レトロゲームプレイ日記 特別編 ドラゴンクエスト3 そして伝説へ・・・ ~ルイーダの酒場で待っていたのは3人の遊び人だった~ (武藤勇城)
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1週目 ルイーダの酒場で待っていたのは3人の遊び人だった!

※今までの『レトロゲームプレイ日記』のように、淡々と結果のみを描くのではなく、今回は少し趣向を凝らしてみました。実際にゲームをプレイするのは変わりませんが、そこにキャラクターごとの個性を与え、物語として少し「改変」「脚色」しながら、話を膨らませて描きます。

 

 

【ゲーム基本情報】

 ゲーム機器:ファミリーコンピューター

 タイトル:ドラゴンクエスト3 そして伝説へ・・・

 ゲーム会社:エニックス

 発売日:1988年2月10日

 ジャンル:ロールプレイングゲーム

 定価:5.900円

 参考価格:中古品ヤフオク落札価格150円 (FCソフトのみ)~3.600円 (箱説付き)~10,000円前後 (箱説付き・美品)~新品未開封品落札最高価格53,001円

 

【ゲームの特徴】

 主人公の少年に成りきって、父の仇でもある魔王・バラモスを倒す旅に出る。

 旅の仲間を3人まで、任意でパーティーに加える事が可能。基本的なパーティー編成は初期状態で用意されており、その場合は『戦士』『僧侶』『魔法使い』+主人公の『勇者』になる。これが最もバランスの良いパーティーだが、自分でキャラメイクしたその他の職業、『武道家』『商人』『遊び人』などを使う事も可能。職業ごとに特徴があり、呪文を使えるのは『勇者』以外では『魔法使い』と『僧侶』のみ。

 町の外でモンスターを倒し、経験値とゴールドを入手し、レベルを上げて装備を整え、魔王を倒す事が最終目標になる。なお、DQ3では、前作やそれまでのRPGとは異なり、この魔王を倒すという主目的を忘れて転職とレベルアップを繰り返す、といった楽しみも生まれた。これ以降のRPGでは、メインストーリーを追わない、比較的自由度の高いタイプの作品も多数生まれた。

 

 それではスタート!

 

 

【ゲーム開始】

 それは ゆうきが 16さいになる

 たんじょうびの ことであった。

 

「おはよう ゆうき。

 もう あさですよ。

「きょうは とても たいせつなひ。

 ゆうきが はじめて おしろに

 いくひ だったでしょ。

「このひのために おまえを

 ゆうかんな おとこのことして

 そだてた つもりです。

 

 母親の声で目を覚ます。

 着の身着のまま、母親に先導され、お城の入り口に到着。

 真っすぐ行けばお城だから、ここから先は一人で行ってらっしゃいと言う。

 なんだよ、ここまで来たなら一緒に行けばいいのに。

 起きてトレイにも行っていないので、一回家の方に戻ろうとすると、

 

「ゆうきや どうしたの?

 おうさまに あっていらっしゃい。

 

 母はそう言って、家に帰らせてくれない。

 漏れそうだ。

 しかし、母が入り口のところで監視しているので、戻るに戻れない。

 しょうがない、早く用事を済ませてしまおう。

 

「アリアハンの おしろに

 ようこそ。

 

 城を守る衛兵に声を掛けられ、城内へ。

 物珍しさにキョロキョロしながらも、尿意をさっさと解消するため、寄り道せず真っすぐ進む。

 

「さあ おうさまが

 おまちかね ですぞ。

 

 玉座の間に続く階段下にいた衛兵にも声を掛けられる。

 お城には初めて来たんだけど、僕ってそんなに有名?

 階段を登り、玉座の前へ。

 王様は既に待っていた。

 しまった、王様を待たせてしまうとは・・・!

 

「よくぞ きた!

 ゆうかんなる オルテガのむすこ

 ゆうき よ!

「そなたの ちち オルテガは

 たたかいのすえ かざんに おちて

 なくなったそうじゃな。

(えっ? そうだったっけ!?)

「そのちちの あとをつぎ

 たびに でたいという そなたの

 ねがい しかと ききとどけた!

(そんな願い、した覚えがな・・・さては母だな!)

「てきは まおうバラモスじゃ!

「せかいの ひとびとは

 いまだ まおうバラモスの

 なまえすら しらぬ。

(僕も今知ったのだが?)

「だが このままでは やがて

 せかいは まおうに

 ほろぼされよう。

「まおう バラモスを

 たおしてまいれ!

「まちの さかばで なかまをみつけ

 これで そうびを

 ととのえるが よかろう。

 

 ゆうきは おかねと

 なかまのための ぶき ぼうぐを

 もらった!

 

「では また あおう!

 ゆうきよ!

 

 王様は何をくれたのかなっと。

 気になる持ち物を確認してみる。

 

E どうのつるぎ

E たびびとのふく

  たびびとのふく

  こんぼう

  こんぼう

  ひのきのぼう

 

 50ゴールド

 

 銅の剣と旅人の服は、寝ている間から身に着けていたものだ。

 だから王様がくれたのは、棒っ切れが三本、服が一着。

 そして50ゴールド・・・って子供のお駄賃か!

 こんなんじゃ、25ゴールドするキメラの翼を2つ買ったら終わりじゃないか!

 150ゴールドする皮の鎧や、90ゴールドの皮の盾なんてとても買えやしない。

 しょ、しょっぺえ!

 このお城って、そんなに貧乏なのか~!

 ・・・まいっか、モンスターを倒せばお金や経験が手に入るという話だから、さっさと酒場へ行って仲間を探そう。

 そして王様がくれた、こんなしょっぱい装備は処分して、良い武器を買い揃えるとしよう。

 おっと、その前に、僕自身のステータスも確認しておこう。

 

そうび:どうのつるぎ、たびびとのふく

  7:ちから

  6:すばやさ

  7:たいりょく

  7:かしこさ

  4:うんのよさ

 15:さいだいHP

  7:さいだいMP

 19:こうげき力

 11:しゅび力

  0:EX

 

 ではルイーダの酒場へ、GO!

 というわけでやって来た酒場。

 1階の受付で、色っぽいお姉さんに話し掛ける。

 

「ここは ルイーダのみせ。

「たびびとたちが

 なかまをもとめて あつまる

 であいと わかれのさかばよ。

「なにを おのぞみかしら?

 

「えっと、冒険の仲間を探しているんですが」

 お姉さんがリストから紹介してくれるようだ。

 チラッと覗き見をすると、戦士スタロン、魔法使いマリーン、僧侶エルシト、といったちょうど良さそうな面々が見えた。

 勇者、戦士、という前衛が2人。

 それを魔法使い、僧侶、という後衛2人がサポートする。

 バランスが良さそうじゃないか!

 

「今、ご紹介できそうな方はいませんね」

「・・・は?」

「リストにはおりませんので、どうぞ、二階の方でお酒を呑んでいる方に、ご自由にお声掛けください」

「今、ちょっと見えちゃったんですけど、戦士スタロンさんって・・・」

「いません」

「いや、魔法使いマーリンさんとかも見えたんですけど?」

「そのような方は、ここにはおりません」

 

 ど、どういう事だ?

 見間違え・・・?

 それとも、これは陰湿なイジメか何かか?

 ま、まあいいもんね、自分で探せと言うなら探すだけさっ!

 とにかく二階へ行ってみよう。

 

「あそびにんは ほんとうに

 やくたたずだ。

「つれてゆきたいなら

 じゅうぶんに つよくなってから

 シャレのつもりで なかまにしろ。

 

 ほうほう、知ってる。

 

「けんじゃは えらばれしもの。

 しゅぎょうを つんだものだけが

 なれるそうだ。

 

 うん、それも知ってる。

 しかし、酒場って言っても、大した情報もないし、強そうな人もいないな。

 飲んだくれているのは、うだつの上がらないおっさん、それに年老いた高齢者ばかり・・・。

 おっ、あそこのテーブルに若者がいるな、ちょっと声を掛けてみよう。

 

「こんにちは!」

「ふぇ!?」

「おぅ兄ちゃん。何だ、一緒に飲みたいんか?」

「いや、えっと・・・」

「奢ってくれるなら~、あとでイイコトしてあげよっか~?」

「ギャハハ! オメーはいっつも、若い男を見ればやってんだろ!」

「せっかくカモが来たんだから~、ネギ出してくれるまで黙っててよ~」

「ギャハハ! おぅ兄ちゃん。こいつは金持ちにタカるワルイオンナだぜ。騙されんなよ」

「騙されるって言っても、僕、全財産50ゴールドしか・・・」

「何よ何よ~、ちょっと良い剣持ってるから~イイトコの坊ちゃんかと思ったのに~」

「ぇっとぉね、50ゴールドでも最高級のシャンパン、ボトルでね、入れられると思ぅょ」

「ギャハハ! そりゃいい! シャンパン入れていいか?」

「良いわけないです!」

「何でえ冷やかしか?」

「そうじゃなくて、皆さん、旅の方ですか?」

「ふぇ!?」

 

 顔を見合わせる三人。

 

「ん~。旅の方っていや~そうかもねえ~」

「俺たちは旅の道化団よ。リーダーは俺、ジャック・ザ・トランポリン。『じゃく』って呼んでくれ」

「ぁのぁの、ぁたしはラビット・ジャグリング・ハートって言うのぉ。みんなは『はあと』って呼ぶょ」

「それで~私がエンジェル・パントマイム・クイーン~。『くいいん』って呼んでね~」

 

 元気いっぱいといった印象の、豪快に笑う男性が、じゃく。

 ボインボインの、色っぽいお姉さんが、くいいん。

 くいいんと正反対の、少年かと見紛う断崖絶壁が、はあと。

 

「じゃく、はあと、くいいん。僕の名前は『ゆうき』です。アリアハン王の命を受け、父の仇バラモスを倒す旅に出るところです」

「バラモス~? なんだい~それ~」

「魔王ですよ。魔王」

「ふぇ!?」

「ギャハハ! おぅ兄ちゃん、大法螺吹くねえ! いいねえ、嫌いじゃねえぜ」

「ふ~ん、そうなの~? じゃあお姉さんが~、そんな勇者サマにサービスしちゃおっかな~」

「いや、そういうのはいいんで! それより旅の人なら、少しは荒事にも慣れてるんですよね?」

「おぅ! 兄ちゃん、その辺のチンピラには後れを取らねえぜ!」

「旅路の途中のスライムもぉ、ょく出会って戦ぅょぉ」

「じゃあ! 是非、僕と一緒に魔王を倒す旅に出ませんか?」

「・・・」

 

 またもや無言で顔を見合わせる三人。

 乗り気、という風には見えないが、そこまで嫌な顔もしない。

 僕の言葉が半信半疑、といったところだろうか。

 そういえば王様も、バラモスについて誰も知らないと言っていた。

 そうか、バラモスとか、魔王なんて言っても、通じないんだ!

 

「あの、じゃあですね、暫くお試し期間という事で、僕と一緒に旅をしませんか?」

「おぅ、兄ちゃん! 旅慣れてる俺らと一緒なら安心だぜ?」

「そうね~可愛い子だし~? お姉さんはいいわよ~、いつ襲ってきても~」

「ギャハハ! 襲うのはお前の方だろ? くいいん」

「あら~、私だってそこまで誰彼構わずじゃないわ~」

「ぁのっ、そぉゅぅ、襲ぅのがどっちかってぃぅ話じゃなぃと思ぅょ。ぁっ、ぁたしは、そのっ、そろそろ旅に出るのもぃぃなぁって思ぅかなぁ」

「んじゃ、ゆうき、って言ったか。俺ら三人、今日から暫く厄介になんぜ! でもな、俺らの職業を聞いて、やっぱやめたってのはナシにしてくれよ?」

「ぁの、ぁたし達、他の方からは敬遠されちゃってぇ、旅の道化団なんて名乗ってるけどぉ、実は・・・」

「あ~! 待て待て、それを今言っちゃいけねえぜ!」

「もしかして・・・」

「ん?」

「皆さんの職業・・・遊び人・・・ですか?」

「ギャハハ! バレちまったか! そうよ、俺ら一度もアリアハンを出た事もねえ、ベテランの旅人! その名もアリアハン道化団!」

 

 ビシッとポーズを決める三人。

 うん、これはダメな人たちだ・・・やっぱり違う人に・・・。

 

「おぅ兄ちゃん! 頼むよ! 俺ら外の世界を見てえんだ! でも遊び人ってだけで、誰も連れて行ってくれねえ! だから仕方なく、こうして三人つるんで、やけ酒をあおる毎日なんだ。仲間にしてくれ! な、この通~り!!」

 土下座、というより、床に完全に寝そべって顔と全身を地面に擦り付ける、じゃく。

「パフパフでも~何でもするから~」

 胸の谷間を僕の顔に押し付けようとする、くいいん。

「ぁのっ! ・・・」

 何か言いたげだが、結局何も言わない、はあと。

 みんなが期待の眼差しで僕を見る。

「いや、あのですね、僕はこれから魔王を倒さなくてはいけなくて・・・」

「おぅ、そう言うなって! 今はまだ、ただの遊び人だけどよ! 俺らだってきっと役に立つ日が来るぜ! この通り!」

 じゃくは、いつの間にか全裸になって、床に体全体を擦り付けている。

 床オナかな?

 そういうのは一人の時にやってくれ。

「もう~、ほらほら~サービスサービス~。パフパフ~」

 柔らかい感触が両方の頬を圧迫する。

 こんなの、は・ぢ・め・て。

 いやそうじゃなくってだな・・・。

「ぁの・・・ダメ、かなぁ?」

 潤んだ瞳で僕を見詰める、はあと。

 捨てられた子犬のようだ。

「あ~もう、分かった、分かりましたよ!」

「おぅ、そうか! よろしく頼むぜ、ゆうき!」

 

 急に尊大な態度になる、じゃく。

 だってしょうがないじゃないか!

 この酒場には、他に若い人がいないんだから。

 この三人と一緒に旅に出て、機を見て捨てる!

 その時、捨てられる子犬のようになっても、もう知らないぞ!

 魔王を倒すためには、戦士のような強力な前衛と、後方からバックアップする呪文を使える魔法使い、それに回復魔法も必須だ。

 力もない、魔法も何一つ覚えない、ロクな武器も使えない、レベルが上がれば上がるほど無駄な技能を覚え、更に成長が悪くなっていく、そんな遊び人じゃ、魔王と戦うのは無理ゲーだ。

 

 だから、こいつらは、いつか必ず捨てる!

 王様から貰った装備を分配しながら、僕はそう決意を固めると、三人の遊び人を引き連れてアリアハンの街を後にした。

 

 

 

なまえ:じゃく

そうび:こんぼう、ぬののふく

  4:ちから

  4:すばやさ

  4:たいりょく

  2:かしこさ

 10:うんのよさ

 11:さいだいHP

  0:さいだいMP

 11:こうげき力

  6:しゅび力

  0:EX

 

 

なまえ:くいいん

そうび:こんぼう、ぬののふく

  3:ちから

  3:すばやさ

  4:たいりょく

  1:かしこさ

  9:うんのよさ

 11:さいだいHP

  0:さいだいMP

 10:こうげき力

  5:しゅび力

  0:EX

 

 

なまえ:はあと

そうび:ひのきのぼう、たびびとのふく

  3:ちから

  3:すばやさ

  6:たいりょく

  1:かしこさ

 10:うんのよさ

 14:さいだいHP

  0:さいだいMP

  5:こうげき力

  9:しゅび力

  0:EX

 

 

(余っている布の服を売却、所持金+7ゴールド)

所持金:57ゴールド

プレイ時間 (執筆時間を含む):約210分

 

※因みに、新しいキャラクターを作ると、必ず『ぬののふく』を装備しています。そのキャラを仲間に加え、布の服を剥ぎ取ってパーティーから外し、奪った服を道具屋で売る。という行動を繰り返すと、序盤から無限のゴールドを入手可能です。但し、そんな無駄な努力をするより、モンスターを倒した方が早いです。



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2週目 初戦闘で瀕死になるとは・・・ダメだこりゃ!

 じゃく、くいいん、はあと。

 3人の仲間を加え、僕たちは意気揚々とアリアハンの城下町を後にした。

 ようやく始まる冒険の日々。

 初めて見る外の景色に、みんな大はしゃぎだ。

 特に、じゃくは手に持った棍棒をブンブン振り回しながら、ピョンピョン飛び跳ねるように歩いていた。

 

「初めての冒険だから、まずはここ、アリアハンの周りを歩くだけですよ?」

「おいおい、4人もいるんだ、さっさと次の町を目指そうぜ!」

「そうよ~、何しろ私たち~・・・」

 

「「「 アリアハン道化団! 」」」

 

「・・・なんだから~」

「声を揃えて言ってもダメです。遠出する前にレベルを上げないと。あと、僕はそのアリアハン道化団に入っていませんからね?」

「ギャハハ! そうだったのかよ! でもよ、アリアハンの周りにゃ弱いモンスターしかいねえって聞くぜ」

「そうよね~」

「ぁのっ、ぁたしは、ゆぅきが言ぅ通りぃ、弱ぃモンスターを倒してぇ、レベルぁげるのがぃぃと思ぅょ」

「大丈夫だって! アリアハンの衛兵たちが、定期的にモンスター退治してるって話だからよ。マジクソザコナメクジしかいねえって!」

「まずは近場で経験を積むのが一番です」

「おぅ、そうか。しょうがねえ、ここはアリアハン道化団リーダーのゆうきに従うぜ」

「ちょっと待って。僕はリーダーじゃないし、そもそもアリアハン道化団に入った覚えも・・・」

「こまけえ事はいいんだよ!」

「ぁのぁのっ! ぁそこ! 何かぃるょ!」

 

 じゃくが能天気に騒ぎ、僕がたしなめる。

 そんなやり取りを繰り返す間に、城下町からだいぶ北の方まで来ていた。

 北西の川に架かる橋の手前だ。

 はあとの上げた悲鳴に近い警告に、僕たちアリアハン道化団は身構えた。

 

 ・・・ん?

 違う、僕はアリアハン道化団じゃないってば!

 

 目の前に現れたのは、スライムと呼ばれる最弱のモンスターが3匹。

 その横には、何か動物のシャレコウベに乗っかった、大ガラスも1匹いる。

 最底辺のモンスターが、計4匹である。

 

「数は互角です。やるぞ!」

「おぅ!」

「僕とじゃくが、まず大ガラスを仕留めます。その間、数的不利ですが、くいいん、はあとの2人でスライムを抑えて下さい!」

「任せて~」

「はぁぃ」

「大ガラスを倒したら、すぐに救援に行きます!」

「アリアハン道化団の初陣だぜ!」

 

 こうして僕たちアリアハン道化団は、初めての遭遇戦に突入した。

 ・・・うん、もうアリアハン道化団でいいです・・・。

 

 僕とじゃくの攻撃により、大ガラスを仕留める事に成功。

 しかし、倒す間にじゃくが大ガラスと、背後からのスライムの奇襲を受けてしまい、手傷を負う。

 それからくいいんとはあととも合流し、残るスライムの群れを討伐。

 少し時間がかかったものの、僕たちは誰一人欠ける事なく勝利を収めた。

 

「はぁ、はぁ。何とか退治できましたね」

「ねえ~大丈夫~?」

「クッソ痛えぜ。骨が折れてるかも知れねえ」

「見せて下さい」

「おぅ、ここだ・・・折れてねえか?」

「全然。平気みたぃだょ?」

「そうか。だがもう戦えねえ。アリアハンに戻ろうぜ」

「そうですね。じゃくが一番酷いみたいですが、全員負傷していますし、一度僕の家に戻って休みましょう」

「おぅ、そうしてくれ・・・」

 

 ステータスを確認すると、じゃくのHPは残り3だった。

 HP3!?

 最底辺のモンスターと一度戦っただけで、もう瀕死じゃないか!

 これはレベルが上がるまで、付近のモンスターと戦って経験を積むしかなさそうだ。

 

「だから言ったじゃないですか。暫くはアリアハン周辺でレベル上げですって」

「そぅだょぉ? ィォ・ギラ・ァーメンって言ぅもん」

「・・・? 何ですか、それ?」

「ギャハハ! それを言うなら急がば回れ、だろ!」

「はあとはね~ちょっとオツムが残念な子なの~。でもそこが可愛い~と・こ・ろ~」

「急がば回れ・・・イオギラアーメン・・・どう間違って覚えるとそうなるのか分かりません」

「ギャハハ! 俺にも分かんねえよ!」

「でもでもぉ、じゃくは、ぁたしの言葉、ぃつも分かってくれるょね」

「長い付き合いだからな!」

「ねえ~あれ見て~。ヤバくな~い?」

 

 アリアハンまで、大した距離ではなかったのに。

 よほど僕たちは運が悪いのだろう。

 町に戻る途中で、再びモンスターの群れに遭遇してしまったのだ!

 

「マズイ! 逃げましょうか?」

「いや、俺はもう走れねえし、逃げる間に襲われたら助からねえ! もし逃げるなら、俺を置いて行ってくれ」

「えぇ~・・・じゃく~、本気で言ってる~?」

「ぁのっ! ぁの・・・」

「そんな事はしませんし、出来ませんよ! みんな、戦いましょう! 戦って切り抜けます!」

「おぅ。だがすまねえ、俺は戦うのは無理だ。ここで『ぼうぎょ』して、せめて敵の攻撃を引き付けておくから、その間に残りをやっちまってくれ」

「分かりました。 じゃく、絶対死なないでくださいね!」

「おぅ、努力はするぜ・・・」

 

 スライムが4匹。

 僕の次に攻撃力の高い、じゃくを欠いての戦闘。

 無我夢中で銅の剣を振るった。

 向こう側では、くいいんとはあとも必死に棒きれを振り回し、スライムを抑えている。

 まともにスライムにダメージを与えられるのは、僕しかいない。

 1匹、2匹、3匹・・・とにかく倒しまくった。

 最後のスライムを、くいいんとはあとが2人がかりで倒した時、じゃくのHPはギリギリ、1だけ残っていた。

 

「さあ、肩を貸します。歩けますか? アリアハンはすぐそこです。頑張って下さい」

「おぅ・・・もうダメかと思ったぜ・・・ありがとよ」

「顔、真っ青だょぉ」

「おぅ・・・」

 

 息も絶え絶えになった、じゃくを抱きかかえるようにアリアハンの町に戻る。

 僕が家に帰ると、母親も祖父も、パーティーの仲間を暖かく迎え入れた。

 温かい食事を摂り、ベッドで横になる。

 食欲もなく、いつもの元気な無駄口も叩けない、そんなじゃくは、夜のうちに衰弱死してしまうのではないか・・・?

 

「おぅ! 起きたか、ゆうき!」

「ぉはょぉ」

「遅かったわね~。先に朝食~頂いちゃってるわ~」

「さあ今日もモンスター狩りに行こうぜ! ・・・行くんだろ? ゆうき?」

 

 夜も眠れなかった僕の不安は、ただの杞憂でしかなかった。

 昨日の死にそうな様子は、一体何だったのか?

 じゃくは一晩で、すっかり元気を取り戻していた。

 

「もう体は大丈夫なんですか?」

「おぅ! この通りピンピンしてるぜ」

「そうですか。それは良かった。モンスターと戦うのは良いですが、アリアハンの周囲だけですよ?」

「おぅ! そりゃ当然だな!」

「早く次の町に行きたいとかは・・・?」

「ギャハハ! 初心者同然の俺らアリアハン道化団が、隣町まで歩いて行こうなんてのは無茶な話だぜ? 冗談は顔だけにしとけよ、ゆうき!」

「・・・」

 

 ・・・まあ、分かってくれたのなら、もはや何も言うまい。

 

 初日の失敗を繰り返さないよう、それから僕たちは1日1回、もしくは2回の戦闘を行ってから、すぐ家に戻って休む、という戦闘スタイルを確立した。

 とても連戦して経験を積むなんて無理。

 安全第一だ。

 稀に、なかなか敵に出会わない日もあって、日が暮れ始める時がある。

 夜になると、この周辺でも少しモンスターが強くなるという。

 だから夜の戦闘は避けよう。

 なんて作戦会議で話をしても、結局、夜になる前には2回の戦闘を終えて、家で休む羽目になるのだった。

 

 そんな日々を3~4日ほど過ごすうち、じゃく、くいいん、はあとの3人はレベルが2になった。

 更に数日後には、僕もレベルが2になり、ほぼ同時にみんなのレベルは3になった。

 僕はメラの呪文を覚えたので、試しに大ガラスにメラを放ってみると、銅の剣で切るよりもやや多くのダメージを与えられるようだ。

 みんな、そこまで劇的な能力的な向上は見られないが、毎日の戦闘は少し楽になっただろうか。

 

 経験値と同時に溜まっていくのがゴールドだ。

 僕の自宅で寝泊まりをしているので、宿代がかからない。

 この人数で毎日寝泊まりをするのだから、母親には食事代などで負担をかけてしまうが、どうやら父の遺産があるらしく、金銭的な支払いなどは求められなかった。

 もっと余裕が出来れば、僕が稼いだお金で母親に楽をさせてあげられるのだが。

 今はバラモスを倒し、世界を救うのが最優先だ。

 16歳にもなって、何を甘ったれた事を言っているのかと思われるかも知れないが、これは世界を救うためなんだ!

