真選組の沖田さん(ドS)と型月の沖田さん(病弱) (芋けんび)
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番外
沖田さんのカルデア生活



「カルデアに召喚された桜之進ちゃんがみたい」と、友人から言われたから書いた誰得な回。

本編とは全く関係ないので、頭を空っぽにしてお読みください。


 

 

レフ・ライノール。

 

カルデア爆破事件の犯人であり、2016年以降の人類史を焼却した張本人。

 

物腰柔らかな紳士然とした人物だが、それはあくまで仮の姿でしかない。

 

本姓は悪意と嗜虐性に満ちた外道にして極悪人。人間という存在を徹底して卑下して「ゴミクズ」呼ばわりし、人類史の焼却によってカルデアの外界にいた人類すべてが抹殺されても歯牙にもかけていない。

 

人類史崩壊の命運はただ一人生き残った唯一のマスター、藤丸立香に委ねられる。

 

彼は魔術とは縁のない一般人に過ぎない。幾多の苦悩と決断を強いられながら、人類の為にその身を投じる。

 

藤丸立香は魔術こそ無縁だが、「適合者発見確率ほぼゼロと言われた日本で奇跡的に見つかった驚異の『レイシフト適性100%』」の持ち主でもある。

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

「今カルデアではこちらに手を貸してくれるサーヴァントが不足している。一月前に騎士王『アルトリア・ペンドラゴン』の召喚に成功したとはいえ、それでもカルデアにいるサーヴァントが少数な事に変わりはないんだ」

 

「何が言いたいかわかるよね?」と言わんばかりにこちらに目伏せしてくるダヴィンチちゃんに強烈なまでも圧力を感じた。

 

失敗は許されない。

 

先程から麻婆豆腐やらきよひーばっかり出てくるが、これ以上の失敗は許されない。

 

「それじゃマシュ。準備よろしく」

 

「了解しました」とロマニに返事を返すと己が手に持つ十字の大盾を触媒に用いて召喚サークルの設置を行った。

 

大きく息を吸い込みゆっくり吐き出していく。

 

ーーいける。

 

「――――告げる。 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に 聖杯の寄るべに従い、人理の轍より応えよ 汝、星見の言霊を纏う七天 降し、降し、裁きたまえ、天秤の守り手よ―――! 」

 

赫々たる日輪のような白い光が部屋を満たす。この召喚システムは、人理を破壊することを願望とする危険な英霊は基本的には除外される仕組みとなっている。

 

「真選組八番隊隊長、沖田桜之進。召喚に応じ推参致しました。主に害なす輩は私が斬り捨てましょう」

 

「沖、田…さん…?」

 

姿を現したのは顔が沖田総司と瓜二つの全身黒づくめの中性的な人物だった。

 

首元には白いマフラーを巻いており、ますます沖田さんっぽさを感じさせる。

 

「初めましてマスター!あれ?そんなに驚いた顔をして一体どうしたんです?」

 

君が原因だよ。

 

これは一体どういうことなんだろう。真選組八番隊隊長って言ってたから沖田さんの血縁関係者なのか?

 

「あ、ごめんね。君が沖田さんと瓜二つの顔しているから驚いちゃって…」

 

「あー、なるほど。確かにオリジナルの沖田さんと私って同じ顔してますもんねぇ。これには深ーい事情がありましてですねーー」

 

「ひょえぇぇぇぇ!?な、何で私と同じ見た目の人がいるんですか!?だ、誰ですか貴女は!」

 

沖田さんの話をしていたら沖田さんが扉の向こうからタイミングよく現れた。同じ容姿と声をしているだけに非常に混乱するんだけど…。

 

「あ、オリジナルの私じゃないですか。初めまして!真選組八番隊隊長の沖田桜之進と申します。気軽に沖田さんって呼んでくださいね」

 

「いやいや!呼んでくださいね、じゃありませんよ!?何でそんなに冷静なんですか!というか、新撰組の八番隊隊長って平助さんじゃありませんでしたっけ?」

 

新撰組じゃなくて真選組ですよ(・・・・・・・・・・・・・・)?」

 

「ほえ?」

 

「んん?」

 

沖田さんと顔を見合わせる。この沖田さんっぽい人は何が言いたいのだろうか?

 

「私のいる世界にはオリジナルの私の新撰組と同じように、真選組なる治安組織が存在するんです。まぁ、こちらは剣客集団じゃなくてチンピラ集団なんて揶揄されてますけど…」

 

つまり平行世界には真選組という新撰組に似た組織があって、そこの八番隊隊長をしているのが目の前にいる沖田桜之進って事なのか。

 

それにしても見分けがつかないくらい顔が似ている。でも、性格はなんというか少し違う気がする。

 

元の沖田さんも性格は陽気なんだけど、今しがた召喚されたこの沖田さんは、まるでギャグ漫画から飛び出して来たようなコメディ感が漂うオーラを纏っている。

 

「そんなに驚くことでもないと思いますよ?アルトリア顔なんてもっと沢山いるんですから」

 

「急なメタ発言はやめてくださいよ!?もう一人の私!」

 

何かとんでもないことを言ってないかこのサーヴァント。あと、さり気なくこっちの心を読まないで。

 

「ふむふむ。現界したクラスはアサシンですか。…あれ?セイバーじゃない…?な、なんでですか!?沖田さんと言ったらセイバー!そして全クラスで最優なのもセイバーじゃないですか!」

 

「よくわかってますね、もう一人の私。そうです、最も強くて優秀なのはセイバー!そして、そのセイバーになれなかったあなたは”敗北者”なんですよ」

 

「は、敗北者ですと…?取り消しなさい…!今の言葉を…!」

 

「何で急にコント始めてるの?沖田さん達…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【真名】

沖田 桜之進

 

【読み】

おきた ようのしん

 

 

【性別】

女性

 

【身長】

159cm

 

【体重】

45kg

 

【CLASS】

アサシン(Assassin)

 

【属性】

中立・中庸

 

【隠し属性】

病弱

 

【ステータス】

筋力:C

敏捷:A+++

幸運:D

耐久:C

魔力:E

宝具:C+

 

【クラススキル】

気配遮断:B

単独行動:C

 

【保有スキル】

 

縮地:A

 

瞬時に相手との間合いを詰める技術。多くの武術、武道が追い求める歩法の極み。単純な素早さではなく、歩法、体捌き、呼吸、死角など幾多の現象が絡み合って完成する。

 

最上級であるAランクともなると、もはや次元跳躍であり、技術を超え仙術の範疇との事。

 

ギャグ補正:EX

 

別名シリアスブレイカー。いかなる状況においても決して自分のペースを崩さない鋼の意思。彼女が存在する事で、どんなシリアスな出来事も全ては笑いに変わる。

 

心眼(偽)B

 

虫の知らせとも言われる、天性の第六感による危険予知能力。視覚妨害への耐性も兼ねる。

 

【特殊台詞】

 

「おや?オリジナルの私じゃありませんか。いつ見てもその浅葱色の羽織はかっこいいですね。沖田さんもこんなかっちりした隊服じゃなくて、もっと動きやすいものがよかったです。真夏だと蒸し暑いんですよねぇ…。それはそれとして、オリジナルの私って天才剣士って呼ばれてたんですよね?どっちが本当の天才剣士なのか知りたいので、勝負でもしませんか…って、そーちゃん待ってくださいよ!そんな嫌な顔して逃げなくても!?」(沖田総司所持時)

 

「土方さーん。頼まれてたマヨネーズ持ってきましたよ。え?そんなものは頼んだ覚えはない?沢庵…ですか?土方さんって沢庵なんて好きでしたっけ?」(土方歳三所持時)

 

「そんなに目を見開いてどうしたんです?…沖田ちゃんとそっくりでビックリしただけ?なるほど、オリジナルの私と同じ新撰組の斎藤一さんですか。ウチには齋藤終という方ならいますが、斎藤さんはアフロ頭じゃないんですねぇ…。へ?今夜一杯どうだ?ひょっとして、沖田さんナンパされてます?」(斎藤一所持時)

 

 

【プロフィール】

ギャグ要素の強い平行世界からやって来た謎の多き天才剣士さん。沖田総司と瓜二つの顔だが、沖田総司であって沖田総司ではないらしい。陽気で人懐っこいが、一度刀を抜けば人斬りの目になるのはオリジナルと同じ。

 

【宝具】

 

武装警察真選組(チンピラ警察)(ランク:B 対軍宝具)

 

バズーカの弾を上空に放つ事で、自身の一定範囲内に真選組の隊士を召喚する。各々の隊士は全員が独立したサーヴァントだが、宝具は持たず戦闘能力はピンキリである。

 

他にも全員がランクE相当の『単独行動』を保有している為、短時間であればマスター不在でも活動可能。

 

ちなみにこのバズーカは真選組の隊士は全員が所持しており、発動者の心象により召喚される隊士の面子や性格が多少変化する。

 

例えば土方さんが召喚するとガラの悪い真選組が。近藤さんが召喚するとお堅い真選組として召喚される。

 

召喚者と仲が悪いと、そもそも召喚に応じない場合もある。

 

沖田が召喚するとかなりギャグ要素の強い真選組となる。

 



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本編
真選組の沖田さんは病弱剣士



前垢で投稿していた作品のリメイクになります。
内容は異なる部分が多々あるのでご注意ください。


【挿絵表示】


あと10分で3時様に描いていただきました。
ありがとうございます!


 

 

真選組の朝は早い。寝巻から真選組指定の黒い隊服に着替えた隊士達は、顔を洗い、歯を磨き、身なりをしっかり整えたら大慌てで広間に集まる。

 

集合時間に遅れれば、真選組副長の土方から局中法度で切腹を命じられる。いやいや、流石にそれはやり過ぎだろう、と局長の近藤が言えば、時間もロクに守れねー奴に隊士は務まらねぇ。と土方がタバコを吹かしながら言うまでがいつもの朝だ。

 

「ぐがー」

 

「おーい。会議中に寝てんじゃねーぞこら」

 

「んあ…、わかってますよ〜。堂々と寝ればいいんでしょう」

 

「寝方の問題じゃねー!会議中に寝るのを止めろって言ってんだよ!」

 

「まぁまぁ土方さん。そーちゃんも悪気があって寝てた訳じゃないと思いますよ?そこまで怒らないであげてください」

 

胡座をかいてだらしなく座る総悟をフォローを入れるのは、背筋をしっかり伸ばした綺麗な正座をするピンクブロンドの髪の毛を1つに束ねたポニーテールの人物。

 

男性、女性ともとれる中性的顔立ちで、首元には長い白色のマフラーを巻いている

 

「そーだそーだ。反省しろ土方〜」

 

「うるせぇ!アイマスクを頭に付けてる奴はどっからどう見ても寝る気満々だろうが!…ったく、総悟を甘やかし過ぎんだよお前は」

 

「んー、そんなことはないと沖田さんは思いますが」

 

「自覚なしかよ…」と頭を抱えながら首を横に振る土方。

 

沖田 桜之進(おきた ようのしん)

 

真選組唯一の女性隊士にして八番隊現隊長。一番隊隊長の沖田総悟の義理の姉でもある。陽気ながら儚げな雰囲気を併せ持つ。

 

剣の腕前は真選組随一で、同じく真選組の中でも別格の強さを誇る沖田総悟には「儚げに見えて俺なんかよりよっぽど恐ろしい人」と畏敬され、副長の土方にすら「首根っこしっかり掴んでないと何やらかすかわかったもんじゃねぇ狂犬」と厳しい評価ながらも剣の腕は認められている。

 

元々は藤堂凹助が八番隊隊長を務めていたが、藤堂本人が「強い人が隊長になるなんて当たり前っスよ。俺は沖田ちゃんが隊長でいいと思うっス」と自ら隊長職を辞退した。

 

藤堂凹助は頭にバンダナを巻いた頬に切り傷がある男で、何かと語尾に「〜っス」と付けるのが特徴的。

 

気だるげながらも剣の実力は確かな強者で、自分よりも強い相手のことは素直に認める潔さを持つ。

 

実は隊長職が面倒臭いから桜之進に譲ったのではないか?と隊内では囁かれているが真実は定かではない。

 

「かぶき町周辺の警邏は十番隊と八番隊に担当してもらう。ここの所、白昼堂々と物取りを行う不届き者が多発していると上から報告があってな」

 

「お、今日は原田さん達の隊と一緒ですか!よろしくお願いしますね!」

 

「おぅ、任せときな。怪しいヤロー見かけたらすぐ知らせてくれ。俺がぶっ飛ばしてやるぜ」

 

「町からクレームくるような問題は止めてくださいっスよ原田隊長。この間もパトカーで町内かっ飛ばして問題になったばっかなんスから」

 

「あれは停止しろって呼びかけてんのに止まらねぇ犯人が悪いんだろうがよ」

 

「だとしても町の皆さんに迷惑をかけるのはダメですよ原田さん。もっと穏便に解決しましょうね」

 

「はいぃ!すんませんしたー!」

 

「頭下げるの早っ!?」

 

「あんな花のような笑顔で言われたら自分の過ちをすぐ認めるしかないだろ!」

 

「沖田隊長!俺にも怒ってください!」

 

「おいテメー。桜姉(さくらね)ぇにテメーの性癖を押し付けるんじゃねぇ」

 

土下座する勢いで桜之進に頭を下げる原田に周りからは笑いが巻き起こる。見かけは強面だが、心の中はピュアそのもの。どれくらいピュアかと言われれば、感動ものの映画ですぐ号泣するくらいには。

 

「ちっ。どいつもこいつも(さくら)に甘過ぎんだよ。皮が小動物でも中身は獣そのものだろうがよ」

 

「ハッハッハ!まぁ良いじゃないかトシ。(さくら)ちゃんがいるお陰で野郎共のやる気が上がってんだ。それに、桜ちゃんがこうして真選組にいられるのは、とっつぁんがあれこれやってくれたのもあるだろう」

 

「とっつぁんね…」

 

とっつぁん、と言うのは幕府の治安組織を束ねる警察庁長官【松平 片栗虎】の愛称だ。

 

出動すれば彼が通った跡は塵一つ残らないことから破壊神と呼ばれ攘夷志士からも幕府からも恐れられている男。

 

しかし、公私混同は日常茶飯事で優先順位が「娘>保身>職務」と毎晩のようにキャバクラで豪遊しては妻に怒られ、娘からはウザがられている可哀想なお父さんでもある。

 

「不定期に屯所に来んのは勘弁願いたいんだが何とかならねーのか近藤さんよ」

 

「とっつぁんも何だかんだで忙しい身だからな。時間を割いて俺達の様子を見に来ているんだろうさ」

 

「どう考えても俺らじゃなくて桜の様子を見に来てんだろありゃ。毎度毎度、クソ忙しい時に手土産片手に屯所にフラっと現れやがって」

 

「とっつぁんは目に入れても痛くないくらいに一人娘の栗子ちゃんを溺愛してるからなぁ。野郎共だらけの職場に女の子がポツンといるのが心配なんじゃないか?かく言う俺もかなり心配してるぞ」

 

「アレを襲う奴の気が知れねぇ。そもそもあいつが黙って襲われるたまかよ。『剣が折れたら鞘で。鞘が折れたら拳で』とか抜かす脳筋女だぞ」

 

実際、打倒倒幕を掲げる過激派攘夷党の巣に突入した際は、刀が折れたら相手を素手で殴り飛ばしていた。

 

一時現場で見せた、倒立した状態で、下半身を開脚させたまま地面に足をつかずに、上半身を高速旋回させる人間離れした動きは、とてもじゃないが真似できない。

 

「いたいけな女の子に脳筋とはなんだトシぃ!!」

 

