後輩は心の怪盗団 (モカチップ)
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20XX年5月
プロローグ


 ……ん、んんんん。

 仕方ないとは言いたくない。

 

 子供相手に大人が寄って集って犯罪者呼ばわり。

 

 ただ人助けをしただけだって言うのに、だ。

 

 道路で酔っ払った男に絡まれていた女性を助けただけ……。

 

 助けようと行動しただけでも凄いこと。

 常人じゃできない。

 

 なのに酔っ払った男に「いきなり暴力を振ってきた」と警察に訴えられる。

 

 相手がお偉いさんだったみたいで成す術もなく……。

 

 友達は離れ、先生も見限る。

 ……ただ両親だけは……。

 

 それだけが唯一の救い、かな。

 

 あ、俺じゃないよ。

 同校の後輩のこと。

 

 名前は()()()

 

 保護観察の身になり退学処分受け、都会にある秀尽学園に転入した大切な後輩。

 

 ……そう蓮に告げられたからね。

 だから分かる。

 

 分かるんだけどねぇ……。

 

「……なんで俺まで?」

 

 退学処分を受けているんだろう。

 ああ……ついカッとなって蓮の担任と校長を殴ってしまったんだよね。後悔も反省もしてない。

 

 ……蓮はなにも悪くない。

 なのに学校に泥を塗ったらや面汚しなど心無い言葉を聞いてイラついたから。

 

 最後まで生徒を信じられない教師なんていない方がいい……。

 

 生徒に寄り添い支えるのが教師。

 

 退学処分されたのは痛いがあんな学校には居たくないからね。

 

 それはいいんだ。

 ……本題に入ろう。

 

 目の前には門。

 奥には学校がそびえ立っている。

 

 学校銘板には()()()()()()()()と……。

 

 ……?????? 

 なんで? 

 

 なんでこうなったか思い出そう。

 

 …あー退学処分を受けてからは蓮が転校するまで遊んでたんだ。

 

 ほとぼりが冷めるまでは居られないだろうし。

 

 ……思い出作りがしたいと言われて。

 

 地元だとうしろ指さされるから少し遠出をしたり軽い旅行とか行ったりね。

 

 ……旅行は流石に不味いと思ったんだけど蓮の両親にゴリ押されて…。

 

 退学処分の負い目があるにしてもグイグイきてたよ。……結局折れた。

 

 本当……何もなくて良かった。

 

 じゃなくて、ね。

 

 蓮が都会に行き一ヶ月経ったぐらいかな? 

 

 朝から引越し業者がやってきて……。

 何かと思えば住所が書かれた紙を渡されて……。

 

 書かれた住所に行けば……なんか都会に来ていて。

 なんか秀尽学園高校に転入することになっていたんだ。

 

 現に制服を着て立っているよ。

 

 ……分かんないねえ。

 

 転入という形だから高卒は取れる。

 それは嬉しいんだけど、ね。

 

 あ……あー…どうしようか。

 

 このまま立ちっぱなしもなんだし入━━

 

「先輩ー!」

 

 聞き慣れた声。

 聞き慣れた呼び名。

 

「ん?」

 

 振り返……ぐふっ! 

 

 腹部に黒い何かがダイレクト。

 バランスを崩し仰向けで……。

 

 思っきりコンクリートに頭が叩きつけられる。

 

「お久しぶりです! 先輩!」

 

 ……あ…ああ……。

 頭が痛てぇ……。

 

「久しぶり……蓮」

 

 ……なんか蓮のカバンから目を回した黒猫が……あ、無理だこれぇ。

 

 1ヶ月ぶりの再会。

 後輩に意識を落とされました。




読了ありがとうございます。

アンケートも付けようと思うのですがアンケートの結果次第で色々とカオスになりますのでご了承くださいませ。


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転校生と生徒会長

んー性別を出せないから深く書けないなぁ。
と言いますか実はP5Rをやったことがないんですよねぇ(白目)

本格的に書くのはまぁ……10月21日から……。
なんならP5はプレイ済みなので動画みてなんとか……いける?



「……って…」

 

 頭が痛い。

 後頭部にコンクリートを受けたら、な。

 

 知らない天井だ。

 運ばれているってことは保健室か。

 

「目を覚ましたのね」

 

 すぐ近くで椅子に座った制服の少女。

 養護教諭……ではないよね。流石に。

 

「……おかげさまで」

 

 よっと……。

 何処にでもある保健室。

 

 他には誰もいないか。

 蓮ぐらいなら居ると思ってたんだけど……。

 

 流石に授業に出てるよね。

 

 ……ジロジロ見られてもなぁ。

 隠す気もなくガン見って……。

 

 ここに居るということは気絶した後のことも知っているんだろう。

 

 何があったか想像したくもない。

 

 転校初日からハードモード。

 ……リスキーだ。

 

「貴方は転校生よね」

 

「そうだね。俺は天宮憂(あまみやうい)

 

 手を差し出す。

 自己紹介に握手はつきもの。

 

「っ……私は新島真よ。生徒会長をやっているわ」

 

 ……拒否、か。なんか驚いているし警戒されてる? 

 

 ああ、蓮と苗字が同じだからかな。

 

 蓮は雨で俺は天。

 よく漢字を間違えられたりするんだよね。

 

 それもあるけど……前の学校のこととか。

 理由はどうであれ教師をぶん殴ってるから。

 

 こっちでも問題を起こされたらたまったもんじゃないんだろう。

 

 生徒会長なら聞いてるだろうし。

 仕方なく腕を下ろす。

 

「よろしく真」

 

 苗字はお堅い。

 馴れ馴れしいぐらいの方が丁度いい。

 

 地元ではそうだったしね。

 今じゃ苗字を呼ぶことすら躊躇われるけど、さ。

 

「え、ええ……よろしく」

 

 自己紹介を最後に会話が途切れる。

 あはは……沈黙がキツい。

 

 名前は新島真。生徒会長をやっているから多分同じ高校3年生。……生真面目な優等生タイプ、かな。

 

 話題…話題は……っと。

 

「……()()()()()

 

「え?」

 

「心の怪盗団って知ってるかしら」

 

 心の怪盗団……? 

 最近都会を賑わせている謎の多い怪盗だよね。

 

 悪人を改心させる、とかなんとか。

 高校教師が急に罪の告白をしたとかSNSで騒がせてたね。

 

 高校の名前が……。

 そう、この()()()()()()()()

 

 元オリンピック金メダリストの鴨志田卓。

 バレー部の顧問であり全国まで導いていた裏では体罰やセクハラをしていた。

 

 そのせいで被害を受けていた生徒の一人が飛び降りたとも。

 

 急に自首をしたことから心の怪盗団が改心させたと言われている。

 

 ……改心、か。

 相手の人格さえも変えてしまう。

 

 言い方を悪くするなら洗脳、か。

 もしかしたら脅したのかもしれないけど。

 

 今までずっと裏を隠し続けてきた人間が急に心を入れ替える、なんてことはありえない。

 

 人間はそう簡単には変われない。

 悲しいことにその様にできているんだ。

 

 過程がどうであれ結果的には良い方向に向いている。なんなら蓮を嵌めたお偉いさんやあの教師たちも改心してもらいたいものだ。

 

 ……なんて。

 教師たちは殴ったからイーブンだしお偉いさん……あの衆院議員には関しては蓮が決めること。

 

 蓮に頼まれた時は……手助けぐらいはできるだろう。

 

 あ、心の怪盗団で思い出した。他にも廃人化や精神暴走事件が起きているんだよね。……改心……人格…洗脳。

 

 ……………………()()()、ね。

 

 ……チャンネルもあった気がする。

 怪盗お願いチャンネルだっけか。

 

 あとで見てみようかな。

 

「聞いてるの?」

 

「あ、ああ……名前だけなら」

 

「そう。……それと」

 

 チャイムが鳴る。

 授業が終わったみたいだね。

 

 ……時間、確認してなかったや。

 鞄は……あったあった。

 

 時間は……12時。

 そんなに寝てた……? 

 

 自己紹介もなくお昼ご飯を食べるのか。

 

「……あ」

 

 着信だ。

 相手は──

 

「電話……()()()ね」

 

 覗き見て呟く。

 蓮も良い印象は持たれてないみたいだ。

 

 ……前途多難だなぁ。

 

「後輩だから」

 

 連絡先を知っててもおかしくない。

 

「……その後輩共々問題だけは起こさないでね。転校生さん」

 

「あはは……肝に免じて置くよ。生徒会長さん」

 

 保健室から出ていく真を見送る。

 着信は鳴り続けている。

 

 ……出ないと。

 

「もしもし」

 

 △

 ▽

 

 

「……天宮憂」

 

 先月転校してきた雨宮蓮と同じ高校に通っていた高校3年生。

 

 教師に暴力を振るい退学処分。

 

 在学時は文武両道と人当たりも良く絵に書いた様な優等生。全国模試も1位……ね。首席での卒業を約束され、超難関大学の推薦まで決まっていた。

 

 ただ1人、雨宮蓮の無実を訴えていた。

 単位や成績を見れば秀尽の他にも高校は選べたはず。

 

 タイミングもそうね。

 雨宮蓮が転入して1ヶ月。

 

 鴨志田先生が自首をして直ぐのこと。

 ……引っかかる。

 

「はぁ。監視対象が増えるのは困るけど」

 

 仕方ないわね。




ほのぼーのにやっていきたいなぁ。
あ、先輩はペルソナ使いです(覚醒済み)


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再開

 後悔はなかった。

 

 だって人として当たり前のことをしただけだから。

 

 人助けをしただけに過ぎない。

 

 世の中は理不尽だ。

 

 一つ一つの行動で運命が決まる。

 

 弱い者は悪意に覆い尽くされてしまう。

 

 友達を失い、先生には見放される。

 ……ひとりぼっち。

 

 だけど……だけど…。

 先輩だけは私を信じてくれた。

 

 頑張ったなって褒めてくれた。

 それだけで……救われた。

 

 そのせいで……先輩までも…悪意に飲み込まれちゃった。

 

 それだけは許せなかった。

 その悪意に……なにも出来なかった私にも。

 

 先輩は後悔してないと笑いながらいった。

 ……私は後悔してる。

 

 なにもできない私に先輩は寄り添ってくれた。支えてくれた。

 

 私は先輩になにもしてあげられなくて……。

 ……守られているだけだった。

 

 そのせいで先輩の人生を壊してしまった。

 

 納得……できるわけない!! 

