戦姫連結:シンフォギアコネクト!Princess/Knight (ジョナタイ)
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消えた騎士の行方
VRゲーム『レジェンドオブアストルム』というゲームの中に数え切れない数の人が魂を囚われていたけれども、皆が協力して人々を解放したりした。この世界に入ると記憶に修正をくらう(この世界の住人としての記憶が生えてくる)。現実世界も割とファンタジーに片足突っ込んでいる。
なある所に一人の青年が居た。
名前は『ユウキ』。彼はランドソルという街に住んでいた。
彼は『この世界』で圧倒的な不利な状況に陥りながらも仲間と手を取り合い絆を紡いで困難を乗り越えてきた。
関わり合う人々と絆を紡ぎ、その人々の為に奔走し、時には顔も知らない誰かの為にも命を掛ける、そんな少年。
そんな彼は今————
【Side:カスミ】
「一体何処へ行ってしまったんだい助手くん…?」
私は溜息を吐きながら、足を組みティーカップに角砂糖を入れ、相棒である
私の名は『カスミ』。
「『居なくなってしまった彼の捜索』、かぁ…」
先週頃から舞い込んだ一件の依頼。その内容は失踪してしまった彼の捜索願いだった。
「犯人の心当たりがあるが、それは無いだろうなぁ・・・」
私の頭の中では、猛回転しながら「心当たり」について思案していく。『姉』、『愛の凄い人』に『破滅願望持ち』、『反社組織の頭』等々、注意人物をリストアップしていく。他にもまだまだいるにはいるが、彼女たちが依頼してきたのだ。他の事件なら目星は外さないが、今回の件では犯人の線は無いと断言してもいい。
………………………………………
今日もまた無為に時間だけが流れてゆく。いつもならユウキが横におり、コーヒーの一杯でも淹れて談笑でもしていた事だろう……
だが、その彼は居ない。
彼女の脳内は『分からない』という結論だけが彼女思考を支配していた。
「・・・1週間前にカルミナの警護をしてる時から誰かの視線を感じていた。五日前には何故かオーエド町へと向かい…三日前にはランドソル王城。向かった先で一時間は必ず姿が見えなくなる時間が存在し、直後の彼は記憶が曖昧…」
カルミナとは、この世界のトップアイドル達のメンバーはノゾミ、チカ、ツムギの三人。リーダーのノゾミはアイドルになる為に生まれたような存在で、一挙手一投足が華麗で美しい。チカさんは唱喚師と呼ばれ、歌で精霊を使役する。ツムギは、元々は衣装作成などの裏方担当であったが、ノゾミの抜擢によりアイドルと衣装屋の二足の草鞋を履いている。
「そんな彼女たちの警護をしてる際に怪しい人物は四人ほどいた…」
1日前
証言1:ライブスタッフ
1週間前に変わった事、ですか?その日は、いつも手伝いに来る彼とプロデューサーが変な魔物をやっつけてくれまして。真っ黒い灰みたいなのが急に飛んできたと思ったら急に魔物になって。幸い二人の初動が早く大した怪我人も出ずに助かりました。僕らもすぐ逃げる事に成功して。あぁ、そういえば何か細い杖のような物を持ったマントを被った女の子が彷徨いていました。でもそのまま去って行ったので話しかけにいくような事はしていません。
証言2:ライブ会場周辺住民
1週間前?特にこの辺で変わった事はありませんでした。強いて言うなら、季節外れの流れ星があったのと彼の様子。彼はしきりに周りを見渡してはソワソワしていましたね。まるで誰か気になっている人が居るみたいに。その時は髪型が奇抜な男が辺りを彷徨いていたので、話しかけに行くと逃げてしまって……
証言3:クレープ屋の店員
あ、カスミさん。お兄ちゃんは…まだ見つかって無いんですか。‥‥はい。あ、そういえば急に昨日思い出したんですけど、フードを被って背中に剣のような物を携えた女性がクレープを買ってくれました。その後お姉ちゃんがその女性を追いかけて行ったんですけど…関係ありますかね、これ?
証言4:アイドルプロデューサー
坊やの様子だと?そういえばその日、見たことの無い魔物が攻めて来ただろう?その時の坊やはなんとなく調子が悪い…いや
「さて、これまで出た情報を整理してみると....」
・助手くんの能力の調子が良い
・謎の魔物の強襲があるも、二人の活躍で対処
・季節外れの流星
・謎の女性の目撃情報
・シズルさん(お姉さん)が行方不明
・助手くんの様子がおかしかった
「・・・・・・」
(謎の人物達と様子がおかしくなったのは関係があるのか?)
「この情報から重要な証拠そうなのは・・・」
(謎の少女、男、魔物。この三つだろう)
そして次の聞き込みへ向かう。
ーーーーーーーーーーーーーー
オーエド町にて
証言1:町の行商
あ、ショーグンを。彼はこの町の英雄なんですよ。入り口にあった銅像は…あぁ、当日の彼ですか。その日、町を回っていた私はフラフラと歩く彼を見かけたのですが、小さな声で女性の声が聞こえてきました。誰も彼の背後には居なかったのに。
証言2:主君を想う忠臣のシノビ
ショーグンー!ドコデスかー⁉︎…ハイ?ワタシに聞き込み...デス?…『あの日ショーグンを見たか?』…見たのデスが、ショーグンはワタシが駆け寄った瞬間に地面に剣を突き立ててそのまま消えてしまったのデス。一体何処へ行ってしまったのデスカ、ショーグーン!
