東方監視録 (三次元大介)
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始まり
キャラ設定


今更ですみません!



【挿絵表示】
キャラ外見です。月読の都市にいた頃の姿です。それ以降の時代はスーツが和服に、コートが羽織りになっています。流石にこれ以上描く気力が湧かなかったので脳内変換してください。すみません… 下手くそですみません…


 

 

 

プロフィール

 

名前 岡 迅一郎 (おか じんいちろう)

 

種族 偽神(ぎしん)…人間から神へと進化した為、純粋な神では無い

 

年齢 48億歳

 

性別 男

 

能力 解を出す程度の能力

 

   脳が覚醒する事により、この世の全てを理解し、実行できる。

   ほぼ全知全能。覚醒度合によって変わる

 

20%覚醒 身体能力や反射神経の超向上 五感の操作 超演算

 

30%覚醒 この世に存在する力、電気・電波信号の視認、操作

 

40%覚醒 脳波の操作によるマインドコントロール、洗脳

 

50%覚醒 生命を含めた全ての物質操作 未知の物質に対する理解

 

60%覚醒 空間・重力の制御、操作

 

70%〜覚醒 肉体・細胞の変化、制御、物質の融合・変化、

      概念の生成、操作

       

※全て科学的根拠に基づいたものです

 

武器 仕込み杖…神力を当て続け鍛えたアメノとの合作だがどちらも鍛治神では無いので少し作りは甘い。

 

大太刀 …鍛治神、天目一箇神(あめのまひとつのかみ)作。材料は神域で採れるヒヒイロカネ(西洋名オリハルコン)で、全長303cm、刃渡り221cmにも及ぶ巨大な刀。ジンの210cmを誇る高身長を持ってしても巨大といえる。銘は《天斬》。神のような概念的なモノも切ることが可能。

 

 

 

経歴…アメノの重大なミスに巻き込まれた哀れな人間。無理矢理進化させられ、神になった。一回ボコボコにした上、何億年も経っているので一応許してはいる。次に自分の様な犠牲者が出ないよう、神々を見張る監視者に任命された。一部の神々からは恐怖の象徴として見られる事もある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

名前 天之御中主神 通称アメノ

 

種族 神

 

年齢 秘密♪ 138億歳←ちょっと!?byアメノ

 

性別 女

 

能力 全てを創造する程度の能力

 

その名の通り、ありとあらゆるモノを創造できる。物質は勿論の事、生命、概念といったものまで創ることが出来る。初めてジンと出会った頃、しっかりやっていれば僅差で勝てたが油断しすぎたのとジンの能力が思いの外強力だったのもあり、ボコされた。

   

武器 笏…神木から作られたもの。素手でも強いが、これを媒体にする事でより正確に、より強力な弾幕や能力を使える

 

剣《無銘》…無銘ではあるが頑丈さは折り紙付き。基本的に素手だが、ジン真似して剣を使うこともある。腕前は比那名天子以上魂魄妖夢以下

 

経歴…宇宙の誕生と共に生まれた原初神。最も格の高い神とされており崇められている。『あの出来事』を起こした理由をジンには一柱では管理が大変だからと説明したが、実は独りでいるのが寂しかった為である。そしてそれは既に気付かれている。

 

 




技はこの後も追加していく予定です


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覚醒

投稿初めてです。少し文章がおかしいかもしれませんが温かい目で見てもらうと嬉しいです。


 

 

人類はおよそ二億年前に誕生したと言われている。しかし現人類が観測できなかったように、月の民と呼ばれる古代の人類が存在した。

さらにその月の民でさえ観測出来なかった人類がいた。

しかしその人類はすぐに滅びてしまった。これは唯一生き残った男の話である。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

地球はおよそ四十八億年前に生まれた。生命が誕生したのは三十五億年前。その時既に人類は存在した。

 

「ウホッ」

 

…と言っても猿人類だが。

しかし現人類と違い既に火を発見し、石器も扱っていた。とにかく進化が早く、賢かった。

 

「ウホッホ!」

 

「ウホッ」コクリ

 

彼らはいつものように、狩りをして、談笑(?)をして仲睦まじく過ごしていた。

しかしそれは唐突に終わりを告げた。

 

ギィィィン

 

「グギャッッ!?」

 

「グオォォォ!?」

 

突然頭に激痛が走った。

とても口で言い表せられるものでは無かった。

耳鳴りがし、脳を内側から鷲掴みにされ、掻き回されているような感覚に陥った。

そして無限ともいえる膨大な情報が入ってきた。

とても猿人類の脳で処理し切れるものではなかった。

 

「ギャッッッ」バタッ

 

一人、また一人と倒れていく

 

しかしたった一人だけ耐えきった

 

「グオォォォ!」

 

激痛は三日三晩続いた

 

耐えきったソイツは周りを見渡した。

さっきまで一緒にいた仲間、家族、みんな死んでいた。 

 

とりあえず、疲れを少しでも癒そうと川へ向かった、その時川に映ったのは見慣れた自分の顔ではなかった。体毛が全て抜け落ち、髪が生えていた。

 

「は…………?」

 

そして口から出たのは流暢な"言葉"であった。

 

彼は所謂人間へと至ったのだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

天之御中主神(アメノミナカヌシ)

 

 

宇宙を創った造形三神の内の一柱であり、日本神話において最も高位の原初神である。

宇宙そのものであり他の唯一神などと同一視されることもある。

キリスト教では《ゴッド》、イスラム教では《アッラー》、ユダヤ教では《ヤハウェ》など

 

そんな全知全能の神であっても、宇宙を全て同時に監視することは不可能である。よって神は自身の眷属を創ろうとした。

しかしこの神は思ったよりもズボラで、また一から生命を創るのを面倒に思った。

そしてこの結論に至った。

地上から取り立てようと…

 

しかしまだ進化の乏しい猿人類では、自分を補佐するには力不足だと思った。

 

よってこの生物の限界値を突破させ、進化を促そうとした。

 

結果は一つの個体を除いて全滅

 

「生き残ったのは一匹だけか…。まぁ優秀な個体が生まれただけでもよしとしよう」

 

だがこの神どこまでもめんどくさがり屋だった。

 

「能力が上手く使えるようになるまで教育するのは面倒だな…

 自分で頑張ってもらうか…」

 

 

 

 

 

 

 




この神…ッ クソすぎるッッッ!


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鍛錬

連続投稿!


 

 

 

 

一体何が起きた

思い出せるのは、頭に走る激痛と仲間の断末魔

そして自分の知らないはずの情報が頭に入ってくる。

この世の真理、成り立ち、存在、法則…そして神について

 

「ウジウジしていも仕方がない。このままじゃ獣の餌になる」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ギャッッ」ザシュ

 

手頃な獣を狩り、火を起こそうとした。

 

「ッッッ!?」

 

すると頭にまた知らない情報が入ってきた。

熱の仕組み、火が起こる原理など

 

「…この世の全ては原子で成り立っている…。その原子で摩擦を起こし熱を発生させ、酸素に引火させる…」

 

そして徐に指を弾く

 

ボボッッッ

 

指の先から火が出た。なぜ指が燃えないかは知らない。

 

「脳が急発達したせいで、体にも影響が出たのか…?」

 

まぁこの際どうでもいい。

 

新しい目標ができた。この力を使ってあのクソ神に復讐してやる

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

しかし神が何処にいるか分からない。それに会えたとしても奴神にとっては赤子の手を捻るより簡単だろう。

そう脳が教えてくれる。

 

きっと奴を見つけ、強くなるには膨大な時間がかかるだろう。

目標途中で寿命で死ぬなんて笑えたもんじゃない。

 

どうすればいい…

 

「……これだッッ!」

 

生物は老いと共に細胞分裂が衰え、身体が新しい細胞で作られなくなる。そしてそれが限界に来た時死ぬ。

 

ならばそれを続ければ良い

空気中、地中、また他の生物から活力を奪い、細胞運動を活性化させ

老いを防ぐ。

そしてそれの応用…再生だ

傷を受けてもその部位に力を収束させ瞬時に再生する

 

試しに腕を切り落としてみる 

 

……何? 痛くないのかだと? そんなのアレに比べれば毛程でもない

 

ザシュッ ボトッ

 

落ちた腕を拾い、切断面にくっつける。そして力を集める

 

 

「治った… 成功だ」

 

 

この時地上初の不老不死の生物が誕生した

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

あれから一億か二億年くらいたったか

 

…早い?気にするな

 

にしてもこの能力は便利だ。この世の全てが理解できる。一般的に人というのは脳の10%程しか使ってないそうだ。これが完全に覚醒すれば神の領域にも至るという。

 

今では俺は目に見えない情報、脳波が見えるようになり他の生物を操ることができる。重力・空間の仕組みも理解しそれも習得済みだ。

不老不死を手に入れてから思ったことがあった。

仮に腕がくっ付ければ治るとしても、それを跡形もなく吹き飛ばされてしまえば再生は不可能だ。

そこで考えたのが、この世の全てが原子でできているのならば、自分も粒子化でき、失った部位さえ再生できるのではないかと。

 

思い立ったが吉、早速取り組んだ。

 

自分の身体が微小な粒子でできていることを"理解"し、指の先から分解されていくのを意識する。

 

そして腕を切り落とす

すると腕は淡く光り、細かい微粒子となって切断面へ収束していく

 

今度は空気を圧縮させ、腕を跡形もなく吹き飛ばした。

 

すると切断面に微粒子が収束していき、腕を再構成していった

 

「すごいなこれは」

 

最初は仲間を失う要因にもなったこの能力。

忌々しかったが、今では欠かせない能力だ。

 

全知全能に近いこの能力 何かをするために答えを出すことを解を出すというらしい

 

名前は……"解を求める程度の能力"

 

そう考えた瞬間、視界が光に包まれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 




駄文だなぁ…


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遭遇

三話目!


 

 

 

俺は今非常に不機嫌だ。何故かって?それは…

 

「やあやあ、君があの時の固体だね?よく成長したなぁ〜」

 

 

目の前にあのクソ神がいるからだ

 

なぜあの神だと分かったか?

一目見た時から脳が理解したからだ

 

「あれー?無視ー?流石に傷つくなぁ」

 

「あんな事しておいて友好的に接してもらえると思ったか?」

 

「いやーまさかあんな事になるとは思わなかったんだよー」

 

こいつ…悪びれる様子が無いな

 

「まずはあんな事をした理由を教えてもらおうか」

 

すると神はよくぞ聞いてくれた!と言わんばかりに話し始めた

 

「君には私と宇宙の管理をして欲しいんだ!」

 

宇宙の管理?これまたスケールのデカい話だ

 

「それなら別に俺で無くてもいいだろう。神なんだから自分で眷属なり創れるだろう。」

 

俺の疑問はそこだ。俺にわざわざ頼む必要が無い

 

「いやぁ、一からまた生命創るの面倒じゃん?だから元々いる生物を進化させた方が楽だなーって思って」

 

……………は? 

つまりあれか 俺らはこいつがめんどくさがったせいで死んだということか

 

「それで?何か俺に言うことは無いのか?」

 

問題はこいつが反省しているのかだ

 

「言うことー?…あっ」

 

やっと分かったか

 

「これからよろしくね♪」

 

「死ね」 

 

俺は奴に向かって光線を放った。ついさっき考えた、電子を圧縮させ放

つ『電子砲』だ

 

「ッッ!!」

 

「今のを避けるか。腐っても神だな」

 

「へぇ?私とやり合う気かな?」

 

「我儘な神にお灸を据えてやる」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「後悔させてやる!神言『止まれ』」

 

「む…」

 

身体に何か巻きつくような感覚に襲われ、動きが封じられた

 

「あれだけ啖呵をきった割にはあっけないねー?」

 

なるほど これが神の力…凄まじいな

 

だが

 

「フンッ」バリィン

 

「……え?」

 

実体があるのなら解析するのは容易い

 

「ふむ…神の力はこんなものか"あっけないな"」

 

俺は出来るだけ意地悪な顔をつくって嘲笑ってやった

 

「へぇー?その口閉じさせてやる!」

 

「喰らえ!『八尺瓊勾玉』‼︎」

 

俺に向かって無数の金色の弾が向かってくる

 

「ほらほらー。逃げないと風穴空いちゃうよー?」

 

コイツ…完全に調子乗ってるな 好都合だ

 

「問題無い」

 

「え」

 

俺は身体を粒子化して光速で奴の背後は移動してやった

 

「さよならだ」

 

俺は足に中性子を集中させる

そして昔拾ったウラン原子を奴にぶつけ蹴りつける

 

ドゴォォォォン‼︎‼︎‼︎

 

 

原子爆弾ならぬ原子爆蹴りだな

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「うーん………」

 

「目は覚めたか?」

 

「うん…あっ!」 

 

「お前は負けたんだよ。調子に乗らなかったらもう少し良い勝負をした」

 

「うっ…」

 

とりあえずボコボコにしてやったから少しは気は晴れた

 

「…どうして私を殺さなかったんだい?」

 

「確かに最初は殺してやろうと思った」

 

「なら…」

 

「だがお前がこの宇宙の為にやったっというのは嘘では無かったと分かったからな。それにお前を殺せば宇宙の管理は誰がやる?俺は面倒だからやらん」

 

こいつの尻拭いなんてまっぴらごめんだ

 

「それにお前に協力してやらんでもない」

 

「‼︎ほんとう!?」ガバッ

 

「お前じゃまたなんかやらかしそうだからな」

 

奴は「うっ」とうめいた

 

「とりあえずよろしくな」

 

「!よろしくっ!」

 

俺たちは握手を交わした

 

「そういえば自己紹介がまだだったね。私は天之御中主神。君は?」

 

名前…か

 

「俺には名前はない」

 

「え…。じ、じゃあ私が付けてあげよう!」

 

「頼んだ」

 

「えーっと、君は神の欲によって生み出されたものだからそういえば精霊に欲から生まれた全能の奴がいたから、そいつからもじって……苗字は適当でいいや「おい」決めた!」

 

 

「君の名前は『岡 迅一郎』だ!」

 

…悪くない

 

 

そして俺の話は始まる

 




名前の元ネタ分かりましたかね?
西洋の精霊に『ジン』というのがいます。なぜ主人公たちがそんな事を知っているのかは…まぁ察してください

これから文章力上げていきますので何卒…


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規律

四話!


 

 

 

 

 

あれから俺は天之御中主神もといアメノ(めんどくさいからそう呼んでいる)と様々な神を創った

 

俺が増えたとはいえ広大な宇宙を管理するにはまだ少ない

 

だから神を創る 単純だろう?

 

後はアメノみたいに馬鹿をやらかす神が出ないように

規律を作った

 

抜粋すると

 

一条 物事は必ず神議会を通すこと

 

四条 生物の進化、生態系に過度に干渉しないこと

 

七条 神は必ず管理報告を月一ですること

 

など簡単に言えばこんなものだ

神議会とは全ての神が集まり、物事を決定したり審判をする集まりだ

もちろん議長はアメノで私は副議長だ

これを作ってから40億年程たったか

 

最初アメノが調子に乗って一千万程神を創ったが

馬鹿をやった奴があまりにも多かったため二百万ほど消滅させてやった

今は全部で八百万の神が宇宙を管理している

 

俺はアメノの神気にあてられ、神に近いものになったが

人間が神を名乗ると色々問題が起こるので、『監視者』としての役割をもらった。

 

アメノは言うまでもなく最高神。俺は監視者。

監視者と言われてもよく分からないと思うが、

簡単に言えば、他の神がやらかさないように見張る係だ

 

基本的に俺はNo.2だが時によって、アメノと同じ権力を持つこともある

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 神域

 

 

「うー……」

 

「大丈夫か?偶には息抜きしろ」コトッ

 

「ジンっ!大好きー!!」キラキラ

 

「ほれ、追加の書類だ」

 

「チクショーー!!」

 

いまかなり統制が上手くいっている

おそらくこのままいけば一億年程すればこの書類の山は消えるだろう

 

「そういえばこの間新しい人類が生まれたね」

 

「この間……五十万年前だな」

 

「すごいよねー。あんな立派な設備作って、夜も明るいね〜」

 

…おかしい。人類がいくら賢いと言っても五十万年程度でそこまで進化するはずが無い。

 

「アメノ。地球の担当は誰だ」

 

「えっなに急に「いいから早く」…えっと確か天照だったような」

 

「わかった」

 

「ちょ分かったって何がよ」

 

「久々に"消滅"対象がでたかもしれん」

 

「!」

 

「行ってくる」

 

「…分かった。気をつけてね」

 

ブォン

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

地球の神界

 

 

 

ブォン

 

「!」ビクッ

 

「久しぶりだな。天照」

 

「お、お久しぶりで御座います。迅一郎様」

 

「そう畏まるな。ラフにいけラフに」

 

「は、はぁ」

 

畏まったのはあまり好きでない

 

「少し確かめたいことがあってな」

 

「何なりと」

 

さて、本題だ

 

「今地上に降りている主な神は誰だ」

 

「今降りているのは大国主と須佐之男と月読が降りております」

 

大国主に須佐男に月読か…

 

大国主は土地の整備に行くと言って降りたな

須佐男は自由気ままに旅をしているのだろう

月読…奴は人間に甘い節があるからな 我が子のように可愛がって

知恵を与えすぎてしまったのだろう。まぁどこぞの最高神よりはマシだな

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「へぇっくしッッ‼︎」

 

「風邪ですか?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

とりあえず会いに行くか

 

 

「なるほど。助かった。邪魔したな」

 

「い、いえ!お役に立てたのなら!………あのぉよければ今度お茶でも」

 

「む…分かった 空けといてやる」

 

「!」パアァァ

 

「じゃな」

 

「お気をつけて」

 

ブォン

 

 

 

 




所々独自解釈ありますがお願いいたします


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月読

五話!


 

 

 

 

ブォン

 

 

 とりあえず都市の外にやってきた 

いきなり都市内に現れれば騒ぎになる。

今の服装を確認しよう

 

 

 つい一億年前に化学繊維と神域で飼われている蚕の糸で作ったスーツと呼ばれるものにコートとハット、神の使いの皮から作った革靴にサングラス。一応護身用に仕込み杖も。

 

 この都市の発展具合から見てみると、このくらいの服装が一番自然だろう。遠目に見た感じでは恐らく合っている筈だ

 

 しかしなぜサングラスをかけているか、俺は眼から相手に直接情報を送ることができる。しかしそれをしてしまえば相手は脳死してしまう

 

万が一があるのでこうしてやっているのだ

 

 

「まぁ不自然な格好ではないだろう。行くか」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「止まれ!」

 

うーむなぜだろうか 服は普通だと思ったのだが

 

「何故外に出ている!許可証はどうした!」

 

なるほど 止められた理由はそれか。流石に街の仕組みまでは把握していなかった。もういい面倒だ。門番には申し訳ないが能力を使ってしまおう。

 

「いいか『私がここにいるのは不自然でない』」

 

「……あなたがここにいるのは不自然でない…」

 

 

 私が言葉を発すると、門番の目が虚になりオウム返しをする

 

 

「『私を月読のところまで案内する』」

 

「……あなたを月読様のところまで案内する…」

 

 よし、脳波を少し弄らせてもらった。まどろっこしいのは嫌いだ

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…こちらです」

 

「ふむ。ご苦労 戻っていいぞ」

 

門番は虚な目をしながら戻っていった

 

さて久々にお仕置きだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔するぞ」

 

「!」

 

「だ、誰ですか!貴方は!!」

 

「何者だ!」

 

中に入ると銀髪の赤と青の奇抜な格好をした女と、紫色のポニーテールの女、そして金髪の扇子を持った女がいた

 

そして奥で座しているのが月読だろう

昔見た時より成長しているがまだまだ小娘だな

 

「久しぶりだな月読。人類史始まって早速やらかしてくれたな」

 

「きっ、貴様!月読様になんて口を‼︎」

 

紫の女が抜刀の構えをとる

 

「お辞めなさいっっっ‼︎」

 

「「「!?」」」

 

きっと月読は人の前でそんなに激昂したことがないのだろう

三人が非常に驚いている

 

そして月読は俺の前に来て頭を垂れた

 

「月読様!?」

 

「お、お久しぶりで御座います。岡様…」

 

「礼儀は一応なっとるみたいだな。何故私が来たか、分かっているな?」

 

「は、はい。存じております」

 

「あまりな、こういう事されるとな?神議会(こっち)としても困る訳だ」

 

「は、はい」

 

「人類が急激に進化する事の影響が分からなかったお前じゃあるまい?」

 

「も、申し訳あ」

 

「謝罪は聞いてない」

 

 

 ゴウッッッ!!!

