幻想郷と別世界からの来訪者 (フォーウルム)
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番外編 設定集
零 霊夢 魔理沙 龍義


零と龍義と主人公コンビについての紹介です
今後も書いていく予定です
ここに以前あった世界の概要については別ページにて記載します


性別 男

年齢 18

能力

①世界の情報を得る程度の能力

②情報を顕現させる程度の能力

③あらゆるものに干渉できる程度の能力

武器 無し(今後追加予定)

 

本人について

他の世界から幻想入りした少年

以前までは記憶障害だったが寄生異変解決と共に記憶を取り戻した。

今は幻想郷での生活を楽しんでいる。

髪は透き通るような白色で瞳も同じように透明に近い白色をしている。

性格は温厚であるが戦闘の際には冷酷な一面も見せることがある。

他人からの好意を断って関係が悪化するのでは、と考え好意を素直に受け入れている

誰にでも優しくしすぎるので「人誑し」と紫に言われた事がある

 

能力について

彼の能力は3つあるので、それぞれ紹介していく

 

①について

介入した世界の情報を得る事ができ、いつでも閲覧することができる。

技や人物名、歴史などを知ることができる。

発動条件は『世界に入る』ことで発動する。

情報を所持している世界が崩壊、または隔離されると情報が記憶ごと消滅する。

復帰には「入り直す」以外はない。

 

②について

情報は記憶でも書面でも詳細さえわかれば使用できる

スペルカードに関しては顕現させる際に『◯コード』という風に変換される

武器や災害なども顕現させられるが災害に関してはあまり使い勝手はよくない

 

③について

弾幕や気候、記憶などに干渉できる。

他人の精神や意識に干渉できるようになってきたのはつい最近である

 

 

式神について

彼の使役する式神は以下の共通点を持つ

1.全員が《解放》スペルの元になっている

2.全員は元パラサイト

さらに式神は召臨を唱えると制限時間無しで出現する。零から離れていても自由に動ける。

尚、発動後しばらくたつと魔力、妖力、霊力いずれかの補給が必要になる

 

スペルカードについて

零のスペルは「カード」ではなく「コード」として表記

使うスペルは零本人が作った「スペルコード」と能力で複製した「コピーコード」の2種類

 

コピーコード(以後「コピー」)の概要

・コピー元のスペカの効果でコードが変化

 例 攻撃系→/コード

   防御系→#コード

   補助系→*コード

 

・以前はクールタイムが必要だったが、鍛練の成果で必要はなくなった

・コピーには「熟練度」が存在し、使えば使うほど威力や性能が向上する。

・オリジナルのスペルを受ける、または何度も見ることによって再現度が上がる

 

オリジナルスペルについて

零が作った零専用のスペル

一回一回の威力や効果は絶大だが消耗が激しい

コピーと違い熟練度はない

 

 

 

博麗霊夢

性別 女

年齢 18

能力

空を飛ぶ程度の能力

 

使用武器 お札、大幣 封魔針 滅暗の神霊杖

大幣とはお祓い棒のことです。こっちの方がカッコイイ

お札や封魔針も持ってるけど大幣で大抵はなんとかなるので使わない

滅暗の神霊杖は零から貰ったもので見た目は大幣に似ているが赤と白の装飾品がついている。「その場に存在するだけで辺りを浄化する」という能力を持っている。

 

本人について

本作のヒロイン

かなり強い部類に入るが、零が強すぎる上に戦闘が少ないので霞んでいる

性格は基本的には真面目だが、面倒ごとは嫌い

妖怪や人間からは慕われている

お金や酒に弱い

 

零に関して

最初は零に対して何も気にしなかったが、日々を過ごすにつれ意識するようになった。

零に一番最初に告白しており「正妻」であることを自慢している。

自分が一番であればいい、ということで零が他の異性と恋愛関係になるのを容認している。

 

 

霧雨魔理沙

性別 女

年齢 18

能力

魔法を使う程度の能力

 

使用武器 ミニ八卦炉

魔理沙は愛用の八卦炉。魔法の強化や使い方によってはジェット噴射のように使うことが出来る

 

本人について

霊夢の幼馴染みで魔法使い。強くなるための努力を惜しまず、全力を尽くす。

寄生異変では零に負けた時の悔しさと強くなりたいという欲でパラサイトに寄生された。現在はいつものように生活している。

 

零に関して

零の初戦闘で負けた後、彼を超えられるように日々頑張っている。

恋愛対象としては見ていないが、良き魔法の実践相手になっている。

 

 

聖 龍義

性別 男

年齢 18

能力

細胞を操る程度の能力

使用武器 無し

基本的に素手。細胞を硬化させたり、数を増やして剣のようにするなどの戦法をとるため必要はない

 

本人について

元は零と同じ世界から来た外来人。

敵対勢力の帝国軍所属の幹部だった。

元いた世界が崩壊する寸前にパラサイトにデータ化した自分の人格を移しやって来た。

幻想入り後、命蓮寺に飛ばされそこにいた聖白蓮と「神社の他のものに危害を加えない」という条件で聖に寄生した。

その後は零に倒され改心し、命蓮寺で生活している

白蓮とは両想い

 

零に関して

本人とは直接面識はないが、龍義は知っていた。

報告書の内容から零が一部の異名持ちパラサイトを取り込んでいるのでは?と疑っていたが、寄生異変の際に確信に変わった。

異変解決後は零としょっちゅう駄弁っている

 

 

 

 

 



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美鈴 咲夜 パチュリー レミリア フラン

こんばんは、フォーウルムです
今回はレミリア達の紹介になります


紅 美鈴

性別 女

年齢 20

能力

気を操る程度の能力

使用武器 無し

素手で戦う。格闘センスはピカイチ

 

本人について

紅魔館の門番。しょっちゅう寝て咲夜に怒られる。

年齢は作者のイメージ

咲夜よりも前から紅魔館で働いている

 

零について

現在の時点で関係はない

 

 

 

十六夜 咲夜

性別 女

年齢 18

能力

時間を操る程度の能力

使用武器 ナイフ

大小様々なナイフを扱う。

 

本人について

紅魔館のメイド。何故人間でありながら吸血鬼に仕えているかは不明

レミリアやフラン等には敬語で話すが他に対しては砕けた口調になる

 

零について

紅魔館に零が来ていた際にさりげなく好意を寄せている素振りを見せている

初対面の時にナイフ首に刺すが効かず、かなりの実力であると認めている

想いを伝えようとするが、まだ実行できていない

 

 

 

パチュリー・ノーレッジ

性別 女

年齢 不明

能力

属性を扱う程度の能力

使用武器 無し

魔法で戦うから必要ない

 

本人について

レミリアの親友で互いに「レミィ」「パチェ」と呼び会う仲。

原作よりも動くことができる

魔法のスペシャリストであり、紅魔館の大図書館には彼女が書いた魔導書が多数存在する

 

零について

現在は関わりはない

 

 

 

レミリア・スカーレット

性別 女

年齢 17

能力 

運命を操る程度の能力

使用武器 グングニル

レミリアの愛用する槍。普段はしまっているが戦闘の際に取り出す

《神槍》を発動させると真の姿になり紅みがかった紫色になる

 

本人について

年齢は作者の考えるイメージ

紅魔館の主人。

基本的にはカリスマだがテンパるとカリスマブレイクする。

前述したパチュリーとは仲がいい

吸血鬼であるが日光は平気

 

零について

フランを助けてくれた恩人であり、日光を克服させてくれた相手でもある。

零がフランや咲夜と仲がいいのは知っていて、よく紅魔館に招いている。

たまにお茶会にも誘う

 

 

 

フランドール・スカーレット

性別 女

年齢 16

能力

あらゆるものを破壊する程度の能力

使用武器 レーヴァテイン ヴァルムヘイル

レーヴァテインはいつもは悪魔の尻尾の形をしたステッキ。

戦闘時に紅い炎に包まれ剣形態に移行する。

ヴァルムヘイルは寄生異変の際に零からもらったものであり、所有者に応じて見た目と性能が変化する。

フランの場合は全長1.5メートルほどで血のような紅い色をしている

 

本人について

レミリアの妹。

自分の力が押さえられず地下室に幽閉されていた。

その後、出てきたがパラサイトに寄生され再び幽閉される

零によってパラサイトから解放される。

基本は好戦的だが戦闘中に相手を冷静に分析するクールな一面もある

 

零について

自分を助けてくれた恩人と思っており、非常に懐いている

零が次に紅魔館に訪れた際に告白しようとしていたが、討伐戦争のために出来なくなってしまった。

尚、その際に紅魔館で少々暴れた模様

零のことは御兄様と呼んでいる

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
次回はジャンル関係なく五人くらい選んでやります
書いてほしいキャラの紹介とかあれば書くんでコメントよろしくお願いいたします


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幽香 勇儀 早苗 鈴仙 

今回は式神戦の《演奏家》~《狙撃手》までのキャラ紹介になります


風見幽香

性別 女

年齢 不詳

能力

花を操る程度の能力

 

使用武器 日傘

幽香が愛用している日傘。

傘の先端からレーザーや弾幕を放てる

 

本人について

幻想郷で一番草花を愛する人物。普段は向日葵畑の近くに住んでいる。

花を大切にする人物には優しいが、粗末にする人物には容赦がない

かなりの実力者である。

 

零に関して

現在は直接的な関わりはないが零は幽香の実力を認めており、幽香も零の実力を認めている。

 

星熊勇儀

性別 女

年齢 不詳

能力

怪力乱神を持つ程度の能力

 

使用武器 拳

やはり拳で語るのが一番

 

本人について

幻想郷の山の四天王。

かなりの酒飲みでよく旧地獄の酒屋で飲んでいる

実力は上の方。

 

零に関して

特に接点はないが、彼の式神である竜胆とは飲み仲間でよく酒を飲んでいる

 

東風谷早苗

性別 女

年齢 18

能力

奇跡を操る程度の能力

使用武器 大幣 お札

霊夢と同じだが大幣は霊夢が使っているものよりも軽い

 

本人について

守谷神社の巫女で現人神

元は現実世界から入ってきた外来人であり、最初は戸惑っていたものの今は馴染んでいる

原作とは大きく異なり、超がつくほどのガンマニア。

神奈子や諏訪子に振り回されていることがよくあるが、仲は非常に良い。

 

零に関して

自分とは別の世界から幻想入りした零に興味深々。

何度か話しているうちに好意を持つようになるが、霊夢と付き合い始めたという話を聞き気落ちする。

が、その後妖夢や咲夜(四章後追加のストーリー)等と恋愛関係になったというのを聞き、自分もそうなりたいとやる気を出す。

零からは「苦労が絶えないが必死に頑張っている苦労人」として見られている。

 

鈴仙・優曇華院・イナバ

性別 女

年齢 18

能力

狂気を操る程度の能力

 

使用武器 銃火器全般

銃火器ならなんでも扱える。特に最近ではにとりが作っている河童印の武器を愛用している。

 

本人について

年齢は作者の想像。

永琳を「師匠」と慕っており人里によく彼女の薬を売りに行っている。

てゐによく悪戯をされては追っかけ回す日々を送っている。

永遠亭では永琳の補佐として働いている。

原作と同じように月の都から逃げてきた過去をもつ

 

零について

『パラサイト・ネスト』にて入院した零と親しくなる。

日常会話をしてる間に気が緩み、過去の話を零にしてしまう。

気がついた時には全て話し終えており、嫌われるかと恐れたが零からは「今までよく頑張ったな」と過去を受け入れられて恋に落ちる。

その後も零に会うたびに鼓動が早くなり、たまに挙動不審になる。

告白しようとした日に紫がやってきて討伐戦争が始まり、ショックを受ける。

零からは「辛い過去を乗り越えた頑張り屋」として見られている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第一章 外来人と巫女編
プロローグ/紹介(台本形式)


ある巫女は言った

「あなたを救ってみせる」

ある従者は言った

「貴方を止めてみせる」

ある庭師は言った

「あなたを越えてみせる」

ある賢者は言った

「あなたはここで何を得るのかしら?」

そして、

 

あの外来人(怪物)は言った

 

 

「ここは退屈しないなぁ」

 

 

 

 

これは、記憶を失った少年と、幻想を生きる少女たちの物語

 

 

 

 

 

 

 

 

???「ここは」

 目が覚めるとどこか見知らぬ世界が広がっていた。木が生い茂り、ほどよい日光が差し込んでいる。あたり1面見渡しても誰もいない。

「何処なんだここ」

 とりあえず、歩いてみよう、何か見つけるかもしれない。

しばらく歩いているととても広い湖が見えてきた。

???「湖……?」

???「ん?なんかいるぞ?」

???「あ、待ってよ!」

 ふと声が聞こえた。振り替えると青い髪と黄緑色の髪の少女が近付いてくる。

???「どうしたの?チルノちゃん?」

チルノ「ほら、大ちゃん!人間がいるぞ!」

大妖精「え?あ、ほんとだ」

 青い髪はチルノ、黄緑色の髪は大ちゃんと言うらしい。

チルノ「なにしてんのー?」

???「わからない」

大妖精「え?わからないって?」

???「文字通りだが、というかここは何処だ?」

チルノ「ここは幻想郷だぞ!」

???「幻想……郷?」

 聞いたことはないがそういう土地なのだろう

大妖精「あ……あの」

???「ん?」

大妖精「あなたのお名前は?私は大妖精っていいます!」

チルノ「アタイはチルノだ!」

???「そうか、俺は………俺は…」

大妖精「?どうされました?」

???「わからない」

大妖精「え」

チルノ「自分の名前わかんないのか?」

???「ああ、わからない」

 

 

 

 

 

物語は始まったばかりである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャラ紹介

 

 ???(主人公)

性別 男

年齢 18

能力 ???

   ???

 

主人公です。能力や名前等は今後明らかになっていきます。

 

博麗霊夢

性別 女

年齢 18

能力 空を飛ぶ程度の能力

 

 

霧雨魔理沙

性別 女

年齢 18

能力 魔法を使う程度の能力

 

原作の主人公ペアです。勿論登場します。

 

十六夜咲夜

性別 女

年齢 18

能力 時間を操る程度の能力

 

今作の咲夜さんは霊夢たちと同年齢です。たまに「年齢違うんじゃね?」等というのをネットでみますが、あくまでも同年齢です。

 

魂魄妖夢

性別 女

年齢 17

能力 剣術を扱う程度の能力

 

妖夢の年齢は不明だったのでとりあえず。他キャラより1歳低いのは……勝手なイメージです

 

チルノ

性別 女

年齢 8(精神年齢)

能力 氷を操る程度の能力

 

⑨。年齢は不明だったので精神年齢を。主人公と最初に接触するキャラ、ということで前々から決めてました。今後も何かと登場します。

 

大妖精

性別 女

年齢 11

能力 無し

 

チルノがいれば大妖精もいます。チルノと共に主人公に接触します。能力無いけどチルノより強いよ!

 




皆さんはじめまして、フォーウルムと申します。
今まで様々な方の小説を読んで「自分も書きたい!」と思い始めました
初めてなので誤字や脱字、変な文などもあるかと思いますが暖かい目で見守っていただくか、コメントしてくださると幸いです。
あと、「この武器使って欲しい!」とか「こんな技使って」というのがあったら是非コメントよろしくお願いします!


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博麗神社へ

こんにちは、フォーウルムです
今回は博麗神社へいきます
あの二人も出ますよ


???「ここか」

 俺は今神社の前にいる。何故かというと……

数分前

 

大妖精「それでしたら博麗神社へ行ってみては?」

???「博麗神社?」

大妖精「はい!」

???「何でだ?」

大妖精「そこに行けば霊夢さんに会えると思いますので、霊夢さんに聞けば何かわかるんじゃないでしょうか?」

???「なるほどな。で、霊夢って誰?」

チルノ「脇巫女だぞ」

???「は?」

チルノ「いつも脇出してる格好だから脇巫女」

???「なんだそいつ」

 巫女なのにそんな格好なのだろうか?

大妖精「本人の前で言わないでくださいね?霊夢さんすっごい強いですから」

???「どれくらい?」

大妖精「少なくても私たち以上です。強すぎて鬼とか呼ばれてます」

 鬼のように強くて、脇出してる巫女……?

想像できんな

???「まあ、行ってみるか」

大妖精「場所はあの山の上くらいのとこです」

???「そうか、ありがとうな」

大妖精「あ、待ってくd」

 俺は地面を()()()()()。その瞬間、俺は物凄い速さで大妖精が言っていた山に向かって飛んでいた。

大妖精「きゃっ」

チルノ「うわっ」

大妖精「あれ?いない……」

 そこには抉れた地面をと土を被ったチルノしかいない。それにしても……

大妖精「あの人って一体…」

 大妖精は彼に会った時から違和感があった。透き通る様な透明な目、光を浴びて輝く白い髪、普通の人間(人間自体少ないが)の見た目とは違ったが、妖夢などもあんな感じであったが、それでも違和感が拭えなかった。

 

 

現在

 

 

???「さて……霊夢っての探すか」

???「ここに居るわよ」

 声の方向を見ると、少女がたっていた。

赤と白を基調とした服を着ていて胸には黄色いリボン、チルノが言っていた通り、脇が空いていたので、納得する。

???「なるほど、あんたが霊夢か」

霊夢「へー、知ってるんだ。私のこと」

???「聞いたからな」

霊夢「誰に?」

???「チルノと大妖精」

霊夢「他に何か言ってたかしら?」

???「……何も?」

 見るからにヤバそうな殺気が溢れてきた。確かに強そうなので、脇巫女のことは伏せておこう。

霊夢「あっそ。で、あんたの名前は?」

???「わからない」

霊夢「なるほど、外来人ね」

???「外来人?」

霊夢「……あなた、記憶無いの?」

???「あったら名前言えるだろ」

霊夢「それもそうね」

 俺は外来人らしい

霊夢「名前どうすんのよ、無いと不便なんだけど」

???「決めていいのか?」

霊夢「あんたの名前でしょ」

???「そっか、霊夢さんなんかない?」

霊夢「自分で決めなさい。あと霊夢でいいわよ」

???「りょーかい、じゃあ」

 名前か………どうしようか

 

何してる?置いていくぞゼロ!

 

???「がっ?!」

 

なんだこれは?

 

何してるのー?置いてくよ?

 

これは、一体…

 

霊夢「ちょ、どうしたのよ?」

 

嫌だ!頼む!助けてくれ!ゼロ!

 

これは………

 

霊夢「……ぇ、ねぇてば!」

???「あ」

霊夢「大丈夫?」

???「ああ、うん」

霊夢「心配なんだけど」

 そういって霊夢は俺の顔を覗き込んできた。その目が合う。

???「大丈夫だ、それより決めた」

霊夢「名前?何にするの?」

???「零。多分これにしなきゃいけない」

霊夢「………」

???「なんだよ」

霊夢「ずいぶん痛い名前ね」

???「俺の名だ、俺が決める」

霊夢「あっそ、まあ、よろしくね?零」

零「ああ、よろしくな」

 

 

霊夢「さて、と」

零「なんだこれ?」

 目の前には透明なガラスで出来た玉がある。大きさはだいたい40センチくらいだろうか?でかい

零「何するんだ?」

霊夢「あんたの能力見なきゃでしょ?」

零「これで?見れるのか?」

霊夢「そうよ、あとは……」

???「おーい!」

霊夢「来たわね、魔理沙」

魔理沙「ん?どうしたんだぜ?霊夢。ってそいつは」

零「どうも、零です。外来人ってやつらしいです」

魔理沙「らしいって……」

霊夢「記憶喪失なんだってさ」

魔理沙「なるほどなんだぜ、私は魔理沙、よろしくなんだぜ!」

零「ああ、よろしくな」

霊夢「零ー?見るわよ?」

零「ああ、頼む」

 

 霊夢に呼ばれたのでガラス玉に手をかざす。霊夢も同じようにかざし、何か呟いている。

 

 

 

 

 

 長くね?始めてからかなりたつが終わらない

 

零「魔理沙、いつもこんななのか?

魔理沙「いや、いつもはすぐに終わるんだぜ

 などと話していると………不意に霊夢の()()()()()()()()()()()()

そして

???「霊夢!今すぐやめなさいッ!」

霊夢「え」

誰かの声が聞こえると同時にガラス玉は目映い光を放ち

俺の意識は途絶えた

 

 




いかがだったでしょうか?中途半端ですいません……
次回は、零の能力が公開されます


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明かされる能力

お気に入りにしてくれている方、ありがとうございます!
今回は零の能力が明らかに!



こちら連合軍防衛隊本部、コードゼロ応答せよ。繰り返す………

 

なんだ……これは……

 

体が重い……苦しい

 

 

誰か居ないのか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「…………うぅ…」

霊夢「! 零っ!」

零「れ……い…む?」

 

目が覚めると俺は布団に横になっていた。霊夢が敷いてくれたのか?

 

霊夢「全く、心配させないでよ」

零「俺は……あのあとどうなった?」

霊夢「それは……」

 

霊夢が言い淀んでいるとまた後ろの空間が歪んで開いた

 

???「それは私から話しましょうか」

零「誰だ?」

霊夢「あ?何で居んのよ。紫?」

 

紫、と呼ばれた女は目の前の裂け目からこちらを覗いていた

 

紫「はじめまして、私は八雲紫。この幻想郷の賢者ですわ。」

零「は、はじめまして。ん?賢者?」

紫「そうだけれども、今はどうでもいいわ」

 

いいのかよ

 

霊夢「何しに来たの、紫?」

紫「あら、彼に今後のこととかを話そうと思っていたのだけれど」

霊夢「そ、じゃあ私はそとにいるから」

紫「駄目よ、貴女も聞きなさい」

霊夢「何でよ?」

紫「これから起こる異変についても話すからよ」

霊夢「!」

 

異変?なんだそれ

 

紫「異変っていうのは……そうねぇ…事件みたいなものよ」

 

コイツ、心読めんのか?!

 

霊夢「どう言うこと?」

紫「単刀直入に言うわ。零、あなたの元の世界なんだけれど」

零&霊夢「?」

紫「()()()()()

霊夢「!!」

零「…」

 

なるほどな、()()()()

 

霊夢「どう言うこと?!それ!?」

紫「そのまんまの意味よ。彼のいた次元は崩壊し、消滅した」

零「だから記憶がないと?」

霊夢「?! 何言ってるのよ?!零!」

紫「使ったの?()()

零「多分ね、頭にさっきはなかった記憶が入ってる」

霊夢「??」

紫「彼の1つ目の能力、()()()()()()()()()()()()()よ」

霊夢「?????」

紫「彼の能力は干渉した、あるいは接触した世界の情報を得られる能力よ。ただ、消滅した世界の情報はきれいさっぱり忘れるみたいだけれど」

霊夢「何それ…使い道あるの?」

紫「わからない、私の持つ情報が少ないからなんとも言えないわ」

 

成る程、便利か不便かわからんな

ん?1つ目?

 

零「なあ、紫さん」

紫「何かしら?」

零「1つ目ってことは、まだあるのか?」

霊夢「嘘でしょ、2つもあるの?!」

紫「いいえ、3つよ」

霊夢( ゚д゚)ポカーン

 

あ、壊れた

放置しよう

 

零「で、その内容は?」

紫「二つ目は()()()()()()()()()()ね」

零「つまり?」

紫「技の情報や記憶のなかのものを使えるってことよ」

零「ショボくね?」

紫「そうね、3つ目が無かったらそうなるわね」

零「3つ目?」

紫「ええ、最後はある意味恐ろしい能力よ」

 

恐ろしい?どう言うこっちゃ

 

紫「最後は()()()()()()よ」

 

何言ってやがる

 

零「意味わからん」

紫「簡単にいえば()()()()()()()()()()()()っていえばいいかしら?」

零「なるほどな」

紫「え、理解したの?早くない?」

零「ああ、わからないってことを理解した」

紫「えぇ…」

 

使ってくうちに慣れるだろ、さて

一番気になってることをきくか

 

零「なあ、紫さんよ」

紫「何かしら?」

零「俺は何処に住めばいいんだ?」

 

そう、家がないのである

 

紫「此処よ?」

零「へ?」

紫「だから博麗神社(ここ)に住むの」

零「……」

霊夢「ちょっ、聞いてないんだけど?!」

 

あ、起きた。ってか今まで壊れたまんまだったのか

 

紫「だって今言ったんだもん」

霊夢「紫!あんたねぇ!」

 

賑やかだねー

 

魔理沙「お、目覚めてたのか」

零「あ、魔理沙。来たの?」

魔理沙「そうなんだが、どういう状況なんだぜ?」

零「えーとな」

 

 

少年説明中……

 

 

魔理沙「……なるほどなんだぜ」

零「わかってもらえた?」

魔理沙「とりあえず、お前が強いのと此処に住むのはわかったんだぜ」

零「そりゃあ、よかった」

魔理沙「じゃあさ、零」

零「んー?」

 

なんだ?まだわからないことでも………

 

 

魔理沙「お前に決闘(弾幕ごっこ)を申し込むぜ!」

 

 

零「…………はぁ?!!!」

 

 

 

 

 

 

 

キャラ情報更新

 

零(主人公)

 

性別 男

年齢 18

 

能力

 

世界の情報を得る程度の能力

情報を顕現させる程度の能力

干渉する程度の能力

 

 

 

 

 

 

 

この幻想郷の戦闘のルール

①スペカあり

②能力の使用あり

③互いに許可していれば()()()をさす(ピチュらせる)のもOK

 

以上の3つです

 

 




はい……次回は魔理沙との戦いです。
戦いのルールは普通の戦闘です、スペカルール?シランナ
戦闘シーン書くのも初なので見にくかったら意見コメお待ちしてます


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初の戦闘

こんにちは、フォーウルムです
今回はVS魔理沙です
今回から書き方を変えました。
見にくかったら意見ください


~零SAID~

 

 

 

「準備いいか?零」

 

魔理沙との弾幕ごっこ(戦闘)なんだが、普通に◯し合いじゃね?

 

「ああ、いつでもいいぞ」

 

霊夢には反対されたが、互いにピチュらせないという条件ならとokをもらった。

勝てるかどうかは別で

 

「負けそうならいつでも降参してもいいんだぜ?」

「しないよ。最後まで全力さ」

 

魔理沙には悪いけど()()()()()()()()()()()()

 

「じゃあ、行くぜ!」

 

魔理沙は箒に跨がり空高く上昇した

 

「くらえ!」

 

星形の弾幕が飛んできた

 

「おっと」

 

当たるといたそうなので回避する。速いもの、遅いもの。まっすぐ飛ぶものに曲がりながら飛ぶものと様々で多少驚く。

 

「夜なら綺麗なんだろうけどなー」

 

今はお昼過ぎ。明るいのもあって正直見にくいが空間認識に干渉してダンスのステップのように回避していく。

 

「舐めないで欲しいんだぜ?まだこんなのもあるんだぜ!」

「ん?(*゜ロ゜)ちょっま」

 

不意に感じた殺気に急旋回で回避行動をとると、さっきまでいた場所にレーザーが……

 

「殺す気か?!」

「避けれたんだから問題無いだろ?あ、おかわりもあるんだぜ!」

 

そういって何本ものレーザーが再び飛んでくる。

 

「チィッ」

 

いい加減避けるのも疲れてきた。

そういえば、幻想郷の情報に気になるものがあったな、と思い出す

『情報を元にその事象を顕現させることができる』

『どんなものにでも干渉できる』

(何事も試してみる価値はありそうだ)

 

「さあ、くらうんだぜ!」

 

恋符マスタースパーク

 

そう言って魔理沙はスペルを放ってきた

俺は()()()()()()()()()()()

 

「?!なにしてんのよ?!零!」

「避けないんだぜ?!」

 

そしてマスパは俺に

 

 

()()()()()()()

正確にはマスパがねじ曲げられたと言った方が言いかもしれない

マスパはあらぬ方へ曲がって俺には掠りもしなかった

 

「どう……なってるんだぜ?」

「……ふぅ、ぶっつけ本番でも何とかなるんだな」

 

内心出来るか心配だった俺はため息をついた

 

「これって……」

「言ったろ?干渉する程度の能力だって」

「!まさか……!」

 

そう、さっきのは俺がマスパの進む方向に干渉した結果だ。

もう少し試したいが、疲れてきたのでそろそろ終わらせよう

 

「何してるんだぜ?ぼーっとしてたら今度こそあたっt」

 

その瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「は?」

「そこまで!」

 

霊夢がこれ以上は無理だろうと止めてきた。

 

「負けたのかぜ?いや、でも…」

「あんた……それ大丈夫?」

 

魔理沙の脇腹からは血が滲んでいる。しかし、魔理沙は痛がらない。

 

「痛みは感じないはずだ」

「何でよ?」

「干渉して痛覚遮断してる。魔理沙、動くなよ?」

「え、一体なんなんd」

 

魔理沙の言葉が終わらないうちに脇腹の傷に触れる。

 

「////!!なっなななナニシテルンダゼ!」

「終わったぞ」

「へ?……あ傷が塞がってるんだぜ?服も元通り……」

 

手を離すと魔理沙の脇腹の傷はなくなり、服に滲んでいた血はなくなっていた。

 

「これも干渉の応用かしら?」

「まあね。思い付きでも何とかなるもんだ」

「すごいんだぜ……にしても悔しいんだぜー!」

「聞いてはいたけど…ほんとにぶっ壊れね」

 

感嘆の声をあげつつ悔しがる魔理沙と、呆れる霊夢。

うん、俺もそう思うよ

 

 

~霊夢SAID~

 

あれは強すぎる…

初めて能力の事を聞いたときも思ったが、彼の応用力も凄まじい。

おそらく彼は()()()()()()()()()()

そうなった時に、私は彼を止められるだろうか?

これも干渉のせいかわからないが、彼に手を排除しようという気になれない。

博麗の巫女なのに()()()()()()倒すことに戸惑ってしまっている。

どうすれば……

 

「霊夢?」

「え、ひゃあ!」

 

気がついたら、零がこちらの顔を覗いていた。

至近距離で目があってしまい、変な声が出た。

 

「な、何よ」

「いや、なんか考え事かなーってさ」

「別に、関係ないわよ///」

 

恥ずかしくは無いはずなのだが、勝手に意識してしまう。

 

「? そうか?」

「ええ、さて帰りましょう」

 

そう言って歩きだそうとしたが、零はついてこない。振り替えると彼は不思議そうな顔でこちらを見ていた。

 

「帰るって?」

「だから神社によ。しばらくはあんたの家なんだから」

「あ、ああ。そっか」

「何?文句ある?」

「いや、別に」

「そ……」

 

そう言って私は歩き出した。今度は彼も一緒に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここからは零についてです

 

能力説明

 

能力の発動条件や制限についてです

 世界の情報を得る程度の能力

零が触れた(接触した)世界の情報を得る能力で条件は無し

現在は幻想郷の情報のみです。

得られる内容は

・地理

・存在する生物

・その世界のルール

・その世界で使われた技や武器

等の情報を得られます

制限は

『崩壊した、あるいは消滅した世界の情報は記憶がごと消滅する』

というものです。

 

 情報を顕現させる程度の能力

情報や記憶を元にその事象を発動させる能力です。

例えば、霊夢の「夢想封印」や魔理沙の「マスタースパーク」等の情報があればそれを使用できるというもの。

情報は1つ目の能力で得られるので、基本何でも使えます。

発動条件

顕現させたいものの情報を頭に思い浮かべる事で発動します。

制限はありません。

 

 干渉する程度の能力

一番のぶっ壊れ。

その名の通り、ありとあらゆるものに干渉します。

弾幕やスペカはもちろん、天気や災害、さらには世界自体に干渉できます。

制限はありませんし発動条件もありません

ただし、他者への精神干渉のみデメリットがあり、それを使うと零に

・能力の暴走

・あり得ない事象の顕現

・致命的な物理被害

のいずれかが発生します

 

 

 




いかがだったでしょうか?
初の戦闘シーン、頑張って書きましたが見にくかったらスイマセン。
さて次回は、少しの日常と次のステップです。
霊夢との戦いはまだ先になりそうですが……気長に待っていてくださると幸いです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


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狂気との邂逅、封印の目覚め

はい、第一章の最終話です
めっちゃ長いのと予定を変更しすぐに終わる戦闘を入れました





それでは最終話どうぞ


「…………ふあぁ……」

 

欠伸をしながら眠い目を擦っているのは霊夢である。

今まで比較的規則正しい生活を送っていた彼女だが、最近は少し崩れてきていた。

理由は……

 

「起きたか?霊夢」

 

この居候の零のおかげである

この神社に住むようになってから彼は

「住まわせてもらう間の家事はやるよ」

と言って、炊事や掃除などを一人でやっている

結果霊夢は最近ずぼらになってしまっていた

 

「ん……ねむい…」

「眠いんなら寝てていいぞ、飯は作って置いてあるから」

「んー」

 

彼の能力の1つ、干渉する程度の能力はどうやら料理にも使えるらしく、作り置きの料理も能力1つで出来立てを維持できるらしい。

 

「どっか行くのー?」

「今日は湖の方に行ってくるよ」

「いいけど()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()……行ってきまーす」

「いってらっしゃ~い」

 

なぜ目立ってしまうのか、それは数日前に遡る

 

 

号外!白黒の魔法使い、外来人に敗れる?!

 

 

 

幻想郷でかなり有名な文々。新聞

その号外で取りあげられてしまったのだ…

幸い能力は明らかになってはいなかったが、それでも被害はあった

一番の被害はアリスだった

 

「魔理沙になにしてんのよ!!」

 

新聞片手に攻め込んできた時は驚いたが、零の干渉する程度の能力で視覚に干渉されて零の姿見えないようになったため何とか収まった

 

「あんたも大変ね~」

 

彼はこれからも苦労が絶えないだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

霧の湖にて

 

 

 

「まあ、そう言うことがあったんだ」

「「へー!」」

 

零は湖にいるチルノと大妖精に以前の出来事を話していた

 

「魔理沙さんに勝つなんて、お強いんですね!」

「そうだな!今度はあたいとやろうよ!」

「面倒だよ……てかチルノはさいきょーなんだろ?」

「もちろん!あたいにかてるのはあたいだけだ!」

 

会話だけ見ればほほえましいが、多くの人間が彼らを見たら妬みの視線を向けるだろう。

なぜか?

大妖精は右腕に、チルノは左腕に()()()()()()()()()()()()()()

もっとも零とチルノは気にしてないが

大妖精はさっきから視線を合わせられないでいた

 

 

 

 

一方その頃

 

 

 

 

「咲夜」

「はい、どうかされましたか?」

 

此処は紅魔館。城主のレミリアと従者の咲夜は共に窓の外を眺めていた。

 

「これ。わかるわよね?」

「外来人……ですか」

 

レミリアの手には文々。新聞が、あの号外があった。

 

「その人間、連れてこれるかしら?」

「神社にいるのでは?」

「いや、今は湖で妖精どもと戯れているようだ」

「わかりました、いって参ります」

 

そう言って部屋を出ようとした

 

 

()()()()()

「!……わかりました」

 

(お嬢様が()()()()()と仰った。あの男それほどまでなの?)

 

外来人が、しかも来て数日の人間が魔女を倒した

その時点で察しがつくが、余程強いのか

心に少しの不安と緊張感を持ち従者は標的()を探す

 

 

 

しばらくして

 

 

 

 

 

 

「おいこら」

「何かしら?」

 

 

俺は今縄でぐるぐる巻きにされて館の中に引きずり込まれている。

おかしい、さっきチルノたちにバイバーイと手を振って、よし帰ろうと思ったらこれである

咲夜という女が、やったのには違いないんだが…

 

「離せ」

「抵抗するでしょ?」

「しないから」

「しない?」

「しないよ」

「ならいいわ」

 

案外あっさり

話通じるならさっさとすりゃあよかった

にしてもだ

 

「綺麗な顔してんなー」

「?!?!」

 

あ、心の声が漏れてる。と気づくのは彼女の顔が真っ赤になった直後だ

いや、誰でもこの顔を見ればそう言うだろう

銀髪のショートヘアーに左右のお下げ、瞳は深い青色で唇はほんのりピンクがかっている

霊夢は霊夢で綺麗だが、この女もまた綺麗だった

 

「バカ言ってないでいきましよ」

「あ、噛んでr」

グサッ

「痛い?!」

 

ナイフが刺さった、しかも首に

 

「殺す気か?」

「何で死んでないの?」

「しらぬ」

 

そういう体なのだ仕方がない

 

 

 

 

 

しばらくして……

 

 

 

「ここよ」

「ここは?」

「主の間。お嬢様がお待ちよ」

 

なるほど、確かに広そうだ

じゃあ早速はいr

ガッシャアン

 

 

「そこは玄関じゃないのだけれど…」

「うっさいわね」

 

なんか霊夢が窓から入ってきた

 

「霊夢、よお( ・∀・)ノ」

「よお、じゃないわよ!なにしてんのよ!」

「ごめんなさい、私が連れてきたの」

 

調子にのったら怒られた

 

「なんで?、レミリアの指示かしら?」

「ええ、貴女の所には後で詫びのお酒を持っていこうと思っていたのだけれど」

「な?!」

 

あちゃー、やったな霊夢お前

 

「そっそれならそうと言いなさいよ、窓割らなきゃよか……あれ?」

「あら?窓が直ってる」

 

気がつくと霊夢が割った窓はしっかり割られる前に戻っていた

能力使って直しました

 

「さっさといこうぜ」

「そうね、お嬢様を待たせてはいけないわ」

「あ、待ちなさい!」

 

 

主の間

 

 

 

「よく来たな、私はレミリア・スカーレットだ」

 

お嬢様、なんかで思ってたのと違う

見た目はチルノたちと同じくらいか

髪は紫で背中には蝙蝠の羽がついていた

 

「はじめまして、零だ」

「そうか、零か。ところで…」

 

レミリアは霊夢の方を見て少しびくびくしている

 

「なんで霊夢がいるの?」

「うちの居候勝手にらちった癖に何いってんのよ」

「う、ごめん」

 

なんかしおらしいぞ

 

「で呼ばれた理由は?」

「ああ、実はな…」

 

レミリアが話そうとした瞬間

後ろの壁が爆発した

 

「?! なんだ?!」

「あれぇ?お姉さま以外のがいる。咲夜でもないのね」

 

レミリアによくにた金髪の少女がいた

 

「フラン……」

「お姉さま、いつもずるい。私も壊したい(遊びたい)!!」

「!! 避けなさい!」

 

さっきまでいたところに弾幕が…

 

「逃がさないよ?『きゅっとしてドカーン!!』」

「なッ!!……ぐあああぁぁ……!!」

 

フランの技が俺の右腕に当たったらしい

右腕が消し飛んだ

 

「ッ!零!!しっかりしなさい!」

 

霊夢が声をかけるが、痛みで……意識…が

 

「零!しっか……さい……」

 

声が遠く、離れていく……

 

 

 

 

 

死んだのか?

いや、終わるかよ

まだあいつらがやってるんだ

 

 

 

「やあ、気づいたみたいだね」

誰だ?

「ぼくかい?ぼくは君さ」

何を言っている?

「ん?ああそうだったね君は作られた側だものね」

作られた?俺が?

「正確には、人格がだけどね。」

俺は、戻りたい

「うん」

まだ…あいつらが戦ってる

「辛いよ?」

知っている

だからこそ戦わなくてはいけない

「もうもとには戻れない、それを覚悟の上でも?」

ああ。覚悟は出来ている

「そうか、流石だよ、きみは」

どうすればいい?

「大丈夫、君は何も心配しなくていい」

なぜだ?

「君が悪いんじゃない。僕と八雲のせいさ」

八雲…。紫か!

「うん。約束は破ってしまうけど、仕方がない」

「僕の命をあげる」

だが…

「いいからいいから」

すまない

「大丈夫、いってらっしゃい」

ああ、行ってくる

「あ、最後に」

「紫さんに謝っといてね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アハハハハハ!」

「くっ!」

 

フランを止めるために零から引き離したまではよかった

空中戦にもなれてる

それでも

 

「ねえねえ!もっともーっと遊んでよ!」

 

フランの攻撃は激しさをます一方だ

 

「ねえ!、止めらんないの?!」

「妹様ってこんなに強いんですか?!」

「私の妹だ!弱いわけ無いだろう!」

 

こちらは3人がかりなのに対し、あちらは1人

数的有利があるはずなのに、それを覆してくる

 

「くそ、このままじゃ?!」

 

一刻も早く零を治療しないといけないが、そんな暇はなかった

だがおかしい、なぜフランに勝てない?