 そう自分に言い聞かせて、親のすねをかじって、今しばらくはこの生活を続けるとしよう。

 

 そんなすねかじり生活のおかげで、レベル上げの合間に貯まったお金が100ゴールドに到達した。

 アリアハンの武器屋で売っている『どうのつるぎ』が100ゴールドである。

 

「じゃく、この銅の剣を」

「おぅ! じゃあ俺が使っていた棍棒は、はあとにお下がりだな」

「ぅん。ぁりがと。今までのヒノキの棒ょり、すっごく太くてぇ硬ぃょ」

「太くて~、硬いの~?」

「くぃぃん、妙な言ぃ回しはゃめてょぉ?」

「あら~、自分で言ったんじゃない~」

「ぁたし、そんな事言ってなぃょ?」

「ギャハハ! 言ってたぜ、はあと! 太くてぇ、硬いよぉ、ってな」

「もぉ、ゃめてょぉ」

 

 何はともあれ、これでパーティーの攻撃力は一気に増加した。

 僕も、じゃくも、ほぼ一撃で大ガラスを撃破できるようになった。

 棍棒を装備したはあとも、くいいんと2人がかりならスライム1匹を確実に屠れるし、戦闘の効率は一気に上がった。

 一日1~2回の戦闘しかできなかったのが、今では3~4回の戦闘をこなせるようになり、HPに余裕があるうちに陽が落ちて、家に帰る日も増えてきた。

 

 更に数日の戦闘をこなし、王様の命を受けてから、ひと月ほど経過しただろうか。

 僕はレベルが3になり、他のみんなは4に上がった。

 所持金が貯まったところで、順次、くいいん、はあとの武器として、2本目と3本目の銅の剣を購入。

 それまで使っていた、スライムの粘液まみれの、きったない棍棒は、道具屋で下取りに出した。

 

 棍棒を中古屋で買うのはやめよう。

 僕はそう心に誓った。

 

 

 

なまえ:ゆうき

そうび:どうのつるぎ、たびびとのふく

呪文 :メラ

レベル:3

  9:ちから

  8:すばやさ

 10:たいりょく

  9:かしこさ

  6:うんのよさ

 22:さいだいHP

 11:さいだいMP

 21:こうげき力

 12:しゅび力

105:EX

 

 

なまえ:じゃく

そうび:どうのつるぎ、ぬののふく

レベル:4

  6:ちから

 11:すばやさ

  7:たいりょく

 11:かしこさ

 34:うんのよさ

 13:さいだいHP

  0:さいだいMP

 18:こうげき力

  9:しゅび力

105:EX

 

 

なまえ:くいいん

そうび:どうのつるぎ、ぬののふく

レベル:4

  5:ちから

  8:すばやさ

  7:たいりょく

  7:かしこさ

 39:うんのよさ

 19:さいだいHP

  9:さいだいMP

 17:こうげき力

  8:しゅび力

105:EX

 

 

なまえ:はあと

そうび:どうのつるぎ、たびびとのふく

レベル:4

  4:ちから

  9:すばやさ

  9:たいりょく

  7:かしこさ

 42:うんのよさ

 20:さいだいHP

  0:さいだいMP

 16:こうげき力

 12:しゅび力

105:EX

 

 

所持金:14ゴールド

プレイ時間 (執筆時間を含む):約310分

累計プレイ時間:約520分



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3週目 レーべの村は思ったより近かった!

 これまで、安全第一を心掛けてきた僕たちアリアハン道化団。

 数ヶ月の間、戦闘を繰り返して経験を積み、また稼いだゴールドで装備を整えた事により、アリアハンの城下町周辺に棲息するモンスター、スライムや大ガラスは、もはや敵ではなくなっていた。

 

「今日は、橋の向こう側へ行ってみましょう」

「おぅ!」

「あら~。じゃあ~無事に戻って来れたら~、パフパフ~サービスしちゃうわ~」

「ギャハハ! くいいん、ゆうき。お前ら昨晩もヤってただろ!」

「それはそれ~、これはこれよ~」

「ぁのっ! ぇっと・・・」

 

 何か言いたげでも結局言わない、はあとの意見?は無視して、僕たちは橋を渡った。

 いざという時すぐに戻れるよう、橋を超えた北側にある近場の森を歩き回る。

 ここで暫くモンスターと戦って、様子を見ようという魂胆だ。

 

「来たわよ~」

「おぅ? 何だありゃ?」

「あれは『いっかくうさぎ』ですね。あの鋭い角に注意して下さい」

「おぅ!」

 

 現れたのは、スライム数匹を引き連れた一角兎だった。

 額の先に、長くて鋭い一本の角を持つ、凶暴なモンスターである。

 強靭な後ろ足で跳ね、一気に間合いを詰めると、そのままの勢いで獲物を突き殺そうとするのだ。

 その角による一撃をまともに喰らっては危ない。

 僕の着る旅人の服など、簡単に貫いてしまうだろう。

 

 僕が銅の剣で牽制しつつ、一角兎を抑えている間に、みんながスライム3匹をやっつけた。

 手傷を負ったけど、まだ全然戦える。

 そのまま全員で一角兎を取り囲むと、一気に片を付けた。

 

「攻撃力は高めですが、大ガラスと比べて大差はありませんね」

「おぅ! そうだな!」

「ぁのぁの、今は一匹だけだったからぁ、そのっ・・・ターバンせぃすぃ、だょぉ」

「・・・なんて?」

「ギャハハ! それを言うなら、油断大敵だろ」

「ふぇっ!? ぁたし、そぅ言ったょぉ」

「ターバン聖水・・・油断大敵・・・全然違うじゃないですか。何をどう間違ったらそうなるのか?」

「そこが~はあとの~、かわいい~と・こ・ろ~」

「何はともあれ、当分この森でモンスターと戦いましょう」

「おぅ!」

「はぁぃ」

 

 狩場を川向こうの森へ移し、僕たちはまたレベルアップに精を出した。

 この森では、アリアハン周辺では見かけなかった新たなモンスターとして、一角兎の他に『オオアリクイ』も出現する。

 大アリクイは、一角兎を更に一回り強くしたような相手だ。

 一角兎であれば、運が良ければ僕の攻撃一回で倒せる。

 しかし大アリクイの方は、銅の剣による一撃だけで、その硬い体毛を突き破って致命傷を与えるのが難しかった。

 その他、スライムも群れを成して襲ってくる時がある。

 8匹のスライムに囲まれると、レベルが上がった僕たちでも苦労し、特に最後尾に位置するじゃくが集中攻撃を受けた時など、HPがかなり削られた。

 それでも、初日のようにじゃくが死に瀕する程ではなく、割合に余裕を持って城下町まで戻れた。

 

 森でのレベル上げに夢中になり、帰宅が夕方を過ぎて、すっかり夜闇に包まれてしまったある日。

 アリアハンの町に入ると、心配した母親が家の外で待っていた。

 

「まあ おそかったのねっ。

 でも ぶじで ほんとうに

 よかったわ!

「もう うえにいって

 おやすみなさい。

 

「おぅ、ゆうき。あまりカーチャンを心配させるもんじゃねえぜ」

「そうよ~? ほ~らママの胸にいらっしゃい~パフパフ~」

「ギャハハ! お前はゆうきのカーチャンじゃねえだろ」

「ぁのっ・・・ぁの、ぉゃすみなさぃっ」

 

 大人になったつもりでも、母親にとって僕はまだ子供なのだろう。

 バラモス退治も、レベル上げも大事だけど、母親を心配させないようにするのも大事だ。

 これからは夜になったら、ちゃんと家に戻るようにしよう。

 夜になったら、ね。(夕方のうちに戻るとは言っていない)

 そう心に誓った。

 

 ・・・だってさ、夜の戦闘も少し試したいじゃん?

 時間は有効活用しなきゃ。

 それに、母親に心配されるのも、ちょっと嬉しいし?

 などと言い訳をしながら、僕は眠りに就いた。

 

 橋の向こう側で効率よく経験を稼ぐと、程なくしてみんなのレベルが5になった。

 それに続いて、僕もレベル4に上昇し、『ホイミ』の呪文を覚えた!

 これは大変な収穫である。

 LV2になった時に覚えたメラは、正直、あまり使いどころがない。

 銅の剣による攻撃と、与えるダメージに差がないからだ。

 MPを消費してまで使う意義を感じない。

 しかしホイミは、それとは全然違う。

 敵に受けたダメージを回復する魔法なのだ。

 自分や、傷付いた仲間を癒す事が可能で、これにより戦闘継続能力は一気に上昇した。

 

 ホイミを覚えて余裕が生まれたので、川の向こう側ですっかり真夜中になり、家に帰る頃には夜が白み始める日が増えた。

 疲労困憊でアリアハンに戻ると、母親は家の前でずっと待っていてくれた。

 そんな時、母親は怒るでも文句を言うでもなく、ただ僕の身を案じ、ゆっくりお休みなさい、とだけ繰り返した。

 

 一角兎や大アリクイとの戦闘に備えて、装備も新調した。

 アリアハンの武器屋で売っている『かわのたて』を90ゴールドで購入。

 最前線に立つ僕が装備して具合を確かめると、これがなかなか良い感じである。

 一角兎の突進も受け止められるし、簡単に壊れない頑丈さもあった。

 森での戦闘を繰り返してゴールドを貯め、僕と共に前衛に立つ、はあとの分も皮の盾を購入。

 更に数日の戦闘を経て、新しく『かわのぼうし』を80ゴールドで購入し、これは僕が装備した。

 皮の盾に比べて、皮の帽子の使用感は悪く、おまけ程度、気休め程度の防御力でしかなかったが、これが命を救う可能性だってあるだろう。

 こうしてパーティーの装備も整い、いよいよ隣町を目指す日がやって来た。

 

「僕たちアリアハン道化団もレベルアップして、川の向こう側でも余裕を持って戦えるようになりました。そろそろ次の町を目指しましょう」

「賛成~」

「おぅ! やっとだな!」

「回復魔法も覚えましたから、『やくそう』は必要ないでしょう。『キメラのつばさ』も要らないと思いますが、どうでしょうか?」

「それでぃぃと思ぅょ」

「全部、アリアハン道化団リーダーのゆうきに任せるぜ。異論はねえ」

「私も~」

「では、すぐ出発しましょう」

 

 アリアハンを出て、橋を渡り、いつもの狩場である森を抜ける。

 何度かモンスターと遭遇したが、回復魔法を使うまでもなく撃破。

 そのまま北西を目指すと、陽が暮れる前には、海岸線の手前にある集落が見えてきた。

 ここがレーベの村である。

 

「思ったよりも近かったですね」

「そうね~、なんか~拍子抜けしちゃった~」

「俺たちも強くなったって事だぜ!」

「周辺の敵とも戦ってみたいところですが、先に村の中を見て回りましょう」

「はぁぃ」

 

 まずは村の入り口近くにある道具屋を覗く。

 品揃えはアリアハンと大差ないが、『ターバン』という珍しいアイテムが売っていた。

 初めて見る品なので、これは何かと店主に尋ねると、薬草やキメラの翼のような使い捨ての道具ではなく、頭に装備する防具なのだと言う。

 

「これは・・・僕には装備できそうもないですね。皆さんはどうです?」

「ギャハハ! おもしれー形してんな! 気に入った、俺は装備すんぜ!」

「ぁのぁのっ、ぁたしも好きぃかもぉ」

「なんか~夜も使えないかしら~?」

「夜?」

「そうね~面白い使い方があればいいわね~。どう? ゆうき、今晩試してみない~?」

「ギャハハ! くいいん、お前は相変わらずだな! 前もコッソリ、スライムの屍骸を集めてただろ? 知ってんだぜ」

「ふぇ!?」

「あら~。見てたの~?」

「おぅ、あれも何かに使ったのか?」

「ん~っと~、ひ・み・つ~」

「ギャハハ! 好奇心旺盛な女だな!」

「で~? ゆうき~、今晩~どうかしら~」

「結構です。そもそも、まだターバンを買えるほどのお金がありません。まずお金が貯めないと」

「じゃあ~お金が溜まったら~、私がサービスして~あ・げ・る~」

「結・構・で・す!」

 

 次に向かったのは武器屋。

 アリアハンより小さな村なのに、品揃えはアリアハンよりずっと良かった。

 

「おお、『せいなるナイフ』ですか。これは切れ味が良さそうです」

「でもぉ、小っちゃくてぇ、短ぃょ?」

「ちっちゃくて~短いの~?」

「ギャハハ! 租チンかよ」

「もぅ、変な言ぃ方しなぃでょ。ぁたし、そんな事言ってなぃょ?」

「とにかく! これなら全員装備できそうですね。戦力アップが見込めます」

「おぅ! そうだな」

「こっちは『くさりがま』ですか。これはどうです? 使えそうですか?」

「そうだな・・・おもしれー武器だな! これも気に入った! 俺は使うぜ!」

「扱えるかどうかの基準は、面白いかどうかなんですね」

「そりゃそうよ! 何しろ俺たち・・・」

 

「「「「 アリアハン道化団! 」」」」

 

「・・・だからな!」

 

 ・・・はっ!

 ついつい、一緒にポーズを決めてしまった。

 じゃくのペースに、すっかり巻き込まれている!?

 

「とうぞくのカギは

 てにいれましたか?

 

 はい

→いいえ

 

「このむらの みなみの もりにも

 ナジミのとうに つうじる

 どうくつが あるとか……。

 

 武器屋と道具屋以外にも、村を少し歩いて有益な情報を入手した。

 ナジミの塔、というのは、アリアハンの真西、川の向こう側に見えている大きな建築物だ。

 いつも狩場にしていた森から西へ、岬をぐるっと回って洞窟を抜ければ行けるが、北側にあるこのレーベの村の近くからも入れるという。

 ナジミの塔の攻略に向かうのは、もう少しレベルアップして、装備も整えてからになるが、その際に役立つ話だった。

 

「レーベの村はあらかた見て回りましたね。陽が暮れる前に、周辺の敵とも戦ってみようと思うのですが・・・」

「おぅ! 良いんじゃねえか? だが死にそうな目に遭うのは勘弁だぜ」

「分かってます。十分に安全マージンを確保した上で、様子を見ましょう」

 

 という訳で、レーベの村の周辺の敵の強さを調べる。

 近くを歩き回ってみると、川を超えた森の中に出るモンスターと大差はなかった。

 スライム、大ガラス、一角兎、大アリクイ・・・。

 これなら特に問題は無いだろう。

 アリアハン付近の方が、いざという時すぐ家に帰って休めるので、僕たちはいつもの狩場へ戻り、それから一ヶ月ほどは経験とゴールを度稼ぐ日々を送った。

 

 やがて遊び人たちは全員レベルが6になり、それから暫く経って、僕もレベルが5になった。

 僕の装備品として、アリアハンで皮の鎧を購入し、それまで着用していた旅人の服はくいいんへ手渡した。

 

「んっ~。ゆうきの甘酸っぱい~か・お・り~」

 

 くいいいんは、僕の着ていた服に顔を埋めて、上気した頬と、うっとりした瞳で言う。

 変態さんかな?

 続いて、貯まったお金で皮の盾を購入し、くいいんが装備した。

 

 ここまで順調に成長を続けてきたアリアハン道化団。

 しかし全員レベルが7になったところで、遂に、遂にッ!

 恐れていた事態が起きてしまった。

 

 ・・・まあ、その話は、また今度にして。

 今回は、はあとの新装備品としてターバンを買ってあげた事と。

 そのターバンの防御力が半端なく高かった事。

 次の目標は、くいいんにもターバンを買ってあげる事。

 強力な武器を新調する事。

 それから、僕のレベルも6に上がって『ニフラム』という使えない呪文を覚えた事を、冒険の書に記す。

 

 

 

なまえ:ゆうき

そうび:どうのつるぎ、かわのよろい、かわのたて、かわのぼうし

呪文 :メラ、ホイミ、ニフラム

レベル:6

 19:ちから

 13:すばやさ

 15:たいりょく

 11:かしこさ

  7:うんのよさ

 32:さいだいHP

 13:さいだいMP

 31:こうげき力

 34:しゅび力

510:EX

 

 

なまえ:じゃく

そうび:どうのつるぎ、ぬののふく

レベル:7

  9:ちから

 17:すばやさ

 14:たいりょく

 16:かしこさ

 69:うんのよさ

 24:さいだいHP

  0:さいだいMP

 21:こうげき力

 12:しゅび力

510:EX

 

 

なまえ:くいいん

そうび:どうのつるぎ、たびびとのふく、かわのたて

レベル:7

  7:ちから

 14:すばやさ

 13:たいりょく

 14:かしこさ

 67:うんのよさ

 30:さいだいHP

  0:さいだいMP

 19:こうげき力

 19:しゅび力

510:EX

 

 

なまえ:はあと

そうび:どうのつるぎ、たびびとのふく、かわのたて、ターバン

レベル:7

  7:ちから

 15:すばやさ

 13:たいりょく

 15:かしこさ

 84:うんのよさ

 29:さいだいHP

  0:さいだいMP

 19:こうげき力

 27:しゅび力

510:EX

 

 

所持金:102ゴールド

プレイ時間 (執筆時間を含む):約370分

累計プレイ時間:約890分



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4週目 ナジミの塔には人が住んでいた!

 僕たちアリアハン道化団は、最初の戦闘で瀕死になっていたあの頃から、慎重に、確実に、順調にレベルアップを続けていた。

 じゃく、くいいん、はあと、3人がLV7になったところで、僕は決断した。

 

「僕たちも強くなりました。そろそろ先へ進みたいと思います」

「おぅ! リーダーのゆうきが、いつそう言い出すかと、ずっと待ってたぜ」

「ぁのぁのっ、準備をね・・・ぇっと・・・」

「分かってます。僕のホイミはありますが、MPには限りがありますし、念のため薬草を買っておきましょう。はあと、それで良いですか?」

「ぅん、そぅだね。ぁとね・・・ぅぅん、やっぱ、何でもなぃ」

「あまり無理はせず、自宅とナジミの塔の間を何度か往復しながら、少しずつ攻略していきましょう」

「おぅ!」

「分かったわ~」

 

 心配性のはあとは、まだ何か言いたげにモジモジしている。

 だけど、はあとが何か言うのを待っていては陽が暮れてしまう。

 アリアハンの道具屋で薬草を2つ買い、はあととくいいんに一つずつ手渡すと、町を出た。

 

 ナジミの塔へ向かうルートのうち、僕たちは南の洞窟を選択。

 何かあった時すぐ帰れるように、最初は洞窟の入り口付近でモンスターの強さを調べる。

 暫く歩き回って調査した結果、出現するモンスターは、大アリクイ、一角兎、大ガラス、スライムで、外のモンスターと全く変わらなかった。

 

 それより問題なのは、3人の遊び人が覚えた新スキルである。

 くいいんが戦闘中に、突然『にっこり ほほえんだ!』のだ。

 スライムの目の前に顔を突き出し、ニコ~ッと。

 もちろん、微笑んだってスライムには何の効果もない。

 くいいんは顔面に手痛い一撃を喰らっていた。

 一体、何をやっているのだ・・・?

 と思っていたら、それを見たじゃくが真似をして、大アリクイの目の前で微笑むし、はあとまで微笑みだした。

 僕が攻撃するように指示をしても、3人とも面白がって微笑んでばかりいる。

 3人のうち1人だけならまだしも、僕だけが戦って、3人とも遊んでいる時など、もうどうすればいいのか分からない。

 

「真面目に戦ってください!」

「でもよ~、スライムや一角兎と戦うのは飽ちまったぜ」

「そぅだょ? もっと楽しぃ事したぃかなぁ」

「なんか~拍子抜けしちゃった~」

「余裕を持って戦う、安全第一です。命は一つしかないんですから」

「おぅ、知らねえのか? 死んだら教会で生き返らせてくれんぜ」

「そうそう~、だから~安心していいのよ~」

「いえ、ターバン聖水です。決して気を緩めないように」

「それを言ぅならぁ、油断大敵だょ?」

「ギャハハ! はあとに突っ込まれちゃ終いだぜ、ゆうき」

「ぇー、ヒドぉぃ」

「ね~あれ見て~。何かしら~?」

 

 何を言っても、もう飽きた、遊びたい、楽しい事をしたいと、ワガママを言い始める3人。

 やはり遊び人はダメだ。

 早く捨てよう。

 僕は再び、心に誓った。

 

 洞窟の中のモンスターに警戒しながら、探索を続けていると、上へ続く階段の手前で、くいいんが宝箱を発見。

 なぜ、こんな所に、これ見よがしに置いてあるのだろうか?

 いかにも何かありそうな、怪しい宝箱である。

 

「これは罠でしょうね」

「おぅ、罠だな」

「そうね~、罠かも~」

「ぁのっ、ぁのね・・・」

「という事で、ゆうき、思い切って開けてくれや!」

「なんでですか!?」

「ギャハハ! 面白そうだからに決まってんだろ!」

「面白そうって・・・僕が罠にかかって死んだらどうするんです?」

「だから教会で生き返らせてやるって!」

「そうよ~、生き返ったら~パフパフ~サービスするから~」

「あのですね、回復魔法を使えるのは僕だけですよ? 3人でアリアハンまで帰れますか?」

「おぅ、何とかするって!」

「それにですね・・・フガッ」

「ゆうき~ほら~。パフパフ~、パフパフ~」

「ギャハハ! くいいん、お前、死ぬ前、生き返る前からサービスしてんじゃねえか!」

「いいのよ~、これは前払いだから~パフパフ~」

「ぁのっ、中にこんなのがぁったょ」

 

 くいいんの二つの膨らみが両頬を挟み込んで、僕が身動き出来なくなっている間に、待ちくたびれたはあとが宝箱を開けてしまっていた。

 凶悪な膨らみの間を命からがら脱出すると、はあとからアイテムを受け取る。

 中に入っていたのは旅人の服だった。

 

「何の変哲もない、旅人の服ですね」

「おぅ! だから言ったろ、早く開けろってよ!」

「その前に、これは罠だって言いませんでした?」

「さあ? 覚えてねえなあ」

「私も~知らな~い~」

「ゆうきが聞き間違えたんだろ?」

「いやいや、確かに言いましたよ。罠だって。それで、罠にかかって僕が死んだらどうするのかって話を・・・」

「こまけえ事はいいんだよ!」

「一応、これだけは言っておきます。僕は死んでも、生き返るつもりはないですからね」

「ふぇ!?」

「おぅ? どうしてだ?」

「だって、一度死んで蘇るって、それは最早アンデッドじゃないですか。ゾンビですよ、ゾンビ。下手すれば腐った死体ですよ」

「お、おう・・・」

「死んでぇ、腐る前なら平気だょ?」

「いや、腐った死体になるのは最悪の場合で、腐ってなくても動く死体です」

「ゆうき~、考え過ぎよ~。そんな事より~パフパフでもして落ち着きしょ~。ほら~パフパフ~」

「ぼぢづぎばっ! ブハッ、落ち着きませんから! むしろ窒息死します」

 

 僕はゾンビになるなんて、まっぴらだ。

 そんな事をしてまで生き永らえるなんて、それじゃ魔王軍に入るのと何が違うんだろう?