 

 

 少し神力を解放して威圧する。…いかんな。昔自分がされた事を思い出すと加減がうまく行かない

 

 

「「「「‼︎」」」」

 

 全くどうしようもねぇ奴らだ。この程度でへこたれるとは

 

 

「あ、あぁ……」

 

「まぁ今回はバカ神みたいに全滅させたわけでもないし、お前はアメノと天照のお気に入りだ。それにこの人類を消すわけにもいかん」

 

「今回は厳重注意に留めておく。だが」

 

「次はないぞ」

 

「り、了解致しました。寛大なる御心 か、感謝致します。」

 

「しばらく地上を見て回るつもりだ。粗相のないように」

 

「はっ。永琳案内して差し上げなさい」

 

「!? 了解しました」

 

ほぉこいつは永琳というのか

 

「こちらへ」

 

「うむ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「そういえば自己紹介がまだだったな。私は岡迅一郎だ」

 

「八意永琳と申します。そして先程いた紫髪の方が綿月依姫、金髪の方が綿月豊姫と言います。どちらも軍事を司る綿月家の娘で御座います。」

 

なるほど 人間にしては中々の強さだと思えばそういうことか

 

「お前は何をしているんだ?」

 

「私は薬師をしております。賢者、などと呼ばれることもあります」

 

賢者か… 知恵比べでもしてみたいな

 

「?!」ゾワァ キョロキョロ

 

「どうかしたか?」

 

「い、いえ何も」

 

それにしても都市か 楽しみだ

 

 

あ アメノに伝言しておくか

 

 

 

 

 




キャラの口調難しい…


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都市

五話!


 

 

 

 

一通り都市を回り切った後、永琳の研究所で休憩をしていた

 

 

「まぁなんだ、最初は怖がらせてしまってすまんかったな」

 

「いえ、気にしておりませんので」(案外良い人?なのかも)

 

すると外から何やら打ち合う音が聞こえてきた

 

「む?この音は」

 

「あぁ、きっと綿月家の道場からでしょう。あそこ出身の軍人は優秀と聞きます」

 

ふむ…剣術か

 

私は別に戦闘狂という訳ででは無いが、そう言ったものには興味がある

 

神域でも数々の神と戦ってきたが、純粋な剣術勝負はあまりした事が無い。人というのは作ったものを披露したがる。私もその内の一人だ

 

生まれて早48億年、48億年で確立させたこの戦闘術を披露する時が遂に来たな

 

「よし、行ってみよう」

 

「そうですかってええぇぇぇぇ?!」

 

「ん?何か問題が?」

 

「あ、いえ…」

 

「何、手加減はするさ。心配するな」

 

(あんな覇気受けてからじゃ、全く安心できない‼︎)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「あ、貴方は…」

 

「やぁ、さっきぶりだな」

 

中に入ると道場着を着た依姫と門下生達がいた

 

「都市の道場に興味を持ってしまってね。来てしまったよ」

 

「は、はぁ」

 

 この小娘 全く不機嫌さが隠しきれてないな。頬の筋肉が痙攣を起こしている。大方ド素人が生意気にも道場破りでもしに来たと感じているのだろう

 

 依姫は深く溜息をついた後、木刀を握り直しこちらに向ける

 

「では、体験してみますか?」

 

 

 態度の変わりようが気になったので、少し脳波を読んでみよう

 

 

(確かにあの覇気は凄かった。だが月読様の話によると所詮同じ人間!大恥をかかせてやる!)

 

「…ではお言葉に甘えて」

 

 …コイツ、余程自信があるのだな。先程ビビリ散らかしていた奴と同じとは思えん。恥をかくのはどちらか、分からせてやろう

 

 私はコートを脱ぎ捨て、立てかけてある木刀を手に取る

 

 

「なぁ、あのオッサン依姫様に挑むのか?」

 

「とんだ命知らずだな」

 

「オイオイオイ、死ぬわアイツ」

 

などと聴こえてくる

 

 後から聞いた話だが、この時同じ場所にいた永琳は生きた心地がしなかったという

 

 

 

 

 

二人共木刀を構えた

 

「さあ、どこからでも来て構いませんよ!」

 

「ではでは、行かせてもらおうか。」

 

 

 先手を譲ってくれるようなので、有効活用させてもらう。重心は低く、瞬発的に一点を踏み込む

 

 縮地ッッ!

 

「!」

 

 その瞬間五メートル程あった間が一気に零距離になった

 

そのまま木刀を振り抜く 依姫は紙一重でなんとかかわすことができた

 

(速い…!全くと言っていいほど見えなかった でも流石にこれ以上は…)

 

「流石にこれは避けるか。じゃあ少しとギア上げるか」

 

「え」

 

 次の瞬間依姫の視界は暗転した

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「うーん…」

 

「あれ、私……」

 

「負けたのよ。あの人にね」

 

「!八意様‼︎ いっ…」

 

「大きな声を出さない。傷に響くわよ」

 

八意様によると肋骨の一本二本がポッキリ折れていたらしい

 

「岡様から謝罪の意をもらったわ。すまなかった、少し気分が悪かったからついって」

 

力の差を思い知らされた 能力を使えばあるいは、と思ったがそれは言い訳であり、相手も剣術しか使っていなかった。対等の決闘だったのだ

いや、相手にとっては決闘ですら無かったのかもしれない

 

「あ、あと」

 

「?」

 

「岡様、少し怒っていらしたわよ。人間だから侮られたことについて」

 

「!?」

 

ばれていたのか?! 読心術でも持っているのだろうか

 

「これは後で謝罪しなければいけませんね…」

 

「まぁ悪い方ではないでしょうし、許してくるとは思うわよ。」

 

「ありがとうございます」

 

 

綿月依姫は敗北を知った

 

 




戦闘描写難しい…


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反省

七話〜


 

 

 

 

やってしまった

流石に骨はやり過ぎた 剣術を見た限りかなりの実力者っぽかったし、"人間だから"という理由で舐められたのでついつい力が入ってしまった。大人気なかったな。私の開心流剣術を見せれずに終わってしまった。

 

 

「後で謝らないとな」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

研究所

 

 

 あの後、永琳からの勧めで研究所の空き部屋の一角を使わせてもらっている。窓から発展した都市を見ながら茶を飲む。割とここでの暮らしも悪くない。

 

 それはそうと、決闘だったとはいえ乙女の骨を数本折ってしまったのだ。見つけたら謝らなければ。

 

 

「む…茶が切れた」

 

 

 予備は何処にあったか。共用の談話室だったか?そう思い、立ち上がって部屋の外に出る。談話室に続く長い廊下を進む事約2分。

 

 

「「あ」」

 

 

 談話室のドアを開けると、ソファに腰掛けている綿月姉妹がいた。少し気まずい雰囲気が流れた

 

 

「依hi」

 

 

「申し訳ありませんでした‼︎」

 

 

えぇ…なんかいきなり謝られた。こちらが先に謝罪しようとしたら目に見えぬ速度でスライディング土下座をかまされた。辞めてくれないか、めっちゃ他の人に見られてるから

 

 

「貴方を同じ人間だという理由で侮ってしまったことについて謝罪したく思います‼︎」

 

「あぁその事か。あれは私も大人気なかった。すまんな。もう痛まないか?」

 

「は、はい!あ、後少しお話が…」

 

 

 ん?話?なんか大体見当はつくが…

 

 

「私を…弟子にして下さい‼︎」

 

 oh…本日2度目のスライディング土下座。これ決闘の時より速いんじゃないか?

 

まぁいいか

 

「…私も仕事があるし、教えれる時は限られるが、それでもいいか?」

 

「は、はい!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 それから神域と都市を行ったり来たりして、仕事をしたり、稽古をつけてやったりした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はぁっ!!」

 

「脇が開きすぎた。もっと剣筋を絞れ」

 

「ぐっ…!はい!!…そこッッ!!」

 

「それは残像だ」

 

「え」

 

「隙あり」

 

 

 バシイィィィイイン!!!

 

 

「あだぁ!?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「月読、今回の事はもういいからしっかり部下の手綱は握っておけよ?」

 

「はい…申し訳有りません…」

 

「じゃあ…ほれ、罰則の書類だ」ドサッッ

 

「何ですかこの量⁉︎摩天楼ですか!?」

 

「アメノがサボっていた分だ。安心しろ、私もやる。だが暫くは寝れるとは思うな?」

 

「そ、そんなぁ…」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 今まで過ごした48億年よりも濃密な気がする。今まではただ神域で回された仕事を淡々とこなすだけだったからな。

 

…これを機に地上で生活するのも悪くないな

 

その事をアメノに話すと

 

「えーーっ!?ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダァ‼︎」

 

 やだ七回言ったな。流石に多すぎる

 

「なんでだ?」

 

「なんでってジンがいないとつまらないじゃん!」

 

 私も好かれたもんだ。だが私はお前以上につまらん生活を送ってたぞ。そんな鬱憤をぶつける意味も兼ねて揶揄ってみる

 

「ん?もしかしてアメノは私のことが好きなのか?」

 

「あっいやっこれは……」

 

 なんだその反応は。揶揄う気で言ったのにこっちが困るじゃないか。それにお前は俺の倍以上生きてても見た目がアウトだ。もしもしポリスメンされてしまう

 

「まぁ一生の別れって訳じゃないんだし、いずれ会えるさ」

 

「うー…じゃあ私も行くっ!」

 

「その書類の山を見てから言え」

 

 ちなみに私のノルマは終わらせた

 

 それが終わってからな 頑張れアメノ

 

「いつかいくからね!」

 

「はいはい。頑張れ頑張れ」 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

しかし完全に地上に降臨すると神域に行くのが面倒になるな

 

 

作るか世界

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まぁこんなものではないだろうか。こんな軽いノリで作ってしまったが、中々の出来だ。

 この世の真理や知識が集まる世界 後に哲学者プラトンが提唱する、その名も『英知界』…とは言っても何もないから真っ白な世界だが

 

 

 だがこの世界なら全てが私の思うままだ。試しに頭の中で都市で見たオフィスをイメージしてみる。

 

 

 ガタッ…ゴトゴトッ……!

 

 

 すると床から生成されるように、家具や機材が揃っていく。数秒もせずに立派な部屋が出来上がった。

 無限に広がる白い世界に、一つの部屋がポツンとあるのは違和感があるが、この際目を瞑ろう。それに様々な情報が入ってきて仕事がやりやすい。見た目はどうだっていいだろう。創って正解だ

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

月読の館

 

 

 それは突然の事だった。

 

 

 

「月へ行く?」

 

「はい。私の力では穢れを浄化しきれないので」

 

 穢れ……妖怪のことか 人の負の感情から生まれ、人に仇なす存在には知恵を持つ大妖怪もいうのもいるらしい。自分達から生まれた存在から逃げる為に飛ぶとは皮肉なものだ

 それに…きっと戦争が起きる

 

 知恵ある妖怪ならわかるはずだが、自信を構成する負の感情を出す人間が月に行ってしまえば自身の存在が危うくなる。それに気づいてコイツは言っているのか

 

 まぁ何が起ころうと私には関係ない。たが突っかかってきたら相手をしてやろう

 

 

 

 

 




前にアメノの性別は無いと言いましたが、話の都合上女性に致しました

感覚としては諏訪子みたいな感じです


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人妖大戦

八話ッッ!


 

 数年前に月読から聞かされていた月移住計画が、とうとう本日決行されるらしい。皆慌ただしく動いており、ロケットに荷物を詰め込んだり住民の数を確認したりと忙しそうだ。

 

 そんな私は関係無いので、いつもの研究室の一角からその様子を眺めている。何故かそれなりに偉い筈の依姫が一緒に居る。何でおるんや。ていうか人の部屋ジロジロ見るな。落ち着かない。お前準備しなくていいんか

 

 

「本当に一緒に行かれないんですか?」

 

 

 そんな私の心情を知らずに依姫が口を開く

 

 

「あぁ、月に行ってもつまらなそうだしな。ていうか行こうと思えばいつでも行けるし」

 

 

 まだ依姫は不満そうだ。

 

 

「教えれる事は全て教えたし、いずれまた会えるさ」

 

 

 子供のようにむくれる依姫が面白いので、つい頭を撫でてしまう。すると依姫は顔を真っ赤にして腕を振り回す

 

 

「なっ!?こっ、子供扱いしないでください!」

 

「おお、怖い怖い。ていうか割と洒落にならん攻撃だから辞めろ」

 

なんてふざけていると

 

「妖怪だぁぁー‼︎」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

辺りに警報が鳴り響く。兵士たちが走る。悲鳴が聞こえる。

妖怪達が襲撃を仕掛けて来た その数およそ十万

あちらもかなり必死なのだろう

 

「ヒャッハー!お前ら人間は妖怪の餌になっとけばいいんだよぉー!」

 

なんかきた

この襲撃には出来るだけ干渉しないつもりだったが、あちらから来るなら話は変わる。

 

「死ねぇグギャッ」スパパッ

 

私は残像という言葉すら生温く感じる速度で仕込み杖を抜刀し

妖怪を三枚に卸してやった

 

「岡様!」

 

「ここは私がどうにかしてやる。お前らはさっさとロケットに乗れ。

置いてかれるぞ」

 

「はっはいぃぃぃ!」

 

 

さてと…

 

「これで思い切りやれるぞ?大妖怪とやら」

 

「フンッ 仲間を逃したつもりか?奴らも貴様と同じ運命を辿らせてやる」

 

「私は上級吸血鬼ハロルド!そんじょそこらの大妖怪と一緒に見るなよ!」

 

ほぉこいつ修行前の依姫くらいはあるか

 

「死ね!血閃!」

 

奴は血を亜音速で放ってきた うん威力精度共に申し分ない

 

 

 

 

 

 

妖怪の中で見ればな

 

 

ザシュッ

 

「は?」

 

ボトッ

 

「ギャアァァァ?!う、腕があぁぁ!」

 

神々と飽きるほど殺し合ってきた私にとっては、欠伸が出るほどだ

 

「さてと」ザッ

 

「グッッ!」

 

「ぶっちゃけお前らの生死なんてどうでもいいんだわ。この戦争についてもな」

 

「なら何故邪魔をする!貴様は神だろう!」

 

ほう 初見で私を神だと分かった奴はほぼいない だが

 

「神に手をあげた時点で貴様の死は決まっている。この世は弱肉強食

強い者が生き残り弱い者は淘汰される。それだけだ」

 

「だが同族の為に最後まで戦ったのは敬意に表する。よって最高の技で貴様を屠る」

 

私は奴に向かって手をかざした

  

   "消滅"

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ふむ、全て飛び立ったか

 

よしよし……ん? あれはもしかしなくとも……

 

核じゃねぇかぁぁぁ!

 

 

ドゴォォォォン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタガタッゴトッ

 

「クソッ 月の野郎共、次会ったら覚えとけよ…」

 

核ぶっ飛ばすとか後に生まれる生命のことなんも考えてねぇな

 

さてと、これからどうしましょうかねぇ 

 

またプラプラするか

 

 

 

 




ちなみに殺された吸血鬼は幽香並です


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諏訪の国

遅くなってすみません


 

 

 

 

月の連中共め 次の生命が生まれるまでに軽く二億年掛かったぞ…

月読とは少しOHANASHI☆しないとな

 

 

さて、今私は街?いや国か その外にいる

さっき入ろうとしたら矢飛ばして来やがった

別に当たっても問題ないが人外認定されるからな

面倒なこった…

 

ていうかこの時代にスーツ姿は普通に不審者だな だからか(今気づいた)

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「うん、こんなもんだろう」

 

さっきの反省を活かし、服は時代に合わせた商人にしておいた

交易に来たと言えばいいだろう。

だがサングラスの代わりとなるものがなかったので仕方なく眼鏡を掛け

複雑に屈折させることにより、防いでいる

お陰で前が見えん まぁ電磁波感知で擬似的には見えるが

 

 

 

「止まれ!諏訪の国へ何の用件だ!」

「私は西の国から来た商人ジンと申します。交易をしたく思い」

「ふむ…分かった。だが荷物の点検はさせてもらおう」

「えぇどうぞ」

 

それにしても諏訪…どっかで聞いたことあるな

 

「少し聞きたい事があるのですが」

「ん?なんだ」

「この国は一体誰が治めているんで?」

「そんな事も知らずに来たのか…。まぁいい、この国は諏訪子様が治める偉大な国である!」

 

やっぱり諏訪子か 生まれたての頃は少々荒れてたからなぁ ちょいと締めてやったが

祟り神になってたりして はっはっは

……少し顔を出してみるか

 

「諏訪子様には何処へ行けば会えるんで?」

「…何故そんな事を聞く」

 

あり?警戒されたか?

 

「いえいえ、かの地母神の御利益にあやかろうとしているだけですよ」

「なるほど。境内はこの大通りを真っ直ぐ行けば着くだろう。見ればわかる」

「へぇ、ありがとうごぜぇやす」

「…変な奴め」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「お?あれか」

 

神社らしきものの前には人だからができており

「諏訪子様ー!」

「ありがたやありがたや…」

「見たか⁉︎今こっち見たぞ!」

 

いい感じに治めれているじゃないか 心配するまでも無かったな

これ以上は野暮だな 帰るか

 

 

「やぁ君!見かけない顔だね?観光かい?」

 

おっと、まさかあっちから絡んでくるとは

 

「残念ながら観光客では無い。私を覚えてないか?」

 

私は眼鏡を外して言う

 

「へ…?」

 

しばらく私の顔を凝視してから大袈裟に飛びずさった

 

「ああああああんたは‼︎」

「覚えていてくれたようで何よりだ」

 

ていうか驚きすぎた そんなにトラウマか?

 

「今は落ち着いている様だな」

「はぁ、お陰様でね……」

「にしても立派な国じゃあ無いか。信仰もよく集まっているな」

「…奪らないでよ」

「そんな事はしないさ。私やアメノのような最高位の神は、信仰が無くとも存在できるからな」

「え何それ初耳なんだけど」

 

聞かれた事なかったからな

高位の神が人の信仰に左右されるようじゃ世界が崩壊するぞ

 

「良い国だ。今度はここに滞在してみるか」

「………えっ」

 

 

 

 

 

 

 




独自設定です。諏訪子は昔荒れていて、ちょっとお仕置きされてます

なので少しジンにトラウマを持っています


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大和の使い

十話ッッ!


 

 

 

 

諏訪の国に来てから数日が経った。今は諏訪子の家に住まわせてもらっている 勿論対価は払っている うーん平和だなぁ

 

「ジーン!」

「おわっと」

 

そんな事を考えていると諏訪子が飛び付いて来た

何とかこの数日間で好感度を多少上げれた…大変だった

娘ができたらこんな感じなのかねぇ

 

「ジン?」

「おっとすまない。考え事をしていた」

「むー…」

 

何を拗ねている にしても何か食いたいなぁ 食べなくても生きれるが

 

「諏訪子様〜、岡様〜、昼食が準備できましたよ〜」

「やりぃ!」ブォン

「あっ」

 

女中の呼ぶ声が聞こえたので食堂まで過程をすっ飛ばす

 

何々今日は鰤大根か うまそうだ

 

「ちょっと待ってよ〜」

 

遅れて諏訪子が入ってくる

 

「最近食事(これ)しか楽しみが無いような気がする」

「完全におじさんだねー」

「やかましい」

 

今頃だがコイツかなり馴れ馴れしいな まぁそっちの方が私は好きだが

 

ーーーー

ーーーーーー

ーーーーーーー

 

「ふぅー食った食った。ご馳走様でした」

「美味しかったぁ〜」

「ふふっ。お粗末様でした」

 

女中が皿を片付けていく

 

「あぁすまない」

「いえいえ私の仕事ですので」

 

なんか飯食ったら眠くなってきたな

 

「諏訪子。ちょっと縁側で寝てくる」

「んー。わかったー」

 

ブオン

 

あーやべ 能力使ったら余計眠くなった 脳の休憩だぁ…zzz

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

  ーーー!

 

 うーむ

 

  ーーン!

 

 あぁん?