 

「!ねえ、レミリア!あれ何?!」

 

そこには、いや、フランの顔の頬には()()()()()()()()()

 

「わからない!だが、あれが出て以来フランは凶暴化が増している!」

「じゃあ、あれが」

 

それに気をとられてしまった

フランが間近に迫る

 

「アハッ死んじゃえ!!」

「しまった!」

 

フランのレーヴァテインが私に刺さる…

 

 

 

 

ことはなかった

 

「ガフッ」

「え」

 

急にフランがいなくなった

否、()()()()()

 

「な、なん……で?」

 

目の前には零がいた

フランに破壊された腕は戻っていた

しかし

どこか違う

見た目も、雰囲気も同じはずなのに

いや、違う点が1つだけあった

彼の目は透き通るような白であったはずだ

だが今の彼の目は

 

 

深紅の色になっている

 

 

「霊夢」

「零……大丈夫なの……?」

「下がってろ」

「!」

 

霊夢は2つの意味で泣いた

1つは零が戻った安堵から

もう1つは

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という不安からである。

 

「大丈夫だ、霊夢」

 

彼の言葉が続く

 

「すぐ戻る」

「!!……うん……わかった…」

 

そう言って外来人()狂気(フラン)のもとへとんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛いじゃん」

「悪かったな」

 

目の前にはフランがいる。

全身の傷は癒えたらしく、見えない

だが、()()()()

 

「終わらせてやるよ」

「やれるもんならやってみてよ!」

 

フランがレーヴァテインを構えて突進してきた

零は、

 

「遅いな」

 

彼は

レーヴァテインを弾き、叩き折り、フランの体に己の手を突き刺した

 

「がッ?!」

「いい加減にしやがれ()()()()

 

そして、引き抜いた手には百足のような、虫がいた

 

「あばよ」

 

零はそれを握り潰した

虫が消滅すると同時にフランの頬の紋様も消えていた。

 

 

 

 

 

 

「フラン!!」

「眠っているだけだ」

「ありがとうね、零」

 

力尽き眠っているフランを抱いたレミリアがお礼を述べた。

 

「それよりも、霊夢」

「……何?」

「有力者全員集めてくれ」

「!…どうして?」

「以前紫が言っていただろう?」

 

 

そう、これは始まりに過ぎない

 

 

 

「異変だよ、俺が原因のな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまでご覧いただきありがとうございます
次回は第二章の前にちょっと回想を挟みます
内容は「零の元の世界」についてです
投稿期間空くかもですが頑張りますので、気長にお待ちいただけると幸いです


これを書いてる間にお気に入りが10件を突破いたしました!
ありがとうございます!


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第一・五章
幕間 もう1つの地球


これは主人公の零が元々いた世界で何があったのか、そしてそのあとどうなったのか。というお話


紅魔館のホールには多くの実力者が集まっていた

八雲紫や博麗霊夢はもちろん

館の主レミリアや西行寺幽々子

八意永林や古明地さとりなどもいた

 

 

「急にお呼び立てして申し訳ない。俺は零。最近ここに来た外来人だ。」

 

零が話し始めた

 

「皆さんに集まってもらったのは他でもない。今、そして今後発生するであろう異変についてだ」

 

周囲にどよめきがはしる

無理もない

これから起こる異変についてなど話す者は今までいなかったのだから

 

「先ずは聞いてほしい。なぜ、この異変が起こったのかを」

 

 

 

 

地球にて彼らは戦争していた。

彼らの世界には2つの勢力のみが存在していた。

独裁政治を敷く帝国軍と小さい国々の集まりである連合軍

この2つが争っていた。

連合は生物兵器を、帝国は機械兵器を使った戦争でなん十年も続いていた

しかし、最悪の事態が起ころうとしていた。

帝国は次元を越える装置を開発し他の次元から戦力を得ようとしたのだ

連合は必死に抵抗しようと策を練った

その結果生まれたのが『零』であった

彼は帝国軍を蹴散らし続けた

そして、ついに帝国軍を追い詰めた

だが、帝国軍は諦めなかった

戦いの最中、帝国軍は座標をセット、そして繋がった次元に兵器を送り込んだのだった

直後、帝国の本拠地は巨大な爆発を起こした

装置が負荷に耐えられず暴走したのだ

結果、巻き込まれた零は次元転送に巻き込まれた

だが、これで終わらなかった

転送の最中にアクシデントがあり零の精神が不安定になった

直後にであったのが八雲紫であった

零は彼女に事情を説明した

取引として『零が別次元で使っていた力を能力に置き換えて幻想入りさせる』

ということが決まった

だが、その代償として零の魂を別の魂に換え、元の魂を封印することで、最悪の事態に備えたのであった

 

 

 

「これが、俺がこの幻想郷に来た理由だ」

 

誰もが真剣に聞いていた

そこで1人が手を上げた

緑髪の巫女、東風谷早苗である

 

「あの、機械兵器っていうのはどういった物なんでしょうか?」

「これだ」

 

零は黒い何かを宙に上げ固定した

それは百足のような機械だった

 

「これは『パラサイト』。名前の通り人間に寄生する」

 

フランの中にいたものと全く一緒でレミリアは顔をしかめた

 

「これは生物に寄生し、精神を暴走させる。特に『負の感情』を抱いていればより強く発現する。発現すると顔に紋様が浮かび上がる、最下級は緑で強くなるに連つれて赤くなる」

 

フランについていた紋様は黄色だったから、そこそこ強いんだろう

 

「あともう1つ、パラサイトに寄生された奴には、()()()()()()()

 

ざわめきが起こった

能力が効かない、となれば止める手段がガクンと減ってしまうので当然だろう

 

「じゃあ、どう止めればいいのかしら?」

 

発言したのは風見幽香だった

 

「能力は精神的なものはほぼ効かない、物理的に無力化するしかない」

 

相手を傷つけるしかないのか……

 

「まあ、それに関しては何とかするよ。他にはいないか?」

 

誰も発言するものはいなかったのでそのままお開きとなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、零」

「どうした?霊夢?」

 

会議後、霊夢は零に気になったことを聞いていた

 

「記憶、戻ったの?」

「……いや、俺はあいつとは違うんだ」

「?」

「あいつの記憶は、脳にのみ保存されている。今の俺は……別人格とでも思っといてくれ」

「そう……」

「あとな」

「? 何よ」

()()()()()()()()()

「!! そんな……」

 

衝撃的だった。

 

「大丈夫、元の…霊夢の知ってる零に変わるだけさ」

「……貴方はどうなるの?」

「消えて無くなるよ」

「…怖くないの?」

「怖いさ…でもやらなきゃいけない」

 

強い……でも……悲しそうに見えた

 

「……ヤバイな…眠くなってきた、霊夢」

「何?」

「お願いを2つほど聞いてくれないか?」

 

なぜか、胸が苦しい

でも、心配をかけないように答える

 

「何をすればいいのかしら?」

「あいつが目覚めたら、何があったか伝えてほしい。」

「わかったわ。もう1つは?」

「肩を、貸してほしい」

 

零の声はか細くなっていた

 

「っ……いいわよ」

「ありがとな」

 

霊夢が座ると、そのとなりに零も座って、霊夢の肩に頭を乗せた

 

「重くないか……」

「これぐらい余裕よ」

「そうか……」

 

 

「なあ、……霊夢…」

 

 

「何よ?」

 

 

ありがとうな、本当に

 

 

 

それがもう1人の零()の最後の言葉だった

 

 

 

 

 

 

 

「早く起きなさいよね、零」

 

彼女の目には涙がたまっていた

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
次回から異変解決に向けて物語が進んでいきます。

お楽しみに!







戦闘シーン増えるから、書く練習しなきゃ


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第二章 寄生異変
キャラ/用語等紹介


第二章の主要キャラと用語の紹介です
零+他キャラです
用語はパラサイトについて等です
質問などあればコメントください

餡 子太郎さん、コメントありがとうございました!


*零の干渉の能力に説明を付け加えました


 

 

 

性別 男

年齢 18

能力

世界の情報を得る程度の能力

情報を顕現させる程度の能力

あらゆるものに干渉する程度の能力

 

干渉について

あらゆることに干渉する、とあるが出来ないものと難しいものも存在する

 

不可能なもの 過去

 

難しいもの 他人の精神を操作する

      時間の流れを遅く/早くする

 

使用武器 素手

武器はあらかた使えるし、なんなら能力で作れるけど基本的に素手

 

スペルカードについて

零のスペルは「カード」ではなく「コード」として表記

使うスペルは零本人が作った「スペルコード」と能力で複製した「コピーコード」の2種類

 

コピーコード(以後「コピー」)の概要

・コピー元のスペカの効果でコードが変化

 例 攻撃系→/コード

   防御系→#コード

   補助系→*コード

・コピーの種類に関係なく一回ごとにクールタイムが必要

・クールタイムは使ったスペルに応じて変化する

・コピーには「熟練度」が存在し、使えば使うほど威力や性能が向上する。

 

オリジナルスペルについて

零が作った零専用のスペル

一回一回の威力や効果は絶大だが消耗が激しい

コピーと違い熟練度はない

既出のオリジナルコード

「《解放》捕食者の紅き意志(プレデター・クリムゾン・ウィル)

系統:身体補助系

使用中は使用者の身体能力が飛躍的に向上する。

暴走状態で3人がかりでも止められなかったフランドールを僅か数秒で無力化できるほどになる

この状態でパラサイトに寄生された人の寄生部位に触れるとパラサイトに触れる事ができる

使用中は両目が紅色に染まる

制限時間が存在し最大1分30秒ほど

 

本人について

最近は、霊夢やチルノだけでなく、妖夢や咲夜などとも交流を深めている

特にフランにとても懐かれており紅魔館に寝泊まりする日も増えた

博麗神社に戻ると霊夢が拗ねていたりするのでかまうが、何故拗ねているか本人は知らない。

 

博麗霊夢

性別 女

年齢 18

能力

空を飛ぶ程度の能力

 

使用武器 お札、大幣 封魔針

大幣とはお祓い棒のことです。こっちの方がカッコイイ

お札や封魔針も持ってるけど大幣で大抵はなんとかなるので使わない

 

本人について

本作のヒロイン

かなり強い部類に入るが、零が強すぎる上に戦闘が少ないので霞んでいる

お金や酒に弱い

 

零に関して

最初は零に対して何も気にしなかったが、日々を過ごすにつれ意識するようになった。

今では零の事が頭から離れないくらいである

 

 

フランドール・スカーレット

性別 女

年齢 不詳

能力

あらゆるものを破壊する程度の能力

 

使用武器 レーヴァテイン

普段は悪魔の尻尾の形をしたステッキ

フランのスペルによって剣モードに移行する

 

本人について

寄生異変の最初の被害者

「地下に幽閉されていた過去の記憶と当時の孤独」がトリガーになり、寄生された。

今は完全に回復し、零たちと行動を共にしている。

レミリアより子供っぽい発言が多いが、戦闘時には相手を見極める冷静さもあるが表情には笑みが浮かんでいるため、戦闘狂として見られている

 

零に関して

自分をパラサイトから助けてくれた恩人として見ている

零を呼ぶときは「お兄様」と呼ぶくらいに懐いている

 

魂魄妖夢

性別 女

年齢 17

能力

剣術を扱う程度の能力

 

使用武器 楼観剣 白楼剣

説明不要の二振りの刀。

 

本人について

白玉楼の庭師で幽々子の従者

毎日鍛錬を欠かさず、日々努力している

 

零に関して

前々から交流はあった

白玉楼に来た際に零に決闘を申し込むも呆気なく敗北

以来、ライバル視するようになり、零が訪れる際は必ず手合わせをしている

ライバル視と同時に異性としても見ているためつばぜり合いになると恥ずかしさでせり負ける

あんまりみょんは使わないが気が緩むと出てくる

 

ここからはパラサイトについてです

パラサイトといいながら自立してるのもいますが、許してください

 

パラサイト

他者に寄生し、精神を乗っとる、狂わせるなどの影響を与える

負の感情や悩み、トラウマを抱えた生物ほど寄生されやすい

大きさは大体10~15センチほどで基本的には金属ににた殻を纏っているが、寄生する際には霊体になり憑依するかのように寄生する

上位個体も存在しており通常個体との差は大きさと暴走時の戦闘能力である

寄生された人物が戦闘状態になると頬に紋様が現れる。右か左かはランダムである

色は弱い種類が緑色で黄色→オレンジ→赤の要領で強さが変化する

 

パラサイト・トルーパー

パラサイトが変異した個体

原因は幻想郷に存在する魔力や霊力によるものとされているが詳細は不明

人の形をしており、身長は150~180と様々である

戦闘スタイルも個体差で変わり、剣や槍、銃を使うものも存在する

 

パラサイト・ネスト

パラサイトの巣

幻想郷に来る際機械から生物へと変異した個体が作りだした

中からはパラサイトが発生するが、出現するまでに半日から1日程度かかる

耐久性が高く、破壊するのには相当の火力が必須

 

 

 

その他の用語

 

寄生異変対策連合

 

今回の異変に対して幻想郷内で組まれた連合

紫、永林、幽々子、レミリア、さとりの5名を筆頭に名だたる妖怪や実力者が集まって結成された

部隊も存在し、4人一組の「精鋭小隊」と1人の実力者と複数の構成員からなる「活動中隊」がある

精鋭小隊はパラサイトの対処、活動中隊は民間人の避難誘導や安全確保が主な役割である

ちなみに、零は精鋭小隊の一番隊でメンバーは霊夢、フラン、妖夢である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?
説明ばっかですいません……

次回から第二章本編がスタートします

コメントや感想、ご意見お待ちしてますのでよろしくお願いいたします!


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第一精鋭小隊

二章本編です

会議から3日ほど経った日のお話です
今後他の隊も徐々に登場します
要望があれば紹介まとめなども作ります
アンケートにもご回答ください!


それではどうぞ!



 

 

霊夢は神社の縁側で横になっていた。

天気は快晴で気温もそこそこで最高の昼寝日和だった

 

「何だらけてんの?」

「んー、いいじゃん。トラブルも起きてないんだし」

 

霊夢に話しかけたのはフランドールである

彼女は吸血鬼でありながら日陰ではなく日当にいる

本来なら一瞬にして灰になるはずであるが…

 

「便利になったわね、あんた」

「うん、まさか()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それは3日前の夜のことである

 

 

博麗神社の居間に8人の人物が集まっていた

居るのは零と霊夢に早苗

紫、幽々子、永琳、さとり、そしてレミリアである

他はそうでもないが早苗は縮こまっている

無理もない、同じ部屋に紫や幽々子、永琳といった賢者に紅魔館の城主と地霊殿の主人

幻想郷最強の霊夢がいる上に外来人ながらチート能力3つ持ちの零がいるのだ

 

「そんなにビビるなよ」

「は、はい…」

「さて、始めましょうか。みんなに集まってもらった理由は異変に関してよ」

 

紫が話し始めた

 

「今回の異変に対して対策本部を設けて対パラサイト用の部隊を編成しようと思うの」

「部隊?随分と警戒してるのね、紫」

「ええ、それで内容なんだけど。4人で一組の精鋭小隊と複数の構成員で組む活動中隊を作るつもりよ」

 

 永琳の質問に答えながら紫は話を進める

 

「話はわかったがあんたらはどうするんだ?

「私たちは基本的には貴方達に指示を出すわ」

 

俺の質問もさも当然のように答える

 

「わかった。それで俺は?」

「あなたには第一小隊に入ってもらうわ」

「メンバーは?」

「決めていいわよ、あなたが信頼できる人を選びなさい」

 

1番だしな…、なら

 

「まずは霊夢だな」

「わ、私?!」

「ああ、信頼できるし強いからな」

「な、なんだ…わかってるじゃないの(零と一緒…えへへ)」

(嬉しそうですね、霊夢さん)

 

心がさとりに読まれていることを霊夢は知らない

 

「次はフランだな」

「フランを?いいけど無理させないでね?」

 

レミリアから反発されるかと思ったがあっさり許してもらえた

 

「最後は妖夢だな」

「妖夢ちゃん?いいわよ〜」

 

幽々子からの許可もあってメンバーは決まった

 

「さて、早苗?」

「は、はい!」

「貴女には他の隊を割り振ってもらうわ、お願いできるかしら?

「わかりました!」

「そ、じゃあもういいわ。零」

「あいよ」

「え、どういうk」

 

言い終える前に早苗を守矢神社まで飛ばした

 

「…なんか雑いわね」

「気にすんな」

「もう終わりでいいか?」

「ええ、お疲れ様。」

「そうか。零、お願いしてもいい?」

「わかった」

 

そう言ってレミリアたちを元の場所に転移させた

残っているのは零と霊夢と紫だけになった

 

「じゃあ、私も帰るわね」

「ええ、じゃあね紫」

 

そう言って紫もスキマで帰っていった

周りには2人以外居なくなった

 

 

 

 

 

「さて、と…霊夢、俺らも寝ようk」

ドサッ

 

霊夢に寝ようかと言おうとしたら霊夢におっかかれられ、そのまま倒れ込む。

 

「!? どうした?」

「…ないわよ…」

「?」

どうしたじゃないわよ!!

「!」

 

霊夢は限界であった

そう、目の前にいる彼は数時間前まで瀕死に近い状態で気絶したのだ

しかもその後『もう一人の零』だったとはいえ隣で想い人が死んでしまったかのように感じてしまっていたのだ

今までそういったことがなかっただけに霊夢には耐えられなかった

 

「どれだけ心配したと思ってるのよ!腕は無くなるし出血も酷かったし、急に雰囲気変わるし!!それに…それに!」

「……」

 

零にはいなくなった人格の話はしていない

話せば彼が傷つくと思ったから

 

「そのまんま寝ちゃって…ほんとに心配したんだから!ばかぁ!!!」

「霊夢…」

「…うぅ……ぐすっ…」

 

そのまま霊夢は暗い居間で零におっかかったまま泣いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着いたか?」

「…うん…」

 

二人は縁側に座っていた空には綺麗な月が煌々と輝いている

 

「心配かけてごめんな」

「全くよ、もう」

 

霊夢は零の隣に座って寄りかかっていた

 

「もう少しこのままがいいな」

「わかったよ、風邪ひかないようにしておく」

「ふふっ、ありがとね」

 

そして、霊夢は眠った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

 

「フラン居るかー?」

 

零は紅魔館に来ていた

 

「あ!お兄様!」

 

フランが抱きついてきた

零が来ると決まって抱きついている

 

「お姉さまから聞いてるよ、フランを選んでくれたんでしょ?」

「そうだが、嫌か?」

「全然!今日はどうしたの?」

「ああ。試したい事があってな」

 

そう言って零はフランの頭に手を乗せた

 

「?何するの?」

「いや、もう終わったよ」

 

と言って零は()()()()()()()()

 

「!!ちょっと…ってあれ?」

 

フランの体は日光にあたっているが全く変化はなかった

 

 

 

 

 

現在

 

「まさか干渉でそんな事ができるなんてね」

「うん。びっくりだよ」

 

そんな話をしていると

 

「霊夢、フラン。ここにいたのね」

「紫、どうしたの?」

 

紫が現れた

嫌な予感しかしない

 

「早速出たわ。対処してもらえるかしら」

「…詳しく」

「人里でパラサイト寄生者を確認、数は2。両方とも色は緑よ」

「零と妖夢は?」

「これから伝える予定だけど、先に行っててもらえるかしら?」

「誘導は?」

 

そう言った時だった

 

ブゥン

ドサッ

 

「グウッ」「ギヒィッ」

「!!これって!」

「まったく、これじゃ人か獣かわからんな」

「! 零!」

 

パラサイトに寄生された町民とそれを連れてきたと思われる零が

ここまで転移したのだ

 

「すまん、抑えられるか?」

「任せなさい!」

「いくよ!」

 

そう言って2人は町民を抑える

 

「さて、やるか」

 

彼は構える

力を解放させるために

 

「スペルコード《解放》捕食者の紅き意志(プレデター・クリムゾン・ウィル)

 

ゼロの目が真紅に染まる

 

「霊夢!フラン!」

「「!」」

 

零の声で2人は距離をとった

 

「ギシャァ!!」

「遅えよ」

 

零は滑るように動き2人の町民からパラサイトを引き剥がした

 

「じゃあな」

 

そして、握り潰した

 

「ふう」

 

スペルを解除しため息をついた

 

「お疲れ様、零」

「おつかれー!」

 

霊夢とフランがそれぞれ労いの言葉をかけた

 

「ああ、あれ?紫は?」

「先に帰ったわよ」

「そうか。……なんか腹減ったし飯食うか」

「さんせー!」

「妖夢も呼びましょ」

「そうだな。さて、何食おうかな」

 

昼食の話をしていた時だった

 

「霊夢様いらっしゃいませんか?!」

 

何者かが飛び込んできた

見れば鴉天狗であった

しかも体の所々に傷があった

 

「いるけど、どうしたのよ?」

「フラン様と零様は?」

「いるよー」

「これから飯なんだが、なんかようか?」

 

元気に答えるフランと、食事を邪魔されて不機嫌な零を確認するとその鴉天狗は用件を言ってきた

 

「緊急です!パラサイトに寄生された人が人里を襲撃中!加勢してはいただけませんか!」

「「「?!」」」

「前線はすでに崩壊寸前です!これ以上は持ちません!」

「おい、状況をもっと詳しく」

「はい、今現在人里をパラサイト寄生者が襲撃中、数は三人です。今現在精鋭第二小隊とその場に居合わせた妖夢様が対応、第一活動中隊が民間人の避難誘導をしています。」

「二番隊と妖夢で手一杯の上に押され気味って一体誰が?」

「……申し上げます」

 

そこで鴉天狗は一度、唾を飲み込み、こう言った

 

「今回の襲撃者は、犬走椛様、聖白蓮様、霧雨魔理沙様です……!」

「はぁ?!!」

「そんな…!」

「嘘でしょ?!」

 

 

最悪の事態になった

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 認められたい願い、孤独を知るもの

 

 

 

霊夢「魔理沙……なんで…?」

魔理沙「私は、もう絶対に負けられないんだぜ…」

フラン「止めて見せる!絶対に!」

椛「どうすれば……認められるんですか…?」

零「来いよ、全力で相手してやるから」

白蓮「迷う必要はありません、私が解放して差し上げましょう!」

 

 

 

さあ、戦いを始めよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

「これ渡しとく」

「何よ?これ?」

「? スペカ?」

「対パラサイト用の武器だ、スペカみたいに発動すれば使える」

「「!」」

「あの三人との戦いで必要になるだろうしな…さあ、行くぞ!」

「うん!」

「ええ!」

 

 

 

 






はい、いきなりクライマックスシーンみたいになってますが、しばらく続きます。
次回予告の台詞ですが、零だけが喧嘩口調っぽいですがお許しを

次回はフランvs椛です!お楽しみに!


追記
おまけのやつはオリジナル武器を渡すシーンです
本編にいれる場所無かったんで



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認められたい思い、孤独を知るもの

こんにちは、フォーウルムです
現在、絶賛腹痛と格闘中です。急に冷えすぎなんですよ…ホント

さて、今回からバトルラッシュです
第一戦はフランvs椛です

バトルの前に会話があります


 

 

「うぐっ」

「呆気ないんですね、妖夢さん」

 

目の前には椛がいる。頬にはオレンジ色の紋様が見える

人里へ買い出しに来ていた最中の襲撃だった

先ほどまで第二小隊と聖、魔理沙が戦闘していたが第二は壊滅、2人もどこかへ行ってしまっていた。

 

「いい加減諦めたらどうです?貴女には勝ち目はもうありませんよ?」

 

虚な目で言われる

実際に妖夢にはこれ以上の戦闘は不可だった

右腕は折れて、左足も痛めてしまった上に右足に関しては感覚が無い

立つことすらできず、絶望的だった

 

「な…なん…で?」

「復讐ですよ、私達を貶してきた連中への」

 

椛の目に怒りが写っている

 

「終わりにしましょう、いい加減辛いでしょうしね」

 

そう言って彼女は刀を構えた

 

「さようなら、妖夢さん」

 

彼女の剣が妖夢に向かう

 

 

「ギリギリセーフ、かな?」

「何?」

「フランさん…」

 

そこにはフランドールがいた

 

「あなたも邪魔をするんですか?」

「仲間が殺されるのを黙って見てられないの」

 

そう言ってフランはレーヴァテインを薙ぐ

それだけで強力な風が巻き起こる

 

「くっ」

 

椛が離れるのを確認しフランは妖夢にカードを渡す

 

「これは?」

「お兄様の。それを使えば永遠亭までいけるから」

「! ありがとうございます…」

 

妖夢は受け取ったカードを使い転移した

 

「さーてと」

「余計なことを」

 

今この場にはフランと椛のみ

 

「やる?」

「いいでしょう、叩き潰してあげます!!」

 

そしてフランと椛は激突した

 

 

 

「へー、やるじゃん」

 

二人は打ち合いをしていた。

切り掛かっては防がれ、斬りかかられては防いでの繰り返しだった

 

「これだけ強いなら妖夢に勝っても不思議じゃないよ」

「よく喋りますね、あなたは!」

 

思い切り振り切るが、バックステップで回避される

 

「ねえ?なんでそんなの(パラサイト)に頼るの?」

「そんなの?決まってるじゃ無いですか?」

 

フランの言葉に椛は怒りを露わにする

 

「復讐のためですよ」

 

 

 

 

 

『天狗のくせに飛べない下等種』

そう言われたことがあった

天狗には鴉天狗と白狼天狗の2つが存在していたが、この世界では白狼天狗は馬鹿にされてきた

椛にはそれが耐えられなかった

どれだけ努力をしても、どれだけ成果を出しても『白狼天狗だから』という理由で認めてはもらえない

 

「悔しい」

 

「強くなりたい」

 

そんな時だった

パラサイトが入って来たのは

 

「チカラガホシイカ」

 

私は

 

「欲しい、誰にも貶されない、誰にでも認めてもらえる力が!」

 

私は悪魔(パラサイト)に魂を売った

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどね。」

 

フランはそれを聴きながら切り合っていた

 

「だから復讐?」

「そうですよ、地下に閉じ込められて孤独だった貴女ならわかるんじゃないですか?」

「…」

「レミリアさんに復讐しようとしたはずです」

 

フランに問う

彼女ならきっと

 

「そうね、そう思ったこともあるわ」

「なら」

「でもね、私はそんなふうに思った事は無いわ」

「なっ」

「確かに私は地下では孤独だった、でもそれはお姉さまの愛だった。私が誰かを傷つけないようにする為だった。それに力が制御できる今は自由にさせてもらってるしね」

「恨んで無いのですか?あなたを閉じ込めたのに!」

「ないわ、少なくとも今はね」

 

理解できない

なぜ

なぜ耐えられる?

 

「ねえ」

「…なんですか?」

 

フランから予想だにしない言葉が出てきた

 

()()()()()()()()

「え」

「あなたには何かこだわりがあるのかも知れない。私が嫌なら他の誰かに。あなたはそれ程すごいのよ!」

 

今まであっただろうか

誰かに認められることが

あった

『何してるんです、椛?置いてきますよ?』

『椛さーん!早くー』

 

自分の上司の文とその友人のはたて

二人がいたのに

認めてくれていたのに

 

「私は…私は」

「戻りたい?」

「はい…戻りたいです。でも」

「?」

「私は許してもらえるんでしょうか?」

「大丈夫よ、心の闇なんて皆持ってるだろうし」

「そう、ですか」

 

また始められるなら

私は

 

「うぐっ?!」

「椛?!どうしたの?!」

 

椛の背中から何かが出てきた

 

『ギシャアアアアアア!!!』

 

それはパラサイトであった

 

「椛、こっちに!」

「は、はい!」

 

椛を後ろに下がらせてフランは()()()()()()

 

「力を貸して、お兄様」

 

《武装》ヴァルムヘイル

 

フランの手には真紅に輝く剣が

 

『フシャアアアア!』

 

パラサイトに向かってヴァルムヘイルを振る

 

「失せなさい、見苦しいから」

 

たった一回の振りだったのにパラサイトは跡形もなく消し飛んだ

 

 

 

 

「紫、いる?」

「呼んだかしら?」

 

椛を永遠亭に転移させたフランは紫を呼んだ

 

「椛をお願い」

「貴女は?」

「待機してる、二人が戻るまで」

「わかったわ」

 

そう言って紫はスキマに消えていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ、椛は駄目だったみたいですね」

 

聖白蓮は舌打ちをした

()()()()()()()()()()()()()()()

 

「さて、どうするか」

「見つけたぞ、虫野郎」

 

そこにはいつの間にか零がいた

 

「あら、零さん。どうされました?」

「やめろ気持ち悪い、大方脳にでも寄生してんだろ?」

「なーんだつまらない」

 

そう言って(パラサイト)は不敵に嗤う

 

「思ったよりお早い到着で、魔女はどうした?」

「霊夢がやってるだろうさ、それよりも」

 

零の言葉に怒気が含まれる

 

「覚悟はいいか?」

「それはこっちの台詞です、貴方ごときが敵うとでも?」

「もちろんさ、それに」

 

零が構えると同時に()()()()()()()()

 

「おいおい、いきなりですか?零」

「機嫌が悪いんだよ、あと喋り方変えんな気色悪い」

 

そして破戒僧(パラサイト)怪物()の戦いが始まる

 

 

 

 

次回 思いがけぬ弱点、新たなる力

 

パラサイト「お前の負けだよ、零」

零「舐め腐ってんじゃねえぞ、虫風情が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます

次回は零vs聖です
フランの新武器や今後の新武器は最終回後にまとめて紹介いたします。

零が段々不良っぽくなってる……






追記

コメントや感想、質問ください!
自分のモチベーションがめっちゃ上がります!




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思いがけぬ弱点、新たなる力

こんにちは、フォーウルムです

零vsパラサイトです

書いてる間によくわかんなくなってるかもですが許してください……

それではどうぞ!


 

 

 

「案外やるねえ?さすがは化物」

「虫に褒められても嬉しくねえ」

 

零とパラサイトの戦闘が始まってから10分ほどが経過した

二人とも素手であり、互いにスペルは使っていない

 

「お前の事、調べんのに苦労したんですよ?」

「その喋り方やめろって、いってんだろ」

 

零は思いっきり地面を叩いた

すると放射線状に地面が揺れ、爆発する

 

「おっとっと」

「身軽なやつだ」

 

このように、零がせめてもパラサイトはかわすので決定打が決められないでいた

 

「そういえば」

「なんだよ?」

「俺はお前の弱点を知っているんだよ」

 

意外な言葉に眉をひそめる

 

「弱点だと?」

「ああ、まず第一にお前の《解放》は少しの時間しか使えない」

 

なんだそんなことか、その程度は問題じゃないな

 

「あと、もう1つ。これは偶然かな?」

「何?」

「お前の能力ってさ、脳には干渉できるんだよな?」

「そうだが……まさか!」

「その手で俺の脳に触れたら、コイツ()はどうなるんだろうな?」

 

忘れていた

脳には記憶や人格の情報が入っている

ここに前線零の()()()()()()場合、

 

「気づいたか。そうだ、おまえは俺の脳に触れることはできない」

「……!」

「諦めろ」

 

衝撃の事実に気を取られ、隙を突かれる

 

「ガフッ……」

「醜いなぁ?ほらほら」

 

聖の身体能力が高いゆえに一回一回の一撃が致命的なダメージを与える

 

「ぐ……あぐ……」

「おいおいおい!その程度かよ!」

 

腕も足もまともに動かせない

ダメージがでかすぎる

 

「…なんだよ、終わりかよ。んじゃあ、魔女の方にでも…」

「待てよ」

「今さらか?」

 

《解放》を使って無理やり立ち上がる

 

「いいねぇ!最っ高だよ!」

 

だが

 

「まあ、お前の負けだが」

「がっ」

 

パラサイトは目に止まらない速さで近付き零の心臓に腕を突き立てる

 

「あ……」

「今度こそ、終わりだよ」

 

腕を引き抜くと零の体は地面に倒れた

 

「この程度か、まあ少しは楽しめたな……今度こそ魔女の方n」

 

ガウンッ

 

「あ?」

 

パラサイトは地面に倒れこんだ

おかしい、何が起こった?

 

「チェックメイトってヤツか?」

「な?!」

 

そこには()()()()()()()

だがその眼は蒼く染まっていた

 

「何が起こった…?」

「《*コード》フォーオブアカインド」

「そうか…分身か」

 

そう、あらかじめ戦いを始める前に零はフォーオブアカインドを発動し、分身に相手をさせていたのだ

 

「なるほどな…はなから負けてたのかよ」

「俺の方が一枚上手だっただけさ」

「くっそー、悔しいな」

 

そういったパラサイトはどこか嬉しそうだった

 

「なあ、1ついいか?冥土の土産に聞きたいんだ…」

「なんだ?」

「なんで、さっき蒼くなってたんだ?」

 

最後にそれだけ知りたかった、自分を破ったものを

 

「《解放》狙撃手の蒼き照準(スナイパーズ・ブルーサイト)、新技だよ」

「即興かよ、その銃もか?」

 

零の手には青い銃が握られている

狙撃銃のようだがスコープがない

 

「いや、これは前々から作ろうと思っていたやつだ、こんな使い方になるとは思わなかったがな。」

「……ははは、化物め」

「言ってろ、俺からも1つ」

「なんだよ」

「お前の目的はなんだ?他とは違うだろ?」

 

気になっていた

会話が出来るが被寄生者ではない

寄生するが脳に寄生する

明らかに今までとは違った

 

「俺はさ、()()()()()()()()()()()()()()()

「!」

「受肉しようと思ったらこの坊さんにであってな」

「じゃあ、なぜ彼女はお前が寄生するのを許したんだ?」

「…取引だったんだ」

「は?」

「『私の体を渡すから他の神社の者には手を出さないでくれ』ってさ」

「ほう?」

「まあ、そう言うことさ」

「…話したいことは終わったか?」

「ああ、俺もあんたも無いっぽいな、さっさと終わらせてくれ」

「……未練無いのか?」

「あるよ、お前にリベンジしたいし、もっとこの世界見たかったし、それに……」

 

そう言ってパラサイトは視線を反らした

 

「……まさかとは思うが聖のことが好きなのか?」

「うっ……」

「…マジかよ」

 

えー、どうしよう

 

「……まあ、負けたからな。俺はもうどうしようもない」

「じゃあ、()()()

「は?」

「今後、幻想郷で悪さをしない、必要なときは協力する、しっかりと周りのやつに謝罪をする。この三つを守るんなら、助けてやる」

「…なに言ってやがる?」

「そのまんまだが?」

 

唖然とした

さっきまで殺し合い、虫野郎とか言ってたのに

 

「どういう風の吹きまわしだ?」

「改心するなら助けてやる、こちらにもメリットはあるだろうしな」

「だが、おれは」

「体か?ほれ」

 

そう言って零は人の形をしたものを造り出す

 

「おいおいおい!人体錬成かよ?!」

「そんなもんじゃないさ、俺のやつを色々いじって複製しただけだ」

「やってんなあ」

 

相変わらず化物だ

 

「移れるか?」

「やってみる」

 

聖の体から離れ新しい体に入り込む

 

「どうよ?」

「すげえ、本当に体だ」

 

語彙が崩壊した

それほど感動的だった

 

「紫、いるんだろ?」

「…いるし見てたわよ」

 

スキマが現れ、紫が出てくる

 

「コイツ、本当に許すの?」

「少なくとも俺はな」

「もし、約束を破るようなら?」

 

紫の質問に零は笑顔で答える

 

「消す」

 

「わかった、反逆しないから、その顔やめて!」

「ならいいわ、この人は一旦つれていくわ」

「殺すなよ?」

「大丈夫よ」

「なあ、零」

 

スキマに入る前にパラサイトが声をかける

 

「なんだ?」

「ありがとうな」

「………おう」

 

そう言って二人はスキマに入っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…ううん……?」

「目覚めたか」

「ここは?」

 

聖が目を覚ました

 

「あの人は?」

「紫と一緒にいる。一応取引で安全は保証してるから大丈夫だろ」

「! そうですか!」

 

なんか嬉しそうだ

 

「嬉しそうだな」

「いや、その、えーと」

 

聖は恥ずかしそうに目を反らした

まさか……

 

「おい、まs」

「いやいやいや?!違いますよ?!別に好きだなんてっ!!?」

「聞いてねえよ」

「あ……」

 

聖、墓穴を掘る

 

「まあ、お幸せに?」

「////」

「ほら、これ」

「あ…ありがとうございます」

「一応永遠亭にいろ」

「わかりました」

 

そう言って聖は転移した

 

 

さて

 

 

「霊夢のとこに行くか。」

 

そして彼は転移した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけたわよ、魔理沙」

「…霊夢」

 

魔理沙を見つけた

彼女の頬には寄生者の紋様が浮かんでいる

色は赤だった

 

「終わらせましょ?あんたを救って見せる」

 

霊夢は新武器を構える

零からもらった新武器を

 

「……わかったんだぜ、霊夢。止められるなら止めてみせるんだぜ」

 

魔理沙も八卦炉を構えた

 

 

「「行くわよ(行くんだぜ)」」

 

あんた(魔理沙)を救ってみせる!!」

お前(霊夢)を越えてみせる!!」

 

 

 

 

 

次回 意地と決意、親友の想い

 

 

霊夢「絶対に助けるわ、魔理沙」

魔理沙「止めないでくれ、霊夢」

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます

次回は霊夢vs魔理沙です

あと2話で完結予定です

感想や、評価お願いします








二章終わったらどうしよう…


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意地と決意、親友の想い

こんにちは、フォーウルムです
霊夢vs魔理沙ですが
なんだか、すぐに終わりそうです

それでは第11話、どうぞ!


今回は二人の心境から始まります


 

 

 

 

 

親友だった

彼女は私が幼い頃からの親友だった

異変を解決し、喧嘩し

宴会で馬鹿やっては彼女(魔理沙)を叱ったりしていた

その日常が当たり前だと思っていた

 

魔理沙と零が戦ったあの日に

零が勝ったあの日に

彼女の気持ちを察することができなかった

異変が始まったあとも、彼女のことを気にしてはいなかった

気づけていれば、こんなことにはならなかったのに

気づいていれば、彼女は寄生されなかったはずなのに

これが、贖罪になるかはわからない

それでも私は親友(魔理沙)を救ってみせる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

親友だった

あいつは私の幼馴染みで最高の親友だった

一緒に異変を解決し、共に縁側で駄弁り

馬鹿をやってあいつ(霊夢)に叱られることもあった

私にはそれがとても幸せなことだった

 

零が来たあの日

あいつに負けたあの日

私は未熟さを知った

このままじゃ、霊夢についていけない

だからこそ、どんな手を使ってでも強くならなきゃいけない

だから、私は悪魔(パラサイト)を使った

今の私は零よりも強い

私は零を倒す

その邪魔をするなら

例え親友(霊夢)でも超えてみせる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くわよ!魔理沙!」

「来い、霊夢!」

 

二人が激突する

星が飛び、札が舞い、互いの必殺の一撃がぶつかり合う

魔理沙はミニ八卦炉を、霊夢は零から渡された新武器を持って全力を出しあっていた

 

「流石だぜ、霊夢!」

「あんたもやるじゃない!」

 

二人は互いに互いを知っている

故に

 

「一気に決めるぜ!」

「やってみなさい!」

 

互いの奥の手は互いの致命傷になり得た

 

『寄生符 マスタースパーク・ディザスト』

『神麗符 夢想封印・絶』

 

二人の技が激突する

あまりにも巨大な衝撃が空気を打ち、轟音を鳴らす

弾かれた二人は再び弾幕を展開し、拮抗する

 

((まだ、まだ行ける!))

 

霊夢も魔理沙も純粋に戦いを楽しんでいた

 

(ここまで強いなんて……もっと早く気づけていれば)

 

霊夢は悔いていた

魔理沙のことに気づけなかったことを

だが、霊夢は心のそこでは喜んでいたのかもしれない

彼女(魔理沙)とここまで戦えたことが

 

(終わりたくない…終わらせたくない!)

