仮面ライダーアテランテ (湊戸アサギリ)
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概要・簡単な人物紹介

とりあえず解説を最初に

追記2022.10.10
カオルの苗字を「エルリック」から「アイカワ」に変更しました(エの付く名前が多いと思ったので……)

追記2022.11.18
更にカオルの苗字を「ハネムラ」に変更しました。どんだけ変更してんねん、ネーミングセンスなさ過ぎやろ自分

追記2022.11.24
ナツエの名前をナツメに変更しました。「エ」だとエマと被るので……変更多くてすみません

追記2023.4.10
ハネムラの名前を変更しました。また変えてすみません、ルで終わる名前が多いと思ったので……

追記2023.5.18
メイン四人のイメージ図をキャラットで作り、追加しました
最後のほうにあります


概要

水位が上がり、大陸の九割が無くなり海の惑星になった未来世界が舞台の仮面ライダー。

主役ライダーと二号ライダーの出会いと運命の物語。二人を中心に世界の運命をかけた戦いを繰り広げていく

変身ベルトや武器に使うアイテムのモチーフはフロッピーディスク及びMDディスク。これらをベルトや武器にスキャンし変身、攻撃、ライダーキックを発動する

10人くらいライダーが出てくる予定。

 

 

 

あらすじ

西暦2050年。地底世界「グランテ」が地上征服を開始し、秘宝「アンデルセン・アーカイブ」を使ったテロにより地球の大陸の多くを沈め、地球の海の水位を上げて水の惑星にした

地球人達はグランテと戦いながら文明を継続させ、地上・海上・海底に都市を築いて生きていた。

それから400年経過した西暦2450年。『ネオマリーナシティ』でゴンドリエーレとして船をこぐ日々を送る青年ダイゴ・レガシーはシティを守るため、仮面ライダーアテランテしても戦っていた。そんな中、謎の美少年・イザナと出会い、彼の運命は大きく変わる。そのイザナも仮面ライダーのひとり、マークイスだった……

そんな中、願いを叶える秘宝「アンデルセン・アーカイブ」を巡る仮面ライダー達の戦いが巻き起ころうとしていた……

 

謎多き敵と戦い世界を守るのか、願いを叶えるのか……

 

 

 

登場人物

 

ダイゴ・レガシー/仮面ライダーアテランテ

主人公。21歳。ゴンドリエーレ。元気いっぱいで熱血漢。少しお人好しな性格。特撮ヒーローの『ギャラクシアガイ』のファンでもある。青髪に大柄な長身が特徴。口癖は「ギガメガ」。特技は料理とカンツォーネ。

アテランテは「アトランティス」をもじったもの

「落ちるなよ、ギガメガに行くぜ!」

 

イザナ/仮面ライダーマークイス

もう一人の主人公。長めの金髪に紫の眼をしたクールな美少年。17歳。年齢より少し小柄。生意気だが芯が強く凛々しい。ヘータ、サトルと共に『リブーターズ』を結成し行動している。幼馴染の少女を探しているが……

マークイスは侯爵を意味している。

「邪魔だ! 僕を阻む者は誰であっても許さん!!」

 

エマ・タカハシ/仮面ライダーエスポワール

メインヒロイン。19歳。「賭博の女王」を自称する投資家にしてギャンブラー。金銭や宝石等金目のものを好む。彼女の投資した企業の多くは大規模になることが多い、現在は姫坂コーポレーションの株主をしている。欲深く自由奔放な性格。17歳の弟がいる。

「どんな駆けもガッポリ勝ってみせるわ!」

 

キカゲ・ハネムラ/仮面ライダーロンディネ

ライダーシステムの研究と開発をこなす技術者。開発の傍ら彼自身も変身して戦う。ダイゴ達のベルトは彼の作ったもの。一人称は「オイラ」で掴み処の無い人物。26歳。実は魔法少女のアニメ好き。

「オイラ、実践と一見をしないと気が済まないんでね」

 

ナツメ・クサカベ/仮面ライダーブーディカ

もう一人のヒロイン。34歳。眼鏡にセミロングの黒紫髪の女性。姫坂コーポレーションのOL。気弱で泣き虫。既婚で夫と息子がいる。エマにより仮面ライダーとして戦うことになる。夫と息子を何よりも大事にしている

「程々にしてください!」

 

ミキヤ・アオヤマ/仮面ライダーヒイラギ

ダイゴの憧れの先輩ゴンドリエーレ。25歳。紳士的でゴンドリエーレとしても評判の良く正義感も強い美男子。

 

ヘータ/仮面ライダージキル

イザナの子分の一人。腰まで長い黒髪で右目を隠した髪型をしている。18歳。イザナに忠実で側近のような存在。クールで冷静沈着。姉を探している

「悪いがリーダーがいないと俺達が困るんでな」

 

サトル/仮面ライダーハイド

イザナの子分の一人。跳ねた赤茶色の短髪が特徴。16歳。子供っぽく騒がしい性格。弟を探している。

「リーダー、やっちゃってください!」

 

 

 

メイン四人のイメージ図です

 

※キャラット(https://charat.me/)で作りました

 

ダイゴ・レガシー 髪型はもうちょういトサカっぽい感じだしたかった……

 

【挿絵表示】

 

イザナ ピアスしています

 

【挿絵表示】

 

エマ・タカハシ 巨乳ですがパーツがなかったです

 

【挿絵表示】

 

ナツメ・クサカベ もちょっと黒紫の髪です

 

【挿絵表示】

 



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Act.1 水の都を守る者

第1話です。キャラ解説も更新していきます!

追記2022.11.17 AIピカソに描いてもらった挿絵を追加しました


Prologue・ある人の記録

 

 西暦2050年の春先にそいつらは現れた。

地底には独自の文明と住人がいたことを地上の人類達は知らなかった。地底世界からの民『グランテ』は地上世界に突如として現れ、地上を制圧していった。

グランテの当時の皇帝は彼らの科学技術の結晶にして悪魔の兵器『アンデルセン・アーカイブ』の力で地上の世界を塗り替えた。

「アーカイブよ! 地上の民達に力を示せ! この星を海に沈めよ!」

皇帝はそう叫ぶと、地上の水位が急上昇し大陸が沈み人の立てる大地は減っていった。地球の大陸の多くが沈み星の97%が海と化した。

地上の人類はグランテと戦いつつも、自分達の文明を継続させていった。海底や上空、海上に都市や国家を設置し人類は生き抜いていった。多くの犠牲を払いながらも……

それから400年の月日が経過しようとしていた……

――とある男の手記から

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

Act.1 水の都を守る者

 

 西暦2450年。水位上昇により大陸のほとんどが海に沈み、地球は「水の惑星」となっていた。人類は海上、上空、海底に都市を建ててそこで生活していた。400年の経過でグランテの影響力は低迷していったがまだまだ警戒されていた。

ネオマリーナシティ。かつて日本のあった海域にある海上と海底に設置された大都市。海にビルや家が浮かんだような街並みが広がる『星下区』と海底に作られた地域『アクアリウム』でという二か所で構成されている。『星下区』にはある職業があった。

星下区は海の上に建物が建設されているがゆえに道路や歩道がほとんど無く、代わりに運河があり、住人らは船で移動していた。建物同士を繋ぐ橋があったり低い建物の上に道路はあるが、移動手段としてはそれが多かった。彼はその船を漕ぐ者の一人だ。

青い髪をした彼はゴンドラを漕ぐ。そこには子供が数人乗船していた。その時、強い風が吹き、そのうちの一人の少年の被っていた帽子がふわりと宙を舞った。

「わっ!」

少年の帽子は水の上に浮かんだ。ゴンドラを漕ぐ彼はそれにすぐ気づき、ゴンドラを止めオールの先で帽子を救い上げた。

「よっと!」

帽子はオールに当たりまた宙を舞い、落とした少年の頭にストンと戻ってきた。

「わぁ……ありがとうお兄ちゃん!」

少年はゴンドラを漕ぐ彼に礼を言った。

「おう! この辺は時々強い風が吹くから気をつけろよ!」

ゴンドラを漕ぐ彼、ダイゴ・レガシーは少年に笑いかける。彼は星下区の生命線である船ゴンドラを操縦する者、ゴンドリエーレの一人だ。

「おっし、着いたぜ。もう降りていいぞ!」

「「はーい!!」」

目的地の小学校近くの停留所に止まると少年達は降りて小学校に向かっていく。ダイゴはそれを見ていた。

「よっし! 次はBエリアで……」

「ダイゴー!」

ダイゴが次の現場に向かおうとすると、別のゴンドラがやってきた。

「あ、ミキヤさん! お疲れ様っす!」

別のゴンドラに乗っている男の顔をダイゴは見る。ゴンドリエーレの一人、ミキヤ・アオヤマだ。

「到着しました」

ミキヤは自分のゴンドラを停留所に止めて女性客達を全員降ろす。

「よかったねぇ」

「ミキヤさん、素敵だったわ!」

女性客らはそう言って降りて行った。

「ミキヤさん相変わらずギガメガ人気ですよね!」

ダイゴはミキヤのほうを見る。ミキヤは容姿端麗で確かな腕前で、ゴンドリエーレとしての女性人気が高い。

「俺は当たり前の仕事をしてるだけだよ」

「それが良いんじゃないですか」

「俺も次はBエリアだ」

「じゃあ一緒に行きましょ!」

二人はそれぞれのゴンドラを漕ぎ、次の現場に向かう。

ゴンドリエーレとは、星下区の運河を行き来し、市民の交通や荷物の運搬を補助するゴンドラの漕ぎ手達のことだ。彼ら無くして海上の市民の生活は成り立たない。

「そういや中央のほうで車道の建設、もう工事が終わってるですよね?」

「ああ。救急車や急ぎの荷物を積んだ車を走らせないといけないからな」

「俺なんだか複雑っすよ。便利になるのはいいですけど、俺達ゴンドラ乗りのいる意味が無くなっていくみたいで……少し寂しいです」

ダイゴは漕ぎながらぼやく。ミキヤはそれに頷き、語る。

「確かにな。海は豊かさと美しさをくれるが、時には人の道を阻むものにもなる。スズキ支部長がよく言っているだろう?」

「そっすわなぁ。人命や生活には代えられないですよね……」

ダイゴは星下区の生活を愛していた。船が無いと生活がままならない日常も、運河の入り組んだ街並みもゆるやかに流れる時間も。

「年々水位が上がっているからそれに合わせた生活に変えないとな」

「はぁい」

ミキヤとダイゴはそのまま次の仕事場に向かっていった。

 

 ※

 

 「ただいま戻りました」

「Bエリアの荷物運搬、ギガメガに終わらせてきましたっ!!」

Bエリアでの仕事を終えると、ミキヤとダイゴは自分達のいる支部のゴンドラステーションに帰還し事後報告をする。そこにいたのは支部の代表である男、タツヒコ・スズキだ。

「お帰り。思ったより速かったね」

スズキは細い目で二人に笑いかける。

「俺達にかかればすぐっスから!」

「ダイゴくん、相変わらずだね」

ダイゴにスズキは笑いかける。

「あ、そうだ! 『ドライバー』の整備終わってます? 本部の人に治してもらってたの!」

「それならさっき来たよ」

スズキは赤いケースを取り出し、開く。そこには特殊なベルトがあった。

赤と白、そして金の彩色が施されたバックルが中央にあるそれをダイゴを手に取り、眺める。

「おおっ! さすが本部! あざっす!」

「もう壊すんじゃないぞ。装備壊したりで叱られるのは私もなんだから」

そのベルトはダイゴ達ゴンドリエーレの仕事に重要なものだった。

「スズキ支部長、俺のドライバーはまだですか?」

ミキヤはスズキに問う。

「ああ、悪いがミキヤくんのはまだメンテナンスが終わっていないんだ」

「いつ『奴ら』が出るかわからないので少しは急いでほしいです……」

ミキヤもそのベルトを使う者だった。

「『アンデルセン・アーカイブ』を使えるようにする改良には時間がかかるみたいだな」

「ミキヤさん、大丈夫っすよ! 俺がいますから!」

ダイゴはミキヤに笑いかける。そうやっていると……

――ビーッ! ビッー!!

サイレンがゴンドラステーションの建物内に響く。

『Dエリア14に中型のクラーケン出現! 仮面ライダー出動要請!』

AIのアナウンスが響く。それはシティ内に怪物が現れた知らせだ。

「要請来たか」

「俺が出ます!」

スズキが呟くとダイゴはベルトを持って出る。そのままダイゴはステーションの建物を出ると、愛用の赤いバイクに乗りエンジンをかける。それと同時に運河の中から、バイクの走る車道が運河を割るように現れる。それは緊急時にのみ現れる道だ。ダイゴはその道をバイクで爆走し、怪物、クラーケンのいる現場に向かう。

 

 ※

 

 「きゃああ!!」

「逃げろー!!」

ネオマリーナシティでは数少ない広い歩道のあるDエリア14にいた人々はそのおぞましい怪物、クラーケンに怯えた。巨大な大凧のようなそれは人々に向かってうねるように歩き、その足で殴りかかろうとする。

「きゃあ!」

一人の幼い少女が倒れる。それを見たクラーケンは呻きながら長い足を少女に伸ばし殴りかかる。

「きゃああああ!!」

少女は殴られると悟り、悲鳴を上げる。

――バシンッ!!

しかし、少女を痛みは襲わなかった。

「?」

少女が顔を上げてみると、一人のゴンドリエーレの青年、ダイゴがいた。彼がクラーケンの長い足を受け止めていたのだ。

「君、大丈夫?! 立てるか?」

「うん……ありがと」

ダイゴは思い切り足を投げるように退かすと、少女を立たせる。

「走れるか? この先まっすぐ行ったとこのゴンドラステーションに逃げろ。みんなそこに避難してるから」

「うん」

少女は立ち上がって、まっすぐと走っていった。それを見送ったダイゴはクラーケンの方を睨み付ける。

「……俺の海を荒らしたな?」

クラーケンを見ながら、ダイゴは赤いベルトを取り出し腰に装着する。そして、一枚のフロッピーディスクを出す。

「静かに自分の縄張りで生きてるなら口は出さねえ、だが人の縄張りに入って人を狙うなら黙っちゃいられねえな! ――変身!!」

フロッピーディスクを一度高く上げ、勢いよくベルトのバックルに差し込み、それを一回転させる。

『システムコード! アテランテ!』

それは音と光を放ち、ダイゴの姿を変えた。

『カラシウスアウラティス! アテランテ!』

そこにいたのは仮面ライダーの一人、アテランテだった。

仮面ライダー。それはゴンドリエーレの一部に与えられた戦闘システム。シティに現れる海の害獣や異端の犯罪者と戦いシティの市民達を守る者達のことだ。

「ギガメガに行くぜ!」

アテランテとなったダイゴは銛、ハープーンを取り出しクラーケンに向かっていく。ハープーンはクラーケンに突き刺さりそれは苦しみ、抵抗する。クラーケンは足でダイゴに殴りかかるがダイゴは軽々と避けてハープーンで攻撃していく。

ダイゴとクラーケンは互いに攻撃を続けていく。

「うわ! こりゃ大技でしとめないと!」

地道にダメージを与えていては時間がかかると思ったダイゴはベルトに刺さっているフロッピーディスクを取る。その時クラーケンは素早く逃げ出し、広い運河に飛び込む。

「わ! そっちに行くんじゃねえ!」

ダイゴはそれを追って飛び込む。仮面ライダーのライダースーツは潜水用の機能もあるので潜ることも可能だ。そこにダイゴの身体能力も加わり、ぐんぐんと力強く泳ぎ、逃げるクラーケンに追いついた。ハープーンで再び刺し、動きを封じる。

「ギガメガに仕留めてやるよ!」

ダイゴは刺したまま泳ぎ、水上に持ち上げる。クラーケンもダイゴも水上に顔を出す。

ダイゴは水の中でベルトの中で先ほど変身に使ったディスクを裏返しに差し込む。それが必殺技の発動条件だ。

『アテランテ・ファイナルアタック!!』

ダイゴの周りの水がダイゴの身体を高く持ち上げる。

『アテランテ・マリンスプラッシュ!!』

「貫いてやるぜ!」

ダイゴはそのままクラーケンに向けてキックする。

――ドシャアアアア!!

クラーケンは逃げれず、そのキックを喰らい、そのまま水中で爆発し消滅する。

ダイゴはその勢いで広い歩道に出る。

「ふー、駆除完了!」

ダイゴは変身を解除し、いつもの姿になる。

ゴンドリエーレのもうひとつの仕事。それは仮面ライダーに変身し、ネオマリーナシティに現れる海の害獣・クラーケンを駆除し人々を守ることだった。海の上にある街の日々は美しくも過酷だ。だから美しいのかもしれないが……

 

 ※

 

 ある少年は高い廃墟ビルの上からネオマリーナシティを見ていた。旧時代の大きなビル街が水没したようなその風景を。

「……」

その金髪の美少年は遠い目でそれを見ていた。

「――すっかり変わったな……」

「「リーダーッ!」」

そう呟いていると、彼の元に長い黒髪の少年と赤茶色の髪の少年が近寄ってきた。

「リーダー、やっぱここにいたんですね。探しましたよ」

「勝手にふらっと一人にならないでくださいよぉ!」

「ああ。悪いな」

二人にリーダーと呼ばれた金髪の美少年は遠くを見つめたままだった。

 

 ※

 

 「――問題ありません。それは伸し上がるチャンスです」

あるビルの中のエスカレーターの上。マゼンダ色の髪の女は電話で商談をしていた。彼女の投資している企業の重役との取引の電話だ。彼女の投資した企業の多くは上昇している。彼女の今後の大勝負をまだ誰も知らない。

 

 ※

 

 「今日来る予定の人は確か……」

ある会社の受付に眼鏡をした黒紫の髪の女がいた。

「すいません、先程連絡した者ですが」

「あ、はい! ご予約伺っています」

会社に入ってすぐの受付の場で予定を確認する彼女を来客は呼ぶ。彼女は今後来る来客がとんでもないことを知らない。

 

 ※

 

 「コイツがアテランテのシステム使っている奴か……」

ある研究所である青年は仮面ライダーアテランテであるダイゴ・レガシーの資料を見ていた。その青年はダイゴに対して淡い興味を感じていた。

 

 ※

 

 「ゴンドラ通りまーすっ!」

ある狭い運河。ダイゴは戦いを終えるとすぐにゴンドリエーレの職務に戻ってゴンドラを漕いでいた。前から通る別のゴンドラに注意を呼びかける。別のゴンドラのゴンドリエーレはそれに気付き操縦を止めてダイゴのゴンドラを通す。

市民を船で送り届けることも海の害獣から守ることもダイゴの任務だった。そんな日々が続くのだと、ダイゴはまだ思っていた。

 

 

続く

 



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Act.2 過去から来た侯爵

二号ライダーが出てきます

追記2022.11.24
ダイゴの妹の名前を「ノドカ」から「ノリカ」に変更しました。似たような名前が目立つ気がしまして……(言い訳)


 金髪の少年は時々夢を見る。ある人を探して走り回っていると、黒い影が自分を包み横倒しになる。自分は闇の中に揉まれ、その恐怖に叫ぶ。

――僕を一人にしないでくれっ!! ああああああぁぁぁっ!!

少年はそう叫ぶと夢から醒めた。

「っ!! ……」

少年、イザナはバイクが数台入るくらいの広さのガレージにあるソファに座ったまま眠っていたのだ。

「またあの夢か……」

 

 

 ※

 

 

 夜のネオマリーナシティの中心部は強い街明かりの光で昼に負けないくらいに明るい。そんな中心部から少し離れた星下区はそこまで明るくなく、夜の海らしい風景があった。ダイゴと彼の妹はそこの集合住宅の一角に住んでいた。

「ただいまぁー」

「おー、ノリカお帰り!」

大学から帰ってきた妹、ノリカをダイゴは夕食を作りながら迎える。

「今飯出来たとこだぞ」

「わぁ、今日も美味しそう!」

食卓にあったのはノリカの好物のハンバーグと白米とワカメの味噌汁だった。ノドカはカバンをソファに置いて食卓につく。

「いただきまーす。そういや兄ちゃん、今日もクラーケン倒したっしょ?」

「そうだぜ?」

「大変じゃない? ゴンドラ漕ぐだけじゃなくて害獣退治までしないといけないのって」

ダイゴ達ゴンドリエーレが仮面ライダーとして戦うことはノドカも知っている。

「そんなことねえよ。港町に住む人達を守るのも、海に生きる男の仕事だってうちの支部長が言ってたしな……」

スズキから以前習ったことをダイゴは語る。そうしていると彼はふとある事を思い出す。

「あーっ! 今日『ギャラクシアガイ』の映画の日だ!!」

ダイゴは慌ててテレビを点ける。そこにダイゴの憧れのヒーローがいた。

『大銀河の神が俺をこう呼ぶ! ギャラクシアガイと!』

「あああ! やっぱ良い!」

ギャラクシアガイ。ダイゴが幼い頃から憧れている創作物のヒーローだ。テレビ放送の終わった現在でも人気が高く、映画もいくつかあるほどだ。

「兄ちゃん相変わらずギャラクシア好きだよね」

「当たり前だ! 俺の永遠のヒーローだぜ! ギガメガかっけええだろ!」

ギャラクシアガイの映画を見ながら、二人は食卓のハンバーグを食べる。

「んふぅ、おいしい」

「だろー!?」

父は仕事でなかなか帰らないが二人はいつも食事を共にしていた。

「兄ちゃん、ギャラクシアガイみたいになれてよかったって思ってるっしょ?」

「まあな! 人間一回はヒーローになりたいって思うだろ! 今の俺はそれだよ!」

「兄ちゃんは昔から何回も思ってたっしょ? まあ自分は無いけど」

「へー?」

 

 

 ※

 

 

 「ダイゴ、ドライバーの調子どうだったかい?」

「前よりギガメガ強くなっていますよ!」

翌日のゴンドラステーション内。スズキはダイゴに整備されたアテランテのドライバーについて報告を求め、ダイゴはそれに答える。

「それは良かった。それを報告書にして本部に出してね」

「ううう! それはきっついっす」

「それから、クラーケンと戦って何か変わったことはなかったかい?」

「? 特に何もなかったっすよ。前よりちょっと強いかな、って思いましたけど」

スズキは話題をクラーケンについてに変える。

クラーケンは世界が海に沈んだ後に現れた生物で人間を食することもある。だから仮面ライダーや専門の猟師達が駆除することが多い。かつての地球にいた野生の猛獣のような存在である。

「そうか……クラーケンの目撃情報も出現率も増えて来たから気を引き締めないとな。猟師衆だけじゃ対処しきれないこともある」

猟師衆とはクラーケン等海から来る害獣達を仕留めるために組織された狙撃隊である。

「もちろんっス! 俺に任せてください!」

「よし! じゃあ見回り行ってこい!」

スズキはダイゴをパトロールに出すのだった。

 

 ※

 

 「今日は予約客いないし通学グループはミキヤさんの担当だからゆっくり出来ると思ったのにぃ……」

ダイゴは自分のゴンドラをこいで運河を行く。橋にも細い道にも人は少なく、風も小さく海の揺れも小さい。

「……」

久々に見た穏やかな風景。ダイゴはそれらを見て、歌を歌い出す。ゴンドラ乗る者達が長年歌い続けたカンツォーネを。雄々しくも優しい歌声が周囲に響く。その歌を聴いて建物の窓から顔を出す者がぽつりぽつりと出てくる。イタリア語で直接的な歌詞の意味はわからないが、その歌に聞き惚れる。

その歌は、高い位置にある陸橋をバイクで走っていたある少年の耳にも届いた。

「? なんだろう? 歌か?」

少年、イザナはバイクを止めてヘルメットを取り、歌声の聴こえる場所を探してみる。聴こえる方角を見ると、ダイゴがゴンドラで歌う姿が見えた。歌の意味は分からないが気になってしまう。

「ゴンドリエーレの歌か」

イザナはその歌を聴いたことはなかったが、なぜか懐かしさを覚える。

「やっぱりここはほとんど『海』みたいだな……」

しばらく聴いていると、イザナはヘルメットを被り直しバイクに乗り、再び走り出す。

ダイゴはそれとほぼ同時に、歌い終える。

「……ふー」

「ブラボー!」

「良かったよダイゴ!」

ダイゴの歌を聴いていた街の人々は称賛し拍手する。

「おー! あざっす!」

ダイゴは人々に手を振る。

 

 

 ※

 

 

 イザナは陸橋を降りて運河のなく車道や歩道の多い区域に到着する。そこは古い電化製品や鉄骨の積もった場所だった。イザナはここに隠れている盗賊を探しに来たのだ。盗賊を見つけ次第捕まえるのは彼の今の仕事だ。

イザナが歩いていると、彼の気配を感じたその盗賊の男が姿を現す。

「なんだ坊や? こんなところに来るなんて迷子か?」

「いや、貴様に用があってな。『モンスターキー』を使って強盗をするお前を捕えろってな」

「は?」

モンスターキーとは使用した人間を人間では無くす、つまり怪物に変えてしまう鍵。人体のどこかに付けられた鍵穴の入れ墨に刺すことでそれが成立する。

「なんだよ、俺がキー持ってるの知ってるのかよ……じゃあ、ぶっ壊れろ」

盗賊の男は懐から鍵、モンスターキーを出し腕に彫られた鍵穴の入れ墨に差し込む。その力で男の姿は岩石が擬人化したかのような怪物の姿になる。

「潰してやるよぉ!」

怪物になった男はイザナに殴りかかる。イザナは素早く避ける。男の殴った地面は大きく穴が開き、周囲の古い電化製品の山や鉄骨は崩れる。殴るのを避け続けるイザナは男から離れる。離れたイザナは、あるベルトとフロッピーディスクを取り出す。

「悪いが付き合っているほど僕は暇じゃないんだ」

イザナはベルトを腰に装着しフロッピーディスクを高く上に上げて差し込む。

「変身!」

『システムコード・マークイス!』

イザナの身体は黒い鎧の騎士のような姿に変わる。そこにいたのは、黒と緑と紫の色をした戦士、仮面ライダーマークイスだった。

『ロードオブ! マークイス!』

「……殺せるなら殺してみろ、僕を阻むことは誰もできない!」

マークイスとなったイザナは銃剣を振りかざし男と交戦する。剣の部分で切りかかる。男は岩の拳でイザナを殴り続けるがイザナも止まらずに剣の部分で切り続ける。男は転がっている鉄骨を持って投げる。イザナはそれを軽々と避けて男に向かっていく。銃で撃ち、剣で斬る。そうしていくと男はダメージが溜まっていき、動けなくなっていく。

イザナはベルトのフロッピーディスクを取ると、銃剣に差し込む。

『マークイス・ファイナルアタック!』

「これで終わらせる」

『ドラグーン・シューティング!』

イザナは銃を向けて大きな紫の光の弾を撃つ。それは男に命中し、爆発する。男は元の人間の姿に戻りその体内からは先程のモンスターキーが出てくる。それはヒビは入り効果を無くしていた。

「……ふー、終わったか」

イザナはモンスターキーを拾う。そうしていると、ブレス型の通信機に連絡が入る。

『リーダー、盗賊野郎の盗んだ宝石は全部見つけて回収しました』

『そいつの仲間はオレらがボコっときましたよ!』

イザナと行動を共にする二人の少年からだ。長い黒髪で右目を隠しているのがヘータ、赤茶色の短い髪をしているのがサトルだ。

「ああ、大義だった。アジトでシズクさんに渡しておいてくれ」

イザナは通信を切る。シズクという女性から与えられる任務を遂行する、それがイザナ、ヘータ、サトルの仕事だ。三人はそれが『自分達の願い』の手がかりになると信じて行っている。

