備を減らしているのもある。ともかく無事で何より」

 

 

 笑顔でそういうと、エデルリッゾ はありがとうございます。とそれに返答した。

 レイレガリアをそれを見て何かを考えるように瞼を閉じる。

 そして、何かを決心したかのように力を入れて立ち上がると口を開いた。

 

 

「だが、腹芸をもう少し教え込むべきだったと感じている。

 エデルリッゾ はそんな雄々しく、わしの前には立てんよ。

 そうであろう。我が姫、アセイラム・ヴァース・アリューシア 」

 

 

「……確かに、そうですね。

 やはり無理がありました。あそこを抜けてくるまではよかったのですが」

 

 

 そういってホログラムを解除するアセイラム姫。

 「お久しぶりです、おじい様」とドレスの端をつまみ会釈をした。

 

 

「なぜ、そのまま来なかった?」

 

 

「大罪を犯すなら私でいい、といったあの子を納得させるためです。

 バレれば明かすつもりでしたし、おじい様なら気づくと思っていました」

 

 

「そうか、そういうことか……して、なぜわざわざ戻った。

 反逆者は内にある。もしかするとわしが命令したかもしれん」

 

 

 なぜ戻った、戻るべきでなかったといわれているようで

 少し、アセイラム姫は瞳を揺らした。だがすぐにそれを振り払うかのように

 凛々しい笑顔を浮かべ、―――懐から銃を取り出した。

 

 

 

「それは……貴方を殺すためです。ヴァース皇帝」

 

 

  

 銃口を向けるアサイラム姫が苦し気に笑った。

 

 その先の男性、レイレガリア・ヴァース・レイヴァースもまた、笑った。

 

 

「可愛げのある姫であったと思ったが、いつ女王となったのだ?」

 

 

 

「地球で、あの日。あの地獄を生き抜いたからでしょうか……。

 だから、おじい様。あの人の様に……平和の為に犠牲になると誓った。

 私も全てを捨てる覚悟を持ったのです。味方すらも、故郷すらも」

 

 

 

「すでに戦う事をやめた軌道騎士もいる」

 

 

「戦いをやめずエアロゲイターやジオンと協力するものも必ず出ます。

 だからこそ、私は王位を奪い。私の復活を宣言する。

 その上で……反逆者ザーツバルムの揚陸城のドライブを停止します」

 

 

 アルドアドライブを停止できるのは王家に連なるもののみ。

 レイレガリア・ヴァース・レイヴァースの直系のみが持つ君主の権限。

 

 

「アルドノアは彼らの権利の象徴でもある。奪われたくないものは従います」

 

 

「そのやり方は遺恨を残し、畏敬を奪う」

 

 

「畏敬……? 戦いを止められず、多くのものを死に追いやったこの国が」

 

 

 その言葉はとても低く、冷たかった。

 アセイラム姫が心の奥底に押し込めていた、辛さと痛みそのものであるかのように。

 

 

「エアロゲイター、宇宙怪獣……さらに現れた謎の異星人。

 あの星が戦う力を喪うことは人類が滅びるのも明白。

 団結せねばならぬ時にそれを断ち切ったのはヴァース帝国……最悪の国。償わねばなりません」

 

 

 王死すことで、苦痛を味わうことで。そして、いつか滅びることで……。

 

 

 

「さようなら……おじいさま」

 

 

 ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!

 

 

 宮殿に轟音が響き、天井が砕けた。

 2人は何が落下した、と思い天井を見上げる。だが、それは厳密には違う”衝突したのだ”

 天井から覗く、鳥の様な顔が開き。”運搬物”をワイヤーで下ろす。

 それは、だいぶ辛そうに地に降り立った。

 

 

「やめろ、セイラム・ヴァース・アリューシア。

 それはお前のやり方じゃぁないだろ……」

 

 

 

■■■■■■

 

 

 

「シン、さん……」

 

 

「……そうか、お主がこの子を助けたのだな。地球人か?」

 

 

 彼女の動揺からそれを察したように、レイレガリアはシンを見つめた。

 

 

「あぁ、地球生まれ地球育ち。からのコロニーに引っ越しとか色々あるけど」

 

 

「ややこしいな。まぁ、いい。感謝をしている……ありがとう。

 そして、すまなかった。この騒乱、止められぬのはこの身の老いと力の無さ

 そのうえで頼みたい……止めないで欲しい」

 

 

 祖父の意外な反応に目を見開くアセイラム。

 レイレガリアは少し待て、と手をそちらに向けると再び話を始めた。

 

 

 

「姫を失った心労があったとしても生存を嘯き内部を切り崩し権威を得ようとする。

 その言を信じてしまったのはこの私だ。私なのだ。ならば、古き王は廃されるべき」

 

 

「ダメだ」

 

 

「この子は覚悟もある」

 

 

「ダメだ」

 

 

「なぜかね。好いた女の手を汚したくないか?」

 

 

「違う、この場の結果は俺にとってとても大事な事だ。

 うまく言えないかもしれない。でも言うよ、俺は」

 

 

 アセイラム姫に向かい合う。

 

 

「バレるとは……思っていませんでした」

 

 

「喋ればボロが出る。だから黙って座らせておくとは考えたな。

 皆には喉が痛いから薬を飲んで黙ってるって言ったって聞いたぞ」

 

 

「なかなか、簡単だけど良い作戦かと」

 

 

 涙目でいたずらが成功した子供のように笑う。

 しかし、すぐに目つきをかえた。覚悟の顔だった。

 

 

「私は覚悟をしました。

 身を切り、永き憎悪に身を浸しても……人類のために平和を作ります」

 

 

「ずいぶん感情的な行動だな。いなほに馬鹿にされる。

 スレインは泣くかもしれない。エデルリッゾは永遠に苦しむぞ」

 

 

「だから、止めるのですか!!!」

 

 

「俺が、お前の平和の祈りを信じているからだ」

 

 

「祈りだけじゃ、言葉だけじゃ何もできなかった!!!」

 

 

 バァン!と弾がシンをかすめる。

 感情的に発砲してしまったのか、カタカタと手が震えている。

 

 

「だから、歯車になるしかないと思った! 

 ヴァース帝国を動かす大きな歯車に、皇帝に! 

 覚悟をしてきたのに、貴方はそんな自分の気持ちだけで止めると!?」

 

 

「そうだ」

 

 

 過去に置き忘れたものは取り返せないと知っているから、

 過去に”する”訳にはいかないとここにきた。

 

 

「ベターな選択だがベストじゃないだろ。これさ」

 

 

「この状況で、完璧なんて。笑顔で笑える平和など求めていられない!」

 

 

「そりゃそうだ。でもなんで、今、平和を求める。

 あんたの声で止まった奴だっている。そいつらが何か行動するかもしれない。

 クルーテオさんだっけ? 彼もなんかやってるだろ。信じてやらないのか?」

 

 

「じゃあ、座して笑っていろと!?」

 

 

「……なんで自分で全部しょい込んでるんだお前は!

 そいつらに荷物を分けろっていってるんだろ!!」

 

 

 事実、アセイラム姫の死が懐疑的な状況で降下占領したものの戦いを止めているたちは多い。あの会見で生存を確信し軌道に戻った者もいた。

 

 

「どうして信じてやらない!!」

 

 

「彼らは私を見捨てた!!」

 

 

「本気で言ってるのか!! 言ってねぇだろ!!!」

 

 

「……っ!」

 

 

 そう、裏切られてもなお、平和を築き上げることを信じていた。

 分かり合えるものだけではないと理解してもなお、

 時には戦いになるとしても、それでも話は続けようとしていた。

 憎しみだけじゃ、平和は手に入れられないから。

 平和の祈りを、シンは知っている。シンだけではない。

 きっと、彼女を関わり合ったロンド・ベルの人間たちも。

 

 

「話し合え、手を取り合おうと努力をしろ。

 時にはわかり得ないかもしれない、殺し合うだろう。

 でも、あんたの傍に立ってくれる人たちはいる。いるだろう」

 

 

 ヴァースに属するもの、アキトの様に火星人を自称し属さないもの。

 火星だけでいろんな人間がいた。ならば、可能性は広く残っている。

 

 

「手を汚すなとはいわない。俺も人殺しだ。自分と自分の周りを護るために

 敵を殺した。関係ない人も、巻き込んだ。それは俺の過去だ。変えられない」

 

 

 ―――でも、お前はまだだよ。

 

 

 

「平和の種を撒け、アセイラム。

 レイレガリア・ヴァース・レイヴァースが望み、叶わなかった。

 地球と、火星と、ヴァースとの明日の平和の種をお前が告げ!」

 

 

 

「わ、私は……」

 

 

 

「種か……そうか、そうだな。私はそれを懐で温めるだけで、

 植えようとしなかったのかもしれない。必死だったというのは言い訳か?」

 

 

 自嘲気味にそういうと、シンは首を振った。

 

 

「レイレガリアさん、あんたは地球との争いの当事者だ。

 苦しみと憎しみのはてて、それを捨てなかっただけで立派だ。

 問題があるとすれば……あんたのその種をアセイラム姫だけに渡した事。

 もっと、多くのものにそれを根付かせていくべきだったんだ」

 

 

「難しい事を言う……」

 

 

 

「ごめん、俺もそう思う」

 

 

 

「構わない。確かに無理だと諦めていた部分はあった……アセイラム。セラム」

 

 

「お、おじいさま……」

 

 

「彼のいう事を、試してみるとしよう。

 銃を下ろし、来るのだ。呼びかけよう……その祈りを」

 

 

 いつか芽吹くと信じて、種を植えるのだ。我が愛しき姫……

 

 

 

「…………はい!」

 

 

 

 





なるはやでざっと確認して下もあげます

流石に疲れたので1日ぐらいは休むかもしれない


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今を生きる 下


はじめて前書きをまともに使う

明日はいるので起きたら修正します


 

■■■■■■

 

 

 

「王様にはい、愛ですみたいにいっておけば姫様もらえたんじゃない?」

 

 

 衝突で問題がないか各部の確認をしながらいなほはいう。

 

 

「馬鹿野郎。思いもしてないことを言えるか。俺は思ってる事しかいえねぇ。馬鹿だから!!」

 

 

「思ってることをまるごとぶつけたのがあれなら、

 それはそれで赤面しそうだよ、僕は……」

 

 

 スレインがワイヤーを巻き上げシンを『ダイダリオーンの飾り物の頭部』にしまう。

 

 

「シン、悪いんだけど帰りもそこね」

 

 

『予備のワイヤーをしまっておく飾り物の頭部が俺の部屋かぁ……』

 

 

「僕らもそんな広くないし。肩もぶつかるよ……

 とりあえず、警備に補足されてるし一気に離脱してから」

 

 

『俺のM9の電子兵装で痕跡を消しつつ、輸送機に戻る。

 これが縁の下の力持ちってやつかぁ!』

 

 

『4本の足にがっちり餌のように固定されてるくせによく言うぜ』

 

『おいおい、それを言うのは勘弁してくれよ。見た目はやべぇけど』

 

 

 

ダイダリオーン。

 

スレイプニールの宇宙用軌道ユニットと

スレイプニール自体のパーツを使って作られた高速運搬用ユニット。

兵装はなく、ワイヤーでの遮蔽物破壊などだけを搭載したもの。

 

いなほはシンが帰って来るとは思っていたが

自分以下のあの動きでは正直、お荷物であり

しかし、全く戦力にできないほどでもなく、という事を考え

スレイプニールではなく、別の機体を使わせる。

という、ネオカタフラクト構想を立てた。

 

設計協力のフリット・アスノ、アストナージの2人と共に

スレイプニールをパーツ単位まで分解し、

『いずれビーム砲の様な兵装を取り付け戦闘機』として使う。

 

そういう予定として建てられた。

スレイプニールというか地球のカタクラフト自体

【2腕2足ではなく四本腕の機体が剛性の高い方の腕で直立している】

というやや複雑なユニットなのだ。

 

 

故に、じゃあ全部腕でいいじゃん。

というのがダイダリオーンであり。

いわば、運搬用としてテストしているが将来的な構想は

4本の腕による武器の自在な取り回し。

遠近すべてに対応する、高速飛行ロボットであった。

ただし、装甲は捨てられているので棺桶なのは変わらず……

 

 

【安いのは大事だよ。重要な宣伝場所だから。当たらなければいい】

 

との事だった。

 

 

「シン、ありがとう……」

 

 

『えっ?』

 

 

「僕はきっと、姫の追い詰められた今の考えに近かった

 それは部分的に正しいんだけど悲しみを生む。だからもう少し考えるよ。僕も種を、育てる」

 

 

『そっか。お前はすごいな。』

 

 

 俺にはできなかったことだ、という言葉を心の中で零した。

 

 

 

■■■■■■

 

 

「ダイダリオーン、戻りました」

 

 

「そうか、エデルリッゾくん。3人を出迎えてあげるといい。

 ……オペレータ。警戒を15分の間、一種に切り替えろ」

 

 

「クワトロ大尉。あと10分でヴァースですが、機体がホットスタートだと疑われませんか?」

 

 

「ヴァースと戦う訳じゃない。いやな予感がするのだ。

 アムロも感じているはずだ。タイミングを見ているような、そう、罠を張るかの……。

 嫌な感じがする。説明は難しい。そして、おそらく避けられまい。だが警戒は必要だ」

 

 

「……分かりました。ナデシコが収容完了したそうです」

 

 

「こちらに向かう様に伝えてくれ。輸送機では宇宙に上がれん」

 

 

(いやな感じだ……)

 

 

■■■■■■

 

 

 

「副長、バニシングモータは?」

 

「イナーシャルキャンセラーと砲撃を同時にこなすのなら問題はないレベルに」

 

「ワープは?」

 

 

「不明ですが……どうかしました?」

 

 

「勘だよ……静かな時は何かが起こるものだ。

 ブライト艦長たちの船も態勢が変わった。彼らも感じているのだ」

 

 

 

 

ビィイイイイイイイイイイイイイ!!

 

 

 

 

「敵機、多数! 確かにきました!!」

 

 

「わしもまだまだ現役だな」

 

 

■■■■■

 

 

 

「私たちの今の話は、届いたでしょうか」

 

 

「この宮殿は全ての揚陸上に同時にホログラム通信ができる。

 逆に言えば、ここしかできん。否が応でも理解はするだろう。

 まだ反抗するものは仕方あるまい。王として乗り込めば

 アルドノアドライブは停止できたろうが……気にするな。少し遠回りするだけだ」

 

 

 役目を果たし、疲労の色を浮かべながら玉座に座る。

 

 

「ゆけ、平和の種子を配るのだ。

 それに、今は彼らと共にいる方が安全だ」

 

 

「それはどういう……」

 

 

ビィイイイイイイイイイイイイイイ!!!

 

 

響き渡る警戒音に、アセイラムがおどろき身を震わせる。

 

 

 

「木蓮だろう、動きが怪しかった。輸送機が到着次第、彼らと共に逃げよ」

 

 

「おじい様は!」

 

 

「通達は事前にしてある。残っているのは徹底抗戦を誓ったものだ。お前の妹や

 半数以上は脱出している。私は……近くのアルドノアドライブを止める役目がある」

 

 

 奪われ、利用されるわけにはいかぬのでな。

 といってゆっくりと立ち上がる。

 

 

「やるべき事をするのだ」

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「艦、被弾!」

 

 

「弾幕、薄いよ! なにやってんの!!!」

 

 

「無理ですよ。相手は消えたと思ったら出現するんです!

 しかもあのバッタ、ナデシコと同じフィールドを持っている!」

 

 

「ナデシコは今、輸送機を回収中です!」

 

 

「ビーム砲撃やめ! 実弾をメインにして再開だ。当たらなくてもいい。バラまけ!」

 

 

「ブライト艦長、通信です!」

 

 

 そういってモニターに浮かんだのはタシロ提督だ。

 

 

『艦長、ワープするほかない……!

 多勢に無勢。ロボット軍団も連戦で完全な状態ではない』

 

 

「しかし、マクロスのフォールドユニットは破損しています!」

 

 

『本艦の周囲へ。出力に不安は残るが手段はこれだけだ! ナデシコは!』

 

 

「ナデシコ、帰還! エステバリス部隊展開!」

 

「……情報を共有!」

 

 

『5分後にワープを開始する!!』

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「僕らは待機だって。まぁ、デューカリオンに戻る時間はないよね」

 

 

「そうか、この機体ではまだ戦えないしな」

 

 

「よーし」

 

 

「ライブレードは左だよ。なんで今、右の百式にいったの」

 

 

「目がまわってんだよ!! わかるだろ!!」

 

 

 そんな事を喋りつつ、よたよたとライブレードにたどり着き

 コックピットに上る。複座ではすでに白目を向いた男がいない。

 

 

「おい、強化パーツがないぞ!!」

 

 

「ザーツバルム(きょうかぱーつ)の準備を忘れていたな……」

 

 

「ざ、ザーツバルム卿。さすがに不憫だ……」

 

 

(一人でなんとかするけどバックファイアがな……

 今の状態だと寝込むか最悪死……いや、なんとかしよう)

 

 

 そういってシートに寝そべり体を伸ばす。

 少しでも寝ておこうと思った。

 

 

「いなほ、俺はワープアウト後の攻撃に備えて……寝る」

 

 

「うん、おやすみ。僕は艦隊が接続したらデューカリオンに戻るよ」

 

 

 2秒で寝た。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「各艦接続。ロボット部隊、収納! バニシングモーター、ギリギリです!」

 

 

「それでもやるしかない! ワープ!」

 

 

「ワープ!!」

 

 

「ワープ成功!」

 

 

「やれやれ、今度はワープ中に宇宙怪獣に襲われることもあるまい……」

 

 

 そういってタシロ提督がふぅ、と息を吐きだすと艦内にアラームが鳴り響いた。

 

 

「なんだぁ!?」

 

 

「か、艦長! 戦闘によるダメージで出力がわずかに足りません!

 このままでは、タンホイザー・ゲートから離脱できず通常空間に復帰できません!」

 

 

「なーんてこったぁ!!」

 

 

 

■■■■■

 

 

 

『プライヤーズを使ってください』

 

 

 そういったのは大河幸太郎。宇宙開発公団の総裁である。

 対策の話し合いを始めた時に急に通信があったのだ。どうやら、諜報員が紛れ込んでいたらしい。

 

 

『3機を結合したハイパーツール、ディメンジョンプライヤーで

 地球に付近に来た瞬間に前面空間に穴をあけるのです。

 空間すらも文字通り捻じ切ることができるあれならば……ですが問題が』

 

 

 彼の話によると、運用の問題は腕部にコネクターを増設することで対応できる。

 しかし、動力を送り運用できる機体とそのコネクタの相性……大きさに

 対応できるのはデータ見る限り、ダンクーガと

 

 

『ライブレードの2機。しかし、ダンクーガの獣戦機を獣戦機たらしめる部分とGSライドの相性が悪い。しかし、ライブレードは……現在、満足な起動ができない。うまくいって、力を使い果たし』

 

 この空間に取り残され、イナーシャルキャンセラーのないライブレードは爆散する。

 

 

「わかった、すぐに始めてくれ。俺も準備をする」

 

 

「…………死ぬかもしれない。いや、おそらく死ぬんだぞ。お前!!」

 

 そういってシンの襟首をつかみ上げたのは忍だ。

 

 

「病人はすっこんでろ! こいつは……」

 

 

「相性が悪いって言われてるだろ。周りの奴らを殺したいのか?

 なら、勝手に死ね。俺は行くぞ」

 

 

「……あぁ、そうかよ! ならどこへでもいって死んじまえ!」

 

 

 そういって忍はシンを下ろし、その場を後にした。

 

 

「……すまないね。言い方がなっちゃいないだけなんだ」

 

 沙羅がシンにそういう。

 

 

「分かってる。そういう奴だからあんたらは一つになれるんだろ」

 

 

 頼むよ。そういって、シンは足早にその場を去った。

 

 

「死ぬのが、怖くないなんて凄いな……」

 

 シンジがぽつりとつぶやいた。

 

 

「……お前、本当にアイツがそう思ってると思ったのか?」

 

 予想外にも反論したのは絡みのないカミーユだった。

 

 

「死にたいなんて、思ってここにいる奴らなんていない……」

 

 

 

■■■■■

 

 

 

(腐った野郎だが、アイツを巻き込む訳にはいかない。片道の可能性が高い)

 

 

 コックピットに乗り込む。コネクターはいわゆる、本来腕に備わっていない

 バイパス機能をアクセサリとして装着するものなのですぐにすんだ。

 いつでもいい。と言われていた。そのまま、もう2分は座したままだった。

 

 

―――死ぬのが怖いのか?

 

 

(そりゃ、そうだ……ヴェイガンと戦う時だって 

 どこか、そういう思いはある……でも……できることはやる)

 

 

「ライブレード、出るぞ!! 上げてくれ!!」

 

 

 ハッチが開き、ライブレードとプライヤーズを乗せたハンガーが上に上がっていく。

 やや汚いが、そのまま空き缶を投げ捨てた。

 

 

「コックピット閉鎖!」

 

 まだ変形やこういう動きに関係ない部分はなれない。

 音声にあわせて想像することで操作している。

 扉が、ゆっくり閉まっていく。

 

 

(限界まで、やるさ。帰るために)

 

 

 難しい事は理解していても。彼らを地球に返すために。

 その時、閉まる寸前のコックピットの背後の複座に何かが落ちた音がした。

 思わず、振り返る。

 

 

「本来は二人乗りと、聞きました!」

 

 

「3人ならどうでしょうか!」

 

 

「ばっ……やばっ! もう上に出ちゃった! 戻れない! どうすんだお前たち!!」

 

 

「死ぬ気でやっているわけじゃありません!! 貴方だって、帰るつもりはあるでしょう!」

 

 

「死ぬ、覚悟はしてる」

 

 

「なら、生きる覚悟もしてください!!」

 

 アセイラム姫の言葉。それに

 はっと、思った。それは考えたことがなかったかもしれない。

 生きるつもりで戦っても常に死は付きまとうから。

 

 

 

『日野君……作戦を……なに!? アセイラム姫!』

 

 

「理論時間的にはもう地球を通り過ぎる! タシロ提督……このままいきます!」

 

 

『……2人とも、生きて戻るのだぞ!!』

 

 

 息を吸い、吐き出した。弱音をかなたにおいやるように。

 足元でプライヤーズの1体が足を叩いていた。心配するな、といっているようだった。

 

 

「ありがとう、力を貸してくれ。行くぞ……」

 

 

ディメンジョンプライヤーぁあああ!!

 

 

■■■■■

 

 

 

「艦長、ライブレード、空間をつかみました……ダメです、切り離せません!!」

 

 

「なにぃ!?」

 

 

 出力不足。休息とアキトの料理で幾何は戻った。

 しかし、今のライブレードは”メイン”のみで起動している。

 負念の影響を気にして、サブ動力炉を落としている状態では難しい。

 

 

「だめなのか……」

 

 

「無理だよ、だってあの人は……憎しみだけで戦ってるんだ

 生きて帰る気がないじゃないか、あの時も……」

 

 

 ヴェイガンとの戦闘のことを覚えていたシンジは口に出した。

 それに反対するものは少ない。いなほもスレインもデューカリオンに戻っている。

 反対意見を口にするものは居なかった。クスハと兜すらも。

 

 

「……なんで、なんでそんなこといえるんだ!

 生きたくない奴なんているか、いるわけないだろ!」

 

 

 カミーユが吠えた。

 

 

「かかわりが少ないから好き勝手にして、

 ここにいるお前らはどうなんだよ!! 

 少なくとも俺は……俺は死にたくなんてない! アイツだって、そうだ。わからないのか!」

 

 

―――お前らはどうなんだよ!!!

 

 

■■■■■

 

 

 

「すごい声だな、マジ切れだ……」

 

 操作する手が震える。力が、後押し足りない。

 それはわかっている。複座から供給がないのだ。

 

 

(やはり、無理か……サブを入れて瞬間的に……2人の脱出はなんとか)

 

 

「……あの、最後になるかもしれないですし教えてください。ヴェイガンって?」

 

 

エデルリッゾ が気まずそうにいった。まぁ、こんな時に聞く事ではない。

 

 

 

「なんてことない。俺の引っ越したコロニーを破壊したUE、異星人だ。

 そして、俺の弟分と、そいつが愛してる俺の妹分を殺した」

 

 

「憎いのですか?」

 

 

「許せない、きっと一生……」

 

 

「では、その恨みだけでここにいるのですか?」

 

 

 

―――それは、違うよ

 

 

■■■■■

 

 

 

 

『目覚めた時、記憶がなくて自分を探してた。

 どこまでいけばわかるのかっていろんなものを見て、聞いた

 そして、学生をやってみて。少しだけどな。楽しかった』

 

 

「楽しかった……んですか?」

 

 

 シンジが恐る恐るいう。

 

 

 シンはあぁ、と気まずそうに言う。

 

 

 

『記憶が戻ったあとだと、ちょっと悪いかなって思うけど

 大好きだよ、クラスメイトもさ。元の学校も今の高校も』

 

 

 帰りたいな…

 

 

 

  ふと口に出た言葉は初めてだったかもしれない。そして、理解した。

 

 

『帰りたいよ、毎日が平和ではなかったけどあの場所に。

 くだらないことしゃべっていなほハーレムか?ってすねる真似して』

 

 

  帰りたい。なんて思っちゃいけないのに

 

 

『昔も楽しかった。でも仲間を失うたびに、いろんなものを失ってそぎ落として強くなった

 でも心ってのはなんで一つなんだろう。足りないとも思った……なんで心は一つなんだろう』

 

 

 

「僕は、1つでいいですよ。悩んでばっかりで困ってしまいそうで」

 

 

 

『でも楽しいこととか、いろんな事をしまっておくのに歯少ない。

 何より、悲しみや苦しみをもっと味わいたかった……仲間の分も』

 

 

 怒り、悲しみ、憎しみ。背負ってきた命。過去。

 

 

 

『でも、過去だけで戦ってきた訳じゃない。俺は……今を生きてる。今を生きてる』

 

 

 ベターマンは帆であるといった。命運を決めてかじ取りする訳ではない。

 ただ、風を受けて彼を届けろと言っているのだ。今、理解した。

 

 

『あぁ、生きる……行きたい。お前たちを未来に送るために!!」

 

 

 急にライブレードの出力が上がっていくのを感じる。

 

 

(そうか、拒絶していたのは俺の方だったのか)

 

 

 上面だけの部分があった。今、覚悟は成った。

 

 

■■■■■

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 

 

 ライブレードのカラーリングが白く染まる。

 カメラアイが今回だけだと告げるように、光り輝いた。

 

 

 プライヤーズのGSライドが過剰なエネルギーの供給を受け、悲鳴を上げる。

 しかし、それでも彼らはやっと役目が果たせると喜んでいるようにも見えた。

 

 

 

「ひきちぎれろぉおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 

 空間に穴が開いた。それはほんの少しの間。

 

 

 

『急速、脱出!!』

 

 

■■■■■

 

 

 

601:学生兵

というのが顛末で例の如く今起きたんですけど

起きたらライブレード黒く戻ってたのはいいとして

達磨になってるんですけど……えーと、コマンドは

 

 

バッドエンドまであとライブレード2回撃墜だにょ~☆

バッドエンドまであと機体破壊1つだにょ~☆

 

 

602:名無しのハズレ転生者

バッドエンドフラグ進行してて草

 

 

603:名無しのハズレ転生者

あんだけキメたのに世界がお前のせいでピンチや!!!

 




誤字確認したんですけど眠くて見つかってない可能性があるので

大変お見苦しい誤字があったらすいません。


因みにライブレードは文字通りだるまです。
胴体と首だけ格納庫に鎮座してます

通常空間に復帰した瞬間、過剰供給でコネクタがボンして腕は吹き飛び
プレイヤーズに足が巻き込まれ転がってボディは傷だらけ

因みに負念吸収装置をONにしたまま動かしてたら
プライヤーズに伝播して母艦の空間捻じ切ってBADエンドでした
まぁ、一人だとこの一連の会話の後にBADエンドだと思うとギャグですね






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幕間 インターミッション6 『穏やかな生活』

 

~東京湾 Gアイランドシティ~

 

 

 

「おほー、とんでもない骨董品じゃのうこいつは!」

 

 

 

独特な真横に伸びる白髭を蓄え髪を鬣の様に整えた老人、

獅子王麗雄はライブレードの解析結果を見ながら、嬉しそうに叫んだ。

表面的には宇宙開発公団顧問という事になっているが彼の本当の姿は

このGGGのエグゼブティブスーパーバイザー兼研究開発部部長。

多数の博士号を持つ世界十大頭脳の一人である彼は機体の全体図を表示しながら言う。

 

 

 

「機体の表面からは分からんかったが吹き飛んだ腕部と脚部内部の

 スキャン結果で一部のパーツが数千年と出た。しかし、技術としては今に近しい」

 

 

「爺さん、つまりどういう事なんだよ?」

 

 ゴジラの背びれモヒカンとマッチョがトレードマークの参謀、火麻激は、

 自慢のモヒカンに櫛を入れながら結論を急かした。

 

 

「完全な異世界由来の機動兵器である、という事じゃよ。

 プラーナコンバータについてもサイバスターのものに近い。

 だが、ラ・ギアスの物かといえば違う。だが面白い事にこの右腕部……

 間違いなくサイバスターの物であるのじゃよ」

 

 

「? どういう事だよ? ラ・ギアスの物じゃないのにサイバスターの腕だ?」

 

 

「疑問はごもっともです」

 

 どこか温厚な顔なふくよかな男性、整備部オペレータ牛山一男は振り返る。

 

 

「これを決定づけたのは内部の動力炉です。

 ライブレードはメインとサブ。2つの動力を有しています。

 メインがプラーナコンバータ。

 そして、サブが名称不明の動力炉。搭乗者によれば負念を力にする……」

 

 

 

「負念。負念ってことは、あれか。悪意とか……」

 

 

「死者の念が発する波動、あるいは死者そのもの。ともかくとしていいエネルギーではない。反面、莫大なエネルギーでもある。との事です

 でも個人的に驚いたのはサブコントロールシステムですねぇ」

 

ぼさぼさの髪に鼻頭の髭を生え放題に放置したまま。

そんな不衛生な風貌の猿頭寺耕助は頭をがさがさと搔きながら言った。

 

 

「数日の解析でライブレードは本来、パイロット2人のエネルギーの相乗効果により超常的な力を発現する機体であると判明しました。

 同時に、その能力故に単体では出力が足りず操作ができません。このシステムはそれを可能にする高度なプログラムと技術の結晶です。解析できないほどに」

 

 

「相乗効果?」

 

 

 

「プラーナというものが生命力そのものである+のエネルギーと仮定して、命が燃え上がる瞬間というのはなんでしょうか?」

 

 

「あん?」

 

 

 火麻激は腕を組み、顎をなでて少し考えながら……

 

 

「戦闘、だな!」

 

 

「NO!! ラブでぇす!!」

 

 

 金髪の長髪と豊満な肉体を揺らしながらスワン・ホワイトが拳を突き上げる。

 

 

「おいおい、んな馬鹿な……」

 

 

「いえ、2つの感情が正の方向でシンクロする現象としては友情愛情は至極まともです。ただ、ライブレードはエネルギーの消費の問題なのか。より強い結びつき、つまり愛情を使い。プラーナを高め、それを糧とするというシステムの様です。よくできています」

 

「各艦とライブレードのデータの提供により解明にいたってシステムですが

 安定性は極めて低く、それゆえのサブシステムだと思われます……最も、パイロット単体での消耗は日野真さんのバイタルデータを見る限り、最悪です」

 

 

 猿頭寺耕助の技術的な賞賛にウサギ耳のような独特のヘアースタイルの卯都木命がそういって苦言を発する。

 

 

「体重推移は2週間で7キロ。

 運動レベルと食事レベルに変化がほぼない中でこれは異常です」

 

 

 

「まさに敵を倒すためにすべてを犠牲にする兵器ってことか……」

 

 

「では、諸君。関係情報がそろった中で決を取る」

 

 

 色黒で彫の深い顔の男、GGG長官。大河幸太郎の声に全員が振り向いた。

 

 

「ライブレードは善と悪を併せ持つ不安定な機体だ。その危険な機体にGSライドを与えるべきか、私は悩んでいる……各員、手元のボタンを押してくれ」

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 食堂に集まって食事をしているのはシン、いなほ、スレイン。

 並んだシンプルな和食をもくもくと食べていく2人の横で、

 端末のテレビにかじりついているスレインがいた。

 

 

 

『幼馴染のレイン君の存在に揺れるセーラ姫の未来は!?

 果たして、姫は正義のティータくんの腕を取れるか!』

 

 

 

「なんでだぁああああ!!! どうみても負ける雰囲気じゃないか!

 姫、頑張ってください!! 同じ火星人のレインくんを信じて!!!」

 

 

「スレイン、ソースと取ってくれる?」

 

 

「あぁ、すまない。はい」

 

 

「ありがとう」

 

 

「……じゃなくて、これ酷くないですか!

 火星が完全に悪者ですよ!!!!!!」

 

 

 狂ったようにその場で震えるスレインを横目にシンははぁーー……とため息を吐き出して指をさした。

 

 

「お前、そらこれはティターンズのプロパガンダ用アニメなんだぞ。当たり前だ。

 なんなら、ロンド・ベルっぽいヴィラン集団もいるし、コロニーは敵だし……てか、もっと推しを信用しろ推しを。お前の姫は正しい事を見れるだろ」

 

 

「ハウワァ!? そうだ、姫は幼馴染の手を取る筈。 姫、私は信じています!!」

 

 

 スレインは手をあわせ祈るように天を向いた。

 

 

「アニメでここまで盛り上がれるんだね」

 

 

「あんまり言ってやるな。自分と重なる部分があるんだろ。それにしても……マクロスとロンド・ベルの3艦に先駆けてきて5日ぐらいか? 久々に穏やかだな」

 

 

 

 軌道上で一戦あったとか聞いたような気もするが、正直。昨日まで寝込んでたので気にする余裕もなかった。最も、緊張感から解放されて睡眠と休息をしっかり取れて久々に万全な状態を味わっていて目をそらしていたのも事実ではある。

 

 

「飯が美味い、寝るのも気持ちい。一生このままでいい……いや、だめか」

 

 

 平和の良さを堪能していた。

 

 

■■■■■

 

 

701:学生兵

ライブレードの修繕の名目で居残り

飯もあるしよく眠れる。もう一生このままでいい

 

702:名無しのハズレ転生者

過酷な生活を強いられすぎて

日常のぬるま湯から逃げられなくなってて草

 

703:名無しのハズレ転生者

平和を……強いられているんだ!!!

 

704:名無しのハズレ転生者

ところで姫様何してんの

 

705:学生兵

宮殿が吹き飛ばされて、生存は100%ありえないって事で

暫定王女なので、ルートは違ったけどそれを利用して外交ルートに入ってる。

クルーテオのおっちゃんがまず、先陣を切って揚陸城で来た。

 

706:名無しのハズレ転生者

あぁ、放送で実際にドライブ停止させて~からの

騎士は姫に忠誠を誓っています。で、もう抑止力になんのか

 

707:学生兵

その影響でいくつか、おっちゃんに続け!してきた奴と

とりあえず中立で軌道に戻った奴。敵陣に向かった奴で別れた

一先ずは地球上に今、火星勢力はいない

 

708:名無しのハズレ転生者

出鼻をくじかれて、あまり行動がなかったな

まぁ、大義名分の真偽が不明の状態じゃ何もできん

 

709:名無しのハズレ転生者

そういう意味では初手正解だったな

 

710:学生兵

アイスうっま

 

711:名無しのハズレ転生者

こいつ、本当にあのヴェイガン絶対殺すマン……?

 

 

■■■■■

 

 

「うーん、うっま……」

 

 

 アイスを口に運びながらシンは釣り竿を見つめている。

 海の真ん中にあるメガフロートということで、なら釣りをしようとやってきた。

 道中、寝ている間の火星で起きた出来事を確認していたがサラ基地が事件が起きたとか、ダイターン3が出たとか大まかな事情の確認だけで「もう、いいか」と端末の電源を落としてしまった。

 

 

(なんつーか、当事者のようで部外者のような。

 大筋に関わってはいないけど不足すると不便な……微妙な立場だな俺)

 

 

 ふと、空を見上げた。宇宙はずっと冷たい場所で、魂が漂う地獄の様な印象だった。

 だが、あの時。アセイラム姫とエデルリッゾ以外で力を貸してくれたのもまた、宇宙を漂う魂だった。

 

 

(まぁ、わからん事はひと先ずおいとこ……

 機体がぶっ壊れる度に乗り換えが発生する謎システムが健在なら乗り換えか強化が起きるかも)

 

 

 個人的には強化がいい。まぁ、没収もありうるのだが……

 それならそれであの鳥にでも乗るから別にいい。

 

 

 

「あ、シャアが能力使って同調したおかげで未来見えて回避できたんだよな、多分。お礼言っとくか」

 

 300円ぐらいのアイス1個でいいかな。

 高いものは食いなれてるだろうし庶民ランクでちょっといいもの、ぐらいがいいだろ。

 

 

(どれがいいかは食って選ぼう)

 

 

 体重を戻せと言われてるのである程度好き勝手食べる。

 戦時中の中でだいぶ贅沢な暮らし方をしているかもしれない、などと思ったが、

 シンは療養中という建前シールドでやり過ごす事にした。

 

 

「来たよ」

 

 

「すまない、初めての経験で悩んでしまった」

 

 

 短く到着の報告だけをした、いなほ。バッグにいろいろなものをつめたスレイン。

 対照的な2人はどこか足りない部分を補っている兄弟の様に見えた。

 

 

「おま、スレイン。これだいぶ詰めたな」

 

 

「僕はお昼と飲み物だけでいいといったんだけど……」

 

 

「日が沈んで寒くなってきたら羽織るものがいるだろ! 今日は晴天だし帽子も数種類ある!」

 

 

「むぎわら帽子とむぎわら帽子でダブってる。非効率的だ」

 

 

「違う! リボンがついてるだろ!」

 

 

 そんな2人の口論を眺めながら、そこまで推しなのかとむぎわら帽子をかぶった。

 汽笛がなり、振り向くと一先ずお勤めが終わったのか姫様と侍女の姿が見えた。

 

 

「おかえり」

 

 

 声が届かない距離なのは承知で笑顔を向けてシンはそういった。

 

 

 




今月でおわるかと思ったけど今月で終わるには毎日3話ずつみたいな
キチガイにならないといけないのがわかり、無理だと悟ったので
10月中を目途に頑張りま、すぅ……


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宇宙の終わり、その先に 上

799:学生兵

そういや、敵って出そろってるの?

 

 

800:名無しのハズレ転生者

はず。ただ、ぶっちゃけここから増える可能性もあるので

早々に地球はイージスしておきたい。できるのかはわからん

 

801:名無しのハズレ転生者

地上勢力沈静化させて宇宙にあがりてぇなぁ?

 

802:学生兵

でも、あいつら直接地球にワープしてきたんだよな。

ゼハードのやろがよぉ……次はぶち殺してやるからな

 

803:名無しのハズレ転生者

殺意の塊で草

 

804:名無しのハズレ転生者

幽霊が止めに来るの間に合わなくてプラズマダイバーミサイル撃ってそう

 

 

805:名無しのハズレ転生者

こいつはやる。間違いない。

 

 

806:名無しのハズレ転生者

これ聞くのはなんだけど、そもそもユリンちゃんはヴェイガンなの?

イッチっていつも錯乱してるからいまいちわからんのだけど

 

 

807:学生兵

違うよ。でもユリンが生きてれば俺の気持ちも少しは変わってたよ

フリットの通信を通して聞いたヴェイガンの境遇にも同情はした。

でも被害者だって言いながら、じゃあなんでもしていい。っていうのがな。

それはもう救いようがねぇ。絶滅だよ

 

808:名無しのハズレ転生者

でも相手側はどうなんだよ

もう勘弁!って思ってるかもよ!

 

809:学生兵

記録を見てみたけど、俺が眠った後

13,4年後かな? もうちょい? 

連邦軍とヴェイガンの軍はそのあともまたぶつかってる。

そこからしばらく、双方の物資や設備が定期的に破壊されてた。

ヴェイガン側が一度、息を完全にひそめるまでな。

UE関係の資料は断片的だけど多分、戦争が無駄にかなり長く続いてた事になる。

連邦はUE(ヴェイガン)の仕業だと思ってるし、ヴェイガンは連邦の仕業だと思ってるし多分、互いの感情は最悪だよ

 

だから、始末していいんだ。問題ねぇな!!!

 

 

810:名無しのハズレ転生者

なんでそんな事を……

戦争屋とかいたのかな。ブルーコスモス一派か?

 

811:名無しのハズレ転生者

これ多分、悶着して戦力不足で

冷戦化したからいいんでないの?

 

 

812:名無しのハズレ転生者

>>811 

始まっちまった戦いはどんな結果にせよ終わらんとだめ

むしろその無駄に長引いた戦争でヴェイガン側が自棄になって

地球は勝ったけど地球自体はコロニー全部落とされて

甚大な被害を被りました! まであった。ただ、運がよかっただけ

 

813:名無しのハズレ転生者

悶着状態を作り出すことでヴェイガンが滅ぼされることのないようにしてたってことなんかな? でも無駄に被害を出してるだろうし

ぶっちゃけ、それこそ逆に和解の芽なくなってるよな。AGEに詳しい人おる?

 

 

814:学生兵

よく語尾に.ってつける人が別のスレで詳しいって言ってたけど

あの人のスレ見に入ったら落ちてたから死んでる。本当、過酷だなここ

 

815:名無しのハズレ転生者

世は無常だなぁ……

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「……しまった、寝起きにスレをのぞいたらつい殺気が溢れちまったなぁ」

 

 

 怒りの炎を少しでも消すように蛇口から出る冷水を顔に浴びせる。

 10分ほどそれを繰り返すと、少しだけマシになった気がした。

 

 

「あの釣りから2日か……確かにそんな直ぐ直せるとは思ってないけど中間報告すらないのは妙だな……」

 

 

 ライブレードを危険な機体として封印するつもりでもあるのかもしれない。そうなると、機体を直してくれるという言葉を信用してここに降りてきたのはそもそも失敗だったのかもしれない。迎えまで寄越してくれたのも、逃げ場をなくすための物だったのだと考えると納得が行く。ふと、シンは考える……

 

 

(封印か……いや、それは認められない)

 

 

 たとえそれが自分の身を案じた事だとしても、

 たとえそれが、彼らなりの正義に準ずる結果だとしても

 

 

(俺にはまだあの機体が必要だ……問題は)

 

 

 そう、問題。今、シンが最も気になっている事。

 世界の滅亡に絡んでいるのが自分の存在なのか、機体なのか。

 一応の結論はあった。ベターマンは自分の事を必要な存在であるといっているし、ならばライブレードがそうである可能性は高いという……消去法であるが

 

 

「問題ない」

 

 

 そう、問題ない。はじめて乗ったあの日。あの機体とは強い、縁を結びあった。そんな気がする。いや、縁というよりはそれは……契約なのかもしれない。

 

 

「問題ない、俺はやれる……やれる」

 

 

 それは自信の現れでなく、弱い自分を塗りつぶす様に言い聞かせている様だった。

 

 

 

■■■■■

 

 

 空の下、ワンピースに着替えてホログラムで髪の色だけを変えたアセイラムの傍。

 クルーテオが一歩だけ後ろに下がった位置に立っている。

 

 

 

 

「姫様、貴方様をここにお連れする時に偽情報を流し影武者として用意した輸送船が攻撃されました。人員がいない無人船でしたが、やはりまだ狙われていると思っていいでしょう。ただ……」

 

 

「ただ、どうしたのですかクルーテオ?」

 

 

 

「輸送艦の機動能力を奪う、つまり鹵獲するための攻撃でした。皇帝陛下亡き後、アルドノアドライブを起動できるのは2人……つまりそういう事であるかと」

 

 

 

「アルドノアドライブを起動できるもの、私と妹のレムリナ・ヴァース・エンヴァース……宮殿は完全に破壊されたのを映像で見ました。ならば……」

 

 

 アセイラムは考える。祖父は絶対にアルドノアドライブを渡すことはないだろう。処分するとは……宮殿ごと破壊するという事だった筈。

 実際、その外れて欲しかった想像通り。宮殿が爆発する様子は映像として残っていた。だが、それでもこの行動は明らかに……

 

 

 

「アルドノアドライブを手に入れた、という事でしょう。……レムリナは?」

 

 

「はっ……保護しておりましたがおりません。

 食客トリルラン男爵の姿もなく、おそらくは全てつながっていたことかと」

 

 

 アセイラムは「そうですか」と答えると、瞳を潤わせた。

 

 

「確かに私はあの子に疎まれていた。でも、それでも……

 立場を奪おうとした家族に、妹に命を狙われていたのですね……」

 

 

 クルーテオは何かを言いかけ、途中で口を結んだ。

 自分の言葉では痛みを和らげることはできないと悟ったのだ。

 

 

「……タルシスを搬入しました。機体はスレインに預けます。

 奴ならばうまく扱うでしょう。それから、彼もここに?」

 

 

「ええ、ですが出来れば戦ってほしくはない。

 黙っていますが、私もエデルリッゾも彼の身の内の痛みを知ってしまった」

 

 分かり合い、助け合い、結ばれる事で力を高め合う。

 命そのものを絡め合う中で、悲しみと苦しみをも共有してしまった。

 アセイラムも、エデルリッゾも、少し距離を取っているのはそれが理由だ。

 

 

「しかし、彼が必要です」

 

 

「クルーテオ!!」

 

 

 

「必要なのです、姫!! 我が城の同胞が命を救われた事を理解し、唯一。歩み寄れる地球人もまた彼! 多くの貴族も、ヴァースの臣民も! まだ、矛を収めただけ。一度撃ち合いを始めてしまったものが、それをやめるならば理由いるのは必然!」

 

 

 必要なのです、と再びクルーテオは繰り返す。

 

 

 

「真にヴァース帝国と、地球と、それらに平和あれかしと願うなら……縁が必要なのです。そして、今2つを結ぶ、か細い糸。それが彼なのです!!王として、残酷におなりなさい! 利用するのです!!」

 

 

 

 バシーーーーン!!

 

 

 

 クルーテオのほほが激しく叩かれた。

 ため、こぼさぬように耐えていた涙がぼろぼろとアセイラムの瞳からあふれた。

 

 

「私たちは……私は! 

 あの人に苦しみを与え続けるヴェイガンと同じなのです!

 被害者であった。でも、すぐそばにあった平和の可能性を捨てて

 虐げられたのだから、何をしてもいいと! 同じなのです!! それを、それをあなたは……利用しろと!?」

 

 

 叩かれた、ほほに手をあてたただ目を見開き身動きしないクルーテオ。

 彼の驚愕察するにたやすい。すぐに正気を取り戻し。

 

 

「失礼しました……」

 

 

「赦します。私も貴方という忠臣にあるまじき行動をとりました。ですが……

 クルーテオ、どうか彼を道具として見るのはやめてください」

 

 

 クルーテオは思い出していた。命失いかねぬ戦いに赴いた彼を。

 機体を砕きながらも敵を追い返したのは誰だったのかを。

 

 

「はっ……(行動にこそ人の本質はある。

      彼に人の命の区別はない。というのにこの私はなんとなさけないことか)」

 

 

 クルーテオは深く、己の未熟さを痛感し恥じた。

 そして、今の気持ちを忘れぬように心に深く刻んだ。それが自分を成長させるのだと……

 

 

(今、理解した。姫は知っているのだ。彼は立つ事を

 どんな思いものを背負い続けても、命尽きるまで……)

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

 

「大河幸太郎という。宇宙開発公団総裁、というのは表向きだ。

 実際はGGG、ガッツィ・ジオイド・ガードの長官という立場はある。

 本筋と関係ないので省略させてもらうがつまり、地球にある潜在的脅威に対処する組織だ」

 

 

 

「地球は色々ありますねぇ」

 

 

 

「はは、全くだ。さて、かけてくれ。話をしよう」

 

 

「失礼します」

 

 

 そういってソファーに腰かけると、対面に大河幸太郎が着席した。

 

 

「率直に言う。ライブレードは凍結という形にしたい。申し訳ないが」

 

 

 頭を深く下げ、大河幸太郎はそう言った。

 

 

「それは……危険だからですか?」

 

 

「それもある。だが、機体以上に君の消耗具合がひどい

 というのが一番だった。全員が否決に回った上でこの提案が出たのは

 この理由が大きい。無論、その提案を飲んだのは私だ。責任も」

 

 

 療養施設は用意しよう、といって机にいくつかの不動産が並べられる。

 

 

「対ヴェイガンとの市街地戦で出た被害により、君の居場所を教えろ

 という声が市民より多く出ている。なので、少し離れた場所になるが警備は万全だ」

 

 

「俺がまだ戦うといえば?」

 

 

 

「扉の前に機動部隊が待機している。

 すまないが、君に与えられた選択肢はどこで、のみだ」

 

 

 すまない、そう言葉を重ねた。

 

 

 

「君は若い。パイロットとして教育されたとしても、

 優秀な戦士だとしても、命を粗末にして欲しくはない……。

 我々は自分が善意ある大人の一人として信じていう。もう、戦わないでくれ」

 

 

 矛盾なのは理解しているのだがな、と小さく呟いた。

 大河幸太郎の眼には悲しみが宿っていた。

 それがシンには分かった。だが、それでも……

 

 

「できません。できない。したくない。それだけは嫌だ」

 

 

「そうか、ならば……」

 

 

 

 

 その瞬間、爆発音と激しい振動が応接間に響き渡る。

 ガラス窓の向こうでは激しい発光も確認できた。間違いなく攻撃行動である。

 

 

 

『長官! 高速で宇宙より飛来したものが攻撃を仕掛けてきました!』

 

 

「正体は!」

 

 

『その組織にも該当しません!』

 

 

「くっ、まだGGGは戦力の準備中。その隙を狙われたか! 何者なんだ……」

 

 

『いなほくんとスレイン君がハッチを強制排除して出撃しました!』

 

 

「何!?」

 

 

 

 ―――ついに先兵がたどりついたか

 

 

 

「ベターマン……どういう事だ!」

 

 

 

 ―――暁の先兵。その意思を反映するもの……パトリアの刻、妨げし者!!!

    

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「敵の正体は不明。現在、ロンド・ベルおよびマクロスに救援要請中。スレイン」

 

 

「分かってる。タルシスの未来予測でサポートする。だが一応……

 こちらはロンド・ベル所属。スレイン・トロイヤード! 貴殿の所属を名乗られたし!」

 

 

『へい、君が仲間にいるんだ。めずらしいねぇ……

 で、僕? 僕かい? インファレンス……”推論者” 知の記録者を統べるもの」

 

 

「記録者……?」

 

 

『知識を記録し、文明破壊するもの……と分かりやすく言えばばいいかな?』

 

 

「敵、なのは疑いようがないね」

 

 

 いなほが宇宙ユニットを改良し制作した地上の高機動ユニットを装備した

 オレンジのスレイプニールのライフルの安全装置を外しながら言った。

 

 

「……おかしい、タルシスの未来予測に攻撃の反応が」

 

 

『する気がないからね』

 

 

「何!?」

 

 

『まずは君たちの攻撃力を記録しよう。このオメガ・ヴァルホークでね』

 

 

 各部にオレンジのカラーリングを持つその機体はどこか、強い威圧感を放つ……

 

 

■■■■■

 

 

 

「……行くしかないな」

 

 

 ベターマンの声はもうシンに届いていない。

 必要な事は伝えたということなのだろう。意味はわからない。

 だが、敵という事は伝わった。十分だ。

 

 

 

「待ちたまえ!! ライブレードは計測の為に一部は修繕した。

 だが、破損した両腕と脚部。摩耗したウィングも取り外されている!!」

 

 

 動かせる状態ではない。動いても意味がない、という事なのだろう。

 だが、なんの問題もない。

 

 

 

「万全の戦いなんていつもなかった。その時に、あるもので

 できることをする。長官さん、あんたは良い人だ。でも、だからこそ覚えておいてくれ」

 

 

 

 ―――大人なら、背を押してやるべきだ。

 

 

 

「何より、この世界……俺以外もたくさんの少年少女が戦っている。

 俺より弱い奴が歯を食いしばって戦っているんだ。俺だけ逃げても、しょうがない」

 

 

 

 鼓動を感じる。目覚めたのだ。憎しみを持って動く機体。

 悪夢と共に空を舞い、暗黒を纏う剣をふるう死神。でもあの時感じた。

 その奥底には確かな意思がある。おとぎ話の様な騎士のような誇り高き光の意思が。

 

 

 今も叫ぶ、悪鬼断つべしと

 

 

 

「こい、ライブレード!!」

 

 

 

 地響き、鳴らし。拘束を断ち切り、大地の奥底よりそれは現れた。

 翼は手折られてもなお、立ち上がった。”新たな”腕と脚を携えて。

 

 

 

 そして、それは主にこうべを垂れるように、コックピットを開いた。シンはそこに飛び乗る。

 

 

「あ、あれは……ガオガイガーの予備パーツを取り込んだのか!! そんな事が……」

 

 

 立ちすくむ男を置いて、ライブレードは向かう。己の敵の元に。

 

 

 

『あれは……なんだ?』

 

 

 

「姿形は変わったが、こいつはライブレード。

 お前の敵だ! いくぞ、インファレンス!」

 

 

『その熱血具合、なぜかいら立つ……本当にいら立つよ!!!」

 

 

「スレイン、あと5分だ」

 

 

「了解、攻撃を開始するぞいなほ。僕ら3人で時間を稼ぐ!」

 

 

 

 

 しかし、同時刻。ロンド・ベルもまた攻撃を受けていたのだった……

 

 空の果てで輝く流星と共に現れた来訪者は、破滅を呼ぶのか。果たして。

 

 

 

 




誤字報告ありがとうございます。
忘れてましたけどこの機能便利ですね……



ちなみにライブレードはドリルガオーと
ステルスガオーの腕部だけ取り込んでる感じですね。
羽はないので一生懸命どっすんどっすん走って頑張ってジャンプします。


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宇宙の終わり、その先に 下

 

900:学生兵

猥談で楽しそうな所悪いし、次スレも近いから端的に言うけど

だれか、インファレンスとかいうお兄さんしってる人おりゅ!?

オメガ・ヴァルホークとかいうのに乗ってていくらダメージ与えても再生する!

 

901:名無しのハズレ転生者

スパロボWの敵。終わった宇宙の歴史を記録して次の宇宙に向かう。

本来は宇宙の歴史を記録しそこに存在していた人の記録だけでも残そうという存在だった。

なんかバグって記録した文明破壊するマンになった

 

902:名無しのハズレ転生者

でも、ヴァルホークって主人公ユニットじゃ……

主人公から奪われ済ってこと? 

 

 

903:学生兵

あと、ブラック会社ベターマンおじさんが暁の先兵って!!

 

 

904:名無しのハズレ転生者

あ、記録者が狂った理由って……

 

905:名無しのハズレ転生者

めっちゃ筋が通る。確かにWもガオガイガーいた

まぁ、ぶっちゃけ殴るだけ無駄かもしれない。無限に再生するぞそいつ

なんか手段なかったっけ

 

906:名無しのハズレ転生者

俺らがなろう主人公だったらなぜかwikiの記憶完璧に覚えててやれるのに

 

907:学生兵 LIVE

ライブだけつけとくから僕が死ぬ前に思い出して☆

 

908:名無しのハズレ転生者

後ろ向きすぎて草ぁ!

 

 

 

■■■■■

 

 

『さて、5分はたった訳だけど……気はすんだかな? それじゃあ

 当初の目的通り、逃げたギャレオンと君たちごとこの町を破壊させて貰おうかな」

 

 

 

「機体のダメージより損傷回復のスピードの方が上回ってる」

 

 

 

「冷静に解説しないでくれるか、いなほ! 絶望してくるだろ!」

 

 

 

(軽口をたたく余裕はまだあるみたいだな、スレイン。

 が……俺はそうもいかないザーツバルム(きょうかぱーつ)の負担2割減は地味に大きかった)

 

 

 負念を際限なく蓄積するが、変換効率は悪い。

 パワーロスはメインの操縦者自身の精神を傷つけ、容赦なく体力を奪っていく。

 まさしく急増のシステムと思われる不完全なシステムに感じる。

 

 

(俺の使い方が悪いのか、分からない。

 だが俺一人だとサブパイロットシステムの補助ありでも

 メインのプラーナコンバータだけでは出力が足りない)

 

 

(あの時の力があれば……いや)

 

 

 非戦闘員を二度もここに乗せる訳にはいかない。

 たとえそれが機体を最大限に使う手段だとしても……

 シンは思う。コックピットとは鉄の棺桶なのだ。そして、そこに生きそこで死ぬ。

 

 

 

「直上に攻撃、10秒!」

 

 

 タルシスの戦術予測が攻撃をスレインに伝えた。

 シンはいなほのスレイプニールの傍に駆け寄る。

 

 

「プロテクトシェード!!」

 

 

 腕部から波紋の様に広がるバリアが攻撃を防いだ。

 

 

「この腕便利だな。足もちゃんと足をしてるしなんかドリルもある!!

 そこそこ走れるしジャンプもできる!」

 

 

「それは僕のカタクラフトへの皮肉? でも、これはこれで便利だよ」

 

 

『アルドノアドライブか。固有の能力は製造した後に発揮するまで分からない。

 未来予測なんてタイプもあったんだね。タルシスはすでに撃墜されていたから助かるよ』

 

 

「何!?」

 

 

(……終わった宇宙。前の宇宙ってことか?

 それはある程度似た歴史をたどるって事か……でも記録にないのは助かる。

 ある程度、アイツはライブレードを観察しようとするはずだ……強い武器ないけどね)

 

 

 翼をもぎ取られると剣でブンブンするしかなくなるライブレード。

 スレイプニールは汎用性に優れているが突破力はなく、タルシスも持ち前の機動性を発揮して攻撃を回避していたが、一撃で決めるだけの兵器がないのは同じはずだ。

 ライブレードの武器もあとはせいぜい、膝ドリル。

 しかし、ついてはいるけどまともな推力もない膝蹴りが当たる訳もなく、当たった所であの修復力をこえられるかと聞かれれば圧倒的にNOを突き付けるだけの確信はある。

 シンはわりと真剣に悩んでいた。

 

 ちらっと見えたレスにオーラをはぎ取ればワンちゃんあるとある。

 シンはさらに悩む。オーラというのがそもそもよくわからんし

 ライブレードよりわずかに高い様に見えるわりに

 運動性能はあちらの方が明らかに高い。重力下でライブレードより大きくそれであの動きは汚いとすら感じた。

 

 

(バーストプラーナしかない……!)

 

 

 だが、できるのか。激しい感情を暴れさせることが、命を昂らせることが……

 シンには自信がない、なかった。

 

 

「くそぉ、俺は王道主人公タイプじゃねぇんだぞ!

 どうせなら悪役らしくヴェイガンもセットでつれてこい!! そしたらこの場ごと灰にしてやる!」

 

 

「ただ現状だと決め手がないのは確かだよ。再生しなければいくらでも手段はあるんだけど」

 

 

「せめて、マジンガーかゲッターだけでもいてくれたら……」

 

 

 決め手がないというのは共通認識だったらしい。

 

 

「なら、やるべきことは一つだ。おそらく、向こうも襲われてるけど……。

 それを片付けてかけつけてくれるのを待つしかない」

 

 

「要するに時間稼ぎ、再開だぁ。くそがよぉ!」

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

「父さん……どいてくれ、俺も行く!!」

 

 

 オレンジの髪の男性……機械の体を持つ男、獅子王凱は静止する父、獅子王麗雄にそう言い放った」

 

 

「いかん、凱!! ギャレオンは今だ目覚めん。ガオーマシンだけで何ができる!

 勇者ロボもAIの習熟をまたねばならん。ここは彼らに任せるしかない!」

 

 

 しかし、獅子王麗雄も理解していた。

 敵の再生力を上回る手段もなく、このままでは押し切られるのは間違いない。

 彼が凱を止めてるのは親心以上に……。

 

 

「無駄なのじゃ、凱!! お前が参戦した所で勝率の上昇はむしろマイナス!」

 

 

「なら、彼に翼を!!」

 

 

 凱の視線の先にはライブレードの翼がついた鎧の様なものが置かれている。

 

 

「……不可能じゃ。ステルスガオーの様なパイロット操作機能を組み込む余裕はない。

 そして、独立稼働もできん。このライブレードの翼はGSライドなどを組みこみつつ、損傷したバリア能力を補うジャケットアーマーと翼をひとつにしたものじゃ……単体での稼働は」

 

 

 獅子王麗雄はライブレードの修理中に気づいたバリア機能の損失。

 その修理がはかどらないためにサブプランとして採用したのがこの外部装甲。

 それを取り付けた上で封印する予定だった。いつか安全な稼働ができる日まで。

 しかし、Gアイランドシティが狙われるなんて事を考えてはいなかった。

 この施設には特にまだ、何かあるわけでもなかったからだ。

 

 

(まるで、最初からギャレオンを破壊しにきたかのような動きじゃ……)

 

 

『その想像は正しい』

 

 

「何……声が!? いや、違う」

 

 

『緑の星の継承者よ。今は力を蓄えるがいい……ペクトフォレース、ウイリデ!』

 

 

 突然現れた男の胸の宝石から発せられる緑色に輝く粒子がライブレードの翼を覆った。

 すると、動力を接続されたわけでもないというのにその翼が稼働を始める。

 

 

「お、お主は一体……」

 

 

『ソムニウム……ラミア』

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

 

 

『7分。そろそろ観測することはないかな?』

 

 

 

「いなほ、あの急に現れる攻撃は何かわかるか?」

 

 

「おそらく、すでに発射されていたものが瞬間的に次元をつなげてこちらに飛来している……

 スレインの未来予測でとりあえずは回避できる。でもそれだけだ……」

 

 

 

 その時、ライブレードが突き破った地面から何かが飛び出した。

 

 

「あれは……ライブレードの翼?」

 

 

『受け取れ、同調者よ。暁の先兵は私が退ける。しばし時間を稼いでくれ』

 

 

 

「ラミアか!? 見捨てられたわけじゃなかったのな! よっしゃあ!!」

 

 

 

 ライブレードがジャケットアーマーと合体する。

 肩口で固定されたその鎧は胸と腰を文字通り、包み込むように繋がった。

 

 

『文明の破壊者、インファレンス。あの船すら奪ったか……。

 アプリカントの意思すらもはや受け付けぬというのだな……ネブラの実よ、我に力を』

 

 

 懐から取り出したネブラの実を食するラミア。

 体を震わせ、高まる気迫。そして、意識のスイッチを切り替える様に、

 かけていた黒塗りのサングラスを投げ捨てた。その下の眼は血の様に赤い。

 

 

『うぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 

 

 

 発せられるハリケーンの如きすさまじい風。

 その中で巨大な何かがうごめく。そして眼を見開き、飛び出た。

 

 

『ぐぅ!』

 

 

 白く細い体躯を持つ巨大な蝙蝠に似たその化け物は、ソムニウムのラミア。

 強化形態ラミア……その頭部。クラッシュウィッパーがオメガ・ヴァルホークを弾き飛ばした。

 

 

 

キィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインンン!!!

 

 

『しまった!』

 

 

「逃がすな! ここで始末をつける!」

 

 

 ベターマンのリミピッドチャンネルを経由し、いなほとスレインとシンの意思が反響しあう。

 3体の機体の特性を理解し、瞬時に構築した作戦をいなほが意思の波として2人に伝えた。

 

 

 そして、ライブレードが、スレイプニールが、タルシスが同時に飛び立つ。

 

『堕ちろ!!!』

 

 飛来する機体に向かって異次元より無数のビーム攻撃が四方より放たれる。

 しかし、タルシスとその未来予測を受け取ったライブレードがバリアを展開しスレイプニールを護った。

 肉薄するスレイプニールより発射されるワイヤーがオメガ・ヴァルホークを拘束し、

 そのワイヤーをつかんだタルシスが地面に叩きつける。

 

 地に落ちたオメガ・ヴァルホークはなお飛び立とうとする。

 そこに高速で落下してきたライブレードが左腕を押し付ける。

 

 

「プラズマホーーールドォ!!」

 

 奪ったガオガイガーの予備の左腕に内臓される反発的防御フィールド。

 プロテクトシェードを反転させ、攻撃エネルギーに変換し、そのフィールドの反発作用によって行動を封じる。付随的効果によりフィールド内では激しいスパークが発生し電子機器に損害を与える。

 

 

『くそ! 離せ、離せって言っているだろ!!!』

 

 

「うるせぇええええ!! 無限に回復しやがって無限チートやろうが!

 こっちも痺れてんだ! こうなりゃ、ライブレードが爆発するまでこうしてやるぞ!」

 

 

『その、必要はない。滅べ、インファレンス』

 

 

 

 

 サイコヴォイス!!

 

 

 

紀元前2500年、アーリア人がソーマを食することでのみ発したといわれる超常の声。

その声は対象物の固有振動数に同調し、それのみを粉砕する超高周波。

周囲が大きく歪み、光すらもそれに屈しネブラの姿が歪んだ。

 

 

 

『ソムニウム!! 次は殺す!