「怒るトコそこ!?」

 

「このむっつり腐れマヨラーに何を言っても無駄ですよ近藤さん。自分が戦いで一回も桜姉ぇに勝てた試しがねーから恨み言吐いてるだけでさァ」

 

「むっつり腐れマヨラーってなんだお前っ!?明らかに私情が入りすぎだろうが!」

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「あー!おきただぁ!」

 

「おきたおきたー!今度また鬼ごっこしようぜ!」

 

「かくれんぼの方が楽しいぞ!」

 

「ふふっ、いいですとも!鬼ごっこでもかくれんぼでも、沖田さんはいつでも受けて立ちますよ〜。あっ、横断歩道で止まるのは危ないので気を付けましょうね」

 

桜之進の足元に寄ってくる子供達。仕事中で忙しい身であるにも関わらず、嫌な顔1つしないでちゃんと目線を子供に合わせて柔らかい笑みを浮かべながら話を聞いている。

 

「はーい」

 

「はーい!」

 

「貴方まで返事してどうするんスか…原田隊長」

 

「はっ!?し、しまった!」

 

何がしまったなのか。

絶対零度の冷たい視線を原田に向けた。

 

沖田 桜之進は男女問わず人気がある。

 

丁寧な物腰で人当たりもいい。その上、真選組の隊士にも負けない強さと可愛さがある。それだけ注目を浴びながらも誰一人として彼女に言い寄ろうとしないのは一番隊隊長の姉だからだろうか。

 

つい先日も、休憩中に居間で沖田姉弟が仲良く団子を食べてる所を目撃した隊士が数人いたという。

 

陰で隊士達には、シスコン隊長なんて呼ばれてる事を総悟が知ったらバズーカで四六時中追いかけ回されるから皆黙ってるのは内緒。

 

 

 

 

 

 

*******

 

 

 

 

「ピー!はい、お兄さん。今信号が赤なのに無理やり渡ろうとしたよね?困るんだよねーそういうの。ルールはちゃんと守ってもらわないとさ」

 

「あん?今の何処が赤だったんだよ!ギリギリ黄色だったんだからセーフだろうが。言い掛かりつけてんじゃねぇよハゲ!」

 

「んだとゴラァ!イイか、これはハゲじゃねぇ。スキンヘッドっつーんだよ。そこらのハゲ頭と一緒にすんな」

 

「ハゲにハゲって言って何が悪ぃんだよ。意味合いは同じだろーが!」

 

駐車違反の切符切りが終わったので原田さんと合流してみれば何やらつば付きの帽子を被った若い男性と揉めていた。

 

隣にいる藤堂くんをチラ見すれば無言で首を横に振った。「そっとしとけ」と言う意味だろう。

 

いやいや、仮にも警察が騒動をガン無視するのはダメでしょうよ。

 

真選組所か警察機関への信用問題に関わるんですからちゃんと仲裁に入りませんと。

 

つい最近だってテレビで真選組を取り上げてましたけど、散々な言われようだったじゃないですか。

 

なんですかチンピラ警察24時って!

完全に真選組への風当たりが更に厳しくなってますよね。

 

「藤堂くん。私が二人を止めてきますので少しの間フォローお願いします」

 

「え?隊長仲裁に入るんスか?やめといた方がいいんじゃ…」

 

「揉め事は殴ってでも早めに止めろって土方さんも言ってたじゃないですか。ほっといたらもっと悪化してしまいますよ」

 

「副長、沖田ちゃんになんて事教えてるんスか…!え、まさかその言葉を鵜呑みにして本当に殴らないっスよね?」

 

「いくら私でもやっていい事と悪いことの区別は付きますよ〜。心配はご無用です」

 

殴り合いに発展しそうな二人に駆け寄って「はい、ストーップ!そこまでにしてください」と喧嘩を止める。

 

「どいてくれ沖田ちゃん!俺はこいつにハゲとスキンヘッドの違いを教えこまないといけねーんだ!」

 

「あんた警察か?だったらこのお仲間のハゲにも何とか言ってくれよ。ったく、こっちは急ぎの用事があって早く行きてーってのに…」

 

若い男性は呼び止められてイライラしているのか、さっきから貧乏ゆすりが凄い。

 

「お急ぎの所すみません。こちらもこれが仕事なのでどうかご勘弁ください。えーと、信号が無視っと。手短に済ませますので、一応荷物検査だけさせていただけますか?」

 

「え!?そ、それはちょっと困るかなー?なんて…はは」

 

「?何かご都合が悪いことでもあるのですか?」

 

「いやいや、ないよ!?」

 

「では、ご協力をお願いします」

 

「は、はい…」

 

イライラしたり焦ったり忙しい男性ですね。両手を上げさせて体を調べる。

 

ポケットには携帯のみ。持っていた茶色い鞄にはメモ帳と財布。そして透明な袋に入った謎の白い粉が大量にあった。

 

「これは何ですか?」

 

「ああ、えーと…。風邪薬だ。最近風邪気味でさ」

 

「なるほど、そうでしたか。お大事にしてください」

 

「あ、ありがとう。それじゃあ俺はこれで…」

 

足早に立ち去ろうとする男の肩を藤堂が「ちょっと待ってくださいッス」とがっしり掴んだ。

 

「あんた、麻薬売買で指名手配されてる【倉部 大志郎】じゃないスか?」

 

「なに?そいつは本当か藤堂。おい、テメー。ツラよく見せろや!…間違いねぇ。こいつ、局長が会議で言ってた指名手配犯だ。確保っ!確保ーー!」

 

「くそっ!どけっ!」

 

桜之進を突き飛ばして猛ダッシュで交差点を駆けた。隊員達が数人がかりで追い掛けるものの、男の逃げ足が早くすぐ距離を離される。

 

「沖田ちゃん!俺達も急いで追い掛け…あれ?沖田ちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

路地裏に逃げ込んだ男は立ち止まって大きく息を吐いた。幕府の犬共と出くわすとは何ともツイていない。

 

「はぁ…はぁ…!ちっ、アホ共のせいで余計な時間を食った。早く行かねーと…」

 

長いこと逃走生活を続けていた男は脚力には自信があった。絶対に捕まってやらないという反骨精神にも似た抵抗。故に今回もどうせ逃げ切れると高を括っていた。

 

「それは無理だと思いますよ。私に見つかってますから」

 

「なっ!?お、お前…!」

 

薄暗い通り道から足音もなく姿を見せたのは先程自分が突き飛ばしたポニーテールの女だった。

 

「指名手配犯、倉部 大志郎。違法薬物所持、の容疑で貴方を逮捕します」

 

「クソが…!ぜってぇ捕まってたまるかっ!」

 

このままでは逃げ切れないと察した男は、ゴミが溜まったゴミ箱の上に置いてあった鉄パイプを手に取って殴り掛かる。

 

「……!」

 

目前の女が腰に差した刀の柄に手を掛けるが、もう遅い。鉄パイプは吸い込まれるように女の頭部へと命中するーー

 

 

ーーーはずだった。

 

 

「は?な、な、なな…!」

 

いつの間にか握り締めていた鉄パイプがバラバラになって地面に朽ちていた。一体いつ刀を抜いたのか?男の目にはただ柄に手を掛けて棒立ちしているようにしか見えなかった。

 

「近藤さんや土方さんに『殺すな』ってキツく言われてるので、大人しく捕まってくれませんか?うっかり殺して始末書を書かなきゃいけないのも面倒なんで」

 

口調こそ丁寧ではあるが、目付きはただ冷たく鋭い。

 

歩道で会った時の人懐っこい表情はなりを潜め、感情の一切を殺した能面のような顔で刀を突き付けてくる。

 

「(なんだコイツ…。本当にさっきまで虫も殺せないような平和ボケしたツラしてたヤツなのか?)」

 

「はぁ…やっと追い付いたぁ…。一人で突っ走っちゃダメっスよ、沖田ちゃん。原田さんが『速くて追い付けねぇ!』って嘆いてましたよ」

 

「す、すいません…。でも、藤堂くん。犯人を見つけました。とっとと捕まえましょうか」

 

「はいはい、お任せくださいッス」

 

「ちきしょー!!離せー!!」

 



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掲示板:Part1

 

1:病弱剣士

ちょっと聞きたいんだが

みんなってどんな世界に転生してんの?

 

2:名無しの転生者 

なんだその名前

 

3:名無しの転生者 

アクション

 

4:名無しの転生者 

サスペンス

 

5:名無しの転生者 

ホラー

 

6:名無しの転生者 

ざっくりし過ぎだろお前ら

もっと詳しく教えろ

ちな、俺はバ〇オ

 

7:名無しの転生者 

ワイは進〇の〇人

いま巨人の腹の中

 

8:名無しの転生者 

ヒ〇アカ

名も無き三流ヴィラン

 

9:名無しの転生者 

>>7

早く成仏してクレメンス

 

10:名無しの転生者 

>>7

どうやって文字打ってんだよ…

 

11:病弱剣士

はえー

ヒ〇アカとかうらやましいわ

 

12:名無しの転生者 

ひぐ〇し

生梨花ちゃまちっさい

 

13:名無しの転生者 

いま俺の身長がちっさいって言った?(154cm)

 

14:名無しの転生者 

低身長のニキは牛乳飲め

 

15:名無しの転生者 

病弱剣士って名前でパッと思い浮かぶのは

型月の沖田さん!

 

16:名無しの転生者 

沖田さんだいしょーりー!

 

17:病弱剣士

>>15俺がその沖田さんに憑依してしまったんだよ!

 

18:名無しの転生者 

マ!?

 

19:名無しの転生者 

クソうらやま

 

20:名無しの転生者 

嘘だね

俺は証拠の画像を見せないと信じないぜ

 

21:名無しの転生者 

おう

今すぐ自撮り撮ってうpしろや!

 

22:名無しの転生者 

はよ!はよ!

 

23:名無しの転生者 

過激派こわ

 

24:名無しの転生者 

嫉妬で狂った哀れなスレ民よ…

 

25:病弱剣士

これでいい?

画像

 

26:名無しの転生者 

FOOーー!!

 

27:名無しの転生者 

かわええ

 

28:名無しの転生者 

これは幸薄最かわ剣士

 

29:名無しの転生者 

満面の笑みピースいいねぇ

 

30:名無しの転生者 

ポニテ沖田さんか

 

31:名無しの転生者 

何か服装違くね?

 

32:名無しの転生者 

確かに

 

33:名無しの転生者 

軍服っぽいな

羽織もないぞ

 

34:名無しの転生者 

いや待て

ワイこの格好見たことあるぞ

 

35:名無しの転生者 

銀魂の真選組がこんな服装してなかったか?

 

36:名無しの転生者 

チンピラ警察24時か

 

37:名無しの転生者 

カーーツーーラーー!!(バズーカ撃ちながら)

 

38:病弱剣士

どうやら俺は銀魂の世界に転生したみたいだ

でも何かこの世界おかしいんだわ

 

39:名無しの転生者 

 

40:名無しの転生者 

ん?

 

41:名無しの転生者 

何がおかしいんだね

 

42:名無しの転生者 

あっ(察し)

 

43:名無しの転生者 

>>41沖田総司をモデルにしたキャラが既に真選組にいる

 

44:名無しの転生者 

ドS王子か

 

45:名無しの転生者 

ソーゴ・ドS・オキタⅢ世閣下ね

 

46:名無しの転生者 

いやバカイザーだろ

 

47:名無しの転生者 

あってるけど名前で呼べよお前ら

 

48:名無しの転生者 

既にモデルになった沖田総悟がいるならこのイッチ沖田さんは何で銀魂にいるの?

 

49:名無しの転生者 

これは謎が深まりますね…

 

50:名無しの転生者 

神様転生先ミスったか?

 

51:名無しの転生者 

ちょっとー

注文した品と違うんですけどー

 

52:名無しの転生者 

クレーム待ったナシ

 

53:名無しの転生者 

神様がそんな初歩的な間違いする…?

 

54:名無しの転生者 

駄女神ならありえる

あ、でも神様っていっぱいいるんだっけ…?

 

55:名無しの転生者 

ワイの転生担当した神様は爺さんだったな

 

56:名無しの転生者 

終始業務口調な淡泊クール女神だったわ

 

57:名無しの転生者 

居眠りが多い適当なおっさん神

特典付けろって言ったのに「面倒臭いからやだ」で済まされたンゴ

 

58:名無しの転生者 

>>57

適当すぎィ!!

 

59:名無しの転生者 

あーあのおっさんかぁ

俺も転生先ルーレットで決められたわ

 

60:名無しの転生者 

人の第2の人生をルーレットで決めるとか神様に慈悲の心はないんか?



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掲示板:Part2

 

61:名無しの転生者 

てかイッチ全然書き込まなくなったけど何かあったんか?

 

62:名無しの転生者 

緊急事態か?

 

63:名無しの転生者 

イッチー?

 

64:病弱剣士 

ごめんごめん

そーちゃんが部屋に来たから話し込んでた

 

65:名無しの転生者 

そーちゃんって誰や

 

66:病弱剣士 

沖田総悟

沖田さんの義理の弟なんや

 

67:名無しの転生者 

は?なにそれ?

 

68:名無しの転生者 

あのサドに義理の姉がいるとか初耳なんだが

どうなってんねや工藤っ!

 

69:名無しの転生者 

俺にもわからねぇ…(混乱)

 

70:名無しの転生者 

バーロー

 

71:病弱剣士

弟とお昼休憩中

画像

 

72:名無しの転生者 

うーん

これは紛れもなく仲のいい姉弟

 

73:名無しの転生者 

イッチ沖田さんが総悟に団子を食べさせてる図

 

74:名無しの転生者 

口大きく開けて団子待ってる総悟かわええな

 

75:名無しの転生者 

わかる

親からエサ貰う雛鳥感ある

 

76:名無しの転生者 

尊み

もとい、てぇてぇの感情をメモリーに保存します

 

77:名無しの転生者 

おい

なんかネットスラング言葉を使うアンドロイドがいるぞ

 

78:名無しの転生者 

ここは様々な転生者が集う掲示板だからな

そりゃあアンドロイドの一人くらいはいるだろ

 

79:病弱剣士 

>>74>>75なんかやたらそーちゃんからの好感度が高いんだ

この間もそーちゃんに「お風呂一緒に入りましょー!」って言ったら顔真っ赤にして逃げてって可愛かったぜ

 

80:名無しの転生者 

何やってんだこいつ

 

81:名無しの転生者 

からかい上手の沖田さん

 

82:名無しの転生者 

総悟はドSだけどああ見えて実は心はピュア

 

83:名無しの転生者 

おっと…心は硝子だぞ

 

84:病弱剣士

むふー!

これも皮が可愛い沖田さんだからできる特権なんですよ

すいませんねスレ民の皆さん!

 

85:名無しの転生者 

…すぞ(小声)

 

86:名無しの転生者 

屋上行こうぜ…

久しぶりにキレっちまったよ…

 

87:名無しの転生者 

何でこんな奴が沖田さんになれてワイはなれないねん

世の中理不尽だろ!

 

88:名無しの転生者 

ターゲット…ロックオン…

 

89:名無しの転生者 

あんたって人はーー!!

 

90:病弱剣士

ただ、なんというか…中身が男だからなのか

野郎を見てもトキメキは一切ないね

 

91:名無しの転生者

さっき「そーちゃん可愛い」とか言うてたやんけ

 

92:名無しの転生者 

言ってたな

 

93:病弱剣士

>>91それは弟だから可愛いって思ってるだけ

恋愛感情なんかは特にない

 

そもそも恋にうつつを抜かす余裕なんて今の俺にはない

 

94:名無しの転生者 

…と言うと?