 

続く

 



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人物解説①主人公・二号ライダー・ヒロイン(三号ライダー)

人物の詳細設定も書いていきます
出来る限り正統派主人公を目指しています。二号はもう一人の主人公で、ヒロインは三号ライダーでもあります
随時追記、編集すると思います

用語も解説していきます

2023.5.9
一部加筆と修正。

2023.5.18
立ち絵メーカーでイメージを作ったので追加しました


ダイゴ・レガシー/仮面ライダーアテランテ

 

年齢:21歳

身長:180cm

主人公。仮面ライダーアテランテの変身者。ゴンドリエーレの一人で普段はゴンドラを操縦し、時には仮面ライダーとして戦う。熱血漢で元気いっぱい。口癖は「ギガメガ」

特撮ヒーローの「ギャラクシアガイ」が好きでヒーローへの憧れがある。妹と二人暮らしで父は仕事で単身赴任中(船乗りの仕事でなかなか帰れない)

体格は縦にも横にも大きめ。筋肉ある、モヒカン風に盛り上がった青髪(ちょっとハネてる)で緑眼。身体能力は高くて戦闘にも慣れている

特技は潜水、料理、カンツォーネ(歌)

好きな食べ物は煮干し、魚のフライのハンバーガー

 

ゴンドリエーレとしての制服は紺と白の配色で靴は長靴。右手にグローブをしている。

(本来は上着の前は閉めるがダイゴは開けている)

 

仮面ライダーアテランテ

カラーリングは赤と白と金でモチーフは金魚。水属性の技を使える。海での戦闘で強い

バイクの「マシン・アテランテ」も赤と白の装甲で状況に応じて水上でも走れるようになる

基本武器は銛のアテランテハープーン。名前はアトランティスをもじったもの

 

ゴンドラも戦闘で使うことがあります。たまに水上で戦います

 

結構アニメっぽいキャラデザ想定で書いています。正統派主人公を目指して書いています

 

 

 

 

 

イザナ/仮面ライダーマークイス

 

年齢:17歳

身長:164cm

もう一人の主人公。やや長め(気持ちおかっぱ)の金髪で紫眼。クールな美少年で気高い。年齢よりやや小柄で童顔。体形は標準。幼馴染の少女を探すためにヘータとサトルと「リヴートスターズ」を結成し行動している。自分達を仮面ライダーにスカウトした女性・シズクからの依頼をこなしている。幼馴染の少女との再会のためにアンデルセン・アーカイブを集めている。

特技はバイク、喧嘩。好きなものはケーキ、肉料理。苦手なものは煮干し等魚料理。

 

服装は黒いライダースジャケットに茶色の革ズボン。靴はブーツ

 

 

仮面ライダーマークイス

黒と緑と紫の戦士。モチーフは西洋の鎧騎士。マークイスは「侯爵」を意味する。火属性で火系の技を使える。基本武器は銃剣・シェヴァリエショット

バイクは「マシン・マークイス」でイザナは普段から乗っている。色は黒と緑と紫

 

 

 

 

 

エマ・タカハシ/仮面ライダーエスポワール

 

身長:158cm

年齢:19歳

メインヒロイン。「賭博の女王」を自称する投資家にしてギャンブラー。金銭や宝石等金目のものを好む。彼女の投資した企業の多くは大規模になることが多い、現在は姫坂コーポレーションの株主をしている。欲深く自由奔放な性格。17歳の弟がいる。

好きなものは宝石、装飾品、お金、賭け事全般。

マゼンダ色の髪をポニーテールにしており、服装は見せブラにジャケット、ショートパンツにタイツに膝上ブーツと露出度が高い(巨乳で抜群のプロポーション、ほぼへそ出し)

アンデルセン・アーカイブを世界一の宝石と考えており、それを集めること自体を目的にしている。

 

仮面ライダーエスポワール

桃色と灰色の戦士。モチーフは怪盗。風属性。身体のラインが女性らしいスーツ

武器は弓・ウィングサモナー

バイクは「マシン・エスポワール」でエマは普段から乗っている。色は灰色と黒

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

エマの髪型は回やシーンによって違う時があります

 

 

三人のイメージはこれです。五百式立ち絵メーカーで(https://picrew.me/ja/image_maker/689163 https://picrew.me/ja/image_maker/625876

)で作りました

 

ダイゴ・レガシー 本当はもっとトサカみたいな髪型してます

 

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イザナ

 

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エマ・タカハシ

 

【挿絵表示】

 



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Act.3 海の中での出会い

主役ライダーと二号ライダーの出会い。そして他のライダーもいます


 「じゃあなダイゴ」

「おー! また乗ってくださぁい!」

ゴンドラの停留所にゴンドラを止めるとダイゴは初老の男性を降ろす。男性は挨拶をすると歩いていく。その時、ゴンドラに置いてあるラジオからアナウンスの電子音が流れた。キャスターの話が流れる。それはある事件の追悼を意味していた。

『本日4月2日はグランテが地上を制圧を開始。世界が海に沈むきっかけとなった事件からもう400年が経過しました』

グランテを名乗る地上世界の住人達が戦争を巻き起こし、その被害で世界が変わり海に沈んでいった。

『そして8月4日以降、グランデのもたらした兵器により水位は上がっていき、地面や草木は無くなり地球は海の惑星へと変わっていきました』

「そっか、400年前って天然の島とか山とか普通にあったんだよな」

淡々と流れるアナウンスをダイゴは聞いていた。ダイゴは植物の生えた地面や島国のある風景等、西暦2000年代まで当たり前にあったもののことは知らない。海底の都市や人工の島が当たり前の世界で生きていた。だから400年前の世界の出来事がまるで御伽噺のようにしか思えない。そんな風に黄昏ていると、ダイゴの仕事用のスマートフォンに連絡が入る。

「はい、俺です」

『今後の業務のことでちょっと話がある。戻ってきてくれ』

スズキからステーションに戻る指示が入った。

 

 ※

 

 「グランテの連中が街で悪さしているんすか?」

「ああ」

ゴンドラステーションに戻ったダイゴはミキヤと共にスズキから新たな業務について聞かされている。

「年々グランテの影響力、軍事力は無くなっているんだがまだ残党が残っていてな。その残党がネオマリーナに潜伏し街全体を乗っ取ろうとしているみたいなんだ」

グランテ。地底世界から来た人間に似た種族による帝国。かつては地上の全てを乗っ取り、アンデルセン・アーカイブの力で世界を海に沈めたが、400年かけて地上の人間達との対立の中で影響も軍事力も衰退していった。かつて世界を掌握したものの、時間の経過や変化により自然とその力は無くなっていった。

「どんな大国もいつかは栄光を無くすが、残党はいつまでも残ることが多い。でな」

スズキはタブレットにある画像を出す。鍵の形をした装置、モンスターキーだ。そして、キーの力で怪物、アンロッカーに変身した人間の画像も。

「人間がこんな風になるんですか」

ミキヤはアンロッカーの姿を見て驚く。

「連中はこのモンスターキーで怪物になって人を襲うこともあるそうだ。今後はこいつらとの戦いも私達の業務になる。気を引き締めていけ」

「わかったっす!」

「了解」

スズキの説明にダイゴとミキヤは頷く。

「俺達の海が余所の連中に荒らされるなんて、させませんよ!」

「支部長、グランテはもう国家としては機能していないというのは本当ですか?」

意気込みを見せるダイゴの横でミキヤが問う。

「ああ、国民が国を捨てて地上の人達として生きることを選んでいったことで実質王族とそこに直接関わる者達しか残っていない状態だ」

スズキは本部にあたるゴンドリエーレの組織「クストーデ」から聞かされた情報を語る。

 

 ※

 

 「リーダー、ただいまですー! あれ?」

イザナ、ヘータ、サトルのアジトであるガレージにサトルは買い出しから帰ってきた。イザナ本人と彼のバイクが無く、ヘータしかいないのにサトルは気付く。

「リーダーは?」

「星下区まで偵察がてら走ってくってよ」

ヘータがイザナの行方を語る。

「なんだよ~、走るんならオレも一緒に行きたかったのに!」

「お前といるとうるさくて気が散って事故るからだろ?」

「うるせえな」

サトルは不貞腐れる。イザナがバイクで一人街の陸橋を走るのはいつものことだ。

「……オレらの探してる人達って、今どうしてんだろ」

「……」

買ったものを古いテーブルの上に置いたサトルが呟いた言葉でヘータは黙り込む。

 

 ※

 

 

 高い位置にある陸橋をイザナはバイクで走っていく。海に沈み運河が覆う街ではバイクの走れる場所は高い位置にある陸橋や数少ない車道のみだ。

「……」

陸橋から降りるとイザナはバイクを止めて、ヘルメットを取る。バイクを置いて少し歩き、運河を跨ぐ橋を歩いてみる。

「今日はあのゴンドラ乗りはいないのか……?」

先日見かけた青い髪のゴンドリエーレ、ダイゴはいないのかと探してみる。彼の澄んだ歌をイザナは忘れられなかった。橋をおりて細い歩道を歩きながらあたりを見回していると、

――ザプッ!

「!?」

巨大な蛸のような害獣、クラーケンの長い足が海からあがりイザナを殴る。

――ドズッ!

「だは!」

油断したイザナはそのまま殴られ続け、海に落ちる。クラーケンは興味を失い海に戻ってイザナから離れる。

「ブハワッ!!」

イザナは泳げなかった。変身していればスーツの耐水機能で息は持つが、今は変身が出来ず溺れる。その姿をゴンドラに乗っていたダイゴが見つけた。

「! 誰か溺れてる!」

ダイゴはゴンドラを止めて、上着とシャツを脱ぎ海に飛び込む。

イザナは力が無くなり沈んでいく。意識と酸素が無くなりかける。朦朧とした視界の中で自分に向かってくる人影が見える。

――!?

無駄な動きもなくそれは近付く。

――あれは、人魚……?

イザナは朦朧としたままだった。

 

 ※

 

 「ぷはっ!!」

ダイゴはイザナを抱えて水面に顔を出し、ゆっくりと泳いでゴンドラに乗せる。すぐ近くの船の係留場に止めてそこに意識が朦朧としているイザナを上げる。

「ん……んん」

「おい大丈夫か!?」

イザナを仰向けに寝かし胸を押し水を吐かせる。そうするとイザナの意識は戻り、ゆっくりと瞼を開けるのをダイゴは見る。

「……んぐぅ」

「生きてるか!? おい!」

ダイゴはイザナに呼びかける。イザナの胸から手を離し、彼をダイゴは見る。

――子供だよな……? ダイゴはイザナの顔と姿を見る。

金色の髪に紫の丸い瞳に白い肌。誰がどう見ても整っていると言うであろう容姿に小柄な背丈。それを人はこう思うのかもしれない。

――……なんだか、王子様みたいだな

イザナはゆっくりと起き上がり、ダイゴを見る。目の前の上半身裸の男を。

――なんでこの男、上に何も着てないんだ?

自分はこの男に助けられたのはすぐに理解したが、とりあえずそう思った。

――さっき人魚だと思ったのは……まさかコイツか?

人魚に見えたものはただの人間の男だったと気付き少しがっかりするイザナ。

「よかったぁ、生きてたぜ。お前クラーケンに殴られて落ちて溺れてただろ」

「そうみたいだな、すまん」

イザナは少し不満げな表情でゆっくりと立ち上がる。

「あ、おい! 無理に立つなって!」

「気にするな、僕の不注意だったんだ」

イザナはそのまま歩き出し、自分のバイクの置いてある場所に向かっていく。

「待てって!」

ダイゴは彼を止められなかった。

「……なんだよアイツ!」

不愛想な態度を見せられてダイゴはやり場が無くなるのだった。そうしていると仕事用のスマートフォンが鳴る。

「はい、こちらダイゴ!」

『Sエリア13に大型のクラーケンが出た! ミキヤのベルトはまだメンテ終わってないからお前一人で行ってくれ!』

スズキからの連絡だった。

「おっす! 俺一人でギガメガやってやりますよ!」

ダイゴはスマートフォンでバイクを呼ぶコマンドを押す。すると運河からバイクの車道が出てきて、そこを自動操縦で走ってくるバイクを迎える。上着を着てヘルメットを被りダイゴはそれに乗り、Sエリアに向かう。

 

 ※

 

 イザナはバイクを見つけ、ヘルメットをしてそれに乗り、陸橋を再び走る。その時、バイクに搭載された通信機に連絡が入る。自分達に指示する女性、シズクからだ。

『――イザナくん、アンデルセン・アーカイブの行方がわかりました』

「! どこですか?」

『今Sエリアに向かっているクストーデのゴンドリエーレが二つ持っています。ヘータくんとサトルくんはもう向かっています』

「はい、すぐ行きます」

イザナは通信を切る。それと同時に、それぞれのバイクに乗ったヘータとサトルがイザナを挟むように走って追い付く。

「久々にアーカイブの情報来ましたね、急ぎましょう」

「リーダー置いてくなんて酷いですよ!」

ヘータとサトルと共にSエリアに向かう道を走る。

「ああ、行くぞ」

 

 

 ※

 

 「きゃあああ!」

「うわああ! 逃げろ!」

Sエリア13。街の人々は大きなクラーケンを見て叫び逃げる。ダイゴはすぐに到着し、バイクを降りてベルトを出す。

「今日は船漕ぐ以外の仕事多いな! 変身!」

『システムコード! アテランテ』

ダイゴはアテランテに変身する。

『カラシウスアウラティス! アテランテ!』

「ギガメガに仕留めてやるよ!」

ダイゴはアテランテハープーンを振りかざし立ち向かう。クラーケンの力は強く、刺してもダメージにならない。皮膚もいつもの以上に固い。蹴りを入れても手応えがない。

「なんか今日のやつすんげぇ固いな!」

そうこうしていると、バイクに乗ったミキヤが走ってくる。

「ダイゴ!」

「ミキヤさん!」

「俺のベルトはまだだが、少しくらいなら援護させてくれ」

ミキヤはバイクに乗りながら専用の銃でクラーケンを撃つ。

「あざっす!」

「それから、本部からこれが届いた! 使ってくれ!」

ミキヤはダイゴにあるものをバイクに乗りながら渡す。それはアンデルセン・アーカイブのひとつだった。

「これって支部長が前に言っていた……」

「ああ、俺達の新装備になるアンデルセン・アーカイブのひとつだ。これをベルトにスキャンしてみろ」

ミキヤが渡した黄色のMD(ミニディスク)はそれだった。ミキヤは即座に離れる。

「あざっすミキヤさん!」

ダイゴはアーカイブをベルトにスキャンする。

『アーカイブ! リトルファイアー!』

マッチ売りの少女の力を持ったそれはアテランテの上半身を黄色に染める。

「お! なんか熱いなこれ!」

アテランテハープーンから火が出る。

「おっし!」

ダイゴは火を噴き出すアテランテハープーンを振りかざす。クラーケンは火でダメージを受ける。

「やっぱ生き物は火に弱いな」

ダイゴは先程と打って変わって着実にダメージを与えていく。

「そろそろきめっぞ!」

ダイゴはアテランテハープーンにある差し込み口にアーカイブを入れる。

『リトルファイアーハンティング!』

アテランテハープーンは一時的に炎の剣に変化する。ダイゴは大きくジャンプしクラーケンに切りかかる。炎によりクラーケンは真っ二つになり、消滅する。

「よっしっと!」

「やった!」

ダイゴが一仕事を終えるとミキヤも安心する。

「もう一つアーカイブを持って来たんだがいらなかったな」

「え? もう一つあったんすか?」

ダイゴが変身を解除せずにミキヤに近づこうとすると、

――バンッ!

「!?」

光の銃の弾がダイゴの足元に当たる。

「誰だ!?」

弾の撃たれた方向をダイゴとミキヤが見ると、そこには金髪の美少年、イザナがいた。

――! あいつはさっきの!?

イザナのやや後ろにはヘータとサトルもいた。

「お前の持っているアンデルセン・アーカイブ、いただくぞ」

イザナ、ヘータ、サトルはベルトを取り出し、腰に装着する。三人はそれぞれのフロッピーディスクを取り出す。

「お前達、行くぞ」

三人は同時に変身する。

「「「変身!!!」」」

三人はフロッピーディスクをベルトに差し込む。強い光を放つと、イザナはマークイス、ヘータはジキル、サトルはハイドという仮面ライダーに変わる。

「!? どういうことだ!?」

「!?」

仮面ライダーのベルトは現状ダイゴやミキヤにしか渡されていない装備。三人がなぜそれらを持っているのかをダイゴもミキヤも知らなかった。

 

続く

 



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用語解説※随時編集、更新します

用語解説です。予告や事後報告無しに内容が変わることがあります
徐々に増やしていきます


〇フロッピーチェンジディスク

仮面ライダー達が変身に使用するディスク。ベルトの真ん中に差し込み使用する

時々必殺技にも使用する。基本フロッピーディスクと呼ばれる

 

〇アンデルセン・アーカイブ

強化アイテム及びキーアイテム。全11種を揃えるとどんな願いが叶えられる。願いを叶える。一個一個それぞれに戦う力を持つ。アンロッカー(後述)を怪物から人間に戻せる数少ない手段でもある。ベルトにスキャンすれば、アンデルセン童話にちなんだそれぞれの能力(人魚やマッチ売りの少女、親指姫等)を使える。願いを叶える力はある条件も必要でアーカイブだけでは叶えられない。MD(ミニディスク)の形をしている

 

一覧※随時編集及び更新します

 

アーカイブの名称 ・ナンバー ・技の属性 ・色 ・元ネタの童話

 

リトルファイアー ・1 ・火属性(火炎) ・黄色 ・マッチ売りの少女

ブラッドシューズ ・2 ・強化系 ・赤 ・赤い靴

ハンプティダンプティ ・3 ・草属性 ・緑 ・もみの木

ジュエルバード ・4 ・風属性、強化系 ・水色 ・サヨナキドリ(小夜啼鳥)

 

〇ネオマリーナシティ

ダイゴ達が暮らすかつての日本の関東にあたる場所にある大都市。海上に海中(海底)に人が住める街がある。

海上は旧時代のヴェネツィアのような風景と海中(海底)には「アクアリウム」と呼ばれる区域がある。アクアリウムは巨大水槽のようになっており、そこに街がある

 

〇ゴンドリエーレ

「ネオマリーナシティ」での移動手段「ゴンドラ」を操縦し市民を送る者達。そして市民を守るために仮面ライダーに変身し戦う者達。水(海)に落ちた市民を助けることも

ライダーシステムの開発は姫坂コーポレーションの軍事開発部門で行われ、それらを使用している

 

〇クラーケン

400年前から存在する生物で人間を襲う。タコやイカ、サメのようなものが多い。

 

〇クストーデ

ネオマリーナシティのゴンドリエーレ達が所属している。アジアの海域の安全と平和、ライフラインを守る組織。本部は中国(本編ではチャイナ名義)の海域にある

 

〇猟師衆

クラーケン等海からやってきた怪物や害獣を駆除するスナイパー(ハンター)のチーム。クストーデに所属している。こちらもネオマリーナシティを守っている

 

〇地底帝国グランテ

400年前から存在する地底人の国家。400年前こそ地球のほとんどを制圧したが年々支配力が低下していき、現在は小国で国として機能していない。国民も少なく王家や政権に関わる者しかいない状況。

 

〇モンスターキー

グランテに関わる人間が持つ怪物化をするアイテム。使用し怪物になった状態は「アンロッカー」と呼ばれる。

 



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Act.4 願いにアクセスするアーカイブ

二号ライダーとその子分二人が出てきます

※2023/1/16
リブーターズの名称をリヴートスターズに変更しました。他のも随時変更します。なんか書き直しばかりですみません


 「な、なんで??」

仮面ライダーとなったイザナ、ヘータ、サトルを見てダイゴは驚く。紫と緑と黒のマークイスの斜め後ろには青と黒のジキル、黄色と黒のハイドが立つ。

「そのアーカイブは僕達『リヴートスターズ』の物だ。黙ってよこせ」

「リヴート? やだよ、これは俺達の装備だぞ」

イザナが手を伸ばす動作をするとダイゴは拒否する。しかしお構いなしにイザナはダイゴに飛び掛かる。

「アーカイブはもらうぞ!」

「どわ! だからなんでだ!?」

ダイゴは黄色いアーカイブを即座に隠す。するとアテランテの姿はいつもの姿になる。イザナの銃剣をダイゴはハープーンで受け止める。

「おうら! とっととよこしな!」

「また来た!」

サトルもダイゴに飛び掛かる。ダイゴはそれとも取っ組み合いをしつつ、イザナと交戦する。

「しつけえな!」

「どわ!」

ダイゴはサトルを張り倒す。

「ダイゴ!」

ミキヤはそれを見て叫ぶ。そこにヘータが近づく。

「お前も黙ってアーカイブを出せ」

「!?」

――ドスンッ!

ヘータはミキヤの腹を強く殴る。それはミキヤに大きくダメージを与える。

「ぐはっ!」

意識を無くしかけるミキヤ。しかし、それに耐えて即座にミキヤは持っていたアーカイブをダイゴに向かって投げる。

「ダイゴ、これを使え!」

「えっ?!」

ミキヤはアーカイブを投げ、ダイゴはそれを受け止める。

「おっ! ミキヤさんあざっす!」

ミキヤから受け取った水色のアーカイブをベルトにスキャンする。

『アーカイブ! ジュエルバード!』

サヨナキドリの力を持ったアーカイブを使うと、ダイゴの両腕は水色の大きな石でコーティングされたようなものに変わる。

「それで二人を思い切り殴れ!」

ミキヤが叫ぶ。

「おんどりゃぁ!」

ダイゴは言われるままに、イザナ、サトルと順番に殴る。

「ぐは!」

「どわぁ!」

イザナとサトルは吹き飛ぶ。二人は地面に叩きつけられる。

「リーダー! サトル!」

ヘータはそれを見て叫ぶ。

「ミキヤさん、行きますよ!」

ダイゴは自分のバイクに乗り、ミキヤも自分のバイクに乗り走っていく。

「ああ! 待て!!」

ヘータはそれを見るがすぐに見失う。

「……っ、くそっ」

「うへぇ~」

イザナは悔しがりながら起き上がり、サトルはうつ伏せのまま落ち込むのだった。

 

 

 ※

 

 

 「なんすかあの連中は!?」

ゴンドラステーションに帰還すると変身解除したダイゴはスズキに問う。

「一人がリヴートスターズと名乗っていましたが、なぜ奴らが仮面ライダーのベルトを持っていたのですか?」

ミキヤも問う。スズキは答える。

「連中のことはまだ上層部が調査中だ。恐らくソイツらの陰にいる雇い主みたいなのがベルトを渡して動かしているんだろう。アンデルセン・アーカイブを狙ってな」

「なんでこれが狙われるんですか?」

ダイゴは二つのアンデルセン・アーカイブを出す。

「……うちの上層部、クストーデはあくまでもアンデルセン・アーカイブを戦闘のための装備として扱っているが……伝承ではこれは11種類を揃えるとどんな願いも叶えられると言われている」

「願い?」

 

 

 ※

 

 

 「ああもう! あの金魚野郎なんなんだよっ!」

ダイゴがゴンドラステーションにいるのと同時刻。アジトであるガレージでサトルはコンクリートの壁を憤りで蹴る。

「サトルうるせえぞ」

ヘータは椅子に座り腕を組み溜息をつく。

「だってだって! アーカイブ無いとオレ達は……」

「大事な人に会えないからな」

ソファに足を広げ座り込み、サトルに付け加えるようにイザナは言った。

「そうっすよ! この一年近くオレ達ずっとそのために戦ってきたじゃないですか」

一年近く前に三人はシズクという女性に出会い、アンデルセン・アーカイブの存在を知った。11個もあるそれらを揃えるとどんな願いも叶えられると知り三人は、リブーターズは願いのためにそれらを集めることを目的にしている。三人の願いはただ、それぞれの大事な人に会いたい。それだけのために戦っている。

「――お時間よろしいですか?」

「!」

ガレージの中に一人の初老の女性が入ってくる。着物姿でやや白髪のあるその女性こそがシズクだった。

「シズクさん」

イザナの前にシズクが来る。

「シズクさん、あの金魚野郎のいる組織、クスなんとかってのもオレ達みたいに何か願いがあって集めてるんすか?」

「サトル、クストーデだ。その辺はどうなんですか?」

サトルの問いにヘータは補足する。

「いえ、クストーデは危険物として回収することを目的にしています。11個揃えなくてもそれぞれに特別な力を持っていますので。仮面ライダーのベルトに使用したことで強化されるのも、そのひとつです」

自分の持つ情報をシズクは三人に伝える。

「アーカイブにはアーカイブしか対抗出来ません。以前手に入れたこれをお渡ししておきます」

シズクは着物の裾から赤いアンデルセン・アーカイブのMDディスクを取り、イザナに渡す。ブラッドシューズ。赤い靴の力を持つアーカイブだ。

「……」

イザナはそれを黙って見ているのだった。

 

 

 ※

 

 

 「――クストーデはアンデルセン・アーカイブの回収をしつつ、戦闘に使えるかどうかも検証している。グランテのテクノロジーだから、どこまで地上の人間が使いこなせるかわからないが」

ダイゴとミキヤはアンデルセン・アーカイブについてスズキから説明を受けている。

「アーカイブの回収は一応うちの管轄じゃないが、できれば回収してほしい。誰がいつ何を願うかわからないからな」

「どんな願いも叶うというのは本当ですか?」

ミキヤが問う。

「ああ。400年前に世界を海の惑星にしたのはアーカイブの力だったからな。世界の状況を変えることが出来るのは確かだ」

「ギガメガマジすか」

ダイゴは圧倒される。400年前まで世界に大陸があったことすら御伽噺と思っているが、それが自分の持つMDの形をした装置によりそれが起きたことも御伽噺のように思えた。

ダイゴはまだ知らない。アンデルセン・アーカイブの本質を。それに自分自身が大きく関わっていることを……

 

 ※

 

 「――というわけで、君にはモンスターキーと、アーカイブの回収をやってもらうよ。契約通り、アーカイブは全て君が所有していい」

「本当にいいんですね?」

投資家の女は自身が投資している会社の重役と取引をしていた。マゼンダ色の髪のその女は重役に渡されたベルトのバックルを見て笑顔を見せる。

「毎度ありです。この賭けは必ず勝てますよ」

女、エマ・タカハシはベルトを受け取るのだった。

 

 

続く

 



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Act.5 始まる奪い合い

ヒロイン兼三号ライダーが出てきます。ライバル枠のつもりです

追記10/18 脱字修正しました


 ダイゴは先日のイザナのことを思い出しながらゴンドラを漕いでいた。自分があの時助けた少年が実は仮面ライダーであったことには驚いた。名も知らない美少年がなぜか気になっていた。

――アイツはアテランテが俺だって気付いてなかったよな。変身してた時に急に出てきたから……だけど拒否ってるのにアーカイブ取ろうとして攻撃してくるとかなんだってんだよ! ちょっとでも王子様みたいだと思った自分に腹立つっ!!