証言3:………
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ご協力ありがとうございます」
着物姿の女性を見送り、私はメモ帳を取り出した。
街へ繰り出した私は、聞き込みを行った。人通りは少なく中々捜査には難航したが、それでもなんとか情報を集めることには成功した。
新たな情報としては
・何かに導かれるかのように町を彷徨う
・剣を突き刺し消えた
そして……
「『他にも幾つか剣が突き刺さっている場所があった』、っと」
そう、オーエド町のは五箇所剣が突き刺さっているのが分かった。実地調査に向かったが、剣は結構な深さまで埋められており、引き抜こうと思ったが一向に動く気配は無かった。
仕方がないので、地図上に剣の位置を書き込んでいく。すると、剣に何かしらの印が刻まれている事に気づいた。そして自分でその気づいた事実に震えた。
「…!これ助手くんの剣じゃない⁉︎」
そう、この剣は彼が使うような両刃の剣では無く、更に大きく儀式に使用されるようなものだった。そんな剣を私は
いや、訂正しよう。勘違いなどでは無く、本気でそう思っていた。
「これはかなりマズイ状況なのではないかい…!」
急いで最後に目撃された現場、ランドソル王城へと向かった。
…………その時の私は、一つミスを犯した。
助手くんの身を案じ、急いで次の現場に向かったが、此処でもう少し冷静になれたのならある違和感を感じ取れたかもしれなかった。
一つ目の違和感。
何故町に人が少なかったのか。
このオーエド町は、いつも観光客や店を切り盛りする人たちで溢れかえっていたが、今日出会えたのはたったの数名だった。
二つ目の違和感。
何故五か所に剣を突き刺す必要があったのか。
冷静になって考えてみれば、ここに何かしら意味が見出せる筈だった。しかしこの時は考える間も惜しいと移動に全力を出した。
そして三つ目。
それはーーーーーーーーー
—————————————————
ランドソル王城に着いたカスミは息は絶えながらも、【
「私は急がないと助手くんが!」
「ちょ、ちょっと待ってください!貴女は調査で来られたのでは⁉︎」
「!カスミちゃん、少年がどうかしたのかい?」
「ジュンさん!」
半ば混乱気味なカスミを宥める王宮騎士団員であったが、そこに王宮騎士団の団長、『ジュン』が通りすがる。彼女はいつも正門を守護しているのだが、今日は違ったらしい。
カスミは急いで事情を説明し、ジュンと共に王城の中へと足を踏み入れるのだった。
「…つまり、少年は今とても危険な状況にいると?」
「ああ、そうなんだ。だから今は1秒でも時間が惜しくてね。情報をーーーー」
事情を理解したジュンは、王城で起こった奇妙な出来事についてかいつまんで教える。
ジュン曰く。
ユウキを見つけた一般騎士は、何故そこにいるのかと問い詰めようとするが、向こうは一切こちらの事が目に入っておらず、剣を突き立てようとするが如何なる理由か、それを辞め次の瞬間には虚空へ消えたという。
「…という訳なんだ。我々も彼を探していてね。またここに現れるというのは本当なのかい?」
「ああ。……といってもコレは推理じゃなくてただの直感だけどね」
彼女は理屈どうこうではなく、直感的にここに何かがあると感じたのだ。ジュンもそれを察する。
直後、空間が揺れる。
………………………………
助手くんが消えたという現場にたどり着いた私たちだったが、そこで驚きの光景を目にする。
「し、シズルさんッ⁉︎」
「う、うぅぅ‥‥」
シズルさんは、身体中に傷を負っていた。その怪我の具合は、これまで経験したどの戦いの時よりも酷い。彼女は弱々しい身体を奮い立たせながら剣を構える。その眼は、未だ戦意に満ちていた。
「し、シズルさん!これは一体どう…⁉︎」
「こないで!今から
「危ないカスミちゃん!」
直後、凄まじい衝撃が私達を襲う。ジュンさんが咄嗟にバリアを張ってくれなければ私たちはすぐさま
「……」
「そろそろ終わりの時間だな、女」
「助手くん⁉︎それに横の女性は、オーエド町にいた.....?」
「詳しい説明は省くけど、弟くんは
瞬間、シズルさんは吹き飛ばされ王城から飛び出す。謎の女が振るった杖によってだろう。杖は妖しく光り、毒々しい色の魔物が透けて見えた。
ーーーーーーそう、三つ目の違和感。
そんな彼女がボロボロになっており、傷だらけだった。一瞬で「ヤバい」と脳が
助手くんの横にいる彼女は、あの時私が聞き込みをした女性だ。全て手の上で転がされていたとでもいうのかーーー?