 

95:病弱剣士

真選組の仕事が物凄く忙しいんだよ!

もう本当に気が休まらない

何でこの世界こんな犯罪多いの…

 

96:名無しの転生者 

警察だからネ

そりゃあ忙しいだろ

 

97:名無しの転生者 

市民からはチンピラ警察とか揶揄されてるけど

江戸の治安が彼らによって守られてるのは確か

やり方が過激だけど

 

98:名無しの転生者 

よく全裸になってるけどシリアス回のゴリラかっこいいよね

 

99:病弱剣士

土方さんが沖田さんに微塵も優しくなくて泣く

銃器横流ししてた売人追いかけ回したり、攘夷党との大抗争でヘロヘロなのに「こんくらいで疲れてんじゃねェ。オラ、次はこの書類やれ」とか…あの人は鬼なのか?

 

100:名無しの転生者 

ひっじは不器用なだけだと思う

内心はイッチを労わってるで(多分)

 

101:名無しの転生者 

さすが鬼の副長は伊達じゃないな

 

102:名無しの転生者 

土方さんって沢庵好きの土方さん?

 

103:名無しの転生者 

そっちじゃない

マヨの方

 

104:名無しの転生者 

型月の沖田さんに憑依転生したのにINしたのが銀魂で、しかもなおかつ【新撰組】じゃなくて【真選組】なのがオモロい

 

105:名無しの転生者 

神のイタズラとしか思えん

 

106:名無しの転生者 

銀魂のひっじが「ここが!俺が!真ッ選ーー組だァァァァァ!!」って言うの?

 

107:名無しの転生者

想像したら草

 

108:名無しの転生者 

>>106絶対マヨ方さん言わんだろ

 

109:病弱剣士

差し入れで土方さんの自室に大量の沢庵をテーブルに置いてったら鬼の形相で死ぬほど怒られたことならある

 

110:名無しの転生者 

何でやったし

 

111:名無しの転生者 

そこはせめてマヨネーズにしてやれよ

 

112:病弱剣士

土方さんだから喜ぶかなーと思って

 

113:名無しの転生者 

だから土方違いだと(以下略)

 

114:名無しの転生者 

イッチまでそのボケやりだしたら終わりやで

 

115:名無しの転生者

さっき真選組の仕事忙しいって言ってたけど

イッチ沖田さんは何番隊に所属してるん?

 

116:名無しの転生者 

一番隊だったら沖田沖田でカオスになりそう

 

117:名無しの転生者 

下の名前で呼べば問題なかろう

 

118:病弱剣士 

八番隊で隊長やってるー

 

119:名無しの転生者 

すご

 

120:名無しの転生者 

隊長職だって!?

 

121:病弱剣士

近藤さんや土方さんの推薦でね

「剣の腕が立つのに隊長にならないのはおかしい」って

 

122:名無しの転生者 

イッチ強いんか

 

123:名無しの転生者 

皮が型月の沖田さんだから肉体にも比例するのかね

 

124:名無しの転生者 

言うて銀魂世界の住人みんな人間離れしてると思うが

 

125:名無しの転生者 

縮地とか三段突きはできるの?

 

126:名無しの転生者 

急に全員が興味津々で草

 

127:病弱剣士

>>125できるけど連発はできない

肉体への負担が尋常じゃないから

 

あと、只でさえ身体が弱いから反動が凄い

 

128:名無しの転生者 

短期決戦か

 

129:名無しの転生者 

戦いが長引いたらどうなるの?

 

130:病弱剣士

血反吐吐いて倒れるよ

 

131:名無しの転生者 

いきなり血ィ吐いたら現場騒然とするやろ

 

132:名無しの転生者 

コフッ!

 

133:名無しの転生者 

トマトケチャップ吹き出したって脳内で変換すればよろしい

 

134:名無しの転生者 

一体どこにトマトケチャップを口からぶちまけるヤツがいんだよ



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掲示板:Part3

 

135:名無しの転生者

【悲報】俺氏、梨花ちゃまのおパンツを盗もうとするも本人にバレて包丁で腹を何回も刺され無事死亡

 

136:名無しの転生者

ロリコンニキィィィィィ!

 

137:名無しの転生者

ワロタ

 

138:名無しの転生者

ひぐ〇し世界に転生したニキか

まだ懲りてなかったのね

 

139:名無しの転生者

自分からとんでもない犯行バラしてて草

 

140:名無しの転生者

その惨劇を乗り越えろ

そして逮捕されてしまえ

 

141:名無しの転生者

>>140応援してるようで私怨たっぷりで芝

 

142:名無しの転生者

にぱー☆で皆の心を癒すあの梨花ちゃまが目の敵にするってよっぽどやろ

 

143:病弱剣士

沖田さん参上!です!

 

144:名無しの転生者

そもそも雛見沢症候群Lv5発症しておいて何でそんなに冷静なん?

 

145:名無しの転生者

元から頭のネジぶっ飛んでるからじゃね

 

146:名無しの転生者

ん?おお、イッチ沖田さんが戻ってきたぞお前ら!

 

147:名無しの転生者

>>143おけーりー

何か進展あった?

 

148:名無しの転生者

よくぞ舞い戻った

 

149:名無しの転生者

おかえりなさい!待ってたよん

 

150:病弱剣士

進展という進展はないけど、神楽ちゃんに会ったよー

 

151:名無しの転生者

おお!

 

152:名無しの転生者

ようやく万事屋メンバーと接触か

 

153:名無しの転生者

ノブゥ!?

 

154:名無しの転生者

わしこそが第六天魔王、織田信長じゃ!

 

155:名無しの転生者

>>153>>154そういや中の人ってくぎゅだったなw

 

156:名無しの転生者

沖田さんとノッブ

次元を超えて運命の再会かっ!?

 

157:病弱剣士

公園で見回りしてたら、酢昆布咥えてベンチで項垂れてる子供見つけたから心配になって声掛けたら神楽ちゃんだった

 

158:名無しの転生者

あの世界で酢昆布好きな子つったら神楽しかおらんよな

 

159:名無しの転生者

いや、そよ姫も好きじゃなかったか?

 

160:病弱剣士

酢昆布貰った!

画像

 

161:名無しの転生者

なに仕事サボって酢昆布貪ってんねん

 

162:名無しの転生者

突然写真を撮るイッチ沖田さんにキョトン顔のチャイナ娘いいね!

 

163:名無しの転生者

黙ってれば超絶可愛い美少女

口を開けば毒舌とゲロを撒き散らす

ついたあだ名はゲロイン

 

164:名無しの転生者

散髪屋の回の将軍にゲロぶっかける話好き

 

165:病弱剣士

神楽ちゃん「こんな真夏にマフラーなんかして暑くないアルか?」

 

沖田さん「冷却マフラーなんで大丈夫ですよ。それに結構通気性もいいので全然暑くなりません」

 

166:名無しの転生者

そのマフラー通気性いいのか

 

167:名無しの転生者

沖田さんってマフラーは黒のイメージだったけど

イッチ沖田さんは白なんやな

 

168:名無しの転生者

水着の沖田さんも白色のマフラーしてなかったっけ

 

169:名無しの転生者

真夏は真選組の隊服はキツそうだな

 

170:名無しの転生者

総悟が一時ノースリーブの隊服作ってたよね

 

171:名無しの転生者

あー、あの世紀末みたいな格好のやつ?

 

172:名無しの転生者

ノリノリで着てるのゴリラだけかと思ったら

ザキとか他の隊士も着用してんのワロタ

 

173:病弱剣士

 

174:名無しの転生者

ん?

 

175:名無しの転生者

なんやなんや

 

176:名無しの転生者

どした?

 

177:名無しの転生者

事件かな

 

178:病弱剣士

めんごめんご

文書打とうとして途中で送信しちゃったぜ

レジ袋片手にぶら下げた銀さんがやって来た

 

179:名無しの転生者

遂に主人公登場か!

 

180:名無しの転生者

銀さーん!

 

181:名無しの転生者

杉田!杉田!

 

182:病弱剣士

神楽ちゃんにいつの間にか「おっきー」とか言うあだ名付けられててて俺氏困惑

 

183:名無しの転生者

人斬りって呼ばれてないだけマシ

 

184:名無しの転生者

銀魂世界の住人ってみんな独特なネーミングセンスしてるよね

 

185:名無しの転生者

ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲とか?

 

186:名無しの転生者

そりゃ秀逸なギャグとパロディという名のパクリでここまで人気になった作品だからなー

 

187:名無しの転生者

シリアスとド下品の混同

 

188:名無しの転生者

時間が止まる話だっけ?

あれで俺の腹筋がお亡くなりになったわ

 

189:名無しの転生者

魔貫光殺砲ォォォォォォォォォ!!

 

190:名無しの転生者

「これ銀魂だよな?」って何度思ったことか

 

191:病院剣士

初対面だからか開口一番に「そのマフラー暑くねぇのか?」って神楽ちゃんと同じこと銀さんに聞かれた

 

192:名無しの転生者

そこは「誰だテメェ」じゃないのか

 

193:名無しの転生者

まぁ、真夏にマフラーなんざしてればツッコミの一つでもしたくなるよな

 

194:病院剣士

マフラーは何かしっくり来るからずっとしてる

オフの時は外すけど

 

195:名無しの転生者

たわけ!マフラーは貴様のアイデンティティじゃろが!

 

196:名無しの転生者

銀さんはいつものパチスロ帰りなのかね?

それとも仕事か買い出し?

 

197:名無しの転生者

おはノッブ!

 

198:病院剣士

>>196レジ袋にジャンプと酢昆布、イチゴ牛乳とペットフードが見えるから多分買い出しだと思う

 

199:名無しの転生者

こわ!何で買ったもん全部わかんの!?

 

200:名無しの転生者

透視できるんか

 

201:名無しの転生者

神様の特典とかじゃね?

 

202:病弱剣士

日々の警邏の賜物(ボソッ)

え、てか特典って何?みんな転生する時に特典なんて貰ってんの?

 

203:名無しの転生者

貰う貰わないは個人の自由だけど、言えば何かしらの特殊能力は貰えるで

 

204:名無しの転生者

ワイは瞬間移動

 

205:名無しの転生者

ループ

 

206:名無しの転生者

>>203神様いい加減なやつばっかだからなぁ…

注文しても注文通りの特典くれるか怪しいぞ

 

207:名無しの転生者

女の子のパンツの色がわかる特殊能力貰ったけど、正直これでどう青春を謳歌すればいいんや

 

208:名無しの転生者

めっちゃええやん

 

209:名無しの転生者

それを俺に寄越せ!早く!

 

210:名無しの転生者

>>202もしかしてだけど…イッチ特典貰えるの知らなかった?

 

211:名無しの転生者

やらかしてるやん

 

212:名無しの転生者

オワタ

 

213:病弱剣士

いや、変な刀だったら貰った

転生間際に「この刀を肌身離さずに持ってなさい。さすれば必ずあなたを守ってくださるでしょう。え?効果?それは秘密です♪」とか言われたけど

 

214:名無しの転生者

うさんくせー

 

215:名無しの転生者

神から貰うって時点で曰く付きのブツ確定

 

216:名無しの転生者

秘密です♪とか怪しさの塊じゃねーか

 

217:名無しの転生者

こいつはくせえッー!ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーーーーッ!!



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掲示板:Part4

 

218:病弱剣士

あ、ごめん

ちょい一旦落ちる

 

219:名無しの転生者

りょ

 

220:名無しの転生者

ぶっちゃけ、イッチ沖田さんが神から貰った刀についてお前らどう思うよ?

 

221:名無しの転生者

絶対ろくな代物じゃない

 

222:名無しの転生者

うんうん

 

223:名無しの転生者

銀さんが中学の修学旅行でノリで買った洞爺湖の木刀くらい信用できない

 

224:名無しの転生者

恐ろしく切れる刀だが、切った者の魂を吸い取ると言われていた妖刀である

 

225:名無しの転生者

それなんて村麻紗

 

226:名無しの転生者

紅桜みたいなとんでも妖刀の可能性もある…?

もしくはクサナギやマガナギとかさ

 

227:名無しの転生者

クサナギとマガナギは妖刀じゃなくて、正しくはエクスカリバー星の天人だけどな

 

228:名無しの転生者

オタク化した沖田さん…ありだな!

 

229:名無しの転生者

一つ気になったんだが…いいか?

 

230:名無しの転生者

オタクな沖田さんとアニメ談義したい

 

231:名無しの転生者

>>229ええで

 

232:名無しの転生者

イッチ沖田さんって沖田総悟の義理の姉なんだよね?

なら、ミツバさんとはどうなんだって思って

 

233:名無しの転生者

と言うと?

 

234:名無しの転生者

あー、そういや総悟には実の姉である沖田ミツバがいるよな

 

235:名無しの転生者

ほならイッチ沖田さんはミツバさんの姉か、妹ってことになるのか

 

236:名無しの転生者

歴史好きのワイ参上!

沖田みつには、弟の沖田総司、妹には沖田きんと言う名の女性がいるで

 

237:名無しの転生者

なら、イッチ沖田さんのモデルは沖田きん?

 

238:名無しの転生者

イッチが言ってた【義理の】ってのが妙に引っかかるんだよなぁ…

 

239:名無しの転生者

沖田ミツバ=病弱

イッチ沖田さん=病弱

 

これイッチのいる銀魂が今どの時系列か知らんけど、沖田ミツバもいる世界線の銀魂なら結構やばくね?

 

240:名無しの転生者

何が?

 

241:名無しの転生者

 

242:名無しの転生者

あっ(察し)

 

243:名無しの転生者

言ってる意味がわからん

誰かkwsk!

 

244:名無しの転生者

>>239ミツバ篇のことを言いたいのかな?まぁ、姉2人が病弱だと考えれば総悟からすれば気が気じゃないだろうしね…

 

245:名無しの転生者

激辛せんべい

 

246:名無しの転生者

あの回は感動した

 

247:名無しの転生者

そもそもイッチのいる銀魂ってミツバさん存在すんの?

本人から全く話を聞いてないからわからんのだけど

 

248:名無しの転生者

ドS王子と真選組の話はよう聞くけど、不思議とそれ以外の話題は全く話さないな

 

249:名無しの転生者

話すタイミングがないだけちゃう?

 

250:病弱剣士

何か万事屋一行に家にホイホイ誘われたんで、いま万事屋にいる

これ証拠

画像

 

251:名無しの転生者

仕事サボるな

 

252:名無しの転生者

イッチ沖田さんマイペースかよ

まぁ、それでこそ何かとクセの強い銀魂の住人らしくあるが…

 

253:名無しの転生者

>>250ちょうど戻って来てくれたから聞くけど、イッチのいる銀魂ってミツバさんはいるの?

 

254:病弱剣士

>>253いるよ!俺の義理の姉だし、定期的に手紙も送ってる

 

255:名無しの転生者

って事は、何れミツバ篇もあるのは確定か?

 

256:名無しの転生者

イッチ沖田さんのいる銀魂っていま時系列で言うならどの辺りなんだよ(2回目)

 

257:病弱剣士

多分、紅桜の少し前くらい

この間土方さんが「人斬り似蔵が〜」みたいな話を近藤さんとしてたから

 

258:名無しの転生者

名エピソード来ちゃぁぁぁぁぁぁ!

 

259:名無しの転生者

介入しろ!

 

260:名無しの転生者

銀さんとヅラの船の上のラストバトルかっこよかったよね

 

261:名無しの転生者

短髪のヅラくそイケメンだから定期的にあの姿でいて欲しい

 

262:名無しの転生者

>>259さすがに警察が上の許可も無しに単身で乗り込むのはマズいのでは?