 だったら潔く死を選ぶ。

 だけどアリアハン道化団のメンバーに、それを理解して貰うのは難しそうだ。

 僕は説明を諦めて、とにかく教会で復活させるのはやめてくれ、と繰り返した。

 この話は、後で母親と祖父にに伝えておく必要があるだろう。

 それと同時に、パーティーの誰かが死んだ場合、または僕を残して全滅した場合は、絶対に復活させないぞ、と心に誓った。

 

 探索を続けると、むき出しの岩肌だった暗い洞窟から、陽の光が差し込む綺麗な石畳の床に変わった。

 ナジミの塔の内部に入ったらしい。

 下手に進まず、ここでまた少し周囲のモンスターを調査した。

 すると、今まで出会ったモンスターの他に、『フロッガー』という巨大なカエルの化け物と、『じんめんちょう』という巨大な蛾が出現すると判明した。

 フロッガーの方は、一角兎や大アリクイを、更に一回り強化したような相手で、そこまで苦戦せずに倒せた。

 人面蝶の方は、攻撃力も防御力も低いが、『マヌーサ』という呪文を使ってくるのが厄介だ。

 人面蝶だけ数匹出るのであれば、特に気にする必要はない。

 全員で殴り掛かれば、余裕を持って倒せる。

 ところが、フロッガーなど他のモンスターと一緒に出現する時があって、倒す前にマヌーサをかけられると面倒だ。

 マヌーサというのは、僕たちのパーティー全員が幻に包まれてしまう呪文だ。

 運よく抵抗できればいいが、幻術にかかると攻撃の狙いが定まらず、ミスばかりになる。

 そうでなくても、僕以外のパーティー全員が揃いも揃って、モンスターの前で微笑んでいる時があるわけで。

 僕が幻に包まれてミス、他全員が微笑む、という形で何も出来ずに敵の攻撃だけ受けてしまう、なんて事態も。

 お前ら・・・真面目にやれ!

 敵にとってのボーナスステージじゃないか。

 

 といった辺りで、HP・MPも危険水域になったので、一旦アリアハンの自宅に戻った。

 翌日は、レーべの村近くの入り口から、ナジミの塔1階部分を探索していくと、塔の内部にテーブルとイスが並んだ部屋を発見。

 見慣れぬオジサンがいるので、話し掛けると、旅人の宿屋だという。

 こんな危険な場所で?

 しかも値段は良心的!

 僅か8ゴールド!

 仕事熱心な人もいるものだと、みんな感心しきりであった。

 

「なあゆうき、家に戻るより、ここに泊まった方が効率よくね?」

「そぉだょ。8ゴールドだったら一回戦ぅだけで稼げるょ」

「そうよね~」

「いいえ、母親が毎日、家の前で僕の帰りを待っています。心配させないよう毎日帰ろうと、心に決めているので」

「おぅ! 母親を心配させないのが一番大事だぜ」

「ぁたしも帰った方が良ぃと思ってたょ」

「自宅が一番よね~。さあゆうき~ママの胸にいらっしゃい~、パフパフ~」

 

 掌くるっくる。

 明日にも手首が捻じ切れるのではないだろうか。

 

 そうこうする間に、パーティーのみんなはLVが8になった。

 目標額だった550ゴールドのお金も貯まったので、レーベの村で鎖鎌を購入。

 攻撃力が一気に跳ね上がり、戦闘がぐっと楽になった。

 ナジミの塔の探索も捗り、僕のLVも7に上昇、ここで『ルーラ』の呪文を覚えた!

 ルーラというのは、一度行った事がある町まで一瞬で移動できる呪文である。

 これほど便利な魔法は他にない。

 消費MPが8も必要なので、ルーラのためのMPを残そうと思うと、残りはホイミ2回分程度しかない。

 ただ、探索の途中で引き返す時、結局MPに余裕を持って帰らなければいけないわけで、ルーラ1回分だけあれば良いというのは計算しやすくて助かる。

 

 ナジミの塔を上層まで登ると、出現するモンスターも変わった。

 空を飛ぶモンスター『さそりばち』は、なかなか高い攻撃力を持っているし、尾にある大きな針で刺されると、稀にマヒして暫く動けなくなってしまうらしい。

 僕たちが塔を攻略する間、運良くマヒする事はなかったが、要注意だろう。

 

 そこまで強力なモンスターではないが、『バブルスライム』というモンスターは、『どく』攻撃をしてくる。

 バブルスライムの群れに襲われ、はあとが酷い毒を受けてフラフラになってしまった。

 僅かな距離を歩くだけで、じわじわHPが削られる。

 早く治療しなければならないが、僕たちのパーティーには僧侶がいない。

 

「はあと、大丈夫ですか?」

「ぅん・・・もぉダメかもぉ」

「ここまで来ましたが、一度アリアハンに戻りましょう」

「おぅ! こんな事なら、はあとの言う通り『どくけしそう』を買っておくべきだったな」

「そんな事~言ってたかしら~?」

「今それどころではありません。はあとの症状は一刻を争います」

 

 僕たちはナジミの塔、3階ほどの高さの窓から飛び降りると、覚えたての『ルーラ』でアリアハンへ。

 自宅でひと晩、ゆっくり休ませたが、はあとの症状は回復しなかった。

 毒の治療には、毒消し草を買って投与するか、教会で治療をお願いするしかない。

 金額的には大差ないが、僅かでも安い教会へ行き、『どくのちりょう』をお願いした。

 青黒く変色していた、はあとの傷跡は、みるみる回復し、すぐに体調も良くなった。

 ナジミの塔の攻略に、毒消し草は必須だろう。

 そう話し合って、道具屋で3つほど買い込み、じゃく、はあと、くいいんに一つずつ持たせた。

 

 それからも、傷付き疲れれば自宅へ戻り、毒消し草を使えば買い直し、ナジミの塔を少しずつ、牛歩で進んでいく。

 その間にみんなのレベルは9に上昇。

 塔の内部で発見した皮の帽子は、じゃくが装備。

 そして遂に僕たちはナジミの塔の最上階へと到達した。

 そこにいたのは、一人の老人である。

 こんな危険な場所で、僕たちを待っていたと言う。

 その老人から手渡された物。

 

 僕たちは重要アイテム、『とうぞくのカギ』を手に入れた!

 

 

 

なまえ :ゆうき

そうび :くさりがま、かわのよろい、かわのたて、かわのぼうし

呪文  :メラ、ホイミ、ニフラム、ルーラ

レベル :7

  21:ちから

  17:すばやさ

  21:たいりょく

  12:かしこさ

   8:うんのよさ

  42:さいだいHP

  17:さいだいMP

  45:こうげき力

  26:しゅび力

1141:EX

 

 

なまえ :じゃく

そうび :くさりがま、たびびとのふく、かわのぼうし

レベル :9

  11:ちから

  23:すばやさ

  19:たいりょく

  18:かしこさ

  89:うんのよさ

  30:さいだいHP

   0:さいだいMP

  35:こうげき力

  21:しゅび力

1141:EX

 

 

なまえ :くいいん

そうび :どうのつるぎ、たびびとのふく、かわのたて、ターバン

レベル :9

   8:ちから

  17:すばやさ

  22:たいりょく

  15:かしこさ

  94:うんのよさ

  45:さいだいHP

   0:さいだいMP

  20:こうげき力

  28:しゅび力

1141:EX

 

 

なまえ :はあと

そうび :どうのつるぎ、たびびとのふく、かわのたて、ターバン

レベル :9

   9:ちから

  19:すばやさ

  20:たいりょく

  17:かしこさ

  95:うんのよさ

  40:さいだいHP

   0:さいだいMP

  21:こうげき力

  29:しゅび力

1141:EX

 

 

所持金:67ゴールド

プレイ時間 (執筆時間を含む):360分

累計プレイ時間:1250分



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5週目 僕の体がメラメラと燃えたのは・・・悪い夢を見ていたんだ!

 ナジミの塔で『まほうのたま』を手に入れた僕たちアリアハン道化団。

 初めての探検は、これを以って無事終了。

 嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねるじゃくを先頭に、意気揚々とアリアハンへ帰還した。

 勇者の凱旋である。

 

 自宅に戻ると、母親はいつもより少しだけ豪華な食事を用意してくれた。

 祖父も母も、特に何も言わなかったが、どうやら僕たちの功績を喜んでくれているらしい。

 和気藹々と、僕たちは食卓を囲み、夜は更けていった。

 

「おぅ! この魚美味いな! はあとも野菜じゃなくて、これ食えよ」

「ぁたし、野菜の方が好きだしぃ。この人参のきんぴら絶品だょ?」

「祖父が裏の畑で育てているんです」

「へ~、そうなの~? この白菜も~そうかしら~」

「はい。肥料に秘密があるらしくて・・・」

 

 迎えた再出発の朝。

 僕たちは手に入れた盗賊の鍵を使って、今まで入れなかったあちこちの扉を開けて回った。

 宝箱があればかっぱらい、他人の家であれば隅々まで家探しする。

 

「そう、僕たちは・・・」

「「「「 アリアハン盗賊団! 」」」」

 

 ビシッとカッコ良くポーズを決めた。

 そりゃまあ、盗賊の鍵だし?

 勇者ってのは、家に入ってあちこち調べ回った挙句、何かを見付けたら勝手に貰っても良いものなんだ。(※ダメです)

 他の国は知らないが、少なくともアリアハンでは、それで勇者が牢屋に入れられたり、処刑される心配はない。

 

 アリアハンのお城の内部、鍵を開けた扉の先にナジミの塔へと続く階段を発見し、再探索。

 塔の中にも鍵の掛かった扉があり、宝箱の中に『すばやさのたね』があったので、僕自身が使う事にした。

 素早さの種というのは、食べた人の素早さが少しだけ上昇するもの。

 他のメンバーは、いずれ捨てるのだから、素早さの種を使うのは勿体ない。

 カリ、カリ・・・齧ってみると、甘いような、苦いような、しょっぱいような、酸っぱいような?

 いや、無味無臭だな、これ。

 美味しくも何ともなかったけど、ステータスを確認すると、素早さが「2」上昇していた。

 

 ナジミの塔の探索を終え、レーベの村に立ち寄って僕たちは、貯まっていたゴールドで新品の鎖鎌とターバンを購入。

 鎖鎌は僕の次に攻撃力の高い、じゃくが装備した。

 持ち手の部分を握ってブンブン振り回すので、危ないからと注意すると、今度は鎖の部分を持ってみたり、大きく口を開けてカマの部分を口の中に入れようとするので、慌てて止めなければいけなかった。

 じゃくに持たせて大丈夫だろうか?

 不安は拭えない。

 ターバンの方は、前から3番目に位置するくいいんが。

 くいいんの被っていた皮の帽子は、じゃくが装備した。

 

(※ここまでが前回末尾のステータスです)

 

「ゆうき、見てくれ! この皮の帽子も悪くねえな! 気に入ったぜ」

「似合いますね」

「おぅ、そうだろ? これで俺もモテモテになっちまうぜ」

「その前に、ちょっと斜めになってますよ。ほら、直しますから・・・これでよし、っと」

「ふぇ!? くぃぃん、何ゃってるのぉ!?」

「ねえ~ゆうき~、見て見て~。ミイラ~」

「ブッ!」

 

 くいいんは上半身裸になって、買ったばかりのターバンを巻き付けただけの姿になっていた。

 体のラインがくっきり浮き出て、豊満な胸が強調されて・・・

 

「・・・ゆうきにはまだ早えって。おぅ? 起きたみたいだぜ」

「ごめんなさいね~ちょっと刺激が~強すぎたみたい~」

「あれ・・・ここは?」

「武器屋の中にぁるベッドだょ。ゆうきぃ、急に倒れちゃったからぁ」

「そうでしたか。それはご迷惑を」

「気にすんなって! それより面白いもん見っけたぜ」

「これ~『とげのむち』~。ね~ゆうき~、これで今夜~遊ばない~?」

「ギャハハ! くいいん、ゆうきがまたぶっ倒れちまうぜ?」

「そんなの買いませんよ」

 

 ああ、棘の鞭ね、それ売ってるのは知ってた。

 絶対何か言い出すと思って、見ないようにしてたんだけど、見付かっちゃったか。

 でも変な事に使うだけだから、絶対に買わないぞ。

 

 武器屋の店主に、お世話になりましたと一声掛けてから、店を出る。

 次はレーベの村の東北にある、鍵のかかった家にコッソリ潜入だ。

 屋内に誰もいなかったので、何か使える物はないかと一階を家探しするも、何も発見できず。

 そのまま二階へ。

 誰もいないと思っていた家の中には、物音も、気配もなく、身動ぎ一つせず、ただじっと座っている老人がいた。

 

「はなしは すでに きいておる。

「さあ この まほうのたまで

 ふういんを とくがよい!

 

 話は聞いている・・・だと・・・?

 誰に?

 よく分からない謎の老人だ。

 僕たちは顔を見合わせると、口元に人差し指を当てて、階下で泥棒の真似事をしていたのは内密に、と合図をし頷き合った。

 そんな僕たちの不審な動きなど気にも留めない様子で、老人が僕たちに手渡したのは、黒くて真ん丸な謎の物体。

 

 僕たちは重要アイテム、『まほうのたま』を手に入れた!

 

 レーベの村を出た僕たちは、大陸の東の果てを目指した。

 ナジミの塔の最上階と同じようなモンスターと、『まほうつかい』が出現する、厳しい山間に踏み入っていく。

 こんな辺鄙な場所に、ポツンとひとつ祠がある。

 中にいた老人は、先に進むためには魔法の玉が必要だと言う。

 老人の教えに従って北へ向かうと、小さな湖のほとりに地下道を発見。

 ここで僕のLVが8になったので、一度家に戻って休んでから、レーベの村でターバンを購入。

 じゃくに装備させると、改めて地下道に足を踏み入れた。

 

「ここが いざないのどうくつじゃ。

 じゃが かいだんは

 いしかべで ふうじられておる。

 

 地下道の先にいた男に話し掛けると、この先は通れないようだ。

 だけど僕たちには魔法の玉がある。

 この真っ黒な玉は、どうやって使えばいいんだ?

 迷う僕の手から、じゃくが魔法の玉を奪い取ると、徐に壁にある松明の火に向かってかざす。

 

「何をやっているんです?」

「おぅ! これな、昔見た事あんだよ」

「そうなんですか!?」

「ここに出っ張りがあんだろ? 『どーかせん』って言ってな、火に近付けっと・・・」

 

 バチバチバチッ!

 魔法の玉の出っ張り部分が、小さな火花を放った。

 

「ゆうき、ボサッとすんな! 危ねえぞ、伏せろ!」

「ふぇぇぇ!?」

「な~に~よ~」

「いいから頭下げろ!」

 

 ドゴォン!

 

 じゃくがみんなの頭を押さえて倒れ込むのと同時だった。

 ものすごい轟音と共に、地面が大きく揺れ、砂塵が舞い上がった。

 濛々(もうもう)と立ち上る砂煙が晴れた時、道を塞いでいた壁は崩れ落ちていた。

 

 壁の先の階段を降りると、そこは手入れのされていない、ボロボロに崩れた通路だった。

 ずっと壁に塞がれていたので誰も立ち入らなかったのだろう。

 通路の各所に穴が開き、真っ暗な口を開けている。

 モンスターの気配があったので調査を行うと、新しく『アルミラージ』『おばけありくい』『キャタピラー』が出現すると分かった。

 お化けアリクイは大アリクイを強化したモンスターで、そこまで強力ではない。

 アルミラージは一角兎を強化したモンスターで、『ラリホー』を使ってくるのが厄介だ。

 新種のキャタピラーは大きな芋虫のモンスターである。

 とにかく硬くて、まともにダメージが通らない。

 どのモンスターも手強く、洞窟を少し探索するだけでHPとMPが削られ、すぐに自宅に戻って休まなければいけなかった。

 その分、経験値とお金は稼げる。

 何日か洞窟の探索を続けると、みんなのLVは10になり、くいいん用の鎖鎌も購入できた。

 くいいんは、どうしても棘の鞭が欲しいとねだったが、嫌な予感しかしないので、その要求は毅然として突っぱねた。

 

「今日も誘いの洞窟攻略に向かいましょう」

「おぅ!」

「入り口から地下一階部分の探索は概ね終了しています。今日は先日発見した階段を降りて地下二階の探索を行いましょう」

「ぁのね・・・ぇっと・・・」

「僕たちのレベルなら大丈夫です。何も問題はありませんよ」

「ぅん・・・」

 

 目の前に現れたのは4体の魔道士。

 みんな、総攻撃だ!

 僕の号令一下、全員で斬り掛かる。

 しかし敵もさるもの、最後尾にいるじゃくが集中砲火を浴びる。

 じゃくのHPは33。

 メラは防御力を無視して、10前後のダメージを受ける。

 もし11のダメージを3回受ければ、死の可能性もある。

 厄介な事に、魔道士は知恵が働くので、こちらのパーティーの誰か一人を集中攻撃してくるのだ。

 3発のメラがじゃくを襲った。

 HPが削り取られ、一気に4まで減少。

 僕はホイミで回復すべきか、残り2体にまで討ち減らした魔道士を叩くか、迷ったが、ここは総攻撃で先に倒してしまうべきだと判断。

 魔道士がメラの準備をしている間に、辛うじてやっつける事に成功した。

 

 ホイミでじゃくの傷を回復し、出口を目指した僕たちの目の前に現れたのは、またしても魔道士の群れ。

 残りMPはルーラ1回分のみ。

 魔法を温存しなければいけなかったので、僕のHPは31に減ったままだった。

 総攻撃の指示をしたのに、みんな従わず。

 魔法を唱える魔道士の目の前で、ニコニコ笑っている。

 僕の一撃で魔道士を1体倒したものの、残る3体の魔道士のターゲットは僕だった。

 メラの炎が僕の皮の鎧を焼き、焼け焦げた匂いが漂う。

 靴やズボンにも火が点き、僕は地面を転がって火を消した。

 2発のメラと魔道士の攻撃により、僕のHPは一桁になった。

 止むを得ず、僅かなMPをホイミに回そうと詠唱を行っている僕に向かって、メラの炎が・・・

 

 熱い・・・苦しい・・・

 

 猛烈な痛みと絶望感。

 僕はそのまま意識を失った・・・

 

 

 

「・・・ゆうき、起きなさい。今日は誘いの洞窟へ向かう日でしょう」

「・・・ん、おはよう」

「おぅ、遅えぞゆうき!」

 

 あれ?

 僕は確か、みんなと誘いの洞窟を探索していた筈では?

 

「今日は誘ぃの洞窟のぉ、初探索だょね」

「初・・・探索・・・?」

「そぉ言ってぃなかったぁ?」

「そうでしたね」

「どんなモンスターが出るか、確かめながら進むんだろ?」

「ああ・・・」

「おぅ、まだ寝ぼけてんのか? シャキッとしろよ」

「一角兎と大アリクイの強いやつが出るんです」

「ふぇ!?」

「なんで~知ってるの~?」

 

 そうだ、今日は誘いの洞窟の本格探検を始める日だ。

 なんでだろう、僕はずっと誘いの洞窟を歩き回っていたような気がする。

 出てくるモンスターも、直感的に分かるぞ。

 そして僕のカンは当たっていた。

 僕が出現モンスターを言い当てた事に、みんな目を丸くして驚いた。

 何故かと問われても、何とも答えようがない。

 行った事もないし。

 そんな気がしただけだ。

 

「夢のお告げよ!」

 

 右の親指を顔の横で突き立てて、僕は自信満々に言っておいた。

 魔道士の炎に包まれて焼き殺されたような気がしたけど、あれは悪い夢を見ていたんだ!

 宝箱の中にあった『せいなるナイフ』を、はあとに手渡しながら、僕はそんな事を考えていた。

 

 

 

なまえ :ゆうき

そうび :くさりがま、かわのよろい、かわのたて、かわのぼうし

呪文  :メラ、ホイミ、ニフラム、ルーラ

レベル :8

  23:ちから

  18:すばやさ

  24:たいりょく

  13:かしこさ

   8:うんのよさ

  49:さいだいHP

  18:さいだいMP

  47:こうげき力

  27:しゅび力

1720:EX

 

 

なまえ :じゃく

そうび :くさりがま、たびびとのふく、ターバン

レベル :10

  12:ちから

  25:すばやさ

  23:たいりょく

  19:かしこさ

 101:うんのよさ

  40:さいだいHP

   0:さいだいMP

  36:こうげき力

  28:しゅび力

1720:EX

 

 

なまえ :くいいん

そうび :くさりがま、たびびとのふく、かわのたて、ターバン

レベル :10

   9:ちから

  20:すばやさ

  25:たいりょく

  16:かしこさ

 109:うんのよさ

  53:さいだいHP

   0:さいだいMP

  33:こうげき力

  30:しゅび力

1720:EX

 

 

なまえ :はあと

そうび :せいなるナイフ、たびびとのふく、かわのたて、ターバン

レベル :10

  10:ちから

  21:すばやさ

  23:たいりょく

  18:かしこさ

 106:うんのよさ

  47:さいだいHP

   0:さいだいMP

  24:こうげき力

  30:しゅび力

1720:EX

 

 

 

所持金:648ゴールド

死亡回数:ゆうき×1回

プレイ時間 (執筆時間を含む):約480分

累計プレイ時間:約1730分

 

※今回は誘いの洞窟で、ゆうきが死んてしまいました。前話で描いたように、ゆうきの強い希望により、教会で『いきかえらせる』は選択しません。誰かが死んだ時点でゲームオーバー、以前のセーブ地点からやり直します。その時の出来事は、まるで夢だったかのように薄っすらと記憶の片隅にあるものとして進行していきます。




なかがき (次回の更新時期について)

ここまで毎週日曜日の更新を行ってきましたが、次話「6週目」は更新できない可能性が高いと思います。ここハーメルンではなく他サイトで、10月12日~14日にかけて、2本(もしかしたら3本)の短編を新規公開する予定です。そちらの執筆と確認作業に時間を取られてしまいますので、本作の更新は間に合わないと思います。もし間に合えば次週10月16日も公開しますが、一応、次回更新は10月23日(日)の予定です。

ここまでお読み頂き、有難うございました。次回更新まで間が空きますが、楽しみにお待ち頂ければ幸いです
 m(_ _)m


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6週目 トンネルを抜けるとそこは雪ぐ・・・ロマリアであった!

 死ぬほど怖い夢を見た僕は、今まで以上に慎重な行動を心掛けた。

 

「おぅ、ゆうき、早く先に進もうぜ!」

「ダメです。嫌な予感がするんです。この先に進むのは危険だと」

「ぁたしも、そぅ思ぅょ?」

「けどよ、もう飽きちまったぜ」

「もう少しレベルを上げましょう」

「それがぃぃと思ぅょ」

「いつまで続けんだよ?」

「そうですね、僕のレベルが10になるまで、外か洞窟入り口付近で経験を積みましょう」

「いやいや、もう十分だろ」

「分かりました。では、じゃくとはここでお別れですね。今までご苦労様でした、サヨナ・・・」

「さっ! はあと、くいいん、さっさと準備しろ! 今日も元気に狩りに行くぜ! 楽しいレベル上げ、レベル上げっ!」

 

 問題は、誘いの洞窟の内と外、どちらが効率よく経験値を稼げるかという点だ。

 モンスターの強さは洞窟内の方が上で、一度の戦闘で得られる経験値も間違いなく多い。

 その分HPの減りが早くなるので、何往復もする必要がある。

 移動時間も考慮すれば、一度の戦闘経験値が減っても外で狩りをする方が良さそうだ。

 アリアハンから誘いの洞窟まで、歩いて行くだけで陽が傾き始めるから、野宿の準備も必要になる。

 家を出る前、これからは毎日帰れなくなるかも知れないと告げると、母親は一瞬、寂しそうな表情を浮かべてから、そうなのね、と一言だけ呟いた。

 

「いや、毎日は無理でも、なるべく帰って来るよ」

「おぅ、ゆうきのかーちゃん! 任せてくれ。俺らが付いてんだ、大船に乗ったつもりでいてくれや」

「そうよ~、ゆうきに悪い虫が付かないように~、私が見張っておくわ~」

「ギャハハ! 悪い虫はオメーだろ、くいいん」

「なによ~それ~」

「そぉやってぇ、すぐ脱線するのぉ、良くなぃと思ぅょ」

「そうです、今は毎日帰って来れるかどうかの話をですね・・・」

「こまけえ事はいいんだよ!」

「とにかく! 僕のルーラがあるから、MPに余裕があれば家に戻るようにする。でもMPに余裕がなくなって、外で泊まる日も出てくると思う。だからあまり心配しないで。毎晩、家の前で待ってなくていいからね」

 

 こうして、僕たちアリアハン道化団の、レベル上げの日々が始まった。

 お金には余裕があったので、初日の行きがけにレーベの村に立ち寄り、はあとのための鎖鎌を購入。

 聖なるナイフを売った分も合わせれば、まだお金には余裕があった。

 じゃくが欲しそうにしている『ぶどうぎ』を試着させると、ものすごく着心地が良いらしい。

 ステータスも旅人の服より上昇した。

 僕は装備できないので、はあと、くいいんの分も合わせて3着購入した。

 くいいんが食い入るように棘の鞭を見ているのを、引きずるようにレーベを離れると、もう二度と近寄らないぞと心に誓った。

 MPが切れてルーラが使えなくなった時も、レーベの宿屋には立ち寄らず、疲れた体と腹ペコのままアリアハンの自宅まで歩いて帰るのだった。

 

 食料も水も多めに用意して、2日~3日に一度家に戻る。

 そんなルーティーンを繰り返すと、僕のレベルが9になり、暫くしてみんなのレベルは11になった。

 お金は貯まる一方だが、棘の鞭を含め、買うべき装備品はない。

 宿代もかからないので、必要になるのはバブルスライムに毒攻撃を受けた際の毒消し草代くらいなもの。

 貯金残高を殖やしながら、ただひたすらモンスターを倒し続けた。

 

 一ヶ月、二ヶ月・・・。

 どれだけの月日が経っただろうか。

 僕のレベルが遂に、目標だった10に到達。

 誘いの洞窟内での戦闘も、以前より楽になり、先へ進むのに十分だと思えた。

 それをみんなに告げると、じゃくなど特に大はしゃぎして、すぐに行こう、今日行こうと、ベッドに腰掛ける僕の手を引く。

 せめて一晩ぐらい、ゆっくり休ませてくれ・・・。

 

 ―――パチ、パチン。

 

 頬に微かな痛み。

 耳元で音が鳴る。

 

「おぅ、ゆうき! 早く起きろよ!」

「・・・ん・・・もう朝ですか?」

「おぅ! さあ行くぜ!」

「・・・朝食もまだじゃないですか・・・」

 

 まだ陽も昇らぬ早朝。

 じゃくは誰より早く起きると、ぐっすり眠っていた僕を叩き起こした。

 続いてくいいん、はあとの枕元に立つと、大きな音を立てて頬を叩いた。

 甘美な声を上げるくいいん、泣きそうなはあとをベッドから引きずり出し、寝巻のまま手を引いて家を出ようとするじゃくを、何とか制止しなければいけなかった。

 ・・・子供かっ!