「少年を返してもらおう!」
「嫌だ。コイツはもうーーーーー
ワタシだけの騎士!!」
「ワタシの命を守り、ワタシの欲しいモノを持つ!これは運命だッ!愛の導きだッッ」
いつの間にか突撃していたジュンさんは女に剣を振るが、助手くんは間に入りジュンさんの剣を止める。
「しょうね…っ!」
「邪魔だ、退け」
そして女は私諸共ジュンさんと共に吹き飛ばす。魔法の詠唱を済んでいなかった私はジュンさんが直撃し、息が詰まる。
「ぐぅ、ぅあぁぁ.....」
「だ、大丈夫かい、カス、ミ、ちゃ.........」
ジュンさんは気絶していた。見れば彼女は着けていた全身鎧の半分が消え去っていた。生身で生きているのが不思議な程だった。かくいう私も両足は一切動かず、目線でしか彼らを追えなかった。
助手くんと女は、そんな私たちを存在しないものかと思うように私たちを踏んでいく。いや、助手くんは私達を踏まないように私たちを避ける。痛む身体を強制的に動かし見たその顔は、涙を流していた。
「じょ、しゅく、ん…!」
「やはり!これで向こうの世界に
女は、助手くんの手元にあった剣を突き刺した。すると空間に大きな穴が開く。そこへ飛び込もうと彼の手を引く。
「させ、ない.......!」
私は全ての力を振り絞り女へと魔法を放つ。いつもは犯罪者を捕縛する為のモノだが、今は女を吹き飛ばす程の威力を込めたつもりだ。
「何ッ⁉︎」
そして。
助手くんはそれを庇おうと飛び出ようとし、魔法に当たり穴に吹き飛ばされる。
幸い、というべきか。
魔法の威力自体は、人一人分を少し押す程度の威力しか無かったが、彼が怪我をしなくて良かった。
女の方はというと、杖にヒビが入り大層慌てふためいていた。
そして、穴は塞がる。
落ちゆく意識の中、私は決意した。
『絶対に助けに行くから、待っていて、助手くん』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
《side:ユウキ》
意識が定まらない。
身体が痛い。死にそうなくらい。
でも。だけど。
「僕には、やらないといけない事が…!」
彼女を助ける。
そう、あの人が願っていたのだから。
登場人物
カスミ
主人公のユウキの事を“助手くん”と呼び、事件現場に向かう。
犬耳の獣人で魔法を扱う。
ジュン
【王宮騎士団】の団長。ランドソル王女を守護する鉄壁の黒鎧で街の悪人からは恐れられている。本人の基礎能力も高い。
ヒーローショーのヒーローアクターをしている。家の規律で鎧は脱がない。
ユウキ
本作の主人公。彼を構成するモノはほぼほぼ善意。ランドソルは彼を中心に回っている部分もある。多分彼がいなくなると町は滅ぶ。多くの登場人物の脳を焼き、そのせいで何回か死んでいたりする。
???
謎の人物。その戦闘力は多くの登場人物を上回る程。持っている杖で謎の魔物『ノイズ』を召喚するが、その魔物はすぐさま形を崩壊させる。世界を移動させる術を持っており、それで世界間を移動する。人の思考に干渉する能力を持っており、ほかの登場人物の思考を操ったり、物語中盤でカスミが違和感を見逃した原因の一つ。
今回はここまで。感想と評価貰えたら嬉しいです。質問も感想欄で受け付けてます。
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彼女と彼の覚醒の鼓動
・『聖遺物』というすごーいアイテムがある
・シンフォギアを纏えばノイズをぶっ飛ばせる
・ゲームは楽しい
『お……………!』
『ねぇ…キ……はな…………の?』
『私のの名前は風鳴翼です』
『…タシは天羽奏だ』
脳内に駆け巡る人々の顔。だけどすぐにノイズが入り思い出せ無くなる。
(誰だっけ・・・)
思い出が消えていき、記憶に穴が空いていくのすらもう感じられない。触れ合った時の感覚も、顔も見えない———
現れたフィーネに手から放たれる光弾により崩れ落ちる視点。
「これで……!」
最後の景色は、彼女の満面の笑み。
————————————————
「.....?」
ユウキは、何処かの草っ原で目を覚ました。寝転んだ格好であたりを見回す。そんなユウキの傍らには、見知らぬ女の子が居た。
ニャー
いや、一人だけでは無くもう一人....いや
「あの、大丈夫?この子が木から降りられないのを見て木に登ろうとしたら君が更に上の方から落ちてきて....」
その女の子は、ユウキの頭を膝に乗せてくれて目が醒めるまで待っていてくれたのであろう。その表情から安堵の色が伺えた。子猫はユウキの頬をてしてし、と殴っていた。玩具だと思われているようだ。
話は15分前に遡る。
その日、“立花響”は学院内を散策していた。入学初日という事、さらに彼女の趣味である『人助け』から「誰か困ってないかな〜」と辺りを回っていた。
『猫ちゃーん、おーい、降りてきなーッ!』
『弁当の残りあげるからさー!…駄目だ降りてこないね』
『どうしたんですかーッ!』
上級生から猫が降りて来られない、という事情を聞いた響は自身が捕まえに行くと言い、木の下へ向かう。
『よーし、待っててね子猫ちゃんッ!……ってあれ?』
制服の袖を捲り、後ろの女学生が“予鈴が鳴ったから一旦教室に戻る”と言うのも(予鈴も)聞こえず、そのまま木の上に登ろうと足を沈ませた時
ミシミシミシッ
と、木の折れる音が響く。
『ええッ⁉︎』
驚きのあまり足を滑らした。上を見れば何か大きな物体が落ちてくる。猫よりもさらに高い位置に存在していたのであろうか、落ちてくるまで気付かなかった。
グシャ
その物体は、よく見てみればそれは“人”だった。頭から落ちていた。何かが潰れる音がした。
『…は!だ、大丈夫ですかッ⁉︎』
慌てて介抱して脈があるか確かめたり、骨が折れていないかなどを解る範囲で触診した。
触診して確認した結果、何処も骨は折れておらず、傷もついてはいなかった。
『首から落ちてたのに…頑丈だなぁ、この子。同い年かな?』