 

 私は日陰者。

 先輩は人気者。

 ……見捨てて良かった。

 

 先輩には沢山の友達がいたんだから。

 文武両道、品行方正。

 

 大学だって推薦で……決まっていた。

 

 落ちこぼれの私とは正反対。

 住んでる世界が違ったのに……。

 

 気を使わなくてよかった。

 守らなくてよかった。

 

 なのに……傍にいてくれた。

 

 全てを捨ててまで……私を選んでくれた。

 

 ……先輩がいなかったら壊れてた。

 感情に押し潰されていた。

 

 先輩……。

 

 無理も承知に思い出が作りたいと言った時も笑顔で頷いてくれた。

 

 都内に行く時も両親以外に先輩だけは見送ってくれた。

 

 ……感謝なんて言葉では言い表せない。

 

 ……恩人でも足りない。

 私が私である為に必要不可欠。

 

 世界で一番大切な人。

 ……大好きな人。

 

 先輩がいないだけで不安でいっぱいだった。だから精一杯の仮面を被った(虚勢を張った)

 

 友達ができても物足りなかった。

 ぽっかりと心に穴が空いている。

 

 反逆の心を手に入れても……。

 傍に先輩がいない。その現実が苦しい。

 

 楽しい日常。

 だけど……それ以上には感じられない。

 

 足りない……もっと欲しい。

 

 触れて欲しい。

 撫でて欲しい。

 抱き締めて欲しい。

 

 そう考えれば考えるほど──

 キュゥゥと胸が締め付けられる。

 

 先輩が……欲しい。

()()()()()()()

 

 ……私だけの、先輩にしたい。

 

「どうしたんだ? ブツブツと」

 

 鞄から頭だけ出した黒猫が喋る。

 

「…………なんでもない」

 

 ……あれから先輩と会うこともできず声すら聞いてない。

 

 ……電話は迷惑、だし…。

 

 バイトを探さなきゃって言っていた。

 通信高校でもいいから卒業しないとって…。

 

 先輩の邪魔だけはしたくない。

 だから我慢……しないと、いけない。

 

 1年だけ…そう、1年だけ。

 そう言い聞かせても……。

 

 納得できない私がいる。

 

 この1年間……。

 

 先輩になにかあったらどうしよう。

 不安が募っていく。

 

 先輩に彼女ができたらどうしよう。

 紹介されたら……。

 

 どうにかなってしまいそう。

 ううん、どうにかなってしまう。

 

 そう考えただけで手に力が入る。

 奥歯を擦り上げ軋み鳴らす。

 

「…レン? どうし」

 

「なんでもない」

 

「そ、そうか」

 

 ……考えないようにしよう。

 

 怯えた黒猫をひとなで。

 

 ん、正門が見えてきた。

 鴨志田先生からオタカラを奪い平和になった学園が見え━━

 

 …………え? 

 正門に立つ人に釘付けになる。

 思わず足を止めてしまう。

 

「レン? どうしたんだ?」

 

 う、嘘……。

 …あ、え…? 

 

 見間違えるはずない。

 ずっと一緒にいたからこそ分かる。

 

 その後ろ姿は……。

 ……せん……ぱ…い……? 

 

 な、な……ん…で……? 

 

「レン…? ……おいレン!?」

 

 疑問は直ぐに破棄された。

 頭よりも先に体が惹き付けられる。

 

 無我夢中に走って━━

 

「先輩ー!」

 

「レン!?」

 

 飛びついた。

 私の猫なで声を聞き驚く黒猫。

 

 気を張りクールな印象を被っていた反動が爆発した。だって…先輩がいる。

 

 張り付けた仮面は簡単に引き剥がされる。

 ……こっちが素だと言えばもっと驚くのかもしれない。

 

「ん?」

 

 振り返った先輩の胸に顔が押し込まれる。

 好きなこの匂い…落ち着く、匂い。

 

 勢いは止められない。

 押し倒す形で馬乗りになった。

 

「お久しぶりです! 先輩!」

 

「久しぶり……蓮」

 

 先輩に名前を呼んで貰えた。

 それだけで言い表せない快感を全身に感じる。

 

 先輩だ……先輩…先輩が……どうして先輩が……どうでもいい。先輩が目の前にいる。

 

 その現実だけ全てがどうでも良くなる。

 先輩の胸……耳を当てれば心臓の鼓動。

 

 先輩の音。

 私だけが知っている、私だけの音。

 

 安らぎをこれでもかと感じる。

 このまま眠ってしまいたい。

 

 きっと……絶対にいい夢を見れるから。

 ………? 

 

「先輩?」

 

 先輩が動かない。

 

 揺すってもほっぺを突っついてもうんともすんとも言わない。

 

 ……柔らかい。髭もなくツルツルでお餅みたいにモチモチ。

 

 えへへ……ずっと触っていられる。

 ほっぺ摘んだり撫でたり……。

 

 ……頬ずりしたり…うぇへへ…。

 

 …なんか沢山の視線を感じる。

 

「…………なにやってるの?」

 

 視線の一人が前に出る。

 私の友達で……仲間の━━

 

「……おはよう」

 

「…お、おはよう」

 

 私と先輩を交互に見ていた。

 

 ほんのりと頬が赤らんでいる。

 ……!? 

 

「……襲うなんて考えてない」

 

 嘘……思ってたかも。

 ほ、ほんの少し……だけ? 

 

「……襲う…っ?」

 

 墓穴掘った……! 

 

「なんでこんなに人が多いんだよ。…蓮と高巻じゃねえか! おは……」

 

 ……あっ。

 

「…………おはよう」

 

 先輩と会えたのが嬉しくて……。

 その……つい……抑えきれなくて。

 

 ……頭で考えても言葉にできなかった。

 精一杯の挨拶で濁した。

 

「お、お…おう…! 先…行ってるわ」

 

 行っちゃった。

 せ、せめて……。

 

「……私も行くね」

 

 ……あ…。

 

 …誤解、解けるかな。

 ……先輩を起こさないと。

 

「せんぱ……」

 

「正門で集まって何をしているの? もう授業が始まるわ…よ……」

 

 ……今度は生徒会長。

 耳まで真っ赤にしている。

 

 前歴以外にも付きそう……。

 

 ……まぁいっか。

 その時は先輩も……一緒。

 

 一緒なんだ。

 ふふっ…。

 

我は汝…は我…
汝ここに、りを血盟の絆へと転生せしめたり

力は反の翼となりて

魂のくびきを打ちらん

今こそ汝、「永劫」の究極なる秘奥に覚めたり
無尽の力をに与えん…

 

 お揃いですね、先輩。




最速コープMAXです。


未来永劫先輩に対する愛は変わらないってことですね()
コープがバグってます。

後ほどアンケート置いときます。


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ペルソナ使い

「……ここに居るんだっけ」

 

 立ち入り禁止の屋上。

 ドアを開ける。

 

 えーと、蓮は……いたいた。

 

 金髪の少年少女の間に挟まり談話している。膝の上には黒猫が丸まっていた……。

 

 友達ができたみたいで安心した。

 

「!……せ……先輩」

 

「おっとと……危ない」

 

 間髪入れず突撃してくる。

 膝から転げ落ちる黒猫。

 

 分かっていたはずなのに尻餅をつく。

 膝の上に蓮が……。

 

 ……そんなに積極的だったかな。

 

 2人は呆然としている。

 黒猫はにゃーにゃー鳴いていた。

 

「…ふへぇ」

 

 暑苦しい。

 

「……別人じゃね?」

 

「うーん……どうだろ」

 

 言いたいことは分かる。

 こんなに酷くなかったと思う。

 

 ……思いたい。

 

「友達が困ってるよ」

 

「……あ」

 

 パッと素早く……嘘。

 渋々離れてくれた。

 

 はぁ…自己紹介だね。

 2人の前に立つ。

 

「こんにちは。蓮の友達だね。俺は天宮憂。よろしく」

 

 先に男の子。

 手を差しだす。

 

「……あ、うす。坂本竜司…です」

 

 恐る恐る握ってくれた。

 しっかり握り返す。

 

 見た目に反して良い子かな。

 次は女の子。

 

 外人さん?

 

「高巻杏です。よろしくお願いします」

 

 ハーフかクォーターかな?

 

 抵抗なく握ってくれる。

 ベタベタするのも失礼だから押さえつつ握り返す。

 

 よし、自己紹介は終わり。

 

「蓮がお世話になってます。これからもよろしくしてあげてください」

 

 色眼鏡無しで見てくれている。

 蓮にはこういう子達と繋がりを持って欲しい。

 

「あ、いや……寧ろお世話になってんのは…」

 

「……私達、というか」

 

 ……訳ありなのかな。

 そっか、蓮は……変わらないんだ。

 

 全く……。

 

「…先輩」

 

「出しゃばり過ぎたね。一個上だけどそんな畏まらなくていいよ。…可愛い猫だね」

 

 にゃーにゃーと鳴き続ける黒猫を持ち上げる。

 

 あ、大人しい。

 

「お利口さんなんだね。えらいぞー」

 

 撫でくりまわしても怒らない。

 ゴロゴロと喉を鳴らしてくれる。

 

 黄色い首輪がトレードマーク。

 

「……モルガナ…!」

 

 ギリィ…と擦れる音。

 ……ど、どうしたの蓮。

 

 そんな黒猫を睨み付けて……。

 ……モルガナって名前なんだね。

 

「モルガナかー」

 

 もふもふ。

 

 △

 ▽

 

 至って普通だった。

 

 レンが盲目的に愛する男。

 変わり様には驚いた。

 

 あのレンが甘えた声で……。

 ……寒気がしてきた。

 

 恐怖もヒシヒシとこの身に伝わる。

 

 だって今もワガハイのことを親の仇のように睨んでるんだぞ!?あとが怖い……。

 

 2人もレンと距離を置いている。

 あ、これ助からない……?