 

263:名無しの転生者

巻き込まれました〜って装えば問題ないでしょ(鼻ほじ)

 

264:名無しの転生者

いやアカンやろ

 

265:病弱剣士

定春可愛いィィィィィィ!うへへへへ!

画像

 

266:名無しの転生者

あの、頭かじられて大量出血してるんですがその

 

267:名無しの転生者

銀さんと新八ドン引きしててワロタ

 

268:名無しの転生者

そりゃやってること異常者のそれだし…

 

269:名無しの転生者

イッチ可愛いもの好きなんか

 

270:名無しの転生者

イッチって紅桜の回はどうすんの?

 

271:名無しの転生者

介入しない方が身のために1票

 

272:名無しの転生者

万事屋に恩を売っておけに1票

 

273:名無しの転生者

>>272万事屋に恩売ったところでアイツらは無かったことにしそう

 

274:名無しの転生者

儲け話か、金で釣れ

 

275:名無しの転生者

万事屋の扱いェ…

 

276:病弱剣士

>>270現状はまだ様子見かな

辻斬りの件で江戸の見回り強化されてからというもの、真選組の皆がピリピリしてて居心地悪かったから万事屋和むわぁ…

 

277:名無しの転生者

岡田似蔵か…

 

278:名無しの転生者

ダーオカねぇ…

 

279:名無しの転生者

それは型月の方な



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まるでダメなおっさん

 

「あっちぃぃ…やばいってこれ。何でこんな炎天下なんだよ。誰がこんな常温にして地球熱々にしろなんて頼んだ。郷ひろみも無言で首降るレベルだよこれ。燃えてるんだろうか〜、感じてるんだろうか〜すら聞くまでもない程の猛暑じゃねーか」

 

身を焦がさんばかりの太陽が上空でサンサンと輝く。額から流れる汗を不愉快そうに片手で拭う銀時。

 

「なぁ、ハゲ頭のおっさん。もう帰っていいよね?俺もう帰っていいよね?」

 

「え?よくわかんねーけど、帰っていいんじゃねーの?」

 

「いい訳ねーだろ!こっちはな、買い溜めしてたイチゴ牛乳が切れて糖分不足でイライラしてんだよ。何も知らねーくせに余計な口を挟むんじゃねーよ!」

 

理不尽な逆ギレに、坊主頭の少し強面なおじさんは涙目になりながら両手で顔を覆う。

 

先に話しかけたのは一体どっちだよと、ツッコミを入れる者は残念ながらこの場にはいない。

 

「あれ?万事屋の旦那じゃないですか。コンビニ強盗の帰りですかい?」

 

「会って早々に変な言い掛かりやめてくんない?片手にレジ袋ぶら下げんのが見えねーのかお前。つーか、ここで何してんの?」

 

「巷で何かと問題になってる辻斬りがここいらで目撃されたってんで、その聞き込みですよ。旦那もフラフラ出歩いてると目ェつけられますぜ」

 

「不吉なこと言うんじゃねーよ。本当に現実になったらどうすんだっつーの」

 

感情の読み取れない目元のまま、悪戯っぽく笑いながら「冗談ですぜ」と間の抜けた返事を返す。

 

「そういえば、この間の連続婦女子誘拐事件の件では協力ありがとうございやした」

 

「婦女子誘拐?…あー、あれか。別に気にすんな。今をときめくアイドル様に前金貰っちまったし、真選組のマスコットとして手伝っただけだからな」

 

「土方さんは余計なことしてくれやがって、とボヤいてやしたが、万事屋の旦那が連中の気を引いてくれて助かりましたぜ。あの場に姉上がいてくれりゃ、もっと俺も楽できたんですがね」

 

「姉?総一郎くん、姉貴いんの?」

 

「総悟でさぁ。ええ、上に2人ほど姉が。1人は同じ真選組の隊長なんで、何れ旦那も会うと思いやすぜ」

 

「へぇー…」

 

このドS王子に姉だって?

 

全く想像つかない。その姉とやらも超ドSなのか、と内心で失礼なことを考える銀時。

 

「ちなみに団子が好きなんで、もし見かけたら餌付けしてやってくだせェ。俺の姉上はそれで喜びますんで」

 

「自分のお姉さんを野生動物みたいに言うんじゃねー!それでも弟かお前ぇ!?」

 

「何言ってるんですか旦那。慕っているからこその愛情表現でさぁ。姉上がウチにいるお陰で、真選組のイメージも少しは回復傾向にありやすからね」

 

「犯人追っかけ回して逮捕するに飽き足らず、ついでに暴行や破壊活動してりゃ世間様からの評価なんてガタ落ちするに決まってんだろうが」

 

「ごもっともです。これも全部土方さんが悪いでさぁ。俺はただ指示に従って動いてる(・・・・・・・・・・)だけなんで」

 

わざとらしく視線を下に向けてため息を吐く。責任の全てを副長の土方に丸投げする気でいるようだ。

 

「悲しげな顔で何かとんでもないこと言ってるよこの子。自分だけ責任から逃れる気満々で俺怖いよお母さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

******

 

商店街通り。

 

ここには飲食店、服屋、薬屋、デパート、コンビニ、と様々な店が立ち並んでおり、大勢の人で賑わっている。

 

その中でも、大通りを少し抜けた先にある大江戸公園は老若男女に人気のスポットである。

 

「はぁ…。また面接に落ちちまった…。どいつもこいつも俺がホームレスだと知るや否や、手のひら返して門前払いしてやがってよ!ああ、そうだよ。俺は無職でホームレスの負け犬だ。でも、それの何が悪いってんだ!こんちきしょうが!」

 

噴水近くのベンチ座っていた黒いグラサンの男は、怒りに身を任せて飲み終わった空き缶を投げ捨てる。カランカランと乾いた音が地面に響いた。

 

「あのー、もし、そこのお方。ダメですよポイ捨ては。飲み終わったらちゃんとゴミ箱に捨てましょうね?」

 

項垂れていた男が聞こえてきた声に反応して顔を上げると、真選組の隊服を着た白色のマフラーが特徴的なポニーテールの人物が目の前に立っていた。

 

「うぐっ、すんません…お巡りさん。す、すぐ拾うんで、あの…罰金は勘弁してください!今その金が底ついてて…!」

 

「あれ?貴方は…」

 

「へ?お、俺の顔に何か付いてる?」

 

「いえ、すみません。人違いでした。それよりも、随分と切羽詰まってますね?何かあったんですか?」

 

「良ければ話を聞きますよ」と軽く微笑んだポニーテールの隊士は、男の隣に座った。

 

警察に嫌な思い出しかない男は、反射的に断ろうとするが、

 

「私は沖田って言います。気軽に沖田さんって呼んでください」

 

「これはどうもご丁寧に…。真選組にもあんたみたいな腰の低い奴がいるんだなぁ。あ、俺は長谷川ね。間違ってもマダオじゃないから」

 

「長谷川マダオさんですか。いいお名前ですね!」

 

「違う違う!マダオは名前じゃないから!いや確かに名前っぽいけども!?マダオはね、堕ちる所まで墜ちた、いわば蔑称みたいなものさ。仕事があって、帰る場所があって、安全な寝床がある。そんな人間にとっての当たり前がどれだけ大切かなんて、自分が何もかも失った側の人間にならねぇとわかりはしねぇ。何もかも失って色んな人間からゴミを見るような冷たい視線を浴びせられてる俺だから…って、ああ!ごめんごめん!こんなおっさんの愚痴なんて聞いても嫌になるだけだよね?」

 

蓄積していた不平不満が爆発したのか、相槌を打つ暇も与えぬ勢いで喋り倒すが、桜之進は嫌な顔1つせずに話を聞いていた。

 

「構いませんよ。話してスッキリするなら幾らでも話してください。困ってる人を助けるのも警察の仕事ですから」

 

「そういってもらえると俺も救われた気持ちになるよ、へへっ…。まだ若いのに随分と立派な志を持ってるんだなぁ。キミ、本当に真選組なの?まとも過ぎておじさんビックリなんだけども」

 

「商店街にある魚屋のおじさんにも同じセリフを言われましたよ。あの…、真選組ってそんなに印象悪いんですか?」

 

「悪いっていうか、やり方が荒いんじゃない?この間なんて、ベッコベコのパトカーで違反車両を猛スピードで追いかけながら『だから止まれつってんだろうが!今すぐ止まりやがらねーとバズーカぶち込むぞゴラァァァァァァァ!!』って拡声器で怒鳴ってんのおじさん見たぞ」

 

職権乱用とも言える横暴な逮捕。一般市民にバズーカをなんの躊躇もなく撃つのは日常茶飯事。ガラの悪い集団がいると思ったら実は真選組だった、など。真選組は世間からの評価は辛口なものばかり。

 

「ちょ、それ絶対ウチの土方さんじゃないですか。副長が一体何やってるんですか!?」

 

侍の心、いついかなる時も、忘れることなかれーー

 

真選組という血気盛んな侍たちが集まる場所で、規律を守らせるために作られた鉄の掟。

 

それが、局中法度だ。

 

掟を破った者は切腹という無慈悲でそれ相応の罰によって裁かれる。鉄の規律を考案したのは他ならぬ副長の土方十四郎なのだが、その副長が掟破りとはどうなのだろうか。

 

「見回りが終わったら土方さんに文句言わなきゃ…」

 

「ふう…。色々話してたら胸ん中につっかえてたもんが無くなった気がするよ。こんなまるでダメなおじさんの愚痴を熱心に聞いてくれてありがとな。若い兄ちゃん」

 

「いえいえ。少しでもお役に立てたのなら幸いです」

 

この世の終わりのような表情で項垂れていた長谷川だったが、今はどこか晴れ晴れとした面持ちで話を聞いてくれた桜之進に対して礼を述べた。一方の桜之進は、これで自分の役目は終えたとばかりに徐にベンチから立ち上がってーーー

 

「あと、私はこんなナリでも一応()ですよ?」

 

と、最後に特大の爆弾を放り投げてその場を立ち去って行った。

 



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幕間 マヨ方さんと沖田さん

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

今回は箸休めのマヨラー視点です。


 

 

ミツバから手紙が届いた。

内容は大体元気してるかとか、総悟と桜之進に変わりはないかといったものが殆ど。手紙は月に4〜6通くらい屯所に届けられるが、手紙と一緒に激辛煎餅まで毎回送ってくるのはどうかしてると思う。

 

誰があんな味覚を崩壊させるような激辛食えんだよ。

 

あれが届く度に「一体誰がこの劇物を処理するか?」という真選組一重要な会議が行われるのだが、もっと重要な案件はなかったのだろうか。

 

最終的には近藤さんが「じゃあ誰が食べるかクジ引きで決めよう!」とあまりに理不尽な提案をしてくるのが常。

 

いや、だったら最初の会議は何だったんだよ。

 

一度、「そんなに嫌なら食わなきゃいいだろ」と言ったこともあるが、どうやらそれはタブーらしく、近藤さんからは「せっかく"真選組の皆さんで召し上がってください"って送ってくれてるんだから食べなきゃミツバ様が悲しむだろ!」と何故か怒られ、総悟からは「死ねぇぇぇぇぇ土方ァァァァァ!!」と本気で斬り掛かられ、追い討ちでバズーカまで撃ってくる始末。

 

隊士全員からもブーイングの嵐だった。

 

かくなる上は沖田に助けを求めるしかねぇと沖田を見れば「あの激辛煎餅美味しいですよねぇ。沖田さん結構好きなんですよ。土方さんもお一つどうですか?今ならお団子も一緒にもれなく付いてきますよ」とズレた意見しか言わねぇ。

 

前々から思っていたが、沖田はかなりのド天然だ。おまけに戦場じゃ猪突猛進気味に敵に突っ込む脳筋バカときた。

 

そのくせ総悟の野郎と同等かそれ以上に剣の腕が立つ実力者でもある。

 

女人禁制の真選組で唯一特例で入隊を認められたのは、他ならぬ沖田桜之進のみ。剣の腕前もあるが、単純に松平のとっつぁんと近藤さんが、「沖田を娘のように溺愛しているから」という親バカ過ぎる理由によるものが大きい。

 

「土方さーん。言われていた書類持ってきましたよ」

 

噂をすればなんとやらだ。

 

自室で書類整理をしていると、外からあいつの声が聞こえてくる。

 

「沖田か。入っていいぞ」

 

入室を許可すれば「失礼しまーす」と間延びした口調の沖田が部屋に入ってきた。

 

「書類ってこれでいいんでしたっけ?」

 

「ああ。ご苦労さん、確かに受け取った。もう戻っていいぞ」

 

「はーい…あっ、そうだ。土方さん土方さん。ちょっと聞いてくださいよー」

 

踵を返して部屋を後にするのかと思いきや、不満げに口を尖らせた沖田が話し掛けてきた。

 

まるで学校の休み時間に友達と雑談でもするかのようなフレンドリーさに思わず呆れ混じりのため息が漏れる。

 

こいつは昔っから緊張感に欠ける。誰が相手でも物怖じしない勇気と度胸には俺も感服しているが、誰これ構わずに親しみさを出すのは感心しねぇ。やる気のない緩い隊長と舐められかねん。

 

だが、コイツがいりゃ真選組の士気が上がるのも確か。やれ「沖田隊長に振り向いてもらう」だ、「沖田さんは俺の母になってくれるかも知れなかった女性だ」だの。動機こそ不純だが、それで隊士共がやる気になるってんなら重畳だ。

 

正直俺にはこんな脳筋バカの何処がいいのか全くわからんが。

 

「見てわからねーのか?仕事中だ。後にしろ」

 

片手を振り動かして『早く帰れ』とジェスチャーする。あの野郎、山のようにある書類を全部俺に押し付けやがって…。

 

「うひゃー凄い量の書類ですね。えーと?器物破損、建造物等損壊による請求書と始末書?何ですかこれ?」

 

俺の言葉を聞いてるのか聞いてないのか、沖田がテーブルに置いてあった数枚の紙を手に取る。

 

「お前…人の話を…。まぁ、いい。全部総悟の野郎がやらかしたものだ。ったく…。街中でバズーカを撃つなってあれほど言ったろうによ…」

 

「そーちゃんは土方さんが大好きですからねぇ。土方さんが注意すればするほど、喜んで破壊と暴力を繰り返しますよ」

 

「なにその全く嬉しくもなんともないツンデレ。混沌しか生み出さねぇじゃねーか」

 

やり過ぎるなと口を酸っぱくして警告しているが、それを改める所かそれ以上に酷くなりつつある現状に頭を抱える。

 

アイツのひねくれた性格というか、捻じ曲がった性根を正すなんざ到底無理な話だ。

 

ドラえ〇もんのきこりの泉にでも放り込まねぇ限り、何も変わらんだろう。

 

「お前からも総悟に何とか言ってやってくれ。俺が文句言ってもロクに聞きもしねェ」

 

「んー、沖田さんが言っても変わらないと思いますよ?」

 

「少なくとも俺よりかは効果あんだろ。アレはお前に懐いてるみてぇだしな」

 

「まぁ、確かに?朴念仁の土方さんよりは効果ありそうですねぇ」

 

「お前今なんつった?」

 

聞き間違いか?さり気なく俺をディスらなかったか?気のせいか?気のせいなのか?