 

  ージンッッ‼︎

 

「ヘァっ!?」

「起きて!ジン‼︎」

 

目を覚ますと必死の形相をした諏訪子の顔が見えた

 

「どうした」

「外に…外に大和が!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ーこれより大和は諏訪の国に対し宣戦布告をする」

 

一際でかい鎧の男がそう言う 

 

「いきなり軍引き連れて宣戦布告⁉︎何事にも順序ってもんがあるでしょう!」

「これは決定事項だ。猶予は三日くれてやる。精々楽しませろと主神かだ」

「‼︎」グッ

 

何か引っ掛かるな

 

「おい」ズィ

「何だきさ…!」

 

私は相手を見下ろす形で詰め寄る 私は二m十cmくらいはある

 

「その戦争は其方の神が出るのか?」

「あ、あぁそれがどうした!」

 

ふむなるほど

 

「後もう一つ。お前、人間か?」

「は?グッ!?」

「今解析してみたが、貴様人間では不自然なほどに強いな。筋力が凡そ平均成人男性の10.7倍。霊力包容量も5倍だ。それに神力の残滓も感じる。お前、神兵だな?」

「!」

 

まさか人同士の戦争に神兵を紛れ込ませるとは 恐らく他の奴等は違うと思うが、改造はされていると見たほうがいいな

 

「貴様の神の所へ案内しろ。拒否権は無い」

「ジ、ジン…」

「心配するな。直ぐ行って帰ってくる。因みに他の奴ら。私が行っている間にこの国に何かあれば」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無事では済まないぞ」

 

私は神力を少し放射する

 

「う、おぉぉぉ…」

「ぐぅぁぁあ…」

「……!」ブクブク

 

中には気絶した奴もいたみたいが関係ない

 

「さぁ行くか」

 

 




因みに何故あんなに怒っていたというと、そもそも人体改造と神が人間として戦争をするのは御法度だからです。
ちなみに神兵一人で人間の兵士200人程だと思ってください


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直談判

十一話じゃけぇ


 

 

 

 

ブォン

 

私は神兵の記憶を探って一気に大和の王宮まで侵入した 全く目が痛くなる程無駄に豪華だな。アメノの部屋の方が多少マシだ

 

あれか あの変なしめ縄女

 

 

「ッ⁉︎何者だッ!」

 

こいつも神兵か

 

「おい!聞いているの「黙れ」ゴハッ!」

 

突っ込んで来たので裏拳を喰らわしてやる

 

「な⁉︎兵隊長級が⁉︎」

「おい」

「!貴様何者だっ‼︎」

 

この姿では分からんか 私は背後に光背(仏や神が纏う光の輪)を出現させ、神力を放つ

 

「あ、あぁ…!この神力は……」

「"我"は監視者、神を裁く者なり。言葉には気をつけよ」

 

奴は頭を垂れた

 

「神奈子様⁉︎」

「聞きたいことは色々あるが。一つずついこう」

「はい…」

「まず、今回の戦争について貴様直々に出るそうだな」

「仰る通りです」

 

ここは問題ない ここまでは唯の神同士の戦争であるからな

 

「だが神同士で戦争する際は最低一ヶ月前には通告をせよと法典に書いた筈だが」

「それは…」

「完全な不意打ちだな」

「申し訳有りません…」

 

問題は次だ

 

「では二つ目。なぜ兵士の中に神界の者が紛れている。他の人間の兵士も改造したな」

「⁉︎」

 

これは『神王法典』第四条に生命の進化や構造に過度に干渉する事を禁じた筈だ。

これはアメノが最初にやった禁忌でもある為、最悪消滅もあり得る

 

「お、お待ち下さい‼︎私はそのような事は存じておりません‼︎」

 

何だ 悪足掻きか?

 

「私は戦神であります!戦いに誇りを持ち、兵士達を愛しております‼︎我が子を甚振るような真似はしませぬ‼︎」

「先程不意打ちをしようとした者とは思えない発言だな」

「うっ」

 

だがその言葉に嘘は無いな 嘘をついた様子も無い

あとさっきから動揺した脳波を放っている奴がいるな

 

「そこのお前、止まれ」

「!な、何でございましょう?」

「貴様は八坂神奈子の眷属神か?」

「は、はい」

「貴様だな?神兵を招き入れたのは」

「⁉︎」

 

大体目星は付いていたが、一応確認はしておかないとな

 

「トガミ⁉︎お前なのか……?」

 

トガミ…それなりの軍神だったか

 

「何故だ…!何故こんな事を‼︎」

「……何故か、だと? フハハハハ!アハハハハッ!」

「何が可笑しい!」

「もう古いんだよ!その法典とかなんとかって」

「私が頂点に立ち!全てを作り替える!その為の足掛かりだ

 いずれ貴様や監視者、最高神でさえ殺せるように力を溜め続けて来た!」 

 

なるほど そういう魂胆か

 

「計画は狂ったが、今此処で貴様を消せばほぼ野望は達成されたも同然!死ねぇ!監視者ぁ!」

 

トガミの姿が禍々しい容貌に変わっていく 

かの軍神の見る影もないな

 

「『天災龍』厄砲!」

 

そんじょそこらの神なら消し飛ぶくらいのエネルギー砲が放たれる

 

「八坂神奈子。防御壁を張っておけ。全力でな」

「へ?あっはい!」

 

久々に楽しめそうだ

 

 

 

 

 

 

 




キリ悪くてすみません


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厄神

上がらない文章力… どうしよう


 

 

 

 

「余所見とは余裕だなぁ⁉︎」

 

禍々しいエネルギー砲が私に向かってくる

 

「岡様!」

「心配するな」

 

私は空間からいつぞやの仕込み杖を取り出し構える

仕込み杖は直刀である為、普通の刀の様に腰で切る事ができない

よって私は杖を左肩に添える独特な構えを取る

 

そして鍔を切り重力に任せて抜く 肩を体ごと捻り一閃

切られたエネルギー砲は真っ二つになり、そのまま霧散する

 

「‼︎ 霊力を切るなんて馬鹿げてるねぇ…」

「何、昔からこういうのは得意なんだ」

 

これぞ都市で見せる事の叶わなかった剣術

恐らくこの世で最も古い武術 "開心流"

40億年もかけて確立した甲斐があったな

 

「もう終わりか?」

「‼︎抜かせ!」

 

奴は恐ろしい速度で踏み込み私の懐まで入ってきた

そして生やした凶悪な爪で切り裂こうとする

 

「チィッッ!」

「おっと…」

 

中々に速いな 油断してたら服が裂けるところだった

 

 

…都市にいた時には否定したが、どうやら私は戦闘狂(バトルジャンキー)らしい

今こうして戦っているとういうのに高揚感が抑え切れん

"消滅"を使えば一瞬で終わるだろうが、それでは面白く無い

丁度いい機会だ 偶には近接戦闘もやっておきたい

 

「…っ!舐めてんじゃねぇぞ!」

「おっ?」

 

しまった 態度に出ていたか

怒らせてしまった様だ

 

「ウオォォォォッ!」

「フン…」

 

段々奴が怒りに呑まれ、攻撃がワンパターンになってきたな

ただ奴が振るう爪を刀で弾く、今度は上からの大上段 

それも飽きた そしてまた弾く

つまらん そろそろ終わらせるか 八坂神奈子(コイツ)も限界みたいだしな

 

「悪いが、そろそろ終わらせて貰おう」

「あぁっ!?防戦一方の奴が何言ってんだ!」

 

私は納刀し、構える 

 

「何だ?降参か?」

「今終わらせてやると言ったばかりだろう。頭の悪い奴め」

「…死ね」

 

よし 飛び掛かってきたな

刀にある力を纏わせる

 

「ふッッッ」

「があっ!?」

 

トガミの体に一本の切り傷がついた

 

「何だぁ?脅しておいてこんなものか?」

 

私は黙って納刀する

 

スーーー チンッ

 

すると

 

「な、なんだこれは!」

 

奴の体が傷を中心に分解されていく

 

「これは…消滅かッッ!」

「これは"消滅"の下位互換"分解"だ。」

「ぶ…分解だと……?消滅じゃないのか…⁉︎」

「"消滅"は概念、存在そのものを消すことが出来る。掛かれば転生も出来ん。

しかしお前に掛けた"分解"は相手を粒子級にまで破壊するものだ」

「普通の生物に掛ければ即死だが、神は分解された程度では死なん。

これがどういう意味か分かるか?」

 

するとトガミは顔を真っ青にし

 

「ま、まさか!」

「察しの良い奴だ。つまるところ、貴様は生きる事も出来ず死ぬ事も出来ない無限地獄に堕ちる訳だ」

「よ、よせぇぇぇ!やめろぉぉお⁉︎」

「もう遅い」

 

もう殆ど消えかかっている

 

「い、いやだ!誰かあぁぁぁ……」

 

そう言って奴は目の前から姿を消した

任務完了だ さて神奈子は…

 

「ブクブク…ビクンッ」

 

…耐えれんかったか 仕方ない、待つとしよう

 



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話し合い

タグ少し変更しました!
遅れてすみません…


 

 

 

 

取り敢えず神奈子を起こさねば

 

「おーい」

「うーん…」

「起きろーー」

「うぅ……」

「朝だぞーーー」

「ぐぅぅ…」

 

コイツ…

 

「起きろっつってんだろうがッ‼︎さっさとしやがれッッ!」

「ハ、ハイィィィ!!」

 

やっと話ができる 大丈夫かこいつ 気が遠くなりそうだ

 

「えっあっ、おっ岡様⁉︎」

「は〜い、岡さんですよ〜」

「あの、私ってもしかして…」

「気絶してましたね〜。そりゃまぁあっさりと」

「うぅ…」

 

煽るのはこれくらいにしておこう

 

「そろそろ本題に入ろう」

「はい…」

「きっと貴様は今回の件で神議会で取り上げられるだろう」

「……」

「現象界への過度な干渉、あまつさえ子である人類の改造。直接干渉していないとはいえ、眷属神の監督不行届としてある程度何かはあるだろう。」

「も、申し訳」

「私が報告すればな」

「………え?」

 

 

監督不行届なんて言ったが、ぶっちゃけどうでもいい

そこら辺はあまり厳しく厳罰化されてないし、実行犯は別。

後で分かったが、トガミの奴、周りの神にかなり根回しをしていたようだ。中には神議会の理事を請け負うような高位の神までいた。ここまで綿密に計画が練られていたのなら、どの神でも気付けやしないだろう。腐敗した神に裁く権利など無い。また議会を改正しなければな。

 

「まぁその代わりと言っちゃあ何だが、お前この戦争を諦めるつもりは無いんだな?」

「…はい。民の為、他の眷属神の為、国の安寧と信仰が必要なのです。」

「ならば今回の戦争は総力戦では無く一騎討ちで決めろ。本当に民の事を想っているなら」

 

さぁどう出る?戦神

 

「…了解致しました。民の為と言いながら、その民を犠牲にしようとした。愚かでした…。今回の件、感謝致します」

「うむ、良き良き」

「では、一ヶ月後に会おう」

「はっ」

 

ブオン

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

ブォン

 

「うわぁ!?」

「おっと」

 

転移した目の前に諏訪子がいた。他の軍は帰ったみたいだな

 

ダキッ

「お?」

「バカバカバカ!何が『直ぐ帰る』さ!心配したんだぞ!」

 

あ、そういやもう半日経ってたな

 

「あぁ…すまんすまん」ナデナデ

「もっと…」

 

ハハッ 困ったな 報告ができないじゃないか

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「とまぁこう言った感じで一騎討ちで決める事になった。国を守る為だ。お前も腹を括れ」

「うん…でも勝てるのかな……」

「アホタレ」

「あいたっ」

 

国の主神がそんなでどうする

 

「やるからには勝つんだよ」

「でも相手は戦神だよ?あっちの方が有利だと思うんだけど」

「確かにお前と奴では能力の相性が悪い。それにお前には経験が圧倒的に足りない。幾つもの戦場を制してきた奴にとってはお前はカモだろう」

「そんな…」

 

諏訪子の能力は大地を創造し操るもの。土や石、植物など多種多様なものを創造でき、非常に汎用性が高い。

だが八坂神奈子は天候を操る。諏訪子の大地から生成した武器や物体は使い物にならなくなるだろう。そのアドバンテージを埋めるには…

 

 

「特訓だ」

「へ?」

 

 

 

 

 

 




ようやく諏訪大戦が終わりそうです


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特訓

展開早いなぁ


 

 

 

 

「でぇりぁぁぁあ!」

「甘い」

 

生成した武器を持ち、素人同然の動きで突っ込んでくる諏訪子 

それを少し体を捻って避ける ついでに足を引っ掛けてやる

 

「へぶっ!?」

「お前の課題は近接戦闘だ。そこをどうにかしないと相手は徹底的にそこを突いてくるぞ」

「言われずとも!」

「お?じゃあもう少し段階上げても良いな?」

「え?それはちょっと…ってぎゃああぁぁぁあ!?」

 

道のりは長い

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一騎討ちの日まで残り三日だ

 

「ふっ!」

「そこぉ!」

 

今では手加減しているとはいえ、かなり私の動きを見切れるようになっている 若いのは成長が早くて良いね(by40億超えのおっさん)

そして私な諏訪子の拳を掴む

 

「なっ、…また駄目だったかぁ〜」

「いやいや、素晴らしい成長速度だ。他の神じゃあこうはいかない」

「という事で、これより最終試験を行う」

「最終試験?」

「私と能力を使った模擬戦だ」

「えぇっ。それって勝ち目あるの?」

「安心しろ。私は使わん」

「……!」ピクッ

 

お?反応したな

 

「それは流石に舐めすぎじゃない?」

「なら、使わせてみろ。成長したお前が見たい」

「望むところだ!」

 

 

 

 

 

 

「おっ始める前に…」

 

私は合掌して直径20キロ程を結界で包む

 

「さて、準備は整った。始めようか」

「後悔しないでよ!せりゃあぁ!」

 

諏訪子が能力を使い地割れを起こす。私がバランスを崩した所を狙い、地の底から無数の針が飛び出して来た

 

「むうんっ!」

 

だが私は手首のスナップを利かせる事ににより、仕込み杖で全ての針を切っていく

 

「どうした!こんなものか⁉︎」

「そんなわけ…あるかあぁ!」

 

すると先程切った大地の針が爆発し、煙幕のようになる

目眩しのつもりか…?だがそんな物が効果が無いのは奴も承知の筈…

だとすると

 

「何かを狙っている、か…」

 

すると全方位から光弾が飛び出してくる

 

「似たような事を…!」

 

その時ある方向から一皮大きな気配を感じた

 

「そこかっ!」

 

その気配に向かって斬撃を飛ばす

 

が、そこに居たのは膨大な神力を纏った土人形だった

「これは…? まさかっ!」

「ミシャグシ様‼︎」

 

危機を感じ取った私は急いで飛び退く。するとさっきまでいた地面が割れ、巨大な白蛇に乗った諏訪子が現れた

能力無しで空中では自由がきかん。まずい

 

「いっけえぇぇぇ!」

「キシャアァァァッッ!」

「舐めるなぁ!」

 

私は無理矢理体を捻って剣を突き出す

 

 

 

 

 

 

 

 

ビシィッッッ

 

 

スタッ ズシャアァァ

私が着地してから遅れて大蛇と諏訪子が落ちてくる

 

「うぅ……」

「ふむ…」

 

なんとか勝てたが

 

ピシピシッ バリンッ

 

剣が半ばで折れてしまった

 

「合格だ。諏訪子」

 

 




感想お待ちしております!


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決着

投稿頻度遅くてすみません


 

 

 

 

 

決戦当日

 

 

八坂神奈子が数人の部下を引き連れ、国へやって来た

相手は準備万端だな

 

「大丈夫か、怖気付いたか?」

「まさか、滾ってきたよ…!」

 

こっちもだったな

取り敢えず安心だ

 

「さぁ行ってこい」

「うん、行ってきます」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「国を明け渡す準備は終わったかい?」

「その口を閉じさせてやる」

 

 

二人共凄い気迫だねぇ、流石地母神と戦神といったところか

 

「それでは、合図を出すまで動くなよ?……………始めッッ‼︎」

 

その瞬間二人の姿が掻き消える

 

ガキィッッ! ドゴォォン!

 

音がする度に空間が揺れる

……強めに結界張っといて良かった…いつもの適当なやつじゃ、木っ端微塵になっていただろう

 

「はあぁぁぁあ!」

「せりゃあぁぁあ‼︎」

 

諏訪子が生成した武器はすぐさま神奈子の能力により使い物にならなくなっているが、それを囮又は使い捨てにする等して相手を翻弄していた。今のところ五分五分といったところだろう。

 

こんな時に何を考えているのか、私も対等な相手と死闘を投じてみたい。今のところ私と同等なのはアメノしかいない。能力無しの格闘戦ならば、須佐男(スサノオ)かオーディンくらいだろう。

アメノはそう簡単に神域を離れられんからなぁ。私は執行官だから割と自由に行動できるが

 

と言ってる間にもう決着がつきそうだ

 

「くっ!」

「はぁっ!」

 

諏訪子が少し押され気味だな。

 

「次でハァ、決めるぞ…」

「ハァハァ、望む、ところ…!」

 

「これで、終わりだあぁ!」

「やあぁぁぁぁあ!」

 

互いに拳を振るい、大きな音と光が結界を満たした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

立っていたのは神奈子だった。諏訪子も起き上がる気配が無い。

 

 

「そこまでッッ!勝者、八坂神奈子ッッ!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

うぅ…ここは…私の家……?

 

 

 

「うぅ……あれ私…」

「む、起きたか」

「そっか…わたし負けたんだ……」

「お前はよくやったよ」

「う、うわあぁぁぁぁぁん!!」

 

戦いの記憶が蘇る

 

「あれだけ特訓にっ、付き合ってくれたのに、ヒグッごめんなさい…勝ちたかったよ…」

「何も謝る必要は無い。今考えるべき事はこれからの国のことだ。お前はその小さな体を張って国の為に戦った。負けたとしても恥ずることでは無い。」

「ゔん…」

「さぁ、事後処理といこうか」

 

いつまでも泣いてちゃいけない。国の為に出来る事をしよう

 

 

 

部屋に入ると神奈子がいた ジンがこえを掛ける

 

 

「待たせたな」

「!いえ、滅相も御座いません。それ程待っておりません」

「そうか、なら早速会議を始めよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

会議の結果、諏訪の国は大和に下り八坂神奈子を祭神とする事が決まった。しかし突然神が変わって崇めろと言っても民は納得しないだろう。

そこで諏訪子と神奈子の二柱を祭神とし、表向きは神奈子が裏方では諏訪子が治めることにより、民の反感を抑える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、私はそろそろ行くとする。」

「…別にここで暮らしても良いんだよ?態々旅なんてしなくても」

「私にはこの星を旅し、監視する義務がある。ずっと此処にいる事は出来ん。」

「そっか…。でももう会えない訳じゃないんでしょ?」

「あぁ、また機会があれば会おう。諏訪子、神奈子、体には気をつけろよ」

「む〜〜、また子供扱いして〜」

「岡様もお元気で。ていうかお前言葉遣いには気を付けろ!相手を誰だと思っている!」

「私は良いの〜」

「おまえ…ピクピク」

「…その様子だと大丈夫そうだな」

 

 

 

 

 

さて次は何処へ行こうか

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

プルルルルルル

 

お?アメノからだ。因みにこれは私が開発した通信器具だ。持ち運びが便利だから『携帯』と読んでいる。これを渡しているのはアメノだけだ

 

「どうした」

『あ、ジン〜?ちょ〜〜〜〜〜〜〜っと問題が起きてねー?』

「…ハァお前のちょっとは全然ちょっとじゃないからな、何だ?」

『えっとね?出来れば怒らないで聞いて欲しいんだけど…』

「話の内容による」

『それ絶対怒るやつじゃん⁉︎ 』

「いいから用件をさっさと言え」

『うん…えっとね?私の眷属神の一柱がね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間とデキちゃった。テヘッ☆』

 

「……………はあぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」

 

 




いつもより少し長く(?)なりました


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神の子

不定期更新タグ付けました


 

 

 

 

 

 

あの後神域に凸ってアメノに詳しい話を聞いた(正座)

話によると地上に正体を隠し降臨していた神の一柱がある人間と恋に落ちたらしい。無駄にロマンチックだなコンチクショウ

 

…いかんいかん落ち着け私

そして産まれた子供は既にかなり成長しているらしい

名前を若御毛沼、人々からは神武天皇と呼ばれているらしい

幼い時から類い稀なる才能を発揮し、神の子と呼ばれる事もあるそうな。…比喩表現無しで神の子なのだから笑えない

因みに親の神の方は、子を産む際に力も譲渡してしまった為、神では無くなってしまったとのこと。まぁ自業自得だな。本人は愛する人と天命を全うできると喜んでいたが。こちらの気も知らずに抜け抜けと。しばき倒したろか

 

 

 

 

それで私がその天皇の監視をする事になったのだ。全くあのアホ神は面倒事しか運んでこないな。…考えていても仕方ない、監視を続けるとしよう

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

六百年程経っただろうか

 

問題発生だ。これまでに幾つもの天皇を見てきたが今回は異常だ。なんと能力持ちの天皇が産まれた。正確にはまだ天皇ではないが。

これまでの天皇より圧倒的に霊力が多い。そりゃもうずば抜けて。

困ったな。神の力を唯の人間が用途も分からんまま使い回されるのは少々危険だ。これは動く必要がありそうだな。

 

「ハァ…クソめんどくせぇ」

 

何?キャラ崩壊だと?タグはしっかりつけてるだろうが(メタ)

今気づいたが自分の一人称が安定しないな。俺だったり私だったり、まぁ気分でいこう

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「神子様。事は上手く運び、物部守屋は討ち取られ、物部の一族は破滅の一方を辿っております」

「報告ありがとうございます、布都。下がっても良いですよ」

「はっ」

 

やっとだ。やっと国が安定してきた。物部も蘇我も今回の戦争で消耗し、確立した実権が漸く天皇に返ってくる。これからだ。これからまたすべて始まるのだ。

 

「あら、豊聡耳様。随分とご機嫌なようで」

 

壁に穴が開き彼女を知らない者なら惚れてしまうような美女が現れた

 

「…あぁ青蛾か。それはそうさ。やっと私がこの国を主導出来るんだ。今までは名目上は天皇に主権はあれど、実質国を動かしていたのは蘇我と物部だ。協力してくれた布都と屠自古には感謝しかないさ」

「実権を取り戻せて嬉しいのは分かりますが、道教の修行を疎かにしてはいけませんよ?」

「それは重々承知している。私に足りないのは時間だ。仙人になるのは必須だからね」

 

仏教を信仰しておきながら中国宗教である道教を学ぶこの男、いや性別を偽っている天皇、豊聡耳神子。後の聖徳太子である。

 

「仙人になる事によって不老不死を得る。何ともそそられるじゃないか」

「あぁ、全くだ」

「えぇそうでございますね…っ⁉︎」

「だっ誰だ⁉︎」

 

その男は突然現れた

あの飄々とした態度を崩さない青蛾ですら本気で驚いていた

私も全く油断していなかったにも関わらず、この男は部屋の中にいる

 

「やぁ、私の名前は岡迅一郎。皆にはジンと呼ばれている。まぁ好きに呼んでくれたまえ」

 

 




キリ悪くてすみません


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神と神の子

少し投稿頻度遅くなりそうです


 

 

 

 

 

なんなんだこの男は。人間の形をとってはいるが、感じられる気配は青蛾の様な仙人でも無い。どちらかと言えば神のような気さえする。

それに『ジン』…? 何かの書物で見た事が…

 

「考え事は終わったか?」

「!」

 

まずは集中しなければ。素性が分からない以上、警戒するに越したことは無い。

 

 

「何処の誰かは存じ上げませんが、ご退場頂きますわ」

 

するといつの間にか簪を抜いた青蛾が男の後ろに立ち、真下に穴を開けた。

 

「!?」

「おっ?」

 

男はそのまま落ちて見えなくなってしまった。

 

「青蛾っ!」

「心配されずとも、恐らくあの男は生きておりますわ。まぁ出てこれる事は無いでしょうが」

「一つ正解で一つ不正解だ」

 

 

………え?