 

 戦慄と絶望が交差する。

 ……コイツはワガハイのことを撫でくりまわす。

 

 荒々しくもなく、優しくもない。

 ただ普通に愛でている。

 

 ……普通だったんだ。

 蓮と同じ力を感じる。

 

 弱々しいが……それでも確かに感じた。

 コイツは……()()()()使()()、だ。

 

 ただ…レンはおろかワガハイやリュージ、アン殿には遠く及ばない。低級シャドウを倒すのが精一杯だろう。

 

 どんなペルソナを持っているのか反逆の意思はなんなのか……気になる点はある。

 

 知ったら驚くだろうな。

 ……黙っておこう。

 

 レンだって巻き込みたくはないだろう。

 ワガハイもだ。

 

 ……ウイがいなければレンと会うことすら叶わなかったかもしれない。

 

 レンを見てわかった。

 ウイはレンの精神的支柱。

 

 ウイに何かあればレンは一瞬で崩れる。

 弁慶の泣き所に近い。

 

 なら尚更巻き込めない。

 レンはジョーカー。切り札なのだから。

 

 他にもあるんだけどな。

 なんか、こう……()()()()を感じたんだ。

 

 前にどこかで会ったような…そんな気がする。

 

 メメントスやパレスはないだろう。

 ……ワガハイの言葉を認識できていない。

 

 ペルソナ使いだよ、な?

 

 もしかしたら認知した上で演じている?

 幻聴だと聞き流している可能性があるのか?

 

 ……試してみるか。

 

「おい!ワガハイの声聞こえてるか!」

 

「どうしたのモルガナ?」

 

「オマエがレンの大大大好きなアマミヤウイだろ!!」

 

「怒ってる?撫で過ぎちゃったかな。…あ、どうした蓮」

 

 あ、やべっ…。

 顔が活火山になったレンが……ミギャ!?

 

「おいおいおいおい」

 

「あ、死んだねこれ…」

 

 く、首がしま……リュージ…アン殿、助け……。

 

「モルガナが……」

 

「……ないのに」

 

 私だってしてもらったことがないのに…って人間の男女でさっきのは普通に不味いだろ。

 

 ワガハイも人間だけどな!

 今は猫だけど……猫じゃねーよ!

 

「?」

 

「……あっ」

 

 チャイムがなった。

 …お昼ご飯食べてなかったな。

 

 あ、待ってくれレン!

 さっきは悪かった!

 

 ……悪かったから頭を掴むのはやめ━━

 

 △

 ▽

 

 可愛かったなぁモルガナ。

 

 次はクラスで自己紹介。

 良い関係を築いていきたい。

 

 あ、どうせだし蓮と一緒に帰ろう。

 ついで蓮がお世話になってる人にご挨拶に行かないとね。

 

 確か喫茶店……だっけか。

 コーヒー好きだしこれからお世話になるかもね。

 

「よし…頑張りますか」




次はパレス編かなぁ?
知らぬ間にイセカイナビが生えてていつの間にか迷い込む。

モルガナが懐かしさを感じたのは多分、カロリーヌジュスティーヌと同じ理由。

弱いとも言っていたけどコミュが全部リセットされているからです。ワイルドはあらゆるペルソナを使える代わりに絆を紡いでいかないと成長しないから…ある意味蓮との絆?はあるけれど…。
それでも一から築いていかないといけないので……。

普通のペルソナ使いの方が実は成長早かったりして。


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偶発

「……迷った」

 

 流石は渋谷。

 何処にいるのかすら分からない。

 

 人の大波。広大な海だと思わせる。

 ……誰か連れてこれば良かったね。

 

 蓮なら無条件で来てくれるし……。

 

 後悔先に立たずだよ。

 

 …あれ?逆に言えば蓮以外とは親密さに欠けている?

 

 杏ちゃんと竜司くんは蓮に気を使ってかあんまり関わらないしモルガナは猫ちゃんだしなぁ。

 

 同級生とは会話こそするも外だと、ね。

 蓮と違いトラブルを起こしている。

 

 受験前だし問題児と関わろうとする物好きはいないだろう。

 

 紛れもない事実。

 理由はどうあれ弁解の余地はない。

 

 ま、まあ…適当に歩くのも悪くないか。

 ……迷子になったら蓮を呼ぼう。

 

 気ままに歩き続ける。

 歩き続けて……歩き…続け…て……。

 

 うん……。

 

「……どこ?」

 

 迷った。

 人気のない住宅街。

 

 目の前に古めかしい一軒家。

 表札を見る。

 

 ……斑目?

 斑目…斑目……。

 

()()()()()、かな」

 

 世界に名を轟かせる日本画家。

 沢山の弟子を持つ巨匠。

 

 芸術に疎い俺でも代表作であるサユリは知っている。

 

 怖い…と思った。

 怒りを感じるというか……。

 

 素人の感想に過ぎない。

 

 ここは自宅…かアトリエ?

 

 ……流石にないか。

 沢山の弟子がいるのにこんな場所では、ね。

 

 築何年かも分からない。

 ずっと住んでるにしてもリフォームぐらいはするはず。

 

 夏場は暑そうだし冬場は寒そうだ。

 住み込みの子がいたら体調を崩してしまう。

 

 ……環境が悪過ぎる。

 

「しかも()()()()。まだ()()()に住んでるって言われた方が信じられ━━」

 

『━━ヒットしました。ナビゲーションを開始します』

 

「る……?」

 

 ……空気が変わった。

 なにより……。

 

 これは……。

 

「美術館…?」

 

 斑目…美術館、ね。

 豪華というか…目に悪い。

 

 落ち着いて……ふぅ。

 

 さっきまで……。

 考えても仕方ない。

 

 現状何も把握出来ていない。

 情報収集もそうだけど。

 

 …確かめよう。

 嫌な予感がする。

 

 過去に似たような体験してるせいか。

 思った以上に落ち着いている。

 

 何もないといいな。

 

 んー……。

 大名行列を思わせる人集り。

 

 悪いけど無理やり通らせて貰うかな。

 

 はぁ…人酔いしそうだ。

 

 △

 ▽

 

 ……繋がらない。

 圏外…電源を落としている?

 

 出ないならまだ分かる。

 寝てるかもしれない。

 

 だけど繋がらない。

 

 分からない。

 

 先輩のスマホに繋がらない。

 怖い…怖い…。

 

 何かあったのかもしれない。

 事故、事件……嫌なことばかりが頭を過る。

 

「どうしたんだ?」

 

「……なんでもない」

 

 鞄に潜むモルガナの頭を撫でる。

 

「そうか。今回も予告状を出した後で決行だ」

 

「……うん」

 

 ……先輩。

 

「だから2つ戻って、6月2日には、潜入ルートを確定しないとな」

 

「いい?絶っっっっ対に、失敗できないんだからね?」

 

 杏が力強く叫ぶ。

 ……竜司がげんなりした顔で見ていた。

 

「作戦開始だ!」

 

 先輩…大丈夫かな。

 また、あとで電話しよう。

 

 △

 ▽

 

「……つ、疲れたぁ」

 

 なんとか美術館内部に入れた。

 

 並んでる人達は微動だにせず。

 割り込んでも無反応。

 

 まるで無機物。

 

 マネキン…みたいで。

 気味が悪かった。

 

 それは置いといて。

 ……入ったのはいいんだけど。

 

「誰も…いない…」

 

 あれだけの行列。

 なのに誰一人いない。

 

 異常だ。

 

 薄々気づいていた。

 まさか……。

 

「キサマ!どこから入った!?」

 

 訂正する。

 警備員たちは居たみたい。

 

 人ではない。

 ……やっぱり。

 

「入口からだよ」

 

「侵入者は排除スル!!」

 

 人の話は最後まで聞こうよ。

 

 警備員たちは姿を変える。

 超常的な姿。

 

()()()()へと。

 

 ……はは…もう関わることはないと思っていたのにね。

 

 相変わらず運が悪い。

 なんで迷い込んだのか。

 

 運命だったのかもね。

 

「はぁ…」

 

 息を吐く。

 目を閉じ腕を前へ。

 

「コロセ!」

 

 想いを解き放つ。

 ひとこと━━

 

「……()()()()

 

 そう、呟いて。

 

 

 

 




フライングパレス。
蓮達が潜入する前に迷い込んだ先輩。
イセカイナビは蓮と接触した時に生えてたことにして。

ブツブツひとりごといってたら勝手に巻き込まれた(自分から凸った)

先輩は本来のペルソナ使い仕様なので怪盗服みたいなオシャレ機能ありません。


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リセット

パレス編です。



 現れるタロットカード。

 旅人が描かれている。

 

 愚者のアルカナ。

 ……手に取り胸に押し当てた。

 

 溶けるように……。

 結晶となり入り込んでいく。

 

 背後に現れる分身(ペルソナ)

 …湾曲した剣を持つ英雄。

 

 その名はソ……ん?剣…?

 

「……()()()()()?」

 

 なんで……。

 

「排除ダホー!」

 

 っ…不味い!

 迫りくる氷塊。

 

「メギドラオン!」

 

 ……しかし何も起こらない。

 振り返ると困った様子の英雄。

 

 ……………?

 …そういうこと!?

 

「スラッシュ!」

 

 頷くと氷塊に駆け曲剣を振るう。

 

 切り払…えない。

 あ……った…ぁ!