イザナを思い出し、ダイゴは腹を立てる。

「ダイゴ」

「へ?」

ダイゴは誰かに呼ばれる。それは後ろ横からゴンドラを漕いでやってきたミキヤだった。

「客に見られたらマズイ顔しているぞ?」

イザナとの戦闘を思い出ししかめっ面になっているのをミキヤは指摘してくれる。

「え? うそ!」

ダイゴは慌ててしかめっ面を直す。

「気をつけなよ? 笑顔も仕事だぞ」

「おっす……」

ミキヤはそれだけを言うと、ゴンドラを漕いで目的地に向かっていった。

「ミキヤさん相変わらずギガメガ爽やかだぜ! 王子様ってああいう人のことだよな!」

にこやかに注意されてダイゴの表情は緩み謎に納得する。

そんな彼の様子を、上の陸橋から一人の女が見ていた。

「……あれがクストーデの仮面ライダーねぇ、なんかバカっぽいわね」

そのマゼンダ色の髪をした女はバイクに跨りヘルメットを被り走らせ、今日の仕事場に向かう。

 

 ※

 

 

 マゼンダ色の髪の女、エマ・タカハシはネオマリーナシティ内のあるジュエルショップに来ていた。客としてではなく、出資する者としてだ。投資する店が今後伸びるかどうかを見るのは投資家の仕事の一つだ。

「タカハシ様、いかがですか?」

店の社長と共にエマは店舗の宝石と金や銀で出来たアクセサリーを見る。

「相変わらずどれも綺麗ですね。さっき見たサファイアのピアスは買いますね」

「あ、ありがとうございます!」

気に入ったものはもちろん買うのであった。

「不正は無いのと、売り上げも安定していますから投資の契約更新ですっと」

「ありがとうございます!」

「ここのアクセ好きだから今後もサポートしていきますよ」

エマは社長にクレジットカードを渡し、その小さなサファイアのピアスを買いそのまま耳に付ける。

「じゃあ今日はこれで。次の仕事があるので。ここの店のと同じくらい素敵な宝石が待ってるから」

「はい?」

エマは社長に笑顔を見せながらそう言って店を出る。

 

 ※

 

 「クストーデの持ってるアーカイブって俺の持っている二個だけなんすか?」

ゴンドラステーションの停船場。ダイゴは自分のゴンドラを海から引き揚げ、ワックスで磨きながら別のゴンドラを磨くスズキに問う。

「ああ。残り九個は金持ちが所有してたり完全に行方がわからなくてな。政治家に持っている奴がいてそれを本部に渡せって交渉もしてる」

「なんで金持ちや政治家が持ちたがるんですか? 願いのためっすか?」

「いや、アーカイブは歴史的な価値のあるオーパーツでもあるんだ。純粋にコレクションや所持することでお偉いさん同士の駆け引きの道具にも使われる。だから願いがない奴らも狙ったり所持したりしているんだ」

スズキはアンデルセン・アーカイブの価値を語る。

「うわぁ、俺にはわかんねえ世界っすよ」

「まあ、お前でいうところのギャラクシアガイのプレミアグッズみたいなもんかな? コレクションしがいがあるかつ、それがあれば番組がもっと楽しめるみたいな」

「おお! 今のでなんかわかったっす!!」

ダイゴ用にわかりやすくスズキが説明するとダイゴは笑顔で納得する。

「まあ何に価値を覚えるかは人それぞれだな」

二人はそれぞれ作業を続ける。すると、

「すいませーん! 乗船予約したエマ・タカハシですけどー!」

女の声が聞こえた。

「え? 客?」

ダイゴはそれに反応する。

「あー、予約客だ。ダイゴ対応頼む」

「了解っす」

ダイゴは走って女、エマ・タカハシの元に行く。

「えっと、14時に酒井シーランド行きで予約してたエマ・タカハシさんですね」

「うん! あそこバイクじゃいけないからお願いね」

ダイゴは予備のゴンドラを用意し、エマと共に乗る。そして海上の遊園地、酒井シーランドに向かう。車道が設備されていないため船がないといけない場所にあるのだ。ダイゴはオールを動かしながら営業トークを始める。

「酒井シーランドって俺行ったことないですよー。気になってはいるんですけど」

「結構いいとこよ。あとタメ口でいいわ、あんたと年あんま変わらないみたいだから」

「あー……何しに行くんだ? 友達と待ち合わせてるとか?」

タメ口でいいと言われ、ダイゴの口調は砕ける。

「ううん。仕事で偵察に行くの。私あの遊園地に投資しててね。出資先の定期偵察は投資の基本よ」

「あんた投資家か?」

「そうそう! 私がお金出したとこは絶対大当たりするから今にあの遊園地はもっと大きくなるわ」

「すげえ自信だな、よくわからねえけど」

エマの自慢げな様子を見るダイゴ。いきなり自慢話する乗客はたまにいるが彼女はどこか異質さを感じる。

「お金出した会社や遊園地が大きくなるの見てるとワクワクするわよ~? 自分が信じたものが形になっていくのとか、売り上げの一部がこっちに来るとか」

ダイゴのゴンドラは酒井シーランドがある区域に近づく。海に浮いている遊園地の風景がそこに見える。園専用の停船場にゴンドラを止める。

「ついだぞ」

「ありがとね。お金はもう払ってるから」

エマはゴンドラを降りて停船場に立つ。その瞬間、

――ドンッ!

「!?」

ダイゴの身体を強く押して、バランスを崩させる。ダイゴはよろけながらもギリギリでゴンドラから落ちなかった。

「おい! 何しやがる!?」

「あら、体幹いいわね。思ったより体力あるかも」

エマはダイゴの身体能力を確認すると、あるものを取り出す。それは仮面ライダーのベルトとフロッピーディスクだった。

「!? それって仮面ライダーのベルトか!?」

「ちょっと悪いけど力ずくでもらうわよ、変身っ!」

『システムコード・エスポワール!』

エマは腰にベルトを装着しフロッピーディスクを差し込む。すると灰色の光が彼女を包み彼女の姿を変えた。

エマは仮面ライダーエスポワールになった。

『レディディーラー・エスポワール!』

「ケガしたくないなら、アンデルセン・アーカイブよこしなさい!」

エマは弓のウィングサモナーをダイゴに向ける。

「コイツもかよっ!?」

 

続く

 



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Act.6 賭博の女王の思惑

ヒロイン(三号ライダー)と戦っています。うちのヒロインはライバル兼三人目の主人公を目指しています


 ダイゴの目の前に弓に搭載された矢の先がある。それに対して危機感を覚える。

「アーカイブ狙ってるやつら多すぎだろ! 変身!」

ダイゴは自衛のためにベルトを取り出しアテランテに変身する。

『カラシウスアウラティス! アテランテ!』

「ゴンドラ乗りを突き落とそうとした罪はギガメガ重いぜ!」

ダイゴは素早く距離を取ってあえてゴンドラから飛び降りて海に入る。彼女の狙いはアーカイブだ、距離を置いたほうがいいと判断したのだ。潜水し逃げることにした。

「いや、飛び込んでるじゃん」

エマも彼を追って飛び込む。海中で泳ぐダイゴにエマは追い付く。

「え!? お前のスーツも水中向きかよ!?」

「今の時代普通でしょ!」

ダイゴの素早い泳ぎをエマはしつこく追う。しばらくそうしていると、エマはダイゴに少し追いつく。弓から矢のような光弾を出し、ダイゴはそれを避ける。そして弾をハープーンで掃う。ダイゴはうまくエマに近づき、ハープーンで弓を殴る。二人はしばらく武器で殴り合いを続ける。その時一瞬、二人の身体は接近しあう。

「お前も何か願いがあってアーカイブ狙ってるのかよ! なんでベルト持ってるんだ!」

一旦離れたダイゴはエマに叫ぶ。

「願い? 私の目的はアンデルセン・アーカイブそのものよ」

「は?」

エマは答える。

「アンデルセン・アーカイブは地球が海に沈む前の時代からずっと歴史の裏で奪いされてきたお宝なの。だから私、それがすごく欲しい、ただそれだけ」

エマは金そのもの、金目のものや宝石だけでなく、歴史的価値の高い秘宝も好んでいた。

「願いが叶う伝説を持った世界一の宝石がほしいのよ、それがアーカイブだっただけ」

アーカイブを宝石として所持したい。それがエマの目的だった。

「コレクションって持っているだけで嬉しくなるでしょ? 危険物のコレクターだなんて普通にいるんだし当たり前よ」

「マジかコイツ……」

エマの目的を知ってダイゴは驚くしかなかった。

「今持ってるの全部もらうわよ!」

「おわ!」

エマは距離を取り弓でダイゴを打とうとする。しかし、それは叶わなかった。エマのスーツの中からスマートフォンが鳴る。

「は?」

「あ、あちゃー。シーランドの園長との打ち合わせの時間だったぁ」

エマの動きは止まる。

「仕事の時間だし今日はこの辺にしておくわ。じゃあね!」

エマは素早く泳ぎ、元いた停船場に戻っていく。ダイゴはそれを見て少し安心しつつ、海上に顔を出す。

「ふー。……あんの客、仕事中に……もう二度と来るんじゃねえよ! あの魔女!!」

自慢話をしだし仕事を邪魔する魔女のような女。それがエマだとダイゴは認識した。

 

 ※

 

 「――というわけなので俺はあの女NGです!」

「一応客にあの女はやめろ」

変身を解除しゴンドラステーションに帰還し、ダイゴはスズキに報告する。

「あの人も仮面ライダーだったかぁ。上には報告しとくしお前には相手させないようにしとくよ。忙しい時に戦いしかけられたらさすがに困るからな」

「頼みますよ!」

ダイゴはエマへの怒りを語る。

「しかし、エマ・タカハシはどこでベルトを入手したんだ? リブーターズの三人といい……」

スズキはことの異常さに頭を抱えるのだった。

「次あったら本部のブラックリスト入りさせるようにし……あれ?」

ダイゴは制服のポケットにあるアーカイブを確認する。ふたつ持っているはずだったが、ひとつしかない。取り出したものはリトルファイアーだけでジュエルバードがない。

「ぎゃあああああー――!! アーカイブ一個ねええっ!!」

ダイゴはアーカイブがひとつないのに気づく。戦闘時に接近した時にエマに奪われたのだ。

 

 

 ※

 

 「あの赤い仮面ライダー、スーツもだけど本人思ったより体力あったじゃん~船漕いでるだけだしすぐやれると思ったのに! 一個しか取れなかったぁ!!」

翌日の昼。エマはダイゴからさり気無く取ったアンデルセン・アーカイブ、ジュエルバードを見つつ、ややぼやきながら歩道を歩く。

「でもやっぱこれ綺麗~~。一個だけでもこんなに素敵なのに、十一個揃えたら最高じゃないの!」

エマはアーカイブを眺める。危険さと輝きを放つそれは彼女を魅了する。

今日はバイクが走れない運河沿いの道を歩くのが多い。クラーケンが出た時等緊急時に出るバイクの車道はクストーデの仮面ライダーしか使用できない。

「あのゴンドリエーレ以外だと確か……」

エマはベルトをもらった相手から聞かされた自分以外の仮面ライダーをタブレットの画像で確認する。マークイスであるイザナ、ジキルであるヘータ、ハイドであるサトルの写真を見る。

「全員私より年下じゃん……だけど、この子かっこいいじゃないの」

イザナの写真を見てエマはその容姿を褒める。

「確かこの子達も一個持ってるって専務言ってたわね」

イザナ達リブーターズを探してエマは歩く。しかしそれを止めたのは……

「ぶしゃああああ!!」

「!?」

運河の中から現れたクラーケンだった。しかも大型だ。

「どわ! 嘘でしょ!」

「うわあああっ!!」

「きゃああ!」

エマの遠くにいた街の人々もそれを見て逃げ出す。

「やばいねこれ!」

エマは走って離れる。戦うと判断する。

「これはやったほうがいいかも……」

彼女はベルトとフロッピーディスクを出す。

「変身!」

『システムコード・エスポワール!』

エマはエスポワールに変身する。

 

 ※

 

 『大型クラーケンがBエリア22に出現! 仮面ライダー出動要請!』

「この近くかよ! やっぱ最近クラーケン多くないか?」

クラーケンの出現はゴンドラを漕いでステーションに戻ろうとするダイゴのスマートフォンにも届く。ダイゴは自分のゴンドラを降りて自動操縦で走ってきたバイクに乗り、現場に向かう。

 

 ※

 

 「えっとこれどうするんだっけ?」

エマはアンロッカーは何体かと戦っていたが、クラーケンとの戦いはまだなかった。アンロッカーは人間と変わらぬ大きさであることが多いがクラーケンは大きいことが多い。エマはクラーケンから距離を取り弓で射る。弓の矢はあまり効果が無いように見える。クラーケンはエマに殴りかかりエマはそれを避ける。

「やっぱただのでかいタコじゃないわね!」

エマはクラーケンに近づき、弓で殴る。それでも効果は少ない。そこで先程入手したアーカイブ、ジュエルバードを出しベルトに差し込む。

『アーカイブ・ジュエルバード!』

エスポワールとしての姿が変わる。上半身が水色になり、両手に宝石のようなグローブが装備される。

「わぁ!」

エマは関心しつつ、クラーケンを殴ってみる。

――ゴンッ!

「ぶしゃああ!」

クラーケンの動きは止まる。エマはそのまま殴り続け抑えていく。

「すごいわ、しかもこんなに輝いてて私好みよ!」

エマはアーカイブの力を見て更に関心する。そこにバイクで走ってきたのは、ダイゴだった。

「ああっ! あの女!」

ダイゴはエマの姿を見る。ジュエルバードを使っている姿を見て、ジュエルバードを持っていることを確信する。

「あ、なんでいるの?」

「クラーケン駆除するのもウチの仕事なんだよ! 後で覚えてろっ! 変身!」

ダイゴはバイクで走りながらあらかじめ装備したベルトにフロッピーディスクを刺しアテランテに変身する。バイクに乗ったままクラーケンに突っ込み、ハープーンで突き刺す。

ダイゴはアーカイブ、リトルファイアーを出しベルトに差し込む。アテランテの上半身は黄色になり、ハープーンは剣になり赤い火を噴き出す。それを振り回しクラーケンを追い詰める。アーカイブをハープーンに差し込み、技を発動させる。

『リトルファイアーハンティング!』

ダイゴはバイクから飛び降りて高くジャンプし、クラーケンを大きく斬る。

「今日はギガメガに早くキメっぞ!!」

――ドガアアアッ!!

ダイゴの技でクラーケンは消滅する。

「駆除完了っと……」

ダイゴはスタン、と地面に降りて駆除を確認する。

「よかったぁ、クラーケン倒せたぁ」

エマは安心し、変身を解除する。ダイゴもそれを見ながら変身を解除する。

「さぁて……次はお前だ!」

「うわ!」

「待てコラ!」

エマは走って逃げ出す。ダイゴはそれを走って追う。

「お前のせいであの後怒られたんだぞ! アーカイブ返せ!」

「あんたの仕事は知らないわよ! むしろアーカイブ寄こしなさいよ!」

追いかけるダイゴからエマは逃げる。運河沿いの歩道を走る。逃げ足の速いエマにダイゴは追い付く。しかし、彼女は素早く上着を脱いでそれをダイゴにかけるように投げて視界を暗くさせる。

「わ!」

いきなり暗くなりダイゴの動きは止まる。ダイゴは上着を顔から外す。

「ど、どこだアイツ!」

ダイゴは辺りを見回す。エマが建物の高い塀の上に登って座っているのが見えた。

「お前……!」

「あんたなかなかやるね」

「いい加減にしろよこの魔女!」

エマは右手を銃の形にして怒るダイゴに向ける。

「魔女じゃないわよ、私は女王。賭博の女王よ。欲しいものは全部取ってやるわ」

それだけを言って、エマはまた素早く立ち去る。

「……なんだよ?! やっぱ魔女かよっ!」

アーカイブを取り返せずにダイゴは叫ぶのだった。

 

 ※

 

 「ふー、逃げられてよかったぁ」

エマはダイゴから大きく離れられて安堵する。

「あの専務さんが言ってた、もう一人誰かに戦ってもらうっての考えたほうがいいかも。用心には用心重ねないと」

クラーケンと他の仮面ライダーを同時に相手にしないといけない、そう思うと彼女は用心するのだった。

 

続く

 



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Act.7 鍵を開けられた怪物

戦闘シーンをうまく書けないです。誰か教えてください


 「ちきしょうあの魔女~~」

ゴンドラステーションの屋上の掃除をしながらダイゴは奪われたアンデルセン・アーカイブを取り返せずに落ち込んでいた。

「仕事の邪魔しまくってくるとかギガメガ嫌すぎんだろ!」

モップを振り回しながらダイゴは先日のことを思い出す。ゴンドラでの仕事中に戦いをしかけられたり仕事で必要な装備を奪われるわで許せなかった。

「……よっし、全部終わったな」

ダイゴは屋上の床もテーブルも全て綺麗にし終わる。それからモップを持ったまま、歌い出す。気晴らしと練習のために。イタリア語の歌詞の歌でこう綴られている歌を。

―――深い海から眺めていた あの白く強い光を あなたが水の上にいるかもしれないと

―――波にもまれた音色は あなたに届くかもわからない 

―――どうしてあなたは 空を眺めていたの?

その歌声は周囲に響き、やや離れた歩道のほうにも聴こえた。

「なあ、なんか誰かが歌ってねえか?」

「? どっかでラジオが流れているんだろ?」

最初にダイゴの歌声に反応したのはサトルだった。ヘータもそれに気付く。

「……いや、これは誰かが生で歌ってるな」

二人といたイザナも気付くのだった。以前とは別の歌だが歌っているのは同じ人物だとわかる。日本語ではない歌詞で意味はわからないがその歌声は確かに澄んでいて惹かれており、忘れられないでいたのだ。

「どこからだろう……」

「え!? ちょっとリーダー?」

「どこ行くんですか!?」

歌声に釣られて歩くイザナをサトルとヘータは追いかける。イザナ達は運河沿いの道に出る。

 

 ※

 

 モップとバケツを片付けたダイゴは歌いながらゴンドラステーションの停船場に出る。自分のゴンドラを見つけ歌うのを止める。

「次はゴンドラだな ん?」

ダイゴの視界に見覚えのある三人の人物が入る。イザナとヘータとサトルだ。

「あ……」

イザナはダイゴに気付き近づく。ヘータとサトルはそれについていく。

「やあ、また会ったな」

「お前、こないだの……」

イザナはダイゴがアテランテだと気付いていない。

「さっきまで歌っていたのは、もしかして君か?」

イザナはダイゴに問う。

「そうだよ、悪いか?」

「いや、いい歌だと思ってここまで来てしまっただけだ」

「そりゃどうも」

ダイゴは褒めるイザナから目を逸らす。

「歌ってたのってアイツ?」

「みたいだな……」

イザナの後ろでサトルがヘータと話す。

「……それと、君は仮面ライダーって知っているか?」

「え?」

イザナはダイゴに更に問う。しかしその答えは言えなかった。

「わああああっ! ああ!」

やや遠くから男性の溺れる声がする。

「あ!」

ダイゴはそれを聴いてすぐに反応する。ゴンドラステーションのある運河に足を滑らせて溺れている男性が視界に入る。

「ちょっとがんばっててくれ! すぐに行く!」

叫びながらダイゴは制服の上着と下に着ている黒いシャツを脱ぎ、流れるように運河に飛び込み、男性に向かっていく。

「!?」

「?!」

「ちょ、なんだ!?」

イザナもヘータもサトルも、その速さに驚く。無駄な動きのない静かな泳ぎで、男性に近づく。それはまるで、いや本物の人魚のようだった。

「息してっか!? しっかりしろ!」

ダイゴは男性を支えながら静かに泳ぎ、停船場に向かい彼をゆっくりあげる。

「おいお前、救急車呼べ! 119番! Aエリアのステーションって言え!」

「え!? なんでオレ!?」

「いいから!」

ダイゴはサトルを指差し指示する。サトルは圧倒されシズクから支給されたスマートフォンで119番を押し救急車を呼んだ。

 

 ※

 

 「じゃあお願いしまーす!」

数少ない車道を高速で走る救急車を制服の上着を着なおしたダイゴは見送る。男性は危険な状態と見たダイゴは医者が必要と見てサトルに通報させたのだ。

「助かったぞ。ギガメガサンキュ!」

「なんでオレだったんだよ! びっくりしたじゃねえかよ!」

ダイゴはサトルに礼を言い、サトルは素直な感想を言う。

「なんかえらいもん見せられましたね」

「ああ……」

迅速な救出劇を見てヘータとイザナは圧倒されていた。圧倒されつつも話を戻す。

「話は戻すが、仮面ライダーって知っているか?」

「ああ、それは……」

自分が仮面ライダーアテランテと明かせばややこしいことになるとダイゴは見た。

「それはお前らには教えられねえよ。企業秘密ってやつだ」

事実を伏せることにした。極秘ではないが部外者には深い事実を言えないのはクストーデのルールなので嘘は言っていない。

「そうか、まあいい。あと僕の名はイザナだ。お前ばかり言うな。後ろにいるのはヘータとサトルだ」

イザナはついでに名乗るとヘータとサトルの名も言った。

「イザナって言うのか。俺はダイゴ。ゴンドラ乗りのダイゴ・レガシーだ!」

名乗られた返しにダイゴも名乗る。

「ダイゴか。君の歌だけは気に入った。じゃあな、お前ら行くぞ」

「はい」

「うっす」

イザナはヘータとサトルを連れて去っていく。

「なんで上からなんだよ! 『歌だけは』ってなんだ!?」

イザナの態度にダイゴは腹を立てるのだった。

 

 ※

 

 その翌日のことだった。ダイゴが危険と見て病院に輸送させた男性のその後がゴンドラステーションに届いた。

「昨日ダイゴが病院に輸送させた男なんだが、検査の結果……モンスターキーを使用したのがわかった」

「え?」

スズキは仕事用のタブレットでメールに記載された男性の検査を読む。

「使用して暴れて運河に落ちたかもな。モンスターキー自体も持っていた」

「その人は大丈夫だったんすか?」

「命には別状はないそうだ。今日の朝警察に引き渡すはずだったんだ。それでな……」

「だった? それでって?」

スズキは受け売りの情報を語り続ける。

「今日の朝、その人は病院を抜け出してどこかに行ってしまったんだ。モンスターキーも持ってな」

「!?」

スズキは苦い顔を浮かべる。

「くっそう、俺らの海で変な鍵がバラまかれてるなんて、許せねえです!」

ダイゴは危険性のあるものがバラまかれていると思い、怒る。

 

 ※

 

 モンスターキーの回収はリブーターズの任務でもある。アジトのガレージとバイク等の装備の使用権、食料や日用品を買うための金銭、そして三人が探してる人達の情報収集をしてもらう条件なのでやるしかない。

ネオマリーナシティの運河の無い中心部にある噴水の前にリブーターズはいた。

「モンスターキーとかアンロッカーはオレら関係ねえじゃん、めんどくせ~」

「しょうがねえだろ。シズクさんとはそういう契約してんだからよ」

ぼやくサトルにヘータは言った。

「シズクさんもどこで誰がモンスターキーをバラ撒いているかわからないみたいだ」

イザナは先日シズクから渡されたアンデルセン・アーカイブのひとつを出す。そうしていると、騒ぎ声が聞こえてきた。

「きゃあああっ!?」

「うわあああ!」

三人の目の前で何人かの人間が逃げていく。

――チリン! リーン!

それと同時にイザナのブレス型の通信機が鳴る。鈴の音はアンロッカーが現れたサインだ。

「アンロッカーか! 行くぞ!」

「「おっす!」」

イザナがバイクに乗ると、ヘータとサトルもそれぞれのに乗車し反応のある場所に向かう。

 

 ※

 

 「オラオラ! 全部燃えちまえええ!!」

アンロッカー、マグマ・アンロッカーはマグマを噴射し周囲の建物を熱で溶かしていく。その周りには黒い怪人も複数いる。これらはボーンと呼ばれる疑似生物の兵士である。

「フギッー」

「フギャー」

ボーンは鳴き声を上げながらマグマ・アンロッカーと暴れる。

「おわ! ボーンすげえいる!」

「奴は僕がやる。二人はボーンを蹴散らせ」

「はい!」

バイクに乗りながらサトルは驚き、イザナは指示しヘータは頷く。三人はバイクに乗ったままベルトを装備し変身する。

「「「変身っ!」」」

それぞれ変身した三人はボーンの大群に突っ込み、バイクから飛び降りて戦いを始める。イザナがマグマ・アンロッカーに向かっていくとボーン達はそれに群がる。それを止めるのはヘータとサトルだ。

「リーダーの邪魔するなら、」

「ブチのめすっ!」

ヘータは拳を振りかざしボーン達を殴り倒す。サトルは高く足を上げボーン達を蹴り倒していく。

その傍らでイザナとマグマ・アンロッカーが戦闘を開始する。

「お前がマークイスか」

「ああ、僕を知っているなら立ち退いたほうがいいぞ」

マグマ・アンロッカーの噴くマグマの弾丸をイザナは避け銃剣の銃で撃つ。近づいて二人は殴り合う。

「これで全部か」

「でりゃ! よっし!」

ヘータとサトルはボーンを全て倒す。そしてイザナとマグマ・アンロッカーの元へ走ろうとする。マグマ・アンロッカーはそれに気付いた。

「邪魔をするなガキ共!」

マグマ・アンロッカーはヘータとジキルに向かってマグマの熱線を撃つ。

――ドシャアアアン!!

そして大きく爆発する。

「!」

イザナはそれを見て黙る。

「お仲間がいなくなって残念だな。次はお前だぞ」

マグマ・アンロッカーはイザナのほうを見る。しかしイザナのマスクの下の表情は曇っていない。

「どうかな。あんなので終わる奴等を僕は連れている覚えはないぞ」

「は?」

イザナとマグマ・アンロッカーの前に爆風の中から出てきたヘータとサトルが来る。そしてヘータはパンチを、サトルはキックをマグマ・アンロッカーに一撃与える。

――ドバッア!!

「あんなもんで満足してんじゃねえよ」

「全然熱くねえぜ!」

マグマ・アンロッカーは大きく倒れた。

「大義だった。これで終わらせよう」

イザナは二人の無事を確認し、赤いアンデルセン・アーカイブ、『ブラッドシューズ』を出してベルトに差し込む。

『アーカイブ! ブラッドシューズ!』

「赤い靴」の力を持ったアーカイブでイザナの下半身の装甲は赤く染まる。

「ダンスに付き合ってもらうぞ」

イザナは立ち上がるマグマ・アンロッカーに向かって蹴りを入れる。いつもより軽くなった足で確実に追い詰める。マグマ・アンロッカーは抵抗していたが次第に動きが止まる。

「リーダー、やっちゃってください!」

サトルはイザナに呼びかける。イザナはアーカイブを差し込み直し、技を出し始める。イザナは大きく飛び上がり、そのままマグマ・アンロッカーに向かってキックする。

『ブラッティダンシング!』

――ドガアアアンン!!