 

魔理沙は歓喜していた

霊夢に追い付けたことに

 

 

二人は何分、いや何時間も戦っていた

 

「「はぁ……はぁ」」

 

二人の体力は限界に到達していた

 

「?……魔理沙、貴女」

「……なんなんだぜ?…霊夢?」

 

霊夢は魔理沙の前に鏡のような結界を出した

魔理沙の頬からは紋様が消えていた

 

「あんた……いつから消えてたのよ?」

「わからないんだぜ……」

 

なんともしっくり来ない

なぜ紋様が消えたのか

それを教えたのは彼だった

 

「終わったみてえだな」

「?! 零!」

「久しぶりだな、魔理沙」

「ああ、えっと」

「どうした?」

「あー」

「零、ちょっと」

「ん?」

 

少女説明中……

 

「なるほど、戦ってたら魔理沙の紋様が消えて、気がついたら魔理沙も正気だったと」

「そうなのよ、なんでか知ってる?」

「これだろ」

 

そう言って零は霊夢に渡した武器を顕現させる

 

「あ、私の」

「これは『滅闇の神霊杖』っつってな」

「どんな効果なんだぜ?」

「戦闘してる相手を浄化しながら追い詰めるっていう効果だが?」

「「……」」

 

事無げに伝える零に対し二人には思うところがあった

 

「零……」

「?」

「そんなチート武器使わせないでよぉ!!」

「なんでぇ?!」

 

チートすぎる、故に締まらぬ

 

 

 

帰り道にて

 

魔理沙と零は空を飛んでいた

 

 

 

 

 

「それが、寄生された理由か」

「ああ、そうなんだぜ」

 

零は魔理沙の動機を聞いていた

 

「俺に負けたから、か」

「笑うんだぜ?」

「笑わねえよ、悔しいことは誰にでもあるもんさ」

「……原因の癖に」

「悪かったよ」。。まあ、動機が知れて俺は十分だよ」

「私もいいかぜ?」

「いいぞ」

「霊夢のあの武器、なんであんなものを渡したんだぜ?」

 

魔理沙の疑問はあの武器についてだった

 

「だって、嫌だろ?」

「?」

「親友を理由があるとは言え叩きのめすなんてさ」

「!……配慮だったのかぜ?」

「まあな、ちなみになんだが」

「なんなんだぜ?」

 

そこでは一拍開けて零がまた口を開いた

 

「お前らから少しはなれたところで待機してたんだが」

「?」

「もし霊夢があれを使ってなかったら」

「使ってなかったら?」

「俺がお前を狙撃してた」

「?!?」

 

 

「狙撃って、射殺ってことかぜ?」

「パラサイトだけな」

 

さらっと言われたことに、驚きながらも

魔理沙は満足していた

初めて霊夢と全力で戦えたことが

とても嬉しかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っていうことだったわけよ」

「へ、へー」

 

ここは永遠亭

零は妖夢に結末を話していた

零の頭には包帯が巻かれている

 

「それで、戦いの最中に怪我をなされたと」

「いや、これは霊夢に零距離で夢想封印食らった」

「……それでよく生きてましたね」

 

相変わらず化物だと妖夢は思った

 

「零?いるかしら」

「おう、いるぞ」

 

紫が部屋に入ってきた

珍しく扉から

 

「わかったか?」

「ええ、突き止めたわ」

 

零は紫にとあるものを探してもらっていた

それは

 

「パラサイトの本拠地はここに記してある」

「そうか、助かる」

 

そう言って零は立ち上がる

 

「あ…あの」

 

妖夢は意を決して声をかけた

 

「なんだ?」

「お気をつけて、すぐに戻ってきてくださいね?」

「…ああ、わかった」

 

そして彼は部屋をあとにした

パラサイトの本拠地

それは彼から聞いた話だった

 

 

 

 

数分前

 

 

 

 

 

 

「パラサイトネスト?」

「そうだ、あいつらの本拠地だ」

 

この病室には、パラサイトだった彼と聖がいた

 

「龍義が言うにはそこに親玉がいるらしいんです」

 

龍義というのは彼の名前らしい

 

「わかった、んでどこにあるんだ?」

「わからない」

「あ?」

「あれは別次元に存在する。お前にバレないようにな」

「…そうか、じゃあな」

 

零はそう言って部屋を出て、紫に探すのを依頼した

 

 

 

 

「さて、行くか」

 

零は1人で立っていた

全てを終わらせるために

 

「一人で行くの?」

「いたのかよ、霊夢」

 

永遠亭の外

月明かりの下に二人はいた

 

「俺の問題だからな」

「あんただけのじゃ無いわ」

 

そう言って霊夢は零に近付いていく

 

「私の問題でもあるわ、親友を誑かした罪を償わせてやるわ」

「そうかよ」

 

零は手をかざす、するとそこに門が現れた

 

「この先があいつらの巣だ、準備はいいか?」

「ええ、もちろん」

「いい返事だ、」

「途中でくたばらないでね?言いたいことあるから」

「……楽しみにしてるぜ」

 

二人は門を越える

全てに決着をつけるために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 決戦 パラサイト・ネスト、守りたいもの

 

 

霊夢「なんで……なんでよ!?零!!」

零「ごめんな、霊夢。さよならだ」

 

失った少年が戦いの先に得るものとは?

 

 

 

 

 

 

 




はい……皆さん思ってることがあるでしょう

霊夢と魔理沙の戦闘が締まらない、と

もとより二人の戦いはああなる予定でした


さてさて、次回は最終回

彼が何を得るのか、ご期待ください


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パラサイト・ネスト、守りたいもの

こんにちは、フォーウルムです
今回で第二章「寄生異変」は完結です

投稿間隔短すぎですごく早く完結してしまったな、と思います
二章後の事は後書きに

あと、アドバイスをいただき書き方を大幅に変更いたしました。
以前書いた作品も修正します

それでは最終話
どうぞ


「ここね」

「みたいだな」

 二人がいるのは巨大な門の前。次元を飛んでここにやってきた。

あまりにも巨大なその門は低く見積もっても20メートルほどだろうか

「さあ、行きましょ」

「待て、霊夢」

「何よ?」

「これを」

「カード……しかも二枚」

「この後必要になる」

「…わかったわ」

「じゃあ、行くぞ」

「ええ」

 二人は門を開けて先に進む

 

 

パラサイト・ネスト 内部

 

 

「暗いわね」

「そうか?案外見えるが」

「まだ目が慣れてないのよ」

 内部は非常に暗く、周りの青白い光が唯一の明かりだった

「見にくくて進めないわ、何とかならない?」

「んー、わかった」

 そう言って零は霊夢の目に手をかざした

「どうよ?」

「!…さっきよりよく見える」

「視覚に干渉してるからな、ほぼ永続的な暗視効果だ」

「最初っからやってよね」

「悪い悪い」

 等と話していると、目の前に人影が。よく見るとそれは人の形をした()()だった。

「人間…じゃ無さそうね」

「味方でもなさそうだ。大方、パラサイト・トルーパーってとこか?」

 目の前の生物()はそれぞれに剣や斧、銃などを持っていた。

「戦う気満々ね」

「時間が惜しい、ねじ伏せるぞ」

「わかったわ」

 そう言って零は構えをとり霊夢は神霊杖を発動しその手に持つ

「さあ、ウォーミングアップと行こうか」

 二人の蹂躙が始まった。

 

 

 戦闘が始まって数分

霊夢は零を見ていた。パラサイト・トルーパー相手にただただ蹂躙する彼を。近接武器を弾き、いなし、時に叩き折り一体一体確実に倒していく。

背後にまわられれば回し蹴りで一撃で倒し、遠くから銃で撃とうとすれば零が顕現させた銃で逆に頭を撃ち抜かれる。

文字通り敵無しだった。

「これで、終わりだっ!……霊夢、終わったぞ―?霊夢?」

「え!あ、うん」

 最後の一体に止めをさした零に声をかけられ霊夢は我に帰った

「大丈夫か?疲れてんじゃねえの?」

「馬鹿言わないで、まだ行けるわ」

 さっきまでは二人交互に前衛後衛入れ換えでやっていたが最後は零の蹂躙で霊夢はなにもすることがなかったので、そんなに疲れてはいなかった。

「それより、この先なの?」

「ああ、親玉はここにいるだろうな」

 先程と同じかそれ以上に巨大な門があった。ここに、パラサイトの親玉が……

「なあ、霊夢」

「何よ、改まって」

「あっちって今どんなだっけ?」

 急に零が話題を変えてきた

「あっち?幻想郷の事?」

「ああ」

「夜よ、酒でも呑みたくなるような」

「そうだったな」

 どうかしたのだろうか?

零は反対側を向いたまま話し続ける

「どうしたのよ、本当に」

「考えてたんだ。いつ打ち明けようかなってさ」

「?」

「霊夢、」

 振り返った彼の目には、大粒の涙が溜まっていた。そして彼の瞳にはあの日の彼の、()()()()()()()()()()()()悲しげな光がうつっていた。

「霊夢…」

「……なによ」

「俺はさ、幻想郷にこれて良かったと思う。霊夢や魔理沙、フランに妖夢、いろんなやつに会えたからさ」

「……」

「記憶を無くした俺にとって、大切な何かを失ってしまった俺にとって、あの世界(幻想郷)はとても居心地が良かったんだ」

「…っ。」

「まだ、1週間も経ってないけどさ、気づけたんだ。()()()()()に」

「それって……」

 霊夢が何かを言おうとした瞬間だった

カクンッ

「……ぁ…?」

 霊夢の体が崩れ落ちた。まるで糸の切れた人形のように

「……ぜ…ろ………?」

「お別れだ、霊夢」

 なんで?力が入らない。言葉を紡ぐことさえ難しい

「お前に干渉して神経を麻痺させてる、しばらくは動けないだろうな」

 なんでよ?なんでそんなことするの?

零は力無く倒れている霊夢に向かって歩いていき、しゃがんで言葉をつないだ

「ここからは俺一人でやる。お前は連れていけない」

「……そ…………な…」

「お前を失いたくないんだ霊夢。お前は確かに強い、だけどお前がいると傷つけてしまうんだ」

「……ぃ…ゃ」

 どうする気なんだろう?そこでふと気づいた

零からもらった札が光っていることに

「神社に戻れる、安心しろ」

 いや、私も戦う

そう言いたかった

あの日の決めたのに。絶対に失わないと、失いたくないと

「霊夢」

 零の声。顔を見上げるが、自身の涙でその顔は見えなかった

「ごめんな」

次の瞬間、私は幻想郷に戻っていた

 

 

~霊夢Side~

 

 

「霊夢!無事だったの?!」

「ゆ…か……り…?」

 目の前にいたのは紫。おそらく帰ってくるのを待っていたのだろうが、その目には困惑の光がうつっていた。

「零は?一緒じゃなかったの?」

「っ!……零は…零はッ……!」

 霊夢は麻痺の切れた体を勢いよく起こした

「まだ来てないわ」

「そんな……」

「霊夢…何があったの?」

 霊夢は伝えた。なにがあったのか、自分はどうしたいのかを。

「まだ行けば間に合うかも」

「!…ほんとなの?!」

「確証は無いけれど、でも行くんでしょう?」

「ええ、もちろん!」

「なら、私達もいくぜ、霊夢」

 そこには魔理沙とフランがいた

「魔理沙!フラン!」

「お兄様が頑張ってるんだもん、私もいくわ」

「もちろん私もだ、親友だろ?」

「っ…ありがとう、二人とも」

「開くわよ」

 紫がスキマを開く

「さあ、行きましょ!」

「うん!」「ああ、いくぜ!」

三人はスキマを通った

そしてその先で見たものは、

 

何もない空間で巨大な血溜まりのなかで

ピクリとも動かない息も絶え絶えな零の姿だった

 

 

~零Side~

 

 

「さて、()()()

 そう言って彼は目を閉じる。すると時間が、いや、間隔がおかしくなったような錯覚が起きる

「五倍、いや10倍かな?」

 今、零がいる次元と幻想郷では時間の流れが違う。今頃霊夢は神社に飛ばされている最中だろう。

「何とかして終わらせないとな」

 零は扉を蹴破った

 

「ヨクキタナ」

 目の前には黒々として滑りけのある鈍い光を放つ皮膚に覆われ、体からタコやイカのような触手を持つ異形がいた

その声を零は覚えていた。先の戦いで帝国軍を率いていた総督の声だった

()()()()()()()()()

 零は気がついていた

この次元は()()()()()()()()()()()()

「オマエハ、アイカワラズヨワソウダナ」

「お前は変わったな、運動しなさすぎでブヨブヨじゃねえか」

「マチワビテイタゾ、オマエヲコロスノヲ」

「奇遇だな、俺もだよ」

 零は手を伸ばす。するとその手に黒と白を基調にした剣が出現する

「ホウ、ブキヲツカウノカ」

「当たり前だろ?お前に素手なんざ使ったら臭そうだ」

 両者に殺意が籠る

「ナブリコロシテヤルゾ!ゼロ!!」

「ぶち殺してやるよ!ゴミ野郎!」

 

 

 零は地面を蹴り飛び上がる。それを目掛けて大量の触手が突き刺さんとばかりに向かっていく。零は剣を振るいそれらを切り捨てていく。

「オラァ!」

 接近し本体に切りかかるが、すぐに再生した

「チッ」

「ドコヲミテイル!」

「!くそが!」

 頭上から迫る触手をバックステップで回避する。

「一気に決めてやる!」

 零のスペルが発動する

《解放》捕食者の紅き意思

 

「消し飛びやがれ!」

 零は再びスペルを使う

《滅符》バーニング・ブレイカー

 巨大な爆発がパラサイトに直撃した

「グガァ!」

 スペルが確実にダメージを与えた

「まだまだぁ!」

 さらにスペルを叩き込む

 《滅符》インフェルノ・スパイラル

 零を中心に火焔の嵐が吹き荒れる

「バ…バカナァ!」

「これで、終わりだぁッ!!」

 

《滅命符》クリムゾン・デストラクション

とどめの一撃が繰り出された

 

 

「はぁ……はぁ」

 零は肩で息をしていた。スペルで力を使い果たし、いつ倒れてもおかしくはなかった。

「……スバラシイイチゲキダッタヨ、ゼロ」

「なっ、ゴフッ」

 零の腹に触手が突き刺さる。

「ザンネンダッタナ、ワタシニハイッポトドカナカッタヨウダゾ」

パラサイトの体からは煙が燻り、所々体が消し飛んでいた。

「オマエヲコロソウトオモッタガ、ダメージガオオキイ。オマエヲトリコミ、ワガカテニシテヤロウ」

そう言って零を取り込み始めた。

「クヤシイダロウ?ムシヨバワリシテタヤツニトリコマレルノハ?」

「生憎だが、」

 力無く取り込まれていく零の顔は

()()()()()()()()()()

悪魔のような笑みが浮かんでいた

「?!、ナゼワラッテイラレル?!」

「お前の敗因を教えてやる」

零の右手にはカードが

「俺を殺さずに取り込もうとしてしまったことだ」

「!!、ヤメロ、ヤメテクレ!」

スペルが起動された

「イヤダアアアァァァァ!!!!」

 

《死符》イレース・ワンズ・ライフ

 

 

「……消えたか」

 零は先ほどの空間にいた。取り込まれていた部位は、パラサイトと共に無くなり、そこから大量の血がでていた

「能力が…使えねえ、無理も……ないか…」

 意識が遠退く

自分は守りたいものを守れたのだろうか?

 

霊夢を救えたのだろうか?

 

あれ?

 

 

 

霊夢って……

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「零……?」

部屋の中央で零は倒れていた。

「零…!起きてよ、零ぉ!」

霊夢はスキマから出るや、零に駆け寄り抱き起こした

「!」

軽い、軽すぎる。

それもそのはず

零の体には大きな穴が空いており、所々()()()()()()()()()()()()()

「そんな……お兄様…」

「…酷いんだぜ…」

「紫、いるんでしょう!紫!!」

「そんな怒鳴らなくても……って何よ、その零の怪我?!」

怒鳴られて呼び出された紫は零の様子を見て驚愕した

「早く、永遠亭に運んで!!早く!!」

紫が急いで開けたスキマを霊夢は零を抱えるようにして通った

 

 

 

永遠亭 待合室

 霊夢達は待合室にいた

そこには他にも、紫、魔理沙、フランやレミリア、咲夜、早苗、そして、傷がある程度治った妖夢がいた

皆、暗い表情であったが、霊夢のそれは比べ物にならなかった。

そこへ永琳がやってくる。

「零の容態は?」

「一言でいえば、絶望的ね」

永琳は淡々と話し始めた。

「右腕の全損、左足の炭化、右足は膝から先がない。目は左目の欠損に右目は失明。正直まだ生きてるのが奇跡ね」

 絶望

永琳から出た言葉はまさにそれであった

「そんな…治す方法は無いんですか?永琳様?」

尋ねたのは妖夢だった

「駄目ね、手は尽くしたけれど、効かないわ」

「…え?」

()()()()()

「どう言うことなんだぜ?薬が効かないっていうのか?」

「ええ、厳密には効果が()()()()()()といえばいいかしら?使ったそばから無効になっていくのよ」

「能力はまだ生きてる……?」

「なにか方法は無いの?このままじゃお兄様が!」

どうしようもない

霊夢はただただ俯いていた

彼に何もすることはできない、彼からもらったスペルは強制転移のスペルで……

スペル?

「あれ?」

待て、思い出せ

あのとき零は

『この後必要になる』

そう言ってスペルを渡してきた

枚数は()()

「ああ、」

「どうしました?霊夢さん?」

もし、彼がこうなることを予想していたら?

「ああ!」

「れいむ?」

「どうしちまったんだぜ?」

もしも

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

霊夢はポケットから零からもらったスペカを取り出した。

「これが使えるかも」

「何かしら?それは?」

「零のスペル、この後必要になるって」

「零が?」

「彼の病室は?」

「ここを出て左に……ってちょっと?!」

 霊夢は急いだ。零の病室に向かっていく

その後を魔理沙達がついていく

「入るわよ」

 部屋を入って奥へ進むとカーテンの閉じられたベッドがあり、それを開くと中には一人の男がいた。

零。変わり果ててしまった霊夢にとって大切な人。

「これで戻らなかったら、承知しないから……」

そう言って霊夢はスペルを唱えた

 

 

 

《解錠》解き放たれし願い

 

 

 

瞬間、辺り一面光に包まれた。

「霊夢!なにして…って眩し!」

 それは目が眩むような光だった。

赤、青、黄、緑、紫

そして白

六色の光が零を包んでいく。

すると

「霊夢!零が!」

「え?」

 光は零と一体化していく

右腕、左脚、右脚、そして目と髪

全てが元に戻っていく。

「終わったの?」

 光が収まり、目を開けると

そこには

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたな、霊夢」

 

 

 

 

 零が立っていた。

「あ……ぜ…ろ?」

「俺だよ、心配かけて済まなかったな」

ああ、帰ってきたんだ

「もう、本当に……心配したんだから…!!」

 霊夢は零に抱きついた

そしてこの上なく強く抱き締めた

「ただいま、霊夢」

「お帰りなさい、零」

 

 

 

こうして、変異異変は幕を下ろした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 異変解決、そして…

 

 

紫「覚悟はいい?零?」

零「ああ、問題ない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回で…終わりませんでした。
次回はエピローグ&スペル、武器紹介です





コメント…ホシイナ……


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異変解決、そして…

こんにちは、フォーウルムです。
東方の人気投票すごいっすね、フランがほぼ総取りみたいになってましたね
おめでとう!フランちゃん!

まあ、それはさておき
今回で二章は完結となります。
三章は日常メインでやっていくつもりなのでよろしくお願いいたします


 

異変の元凶を倒して、数日が経った。俺は今、永遠亭で入院していることになってるが、実際は元気である。

なぜか永琳から「しばらくは安静で」といわれたので、大人しくしている。三食出るし、ベッドも寝心地がよかったので文句はない。

それに、いろいろなやつがお見舞いに来たりもした。

1日目は、チルノと大妖精だった。

二人とも元気そうで、怪我の話をしたら大妖精は慌てていたが、チルノは理解できていないようだった。

2日目はレミリアとフラン、咲夜だった。

フランも咲夜も怪我を心配してくれていたみたいで、俺が元気なのを確認すると咲夜は安堵のため息をつき、フランは嬉しいと言わんばかりに抱きついてきた。

ちなみにレミリアにはまだ日光耐性を付けていなかったのでこの日にした。レミリア本人はすごい嬉しそうだったが、日傘を持っていた咲夜は何処か哀しそうな目をしていた。

3日目は妖夢がきた。

彼女曰く「零さんに勝てる剣術を極めている」だそうだ。

退院したら是非手合わせを、と言われてしまえば断れなかった。

4日目は意外な客が来た。

椛と文の二人だった。

椛は異変の事を謝りに来たみたいだったが、誰にでもあることだから気にするな、と言っておいた。初めてまともに話したが、真面目なやつだと言うことはわかった。

文は取材のため、などと言って俺の能力やスペルについてしつこく聞いてきたので

「退院したら妖夢と手合わせするからそのときに」

といった。文は納得しなさそうだったが椛に怒られて渋々承諾した。

そして、今日は5日目

誰も来なかったので、寝ようと思ったときだった。

「あら、これから寝るところだったかしら?」

「…何時だと思ってる?」

「21時。貴方って早寝なのね」

「悪いか?」

「いいえ、じゃあ帰ったほうがいいかしら?」

「話しても構わない、寝ようにも寝れなそうだったしな」

「そう」

「で?内容は?」

「異変の後処理についてよ」

どうやら、幻想郷のほうでの後処理が終わったらしい。

「それで?」

「いい知らせと悪い知らせ、どっちから聞きたい?」

「いい知らせを。」

「わかったわ、いい知らせって言うのは異変が解決してパラサイトは全滅したってことよ」

「ほう、で悪い知らせってのは?」

「そう遠くない未来、また異変が起きる。しかも外部からの介入でね」

「それだけか?」

「いまわね、また力を借りることになりそうよ。覚悟はいいかしら?零?」

「ああ、覚悟は出来てる」

「なら、よろしくね。」

「頼むぞ、紫」

「じゃあ、私は帰るわ。あとは()()()()()()()()

「あ?」

意味深な言葉を残し、紫はスキマに消えていった。

すると部屋のドアがゆっくりと開かれる。

「……零…」

「霊夢か、どうしたんだ?」

そこにいたのは霊夢だった。暗くて表情は見えない。

霊夢はスタスタと近付いて来てベッドに腰掛けた。

「気分は?」

「悪くはない、がいい加減飽きてきた。霊夢にあえてよかったよ」

「…怒ってないの?」

「何が?」

「だって、こんな夜に…」

夜といってもまだ21時半を過ぎた程度で、そこまで遅くはなかった。

「怒ってないよ、むしろ霊夢は怒ってないのか?」

「……」

「怒ってるなら、言ってもいいんだぞ?」

「怒ってるならけど、もういいの。貴方が生きていたから、それで」

「随分優しいんだな」

「ふふっ、感謝しなさい?」

「へーへ、ところで霊夢」

「何よ?」

「帰ってきた後で言いたいことがあるんだろ?」

「……////!それは、その…」

「無いの?」

「……ええ!無いわよ!」

顔を真っ赤にして言われても説得力がない

が、それはそれで好都合だった。

「じゃあ、俺から言わせてもらうよ」

「? 何を……」

「霊夢、君が好きだ。」

「?!」

「この幻想郷で生きるうちに君に惹かれたんだ。俺と、付き合ってくれませんか?」

「……」

ミスったか?

「……いいの?」

「え?」

「私で…いいの?」

「うん」

「魔理沙とか咲夜じゃなくて?」

「うん」

「妖夢やフランでもなくて私…?」

「もちろん、霊夢が好きなんだ。」

「……そう」

霊夢はまたも顔を赤らめている。

「それで?」

「…え?」

「告白の返事。教えてほしいな?」

「……もう一回」

「ん?」

「もう一回…言ってくれない?」

「……わかった」

そう言って霊夢の瞳を正面から見る

「霊夢、貴女のことが好きです。付き合ってくださいませんか?」

「はい、喜んで!」

霊夢は俺をぎゅっと抱き締めてきた。それに答えるかのようにこちらも抱く力を強める。

霊夢が体を離した、そして…

俺の唇に優しくキスをした。

「……案外恥ずかしいわね、こういうの」

「…そうだな、俺も恥ずかしい。」

俺たちは二人で顔を見合せ、同時に笑った

 

 

その日の夜中

霊夢は俺のベッドの中で一緒に横になっていた。いわゆる添い寝というやつだ

「ねえ、零」

「なんだ」

「もし、もしもよ?他の娘たちがあなたに…その…告白してきたら、どうするの?」

「あ?あー」

特に考えてはいなかった

紫には「貴方、モテモテね」と以前からかわれたことがあったが、実際にモテているという自覚は無かった

「わかんないな」

「私は…別にいいからね?他の娘と付き合っても…」

「えぇ…」

「その代わり、私が一番零のことを愛してるってこと、忘れないでね?」

「ああ、忘れないよ」

そう言うとまた彼女に優しくキスをされた。

 

 

 

 

 

 

二日後

俺は訳あって命蓮寺に来ていた。

「久しぶりだな」

「退院したのか、早かったな零?」

そう、龍義に用があったのである。

「体の調子は?違和感はないか?」

「問題ねえよ」

「そうか」

拒絶反応が無いことを確認し、一息つく。

「なぁ、零」

「なんだよ?」

「霊夢に告ったか?」

予想外のことを聞かれ内心ビビるが平然と答える

「ああ」

「まじか!で、結果は!?」

「オッケーだってさ」

「おおー!おめでとう!」

パラサイトの時よりも明るい性格に内心呆れながら反撃を開始する

「お前はどうなんだよ?」

「へ?」

「聖に言ったのか?」

「……まだです…」

案外ヘタレなのかと思うが無理もない。

相手は破戒僧と呼ばれており、幻想郷の実力者の一人である聖白蓮なのだ

「まあ、頑張れ。応援はしてやるから」

「サンキューな」

「さて、話題を変えようか」

「?わかった。」

そう言って俺は昨日紫に言われたことを龍義に話した。

「…以上だ」

「なるほどな。俺は必要に応じて手伝えばいいわけだ」

「ああ。もっとも大抵は命蓮寺(ここ)の防衛だと思ってくれていいよ」

「了解」

「あら、零さん。いらしてたんですね」

「ああ、ちょっと駄弁りにね」

奥から出てきたのは聖だった。

「異変の時はご迷惑をおかけしました」

「気にすんなよ、いちいち面倒だ」

「しかし…」

「過去のことよりも今この時が重要なんだよ。なあ、龍義?」

「なんで俺に振るんだ?」

「察しろ、じゃあ俺は帰る」

「ま、待ってください」

「どうした?聖?」

「零さん、お気づきですか?」

「何が?」

()()()()()()()()()()()

「…ああ」

「いつ頃からです?」

「霊夢に目覚めさせられたときに」

「大丈夫なんですか?」

「問題ない、()()()()()()()()()()()()()()()

「そう、ですか」

「じゃあ、またな」

「おう、気をつけてな」「はい、また」

簡単に挨拶を済まし、俺はとある場所に向かった。

 

 

 

「なんだか、久々だな」

ここは博麗神社

俺の、大切な場所

「あ、零」

「霊夢…」

門の前には霊夢がいた。わざわざ待ってくれてたのだろうか?

「ただいま、霊夢」

目覚めた時に言った言葉を、帰って来たことを伝える言葉を口にする

そして彼女(霊夢)は…

「お帰りなさい!零!」

笑顔で俺を迎えてくれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 番外編 武器、スペルなどの紹介

 

 

 

霊夢「次回の出番はなさそうね」

零「だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んで頂きありがとうございました
これにて二章は完結となります
三章は零の幻想郷内での日常を描く予定です
次回は三章の前に認められたい思い〜パラサイトネストまでで登場した武器やスペル、オリキャラについての紹介となります。
質問や感想などがありましたら、コメントやツイッターにて送ってください

それではまた次回


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武器、スペル、オリキャラ紹介

作品に登場してまだ紹介されていなかった武器などを紹介します。
本当はただ紹介するつもりだったのですが、せっかくなので本人達にお願いしました
好評ならまたやるつもりなので感想をお願いします


「今回は紹介だけじゃなかったのか?」

「らしいんだけど…作者から『たまにはこういうのもいいよね』って」

「俺らがコメントしながらやるのか…」

「ぼやいても仕方がないわ、始めましょ」

「わかったよ」

「じゃあ、最初はこれね」

 

《武装》ヴァルムヘイル

種類 スペル/武器

初登場 第九話

使用者 フランドール・スカーレット

概要

全長170センチの剣。パラサイト用に作られており、威力は絶大。使用者によって変化

 

「これか、フランに渡したやつだな」

「使用者によって変化、ってあるけど、どういうこと?」

「そのまんまさ。使用者によって色や威力とかが変わってくる。俺が試した時は白色だったぞ」

「へー。次はこれね」

 

《転移》ムービングポジション

種類 スペル

初登場 第九話

使用者 魂魄妖夢など

概要

移動用のスペル。使用者をあらかじめ設定された場所に転移させることができる。

 

「私を幻想郷まで戻した時のやつね」

「ああ、あれは予め発動準備状態のやつを霊夢に渡して、いつでも飛ばせるようにしておいたんだ」

「終わったからいいけど、もうしないでね」

「悪かったって、次行くぞ」

 

聖 龍義

初登場 第十話

性別 男

年齢 不明

能力 細胞を操る程度の能力

 

「龍義ね、苗字が聖になってるのは…」

「もらったんだとよ、本人も満足してた。」

「なるほど。で、この能力は?」

「そのまんまだ。細胞をいじれる。硬くしたり柔らかくしたり。増やしたりはできるが減らせないっぽいな」

「なかなかにすごいわね」

「だな。次行くか」

 

《*コード》フォーオブアカインド

種類 スペル

初登場 第十話

使用者 零

概要

零がフランのスペルをもとに複製した。まだ熟練度が足りないので分身は二体までしか出せない

 

「フランのやつの複製なのね」

「まだ慣れてねえからあまり分身は出せないけどな」

「…私のスペルの複製もあるの?」

「あるにはあるよ、使い勝手が悪いが」

「あらぁ?どういうことかしら」

「熟練度上げないと球が一発しか出ねえんだよ、素が強すぎて」

「…諦めなさい」

「はーい。次は、おおこれか」

 

 

《解放》狙撃手の蒼き照準(スナイパー・ブルーサイト)

種類 スペル

初登場 第十話

使用者 零

概要

零の特殊状態系統のスペル。長距離戦闘に長ける。

使用中は瞳が青色に変化する。

 

「龍義の時のスペルね。武器も持ってなかったかしら?」

「これか?」

 

武器 ハンター・アームズ

種類 ライフル

初登場 第十話

使用者 零

概要

狙撃手を使用中の時のみまともに使える。

それ以外では使用が制限される

 

「ライフル?」

「銃の種類だよ。幻想郷には使ってる奴いないからわかんないか」

「まあね、制限されるってどんな感じ?」

「残弾数の低下、射程範囲縮小、威力低下とかかな」

「さっぱりだわ」

「今度詳しく教えるから。次は?」

 

武器 滅暗の神霊杖

種類 杖

初登場 第十一話

使用者 博麗霊夢

概要

神聖な力が込められた杖。その場にあるだけで周囲を浄化することができる。

 

「私の武器ね」

「使ってみてどうだった?」

「もうちょっと短いほうがいいかもね」

「ふむ、改善しようかな?」

「さて、ここからはスペルについてね」

「何してるんだぜ?二人とも?」

「魔理沙か、今武器やスペルの紹介をしているんだ」

「へー、私も混ざるのぜ」

「オッケー、じゃあ始めるぞ。」

 

始めに

この世界のスペルには威力値と呼ばれるものが存在します。

威力値はそのスペルが直撃し、ダメージがどれくらいなのかというものを数値化したものです。

 

「こんなのあったのね」

「作者曰く『この世界だけだし、数値で見たほうがわかりやすいだろ?』ってよ」

「へーそうなのかぜ」

「とりあえず、参考までに二人のスペルの威力値のっけとくぞ」

 

麗符 夢想封印 威力値5600

 

恋符 マスタースパーク 威力値5500

 

「私のほうが高いわね!」

「悔しいんだぜ!」

「だが、100しか違わないじゃないか」

「それでも悔しいんだぜ…」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ここでちょっと

威力値をわかりやすく説明

基本的に100違うとかなりの差が出ます

常人なら50も出せれば最高

わかりやすく例を出しときます

常人のパンチ 30

銃弾(9mm) 80

こんな感じです。災害とかで換算すると

地震 2500

噴火 4500

こんなだと思います

それらを踏まえてこの後の紹介を御覧ください

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

《滅符》バーニング・ブレイカー

威力値 6200

種類 スペル

初登場 第十二話

使用者 零

概要

捕食者使用中に使える下位スペル

巨大な火柱を相手に叩きつける

 

《滅符》クリムゾン・スパイラル

威力値 7000

種類 スペル

初登場 第十二話

使用者 零

概要

捕食者使用中に使える中位スペル

周囲に炎の渦を発生させ焼き払う

 

「さすがに威力高いんだぜ」

「ふん……なかなかやるじゃない」

「あ、忘れてた」

 

《滅命符》クリムゾン・デストラクション

威力値 15000

種類 スペル

初登場 第十二話

使用者 零

概要

捕食者使用中に使える上位スペルでありラストワード

辺り一面を焼きつくし、火球を降らせ、火柱で薙ぎ払う

使用後、強制的に捕食者が解除される

 

 

「い……一万って」

「バケモンだぜ…」

「そうか?」

「……感覚バグってるわね」

「……怖いんだぜ」

「これで最後かな?」

「まだ一枚残ってるわよ」

「あれ、なんかあったっけ?」

「ほら、これよこれ」

 

 

《死符》イレース・ワンズ・ライフ

威力値 無し

種類 スペル

初登場 第十二話

使用者 零

概要

零本人のラストワード

使用した際に触れている物体を消滅させることができる

代償があまりにも大きい。例として、『部位損傷』『記憶喪失』『人格崩壊』がある

 

 

「「………」」 

「あー、これか」

「強すぎる分、代償がでかすぎるんだぜ」

「こんなもんだろ?皆のラストワードも」

「「全然?」」

「まじ?」

「まあ、いいわ。これで全部かしら?」

「だな、なんか抜けてたらすまないな」

「そんときは、作者を縛り上げるから許してほしいんだぜ」

「次回からは……第三章…?らしいから楽しみにしててね」

「さて、なんか食うか。腹へった」

「賛成なんだぜ!」

「ちょっと?終わらせてからよ?」

「わかったんだぜ」「へーい」

「それではここまで読んでいただき」

「「「ありがとうございました!」」」

 

 

「さて、何食べようかしら?」

「他のやつも呼んで宴会とか?」

「それいいんだぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 やめろ!俺はまだ死にたくない!

 

 

 

 

 

 

零「おい待て!どう言うことだ?!」

 

 

 

 




次回は第三章です。
アンケートで多かった日常編を書きたいと思います

それでは、また次回


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第三章 日常編
やめろ!俺はまだ死にたくない!


今回から三章です!


前置きに書くようなことが無い…











あ!感想やメッセージお待ちしてます!


今は秋。食欲、読書、運動、皆さんは何の秋を楽しんでいるだろうか。

この俺、零は今

絶賛《ピンチ》の秋を満喫させられていた。

おかしい、絶対におかしい

今日、霊夢は紅魔館でお茶会があるからと言って神社を出た。

それを見送った俺は境内の掃除や、トレーニングをしていた。

汗をかいたので風呂で汗を流して着替えて昼飯の支度をしようとした瞬間だった。

急に視界が暗転し、気がついたら全身縄でグルグル巻きにされ、床に寝かされている。

建物の雰囲気から紅魔館なのだろうが……ってかこれ以前にもあったな

「お久しぶりですね、零さん」

声がするほうを見ると、妖夢や咲夜にフラン、魔理沙に早苗、古明地姉妹と……鈴仙がいた。鈴仙とは入院中に知り合ってよく話をしていたから知ってる。

だけどさ…

「何でお前ら臨戦態勢なの?」

「自分の行いを振り返ってください」

妖夢からものすごい殺気が……

「霊夢は?」

「別の部屋で寝てるわ、お姉さまと一緒に居るの」

そう答えたのはフラン。その手にはレーヴァテインが握られている

「何でそんな殺気立ってるんだよ?!」

「霊夢さんに聞きましたよ」

妖夢が刀を構えて話し出した。

「霊夢さんに告白したそうですね?」

「うん」

全員からの殺気が込み上げる

「怖いよ!めっちゃ怖いよ!?」

「キスもしたんですか?」

妖夢の目が怖い

どうする。考えろ!

事実を言う→死ぬ

嘘で誤魔化す→死ぬ

駄目じゃん

仕方がない

「………したよ」

「……何回ですか」

「……二回…かな?」

『よし、殺るか』

「やめろ!俺はまだ死にたくない!」

くっそ、ここでタイトルのやつ言うのかよ!作者め、知ってやがったな!

ヤバい、このままじゃ何されるかわかったもんじゃねえ、ってか能力使うか

零は座標干渉を使い縄だけを別の場所に移した

「何してるんですか!零さん!」

「くっそ、ばれたか」

いきなり妖夢にばれたので部屋から出ようと扉に手を掛けた瞬間だった。

ガチャリ

「何してんのよ」

「「「「あ」」」」

 

少年説明中…

 

「…とまあ、そういうことなんだ」

「なるほどね」

「あんたらも物好きねえ?」

『うっ……』

先程と形勢が逆転した形になった

「大体、人が先に手を着けた相手を狙うもんかしら?」

「それは……」

ふむ、さすがに妖夢達があれだな…そういえば……よし

「他のやつでもいいんじゃねえの?」

「へ?」

「ちょ…何言って」

「霊夢が言ったんじゃねえか『他の娘に告られても断んなくてもいい』って言ったの」

「あ…」

「それに、少しくらいならいいんじゃねえの?別に悪いことしようとしてたわけじゃないんだし」

「そうね、でも条件があるわ」

「…なんでしょうか?」

「三日よ、三日までなら許すわ」

「俺が2日がいいって言ったら?」

「それはそれでいいわ。アンタらは?」

「…わかりました」

そういうことで女性陣の中でこんな取り決めが行われた

・零と一緒に入れるのは一週間のうちの3日間まで

・危険なことを無理にさせない

・誰のとこに行くかはジャンケンで決める

以上の3点である

俺は物か?

 

 

数分後

 

 

俺のしばらくの日程が決まった

内容は

・白玉楼

・霧雨魔法店

・地霊殿

・永遠亭

・守谷神社

・紅魔館

の順だ

可能な限り仲良くしていただきたいものだ。

そんなこんなでお茶会はお開きになった

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社にて

「いいのかよ、あんなの決めて」

「いいんじゃない?あんたがよければさ」

今、俺は霊夢と共に布団に横になっている。布団は隣り合うように敷かれている。

「でも、なんであんなことを?」

「気づかないの?この世界の異変に」

異変?…もしかして

「あんまり男がいないからか?」

「そうよ、この世界の男はなぜか早死にするの。能力も持ってないから死にやすいし」

「なるほどな」

「私もだけど、恋愛なんて考えたことなかったの。好きになるような人なんていなかったから」

()()()()()()()俺みたいに能力持ちで死ににくい。だから俺を好きになったとか?」

「どうかしらね?少なくとも私はあなたの能力ではなくあなた自身に惚れたのよ?」

「そうか、それが嘘でないことを祈るよ。他がどうかは知らないがな。」

「他の子も同じよ」

「何か言ったか?」

「いいえ、おやすみ」

「???、ああ、おやすみ」

そう言って俺たちは眠りについた

 

 

 

深夜くらいになって

俺は目を覚ました。隣では霊夢が心地良さそうな寝息をたてている。

霊夢を起こさないように境内へ出る

 

近くにあった木によりかかる

「あんな風になるなんてね」

急に声が聞こえるが想定内だった。

「何の用だ?紫?」

「貴方にお話があって、ね」

「内容は?」

「二つよ、一つはこの後の貴方の行動についてよ」

「あいつらが言ってたお泊まり会みたいなやつか?」

「ええ」

「迷惑か?」

「まさか、こちらとしても好都合よ」

好都合?何を言っているんだ?

まあ、いい

「二つ目は?」

「貴方の力が借りたいの。戦力を、ね」

「一人しか居ないのにか?」

「駄目かしら?」

「…条件がある」

「…何?」

「式神のスペルの情報。あれは実物をもとにした方が良さげだからな」

「?。何に使うの?」

()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()

「!?」

「戦力には申し分無いだろう?」

「…いいわ。乗ってあげる」

「そうか、情報はいつだ?」

「はいこれ」

「…用意がいいな」

「偶然よ」

「…あっそ」

手渡された情報を読み込んでいく。

「じゃあ、よろしくね?」

「ああ、任せろ」

そう言うと紫がいなくなったので俺は寝床に戻る。

 

次の日

 

白玉楼に向かおうとする俺を霊夢が見送りに出てきてくれた。

「もう行くの?」

「まあ、約束は約束だしな」

「そ。気をつけてね」

「ああ、行ってくる」

 

 

そう言って俺は白玉楼に飛んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 白玉楼と庭師

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖夢(絶対に想いを伝えるんだ!)

零(なんか緊張してる…のか?)

 




次回から白玉楼編です!
今後も大体2話くらいでやっていきます。

アンケートにもお答えしていただけると嬉しいです。


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白玉楼と庭師

日常編妖夢パートです


 

「ここか」

俺は今白玉楼に来ている。

時刻は朝の8時、少々早かったか?