見た目ではすぐに起き上がりそうなくらい元気そうに見える。肌の色艶も良い、身体も筋肉が付いていて程々に引き締まっている。だが、その割に顔は幼く、自身と同じくらいの年齢に見えた。格好は昔見たことのあるようなアニメの騎士のような格好だった。
とりあえず、意識が戻るまで軽く介抱しようとハンカチを濡らして額に乗せた。
以上、回想終了し現在に戻る。
「大丈夫?名前言える?」
目を覚ましたとはいえ、頭に重大な傷を負っているかもしれない。そう考えた響は彼に質問する。目の焦点が合うか?呂律は回るか?一挙手一投足を見守る。
「…ぉくのなまえ、ゆうき」
たどたどしい喋りだが、呂律は回り、意識もしっかりしているようだ。辺りをキョロキョロと見回す。
「ここ、どこ?」
「ここはリディアン女学院。ユウキくんはなんで木に引っかかって居たの?」
受け答えも出来る。ああ良かった、とホッとした響は次の台詞で固まる事になる。
「“き”?」
「猫ちゃん助けようと登って降りれなくなったの?」
「ぇこぉ?」
「え」
「えっと、自分の歳と何処で生まれたか言える?」
「?」
記憶喪失、だった。
彼には自身の名前以外、一般常識も、物の名前も、何も“覚えていない”。
彼は色々と挙動もおかしく、立ち上がれずに地面を這いずり回っている。
(話には聞いたことあったけど、ほんとにあるんだ)
響は衝撃を受ける。ユウキは、猫を持ち上げて口に入れようとしたり、猫の反撃を受けていた。口を開き四つん這いのま蝶を追いかけたりと、遠くから見れば大きめの赤ちゃんだった。
響は最悪の想像ばかりしていたが、彼は元から記憶喪失だった。が、それを知る由はない。
「……ってそうだっ!ユウキくんちょっと一緒に…ってあれ?」
とりあえずユウキを放ってはおけなかったので、『教室…は無理だから保健室へ連れて行こう』と決意した響が振り返るといつの間にか消えてしまっていた。
(えー、何処に行ったの⁉︎)
辺りをキョロキョロと見ても誰も居らず、猫もいつの間にか消え去っていた。二人とも影も形も無い。
と、そんな困惑気味な彼女を置き去りにするように、本鈴の鐘が鳴り響く。
「あわわわ、大変だぁ!予鈴さっき鳴らなかったッ?わたし、呪われてるーッ⁉︎」
また後で彼を探すことを心に決め、一目散に教室へと駆け出す。
(やっぱり授業始まっちゃってるよ〜……バレないように)
「こっそーり、こっそーり…」
「響!こっちこっち!先生が黒板見てるうちに…」
その時、窓の外で大きな爆発が起こる。
響が窓の先に注目すれば、先程出会ったユウキが遠く離れた場所だが、吹っ飛んでいたのに気付いて思わず大声を上げた。
「嘘ーーーッ⁉︎」
「⁉︎」
上げた大声で教卓に立っていた教師がこちらを向いた。響を見つけるとその顔を真っ赤にし、完全に怒っていた。
「立花さんッ!あなた遅刻してなんです大声をあげたりしてッ!!」
「あ、あああの、さっき木から落ちてきた子が今窓の外を飛んでて…」
「それで…?」
「お、驚いちゃって、あははは……」
「立花さんッッ!遅刻しての言い訳がそれですかッ!とりあえず席に座りなさいッ!」
「す、すみませーんッ!」
—————
「はぁ〜〜っ、私ってば呪われてるかもぉ…」
「半分は響のドジでもう半分はいつものお節介…って言いたいところだけど、今回ばかりはそうかもね」
彼女のお節介は止まるところを知らないが、それはそれとしてまさか人が飛んでいくとは。これを見れば誰だって驚くだろう。一瞬だったが、“小日向未来”もそれを目撃した。見間違いかと思ったが、響もそれを見ていたので、というかその数分前までコミュニケーションを取っていたというのだから、詳しく聞いてみた。
「ーーって感じで急に消えたと思ったら空を飛んでたのはびっくりしたよ」
「それで大丈夫なの響、その記憶喪失っぽい子のことは」
件の少年は何処へ消えたのか、また何故空に吹き飛ばされていたのか?彼への疑問は尽きない未来は響に問いかける。
「うーん、多分大丈夫。なんでか分かんないけど、また会えそうな気がするんだよねぇ」
「ふーん…」
答えは漠然としていたが、響の方は心の底からそう思ってる様子なので訊ねるのはやめにした。響は、
「ああーッ!未来、それ翼さんの記事だ!スクラップにしてもいい?」
昔からのファンであった元ユニット《ツヴァイウィング》の翼の記事に興奮して、それどころではないようだ。
響は“風鳴翼”への憧れでこの学園に入ったのだから、凄いものだと感心するばかりだ。まぁ彼女がここを選んだ理由はそれだけでは無いと、心の何処かでは気づいているのだが。
——————
立花響は、2年前に起きた【ライブ会場の惨劇】の被害者である。
人気ユニット《ツヴァイウィング》のライブで起きた、認定特異災害ノイズの襲撃。犠牲者も多く出ており、未だに語り続かれる惨劇である。
ノイズは、無機質に人々を炭素の塊に変えていく。何故存在するのか、いつから出始めたのか、理由は未だに分からない事も多い。ただ一つ確実に言えるのは、出会ってしまえば生存率はほぼ0という事。
しかし、そんな中で彼女達を救おうとした人物が二人いた事を響は知っている。
一人は先程会話に出た人物、“風鳴翼”。
《ツヴァイウィング》の片翼であり、現在はソロで活躍している。彼女の歌声は圧倒的であり、その声に魅了されたファンも多い。
ライブ会場では、蒼い“ナニか”を纏い観客を護っていた。
そしてもう一人は響の命の恩人、“天羽奏”。
《ツヴァイウィング》の片翼であり、姉御肌な部分もあり皆を引っ張っていた。活発的な部分も多くのファンを惹きつける要素だっただろう。
もうステージに彼女は居ない。
ライブ会場では、橙色の“ナニか”を纏って、響の命を守った。
(あの日、何が起こったのか知りたくて、この学院に入学した)
でも今日は結局出会う事も無く、それどころか見かける事も無かった。
明日こそは、と意気込み