 

「沖田さんが土方さんの悪口を言うなんてそんなのある訳ないじゃないですか。気のせいですよ!き・の・せ・い!」

 

「目ェ泳がせながら言っても何の説得力もねーぞ」

 

やっぱりこの阿呆とは一度腹割って話し合った方がいいんじゃなかろうか。上司相手にここまで舐め腐った態度でいられるヤツなんざ、コイツとあのドS(総悟)だけだぞ。

 

「そういえば土方さん。ミツバさんにお手紙の返信は書かなくていいんですか?」

 

「ぶっ!?」

 

「ちょ、汚っ!?いきなり何するんですか!?」

 

「茶飲んでる時にお前がいきなり変なこと言うのが悪ぃんだろうが!」

 

コイツ…、何でミツバから手紙が届いてることを知ってやがんだ!?誰にも手紙は見られてねェはずだ。

 

「額に『ミツバさんから手紙が届いた』って書いてありますよ」

 

「ンな訳ねーだろうが。寝言は寝て言え」

 

「まったまた〜。そんな照れなくても。目を泳がせながら言っても何の説得力ありませんよ?」

 

「うるせぇ!!」

 

あれ、コイツこんなウザキャラだったっけ?てか、勝ち誇った顔でドヤ顔すんな。何も勝ってねぇよ。

 

「まぁ、本当は私宛にミツバさんからお手紙が届いていたので、もしかしたら土方さんとそーちゃんにも届いてたりするんじゃないかなって思ったんです」

 

「最初っからそう言え。ああ、確かにあいつからの手紙は俺にも届いてたぞ」

 

「たまにはちゃんと返事を書いてあげた方がいいんじゃないですか?ミツバさんも土方さんからのお手紙(・・・・・・・・・・)を待ってると思いますよ」

 

「…っ。ふん、余計なお世話だ」

 

血の繋がりがないと言っても一緒にいればやっば似るもんなのか?笑った顔がミツバによく似てやがる…。

 

俺じゃあいつを幸せにはしてやれない。ロクでなしの俺なんかよりも相応しい相手が見つかるハズだ。

 

惚れた女には幸せにはなってもらいたい。

俺みてーなヤツは、陰ながらあいつの幸せを応援してさえすればいい。

 

「頑固一徹ですねぇ」

 

こちらに背を向けて去って行く沖田からそんな声が聞こえた気がした。



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幕間 沖田と沖田と沖田


過去話。
ショタ総悟の視点になります。


 

 

俺にとっての姉は姉上ただ一人。

どんな時でも姉上だけが俺の心の支えだった。

 

いっつもニコニコ笑いながら俺に話しかけてきて、俺が困ってれば必ず助ける得体の知れない女。

 

土足で人の心ん中に入るクセに、自分の過去は喋りたがらないミステリアスの女。

 

それが、沖田 桜之進との最初の出会いだった。

 

 

 

 

 

*******

 

 

近藤さんの道場に上がり込んでは剣術修行に明け暮れる毎日。あの憎たらしい土方は嫌いだったが、修行そのものは嫌いじゃなかった。

 

そんなある日、いつもの様に丸太を振って筋力トレーニングをしていると、近藤さんが一人のガキの連れて帰ってきた。

 

歳は俺よりも2〜3歳上くらいだろうか。

 

何でも買い物帰りに道端で死体漁りをしている少女を見つけて連れて帰ってきたらしい。

 

やってる事が誘拐のそれだといえば、「家族がいない孤児らしくてなぁ。見て見ぬふりも出来ねぇんで連れて帰ってきた」と笑いながら開き直っている。

 

この人はほんっとに他人に甘過ぎるんだよなぁ。

 

ドが付くほどお人好しで、涙脆いーーまぁ、この人のそんな部分が俺には居心地が良いと感じる理由なんだが。

 

しかし、同時に何でも受け入れてしまう程の優しさは、この人にとって最大の武器であり、弱点でもあると俺は思っていた。

 

「ん?」

 

ふと、感じる鋭い視線に目を向ければ、近藤さんが連れてきたガキが俺を真顔でじっと見つめていた。

 

敵意とかじゃなくて、こちらを観察しているかのような眼差し。

 

何故だか無性にムカついてこちらも負けじと睨み返してやるが、まるで効果がないのか俺に笑いかけてきやがった。

 

「(こ、こいつぅ…!)」

 

「そんなの怖くありませーん」とでも言いたげに笑うガキに腹が立ち、丸太を掴んでいる両手に力が入る。

 

「おーい、総悟〜!こっちに来てお前も挨拶しろよー!」

 

ニッコニコの近藤さんが俺を手招きして呼び掛ける。こっちの心情を知らないからとは言え、間が悪すぎぃ!

 

「えー、俺はいいぜ。今は丸太を振るので忙しいんだよ」

 

「はっはっはっ!女の子相手だから緊張してんのか?お前もウブな所があるじゃねーか」

 

「はぁ!?ちげーし!」

 

「クソ生意気なガキにも多少は可愛い所があるんだな」

 

「うっせー土方!お前にだけは言われたくねぇ!」

 

後から道場に来た新参のくせに生意気にも俺を小馬鹿にしてくるのがまじでムカつく。後で覚えてろよ土方…!

 

「私は沖田と言います。沖田さんって呼んでくれたら嬉しいです」

 

俺と同じ姓の『沖田』と名乗った子供が、花の咲くような眩しい笑顔のまま、ニコニコ顔で俺に歩み寄って来た。

 

「何で出会って間もない奴にさん付けしなきゃいけねーんだよ。てか、沖田って言ったいま?俺と同じ?」

 

一体何の偶然だよ。そんなホイホイばったり会うほど、『沖田』なんて苗字多くねーだろ。佐藤や鈴木とか田中じゃないんだし。

 

あ、わかったぞ。さては…コイツ俺のファンだな?

 

「なんだよその手は」

 

「握手ですよ。仲良くなる為のおまじないです」

 

「はぁ?嫌だよ、やらねーよ。何でお前みたいなガキと…っておい!無理やり握手させんな!強引かよお前!?」

 

「沖田同士で気が合うみてーだな」

 

そんな訳ねーだろ!?バカだろ。やっぱり土方バカだろお前。

 

「せっかくだ、総悟。一緒に稽古してみたらどうだ?」

 

「ぜってー嫌だ!」

 

「即答かよ…。しかしな、同じくらいの歳の子と勝負した方がお前やこの子の為にもなるぞ?」

 

「大体コイツ戦えんのかよ?どう見ても弱そうじゃんかーー」

 

 

私の方がキミよりも強い(・・・・・・・・・・・)ですよ」

 

 

つい数分前までの笑顔とは打って変わって、感情の一切を消し去った無表情のバケモノがそこに居た。

 

自分を大きく見せる為のでまかせ、もしくは自分の力を過信しすぎてる馬鹿かよ、と口を開いて言い返してやりたいのに声が出ない。

 

光を失った眼が俺を凝視する。

 

恐怖。不安。怯え。

 

冗談とは思えない凄みを感じて一歩後ろに後ずさる。

 

「(な、なんだよこいつ…)」

 

全身から一気にぶわっと冷や汗が溢れ出す。

 

無意識の内に手足が震える。全身の筋肉が緊張し、心臓の鼓動な張り裂けそうな勢いで早くなる。

 

「稽古、早くやりましょうよ。それとも真剣で殺りますか?」

 

「真剣で稽古するアホがいるわきゃねーだろ。道場血で汚すつもりかよ。そもそも、ガキのお前が何でそんな物騒な刀なんて持ち歩いてんだよ?」

 

「トン・キホーテに売ってました」

 

「んな訳あるか。どこのディスカウントストアに日本刀売る店があんだ」

 

「拾いました」

 

「言ってることコロコロ変わりやがるな。…どうすんだよ近藤さん?」

 

「さっき俺も捨てるなり預けるなりできないのか、って言ってみたが、『刀に取り憑かれてるから捨てても手元に戻ってくる』んだそうだ」

 

「どんな言い訳だ。まさか妖刀とか世迷いごとでも宣うつもりか」

 

「何か言いづらい事情があるんだろうさ。この歳でこんな物騒なものを持ち歩いてるくらいだ。理由を聞かない変わりに、絶対に許可なく振り回さない、人に怪我を負わせないことを条件に所持許可を出した」

 

「おいおい、正気か?どう考えてもロクなことにしかならなそうだろ。後でどうなっても俺は知らねーぞ…って、おい。大丈夫か?顔真っ青だぞお前。漏らしたか?」

 

「…え?う、うっせーな。気のせいだよ気のせい。つーか、漏らした言うな!」

 

俺の心情とは他所に、話が勝手に進んでいた。刀云々よりも、こいつが放ってた異常なまでの殺気と威圧感について問いただしてくれよ。

 

どう考えても普通じゃないだろこいつ。

 

「おい!稽古すんなら先輩を立てる為に接待して負けるんだぞ。それが後から入って来た後輩の最初の責務だからな」

 

「……」

 

おいこのやろー、無視すんな。

 

俺の言葉を聞いてるのか聞いてないのか、俺に背中を見せてある程度距離を取ると、床に置いてあった竹刀を手に取り、再び俺いる方向に体を向き直した。

 

「見たことねぇ独特な構えだな。あれば一体どこの流派だ?トシ、何か知ってるか?」

 

「いや…。俺も色んな道場に道場破りをふっかけてきたが、あんな構えは見たことがねぇ」

 

「後輩らしく、貴方を全力で叩きのめします。お覚悟を」

 

「どこも後輩らしくねーよ!それが先輩に対する仕打ちか!?」

 

怖いよ!何なんだお前!

 

そもそも、さっきまでの明るい口調はどこいったんだよ。戦いになったら急に人が変わったように別人になりやがって…!

 

「毎日のように丸太を千回振ってる俺に勝てると思ってんかよ…!このやろーー!!」

 

「いや、お前が振ってんのあれ丸太じゃなくて丸太の木の皮だろ」

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

「そーちゃん、今日はお稽古に行かなくていいの?いつもは朝早くに家を飛び出して近藤さんの道場に走ってたじゃない」

 

眠りから覚めれば不思議そうにこちらを見つめる姉上の姿が目に映る。

 

「すみません姉上。僕もう道場に行きたくないっす。後から入って来た変なガキが『僕と稽古する』とか言ってボコボコにしてくるんです。あと土方がムカつくから行きたくないんですよ…」

 

「まぁ。その子はそーちゃんと同じくらいの歳の子なの?」

 

「多分、僕より2〜3歳上くらいです」

 

「総悟ちゃん総悟ちゃん!沖田さんと一緒に道場に行きましょ!」

 

「出たな!サド女!誰がお前なんかと道場に行くかよ!」

 

一体どうやって住所を突き止めたんだこいつ!?

 

「沖田先輩。稽古の時間っす」

 

「土方ぁぁぁぁ!!お前の差し金かよ!?」

 

「あらまぁ、土方さん。わざわざそーちゃんを呼びに来てくれたんですか?うふふ、ありがとうございます。お隣にいらっしゃるのがそーちゃんの言っていた…?」

 

「初めまして!私は沖田桜之進と申します!総悟ちゃんのお友達をさせていただいてます!」

 

「ご丁寧にどうもありがとうね。私はそーちゃんのお姉さんのミツバって言うの。良ければこれからもそーちゃんと仲良くしてあげてね。ふふっ、良かったわねそーちゃん。歳の近いお友達が出来たのね」

 

「総悟ちゃんはやめろ!ち、違います姉上!?こいつが勝手に僕を友達認定してきてるだけで…!?」

 

結局あの試合は俺の完敗だった。それも圧倒的な。

 

俺の猛攻に防御ばかりで一向に攻撃してこない沖田。俺は最初「攻撃する隙がないから後手に回るしかない」のだと思っていた。

 

でも、違った。

 

あいつは俺にカウンターを叩き込むチャンスをずっと待ってたんだ。

 

俺の振り下ろした竹刀をいとも容易く弾き返すと、いつの間にか俺の握っていた竹刀は宙に浮き上がっていた。

 

「やばい!」と思った時には首筋に竹刀を突き付けられていて「攻撃が素直過ぎますよ?」とはにかんで笑っていた。

 

近藤さんは沖田を「成長が楽しみな若者」と絶賛してたけど、土方のやろーは「相手に隙を敢えて見せてからのカウンターか。腕っ節に余程自信がなけりゃまず出来ない一手だな。だが、ちと動きに無駄が無さすぎねーか…?」と期待よりも、不安や警戒といった感情が入り交じった感想を言っていた。

 

土方のやろーの意見に納得する訳じゃねーけど、俺も沖田は危険な感じがする。ガキなのにガキらしくないのもそうだけど、昨日の試合のあの目は今思い出すだけでも震えてくる。

 

あまりの怖さに小便ちょっとチビったし…。換えのパンツを道場に置いておいて良かった良かった。

 

「それにしても、桜之進ちゃんの姓も沖田って言うのね?なんだか凄い偶然。」

 

「こいつは道端で死体漁りをしている所を近藤さんに拾われた孤児らしくてな。近藤さんが自分の道場に住まわせるつって聞かねーんだ」

 

「孤児?まだ子供なのにそれはあまりにも酷な話ね…。あ、そうだわ。家に今一人部屋が丁度余ってるから良かったら一緒に暮らしてみないかしら?」

 

「はぁ!?あ、姉上!いきなり何言ってるんですか!?僕は反対ですよ!」

 

まずい。

 

「あら、どうして?」

 

「こいつは戦いが大好きな戦闘狂女なんですよ!そんな奴と一緒にいたら姉上の身にもきっと危険が…」

 

「相手は女の子なのよ?そんなことを言ってはいけません。メッ!」

 

まずいまずいまずい。こいつと一緒に住む?冗談じゃねぇ!こんな獰猛な獣が姉上や俺の傍にいるとか落ち着いて寝れもしないぞ!?

 

「私なんかが一緒に住むだなんて…。ご迷惑ではないですか?」

 

「いいのいいの。桜之進ちゃんは一目見た時から何処かほっとけない気がしてたの。私の事は実のお姉さんだと思って接してくれていいからね?」

 

「土方ぁぁぁぁ!!お前も黙ってないで何か言えよ!」

 

「ん?俺は別にどっちでも構わねーよ。沖田同士で仲良くなれるんじゃねぇか」

 

「テメェ他人事だからって適当過ぎるだろ!?」

 

「んな事より先輩。今日も道場っすよ。ほら早く来るっす」

 

「離せ!離せったら!ぬがああああああ!!」

 

「これからよろしくお願いしますね。そーちゃん(・・・・・)

 

「お前がそーちゃん言うんじゃねぇ!」

 

ちきしょー馴れ馴れしいぞこいつ。あと頭撫でんな。ガキ扱いしやがって…!やっぱり沖田なんて大嫌いだ。

 



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清楚なキャラを貫くなら下ネタにも怯まない精神力が大事


素敵なイラストを描いていただきました。
圧倒的感謝!


【挿絵表示】



 

まさかマダオがこんな所にいるなんてビックリしたな…。咄嗟に「あっ、マダオだ」って言いそうになったから危なかった。

 

相手からすれば、俺は初対面のお巡りさんでしかないからね。

 

下手に余計な事を喋ると後で色々面倒だし…。それに、あんな負のオーラ全開でベンチで体育座りされたらこっちも気になって話しかけるしかなかった。

 

困ってる人がいたら見過ごせませんよ。なんたって沖田さんは善良なお巡りさんですからね。(2回目)

 

マダオは最後まで俺を男だと思ってたみたいだし、そーちゃん直伝のこの男装は思いのほか上手くいってるみたいでホッとした。

 

「別にわざわざ男装する必要ないのに」と言ってみたが、そーちゃん曰く「『所詮は女』と女を舐め腐った輩もいやすからね。姉上を馬鹿にした連中の出っ鼻をへし折ってみるのも一興でさぁ」と大魔王のような不敵な笑みを浮かべながらそんな事を言われたらこちらも首を縦に振らざるおえなかった。

 

「んん?」

 

ふと、ベンチで行儀よく座る中華服の子供が目に入る。この世界で中華服って言ったらゲロインこと神楽か、その兄貴の神威くらいだろう。

 

ーー率直に言うと神威とはなるべく出くわしたくない。あんな夜兎の本能に忠実なバトルジャンキーに目をつけられたら命がいくつあっても足りはしない。

 

象を一瞬で混濁させる毒矢をあんなにその身に受けながら死なない奴だぞ。

 

ただの人間でしかない沖田さんではまともに殺り合えるような相手じゃない。

 

え?そーちゃん?