「あ、零さん。おはようございます」

「ああ、おはよう」

門のところで妖夢が出迎えてくれた。

そのまま白玉楼の中に案内される。

「あら~、いらっしゃ~い」

「お邪魔します、西行寺様」

「幽々子でいいわよ~」

中には西行寺幽々子がいた。

「私はしばらく紫のところにいるから~」

「え?!ちょっ、幽々子様?!」

「ごゆっくり~」

そう言って急に現れたスキマの中に入っていなくなってしまった。

「…………」

「行っちまったな」

「……はぁ」

「とりあえず、どうする?」

「え?」

「なんかやりたいこととかないのか?」

「ええっと、じゃあ」

 

 

数時間後

 

 

「はぁ…はぁ…」

「いい加減やめたらどうだ?」

「はい、そうします…」

以前から考えていた剣術を試したい、といわれたので組手をしていたのだが全く勝てそうな気配がないので終わりにしようと提案した。

まあ、どんな動きをするのかって言うのは能力で探知できるからね、仕方ないね。

「悔しいです!」

「前よりも動きはいい。今後も頑張ったら勝てるんじゃないの?」

事実、以前よりも動きに無駄がなく、精錬された動きだった。

「絶対に勝ちますから」

「期待してるよ」

「じゃあ、お昼にしましょうか」

「もう夕方だぞ?」

「へ?!」

すでに夕方の五時をまわっている。

どれだけ集中していたのだろうか……

「すいません!汗流してきたら夕食の仕度しますね!」

「りょーかい」

そう言って妖夢は中に入って行った。

暇なのでスペルの調整をする

本当は睡眠も食事も俺には必要はない

干渉によって疲れは打ち消せるし、顕現で必要な栄養素は作れる。

それでもこれらの動作をするのは『人間でいるため』である。

ほとんど化物のようになってしまったがせめて生活くらいは人間のようにしたいという、俺の足掻きだ

 

 

数十分後

 

 

汗を流し終えた妖夢が作ってくれた料理に舌鼓を打っていた。

霊夢の料理は家庭的とするならば、妖夢の料理は旅亭のフルコースとでも言おうか。

見たことも無いような料理ばかりで驚かされる。

「お味は如何ですか?」

「美味しいよ、どれもこれも食べたことの無い味だ」

「それはよかったです!」

「明日はどうする?」

「そうですねー、人里にでも行きませんか?」

「そうするか」

明日は人里に買い物に行くようだ。

それに備えて早く寝るとしよう。

 

 

「お布団はこんな感じでいいですかね?」

寝るために妖夢に布団を出してもらっていた

本当は俺がやろうかと思ったのだが、妖夢に「お客様ですので」といわれたので任せている

「サンキューな」

「いえいえ、これくらいなんともありませんよ!」

「じゃあ、お休み」

「あ、はい……」

「?どうした」

「あの…零さん」

「?」

「一緒に寝ても…よろしいでしょうか?」

「……」

「あ、いえ。すいません急に、嫌なら嫌で…」

顔を赤くした妖夢に迫られた。

……まあ、いいよな

「はぁ…しゃーねえな」

「え?」

そう言って零は明かりを消して妖夢に近付き抱き上げる。

「え?!いや、あの?!」

「一緒に寝たいんだろ?」

「いや、そうですけど……じゃなくって?!」

慌てている妖夢を隣に降ろし布団に入る。

「明日は出か掛けるんだし、しっかり休めよ?」

「……はい」

「お休み、妖夢」

「お休みなさい、零さん」

そうして、1日目は幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館に集まっている者達がいた

紫、幽々子、永琳、レミリア、さとり。

この五人は前回の異変の時の指示役であり、幻想郷でもかなりの実力を持つもの達である。

「それで、これを進めるの?」

「ええ、今後の戦力増強のためにね」

紫達が見ていたのはとある計画書であった。

「本当にこれでいけるのかしら~」

「それは彼次第ね」

計画の鍵は零であり、幻想郷全体である

「ふん、どうせ私の敵ではないわ!」

声がするほうを向けば、そこにいたのは比那名居天子であった。

「貴女に勝てるの?」

「あったり前よ!あんな外来人ごとき、試すまでもないわ」

「どうだかな」

別の声

その主は……

「あんたに何がわかるのよ、外来人」

「龍義だ、自己紹介したろ」

寄生異変の時に仲間になった龍義である

彼もまた呼ばれていた

「どういうことかしら?龍義?」

「この計画見る限り零に有利すぎる、それに…」

間を開けて龍義は思いがけないことを口にした。

「式神なんて使われたら負けるぞ、あいつに」

『?!』

「知らないのか?あいつがなんて呼ばれてたのか」

「貴方は知ってるの?」

「ああ、いい機会だし、教えてやるよ」

そう言って彼は語り始めた。

旧世界(彼の世界)での化物()の記録を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 人里デート 異名殺し

 

 

 

 

 

零「次回予告のタイトルの落差がひでぇ」

龍義「仕方ねーから諦めろ」

 

 




次回はデートと零の過去関係のお話です
書いてる間に零が最終決戦で使っていた武器の説明がなかったことに気づきました
それの説明は四章でする予定です


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人里デート 異名殺し

こんにちは、フォーウルムです
今回は零の過去→デートって感じに話が進みます。



「あいつは最強の名を欲しいがままにしていた。」

龍義が話始めた

 

「あいつは連合軍の中でも随一の戦力だった

戦場に出れば瞬く間に戦いを征し、立ちふさがる奴らは須く蹴散らしていた。

パラサイトの中には《異名持ち》って呼ばれる奴らがいたんだ。

この幻想郷における二つ名みたいなものかな、そいつらは他の奴よりも戦闘力とかが高い連中だった。

幻想郷内だったらかなりの手練れだったろうよ。

そして零はそいつらを始末する仕事を担っていた。俺達は奴を異名殺し(ネームドキラー)と呼んでいた」

そこで龍義は黙った。

「何故、そんなことを知っているの?」

紫が尋ねる

「俺は……元は帝国軍の幹部だったんだ」

『!』

全員が驚いた。

無理もない、前世で敵同士だった零と龍義。この世界でも争った二人は今は良好な関係を築いており、とても敵とは思えなかった。

「まあ、俺の昔話はまたの機会に。問題はここから」

龍義が目を細める

「幹部故に帝国軍所属の異名持ちの死亡処理は俺のとこにまわってくるんだが、変な報告書が五枚あった」

「変な?どう言うことだ?」

レミリアの問いに対し、龍義は告げる

「死亡ではなく、()()()()になってるんだよ」

「それが?何が問題なんだ?」

「失踪扱いの異名持ちは全部で五体。そのうちの二体は……」

そのあとに出てきた龍義の一言でその場の全員が凍りついた。

「《捕食者》と《狙撃手》だ。つまりあいつは他の異名持ちを自身の力として使っている可能性がある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白玉楼にて

 

 

 

 

「……うーん…」

目を擦りながらおきるとすでに朝だった。昨日彼と一緒に寝た時に感じた温もりがまだ残っている。

彼の姿はそこにはなかった。

「起きたか」

「零さん、おはようございます」

「ん、おはよう」

「朝ごはん作りますね」

朝の挨拶を済ませてキッチンへ向かう。

(早めに作って、買い物にいきたいな)

そう考えていた妖夢はどこか嬉しそうに調理をするのであった。

 

 

少年&少女食事中

 

 

 

 

「さて、行くか」

「ですね」

準備を済ませ白玉楼を出た

人里に出た後、2人はいろいろな買い物をした。

服屋に行ったり、和菓子屋に行ったり

時間はあっという間にすぎ気づけば夕暮れであった

特に妖夢がとても活き活きとしていて零はとても心が温かくなった。

 

 

 

 

その日の夜

 

妖夢は覚悟を決めていた

零に想いを告げる覚悟だ

すでに霊夢と付き合っている零に告げるのはどうかと思ったがそれでも伝えたかった

彼に惹かれてしまった自分に嘘はつけなかった

(断られてもいい、せめてしっかりと伝えなきゃ)

今、ここに零はいない。おそらく庭の方に居るのだろう

彼に会うために妖夢は立ち上がった

 

 

 

「魔力風邪?」

『ええ、そうらしいわ』

零は庭で話をしていた。

相手は霊夢、零の作った遠隔通話スペルで話しているのだ

「じゃあ、魔理沙のとこは無しか」

『そうね、お見舞いに行ったけどかなりきつそうだったわ』

魔力風邪という病に魔理沙がかかったので魔理沙の元には行かない方がいいという連絡が霊夢から来ていた

「となると、次は地霊殿か」

『そうなるわね、気をつけなさいよ?』

「わかっている」

『…ねえ』

「どうした?」

『妖夢とはどうだった?』

「今日は人里まで行ってきたよ」

『デートみたいね』

「そうかもな、妖夢が楽しそうで何よりだ」

『もし、妖夢から告白されたら?』

「…キツイこと聞くな」

『流石に気になるわよ。私が先だったんだから』

「霊夢はどうなんだ?」

『別に構わないわ、人数が多くても私は構わないし』

「一夫多妻ってありなのか?」

『一夫多妻がダメなんてルールはないわよ』

「俺は何股すればいいんだ?」

『任せるわ、それでも私が一番なのは変わらないんでしょ?』

「もちろん」

『そ、ならいいのよ//////』

「じゃあ、おやすみ」

『ええ、おやすみなさい』

零は通話を切った

振り返るとそこには妖夢がいた

薄い緑色の寝巻きを着ている彼女を月明かりが照らしている

「霊夢さんからですか?」

「ああ、魔理沙が風邪なんだと」

「大変ですね」

「そうだな」

「あの、零さん」

「なんだ?」

妖夢の声は震えていた。

怖かった。断れるのもそうだし、何より相手に浮気みたいなことをさせるかも知れないのだ。

嫌われたくはなかった

それでも

「今日は月が綺麗ですね」

あまりにも古典すぎるだろうか、それでも妖夢はこれなら伝えられると思っていた

「…そうは思わないな」

「!」

零からの答えに戸惑う

「あんな明るいだけで手が届かない月なんかよりも…」

零がこちらに近づいてきて、そして抱きしめてきた。

「…ぁ…」

「俺はお前の方が綺麗だと思うぞ?妖夢」

「それって」

「妖夢、俺と付き合ってくれないか?」

「!!」

「駄目かな?」

「………ずるいです、私だって言おうとしてたのに」

「ははは、ごめんな」

「…もう」

そう言って妖夢は零の頬にキスをした

「これが答えです」

「そうか」

零は妖夢を正面から見てその唇に優しくキスをした

 

 

 

三日目

 

 

イチャイチャした

白玉楼から出ることもなく、ただひたすらに寝っ転がってイチャイチャしていた

 

 

 

 

 

次の日

 

「もう、行っちゃうんですね」

「また来るよ、そのときはもう少し時間がとれるといいな」

「そうですね」

「じゃあ、待たな」

「はい!お気をつけて!」

妖夢と別れて冥界をあとにする零

だがその行き先は地霊殿ではなかった

 

 

「よお、紫」

「!零…」

ここは次元の狭間。紫はよくここにいるので探すのは簡単だった

「ちょうどよかったわ」

「何が?」

「これを」

「ん?」

そこには、計画が書かれていた

内容は、

「幻想郷における別次元侵略者に対抗するための戦力?」

「ええ、いつ他から攻め込まれるかわからないから」

「なるほどね、俺はどうすりゃいいんだ?」

「貴方には『敵』になってもらうわ」

「へえ」

「やることは単純。ルールにしたがって戦闘してくれればいいわ」

「随分なお願いだな」

「いいのか?仮にも相手はお前の世界の住人だぞ?」

「わかってるわ。でも、だからこそよ」

「あのなぁ」

「いいじゃねえっすか、御主人」

聞き覚えの無い声に紫は振り返る

そこには、男が立っていた。

真っ赤な髪に深紅の瞳を持つ男だった。

その後ろには青色、緑色、黄色、紫色のローブをまとった者達がいた

「調子はどうだ?《捕食者》?」

「サイッコーっすよ」

「まさか、彼が」

「そうだ、俺の式神」

「……さすがね」

「仕事っすか?御主人?」

「いや、まだだ。しばらく休んでいろ」

「へーい」

その一言で彼らは消えていなくなった

「あいつらなら十分だろう?」

「…期待してるわ」

「ああ」

そう言って彼は転移を行う

向かうは地霊殿

また、楽しくなりそうだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 地底の館と事務作業

 

 

零「………めんどい」

さとり「……頑張りましょ」

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
え?魔理沙はどうしたかって?
ネタ切れです
次回からは地霊殿です
特にイチャイチャはしない予定です
次回も気長にお待ちください!


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地底の館と事務作業

こんにちは!フォーウルムです!
今回は地霊殿編です



ここは地霊殿その名の通り地底の世界、地獄にある

この建物は元は灼熱地獄だったらしく非常に熱い

いかにもボスが出てきそうな立地の館の中で

俺は事務作業に励んでいた

地霊殿のある地下は地上よりも過酷な地形が多い

それゆえに特別隊が編成されて地形の調査などを行なっている

さらに地獄でもあるために怨霊や妖怪などの被害も多い

そういった報告書の山の処理の手伝いをお願いされていた

「……」

「……」

さとりと零の間に会話は無い

いや、正確には

(さとり、これ終わったぞ)

(それはあっちの棚に。次はそこの山をお願いします)

(あいよ)

二人は口で会話する手間がいらない

さとりは能力で心が読めるし、零も干渉でさとりの考えなどを読むことができるのだ。

そのため執務室の中ではペンと紙が擦れる音しか聞こえない

(溜め込んでた、ってわけじゃなさそうだな)

(最近になって増えてきたんですよ)

(原因は俺か?)

(そうかもですね)

あまりにも多い数の報告書はどれも最近の日付である

1番古いのは約三週間前。零が幻想入りした頃だった。

(いつも一人で?)

(そうですね、こいしは出歩いてますし、お燐とお空は別の仕事を任せてますので)

別の仕事とは灼熱地獄跡の管理である

お燐は死者の魂の処理、お空は火力調節が主な役割である

お空の「核融合を操る程度の能力」には驚かされたが、納得はできた。

初めて会った時に試し打ちと言われて打ち込まれた魔弾はとてつもない火力だったからだ。

(寂しくねえの?)

(今は寂しくありません、貴方がいますからね)

さとりの言葉に思わず彼女の方を見てしまった。すると彼女もこちらを見て揶揄うようにクスリと笑った

(揶揄うなよ)

(私としては思ったことを言っただけですよ?まあ『言って』はいませんが)

(…便利なんだか不便なんだか)

ため息をつきながら整理をしていると時計が12時を知らせる鐘を鳴らした

(昼か、なんか食べるか?)

「そうですね、お昼にしましょうか」

「こっちで話すのはなんか久々な気がする」

「まあ、4時間も話しませんでしたしね」

4時間の作業を一段落させて昼食をとることにした。

「外の街で食べましょうか、先に行っていてください」

「さとりは?」

「ペット達に餌をあげてから行きます」

「わかった、またあとでな」

「はい」

そう言って零は地霊殿から出てきてカードを取り出した

「スペルカード《式神召臨》」

唱えると捕食者を含めた五人が現れる

「お呼びか?御主人」

「しばらく外には出ていなかっただろう?自由時間だ。」

「まじすか?やった!」

「その代わり、喧嘩沙汰は無しな」

「えー」

「暴れる気満々だったんですね?」

零と捕食者の会話に割って入ったのは緑のローブを纏う少年だった。

「うっせーな、《守護者(ガーディアン)》」

守護者と呼ばれた少年は零に尋ねる

「自由ってどれくらいですか?」

「俺が呼ぶまでだ。派手に目立つようなことと喧嘩沙汰以外は許す」

「わかりました」

「つまんねーの」

捕食者はつまらなそうに口を尖らせている

「まあ、そう言うなよ。時期に暴れられるから」

「どういう意味っすか?」

零は彼らに紫が進めている計画について話した

「アハハ!そいつはいいや!」

「面白そうですね」

捕食者も守護者も笑い、後の三人もやる気があるようだった

「それまでの辛抱だ。我慢してくれ」

「あいよ。じゃあ、またあとでな」

その言葉を最後に彼らは自由行動をとり始めた

「お待たせしました、零さん」

「お、案外早かったな」

「さて、いきましょうか」

「りょーかい」

そして二人は街に向かい始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 午後の休暇 明かされる式神

 

 

 

 

 

 

守護者「やっと、全員ですかね?」

捕食者「かもな、ってか名前何とかしてくれ」

零「気が向いたらな」

守&捕(考えない気か?)

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
次回はついに残りの式神が明らかに!
察している方もいるかと思いますが
零の《解放》と式神は同名です
なので今回出てきた捕食者と守護者、以前零が使った狙撃手は確定で式神で次回に残りの二人が出てきます
あと名前考えます
次のお話は少しかかると思うので気長に待っていただけたら幸いです
それでは第十九話でお会いしましょう
さよなら!


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午後の休暇 明かされる式神

どうも!フォーウルムです!
今回は地霊殿編その二です
明かされていなかった二人の式神も登場します!


 

ここは人里

急に言い渡された自由時間をどう使おうか悩んでる女性がいた

髪の毛は腰くらいまで伸びており、その髪は眩しいほどの金色だった

瞳も髪と同じような金色で身長は170センチほど

それでいて可愛らしくアイドルのような顔をしている

モデルのような姿の彼女にとって「目立つな」というのはまさしく無理難題であった。

「全く、あの御方も酷いです。目立つななんて」

ため息を吐きながら里を見て回る

自分が知っている街とは大違いだった

ビルが立ち並び車が道を埋め尽くす息をすることすら困難で、人々が暗い顔で歩き回る世界とは違う

昔ながらの木造の家、道を走る馬に引かれる荷車、明るい表情で過ごす里の人たち

自分が憂い、嫌い、壊そうとした世界とは違う

「…あの御方の目指した世界は、このような世界だったのでしょうか?」

彼女は元は音楽好きの少女だった

気になった楽器は調べて演奏しプロに勝らずとも劣らないくらいの腕前だった

しかし、周りからはその才能ゆえに嫌われ、隔絶された

そしてそんな中、始まった大戦

彼女はパラサイトに寄生され、その特技から『楽器の演奏の音色で戦う』という異質な能力が発現し、帝国からは異名を与えられた

そしてしばらくしたある日、()が現れた

音による衝撃波や音色による魅了なども行ったがまるで効かず、殺されると思っていた

「俺と共に来い。お前のその音色は破壊のためのものでは無い」

「その力を、その音色の輝きを、俺の目指す世界につかえ」

荒々しくも自分を認めたその言葉に、彼女は救われた気がした。

だから彼女は彼に従おうと誓ったのだ。

()()()()()()()()()()()()()()()()

彼女の名は凛音。与えられた異名は演奏家(パフォーマー)

「とりあえず、お昼にしよっと」

そう言って彼女は歩き出した

 

 

 

 

 

 

旧地獄

 

「ここか?」

「はい、ここのラーメンは格別なんです」

昼食をとるために外へ出た零とさとり

やって来たのは旧地獄でも有名なラーメン屋だった

「お?さとりさんじゃねえか!」

「どうも、いつものをお願いします」

「あいよ、そっちの兄ちゃんは?」

「味噌ラーメンで」

「あいよ!」

ラーメン屋の店主は見たところ種族は鬼だった

気さくで豪快で、やる気に満ち溢れていた

「どうかされましたか?」

「いや、何でもない」

あの世界の連中は、こんなに活き活きとはしていなかった。

どいつもこいつも死んだ魚のような目をしていて、世界に絶望してしまったような雰囲気だった

零は、思い出している最中に思考を振り払う

せっかく旨そうなものにありつけるのだ、つまらないことを考えては不味くなる

「あいよ!」

「ほぅ?旨そうじゃないか」

零のラーメンはチャーシューが三枚と味玉がのった味噌ラーメン

さとりのはチャーシューは少ないものの、野菜が多くのっている塩ラーメンだった

「いつもそれなのか?」

「ええ、美味しいですし、野菜もとれるので」

 

 

味はめちゃくちゃに旨く今後も来ようと決意する零であった

 

 

 

 

 

「いやー、旨かったな」

「そうですね、最近出れなかった分美味しかったです」

食事を終えた二人は街を歩いていた

「この後はどうするんだ?」

「そうですね、零さんのおかげでかなり楽できましたし、ゆっくりしましょうか」

そんな会話の中

「キャアアアアァァァァァ!!」

「あ?」

「? なんでしょうか」

急な悲鳴、それに反応して割れる人混み

その先には

「うっ動くな!こいつがどうなってもいいのか?!」

「ママー!」

子供を抱え、首にナイフを当てている中年の妖怪がいた

「中年…なのか?」

「どうでしょう?少なくともおっさんみたいですね」

そんな他愛ない話をしている間にも誘拐犯は逃走しようとしている

「しゃあねえな、待ってろ」

「え」

零は人混みを飛び越え誘拐犯の元に

「あ?!なんだてm」

「吹っ飛べ」

零の拳が誘拐犯の顔面に食い込み誘拐犯は吹き飛んでいった

捕まっていた子供は零によって救出された

「零さん!さっきの奴は?」

「どっかいった」

「追いかけないと!」

「いや、いいだろ」

「なんでです?」

「これから死ぬ奴がどうなろうと知ったことじゃねえよ」

「?」

 

さとりは気づかなかったが、このときにとある人物がその犯人を追っていた

 

 

 

 

 

「はぁはぁはぁはぁ、なんなんだあいつは?!」

誘拐犯は口を押さえている

彼の歯はくだけ散っていた

「くっそ、だが逃げれただけいいとするか」

彼は実は犯罪者で牢屋から脱走してきていた

 

 

だが

 

 

カツン…カツン…

 

 

「あ?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

身長は190を越えているであろう、かなり高い

顔を影になっていって見えない

「なんだテメエは!?」

「…」

脱獄犯は吠えるが大男は何も話さない

「そこを退きやがれ!」

そう言って走って近付いた彼は

 

次の瞬間に肉片に変わっていた

辺りに血の匂いが充満する

「……やはり、臭いな。罪人の血は」

男は低い声で呟く

「我が主の邪魔をしたのだ、もう少し耐えてくれればよかったものを」

男は落胆しながらその手にこびりついた血を振り払う

「罪人は所詮罪人。我が正義の前に立ちふさがることは不可能」

男の顔に深い笑みが刻まれる

「我が《執行者》の名の元にすべての悪を滅ぼす!」

その男の名は竜胆、花から名前を貰った彼は己が信じる正義のために生きてきた

その執念がそうさせる運命だったのか彼の異名は執行者(エンフォーサー)であった

零と出会った彼は彼の意思の強さと彼自信の力に心酔していた。

それ故に、彼は零の為にその身を捧ぐ

「さて、私も昼食としようか」

男は歩き出す

己の正義が必要とされるまでしばしの休みだ

 

 

 

 

二日後

 

「行ってしまうのですね、零さん」

「ああ、一旦博麗神社に戻るよ」

彼は後の二日も地霊殿で過ごした

そろそろ神社が恋しいので一度帰宅しようと考えていたのだった。

「またいつか会えるだろうし、気長に待っててくれ」

「そうですね、またお会いしましょう」

それを最後に零は地上に戻っていった

 

だが、彼は気づいていなかった

彼の身に起こっていた異変に

 

 

 

 

 

 

 

次回 止められぬ渇望 永遠亭での一時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢「お帰り!………どうしたの?」

零「霊……夢…」

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

竜胆はもともとは別のにしようと思ってたのですが、「闇落ちした正義って良くね?」という私の厨二病心をくすぐる結論に至ったのでそうなりました。
次回は永遠亭……の前に零の身に起こる変化です
一応規制がかからないようにするつもりですが、どうなるかわからないです……
ちなみに官能小説的な展開ではありません
アンケートの結果、紹介が欲しいとのことだったのでそちらも作ります。
なので多分次はそっちの紹介が出るかなー、と思っています。
長くなってしまいましたがここらで終わりにしたいと思います
次の投稿をお待ちください!
それでは!


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止められぬ渇望 永遠亭での一時

今回で第三章は完結になります
理由は活動報告15にて
それでは、どうぞ


 

 

霊夢Side

「♪~」

霊夢はご機嫌だった。

何故なら今日は零が帰ってくるのである

「久々だから、いっぱい甘えようかしら?」

零から連絡があって一旦帰ってくると言われた。

「今日は天気がいいし、縁側で待ちましょうか」

そう言って外に出ようとすると…

「……」

「あら、零」

すでにそこには零がいた。

「おかえり!零!……どうしたの?」

「……霊…夢…」

零の様子がおかしい。

目は虚ろで足取りも覚束ない。

彼を支えようと立ち上がるがその彼に軽く突き飛ばされ、畳に押し倒される。

「え?!ちょ、ちょっと!」

彼の状態は明らかに異常だった。

「霊夢……」

「ねえ、ほんとに……ひゃん!」

彼が私の首に口を付け、そのくすぐったさに声が出る。

その瞬間、体から徐々に力が抜けていくのがわかった。

「……ぜ…零…?」

彼はそのまま私の体を強く抱き締める。

その様子はあまりにも辛そうで、私は彼の渇望に身を任せることしかできなかった

 

 

零Side

「はぁ…はぁ…」

一体何があった?

地霊殿から帰る前に霊夢に連絡をとったところまでは覚えているのだが、そこから先は記憶がない。

そして気が付くと霊夢を畳に押し倒していた。

彼女の首には俺の歯形らしきものがついており、彼女の顔には涙が浮かんでいた。

「霊夢…俺は……」

最悪だ

何が起こったかはわからないが、霊夢を泣かせてしまった。

「もう……大丈夫なの…?」

霊夢がこちらを気遣いながらその手を差し伸べてくる。

俺はただその手を優しくとることしかできなかった

 

 

 

「それで?本当に心当たり無いの?」

「全く……何にも思い付かんな」

体調を取り戻した霊夢になぜああなったのか尋ねられたが、身に覚えがなかった

「不思議ね、あんなになったんだから何かありそうだけど…」

「わからんな、医者に見て貰うか」

「そうね、次は永遠亭でしょ?見てもらってきなさいよ」

「ああ、そうする」

永遠亭には永琳という医者がいたはずなのでついでに見てもらうことにした。

「じゃあ、いくよ」

「ねえ、零」

「ん?」

「さっきみたいな事、あんまり他の娘にしないでね?」

「わかった」

霊夢に釘を刺されつつ、俺は永遠亭に向かった。

 

 

 

 

 

 

幻想郷上空

高度約3000メートルほどのところにその少女はいた

外見の年齢は14歳ほど。

髪の色は空のような水色、瞳は海のような深い青。

背中には機械的な羽が二枚ついている。

彼女は零の式神の中でも最年少の少女であった

親に捨てられ孤児として生きていた彼女は帝国に道具のように扱われ、ただ人を殺すことを教え込まれた。その中でも狙撃の腕がよくパラサイトに寄生された際もその腕前から狙撃手の異名を与えられた。

その後さまざまな戦場を渡り歩き、零に遭遇した。

そこで彼女は初めて死を覚悟した。

あまりにも彼は強く、それでいて優しかった。

「お前に選択肢をやろう。ここで死ぬか、俺たちについてくるか」

死ぬのは怖くなかった。だが、この男についていけば何かが変わると思った。

だから彼女は彼に従った。

それ以降は彼女は以前よりも幸せだった。

先に彼の協力者となっていたパラサイト達に歓迎されたのだ

そして今、彼女は何もすることがなく空を漂っていた

彼女は自身の迷彩で他の生物には探知されないようにしながら自由時間を楽しんでいた。

「翼……か」

翼、それは零が彼女に与えた名前である。

「……ふふっ」

彼女は小さく笑う。

役目が来るその時を夢見ながら……

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって永遠亭

「……ってことがあったんだ」

零は永遠亭で永琳に何があったのかを話していた。

「なるほど、多分霊力不足ね」

「使いすぎって事か?」

「多分ね、スペルとか使いすぎるとよくあるそうよ」

スペル…式神か

「心当たりありそうね」

「言われてみりゃあ…ってやつだな」

「とりあえず安静になさい」

「はーい」

 

「さて、どうするかな」

特にやることがなくなってしまった。

「あれ?零さんじゃないですか!」

「ん?ああ、鈴仙か」

鈴仙・優曇華院・イナバ

ここ、永遠亭で働く少女だ。

永琳を師匠と呼んで慕っている

「どうしたんですか?」

「実はな」

 

少年説明中…

 

「ってことがあったんだ」

「なるほど、大変だったんですね」

「まあな」

「そういえば、零さんって銃使えるんでしたっけ?」

「一応な」

「へー、意外です」

「そうか?」

「はい」

そんな会話をしているときだった

「零、いいかしら?」

目の前に突如紫が現れた

「どうした?」

「計画を実行したいの」

「……」

「け…計画?」

鈴仙は首をかしげている

「いいんだな?」

「ええ、準備をお願いね」

「…わかった」

そう言って俺は転移する

戦いの準備をするために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 第四章 討伐戦争

 

 

 

 

 

 

零達と霊夢達の戦いが始まる

 

 




………はい
次回から第四章です
勝手に変更して申し訳ありません
戦闘シーンは頑張りますのでお許しください

それではまた次回に


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第四章 討伐戦争
第四章 討伐戦争 前夜


「おーっし、ルール確認すっぞ~」
ここは次元の狭間。
そこに居るのは容姿の違う男女六人
「ルールは単純、俺たちが一人ずつ出て戦うだけ。
あっちは複数人出てくるが問題ないだろ。
あと一般人は殺っちゃ駄目。いいな?」
《捕食者》こと焰が他の面子に確認をとる
「了解です!」「……わかった」「わかりました!」「心得た」
それぞれの反応をして、ルールの確認をする
「あっちはある程度まで叩きのめせば戦闘不能(ピチュる)で復帰不可、ただし一人倒せば復帰できる」
「勝利条件は?」
「あっちの全滅。こっちが全滅すると負け」
「なるほど」
零が紫と進めていた計画
本当はもう少し先の話だったはずだ
「準備いいっすよ?御主人」
振り向いた先には零がいた。
「戦争、といってもこれは遊びさ。楽しもう」
「それで…最初は誰が行くんですか?」
凛音が尋ねる
「僕が行きますよ」
そう声をあげたのは緑髪の少年、《守護者》だった
「行けるのか?()()
陸斗と呼ばれた少年はニッ、と笑う
「行けますよ!頑張ってきます!」
そう言って彼は準備を始めた









紅魔館 エントランス

 

「……以上が今回のルールよ、何か質問は?」

紅魔館にいつものように人が集められていた。

最近何かとここに来ることが増えている。

「なあ、それに何のメリットがある?」

口を開いたのはレミリアだった。

「さっき言った通りよ。」

「何故戦力の増加等ということをする必要がある?」

「幻想郷を護るためよ」

「何?」

「今、別の次元ではとある勢力による侵略が行われているわ」

「それに対抗するため、と」

「ええ、ご理解いただけたかしら?」

「まあ、な。ちょうど暴れようと思っていたところだ。」

レミリアはその顔に笑みが浮かぶ

「じゃあ、そう言うことで」

「待ってくれ」

待ったをかけたのは龍義だった

「どうしたの?龍義?」

「何の情報もなく行くのか?」

その言葉に全員がハッとする。

確かに、あの得体の知れない連中を相手にするのは気が引ける

「じゃあ、どうしろって言うんです?」

妖夢が問う

「これ」

そういった彼の手には紙が五枚

「何ですか?それ」

()()()()()()()()

『!?』

あいつら、というのは式神のことだろうが、一体何故?

「今日の朝、あいつが持ってきた。『せいぜい足掻くんだな』だそうだ」

その報告書は龍義が以前言っていたものだろう

「ここには、失踪扱いのパラサイト、つまりあいつが式神として使っている奴らの情報が載ってる」

「信用出来るの?」

「ああ、少なくともこれにかなり近いだろう」

「なるほど。鵜呑みにせずに活用しましょうか」

ハンデのつもりなのだろうか

「ああ、それと」

紫が口を開く

「零には誰が出るか伝えるようにって言ってあるから」

「え?まじで?」

全員が唖然とする

それはつまりあらかじめ、これこれこういうのがこうなるから、と伝えられるということ

こちらには報告書もある。よっぽどの自信があるのだろうか

「んで?最初は誰が来るんだ?」

龍義の問いに紫が答える

「相手の第一陣は《守護者》だそうよ」

「……いきなりかよ…」

「知ってるのね」

「まあな、ってか失踪扱いの連中は全員がヤバいのばかりだからな」

「その守護者ってどれくらいヤバいんですか?」

早苗が聞くと龍義はまるで諦めらかのような雰囲気を発しながら答える

「最強の防御力、最強の耐性。それはあまりにも強力でな」

「でも、それだけなら……」

早苗の反応に龍義はさらに続ける

()()()()()()()()()()()()()()()()って言ったら?」

「な?!」

龍義の一言に早苗は驚愕を露にするが、他の面子はピンと来ていないようだった。

「早苗、そんなにヤバいの?」

「ヤバいなんてレベルじゃありませんよ、霊夢さん」

「その、核ってやつはどんなものなのよ」

霊夢の問いに答えたのは龍義だった

「大量殺戮を元に作られた兵器さ、この幻想郷だったら二、三発で壊滅するだろうよ」

「…なるほどね、それはヤバいわね」

「何はともあれ、作戦をたてましょう」

紫の一言で会議が再開される

最強の盾を倒すために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 第一戦 《守護者(ガーディアン)》vs紅魔

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陸斗「さーて、張り切って殺りましょうか!」

レミリア「さあ、全力で殺るわよ!」




ここまで読んでいただき、ありがとうございました
一応式神の名前の確認です
捕食者→焰
狙撃手→翼
守護者→陸斗
演奏者→凛音
執行者→竜胆
以上になります
焰だけしれっとでしたが許してください
次回から四章本格スタートですので、お楽しみに!


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守護者(ガーディアン)》vs紅魔

「さて、ここからスタートかな?」
彼が立っているのは湖の近くの岩場だった。
「うーん、霧で何も見えないや」
周りは濃い霧で覆われていて視界が悪くなっていた。
「とりあえず移動しよ」
そう言って移動しようとした彼を
横から迫る紅い槍が穿った


数分前

 

「それで?誰が最初に行くの?」

「最初は我々がいこう」

名乗りをあげたのはレミリアだった。

「我々、ってことは紅魔館総出で?」

「まあな、そうでなくちゃ敵わなそうだ」

流石のレミリアも今回は慎重なようだ。

「ああ、これを渡しておくわ」

「なんだ?」

紫の手には小型の機械が乗っていた

「にとりが作ったデバイスよ。連絡が取れるようにね」

「なるほどな」

そう言って彼女はそれを耳にかける。

「それと、戦闘不能になったら『ロスト』ということになるわ。頑張ってね」

「ああ。じゃあ、行ってくる」

そう言って彼女はホールを後にした。

 

 

 

 

 

 

「どうするおつもりで?」

玄関にはレミリア以外に咲夜、美鈴、パチュリー、フランドールがいた

「咲夜と美鈴は近距離から、私とパチェ、フランで中距離からやる」

「隙をみてスペルを叩き込む、でいいかしら?レミィ」

「ああ、それでいい」

「場所はわかってるんですか?お嬢様」

美鈴が尋ねる

「場所は霧の湖だそうだ」

「なるほど、奇襲しかけられそうですね」

「どうするの?お姉様?」

「考えてある。ああ、あとフラン」

「なぁに?」

「頼みがあるんだが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いたた、もろに喰らったみたいですね」

油断していた

まさかいきなり先手を打たれるとは思ってなかった。

おそらく、館の方角から飛んできた今の一撃はレミリア・スカーレットという奴のスペル『《神槍》スピア・ザ・グングニル』だろう

()()()()()()()()()()かなりの致命傷になっただろう

「すげぇ威力、ってかそれでも霧晴れないんですね」

かなりの威力だったのにもかかわらず霧は濃いままだ。

「このままだと負けないけど勝てないな」

どうしようか、と考え……る時間もくれないらしい

殺気を感じて体を捻って避ける

先程までいた場所を何かが貫く。それは人の拳だった

紅魔館のレミリアの仲間で格闘術使いは…

「紅 美鈴か。案外早いですね」

「私を忘れられては困ります」

「ッ!」

後ろからの声に今度は飛び退く

その瞬間に数本のナイフが突き立つ

「十六夜咲夜、なるほど!総出で来ますか!」

想定内だが、できればこうなってほしくなかった。

とすれば、パチュリー・ノーレッジとフラドール・スカーレットもいるだろう

どこまでやれるか

その瞬間だった

美鈴と咲夜に体を押さえつけられる。

「「今です!パチュリー様!」」

「しまった!」

パチュリーの魔法は厄介だとご主人()から聞かされている

咲夜と美鈴がいなくなるが避ける時間はない

そして……

ーーーーー『《火水木金土符》賢者の石』ーーーーー

パチュリーのスペルが陸斗に向かって放たれる。

「しょうがない、『____

 

 

 

 

 

 

 

「…なかなかに派手だな、パチェ」

咲夜と美鈴がいるところに思いっきり打ってくれとは言ったが、まさか『賢者の石』を打つとは思わなかった。

「流石にこれを打てば無傷じゃ済まない筈よ、さっさと追撃しましょう」

「そうだな。咲夜、美鈴、聞こえt」

その時、

ズドン

「な……!」

パチュリーのたっていたところに光の柱が落ち、衝撃波がレミリアを襲う

「パチェ…?」

そこにはすでにパチュリーはいなかった

『レミリア!』

「!紫か?!」

紫からの通信だった。

『パチュリーが戦闘不能(ロスト)したけどどうしたの?!』

「まさか、今のでか!」

招待不明の光の柱、十中八九奴の攻撃だろう。

だが、どうやって?

「咲夜、美鈴、フラン!気を付けろ!やつはまだ戦える!」

 

 

 

 

 

「やれたかな?」

陸斗は肩や膝についた土を払う

いきなりの攻撃にはまたも驚かされたが、問題はない

「あと4人か。このまま殺れればいいんだけど」

彼の周りには二枚の大楯が浮いていた。

「さて、こっからが本番だ」

そう言い、彼は反撃を始める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 最強の盾 一瞬の隙

 

 

 

 

 

パチュリー「私の出番短すぎじゃない?」

レミリア「…まあまあ」

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
喉痛いし頭も痛い中書いたのでぐちゃぐちゃかも……
次回で決着しますのでお楽しみに!


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最強の盾 一瞬の隙

お姉様の指示が耳にはいる
(パチュリーの本気喰らった上にまだ動けるんだ…)
パチュリーのスペルの後の轟音。おそらく反撃か何か受けたのだろう。
大体の敵の位置はわかった。美鈴と咲夜は巻き込まれないようにかなり遠くへ移動している。
(作戦通りね、ここまでは)
音をたてずに目標地点まで移動する。
「じゃあ、やりますか」
フランはスペルを発動させる


 

 

 

「! 殺気!?」

急な気配に振り向くと、そこには金髪の少女がいた。

赤い剣を持ちこちらへ向かってくる

レミリアの妹、フランドール・スカーレットだ

「堂々来ますか、なら!」

相手は正面から来るなら反撃は容易い自分に剣が刺さる直前に彼はスペルを発動させる

「《壁符》リフレクション・インパクト!」

すると、彼を緑色の光が包み込み、ダメージを吸収する

「喰らえ!」

そしてそれをフランに向けて放つ

それは赤い光線となってフランに直撃する

これがパチュリーのスペルを防ぎ、弾き返したスペルである

発動直後に自身へのダメージを吸収し、()()()()()()()()()()()()()()()()()()というもの

彼が守護者という異名を持つ理由の一つだ

「案外呆気ないなぁ」

放った光線はフランドールの心臓部を貫き、その体を消滅させた

恐らく戦闘不能(ロスト)になったのだろう

「あと三人」

その時、再び美鈴がと咲夜が仕掛けてきた。

その後ろにはレミリアも見える。

「早いですね、到着が」

「まだ終わってませんからね?」

「でも、あと三人だけですよ。先程二人目を倒しましたし」

「「?!」」

二人の顔に驚愕の表情が浮かぶ

「ッこのぉ!」

「待ちなさい!美鈴!」

美鈴は怒りに身を任せ全力をぶつけてくる

そこへ

「よくも妹を!」

レミリアが加わる

「丁度いい、三人まとめて御相手しますよ!」

 

 

 

・・・・・

 

 

 

「はぁ…はぁ……」

「化け物、ね」

「どうも、あまり嬉しくはありませんが」

戦闘開始から一時間弱

攻めては弾かれ攻めては跳ね返されを繰り返していた

奴の反射のスペルもそうだが、二枚の大楯も厄介だ

攻撃を防ぐだけでなく、ぶつけることで攻撃もできる

ダメージ自体はさほどでもないが、こちらの動きを制限してくる

精神をすり減らしながらの戦いは、非常にキツい

いい加減私も咲夜達も限界だ

「美鈴、咲夜、どれくらい余力がある」

「スペル一枚くらいは、何とか」

「ははは、私は無理そうです」

咲夜はスペル一回、美鈴は限界か

私もあと一発くらいだろう

奴の周りの盾、そしてあの反射のスペル

恐らくは連続しては使えないはずだ

現に先程からの戦闘でも()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()

そこが唯一の勝機

逃せば勝ち目はないだろう…

 

 

 

上等だ

あきらめてなるものか

「美鈴、時間を稼げ! 咲夜は私に合わせろ!」

「「了解」」

 

 

なんだ?まだ何かする気か?