 お前もだ、ライブレード!! そして、その2体。忘れないからな!!』

 

 

 

 オメガ・ヴァルホークに広がる皹が止まることなく、全身に広がり。轟音と共に砕け散った。

 

 

 

「……ラミア」

 

 

 

『暁の霊気の残滓を使い、奴は逃げ伸びた……私は行く。まだ補足されるわけにはいかない』

 

 

「そうか、悪い。助かったよ……。

 こいつもなんだ。翼が来てからすごい楽になった。いや、鎧かこれ?」

 

 

『お前が今を生きる力捨てぬ限り、それは力を貸すだろう。さらばだ……』

 

 

そういって、ネブラは飛び立って消えた。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

981:名無しのハズレ転生者

はえー、やっぱ強いラミアくん

で、どうしてるの今

 

 

982:学生兵

プラズマホールドでライブレードの

電子機器が故障したので再修理してる。もう1日寝てるわ

何かあってもラミアくんいるもんね!! ……いる? 

 

983:名無しのハズレ転生者

何度も助けてくれるわけないだろ!! 自分でなんとかする努力をしろ!

 

984:学生兵

それもそうだな。すまんかった

 

985:名無しのハズレ転生者

ほんと、アホだけど素直なの草

 

 

■■■■■

 

 

「こうなった以上、できる限りの支援はしよう。だが……。

 私は君が戦うべきでないと思う。ライブレードに命を吸い切られる前に剣を下ろしてほしい」

 

 

 

 そういうと大河幸太郎はいつでもきたまえ。

 相談も受けようと電話番号を渡してきた。

 初めてこういうのをもらうのが男というのもなんだかなぁ、と思いつつも間違いなく一人の人間として心配されているのもわかったのでしっかりと受け取った。そして、シンはロンド・ベルの迎えを待っている。

 

 

 

「あの……寝込んだりしてませんか?」

 

 

「リッゾちゃん、そんな俺がいつも死にかけてるみたいな」

 

 

「出会いからして大分ムチャでしたし……」

 

 

「まぁ、まぁまぁまぁ……」

 

 

 シンはなんも否定できなかったのでとりあえず必死にその場を流した。

 だが、事実として負担は軽い。後半、かなりやせ我慢していた部分もあった状態が

 翼が張り付いてから歯を食いしばってればなんとかなる、ぐらいの負担にはなった。

 

 

「手足と翼。いいもん貰ったわ。余裕だな!」

 

 

 きついもんはきついのだけど、という弱音は心の中で押しとどめた。

 

 

「そうはいっても、苦しいのは変わらないのでは?」

 

 

「ちょ、まっ、っぎぃ! まっ、まぁまぁまぁ……」

 

 

「……本当に必要な時は呼んでください。

 ここでのテストの時はダメでしたがあの時は動いているのです。力にはなれる筈です……いいですね?」

 

 

 そういってアセイラム姫はシンを睨みつけた。

 

 

「本当に苦しい時は、そうな。言うよ」

 

 

 わかっているのだ。根っこの所で誰もを拒絶しているのを。

 結局、なんもかんも自分が悪い。少しずつ変わっていくつもりはあるけども。

 

 

(本当にやばい時じゃないと素直になれないって、なんか暴力系ツンデレみたい……)

 

 

 どっちかっていうと、お前はヤンデレだよ。

 そんなことを言いたげに一瞬だけライブレードの首が動いてアイカメラが光った。





調子悪くてかえってぎっりぎりまで
寝てた。危なかった。誤字確認は明日……


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幕間 インターミッション7 『やどかり』

ハズレ転生者専用掲示板 おしらせ

――――――――――――――――――――――――――――――――――

前回、新人の数を上回る死亡者を出しましたが

今期は新人166名に対して、死亡者は97名。
比較的少数で抑えることができました。念願かなってアップデートされた
掲示板の閲覧履歴がないものに、
リンクを表示する機能が役に立ったと報告がきています。

ただ、意外なことにこれまでその存在を知らずに
生き延びていた人もおり、その人たちの延命とコミュニケーションにも
一役買う事ができたのが我々としては一番、喜ばしいものでした。


来期も皆様の無事をお祈りしています。


 

大惨事スーパーロボット大戦 4スレ目

 

 

 

 

 

 

20:学生兵

働きたくねぇ、船降りるわ

 

21:名無しのハズレ転生者

 

22:名無しのハズレ転生者

 

23:名無しのハズレ転生者

休暇で冷静さを取り戻した結果かぁ

 

24:名無しのハズレ転生者

毎回、疲れ切ってまともに動いていなかった脳みそが

思考力を取り戻したらそらこうなる

 

 

25:名無しのハズレ転生者

うるせぇ!!! 戦おう!! ドン!

 

26:学生兵

いや、でもまじでぬるま湯につかりすぎたわ。

1分ごとに有給を脳内で申請してる。休み"たい!!!

 

27:名無しのハズレ転生者

なんて汚いニコロビンなんだぁ……

 

 

■■■■■

 

 

 

 ロンド・ベルは通信による艦長会議を始めていた。

 艦長会議といっても、話をまとめるために一同が通信をつなげているというだけで

 情報の共有の為に全艦にその様子は放送されている。情報に秘匿がないというのは、

 ロンド・ベルの強い結束の理由の一つかもしれない。

 また、今回は戦力の一部を借り受けたという事でミスリルも会議に参加している。

 

 シンは機体を一先ず、マクロスに預けると部屋の荷物をいい加減移動しようと

 プトレマイオスに移動してきた。その流れでその会議にも参加する事になった。

 

 

『失礼、こちらの事情で時間が遅れてしまい申し訳ない。彼らは記録者を名乗っていました。

 一先ず、ザ・データベースとして敵対勢力登録をしました……。

 また、彼らはGアイランドにも出現しています。そうでしたね、大河幸太郎総裁』

 

 

 ラーカイラムに戦艦を乗り越えたブライト艦長が目くばせをする。

 

 

『此処では正直に、GGG長官と名乗った方がよろしいでしょうな……

 ええ、敵の狙いはギャレオンでした。今は安全な場所に移送しております。フリット艦長、彼は?』

 

 

「ライブレードより提供された記録を各艦長は共有していると思います。

 それでいくつか不明点ががあると感じ、ここに来てもらっています」

 

 

『では、さっそくで申し訳ないのですが……ザ・データベース。

 彼は異星人勢力ですか、それとも我々の様な……』

 

 シーラ・ラパーナがモニター越しにシンを見つめて言う。

 あるいは彼のオーラを見て虚偽を見破ろうとしているのかもしれない。

 

 

「(まぁ、アイツらの話からなんとなくわかる事だけでいいか)

 まず、俺たちを助けてくれた相手はソムニウム。人類の免疫抗体ともいうべき存在です」

 

 

 

『あぁ、だから私たちにそっくりだったんですねぇ。

 すいません、質問です! 進化で別れたって感じでよろしいのでしょうか!』

 

 

 ミスマルユリカが興味本位にそう質問する。

 

 

「(いや、あの話し方からして……)

 いえ、厳密にいえば地球で暮らす中でそういう役割を得て共生したという感じです。

 彼ら自体はもっと別の場所からやってきた、そういう生き物なんです」

 

 

『人から巨大な怪物に変化したな。もしや、宇宙怪獣の亜種かね?』

 

 

『あるいは別の宇宙人か……』

 

 

 タシロ提督の発言に続いてグローバル艦長が発言する。

 

 

「いえ……彼らは別の宇宙から来ました。厳密にいえば……今の宇宙、その前から

 滅びる宇宙から今の宇宙にやってきたのがソムニウムとザ・データベースなんです。

 そして、ザ・データベースは気になる事を言っていました。当初の目的通り、逃げたギャレオン……と」

 

 

『我々の元にたどり着いたギャレオン。彼もまた、前の宇宙からやってきた存在だと!?』

 

 

「だと思います。アイツらは宇宙からやってきましたが、記録を確認して

 太陽系外から飛来してきたようなものがないのはこちらでもわかっています。なら……」

 

 

『あの時に急に出現したギャレオリア彗星。あれは次元ゲート、あるいはその裂け目。

 だった可能性がありますね……筋はしっかり通っていると思いますよ。シンさん、ありがとうございました』

 

 

 

「(いえ、それでは失礼します)やすみてぇ~~~」

 

 

『『『『『『えっ?』』』』』』

 

 

 

「もー、限界だ! 俺は休むぞ!! よく考えると働きすぎだろ!

 何回、限界寸前まで頑張ってんだ! ザーツバルムは電池でも俺は電池じゃねぇ~~!!」

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 数十分後、艦長会議の終わったプトレマイオスのブリッジの端で

 シンは目の輝きを失ってゲンドウポーズで座っていた。

 

 

「ごめん、中途半端に休んだせいで休みの快楽を思い出しちゃって……」

 

 

「い、いや……まぁ、確かに君は……」

 

 

 そこまでいって、フリットはためらいがちに咳ばらいをしてから。

 

 

「シン兄さん、よく働いている。

 思えば懲戒任務も誰かしらのかわりに出撃していた。

 コールドスリープで数十年といっても、意識がないのは休みとは言わない」

 

 

「……艦長」

 

 

「昔の様で構わないよ」

 

 

「なら、フリット……お前がこうしてる理由は結局なんなんだ?

 あの格納庫で動かないガンダムがそうなのか?」

 

 

「……兄さん。ラーカイラムのアムロ・レイの機体を見たかい?

 νガンダム……アスノ家のザ・ガンダム。コロニーと共に消えたあの機体を」

 

 

「いや、まだだ(そういえば……そうだったな)」

 

 

「……そうか。あとで見るといい。それで、理由か……イオリア・シュヘンベルグ。彼のサブプランだ

 事の始まりは私と息子、アセムの思想が分かれ、彼が海賊に身を落としたところから始まる……出してくれ」

 

 

 フリット・アスノがそういってテーブルのボタンを押すと

 月の画像が表示される。かつてハイパーゲートが存在した付近に『Veda』と表示さた。

 

 

「ここはヴェーダ。100年前に作られた量子型演算処理システム……。

 AGEシステムの元となったものだ。私はここで、13年ほど前。AGEに導かれるままに彼に出会った……」

 

 

 フリットはテーブルに置かれた擦り切れたAGEデバイスを懐かしむ様に見つめながら口を開いた……。

 

 

 

■■■■■

 

 

40:学生兵

という感じに懐かしさを味わった

 

 

41:名無しのハズレ転生者

お、まてぇい! 今、なんかすごい事きいたな

 

42:名無しのハズレ転生者

ザ・ガンダムがνガンダム……?

 

43:名無しのハズレ転生者

コロニーショックで時を超えて~……ってこと!?

 

44:名無しのハズレ転生者

混乱してきたけど、

全部聞いてから整理したいんで過剰で頼む

 

 

45:学生兵

 

 オッス!

 

 

 フリットの孫が、キオが生まれたころにアセムが作戦で行方不明。

 同時期に宇宙海賊ビシディアンが宇宙に出現した。

 

 

 データには宇宙海賊ビシディアンの罪状が並んだ。

 内容は連邦軍に対する私掠行為、臨検活動と称した略奪。

 作戦妨害など、反連邦組織であるのは明らか。

 でも、同時にヴェイガンの攻撃を妨害している記述もあった。

 フリットはこれでアセムと理解したみたいだけど頭を抱えたらしい。

 

 この組織の筆頭、キャプテン・アッシュ。彼が運用する

 『ダークハウンド』と呼称される機体。見るものが見ればわかる。

 間違いなくAGE2……これでキャプテンアッシュ=アセムが連邦内部で確定。

 

 

 責任の追及でフリットは

 

 

 テロ組織への機体の横流しや支援行為。

 アセム・アスノの反乱。諸々を被らされ、将官位を剥奪(元々敵も多かった)

 戦いは冷戦に近いものとなり、そこへの意向と同時に、

 マッドーナ工房は閉鎖に追い込まれ、MSという技術は一時的に失われる。 

 

 

『個人的考察』

 

 今思えばザクのどこか丸みを帯びたフォルムはジェノアスに近い。一度途絶えた

 MSをはじめとする一連の戦争の技術がジオンから始まったのを考えると、

 職人の一部がジオンに流れ着いたのは何となく想像がついた。

 フリットが表舞台に出ないのは恨んでる奴が一斉に集まってきて殺されかねないから。

 

 

【以下、ちょっとあったやり取り】

 

 

「息子も息子で変えようとしたのかもしれないさ」

 

 

「だが、間違いだったのだ。パイロットの腕だけでなく

 歴史を教えるべきだった……アセムの行動は互いの憎悪を高めた。

 最早、和解という形で止まるものではない……イゼルカントを倒しても終わるかどうか」

 

 

(望むところさ……ふっ、ふふふっ……ヒヒヒヒッ!)

 

 

46:名無しのハズレ転生者

ヴェイガンにかかわるとキチってくるのやめろ(震え声)

 

 

47:学生兵

んで、ここでどうして今。また戻ってきたのか聞いたんだけど、

キオが生まれてすぐ、アセムが行方不明になったころ。

自分の古いAGEデバイスに通信が入ったらしい。

新品は孫の元においてあるからおかしいな、って思ったら

それが、イオリア・シュヘンベルグだったらしい

 

 

48:名無しのハズレ転生者

あの時代のさらに100年前ぐらいの人間になるのか

 

49:名無しのハズレ転生者

でも、なんで連絡してきたんよ?

 

 

50:学生兵

借りを返せってことらしい。そもそも

実は、俺を救ったコールドスリープ装置。

あれはAGEビルダーが製造したものだが状況を見てたそいつが送ったものらしい

 

んで、そいつがフリットに頼んだのがサブプラン。内容はざっくり

 

・当初考えていた武力介入はもう必要ない。代わりに

 私と私の作ったイノベイダー死んだ場合、ある戦艦で力に目覚めつつあるものたちを救え

 

・適正値に達するものがいればガンダムマイスターとし、

 世界の平和に貢献してほしい

 

 

みたいな感じだったらしい。ちなみに適正値に届く奴がいないから

ガンダムは永遠に電池と化してる。

 

 

51:名無しのハズレ転生者

刹那もロックオンも、ガンダムマイスターってあの世界が生んだ存在だからな

この世界も荒れてるっちゃ荒れてるけど世界の紛争はほぼ鎮圧されてるし

特に刹那なんか生まれてくるはずもなく……

 

 

52:名無しのハズレ転生者

んじゃ、フリットの爺様が念動力者とかNTとかを保護してたってこと?

 

 

53:学生兵

そうね。本格的な活動はヴェーダがおっさんごとハイパーゲートと一緒に吹き飛んで

AGEビルダーがそれに反応するようにヴェーダを複製したところかららしい。

因みに、それはビアンなんとかに渡し隠して貰ったらしい。プトレマイオスに流石につめねぇやって

 

54:名無しのハズレ転生者

ほーん、あの爺さんが人を救う活動に従事してるなんて

なんかすげぇ以外だな。でもフリットって確か元は優しい奴だったらしいし

 

 

55:学生兵

あと、ヴァースがくる前にハイパーゲート跡地付近で男性のESP能力者を救助したらしい。

ロボットの残骸と一緒で、地球の軌道上で同じ脱出ポッドに入った女性を助けて

彼らは自分が助けてきた人たちが作った新未来創世機関アヴァルダっていう

組織に預けてきて、どうやらダンガイオーはそこの所属らしい

 

56:名無しのハズレ転生者

何やってるのそこ?

 

 

57:学生兵

空気清浄機とか、森林の再生とか

今は自然技術の研究が多い。ぶっちゃけ、原作があんのか知らないけど

大分離れた存在にはなってる筈

 

 

■■■■■

 

 

 

「いいぞ、戻してくれ!」

 

 

「戻すのも大変なんだよぉ……変形する時よりは楽だけど」

 

 

 ギコチナク高速起動形態からロボット形態に変形するライブレード。

 その様は”ラグって遅いトランスフォーマーの変形シーン”と表すような微妙な感じである。

 

 

「かー! なさけない! 男ならきっちり決めろ!」

 

 

 そういったメガネのニヒルな笑顔が似合いそうな男はウリバタケ。

 ナデシコのメカニックであるが、前回の襲撃を受けマクロス側へ増員としてきている。

 

 

「ムチャ言わんでくださいよ。こう、心で動かすから……

 レバー引っ張ってガチャン!!!みたいにならないんだよ!?」

 

 

「サイバスターはもっとがっちゃんがっちゃんしてるだろ!」

 

 

「アイツはあれでも歴戦のパイロットだからな、どうみても!」

 

 

 わーわー!と年上のおっさんと口論しつつ、コックピットから降りる。

 最近は降りようとすると膝をついてしゃがんでくれるから楽だな……などと思いつつ

 それはそれでなんかの意思があるのは確定だから怖いな、と少しシンは背筋を寒くした。

 

 

「まっ、変形機構は問題ないと。

 スキャンで修理すべき部分がないのもわかったし戻っていいぞ……休暇だそうだ。

 あの放送は全員が聞いたからな……まぁ、わからんでもない。

 俺は機械をいじってりゃいい。でもお前らは限界ギリギリの中で殺し合いだ」

 

 

 好きな事をしてる奴と嫌いな事をしてる奴の違いだな、と肩を叩いてウリバタケは手元の書類に目を移した。

 なんだかんだ言いつつも、大人の一人であることは間違いないのだな、とシンは感じた。

 

「で、どこに行くんだよ?」

 

 

「自分の街に一度戻ろうと思います

 最後に一度見ておきたくて」

 

 

「おま、しかたねぇとは言え、ぶっ壊してるんだろ!?袋叩きにされるぞ!!」

 

 

 

「パイロットとバレなきゃ大丈夫ですよ。あ、それと……これ。もっていってください」

 

 

 シンは足元のクーラーボックスを指さしそういった。

 

 

 

「特にシャアには1つ渡しておいてください。

 あんな大人でも火星の時は多分、あの人のおかげで助かってるんですよ」

 

 

「おう、ノースリーブ大尉にだな。わかった」

 

 

「ならば、その差し入れは今。受け取るとしよう」

 

 

「あ、やべ」

 

 

 ちょうど鉢合わせて気まずい気分になったシンであった。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「それで……私は何かしただろうか?

 特に礼をされる覚えはないのだが」

 

 

 カップアイスを食べながらシリアス顔をする男はシュールだなぁ

 などと思いながら、シンは壁際で互いに顔を合わせぬまま言った。

 

 

 

「俺の能力はいわば、相手の能力を写す。コピーみたいなものです。

 大尉のNT能力を一時的に複写していたことと、睡眠時で能力が高まったのか未来を見たんです」

 

 

 

「ほう、未来とは?」

 

 

「セラムさんが自分の父親を殺す所でした。 

 それを見た上でいなほとスレインの協力があったので間に合ったんですよ」

 

 

 だから、貴方がMVPなんですよ。とムッとした顔を浮かべたままシンは言う。

 クワトロはそれを見て、苦笑いのままアイスを食べきり屑籠に入れた。

 

 

「そうか、助けになれたようで何よりだ。しかしなぜそこまで嫌う?」

 

 

「正直な事をいうのがすげぇ申し訳ないけど隠すだけ無駄だと思うので。

 ……蝙蝠野郎が苦手なんですよ。敵から味方。そして、また敵になるであろう貴方みたいな」

 

 

「敵になる気はないさ」

 

 

 

「なりますよ。シロッコ、ハマーン。彼らが消えた後にきっと

 シャア・アズナブルは地球に絶望したとかいう理由でまた敵になる。しかもその本心は隠したまま」

 

 

「本心、か……」

 

 

 宇宙に何かを探すかのように視線を漂わせた後、クワトロは言った。

 

 

「では、シャアの本心とは?」

 

 

 

「アムロ・レイに対等な条件で勝ちたいという思い。

 そして、自分の愛した女性を殺した事に対する怒りであり、

 母親を奪われた、と思っている勘違いした男の復讐。

 それらにほんの少しだけ宇宙の総意という名のマイノリティを粉にして塗したもの」

 

 

 

「ふっ、彼の事をずいぶんセンチメンタリストの様に語るな

 だが今の私はクワトロ・バジーナ大尉だ。それ以上でもそれ以下でもない」

 

 

 

「シャアがクワトロを名乗れるものか。

 エドワウ・マスに優しさを置き忘れ、シャア・アズナブルにしかなれない。

 そんな男がクワトロになんてなれるものかよ。アンタは!」

 

「……!」

 

 

「終わらせた気になって、次(クワトロ(4))じゃない! 

 スペースノイドの自立を目指したいだとか、そんな理由で参加したつもりか!

 でも、そんなこと実際は考えちゃいないだろう! 考えてるならとっくに

 政治家にでもなってるよ! できた! 目の前だからよくわかる!」

 

 

「やめておくといい。人の心の中に踏み込むのはそれ、相応の資格がいる。

 私もこうして再び表舞台に上がった以上。自由を捨てる覚悟はしてきた」

 

 

 

「知った事か。いつも思ってるのは死んだ女の事で、そんな自分を女々しいと言われるのが嫌で、

 クールを気取って伊達の強さを掲げてる。なのに、強いと誤解して色んな人が近づいてくるけど、

 自分の心を晒せば傷つくのが分かるから、傷つけられない様に相手が思う理想の人物を演じて遠ざけるんだ。

 相手は大体、それで好意を持つけど一方的な気持ちで近づいて来られるのが嫌で嫌で仕方ない……」

 

 

 

「黙れ!!!」

 

 

 拳を振るうがシンも殴られるつもりは毛頭ない。その拳を受け止める。

 

 

「地球連邦政府が増長し腐敗したのは確かだ。でもスペースノイドに罪がないわけじゃない。

 空と大地が世界にあるように宇宙と星とで世界はあるから手段はいくらでもあるのに、

 それを考えようともせず、始めた事に間違いがある。アンタも!!」

 

 

「私が何か考えなかったことがあるか!」

 

 

「考えたつもりにしかなったことがないからその言葉が吐けるって、分かれよ!」

 

 

 シンはそういって相手の拳をぎりっと握り込んだ。

 

 

「ララァ、私の母になってくれる筈の女性だった!」

 

 

「他人に勝手な役割を押し付けるな! 同じように何かにならなくたっていい!

 アンタはアンタでいい。だからそのために、そろそろ理解しろよ!」

 

 

「何をぉ!」

 

 

「アンタもララァを殺したって事をだよ!」

 

 

 話は終わりだとばかりに頭突きをくらわす。

 

 

「ぐっ……」

 

 

 よろけて尻もちをついたクワトロを見つめ、シンはしゃがみこんだ。

 

 

「アンタは弱い人間だ。決して強い人間じゃない。

 でもアンタはとてもよくできた強い人間の真似ができて、弱い人間は

 それを見て強いと誤解して頼ってしまう。ダメだよ、それは。ちゃんと言いなよ」

 

 

 それだけ言うと、シンはその場を足早に去る。

 

 

(ニュータイプとの同調はしんどい。

 感情にブレーキが効かなくなる……俺の能力もある程度、意識的に制御できても

 今回みたいにできない時もあるから不便だよ、これ……完璧なONOFFスイッチとかないの……)

 

 

 

 その背中をクワトロは見ていた。

 子供の様に座り込んでただ、見ていた。

 シンが去り、はっとした様に整備員が助け起こそうと寄っていくが、

 クワトロはそれを手で制して壁を背にして座ったままでいた。

 しばらくして、しとしとと涙を流し始めた。大勢の人に見られてもほほに伝わるそれをぬぐう事はなかった。

 こうしていたいとすら、彼は思った。

 

 

■■■■■

 

 

70:名無しのハズレ転生者

おう、強い人間のふりをした男。何か言う事はあるか?

 

 

71:名無しのハズレ転生者

自分のブーメランが常に被弾する気持ちはどうだ?

 

72:学生兵

フフフフッ……俺は自分がくそ雑魚だと理解した上で

強がってるからいいんだ。メンタルが壊れないコツは

ダメージに納得をする、ということなんだ……

 

73:名無しのハズレ転生者

ブラック企業勤めみたいな底力理論やめろ!! メンタルの装甲値には限界はあるんだぞ!!

 

74:学生兵

まぁ、俺もそろそろ壊れるとは思ってる。

でもひと段落ついてお役目終わるまででいいんだわ。さーて、雑魚らしく頑張るか




半分ぐらいで短くしようとしたら長くなってて0時過ぎてた
申し訳ない。誤字脱字確認は明日


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幕間 インターミッション8 『整理。決断。あるいは諦観』

 

ロボマニアの異世界戦争 ~エンディング後~

 

 

445:ロボマニ

つまり、スパロボαは本来67話。話数にするなら君は42話

熟練度45以上で分岐があるけど、話を聞く限り

もう中盤の入り口で終盤に向かって進んでるのは間違いない

 

 

445:学生兵

なるほど。そうなると、ここから攻勢をかけてきそうなのは

一先ず動きがないバンカーを抜いて、ヴァース帝国を抜いて……

 

 

446:ロケットパンチ無双

ヴァースの一部ははネオジオンと合流すると思う

ハマーンが敵に回るかはわからんな。

むしろ、お前にボロクソに言われてシャアが敵になる可能性はある

 

447:学生兵

そ、そんなこと言ったってしょうがないじゃないか

 

 

 スレ民の相談で紹介されたスレに訪れたシンはさっそく複数人に絡まれていた。

 学校の屋上。そこから広がる眼下には自分が吹き飛ばした街……

 と、思ったのだがプライヤーズの実働データが反映されたおかげか、

 カーペンターズという彼らの修理に特化した量産機の配備が始まったとのことでほぼ復興が完了していた。

 

 しかし、そこに半数以上帰ってくるものはいない。

 きっと寂しい街になるだろう。”自分もきっと帰ってこない”

 

 だが、その方がいいのかもしれない。

 わずかの間、でも確かな思い出をくれた街と、

 色んな事があった地球に感謝をしている。だからこそ、戻らない方が良いのだ。

 

 シンは宇宙を見上げた。

 ここからでも漂うそれが見える。いや、見えるというのは正しくない。

 この蒼穹の果てにある闇の中でそれが漂っているのを感じるのだ。

 

 

―――俺もあそこに還るのか。それとも、消えるのか

 

 

(それなら、それでいい。セラムさんやリッゾちゃん。

 いなほや、相良や。スレイン。そして、フリット……別れるのは辛いけど)

 

 

 己の心に、あるいは魂か。

 広がっていく皹の様なものを確かに感じるのだ。

 戦うたび、ぶつかりあう度に……もはや、今、戦いをやめても時間が延びるだけ。

 ならば、燃え尽きると決めたのだ。

 今、この瞬間を生きていくと、決意をしたのだ……

 

 

(おっと……)

 

 

 ぼーとしてしまったな、とスレに戻る。

 話し合いがそこそこ進んでいて、ある程度のまとめが始まっていた。 

 難易度が上がっているのは 

 

 

①『敵対組織の増殖』

 

 

②『それによるロボット部隊の損耗率』

 

 

③『味方組織の一部壊滅』

 

 

 

 

①はザ・データベース、バンカーなど

 本来は存在しない組織の介在により発生している事象。

 ただ、すべてを滅ぼす必要もなく。というかできない

 おそらく、未来の危険因子として残るものが多く

 いわゆる『第二次』が始まったころに連鎖的に発生するとのこと

 

 

②が一番大きいとシンは感じた。

 事実、現在同時出撃可能な機体は十数機。

 連戦に継ぐ連戦で整備が間に合っていない。

 

 ガンダムをはじめとした整備の経験値が整備員にあるMS系列。

 カタフラクトの様な整備コストの低い機体。これらがその出撃数不足を補っている 部分がある。逆に言えば、アムロやクワトロ。いなほや教官たちの疲労は濃い。

 エステバリス部隊のおかげで緩和されたのは確かだが…・・

 

 

 設備があろうと人の数には限界があり、

 そこにどれだけの経験があるか、という事を加味すれば人はさらに減る。

 そして、特機を整備できるのはそれこそ一流のものたちなのだ。

 

 今のバランスが限界をこえた時、ロンド・ベルは敗北する。

 

 

③『味方組織の一部壊滅』

 

 

 これはソレスタルビーイング。

 そして、先日。ワープを使ったヴェイガンにより破壊された

 ソロモン諸島のオーブ連合首長国がこれにあたる。

 

 オーブは今後、中立ながらも様々な軍事技術の基礎となるものを

 確率していく存在でもあった為、大きな損失であるのは間違いない。

 

 特に構築中であったという噂の太陽光発電と大規模送電施設は立ち消えとなり、シズマドライブとそれを補う原子力がメインになる。

 話によれば、シズマドライブも消えることとなるので、

 光子力が普及するまではかなり難しい問題になるだろうとの事であった。

 

 

 

600:ロボマニ

 

結論としてまず、地上と宇宙勢力を早急に分断すべきだと思う。

地球を守りながらの排水の陣だといつか限界が来る。

でもイージスでは防げないと思う。なぜなら、クロスゲートがあるから

ならもう手段は一つしかない

 

『Gaia Relive』

 

 

601:学生兵

そっか……で、つまり誰に力を借りればいいかな

 

 

602:ロケットパンチ無双

BF団

 

603:学生兵

はっ?

 

 

604:変身ロボ

いや、まぁその反応になる

 

605:特撮隊長

そらな。敵対組織がなんとかできるって言われても

 

606:グランド

しゃーない

 

607:コマンダー

僕でもそうなる

 

608:海王

でも嘘は言ってないぞ、ニキは

 

609:ロボマニ

いいか、そもそもBF団は

 

 

①ジャイアント・ロボシリーズ開発(GiantRobo)

 シズマドライブを停止させることを前提とした計画。

 バシュタール現象に巻き込まれないために

 原子力を動力源としたロボット「GRシリーズ」を開発する計画。

 

 

②地球静止作戦(GaiaRest)

「バベルの塔」を探す計画

シズマドライブの影響により所在が分からなくなってしまっていたバベルの塔を探す。

「地球静止作戦」を行うことでシズマドライブを停止させ、GRシリーズを用いて、

シズマドライブが停止した地球において、唯一稼働しているバベルの塔を発見する計画

 

 

③バベルの塔への帰還(GreatRord)

 ビッグ・ファイアの居城「バベルの塔」へと辿り着く計画。

 バベルの塔自体に自動防衛機能が存在し、それを突破する為にもGRロボが必要だった。

 

④地球再生計画(GaiaRelive)

 BF団が結成された目的。

 バベルの塔に至ったビッグ・ファイアが真の力を解放し、地球を「本来の姿」へと再生させる計画

 

の4段階で行われるもの。でも、スパロボαにおいてはおそらく少し違う。

BF団が探していたのは間違いなく、バベルの塔だけどそれはそこに封印された

ビッグ・ファイアを探すためでこれも最終計画の前段階なんだよ。

 

多分、彼らが最終的に目指した場所はバラルの園なんだな

 

 

 

 バラルの園(Eden Of Baral)、スレ主とスレ民の説明によると

 シンの地球に存在する古代の惑星防衛システムの基幹となる空中要塞。

 つまり、ここにたどり着く事は最大の地球防衛であり、地球再生の手段でもあった。

 

 

620:学生兵

え、じゃあBF団ってビッグファイア団であり

 

BaralFighter。バラルの戦士、バラルの守護者ってこと!?

 

 

621:ロボマニ

そうなる。だから、早急にサイコドライバーであるビッグファイア様を

バラルに送るのが最大の解決策であり、難易度を戻すための手段だよ。

実際、そうなればイージスシールドはコロニーに送れるしね。

ただ、問題は今の消耗した彼ではガンエデンに勝てない。誰かが戦い、鎮圧する必要がある。わかるね?

 

622:学生兵

あ、はい。ありがとうございましたぁ……あぁあああああ!! むりぃいいい!

 

 

 

「畜生、この世は地獄だ。絶対、そいつHP20万とか30万とかで

 ラスボス相当で僕従えてる奴じゃん…………どうすんねん。どうすんねん! あぁあああ!」

 

 

 方向性は決まったが、頭が痛くなる。

 少なくともライブレードでどうにかなる相手ではない。

 だからといって、ロンド・ベルをつれていける状態でもない。

 盾となっている彼らが消えればジオンや他の組織が何をするか分からない。

 

 

(うぅ……大体、聞いた話じゃそれが中枢活単騎で地球のシールドを発動するんだろ?

 絶対強いし、そんな相手に大勢でかかっただけで勝てるとは思えないんだよな。手札が足りんわ……)

 

 

 寒空の下、がっくりと項垂れて地面に座り込んだ。

 空は青い。でも心は暗い。そして、決戦の時は近づいていた。

 

 

 

 

 

 





お整理回

本編は今から。0時に間に合うように頑張ります
無理だったら明日で


追記 無理そうです。寝ます。すいません


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バイバイ、シロッコ

 

「正直な話なのですが……

 ヴェイガンは地球を攻めてくるでしょう。

 厳密な時期についてはヴェーダが算出中ですが」

 

 

「アスノ中将、それは……

 いえ、フリット・アスノさん。それはありえないのでは」

 

 

 休憩中の個室で向かい合う、ブライトとフリット。

 ブライトも部分的とはいえフリットの歴史を知っている。

 中佐ともなれば深い所にも踏み込んでいた。

 それゆえに、復讐者の妄言であると感じる部分があったのは確かだ。

 

 

「艦長。確かに、普通はありえない。

 だが、ヴェイガンは事実。一度、超空間ワープを利用し攻めている。

 続けてこないのはそれが過度に利用できるものでないのと、おそらく。地球側にヴェイガンの工作員がいるからです。それも、連邦か、ティターンズ。片方、あるいは」

 

 

 

「両方に……!? どういう事ですか」

 

 

「ブライト艦長。そもそも、誰も間に合わないタイミングで日野真くんの街が襲撃されたあの一件がおかしいのだ。君はティターンズを侮っている部分がある。彼らは思想こそ過激だが無能ではない。その治安活動の隙を付く、というのが簡単にできるものではない」

 

「そ、それは……」

 

 事実、である。実際の所、あの戦いもミスリルのM9が間に合わなければ敵は後退していなかった可能性が高い。防衛できたのは、地球連邦と一部の独立国。中立国から切り離されたミスリルの存在があったからであり、それもたった1人の少年の時間稼ぎが間に合った、というかみ合わせに過ぎなかった。

 

 

 ブライトはコーヒーを口に含み、一息をつくと再びフリットに向かい合った。

 

 

 

「……では、いつ。どこを?」

 

 

「大規模的に、無差別に。それはコロニーも含まれるでしょうな。

 しかし、陽動。狙うならトップの首を取りに来るでしょうな。

 ずばり、狙いはアフリカ最西部。連邦軍本部のある首都、ダカール……高官を皆殺し、一気に命令系統を寸断。地球を掌握するのでしょう」

 

 

 

「し、しかしそれならそれこそ。コロニーを掌握して……」

 

 

「コロニー落としこそありえない。彼らは地球人が憎い。憎いが、地球は壊したくはないのだよ。彼らは……地球に帰りたいのだ。そして、自分たちこそが地球人と名乗りたい。それがすべてなのだ……」

 

 

「……それは」

 

 

 ブライトは瞼を閉じて、世界から目をそらしているかのようだった。

 この世界に多すぎる悲しみから、少しでも遠い場所にいたいようにも見えた。

 しかし、彼は艦長。それは許されぬ立場ではなかった。

 

 

「それは、悲しいものですね……」

 

 

「どこで生まれても故郷は故郷。上も下もない。

 だがなぜか地球を特別に感じる。それはきっと、人の性なのでしょうな……」

 

 

■■■■■

 

 

 

「三者会談でハマーンとの交渉は私が担当する。ジュピトリアンのシロッコの動きはわからん以上、警戒は必要だ。艦長は、アムロと一緒に艦へ残ってくれ。

 私がいなくなってもアムロがいればなんとかなろう」

 

「シャア、それは俺に神輿になれということか?」

 

「私にその役目を求める男が、自分は嫌だと」

 

 

「……確かにそうだな。それは少々ずるいかもしれない。だが、荷が勝ちすぎている」

 

 

「連邦の白い悪魔の肩書とそこまでの経歴があれば、

 何、平和の神輿としては十分だ。さて……

 

 クワトロはブリッジでしばらく思考し立ち尽くしたまま、やがて何かを決めた様に頷く。

 

「カミーユ、ジュドー、洸、エマ中尉……いや、やはり宗介を同行させてくれ

 一人は危険な状況に対応できる人材が欲しい」

 

「分かった。だが、一応本人たちの了承は取り付けてくれ」

 

 

 特にカミーユは命令だといえば絶対に反発するだろうからな。

 言葉にこそ出してないかがそういう意図があるのを理解してクワトロは苦笑した。

 

 

「宗介は言わずもがな。カミーユやジュドー、洸は交渉相手の目論みや邪念といったものを見抜くには適任なので、できれば同行させたい。というところだな」

 

「了解だ、許可しよう」

 

「クワトロ大尉。私も同行してよろしいですか?」

 

 レコア・ロンドがためらい気味にそう声をかける。

 

「構わないが……理由は?」

 

 

「活躍できる場が欲しいのです。それに敵地への潜入任務は慣れています」

 

「(………今はわかる。彼女もまた私なのだ)いいだろう。アムロ、後の事は頼む」

 

 

「あぁ、無事を祈る」

 

 

 レコアが出ていき、それに続こうとしていたクワトロだがふと、足を止めた。

 

 

「本人が了承するかわからんが、もう一人呼びたい人間がいる。繋ぎを頼めるか?」

 

 

■■■■■

 

 

 

 

(……これが、あの念を発した人)

 

 壁際で宗介と並び、じっとしているシンを見つめながらひびき洸は心中で呟いた。

 

 

(恐ろしい念だった。憎しみと、悲しみと、絶望と……

 ぐちゃぐちゃになった心が宇宙を染めていくようだった。だが、今は……静かだ)

 

 

 宗介はじっと、シンを見つめる洸に気づいた。

 

 

(寝ている男を観察する趣味があるのか……妙な男だ)

 

 

「Zzzzzzzzz……(目を開けて寝てる)」

 

 

 

 シンはどうせなんかあるんだろ、とがっつり寝ていた。

 

 

 沈黙に耐えきれなくて、ジュドーが口を開く。

 

 

「あの、宗介さんって傭兵なんですよね!」

 

 

「肯定だ。紛争こそ減ったがなくなってしまったオーブのような独立国同士の争いあるし、

 テロ行為はやはり存在する。俺はそれを鎮圧する軍事による平和維持活動が専門だ」

 

 

「なるほど、カウンターテロ部隊って事だね。興味ついでに悪いんだけどさ、

 今、有事に備えてやっておくべきことってあるかな!」

 

 

「そうだな、銃の安全装置はもう外しておけ。

 それと、どういう状況でも寝返りというのはあるものだ。

 俺も最近、潜水艦内で裏切られてな。あれは中々苦労した」

 

 

(なんだかしれっと壮絶な体験を語るなコイツは)

 

 

 カミーユが世界の違いを感じている所で、

 ジュドーはむしろ興味深そうであった。柔軟な男である。

 

「なるほど。すぐ実践するよ」

 

 

「それと、素人はすぐに頭を狙うのは難しいだろう。

 何より、先ほどまで仲間だった相手だしな。そういう時は迷わず、肩か足を狙え」

 

 

 体の各部をトントンと指さしながら、教導する様に説明する。

 

 

「最悪、銃を抜いて向ける。というだけで威圧を与えられる。

 それだけでいい。対処は俺がする」

 

 

「あの、敵はともかく仲間だった人を殺すのは……」

 

 

「あぁ、分かっている。俺も学んだ。

 情報を吐かせる必要もあるし裏切者については無力化を優先する」

 

 

(ジュドーはそういう事じゃなくて心情的なものを言っていると思うんだけどなぁ)

 

 

 

 

 

ヴィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!

 

 

 

 

「な、何だ!?」

 

 

 驚くジュドーに宗介が銃を手に取り告げる。

 

 

「会談で何かあったのだろう。銃の安全装置を外せ! 今すぐ!!」

 

 

 せかされる言葉に従う様に、ジュドーが続いてカミーユが銃をとる。

 シンは警報が鳴った瞬間に目覚めたようですでに準備は終わっていた。

 

 

 その時、部屋が発光に包まれ、何者かが現れた。

 

「エアロゲイターの空間転移装置と言えども、距離を稼ぐことは出来んようだな

 まぁ、いい。拘束は避けられた……むっ?」

 

「お、お前は…パプテマス=シロッコ!?」

 

「カミーユ、そこをどけ!!」

 

 宗介が銃を構える。しかしそれを盾になるようにレコアが銃を構えかばった。

 

 

「お前は……そうか、私と一緒に来い」

 

 何かを感じ取るようにシロッコはレコアに手を差し出した。

 

「(私を呼んでいたのは、この人。パプテマス=シロッコ……だった)

    あなたは私を必要としてくれるのですか……本当に?」

 

「あ、あ時代は君のような強い女性を求めている。私も……」

 

 

「レコア少尉、何を言ってるんですか!?」

 

 

「動かないで、カミーユ!!」

 

 

 そういって銃を向ける。仲間に向けられた銃に、カミーユは動揺した。しかし

 

 

 パァン……パァン……

 

 

「ううっ!」

 

 

 シンが静かにゆっくりレコアの肩と腕を打ち抜き。

 

 

 パァン!

 

 

 

「うっ!」

 

 

 宗介が素早く肉壁が消えて丸見えになったシロッコの眉間を打ち抜いた。

 一瞬の事に、動揺する一同。宗介は満足そうにうなずいた。

 

 

 

「いいか、これが適切な動きだ。参考にしておけ」

 

 

「適切な動きもくそもねぇだろ……。

 自分で言っておいて眉間を打ち抜くな」

 

 

「裏切者は拷問の必要がある。 

 だが、敵に対して容赦をすれば死ぬのはこちらだ」

 

 

「いや、そうだけどね……そうなんだけどね……! 

 絶対面倒ごとになるから覚えておけ……よ!!」

 

 

 扉の前にテーブルを倒して立てかけ。それが動かない様にソファーを押し付ける。

 即席バリケードである。そして、多分撃てないだろうと察して手を出して

 ジュドーやカミーユ、洸に弾を要求した。

 宗介が安全確保が終わったのを確認すると、レコアの応急処置をてきぱきと開始する。

 とりあえず、死ぬことはないだろう。

 

 

「なんで、君は……仲間だった人を撃てたんだ。彼女は撃つつもりは」

 

 

「武器を持って向けられたなら、撃つ気はないなんて甘い考えは捨てろ。

 想像しろ……これは戦争なんだ。寝返ったこの人が、連邦の兵士を殺すんだ……

 お前はそうやって殺された人たちの家族になんて言葉をかける?」

 

 

「……!」

 

 

 3人は戦争というものの本質を、少しだけ理解した気がした。

 そして、同時にそれに染まり切れないとも思った。

 

 

 

 

 

149:学生兵

おい、シロッコとかいう偉い奴死んだんだけど!!

厳密には宗介が射殺した。これまずいですか?

 

150:名無しのハズレ転生者

 

151:名無しのハズレ転生者

いや、草じゃないんだが

 

152:名無しのハズレ転生者

まぁ、ハマーンは爆笑してそう

 

153:名無しのハズレ転生者

シャアは絶対困惑してる

 

 

154:学生兵

こいつが強くてやばいのは聞いてるけど

厳密にどう偉いかってわからんのよな……うーん、まぁ、しゃーない

ハマーンとかいう人と交渉するか

 

155:名無しのハズレ転生者

切り替え早くて草

 

 

■■■■■

 

 

 

「フハハハハハッ!!! なんとも情けない、最後だったな」

 

「ハマーン様。ジュピトリスの連絡は?

 他のものたちは確保しましたが……」

 

 

「食事中とでも伝えておけ。その間にMSを遠距離射撃体勢で配備。奴らの推進機関に狙いをつけておくのだ」

 

 

 そういって、ハマーンは機嫌が良さそうにクワトロの前にやってきた。

 

 

「シャア。お前は私と一緒にアクシズへ来てもらおう」

 

 

「いいだろう」

 

 

「クワトロ大尉!?」

 

 

「だが、和平をその引き換えにここで和平を結んでもらう」

 

 

「ありえん」

 

 

「なら、ジュピトリスを破壊する。アーバレストの射撃がヘリウム3のタンクに当たれば

 この基地ごと終わりだろう……私はそれでも構わん。彼らもだ。覚悟はしている」

 

 

(いや、俺はしていない。待とうか……待とうか、シャア!)

 

 

「ちっ、ECSか。ASとはMSと別の意味でも恐ろしい兵器だ。

 ……いいだろう。ジュピトリスとお前。土産としては十分だ。放送の準備をする」

 

 

 ハマーンはグレミーに目くばせをすると、彼は静かに頷きその場から去った。

 

 

 

「すまない、カミーユ。後は頼む。

 なるべく早く戻るようには努力をするつもりだ。大丈夫だ、アムロもいる」

 

 

「でも、貴方がいない! いいんですか!?」

 

 

「クワトロさん、あんたが犠牲になる必要はないだろ!」

 

 

「誰もが何かを平和の為に犠牲にしているのだ。そういう意味では私は甘かったのだ」

 

 そうだろう、とシンを見つめる。

 シンは組んだ腕をほどき、近づく。

 

 

「戻るか、シャア・アズナブルに」

 

 

「シャアであることを清算せねば次にいけん。

 私はクワトロになるためにシャアに戻る」

 

 

「そうか、応援してるよ」

 

 

 

 そのあと、カミーユとジュドーにハマーンが語り掛けていたが

 シンと宗介は気にせず自分たちの乗ってきた輸送船に戻った。

 帰り道で宗介がアクシズにコッペパンはあるかと兵士に声をかけていた。

 

 シンは大きな変化こそないが、

 どこか残念そうに見えなくない表情からないんだな、と悟った。

 

 

 

 

・ネオジオン(ハマーン(ミネバ・ザビ派))と和平を結びました

 

・ジュピトリスがハマーンにわたりましたがなんとか逃げようとしています

 

・シロッコが死んでるっコ

 

・レコアさんがネオジオンの牢屋に投げ込まれました

 

 

 

【世界に影響する変化】

 

 

 

『ハマーンの機体が強化されます』

 

 

『シャアが離脱しましたが、

 代わりに少ししたらハマーンが飛んでくるので+です』

 

『バランスが崩れたとビシディアンが再び動き出した模様です』

 

 

『シロッコが倒れたことで動き出すものがいるかもしれません……』





僕だって、カミーユの大事な戦いを奪いたくはないけど
現状のメンバーだとやっぱ護衛として宗介かマオ辺りだろうし
そうなるとやっぱシロッコ死ぬし、仕方ない……


でも絶対、なんか悪いことも起きてるよ!


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幕間 インターミッション9 『襲来のインなんとか』

 

 

『こちら、ライブレード。ビシディアン、停止せよ。繰り返す、停止せよ』

 

 

 数日後、もう出番よっというノリで使い走りに出されたライブレード。

 ハマーンは別に関心を向けていなかった気がするのだが直々の指名だった。

 

 ジュピトリスは既存の推進力をすべて奪われ、ただの宇宙基地にされていたがビシディアンに乗り込り推力をつけられ奪われたとのことだった。

 狙いが核融合炉の燃料としてヘリウム3なのか、生産能力を持つジュピトリス自身なのか、それは不明だが速度ではサイバスターの次に早いライブレードが使い走りに出されていた。ちなみに寝起きでシンは変形にはやはり苦労した。

 

 

 

『へ、民間人がいるぜ。撃つのかよ?』

 

 

『でも、お前はその民間人を盾にしてるんだよな?』

 

 

『へっ?』

 

 

『人の命を盾にするのはヴェイガンのやり方だ。あぁ、そうだ……そう!」

 

 

 

 ユリン、ユリン、ユリン!

 いい子だった! かわいい子だった!

 優しく素直でかわいくて、フリットが大好きだった!

 俺にも優しく微笑み、懐いてくれた。そんな子に実験をして、

 能力の中継部品としてパイロット席に縛り付け! 

 なんだ、お前はお前はヴェイガン。人じゃない、獣だ。

 いや、獣だってまだましだ。あぁ、そうだ。

 死んだ、死んだ、死んだ。俺の夢が死んだ!!

 

 フリットとあの子の結婚式に呼んでくれよって

 恥ずかしそうにあの子はうんとうなずいて、フリットは頬をかいていた。

 幸せな時間。自分が二流だっていい。フリットに能力で負けて悔しくても、

 自分なりに、無能なりに、目の前のものを護るために戦おうとしたのに、お前ら!

 

 

 

 

「すぅ……殺す。お前たちはヴェイガンだ。とりあえず決めた」

 

 

『船長ーーーーー!!! 前に回り込んでなんかエネルギー貯めてますーーー! やばいですーーー! アイツやばいですーーー!!』

 

 

『とまれ! あれは確実に撃つ!! とまれーーー!』

 

 

 

 その様子をライブレードとの通信を通してみていたブライトは困惑した顔でハマーンに視線を向けた。

 

 

 

「ハマーン。お前はこれを理解していてやったのか?」

 

 

「いや、ただ面白い男なのは前回で分かっている。ニュータイプではないが妙な感性を持っていて迷いがない。サイバスターの事は聞いているがあれでは止められないと思ったのでな。なら、確実な手段を選んだ」

 

 

「怖い女だ、お前は……」

 

 

 ブライトは自分の妻がまともな女性でよかったと思った。

 そして、彼女を裏切る事だけはやめようとも誓ったのだ。

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

「戦う力を失くせば戦いは終わる!

 いつかくる対話のための行動だった!」

 

 

 

「馬鹿者! 長引いた戦いの中で何人死んだ! 

 どれだけの憎悪が生まれた!! お前の行動は宇宙に憎しみの芽を撒いたのだ!」

 

 

 

 さっきから永遠に殴り続けているフリット・アスノとその息子。

 海賊の親分ことアセム・アスノ。殴り合いは止まらない。もう1時間だ。

 

 

 

「延々と永遠 ってあるじゃねぇかよ、いなほ。どっちも長く続ける、みたいな感じでたまーに見るよな延々と、永遠と」

 

 

「言葉としては前者が正しいよ。後ろは誤用ともいえる」

 

 

「いやぁ、そうなんだけどさぁ。どっちでも理解はできるし、言葉のストレート感は後者の方が分かりやすいよな。なんでそんな風な使い方が出てくるんだろうな」

 

 

「……確かに、単なる誤用だけならすぐ消える」

 

 

 兜といなほが妙な雑談を始める横で不満げな床に座り込み不満げなシンは居た。

 

 

 

「ヴェイガン亜種として処分すべきだって。あいつら宇宙の敵だからさぁ~。俺、肉壁発言出した段階で殺すしかないって!!!」

 

 

「ヴェイガン判定の基準をもう少し下げてくれ。君の過去は否定しないが……最低でも、相手は始末しても民間人を生かす方向で頼む……」

 

 

「大丈夫です。ヘリウム3のタンクの攻撃は最後の最後に使う予定でした」

 

 

「そうか、とりあえずは避ける予定だったか。でも撃つ気はあったと」

 

 

「はい」

 

 

「……頼む、最後の最後の最後。ぐらいの本当にできる限り

 民間人を巻き込む優先度は下げてくれ。頼むぞ」

 

「了解でーす」

 

 

 と、いってもいよいよの時はやるのだろう、とアムロは眉間にしわをよせた。

 仲間のためなら撃つ。逃がしたものたちがさらなる被害を出すなら撃つ。

 彼の中には明確な天秤があり、同時に自分の罪を背負うだけの覚悟がある。

 そして、それに苦しむ心もなぜか同居している。

 

 ある意味、ジュドーより安定性を持っている。少し羨ましい気持ちもあったが、アムロはとんでもない奴を押し付けられたなぁ、と遠いかなたのシャアを見た。

 シャアは元気だろうが面倒ごとは多いが、自分のやるべきことを見つけたならそれはそれでいいのかもしれない。

 かつてのライバルの兆進を願いながら、自分のこれからの苦労から目を逸らした。

 

 

 

「よくやってくれた、マコト=ヒノ。いや、私もシンと呼ぼうか」

 

 

「そうしてくれ。姓名も好きじゃない」

 

 

「ほう、なぜだ?」

 

 

「死んだ家族を思い出すから。愛称で呼んでもらう様にまず頼むのは自分の家族に自分がしている事を誇れるものじゃない、と理解しているからだからな」

 

 

 ハマーンは、「ほう……」と呟くと微笑を浮かべた。

 とても邪悪に見えるがただ笑っているだけなのだろう。

 

 

「分かった。シン、今回の活躍は感謝する。

 宇宙海賊の処遇も預かりたいが…………」

 

 

「抑えたのはロンド・ベルだ。悪いがジュピトリスだけで勘弁してくれるか?」

 

 

「いいだろう」

 

 

「いいのか?」

 

 アムロが驚いたようにハマーンに聞き返した。

 

 

「ふふっ……構わん。ジュピトリスが戻ってくれば文句は言わん。

 だが、ヘリウム3は今のうちに回収しておくとする。シンに撃たれては構わん」

 

 

(ハマーン。ニュータイプ能力で読み切れぬシンという男を見極めているのか。シンも不運な相手の眼にとまってしまったな……さて)

 

 

 自分にも役目はある。受けついでしまったものだが、

 やるしかないのだとアムロは活を入れた。

 向き不向きで逃げられるものではない。順番が来たのだから……

 

 

 

「あべ!!!」

 

 

「鈍ったな、アセム。私は艦長席に座っているだけが仕事ではない。メカニックも、資材の搬入も買い出しも参加していた!! みよ、この力こぶ!」

 

 

 わーー、と拍手が巻き起こる。

 なんだかんだで皆も二人を見世物にしていた。

 クスハが急いで治療に向かうが大体は、感想を語り始めるリュウセイのような感じだった。

 

 

 

「好きで命を奪う訳ではない。時代がそうさせる……

 ハマーン。人はいつか憎しみだって越えていける」

 

 

「だから、アムロ・レイ。お前が人の心の光を導くのか? シャアの代わりに」

 

 

「あぁ、そうだ」

 

 

「ふっ、時代が動く特等席か。これはこれで悪くない」

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 ダカールの一時的なのっとり演説をすることが決まった。

 決まった、というのは違う。本来はシャア・アズナブルがそれを担うはずだった。それを今回行うのはアムロ・レイとハマーン・カーンである。

 ギレン総帥はア・バオア・クー。ドズル中将はソロモン。

 それぞれが作戦に向けて指揮を高めているだろうところで、アクシズの離反。

 ミネバ・サビは困惑するだろうがそこはシャア・アズナブルがうまくまとめるだろう、とシンは思った。

 

 

 ぢゅぅうう、と飲み物を咥えて水分を補給しながら、

 運ばれていく複座の電池を見送る。シンは一応、今日もご苦労様でした。と少しだけ感謝をした。空になった容器をゴミ箱に入れるとベンチに寝そべった。

 

 

(BF団。どこにいるんだろうな。接触しなきゃいけないし、

 あの後スレ民に聞いた感じ、あいつらにヴぁしゅ?何とかを起こさなせなきゃあの人たちに聞いた方法は……んーーー……)

 

 

 端末に映った情報を流し見すると、量産型グレートとゲッターGの設計図を盗んでいるという項目が目に映る。

 これが多分、破壊されたGRシリーズの代わりにする物のはず。

 ピースは揃っているようにみえるがなぜ、動かない。

 

 

(……わからん。わからんことは多い。わからんことは相談しよう……)

 

 

 意識をスレに向けようとして、やめた。

 

 

(いや、これは俺が俺自身として。世界の当事者としてなすべきことかもしれん。やめよう……みんなも実況とかで満足するだろ。メンタルケアにだけ利用させて貰う)

 

 

 足と腕を投げ出し力を抜いた。

 GSライドのおかげで精神ポイントの減りがマシになり楽になったのは確かだがバックファイアによるダメージが軽減される訳ではない。辛いのは変わらない。

 休めるときに休もう。どこでもいい。

 

 

「部屋まで帰るのも、めんどくさい……

 デューカリオンが遠い。いや、でもベンチ占領してる音はダメかな……」

 

 

 

■■■■■

 

199:学生兵

そうしたら、2日ぐらいねてたんですよね

な~んででしょうねぇー

 

 

200:名無しのハズレ転生者

回復力ゼロ

 

201:名無しのハズレ転生者

回復力着実にすり減ってて草も生えない

 

202:名無しのハズレ転生者

ライブレード『僕は悪くない』

 

203:名無しのハズレ転生者

お前の仕業なんだよなぁ~~~

 

204:名無しのハズレ転生者

堕ちろ! 堕ちたな!(

 

 

205:名無しのハズレ転生者

(強化して復活)いっすかぁ?

 

206:名無しのハズレ転生者

バッドエンドにも組み込まれた

悪魔にしかなれないマシンで草

 

 

207:学生兵

おい、イングラムとかいう知らない人が攻撃してるらしい! 行くかぁ

 

 

208:名無しのハズレ転生者

味方にも居たはずなんだけど一回も顔あわせてないから

まじで存在すら忘れてて草なんだ

 




頑張ったので明日、休んでても勘弁してください

休まない様には頑張ります

誤字修正も今、してます!


完結までは幕間ぬいて多分、あと10……14か15?
途中からなくなる可能性があるのでたまに1日2日奇跡的に上がったりするとして
10月10日ぐらい。キリがよい……


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「漆黒の天使きたけど捕まりて」

 

230:学生兵

端末をスライドして、さっさと情報を頭に入れたけど

 

・ロンド・ベル隊は三分割。地上部隊、ソロモン。

・アクシズと和平を進めようとする中で、

 ミネバの変わり方を理解したシャアが少しだけ時間を欲しいと説得の時間を要求 

・ハマーンはそれに反対したけど、ミネバ本人が話したがってた

・機体の損耗の大きいMS部隊と疲労の色が濃い奴はこの間に休息と修理中。

 

 

今、さらっと話を聞いたのは

 

 

・表面的には完全に従ってるようにしながら、情報は全部流してたギレン子飼いのグレミーくん脱走。

・みんながキュピンして敵の接近を察知して出撃

・グレミーくん、追ってきたと思って出撃。そこにさっきの変な名前の人出現。

 

 

231:名無しのハズレ転生者

変な名前の人

 

232:名無しのハズレ転生者

もう記憶する理由もない感じで草

 

233:名無しのハズレ転生者

まぁ、でもハマーンも仲間ならこの場でワンちゃん殲滅できるか

 

234:名無しのハズレ転生者

何もなければな

 

235:学生兵

大体、なんかあるんだよなぁ……

 

 

■■■■■

 

 

 

「何、どういうことだ……?」

 

 

「言葉の通りだ、イングラム・プリスケン。

我らアクシズはロンド・ベルとの協力関係に至った。つまり、ゼ・バルマリィ帝国と交渉する気はない。つまり、お前は攻撃対象という事だ……では任せるぞ」

 

 そういってハマーンを乗せた戦艦ははグレーミを追いかけていった。

 

 

 

「イングラム・プリスケン! 予想と違った展開だったようだな!」

 

 

「フフフッ…………やめておけ、今のお前では俺とアストラナガンには勝てん」

 

 

「ならば全員でかかるのみ! 各員、アストラナガンに攻撃を集中!」

 

 

「まさか、あんな事をしておいて1体多で卑怯だなんて言うなよ!」

 

 

 熱くなる現場の中でしれっと出撃する、ライブレード。

 黒くて見にくい機体だなぁ、と思ったシンはとりあえずロックオンだけつけておくくことにした。とりあえず、なんか皆話してるので回線を合わせた。

 

 

 

「なぁ、お前がイングランド・プリケツンさん?」

 

 

「ブッ!」

 

 ジュドーが噴き出した。いや、ジュドーだけじゃなく何人か我慢している声が聞こえる。

 

 

 

「俺はお前がなんで裏切ったのかは分からない。でも改名は役所でできるよ」

 

 

「イングラム・プリスケンだ!」

 

 

「訂正するほど変わらんだろ。ほぼ正解じゃねぇか。敵の癖によぉ……」

 

 

 めんどくせぇなぁ、と思いながらシンはカロリーバーを齧った。

 絶食同然だったのでこれで十分うまい。ちょっと折れてたので後部座席の白目のザーツバルムの口に入れておく。感謝の気持ちだ。

 

 

「……マコト=ヒノ。お前が因果の歪みか。この場は退かせてもらう……」

 

 

「! グローバル艦長。プライヤーズを射出してくれ! 非番ならだけど!」

 

 

 シロッコが急に出現したことで、敵側の次元跳躍技術が短距離ならば確率している事を理解したシンはそう頼む。そして、それに対処する方法をグローバルも身をもって理解していた。かつて、木星で異次元空間に閉じ込められた経験。故に、彼は戦闘時はプライヤーズを格納庫でホットスクランブルで待機させていた。

 

 

「了解した。プライヤーズ射出!」

 

 

「さらばだ……」

 

 

「ツールコネクト!!」 

 

 

「!?」

 

 

ディメンジョン・プライヤーーーズ!!!

 

 

 

 

 ギャレオリアロード、時空間に干渉、次元の壁を超えるゲートを生み出す次元移動装置。

 そのデータを部分的に解析し、これを元にした『ディメンジョンプライヤー』

 この装置は移動技術こそ得ることはできなかったが、しかし空間を『掴む』事ができる。

 それはつまり、時空間移動を阻害することが可能だという事であった。

 

 

 

「よし、今だ!! やれ!!!」

 

 

 

 攻撃が降り注いだ。真の力を発揮できない状況で集中砲火を食らってアストラナガンは堕ちた。

 

 

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「ずーと、SRXチームがあの人殴っているけどいいのかよ……?」

 

 

 

 ジュドーが気の毒そうにその様子を指さした。

 

 

「俺はプリケツさんの事はよく知らないんだけど、

 裏切ったらしいし情報を吐き出させる拷問の一つと思えばいいと思う」

 

 

「いや、まぁ……そうかなぁ」

 

 

 前回のシロッコの事を思い出し、殺されないだけましかと思ったジュドーは

 とりあえず自分を納得させることにした。

 

 

 

「だが、ハイパーツールか。便利だな……

 相手の空間跳躍も阻害できるんじゃないか?」

 

 

「カミーユ、お前たちのニュータイプ能力で場所まで把握できればな。

 でも敵意を感じるだけで具体的な場所は無理だろ? それじゃあちょっとな」

 

 

「むっ、そうか……いい案かと思ったんだけどな」

 

 

「いや、内容としては悪くなかった。デフォールド反応や

 ワープしてくるのがあと少し早くわかれば空間を挟み込んで

 入口を開けない、事は可能だと思う。ただ、機体の出力次第だからどのぐらい持つかはわからん」

 

 

「なるほどな、そうなると外部ジェネレーターか……」

 

 

 技術的な話になると、ジャンク屋の血がうずくのかジュドーが混ざり。

 いなほが混ざり、部隊の展開にはこのぐらいの時間がかかるとフォッカーがやってきて

 戦略的な会議が始まった。その間もイングラムはずっと殴られ続けていた。

 

 

 

■■■■■

 

 

『アストラナガンについては、マオ・インダストリーに送るべきでしょう』

 

 

「ですが、シラカワ博士。

 2年前の月のテクネチウム基地を消滅させたヒュッケバインMK-Iの暴走事故の件もあります」

 

 

 ブライドがそう言うと、シュウ・シラカワはですが……と言葉を遮った。

 

 

『アストラナガンは形状からもパーソナルトルーパーの技術を流用しています。

 つまり、多くを解析できるのはあそこしかないのです。現状手元においておくのも危険です。

 マオ・インダストリーはあの事故がありました。だからこそ、EOTに対するセーフティもあるでしょう』

 

 

「分かりました。では、アクシズの手を借りて早急に移送します」

 

 

■■■■■

 

 

 

265:学生兵

 

……という感じでプリケツさんを捕まえたんだ

 

266:名無しのハズレ転生者

名前ぐらい覚えてやれって!!

 

267:名無しのハズレ転生者

ひどすぎる略称。一生これかよ

 

268:名無しのハズレ転生者

フフフッ……デッドエンド俺(捕縛)

 

 

269:名無しのハズレ転生者

結果的に転送技術が確立してるのを教えたシロッコMVPで草

 

270:名無しのハズレ転生者

艦長も経験から格納庫にプライヤーズ待機させてて草。有能か?

 

271:名無しのハズレ転生者

有能な艦長しかいねぇんだわ

 

272:学生兵

俺がMVPだろ!!!

 

273:名無しのハズレ転生者

他人のふんどし

 

274:名無しのハズレ転生者

さっきまで寝てたろお前

 

275:名無しのハズレ転生者

プライヤーズが役にたったけど君の手柄かってーと……

 

276:学生兵

酷い!! ひどくない!?

 

 

 

 




半端なく疲れてたので、
このままいろんなパート詰め込むつもりだったけど諦めました

短い日もある。許して


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幕間 インターミッション10 『それぞれの道』

100%じゃない攻撃は0%

0%だっていってんの! 必中は人権なんだよ!!!



日野真(ひの まこと) 愛称:シン


精神コマンド:自爆(1) 集中(10) 戦慄(30)

       捨て身(70) ??? ???