技が決まるとマグマ・アンロッカーは元の男性に戻り、身体からモンスターキーを排出させる。イザナはそれを掴む。

「ふぅ……行くぞ。警察が来る」

「はい」

「うっす」

イザナ、ヘータ、サトルはそれぞれバイクに乗り、その場を去る。

 

 ※

 

 ダイゴが救助し病院に搬送させた後に病院から抜け出した、モンスターキーの所持者はネオマリーナシティの中心部で負傷した状態で見つかった。彼の持っていたマグマのモンスターキーはどこにもなかった。その報告はダイゴとスズキの元に入った。

「建物や車はいくつか溶かされたが怪我人や死者は出なかったそうだ」

「それはギガメガ良かったっす!」

ダイゴはそれを知って安堵する。

「現場状況から見て、誰かと戦って負傷したらしい。その相手はわからん」

「とりあえず良かったですよ! 誰も死んでねえならそれに越したことないです……」

ダイゴは軽く俯くのにスズキは気付く。

「自分がモンスターキーの所持者を助けたのは間違いだったと思っていないか?」

「え……?」

「お前も私も奴がモンスターキーを持っていたのは知らなかったしそれで暴れるだなんて思ってもみなかったんだ。誰が何をやらかすなんて未来はお前が気負いすることじゃない。罪人の罪は溺死じゃ消えないし償えない。お前が助けたいって思う人を助けていけばいい」

スズキは凛々し気さのある微笑みを見せる。ダイゴはそれを見て、胸のつっかえが少し取れる。

「あ、あざっす……!」

ダイゴは少し前を向く。

リブーターズが交戦し、モンスターキーを回収したことをダイゴもスズキも知らないのであった。

 

続く

 




戦闘後、リブーターズはラーメン屋行ってます

サトル「リーダー、ラーメン屋行きましょうよ!」
イザナ「ああ、久々に行くか」
ヘータ「いいけどお前が全部出せよ」
サトル「なんでだよー」


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Act.8 ディスクに刻まれた音色

 ダイゴの妹の名前をノドカから「ノリカ」に変更しました。似たような名前多いなと思って……まだ出番少なかったり現状出てないキャラの名前は初公開時を変更させていく予定です。カタカナだと被りが気になってしまうので……(初登場回のも書き直しておきます)


 「兄ちゃん、今日は夜勤?」

「おー、だからメシはお前でやっててくれ」

自宅で朝食を取りながらダイゴはノリカに言った。焼き鮭と白米と味噌汁とどれもノリカの好物である。

「わかったー。兄ちゃん、また会えるといいね」

「? 誰とだよ?」

「イザナって人」

「ブフッ」

ノリカの発言にダイゴは牛乳を吹き出す。

「な、なんでだよ!?」

「兄ちゃんの歌褒めてくれたっしょ? 歌ったらまた聴きにくるんじゃない?」

「ゴンドラ乗らない奴に聴かせてもしかたねえだろ! 営業妨害だっての!」

ダイゴは少し慌てるのだった。

 

 

 ※

 

 

 エマの投資している会社のひとつに『姫坂コーポレーション』というネオマリーナシティを本社におく企業がある。450年前に出来たインフラ設備や建築技術、AIシステムを提供する企業で地球が400年前に海に沈んでからの世界を支えた組織のひとつである。

エマは姫坂コーポレーションの使われていない来客室にいた。彼女の交わした取引は表向きにできないものだ。本社ビルの裏から専用のパスで入りそこにいた。

「どうだった? クストーデの仮面ライダーは?」

エマの目の前のソファに座っている男、カラン・カトウは問う。彼こそがエマを仮面ライダーにし、アーカイブを回収させようとしている人物で、姫坂コーポレーションの専務にして現社長の孫である。

「結構強かったです。ただのゴンドラ乗りかと思ったけど戦闘に慣れてたよ。それに、クラーケンもやばいと思いました……やっぱりアレを頼んでもいいですか?」

素直な感想をエマは言いつつ、エマはカランに頼みを申し出る。

「ああ、やっぱり必要になったね。君の戦闘と回収をサポートするためのもう一人の仮面ライダーが……うちの社員から目ぼしい人をリストにしておいたよ」

カランはエマにタブレットを渡す。姫坂本社に所属している適性のある人物たちのデータをエマは見る。老若男女、既婚未婚問わず様々な人物がいた。

「君がよさげだと思う相手を選んでいいよ」

「ああ、ありがとうございます。一人一人どんな人か見ていきたいのでちょっと時間かかりますけど」

「拘るねぇ」

「世界一の宝石のためです。妥協なんてできません」

「そうだったね」

エマの宝石に対する欲望はカランを内心ほくそ笑むのだった。

 

 ※

 

 「支部長、ミキヤさんのベルトまだメンテ終わってないんすか? ギガメガ呑気すぎません?」

ゴンドラステーションでの書類作業中、ダイゴはスズキにミキヤのベルトについて問う。

「俺は大丈夫ですけど、ダイゴだけじゃ負担も多いですもんね」

その隣にはミキヤもいた。

「確かにな。ダイゴ一人じゃさすがにキツイって連絡したけど、まだだって言われたよ」

スズキもミキヤのベルトがまた戻ってこないことをぼやく。

「ベルト開発した奴が結構曲者らしいんだよ」

「??」

スズキの溜息の意味をダイゴはわからなかった。

「それより、また追加業務になるんだが……」

「なんすか?」

「モンスターキーの回収とそれを使って怪物になった人間との戦闘もうちの業務に正式に追加されたぞ」

スズキは浮かない顔で追加された業務を語る。モンスターキーを使ってアンロッカーになった人間との戦闘もダイゴやミキヤの仕事になったのだ。

「一応訊いておくがお前ら、いいか?」

スズキはダイゴとミキヤに問う。ダイゴとミキヤの答えは決まっていた。

「ギガメガもちろんっすよ! お得意さんだけじゃなく船を漕ぐ海を守るのも、ゴンドラ乗りの仕事ですから!」

「そうですよ。危険なのは海に関わる仕事を選んだ時点で覚悟できています。それが少し増えただけです」

「お前達……」

二人の思いをスズキは知り、少し圧倒される。

「そうだったな。それを聞けてよかった」

 

 ※

 

 夕方になるとダイゴとミキヤはゴンドラを漕ぐ。夕方は小学生達が何人かが集団下校する時間帯であり、その小学生達を自宅近くの停留所まで送るのも二人の仕事だ。彼らを乗せて各自仕事をこなす。

「――お兄ちゃん達じゃあねー!」

「ありがとねー!」

「おっー! 足元とクラーケンに気をつけて帰れよ!」

停留所に到着しゴンドラから降りた小学生達をダイゴは見送る。ミキヤも見送っていた。

「あの子達えらいな。毎日船に乗って通学してて」

「そりゃ俺達の街じゃ当たり前っすから」

「当たり前、か……」

「? ミキヤさん?」

ミキヤの表情がどこか浮かないようにダイゴには見えた。

「いや、モンスターキーがああいう子供達の手にも渡ってしまうのかもと少し思ってな」

「あ! そうだ! ギガメガ可能性ありますよね!」

「ダイゴが助けた男といい、出所がわかればいいが……」

二人がそう話していると、

「わあああっ!!」

「きゃああ!!」

悲鳴が聞こえた。

「な、なんだ? クラーケンか?!」

「でも注意報も警報も出てないぞ」

ダイゴとミキヤはゴンドラから降りて悲鳴が聞こえる方向に走る。

「! あれは!?」

近くの広場に行くと、そこにはクラーケンではない存在がいた。

大きなカマキリのような人間がいる。

「あれが、モンスターキーを使って怪物になった人間?!」

「スズキ支部長! Gエリアの広場にモンスターキーを使ったと思われる人間がいました」

驚くダイゴと驚きつつもスマートフォンでスズキに連絡するミキヤ。

『出やがったか。ダイゴ、変身して決めてくれ。モンスターキーで怪物、アンロッカーになった奴は仮面ライダーの装備での攻撃じゃないと人間に戻せねえ』

ミキヤは電話口で対処方法を伝える。

「あれ人間かよ!?」

ダイゴには怪物、カマキリ・アンロッカーが元は人間だったとは思えなかった。

「ブシャあああ!!」

カマキリ・アンロッカーは火を噴いて周囲の木々を燃やす。それを見て周囲の人間は驚き逃げ出す。

「なんでカマキリが火噴くんだよ! みんな逃げろ!」

ダイゴは周囲の人間達に叫び誘導する。

「放置してたらギガメガにやばいぜ! ミキヤさん、避難誘導を頼みます!」

「ああ!」

ミキヤは周囲にいる逃げ遅れた人々を誘導する。

ダイゴはベルトとフロッピーディスクを取り出し、ベルトを装着しディスクを差し込む。

「変身!」

ダイゴはアテランテに変身する。ハープーンを出し、カマキリ・アンロッカーに向かっていく。

「俺達の海、荒らしてんじゃねえぞ!」

ダイゴはカマキリ・アンロッカーを止めるべく交戦する。カマキリ・アンロッカーは両手の鎌でハープーンを受け止め、ダイゴとカマキリ・アンロッカーは打ち合いになる。

「これって倒したら変身した人間はどうなるんだよっ?」

そう思っていると、スズキからの通信がライダースーツに直接入る。

『心配するな、怪人状態で仕留めれば体内からモンスターキーは出てきて使用出来なくなる。ただの攻撃じゃ動きすら止められないと報告もある、思いっきりやれ!』

スズキはダイゴに指示する。

「あざっす支部長! ギガメガ本気で仕留めます!」

ダイゴは素早く動き、一旦カマキリ・アンロッカーから離れる。ダイゴはベルトのフロッピーディスクを取り、裏返しに刺しなおす。これが必殺技の条件だ。

『アテランテ・ファイナルアタック!!』

ダイゴの周りに水が出現し、噴水のように高く上がりダイゴを持ち上げる。

『アテランテ・マリンスプラッシュ!!』

「仕留めてやるよ!」

ダイゴはそのまま、カマキリ・アンロッカーに向かってキックを決める。

――ドシャアアアア!!

「ブシャああああ!!!」

カマキリ・アンロッカーはダメージを受ける。ダイゴが地面に着地すると同時に、カマキリ・アンロッカーからモンスターキーが出てきて、それは使用不能になる。アンロッカーだった存在は元の普通の女性に戻る。女性はそのまま倒れる。

「大丈夫ですか!?」

それを見てミキヤは女性に駆け寄り保護する。ダイゴは地面に落ちたモンスターキーを拾う。

「これが俺達の海を荒らしてるのか……」

ダイゴはベルトを外し変身を解除する。使用者を怪物にするだけでなく、周囲の人間にも被害を及ばせるそれは警戒するしかない。

 

続く

 



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番外編1 ダイゴの歌

猟師衆の出てくる番外編です。ダイゴの歌の歌詞、もっと良いの書きたいです

9話以降はpixivFANBOXで先行公開します(後日ハーメルンで更新します)
少しでも早く最新話見たい人はFANBOXもよろしくお願いします!


 ネオマリーナシティは星下区。運河の入り組むシティならではの街並みの運河をゴンドラで移動するのはダイゴ・レガシーだった。

「午前の予約分は今ので完了っと!」

先程客を降ろしたダイゴはゴンドラステーションに一旦戻る途中だった。しかしシティの運河には付き物がある。波の揺れが自然ではないものだと気付く。

「! あ、まさか」

――ブシュウッ!!

中型のクラーケンが水面から現れた。

「ブギャアアア!」

「ああ! やべえ!」

クラーケンはよじ登り歩道に入ろうとする。クラーケンは人を喰らったり怪我をさせるゆえに駆除対象である。駆除の権利のある仮面ライダーであるダイゴはベルトを出す。

「それ以上入るんじゃねえぞ!」

そう言ってダイゴは変身しようとする。その時だった。

――バンッ!

「え?」

クラーケンはどこかから飛んできたレーザーに撃たれて動きを止めて海に落ちた。動かなくなったクラーケンは水面に浮く。

「大丈夫ですか!?」

「う、うっす……もしかして猟師衆の……?」

一人の黒と灰色のミリタリー服を着てレーザーの出る猟銃を持った男が歩道を歩いてダイゴのゴンドラに近づく。彼はダイゴが見覚えのある人物だった。

「オオツカさん!」

「おー! ダイゴじゃないか! 久しぶりだな!」

ヨシキ・オオツカ。クラーケン等海の害獣を駆除する特殊部隊『猟師衆』の第一隊の隊長だ。年は四十を過ぎているが、高い身体能力と鋭い勘でクラーケンの駆除に貢献している。

ダイゴはゴンドラを歩道沿いに寄せて自分もオオツカに近寄る。

「あざっす! 助かりました!」

「それは良かった!」

旧知の間柄である二人は再会を喜ぶ。

「オオツカさんやっぱギガメガすげえっすよ! 俺は変身で時間かかっちまうから……」

「なあに、お前の本職はゴンドラ漕ぎだ。お前達の仕事を専念させるために俺達がいる」

反省するダイゴをオオツカは役割を語る。

「本来なら全て俺達の部隊が対処するのがいいが、クラーケンの数が多くお前にも戦ってもらわらないといけないのがな……」

オオツカは猟師衆の現状を語る。

「それは心配ないっすよ! 仮面ライダーとして戦うのも、ゴンドラ漕ぐのと同じくらい大事ですから!」

ダイゴは笑顔で答える。

「そうだったな。それならいい」

オオツカは少し安心する。

「スズキは元気か?」

「元気っす! 今日は一日中予約入ってて人気で。相変わらずギガメガ厳しいですけど」

二人は笑い合う。

「相変わらずだな。……久々に歌ってくれないか? お代は後でステーションに出す」

「オオツカさんにならタダでいいっす!」

「良い歌聴かせてくれ!」

オオツカに言われダイゴは歌い出す。

――空の星のように 街灯(まちあかり)は光る 船は馬のように 海を走っていく 灯台の灯(ひ)は 月に負けじと輝く

ダイゴの明るい歌声は周囲に響く。雄々しくも澄んだそれは少し遠くにいる人々にも届く。

――海の底からじゃ見えない人が生きる世界 世界が沈んでも 人の思いは光る 海と空が近づいても 星に手は届かない

――見上げた海の上に あなたはいるの?

離れた場所にいた人々はダイゴの歌に聞き惚れる。

「あのゴンドリエーレの歌、相変わらずいいなぁ」

「本当に、まるで人魚みたいね」

人魚のような歌声はネオマリーナシティの人々には馴染みありつつも、いつ聴いても魅惑的に思われるのだった。

 

続く

 



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Act.9 婦人と柊の花

ナツメが出てきます。今回でまた新ライダーが出てきます


 エマはある女を尾行していた。自分の戦いをサポートさせる人物の候補である女を。カランに提示された人物達を一人一人を見て選びたいのだ。自分が求める宝石を手にするために。

「えっと、あれは……ナツメ・クサカベって言うのね」

ビルの多い地区を歩くナツメ・クサカベという女からやや離れて歩くエマ。眼鏡をした妙齢のどこにでもいるように見える女だが、エマは気になってしまう。数日彼女を追うことにした。

 

 

 ※

 

 

 ゴンドリエーレにも休息の日はある。ダイゴの場合、休日はギャラクシアガイに纏わる事に使っている。今日は数量限定かつ店頭のみでしか扱わないギャラクシアガイのフィギュアを買いにホビーショップにいた。いつもの制服ではなく黒シャツに赤いジャケットに茶色のズボンという私服姿だ。

「今日のフィギュアはネットじゃ買えねえのと、もう生産予定が無い種類だからなぁ……あ! あったっ!」

ぽつんと台に置かれたお目当てのフィギュアの箱を見つける。それに手を伸ばそうとしたのはダイゴだけではなかった。

「「あっ」」

ダイゴと手が重なったのは小学校低学年くらいの少年だった。

「「……」」

ダイゴと少年は静かに睨み合った。そして……その手を退けた。

「ほら、取れよ」

「う、うん」

フィギュアは少年のものになった。

 

 ※

 

 ダイゴはフィギュアを購入した少年と店を出る。ダイゴは少年のリュックにあるギャラクシアガイのストラップを見る。

「! なあ、それどこに売ってるんだ?」

「姫坂のビルの近くのコンビニのガシャポン。シャドウが出ないからまた今度行くんだ」

「シャドウってエメラルド・シャドウ?」

「うん」

エメラルド・シャドウとは『ギャラクシアガイ』に登場するもう一人のヒーローでこちらも人気のキャラクターだ。

「お兄さんはギャラクシアガイ好きなの?」

「おう! お前もか?」

「うん! あ、でもガイよりシャドウのが好きだよ」

少年はエメラルド・シャドウの、右手を高く上げ素早く降ろし目の前の相手に指を差すポーズを取る。

「『我が激情は惑星をも砕く!』」

「おお! それシャドウのポーズとセリフか! うまいな!」

ダイゴもギャラクシアガイの、くるりと周り歌舞伎のようなポーズを取る。

「『大銀河の神が俺をこう呼ぶ! ギャラクシアガイと!』」

「お兄さんもうまいね!」

ダイゴと少年は店の近くの広場のベンチに二人して座る。

「シャドウはね、普段はそっけないけどいざって時は強くてかっこいいんだもん!」

「確かになー! あれはギガメガツンデレだぜ」

「26話でガイが負けて落ち込んだ時は黙ってそばにいてくれたとこが好きなんだ」

「そうなんだよ! お前若いのによく見てるなぁ!」

互いにシンパシーを感じた少年とダイゴはギャラクシアガイとエメラルド・シャドウについて長く語り合う。

「――そういやまだ名乗ってなかったな。俺はダイゴ・レガシー。お前は?」

「ボクはケンジ。ケンジ・クサカベ。小学一年生」

「その年でギャラクシアガイを知ってるってなかなか通だな。十年も前の作品だぜ?」

「去年やってた映画見て好きになったんだ~。こないだテレビでもやってたの」

「俺もあの映画も好きだ! 新規にはあれがぴったりだな!」

これがダイゴと少年、ケンジ・クサカベとの出会いだった。

 

 ※

 

 ナツメ・クサカベは姫坂コーポレーションの受付嬢だ。本社ビルに来る来客を案内したり電話を取ったりと一般的な事務作業が中心だが時には本社ビルを出て最寄りのゴンドラの止まる停留所まで行き来客を迎えに行くこともある。今がその時だった。

「確かお客さん、まだゴンドラで向かってる途中だよね……?」

ナツメは急ぎ足で向かう。その時、視界にあるものが入った。

「!?」

一人の少女が運河に落ちて浮かぶ帽子を取ろうとして、歩道から身を乗り出そうとしている。柵を掴んでいる手は今にも外れそうだった。そしてその手は外れた。

「あ、危ない!」

危険を感じたナツメは少女に向かって走り、近寄りその腕を掴み少女が運河に落ちるのを止めた。彼女を全身で受け止め、仰向けに倒れる。

「あば!」

ナツメは、少女を助けた。

「あ、あなた大丈夫!?」

「う、うん。ごめんなさい……」

ナツメと少女は立ち上がる。

「危ないでしょ身を乗り出したら!」

「だって帽子が」

ナツメが少女に注意すると同時にそこにゴンドラの長いカヌーが伸びる。そこには少女の落とした赤い帽子がかかっている。

「あ、これ……」

それは少女の帽子だった。

「この帽子であってますか?」

カヌーを伸ばしたのはゴンドラに乗ったミキヤだった。

「うん! ありがとう!」

少女はカヌーの帽子を取り被る。

「よかった。その人にもお礼言うんだよ」

ミキヤはナツメに視線を送る。

「ありがとう、それから、危ないことしてごめんなさい……」

少女はナツメにも礼を言い謝る。

「えっとっ……今度から気をつけてね?」

礼も謝罪も予想してなかったナツメはやや戸惑う。少女はそのまま帰っていった。

「すみません、お手数をかけてしまって」

ナツメは柵越しのミキヤに頭を下げる。

「いえいえ。知らない子に注意出来る人なんてなかなかいないですよ」

「そ、そうでしょうか……」

ミキヤはナツメを立てる。ナツメはまだ戸惑ったままだった。

それを、エマ・タカハシは離れた場所からじっと見ていた。

――判断も動くのも速いわね。しかも度胸もある……アイツがいいかも

エマの中である事が決定した。

 

 ※

 

 「うあああ……」

数時間後。姫坂コーポレーション本社ビルの受付窓口にナツメはいた。仕事でのアクシデントで深く落ち込んでいた。下を向いて両手で顔を塞いでいた。

「あんた、何してるのよ?」

「お客様を迎えに行くのに遅れて、怒られちゃいました……」

問われた質問にナツメは返す。停留所に迎えに行った来客と上司に遅れたことを叱られ、ナツメは落ち込んでいた。事情を知るミキヤがフォローをしてくれたが、引きずってしまう。

「って、え?」

ナツメは話しかけてきた人物の顔を見ようと自分の顔を上げる。目の前に一人の女、エマ・タカハシがいた。

「……えっと、ご用件は?」

ナツメは客人だと思い、眼鏡を直し切り替える。

「アンタの名前、ナツメ・クサカベよね?」

「? そうですけど、私に何か?」

「アンタにちょっと要件があってね」

「私に? あのお名前は?」

「エマ。エマ・タカハシ」

エマはナツメに名乗る。

「アンタに私の仕事をちょっと手伝ってほしいのよ。よっと!」

エマはあるものを取り出し、ドンとナツメに見せる。それは、仮面ライダーのベルトだった。

「? ベルト?」

「そうよ。これ、あんたに使ってほしいのよ」

ナツメはエマが何を自分にさせたいのか、わからずにいた。

 

 ※

 

 「ミキヤ! お前のベルトがやっと戻ってきたぞ!」

同時刻のゴンドラステーション内。スズキはミキヤにベルトの入ったケースを渡す。

「ようやく来ましたか!」

「今日ダイゴ非番だったからどうなるかと思ったよ」

ミキヤは渡されたケースを開く。そこにはダイゴの使用するアテランテのベルトと同じ性能を持つオレンジ色のベルトがあった。

「よかったです」

ミキヤはベルトを確認し、ポケットから自分の白いフロッピーディスクを出す。それが彼の仮面ライダーの証だ。その時、警報が鳴った。

『Dエリア23に中型のクラーケン出現! 仮面ライダー出動要請!』

「おわ! すんごいタイミング!」

スズキはベルトを渡した瞬間に鳴った警報に驚く。

「俺行きます」

「ああ、早速だが行ってくれ」

ミキヤをスズキは見送る。

ミキヤは自分の専用のバイクに乗り走り出す。それと同時に緊急時にのみ上がる車道が運河から現れる。現場に向かって進む。

 

 ※

 

 「ぐじゃああ!」

Ⅾエリアでは中型のクラーケンが暴れている。人々はそれを見て逃げ出す。そこに一台のバイクが走り込む。そこにはミキヤが乗っていた。

「それ以上はさせない! その身は海に返してやれ!」

ミキヤはバイクを降りて自身のベルトとフロッピーディスクを出す。

「俺の楽園を荒らすなよ。変身!」

『システムコード・ヒイラギ!』

ミキヤは装着したベルトにフロッピーディスクを差し込む。するとオレンジ色の風が彼を包む。そしてミキヤは白とオレンジの戦士、仮面ライダーヒイラギに変身した。

『エレガント・ヒイラギ!』

ヒイラギになったミキヤは銃や弓矢を出し、クラーケンを打ち抜く。一時的に動けなくなったそれを弓で殴る。クラーケンは足でミキヤを殴る。ミキヤを地面に叩きつける。

「どわ!」

クラーケンはミキヤを投げると運河に向かって動き出す。

「逃がすか!」

ミキヤは弓矢に自分のフロッピーディスクを差し込む。

『ヒイラギ・ファイナルアタック!』

ミキヤは弓を強く引いて大きく鋭い矢を放つ。

『フラワーアーチスプラッシュ!』

矢は花びらをまき散らしながら素早く鋭く、クラーケンを射る。クラーケンは爆破し消滅する。

「駆除完了……」

ミキヤはクラーケンの駆除を確認すると、変身を解除する。

「前よりパワーが上がってたな。メンテに時間がかかるわけだ」

 

 ※

 

 「ミキヤさんのベルト、ギガメガパワーアップしてたんすね! 支部長から聞きました!」

翌日。ゴンドラの停留所で非番明けのダイゴがミキヤに問う。

「ああ。前より使いやすくなっていた。やっとまともに戦える」

「助かったっすよ! ここんとこずっと俺一人で大変でしたし」

ダイゴとミキヤはそれぞれのゴンドラを止めて客を待っていると、一人乗り込んできた。

「Fエリアの図書館前まで乗せてくださーい! あ!」

「お、ケンジ!?」

ダイゴのゴンドラに見覚えのある少年、ケンジが乗り込んできた。

「ダイゴ!?」

「知り合いかい?」

ケンジをミキヤは見る。

「おっす、昨日たまたま出会ってギャラクシアガイについて語り合ってました!」

「うん!」

ケンジは笑顔でダイゴのゴンドラに座り、背負っていたリュックを膝上に置く。彼の持っているリュックがダイゴは気になった。

「? ケンジ、それエメラルドシャドウのエンブレムだよな? そのリュックどこにあったんだ?」

シンプルなリュックに目立つ緑の宝石のマークをダイゴは指差す。

「うん! これボクのお母さんに作ってもらったんだ」

「おお! 推しモチーフのリュック作れるとかお前の母ちゃんギガメガすげえ!」

「えへへ」

ダイゴに母を褒められケンジは誇らしくなるのだった。

 

 

 ※

 

 「ただいまー!」

「あら、ケンジお帰りぃ」

その日の夕方。帰宅したケンジを出迎えたのは母のナツメだった。

「今日ね、ボクの友達がお母さんの作ったリュック褒めてくれたんだよー。すごいって」

「え? そうなの?!」

ナツメはケンジに今日の出来事を聞かされ、少し照れる。そこに来たのは、

「ただいま。ナツメちゃん、ケンジ」

仕事から帰宅したナツメの夫でケンジの父、ヒデオだった。

「あ、お父さんおかえりー」

「お帰りなさーい、ヒデオくん」

ヒデオをケンジとナツメは笑顔で出迎えるのだった。

 

続く



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Act.10 その懐かしさは……

リブーターズの名前は「リヴートスターズ」に変更します
過去の分も随時修正もしていきます


 『私の仕事を手伝ってよ』

ナツメはエマに言われた言葉が気になっていた。その時に見せられたベルトも。

『私今、すんごいお宝を探してるのよ。それをちょっと手伝ってほしいわ』

彼女はそれだけを言ってその場を去っていったのが引っ掛かっていた。

「お宝って何かしら……? それよりあのベルトは何?」

ナツメはぼんやりと考えながら、職場に向かって歩いて行った。

 

 ※

 

 「前に見た金魚野郎、あれから全然見つけられねえよ。出てもすぐ倒して帰っちまう!」

「クストーデの仮面ライダーはクラーケンがいないと出てこねえからな」

ネオマリーナシティ内。リヴートスターズの三人は、アンデルセン・アーカイブを持つ仮面ライダーを探していた。バイクを止めて一旦はたむろしている。サトルとヘータはアテランテを見つけられずにいた。彼の正体がダイゴであることもクストーデの仮面ライダーは普段ゴンドリエーレであることもヘータとサトル、そしてイザナも知らない。イザナはブラッドシューズのアーカイブを出す。