 

 腕に走る痛み。

 だらりと落ちていく。

 

 感覚がない。

 ……不味い。

 

 …………ペルセウス。

 ()(ペルセウス)

 (ペルセウス)()

 

 本当の俺…なんだけど、ね。

 でもなんで……。

 

 んー訛ったかな。

 ペルソナを使うのは3()()ぶり。

 

 …鈍らない方がおかしいか。

 

「チミ〜よわよわ〜」

 

「……あはは」

 

 シャドウにいわれたらお終いだよ。

 

 ……もしかして…。

 

 胸から飛び出すタロットカード。

 光を放ち絵柄を変えていく。

 

 裸の男女と弓を持つ天使。

 恋愛のアルカナ。

 

「チェンジ!()()()!」

 

 英雄が小さな少女の姿へと……。

()()()()……やっぱり、か。

 

「……ディア」

 

 妖精が宙を舞う。

 …腕の感覚が戻る。

 

 痛みは残るけど動くだけいい。

 

 ……明らかに弱くなっている。

 

 理由は分かる。

 ペルソナは心の力。

 俺の場合は……()()()、かな。

 

 ……仕方ない。

 

 簡単に断ち切れる繋がりだっただけ。

 必死に保とうとも何れは壊れる。

 

 ……そんなものだよ。

 

「侵入したこと後悔させてあげる」

 

 幸いシャドウたちは油断している。

 ……戦い方を忘れたわけじゃない。

 

 大丈夫…。

 動かなくなるまで……。

 

「……ね…!」

 

 …明日は筋肉痛かな。

 

 △

 ▽

 

 サイレンが響いている。

 ……うるさい。

 

 行列は変わらない。

 なにひとつ……変わってない。

 

「なんだ!?」

 

「もうバレたの!?」

 

 驚く2人。

 そんなはずはない。

 

 私たちはパレスに入ったばかり。

 まだ予告状も出してないし潜入ルートも確保していないから。

 

「落ち着け。……どうやらワガハイたちの他に侵入者がいるみた……!」

 

 ……モナ?

 

「ん、んっ!…なんでもない。寧ろ都合がいい。警備が手薄になるしルート確保には持ってこいだ」

 

「…………」

 

 モナの顔を覗き込む。

 顔をこわばらせ目をそらした。

 

 …なにか隠してる。

 

「いやダメだろ!?助けに行こうぜ」

 

「そうだよ。何かあってからじゃ遅いし」

 

 ……スカルとパンサーの言う通り。

 予告状まで時間はある。

 

 だけど……

 誰かを助ける時間は今しかない。

 

 なにより━━

 ……先輩はそうするから。

 

「あ!あーっ!ああーっ!わかった!ワガハイが行ってくる!だから3人は先に行ってくれ!」

 

「は?なにいって…おいモナ!!……なんだってんだよ」

 

 モナが駆け出す。

 人々の隙間の奥に消えていった。

 

「どうしたんだろう。焦ってたみたいだけど」

 

「……行こう」

 

「1人にしていいのか?」

 

「…モナなら大丈夫」

 

 モナは強い。

 

 私たちより前からペルソナ使いをしてる。……隠し事は気になるけど…。

 

 ……信じよう。

 信じることからはじめる。

 

 信じてもらう事。

 それがどれだけ幸せなことか。

 

 ……分かっているから。

 

「ジョーカーがそういうなら」

 

「……うん」

 

 そうですよね。

 ……先輩。

 

 △

 ▽

 

「……はぁ…はぁ…」

 

 倒すことはできた。

 格上相手によくやったと思いたい。

 

 肩で息をする。

 足元には倒れたシャドウ。

 

 霞のように消えていく。

 

 ……ははっ。

 

「しぶといね〜」

 

 多すぎないかな?

 これでも十数体は倒したよ。

 

 身体中が痛い。

 意識が飛びそうになる。

 

「ピクシー…ディア……」

 

 ジリ貧だ。

 逃げるにもタイミングを逃し……あ?

 

 カクンッ…と膝を折る。

 地に手をつける。

 

 回復…し……。

 ……できて…ない?

 

 顔を上げる。

 

 涙目の妖精。

 …そう…か……。

 

 ……ここまで、か。

 

「ありがとう」

 

 撫でる。

 …ごめん。

 

 妖精が手を伸ばす。

 頬に触れる直前……。

 

 飛散していく。

 

 …………………。

 

「これで終わりダホー」

 

 再度迫る氷塊。

 抗う術はない。

 

 当たれば……。

 

 終わり…か。

 ……蓮…ごめ━━

 

「威を示せ!ゾロ!」

 

「っ…!」

 

「ヒホー!?」

 

 横切る旋風。

 氷塊を切り裂き……シャドウすらも切り刻む。

 

 何は……ともあれ。

 生き…てる……。

 

 はは……良かっ……。

 

「おい!大丈夫…じゃないよな。悪い…ウイ」

 

 意識が薄れる中。

 聞こえた名前……。

 

 俺のことを知って……。

 

 君は……誰…。

 

 なんて聞けるはずもなく。

 

 視界は闇に覆われた。




初期ペルソナはペルセウス→ソなんとか。
登場したのはピクシー(イズン)だけです。
先輩の恋愛キズナ(コミュ)MAXがイズンってだけなんですが。

結果的には数の暴力に負けてしまいました。
レベル1の先輩が推奨レベル11以上のパレスで戦い抜ける訳もなく。

モナちゃんの為に言っきますが先輩を見捨てるつもりはなくあとでこっそり抜け出し助けようとしてました。はい。
その場合は手遅れかパンケーキが来てくれた……はずです、はい。


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秘密と黒猫と……

んーむ。文量増やした方がいいかなぁ。
……考えとこ。


『ようこそ、お待ちしちぇ………お待ちしておりました』

 

『合体を始めます。……あ…事故りました。…スライム、ですね』

 

『ここが貴方の家、なのですね。……ベルベットルームとそう変わらないみたいですが』

 

 懐かしい……。

 元気かな。

 

 青い少女(××××××)

 あれから3年か。

 

 会うことはできた。

 ……会わなかった。

 

 契約期間を終えた。

 会う理由がなくなったんだ。

 

 理由もなく会うのは……なんかさ。

 

 …一度ぐらいは会っとけば良かった。

 本当に……ね。

 

 ん?

 

『こ…声…届…き……は……存…し……』

 

 この声……は。

 ……懇願する少女。

 

 青い少女に似た……。

 か細く小さい。

 

 …最後は辛うじて聞き取れた。

 悪しき神を……世界を救って…。

 

「……んぐっ…あれ?」

 

「目覚めたか?」

 

 ……美術館の前?

 体に痛みは…ない。

 

「あんまり動くなよ」

 

「あ、ああ」

 

 ………………。

 目の前には黒猫の着ぐるみ。

 等身は子供サイズ…。

 

 大人が入るには無理があるような。

 黄色いスカーフ……?

 

 黄色……黄色い。

 黒猫……あ、も、もしかして…。

 

「……()()()()?」

 

「おお!流石はウイだな!ワガハイの正体を見破るとは!」

 

 嬉しそうに頷く。

 あ、あー……モルガナ、なんだ。

 

 助けてくれたのはモルガナで……ペルソナ使い、だよね。

 

 モルガナは蓮の飼い猫……。

 い、嫌な予感しかしないんだけど…。

 

「助けてくれてありがとう」

 

「当たり前だ。ワガハイは紳士だからな。しかし単身でパレスに、しかも正面突破は無謀にも程があるぞ?……閉館してる美術館に入るならもっとスマートに……」

 

 あはは…おっしゃる通りです。

 ……ん?え?閉館してたの?

 

 通りで誰も居ないわけだ。

 恥ずかしいな……もう。

 

 …でー……。

 

「パレス?」

 

「この様子だと何も知らないみたいだな。立て込んでるから簡単に説明するがいいか?」

 

「うん」

 

 モルガナは教えてくれた。

 パレスはとてつもない歪んだ欲望を持つ人から具現化された認知世界だと。

 

()()()()()……()()()()

 聞き慣れないワード。

 

 …やっぱり違うんだ。

 ……安心した。

 

 しかもモルガナは心の怪盗団の一員で…蓮や杏ちゃん、竜司くんも怪盗団でペルソナ使い……?

 

 みんなで鴨志田先生のオタカラ?を盗み改心させた、と。

 

 蓮に至っては様々なペルソナが使える?

 ……ワイルド!?

 

 イ、イゴールさんと契約した…!?

 いつ!?どこで!?

 

 そんな素振りは見えなか…

 ……都会に引っ越してから?

 

 点と点が繋がった。

 鴨志田先生にはパレスがあったんだもんね。

 

 蓮たちはパレスの中に入る術を持っていてパレスの中に入りオタカラを盗み出し改心させた。

 

 オタカラは多分、パレスを具現化している核に近い何かなんだろう。

 

 盗めばパレスは消滅する。

 同時に…欲望も消え去る。

 

 ……ってところかな。

 改心について謎は解けた。

 

 シャドウに関しては殆ど同じみたいだしね。

 

 ……なんで俺は入れたんだろう。

 ペルソナ使いなら……入れる、とか?

 

 だとしたらもっと前から気づいている、はず。

 ……今度聞けばいいかな。

 

「大丈夫か?」

 

「大丈夫だよ」

 

「ならいいんだ。……ウイのことはみんなに黙っとくから安心してくれ」

 

「……?」

 

 別に隠すようなことでも……。

 

「このことはワガハイとウイの秘密だ」

 

 モルガナが隠したいみたいだね。

 ……秘密、か。

 

「わかった。約束だよ」

 

「おう!ワガハイほど口の固い人間はそうそういないぜ!」

 

 に、人間なんだ。

 どう見ても……うん。

 

 モルガナに手を差し出す。

 ……強く掴み返してくれた。

 

 柔らかくてもふっとした感触。

 あ……これは癖になりそう。

 

我は汝…は我…
汝、ここにたなる理を得たり

理はち、

魂をらし導かんとする原初の種子なり

我、「魔術師」のペルソナ誕生に祝福の恵みを得たり
始まりへと至る、更なるとならん…

 

「…握り過ぎだ」

 

「あ、ごめん。つい……」

 

「まあいいが……ここから出られる。ウイは先に帰ってくれ」

 

「え、いや……わかった」

 

 一瞬でも同行しようと思った。

 けど足手まといになるのが目に見えて分かる。

 

 苦戦したシャドウを一瞬で倒したモルガナ。

 俺を担いでとなると……全員倒したってことだよね。

 

 実力の差は歴然。

 言い訳は…しない。

 

 俺は弱かった。

 

 ……蓮たちの方が強い。

 足枷になるのはごめんだからね。

 

「後でおち合おうぜ!」

 

 機敏な動きで塀を乗り越えて行った。

 ……特訓とかした方がいいのかな。

 

 △

 ▽

 

 1人の男と訳のわからない猫みたいな奴。

 ……しかも男は…ふーん、なるほどね。

 

 ペルソナ使い。

 しかも━━

 

「同じ、か」

 

 多種のペルソナを使役することができる。

 ボクやあの女と同じ。

 

 ……面白いじゃないか。

 

 高校を退学したと聞いた時は驚いたけど。

 これなら━━

 

「退屈しなさそうだねぇ」

 

 斑目の様子を見ようと思ったけどやめた。

 それよりも━━

 

「久しぶりだね。……憂くん」

 

 最後に会ったのは…去年の夏だったかな?