ーーーーーーーー
夢を見た。
どこか懐かしい、けれど絶対にあり得ないような心地の良い夢を。
ーーーーーーーーー
翌日。
昼食時間に未来と食堂で昼食を食べている最中にチャンスは突然やってきた。
「---あぁ、風鳴翼よッ!」
「ホントだわ!」
追い求めていた人物が、憧れていた本人がすぐそこにいる。
「あ、あのっ!」
頭が真っ白になり何も考えられなくなりそうになるくらい緊張しながらも、必死に言葉を紡ごうとしたが。
「…ん」
「?あっ」
「だからご飯粒付いてるよ響!」
「食事は落ち着いて食べることだ」
風鳴翼は自身の口に付いていたご飯粒に指を差し、そのまま立ち去っていった。
当の響は付いていたご飯粒を口に放りながら黙り込んで席に座るのだった。
恥ずかしさのあまり、顔から火が出そうな程真っ赤になった響を未来が慰めながら数時間。気づけば放課後になっていた。
初回特典が盛り沢山なCDが今日発売されるのをすっかり忘れていた響は『このままでは売り切れてしまうなら』と未来から許可を貰い、学園からCD店に向けて一人道を駆けていく。早くしなければ売り切れてしまうぞ、と想像の中の未来が応援してくれている。しかし曲がり角を曲がると、人にぶつかった。
「あいたーッ⁉︎」
「ぶぇっ」
ぶつかった何か、注視してみればそれはユウキであった。
ぶつかった衝撃でユウキは吹き飛ばされてしまい、五メートル程転がってしまう。受け身は取らず、顔から倒れるのは以前とは変わらない。
「だ、大丈夫ですかッ⁉︎あ、ユウキ君?」
「おいっす〜」
起き上がらずに顔だけこちらに向け謎の挨拶をしてくるが元気そうだ。安心しながらユウキを起き上がらせる。
「もー心配したんだよ。この前ふら〜っと居なくなったし、そのあと急に飛んで行っちゃうしでてんやわんやなんやかんや」
「ぼくもビックリ」
今の会話になんとなく違和感を感じたが、五体満足で以前よりもおかしくは無いので、その違和感は一度置いておく事にした。
「ケガしてない?」
「してない。ダイジョーブだよ」
両手を広げて立ち上がるユウキ。顔はニコニコと笑顔で活気ある表情だ。
「なら大丈……」
「いや(マトモに)喋れるようになってるッッッ⁉︎」
〜〜〜〜〜〜〜
「…と言う訳で、翼さんのCDを買いに行く途中なの」
「ついてっていい?」
イイヨッ!と笑顔でokサインを出してユウキの身だしなみを整えてホコリを払ってあげる。
そんな感じで二人はCD販売所に駆け足で向かっていく。
「そういえば」
「?」
「ユウキくんってどこからやってきたの?前は聞けなかったけど…」
「・・・・?思い出せない」
「そうなんだ…」
ユウキの脳内には、ぼやぼやと四人の人物の顔が浮かび上がるが、顔にモヤが掛かっており思い出すことが出来ない。
『ユウキくん、ぎゅーっ!!』
『もう、あんたっていつまでも子供みたいなこと言うわね』
『おにーたん!』
『あ・・・様』
なんとなくそのモヤモヤを言葉に出来なかったユウキは、何を言うでもなくただ走るのみだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「はぁはぁ……!」
「あれって何、ヒビキちゃん⁉︎」
何故、こうなったんだっけ?なんで逃げないといけなかったんだっけ?走りすぎて一瞬記憶が飛んでしまったが、話は数十分前の不運な出来事から始まったっけ。
私達は、なんとか間にあうようにと走りながら向かっていたけれど。その途中で曲がったコンビニ。そこには、
『CD、特典ッ、Cーーッ…って、え』
『どうしたの?』
『あ、アレ・・・・』
震える指で指さした先には。
人が。
いいや。
『くろいこな?』
『…!そうだった、記憶喪失で・・・・まずは逃げ』
意味も訳も分からないユウキくんに今すぐ逃げるべきだと説明しようとしたけど、それは甲高い悲鳴によって掻き消されてしまって。
『きゃーっっ!』
『『!!』』
その発生源である幼女を目にした瞬間、私もユウキくんも身体が咄嗟に動いていた。助けなくては、と駆け出し、ユウキくんが彼女を背に走り出した私に付いてきて—————
「はぁっ、はぁっ…・・・・!!」
「どこまでいくの!」
声を張り上げていう彼は、息こそ切れていないが終わりの見えないゴールに不安を感じていそうだった。とにかく不安が、恐怖があり、そんな感じだった。私もそれは同じだったけど、とにかく走って走った。
胸に秘めたあの人の言葉が、私たちを走らせた。
『ーーーー諦めるなッッ!!』
どれくらい走っただろう。もう追いかけて来ないかな、と建物の脇に座り込み、息を整える。
「はぁ、はぁッ…!」
「ふぅ、ひびきちゃんだいじょうぶ?」
「うん…っ!」
辺りを見回す私は、立ち上がり先程の彼のポーズを真似て、『元気いっぱいだぞ』と強がって見せた。本当は今にも倒れ込みそうなくらい疲れていたけど、そんなことは二人の前では言えない。それに、あの言葉のお陰で奮い立った自分はそう簡単には諦める事も無いから。
一瞬目を瞑り、
「あ、ああ……!」
「・・・・? ⁉︎」
女の子が急に怯え出して悲鳴を溢す。何故かと周りを見渡せば、私たちはノイズに囲まれていたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーー
三人は、袋小路に追い詰められたネズミの集団のように身を寄せ合い震える。
しかし、ユウキは一人飛び出し果敢に立ち向かおうとする。いや、ノイズの恐ろしさを知らない彼のその行動は蛮勇と呼ぶべきものなのだろう。これといって対策の無いまま駆け出す彼は死にに行くようなものだった。そんな彼を止めようとするも、横の少女は悲しく呟く。
「お姉ちゃん、私たち死んじゃうのかなぁ?」
死。
そのイメージが脳内を占める。
だけど。
けれど。
『生きるのを…』
「生きるのを……」
決して諦める事はしない。生きる事を、彼女らを守る事を!