「……アーカイブが無くても僕達の大切な人達が見つかる方法があればいいんだがな」

イザナをヘータとサトルは見る。

「……俺達のはともかく、リーダーの大切な人はアーカイブを使わないと会えない相手かもしれませんよ?」

ヘータは出来れば、アーカイブを全て集めて自分達の大切な人達に会いたい。生死の分からない相手と出会うためにはそれしかないと思っている。

「……かもしれないな」

イザナは少し下を向く。三人がそうしているとまた、『あの歌』が聴こえてきた。

近くの運河からダイゴの歌声が聴こえる。

「こないだのゴンドラの奴ですね。ここにも来るなんて」

「でけえ声してんなぁ。あの兄ちゃん」

ヘータとサトルはダイゴを思い出しやや呆れる。

「……」

そんな二人を余所にイザナはダイゴの歌が気になった。

「ちょっと行くか」

「え?」

「ちょ! リーダー!?」

ダイゴの歌が聴こえる方向にイザナは歩いて行った。

 

 ※

 

 ――見上げた先には 水に塞がれた太陽 水の上に出れば その光に届くのか

運河を行くゴンドラを漕ぎながらダイゴは歌う。客に歌う事はゴンドリエーレの仕事のひとつだが実際に歌う者は少ない。それもあってか、ダイゴの歌はシティ内に響きやすかった。

「また歌っているのか」

「!」

機嫌よく歌っていたダイゴを呼び止めたのは歩道にいたイザナだった。

「なんだよ。邪魔するんじゃねえよ」

「君の歌を近くで聴きたくなってね」

いきなり出てきたイザナにダイゴは戸惑う。自分がアテランテだと知られるのは危険だと思い、警戒してしまう。

イザナは大きな紫の眼でダイゴをじっと見つめる。その視線はかなり強かった。

「……全部聴きたきゃ料金出して乗りな! ゴンドラ乗りの歌は高いんだぞ」

視線の重さにダイゴは叫んだ。

「ああ、いいぞ」

イザナはそのまま、ダイゴのゴンドラに乗ることになった。

 

 ※

 

 ゴンドラの進む方向を背にする側にイザナは座り、ダイゴは向かい合わせの形になる。

「行き先は?」

「さっきいたところから一周してくれ」

ダイゴとイザナを乗せたゴンドラは動き出す。

「さっきの歌の続きを歌ってくれ」

「お、おう」

ダイゴは先程の歌の続きを歌う。運河の高い位置の橋をくぐりながら。

――あなたの住む楽園を 私はうまく走れない 私の愛する海を あなたはうまく泳げない

――世界の違いに いつだって 押しつぶされてしまうそうになるんだ

人間に恋をした人魚を歌った曲。ネオマリーナシティのある海には大昔人魚がいたという伝説を歌に起こしたものだった。

――あなたが綺麗だと言った花も しなやかと言った踊りも 私には不似合いなもの

――それでも あなたのそばにいたい あなたの笑顔を見つめていたい

ゴンドラを進ませながらダイゴは歌う。

「……いい曲だな」

歌い終えたダイゴにイザナは笑みを見せながら率直な思いを語る。

「だろっ! 歌もゴンドラ乗りの仕事だぜ!」

ダイゴは誇らし気になる。

「ネオマリーナって不思議な街だな。ここは海の上、なんだろ?」

「おうよ! この街自体が海みてえなもんだ!」

ネオマリーナシティの所在は日本の関東の海、それも過去の時代にも島や大陸のない位置に存在している。海中に巨大な水槽があるような構造の海中の都市『アクアリウム』の上部にネオマリーナシティはある。端的に言えば水中に重しを入れた水槽を浮かべるようなそれは25世紀でも珍しいものだった。

「世界のほぼ全部が海に沈んじまったけど、人間はそんな世界でも、世界の全部が海になっても生きていけるってのを証明するため、200年前にネオマリーナは造られたんだ。誰が誰に証明したいのかはわからねえけど、俺はネオマリーナがギガメガに好きだぜ! ここは俺の海なんだよ」

ダイゴは自分の生まれた街を愛していた。幼い頃は海中の『アクアリウム』で育ち、今はゴンドリエーレとして海上にいる。

「そうか……」

「なんだよ。お前さっきから」

イザナの返しが複雑そうにダイゴには見えた。

「いや、僕はここで育ったわけじゃないのに……なぜか懐かしさを覚えるんだ。特に」

「懐かしさ?」

「……君の歌も聴いた事ないはずなのに昔聴いた事あるように思えてしまうんだ」

イザナは右腕で自分の膝に肘をついて寂しげな目線をダイゴに向ける。

「俺がお前に会ったのは、こないだ助けた時が初めてだぞ?」

「それは僕もだ。だから不思議なんだ」

「……」

イザナの発言にダイゴも黙る。

「……もう一周したぞ。降りろ」

ダイゴのゴンドラはイザナに会った場所に戻ってきた。

「じゃあな」

イザナは料金を渡してゴンドラを降り、元いた場所に戻っていく。

(……俺を見て懐かしいって言ったのはどういうことなんだ? ギガメガわかんねえよ)

ダイゴはイザナの『懐かしい』がどうもひっかかるのだった。

 

 ※

 

 「リーダーどこ行ってたんすか?!」

「ああ、ちょっとあのゴンドリエーレの歌をだな」

「あの兄ちゃん声でけえんだからわざわざ行く事なかったでしょ!」

戻ってきたイザナにサトルは問う。

「……アイツが少し気になってな。アイツの歌も声も、なぜか聞き覚えがあるように思えるんだ」

「え?」

「?」

サトルとヘータはイザナの発言に引っ掛かる。そうしていると、制服を着た一人の警察官が自転車に乗ってやってきた。

「おー、坊主達! ここはバイク駐車禁止だぞ」

「あ、マツザキさん」

ヨシオ・マツザキ。ネオマリーナシティの中年の警察官だ。イザナ達とは既に旧知の関係である。

「マツザキさん、ちょっと休むくらいいいだろう?」

「そーだそーだ!」

イザナとサトルは言い返す。

「俺ら見張る以外にも仕事あるだろ?」

「そうもいかねえよ。この街に迷い込んだ子供を見てやるのが俺の仕事なんだよ」

「俺ら子供じゃねえっての」

ヘータもマツザキに言い返す。

「外からネオマリーナに来た連中はみんな、迷い込んだか何かを探してる奴等ばかりだ。お前達は……人を探して迷い込んだんだろ?」

「……」

マツザキに言われイザナ達は黙る。

「お前達の探してる人達はウチの署でも捜査中だ。必ず見つけてやる。だから駐車ルール守れよ!」

そう言ってマツザキはそのまま自転車で行った。

 

 ※

 

 「ほおら、ついたぞ」

その日の夕方。ダイゴはいつものように小学生達をゴンドラで下校させ、停留所で降ろす。

「お兄ちゃんじゃあねー」

「おう! また明日な」

ダイゴは小学生達を見送る。その時、スズキから連絡がきた。

『ダイゴ、クラーケンが出たぞ! お前の近くの、Dエリアだ』

「おっす! すぐ行きます」

ダイゴはゴンドラを止めて降りて自動操縦で走行してきたバイクに乗り、現場に向かう。

 

 ※

 

 中型のクラーケンが歩道の上に上がり、周囲の建物に火を噴き建物を燃やす。それを見た人間達は逃げていく。

「きゃあああ!」

「わあああ!」

そこにバイクで駆け付けたのはダイゴだった。

「うわ! 火を噴く種類かよ! 早く止めねえと!」

ダイゴはベルトとフロッピーディスクを出し、アテランテに変身した。

「変身!」

『カラシウスアウラティス! アテランテ!』

「ギガメガにしとめてやるよ!」

ハープーンでダイゴはクラーケンに向かっていく。クラーケンは火を噴きダイゴはそれを避ける。

「あっちぃんだよ! しかもあぶねえ!」

ダイゴはハープーンを強くクラーケンに刺す。クラーケンの動きは止まる。

「よっし! そうだ、火消さねえと」

ダイゴはハープーンの火で燃えている周囲の建物を見る。

「火を消すなら水鉄砲だろ」

ダイゴはハープーンの柄を折り曲げ、銃形態にする。すると、柄の一番下からホースが自動で伸びすぐ傍の運河の海に入る。ダイゴは火に銃形態のハープーンを向けて強い水圧の水の弾を撃つ。すると、建物の火は瞬時に消える。

「こっちもよし!」

火が消えたのを確認したダイゴはクラーケンを見る。

「お前に恨みはねえが、お前は人の海域の掟を破った。人の掟に従い、お前を仕留める!」

ダイゴはベルトのフロッピーディスクを裏返しに差し込み、ダイゴの周りの水がダイゴの身体を高く持ち上げる。

『アテランテ・マリンスプラッシュ!!』

ダイゴはそのままクラーケンに向けてキックする。

――ドシャアアアア!!

クラーケンはそのまま消滅する。

「ふー、駆除完了っと!」

ダイゴはそれを確認する。そうしていると、

「ようやく見つけた」

「え?」

イザナ、ヘータ、サトルの三人である。

「逃がさねえぞテメェ」

「アーカイブ寄こしな金魚野郎!」

ヘータとサトルはイザナの横でダイゴを睨む。

「僕だけで行く。お前らは手を出すなよ」

「はい」

「うっす!」

イザナはヘータとサトルにそれだけを言って自分のベルトとフロッピーディスクを出し装着する。

「変身」

『システムコード! マークイス!』

イザナはマークイスに変身した。

「今持っているアーカイブをもらうぞ」

「おわ!」

向かっていくイザナの銃剣をダイゴはハープーンで受け止める。

「お前なんでアーカイブが欲しいんだ!? 願いのためか!?」

「お前には関係ないことだ。余計な戦いをしたくないと思うなら大人しく渡せ」

「俺だってアーカイブは仕事で必要なんだよ!」

打ち合いながらお互いは叫ぶ。

「あーら、やってるじゃない!」

「!?」

そこに横やりを入れたのは、エマだった。ダイゴとイザナがすぐそばの建物の高い柵を見上げると、そこに座っていた。

「あんた達のアーカイブ、私がもらうわよ! 変身!」

エマは柵から飛び降りながらベルトにフロッピーディスクを差しエスポワールに変身する。

「このギガメガ忙しい時に!」

「なんだあの女!?」

ダイゴはやや怒り、イザナは見知らぬ女の乱入に驚く。

 

続く

 




 ミキヤは別のエリアでクラーケン退治をしてました。その辺もうまく本編で出せたらいいなぁ……書くのって難しいんだよ

マツザキさんはダイゴの隠れファンだったりします
「やっぱ良い曲歌うな……」


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Act.11 衝突と欲望と

戦闘多めです。早く怪人出てくる回を増やしたいです


 エスポワールに変身したエマはダイゴとイザナに割り込む。

「どわ! いきなり!」

ダイゴはエマを警戒しイザナとの打ち合いをやめて離れる。そしてエマとの打ち合いになる。弓で殴りかかる。

「まだ持ってるんでしょアンタ!」

エマはダイゴから奪ったアーカイブ、ジュエルバードを取り出し、それをマスク越しにキスする。そして自分のベルトに差し込む。

『アーカイブ・ジュエルバード!』

エマの、エスポワールの上半身は水色になり、両手はボクシンググローブの形になる。

「わあ! すごいキラキラ! 私にぴったり!」

エマは関心しながら、ダイゴに殴りかかる。

「どわ! あぶねえ!」

ダイゴはそれを避けたり受け止めたりする。

「なんだあの女!」

「リーダーの邪魔しやがって!」

離れて見ているヘータとサトルは突然現れたエマに驚く。

「あいつもアーカイブを持っていたのか。それももらおう」

エマに戸惑いつつもイザナはブラッドシューズのアーカイブを出し、ベルトにスキャンする。

『アーカイブ・ブラッドシューズ!』

イザナ、マークイスの下半身は赤に染まる。

「きゃあぁ! それも素敵!」

エマはそれを見て関心し、そちらに気を取られイザナに向かっていく。イザナは蹴り、エマは殴る。

ヘータとサトルはダイゴのほうを見る。

「リーダーにはああ言われたが、俺らも」

「おう! 金魚野郎はがら空きだぜ!」

ヘータとサトルもベルトとフロッピーディスクを出し、変身する。

「「変身!」」

ヘータはジキルに、サトルはハイドになる。

「げ! お前らもかよ!」

向かってくるヘータとサトルにダイゴは驚く。

――ドスッ! ガッ!!

サトルの蹴りとヘータの拳を同時に受け止める。

「おりゃぁ!!」

「怪我したくねえなら大人しく渡しな!」

サトルとヘータは蹴りと殴りをやめない。

「うげ! 元気過ぎだろ。とりあえずあの魔女からジュエルバードを取り返さないと! お前らどけ!」

ダイゴはリトルファイアーのアーカイブを出す。

『アーカイブ・リトルファイアー!』

ダイゴはそれをベルトに差し込むと上半身が黄色に変わり、ハープーンが炎の剣のようになる。

ダイゴは思いっきりハープーンを振り、ヘータとサトルを振り払う。

「ぐ!!」

「どわぁっ!!」

ヘータとサトルは火を浴びて勢いで地面に叩きつけられるように転ぶ。ダイゴはそのまま、イザナとエマのほうに走る。

「あ! やっぱもうひとつあったじゃん!」

エマはダイゴに気付き、それに釣られてダイゴに向かっていく。

「こっちを先にもらうわよ!」

エマはジュエルバードのアーカイブを取り、身を軽くするとダイゴのベルトに手を伸ばす。それはダイゴもだった。

「返せ!」

「え?」

エマの取り出したジュエルバードをダイゴは取る。

「おっし!」

「ああちょっと!」

ダイゴは素早くエマから離れる。

「何をしているんだアイツらは?」

一連を見たイザナは何となく呆れる。

「返しなさいよ!」

「お前が先に奪ったんだろ!」

ダイゴがエマから離れようとすると、エマは弓で彼を撃つ。ダイゴはそれを避ける。しかし、そこに入ってきたのが一人。

――ドスンッ!

「ぐはあ!」

ダイゴは頭を横から強く殴られる。マスクで覆われているが、それが無ければ気絶するくらいに強い。それで動きが鈍る。殴ったのはヘータだった。

「さっきはやってくれたなぁ? 金魚の兄ちゃん」

隙を見てヘータは素早くダイゴの持つジュエルバードのアーカイブを取る。

「オイコラ!」

ダイゴはそれを見てすぐに動く。

「わりぃな、これがないと俺達が困るんでな」

ヘータはダイゴから逃げる。

「! お前ら、一旦引くぞ!」

「はい!」

「うす!」

イザナはヘータとサトルに言い、二人は従う。三人はそれぞれのバイクに乗り込み逃走する。

「ああ! 行っちまう!」

ダイゴが叫ぶ横でエマは、

「待ちなさーーーいっ!!!」

変身したまま走って追いかける。

「……なんだあいつら」

ダイゴは嵐のようなリヴートスターズの三人とエマに圧倒されるのだった。

 

 

 ※

 

 

 「ああっ~、もう一個のアーカイブ取れなかったぁっー!」

リヴートスターズの三人は変身を解除し、逃げた先のガレージでサトルは叫ぶ。

「ヘータ、大義だったな」

「どうもっす」

イザナはヘータからジュエルバードを受け取る。

「ヘータばっかり褒められてずりぃ!」

「お前役に立ってねえだろ、当たり前だ」

「サトルも大義だった」

「あざっす!」

「リーダー、甘やかさないでください」

そう三人は反省会をしていると、バリンッ! と窓から音がした。

「え?」

三人は窓を見ていると、それは大きく割れていた、いや今も何かで割られている最中だった。

「ああっ! なんか割れてる!?」

「誰だ!?」

サトルとヘータは窓に近づく。すると、

「あ」

「だぁっーーー!? さっきのぉっ!?」

ハンマーで窓を割ってガレージに侵入しようとしたのは変身を解除したエマ・タカハシだった。彼女の姿を見てサトルは叫ぶ。

 

 ※

 

 あっという間にエマは捕まり、縄で縛られ椅子に括り付けられ拘束された。

「えーん! ジュエルバードと赤いの持って帰りたかったのにぃ~」

エマはうなる。

「だからって窓割ってくる奴があるか」

イザナ達三人はエマを睨む。

「アーカイブのためならなんだってやるわよ! この賭博には命もプライドも賭けられるわ」

エマも睨み返す。

「文字通りの恥知らずみたいだな」

イザナは呆れる。エマはヘータとサトルのほうを見る。

「その子達あんたに従っているみたいね。まるで道具みたい」

エマは挑発をする。その瞬間、

――パンッッ!!

イザナはエマを睨み、左頬を強く叩いた。その瞳には怒りがあった。

「!?」

サトルとヘータはそれに驚く。

「リーダー何してんだよっ!? アンタが怒ることじゃないでしょ!」

「道具だと思われるような事してるのは俺らですよ」

サトルとヘータはイザナを止める。

「……僕がそれを嫌って言ったら?」

イザナは手を降ろす。今度はヘータとサトルがエマを睨む。

「おい、博打の姉ちゃん。くだらねえ挑発は俺らには効かねえぞ」

「あんま調子こいてんじゃねえよ!」

二人はエマが「道具」と言ったのは挑発だとわかっていた。

「あはは、容赦ないなー。やっぱ一人がきついわね。でも一個だけでもアーカイブはもらうわ」

「!」

エマはスルリ、と縄を抜けるように解き椅子から立ち上がる。そして素早くイザナのジャケットの内側ポケットに手を伸ばすが、サトルが背後から腕を抑える。

「何さらっと取ろうとしてんだ! てかなんでそこなの分かったんだよ!」

「お宝の場所はすぐわかっちゃうのよ!」

イザナはエマの額に銃剣の銃口を向ける。

「おっと」

「あまりふざけた真似はしないでくれ。今すぐ出ていけ」

「……っ」

エマは動きを止める。サトルはそれを見て手を放す。エマは黙ったまま、扉を開けて出ていく。

「べーっだ! 二度と来るな!」

「なんだったんだ? あの女」

エマが出たのを確認したサトルは舌を出し、ヘータは呆れる。

「……」

イザナはジャケットの内側ポケットの二つのアーカイブを確認がてら取り出して見る。

 

 ※

 

 「やっぱ人手はいるみたいね! すぐにでも『あいつ』に変身させないと!」

エマはバイクで走りながら叫ぶのだった。

 

 

 ※

 

 「……」

ダイゴは仕事に戻って、運河でゴンドラを漕いでいた。

イザナの言っていた『懐かしい』がどこか引っ掛かっていた。

イザナの願いとその懐かしさは関係があるのか、ダイゴにはわからかった。

 

続く



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Act.12 ボクのお母さん

やっとナツメの変身です。長かった……
ナツメ(ブーディカ)が四号ライダーなのでこの回までがチュートリアルになります


 「四人も仮面ライダーが出てきてギガメガ大変だったぜー」

「そんなにやばかったんだぁ」

ダイゴとノリカは夕飯の食事を囲っていた。今日は鮭の唐揚げに豆腐の味噌汁だ。

「エマって女のライダーはアーカイブ自体が欲しいのと、他の男の三人のライダーは何か願い事があるってこと? おかわり!」

「多分な。ん」

ノリカはダイゴに自分の茶碗を渡し、ダイゴはすぐにそれに白米を装い渡す。

「ノリカはよ、俺の歌をどう思う?」

「兄ちゃんの歌? 昔から上手だと思う」

「そうじゃなくてよぉ……懐かしいとか思うか?」

イザナに『懐かしい』と言われたのがどこか引っ掛かっていた。

「懐かしい、か。確かに兄ちゃんが歌うとなんか不思議な感じがするかも」

「不思議ってなんだよ」

「うーん、一回聴いたら忘れられない感じ!」

「えー、なんだそりゃ!」

ノリカのあやふやな返答にダイゴは余計に悩むのだった。

「兄ちゃん、今日の鮭美味しいよ」

「さんきゅ!」

でもノリカに食事を褒められ、一旦は吹っ切れた。

 

 

 ※

 

 

 「ダイゴー!」

「お! ケンジ」

ある昼間の運河。停留所に止まったダイゴのゴンドラにケンジは乗り込んだ。

「図書館前まで行って!」

「おっしゃ!」

ケンジを乗せたダイゴは図書館近くの停留所に向かう。

「ねえねえ! 来月またギャラクシアガイの映画あるでしょ? 前の続きの」

「おう! 絶対に見に行くぜ! なんなら一緒に行こうか?」

「うん行きたい!」

ケンジとダイゴはギャラクシアガイについての会話に花を咲かせる。

「あーでもお前と行くならお前の親御さんの許可いるな」

「えー?」

「そういやお前の母ちゃんってどんな人なんだよ?」

ダイゴはケンジの母について問う。

「お母さん? ボクのお母さんはね、姫坂の会社でお仕事してて眼鏡しててちょっとドジで――」

ケンジは母、ナツメについて思うことを語っていく。

 

 ※

 

 「へくちっ!」

姫坂コーポレーションの受付にいたナツメはくしゃみをする。

「今日ちょっと寒いのかな」

ナツメがそう思っていると、ある女が彼女の目の前に来た。

「ねえアンタ」

「! 貴女は……」

エマ・タカハシだった。

「やっぱり忙しすぎてアンタの手がどうしても必要なのよ。やっぱり、私の仕事を手伝って」

「仕事って……あの時に見せてくれたベルトに関係あることですか?」

「もちろんよ!」

エマはナツメに迫る。

「あんた、ニュースで仮面ライダーの情報は見てる?」

「ええ、一応……」

「じゃあクラーケンを見たことは?」

「何度か。見かけたらすぐに逃げてしまいますが」

「なら話は早いわ!」

「へ?」

ナツメはエマに問われ、戸惑うしかなかった。

「盛り上がっているようだね、ナツメ・クサカベくん」

「あ、貴方は」

そこに来たのは姫坂コーポレーションの専務、カラン・カトウだった。

 

 ※

 

 「ダイゴ、リヴートスターズってどんな三人なんだ?」

「え?」

停留所でゴンドラを止めていたミキヤにダイゴは問われる。ダイゴは先程ケンジを降ろしたとこだった。ミキヤはまだイザナにもヘータにもサトルにも会ったことはない。

「うーんと、ぱっと見は普通の若い男三人って感じっすね。でもちょっと怪しいとこもあるかも」

ダイゴはリヴートスターズの三人、特にイザナについて思い出す。

「アイツらがアーカイブで叶えたい願いがあるみたいですけど、それがわかればいいんすけど」

「? なぜ知りたいんだ?」

ミキヤはダイゴに更に問う。

「アイツらの願いがアーカイブじゃなくても叶う願いってわかれば、余計な戦いしなくて済むじゃないっすか。俺らのメインの仕事はゴンドラ漕ぐことっすよ!」

ダイゴはイザナの顔を思い浮かべる。ゴンドラの上で見せたどこか寂しげな表情を。

「……ダイゴは相変わらずお人好しだな。危険かもしれない連中の願いの心配をするなんて」

ミキヤは少しクスリと笑う。

 

 ※

 

「仮面ライダーって、クラーケンを退治してくれるゴンドラ乗りさん達の使っているシステムのことですか?」

「そうよ。わかってるじゃない」

「うちの会社はゴンドラの整備もしてますから、一応話は聞いています」

カランに呼ばれ専務室にナツメはエマといた。

「クサカベくん、君にはそこのエマくんの仕事を手伝ってもらいたいんだ。エマくんは君を指名した」

「?」

カランはナツメに説明する。

「エマくんはうちの会社に出資してくれる投資家の一人でね、契約上彼女とは協力関係になっている」

「ええ!? こんな若いのに!?」

ナツメは驚いた。どう見ても自分より一回り以上年下の若い女が自分の勤める会社に投資している人物だとは思わなかったのだ。

「えっと、その、エマさんのお仕事を手伝うって投資のことですか?」

「うーん、ちょっと惜しいわね。手伝ってほしいことは……」

エマはナツメに視線を向ける。

「アンタには、仮面ライダーとして私の戦闘を手伝ってほしいの。私のコレクション集めのね」

「!? 私が、仮面ライダー?」

ナツメはエマの鋭い視線に固まりつつも、予想もしなかった言葉に驚いた。

 

 ※

 

 『きのう午前11時頃、ネオマリーナシティ・月原区にて殺人未遂事件が発生しました。被害者は40代男性で未だに意識不明の重症、容疑者の〇〇□□は犯行に違法とされる「モンスターキー」を使用したとされ、現在も逃亡中で――』

ゴンドラにあるラジオから殺人未遂の情報は流れるのをダイゴは聞いていた。

「やっぱモンスターキーの事件が増えてやがるな。一体どこで誰が流しているんだ?!」

モンスターキーのことはダイゴも気になっていた。

「それなんだよなぁ」

それはダイゴの傍にいたスズキもそうだった。

 

 ※

 

 女がくたびれた服装で街を歩いていた。その女は危険物の使用を理由にたまたまその場に居合わせた見知らぬ男に重症を負わせてしまいそれゆえに逃げていた。女はその手に持っていた危険物、モンスターキーを見る。

「もっと、もっと甚振りたい、苦しむ声が聴きたい……」

女はアンロッカーになり暴力を奮い、その快感が忘れられなくなっていた。

「だから、もっと苦しんでよ!」

そう呟き女はモンスターキーを腕に刺し、ウルフ・アンロッカーに変わる。

「うわ! なんだ!?」

「きゃあああ!」

ウルフ・アンロッカーが周囲の人間を襲おうと、暴れる。鋭い爪を高く上げる。

「アンロッカーだわ!」

そんなウルフ・アンロッカーに見つけたのは、エマ・タカハシだった。その隣にはナツメもいた。

「ええっ!? あ、あれが……ニュースで見た、怪物?」

初めて見た怪物にナツメは震える。

「うん。契約上アイツらを退治してモンスターキーの回収をするもの、私の仕事よ」

エマは自分のベルトとディスクを出す。

「さっき説明した通りにやって。私に続いて! 変身!」

エマはエスポワールに変身する。

「さあ、ガッポリ行くわよ!」

エマはウルフ・アンロッカーに向かっていく。

「どわ! きゃあ! 爪でか!」

エマはウルフ・アンロッカーの爪を避けながら弓で攻撃していく。

「ナツメ、アンタもベルトとディスクで変身して戦うのよ! 早く!」

「い、いきなり?! 無茶ですよそんな怪物相手に!」

ナツメはアンロッカーと甚振り合うエマを見て涙目になる。単純に恐ろしく見えてしまう。

「ほっといたらこういう奴らにアンタの家族が狙われる、かもしれないわよ! アンタ旦那と子供いるんで、しょ!」

「!」

旦那と子供。エマにそう言われナツメはヒデオとケンジを思い浮かべる。ウルフ・アンロッカーに襲われたのは彼女と面識の無いごく普通の男性だった。夫や息子が襲われた男性と同じ目にあってしまったら……と、一瞬過った。

「……わかりました、行きます! ……変身!」

震えながらナツメは渡されていたベルトとフロッピーディスクを持ち、ベルトを装着しディスクを刺す。

『システムコード! ブーディカ!』

ナツメは黄緑と灰色の女戦士、仮面ライダーブーディカに変身した。

ナツメは走り、使い慣れない銃をウルフ・アンロッカーに向けて撃つ。アンロッカーはその弾に動きを鈍らせる。

「よっしゃ上出来!」

エマは一度アンロッカーから離れる。アンロッカーはナツメに向かって爪を大きく振る。

「わ! きゃああああ!」

ナツメはそれに怯え、避ける。

「やっぱり怖い~!!」

ナツメは仮面の下で泣き出す。

「今のいいダメージになってたわ! もう決めていいかも」

エマは自分のディスクを裏返し刺しなおす。それがライダーキックのギミックだ。

『エスポワール・ブレイキング!』

エマはナツメから離れたアンロッカーの周りを走り回る。

「すんごいの見せてあげるっ!」

エマはそのまま高く飛び、大きくキックする。

――ドガアアッッ!!