何か話していた三人が急に動き出す、咲夜とレミリアが下がり美鈴が接近してくる。

「時間稼ぎですか!」

そう言って美鈴に拳を叩き込む

「まだ足掻くんですか?」

「ええ」

「何故そこまで!」

「私達は、お嬢様を信頼しています!だからこそ、諦めない!」

美鈴の全力の一撃を避け、彼女の体にこちらの一撃を叩き込む

「ガフッ」

「終わりです!」

そのまま振り抜き、美鈴を吹き飛ばす

彼女はそのまま木に激突し動かなくなる

すると、彼女のからだが光って消えた。

「ロスト、確認。」

あと二人だ

だが

「これで終わらせる!」

二人は最後の一撃を放とうとしていた

「《幻符》殺人ドール!」

「《神槍》スピア・ザ・グングニル!」

その二つのスペルは守護者に向かって放たれる

 

 

 

 

 

 

「甘い!」

彼がここでは一枚上手だった

彼のリフレクションは()()()()()()()()()()()()()()()()

よって、複数人が相手でも対処できるのだ

「《壁符》リフレクション・インパクト!」

再び彼の体を光が包み込む

そしてレミリアと咲夜のスペルを吸収し……

 

「終わりだぁ!」

 

それを光線として打ち出した

咲夜のスペルはまるでマシンガンの弾のように飛び彼女の体を蜂の巣にするかのように穿ち、彼女を倒した

グングニルは砲弾のように発射されレミリアの体を貫いた

 

 

 

 

「はあ……はあ…」

彼の壁符は使う間隔が短いほど次の発動までの時間がかかる、次に撃てるのは恐らく3分後くらいだろう

問題はない、相手は全滅したのだ

「さて、次の相手h」

グサッ

「え?」

陸斗の体を一本の剣が貫いたその色は

 

 

 

深紅の色

 

 

その剣を陸斗はよく知っている

その剣は元は零が所有していたがとある人物に渡した剣

 

剣の名はヴァルムヘイル

 

 

とある人物の名は

 

 

フランドール・スカーレット

 

 

 

「何故?!馬鹿な!」

抜こうとするが既に遅かった

ヴァルムヘイルは赤い光を放ち陸斗の体の内側から爆発させる

壁符は使えない

「……負けですね、僕の」

そう言って彼はヴァルムヘイルによって爆破された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わったかな」

爆心地から数メートル先にフランはいた

何故、彼女が無事か。それは……

 

戦闘開始前

 

 

「フランは参加しないでくれ」

「どういうこと? 黙って見てろって?」

「いや違う、正確には囮だけを使ってほしい」

「なんで?」

「恐らくだが、一回でも倒したと相手に認識させれば油断が誘えるかも知れない。」

「なるほど、じゃあフォー・オブ・アカインドを使えばいいのね」

「ええ、頼むわね」

「わかった!」

 

 

 

 

「こうも上手く行くなんてね」

実際に最初にレーヴァテインを持っていた分身は倒され、彼に錯覚させることに成功した

恐らく、失敗していたら勝ち目はなかっただろう

「さて、紅魔館に戻ろうかな」

そう言って帰ろうとしたときだった

 

「いやー、お見事お見事」

「??!」

後ろからの声に振り返る

そこには

陸斗がいた

 

 

「な…なんで?」

「ああ、あの程度じゃ死にませんよ?」

そう言いながら彼はこちらに何かを見せる

「…それは?」

彼の手にはペンダントがあった

それには緑色の水晶のようなものが装飾としてつけられていたが、割れてしまっている

「僕らの残機、とでもいいましょうか。僕らは驚異的な回復力があるので、死亡判定になるとこれが代わりに割れるんですよ」

「じゃあ」

「ええ、今回は貴女方の勝ちです」

そう言って彼はそのペンダントをしまう

「さて、僕は帰りますが、その前に情報を差し上げましょう」

「情報?」

「ええ、まあ報酬とでも思っておいてください」

「それで?内容は?」

「次の相手は《演奏家》です」

「! 教えていいの?」

「そういう指示ですから」

ハッタリ、というわけでもなさそうだった。

「まあ、精々頑張ってください。」

「ちょっと!まだ話は…」

既に彼はここから消えていた

「……とりあえず、戻ろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やられちゃったなー」

陸斗は次元の狭間に戻っていた

「……お疲れ様」

「あれ?翼さんじゃないですか?お出迎えですか」

「…マスターの指示」

「なるほど、怒ってますかね?」

「……いや。でもまだまだだな、って」

「あはは、そうですか」

どうやら、機嫌は損ねていなかったようだ

「凛音はどこに?」

「……もう準備してる、かなり張り切ってたよ」

「そっか」

僕の役割はここまでのようだ

「僕は休むよ。何かあったら連絡してくれるかな?」

「……わかった」

恐らく、凛音はさほど驚異にならないだろう

恐らくすぐに倒されるはずだ

だって

 

彼女は

 

 

 

「……優しすぎるからなー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 vs《演奏家》 鳴り響く音色

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凛音「……戦わなきゃ…だよね…」

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
次回はvs凛音です
そんなに長くはならない予定です



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演奏家(パフォーマー)》 鳴り響く音色

(戦わなきゃ…でも、でも)
凛音はビビっていた。
基本的に後方支援に徹していたので、単騎戦闘は慣れていない
「どうした?凛音」
「あ、零さん」
「怖いか?」
「……はい」
「まあ、今まで前線に出なかったからな、前は一人だったっぽいが」
「昔の話です、もう皆さんと居るのに慣れすぎてしまって」
凛音は目を伏せる。
悲しいが()()()()()()()()()()()
以前、何人かに話したらしいが、その内容は事実とは異なる
関係ないはずなのにそんなことが頭をよぎる
「凛音」
「はい?」
「別に勝てなくてもいい。出せるだけの力を出してこい」
「陸斗君は出しきってませんでしたけど」
「まあな、あいつは出すのに慣れてないだけだから」
「そう…ですか」
「すまないな」
「え?」
急な零の謝罪に首を傾げる
「君の音色を戦いに使わせてしまって」
「大丈夫です、いつかなるんじゃないかなって思ってましたから」
「…すまない」
「気にしないでください、とりあえずいってきますから」
「わかった、気をつけてな」
「はい!」
そう言って彼女は幻想郷に転移する










「それで?次は誰なの?」

もはやここで集まるのが当たり前、と言わんばかりに紅魔館には人がいた。

「フランの話じゃ、次は《演奏家》らしいじゃない」

「ああ、そうらしいな」

そこには紫と龍義の二人がいた

その周りには他の面々が待機している

「実際どうなの?彼女」

「単騎じゃそこまで強くは無いらしいな、基本的に後方支援だとか」

「じゃあ、誰を向かわせましょうか」

「私が行っても?」

声のするほうを見るとそこには傘を持った女性が

「幽香…貴女が出るの?」

「ええ、でもできれば近接で戦える人がほしいわね」

「じゃあ、私が!」

名乗りをあげたのは妖夢だった

「行けるか?妖夢」

「はい!任せてください!」

やる気は十分そうだ

「なら、任せる。場所は…」

龍義はマップから《演奏家》の位置を探る

「ん?ここは…」

「見つけたの?」

「ああ、場所は」

 

 

「向日葵畑だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「綺麗…」

転移してきた先で凛音の目に入ったのは一面の向日葵だった

全ての向日葵が咲き誇っているが、今の季節は本来なら秋のはずだ。

「ここは秋でも向日葵が咲くの」

「?!」

振り向くとそこには緑色の髪に淡いピンク色の日傘をさしている女性と、白髪で背中に刀を2本背負った少女がいた

「貴女が《演奏家》?」

「ええ、貴方は?」

「私は風見幽香。それで…」

「私は魂魄妖夢です」

風見幽香に魂魄妖夢、恐らくこの二人が私の敵

 

 

 

ならばやることは決まっている

 

 

 

 

 

 

 

 

急に雰囲気が変わった

先程まで柔らかい印象だったのに

まるで背筋が凍ってしまったようだ

「貴女達が何方かは深くは知りませんが」

彼女の手には横笛が握られている

「消えてください」

その言葉を合図に戦闘が始まる

 

 

 

圧倒的

すべてにおいて彼女(凛音)の動きに当てはまる

攻撃の回避や衝撃の逸らし方は勿論

放つ弾幕の制圧力と破壊力のバランスもとれている

先程まで笛だけだったのに今の彼女の手には機械のようななにかがあり、そこから太鼓、笛、弦楽器などの音が響き渡る

以前、紫が持ってきた「CD」で聞いた音色にそっくりだった

美しく激しい彼女の弾幕はかなり驚異だった

発射されてから着弾まで1秒かかるかどうかというレベルだ

音そのままの速さで飛ぶその様は、まるで弾丸のようだった

しかし、一定のリズムで攻撃が止む瞬間が存在する

そこを突ければ、勝てるはずだ

「妖夢!いつでも行けるようにしなさい!」

「はい!」

 

 

強い

戦いはじめてからそう感じたのはあの方以来だろうか

緑髪の女性は弾幕を撃ち落とし、白髪の少女は弾幕を切り伏せる

こちらの攻撃は一応音速とほぼ同速度であるはずだがあの2人はそれを紙一重で捌いていく

才能なのだろうか、と考えたところで首を横に振る

怖気ついてはいけない

それにこれは勝てるかどうかじゃない

自分の全力が出せるかどうかだ

最後の最後まで諦めない

 

 

 

 

 

 

 

剣撃と光線、音の弾幕による均衡は

突如として崩れ落ちる

「妖夢!」

幽香の放った渾身の一撃が凛音を掠める

「ッ! 危なかった」

「隙あり!」

妖夢は凛音が体勢を崩した隙を逃さなかった

霞むような速さで凛音に接近する

勢いを殺さずにそのまま抜刀する

「しまった!」

「もらったぁ!」

妖夢の一撃は吸い込まれるように凛音の首に直撃した

 

 

 

 

 

 

 

「う、う〜ん」

「気がついたみたいね」

目が覚めるとそこは向日葵畑の横の道端だった

首元を見るとペンダントは割れてしまっている

「…負けちゃいましたか」

「なかなか手強かったわよ?」

幽香にそう言われて少し笑みが溢れる

「そう、ですか」

「ええ。きっと鍛えればもっと強くなれるわよ」

「そういえば、もう一人の彼女は?」

「いないわよ?」

「え?」

「貴女と相打ちになってロストしたのよ」

相打ち?そういえば直前に弾幕飛ばしたっけ

当たったんだ、あれ

「貴女の音色は本当に綺麗だったわ。今度もっと聞かせてくれるかしら?」

「! はい、喜んで!」

幽香が差し伸べた手を凛音はとり、戦いは終わった

 

 

 

 

 

 

 

「むぅぅぅぅ〜〜」

「何唸ってんだよ」

「悔しいんです!」

相打ちになった妖夢は紅魔館に飛ばされていた

「まあ、そこまで消費してねえみたいだし、また出ればいいだろ」

「はい…」

落ち込む妖夢を慰める龍義

そこへ

 

「戻ったわよ」

「おお、幽香か」

戦いを終えた幽香が戻ってきた

「次のやつわかったか?」

「ええ、次の相手は」

 

 

 

 

 

 

 

「《執行者》よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、疲れた」

次元の狭間に戻った凛音は腰掛けていた

ここは零が造った屋敷だ

『お前らの家だ好きに使ってくれ』

という話だが、かなりでかい

紅魔館という屋敷ほどの大きさらしい

「お疲れだったな、凛音」

「ああ、焔君ですか」

声をかけてきたのは焔、捕食者の名をもつ青年だ

「かなりの奮闘だったみたいだな」

「1人は慣れてないので疲れましたけどね」

「いつかなれるさ、今度組み手でもやるか?」

「私じゃ相手にならないでしょ?」

「釣れねえなぁ」

「それよりも、次って竜胆君なの?」

「らしいぜ、あいつも戦いたいんだろ」

「うーん」

「なんだ?心配か?」

「そうじゃなくって」

「???」

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 vs《執行者》 戦う理由

 

 

 

 

 

竜胆「ふむ、美味いな」

勇儀「だろ?ほら飲め飲め」

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
次回は竜胆戦になります

最近、寒くなってきてラーメンを食べる機会が増えました。
結構夜は寒いんすよ
皆様もお体にお気をつけください

UAが3000を突破いたしました!嬉しい限りです!


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執行者(エンフォーサー)》 戦う理由


「まさか、ここまでとはな」
目の前の男が私にそう声をかける
普段はこんなことはしない
いつもならば笑って共に酒を酌み交わす仲だったのに
「どうした?鬼ともあろうものが、迷っているのか?」
目の前の男の挑発に苛立ちを覚える
だが、私はあくまでも冷静だ
絶対にお前を止めて見せる








「《執行者》?」

紫から今回の戦闘に参加するように言われたのはつい先程だった

「ええ、貴女にお願いしたいのだけれど」

「構わんが、私は飲む約束をしてるんだ」

「へー?お相手は?」

「竜胆ってやつだ」

「……そう」

「あ?なんか文句でもあんのか?」

「いいえ、でも…」

歯切れが悪い、何を考えている?

「なんでもないわ、精々楽しんでね」

「あ!おい!」

返事も聞かずいきいきやがった。

あんにゃろう

 

 

 

 

 

 

「待たせたか、勇儀」

いつもの居酒屋で飲んでいると声をかけられる

「ああ、待ってる間に一本飲んじまったよ」

「ふむ、それはすまなかったな」

竜胆はそう言って私の隣に腰掛ける

「さっき八雲紫ってやつが来てな?」

「うむ、それがどうした?」

「執行者ってやつと戦えってさ」

「な?!」

竜胆が異様に驚く

「どうした?竜胆?」

「勇儀、外へ行こう」

「あ?なんでだよ」

「面倒事を片付けるのだよ」

急に雰囲気が変わった

 

 

 

その後私達は地獄の外れにある平原に来ていた

「んで、面倒事ってなんだよ」

「《執行者》と戦うのだろう?」

「ああ?まあ、そうなんだg」

「我がその《執行者》だ」

 

 

 

 

 

 

 

は?

 

 

 

 

 

 

 

 

「何かの冗談か?竜胆」

「そう聞こえるか?」

「ああ、聞こえるね」

「ならば仕方がない」

 

 

「宣言しよう、我は地獄を滅ぼす」

 

 

「!?」

「そのままだよ、我は我が正義の為に地獄を滅ぼす」

「一体何の真似を!」

「口実だよ、お前が我と戦うためのな」

「そうまでして…」

「なあ、勇儀」

「?」

「怖いのか?」

「…何が言いたい?」

「殺し合うのが怖いのかと聞いている」

「…」

「怖じ気付いたのなら構わん、そこをどけ」

竜胆が町に向かって歩こうとする

 

 

 

ガシッ

 

彼の肩を掴む

「ん?」

「行かせると思っているのかい?」

「ほう?」

「やってやるよ」

 

久々の喧嘩だ

 

相手は竜胆

 

不足はない!

 

「さあ!始めようか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

喧嘩、というのが正しいのだろう

弾幕を出さず、ただ己の肉体だけで戦う

普通の喧嘩と異なる点があるとすれば

両者の拳は一撃必殺の威力である、ということだろうか

互いの一撃は喰らえば即退場の致命打になり得る

それを互いに繰り出しつつ相手のを避ける

その動きは一種の舞のようだった

「何故戦うんだ?竜胆」

「無論、我が正義の為」

「なら、その正義ってなんだ?」

竜胆は押し黙る

彼の正義

それは彼自身にもわからなかった

「解らぬ」

「そんなもんの為に戦うのかい?」

「…何が言いたい?」

「私にゃあ正義がなんだというのは解らんが、少なくともこれだけは言える」

 

 

「くだらないね」

 

 

「…」

「そうだろう?訳も意味もわからないもののために戦って何になるってんだい?」

「…」

「私はな、楽しいから戦う」

「…楽しい?」

「ああ、それにな」

「なんだ?」

「喧嘩の後の酒は旨い」

「は?」

 

数秒の沈黙……

 

「……ククッ」

「?」

「ハッハッハッハッハ!」

急に竜胆が高笑いをする

 

「そうか、楽しいか。酒が旨いか」

「ああ」

「我に足りなかったのは、そういう娯楽だったのかも知れんな」

「どうだろうねぇ?」

「悩んでいた我が馬鹿馬鹿しい」

竜胆が顔を上げる

その顔は、清々しく笑っていた

 

「ならば、決着としようか」

「いいねぇ!そうこなくっちゃ面白くないさ!」

 

 

 

互いに距離を取る

そして…

 

 

「『四天王奥義 三歩必殺』!!」

「『黒龍拳 鏖牙閃雷』!!」

 

 

互いの必殺技がぶつかり

 

巨大な衝撃波を生む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うーむ」

目が覚めると、そこには誰も居なかった

周りには飛び散った泥、足元には直径15メートル程のクレーター

首のペンダントは砕けている

「相討ち、とはな」

見渡しても勇儀の姿はない

「紫、いるのだろう?」

「ええ、ここに」

竜胆の呼び掛けに紫が答える

「どうなった?」

「そのまま相討ちよ、妖夢と凛音みたいにね」

「そうか…」

「勇儀なら無事よ?すぐ戻ると思うし」

「なら構わん」

 

そう言って歩きだし始めて、ふと足を止める

「伝え忘れていた」

「何かしら?」

「次の相手だ」

「あら、そうだったわね」

「次の相手は《狙撃主》だ」

「間違いないの?」

「ああ、奴は恐らくまだ出るまい」

奴とは捕食者。焔のことだ

「わかったわ。伝えておく」

 

 

そこへ

 

 

「お疲れ様でした、竜胆さん」

「? ああ、陸斗か」

第一戦目で出てきた陸斗がいた

「紫さん、伝言です」

「何かしら?次の相手は聞いたのだけれど」

「それなんすけど、戦いは三日後にしてもらえませんか?」

「いいけど、なんで?」

「さあ、とりあえず零さんからの指示なんで」

「? わかった、伝えておく」

「じゃあ、そういうことで」

そう言って陸斗は消える

「その顔は、見つけたようね」

「うむ、我はもう、迷わない」

それを聞き紫はスキマに消える

 

さて、我も行こうか

 

好敵手(勇儀)と飲む酒は今後も旨くなりそうだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 《狙撃主(スナイパー)》 不可能を覆す実力と兵器

 

 

 

翼「♪♪~」

陸斗「なんすか、あれ…」

凛音「戦車の…砲台……?」

焔「これ、戦いになんのかよ…」

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
お気づきの方も居るかと思いますが、式神でスペルや技が使えるのは「迷いがなくなった」時です。なので翼ちゃんはガンガンに暴れまわります
次回はスナイパー対決です!さてさて、誰が相手になるのやら、お楽しみに!


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狙撃主(スナイパー)》 不可能を覆す実力と兵器


零の造った館には二つの地下室がある
誰も立ち入ることがない部屋が一つ
もう一つは
「♪〜」
その部屋には大量の機械やら工具が転がっている
部屋の入り口付近には2人の男女が
中心には1人の少女がいた
「あれ、なんですか?」
「俺に聞くなよ、銃はわからん」
凛音と焔は中心にある巨大な兵器を眺めていた
元々帝国軍所属の2人からしたら製作工程に関しては見慣れていた

作ってるのが自分より幼い少女という点を除いて


部屋に篭り始めてから丸2日近く経っている
食事や睡眠はとっているのか、という心配をよそにその少女は鼻歌混じりに作業を進める


「…できた」
「お疲れ様です、翼ちゃん」
「…凛音お姉ちゃん」
作業を終えた翼を凛音が抱きしめる
「これは…狙撃銃か?」
「…うん」
「にしては、ゴツいな」
「…そうでもない、本質は性能だから」
竜胆が戦った日に三日後に戦うと話を聞かされた。しかも相手も銃使いだと言われれば気合が入る
「大丈夫だよ、心配はいらない」
いつもと違い、はきはきとした物言いに凛音と焔は彼女の変化を感じ取る


「確実に仕留めるから…」





ガシャンガシャン

キュイィィィィン

バチッバチバチッ

 

 

機械の駆動音や作業の音が鳴り止まない

本来、幻想郷では聞かないであろう音が鳴っている

ここは妖怪の山の河童の基地

そこに鈴仙はいた

「調子はどうだい?」

「好調よ。にとり」

基地の河童たちを束ねるにとりが声をかけてくる

「そっちこそどうなのよ?」

「順調さ。問題なく進んでいるよ」

鈴仙がにとりに依頼したのはとある武器の製作だった

相手はおそらくかなりの長距離狙撃を行なってくるはずだ

だが、それは普通ならの話だろう

迷いの竹林の奥の永遠亭を狙うことはまず不可能なはずだ

きっと接近してきての銃撃戦になるはずだ

そうなった時の武器をにとりに頼んでいた

河童たちの手がける武器は最新鋭で、どれも使い心地はよかった

「あと2日だっけ?」

「ええ、間に合いそう?」

「勿論、出来しだいに永遠亭に持っていくよ」

「ありがと」

決戦まであと2日

 

 

 

 

 

 

2日後

 

 

 

 

 

 

「ここに置いとくよ~」

「わかった、ありがとねー」

「おまけも置いとくから~」

「おまけ?よくわかんないけどありがとー!」

決戦当日の夜、永遠亭では準備が進められていた

迷いの竹林には兎達が待機しており、各自が連絡できるように無線機を持っている

永遠亭内部には永琳と鈴仙が待機している

加えて…

「何故貴女がここにいるのよ、早苗」

何故か早苗がいた。

普段は巫女装束なのに、彼女は今はガチガチの迷彩服やらギリースーツを着ている

「何故って、戦うために…」

「そうじゃなくって、なんで重装備なんですか?」

「こう見えて私、超が付くほどのガンマニアなので」

「はぁ、好きにして」

「それよりも、うまく行くんですか?」

「ええ、相手は確実に竹林に入ってくる」

「そこをゲリラ戦法で襲撃する、と」

「確実に仕留めるわよ」

「勿論です!」

そう言ったときだった

 

 

 

早苗の体を一本の光の線が貫いた

 

 

 

 

 

「がっ!?」

「な!? なんで?」

 

早苗はそのまま吹き飛び壁に激突する

幸い、零の干渉能力で建築物は破壊されないが、それでも衝撃が凄まじい

それよりも

(狙撃!?一体どこから!?)

本来と全く違う進展に戸惑っていた

ここを狙撃するのは不可能なはず

距離が離れている上に、竹林があるのだ

おまけに夜でかなり暗い

 

届くはずが……

 

 

 

 

 

待て

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もし相手の狙撃銃が

 

 

ここまで狙える精度だったら?

 

 

 

相手の技術が

 

 

 

それを可能にするほどなら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありえる

相手は式神で元々はパラサイト

おまけに《狙撃主》の異名持ち

圧倒的な実力があってもおかしくはない

「さて、どうしようかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…外した、かな?」

永遠亭から3キロ程離れたところに翼はいた

浮遊しながら銃を構える

だが、彼女のそれは銃とは呼べないようなものだった

銃身の長さが4メートルくらい

薬室や、ボルトハンドルは簡素で、外からではどこにあるか視認できない

引き金は銃の下部についたカバーの中にありこちらも外からではよく見ることができない

上部の持ち手の近くには長さ20センチにもなるスコープが備え付けてある

対物狙撃銃にしては口径も大きい

「…使い心地は良好」

彼女の狙撃の腕は群を抜いて素晴らしかった

そして、その実力にあった性能の銃

「…次は、確実に」

狙いをピンク髪の女性に定めて引き金を引く

弾が音速を超える速さで射出されると同時に薬莢が薬室から放り出される

射つと同時に排莢され次弾が装填される

発射された弾丸は目にも止まらぬ速さで飛ぶ

だが、運がいいのか身体能力が高いのか

銃弾を回避された

銃弾はそのまま地面に激突し辺りに衝撃波を撒き散らす

 

避けられた

その事実が翼に殺意を与える

 

「……楽しくなりそう」

 

 

そう言って笑う彼女の顔にはみたことも無いような笑みが浮かんでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 闇穿つ銃弾

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早苗「…危なかったぁ…」

鈴仙「ええ?!無事だったの?!」

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
翼が使っている銃に関しては今後追加する予定の式神紹介にて記載します
もうしばらくお待ちください


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闇穿つ銃弾

「今頃、戦ってるのかしらね」
博麗霊夢は現在、妖怪の山に来ていた
近々来るであろう決戦に備えて
先ほどまで滝行をしており今は着替えて近くの岩場に腰掛けていた
「…そろそろ帰ろうかしら」
そう言って立ち上がった時だった
「あなたが、博麗霊夢?」
「! 誰?」
木の影から現れたのは1人の女性
身長は170より少し低いくらい
髪は漆黒の黒で両目も黒だ
会ったことはない
ただ、彼女の雰囲気だけはどこかで()()()()()
「初めまして、私は神薙 彩(かんなぎ さやか)よ」
「神薙…彩。一体なんのよう?」
「あなたにこれを」
そう言って伸ばされた彼女の手には封筒が握られている
「これは?」
その封筒を手に取り、それに目を通す
どういう仕掛けかはわからないが封が開かないようにしっかりと閉じられている
「彼に、零に渡してくれるかしら?」
「!! あんた零のことを!」
視線を前に戻すが、すでに彼女の姿はない











彩は次元の狭間にいた
霊夢に封筒を渡した直後に引き込まれたのだ
「よかったの?彩」
声をかけるのは紫
「ええ、これでいいの」
そう言って地面に座り込む
彼女は幻想郷に来た時点で死ぬ寸前であった
「あれが、博麗霊夢」
「そうよ、博麗の巫女。そして…」


()()()()()()()()()()()()()()
「一眼あえてよかったわ」
彼女の体が崩れ始める
「紫さん」
「紫でいいわ、何?」
「あの子を、お願い…します」
それを最後に彼女は塵となり、崩れ去る
「ええ、任せなさい」

例え何があっても


約束は守るから















 

 

幻想郷 迷いの竹林

鈴仙は頭を悩ませていた

想定外の射程と威力

完全に見誤った

絶対にあり得ないという距離

こちらがほぼ見えないであろう立地

にもかかわらず、相手の狙撃は止まない

着弾時の轟音と衝撃波は凄まじいもので近くに着弾すれば音で脳が狂いそうだった

「どうします?!鈴仙さん!」

早苗がこちらに聞いてくる

初撃でやられたと思っていた早苗はまだ無事だ

右腕の装甲は砕け散っているが

「どうするったって、反撃のしようが…」

「ちょっといいかしら?」

永琳が声をかけてきた

「なんですか?お師匠様」

「にとりのやつなんだけど」

「あれはアサルトライフルだからダメです」

「これも?」

そういった永琳の手には巨大なアタッシュケースがあった

「なんですかこれ?」

開けてみると中には分解された銃が入っていた

「これって!?」

「組み立てまで何分あれば足りそう?」

「5分、いや10分くらいで」

「わかったわ」

そう言って永琳は庭に出る

「?! 何を?!」

「時間稼いであげるからさっさと組み上げなさい」

永琳は矢をつがえた弓を構える

「久しぶりだから、手加減はできないわよ」

 

 

 

 

 

 

 

「??? 何してるの?」

翼はスコープで永遠亭を見ていた

先ほどまでいなかった白い髪に赤と青の服の女性が現れた

その手には弓が握られている

「弓なんかじゃ届かない…!?」

間一髪で回避する

こちらに向けて光の矢が放たれたのだ

「あなたが、相手なんだね」

口角が上がり、体が熱くなるのがわかる

引き金に指をかけ、スコープを覗き込む

「簡単に、壊れないでね?」

 

 

 

 

 

「ぴ…PTRD…?」

「なにそれ?」

「『PTRD1941』または『デグチャレフ対戦車ライフル』っていいます。改造型ですかね?」

「さあ?でも、使えるみたいね」

鈴仙の手には一枚の紙が

それには

『MBTK2000 カッパレフ対物狙撃銃の取り扱い説明書』と書いてある

名前からして早苗の言っていた銃が元になっているのだろう

「射てそうですか?」

「なんとかね、こう見えて結構軽いのよ」

「じゃあ、永琳先生の元に!」

「急ぎましょ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…案外当たらないものね」

あれから10分近くたったか

永琳は弓を下ろし物陰に隠れている

休みなしに矢を射っていたのだ

流石に疲れる

鈴仙が戻るまで、あとどれくらいだろうか

「お師匠様!」

「鈴仙!遅かったわね!」

「すいません、でも行けます!」

 

 

 

 

 

「! 来た」

スコープに先程までいたピンク髪の女性が写る

「次で仕留める」

そう言って彼女はカードを切る

「スペルカード『《穿弾》ライトニングスティンガー』」

翼の銃に眩い光が集まる

永琳にも使っていたこの技を最大火力で撃ち込む

「これで、終わり…!」

 

 

 

「鈴仙さん!」

かなり遠くに強烈な光を放つものが浮かんでいる

恐らくあれが《狙撃主》だろう

「外さない!」

鈴仙はそう言って引き金に指をかける

「当たれぇッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人が銃弾を放つのはほぼ同時であった

両者から放たれた弾丸は同じ一直線上を飛ぶ

だが、弾丸は互いの軌道を反らせてすれ違う

 

 

 

翼の放った弾丸は鈴仙のすぐ横に

 

 

 

鈴仙の放った弾丸は

 

 

翼の銃を貫き……

 

彼女の体を穿つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無事ですか?鈴仙さん?」

「無事に、見える?」

奇跡的にそれた弾丸の余波を受けて鈴仙は床に転がっていた

永遠亭はいつの間にかきれいさっぱり元通りだ

「それよりも、敵は?」

「さ、さあ?どうなったのかは……」

「…ここにいるよ」

「「!?」」

声がするほうを見れば、青い髪に青い目の少女がそこに立っていた

「…すごいね、お姉さん」

「貴女が、《狙撃主》?」

「…うん、私は翼。よろしくね」

そう言った少女はどこか嬉しそうだった

「…私、もう戻るよ」

「ええ、わかったわ」

「…お姉さんの名前は?」

「鈴仙。鈴仙・雲曇華院・イナバよ」

「…鈴仙お姉ちゃん、か」

お姉ちゃん、と呼ばれ少しくすぐったい

「…次に来るのは《捕食者》よね」

「…うん。焔お兄ちゃんだよ」

「どれくらい強いか、わかったりする?」

その鈴仙の問いに翼は狭間の入り口を開きながら答える

「…強いよ、とっても」

そう言って彼女は虚空に消える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様でした、翼さん」

「…陸斗」

館に戻ったら陸斗が出迎えてくれた

確か以前は立場が逆だったはずだ

「…マスター、何か言ってた?」

「特には、でも「頑張ったな」と」

「……そっか」

「何はともあれ、お疲れ様でした」

「…うん。焔お兄ちゃんは?」

「さっき出発されましたよ」

その言葉に翼は首をかしげる

「…もう?」

「はい、なんでも調べものがあるとか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此処か」

焔は妖怪の山に来ていた

今彼が立っているのは、先程霊夢が居たところだ

「確かにこの辺りだったんだが…」

ついさっきまで感じていた何かの気配

「どことなく御主人のに似てると思ったんだが、気のせいか?」

今となっては完全に消えてしまっている

御主人こと零は今は館にいるはずなのでありえない

御主人は今までに無い試みをしている

俺たちパラサイトには羽が存在する

全てではないが俺らみたいな特殊個体は強さに応じて羽が増えるんだが

俺は4枚とかなりの強さらしい

それを増やそう、というのはなかなかにきつい話だ

 

それはさておき

「そこにいるんだろ?出てきたらどうだ?」

誰もいないはずの暗がりに向かって呼びかける

「…いつから気づいてたんですか?」

そこから出てきたのは犬走椛だった

「なんとなくだ、案外勘がいいんだよ」

「そうですか…」

「んで?戦んのか?」

彼女は確か以前の異変での被害者だったはずだ

直接は戦ったことはないが、実力はどんなだろうか?

そこへ

「私も混ぜてもらおうか!」

「あ?」

そこに青く長い髪に黒い帽子を被った女がいた

「誰だ?お前?」

「私を知らないのか?」

「知らん」

ほんとに誰こいつ

「私は比那名居天子だ!覚えておけ!」

「2人だけかよ、まあ悪くはねえか」

そう言って彼は武器を抜く

「ほう?」

「な?!」

天子と椛はそれぞれ焔の剣を見て少なからず衝撃を受ける

長さは2メートルを超えて本体は暗い赤、刃は両刃となっていてその色は鮮やかな赤い色

その姿は見てるだけで重厚感が溢れている

だが、椛は焔の次の一言でさらに驚愕する

 

 

 

「さあ、本気で殺るぞ()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 《捕食者(プレデター)》 他者の知識を喰らうもの

 

 

 

 

 

 

 

 

天子「さあ、行くわよ。番犬椛!」

椛「誰が番犬ですか!?」

焔(賑やかすぎんだろ、あいつら)

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
ついに五人目、捕食者こと焔戦です!
戦闘中にもう2人くらい参加させます
まだ誰を入れるかは決めかねています

あと彩に関しては式神の紹介にでも載せる予定です


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捕食者(プレデター)》 他者の知識を喰らうもの

ほう
椛とかいうやつはヴァルムヘイルを知っているようだな
そういえば居るんだったか
俺たち以外の使い手が
是非ともそいつとも殺り合いたい物だな


なぜ?

ヴァルムヘイルといえばフランさんが持っている剣のはず。

「驚いた、って顔をしてんな?」

互いの剣で切り結びながら相手が聞いてくる

「その様子じゃあ、他の連中からは聞かなかったみてえだな」

「何をです?」

「俺たちの武器についてだよ」

そう言って焔と名乗った男が剣を振り抜きこちらを押し退け距離を取る

「俺たちはそれぞれ武器を持ってる。それを統一して『ヴァルムヘイル』って名前にしてるんだよ」

式神たちの武器が全てヴァルムヘイル?

だが、それでは…

「じゃあ、お前と最初に2人の武器が違うのは?」

そう言いながら切り掛かるのは天子

緋想天の剣を思いっきり振り下ろす

「性質の違いさ」

それを彼は笑いながら受け止める

「陸斗の性質は『防御』、凛音の性質は『音色』だからな。それぞれ盾と楽器になったのさ」

つまりは所有者の魔力や妖力によって変化するという事なんだろう

フランが剣の状態なのはおそらくレーヴァテインが原因だろうな

「そんなこと教えていいんですか?」

「構わんよ、知ったからどうにか出来まい、貴様等には」

癪に障る言い方だが事実、それだけでは突破出来ない

実力だってあんな大剣振り回しているのに、速さはこちらより上

ただ戦っても勝ち目は無い

「諦めるな!」

「「!」」

そこへ、2人の少女が舞い降りる

1人は金髪の魔法使い

もう1人は同じ金髪だが、背中に羽が生えている

「魔理沙さん、フランさん!」

「やっほー、椛」

「こっからは私たちも加わるぜ!」

二人が来てくれた、これなら!

「ふん、どうするの?」

緋想天の剣を焔に向ける

「こっちは4人、対してお前は1人。戦力差は目に見えているぞ?」

「………」

焔はこちらを一瞥し

「くだらねえな」

「「「「!!」」」」

「人数差がなんだ?」

「…何が言いたい?」

あからさまに何かを企んでいる

「いいことを教えてやるよ」

焔が剣を持っているのとは逆の左手を突き出す

その手に赤い光が灯る

「いくら雑魚が集まろうと」

 

 

その光が

 

 

弾ける

 

 

 

 

「俺には勝てねえよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!? なんだ!」

紅魔館が揺れる、まるで巨大な地震のようだ

「一体何が起こったの?」

「わからん、どうなっている?」

すると

「紫さま!」

「藍!どうしたの?」

紫の式神の藍が部屋に駆け込んできた

そして次の一言は

「妖怪の山が、半壊しました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

焦げた匂い

火が弾ける音

 

どうなったの?

 

椛は?

 

魔理沙やフランドールは

 

 

どう……なって……

 

 

 

 

 

目を覚ました天子が見たのは

 

 

 

 

木々が焼け、土は抉れて変わり果ててしまった

 

 

 

 

妖怪の山だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数が多ければいいのか?

違うだろう?

強くなければならない

どんな手を使っても

俺は怠惰だった

自分ではやろうとせず、周りがやっていることを見て盗み

他人の技術を自分のものにする

だから捕食者(こんな名前)を与えられるのだ

有象無象の集まり

ただの市民

腐りきった貴族共

殺すのも億劫だ

くだらない

 

 

 

「お前は随分退屈そうだな?」

 

 

 

 

「そんなとこにいないで、俺たちと来い」

 

 

 

初めて楽しい殺し合いをした

白髪白眼の男だった

 

あんたのしたに居れば楽しそうだ

 

 

 

あんたの為に

 

 

俺は破壊の限りを尽くすと決めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回 破壊と堕落の魔法剣士

 

 

 

 

 

 

 

 

 

焔「うーん、マシュマロもってくりゃあ良かったな」

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
何か変な文になってますがお気になさらず

新しい小説始めました!
よかったらそちらもどうぞ!


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破壊と堕落の魔法剣士

所詮雑魚は雑魚だ
たった一回の技で壊滅する
これだから蹂躙は嫌いなのだ
どれだけ技を磨こうと、どれだけ研鑽を重ねようとも生まれ持った『才能』の前では無力なのだ
持たざる者は憎むだろう
憎みたいだけ憎んでくれ
もはや、どうでもよくなってしまった


「うーん、マシュマロでも持ってくりゃあよかったな」

気だるそうなやつの声が聞こえる

朦朧としていてもはっきりと耳に届く

「ぐ、う…ぁぁ」

体に力を入れようとすると激痛が走る

天人の体にこれだけのダメージを与えるとは

「まだ生きてたのかよ」

すぐ目の前に焔が立つ

「さっさと死ねば楽なのによ」

「私は…まだ…」

「死ね」

焔が剣を振り下ろす

ガキィン

緋想天の剣で受け止める

「あ?」

「負けられない…お前のようなやつに…私は負けない!」

天子は死力を尽くして剣を弾く

「はぁ、はぁ」

「ふん、随分としぶといな」

焔は剣を構える

「次で仕留めてやるよ」

 

 

何故だ

何故立ち上がる

全く理解できん

足掻けば足掻くほど苦痛を味わうだけだ

一体何がお前をそこまで駆り立てる?

『いつか、お前にもわかる時が来る』

ご主人が言っていたのはこういう事だったのだろうか?

ならば

こいつとぶつかればわかるのだろうか?

俺に足りないものが

 

 

 

 

 

振れて、あと一回か

情けない、実に情けない

天人ともあろう私が、こうも遅れをとるとはな

すまなかったな、緋想天の剣よ

もう私は立ち止まらない

私は、私の道を征く

ついてきてくれるか?

手の中の剣がドクンと跳ねたような気がした

応えてくれるのか

ありがとう

 

 

 

「いくぞ!天人!」

「ええ、来なさい!焔!」

 

二人は地面を勢いよく蹴飛ばす

「ぜあああぁぁぁぁぁ!!!」

「てりゃあああぁぁぁ!!!」

 

そして、2人が交錯する

 

 

 

 

 

 

ピシッ、パァン

焔のペンダントが砕け散る

対して天子の方は右腕が空高く飛ばされる

 

「腕一本で、勝利を掴むか」

「ふ、ふん。これで済めば安いもんよ」

「食えないやつだ」

 

結果は焔の負けだった

だが、彼の顔は

清々しい笑顔だった

 

 

 

 

一方その頃

 

「がっ…くはっ」

「俺の勝ちだな、霊夢」

「…悔しいけど、そうみたいね」

次元の狭間

そこの中でもここは誰も近づけないような複雑な空間だった

「少しは楽しめたぞ」

「少しなの

「はは、好きな人を痛ぶって楽しいやつがいるかよ」

「……もう」

「ほら、帰ろうぜ」

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館 ホール

 

 

 

「結果、五対一で幻想郷組の勝ち、ということで!」

『宴だぁ!』

紅魔館はお祭り騒ぎだった

この戦いの関わった妖怪以外にも集まっており

中でも式神たちと仲良く呑んでいる姿が見受けられる

翼と陸斗は酒が飲めずオレンジジュースだが

そんな中…

 

 

「うう、頭いてぇ」

零はバルコニーに来ていた

本来酒を飲まない零

アルコールを能力で分解しているため、酔いは回らないが、頭痛がひどい

「悪くわねえが、あまりやりたいとは思わないな」

「お兄様っ!」

「うおっ?!あれ?フラン?」

抱きついて来たのはフランだった

「むふふ〜お兄様の匂い〜」

「お疲れ様だったな」

フランの頭を優しく撫でる

「頑張ったけど、悔しいな」

「焔のやつか、威力は俺よりも高いからな」

話によると、フランは魔理沙たちと共に焔の一撃で消し飛んだらしい

「まあ、仕方ないさ」

「むー、やりたいことがあったのに」

「今じゃ、ダメなのか?」

「え?!いや、そのー」

頬を赤くするフラン

どうするか迷っていたようだが、一つ大きく頷くと零に向き直る

「零、私と…付き合ってください!」

「いいよ」

「そうだよね、やっぱりダメ……え?」

「いいって言ってるじゃん」

「いいの?本当に?」

「もちろん!」

「そっか、やったぁ!」

再び抱きつくフラン、抱き寄せる零

そこに近づくのは

「零〜?うちの可愛いフランに何してるのかしら〜?」

「ぜろー、にゃにしてんのよー?」

レミリアと霊夢だった

かなり酔ってる

「あー、フラン?」

「…わかってる」

二人は回れ右で後ろを向く

「「逃げるよ!!!」」

そして一目散に走り出す!

「コラー!待ちなさーい!」

「止まりにゃさ〜い!」

「…くくっ」

「…ふふっ」

 

「「あははは!!」」

 

 

 

こうして、夜は更けていく

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
無理矢理感満載ですがこれにて四章は完結、次回より日常編が復活します
章区分けは『日常II』にする予定です
投稿頻度が落ちるかもですがこれからも続けていくのでよろしくお願いします!