 

 すっかりテンションが上がったじゃくは、ぴょんぴょん飛び跳ねながら誘いの洞窟へ向かう。

 モンスターを前にしても飛び跳ねているので、どちらが一角兎か分からない。

 洞窟内に入ってもテンションは落ち着かず、通路のあちこちに空いている穴を飛び越えようとして、何度も落下。

 その都度、入り口付近の階段から昇らなければいけないので、逆に洞窟攻略に時間がかかったように思う。

 

 MP温存のため、幾つかの薬草を消費。

 思ったより楽に誘いの洞窟の最深部に到達した。

 盗賊の鍵を使って開けた扉の先に、白と青に渦巻く空間があった。

 ワープホールである。

 この先に何があるか分からないからと、僕が注意する間もなく飛び込む、じゃく。

 しょうがないわねと肩をすくめる、くいいんと顔を見合わせる。

 不安そうな顔で尻込みする、はあとの背中を押すように、僕たちも渦の中へ飛び込んだ。

 

 長いトンネルを抜けると、目の前には海が広がっていた。

 三方を海に囲まれた岬の先。

 じゃくは茂みの向こうにお城が見えると言う。

 自慢の跳躍力でジャンプしたら見えたらしい。

 

「ようこそ ロマリアのおしろに!

 

 敵に出会う事なく、すぐ目的地に到着。

 城門脇の衛兵に声を掛けると、ここはロマリアというお城のようだ。

 真っ直ぐ進めば城内。

 その道の左右には、お店や宿屋が立ち並んでいる。

 

「この先、誘いの洞窟より更に強い敵も出てくるでしょう。このお城の基本的な武器・防具を調べてみましょう」

「賛成ぃ」

「おぅ、おもしれーモンがあるかも知れねえしな」

「そうね~、夜のおもちゃがあると良いのだけれど~」

「エッ!? 夜のおもちゃ?」

「ギャハハ! くいいん、お前はそれしかねえのか」

「ぁのぁのっ・・・」

「だって~男女のウ・フ・フは~、人類にとって一番大切なのよ~」

「ギャハハ! 違げえねえ!」

「でしょ~? だからゆうき~・・・」

「お断りしますっ!」

「まだ何も~言ってないのに~」

 

 くいいんの話を聞く必要はない。

 どうせロクな事を言わないのだから。

 くいいんを半ば無視するように、武器屋の軒先に並んでいる武器を物色する。

 やはり、アリアハンより品揃えが良い。

 武器が高品質なのは、需要があるからだ。

 つまりアリアハンより強い敵が多いのだろう。

 お金はたっぷり貯まっているので、まず一番高品質そうな『はがねのつるぎ』を自分用に購入。

 お値段は1500ゴールドと、鎖鎌の3倍ほどするが、攻撃力は9も上昇した。

 

「これは良さそうですね。じゃくもどうですか?」

「う~ん・・・イマイチだな」

「ねぇ~、こっちの『てつのやり』なんてどう~?」

「どうって聞かれても」

「長くて~太くて~、これ~・・・はぁ~っ・・・はぁ~」

 

 くいいんは、おかしな目つきで鉄の槍を手に取っている。

 何を妄想して頬を上気させているのか知らないけど、くいいんに渡すのは危険な気がするぞ。

 防具の方では『くさりかたびら』と『せいどうのたて』が最も良い品のようだ。

 自分用にこれらを購入し、装備してみると、今までの皮の鎧、皮の盾より防御力は10以上も上がった。

 他のメンバーに薦めるも、みな首を横に振る。

 どうやら好みではないようだ。

 自分の装備品が整っただけで満足しよう。

 

 道具屋も軽く覗いた後、階段を昇って玉座の間へ。

 そこにいた大臣からも、何やら頼み事があると言われた。

 そのまま王様との謁見に臨む。

 

「どうか わがおうの たのみを

 ききとどけてくだされ!

 

「よくぞ きた!

 ゆうしゃオルテガの うわさは

 ききおよんでおるぞよ。

「では たのみが ある!

 カンダタというものが

 このしろから きんのかんむりを

 うばってにげたのじゃ。

「それを とりもどせたなら

 そなたを ゆうしゃとみとめよう!

 さあ ゆけ ゆうきよ!

 

 いや、別に勇者として認められなくても構わないが?

 まあ困っているというなら、力になろうじゃないか。

 という事で、次なる目的はカンダタ退治と、『きんのかんむり』の奪還だ。

 でもロマリアに来るだけで死ぬ思いをした僕たちが、この城の最新鋭の装備を持った衛兵たちでも相手できない、カンダタなる者に勝てるだろうか?

 

「これはまた暫く、レベルを上げないと進めないかも知れませんね」

「えぇ・・・ゆうきよお、さっさと先に進もうぜ?」

「分かりました。ではじゃく、今まで有難・・・」

「よし! そうと決まれば早速レベル上げだ! 行くぞ、くいいん! はあと!」

 

 満場一致で異論も出ず、レベル上げに勤しむ運びとなった。

 取り敢えず、ロマリア周辺のモンスターの調査を行う。

 あまり城から離れないように注意しながら、出現モンスターを調べると、今まで出会ったモンスターとしてはアルミラージ、魔法使い、キャタピラーが。

 出会った事がないモンスターとしては、『ポイズントード』『アニマルゾンビ』『さまようよろい』の3種類が出現すると判明した。

 ポイズントードは、見た目はフロッガーに似ているが、その名の通り毒攻撃をしてくる。

 しかもバブルスライムより高確率で毒を受けるので厄介だ。

 アニマルゾンビは腐った犬の死体だ。

 素早さを下げる『ボミオス』という呪文を使ってくる。

 彷徨う鎧は、特殊で厄介な技能は使って来ないものの、とにかく攻撃力と防御力が高い。

 頑丈な盾で弾かれると、新品の鋼の剣でも折れてしまいそうなほどだ。

 

「おぅ、ゆうき。経験稼ぎはいいけどよ、ロマリアを拠点にした方が良くねえか?」

「なるべく家に帰る、母親とそう約束しましたので」

「けどよ、アリアハンまで往復するとMP消費するだろ。その分、狩りの効率落ちねえか?」

「分かっています。それでも、です」

「宿屋泊まったって大した金額じゃねえぜ」

「往復すると~、ホイミ一回しか~使えなくなっちゃうわね~」

「ゆうき、僅か12ゴールドをケチって効率悪くなったら意味ねえだろ」

「ぁのね、小さなメダルまた会ぉぅ、って言ぅからね、ぁのっ」

「え? なんて?」

「ギャハハ! はあと、それを言うなら塵も積もれば山となる、だろ!」

「ふぇ!? そぅ言ったょ!」

「小さなメダルまた会おう・・・塵も積もれば山となる・・・これを翻訳できる、じゃくも大したものです」

「おぅ、長い付き合いだからよ」

「とにかく、効率は悪くても家に戻って休みましょう。異論は認めません」

 

 何はともあれ、強力な新モンスターを前にして、僕たちは更なるレベルアップの必要性を感じていたのだった。

 

 

 

なまえ :ゆうき

そうび :はがねのつるぎ くさりかたびら せいどうのたて かわのぼうし

呪文  :メラ ホイミ ニフラム ルーラ

レベル :10

  30:ちから

  22:すばやさ

  32:たいりょく

  15:かしこさ

   9:うんのよさ

  65:さいだいHP

  20:さいだいMP

  63:こうげき力

  40:しゅび力

3443:EX

 

 

なまえ :じゃく

そうび :くさりがま けいこぎ かわのたて ターバン

レベル :12

  14:ちから

  27:すばやさ

  31:たいりょく

  20:かしこさ

 116:うんのよさ

  59:さいだいHP

   0:さいだいMP

  38:こうげき力

  35:しゅび力

3443:EX

 

 

なまえ :くいいん

そうび :くさりがま けいこぎ かわのたて ターバン

レベル :12

  11:ちから

  22:すばやさ

  29:たいりょく

  18:かしこさ

 120:うんのよさ

  61:さいだいHP

   0:さいだいMP

  35:こうげき力

  33:しゅび力

3443:EX

 

 

なまえ :はあと

そうび :くさりがま けいこぎ かわのたて ターバン

レベル :12

  11:ちから

  23:すばやさ

  32:たいりょく

  19:かしこさ

 116:うんのよさ

  66:さいだいHP

   0:さいだいMP

  35:こうげき力

  33:しゅび力

3443:EX

 

 

所持金:2092ゴールド

死亡回数:ゆうき1回

プレイ時間 (執筆時間を含む):約520分

累計プレイ時間:約2250分

 

※今回のプレイ日記のように、僅かな宿代でも浮かせて装備やアイテム購入に充てたい場合に、少しだけ得をする裏技。ロマリアの王様に会った後、ルーラでアリアハンに戻り自宅で休んでから(王様に会ってセーブするのではなく)ルイーダの酒場でセーブします。リセットしてロードすると、アリアハンではなくロマリア(最後に会った王様の前)から再出発になります。MPもルーラ1回分お得!




なかがき (次回の更新時期について)

こちらの「特別編」第6話部分、ロマリアに到着するまでの様子を、ノベルアッププラスで公開中の「通常版」でも纏める作業がありますので、また次週も休載になる可能性があります。また、同じノベプラの方で、この機に新しいイベント用短編も描くかも知れませんので、その場合はほぼ確実に一週間空いてしまうと思います。

というわけで、来週30日の更新については未定です。次話更新まで、暫くお待ちください
 m(_ _)m

11月にはワールドカップが始まるので、更に更新が遅くなりそうな・・・(小声)


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7週目 毒針は誰も装備出来なかった!

 苦労の末、ロマリアに到着した僕たちアリアハン道化団。

 更なる強化の必要性を感じ、ロマリアを拠点に自宅との往復を繰り返した。

 

「じゃく、これを。絶対に手放さないで、昼夜を問わず大切に持っていてくださいね」

「お、おう・・・」

「絶対に、絶対ですよ?」

「それはフリか? 押すなよ、押すなよ?」

「ち! が! い! ま! す!」

「じゃあ、なんだよ?」

 

 ロマリアの武器屋で売っていた、750ゴールドの『てつのやり』。

 どれほどの性能か調べるため、一本だけ購入してみた。

 鎖鎌と比べて、値段も攻撃力も、そこまでの差はない。

 もしこれが良品であれば、よだれを垂らし荒い息で見ている、くいいんと、オロオロしている、はあとの二人にも買い与えるところなのだが・・・

 

 ・・・なぜ肌身離さず持っているように言ったのかは、説明するまでもあるまい。

 

 新品の鉄の槍を、じゃくの胸元にしっかり抱かせる。

 鍵の付いた宝箱があれば、その中にでも入れておきたいほどだ。

 

 ロマリアの周辺のモンスターは、そこまで強力ではない。

 朝一から狩りを始めて、陽が沈む頃になっても、まだ余裕がある。

 そして陽が落ちてくると、昼間とは違うモンスターも出現した。

 背中に蝙蝠の羽根を持った『こうもりおとこ』だ。

 この敵は『マホトーン』を使ってくる以外、大した能力はない。

 マホトーンは、こちらの呪文を封じる呪文だが、僕たちアリアハン道化団には無意味と言って良い。

 攻撃も防御も、他のモンスターと大差ないか、むしろ弱い。

 それなのに経験は多めなので、なるべく蝙蝠男を狙おうと決めた。

 その他、昼間に出会う彷徨う鎧は、『ホイミスライム』という回復呪文を使う仲間を呼ぶので、昼はこのホイミスライムを狩って経験を稼ぐのも美味しかった。

 

 そんな日々を過ごすうち、僕のレベルが11になり、『ギラ』の呪文を覚えた。

 敵1グループを炎熱で包み込む呪文だが、MPが少ない僕は試しに一度使っただけで、もう使う機会はなさそう。

 それから程なくして、みんなのレベルも13に上昇した。

 

「なあ、ゆうき。もうちょっと違う場所にも行ってみねえか?」

「違う場所ですか」

「おぅ、経験値稼ぎはいいけどよ、少し飽きちまっ・・・」

 

 僕が一瞬、鋭い眼光をして「ここでお別れですね」と口にする気配を察したか、じゃくは慌てて前言を打ち消す。

 

「・・・じゃねえ、なんていうか、そのな」

「ピクニック~、みたいで楽しそうね~」

「ぁたしはぁ、このままぉ城の周りをゥロゥロしてぃるだけでぇ、楽しぃょ?」

「う~ん」

「ほら、この辺りのモンスターなら問題ねえだろ? ちょっとだけ! な!?」

「そうよ~。先っぽだけ~、先っぽだけだから~」

「ギャハハ! くいいん、それは男が言うセリフだぜ!」

「でもぉ、ぁたし、潮風も好きだしぃ」

「あら~奇遇ね~。私も~潮は大好きよ~? ビクンビクンしちゃったりして~」

「ふぇ!?」

「ギャハハ! くいいん、それは潮違いだぜ? で、潮を吹く方と吹かせる方、どっちだ?」

「どっちも~好きよ~。ねえ~ゆうき~、今夜どう~?」

「・・・はぁ、分かりました。では少しだけロマリアを離れて、違う景色も見てみましょうか」

「おぅ! やったぜ! どっちに行くんだ? 北か東か西か」

「取り敢えず北ですかね」

「やったわ~。ゆうきが~、とうとうOKし・・・」

「してません! そっちの話じゃないです!」

「あら~、新しい景色を~教えてあげようと思ったのに~」

「結構ですっ!」

 

 ロマリアの城は岬の南端からやや北側にある。

 南は海だから、一度、北の方角へ向かい、それからどちらへ進むか考えた。

 西側は大きな川と険しい山に囲まれ、進めそうにない。

 東はやや広くなっていて、森と平野が広がっている。

 北は険しい山の合間に、細い獣道が続いている。

 

「山間はモンスターに出会いやすい場所です。そこを避けて、東へ向かってみましょうか」

「おぅ、ゆうきに任せるぜ!」

「ピクニックの~お弁当も作ったのよ~」

「ぁのっ・・・」

「はあとも~、一緒に作ったのよね~?」

「ぅん」

「では、少し休憩しましょう」

 

 女性二人の手作りお弁当。

 好天の中、やや広くなった場所に布を敷いて、みんなで手作り弁当を楽しんだ。

 母親から教わったという直伝おにぎりの具は、僕の大好きな魚介類。

 僕にとっては食べ慣れた味だが、じゃくは初めてだったらしく、大きな大きなおにぎりを、それ以上に大きな口を開けて頬張る。

 その様子を見て、僕は自分の口元を指さしながら言う。

 

「じゃく、ここ、ここです」

「おぅ?」

「ほらぁ、じぃっとしてぃてねぇ」

「な、なんだよっ」

「ぅふふっ、取れたょぉ」

 

 じゃくの唇の下に白いご飯粒が付いていたのを、はあとが人差し指で取ると、そのまま自分の口に放り込んだ。

 柄にもなく照れるじゃく。

 う~ん、この二人、良い雰囲気じゃないか。

 くいいんがそれを真似て、唇にわざとご飯粒を付け、「ゆうき~、ん~」などと目を瞑りながら迫って来るので、鞘に入ったまま鋼の剣で思いっきり殴り付けておいた。

 きゅう~、と目を回して倒れたが、ホイミをかける必要はないだろう。

 

 一休みした後、僕たちは更に東へと向かった。

 南側には深い森、北側には険しい山々。

 森の先には大きな川と、そこに架かる一本の橋も見えた。

 川を渡ったら、強い敵が出そうだ。

 相談の結果、橋は渡らず、その手前を散策するに留めた。

 今までと同じ敵しか出ないだろうと思っていたら、予想に反して全く新しい敵が出現。

 雲の形をした『ギズモ』と、大きな猿のモンスター『あばれザル』の二種類だ。

 ギズモの方は、魔道士の上位互換で、メラを使ってくる以外大した事はない。

 問題は暴れ猿の方だ。

 やたら攻撃力が高く、一撃で20ポイント前後もHPを持って行かれる。

 これが3体まとめて襲って来たのだ!

 

「みんな、暴れ猿です」

「おぅ!」

「あの巨体から繰り出す攻撃に注意ですよ!」

「分かったわ~」

 

 全員攻撃で3匹のうち1匹の息の根を止めた。

 その間に、はあとが狙われ、HPは残り30余りに。

 あと2撃で死にかねない危険水域だ。

 防御を固めるべきか?

 一瞬迷ったが、残り2匹のうち1匹を先に仕留めれば、危険はなくなる。

 総攻撃だ!

 だけど、この判断は失敗だった。

 巨体に見合わぬ素早さで、暴れ猿が強烈な一撃を放つ。

 はあとの顔面に暴れ猿の拳が食い込んだ。

 続いてもう一匹の暴れ猿が体当たりをすると、はあとの体は大きく跳ね飛ばされ、無機物のように地面に転がった・・・

 

 

 

「・・・おぅ、ゆうき。起きたか!」

「ぉはょ、朝ご飯用意してぁるょ」

「今日は~ピクニックに行くのよね~。お弁当~作ったわ~」

「くぃぃんとぉ、二人でぇ、ねっ」

「ね~」

「そう言えばそうでしたね」

「寝ぼけてんのか?」

「ちょっと悪い夢を見ていたみたいです」

「じゃあ~私が~、慰めてあげよっか~」

「いえっ! 結構です!」

「あら残念~。でも~気が変わったら~、いつでも言ってね~」

「それより、今日の予定を変更しましょう。ロマリアの東を見に行く予定でしたけど、何だか嫌な予感がします。今日は北の山に向かいます」

「おぅ、そうか。どっちでも構わねえぜ、ゆうきに任せる」

 

 こうして僕たちは北の山へ向かった。

 険しい山道の手前でお弁当を広げる。

 僕の大好きな、巨大おにぎりをパクつくと、じゃくの口元にご飯粒が・・・何だか既視感。

 楽しい昼食を終え、山道を進むと、新しく『キラービー』と『ぐんたいガニ』が出現するようになった。

 キラービーの方は、さそり蜂と同系統のモンスターで、攻撃を受けると時折マヒしてしまう。

 遊び人三人衆は、元から攻撃の指示に従わず遊んでばかりなので、マヒしていてもさほど影響はない。

 問題は僕自身がマヒしてしまった時だ。

 戦力的に、他の3人だけでは厳しい戦いになる。

 軍隊蟹の方はと言えば、堅固な殻に覆われていて、ダメージがほとんど通らない。

 まともにダメージを与えられるのは、鋼の剣を持った僕だけ。

 しかも仲間を呼ぶ習性があるので面倒だ。

 ただ経験値は多いので、ロマリア周辺からやや北側に狩場を移し、レベルアップに励んだ。

 

 それと前後して、山中で村を発見。

 カザーブという名の集落だった。

 辺鄙な場所にある小さな村なのに、武器屋を覗くと良品が揃っている。

 中でも『てつのよろい』と『てつのたて』は、ロマリアで購入したばかりの鎖帷子、青銅の盾の上位互換だ。

 じゃくに装備したいか尋ねると、こんなの面白くないから嫌だそうだ。

 はあと、くいいんも首を横に振るので、自分用に買い揃え、今までの装備は売り払った。

 僕の防御力は更に10ほど上昇。

 周囲での狩りは少し楽になった。

 

 山道でモンスターを倒し、陽が落ちたので一休みのためカザーブを訪れた、ある日の夕暮れ。

 どこのお店も既に閉まっていた。

 いつもの道具屋の前を通ると、店はすっかり寝静まって、カウンターには誰もいなかった。

 いつも店を覗いた時に、店主が大事そうに品物を入れていた宝箱が2つ、置きっ放しである。

 

「おぅ、ゆうき。見ろよ」

「見えてます」

「あの宝箱さ、何が入ってんだろな?」

「さあ?」

「店主が寝ている今なら、こっそり入って貰っても良いんだよな?」

「ふぇ!?」

「ぐっへっへ」

「あら~、悪い顔~」

「そう! 僕たちは・・・」

 

「「「「 アリアハン盗賊団! 」」」」

 

 ポーズも決まった!

 

 お店の裏側は、鍵の掛かった扉。

 盗賊の鍵を使って忍び込む。

 店主はスヤスヤと寝息を立てていた。

 起こさないよう、物音を立てずに、抜き足、差し足、忍び足・・・そっと宝箱を空けた。

 

 ゆうきは『どくばり』と『こんぼう』を手に入れた!

 

 毒針は、ダメージが1で固定される代わりに、一定確率で急所を突き刺し、即死させる武器だ。

 つまり攻撃力の乏しい遊び人たちも、これを使えば戦力になる!

 はあとが恐る恐る、といった感じでそっと手を伸ばす。

 結論。

 怖いから、面白くないから持ちたくない。

 だそうだ。

 せっかくの武器なのに、誰も装備出来なかったよ・・・。

 仕方がないので道具屋に売りに行くと、たったの7ゴールドだと言う。

 安売りせず預り所に保管した。

 

 それからも僕たちアリアハン盗賊団は、ロマリアとカザーブの周辺で狩りを続けた。

 じゃくが、もっと北に行こうとか、東の方を見に行こうとせっつくので、制止するのが大変だった。

 僕たちは弱い。

 安全第一だ。

 もう1レベル上がるまで我慢するよう、じゃくを説得し、代わりにレベルが上がったら先に進むと約束。

 じゃくも何とかモチベーションを保ち、狩りに励んだ。

 

 そして遂に僕のレベルが12に到達、新しく『アストロン』を覚えた。

 味方全員が鉄の塊になり、動けなくなる代わりに、一切の攻撃を受け付けなくなる呪文だ。

 うん、使わないな!