「ジャアアアア!!」

ウルフ・アンロッカーはキックを喰らい、そのまま倒れ爆発する。

アンロッカーは元の女の姿に戻り、倒れる。その身体からモンスターキーが排出されエマはそれをキャッチする。

「はい終わりー」

エマは変身を解除する。ナツメも解除し、その場にガクンと、座り込む。

「こ、こわかったぁー……。あ! とりあえず警察呼ばなきゃ! いや救急車? 消防車?」

初めての戦いで震えながらも、ナツメはスマートフォンを出し通報する。

 

 ※

 

 「なんじゃこりゃオイ! ギガメガありえねえ!」

後日。エマがウルフ・アンロッカーを倒したことがネットニュースとして出回った。タブレットに表示された新聞記事を見てダイゴが驚く。

「ピンクの仮面ライダーがエマで……このもう一人は、誰だ?」

記事の写真にはエスポワール、つまりエマの姿と、見知らぬ黄緑の仮面ライダーの姿があった。その黄緑の仮面ライダーがケンジの母親であることをダイゴはまだ知らないのであった。

 

続く

 




リヴートスターズの食事シーンもいつか書きたいです


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Act.13 だって胸が苦しいんだよ

今回は誰も変身してません。今後変身しない回もあると思います


 「やあ、今いいか?」

「! イザナ?」

ダイゴがゴンドラステーションの前にいると、買い物袋を両手に抱えたイザナが現れた。

「なんだよ」

「なんだってゴンドラに乗りに来たんだよ。荷物多いからちょうど良かった」

「お前はバイクあんだろ」

「この辺の道はバイク走れないの、君だって知ってるだろう?」

イザナはそう言いながら水上にあるダイゴのゴンドラに乗り込む。

「Fエリアの僕達のアジト近くの停留所に行ってくれ」

「お前ら、ってお前とあのロン毛と茶髪か?」

「ああ。バイクのガレージで僕達は寝起きしている」

ダイゴはイザナが座るのを確認するとゴンドラを漕ぎ出す。水上の流れは緩やかで漕ぎやすい。

「――僕達三人は余所の街から来たんだ、大事な人を探すために……」

「大事な人?」

「それがどこにいるかわからないが、見つかるまで諦めたくないんだ」

「お前と一緒にいたあの二人もか?」

「ああ……」

イザナはダイゴに自分の事情の一部を話す。

「お前の大事な人ってどんな人? 女? 男?」

ダイゴはやや食い気味に問う。イザナの素性は正直知りたい。

「女の子だよ……。僕と同い年の幼馴染で、ずっと昔に生き別れて以来探している」

同い年の幼馴染の女。それがイザナの探している相手だ。

「……」

ダイゴはそれを知って、なんとなく沈んでしまう。

「……わ、わりぃ」

「なんで君が謝るんだ?」

「だってよう……」

「君が気に病むことではないだろ」

そうしていると、イザナ達のアジトであるガレージ近くの停留所に到着する。ちょうどそこにはヘータとサトルがいた。

「リーダー、荷物お持ちします」

「今日の夕飯はカレーっすよ!」

イザナがゴンドラを降りるとヘータとサトルは荷物を受け取る。その時、サトルとダイゴの目があった。

「ゴンドラの兄ちゃん! ちょっといいか?」

「? なんだ?」

サトルは自分の右手首の上着の袖をめくり、それを見せる。そこには革紐と銀で出来たブレスレットがあった。

「これと同じモンしてる子供見なかったか? 小学生くらいの!」

「? 俺の客、小学生多いけどそんなブレスレットの奴は見たことねえよ」

「じゃあさ! 三年前に、」

「サトル、もう行くぞ」

サトルとダイゴの会話をヘータが遮る。サトルはしぶしぶイザナとヘータに付いていく。

「……」

「なんだったんだ……?」

ダイゴは三人の背中を見ていた。大事な人を探しているらしい三人を。

イザナ、ヘータ、サトルは荷物をそれぞれ抱えてアジトに向かっていく。

「なんで止めたんだよ、あのゴンドラの兄ちゃんなら客商売だし何か知ってるかもしれなかっただろ!」

「俺達の事情に巻き込んでるんじゃねえよ。三年前のアレは新聞にもニュースにも出てねえから知るわけもないだろ」

サトルはヘータに遮られたのを怒る。

「お前らの巻き込まれた事件は報道されなかったんだな」

「そうみたいです……」

イザナが口を挟む。

「三年前のアレで俺もサトルも、何もかも無くしましたよ」

「うん……」

ヘータとサトルの表情は沈む。

 

 ※

 

 「支部長ー!」

「お、ダイゴ」

次の停留所にゴンドラを向かわせるダイゴはスズキのゴンドラを見かける。

「今ちょっと時間いいすか? 業務のことで!」

「いいぞ、なんだ?」

ダイゴは自分のゴンドラをすれ違うスズキのに寄せる。

「支部長は人探ししてる客を乗せたことありますか?」

「? 客と何かあったみたいだな……?」

スズキはダイゴに何があったかは聞き返さずに答える。

「あるよ。昔からたくさんな……忘れたくないものを探している人がやってくる、この町じゃよくあることだ。ネオマリーナの外から来る人はワケアリが多い。海は全ての者を対等かつ平等受け入れる、どんな過去があっても何者であれど」

スズキはダイゴの顔を見てみる。

「お前客と何かあっただろ?」

スズキは笑いかける。ダイゴは頷く。

「ゴンドラ漕ぐだけが仕事じゃねえのは前にも教えたよな。この海でお前はどうしたい?」

「……」

ダイゴはイザナの顔を浮かべる。大事な人を探しに来たという彼を。異国の王子のような容姿の少年が浮かべた、どこか寂しげな表情は忘れられない。

――やっぱアイツが、イザナのことほっとけねえや!

「――よっし! 決めた!」

ダイゴは上を向く。

「ネオマリーナは、この町は俺の海っす! ここに来た連中に俺が出来ることを全部やってやりますよ!」

「おっし! それこそゴンドラ乗りだ」

笑顔が戻ったダイゴにスズキは内心安心するのであった。

 

 ※

 

 「これを使うと願いが叶うのですか?」

黒いスーツを着た男は、数人の自分の客に囲まれていた。初老の男は黒いスーツを着た男に渡された鍵、モンスターキーを見る。

「もちろんです。願い叶うというより、野望を達成させられるとも言えますね」

黒いスーツの男はほくそ笑む。彼の右手の甲には大きな傷があった。

 

 

続く

 



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人物解説②サブヒロイン(四号ライダー)・二号の子分枠二人・主人公の上司

サブヒロインが四号ライダーでもあります
やっとこの四人の解説書いたわ……


ナツメ・クサカベ/仮面ライダーブーディカ

身長:155cm

年齢:34歳

もう一人のヒロイン。姫坂コーポレーションのOL(受付嬢)。真面目だがドジで泣き虫

自身の業務の一環でエマと共に仮面ライダーブーディカとして戦うことになる。夫・ヒデオと息子・ケンジがいる既婚者であり母親でもある。夫と息子一筋。

ふちのあるメガネをしている。黒紫髪のセミロングを仕事の際は結ぶこともある。仕事時は制服。私服はシンプルなロングスカートスタイル

 

仮面ライダーブーディカ

黄緑の戦士。身体のラインが女性らしいスーツ。他より比較的シンプル

装着型。目の部分は黒い。武器はショットガンのブーディカショット

バイクはバイクは「マシン・エスポワール」でエマと共用

 

 

ヘータ/仮面ライダージキル

身長:182cm

年齢:18歳

イザナの子分の一人で「リヴートスターズ」のまとめ役。クールで冷静沈着な性格ゆえに的確な判断を常に選ぶ。姉を探すために行動し、イザナに忠誠を誓う。腕っぷしは意外にも強く戦闘力は高い

胸より下まで長い黒髪に紺色のつり眼(四白眼)をしている。前髪で右目は常に隠れている。若干やせ型の標準体型。色は白い。黒いライダースジャケットに青いズボン、靴は低いヒールのショートブーツ。左利き

 

仮面ライダージキル

黒と青色の戦士。ベルトとバイクはマークイスと同じもの

腕部分が特に固く作られている(ヘータがパンチ技が多い)

 

 

サトル/仮面ライダーハイド

身長:176cm

年齢:16歳

イザナの子分の一人で「リヴートスターズ」のムードメーカー。騒がしく子供っぽい言動が多く泣き虫な面も。それゆえに人懐っこい。弟を探すために行動しイザナに忠誠を誓う。戦闘力はイザナやヘータよりやや低い

短く赤茶色のくせっ毛でやや丸く垂れた三白眼。黒いライダースジャケット(前は開いていて黄色いシャツを着ている)に黒いズボン、靴は革靴。右腕にはブレスレットをしている

 

 

仮面ライダーハイド

黒と黄色の戦士。ベルトとバイクはマークイスと同じもの

足部分が特に固く作られている(サトルが足技が多い)

 

 

 ※

 

 

タツヒコ・スズキ

身長:165cm

年齢:44歳

ゴンドリエーレの一人。ダイゴの所属するゴンドラステーション・星下区支部の支部長。

短い黒髪で首の右側に大きな傷がある。ゴンドリエーレとしての腕も一流。

飄々としているようで部下思いであり、ダイゴやミキヤを気にかける。

 

 

 

 

サブヒロインが四号ライダーになります。二号の子分枠っていいですよね……

スズキ支部長の名前はタツノオトシゴと魚のスズキ(鱸)からです



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Act.14 夢が始まる時

更新ペースを上げたいです。現状月二回くらいしかできてねえや……


 「お兄ちゃーん! もう乗っていい?」

「おう乗れ乗れ!」

小学校が終わった小学生達をダイゴは自分のゴンドラに乗せて、運河を行く。今回は少なく少年が二人、少女が二人だ。

「――なあ、お前達。お前達の学校に変わった腕輪してる子はいないか?」

ある程度進むと小学生達にダイゴは問う。サトルに問われた事が気になっていて彼の探す『革紐のブレスレットをした子供』を自分の客達が見ていないかを探ってみる。

「革紐で出来てるんだけどよ」

「えー、知らない」

「見た事ないー」

小学生達は何も知らなかった。

「やっぱいないかー」

停留所に到着するとダイゴは小学生達を降ろす。それと入れ替わるように、ぼさぼさの長髪にラフな格好の男が乗ってきた。ダイゴは彼に見覚えがあった。

「ぃよう、ダイゴ!」

「あ! テツロウ!」

テツロウ・ワニオカ。ダイゴが高校時代まで一緒だった幼馴染である。

「久しぶりぃ。Rエリア停留所まで行って」

「おうよ! ちょうどお前に聞きたい事があったんだよ!」

「なんだぁ?」

「情報屋のお前にギガメガ頼みたいことがあるんだ」

テツロウは情報屋だ。ニュースにも報道されていない事件や、ネットにも上がらない口コミも多く所持している。現在行方不明になっている人物の情報も。

ダイゴはテツロウを乗せたゴンドラを漕ぎながら運河を行く。

「最近俺の客に人探ししてる奴がいてよ。ソイツと会って情報くれてやることはできないか?」

「えー? おれの情報提供代は高いよ?」

「頼むよ、困ってるみたいなんだ」

「ていうかそれ、ダイゴは頼まれてやってるの?」

「え?」

ダイゴはテツロウに聞き返される。

「別に頼まれたわけじゃねえよ。俺が勝手にできることないかって、やってるだけだよ」

「ほー、ダイゴがその客気に入ってるってか?」

「うるせえ。一応贔屓してくれてっからサービスだよサービス! 客が海に落とし物したら拾うのもゴンドラ乗りの仕事なんだぞ」

ダイゴは思わず照れる。

「ダイゴはやっぱ気になる事があると黙ってられないなぁ」

「だからうるせえっての!」

テツロウはずっとくすくす笑っているのであった。

 

 ※

 

 (イザナは同い年の女を、くせっ毛の奴は小学生くらいの子供?、あとロン毛の奴も誰か探してるんだよな??)

運河をゴンドラで進みながらダイゴはイザナ達三人について考える。ロングヘアの男、ヘータのことが一番わからずにいた。

(変身してる時に思い切り殴ってきたのもアイツだよな……あのパンチギガメガ強かったぜ)

戦闘の際、ヘータに強く殴られたのを覚えていた。変身で強化されていたとは言えかなり強力だった。

「ダイゴ」

「え? あ、お前かよ」

ダイゴを呼んだのは歩道にいるイザナだった。呼ばれたダイゴはゴンドラを止める。じっと見られてしまい内心戸惑う。

「お前達の探してる人は見つかったか?」

「まだだよ。手がかりも何もない」

「お前の探してる幼馴染ってどんな人だよ? 名前は? 特徴は?」

「なんでそこまで聞くんだ?」

ダイゴに問われて今度はイザナが戸惑う。

「客の探し物を手伝うのも俺らの仕事なんだよ」

「随分手間のかかる営業をするな」

客へのサービスにしては大げさでは? とイザナは思ってしまう。

「……気持ちはありがたいが、君にそこまでする理由はないだろ? こないだのも、そんなつもりで言ったわけじゃない」

「え?」

「僕の、いや僕達の問題だ。気になるかもしれないが触れないでくれ。君には関係の無い話だ」

キッパリとイザナは幼馴染を探す手伝いを拒否する。

「余計な話をしてすまなかった」

イザナは立ち去ろうとする。しかしダイゴは怯まなかった。

「お、おい待てって! 待ってくれ!」

ダイゴはゴンドラから降りて柵を跨ぎ歩道に立ちイザナを追う。

「待ってくれよイザナ!」

「!」

ダイゴはイザナに追いつく。そして、小さいメモを渡す。イザナは受け取る。

「なんだこれ?」

「俺のダチに情報屋してる奴がいて、そいつの連絡先だよ。コイツなら何か知ってるかもしれねえ。俺の名前出して頼んでみろ」

「??」

突然メモを渡されてイザナは立ち止まる。

「じゃあな! がんばれよ!」

ダイゴは自分のゴンドラに戻っていく。

「……やけにお節介だな。普通渡すなら自分のだろ」

イザナはメモをポケットに仕舞うのだった。

 

 ※

 

 黒いスーツの男はネオマリーナシティ内の古いビル街のどこかにいた。男はスーツを着た中年の目の前でケースに入った複数の鍵、モンスターキーを見せる。

「よく御覧下さい。ひとつしか現状渡せませんので……私の提示する指示に従ってくれるなら、無料提供しますよ」

黒いスーツの男はモンスターキーを中年に見せる。

「これで私の事業が成功するのですか?」

「成功? それ以上のものが見ることができますよ。楽園のような心地よさとかね……」

黒いスーツの男は中年にモンスターキーのひとつを渡す。その男の手には大きな傷があった。

 

 ※

 

 イザナには定期的に通う場所があった。プロの臨床心理士が開いている未成年向けのカウンセリングルームだ。マツザキに勧められて臨床心理士の老いた女性、ヨウコと会う日を作っている。

「――時々幼馴染の夢を見るんだ。ずっと昔に住んでた街を一緒にただ歩いている夢を。歩いていたら、地震と津波が来て幼馴染の名前を叫んだら目を覚ますんだ……」

イザナは椅子に座り、夢の話をヨウコにする。ヨウコは茶を出しながら聞いていた。

「その時のことが忘れられないみたいだね」

「ああ。幼馴染も僕の名前を呼んでて……その声が今でも忘れられないんだ」

「……」

イザナは茶を飲みながら夢の内容を思い出して苦い顔を浮かべる。それをだたヨウコは見ていた。イザナはダイゴに渡されたメモを見てみる。ダイゴのではなく情報屋のテツロウのを。

(渡すなら自分のを渡せよ)

イザナはメモをポケットにしまう。

――リリリン! リリン!

それと同時にイザナの、シズクに渡されたスマートフォンが鳴る。アンロッカーが現れた合図だ。

「もう今日は帰る」

「あらそう」

イザナはアンロッカーのいる現場に向かって走っていく。

 

 ※

 

 「ミキヤさんは人探ししてる客を乗せたことあります?」

「え? 特にないが、それがどうした?」

ゴンドラステーションでの待機時のミキヤにもダイゴは尋ねる。

「俺の客に人探ししてる奴がいるんすよ。それで俺に何ができるのかって……」

「お客さんに頼まれたのか?」

「そうじゃねえっすけど、俺どうしても気になっちまったんで」

そう話していると、サイレンとアナウンスが鳴った。

『Nエリア12に大型のクラーケン出現! 出動可能の仮面ライダーは現場に向かってください!』

「なんだよっ! 人がギガメガ忙しい時に!」

「行くかダイゴ」

ダイゴとミキヤはステーションを出る。運河の水の中からバイクの走る専用の車道が現れる。そこをバイクが二台自動で走ってきた。ダイゴとミキヤはそれに跨り現場に向かって走る。

 

 ※

 

 「わあぁ!」

「逃げろー!」

Nエリアの住人達は大型のクラーケンを見て逃げ出す。クラーケンは周囲の建物を無差別に破壊していく。Nエリア内には運河は無い。海にいるクラーケンがどうやって来たのかはわからない。

「なんでここにクラーケンが出たんだよーっ!」

住人の一人が叫ぶ。

「みんなー! そのまま走って逃げろ!」

ダイゴはバイクに乗ったまま周囲に呼びかける。バイクに乗ったダイゴとミキヤは現場に到着し降りてヘルメットを外し大型クラーケンを見る。

「いつものよりギガメガでっか!」

十五メートルはあるであろうクラーケンを見てダイゴは驚く。

「被害が出る前に対処するぞ」

「おっす!」

ミキヤの冷静な声に従いダイゴは自分のベルトとフロッピーディスクを出す。ミキヤも同じように両方を出す。

「変身!」

「変身」

『システムコード! アテランテ!』

『システムコード! ヒイラギ!』

二人は叫び、それぞれに変身する。

『カラシウスアウラティス! アテランテ!』

『プリンス・オブ・プリンス! ヒイラギ!』

ダイゴはアテランテに、ミキヤはヒイラギに変身しクラーケンに向かっていく。

「ミキヤさん、いきますよ!」

「ああ!」

ダイゴはジャンプで登り近付きハープーンで突き、ミキヤは弓矢で遠距離から撃つ。

「でりゃあ!」

暴れるクラーケンの鞭のような足が当たるがダイゴは怯むことなく避けて更にジャンプし、アーカイブ、リトルファイアーを出し使用する。

『アーカイブ・リトルファイア!』

上半身が黄色になり、ハープーンからは火が出る。

「ブジャアアア!!」

火が当たり熱さを見たクラーケンは暴れる。クラーケンの皮膚の一部は燃える。

「おわ!」

クラーケンは暴れながら広い運河のある方角に水を求めていく。

「よっし。運河のほうが俺達もやりやすいからこのまま……。ミキヤさん、頼みます!」

「ああ!」

ミキヤは銃で誘導弾を出し、クラーケンを運河に向かわせる。それはなかなか難しいが、二人はやめない。しかし、それを止めるものがいた。

――ドシャッ!

「!?」

ダイゴに何かがぶつかってきた。いや殴られたようだった。

「!? アンロッカーか!?」

ダイゴを殴ったのは巨大なバッタのような怪物、バッタ・アンロッカーだった。

「うわ! なんだよこんな時に!」

ダイゴは攻撃してくるバッタ・アンロッカーに対応する。

「ダイゴ!?」

「ミキヤさん! クラーケンは頼みます!」

遠くにいるミキヤにダイゴは叫び、バッタ・アンロッカーに応戦する。

「クラーケンで忙しい時になんだコイツは!」

バッタ・アンロッカーは淡々と攻撃をしてくる。

「邪魔してんじゃねえよ!」

「ぶじゃあああっ」

ダイゴはハープーンを炎の剣にして斬るとバッタ・アンロッカーは吹き飛ぶ。

「先にこっち決めるか」

ダイゴがアーカイブをベルトに差し込もうとすると、

――バジュンッ!

「ブジャッ」

バッタ・アンロッカーは誰かに射撃された。弾の飛んできた方向を見ると『彼』がいた。

「悪いが、そのアンロッカーのモンスターキーもお前の持つアーカイブも全て渡してもらう」

マークイスに変身したイザナだ。イザナはダイゴに近づく。

「まずはお前からだ」

「おわ! いきなり!?」

イザナは銃剣の剣先でダイゴに攻撃する。

ダイゴはハープーンで対応する。

「お、お前の願いは本当にアーカイブが必要なのかよっ!?」

「お前が知る必要のほうがない」

「あるだろ! 人の仕事邪魔しやがって!」

ダイゴはイザナに叫ぶ。

「お前に何がわかる……」

「?」

イザナは小さく呟く。

「……僕達は大事なものを全部奪われたんだ、それを取り戻す道を阻むなら誰であろうと容赦しない!」

イザナは仮面の下でヘータとサトルのことを思い出して憤る。

 

続く




エマやナツメ、ヘータとサトルが別のとこで戦っているのもいつか書きたいです
アンロッカーもクラーケンも色々いるので……


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Act.15 駆け引きできないものは、

 「……僕達は大事なものを全部奪われたんだ、それを取り戻す道を阻むなら誰であろうと容赦しない!」

イザナは叫び、ダイゴに銃口を向ける。

――大事なものを全部? ただの人探しじゃないのか?

ダイゴは少し引っ掛かる。

そうしていると、クラーケンが呻く声がする。クラーケンにミキヤが苦戦しているのを見る。

「やべえ!」

ダイゴは一旦クラーケンに向かって走り、ミキヤに加勢する。

「ダイゴ!? あのバッタと黒い仮面ライダーはいいのか!?」

「今はこっち! こいつのが危害出てるでしょ!」

ダイゴはクラーケンに飛び乗ってハープーンで刺す。

「ミキヤさん、離れててください!」

ミキヤはダイゴに言われクラーケンから離れる。ダイゴはベルトに刺さったアーカイブを裏返しに刺し直す。

『アテランテ・ファイナルアタック!!』

ダイゴはクラーケンから大きくジャンプする。その時ハープーンに灯る火が大きくなる。

『リトルファイアー・スラッシュ!』

「これで決まれっっー!!」

ダイゴはハープーンを大きく振りかざしクラーケンを斬るように叩く。

――ズッシュッ!!

「ぶじゃあああっ!」

クラーケンは爆破するように倒されて跡形もなく無くなった。ダイゴはスタン、と着地する。

「よしっと!」

「ありがとう、助かった」

ミキヤはダイゴに礼を言う。

「いいっすよ!」

そういいながらダイゴはイザナのほうを見る。

イザナはバッタ・アンロッカーとまだ戦っていた。しかし、バッタ・アンロッカーは逃げ出した。

「――……」

イザナは逃がしたのを悔しがり、変身を解除する。そこに自動操縦のバイクが走ってくる。

「お、おい待て!」

イザナはバイクに乗ってそのままどこかに走っていった。

「……あれが君の言っていた、イザナという子か?」

「そっす……」

イザナを初めて見たミキヤにダイゴは頷く。

 

 ※

 

 「大型のクラーケンにモンスターキーの怪物、てんてこまいだったみたいだな」

ゴンドラステーションに戻りダイゴとミキヤはスズキに報告する。

「モンスターキーの怪物がよくわからないんだよな。怪物、アンロッカーになった連中は全員意識不明か意識戻ってもどこで手に入れたかも言わない」

スズキは現状を語る。

「クストーデ本部はなんと仰っていますか?」

ミキヤがスズキに問う。

「本部に俺も問い合わせしまくっているが、クラーケンもアンロッカーもネオマリーナでしか確認されないから若干舐めてるみたいだ。俺達と猟師衆でなんとかしろとしか連絡が来ない」

「なんすかそれ!」

スズキの答えにダイゴが反応する。

「……ここは外の連中から見たら、どうでもいい奴らの街らしい。昔からそうだ」

「?」

スズキは溜息をつく。どうでもいい奴らの街らしい。ダイゴにはその言葉の意味がわからなかった。

 

 ※

 

 「ダイゴー!」

「え?」

ゴンドラステーション内から出ると外にいた見覚えのある女、エマ・タカハシがいた。

「うわ! お前かよ!」

ダイゴは厄介なものを見る目でエマを見る。

「何しに来たんだ?」

「当たり前じゃない、仕事の邪魔してほしくないからアーカイブ渡しなさい」

「げっ」

ダイゴの予想通りエマはアーカイブを求めてやってきたのだ。

「邪魔してた自覚あるのかよ、やっぱギガメガ質がワリィ!」

「当たり前じゃない。欲しいんだもん」

「お前に構ってる場合じゃないのに!」

二人が言い争っていると、そこにスズキが現れた。

「お客様、あなたコイツのブラックリストに名前入っていますよ?」

スズキはダイゴを庇う。

「ゴンドラ乗るんだったら私かミキヤで、アーカイブはこちらも仕事で必要なので渡せません」

「え……」

スズキは淡々と話す。丁寧だが威圧的にも見えるそれに内心エマは圧倒される。

「は、はあ……」

冷静に対応され逆に肩透かしをしてしまう。

「おお! さすが支部長!」

ダイゴはそれを見てはしゃぐ。しかしエマは諦めなかった。

「危ない目に遭いたくないなら、大人しく渡しなさい!」

エマは自分のベルトとディスクを出す。

「げ! ギガメガしつこい!」

ダイゴはスズキより前に出る。

「ダイゴ! 相手にするな!」

「こういう奴は一回ぶっとばさないとダメっすよ!」

ダイゴも自分のベルトとディスクを出す。

「そうこなくちゃ、変身!」

「変身!」

エマとダイゴはそれぞれエスポワールとアテランテに変身する。

「さぁ! 渡しなさい!」

弓矢片手にエマはダイゴに向かって走りダイゴはそれを避ける。

「あんまやりたかねえけど、一回ぶっとばさねえとな!」

ダイゴはハープーンでエマに向かって走り、エマは弓矢で打ち合いになる。

「欲しかったら本気で来な!」

「え!? ちょっと!?」

――ザプンッ!

ダイゴは運河の水中に勢いよく入る。エマもそれを追うように飛び込む。

――ザブンッ!

「ダイゴ! 逃げ切れー!」

スズキはそれらを見てダイゴに声援を送る。

ダイゴは水中を泳ぎ、エマから逃げる。ダイゴは本気で泳ぎ続ける。

「待ちなさーい!」

エマは諦めずに泳いで追う。二人のライダースーツは水中を自由に泳げるように出来ている。それとダイゴの泳ぎが加わるとスーツの性能を超えた速さを見せる。

「うー、さすが海育ち。やっぱ速いや。でも追いかけるだけよ!」

エマはしつこく追う。

「ギガメガしつこいな!」

ダイゴは呆れながら泳ぎ続ける。

「欲しいと思ったお宝はぜーーーったいっ! 手に入れるのが私の主義よ!」

「げっ!」

エマの泳ぎは決して速くはないが、金銭や宝が絡む事となれば話は変わり通常以上の体力を見せる。

「追いついた!」

「ギガメガしつこい!」

迫ってくるエマにダイゴは一瞬戸惑う。ダイゴは高く飛び、水上に出る。

――ザブゥッ!!