 

あの子は俺なんかより遥かに強いからきっと大丈夫。

 

「お前ここら辺じゃ見ない顔アルな。その格好ってことは税金泥棒の仲間?」

 

「お前、じゃありません。沖田さんには沖田桜之進っていう超絶キュートな名前があるんですよ」

 

「ダサいネ」

 

「辛辣っ!?」

 

一言でバッサリ切り捨てるその容赦のない毒舌。間違いなくこの子は神楽ちゃんだ。

 

「沖田ってことはあのいけ好かないサドの兄弟アル?」

 

「そうですそうです。貴女の話はよくそーちゃんから聞いてますよ。『万事屋の生意気なじゃじゃ馬のガキ』と」

 

「あのサドォォ!自分の方がガキのくせによく言うアル!今度会ったら絶対にタダじゃおかないネ!」

 

両足をバタバタさせて怒りを露わにする。鉢合わせれば喧嘩が絶えない犬猿の仲なのは原作通りらしい。

 

それはそうと、神楽ちゃんを見るとノッブと呼びたくなるのは何故だろうか。

 

「貴女はこんな所で一人ポツンと何をしてるんですか?もし迷子だったら沖田さんが交番まで案内しますよ」

 

「神楽ネ」

 

「へ?」

 

「私の名前アル。あのサドは生理的に受け付けないけど、お前とは仲良くやれそうな気がしたネ」

 

「神楽ちゃん…!」

 

花の咲くようなニコニコ顔でそんな事言われたら感動で泣きそうになるよ沖田さん。でも、君のパピーに嫉妬で殺されそうだからその笑顔はやめて。

 

「もしかしたら、あのサドの弱みを握ることができるかも知れないアルからな」

 

いや、それが目的かい!?

 

天使のような悪魔の笑顔で物凄いこと暴露されたんだが。マッチのミッドナイトシャッフルもビックリの強かさだよ。まだ子供なのに世渡り上手か。

 

「今後ともよろしくアル、おっきー」

 

「はい、よろしくお願いします…って、おっきー?何ですかそれは?」

 

「渾名ネ。それとも人斬り(・・・)って呼んだ方がよか「おっきーでお願いします!」…即答アルか」

 

「冗談で言ったのにそんな本気にならなくてもいいのに」と、酢昆布を食べながら悪戯っぽく笑う。全然冗談に聞こえなかったんですけど。絶対一瞬だけFateの第六天魔王が憑依してたぞ今…。

 

あっ、そうだ。万事屋メンバーの誰かに会ったらやりたい事があったんだった。

 

「神楽ちゃん、1つお願いがあるのですが…いいですか?」

 

「何アルか?」

 

「一緒に写真撮りませんか?」

 

「は?急に何言ってるネ?」

 

「実は沖田さん、万事屋さんの大ファンなんですよ。ですから、一緒に写真でも撮れたらなぁってずっと思ってたんです」

 

「私達のファン…?おっきーかなり変わり者アルな。中々いないヨ。メタルスライム並の激レアの人物ネ」

 

真顔で皮肉を言うが、よくと顔を見れば頬がほんのりと赤く染っている。照れを誤魔化す為に敢えてそうしたんだろうと思うと、なんだか微笑ましくなった。

 

「?何で頭を撫でるネ?」

 

「いやぁ、撫でやすい頭が丁度目の前にありましたので」

 

「子供扱いすんなアル!」

 

 

 

ガキ扱いすんじゃねぇ!

 

 

 

そういえば、そーちゃんにも昔そんなこと言われたっけ。懐かしいなぁ。そーちゃんとは昔は結構仲が悪かった。ミツバさんがいなければ今もひょっとしたら仲が悪いままだったかも知れない。

 

土方さんは茶化して反抗期は終わったのか、なんて言ってたけど。

 

「あり?お前こんな所で何やってんだ?」

 

「あっ、銀ちゃん。銀ちゃんこそ公園で何してるアルか?」

 

「ジャンプの最新号はまず公園で読むって決めてんだよ。…てか、職質されるとか何やらかしたんだよお前」

 

会話に割って入ったのは、特徴的な銀髪に、やる気を一切感じない死んだ魚のような目。『洞爺湖』の銘が入った木刀を腰に差した人物だった。

 

偶然とはいえ、こんな所で主人公と邂逅することになるなんて。

 

「神楽ちゃんの保護者の方ですか?近頃は子供を誘拐してお金を巻き上げようとする犯罪グループもいると聞きますし、子供からは目を離してはダメですよ?」

 

「こんな怪力娘を誘拐しようなんて考える奴はいねーから大丈夫だろ。それに、こいつァ夜兎だしな」

 

「オイ、聞こえてんぞ天パ。誰が怪力娘アルか。少しは私の心配をしろヨ」

 

「ん?つーか、その格好ってこたァお宅って真選組なのか?」

 

「あ、はい。真選組八番隊隊長の沖田桜之進と言います。気軽に沖田さんって呼んでくださいね」

 

「沖田だぁ?…ああ。ひょっとしてあいつの言ってた姉上ってのはアンタか」

 

「え!?おっきーって女だったアルか!?」

 

お前、女だったのか。

 

よくある薄い本やR―18指定じゃ、実は女でしたー的な展開は脅迫のネタとなって、汚いおっさんやチャラ男にあんな事やこんな事をされてしまうのだが、そんな鬱展開は御免蒙る。沖田さんはそんなチョロくないんで。

 

「そーちゃんに会ったんですね。ええ、訳あって男っぽい格好をしてますが、私はれっきとした女ですよ」

 

「確かにサラシで誤魔化しちゃいるが、こりゃ間違いなく女だな」

 

「あの、ナチュラルに人の胸を触るの止めてくれませんか?お巡りさん相手にセクハラなんていい度胸してますね」

 

「違ぇんだよ。俺の両手がまるで吸い込まれる様に沖田の胸によぉ」

 

人のおっぱいをダイソンみたいに言わないで下さいよ!?

 

「おま、女が人前でおっぱいとか言うなよ…」

 

「おっきー下品アル」

 

ゲロインにだけは絶対に言われたくない。何なんだこの人達は。いや、こんな事は銀魂じゃ日常茶飯事だったわ。

 

ツッコミし出したらキリがない。

 

「何でこっちが悪いみたいになってるんですか…」

 

「そんな露骨にこいつらめんどくせぇみたいな顔すんなよ。悪かったって。俺は坂田銀時っつーもんだ。困ったことがあったら『万事屋銀ちゃん』をよろしくな。言っとくが、依頼料はちゃんと貰うぞ」

 

「改めて、社員2号の神楽アル。仲良くするヨロシ」

 

「ご丁寧にありがとうございます。そーちゃん共々、今後ともよろしくお願いしますね」

 

「銀魂の女キャラには有るまじき淑やかさでビックリなんだが。ゴリラ急に路線変えたのか?清楚なキャラ出せば売れるとでも思ったの?」

 

「清楚なキャラは自分でおっぱいなんて言わないネ。おっきーも立派なこっち側の人間アル」

 

喧しいわ。誰がそんな事を言わせたのか考えてみろ。誰が1番悪いのか考えてみろ。ん?あれ、待てよ。最初におっぱいって言ったのは自分だったっけ…?




コロナに感染してしまったので、暫く更新できません。
すまぬ…。回復したら執筆を再開するので待っててくだされ!


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真面目な人ほど一度ハメを外すと物凄い

 

沖田さんは思った。

 

万事屋にいるであろう超大型犬。正確には犬型宇宙生物である定春をモフモフしたいと。誰にも明かしてないが、この沖田さんはかなりの動物好きである。定春は愛らしい外見とは裏腹に、よく人の頭に噛み付く。漫画やアニメだとかなりの出血してる描写がある事から、深く噛み付いているのは間違いない。

 

「(それがどうしたと言うんだ。俺は定春ちゃんをモフモフしたいんだよ。あの悪魔的に抱き心地が良さそうなモフモフ。絶対に病みつきになること間違いない!)」

 

「で、ウチには定春って言う大きなペットもいるアル」

 

丁度神楽の口から定春の話題が出る。沖田が「そんなに大きいんですか?見てみたいですねぇ」と言うと、「そんなに見たいなら家に来るヨロシ」と意外とあっさり万事屋銀ちゃんへと招き入れられる。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「ここが万事屋の内部ですか!うわぁ…結構広いんですねぇ」

 

興味津々と言った様子で辺りをキョロキョロと見渡していた。

 

「勝手に人の物に触んじゃねーぞ。ったく、家ん中にポリスメンがいる思うとどうも落ち着かねぇ…」

 

「でもおっきーはあのチンピラ集団(真選組)と違ってあんま嫌な感じはしないアル」

 

神楽の言う通り、何かとクセが強い真選組の隊士達と比べるとどこか落ち着いた雰囲気が沖田にはあった。目の前で子供のようにはしゃぐ人物があのドS王子の姉と言うのだから驚きだ。

 

「二人ともおかえりなさい。あれ?お客さんですか?」

 

居間から出てきた新八が沖田を見て首を傾げる。

 

「あ、お邪魔します。初めまして、真選組の沖田桜之進と申します。気軽に沖田さんって呼んでくださいね」

 

沖田が人懐っこい笑顔で自己紹介をすると、新八が「え、あ、いや、これはどうもご丁寧にありがとうございます?えっと、ここの社員の志村新八です」と若干驚きと戸惑いを含んだ声色で自己紹介した。

 

「沖田という事は、沖田さんのご親族の方なんですか?」

 

「はい、そーちゃんのお姉さんです。と言っても義理なんですがね。あははっ…。弟がいつもお世話になっています」

 

「え!女性の方だったんですか!?すいません。真選組って言うもんですから、てっきり男性だとばかり…」

 

「いえいえ、大丈夫ですよ。真選組はそもそも男性しか入隊出来ませんから驚くのも無理はないと思います」

 

「つくづくあのサドの姉とは思えない謙虚さネ。実はおっきーもドSだったりするアルか?」

 

「ドS?うーん、どうなんでしょうか。自分ではよくわかりません…。あ、でも、そーちゃんは血の繋がっていない私に対しても優しいんですよ。たまに意地悪ですけど…。まぁ、そんな生意気なところも可愛いなって思いますが!」

 

神楽の問い掛けに沖田は一瞬目を丸くし、困ったように笑いながら答える。だがすぐに嬉しそうに頬を緩ませた。

それを聞いた神楽と新八が同時に本人に聞こえない程度の声量で呟いた。

 

―――結構ブラコンアルな(なんですね)……―――。

 

「お前だって自身の姉にベッタリなだろーがぱっつぁんよォ」

 

「い、いきなりそういうこと言うのは止めて下さいよ銀さん!?て言うか今の聞いてたんですか」

 

「あーー!!」

 

居間に入ると沖田が一際デカい大声を上げた。何事かと思い全員がそちらへ視線を向けると、沖田が定春に抱き着いていた。

 

「大きい!この子が定春ちゃんですか!生で見ると本当に大きいですねぇ。あの、抱き締めても宜しいでしょうか?大丈夫です、優しく…優しく致しますから!」

 

「ワン!」

 

「大丈夫、先っちょだけだからみてーなテンションでやらしいこと言ってんじゃねーよ!?あんま調子に乗って触ってると痛い目見んぞ。知らないからね。頭噛まれても俺は知らないからね」

 

「ガブ」

 

「ふわァァ!?」

 

「銀さん…もう手遅れです…」

 

新八のその言葉の通り、沖田はすでに頭をガブリと噛み付かれていた。かなり強く頭に噛み付いているようで、尋常ではない血の量が出ており沖田の白い肌に紅が滲む。しかし当の本人は満面の笑みを浮かべたままであった。

 

「元気いっぱいですねぇ。ふふっ、本当に可愛いなぁ。…あの、不躾なお願いばかりで申し訳ありませんが、記念に一枚写真撮ってもいいですか?」

 

「何の記念んんんん!?呑気に写真撮ってる場合か!状況わかってんの!?お前は現在進行形でこのバカ犬に噛まれて頭から大量の血が出てんだぞ!もっと自分の体を大切にしろ!」

 

「物凄い力で噛み付いていて中々離さないネ!定春ゥゥゥゥゥ!」

 

「(あれ?沖田さんって一見常識人っぽい感じに見えますけど、実はかなりやばい人なんじゃ?)」

 

新八がそんな事を考えている間にも、どんどん血が流れ出て沖田の顔色がみるみると青ざめていく。

流石に見兼ねた銀時と神楽は必死で定春の口から引き剥がそうとするのだが、全く歯が立たない。沖田も痛みを感じているのかいないのか、ずっと笑顔のまま「可愛いですねぇ」と壊れた玩具のように同じ言葉を繰り返すだけであった。

 

 

そんな時ーーー

 

 

 

ーーピンポーンーー

 

「はぁ、やっと離しやがった。んあ?チャイム?一体誰だよ…こんな時によォ。ババアが家賃取り立てにでもきやがったか?」

 

銀時がぶつくさ文句を零しながら居間を出て行く。玄関のドアを開けるとそこにはーー

 

「げ、おめーはヅラの傍にいる変な物体じゃねーか。何でここにいやがんだ。あり?ヅラはどうした?」

 

「……」

 

「お、おい!勝手に他人の家に入んなよ!?不法侵入で訴えんぞテメー!つか、ちょい待て!今沖田が万事屋にいるんだけどぉ!?」

 

桂のペットであるエリザベスが立っていたのだ。銀時の質問を無視したエリザベスは、彼を押し退けて無言のまま室内へと入っていく。

 

「エ、エリザベス!?」

 

新八と神楽がエリザベスの来訪に驚いている間にも、エリザベスはスタスタとソファ一直線に歩いていく。

 

「?どなたです?万事屋さんのお知り合いですか?」

 

「(マズイって!どうすんですかこれ!最悪のタイミングで天敵同士が鉢合わせてますよ!!)」

 

「(落ち付けヨ新八。まだおっきーはエリザベスがヅラの仲間だって気付いてないアル。適当に誤魔化せばきっとバレないアル)」

 

「(そもそもヅラの野郎は何で隣にいねーんだよ。自分のペットが迷子になってるってのによォ。ここは迷子センターじゃねーんだぞ。ペットの躾はちゃんとしろっての。兎に角、沖田に気取られねー様にしろよテメーら)」

 

三人はヒソヒソ話をしながら成り行きを見守る事にする。エリザベスは無言のままソファに腰掛けると、何をする訳でもただじっとしている。

 

「あ、ああ!こいつは俺達の知り合いでな!今日会うことになってんだわ。そうだよな、エリザベートくん」

 

「いや、何処の血の伯爵夫人ですか!?そもそも明らかに足下を見る限り男性ですよねこの方!?」

 

《エリザベートじゃない、エリザベスだ》

 

「何で自分から墓穴を掘ってるアルか!?」

 

「ヅラみてぇなこと言ってんじゃねーよ。自分から見えてる地雷踏み抜くとか何考えてんだ。そもそも『エリザ』の部分しかあってねーだろうが」

 

「それ先に言い出したの銀さんですよね!?何でエリザベスが言ったみたいな空気感を出してるんです!?」

 