精神ポイント:180


 

 サラ・ザビアロフはラーカイラムの懲罰房に収監されていた。

 刑務所につれていけば自殺する可能性があるし、そうすればシロッコの傍に使えていた彼女まで殺したのかとジュピトリアンが暴走を始める可能性がある。

 シロッコはアーガマクルーの部屋に乗り込んできた、という事と

 その場で裏切りが起きたという事で計画的犯行を寸前で防がれ、反撃で殺されたという事になった。状況証拠だけなら十分だし、幸か不幸かレコアの裏切りがその説に根拠を持たせ、ジュピトリアンを一先ずは鎮める事に成功した。

 

 しかし、近くならニュータイプ能力で異常がわかるだろという事だった。

 彼女を担当していたのはカツだった。能力の差が浮き彫りになり、だんだんと待機が多くなっていったカツ。

 フラストレーションこそためていたが、この役目につくようになってそれは次第に解消されていった。

 役目があるという事、好きな女性の傍にいられるという事。

 カツ・コバヤシは今、満たされていた。

 

 

「サラ、サラ。泣かないでおくれよ……」

 

 懲罰房の中に入ったカツが涙を流し続けるサラの肩に手を置いた。

 本来は中に入る行為など論外(人質にされる可能性を考慮すると)なのだが、カツはそこまで気にしている余裕はなかった。

 いや、それは言い訳だ。カツはただ、サラに触れていたかったのだ。

 

 

「シロッコ様……シロッコ様……」

 

 

「サラ、シロッコは死んだんだ。もういない」

 

 

「いや……いや……」

 

 

 頭を振り、否定する。そして、また泣き出す。

 それだけだ。サラの一日はそれだけだ。カツがなんとか食事押し込んだ後、もう3日も食事をとっていない。ならば、カツは今日もまたアレをやるのかと少し鬱になった。

 

 

 だが、カツは少し優越感があった。人はいつか忘れる、だからいつかは。きっと、そうすれば自分が彼女と共にいられる。

 それは優しさと、少年らしい下心が混じったものだった。

 だから、カツは囁き。現実を理解させようとする。

 

 

「シロッコ様がなんで、殺されなければいけなかったの……ひどいよ」

 

 

「アイツだってたくさん殺したんだ。なのに自分は殺されちゃいけないのか? 女系政治なんて夢を抱えて、人の上に立ったけどそんな家族を持たないセンチメンタリズムから始まったもので野望ですらない。正しさもない。サラはそれをわかって!」

 

 

「分かってたよ……」

 

 

「!?」

 

「分かってた。でもそれがあの人がやりたい事だったから……やり方が悪いのも、自分勝手なのも、まるでゲームか何かをするようで王様を気取ってたのもわかってた……でも、愛していたのよ。愛されていたの……」

 

 

 カツは驚きを隠せなかった。わかっていて従っていたのか。わかっていて、戦い。たくさんの人を殺したのか。カツは思っていた。サラはただ騙されていると、だから連れ戻すと、本気で思っていたのだ。

 だが、カツは今。理解した……理解してしまって、泣きたくなったから、涙を流した。

 

 

(そうか、サラ……君はシロッコを愛していたんだね。シロッコも、君を愛していてそれだけは本当の物だった。そして、僕は……君に恋していたんだね)

 

 

 カツ・コバヤシとサラ・ザビアロフは数日後、ハマーンの伝手でモウサに降りた。カツは戦う理由を失くしたし、サラは復讐などする気はないのが分かったから、カツはただ、サラを近くで支えて見守っていくと決めたのだ。

 彼女が求める友人として……。

 

 

■■■■■

 

 

 

「シンくん、非番の日はどこか出かけないの?」

 

 

 いなほの姉、シンの学生時代の訓練教官の一人である界塚ユキは寝転がってASマガジンを読むシンに声をかけた。

 

 

「はっ、准尉殿」

 

 

「ユキでいいわよ……家に来るときはそうだったでしょ」

 

 

「一応、戦時中なのでユキさんより教官が妥協ラインですかね……それで、教官殿。何用ですか?」

 

 

 はぁ、とため息を吐き出しながらユキはシンの本を取り上げながら言った。

 

 

「シンくんは、今日はどこか出かけないの?

 アクシズにモウサにいけば何か娯楽ぐらいあるでしょ。他の艦にいくのもいいし」

 

 

「俺、めっちゃ休んでるしやってることも事なんで顔出し辛いんですよね。マクロスとかはたまにいくんですけど」

 

 

「え、そうなの!」

 

 

 何かある、と楽しそうに笑顔になるユキにシンはいやいや、と手を振る。

 

 

「色っぽい話じゃないんですよね。バルキリー以外も搭載予定があったからASを始めとした色んなシミュレーターがそこにあるってのが理由でして……グローバル艦長がよくチケットを融通してくれるのでライブは見てたりしますけど」

 

 

「え、えっと……ほかには?」

 

 

「整備、情報の整理、食事、風呂。いつものルーティンですなぁ」

 

 

 仕事、仕事、仕事。休日も仕事ですといっているような返答にユキは目を丸くした。自分と反対の性質に眩暈すら感じたかもしれない。

 

 

「わ、私だってもう少し遊ぶし、寝てるのに……」

 

 

「まだまだお若い様で何よりです。ペニビア様こそ、鞠戸教官とお出かけにならないので?」

 

 

「な、なんであの人が出て……大体……」

 

 

「あ、出かけてきます。さっさと素直になった方がいいですよ」

 

 

「ちょっと!?」 

 

 

 

■■■■■

 

 

『アストラナガンですが、メテオ3内部に存在するものと同質のクリスタルを素材に作られている事が分かりました』

 

 

「メテオ3、ですか……」

 

 

 マオ・インダストリーの社長、リン・マオの言葉にブライドは困惑した。

 

 西暦2012年。地球に二つの隕石がモスクワとニューヨークに落着し、両都市は壊滅した。それぞれ「メテオ1」と「メテオ2」と名づけられた。

 新西暦とは、その直後のネットワーク・インフェルノによる情報産業の技術水準の衰退などを理由に変革を迫られ、その3年後に2015年に制定された年号だ。

 

 そして、新西暦179年に南太平洋のマーケサズ諸島アイドネウス島に落下した隕石。規模の巨大な3番目の隕石ということで次いで「メテオ3」と名付けられたその存在はEOTに詳しくないブライトですら聞いた事があるものなのだ。

 そして、ビアン・ゾルダークが外宇宙の危険性として根拠にしたものもまた、メテオの内部に秘められた解析不能のEOT技術であった。

 

 

「アストラナガンは移送準備の間に復元されていました……メテオ3から発見された、金属物質は自己修復作用を持つと聞いておりましたが」

 

 

『その通りです。そして、パイロットがあれだけの攻撃を受けて無事だったのはこれがパイロットの傷すら治癒……あるいは復元したと思われます』

 

 

「なんと……」

 

 再生医療にも様々な条件はある。しかし、それすら凌駕する修復力にブライトは驚愕を隠せなかった。それが事実なら、エアロゲイターは……ゼ・バルマリィ帝国はもはや、想像すらできない敵であるのは間違いない。

 

 

『内部の動力源も謎ですが、これから得られるものは多いと思われます。セーフティを多重にかけながら解析などを進めていきます。しかし……』

 

 

「安心はできない。ですな? 了解しました。最悪、そちらの無事を優先してください」

 

 

 ブライトはイングラムも処分すべきかもしれない、と考えた。

 だが、面と向かって人殺しができる度胸が自分にあるとは思えなかった。

 

 

■■■■■

 

「だからって、ナデシコに来られても困るんだがよ! こっちはこっちで大変だったんだぞ! エステバリスの整備もまだ終わっててねぇ!」

 

 

「会社の意向だからとかいって単独行動するからでしょ。皆、無事だったんだしいいじゃん……で、どう思います?」

 

 

「んー……」

 

 

 シミュレーション結果を見ながら、唸るウリバタケ。

 画面にあるのはライブレードのバトルプログラムだ。

 

 

「GGGから提供されたデータで分かった、両腕と脚による必殺攻撃……本来はEMTストームで相手の動きを静止するが生成機能がないから足止めができず不発の可能性が高い。それの代替え策が超加速か」

 

 

「今の状況だと吹っ飛んじゃう可能性があるので、

 補助として使ってるGSライドをバイパスを追加して、

 この時だけ独立させて推力はGSライド。攻撃をプラーナコンバーターとして分ける。という形で可能っぽいんですが……でもこれでも当たんねぇんすわ」

 

 

「命中率20%ちょいって所か」

 

 

 ウリバタケは頭をかきながら、あぁでもないこうでもないと呟きながら端末を弄る。

 

 

「やっぱワイヤーの増設。拘束で5%って所が限界だろうなぁ……。これ以外になると電磁フィールドによる拘束。あるいは念動。は無理だろうし重力だな」

 

 

「重力操作技術の領域かぁ……」

 

 

「マクロスが今も改善できず倉庫で眠ってる重量操作ユニットを利用する手もあるが、あんなの機体に組み込めねぇしブラックホールエンジンでも積むしかねぇ」

 

 

 そういって、機体を眺めながら液晶叩くウリバタケ。

 

 

「プラズマホールドと増設ワイヤーの組み合わせに推力を少し強化して40%。これが現状で可能なラインだな……後でマクロスに行く用事があるからやっといてやる」

 

 

 端末をシンに押し付け、笑顔を浮かべて肩を叩く。

 

 

「改造屋の俺が言うのもなんだが、積めたとしてもEOTだけは関わるのはやめておけ。死体すら残らねぇ。これで我慢しろ!! ロマンはあっても命は大事だ!」

 

 

■■■■■

 

 

 

 

「艦長、おかえりなさい。副艦長も」

 

 

 

「あ、あの私はただの侍女で特にできることもなく、

 艦の居場所を頂くために便宜上頂いたものなので……」

 

 

「まぁ、気持ちはわかるけど戦闘中は多分。そう呼ぶし慣れてね」

 

 

 そういってユキはエデルリッゾの頭をぐりぐりと撫でまわした。

 やや不満げながらもそれを受け続けている辺り、少しは地球人に対する苦手意識が薄れているように感じて、艦長であるアセイラム姫は微笑んだ。

 

 

「イージスについてのうちあわせはひとまず終わりました。

 私の傘下に入った揚陸城をエネルギーラインとして経由して生成は可能です。ただし、連続使用は3日程度かと」

 

 

「3日遮断できるってんなら上等だ。これで本格的に攻勢に出れるかもしれねぇな……! いなほもスレインも護衛ご苦労だった!」

 

 鞠戸 孝一郎は高揚を抑えきれない様子でニヒヒと笑う。

 

 

「いえ……所で彼の姿が見えませんが」

 

 

「シンくんならどっかいったわよ。といっても非番を楽しむって感じでもないし、シミュレーターか整備してるか……」

 

 

「シンなりの休み方なんだよ、ユキ姉。休みは好きに使っていい筈だよ」

 

 

「いなほもシンも、そうだけど……あんたらのそれは残業っていうの!」

 

 

 ペンと額にデコピンを打って、ユキはふん!と腕をくんでそっぽを向いた。

 スレインはそれを苦笑を浮かべながら、どこか羨ましそうに見ていた。

 そんな時に、一瞬だけスピーカーが起動した。

 

 

『帰還しました。寝ます。報告終わり』

 

 

「ほら、寝るって」

 

 

「そら、夜は寝るでしょうね……でもこんなの残業疲れのままベッドに倒れ込むのとかわらないのよ!! 休め、ばかーーーー!」

 

 

 

「姫様……あの人は大丈夫なのでしょうか?」

 

 

「しょうがないのよ、きっと。もう。疲れないと眠れないの」

 

 

 戦いを早く終わらせる以外、彼が安らぐ方法はないのだろう。

 アセイラムは平和を固く胸に誓った。

 シンがその後の事など何も考えず。燃え尽きようとしている事を知るがゆえに。

 

 

 




誤字は明日(限界)


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死霊憑依

ニュータイプ会話を思い出しながら、それとなく煙に撒く男。

こいつもしや……クソです!?



ところで誤字報告ありがとうございます。
本当、便利な機能だぁ……


 

「素晴らしきヒィッツカラルド……答えろ。

 GR計画とは、バベルの塔によって増幅された念動により首領ビッグファイアをバラルの園へ導く計画か?」

 

 

 

「な、なぜ!?」

 

 

「合っているなら退け。お前らの能力はもしかして、文字通りビッグファイアの力なんじゃないか? 繰り返す、合っているなら引け。眩惑のセルバンテスと共に。俺がここにいて、龍虎王が復活した今。勝ち目はない」

 

 

 

「いいだろう……ついでに名を聞いてもよろしいかな」

 

 

 

 グルンガスト参式を護るように背にしたライブレードの開かれたコックピットの扉に立ち、シンはヒィッツカラルドと向かい合う。

 

 

 

「シンで通している」

 

 

「覚えておきましょう、シン。ところで、退くついでにお聞きしたい……どこでその情報を?」

 

 

「それは秘密だ。だが、ガンエデンをビッグファイアに……

 いや、バビル二世に任せる事は賛成だ。このままでは永遠に敵の侵入を許す。

 クロスゲートの封印が完全に解かれる日も遠くない筈だ……地球を滅ぼす訳にはいかない」

 

 

「フフッ……そこまで知っているならば我らはいずれ、

 君と手を取り合うやもしれませんね……」

 

 

■■■■■

 

399:学生兵

という感じで、襲われてるぜって報告がきてから

めっちゃ急いでいったらBF団いて話したわ

 

400:名無しのハズレ転生者

良く間に合ったな宇宙から

 

401:名無しのハズレ転生者

こいつの機体は短期間・かつ無補給で地球を数十周できるほどの

速度を持つサイバスターが技術の発展元だからな。

機動エレベータなり、大気圏降下フィルムなりで地上に降りる手段さえあれば余裕よ

 

402:名無しのハズレ転生者

なお、変形には苦労する模様

 

403:名無しのハズレ転生者

オォン……アォン……みたいな悲鳴あげてそう

 

 

404:学生兵

大分慣れてきたけど最初期はうんこ踏ん張ってるようなイキみ方と声だった

 

405:名無しのハズレ転生者

汚すぎる変形で草

 

406:学生兵

ちな、向こうが去り際にパッチンで天井切り裂いて瓦礫落として逃げたんだけど

あのおっさんが通信機みたいなの渡してきてな。まぁ、案の定。俺からは連絡できないっぽい

 

407:名無しのハズレ転生者

まぁ、いずれは連絡がくるべ

でもお前。そんなやり取りをしたら国際警察機構とかに囲まれるんじゃね

 

408:学生兵

囲まれたけど、ヴァシュタールの惨劇の真実を知りながら

隠蔽しているシズマ・ド・モンタルバン三世の手下などネオジオンと変わらん……

って煽って内輪もめさせたから今から帰ろうと思う。別スレで話聞いといてよかったね☆

 

 

409:名無しのハズレ転生者

ひでぇ煽り方で草。まぁ、そうなんだけど

 

 

■■■■■

 

 

 

「シンくん、教えて……貴方は何者なの!」

 

 

 

 龍虎王に乗ったクスハがシンに問いかける。

 

 

(なんかそれっぽい事言っておくか……えーと……うーん)

 

 

 

「俺は生と死の輪廻を護る因果の番人の1人。

 クスハ、お前が生の、生きとし生けるものを護る破邪顕正なる戦士であるように、

 近い役割を持つものがいる。俺は死の側に近づき世界の理の一端に触れた」

 

 

「私とブリットくんのように、君はライブレードに選ばれた」

 

 

「(違う気がするけどまぁええわ)そうだ……」

 

 

 ダイフォゾンを仕舞うと、背中の翼。ブースターを起動する。

 あんまり長引くとそこでもめてる国際警察機構が正気に戻りそうだったからである。

 

 

「敵、じゃないの?」

 

 

「生と死は反するものでなく、命というものの一つのプロセス。

 物質世界に課された理。戦う理由がない。むしろ、2つは同じものを望んでいるのさ。分かるだろ? 死んだものが皆、恨み辛みを抱くわけではない

 命を持たないものが正のエネルギーを持ちえない。だから負の側にいるだけなんだ」

 

 

「な、なにを!」

 

 

「死と向き合いながらも生きあがき、今を勝ち取る事。

 物質世界のルールを打ち破れと、世界は人に囁ている。いつかは理解できる。

 だが、できればここでの話は秘密にしておいて貰いたい。揉めるだろうからな」

 

 

 そういってライブレードはぎこちなく変形して飛び立つ。

 後に残された龍虎王は立ち尽くすことしかできなかった。

 

 シンは変形に手間取ってるの突っ込まれなくてよかったと安堵した。

 

 

■■■■■

 

 

 

 

410:学生兵

いや、ちょっと待て……これ、制御奪われてますねぇ!? こいつに!!

ザーツバルムもってくればよかった!!!

 

411:名無しのハズレ転生者

戦闘を予見して焦ってるのはわかるけど完全に強化パーツ扱いで草

 

 

412:名無しのハズレ転生者

意思もってる動きはしてたけどついに機体のっとるのは草

 

413:名無しのハズレ転生者

まるで彼氏()を振り回すメンヘラ彼女を自称するストーカー

 

414:名無しのハズレ転生者

確かに初登場もそんな感じだった

 

415:学生兵

あ、いや、これちょっとまず……

まさかあれと戦えと? なんでぇ!? なんでぇ!!

違うよね、これはなんかちょっとすごいゲッターだよね。画像あげたけど!

 

416:名無しのハズレ転生者

真・ゲッターで草。おわりだよ、君

 

417:名無しのハズレ転生者

確かに初登場もそんな感じだった

 

418:名無しのハズレ転生者

やっぱ真・ゲッターは……最高やな!

どうせなら、カイザーとも敵対しないか?

 

419:名無しのハズレ転生者

おう、そうだな。頼むよイッチ

 

420:学生兵

ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!

 

 

421:名無しのハズレ転生者

面白そうだからライブで頼むわ。

なるべくかっこつけてね♡

 

422:学生兵 LIVE

はい

 

423:名無しのハズレ転生者

素直で草。でもどんな顔してるか大体わかる。

 

 

■■■■■

 

 

 

 

「げ、ゲッターの力がリミッタを外し上がっていく……何かに備えている」

 

 

「どういうことだ、リュウ! 隼人、オープンゲットは!」

 

 

「ダメだ、でたらめに出力が上がっていく……何か来るぞ!!」

 

 

 一瞬でかなたより飛来したそれはライブレード。

 高速移動形態から流れる様に変形したそれは、真・ゲッターの前に舞い降りた。

 

 

「ライブレード、だと!? 確かに機動力の高い機体だとは聞いていたが……」

 

 

『3人とも、ライブレードは国際警察機構北京支部から浅間山のこの研究所一直線に飛行してきたようだ!』

 

 

「な、なんで速度だ……真・ゲッターに匹敵するか、それ以上かもしれんぞ……」

 

 

「……ゲッターが……ゲッターが言っている……

 試練の時がきたと、彼と戦え、彼の使命を果たすために……戦えと」

 

 

「フッ……そうか、ライブレード。お前はそのために俺をここに……

 (ざけんな、ばーーーかーーーーーー!!! 

  スパーリングの相手として格上すぎんだろ!!! 何を思ってこの対戦なの!? ばかばかばかぁ!)」

 

 

 一瞬、マイクをきって機体をゴンゴン殴る。

 もう一生このまま八つ当たりしていたいぐらいシンは焦っていた。

 

 

 

「注がれたエネルギーを、研究所の増幅装置やすべてのゲッターのエネルギーを食い尽くした理由。

 今、分かった。俺にはわかる……隼人、弁慶。シャインスパークを使うぞ!!」

 

 

「なんだかわからんが、どうやら後輩が先輩の背中を追う。そういうことか」

 

 

「なるほどなぁ。だったら、容赦するわけにはいかねぇな!」

 

 

「フフッ……(容赦してよぉ~~~~~ねぇ~~~~~!)」

 

 

 真・ゲッターのゲッター線が高まっていくのを肌で感じる。

 同時に自分の動悸で鼓動が速まっていくのも感じる。焦りで。シンは天を仰いだ。

 

 

(考えろ、考えろ……勝てる算段があるからここに呼び出せたんだぁ、多分……

 プラーナコンバータのフルパワーじゃ無理ぃ。じゃあ、謎の副動力炉の完全開放。

 それはありそうだけど、これでいいのか正答は! 正答ださなきゃもれなく死ぬぞ!!)

 

 

「ゲッタァアアアアアアアアアアアア!! シャアアアアアアアイイン!!!!」

 

 

(あぁ、神谷明の音ぉ~~~。って場合じゃねぇんだわ……ン? 緑色の光?)

 

 

 ふと、ライブレードの胸にアーマが装着された時に

 一緒にはりついたものがあるのを思い出した。GSライドと、Gストーン。

 

 

 

(……そういえば、俺は考えたことがなかった。

 プラーナコンバータの不足出力をどうやって補助動力は補っていた?

 そうだ、GSライドのバイパスは作ろうとしてたけどそもそも……

 ”補助動力自体はエネルギーを機体に送っていない” 考えろ、考えろ……!)

 

 

 気づく、そう結局はライブレードはプラーナコンバーターで動いている。

 だが、この機体はそれに組み込まれた別の機構が

 ”操縦席に乗る複数の心を同調しプラーナを爆発的に高め”

 それを動力とすることで超常ともいえる能力を発揮する機体なのだ。プライヤーズの時に

 そこはシンもはっきりと自覚したのだ。では、補助動力は何をしているのか……

 

 

(……そう、同調だ。俺と同調しているんだ。俺の憎しみと、マイナスエネルギーと

 そうか、副動力はまさにもう一人のパイロットなんだ。そういうシステムなんだよ。

 なんであの時、白くなったのか。あの時は俺が同調していたのはあの2人……理解したぞ、多分!)

 

 

 シンは思う。でたらめでいっていたことだが意外と正しいのかもしれない。

 

 

(他人の能力を写す能力とはいうなれば、強大な共感力。

 その能力を持って副動力と同調する、キーとなる”あるものへの憎しみ”

 そして、Gストーンの輝きを受け入れたのはこの機体自身とするならば……

 この機体を俺だけで最大の力を発揮する方法。ずっと1つだけだった……)

 

 

「俺が憎むのは未熟だった俺自身。

 でもそれ以上……他人の命を無為に奪っていく奴らだ! それを倒すためなら命を賭ける」

 

 

 でも、それは死ぬって意味じゃない!! 俺は生きることを諦めない!

 

 

「生き、あがく!! 輝けぇええええ!!!」

 

 

 140/180 → 70 『捨て身』

 

 

 ライブレードが緑色の光を放つ。それは命輝く石、Gストーンの輝きである。

 

 

 

「ライブレードがGSライドを、

 Gストーンを受け入れたのはそれも意思宿るものなんだろう!

 歩いてる道は違うけど、向いている場所は同じならできる筈だ!

 この機体はそれを体現するマシーンなんだろ! ならば、すべてをひとつにすることはできる!!」

 

 

 機体のカラーが黒をメインとしたものから、黒と白が混ざり合うツートンカラーに変化する。

 それをつなげるように走るラインは緑の光、Gストーンの輝き。

 

 

「真・シャイン! スパァアアアアアアアアアアアアアアアクゥ!」

 

 

 眼前に迫る、真・ゲッター。

 ライブレードはがむしゃらに拳を突き出した。

 

 

「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 

 

■■■■■

 

 

449:学生兵

というわけで相殺して生き残ったよ。

 

 

450:名無しのハズレ転生者

最後、なんかすごいパワーを感じるパンチで草

 

 

451:学生兵

うるせぇ!!!

体現するマシーンに乗ってても武装がねぇんだ、武装が!

 

 

452:名無しのハズレ転生者

世知辛ぇ~~~

 

 

453:名無しのハズレ転生者

でも俺、ちょっと納得いかないんだけど

なんで正の位置にするエネルギーが負の無限力に属する

怨念とかの悪霊とかの死のエネルギーと合一できたわけ

 

 

454:名無しのハズレ転生者

そういや、負の無限力と正の無限力は敵対してたよな

「融和による進化」「闘争による進化」

結局は命を滅びさせないために前に進めるのが正の無限力だったよね。例外もあるけど

 

 

455:名無しのハズレ転生者

 

そういや、幽霊もザ・パワーと融合した人たちが例外として出てきたけど

あれは接触していたものを力を与えたって感じだよな。やっぱ死人は本来、負の力なんじゃ

 

 

456:学生兵

俺、その辺は知識足らないんだけど

今、まさに死に物狂いでやってた側の意見として

生と死。正と負で本来は循環するもので、そこから外れた邪界思念というべき別の負

があるんじゃない? 

 

 

 

457:名無しのハズレ転生者

そうか、歪められて生まれたものか……

イデのような例を考えるとそうかもしれんな

 

 

458:名無しのハズレ転生者

ニュータイプも幽霊のオカルトパワー借りて戦うし

アイツらも今を護るためだ! みたいな感じだしそうかも……

 

 

459:名無しのハズレ転生者

で、精神ポイントあとなんぼですか?

 

 

460:学生兵

30。皆様のためにぃ~1回戦うたびにぃ~ 僕は死にかける。もう機体の中で寝ます。おやすみ

 

461:名無しのハズレ転生者

そういや、最後のって明らかにポゼッションだけど

もしかして副動力炉って精霊の加護かそれ自体を内包してんのか……?




武装がないからパンチ。しょうがないね! 
一度剣はしまっちゃったし、羽ビームは時間かかるし、
だからといって武装ははえてこねぇんだ! 


なんでメンヘラ用マシン自分でたまに動いてるの
というアンサーをした所で少し誤字確認した後に寝ます

終わりが見えてきたので安心しました。


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幕間 インターミッション11 『その先にあるもの』

550:学生兵

おはようございます。今回は2日で済んだ。

しかもちゃんと自分の部屋に帰ってきて寝た。快挙だな

 

551:名無しのハズレ転生者

それは快挙なの?

 

552:名無しのハズレ転生者

2日も仕事をさぼった無能といえる

 

553:名無しのハズレ転生者

我らは1日も休まず戦い続けている

しかし、彼は2日も休んだ。なぜか

 

554:名無しのハズレ転生者

無能だからさ……

 

555:学生兵

なんでそんなひどい事いえるの!!

 

556:名無しのハズレ転生者

キリ番踏んだな。報告しろ!

 

557:名無しのハズレ転生者

古代の文明使いおるね

 

558:名無しのハズレ転生者

命捨てる気であるくせに誰よりも執着してるからだろ!!

 

559:学生兵

覚悟は覚悟であって死んでいいって諦めとは違うんだよ!

 

560:名無しのハズレ転生者

俺もコンスタンティンに似た事言われたわ

 

561:名無しのハズレ転生者

DC世界は命の危険どころか魂の危険もあるからなあ

 

562:名無しのハズレ転生者

でも、20人いて半数は裏切って敵側に転生者がついた

マーベル世界と比べると覚悟して死ぬ奴が多いだけましかもしれない

 

563:学生兵

よーわからんけど、皆、それぞれ苦労してるんやな

 

564:名無しのハズレ転生者

てか、結局。昨日の仕組みがよくわからんのだけど

負の無限力って敵だろ。

 

 

565:学生兵

 

生(正)に属する力(ニュータイプとかそういうの)

 

      

正であり負でもある(両者を循環させる力) 

      

 

死(負)に属する力(怨霊、死霊、幽霊)

 

みたいな感じだと思う。よくはわからん。

ただ、皆がいう負の無限力ってのと負念は近しいけど別だと思う。

だから、そっちの考えに合わせるとこれら、

3つ併せて1つの正の無限力になる。ややこしい

 

 

566:名無しのハズレ転生者

その理屈でいくとイッチはクスハにいった負に属するというより

真ん中になるな。でもそれがチートでつよいかってーと……

 

567:名無しのハズレ転生者

ぼこされてたからな。便利であるけど強弱はっきりしてる部類の力

イッチはゴミ。機体におんぶにだっご。

 

568:学生兵

定期的に俺にすげぇきびしいねぇ!!

 

 

■■■■■

 

 

「そういやよぉ、お前。いつも私服か学生服じゃねぇか。

 ノーマルスーツは着ねぇよなぁ? 衝撃とか大丈夫なのか?」

 

 

 機体の調整中にマクロスでジャンクあさりをしていたらしいウリバタケがシンの所によってそう声をかけた。シンは「頼む」と声をかけるとライブレードが腕を床に接地させた。それを滑り台のようにして下に降りる。

 

 

「衝撃はないんですよ。全く。ゲッターチームは真・ゲッターの操縦で鼻血とか出してたらしいですし、サイバスターみたいにMAXスピードでなんもないですしそういう意味では最強かな。一応、ダッシュボードにノーマルスーツはしまってますけど」

 

 

「ほぉー……コックピット周りのシステムなんかなぁ。これはわからん。なぁ?」

 

 

「えぇ、そうですね。これを流用できればと思うんですが解析は中々……脳波コントロールの領域のテスト機として結構いいデータが取れています。YF-21にはデータが反映されているそうですね」

 

 アストナージが額の汗をぬぐいながら、ウリバタケに何かを投げ渡した。

 

 

「悪いな、今度奢るよ」

 

 

「でもライブレードのデータなんて何に使うんですか?」

 

 

「Xフレームっていう火力開発したんだがどーにもうまくいかなくてな。だから、パイロットと機体の一体感を高める方の強化に舵取りしようと思ってよ」

 

 

「人機一体、ってか。うちのこれが参考になるのかね……うぉい、睨むなよ」

 

 

 やけに最近、意思を表にというか顔に出してきた。がん見するカメラアイが赤い。キレてそうとかんじシンは黙った。

 

 

「しかし、意思を持つロボットねぇ……ゲッターも明らかにそういう動きをしてるんだよな」

 

 

「でも、あれはライブレードとぶつかりあってエネルギーを使いきって止まってるらしいですけどね。ゲッターチームはドラゴンを強化して使うらしいですよ」

 

 

「俺のせいじゃないからね。俺のせいじゃないよ」

 

 

 しかし、1割のリミッターを外しあれは何割のパワーなのか。最低でも2割。でも2割だったら2割であれになるので無限力というワードもあながち大げさな名前ではないなと額に汗がびっしり浮かんだ。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「イングラム少佐はミスリルに送り情報を吐いたらしい。拷問の内容については聞くな、といっていた。肉体的より精神的に追い詰めたらしい。内容については後日、まとめて報告とするそうだ」

 

 

 朝の報告会でそんな話をシンは聞いた。

 相当地獄なような事をされてさめざめと泣いている男の顔が頭に浮かべようとしたが、顔をそもそも知らないのでプリケツに目玉がついた謎の生物が想像の中で泣いていた。まぁ、別にそこまでかかわりもないしそもそもして裏切者なので、もっと地獄な様な目にあってもいいか、とシンは思っていた。

 デシルが悪い、あんな裏切り方をしなければこんな裏切者始末するマンは生まれなかったのだ……

 

 

「ありがとうございました!」

 

 

「おっと、いけね」パチパチ

 

 

 マクロスにきて久々にリン・ミンメイのライブで拍手を送る。

 私の彼はなんとやら。あんな歌を歌うなら、やはりパイロットの間で聞く噂はそうなのだろう。

 何とも羨ましい限りだが、シチュエーションに羨ましさを感じるのであって、じゃあ、リン・ミンメイを彼女にしたいかといえばそういう気持ちでもないな。

 事実、終了時に会場の後部席からこのように真っ先に退場している。歌手ミンメイの歌に興味はあっても、女性という認識はないのだなぁ、とシンは思った。

 

 

「歌はいい……君もそう思うかい?」

 

 

「あ、そうすね。じゃあ」

 

 

「えっ」

 

 

 宗教の勧誘みたいなのを高速でスルーし、タクシーに乗った。

 仕事があるのだ、仕事が。勝手に行動した時の報告書をかかねばならない。

 軍属というかロンド・ベル属というか大戦後は編入になるかもしれないのだろうが、今は特に臨時で准尉待遇ではあるらしいのだが階級らしい階級を振りかざしたことはない。

 いつか、振りかざして優雅に暮らすかとか考えてみたがシンは自分がそんな風に生きる姿が想像できず、ほとほと自分に軍人が向いてないのを感じた。

 

 

「お客さん、行先はあそこでよろしいんですね?」

 

 

「あ、そうです。予約しておいた通り、マクロスの格納庫にいける……」

 

 

「地獄へ、ですね」

 

 

「はっ?」

 

 

 タクシーは動き出す、しかし窓柄に黒いスモークが覆い外の景色はうかがえない。外からも中の様子は見えていないのだろう。

 そして、運転手も又正体を現した。

 

 

「眩惑のセルバンテス……」

 

 

「分かったろう。われわれ、BF団にしてみれば地球圏内にいる限り、こんな潜入任務などたやすい……連絡用の通信機は渡したがそれを示しておこうかと思ってね」

 

 

「なるほどね……超能力者同士で争ってるのがよくわかる。ロボット乗りの俺らには想像できん領域だな……」

 

 

「フフフッ……理解できたようで何よりだ。賢いものは嫌いではない。我らが直接対決して苦労したのは国際警察機構。あるいは、内閣調査室所属の特殊部隊『ID5』ぐらいなのだ。それに比べれば軍部の防諜機関など、遊びということだ。最も……今回は挨拶で帰る」

 

 髭をなびかせる、誰もが想像する典型的石油王の様な男、眩惑のセルバンテスはゴーグルの下で瞳を怪しく輝かせながらそういった。

 

 

「今、はっきりと分かった。お前らやっぱ地球の征服とかそういうのどうでもいいだろ」

 

 

「我らのすべてはビッグファイア様のために。名乗るたびにそう言っている筈だ。そして、その意思は……なんのためにあるかは君は理解しているのではないか?」

 

 

「そうだな」

 

 末端の戦闘員はともかく、超A級と定義される幹部の意思はほぼ統一されているのが分かった。急なことだったが収穫はあったから、それでいい。

 どうせ世界の平和の蚊帳の外。なら、徹底的に外でうごくのが自分のあり方なのだろう。

 それでいいか、それでいい。一瞬考えたが、別に悩むまでの事でもないのだとシンは思った。

 

 

 

「結構の前日には連絡しよう。イージスを掌握し、地球と宇宙を分離しその末に再び大怪玉は起動する。世界のシズマは止まり、バベルの塔を見つける。君の戦いはそこからだ。黄帝ライセについては我らがビッグファイア様が対処なさるだろう」

 

 

「黄帝ライセって少し聞いた気がするけど国際警察機構のトップだろ? なんで……」

 

 

「味方に敵ありとはよくある事だ。君はこちらの戦いは気にしなくていい。それぞれの益の為に動けばいい。そういうことだろ」

 

「実質、お前らの総どりだろ。まぁ、いいけどな」

 

 

「ふっ、そう、それでいいのだよ。バラルの力で念の盾を使えるのは我らが主のみ。

 これもよくあることだ。一つの目的のために敵と味方が協力する。君は、その果てに信頼を失うだろう」

 

 

「いいさ。それでいい……俺はできることをする。いつだってそうしたんだ」

 

 

「たいした自己犠牲精神だ」

 

 闇の中にいつだって光を求めた。可能性というものが示す未来を探し、戦い続けてきた。ただ、明日を消さないように。自己犠牲じゃない、そんな言葉で締めくくられるのは気に食わない。

 歯を食いしばり、立ち向かってきたのは常に自分の意思だ。

 

 

「馬鹿にするな、ロンド・ベルの戦力を割けばそこをほかに突かれる。だから俺が行くんだ。俺は俺の意思で戦うんだ」

 

 

「フハハ! 失礼したね、シンくん。英雄願望か、自己犠牲か。そのあたりだと思っていたがどれも違う、ある意味まっすぐにしか生きられない男か……大作君と近い。損だな、その生き方は」

 

 

「それでも、良いと思った。思ってるんだよ。ほっておけ……」

 

  

「そうかね! では、ドライブを楽しもう。私たちと、君と、同じ道を歩く者のね」

 

 

 伸びる暗闇の向こうに彼らはビッグファイアだけを見ているのだろう。

 だが、シンは確かに希望を見ていた。同じ道でもみるものは違う。

 無限力すらも、目指すものは違うのだから……

 

 

 





 終わりが見えてきて、ハァハァハァ……してる
 でも体力は限られてるので平日は連投はむーりぃ。土日でなんとかなれ!!
 と思っています。頑張ります


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終末へのプレリュード

 

600:名無しのハズレ転生者

てか、オーブ吹き飛んだけどいいの?

 

601:名無しのハズレ転生者

まぁ、イゼルカント様に真っ先に狙われそうなスタンスだけど

 

602:学生兵

俺は政治には詳しくないんだが、首都が吹き飛んで経済の橋渡しがなくなり

ティターンズを経由してブルーコスモスって所が引き取ったらしい

 

 

603名:無しのハズレ転生者

あっ……

 

 

604:無しのハズレ転生者

コーディネイター「助けて……助けて」

 

 

605:名無しのハズレ転生者

あずにゃん「駄☆目」

 

 

606:名無しのハズレ転生者

フレームできてるであろストライクくんたちとか

アマツとか一切、データがわたらずどうやってプラントは戦争すんだよ

 

608:名無しのハズレ転生者

ジンとかで勝負できるわけねぇだろ!!!

つまり、諦めるという方向です

 

 

609:学生兵

あ、思い出したわ。ブルーコスモスくんって死の商人か

でもそれってつまり、アイツらが他に兵器ばらまいてやばくなるって事だよな?

 

610:名無しのハズレ転生者

木蓮、アマルガム。ありとあらゆる敵がフェイズシフトを使う環境か

あの技術の流出って結構つらいもんがあるんだけど。

何がやべぇってビームを実体弾でぬいた後にフェイジシフトされると木蓮が最強になる

 

611:名無しのハズレ転生者

嫌な第二次αになりそうですね

フリーダム量産とか地獄にならないのだけを祈る

 

 

612:学生兵

俺がもう中々に持ちそうにないんで後の世代には頑張って頂きたい

 

 

613:名無しのハズレ転生者

正直で草

 

 

 

614:名無しのハズレ転生者

でも南極だかのクロスゲートの封印がとけるとまずいんでねえの?

 

 

615:学生兵

俺も厳密にあれがなんなのかは理解してない。

ただ、負念が渦巻いてるのがわかるしそもそもライブレードはあそこから出てきたし

異世界に繋がってるのは確かだけど悪意を持って作られたコピーみたいな……

 

 

616:名無しのハズレ転生者

本来のα次元で負けたケイサルくんが別次元に逃げ延び

負念を回収することで癒し、強化してるって可能性は?

 

617:名無しのハズレ転生者

あっ、なるほど……

クロスゲート・パラダイム・システム。

でも反転してるってことはスフィアの反作用な事を押し付けてるってこと?

じゃあ、オリジナルをアイツは掌握してるかしかけてるって事になるんじゃ

 

618:名無しのハズレ転生者

アイドルに希望を見たみたいなコメントをしてたな、ソシャゲで

いや、待て……優しく受け止め包み込む、自然で優しい強さというゆるふわ無限力を経て

アイツは内にある負念をクロスゲートに押し付ける事を学んだんじゃねぇか!?

 

 

619:名無しのハズレ転生者

ルアフ・ガンエデンのように力を貸し与えるのではなく

負の無限力で汚染し自身に帰属するものとする力を得たって事か

もしかすると、ライブレードの世界はそうやってクロスゲートから撒かれた負念で内乱に

 

620:学生兵

なんだかよくわからねぇが聞いても理解できないだろうし

待機してるか……

 

 

■■■■■

 

 

 

「おー、エヴァンゲリオン(今、思い出してきたけどテレビは見た記憶あるな。

             でも、なんだこのくそ最終回!って縁切ったんだっけ)」

 

 

「いや、シンさん! のんきに言ってる場合じゃ!」

 

 

「言うて、俺は今日待機だし。懲戒任務帰りで出撃許可下りてないから。

 まぁ、先行するって聞いてこっちに着艦したけどデューカリオンの設備だとそもそもメンテに不安がな」

 

 

「特機はフルメンテじゃないにせよ、手間はかかるからマクロスとかでのメンテも待機列になるからね」

 

 

「そう、その通りだよ、いなほくん。せんべい食べる?」

 

 

「もらうよ」

 

 

「おう、俺にもくれ」

 

 

「うっす、教官」

 

 

「あんたたちねぇ!!」

 

 

「無駄です、ユキさん。彼らは完全に気が抜けています」

 

 

 スレインが頭を振ってもう無理です、とユキに訴えかける。

 ユキはぐっと言葉を飲み込み、管制に戻る。

 

 

『竜馬さんの真・ゲッターが現れなけれ…僕はトウジを殺すところだったんだ……!」

 

 

『しかし、あの時は…!』

 

 

『そんなこと言ってこれ以上僕を怒らせないでよ……

 初号機の残されているあと185秒……これだけあれば、本部の半分は壊せるよ』

 

 

 ラーカイラムなどに先行してネルフにやってくると、

 しれっと初号機に乗り込んだシンジくんが本部を破壊しようとしていた。

 大胆な行動力とまじでやりそうな迫力。知ってる彼とそこそこ違う事に妙に成長を感じて、

 ちょっと「おう、やれやれやっちまえ!」なんて思いをシンは抱いていた。

 

 

「シンジさん、ダメです! あなたも彼らと同じになるのですよ!!」

 

 

(しれっとダメな大人扱いかぁ、セラムさんや)

 

 

『止めないでよ、アセイラムさん!

 そうだよ、そうさ! でも許せないよ! 許せないんだよ!

 この人たちは僕に友達を殺せっていったんだ! だからそれなら自分が死んだ方がいいって!

 そう思った! でも、父さんたちは目の前の命より初号機が大事だって!! 許せないよぉ!』

 

 

『シンジ君、話を聞いて! 碇司令の判断がなければ、皆は死んでいたかも知れないのよ!』

 

 

 

「そりゃ仮定でしょ。手段を考えたのか? 一時的にせよ、ダルマにするとか

 あとなんか目標はお前が倒せとか単騎で対処させとかあるけどさ……

 3体集まってりゃ引き抜けたんじゃない、プラグ。戦力を段階投入って君……俺でもわかるよ!! 馬鹿!!」

 

 

 

「戦術はB判定だからな、お前。それも真面目だったとか提出物とかの加点でギリ

 俺はそんなお前が今は立派なパイロットでうれしいぜ……立派か? 立派かなぁ」

 

 

「やめてくださいよ!! 教官、人の恥部を!」

 

 

(まぁ、緊急時の対処についてはシンが一番高かったけど調子乗りそうだし黙っておこう)

 

 

 

『…………』

 

 

「あの、ネルフの皆さんが黙ってしまったのですが……」

 

 

 アセイラム姫が攻める様にシンを見つめる。

 それに続くようにエデルリッゾが静かに頬を引っ張った。

 

 

「あででで! すんません! 言いすぎました! 俺が悪い!」

 

 

『あ、いえ。でもなんか怒りが冷めてきました。降ります……』

 

 

「あ、あのネルフの皆さんはあくまで学術的な知識であって

 MAGIもそれに基づいてますし、仕方ないかと思います!! それでは!」

 

 

「追い打ちするな、准尉。追い打ちを……

 姫さん、とりあえず初号機とシンジを回収する。落ち着いてきたけどネルフに渡すとまたキレそうだ」

 

 

「あ、はい……前進開始。進路、初号機!

 その後、初号機のみネルフへ。シンジさんはロンド・ベル所属です

 艦長全員の合意なく引き渡す必要はないと考え、本艦で保護! ……シンさん、貴方はちょっと」

 

 

「すいません、他意はないです 害意も!! ちょっと思ったことが我慢できないだけで!!」

 

 

「アホウ! それが一番性質悪いわ!」

 

 

「はい」

 

 

「納得はやっ……」

 

 

■■■■■

 

 

 

 シンジを他のメンバーが迎えに行く中、艦橋で正座をするシン。

 その足の下にエデルリッゾが静かに冷えない様にとタオルケットを押し込む。

 目の前ではアセイラム姫(パーフェクトドレスバージョン)が怒気を纏っていた。

 

 

「言い過ぎです!! もう少し手心を加えて言いなさい! 

 泣いてたかもしれませんよ! 彼らだって大人というだけで人間ですよ!」

 

 

「いや、でもぉ。年齢のわりには子供だしシンジを助けたり

 バックアップしてる感じはあんまなかったっていうか(うろ覚えテレビ知識と今までの戦闘)」

 

 

 

「い・い・で・す・か・!」

 

 

「はい」

 

 

 ピンと背筋をたてて、向き直った。シンは抵抗を諦めた。

 

 

「彼らの中に本当の意味で実戦を戦い抜いた人はいません!

 火星のように戦いの歴史を事細かに記しているわけでもなく

 あくまで、マニュアルデータなのです! わかりますか!!」

 

 

 

「まぁ、それはそうなんだけど……」

 

 

「何より、彼らは戦艦に同乗してる訳ではありません。

 彼らは彼らで使徒の解析やそれを探す役目があるからです。

 ある程度、心の距離はどうしてもできてしまうのです……」

 

 

「うっ……」

 

 

 言い返せない。ちょっと項垂れた。

 確かに何もしてないわけではなかったのだ。

 

 

「でも、これだけは言わせて欲しい。アイツら勝手だろ」

 

 

「そうですね。でもいわば彼らは会社の同僚であり

 私たちの様な仲間意識はないのです。幼稚な部分があるのは確かです。

 でも……貴方の言葉は言い過ぎです……何かあったのですか?」

 

 

 シンはそっぽを向いて、歯をかみしめた。

 

 

「自分の中にある嫌いなものを見せつけられると、嫌になるだろ……俺もガキさ

 他人の痛い所を突くようで、結局は他人と協力しきれず。過分に背負う部分がある。

 わかってるんだ、それがダメな事も。でもどうしたってどうにもできない。怖い」

 

 

「……あの、姫様やお強いあなたでも怖いものがあるのですか?」

 

 

「あるよ……」

 

 

 エデルリッゾの言葉に返答すると、膝の下のタオルケットを静かに抜き取り、

 まとめて彼女の腕の中に押し込んだ。

 

 

「俺はいなほも、スレインもそうだけど

 少しふれ合っただけでなんか死んでほしくないと思う。

 好きになりやすいのかもな。だから、そいつらに死んでほしくないから一人で動く、そういう部分はある」

 

 

 2人の顔を見ない様に、出口へ向かう。

 何か言っている気がするが、カツンカツンという自分の足音だけに耳を向ける。

 

 

「でもな、一見すればどうにもならないんだ。俺しか動けないことも多い

 それでも、たくさん相談すれば実はなんとか皆が俺を助けてくれる余裕ができるかも

 とは、思うけどそうすると死ぬかもしれない、傷つくかもって想像が頭から離れない……何より」

 

 

―――嫌われるかもしれない、と思うと手を伸ばせないんだ。ガキだよ、本当

 

 

 

 去っていくシンの背中に手を伸ばそうとして、すんでの所で届かなかった。

 アセイラムは宙を掻いただけになった手の置き場を見つけられなくて、自分の片手でそれを覆った。

 

 

「姫様……あの人はもしかすると誰よりも臆病なのかもしれません……

 きっと、弱さを見せられないだけで……泣いているんです……」

 

 

 瞳に涙をためた。でもエデルリッゾはそれを流さなかった。

 何もできずただ立っている。侍女という立場を支えにして、そんな自分が情けなくて泣く資格もない気がした。

 アセイラム姫は強く彼女を抱きしめた。

 

 

「分かっています……分かっています。

 でも私は、どうすればあの涙を拭えるか。分からないのです……」

 

 

 くやしさと、悲しみと、いろんなものが彼女の中を渦巻いていた。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 シンはライブレードの中に戻った。

 最近は此処が一番落ち着く感じすらある。トイレが終わったら帰らないで籠ってる時もあった。

 ここでだけは強い自分でいられる。いや、パイロットである以上いなければならないから、

 そんな虚勢が自分を助けてくれた。だが、勇気というにはあまりにも贋作なそれが今まで生かしてくれた。

 

 

「…………あれ?」

 

 

 動力を起動していないのに、力が抜ける気がする。

 

 

 

ビキィ!

 

 

 視界がひび割れた。いや、それは正しくない。眼は見えてるのに

 目の前にあるコックピットすらどこかあやふやで認識できない。

 突然の事態に戸惑う。しかし、それが少しずつ落ち着いてくると体中が痛む。

 

 関節ではない、もっと何か。全身を満たしている何かが軋みを上げた。

 

 

 

(砕ける? だ、だめだ。だめだ、まだ……まだ……まだ駄目だ!

 終わってない、何も終わってない! 終わりも見えた、復讐の相手だって残ってる!

 そうだ、ヴェイガンを……世界に悲しみと憎しみを振りまく奴らは皆、ヴェイガンだ……)

 

 

「よし……よし、落ち着いてきた。やはりヴェイガン、

 ヴェイガン殲滅の決意と憎しみは万病に効く……俺を取り戻させてくれる……

 なぁ、ライブレード。俺ともう少しだけ戦ってくれ。ユリン、ごめん。ごめん……

 お前の仇を討ってやりたかった。でも俺の代わりに皆が倒してくれる……」

 

 

 

 シンは神が嫌いだった、女神も嫌いだった。

 どんな形にせよ自分は死んだ。死んだ自分をリサイクルの様に

 地獄に突き落とした彼らが嫌いだった。それでも……それでもと……

 初めて、心から祈った。

 

 

「神よ、あと数回だけ全力で戦う力をくれ……頼む」

 

 

 気を失う事もできず、体中に這う痛みを感じながら彼はただ、何の力もない観測者にそう祈った。

 





起きたら頑張ります(誤字修正、執筆)


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幕間 インターミッション12 『うちてぇなぁ~』

 

「これは強化手術で用いられる負担の軽減薬です」

 

 2錠だけ入ったピルケースを揺らしながら、デューカリオンの軍医。耶賀頼 蒼真(やがらい そうま)はシンにそれを手渡した。

 

 

「ですが、そういう状況ならもう少し早く来てほしかったのですが……」

 

 

 

「教官と鉢合わせても困るじゃないですか。

 今日だって雑にデートをセッティングして追い出したんですから……他のみんなが外出するのに合わせるのわりと苦労したですよ」

 

 

 

 教官というのはもちろん、鞠戸 孝一郎 《まりと こういちろう》の事である。

 かつてはPTSDでまともに戦闘を行う事ができなかった彼だが、

 むしろ、そんな自分すら戦うしかないという戦力のカツカツ具合にいつしか立ち直っていた。王道的な物語ではなく、役割を押し付けられることで立ち直るというのも皮肉であるが、無力さこそがその根本的ものだった彼にはそういう役割こそ必要だったのかもしれない。

 

 

「で、負担の軽減薬っていうのは?」

 

 

「宇宙世紀の強化手術は10年前とくらべて、格段にその能力と安定性が上がっています。これらは技術の進歩、とくに薬学の面の改善が大きいのです。この薬はいわば、膜を張る。過敏すぎると言われた強化兵の能力を安定化させるわけです」

 

 

「ほーん、つまり同じように俺も、って事ですね。なるほどなぁ……効果は?」

 

 

「試しました。とりあえず、副作用で死ぬほど苦しむ様な事はなく。毒で最悪のメンタルにした時にも大分効きました」

 

 

 なるほど、とひとまず納得したシンはそれを懐にしまった。

 

 

「ですが、正直。話を聞く限り君のそれは末期です。いや、機体が機体である以上。避けられる状況ではないでしょうが……」

 

 

「先生」

 

 

 目を伏せる耶賀頼先生にシンは明るい声で声をかけた。

 

 

「俺はやるべきことをして、こうなってるだけです。後悔はない」

 

 

「それは、いなほくんや彼らの前でも?」

 

 

「言える。でもいったら止められるから言わないけど」

 

 

 別に自棄になっているわけではないのだ。

 できれば、時間切れになる前に生きて帰るつもりではある。一生の苦しみを背負っても生きてるだけマシだとはいえるのだから。

 

 

「死ぬ覚悟はいつだってしてきた。これはね、先生。生きる覚悟の為にですよ」

 

 

 痛みは、どんな時も決意を鈍らせる。でも、痛みは生きてる証拠でもある。

 痛みをなくすということは生すら否定する事でもあるならば、

 これはいわゆるダブスタとかいうものなのか? なんてシンは思った。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

「ダカールの演説の日、ヴァースとの和平の為にイージスを1分間だけ展開するそうだ。その瞬間、コンピューターウイルスを仕込み。アムロ・レイなどの部隊が宇宙に上がった段階でイージスを作動させる」

 

 

 衝撃のアルベルトは葉巻に火をつけながら、シンにそういった。

 

 

「……これ、どうなってるの?」

 

 

「テレパシーの中継装置だ。貴様はいわゆる、感応能力に近いものを持つという話だったのでな。ただの人間なら役にも立たんが……まぁ、問題はない」

 

 

 座れ、とどころから出てきたのかも分からないソファーに座ると隣に女の子が座っていた。

 

 

 

「娘だ、本来はわしとこやつの直通回線なのでな。巻き込んだのだろう……よいか、ヴァシュタールで地上のシズマドライブが停止し、電力の8割が停止する」

 

 

「すると、どうなるんだ?」

 

 

「地上のエネルギー反応はお前たちの様なロボットと、原子力だけになる。それをセンサーから排除した上で残るエネルギー反応の地点。バベルの塔に我らは向かう。お前の仕事はそこからよ……」

 

 

「お前たちの情報を元に、バラルの園を見つける」

 

 

「そして、ガンエデンを確保する。

 孔明の話ではまだ守護者はダメージから復帰しきれていない。ならば、お前はガンエデンと3体のしもべと対峙する事になるであろう。が、勝利することは難しい」

 

 

 咥えていた葉巻を手で握りつぶす。

 

 

 

「決着はこちらがつける。だが、我らもバベルの塔からバラルまでは多少は時間がかかるであろう。奴を引き付けておき、できるなら露払いをしろ」

 

 

「全部あんたら担当するのはダメなのか?」

 

 

「位置を気取られて、一か八かで行動を始める可能性がある。だからこそ、そういう役目は必要なのだ」

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

「何、武器がいる?」

 

 

 プトレマイオスを訪れて、シンはフリットに尋ねた。

 フリットは何かを悩む顔で顎髭を撫でた後に指をさした。

 

 

「アセムを絞り上げた時に奴の船から一つ、運び込んだものがある。あれは、その名もプラズマダイバーミサイル……私がかつて研究していた兵器だ」

 

 

 フリットの説明は難しかったのだが、つまり核ミサイルというより極小範囲を電子レンジの様にするものであるとシンは理解した。

 そら、流石に渡していい兵器ではない。

 

 

「えっぐ……」

 

 

「だから、研究をやめたのだ。量産のために私の試作をアナハイムかブルーコスモスに持ち込もうとしたのだろう。これに関してのみはアセムはいい仕事をした」

 

 

「他は?」

 

 

「……イゼルカントとはおそらく、和解の芽がない。なくなった。連邦の高官の中にもアセムによって長引いてしまった戦いで家族を失ったものも多い……」

 

 

 最低でも、決着はヴェイガンの本星。あるいはコロニーの長期間の植民地化という形で決着するであろう、とフリットは予測している。

 心の中で少し、それを喜んでいる自分に気づいてフリットは頭を振った。

 

 

「そうか、じゃあこいつは頂いていく」

 

 

「使うのか、兄さん……」

 

 

「必要なんだ。問題はダカールの日アイツらがこっちに攻めてこないかだな……情報は掴んでるだろうし、団結もされたくないから来ると思うんだよな……無理だよ、フリット。絶対我慢できない……」

 

 

「……兄さん、くれぐれもいうがこれ1発きりだ。他には強力な兵装などないぞ」

 

 

「でもヴェイガンがでてきたら秒で撃っちゃう……絶対気持ちいいしすっきりする」

 

 

 ヴェイガン殲滅は気持ちいいZOY~! 至上の快楽であることは間違いない。

 なので、お願いだから今回ばかりは出てこないでくれと祈った。

 

 

 

 





どう着地するか考えてたら、全く進まなかった……なんとなさけない

ずるずる続けるんじゃなくてスパっと落ちる流れに
やや強引でも向けていこうと思います


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さらばイゼルカント

 

大惨事スーパーロボット大戦 5スレ目

 

 

22:学生兵

というわけで、俺はプラズマダイバーミサイルを手に入れたんだ

 

 

23:名無しのハズレ転生者

へぇ、EMP兵器としても強そうじゃん

 

24:学生兵

でも今、撃っちゃったからどうすんべかって話

 

25:名無しのハズレ転生者

 

26:名無しのハズレ転生者

 

27:名無しのハズレ転生者

躊躇なくて草

 

28:名無しのハズレ転生者

人の心がないんかお前は

 

29:学生兵

でも相手が人間じゃなかったから……

 

30:名無しのハズレ転生者

あっ(察し)

 

 

31:名無しのハズレ転生者

殲滅! 殲滅! ヴェイガン殲滅! しばくど!(ミサイル発射)

 

 

32:名無しのハズレ転生者

ユリン止めに来たかわからんけど

止めに来た頃にはもうトリガー引いてそう

 

 

■■■■■

 

 

 

「議会の方と、このテレビを見ている方には、突然の無礼を許して欲しい。

俺は……いや、僕はアムロ・レイ。話の前に、皆さんに知って貰いたいことがあります」

 

 

 罵声の響く、議事堂の中でアムロは思った。

 自分はいつから俺、というようになったのだろうかと。大人になったといえば、そうだがそれは戦争の後からだったと思う。

 自分の傷と、弱さを隠したくていつしか強がるようになっていた。

 軟禁に甘んじて、肉欲におぼれていくなかで少年の自分は心のより深くにもぐってしまった。だが、今日。もう一度、自分自身として世界に立ち向かうのだ。

 シャア・アズナブルにはできない。

 地球、宇宙とで生きた。アムロ・レイとした。

 

 

 

「鳥取に生まれ、母の不義……いえ、残酷かつ最低の行為。不倫により父と僕は宇宙に上がりました。グラナダ、サイド6、そしてサイド7。父と共に転居を繰り返し、僕、個人としては宇宙での暮らしが遥かに長い。だから、故郷といえば宇宙なのだけど、地球での暮らしは心地よかった。重力に囚われている間、この星は僕を癒してくれた。嫌、違う……重力とはやさしさなんだ。魂を捉える訳じゃない、それは、母の腕だ。自分の意思で、歩みだすまで。優しく包み込んでくれる愛だった」

 

 

 ―――僕は弱い人間です。

 

    だから、英雄としてでなくそういうものとして語ることを許してほしい

 

 

 一年戦争後の英雄的扱いから、多くのジャーナリストから「ニュータイプ」についての取材を受けた。それでも、何かといわれても難しい。なんとか、言葉をひりだしても発言は抽象的で、大衆にとって難解なもので理解されなかった。

 詩的な表現のような、稚児の落書きのようなその抽象的表現は心からあふれるものをただ、口に出したものだからだ。

 それは、素直に受け止めようとするものにしか伝わらないけれど、多くの人には心と心の間に盾がある。だから、無駄かもしれないけども、

 アムロは今日、素直にしゃべろうと決めた。

 

 

 

「現在、ティターンズが地球連邦軍を我が物にしているやり方は、かつてのザビ家がスペースノイドの総意は我にありと曲解しジオンを作り替えた過ちと同じだ。

 事実、今、僕らはミネバ・ザビと手を取れた。

 これはティターンズにはできなかった事。

 人が宇宙に出たのは、地球が人間の重みで沈むのを避けるためで、

 地球には金持ちしか残っていないなんていうけども……

 かつて、宇宙開拓事業は色んな保証はあれど、

 豊かな人間にだけ許された挑戦だった……」

 

 

 アムロ・レイは大きく息を吸い込んだ。それは、広がり切った幻想と夢と希望を打ち砕く言葉でシャア・アズナブルなら言わなかった言葉だ。だが、だからこそ自分が言う必要があると彼は感じた。

 

 

「宇宙に出ることによって、人間はその能力を拡げることができる……なんて事は嘘だ。ニュータイプのような能力は確かにそうやって覚醒したが地球で別の力に目覚めたものもいた。結局、宇宙ではない。人の争乱がまだ目覚めるべきではなかったものを揺り起こしたにすぎない。これはまだ、人に過ぎた力だ」

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

「…………」

 

 

 アクシズでクワトロは、シャア・アズナブルは彼の言葉をただ黙ってじっと見ていた。内にいろんなものはあるけどもどれも言葉にできなかった。

ただ、分かるのは自分があそこにいれば真逆な事を言っていた事だけはわかる

 

 

「シャア……彼の言う通りなのかもしれないな。結局、ジオンも地球の事なんてよく知らなかったのだ」

 

 

 

「ミネバ様、その感性を大事にしてください。

 そして、考え続けるのです。それがあなたを正しき指導者に導くでしょう」

 

 

 

■■■■■

 

 

 

『ティターンズ、聞いてくれ。ティターンズすべてがそうじゃない。自分なりの正義を持っているかもしれない。でも、その正義を導くものは野心に満ちたインテリで自分の都合のいいようにしか君たちをみていないし、君たちも自身の意思で行動していない。わかるだろ』

 

 

「そんな事、あるかよ! そんな……」

 

 

「ジェリド!! 本当にそうか! 誤って僕のかあさんを殺した時、自分で殺されようとしたろ! 僕はその時も言ったはずだ。ティターンズを憎むと!!」

 

 

 

「か、カミーユ……」

 

 

「本当に正しいと思っているのか、それしか道がないと思っているのか! 間違いだろ、そんなの! あの言葉が聞こえないのか! 偉ぶってるか! あの声は、泣いてる! アムロ・レイだって人間なんだ。そして、お前も! それを分かれよ!!」

 

 

 通信網を破壊しようとするティターンズと激しい空中戦を繰り広げる、ロンド・ベル。その中でライブレードはただ、戦艦の上で立ち尽くしていた。

 悪意を感じた。いや、違う。シンには感知能力はない。

 ニュータイプと同調もしていない。これはただの勘。

 流れるように、プラズマダイバーミサイルを装備して出てきた事すら。

 

 

「ヴェイガンの臭いだぁ……」

 

 

 悦!

 

 

 

■■■■■

 

 

 

『あの戦争の頃、僕らは戦うしかなかった。攻めてきたジオンに対してそれしか選択がなくて生き残るために子供の僕らは慣れもしない銃とMSと戦艦と、人殺しを続けた。そして、今も……殺す気でくる相手は同じ様に対処するしかない。でも、あのころと違って選べるはずだ! なぜ、僕ら今も……同じ人類同士で殺し合いを続けるんだ! ……うっ……うっ……』

 

 

 

「そうね、アムロ……皆、あの頃の痛みを隠しているだけなのよ。誰かに押し付けて。でも、それじゃあダメなのよね……」

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

『今、ティターンズは、このような時に戦闘を仕掛けてきている。僕らが、議会を武力で制圧したのも悪い。でも、それはこの放送のためだ。事実、この話の間に一度でも銃声が響いたか! いない! でもティターンズは、この議会に自分たちの味方となる議員がいるにもかかわらず、こうして襲ってきている。それを……もう、争いに憎しみ合うのはやめてくれ。こうして、僕たちはヴァースとだって手を取り合えた』

 

 

 街の中でカイ・シデンが一人残ってカメラを回した。

 ロンド・ベルと激しい戦闘を繰り広げるティターンズ。

 戦艦は議事堂を盾になるように浮かんでいる。

 

 

「いい絵が取れてるぜ、アムロ……そして、これが宇宙の悲しみを防ぐ傘。イージスか……」

 

 

 地球を覆い始めるバリアフィールドでカイは写真に収めた。

 

 

■■■■■

 

 

 

 

 通信機からアセイラム姫の演説が始まったのが聞こえる。

 ヴァース帝国の正式な和平を宣言し、それの立役者であるエゥーゴとアムロ・レイが指示と権力を得る。

 そういうシナリオなのだろうとシンは感じた。

 通信機を切る。俺はただ、待てばいいのだと集中した。

 戦場の空気は過敏だ。だからこそ、異物はわかりやすい。

 

 

「まだ劣等種と人間を見下ろしているのか、ヴェイガン。あの時、俺はフリットたちを通してお前を感じた……だから、俺はお前が見ている俺たちの姿が分かるぞ……」

 

 

 負念を追うのだ、それならライブレードに乗る俺はわかる。

 そうシンは思った。クロスゲートのコピーともいえるそれの発現は膨大な負念の流れを伴う。そこに撃てばいい。善良なヴェイガンとは戦場に出てこないヴェイガンである。戦場にいるヴェイガンは悪いので全て塵にする。

 絶対的な殺意が共鳴し、ライブレードの出力が上がっていく。

 そして、麻酔を忘れたザーツバルムは襲い来る恐怖におむつに失禁していた。

 

 

 

「しぃいいいいいいいいいいいはあああああああああああああああああ!!!」

 

 

 戦場を流れる死霊を追う。

 連邦に恨みをもつもの、ティターンズに恨みをもつもの。

 地縛霊、浮遊霊、シロッコはライブレードに吸い込んでエネルギーにしておく。多分、死んでもしぶといこいつは負念だけはぎ取ってクリーニングされるだろう、と心配はしていない。

 奪われたものは奪い返せない。でも、その報いを与えられきれなかったから苦しみと悲しみだけが残り続けている。来て欲しい、だが温存できれば便利な武器だ。来てほしくはない。

 だから、もしかしたら来ても我慢するべきかもしれない。

 

 

「!!」

 

 

 世界に穴が開いた、負念が世界に注ぎ込まれていく。

 場所は、議事堂の真上。つまり、直上。

 

 

 ミサイルを構える。巨大なそれを取りまわすのはライブレードの出力でも難しい。

 脚部の固定装置を起動し、下半身に力を入れた。

 チューリップが見えた。そして、開く……

 

 

 

「しねぇええええええええええええええ!!」

 

 

『兄さん、ダメ!』

 

 

 

「あ、今なんか見え。もう撃っちゃたよ」

 

 

 

『えっ?』

 

 

「まぁ、次は気を付けるわ。戦場に出てないヴェイガンはいいヴェイガンだからね……」

 

 

■■■■■

 

 

 

「連邦よ、私は、イゼルカントは! かえって……」

 

 

 カッ

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

50:学生兵

というわけで、俺はプラズマダイバーミサイルを撃ってしまい

 

51:名無しのハズレ転生者

ユリン止めに来たけど迷いなかったから早すぎて止められなくて草

 

52:名無しのハズレ転生者

ヴェイガンが最強のヴェイガンキラーを育てたのが悪い。

裏切者絶対許さないに育てたのもそうだし、

デシルが悪いよデシルがぁ~

 

 

53:名無しのハズレ転生者

第二次のヴェイガンの指導者

 

本命:ゼハード

対抗:キオ・アスノ(ここまででてないし)

大穴:デシル

 

 

54:名無しのハズレ転生者

まぁ、キオくんはラジコンで自我ないも同然だし

ゼハードだったら和解ワンちゃん……

 

 

55:名無しのハズレ転生者

でもキオだったらイッチも止まるだろ

 

 

56:学生兵

戦場に出てきたら悪いヴェイガンなんだから始末するに決まってるだろ!!!