 ……会いたかったよ。




先輩はこれ以上マダラメパレスに関わることはない、かな?
……多分。本格的に関わるのは終盤にしたいと思ってたり。
メメントスはガンガン入ると思います。
今回からコミュを解禁ですかね。
切っ掛けは青い少女の声です。

先輩のコミュは他と違った感じなのは仕様です。
イメージカラーは…緑?

なんか蓮の赤と比べて……ね。
最後のはアレです。アレですアレ?


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電話・表

閑話に裏を置くかな。
先輩は基本パレスに関わらないので今更ながらペルソナ5かR未プレイだと分からないかも知れないですね。



 ……結構ヤバかったな。

 赤外線が蜘蛛の巣のように張り巡らされていた。

 

 道中に金ピカの壺の残骸があったり。

 大きな穴が空いてると思ったら絵だったり……壺はリュージが壊したな。

 

「悪い遅くなった!……どうなってるんだ?」

 

「……モナ」

 

 他とは比にならない厳重な赤外線。

 ……見覚えのある奥の扉。

 

 確か……フスマと同じ柄だ。

 別のやり方でこじ開けられるかもしれない。

 

 あとで共有だな。

 でー……。

 

 仁王立ちのジョーカー。

 両手はスカルとパンサーの首根っこを掴んでいた。

 

 ぐったりとして動かない。

 ジョーカーも満身創痍といった様子だ。

 ……本当に何があったんだ!?

 

「モナ」

 

「な、なんだ?」

 

 無表情……苦痛を漏らすこともない。

 肩でを息をしつつも眉一つ動かない。

 

 痛覚…あるよな?

 

「助けた人…大丈夫?」

 

「お、おう!バッチリ助けたぜ!」

 

 今頃はパレスから出てるだろう。

 

「……よかった」

 

 薄く微笑んだ。

 

 …自分のことよりも相手のこと、か。

 優しいな。その優しさをスカルとパンサー……ワガハイにも…なんでもない。

 

「回復した方がいいな」

 

「…ん」

 

「回復したら引き上げるぞ」

 

「……分かった」

 

 ズルズルと2人を引き摺りながら歩き出すジョーカー。

 

「なぁ」

 

「……なに?」

 

「なんで大怪我したんだ?」

 

「…………」

 

「スカルとパンサーもそうだ。ワガハイたちのレベルならここのシャドウに遅れをとることはまずない」

 

 苦戦を強いられる可能性はあるにしても一方的にやられることはない。

 

 特にジョーカーは臨機応変にペルソナを変え猫のような身のこなしでシャドウを翻弄する。

 

 …()()()みたいな動きだったな。

 

 ペルソナの恩恵はあれど三日三晩でつく技術じゃない。

 

 ……()()()()()()()()()()

 ペルソナを抜きにしても男のリュージを瞬殺できる。

 

 だから不安なんだ。

 イレギュラー。予期しない事態。

 

 ウイもそうだがなにか━━

 ……ジョーカー?

 

「……流れ弾」

 

「は?」

 

()()()……?

 要するに敵に当たらず味方に━━

 

「私の流れ弾に当たっただけ」

 

「オマエのせいかよ!?」

 

「……射線上に入るのが悪い」

 

「鬼畜か!?」

 

 カモシダ戦の時もスカルが弾丸と魔法の嵐に巻き込まれてたけど!!

 

 敵味方戦闘不能にするとか怪盗じゃなくて狂戦士(バーサーカー)じゃねーか!!

 

 ……近接は優秀なんだ。

 もうジョーカーから銃と魔法を取った方がいいんじゃないか?

 

 はぁ…2人が倒れた理由はわかった。

 

「ジョーカーはなんでボロボロなんだ?」

 

「……守ってたから」

 

 なるほどな。2人を守りながら戦えば━━

 

「起こせばいいだろ」

 

 タケミから買った薬を使えば……。

 

「…………」

 

 早足で進んでいく。

 逃げた。……これ、忘れてたな。

 

 ウイに相談した方がいいか?

 ジョーカーは首ったけだしウイは良いヤツだし改善策を出してくれるだろう。

 

 ……ウイのいうことは聞く。

 関係が飼い犬と飼い主のそれだしな。

 

 怪盗団のことを隠しつつそれっぽくいって貰うだけでも変わる…と思う。

 

 改心まで時間はあるんだ。

 ジョーカーは強い。その強さを腐らせるのはもったいない。

 

 その為なら━━

 

「しのごの言ってらんねぇな」

 

「……モナ遅い」

 

「悪い。今行く」

 

 2人を起こして早く引き上げるか。

 その後は……作戦決行だな!

 

 美術館を出たところでジョーカーがボーッとしていた。……どうしたんだ?

 

 △

 ▽

 

 パレスにオタカラ。

 ……改心。

 

 廃人化事件…精神暴走事件。

 そして……ペルソナ使い。

 

 全てはシャドウに繋がる。

 

「……疲れた」

 

 平凡的な部屋。

 使い込まれたソファに体を預ける。

 

 モルガナに助けて貰ってパレスから脱出した。

 

 召喚の反動で鉛のように重くなった体をなんとか自宅まで導いて今に至る。

 

 初めはあの事件の再来かと警戒したけど根元が違う。……シャドウという共通点はあるんだけどね。

 

 ……蓮は契約している。

 何か知ってるかもしれない。

 

 ()…はある。

 肌身離さず……お守り代わりに。

 

 行こうと思えば行ける、はず。

 あの時は…所々に青い扉を見かけた。

 

 都内でも探せばきっと見つかるはず。

 

 それよりも……眠い…。

 目を閉じれば泥のように眠れる。

 

 寝よう……明日も学校。

 休む訳にはいかな……。

 

 視界はゆっくりと閉ざされ……。

 

「よっ!」

 

「んぁ?」

 

 この声は……モルガナ?

 

「ダンボールばっかりだな。広いのにもったいないぜ」

 

 目を擦り足元を見ると黒猫が佇んでいる。

 

 荷解きする時間がなくてね。

 って……。

 

「……こっちでも喋れるんだ」

 

 可愛らしい猫の鳴き声は聞こえない。

 パレスで聞いた着ぐるみの声。

 

「ウイがワガハイの言葉を認知できるようになったからな」

 

 ……頭が回らない。

 兎に角モルガナの言葉を理解できるようになったってこと。

 

 …そっか。蓮たちがモルガナに受け答えしていたのは会話ができていたからなんだ。

 

 竜司くんは喧嘩してたし……よくよく考えれば不自然なところがあったんだね。

 

 ……うん、考えたとしてね。

 新たな疑問が生まれるわけだけど……。

 

「どうして家を知ってるの?」

 

「レンから聞いたんだ」

 

 蓮から……蓮に教えたかな?

 まだ荷解きを終えてないから教えてないはずなんだけど……。

 

 教えても良かったけど蓮のこと。

 荷解きを手伝うとか言い出しかねない。

 

 流石に手伝わせるわけにはいかないし。

 

「……中にはどうやって」

 

「窓からだ。開けっ放しとか不用心じゃないか?」

 

 あのー……ここマンション……。

 窓が開いててもセキュリティが……。

 

 あ、()()……か。

 マンションのセキュリティぐらい造作でも……ない、のかな。

 

 じゃあ怪盗だから家も分かったんだね。

 そう……納得しよう。

 

「今度から気をつけるよ。えーと……要件は」

 

「頼む!レンをなんとかしてくれ!」

 

 ……えっと?

 蓮をなんとかするってどういう━━

 

 噂をすれば蓮から電話が……ちょっとモルガナ!?……切った…の……?

 

 折り返しかけないと…ね。

 え?なに……この着信履歴……。

 

 先に電話電話…。

 

 ごめん。寝惚けて切っちゃったんだ。

 

 え?謝らなくても……蓮は()()()ができる良い子だね。

 蓮のそういうところ、()()()()

 

 自己犠牲に近いかもしれないけど……。

 誰かの為に行動できるのは凄いことだからね。

 

 自分も見習わないと。

 

 …蓮?

 

 あ、うん。おやすみ蓮。

 

 それで蓮をなんとか…。

 解決した…?帰る?

 

 うん、わかった。

 次会うときは教えるね。




本編との違いは宝魔のスキップぐらいですかね。
モルガナの代わりに竜司くんが罠踏んでます、はい。

色々と属性が付与されるかもしれないジョーカー。



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閑話・番外編
双子の看守


コミュではないけどコミュみたいなもの()
性別は決まってないため意地でも出さないスタイル。
本編は10月入ってからですかねぇ。


 ……今日は休み。

 都会の喧騒にも慣れてきたよ。

 

 初めこそ神経質になっていたけど慣れれば大したことない。

 

 よく家にやってくる蓮や祐介は大切な用事があるとかで来ない。ほかの来客予定もない。

 

 だから今日ぐらいはのんびり休日を過ごそう。……と思っていた…んだけど。

 

「お前が囚人の言ってた。ふんっ! 弱そうだな」

 

「カロリーヌやめなさい。大変失礼いたしました」

 

 ……なんか看守? のコスプレをした外国人? の少女たちが家にやってきた。

 

 金髪だけど染めてるようには見えない。都会は外国人が多いから珍しくはない……かな? 

 

「大丈夫だよ」

 

 ……刑務所に入ってる知り合いは居ないんだけどなぁ。知らぬ間に入ってたらそれまでなんだけどさ。

 

 しかし都会はこんな幼い子もコスプレをするんだね。……世界は広い。

 

 ……()()()()()()()()だ。

 

「お、中々良さそうな部屋ではないか」

 

 一人の少女が靴のまま部屋に。

 ……靴のまま? ちょっとちょっと! 