 

 

「そんなに警戒しなくても良い。別にお前らをどうこうしようって話じゃ無いんだから」

「ただ、その態度は少々頂けないな」

 

すると男から霊力とも呪力とも違う、神力が発せられた。圧倒的なその存在に私も青蛾も息をするのも忘れてしまった。

 

「太子様っ‼︎ご無事ですか⁉︎」

「てめぇ!太子様から離れろっ!」

 

激しく障子が開けられ、弓を構えた布都と剣を携えた屠自古が入ってきた。屠自古が剣を振りかぶる。

 

だが

 

「落ち着きたまえ」

「!危ないっ!」

 

そう言って男の指から光の線が飛び出し、屠自古の頭を貫こうとした。咄嗟に布都が突き飛ばしたが、代わりに貫かれてしまった。

そのまま力無く倒れてしまった。

 

「ッッッ!布都ッッ!」

「布都!てめぇ!」

「落ち着けと言っとるだろうに。心配せずとも眠らしただけだ。肉体的損傷は無い」

 

その言葉を聞き、少し冷静にはなれた。

 

「私が用があるのはお前だ。豊聡耳神子」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

あの後恐らく数分もすれば目を覚ますだろうと言われ、布都を寝室に移し屠自古と青蛾に診てもらっている。

そして今私はジンと名乗った男と同じ部屋にいる

 

「…私に話とは」

「警戒されると話が進みづらいのだが。まぁいい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様、その能力をどう使う?」

「!?」

 

今日何度目の驚愕か分からない。何故私の能力の事を?この男はなんなんだ?様々な疑問が駆け巡る。私は動揺しつつも平静を保って

 

「どう…とは質問の意味が図りかねますが」

「持っている事については否定しないんだな。天皇家の産まれのお前なら知っているだろうが、天皇とは紛れも無く神の末裔である。」

「それ故に普通の人間とは常軌を逸した力を持った人間が生まれる。私はその力があまり良くない方面に使われる事を憂いている。」

 

どこまで知っているんだ?この男は

 

「私は物心ついた時からその事についてはよく考えています。世の為国の為、決して私情で使う事はありません。」

「…そしてそちらの質問に答えたのですから、こちらからも宜しいですか?」

「あぁ良いとも」

 

よし、これで少しは男について知れる

 

「先程の神力、貴方は人間のように見えますが神なのですか?」

「…監視者」

「はい?」

 

今なんと? 『ジン』、『神力』、そして『監視者』…まさか

昔読んだ古事記に同じ名前があるのを思い出した。天之御中主神と共に世界を創り、万物の支配者である神をさらに見張る存在

 

「その様子だと私が誰か理解したか?」

 

私はとんでもない大物に出くわしてしまったようだ

 




ご愛読ありがとうございます


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尸解仙

続けて投稿しました


 

 

 

 

 

神子(豊聡耳は長いので省略)の奴が能力を悪用しない事はよく分かった。普通の能力持ちなら態々こんな事はしないが、神の不祥事で起きた事だからな。対処せざるおえん

 

暫くここいらに滞在する事になったので、都にある空き家を借りて監視する事にした。だがちょくちょく仕事が舞い込んで来る事もあり、偶に英知界に戻ったりして仕事もする。やはり神域と地上の中継地点であるからよく情報が入って来る。

地上の監視や他の神々からの報告を纏め上げるだけで無く、時間の流れ・空間の歪み・星々の公転等見ることが多すぎる

 

 

そうだ宇宙図を作ろう。これなら即座にこれらの事が起きた時対処できる。仕事がまた一つ減ったな

地上の監視を再開しよう

 

ブォン

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ブォン

 

「おひさ〜」

「うわっ!」

「驚かせるで無い!というか何処から来たんじゃ⁉︎」

 

仲の良いコンビがいる部屋に来た モラルだと?そんなものはこの時代に無い ていうかいつも一緒にいるな。デキてるんじゃあないか?

 

「…今何か失礼な事を考えなかったか?」

「さぁ?なんのことやら」

「…まぁ良い。今日は何用だ?」

「別に?暇だったから来ただけさ」

「お主、何処ぞの邪仙の様な事を言うようになったな」

 

邪仙…青蛾のことか 人の子供拉致ってザシュッとしちゃう系娘々か

 

「それより質が悪いかもな」

「口を慎め」

「すみません冗談です地獄行きは勘弁を」

 

あれと一緒は癪だな 私は神をひっ捕まえてザシュッとはするが、青蛾程では無い

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「!」ゾワァ キョロキョロ

「月読様?どうかされましたか?」

「い、いえ別に…」

「?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「それにしてもまさか貴方が伝承にある『監視者』とな?元人間とは信じられぬ」

「私もそれは思った。あんた尸解仙じゃないんだろ?どうやって不老不死になったんだ?」

「……話せば長くなるが、聞きたいか?」

「…!や、やっぱりいい「我は聞きたいぞ!」っておい布都!」

「ハッハッハ。別に減るもんでは無いし、良いだろう。」

 

 

私は『あの時』の事を全て話した。時々二人の顔が青褪めたり仰天していたのが面白かったな。

 

 

 

「…そんな事が」

「よく耐えれたな…」

「人一倍『生』に対する欲求が強かったんだろう。自分でもびっくりだ」

「その神の事を恨んだりしないのか?」

「もう私の中では復讐は済んだし、奴は今仕事という名の無限地獄に追われている。娯楽を愛する神にとっては苦痛だろう」

 

 

さてとではそろそろ…

 

「私の話は面白かったか?」

「…?誰に聞いてるんだ?」

 

「やはり気づかれていましたか」

「神子様っ!?」

 

大方完全なる不老不死について興味があったのだろう。尸解仙による不老不死は、死神に一生追われる羽目になるからな

 

「今言った通り、私もアメノと同じことは出来るがそれはそもそも禁忌とされている上、お勧めはできない。尸解仙になるより危険度は高い」

「分かっています。手を出してはいけない領域、という事ですか」

 

 

あぁ、仮にやったとしてコイツらでは十中八九死ぬだろうな

あれには生に対する執着が必要だ。死に対して恐怖するだけでは成り得ない。

 

 

「どうしてもと言うなら仙人にはなれんが廃人にならなれるぞ」

「はは、遠慮しておきます」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

まず初めに布都が術を行使し、先に眠りについた。敬愛する者の為とはいえ、奴も中々イカれているな。

遺体が腐敗しないのを確認した後、神子が尸解仙になる為に丹薬を飲み始め、体調を崩すようになった。

これは失敗した訳では無く、必要な過程なのだという。

 

  シャリ…シャリ…

 

「林檎剥けたぞ。いるか?」

「いりません。絶対分かってて言いましたよね?」

「体調不良者は何も食えなくて大変だな。シャリッ うん甘いな」

「うぅ…そんな殺生な…」

 

HAHAHA、おちょくるのはこの程度にしておこう。

 

「そういや大体幾らくらい眠るんだ?」

「青蛾によると千年、もしかしたらもっとかかるかも知れないそうですね」

「何だそんなものか」

「時間感覚狂ってません?」

 

そりゃ何年生きてると思ってんだ こちとらいい歳したジジイだぞ

…と言っとる間に神子の息が乱れてきた。時間か

 

「そろそろか」

「えぇ…もう手足の感覚がありません…。死ぬ瞬間って本当に自分で分かるものなのですね」

「まぁ私はそんな物感じんがね」

「はは、貴方らしい…。また会えますかね…」

「永遠の別れじゃあ無い。たった千年待って見せよう」

「告白ですか?」

「何だ、貰って欲しいのか?」

「ふふ、冗談です。…それでは…また…」

 

眠ったか

 

「青娥、しっかり守ってやれよ。」

「やはり気づいていましたか。言われずとも、私の役目ですもの」

「そうか、では頼んだ。あと気配の消し方がお粗末だ。修行し直せ」

「あらあら手厳しいですわ」

 

「じゃあなまた千年後に会おう」

「御武運をお祈りしておりますわ」

「邪仙からの激励か。不吉だな」

 

失礼ですわ〜と言うのを無視して、神霊廟を後にする

次は何処へ行こうか

 

 




初めて二千文字いった…!


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スキマ妖怪

十九話だ…!


 

 

 

 

暫く地上では問題も起こらず、私も自由気ままに旅を続けた。

しかし次の町に着く前に暗くなってきたので、近くの山で野宿をする事にした。

 

 パチパチッ

 

焚き火が弾けた。先程川で獲った川魚も焼けた頃合いだろう。

どれどれ…あっづ!! 少し火傷したが、問題ない

 

「やはり外で食う飯は格別だな」

 

 

 

ふぅ…旨かった。食わなくても生きれるとはいえ、食事をすれば生きている実感を感じれる。

さてと、ではそろそろ…

 

「今から三秒以内に出て来なければ、隠れてる空間ごと首を刎ねてやる。」

 

仕込み杖は諏訪子に折られてしまったので、魚をぶっ刺していた串を一見何も無い空間に向ける。妖怪如きこれで事足りる。

 

「三……」

 

「ニ………」

 

「いti「わ、分かった!分かったからやめてぇ‼︎」やっとか」

 

すると空間が裂け気色の悪い空間から一匹の女妖怪が出て来た

 

「で、妖怪なんかが私に何の用だ?」

「え、えっと………」

「さっさとしろ。私はジロジロ見られるのが嫌いなんだ。今非常に機嫌が悪い」

「や、やめてってばぁ!?…ハァ…ハァ…コホン、一つ質問したいのだけれど妖怪と人間の共存はできると思「無理だな」食い気味!?」

「妖怪と人間は相容れない。一時的に出来たと仮定しても、どちらかが必ず戦争を起こすだろう。どちらかが全滅しなければ終わらない戦争をな」

「それにいずれ人間が進化する事により、妖怪といった類の存在は希薄になるだろう。これが時代の流れだ」

 

時代に対応出来なければ生きていけないのは人間も妖怪も同じだな

 

「…でも私はそれを否定するわ」

「ほう?」

「私は人間と妖怪の共存が実現する理想郷を創りたいの。忘れ去られた幻想が行き着く場所、仮に『幻想郷』とでも呼びましょうか」

「貴方からは強大な力を感じるわ。協力してもらえないかしら」

 

口調こそ頼んでいるようだが、そこらの妖怪なら萎縮する圧を発しながら喋っている。……愚かな 私を人間と侮ったな

 

「気に入らない…」

「っ!?」

 

真の強者は相手を見ただけで力量差を理解する。それが勝つ為の前提条件だ。コイツにはそれが欠如していたようだ。

それに

 

「貴様からは相手の弱みを探ろうとしているのが見え見えだ。それが余計に腹立たしい」

「(神力⁉︎…唯の人間じゃないとは思っていたけど、まさか神だったなんて…見誤ったわ…!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「冗談だ」

「へっ?」

 

それにしても幻想郷か…人類の進化に影響が無ければ問題ないが、一応神議会では取り上げておくか

 

「いまこの場での返答は保留させてもらう。答えが出たらまた来てやる」

「…分かったわ」

 

 

期待はしないで貰いたいがな

 




八雲紫ファンの皆さんすみません


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審議

二十話です…


 

 

 

 

 

 ザワ…ザワザワ…

 

今回もしっかり集まってくれたな

え〜では…コホン

 

『お静かに願います。これより第43億8655万95回、神議会を開催致します』

 

私は拡声器を通して厳かに宣言をする

 

『今回の議題は、ある大妖怪が提唱した幻想郷についてであります。』

 

「幻想郷…?」

「忘れ去られるであろうものが辿り着く場所らしい」

「馬鹿馬鹿しい。そもそも妖怪の言った事を此処で議論するのが無駄じゃ」

 

騒がしいな。まだ本題に入っておらんというのに。私は議長席にいるアメノに目配せをした。アメノは頷きただ一言

 

「黙りなさい」

 

ザワザッ ピタッ

 

一瞬で静かになった。流石最高神なだけあるな

 

『えーでは、本題に入らせて頂きます。この幻想郷についてですが、時代と共に消え去る筈の生命が残留してしまうというのが懸念材料であります。これが神王法典第十三条に記載してある『生命の在り方を改変するべからず』に反しないか判断する必要が御座います。』

 

 

「むぅ…時代に反抗した存在か…」

「微妙なところではあるな…」

「妖怪の言う事など戯言だ!そんなの即刻却下に決まっておろう!」

 

一柱論外がいるな。私が聞いているのは妖怪だからどうこうの話じゃあ無いんだ。

 

数時間後

 

ふむ、そろそろいいか

 

『それでは、投票を決行いたします。幻想郷を認める者は青の札を、認めない者は赤の札を上げてください』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

投票結果

 

賛成 795万8027 反対 4万1973

 

 

やはり少なからず反感はあるだろう

 

『反対意見の者の話を聞きましょう』

 

「妖怪の言う事など信用なりませぬ!」

「幻想郷など所詮一時的なもの。長続きはしませんぞ」

 

ここでアメノに代わってもらう

 

『諸君らの意見は尤もだね。だけど、殆どの神が法典に違反しないと判断した。少数意見を蔑ろにするつもりは無いけど、やってみる価値はあるんじゃない?』

 

そう言って奴は微笑む。その姿は男神や女神関係無しに見惚れてしまう程のものだった。

それにしても…最後少々軽すぎ無いか?

 

「ま、まぁ最高神様がそう仰るなら…」

「…特別に認めてやらんでも無い」

 

おいコラ ロリコン共

それでいいのか神たちよ

 

 

まぁ上手く(?)纏まったみたいだしな 良しとしよう

 

 

ではこの件の担当を決めなければな

私?お前らは私を忙殺させる気か 断固拒否する。

というよりまともに仕事している神の割合が若干少ないのは何故だ

粛正してやる

 

 

 

…話を戻そう。解析鑑定の結果、八雲紫は1200歳程度と見た。なら同年代くらいの神の方がお互いやりやすいだろう。

ちょうど都合のいい奴がいたな

 

「摩多羅隠岐奈。貴殿をこの件の担当に任命する」

「…え?」

「返事はどうした」

「あ、はい!承りました。この摩多羅隠岐奈、期待に添えるよう努力致します。」

「宜しい。これにて議会を閉廷する!それでは解散っ!」

 

 

 

 

 




ちょっと無理矢理感がありましたね


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邂逅

二十話超えましたね〜


 

 

 

 

 

摩多羅隠岐奈

本人曰く絶対秘神だの後戸の神だか能楽の神だか色々言っているが、神の中では歴史的にはかなり浅い方であり、誕生したのはつい千年ほど前だった。前世では人間だったらしく聖徳太子、豊聡耳神子に仕えていたという。

そんな同年代くらいなら他の年食った神より上手くやれるだろうと思い任命した。

 

 

「岡様。その、八雲紫というのは一体どんな妖怪で…?」

「八雲紫。能力は『境界を操る程度の能力』。空間に裂け目を作り移動、攻撃、探索など汎用性の高い能力だ。能力に関してはお前と似通った部分があるな。後何かと胡散臭い雰囲気は感じる。」

「そんな者の言う事など信用してよろしいのでしょうか」

「信用?そんなものは無い。奴が何を企んでいようと所詮神の手の上。一妖怪がどうこうできるものでは無い」

 

仮に何か隠していても即座に気付ける。私の能力は本人ですら知り得ない事まで知る事ができる。それに脅しておいたから歯向かう事もないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「来てやったぞ、八雲紫」

「!お待ちしておりました。監視者様。」

「おっ。どうやらあの後勉強したようだな。」

「…数々の無礼お許し下さいませ。私の知り得ない範疇だったとはいえ、ご無礼を」

 

口先ではああは言っているが、此方の事を何か掴もうとしているな。その癖は一生直らんだろう。まぁ、放っておくか。支障は無い。

 

「そんな事は置いといて、コイツは摩多羅隠岐奈。今回の件の担当になった神だ」

「担当…神…それってつまり……!」

「あぁ、幻想郷の存在を『一応』認められはした。だが、創造する際は摩多羅の監視下でやるように」

「…了解しましたわ。こちらも『一応』感謝しておきますわ」

「貴様っ!岡様に向かって何という口を!」

「あら、盲信者は嫌われますわよ?」

やはりコイツとは仲良くなれそうにないな

 

「落ち着け。まぁ今のは私の言い方に多少問題があったな。取り敢えずお前達には仲良くしてもらわなければ困る」

「……ではよろしく頼む。大妖怪殿?」

「……仕方ありませんわ。こちらこそよろしくお願いしますわ、神様?」

 

「フフフ…」

「ハハハハ…」

 

案外上手くやれそうかも?

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

八雲紫、摩多羅と別れてまた旅を再開した

 

今度からは絶対面倒事は仕事しない中級辺りに回してやる

やらねぇ奴は消したる

 

これで少しは気が休まるかね

 

 

「貴様!そこで何をしている!」

 

ハアァ〜〜〜(クソデカ溜息)

次から次へと…なんだこの犬っコロ

私の周りを十匹ほどの妖怪が取り囲む

 

殺すか

 



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妖怪の山

二十二話


 

 

 

 

 

何か面倒臭いし、全員ぶっ○していいかね

 

「ここは、妖怪の山だ!人間が何用だ!」

 

あり?こっちが領域侵入しちゃった訳か。じゃあやっぱさっきの無し。私は完全に相手に非がある状態で○すのが好きなんだ。好みの展開じゃあ無い。

 

「すまんすまん。最近悩み事が多くてボーッとしてたら、いつの間にか入ってたみたいだ。すぐ出ていくから勘弁しておくれ」

「…一応侵入者は上層部に連れて行かなければならない。判断はその後だ」

 

話は通じるみたいで助かった。大人しく着いて行こうか

 

「それにしてもその耳本物?」

「なっ、おい!気軽に触るな!」

「い〜じゃないか〜。珍しいんだよこういうのは」

「貴様…」

 

その後一悶着あったが割愛しよう

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

山の頂上付近まで登れば中々立派な屋敷が見えた。中に通されると、二匹の…鴉天狗というのかあれは? が居た。

 

「天魔様。此方が山へ侵入した愚かな人間です。」

「だから事故だって言ったじゃあないか。まださっきの事怒ってんのか?」

「……」

 

恐らく奥の座で胡座をかいているのが天魔だろう。能力といったモノは感じられないが、それなりの気迫を感じる。

 

「…という訳なのです。」

「なるほど、そう言った事なら態々殺す必要も無いな。では射命丸。適当に放り出しておけ」

「あややっ、了解しました。」

 

どうやら話は終わったみたいだな。ていうか物騒な言葉が聞こえたんだが気のせいか?