馬鹿にしてるのか!!! 戦場に出てきたら誰の血縁とか関係ないよ!!

ヴェイガンなんだぞ!!! 殲滅だよ

 

 

57:名無しのハズレ転生者

やっぱデシルが悪いよ~デシルがぁ~





デシルが悪いよデシルがぁ~

ちゃんと誤字脱字修正します


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幕間 インターミッション13 『兄と弟』

 

 

100:学生兵

というわけで我慢しきれずヴェイガン殲滅に

プラズマダイバーミサイルを使ってしまったので最終強化フェイズにいきます

 

101:名無しのハズレ転生者

ヴェイガンを殲滅してしまったので

 

102:名無しのハズレ転生者

そんな間違えて落としたみたいな軽いワードですか?

 

103:学生兵

そういえば、エースになりました

 

104:名無しのハズレ転生者

あっ

 

105:名無しのハズレ転生者

撃墜数一発で中々、ですねぇ……

 

106:名無しのハズレ転生者

小型ジェネシスみたいなミサイルを作った

フリット・アスノ、有能

 

107:名無しのハズレ転生者

息子……

 

108:名無しのハズレ転生者

ま、孫はまだいい所あったから……確か(あいまいな記憶)

 

109:名無しのハズレ転生者

とりますぺよろ

 

110:学生兵

うぃ

 

 

ライブレード・B

 

武器

 

・ゼイフォニック・ブラドラー  射程:結構遠距離

・ブラン・ダイガード(剣ビーム) 射程:気合い入れても中距離

・暗黒霊剣ダイフォゾン      射程:投げても近距離

・ドリル(膝の奴)        射程:近距離

・ロケットパンチみたいな奴    射程:中距離

・ヘル・アンド・ヘブンとかいう技(うまくあてられない) 射程:近距離

 

特性

・バーストプラーナ

 高ぶった感情のまま生命力を機体に注ぐ。

 機体はとても強くなる。操縦者はとてもやばくなる。

 というか、下手すりゃ死ぬ

 

・プロテクトシェード(バリア)

 

装着強化パーツ

 

・プラーナコンバータ

 

効果:運動性+25、照準値+15 パイロット能力値の上昇アップ

 

 

・ザーツバル・おむつ

 

 

効果:負念のバックファイアを2割削減する

   最近、途中で起きてしまう。ハゲてきた

 

 

 

 

111:名無しのハズレ転生者

己の失敗で尊厳を奪われた男、ザーツバルム。

 

112:学生兵

ちなみに流石に決戦にザーツバルムはつけていかないので

まぁー……強化パーツっていうのかなぁ。複座になんか置いていいとして

なんかつけられるのあと3個ぐらい

 

113:名無しのハズレ転生者

つけていかないので

 

114:名無しのハズレ転生者

ナチュラル人権無視

 

115:名無しのハズレ転生者

強化パーツだぞ!!

 

116:名無しのハズレ転生者

で、何があんの?

 

117:学生兵

いいものはロンド・ベルに残しておきたいな。あとエネルギー系は意味ないだろうし

……って所だな。

 

118:名無しのハズレ転生者

 

超合金Z

HP+1200、装甲+250、EN回復10%

超合金ニューZ

HP+1700、装甲+350、EN回復10%

 

 

高性能スラスター

運動性+25。

アポジモーター

運動性+5 移動力+1

 

バイオ・コンピュータ

運動性+20、命中率+20%。

 

リニアシート

 射程+1、命中率+20%。

 

高性能照準器

命中率+30%、

 

119:名無しのハズレ転生者

精神ポイントつかわんと攻撃当たらんし、命中じゃね

 

120:名無しのハズレ転生者

俺は超合金とあぽじもーたかなぁ……

高速移動形態はともかく人型って大体移動力落ちるし

 

121:名無しのハズレ転生者

バランス配分

 

122:名無しのハズレ転生者

でも、それだと中途半端になるよな。帰ってこれるかわからん

 

123:名無しのハズレ転生者

イッチはどう思う?

 

124:学生兵

俺は装甲強化とアポジモータかな

でも俺の戦術の成績よくはなかったから正しくない

 

125:名無しのハズレ転生者

んじゃ、イッチの逆張りしていくか

 

 

■■■■■

 

 

 

「兄さん、ユリンに会ったよ。久しぶりだった……あっけにとられてたけど」

 

 

 格納庫で整備を手伝ってもらっているときに、フリットがためらいがちに口を開いた。

 

 

「いや、まぁ……撃っちゃったからね」

 

 

「それについては一言モノ申したい」

 

 

「でも後悔はないぞ。あの時、デシルに最初に違和感を感じたのは俺だった。デシルを止められたのも俺だった。子供だから撃たなかった。だから、もう迷わないって決めた」

 

 

 ただの子供ではない、子供にしては違和感がある。

 能力ではなく、その精神性に違和感を感じた。

 地球でも、コロニーでもなく。むしろそれを恨むかのような。

 だが、その時は何も知らなかったし自分の能力に自信がなかった。何より子供だったから

 その結果、自分は此処にいる。

 

 

 

「……ユリンちゃんは、なんだって?」

 

 

「もう、自分を許せと。ヴェイガンはラウンダー能力者が多い。だからゲートが開いた瞬間に能力が共鳴で強くなって、やっと会えた。ほんの少しだったけど」

 

 

「満足したか? もう、歩いて行けるか?」

 

 

「……あぁ、やっと」

 

 

「そうか」

 

 

 心残りはない。いや、迷いはなくなったという顔だった。

 シンはならもう、大丈夫だなと思った。

 彼はこれからくる多くの人を導く一人になるだろうと。

 

 

「フリット、これを載せてくれ」

 

 

「高性能スラスター、バイオ・コンピュータ、リニアシート……分かったよ。

 兄さん、スタスターはどこに増設する?翼にはつけられないが」

 

 

「腰のあたりで頼めるか。GSライドのエネルギー供給ラインがあるからそこから」

 

 変化した時の画像を見せながら、説明する。

 あの形態を使いこなさせなければ勝利はないができるかは不明である。

 

 

「本当は武装をつけられればいいんだが汎用的なライフルぐらいじゃ、

 俺の最後の敵は倒せないと思う。だから、もうフレームから見直さないと無理だな」

 

 

 その時間はなさそうだが、と呟いて端末の電源を落とした。

 そして、それをフリットに手渡す。

 

「写真とか動画とか、個人的なものを移した。おっと、エッチなものはないぜ?」

 

 それは残念だな、と笑顔を浮かべながらそれを受け取る。

 

 

「ジャイアントロボの援軍に何体かが出撃した。たぶん、もうすぐだと思う」

 

 

「電子兵装のスペシャリストが近くにいる。2分が限度だ」

 

 

「十分だ……フリット」

 

 

「なんだい?」

 

 

「ザ・ガンダム……いや、νガンダムが時空を超えた事には意味がある。

 既存の技術を越えなければ倒せない敵がいるって事だ。そして、それは……」

 

「サイコフレーム、人の心の光。だね?」

 

 

「開発をするんだ。必要な因子はここにある……」

 

 

「……あぁ、分かったよ」

 

 

 1時間後、作業の完了を待っていたかの様にシンの胸の中で通信機が震えた。

 静かにピルケースを手に取ると錠剤をのみ込んだ。

 そして、向かい合った二人は互いに頷いて逆の方向に向かった。

 

 

 





あと1話。間に合えば今日。

無理なら明日。いや、すいません。

いろいろ整理しながら進めてるので
今ぐらいの時間(20時)には間に合わせる予定だったんですが無理でした。


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シン

 

「大作、覚えておくといい。

 正義の在り方とは悪に対してのみ存在するのではない。

 それならば、我ら悪人は全て、世界を滅ぼす事になる」

 

 

「違うのですか!」

 

 

 ジャイアントロボの破壊された頭部に、配線を収めて自分を必死に固定する大作。

 

 

「違う! わしは、十傑集は! その願い、一つ! そうであろう、孔明!」

 

 

「無論ですとも」

 

 

 大怪球の中から出てきた孔明が、ジャイアントロボの肩の衝撃のアルベルトの隣に並んだ。それに続くように続々と十傑集集合する。

 

 

「世界の運命はお前という小僧と、その球ごとにきに左右されていいものではないぞ! ゆくぞぉ、皆!」

 

 

「われら!」

 

 

「十傑集が集まれば!」

 

 

「「「「「「「「「「大怪球の一つや二つ」」」」」」」」」」

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

 遮熱用フィルムを投げ捨て、空で機体を翻した。

 直上で宇宙に広がる線と線が繋がり、イージスが形成されていく。

 グラン・ガラン隊、ラー・カイラム隊、ゴラオン隊が戦闘中なのは調べがついている。マクロスとナデシコは宇宙。これで邪魔されることはない。

 彼らはこれからに必要な戦力だ。

 実際の所、協力は欲しかった。だが万全であるナデシコは企業所属で民間人同然だし、それに続くマクロスは民間人をいまだにおろせないでいる。

 バルキリーで荷が勝ちすぎているし、そうなるとやはり単独で動くしかない。

 だが、気持ちは楽だなとシンは思った。自分は前座。あの超人軍団の到着までまてばいい。

 

 機体に一人だけなのは久しぶりだ。

 ライブレードとのつながりを強く感じる。

 喜んでいるような、悲しんでいるような。不思議な感覚だった。

 

 

 座標は受け取っている。GRシリーズと共に進行した量産型グレートとドラゴンによって、バベルの塔の防衛を突破したバベル2世が念を感じる。

 地球最強の最強の念動者の2人のうち1人と聞いていたが、うなずける。

 情報だけとはいえ、地球の裏からこうもはっきりと念を飛ばせるのだ。

 

 変形した機体がぐんぐんと飛んでいく。

 目標は徐々に海上から浮上し始めていた。

 海中で昨日の完全復帰を待っていたが見つかった事で先んじて攻撃を開始しようとしているのかもしれない。一気に速度をあげて突入し、ぎこちなく変形する。

 

 着地するとすぐに巨大な建造物が目に入る。

 

 

「バベルの塔!? 教科書で見たことある!

 バラルの塔なのか? あれを複製したのがバベルの塔だとして、これが巨大な念の増幅装置のパーツなのか!」

 

 

 突如、塔から放たれる砲撃が宇宙を攻撃する。

 だが、星を覆う様に展開されたイージスシールドがそれを遮蔽する。

 

 

 意を決する。目覚めた。ならば、戦うしかない。

 

 

「無駄だ、ガンエデン! 今、宇宙は人は、部分的にだが心をつなげ始めた。彼らは今、地球ではなく心をつなげた一つの種族になる。それでも、排除するのか!」

 

 返答は言葉でなく、実力であった。

 サメ、鳥、豹をもしたロボットが続々と出現する。

 そして、それを称えるかのように大きな翼を複数持つ巨大なロボットが舞い降りる。最古にして最強のサイコドライバー用決戦兵器、ガンエデン。

 

 

 

(なんて、プレッシャーだ……だが、これは同時に俺にとってのチャンスでもある!」

 

 シンの同調能力は相手の能力を写しとる。多少劣化するとしても、最強のサイコドライバーが相手ならば、格が落ちたところで領域自体は変わらない。

 たとえ、自身の自壊が早まるとしても。

 

 

「うおおおおおおおお! いくぞぉ、ガンエデン!」

 

 

 生き残る道がここにしかないのなら、やることは決まっているのだ。

 

 

■■■■■

 

 

 

 

「フリット艦長、なぜ我らの妨害をしたのかね?

 彼を一人で行かせる必要はなかっただろう」

 

 

 グローバル艦長が拘束されたフリットにそう声をかけた。

 

 

「今、この世界にはどれだけの潜在的な敵がいるだろうか」

 

 

「何?」

 

 

「分かるだけでもまだ宇宙にはザ・データベス。エアロゲイター。まだみぬ連合を結んでいる異星人もいるかもしれない。

 ミケーネの様な地下勢力はまだいるだろうし、ハイパーゲートの爆発で破壊され斬らなかった月も妙だ。もしかすれば別の勢力がいるかもしれない……」

 

 

 フリット・アスノの言葉にグローバル艦長がむぅと、唸った。

 

 

「それが理由だ。ロンド・ベルを失わせるわけにはいかない。

 危ういバランスの天秤は今、かろうじて均衡しているだけ。だからこそ、兄さんは行った。かつてなせなかった事を成すために」

 

 

「成すこととは?」

 

 

 アセイラム姫が口を開く。

 

 

「自分の大事なものを護る。そのためだ……だから、一つだけ頼めるかね。兄さんが勝利するためにあと一つだけ、マクロスから送ってほしい」

 

 

■■■■■

 

 

 

 

「おおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 回転する拳を放ち、それが襲い掛かってくる多数のロボ。

 ガンエデンの眷属、クストースを打ち抜いた。

 

 人間工学的設計を全身の各部分に施されているガオガイガー。

 そのパーツは同じく、人型として設計されたライブレードと相性がよかった。これは、ライブレードが大型化された事により等身が限りなく近づいたという理由もある。『ステルスガオー』のエンジン部でもあるその腕部は小型のGSライドを備え付けられている。故に、エネルギーに於いては無尽蔵であり回転と共にブロークンエネルギーの発生により十分な破壊力を持つ。

 また、ゾンダーロボのバリアシステムをも強引に破壊し、プラズマを封じ込める磁場形成することでバリアフィールドを阻害する効果は念動バリアに対しても有効であった。

 

 バリアを阻害され、海のクストース。サメ型のケレンは空間潜行により離脱しようとするも、それを限りなく薄くバリアとしてではなく空間を阻害するそれとして広げたプロテクトシェードにより阻害し膝のドリルーで砕いて破壊した。

 そして、それを土台にして飛び上がりはぎ取った頭部を近くの同型のケレンに投擲し、地面に叩き落とす。

 

 着地の隙を狙って空のクストース。ワシのカナフが5体の群で接近する。

 翼を銃口として向けて、チャージの終わっていたゼイフォニック・ブラドラーでそれを打ち抜く。推力か武装かのどちらかしか使えない武器であり、使い勝手は悪いが威力は通常時のライブレードの中で最高である。

 

 陸のクストース、ザナブが背後からとびかかる。

 ライブレードは腰部の増設スラスターで機体を回転させると、大剣でそれを横なぎに払って破壊した。

 

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 

 ビシィ……と心に皹がはいるかのような感覚を感じる。

 ピルケースを取り出しそれをそのままに口に入れてかみ砕き、ケースの破片だけを吐き出した。少し口は切れたが問題はない。

 もたもたと薬を取り出す時間を使うよりマシだ。

 

 

 シンはあと何体残っているかは考えない事にした。

 むしろ、鎮座し動かないガンエデンを不気味に感じる。

 彼、いや、彼女の能力に同調しその先読みを拝借しているがいまだに感情がうかがい知れない。ただ、何かを観察するかのように感じる。

 

 

「何、図ってやがる……」

 

 

「剣として、使えるかどうか……」

 

 

「剣とはなんだ!」

 

 

「地球の守護者だ……」

 

 

「地球だけの守護者だろ、気に食わねぇーーーー!」

 

 

 左右から押し寄せるザナブに向けて、ドリルニーを放ち破壊する。

 脚部パーツを外し一時的に外し、腕部で振り回して攻撃したのだ。

 翼の推力だけで浮き上がった形になったライブレードに空間跳躍でケレンが襲い掛かる。脚部を地面に投げ捨て、剣を投擲する。そこにぶつかり両断したケレンが剣を巻き込んで爆発した。

 精神ポイントはすでに100を切った。

 十数分の半全力戦闘だけでここまで息切れに近づくライブレードは世界一燃費の悪いマシンだと、シンは内心毒づいた。

 半と、つけたのは前回の強化形態を使っていないから。

 おそらく、あれは一度切り。たった一度の機会。

 そして、それを使えるのは……

 

 

「今じゃない!」

 

 

 走ってきたザナブを投げ捨てた時に、ドリルガオーとして

 地面にドリルで潜っていた脚部が地面の下から破壊する。

 変形させ、足を再び装着し後ろに飛び下がる。

 

(まだか……まだか!)

 

 

 十傑集の到着を待っている。これだけ待っても到着しない。

 しかし、視界をあげて嫌な事に気づいた。

 

 

(到着は……していたか!)

 

 

 到着はしている。しかしバラルの園を覆うフィールドを破れないでいる。

 ライブレードはガンエデンに品定めされているために通れたのかもしれない。

 

 

「く、くそが……!」

 

 

 一か八か、死霊憑依を使うしかないか。

 その時だった、空のかなたより回転する何かがフィールドを突き抜けてバラルの園に突き刺さった。

 

 

「……プライヤーズ!!」

 

 

 プライヤーズに張り付くようにして

 十結集がバラルの園に侵入した。外円ギリギリだがすぐに合流するだろう。

 

 

「よぉし!!!」

 

 

 全ての力を機体に注ぎ込み、決戦の時は来た。

 死霊憑依により機体のカラーリングが変化した。

 

 

(この、一撃でいい。俺は所詮前座。だから……すべてをかけろ!)

 

 

 

「ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ……ふぅん!」

 

 

 攻撃エネルギーと防御エネルギーを融合した膨大な融合エネルギーを叩きこむその必殺技はガオガイガーだからこそできる技でもある。

 緑の星のテクノロジーを部分的にしか使いきれないライブレードにできることは……”融合エネルギーを機体内部で解放する”自爆である。故に

 

 

「ヘル・アンド・ヘル!! おおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 全てのエネルギーを突進力にかえて突撃する。

 ガンエデンの僕、クストースがとびかかって来るがその端から破壊された。

 余波により機体の各部が傷ついていくが、関係ない。

 その先で、ガンエデンが王座で待ち構える頂点者として静座し、フィールドを展開した。

 

 

 

「させるかぁ!!」

 

 

 十傑集のエネルギーを終結させた衝撃のアルベルトの攻撃がフィールドを相殺する。そのエネルギーはライブレードをはるかに凌駕するがガンエデンという存在が相手であればそこまでが限界だった。だが、それでいい。

 融合エネルギーを両腕に宿したライブレードが突撃する。

 そして、突き入れた腕の融合エネルギーを解放する。

 

 

「精神コマンドにすれば自爆、って所か……自爆に始まり自爆に終わる。いいね、悪くない……!!」

 

 

 

 心に広がる皹を感じた。それがもうすぐ自分の意識全てを飲み込むことも。

 後悔は、何一つない。

 

 

 

「……何一つないわけ、ないか」

 

 

 ライブレードが吹き飛んだ。

 両腕、両足、頭部に原型はない。爆発から残った上半身と腰部は原型をたもったが、その衝撃が内部までが無事かは不明だった。

 

 

 しかし、そこまでしてもガンエデンは撃墜されていない。

 フィールドの完全消失と一時的な行動不能にとどまっている。

 だが、それもすぐに修復が追いつくであろう。だが……十分だった。

 ガンエデンの前に少年が舞い降りた。

 

 

 

『ナシム、もういいんだ』

 

 

『バビル……』

 

 

『皆、すまない……この日が来ないことを願ってもいた』

 

 

 

「滅相もございません。我ら、視点は違えど忠義。一片の曇りなく」

 

 

「「「「「「「「「「すべては、ビッグ・ファイア様へ」」」」」」」」」」

 

 

 十傑集がバビル2世に吸い込まれていく。

 

 

『新たな地球の、いや、宇宙の守護者たちよ……わずかだが、君たちの時間は僕が稼ぐ……』

 

 

 ガンエデンより抜き取られた意思が少女の姿となり、どこかへと消えていった。

 そして、バビル2世の意識と一つとなり、ここに地球圏の守護者。

 バビル・ガンエデンが誕生した。こうして、一人の少年はひっそりと舞台から降りたのであった……。

 

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

 それから、いくつかの戦いを超えて人類はひとまずの平和を取り戻した。

 宇宙怪獣撃退の為のエクセリオン自爆、それに伴うイージスシールドの強化。

 コロニーをその範囲内に移動する計画。

 ジオン残党と共に消えた、一部のヴァース貴族。

 沈黙を保つザ・データベース。様々な問題は残ったが……

 それでも、人々は平和を手に入れた。

 

 アムロ議員の誕生を始めとした、様々な歴史の変化はどういう歴史を紡いでいくのか。その答えは、サイコ・フレームしか知らないのかもしれない。

 だが、決して楽な道ではない。いや、本来の歴史より過酷な道だろう。

 それでも、人類はなんとか生き延びた。まだ、生きているのだ……。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

「見てください、はがきが届きました。街に多くの人が戻ってきたそうですよ。相良さんも学校が再開したと、喜んでいるそうです……帰りたいですか?」

 

 

 ヴァース帝国、その片隅で車いすを押していたのはエデルリッゾ。

 そのことばに車いすに乗った少年は答えるわけでもなく、反応すらない。

 ただ、暗い瞳が遠い場所を見つめている。

 

 

 

「そうですね、やるべき事は……終わったのですから、もうあなたは戦うべきではないのでしょう」

 

 

 助けてと、声をかければ目覚めるかもしれない。だが、それはあまりにも残酷なことだと彼女は思った。だから、このままにしておくべきだ。

 幸せではないかもしれない、だが苦しみもしない。なら、このままでいいのだ。

 

 

 その時、扉が開いた。

 白いドレスではなく、白と黒のツートンからのドレスを身にまとった少女はアセイラム姫だ。

 彼女は、抱えていた毛布を車いすの少年の膝にかける。

 

 

「帰りは……私が押してよろしいでしょうか?」

 

 

「姫様……いえ、王女様。もちろんです。彼も喜ぶと思います」

 

 

「さぁ、それはどうでしょう……でもそうだったらいいのですが」

 

 

 少年は答えない、砕けた心と魂はまだそこにあるのか。

 少なくとも、この1年。なんの変化もなかった。回復の兆しすらも。

 ただ、息をして吐き出す。単純な声掛けに従う、機械の様に。それだけだ。

 

 

「おやすみなさい、シンさん……」

 

 

 

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

999:学生兵

 

.$E#$'H

 

 

 

 

 

1000:システム

バッドエンドまであとライブレード1回撃墜だにょ~☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





それは平和の立役者でもないが黒子の様であり
しかし、自分の舞台の上で主役であった

世界の歩みを進めるものであるが、
自身は過去に囚われた囚人であった。

同時に心壊れて解放されてもなお、
世界を案じる優しきものでもあった、って感じです、かねぇ……


読者さん、貴方たちのおかげで私はまた楽しさを見つけられた。
本当にありがとうございます


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それは使命ではなく
ヴァース強襲


他の書きながらたまにやると思います

リハビリ強硬進軍は終わったのでそんなペースは速くないと思います


 

 国際警察機構とほぼ相打ちになる形になった十傑集。

 バラルへ瀕死のまま駆けつけた彼らの命と力を得て

 一時的に復活し、地球の新たな守護者となったビッグファイアことバビル2世。

 しかし十傑集の力を取り込んでも全盛期の彼の力を取り戻すことは難しく、

 むしろ、もともと少ない寿命をさらに大きく寿命を削いでしまう。

 念動の波によって地球の転移こそ、阻害されているが将来的にはどうなるか分からない。

 人類は地球や火星に残されたプロトカルチャーの技術の分析を進めていく事を決めた。

 

 

 

 そして、バルマー戦役終戦、2週間後。

 突如地球に飛来した金属生命体、仮称はエイリアン(後に正式採用)

 黄色い巨大な巨人が復興を始めていた街を破壊しながら進む事態が発生。

 地球到達後の動きを観測し、巡礼ポイントと呼ばれている場所を目指す習性であり、

 その直上あるものを街であろうと破壊しながら進行するという性質以外は不明であった。

 

 使徒の例を考え、巡礼ポイント到着=世界の破滅と結論づけ、

 地球連邦は残戦力とアクシズの軍隊の一部を再編し、

 対エイリアン特殊部隊「フューネラル」を組織。

 同時に、アナハイムによって対エイリアン用可変兵器。

 ザルク (SARG)を製造し、対抗を始めた。

 

 多数の特性を持つ様に進化したプログレッシブ・エイリアンに苦戦しながらも、

 フューネラルとエイリアン実験複合体フランクの活躍によりその戦いは一応の決着を迎える。

 しかし、人としての意識を取り戻したフランクが語った、

 地球を狙うであろう宇宙の無数の星間連合の存在。

 何より、彼に力を与えた彼を無数に複製し分割してエイリアンへと変えた正体不明の力。

 

 

「Oath Over Omega は物質世界に終焉を求める」

 

 

 彼の言葉により、地球連邦はさらなる戦力強化を強いられた。

 生産力に秀でたカタクラフトへ改良した人造エイリアンモーターを組み込むことで、

 MSに引けを取らない戦闘力を発揮するようになった新造カタクラフト『アステリオス』

 それに呼応するように加速度的に進んでいくMS開発と

 表舞台にまで台頭を始めるAS(アームスレイブ゙)

 世界はどこへ進むのか……

 

 

 数か月後、バルマー戦役で疲弊した地球連邦高官の一部は、南極でひそかに星間連合。

 地球呼称『ゲスト』に地球を売り渡そうという計画を立てる。

 それ自体はシュウ・シラカワにより防がれるもこの一見で、

 彼は敵対者と判断され、この出来事は『グランゾンの反乱』として重大事件となった。

 

 バルマー戦役より1年。

 ロンド・ベル隊の特機のオーバーホールが終わりが見えてきた頃、

 ティターンズがその牙を剥く……

 

 バルマー戦役の最終作戦時、超重力崩壊によって発生した衝撃波。

 それは半年後に地球圏へ到達しその影響はガンエデンの庇護下にある地球は無事でも

 スペースコロニーの大半を損壊させることを予測させた。

 

 

 イージスの配備が急がれたがその情報はバルマー戦役後、

 地球連邦軍を掌握し、SDFやロンド・ベル隊を解体した

 ティターンズによって隠され、多くの人々は真相を知らされていなかった。

 かつての特機の回収を始める彼らの元に突如加入したフリット・アスノの孫。

 キオ・アスノの加入と共に動き出すAGEシステムと

 それによって力を増していくティターンズ。半サイコフレームユニット、

 AGE-FXと量産機オルタエイジに追いつめられるかつての英雄たちは追い詰められていく。

 世界は混乱の中に今、戻ろうとしていた……。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

『JAPANESE AREA』

 Gアイランドシティ

 

「博士、これが……」

 

「うむ、今完成した。地球と火星。そして、緑の星の技術によってよみがえった。

 新たなる翼。ネオ・ライブレードという所じゃのう……感慨深い」

 

 大河幸太郎の言葉に獅子王麗雄は苦労を思い出しながら、答えた。

 

 

「コックピット以外は全損。彼の命を守ったと思われるサブ動力は破損。

 事前にとってあった機体データとラ・ギアスと火星の助力で完成こそしたが

 動くかどうかはわからん。これを動かせるのは彼だけじゃろうからなぁ……」

 

 その当人は地上最強のサイコドライバーの片割れの念に同調するという無茶が後押しし、

 精神が破壊されきっており、今だその心は目覚めない。故にテストなどはできなかった。

 

「フリット・アスノ艦長が回収していたBSD……本来の精神的ケアシステムとして

 修理されたものによって回復の兆しは見せているそうですが、それも単純な行動のみだと」

 

「食事をするように、排泄するように、眠るように。

 指示には従うようにはなったがそこに意思がないとの事じゃったな」

 

「えぇ、彼の心自体はまだ帰る場所を見つけられず、彷徨っているのでしょう

 だからこそ、きっと彼には力が必要だ。彼を壊すのではなく、ともに戦ってくれる。

 今度こそどこにでも飛んでいける翼が……」

 

 獅子王麗雄は彼のその言葉にうなずく。

 

「この機体なら、それを成してくれる筈じゃ……

 彼のおかげでハイパーツールやガオガイガーの完成度は飛躍的に高まった。

 少しでも恩を返せるといいのじゃがな……しかし、それにはまず目覚めてくれねば」

 

 シュウ・シラカワに提供されたリチュオルコンバーターによって

 エネルギー効率と危険度は下がった筈だと予測されるが起動しない限り、

 テストはできず仮定の領域だ。最も、危険度というならプラーナコンバータと

 2人の操者の精神リンクこれにより能力を上げる謎の機能の撤去が最重要だが、

 これは行われなかった。

 

 理由はライブレード操縦方法である感覚的操作。これが現状では

 プラーナコンバータありきの操作方法であったからだ。

 なので現在はプラーナコンバータへの出力を最低限にするために。

 兵装、推力、機体の機動。これらを通常時に3つの副動力がそれぞれ、

 1台ずつ担っている事になる。そして、理論値ではあるが3つの副動力。

 GSライド、リチュオルコンバーター。そして、アルドノアドライブ。

 理論上はこれらで機体の戦闘力を十全に確保できる。

 

(しかし、ライブレードの本来の副動力炉。

 リチュオルコンバーターより精度は低いが……別の役目があったのかもしれんな。

 事実、ライブレードの意思ともいえるものはこのパーツじゃった……

 だからこそ、一応はその核ともいえる謎のパーツは別の形ではあるが組み込んだ)

 

 

 獅子王麗雄はネオ・ライブレードを見上げた。

 脚や腕部はガオガイガーに近い。しかし、脚部はドリルは外され大型化している

 背中には翼と共に折りたたまれ砲台が1対。

 要所要所が改善されているようにみえるが、最も目立つのはカラーリングだ。

 黒をメインにしていた機体は今は真っ赤な色に染まっている。

 

 

「博士、ところでこのカラーリングは?」

 

「副動力の心臓部ともいうべきものを補助パイロットシステムに組み込んだのじゃ。

 シンくんの話が事実ならば意思がある。ならば使えると思ってな。すると……」

 

「機体が変色したと……血が通った、という事ですかな」

 

 

「本人が見たらまた悪役みたいなカラーだとヘコみそうじゃがな。

 だが、火星の人たちは喜ぶじゃろうな。彼らのパーソナルカラーは赤色だしのう

 しかし、いろんなものが協力してくれた。この機体はまさに人の力の結晶じゃ」

 

 その言葉に反応し、誇るように翼に刻印されたGGGのマークが輝いた。

 

 

「長官! 父さん! ティターンズがこちらに接近している!」

 

 そう駆け込んできたのは金色のボディ、サイボーグ凱。

 

「うむ、オービットベースに避難するとしよう。

 ディビジョン艦こそ正式な稼働はまだだがここの人員の収容場所はある。避難は」

 

 

「あとは2人だけだ。だから俺が来たんだ。少し手荒な運び方になるが……」

 

 

「やれやれ、老骨に響くのう。まぁ、ギャレオンもハイパーツールもすでに隠した。

 ここにあるのはせいぜい、こいつぐらいじゃ……そして、これも打ち上げる」

 

 ボタンを叩くバン!という音と共にネオ・ライブレードがシャトルに格納されていく。

 

「フォールドブースターを装着してある。無事には届くと思うが

 それまでに火星にまで火種が広がっていなければいいのじゃが……」

 

 

「えぇ……(しかし、ティターンズが地球を掌握するのは早すぎた……

 1年前、バビル2世。彼の思念波で目覚めた超能力者たちによる事件も多かったが

 傘下にでも組み込んだのか。AGEシステムだけが今の事態を引き寄せたとはとても)」

 

「長官!」

 

「あぁ、すまない。行こう」

 

 

 宇宙に向かって飛び立つシャトルを見て、

 大河幸太郎はせめて宇宙と地球の絆が立たれぬようにと祈った。

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「ヴァース帝国、王女。アセイラム・ヴァース・アリューシアに告ぐ。

 こちらはティターンズのキオ・アスノ大尉! 地球との条約の下に

 ただちに武装を解除し、アルドノアドライブおよびその起動権

 を明け渡し、ティターンズの指揮かに入ることを望みます!」

 

 

「それは連邦にすべてを明け渡せという事ですか……

 あなたたちはまた、戦争がしたい。あるいは火星を奴隷にしたいという事ですね?」

 

 

「そういう意味ではありません。でも衝撃波が迫っている今

 コロニーの為にティターンズは動いています! イージスシールドを必要なんです!」

 

 

「ならば!! お互いに争いの歴史があるからこそ対話をする時なのではありませんか!?

 なぜ今、再びこの様にに攻めてきたのです! 悲しみと苦しみ。多くの血の果てに

 私たちは人類という大きな輪を作ろうとしたはずです!! その理由を述べなさい!

 武器を突き付け、奪おうとする。それは過ち。そう、過去の我らとあなた達と同じです!」 

 

 

「だからこそです! 今こそ人類の力を結集し、敵の襲来に備えなければいけないんです。

 そして、それは人類の代表者としての連邦でありティターンズであるべきです!」

 

 

「……人類の代表、ですか」

 

 

「わかってくれましたか!」

 

 

「……えぇ、分かりました」

 

 奥歯を噛み締め、怒りを内に抑えつけた。

 アセイラムは許せなかった。その傲慢さが。彼女の知るロンド・ベルは

 誰も、自分を代表だなんて考えなかった。皆、力あるものの使命を果たそうとした。

 戦いの先にある平和とたくさんの笑顔を信じていた。

 その強さの源泉は奪ってしまった命と、救えなかった命。

 一人一人が苦悩しながらもそれを背負い、前を向いていたからだ。

 目の前の少年はもしかしたら、何かを吹きこまれ騙されたのだろう。

 それでも……彼女は赦す事はできない。

 

 

「これより、ティーンズを敵対勢力と認定します。

 火星の市民ブロックを地下へ格納開始しなさい。火星騎士は?」

 

 

「ティターンズにより足止めを食らっています!」

 

 

「ならば、ギリギリまで基地設備での迎撃の後に出撃。

 先行投入と段階的投入は悪手です。ミサイルや砲台の半分まで使用。

 その後、残存兵力を一斉投入!火星騎士が戻ってくるまで時間を稼ぎます」

 

「了解しました、陛下。プリペンターへの救援連絡も送りました」

 

「どうして、無駄な犠牲を出すんですか!」

 

 

「家畜になれと言われて従う人間は居ません。

 私は……私たちは人間です! 通信終了!」

 

 ティータンズが進軍を始める。

 彼らの台頭と横暴を聞き、すぐに軌道騎士を一部を火星騎士として再配備し

 構築した防衛網が突破された所からして、その情報に間違いはないと確信した。

 ならば、この戦いの勝敗は

 プリペンターの到着と火星騎士が足止めを抜けて戻れるかの2点に集約される。

 

 

「アセイラム王女様、よろしいのですか? 対話もそうですが

 条項に地球連邦の部隊に攻撃を仕掛けた場合、すべての権利を破棄すると」

 

 

「彼らはいわば、地球を不法占拠しているものです。

 そんなものたちに対話の意思はありません。私たちが和平を結んだのは?」

 

 

「それは、地球……」

 

 

「いえ、アクシズを仲立ちとして”エゥーゴ”と和平を結んだのです。

 つまり、私たちが地球の同志と認めているのはエゥーゴでありロンド・ベル」

 

 

「……そうか、という事はそもそも適応しない。

 民意も世論も味方につけることができない、という事ですね」

 

 

「その通りです。準備が進んでいる地球安全評議会が今、確立されたとしても

 我らを一方的に弾劾することは不可能……ならば、この場は戦うしかないのです」

 

 対話を捨てた訳ではない。ただ、それには両者がテーブルにつかねばならない。

 一方的な蹂躙の果ての降伏は対話ではない。

 何より、今の彼には聞く耳がない。何をされたのはか分からないがその事は確か。

 

 

「……すいません、こんな時に私信などもってのほかなのは理解していますが、

 エルデリッゾに連絡を。彼を此処に連れてくるように伝えてください……」

 

 

 だが、最悪の事態を考えねばならない。

 自分の極めて個人的な憂いを取り除くために彼女はそう告げた。

 安全な場所とは後方だ。それは、まさしく此処であろう。

 だが、死ぬならば共にありたいという思いもまた、確かにあった。

 

 

「!? 王女様、デフォールド反応です! 直上!!」

 

 

「この状況でまだ、敵が……!」

 

 

「いえ……シャトル1機! 次元バリア境界ギリギリに直陸します。これは……」

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 真っ白な部屋の中にいた。机と椅子だけの簡易な空間で2人向かい合う。

 目の前は神を名乗る男。自分がそう自己紹介してきた気がする。

 といっても、目元の黒い隈が死神だろうな。と感じさせる。

 

 

「じゃあ、まず死んだ時の年齢を教えてくれるかな」

 

「24歳です」

 

「24歳?もう働いてるの、じゃあ?」

 

「学生です」

 

「学生?あっ……(察し)ふーん」

 

 

 何か気まずい事を言ったという顔をした神。

 

 

「……いや、お前!! 神様なら!!

 俺が高卒で仕事してそのあと、通信で大学入りなおしたの知ってるだろ!」

 

 

「今ならこのシチュエーションできるかなって、思って。

 それで、残念だったねぇ。ところで個人的な提案があって……の前に神を信じて貰おうか」

 

 

(ん……いや、この●ム●ェイとか宗教の勧誘みたいなやりとり覚えがあるな)

 

 

 ふと、既視感を感じた。その時、この状態の異常がはっきりと見えてくる。

 

 

「君は高卒で働きだしても学歴コンプレックスがぬぐえず、

 ふと見かけた通信大学に必死に飛び込んでみたものの私生活をギリギリまで詰めても…」

 

「あー、やめましょう、やめましょう! 無能を突き詰めるのやめましょう!」

 

 

「会社勤めからアルバイトに変えても

 なお、授業に遅れそうになるレベルで座布団に顔を押し付けて情けなく泣いてたね」

 

「ヒュォ……(言葉にならず息だけ吐く音)」

 

 

(なーる。あの頃の景色をずーと再生してたんだな。

 つうことは俺はまた死んだか精神でも崩壊してたか……まぁ、ええか)

 

 

「信じたようだね。で君にして欲しい事は、転生後。世界の難易度にブレーキをかける事。

 くじ引きでいえばハズレの仕事だし失敗の確率の方が高い。でも行けば次を優遇するよ」

 

「抽象的だなぁ……ブレーキって?」

 

「あぁ!」

 

「おい!」

 

「ははっ、次の人生の優遇は金持ちとはいえないけど普通の人生はあるよ。

 ちなみに抽象的なのはそれが具体的になんなのかはその先でしかは分からないから」

 

(そうだな、そしてそれは多分。ガンエデンを掌握できるかだった)」

 

「片親じゃない人生か。わるかねぇなぁ……あと最低でも平均的能力な……

 あ、中央値とかじゃなくてほんと。一般的っていうぐらいの能力は欲しい。

 それを最低保証にして上がる幅は運任せでいいわ」

 

「いいの?」

 

「ありすぎると才能に依存する。努力もしなくなる。わかるんだよ。努力は辛い。

 無能なりに頑張ってきたから大切さもわかる。努力を無意味にしたくねぇよ、俺は……」

 

 

 

 そう、そんな事を言った

 それから記憶が戻ったのは6歳ぐらいで

 切っ掛けあれはそう、ザ・ガンダム。νガンダムを見た時だった。

 色々あった、あの頃も。悲しい事も楽しい事も、

 でも、今の自分はあの頃の自分とまた少し違う、別の自分なのだ。

 記憶を失って、自分なりに苦労した生活。新しい人との付き合い。

 その中で確立した自分心がやはり今はメインになっている。

 そして、この自分として……役目を果たしたのは間違いない。

 

 

 ……役目は果たした。だから休むころだろう。

 ここから先は自分が関係ない世界の出来事。その世界の出来事。

 むしろ、自分がいることで歪むかもしれない。生きる運命が死ぬ運命になる。

 

 

 

 そう思って、瞼を閉じた。いや、そう念じただけなのだけど

 周りの景色が消えていく。それだけでなく自分自身の存在すら希薄になっていく。

 ようやく終わりが来るという安堵だけが自分の心を満たしていた。

 ただ、閉じた瞼から零れ落ちたのはなんだったのだろう。





 何度か誤字は確認しましたが多分ある


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SIN

えがおはゆるせねぇよ……


 バリアを揺らす衝撃波は伝わる。

 宮殿に貼られた次元バリアも冷却の限界を越えれば侵入されるだろう。

 

 そう、限界がある。

 基本的に対象者と接触していなければ全力を発揮できないため、

 揚陸城もその軌道を保つ事しかできない。だからこそ、前線基地として

 攻撃時は基本的には同時降下していた。

 コックピット内部やブリッジに搭載される為、

 アルドノアドライブは放射冷却を行えず、内部冷却システム便りになる。

 そう、デメリットがなければ次元バリアでの突撃だけですべてが済んでいる。

 

 だが、それ以外にも次元バリアには内部と外を隔絶する為、搭載機は攻撃時、

 それを外さなければいけないことや、次元を指定した場所と繋げられないため、

 接触したものを問答無用で消し飛ばすなどの各種の問題があるのだ。

 そう、アルドノアは完全な兵器ではない。必ず穴が存在した。

 それは、まるで生み出したものが……。

 プロトカルチャーが完全であることを認めなかった様に。

 

 

「さぁ、いきましょう。急いで」

 

 護衛に急かされる。エルデリッゾは準備をした。

 MS相手に銃など無意味だが一応は準備をしておく。

 だが、安全装置を外すのは自分の今からすることは危ないと思った。

 彼女はそれをそっと、

 お守りの様に目の前の男性のを懐にしまうと自分は役目に専念しようと決めた。

 

 

「さぁ、座ってください」

 

 焦点の合わない眼の男性、日野真。シン。

 シンは背が伸びて、女性らしさの出てきた少女、エルデリッゾの指示に従った。

 動きに人らしさはない、どこかぎこちなくロボット様に。

 1年前、急行したデューカリオンによって

 コックピットから助け出されて蘇生処置の末に息を吹き返した後もずっとこうだった。

 命令されれば排泄もする、食事もする。ただ、決まった動きをしてくれるだけで、

 運動のような複雑な動きはしてくれない。

 まるで何かが彼を生かしているだけで、その心は戻ってくる様子がなかった。

 エルデリッゾも、アセイラムもこの状態を快くは思っていない。

 火星と地球を結んだ男として、半ば、英雄の様に祭り上げられて生かされている。

 そんな気すらする。終わらせてやるべきという意見すらあった。

 

 2人もそんな事を一度は考えた。だが、できなかった。

 いつか戻ってきてくれるのではと淡い思いがあった。

 だが、1年経って何か変わることはなく、2年、3年とこのままなら……。

 

 

「駄目です、ダメですよ……ほら。しっかり椅子に自分を固定してくださいね」

 

 手を椅子に握らせながら、悲しみがこみあげてくる。

 止まっている。頭髪の成長も、爪も。呼吸も鼓動も最低限で、

 体温も低めで冷たさすら感じる。

 

 車いすを動かす。庭園から指揮所までは時間がかかる。

 急がねばならないだろう。足に力をこめた。

 

 

 しかし、その時乾いた発砲音が響いて護衛が崩れ落ちた。

 それを行ったのはもう一人の護衛。仲間だった存在。

 

 

「動かないでください」

 

 額に押し当てられる冷たいものに死をエルデリッゾは感じた。

 

 

「そ、そんなどうして……」

 

 

「一辺倒ではないという事です。ティータンズに従うヴァースの民もいる。

 手荒な事はしたくありません。貴方と彼を確保できれば彼女は降伏する」

 

 

「ひめ……王女様はそんな!」

 

 

「弱さは誰にもある。この1年、見ていてそれはわかりました。

 あの人の弱みとはまさに、貴方と彼です。これで無駄な争いは終わる」

 

 

「隷属するのが正しいことなのですか!」

 

 

「考えることは人は恐れる。従う事が心地いいからです。

 それが隷属と聞こえるならそうなるでしょう。私は共生と感じますがね……」

 

「そうですか……」

 

 エルデリッゾは銃をつかんで左胸にに強く押し付ける。

 そして、もう片方の手で相手の手をつかんで引き金を引こうとする。

 

 

「なら撃ちなさい。私が死ねばすぐに伝わります! なぜなら……

 このブロックは私のアルドノアドライブで管理されている! 死ねば閉鎖されます!」

 

 

「や、やめなさい! 」

 

「姫様を利用なんてさせません! この距離なら貫通してこの人も無事ではすみませんよ!」

 

「大事な人間ではないのですか!!!」

 

 

「だからこそ……だからこそ、利用なんてさせない!!!

 この人の生き方を知っている、私も、姫様も! あなたはどうですか! 

 知らない癖に! 彼と私たちの間に割り込まないでください!」

 

 

『涙の理由は一つだよ』

 

 

 ぴくっとシンの腕が動く。

 

 

『消えることに涙したなら、消えたくないって言っている。魂が……さぁ、起きて』

 

 

「さぁ、やりなさい! そして、無意味に死ぬといいのですよ!」

 

 

「くっ! そうですね、なら祈りましょう。彼に傷があまりつかず利用できることを!」

 

 

 エルデリッゾは目を見開いた。かつての自分なら祈り閉じていただろう。

 だが、強く見開いた。生きる事、それを魂に刻み付けるように。

 しかし、衝撃と共にその視界が落ちシンの腕の中に倒れ込んだ。

 

 

 パァン……パァン……バギィ!

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「もがぁ!」

 

 自分の状態が分からないかの様に男の眼が視界を彷徨わせる。

 肩がうまく動かず、銃を落としたようだと気づいたのだろう。

 だが、なぜ今。自分はこんなに呼吸ができないのだと考えている。

 そんな所じゃないだろうか。叩き込まれた拳で割れた歯の痛みにもやがて気づく筈。

 

 

「腕をしゃぶるのは楽しいか。少し前から聞こえてたぜぇ……。

 いいか……裏切者はヴェイガンだぁ……わかるかぁ。

 だが裏切者ヴェイガンは情報を吐いてから死ななければならない」

 

 

 エデルリッゾを車いすに代わりに座らせ立ち上がる。

 その勢いのまま、ヴェイガン(裏切者)を床にたたきつけると、

 銃を投げ捨て、シンはその手で絞るように鼻を握った。

 

「もーーー!」

 

「呼吸ができない、そうか。知ったことじゃあない。

 大丈夫、失神するだけ。コロサナイー……殺さないよぉ! 

 でもそのあとは死よりも辛い、拷問だねぇ……あぁ!?」」

 

 

「もげげげえーーーー!!」

 

 

 ビククンと激しい痙攣の後に気を失ったヴェイガンを離し近くの銃を蹴り飛ばす。

 太ももにしまっていた相手のナイフで服をべりべりとはいで全裸にし服の切れ端で

 椅子に結びつける。一応、歯の破片をざらざらと吐かせ気道確保だけを行った。

 一仕事を終えて満足した様に額の汗をぬぐう。

 

「いい気分だぁ……起きて早々ヴェイガン殲滅とはなぁ……最高だぜ。

 おっと、いけね。自決用に奥歯に毒入れてるかも……ベキィ。 あ、やっぱね」

 

「あ、あっ……」

 

「おはよう。よくわからんが火星? とりあえずこいつはこのまま連れていけ。

 下っ端の警備にはまだ裏切者がいるかもしれんからな」

 

 

「あぁあああああああああ!!!」

 

 

 ひしっと伝わるぬくもりと、

 服にしみこんでいく涙と鼻水の染み。

 やや、困惑した顔を浮かべつつ肩を押して引きはがす……剝がれない。

 

 

「ぁああああああ!」

 

 

「泣くな、泣くな! ほら、しゃきっとしろ!

 俺も俺でやることがあるから! ここからすぐ外に出られる場所はどこだ?」

 

 

「ずぴー……ここから2、3分です……」

 

 

「……いいよ。いいよ。なんか俺が悪い気がするし洗濯も自分でやるわ。俺が悪い。

 お前はよくやってくれた、多分。とりあえず、服預かっててな……さて、いくか」

 

 

 制服を脱いで、エルデリッゾの肩にかけると体を動かす。

 おそらくかなり長い間、寝て起きたわりには好調だったとシンは感じた。不思議な事に。

 

「ノーマルスーツは?」

 

 

「出口の傍に。ストレージは網膜認証式ですが貴方の……シンさんのも登録されています。

 ただ、どこにいくんですか? 逃げるとは思っていませんが現在は宮殿は次元バリアの」

 

 

「俺が通るスペースだけ解除するように連絡してくれ。もう、到着してる筈だ」

 

 

 ■■■■■

 

 

「カタクラフト、ステイギスの損耗率66%!

 特にガンダムタイプに凄まじい勢いで撃墜されています!」

 

 

「アステリオスの配備が間に合っていなかったのが効いてきていますね……」

 

 アセイラムは苦々しい言葉と共に唇を噛んだ。

 火星の作業用カタフラクトを改造し、

 武装ユニットを装着した。量産型カタフラクトであるステイギス。

 そもそもヴァース帝国にとって、カタクラフトは貴族の力の象徴でもある。

 だからこそ、ワンオフ機の性能は強大だが前線基地である揚陸城を必要とする様に、

 継続的戦闘能力が低かった。つまり、攻めは強いが周りは弱い状態であった。

 

 それを危惧したアセイラムは反乱を企てた妹を調べ上げる中で

 この機体のデータを発見し製造した。アルドノアドライブ製造時、

 出力の高さと固有能力を持つ当たりより遥かに多くできてしまう低出力のハズレ。

 これを搭載し、量産機として製造されたこの機体は

 アセイラム・ヴァース・アリューシアによる一括の起動が行われている為、

 起動権限の必要なく操縦ができる。まさしく、ヴァースの終わりと共に死ぬ、

 ヴァースと命を共にする機体ともいえ、貴族ではない一般階級の兵士が操縦をする。

 武器は四門の機関砲とミサイルランチャー。

 有人機1機を母体とし、自動操縦の無人機4機による5機1編成。

 長距離移動時、機体の四隅にあるジョイントに連結しブースターとする事もできる。

 これは、拠点防衛用の『数』の兵器である。

 

 しかし、操縦者の習熟度と元は作業用であるが故の戦闘能力の低さは否めない。

 だからこそ、アステリオスの搬入を急いだがティターンズの決起が起こり今に至る。

 

(指揮の学習が終わったのも少ない。せめて、特機が数台なければ……)

 

 その時、扉が開かれた。

 アセイラムとオペレータが振り返るとそこには車いすに縛られた全裸の男と、

 エデルリッゾの姿があった。よほど急いだのか息を切らしている。

 

 

「ひ、姫様! 宮殿の緊急時避難用通路の近くの次元バリアを解除してください!」

 

 次元バリアは弱点を補うために、何十枚とつなぎ合わせるように展開されている。

 

 

「分かりました、急いで!」

 

 

「了解しました、部分的に開閉します!」

 

 

 理由なく、そんな事を言い出す訳がない。

 何より、アセイラムには予感があった。

 

(あの子がかけている制服、きっと……!)

 

 ■■■■■

 

 

「よう、相棒……お互いしぶといな。

 いや、なんとなくわかる。きっとお前が俺を生かしてくれたんだな」

 

 

 シャトルの中で寝そべる機体を見上げた。

 

「真っ赤とはまた、ずいぶん悪党なような機体になりやがって……。

 見た目も随分、かわってるじゃねぇか。なぁ? まだ、そこにいるのか?」

 

 アイカメラが明滅した。

 

 

「……よし!」

 

 

 推進剤で接近し、コックピットを開閉する。

 見た目のわりに構造自体はさほど変わっていない。

 登場し、閉鎖する。ヘルメットだけを外し操作装置である水晶に手を触れる。

 

(感覚が軽い。他の補助動力がついたのか?

 周囲から負念を吸い取っている感覚はあるが、バックファイアがない。

 頭部にGストーンは確認できたが、いろいろと改造されたのか?)

 

 シャトルの屋根が開き、それにあわせてライブレードが起き上る。

 

「まいったな……」

 

 本当にまいったとシンは思った。

 なんか違和感がある。歯にものどころかつまようじが挟まったような感覚。

 

 

「駄目だ、ライブレードが完全に見た目と違い勇者ロボとか正義の味方寄りに改造されてて

 力の使い方がいまいちわからねぇよぉ~~~! 

 暗黒戦士みたいなパワーアップルートばっかの俺に正当派に戦えって死刑宣告でしょ!」

 

 視線を下ろせば、両手の上にGストーンなようなものがはまったガントレットのような

 装置まで降りてきた。GSライドの補助装置なのだろうが……。

 

 

『操作をレクチャーします。併せてください』

 

 

「おわぁあああ!! なんか画面に出てきたぁ!」

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「味方の撃墜率が多い。でも限界は近い筈なんだ……」

 

 

 AGEシステムが導き出す次元バリアの限界時間はあとわずか。

 そして、それが正しかったのをしめすかのようにわずかに次元バリアが開く。

 

 

「よし、今だ!!」

 

 

 キオ・アスノは賭けと思い撃墜されパイロットの死亡したオルタエイジを数機呼び寄せる。

 パイロット死亡の後もラウンダーの共感能力によってビットとして使える機能が搭載され、

 まさしく、キオ・アスノの親衛隊ともいうべきその機体たちを盾にし突撃を開始した。

 

 ステイギスの一斉攻撃の盾としながら推力を上げていくAGE-FX。

 

「ごめん、皆! でも、僕はやるよ!!」

 

 

 その時、眼前のシャトルから何かが飛び出した。

 赤いボディに緑のラインが走る謎のロボットだった。

 

 

「! でも今は止まる訳にはいかない!」

 

 

 彼は彼なりの使命を果たすために眼前の敵を倒す。それだけだった。

 

 

「キオ・アスノ……死にたくなければ避けろ」

 

 

「何!?」

 

―――テトラ・グラマトン!

 

 オープン回線で語り掛けてきたその言葉と共に機体が腕を左胸に突き立て、開いた。

 そこにはただ闇がある。光すら消え失せる闇の中で何かがそこに”いる”

 鳴動する黒白の機械の心臓の様なものイメージがキオの脳内に浮かび鼓動が

 耳の傍で聞こえるように錯覚するほど激しく鳴り響いた。

 

 

 

「!?」

 

 

 それは血に流れる、英雄フリットアスノから受け継いだ才能。

 強大なラウンダー能力の反射。ただの回避行動ではなく、

 全力で離脱しなければならない。という直感だった。

 

 

「コスモ・ブラスタぁああああ!!!」

 

 

 

 闇から生まれる光の束が周囲を飲み込む。

 無数のオルタエイジを破壊する中で、

 ステイギスを破壊せず光芒を引きながら、しばらく広がっていった。

 

 

「敵味方識別ありのMAP兵器とは恐れいった……

 ティターンズ……いや、キオ・アスノ退け!!!」

 

「なっ……」

 

 

「退かなければお前とお前の家族も殺す。血の果てまでも追い詰める……」

 

 

 その言葉と共に背中に浮かぶべたつく汗と冷たい死の気配。

 キオは操縦桿を震えさせ、息を荒くする。恐怖を抑えきれない。

 そんな感覚は初めてだった。

 

 

『火星騎士が防衛網を抜けました!』

 

 その報告が後押しになった。AGE-FXは機体を翻し、その場を去る。

 

 

「撤退する!」

 

 

 遠ざかるその背を見ながら、シンは安堵の言葉を漏らした。

 

 

「あぶねぇ、もう限界だった……」

 

 

『まだやれます』

 

 

「やれねぇよ!! 寝起きだぞ! 動力全稼働ってなんだお前!

 俺は今、何したのかすらわかってないぞ! 精神の残量は2割ぐらいだからね」

 

 

 まぁ、それでも余裕はある方だけどとは思うがと力を抜きシートに体を預ける。

 

 

『私はライブレードです』

 

 

「ライブレードはこれだろ、これ」

 

 

『厳密にはサブパイロット接続システムに接続されたもの。

 副動力になっていたものの内で”育てられていた”人工的な精霊』

 

 

「精霊か……」

 

 

 サイバスターはなんとかという名前の大精霊の加護を受けている、

 という説明があったのがなんとなく記憶に残っていたのを思い出す。

 ライブレードがそれを基にしたなら、機体の能力を引き出すために、

 人工的な精霊の創造に行きつくのは納得が行く。

 つまり、自分はこれが食い損ねた余りをエネルギーとして使っていたし

 そもそも、それをエネルギーとするのもおそらく、土壇場の改造だった。

 だからこそのあのダメージだったのかもと、独りで結論付けた。

 

 

「まぁ、今度教えてくれ。んで、この機体は?」

 

『ネオ・ライブレードです』

 

「え、いや。だっさ。なんかもう少しいい奴にしよう。俺もセンスはないけど」

 

 

『……では、どうぞ』

 

 

 空間に投影されたモニターらしきものに入力欄が表示される。

 シンはしばらく悩んで『ネオ』をBS連打で消した後に文字を書き加えた。

 

 

『由来は』

 

 

「お前と俺は一つみたいなもんだろ。ここまでくれば一蓮托生だ」

 

 

『……了解しました。これより本機は』

 

 

 ―――ライブレード・SIN(シン)と呼称します。

 

 

 ■■■■■

 

 

 機体を格納庫におろして、腕を回す。

 

 

「うーん……やっぱ調子がいい」

 

 

 精神的なものではなく、肉体的な意味だ。

 最後は自爆同然で流石に機体の保護機能がキャパオーバーしたのか

 コックピットでバウンドした覚えがある。

 なのでぶっちゃけ、病院で介護よろしくな状況だと思っていた。

 だが、”万全な所まで回復した状況で肉体が維持されていた”

 と表現するしかない。まるでよく寝て起きた後である。

 

 

(……ユリンか)

 

 

 見捨てられてなかったことに驚きすら感じるが、彼女の気配を感じた。

 もう、ここにはないがおそらく、最低限の事だけはしてくれたのだろうと。

 悲しい様な、気恥ずかしい様な。だが、うれしくもあった。

 

 続々と帰還するカタクラフトに視線を向ける。

 量産機と思わしきものの他にしらないものも多い。

 対峙した相手もそうだが、早急に事態を確認する必要があると確信した。

 歩を進めると、黒いドレスの女性がいた。

 

 

「…………あっ!! アセイラム姫……

 いや、もしかしたら王女……なんですかねぇ? へへぇ」

 

 

「なんでそんな他人行儀なんですか……もう」

 

 

 楽しそうに笑っているがどこか気品もある。

 可愛さが美しさに変わったというか。眼を嫌でも惹かれる。

 自分の意識を戻すためにぺちっ、と一度ほほを叩くと向かい合う。

 色々話すことはあるのだろうけど、とりあえず言う言葉がある。

 

 

「ただいま」

 

 

「おかえりなさい」

 

 

 彼女は、晴れやかにそう言って破顔して涙をあふれさせた。

 焦りながら、近づいて涙を拭おうとした手に両手を重ねてくる。

 

 

「おかえりなさい……」

 

 

 待ってくれている人間はいた。

 戻ってきてよかったのかもしれない。

 

 この使命のない世界に。

 あるいは今、生まれたのかもしれない。不思議と涙が止まらない。

 

 

「……ただいま!」

 

 

 世界にも届くような大きな声。地球にも届けと願った。




誤字修正は明日とか、明後日とかまでには
他の話も3回ぐらい確認したいなぁ……



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幕間 インターミッション1 『永久就職』

スレ民はガンダムAGEを

素材はよかった、物語の齟齬は
表面上ではなく、潜在的なキャラクターの真意が別にあるゆえに発生したもので
筋道をたてて補強すれば理解できなくはない。

のような好意的な見方をしているがそう考えるとあの先の世界滅ぶね

が結論でした


 

 現状の状況確認の為に、貰った私室に引きこもって10日。

 ある程度は理解したが、同時に問題が発生していた。

 

(掲示板が閲覧できない……)

 

 転生者掲示板へのアクセス権を失ったのか閲覧不能になっていた。

 さんざん、活用した後なので脳内妄想という事はない。

 だが、まだまだ必要な知識は多かったしむしろ、これからというタイミング。

 そこでこんな足の引っ張り方をされるのかと、シンはため息と共に机に突っ伏した。

 

「キオ・アスノ……」

 

 

 フリット・アスノの孫。

 ガンエデン強奪計画の時についでに詳しく聞いていた。

 スレ住民の話はこうだった。

 

 いろいろな意見はあれど、彼は良くも悪くも少年であり純真だった。

 だからこそ、”イゼルカントが自分の思想を受け継がせる”事を選んだ少年なのだと。

 

 個人的には同情はあれど敵として出てくるなら、殲滅するだけだと鼻ほじ案件だ。

 しかし、興味はない。興味はないが今後の為に彼はしっかり覚えていた。

 

 

 ヴェイガン首領、イゼルカントがキオ・アスノだけに、自身の目的……

 コロニーを攻撃、破壊し極限状態の中で覚醒を促し、彼が優良種と定めた存在。

 Xラウンダーを目覚めさせようとしていた事を話したのも、

 同様の事をヴェイガンの側でも表向きは爆発事故として行っていた事も。

 そして、市民がマーズレイで苦しんでいる事を彼自身の眼と心で理解させたのも……

 息子に似た、彼に自分自身の思想を全てとは言わず刻む為であった。

 

 イゼルカントは理解していた。キオと自分が必ず決別することを、

 そして、おそらく。ヴェイガンが負けるという事も理解していた。

 だから、別の方法でヴェイガンを救いつつ人類を破滅させることにした。

 

 それは、”EXA-DB”による内乱。

 

 EXA-DBは情報のライブラリだという。歴史の中に埋もれた技術の結晶。

 そこからヴェイガンの技術がうまれたとすれば、人類は必ずシド討伐を目指す。

 そして、EXA-DBの回収を目指し、その独占を目論み必ずいは起きる。

 便利なものを使わないでおけるほど、人類は無欲ではないからだ。

 

 100年程度の平和を経て、キオ・アスノが未来に希望を信じて眠りにつくころに

 世界は唐突に地獄の中へと放り込まれるだろうと……。

 そして、その果てに生き残るのはおそらく、心を通わせ合えるXラウンダーのみ。

 こうして、イゼルカントの目的は果たされるのだ。

 

 キオ・アスノに生まれた平和への思いはイゼルカントに育まれたもの。

 AGEの平和は確かに彼の功績だ。しかし、道筋も、その果ても。世界のおわりも。

 全てはイゼルカントの掌の上という事になる。

 なんとも気に食わない独り勝ちだ。

 キオ・アスノは”選ばされてしまった” 

 そして、本人はそれを選んだと信じている。

 

 といっても、シンも話を聞きながらいろいろ反論したが、納得させられてしまった。

 

 

 1つ、キオ・アスノはヴェイガンにガンダムごと捕まった。

 でも、ヴェイガンはそのガンダムを破壊も解体もしなかった。

 データ取りだけして無造作に格納庫においてあった。それはなんでだと思う?

 

 2つ、光学迷彩を間接的に感知するシステムをAGEシステムがあるとはいえ、人類側が

 開発しているのに、それを生み出したヴェイガンがシステムを奪われた場合の

 セーフティ。あるいは、対抗処置がないのは妙じゃないか?

 

 3つ、光学迷彩技術という自分たちの最大のアドバンテージを奪われ、それが広まり、

 自分たちが劣勢になる可能性があり、全力で相手をつぶさなければいけない状況で

 「対応は任せる。”被害は最小限にとどめろ”」と言った結果、

 おそらく、戦力は大きく投入されずキオ、救出部隊はセカンドムーンに侵入できた。

 

 4つ、キオ・アスノ奪還という目的を理解している。

 なら、なんらかの方法でその場所も把握している事、それも間違いなく理解している

 なのに何も警備がなかったのは不自然だ。

 

 

 そう、全てはキオ・アスノに取り返させ、逃がすため。

 妙な警備の穴と手心も、それを名目上は奪われたとする為ならば筋が通る。

 

 

(恐ろしいと感じた。だから、躊躇なく始末すると決めていた。

 じゃなくても始末するし結果的に始末したけど、でも世界にはティターンズがいた)

 

 

 舞台の上に上がる理由がなければと準備はしたが、この世界に悪役は多すぎる。

 バスク・オムか、ジャミトフか、あるいは別の存在か。

 キオ・アスノは今も利用され続けている。

 最も、最悪の結論として”自分で考えて決めた結論”という最悪の結末もありうる。

 確かめる機会があるといいが、残念ながら不殺なんて戦場の中では成立しないのだ。

 それこそ、敵が棒立ちでもしない限りは……メインカメラが壊れても、サブカメラがある。

 腕や足がもげて武器がないなら、それこそ機体で突っ込んでくる。

 

 皆が皆そうではないが、その程度の覚悟があるものだけが戦場にいる。

 でなければ、逃げ出している。どこにいるとしても、パイロットは自分は死なないなんて、

 甘い考えを抱いているものはほとんどいないのだ。

 訓練を経て、コックピットに乗り込んだ時にパイロットは生まれ、

 そして、その生まれた場所で死ぬ。コックピットは鉄の子宮であり棺桶でもある。

 

 

(邪魔をするなら、フリットの孫でもヴェイガンには変わりない。

 それなら、いっそ諦めがつくから殲滅するつもりだけど……でも、13歳か

 小6か中1ぐれぇかぁーーーーー! ちょっと流石になんかくるかもなぁーー!)