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第五章 日常編II
お留守番


こっちでは久々の投稿ですね。どうも、フォーウルムです
今回のお話は紅魔館でのお話になります

質問で零の本命は誰か、というのがありましたが、今のところは決めかねています
完結までには決まったらいいな


「いい天気ですね」

「そうだな」

「貴方とこうやってゆっくりとお茶を飲むのは初めてですね」

「言われてみればそうだ。紅魔館に来るはずの予定が潰れてしまったからな」

紅魔館の庭が見えるテーブル

そこで菓子を食べながら紅茶を飲んでいるのは咲夜と零であった

「にしてもいいのか?二人がいないからって」

「いいんですよ。お嬢様も、『ゆっくりしなさい。たまには羽を伸ばすのも大事よ』とおっしゃってましたので」

それは昨日の夜のこと

 

 

 

「吸血鬼の茶会?」

「そうだ」

レミリアから相談されたのは『留守の間、紅魔館を任せたい』というものだった

「誰も残らないのか?」

「咲夜しか残らん」

「なんでだよ」

「人間だからだ」

「……あー、そうか」

「わかってくれたか」

以前フランから聞いた話だ

人間のことをめちゃくちゃ見下す吸血鬼の茶会に呼ばれる事があって非常に面倒と言っていた

なんでも主催者の吸血鬼は大の人間嫌いで食事以外では人間を見ることを拒むらしい

その割と他の妖怪や魔女は好意的に見るとかいうので何かしらの偏見を持っているのだろう

「それで、引き受けてくれるか?」

「別に構わんよ。神社には最近行ってないしな」

討伐戦争の後、霊夢から『しばらく神社には戻ってこないで』と言われてしまった

理由は『秘密の特訓』らしい

なので最近は狭間に作った館を式神たちと使っていた

「感謝するわ、咲夜一人じゃ寂しいだろうし」

「そうだな。まあゆっくりさせてもらうよ」

「そうしてくれ。部屋は自由に使ってもらって構わないわ」

「りょーかい」

 

 

 

現在

「それで、今日はどうするんだ?」

「そうね、たまには何もせずにゆっくりするのもありね」

「なら部屋に戻ることをお勧めする。季節的に冷えるからな」

今の季節は秋

すでに山は紅葉し綺麗な赤い色に染まっている

日当たりがいいから暖かく感じるが気温は低いのだ

「そうね、あなたは?」

「俺は…もう少しここにいさせてもらうよ」

「そう。またあとでね」

「ああ」

そう言って咲夜はその場を後にする

 

 

咲夜Side

 

 

「はぁ、難しいわね」

自室に戻った(咲夜)はベットに倒れ込む

他の人といるときはそんなに気にならないが、二人きりだと意識してしまう

会ったばかりの頃は全く気にならなかった

お嬢様が連れてこいというから向かって拉致っただけだった

その後の強さを見るまでは…

実力もそうだが、心も強靭であった

挫けそうになっても、壊れてしまいそうな状況でもあきらめない

自分にはない強さに惹かれた

お嬢様に抱く「尊敬」とは違う何かが私の中に渦巻いている

 

以前霊夢に聞いた事があった

なぜ零が他の子と付き合うのを許すのか、と

霊夢はこう言った

「零が楽しそうだから」と

「あいつ、私といる時と他の子といる時で表情が違うのよ。悔しいけど私にはしない顔で他の子に笑いかける。でも、他の子にしない顔を私に向けてくれる。無意識なんだろうけどね。きっと心の中で助けを求めてるんだと思う。私たちには明かせないような闇を持ってるから。だからあいつが望むなら他の子と一緒にいてほしい。複雑なのよ、色々と」

 

以前はわからなかったが、今ならわかる気がする

彼の心の闇は底知れない、一人で背負うには重すぎる

私に渦巻くこの想いも、貴方の抱えるその闇も

一緒にいる事ができれば

解りあえるのかしら

 

 

零Side

 

 

咲夜に戻れと言ったくせに、どうやら自分は寝てしまったらしい

ゆっくりと目を開く

目の前に広がるのは一面の赤

空も海も陸も

見渡す限り赤

誰もいない世界で1人

誰もいなくなってしまった世界で1人

ただただ赤い世界に俺は立っている

「……またこれか」

最近よく見る夢

俗にいう悪夢とやらなのだろう

最初は戸惑っていたが

もう驚かない

この夢以外にも青、黄、緑、紫があることがわかっている

式神たちを切り離してからよく見るようになった

「…相変わらず寂しい世界だ」

ただ世界が赤くなっているだけなのでほとんど変なところはない

全てが赤系統の色に包まれていることを除けば

いつものように散歩をする

歩いている内に目が覚めるはずだ

いつもはそうだ

そうやって歩いているうちにとある場所にたどり着く

「…紅魔館」

今、俺が寝ているであろう紅魔館があった

そして、自分が寝ているはずの椅子の上に奇妙なものを見つけた

薔薇

それは見事な薔薇だった

本来なら真っ赤なはずの薔薇は

なぜか青く輝いていた

「零さん?」

俺を呼ぶ声が聞こえる

誰だ?

「起きて、零さん」

一体、誰なんだ

 

 

 

 

 

 

 

「起きたようね」

「咲夜?」

そこには咲夜がいた

なぜか俺に覆いかぶさるような格好で俺の上にいる

「起きないから心配したわ。うなされていたけれど、大丈夫?」

世界はいつも通りの色だ

もっとも、暗くなってしまっているのであまり見えないが

「大丈夫だ」

「嘘ね」

「…なぜそう思う?」

「そんな苦しそうな顔で言われても、ね」

「…そうか」

「何かあったの?」

「そうだな、咲夜には話してもいいかもな」

零は咲夜に話した

最近の悪夢も、自分が抱えている闇も

全ては無理だったが、話せるだけ話した

「そう…」

「笑いたければ笑ってくれ。自分の圧に押し殺されそうな俺を」

自虐的に笑う零を、咲夜は抱き締めた

「…なんの真似だ?」

「あなたが苦しいのはわかったわ。そこまで深く悩んでいることも」

咲夜は言葉を紡ぐ

目の前にいる男に、伝わるように

「あなたの悪い癖ね、なんでも1人で溜め込んでしまう」

「何がわかる。何も知らないお前に」

「何もわからないわ。だから教えて?貴方を救える方法を」

「俺にもわからん」

「なら見つけましょ。私も手伝ってあげる」

「見つからないかもしれないぞ」

「大丈夫。見つかるまで、一緒にいてあげる」

咲夜の言葉は零に届いているようだった

「なぜそこまで?」

「貴方が好きだから。それじゃダメ?」

「はぁ、いつか刺し殺されそうだ」

「ふふふ、貴方なら大丈夫でしょ?」

「まあな」

「それで…」

「?」

「一緒に、ついて行っても、いい?」

咲夜の顔は赤くなっていた

暗がりの中でもわかるくらいに

「ああ、いいぜ。よろしくな、咲夜」

「ええ、よろしく」

零と咲夜は互いにキスをする

まるで、互いの存在を確かめるかのように

 

 

おそらくあの青薔薇は、咲夜だったんだろう

もしかしたら、彼女なら

 

 

 

 

俺を救ってくれるかもしれない

 

 

 

 

 

次回に続く




ここまで読んでいただきありがとうございました
今回から日常IIが始まります
ネタが尽きなければ早めに投稿しますので
途中に出てきた夢は5章に本格的に出ます


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紫煙の悪夢

 

 

「平和だな」

秋風の吹くなか、零は人里で物思いに耽っていた

最近はパラサイトどもも落ち着いて暇、と言ってはアレだが特に何もやることなく過ごしていた

「たまには目的もなくふらつくのもいいかもしれないな」

そう思った時だった

「あれ?零さん?」

「ん?鈴仙じゃないか」

そこにいたのは鈴仙・優曇華院・イナバだった

永遠亭の医者の永琳の弟子であり、最終決戦後に俺の看病をしてくれていた人物でもある

「その格好は…」

「ああ、今ちょうど往診がおあわった所なんです」

「なるほどな。お疲れ様」

「あ、ありがとうございます」

労いの言葉をかけると、鈴仙は顔を真っ赤にする

「? 大丈夫か?」

「は、はい!大丈夫です!」

「そうか?」

「それより!この後お時間ってありますか?」

「あるけど、それがどうしたんだ?」

「近くのお茶屋さんでお茶でもしないかな〜?なんて」

「なるほど。わかった、付き合おう」

「本当ですか!」

お茶の誘いに応じると鈴仙はグッとガッツポーズをした

 

 

近くにあった団子屋で一息つく

「あの」

「ん?どうした」

「いえ、最近の零さんってどこか上の空なので」

「…そうか」

「何かお悩みでも?」

「悩み、では無いんだろうけど、ちょっとな」

「どうされたんです?」

「最近変な夢を見るようになってな」

「悪夢ですかね?」

「そうも思えないんだ。なにか大切なものを無くしてしまって、それを探しているみたいな。…言葉にするのは難しいな」

「そう、なんですか。お力になれればと、思ったんですけれど」

「そう思ってくれるだけで嬉しいよ」

そう言ってみたが、彼女の心はどこか曇っていた

 

 

 

その日の夜

 

 

 

 

 

 

零と別れた後、彼女はそのまま布団に横になって眠っていた

 

「あれ、ここは?」

気がつくと彼女は人里の道の上に立っていた

しかし、その人里は彼女の知っているものとかけ離れていた

「なにこれ…紫色の…世界?」

全てが紫色に染まっている

あたりには同色の煙も立ち込めている

唯一空だけは白い

見ていて気持ち悪くなりそうだ

おそらくここは夢の中なのだろう

歩いてみると、どこもおかしくは無いように見える

そう思った時

「キシャアアアアアア!!」

「?! な、何!」

物陰から何かが飛び出してきた

それは、豚の頭に異形の体をくっつけたかのような見た目の化物であった

「た、戦わないと!」

しかし、どう頑張っても弾幕を撃つことはできない

「キシャアアァァ!」

「やばっ!」

なんとか身を守ろうとしたその時だった

 

ズガガガガガガ!!!

 

「グギャァ?」

「え?」

化物に大量の槍のようなものが突き立った

化物は何が起こったかわからずに消滅していった

「今のは…一体…?」

首を傾げる鈴仙

そこへ

「何故、お前がここにいる」

後ろからの声に驚いて振り向くと、そこには零がいた

「ぜ、零さん!」

「なんでいるんだ?」

「さぁ?気がついたらここにいたんです」

「ったく。俺がいたからよかったが、危なかったな」

「ありがとうございます。もしかして、これがさっき仰っていた」

「ああ、『悪夢』だ。今日は紫みたいだが」

「今日は、って他にもあるんですか?」

「青や赤、緑に黄色。合計5色ある」

「カラフルですね」

「んなこと言ってる場合か。ほら、危ないから戻れ」

そう言って零は鈴仙の肩に触れる

その瞬間、彼女は夢からいなくなった

「…これ以上巻き込むなよ?」

零の目の前の地面から、何かが這い出てくる

「しゃあねえな、遊んでやるよ」

 

 

 

 

 

 

「…あれが、悪夢」

鈴仙はさっきまで見ていた夢を思い出していた

あんなに奇妙な夢、しかも他にもあるなんて

普通じゃ考えられない

なんであれで平然を保っていられるのだろうか?

いや、あれが異常なんじゃない

彼にとって()()()()()()()()

「すごいな、そこまで強いなんて」

おそらく私は無理だ

毎晩あんな世界に1人

しかも正体のわからない何かに襲われるなんて

考えただけでも頭がおかしくなりそうだった

それが、彼の力の源

彼を突き動かす何かを隠すもの

以前そうじゃ無いかと思っていたが、今日会った時に確信した

彼の異常さに

「早く、彼を救わないと」

彼の中にある何か

それはおそらく

幻想郷にとって最大の異変になるだろう




ここまで読んでいただきありがとうございました
こちらの投稿が久しぶりのフォーウルムです
最近はもう一つの方を集中的にやっているのでこちらの投稿が遅れてしまっています
それでも忘れたわけじゃありませんので、気長に待っていただけたら幸いです


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翡翠の悪夢と別世界の来客

 

 

「勘弁してくれ……」

今日は朝から頭痛が酷かった

何を食べても吐くし、何かをする気力も起きなかった

 

 

仕方がないので横になったらこれだ

辺り一面緑色の世界だ

一瞬森にでもいるのかと思ったが、近くの木の幹が緑色だったので悪夢か、と肩を落とす

おまけに緑色の化物どもまで出てくる始末だ

「やられるのも癪だ。皆殺しにしてやる」

手頃な大きさの剣を作り出し、殲滅を開始する

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?ここ、どこだろう?」

元の姿に戻って帰ってきたと思ったら説教されるし、挙げ句の果てには暴走しかけるこいしたちを止めたりと忙しかった

だからさっさと寝ようと横になったのに

気がつけば全てが緑色の世界に俺は立っていた

見た感じ幻想郷のようにも見える

「なんだろう、今まで生きてきた中でこんなの初めてだ」

そんなことを考えていると

「ギシャアァァ!」

「え?うわぁ?!」

目の前に奇妙な生き物が出てきた

周りと同じような緑色だったので気づかなかった

竦斯(しょうし)!」

俺は式神である竦斯を呼び出す

呼び出された竦斯は急ではあったものの目の前の生き物をしっかりと倒してくれた

「助かった、サンキューな」

「ふん、これくらい当たり前なんだから」

「ってあれ?」

ふと気づいたことがある

本来、俺の式神は俺の神力を消費して呼び出すのだが

ここではその消費が全く必要ないようだ

「それより、ここって幻想郷ですか?すごい違和感があるんですが…」

「わからない、普通じゃないことは確かだが…」

その瞬間、地響きのような音が真後ろから響いた

振り向くとそこには身長が8メートルもあるような怪物が2本の足で立っていた立っていた

「でっか!」

「こんなのいるの?!」

その巨大な怪物に驚いていたが、さらに驚かされる事が起きた

それは……

 

 

 

ゴシャアッ

 

 

 

「「え?」」

 

 

その怪物が一瞬にして砕け散り、肉片を撒き散らしたからである

「ったく。まだ残ってやがったのか」

その残骸の中から声が聞こえる

立っているのはかなり背が高い男だった

その手には長さが2メートル程の大剣が握られている

「こんなとこにまで居たのか…ん?誰だ?」

目の前の男と目が合う

透き通るような白い髪に透明な瞳をしている

「人型、しかも御供がいるのは初めてだな」

「え」

「殺ったことはないが、まあ問題はないだろ」

そう言って男は剣を構える

 

 

 

 

 

こんなやつは初めてだった

人間の皮を被っているがその中身は化物のようだった

人間にしてはあまりにも大きすぎる力が夢の中であるにもかかわらずひしひしと伝わってくる

「あんた、人間じゃねえのか?」

「一応神なのかな?」

「疑問を疑問形で返すな。まあそれなら本気出しても良さそうだな」

俺は新しい力『六天の翼』を発動させる

六色ありそれぞれに対応する能力を発揮できる

俺は火力特化の『赤天』と防御特化の『緑天』を発動させる

「消し飛べ!」

たった一撃で辺り一面を更地にする威力の火球を撃ち込む

着弾すると同時に辺り一面が真っ赤に染まる

「………へぇ、やるじゃん」

中心にいた奴を庇うように壁のような生き物が覆い被さっている

どうやらそいつのお陰で防げたらしい

「さて、何処まで耐えられるかな?」

 

 

 

「大丈夫か、塗壁」

塗壁がすぐに盾になってくれたおかげでなんとか無事だった

それにしてもなんなんだあの威力は

たった一発の火球程度でここまで塗壁が消費するのは稀なんて物じゃない

明らかに異常だ

「本気でやらないと、俺も危なそうだな」

そう思った瞬間

ドゴォン

再び強大な揺れと熱が襲いかかってきた

「このままじゃ間違いなく負ける」

「でも、どうするんですか?」

竦斯が尋ねてくる

「一か八かだ…」

 

 

「なんか動かないな」

二発目を打ち込んでしばらく経つが動く気配がない

流石にまだ死んじゃいないと思うんだが

そう思っていると壁の中から影が飛び出した

「あ?」

それはさっき御供を連れていた男だった

そいつはそのまま覆いかぶさっていた奴から距離をとり

ありえないような脚力でこちらに向かって跳んできた

「真正面からくるか!」

俺は右手に持つ剣の先に力を集中させ、赤い光弾を作り出す

「この距離なら外さねえ!」

そして射出した光弾は___

 

男を避けて後ろに飛んでいく

「はぁ?!」

光弾が向かう先にはさっきの壁の生き物が

「まさか…!」

「塗壁はあらゆる攻撃を引きつけてくれる!」

「?!」

いつの間にか目の前にまで迫っていた男に驚く

「お前、何者だ?」

「俺はリク、君こそ誰なんだ!」

「リク?名前があるのか?」

首を傾げながらとりあえず地表に降りる

「逆に名前がない奴がいるのか?」

「いや、待て待て待て。お前まさか、()()()か?」

「外?よく分からないけれど、少なくともここ出身じゃないよ」

「……まじか」

俺は頭を抱えた

 

 

 

先ほどまであの男から溢れて威圧感が嘘のように消えている

「あ、あの。どうかしたんですか?」

「…いや、驚かずに聞いてほしいんだ」

「はい」

「ここが外の世界と違うのはわかるか?」

「え、はい。辺り一面真緑ですし」

「ここは()()()()()()()なんだ」

「……ええ?!」

「驚くなって言ったろ」

「いやだって。えぇ」

「そんなに驚かれるとは思わなかったな。続けていいか?」

「うん」

「それで、いつもなら化物どもを皆殺しにすれば覚めるんで殺し回ったんだが、なかなか覚めなくってな」

「は、はい(殺し回る…?)」

「まだいるのかと思って探してたら少し大きめの怪物を見っけたんで叩き潰したんだ」

「な、なるほど…?」

「そしたらお前らが居たんでてっきりこの悪夢から生まれた奴らかと思って…」

「……殺しにかかってきた、と?」

「そうだな」キリッ

「悪びれてくださいよ?!少しは!」

「すまんすまん」

「でもこれで納得しました。通りでいつも以上に戦えるわけだ」

「そうか?」

「うん。いつもならもう式神は戻さなきゃ神力の消費が酷いんですが、今は大丈夫ですから」

「なるほどな」

そういった時、彼の体が光の粒子と共に消え始めた

「! これは…」

「どうやら時間らしいな」

「そっか」

「まだ俺の名前を言ってなかったな。俺の名前は『零』だ」

「俺はリク。さっきも言ったけどね」

「なかなかに楽しかったぞ?次は本気で殺るからな?」

「…あ、あれで本気じゃ無いのか」

俺の言葉にリクは苦笑いする

「ねえ、また会えるよね?」

「…ああ。まだ決着はついて無いからな」

「そっか、楽しみにしてるよ!」

 

その言葉を最後にリクの姿は完全に消え、俺の悪夢も覚めた

 

 

 

「…………」

目に入るのは自室の天井

頭にはリクのことが焼き付いている

初めて全力が出せそうな相手を見つけた

「……楽しみだなァ」

それだけで俺の口から笑みが溢れた

 




どうも、フォーウルムです
ここまで読んでいただきありがとうございました

今回はサイコパスのらいらいさん様の作品『無意識少女と優男』の主役であるリクくんが登場してくださいました!
コラボしてくださったサイコパスのらいらいさん様に感謝です!
今後も《来訪者》、及び《地憶譚》のコラボは募集してますので気軽にお声がけください!


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作られた命 本物の想い

 

翡翠の悪夢の件から数日経ったある日

 

紅魔館には緊張が満ちていた

 

 

発信源は零

この上なく冷酷な顔つきをして、何かの紙に目を通している

 

彼の前に正座しているのは霊夢だった

 

その様子を部屋の外から眺めているのは他の面々だ

 

「なんであんなに御兄様は怒ってるの?」

「わかりませんわ」

「どうしたんでしょうね?」

フラン、咲夜、妖夢は中の様子に疑問を持つ

レミリアや魔理沙たちもいるが、零が不機嫌な理由はわからない

ただ一人、龍義を除いて

 

「…なぜだ」

「……」

「なぜ黙っていた」

「…ごめんなさい」

「謝る必要はない。何故これを黙っていたのかと聞いている」

その手には何枚もの紙が握られている

それは以前霊夢が神薙彩という女性からもらったものだった

「……零を傷つけると思ったから」

「……そうかよ」

零は立ち上がり、部屋から出て行こうとする

「あ……」

霊夢は彼を追いかけようとするが、そのまま立ち竦んでしまった

「お、お兄…様」

「……」

部屋の外にいたフラン達を、零は一瞥し、館の出口を目指す

それを止められるものは誰もいなかった

 

 

 

零の持つ手紙にはこう書いてあった

「あなたは本物の人間ではない」

「あなたは私の息子の遊び相手であり、大量殺戮のために作られた」

「あなたは覚えてないかもしれないが、すでに何億もの命を奪っている」

他にも大量の真実が事細かに書かれていた

その全ては、彼の精神を揺さぶっていた

「……最初っから、俺には資格がなかったのか」

そうやって眺めていると、一枚だけ不思議なものを見つけた

「ん?」

それは零に向けられた、懺悔の言葉だった

 

 

__________________

 

 

あなたがこれを読んでいるということは、きっと、私は役目を終えているでしょう。

私があなたを作ったのは、息子の遊び相手が欲しかったから。国の政策で『軍用クローン兵器』を作ることになった時に、それを口実にあの子の細胞からあなたを作ったの。誰にも負けない圧倒的な力と一緒にね。名前はあの子の名前の別の読み方の『ゼロ』にしようってことになった。

あの子はとても喜んだわ。同年代の遊び相手が出来たって。当時の私は研究所勤めで、あの子のことは見てあげられなかった。あなたが戦場に向かう度に『いつ戻ってくるの?』って聞かれて大変だった。本当はあなたは大戦が終わったら廃棄処分されるはずだった。流石にそれは可哀想だと思ったから『戦闘能力を剥奪した上で、私が預かる』ように上に掛け合ったこともあった。

 

でもそうはならなかった。

 

敵の最後の足掻きであなたもあの子も重傷を負った。どちらかを助けることは出来たけど、そうすればもう一人の方は死んでしまう。そんな中、あの子は『ゼロのために使ってあげて』と言った。私は悲しかったけど、あなたに治療を施した。その後、あなたに協力していた五人のパラサイトたちにお願いしてあなたの記憶を書き換え、幻想郷に送ったの。

 

 

あなたが私をどう思おうと構わない。それでも

 

 

私はあなたを愛しています

 

 

 

____________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

零はただ無言でその紙を見ていた

「どうだった?」

「……居たのかよ」

振り向くと、そこには龍義がいた

「俺は、人間じゃないのか」

「そうだ」

「知ってたのか?」

「仕事上な。お前のことは調べまくったからな」

「……そうかよ」

零はそっぽを向く

「気にすることは無いと思うぞ?」

「……何?」

「ここは幻想郷なんだ。何が居ようが気にする奴はいない」

「……俺は、本物なのか?この体も、この記憶も、この想いも」

「知るか、それはお前が決めることだ」

「俺が……?」

「ああ。そうだとも」

龍義は大きく頷く

「そうか……そうだよな」

零はそう言って空を仰いだ

 

 

 

 

その日の夜

 

 

 

 

 

博麗神社の縁側に、霊夢はいた

彼女の顔は赤く、泣き腫らした跡があった

そこへ

「………霊夢」

「?!………零?」

そこに立っていたのは零だった

「…隣、いいか?」

「あ…うん」

零は霊夢の隣に腰をかける

「すまなかったな」

「え?」

「あの時は霊夢を傷つけるような発言をしてしまった」

「……零」

その目には先ほどの冷酷な光は無く、安らかで穏やかな光が灯っていた

「………私も」

「ん?」

「私も、零に何も相談しなかった。ごめんなさい」

「……いいんだ、もう」

零は霊夢を抱き寄せ、その薄い赤い色をした頬にキスをする

「………」///

「まだするか?」

恥ずかしさで顔を真っ赤にする霊夢を零は悪戯っぽい笑顔で見つめる

「……ばか…」

霊夢は彼の唇に己の唇を合わせる

最初は合わせるだけだったが、どちらともなく互いの舌を絡め合う

「…………ぷはっ

「………可愛いことするじゃねえか」

「……たまには、ね」

恍惚とした表情で霊夢は零を見る

零はそんな霊夢を強く抱きしめる

「……離さねえから」

「……うん」

「何があっても、守り切ってみせる」

「……わかったわ。お願いね」

「…ああ、任せろ」

そう言った零は月を見上げる

その月は煌々と輝き、2人を優しく照らしていた

 

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございました
どうも、フォーウルムです
気がついたらUAが5000超えてました。ありがたい限りです
今後、この《来訪者》の投稿は若干遅くなります


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妖夢の望み

 

 

 

翡翠の夢とリクとの出会いから数日経った

あれから俺は特に異常なことが起こる事なく日々を過ごして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たらよかったんだが

 

というのも、最近になって俺の能力のひとつである『干渉』が本気でチートになってきた

理由としては『無制限の他者への精神干渉』が可能になったからだ

範囲を指定すればその中の奴らを眠りに落とせるし、対象を絞れば精神状態を意のままにできるとかいうぶっ壊れになってしまった

そして俺はそれを

 

 

妖夢に打ち明けていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そんなことに……」

「ああ、ほぼ完全になんでもできる」

「例えば、どんな感じですか?」

「『相手に恐怖を植え付ける』『敵意を失くさせる』。やろうと思えば『相手の体の自由を奪う』事もできる」

「へ、へー」

妖夢は顔を赤くしながらそっぽを向いてしまう

「どうした、妖夢」

「な、なんでもありません!それよりも稽古しましょ!」

「わかったよ」

 

 

 

 

俺は木刀を構える

妖夢はいつものように二本持ちだ

「行きます!」

「よし、来い!」

妖夢は木刀を思いっきり叩き込んでくる

彼女の剣捌きにはいつも驚きを隠せない

研ぎ澄まされた鋭さ、無駄のない動き。どれをとっても見惚れてしまう

しかし、ただ見ているだけでは負けてしまうので多少なりと反撃はする

いなし、かわし、受け止める

霊夢のような弾幕×体術ではなく剣術だけでここまで戦えるのは、やはり彼女の才能なんだろうと思う

「そら!」

「あ!?」

妖夢の木刀を上に弾き飛ばし、こちらの木刀を首に押し当てる

「………参りました」

妖夢は力無く項垂れる

「以前よりも上達している。危なかったよ」

事実、何度か気を抜いたら負けそうな所はあった

「……零さん」

「ん?どうした……?!」

妖夢を見ると、彼女は白楼剣と楼観剣を抜刀している

「本気の手合わせ、お願いします」

「…………本気か?」

「はい。もし私が勝てたら私のお願いを聞いてほしいんです」

「………じゃあ、俺が勝ったら俺の言うこと聞いてもらうからな」

「………わかりました」

「決まりだな」

本気でやるために、俺は羽を顕現させる

「…さあ、いくぞ」

 

 

 

 

 

 

 

結果は案の定、俺の勝ちだった

俺の羽は『耐久型スペル』というものに分類されるらしい

妖夢は二枚目のあたりでダウンした

まあ、本気と言っても殺すのはまずいので死なない程度に手加減はした

 

「俺の勝ちだな、妖夢」

「……はい」

「じゃあ、約束通り」

「わかっています」

「なんでこんなことを?」

「?!」

「どうした?」

「い、いえ。でも、そんなことでいいんですか?」

「俺が知りたいんだからいいんだよ」

「……わかり…ました」

妖夢は俺の方を見る

「羨ましかったんです」

「…え?」

妖夢の言葉に困惑する

「羨ましかった?」

「……はい。霊夢さんが羨ましかったんです」

「なんでまた」

「だって、だって!」

妖夢の目から涙が溢れる

「私だって零さんのことが好きなのに…霊夢さんばっかりで。だからこれで勝てば独り占めできるかもって……。」

「……」

零は思い出していた

 

かなり前のことだ

 

 

 

 

 

「私もだけど、恋愛なんて考えたことなかったの。好きになるような人なんていなかったから」

「だから、俺か?俺みたいに能力持ちで死ににくい。だから俺を好きになったとか?」

「どうかしらね?少なくとも私はあなたの能力ではなくあなた自身に惚れたのよ?」

「そうか、それが嘘でないことを祈るよ。他がどうかは知らないがな。」

「他の子も同じよ」

「何か言ったか?」

「いいえ、おやすみ」

「???、ああ、おやすみ」

 

 

 

 

 

 

 

霊夢に言われたあの言葉

(こういう事だったのか)

目の前で泣いている妖夢の顔に触れる

「なあ、約束はまだ有効だよな?」

「え…」

妖夢は困惑した表情をする

「それにさっき俺が()()()()()()()()()()()って言った時、何考えてたんだ?」

「?!!! いや、その…」

妖夢は顔を真っ赤にしている

「覚悟はいいな?」

妖夢の腕を押さえて畳に押し倒す

 

「え、ええ、ええ!?」

「どうした、いやか?」

「で、でも!霊夢さんが!?」

「あいつからは許可もらってるから」

「ええ??!!」

妖夢の必死の抵抗を軽くあしらう

「さて、他に言うことは?」

「……や、優しくお願いします」

「……努力するよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、妖夢は腰が抜けて動けなくなった

 

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございました
どうも、フォーウルムです
今回のは深夜テンションで書いたのを昼間に書き直しました

ちなみに霊夢は零の正体が判明した日の夜にヤってます


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『最強』の戯れ

「準備はいいかい?」
「無論だ。だがいいのか」
「あっちから許可はとってるからいいよ」
「……悪趣味だな」
「美学と言ってくれよ」
「くだらんな、しかし退屈はしなさそうだ」



 

 

 

幻想郷最強

 

今、この幻想郷に俺に勝てる奴はいない。

霊夢や魔理沙、紅魔館のレミリアや永遠亭の永林、他の勢力のやつらも相手にしたが、負ける事はなかった。

最初は俺を人間だと侮っていたやつらも正面から捩じ伏せる。

致命傷を受けることもなく、苦戦する事もない戦いだった。

 

そんな自分の力試しを終えた俺は博麗神社の台所に立っていた

「まだー?」

「もう少しだから待ってろ」

「はーい」

今日は久々に霊夢のところへ来ていた

久しぶりだから、と言うことでありものを簡単に調理していく

「出来たぞー」

「いただきます!」

「早えな」

「らって、おいひいんらもん」

「食いながら喋るな」

「ふぁーい」

「ったく」

霊夢が美味しそうに料理を食べているのを眺める

本当にこいつはよくこうも美味しそうにものを食べるなと感心すら覚える

「? 何よ」

「何でもねえよ」

「そ。御馳走様」

「御粗末でした。片付けはやっとくから」

「……ん」ギュッ

霊夢が零に抱きつく

「どうした?」

「…少しこのままがいい」

「……しゃーねえな」

 

 

数十分後

 

 

「これで終わりだな」

零は霊夢を起こさないように布団を敷き、寝かせ、片付けを終えて休憩しようとしていた

「にしても、退屈だな」

「そうだね、最強はつまらないかい?」

急な声

振り向くとそこにいたのはフルフェイスのヘルメットを被った男がいた

俺はソイツをよく知っている

「…急に来んな、ウルム」

「いやー、すまんすまん。」

「まったく。で、なんの用だ?」

「退屈そうにしている君にお願いがあってね?」

「何?」

 

 

 

「霜月、雪華」

「うん。半人半妖の青年でね。君よりも少し年上なんだ」

「興味ねえ。んで、強いのか?」

「折り紙付きさ」

「俺はどうすればいいんだ?」

「あっちの幻想郷に遊びに行って欲しい」

「ふーん()()()いいんだな?」

「いいよ、好きなだけやってくれて構わない」

「わかったよ」

「あ、1つだけ」

「ん?」

「桜っていう少女は殺しちゃ駄目だからね?」

「…何故?」

「教えられない。でも、君にもわかるはずさ」

「………ふん」

「僕は行くよ。出発になったら呼びに来る」

「おう」

そう言ってヘルメット男は消えた

 

 

 

 

 

 

「………これでいいな」

六天の翼や最近会得した召喚術、武器を確認し終える

「……最強…ねぇ?」

彼は考えていた

 

最強とは何か?

負けないこと?勝ち続けること?

何をもって最強とするのかは、俺にはわからない

 

だが、これだけは言える

少なくとも、これから会いに行く奴の力は俺並みかそれ以上だ

とりあえずは、ソイツを潰すところから考えるとしよう

これは『戯れ』だ

 

得た力を試さんと無邪気に喜ぶ少年の、ただの『遊び』だ

「……楽しませてもらおうか」

そういって彼は神社を後にした

 

 

 



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主を追って

どうも、こっちでは非常にお久しぶりのフォーウルムです
今回は、こっちの世界でのコラボの前日譚のようなものです。
それではどうぞ。


 

 

次元の狭間にて

 

 

「これぐらいで良いな。」

赤髪の青年はそう言って立ち上がる。彼の目の前には火が通される前の焼き鳥が大量にあった。その近くには塩ダレや醤油ダレといった味付け用の調味料も置いてある。

「こんぐらいありゃあ足りるだろうな。」

うんうん、と頷いた彼はそれをクーラーボックスに入れ始める。このボックスは彼の主人である零が造った魔法の箱(マジックボックス)で、別の隔離された空間に入れたいものを飛ばし、保管するものだ。彼を含めた式神達からは四○元ポ○ットと呼ばれている。

「……あとは、マシュマロだよなぁ!」

焔は3、4袋の市販のマシュマロ(紫に買ってもらった)を入れる。

「…久々のキャンプ?」

そこへやってきたのは青い髪と瞳の少女、翼だ。

「キャンプってか遊びに行く。ほら、御主人今仕事だろ?それの手伝いに。」

「…!…私も行く!」

(マスター)のところへ行くとわかった瞬間、翼の目が輝く。

「じゃあ準備してこい。」

「…わかった!」

彼女はパタパタと羽を動かし自室に向かった。

「……さてどうするかな。」

焔は顎に手を置いて考える。

それは、数分前の事だ。

 

 

________________________

 

 

 

「御主人の援護?」

胡散臭いヘルメット(奴はフォーウルムと名乗った)はそう言ってきた。

「うん。彼の手伝い……もとい様子見に行ってほしいんだ。」

「んな必要あるかぁ…?」

零の戦闘に関して、焔はよく知っているつもりだ。

 

彼が帝国軍にいたころの話だ。彼は大量の軍隊を率いて連合軍の領地へ進攻する作戦の真っ最中だった。準備を整え、明日進攻…というタイミングで作戦は中止になった。

何故ならば、たった1人の少年によって壊滅させられたからだ。その少年が、連合軍の技術者である神薙 彩の息子のクローンである零だった。何万もいた軍勢は呆気なく狩り散らかされた。最後の一騎討ちで少しは足掻こうと思ったが3分と持たなかった。圧倒的な実力の差があった。

死を覚悟した焔だったが、零は彼を助け、味方に加えたのだった。

 

 

そこまでの強さの御主人に援護など不要だと感じている。

「意味ないんじゃねえの?御主人だったら問題なく………」

「それは『()()()()()()としても?」

「な?!」

メット野郎の一言に驚愕する。

無天。それは彼等式神の六人目にして、零自身。一定の条件を満たした場合のみ発動する式で、発動すれば唯々殺戮を繰り返す怪物となる。

「あり得ねぇ……。」

「いや、これは断言できる。無天は必ず現れる。」

「……場所は?」

そうして彼は、零の向かった場所を聞いたのだった。

 

 

 

_________________________

 

 

 

「……準備、出来たよ?」

「ん?そうか。」

気が付くと翼がリュックを背負ってやってきていた。

「じゃあ行くぞ。」

「…うん。」

焔はゲートを開く。

「間に合うと良いんだけどなぁ……。」

 

 

 

 

 

続く。

 



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第六章 AnotherNumber編
新たなる異変


 

 

「診察終わったわよ。」

 

永遠亭の主である八意永琳が目の前の男に言う。

 

「何かわかったのか?」

「そうね、()()()()()()()()()やっぱり穴があるわね。」

「……そうか」

 

その言葉に俺は頷く。

 

「その様子だと心当たりがあるみたいね?」

「まあな、龍義の話とこの前の戦いで確信した。」

「……それって他の式神のことよね?」

「知ってたのか?」

「あなたが遊びに行ってる間にね。」

「なるほど。」

 

それはつい最近の事だ。

別世界の強者と戦わないか、的なことを言われた俺はその言葉通りに次元を移動し、戦いに行ったのだが。

そこで万が一死んだときの保険である術式《無天》を壊されたのだ。その時に感じた違和感はあの悪夢を見ているときに感じたものと同一のものだった。

 

「あなたでも死ぬのね。」

「普通は死なねえよ。相手が異常だっただけさ。」

 

あの男、霜月雪華は予想以上だった。こちらの世界とは別の住人だけあって飽きることの無い戦いをすることができた。

……それに没頭しすぎて死んでしまったのは元も子もないが。

 

「それで、この後はどうするの?」

「龍義に呼ばれているからな、なんでも重要な話らしい。」

「そう、面倒ごとにならないといいけれど。」

 

そんな永琳のボヤキを聞きつつ部屋を出た俺は一言つぶやく。

 

「面倒ごとじゃなければ呼ばれねえんだよなぁ。」

 

 

 

 

 

次元の狭間 式神の館にて

 

 

 

「んで、話ってなんだよ。」

 

自宅()に呼ばれた俺は発端の人物である龍義に問う。

 

「ああ、お前の悪夢と関連する話をしようと思ってな。」

 

龍義は腕を組みつつ言う。

 

「それはありがたいが、なんでこいつ等も居るんだ?」

 

こいつ等、というのは式神たちの事だ。普段なら全員が個々にやりたいことをやってるはずなので全員揃うのは珍しい。

 

「俺らにも関係あるんすよ、御主人。」

「勿論、私にもね。」

「しれっと居るのか、八雲。」

 

スキマから現れたのは八雲紫だ。

 

「俺が呼んだ。」

「そうか、んで?話ってなんだ?」

「単刀直入に言おう。式神って何人いる?」

 

龍義の言葉に首をかしげる。

 

「何人って見ればわかるだろ。5人だよ。」

「そうか……じゃあこいつらが組織にいるときの幹部の人数はわかるか?」

「幹部?」

 

恐らく幹部というのは帝国軍の変異型パラサイト(寄生兵器)を持っていた連中だろう。

 

「それこそ5人だけじゃないのか?」

「…知らないのか。」

 

龍義がうなだれる。

 

「どういうことだ?」

「……俺らが軍に居たころ、番号が振られてたんすよ。」

 

焔がそう言う。

初耳の情報なので驚きを隠せない。

 

「番号だと?」

「はい、強さ順で。」

「なるほど、それで1~5の番号が振られていたと。」

「零さん、そうじゃないんです」

 

そう言ってきたのは凛音だ。

 

「どういうことだ?」

「私は今ここにいる式神のなかで一番下の番号をもらっていたんですが、その番号は『9』なんです。」

「…何?」

「私たちは()()()()()()()()()いました。残りの5人は零さんと戦ったことはないのでご存じなかったかと。」

「そうか……んで、その話が俺とどう関係がある?」

「それがお前の悪夢と関係があるんだ。」

「なんだと?」

 

龍義の言葉に驚く。

 

「お前が悪夢で見る光景は、もとはあいつら用のものだったんだ。」

「何を言っている?」

「つまり……つまり………あーなんだ、その。」

「俺らがまだ自立してなかったときの待機所みたいなものです。」

「待機所?」

「そうです。戦闘時のときは外に出ますが、それ以外は御主人の能力で作られた空間に居たんすよ。」

「つまり、そこに放り込まれていたのか?」

「精神だけな。」

 

龍義と焔の言葉で納得する。

 

「オリジナルから聞かなかったのか?」

「そんな話をしたことは無かった。」

 

オリジナル、というのはクローンである俺の元になった人間だ。すでにこの世にはいない。

 

「それで、問題はここからだ。」

「あ?」

「デウエクを覚えているか?」

「ああ、覚えている。」

 

デウエク。正式名称は『デウス・エクス・マキナ』。俺が元々いた世界に存在した高性能の自立型演算処理装置のことだ。人類の知識の終着点、などと呼ばれていたが、そんなことは無かった。

あれがなければ帝国と連合の戦争もなかったし、パラサイトも生まれず、平和な世界になったはずだ。

だがそれが作り出した技術がなければ俺が存在しないというのはなかなかの皮肉である。

 

「それがどうした?」

「それの一部が幻想郷に流れ着いた。」

「はぁ?!」

 

衝撃の(ry。

 

「いつの間に流れてきたんだよ!」

「お前が「遊びに行っている間に」だろ?○○ッ〇〇が!」

 

俺がいない間にそんなことになっていたとは。

 

「落ち着け。流れ着いたのはほんの一部のデータだけだ。戦争になるようなものも入ってはいなかった。」

「……そうか。内容は何だったんだ?」

「上位パラサイトの生存状況についてだ。」

「どうだったんだ?」

「残りの5人は生存している。」

 

生きていたのか。別の世界で幸せになれてるといいんだが。

 

「それが何か問題か?」

「やっと私の出番ね。」

 

さっきから話を聞いているだけの紫が口を開いた。

 

「一体どういうことだ?」

「その5人は今、()()()()()()。」

「……冗談みてえだな。」

「彼らはどうやらこっちに攻めてくるみたいなの。」

「なるほど。つまり迎え撃て、と?」

「話が早くて助かるわ。」

「俺はいいが、お前らはどうなんだ?」

 

俺は式神たちに問う。

 

「もちろん参加するっすよ。久々に顔合わせるんだから、挨拶がてらぶっ倒します。」

 

焔の言葉に他の式神たちが苦笑いしている。

だが、全員が戦うようだ。

 

「話はそれだけか?」

「ああ。」

「そうか。お前はどうする?」

「俺は見てるよ。」

「あっそ。」

 

期待してはいなかったが、龍義は不参加のようだ。

 

「何はともあれ、各自準備を怠るな。いつでも戦えるようにしておけ。」

 

その言葉の後、話し合いはお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

 

「……ってことがあったんだよ」

「へー。」「なるほどです。」「そうだったのね。」

 

博麗神社で話し合いの内容を目の前の三人に説明していた。

目の前…というかなんというか、どういえばいいかわからない。

右腕には霊夢がくっつき、左腕のは妖夢が抱きつき、さらに後ろから覆いかぶさるようにフランが乗っかっている。

 

「怒ってるのかお前ら?」

「そりゃあ怒るでしょ!勝手にどっか行って戦いに巻き込まれた挙句一回死ぬなんて!何考えてるのよ!?」

 

霊夢に怒涛の勢いで叱られる。

巻き込まれたんじゃなくてふっかけたと言ったら殺されそうなので言わない。

 