「エリザベス?ヅラ?…何か聞き覚えのあるワードですね。ひょっとして飼い主の方は黒髪で長髪の攘夷浪士だったりします?」

 

沖田が腕を組んで首を傾げる。その様子に三人はギクリとした。だが、エリザベスは何も言わずに黙っているだけだ。

 

いや、よくと見れば体が小刻みに震えていた。

 

沖田の服装を見て真選組だと気付いたらしい。あまりにも反応が遅すぎる。何故入ってきた時に何も思わなかったのか。

 

《通りすがりの迷子だ》

 

「(迷子になってんのはお前の意味不明な発言だろーが!どんな言い訳!?もうちょいマシなこと思い付かなかったのか!?)」

 

「ああ、なるほど。迷子の方ですか。かぶき町は意外と広いですからねぇ。人の通りも激しいですから、自分が何処にいるのかわからなくなりますよね」

 

「(ん?あれ?こいつもしかして気付いてねーのか?あの馬鹿共(真選組)の中じゃかなり常識人っぽいから、1発でモロバレ、即御用かと思ったが、割と抜けてたりする?て言うか、あらぬ誤解を生みそうだからいい加減その血だらけの顔を何とかしてくんない?)」

 

「あの、沖田さん。これで顔を一回拭いてください。見ていて怖いです…」

 

「あ、すいません…。お気遣いありがとうございます」

 

新八が水で濡らしたタオルを沖田に渡す。銀時は心の中で「ナイスだ!ぱっつぁん!」と新八に拍手を送っていた。

 

「良ければ、沖田さんが交番までご案内しましょうか? 大丈夫です!お姉さんにドーンと任せてもらって構いませんよ」

 

《気持ちだけもらっておく。彼らに依頼したい事があるのでな》

 

「そうですか?まぁ、本人がそう仰るのであれば、私も無理にとは言いませんが…」

 

沖田は苦笑しながら頬を掻く。

 

依頼という単語を聞いて銀時達は顔を見合わせた。エリザベスが自分達に一体何を頼みたいというのだろうか。

 

「仕事の邪魔をする訳にもいきませんので、私はこれで失礼しますね。突然申し訳ありませんでした。タオルも洗って今度お返しに伺いますね?」

 

場の空気を察してか、定春の頭を一撫した沖田はペコリとお辞儀をして、居間を出て行った。バタンという音と共に扉が閉まる。それを見届けた銀時はエリザベスに向き直った。

 

銀時達にはエリザベスが何を考えているのか分からなかったが、取り敢えずソファに座る事にした。エリザベスは相変わらず黙ったままでいる。

 

銀時はボリボリと頭を掻きながら口を開いた。

 

「で、俺らに依頼ってなんだ?お前の隣にヅラが居ないって事は、アイツ絡みの依頼か?」

 

エリザベスはプラカードを掲げる。そこにはデカデカとこう書かれていた。

 

《桂さんが辻斬りに斬られた。今も行方がわからない》

 

「なっ!?」

 

銀時の表情が変わった。それは神楽や新八も同じである。エリザベスは真剣な眼差しで三人を見据えた。

 

ーーでも、あんなに強い桂さんが簡単に死ぬとは思えない。あの人を探すのを手伝って欲しいーー 

 

「手伝うって言ってもよォ、手掛かりの1つもねーんじゃ、行方知れずのヅラを探すなんて難しいだろーが」

 

「最近巷で噂されている辻斬りと何か関係があるんでしょうか?」

 

「任せるネ!ヅラは必ず私達が見つけるアル!」

 

「おまっ、ンな勝手に決めんじゃーー」

 

「あれ?銀さん電話鳴ってますよ?」

 

「誰だよ…こんな時に…」とぼやきながらも、銀時はエリザベスに背を向けた。そして、机に置いてある受話器を手に取る。

 

「はーい、万事屋でーす。え?仕事の依頼?」

 

そして数分間、電話の主と会話をした後に受話器を元の位置に戻した。

 

「新八、神楽。ヅラの件はお前らに任せたわ。俺ァ今からちょっくら出かけてくっから」

 

「え?いやそんな急に言われても…!?」

 

それだけ言い残すと、銀時はエリザベスの前から立ち去っていく。

残された2人はお互いに顔を見合わせる。

エリザベスはそんな彼等を見て、申し訳なさそうな顔をして頭を下げた。

 

《頼む、桂さんを見つけてくれ》

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「おい、ザキ。沖田のヤツを見なかったか?」

 

廊下を歩いていた監察方の山崎に土方が声をかける。

 

不機嫌な副長の表情から察するに、また沖田隊長が何かやらかしたのではないかと内心で考える。

 

土方と総悟の二人はよく言い争いの喧嘩をする。と言うよりは、総悟が一方的に土方に突っかかって土方がそれに対して怒る場面が多い。

 

「副長、何かあったんですか?」

 

「大江戸公園に見回りに行ったきりで、あいつから報告が一切ねぇんだ。何かあったのかと思ってな」

 

「大江戸公園?ああ、桜ちゃんの事だったんですね。すいません、副長が沖田隊長って言うもんですから勘違いしてました」

 

「あー、悪ぃ。紛らわしい呼び方しちまった」

 

土方は決まって桜之進の事は”沖田”と呼ぶ。”桜”と呼ぶ事もあるが、土方の中では沖田呼びが定着しつつある。理由は何となくその呼び方の方がしっくり来るから、であった。

 

土方はバツの悪い顔で頭を掻く。

そんなやり取りをしていると、また別の隊士が二人のもとにやって来た。

 

「副長。これ今日の報告書っス」

 

報告書を片手に現れたのは八番隊副隊長の藤堂凹助であった。しかし、彼の傍らには隊長の沖田桜之進の姿はなかった。

 

「凹助?何でお前が報告を…。沖田のヤツはどうしたんだ?」

 

「隊長なら万事屋に行ってくるって言ってたスよ」

 

「は?万事屋?何でそこでアイツらが出てくんだよ」

 

意味がわかんねえと言いながら眉間にシワを寄せる。

 

「何でも公園内を見回り中に、万事屋と偶然出会ったらしいっス。彼らの大ファンだと嬉しそうにメールで言ってました」

 

「それがこれです」と携帯を開いてメールの内容を土方に見せる。

 

 

 

From 沖田ちゃん

Sub やばいです!!(>_<)


 

藤堂さん藤堂さん!

やばいですよ!マジやばです!

いま大江戸公園を見回りしていた最中なのですが、

なんと万事屋銀ちゃんの坂田さんと神楽ちゃんに出会いました!生で見たのは初めてだったので、もうテンションが⤴︎⤴︎

いやー、土方さんや総ちゃんから話は聞いてましたが、中々に面白い方々ですねぇ。

 

沖田さんが万事屋さんの大ファンだと明かしたら、皆さんが家に招待してくれるそうなので、ちょっと行ってきます!

 

むふー!早く定春ちゃんをモフモフしたいです!

(((o(*゚▽゚*)o)))

 

 

P.S

大江戸公園、及びにその周辺には不審人物の姿は確認されず。八番隊の隊士は担当の場所の見回りが終わったら屯所に戻ること。

 

 

 

「P.Sじゃねーよ!?何だこのアホ丸出し文面は!最初と最後で文体変わりすぎだろ!P.Sの部分の文面だけ他人が書いてねーか!?…比較的真面目で俺と同じ常識人ポジションだと思ってたが、どうやら俺の思い違いだったらしい。戻って来たら士道不覚悟で切腹だ」

 

「俺と同じ…常識人?お茶やコーヒーにマヨネーズぶっ混む人は常識人とは言わないんじゃーー」

 

「何か言ったかザキ?」

 

「い、いえ!何でも!?」

 

「まぁまぁ、副長。我々は日夜、市民や国を守る為にずっと気を張り詰めて仕事してる訳じゃないですか。ましてや隊長格の職に就いてると言っても彼女はまだ十代の若者ですよ?男だらけの空間で常にそんな仕事の責任感と緊張感に晒されてれば、ハメの一つもを外したくなるんじゃないスかね」

 

桜之進の報告メールを見て額に青筋を浮かべる土方。一方、凹助は苦笑いをしながらフォローを入れていた。

 

「沖田のことになると随分お喋りになりやがるな。何だ?あいつに気でもあんのか?」

 

「茶化さないで下さいよ…。単に妹同然に可愛がってるだけッス。恋愛感情なんてありません」

 

陽気で人懐っこく、職務態度も至って真面目な彼女だが、時折こういった周りを困惑させる謎の行動に出ることがある。戦闘時の雰囲気の変化も相まって、彼女の隊に属する隊士達の間では『沖田隊長二重人格説』が噂されているとかいないとか。桜之進よりも年上で昔から桜之進を知っている凹助は「まぁ、あの沖田隊長の姉だし」と大して気にした様子はなかった。

 

「ただいま戻りましたー!」

 

「沖田隊長。帰ってくるのが遅いっスよ」

 

「おう沖田。随分とウッキウキな顔してるじゃねーか。万事屋んトコは楽しかったか?」

 

「はい!…はい?ひ、土方さんんんんん!?あ、あの、これには深い訳がありまして…!」

 

「士道不覚悟で切腹な」

 

「ド直球過ぎませんかッ!?」



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苦楽を共にした仲間だからこそ逆に意識してない事もある


お風呂の回



 

真選組の屯所には浴場がある。だから、いつも隊士たちは交代で入りにいくのだが、如何せんそこまで大きい浴場でもないので、順番待ちの行列ができることが日常茶飯事。

 

待ち時間にしびれを切らしてお風呂を我慢できない者達は皆、近くの銭湯に向かう。寧ろ、そっちの方がすぐ湯船に浸かれる為に手っ取り早いだろう。

 

しかし、一部の真選組の男達はわざわざ長い待ち時間のある屯所内の浴場に入ろうとする。それは何故か?男達は浴場で発生するとある事件に胸を躍らせているからだ。

 

事件と言っても怪我や事故ではない。

通学路の曲がり角でパンを口にくわえた可愛い転校生とぶつかる。そんな甘いトキメキのあるハプニング。

 

「やや、また一回り大きくなってません?サラシで潰して隠すの結構大変なんですよねぇ」

 

沖田さんのお風呂タイム。

 

真選組隊士たちが毎日のように利用するその広い浴槽の中で一人の少女が楽しげな鼻歌を歌いながら体を洗っていた。少女の名前は沖田桜之進。

 

そして彼女の最大の特徴は……胸に大きな脂肪が二つあることだ。つまり彼女は紛うことなき"女"なのだ。

 

普段は男装をして髪を一つ結びにしている彼女だが、今は完全に無防備。髪紐を外した白髪の長い髪。沖田の体は、女性らしい丸みを帯びていて、胸もかなり大きい為か腰から臀部の曲線は少し細めに見えるがそれでも十分すぎるほど肉感的だ。

 

おまけに白い肌はシミひとつなくスベスベとしていて美しい。顔立ちも中性的ではあるが美人といって差し支えないほど整っている。

 

男装時の凛々しさもあってか、よく女性から告白される事もあるとかないとか。

 

「恋愛とかよくわかんないんですよねー」とは本人の談。

 

まぁ何にせよ、この世のものとは思えない美少女が入浴しているわけである。しかも全裸。これは男なら興奮しない訳がない。

 

『どうだ?中の様子は見えるか?』

 

『駄目だ。この角度からだと何も見えねぇ。くそ、なんてザマだ!あと少しで沖田隊長のあられもない姿を拝めそうだってのに!』

 

浴場の外の窓から数人の人影あった。どうやらあれこれとアイディアを出し合って浴場を覗こうとしている様だ。

 

『もう俺ら全員で浴場に突入した方が早いんじゃないか?別に沖田隊長が入浴してるから男は入っては駄目、なんて局中法度はないんだしさ。沖田隊長だって「別に混浴でも構わないですよ。気にしないので」って言ってたろ』

 

『何言ってやがる!局中法度に書いてなくとも人として、いや、男として駄目だろうが。それに、こんなナヨナヨした体を沖田隊長に見られたら俺は生きていけねーよ!』

 

『だからあれ程ダイエットをしろって言ったじゃねーか。ラ〇ザップやれよ。てか、それが本音だろお前』

 

『ん?おい、誰か浴場に入って来たぞ』

 

覗き仲間の一人の隊士がヒソヒソ声で全員に伝える。

 

「何だ、沖田もいやがったのか」

 

「うわぁ!背後から急に声をかけないで下さいよ!ビックリするじゃないですか!」

 

腰にタオルを巻いた完全オフモードの土方が浴場に入ってくる。

 

「お前が無防備なのが悪ぃんだろ。入ってもいいか?嫌なら出ていくが…」

 

「もうやだなぁ。変なところで気を使わないで下さいよ。土方さんらしくもない」

 

「それどう意味だ?つーか、毎回思うんだが、お前気にならねーのか?」

 

「へ?何がです?」

 

湯船に浸かって沖田に背を向けた状態で土方が更に話を続ける。

 

「真選組には女はお前しかいねー。隊士全員、お前が女のは知っちゃいるが、だからこそ野郎の目線とか気になんだろ」

 

「はぁ…。目線、ですか?」

 

「何だよその反応は。まさか、本当に何も感じてなかったのかお前」

 

「隊士の皆さんから視線を時たま感じてはいましたけど、別段気にはしてなかったですね。私にとって真選組は家族みたいなものですし」

 

平然と答える沖田を見て「筋金入りのバカか」と頭を抱える土方だったが、すぐに諦めたようにため息を吐いた。

 

ちなみに先程の沖田の反応の通り、隊士達からは恋愛感情を持った目を向けられているのだが当人は全く自覚していない。それだけでも大問題だというのに、その事を沖田が知らない。

 

「近藤さんなんて酷いんですよ。私がお風呂に入ってる時にたまにばったり会うんですけど、私が入浴しているのを見るや否や大慌てで『えええええええ!桜ちゃん!?待って待って!ごめん!本当にごめんなさい!今すぐ出て行くから通報は勘弁して!』って猛スピードで逃げるんですよ?」

 

「あの人はピュアだからな。お前と一緒に風呂に入る勇気は持ち合わせてないだろ」

 

「でも、そーちゃんもお風呂一緒になると顔を真っ赤にして逃げますよ」

 

「ほう、そうなのか?アイツにしちゃ珍しい反応だな。ドS王子も中身はガキンチョってことか」

 

土方と沖田はそんな会話をしながら湯船に浸かるとお互い背を預けるように座る。すると、沖田の背中と土方の背中が触れ合う形になる。

 

沖田は土方より小柄ではあるが女性としては平均的な身長なので、こうして並ぶと二人の体格差は一目瞭然だった。

 

「土方さんは逃げないんですね。さすが女性からモテモテの色男は違いますねぇ。よっ!日本一のモテ男!って、あいたぁ!?」

 

「茶化すんじゃねぇよ!頭ぶっ叩かれてーのか!」

 

「もう既に叩いてるじゃないですか!乙女の頭を何だと思ってるんですか全く!」

 

「乙女だぁ?ああ、そういやお前って女だったな。悪ぃ、普通に忘れてたわ」

 

「流石に酷すぎませんかそれ!?」

 

土方のあんまりな発言に涙を浮かべながら怒る沖田だが土方は涼しい顔だ。沖田を女として見ている男がいたら恐らくこんなやり取りは想像すらできないだろう。

 

軽口を言い合いながらもじゃれ合っている二人。端から見るとただの友人同士に見えるが、彼らは紛れもなく"男と女"なのだ。

 

昔からの付き合いに慣れきってしまった為、女性としての意識をどこかに置いてきてしまったのかもしれない。

 