 

「はーい。では侵入者さん?お外に行きましょうか」

「りょ〜かい。ていうかえらい別嬪さんだな。妖怪は顔面偏差値でも人に勝つか…」

「あややっ、人間に口説かれたのは初めてですねぇ。人でなければ今度お茶でも誘ったのですがねぇ」

「神だったら誘ってくれるか?」

「はい?」

 

すると屋敷の外が騒がしくなっているのに気付いた

 

「こ、困ります!まだ中では話が…!」

「こんな強そうな気配垂れ流してる奴見つけてジッとしてられるかってんだい」

「ゆ、勇義さまあぁぁぁあ」

 

なんだなんだ?穏やかじゃねぇな

 

「これは…やばいです」

「やばいって何が」

 

すると扉が吹き飛んだ。そこには

 

「おっ?あんたかい。気配の正体は」

「あんた誰」

 

鬼がいた

 

 

 

 

 

 

身長は175くらいだろうか。女性にしては高い方ではあるが、私の身長が210という事もあり、どうしても私が見下げる形になる。少し首が痛い。

 

「…分かるよ。あんた力を抑えてるけど、相当に強いね」

「分かるか?気が合いそうだな姐ちゃん」

 

私が只者でないことには気付いたようだが、神とは見抜けなかったようだ。だが実力者である事は間違い無いだろう。

 

「ヨシッッ。あたしと喧嘩しようじゃないか!」

「ええっ!?ちょ、勇儀さん、困りますよ!人間と鬼との喧嘩なんて、火を見るより明らかです!」

「…文には分からないのかい?この男の異常さが。気にしなくてもあんたが思ってるように殺しちまう事は無いよ」

「よぉーし、久々に張り切っちゃうぞ〜」

「貴方も貴方でおかしいんじゃ無いんですか!?相手は唯の鬼ではありません!鬼を束ねる四天王ですよ!?」

 

ん?四天王?鬼にそんな役職出来てたのか。俄然やる気が漲ってきた。さてどんなものかね

 

「くどい」ガシッ

「あやっ!?」ポーイ

 

勇儀が射命丸と呼ばれた鴉天狗をどっかにぶん投げた

 

「さあ!始めようか」

「少しは楽しめそうだ」

 

 




口調合ってますかね?


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鬼の四天王

二十三話


 

 

 

 

 

「まずは小手調べからだ!」

 

勇儀はそう言うと接近して来て私の右頬を狙ってその拳を振るった

 

「!おっと」

 

何が小手調べだ 今の普通の人間だったら頭消し飛んでたぞ

そう愚痴りながらも体を軸に回転させ、直撃を免れる。その回転の勢いを利用し、奴の頭に肘を叩き込む。所謂バックスピンエルボーだ

 

「ぐっ!?…今のは流石に舐めすぎたね。本当に唯の人間じゃ無いんだね?」

「そりゃあ、唯の人間が鬼に攻撃できる訳がないだろう?やっても肘がぶっ壊される」

「それも…そうだねっ‼︎」

 

すると奴の筋肉が膨張し、気配も先程とは比べ物にならない程になった。

 

「こんな強い奴に小手調べなんて失礼だったね。これからは本気でいくよ…?」

「!」

 

すると奴の姿が掻き消えた。それと同時に体に凄まじい衝撃が走った。

そのまま私は10m程吹き飛ばされたが、途中で一回転して着地した。今のは大陸に寄った際にある武術家から教わった技だ。極限まで脱力する事により、衝撃を逃す。まさか本当に実現出来るとは…。あの老師には感謝だな。ていうかあの老師、普通の人間の筈だが軽く百年以上生きていたな。本当に人間だったのか…?

 

とまぁ今は目の前に集中だ

 

「へへっ。漸く一発入れてやった…。でもあんまり手応えが無かったね。何をしたんだい?」

「それを教えてやる道理は無い」

 

ふむ、なら下界で初めて覚醒してみるか

…20%覚醒

 

「!?何か隠してるとは思っていたけどここまでとはね…」

「全力の私はこんなものじゃ無い。さあもっと楽しませてみろ。」

「言ってくれるねぇっ!!」

 

先程よりも速く、そして重い拳が飛んで来る。

だが遅い。身体能力と動体視力、反射神経を強化した私には最早止まって見える。

 

「はあっ!」

「なにっ!」

 

人外をも超える身体能力と50億年近くの経験を積んだ今の私は、鬼程度には負けん。

 

全力の自分の攻撃を見切られた焦りか、はたまた怒りか。動きが正直になってくる

 

「右、右、左、右、左…」

 

その為その場から動かずとも、軽く体を捻るだけで避けれる

 

すると勇儀は突然後ろに飛んだ

 

「まさかここまでとはね…今のあんたなら私の全てをぶつけれそうだ!」

 

これは大技の予感

 

「『三歩必殺』!!」

 

ドゴオォォオン‼︎ ドゴオォォオン‼︎ドゴオォォオン!!

 

一歩進む度に地割れが起き、そこから無数の光球が発生し飛んでくる

ならばこちらもだ

 

「開心流 遊撃掌‼︎」

 

 パアァァアン!!

 

開心流は剣術だけにあらず。格闘術も勿論修めている。私は残像と言うのが生温く感じる程の速さで掌底を繰り出し、手で空気を叩く。その衝撃波で無数にあった光球を消し去る。広範囲かつ攻守に長けた技だ。その余韻で勇儀は思い切り吹き飛ばされる

 

「ぐっっ!!ははっ、これも防がれるか。参った…よ…」

 

そのまま立ち上がる事は無かった

 

「私の勝ちだ」

 

ふぅ、それにしても少々鈍ったか?




大陸にいた老師、刃牙好きな人は分かりましたか?
時代は合いませんがどうしても出したかったんです。すみません


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宴会

深夜投稿…ありですね


 

 

 

 

 

「いや〜まさかあの勇儀を負かすなんてね。いやはや凄い人間だ!」

「萃香…気にしてるんだからあまり言わないでおくれよ…」

 

私は何故か今宴会をしている。そしてまた四天王を名乗る幼女に絡まれていた。というより何故喧嘩の後に宴会?コイツら頭湧いてんのか?

 

「なぁなぁ、今度は私と勝負しないかい?」

「遠慮しておこう。流石に今日は疲れた。老人は労われ小娘」

「老人?どう見たって40か50辺りだろう?」

「桁が8つ足りない。」

「ははは、またまた冗談を…ほんとに?」

「大マジだ」

 

体は歳を取らなくても精神的に疲れるな。どの生物も老いには勝てんな

 

「また、機会は取っておいてやる。だが今のお前達に負ける気はせん。強くなってから出直して来い」

「ほぉーお?言ってくれるじゃない。その約束忘れないでよ!」

「あぁ勿論だ」

 

あ、あそこにいるの射命丸か。鬼にぶん投げられていたが生きていたんだな。なんか隅っこの方で白狼天狗と呑んでいるな

 

「ちょっと気になる奴を見つけたから少し席を外す」

「お〜いってらっしゃい」

 

 

 

「よぉ」

「お、岡さん!?なんでここに!?」

「いや何でって、何処で飲もうと私の勝手だろう」

 

遠慮無く隣にドカッた座る

 

「そちらさんは…」

「あ、は、白狼天狗の犬走椛と申します」

「そういや私を連行した奴らの中にいたな。ていうか何故敬語なんだ?」

「そりゃあこの山の支配者である四天王を倒したんですよ?鬼を恐れている他の私達妖怪にとっては恐怖の象徴でしかないんですから」

 

あぁなるほど、そりゃビビるわな。

っと何か手に当たってんな。って剣じゃねぇか。危ねぇな

 

「これ誰のだ?こんなとこ置いてたら怪我すんぞ」

「!も、申し訳ありません!私のです!哨戒中に呼び出されたもので、そのまま…」

「……」

 

そういや武器か。諏訪子に仕込み杖折られたから新調してないな。次は普通に剣か刀にしてみるか。いやこのサイズだと私には小さすぎる。西洋剣ならまだしも日本刀はバランスが大事だからな。大きなものを作ろうととすると妙な支障が出そうだ。できれば刀の方が使いやすくていいのだが。こんなもの作れるやつは………………いたわ。頼んでみるか

 

「いや、大丈夫だ。寧ろ助かった」

「へ?助かったって何が」

「少々用事が出来た。行ってくる」 バビュンッ

「え、ちょえぇぇぇえええ!?」

「あやややや…あれ私より速いんじゃないかしら…」

 

偶には飛んで行くのもいいな

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「という訳だ」

「いや何がという訳ですか?」

 

私は今神界に来て天目一箇神(あめのまひとつのかみ)の元へ訪ねていた。日本神話に詳しい者なら分かるだろうが、この神は鍛治神である。眼帯を付けた片目の神であり、それなりの容姿を持っている。神界屈指の腕前を持ち、数多の神の武器の製造を行なっている。それゆえかなり忙しい。アポ無しで来られるとかなりキツイのだ。

 

「武器作ってくれ」

「いや貴方には仕込み杖があるじゃないですか」

「折れた」

「はあぁぁああ!?あれ折れるんですか!?最高神様の神気にあてられたのに!?」

「まぁあれ鍛造じゃなかったから耐久は元々低かったんだろうな。後は私の力量不足か」

「貴方で力量不足だったらこの世の神全て役立たずですよ」

 

ほんとそうだよな。あれ?ちゃんと働いてるのってもしかして俺だけ?神界やばくね?




次回神々死す!


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新しい武器

 

 

 

 

 

「で?どんな武器を打って欲しいんですか?」

「理想としては日本刀なるものを私専用サイズに作って欲しい。補助武器として、また仕込み杖も欲しい。後私の"消滅"を付与しても壊れないようにしてくれ」

「巨大武器の製造ですか…ですが日本刀は形が命。形状によっては全く切れない物も出てしまいます。それを巨大化するのは少し…」

「ていうか結構な無理難題を出しますね。"消滅"に耐えれる素材なんて何処探しても無いですよ。」

「それに関しては問題ない。アメノの神気をまた利用する」

「最高神を材料扱い…」

 

仕方あるまい。少しは迷惑かけた分働いて貰わねば

 

「でもですねぇ…時間も掛かりますし、何よりやる気が…」

「やってくれたら珍しい鉱石や武具の製法を優先的に譲ってやる」

「やります。やらせてください」

 

清々しいほどの掌返しだな

武器に関しては問題ないだろう。

 

バアァァアン!!

 

「ジンっ!!」

「扉を蹴破るなアメノ。後なんで分かった」

「ジンが居る気がしたっ!」

 

犬かお前は。天目一箇神もなんとも言えない顔してるじゃないか

 

「これ何!?設計図?」

「あぁお前にもこれを手伝ってもらおうとしていたところだ。(材料としてな)」

「ん?何か言った?」

「いや別に」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「よっと…」

 

私は妖怪の山へ帰ってきた。皆酔い潰れるな。…椛なんか口に一升瓶突っ込まれてんぞ 生きてるよな?あれ

 

「あ〜〜?…おかえりぃ…ジン…」

「まさかお前が酔い潰れるとは、萃香。あの短時間でどんだけ飲んだんだ」

「あの後勇儀と飲み比べをしてねぇ〜。酒樽が100を超えてから数えるのを辞めたよ…」

 

アホだな。で悪酔いして周りにも飲ませたということか

 

「取り敢えず水飲め。全員介抱するのは面倒だが仕方ないだろう。ほら勇儀も起きろ。お前比較的大丈夫だろ」

「うぅ〜ん…うるさいねぇ〜。もうちょっと眠らせておくれよ」

「この飲んだくれが。お前がやった分くらい片付けやがれ」

 

その後三人で200名近くいる者を介抱した。疲れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、そろそろ行くとしよう。」

「楽しかったよ。またおいでよ」

「次会ったら私とも喧嘩してよ!」

「へいへい、覚えておこう」

 

私はあの後数日滞在した後帰ろうとした。これ以上世話になるのは気が引けるからだ。が二人に見つかり水臭いと言われ見送ってもらえる事になった。

 

さて、じゃあ神界に一度戻るか

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

工房

 

「よぉ」

「うわびっくりした」

 

そろそろ頃合いかと思ったが、早かったか?

 

「ええ!完成してますよ!」

 

あれ?心読まれた?まぁ乗っとくか

 

「おお!流石仕事が早い」

 

私は奥の部屋へと通された。するとそこには巨大な刀と見覚えのある杖。そして……アメノがいた

 

「あ〜〜…………?ジン……?」

「お、おう。少し見ない間にやつれたな?」

「この半月近く眠らずずっと神力を鉱石に当て続けてたからね…」

「そりゃきつい」

 

まさかぶっ通しで作業してるとは思わなかった。少し悪い事をしたな

 

「見て下さいこれ!恐らく今まで作った中で一位二位を争うくらいですよ!まずここの柄がですね…」

 

なげぇ説明が始まった。説明を聞きながら刀を持ち上げる。ふむ…程良く重く、振りやすい。私に合っている。

 

「あ、持ち運ぶには不便でしょうから紐を付けて背負い太刀にしておきました!」

 

コイツ前会った時は死んだ魚みたいな目してたのに鍛治の話になるとめっちゃ喋るな。

 

「うん。非常に良い。助かった。約束の鉱石だ。」

「おおっ、これでまた作業が捗りますね!最高神様!もう少しお手伝いお願いします!」

「もういやぁぁぁああ………」

 

すまんアメノ。お前の死は無駄にはしない

 

 

 



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竹取物語

多分今日最後です


 

 

 

 

この国も良く発展したなぁ。街が賑わっている

ん?あそこの屋敷、やけにデカいし人が集まってるな

行ってみよう

 

ザワザワ…ザワ…

「これは一体何の騒ぎですかな?」

「何だおま…うおっ!」

 

まぁそうなるだろうな。この国のこの時代での平均身長は161cmだし、私はそれよりも50cmも高いからこの反応は妥当だろう。群衆の中で私だけ飛び抜けている。

 

「い、いやな?あそこに住んでる爺さんの娘さんがえらい別嬪さんだっていうもんで少し見に来たんだよ」

 

すると他の民衆も集まってきて

 

「そうそう、あまりにも美しいもんだから各地の貴族達が求婚に来ているのさ」

「なるほど」

 

女は男を狂わせるというがここまでとは。興味が湧いてきたな

 

「だが娘さんは誰とも結婚してする気が無いんで無理難題を吹っかけてたらしい」

「この世にあるかも分からない物を持ってきた人と結婚してすると言ったらしい」

 

うまいこと躱すな。その娘とやらは

…それよりもあの屋敷から月の民の気配を感じるのは、恐らくその娘が月出身なのだろう。旧人類が新人類に妙な影響を及ばせなければいいが。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

夜…

 

 

「今日のお見合いも断ったのかい?輝夜」

「ええ、皆様下心が丸出しなんですもの」

「できれば早く良いお婿さんを見つけて欲しいが、輝夜が嫌なら無理強いはせんが…」

「御免なさい、お爺さま。私は誰とも結婚する気はないのよ」

「そうかい…」

 

お爺さまは少し悲しそうな顔をして部屋から出て行った

その姿を見て申し訳ない気持ちになるが、さっきの言葉は本当だ。譲るつもりはない

 

「はぁ…早く迎えに来てよ永琳…」

「む、今永琳と言ったか?」

「⁉︎」

 

自分以外いないはずの部屋で二つの声が響いた。一つは私、もう一つは知らない声だ。振り向くと縁側に胡座をかいた巨躯を持った男が月明かりに照らされていた。因みに自分との距離は1mにも満たない

 

(少し気を抜いていたとはいえ、ここまで接近されるまで気づかなかった…?一体何者…月の人間ではなさそうだし…)

 

「もし、貴方は一体何処の誰?」

 

出来るだけ平静を装って言う

 

「私か?私は岡迅一郎。唯のおっさんだ」

 

お前のような気配を感じさせない2m越えのおっさんがいてたまるかと言いたくなったが、ここは我慢する。

 

「…それより永琳を知っているようだけど、もしかして貴方は月の人間かしら?」

「ん〜?ハズレ」

 

本格的に分からない。穢れを感じさせないから月の民か玉兎…は無いわね。それどころか神聖な気さえ感じる。いや…ちょっと待って…岡、迅一郎?まさか

 

「恐らく君が思っている答えで合っている」

「!」

 

やはり、その迅一郎だったか。基本的に月読様第一の月の民にとっては、その神すら凌駕する存在を信じたくなかったのだろう。これを知っているのは月の上層部くらいしかいない

参ったわね。迎えが来る前にこんな奴と出くわしてしまうなんて。私は神や運命を嫌いになりそうだ。

 




ちょっと疲れましたね


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求婚

 

 

 

 

 

「かの監視者さんが私に何の用?」

「なに、お前ら旧人類が今地上で暮らしている新人類に悪影響を及ぼしてないか確かめに来たまでさ」

「私1人に態々出張る事無いと思うけど?」

「お前らはこの地上には早すぎる文明を持っているからな。それで進化のズレが起きたらかなわん」

 

ぶっちゃけ私の月の民に対する評価はあまり高くない。文明を消し去る為とはいえ、核を放って関係無い生命まで殲滅したからな。次同じような事があれば月読諸共消してやるつもりではある。

 

「で、お前は何で地上に?下界で娯楽でも求めに来たか?」

「まぁそんなとこね。月は退屈過ぎたのよ。だから蓬莱の薬を飲んで追放されたの」

 

蓬莱の薬、確か永琳が開発した不老不死の薬だったか。やはり天才だな、あんな代物を一人で作ってしまうとは

 

「薬を飲んだだけで追放されたのか」

「えぇ、不老不死になる。つまりは生に対する執着。これを穢れとして月では認識してるの」

 

月の思想はなんというか極端だな。排他的というのか、どちらにせよ厄介の種である事には変わりはない。

 

「その様子じゃ随分と退屈してるようだが」

「私が美しいのは分かるけどこうも毎日結婚、結婚て言われたらね…」

「性格はともかく顔は確かに美形ではあるな」

「あら、私に惚れてもいいのよ?」

「悪いが顔面偏差値の高い奴は見慣れてるんでな。今さら小娘の顔見たところでだ」

「釣れないわね」

 

それに私の好みじゃあ無い。私はもっと大人な方が好みだ。近いものといえば…八雲か摩多羅だな、絶対あり得んが。まぁともかく小娘に用は無い!

 

「…で迎えはいつ来るんだ?」

「次の満月、後二週間程かしら。でも帰るつもりは無いわ。帰っても体のいい実験台として使われるだけだもの」

「私としては問題起こしそうだからとっとと帰って欲しいがな」

「冷たいわねぇ」

 

火種は出来るだけ抱えたく無い

 

「じゃあ問題は起こさないわ。ただひっそりと地上で暮らしていけるだけでいいの。迎えの者に協力者がいるから逃げるのを手伝ってくれないかしら?」

「…問題を起こさないと誓うなら協力してやろう。私も月の使者に伝言を頼みたいしな。」

「!ありがとう。まさか聞き入れて貰えるとは思わなかったわ。」

「覚えておくといい。神は気紛れなのだよ」

「ふふっ、なにそれ」

 

その夜は談笑しながら過ごした。

 

 

 

 

 

そして満月の夜…

 

「何としてでも姫を守るのだ!帝の御命令ぞ!命を賭すのだ!」

「「「オオオオオオオォォ!!」」」

 

月に帰るという話は帝、昔で言う天皇の耳にも入ったらしい。兵を100程配置し、屋敷を完全に取り囲んでいる。

 

「こんなに居ても月の技術の前では無力なのに…」

「仕方ない。今の地上の文明では知り得ん事なんだ。」

 

だがあの鼓舞をしている司令官は中々できる男だな。そこらの大妖怪も相手にできるだろう。

私達はというと、あの時の部屋に二人座していた。あの夜の次の日、輝夜が私を護衛として雇うとの趣旨を爺さんに伝えたらしい。その爺さんは疑う事を知らないのか快諾した。

 

「む……」

「来たわね」

 

突然夜空が怪しく光出した。その光に包まれるようにして牛車の様な乗り物がゆっくりと地上へと降りて来た。

…これは精神に干渉する電波を放っているな。兵士達が虚ろな目になり、撃ち落とそうとしていた弓を下ろしてしまった。

 

牛車から白い衣を羽織った男と、銃を構えた兎?の耳を生やした人間が出てきた。月の技術ならレーザーくらい作ってそうだったが、地上を制圧するには原始的な銃で充分だと思ったんだろうな。

 

「簡潔に言う。姫を此方に渡せ」

「ぐっ…何なんだ貴様ら…姫は渡さんっ!」

 

おっ、凄いなアイツ。一人だけあれを耐えれたのか。見込んだ通りだ。

すると銃を持っていた奴がそいつに銃口を向けた

それは困るな

 

「やれ」

 

ズダダダダダッッ!