 

「待って!」

 

「なんだ?」

 

「靴を脱いでくれないかな」

 

 欧米じゃあるまいし流石に土足であがられるのは困る。

 

 ……見知らぬ少女たちをあげる方がもっと困るんだけどね。……新手のセールスとか、には見えない。

 

 宗教……も、ないよな。

 

「は? なんでだ?」

 

 ……外国人だったね。

 流暢に日本語を話すから忘れてた。

 

「日本では家に入る時は靴の脱ぐのが当たり前なんだよ」

 

「囚人の居城は土足だったぞ」

 

「……そっかぁ」

 

 えーと…牢屋のことだよね。

 日本じゃ土足厳禁だし畳部屋のはず。

 

 あーそういうプレイ…? 

 

 その類の専門店があるとは聞いてたけど……えぇ…見た目よりも…えぇ…。

 

「とりあえず靴は脱いでね」

 

「分かった。ジュスティーヌも靴を脱ぐんだぞ」

 

 気が強い子がカロリーヌ、大人しそうな子がジュスティーヌか。

 

 ん……名前的にフランス人かな。

 

「なにか言いましたか?」

 

 ……もうソファに腰を下ろしていた。

 ちゃんと靴を脱いでる。

 

 マイペースだなぁ。

 

「もう座ってたのか。んっしょ……これでいいのだろう?」

 

 綺麗に靴を並べソファに座った。

 意外と真面目なのかもしれない。

 

 なんで玄関開けちゃったかなぁ。

 ……ご飯作ろう。

 

 冷蔵庫を開けて中を確認する。

 材料的に……あ、これにしよう。

 

 

 コイツが囚人の言っていた男。

 天宮憂だったな。

 

 散々聞かされてきたが拍子抜けだ。

 

 誰も寄せつけない冷気を纏ったような囚人がこの男のことになると饒舌になる。

 

 囚人のことよりも詳しくなった。

 好きな食べ物、嫌いな食べ物、趣味嗜好、身長、体重、血液型、誕生日……上げたらキリがない。

 

 主は顔を引き攣らせドン引いていた。

 ジュスティーヌは真面目にメモしていたが……何に使うつもりなんだろうな。

 

 しかし囚人が妄信するレベルだ。

 いったいどんな奴が出てくるかと思ったらただの人間だぞ? 

 

 何処にでもいるような一般人。

 大衆に埋もれていてもおかしくない。

 

 ……ペルソナ使いではあるみたいだがな。

 面白い。

 

()()()()()()を持っている。

 が……()()()()()()を感じる。

 

 こう……落ち着く。

 油断すると気を抜いてしまいそうだ。

 

「カロリーヌ」

 

「……なんでもない」

 

 囚人は知っているのか? 

 この男がペルソナ使いだということを━━

 

 囚人のことだ。絶対に知っている。

 知っていた上で私達に隠していた。 

 

 ………………。

 

「なにをなさってるのですか?」

 

「朝ご飯を作ってくるんだ。一緒に食べる?」

 

 隣に座るジュスティーヌと台所に立つ天宮憂が会話をしている。

 

 いい匂いがすると思ったら料理を作っていたのか。……食べなくても問題はない、が。

 

 あのかれーなる食べ物は格別だった。

 少し甘くしても良かったがな。

 

「アポイメント無しの来訪です。気を遣わなくても大丈夫ですよ」

 

 おいジュスティーヌ! 余計なことを言うな! 

 

「予期せぬ突撃は慣れてるからね。……1人分作るのも3人分作るのも対して変わらない。朝早くだし何も食べてないだろう?」

 

「……はい」

 

「それに1人で食べるよりみんなで食べた方が美味しいんだ。勝手なお願いだけど一緒に食べてくれないかな?」

 

「そ、そう…ですね。そこまで言うのでしたらお言葉に甘えさせていただきます」

 

「ありがとう」

 

「……いえ」

 

 ほう……あのジュスティーヌが大人しく引き下がった。

 

「もう少しでできるから待っててね」

 

 ニコニコと微笑み背中を晒す。

 無防備な背中に何故か安心感を覚えた。

 

「……なるほど」

 

 呟くジュスティーヌ。

 

「どうしたんだ?」

 

「囚人があれだけ称賛していた理由が分かりました。彼がいるなら……」

 

 ぶつぶつと何か言っている。

 だが同時に鼻腔を刺激する匂いに遮断され最後まで聞き取ることはできなかった。

 

 

 

「お待ちどうさま」

 

 2人の前に皿を置く。

 中には多種の野菜が入った赤い煮込み。

 

 ラタトゥイユ。

 フランスの郷土料理。

 トマトベースの味の中で野菜たちの甘みやコクが強調され旨みが口の中に広がる。

 

 単品で食べても美味しいしパスタのソースにしても美味しい。美味しいづくしの料理。

 

「この赤いのはなんだ? ……まさか血か!?」

 

「貴方も神殺しでしたか」

 

「囚人の主も神殺しだったがお前も神殺しだとはな」

 

 ん??? 

 血? 神殺し? 

 

 なんか勘違いされてるけど……触れない方がいいんだろうなぁ。

 

 2人はラタトゥイユを知らない。

 ……フランスじゃないのか。

 

 日本で生まれて日本で育ったのかな。

 それとも根本的に間違えていた? 

 

 ……にしても2人の言う囚人が誰か分からない。

 しかも囚人の主って……。

 

 ああ、秀尽の可能性もあるのか。

 秀尽の主……言葉通りに捉えるなら校長…。

 

 うん、それはないか。

 亡くなってるし。

 

 ……俺も食べよかな。

 

「……ふぅ…美味しいですね。刺激は……んくっ……イマイチ足りませんが…はふっ……野菜が食べやすく噛むと口の中に広がる甘み……はむっ…」

 

「かれーよりも……むぐっ…食べやすいし…もぐっ……美味いな」

 

 お気に召したようでパクパクと皿を空にしていく。

 

 は、早くない…? 

 

 満足そうで何よりだけどさ。

 

 ……まだ食べたりないのか皿の底を見ている。

 あーまだまだ育ち盛りだもんね。

 

「おかわりあるよ」

 

「お願いします」

 

「私も頼む」

 

 ……後で食べよう。

 差し出された皿を受け取りラタトゥイユを注ぎにいった。

 

 結局おかわりを繰り返していく少女達にラタトゥイユは食べ尽くされたのは言うまでもない。

 

 し、仕方ないよね。

 ……食べ盛りだし、ね。

 

 満腹になった少女たちは各々礼をいうと足早に去っていった。

 

 これ……料理をご馳走しただけなのでは? 

 ま、まぁ……いいか。

 

 休日は始まったばかり。

 さてと━━

 

「……コンビニ行ってこよ」

 

 

「ジュスティーヌ」

 

「主にはお伝えしません」

 

「そうか。その方がいいな」

 

「彼は囚人の更生に貢献しています。寧ろ感謝しなければなりません」

 

「……帰るか」

 

「帰りましょう」




大いなるネタバレ()
時系列的には特別刑務(ルブラン後)

感覚的には双子の看守に違和感を抱いている。

囚人のことは本当に分からない。
蓮が憂に知られたくないため隠している。
(+本来のベルベットルームを知ってるから尚更)


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ルブランにて

勘違いというかなんというか。
初日から結構やらかしている先輩です。



「お待ちどうさん」

 

「ありがとうございます」

 

 レトロな内装。

 芳醇な香り。

 

 渋くダンディなマスターに━━

 

「にゃー」

 

 可愛いにゃんこ。

 

 最高。

 そのひとことにつきる。

 

「いいってことよ」

 

 興味深そうな顔。

 ……蓮がなにかいったんだね。

 

 竜司くんと杏ちゃんにも言ってたみたいだし。

 

 何をいってたんだろうね。

 聞こうにも当の本人は2階?の自室で眠っている。

 

 ……下校前から目を細めうとうとしていた。蓮の滞在先に行こうと思っていたから最悪おんぶをしていけばいいと考えていたんだ。

 

 下校時にはフラフラと危なっかしく遂には倒れた。

 

 慌てて受け止めたら━━

 ……寝た。

 

 あはは……だっこするしかなかったんだ。

 

 眼鏡は落ちそうだったから取って。…やっぱり眼鏡はない方が、いいかな。

 

 おんぶをするにも1人じゃ無理。

 誰かの手を借りようにも問題児2人。

 

 竜司くんか杏ちゃんが……1度引き剥がそうとしたら鯖折り一歩手前まで逝った。

 

 声をかけてもモルガナが鳴いても起きない。

 

 ……選択肢はなかった。

 視線には堪えたね。

 

 電車を乗る時とか。

 切符をどう買おうか考えたり。

 

 モルガナがいて助かったよ。

 普通の猫より頭がいいのか切符を買えたんだ。

 

 ダメ元でいって良かった。

 モルガナは蓮の飼い猫……らしい。

 いつ飼ったんだろう。

 

 地元にはいなかったはず……。

 

 猫好きなのも知らなかったなぁ。

 学校まで連れていくくらいだ。

 

 ……バレなきゃいいけど。

 

 あとは駅員さんに説明して改札窓口から通して貰ったり……電車の中は地獄そのものだったよ。

 

 狭い空間にこれでもかと人が敷き詰められる。なんとか蓮を壁側に寄せて事なきは得た。

 

 ……都会は怖い。

 

「いいってことよ。しかしあの蓮が男に抱えられながら帰ってくるとはねぇ」

 

 喫茶店のマスター。

 佐倉惣治郎さんは目を細めながら蓮の部屋へと続く階段を見つめる。

 

 蓮はこっちだと寡黙でクールな印象が強いらしい。

 

 口数は少なく眉一つ動かさない冷気を纏った少女…なんだって。

 

 誰それ?

 ……ほんとに誰?

 

 確かにね。

 竜司くんや杏ちゃんの前だとクール……。

 

 人前で堂々と飛びついて来る時点でクールもなにもないよ。

 

 ま、まぁ……蓮がそれでいいなら。

 うん、気にしてもね。

 

「……コーヒーいただきます」

 

「おう」

 

 心の中にしまい込み逃げる形でコーヒーを飲む。……っ!?