 

 

 嫌な後味の悪さが口の中に残ってしゃりしゃりするような錯覚を感じる。

 とりあえず、棚にあげておこうと思った。今度は一応聞いてみて、

 こちらでも情報は集めてみる。そのうえでヴェイガンと感じたらためらいなく始末する。

 気持ちとしてはそう思っておこう。そう思うしかない。

 

「駄目だ、堂々巡りだ……ずーと同じ思考でループしてる。棚にあげて落ちてくる。

 この案件はあげるんじゃなくて仕舞って忘れておくほかない……他の事を考えよう」

 

(んで、EXA-DB。この世界ではそれがプロトカルチャーの遺産の一つだとして、

 それにアクセスしたというイゼルカントなら、宇宙の秘密に近しい人物だった)

 

 最悪の状況を回避した代償に、窓口をひとつ失った。

 掲示板での知識の補給ができない以上、情報は多ければ多いほどいい。

 だが、後悔したところで過去には戻れないのだから結局は手札で勝負するしかない。

 ならば、今は手札を増やすために情報が必要だ。

 

「……地球圏に一度いこう」

 

 

 プリペンターに合流することで何か突破口が見えてくるかもしれない。

 ダメだった時はその時にまた考えるとしよう。一先ずの行動方針は決まった。

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「従騎士の3割は脱出が間に合わなかったか、

 脱出せず特攻の様な形で敵を巻き込んだ様です」

 

 

 赤髪の少女。オペレータであるクーラルデュッセはそう報告して目を伏せた。

 涙を流す訳でもなく、悲しげな表情にも見えない。

 しかし、その整った表情の瞼の向こうに悲しみが存在するのをアセイラムは知っていた。

 

(彼女のおかげで前線の連絡と情報分析が円滑に進み、

 迎撃の準備もできた。何より、こちらの意図をすぐに組み込んでくれる所が助かります)

 

 だからこそ、そんな優秀な人間に負担を強いる事が歯がゆいと彼女は思った。

 本来ならあと2人は此処にいる筈だった。だが、1人はティターンズの騒動で戻れず、

 真っ先に戻ってきていた信頼のおける人物である1人は約束故にある人物に付けていた。

 

 戦術教練が未熟な火星では機器を読み上げる程度はできても

 戦術的な分析が本格的にできるものは少ない。彼女は地球に半年間留学し、

 超スパルタの教育課程をなんとかクリアできた貴重な人材の一人なのだ。

 

 3人含めてじっくり育てたかったが、

 こうなれば彼女には地獄を突き進んで貰う他ない。

 最も、もう1人はあの日にお役御免になった以上。2人にはなる。

 それでやりくりするしかないとアセイラムはため息を吐いた。

 

 

「まず、ティターンズの対策を考えましょう」

 

 

「いや、それはない。あいつらはもう来ないはずだ」

 

 当たり前の様に指揮所の扉をあけて入ってきたのはシン。

 クーラルデュッセが少し眉をひそめて立ち上がろうとしたが、アセイラムがそれを制す。

 

「シンさん、何か心当たりが?」

 

 

「あー、それはな……」

 

 

「すいません! これをど、どうぞ!」

 

 

「おう、ありがとう」

 

 乾燥が終わったらしい制服を着るとシンはなつかしさに包まれた感じがした。

 ただ、どうもぱりっとした感じがどこか新品の様で違和感はあったが、

 時間的に1年はアイロンなどかけた服を着てないのでわかる訳ないかと、疑問は捨てた。

 

 アセイラムはその姿に一瞬、驚いた様な顔をしたが、顔をほころばせた。

 

「落ち着きます、その姿。ずっとそれでいてください」

 

 

「永遠に留年するの!? 服は考えるよ! でも落ち着くの俺の感覚的にまだ学生だから

 くそーーー、留年かーーー! 留年だよなぁーー! あーーー! ならんかー!」

 

 

「うるさいですわ」

 

 

「あ、はい。ごめんなさい」

 

 

「クーラルデュッセ、ごめんなさい。少しはしゃいでしまったの」

 

 そういって笑うアセイラムの吸い込まれる様な翠眼は澄んでいて覗き込みたくなる、

 そんな衝動にクーラルデュッセは駆られた。しかし、その白い肌と

 容貌。それらはまさしく王女と称するに値するほど見目麗しい整っており、

 すらっと伸びた手足ですら芸術の域であると彼女は感じ、ぐっとこらえた。

 

「いえ……(美しすぎて近づいたら死んでしまう)

 

 それで、日野伯爵。先ほどの説明をお願いします」

 

 

「今、なんか……いや、いいわ。いいか、ティターンズはそもそも、

 スペースノイドを軽視し地球至上主義を掲げた組織だった。それが今、

 イージスでコロニーを護るとか、コロニー出身者を旗印にしたり……」

 

「確かに違和感がありますが……」

 

 

「そう思うだろ? でも実際は違う。これ要するに変わったと世論を味方にして

 あとあと防衛費だなんだとコロニーから毟る前フリでしかない。そして、

 衝撃破から防いで貰って、異星人から守ってもらっているとくればもう何も言えない」

 

 

「あっ……やり方が変わっただけ、という事ですか?」

 

 

「そう、強圧的なものから段階的隷属化とでもいうものにシフトしただけだ。

 んで、こっから……もう攻めてこない根拠だ。ぶっちゃけ……

 何かが起きる前に戦力確保をしたかったから攻めてきたのは間違いない」

 

 

「妙な確信ですね」

 

 

「だって、隊長機1機だったろ。

 何なら、戦闘もないって舐めてた可能性すらある。

 つまり、”もう地球圏で何かが起きてる” だから来るわけがない」

 

 

「で、ですが……」

 

 妙に食い下がるクーラルデュッセにシンは腕を組んで少し考えると、口を開いた。

 

「それに、本当に完全に勝利を確信した上なら手柄になるから

 スペースノイドのアスノ家の血筋を送ってこないよ。

 ジャミトフは直下の部下のバスクとの関係悪化を今はさせたくないだろうし」

 

「そう、ですね……」

 

 諦めて納得したようでがっくりと項垂れた。

 

 シンは自分も意外と弁が立つ、などと鼻を伸ばそうと思ったが

 結局、他人の知識を下駄にしているのは間違いないのに気づく。

 口に出すのは適度にしよう、とひそかに心の中で決めた。

 

「ともかく、一度地球へ向かうぞ俺は

 悪いけど移動手段を用意してほしい。これは火星の未来の為にもなる筈だがどうだ?」

 

「ティターンズを倒し、

 改めて地球との友好関係を取り戻せば確かに有益ではありますね」

 

「姫様。ほとんどの特機が接収されたと聞いておりますが、特機のほとんどは

 操縦者の意思なく動かすことはできません。脅迫的に戦わされているとして

 そのような状況なら、単騎での直接対決での勝利も可能かと」

 

「待って、その単騎ってもしかして俺ですか?」

 

 

「……そうですね。火星の資源も限度があります

 まずは今回の戦闘を分析して防衛網の再編を行いますが……」

 

 

 テラフォーミングにアルドノアの応用は適していない。

 マーズレイの克服にこそ一躍は買い、工業発展のためには必須だが、

 地磁気が弱く大気の薄い火星。動植物の生育も難しい環境であるのは確かなのだ。

 長い間、多くの台所を支えるクロレラやオキアミ。

 いまでこそ、それ以外も現地で生産できるものも増えた。

 しかし、輸入が途絶えている今の状態は将来的に問題を発生させるのは間違いない。

 段階的に継続されているテラフォーミングや緑地化作業も

 やはり、地球の支援あってのものだ。独り立ちにはまだ早い。

 

 

 

「そのあとに出発しましょう。デューカリオンを出します」

 

 

「すいませーん! 言論の封殺解除お願いします!」

 

 

「静かにしてください、伯爵! 腹をくくってください!」

 

 

 ■■■■■

 

 

「どうぞ、シンさん」

 

 

 デューカリオンの艦橋で渡された身分証。

 そこには全く身に覚えのない名前と国籍が記されている。

 

「マコト・ゼファー・ヒノ……え、火星国籍? な、なんぞこれ……

 いや、待て!! 俺の地球国籍くんは!?」

 

 

「ヴァースの救国の英雄が地球に居住する必要が……?」

 

「地球国籍のままこちらにおいておくのができませんでしたので」

 

 

「んんぅーーー……これもしやもしや休学になってる処か退学では?」

 

 

 永遠に学歴コンプレックスで苦しむのかと涙を流す、シン。

 

 

「全部終わった後に中卒でどこに就職すれば……

 テストパイロットとかなら引き取ってくれるかなぁ……」

 

「大丈夫です」

 

「えぇ、そのとおり。大丈夫です」

 

 

 冷えた笑みを浮かべるアセイラムとエルデリッゾを見つめながら、

 首筋に冷えた感覚を感じる。

 

「伯爵……」

 

 

「は、はい」

 

 クーラルデュッセが気の毒そうに肩に手を置く。

 

「諦めてください」

 

「ああ逃れられない!(カルマ)」

 

 勤続何年で年金はあるのか。

 せめて、お見合いの補助ぐらいはあってほしい。

 シンは天井を仰ぎながら、一直線に進む自分の人生のレールの先を見つめた。




誤字確認。余裕があれば……


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幕間 インターミッション2 『凍え、怯え、称えたまへ』

誤字報告ありがとうございます!!


 

 アセイラム・ヴァース・アリューシアの命令により

 新たな防衛網が構築された。残存する勢力の大半をを火星に置き、

 選抜された火星騎士を数名護衛とするという形は地球が再び攻めてくるというより

 この状況下で別の異星勢力の介入を警戒したものだった。

 騎士の選別は当事者同士の話し合いの元に行われ、

 護衛に適した未来余地の能力を有するアルドノアを持つ、スレインが選ばれた。

 

 

 そして、彼らを載せたデューカリオンは現在、

 地球近傍小惑星であるイカルス1566に建設されたイカロス基地で補給を受けていた。

 

 

「んじゃ、EMPは広範囲兵器ってわけじゃないのか」

 

『そうね。補助装置で拡張強化されたものだから別物よ』

 

 ライブレードに宿る精霊、名称未定の存在はそう語った。

 流石に自分自身でもあるので詳しい。こういう相手がいると助かる。

 

 

 先に下船する仲間を見送り、シンは

 ライブレードの増設された機械機器の調整とテストをしていた。

 バリ張な勇者ロボモドキと化した愛機は正直、今はまだ不明瞭な部分が多い。

 

 

 既存のモニターシステムは180程度のものだったが、

 各部の破損と共に失われたので、全天周囲モニターとして改装された。

 リニアシート搭載を推奨されたが、後部に複座としてサブパイロット席がある以上。

 それは難しいと却下された。だが、その代わりとして安全策は各所に増設され、

 同時にGSライド補助用器具、Gガントレット。投影モニター。などが追加された。

 総合的な戦闘力は増えたが、確認する事は増えた。

 整備兵に任せればいいのだがそういう調整は自分でやりたい。

 微妙に細かい性格が仕事を増やす。そういう所は損だな、と本人も理解はしていた。

 

 

 

『地球人にアルドノアドライブを与えていいのか?とか色々反論があったのよ。

 私の目の前で争ってたけど、結局は能力発現ギリギリの奴を使ったみたいね』

 

 

 

「まぁ、持ち上げる奴もいるだろうがそういう奴の方が多いだろ。

 んで、その結果どうしたんだよ。まじで目の前しか使えないEMPとかなら」

 

 

『GGGの協力で局所的に限定することで飛距離の伸ばす事ができた。

 でも、このアルドノアドライブは能力と同時に使う事が出来なくて、

 能力を使うと推力と姿勢制御能力を一時的に失ってしまうのよ。問題点ね』

 

 

「問題点って?」

 

 

『単純にいえば、能力を使うと推力が向いてた方向にすごい勢いで吹っ飛ぶ』

 

 

「自殺かなんかですか?」

 

 

 能力を使う準備をして切り替えた瞬間、敵の待ち構えてる方向にすっ飛んでいく

 待ち構えていた敵に集中砲火を受けて終わり。紐なしバンジーより生還率が低い。

 これが、宇宙最強のスポーツSEPPUKUであるとでも叫んで死ねばいいのか。

 それとも、その勢いを利用したピンボールにチャレンジすればいいのか。

 いずれにしろ、とんでもねぇ欠陥であるとシンは感じた。

 

『だったのだけど、エルゴフォームという重力制御システムが提供されて

 これのおかげで問題点が解決したわ。ちなみに機体修理費用の出資元よ』

 

 

「え、火星じゃないの?」

 

 

『あのね……今は一切の外貨を獲得できてないのよ、火星は』

 

 

「あ、そっかぁ……(無知)

 今度お礼いっとくか。そいつの名前って?」

 

 

『サンジェルマン伯爵、という事らしいけどね。偽名だと思うわ』

 

 

「いやぁ、案外本物かもしれんぞ……でもその人確か17世紀とかだったか

 流石に生きちゃいねぇ……か? 無理か。無理だな。でも脳みそだけとかなら……」

 

 

「ちょっと」

 

 下から声をかけられた。誰かがいる。

 開かれたままのコックピットから乗り出して、その人物を見つめるも記憶に浮かばない。

 

 

「はい? ……はい?」

 

 

「何よ、今の間は」

 

 

「記憶を掘り起こしたんだけど、ぱっと出てこなくてな。知り合いだっけ?」

 

 

「ロンド・ベルにいたでしょ!! アスカ、惣流・アスカ・ラングレー!

 エヴァゲリオン2号機のセカンドチルドレンよ!! 思い出した!!?」

 

 煽情的なピッチリした赤いノーマルスーツを着た少女アスカは、

 調整を続けるシンにピシィ!という効果音が聞こえそうなほど鋭く指差した。

 シンは1分考えるような顔をして、ふとシンジの顔が浮かんできた。

 

「あ!! あのシンジくんのお仲間さんの! はい! はいははい、わかったよ!」

 

 

「なんで七光りとのセットなのよ!!」

 

 

「そうはいっても交流がなかったしなぁ……いや、ほとんどの奴とかかわりがなかったか」

 

 

 仮説の基地で格納庫は無重力区画だ。コックピットから這い出し、

 扉が開きむき出しのままのそこを蹴り飛ばし降りる。

 マクロスもプトレマイオスも重力区画だったため、こういう降り方できるのは久々だ。

 かつてはこれが基本だったので懐かしさを感じる。まぁ、ヴェイガンキラー時代は、

 淡々と狩りと死にかけるをループしていただけなのでどちらかというと思い出したない。

 

 

「惣流ちゃんがここってことは他の2人も?」

 

「ちゃん!?」

 

「年下だしな。んで、どうなの?」

 

「まぁ、確かにえこひいきと七光りもこっちにいるわよ。

 ネルフはあんな事があったあとだし、連邦に解体されたわ

 私たちは色々あって数か月前から此処にミサトとこっちに隠れてるってわけ。癪だわ」

 

「そっか。まぁ、元の生活に戻れないのは大変だよなぁ……頑張ってね」

 

「ちょい待ちぃ! それよりアンタ、死んだ筈でしょ!」

 

 

「あ、なる。呼び止めたのはそれ。うん、死んでたよ。精神的に。1年ぐらいらしいな」

 

 

「え、あ、そう……」

 

 実は生きてて隠れてましたパターンを予測してたのだろう。

 アスカは本当に悲惨な状況であったことを聞いて、何も言えなくなってしまった。

 シンはその様子に、根は優しい女の子なのだろうと、感じて温かい気持ちを感じた。

 

 

「……でも、それならアンタ。なんで戻ってきたのよ。

 そのまま隠れておくこともできたでしょ別に。わたしたちみたいに……

 これしか居場所がないって訳でもないんじゃない?」

 

(……なるほどな、これが聞きたかったんだろうな)

 

 

 脳裏の記憶を巡らせると、エヴァのチルドレンは家族関係が壊滅していた気がする。

 拍手でパチパチ謎のエンドで馬鹿にされてるようで縁を切ってそれ以降関わっていないし

 どちらかというと裏番でやってたリューなんとかが好きだった様な覚えがある。

 もう幾星霜も過ぎていった時間の中であいまいな記憶の方が多いが、

 wikiよろしく補給できる状況でもなく。ならば、自分のできる事は少しだけ先輩として、

 迷子の子供の手を引いて道の上に戻し機会を与えるぐらいなのだろう。

 

 

「分からん。俺は体が勝手に動いてた。

 心と体が直結してるから、考えるころには動いてる。ただ……」

 

 

「ただ、何よ?」

 

 

「生きる手段っていっぱいあるよ、この世界。

 宇宙ならネルフの伝手は少ないだろうし意外と逃げ場所はある。

 どうしても嫌なら逃げてもいいと思う。お前、シンジくんも、あの綾波って子も」

 

 

 ―――居場所は自分で決めていい

 

 

「どんな時も実は選択ってのはある。

 だから、逆に言えば決めた瞬間からそこは自分の居場所だ。誇っていい」

 

 アスカはきょとんとした表情を浮かべたまま言葉を失う。

 二の句が出てこないのか口がわずかにパクパクする。

 

 

「……何よ。じゃあ、火星に逃げたいっていったらそうしてくれるの?」

 

 

「もちろん。2人にもそう話してみろよ。普通についてきてくれると思うぞ」

 

 

「どうかしらね……あたしは……もぶ!」

 

 

 弱音が零れてくる口を左右の頬肉を手で押し込んでふさぐ。

 タコの口の様にまぬけな顔のまま何かを喋ろうとしてジタバタと暴れている、アスカ。

 

「プライドはあってもいい。でも孤高であることで強くなれる人間は少ない。

 いいか? 人は強くなるために自分の殻を破らなきゃいけない。今がその時だ」

 

 

 ぱっと手を放し、シンは少し膝を曲げてアスカに向かい合った。

 

 

「話してみろ。お前が考えている以上に、お前ら3人は仲良くなれるよ……

 というわけでほらほらほら!! いくぞ! 案内しろ! ノーマルスーツいきまーす!」

 

「ちょ!? プラグスーツにそういう機能はないのよ! 卑怯じゃない! やめーー」

 

 

(クルーデックさん、ウルフさん、ラーガンさん……

 どうだろう。俺は少しだけあなた達の様に導けただろうか……)

 

 

 浮かぶ涙を払って、笑顔を維持してアスカを引っ張っていくシン。

 人生は選択の連続だ。だけどいつもシンが思うのは、

 誰かに相談すればよかった、頼ればよかったという事ばかり。

 デシルの違和感を感じていた。確信的なものすらあった気がする。

 それでも自信の無さが、間違いだったら自分の立場を悪くしてしまう。

 嫌われてしまうかもそれないなんて、後ろ髪を引かれてためらってしまった。

 

 全てが自分の責任だとは思わないし、それで絶対止められたなんて自惚れてもいない。

 でも、”もしも”という言葉が脳内を反芻する。見ない様にしても、奥に押し込んでも、

 眼を逸らすなと目の前にそれが戻ってくる。繰り返しだ。

 

 

(馬鹿な奴だな。俺が一番誰かに支えて欲しがってるのに、

 それをいう事もできない情けない男なんだ……最悪だよ)

 

 

 自嘲するように目をふせて笑みを浮かべる。

 他の若い奴らにはこんな人間にはなって欲しくないとシンは心から思った。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「サンジェルマン伯爵、深紅の翼は無事。火星と地球の絆を繋ぐ彼の下へ……感謝します」

 

 

『それも確かに本名ではあるが、

 こうして、顔を出した以上はサンドマンと呼んでくれたまえ。

 本名で呼び合う事は真の絆を得るうえで大切な事と感じているのだ』

 

 緑色の宝石がはまったステッキを持ちながら、キザな笑顔で笑う男、

 クライン・サンドマンはそういった。30歳後半という自称はしているが、

 そのわりにはもう少し若く見えるし、何より老いと共に衰えるエネルギーのようなものが

 今も全身から発せられているように見える。

 アセイラムは目の前の人物に底知れなさを感じた。

 

『そして、ライブレードと彼の目覚めは私もまた喜ばしい。

 何せ、この世の中。強者の威を借りるものは多くとも、

 真の強者は少ない……さて、プリンセス・アセイラム。強者とは何かね?」

 

 笑顔を浮かべて、さぁ、気軽に。という様子ではあるが

 おそらく、そうではないのだろうとアセイラムは感じた。

 だが、恐れる必要もないし遠慮する必要もない。

 相手の考えに合わせるのではなく、自分が思う事を口にする。

 

「自身の弱さを受け止めている者です。

 自分を弱いと認められるものは、その弱さを誰かのために乗り越えられる」

 

 

 サンドマンはその言葉にフッと微笑を浮かべた。

 そのさわやかな笑顔にはどこか嬉々とした様子が混じる。

 

 

『ふとした時の行動こそ、魂を写す鏡。恐怖を押し殺し強くあれる者

 彼の行動を見ていたからこそ、私は彼の魂に”美しさ”を見出した』

 

 

「それが彼と彼の機体を助けてくださった理由なんですね」

 

 

『個人的な理由もあるがね。だが、私の事情など微々たるものだ。

 この心を突き動かした情熱。それを私に与えた美しさ君たちが失わぬ限り共にあろう』

 

「後悔させぬとは言えません。我らも、彼も、

 ただ自分らしくあろうとしているだけですからね」

 

 

『ふっ……君らはそれでいい』

 

 

 

■■■■■■

 

 

 

 プシュと缶を開ける音が響く。

 エコを考えるなら紙パックなりの素材の方がいいのだろうが、

 この雰囲気を大事にしてる所はポイントが高い。

 昔を思い出せるのがいい。昔というのはもちろん、前世なのだけど。

 缶を椅子においてその隣に自分が座る。

 

「昔、か……」

 

 こうして体験してみると前世を引き継いでいるというのは案外、良い事ではない。

 経験値とレベルそのままだけ年齢だけ若返ってやり直す、と考えると良い事に思える。

 でも、そんな甘いものじゃなかった。

 あの頃は当たり前だったものがない、というのは意外とストレスになる。

 慣れても、ふとした時にあの頃の名残を探してしまう。

 ある筈もないものを探してしまう。

 だからこそ、こういう場所は助かる。逃げ場所として最適だ。

 誰もが寝静まった空間でガラスの向こうの宇宙を見つめた。

 

 かつては宇宙に夢を見た。それは、昔も

 フリット・アスノという旗をかかげたあの時も、

 この宇宙の果てに何かがあると胸を弾ませた。

 だが、それもユリンを失い。フリットに癒えぬ悲しみを刻んだ時に。

 この世界の果てには憎しみしかないのだと、諦めてしまった。

 

 でも、フリットは乗り越えたのかもしれない。

 あるいは乗り越えようとしているのかもしれない。

 人の心を理解しきることはできない、だから数多のIFを考えて生きるしかない。

 フリットに恨まれてるのではないかという事すらも考えたことがある。

 

 人は弱い、それを自分自身で嫌というほど味わった。

 そして、これからも味わい続けるのだろう。

 ふと、気配を感じた。そちらを見ることはしない。誰かは分かる。

 

『フリットはね、自分の孫が天才だと気づいたんだって。

 だから、その子に色んなものを教えたって……そのせいで息子さんと喧嘩しちゃって』

 

「そら、そうだな……」

 

 

『うん……でも、フリットもただ復讐の道具にしたかった訳じゃないんだよ。

 愛してもいた。だから、死なない様に力を与えたかったんだと思う。

 そして、悩んで乗り越えた。自分の苦しみを誰かにぶつけてはいけないって』

 

 

「……耳が痛い話だよ。全く。でもその通りだと思う」

 

 

『優しいから目を背けられないんだね。

 自分の責任にするのをやめれば、きっと楽になれる。』

 

 

「それだけはやらない。俺は背負って生きていくよ。

 その上でいつか、憎しみを、自分を、許せたらいいと思う……」

 

 だから、それまでは戦い続ける。

 憎しみすら糧にして、矛盾した生き方だとしても

 魂安らげる場所は平和の中にしかないと理解している。

 

 

「あの……どなたと話していたんですか?」

 

「リッゾちゃんか。幽霊だよ」

 

「ぴゃ!?」

 

 ずざざと遠くに遠ざかる。背が伸びてきて美人になってきたのに、

 小学生ぐらいの背の頃の可愛さは動作にまだまだ残っている。

 

 

「まぁ、ライブレードの副作用というか、見えるんだな。

 そもそもそれに対する才能がなけりゃ多分、動かせなかったんだろうけど」

 

「あ、悪霊ですか!?」

 

 

「の時もあるな。今日は……妹、かな」

 

 

 もう誰もいないその場所に手を伸ばし、缶ジュースを口に含んだ。

 完全な合成ものなのか若干味は怪しいが、

 砂糖多めのドクターペッパー的なものと考えれば飲めなくはない。

 まぁ、気分が大事なのだしこの際、味は二の次でもいい。一気に飲み干し、空にした。

 

 そのまま、けんけんぱとゴミ箱に向かい缶を投入しリッゾちゃんの方を向き直す。

 

「……なんか浮かない顔してるね」

 

「その、妹さんの事を……悪霊と」

 

 

「あぁ、そりゃあ別に気にしてないよ。

 傍からみりゃやばい奴だもん。理解してていったなら起こるけど……」

 

 と、子供をあやす様に頭に手を載せようとして気づく。

 もうそんな背丈でも年齢でもないんだなと感じた。

 セラムさんほどでなくても、もう十分女性なのだ。

 そっと、手をずらし肩に手を置いた。

 

 

「そういう気持ち、優しさを大事にしてくれよな……それじゃあ、お休み」

 

 基地の部屋が割り振られているらしいが、

 正直、今は眠れる気がしないのでコックピットで寝よう。

 体はバキバキになりそうだがいつでも動ける。戦える

 そう思えば気持ちは楽だし、それが少しでも安眠をくれる気がする。

 だが、足が動かない。というか、袖を引っぱられている。

 

「どしたの?」

 

 

「あの、私、まだ地球人が怖いです! でも、昔より……

 その差別とか、偏見とか……そういうものはありません! 

 これから少しずつ失くせると思います……その、貴方の、シンさんのおかげです」

 

「……そうか、そういってくれるのはうれしいね。

 でもそれはリッゾちゃんがそうしようと努力をしたからだ」

 

「ありがとうございます。でも、切っ掛けをくれたのはシンさんだから、

 姫様を、私たちを助けてくれたのも……だから、私たちを頼ってください!」

 

 

「それは……」

 

 

 強い決意に満ちていた。瞳の奥にある確かな意思は確固たるものだ。

 冗談で返すことなど認めないというその思いが語る言葉はなんとなく、理解できた。

 

「ライブレードに乗る、って事か? リッゾちゃんも、セラムさんも。

 それは……いや、それだけは…………えっと……うっ…………」

 

 言葉が出てこない。

 断ればいいのに、言葉が出てこない。

 恐怖が首を絞めつけている。想像してしまった、2人の死を。

 

 

「か、考えとく!」

 

 

 袖を払い、走る。走る事しかできない。

 ある程度は鍛えているのに息切れが止まらない。心理的な乱れのせいだ。

 どうにもならない。急げ、急げ。

 

 

「きゃっ!」

 

 

「あ、ご、ごめん! ごめん! セラムさん、ごめん。ごめ……」

 

 

 あぁ、足が止まってしまった。膝がもう動かない。

 力が抜けて動かない。もう、ダメだ。

 

 

「もう、何も……失いたくないよぉ……」

 

 一人だから、ムチャもできた。生きるつもりではあるけど、

 それでも命を賭けて戦う事ができた。

 空いたままのパイロットシートは心の予防線だった。

 心の熱が冷めていき、疲労が体を包んで意識が遠のく。

 

「大丈夫……ね、そうよね? 」

 

 温かい。

 

「はい、姫様。シンさん、大丈夫ですよ……」

 

 温かい。

 

 

 きっと、冷たいのは俺だけ―――

 

 

 

 





前置きが長くなる。

今までは進行の為に切り刻んだ要素を入れる故の鈍足さ。
需要はなくとも、俺にはいる。いります!

愛を抱いて、勇気と共に。毎日ヴェイガンを焼こうぜ?


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クロス・プラーナ

誤字報告ありがとうございます。

ーとか完全に見逃してましたわ……


 

 基地の作戦室に全員が集まっている。

 エヴァパイロットは此処から移動すると、軍に狙われる可能性があるため、

 戦力として使う事はできないが、一応、参加していた。

 シンは腕を組み誰と目を合わす事無く目を伏せている。

 今は何も考えたくないとそうやって殻にこもっているようにも見える。

 

 

「当初の予定としてはテスラ=ライヒ研究所で

 プリベンターの部隊と合流する予定だった……でも研究所と連絡が取れないと」

 

 

「ええ。私は正直、経験が少ない。何かのトラブルという事にして降下するか、

 すでに制圧済であると考えルートを変更するか、

 率直に意見をお聞かせください、葛城ミサト一佐」

 

 アセイラム姫がミサトにそう投げかけると、

 ミサトは少し考えた後にモニターに2つの場所を表示した。

 

 

 

「北米コロラドにあるオーバーテクノロジーの総合研究機関。通称は「テスラ研」

 世界有数の研究機関であり特機の製造場所でもあるここですが、最近までは

 その独自性を保っていました。それは、異星人の持つ超技術……

 EOTを深く理解している唯一の機関であることが大きかったのですが……この感じだと」

 

 

「ティターンズに制圧されたと?」

 

 

「あるいは、別の何かかに。異星人か地下勢力か。

 通信が故障したなら代わりにすでの別の手段を取っている筈です。しかしそれもない。

 そうなると、一番安全な場所はオーブ連合首長国だったのですが……」

 

 アナハイムとオーブに×をつけるミサト。

 

 

「オーブ連合首長国は首都の壊滅と同時に解散。

 モルゲンレーテはブルーコスモスの管理下に置かれています。

 そうなると、プリベンターの合流を視野に入れるところですがそれも今は無理でしょう」

 

 バルマー戦役のメンバーがモニターに次々と映し出される。

 その中のメンバーに次々に×マークが張り付く。

 

「コンバトラー、ボルテスメンバーは半数ずつ分けられ、

 各マシンは動力を外された状態で管理。アムロ・レイ大尉、ブライト・ノア大佐

 などの中核メンバーはそれぞれ分けて管理されるなど徹底した監視下にあります」

 

 これはプリベンダーからもたらされた最新の情報です、と前置きしミサトは結論を述べる。

 

「プリベンダーは当初、ロンド・ベルメンバーを解放することで、

 ティータンズに対抗するためにロンド・ベルを再編する事を目指していた筈ですが

 現状ではそれはほぼ100%と言い切っていいほど不可能なはずです。そうなれば……」

 

 

「別の組織を作るしかないと?」

 

 

「そうです。そうなると現状、最適なのは……そうですね。

 例えば、ミスリルとの接触になるでしょう。しかし秘密主義の傭兵組織故に……」

 

 

「なら、俺が行く」

 

 

 すっと手をあげたシンは言い出すか悩んでいるのか、言い淀んだ後に言葉を紡いだ。

 

 

「知り合いが所属している。おそらく、いるだろう場所も分かる。

 ただ、アイツは自分なりに日常を楽しんでもいる。だから単独での行動を希望したい」

 

 

 ■■■■■

 

 

 

『計算上はエルゴフォームの重力操作を応用すれば突入は可能になるわ。

 ただ、ゆっくりと降下する事になるわけだから無論、無防備。降りる場所を考えねば」

 

「軌道エレベータは見張られてるだろうし、さてどうするか……てか、なんだその姿は」

 

 メイド服と巫女服の中間の様なオフショルダーの服。

 瞳は闇を象徴するかのような透き通った紫眼。

 そして、長い髪を巻いたツインテールが腰まで伸びている。

 ライブレード自体であり、ライブレードに宿る人工精霊が考えた自分の姿らしい。

 

「なんで銀髪なんだよ」

 

 

『そこ!? いや、それはあなたがあの金髪のお嬢さんが苦手そうだったから』

 

 

「苦手な訳じゃない……セラムさんも、リッゾちゃんも距離がわからねぇんだよ」

 

 

 ゆらゆらとするホログラムの額を指ではじくと、額にバッテンマークの古めかしい、

 ばんそうこうの様なマークが浮かぶ。個性豊かな精霊だとシンは思った。

 

「名前は? ライブレードでいいのか?」

 

『それでもいいけど、この子にはこの子だけの名前があった方がいいと思うのよね。

 ほら、元は私が入ってた訳じゃないしだからルイス・キャロルからとって

 キャロル、なんてどうかな。って思うの! キャロル・ヴォルクルス』

 

「ヴォルクルス、なんか見た覚えが」

 

 

『サイバスター乗ってる人たちの敵の教団の名前。カッコいいから! はい、登録」

 

 

「あ~~~いけません! いけませんよ! 絶対後で面倒な事になる。悔い改めて†」

 

 

 面倒なロボになってしまったなぁ、と思いながら、

 空間に投影されたモニターの降下予定ポイントを選択する。

 ティターンズの警備の穴をつけるポイントはわりと少ないので選択肢は少ない。

 いずれも予定の都立陣代高校までは距離がある。

 

 

「……すぐ近くに高速道路があるここにするか。

 説明受けたけど確か偽装できるんだろ、車に」

 

 

『Fでもいいかもね。大島の近くに降りるから』

 

 

「んじゃ、CとFで都立陣代高校までの所要時間を教えてくれ……

 って、そんなSiriさんよろしく、みたいなの無理かぁー」

 

 

『それがなんなのか分からないけど流石に簡易シミュレーションぐらいはできるわよ。

 起こりうるトラブルを組み込むとかぐらいならできるわよ。どうする?」

 

 

「え、できるんだ? すげー。んじゃ、その通り頼む」

 

 

『30分になります』

 

 

「なっが……頑張ってね」

 

 

 なう~ろ~どと吹き出しが張り付いた相棒のホログラムをささっと端に動かすと、

 シンは腕を頭の後ろで組んで寝転がった。まぁ、昨日はよくは寝れたのだが。

 でも心的ショックの気絶に近いので体力の回復具合としてはいまいちである。

 

 

 

「……寝るかぁ?」

 

 

「話そうと思ってきたのに、そうされると困るよ」

 

 

「スレインか、久しぶりだな」

 

 

 コックピットによじのぼってきたスレインは、軽く拳を突き出すと、

 シンはそれに応えて拳を突き合わせた。

 

「もっと早く来ようと思ったんだけど、アセイラムちゃんを見てて遅れてしまった。

 火星の鎮圧に失敗してプロバカンダとして二期が始まったんだ。今度はレインくんと

 いって、僕にそっくりなんだ……今度こそは真実を告げてほしい、地球よ!!」

 

 

「立派なアニオタに育ってやがる」

 

 

「リュウセイくんとは定期的に実況をしていたよ」

 

 

「染まったなぁ、スレイン。いや、垢抜けしたなって褒めた方がいいのかぁ」

 

 

 そんな事を言ってる間にコックピットに上がり、複座に座る。

 水晶に触ったり、機器を少し触っているかのようだ。

 

 

「……やはり、動かないか」

 

 

「受け取った情報の整理ぐらいはできるらしいぞ。まぁ、そんぐらい。

 で、どうしたスレイン? 一応、出撃はこれ待ちだからまだ余裕はあるけど」

 

「色々言いたい事がある。なんで起きたのを教えてくれなかったとか、

 皆を助けてくれてありがとうとか、いなほに連絡しないの?とかね。

 でも一番言いたい事は察してくれてると思うんだけど、どうだろう?」

 

 

 シンは険しい顔を浮かべ、振り返るとスレインを睨みつける。

 

 

「……ライブレードに乗せる気はない。

 姫様も侍女も火星の重要人物だろ……あぶねぇってわかるだろ」

 

 

「なら、君が守ればいい。ライブレードの本来の運用を考えるなら、

 ソロで動かしている今の方がおかしいのはわかる筈だ……」

 

 正論が多用されないのは、鋭利で鋭く、それでいて確実に相手に効くものだからだ。

 故に議論の場においてはそれを容易て論破を気取るのはタブーにされているが、

 この場はそんなものが関係ない。

 

 

「もう、仲よくなった奴を失いたくない……」

 

 

「誰もが戦場にいる以上死ぬんだ。

 君はその言葉を殺した相手にも言うのか? いいか……」

 

 

 スレインはシンの肩を掴んだ。

 冷え切ったその体に生気を、熱を吹き込む様に。

 

 

「火星の重要人物だからなんて関係ない。

 本人が望み、戦おうとしている。なら、止めないでくれ

 彼女も、姫様も、後悔をしないで生きたいだけなんだ。君なら分かるだろう?」

 

 

「……そう、だな」

 

 

 分かる。自分もそれだけを胸に抱いて生きてきた。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 道路を走るトラックが1台ある。

 通行スピードを護りながら動くが、それに違和感があるのはブレーキと

 コーナリングの素早さだ。重量があるトラックと思えないその違和感は

 注視すれば一目瞭然だが街中でそんなことを気にする人間はいないだろう。

 そう考えると、ホログラムの激しい動きに追従しきれないというハンデは、

 機動ロボット戦闘以外ではさほどデメリットにはならないのかもしれない。

 

 

「……妙だな」

 

 

「どうかしたんですか?」

 

 シンの呟きに隣のアセイラムが反応する。

 

 現在、シンたちは分離した下半身部分が変形したもの。

 R・アタッカーで道路を走行している。変形の都合でコックピットが変形し、

 前後方の2か所だったコックピットが隣り合う形になっている。

 

 ホログラムにより大型トラックにみえている筈のそれは、

 実際、直上部にある砲門が見えるので明らかに普通の車ではない。

 ないのだが、火星のホログラム技術は有能だ。砲塔が火を吹かない限りは、

 しっかりとカモフラージュしてくれる事であろう。 

 

 シンはトントンと手を置いている機体操作用の水晶を叩きながら、考える。

 そして、広域電波でラジオを聴こうと手を伸ばしてそれが自分の場所からできない事を、

 思い出し、隣のアセイラムにそのまま声をかけた。

 

「電波の受信感度をあげてくれ。タッチモニターの左の……」

 

 

「マニュアルは読んでいます。これですね」

 

 

「(読み込んでるのか……準備してたな)少しずつ上にあげていってくれ

  それで受信できなきゃ、そういう事でいいと思う…………さて、どうなる」

  

「上げました」

 

 

「どこまで?」

 

 

「えっと、一番上です」

 

 シンは眉を顰める。ラジオ電波が入っていないからだ。

 

 

「R・ディフェンダーに連絡。ECMの状態も確認してくれ」

 

 

「駄目ですね。返答がないというか不通で通信が切れます。

 ECMセンサーによる反応はありません。妨害電波は検出されていませんが……」

 

「……教官のマニュアルを思い出せ……

 ECMじゃない、おそらく、機器の故障ではない。

 他の電波が入ってきてないから電波干渉でもない……太陽フレアか。まずいな」

 

 

 シンは立ち上がって、上部についた機器のトグルスイッチを入れて、すぐに着席する。

 

 

「今のは?」

 

「こっちは独立した装置。アナログメインで詰め込んで貰った。避難信号用ライトとかな。

 スモークは左から今の奴、注意、安全確保。接触式振動感知に、

 設備類はここからここまで。ここからがライトで……まぁ、いいか。全部入れとこ。

 赤・黄のスモークを飛ばした。古典的だし、少し時間はかかるが空のアイツには伝わる筈」

 

「で、ですが太陽フレアによる電波障害なのでしょう?」

 

「X28 3B等級。この辺で広域的な障害が出るし実例があるこれはマニュアルにもあって、

 あるいはそれ以上の状態と考えるなら衛星通信系はしばらくどうにもならない。

 流石に機動兵器やジャマーがあるASなんかは対応してるけど電話中絶対通じない」

 

「格好の機会、であると?」

 

「これを俺はピンチと捉えるがチャンスと捉える奴もいると思う。今の地球ならな……

 セラムさん。ノーマルスーツを着たままでいてくれ。

 このレベルだと健康的な問題が出てくる可能性がある」

 

 

 シンはスピードを上げた。

 少しでも被害が少ない状況ならばいいが無理かもしれない。

 

 

 ■■■■■

 

 

「宗介、ずっと上をバンバン叩いてるけどどうなの?」

 

「問題ない。学校の地下施設は軍管轄の施設だ。

 確かに後付けの施設ではあるが設計思想自体はしっかりしたものだ。

 俺がかつて校舎を覆った装甲より強固だ。

 籠城ならあと1時間……いや、最低でも30分は持つ。いなほ、どうだ?」

 

「ECM反応はない。天体観測部の観測記録から考えた結論だけど……

 太陽フレアだろうね。前の学校なら海底ケーブルで直通回線があったんだけど

 とりあえず、カタクラフトのホットスタートの準備をするよ。2機とも」

 

 そういってコックピットに乗り込んでいくいなほ。

 

「それって、最終手段じゃんいなほ~!」

 

 

 その要素を見ながら、ショットカットの網文韻子(あみふみいんこ)は涙目で絶叫した。

 

「くそ~、戻ってきてそうそうこれかよぉーーー!」

 

 

「そうはいって1年ぐらいは平和だったけどね……」

 

 

作業着を着たカーム・クラフトマンのボヤキに

箕国起助(みくにおきすけ)が苦笑いを浮かべながらそういった。

 

 

「ぼやくな、ぼやくな……祭陽、詰城、どうだ!」

 

 

「通信はダメですが、非常灯でSOSサインを出してます。

 ただ、日中ですし援軍が来てくれること前提ですね……くそぉ、アナログだなぁ」

 

 教官である鞠戸孝一郎にそう返答すると、

 祭陽希咲(まつりびきさき)は茶髪を苛立たし気に掻いた。

 

「集音の結果、ぐるっと囲まれてますね。どうします?」

 

 

 諦観混じりの詰城祐太朗はメガネを拭きながらそう問いかける。

 

「相手は人型のASだ。どうするもこうするも逃げ場がねぇよ。

 とりあえず、武装とチョッキぐらいは着とけ。どうなるかわからんけどな」

 

「でも可愛くないし……」

 

「余裕ですねぇ!?」

 

 

 ニーナ・クラインのそんな言葉に思わず声を荒げて驚く鞠戸。

 だが、余裕があるものが多いのは助かると彼は思った。

 一度、戦火を間接的に経験した事がその切っ掛けになっているのなら、

 あの戦争も無駄ではなかった、そう信じたい。

 

「教官、セントールユニットに脚部を換装しましょう。

 多重車輪の馬力で人員運搬用のソールユニットで一気にここにいる人たちを運ぶ。

 これしかないと思います……どのくらいかかる?」

 

 

「いなほ、お前……俺しかここの機材を使える整備士がいねぇ。

 30……いや、20分くれ。それでなんとかする!」

 

「……わかった、それでいくぞ! カーム、急げ!」

 

 

「ねぇ、でも……狙われてるのって千鳥さんだったよね。彼女を差し出せば」

 

 誰かが呟いたその言葉に、一斉に視線が集まった。

 

「馬鹿野郎! 奴らが集めてるサンプルってのはこいつ能力だけじゃねぇ。

 一人の為だけに街中にあんなものばらまくわけねぇだろ! 

 何より、避難中にこの街を平らにしようとしてた奴がいるっての忘れてねぇよな!」

 

 鞠戸の一喝で静寂を取り戻す生徒たち。

 だが、それはある意味。助かる方法があるかもしれないという希望を打ち砕いた。

 それは鞠戸にもわかっている。最後の心の防衛線が崩れた以上に、早急な対処が必要だ。

 

「……全員、ソールユニットへ移動開始。

 シートベルトなんて上等なもんはない。それこそ難民を詰め込んだコンテナに近い。

 だが、安心しろ! 緩衝構造だからトランポリンとでも思え。 相良!」

 

「はっ、大尉殿」

 

「カタクラフトはもう1機あるがケガ人のお前は乗せられない」

 

「だが、かすり傷です! AS以外もカタクラフトの操縦も今は理解して……」

 

「治療の終わったお前のクラスメイトは先に寝かしてある。そいつらを護れ。命令だ」

 

 

「なっ……いえ、了解」

 

 

 増設避難用耐衝運搬コンテナ、『ソールユニット』

 トラックとは違い、丸みを帯びた巨大なコンテナは馬車を想起させる。

 しかし、入口の先はハニカム構造になっており、一つの区画ごとに5名ずつ収容する。

 全大戦、街中での戦いになることも多かった所から、

 多くの避難民を一度に陸上から別の場所に移動するために制作された。

 

 

(何人入るんだったかな……まぁ、こっちの学校に復帰した奴は全員ではないし足りるか)

 

 そこに続々と乗り込んでいく生徒を見下ろしながら、鞠戸は悩んでいた。

 逃亡がうまくいったとして逃げる場所がない。

 最寄りの基地は県境を越える必要が出てくるが、援護もなくたどり着ける可能性は低い。

 フォールド通信が使えればよかったのだが、

 学校に急遽増築された仮設の地下倉庫兼実習室にそんな上等なものはない。

 

「教官、アレイオンの方のホットスタートは終わってます」

 

「あぁ、わるいな。いなほ、お前は避難を優先しろ。

 戦闘は全て俺が行う……姉貴の事があるからって俺が倒れても助けにくるなよ」

 

 

「……わかりました。でも弱気にならず女神の加護を信じてみてはどうですか?」

 

 

「怠惰でも女神は女神ってか。悪くないね、そうしよう」

 

 

 アレイオン乗り込み、操縦桿を握る。

 

「リフト起動! 第2搬入口から出るぞ! 

 あいつらは校庭の第1に釘付けだ! それで時間を少し稼げる」

 

「了解、リフト起動。アレイオンを先頭にして稼働」

 

 

 いなほの操作により、機体が出口へ向かっていく。

 前回の襲撃の後、ソールユニットや機材を運び込むために増設された出口。

 その場所を知るのは受け取りを行っていたいなほと教官だけ。

 してやったりとわずかな優越感を感じながらも鞠戸はそれ以上の焦燥感か、あるいは勘に

 突き動かされるかの様に反射的にアレイオンの携帯する武器の安全装置を外した。

 先行し上昇していくリフト。開いた扉の先には青い空が広がっている。

 

「あぁ……」

 

 鞠戸は安心した。

 そして、リフトが上がり切り機体が外に出た。

 

 

「あっ……?」

 

 安心してしまった。

 だからこそ、自分の周りに広がる光景に硬直してしまった。

 アラストル、アマルガムの小型機動兵器。対人用に作られたASであるが

 電波不通の状況では設定されたプログラムによって動作している。

 だからこそ、鞠戸は安心していた。”機械など欺けると”

 

(まさか……)

 

 先ほどのあれは攻撃ではなく、反響より基地の規模と通路の有無を確認していたのでは。

 

(まさか……)

 

 そして、それによって逃げ場所を想定して待機していた。

 校庭を覆っていたものより数は少ないがそれでも20機以上だ。

 

 限界状況で加速される思考の中で鞠戸は悟った。

 高等な判断は不可能だとしてもデータリンク機能を有していたとしたらどうだ。

 長距離は不可能でもなんらかの短距離なら通信は可能な筈。それにより、

 学習である程度の作戦の方向転換も可能だとすれば、あの一体、一体、

 どれもが指揮官となりうる。だとすれば……この展開は可能だ。

 

「悪いな、覚悟は決めなきゃならねぇ」

 

 首から下げた指輪を握って、鞠戸は独りごちた。

 とびかかってこようとするアラストルに銃を向ける。

 1体でも道ずれにするために。しかし……敵はいつまでたっても自分に向かってこない。

 

 否、とびかかってきたすべてが引っかかる様に空中で静止していた。

 注視すると機体の周囲を覆う様に、波紋を発する壁がある。

 それは、自分の上にいる戦闘機が発するものだった。

 

「これは……!?」

 

 

『簡易プロテクトフィールドはそんなに長持ちしないのでさっさと排除をお願いします』

 

 

「いや、そんなこといったって! あの小型ASの機動力はばか高い!」

 

 

『あー、いえいえ。教官殿ではなくて、うちの人に言ってるんです』

 

 瞬間、紫の光芒が敵に向かって降り注ぐ。

 光の先にはトラックが一台。いや、攻撃と共に揺れ動くその姿の先には

 2門の砲塔を担いだ鉄の壁を思わせるような強固な姿の何かがいる。

 

 

『よーし、good。ぐっぼーい!

 さてさて、後続が控えてるんですし早く降りたらどうです?』

 

「お、おう」

 

 せかされる様に降りるとリフトが下降をはじめ、すぐに後続のいなほの機体、

 ソールユニットを装着したアレイオンが上昇してくる。

 

『でわでわ、状況の説明を手短にお願いできますか?』

 

 

「うちの学校の千鳥が狙われ、対抗した相良が負けてアーバレストは大破。

 地下に逃げ込み、逃げ出したが分散してある出口の一つを包囲されてこのざまだ。

 データリンクが生きてるなら相良を負かしたやつもすぐに駆け付ける筈だ……どうする?」

 

 

『……ふむ、了解しました。こちらで対処します

 貴方たちは私たちが足止めしている間に川崎方面へ向かってください』

 

 

「襲撃が限定的なものなのか、限定的なものであるなら情報を拡散し

 すぐにその情報を共有するために、だね?」

 

『そうです。なので急いでください、いなほくん。もう来ました』

 

 

「? なんで僕の名前を……」

 

 

『行きなさい、早く!!』

 

 

 2機の脇をすり抜けるように放たれる砲撃。

 それが数百メートル先で銀色の機体にはじかれる。

 同時に偽装を解除してR・アタッカーが飛び込んでくる。

 

 

「合体して、突撃する! エルゴフォーム展開!」

 

『了解!』

 

 

 ホバーで浮き上がったG・アタッカーが展開した重力フィールドに、

 G・ディフェンダーが飛び込む。推力の補助とバリアフィールドの形成に使われていた、

 ステルスガオーのエンジンが格納されていた腕部に押し出される。

 エンジン部から回転しながら拳が突き出てくると同時に、

 ボディに収まっていた頭部が持ち上がり、上半身が完成する。

 そこにG・アタッカーがドッキングし、砲塔が背中の線を通って移動し、

 担ぐように装着。同時にドッキング部の前方が開いた後に1回転し、脚部が完成する。

 

 コックピットがG・ディフェンダーの内部に移動。

 通常の前方、後方の形に変形した。

 

『全動力、稼働確認』

 

 

 

 アイカメラが光り輝き、体に走る緑のラインが走ると共に白いボディが深紅に染まる。

 その姿は血に染まった呪われた機体にこそ見えるがまさしく……

 

 

「ライ、ブレード……」

 

 

 いなほが絞り出すような声で呟く。

 

 

「いくぞぉおおおお!! レナードォオオオ!」

 

 

 深紅と銀の機体が衝突した。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「共振!? マサキ・ヒノ!! お前もまたウィスパードだというのか!」

 

 

「悪いが俺はただの盗人みたいなもんだ。お前の能力を劣化して写しとった」

 

 

「……! 驚異的だな。そうはいうがその範囲がすべてに及ぶなら、

 頂点的な能力ともいえる! オムニ・スフィアにそこまでの力があるのか……」

 

 

「あるいは、その外かもな……」

 

 

 

「そこまでの力があるならば、やはりかなめを確保したい」

 

 

 さらに力を強くなる推力に一瞬押し負けるライブレード。

 

 

「くそ、体格はこっちが上なのに押し負けてるぞ。化け物か!

 このままじゃ押し切られるぞ! まだ時間稼ぎにもなってねえのに!」

 

 

『化け物よ! 実際、まだ底が見えてないのよ!

 プラーナコンバータの出力を上げなさい!!」

 

 

 ライブレードのスペックを十全に発揮するならば、それしかない。

 そうすれば、補助動力で機体の力を補うのではなく、機体のスペックに上乗せできる。

 だが、それは危険を伴う事をシンは理解している。

 

 

「……ハーフ、ハーフ。25%でいくぞ!」

 

「いえ、最大で行きましょう。開始します」

 

 

 アセイラム姫が動力調整を開始する。

 

 

『ばっ、馬鹿なの!?』

 

「やめろ、セラムさん! 危険だぞ!」

 

 

「覚悟をして、ここに乗っています。

 それが王族として無責任だと思われようとも、

 玉座に胡坐をかき無味乾燥な感情で地球が荒廃するのを放置するつもりはありません」

 

 

「だが!」

 

 

「シンさん。1度だけ聞きます」

 

 

 振り返ったシンに向かってアセイラムは真剣にそれを見つめ返した。

 

 

「私はあなたを信じています。貴方は……私を信じてくれますか?」

 

 

 それは少し控えめな言い方だった。本人に自信がなかったのかもしれない。

 事実、瞳が不安で揺れている。どうすればいいか、考える時間はない。

 いや……決断というのはいつだってそうなのだ。

 ただ、心の中にあるものに従う。それだけの時間しか残されない。

 だから、いつだってその時は正しい……

 

 

「出力全開!」

 

 

「了解、出力全開!」

 

 

『馬鹿が2人ぃーーー!』

 

 

「いいから、お前はなんとかアイツを少しでいいから弾き飛ばせキャロル!!」

 

 

『あぁあーーー! もう、砲塔を最大出力で使うわよ。壊れても文句言わないでよね!』

 

 

 相手の足止めに使われていた前方に展開されたエルゴフォームを解除。

 グラヴィトンライフルが最大出力で射出される。

 当然、ラムダドライバによって防がれ続けているし、

 その中でベリアルは進行を続けている。

 

 

「俺ら2人を繋ぐものがあるとしたら、それはなんだろうなセラムさん。

 あの時、3人で感じたのはなんだったんだろう……」

 

 

「分かりません。でも、特別な繋がりがあると私たちは信じていた。

 衝動的な行動で危険を冒してしまいましたけどね。でも、私たちは自分の心を信じた」

 

 

「そうか、なら……俺もしたがおう!」

 

 

 心が折り重なり、幾重にも強固になっていくのを感じた。

 そして、何をすればいいのかも理解する前に分かる。

  

 背中の1対の翼が外れ、両腕部に装着される。

 膨大なエネルギーがそこに流れ込み、真っ赤に輝いた。解放の時を求める様に。

 ライブレードがベリアルに向けて両腕を突き出す。

 

 

「「真ゼイフォニック・ヴァース・レイ」」

 

 極大のビームが放たれる。

 ベリアルを巻き込みながら、空に浮かぶ雲すら消し飛ばし尽くして突き進んでいく。

 やがて、エネルギーの放出が収まると蒼天だけが彼らを見下ろしていた。

 

 

「……驚いた、精神の消費は3分の1って所だ……嘘だろ」

 

 

『私の力を十全に使えればこんなものよ!(震え声)】

 

 

「お前、絶対だめだと思ってたろ……」

 

 

『いや、だって心をリンクさせるには……ねぇ?』

 

 

 ホログラムがアセイラムを見つめるが、金髪の少女は少し恥ずかしそうに、

 口元に指をあてている。それを見てキャロルは頭を……

 ホログラムなので映像なのだが、掻いた後に頷いた。

 

 

「……ラムダドライバ―を十全に発揮できてるなら生きてる。

 精々、一時的なオーバーヒートに持ち込んだぐらいだ、俺らも逃げるぞ……セラムさん」

 

「はい?」

 

 

「悪い、助かった……

 もう言わないよ、乗るなって。セラムさんにも、リッゾちゃんにも。

 あるんだな、どんなに頑張っても一人じゃできないことってさ……」

 

 無力を痛感したかのように、神妙な顔つきのシンの顔を見て、アセイラムは笑う。

 

 

「私は、貴方がそれを心から理解できたのが今回の収穫です」

 

「え、なんで?」

 

「これなら、もう一人で出て行って。死ぬなんて事はなさそうですからね」

 

 

 その言葉に、シンはバツが悪そうに眼をそらした。

 

 





OGの時間軸を外伝として進行して
一区切りすると思います。ちょこちょこやって終わらせるつもりですが
エターしたら申し訳ありません。
努力はしますが完結するという明言はできません。

ただ、OGのあたりで一先ずのオチはつけたいなとも考えています


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幕間 インターミッション3 『先行く道』

ガバSF考察&考察

猫と話しながら2秒で考えました。許し亭許して


 

 トゥアハー・デ・ダナンから連絡が来たのは県境の基地についてすぐだった。

 というよりも、基地に潜り込んでいるものがおり彼を通じて連絡が来たのだ。 

 シンたちは、避難民を基地に預けると連邦の補給戦艦にカモフラージュして

 降下してきたデューカリオンへ搭乗し、それがバレる前にその場を後にした。

 道中、アーバレストのAIブロックを回収しメリダ島の座標に向かった。

 シンたちはそこで合流し、今後の戦略会議を行う事になった。

 

 

「ハガネ、クロガネ、ヒリュウ改。スペースノア級万能戦闘母艦か……」

 

 

「と、いうのはなんなのですか?」

 

 

 調整を協力していたエデルリッゾが後部席から乗り出して問いかける。

 シンは俺も聞きかじりだから、と前振りをしてから3つの母艦の画像を表示してから。

 そのホログラムを背後に流して、エデルリッゾの前に表示した。

 

 

「EOTを用いて建造された万能戦艦。

 外宇宙航行だけでなく大気圏内の飛行、水中潜行を可能とする。

 いわば、小型のマクロスって所だな。これれでどれだけのものかイメージはつくだろ」

 

 

「わぁ……デューカリオンが見落とりしてしまいます……」

 

 

 まぁ、戦闘指揮所が存在しない所も似てるしデューカリオンを建造したデータを流用してると思う。

 ともかく、すげぇ戦艦が3つあり。そこに駐留する部隊も到着してるって所だな。

 

 

「なるほど、無敵ですね」

 

「あー、まぁ、そうだな。実際、奪われかけたメリダ島を防衛してくれたともいってるし、

 アマルガムに対抗できるならそうとも言えるかもしれない……よし、調整完了。データは」

 

 

『クロスプラーナにより、消費効率は6分の1に低下。コスモなんちゃら~!を

 使っても十分な戦闘能力は発揮できそうよ。でも、今回は休息を薦めるわ」

 

 

「だな、流石にな……戦闘後から休んでない。

 俺もかーーー!寝てねぇわ!の時代は終わったわ。素直に疲れてしんどい」

 

 

 動力とシステムを落として立ち上がる。エデルリッゾがあわててかけより、

 からだを支える様にした。シンがなんとも倒れているのでトラウマがあるのだろう。

 まぁ、今となってはそれはないのだろうが疲れているのは確かなので少し体重を預けて立ち上がった。

 

 整備用リフトに乗り、2人で地面に降りたと、男性が敬礼をして待ち構えている。

 

「テツヤ・オノデラ大尉だ。マサキ・ヒノか?」

 

 

「違います! マコト・ゼファー・ヒノ侯爵です!」

 

 

「こ、こうしゃ……?」

 

 

「あ、いえいえいえ!! あってますあってます! なんでありましょうか、大尉殿!」

 

 

「いや、敬語はいい。これより作戦会議がある。すまないが出頭をしてもらいたい。

 のだが、君は作戦指揮の範疇に組み込まれてないので命令権がない。君が決めてくれ」

 

 

「いえ、参加します。参加者は?」

 

 

「各艦長、テスタロッサ大佐、彼女の友人、基地から数名……

 それから、アドバイザーとしてシュウ・シラカワ博士だ。

 内容については各員にストリーミング配信される。太陽フレアによる障害も回復しているからな」

 

 

「分かりました。では、この子も同席させてください。パートナーでして」

 

 

「ほう……?」

 

 

「あ、そういうわけではなく!!」

 

 

「いえ、そういうわけです!!」

 

 

「誤解されるでしょ!!!」

 

 

■■■■■

 

 

 

「アイツは時空振動弾を完成させる、と言っていたわ」

 

 

「時空振動弾……?」

 

 

「マコトさん、私たちと共振してください。それで情報を共有できる筈です

 カナメさんの許可は取り付けてあります。」

 

 

「あ、はい」

 

 

 男や敵だったら、ホイホイ勝手にするのだが女性相手だと申し訳なさが先に来る。

 同調能力というのは、便利なものではない。使えば相手にバレるし煽りにもなる。 

 能力質は劣化するし、上回る事はない。だから、結局は自分次第になる。

 チートの様で便利能力という枠組みでしかないそれは、輝くは時と場合によるとしかいえない。

 非常に不安定なものな上に勝手に作動する時もある。

 

「…………あ、なるほど」

 

 

「すまない。早速だが説明をしてもらえるか?」

 

 

 髭を蓄えた歴戦の風貌を漂わせるダイテツ・ミナセが口を開く。

 テッサに目配りをした後に、カナメはうなずいた。

 

 

「あらゆる物を別の時空へ飛ばすことで消滅させる兵器。

 ABCに次ぐ、D。ディメンジョン。つまり次元干渉兵器よ」

 

 

「あ、あの……全く予想ができないのですが」

 

 遠慮がちにヒリュウ改のレフィーナ・エンフィールドがそう口をはさむ。

 といってもおそらく、多くの人間の代弁でもあるのは間違いない。

 

 

「シンさん、私はかみ砕いて説明するのが苦手です。

 補強はするのでお願いできませんか。今は理解できている筈です」

 

 

「ん? あぁ、分かった……そうだな」

 

 

 パンと手を叩き開くと、球体が出現した。

 空間モニターに浮かんだそれに地という文字を書く。

 

 

「俺たちの世界は3次元空間だ。じゃあ、3次元ってのはなんだって話だよな。

 3次元は4次元という箱に収まった、あるいは4次元という紙に描かれた存在なんだな。

 まぁ、いうなれば時空振動弾は消しゴムか」

 

 

「えぇ、4次元という箱に干渉し、削り取る。

 それによって3次元を部分的に消し去る。防ぐことができない兵器です」

 

 

 シュウ・シラカワがほう、と興味深そうにうなずく。

 

 

「グランゾンですら対抗できないでしょうねぇ……興味深い」

 

 

 その言葉に レーツェル・ファインシュメッカーが動揺をサングラスの下に浮かばせる。

 

 

「シラカワ博士でも、ですか?」

 

「えぇ、グランゾンは時空を移動できます。最大出力なら平行世界移動も可能かもしれません。

 ですが、これはいわば……過ぎ去った過去という時間も含めて平行世界、3次元だからです」

 

 

 シュウ・シラカワが指で線を引く。

 

 

 

「時空というのはかつて、連続体として考えられていましたし、SF作品でもそういう扱いが多かった」

 

 

 4番目の次元である「時間」という箱と3次元とかかれた紙を一まとめにして、

 4次元という箱をホログラムで作り出すシュウ。

 しかしかれはそれをバン!と破壊する。

 

 

「しかし、そうなるとグランゾンの存在も、その能力も成立しないのです。

 量子力学が語る世界像は重なり合う様に、複数の過去と未来が成立している。

 つまり、世界の構造という意味ではこちらの方が正しいといえるでしょう」

 

 

「えーと、なんだろな。俺も理解はしてるけど頭が微妙だから解説が……

 ストップモーションをかんがえるとわかりやすかもしれない。

 あれは動画だけど実際は1コマ1コマが切り取られた写真だろ」

 

 

「なんとなくイメージができた。つまり、時間という存在は我の主観としてでしか存在せず、

 常に我らは別の世界へ動き続けている、という解釈でいいのだろうか?」

 

 

「あ、うん。多分その認識であっていると思う。えーと」

 

 

「クルーゾだ。では、我らを導いているのはなんなのだ?」

 

 

「んー……多分、動画でいえば編集者。この場合でいえば因果律。

 というものだと思う。ただ、俺らには考えがあって意思がある。だから、ある程度道が歪む」

 

 

「だからこそ」

 

 

 シュウ・シラカワは引いていて線に上下させて波の様にする。

 

 

「我らの世界はある程度の余裕、たわみがあるという訳です。

 ですが同時にその余裕を作るためにエネルギーは消費され、

 やがて宇宙は終焉を迎える。まぁ、この辺はいいでしょう。今回、大事な事は一つ。彼の目的」

 

 

 

「……兄は、世界全てを破壊する気なのだと思います。

 3次元、つまり平行世界を含めて。そういう人です。寂しがりやなのですよ」

 

 

「世界そのものを巻き込まれても困るのだがな……」

 

 

「でも、そう思うような生き方を与えてしまったのもこの世界なのではないでしょうか?」

 

 

 レーツェルの呟きに、レフィーナがそう返した。

 そういわれては何も言えないと、思ったのかレーツェルは「そうかもしれない」とだけ口に出した。

 

 

「壮大な自殺か。理解はできん。だが、否定もできんよ。

 我らは今、こうして脅威に晒されながらも人類で争っているのだからな。だが……未来はある」

 

 

 ダイテツの瞳にははっきりとした意思がある。

 本当に未来を信じているのだろう。

 

 

「夢想家と言われようと私は人類を信じる。

 だからこそ、我らはこの苦境を打破せねばならぬ。そうだろう?」

 

 

 その言葉に一同はうなずいた。しかしその中でシンだけが別の事を考えていた。

 

 

(なら、オムニスフィアに干渉して4次元という箱を部分的に弄れないか?)