ダイゴが水面に出るとちょうど足場になる運河沿いの歩道が見え、彼はそこに着地する。

それを追ってエマも出てくる。

「! やっぱこれで行くぜ!」

「あっ! それよそれ!」

ダイゴはエマが求めるアーカイブ、リトルファイアーを出しいつもとは裏返しでベルトに差し込む。

『リトルファイアスプラッシュ!』

ダイゴの足は炎を纏い、彼は高く上に飛ぶ。

「しつこい奴にはこれだぜ!」

「へ?」

ダイゴはエマに向かって落ちるようなキックをする。

――ドシャアアアッ!!

「どわああああああ!」

炎を纏った右足のキックは叫ぶエマに命中する。ダイゴは着地する。

「やったか? ていうか生きてるよな?」

ダイゴは変身を解除しながらエマに近付く。エマの変身は解除され全身黒こげで仰向けに倒れていた。

「ううう……おたからがぁ~」

「思っていたより大丈夫だな。もう俺らの仕事邪魔するなよ!」

エマの意識を確認するとダイゴはその場を立ち去って自分の仕事に戻るのであった。

 

 ※

 

 「お邪魔します」

そう言ってイザナ達のガレージに現れたのはシズクだった。イザナとヘータとサトルはちょうど三人でいた。

「シズクさんか」

椅子に座り込むイザナにシズクは近付き、タブレットを見せる。

「明日、日本本土からアーカイブのひとつを持った方が来ます……」

シズクはイザナにアンデルセン・アーカイブのひとつを持った人物の情報を渡すのであった。

 

続く



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人物解説③ミキヤとか、ノリカとか

遅くなってしまったミキヤやノリカの解説です。ケンジやヒデオもいます


 

 

ミキヤ・アオヤマ/仮面ライダーヒイラギ

身長:185cm

年齢:24歳

ゴンドリエーレの一人。ダイゴの所属するゴンドラステーション・星下区支部所属。

銀髪のまいた短髪に黄色の瞳が特徴。爽やかな言動が特徴的。王子様のような気遣いと容姿で女性客のファンが多い。穏やかで冷静な性格だが実は少し目立ちたがり?

大柄だが体型は標準。制服はダイゴと同じもので前は閉めている。一人称は「俺」

好きなものは花全般、おにぎり、クラシック音楽

 

 

仮面ライダーヒイラギ

オレンジと白の戦士。目の部分は黒。モグラのような頭部をしている。

武器はモグラの手の形をした剣・クロウソード

 

バイクはマシン・ヒイラギ。アテランテとの色違い(オレンジと白)

 

花や草に因んだ要素でまとめていきたいです

 

以下、あんまり出番ない人達。もっと出したいです

 

 

ヒデオ・クサカベ

年齢:36歳

身長:178cm

ナツメ・クサカベの夫。黒髪に顎ひげが特徴。星下区の漁港の漁師。体力は高い。合気道の心得がある

ナツメを「ナツメちゃん」と呼ぶ。クールで口数は少ないがナツメとケンジに対して愛情深く思っている。ナツメとは十年前に出会い現在に至る

 

ケンジ・クサカベ

年齢:7歳(小学一年生)

身長:124cm

ヒデオとナツメの息子。しっかり者だが甘えん坊な面もある

「ギャラクシアガイ」の登場人物・エメラルドシャドウが好き。それ以外では読書、都市伝説、船の模型が好き。ナツメ同様の黒紫の髪をしている。ダイゴとはギャラクシアガイを通じて出会ったオタ友。両親は「お父さん」「お母さん」と呼ぶ

 

ノリカ・レガシー

身長:152cm

年齢:18歳

ダイゴ・レガシーの妹。音大の一年生でピアニストを目指している

オレンジの髪をツインテールにしている(巻いている)。やや細めの体型。楽しい事が好きな呑気者。ダイゴを「兄ちゃん」と呼び、一人称は「自分」

好きなものはダイゴの手料理、ピアノ、昼寝。へそ出しのシャツに長ズボン姿が多い

※学年上ノリカは大学一年、ヘータは高校三年生なのでノリカのが年上

 

テツロウ・ワニオカ

身長:170cm

年齢:21歳

ダイゴとノリカの幼馴染。ネオマリーナシティ内で情報屋をしている。裏社会の情報を多く持つ。ダイゴとは信頼関係を持つ。情報はシティの外からの難民や裏社会の住人達から集めている

 

ヨシオ・マツザキ

身長:178cm

年齢:38歳

ネオマリーナシティ内の警察署に勤務している警官。階級は巡査課長

シティに流れてきた難民や移民を支援する保護課の課長で保護対象者の見回りをしている。イザナ達の事も保護観察対象で時折声をかける、シティの外からやってきた彼らを気にかけている。基本警官の制服姿。小学生の娘がいる。

イザナ達の探している人達の事も操作している



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Act.16 開場

投稿ペースを上げるためになるべく話を短く書きたいですがむずいです


 仮面ライダー。それは一部で囁かれていた戦士達の名称。時には人を守り時には人を傷付けると言われていた。多くのものは特殊なベルトとバイクを使いこなすとも。彼等は何百年も前から世界の裏で暗躍し時には人に笑顔を、時には涙を流させた。

「ひゃあ、色んな仮面ライダーがいるんだねぇ」

クサカベ家のリビングでケンジは図書館から借りた都市伝説の本に書かれた『仮面ライダー』についての記載を読む。その横には洗濯物を畳むナツメがいた。

「仮面ライダー?」

「うん、人知れず戦うヒーローだよ! 四百年以上前からいるんだって」

「そんなに昔から……」

ケンジは嬉し気に語る。ナツメは自分がベルトを渡され変身した時のことを思い出す。エマさんや私が変身したそれは仮面ライダーなの? と……。

(エマさんにはただ私の指示に従って、と言われたけど……私、あの時変身したのよね?)

自分が変身した事実をナツメはまだ信じられなかった。

「お母さんどうしたの? つかれてる?」

「え? そう見える?」

ケンジはナツメの様子がおかしい事に気づく。

「? なんでもないよ」

ナツメは笑顔で悩みを隠すのだった。

「お父さんって今日どこでお仕事してるの?」

ケンジは日曜出勤の父、ヒデオについて触れる。彼は漁師で今日は市場に魚を配達しに行っている。

「アクアリウムの市場だと思うわ。五時くらいになったらお父さんを迎えに行く?」

「うん行く!」

二人はヒデオを迎えに行くことにした。

 

 ※

 

 ネオマリーナシティの真下にはもうひとつの都市がある。地下いや海中に拡がる『アクアリウム』と呼ばれる地域で巨大かつ特殊なガラスで覆われその中にビルや街並みがあった。空は無く見上げればガラス越しに海中の風景が拡がって、魚や亀、時には鮫が泳いでいる。それは水族館の大水槽を見ているように思えて、水槽の中にいるのは住人達であった。ダイゴは今日、仕事のためにそこに向かう。

「出来れば船でここ行きたかったぜぇ」

バイクで自動車専用のトンネルを走るダイゴはそう思っていた。バイクは加速したままどんどんと海中の街に向かっていく。

 

 ※

 

 「ギガメガ久しぶりの『アクアリウム』だぜ!」

ダイゴは到着するとアクアリウムの街並を見る。

巨大な水槽の中に海上のネオマリーナシティほど大きくはないが、古くも美しい街並が見える。彼はそこに懐かしさを覚える。

「――レガシー!」

「!」

ダイゴは苗字で呼ばれる。彼を呼んだ赤黒く短い髪でダイゴのに近いゴンドリエーレ制服を着た女をダイゴは知っていた。

「土井垣(どいがき)!」

土井垣頼子(どいがきよりこ)。ダイゴと同じゴンドリエーレ、いや女なのでゴンドリエーラである。彼女は三年前まで共に見習いとして研修していたダイゴの同期である。

「相変わらず元気そうだねぇ~、ノリカちゃんは?」

「アイツも元気にしてるぜ。俺の今日の仕事の相手はどこだよ?」

ダイゴが今日アクアリウムに来たのは彼の歌をリクエストした者がアクアリウムに来ているからだ。

「あたしが案内するよ。バイクに乗せて」

頼子はダイゴが再びバイクに乗るのを見て彼から予備のヘルメットを借りて被り自分も乗る。

「しかし贅沢な客だよ。ダイゴの歌聴きたいだなんて」

頼子はそう思うのであった。

「なんでだよぉ。それだけ俺の歌が評判良いって事だろ! ギガメガ光栄だぜ!」

「あんた確かに歌だけは評価高かったもんねー」

「だけってなんだよ! だけって!」

他愛無い話をしながら、ダイゴと頼子は目的地に行くのであった。

 

 ※

 

 「矢沢孝元(やざわこうげん)。矢沢重工の社長で彼が所有しているアーカイブは『フェアリーフラワー』になります」

リヴートスターズのガレージにシズクは来ていた。彼女はイザナ達にアーカイブを所持する人物につきて説明する。

「仮面ライダーでもないのにアーカイブ持ってても意味ないっしょ?」

矢沢の説明をされ、サトルは問う。

「確かに。ですが、彼はアーカイブだけでなくモンスターキーも所持しています」

「キーとアーカイブって何か関係あるんすか?」

ヘータもシズクに問う。

「もちろんです。アンロッカーになれる者は、アーカイブで強化する事もできます」

「戦闘でアーカイブを使えるのは、僕達だけでないんですね」

イザナは内容を閉める。

「はい。ですのでくれぐれもお気をつけて」

シズクは三人に忠告する。

 

 ※

 

 矢沢孝元はアクアリウムにいた。仕事の都合でネオマリーナシティに来て間もない若い社長、それが矢沢だ。彼に指名されアクアリウムに来たのがダイゴだった。

「本日はご指名いただきありがとうございます」

「ああ、こちらこそありがとう。君の歌は評判良いと聞いてね。一度頼んで見たかったんだ」

ダイゴが指定された停泊所に行くと矢沢は既に運河に浮かんだゴンドラに座っていた。アクアリウムにも海上のネオマリーナ同様、運河が流れている。頼子はそこでゴンリエーラを勤めている。

「レガシー、失礼の無いようにねー」

「うるせえ。ギガメガわかってるっての!」

ダイゴが乗船するのを見ると、頼子はゴンドラを見送る。ダイゴはオールで動かす。徐々に頼子の姿は見えなくなる。

「……彼女が君を呼んだのか?」

「そうですよー。矢沢さんが俺を指名してくださったので」

ダイゴは矢沢を見る。

「早速一曲お願いしたい。とっておきのを……」

矢沢は歌を求める。

「それでは一曲お聴きくださいっ!」

ダイゴは一度ゴンドラを止めて歌い出す。

――静かな青の中 眩しい光を見つけた それに触れたら 夢の中に入れるのかな?

――夢の中で泣いていたら 君は手を伸ばして立ち上がらせてくれるかい?

――あの時君が言った言葉の意味も 知らないんだ

澄み切った歌声が静かな運河の水面に響く。水面はスピーカーのように歌を乗せて離れた場所にいる人間達の耳にも入る。

ダイゴと矢沢のゴンドラ周囲だけではなく、アクアリウム中に響く。

「お! レガシーが歌い出したね」

停泊所にいる頼子の耳にも入る。

――君がいる緑の中 私も歩いてみたいけど それは許されないみたいだね それでも

――あの日見つけた一番星 届くまで追いかけていきたい 例えそれが間違いでも 止まることなんてできないんだ

――どうしても その笑顔 見せてほしい

ダイゴの歌をじっと、矢沢は何かを確認するかのように聴いていた。笑みはあるが影もある。

「……綺麗な声だ。とても素晴らしい」

矢沢はダイゴを褒める。

「でしょう! 俺昔から歌だけは一流もんですから!」

ダイゴは誇らしげになる。

「この歌声は間違いないな」

「?」

矢沢は黒い笑みを浮かべる。

「――二人きりの時間、もっと楽しもうか」

矢沢は急に立ち上がる。そして、奇妙な物体を見せるように取り出す。その一つはモンスターキー、もう一つは……ダイゴ達仮面ライダーのベルトに似たそれだ。

「!? それってモンスターキー!?」

「ああ」

矢沢はベルトを装着しその鍵穴にキーを差し込む。

『アンロック、レオン』

ベルトがそう鳴ると、矢沢の姿は獅子に似た野獣の姿に変わる。

「! アンロッカー!?」

「君の持つアンデルセン・アーカイブをもらうよ」

矢沢もアーカイブを探す者であった。

 

続く



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Act.17 手がかり

更新遅くなりましたが、最後まで書きたいです


 「――!」

海上のネオマリーナシティ。イザナの耳に音色が届いた。それは間違いなくダイゴの歌声である。

「リーダー?」

その反応にヘータは気付く。

「……歌が聞こえないか?」

「聞こえないっすけど」

イザナが聞こえた歌声にヘータとサトルは気付かなかった。

 

 ※

 

 

 野獣、レオン・アンロッカーとなった矢沢はゴンドラの上でダイゴを睨みつける。

「お前、アンロッカーか?」

「ああ、君を探していた」

「俺を? なんのつもりだ?」

レオン・アンロッカーの言い分をダイゴは理解できないまま、狭いゴンドラの中で距離を取る。

「悪いがぼくは、君をつれて帰らないといけなくてな。一緒に来てもらおう」

「ギガメガ怪しいな。それに客の家に行くのはウチじゃNGだぜ!」

身の危険を覚えたダイゴがベルトを出す。

「変身!」

ダイゴもアテランテに変身する。

「やはりそうなるな!」

レオン・アンロッカーはダイゴに走り込み、噛みつこうとする。

「どわ!」

ダイゴは避ける。そして海に飛び込み、ゴンドラから泳いで離れる。レオン・アンロッカーはどう見ても獅子。海には入れないだろうと見たが、それは違った。

「どこへ行くんだ?」

「!?」

レオン・アンロッカーは追ってきた。泳いできたのではなく、文字通り水面を走っている。

「な、なんだそりゃ!?」

「驚いたか? 海で自由なのは君だけじゃないんだぞ」

レオン・アンロッカーは泳ぎ離れようとするダイゴを追いかける。

「なんだよこいつ!」

ダイゴは水中に潜る。レオン・アンロッカーもそれを追って水中に潜る。

「! 待ちな! 獅子からは誰にも逃れられない!」

「しつけぇ!」

ダイゴは潜ってきたレオン・アンロッカーと対峙しハープーンで応戦する。レオン・アンロッカーは両手の爪を受け止める。

「お前は誰だよ! まさかモンスターキーをばらまいてるのはお前か!?」

「ばらまいたのは僕じゃない。僕は、ただ君を連れてこいと言われただけだ」

「だからなんでだよ!」

ぼやかすような発言をするレオン・アンロッカーにダイゴは怒る。

「……『君』は知らなくていいから教えない」

レオン・アンロッカーの声は静かにそう言い、ダイゴに向かって爪を向ける。

「!?」

バシィン!!

レオン・アンロッカーはダイゴを引っ搔いた。

「どわ!」

ダイゴはダメージを追う。火の能力であるリトル・ファイアーのアーカイブは水中では使えない。やはり一度逃げるしかないと見る。ダイゴはより深くに潜る。

「待て!」

レオン・アンロッカーもそれを追い泳ぐ。しかし、

「ぐはぁ! ぶ!」

レオン・アンロッカーはそれ以上潜れなかった。モンスタキーで変化しても長く深く潜ることは苦手だ。レオン・アンロッカーが水を飲んでしまっているうちにダイゴを見失う。

「ぷは!」

レオン・アンロッカーは水面に顔を出す。

「まあ声を確認出来たしちょっと遅くなってもいいかな」

 

 ※

 

 「かはっ!!」

ダイゴはアクアリウム内の船場に出る。レオン・アンロッカーがいない事を確認すると変身を解除する。

「ギガメガ危険は客だったぜ。俺を狙っているみたいだけどなんでだぁ?」

レオン・アンロッカー、矢沢が何故自分を狙ったのかを言わなかった。

 

 

 ※

 

 「ダイゴ・レガシーの事を見てきたよ」

矢沢は自分のスマートフォンである人物に連絡する。

『……何勝手に動いているんですか。アーカイブもひとつしか無いのに。今の貴方の仕事はアーカイブを集める事ですよ?』

電話の相手に矢沢は呆れられる。

「アーカイブ使うのにアイツは必要だろう? なら早めに僕達の元に置いておいたほうが」

『金魚は金魚鉢から出られませんので、その必要はありません』

電話の相手は矢沢の勝手な行動に呆れながらそう言った。

 

 ※

 

 「矢沢孝元、要注意と」

ダイゴは頼子と合流し、矢沢の事を話す。頼子はそれをスマートフォンに記録する。

「あんたが仮面ライダーなのを知ってて襲ったみたいだね」

「ギガメガびっくりしたぜ」

「あいよ。上層部には一応報告しとくわ」

頼子とそう言っていると、バイクの音が聴こえた。バイクはダイゴと頼子のほうに向かい、止まる。そのバイクに乗っていたのはイザナだった。

「ダイゴか? 奇遇だな」

「イザナ!」

意外な場所で出会った事に二人は驚く。

「お前なんでここにいるんだよ」

「それは僕の台詞だ。それより、こういう男を見なかったか?」

イザナはバイクに座ったままスマートフォンを見せる。その写真には見覚えのある顔が映っていた。

「! 矢沢!?」

先ほどまで戦った相手、矢沢孝元だった。

「知っているのか?」

「今日の俺の客だったんだよ!」

「じゃあ今はどこにいる?」

「さっき別れたから知らねえ」

ダイゴは嘘は言っていない。

「なんでソイツの事探しているんだよ」

「コイツが僕達の大事な人達の手がかり、アンデルセン・アーカイブのひとつを持っているんだ」

イザナはダイゴの問いに答える。ダイゴには自分達が大事な人達を探すために、アンデルセン・アーカイブが必要だとは説明していなかった事を思い出しやや詳しく語る。

「ええ?!」

ダイゴは驚く。先程の自分との闘いに使わなかっただけで持っていたのかと。一応アーカイブの回収は自分とミキヤの任務でもあるので関係無いわけでもない。それから……

「わかった! すぐに探してやるぜ! この辺の地理なら任せろ!」

「へ?」

ダイゴは意気込むのを見てイザナは驚く。

「なんで君が張り切るんだ?」

「お前とあの二人の大事な人の手がかりだろ? 言ったろ、客の探し物を手伝うのも仕事だってよ!」

イザナの事がほっておけない。

「やっぱり手厚いな……」

「レガシーらしいわねぇ」

イザナも頼子もダイゴの勢いに圧倒されるのであった。

 

 

続く



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Act.18 水路

なるべく一話を短くしていきたいです……あとメインPCが壊れました。メインデータどうしよ


 「ネオマリーナもアクアリウムもギガメガ広い、まだ遠くには行ってねえはずだ!!」

アクアリウム内の運河の停留所。ダイゴはバイクに乗り、海上に向かう事にした。イザナはそれを見ていた。

「どうやって探すんだ?」

「ついて来な! お前の幼馴染を探すよりかはすぐ見つかるぜ」

「?」

「ダイゴー!」

そう話していると、子供の声が聴こえた。ケンジだった。

「ケンジ!? なんでここにいるんだよ?」

「お父さんが今日ここでお仕事してたから、お母さんと一緒に迎えに来たんだよ」

ケンジは自分の状況を語る。イザナは彼を初めて見て問う。

「? ダイゴ、この子は?」

「おお、コイツはケンジ・クサカベ。俺の客の一人だ」

「えー? ボク達友達でしょ」

「そうだったな」

「そうだよぉ!」

ケンジにダイゴはじゃれる。

「僕はイザナ。ダイゴの客だ」

イザナはケンジに名乗る。

「ケンジー!」

「あ、お母さんだ。じゃあね!」

ケンジは母が呼ぶ声を聞き、その場を去る。ダイゴとイザナは彼が両親といるのを見ていた。

「あれがケンジの父ちゃんと母ちゃんか」

 

 ※

 

 

 海上のネオマリーナシティ。ダイゴは自分のゴンドラに乗り、聞き込みをして回る事にした。そこにはイザナもいた。

「こういう人、見ませんでした?」

ダイゴはタブレットで矢沢の写真を表示し、ゴンドラに乗った客に聞き込む。

「いやぁ、見なかったね」

「そっすかぁ」

ダイゴは後ろ向きになって漕ぎ、その足元にはイザナが座っている。客は向かい合う形で座る。客も目的地に着くと、降りる。アクアリウム内は頼子が探してくている、自分はネオマリーナで矢沢を探す。

「僕は座っているだけでいいのか?」

「いいんだよ、俺が見つけてやるから」

イザナをゴンドラに乗せたままダイゴは聞き込みを続ける。そこに、

「ダイゴー!」

「テツロウ!」

テツロウが走ってきた。ダイゴは彼に矢沢の情報を貰う依頼をしていた。

「矢沢孝元、モンスターキーの製造に関わってるみたいだよ」

「製造?」

テツロウはダイゴに今ある矢沢の情報を教える。

「矢沢重工。表向きは船や橋を作ってるけど、裏ではミサイルやら小型軍艦やらの兵器を作っていてそれらをテロリストや軍事国家に売り捌いてるんだよ。兵器の中にはモンスターキーもあるみたい」

「マジかよ」

「警察も動いているけど上手く誤魔化されて取締もできないそうだ」

「だからあの社長、モンスターキー持ってたのかよ」

ダイゴはテツロウに依頼料の紙幣を渡す。テツロウはイザナのほうを見る。

「あ、イザナくんじゃん」

「先日はどうも……」

イザナはダイゴにテツロウの連絡先を教わった後日、ダイゴの名を出しテツロウに依頼していた。

「まだあんた達の尋ね人達の居場所はわからねえんだよ。なんせネオマリーナの人達じゃねえみたいだし」

「少しでも情報があるなら教えろ、ヘータとサトルも待っているんだ」

テツロウにイザナは言う。

「なぁ、お前の子分達の大事な人ってどんな人だよ?」

ダイゴはイザナに問う。

「ああ、あの二人は……」

ーーぶしゃあああ!!

イザナが答えかけた時、海上から大きな水しぶきを出しクラーケンが現れた。

「!?」

「うぎゃああ!! 出た!!」

テツロウは怯える。中型だが並のクラーケンより凶暴そうに見える。

「!」

ダイゴもそれを見上げる。変身して対処しようと思うが傍にはイザナがいる。変身するか逃げるか、選択を迫られるのであった。

 

 

続く



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Act.19 波紋

 ダイゴ、イザナ、テツロウはクラーケンを見る。ダイゴはイザナの前で変身する事を内心渋る。しかしそうも言ってられない。クラーケンは海から上がる。それに釣られるように別のクラーケンが複数出てくる。それも凄まじい移動速度で……それが街の中に入っていく。中型のも、大きく揺れながら移動する。

「ギガメガやばいぜ! イザナ、テツロウ連れて走れ!」

「え?」

「いいから! あと避難誘導してくれ!」

イザナを逃して変身を見せないようにする。

「だが僕は」

「いいからっ!!」

「あ、ああ……」

ダイゴの勢いにイザナは圧倒される。イザナはゴンドラを降りてテツロウと走る。

「よっし!」

ダイゴが変身しようとベルトを出すと、クラーケンがそこに遅いかかろうとする。しかし、

――ザジュンッ!!

一筋の銃弾のようなレーザーが飛び、クラーケンを撃った。クラーケンはドサリと倒れる。

「ダイゴ! 大丈夫か!?」

「オオツカさん!」

撃ったのはクラーケン等海の害獣を駆除する特殊部隊『猟師衆』の第一隊の隊長、ヨシキ・オオツカだ。

「今俺達の部隊がクラーケンを対処をしている。お前は避難誘導してろ!」

オオツカはクラーケンを猟銃で撃ち続ける。

「でもこんな数、オオツカさん達だけじゃ捌けないだろ!」

ダイゴはベルトをする。

「クラーケンの駆除は俺達の任務だ。俺達に任せてくれ」

「こういう時のための『仮面ライダー』だろ!? 中型のが向こうにいるんだよ!!」

ダイゴはオオツカに叫ぶ。そうしている間にクラーケンは海から上がり街に入っていく。

 

 ※

 

 ――バジュン! ババジュン!!