 

「なっ…」

「流石に新人類に手を出すのは頂けんな」

 

奴に飛んで行った筈の銃弾は全て空中で静止していた。

私は銃弾の周りの空気を圧縮させ、無理矢理停止させたのだ

 

「そっくり返してやろう」

 

私は羽衣の男に指を向ける。すると止まっていた銃弾も奴に向く。

 

「なっ貴様っ!私が誰か分かって…」

「知らん」

 

 ドドドドドドッッ!!

 

「……!」

「冗談だ」

 

全て奴の足元に着弾させた。でないと伝言を頼めんからな

 

「輝夜を連れてくならさっさとしろ。永琳」

「…やはり気付かれていたのですね」

「当たり前だ。無駄に歳は食っとらん」

 

何処からともなく永琳が現れた。光学迷彩でも使ってたんだろう。

 

「岡様…」

「面倒臭いのは嫌いだ。さっさと行け」

「はい。さぁ姫様行きましょう。」

「あれ?ジンは来ないの?」

 

すると男が正気に戻り

 

「八意貴様!何のつもりだ!」

「私は姫様に尽くすと決めたの。貴方達が何を言おうがそれは変わらないわ」

「貴様…!」

「お前の相手はこっちだ。」

 

懐から拳銃を取り出そうとして、私が前に出る。2mある身長だ。これだけで威圧になる

 

「うお……」

「貴様らには伝言を頼みたい」

「で、伝言…?」

「そう、今回の件がどういう経緯があったかは知らんが、お前達月の民は既に過去の存在なんだ。これ以上今存在している新人類や文明に干渉するつもりなら、存在ごと無かったことにしてやる」

「…!お、お前は。いや貴方は…」

「分かったらそこで伸びてる兎二匹連れてとっとと月に帰りやがれ」

 

すると慌てて二匹を引っ掴み牛車に乗り込んで夜空へと消えていった。背後を見ると既に輝夜達も行った後みたいだ。

 

「ふぅ、この私が人助けをねぇ…」

 

自分の変化に少し驚きながらも私は歩き出した



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後処理

 

 

 

 

 

昨日の夜の出来事が嘘みたいに賑わってるな。これじゃ輝夜の事を忘れ去るのも時間の問題だろう。しかし何故私が帝に薬を渡してやらなければならんかったのだ。自分で動け、若者。

なんて考えていると皇居が見えて来た。神子の時代にも思ったがやはり天皇の屋敷はデカいな。すると門の前にいる馬に乗った見覚えのある兵士を見つけた

 

「む、貴様はあの時の…」

「ああ、昨日ぶりだな」

「あの時は…助かった。礼を言わせてくれ」

 

あの時唯一倒れなかった司令官だ。奴も丁度帰ってきたところらしい。

 

「気にするな。ついでみたいになって、あれなんだが少し頼みたい事がある」

「…?分かった。言ってみろ」

「姫からの贈り物だ。帝に渡してくれと」

「姫からの⁉︎一体何が…」

「蓬莱の薬。不老不死になれる代物だ。それで手切りにしろとの事だ」

「…分かった。献上しておこう」

「くれぐれも丁重にな」

 

そう言って私は皇居を後にした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

私はとある山に来ていた。

 

やはり人間というのは未知なるものに恐怖を感じる生き物だ。突然「不老不死の薬です。」と言われてはいそうですかって言って飲む奴はいないだろう。どうやら月に帰ったと思っている帝は一番高い山で薬を焼いて天に届かせようとしているらしい。全て知っている私からすれば無駄としか言いようが無い。

しかし、月の文明で作られた代物を地上の人間がどう扱うか気になったのでこうして来ているわけだが

 

 

「おい!見つかったか!?」

「いや、こっちも駄目だ!」

 

何やら騒がしいな

 

「クソッ!あの女子(おなご)め!」

「どうかされましたか?武士の皆様」

「だ、誰だ貴様は!」

「唯の旅の者で御座います。何やらお困りのご様子」

「…信用できるのか?」

「むぅ……」

「貴様ら!何をサボっている!早く…お前は」

「おや、また会ったな」

 

一体何の縁だろうか、またあの司令官だ。

 

「コイツは問題無い。下がってよい。」

「御意」

 

二人の武士は何処かへ走り去って行く

 

「何があったんだ?」

「…情けない話だがあの薬を運んでいる最中、突然現れた少女に奪われてしまってな。反応できずに持ち去られてしまった。服装から貴族の出の者だとは思うが、あの少女の顔には見覚えが無い」

「なるほど、そりゃ大変だ。手伝おうか?」

「いや、帝もあの薬を使うつもりでは無かったから、別に良いとは仰られていたが」

 

今代の帝は寛大だな。少し前なら見つけ次第、即刻首を刎ねていたが。

 

「ではもう帰るんだな」

「あぁ、問題無い。世話をかけたな」

 

何もしとらんよ。ただ話を聞いただけだ。それにしても少女か。少し感知の範囲を広げてみるか。

…居た。今山を降りているのか、一応追いかけてみよう。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

行ってみると、そこにはかなり高そうな着物を纏った少女が確かにいた。土やらで汚れているが。何故その格好で来た。

 

「お前さんが薬を盗んだ犯人か?」

「うわ⁉︎あんた誰だ!」

「ただの旅人だ。さっきあちらで薬を盗られたと騒いでいたのでね」

「……捕まえにきたのか」

「まさか、その事に関しては奴らも諦めている。私が捕まえる義理は無い」

 

ただ私には一つ聞いておきたい事がある

 

「お前それを飲む気か?」

「あぁ、この力を手に入れて父上に恥をかかせたあの女に復讐してやる…!」

「お前、それを飲む事が何を意味するか理解しているか?」

「意味…?不老不死になるって事のか?」

「その通り」

 

まだ精神の幼いコイツには分からんだろうが、不老不死は思ったよりキツいぞ

 

「永遠の命を手に入れ無限の人生を謳歌する奴もいる。が精神の弱い者が手にすると、一度誰かと別れる事を覚えてしまえば後は無限地獄だ。途中で"死にたい"と思ってもできない。その苦しみに悶えながら最終的には廃人と化す。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう一度聞く。本当にそれを飲むのか?」

 

「っ、それでも…私は……復讐ができるなら…」

「そうか、なら止めはしない。後悔はしないようにな」

 

それが彼女の意志なら尊重する。何だかまた会いそうな気もする

 



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怨嗟

三十話来ましたね〜


 

 

 

 

 

この数百年、月の奴らが来た事以外には特に変わった事は無かったな。

次はマジで許さん。誰かに別に監視させるか。奴らは穢れとやらを嫌うから地獄の神がいいか。

亜空間から取り出したリストを見て考えてみる。

今の地球の地獄の神で暇しているのは…ヘカーティア・ラピスラズリ?ヘカーティアってあの「welcome hell」と書かれた妙な服を着た女神か。というより不定詞のtoが抜けているぞ。まさか自作か?…取り敢えず会いに行くか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

地獄…

 

亜空間に穴を開けそこから私が出てくる。

 

「…久しぶりに来たが暑いな、ここは。イザナミのいた黄泉よりはマシだが」

 

本当なら生物が来れば一瞬で蒸発するのだが、億単位で生きてると様々な物に耐性を持ってしまうものだな。イザナミの呪いも効かなかったし。

少し歩くとすぐに城が見えて来た。あそこに住んでいるらしい。

ノックしようとしたら…インターホンがあった。これまだ地球の技術じゃない筈なんだがな。まぁいい

 

  ピンポーン ピンポーン…

 

「ガチャあら?こんなところに人が来るなんてめずらしえぇぇぇええ!?岡様!?」

 

なんか皆私の事を岡様と呼んだりジンと呼んだらするが、ジンの呼び名はアメノにしかされてなかった筈なんだがな。そういやアメノが暇潰しで書いた聖典に私の名前も書いていたな。だからか

 

「やあ、久しぶりだな。覚えてくれているか?」

「も、勿論です!ええっと、今回はどのような用件で…」

「実はな…」

「ヘカーティア〜?何してるんだ?」

 

用件を話そうとしたら玄関の奥の方から金髪ウェーブの満州族の袍服のような物を着た女が現れた。

 

「あ、純狐。今ちょっと取り込み中で…」

「ヘカーティア、コイツは誰だ。何故人間如きが地獄にいる?」

「純狐おぉぉぉぉお!?ちょっと黙っててくれないかしらん!?」

「お、おう…分かった」

「落ち着いたか?」

「はぁ、はぁ…申し訳ありません。お見苦しい所を」

 

随分と元気の良いコンビだ。面白いな

 

「気にするな。急に押しかけた私が悪い」

「ありがとうございます。何なら奥で話を…」

「おお、ではお言葉に甘えて」

 

私は奥に通され、茶を出してもらった。

 

 

「なぁヘカーティア。結局コイ…この人は一体誰なんだ?」

「ん?私は岡迅一郎。神のようなものだと思ってくれるといい」

「それってヘカーティアより偉いのか?」

「当たり前よん!辺境の地獄の神より最高神様の付き人様の方が偉いに決まってるわよん‼︎」

 

あれ、私は付き人扱いになっているのか。まぁ大体要因はあいつ(アメノ)にあるから後で締めておくか

 

「こちらも質問いいか?お前さんは?」

「私は純狐。嫦娥を殺す為にヘカーティアと協力している。」

 

なるほどこりゃ都合が良い。嫦娥はたしか月の仙人だったな

 

「で、頼みたい事なんだがヘカーティア。お前に月の監視を任せたい」

「え!?私がですか?何故私が…」

「もう一々奴らがやる事に手を焼くのは御免だ。それならお前らが適任かと思ってな。」

「嫦娥も殺していいのか!?」

「それは知らん。好きにしろ」

 

やった!と一人で狂ったように喜んでいる純狐をおいておき、話を進める

 

「報告の義務は無い。だが手に負えない場合の時は連絡しろ。力にはなる」

「了解しました。感謝致します。」

「私が楽したいだけだよ。」

 

そんな感じで仕事を押し付けゲフンゲフン任せる事ができた。これで少しはマシになってくれるといいが




ヘカーティアの敬語、違和感しかない


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妖怪寺

更新遅れましたすみません


 

 

 

 

 シュオンッ

 

独特な音がして亜空間が閉じる。いや〜地獄から帰ってくると地上が異常なまでに涼しく感じる。夏入ったばっかりだぞ。

 

「むしろ寒いなこりゃ。温度ボケは治るまで時間がかかりそうだ」

 

そう言って肩をさする。すると背後に微小な反応を感じた。振り返ってみると、私ですら見上げる程の巨躯を持った妖怪がいた。見た目は様々な動物が混ざり合ったような感じだ。

だがここで違和感を感じ取った。見た目に反してそれほど妖力が高くない。ならば幻術系か?いや実態はある。まぁどちらにせよ試したい事があるから丁度いい

 

「グオォォォオオ!!」

「作ってもらっておいてなんだが、今回初めて使うな」

 

そう言って空間から取り出したのはいつぞやの大太刀である。仕込み杖の方は何度か使ったが、あまり大きい相手がいなかった為使わず仕舞いななっていた。ようやく試運転だ

 

「グアッ!!」

「よっと」

 

妖怪はその剛爪で私を引き裂こうとする。が私は大太刀を背負い体全体を使って抜刀する。そしてそのままの勢いで爪に掠らせながら腕を狙い、切り飛ばした。

 

「ギャオォォオオ!?」

「うん、重さ鋭さ共に良し。刃こぼれも無い。まずまずだ」

 

激昂した妖怪は切られてない方の腕で掴み掛かろうとするが私は逆に奴の腕を掴む

 

「ギャオッ!?」

「フンッッ」

 

そのまま引き寄せ相手の体を背に乗せ、押し上げる。浮いた身体を腕で引っ張り投げ倒す。背負い投げだ。

 

 ズシンッッ

 

「グ、ガア…」

「見た目程手応えの無い奴だ。終わりにしてやろう。」

 

そうして大太刀を大上段に張り上げ、振り下ろー

 

「ま、待って!降参!降参するからっ!」

「む?」

 

すると先程までの妖怪は消え、そこには妙な羽を生やした少女がいた

 

「やはり幻術の類のものだったか…?にしては妙に現実味があった」

「はぁはぁ、あんた何モンだよ。妖怪に圧勝するなんて…」

「神様だ」

「は?」

「本当だぞ。何ならここで神力を解放しても…」

「信じる!だから止めろぉ!?」

 

信じてくれたようで何より。にしてもコイツの能力が気になるな。よし、『解析』

種族…鵺 能力…正体を判らなくする程度の能力

なるほど、さっきのはこれによるものだったのか。納得だ

 

「とまぁ私は自尊心が特別高い訳では無いが、突然襲い掛かれて見逃してやる程優しくも無い。」ゴゴゴゴゴ…

「うっ…」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「うまうま」

「何であの雰囲気で団子要求すんだよ」

「いいじゃないか、ここの団子旨いんだから。命よりは安いだろう。」

「別にいいけどさぁ…」

 

私はあの後罰として団子を奢らせた。最近食に対する喜びが無くなってきたが、ここの団子だけは定期的に食いたくなる。薬物でも入っているのだろうか

 

「私は妖怪が金を持っている事に驚きだ」

「擬態する時には必要なんだよ。一文なしだったら怪しまれるからな」

「なるほど…そういやまだお前の名前を聞いてなかったな。妖怪とはいえ持っているだろう?」

「ん?あぁ私は封獣ぬえ。この近くにある寺に入り浸ってる」

「ほう、種族名がそのまま名前とは」

「なんで分かったんだよ!?」

「能力のおかげさ」

 

私は頭を指差しながら言う。

 

「ふぅ食った食った。また旅を再開するか」

「あ、そう言えば何で神さんが神社に籠らず旅なんかしてんだ?」

「私は少し特殊なだけだ。こういう神も他にもいるにはいる」

「旅をしながらなんて神さんっぽく無いな」

「よく言われる」

「あぁー!!こんなとこに居た!ぬえ!聖が探してたよ」

「げ!一輪。イタズラがバレたのか!?」

 

何だ?妖怪が尼の格好をしている…?

 

「ぬえ、お前の住んでいる寺はどういう所なんだ?」

「え?…あー、何か人妖平等を掲げる寺だったような…?」

「人妖平等?これまた夢物語な…」

「コラーっ!無視するな!ていうかそのおじさん誰?」

 

あ、話に集中していて完全に忘れていた。

 

「初めまして、お嬢さん。私の名前は岡迅一郎だ。ちょいとこの鵺を懲らしめてやった唯のおじさんだ。」

「嘘つけ!さっき神だって言ってたろうが!」

「は…?懲らしめ…?…神?」

 

フリーズしてしまった。ちょっと情報量が多かったか。

 

「ハッ!え、本当に神様…?」

「本当だとも、なんなら…」

「だあぁーー!その下り何回やるんだよっ!ていうか街中でするな!」

「冗談さ、神様ジョークだ。」

「笑えねぇ冗談だ」

「じょー…?」

 

ほらまた置いてけぼりになってる。それにしても妖怪寺か、興味が湧いてきたな。次はそこに行ってみよう。

 

「よしじゃあその妖怪寺に行くか。店主、お勘定」

「あいよー」

「は!?冗談じゃない!私は逃げる!」

「あ、ぬえ!待ちなさい‼︎」

「安心しろ。二人とも連れて行く」

「「へ?」」

 

私は二人の首を引っ掴んで亜空間を開く。そしてその中に放り投げる。

 

「「ああああああ!?」」

 

よし私も行くか

亜空間が閉じる。そこには呆然とした店主がいたとかいなかったとか

 

 

 

 




少し長め…?


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南無三

 

 

 

 

 

  シュオンッ

 

「うわ!?」

「ぐへぇ!」

「よっと」

 

亜空間を抜けると少し山の奥にある寺の前に着いた

 

「いつつつ…あれ?私場所教えたっけ?」

「お前の記憶を少し覗いた。問題ない」

「いや問題大ありだよ!?何勝手に覗いてんの!?」

「安心しろ。まだ気付かれてない悪戯については黙っといとやる。」

「あああああ‼︎」

 

やかましい。耳元で叫ぶな

 

「う、うーんここは…さっきまで店に…」

「気付いたか。」

「うぇっ!?さっきの…神様?」

「ここが噂の妖怪寺か、思ったよりも綺麗だな」

「何の音です?一輪、帰ってきたのですか?」

 

すると寺の中から金と紫のグラデーションの入ったロングウェーブをした女が出てきた。気配からして人間…いや魔法使いか

 

「一輪?それにぬえも…そちらの御仁は?」

「初めまして、私は岡迅一郎という者。こんな形だが一応神をやっている。」

「…神ですか」

「驚かないんだな?」

「私にとっては、人も妖怪も神であっても全て平等、同じ物ですから」

 

ほう…この尼、人と妖怪だけでなく神までも同じと言うか。確かに妖怪は人から恐れられなければ存在できんし、人も妖怪に対抗する為文明か発展していく。持ちつ持たれつの関係ではある

 

「何かご不満な事でも?」

「いや?考え方は人それぞれなのだと実感しているだけさ。ただ人とはそんなに単純では無い。受け入れられない時もあるだろう。その極端な思想はいずれお前の仲間を危険に晒す。」

「…肝に銘じておきましょう」

 

こういう異端な物は排除される傾向にある。その信念を貫き通せればいいが。

 

「本日は命蓮寺にどのようなご用件で?」

「いやただ妖怪寺とやらがどのような場所か興味が湧いたんだ。後この小娘が"悪戯"を仕掛けてきたのでな。保護者に文句の一つでも言ってやろうかと」

「! ぬえっ!!」

「いっ!?やっべ!」

「あ、待ちなさい!星、この方を案内して差し上げて!」

 

おお、えらい速度で追いかけて行ったな。身体強化系か。勇儀といい勝負をしそうだ。

 

「はは…」

「騒がしくて申し訳ないね、お客人」

「ん?君たちは?」

「私は寅丸星と申します。そしてこっちが」

「ナズーリンだ」

 

そこにはネズミ?の耳が生えた少女と女性にしては背の高い虎のような模様の服と髪をした女性が立っていた

 

「本当に妖怪しかいないんだな。」

「人間の信者はまだいないね、妖怪の信者はそれなりにいるんだが。」

「それにしてもお前、妖力と神力の両方を感じる。不思議な奴だ。見たところ毘沙門天の系譜といったあたりか?」

「!すごいですね。初見でそこまで分かった人はいませんでしたよ。」

「毘沙門天か…もう一度槍勝負でもしたいな」

「へぇそうなん……はい?」

「し、勝負?」

 

おや、何を驚いている?