 

「美味しい…」

 

「そりゃあ俺がいれてるからな」

 

 したり顔の惣治郎さん。

 

 マイルドな飲み口。しっかりとしコクがあって風味豊かで甘味を強く感じ……これって……。

 

「ブルボン…ですよね」

 

 説明し……なにを説明するんだか。

 コーヒー豆の3大原種であるアラビカ種に属する品種でブルボン島で誕生したのが名前の由来と言われている。

 

「!……わかるのか」

 

「しかもアマレロ……」

 

 ブルボンの中でも希少なコーヒー豆。一般的な喫茶店やカフェでは出回るものじゃない。

 

 ……惣治郎さん。

 何者なんだろう。

 

 ただの喫茶店のマスターにしては……。

 

「あー…なるほど。だから…か」

 

「…ん?」

 

 暖かいなにかを感じる。

 

「……恋する乙女はなんとやらってねぇ」

 

「にゃー」

 

「は、はぁ…?」

 

 なんもわからない。

 惣治郎さん…?

 

 穏やかな空気がふっと消える。

 

「話を変えて悪いが……蓮の担任と校長を殴ったんだってな」

 

 ……そこまで知ってるんだ。

 

「はい」

 

「それで退学になったら世話ないだろ」

 

「言えてますね」

 

 今となったら笑い話。

 

「もしも…だが、どんなことがあってもお前さんは蓮を選ぶのか?」

 

 ???????

 え?……それはどういう…。

 

 …二兎を追う者は一兎をも得ず?

 みたいなもの、かな。

 

 それならなんで一択を蓮にして……。

 ……わからない。

 

「はい」

 

「好きな人ができてもか?……全てを捨てることになってもか?」

 

 険しい顔が迫る。

 

 好きな人。

 うーん……初恋がない。

 

 全てを捨てることになっても、ねぇ。

 大袈裟だなぁ…思いつつも口には出さなかった。

 

 なんでこんな質問をしたのか気になるけど……。

 踏み越えちゃいけないライン。

 

 大人しく答える他ない。

 でも━━

 

「もちろん」

 

 なんだかんだで蓮を選ぶと思う。

 理由はない、けど。

 

「……そう、かい」

 

「…ご馳走様です。帰る前に蓮を見てきてもいいですか?」

 

「…いってきな」

 

「ありがとうございます」

 

 モルガナも一緒に……あれ?

 いない。…どこにいったんだろう。

 

 △

 ▽

 

 あの言葉……。

 あの言葉を聞いてから心臓が鳴り止まない。

 

 呼吸が荒くなる。

 頭がクラクラして……体が熱い…。

 

 耳が溶けてしまいそう……。

 

「好きな人ができてもか?……全てを捨てることになってもか?」

 

「もちろん」

 

 好きな人ができても…私を選んでくれる。

 

 て、ことは……先輩は私のことがす、すすすすすすすすすす…す……す!

 

 不安定な足場。

 階段に座り込む。

 

 ……腰、抜けた。

 

 はぁ…はぁ…は、はぁ……。

 思った様に息ができない。

 

 し、しし…深呼吸し、てて…。

 

 ひっひっ…ふー。…ひ…ひ……ひっふー。

 

 だ、だめ…ど、どうにか…!

 

 お、お…おちおちちおちつおちおおちおちちおちおつちおち…。

 

「……だ、大丈夫か?」

 

「モ、モルガニャ…」

 

「こりゃダメだな」

 

 う、うるさい……!

 仕方ないでしょ!

 

 気がついたらベッドで寝ていた。

 先輩の匂いに包まれた制服を抱きしめて余韻に浸っていた。

 

 喉が渇いてきたから飲み物を取りに階段を降りたところで先輩と惣治郎さんの会話が聞こえてきた。

 

 男性同士の会話。

 なにより先輩の━━

 

 気になって盗み見たら……。

 

「そんなつもりでいったんじゃないと思」

 

「…ご馳走様です。帰る前に蓮を見てきてもいいですか?」

 

 ンンンっ!

 せ、先輩がくる…!?

 

「おい!はやく戻らないとヤバいぞ!」

 

 わ、わかってる…!

 んっ…しょ……。

 

 なんとか這って部屋まで……!

 

「……蓮…?」

 

 ダメだった。

 お、恐る恐る…先輩の顔を見ぴゃ!?

 

「大丈夫か!?」

 

「ひぇ…へ、へんぱ」

 

 ち、ちちちちちかちかかちかちち…!

 ぴぇ!?

 

 お、おおおでここ…へんぱいのて、てて。

 

「熱……ちょっと高い」

 

 心臓の鼓動が加速する。

 バクバクとブレーキの壊れたように…。

 

 だ、だめ…!

 熱い…死ぬ、死んじゃう……!

 

 …殺されちゃう。

 先輩に尊死させられちゃう。

 

 モルガナ…た、助け……。

 

「さすがのワガハイも無理だ」

 

 首を横に振る。

 モルガナー!!

 

「ここにいたんだ。もしかして蓮の異変に気づいてたのかな」

 

「ああ!ウイが来てからレンは異常だからな!」

 

 ぐぅ…先輩のいる前で……。

 ……覚えといてひゅ!?

 

 お、お姫様抱っこ……!

 は、はは…はじめ、て……あわわわ。

 

「先ずは身体を温めないとね」

 

 身体……温める……?

 ……………ひゅいぇ!?!?

 

 あ、あたたたたあたあたため…。

 ……先輩とあたためあ……あっあっ…あ。

 

「れ、蓮?……蓮!」

 

「……この先大丈夫なのかこれ」

 

 モルガナ…うるさ…い……。

 

 △

 ▽

 

 蓮が倒れた。

 

 ……引っ越してから一度も連絡がなかった。

 

 気を使わせてたみたいだ。

 俺から連絡すれば良かった。

 

 いきなり都会に1人放り込まれたんだ。

 心細かっただろう。……ごめん蓮。

 

 ……できる限り傍にいよう。

 友達もできて素敵な大人もいるからお節介かもしれないけど。

 

 惣治郎さんに許可を頂いたし蓮の看病だね。

 

 熱さまシートとおかゆの材料。リンゴ……あ、モルガナのおやつも買ってきた。…晩御飯……。

 

「…おかゆでいっか」

 

 着替えは諦めるとしてお風呂は近くに銭湯があるからそこで。

 

 寝場所は……ソファを借りて。

 

 蓮もお腹を空かせてるだろう。

 モルガナもご飯を食べてるかわからない。

 

 先に━━

 おかゆ作りますか。

 




時系列はペルソナ使いの後。

先輩に会えなかった反動+確信(勘違い)でオーバーフローした蓮と純粋に蓮が好きな先輩。

深く考えず言葉に出す精神()

蓮が必死にコーヒーを学ぶ理由を察する惣治郎。
惣治郎の第一印象は……え?付き合ってんの?

これも多分愛だと思います()


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結成?






「……行かなくて良かったのか?」

 

 腕の中のモルガナが喋る。

 不安げな上目遣い。

 

「マコトに聞いたぜ。ウイも修学旅行の引率を頼まれたって……レンも楽しみにしてた。ワガハイなんかといていいのか…?」

 

「修学旅行は去年行ったし今年も行くほどの気力は残ってないよ……こうしてモルガナとまったりしてる方が何倍も楽しいし」

 

 嘘偽りない本音。

 ……修学旅行、ね。

 

 今頃ハワイを楽しんでるのかな。

 お土産は期待しよう。

 

 モルガナを見つめる。

 

 あ、そっぽむいた。

 

「……変わってんだな。オマエ…」

 

「あはは…よく言われる」

 

「……なぁ」

 

 か細い声。

 薄暗い自室に響く。

 

 沈黙が続いていく。

 

「モルガナ……?」

 

 どうし━━

 

「……ワガハイは役に立ってるのかな」

 

 モルガナ……。

 最近よく家に来るとは思ったけど。

 

 怪盗団の中でなにかあったみたいだね。

 ……迂闊なことをいえば刺激しちゃうかもしれない。

 

 けど……。

 

「もちろん」

 

「……本当にそう思うか?同情なんていらな」

 

 弱気な姿勢。

 思った以上に追い詰められている。

 

 ……弱味を見せている。

 それを嬉しいと、思うのは……ダメな奴だよなぁ。

 

「大丈夫、保証する。なんなら俺はモルガナにお世話になりっぱしだよ」

 

 ズルい言い方。

 でも本当に助けられているんだ。

 

 モルガナが何を言おうと……俺は、ね。

 それは蓮達も一緒だと思う。

 

 恩を仇で返す…なんてことはないよね?

 モルガナとの出会いがあって怪盗団が生まれたこと。

 

 忘れちゃいけないよ。……みんな。

 

「……ウイ」

 

「くよくよしてちゃみんなに笑われるよ?人間に戻るために頑張るんでしょ?」

 

 モルガナを撫で回す。

 

「あ、ちょ!どこ撫でて…にゃふ!?」

 

 じたばたと藻掻く。

 決して離さない。

 

「あはは……ルブランに行こうか」

 

 ギュッと抱きしめた。

 相変わらずもふもふだぁ。

 

 ……モルガナ?