ミリタリー服の隊員達が猟銃で小型のクラーケン達を駆除していく。

「そのまま向こうへ走ってくれ!」

イザナはテツロウと街の住人の避難誘導をしていた。イザナにはミリタリー服の隊員達はやや珍しく思えた。

「アイツらは?」

「アイツらは漁師衆! クラーケンの駆除は本来アイツらの仕事なんだよ」

隊員達を初めて見るイザナと見慣れているテツロウ。

「? 本来って?」

イザナは少し引っかかる。引っかかりながらも逃げる住人達を避難誘導をしていく。

「! Dエリアに向かう道を走れ!」

隊員達が駆除しているところに、オオツカが走って加入する。それを追いかけてきたのはダイゴだった。

「ダイゴ!」

「イザナ!」

イザナはダイゴを見つける。

「君は逃げたほうが良いぞ。なんなら僕は」

「俺が逃げれるわけねえだろ!」

二人はクラーケンが増えているのに気付く。

「テツロウ、お前は逃げろ!」

「お、おう!」

ダイゴはテツロウを促し彼は逃げるために走る。オオツカは猟銃でクラーケンを撃ち続け、駆除していく。

「リーダー!」

「大丈夫すかー!?」

そこにヘータとサトルがバイクで走ってきた。

「お前ら!」

「なんか今日おかしいっすよ、クラーケンこんなに出た事ないでしょ?」

「さすがにどうにかしないとマズイですよ」

「ああ」

イザナがベルトとフロッピーディスクを出すと、続いてサトルとヘータは自分のベルトとフロッピーディスクを出し変身の準備をする。

「〜〜……」

増えるクラーケンとそれに怯え逃げる住人達。ダイゴはイザナに変身を見られたくなかったが、もう変身するしかなかった。

「イザナ、あとでギガメガ説明すっからな!」

「へ?」

ダイゴは自分のベルトとフロッピーディスクを出し、ベルトをする。

「変身!!」

ダイゴは仮面ライダーアテランテに変身した。

「!」

イザナはダイゴがアテランテの姿になった事に驚く。ダイゴは中型のクラーケンを見つけると、ハープーンで向かっていく。

「これ以上俺の海域(うみ)に入ってくるんじゃねえ!」

ダイゴは小型のクラーケンを狩り、中型のに当たっていく。

「えええ!? あのゴンドラの兄ちゃんが金魚野郎だったのかよ!?」

驚いていたのはサトルとヘータもだった。

「それより僕達も行くぞ」

「はい」

驚くサトルとヘータにイザナは変身を促す。

「変身」

「「変身!」」

イザナはマークイスに、ヘータはジキル、サトルはハイドに変身する。

イザナはヘータのバイクを借りて乗り、クラーケンを轢いて倒していく。ヘータとサトルもクラーケンを殴り蹴っていく。

「! アイツらも仮面ライダーか?!」

オオツカはイザナ達を見て驚く。

「仮面ライダーのベルトはクストーデや姫坂コーポレーションに関わっている限られた人間にしか渡されない、しかもあの形状は見た事がない……」

オオツカは驚きと同時に違和感を覚えるのであった。

 

 

続く




なるべく短い字数で公開して投稿頻度を上げたいです……色々書きたいシーンだらけでして……そしてようやく本編でオオツカを出せました……


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Act.20 欠片

ナツメが久々に出てきます


 「うわ! ちょっと何あれ!?」

洋服屋の中でショウウィンドウ越しに見ていたのはエマ・タカハシだった。エマは外にいるクラーケンを見る。

「あんなに出てくるもんなの!?」

エマは服を直し買い物を中断し店を出る。店員らも裏口から逃げる。

「これ絶対マズイわよ……」

エマはベルトとディスクを出し、エスポワールに変身する。

「変身!!」

『システムコード・エスポワール!』

弓矢で何体かのクラーケンを射る。何体かの動きを封じ射殺出来たが数が多く追いつかない。自分を囲うクラーケンを払うのもきつい。

「やっぱアイツがいるわね」

エマはある人物を一人浮かべ、その人物にスマートフォンで電話をかけた。

 

 ※

 

 ネオマリーナシティの車道のあるFエリアのショッピングモールにナツメは家族との時間を過ごしていた。

「ーーナツメちゃん悪いね、休みの日に迎えに来てもらって」

「いいのよ〜。私が迎えに行きたかったんだもん。こうして帰りはドライブできたじゃない」

夫のヒデオに労われナツメは笑みを見せ照れる。

「ねえねえおとうさん! おかあさん! なんか変だよ!」

「え?」

ケンジが指差すほうをナツメとヒデオが見ると、大勢の人間がクラーケンから逃げているのが見えた。クラーケンの姿も見える。

「ええ!? な、なんでここにクラーケンが出てるの?!」

Fエリアは海辺や運河から離れた位置にある。クラーケンはほぼ出ない地区だ。

「クラーケンが大量に出てくるのは海中で何か異変が起きている現れだ。避難しよう。車はクラーケンが駆除されたら後で拾いに行けばいい」

「わ!」

冷静なヒデオはケンジを肩に乗せるように抱きかかえ、ナツメの手を握る。三人は避難誘導中の警備員に従って歩き、避難場所になった屋上に出る。モールにいた客や店員らが沢山いる。

「今モールの外に出たら襲われる。しばらく待っていよう」

「うん」

一安心したナツメの手はヒデオのそれから離れる。ケンジもヒデオから降りる。

すると、ナツメのスマートフォンがなる。

「こんな時に誰が?」

ナツメはそれに出る。

「もしもし?」

『ナツメ、ちょっと手貸して! 今あんたのいるモールの近くにいるんだけど』

「エ、エマさん?!」

『クラーケン狩るの手伝って。猟師衆が来るまで間に合わないのよ。あんたベルト持ってるでしょ?』

「そ、そうですけど……でも私あんなの怖くて前にも出れません!」

ナツメは怯えていた。いくら仕事とは言えアンロッカーやクラーケンとの対峙はナツメには恐怖だった。しかし、その恐怖を和らげ、彼女を動かす方法をエマは見抜いていた。

『……あんた旦那と息子が、怪我してもいいの? クラーケンは自分より大きな大人も子供も見境無く襲うわよ』

「!」

エマに言われナツメはちらり、とヒデオとケンジを見る。いくら避難しているとは言え屋上に登ってくる可能性だってある。見渡せば自分達のような小さな子供を連れた家族も多くいる。

「皆さん! クラーケンがモール内に入り込みました! 屋上に移動しますので指示に従ってください!」

警備員達が大勢の客や従業員達を避難誘導し出す。その大移動が始まると同時にナツメは、

「ナツメちゃん、え?」

「おかあさん!? どこ!?」

ヒデオとケンジの傍からナツメは姿を消した。

 

 

 ※

 

 

 ショッピングモール近くの屋外。エマは弓矢でクラーケンを撃ち、殴る。一体一体こそ脆いが、数は多い。

「やっぱきっついわね、敵は仮面ライダー達だけじゃないみたいわよコレ!」

「エマさん!!」

エマが戦っていると、ナツメがGPSを頼りに走ってきた。

「ナツメ、やっぱ来てくれたのね!」

「貴女のためじゃなくて主人と息子のためです!」

ナツメはベルトとフロッピーディスクを出し、ベルトを巻く。最初の変身こそ夢だと思ったがベルトもディスクも確かにここにある。

「変身!」

『システムコード・ブーティカ!』

ディスクを差し込むとナツメは藍色の風に包まれブーティカに変身した。怯えながらも、ナツメはガンを取り、クラーケン達を撃っていく。

――ヴァン!! ヴァアン!!

「ぐぎぃいい!」

クラーケンは倒れていく。

「エマさん! クラーケンがたくさんモールのほうにいます……中には人がたくさんいて、どうかせめて追い払うのを手伝ってください! お願いします!」

ナツメはクラーケンを撃っていきながらエマに懇願する。本当は頭を下げるべきだがそうもいかない。

「電話じゃ渋ってたのに切り替え早いわねぇ。建物壊さない程度の大技なら出せるわ、いいわよ!」

エマもクラーケンを撃っていき、それに乗る。

危機感を覚えた時、震えながらも動きを止めない。ナツメがそういう女なのをエマは見抜いていた。

「後ろに乗って!」

自分の周囲のクラーケンを払ったエマはバイクにナツメを乗せ、走り出す。

 

 ※

 

 「きゃああ! わ!」

ショッピングモールに戻ったナツメはクラーケンに怯えながらガンで撃つ。自分も怪我をするのが恐ろしいがそれよりも恐ろしいのはヒデオとケンジに危害が加えられる事だ。

「やっぱ人多いところにはアイツらも多いのね」

エマは弓矢をモールの天井に向ける。

「アーカイブが無いから威力は無いかもだけど、なんとかなるかしら? ナツメ、あんたのディスク貸して!」

「?」

ナツメはそう言われディスクを渡す。エマは弓矢に自分とナツメのフロッピーディスクを差し込む。

『レイン・アーチャー!』

エマは天井に向かって、矢を放つ。

――ビガガガ!!

矢は高く上がり大きく弾け、その弾け飛んだ弾はクラーケン達に全て当たりクラーケン達は一気に倒れていく。

「よっし!」

クラーケンを一蹴すると、エマは少し喜ぶ。

「よ、よかったぁ……。あ! ヒデオくんとケンジ!」

ナツメは一度安堵し、ヒデオとケンジの元へ戻る。

 

 ※

 

 「はぐれちゃってごめん〜! でも二人とも無事で良かったぁ〜!!」

ヒデオとケンジの顔を見るとナツメは泣き出す。

「ナツメちゃんも怪我無いかい? 無事で良かった……」

「おかあさん、もうはぐれないでね」

ヒデオとケンジも安堵する。

「しかし、猟師衆も来ていないのに何故クラーケンは駆除されているんだ?」

「そ、それは……」

ナツメはごもるのだった。

 

 

続く




初変身した日の夜のナツメ

(夢じゃないよね?夢じゃないの!?)

ヒデオやケンジにも言えずに困惑するのであった……


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「仮面ライダーアテランテ」が出来た経緯とか

書いている奴の今の心情です
更新速度を上げたいですマジで


「仮面ライダーアテランテ」が出来た経緯とか

 

 

はじめまして。作者です。仮面ライダーアテランテを読んでいただきありがとうございます

アンデルセン童話がモチーフの作品はいつか書きたいと思ったんです……童話モチーフががっつりあるものにしていきたいです

元々は仮面ライダーではなく、児童書的な少年たちの冒険もの?になる予定でした。これ自体は四年くらい前に練っていました。集めるアイテムの名称も「アンデルセンの涙」でした。集めたアイテムで海からやってくる怪物と戦うのも大体一緒でした。主人公達が人間じゃないだけで

仮面ライダーに落とし込むか!っと思ったのがちょうど去年の今頃です。四年間練っていたとかじゃなくて、ふと書くか!となった感じです

なんで当時は小学生の少年主人公で考えたのか自分でもよくわからないです、話の流れもヒーロー寄りだったと思います(だからなんでだよ)

私は人魚モチーフのものが好みです、なんで仮面ライダーシリーズは童話モチーフ少ないねん、イソップは寓話だよ!

 

今の公式じゃできない事やるぞ!

ぶっとんだ世界観で書くぞ!

このご時世じゃ受けない作風でやるぞ!

性癖むき出しで書くぞ!!(これ重要)

何が嫌いかじゃなくて、何が好きかで自分を語れ!!(これ重要)

バイクシーンは絶対書く!!(もっと重要)

 

……といった感じで書いています(雑)

 

アンデルセン童話は人魚姫、親指姫以外にも多くあるのでどんどん取り入れていきたいです。アンデルセンに詳しい方に楽しめるものを目指していきたいです

ダイゴ達がどうなっていくか見ていってほしいです、ちなみにキャラの声はこの方々のイメージで書います(以下敬称略)

 

ダイゴ→畠中祐

イザナ→白石隼也

エマ→悠木碧

ナツメ→早見沙織

 

ミキヤ→石毛翔弥

 

ヘータ→松田岳

サトル→坂口大助

 

 

白石隼也さんのお声と畠中祐さんのお歌がとても好きです。劇中ではダイゴにたくさん歌ってほしいです

 

作者がVtuber(個人勢)を始めてみたりで更新が余計に遅くなると思いますが、今後とも読んでくれたら嬉しいです。これ完結まで何年かかるんよ

たまにPVも作っていますのでそれらも見てほしいです

 

誰か絵描いてくれないかな、ガッツリアニメっぽい感じで……ギーツのキャラクター、みんなアニメ寄りの格好してなかったか??

 

 

アテランテは仮面ライダーに落とし込んだらめちゃ書きやすくなったので仮面ライダーってすごいです。初期案のままだとマジで進まなかったです……(情けねえ)

 

今後ともよろしくお願いします!!



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Act.21 銃口

月二回投稿できるようになりたいです……


 「アイツもうどっか行ったわね。まぁ、それが当たり前かぁ」

ナツメと別れたエマは自分のバイクに跨る。

「なんか今日クラーケンが多いみたいね、じゃあアイツもいるかも!」

エマは自分のスマホでクラーケンが現在多いエリアを見る。そこにはダイゴやイザナ達のベルトの反応もあった。変身したままのエマは迷わずそこにバイクを走らせた。

 

 ※

 

 ダイゴは中型のクラーケンを倒した。イザナ達も小型クラーケンを駆除していく。

「今日ギガメガ多いぜ! 多く出てくる時期にはまだ早いぞ!」

小型のは徐々に退治していくが、そこに現れたのは、

「どわぁ!? でか!」

五メートル級の大型クラーケンだった。サトルがそれを指差す。

「なんだかおかしいな」

イザナも異常さを感じる。大型のタコのクラーケンは高いビルに登っていく。

「何をしてやがる?!」

――ぶじゅううううっ!!

ダイゴが見上げると、クラーケンはビルの上で口から緑の液体を噴き出した。

「!?」

緑の液体は雨のように小粒になって降り出す。

「うわああああ!!」

「きゃあああ!!」

それを浴びた人々は瞬時にもがき出す。

「あああああ!! いだぁい!!!」

「!?」

液体を浴びた猟師衆の一人が騒ぎ痛がる。

「ええ!? なんだよ!? どうした!?」

「おい、これおかしいぞ!」

サトルとヘータも怪しさを覚える。ダイゴのスマートフォンに連絡が入る。

「支部長?」

『今クラーケンが噴いているのは毒だ。今は絶対変身解除するんじゃねえぞ! そいつは毒吹く個体だ』

「嘘だろ!?」

「うあああ!!」

「オオツカさん!」

ダイゴのすぐ近くにいたオオツカが倒れる。ダイゴは近くに寄る。

「オオツカさん! オオツカさん!」

ダイゴは苦しむオオツカに呼びかける。

「お前ら! あのクラーケンを止めるぞ! あれ以上毒を出させるなっ!」

「はい!」

「うっす!」

イザナはクラーケンを止めるべくヘータとサトルと共にバイクでクラーケンに向かっていく。

「イザナ!」

ダイゴが叫ぶうちにイザナ達はクラーケンのいるビルの下に着く。クラーケンは毒を吹き続ける。

「壁を走るぞ!」

――グィンッ!!

イザナがバイクでビルの壁をハイスピードで走ると、ヘータとサトルもバイクで後を追う。壁を見事に登り、クラーケンのいる屋上に到着する。

「クシャミなら余所でやれっ!!」

イザナはバイクから飛び降り銃剣を出し、斬りかかる。クラーケンも鞭打つように足でイザナを殴る。イザナは足を切り裂いていく。

「てめぇ大人しくしろよ!」

「変なモノ噴いてるんじゃねぇ!!」

ヘータとサトルも殴り、蹴る。クラーケンは彼等にも殴るが二人は動きを止めない。

「ヘータ、コイツを使ってくれ!」

イザナはアーカイブ、ジュエルバードをヘータに投げる。イザナもブラッドシューズを出す。

「ええ! 行きますよ!」

ヘータとイザナは自分のベルトに差し込む。イザナの足は赤くなり、ヘータの上半身は宝石で装飾される。

「ああ! ヘータずりぃ!」

「サトルはまた今度な! いい子で待ってろ!」

不満がるサトルをイザナは嗜める。

イザナは思い切りジャンプしクラーケンを蹴り、ヘータは強いパンチを打つ。

――ドシャン! ドグウッ!!

クラーケンは避けながらも攻撃するが確かにダメージがある。クラーケンの動きは少なくなっていく。

「リーダー、アンタで決めてください!」

ヘータはジュエルバードの装備を解除し、イザナに投げ返す。

「任せろ!」

イザナはブラッドシューズの装備を解除し、ジュエルバードを受け取るとベルトに差し込み、上半身が宝石で装飾される。

イザナはジュエルバードを裏返しで差し直し、技を起動させる。

『ブレイキング・クラッシュ!』

イザナは再びジャンプし、クラーケンに大きく振りかぶりパンチした。

――ドジャアアアアア!!

「ぶじゃああああ!!」

クラーケンは破裂するように倒れて消滅した。

「リーダー! やったっすね!」

「ああ。だけど……」

サトルが笑いかけるがイザナとヘータはビルの下から街を見下げる。街人達は毒で苦しんでいる。

あれをどうすれば。イザナ達は悩む。

それはビルの下にいるダイゴもだった。毒に倒れて苦しんでいる人々が目に入り苦しくなる。

「……あれをやるしかないかもな」

ダイゴは悩み、街人達の毒を何とかすべくある方法を試すことにした。

 

続く



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Act.22 人魚の音色

一話の文字数をもう少し減らしたいです
ようやく書きたいシーンが書けるようになりました。もっとやるぞ(何を?)


 大型のクラーケンが毒を噴いていたのはエマも遠くから見ていた。しかしエマはそれが毒だとは知らない。

「さっきまでいたクラーケン、仮面ライダーの誰かが倒したのかしら? すごい爆発だったわ」

エマはバイクでダイゴ達のほうへ向かう。

 

 

 ※

 

 

 「……」

ダイゴは悩んでいた。街の人々は毒で苦しみ、今にも死ぬのでは? と思ってしまう。クラーケンはイザナ達に倒され被害の拡大は阻止出来たが問題は既に毒を被った者達だ。救急の部隊が向かっているがまだ到着しない。それまで自分に何が出来るのかを……。この状況を破れる可能性が彼にはひとつだけあった。

――みんな苦しんでる。あの毒って間違いなくギガメガやばいヤツだ。……上手くいくかわからねえけど、今はこれしかない。

――毒で苦しむみんなを助けてぇんだ!!

仮面の下で、ダイゴは大きく口を開け歌い始めた。

文字の無い歌声が周囲を包み響く。電子音と海の動物の鳴き声が混ざったような歌声が確かにあった。

 

 ※

 

 「!」

ダイゴの歌声はイザナ達がいるビルの屋上にも聴こえていた。

「おい、これダイゴじゃないか?」

「え? この動物の声みてぇなのが?」

「鳴いているのか?」

サトルもヘータも困惑し、三人はダイゴの元へ向かいバイクで移動しだす。

 

 ※

 

 「ああ……ん?」

「あ、あれ?」

「なんだか急に楽になったような……」

ダイゴの歌を聴いた街の人々は苦しんでいたのが徐々に楽になっていった。身体から毒がゆっくりではあるが無くなっていくようだった。クラーケンが毒を巻いた範囲にいた人々は皆、身体が楽になり起き上がる。

「……やったか? おっし!」

それらを確認したダイゴは安堵する。

ダイゴの歌には力があった。その力は変身した時、彼が今望んだものを具現化する。

「救護隊です! 毒を浴びた人はすぐに検査します!」

医療従事者らが到着し、毒を浴びた人々を保護していく。

「今のが応急処置になったよな?」

ダイゴの元にイザナ達が走ってくる。

「ダイゴ!」

「イザナ!」

ダイゴは変身を解除し、イザナとヘータとサトルも解除する。

「さっきの歌は君か?」

「おう! 俺の歌で毒をぶっとばしたぜ」

「みたいだな……」

イザナは保護された人々を見る。

「俺変身して歌うと、こういうこと出来るんだよ。支部長にはあんまり使うなって言われてるけど」

「そうか」

イザナはダイゴをじっと見る。

「……ていうか君、僕達に君が仮面ライダーだと隠していただろ?」

「げ!」

イザナは睨む。ダイゴはイザナに自分がアテランテであることを隠していたが、それを流れでバレてしまった。

「だって! 俺も仕事で使うんだよ! アーカイブの回収は俺もやんなきゃなんだよ!」

ダイゴは弁解する。

「僕達にそれが必要なのは言っただろう? 君には迷惑かけないから今持ってる分を譲ってくれ」

イザナは多少のモヤモヤを持ちながらも冷静に頼む。

「人探しならアーカイブ無くても出来るだろ?」

ダイゴは何故人を探すのにアーカイブが必要かわからなかった。それが、イザナの逆鱗に触れた。

「僕の大事な……アミはアーカイブを使わなければ会えないんだ!」

イザナは静かながらも怒鳴り、睨む。

「!?」

ダイゴは意味がわからずにいた。イザナの後ろでヘータの顔は髪に隠れ、サトルは眉をひそめ沈む表情を見せる。

そこにある女が割り込んだ。

「あんた達ぃ!! アーカイブ渡しなさぁい!」

「!」

エスポワールに変身したままのエマだ。彼女はダイゴに叫びつつ、バイクで向かってきた。

「またかよ!」

エマに横槍を入れられダイゴは一度イザナ達から離れる。

 

続く



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Act.23 ノイズ

今年最後かもしれない投稿です。来年はもっと書き進めたいです

2024.1.26
17話とタイトルと被っていたのを気付いたので変更しました。やべぇ


 「アーカイブ、渡しなさぁい!」

エマは弓をイザナに向け、射る。イザナは避ける。

「エマ! 止めろ!」

ダイゴは勢いよく彼女の背後に周り、羽交い締めにする。

「わ! 離して!」

「お前の相手してる場合じゃねぇんだよ!」

ダイゴはまた変身し、エマのバイクに前から近付き、ガツン! と止める。

「じゃあアンタのから先に貰うわよ!」

「今ギガメガ忙しいんだよ! この魔女!!」

ダイゴはバイクを止めると、エマのベルトに手を伸ばし彼女の変身を解除する。

「解除しないでよ!」

「お前の相手してる場合じゃねえの!」

ダイゴも変身を解除する。

「なんでクラーケンがこんなに出ててきたかも矢沢孝元の居場所のわからねえんだよこっちは!?」

ダイゴは軽く事情を叫ぶ。

「え? 矢沢って矢沢重工の?」

エマは矢沢孝元の名前に反応する。

「お前知ってるのか?!」

「矢沢重工がモンスターキー作ってるかもってのも知ってるわよ。私ソイツ探してたとこだし」

「お前は矢沢に何の用だ?」

イザナもエマに問い詰める。

「持ってる情報とかお金とか全部寄越せって」

「蛮族か?」

エマの目的にイザナは呆れた。

「矢沢本人もモンスターキーを持ってるのも知ってるわ。今ネオマリーナの中をウロウロしてるはずよ……」

「俺達も探してるんだよ」

エマも矢沢の正確な居場所は知らないらしい。

 

 ※

 

 翌日。クラーケンの毒から回復した被害者らからのタレコミがゴンドラステーションにいたダイゴとスズキの元に来た。モニターに映る報告のひとつを見る。

『海の上をライオンのような怪物が二足歩行で走っていた。その怪物が叫ぶと、小型クラーケンが々と出てきて上がってきた』

ライオンのような怪物が、レオン・アンロッカーつまり矢沢孝元だとダイゴはすぐにわかった。

「あいつがクラーケン沢山出してたのかよ!!」

「……やはり俺達の仕事にモンスターキーを持った連中、アンロッカーが関わってきたな」

スズキは現状をまとめる。クラーケンの大量発生やアンロッカーの目撃証言はこれ以外にも届いていた。

「ていうか、ミキヤさんは?」

「今日はミキヤがアクアリウムに行ってる。向こうでもクラーケンは出るからな」

不在のミキヤについてスズキは語る。

「ダイゴ、予約客がそろそろ来るぞ」

「そうだった!」

緊迫していてもダイゴ達はいつもの仕事があった。

 

 ※

 

 ネオマリーナシティ内の一番大きな図書館に行くのが放課後のケンジの楽しみだ。今日も数冊借りて館内から出てくる。その中には『仮面ライダー』の都市伝説をまとめた本もあった。

「これずっと読みたかったんだ〜」

そんな時だった。

「クラーケンだ! クラーケンが出たぞ!! みんな逃げろ!!」

誰かが叫んだ。ケンジの視界にはクラーケンとそれから逃げようとする人々だった。

 

続く



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Act.24 MDの中の記憶

今年初めての投稿。ようやく書きたいシーンが書けるようになりました。


 ケンジがまともにクラーケンを生で見たのはその時が初めてだった。ニュースで見るような怪物が確かにそこにいた。それも鮫に近い個体だ。目撃した人々は危険性を理解していたので一目散に逃げていく。

「坊や! 君も逃げろ!」

「そ、そうだ……」

立ち止まるケンジを見た大人は彼に向かって叫びながら走る。ケンジはそれに反応し、足を動かした走る。しかし、クラーケンはケンジに追い付いた。

「ズジャアアア!」

「うわぁああ!!」

クラーケンはケンジを食べようと口を大きく開けた。

「――変身!」

『システムコード・アテランテ!』

――ズギィン!!

「ブァァァ!!」

聞き覚えのある声でそう言った人物はクラーケンを蹴り倒し、ケンジから離した。

「!?」

その人物はアテランテ、ダイゴだ。

「今のって……ダイゴ?!」

ケンジはアテランテがダイゴだとは知らないが、すぐに察した。

「ケンジ大丈夫か!?」

「ああうん! えっと、ダイゴだよね?」

「おう!」

ケンジが確認すると確かにダイゴだった。

「――やっぱり君には早めに来てもらったほうが良いと思うんだよね……」

「!?」

クラーケンを蹴飛ばしたダイゴの目の前にいたのは探していた矢沢孝元だった。

「矢沢!」

「やっぱり先にアンデルセンアーカイブだけは頂いておくよ」

矢沢はベルトとモンスターキーを取り出し、その二つを使い、レオン・アンロッカーの姿に変わる。

『アンロック、レオン』

ライオンのような怪物が、レオン・アンロッカーがそこにいた。矢沢はダイゴに大きな爪を向ける。ダイゴはハープーンでそれを受け打ち合う。

ーードシャン!!

「……何故クラーケンが現れるか、考えた事あるか?」

「?」

矢沢がくちすざむように言った。

「現れるって、クラーケンは海底に昔から生きているだろっ? 生き物がそこにいるのはソイツの『天命』だろ!」

「そういう事じゃなくて、海底にいる奴らが何故わざわざこの街に上がってくるかだ」

ダイゴの返答に矢沢は少し訂正する。

「連中が何に引き寄せられてこの街に来るか……」

矢沢は、あるものを取り出した。

「!」

青色のミニディスク、否アンデルセンアーカイブだ。矢沢は自分のベルトに差し込む。

矢沢の両手は爪から、大きな植物のツタに一瞬で姿を変える。

「!?」

矢沢は大きく伸びたツタをムチのように振り回しダイゴに向ける。

「どわ!!」

ダイゴはダメージを受けながらも避ける。ツタはダイゴを殴るのをやめない。徐々にダメージが貯まる。ダイゴは仰向けに打ちつくように倒れる。

ーーバダンッ!

「ダイゴ!」

ケンジは倒れるダイゴを見て戸惑う。倒れるダイゴに対し自分はどうしたらいいか、ケンジはわからなかったが……彼は叫んだ。

「ーーた、立って! 仮面ライダーーーっ!!」

ダイゴはケンジに呼ばれたと思い、勢いよく起き上がった。

 

続く



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Act.25 仮面ライダー

 マメに更新したいです


 仮面ライダー。そう呼ばれたと思いダイゴは立ち上がった。自分が呼ばれたと思ったのだ。

「ケンジ、ありがとよ」

――バシン!!

立ち上がったダイゴは、暴れるツタを両手で捕まえた。

「ギガメガしつこいぜ!」

ダイゴは孝元を睨む。孝元はそれでも続ける。

ツタはダイゴを振り払い、ケンジに伸び出した。

「! やめろっての!!」

ダイゴは再び捕まえる。

「その子供に怪我させたくないなら今持っているアーカイブを全て渡せ」

「ケンジもアーカイブもゆずらねぇ!」

ダイゴはアーカイブのひとつ、リトルファイアーを出しベルトに差し込み、上半身が変化する。

「ケンジ、逃げろ!」

「うん!」

ケンジは言われるまま、遠くへ走る。

「おい逃げるなガキ!」

「だから手出すなっての!」

しつこい孝元をダイゴは近付いて止める。

火を纏うハープーンでツタを思いっきり斬り裂く。ツタは植物。故に火で燃えながら切れる。

「そのアーカイブはもらうぞ!」

孝元はダイゴのベルトのアーカイブを狙い、ツタを伸ばす。

「やめろっての!」

ダイゴはハープーンで孝元を直接殴る。

「ひとつでも渡さないと、お前は後悔する事になるぞ」

「は?」

孝元は少し怒りながらほくそ笑む。

「矢沢孝元!」

孝元の名を呼びながら一人の男が割り込むように飛んできた。

イザナだ。

「イザナ!」

ダイゴの前に出るようにイザナは孝元に近づく。

「僕もアーカイブが必要でな。変身!」

『システムコード! マークイス!』

イザナもディスクとベルトを装着しマークイスに変身する。

「お前がマークイスか」

「なんでわかった?」

孝元はイザナが何者かをすぐに理解した。そして部の悪さに気付いた。

「お前には用は無い」

「待て!」

孝元は一方的にイザナを拒否し、一瞬で姿を消した。

「お前どうしてここにいるんだよ」

「君の言っていた情報屋が教えてくれた」

「テツロウの野郎、どっかから見て連絡したな」

テツロウがどこから自分の戦いを見て連絡したのだとダイゴは察した。だが落ち着いている場合では無かった。

「やっべ! まだクラーケンが何体か奥に行ったかも!」

「それを先に言え!」

ダイゴの気付きにイザナも動くのであった。

 

 ※

 

 「えーと、この辺でいいかなぁ?」

茶色の髪に白いワンピースの女がEエリアにいた。女は周囲のビルや店、歩いている人々を見つめていた。

「結構人多いね、よし! ここにしよ!」

女はベルトとモンスターキーを取り出し、ベルトを装着しそれにモンスターキーを差し込んだ。

『アンロック! タランチュラ!』

女は禍々しく黒く光り、タランチュラ・アンロッカーになった。

「さーて早速暴れますかぁ!」

タランチュラ・アンロッカーはその腕を伸ばし声を上げた。

 

 

続く

 

 

 



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