「悪かったって。」

「お兄様ってそういうところあるよね。まあ、そこがいいんだけど。」

 

後ろにいるフランがそういいながら顔を肩にのっけてくる。

 

「……今度埋め合わせしてやるから。」

「絶対だよ!」

「それで、見せたいものって何ですか?」

「ああ、すっかり忘れるところだった。今度の戦いに備えて式神たちの武器を改良したんだが。」

 

妖夢に言われたので本題に入る。

 

「あれでしょ?《神器》ってやつ。」

「紫に聞いたな?」

「まあね、それで?」

「そん時にふと思ったことがあってな。俺も武器を持とうかなって。」

「なるほど、でもその肝心の武器がありませんよ?」

「これからそれを見せるんだよ。」

 

彼女たちを少し遠ざけ、立ち上がりとあるものを取り出す。

それは式神の核たる透き通った立方体だ。

 

「それって。」

「ああ、無天だったものだ。捨てるのももったいないしな。」

 

人間でいう脳死状態になり、完全に崩壊しかけたそれを宙に浮かべる。

 

「無天は俺のもう一つの人格といってもよかった。だからこそ、これで武器を創る。

 

その言葉に応じたかのように立方体が光り輝き、形を変えていく。

完成したのは、長さは1メートルほど、太さはバットのような棒だった。

 

「それが武器?」

「ああ、見てろ。」

 

俺がそれを構えると、棒は剣に姿を変える。

 

「まだまだ!」

 

それを持ち、戦っているかのようにの振るう、その光景はまるで舞のようだ。

零がもつ剣は槍、刀、戦斧と形を自由自在に変える。

 

「ふぅ……」

 

一通り振り、構えを解くと、武器は光に包まれ、右腕の手首にブレスレットとして装着された。

 

「それが零の武器?」

「さっきそう言ったろ?」

「想像以上ですね。」

「お兄様、かっこいい!」

「ありがとうな。」

「それで、名前は?」

「名前?」

「そうそう、必要でしょ?」

 

霊夢にそう言われ、しばし考える。

 

「決めた。」

「そう、なんて名前?」

「『神威』。」

「『神威』…神の威を借るつもり?」

「まあ、そんなところだ。」

 

俺の言葉に霊夢が少しだけ呆れたように言う。

 

「あんたらしいわね。」

「そうか?」

「そうよ。何も変わってない。」

 

霊夢はそういいながら立ち上がる。

 

「さて、私たちも準備しましょうか。」

「ですね。」「やろうやろう!」

「気合入ってるな。」

「そりゃあね、負けられないもの。」

「手始めにお兄様!私と戦ってよ!」

「わかった。相手をしてやる。」

「次は私ね。」

「そのあと私もお願いします!」

「いいぜ、かかってこい!」

 

そんな感じで始まった特訓は咲夜や魔理沙たちも参加し、大盛り上がりとなった。

 

 

その後宴会になったのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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明かされる幹部、最下位の少年

「準備はいいか?」
「私は一向に構わんッ!」
「僕は基本的に戦うつもりはありませんからね?」
「俺は……まぁ狙撃手でも殺せたらいいかなぁ。」
「人間以外の生物に会えるなら何でもいい。ぜひとも動かしてみたいものだ。」


幻想郷に新たな争いの火種が落とされた。







 

 

式神と龍義の話があったあと、零は式神たちを幻想郷のいたるところに配置した。

翼は迷いの竹林に、凛音は人里に。

紅魔館の近くには陸斗を配置し、地底には竜胆を向かわせた。

残った焔と零本人は八雲紫や博麗霊夢たちとともに神社で作戦会議をしていた。

 

「それで、敵の名前とかはわかるのか?」

「残っているのは階級第二位の『殲滅者(アニヒレイター)』。第五位の『統制者(コントローラ―)』。第七位『博士(ドクター)』。第八位『監視員(オブサーバー)』。そして第十位の『追跡者(ストーカー)』っすね。」

 

零に聞かれた焔が残りの幹部の名前を挙げる。

 

「階級ってあんたは何番なのよ?」

「俺は一位だ。」

「流石、妖怪の山を半壊させただけはあるわね。」

 

順位を尋ねた霊夢はその返答に苦笑いする。

 

「特徴とかがわかれば、対処の仕様はあるな。」

「追跡者は比較的友好的かと。」

「何故だ?」

「何故ならこいつは元民間人で俺等とは作りが違うんすよ。」

「作りが違う?どういうことかしら?」

 

紫が疑問を抱く。

 

「本来順位持ちの幹部は戦闘用のパラサイトが変異してるんすけど、こいつだけは()()()()()()()()が変異してるんすよ。」

「パ、パラサイトって医療用もあったのね…。」

「実際は機械で無理やり治してるんで怪しいっすけど、それでも特殊能力持ちには変わりないんすよ。」

「なるほど。それでこいつの戦い方は?」

「無いっす。」

「「「は?」」」

 

焔の返答に霊夢や紫だけでなく零も反応する。

 

「こいつは影を移動する『潜影』の能力持ちですが、それ以外は何も。」

「ナイフ持ってたりとか銃で狙撃とかは?」

「持てないです。もとから筋繊維の病気持ってたみたいで。歩けるっぽいっすけどそれ以外は……。」

 

なんとも言えない空気が漂う。

 

「他に何かないのか?」

「あとは名前の通り対象を追跡し続ける能力ぐらいですかね。」

「外見とかは?」

「普通の男児の見た目ですよ。それこそ……」

 

そんな時だった。

 

「見つけた!捕食者さん!」

「そうそう、あんな感じの……はぁ!?」

 

話の話題に出ていた追跡者が現れたのだ。

 

「追跡者!久しぶりだな!元気だったか?」

「あ、はい。お陰様で……。」

「こいつが追跡者か?」

「あ、あなたはまさか?!」

「零だ。よろしく。」

「よ、よろしくお願いします……ってそんな場合じゃない!」

 

話の流れに呑まれれそうになった追跡者が声を張り上げる。

 

「急いで人里に行ってください!被害が拡大するまえに!」

「?! どういうこと!」

 

霊夢が話に加わる。

 

「殲滅者さんはわざと暴れて捕食者さんをおびき寄せるつもりです。人が多く住んでいるところで暴れれば確実にあなたが来るだろうと……。」

「くそっ、あの野郎!」

 

焔が悪態をつく。

 

「他の奴らはどうしてる!?」

「え、えと。監視員さんは狙撃手さんを探しに。博士は八意さん…?という方を狙って竹林のほうへ。」

「…だろうと思った。」

「何か共通点でもあるのか?」

 

零の問いに焔が答える。

 

「監視員は狙撃手…翼がくるまで幹部一の狙撃の達人、博士は幹部の中でも薬物の扱いに長けているんです。」

「なるほど。同業者を狙ってか。殲滅者は?」

「あいつは俺が来るまでの一位でした。」

「あるあるだな。この機会に殺してしまおうという考えか。」

「追跡者、統制者は何してる!?」

 

焦った様子の焔が追跡者に聞く。

 

「さ、さぁ…あの人は特に何も目的がなさそうな感じでした。」

「そうかよ…。御主人、俺は人里に向かいます。」

「わかった。気をつけろよ。」

 

焔は急いで人里に向かった。

 

「それで、お前はなんでこんなところに来たんだ?」

 

零は追跡者に問う。

 

「僕は別に戦ったりするつもりはありません。非力ですしね。」

 

彼は悲しげな表情をする。

 

「ここに零さんがいたのは誤算でしたが、ここで死ぬなら覚悟はできてます。」

「いや殺さないが?」

「え?」

 

意外な返答に追跡者は困惑する。

 

「な、なんで……?」

「いや、敵対してないやつを殺すのはおかしいだろ?」

「で、でも!」

「んじゃあ死にたいのか?」

 

零の率直な問いに追跡者はしばらく口を閉ざし俯く。

しばらく経ってから口を開いた。

 

「……死にたく、ないです。」

「だろ?じゃあ仲間になれ。」

「ちょ、ちょっと零!?」

「別にいいだろ。な、紫?」

「そうね、私も下手に殺すよりは味方になってもらったほうが有難いわね。」

「ゆ、紫まで。」

 

霊夢は困惑しているが紫は賛成派のようだ。

 

「と、いうことで今日からお前も仲間だ。」

「い、いいんですか?」

「嫌か?」

「いや……そんなことは。」

「ならいいだろ?」

「…役立たずですよ?」

「ん?」

「銃も持てないし、剣も振れない。何もできないんですよ僕は!」

「でも影の中を潜ったり追跡できるだろ?それで十分だ。」

 

少年の叫びを零は受け止める。

 

「無理に戦えとは言わん。辛くなったら辞めてもいい。その穴埋めは俺らがやってやる。」

「……。」

 

少年は涙する。

 

「おいおい……泣くなよ。」

「だって…今まで頼られたこと無かったから…。」

「そうか……ならとことん頼らせてもらうぞ。」

「…はい!」

 

 

こうして新たな仲間を迎えると同時に新しい戦いの幕が上がる。

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




はーい、ども!フォーウルムです!
今回は第十位の追跡者の回となりました。

もとから追跡者は戦闘させる気ありませんでした。
能力的にはもっと上位でもおかしくありませんが、戦闘力が低すぎるので最下位です。
しかたないね、戦闘向けじゃないもんね。

いまはこっちのモチベがあるのでこちらを進めていくつもりです。
あと最近になってまた小説の評価やお気に入り登録してくれた方がいらっしゃったようでありがたい限りです。
今後のモチベにもつながるのでぜひともお願いいたします。



それでは今回はここまで、またお会いしましょう!




感想とかもお待ちしてますのでぜひ。


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地獄の飯も友次第




狂ったくらいのやる気を持つ研究者は食事を取っていないという偏見





 

 

旧地獄 商店街

 

 

 

零達が追跡者と接触していたころ、地底の警備にあたっていた執行者こと竜胆は行きつけのラーメン屋に来ていた。

 

「あいよ!御待ちどう!」

「感謝する。相変わらずの速さだな。」

「おうよ!ウチは《速い!旨い!安い!》がモットーだからな!」

 

竜胆の前に二人分のラーメンを持ってきた店の店主といつものように会話する。

 

「にしても珍しいな。あんたが小上がり選ぶなんてよ。」

「今日は()()()()()()()()()()()()()と共に来ているのだ。」

「そう言うことかい。んじゃ今度はそいつとまた来てくれや。」

「無論だ。」

 

気になった疑問を解消した店主は笑顔で厨房に戻っていった。

 

「ほら食え。麺が伸びるぞ。」

 

竜胆はそう言ってラーメンを友人の前に持っていく。

 

「……いいのかい?」

「当たり前だ。()()()()()()()()()、それ以前に我と貴様は友なのだ。」

「……ありがとう…。」

 

竜胆に促され、ラーメンに箸をつけたのは……

 

 

階級第五位の統制者(コントローラー)であった。

 

 

 

 

数分後

 

 

 

 

 

「美味かった。御馳走様。」

「口に合ったか?」

「うん、数年振りにこんなに美味いものを食べたよ。」

 

先程まで完全に死にかけのような雰囲気だった統制者はすっかり元気になっていた。

 

「理由は解るが、一応聞こう。何があった?」

「いやー、こっちに来たあと色々な妖怪達に会うことが出来てはしゃいでいたら空腹で倒れちゃってね。」

「…相変わらず、その情熱は消えんのだな。」

「君こそ、ラーメンは好きなようで何より。」

 

統制者は柔らかい笑みを浮かべる。

 

「それで、どうだったのだ?」

「駄目だね。妖怪達の脳は僕らとは違うから洗脳も出来ないし、解剖しようにも僕にそんな力はない。」

 

統制者の特殊能力は《脳波統制》と呼ばれており、超広範囲の人間の脳波を操作し、制御を掌握することでまるで軍隊のように扱うことが出来るというものだった。故に本人は戦闘力はなく、いつも戦いの際には本陣で指示を出すか研究室で脳の解剖をするかのどっちかだった。

 

「それで、今後はどうする気だ?」

「どういう意味かな?」

「我等と争う気が有るか、という意味だ。」

「……うーん。」

 

統制者は恐らく他の幹部達と来ている。もし害を成すというのであれば此処で無力化する必要がある。

 

「いやー、無理でしょ。」

 

そんな心配を他所に、統制者は肩を竦める。

 

「この幻想郷は人間よりも妖怪とかの比率が圧倒的。しかも大体の戦力が妖怪に寄っている。洗脳できないんじゃあ勝ち目はないからね。」

「殲滅者も来ているのだろう?」

「来てるね。なんでも捕食者と決着をつけるとかなんとか。」

「変わらんな。アイツも。」

「だろうね。順位以外にも何かありそうだけど。」

「? どう言うことだ?」

「解らないなら構わないよ。そんなことよりも……。」

 

統制者の言葉に首を傾げる竜胆。

 

「君、いつから人間を辞めたんだい?」

「……数ヵ月前だな。」

 

数ヵ月前というのはちょうど零の式神になった時期である。

 

「へぇ。通りで脳波が違うわけだ。君の『我天誅』も変わったのかい?」

「まあ、そうだな。」

 

『我天誅』というのは上層部が竜胆、もとい執行者の能力である『自身に敵意を抱いたものに触れることで殺害する』という能力に付けた呼び名で、竜胆は嫌いであった。

 

「どう変わったんだい?」

「対象が個人から複数になり、即殺ではなくなった。」

「…!いいなぁ~。」

 

統制者は素直に羨ましがる。

 

「僕はそう言うの無いからなぁ。」

「我が主に願ってみてはどうだ?」

「主って…もしかして『異名殺し』?」

「うむ。」

「……指詰めれば許してもらえるかなぁ。」

 

『異名殺し』というのは零に対し帝国が名付けたものだ。

 

「そんなことしなくても許していただけるだろう。」

「本当かい?」

「ああ、我もあの方の右腕吹き飛ばしたが許してもらえたぞ。」

「…それって『我天誅』で?」

「うむ。」

「…即死攻撃を腕だけで済ませるとか化物でしょ…。」

「それで、どうするのだ?」

「…行くよ。君に奢ってもらった借りを返すまでは死ねないからね。」

「そうか。」

 

竜胆は心の底から安心した。古くからの友人を手に掛けずに済んだのだから。

 

「そう言えば、『八意永琳』という人物を知っているかい?」

「ああ、八意殿か。知っているがどうした?」

「いや、博士がその人に会いに行くって言ってたが……()()()()()()()()気になってね。」

「…幻想郷に来る前からか?」

「うん。不思議な話だろ?僕らは最近までコールドスリープだったから外界とは分け隔てられていたのに。」

「……妙な話だな。」

「…それはそうと。」

「ん?」

「もう一杯ラーメン食べてもいいかな?」

「…ふん。良かろう。」

 

統制者の疑問に首をかしげている時に統制者はあろうことかおかわりを要求してきた。

始めて会ったときもラーメンを奢っていたな、と思いながら竜胆は二人前のラーメンを注文するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷 迷いの竹林

 

 

 

月が昇り、辺りを青白く照らし出す頃。鈴仙は妖夢と共に竹林を散策していた。

理由無く歩き回っている訳ではない。

 

「ごめんね妖夢ちゃん。手伝ってもらっちゃって。」

「いいんですよ!たまにはこうやって歩くのも新鮮ですし。」

「…危機感持ってる?」

「持ってますってば!」

 

二人が散策をしている理由は周囲の警戒だ。

零から警戒するように、と言われた二人は夜の竹林をパトロールしていたのだ。

そこへ、もう一人の少女が降り立つ。

 

「! 翼ちゃん!」

「…ん、久しぶり。鈴仙お姉ちゃん。」

 

やって来たのは青い髪に同じ色の瞳を持つ翼だった。

 

「翼ちゃんも見回り?」

「…マスターが鈴仙お姉ちゃん達のところに行けって。」

「零さんが…?」

「…うん。…『俺が行けない分、彼女達の力になってほしい。』って。」

「……そっか。」

 

鈴仙と妖夢は顔を見合わせて微笑む。

普段は戦いの事でいっぱいの彼からの気遣いが少しくすぐったく思えた。

 

「…そういえば、最近変なこと無かった?」

「…変なこと?」

「…例えば、『今まで見たこと無い人が訪ねて来た。』とか。」

「私はないですね。鈴仙さんはどうです?」

「私?…うーん。」

 

鈴仙は考える。

人里から毎日のように患者は来るが、特に変なことはない。

…いや。

 

「1個だけあったかも。」

「…どんなこと?」

「今日の朝くらいかな。一人のお爺さんがお師匠様を訪ねて来たの。」

「…おじいさん?」

「そうそう。『今お師匠様は紅魔館に行っていて不在です。』って言ったら帰っちゃったけど。」

「…それ、どんなおじいさんだった?」

「え?…えーと、80代くらいのお爺さんで、優しそうな雰囲気だったよ。」

「…それだけ?」

「他には…あ、なんかわからないけど『うりー』?て言ってたよ?」

「……不味い。」

 

翼が唇を噛む。

 

「ど、どうしたの?」

「紅魔館に幹部の一人が向かってる。」

「?!」

「もしかして、そのお爺さんが?!」

「…うん。」

 

驚く二人に翼がうなずく。

 

「一体誰なんですか?!」

「…それは___」

 

 

翼が幹部の名を言おうとするのと、彼女の首もとから鮮血が吹き出すのは同時だった。

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 



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姿無き襲撃者/拳は学よりも強し

最近見たドラマの台詞


「人は皆死ぬもんだッ!」


わかる人いるのかな?







あ、ペース復帰します。








 

 

完全に不意打ちの奇襲。

一般人なら棒立ちのまま動けなかっただろうが、二人は違った。

妖夢は翼が倒れた方向から隠れるように竹の陰に、鈴仙は翼を抱えたまま地面に偶然あった窪みに隠れた。

 

「大丈夫ですか!?鈴仙さん!」

「私は大丈夫!それよりも!」

 

鈴仙が気にかけているのは翼の事だ。

 

「ねえ!翼ちゃん!翼ちゃ…」

 

鈴仙は見てしまった。瞳孔が開ききり、ピクリとも動かなくなってしまった少女を。

 

「鈴仙さん…!」

「そんな……そんなのって…!」

 

妖夢が顔を出そうとすると、そのすぐ傍の竹が抉れるように吹き飛んだ。

 

「くぅ…!?」

「妖夢ちゃん!」

 

鈴仙は一瞬迷い、そして翼を地面に横たえた。

 

「勝とう、妖夢ちゃん!」

「……はい!」

 

翼のことよりも、いまは目の前の敵に集中しなければならない。

二人は、それぞれの武器をとった。

 

 

 

 

「…場所わかりそう?」

「厳しいですね。音どころか気配すらわかりません。」

 

翼に奇襲を仕掛けた相手は何も動かない。

 

「私も。脳波が届かない。」

「ってことはかなりの腕前の狙撃主ですかね?」

「うん。もしくは隠密に特化した相手。」

 

鈴仙も妖夢も普段何もせずに過ごしていたわけではない。

互いに組手をし、改善点を見つけ、急な戦いに備えていた。

たまに零からアドバイスをもらって、二人でさらに極めたりもした。

だからこそ、ここで負けるわけにはいかない。

 

「「………。」」

 

息を潜め、敵の動きを探る。

 

カサリ

 

「「!!」」

 

風の音ではない、明らかな葉の音が聞こえ、二人は行動を起こす。

妖夢は楼観剣と白楼剣に手をかけ、霞むほどの速度で接近する。

鈴仙は零からもらっていた突撃銃を構え、妖夢の援護をしようと前を向いた。

瞬間、妖夢の体が横なぎに吹き飛んだ。

 

「がっ…?!」

「妖夢ちゃん!!」

 

目の前で赤い血を吹き出しながら倒れる親友に気を取られた鈴仙は……。

 

「っ!!」

 

右足に激痛を覚え、地面に倒れ込んだ。

 

「妖夢…ちゃ……ん。」

 

鈴仙は親友をを見る。

幸運か不運か、なんとか生きてはいるようだ。

それを確認した鈴仙は自身の足を見る。

太股の辺りから出血していた。

応急処置をしなければ、と思った鈴仙の思考は

 

 

 

急に現れた男に遮られる。

 

「!?」

「まだ動けるのか、お前。」

 

突如現れた男。

体にはマントのようなローブをはおり、その手には見たことの無い銃が握られている。

 

「…だ…れ……?」

「階級第八位、『監視員(オブザーバー)』。」

「…!?」

 

鈴仙は絶句する。

この実力で第八位なのか、と。

 

「驚いているのか?無理もないな。質問される前に教えてやろう。」

 

男は銃口を鈴仙に向け、言う。

 

「俺は元々『狙撃主』という称号を持っていた。だが、ある時アイツがやってきた。」

 

アイツとは翼の事だろうか?

 

「俺よりも優れた狙撃技術。俺にない飛行能力。瞬く間にやつが『狙撃主』を手に入れ、俺には『監視員』等というものが与えられた。」

 

男は悔しそうに呟く。

 

「アイツさえ…あのガキさえいなければ!俺はまだ『狙撃主』のままだった!」

 

男は声を荒げる。

 

「今までどれ程屈辱的だったか、どれ程悔しかったか、お前にはわからないだろう!いや、わかるはずがない!……だが、それも終わりだ。あいつは死んだ。俺が殺した。不本意だが、現場を見たお前らも消させてもらおう。」

 

銃口が鈴仙の頭を狙う。

 

「可哀想だが、これも俺の悲願のためだ。許せ。」

 

 

ガウンッ!!

引き金が引かれ、発砲音が鳴り響き、()()()()()()()()()

 

 

 

「は……?」

 

男は一瞬、何が起こったか理解できず、呆然と肘から先が吹き飛んだ腕を見つめていた。

 

「ッ!!」

 

そこから男の判断は早く、残った腕でフードを被った。

すると体が周りと同化するように透明になっていく。

しかし、それを許さないと言わんばかりに二回目の発砲があり、今度は男の足を吹き飛ばした。

 

「ばっ…馬鹿な!」

 

武器もなく、足も吹き飛ばされ動けない男は狙撃された方向を見る。

そこからやってきたのは……

 

「…詰めが甘いよ、監視員。」

 

身の丈に合わない狙撃銃を構えた少女___翼だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

監視員の止血をし、拘束したあと鈴仙と妖夢の応急処置を行った。

しばらくすると因幡てゐが他のウサギ達を率いて助けに来てくれた。

鈴仙は足だけであったが、妖夢は腹部にも傷があったので安静にさせている。

永遠亭の離れに男を拘束し、鈴仙と翼が監視することになった。

 

「…気分はどう?」

「最悪の気分だ。殺したはずのやつに形勢逆転で負けちまったんだからな。」

 

そう、完全に最初の不意打ちは確かに翼を倒していたはずだ。

鈴仙も翼の瞳孔が開ききったのを確認していた。

 

「…私たち式神はあのくらいなら回復できる。…個体差があって時間がかかるし、その間は死んでるのと同じ。」

「そっか……無事だったんだね。」

「…心配かけてごめんなさい。」

「ううん…いいの。」

 

鈴仙は安堵し、翼の頭を撫でる。

 

「んで、俺をどうする気だ?」

「…マスターに引き渡す。」

「…そうかよ。」

「抵抗しないんですか?」

「して何になる?最初の不意打ちが決まっただけ収穫はあった。悔いはねえよ。」

「…マスターは…」

「あ?」

 

死を覚悟している監視員に向かって、翼は言う。

 

「…マスターはあなたを殺さない。」

「……そうかよ。」

 

そう言って監視員はそれ以降口を開くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって紅魔館。

 

「今日は助かったぞ、永琳。」

「お安いご用よ。」

 

八意永琳は紅魔館に来ていた。

理由はレミリアの友人であるパチュリーの診察だ。

 

「いま飲んでる薬ならもう少し楽になるはずよ。」

「感謝する。」

「流石っすねぇ、先生は。」

 

二人の背後でそう言うのは守護者こと陸斗だ。

 

「陸斗君はなぜここに?」

「俺はここの防衛に。レミリアさん達なら大丈夫だと思うんですがねぇ。」

「……どうやらそうも行かないようだぞ。」

 

呑気な陸斗とは反対に、レミリアは警戒する。何故ならば…

 

「ほほう、これはこれは。八意殿にレミリア殿。それに…見覚えのあるやつがいるなぁ?」

「……博士(ドクター)…!」

 

見た目はかなり年がいっている老人だが、その雰囲気はかなりの圧だ。

 

「…美鈴はどうした?」

「問題ない、ただ眠っているだけだよレミリア殿。」

 

殺気を放つレミリアに臆せず、博士は続ける。

 

「薬学に精通しておられる八意殿だけに会うつもりだったが、お前がいたからなぁ。ここで潰させてもらうぞ、守護者!」

 

博士は懐から取り出した薬を一気に飲み干す。

体から煙が吹き出し、瞬く間に博士の体は筋肉の塊のようになった。

 

「はぁ?!」

「どうなってるのかしらね、あの体!」

「というか脳筋なのか!?」

 

博士の姿を初めて見る二人は驚愕する。

 

「ここは俺がやります!」

 

そんな二人の前に陸斗が躍り出る。

 

「来るかぁ!守護者!!」

「いいぜ、ぶっ倒してやる!」

 

こうして、紅魔館で二人の戦いが幕をあける。

 

 

 

 

 

 

続く

 

 



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拳と拳のぶつけ合い






 

 

「ムゥン!!」

「ぐっ!」

 

紅魔館の廊下で接敵した博士(ドクター)と陸斗は戦いの舞台を中庭に移していた。戦闘能力で言えばおそらく陸斗の方が博士よりも上だろうが、単純な殴り合いでは薬を使ってボディービルダー顔負けの体を手に入れた博士の方に分がある。

 

「どうだ!我が薬が造り上げたこの身体!」

「そんなことやって、体壊しても知りませんよ!」

「問題はない!既に副作用が無いことは確認済みだッ!!」

 

陸斗の能力は『損傷反射(ダメージリフレクト)』と呼ばれるものである。

彼が持つ浮遊する二枚の盾に敵から受けた衝撃を溜め込み、それを跳ね返すというものだった。パラサイト時代の彼は盾ではなく体に溜め込んでいたが、盾の方が使いやすいと言うことで今の形になっている。

 

「貴様は不便になったな!以前は盾などいらなかっただろう!」

「これはこれで便利なんだよ!」

 

博士の一撃を吸収し、拳にのせて跳ね返す。

 

が、その動きにあわせて博士が拳をぶつけてくる。

 

「な!?」

「威力は同じかもしれんが、拳での乱打(ラッシュ)で負けるつもりはない!」

 

予想外の出来事に陸斗は一瞬動きが鈍る。

それを博士は逃さなかった。

 

「貴様の防御などッ!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!!!」

 

乱打を叩き込まれた陸斗は、吹き飛ばされ地面に倒れ込んだ。

 

 

 

 

「っ!…助けに入らないと…!」

 

彼らの戦いを少し離れた場所で見ていたのはレミリアと永琳、フランドールだった。

本当は最初から参戦する気だったレミリアと永琳だが、陸斗から一対一でやりたいと言われたので遠巻きに見ていたのだ。

 

「駄目よ、レミリア。」

「だが、このままでは…!」

 

レミリアは二人の戦いに割って入ろうとするが、永琳に止められる。

 

「これは、彼の戦いよ。私達が入れるようなものでは無いわ。」

「だから黙って見ていろと?」

「御姉様……。」

 

苛立つレミリアをフランは気にかけている。

フランは戦いが始まってすぐに駆けつけてきた。本当は咲夜もいたのだが、彼女は美鈴のところへ行っている。

 

「…駄目だ、見ていられない!」

「ダメッ!」

 

レミリアをフランが押し止める。

 

「離しなさいフラン!」

「まだ待って、御姉様!」

「だけど…!」

「彼、何か考えがあるみたいだから!」

 

 

 

 

 

「ンッン~♪清々しい気分だ。1つ歌でも歌ってみようか。」

 

博士は鼻歌を歌いながら陸斗に近付く。

 

「あんた、音痴でしょうに……聞きたくないですよ。」

 

陸斗はふらふらと立ち上がる。

 

「いくら○ョ○ョの大ファンだからって、台詞パクるのはどうかと思いますよ。」

「フン、いくらでも言うがいい!」

 

博士は陸斗を指差す。

 

「先ほどの私の乱打で盾は割れている!もう貴様は防ぐことは出来まい!」

 

陸斗の足元には縦に割れてしまった盾が二つ転がっている。

 

「…そうですね、もうこの盾には頼れません。」

 

陸斗は力なく笑う。

 

「だから、終わりにしましょう。」

「敗けを認めるか、守護者よ。」

 

博士が拳を強く握る。

 

「ならば、我の最大の一撃で終わらせよう!」

 

力強く握られた拳が、唸りをあげて陸斗に叩き込まれる。

その拳は、陸斗の胸を直撃した。

 

「……中々に楽しめたぞ、守護者。」

 

地面に再び倒れた守護者を見下ろし、博士は身を翻す。

 

「さて、次は永琳殿を……。」

 

そう言って一歩踏み出した瞬間だった。

 

「甘い!甘いぞ、博士ッ!!」

「な、何ィッ!?」

 

地面に伏していた陸斗が急に起き上がり、拳を博士に叩き込む。

 

「まだ動けるとは…しかしこれ以上は…!」

「『震えるぞハート、燃え尽きるほどヒート!!』」

「そ、その台詞は!」

 

漫画で読み、アニメでも聞いたその台詞に、博士は驚く。

 

「まさか……それが使えるのか!」

「喰らえ!俺の拳ィ!!」

「そこは技名をグボアァ!!」

 

陸斗の拳が博士の顔面を穿ち、決着となった。

 

 

 

「はぁ…はぁ……俺の勝ち、ですね。」

「むぅ……悔しいが敗けを認めよう。」

 

地面に倒れた博士の体は、先ほどとは違い、廊下であったときの老人の体だった。

 

「老体をもう少しは労れないのか。」

「ご冗談を、あなたを老人などと言ったら他の若者が可哀想ですよ。」

「言ってくれる…。」

 

博士は苦笑いをしながら言う。

 

「最後の一撃、防いでいたのか?」

「いつから、俺が2枚しか盾を持ってないと?」

 

そう言って陸斗は服の間から盾を取り出す。

 

「…三枚目か。」

「そうです。騙されましたね。」

 

陸斗はニヤリと笑う。

 

「…私の敗けだな、何もかも。」

 

その言葉を最後に、博士は気を失った。

 

「…流石に俺も…キツ…。」

 

陸斗の方も限界を迎えたらしく、地面に倒れかける。

しかし、倒れることはなく、誰かに抱き締められる。

 

「…レ、レミリアさん?!」

「無茶しすぎだ馬鹿者!」

 

レミリアに怒鳴られる。

 

「いくら不死身とは言え、あんな戦いをすればどうなるかわかっているでしょう!」

 

レミリアも言い分に反論も出来ない。

 

「……すいません。」

「まったく、しばらく休め。」

 

陸斗を抱えたまま、レミリアはふわりと浮き上がる。

 

「空いてる部屋があったはずだ。そこまで送ってやる。」

「そんな、悪いですって!」

「怪我人は黙ってて!」

 

暴れようとする陸斗を押さえ込み、レミリアは部屋に向かっていった。

 

 

 

「……貴女のお姉さんって、もしかして……。」

「……どうだろ?」

 

レミリアがいなくなったあと、博士を拘束しながら永琳とフランは中庭で休んでいた。

 

「彼処まで心配するって、よっぽどよ?」

「だよね、いつの間にそんな仲に……。」

 

そう思いながらフランが手を顎につけた時、巨大な地響きが人里の方から鳴り響いた。

 

「な、何!?」

「何の音!?」

 

二人はこの時、知るよしもなかった。

人里を舞台に、激闘が繰り広げられていることを。

 

 

 

「クッソ!おい巫女!無事か!」

「問題ないわ!ってか名前で呼びなさいよ!」

 

人里で戦っていたのは捕食者こと焔と霊夢だった。

その相手は…

 

「ククク…随分と弱くなったんじゃないかい?捕食者(プレデター)!」

 

赤黒い眼を爛々と開き、口を歪に歪ませた女だった。

 

 

 

 

時を同じくして

 

 

「いい加減喋ったらどうだ?」

 

捕食者達とは別の場所で、零が戦って…いや、一方的に戦闘を行っていた。

 

「…わ、悪いけどそうは行かないのよ。」

 

その相手である紫は、肩で息をしながら弾幕を張る。

 

「無駄だ。」

 

その弾幕を、零は一瞬で吹き飛ばす。

 

「ぐぅっ!?」

「いい加減にしろよ。」

 

零はその手に持つ新たなる武器、神威を紫に向けて言い放つ。

 

「早くしねえと、本気でぶっ殺しちまうからな。」

「何故、そこまで執着するのかしら?」

「決まってんだろ。」

 

紫の問いに対し、零は答える。

 

「俺が知る限り、お前しかあり得ねえんだよ。()()()()()()()()()()。」

 

 

 

続く

 

 

 

 




どうもー、フォーウルム。
博士はネタキャラにしました。
いつかはいれたいと思っていた台詞なので後悔はしていません。

次回は人里での戦いの決着と、異変の真相についてです。
お楽しみに!



もし「こうなんじゃないの?」ってことがあったら感想でもメッセージでも良いのでお願いします!励みになります!


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真相に迫れ/主席対次席/真の黒幕

 

 

「あり得ない、ってどういうことかしら?」

 

紫は零を見据える。

 

「これを見ろ。」

 

零の手から現れたのは五枚の半透明のウィンドウ。

そこには他の式神達が写し出されている。

 

「さっきから見ているが、明らかにおかしな点がある。」

「おかしな点?」

「まずは博士だな。」

 

零は竜胆と陸斗が写っていたウィンドウを選んで、自身の前に持ってくる。

 

「竜胆に接触した統制者が言うには、こっちに来る前に永琳のことを知っていたそうじゃないか?あり得ないよな、そう言うことって。」

「………。」

「それに、監視者もそうだ。」

 

零は淡々と続ける。

 

「以前龍義に聞いたが、アイツにはあんなステルス迷彩はなかったはずだ。何かしらお前が関与したと見ているが、反論はあるか?」

「………。」

 

紫は黙ったままだ。

 

「言えない理由でもあるのか?」

「………。」

「……そうか。」

 

何も言わない紫に対し、零は溜め息を吐く。

 

「言いたくなければいいさ。これ以上は詮索しねえよ。」

 

零は神威をおろす。

 

「監視者に関しては俺が適当にでっち上げたブラフだし、あんたにだって言えないことの二つや三つあるんだろ?」

「…察してもらえて助かるわ。」

 

紫は安堵の表情を浮かべる。

 

「俺は戻る。橙の相手を凛音に任せてるしな。」

「それもそうね。……藍が言ってたけど今日の夕食の天麩羅、多く作りすぎたらしいの。貰ってく?」

「そいつはいいな。藍の作る天麩羅は三番目に旨いからな。」

 

紫の誘いに零は乗る。

 

「ちなみに一番と二番は?」

「霊夢の作る天麩羅と焔が焼く焼き鳥。」

「そうなのね。」

 

そのときの零の表情は

 

 

 

あまり優れてはいなかった。

 

 

 

 

 

 

人里での戦いは熾烈を極めていた。

 

「アハハハハハ!滑稽だねぇ!」

「やってくれるじゃねえか……!」

 

焔はその手に持っている剣を目の前の女__殲滅者(アニヒレイター)に向ける。

 

「昔のあんたはもっと強かったはず…随分と弱っちくなったねぇ!」

「言ってろ!」

 

焔は女と剣をぶつけ合う。

女の持つ剣はチェーンソーのような形をしており、それを片手に1本ずつ持っている。

 

「こんなんだったらアタシでも勝てる!」

 

焔はジリジリと押され続ける。

少し離れたところでは霊夢が結界を張って人里に出る被害を最小限に抑えている。

 

「(このままじゃ勝ち目がねぇ……だが本気を出そうにも……。)」

 

もし、今本気を出したらどうなるかの想像がつかない。

普段なら被害を気にせずに戦えるが、今はそうではない。

 

「クッソ……!」

「辛いかい?辛いだろうねぇ!」

 

殲滅者は口を歪ませる。

髪の毛は鮮やかな橙色だが、その眼は黒く濁っていた。

 

「あんたには解らないだろうね、その悔しさが!」

「…何が言いたい…!」

「『負けるかもしれない』、『誰かに追い抜かれるかもしれない』…ずっとアタシが抱えてた気持ちは解らないだろうねぇ!!」

 

殲滅者はさらに火力を上げる。

 

「アタシは悔しかった。ぽっと出のあんたが一位の座に就いて、アタシの居場所を奪った!アタシが…アタシが持っていたのを全部!」

 

殲滅者は声をさらに張り上げる。

 

「あんたが退屈そうにしてる中で、アタシは必死に頑張った。何度もあんたに挑んで奪い返そうとした!なのに…なのにあんたは!」

 

焔の脳裏に思い浮かぶのは零のもとに付く前の記憶。

帝国軍での暮らしだった。

何不自由なく過ごせていたが、何一つとして満足できなかった。

1人で任務に赴き、歯向かう者達を始末する生活。

独りで遠征に行き、静かな夜に星を見上げた暮らし。

そんな中受けた初の()()()()()()()で、零に出会い、満たされない日々を終わらせたのだ。

 

「勝手に居なくなるし、コールドスリープから目覚めたら何もかも無くなってた。だからここまで追ってきたんだ!あんたに勝ち逃げなんてさせない!」

「…殲滅者。」

 

やっと彼女の思惑が解った。

彼女は蹴りを着けたいのだ。

昔から続いていたこの下らない格付け(因縁)に。

 

 

そんな時、今まで結界に注力していた霊夢から声がかかる。

 

 

「あんた!さっさと勝ちなさいよ!」

「巫女……。だが」

「だがも何もないわよ!あんたの攻撃くらい防いで見せるわ!」

 

そう言って霊夢は滅暗の神霊杖を持ち上げる。

杖は霊夢の意思に従うように、その装飾を展開させる。

 

「《神霊符 二重神結界》!」

 

スペルが放たれると同時に今までの結界を覆うように新たな結界が展開される。

 

「そう簡単には壊れないわ。遠慮せずやっちゃいなさい!」

 

霊夢の言葉に焔は笑みを浮かべる。

焔も直感していた。

これなら遊べる、と。

 

「なぁ、殲滅者。」

「な、なんだい急に。」

 

その変化に殲滅者も気がつく。

 

「お前が吹っ掛けたんだ。」

 

焔の剣が揺らめく。

 

逃げんなよ?