 

「おぅ、ゆうき! 約束だぜ、次の場所に行こうぜ!」

「全員レベルが上がってからですよ?」

「こまけえ事はいいんだよ!」

「ぁのっ、ぁの・・・」

「全員のレベルが上がり次第、東の橋を渡って、少し先へ行ってみましょうか」

「そう来なくちゃ!」

 

 橋を渡った先にある森を歩き、ギズモの群れを撃退し、暴れ猿の群れを退治し、『キャットフライ』という魔物の群れに出会ったところで・・・僕はまた意識を失った・・・。

 

 

 

なまえ :ゆうき

そうび :はがねのつるぎ てつのよろい てつのたて かわのぼうし

呪文  :メラ ホイミ ニフラム アストロン ギラ ルーラ

レベル :12

  36:ちから

  26:すばやさ

  41:たいりょく

  17:かしこさ

  12:うんのよさ

  80:さいだいHP

  23:さいだいMP

  69:こうげき力

  52:しゅび力

6969:EX

 

 

なまえ :じゃく

そうび :てつのやり けいこぎ かわのたて ターバン

レベル :14

  16:ちから

  28:すばやさ

  37:たいりょく

  21:かしこさ

 125:うんのよさ

  71:さいだいHP

   0:さいだいMP

  44:こうげき力

  36:しゅび力

6969:EX

 

 

なまえ :くいいん

そうび :くさりがま けいこぎ かわのたて ターバン

レベル :14

  13:ちから

  23:すばやさ

  36:たいりょく

  20:かしこさ

 129:うんのよさ

  75:さいだいHP

   0:さいだいMP

  37:こうげき力

  33:しゅび力

6969:EX

 

 

なまえ :はあと

そうび :くさりがま けいこぎ かわのたて ターバン

レベル :14

  13:ちから

  25:すばやさ

  38:たいりょく

  20:かしこさ

 127:うんのよさ

  78:さいだいHP

   0:さいだいMP

  37:こうげき力

  34:しゅび力

6969:EX

 

 

 

所持金:7165ゴールド

死亡回数:ゆうき1回 はあと2回

プレイ時間 (執筆時間を含む):約600分

累計プレイ時間:約2850分




なかがき (次回の更新時期について)

「またか!?」
という感じですが、次回更新についてです。前回(先々週)書いていた、他サイトで公開する通常版の方が出来ませんでした。ちょっと他のイベント作品(謎解き学園)を作っていまして、ほぼ進んでいません。ですので、また一周お休みして、改めて通常版の編纂作業を行う予定です。同時に、前回後書きでも触れたノベプラ企画モノもやろうと思っていますので、次回更新は再来週、20日の予定になります。

その後はサッカーワールドカップを見るので、また少し空いてしまうかも知れません。ここまでお読み頂き、有難うございます。次回更新、その後の更新も気長にお待ち頂けると嬉しいです
 m(_ _)m


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8週目 カンダタ一味はあまりにも強敵だった!

 何度目だろう?

 僕が、仲間が死ぬ夢。

 あまりにもリアリティのある苦痛、恐怖、悲哀、絶望。

 本当に夢なのか?

 

「みんなに相談があります」

「おぅ、どうした?」

「深刻な顔ね~、パフパフして落ち着く~?」

「実はですね、また嫌な夢を見まして」

「なんでえ、そんな事か! 気にすんな! 魔王っての倒すんだろ? 足踏みしてらんねえぜ!」

「まあ・・・そうですね。ただ嫌な予感がしますので、薬草をたっぷり買って行きましょう」

「ぁたしも、それがぃぃと思ぅょ?」

「橋の東は危険だと、僕の勘が告げています。今回は西を目指します」

「おぅ、ゆうきに任せる!」

 

 持てるだけの薬草を買い込み、カザーブの村から西へと向かった。

 山間を抜け、海岸沿いの平原へ。

 急に強い敵が出て来るのではと慎重に進んでいくが、昼も蝙蝠男が出るようになった以外、変化はなかった。

 軍隊蟹の群れに苦戦しつつ、橋を越え森を彷徨い、陽が暮れればルーラで自宅に戻る。

 そんな探検を数日送ると、カザーブから丸一日歩いた森の中で巨大な建造物を発見。

 恐る恐る中へと侵入する。

 

「ここが あくみょうたかい

 シャンパーニのとう だぜ!

 

 塔の1階で出会った怪しい男。

 悪人面、盗賊風の格好。

 自分で「悪名高い」なんて言っちゃうのか?

 もう逮捕しちゃって良いのでは?

 王様の元まで連行すれば、牢獄に拘禁しておいてくれそうだ。

 しかし王命は、こんな小物退治ではない。

 カンダタという盗賊の頭目を退治し、金の冠を奪い返すことだ。

 

 例によって、出現モンスターの調査。

 外にいるモンスターと、ほぼ変わらない。

 彷徨う鎧、軍隊蟹、蝙蝠男、ギズモなどだ。

 

「見て、宝箱がぁるょっ」

「おぅ、こりゃ盗賊が溜め込んだ金塊だな!」

「あら~いっぱいあるわ~」

「くっくっく」

「げっへっへ」

「うふふ~」

「ぁのぁのっ。ぁたしたちぃ・・・」

 

「「「「 ・・・アリアハン盗賊団! 」」」」

 

 有難く旅の資金として頂戴した。

 王城の秘宝も、民家や商店の品々も、そして盗賊のお宝も、全て僕たちのもの!

 僕は何一つ間違っちゃいない!

 キリッ!

 

 隅々まで探索しつつ、シャンパーニの塔を攻略していく。

 薬草も買い込んだが、僕のMPが尽きたら余裕のあるうちに撤収。

 数日かけて塔の上層を目指すと、3階からは遭遇するモンスターにも変化が。

 今までの敵に加えて『おばけキノコ』『どくイモムシ』が出現。

 お化けキノコはHPが低い。

 何か特殊攻撃をしてきそうなので、真っ先に倒す。

 毒イモムシは、その名の通りの毒攻撃をしてくる。

 しかも単純な毒攻撃ではなく、全員に『どくのいき』を吐きかけ、一気に数人が毒に冒されてしまうのだ。

 毒消し草には限りがあるので、何度も買いに戻る羽目になった。

 

「この とうには 

 とうぞくどもが

 いるらしいぜ。

 

 3階で出会った怪しい男。

 いやいや、お前が「盗賊ども」だろ?

 逮捕しちゃうぞっ!?

 と思ったが、やはり小物を捕まえている場合ではないので放置。

 

 更に上層に進むと、鍵の掛かった大きな部屋があった。

 ガチャリ。

 盗賊の鍵で堂々と正面から侵入。

 中にはテーブルと椅子が並んでいて、数人の男が賭け事に熱中していた。

 僕たちに気付くと、変な奴が来た、お頭に報せに行こうぜ、と逃げ出す。

 はは~ん、さてはこいつらが指名手配犯だな!

 じゃくと顔を見合わせ、大きく頷き合うと、後を追った。

 

 階段を昇った先に、先刻の男たちと、一際大柄な男が待ち構えていた。

 顔を覆う緑のマスク、上半身裸に海パン一丁の、怪しい風体をしている。

 プロレスラーかっ!

 椅子の横に置いてあった大斧、ハルバードだろうか。

 小柄なはあとの身長体重ほどありそうなそれを片手で軽々と持ち上げ、ゆっくり立ち上がる。

 左右に控える子分どもも身構えた。

 ゆっくり間合いを詰める。

 その時だ。

 

 ガコッ!

 

 僕たちの足元の床が、ぱっくりと口を開いた。

 

「うわあっ!」

「きゃぁっ」

「ハハハッ! 馬鹿め! さあ今のうちにズラかるぜ」

「いったあ~い~」

「くそっ! おぅ、ゆうき、どうすんだ?」

「急いで追います!」

 

 僕たちが落ちたのは、子分どもが賭け事に興じていた下の階。

 手元の操作で開く仕掛けだったようだ。

 もし巨大な針や酸が仕掛けられていたら、命はなかった。

 そんな想像力を働かせる余裕もなく、すぐさま上の階に戻ったが、既にもぬけの殻。

 

「おぅ、ゆうき。見ろよ!」

「ここから~逃げたみたい~」

「ぁのっ、宝箱がぁるょ?」

「何にも入っちゃいねえ、奴ら宝を持って逃げたんだ! 追うか?」

「当然! はいどーん」

「ふぇ!?」

 

 尻込みする、はあとを突き落とす。

 はあとの覚悟が固まるのを待っていては見失う。

 窓の下から抗議の声を上げる、はあとに続いて、僕たちも飛び降りた。

 微かにカンダタ一行が逃げる足音。

 そう遠くはない!

 部屋の外壁を時計回りに半周した先で、賊どもの背中を発見した。

 

「カンダタだな!?」

「くそっ、しつけえ奴らだ! そうよ、泣く子も黙る大盗賊のカンダタ様とは俺のことだ!」

「大人しくしろ! 命までは取らない」

「うるせえ! 野郎ども、やっちまえ!」

「来ます! 先に子分どもから片付けていきますよ!」

「おぅっ!」

「任せて~」

 

 カンダタの振り回す大斧は強力で、守備力の高い僕でも一撃で20近くHPを削られる。

 それだけじゃない。

 カンダタには劣るものの、子分どもの攻撃も強烈だ。

 子分2人の攻撃でじゃくが瀕死に、はあとも深手を負う。

 集中攻撃で子分一人を倒したが、このままではマズい。

 じゃくとはあとには、各々持っている薬草を使うよう指示、僕もホイミで回復。

 くいいん一人の攻撃では効果は薄い。

 逆にカンダタの強烈な一撃ではあとも瀕死になり、子分2人の攻撃で僕自身も深手を負った。

 回復が間に合わない!

 はあとが薬草を口いっぱいに頬張ると、そこへカンダタのハルバードが唸りを上げて襲った。

 巨大な刃先が横っ腹を切り裂き、まるでスローモーションのように、はあとの上半身だけが地面にボトリと落ちた・・・

 

 

 

 ・・・ああ、まただ。

 また悪夢を見てしまった。

 びっしょり汗をかいた背中が冷たい。

 体の芯から震えが来る。

 これは夢だ、悪い夢を見ただけだ!

 そう自分に言い聞かせても、体が勝手に震え出して止まらない。

 

「おぅ、ゆうき。起きてたか!」

「じゃく・・・」

「そんな蚊の鳴くような小声で、どうした? 顔も真っ青だぜ」

「相談があるんですが」

「おう? 何でも言ってみな!」

「カンダタ退治・・・諦めませんか?」

「は?」

「冒険を続けるのも、もう辞めましょう。これ以上旅を続けては、命がいくつあっても足りません。そんな気がするんです」

「おいおい、どうしちまったんだ? しっかりしろ!」

 

 絶対に勝てない相手に挑まなければならない恐怖。

 それは底の見えない穴に自ら飛び込まなければいけない状況に似ていた。

 気弱になった僕が心情を吐露すると、じゃくは困った顔で頭を掻く。

 大きな声で僕を叱咤激励した後で、今日一日はゆっくり休もうと提案してくれた。

 

 食事も摂らず、布団に包まったままウトウト。

 長旅の疲れと精神的疲労から、最初はよく眠れたが、寝過ぎて頭痛がしてきた。

 布団の中で丸くなったまま、ぼーっと考え事をする。

 

(カンダタには全く勝てる気がしない)

(少しぐらいレベルを上げても無駄だ)

(自分だけルーラで帰ってしまおうか)

(ルイーダの酒場で別の仲間を探すか)

(あの役立たず三人衆を切り捨てれば)

 

(だけど・・・)

 

(じゃくはいつでも話を聞いてくれる)

(くいいんは母のように包んでくれる)

(はあとの捨てられた子猫のような瞳)

(とても三人を裏切る気にはなれない)

(いっそ一人でどこかへ逃げ出そうか)

(まだ見ぬ東の果てを目指してみるか)

(東の橋の向こうには何があるだろう)

(何か良い武器があるかも知れないぞ)

(武器があれば・・・装備さえ整えば)

 

 一日ゆっくり休み、心と体をリフレッシュ。

 突破口になり得るアイデアも浮かんだ。

 橋の東へと向かってみようと、僕の考えを告げると、思ったよりすんなり賛同してくれた。

 

「元から、俺は旅をしたかっただけだからよ。どこまでだって、ゆうきに付いて行くぜ!」

 

 橋の東側では、ギズモ、バリィドッグ、あばれザル、キャットフライといったモンスターが出現。

 だけど僕の目的は経験値ではない。

 この先にあるかも知れない町や村、そこに売っているかも知れない装備品だ。

 簡単に倒せそうな相手とだけ戦い、そうでなければ全力で逃走。

 丸一日歩いた先で、アッサラームの町を発見した。

 

 町に入ると、じゃくは目を輝かせて色々見て回ろう、ゆっくりしようと提案してきた。

 だけど僕の目的はただ一つ。

 新しい装備品だけだ。

 武器屋を覗き、値段に見合わない品ばかりなのを確認すると、大きく落胆。

 こんなんじゃ、とてもカンダタとは戦えない気がする。

 じゃくは、せめて一泊しようとせがんだが、無視して先を急いだ。

 

 西側には広大な砂漠が広がっていた。

 今まで見た事もない、『かえんムカデ』『じごくのハサミ』といったモンスターと遭遇。

 今までの敵より遥かに格が上だ。

 逃げようとしても、なかなか逃がしてくれない。

 火炎百足が吐く炎は、パーティー全員がメラ程度のダメージを受ける。

 複数の火炎百足に囲まれ、逃げようとする間に、じゃくが炎に包まれ、動かなくなった・・・

 

 

 

 ・・・また、悪夢を見た。

 じゃくが死ぬ夢。

 だけど・・・カンダタと対峙した時の絶望感に比べれば、全然希望が見えた。

 僕の判断は間違ってはいない!

 アッサラームから西の砂漠を進む。

 やはり夢に見た通りだ。

 ピラミッドの中でミイラに襲われ、逃げる間に仲間が倒れる・・・

 

 

 

 ・・・また悪夢を見た。

 しかし希望を求め、砂漠の探索へ向かう。

 そうして遂に、僕たちは砂漠のオアシス、イシスの城へと到達した!

 武器防具屋を覗くと、僕が待ち望んでいた品々が並んでいた!

 高い防御力を誇る『はがねのよろい』は僕自身が装備。

 はあとには『みかわしのふく』を。

 2本の『てつのオノ』を、じゃくとくいいんに1本ずつ手渡し、じゃくの装備していた鉄の槍は、はあとへ。

 これで資金は底をついたが、ステータスは全員大きく上昇した!

 

 これで僕は・・・まだ戦える!

 

 アッサラームに戻って周囲のモンスターと戦ってみると、今までよりずっと容易に倒せた。

 これまでの苦戦が嘘のようである。

 暫く経験を積み、僕がLV13、みんながLV15になったところで、はあとの鉄の斧も購入。

 準備万端!

 満を持してカンダタに挑む。

 

 やはり夢に見た通りだ。

 カンダタに到るまでの道程、子分どもの動き。

 見た光景、聞いた言葉、全て夢のまま。

 唯一の違いは、カンダタと子分が、夢で見たよりずっと弱かったこと。

 回復役は僕、みんなが攻撃役になり、鉄の斧を振るって子分どもを順調に倒していく。

 最後に残ったカンダタに致命的な一撃を与えると、奴は地面に這いつくばって謝ってきた。

 

カンダタ「まいった!

 きんのかんむりを かえすから

 ゆるしてくれよ! な! な!

 

 はい

→いいえ

 

カンダタ「そんなこと いわずにさ

 ゆるしてくれよ! な! な!

 

→はい

 いいえ

 

カンダタ「ありがてえ

 あんたのことは わすれねえよ

 

 カンダタ一味が残していった宝箱。

 ゆうきは『きんのかんむり』を手に入れた!

 

 

 

なまえ :ゆうき

そうび :はがねのつるぎ はがねのよろい てつのたて きんのかんむり

呪文  :メラ ホイミ ニフラム アストロン ギラ ルーラ

レベル :13

  38:ちから

  28:すばやさ

  46:たいりょく

  18:かしこさ

  15:うんのよさ

  90:さいだいHP

  24:さいだいMP

  71:こうげき力

  64:しゅび力

9958:EX

 

 

なまえ :じゃく

そうび :てつのオノ けいこぎ かわのたて ターバン

レベル :15

  17:ちから

  29:すばやさ

  39:たいりょく

  22:かしこさ

 129:うんのよさ

  73:さいだいHP

   0:さいだいMP

  57:こうげき力

  36:しゅび力

9958:EX

 

 

なまえ :くいいん

そうび :てつのオノ けいこぎ かわのたて ターバン

レベル :15

  14:ちから

  23:すばやさ

  39:たいりょく

  21:かしこさ

 137:うんのよさ

  79:さいだいHP

   0:さいだいMP

  54:こうげき力

  33:しゅび力

9958:EX

 

 

なまえ :はあと

そうび :てつのオノ けみかわしのふく かわのたて ターバン

レベル :15

  14:ちから

  25:すばやさ

  40:たいりょく

  21:かしこさ

 132:うんのよさ

  82:さいだいHP

   0:さいだいMP

  54:こうげき力

  44:しゅび力

9958:EX

 

 

 

所持金:1193ゴールド

死亡回数:ゆうき1回 はあと4回 じゃく1回

プレイ時間 (執筆時間を含む):約470分

累計プレイ時間:約3320分




なかがき (次回の更新時期について)

この前、7週目の「なかがき」でも書きましたが、これからサッカーワールドカップ期間になりますので、なかなかゲームプレイ&執筆時間が取れなくなると思います。次話更新は、少し間が空くかも知れません。というか、多分間が空きます。
次回の更新予定は不明です。ワールドカップは来月19日まで、約一ヶ月間続きますので、更新もその間お休みになるものとお考え下さい。来月12月の25日には、確実に更新します。

中盤の難関・カンダタを倒し、LVも目標の20付近まで来ていますので、あと5話前後で完結まで行くかと思うのですが、年内の完結はほぼ絶望的な状況です。もし楽しみにして頂いている方がいれば、お待たせして申し訳ありません。今しばらく、お時間を頂戴いたします
 m(_ _)m


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9週目 あの怖い夢は・・・全て現実だった!

なかがき (お詫びと次回の更新時期について)

前回、第8話のあとがき(なかがき)でも書いていた通り、ワールドカップ期間で一ヶ月ほど間が空き、更新が遅くなりました。もし更新を首を長くしてお待ち頂いて下さる方がいらっしゃいましたら、申し訳ありませんでした
 m(_ _)m

そんな方に、更なる【悲報】です!w

次回更新時期ですが、また一週間空いて、再来週以降(新年8日、もしくは15日)の更新になるかと思います。ノベルアッププラスの方の企画モノが、明日26日から5週にわたって開催されます。それぞれ1000文字で5つの物語(合計5000文字)を描く予定で、それら全てを今週中に完成させるか、少なくとも完成の目途を立てるつもりです。そちらの執筆・確認作業に時間を取られるため、来週の更新は難しいと思っています。

可能ならば毎週更新、というつもりでやっておりましたが、ほぼほぼ隔週での更新となっており、楽しみにして頂いている方には本当に申し訳ありません。気長にお待ち頂ければ幸いです
 m(_ _)m


 強敵カンダタを倒し、無事凱旋した僕たちアリアハン道化団。

 だけどロマリアの王様には、カンダタを倒した事は黙っていようと、相談して決めた。

 なぜかって?

 カンダタから奪い返した金の冠の着け心地が、とても良いからだ。

 暫くの間、金の冠を有効利用させて貰おう。

 

 それともう一つ。

 みんなのレベルが15になったところで、新たな問題が発生した。

 くいいんが戦闘中に突然『あしがもつれて ころんだ』のだ!

 最初は、うっかり何かに躓いたのかと思った。

 でも違った。

 くいいんが転んだのを見て、じゃくはひとしきり大笑いしてから、はあとと一緒になって真似し始めたからだ。

 

「何やってるんです!?」

「ギャハハ! スマンスマン。転んじまったぜ」

「嘘ですよね?」

「ふぇ!?」

「わざとですよね?」

「やだ~ゆうきったら~。い・け・ず~」

「ふざけないでください。敵はどんどん強くなります。戦闘中に遊んでばかりだと、死にますよ?」

「心配すんなって。俺たちがついてるからよ!」

「そうよ~、パフパフして落ち着く~?」

「ぁのぁのっ、ぁたしね・・・」

「真面目に戦ってください! 良いですね!?」

「へいへい」

「努力しま~す~」

 

 口ではそう答える二人だが、全く態度を改める様子はなかった。

 それどころか、以前より酷くなっている気がする。

 にっこり微笑む、躓いて転ぶ。

 2種類の遊びを覚えた分、真面目に攻撃する回数が減ってしまった。

 武器は強くなったし、多少成長しているはずなのに、なぜ戦闘が大変になるのか?

 

 僕たちは次なる目的地、カザーブの北へと向かった。

 山間を抜けると、深い森の先に村落を発見。

 ノアニールという名前の村らしいが・・・様子がおかしい。

 最初、畑を荒らす害獣除けの人形が置いてあるのかと思った。

 精巧な人形だなあ、と。

 だけど触れてみると暖かいし、話しかけると何やら寝言を言う。

 立ったまま、あるいはお店の番台に座ったまま、全員眠っているのだ。

 

「なんだか不気味だぜ」

「そうですね」

「ねえ~、こんなところ~長居したくないわ~」

「はい、ここには何もないみたいですし、先を急ぎましょう」

 

 ノアニール周辺では『デスフラッター』と『あやしいかげ』が出現。

 デスフラッターは大ガラスの上位種で、二回攻撃をしてくるが、攻撃力は大して高くない。

 怪しい影は一匹でしか出現せず、速攻で倒してしまったので強さのほどは不明だ。

 また、夜になると『バリィドッグ』という犬型のモンスターにも出会う。

 アニマルゾンビの上位種で、『ルカナン』という守備力を低下させる呪文を使ってくる。

 バリィドッグだけなら大した事はないが、攻撃力の高いモンスターと一緒に出現すると厄介だ。

 早めにやっつけてしまうに限る。

 

 ノアニールの北は海なので、海岸沿いを西へと進む。

 すぐ先は岬になっていて、大きな洞穴と小さな集落を発見。

 その集落、エルフの隠れ里に入ると、とんがり耳のエルフが数名歩いていた。

 話し掛けても、まともに相手をしてくれない。

 その理由は、奥にいたエルフの女王と話をした時、明らかになった。

 

「そのむかし むすめのアンは

 ひとりの にんげんのおとこを

 あいしてしまったのです。

「そして ゆめみるルビーをもって

 おとこのところに いったまま

 かえりません。

「しょせん エルフと にんげん。

 アンは だまされたのに

 きまっています。

「にんげんなど みたくも

 ありません。

 たちさりなさい。

 

 なるほど、それで人間嫌いなのか~って、僕たち関係なくない?

 まあ何かのついでだ。

 アンと宝石ね、見掛けたら何とかしよう。

 人間嫌いの女王の影響で、お店でも物を売ってくれないので、里を出て洞穴へと向かった。

 

 洞窟内部では、『マタンゴ』『バンパイア』『ひとくいが』という敵が出現した。

 マタンゴはキノコ型のモンスターで、『あまいいき』を吐き掛けてくる。

 甘い匂いに包まれると猛烈な睡魔に襲われ、みんな眠ってしまう。

 また、接近戦になっても、キノコの胞子を吸い込むと眠ってしまう時があるので、本当に厄介だ。

 バンパイアは蝙蝠男と同系列のモンスターで、『ヒャド』を使ってくる。

 ヒャドというのは氷の呪文で、メラの2倍は痛い。

 人食い蛾は、人面蝶の上位手で、マヌーサの呪文を使うのは同じ。

 だけど人面蝶より一回り強く、また、鱗粉には毒が含まれているので、接近すると毒に冒される可能性もある。

 最初の探索中に出会った人食い蛾を倒した際に、毒針を落としたのには驚いた。

 それなりにレアな武器だけど、みんな使うのを嫌がるから、預り所の肥やしにしかならないのが残念。

 

 順調に探索を進めていく。

 初めての洞窟だ、右手を壁につけて、右回りに洞窟を進むと良い。

 じゃくが、そうすれば迷わずに進める、と教えてくれた。

 どこで得た知識かは知らないが、年長の兄貴分といったところで、たまに頼りになる。

 たまにね。

 こうして初日の探索は無事終了した。

 

 迎えた探索二日目。

 更に洞窟の深部へと潜っていく。

 地下へ向かう階段を降りると、暗がりから突如現れた5体のマタンゴに、いきなり甘い息を浴びせられ、仲間たちがバタバタと眠り崩れる。

 僕自身、猛烈な睡魔に抗いきれず・・・意識が途絶えた・・・

 

 ・・・鈍い痛みと物音・・・ハッと気付くと、仰向けに倒れている僕の体を踏み付けるマタンゴの、恐ろしい形相が目の前にあった。

 慌てて振り払い、起き上がった僕に、またしてもマタンゴが甘い息を吐き掛ける・・・薄れゆく意識の中、はあとがたった一人で戦・・・いや、マタンゴの目の前でわざと転んで遊ぶ姿が・・・

 

 ・・・痛い!

 太ももあたりに鋭い痛みを感じ、僕は跳ね起きた。

 いや、起きたつもりだったが、立ち上がれない。

 僕の鋼の剣が、右脚に刺さっている!

 ニタァ~ッと笑みを浮かべるマタンゴ。

 犯人はこいつか!