 

「……ありがとな」

 

「……どういたしまして」

 

我は汝…は我…
汝、ここにたる絆を刻み記したり

芽吹きは灯を輝かせし

魂の息吹を解きたん

今こそ汝、「魔術師」の最奥たる豊穣をみとらん
悠久の恵をに授けん…

 

「……堕ちるのもわかる気がするな」

 

「ん?」

 

「な、なんでもない!ほら!ルブランに行くんだろ?フタバが待ってるぜ!」

 

 腕の中から抜け出す。

 元気…には、なったかな。

 

 最近の怪盗団ブームは凄い。

 非公式でグッズが作られるくらいだ。

 

 みんながいっぱいいっぱい。

 まあ……竜司くん辺りは調子に乗っちゃうかもね。

 

 不安はあるけど蓮や真がいるから……大丈夫だろう。

 

 なにかあればモルガナから教えて貰える。

 メメントスでリハビリをしてなんとか力を取り戻しつつある。

 

 合体やアイテム化はできないけどシャドウと交渉してペルソナを手に入れる術はある。

 

 ベルベットルーム……どこにあるんだろう。

 ……蓮に聞ければなぁ。

 

 △

 ▽

 

 ワガハイは考える。

 

 今のままじゃダメだと。

 有名になってテングになるのは分かる。

 

 今じゃ時の人だ。

 

 図に乗りたくなる。

 大衆が改心を求めている。

 

 その声に…承認欲求が満たされる。

 気持ちは分からなくもない。

 

 ……ワガハイたちは怪盗だ。

 

 どんな時も冷静さを欠かさない。

 知的でありスマートじゃなきゃいけない。

 

 息抜き程度なら許す。

 ……違うんだ。

 

 ワガハイ抜きでも……。

 怪盗団は全然、問題ない。

 

「モナー?どした?」

 

「…なんでもねえよ」

 

「ふーん。あ、芋づる式…」

 

「何が出てきたんだ?」

 

「まだ途中。秘密」

 

 カタカタと軽い音。

 

 メメントスで足代わりになれるだけ…。

 

「うはぁ〜ごっそり」

 

 単なる役立たず…」

 

 テーブルに上る。

 

 カウンターを見ればウイが座っている。

 マスターと談話を楽しんでいた。

 

 ウイは……違う。

 ワガハイのことを……人間と言ってくれる。

 理解してくれる。必要としてくれる。

 

 怪盗団の誰よりも━━

 ……()()()()()

 

「ねこ!モゴモゴうっさい!用があるなら言え」

 

「べつに、ねぇよ」

 

「何、言ってんだ!?」

 

「離せっ!」

 

 無造作に撫でられる。

 

 手触りがいい。滑らかでスベスベ。

 ……それまでは良かった。

 

「人間のものとは思えない」

 

「何べんも言わせんな!ワガハイはニンゲン……」

 

 抑制できなくなる。

 声を張り上げた。

 

 談話が止まる。

 慌てて2人を見る。

 

「うるさくして悪いな」

 

「大丈夫です…けど」

 

 ………………。

 

「……それって思いこみじゃない?わたしも、お母さんのこと、ずっとまちがって思い込んでた」

 

 思いこみ……。

 夢のワガハイ、はメメントスから……っ…。

 

「……一緒にすんな。ワガハイのことはワガハイが……一番、理解……してる」

 

 当たり前だ。

 だってワガハイは……。

 

「それもそっか」

 

 ……ワガハイは…ワガハイ、は…!

 うおっ!?

 

 身体が宙を浮く。

 振り向けばウイの顔。

 

 困った顔、なのに……。

 とても…安心する。

 

「急用を思い出しました。コーヒーありがとうございます。双葉ちゃんまた来るね」

 

「!……お、おう!…待ってる」

 

 あわあわと口を震わせノートパソコンで赤い顔を隠した。

 ……みんなの時とは大違いだ。

 

「なに一丁前に照れてんだが……また来い」

 

「惣治郎うるさい!」

 

「あはは……モルガナ」

 

 耳元で囁く。

 

 んっ…少しくすぐったい。

 

「……お寿司食べにいこっか」

 

 …………ウイ。

 

「大トロがいい」

 

「うん。沢山食べよう」

 

 その笑顔が……。

 ……そうだな。

 

 この道も、いいかもしれない。

 

 △

 ▽

 

「美味しかったね」

 

「おう!腹がいっぱいだぜ!」

 

 満足そうで良かった。

 ……双葉ちゃんは悪くない。

 

 本当に思い込みをしていたんだ。

 怪盗団の活躍があってこそ…ね。

 

 遠回しだけど気を使ってくれたんだろう。

 双葉ちゃんなりの優しさ。

 

 ちょっとすれ違っちゃっただけなんだ。

 大丈夫……きっと元通り。

 

 寿司屋は少しヒヤヒヤしたなぁ。

 

 モルガナがバレないように服の中に隠して……。

 奥の席を選んで…大トロばっかり食べて……。

 

 次回からはお持ち帰りにしないとね。

 

「……ウイ」

 

 腕の中から飛び出す。

 綺麗に着地をする。

 

 目の前にはモルガナ。

 真剣な表情で見上げている。

 

 う、うん?

 

「その……ワガハイと…」

 

 モルガナ…と?

 

「……怪盗団をやらないか…っ!」

 

 怪盗団を……ん?んんんっ!?

 

「…えっと。心の怪盗団は…」

 

「……ワガハイ抜きでやっていける。それに…ワガハイの目的と怪盗団の目的は…違う」

 

 ……モルガナ…。

 

「直ぐには決められな」

 

「いいよ」

 

「いよな。いいのか……いいのか!?」

 

「でも」

 

 蓮たちと話を━━

 

「そうと決まれば明日から活動開始だ!帰るぞ!」

 

「モ、モルガナ」

 

「ウイのコードネームも考えないとな!怪盗団の名前も……」

 

 ……全く。

 といっても俺から言えないし。

 

 修学旅行明け…かなぁ。

 

 しかし、怪盗ねぇ。

 ……怪盗服用意しないといけないのかな。

 

 どんな衣装がいいんだろう。

 そもそもどこに売ってるんだろ?

 

 ……コスプレ専門店とか?

 

「ウイ!」

 

「あ、ごめんごめん」

 

 …なにもないといいんだけど…難しそうだね。




時系列は修学旅行。
先輩も引率を頼まれたけど断りモルガナとキズナを深め中。

モルガナからすれば秘密の共有者であり怪盗団でもないがペルソナ使い(で懐かしい)の先輩は拠り所で良き相談相手。軽く?依存気味。

当分先ですがオクムラパレスは一時期加入する予定。



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電話・裏

お待たせしましたー。



 ……出ない。

 出ない……なんで出ないの? 

 

 出れないから? 出たくないから? 

 その不安はずっと続いていく。

 

 パレスから出てみんなと別れてからも。

 

 モルガナは用があって別れた。

 先輩の家の場所を聞いてきた時は少し驚いた。

 

 少し興味があるっていってた。

 ……先輩は渡さないから。

 

 ん…。

 近くの銭湯で汗を流して……。

 

 ルブランに帰り先輩に電話をする。

 ……切られた。

 

 先輩から電話を切られた。

 ……拒否された。拒絶された。

 

 確信した。……出たくないんだ。

 

「な……なん…で…」

 

「どうした? ひでぇ面してるぞ」

 

「なんでもない」

 

「……そうかい」

 

 私が悪い? 

 先輩になにかしちゃったの? 

 

 分からない。理由も……先輩にしてしまった粗相も……。

 

 分からない。…何も分からない。

 分からない分からない分からない。

 

 過ちに気づけない。

 

 考えろ。

 先輩に何をしてしまったのかを。

 

 落ち着いて……落ち着いて考えないと。

 嫌われちゃう。

 

 先輩に嫌われる。

 考えただけで……冷たくなる。

 

 例え冤罪を被ろうと……裏切られようと……虐められようと……。

 

 腫れ物のように扱われようと……。

 ……どうでもいい。

 

 だけど……。

 先輩から見放される。

 先輩から否定される。

 先輩から拒絶される。

 

 それだけは……だめ…です。

 

「顔色悪いぞ」

 

「……大丈夫」

 

「……店閉めるからな」

 

 惣治郎さんが帰る。

 ひとりぼっちの空間。

 

 もっと孤独を強く感じる。

 

 ごめんなさい先輩。

 先輩の為ならなんでもします。

 

 どんなことでも……私はします。

 だから━━

 

「……許して…くださ」

 

 嘆きは着信に掻き消された。

 ……誰………あっ…! 

 

「……よかった」

 

「先…輩……?」

 

「ごめん。寝惚けて切っちゃったんだ」

 

 ……寝惚けて……もしかしてずっと寝ていた? 

 

 だから出なかったんだ。

 そうなんだ。

 

 ……よかった…よかった。

 

 安心する。

 同時に自分に嫌気がさす。

 

 先輩を信じられなかった。

 ……そんなことするはずがないのに。

 

 …最低だ。

 信じてくれた人を信じられない。

 

 先輩を信じられなかった事実。

 ……私は弱いままなんだ。

 

「…あ、の……ごめんなさい」

 

「え?」

 

「お休みの邪魔をして……ごめんなさい…」

 

 ……だめだなぁ。

 こんなんじゃ本当に捨てられ━━

 

「……蓮は気遣いができる良い子だね」

 

「! …いや……そんな…」

 

「蓮のそういうところ。好きだよ」

 

「…ふぇ?」

 

 す、すすすす……す…すっ!? 

 思わぬ不意打ち。

 喉奥から込み上げる感覚。

 

 グッと押さえ込んで……。

 不味い…心臓が痛い。

 

 さっきまでの不安が全て吹き飛んだ。

 ……あたたかい。嘘…熱い。

 

 電話越しなのに……この破壊力…。

 ……直なら沈んでる。

 

 そ、それよりも…! 

 

「蓮?」

 

「あ、はい! あの…!」

 

「?」

 

「……お、おやすみなさい!」

 

「あ、うん。おやすみ蓮」

 

 電話が切れる。

 すぅ……はぁ……。

 

 気遣い……先輩……好き……。

 気遣いができる子が……先輩は好き…。

 

 ってことは先輩は私に……。

 ……よし。

 

 △

 ▽

 

「悪いことしちゃったな」

 

 疲れていたのかな…と心配する素振り。

 

 レンの惚けた声がスマホ越しから聞こえてきた。

 

 ……実はレンよりウイの方がヤバい? 

 息をするように好きとかいってたぞ? 

 

「…………」

 

「……モルガナ?」

 

「ん! あーどうしたんだ?」

 

「蓮をなんとか……」

 

「解決した」

 

「……はい?」

 

「ワガハイは帰る。あ、そうだ! 今度ウイのこと聞かせてくれよ!」

 

「うん、わかった。次会う時に教えるね」

 

 これで大丈夫だろ。

 ……と思ってたんだけどなぁ。

 

 寿司を持ったレンが笑顔で詰め寄ってくるのを見て死ぬんじゃないかと思ったワガハイは悪くない。

 

 




有言実行特化後輩。

ただ気遣いの範囲が尖りすぎている()

もう4週はしてるのに……合間合間に書いていきたいなぁ。


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