 

瞬間、焔の姿が消える。

 

「な?!」

「遅えなぁ!!」

「は、速い!」

 

焔の剣は紅の炎を纏い、目に留まらぬ速さで振るわれる。

振られる度に衝撃波が空を叩き、爆発に似た衝撃波が発生する。

 

「がっ!?」

「まだ、弱っちいか?おい!」

 

焔の連撃が、遂に殲滅者の体勢を崩し、両手の剣を跳ね上げた。

 

「あ…。」

 

弾かれた剣はそのまま跳んでいき、焔の剣が殲滅者の首もとでピタリと止まった。

 

「終わりだ。」

「……そうだな、アタシの敗けだ。」

 

殲滅者は悔しそうに唇を噛む。

 

「俺らと来ねえか?」

 

焔は剣を担いで言う。

 

「な……!」

「ご主人だってそう言うだろうよ。」

 

焔はニカリと笑う。

 

「…いいのか?」

「いいだろ。強さは俺が保証してやっから。」

「そうか…そうだな。あんたに勝つまでは、死ねないからな。」

 

殲滅者はそう言って笑う。

その眼は、先程と違い、きれいなオレンジ色だった。

 

 

 

 

ちなみに霊夢にこっぴどく叱られた。

デスヨネー

 

 

 

 

 

 

「揃ったな。」

 

博麗神社に零達が集まっていた。

焔達式神は陸斗以外全員。殲滅者達は五人全員だ。

 

「もう一度確認する。『今後は俺の式神として協力する。』『幻想郷で面倒事を起こさない。』この二つを守れればあとは何でもいい。」

 

零が確認すると、全員が頷く。

 

「じゃあ一旦お前らを式として取り込む。」

 

そう言うと、殲滅者達の体を光が覆い尽くす。

光はそのまま輝いていたが徐々に小さく、眩しくなり、最後には綺麗な珠になった。

零はそれを取り込み、一息ついた。

 

「終わったわね。」

「ああ。」

「それで、今回の元凶は誰だったんです?」

「ん?ああ、それなんだがな。」

 

そう言って真相を話そうとしたとき、零の意識は暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………。」

 

零が見下ろすのは巨大な島。

さまざまな地形があり、そこには多種多様の生き物達が住んでいる。

全身が赤い液体で覆われた巨人、半透明な体をした海に住まう巨大な蛇、雲の上にある遺跡で眠る半分天使でありながらもう半分は悪魔の怪物等々。

 

「こいつは……。」

 

零は考えを巡らせる。

自分はこれと似たものを見たことがあるはずだ。

いや、見たのは島ではなく怪物達の方だ。

 

「こいつらは……まさか!!」

「『魔法式と生物の複合計画』。」

「誰だ!」

 

背後から聞こえた声に振り向く。

 

「な?!」

 

そこにいたのは。

 

「やぁ、久しぶりだね。ゼロ。」

 

自分と全く似た姿と顔立ち、自分の白い髪や瞳とは対照的な漆黒の髪と瞳を持つ少年がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

続く。

 

 



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再会/新たなる戦場へ



20XX年3月21日
 帝国が最新型演算機能搭載のマザーコンピューター『デウス・エクス・マキナ(以降デウエク)』の開発に成功する。

4月4日
 帝国がデウエクを使用し新兵器『パラサイト』を開発する。更に他の戦術兵器『複合生物』、『聖遺物兵装』の研究を進める。

4月8日
 複数の国が「『パラサイト』が非人道的であり、兵器禁止条約で禁止されている」という署名を製作する。

4月17日
 帝国軍最高研究者である『神薙 彩』の一人息子である『神薙 零』が10歳の若さで属性応用派生学の履修課程を修了する。

4月22日
 神薙彩の指揮の下、零のクローンである人型戦術兵器『プロトタイプNULL』が完成する。

5月13日
 パラサイトを搭載した10人が帝国軍に配属される。この10人はそれぞれに称号であり偽名である名前、実力の順位付けがされ異名階位(ネームドナンバーズ)と呼ばれることになる。

5月15日
 複数の国が再び署名を提出。これが発端となり帝国と署名国(連合軍)による世界大戦が勃発する。




20XX年4月22日
 神薙零が病のために亡くなる。享年17歳。

4月26日
 神薙彩がNULLと共に連合軍へ亡命。これの制圧のために序列一位『崩壊者』、序列二位『破壊者』が派遣されるが途中で生命反応が消失する。尚、この日の早朝、神薙彩が偶然にも死亡したはずの零の脳がデウエクの補助機構として使用されていることと、他の科学者達の脳が使用されていることを発見していた。

5月3日
 この日を境にNULLと思われる人型兵器が確認され、制圧のために14人のパラサイトが派遣さる。しかし派遣された14人の内、『捕食者』『狙撃主』『守護者』『執行者』『演奏家』の五名が行方不明。残りの9名の内『殲滅者』含む5名が重傷で凍結療法(コールドスリープ)となり、その他4名の死亡が確認された。これにより大幅な入れ換えが生じた。

7月27日
 帝国軍最高指導者である『オルガンズ・ガーダイン』が失踪。残された帝国軍幹部は連合国と和睦を結ぶ旨の宣言を出す。

7月29日
 神薙彩が死去。享年31歳。しかし彼女の遺体は発見されておらず、本当に死亡したかは不明。

8月2日
 連合と帝国の間に停戦協定が結ばれる。が、その式の最中に大量のパラサイト兵器を取り込んだオルガンズ・ガーダインが出現。

8月3日
 オルガンズ・ガーダインを中心として半径50キロにもなる半球状の構造物が出現する。この構造物はパラサイトと似た構造の生物細胞で構築されており、あらゆる兵器での攻撃を受け付けなかった。

8月10日
 連合国の主力にして英雄的存在のNULLが突如として行方不明になる。同時に彼と行動を共にしていた『捕食者』等も行方不明となる。

9月23日
 突如として構造物が消滅する。中心部を調査すると死亡したオルガンズ・ガーダインと思われる肉塊、行方不明になったはずのNULLと遺伝子情報が一致する血液が発見される。

9月26日
 正式に停戦協定が結ばれ、約7年に渡る戦争は終結した。







 

 

 

 

「やぁ、久しぶりだね。ゼロ。」

 

ゼロに瓜二つの青年がそう言って微笑む。

 

「……何でお前がいるんだよ…()()()()()。」

 

オリジナル。そう、今目の前に居るのは____

 

 

 

「酷いなぁ。僕にはちゃんと『神薙(レイ)』って名前があるのに。」

 

ゼロの元となった人物、レイだった。

 

「お前、死んだんだろ?」

 

ゼロは注意をレイに向ける。

レイが入った棺に覆い被さり泣いていた彩の姿が思い出される。

 

「死んだ………いや、()()()()()()()()()。」

「…なんだと?」

 

衝撃の事実に耳を疑う。

 

「僕は病に見せかけて殺されたのさ。」

「そんな馬鹿なことがあるか!」

「あるんだよ。現にデウエクにその記録が残ってた。」

「な…!?」

 

そのような記録が残っていたというのか。

 

「…僕は死んだあと、デウエクの補助パーツとして使われたらしい。だけど幸運にも僕の意識はプログラムとしてデウエクに保存された。」

「…だから、調べられたと?」

「まあね。」

 

レイはそう言った。

 

「…色々言いたいことがあるが、1つだけいいか?」

「なんだい?」

 

レイは首をかしげる。

 

「今回の異変、黒幕はお前か?」

「うん。そうだけど?」

 

即答するレイに対し、ゼロは言葉を続ける。

 

「あらかた予想はつくが、どうやった?」

「どうやったって……簡単に言うとね、」

 

 

彼が言うにはこうだ。

まず、デウエクの中でデータとして覚醒したレイは様々な情報を漁っていた。そんなとき、殲滅者達が凍結療法でデウエクに接続された。

更に数日後、なんと八雲紫がレイと接触。この時既にオルガンズ・ガーダインの計画を知っていたレイは紫と結託することになった。

まず、紫がゼロと捕食者達を幻想郷に引きずり込む。レイ曰く捕食者達も一枚噛んでいたらしい。

次に幻想郷で俺が力をつけている間にレイが凍結療法中の殲滅者達のパラサイトに幻想郷の情報を書き込み、更にレイ自身の情報を記録させる。

頃合いを見て俺にパラサイトの本拠地と偽ってオルガンズ・ガーダインのところの座標を伝え、討伐させる。

討伐後、時間を開けて殲滅者達を再起動させ、幻想郷に紫のスキマを擬装させたワープホールを潜らせて幻想入りさせる。

あとは俺が捕食者達五人を式神として取り込むと精神世界でレイが顕現する、ということだった。

つまり………

 

 

 

「俺はお前の手の平の上で踊らされた、ってことか。」

「まあそうだね。」

 

非常に気に食わないがそう言うことだ。

 

「だが、かなりの賭けだったんじゃないか?」

 

そう、この計画は俺が()()()()()()()()()時点で破綻する計画だったはずだ。一歩間違えればそれでレイは顕現できなくなってしまう。

 

「それはそうだね。でも僕は信じてたから。」

「何を?」

「捕食者達を仲間に引き込んだ君なら殺さないだろう、ってね。」

「……あっそ。」

 

目の前の男の豪胆さに呆れながら、俺は眼下の島を見る。

 

「あれは、アイツ等のための家か?」

「うん。『魔法式と生物の複合計画』で作られたものをアレンジしたんだ。」

 

魔法式と生物の複合計画。

それは元の世界にあった技術である『属性学』を生物と同化させるというものだった。研究所に配属されたレイが指揮を執っていた計画であった。

 

「彼らは僕が作り替えて使い魔として運用できるようにしたものなんだ。」

「使い魔。ねぇ?」

「なんだい?おかしな所でもあるかい?」

「無いさ。」

 

ゼロは笑った。

 

「お前は…いや、俺達はどうなる?」

「僕の意識と使い魔達は後付けの情報として君の中の魔術回路に刻まれる。」

 

レイは淡々と語る。

 

「今後は僕の能力を君も使えるようになる。使い魔もね。」

「魔法は苦手だ。物理で殴れば解決する。」

「それでも物理が効かない相手が出たら、使わざるをえないだろう?」

「…まあな。」

「大丈夫、短い期間なら君の体の主導権を僕に移せるから。」

「変なことすんなよ?」

「わかってる。」

 

レイは笑顔を引っ込めて真剣な表情になる。

 

「ゼロ、僕がここに来たのは君の力を借りたいからだ。」

「何?」

「前の世界では、帝国軍の軍事施設で封印されていた『聖遺物兵装』が眠りから目覚めようとしている。それを止めてほしい。」

「またあの世界に行くのか?」

「そうだ。」

 

ゼロは溜め息を吐く。

 

「行きたくはないが、放っても置けんな。」

「準備をしっかりと整えて行こう。」

「ああ。」

 

ゼロは頷き、レイに手を差し出す。

 

「よろしくな、レイ。」

「うん、よろしくね。ゼロ。」

 

二人は、互いの手を強く握った。

 

 

 

 

 

 

 

__________________________

 

 

「………。」

「あ、起きた!」

 

ゼロが目を開けると、そこには霊夢や焔、そして他の式神と妖夢達がいた。

 

「大丈夫なの、あんた?」

 

霊夢が心配そうに首を傾げる

 

「問題ねぇ。それよりも話すべきことがある。」

 

ゼロは体を起こし、立ち上がって話を始めた。

 

 

 

 

 

 

次の戦場は旧世界(故郷)になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 




どもー、フォーウルムです。
今回でAnotherNumber編は終わりになります。
次回は少し日常系を書こうと思っています。
前書きの年表は旧世界こと零達がいた世界での出来事になります。
書いてる内に日付がごちゃごちゃになって大変でした。
慣れないことするもんじゃないね。


それでは、また次回お会いしましょう!




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回路と術式



パラサイト達との戦いが終わってしばらく経った。
ゼロにもう一人の人格が宿ったり、その人格がゼロよりも礼儀正しかったけどやっぱり頭がおかしいくらいの強さだったりと驚きと呆れの日々だった。
だが、退屈かといわれればそうではない。


『グオォォォォォォ!!』

妖怪でもパラサイトでもない化物が現れるようになったからである。
最初は週に1匹、小型のが出るだけだったのだが最近では大型のものが出るようになってきたのだ。

「化物だー!」
「た、助けてくれー!」

里の人々は逃げることしか出来ない。

「きゃっ?!」

そんな中、一人の少女が転ぶ。
平民の生まれである彼女に武芸の心得などなく、怪物が迫ってきてもただ怯えることしか出来なかった。

『グルゥ…』
「ひ……ぁ……」

恐怖で悲鳴もあげることが出来ない。
怪物の巨大な手が振り上げられた。

「…………?」

腕が振り下ろされるのを待つしか出来ないと少女は目を瞑っていたが、いつになっても何も音沙汰がない。

「え…?……えぇ?!」

恐る恐る目を開けた少女が見たのは
体が崩壊し、崩れていく怪物の姿だった。





 

 

「今のは何?」

 

人里のとある飲食店の個室にて、二人の男女が食事をしていた。

と言っても食事をしているのは男の方だけだが。

 

「『夢想封印・穿』。霊夢の新技だ。」

 

蕎麦をすすっていた男、零が解説をいれる。

 

「今までの夢想封印で出していた弾幕を収束させ、光線として打ち出す高火力技。ちょっとアドバイスしただけで完全にものにしちまうとはなぁ。」

 

零は感心しつつも呆れたように言う。

 

「それは貴方のアドバイス?それとも彼?」

 

そう問うのは八雲紫だ。

 

アイツ(レイ)だよ。アイツ曰く『出来ないかもしれないが。』だったはずなんだがなぁ。」

 

零は天麩羅に塩をかけながら言う。

 

「霊夢の中にある回路は霊力。魔力運用がベースの圧縮術式が上手く機能するとは思わなかったんだろ。」

「回路?圧縮術式?」

 

聞いたことの無いワードに紫は首をかしげる。

 

「あ?あーそういえばそっちの技術じゃないんだっか?」

 

あー旨ぇ、と言いながら天麩羅を頬張る。

 

「折角だし教えてやるよ。」

 

 

 

所変わって紅魔館図書室。

 

「魔力回路……?」

「はい。」

 

紅魔館でホワイトボード(零作)にペンで字を書きながら追跡者は頷く。

 

(…なんで解説してるんだろ。)

 

追跡者は内心ビビっていた。

何故ならば目の前には魔理沙にパチュリー、アリスと幻想郷でも屈指の魔法使いが揃っている。

戦闘力皆無の追跡者はビクビクしながら三人に授業をしていた。

 

「その回路っていうのは魔力だけなのかしら?影貞(カゲサダ)先生?」

 

影貞というのは零が与えた名前だ。

 

「いいえ、回路は人によってことなります。魔力、霊力、妖力などの回路があります。」

「じゃあ私達のは魔力回路ってことね。」

「そうですね。」

「じゃあ、その魔力回路に他の力流し込んだらどうなるの?」

 

アリスの質問に影貞は頭をフル回転させて答える。

 

「人にもよりますね。大体は体に異常を来すか、最悪死に至ります。」

「そうなのね。」

「なるほどな。よし、回路についてはわかったから術式についてお願いしてもいいか?」

「はい!」

 

魔理沙の話題転換に影貞は答える。

 

「術式は一言で言えば『分類』にあたります。その魔法の効果に応じて分類されます。」

「どんなのに分類されるんだ?」

「そうですね、基本の属性攻撃の『属性術式』。魔法の威力をあげる『濃縮術式』。発動速度をあげる『加速型圧縮術式』に単に容量をあげる『増強型圧縮術式』。あとは……」

「わ、わかったわかった!とりあえず沢山あるんだな?」

「え?…ええありますよ。」

「知識量の多さは流石の一言ね。」

 

魔理沙やアリスが感心する。

 

「私の上海や蓬莱操るのも分類名あったりするの?」

「ありますよ。操作系の魔法は『傀儡術式』ですね。」

「か…傀儡……?」

「可愛らしいお人形とは似てない名前なのね。」

 

アリスは少ししょんぼりする。

 

「私のはほとんど属性術式かしら?」

「パチュリーさんのは属性術式に違いありませんが、格が違いすぎて分類しかねますね。」

「そうなのね。案外そっちの世界の魔法ってショボいのね。」

 

パチュリーは嬉しそうに胸を張る。

 

「私のも属性術式、か?」

「そうですね。」

 

魔理沙はそう確認すると少し考える。

 

(…怒らせちゃったかな?)

 

 

 

そんなこんなで追跡者こと影貞の授業は終わった。

 

 

 

 

「き、緊張したぁ。」

 

何事もなく終えた影貞はひと安心する。

 

「確か買い物しなきゃなんだっけ。」

 

影貞は自分の影からメモを取り出す。

そこへ

 

「影貞、少しいいか?」

「魔理沙さん?どうかしましたか?」

 

魔理沙がやってきた。

 

「今度でいいんだが、家に来てくれないか?もっとお前の知ってる知識を教えて欲しいんだ。」

「構いませんよ。」

 

影貞は満面の笑みで答える。

 

「…っ!こ、今度予定教えろよ!迎えに行くから!」

「は、はい!」

 

魔理沙が急に声を荒げたので影貞は背筋を伸ばす。

 

「じゃあな!」

「は、はい…また……?」

 

 

 

「………くっそ、調子が狂うんだぜ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




どもー、フォーウルムです。
今回は霊夢の新技と、この世界における用語を少々解説しました。
影貞君はレイほどではありませんが、知識豊富です。

今回よりゼロとレイの表記は
ゼロ→零
レイ→レイ
になります。
感じだったら主人公とでも思っておいてください。
次回か次次回あたりに式神10人の紹介を書きます。
お楽しみに!


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戦いに向けて



ぽけーっとしてたらコラボが投稿されてました。
今回はサイコパスのらいらいさんとのコラボでした。
あちらの世界でも相変わらずの戦闘狂だったようです。





 

 

夜 命蓮寺にて

 

 

「おやすみ、聖。」

「ええ。おやすみなさい、龍義さん。」

 

あの戦いのあと、命蓮寺での生活にもなれてきた。

最初は慣れないものだったが、今ではすっかりと身に馴染んできた。

この生活が出来るようになったのも零のお陰だ。

でも

 

 

「……夜くらいは休ませてくんねぇかな?」

 

今、龍義が見ているのはおそらく夢なのだろうが、目の前には見覚えのある男がいる。

肩の辺りまで伸びた黒い髪に穏やかな表情をした青年だった。

 

「まさか生きていたとはな。神薙(レイ)。」

「生きてたっていうかなんと言うか……。」

 

レイは頭を掻く。

八雲紫に聞いたときは耳を疑ったが、まさか本当に生きていたとは。

 

「それで用はなんだ?生前のお前に対する仕打ちへの仕返しか?」

「それはないし、どうでもいいよ。」

 

レイはそう言って真剣な眼差しを龍義に向ける。

 

「僕と零は近々元の世界に戻る。」

「……!」

 

元の世界に戻る…ということは。

 

「戻る気は無い、と?」

「いやいや、そういうつもりじゃないよ。」

 

レイは首を振る。

 

「紫さんから連絡があってね。あっちで怪しい動きがあったみたいだからそれを止めにいってくる。」

「止めに行くだと?そんなことをする必要があるのか?」

「…『聖遺物兵装』。」

「!?」

 

レイが放った一言に、龍義は目を見開く。

 

「その様子だと知ってるみたいだね。」

「…知ってるも何も、あれの凍結作業をやったのは俺だったからな。」

 

 

『聖遺物兵装』

それは大戦前の帝国がデウス・エクス・マキナを用いて開発していたものだ。

『機械の肉体を用いることで人体にかかっている術式のリミッターを外し、圧倒的な戦力を得る。』というのがコンセプトであった。

しかし、完成後に異常が発生し暴走したためすべての兵装が凍結処理され、封印されたのだ。

 

 

 

「あれはあってはならない兵器だった。それがどうしたっていうんだ?」

「どうやら、彼らはそれの封印を解こうとしている。」

「な?!」

 

奴らは封印を解くということがどういうことか解っているのだろうか?

 

「僕は零と一緒にこれを阻止に行ってくる。その間…」

「こっちを守ればいいんだな?」

「任せられるよね?」

「ああ、任せろ。」

「焔たちにも話はしてある。」

「あいよ。」

 

その一言を最後に、龍義の意識は途絶えた。

 

 

 

次の日

 

 

 

支度を済ませた零は、目的の次元に向かう手筈を整えていた。

といっても特にやることは無いのだが。

 

「さて、こうなったからには取り止めたりしねぇんだが。」

 

零は溜息を吐きながら後ろを振り返る。

 

「なんで霊夢まで来るんだよ?」

 

そう。霊夢がついてくることになってしまったのだ。

当初は冗談半分で「式神全員に単独で勝てたらいいぞ」などと言っており、さすがに退くだろうと考えていた。

だから本当に霊夢が完勝するなんぞ思ってもいなかったのだ。

 

「いいじゃない。ちゃんと戦えるって証明はしたわよ?」

「博麗の巫女が幻想郷離れていいのかよ?」

「いいのいいの。紫に話は通してあるし、早苗も張り切ってるから。」

 

霊夢の言い訳に再び溜息を吐く。

実際のところは霊夢がついて来てくれることに内心喜んでいるが、バレると恥ずかしいので黙っている。

 

「それで?この格好は?」

「お前のサイズに合わせたコンバットスーツだ。」

 

霊夢が着ているのは零が作った専用のスーツだ。

 

「サイズが合ってるのはいいんだけど、なんか不気味ね。」

「何がだ?」

「…何でもない」

 

少し頬を染める霊夢を見つつ、零はゲートを開く。

 

「言い忘れていたが、あっちではあまり弾幕とか撃つなよ?」

「一応聞いておくけど、なんで?」

「……面倒な連中にバレたくないからな。」

「はぁ?」

「ほら、行くぞ。」

「あ、ちょっと!待ってよ!」

 

そうして二人はゲートを潜っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

現実世界

 

 

エリアE-4

 

 

「これより、作戦行動を開始する。」

 

切り立った崖から下を見下ろすように西洋刀(サーベル)を突き立てた女性が声を発する。

 

「私たちの目的は、発見された遺跡内で反応を示す聖遺物兵装の調査、及び確保である。敵の戦力は不明だが、我々ヴァイオレットチャリオッツの敵ではない!」

 

凛とした声に鼓舞され、兵士たちの背が伸びる。

 

「さあ!行くぞ!」

 

その一言とともに兵士たちは進軍を始めた。

 

 

 

 

 

 

 




原神にはまり呪術廻戦にはまり、小説にまで影響が出てきました。どうもフォーウルムです。
フォンテーヌは実装されるわやってるスマホアプリに呪術コラボ来るわでやること多くて困りますねー。

お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、『聖遺物兵装』は原神の『聖遺物』から、『術式』は『呪術廻戦』が元ネタになっております。これに伴い小説のタグに『技や設定にパロディあり』を追加させていただきました。

さて、今回でAnotherNumber編は最終回となり、次回からは新章に突入します。
お楽しみに!


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第七章 聖遺物編
予期せぬ接触


 

「本当にこんなところにいるの?」

アイツ(レイ)が示した方角はこっちだ。」

 

遺跡の中を進む霊夢は零に問う。

今の二人の目的は遺跡内部にあるという聖遺物兵装を破壊しに来たのだ。

 

「でも、こんな隠れながらじゃなくてもいいんじゃないの?」

「言ったろ、面倒にしたくないって。」

「面倒って、会いたくない人でもいるの?」

「いるよ。」

 

零は溜息を吐きつつ続ける。

 

「俺が…というか俺らが所属していた『第67期帝国兵団』のメンバー。」

「67期…?そんなに嫌なの?」

「嫌っていうか、その中に戦いたくねぇ奴が何人かいる。」

「へ~、例えば?」

「五行の術式を扱う葛城(カツラギ)とか、無重力で戦う浮島(ウキシマ)とか。あとは名家のご令嬢の速水(ハヤミ)もいたな。」

「速水?」

 

女と直感したのか霊夢が聞き返す。

 

「そうだ。今も戦い方を変えてなければ大剣片手でぶん回す戦いをしているはずさ。」

「へ~。……あれみたいに?」

「は?」

 

 

 

 

一方そのころ

 

 

 

 

「これが…聖遺物兵装?」

 

零達よりも先に聖遺物兵装にたどり着いたのはヴァイオレットチャリオッツであった。

 

「周囲に変化はないか?」

 

指揮をしている女性が周囲を調べている兵士に声をかける。

 

「問題はありません、ハヤミ騎士団長。」

「そうか…これの識別は?」

「外観、内部の術式から『愛を捧ぐ乙女』かと。」

「ほう。」

 

ハヤミは目の前の兵装を見据える。

膝を折り、天に向かって祈りをささげている少女の像が、危険視されていた聖遺物兵装とは、初見では気が付かないだろう。

 

「この後はどうするんだ?」

「内部に不備がないかを調べた後、安全装置を解除して回収作業に入ります。」

「そうか。くれぐれも気を付けてくれ。」

「承知しました。」

 

指示を出したハヤミは少しその場を離れた。

すると、彼女の懐に入っていた端末が震える。

 

「こちらハヤミ。」

「もしもーし、聞こえっかー?」

「……貴方ですか、カツラギ。」

「ちょいちょーい、なーんか疲れてないかー?」

「任務終わりに貴方の声を聴けば誰だってこうなりますよ。」

「ひっでーwww。んで、見つかったん?」

「見つかりましたよ。識別名は『愛を捧ぐ乙女』だそうです」

「『乙女』、ねぇ。周囲の人間の肉体や精神の治療に特化したやつだな。」

 

カツラギが冷静に分析するのをハヤミは聞いていた。

同級生のこの男はスイッチが入れば頼れる奴なのだ。

 

「これから回収して帰投する。」

「あいよー。あ、そうだ。」

「なんですか?」

「任務終わったら飲み行かねー?」

「嫌です、お断りします。」

「つれねーww。…?! ハヤミ!今すぐそこからにg

「カツラギ?どうしたんですか?」

 

先程までいつも通りの調子で喋っていたカツラギが焦ったと思ったら通信が切れた。

 

「ハヤミ団長!敵襲です!」

「な?!」

「大量のゴブリンが!」

「チィッ!全員戦闘態勢!聖遺物兵装を守り抜くぞ!」

 

背後に出現させた魔法陣から身の丈の1.5倍はあろうかという大剣を取り出した。

 

「掃討する。生きて帰るぞ!」

 

その声を合図に戦闘が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 



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怪物の帰還



「どーゆーことですか?」

机に座る男を前に、葛城は語気を強める。

「援護出撃の取り止め。フツーならありえねぇだろ。」

葛城はそう言って書面を見せる。
本来は極秘情報であるが、以前帝国側の名家でありながら連合と内通していた彼からすれば簡単に手に入れられる物だ。

「しかも相手はゴブリンの大群。さっさと行かねーと死人が出ちまうんじゃねーの?」

葛城はそう言って目の前の男を睨み付ける。

「そうだな。本来なら取り下げはしない。」
「じゃあ何でなんだ?理由はあるんだろーな?」

男はしばらく考え、溜め息を吐きながら言った。

「既に戦闘は終わり、もうすぐで帰投するそうだ。」




「……………はぁ?」







 

 

それは、葛城が上司の元へ殴り込みに行く数分前の事だった。

 

 

 

 

 

「終わったな。よくわからん連中だったが…一体なんだ?」

 

目の前の男はそういいながら肩に担いだ剣に付いた液体を払う。

彼の周囲には切り裂かれ、原形を保てず消滅していく残骸が大量にあった。

元々は『ゴブリン』と呼ばれる()()を事も無げに殲滅したこの男は……まさか。

 

「久しぶり…で合ってるのか?速水。」

「…それで間違いない。零。」

 

彼は間違いなく零だ。

戦い方、喋り方、立ち振舞い。全てが突如として姿を眩ましたあの男と一緒だ。

 

「生きて…いたのか?」

「まあな。」

「…そうか。」

 

彼は以前よりも生き生きとしている。暗く、弱々しかった以前とは別人のようだ。

 

「零ー、そっちはどう?」

「終わったぞ。霊夢のほうも良さそうだな。」

 

霊夢と呼ばれた茶髪の少女は右手に持ったナイフをしまいながら近づいてきた。

 

 

彼らの戦い方は完全に常識を逸脱していた。

いや、私の戦い方(大剣を片手で振り回すこと)自体が普通と言うつもりは毛頭ないが、それでもこの二人はおかしい。

 

零のほうに関しては素手で殴りかかっていた。そこまではいい。

だが銃弾を素手で握りつぶしたり蹴って跳弾させるなどありえない。

特に4メートル近く離れた敵を触れずに捩じ切るとかどうなっているのだ?

 

霊夢という少女はナイフによる近接術、そして軽やかな身のこなしによる立体的な攻撃で的確に急所を突く戦いが得意なようだった。

まるでボールのような軌道を描いて戦っていたが、元は何をやっていたのだろうか……?

 

「とにかく助かった。感謝するよ。」

「感謝…されるかはわからんがな。」

 

そう言って彼は方向を聖遺物兵装に変えた。

 

 

 

 

 

 

・・・なんやかんやありまして・・・

 

 

 

 

 

 

 

「とユーことで!祝!零の帰還アーンド、ハヤミの無事を祝って!」

 

『かんぱーい!』

 

 

拠点に戻ってきたハヤミは彼女の同僚たちと共に宴会を開いていた。

戦いの後の処理はすでに終わらせ、上層部への報告も終わっていた。

 

「にしてもまさか生きてるとはなー」

 

そう言いながら零に近づいてきたのはカツラギだった。

そばにはハヤミやウキシマがおり、俺の隣には霊夢がいる。

 

「零、この人たちは?」

「紹介しよう。この男は葛城(カツラギ)将明(マサアキ)。元官僚でありながら途中から軍に入ってきた変わり者だ。」

「んな?!」

 

零の紹介に葛城がショックを受ける。

 

「さっきから浮いてるこいつは浮島(ウキシマ)春斗(ハルト)。体も術式も浮いてるやつだ。」

「うきしまだよ~。よろしくね~。」

 

浮島と呼ばれた子供が霊夢に挨拶をする。

……宴会で綿あめを食べているのがすごい気になる。

 

「ちなみにこいつ女な。」

「ヘー。………え?」

「んで、こいつが速水(ハヤミ)香識(カオリ)。一番の功労者だ。」

「そんなものではない。」

 

霊夢の聞き返しに答えず

速水はそう言って顔をそむける。

 

「そんで零、こいつは誰なんだ?見たとこ普通の人間っぽくはなさそうだが。」

「彼女は博麗霊夢。幻想郷の住人で俺のパートナー。」

「…!なるほど、そういうことか。」

 

零の言葉に葛城は納得する。

 

「……驚かないわけ?」

「時空転送門がある時点で異世界の一つや二つ驚かねえって。」

「それに、私たちの間では幻想郷の存在は認知してましたので。」

 

呆れる霊夢に葛城と速水が返す。

 

「まあいい。折角の宴会なんだ。ゆっくりしようじゃないか。」

 

 

 

 

 

その日の夜、とある一室で零は無線機を使って連絡をとっていた。

 

 

「任務はどうだ、(シン)?」

『問題はありませんよ、ご友人。』

 

独特の喋り方をするのは大戦時に俺と渡り合った男(クレナイ) 親だ。

連合軍で随一の強さを誇るこいつと、当時帝国に所属していた俺は一度だけ戦ったことがあった。

その後は連合に亡命し、こいつと肩を並べての戦争になった。

こいつは気に入ったやつを「ご友人」等と呼び、サプライズと称して辺りを焼き払う変人だが、礼儀正しく部下思いの人間だった。

 

「相変わらず、その呼び名か。」

『ご友人はご友人です。それは変わりませんよ。』

 

この男に連絡をとったのは他でもない。

 

『それで、何をするんです?』

「聖遺物兵装の破壊…()()()。」

『ほう?』

「事情があって方針を変えた。しばらくは味方さ。」

『なるほど。それは安心しました。』

「こっちにも留まる予定だし、骨のある奴も連れてきてやる。」

『それはそれは…楽しみです。』

 

その言葉を最後に、通信は終了した。

 

「雇われてる間は、仲間でいてやるよ。」

 

 

 

 

________________________

 

 

 

数時間前、執務室にて。

 

 

 

 

 

「久しぶりだな、章造(ショウゾウ)のオッサン。」

「ふん…お前も元気そうだな、小僧。」

 

零の前で椅子に座っているのは速水章造。速水香織の父親にして組織の最高司令官だ。

 

「面倒は嫌いだ。目的は何だ?」

「聖遺物兵装の破壊。」

「ほう?出来るとでも?」

「やるさ。」

 

章造の問いに零は自信満々に答える。

 

「我々としては、今あれらを破壊されるのは困る。」

「ふーん、じゃあ取引しようぜ?」

「取引だと?」

「ああ。『聖遺物兵装を破壊しない代わりに、あんた等は幻想郷に手を出さない』。どうだ?」

「…なるほど。構わんよ。」

 

零の出した条件を、章造はあっさりと呑む。

 

「意外だな。反論されるかと思ったが。」

「私はあれには興味はない。それは貴族共が躍起になっていることだ。私は娘さえ無事なら何でも構わんよ。」

「そうかい。」

 

そう言って零は部屋を後にした。

 

 

__________________________

 

 

 

 

「……一旦戻るか。()()()を連れてくるにしても、一度焔達のとこに帰ろう。」

 

そう言いながら零は次元の狭間に入るのであった。

 




どうも皆さんこんにちは、フォーウルムです。
最近色々やりすぎて枯れそうです。いや、どっちかといえば萎れるのほうがいいのかな?
まあいいや。

さて、今回登場した紅 親ですがご存じの方もいるでしょう。最近私がはまっているARMORED COREⅥに登場したキャラ「オーネスト・ブルートゥ」が元ネタです。
まあクズではなく仲間としてですが。
主要キャラですのでお楽しみに。

それでは今回はここまで。
次回をお楽しみに!


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魔人と天才



これは、天才と言われた葛城のちょっとした回想である。





「ふむ……これはこうして…。」

「…何してんだぁ?」

 

俺は目の前で何かをしている男、紅 親に声をかける。

 

「これはこれは。サプライズの用意ですよご友人。」

 

親はこちらを向いてにこりと笑う。

 

ご友人()がお客様を連れてくるというので、お出迎えしようかと。」

「そうかい。難儀だねぇ。」

 

この男がつい最近まで敵だったというのが未だに信じられない。

 

 

 

 

 

 

________________________________

 

 

三年前

 

 

 

 

「相変わらず、馬鹿みてぇな火力してやがるな。」

 

辺り一面を火の海にしながらやってきたのは連合軍の主力と言われている男だ。

帝国内では『灼陽の魔人』などと呼ばれ恐れられている。

 

「おや?もしやもう疲れてしまったのですか?」

 

男の手から炎が溢れ出る。

 

「クッソ!」

 

体を横に勢いよく飛び出させ転がる。

体勢を立て直そうと上体を起こすと熱風が頬を撫でる。

 

「やりすぎ、って言葉を知らねえのか?」

「知っていますとも。ですが()()()()ではやりすぎではないですよ。」

 

頭がおかしいだろ、と勝手に毒づく。

この男は単騎で奇襲を仕掛けこちらの勢力の半分近くを削っている。

確か2万くらいいたはずなんだが……?

 

「これ以上の争いは無意味だと思いませんか?」

「うるせえよ、てか手ぇ先に出したのはてめぇだろうが!」

 

俺は右手で星を描き、左手の指を揃え、手刀をつくる。

 

「《五行水星・水閃華(すいせんか)》!」

 

水を纏った手を勢いよく振りぬく。

繰り出された水は刃を形成し、炎ごと男を切り裂く。

 

「素晴らしいですね、ご友人!」

 

しかし刃は男の炎に相殺される。

 

「《五行術式》。たしか陰陽道から生み出されたもので常人には扱えないものだったかと記憶していますが。」

「博識だな。」

 

俺が使っている《五行術式》は『火』『水』『木』『金』『土』の五つを扱うものだ。

本来はどれか一つに適性があり、後の四つを申し訳程度のレベルで扱えれば上出来なのだが。

 

「《五行土星・石裂破(せきれつは)!」

 

右足を一歩踏み出すとそこから衝撃波が男に向かって伸びる。

そう、俺はすべての要素に適性があり、術式をフルで活用できる。

どうやら俺は数年に一度の天才らしい。

 

「なるほど、面白い技ですね。」

 

残念ながら回避され、男に致命傷は与えられなかった。

 

「今日はこれくらいにして帰ります。また踊りましょう、ご友人。」

「二度と会いたくねぇ。ってか俺はてめぇの友人じゃ……いねえな。」

 

言い返そうとしたが男はすでにそこから消えていた。

 

 

 

________________________________

 

 

 

「ご友人?どうかされましたか?」

「ん?ああ、なんでもねえよ。」

 

随分長い時間が経っていたようで親に心配される。

 

「そうですか?」

「心配ねぇよ。ってかそれなんだ?」

「サプライズですよ、それでは私はこれで。」

 

そう言って親はどこかへ行ってしまった。

 

 

 

 

何事もなければいいが。

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 



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異界からの救援要請




「………なんか久々だな。」

零がやってきたのは狭間のとある場所だ。
辺りには黒い、枯れた気が点在しており方向感覚が狂いそうな雰囲気を醸し出している。
この近くに零が式神達のために作った屋敷がある。辺りの木々は特殊なものであり、外部からの侵入を防ぐためのものである。
近付くためには一定の手順を踏むか、能力で妨害を無効化する必要がある。
これはこのあたりで放し飼いにしている六幻魔と呼ばれる最上位使い魔「アビス・シャドウ・ハウンド」の能力だ。

「さて、ゆっくりいきましょうかね。」

そう思い歩みを進めようとした時だった。

御主人!!今日の夕食は天麩羅蕎麦ですよ!

「な、何ぃ!?」

焔の声が零の耳に届く。

(馬鹿な、ただでさえ最近油もの食べ過ぎと言われているのに!)

そう、零は最近食事を制限されている。
成人病云々ではなく、翼や影貞達に影響が出ないようにである。


最も式神たちはその程度で体調を崩すことは無いし、成人病にもかからないが。


「こんなことしてる場合じゃねえ!」

天麩羅が冷める前にたどり着こうと、零は大地を蹴り飛び立った。














 

 

 

ここは狭間、様々な世界が繋がる場所だ。

そこへ、狐面の男が息せき切って現れた。

「零さんはどこに……!!」

狭間は思ったより複雑なようで、今自身が何処にいるかもわからない。

本来なら簡単に現在地を把握できる彼も頭を悩ませる。

 

「侵入防止なんだろうけどこういう時に困るなぁ……!!」

異界の紡ぎ手は、()を探して走り続ける。

 

走っても走っても、景色は変わらない。

 

「方向感覚狂いそう……。」

 

彼は、敢えて斜め右に向かっている。じゃないと同じ所を回るはめになるからだ。しかし、一向に探し求める人物は見えてこない。

それゆえに、気づかなかった。

それに気づいたとき、背後から何か硬いものを背に突きつけられていた。

 

「動くな。」

「僕です。一度お会いしたと思うのですが。」

 

両手を上げ、冷静に告げる。

 

「……悪いが、俺はあんたとは会ったこと無いな。」

 

そう言って銃を構えながら正面に移動してきたのは、水色の髪と黄緑色の目の青年だった。

 

「あー、すみません。声が似てたので。くらんもちと申します。ゼロさんはいらっしゃいますか?」

「なぜその名前を知っている……?」

「以前こっちの世界に遊びに、もとい戦りに来てたので。」

「…なるほどな。あまりにも馬鹿みたいに走り回ってるからどんなやつかと思ったぞ。」

 

男は銃をおろす。

 

「それで、あなたのご主人はどこですか、凪さん?」

「……なんで俺の名前を知ってるかはこの際聞かないが、あの人は今不在だぞ。」

「くそ……、これじゃ救援が……!」

 

紡ぎ手は苛立たしげに拳を握り締める。

 

「焔さんか翼さんなら、雪華が危ないと言えば分かるのですが……。」

「あの二人は今館にいるはずだ。とりあえず行くか?」

「お願いします。」

「よし。」

 

そう言って男は歩きだした。

 

「あとどれくらいもつか……。」

 

監視員について行きながら、彼はひとりごちた。

 

「着いたぞ。」

 

いつの間にか目の前には巨大な館があった。

 

「お邪魔します。焔さんか翼さん、居ますか!」

「ん?何だい?あいつに何かようか?」

 

そう言ってきたのはオレンジの髪と瞳の女性だった。

 

「凶禍さん、焔さんか翼さんの居場所は!」

 

彼の表情からして、何か切羽詰まった事情があるようだ。

 

「…待て、何でアタシの名前を…?」

「呼んだか?」

 

困惑する凶禍を見下ろすように、二階から焔が顔を出した。

 

「焔さん、零さんはどこに!雪華達が危ない。」

 

彼女を無視し、焔へと問う。

 

「…あ?どういうことだ?」

 

飛び降りてくらんもちの近くに焔が来る。それを聞き付けた他の式神達もやってくる。

 

「今、雪華が元居た軍とあいつらが戦っています。兵力差は絶望的、いくら精鋭揃いでも、あまり長くはもたない。」

「なるほど。要は俺らの救援が欲しい、と?」

「その通りです。故に、貴方達の主たる彼を探していたのですが、不在となると……。」

「…ご主人はもう少しで戻ると思うが……。」

「いいえ、待てない。決壊はもうすぐそこです。どうすれば……。」

「……待ってろ。」

「……?」

 

焔は二階に上がり、窓を開け放つ。

 

「……焔さん?」

 

連絡をするわけでもないその行動を訝しむ。

焔は息をおもいっきり吸い込む。それを見た他の式神達は耳を塞ぐ。

 

「あんたも塞いだ方がいいぜ?」

「え?あ、はい……。」

 

困惑しながらも言われた通りに耳を塞いだ。

 

「御主人!!今日の夕食は天麩羅蕎麦ですよ!」

 

空気を震わせんばかりの声を焔が張り上げる。

すると

 

「それは本当か?!」

 

なんと零がどこからともなく飛んできた。

 

「食い物に釣られて来たぁ!?」

 

異界の紡ぎ手は驚愕する。式神達ってこんな子供っぽい理由で召還するの?

 

「普段は週一だからな!で?今日は何の……」

「嘘です。」

「ウソダソンナコトォ!!」

 

焔の一言で絶望に叩き落とされる零。

 

「ドンドコドーンじゃないんだ……。」

 

オンドゥル語かと思いきや違った。

 

「んで?嘘までついて俺を呼ぶ理由は何だ?」

「お客人ですよ。」

「ん?……なんでここにいるんだ狐面。」

「……あそうだ、雪華達が危ないんです!下手をすれば戦死、あとどのくらい耐えられるか……。」

「あいつが戦死?馬鹿なこと言ってんじゃねえよ。」

「それが馬鹿じゃない。『熾天会』との兵力差は絶望的、精鋭揃いではあれどいつまでもつか……。」

 

紡ぎ手は焦りを隠さずに言う。

 

「よって、神薙 零、及び式神たる10名に、救援を要請します。」

 

やおら頭を下げた。彼の目にあったのは、決して失わないという決意と覚悟。それを遂げるためならどんなことでもする。それが紡ぎ手の矜恃(プライド)だ。

 

「……まあ、あいつが他のやつに負けるとは思わんが…アイツを倒すのは俺だ。」

 

零は式神達を見る。

 

「これからあいつの世界に殴り込みに行く。準備はいいな?」

 

その言葉に彼らは頷いた。

紡ぎ手は安堵の溜息をつく。これで駄目だったら最終手段を使わなければいけないところだったな。

 

「早速行こうか?」

「こちらへどうぞ。」

 

彼は後ろに()を作る。

 

「よし。さあ、行こうか!」

 

零の言葉を合図に、式神たちは道を通り、別の世界に向かったのであった。

 

 

 

続く。

 

 

 

 

 




どうもどうも、フォーウルムでっす。
地憶譚でもですが、こちらでもコラボです!
コラボ先はくらんもちさんです。
毎度毎度お世話になりますm(__)m

しばらくはあっちでのお話になります。
ぜひ見に行ってあげてください。
零達も喜びます。

それでは、今回はこの辺で。



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