 くいいん、はあと、じゃく、みんな倒れている。

 生きているのか死んでいるのか、遠目には分からないが、マタンゴが踏んだり蹴ったりしているので、まだ息があるのだろう。

 はあとは僕より装備も弱く、集中的に狙われている様子だ。

「みんな! 起きてください!」

 叫んでも、起きる気配がない。

 一匹のマタンゴが、倒れているはあとの頭上で、大きな岩を持ち上げる。

「やめろ!」

 マタンゴが叫ぶ僕の方を見て、またニタァ~ッと笑う。

 それから大岩を叩き付けると、グシャッという鈍い音を立てて、はあとの頭が粉砕された・・・

 

 

 

「ぉはょ。汗びっしょりかぃて、ぅなされてたょ?」

「ああ・・・はあと、良かった!」

「ふぇ!?」

 

 いきなり抱き付かれ、はあとは目を丸くしている。

 悪夢だ・・・また見てしまった。

 はあとの頭がぐちゃぐちゃに潰され、噴水のように血飛沫が舞い散る様を。

 生きていてくれて良かった!

 

 僕たちは今まで以上に、慎重に探索を進めた。

 必要な資金が溜まったところで、すぐに洞窟を脱出し、みかわしの服を購入。

 くいいんに装備させた。

 

 探索を進めると、洞窟の地下に怪しい石柱があり、その中央でHP・MPを完全回復してくれる事が分かった。

 ここを拠点に経験値を稼ぐと、それから程なくして、僕と仲間たち全員ほぼ同時にレベルアップ。

 更に2900ゴールドを貯めて、じゃくにもみかわしの服を買い与えた。

 こうして攻略の準備は万端、僕たちは洞窟の最深部へと進んだのだった。

 

 回復ポイントから階下へ降りた先で、人食い蛾3匹、バンパイア1匹、マタンゴ1匹の群れに遭遇。

 最も厄介なマタンゴは僕が担当し、他のみんなには人食い蛾を任せる。

 僕の一撃でマタンゴを倒し、他のみんなが人食い蛾を1匹でも減らしてくれれば、その後は余裕を持って戦えるだろう。

 という目論見は脆くも崩れ去った。

 僕の攻撃より先に、マタンゴが甘い息を吐き掛けると、僕は急激な睡魔に襲われた。

 いけない、眠っては・・・薄れゆく意識の中、人食い蛾がマヌーサの呪文を唱える姿と、幻に包まれて闇雲に攻撃を行う仲間の姿が・・・

 

 ハッと目覚めると、仲間たちが敵と戦っていた。

 いや、あれは戦っているのか?

 遊んでいるだけじゃないのか?

 にっこり微笑む、誰もいない場所に向って大ぶりの斧を振り下ろす、躓いて転ぶ、そして眠りこける。

 気付けばHPの残りが少ない。

 僕はホイミを唱え、重傷を負っている仲間には薬草を食べるよう指示。

 しかし・・・ニタァ~っと笑うマタンゴ。

 嫌な予感・・・金色、銀色、桃色吐息を周囲に振りまくマタンゴ。

 起~き~て、い~られ~る、時は短すぎて~・・・再び意識を失った・・・

 

 

 

「ゆぅき、起きてっ。朝だょ」

「ここは?」

「寝坊助さん、ゆぅきの実家だょ」

「みんなを、呼んで貰えますか?」

「ぅん? ぃぃょ」

 

 そして僕は、みんなに夢の話をした。

 モンスターと戦い、みんなが無残に殺される夢。

 その夢で見たもの、地形、出会う魔物・・・全てが現実と同じだった事。

 行った事もない場所なのに、僕は知っていた。

 出会った事もないモンスターを、なぜか知っていた。

 あまりにもリアリティのある夢が、現実と完全に符合していた話を。

 

「ギャハハ! おもしれー作り話だな! 物語作家になれるぜ! はあともそう思うだろ?」

「ぁたしは、ゆぅきの話を信じるょ?」

「そうね~、信憑性は~高いわ~」

「だろ!? ゆうき、もちろん俺も、その話を信じるぜ!」

「つい今さっきと、言っている事が違いませんか?」

「ギャハハ! 寝ぼけてたんじゃねえの?」

「ぁのね、実はぁたしも、怖ぃ夢を見るの」

「はあとは、昔っから勘が鋭いからな! 間違った試しがねえ。はあとの直感、俺は全部信じるぜ!」

「ぅん。じゃく、ぁりがと。それでね、何度も何度もぉ、ぁたしが死ぬの。稀にゆぅきが燃えたりぃ、じゃくも燃えるんだけどね、ぁたしが一番多ぃんだぁ。痛くて、苦しくってぇ・・・だから冒険に出るの、ぃつも怖くて。でも言ぃ出せなかった」

「おぅ、そうか」

「でもね、ゆぅきの話を聞ぃてぇ、ぁれは夢なんかじゃなぃって、確信を得たんだぁ」

「はあと、話してくれて有難う。それと、何度も痛い目に遭わせてごめんなさい」

「ぅぅん、分かってくれるだけでぃぃのぉ」

「これからもリスクを最大限に減らす戦い方をしていきましょう。良いですね、じゃく」

「おぅ! はあとを虐める奴は俺が許さねえ!」

 

 こうして僕たちは慎重に洞窟の探索を進め、最下層で発見したんだ。

 ある一通の手紙と『ゆめみるルビー』を!

 

「許されぬ愛なら、せめて天国で一緒になります。お母さん、先立つ不孝をお許しください アン」

 

 これは女王の娘の『遺書』じゃないのか?

 二人はもう、この世にはいないようだ。

 手紙をエルフの女王に届けると、

 

「そのてにもっているのは

 ゆめみるルビーでは……?

「なんと! アンと おとこは

 ちていの みずうみに みを

 なげたというのですか!?

「おお! わたしが ふたりを

 ゆるさなかったばっかりに……。

「…………………………。

「わかりました。

 さあ このめざめのこなをもって

 むらに おもどりなさい。

「そして のろいを ときなさい。

 アンも きっと それを

 ねがっていることでしょう……。

「おお アン!

 ママをゆるしておくれ……。

 

 そう言って、大粒の涙を流した。

 こうして、エルフと夢見る村ノアニールの騒動は幕を閉じた。

 

 

 

なまえ  :ゆうき

そうび  :はがねのつるぎ はがねのよろい てつのたて きんのかんむり

呪文   :メラ ホイミ ニフラム アストロン ギラ ルーラ

レベル  :14

   43:ちから

   30:すばやさ

   51:たいりょく

   21:かしこさ

   18:うんのよさ

  101:さいだいHP

   26:さいだいMP

   76:こうげき力

   65:しゅび力

14580:EX

 

 

なまえ  :じゃく

そうび  :てつのオノ みかわしのふく かわのたて ターバン

レベル  :16

   18:ちから

   30:すばやさ

   42:たいりょく

   23:かしこさ

  135:うんのよさ

   77:さいだいHP

    0:さいだいMP

   58:こうげき力

   47:しゅび力

14580:EX

 

 

なまえ  :くいいん

そうび  :てつのオノ みかわしのふく かわのたて ターバン

レベル  :16

   15:ちから

   24:すばやさ

   41:たいりょく

   22:かしこさ

  143:うんのよさ

   84:さいだいHP

    0:さいだいMP

   55:こうげき力

   44:しゅび力

14580:EX

 

 

なまえ  :はあと

そうび  :てつのオノ みかわしのふく かわのたて ターバン

レベル  :16

   15:ちから

   25:すばやさ

   43:たいりょく

   22:かしこさ

  138:うんのよさ

   89:さいだいHP

    0:さいだいMP

   55:こうげき力

   44:しゅび力

14580:EX

 

 

 

所持金:1820ゴールド

死亡回数:ゆうき1回 はあと6回 じゃく1回

プレイ時間 (執筆時間を含む):約520分

累計プレイ時間:約3840分




あとがき

今回の作中にて、「桃色吐息」(高橋真梨子)の歌詞をパロディにして使わせて頂きました。利用方法の通りにしてあると思いますが、初めてですので、もし間違い等があれば、ご指摘いただけると有難いです。


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10週目 本当のパフパフは天にも昇る気分だった!

 エルフの里と女王の問題を解決した僕たちアリアハン道化団。

 

「おぅ、ゆうき。カンダタを倒す前に、妙に焦って砂漠の方に行っただろ?」

「行きましたね」

「あん時も悪夢を見てたのかよ?」

「はい。そうです」

「そうだったのか。意味も分からず連れ回されて、驚いちまったぜ」

「すみませんでした。夢か(うつつ)か分からず、暴走してしまいました」

「ぁのねっ、ぁたしも同じだから分かるょ」

「目が覚めたらみんな無事だし、でもあまりにも現実味のある夢で。何とかしなくちゃという焦燥感だけが膨れ上がって」

「可哀想なゆうき~。パフパフで落ち着く~?」

 

 くいいんの悪戯っぽい誘惑。

 いつものように強く撥ね退けたい気持ちとは裏腹、体が自然に・・・柔らかい体温に包まれホッとする。

 

「いいのよ~。暫くこのままで~」

「でよ! ゆうき!」

「なんでしょう」

「砂漠の手前の港町を覚えてんだろ?」

「アッサラームという名前でしたか」

「そうだ! 俺、あそこに行きてえんだ!」

「何か用事でも?」

「いや、特に用事ってわけじゃねえけどよ。ちょっと立ち寄ってすぐ出発しちまっただろ? だからさ、少しだけ、一日だけでいいんだ。寄ってみねえか?」

「そうですね。少し羽を伸ばすのも良いかも知れません」

「よっしゃ!」

 

 次の目的地はアッサラームに決まった。

 ルーラは使わず、以前のようにお弁当を用意して、のんびりピクニックしながら向かった。

 そのせいで到着する頃には、すっかり真夜中になっていた。

 

 アッサラーム周辺では、昼間に出会う暴れ猿やキャットフライなどの他、暗くなるとバンパイアも出現。

 それらを倒す間に、みんなレベル17になり、僕もレベル15に上がって『リレミト』を覚えた。

 リレミトというのは、ダンジョンや建造物から一瞬で脱出する便利な呪文だ。

 

 アッサラームで話を聞くと、重要な情報を得た。

 砂漠の南にある祠に『まほうのカギ』の事を知っている老人がいるという。

 魔法の鍵か。

 アリアハン盗賊団としては、是非とも入手しなければなるまい。

 

「あーら すてきな おにいさん!

 ねえ ぱふぱふ しましょっ。

 いいでしょ?

 

 はい

→いいえ

 

「まあ まじめなのね。

 じゃあ きがかわったら また

 こえをかけて ちょうだいね。

 

 夜の港町、噴水の前に立っていた女性。

 くいいんより一回り、いや二回りも大きなモノをぶら下げたお姉さんに声を掛けられた。

 フッ。

 くいいんの双丘に、今日も顔を埋めた僕だ。

 こんな誘惑には決して屈しない!

 

「いいのか、ゆうき? あんな見事なモノ、なかなかお目にかかれねえぜ?」

「・・・」

「ゆうきが行かねえってんなら、俺が」

「ダメッ! じゃくはぁ、そんな事しちゃ、メ! なぁんだからねぇ」

「お、おぅ」

「ぁたしが、代わりに行くからぁ」

 

「あら うれしい!

 じゃあ あたしに ついてきて。

「あら そんなに いっぺんに

 おあいて できないわよ。

「ひとりで ついてきて。

 いい?

 

 一軒の家の手前で立ち止まるバインバイン女。

 一人だけ?

 これは怪しい!

 絶対に付いて行ったらダメなやつだ!

 それなのに・・・

 

「じゃぁ、ぁたしが」

「いいえ~、私が~」

「やっぱ俺が!」

「それなら僕が行きますよ!」

「「「 どうぞ、どうぞ 」」」

 

 どうしてこうなった?

 みんな本当に付いて来てくれないの?

 超不安なんですけど。

 

「ねえ あたしのよこに

 すわっててね。

「あかりを けして

 くらくして いい?

 

→はい

 いいえ

 

「けすわよ…

「ぱふぱふ ぱふぱふ

「うぷぷぷふ

「ぱふぱふ ぱふぱふ

「こ これは……

「ぱふぱふ ぱふぱふ

「き きもちいい……

「どうだ ぼうず。

 わしの ぱふぱふは いいだろう。

 

 部屋の明かりが灯ると。

 ・・・誰?

 

「あたしの おとうさんよ。

 ぱふぱふが とっても

 じょうずなの。

「わっはっは。

 じゃあ わしはこれで。

「どう? かたこりが なおった

 でしょう。また きてねっ。

 

はあと「なにも ききたくないわ。

    さあ いきましょう。

 

 外で待っていた仲間の冷たい視線を浴びる。

 いや、僕の知ってるパフパフと違ったよ?

 くいいんがしてくれる、柔らかいモノに挟まれるのも、すごく暖かくて安心するし、気持ち良いよ?

 でも筋肉ムキムキお父さんの、肩を揉む絶妙な力加減といったら。

 まるで天にも昇る気分だった。

 みんなもやればいいのに。

 

 それから踊り子のステージを見て、じゃくは大はしゃぎ。

 踊り子の舞台に上がり、ぴょんぴょん飛び回って。

 それを見守る女性2人も楽しそうであった。

 

 港町の夜は更け。

 翌朝。

 聞いた情報を頼りに、砂漠の南の祠を訪れた。

 祠の老人は言う。

 

「まほうのカギを おさがしか?

「カギは さばくのきた

 ピラミッドに ねむると きく。

 しかし そのまえに まずっ!

「イシスのしろを たずねなされ。

 たしか オアシスのそばに

 あるはずじゃ。

 

 前に行った事あるので、知ってます。

 とは言わず、お礼だけ述べて、イシスのお城を目指した。

 砂漠の周辺では、新しく『じごくのハサミ』という敵に出会った。

 軍隊蟹と同系列のモンスターで、とにかく堅い。

 僕の攻撃でも2回では仕留め切れず、みんなはまともにダメージを与えられない。

 その上『スクルト』まで使うから厄介この上ない。

 スクルトというのは、敵全員の守備力が大幅に上がる呪文だ。

 一匹ならいざ知らず、数匹の群れが出てきた日には、一目散に逃げ出すしかない。

 

 イシスで女王様に謁見した後、僕たちは魔法の鍵を求めてピラミッドを目指した。

 イシスから真っすぐ北へ。

 一度迷い込んだので場所は知っている。

 ここで新しく出会う敵は、『だいおうガマ』『ミイラおとこ』『マミー』『わらいぶくろ』だ。

 大王ガマは蛙のモンスターの上位種で『ラリホー』を使ってくる。

 包帯ぐるぐる巻きのアンデッド、ミイラ男とマミーは、攻撃も防御も高い。

 笑い袋は様々な特殊攻撃をしてくる嫌な相手。

 使う呪文はホイミ、マヌーサ、アホトーン、ボミオス、スクルト。

 更に『ふしぎなおどり』を踊るとMPが吸い取られてしまう。

 みんなはMPがないので、対象は僕だけ。

 MPを温存していたのに、笑い袋に吸われて呪文が使えなくなる事もあるのだ。

 

「ゆうき、まずは外を回ってみようぜ」

「どうしたんです? じゃくにしては慎重な意見ですね」

 

 じゃくらしからぬ発言に驚いた。

 いつも猪突猛進なのに。

 じゃくはチラチラはあとを見ながら、何か言いたげであった。

 

 ピラミッドの壁伝いに左回りに進むと、入り口とは別に階段を発見。

 階段を降りてみると、地下は不気味な雰囲気が漂っている。

 出会った怪しい影がメラの呪文を使おうとした様子だが、炎が一瞬揺らめいただけで、かき消えた。

 

「なあ、ゆうき。ここ気持ち悪いぜ。さっさと出ようや」

「先に何があるか、探検したくは・・・」

「ねえよ! はあとに万一があったらどうしてくれんだ!」

「あら~、愛してるのね~」

「そんなんじゃねえって!」

 

 まあ、そういう事なら仕方ない。

 こうして一日目の探索は外と地下を少し巡るだけで終了した。

 

 二日目。

 今度はピラミッド正面から入り、左手で壁を触りながら進む。

 

「お、宝箱だぜ! ラッキー!」

「待ってくださ・・・もう開けちゃいましたか」

「何も入ってねえぜ」

「そう言えばイシスの人が、既にピラミッドは探索され尽くして何も残ってないって」

 

 聞いていた通り、お宝は何も残っていない。

 そのまま左回りに進むと、また宝箱が置いてある。

 しかも3個もだ!

 何も入っていないだろう、と思いつつも、じゃくとはあとが興味津々。

 先を急ごうと声を掛けると、じゃくはしぶしぶといった感じで踵を返した。

 しかし・・・

 

「きゃあぁっ!」

「なんだ!? はあと、はあとっ!」

 

 振り返った僕が目にしたもの。

 宝箱が『ひとくいばこ』に変身して、はあとを丸呑みにする光景であった・・・

 

 

 

「ゆうき、起きろよ。朝だぜ」

「じゃく・・・またです」

「また? ってまさか・・・誰だ? 誰がやられたんだ!?」

「じゃく、ぁのねっ」

「また、お前なのか? はあと」

「ぅん、ごめんねぇ・・・」

「はあとが謝る事じゃねえ! 何があった!?」

 

 僕は宝箱が突然、モンスターになって襲い掛かってきた話をした。

 じゃくは真っ蒼になって聞いていたが、やがて落ち着きを取り戻すと、ピラミッドにはお宝は何も残っていない、だから見付けても開けるのはやめようと強い口調で言った。

 僕、そう言わなかったっけ?

 

 それからもピラミッドの探索を続けた。

 MPはなるべく温存し、薬草を持てるだけ買い込んで。

 買うべき装備がないので、お金には余裕があった。

 今の僕たちは、薬草を浪費しても特に問題は無かった。

 

 再挑戦のピラミッド。

 宝箱を無視して階段を上り、広い迷路のような二階も数日かけて踏破。

 三階に到達した僕たちは、壁際で怪しいスイッチを発見した。

 

「なあ、押してみねえか?」

「じゃく。どうなってもいいと?」

「おぅ・・・そうだな」

 

 好奇心旺盛なじゃくが目を輝かせる。

 はあとの方を見遣りながら、僕が諫めると、渋々といった感じでスイッチの前を離れた。

 残りMPに不安がある中、更に上層へ向かうと、笑い袋とマミーの群れに囲まれた。

 厄介な笑い袋を先に倒すべく総攻撃を仕掛ける。

 その間にマミーが仲間を呼び、腐った死体が現れた。

 更にマミーを殲滅する間に、腐った死体がもう一体。

 マズい!

 もうリレミト一回分のMPしか残っていない!

 僕のホイミではなく、はあと、くいいんに、手持ちの最後の薬草を使うよう指示。

 ところが、この大事な時に、くいいんは腐った死体の目の前で転んで遊んでいるではないか!

 ゆっくりと、腐った死体がくいいんに覆いかぶさり、首筋にガブリ、噛み付いた。

 頸動脈を噛み千切られ、はあとの真っ赤な鮮血が噴水のように舞い散った・・・

 

 

 

 クソッ!

 まただ!

 ベッドの上で呆然としていると、くいいんが顔面蒼白で部屋に入って来た。

 

「ねえ~ゆうき~」

「知ってます。ゾンビに噛み付かれて、死にましたね?」

「あ~、やっぱり~・・・」

 

 くいいんも、自分が殺されるリアルな夢を見た様子。

 いや、夢ではなく現実か?

 はあとは、何度も何度も怖い夢を見ている。

 震えるくいいんを、ぎゅっと抱き締め、よしよし、と頭を撫でるはあとだった。

 

 くいいんのため一日休暇を取ってから、ピラミッド探索を再開。

 3階にあるボタンの謎を解かなければ、先には進めないようだ。

 試行錯誤を繰り返すうち、東端のボタンを押してから、西端のボタンを押すと、仕掛けが解除されると分かった。

 開いた扉の奥、3階中央の部屋で・・・

 

 重要アイテム『魔法のカギ』を手に入れた!

 

 

 

なまえ  :ゆうき

そうび  :はがねのつるぎ はがねのよろい てつのたて きんのかんむり

呪文   :メラ ホイミ ニフラム アストロン ギラ ルーラ リレミト

レベル  :15

   50:ちから

   35:すばやさ

   58:たいりょく

   25:かしこさ

   19:うんのよさ

  114:さいだいHP

   29:さいだいMP

   83:こうげき力

   67:しゅび力

18144:EX

 

 

なまえ  :じゃく

そうび  :てつのオノ みかわしのふく かわのたて ターバン

レベル  :17

   19:ちから

   30:すばやさ

   44:たいりょく

   23:かしこさ

  137:うんのよさ

   81:さいだいHP

    0:さいだいMP

   59:こうげき力

   47:しゅび力

18144:EX

 

 

なまえ  :くいいん

そうび  :てつのオノ みかわしのふく かわのたて ターバン

レベル  :17

   16:ちから

   24:すばやさ

   45:たいりょく

   23:かしこさ

  148:うんのよさ

   91:さいだいHP

    0:さいだいMP

   56:こうげき力

   44:しゅび力

18144:EX

 

 

なまえ  :はあと

そうび  :てつのオノ みかわしのふく かわのたて ターバン

レベル  :17

   16:ちから

   26:すばやさ

   45:たいりょく

   23:かしこさ

  142:うんのよさ

   94:さいだいHP

    0:さいだいMP

   56:こうげき力

   45:しゅび力

18144:EX

 

 

 

所持金:10840ゴールド

死亡回数:ゆうき1回 はあと7回 くいいん1回 じゃく1回

プレイ時間 (執筆時間を含む):約540分

累計プレイ時間:約4380分

 

※ここまでの出現モンスターのドロップ品で各種『種』が揃います。ステータスMAXまで育てる、やり込みプレイの必須アイテム。『力の種』を落とすのは暴れ猿とホイミスライム。『素早さの種』はデスフラッター。『スタミナの種』はギズモと笑い袋。『賢さの種』はバリィドッグと火炎ムカデ。『ラックの種』はサソリ蜂とバンパイア。『命の木の実』はアニマルゾンビです。高ドロップ率の敵も後々出ますが、弱い方が倒し易く効率的です。また、各アイテムで上昇する値は、HP上昇の命の木の実が2~5の間で、それ以外は全て1~3の間です。使用前にセーブし、最大値の3以上になるまでやり直すと良いでしょう。




文字調整まで完了した後で、書き忘れに気付きました。予約時刻までに文字調整が間に合わなそうなので、このまま「あとがき」に追記しておきます。

砂漠のお城イシスは、町に入ってから女王の前まで歩くと遠く、かなり無駄な時間を浪費します。ロードして女王の前からリスタートになり、早く場外に出たい場合は、女王の前から左の方に歩いて行くと、窓のように空いている場所があって、そこから「I can Fly!」すれば一瞬で外に出られます。

物語では、尻込みするはあとを突き落とそう(カンダタに続き2回目のテンドンをしよう)と思っていたのですが、すっかり忘れていました・・・(;^ω^)



2023年1月15日 一部修正

下書き段階では、本文5000文字ちょうどだったのですが、公開後に文字数が4999文字になってしまったようですので、1文字だけ追加しました。

修正前 「なあ、ゆうき。ここ気持ち悪いぜ。さっさと出よう」
修正後 「なあ、ゆうき。ここ気持ち悪いぜ。さっさと出ようや」


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11週目 残り物には福があった!

 砂漠のピラミッドを探検し、魔法の鍵を入手した僕たちアリアハン盗賊団。

 今まで入れなかった扉の奥、世界各地の財宝を頂いて回った。

 

 まずアリアハン。

 王城に鉄扉で閉ざされた宝物庫があり、中には警備の兵士がいる。

 さすがに警備の兵士の眼前で、王城の宝物を持ち去るのは気が引ける。

 

「ゆうしゃオルテガには

 いろいろ せわになった。

「ここで なにをしようと

 みてみないふりを しよう。

 

 なんだとぅ!?

 そういう事ならば、遠慮なく頂戴しようじゃないか。

 ここではゴールドや、幾つかの種を手に入れた。

 

 砂漠のイシスにも、鉄扉に閉ざされた宝物庫があったと思い出し向かう。

 しかし、イシスの兵士は融通が利かない。

 

「おしろのたからは すべて

 じょうおうさまのものだ。

 

 なんだとぅ!?

 入り口で侵入を阻まれた。

 だが!

 アリアハン盗賊団をなめるな!

 こんな時は、兵士が寝静まる深夜に忍び込むのだ!