 

 

 消せるのではないだろうか、この力に災いを振り舞く。

 無限の力、それ自体を…………

 

 

 

 だが、世界のすべてをかけた博打になりかねないそれを、

 行えるかというとシンには自信がなかった。

 

 脳裏に浮かぶのは仲間たちやいなほたち、フリットたちの様な友人。

 そして、二人の少女の姿。

 

 

 

(だが、決定打はこれしかない気がする。

 くそ、何か他にあればな……何か……)

 

 

 選択の時は徐々に近づいていた……



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幕間 インターミッション4 『悩むホワッツ・ゴーイン・オン』


箸休めをしたくなったので緩い話を書く

本来は5万文字ぐらいで短編にしてポポポンと置きたいけど
テンポが速すぎるて悪い、時間かかりすぎぃ! なので妥協&妥協


次回は普通に本編だと思います

本編の構成は何本かな……幕間抜いて全部で14~20程度の予定


 

 多数の力が流れている。

 それはまとわりつくように、あるいは嫌悪をあらわにして払う様に。

 肩を並べる様、守るように、あるいは信じるように。

 

 ”無限の力”と称する力の流れの中がぶつかりあう中で、

 3次元は存在していた。そこに言葉はない、しかし、少年はあえて言葉を求めた。

 

 

 

「イデ、なぜそこまで荒ぶるんだい?」

 

 

「あの男は不変の法則にすら抗おうとしている。

 無限力を消し去り、我らを消し去ろうとしている」

 

 

 ビムラーはためらいがちに言葉を紡ぐ。

 

 

「「生」と「負」交わるバランスが崩れればどちらかの力を引き金に

 宇宙は滅ぶだろう。いずれも甘受し融和できなければ未来はない」

 

 

 それは繰り返されてきた事だ。

 ならば、永遠に生命体は宇宙が生まれ消えて、またうまれても。

 その果てでも戦い続けれなければいけないのだと、彼らは言う。

 しかし、少年は、カヲルは感じた。それは進化と程遠いものなのではと。

 

 生命を進化させる力をゲッター線を始めとして、

 無限力は大筋的には進化を求める。だが、どこか懐古的なのだ。

 プロトカルチャーの一人たる、アダムがリリン足る人類に与えた与えた力、

 サイコドライバー。あるいは念と違い、それは回帰しているだけに感じた。

 

 

「私はそうは思わない」

 

 

「ゼウス、それはなぜだい?」

 

 

「宇宙は死と新生を繰り返す。しかし、その中で知的生命は

 間違いなく、少しずつ進化を繰り返してきたのだ。それは、

 永遠に争いを続けるための闘争心からくるものかもしれん。

 だが、中にはいつか争いを止めるためにという形で”真化”しようとしている」

 

 

 光子力エネルギー、すべてを浄化する光と称されるものの化身となった彼は、

 好意的だった。むしろ、自身が消える事すら望んでいるのかもしれない。

 

 

「無限などという存在が今も昔も進歩を阻む。

 消えてしまうべきだ、正も負も! そうではないか、ゲッターよ」

 

 

「他者を理解し、受け入れ、共に歩む。それを真化と称するならそれが正しい。

 我らは永遠に負とまじりあわぬもの。反発しあう存在。

 イデの主張にはいささか、同意しかねる。高次元生命体を求めるのに、

 それではまるで、自分がいつまでも上にいたいと感じる」

 

 

「そうだ、人は我らすら越えるべきだ」

 

 

 

「ムートロン、「補完」「調律」には否定的でも、

 一歩間違えばそれを呼び込みかねない彼には敵対的だと思っていたよ」

 

 

「カヲル、確かに私は彼を好意的には見ていない。

 彼の存在はいわば、私たちという存在に対してのアンチテーゼだ。

 何ものになる素養はあれど何者でもない。なりかたすら分からない無知でなさけない男」

 

 

「だが?」

 

 

「世界という枠組の外すらもかえようと考えたものは今までいなかった。

 私は彼がいずれ何かになれると考える。それが私たちの望むものか望まぬものか

 分からぬ。だが、中身のわからぬ蛹を殺す趣味は私にはない。私は希望は持ちたい」

 

 

 意思の希薄な無限の力が瞬く。

 この中でそれがもっとも多くの意見なのだろう。

 

 

「最終結論は出た。彼は排除しない。

 さあ、皆、幕を下ろしてほしい。

 そうしなければ、僕は眠ることができないんだ」

 

 

 神々の戯れ、それは誰かに聞こえる事もなく静かに終わりを迎える。

 

 

 だが、当の本人にすれば自分の知らないところで勝手に存在ごと消されようとしていた、

 なんて事はふざけるな!以外のなにものでもない。一生知ることはないのだろうか。

 

 ■■■■■

 

 

 

 

「休ませろーーーー!!!」

 

 

「安定したローテを組みなさい!!!」

 

 

「動画を見る時間を寄越せ―――!!!」

 

 

「「「「Fa●k! Fa●k! Fa●k! Fa●k! 労働! Fa●k!」

 

 

 

「どうなってんのよ、あれ……」

 

 

 自販機前を占領する一団を怪訝な目で見つめながら、千鳥かなめは呟いた。

 

 

「過重な労働に対する抗議だとか、ヒーローにも休暇は必要だ、ってことらしいね。

 まぁ、ストレス解消みたいなものだよすぐおさまる」

 

 

「あそこの白髪の女性、此処の責任者ね」

 

 

「!?」

 

 

 驚愕に言葉を失い目を白黒させるいなほに、相良が肩を叩く。

 

 

 

「問題ない、ここは俺に任せてくれ。交渉事は得意だ」

 

 

「アンタのそういう言葉は信用できないけど、

 疑うのも悪くないわね……まぁ、いいわ。やってみなさい」

 

 

「了解だ……代表者と話がしたい!!」

 

 

 

「俺だ」

 

 

 ずい、と前に出てくるシン。

 

 

「シン、こんなことは無駄だ。わかるだろう!

 ティターンズ、アマルガム。そして、話を聞いた異星人ゲスト。

 その状況かで地上の反抗勢力が一度に集まったとは余談はゆるさん! ある程度のシフトは諦めろ!」

 

 

「……譲歩する気はないか?」

 

 

「当然だ!」

 

 

 すっ、とコッペパンをシンが1つ出す。

 

 

「本当にないか?」

 

 

「と、当然だ……」

 

 

 シンがちょいちょいと手招きすると、クルーゾがコッペパンをひとつだす。

 そして、テスタロッサがコッペパンを1つ出す。

 

 

「ないか?」

 

 

「…………」

 

 

 1歩、2歩、3歩。大股歩きで3人の前に行く相良。

 3人の前にくると、シンの手からコッペパンを受け取る。

 そして、メガホンを受け取った。

 

 

「労働の正当な対価として、我々は休暇を要求するーーーーー!!」

 

 

「あほかーーーーー!!」

 

 

 すぱぁん!!! と千鳥のハリセンが相良の頭を叩いた。

 

 

「痛いぞ」

 

 

「相手に取り込まれてどうするの取り込まれて!」

 

 

「失敬な。相手を落とすのも立派な工作作戦だぞ、千鳥さん」

 

 

「いや、それは確かにそうかもしれないけども……」

 

 

「シンは確かにそういう分野だけは得意だったね……」

 

 いなほは少し悔しそうな顔でそうつぶやいた。

 

 

「あれ、いなほくんってなんでもできるって有名だったわよ……?」

 

 

「そうだね。でもこれだけはシンの方が恐ろしかった。いいかい……」

 

 

 

 

 

 ■■■■■

 

 

「敵の前線基地。まぁ、そうだな。ここはある種の敵にとっての情報センサーだな。

 ここを制圧するにあたり、お前らに与えられているのは3つ。

 正確な兵士の巡回情報と絶対にばれない潜入口。爆弾は1つ。さぁ、どうする?」

 

 

「はい、教官。

 あと詰めによる占領後に基地として利用するために発電施設を破壊します」

 

 

「その通りだな、いなほ。せっかくあるものを利用しないのは損だ。じゃあ……シン!」

 

 

「うっす……そうですなぁ。巡回の装備は?」

 

 

「アサルトライフル、ナイフ、予備弾奏1。ってところだな。それで?」

 

 

「はい!! 皆殺しにします」

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「そのあとのことをざっくり言えば、シンが出した提案は定期報告を行っているのを逆手に取る。

 巡回しているなら、それは時刻事ではなく到着地点ごとの報告だから、潜入後に

 2週目に入った時点それの動きを乱していき、後ろから一人ずつ殺していく。報告は先頭から

 行っていくからケツから始末する。前線基地なら再奪還されるより破壊しつくした方がいい」

 

 

「こわっ……えっ、そんな人なのこれが!?」

 

 

「これとはなんだこれとは」

 

 

「僕が正直怖いと思ったのは、教官が次々に出す追加条件を利用して

 最終的に施設は全壊させるのが適回であるという問題自体をねじ曲げた事だよ……」

 

 

「おかげで俺はバーバリアンとか皆殺しマンとか爆弾キル野郎とかさんざんだった」

 

 

 だがおかげで平均が上がったのも確かなので、それについてはこの辺にしておくか。

 と、シンはひとまず話題を打ち切るために「はいおわり、おわり!」とバッテンを作った。

 

 

「てかね、周りに集まってる人たちはともかく、

 クルーゾさんもテッサもなんで日野くんと意気投合してるのよ」

 

 

「そうだな、そこから説明せねばなるまい……」

 

「えぇ、それはさかのぼる事1時間」

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「青春とはなんなのだろう……」

 

 

『急にどうしたの』

 

 

「いや、青春ラブコメマシーンに乗ってるのに、それから程遠いよね?」

 

 

『いや、相手は……』

 

 

「それっぽい相手は居ても、俺にはらぶらぶイベントも

 ちょっと甘酸っぱい学園生活もないんだよ!?」

 

 

『あ、そういう……』

 

 

 端末からその様子を見ているキャロルはなんだか少し自分の操縦手が情けなくなった。

 

 

「時間が欲しい、いくばくかの時間があれば……

 あの2人と距離が縮まなくても別の女性とラブなイベントが……あるかもしれねぇだろ!」

 

 

「時間が欲しい……あの2人の絆をこえるだけの

 愛を相良さんと育む時間が……」

 

 

「時間が欲しい! カルチャーに対しての愛を楽しむ時間が……」

 

 

「「「ん?」」」

 

 

 ■■■■■

 

 

「私たちは兄弟なのです。多忙にすべてを奪われた!」

 

 

「愛に生き、愛の為に戦ったのに多忙にすべてを奪われた魂の強大!」

 

 

「ノーワーク! ノーウォー! プリーズ、休暇!

 テッサイズシスター。クルーゾイズブラザー!」

 

 

「「「イエスアイムジャスティス!!!」」」

 

 

「「「「「ひゅーーーーー! YEAHーーーーー!」」」」

 

 

「そういうわけだ、千鳥。休暇を要求する!」

 

 

 すぱぁん!

 

 

「アンタはアホな事言ってないでこっちに戻ってきなさい!」

 

 

「それはできん。交渉に応じた以上、最低でも相手寄りの中立という立場はとらせて貰う」

 

 

「なんて変な戦いなんだろう……」

 

 

 いなほがどこか白けたような顔でその様子を見ていた。

 自分の友人のこういうところだけはいまいち理解できない。

 

 

「というか、ほら。シンはあの2人にアプローチかければいいじゃないか」

 

 

 いなほは今しがた、食堂にやってきたアセイラムとエデルリッゾを指さす。

 

 

「うるへーーー! 確かにそれができたらいいけど

 片方は姫で片方はその侍女だぞ! 手が出せるか! 

 俺はデートもキスもエッチもしたいぞ!! でもできるか! 国際問題だろ!!」

 

 

「えっ……! ちょっ、なんてこといってんのよ!」

 

 

 千鳥が口どもると、テッサはうんうんと頷く。

 

 

「そうですね! わかります! 私も相良さんとごにょごにょ……」

 

 

「青春だな、マイブラザー!」

 

 

「相良、声大きすぎて今のバレてない?」

 

 

「肯定だ。明らかに向うのテーブルの視線が泳いで表情も赤い」

 

 

 周りの大人たちも肩を叩きながら、スナックやら何やらをシンの周りに置く。

 からかっているのかコンドームを置きだすものまでいた。

 だが、そんなものでも好意は温かいのかシンはだばだばと涙を流していた。

 

 

「宗介、なんとかしなさいよ……

 ほら、テッサはもうちょっとならデートしても」

 

 

「とはいってもそのちょっとの解釈すら大佐殿頼りになるぞ。

 それに3つの柱で足り立つ軍団ならあと2つもなんとかせねばならん」

 

 

「そうね、その通りだわ……ダイテツ艦長とかにお願いしてシフト変更できないかしら?」

 

 

「わからん。基地無線で連絡してみよう」ピピッ

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「話は分かった……確かに過酷な環境におかれていたのは分かる。テスタロッサ艦長及びクルー

 これより!! 1週間、ドローンなどの自動監視システムを強化し君たちに休暇を与える!!」

 

 

「「「「「「解散します!!! ありがとうございます!!!」」」」」

 

 

「馬鹿野郎! 俺は一人でも!勝つぞ」

 

 

「レフィーナ・エンフィールド艦長を紹介しよう。

 彼女は19歳、年齢も近い、しかも年上おっとりお姉さん系だ」

 

 

「え、私ですか!?」

 

 

「…………皆、共に戦えて広栄だった!! 辛い時、悲しい時、また支え合おう!」

 

 

 ―――うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

 

 

 こうして、ストライキは一瞬で始まり一瞬で終わりを迎えた。

 あとの1日ストライキであった。

 

 

 

「これにて解決、だな」

 

 

「解決、かしらねぇ……」

 

 

 千鳥は背後をちらっと確認すると、静かな殺気を纏う存在が2人いた。

 

 

「私は終わりの始まりな気がするわ……」

 

 

 後日、ライブレードのパイロットが何者かに襲撃を受けランチマットの上で

 白目を剥いて横たわっているのが発見された。

 




個人的に決着は敵を全て倒して大勝利、という形じゃない。
後味を残した二次策という形に落としたいけどどうすっべか……

こうやって悩むのも何かの糧にはなってるのかなぁ


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幕間 インターミッション5 『狭間にあるもの』


まともに睡眠取れる日がなくて結構間が開いたような……
いや、すいません。睡眠時間取れないと本当、ぽんこつで……


あと、大きな戦闘か動きがない時はインターミッション表記にさせていただきます。
ずらっと並ぶと手抜きにみえるの所が問題だけど仕方ないね



誤字は明日か明後日確認します。
誤字報告いつもありがとうございました


 

「無限力を破壊する、ですか……」

 

 シュウ・シラカワは考え込んで黙り込む。

 10数分ほどの静かな静寂の後に、結論を出した。

 

 

「あれが間違いなくそういう兵器ならば可能なのでしょう。

 ですが、それは危険だと私は思います」

 

 

「それは……正と負がバランスを取っているのが世界だからですか?」

 

 

「そうです。相克ともいいます。相反がバランスを生む。

 相克が存在する故にそれは世界続く限り永遠のものであり、同時に

 そのは狭間ともいうべき場所にバランスを取ろうとする無限の力、循環を生む」

 

 

「負が消えれば、正も途絶える。循環もなくなる。

 それは結果的にエントロピーの消失を早め、宇宙を終焉に導くか……」

 

 

 やはり、馬鹿が適当なことなど考えるべきではなかったか。

 と、肩を落とす所にシュウはフフッと妖美な笑顔を浮かべた。

 

 

「いえ、発想自体はあり得ない角度からでした。

 ですが、私自身も人間というものを闘争に駆り立てるのは、

 人間の本能だけでないと思っているのです。検討の余地はあるでしょう」

 

 

 ヴォルクルス教団。そして、暗黒の神に深くかかわり一度は囚われ死と共に解放された彼には、

 それがよくわかっていた。この世界には、目を凝らすだけではつかめない闇も、

 あるいは、サイバスターがかつて宿していたサイフィスの様な光も存在するのだ。

 だからこそ、シュウはライブレードが興味深い存在でもあった。

 

 魔装機に近いながら、それ自身ではない。

 むしろ、精霊を生み出した。まさに『創精機』ともいうべき異質の存在。

 そして、それに宿るのは人工的であり、負念を糧として成長しながらも、

 闇であり光でもある存在として誕生している。

 

 

 理解しきれぬ存在だ。だからこそ、シュウはライブレードをよみがえらせるのに手を貸した。

 リチュオルコンバーターを与えることで、かつての光霊機の様な現象を、

 あるいはもっと異質のそれを発現させるかもしれない。

 ライブレードは彼にとっては知的好奇心の対象だ。

 そして、それは無論。その主操縦手のシンも含めてである。

 

 

「まぁ、過程とするならどんなものにも入り口と出口がある。

 人の手に届かぬ、まさに無限と称する力も高次元の通路を通っている筈。

 それがどこか別れば……その入り口を閉ざす。あるいは破壊することができれば」

 

 

 シンが何か覚えがあるように、頭を少しこんこんと叩く。

 そして、すぐにはっとした顔をしてシュウに詰め寄る。

 

 

「オムニ・スフィアか! そうか、シラカワ博士。

 オムニ・スフィアを破壊するんだ! それだよ、流石天才だ!!」

 

「オムニ・スフィア……? それは?」

 

 

「ウィスパード、念能力。ニュータイプ。この世で発現する超常的な力は

 そこを通るとある存在は言いました。それは多分、ゲッター線や

 ムートロン……だけじゃないか。そう、宇宙怪獣も負の無限力の代行なら

 その意思もそこから伝わっているのじゃないか……と、俺は思います。個人的にですが」

 

 

「魂の観測すら可能なニュータイプ。

 彼らのような力が関わるのなら、そこは霊界……のような場所。ふむ……

 なるほど、興味深い話です。そして、それが高次元への通路であるなら

 3次元側の通路を破壊できれば……可能でしょう。しかし、いくつも問題がある」

 

 

 検討してみましょう。一区切りついたら連絡します。その言葉と共に、

 どこか、ウキウキという擬音が飛び出してきそうな、

 かろやかな足取りのままシンを追い出し、シュウとの話し合いは一方的に終わった。

 

 

 ■■■■■

 

 

「さて、もろもろの和やかな騒動が終わった所で情報の交換と行きたいのですが、

 よろしいでしょうか、キョウスケ・ナンブ中尉殿」

 

 

「えぇ、艦長殿もいいガス抜きができた様子でしたからね」

 

 

「うぅん! まぁ……そうですね、楽しかったです」

 

 

「お立場もありますが、ああやって率先して空気を換えてくれるものが環境にいるのは、

 個人的に良い事だと思います。では……聞いてくださいガイアセイバーズの歴史を」

 

 会議室で淡々と彼がテレサ・テスタロッサに語ったのは、バルマー戦役の裏。

 ゲストとの戦い。そして、その中で現れたアインストという存在の話であった。

 エアロゲイターという敵をロンド・ベルが戦い続けている中で、

 DC特務隊はガイアセイバーズと名を変え活動していたのだった。

 

 

「ゲスト、つまりインスペクターという星間連合の1つですが、

 彼らはすでに倒しました。しかし、同時期に出現したアインストの存在が

 情報として混ざってしまい、それがゲストとして呼称されていました」

 

 

 連邦に加わっていない組織のため、訂正ができず。

 と頭を下げるキョウスケ・ナンブに、テレサはいえいえ、と手を振った。

 そういう部分に関しては仕方ないのだ。自分も、そして、ここにいる

 ロンド・ベルの残党ともいうべきものたちもそういう立場である。

 

 

「では、最近のゲスト発見ありとの知らせは……」

 

 

「南極遺跡の付近で発見されたのは、間違いなくアインストと思われます。

 ただ、我ら3つの戦艦とPT部隊で構成されるガイアセイバーズも

 連邦に追われる身でしたので、その情報を得るまでが限界でした」

 

 

「遺跡を主な研究対象とし、その場から発掘。あるいは解析、再利用を目ざす科学者集団。

 リ・テクノロジスト。通称「リ・テク」。歴史的価値を見出せない

 南極遺跡を長年調査の対象としてる事で最近は規模を縮小でしたね」

 

「LTR機構(Lost Technology Research Organization)

 と違い、DC管轄でない為、資金は回せませんでしたが、スポンサー探しの協力等

 ビアン・ゾルダーク博士は高く評価していた様で連絡を取り合っていたそうです」

 

 

「いた、ですか」

 

 

「えぇ、ゲスト……つまり、アインストの目撃情報は南極付近。その後、

 謎の発光現象の後に連絡が一切ありません。つまり、そういう事だと判断します」

 

「なるほど……」

 

 

 キョウスケの用意した拡大図を見つめる。

 そこには連邦がゲストと認識していたアインスト。

 どこか脳を思わせるような異形の存在。いくつかの機動兵器。そして……

 

 巨大な一つの機体を指さすテレサ。

 

 

「この衛星画像と直前までフェリオ・ラドクリフ氏によって送られていたその場の音声。

 どうやら、共通する通信規格を持たなかったようでオープンスピーカーを使用し、

 会話していたようで、それによると……オメガ・ヴァルザカード。そうです。

 この部分にライブレードが交戦した機体が組み込まれていると予想されます」

 

 

「では、これはザ・データベース」

 

 

「えぇ、そして彼らはこの出現を予期しているかのように表れた様です。

 つまり、デュナミス……音声に残っていた脳の様なものの呼称。そして、同時に

 新たに現れたこちらの機体はメリオルエッセ。これらは協力関係にある可能性が高い」

 

 

 だが、表立って行動は見られないと、締める。

 テレサは写真を見比べている途中で、キョウスケが何かを考えているのに気づいた。

 その表情はどこか険しい様子だったからだ。

 

 

「想像の範疇でも構いません。お話ください」

 

 

「……では。南極で彼らが出現した時、観測された次元の歪みともいうべきもの。

 それと同質のものが観測されたのは2回。1回は我らが対応したアインスト。

 その中でもアインストレジセイアと呼称する巨大存在が次元ゲートを行使した時です」

 

「残りの1回は?」

 

 

「ライブレードが出現した時。つまり、これらは同質のゲートから現れ。

 しかし、別の世界から来たと思われるという事です……ならば」

 

「……これから先も敵は増える可能性は高い、という事ですね?」

 

 

 キョウスケは静かに頷く。

 

 

「味方が現れる可能性もある、とライブレードの例から思いたいのは確かですが、

 そちらの方が可能性としては高い。それが俺と、ビアン・ゾルダーク博士の結論です」

 

 否定できぬ問題の前にテレサは緊張のあまり止めていた息を、深く吐きだした。

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「そういやさ、イングラムってどうなったの?

 てか、よく情報吐かせたよね。アイツ、痛みには強そうだけど」

 

 

「情報を吐かせる手段は一つではない。

 ……カリーニン少佐の裏切りで多くの人員を喪ったが

 当時、生きていた担当官は優秀だったそうだ。

 なんでも、裏切者のくそ野郎は自分のくそも食いやがれと肛門部と……」

 

「あ、ごめん、もういい……」

 

 

「む、そうか? まぁ、食事前にする話でもないかもしれん……終わったぞ」

 

 

 そういって、パタンと端末を閉じて、小型のプリンターから紙をちぎり取る宗介。

 

 

「どうだった?」

 

 

 シンの言葉に宗介はあごをなでて瞼を閉じて少し考えた後、、向き直る。

 

 

「とどめを刺しにいかなかったのは直感的な行動だったのだな」

 

 

「レナードにとどめを刺しにいく気はちょっとだけあった。

 ただ、なんつうんだろ……今は逃げた方が良い気がしたというか」

 

 

「運と勘に救われたな。見ろ」

 

 

 そういって宗介の渡してきた紙を見ると、シンはぎょっとした。

 

 

「うげぇ……」

 

 

「お前の機体の全データを入力した結果、ダナンのコンピュータの計算によれば……

 メモリ、CPUを始めハードウェアの負荷率が瞬間的にシャットダウンギリギリになる」

 

「でも、アイツは平気そうだった気がするんだよな……」

 

 

「確証はないが本人も意識していないのだろう。

 そもそも、あのライブレードの意思。いや、AIが発現するまでは

 このような状況にはならなかっただろう。おそらく、スペックは足りていた筈だ」

 

 

「なるほどな。しかし、まさかこういう問題が出てくるとはな……」

 

 

 もともとの操縦席にあるコンパネとモニターの操作で機体状況は把握できるが、

 流石にこの状況は予想外なのかハードウェアの監視装置などはついていない。

 おそらく、キャロルの補助によりライブレードは機能停止まで不自由なく動ける。

 逆に言えば、過負荷状態で不自由なく動けてしまう故に状態を把握できない。

 レナードを始末しにいけば、最後の一撃の瞬間に機体はフリーズ。

 その場で撃墜の可能性もあったわけだと、シンは最悪を考えて渋い顔をした。

 

 

「警報装置みたいのつけておきたいな……」

 

「おう、じゃあ俺がやっとくよ。簡易的なもんでいいよな」

 

 

「うわ、びっくりした! なんでいんだよ、カーム!?」

 

 

 横から、ぬっと自然に出てきたカーム・クラフトマンの登場にシンが後ずさる。

 

 

「いや、人手不足ってことでミスリルにお呼びがかかったんだよ。皆もな。

 言っておくが、今回もちゃんと拒否権はあったぜ? まぁ、装置は俺に任せとけ。

 それにしても……カタクラフトならともかく、シンが特機か……ふーん……」

 

 

 カーム・クラフトマンはライブレードを見上げ、独りでうんうんと頷いている。

 

 

「……な、なんだよ?」

 

 

「未完成だな、こいつ」

 

 

「はっ!?」

 

 

 ライブレードの修復―――いや、もはや新造なのだが

 それはGGGが請け負っていたという。それが未完成などと……

 あっけらかんと、しかし確信をもっていいはなぅたカーム・クラフトマンを

 シンは疑ってしまった。

 

 

「じゃあ、どうやったら完成すんだよ?」

 

 

「いや、それは餅屋は餅屋だろ。ちらっと見たけど、

 意味不明なシステムも多いし、その開発元の協力がいるんじゃね。

 あのサイバスターとかいうのに似てるし、そっちの? まぁ、補助コンは積んどくわ」」

 

 そういって勝手にライブレードの整備をカームは始めた。

 

「シン、シュウ・シラカワに力を借りるしかないだろうな」

 

 

「まぁ、そうだな……(でもなら、あの時博士は何も言わなかったんだ?)」

 

 

 

 カームの言葉が事実なら、それをシュウ・シラカワも理解している筈だ。

 そうなると、彼はあえて欠陥をそのままにしている事になる。

 

 

(あの人なりに、何か理由があるのかもしれない。

 そうなると、むしろ……あの人の視点では未完成な理由は俺にあるのか……?)

 

 

 思い当たる節は山ほどある。だが、直せと言われても100年かかる自信があった。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 

『巨大兵器規模ではなく、むしろ人間規模の問題も多く起きている……』

 

 

 

「地球に直接的なワープを阻害する念の波動。その副作用と呼ぶべきものか……」

 

 

 ミリアルド・ピースクラフトの言葉に、ギリアム・イェーガーは悩んだ。

 テスラ研を脱出し、運命のいたずらかミスリルに一足早くたどり着いていた彼は、

 単独で世界情勢の確認に走り回っていた。

 その時、同時にまた生存を隠しながら世界を見舞っていたミリアルドを見つけ、

 彼らは頻繁に情報交換をしていた。

 プリペンターから距離を取り、その存在をひた隠し。闇に徹していたのだ。

 モニターごしのミリアルドが口を開く。

 

 

『ギリアム、やはりあれが必要なのではないか?』

 

 

「……パーソナル転送システム。そして、パワードスーツか」

 

 

『バルキリーの補助として設計を始めたのは聞いている。

 だが、君はあれをダウングレードだといっていた……つまり、ゲシュペンストは

 本来そういうものなのであり、君ならばそれが可能なのではないか?』

 

 

「……そうだな」

 

 

 苦い過去を思い浮かべる。かつて、世界の敵であった自分に。

 そして、そんな自分にすら手を差し伸べ続けた仲間たちに。

 帰りたいと思って、次元転送システムを組み立てた。

 罰として、因果の漂流者となった今。二度とXNガイストを汲み上げるつもりはないが。

 

 

「シャドウミラーの出現。新たな敵の登場。

 世界はすでに我らだけでは守れぬ、か……」

 

 

『トレーズは弱者の世界を望んだ。だが、それは守られる事ではない。

 敗北から学び、強き者になれる世界を望んだ……一般人もまた

 今こそみずからの足で立ち上がるべき時がきた、そう私は思う……』

 

 

「……ミリアルド、不思議に思わないか。

 おかしいとは思わないか?モビルスーツ、サイボーグ、様々な特機。AS

 更には異星人までも一つの世界に存在しているんだ、この世界は……」

 

 

『SFの様に、何者かがこの世界を人工的に造りあげ、

 我々を競わせる。この世界は実験室のフラスコだとでも?』

 

 

「そうなのだろう。だが、我らに意思がある限りそれは越えられる!」

 

 

 ギリアムは拳を握って、そう宣言した。

 二度と未来を疑わぬと決めたのだ、あの時に……

 

 

『……ネルガルにコンタクトを取ってみるとしよう』

 

「あぁ、頼む。連絡がきしだい、開発を開始する(俺はもう疑わない。

 そうだろう、君たちが教えてくれたのだ……アムロ、ダン、光太郎……)」

 

 

 ―――そして、この世界で戦い続ける者たちが今も、私に教え続けてくれる。

 

 

 ギリアムの予知の未来は今だ、暗黒に包まれていた。

 しかし、その中でも儚くもまばゆい光が懸命に輝いている。

 

(人が心に持つ、希望を俺は信じる……俺はもうアポロンにはならん)

 

 

 決意と共に、ギリアムは自分の中でもその光が芽生えるのを感じていた。

 この輝きこそ、エルピス。希望は常に等しく存在しているのだ……



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LIFE IS DEAD 上


いろいろ準備とか、まぁ……

シンフォギアライブいってました(白状)


 

『アクシズ及びジオンは協定外の存在である

 ミスリル及び、ガイアセイバーズに協力することはできない。以上だ』

 

「それはどういうことだ、シャア」

 

 即座に切り返す様に返答するシンに微笑を浮かべるシャア。

 

『言葉の通りだ』

 

 握り拳を鼻筋に押し付けながらシンは思考をしばらく巡らせると、

 パッと手を開いて指を立てながら聞き返した。

 

「それは地球連邦及びティターンズも同じであるという事だな?」

 

『そうだ、我々はロンド・ベルを通して和平交渉などを行った。

 和平自体は地球連邦とだ。だが、軍事協定その他の項目の補足事項にこうある。

 「ロンド・ベル及びその理念を継承する部隊の指揮下でこれを行う」とな』

 

「分かった。これについての話はここまでだ」

 

 

「……大佐殿、よろしいのですか?」

 

 話を打ち切ろうとする二人の様子を見ながら、

 相良が前方のテレサ・テスタロッサにそう言う。

 

 

「アクシズとの話し合いをシンにさせるのは、シャア・アズナブル。

 そして、ハマーン・カーンと関係を持つアイツに状況を進展させる為だと」

 

 テレサはモニターを見つめたまま、くすっと笑った。

 

 

「いえ、状況は進展しましたよ」

 

「はっ、不勉強故わかりませんがそうでしょうか?」

 

「言質は取らせてくれた上に採点もしてくれた、十分です」

 

 自分が話せば形式的なものにとどまっていた可能性があるとテレサは思った。

 この1年。アクシズに戻り、ハマーンの補佐を始めたシャア・アズナブルの評価は、

 政治の面では知らぬ人はもぐりか時代遅れといわれる様なレベルであった。

 もっとも、ハマーンは自分に全くの関心を見せぬそぶりは気に入らないだろうが、

 恋人を殺したという噂もある。当然というしかない。

 だが、それでも手に入らぬものを手に入れたという満足感が、

 彼女の狂気を抑え込んだのか、野獣の如き眼光はなりを潜めた。

 仲間に対しては、だが……

 

 とにかく、シャア・アズナブルがシンに気を許しているのは確かなのだろう。

 あの年上を敬わぬ態度はどうかと思うが、

 それを相手も許しているというか、むしろ望んでいる様にも感じる。

 ある種、アムロ以外に対等な話し相手を得た様な感覚を感じているのかもしれない。

 

「なら、個人的な協力者の派遣は可能か? たとえば、ハマーン……」

 

 

『フォールド断層。知っているか?』

 

 

「いや、えーと……断層だから次元の裂け目的なものか?」

 

 

『その通りだ。メガロードが太陽系から旅立つ式典を

 木製圏で行う予定があった。2か月ほど前だ。そこでメガロードと共に

 断層に巻き込まれたと思われ、ハマーンの指揮下である人物の捜索をしている」

 

 

「そうか、分かった。なら代わりに個人的な頼みが一つある。

 西暦から今にいたるまでの歴史をできる限り正確に集めてほしい」

 

『……ほう』

 

 

 意外な頼みにシャアが疑問より好奇心を表に出した声を出す。

 

 

『連邦軍のデータベースなら裏口で入れるが』

 

 

「いや、それだけじゃだめだ。10年前にジオンが地球に降下した時に

 基地から機密データのデータベースと一緒に持ち帰ったものも結構あると思うし

 宇宙移民側が記録しているものもある筈だ。それを相互補完して繋いでみてほしい」

 

 

『構わないが、理由を聞きたい』

 

 

「その答えはきっと、完成した時にシャア・アズナブルが……

 いや、キャスバル・レム・ダイクンに戻ろうとしているお前が一番に理解する」

 

『それだけの何かがあると』

 

「ニュータイプ、Xラウンダー、念能力。統括してESP、エスパーと言う存在がある様に

 俺という霊能力者の様な存在がこの宇宙にある理由の一端。それに気づけると思う」

 

 

『……その言葉は私の好奇心を刺激するには十分だ。

 分かった。少し時間をくれ。それでは……勝利の栄光を君に』

 

 びしっとした敬礼でシンに向かいあうシャア・アズナブル。

 

「今度は裏切るなよ」

 

 

 にやっと笑顔を浮かべてシャアは通信を切った。

 

 

 

「アクシズの援護は絶望的だと思う」

 

 

「シン、その理由とは……あの建前より

 式典で行方不明になったものが理由だと思うか?」

 

 

「あぁ、そうだ宗介。

 ハマーンが現場で指揮をしてまで探す人物は一人……」

 

 

 ―――ミネバ・ザビ。彼女の不在がシャアが支援できない一番の理由

 

 

「えぇ、そうですね。彼女が出張っているならそうでしょう」

 

 作戦プランを練り直さなければなりませんね。

 そうつぶやいたテレサは髪で鼻をくすぐった。

 

 ■■■■■

 

 

「このパトランプがぁ~?」

 

 

 操縦席の天井についたランプをつつきながら、シンは言う。

 

「それな。色々考えたんだけど視覚的に分かりやすいのがいいかと思ってな。

 ちなみに音は鳴らない。警告音を入れるか整備兵のおっちゃんがキュイン音?

 とかいうのを入れようとか言い出したんだが戦闘中だと邪魔かと思ってな」

 

 カーム・クラフトマンはそういってコックピット内の照明を落とし、

 パトランプを光らせる。強烈なLED光の赤色が暗闇を照らしている。

 

 

「と、こうなる」

 

 パトランプを消して照明を入れる。

 どうよ?とばかりに自慢げなその顔を見ながら、

 シンは唇を突き出してなんともいえないもどかしさを表現するだけだった。

 

 

「ちなみに実戦時はこう。この通り引き出されてシグナルタワーになる。緑から

 黄色になったら機体の処理能力が80%越えだから操縦桿のモニターを気にしてくれ。

 赤はマジで危険領域。機体の照明が絞られてこいつが赤く光る。んで」

 

 メイン操縦席と副操縦席の中間に設置されたその球体をぺしっと、カームは叩いた。

 

「イタイ! イタイ!」

 

 

「100%の状態が20秒続くとこいつが強制でショットダウンをかける」

 

 

「MS用ハロ。ずいぶん高級なサブコンピューターだな……盗んできたのか?」

 

 

「おい! 人聞きが悪いぞ!」

 

 

「でも、カームだしなぁ……んで、限界吹っ飛んで壊れるよりマシっていう処置か?」

 

 

「そういう事! その20秒だけはこいつがサポートしてなんとか動く。

 ちなみに、再起動まではおよそ30秒。だから、できればこの20秒は使い切るな」

 

 

「20秒か……あぁ、分かった」

 

 

 悶着状態に持ち込まれていた場合、逃げられるかは微妙な時間だが、

 その辺はやってみなければ分からない。むしろ、それだけ作ってくれただけ

 マシかもしれない。色んな感情が湧き上がってくるが、

 それをなるべく表情に出さないようにシンはカームにそう返答した。

 

「……やっぱ、変わったよな」

 

 

 ふと呟いたカームの言葉はどこか悲しさを帯びていた。

 怖くなった。だからこそ、聞き流すか一瞬考えた後にシンはやはり聞き返した。

 

 

「そうか?」

 

 

「そうだよ。お前は抜けてた所こそあったけど今みたいになんつーか。

 感情を押し込んで隠すタイプじゃなかったろ。そうだろ?」

 

 

「それは……」

 

 

 違う、とは言い切れない。

 今の日野真は自分としてもそういう人物だったと思う。

 ただ、過去の日野真はそうではないのだ。ぐっと、すべてを押し込め。

 なんでもやった。足りないものを補うにはそぎ落とすしかなかったから。

 だから、それが重なった今の自分はきっと。そういう人間になってしまったのだ。

 

 

「……かも、しれねぇな」

 

「それがパイロットになるって事なら、俺はやっぱ……いいや。

 悪いな。転向も考えたりしたんだけど、きっと……無理だと思う。

 ……あ、いやさ! その分、こっちで手伝うからよ!」

 

「あぁ」

 

 乾いた返事を返す。もう言えること事がなかった。

 カームの言葉にどこかシンは納得した。意識はしていなかったが、

 大雑把に言えば変わる事、それがパイロットになる事なのだ。

 相手の人生を、

 たくさんの笑顔や喜び、それを悲しみに塗り替えていく事なのは間違いない。

 

 

 ロボットのパイロットになる。それはかつての夢でもあった。

 でも現実はどうしようもなく重いものを背負い続ける日々だった。

 開いたコックピットから出て、見下ろす。

 

 見知らぬ人物が立っている。生気がない。おそらく、メリダ島の防衛線で死んだ人だ。

 指をさしている。はるか彼方を。

 

 

「カーム、見回りの時間は」

 

 

「お前のか? あと1時間後だろ」

 

 

「繰り上げてくれるように連絡してくれ。」

 

 

 死者は黙し、語らず。ただそこにあるのみ。

 しかし、それと対話できるものがいるならば、

 死者は何を語るのか。それはその時にならねばわからないのだ。

 

 

(だが、俺はこの力すら何か意味があるものと信じたい。それは流石に自分勝手かな)

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 ~浅草~

 

 

 

「馬鹿な、修羅の攻撃をものともしないとは……!

 フォルカ、まだ動けるな。目的は果たした筈だ、逃げろ」

 

 

「だめだ、兄弟を残してなど行けぬ!」

 

 

「行け、フォルカ! 戦えぬ修羅など捨てておけ! 行くのだ!! 使命を果たせ!」

 

 

「涙、涙の感動の場面は結構だが僕らが君らに興味がない、

 という事を示して置く事にするよ。ファイターロア、君のオーバーゲートエンジン

 渡して貰うぞ。完全なるクロスゲートを得るためにも……ね!」

 

 

 修羅を名乗る青い機体を地面に叩きつける。

 10倍近い体躯に攻撃されてなお、原型を保っているのは機体かパイロットの力か。

 

「フェルナンド! ……くっ!」

 

 

「1人は退くか、まぁいい。修羅の本当の力は後でゆっくりと記録させてもらう

 でもせっかくだから耐久力の限界ぐらいは今、図らせてもらうとしようかな

 オーバーゲートエンジンはこの後でもいい。どうせ単体では転移などできはすまい」

 

 そういって巨大な体躯は地に膝をついたフェルナンドの機体、

 ビレフォールに拳を振り下ろす。

 

「……無念!」

 

 末期の言葉を残し、フェルナンドは瞳を固く閉じた。

 しかし、いつまでたっても終わりはやってこない。

 

「……貴様、なぜ!」

 

 

「べらんめぇ!! てめぇらはショウコを拐った犯人だが、

 だからといって見捨てていいなんて事にはならねぇぜ!」

 

 オメガヴァルザカードの拳を押しとどめているのは、

 赤を基調に金の装飾を各部に備える巨大な機体、コンパチブルカイザーだった。

 しかし、200Mを越える体躯を持つオメガ・ヴァルザカードの前には、

 大人と稚児と称してもいい迫力の差を感じる。

 そして、それは同時に力の差でもあった。

 

 

「ほう、流石オーバーゲートエンジン。噂に違わぬ出力だ」

 

 オメガヴァルザカードに登場するインファレンスは、

 感嘆の声を上げた。それは記録者故に生ずる興奮なのか、

 あるいは本能か。さらに力を籠める。

 

 

「貴様、情けのつもりか! 俺は修羅だぞ!」

 

「うるせぇ、俺は俺の思う様にする! てめぇが何を思おうと関係ねぇ!

 ただ、妹の、ショウコの居場所は吐いてもらうぜ!! うおおおおおお!」

 

「くっ……(な、なんだこの星の人間はなぜ。俺はお前にとって敵の筈だ! 

      修羅なら、そんな事は……わからん。なんなのだ……)」

 

 理解できぬ言動に思考を彷徨わせるフェルナンド。

 しかその間もインファレンスは徐々に力を強めていく。

 

「さて、ついでだ。このまま動力をえぐり取ってあげよう」

 

「ま、まだまだぁ!」

 

 しかし、コンパチブルカイザーは搭乗者、コウタの力に応える様に、

 力を与え続ける。しかし、それに機体が耐えられるかは別の問題だった。

 

 

『コウタ! オーバーヒート寸前だ!』

 

 

「だが、退く選択はねぇ! ここで見捨てれば俺は

 もう、妹の顔をまともにみれねぇ!! 兄貴なんていえねぇ!!」

 

「っ!!(そうか、お前は……俺と同じ)」

 

 フェルナンドは、わずかだが理解した。

 修羅とそうでないものの垣根をこえたものの先にあるもの。

 そして、今、彼を突き動かしたのはそこにある何かであった。

 

 

「ビレフォールよ、あと一撃。その力を俺に!!」

 

 

 けたたましい轟音と共にコンパチブルカイザーがビレフォールの蹴りに

 弾き飛ばされる。2倍近い機体を一撃で数十メートル弾き飛ばすその力はまさに

 修羅というにふさわしい。しかし、その機体はそれですべての力を使い果たした。

 正面からオメガヴァルザカードの攻撃を受け、ビレフォールは陥没する地面に半ば、

 埋まるように機体を損傷させ機能をほぼ停止させた。

 

 

「ほう、まだ原型を保っている。どうやら、パイロットも生きている。さすがだね」

 

「てめぇ、なんてことをしやがる!」

 

「敵だろう? なぜそこまで激昂する必要ある?

 オーバーゲートエンジンを奪うのを防いだからって仲間扱いかい?

 でもそんなものはいつでもできるんだよ。これからね」

 

 

「へぇ、格下扱いしてた3人にボコされたお前にそんな事ができんのか。

 そらぁ~、おもしれぇなぁ~~。ぜひ、ぜひぜひ。見せて頂きたいなぁー!」

 

 

 オメガヴァルザカードの頭上から聞こえてきたその声に、

 インファレンスはイラ立ちを露わにして、叫んだ。

 

 

「死んだと思って喜んでいたのに……最低、最低な気分に逆戻りだ、

 シン!! てめえは俺の手で直々に殺す! 今度は戻ってこれねぇぞ!!」

 

 

「くそ! あの禍々しい姿。新しい敵か!! やったらぁ!」

 

 真っ赤なボディのライブレード・SINに向けてコウタが叫ぶ。

 確かに血に染まった呪われた機体にしか見えない上に、

 適度に明滅するGリキッドが循環する緑のラインは怪物が流す緑の血にも見える。

 

 

「待って!! 気持ちは分かるけど俺は味方!! 味方だからね!」

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「カイセキ! カイセキ! ソウコウチ3000イジョウ! 

 ウンドウセイ190イジョウ! タイキュウ、エネルギーソクテイフノウ」

 

 

「すごいですね、このハロって。それでこの数値ってどのぐらいなんです?」

 

『わ、私だってできますし……まぁ、端的に言うと……あれ、これって」

 

「おそらく防御に徹されると攻撃通らないって事だな。

 お前でも無理だぞ、そこの図体でかいロボットの……まぁ、いいともかく!

 そういう事だ。さっさと逃げろ。俺も連絡して適度に時間稼いで逃げる」

 

 

「コンパチブルカイザーとコウタ様でぇい!

 そんななさけねぇ事できるわけねぇだろ! 大体、この街は誰が守んだよ!」

 

「その通りだ。そいつが逃げようとするなら、この街を破壊して引き止めるだけだぜ」

 

 

「ちっ、少しは頭を使えるになったお前」

 

 

「んだとぉ!? おま……」

 

 

 インファレンスの声を遮断するよう高速でオメガ・ヴァルザカードを

 横切りながら道路に埋まった機体を回収して距離を取る。

 その動きを見ていたかの様に突如、ライブレード・SINの傍にリフトが立ち上がった。

 シンがすかさずそこへ拾った機体を投げ入れると機体を回収したリフトはすぐに閉鎖され、

 それを見届けてすぐに再び距離を取る。瞬間、そこに砲撃の雨が降り注いだ。

 

 

「あ、あぶねぇ」

 

「てめぇ……! シン!!」

 

 

「誰だか分からないが、機体を回収してくれたのはナイスフォローだな。

 まぁ、あのスーパーロボット用意してた奴だろ。でも助かった」

 

 

 インファレンスの事を悉く無視する。

 こうやって相手をいら立たせるのも作戦の一つではあるが、

 逆に言えばそうやって少しでも注意を割かねば危険なのも確かだった。

 

 

「どうしますか、シンさん……あの機体の動き、

 巨大な機体は鈍足なんてスーパーロボットの定説の範囲内じゃないですよ」

 

「そうだな、その通りだな……」

 

 エデルリッゾの言葉に頷きながら、シンは考える。

 

 コンバトラー、マジンガー、ダンクーガ。

 火力と装甲を重視した機体は運動性が低い。無論、120 mのダイターン3もそうだ。

 しかし、相手はそんな当たり前の事すら無視した超性能の塊だ。

 

(くそ、といってもここまでの話が本当ならインファレンスの機体は前の宇宙が滅びる、

 その間際。ある意味で遥か未来の機体。そう考えると納得もできるか。さぁて……)

 

 逃げるというものは当然、インファレンスの動きを見るための方便だが、

 正直、生還できる可能性は

 0を1にするために、1を10にするために、10を100に近づけるために。

 どんな状態でも生きるために、後悔しないためになんとかしてきた。

 可能性の限り戦い続けてきた、だが今は1の可能性すら霞んで見える。

 だが、それでも貫きとおさねばならないものはある。

 

「退けば後悔。なら、前を見るしかない。リッゾちゃん、

 プラーナコンバータ最大出力。聞こえるか、巨大ロボ。即興の連携だ。

 攻撃の間、間に互いの攻撃を叩き込むぞ。できるか!!」

 

 

「あたぼうよ! こちとら江戸子。任しとけってぇんだい!」

 

 

「言葉の意味は分からんが、とにかくすごい自信だ! いくぞぉ!」

 

 

 ライブレードが無人のビルを破壊する。

 破砕した場所から巻き上がる粉塵が敵の視界を覆い隠した。

 

 

「小癪な! 上空にセンサー反応があるのはわかってんだよぉ!」

 

 

 オメガ・ヴァルザカードが上空に向けて拳を繰り出す。

 しかしそこにいたのはコンパチブルカイザーであった。

 いや、その肩にはライブレードも乗っている。

 

「なっ!?」

 

 

「アルドノアドライブ、フルパワー。推力全開!」

 

 

「即興連携、タワー・ブーストぉおカイザァーーーキック!!」

 

 

 上空への攻撃と上からの落下攻撃の威力。

 脚部は腕部の最低でもおよそ3倍の威力を発揮する。

 それは人間工学を参考して作られている巨大ロボットでもいえることだった。

 コンパチブルカイザーの蹴りを受けて、けたたましい音を響かせながら破壊され、

 オメガヴァルザカードの腕部が煙をあげて爆発する。

 

 

「お前、ずいぶん危ないことするね……」

 

 

「適当に割り込めっていったろ?」

 

 

「そら、そうだけどね……くそー、冷や汗かいた……

 こいつの機動力と運動性に助けられたな……普通は空中であんな合わせできねぇよ」

 

 

『ライブレードならこの程度はやれるわ!』

 

 

 自身満々にそう告げるキャロル。

 しかし、操縦桿のモニターは明らかに異常を示している。

 

 

「シンさん、ライトが……」

 

 

「黄色!? 嘘だろ……どうなってんだ……!」

 

 処理能力の限界が近い事を告げるその黄色い輝きは、

 シンの中の焦りを瞬く間に肥大させた。

 

 

「おい、キャロル!」

 

 

『何よ。まだまだやれるわ!』

 

 

(やっぱり、気づいてない。ライブレード自身でもある筈が

 この異常に気付いてないってのか、不味いぞ……すべてが噛み合ってない)

 

 

「げぇ! なんだぁ、ありゃぁあ!」

 

 

 そう叫ぶコウタにつられて視線をあげると、

 オメガ・ヴルルザカードが瞬く間に、まるで粘土を煉る様に再生していく。

 この前も見た高速再生だ。いや、巨体になってその力はより上がった様だ。

 

 

「バトルパターンは記録、修正した。

 前回のプラズマホールドはもうきかないぞ……今度こそ終わりだ、シン!」

 

 

「くそ、参ったな……」

 

 

 じっとりと背中を伝う冷たい汗が死の予感を感じさせる。

 先行きの見えない戦いが今、始まろうとしていた。

 

 

 



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幕間 転生者閲覧専用スレ


定期的においた伏線とかそれを膨らませるとか
話をこの形で整理していきたい。

あと本編の地の分が鬼の様に長くなる時があるかもだけど
この辺も色々試しながら書いて少しでもマシになろうとしてるので
ゆるしてゆるして


 

 

大惨事スーパーロボット大戦αAGE 7スレ目

 

 

 

55:名無しのハズレ転生者

 前も見てて思ったけど、これやっぱイッチ。

 こっちに入れなくなってるよね

 

56:名無しのハズレ転生者

 こっちは起きてからライブ配信モードになってるんだけどね。

 

57:名無しのハズレ転生者

 マウスの接触わるいのかなぁ、みたいな感じで

 壁を今、鬼連打してるのちょっと面白い

 

58:名無しのハズレ転生者

 悪いのは魂の接触なんだよなあ

 

59:名無しのハズレ転生者

 魂の接触ってなんだよ

 

60:名無しのハズレ転生者

 分からない……俺たちは見な、感覚で喋っている……

 

 

61:名無しのハズレ転生者

 ライブレードの登場めっちゃもりあがったのに

 

62:名無しのハズレ転生者

 魔王の機体

 

63:名無しのハズレ転生者

 倒した相手の血に濡れてる

 

64:名無しのハズレ転生者

 そのうちにばけものになりそう

 

65:名無しのハズレ転生者

 緑色の血を流しそう

 

 

66:名無しのハズレ転生者

 主人公のふりしたラスボス

 

67:名無しのハズレ転生者

 フォルムは勇者ロボ。

 カラーリングはシャア。

 

68:名無しのハズレ転生者

 シャアリスペクトですか?って聞いてキレさせたい

 

 

 

~スポンサー判明~

 

 

198:名無しのハズレ転生者

 エルゴフォームwwww サンドマンwwww

 

 

199:名無しのハズレ転生者

 ぐらヴぃーお~

 

200:名無しのハズレ転生者

 隅々にまで大張行き届いてますねぇ

 

 

201:名無しのハズレ転生者

 そういや、宇宙世紀どんぱち初期の出身者って事は

 対G機構もお粗末だろうし、重力、G耐性がずば抜けてるのは納得できる

 

202:名無しのハズレ転生者

 合体します?

 

203:名無しのハズレ転生者

 するでしょ。サンドマンがGGGとイッチのスポンサーだし

 グラヴィオンも多分、GGG製だぞ。足はグラヴィオンだし、腕はガオガイガーだぞ

 

204:名無しのハズレ転生者

 グレート合体! スーパーライブレード!!

 

205:名無しのハズレ転生者

 胸にライオンか恐竜が付きそう

 

206:名無しのハズレ転生者

 女性何人乗りになるんです?

 

207:名無しのハズレ転生者

 アセイラム姫、エルデリッゾ、腕と脚となんか背中のパーツであと3人やろなぁ

 

208:名無しのハズレ転生者

 〇ね

 

209:名無しのハズレ転生者

 ハーレム野郎、今から爆散しろ

 

210:名無しのハズレ転生者

 ひでぇ言われようで草

 

211:名無しのハズレ転生者

 愛情の進行鈍足すぎるだろ。現実はもっとずこばこが前に来るぞ

 

212:名無しのハズレ転生者

 でも正直、くっつきそうでくっつかない距離感で永遠にいてほしい

 

213:名無しのハズレ転生者

 分かる

 

 

 ~イングラムの拷問~

 

 

400:名無しのハズレ転生者

 ケツと口を繋がれて一人ムカデ人間化は悲惨すぎて草

 

401:名無しのハズレ転生者

 そら全部喋るわ。もう戻されてるだろうけど

 

402:名無しのハズレ転生者

 でもね、イングラムさんのおかげでSRXチームは強くなったんです

 アイツが敵になってあいつらをたきつけたおかげでだね……

 

403:名無しのハズレ転生者

 それはそうかもしれないけど、そんなせかした育て方した結果

 サルファでリュウセイは敵の誘いに乗って、まわりにやめろって

 言われてるのに突っ込んでSRX爆散させたんだよなぁ……

 

404:名無しのハズレ転生者

 確かに、俺ならやれるっていう一瞬の万能感みたいなものを

 イングラムが与えてしまった感じはある。

 確かにあれはイングラムが悪い。

 

405:名無しのハズレ転生者

 まぁ、確かに……育て方がよかったのか? っていうと微妙だしな

 むしろ育成途中で投げ出したともいえる。

 

406:名無しのハズレ転生者

 俺が思うにどちらも正しくあり、って奴だな

 ところでアストラナガンってどうなんのかな

 

407:名無しのハズレ転生者

 解析されて、マシンセルとマシンナリー・チルドレンがもう生まれてる筈

 ただ、イッチの動きの都合上。アースクレイドルの動きとかがわからん

 だから、イーグレット・フェフがどうなってるかわからん。

 シャドウミラーがでてき次第わかるかな

 

408:名無しのハズレ転生者

 出てくるの? いやまぁ、くるよなぁ……

 クロスゲートもあるし、メリオルエッセも出るだろうし

 バランス調整終わったらしいのにまたバランス崩れてない?

 

409:名無しのハズレ転生者

 次元力とか無限力の干渉でまたずれてるのかもしれない

 

 

 

~インターミッション4~

 

 

650:名無しのハズレ転生者

 草

 

651:名無しのハズレ転生者

 いや、草

 

652:名無しのハズレ転生者

 労働に対するストレス耐性の低さ

 

653:名無しのハズレ転生者

 撃って殺すのバイオレンスな前職の影響ですか?

 

654:名無しのハズレ転生者

 まぁ、確かに戦い続けるしかなかったからな

 

655:名無しのハズレ転生者

 フリットにすらヴェイガンの蛮行教えてないんだろうな

 一人だけ見てしまった実験の光景とかをずっと抱えていく

 

656:名無しのハズレ転生者

 ところで、一つだけきになってるんだけど

 フリットが原作でもユリンに会えたのってXラウンダーが複数いて

 それと共振した影響もあったよな。なんで単体でたまにでてきてるの?

 

659:名無しのハズレ転生者

 ニュータイプ、Xラウンダー、念。全て異なるものらしいしな

 ……うーん。ユリンがでてきたのってAGEーFXと接敵したあとだよな

 

660:名無しのハズレ転生者

 サイコフレーム搭載機……

 いや、でもXラウンダーはそれを使いこなせないと思う

 

661:名無しのハズレ転生者

 そうだな。それに近くにXラウンダーがいる必要があると思うし

 

662:名無しのハズレ転生者

 近くにいなかったよね? 

 

663:名無しのハズレ転生者

 近くに機体は……あっ

 

664:名無しのハズレ転生者

 僕もぉ、多分嫌な事想像しちゃいましたよぉ

 

665:名無しのハズレ転生者

 おじいちゃんの(初恋の女の子が搭載された)ガンダム

 

666:名無しのハズレ転生者

 AGE、ユリンの複製脳みそ搭載エディションとかいう闇付加案件やめろ!!

 

667:名無しのハズレ転生者

 しかし、イッチはなんでこっち見れないんだろうなぁ

 

668:名無しのハズレ転生者

 やっぱ人格壊れて戻ってきたことが関係ありそう

 間違いなく本人ではあるし、前の人格との統合が完全に終わったからとかなぁ……

 

 

 

 

 



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LIFE IS DEAD 下

ジカンガ、タリマセン

スイコウデキテナ。キットゴジタクサン

デモ、ダイブヨユウガデキタノデ。

ジカイハケッコウハヤイ。ハヤイ


 

 

 誰よりも自由でありたいと感じていた、だからこそそれを奪われかけて激怒した。

 誰にも、何にも縛られる事を嫌い、自由に生きてきた。それが、シュウ・シラカワだ。

 

 しかし、その彼自身が不自由の中で生きていたと言うことを悟った。

 そして、それを教えてくれた少年こそ、この世界の中でたった1人。

 誰よりも自由な存在であったと理解した。その時、シュウは真になすべきことを感じた。

 

 だからこそ無限力の束縛を世界から消し去ることで、今度こそ真の自由を得るのだ。

 今、こうして彼を助けるのも自分の為である。

 

 

「ご主人様はいつも変な人に入り込みますね。あぁ、いえ。

 もともと変人なのは理解していますよ。でも、マサキといい、

 破嵐万丈といい、シンとかいう少年といいその対象が極端というかですね」

 

「黙ってなさい、チカ」

 

 その言葉を聞いて、小鳥は静かに口を結んだ。

 シュウ・シラカワのファミリアとして生まれた青い小鳥、チカ。

 いわゆる、使い魔という部類の人工生命であるが、深層心理を体現した存在、

 というわりには自分の性格とは真逆な口と脳が一つになった存在の様によく喋る。

 あるいは、それが自分の心の奥底に押し込めた自分自身なのかもしれないが、

 シュウはそれを認めることはないのだろう。

 

(心の崩壊をこえてなお、彼は戻ってきた。

 そして、私に天啓の如き言葉を与え自覚させた、不自由さを……

 普通の人間なら、仕方ないとその不自由さを受け入れるのでしょうね)

 

 

 ―――ですが、私は受け入れない

 

「すべてを利用してでも、真の自由を手に入れる。

 そのためにも彼には生きていてもらわねばならない」

 

 

「ご主人様の追っかけは多いですが、まさか追っかけになってしまわれるとは。

 おいたわしいと申しますか、新たな側面を見つけたと言いますか。

 あ、もしやこれがギャップ萌えという奴でしょうかね。いやぁ、わかっちゃいますね」

 

 

 

■■■■■

 

 

(前回は足止めしただけで倒したのはベターマン。

 こいつと足止めして他の奴がきたとしても勝てるのか……?)

 

 

 前回も再生の為にエネルギーが消費するようなそぶりはなかった。

 ほぼ無限に近い再生能力ならば、前回の様に粉みじんにでもするしかない。

 隙をついた一撃で腕部の破壊までしかいかなかったのなら、

 巨大ながらライブレードに迫る運動性を持つ機体と正面対決するのは無茶というもの。

 しかし、街の安全を考えて逃げるという選択肢をつぶしかない以上、

 これから先は戦いを続ける以外の選択肢はない、であるならば”どう戦うか”という

 事を考える状況だという事だ。

 

 

「おい、一気にやっちまおうぜ!

 と言いたいところだがそうもいかねぇだろうな」

 

 

「理解してくれて助かる。援軍を要請したいが生憎、潜伏中なんだ」

 

 

「なんだ、まさかアンタら。連邦が指名手配してるロンド・ベルか!?」

 

 

「その一派って感じだな。今やお仲間はほとんど連邦を牛耳ってる

 ティターンズに捕まってる。悪いが、援軍は期待できない。なんとかするぞ!」

 

 コンパチブルカイザーに手を振る。

 ライブレードが背中の翼を肩部にマウントし、砲台として使う、

 ゼイフォニック・ブラドラーと背中に背負っていたグラヴィトンキャノンを

 同時に肩へ移動し、掃射する。

 しかし、それは敵に届く前に目の前の空間で消滅する。

 

「次元制御システムか……! 最初から使えよ」

 

「プロトンノヴァドライブ、中々だろう。

 レギュレイトがたまにぐずって仕事をしなくてね。

 何、さっきの一発でまた眠ってくれたよ」

 

 

 距離をとって着地すると、手の動きを見てすぐに下がっていた、

 コンパチブルカイザーが隣に並んだ。

 

 

「おい!! なんかよくわかんねぇが相手強くしちゃったんじゃねぇか!?」

 

 

「俺もそう思う。まずったなぁ~~」

 

 

「おい!」

 

 

「ま、まぁ、最初の一発で倒せませんでしたし!」

 

 

「そうそう。うん、その通り。ありがとう!」

 

 エデルリッゾのフォローに感謝しつつも、

 シンは別のものを見つめている。自分の視界の端に浮かぶ、ホログラム。

 ライブレード自身であり、それに宿る精霊。キャロル。

 どこか納得のいかない顔をしている。

 

「キャロル、出力調整を手伝ってやれ

 俺は戦闘に集中する。いいな?」

 

 

『冗談言わないで。まだまだこんなんじゃないわ……』

 

 

「自分の世界に絶賛、突入中ですかねぇ……

 (本気でやる気になったら多分、制御を奪われる。癇癪はやめろよ)」

 

 

 全開で戦っている以上、自分の限界も刻一刻と迫る。

 操縦者二人のシンクロにより上昇したエネルギー効率といっても、

 限界があるのにはかわらず、心の中に広がり染みていく疲労を感じる。

 それは、エデルリッゾも感じているのだろう。

 大丈夫か?と聞けば大丈夫という言葉しか返ってこない強がりは、

 彼女も姫も同じなのだ。最も、それは彼女たちが話からすればシンも同じなのだが。

 ともかく、それを理解した上で最速の決着を目指す。

 しかし、シンは勝ち筋の見えないその状況に思考の空回りを続けている。

 

 

「遠距離武装はあるか! 同時攻撃を試してみる!

 なければ、俺の武器は使うけどゴリゴリ俺の精神力を削る!」

 

 

『ある。コウタ、胸の水晶にエネルギを集中させるんだ!』

 

「よし! うおおおおお! カイザァアアアー! バァアアストッ!」

 

 

 緑の水晶から放たれるエネルギがBFの形を作り、敵に凄まじい速度で向かっていく。

 ライブレードはそれを追うようにスピードをあげ、すぐに並行して並んだ。

 そして、空間から実体剣であるダイフォゾンを取り出し、振りかぶる!

 

「ブラン・ダイ・ガード!!!」

 

 ダイフォゾンを介して自機周囲に攻性エネルギーフィールドを発生させる。

 剣に纏わせるのような戦い方もあるが、今回のこれはいわゆる体当たりに近い。

 カイザーバーストが敵のフィールドに降り注ぎ、そこにライブレードが追撃する様に、

 敵のフィールドにぶつかった。

 

 

「シンさん!」

 

 

「くそっ!!」

 

 

 ランプが黄色に光を放つ。処理能力の限界がすぐ間近にある。

 攻撃のたびにこれが続くなら、どちらにしろ時間はない。

 しかし、相手はひるむ様子すらない。そして。

 

 

 バキィーン

 

 

「あぁ! おれたぁ!? うっそだぁああ! 