「もう怒りました!土方さんなんて知りません!先に上がらさせていただきます!」

 

「おう、別に構わねーぞ。俺はあと少し入ってく」

 

「ふんだ!後で後悔しても知りませんからね!」

 

「後悔って一体何を後悔すんだっつの…。上がったらしっかり体を拭けよ。風邪引いても知らねーからな」

 

「わかってますよ!」

 

プンスカと怒りながら浴場から出て行く沖田を見送った土方は再び大きな溜息をつく。

 

「相変わらず可愛げがねぇな…」

 

沖田がいなくなった浴場で一人呟いた土方の言葉は誰に聞かれることも無く、反響することもなく消えていった。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆

 

 

一方その頃、脱衣所では沖田がタオルで濡れた髪を乾かしながら着替えていた。

 

「っと、桜姉ぇじゃねーですかぃ。風呂上がりで?」

 

今から風呂に入ろうとしてたのか、総悟が脱衣場にやってきたところで丁度鉢合わせになった。

 

「はい、そうですよ。そーちゃんは今からお風呂ですか?」

 

「ええ、そんなところですぜ」

 

「そうでしたか。ゆっくりと仕事の疲れを癒して下さいね」

 

「そうしやーす」

 

「ところでさっきから気になっていたんですが、どうして目線を逸らして喋っているんです?」

 

沖田が首を傾げる。確かに彼女の言う通り、先程から沖田が目線を合わせると、総悟はすぐに顔をほんのり赤くして別の方向を向いてしまう。

 

何か変なものでも付いているのだろうか?と自分の身体を見回してみるも特に変わったところはない。

 

「(あー、なるほど。お風呂に入ろうと思ったらお風呂上がりの姉がいて何となく気まずいってやつかな?)」

 

沖田は心の中で納得した。沖田と総悟は血が繋がっていない義姉弟だ。初めこそお互いの仲は良好とは言えなかったが、そこに二人の姉のミツバが介入する事で、少しずつ関係は改善されていき今では本当の姉弟のように仲良くなった。

 

しかし、それでも思春期を迎える男子にとっては複雑な心境なのだろうと沖田は考えたのだ。

 

「そーちゃん、お風呂上がりって暑いですよねぇ」

 

「…弟をからかうのは止めてくだせぇ。それよりも早く服着ないと湯冷めしますよ。唯でさえ体もメンタルもクソ雑魚なんですから」

 

沖田は悪戯っぽい笑みを浮かべると、わざとらしく胸元を大きく開けて見せた。その瞬間、総悟の顔は茹でダコの様に真っ赤に染まった。

 

「(これが胸キュンってやつですか!なるほど、これは確かに良いものですねぇ)」

 

先程も言った通り、普段から沖田は男装をしている。その為、こうして肌を露出させる機会は滅多にない。沖田自身も女扱いされるのはあまり好きではない。魂が男だからというのもあるが、女とわかるや否や、急に態度がデカくなり此方を下に見る人間が多いからだ。

 

しかし、だからと言って、自分が女性であることを否定するつもりは無い。むしろ、女性らしい部分も自分の一部だと最近は受け入れている。

 

総悟が「男装した方が野郎共から舐められねーですぜ」と助言をしたのも自身の姉を心配してのことなのかも知れない。

 

沖田自身、総悟のことはもちろん好きだ。だが、それは恋愛感情ではなく姉弟愛。つまり家族としてだ。

 

だから、こうして異性としての反応を見せてくれるのは素直に嬉しいし、可愛いと思う。総悟の反応を見て楽しんでいると、突然、背後に気配を感じた。振り返ってみると、そこには腕を組んで仁王立ちしている土方の姿があった。

 

「いだぁ!?に、二回も人の頭を楽器みたいに叩くことないじゃないですか!」

 

「アホやってないでとっとと着替えろバカ。総悟は早く服脱いで風呂に入っちまえ」

 

「桜姉ぇになに暴力振るってんだ土方コノヤロー!!」

 

「おめーが困ってるからこっちは助けてやったんだろーが!?」

 

どうやら、先程の沖田との総悟とのやり取りを見ていたらしい。土方は沖田に拳骨を落とすと、そのまま手早く着替えて出て行ってしまった。

 

「全く、土方さんは本当に乱暴者ですね」

 

「…………」

 

「そーちゃん?どうかしましたか?」

 

「いえ、何でもねぇです」

 

「そうですか?それならいいんですけど…」

 

「んじゃ、風呂に行ってきやーす」

 

総悟は沖田に小さく頭を下げると浴場へと向かって行った。





この小説は友情、勝利、成長、努力はあっても(恋愛は)ないです


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傘の置き忘れに注意

 

「へ?辻斬り?」

 

自室で団子を頬張っていた沖田が首を傾げる。

 

「ああ。それも幕府の高官ばかりを狙った、な」

 

土方がマヨネーズ入りのお茶を飲む。何でマヨネーズ?とツッコミを入れてはいけない。極度のマヨラーである彼にとって、マヨネーズとは万能アイテムなのだから。

 

「犯人に目星はあるんですか?」

 

「犯人なら検討はついてる。ーー人斬り似蔵。奴の仕業だ」

 

人斬り似蔵。

 

巷で噂になっている辻斬りの名である。盲目ながら抜き身を見せずに人を斬る居合の達人。その手口は残虐非道。夜間に運悪く出くわせば死あるのみ、とまで言われている。

 

一時行方を晦ましていたが、最近になって江戸で頻繁に目撃されているらしい。

 

沖田は内心で遂に紅桜篇が来たのか、と気を引き締める。銀魂初期の長編エピソード。それが紅桜篇。

 

「(介入…すべきなのか?でも、俺は真選組だしなぁ。あの空間に一人だけ真選組の隊士が混ざってたら違和感しかないだろ)」

 

手助けしたい気持ちはあるが、自分の立場を考えるとそう簡単に動くことは出来ない。

それに、今ここで下手に動いて今後の歴史が変わることがあればどうなるか分からない。最悪、取り返しがつかない事態が起きる可能性もある。

 

「(いや、俺と言う存在が銀魂世界にいる以上、原作からはもう掛け離れているのか)」

 

原作に沖田桜之進なんて登場人物は存在しない。だから自分がどんな行動を取ったとしても、それが未来を大きく左右するとは思えないし、そもそも自分がこの世界の人間じゃないのも事実だ。

 

もし、仮に介入したとして自分は何をしたいのか。何が出来るのか。それすらも今の自分には分からなかった。

 

天才剣士なんて呼ばれているが、所詮それは沖田さんボディだからの話であって、中身は凡人の自分には荷が重い気がしてならない。

 

いや、違う。

 

人を殺めた時点で、それは凡人とは大きく異なる。正義だとか、国とそこに住まう市民の安全を守る為だとか。どんなに上品な言葉で言い繕ったところで、人殺しは人殺し。本質は何も変わらない。

 

初めて人を斬ったあの感触は今でも忘れられない。殺気を込めた眼差しがこちらに向けられた瞬間、全身から冷や汗が流れ出た。身体中の血が逆流するような感覚に襲われて、頭の中では警鐘が鳴り響いていた。

 

ーー嫌だ、俺はまだ死にたくない。まだ生きていたいんだ。だってこんなにも毎日楽しいじゃないか。

 

近藤さんの役に立ちたい。堅物の土方さんをからかって遊びたい。そーちゃんとバカやって騒いで笑って過ごしたい。もっと真選組の皆と一緒に居たい。

 

そんな考えとは裏腹に身体は無意識のうちに刀を抜いていた。そこから先はよく覚えていない。ただひたすら無我夢中で相手の命を奪う為に振るっていたことは覚えている。そして気づいたら、辺りには屍が転がっていて…。

 

ーー自分の体の中でドロドロとした感情が沸き上がってくるのを感じた。まるで真っ黒な絵具を水の中に垂らして溶かしていくような感覚だった。

 

恐ろしいのは、人を殺めた罪悪感だとか、後悔などは一切感じていないこと。殺しそのものに何の感情も抱かない

 

ーーまるで歩く死人(・・・・)のように無機質な思考しか出来ない自分。

 

俺が狂っているのか、それともこの体の本来の持ち主である型月の沖田さんによく似た少女。『沖田桜之進』の精神に引っ張られているのか。どちらにせよ、今の自分が異常な存在であることに違いはない。

 

「攘夷浪士の中でも奴は特に危険視されている。他の隊に任せるには荷が重い。それでーーー」

 

「私に任せようと思った訳ですね」

 

「ああ、そういうこった」

 

土方はそう言って茶を一気に飲み干す。空になった湯呑みに再びお茶を注ぐと懐から二本目のマヨネーズを取り出して中身をどばっと投入する。うっぷ……。

 

「ん?お前も飲むか?」

 

「絶対に遠慮します。沖田さんはまだ死にたくないので」

 

沖田がそう言うと土方が「そうか…。美味いんだがな」と言って残念そうな顔をする。どうやら本気で言っているらしい。どんだけマヨ好きなんだよ!とツッコみたいところではあるが我慢する。この人に付き合っていたら話が進まないし、何より沖田さんのキャラが崩れますからね。

 

「お前の腕は信用しちゃいるが、相手はあの人斬り似蔵だ。くれぐれも油断だけはするんじゃねぇぞ。あと先に行っておくがーー発見したとしても殺すなよ。五体満足で捕まえろ」

 

「へ?」

 

「へ?って、お前やっぱり殺るつもりだったのか!?ダメに決まってんだろ!」

 

「も、もちろんわかってましたよ!」

 

「んな目泳がせながら言っても説得力皆無なんだよ!とにかく殺すな。いいな?」

 

「今日はやけに念を押して来ますね土方さん。何かあるんですか?」

 

「奴は高杉と繋がってる可能性があるらしい。幕府の重鎮ばかり狙ってるところを見るに間違いないと思うがな。だからもし遭遇したら殺さずに捕縛しろ。生捕りが無理なら最悪半殺しでも構わん」

 

高杉。桂と銀時と共に吉田松陽に育てられた三人組の一人にして、鬼兵隊の首領。過激派攘夷志士の中でも特に危険な人物であるとされている。

 

「無茶を言いますねぇ。ですが、分かりました。土方さんに言われた通り生け捕りにするよう努力してみます」

 

沖田が真剣な面持ちで言うと、土方は「任せたぞ」と短く告げた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

夜の帳が下り、町を行き交う人々は皆帰路についていた。沖田はその人々の流れに逆らって歩き続ける。

 

目的はもちろん人斬り似蔵を探す為だ。その手掛かりを求めて今彼女は夜の街を彷徨っている。昼間に比べて格段に治安が悪くなるのは百も承知。

 

「こういう真っ暗な裏通りは特に怪しそうですね。一応、警戒しておきますか」

 

路地に入り込んで辺りを見渡す。沖田の目が暗闇に慣れるまで数秒ほど時間を要した。目が慣れてきた頃合いを見て再び歩を進める。

 

「うーん。ここはハズレ、ですか」

 

沖田がそう思った瞬間ーー カチャッという音とともに目の前の地面が弾けた。沖田は咄嵯に横に跳んで攻撃を避ける。そのまま抜刀すると、すかさず体勢を整えてから斬り掛かるが、いとも容易く受け止められる。

 

このままでは不利と直感でそう思った沖田は、バックステップで後ろに下がった。

 

視線を前に向ける。

 

「…何者ですか」

 

「ほう、今のを避けるたァ中々やるじゃねーか。どうやら幕府の犬っころ共の中にも、少しは腕が立つ奴がいるらしい」

 

男の低い声が響く。それと同時に、沖田に向かって殺気が放たれ始めた。それは肌をピリつかせるほどの威圧を放っており、並大抵の人物ではないことが容易に想像出来た。

そして暗闇の中から現れた人物に思わず目を丸くする。

 

「あなたは……高杉、晋助?」

 

そこには編笠を被った隻眼で長身の男の姿があった。この耳が孕みそうなイケボに派手な着物。歩く18禁みたいな色気を放つのは高杉しかいない。ーーだが何故、攘夷浪士の大物であるこの男がこんな所に? 沖田は内心動揺していた。まさかこんな所で鉢合わせるとは思いもしなかったからだ。

 

「(何でこんな所に高杉が!?)」

 

しかも、沖田の知っている史実だと、高杉は春雨の船に居るはず。少なくともこんなにも早い段階で出会うなんて知らない。

 

「俺の気配に気づくたァ大したもんだ。それに、俺の剣を受け止めるだけの技量もありやがる」

 

「こんな所で夜のお散歩ですか?攘夷志士を纏める親玉と言うのも案外暇なんですね」

 

「ククッ、そうでもないぜ。今はちと野暮用があってな。それを終えた帰り道ってところだ」

 

余裕そうな笑みを浮かべて沖田を見る。まるで此方を品定めしているかのような眼差しだった。しかし、沖田からすれば全く笑えない状況だ。相手は攘夷戦争を経験した猛者である。今の自分でどこまで高杉に太刀打ちできるか…。

 

「………」

 

「いい目だ。そう殺気立つなよ。何も俺ァお前を殺しに来た訳じゃねぇ」

 

「突然不意打ちしてきたクセによく言いますね」

 

「お前さんのその特徴的な髪色に惹き寄せられてな。我慢できなくてつい手が滑っちまった。悪ぃな」

 

「手が滑って斬り掛かるとかどんな感性してるんです?」

 

まじまじと高杉が沖田の髪を眺める。桜之進の髪色は型月の沖田さんと同じ桜色の薄いピンクと、ブロンドが合わさったような髪色をしている。

 

その為か、物珍しさから振り返られることがしばしばあった。

 

「それより、岡田似蔵は貴方が連れている人斬りでしょう?今何処にいるんですか」

 

「さてな、質問に答える義理はねーな」

 

「そうですか。ならば力ずくで聞き出すまでです」

 

「フッ、肝が据わった女だ。敵にするにゃ勿体ねぇ。どうだ?俺と一緒に来ねぇか?」

 

唐突にそんなことを言ってきた。何言ってんだこの歩く18禁は。いきなり勧誘されても困るんですけど。

 

「ジョークにしても笑えないですね。私が真選組を裏切るなんて有り得ません。…ん?女ですって?」

 

ここで沖田は違和感に気づいた。今、目の前の男は何と言った? 私が女? その言葉を脳内で反覆させる。

 

え?いや、いやいやいや! 何でバレてんの?サラシで胸潰してるし、声だっていつもより低めに喋ってる。変装は完璧の筈だ。なのにどうして高杉は沖田さんの性別を見破ったんだ?

 

「初めはやけに色白の男が来たと思ってただけだがな。剣を交えて確信に変わった」

 

「だからどうしたというんです?女だからって舐めてると痛い目みますよ」

 

刀を構えていた沖田が突然柄を片手で回転させながら白銀に光り輝く刀身を鞘に戻して、身を低くして独特なポーズを取った。その瞬間、彼女の白い髪が靡き、鋭い殺気を孕んだ双眸は高杉の姿を捉える。

 

「一撃必殺にして神速の抜刀術。それがお得意ってか。面白ぇ」

 

一見隙だらけな姿勢に思えるが、それはフェイク。沖田が本気で斬りかかる時のみ使用される構えで、これを繰り出しているということは既に戦闘態勢に入っているということだ。

 

「ククッ…」

 

それに対して高杉は何故か嬉しそうに笑みを溢す。

 

一方の沖田は、

 

「(え?何この人怖い。何でこんな殺気ぶつけられて涼しい顔で笑ってられるんですか…)」

 

本気で少し困惑していた。

 





「土方さーん!新しい新技を思いついちゃいました!飛龍閃!」

「る〇剣じゃねぇか!!」


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