 こうして宝物庫への潜入を果たす。

 

「クスクス」(小声)

「ゲッヘッヘ」(小声)

「うふ~」(小声)

「何か文句ありますか? だって僕たちは・・・」(小声)

 

「「「 アリアハン盗賊団 」」」(大声だけど小声)

 

「・・・なのですから」(小声)

 

 更に二階へ上がり、鍵が掛かっていた女王の寝所にも侵入。

 呆れ顔の仲間の女性二人と、寝所にいた侍女が見守る中、女王の下着や着替えを漁る。

 と、その時、部屋に微かな金属音が響いた。

 衣装の中に何かが紛れていたようだ。

 音のした辺りを調べると『いのりのゆびわ』を発見。

 金属音の正体はこれか!

 祈りの指輪というのは、使うとMPを僅かながら回復してくれる高価なアイテムだ。

 これは良い物を見付けたと大満足。

 

 他にも何かないだろうかと、イシス城内外をくまなく探検する。

 塔の上に登ったり、裏庭に出たが何も発見できず。

 もう帰ろうと、だだっ広い前庭に来た時だった。

 

「あら~? ゆうき~、あの茂みの~向こう側~。抜け道みたい~」

「どこです?」

「ほら~あそこ~」

「おぅ! 本当だぜ。なんだありゃ?」

 

 砂漠に囲まれたイシスの城。

 前庭にも乾燥した砂が敷き詰められていて、城壁の手前には乾燥に強い灌木が植えられている。

 くいいんが指さした灌木の一角。

 じゃくは、くいいんの言葉に相槌を打つが 僕にはよく分からない。

 なんとなく不自然な感じはする。

 城壁に近付いてみれば、確かに條々の間に人がひとり通れる隙間があった。

 

「こりゃ怪しいな! プンプン匂うぜ!」

「そうですね、この先に何かあるのでしょう」

「行ってみようぜ! はあとも構わねえか?」

「ぅん、ぃぃょ」

「っしゃ! 決まりだな!」

 

 灌木の先は、すぐ城壁になっている。

 城壁に沿って進むと、壁の一部が破壊されていて、外への抜け道があった。

 こんなところが空いていたら、僕たちのような盗賊団が入り放題じゃないか!

 盗賊より危険な敵軍やモンスターだったらどうするつもりだろう?

 まあ僕には関係ないけどね。

 

 そのまま城壁の外側をぐるっと回る。

 すると怪しい盗賊風の男が、こそこそと城壁を調べているではないか!

 声を掛けると、男は悪びれる様子もなく、この城のどこかに隠された財宝を探していると言う。

 やっぱり盗賊か!

 憲兵に突き出し・・・いや、この男より先にお宝を探し出して・・・

 

「ウヘヘヘ」

「くっくっく」

「くすくすくす」

「私たち~・・・」

 

「「「 アリアハン盗賊団! 」」」

 

「・・・だものね~」

 

 今度は大きな声で、全員お揃いのポーズを決めた。

 怪しい男の目の前で。

 これ、どっちが怪しいんだろう?

 うん、いい勝負だ!

 

 しかし場内は既に、探検し尽くしてしまっている。

 そうなると、残るは・・・?

 笑顔で手を振って盗賊風の男と別れると、崩れた壁を通って前庭に戻った。

 それからお城の方に向かって歩いて行く。

 あれ?

 灌木と城壁の間、ここに怪しい隙間があるぞ?

 隠し通路だ!

 敵襲時、女王が隠れたり、脱出するための通路だろう。

 壁1枚分、大柄な人間じゃ通れないような狭い通路。

 それが外壁に沿ってぐるっと一周、続いていた。

 途中には地下へ通じる階段もあり、そこを降りて行くと、長い間、誰も通った形跡のない、崩れた壁や壊れた石畳になっていた。

 奥は祭壇になっていて、更に下へ降りる階段、そしてその先の小さな部屋で、『ほしふるうでわ』を発見した!

 

「わたしのねむりを さましたのは

 おまえたちか?

 

→はい

 いいえ

 

 気付けば背後に骸骨の幽霊が立っていた。

 いつからいたんだ?

 

「では そのたからばこのなかみを

 とったのも おまえか?

 

→はい

 いいえ

 

 あれ?

 突然だったので驚いて、つい事実を喋ってしまった。

 もしかしてヤバかった?

 と思ったら・・・

 

「おまえは しょうじきものだな。

 よろしい。どうせ もう

 わたしには ようのないもの。

「おまえたちに くれてやろう。

 

 ・・・ふぅ。

 何だったんだ、今の幽霊?

 でもまあ、くれると言うなら断る理由はない。

 有難く使わせて貰おう。

 星降る腕輪を装備してみる。

 急に体が軽くなったのを感じる。

 ステータスを確認すると、なんと素早さが2倍になっているではないか!

 

「あれは・・・よいものだ!」

 

 それから僕たちはピラミッドの上層階、鍵が掛かっていた扉のある部屋へ向かった。

 あの鉄扉の向こうには何があるだろう?

 ウキウキのじゃく。

 しかし部屋の四隅には、不気味な石棺が並んでいて、不穏な空気が漂っている。

 王家の財宝、だろうか?

 部屋の真ん中には宝箱が並べられている。

 相談の結果、試しに一つだけ、開けてみる事にした。

 

 どこからともなく声が聞こえる・・・

「眠りを妨げる者は誰だ!」

 

 周囲の石棺から出てきたのは4体のミイラだった。

 秘宝の守り手か!

 でもミイラ4体ぐらい、何でもないさ!

 総攻撃を仕掛ける。

 しかし・・・ミイラの痛恨の一撃!

 しかも2連発!?

 ミイラの振り回す腕が頸部に激しく叩き付けられ、じゃくの頭があり得ない方向に曲がった・・・

 

 

 

 ・・・やってしまった。

「おぅ、ゆうき! 遅かったな! もう朝飯食っちまってるぜ」

「じゃく、何ともないんですか?」

「何とも? そりゃもう、ぐっすり眠って元気いっぱいよ!」

 

 おや?

 本当に、ただの夢だったのか?

 よく分からないが、じゃくが元気そうで何よりである。

 みんなにせっつかれ朝食を済ませると、僕達は 慎 重 に ピラミッドの宝箱を漁った。

 宝箱の部屋に辿り着くまでに買い込んだ薬草がなくなってしまうので、宝箱は2つ3つ、多くて4つほど開けたところで、多少の余裕を持って帰宅。

 何往復もしてピラミッドの宝物全てを頂いた。

 その間に僕はレベル16になって『ラリホー』を覚え、みんなはレベル18になった。

 各所で発見した種は、全て僕が美味しく頂いた。

 宝物殿から更に上層階へ向かうと、そこにも一つ、宝箱が置いてあり、中には『はでなふく』が入っていた。

 

「こういうの~、なんて~言うんだったかしら~?」

「ぉぉぃぉぉぃ派手な服、だょ」

「何ですかそれ?」

「ギャハハ! はあと、それを言うなら残り物には福がある、だろ?」

「ぇーっ、ぁたし、そぅ言ったょ?」

「おーいおーい派手な服・・・残り物には福がある・・・全然違うじゃないですか。相変わらずトンデモナイ翻訳能力ですね」

「二人は~通じ合っちゃってるからぁ~」

 

 お宝をあらかた奪い尽くした僕たちアリアハン盗賊団は、次なる目的地を目指した。

 ロマリアの西、祠にある鉄扉の向こう。

 地下道を通って、ポルトガへ。

 祠の出口付近では、ロマリア周辺と同じ敵しか出現しない。

 しかしポルトガの近くまで進むと、新しく『ドルイド』に出会った。

 ドルイドは『バギ』という、全員にメラと同じか2倍ほど痛い呪文を使う。

 

 ポルトガで王様に謁見すると、どうやら黒胡椒が足りなくて困っているらしい。

 王様からの手紙を預かると、アッサラーム付近の洞窟へ向かった。

 

「しんあいなる ノルドよ

「このてがみを もつ たびびとを

 バーンのぬけみちへ あんない

 してやってくれ。

「ポルトガのおう より

 

 洞窟に住むノルドという人物に手紙を渡すと、

「旦那方は東に行きたいのか?」

 と問われたので、もちろんですと返答。

 ノルドは、洞窟の壁に三度体当たりをかまし、壁を崩した。

 爆弾並みの破壊力・・・ってマジか・・・。

 こうして僕たちは新大陸に到達した。

 

 新大陸で出現するのは『ヒートギズモ』『ハンターフライ』『デスジャッカル』といったモンスターたちだった。

 ヒートギズモは、ギズモの上位種で、全員攻撃の炎を吐いてくるが、そこまで痛くはない。

 デスジャッカルは犬型のモンスターで、マヌーサを使ってくるのが厄介だ。

 ハンターフライは空を飛ぶサソリ蜂と同系統で、ギラの呪文を使ってくる。

 ドルイドの使うバギより、更にちょっと痛い。

 

 どちらへ向かえば良いのだろう?

 皆目見当がつかないので、取り敢えず北を目指す。

 樹々の生い茂る山道を進むと、4匹のデスジャッカルに遭遇。

 ジャッカルのマヌーサで全員が幻影に包まれ、攻撃がなかなか当たらない。

 その上、仲間は初めて出くわすモンスターに興味津々、遊んでばかりで攻撃をしようとしない。

 やっと倒したと思ったらジャッカルは仲間を呼ぶので、数が減らない!

 じわじわ仲間のHPが減少。

 僕が目の前の幻と戦っている間、足を滑らせて転んだはあと目掛け、ジャッカルの群れが襲い掛かった・・・

 

 

 

「・・・ゆぅきぃ・・・」

「ああ、はあと。ごめんなさい」

「ぅぅん、ぃぃょ。でもね、じゃくが起きてくれなぃのぉ」

 

 よだれを垂らしアホ面で熟睡中。

 こんな時に!

 じゃくが慰めてあげないとダメだろ!

 アホ面のじゃくを見て、なんだか無性に腹が立った僕は、じゃくを叩き起こして朝ご飯抜きで出発してやった!

 しかし・・・今度はデスジャッカル2匹とハンターフライ3匹に遭遇、マヌーサを警戒しジャッカルを先に倒そうとする間に、ギラを連発されてしまう。

 全員HPが危険水域だが、誰を回復したら良いのか。

 先に敵を倒すべきだと判断したのだが・・・更にギラが連続で飛んできて、はあととじゃくが同時に力尽きた・・・

 

 

 

「・・・ゆぅきぃ、じゃくが・・・」

「またですか! もう! じゃくっ!」

「おぅゆうきか、もう少し寝かせてくれや・・・」

「ふざけないでください! さあ行きますよ!」

 

 鈍感にもほどがある。

 こんなじゃくと何年もの付き合いだというはあと。

 菩薩様かな?

 怒りに任せて再出発した僕だったが、更なる悲劇が襲う。

 ハンターフライとヒートギズモ、計5匹の群れに遭遇。

 全体攻撃を連発され、今度は全員に薬草を使うよう指示したが、くいいんが命令無視して遊び出し、回復が間に合わず・・・

 

 

 

「みなさんに相談があります」

「おぅ! 深刻な顔だな・・・もしかしてまたか?」

「そうですよ! それも、じゃくのせいで!」

「俺のせい?」

「そう! じゃくが悪いんです!」

 

 じゃくは事情も分からずしょげ返る。

 これは八つ当たりだ。

 分かっている。

 やや申し訳ない事をしたと思いつつも、腹の虫が収まらない僕は、はあとに制止されるまでじゃくを責め続けた。

 それから、レベルアップの必要性を説く。

 じゃくは、すっかり元気を失ってトボトボ付き従う。

 それから数週間。

 全員レベルが上昇。

 

 こうして再出発の準備が整った。

 

 

 

なまえ  :ゆうき

そうび  :はがねのつるぎ はがねのよろい てつのたて きんのかんむり ほしふるうでわ

呪文   :メラ ホイミ ニフラム アストロン ギラ ルーラ ラリホー リレミト

レベル  :17

   59:ちから

   86:すばやさ

   74:たいりょく

   30:かしこさ

   23:うんのよさ

  144:さいだいHP

   38:さいだいMP

   92:こうげき力

   71:しゅび力

25145:EX

 

 

なまえ  :じゃく

そうび  :てつのオノ みかわしのふく かわのたて ターバン

レベル  :19

   21:ちから

   32:すばやさ

   49:たいりょく

   25:かしこさ

  148:うんのよさ

   93:さいだいHP

    0:さいだいMP

   61:こうげき力

   48:しゅび力

25145:EX

 

 

なまえ  :くいいん

そうび  :てつのオノ みかわしのふく かわのたて ターバン

レベル  :19

   18:ちから

   26:すばやさ

   51:たいりょく

   25:かしこさ

  159:うんのよさ

  103:さいだいHP

    0:さいだいMP

   58:こうげき力

   45:しゅび力

25145:EX

 

 

なまえ  :はあと

そうび  :てつのオノ はでなふく かわのたて ターバン

レベル  :19

   17:ちから

   28:すばやさ

   50:たいりょく

   25:かしこさ

  148:うんのよさ

  103:さいだいHP

    0:さいだいMP

   57:こうげき力

   54:しゅび力

25145:EX

 

 

 

所持金:25056ゴールド

死亡回数:ゆうき1回 はあと9回 くいいん2回 じゃく3回

プレイ時間 (執筆時間を含む):約490分

累計プレイ時間:約4870分



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12週目 遊び人は賢者に転職した!

 ポルトガ王の勅命を受け、新天地を目指す僕たちアリアハン道化団。

 

 みんながレベル19になったところで、更なる問題が発生した。

 じゃくが戦闘中、敵の目の前で両腕を大きく広げて跪いたのだ。

 えっ?

 何やってんの、じゃく?

 無条件降伏?

 もちろんモンスターには通じない。

 軽く目を瞑ったじゃくは、顔面に強烈な一撃を叩き込まれ、鼻血を出しながら笑っている。

 それを見たくいいんが、今度は敵の前で頭を垂れて 顔の前で両掌を合わせて「てんに いのった!」のだ。

 そしてまた、痛打を浴びる・・・。

 

「二人とも。何をしているんですか」

「え? いやあ、何ってよ」

「神様に~、勝利を祈願しただけよ~」

「死にたいんですか」

「ギャハハ! ゆうき、冗談きついぜ!」

「冗談はそっちでしょう!?」

「そうよ~、遊んでばかりだと~、はあとがどうなっても~知らないわよ~」

「そう! はあとの身に危・・・」

「そりゃいけねえな! ちゃんと戦えよ、くいいん!」

「・・・」

 

 ダメだ。

 情が沸いてしまって、ここまで一緒に来たけど。

 もう無理、もう嫌、もう我慢の限界だ!

 これ以上は付き合いきれない!

 もし今度、遊んでばかりで誰かが死ぬような事態になれば、それっきり、きっぱり別れよう。

 そして頼りになりそうな、戦士や魔法使いや僧侶を仲間にして、やり直そう。

 僕は魔王を倒さなくちゃいけないんだ!

 再び心に誓った。

 

 洞窟を抜けた先を慎重に進んでいく。

 洞窟の北には、小さな宿屋が一軒あるだけだった。

 となると南だ。

 全体攻撃をしてくるハンターフライ、数で圧してくるデスジャッカルに苦戦しつつ、山林を抜け、砂漠を超えた先に、町が見えてきた。

 ここがポルトガ王に頼まれていた黒胡椒の産地、バハラタであった。

 

「きたのやまおくには

 てんしょくをおこなう

 ダーマのしんでんああるそうだ。

 

 町を歩いていると、気になる会話が耳に入った。

 てんしょく・・・転職・・・だと?

 転職ってあれか?

 職業を変える転職か?

 もしかして、全くの役立たずである遊び人も、別の職業になれたりするのか!?

 

「皆さん、聞きました?」

「何の話だよ?」

「転職の神殿って今」

「ぅん、ぁたしも聞ぃたょ」

「ダーマ神殿~って言ってたかしら~」

「この町の北にあるそうです」

「転職?」

「そうです、転職できるんですって」

「転職~。そうね~悪くないわね~」

「オメーには遊び人がお似合いだぜ、くいいん!」

「あら~、じゃくこそ~遊び人が天職でしょ~」

「ギャハハ! 転職じゃなく天職ってか!」

「いや冗談じゃなく! 真面目に、もっと良い職業を目指しませんか」

「ぁのねっ、ぁたしはねっ、もっと強くなってぇ、ゆぅきの役に立ちたぃょ?」

「おう! 俺だってやぶさかじゃねえ!」

「そうよね~強くなって~はあとを守ってあげないとね~」

「俺でもよ、はあとを守ってやれんのかな?」

「じゃくは! じゃくはね、ぃつも守ってくれてるょ?」

「けど、俺はもっと強くなりてえ! そんで、ちゃんと守ってやんよ」

「あら~ラブラブね~」

「やめろよ! そんなんじゃねえって!」

「じゃあ~、ゆうきは~私が守るからね~。パフパスやっとく~?」

「それは結構です」

 

 みんなも、やる気を出してくれたみたいだ。

 正直、別れるのは忍びないと思っていた。

 だけど断腸の思いで、みんなとの別離を決意したばかり。

 ところが転職によって、もしかしたらこれからも、みんなと旅を続けられるかも知れない。

 そんな光明が見えたんだ!

 

 ところで、ポルトガ王からの依頼、黒胡椒の件はどうなったかと言うと。

 町の入り口近くにある黒胡椒のお店が、開いていなかった。

 店主の老人は町の南、海の見える広場で、息子グプタと何やら口論をしている。

 話を聞いていると、タニアという婚約者が攫われたのだとか。

 暫く口論した後、グプタは、

「僕が恋人を助ける! キリッ!」

 と一声叫んで、町の外へと走り去ってしまった。

 黒胡椒は、この問題を解決しなければ入手できなさそう。

 仕方がない、グプタを追おう。

 

 タニアが連れ去られ、グプタが救出に向かった洞窟は、バハラタを出るとすぐ北東にあった。

 川を渡り、森の中を約半刻歩いた先。

 洞窟に着くまで間、バハラタ周辺で新たに出会ったモンスターは『マージマタンゴ』『げんじゅつし』『アントベア』の3種類。

 マージマタンゴは、キノコ型のモンスターで、ヒャドとホイミを使ってくる魔法系の敵だ。

 幻術士も同じく魔法系で、マヌーサと『メダパニ』を使ってくる。

 メダパニというのは『こんらん』状態になって、敵ではなく味方を攻撃、同士討ちしてしまう厄介な呪文。

 アントベアは大アリクイ系統のモンスターで、後列が集中的に狙われやすいという以外、さしたる能力はない。

 

 また、洞窟内に入って、新たに出会ったのは、『キャットバット』と『さつじんき』。

 キャットバットはキャットフライの同系統モンスターで、不思議な踊りを踊る。

 殺人鬼はカンダタに似た、プロレスラーのような格好をしたパワー系の敵だ。

 

 これらのモンスターと戦いながら、左手を壁につけて時計回りに探索を進める。

 暗くてよく分からないが、少し進んだところで、何か妙な感触があった。

 これは・・・岩肌ではない。

 金属?

 体当たりをしてみたり、手探りで何かないか探ったが、特に怪しいところはない。

 気のせいか。

 と思ってもう少し進むと、やはり同じような感触。

 いや、さっきよりはっきり分かる・・・これは金属製の扉だ!

 丹念に探ると、鍵穴を発見。

 魔法の鍵がピッタリ合った。

 扉を開け、更に進むと、下へ降りる階段。

 そして洞窟の岩肌とは違う、明らかに人工的な、家の中のような造りに変わった。

 

「なんだ おめえらは?

 オレたちのなかまに なりてえのか?

 

 はい

→いいえ

 

「じゃあ とおすわけには

 いかねえな やっちまえ!

 

 中にいたのは、重装備に身を包んだ4人の『カンダタこぶん』だった。

 カンダタ?

 またあいつか!?

 これは懲らしめてやらなければなりませんね。

 助さん、格さん。

 やっておしまいなさい!

 

 カンダタ子分を軽く一蹴。

 部屋の奥へと進んでいくと・・・

 

「たすけて ゆうしゃさん!

 あたし バハラタのまちから

 さらわれた タニアです。

 

 小部屋に閉じ込められていたのは、一人の女性。

 救出すべき、目的の女性だ。

 更に向かい側の部屋に軟禁されていた男性が、

「突き当りのテーブルに仕掛けがある」

 と教えてくれた。

 この男性は・・・バハラタの町で見掛けたグプタじゃないか。

 言われた通り、壁際にスイッチがあったので、それをポチッとな。

 こうして二人の救出に成功した。

「帰れるのね」

「帰ったら結婚しよう」

 そういうのは、安全な場所に行ってからやってくれ。

 家に帰るまでが遠足だよ!

 ・・・ってほら、言わんこっちゃない。

 出口でカンダタに摑まっちゃったよ。

 しょうがない、飛猿、風車の弥七、お新!

 あと、うっかり八兵衛・・・いや、お前はいいや。

 みなさん、懲らしめてやりなさい!

 

 って、カンダタ強くないか!?

 前より遥かにパワーアップしている!

 周りは軽く片付けたが、カンダタ本人はいくら攻撃しても倒れない。

 MPも枯渇し、あと一撃で死にそうな仲間が出てきた。

 この総攻撃で倒せなかったらヤバいかも!

 

「参った! これっきりで心を入れ替えるから許してくれよ! な!」

 

→はい

 いいえ

 

 危なかった・・・ギリギリの戦いだった。

 カンダタよ、お前のその力を良い方向に使えば、きっと世のため人のためになるぞ。

 改心するのだ。

 部屋の奥にあった宝箱から、各種の種を回収。

 祈りの指輪でMPを回復し、リレミトとルーラでバハラタに戻った。

 

タニア「わたしたち

 おじいちゃんから おみせを

 ゆずってもらったんです。

 

グプタ「いらっしゃい。

 ここは こしょうのみせです。

「やや! あなたがたは!?

「ぼくです。グプタです!

 たすけていただいて

 ありがとうございました。

「こしょうを おもとめですか?

 

→はい

 いいえ

 

「では さしあげましょう!

 おかねなど とんでもない!

 

 僕たちは重要アイテム『くろこしょう』を入手した!

 

 二人が幸せそうで何より。

 なお、カンダタの部屋で見付けた種は、僕が美味しく頂きました。

 

 ポルトガに戻り、王様に大好物の黒胡椒を渡す。

「約束通り船を与えよう。表に出てみると良い」

 なんと!

 無料で手に入れた黒胡椒ひと袋が、新造船に変わった!

 船モン、ゲットだぜ!

 アリアハン盗賊団、海賊団になるってよ!

 海賊王に!!! おれはなるっ!!!!

 

 それから僕たちはバハラタで聞いた気になる情報。

 転職の神殿を探すため、北を目指した。

 道中で出会った敵は、『ごうけつぐま』『マッドオックス』『キラーエイプ』『メタルスライム』。

 豪傑熊はパワー型のモンスター。

 マッドオックスは角を生やした四つ足のモンスターで、ギラを使ってくる。

 キラーエイプは暴れ猿と同系統のモンスター。

 メタルスライムはとにかく硬くて、すぐ逃げてしまう臆病なやつだ。

 運良く倒せたら、経験値をいっぱいくれる。

 

 これらのモンスターと戦いながら進む間に、僕はLV18になり、マホトーンの呪文を覚えた。

 そして北の山の中、僕たちは遂にダーマの神殿に辿り着いた!

 

「ここは てんしょくの しんでん。

 しょくぎょうを かえたいものが

 くるところじゃ。

「てんしょくを ごきぼうかな?

 

→はい

 いいえ

 

「どなたの しょくぎょうを

 かえたいのかな?

 

→ゆうき

 はあと

 くいいん

 じゃく

 

「おろかものめ!

 ゆうしゃを やめたいというか?

 それだけは ならんっ!

 

 怒られちった。

 ゆうき、勇者やめられないってよ。

 じゃあ他のみんなはどうだろう?

 

 ゆうき

 はあと

 くいいん

→じゃく

 

「なんと じゃくは まだ

 いちにんまえのあそびにんに

 なってないというに……。

「みじゅくものの ぶんざいで

 もう しょくを かえたいとは

 なにごとじゃ!

 

 じゃく、遊び人やめられないってよ。

 一人前になってから出直せとな?

 ・・・一人前の遊び人とは?

 よく分からないが、とにかくレベルを上げるしかない。

 ダーマの神殿の周辺で数日間、経験値を稼ぐと、みんなLV20になった。

 前とあまり変わっていないけど、もう一度、神殿に寄ってみる。

 すると・・・

 

「じゃくが なりたいのは

 どの しょくぎょう じゃな?