 もうなんかすごい剣の様なイメージだったじゃん!!!」

 

 

「シンさん! そうはいっても絶対超合金Zとかの方が凄いですよ!」

 

 

「やめろぉ! そんな気はしてた。そんな気はしてたけど!」

 

 

 エデルリッゾの反射的行動により、逆方向へ噴射された翼に内蔵された

 複合スラスターが機体を遠ざける。

 去り際にこれでもかというほどやけくそでライフルを連射するが変化はない。

 

「逃げるのか。逃げるなら、こうするしかねぇなぁ! エクサノヴァシュート!!」

 

 オメガヴァルザカードから発進したアルムアルクスを巨大化、弓状に変化させ、

 敵陣めがけてプロトンエネルギーを結晶化させ、弓として放つ。

 機体の大きさと武器の形状からしてその威力の絶大さを2人は感じた。

 

 

「させるか、カイザァアアアア!!」

 

 

 すでに動き始めていたコンパチブルガイザーがエネルギーフィールドを展開させて、

 攻撃に割り込む。しかし、すぐに皹が入り始めたその光景はパイロット、

 コウタの脳裏に絶望を感じさせた。

 

「くそ!!」

 

 

「プロテクト、シェーーード!」

 

 

 エネルギーフィールドが砕ける瞬間、なんとか間に合ったライブレードが

 プロテクト・シェードを展開する。脚部に集中されたエルゴフォームにより、

 ブレーキをかけてその場にとどまるが道路は陥没し、機体を沈めてゆく。

 反発的防御空間を展開するといっても、それをこえる力に耐えきれる訳ではない。

 完全無欠なバリアではない以上、限界はある。

 しかし、光学兵器ではなく一種の実体兵装であったことと、

 コンパチブルカイザーが威力を削いだことが今回はライブレードに味方した。

 推力を失った結晶は地面に落下し、砕ける。

 

 

「よ、よし!」

 

『今よ!!』

 

「!? 機体制御が!」

 

 ライブレードの胸部が開き、内部見える闇の中で何かが鳴動する。

 黒白の機械の心臓の様なものが、耳の傍で聞こえるように錯覚する。

 激しく鳴り響き、コックピットを揺るがした。

 

『さぁ、聖なる言葉と共に滅びなさい……テトラ・グラマトン!』

 

 

 全身から力が吸われる脱力感。

 しかし、シンの視線は一か所に向いた。

 けたたましい音をならしながら赤く光るそれに。

 

 

「やめろぉ、キャロルぅううう!!」

 

 

『コスモ・ブラスタァアアア!!』

 

 

 闇から生まれる光の束が周囲を飲み込み、

 光芒を引きながら、広がっていく。それがオメガヴァルザカードへ向かう。

 

 

「わるくねぇ技だ。だが……」

 

 オメガヴァルザカードが拳を構える。

 

 

「出力が違けぇ!!!!」

 

 

 プロトンノヴァドライブのエネルギを纏った拳により破壊された前方の空間が、

 繋がった別次元の宇宙へとその攻撃を吹き飛ばして消滅させる。

 

 

『そんな!? えっ!』

 

 

 同時にライブレードのアイカメラから光が消え、膝を折る。

 

 

「ハロの強制シャットダウンか!?」

 

 

「いえ! ハロはキャロルにより動きを止められていたみたいです。

 完全に機体自体のオーバーヒートです! 起動回復時間不明! 不明!」

 

 

「く、くそ!」

 

 

「オーバーヒートとは、なさけねぇなぁ!」

 

 

 オメガヴァルザカードにより蹴り飛ばされ、ライブレードが弾き飛ばされる。

 

 

「よく飛んだなぁ。シン、お前は俺がこいつから動力を取り出した後に

 直々に殺してやる。寝てな! いくぞ、コンパチブルカイザー!」

 

 

「くそ! やってやらぁ!」

 

 

 やけくそに拳を繰り出すが、それを巨大な片手で全て受け止める。

 むしろ、今なら機体全てを握りつぶすこともできるのだろう。だが、それはしない。

 彼の傷つけられたプライドがまだそれを良しとはしないのだ。

 

 

「おらおら、どうした! そのざまかよぉ!」

 

 

「うるせぇ、まだまだ力、八分でぇぃ!」

 

 

『とっくに10割を超えてると思うが、事実力は上がっているし置いておく。

 コウタ、どうする。明確な決め手はもうないぞ!」

 

 

「愛と勇気のコンパチなんとかなんだろ、なんとかしろ!」

 

 

『ムチャな……! だが、できるだけなんとかしよう

 バーナゥ・ファー・ドラグ……! ファイアー、ドラゴン!!!!」

 

 ロアの言葉と共に放たれた炎の龍がアスファルトを裂いて潜り、

 地下からオメガヴァルザカードの足を縛り付けた。

 

「ほぼゼロ距離でぇい! カイザァアア! バーーースト!」

 

 放たれるカイザー・バースト。しかし、その攻撃は

 オメガヴァルザカードの前に現れた空間の裂け目に吸い込まれていく。

 

 

「無駄っていってるのがわかんねぇのか!」

 

 

『しかし、無限ではないはずだ!

 空間制御能力に制限がないならそれを利用して動力炉を奪えばいい!』

 

 

「って、ことらしいぜ。よくわかんねぇけどなぁあああ!」

 

 

「そう思うなら、やってみろよ!!」

 

 

 不動のまま攻撃を受け続けるオメガヴァルザカード。

 そこには限界など見えてこない。ただ、王者の風格をまとい直立している。

 

 

「……いや、底なしか!?」

 

 

「……ぷっ! ハハハハハハハッ!

 あぁ、そうだ。艦載機に処理を割り振ってんだよ! まだまだいけるぜ」

 

 

『何!? いや、そうかこの巨体にさっきの武器の時に発進した機体。

 戦艦なのか、まさか!? そんな機体があるのか、この世界は!」

 

 

「いや、確かにマクロスとかあるけどよ。

 でもこの巨体でこいつ以上の機動力。

 しんじらんねぇ……! く、くそ……!」

 

 

『オーバーゲートエンジンはともかく、このままではカイザーが持たない……!』

 

 

「おらおら、気合い入れろ! ハハハハハハッ!!」

 

 

■■■■■

 

 

 

「くそぉ、やりたい放題かぁ……」

 

 

「し、シンさん! 血が!」

 

 

「男が女をまもらねぇでどうすんだ。

 こんくれぇなんてこたぁねぇ……

 まぁ、真後ろだったから咄嗟に飛び乗れたのはよかったな」

 

 

「な、なぜか凄く死にそうなセリフなのでやめてください! うぅ!」

 

 

 泣きそうな顔をしながら、割れた額をスカートとの布を破いて縛る、エデルリッゾ。

 咄嗟にシンが後方の席に向かって抱き留めたおかげで彼女は無事だったが、

 激しくシェイクされた機体で体や頭を激しく打ち付けられたシンはぼろぼろだった。

 

「俺はボロボロでも動けるからな……あー、いてぇ。再起動までは?」

 

 

「モニターも消えてますし、ホログラムも。どこまで機能が生きているのか」

 

 

「機体は生きてる、間違いない」

 

 

 シンの視界の端ではホログラム。ではなく、電子的な投影装置を失い、

 霊的な姿でのみ存在する精霊が浮かんでいる。

 しかし、その表情はどこか唖然とした様子でこの状況が理解できないような顔だ。

 それでも精霊が見えるならば、機体自体は生きている筈だ。

 

 

「ただ、ハロを掌握されて強制シャットダウンができなかったのなら、

 復帰までどれだけかかるかわからねぇ……でもこのままじゃアイツが負ける」

 

 

 ふらつきながら、前方の席に戻るとSOS信号を出す。

 負けの可能性が出てきた以上、もう救援を求めるしかない。

 街が破壊されても生き残る人はいるかもしれないのだから……

 

 

「一応、言う。逃げてくれると嬉しい」

 

「嫌です」

 

「そういうと思ってた。なら勝つしかない」

 

「あの、こういっておいてなんですが……方法は?」

 

 

「ない。だから、なんとかする。運込みだけど」

 

 

「なら信じてます。だから一緒に戦います!」

 

「あいよ! といってもさて、どうするか……時間はそんなねぇぞ」

 

(……とりあえずは勝利を確信して嬲る筈だ。バリとしたロボみたいな乗り手には悪いが、

 この可能性もあったから死ぬほどキレさせた。それでどれだけ時間が稼げるか。

 これに関してはあのでかいロボットの耐久力次第。でもスーパー系だしかちかちだろ)

 

「……あ、シンさん。アルドノアドライブはおそらく動きます。

 各動力系は独立していますから……制御系がこっちにくっついてるGストーンの

 GSライドは怪しいですが、アルドノアドライブは停止、破壊するまでは稼働します」

 

「念じて動いたら推力は確保できるか。逆にいえば、それ以外は動かない」

 

「アルドノアドライブは近くのシンさんを今も認識している筈です。

 だから、きっと大丈夫です! とりあえず冷却して機体を復旧させないと……」

 

 逃げるだけはできる、という思考が浮かぶがそれをすぐに払う。

 明日の勝利のために逃げる、みたいな王道路線は死ぬほどにあわない。

 どちらかというと、ぶざまな敗北者となってもこの場に立ち続ける。

 それが自分という人間だという事はよく理解している。

 

 戦闘続行をするなら、考えられるのは水源による強制冷却。

 だが、その先まで考えないと勝利はない。

 

 

『……非常用コンソールで私を削除しなさい』

 

 

「なぁにぃ?」

 

 

『ライブレードの不調はきっと、私が原因よ。

 意識が弱く、ライブレードを通してしか外と繋がられなかった初期の私ならともかく、

 はっきりとした存在としてある私が処理系に負担をかけてるのよ。

 おそらく、知らず知らずのうちに……無理もないわね。ある意味、完璧な人工知能よ』

 

 

「だから、お前を消せば動くと?」

 

 

『そうよ、だから』

 

 

「断る……」

 

 

『ちょっと、聞いてたの! 今のままじゃ……』

 

 

「俺は今、一つ確信した事がある。お前はな、ライブレードじゃない」

 

 

 シンはキャロルをじっと見つめる。キャロルはそれに反論するかの様に、

 口を開こうとしたが、その真剣なまなざしに口をきゅっと結んだ。

 

 

「お前がライブレードの状況を把握してなかったのもそうだけど、

 一番は今、お前が自分を殺せっていったことだ。俺は、こいつと戦ってきた。

 確かにこいつは俺を何度も殺しかけた。でも戦う力も護る力もくれた。

 あの時、全部出し切って死んだと思ったのに生きてた。きっと護ってくれた……」

 

 

『だ、だから……』

 

 

「お前がライブレードならわかってる筈だ。そこまでしてくれたこいつを、

 俺が見捨てるわけないと。だから、お前はライブレードじゃない……でも

 でも、ライブレードにお前は必要だった。じゃなきゃライブレードは動かなかった」

 

 

 ―――だから、俺はお前を殺さない

 

 

「ライブレードを動かしていたのがお前なら本来のライブレードは

 意思も何もない金属の塊なのかもしれない。でも、俺はこいつを信じるぜ。

 いや、こいつと……こいつを形作る全てを、地球と火星を俺は信じる。

 グラボがあっちちってなら機体ごと冷やして再起動でリターンマッチだ」

 

 リーゼロッテが静かに頷く。それだけで全てが伝わった。

 

 シンが自分の操縦席に戻って水晶に手を触れる。

 アルドノアドライブは確かに自分を認識しているようだと感じる。

 カメラもない状態で隅田川に運ぶのは中々難しそうだが、大体の位置は分かる。

 やってみるさ、と自分の心に火を入れた。燻ぶる炎に放り込むのは、

 珍しく憎しみではなく闘志と、背中に背負うものが与えてくれる―――生きる意志。

 

 

「行くぞ、行くぞ、ライブレード……もうひと踏ん張りだ。

 なぁ、やってやれねぇ事はないだろ! 俺たちなら!! 信じてるぜ!!」

 

 

 

 ■■■■■

 

 

「うわぁあああ!」

 

 カイザーバーストが限界をむかえ、胸部のクリスタルに皹が入る。

 小規模な伝達系の爆発でカイザがふらつき、膝を折る。

 

 

「初陣にしては中々だがそろそろ限界だなぁ!機体が爆発するぜ!」

 

 

「なら、てめぇを道連れにしたらぁ!」

 

 

「できるわけないって、わからねえのかなぁ……馬鹿かぁ!」

 

 

 感情のまま、オメガヴァルザカードがコンパチブルカイザーを殴りつける。

 瞬間的に展開されたバリアフィールドで全壊こそ避けられたが、

 浮き上がるように弾き飛ばされ、地面に激突した後に見た機体の損傷は、

 重篤なものであるのは見て取れる。しかし、それでもカイザーは立ち上がった。

 

 

「中々いいパンチしてるじゃねぇか……」

 

 

『コウタ、もう限界だ!」

 

 

「うるせぇ、ここで退けばアイツらは一帯を塵にするぜ。

 それぐらい俺でもわかんだよ! 逃げるのはなしだぜ」

 

 

「逃げなくても、やるけどな!

 お前の動力炉を頂いたあとに一気に灰にしてやるぜ」

 

「てめぇ!」

 

「当たり前だろ。ここまで俺を馬鹿にしたんだからよぉ! おら、くたばりやがれ!」

 

 

 臍の発射口が開き、プロトンキャノンを発射する。

 カイザーはそれを対抗しようとするが、最早、立っているだけで限界だった。

 

「まだだ、まだ……あきらめねぇええ!」

 

「全く持って、その通りだな!」

 

 

 緑の光がプロトンキャノンを殴りつけて消し飛ばす。

 

 

 

「て、てめぇ……」

 

 インファレンスが青筋を浮かべて、目の前のそれを睨みつける。

 

 

「シン!!」

 

 

「……よし、いい感じだぜぇ!

 なんかしらねぇけど、動いてる!! よし!」

 

 

 現場猫指さし確認を繰り出しながらコックピットで笑うシン。

 緑色に発光しながらライブレードが手を握った。

 その光は今、コックピットの中でも輝いている。

 命あがくもの、勇気の光。Gストーンが活性化している証明だ。

 

 

「処理系統はオーバーヒートしてた筈だ。これはGストーンの光……

 馬鹿な、超AIのない機体では「無限情報サーキット」の本領を発揮できるわけが」

 

 

 Gパワーと呼ばれる高エネルギーの抽出限でもあるためライブレードに搭載された

 Gストーンを始めとしたそのシステムだが、本来は超AIを載せることで、

 無限情報サーキット……つまり、それ自体が持つ

 超高度な情報集積回路・情報処理システムとしての本領を発揮する。

 しかし、通常ではそれを発揮することは叶わない。

 交戦経験があるインファレンスだからこそ、それを知っていた。

 

「Gストーンを扱うにはそれと直結しなけりゃいけねぇ。

 それを埋め込んでGストーンサイボーグ化するならまだしも、

 機械的サポートをうけて間接的なアプローチしかできねえ人間はなぁ

 そいつを生かせねぇんだ、分かるか!! てめぇ、何をしやがった!!」

 

「怖いのか」

 

「あぁ!?」

 

「伝わって来るぜ、インファレンス。

 お前の恐怖が……お前は恐れているんだ。Gストーンが生みだすGパワーを

 機体が纏うトリプルゼロを抑えきるエネルギーと、それを生みだす人間への恐れを!」

 

 

「ふざけるな! そんなわけがねぇ!」

 

 

 オメガヴァルザカードが後ずさる。インファレンスの言葉に

 相反するような機体の動きはシンの言葉を確かに肯定するかのようだった。

 

「お前、ちょっとは人間みたいなところがあるんだな。安心したぜ」

 

 

 ―――人間ならぶっころせるって事だからなぁ!?

 

 

「シンさん、なんか完全に悪役のそれですね」

 

「うるへぇーー! こうなりゃ、やけだ。おい、力を貸してくれ!」

 

 

 背後のコンパチブルカイザーに声をかけるシン。

 

「助けてくれたのはありがてぇが、何をすりゃいいんだ

 ああいったんはなんだがこっちはろくにうごけねぇ!」

 

「オーバーゲートエンジンだ!

 それも多分、クロスゲートに関わるものなんだろう

 それを利用して次元の彼方にアイツを吹き飛ばす! どうだ!」

 

「わかんねぇ!」

 

 

「わかんねぇのか!」

 

 

「あぁ!!」

 

 

「分かった。じゃあ、試してみるわ! 行くぞ!」

 

 

「よっしゃあ! 行くぜ!!」

 

 

「え! え!? あの! 今の適当な奴でそ、それでいいんですか!?」

 

 

「運だっていったろ。行くぞ!!」

 

 

「ロア! ぶちかませ!」

 

 

『どちらにせよ、手段はないか!

 オーバーゲートエンジン、ドライブ!! 

 超次元間孔を開けるのはわずかだ。タイミングは任せるぞ!!』

 

 

「リッゾちゃん、全副動力を直結してくれ! 制御は……ライブレードがやる!」

 

 

「そ、そんな事できるんですか!?」

 

 

「できる! 頼む!」

 

 

「わ、わかりました」

 

 

「いくぞぉ、ライブレード!!」

 

 ちりちりと焦げる様に、髪の色が赤く染まる。

 命を薪にして燃え上がる様に。バーストプラーナによって、

 ライブレードに力が注ぎ込まれる。最早、退くという選択肢は消え失せた。

 

 

「やらせる……なっ!?」

 

 

 妨害しようと迫ろうとしたオメガヴァルザガードに、

 コンパチブルカイザーの2つのロケットパンチ、スパイラルナックル。

 

「うごけねぇが、手は出るぜ!」

 

「行くぞ、インファレンス! お前の終焉は此処だ!!」

 

『超次元間孔、開放!』

 

 

 希薄関連性近接亜空間、それはこの空間に近い位置関係にあるが

 相互干渉することがない別の空間である。しかし、空間的に近いというものは

 規模の大きさとしては凄まじいものである。それこそ、一生演算しても

 この空間に戻れるかわからない、それほどの遠さだ。

 

 

 折れたダイフォゾンにエネルギを限界以上に集中させる。

 砕けた刀身の先に形成されるそれは、剣というより最早、槍だった。

 それを深く握り込む。

 

 

「いっけええええ!!」

 

 

 Gストーン、GSライドは共鳴する。

 腕と共に放った。独立したGSライドを持つライブレードの拳ならば

 限界を超えたGパワーを放つ、ライブレード自体が衝突したと同じだった。

 そして、機体の持つ無限の力。トリプルオメガを抑え込まれたオメガヴァルザカートに

 それは深く突き刺さり、少しずつ後退を始める。

 

 

「……すぐに戻るぜ。覚悟しな」

 

 

「やってみな。次は殺す」

 

 

 勢いにまけた機体が超次元間孔に吸い込まれる様に消えた。

 

 

「ハハハハハハハッ! ざまーーみろ!!」

 

 

「うぅ、本当に悪者みたいです!」

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「しんどい……」

 

 

「私もです……なんかぎゅーとしぼられた感じというか」

 

 

「あ、ごめんね。そうか、2人で絞られたから俺の負担がマシなのか。

 辛い事は辛いんだけど、なんか徹夜2日目の疲労がピークの当たりのレベル。

 3日目は違うな。3日目はもうずーとZONE入った感じで電池切れまで動くから」

 

 

「それ、どっちにしろやばいのでは……」

 

 

「やばいですね」

 

 

「やばいんですね……帰ったら休んでくださいね、本当……」

 

 

 

 そんな2人のやり取りを見ながら、精霊のキャロルは考えていた。

 

 

『私は……何もしていない。でも、確かに……

 敵の言葉が事実なら、Gストーンが力を発揮したのは……でも、どうして?』

 

 

 理屈で考えれば、ありえない。

 自分がいないライブレードはただのロボットの筈だから。

 だが、そうとしか考えられないとも感じていた。

 

 

「……心のありかなんて誰にもわからねぇよ」

 

 

『あなたにも、私にも、ありますよ』

 

 

 

「じゃあ、虫にはないのか? 花には? 

 当たり前と考えて、人間も機械も見逃してる事はあんだよ、多分な。

 俺は信じてるぜ、ライブレードを……あと、お前もな。だからなんとかしろ」

 

 

『な、なんとかって……』

 

 

「俺が答えを出してもしょうがねぇんだよ、そこは。

 心に従う結果は、本人にしかわからねぇよ……なぁ、そうだよな」

 

 

 そう語り掛ける声に応える様に、シンの手元の水晶がチラついた。

 ほんの一瞬だったそれを、誰も見ていなかった。疲労困憊のシンも当然。

 だが、なぜか言葉は届いていた様な気がした。

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 

「君は、いかないのかい?」

 

 

 カヲルは近くのビルでライブレードを見下ろしながら、

 隣の少年に語り掛けた。彼は、少し考えた様に間をあけてから口を開く。

 

 

「僕の調律は、世界を救えなかったから……真に合わせる顔がないんだ」

 

 

「アポカリュプスは「約束の地」すらも砕いた。しょうがないさ。

 冥王計画や彼の拙い補完よりはマシだった。僕はそう思うよ。

 個人的にだけど、「時の観測者」という使命なき今、舞台に上がるべきだよ。君は」

 

「そうだね。だから、これは言い訳なんだ。僕はきっと怖いんだ。

 誰も僕を知らない世界が、怖いんだ……情けないよね」

 

 

「……そうは思わないよ。僕も孤独に負けて、

 あの書にシンジ君の名を書き加えてしまった」

 

 静寂を打ち消す様に鼻歌を歌うカヲル。

 彼はどこか、機嫌がよさげだった。

 

 

「太虚が、迫っている……」

 

 

 空を見上げながら、少年はそう呟いた

 彼の瞳に映る空は、夕焼けを塗りつぶすかの様な果ての無い暗黒を内包していた……



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幕間 インターミッション6 『どいつもこいつも兄弟』

 

 

「うぅ……こ、ここは……」

 

 

 フェルナンドが目を覚ましたのは見知らぬ部屋のベッドの上だった。

 困惑しながら、首を傾けた時にみえた点滴と医療器材は自分に繋がれている。

 

 

「よう、起きたか」

 

 

「お前は……」

 

 

「コウタ・アズマ。お前がさらった妹の兄貴だよ。蹴飛ばしたろ

 再生医療の機材が家にはなくてな。ロボットドクターの手術だし、

 不安だったけどな……よかったぜ。いや、お前にとっては運悪く、か?」

 

 

 不機嫌な顔で枕元にたっていたコウタは愚痴交じりにそう言った。

 

 

「さてな……修羅としてはお笑いな結末だろう」

 

 フェルナンドは自嘲気味に話す。しかし、どこかすっきりした様子もあった。

 

 

「……なんだよ、なんかいい顔してんじゃねぇか」

 

 

「修羅としてはありえん行動をした。しかし、正しかったとも感じる。妙な気分だ」

 

 

「……やい!! 一つだけ聞かせろ。なんで俺を助けた?」

 

 

 コウタがフェルナンドの顔に近づいて言う。

 フェルナンドはコウタの瞳をしっかり見て、言った。

 

 

「修羅は地球の人間を理解できんと思っていた。

 だが、同じ兄弟を愛する思いだけは理解できた、のかもしれんな。

 体が勝手に動いていた。行動に、理由はない……さぁ、殺すがいい。

 修羅の事について話す気はない……」

 

 

 最後の時を感じ眼を閉じた、フェルナンド。

 しかし、その瞬間はいつまでもやってこない。

 ずかずかと不機嫌気味に足音を鳴らしながら、扉の前に行くコウタを見つめ、

 フェルナンドは信じられないような顔を浮かべる。

 

 

「なぜ……」

 

「うるせぇ……精々、養生しやがれ。だが、出ていくときは一言言えよ。

 礼儀だってんだ、こんちくしょう……ショウコは自分で探すぜ。じゃあな! えーと」

 

 

「……フェルナンド・アルドゥクだ。コウタ・アズマ」

 

「なげぇ。フェル、フェルだおめぇは! あばよ!」

 

 自動扉が開き、すぐにロックを伝える赤いライトが付く。

 フェルナンドはその扉をしばらく見ていたが、やがてゆっくりと元の体勢に戻り、

 天井を見つめた。その先にある何かを見つめる様に。

 

 

「あの時、ビレフォールは最後の力を振り絞った、俺の願いに応える様に。

 闘争本能だけが修羅神を動かすものではないのかもしれん……」

 

 

■■■■■ 

 

 

 

 

 

「GGG共通規格?」

 

 

「Gパーツというあだ名もある。開発者内でだがな。

 これはそもそも、GGGがまだ公になっていない組織という事もあり

 共通規格と言いつつもこれが使われている機体は今、4……いや、3機。

 GBR-1、ガオガイガー。BFR-R、コンパチブルカイザー。そして、GBR-0……」

 

「ライブレード・SIN……」

 

「さよう」

 

 角の様におでこの少し上から伸びる頭髪と、髭を蓄えた白衣の老人。

 キサブロー・アズマは神妙な面持ちでうなずいた

 

 

「ディバイン・クルセイダーズ(DC)の前身EOTI機関に所属していたワシじゃが、

 当初、ビアン博士は異星人による侵略を危惧し、地球圏の武力統一を考えておった。

 これに反対したワシは特別許可を得て機関を去った。しかし……」

 

「博士の予想よりも、早く。我らヴァースによる戦争が始まってしまった……」

 

 

「お嬢さん、気になさるな。裏から手を回したものの存在はワシも把握しておる。

 それに結果的に地球と火星は手を取りあい、意思は一つなった。

 最も今、それをティターンズによって乱されてしまったがな……

 そういう意味では、わしがこうしてあの場を離れていたのは正解だった」

 

 

 エデルリッゾにフォローを入れると、キサブローは視界をボロボロのカイザーと

 それに並ぶ亀裂の入ったライブレードを見つめた。

 

 

「異世界より流れ着いたカイザーはほぼ全損しておった、

 故に、修理よりパーツを流用した新造であった上に、異世界の技術がベース。

 20年以上かかった……ダイナミック・ゼネラル・ガーディアン (DGG) の技術と、

 GGGの協力を得ているのは姿から分かる筈。つまり、このBFベースで修復はたやすい」

 

 

「すでに分析も解明もされている以上は、直すのはたやすいか。助かるね」

 

 

 

 BFベース(Battle Force Base)

 

 キサブロー・アズマ博士が東京浅草の地下施設に建造した秘密基地。

 「アズマ研究所」という名で市井の民間研究所のガワをきた地下基地。

 出入口が幾つもあるため、ライブレードとコンパチブルカイザーはそれぞれ、

 別の場所から基地に搬入された。というか、入口は多いわ、

 基地は広いわ、浅草の地下がどうなっているのは最早、謎である。

 

「……あれ、待って。さらっと流したけどあれ勇者ロボット的な扱いなの!?」

 

 

「見た目はどうみても悪の化身じゃが、そうじゃぞ」

 

 

「あ、赤いのは火星のパーソナルカラー的なあれという事で!!」

 

 

「いーや、あれは絶対血じゃ。暗黒騎士じゃ。ブラッディナイトとかそういうのじゃ」

 

 

「ひ、否定はできねぇ……」

 

 

「頑張って否定してください!! もーーー!」

 

 

 エデルリッゾが不機嫌そうに、肩をぽんぽんと叩く。

 シンは反論を口にすることができず、眉を歪めて困惑顔を浮かべてされるがままだった。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 

「それで、どうなんですか?」

 

「ずぞぞぞぞ……え、何が?」

 

「前は1回出撃するたびにぼろぼろだったでしょう、シンさん」

 

「いや、やっぱ動力分割運用のおかげで楽だわ。

 プラーナコンバーターをフルで動かす必要がある戦闘はきついけど

 でかいの一発撃った今でも3割ちょいぐらい余裕はあるからな」ズゾゾゾゾ

 

 

「1Lの栄養ドリンクストローで啜ってる状況なのはともかく、

 眼に見えて異常は見えないのでやっぱり楽にはなってるんですね……」

 

 胸をなでおろして、安心した様子のエデルリッゾを見ながら、

 シンはピースを浮かべながら再び栄養ドリンクを啜る。

 

「まぁ、正直な話。リッゾちゃんが結構負担軽減してくれてるのもあると思う。

 二つの意思がどうたら、ってのはいまいちわからんけどね。実際、

 3人乗ってた時は大分楽だったし、すげぇパワー出たからな。ただ……」

 

 

 いじいじと前髪の一房、赤になったままの頭髪を弄る。

 

 

「くそぉー、戻らなかった……まるでノリで流行に乗っちゃった

 マイナーバンドの如き。これ、まさか全部赤くなった死にます的な……」

 

 

「二度と!!!! バーストプラーナは使わないでください!! 二度と!!!」

 

 

「あ、はい。わかりました」

 

 

 ぴしぃと!と背筋を伸ばす。

 最近、アセイラム姫といい、エデルリッゾといい圧が強くなった気がする。

 女系社会は着々と進んでるんじゃね?と空の彼方のシロッコにシンは問いかけた。

 

『いや、こういうのではない。わかっておらんな、お前は』

 

「……まぁ、前回はそれこそ最後の一押しが必要だったから。

 相手を抑え込めたとはいえ、アイツの動力の力にあのままじゃ勝てなかったし」

 

 

 シロッコを手で片手押しのけつつ、ドリンクを一気に飲み込む。

 

 

「確かに次元操作すら可能とすれば、アルドノア以上の力になりますね……

 バニシングエンジンとイナーシャルキャンセラーで

 タンホイザー・ゲートを利用したワープは地球も技術としては確立してますが……」

 

 

「うん。連続の使用は難しいし、そういう枷から解き放たれてるアイツは明らかに異常。

 それがOOOあるいはトリプルゼロの力なのかもしれんな。常に再生してるからとか

 でも、多分。アイツ戻って来るよ。数日、数か月、1年後はわからねーけど……」

 

 

「え、そうなんですか!?」

 

 

「人なら無理な演算だろうけど、アイツあきらかに人間とかじゃねぇからな。

 アンドロイドか、なんか……だから、しらみつぶしにいって復帰できると思う」

 

 2度の交戦で確信があった。

 人ではない、しかし人に近い存在であることは。

 そして、Gアイランドシティの事から考えて、Gストーンに因縁がある。

 いや、今回の事から考えればGストーンが生みだすGパワーに苦手意識があるというか、

 反作用とはまた別。いうなれば、中和していたという感じであった。

 

 

(……ライブレード、お前が助けてくれたのか?)

 

 

 正直、GSライドが低出力なのはモニターで分かっていた。

 だが、あの戦いでそれが冗談だったかのような出力が出た。

 それは、一人。いや、2人でも出せたような気はしていない。

 キャロルも戦意を失っていた。だから、彼女のサポートでもない。

 

 

「なぁ、リッゾちゃん。俺さ、意思を感じた気がしたんだ……

 キャロルじゃなくてさ……でも、ロボットが意思を持つなんて……馬鹿な事だけどさ」

 

 

 馬鹿な事と言いながら、どこか嬉しそうにシンはエデルリッゾにそう言った。

 彼女はそれを否定せず、笑顔をシンに向けた。

 

 

■■■■■

 

 

 

『あの時ほど、今は強くは感じられない。でも……』

 

 

 微弱に感じる、とキャロルはライブレードを見下ろしてそう思った。

 正直、ありえないと彼女は思っていた。

 自分はここからそう遠くにはいけない。ライブレードに強く結びついている存在。

 だからこそ、ライブレードの事を把握している。

 そう、思っていた。だが、オーバーヒートなどのことも考えれば、

 それは単なる自惚れで、自分はやはりこの機体に搭載されているだけなのだと、

 切り離されてしまえば、消える。そんな儚い存在であることを嫌でも自覚した。

 

『私を形成する過程で取り込まれた下級精霊や霊の一部が

 ライブレード自身に付いて、自己を形成した? ある種の付喪神のような……

 でも、そんな……それにしたって早すぎる。でも……』

 

 

 でも、確かに意思はある。感じる。

 何より、あの場を逆転する可能性を2人に与えたのは……ライブレードなのだ。

 

 

『私の存在は、無意味……?』

 

 

 暗闇の中で、精霊は自問自答を続ける。

 答えは出ない。彼女を生みだそうとした開発者はもう生きてはいないのだから……

 

 

 

 




ライブレードは原作終了後、
ディスタンスオブデザイアの設定に従い、
平和の象徴として”国際紛争の解決、防止”
を目的とした超国家機関

『国際連盟』の本部地下に移送して管理されていたが、
共和国より始まり、アガルティア王国を巻き込んだ内戦と
その負の念により開かれたクロスゲートにより
異世界アガルティアを巻き込んで広がった大戦により
起動を余儀なくされるが、新たな資格者が戦いの中で死亡。
システムを構築し、なんとか再起動をするも、
人類はクロスゲートよりあふれる負の念が実体化した存在によりほぼ滅亡。

ライブレードが内部よりゲートを閉鎖した為、
全滅はかろうじて免れるも……という状況。

ライブレードはそもそも、原作でもある種の舞台装置として
肉体を失っても精神で活動ができる高次元生命体が
勇者と魔王のような存在として生みだした勇者側の存在。
厳密にいえば少し違うのですが、この解釈が一番楽。
勇者も魔王も立ち位置が違うだけで近い存在なので、
ライブレードは負念で汚染されたゲートを閉鎖できた。

みたいなことにしている。
ところで、ライブレードⅡどこ?(開発中止)



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幕間 転生者閲覧専用スレ2


 本編はなるべくはよぉしま、すぅ~

 ちなみにディスタンスオブザデザイアのPVは
 聖霊機ライブレード Distance of Desireでぐぐるとyoutubeのが
 引っかかります。本編もインターネットアーカイブズにあるけど
 マジで断片的にしか見れないのでこれが一番いい

 久しぶりに見たら、弟の名前シンでした。普通に忘れてた。
 一応、反乱軍VS正規軍という内容だったようですがHPの絵にアガルティアの
 王女がいるので反乱の火はそこまで広がっていく、という感じで
 おそらく、ライブレードⅡはかなり絶望的スタートだったと予測されます

 貴重な資料ですねぇ


900:名無しのハズレ転生者

 勇者ロボで草

 

901:名無しのハズレ転生者

 ただの勇者ロボで草

 

902:名無しのハズレ転生者

 ライブレードの人格が仲立ちしたことで、

 イッチはGストーンの力を発揮できたんだ!

 

903:名無しのハズレ転生者

 超AIの役割をしたんすなぁ

 

 

904:名無しのハズレ転生者

 でもそれでもGストーン使えるのおかしいだろ。

 アイツの中には憎しみと苦しみと悲しみと痛みしかないんだぞ!

 

905:名無しのハズレ転生者

 敵側の属性の盛り方で草

 

906:名無しのハズレ転生者

 愛は近くにあるけど、最後に失って闇落ちすれすれのバランス

 

907:名無しのハズレ転生者

 ハッピーエンド、ありますか?

 

908:名無しのハズレ転生者

 ないです

 

909:名無しのハズレ転生者

 スパロボのオルステッド

 

910:名無しのハズレ転生者

 最終前話 闇よりもなお昏き者 

 最終話  SIN 

 

 

 

大惨事スーパーロボット大戦αAGE 8スレ目

 

 

 

33:名無しのハズレ転生者

 ところで、ライブレードはなんか一芸ないの?

 詳しい奴おらん? 一部でもいいんだけど

 

34:名無しのハズレ転生者

 あー、どうだろ。とりま、作ったのは

 カドゥム・ハーカームみたいな巨人族だよ多分

 ヴォーリアという肉体を失っても意識体として自らを保ってた奴で力もあった。

 確か、ライブレードを勇者。敵を魔王みたいな感じで舞台劇を楽しんでた

 

35:名無しのハズレ転生者

 カドゥム・ハーカームより性格悪くて草

 

36:名無しのハズレ転生者

 でもそれってつまり、ライブレードは

 クロスゲートを制御できる、太極に達しうる存在ってこったろ? 

 んな強そうにみえねぇけどな。見た目はコンパチブルカイザーか

 グラヴィオンだし、カラーリング的に闇落ちした勇者ロボだろ

 

37:名無しのハズレ転生者

 まぁ、でも負念で汚染されたゲートの中から這い出てきて

 しかもそれでも敵対者になってねぇしな。光であり、闇でもあるというか

 ライブレードという存在が巨人族の複製体みたいなもんなのかも

 

38:名無しのハズレ転生者

 勇者と魔王は鏡合わせともいうし、

 どちらの役割でもいいように素養としてはどっちも持ってるのかもな

 だから汚染されなかった

 

 

39:名無しのハズレ転生者

ありうる。じゃあ、あの動力炉というなの

 精霊の生成装置はなんでつけたしたのかな

 

40:名無しのハズレ転生者

 単独で機体を動かすためもあるだろうけど

 何か意味はあったと思うがなぁ

 

41:名無しのハズレ転生者

 クロスゲートの中にいたってことは飛び込んで

 閉じたって事になるよな多分。

 クロスゲートからくる敵と戦ってたのかな?

 

42:名無しのハズレ転生者

 なお、パイロットは使い捨ての模様

 

43:名無しのハズレ転生者

 日記の内容的に地獄のような戦いだったのはわかる

 

44:名無しのハズレ転生者

 それによって、改修ライブレードが完成にいたるって事だよな

 でもサイフィス憑依サイバスターを考えると、確かに驚異的な……

 

 

45:名無しのハズレ転生者

 なぁ、ワンちゃん。巨人族を生みだそうとしてた説は

 

46:名無しのハズレ転生者

 え、こわ

 

 

47:名無しのハズレ転生者

 なくはない

 世界に戦乱を広げようとするゼ=オードと戦ってたのもアガルティア王国を

 筆頭とする周辺の国々だけど、実はそのアガルティアも共和国を

 弾圧した歴史がある。だから、共和国から内戦が始まった

 ネットの続編は途中で打ち切られちゃったけどあの世界はわりと地獄

 ヴォーリアの化身ともいえるライブレードをそうしようとした可能性はある

 

48:名無しのハズレ転生者

 やっぱラスボスはライブレードかぁ……

 

 

 



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幕間 インターミッション7 先立つものはなにもなく

 

 

■序■

 

 

 

「へぇー、アンタ。ロンド・ベル所属だったんだな!」

 

 

「そうそう……」

 

 

 やや自慢げにシンはうんうんとコウタの言葉に頷いた。

 

 

「爺ちゃんから聞いたぜ。宇宙の彼方で宇宙怪獣とかいう

 大量の化けもんとたたかったんだろ? どうだった?」

 

 

「あ、すいません。それは病欠だったというか」

 

 

「あぁ!? 病欠だぁ? なんだそりゃあ、なっさけねぇ!」

 

 

 シンは何も言えなかった。一応、世の中の為に戦ったが

 確かに世界の危機にはがっつり寝ていた(というか精神崩壊していた)

 何も言えなかったので、渋い顔をして一言だけ呟いた。

 

 

「はい、すいません……」

 

 

■壱■

 

 

「シャア、このデータは事実か?」

 

 

『連邦とコロニー側双方の歴史資料。ジオンが回収していた連邦の機密データと

 コロニー側が隠していたもの。そこからまとめたものだ。だが、まだ穴がある筈だ』

 

 

 コロニー開発かつて、棄民政策とまでマスコミに批判されたものであり、

 確かにそういう側面もある。しかし、宇宙で財産も築いたものもある。

 つまり、賢いものは上手く立ち回り勝者になった、という事だ。

 そして、そういうものたちは歴史の裏に立っていた者たちが多い。

 少し政治を齧ればまず目にする、

 マネーロンダリングを専門とするビスト財団の裏の顔の様に。

 

「なんでここまで整合性の取れない歴史の流れになるんだ。

 明治の頃に長く蒸気が使われてた時期があるのも妙だ。エネルギーとして不完全だぞ」

 

 

『あぁ、蒸気が廃止。すぐに電気が主流になった所から、

 いつでも切り替えられるという状況でなぜか蒸気を使っていた事になる。

 このような違和感は歴史の随所にある。私の結論は……君に述べて貰おうか』

 

 

「地球はずっと昔から”何か”との戦いの中心にある

 それが異星人だったのか、もっと別の物だったのか。

 わからねぇけど、ずっと前からそれは起きていて歴史の中で

 場所や時期をかえ繰り返されてきた。しかし、隠されていた……なんか陰謀論みてぇ」

 

 

『ネットワーク・インフェルノが勃発し、情報産業の技術水準が

 1980年代まで衰退したあの出来事も何かの戦いの結果だったのかもしれん

 あるいはそれはもっと別の出来事を覆い隠すための手段だったとすら感じる』

 

 

「……よくないな。よくない」

 

 

 確かに考えれば分かる話だ。

 メテオ1、2の出来事だって首都ひとつ吹き飛ぶ隕石ならずっと前に観測し

 破壊できないにしても対策できていた筈だろう。首都の中核を移す準備事も可能。

 シンがゲームとして部分的に知っていた歴史も、今考えれば違和感があった。

 メテオ1とメテオ2が”ただの大質量隕石の衝突”なんてそんな事が、

 この世界では、そもそも、可笑しいし”ありえない”

 

 

「俺たちの敵はまだ増える可能性があるってのか……冗談じゃねぇ。

 しかも、それは歴史ごと闇に葬った何かかもしれない……」

 

 

「BFベース……広すぎると思わなかったか?」

 

 

『これは、キサブロー・アズマ博士。

 通信機器を貸していただき……』

 

 

「シャア・アズナブル、世事はいい。で、どう思った?」

 

 

『彼から聞いた広さからして、個人で作れる規模とは……』

 

 

「うむ、その通り。ワシは元からあったものを改造したにすぎん

 個人の作業の範疇で基地とスーパーロボットの制作の並行作業など不可能」

 

 

 そういって、一つの資料をシンに差し出す。

 古ぼけたレポート用紙を風化しないように密閉保存されたそれを

 キサブローは開ける様に顎で促す。その表紙に書かれた文字は……

 

 

「大帝国劇場支店花やしき支部……?」

 

 

『博士、これは?』

 

 

「残っているのはこの設計資料とこの広い基地の跡地だけ

 だが、それだけでもわかるじゃろう……新西暦以前にも大きな戦いはあった」

 

 

 シンは机に資料をおいて、おそるおそるページを開く。

 そこには、ドラム缶の様なロボットの設計図があった。

 

 

「蒸気併用霊子機関……え、日付は明治!?

 亜人間型重機発展、虎型霊子甲冑『光武』 博士、これは……?」

 

「隠された歴史、その一部じゃろう。

 使われているのは蒸気。そして、霊力。魂の力……プラーナといえるかもしれん

 断片的に残った記録によれば、これは各地に配備されていたようじゃな」

 

 

『明治の時代地球製魔装機……という事ですか? まさか……新西暦の以前に?

 そんな兵器が各地にあるならば、統一戦争はもっと泥沼化していたのでは』

 

「流石勘が良いのう、シャア・アズナブル。

 その通りじゃ。だからこそ、この技術は完全に破棄されたということになる

 

『そんな、なぜ……』

 

 

「……シャア、この世界にはニュータイプ、Xラウンダー。

 様々な能力がある。だが、宇宙にあって地球にしかない能力もあるよな?」

 

『……超能力。いや、念動力か。しかし、一部だがエアロゲイターも』

 

 

「念動力、TーLINKシステム。それは全て、イングラムを経由して地球にもたらされた

 ものとするならば、彼らが俺のような地球人と同じルーツをもつから、と考えられる。

 まぁ、素人考えだけどさ……ニュータイプの起源もまた、この星にあるとすれば」

 

『宇宙に上がって念動力が変質したものがニュータイプ……という事か?

 ……そうか、なら地球人類。そして、宇宙に上がったものは

 根源的には念の力を持つという事になるな……潜在的ESPとでもいうか』

 

「さよう。少し考えればわかった筈じゃ

 ”なぜ強化”するだけで普通のニュータイプに近い能力を持てるのか

 それは潜在的に人類はESPの素養を持つ。その強さ、弱さはあれどな」

 

 

 博士はそれを理解するのを待っていたとばかりに頷いた。

 

 

「人は根源的に超能力を持っている。念動力の力をパイロットとして間近で見たはず。

 その力は時に超常すら可能とするいわば、理を歪める。世界を変える力として言っても

 良いとわしは思っている。これが、この技術が人が捨てる選択を選んだ理由の筈」

 

「……何かと戦っていた筈だ。これだけものなら」

 

 

『……分かりました、博士。彼らは忘却による念の結界を作り出したのですね』

 

 

「うむ……人々が忘れることで存在をしないという認識、念を作った。

 いないものは害を加えようがない。そうして、世界規模で敵を封印したのだろう。更に

 豊かさを世界に広めることで、恐怖を忘れさせ。悪感情というべきものを抑え込んだ。そして、さらに困った事におそらく……敵はこの封印した奴らだけではない。

他にも昭和初期、平成、令和の時代にまで交戦記録の断片がある」

 

 

「……なら、今の状況は最悪だな。

 世界に残る戦いの傷は今も、人々に恐怖を与えてる筈だ。

 もし、もしこの敵が……魔装機の様な魂の力、プラーナでしか対抗できないなら……そして、他にも潜在的脅威があるならば」

 

 

「到底、ライブレードだけで……いや、ラ・ギアスの力を借りても戦い抜けぬ。

 今、世界はあやういバランスの中にある。このバランスが崩れた時、世界は終わる

 コンパチブルカイザーとオーバーゲートエンジンも所詮は防衛策の一つすぎぬ」

 

 

 重苦しい空気の中でシンはその深刻さを痛感した。

 もし、この力が自分の持つ霊能力に近しいものならば今、世界でそれを持つ者は、

 限りなく少ない筈だ。高度な情報社会と軍事で統合された世界には、

 小国こそあれど、独立性を完全に保っている訳ではない。

 純粋なオカルトというべきものはほぼ、根絶しているといっていい。

 

 

(どうなってやがるんだ……終わった筈じゃないのか。俺の役目は!

 なんで、なんでこんなに今にも皹一つで崩れていきそうな惨状に戻る!)

 

「ちくしょう……俺たち人間はまるでフラスコの実験動物だ……

 神様にもてあそばれてる気分だぜ……最悪だ……」

 

 

 シンの弱気な言葉が重苦しい空気をなお、重くする。

 同時に、耳元で破滅に向かう時計の秒針の音が自己主張する様に響く気がした。

 

 

 

■弐■

 

 

「あのなんとかブレードとかいう奴は修理できて、

 コンパチブルカイザーはまだなんだよ、爺ちゃん!」

 

 

「コンパチブルカイザーは、GGGの技術以外にダイナミックゼネラルガーディアン

 その他の技術を複合して修復されたもの。簡単にはいかん」

 

「くそぉーーー、そんな事が分かってたらぶっ壊さなかったのによぉーー!」

 

 

 コウタ・アズマとキサブロー・アズマの口論を見つめながら、

 シンは機体の動きだけを確かめていた。

 

 

「翼のこれ、スラスター兼砲台って変ですね

 でも隠し武器としては以外と盲点になるし、そういう考えなのでしょうか」

 

 

 スラスターの動きを確かめながら、エデルリッゾがシンに語り掛ける。

 シンは両手のマニュピレーターの指をしきりに操作しながら、うーんと唸った。

 

 

「かもな。でも砲台機能はプラーナ使うから、背中にキャノンついてよかったわ……

 というか、ライブレード武器自体は少ないからな。もうちょい増やして貰うか」

 

 

「剣折れましたしね」

 

「本当な、折れたわ……触媒にしてエネルギー拡散してたから

 次元バリアで殴り掛かられたら終わるわ……」

 

 

「あれはバリアではないのですか?」

 

 

「俺も弱バリアぐらいに思ってるけど、実際は攻性エネルギーフィールド。

 まぁ、より強い攻撃で打ち消してる形だから正直、普通のバリアより大分不便。

 でも次元バリアに対抗できると思っている手段の一つではあったからな……」

 

 いなほが解析した結果、

 ヴァースのアルドノアが持つ、次元バリアは『異次元へ飛ばす』という性質の

 最強の防御でもあり矛でもある。しかし、空気や大気を無尽蔵に削り飛ばし続けている

 というわけではない。そんなことをすれば、すぐにキャパシティを越える。

 つまり、人間やミサイル。ビーム兵器の様な実体を対象としているのは明らかだった。

 

 

 バリアの表面が全て次元の隙間で設置した部分から削り飛ばしまう。

 ならば、とシンが考えたのは剣を触媒として攻性エネルギーフィールドを展開する、

 ブラン・ダイガードによる対抗。自機周囲の一定範囲に攻性エネルギーフィールドを

 展開するこの技。単にエネルギーといっても、それはプラーナコンバータを経由して

 生成された特殊なエネルギー。霊的ものに限りなく近いそれならば、

 次元バリアを突き抜ける。それが無理でも最低でも、次元バリアの表面の異次元の隙間、

 それをふさぐような形で押しだすことは可能ではないか。

 

 実際の所、それは試してみないとわからないのだが

 そもそも、もう試すことができないので意味はない。

 

 

「どうすっかなぁ……まいったなぁ……」

 

 

 博士が回収して修理を検討してみるというが、半分はぶん投げてしまったし

 溶かしてつぶしてなんとかなるのかという疑問の方が浮かぶ。

 

 

「明らかにマジカルな金属でしょあれ」

 

 

「折れた所からしてそんな強度はありませんでしたが、

 他のもので代用できないのですか? ほら、いろんなものがありますし」

 

 

「霊的エネルギーを操る物質か……竜虎王がそんな感じらしいよね。

 データみたよ。そうだ、そいつを見つけてロボットの薄皮をはいで……」

 

 

「あれ、意思を持つロボットって聞きましたよ。やめましょう! ね! ね!」

 

 

「でも、ほかに手段がなぁ……」

 

 

「ま、まぁ! ほら、なんとかツテを探すって言ってましたし! ね!」

 

 

「はいはい、待つだけ待ちましょうかね……

 (まぁ、他にも手段はあるしな。でも……どうなんだろうか)」

 

 

 その手段はプライヤーズとの連結による、ディメンジョンプライヤーによる除去。

 しかし、これはしくじるとプライヤーズが消し炭になる可能性がある。

 何より、絶対条件としてバリアの出力をこえねばならない。それが可能なのか。

 あの時のような力を発揮する自信がない。何より、わりと苦楽を共にした存在である、

 プライヤーズの命を担保にした一か八かというのは気が進まない。

 そうなれば、やはり剣の修理に期待するしかない。

 

 ふと、顔を上げる。すると、そばにエデルリッゾがいた。

 

 

「どしたの」

 

 

「いえ、顔色……全然いいですね。前は乗るたびに青かったというか

 青いまま血反吐吐きながら乗っていたというか……その」

 

 

「そういえば、そうだな。疲労自体はあるんだけど

 前みたいに地獄のような苦痛はないな。おっかしいなぁ?」

 

 

 そう、稼働時間は伸びたのだ。

 緩衝材(副動力)は十分につまれ、負担は減った。

 それでもこんかいのようなギリギリの戦いをすれば、負担は変わらずある。

 だが、20%程度の余裕しかないわりには……

 

 

(……あの苦しみはプラーナの消費だけじゃなかった……って事か?

 ライブレード、お前なのか? それとも、もっと別に理由が……)

 

 

 コックピットから乗り出して、ライブレードの顔を見た。

 当然、何かを語る訳はない。だが、どこかじっと見つめ返されているような気もする。

 

 

「まだ、お前には何かがあるんだな……俺も、もしかしたらお前も知らない何かが……」





なんかうまくかけず止まってました。

忙しさと疲労に脳みそえぐり取られたのかなぁ……
俺の暇つぶしがないんじゃが。と怒ってた人いたら申し訳ない


とりあえずあといくつか作品を加えてそれで、
この章としてはソフトランディングさせて次にいって第二次?で終わるかなぁ

と思ってます


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平和な夢、残酷な現実 上

回復後も引越しとかいろんなことも重なりまして、
そこに負傷と猫の脱走+捕獲がさらに重なりまして
他にも色々と重なりまして。ふざけてるのか。

すいません、心休まる日もなく恐ろしいほど、間が空いて申し訳ありません。



それにしてもかかってた時期より、そこからの後遺症の回復までが時間かかった

まじでゆるさねぇからなぁ、コロナてめぇ





 

■前々■

 

 

 夕日が差し込む教室で独り、読書に耽っていた。

 耽っていると言っても実際は夢中になっているわけでもなく。

 ただ、これは放課後の時間を潰す習慣。

 平和な世界で何をすればいいかわからず、しかし気楽に生きることもできず。

 時間を潰す行為を、ルーティン化して生活の一部とすることで自分に言い訳を立てた。

 

 ただ、平和に過ぎていく時間に違和感を覚え、 

 諸々の説明はあれど、最終的に長々と悩む所作にいら立った相手に

 急に「ほれ、行ってこい」とばかりに落とされた世界で何かに備える日々。

 

 何に備えているのか、分からない。

 ただ、生まれ変わった世界で普通に生き、普通に学校に通い、

 こうして十数年。そろそろ、自分の時間を考えるべきなのかもしれない。

 

 

 そう、アイツも恋人ができたらしいし……

 

 

 

「違う、違う、それが羨ましい訳じゃ……羨ましいわい!!!」

 

 

 そうだよ。それが原因だよ。なーにが、世界平和だバランスだ。

 フォースだって雑なバランス調整じゃないし、俺も雑でいいだろ。

 あの謎パワーなんて「強すぎたからナーフしますね!」の繰り返しで、

 毎度、強かった側の力が産廃になり追い込まれてみたいなくそ調整。

 いや、世界なんてそんなもんだ。経済も戦争も人の間で巻き起こる、

 コミュニケーションさえもわりとそんなんだ。

 

 ア ホ ク サ 

 

 俺も中学生というか学生らしく色恋に精を出すわ。

 宇宙暦だとか、コロニーだとか、就職の話はあとでいい。

 

 読み終わった本のしおりを先頭に戻す。

 明日もまた一から読み始める。十年それを繰り返し。

 それでも暗唱なんてできないのだから、自分がアホなのは理解している。まぁ、前世の過ち。間違っても自分が優れてるなんて思い込まない様に前世の今頃の時期の失敗(廚二行動)を繰り返さないためでもあるので、そういう意味では成功している。だが、残念ながら廚二は永続バステなので気を抜けない。

 

 実際、この本も痴愚神礼讃とかいう溢れる廚二感にひかれて読んだら哲学書みたいなものだった時は、がっくりきたが、賢くあるために愚かであることを知れ、みたいな事はどこか納得できる部分がある。

 あと、何度も読んでると痴愚の女神モリアはなんか萌えキャラに見えてくる。

 俺の想像の中ではしかも巨乳だ。ロングヘア―の。

 常に、「全て私のおかげよ!」と自慢ばかりしているちょっとダメそうなお姉さん。

 

 

 実にいい。まだ使える(意味深) 

 

 

 

 

「真」

 

 

「ん、あぁ」

 

 

 そうか、アイツも部活が終わったか。

 今日は彼女さんが友達と遊びに行くから帰ろうって話だったか。

 すっかり忘れてたが、口に出すと俺の周囲の評価がさらに下がりそうだ。

 黙っておいて、いかにも待ってましたとばかりに帰るとしよう。 

 

 

「帰ろうぜ、綾人(あやと)

 

 

 

 …………綾人?

 

 

 

 

 疑問と共にぐるっと世界が回り、意識が別のどこかに落ちていく。

 いや、そうか。戻るのだ。今の”自分”に、マコト・ヒノに。

 

 帰るのだ、戦乱の世界に。

 あぁ、平和な夢が終わるのだと理解して、

 

 目覚めと共に忘れてしまう事を突き付けられて、

 

 抑えつけても流れ出し、堪え切れない思いが波打つ様に閉じた瞼から涙からあふれ出した。

 

 

 

 

■壱■

 

 

 

「シンさ……またお休み中でしたか」

 

 

 コックピットで眠っているシンはエデルリッゾとアセイラム姫には見慣れた光景だ。

 本人曰く「家の安っぽい布団と違い寝心地良すぎてよく眠れない」との事だが、それが分かりやすい嘘であることを彼女たちは理解していた。

 

 

『安全な場所では眠れない』 それが真実だ。

 

 戦艦の個室がある階層は当然、頑丈に出来ている。

 リラクゼーションの為に宇宙が見える様な構造でも、厚いバリアがあったりするし、

 休憩中の乗務員は安全かつ確実に保護されている。

 ロボットは当然、高価かつ重要なものだからそれ以外に、パイロットやオペレーターを始めとした戦艦の操縦員は替えが簡単には効かない。その様な扱いを受けるのも理解はできる。

 彼らは能力で選ばれた一流の人材なのだから。

 

 

 だが、それがシンという人間に絶妙に不安を抱かせることが多かった。

 命の取り合いがいつ始まっても不思議ではない世界の中、まるでそこから第三者の様なその場所は、彼の神経を休ませることがない。むしろ無力感を際限なく湧き出させる性根……精神的病とすらも言えるそれを増悪させるには十分だった。

 

 

(彼もまたこの世界の犠牲者なのですね、姫様……)

 

 

 遠ざけても戻ってくる。突き放そうとしても離れる事はない。

 世界という線引きの中では、加害者であることを自覚し内に抱える葛藤や苦痛から逃げられない。

 多くの兵士が戦いの中で”しょうがない”と自分の心を護るために抱く諦観すらできず、彼は死ぬまで心に傷を増やしていく。心が壊れず、耐えられる。この世界ではそう生まれたのは不幸としか言えない。

 

 

 彼が戦い、救い続けるのは単なる優しさだけでなない。

 それによって満たされる事を求める偽善ならまだ良かった。それは彼を救ったろう。

 エゴというには衝動的で、意識する前に戦うべき時に考えながらも剣を取るそれは、無意識の向こうにある『彼が彼として存在する』ものに関わる。言葉にするなら”誰かを傷つける、あるいは傷つけた間違いを許せない”というもの。ヴェイガンは堂々と地雷を踏んだ形になるのもうなずける。

 

 

 

 また後にしよう、彼女がそう考えた所で瞼が開く。

 もしかすると、自分の声で起きてしまったのかもしれないと悩みながらも、下手に謝ると逆に気にしそうな気もした。なら、あまりそういう素振りを見せない方がいい。いつもの調子で声をかけようとエデルリッゾは決めた。

 

 

「おはようございます。いい夢は見られましたか?」

 

 

 

「……ん、そうだな。多分……平和な夢だったと思う。多分」

 

 

「平和な夢、ですか?」

 

 

「あぁ、よく覚えてないけどそんな感じでさ……夢、そう。夢なんだ」

 

 

 この世界にそんなものがあるわけない。

 自嘲気味に備え付けのダッシュボードを開いてみる。

 でも、そこには当然。何もなかった。何を探しているのかと考えて、それは多分本だとシンはそう思った。タイトルもわからない本を探して開き直しても、そこには当然何もなかった。

 

 

「……所詮、夢なんだ」

 

 

 此処は現実なのだからと、自分で自分の言葉を染み込ませるようにシンは独り言ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 久しぶりなので、上中下というスマホコミックの如き分割を許しちくり~
 安定した状況に戻ったので大分早い筈


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平和な夢、残酷な現実 下


とりいそぎ。


誤字はまぁ、余裕ある時に確認します


 

■間■

 

 

 

「兄さん、雪だよ。珍しいね」

 

 

 フリット・アスノがコロニーの天井を指さす。

 天候が管理されているスペース・コロニーでは通常、雪は降らない。しかし、このコロニーではMS鍛冶……その中でも特に異質な存在である救世主「ガンダム」の製造を継承したアスノ家を筆頭として、

 様々な実験が行われている。この”雪”すらもそうであった。

 

「お、本当だ。いいねぇ~!」

 

 シンも続いて天井を見上げ、歓喜の声を上げ手を伸ばす。降り積もらない様に調整された人工物故にか、に冷たさはない。

 元現代人としては雪が降るとテンションが上がってしまう。まぁ、交通は死ぬほど不便になるのだが、それはそれとして関東圏に住んでいるものの多くは根っこの部分で興奮を覚える。

 シンはふと、なぜなのだろうと考えた。

 アスファルトとビルに囲まれた場所で育った故の雪への憧れという奴なのかもしれない。

 あるいは、人間は大体の場合の幼少期は明日を夢想して生きるもの。だが、成長し日々を生きる中で月とか年とかの間隔は曖昧になり、その1日をどう生きるかという生き方にシフトしていく。

 

 それを一言でいえば「当たり前の日々に退屈を覚えている」という事だ。

 だからこそ、1日の中で例外ともいうべきイベントが起きると感情が波打つのかもしれない。

 だが、当たり前の生活に落とし込むことで心に余裕を持たせているのも事実な訳で。

 

 

「生前の現実を思い出して吐きそうだ……」

 

 

「ん? 兄さん、どうしたの?」

 

 

「……いや、白いだろ。白といえばこの辺ではお前の家のアレを思い出すなって」

 

 

「あ、そっか。そうだね、あれも空から落ちてきたらしいし……」

 

 

 7歳という年に似合わぬ、怪訝な顔を浮かべてフリットはそう言う。

 MS鍛冶として様々な英才教育を受けているであろう、彼はそれが妙な事だと理解しているのだ。

 アスノ家の記述によれば、それは漂流してきた訳でもない。

 ある日、天井外壁を破り突然落ちてきたという。

 レーダーに引っかからず、まるで急にそこに宇宙空間に現れたかの様に落ちてきたそれは、

 救世主ガンダムと呼ばれ、アスノ家の技術の基礎となった。そして、その機体の名をシンは知っている。

 

 

(νガンダム……)

 

 

 1度だけ見た、量産型でもない、紛れもないオリジナル。アムロ・レイの最高にして最後の愛機。

 ガンダムなどの種別、所謂『リアルロボット』に愛着を持てなかった自分でも知っているほど、ロボットものを少し齧れば話が耳に入る有名な機体。

 虹の彼方に消え、二度と戻る事のなかった。それが、アスノ家にはある。

 宇宙世紀もない、ジオンもない。新西暦というどこかで聞いたことのあるが思い出せないそんな世界にあるのだ。まぁ、そんな特別なものを抱える以上、どう考えてもフリットが主人公なのだろう。

 

 なら、自分は添え物のミックスビーンズでしかないのだとシンは悟っていた。

 神様が何かしろといっても、何かをくれた訳でもなく。なんも上げられないので死ぬ方が多いという説明まであった。そんなの逃げるわ、となるのが当たり前だがその気はもうすでにない。

 年下に全てぶん投げるのは凄まじく後味が悪いのもそうだが、愛着が湧く程度には今の人生が好きになった。だから、できる事はしようと思っていた。

 それがどの程度かは分からないが……少なくともやるつもりではある。

 

 その時、シンの耳元で懐かしい声が囁く。

 

 

「シン、覚えてるわね。あまり使わないけど

 あなたのフットペダルにショートカットが設定されている。緊急回避は真下に蹴るのよ」

 

 

「母さん……?」

 

 

 声の方に顔を向けると首から上がない母親が、気道から朗々とシンに語り掛ける。

 

 

「起きろ、シン。さもなきゃ死ぬぞ」

 

 

 沸々と沸騰し今にも弾けそうな父が、朝寝坊を叱るように声をかけてくる。

 

 

「…………っ!!」

 

 

 覚醒へと向かう意識の中に痛みが流れ込んでくる。

 あぁ、そうだ、もう。平和など、自分には戻ってこない―――

 

 

 夢想の中のささやかな幸せを歯ぎしりと共に、足元を蹴り飛ばす。

 

 

 同時に、世界が回転した。

 

 否、視界が回転したが正しい。

 設定されたショットカットに従い機体は半円を描き、一瞬前までライブレードがいたそこに襲い掛かったものを置き去りにする。

 

 

(わかんねぇ! 分かるのは多分、気絶してたって事。くそ、思い出せ! 何があった!)

 

 

 

■弐・1■

 

 

 

 

「スロットルレバーとフットペダルの両方があるのか……お主、どういう経歴なんじゃ?」

 

 

「宇宙戦闘機からジェノアスに乗り換えたよ。でも、別にそのころの経歴の問題でこういうコックピットになってる訳じゃないからな。思考制御だからって全部考えながら動かすのは無理ってだけで……」

 

 

 身体感覚と同期し動かす魔装機に限りなく近い機体であるライブレードは、本来は全ての操作を行える。

 しかし、同時にシステムの意地と戦闘に精神のエネルギーとなるプラーナを使用することもあり、精神的損耗が激しい。いわば、手足の様に扱う事ができ、機体が感じる事、見た物が操者に伝わる。

 

 だが、それは即ち通常のパイロットより限りなく実戦に近い……

 そう、銃弾が飛び交う中を駆ける歩兵の様な過酷な状況に置かれる事になる。

 

 それを理解していたのか、ライブレードは初期より外部映像の表示はアイカメラを経由したモニターであったし、飛行速度の設定もある程度であれば自動設定ができた。

 

 現在はその自動部分を広げ、スロットルレバーによる翼部分のメインバーニアの推力の調整し、フットペダルにより戦闘用に増設された各部の補助バーニアの操作を行える様になった。

 ライブレードの負担が減ったのはそういった操縦者の事を考えたエンジニアたちの努力の結果でもある。

 

 

「ジュノアス……む、そうか。コールドスリープをしていたのじゃったな。銀の杯条*1の影響で防衛用の兵器が配備できず、エンジェルは無抵抗のまま破壊された《/ref》と天使の落日*2の世代じゃったな」

 

 

「え、あっ、うん。そうだけど……?」

 

 

 思いもよらぬ所で聞き覚えのある単語が出てきて、キョトンとした顔を浮かべた。

 キサブロー・アズマ博士は太筆の様な顎髭を撫でると空を仰ぎ、昔を懐かしむ様に口を開く。

 

 

 

「あの頃のMSは今の技術の元とはいえひどい。AMBAC*3の性能も低い。若い頃に鹵獲、移送された当時のヴェイガンの機体も触ったこともあるが、技術差はひどいものじゃった。お主は自分を能力のない様に言うがの。生き残れただけでも十分な能力じゃ」

 

 

「ん……? あっ! 博士70歳とかだっけ!? 