『諦めるなッッ!!!』
「諦めないでッ!」
「!ひびきちゃん・・・・」
その時、ユウキの目の前には空から剣が降り注ぎ、響は歌を口ずさみその姿を変えていく。
「―――Balwisyall Nescell gungnir tron―――」
身体が変化してゆく。機械類が出ては纏まり、その度に悲鳴をあげるが段々と力が湧き上がり立ち上がる。
そして変身が完了する。
「これは……?」
剣を引き抜いたユウキの脳内に消えていた記憶が蘇る。
『ユウキくんっ、一緒にご飯食べませんか?』
(このご飯大好きな人はペコさん)
『まったく、汚れてるわよ口の周り。ほら、拭いてあげるからじっとなさい』
(この優しい子はキャルちゃん)
『おに....ユウキさん、大丈夫?』
(よく赤ちゃんになるシェフィちゃん)
そして。
『あるじ様!!』
(僕が最初に出会ったコッコロちゃん!)
「思い…出した!」
剣を構えて、能力を全開放し二人を強化する。
戦闘準備は整った。いざ、開戦だ。目の前の敵を屠り、破り、切り裂き、圧倒せよ。
「「はぁあああああ!!」」
雄叫びをあげユウキは、響はーーーーーー!
登場人物紹介
・立花響(15歳 女)
主人公の一人で、モノローグの少ないユウキに変わりモノローグは多め。ツヴァイウィングの二人が好き。幼馴染の未来も大好き。ご飯も大好き!
・小日向未来(16歳 女)
響の幼馴染。同じ寮のルームメイトで、彼女を心配する。元陸上部でその俊足は今も失われていない。人が飛んでいったのには驚愕。
・風鳴翼(18歳 女)
人気ユニット《ツヴァイウィング》の片翼。今はソロで活躍している。あの後、猫を見つけて厳重注意をした。無断侵入については不可抗力なようなので外へ送ってあげた。
・猫さん(メス)
木の上にいた猫さん。ユウキを気に入っており、首輪にはハートの飾りが付いている。飼い猫だろうか?
・ユウキ(??? 男)
現在記憶喪失の記憶喪失中。ここに来る前の記憶が少しあやふやで、能力も向こうにいた頃の百分の一程度。癖のある人たちに好かれがち。今の状態の能力の発動法は、初めに絆を結んだ者の事を思い出すこと。
感想と評価待ってます。
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覚醒の鼓動/騎士の覚醒
逃げた先の再会
記憶喪失の少年がやってきたのは別世界!
拾った女の子と迷子の少女と逃げて逃げて!
追い詰められた二人は輝き出す!
勢いよく声を張り上げた二人は.....
「うわぁぁぁぁ!!!!!」
逃げていた。響は幼女とユウキを抱えながら全速力で工場の脇をくぐり走っていた。
二分前
「えい!やー!」
「す、すごいッ!ノイズを切って倒して・・・ってあれ⁉︎倒れちゃった⁉︎」
勢いよく能力を発揮して斬りかかるユウキ。変身までは良かった響!
しかしユウキは突如倒れ込み、響自身は何が起こったのかは一切分からず、二人を脇に抱えてノイズから逃げていた。
そして現在
「ううう・・」
能力が十全に発動しないユウキは、苦い顔になりながらほんの少しの強化を響に続けていた。そのお陰か、逃げ出す足に更に力が入る。
「あ....っぶなぁぁああ!」
ノイズの触手のようなモノを避けて、避けて逃げる逃げる。突然姿が変わった程度では、ノイズに立ち向かおうなどとは普通考えはしない。
「・・・・・ッハッッ!」
右へ左へぶっ飛びながら、避けては壁にぶつかり肺から空気が強制的に排出される事が幾度も続く。今は建物の間を駆けている。人間二人を両手に抱え込み逃げ回るのは大変だ。
「~~~~~」
「ん?」
響を強化する事に夢中になっていたユウキは、何処からか“声”がするのに気付く。
「目の前の敵を屠り、破り、切り裂き、圧倒せよ〜。目の前の敵を屠り、破り、切り裂き、圧倒しろよ〜ホラーオウエンシテヤッテンダカラヨー」
耳を聞こえる方向に向けると、その声の出所が自身の構えていた“剣”であった事に気づいた。
「・・・・」
ブンブンと剣を振り回して黙らせようとするが、“剣”は揺らされた瞬間に辞めるよう提言してくる。だがそれでもユウキは剣を振り続ける。記憶が能力が使えるまで戻ったとはいえ、基本的にはまだ中身は幼い子供のままだった。
「倒っ…チョッ、やめてっ!振らないで!投げ捨てようとしないで!お願い!やっとの思いでこの剣に……!」
「わわっ、ユウキくん腕の中で動かないでッッ、!あっ…!」
剣を振るうことにより、バランスを崩しかける響。ユウキは落としてしまう。そんな彼女達を狙ってか、ノイズはその触手を伸ばす。
体感にして僅か0.2秒弱。
「……ッ!」
意図せず、彼女の手は反射的に動いていた。二人を守る為、思わず払い除けようとする為。だからこそ驚愕する。
「 え 」
灰になったのは、彼女ではなく
「は、はぇ.....?」
思わず自身の手を信じられない様子でじっと見つめた。
(私が、やっつけたの……?)