 

 今度は一人前と認めてくれたぞ!

 どの職業が良いか、じゃくに選ばせると・・・

 

 せんし

 そうりょ

 まほうつかい

 ぶとうか

 しょうにん

→けんじゃ

 

「じゃくは けんじゃに

 なりたいともうすか?

 

→はい

 いいえ

 

「いちど レベル1に もどり

 しゅぎょうを しなおすかくごも

 おありじゃな?

 

→はい

 いいえ

 

「よろしい。 では おぬしに

 かつをいれて しんぜよう。

「かーーーーっ

 

 じゃくは悟りを開いて賢者になった!

 くいいんは悟りを開いて賢者になった!

 はあとは悟りを開いて賢者になった!

 

 ・・・って、みんな揃って賢者かよ!

 お前ら仲良いな!

 こうして生まれ変わった後のステータスは、以下の通り。

 

 

 

なまえ  :ゆうき

そうび  :はがねのつるぎ はがねのよろい てつのたて きんのかんむり ほしふるうでわ

呪文   :メラ ホイミ ニフラム アストロン ギラ ルーラ マホトーン ラリホー リレミト

レベル  :18

   64:ちから

   96:すばやさ

   80:たいりょく

   35:かしこさ

   26:うんのよさ

  159:さいだいHP

   44:さいだいMP

   97:こうげき力

   98:しゅび力

31318:EX

 

 

なまえ  :じゃく

そうび  :なし

レベル  :1

   11:ちから

   16:すばやさ

   25:たいりょく

   13:かしこさ

   76:うんのよさ

   49:さいだいHP

    0:さいだいMP

   11:こうげき力

    8:しゅび力

    0:EX

 

 

なまえ  :くいいん

そうび  :なし

レベル  :1

    9:ちから

   13:すばやさ

   27:たいりょく

   12:かしこさ

   83:うんのよさ

   54:さいだいHP

    0:さいだいMP

    9:こうげき力

    6:しゅび力

    0:EX

 

 

なまえ  :はあと

そうび  :なし

レベル  :1

    9:ちから

   14:すばやさ

   27:たいりょく

   13:かしこさ

   76:うんのよさ

   55:さいだいHP

    0:さいだいMP

    9:こうげき力

    7:しゅび力

    0:EX

 

 

 職業を賢者に変更した後、使えなくなった装備品を処分して、新調した。

 武器は僕自身も含め、全員お揃いの鋼の剣。

 青銅の盾と鉄兜を3人分と、はあとに武闘着を購入して、ステータスはこうなった。

 

 

じゃく :はがねのつるぎ みかわしのふく せいどうのたて てつかぶと

攻撃力 :44

守備力 :51

 

くいいん:はがねのつるぎ みかわしのふく せいどうのたて てつかぶと

攻撃力 :42

守備力 :49

 

はあと :はがねのつるぎ ぶとうぎ せいどうのたて てつかぶと

攻撃力 :42

守備力 :53

 

 

 

所持金:25138ゴールド

死亡回数:ゆうき1回 はあと9回 くいいん2回 じゃく3回

プレイ時間 (執筆時間を含む):約390分

累計プレイ時間:約5260分




なかがき

遂に目的地『ダーマ神殿』まで辿り着き、賢者への転職を果たしました。目標を達成し、物語はこれで終わり・・・ではありません。もう1話だけ続きますので、どうぞ最後までお付き合いください & 最後まで楽しんで頂けたら幸いです!
 m(_ _)m


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13週目(最終話) 僕たちの戦いはこれからだ!

 数多の困難を乗り越え、幾多の難敵を退け、巨多の試練と苦難の末にダーマの神殿に到着した僕たちアリアハン道化団。

 

 ・・・転職によって、既に道化は一人もいないんだから、道化団ではないな。

 勇者と賢者が盗賊団を名乗るのも良くない。

 もちろん海賊団もダメだ。

 これからは僕たちの事を、正しく『勇者パーティー』と呼んで貰おう。

 って、夜寝る前にみんなで話し合って決めた。

 

 一晩経って、間違いなく賢者に転職できているのか確かめる。

 うん、大丈夫。

 夢なんかじゃなかった。

 心なし、じゃくはいつもより知的で落ち着いて見える。

 はあとも大人びた雰囲気になった。

 くいいんは・・・う~ん、あまり変わらないかな?

 

 転職の影響でレベルダウンしたメンバーに合わせて、アッサラーム周辺まで戻って経験値を稼ぐ。

 あっという間にレベルが上昇。

 僅か数日の戦闘で、みんなのレベルは10になり、基本的な呪文も覚えた。

 僕がホイミをかけなくてもよくなったので、MPの運用が楽になった。

 何より、戦闘中にふざけて指示に従わない、なんて事はなく、真面目に戦ってくれるので助かった。

 

 

 

なまえ  :じゃく

そうび  :はがねのつるぎ みかわしのふく せいどうのたて てつかぶと

呪文(魔):メラ スカラ ヒャド スクルト ギラ リレミト

呪文(僧):ホイミ ニフラム マヌーサ ラリホー

レベル  :10

   30:ちから

   32:すばやさ

   44:たいりょく

   33:かしこさ

   81:うんのよさ

   85:さいだいHP

   42:さいだいMP

   63:こうげき力

   59:しゅび力

 3016:EX

 

 

なまえ  :くいいん

そうび  :はがねのつるぎ みかわしのふく せいどうのたて てつかぶと

呪文(魔):メラ スカラ ヒャド スクルト ギラ リレミト

呪文(僧):ルカニ ホイミ ニフラム ピオリム マヌーサ ラリホー

レベル  :10

   25:ちから

   29:すばやさ

   45:たいりょく

   29:かしこさ

   88:うんのよさ

   86:さいだいHP

   35:さいだいMP

   58:こうげき力

   57:しゅび力

 3016:EX

 

 

なまえ  :はあと

そうび  :はがねのつるぎ ぶとうぎ せいどうのたて てつかぶと

呪文(魔):メラ スカラ ヒャド スクルト ギラ

呪文(僧):ホイミ ニフラム ピオリム マヌーサ ラリホー

レベル  :10

   29:ちから

   28:すばやさ

   41:たいりょく

   27:かしこさ

   80:うんのよさ

   85:さいだいHP

   29:さいだいMP

   62:こうげき力

   60:しゅび力

 3016:EX

 

 

 

 ダーマ神殿の北にあるガルナの塔に、『さとりのしょ』という宝物が眠っているらしい。

 これがあれば誰でも賢者に転職できるんだそうだ。

 何故かみんな賢者になれたし、僕も賢者になりたい!

 ダーマ神殿の神官長に怒られちゃった僕でも、悟りの書があればワンチャンス転職可能なのでは?

 と探しに向かった。

 スカイドラゴンの炎で死にそうな目に遭いつつ、何とか入手し神殿に戻った。

「勇者、辞めます」

「勇者、辞めんな」

 悟りの書があっても、やっぱり僕は賢者になれなかったよ。

 

 HPとMPに少しゆとりが出てきたところで、ポルトガ王に貰った船で外洋に出る。

 海には大型のモンスターもいて、時折ピンチも迎えたが、概ね順調な航海ができた。

 バハラタから西回りに船旅をすると、険しい岩山に囲まれた大陸の南、テドンという小さな村を発見。

 周辺のモンスターは手強く、苦戦したが、村で売っている装備品は良い品が揃っていた。

 中でも『ゾンビキラー』は高い攻撃力を誇る逸品。

 三賢者全員分買い揃えた。

 前衛のはあとのために『まほうのよろい』も購入。

 これで資金は尽きたが、攻撃と防御は大幅に上昇。

 その間、僕のレベルは20、みんなのレベルは15になった。

 

 

 

なまえ  :ゆうき

そうび  :はがねのつるぎ はがねのよろい てつのたて てっかめん ほしふるうでわ

呪文   :メラ ホイミ ニフラム アストロン ギラ ルーラ マホトーン ラリホー リレミト

レベル  :20

   68:ちから

  102:すばやさ

   86:たいりょく

   40:かしこさ

   33:うんのよさ

  174:さいだいHP

   58:さいだいMP

  101:こうげき力

  120:しゅび力

47107:EX

 

 

なまえ  :じゃく

そうび  :ゾンビキラー みかわしのふく せいどうのたて てつかぶと

呪文(魔):メラ スカラ ヒャド スクルト ギラ ルーラ イオ ボミオス マホトラ ベギラマ リレミト

呪文(僧):ルカニ ホイミ ニフラム キアリー バギ ピオリム マヌーサ ラリホー ベホイミ キアリク マホトーン

レベル  :15

   38:ちから

   41:すばやさ

   60:たいりょく

   43:かしこさ

   84:うんのよさ

  125:さいだいHP

   61:さいだいMP

  103:こうげき力

   63:しゅび力

16034:EX

 

 

なまえ  :くいいん

そうび  :ゾンビキラー みかわしのふく せいどうのたて てつかぶと

呪文(魔):メラ スカラ ヒャド スクルト ギラ ルーラ イオ ボミオス マホトラ ベギラマ リレミト

呪文(僧):ルカニ ホイミ ニフラム キアリー バギ ピオリム マヌーサ ラリホー ベホイミ キアリク マホトーン

レベル  :15

   35:ちから

   40:すばやさ

   59:たいりょく

   40:かしこさ

   89:うんのよさ

  114:さいだいHP

   54:さいだいMP

  100:こうげき力

   63:しゅび力

16034:EX

 

 

なまえ  :はあと

そうび  :ゾンビキラー まほうのよろい せいどうのたて てつかぶと

呪文(魔):メラ スカラ ヒャド スクルト ギラ ルーラ イオ ボミオス マホトラ ベギラマ リレミト

呪文(僧):ルカニ ホイミ ニフラム キアリー バギ ピオリム マヌーサ ラリホー ベホイミ マホトーン

レベル  :15

   38:ちから

   34:すばやさ

   54:たいりょく

   35:かしこさ

   83:うんのよさ

  118:さいだいHP

   46:さいだいMP

  103:こうげき力

   80:しゅび力

16034:EX

 

 

 

 僕が使えない『ベホイミ』『キアリー』など、数々の有用な呪文を覚え、みんな頼れる戦力になってきた。

 魔王討伐に向け、着実に成長している。

 以前、はあとが一口で丸呑みにされてしまった、ミミックにリベンジを果たすべく、ピラミッドへと向かう。

 あの時は一撃でやられてしまったけど、今なら難なく倒せるぞ!

 ピラミッドの中を歩き回り、ミミックを全て退治。

 気味悪くてすぐ離れてしまったピラミッドの地下にも赴き、隠し通路の奥で『おうごんのつめ』を入手した。

 

 徒歩で行ける所は全て探索し尽くした。

 次は船で世界一周の旅に出る。

 東の果てでは、商人を探しているという男に出会い、アリアハンから移住希望の商人、とるねこを連れて行った。

 これからの発展に期待。

 北の海で『かわきのつぼ』を使い、『さいごのカギ』を入手した。

 今まで開かなかった扉も通れるようになった。

 ジパングという国では、『やまたのおろち』という怪物の話を聞いた。

 すぐ近くの洞窟内で八岐大蛇を発見、これを討伐して『くさなぎのけん』を手に入れた。

 こうして僕のレベルは25、みんなは20になった。

 

 

 

なまえ  :ゆうき

そうび  :くさなぎのけん はがねのよろい みかがみのたて てっかめん ほしふるうでわ

呪文   :メラ ホイミ ニフラム アストロン ギラ ルーラ マホトーン ラリホー ベギラマ リレミト トヘロス

レベル  :25

   84:ちから

  116:すばやさ

  108:たいりょく

   51:かしこさ

   49:うんのよさ

  220:さいだいHP

   77:さいだいMP

  147:こうげき力

  145:しゅび力

88343:EX

 

 

なまえ  :じゃく

そうび  :ゾンビキラー まほうのよろい みかがみのたて てつかぶと

呪文(魔):メラ スカラ ヒャド スクルト ギラ ルーラ イオ ボミオス メラミ マホトラ ヒャダルコ ベギラマ リレミト インパス トラマナ

呪文(僧):ルカニ ホイミ ニフラム キアリー バギ ピオリム マヌーサ ラリホー ルカナン ベホイミ キアリク マホトーン ザメハ

レベル  :20

   48:ちから

   49:すばやさ

   73:たいりょく

   52:かしこさ

   88:うんのよさ

  152:さいだいHP

   78:さいだいMP

  113:こうげき力

  110:しゅび力

57270:EX

 

 

なまえ  :くいいん

そうび  :ゾンビキラー まほうのよろい せいどうのたて てつかぶと

呪文(魔):メラ スカラ ヒャド スクルト ギラ ルーラ イオ ボミオス メラミ マホトラ ヒャダルコ ベギラマ リレミト インパス トラマナ

呪文(僧):ルカニ ホイミ ニフラム キアリー バギ ピオリム マヌーサ ラリホー ルカナン ベホイミ キアリク マホトーン バシルーラ ザメハ

レベル  :20

   43:ちから

   52:すばやさ

   74:たいりょく

   48:かしこさ

   93:うんのよさ

  143:さいだいHP

   68:さいだいMP

  108:こうげき力

   89:しゅび力

57270:EX

 

 

なまえ  :はあと

そうび  :ゾンビキラー まほうのよろい せいどうのたて てつかぶと

呪文(魔):メラ スカラ ヒャド スクルト ギラ ルーラ イオ ボミオス メラミ マホトラ ヒャダルコ ベギラマ リレミト インパス トラマナ

呪文(僧):ルカニ ホイミ ニフラム キアリー バギ ピオリム マヌーサ ラリホー ルカナン ベホイミ キアリク マホトーン バシルーラ ザメハ

レベル  :20

   48:ちから

   41:すばやさ

   68:たいりょく

   44:かしこさ

   87:うんのよさ

  144:さいだいHP

   63:さいだいMP

  113:こうげき力

   83:しゅび力

57270:EX

 

 

 

 ピラミッドで手に入れた黄金の爪。

 持っているだけで敵をおびき寄せてしまう、ある種呪われた武器。

 高く売れるんだけど、貴重で有用なアイテムなので、ルイーダの酒場にいる、じゃくと顔見知りの戦士スタロンに預けていた。

 黄金の爪を引き取り、ルーラでダーマの神殿へ。

 黄金の爪の効果で敵に出会いやすくなるが、『トヘロス』の呪文を使うと自分より弱い敵は出なくなる。

 つまりメタルスライムに高確率で遭遇するのだ。

 メタルスライムを狩り続け、瞬く間に僕のレベルが28になった。

 その後は、トヘロスでメタルスライムにも遭遇しなくなってしまった。

 

 僕たちのレベル上げは、ここまでだ!

 

 サマンオサで『みかがみのたて』などの装備を整え、近くの洞窟を攻略。

 世界各地に散らばる6色のオーブを揃えれば、伝説の不死鳥ラーミアが復活するそうだ。

 世界を巡りオーブを集めよう。

 そして魔王バラモスとの決戦に赴くのだ!

 

 僕たちの戦いは、これからだ!

 

 

 

なまえ   :ゆうき

そうび   :くさなぎのけん まほうのよろい みかがみのたて てっかめん ほしふるうでわ

呪文    :メラ ホイミ ニフラム アストロン ギラ ルーラ マホトーン ラリホー ライデイン ベギラマ リレミト トヘロス

レベル   :29

    99:ちから

   132:すばやさ

   122:たいりょく

    60:かしこさ

    61:うんのよさ

   245:さいだいHP

    90:さいだいMP

   162:こうげき力

   161:しゅび力

157063:EX

 

 

なまえ   :じゃく

そうび   :ゾンビキラー まほうのよろい みかがみのたて てつかぶと

呪文(魔) :メラ スカラ ヒャド スクルト ギラ ルーラ イオ ボミオス メラミ マホトラ ヒャダルコ ベギラマ バイキルト イオラ マホカンタ リレミト インパス トラマナ ラナルータ

呪文(僧) :ルカニ ホイミ ニフラム キアリー バギ ピオリム マヌーサ ラリホー ルカナン ベホイミ ザキ キアリク マホトーン バシルーラ ザメハ ザオラル

レベル   :25

    59:ちから

    60:すばやさ

    87:たいりょく

    64:かしこさ

    89:うんのよさ

   180:さいだいHP

    97:さいだいMP

   124:こうげき力

   116:しゅび力

125990:EX

 

 

なまえ   :くいいん

そうび   :ゾンビキラー まほうのよろい みかがみのたて てつかぶと

呪文(魔) :メラ スカラ ヒャド スクルト ギラ ルーラ イオ ボミオス メラミ マホトラ ヒャダルコ ベギラマ バイキルト イオラ マホカンタ リレミト インパス トラマナ ラナルータ

呪文(僧) :ルカニ ホイミ ニフラム キアリー バギ ピオリム マヌーサ ラリホー ルカナン ベホイミ ザキ キアリク マホトーン バシルーラ ザメハ ザオラル

レベル   :25

    49:ちから

    64:すばやさ

    90:たいりょく

    60:かしこさ

    96:うんのよさ

   174:さいだいHP

    94:さいだいMP

   114:こうげき力

   118:しゅび力

125990:EX

 

 

なまえ   :はあと

そうび   :ゾンビキラー まほうのよろい みかがみのたて てつかぶと

呪文(魔) :メラ スカラ ヒャド スクルト ギラ ルーラ イオ ボミオス メラミ マホトラ ヒャダルコ ベギラマ バイキルト イオラ マホカンタ リレミト インパス トラマナ

呪文(僧) :ルカニ ホイミ ニフラム キアリー バギ ピオリム マヌーサ ラリホー ルカナン ベホイミ ザキ キアリク マホトーン バシルーラ ザメハ ザオラル

レベル   :25

    54:ちから

    51:すばやさ

    85:たいりょく

    54:かしこさ

    90:うんのよさ

   179:さいだいHP

    80:さいだいMP

   119:こうげき力

   111:しゅび力

125990:EX

 

 

 

所持金:3029ゴールド

死亡回数:ゆうき1回 はあと9回 くいいん2回 じゃく3回

プレイ時間 (執筆時間を含む):約970分

累計プレイ時間:約6230分

 

 

 

 

 

    エ ピ ロ ー グ

 

 

 

 それは、ゆうきが二十歳の誕生日を迎えた日の事であった。

 

「お招きに与って~。みんなで伺ったわ~」

「ゆうき! 誕生日おめでとう!」

「ぉめでとぅ、ゆぅき。はぃ、みんなからのぉ、プレゼントだょ」

「あ、有難うございます。さあ入ってください」

「ゆうきも~、これからは立派な~大人のオ・ト・コ~なのね~」

「お陰様で。母親にも楽な暮らしをさせてあげられています」

「魔王の~貯め込んでいた財宝~」

「ぁれ、ぃっぱぃ、ぁったょねぇ」

「全員で山分けしても、とても使い切れないほどでしたね」

「私なんて~『あぶないみずぎ』を~、色違いで10枚も~買っちゃった~」

「ギャハハ! 買い過ぎだぜ、くいいん」

「78万ゴールドですか」

「そんなにぃ、ぉ金がぁったらぁ、家が建つねぇ」

「いいの~。ゆうきと~夜~使うんだから~」

「使いません! というか、そもそも僕たちはそんな関係じゃないでしょう」

「あら~。い・け・ず~」

「ギャハハ! オメーら、まだ何もしてねえのかよ!」

 

 久々に結集した僕たち勇者パーティー。

 空白の時間を感じさせない、阿吽の呼吸。

 毎日毎日一緒に過ごしている、家族のような安定感と安心感がある。

 軽口を叩き合い、我が家は久々の活気に溢れた。

 

「何はともあれ、こうして魔王を退治して、世界が平和になったのは、皆さんの協力があったからです」

「おぅ! あれから何年だ?」

「確か16歳の誕生日に、母親に連れ出されて王城に行き、その後で皆さんに出会ったんです」

「あら~、そうだったの~」

「そうです。その日が僕の門出でした。だから丸4年ですね」

「もぅ4年も前なんだねぇ」

「お二人は、結婚して2年ですか?」

「おぅよ!」

「ぅん」

「今も仲良さそうですね」

「そうなの~。いつもいつもイチャイチャ~、イチャイチャ~。見せ付けてくれちゃって~」

「知ってます」

「ぅぁ・・・ほぎゃぁ! ほぎゃぁ!」

 

 世界が平和を取り戻して、早4年。

 未だ世界各地でモンスターが跋扈し、アリアハンでも時折被害が出るが、その脅威は以前より確実に減っている。

 じゃくとはあとは結婚し、つい最近、子供も生まれた。

 顔はお父さん似の、可愛い女の子。

 その赤ん坊が空腹をアピールする、元気いっぱいの泣き声も、父親譲りだろうか。

 

「腹減ったみてえだな」

「ぁらぁら、ぉっぱぃ、ぁげなくっちゃ」

「じゃあ隣の部屋でどうぞ。こっちです」

「ぁ、分かるからぁ、平気だょ」

「ほぎゃぁ!」

「ょちょち、ぃっぱぃ飲もぅねぇ」

 

 すっかり母親になった、はあとを見送る。

 賢者の両親から生まれたエリート。

 将来は両親の跡を継いで、賢者を目指すのだろうか。

 それとも、その頃にはモンスターの数も更に減って、あの娘が戦いに出る必要もないだろうか。

 そんな事を考えていると、じゃくが悪戯っぽい笑顔で言うんだ。

 

「なあ、くいいん。いい加減、ゆうきに女ってヤツを教えてやれよ!」

「ななな何を言い出すんですか、じゃく!」

「そうよ~、ゆうきは~シャイなんだから~」

「ギャハハ! 相変わらずだな、ドーテイ!」

「どどどど童貞ちゃうわ! もう、じゃくも変わっていませんね」

「まあ~私は~、ゆうきがその気になってくれたら~、いつでも~」

「じゃ、俺はちょっくら子供の様子でも見てくっからよ!」

 

 じゃくも相変わらずだった。

 賑やかな道化師・・・賢者の男が部屋を出て行くと、二人っきり取り残された部屋は静寂に包まれた。

 なんだか気まずい。

 

「ゆうき~、さっきも言ったけど~」

「何ですか?」

「私はいつでも~オッケーだから~」

「・・・」

「私の方が~年上だから~、ゆうきを~束縛するつもりもないし~」

「・・・」

「ゆうきが望むなら~、一夜限りの関係でも~いいし~」

「・・・」

「いつか~ゆうきが本当の愛を~見付ける日まで~・・・」

「そんなの! 僕はもう、見付けてますよ」

「えぇっ~」

「僕。くいいんが好きです」

「あら~本当に~」

「あなたを愛しています。いつからだろう、ずっと照れくさくて言えなかったけど」

「うれしい~・・・」

 

 

 

 ・・・ふぅ。

 

 みんなが賢者になってから4年遅れで。

 遅くなったけど。

 こうして僕も『賢者』になりました。

 

 

おしまい

 





 あとがき

まずは、最後までお読み頂き、有難うございます
 m(_ _)m

今回のように、実際にゲームをプレイするだけではなく、キャラクターを作って「物語」にしていく「特別編」の執筆は、初めての試みでした。後から見直して、細かいミス(誤字・脱字・誤用など)が多々あるのに気付いてはいるのですが、まあ敢えて修正はしなくていいかな、なんて適当な事を考えていたりします。もしかしたら突然気が変わって、全編見直しをして、修正や手直しなどをするかも知れませんが・・・w

今回の特別編を描くにあたって、執筆開始当初からエンディング部分のオチに関してはある程度想定していたのですが、途中は完全に行きあたりばったりと言いますか、プレイに合わせて物語を紡いでいったものですので、元々の設定やストーリー的にもちょっとどうかな?と思う部分もありますし。そういった部分も含めて、一々直していられないと言いますか。全体的な完成度は極めて低いと思いますが、いかにもラノベといった感じで、軽い気持ちで楽しんで頂ければ幸いです。

今回のような「特別編」は、現状、次回作その他において考えておりません。従って、ここハーメルンへの投稿は、今回これ1作品のみ、最初で最後という事になるかも知れません。もし多くの方に楽しんで頂けて、需要・ご要望があるようならば、また他のレトロゲームプレイ日記でも「特別編」を描く可能性はありますが、現状は完全な白紙です。

「武藤の特別編は、ここまでだ!」

という事で、最後にもう一度。
最後までお読み頂きまして、有難うございました!

   2023年1月29日 武藤勇城


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