 生まれた時代は同じぐらいか! うわ! なんだろ。急に親近感が……複雑すぎる」

 

 

「ふっ……といっても、ワシは当時、地球から出なかった。

 あの頃の宇宙の事を考えると胸を張って同年代とはいえん……見捨てられたようなものじゃった」

 

 

 

「ま、でもさ。敗戦が濃厚だったんだから、できるだけ被害を減らそうとするのは当たり前だし。

 そんなもんじゃないか? いや、理屈としての話であって許しては居ないけどな」

 

 

「条約により力を削がれていたことを理由に支援を絞り、半ばコロニーを相手の戦力分析のための捨て札にしていた地球連邦を許していないのに、地球の為に戦うのかの?」

 

 

「戦う理由があるからな。今はこの星にも。そして、宇宙にも」

 

 

 例えば、多くの人を救うために引き金を引きころした少数の人たちへの贖罪とか、単にヴェイガンの恨みだとか自分の都合でしかないものもある。

 でも結局、大部分を占めるのはそれが”間違い”であるか、否かなのだ。

 

 そして、間違いとは……正義だとか、それに対しての悪だとか、そんな大したものではない。

 多くの人を泣かせる結果につながる事、傷つける事。そんな曖昧なものに肉付けするなら、

 ただ、自分の利益だけを追求し、他者を貶める事を許す事ができないという根底にあるもの。

 

 しかし、それは同時に自分の行動に対するダブルスタンダートといえるものでもある。

 理解はしている。だが、解決はできない。故に死ぬまで悩み続ける。

 

 他者からすればそれは、壊れかけて人間(レイディオ)から流れるノイズにしか聞こえない主張だろうが……ともかく、そんな戦士としての在り方が今もシンを戦場に立たせているのだ。

 そう、確かなものが自分の中にあるのだから、シンはそれでいいと思えている。

 

 

「ま、爺さん同士の懐かしい話は此処までにしよう。それで、博士。ライブレードは?」

 

 

「コンパチブルカイザーと違い、GGGの共通パーツが多く備蓄されていたものでギリギリなんとかなった。残念ながら兵装の類は全滅じゃがな。それと……故障ではないが副機のリチュオルコンバーターが数時間前から妙な稼働をしており機体が自動でホットスタートの状態にある……お主、どう思う?」

 

 

 リチュオルコンバーターは周囲の死者の思念(邪霊や死霊) つまり、負念と呼ぶべきものを吸収し、それをエネルギーに換えることができる動力炉。そして、ライブレードに元々搭載されている補助動力もまたそれに近い。つまり、霊的な何かに強い反応を示しているのは明らかだ。それも、負の側面に関わるものに。そう結論を出したシンは険しい顔を浮かべて機体に乗り込んだ。

 

 

「博士と同じだ。敵が来る可能性が高い。コンパチブルカイザーは?」

 

 

「特殊なパーツが多くすぐには手が付けられん……

 一応、代わりに別の機体の修理を急いではいるがすまんが単騎で出てくれ」

 

 

「了解。単騎で哨戒に出る。エデルリッゾちゃんを……」

 

 

『それではダメだ、間に合わんぞ?』

 

 

「シロッ、お前まだ……いや、いい! 博士、出撃だ!! 今すぐに」

 

 

 肩に手を置く悪念を根こそぎはぎ取られて浄化された、シロッコならぬ白ッコの言葉にせかれたシンはそう言うとコックピットを閉鎖する。

 

 

「了解じゃ、出すぞ! 真上のハッチはまだ瓦礫でふさがれている! 強制排除しろ!! 出撃」

 

 

 機体が固定されたハンガーが高速で射出される。同時に背中の翼に格納された砲台、ゼイフォニック・ブラドラーが光弾を射出する。

 

 

「修理の為に外されているキャノンがない分、背中の稼働がスムーズだ。いくぞ!!」

 

 

 瓦礫が破壊され、曇った空が直上に迫る。すぐにロックボルトを解除、外に出ると同時に飛翔するべくスロットルレバーに手を置いた。

 

 

「3,2,1!」

 

 

 全開を数秒。サイバスターに届かないとはいえ改造されたライブレードの機動力なら町全体を見下ろすまでの高度までならそれで足りる。

 上空から街を見下ろす。表面上は何かがあるようには見えない。

 

 

(あれは……物理的現象じゃない)

 

 

 何かが渦巻いている。まるでハリケーンの様なそれに黒い霧が吸い寄せられていく。

 

 

『あれは、悪意』

 

 

 いつのまにかシンの肩に座っていたライブレードに宿る精霊、キャロルが口を開く。

 

 

「それは分かる。だが、なんでそれがこんな所で集まってるのかって事だ。まさかお前の食事か?」

 

 

『違うわよ。成長した今となっては、そんな強引に集める必要もないわ。

 ただ、偶然でああなる気はしないわね。そう、あれは言うなれば……穴、かしら』

 

 

「竜巻じゃなくて……うっ。あああああああああああ!?」

 

 

 機体に巻き付いた何かがライブレードを地面に叩きつけた。

 同時に激しく揺れるコックピットの中でシンは、身構えることもできず衝撃を受け気を失った。

 

 

 

■弐・2■

 

 

 

 

「そうだ、そう……俺はお前に叩きつけられた。だが、何だ……! お前はなんだ!」

 

 

 目の前の影を睨みつける。それは大きく、翼のある獣のような。

 しかし、はっきりと形を成す事がない。ただ、闇の中を映すかのようだ。それが、穴と言われたそれから尾を引くように佇んでいる。

 機体がうなりを上げる。ライブレードが猛っている。

 あれが、敵だということだけが今、はっきりしている事だった。

 

 

『シン!! まともな武装もなくたった1人の今は勝ち目がないわよ!!』

 

 

「知るか!! 後先考えて退ける状況じゃねぇ! 見ろ!!」

 

 

 

 街中を指さす。影のすぐそばで人々が暴れている。

 急に始まった戦闘のパニックも無論、あるがそれだけではない。

 まるで、理性が消えて動物に戻ったかのように暴れているものたちが散見される。

 

 

「明らかにあの化けものの影響だ。あれが広がっていく可能性が高い」

 

 

『じゃあ、どうすんのよ!!』

 

 

「完全に実体化できていない負念の塊である今なら……吸収できる筈だろ!!」

 

 

『な!? あんなのを!?』

 

 

「高級なディナーつうより焦げたホットケーキって所だろうが我慢しろ! 行くぞ!」

 

 

 ―――おいおい、勢いだけじゃどうにもならねぇ。それじゃあ、ダメだぜ兄ちゃん

 

 

 体が動かない、いや時間すら止まっているかのように感じる。

 

 

 

『まず観察。次は思考だ。兄ちゃん、お前は生まれた時から走れたか? 這いずって、歩くようになって、そっからだろ? 勢いがあるのは結構だがそれじゃあダメだ』 

 

 

「アンタは……?」

 

 

 目の前に軍服を着た男がいる。老齢でメガネをかけたその男は、笑顔を浮かべていて温厚な雰囲気を纏っている。だが隙を感じない。

 

 

『ただのおせっかいな爺さんの幽霊だ。さぁ、兄ちゃん。どうすればいい?」

 

 

「……穴から出てきてまだそこに体が繋がってるなら……そこを閉じればアイツは霧散するかも」

 

 

 にかぁ、と効果音がつきそうなほど口角をあげた老人は嬉しそうに肩をばんばんと叩く。

 

 

『それでいい。お前とその機体ならできる。さぁ、いきな!』

 

 

 その言葉と共に、体に熱が戻ってくる。

 フットペダルを真下に蹴る。相手の動きを先ほど避けたのと同じショートカットだ。

 飛び上がり、上空で半円を描くように着地する緊急回避。

 挙動を見ていた影の化け物が飛び上がり、ライブレードの前に割り込もうとする。

 

 

(さっきの動きを覚えていて考えて動いたな……くそ、賢い! 

 だが、別に逃げた訳でもねぇし、同じ動きじゃないぞ! 変形、変形、変形、変形!)

 

 ライブレードを変形させ、速度を上げる。すぐに再変形し道路をはぎ取りながら着地し穴の前に立つ。

 

 

「今日は好きなだけ食っていいぞ! おかわりもだ!!」

 

 

『いやあああ! 今はそんなにいらない! 太っちゃうーー!』

 

 

 急速に負念を吸い込むライブレード。だが、負念は枯れる事無く穴の奥からあふれだし、だんだんとキャパシティの限界に迫っていく。その中でシンは探していた。この穴の原因を。

 

 

(穴を生みだしたものは穴の近くにある筈だ。上空なら上に上がった時に見えた筈。でもそんなものは見当たらなかった。なら、下だ! 根拠としちゃ間違ってない筈。頼むぞ!)

 

 

 すぐ背後に迫る影の化け物の威圧を感じながらも、砲台を露出させた翼を真下に向ける。

 

 

「ゼイフォニック・ブラドラー、全開だぁ!!!」

 

 

 瞬間、轟音と閃光が周囲を満たした。

 

 

 

 

 

 

■後■

 

 

 

「残念ながら多少の被害はあれど、状態は落ち着いたようじゃ」

 

 

「巻き込まれた奴はいたか……」

 

 

「相手がライブレードを一撃で倒す存在じゃ、無傷とはいかん。しかし、急に現れたあの影は……」

 

 

「急に、ってわけでも……いや、見えてなかったんだろうな。それはまあ、いい。

 博士、あれの回収は?」

 

 

「うむ、先んじて回収しておいたが詳しくは分からん。だが、お主のプラーナコンバータなどの機械に似たものを感じる……そこから推測するなら霊的なエネルギーを集めていたもの。という所か。大分古いがな」

 

「霊的なエネルギー、か……」

 

 

 ソファーに座って、状況を思いだす。地面に攻撃を放って、すぐに穴は消えた。

 そして、そこから負念を得られなくなった影は苦しみながら霧散した。

 結果だけ考えれば、成功だったといえる。人的被害を考えなければ、だが。

 

 

『怪しい奴はいなかったわ。他の変な気配も』

 

 

「ならば、見つけたものを実験的に動かした。と考えるべきじゃ」

 

 

「同時に、その技術がそいつの手に渡った。という事もか……」

 

 

「霊的エネルギーの関連施設は各地にあったのは間違いない。

 この地域にもここ以外にもあったのじゃろうな。見逃していたようじゃ……」

 

 

 頭をがりがりと掻きながらいら立ちを見せる、アズマ博士。

 

 

 

『ねぇ、なんだったと思う?』

 

 

「わかんねぇ。でも、もしかするとそれがかつて人類が戦っていて封印した何かなのかもしれない。

 そして、それは……より強大な力を得てよみがえろうとしている……のは間違いないだろうな。そして……いや、なんでもねぇ」

 

 

 口に出すことはなかった。弱気になりたくなかったし、周りを弱気にもさせたくなかった。

 

 だが、押しとどめたその言葉は自分の中で反響している。

 

 

 ―――そして、ライブレードと同じか、それ以上に強いかもしれない

 

 

 

(不意を打たれた、2人乗りじゃなくてまともな武器もない。万全じゃなかったと言い訳をするには十分だ。だが……だが、万全なら勝てたという確信も持てない……それに、あの声がなけりゃ……)

 

 

 

「……俺の役目は終わった筈。世界はあるべき形に戻ったんじゃないのか……?

 どうなってるんだ。状況は悪くなるばかりじゃねぇか。何が……何が起きてる」

 

 

 

「破界……とディナミスは言っていた」

 

 

「アンタは……」

 

 

「フェルナンド、今はそれだけでいい。慣れ合うわけでもない」

 

 

「おぬし、一応、閉じ込めておいた筈じゃが……」

 

 

「修羅の前にあんなもの塵に等しい」

 

 

「いや、それよりも……なんだって?」

 

 

「破界だ」

 

  

 フェルナンドは部屋の中に入ってくると、2人の前で腕を組む。

 

 

 

「簡単に言えば、この世界を消すつもりなのだ。丸ごとな……」

 

 

 

 

  

*1
ジオンとの1年戦争以前、第一次コロニー国家戦争と呼ばれるものの終結後に結ばれた条約。

MSをはじめとした兵器の完全な廃棄、製造・設計の禁止、データの廃棄によりほぼ全ての内容が実際に履行され多くの兵器が姿を消した。現在の技術より優れていたものもあったという。またこの条約により地球連邦は大きく力を削がれて、解体に近い状態だった

*2
スペースコロニー「エンジェル」がMSに類似した複数の謎の兵器に襲撃され、破壊された事件

*3
宇宙空間において推進剤節約の為、腕や脚の振りにより姿勢制御を行う方式



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幕間 転生者閲覧専用スレ3

時間が許す限り、少しずつでもすすめてぇ!


 

 

■序■

 

 

 

「いろいろと言いたい事はあるが、まず……アンタ、救出されたあの敵……

 なんだ、修羅とかいうやつだったよな……状況を理解しているのか?」

 

 

 

「フェルナンド・アルドゥク。名だけ覚えていればいい。

 そうだな。今のお前たちよりも把握はしているだろう。

 俺の関わった作戦に関わる事象だろうからな……」

 

 

 

「やはり……ショウコの誘拐以外にも目的があったのじゃな……して、それは?」

 

 

魔音(デノン)の音声記録及び……魔音奏者である

 降魔使い(デノンマンサー)の脳の回収、だそうだ。詳しくはこいつにある。受け取れ」

 

 

 フェルナンドは1枚のディスクをアズマ博士に投げる。

 しかし、それを横からシンの手が割って入り受け止めた。

 

 

「おい……良いのか? こんな情報渡せば戻れなくなるんじゃねえか?」

 

 

「構わん。今の俺は戻る訳にはいかん。それに、どうせ死んだことになっているだろう。あの状況で生き残ったと考える奴の方が珍しい。フォルカはわからんがな……」

 

 

「そうか、分かった。悪いが使わせてもらう。博士、これを」

 

 

「うむ、しばし待て……」

 

 

 

■序・終■

 

 

 

300:名無しのハズレ転生者

 

思ったんだけど、役目が終わった=世界の救済って事にならんのじゃねぇかな

 

301:名無しのハズレ転生者

はっ?

 

302:名無しのハズレ転生者

いや、まぁ確かに……

>>1なんか役目が終わった後の世界の方がずっと地獄になってる

 

303:名無しのハズレ転生者

んじゃ、俺らの役目ってなんだよ

 

304:名無しのハズレ転生者

ある程度の時期まで世界を延命させるためとか?

よく考えりゃ、チートもなんもねぇんだぞ。なんとかできる事の方が稀じゃねぇか

 

305:名無しのハズレ転生者

滅びるにもタイミングがあるって事か……でも存続してる世界もあるよな

 

306:名無しのハズレ転生者

この時期に滅びるのは困るけど、それ以降ならいつでも良いみたいな感じかもしれん

 

307:名無しのハズレ転生者

それじゃあ、必死に戦う意味って……

 

 

 

~以降、罵倒などを繰り返す~

 

 

 

大惨事スーパーロボット大戦αAGE 9スレ目

 

 

 

50:名無しのハズレ転生者

落ち着いてきたな。まぁ、荒れるのもしゃーない

 

51:名無しのハズレ転生者

まぁ、>>1みたいなケースで発覚したけど

何時かはわかる事だったろうし……俺も心の整理がついたわ

 

52:名無しのハズレ転生者

いろんな所が阿鼻叫喚で流石に草も生えない1週間でしたわ

 

53:名無しのハズレ転生者

でもその間も神様たちはノーコメなんだよな

 

54:名無しのハズレ転生者

まぁ、なんだかんだで無駄死にのために転生させた訳ではなく

 

55:名無しのハズレ転生者

運が悪かったって説明はあったしな

ハズレの自覚は日々の辛さからしてある

 

56:名無しのハズレ転生者

それな。それでも何かも辛いって訳じゃないし、やりがいもある

 

57:名無しのハズレ転生者

結局、皆必死に生きてるってこったな

 

 

 

 

 

300:名無しのハズレ転生者

ところで、落ち着いてきた所で>>1の状況に戻るけど

あの影は降魔なんか? でもあいつらもっとグロイ見た目してたよな

 

301:名無しのハズレ転生者

封印? が効いててまだ完全に実体化できないのかも

 

302:名無しのハズレ転生者

降魔大戦が起きて二都作戦が行われていたのだとしたら復活しかけていた降魔の王「降魔皇」を封印するために、神器「帝鍵」の力で、

「幻都」を出現させ、そこに降魔と降魔皇を封印した筈。あの穴がそこに繋がっているのかもな。

 

303:名無しのハズレ転生者

でも、降魔ってあそこまで強かったか?

 

304:名無しのハズレ転生者

あの世界は色々な歴史がある。人の憎しみや悲しみの感情って意味なら、サクラ大戦の何倍も濃い。

そうなれば、末端の降魔の強さでさえ相当なものになってる筈。下手すりゃライブレードも終わってた

 

305:名無しのハズレ転生者

ヴァース、木連、ヴェイガン。地球とコロニー。

普通の人間とコーディネイター。恐竜帝国、他の地下組織。確かにな……

 

306:名無しのハズレ転生者

それに異世界の敵は下手すると、時空振動弾なしで、

相克界を生みだす可能性もある。これの落としどころって結局、どこなん

 

307:名無しのハズレ転生者

それこそ、本当の意味で世界の終わりかもしれんな……

 

 

 

 

 

 



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幕間 インターミッション8 先立つものはなにもなく

とりいそぎ。余裕のある時に


誤字確認は3回したけどまだあると思うので後日


 

 

 

 ■序■

 

 

 

「劇団、帝国歌劇団に偽装した対魔特化部隊である帝国華撃団。

 人型の霊子兵器である霊子甲冑。その発展型、霊子戦闘機。それを開発した世界華撃団連盟(WLOF)。

 いずれも歴史の記録にはない。だが、地下に残る資料と合致する部分も多い……この設計図も興味深い」

 

 

「魂の力である霊力を起動キーと動力にする蒸気併用動力機関、そのコアパーツがこの霊子水晶か。天然のが効率がいいって書いてあるがこんなもんみたことねぇぞ……」

 

 

 設計図やその関連資料を眺めて唸る2人の横で断片的な歴史資料を眺める、エデルリッゾもまた眉をひそめていた。

 

 

蒸気革命(スチームレボリューション)なんて技術躍進、地球のどこの歴史の記録にもありませんよ」

 

 

「侵略の為にめっちゃ調べてただろうから、ヴァースの人間は歴史にもくっそ詳しいな……

 こっちは日本以外ノータッチだよ。コロニーも少しはわかるけどさぁ。あとヴェイガンの歴史」

 

 

「俺はそもそもなぁ……なぁ、ロアはどうだ?」

 

 

『こちらの世界に該当するものはないな。そもそも、俺たちの世界は生身の人間がほぼいないんだ』

 

 

 買い物組が戻ってきた所で始まった資料の閲覧だが、そこにフェルナンドはいない。

 最低限の協力以外はしない、という事かもしれない。仲間への義理もあるのだろう。

 

 

「しかし、あの化け物も迷惑な奴だったぜ。近くにいるとうるせぇのなんの」

 

 

「歪な音をずっと発していましたね。影の近くにいた人たちは急に暴動を始めましたし」

 

 

 シンはうーんと、考え込む。当時の記憶を思い出しても自分は音のようなものを聞いた覚えがない。必死だからだったのかと思ったが、それでも視覚以上に音というのは記憶に残るものだ。特に、歪で不快な音だというならなおさらであった。

 

 

 

「それがおそらく、人を暴走させ時には姿すら変えてしまうという この魔音(デノン)じゃろう。

 そして、それを発するという事は即ち……あれは旧暦で人を苦しめた……降魔という事になる」

 

 

「理屈は通る。でも俺がその音を聞かなかった理由は?」

 

 

「気合いの違いだろ」

 

「理屈と理論で語れない脳筋はよぉ」

 

「理屈で卑屈で過去の事を割り切れなくてずっと悩んでそうだな。あほみたいに」

 

「やるか!?」

 

「いいぜ、表でな」

 

「「あぁ!?」」

 

 

「まぁ、まぁまぁ……」

 

 

 エデルリッゾがコウタ・アズマとシンの2人の間にさっと入り、

 二人の下っ腹の部分を必死に押して距離を取らせる。

 

 アズマ博士はその様子にため息を吐きつつも数件しか残っていないが、華撃団の戦闘ログを見ながら少し思案してから口を開いた。

 

 

「……いや、あながち間違いでもないかもしれん。

 華撃団は戦闘中、音に苦しめられている様子はない。もしかすると一定の力の持ち主は、

 霊音(れのん)を断続的に発することでその音自体を中和しているのかもしれんぞ」

 

 

「ほら、見ろ!!」

 

 

「く、くそぉ。科学の専門家でスーパーロボット建造できるようなやつを盾に使うとか!

 レスバに有名解説youtuberの動画を持ち込むがごとき暴力を行使しやがってーーー!

 何も言い返せねぇ。くそったれぇーーーーーーーーーーー!!!」

 

 

「youtuberってなんでしょう……?」

 

 こてんと首を傾けるエデルリッゾを尻目に、少し落ち着いてきたのでなるべく冷静にシンは考える。

 資料によれば、霊音(れのん)は奏組が楽器から霊力を込めて放つ音で華撃団の別動隊、

 霊力の比較的低い奏組はこれを武器として降魔や降魔の卵を倒したり霊障を浄化した。

 霊音は魔を滅すという強い意志の元に発せられるものであるならば、転生によって魂を理解した事により獲得した後天的才能。特異的な霊能力としての素養を持つシンがそれを行っている可能性は高い。

 

 

 だが、それは逆に言えばそれが集団で襲ってくれば全体が敵になる可能性がある。

 ロンド・ベルのスーパーロボット軍団が3分の1でも敵に回れば世界が十分に破滅させられる。

 そんな嫌な想像が頭に浮かぶが、シンは頭を振ってそれを追いだした。

 

 

(可能性はある。でも、いつまでもそんな事考えてたら気が萎える。それこそ、俺が今度は操られるかもしれねぇ……それにしても、世界的規模な技術が消えるレベルの秘匿をほどこし、人の潜在意識に働きかけることで忘却という封印を施したってのは正しいかもしれねえ)

 

 

『しかし、コウタ。これだけの組織だったならばこの基地の基礎。老朽化した施設が浅草のほぼ全体に広がっていた

のも理解はできる。だが、それならなぜ……東京の施設は見つかっていないんだ?』

 

 

「いや、まぁ……そうだな。どうなんだよ、シン?」

 

「んー……大規模な改装工事は繰り返してるからな。見つからない方が可笑しい。組織を解体する時に基地を丸ごと移設したのかもな」

 

 

「うーむ、とりあえず秘匿の回線で現存しているロンド・ベルメンバーとGGGに情報を共有しておくとする」

 

 

「宇宙ならクワトロさんが見つけてるでしょうし、海中では?」

 

 

「んじゃ、ミスリルにも連絡しておくか。それにしても、シミュレーションRPGというより

 なんか戦略シミュレーションみたいな事になってきたな。パイロットだけしててぇよ俺は……」

 

 

 空中に投影された大量の資料を数枚抜き出して目の前に並べて読みながら、愚痴るシンを見ながらコウタは腕を組んでうんうんと頷いた。

 

 

「俺はそれでいいから気楽だぜ」

 

 

『だが、コウタ。いつかは感じるままでなく自分で考えて選ぶ瞬間が来る。

 それだけは覚えておくといい。参考にするものとしてはちょうどいい」

 

 

「人を教科書にするなよ……まぁ、確かに人生って意味なら分厚いかもだけど……」

 

 

 ■壱■

 

 

 

 格納庫の中で並んで鎮座する2体の機体。

 ぼろぼろのコンパチブルカイザーと、ライブレード・SIN。

 フェイスパーツや背格好の似通ったそれは、兄弟が寄り添っているようにも見える。

 その少し外側で、それを眺めていたのはキャロル。ライブレードに宿る精霊である。

 

 

『私は生まれた……でも、生まれた事が操縦者を苦しめている……』

 

 

 

 キャロルは人工精霊。ライブレードがあるからこそ存在を許される。しかし、それと引き換えにライブレードの動作が悪くなっているのは事実だった。

 処理能力不足という問題。しかし、製造者がそれを想定していなかったとは考えづらい。

 ならば……とキャロルは一つの答えにたどり着いた。しかし、それはある意味、自分の存在を否定するものである複雑なものである。

 

 

 

『この状況が、イレギュラー……ということなの?』

 

 

 人工精霊が誕生するまではいい。しかし、人工精霊が存在したままでいるという状況が想定されていなかったと考えるならば筋が通る。

 

 

 そう、自分は存在してなどいけなかったとしたら……

 

 

 

『ガンエデンの戦いでライブレードはほぼ全壊に近い状態だった。もし、それがなんらかのイレギュラーを呼んだのだとしたら……私は……』

 

 

 ライブレード・SINが起動したあとから、だんだんと夢から覚めていく様にはっきりとしていく意識と自我。それ自体が間違い。認めたくなかった。せっかく産まれたのに、消えることを宿命としそれに偶然とはいえ逆らった結果がピンチを招き続けているかもしれないなんて。

 

 

『消えたくない……でも……そう言ってくれる人も私にはいない』

 

 

 暗い闇の中で、キャロルは独り孤独に涙を流す。

 

 皮肉な事にその様は美しすぎた。

 いつのまにか解けた輝くような長い銀の髪も、闇すら飲み込むような透き通った紫眼も、

 赤と白のツートンカラーのエプロンドレスすら、少女と淑女の狭間。もっとも揺れ動き、美しいその様を 表現してるように見えた。

 彼女はまるで、美しさの頂点の瞬間だけを切り取って繋ぎ合わせたコラージュだ。消えたくない、その言葉の重みすらかき消すほどに彼女は人工的だった。

 

 

 

 

 

 ■弐「劇団、帝国歌劇団に偽装した対魔特化部隊である帝国華撃団。

 人型の霊子兵器である霊子甲冑。その発展型、霊子戦闘機。それを開発した世界華撃団連盟(WLOF)。

 いずれも歴史の記録にはない。だが、地下に残る資料と合致する部分も多い……この設計図も興味深い」

 

 

「魂の力である霊力を起動キーと動力にする蒸気併用動力機関、そのコアパーツがこの霊子水晶か。天然のが効率がいいって書いてあるがこんなもんみたことねぇぞ……」

 

 

 設計図やその関連資料を眺めて唸る2人の横で断片的な歴史資料を眺める、エデルリッゾもまた眉をひそめていた。

 

 

蒸気革命(スチームレボリューション)なんて技術躍進、地球のどこの歴史の記録にもありませんよ」

 

 

「侵略の為にめっちゃ調べてただろうから、ヴァースの人間は歴史にもくっそ詳しいな……

 こっちは日本以外ノータッチだよ。コロニーも少しはわかるけどさぁ。あとヴェイガンの歴史」

 

 

「俺はそもそもなぁ……なぁ、ロアはどうだ?」

 

 

『こちらの世界に該当するものはないな。そもそも、俺たちの世界は生身の人間がほぼいないんだ』

 

 

 買い物組が戻ってきた所で始まった資料の閲覧だが、そこにフェルナンドはいない。

 最低限の協力以外はしない、という事かもしれない。仲間への義理もあるのだろう。

 

 

「しかし、あの化け物も迷惑な奴だったぜ。近くにいるとうるせぇのなんの」

 

 

「歪な音をずっと発していましたね。影の近くにいた人たちは急に暴動を始めましたし」

 

 

 シンはうーんと、考え込む。当時の記憶を思い出しても自分は音のようなものを聞いた覚えがない。必死だからだったのかと思ったが、それでも視覚以上に音というのは記憶に残るものだ。特に、歪で不快な音だというならなおさらであった。

 

 

 

「それがおそらく、人を暴走させ時には姿すら変えてしまうという この魔音(デノン)じゃろう。

 そして、それを発するという事は即ち……あれは旧暦で人を苦しめた……降魔という事になる」

 

 

「理屈は通る。でも俺がその音を聞かなかった理由は?」

 

 

「気合いの違いだろ」

 

「理屈と理論で語れない脳筋はよぉ」

 

「理屈で卑屈で過去の事を割り切れなくてずっと悩んでそうだな。あほみたいに」

 

「やるか!?」

 

「いいぜ、表でな」

 

「「あぁ!?」」

 

 

「まぁ、まぁまぁ……」

 

 

 エデルリッゾがコウタ・アズマとシンの2人の間にさっと入り、

 二人の下っ腹の部分を必死に押して距離を取らせる。

 

 アズマ博士はその様子にため息を吐きつつも数件しか残っていないが、華撃団の戦闘ログを見ながら少し思案してから口を開いた。

 

 

「……いや、あながち間違いでもないかもしれん。

 華撃団は戦闘中、音に苦しめられている様子はない。もしかすると一定の力の持ち主は、

 霊音(れのん)を断続的に発することでその音自体を中和しているのかもしれんぞ」

 

 

「ほら、見ろ!!」

 

 

「く、くそぉ。科学の専門家でスーパーロボット建造できるようなやつを盾に使うとか!

 レスバに有名解説youtuberの動画を持ち込むがごとき暴力を行使しやがってーーー!

 何も言い返せねぇ。くそったれぇーーーーーーーーーーー!!!」

 

 

「youtuberってなんでしょう……?」

 

 こてんと首を傾けるエデルリッゾを尻目に、少し落ち着いてきたのでなるべく冷静にシンは考える。

 資料によれば、霊音(れのん)は奏組が楽器から霊力を込めて放つ音で華撃団の別動隊、

 霊力の比較的低い奏組はこれを武器として降魔や降魔の卵を倒したり霊障を浄化した。

 霊音は魔を滅すという強い意志の元に発せられるものであるならば、転生によって魂を理解した事により獲得した後天的才能。特異的な霊能力としての素養を持つシンがそれを行っている可能性は高い。

 

 

 だが、それは逆に言えばそれが集団で襲ってくれば全体が敵になる可能性がある。

 ロンド・ベルのスーパーロボット軍団が3分の1でも敵に回れば世界が十分に破滅させられる。

 そんな嫌な想像が頭に浮かぶが、シンは頭を振ってそれを追いだした。

 

 

(可能性はある。でも、いつまでもそんな事考えてたら気が萎える。それこそ、俺が今度は操られるかもしれねぇ……それにしても、世界的規模な技術が消えるレベルの秘匿をほどこし、人の潜在意識に働きかけることで忘却という封印を施したってのは正しいかもしれねえ)

 

 

『しかし、コウタ。これだけの組織だったならばこの基地の基礎。老朽化した施設が浅草のほぼ全体に広がっていた

のも理解はできる。だが、それならなぜ……東京の施設は見つかっていないんだ?』

 

 

「いや、まぁ……そうだな。どうなんだよ、シン?」

 

「んー……大規模な改装工事は繰り返してるからな。見つからない方が可笑しい。組織を解体する時に基地を丸ごと移設したのかもな」

 

 

「うーむ、とりあえず秘匿の回線で現存しているロンド・ベルメンバーとGGGに情報を共有しておくとする」

 

 

「宇宙ならクワトロさんが見つけてるでしょうし、海中では?」

 

 

「んじゃ、ミスリルにも連絡しておくか。それにしても、シミュレーションRPGというより

 なんか戦略シミュレーションみたいな事になってきたな。パイロットだけしててぇよ俺は……」

 

 

 空中に投影された大量の資料を数枚抜き出して目の前に並べて読みながら、愚痴るシンを見ながらコウタは腕を組んでうんうんと頷いた。

 

 

「俺はそれでいいから気楽だぜ」

 

 

『だが、コウタ。いつかは感じるままでなく自分で考えて選ぶ瞬間が来る。

 それだけは覚えておくといい。参考にするものとしてはちょうどいい」

 

 

「人を教科書にするなよ……まぁ、確かに人生って意味なら分厚いかもだけど……」

 

 

 ■壱■

 

 

 

 格納庫の中で並んで鎮座する2体の機体。

 ぼろぼろのコンパチブルカイザーと、ライブレード・SIN。

 フェイスパーツや背格好の似通ったそれは、兄弟が寄り添っているようにも見える。

 その少し外側で、それを眺めていたのはキャロル。ライブレードに宿る精霊である。

 

 

『私は生まれた……でも、生まれた事が操縦者を苦しめている……』

 

 

 

 キャロルは人工精霊。ライブレードがあるからこそ存在を許される。しかし、それと引き換えにライブレードの動作が悪くなっているのは事実だった。

 処理能力不足という問題。しかし、製造者がそれを想定していなかったとは考えづらい。

 ならば……とキャロルは一つの答えにたどり着いた。しかし、それはある意味、自分の存在を否定するものである複雑なものである。

 

 

 

『この状況が、イレギュラー……ということなの?』

 

 

 人工精霊が誕生するまではいい。しかし、人工精霊が存在したままでいるという状況が想定されていなかったと考えるならば筋が通る。

 

 

 そう、自分は存在してなどいけなかったとしたら……

 

 

 

『ガンエデンの戦いでライブレードはほぼ全壊に近い状態だった。もし、それがなんらかのイレギュラーを呼んだのだとしたら……私は……』

 

 

 ライブレード・SINが起動したあとから、だんだんと夢から覚めていく様にはっきりとしていく意識と自我。それ自体が間違い。認めたくなかった。せっかく産まれたのに、消えることを宿命としそれに偶然とはいえ逆らった結果がピンチを招き続けているかもしれないなんて。

 

 

『消えたくない……でも……そう言ってくれる人も私にはいない』

 

 

 暗い闇の中で、キャロルは独り孤独に涙を流す。

 

 皮肉な事にその様は美しすぎた。

 いつのまにか解けた輝くような長い銀の髪も、闇すら飲み込むような透き通った紫眼も、

 赤と白のツートンカラーのエプロンドレスすら、少女と淑女の狭間。もっとも揺れ動き、美しいその様を 表現してるように見えた。

 彼女はまるで、美しさの頂点の瞬間だけを切り取って繋ぎ合わせたコラージュだ。消えたくない、その言葉の重みすらかき消すほどに彼女は人工的だった。

 

 

 

 

 

 ■弐■

 

 

 

 

「まさか、お前の様なものが乗り込んでくるとはな……」

 

 

 口を開いた緑髪の男の名は、ヴィンデル・マウザー。

 

 そのキレ眼は対面に座す男の考えを読み取ろうと、鋭く睨みつけている。

 

 

 

「乗っ取られてると気づいて、我らシャドウミラーからテスラ研の解放に来たか?」

 

 

「……いや。それなら、もっと戦力を整えてくるさ。

 最も、君らの望み的にはそちらの方がよかったのかもしれない」

 

 

「見透かしたような言葉はやめろ。お前とて、所詮はその才能を開花できなかったのだ!」

 

 

 いらだちを露わにして、ヴィンデルは男に掴みかかる。男は、笑っていた。

 

 

「その通りだ。だが、今からでも遅くはない。そう感じた。この能力を錆びさせていたのは俺自身だ。

 まだ老いるには早い。後に続くものの礎になろうと思っていた。でも、それこそエゴだと気づいた。俺はまだ当事者だ。当事者として……生きねばならない。だからここにいる」

 

 

「戯言をぬかすな……アムロ・レイ!」

 

 

 ヴィンデルはアムロを床に叩きつけた。こけた頬からは想像もできない力。だが、そこからすら激しい闘争心を感じる。アムロは抵抗せずそれを受け、裂けて溢れた口の中の血だまりを吐き出すと、そのままの姿勢で口を開く。

 

 

「俺たちは闘争を日常としてきた。常に争った……

 それによる進歩もあった。でも失ったことの方が多い」

 

 

「世界という枠組みでものを捉えろ! わからんか!! 闘争は人をより高みに誘う。与えてくれるのだ」

 

 

「世界は人の集まりだ。だからこそ世界は、この闘争の中にある世界は、

 常に失うものの方が多い。自分が戦っていたいだけという本音を晒したらどうだ?」

 

 

 図星を針のような言葉で突かれたヴィンデルは歯ぎしりをした。

 

 

「交渉しよう、ヴィンデル・マウザー」

 

 

「何?」

 

 

「交渉をしよう、そういっている。

 今、状況は悪い。無作為に争いを煽れば逆に人類があっという間に絶滅する。お前たちもな。

 今までの時間でこの世界の状況を把握ぐらいはできた筈だ。俺たちが……状況的にお前たちが異世界の人間であろうという結論に至れたんだからな」

 

 

(腹立たしい……アムロ・レイとはこんな口がうまい男だったか?)

 

 

 ヴィンデルの違和感を他所に、

 アムロは静かに椅子に座りなおすと机の上にホログラムを表示させた。

 

 

 

「……これは?」

 

 

「安定的な次元移動システム、そのひな形だ。

 まず、俺たちが出せるのは兵士たちの『居場所』。要するに戸籍と社会的な保障だ。

 お前はこれを餌に兵士を鼓舞し、遊撃的に動け」

 

 

「……私のメリットはないな」

 

 

 

「完成した次元移動システムを渡す。

 何かしらの理由をつけて、精鋭だけで別の世界を移動して闘争を続ければいい

 それと、言っておくヴィンデル……」

 

 

 

 ―――俺たちは嘘を吐かない。嘘に敏感だから吐けないとも言うがな

 

 

 

 ヴィンデルは銃をアムロに押し付ける。

 アムロはその状況でもなお、落ち着いた表情を崩していない。

 

 

「今、この施設を軌道上からある男がロックオンしている。奴は外さないぞ」

 

 

「き、貴様……!」

 

 

「俺の命が引鉄だ。聞こうか、ヴィンデル・マウザー。お前の返答を」

 

 

 アムロは拳銃を掴み、瞳に押し付けるようにしてヴィンデルに言った。

 

 ぱくぱくと何かを言おうと口を動かしたが、それは言葉にならない。

 どうしたって、状況をひっくり返すものがヴィンデルにある訳がなかった。

 

 

 

 ―――さすがだな、アムロ

 

 

「おだてるなよ、シャア。お前の真似だし、お前がいればもっとスマートに終わったさ……

 照準はそのままにしておいてくれ。すぐに撃ち込むことになるかもしれないしな」

 

 

 ―――ふっ……いいだろう。必要はないだろうがな

 

 

 NT独特の共有領域を伝わり脳に響くシャアの言葉。

 それは正しかった。ヴィンデルは苦虫を噛んだような顔を浮かべるとドカッと椅子に座った。

 

 

「……いいだろう。その約束、決して違えるな」

 

 

「あぁ、そのつもりだ」

 

 

 シャドウミラー。鏡に映る影でしかない彼ら、存在なきものたちはこの日、実体を得た。

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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幕間 スワンプマン

取り急ぎ必要になった運転免許とか、

いろんな事が重なってしまった。ひと段落しました。


 

 

■壱■

 

『ダナンに帰還したそうだな。浅草での事は聞いている。災難だったな。もっとも、こちらとしては貴重な情報も得ることができたが……それで、確認したか?』

 

 

 

「2日かけて読み終わった瞬間に連絡してくるんだから、その計算はたいしたものだとほめておくよ、シャア・アズナブル」

 

 

 眼元の隈を擦りながら、嫌味を投げかけるシン。

 椅子に深く腰掛けながら、天井を仰いでふぅと一息をついてからシャアに向かい合う。

 

 

「でも、秘密裏に救出したアムロさんをわざわざ、危険な交渉に? 命の危険が高すぎるだろ」

 

 

『私にできる事はアムロにもできるという事だ。本人の希望もあったしな。それに、私は命については危険だと思っていなかった』

 

 

「その高すぎる信用はなんなんだよ。アムラーですか? はぁ……しかし、シャドウミラーね……」

 

 

 携帯機にいたようないなかったような、そんな気はする。曖昧になってしまうのは、流石に記憶が古すぎるというところがあるのだとシンは思った。

 

 

(最も、αの方がナンバリングとしてははるかに古いんだけどな……その辺はインパクトの問題か。ローグラのスーファミからPS oneの時期に乗り換えたからあの時期のゲームは全部俺には衝撃的だったからな……)

 

 

 なんとか思い出そうと記憶をねじるも中々、思い出せない当時の記憶。アドバンスともなると、そういうものに慣れ切った時期なので印象がどうしても薄くなってしまうのだろうと一人で納得する。

 

 

(それにちょうどそのぐらいがロボットものというかゲームを半卒業になった時期だからな……自分でやる時間がなくてプレイ動画とかで見る様になったし……)

 

 

『で、どう思う?』

 

 

「えぇ?」

 

 

『考え込んだ顔をしていたが、やはり聞いていなかった』

 

 

「なかった。悪いな。もう1回頼む」

 

 

『降魔と降魔皇に勝てる算段はあるか?』

 

 

「ないよ。今の所、ほぼ0%だな」

 

 

『ふっ、随分と簡単に言ってくれるものだな』

 

 

 あっさりと言い渡された人類の終わりにモニターの前でシャアは何が面白いのか微笑を浮かべながらくくっと声を出した。

 

 といってもシンも別に簡単に言ったわけではない。交戦した感想とそこから算出した勝率が素直に0%に近いと言っただけなのだ。

 1%よりは低く0に限りなく近い。最も、他の人間なら絶望していただろう。

 そんな中でシャア・アズナブルが笑ったのは勝てないと思いつつも諦める気はないという意思を示す様に”ほぼ”と言い切った所にあるのだろう。

 

 

 

「俺の装備が不足してる状況とはいえ、不完全な降魔にすらほぼ完敗だった。そんな、降魔の皇……負の念の中心。負の総念とでも言うか。そいつの戦闘力は未知数だ。大体、それが降魔の皇と言いきっていいものかもわかんねぇ」

 

 

『なるほどな……別のものであると考えている訳か』

 

 

「負の総念と表現したろ。それこそ、こいつがすべての糸を引いてる気すらする。

 穴の先にそいつがいる筈なのに気配すら感知できない。

 他の気配は穴の向こうに感じたのにだ……

 ならそれが強大で異質なもので自身を隠していると考えるのが一番、納得できるんだ俺は」

 

 

『君の能力不足だったという可能性は?』

 

 不当な物言いと怒られても良いぐらいストレートな罵倒と取れるそれだが、シンはそれに対して反応はない。信頼はないが、技術と知能の高さは信用はしているし、情報を流すにあたってそういう反論が出てくる当然である。だからこそ、ここでそれを話し合っておく。シャアの政治力の高さが見て取れる。

 回答に対する肉付けの時間はあればあるだけいい。事実と虚偽の比率はシェフのおまかせで言いにしても、調理時間だけはさけて通れないのだから。

 

 

「可能性は十分ある。だが、親玉が不完全なアレ以下だという可能性は100%ないぜ」

 

 

 シャアはそうか、と言って。何かを考える様に視界を彷徨わせると、

 手に持ったカップの中の飲み物を口にした後、それを静かに置いた。

 

 しばらく、指だけが動いている。

 向こう側で空間に投影した資料を確認しているのだろう。5分ほどして、

 シャアはふぅ、と重いため息を吐き出し、口を開く。

 

 

『正直に言うが……ライブレードはゲッターやマジンガーには大分劣るかもしれんが、

 スーパーロボットと冠して問題ない機体。こちらの戦力としては上澄みの部類だ。

 それを駆る君の予測がそれなら、直接対決になった場合、勝算はない。ティターンズ込みでもな』

 

 

「アムロさんが交渉した相手は?」

 

 

『テスラドライブ装備の量産型ゲシュペンストMk-IIが502機と特機がいくつか。悪くはないさ……それで、降魔に対処するのに必要な戦力は?』

 

 

「弾薬が万全であることを前提条件として、アレイオンなら10機。

 そのゲシュペンストならパイロットの練度によるが3~5機だな。ただ、人の思念が集まる場所で出るだろうし必然的に市街戦だ。そうなると、テストドライブの利点は消えるから70 tの重量のあの機体じゃそもそも市街に出せないか。MSとアレイオンの混成部隊で比率は2:8だな。MSは高いから……」

 

 

『と、いうわけで話の流れで悪くはないと評価したわけだ』

 

 

「俺と同じ結論なら俺に聞くなよ。俺は戦技はCとかだったぞ。

 お前の話の信頼性すら下がるぞ。もう一度言うけど俺の戦技成績はC。ギリギリ可」

 

 

 すねた顔をしたシンに向けて、シャアは笑いをかみ殺しながらすまない、と一言言うと、

 シンの端末にファイルを転送した。シンはそれを流し目で読んだあとに視線をシャアに戻す。

 

 

『ふっ……さて、このようにいなほ君はゲシュペンスト1体、MS2体、カタクラフトの4体の混成案を出している。うちカタクラフト2体は自動操作でいいという事で損害も軽微だ』

 

 

「いなほが言うならそれでいいと思う」

 

 

『おや、いいのかね? 対抗心はないのか?』

 

 

「自分得手不手は理解してる。それにアイツは友人で信頼してるし、能力も信用してる。間違いないね」

 

 

『ふっ、羨ましいものだ……』

 

 

 そう思ってるだけでアムロに何も話さないから、仲も深まらないんじゃないかと思ったが言った所で雑な話のそらし方をされるだけな気がしたのでシンは唇をすぼめて言葉を押しとどめた。

 代わりに、率直な感想だけが喉からせり上がって抜けていく。

 

 

 

「本当、めんどくさい男だぜ……」

 

 

 

■弐■

 

 

「M6は4、5年前は1000万ドルほどあれば買えた。しかし、流通の改善や

 技術躍進でパーツも市場で手に入りやすくなった。闇市まで考えるなら

 もう少し安くなっている筈だ。状態の悪いものなら数十万から、

 修理品で数百万という所だろう。市街戦という意味ならこちらの数をそろえた方が安く済む」

 

 

「でも、ASは優秀な兵士であることが大前提な筈だ。

 カタクラフトは習熟までが早い。時間的猶予次第では難しいんじゃない」

 

「肯定だ。だが、M6についてはM9以前にミスリルで長く運用してきた実績がある。

 独自のマニュアルもあり、教導プランもある。トラブルシューティングの質もこちらの方が高い」

 

 

 

 メリダ島基地会議室では、相良宗介と界塚伊奈帆による方針のすり合わせが行われていた。

 厳密にはメリダ島といってもそれは過去の姿。全域を奪還した後、各種の増築工事が行われ、かつてメリダ島があった場所にこの島はない。完全な人工島、メガ・フロートに改造されて別の海域を移動している。といっても突貫工事の為、ECS(電磁迷彩システム)を搭載できるわけもなく、常に計算し衛星の死角を縫うように移動している為、現在は日本に近い位置にある。

 

 同時に反転攻勢の為の準備として、開始されたのが今、この部屋で行われているものだ。

 小会議ともいうべきものと、ミスリルの最高司令官を含めて行う作戦会議に分かれている。

 一応、判断能力を培うためのものという名目はあるがそれが裏の目的はある気がする。

 ある気がするといってもそれが分からないのだから、ひとまず会議に参加している、場に流されている所に日本人らしさをふと、シンは感じた。

 

 

「姉さん、姉さん。あっちは中々ヒートアップしてるぜ。こっちもど・う・だ・い?」

 

 

「猫なで声を出すんじゃないよ、クルツ。全く、アクリル板1枚の先とはいえ、

 一応、私たちはB。あっちはA。別の場所なんだから参加しないの」

 

 

 メリッサ・マオはそういってクルツ・ウェーバーを窘めると、

 それで、と前置きしてから目の前のベルファンガン・クルーゾーに言い放った。 

 

 

「なんで、ソースケはあっちなのよ?」

 

 

「私と君たち、とくにウェーバーとの距離を詰めろという事なのかもしれんな」

 

 

「俺はお断りだ」

 

 不快感を隠す事なく言い放ったクルツ。それに同調するようにクルーゾーは微笑を浮かべる。

 

 

「同感だ。だが、そんな事は彼女も理解しているだろう。ならば、それはついでで……

 実際の理由は向こう側にあると考えるべきではないかな?」

 

 

 クルーゾはそういってAチームの方を指さす。

 マオは怪訝な顔を浮かべるも、その反対にクルツは何か納得がいったようだった。

 

 

 

「戦術的に考えろ」

 

 

「軍は集団だ。たとえ、それが反乱軍の様な扱いを受けている集まりだとしてもね。

 俯瞰的視点から実現可能かつ確実なプランを取るべきだよ。戦略的にね」

 

 

「それでは余裕がない」

 

 

「でも確実だ」

 

 

「状況は常に動く!」

 

「予測と修正は可能だ」

 

 

「まぁまぁ」

 

 

「「お前(君)も何か言えよ(ったら)」

 

 

「そ、そうは言われても俺の戦術の成績なんてお前も知ってるだろ」

 

 

「そうだね、だからそこは期待してない」

 

 

「はっきり言うね、いなほ。お前のそういう所は嫌いじゃないぜ……そうだなぁ」

 

 

 ぺらぺらと紙をめくりしばらく眺めると、さらさらと記入する。

 

 

全長

ファイター:14.30m

ガウォーク:11.30m

バトロイド:4.0m

 

全幅 主翼展張時:14.80m

主翼後退時:8.25m

バトロイド:7.30m

 

全高 ファイター:3.84m

ガウォーク8.7m

バトロイド:12.70m

 

空虚重量 推定13,250kg

 

 

 

「これはバルキリーのデータだ。宗介、アーバレストの全高と重量は? それと比べてM6は?」

 

 

「全高8.5m、重量9.8tという所だな。M6は……7.9Mほどか」

 

 

「つまり、市街戦をするなら圧倒的にファイター形態のバルキリーって事が分かる。

 だが、この大きさならまだなんとかなるレベルだ。そうだなぁ……いなほ、アレイオンは?」

 

 

「頭頂高で13.5m。重量は……分からないな。アーバレストよりは軽いけど、

 兵器を大量に積載する必要があるカタクラフトは重くなるかもしれない」

 

 

 

「という訳でカタクラフトは市街戦という意味では一見向かない様に見える。だが……

 それでも13.5はビルの4階ぐらいだ。つまり、カタクラフトもまだ工夫でなんとかなるんだ」

 

 

 そういってシンはASとカタクラフトの説明があるページを開いて差し出す。

 

 

「ASは細かい人間に近い動きが可能で多種な状況に対応できる。

 カタクラフトはそれには劣るが肉薄を全くできないレベルじゃないと思う。

 間近で見たいなほのリロードとかすげぇ早かったし。それを誰にも求める訳じゃないけどな」

 

 

 宗介はカタクラフトのいなほはアームスレイブのデータが記された紙を受け取り注視する。

 

 

 

「少し追記した……んでだ」

 

 

 

「お前らの意見に俺がなんも口をはさんでないのはどっちも正しいからだよ。

 一つ言う事があるとすれば極論すぎてないかって事。どっちも導入すればいいだろ。

 そうだな、状況を具体的にシミュレートしてみて配備の比率を考えてみろよ。ゲシュペンストと比べりゃ遥かに軽いんだ。クレーン車とか11tとかそんなんだろ。そう考えりゃ街中にいても問題ない」

 

 

 

「訓練の時間はどうする?」

 

 

 

「お前の所はマニュアルができてるんだろ。適性が低い奴は早期に見つけられる筈だ。

 そういう人はすぐカタクラフトのシミュレーターに移って貰えばいい」

 

 

「でも、そうなると逆に増えすぎないかな?」

 

 

「かもな。だが、そこはポジティブにとらえていいと思う。

 予備パイロットが多くても無駄って事はない。違うか、宗介?」

 

 

「肯定だ。むしろ規定人数ギリギリの方が問題だ」

 

 

「肯定頂きました。という事だ、いなほ。

 こっから先はどっちを入れるかじゃなくて『どのくらい入れるか』という所をテーマに頼む」

 

 

「うん、分かった」

 

 

 

 

「なるほどねぇ……でも、あれはリーダーというより指揮官とか艦長じゃないの?」

 

 

 

「そうだな、立案された作戦をまとめて膨らませる。

 我らの女神とはまた違ったタイプのな」

 

 

「つまり、テッサの狙いはここだってのかい?」

 

 

「私は……そうだと思っている」

 

 

 クルーゾーは腕を組み天井を見上げる。

 それは、そこをスクリーンに見立て過去の戦いの数々を思い出すかの様だった。

 

 しばらくして、視線を下ろすとクルーゾーはマオに向き直る。

 

 

「現状の状況を考えるなら、舞台を二つに分ける事も必要。

 そう考えておられるのではないかと私は思っている。そして、目まぐるしく状況が動く戦場を

 2つ並行して指揮すればかならずどちらかが傾く……まぁ、人選にはいささか疑問はあるがな」

 

 

「あら、そう? 私はそうは思わないけどね」

 

 

「ほう、なぜだ?」

 

 マオはニカっと歯をむき出し口角をあげて笑顔を浮かべる。

 

 

「私たちの命を背負う、ミスリ三ルの指揮官たるあの子が決めた事だからよ。それで信頼に足るわ」

 

 

 

 

■参■

 

 

 

「ミッション……スワンプマン。あの思考実験のですか?」

 

 

「えぇ……」

 

 

 厳格な眼つきのメガネの老人。副長、リチャード・ヘンリー・マデューカスの言葉に、

 テレサ・テスタロッサ。ある人物にテッサと親し気に呼ばれるその少女は静かに頷いた。

 

 

 

「我らは今、先の見えないゲリラ戦の様な状況です。

 支援者はあるとはいえ……出張った瞬間、包囲されるなんて可能性は十分にある。

 ならばどうするか……相手の包囲を2つに割らせる。これしかありません」

 

 

「そのための指揮官候補を探すためのあの会議ですか。

 では、その候補が見つかったためにこのプランを進めると?」

 

 

「いえ、厳密には規定値の能力は”見つからなかった”という所です」

 

 

 自分のポニーテールの先で自分の鼻を擽りながら、そう答える。

 

 

「能力的にいえば、いなほさんが一番でしょう。

 しかし、彼は戦略的に自分を突出させる傾向がある。これがいけません。だからこそ彼なのです」

 

「しかし……」

 

 リストを見つめ、マデューカスは表情に不安を浮かべる。

 

 

「私は反対と言わざるおえません。戦技能力が足りない」

 

 

「そこはいなほさんを始め他の方々に補って貰います。重要なのは、スワンプマン……

 つまり、私が複数いるかのように円滑に現場を動かせるかどうか。

 そういう意味ではこれほどふさわしい人物はいないでしょう」

 

 

「そうですか? 例の巨人像との戦闘の様な単独行動があるのでは?」

 

 

「いえ、今は麗しき王女とその従者。彼が命を賭けようとすれば、

 それだけの命が同時に失われかねない。彼は自分の命を軽くは見れません。それに……」

 

 

 

「それに?」

 

 

「……いえ、ともかく問題はないという事です。

 最も、時期を待つ必要もありますので実行はまだ先。ですがその方向で彼にも通達しておいてください」

 

 

「Aye, Mom! (アイマム!)」

 

 

 返答をして立ち去っていくマデューカス。

 その背を見送りながら、テッサはキュッと唇を結んだ。

 

 

 

「ウィスパードではないものがウィスパードに共振できる。

 そんな彼の力はもしかすれば触れてはいけないパンドラの箱なのでしょうか……」

 

 

 テッサは思う、神は死んだと。

 

 だが、だからといってすべてが人間の手に収まっている訳ではない。

 

 触れてはいけないものは確かにある。それは間違いないのだ。

 

 

 

「巴武蔵さん、彼の浅間山のドラゴン暴走事件のような事が今、起きれば……

 世界は、いえ、人類はこんどこそ滅ぶしかなくなるでしょうから……」

 

 

 

 ここからは、触れていいものとそうでないものを勘で仕訳けなければいけない。

 

 ただ、そこに居たというだけで世界の運命を握らされた少女は誰に預けることもできず、

 静かに背を席に傾ける。冷たい座席の感触は人肌の恋しさを燻ぶらせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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幕間 月のウサギ


 煮詰まっちゃった時にAAが組み込めるのを知ったので

 利用しつつあれやこれやでまた再開していこうと思います

 ただ、最近。
 朝早くて夜はものすごく眠いので頑張りますがやっぱり不定期になりそうです。

 週1~週2で1話ぐらいのペースは頑張ってみます


 

 

■間■

 

 

「博士、成功ですよ!」

 

 

「結果だけを見れば、だ……しかし、目標を考えれば成功とは言えんな……」

 

 

「結果だけを見れば、ですか?」

 

 

 早乙女博士と助手の会話に作業着をきた神隼人が口をはさむ。

 その表情はやはり、喜ぶ助手たちと違ってどこか不満げであった。

 

 

「ドラゴン……君たちが使っているものではなく、こちらはプロトタイプだ。プロトドラゴンとでも言おうか。万が一を想定して保存しておいたこれを増幅器に使っても、真・ゲッターにエネルギーを50までしか注げなかった……目標は80だった」

 

 

「真・ゲッターは降り注ぐゲッター線をエネルギーに変えられるのでは?」

 

 

「そうだな、その通り。だが自動吸収ではフルパワーまで3年……」

 

 

「だからこそのドラゴン増幅器、という事ですね」

 

 

「うむ……」

 

 

 加齢か戦いの心労か白髪が見え始めた頭髪を掻きながら、早乙女博士はため息をついた。

 

 

 

「あの時、真・ゲッターの出力は10分の1に抑えていた……」

 

 

「あの時……もしや、エヴァ3号機……そして、ライブレードと戦った時の?」

 

 

 うむ、と神妙な面持ちでうなずくと早乙女博士は真・ゲッターを見上げた。

 

 

 

「そもそも完成した後の起動実験の時も、世界の危険を感じるようにゲッターは出力を上げた。その時……眼だ」

 

 

「眼?」

 

 

「そう、眼が浮かび上がった。それを見て理解したのだ。これには意思があり、そして、私のゲッターの開発はここへ向かうためにあったのだと……そして、ゲッターはライブレードにまるで試練を与える様に自らのリミッターを解除し出力を上げた。だがあれでも全開ではない筈だ」

 

 

 

「あ、あれでまだ全開ではないのですか……」

 

 

 ごくりと唾を飲み込む大きな音が響く。隼人の顔は落ち着いた表情だが、内心の興奮を隠せない様に息が少し荒い。

 

 

「その後もゲッターは戦い抜いた。力を抑えたまま……この先はもしかすると、100%が必要やもしれない……だからこそその時に備えて整備をしている。マジンガーの様に、この機体もまた地球の守護者なのだから」

 

 

「博士、俺はそうは思えません」

 

 

「リョウ……」

 

 

 2人の後ろにやってきたのは流竜馬。ゲッターチームのリーダー。竜馬は彼らに近づき、その一歩手前で止まると真・ゲッターを見上げた。

 

 

 

「やはり……あの時、あれを見たのは俺だけなのか……」

 

 

「竜馬くん、何を見たのだ?」

 

 

「ライブレードとぶつかりあったあの日の夜。夢の中で見たんです。黒いサイバスター……いや、あれはライブレードに近い。そして、マジンガーZのようで……いえ、それだけではない。ゲッター。そう、ゲッターだ。大きい。そう、とても、とても大きなゲッターを……いや、違う。あれは……」

 

 

 

 

 

 

チェーーンジ! ゲッターエンペラー1!!

 

 

「(俺だった。あのゲッターは俺だったんだ……)思えば、俺たちはゲッターを使っていたようで、使わされていたのでは……そんな疑問をあの瞬間、感じました」

 

 

 額にびっしりと浮かんだ汗を袖で拭うと、竜馬はどこか怯える様な表情を隠す様に後ろを向いた。隼人はその言葉に納得がいかない様に唇を尖らせる。

 

 

 

「俺はどっちかというとみてみたいね、ゲッターの行きつく先を」

 

 

「だが、ハヤト!!」

 

 

「落ち着け、2人。ともかく、真・ゲッターはオーバーホール。それに出力の安定しないのもその通りだ。ドラゴンも改良されているし、そちらを使えばいい」

 

 

「……はい」

 

 

 それを少し離れた場所で遅れてきた弁慶と武蔵は見ていた。

 

 

「ムサシ先輩、いいんですか? 揉めてますよ、リョウとハヤトの奴……」

 

 

 

「今は何を言っても逆効果さ。オイラには分かる……」

 

 ゲッターに憧れた、適性がないといわれても必死でしがみ付いてきた。

 それほどまでゲッターを愛した武蔵にも真・ゲッターという存在はゲッターの恐ろしさを感じさせた。

 だから、武蔵は言えなかった。真・ゲッターに乗せてくれと。

 弁慶に気を使った訳でもない。ただ、分からなくなったのだ。ゲッターという存在が。

 

 

(リョウ、お前は何かを見たんだな。いや、それだけじゃねぇ。あの信じられない力を発揮した真・ゲッターにも恐れを覚えたんだ。そうさ、この絶大な力がもし奪われて敵になったら……

 そう感じちまったんだよな。分かるよ、オイラだって震えてくるよ……でも)

 

 

 そう、でも自分はゲッターを嫌うことはできない。

 だからこそ、弁慶のようにゲッターを使いこなせない自分の使命とは、

 竜馬と、ゲッターを結ぶ何かになることなのではないか、と武蔵は思った。

 

 しかし、その思いは叶うことはなかった。

 

 

 スーパーロボット軍団の行動不能の時期を狙って最後の決戦を仕掛けてきた恐竜帝国に対して出撃した、武蔵を乗せたゲッタープロトドラゴンのメルトダウンにより真・ゲッターは封印される……

 

 

 

■壱■

 

 

 

「シャアに送られた資料ですか……わざわざ印刷を?」

 

 

「端末とか空間ディスプレイはどうしたって疲れるからな。

 大量の情報を整理するならやっぱこっちが楽。で、どうだ?」

 

 

 恐ろしい速さで書類を黙読するクーラルデュッセは数十枚の紙束を数分で読み終えると、

 それをトントンと綺麗に揃えて机に置いてから、赤い髪をしばるヘアゴムを外して髪を手櫛で流す。

 

 

「光武、地球防衛組、グランベルム……いずれもこちらでは見かけた事はない情報です。

 もしかしたら、政府で秘匿保護されているプラントなら可能性あります。

 彼らの始祖、ジョージ・グレンは天才的技術者であり科学者でもある。情報を持つ可能性はあります。

 最も……農業プラントに偽装されているコーディネーターの方々の居場所は私たちでも」

 

 

 遺伝子改良による新人類、という名目で生まれたコーディネイター。

 彼らの居住地である特殊なコロニー、通称プラントは秘匿されている。

 存在は多くのものが知っているのに、ここまで情報がないのは不思議なものだと思うが、

 都合が悪いことは隠ぺいするというのが古来からの政治なのだ。いろいろ薄暗いものがあるのだろう。

 

 シンは背もたれにのしかかりくるくるとその場で椅子を回転させた。

 

 

 

「行儀が悪いですよ」

 

 

「良いんだよ。お前だけしか居ないんだし……

 だが、何かがあったのはわかってもその詳細がわからねぇんじゃなぁ……」

 

 

 一つ、生じた疑問があった。だからこそ、その答え合わせのために情報が欲しかった。

 

 疑問、状況を進めるため悩む時間がなかった。

 だからこそ、心の奥に閉じ込めていたこの世界は”どうにもおかしい”という感情。

 

 

(スパロボαにしては……そこに近しいながらも単独した状況が連なり、似た状況を生み出している。

 さすがに、さすがに馬鹿の俺でもなんとなく理解してきた。自分の思っていた世界じゃないことを)

 

 

 ―――だから、もしかして……過去に俺以外にも……

 

 

     あるいは、他のものが戦う世界でもその前に別の人がいたんじゃねぇかな

 

 

 

 そして、戦いの果てに世界の不条理に打ち勝った。だから今の世界がある。

 

 そうであってほしい。それなら、復讐につき動かされてきた自分の戦いにも意味がある。

 

 次の正しい心を持つものにバトンをつなぐ。そのために戦える。

 

 

 

「おやおや……」

 

 

「うお!?」

 

 

 椅子にもたれ掛かるシンの頭の下に老人がいる。

 

 帽子をかぶった小柄な白髪、背丈より大きい帽子。

 どれをとっても目立つ特徴だ。しかし、そんな目立つ老人が入ってきたのに気づかなかった。

 というのが異常だった。シンもクーラルデュッセに気付くことなく、部屋に……

 いや、扉は開いていないのだ。ならば、今、ここに突然現れたという他ない。

 

 

 

「とてつもない魔動力だねぇ。いや、ここの言い方だとプラーナというのだったかね……あぁ、お嬢ちゃん。大丈夫。怪しいけど怪しいものじゃないのさ。それにその銃はもう撃てないよ。ほれ、この通りさ」

 

 

 そういうと老人は銃の弾丸を片手でジャグリングする。

 いや、ジャグリングというよりはそれは宙に浮いているように見える。

 

 

 

「だ、弾丸が抜かれて……」

 

 

「さーて、坊や。あんたの話は聞いてるよ。あたしはV-メイ。

 ここに来たのはあんたを見極めるためにさ。邪悪なものの手助けをするわけにはいかないからね」

 

 

 

「は、はぁ……まぁ、俺はどっちかっていうと邪悪な者なんだけど」

 

 

 

 その返答にプハ、と吹き出すとV-メイはシンの背中を軽くたたく。

 

 

「正直ものだね。確かに心の中の消せぬ復讐心は感じる。

 でもまぁ、あんたはそれだけじゃない。ぎりぎりだけどさ合格さ。それじゃあ、いくとしようかね」

 

 

 ―――ヤロレパパ

 

 

 

 そういってV-メイが指を鳴らすと部屋からシンと老人の姿は消えた。

 

 後には目の前で起きた異常な光景に驚き、

 美少女に似合わぬ顔で口をあんぐりとあけたまま固まるクーラルデュッセだけだった。

 

 

 

 

 

 

 



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