直後、大きなエンジン音を響かせ近づく何かが響らを取り囲もうとするノイズ達が跳ね飛ばしていく。
「呆けない。死ぬわよ」
突然の登場に何も言えず突っ立ているとすれ違いざまにバイクを操縦している者がそう呟く。そしてそのままバイクは巨大ノイズに衝突し操縦者ごと炎上する…
「〜♪」
否。彼女は既に滞空しており“歌”を口ずさみ、響らの横に降り立つ。
「そこでその子を守ってなさい」
「翼さん・・・?」
「?」
そのまま翼は響と同じような格好に変身しノイズの群れに駆け出す。
そこからの彼女は圧倒的だった。
ユウキと響があんなに逃げ回ったノイズを、一瞬で倒してしまった。
「やっぱり翼さんだ…」
「!お姉ちゃん達、あれ!!」
少女の指さす先には工場地域の煙突に比類しそうな程大きなノイズがこちらを狙っていた。
「ッ…⁉︎」
「えいっ・・・!」
響はそれをみて身体が竦んでしまったが、ユウキはこの場にいる者全てに強化を掛けた。
その瞬間何かが空で光った。
それはノイズの五倍以上もある大きな剣だった。ノイズを突き刺し、あたりの工場はは少し両断されてしまった。
(すごい・・・)
「・・・この威力は一体・・・?」
◇◇◇◇◇◇
そこからはあっという間だった。
一帯は規制が貼られ、ドタバタと駆け回る自衛隊(?)や吸引機を扱い少女に飲み物を与えてくれていた。二人はそれをみて微笑んだ。
「あったかいもの、どうぞ」
「あ、あったかいものどうも」
「ありがとうございます」
見たことの無い制服を着た女性から温かい飲み物を頂きホッとひと息をつく。何故かユウキは飲んだまま固まってしまった。
「わ、あったかい・・・」
直後、彼女が纏っていた何かは消失し変身前の制服姿に戻っていた。
「わわっ、わぁーッ!?」
「・・・・・・」
バランスを崩した響を抑えたのは翼だった。お礼を言おうとするが、翼の顔は険しかった。そしてそのまま立ち去ろうとする。
「ありがとうございます!これで翼さんに助けられたの…2回目なんです!」
「…2回目?」
「ママーっ!」
「!」
少女の方へ振り向くと無事母親と再会できたようである。先程飲み物をくれた女性が、情報漏洩の為の書類を手渡している。
「えっ、でもユウキ君は…?え.....?」
寝ていた。スヤスヤと寝息を立てながら赤ん坊のように縮こまり夢の世界へと旅立っていた。
「えッ⁉︎ユウキ君!?あの、すいません、病院に————」
「あなた達をこのまま帰すわけにはいきません。特異災害対策二課に同行願います」
「二課には医務室もあるので、一度そこで彼の容体を確認するので安心してください」
辺りを黒服の集団が取り囲む。響に手錠を掛け、ユウキの体を慎重に持ち車に積みこむ。
「ええッ、なんでぇーーーーー!?」
久々の投稿を読んでいただきありがとうございます。
これからはまた定期的に二作品を書いていきたいと思います。
感想等を頂けたら嬉しいです、それでは!
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『はい、お疲れ様』
夢を、見ていたーーーー
どこまでも続く、美しい夢をーーーーーー
ーーーーーー『じゃなくて!』
「はい!起きて起きてー!」
そんな騒々しい声で意識が完全に覚醒する。いや、
「んもう、呼びかけたのこれで四回目よ?ちゃんと今までの出来事、憶えてる?」
フルフル、と首を横に振る。目の前の少女は、「はぁー」とため息を吐きながらも近寄ってくる。
「あんたってば急にいなくなったかと思ったら忘れやすくなっちゃう体になってるし・・・そろそろ大変な事になるわよ?…元から大変な状況か」
「今のあんたってば身体は前の作りと全く違うんだからあんま無茶出来ないってのに…ん?よく聞こえないって?そんな…えっ⁉︎伝えられる情報に制限が掛かってる⁉︎」
目の前の少女は、よく分からない言葉を呟くが何処か見覚えがある気がする。それは‥‥なんだっけ。
「とにかく、自分の名前は言える?何処に住んでて、何をしてるか?」
「…僕はユウキ、ランドソルで暮らしてて、アルバイトをいっぱい....」
「......他には?」
少女はまだ他に言うべきことがあるだろう、と言わんばかりに詰め寄る。しかし首を傾げ黙ってしまう。
「私の名前も忘れたの?…はぁ、あんたまた厄介ごとに巻き込まれて記憶喪失したの?…私の名前はアメス。あんたをサポートする存在。今は直接手助け出来ないから私の代わりにコッコロたんにガイド役を任せて……って何、口開けてぽかーんとして。いつもより間の抜けた顔してるわよ?」
「…フィ…?」
「!」
「あんたもしかして、思い出しかけてるのね!?えっとじゃあ.....