 

「毘沙門天様と勝負?もしかして君はかなり高位の神なのかい?」

「ん〜、まぁそれなりには。最高神を除く全ての神が生まれるより前にはいた」

「き、気が遠くなりそうな話ですね…」

「毘沙門天の系譜の者なら、ジンという名前に聞き覚えは?」

「…あぁ!迅一郎ってそのジンだったんですか!?」

「むしろ迅一郎の方が本名だけどな」

 

説明する手間が省けて良かった。教育もしっかりなっているようだ。

 

「それでは、命蓮寺を案内しますね」

「よろしく頼む」

 

妖怪と人間の共存…八雲のような事を言っているが方向性は全く違うのだろうな

 




キャラがおかしかったら報告お願いします。


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御利益

やっとテスト終わった…投稿遅れてすみません…


 

 

 

私は星とナズーリンに寺を案内してもらった。内装は一般的な寺と変わらず唯一違う所と言えば、毘沙門天の像が置かれる場所に星が立っていたことくらいだ。

 

妖怪寺とやらは思ったより街中では悪いように思われていないらしい。なんでも寅丸星が毘沙門天に関係がある事や、『財宝が集まる程度の能力』でそれにあやかろうとする者がいる為、それほど反感を買っている訳ではないらしい。だが信者になろうという人間はまだいない。

 

そんなこんなで私は偶に寺に顔を出すようになった。この銀河系の管理をする為、英知界と往復しながらだが。最近は英知界にいる時間の方が長かった為久しぶりに訪れる。

 

「よぉ、久しぶり」

「あ、ジン!最近見ないから死んだんじゃないかって思ってたよ」

 

今ちょいと失礼な事を言った少女は村紗水蜜、船幽霊だ。初めて会った時奴の海レーダーとやらに引っかかり、海賊から貰った酒をひったくられそうになった。何故か関係無い一輪まで飛んできたが、聖に沈められていた。仏教は禁酒だったんだな。

 

「コラ!そんな事言ったら失礼でしょう!…すみません、わざわざお越しいただいたのに」

「気にするな聖、神だっていつコロッと死ぬか分からんのだから間違っては無い」

 

そう言うとその場に居た全員の動きがピタッと止まった。

 

「…岡さん、冗談でもそんな事は言わないでください。」

「言っちゃったのは私だけど、それは笑えないよ…」

「お、おう…なんか悪かった」

 

何故か空気が若干重くなった。神の間じゃよくあるジョークなんだがな。やはり感性の違いか。

私はこの場の雰囲気を払拭する為持ってきた土産を開いた。

 

「…ん?なにこれ」

「ちょいと仕事中に手に入れた土産だ」

「お酒っ!?」

「一輪、貴方後で私の部屋に来なさい」

「わぁ〜いっぱいありますね〜」

「ここらじゃ見ない物もあるね」

 

部屋に一輪、星、ナズーリンの順で入ってくる。というか一輪、お前ほんとブレないな。欲丸出しじゃないか。本当に仏教徒かお前

 

「ほら、ナズーリン。これを」

「これは……?」

「これは西洋で作られているチーズという発酵食品だ。日本で言うところの蘇のようなものだ。食ってみな」

「食べれるのかい?……!これは旨い!」

 

気に入ってくれたようで何よりだ。ネズミっぽいからチーズは安直かと思ったが、そうでもなかったな

 

「じゃあ次は星。これは唐に行った時に手に入れた槍だ。業物だぞ?」

「わぁ!いいんですか⁉︎…これは凄いですね。それによく馴染みます」

 

これは昔自分の武器を探しに唐に行った時、元々唐にいた坊さんがずっと清めていた槍なんだが飾られるより使われた方がこの槍も本望でしょうと言って譲られたものだ。

 

「失くすなよ」ボソッ

「な、失くしませんよ!そこまで酷く無いです!」

「はは、ならいい」

 

「次、村紗。よっと…」

「何これってデカっ!!」

 

私が亜空間から取り出してのは巨大な錨だ。これだけはデカすぎて袋に入らなかった。

 

「『黒髭』という伝説の海賊がいた。そいつが使わなくなった船を捨てようとしていたものだから、買った。」

「買った!?船を!?」

「因みに船本体は錨の中心部に宝石がついているだろう?そこに収納してある。好きに使うといい」

 

宝石内の空間を拡張して保存してある。少々手こずったが

 

「はぁ…話の規模が大きすぎる…でもありがとう!」

 

うんうん喜んでくれたようだ

次は…

 

「一輪」

「はい…」

「…大丈夫か?」

 

一輪の頭には拳大のたんこぶができていた。まさか漫画のようなモノを見ることになるとは思わなかった。ひじりん容赦ない

 

「お前には都の酒蔵特注の酒を…」

「…岡さん?」

「冗談だ。だからそんなに睨むな」

 

ぶっちゃけ一輪は酒以外に何欲しがってるか分からなかった。だが一緒に布教しに行った際着物を見ていたので、安直だが用意させてもらった。

 

「ほらよ」

「!わぁ綺麗…」

 

側から見ても分かるくらい喜んでいるのが分かった。よかった、私だけ何か違う!なんて言われたらどうしようかと思った。

 

「後は、聖」

「あら、私にもあるんですの?」

「勿論だ。これは天竺で手に入れた仏教の書だ。本場のやつを欲しそうにしてただろ?」

「まぁ覚えてくれていらしたんですね!」

 

うん、記念日やらに五月蝿い最高神が一柱いるからな。お陰でそんな能力を授かってしまった。

 

「ありがとうございます。大切にします。」

「ジンありがとー!」

「ありがとう、気に入った。」

 

おおう、一気にお礼を言われた。凄い迫力だ。

…最後に

 

「ぬえ、出てこい」

「「へ?」」

「…気づいてたの?」

「まぁ最初から。お前にもある」

「!ほんと!?」

「お前だけ仲間外れにはせん。ほらおいで」

 

さっきから部屋の外で自分自身を正体不明にしていた。何か期待するような気配がしたので一発で分かった。

呼ぶと素直に私の元へ来た。そこである物を渡す。

 

「腕輪…?」

「お前は自分の能力で自身を正体不明にしているな?」

「え?ま、まぁ」

「お前の能力は強力かつ、自分を見失い易い。いずれ自身の存在にも影響を及ぼすだろう。その時はそれに念じろ。お前という存在を守ってくれる。」

「存在…」

「私の手製だ。効果は保証する。まぁお守りみたいな物だと思ってくれ。」

「て、手作り…へへ…//」

「え〜、い〜な〜。1人だけ手作り〜」

「おいおい、手作りじゃないからって愛情を込もってない訳じゃあないぞ?」

「分かってるけど〜」

 

本当にそう思われているなら心外だ。愛情はこもっているぞ?

純粋にぬえが心配だから一人だけ手作りなのだ。神直々に作るお守りなんてそうそうない。御利益は期待していいだろう。

 

またその後他の奴らからぎゃーぎゃー言われ、騒がしくも1日は閉じた

 

 

 



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予兆

遅れた分描かないと…


 

 

 

 

 

命蓮寺に来てから何年か経つが未だ人間の信者は増えない。毎日町に下りては布教活動をする日々。偶に私も付き添うが、効果はあまり見られない。

今日は一人で町に来ていた。やはり団子はここの店に限る。それにしても町が仰々しい。

 

「…増えんなぁ、信者」

 

するとそこらにたむろっていた町人達が立ち話をしていた。

 

「なぁ聞いたか?町長さん、陰陽師を何人も雇ったらしいぞ」

「やっとあの寺の連中共を潰す気になったか」

「最近活発になってきたから金をケチる事も無かったらしい」

 

…なんと。悪感情をそれほど抱かれていないと思ったが、見通しが甘かったか。要報告だな

 

「店主、勘定だ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「…そんな事が」

「確かだ」

 

私は今聖と二人だけで話している。他の者は出払ってもらった

 

「対策は取らざる負えまい。一つは迎え撃つ、二つは活動場所を変更する、三つ交渉する。」

「お前にとっては一つ目は論外だろう。それに私は神だ。あくまで中立の立場を取る。この問題はお前達だけで解決しなければならない。なら現実的なのは二つ目だというのは猿でも分かる」

「…えぇ、そうすれば何の問題も起きないでしょう。しかし私達が掲げるのは『人妖平等』。ここで逃げては今までの活動の意味が無くなります。なら私の答えは三つ目です」

 

…必ずそう言うと思った。こいつは基本的に信念を曲げない。面倒なタイプだ

 

「私が最初に言った言葉は覚えているか?」

「はい、『その思想はいずれ仲間を危険に晒す』覚えておりますとも」

「なので交渉は私だけが行います。他の者たちは事前に逃がしておきます」

 

学習してないという訳ではなさそうだ。ひとまず安心だ

 

「だがそれが最適解という訳でもあるまい。それでいくならこの話を奴らにしなければならない。必ず反発するだろう」

「理解しています。説得は私が行いますが、きっと後で戻ってくる可能性があります。」

「…なので一つ貴方にお願いしたい事があります。あの子たちが戻ってくるのを阻止して下さいませんか?…交渉が上手くいかなければ私が足止めをします」

「汚れ役を押し付ける事になってしまいますが……どうかっ、お願いいたしますっ…」

 

すると聖は突然土下座をしてまで頼み込んできた。

…ここまで覚悟を見せている。ここは一肌脱いでやろう

 

「神に願い事か、高くつくぞ?」

「!…ありがとうございますっ!」

 

随分と私も丸くなったものだ。私が誰かに影響されようとは。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「駄目です!そんな姐さんだけ置いていくなんて!」

 

ここまでは予想通りだ。やはり当たり前のように反発を喰らう

 

「…あまり賢い判断とは言えません。どうか考え直してください」

「聖…ほんとにそれしかないの?」

「えぇもう決めた事なの」

 

かといってそれで考えを曲げる程コイツの頭も柔らかく無い

 

「じ、じゃあジンが人間達に命令すればいいじゃん!流石に神に逆らうような事も無いでしょ!?」

「ぬえ、神というのは中立的な存在でなければいけない。どちらかに極端に味方をしてしまえば力関係が崩れ、待っているのは破滅だけだ」

「本当にすまないが、今回ばかりは力になれん」

「っ…」

 

すると

 

「もういいっ!ジンなんて知らない!死んじゃったらいいんだ!」

「あっ、ぬえっ!」

 

ぬえは癇癪を起こし外へ飛び出してしまった。能力も使わずに、あれでは人里で姿を晒してしまう

 

「まずい聖、追え」

「!了解しました」

「私達も!」

「駄目だ、今人里は非常に不安定な状態だ。ぬえが見つかればすぐさま陰陽師らが行動を起こす。今のうちにここから離れておけ」

「〜〜っ!…分かりました。行きましょうナズーリン、それに皆んな」

「星っ!あぁもうわかったわよ!」

「姐さん…死なないでよ…?」

「えぇ、心配しないで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…ばかっ、ばかっ…!何が中立だ、何が平等だ!人間なんて皆殺してしまえばいいのにっ…

 

「ん?あれは…妖怪だっ!」

「陰陽師さん!こっちに妖怪が!」

 

陰陽師?そんなやつ私が…

 

「封魔印っ!」

「がっ!?」

 

突然背後に衝撃が走った。背中に手を当てると何か紙のようなものが貼られている

 

「今お主に付けたのは妖力を封じる札じゃ。お主だけでは解除できまい」

 

そういう時周りからぞろぞろと仲間とおぼしき人物達が出てきた。

…クソッ何人いんだよ!

畜生っ…こんなとこで…

 

「お待ちください」

「誰じゃお主は?」

 

聖っ…!?

 

「私は聖白蓮。命蓮寺の住職を務めております」

「ほう、そちらの頭が顔を出してくれるか」

「その子を解放していただけませんか?私の弟子なのです」

「我等陰陽師が妖を解放するとでも?少しはものを考えて話すがよい」

 

コイツッ…!態々気に障る言い方しやがって!

 

(落ち着け、こちらに手を出させてより正当性を増す為の策略だ)

 

ジン!? ど、どこに…

 

(念話だ。お前の脳波を読み取り可能としている。まぁそんな事はどうでも良い。今すぐそこから逃げ出せ)

 

逃げ出せって言ったって…

 

(腕輪を使え。それはお前を守るものだと言っただろう)

 

腕輪…念じる…

 

バチィッ‼︎

 

「!?馬鹿なっ、札が…」

「あばよっ!」

「なっ、待てぇ!」

「行かせません」

「…まぁ頭はここにいるからいいとしよう。貴様ら人妖平等などと謳い何を企んでいる?」

「何も企んでなどおりません。言葉通りそれを実現したいだけなのです。人も妖も同じ生きる者なのです。」

 

 

(よし、陰陽師達が食い付いた。森の東に星達がいる筈だ。そこまで行け)

 

聖はっ…聖はどうすんだよっ!

 

(聖がどんな思いで留まったと思っている。奴の覚悟を無駄にするな)

 

…分かった。言う通りにする…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぅ、取り敢えず私の仕事はここまでだ。こんな所で死んでくれるなよ?聖白蓮

 

私はその場を後にした



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花妖怪

また投稿頻度遅くなるかもです…


 

 

 

 

 

 

聖白蓮。殺される事こそなかったが魔界に封印されてしまったようだ。だが星達が何か動いているらしく、また復活する日も案外近いかもな。

ま、あれから百年程たったので若干先になるだろうが

 

 

そんな事を考えていると見事な花畑を見つけた。これは向日葵か、既に亜米利加から渡っていたか。にしても綺麗に整備されている。神々の管理する庭園にも負けてないな。

 

「そして花にも負けない程の美しいなお嬢さんが一人」

「あら、私の事をそんな風にに呼ぶのは貴方が初めてよ?」

 

やはりそこにいたか。花を観察している時から強い殺気を感じた。

 

「それにしてもよく気づいたわね。これでも気配は消していた筈なのだけれど」

「気配は消せても存在が消せる訳では無い。そこにいるという事実が私に教えてくれる」

「不思議な人ね、吟遊詩人みたいな事を言う。…けれど私はそういうのは嫌いなの」

 

酷い言われようだ。だが不思議とそこまでの怒りは感じられない

 

「一つ聞くわ。貴方は何?」

「何…とは質問の意味を図りかねるが」

 

私の正体に気づき始めたか?少しはぐらかしてみる

 

「まぁ貴方が何者なんてどうでもいいわ。貴方からは強い気配を感じる。…ねぇ闘ってみない?」

 

するとそいつは返事をする間も無く持っていた傘を此方に向け、極太レーザーを放ってきた。

…っておい。それ多分高位の神でも当たったら不味いやつだぞ。かと言って避けるのは非効率だ

 

「なら…相殺するまで」

 

久しぶりに飛び道具を使う。非常に楽しみだ

 

「『電子砲』‼︎」

 

私は向かってくるレーザーに指を向ける。そこから奴が放ったのと同等威力のレーザーが飛んでいく。

レーザー同士ぶつかり合い爆発する

 

「あらお強いのね」

「おいおい、私が結界を張らなければ花畑が粉微塵になってたぞ?」

「あら、あまりにも強そうな人間がいたからつい失念していたわ。礼は言っておくわ」

「素直じゃあねぇな。まぁいい、場所を変えよう」

 

私はそう言い手を二回叩く。すると私達は花畑から数km離れた平地にいた。

 

「…貴方が何者か気にはなるけど、こんな楽しい闘いより優先する事では無いわねっ!」

「っと、だが私は気になるね、お前が誰なのか。私は岡迅一郎だ。そちらは?」

「…風見幽香よ。フラワーマスターなんて呼ばれたりもするわ」

 

こんな戦闘狂が得るような称号でも無いような気がするが、気にしてはいけない。

 

さあ!ここで読者の皆に戦闘狂に出会った時の対処法を教えよう(クソメタ)!

その一…決して目を逸らさない

そのニ…名乗りを挙げる

その三…決闘(バトル)開始!

 

何?なんの対処にもなっていない、だと? 当たり前だ!戦闘狂に目をつけられて生きていられる可能性の方が低いのだ!諦めろっ!

 

脳内でしょうもない講座を開いていると、足元から巨大な蔓が伸び私の足を捕まえた。

 

「少し余所見をしすぎじゃないかしら?」

「なるほど、フラワーマスターの由縁はこれか」

「これだけじゃあ無いわよっ!」

「おおっ?」

 

すると私の体は空中に放り出され無防備な状態になる。そこへさっきの蔓の本体とおぼしき花の怪物が出てきた。ハエトリグサの様な見た目をしている。

 

「グワッッ!」

「いてっ」

 

そして花の化物は私に噛み付いてきた。あーあ、服に穴が空いたじゃないか。また新調せねば

 

「死になさい『マスタースパーク』」

「うおっ!?」

「ギャアアァァアア!」

 

幽香の放ったマスタースパークは化物ごとジンを包み込んだ。

煙が晴れ、そこには何も残っていなかった。

 

「…拍子抜けね。もう少しやると思ったけど」

 

残念そうに傘をさしなおし、歩き始める。

 

「油断したな」

「!」

 

殺気を感じ、すぐさま傘を背後に振るが掴まれてしまった。

そこには少し服が焦げたジンが何事もなかったかのように立っていた。

 

「貴方一体…」

「凄いな、火傷を負ったのなんて一体何億年ぶりだ?これは思った以上に楽しめそうだ」

 

幽香は思った。化け物だと。

人間共に言われる事はあってもまさか自分がそう感じる程の相手に出会うとは思わなかった。だがこの女、どこまでも戦闘狂であった。

抱いた感情は"恐怖"ではなく"喜び"。自分と戦える相手を見つけ興奮しているのだ

 

「どうした?さっさと始めようじゃないか」

「…えぇ!貴方最高だわ!」

 

幽香は狂気的な笑みを浮かべ光線を放つ。

第二ラウンドの開始だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(はて、どうしたもんか)

 

迫り来る光線を見ながら考える。やるなら電子砲で十分相殺できるが、そればかりでは芸が無い。

物質系の技をよく使うから今度は空間系の攻撃でもしてみるか。

この思考は超演算によって加速されている為、0.1秒にも満たない時間である。

 

 

「ではこちらも。『隔絶』」

 

すると目の前まで迫っていた光線が突然爆発した。だが私には傷一つ付いていない。

『隔絶』空気を極限まで圧縮することにより、どんな金属よりも強固な盾を作り出す。

そしてその壁を押し出すことにより攻撃にも転じれる

 

「『衝破』」

「!」

 

ドゴオォォッッ!!

 

見えない壁が幽香に飛んで行き咄嗟に傘でガードする。直撃は免れたが傘はひしゃげ、使い物にならなくなった。

先程の幽香には防御以外にも選択肢はあった。耐えれるか分からない攻撃を真正面から受けた。これはつまり避けなかったのでは無く、"避けれなかった"と考えた方が自然であり、奴は俊敏に欠けるということ。

ならそこを突く。威力を抑え、連射に特化した粒子砲を撃つ。

 

 

※この作品での『粒子砲』と『電子砲』の違いは、電気を帯びているかそうで無いかで区別します。また『粒子砲』は連続的に放射する事でレーザーカッターのようにもなりますby作者より

 

 

 

…何かナレーションが聞こえたが気のせいだろう。

 

奴は何度も飛んでくる光速のレーザーを捌くのに苦戦している。

完全にレーザーに意識がいった瞬間、私は粒子化して背後に移動する

 

「なっ」

「遅い」

 

奴が反応した時には既に私の拳は顎を捉えている。そして僅かに掠るようにして当てる。どれだけ強靭にできた妖怪の身体であっても、人の形をしている以上構造を変えることは出来ない。

風見幽香の体は糸の切れた人形のように倒れた

ていうか強すぎだろ

妖怪の中じゃあ一番手強かったんじゃないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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問題提起

遅れてすみません


 

 

 

 

 

突然だが私は今超ど田舎に住んでいる。風見幽香との闘いからまた百年以上経ち(目が覚めた瞬間また勝負を仕掛けて来たが)、人間達はその間に世界規模で戦争をしたりしていた。それも収束し、平和が戻った。

文明に塗れて過ごすのもいいが、やはり喉かな生活も捨て難い。

 

無機質な神界でずっと居るよりかは遥かに良い

そうして仕事をこなし、だらだら休息をとっていると

 

「カァーッ!カァーッ!」

「ん?」

 

足が三本ある大型のカラスが縁側に降り立った。そういえばこのカラスは八咫烏といったな。確か天照の使い魔だったか

 

「カァッ!」

「何だこれ、手紙?」

 

八咫烏は口に何か咥えていた。受け取ってみると、やはり天照からの手紙であった。私に直接使い魔を送るなんて何か緊急の用事か?

 

「どれどれ」

『拝啓 岡迅一郎様 突然の報告申し訳ありません。しかし一つご報告したい事が御座います。数百年程前、神議会で可決された"幻想郷計画"の事です。詳しい事は議会でお話し致します。お手数ですがお願い致します。 敬具』

 

まじ?あれなんか問題起こったの?責任取らないといかんよな

下手したら副議長辞める事になるかもしれん。ま、辞めても仕事が減るから別に構わんがね

 

「めんどくせぇなぁ〜〜」

「カァ〜〜」

「お〜?よーしよしよし」ナデナデ

「クァっ♪」

 

また議会に行かんとならんのか。あれ本来百年に一度くらいしかせんのに何回する気だ。それもこれもアメノが悪い(現実逃避)

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

神界

 

来てしまった神界。ここ空気張り詰めてるからあまり好きじゃないんだよな

 

「はぁ〜〜〜っ……」

「そんなに溜息付いてると幸せ逃げるよ?」

「それお前が地上に流した根も葉も無いホラだろうが。大概にしろアメノ」

「人間は非現実的なモノを好むんだよ〜」

 

こんな風に駄弁りながらアメノは議長席、私は一つ下の副議長席に座る。すると他の騒がしかった神達は途端に静かになる

 

「それでは第〜回神議会を開廷する!」

 

もう何度聞いたか分からない

アメノが宣言すると議席に座っていた神達が立ち上がり礼をする。

他の者は座ったが一柱だけ立っていた。天照だ

 

「この度は私のような一介の神の収集に応じてくれました事感謝致します。議長様、副議長様もお時間をいただきありがとうございます。」

「い〜よ〜。私はこうやって話すの大好きだからねー」

「コラ、もう少し議長としての自覚を持て」

 

こんな感じで緩いから『最高神様を見守ろうの会』なんていうよく分からん組織ができるんだ。偶に私にも突撃してくるから迷惑している

 

「今回集まってもらいましたのは事前通告したのと変わらず、幻想郷についてです。」

 

そうそう結局何だったんだ?