あんたは晶、、、ラビリスタのプリンセスナイト。プリンセスナイトってのは、『
目の前の少女のことを思い出す。そうだ、彼女はアメスでありフィオ。昔からの相棒で、いつも自分の事を助けてくれた。今でも助けてくれるし、前は彼女を助けに行った。
(なんで忘れてたんだろう…?)
「なんだ、覚えてるじゃない!」
フィオ....いやここではアメスと呼ぼう。アメスはほっと胸を撫で下ろし安堵の表情を浮かべるが、自分の方はというと浮かない表情だった。
「ねぇユウキ。あんた自分が行方不明になった事は覚えてる?」
「……!うん、確か…」
今現在自分の身に起こった事をアメスに余すことなく説明した。
「歌って変身って…まるで朝のアニメの魔法少女べルルちゃん*1みたいね」
「僕も変身したい」
「あんたそういうのホント好きよね.....ってアニメのことは覚えてるんだ。私の事は最初忘れてたのに」
「あ、ほんとだ」
「皆のこと、憶えてる?…『ざっくりとは憶えてる』ね....じゃあ例えばどれくらい?特徴を今から言ってみるから、憶えてるか確認するわよ」
「まず、あんたは色々あってこの世界、【レジェンドオブアストルム】にやってきたの。まぁVRゲームね。何故かまだログインしたら認識修正がかかるんだけど.....*2そこら辺は一旦割愛するわ。重要なのはそこの後だし.....
で、あんたは昔からの宿敵【
「で、一旦話を区切るのだけど。
あんたの力はさっきも言った通り“紡いだ力で皆を強化する
「話を戻して。
そこで記憶喪失だったあんたは、色んなところにいる仲間達と絆を紡いで、ついに覇瞳皇帝を倒すことに成功したわ。まぁ途中あんた死んだりして色々大変だったわ。*8でもそれは次の戦いへの序章にしか過ぎなかったわ」
「突如ランドソルに攻めてきた【レイジレギオン】ってテロ組織が襲撃してきたわ。生意気なカリザ、あんたのママになろうとしてるランファ、破滅願望持ちのミソラ、頭脳派のアゾールド、圧倒的強者のゼーンの五人ね。そして同時期にシェフィ*9ちゃんが仲間になったわ。あんたは二度目の記憶喪失になってね*10。」
「そんなあんた達はなんとか【レイジレギオン】は退けることに成功したけど、エリスと名乗るあの子*11とミロク*12がやってきたわ。たくさんの犠牲を払って、なんとか勝つことが出来た敵....だったわ。」
「そして世界を救ったあんた達は、その戦いで失ったモノを取り戻すため奮闘して。“ハッピーエンド”を迎えた。」
「........,.ハズだった」
「世界を救って。皆を助けたあんたは今私たちの前から居なくなって。すっごい心配したんだからね.....ばか......『心配させてごめんね』って、あんたのセリフじゃないわよ、もう....!」
アメスは途中から涙を流しながら胸に顔を埋めた。どれくらい自分がいなかったのか分からないが、再開した時のあの慌てようは相当心配してくれたに違いない。そう思った。
「......よし!あんたも見つかったし、あとは晶やユイ達、皆にもあんたの無事を.......」
「どうしたの?」
「そういえばあんたって今何処にいるの?」
「車の中で....」
「いや、そうじゃなくて......」
「
『こ こ に い た の か』
突如二人しかいないはずの空間に声が響き渡る。それは耳から入る“音”
ではなく、精神に直接的に響いている。
『お前はもうそちらの世界の住人ではなく、ワタシのモノだ。手元から離れるなよ』
「だ、誰よこの声は⁉︎あんたの知り合いなワケ!?」
「し、知らない…!」
謎の声の主は色々と捲し立てるが、その言葉の意味は全く理解することが出来なかった。
そして空間に穴が空き、そこから無数の手が伸びて自分を掴もうとしている。アメスも必死になって逃げようとするが捕まってしまう。
「こんの、離しなさいよ!ユウキ!大丈夫⁉︎」
「大丈夫.....じゃないかも.....!」
アメスを助けようと剣を振おうとするが、その隙を狙われて捕えられてしまった。しかし何故かその手つきは激しく乱暴に扱うものではなく、丁寧に優しく、しかし力強くといった様子だ。
(なんでだろう…?)
「ユウキ、ユウキーーーー!」
「フィオ、皆に————————」
そしてユウキは再び
————————————————————-
「着きましたよ」
「えっ.....?」
ユウキが目が覚ますとそこは、学校だった。朝、彼が目覚めた場所の近くだ。
重たい瞼を擦りながら、スーツを着た男性に手を引かれ車を降りる。
(何の夢を見てたんだっけ……?)
現実(シンフォギア)世界の連行中の様子
ユウキ→定期的に光る
響→うわまっぶし(直視)
車に乗ってる面々→(眠ってることより光る方で櫻井さんに診てもらった方がいいかな...?)
ユウキ
種族:人間
状態:記憶喪失一部解除/???
身長160cm
能力:味方の強化/???
愛称:騎士クン、あるじ様、シグルド、弟くんetc.....
フィオ/アメス
種族:???
状態:通常、状態異常なし
身長:10cm〜160cmくらいを自在に変化可能
能力:防御特化バフ、テレパシー(っぽい能力、使えるのは少数)
愛称:フィオ、フィオちゃん、アメス様等
感想、評価、質問なんでも待ってます!
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