 

「まず幻想郷ですが現在、中にいる妖怪等が外へ漏れ出る事態となっております。」

 

何……? 幻想郷は基本的に来るもの拒まず去るもの許さずのようなスタンスの筈だ。だから内に溜まることはあれど外に影響する事は無いから可決された筈だ。

 

「一つ聞いていいか?あの摩多羅隠岐奈はどうした。これの担当ではなかったのか?」

 

ある男神が言う。それだ、私が気になっていたのは

 

「それが…お恥ずかしい話ですが、連絡が取れない状況なのです。幻想郷を包む大結界のせいで連絡が容易に出来ない状況下にあります。」

 

そこまで強力だったか。じゃあ質問してみるか

 

「では私からも、いつ頃から連絡が取れなくなった?」

「凡そ四百年程前かと」

 

四百年前…上級吸血鬼共が幻想郷に侵攻したという時か。大方『全てを受け入れる』なんて事を言っているから調子こいてやってきたのだろう。とはいえ幻想郷にだって許容量のようなものは存在する。

一気に外から入ってきた事により、自動的に外へ出たのだろう。

 

 

「…漏れ出た妖怪による犠牲者数は?」

「妖怪はそれ程多くはありませんが、それでも千人程は…」

「ふむ……失態だ」

「も、申し訳」

「いや、私の失態だ」

『へ?』

 

多くの神の声が重なる。その中にはアメノの声もあった

 

「生命を育み、観察する事が仕事であり義務の私が、好奇心からこの様な事態を招いた」

「違うっ!ジンはただ…」

 

アメノが何か言うが無視する

 

「何も違わない。そもそも一介の妖怪の話を聞いた私が愚かだった。…よってこの問題は直接私が解決する」

『!?』

 

当然の責任だ。このくらい筋を通さねばやっていけん

 

「その為私は暫く神議会副議長の職を停止する」

「そんな…」

「その間、代理は天照に任せる。もし私が解決して戻って来た時、私よりも良いと感じたならば、そのまま私は辞職する」

「そ、そのような事は御座いませぬ!貴方がいなければどうなるか…」

「優秀な者が要職に就くのは当然の事。それにもしの話だ。確定じゃない」

 

どちらかって言ったら辞めたいんだけどな

 

「…了解致しました。御武運を」

「あぁ、アメノ。閉廷だ」

「…へ?あ、これにて神議会を閉廷するっ!解散っ!かいさーん!」

 

神々達は戸惑いながらも帰ってゆく。するとアメノが何か言いたげな顔をしていた。

 

「…ねぇ本気なの?」

「冗談であんな事言わん。最悪辞めても一生の別れじゃあない。大丈夫だ」

「…信じるからね」

「勿論、私が約束を破った事は?」

「無い」

 

よし、説得はした。それではいざ幻想郷へ

 




原作スタートです


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幻想郷

とうとうここまで来た…


 

 

 

 

…中々固いなこの結界。もうテレポートでいいか

 

「はあっ!」 ブォン

 

独特な音が鳴り響き、現世と幻想郷を隔てる結界に穴を開ける。

 

「行くか」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

博麗神社 幻想郷を展開する博麗大結界を管理する上で非常に大切な場所である。その神社の中では1人の少女が居た。

 

「ふわぁ〜…暇ね……」

 

彼女の名前は博麗霊夢。博麗神社の巫女であり、人と妖怪の調停者でもある。

 

「お〜い!霊夢〜」

「あ、魔理沙」

 

今ほうきに乗って神社に降り立ったのは霧雨魔理沙。人間でありながら魔法を使う事を得意とする。偶に神社にやって来ては昼食をせびりに来たり遊んだりしている。

 

「また来たの?暇ねぇ」

「いいじゃないか、霊夢だって暇してたろ?」

「まぁいいけど…」

 

内心悪い気はしない。暇な時のいい相手になってくれるので、追い返すような真似はしない

 

「じゃあこの間里の人から貰ったお菓子でも食べる?」

「おっ、じゃあ頂くとするぜ!」

 

そう言って二人で部屋に入ろうとすると

 

「失礼。博麗神社は此処であっているかな?」

「!?」

「へぶぅ!!」

 

突然声をかけられ、振り向いた拍子に肘が魔理沙に当たる。だがそんな事は気にせず目の前の男を最大限警戒する。

 

(魔理沙と話していたとはいえ、私が背後に立たれて気づかなかった?)

 

あり得ない。今までその天才的なまでの直感であらゆる危機を凌いで来た。ゼロ距離で撃たれた弾幕だって避けれた。

 

「どうかされたかな?」

「!…えぇ少し考え事をね…」

「霊夢〜なんだってん……おっさん誰だ?」

「質問を質問で返すな…と言いたいが、まぁいいだろう。私の名前は岡迅一郎、覚えづらかったらジンでいい。監視者だ」

 

監視者…?そんなもの聞いた事が無い。紫なら何か知っているかもしれない

 

「監視者〜?何の監視だよ?」

「ちょ、魔理沙」

「別に構わん。簡単に言えば宇宙だ。」

「「は?」」

 

宇宙?いくらなんでもスケールが大き過ぎる。それが本当なら…いや本当だ。自身の勘がそう言っている

 

「ぷはっ!おっさん嘘つくならもっとマシなのをつけよ。人間にそんな事できるかよ」

「まぁ唯の人間ではどれだけ努力してもできん。それこそお前のような奴はな」

「…おっさん。今なんて言った?」

「ん?別に、『唯の人間』には無理だと言っただけだが?」

 

不味いわね…魔理沙は自身の努力を否定されるのが癪に障ったみたいね

 

「おっさん、勝負だ」

「勝負?」

「弾幕勝負だよ。知ってんだろそんくらい」

「いや知らん今来たとこだからな」

 

『今来た』? じゃあ迷い込んだ外来人では無く、自分から入ったというの!?

 

「悪いが、今は仕事で来ている。子供に構っとる暇は無い。」

 

そう言って私の方を見た。

 

「君、八雲紫を知っているか?」

「(紫の事まで知ってるの?)…えぇまぁ」

「そいつに話があると伝えておいてくれ。日時はまた設定する。……まだ事務仕事が残っているんだ。面倒くさい」

「無視するんじゃないぜっ!!」

 

魔理沙は突然最大威力の『マスタースパーク』を放った。不味い!こんなの直撃すればこの人が…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鬱陶しい」

「え?」

 

迅一朗と名乗った男は、まるで虫でも払うかのように手を振ると、マスタースパークが霧散した。

 

「エネルギー効率に無駄があるな。その妙な装置のお陰で何とか技としては成り立っているが」

 

今の…山は軽く消し飛ぶ威力だったわよ? 一体この男は

 

「ルールは知らんが、勝負だからやり返してもいいんだろう?」

「え」

 

すると男はデコピンのような形の指を作り、弾いた。

 

 パァァァン!!

 

弾けるような音がした。

そしたら魔理沙が突然倒れた。一体何が起きたか理解ができない

 

「あ、貴方!何をしたのよ!」

「何って、ただ空気を弾いただけだが。あぁ心配せずとも死んではいない。調節した」

 

な、なんなのこの男……突然現れて、実力者の魔理沙をこうも容易く…

 

「あ、後やっぱりさっきの伝言は無くてもいい」

「?それはどういう」

 

ジンは突然何も無い空間に手を突っ込んだ。そして何か掴むと引き摺り出した。

 

「きゃあっ!」

「ゆ、紫!?」

「久しぶりだな?八雲紫」

「あ、あはは…」

 

 

 




最近文字数多くて更新が遅れました。


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和解

久しぶりの連続投稿


 

 

 

 

 

 

ジン視点

 

 

「ここが幻想郷か」

 

出た所は森の中だった。

見渡す限り木、木、木。だが絶滅した筈の動植物が存在しており、非常に面白かった。

まぁ、まずは結界の要所に行くか。私がそこに行けば八雲も気付くだろう。

 

「お前は食べてもいい人間なのかー?」

「ん?」

 

微小な気配を感じ取り振り向くと小柄な少女がいた。妖怪か

 

「結論から言えば無理だ。お前程度では私を喰らえん」

「やってみないと分からないのだー」

 

視界が闇で閉ざされる。だが視覚が閉ざされたくらいで食われていては、とっくの昔に死んでいる。電磁波感知で探ると馬鹿正直に突っ込んできた。何か策があっての事かと思ったが、そうでもなさそうだ。

 

「ふん」 ガシィッ

「!?」

 

突っ込んできたのを避け、後頭部を掴む

相手は掴まれた事に驚愕し、もがく

 

「無駄だ。次妙な事をすれば貴様の脳を破壊する」

「!わ、わかったのだー」

 

私は手を離してやる。相手は頭を心配そうにさすっていた

 

「あんな事しておいて何だが、教えて欲しい事がある。貴様名前は?」

「ルーミアなのだー」

「博麗神社という場所に行きたいのだが、何処にある?」

「神社ならあの山の頂上にあるのだー」

「あそこか…助かった」

 

そう言って其処を後にした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

…何という場所にあるんだこの神社は

こんな立地じゃ参拝客も来んぞ

 

あ、誰かいる。聞いてみるか

 

 

「失礼、博麗神社は此所で合っているかな?」

「!?」

「へぶぅ!?」

 

…何か物凄く驚かれた。まぁこの身長じゃ無理もないか ※違います

 

そこからなんやかんやあって勝負を申し込まれた。

私としてはそこの少女が小馬鹿にして来たから、少し言い返してやったのだが、それが気に入らなかったらしい。

それはどうあれ普通に面倒臭い。見た感じ、最近戦った風見幽香程強くは無いだろう。

私は戦闘狂とはいえ見合わない相手には燃えないのだ。もう1人の少女は分からんが

 

「悪いが今仕事で来ている。構っとる暇はない」

 

それでもう1人の少女、霊夢と話していると魔理沙と呼ばれた少女がビームを放ってきた。ムラはあるが幽香のマスタースパークと少し似ている。

 

だが似ているだけだ

 

「鬱陶しい」

 

効かないとはいえ鬱陶しいのだ。人が蚊に刺され、痛いとは感じないが鬱陶しく思うのと同じ感じだ。

なので軽く返してやったら一発で気絶した。空気を弾いてぶつけただけなんだが

 

 

「あ、貴方魔理沙に何したのよ!」

「何ってただ空気弾いただけだが」

 

すると霊夢は鳩が豆鉄砲を食ったような顔した。一定の筋力が有れば誰でも出来るんだけどなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……またか、いつもいつも面倒臭い事しやがって

 

 

「やっぱりさっきの伝言はいい。直接言う」

「それってどういう」

 

彼女が言い切る前に私は空間に手を突っ込む。側から見れば頭おかしい奴にしか見えないが気にしない。

そこであるものを掴むと引き摺り出す。

 

「ふん」

「きゃあっ!」

「ゆ、紫!?」

 

そこにはいつぞやのスキマ妖怪がいた

 

「久しぶりだな?八雲紫」

「あ、あはは…」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

今私たちは和室の中にいる。立ち話もあれなので、中に入れてくれた。

 

 

「やはりあの騒動は四百年前の事が原因だったか」

「えぇ、あれで結界にほつれが出来てしまいそのまま…」

「で、摩多羅隠岐奈はその対処に追われていると。表はお前、裏はあいつっていう感じか」

「その通りで御座います」

 

ま、取り敢えず安否確認取れただけでも良しとしよう

 

「摩多羅の方には程々にと伝えといてくれ」

「了解致しました」

「ちょ、紫。結局この人は誰なのよ」

 

霊夢は混乱していた。今まで見た事のない態度を取る紫を見たのもあるが、彼女にそうさせる事ができる男の詳細も知りたいのだ

 

「そういえば霊夢には行ってなかったわね。この方は監視者。神々と世界を監視し、統括する人よ」

「俄には信じ難いわね…」

「はは、よく言われる」

 

今まで出会う奴殆どに似たような事を言われた。人間が神性を得て成り上がったからな。人間の部分を色濃く残してはいる。

 

「一応此処には視察という感じで来た。だからもう暫くはいる。」

「了解致しました。では寝床は…」

「いい、そのくらい自分で用意する。そこまで世話にはなれない」

 

本当に突然来た私が悪いのだから気を遣わせる訳にはいかん。

そろそろ他の場所も気になるし、行ってみるか。

そう思い、立ち上がって襖を開けると、鳥居の近くに霧雨魔理沙がもたれかかっていた。

そのまま通り過ぎようとすると

 

「いや待て待て待て!普通スルーするか!?」

「私に用があったのか?」

「どう考えてもそうだろ!」

 

なんなんだこいつは。さっき負けた奴がなんのようだ

 

「いや…あの後霊夢に怒られてよ、いくら怒ってもいきなりあれはダメだって…」

「ふむ、では私からも謝罪しよう。少々からかっただけなのだがあそこまで反応されるとは思わなんだ。」

「まぁ悪かったよ。」

「こちらもな。あ、後一つ忠告しておく。私は優しいからあの程度で済ましたが、他の誇りの高い神だったら一瞬で消し炭だ。そういう奴には口調は気をつけた方がいい」

「あ、あぁ分かったぜ」

 

こんなにも成長してくれた私は嬉しいよ…ヨヨヨ

 

おふざけはこのくらいにしてそろそろ行くか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんか空赤くね?




時系列合ってるかな…


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紅魔郷入ります


 

 

 

 

 

「…空、紅いな」

「えぇ、紅いわね」

「あぁ、紅いぜ」

 

 

何だろう。見ているだけで不快になる空ってなに?

 

「じゃなくて!これは異変だぜ!」

「はて、異変とは?」

「ジンさんには言ってなかったわね。異変というのは妖怪の類いが引き起こす異常現象の事よ」

 

成程、それを、異変というのか

事件と一緒だな

 

 

「それよりも早く人里に家から出ないように言わんと、体調不良者が出るぞ。この魔力量は人間には毒だ」

「えぇ分かってるわ。魔理沙、頼んだわよ」

「私かよ!?…まぁいい、貸し一だぜ!」

「あんたに貸し作っても返してもらった事無い気がするんだけど」

「行ってくるぜ!」

 

あ、逃げた。霊夢も大変だな、面倒な事に絡まれて。それにしても妖怪なら類が起こす異常現象か。

この霧、ただ魔力を含んでいるだけでなく日光を遮っている。なら犯人は吸血鬼辺りだと思った方がいいな。

吸血鬼…何かと縁のある妖怪だ

 

「ふむ、運動がてら手伝ってやろうか?」

「別にどちらでも。私としては楽が出来る方がいいけど」

 

この娘ぶっちゃけ過ぎない?本音ぶちかましてきたよ

まぁこれも含めた視察だから問題はないだろう。

 

「じゃあ着いてってやる」

「分かったわ。ジンさんは飛べるわね?」

「勿論」

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

途中で魔理沙が追いついて来て、一緒に向かっていた。すると湖の近くに目が痛くなるような紅色に塗りたくられた館があった。

 

「うわぁ、趣味悪っ」

「確かにこれは目が痛いぜ」

「よほど館の主人は存在感を出したかったらしいな」

 

そう言うと二人とも吹き出した。

近くまで来たので歩いて行こうとする。

 

「やい!アタイの縄張りに入るなんていい度胸じゃない!」

「チ、チルノちゃん辞めようよ…凄く怖そうな人達だよ?」

 

そして何かに絡まれた。そしてそこの緑髪、怖い人って私の事か。どっからどう見ても優しそうだろ!? ※挿絵参照

 

取り敢えず解析してみるか。

緑の方は…大妖精、名前・能力は無い。

 

 

そして青い方は…⑨ おかしいな疲れているのか?これだけしか出ないなんて事はない筈だが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解析結果⑨ …成程つまりこいつは⑨か。少し時間は掛かったが何を意味するかは理解した。解析でもこんな結果しか出ないなんて、何か哀れに感じてしまう。

 

「おい!きいてるのか!」

「いや?全然」

「ムキーッ!!もういい!最初から全力だー!凍符『パーフェクトフリーズ』!!」

「おっ?」

 

妖精にしては大きな力を感じた為少し身構える。

…すると出て来た弾幕(さっき教えてもらった)が全て私達を避けるようにどっかに飛んでいった。

 

 

「……」

「お前達!中々やるな!アタイの子分にしてやってもいいぞ!」

「結構でーす」ブォン

「ぬあぁぁぁあああ!?」ピチューン!

「チルノちゃーん!?」

 

私は手頃な石を拾いぶん投げる。それが見事命中し、吹っ飛ばされて行く。そして追いかける大妖精

 

「うわ、弾幕も使わずに…」

「今のをあいつ流に名付けるとすれば、石符『フライングストーン』ってか?」

「…そんなのに名付けなくていいわよ」

 

そうか?いい技だと思ったんだが




更新遅れるかも知れませんが、何卒この小説をよろしくお願いします


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紅い館

紅魔郷キャラ書けるかな…


 

 

 

 

先程青い⑨を吹っ飛ばして、館の前まで来た。近くまで来てみると思ったよりも大きい。だが一番気になるのは館の内部に空間の歪みができている事だ。恐らく外見よりも広いだろう。

 

するとある事に気づく。門番がいる。…熟睡中の

 

「zzz…zzz」

「なんだこいつ?寝てやがるぜ」

 

そいつの前で手を振ったり、手で音を出しても起きる気配がない。

 

「…面倒だから放っておきましょう。」

「だな。私は外回りを見てくる」

「え〜…手伝ってくれるんじゃないの?」

「何、霧が何処から出ているのか見に行くだけだ。見つけたら止めておく」

「まぁそれならいいけど…」

 

そうぶつくさ言いながら霊夢は館の中に入っていく。魔理沙はいつの間にか入っていた。

 

「さてと、まず起こすか」

 

私は寝ているそいつに脳波を送った。相手の嫌がる記憶を想起させる

 

「うわぁ!待ってください咲夜さん!寝てませんから、寝てませんからナイフはやめてぇぇえ!?」

「よ、おはよう門番君?」

「って誰ですか貴方は!?」

 

叫んだり驚いたり忙しい奴だな。

 

「私は通りすがりの旅人のジンと言う者だ。いつの間にか館が出来ていたので見に来たんだ」

 

私はさらっと嘘をつく

 

「旅人ですか?人里から離れたこんなところまで?」

「何、そんな事承知で来る馬鹿もいるってことよ、それであんたの名前は?」

「ほぇ〜…あ、私は紅美鈴と申します」

 

適当に会話をしながら情報を引き出す。ホン・メイリン…響きからして中国の妖怪か。館は西洋風なのに変だな

 

「それでこの館はなんだ?誰が当主なんだ?」

「…それにお答えする事は出来ません。機密ですので」

「見た感じ吸血鬼とかか?」

「っ!何故それを…?」

 

少し警戒しているな、カマをかけただけなんだが当たっていたか。

だがあの時の吸血鬼の系譜という訳では無いな。あの時完全に消してやったからな

 

「勘だ。それよりお前さん随分と熟睡していたな?」

「あはは…まぁ侵入者は今のところ居ないので大丈夫ですよ」

「もう既に二人入ったが」

「……………マジですか?」

「マジだ」

 

するとみるみる顔が青褪めていき

 

「うわあぁぁあ!どうしよう、咲夜さんに怒られる!!」

「門番なのに寝るからだ。後そんな事はどうでもいいが、霧は一体何処から出ている?」

「そんな事って……それは教えれません。聞いた感じ貴方も先に入った人達の仲間ですね?なら教える道理はありません!」

 

すると凄まじい速度で拳を繰り出してくる。太極拳か、中々極めているな。久々のステゴロと洒落込もう

 

「何の!」

「むっ!」

 

拳に力が乗り切る前に頭を突き出す。頭は最も固い骨がある場所だ。力の乗り切らない拳が当たったところで大したダメージは無い。それと同時にカウンターにもなり得る

 

「貴方、相当場馴れしてますね。私には分かります。」

「そちらこそ、格闘戦では今まで出会った奴の中じゃ上位に入る」

 

私の中ではパワー面でいったら星熊勇儀、技術面でいけばコイツ紅美鈴、その二つのバランス型が風見幽香といった感じだな

 

そう考えている間にも相手は猛攻を仕掛けてくる。武術と弾幕を織り交ぜた美しい舞。拳を振り抜いた時、無防備になる場所には弾幕を滑り込ませ、防御と同時に攻撃に転ずる。無駄の無いいい動きだ

 

「ぬぅん!」

 

私は弾幕ごっことやらに慣れる為、ここに来て初めて弾幕を作ってみた。手のひらに青白く光り、電気を纏った光球が現れる。核を中心に電子を集め、その周りで運動をさせる事により電気を纏う。

 

「はっ!」

「!?」

 

バチバチと音を鳴らしながら飛んで行く光球。紅美鈴の周りに浮かんでいた弾幕全てに誘電し、破壊した。上手くいくか掛けだったが、これなら使えそうだ。

 

「余所見している場合か?」

「っ、はぁっ!」

 

その光景に呆気に取られていた奴に縮地を使って急接近する。相手は直様反応し、蹴りを繰り出した。だがそれを少し首を傾けて回避。

こちらも蹴りをかます。気づいて防御しようとするがそこで私は軸足を捻る

 

「ぐあっ!?」

 

突然軌道が変わった蹴りに対応し切れず、首に重いのを喰らった。そのまま奴は倒れ込んで起き上がる気配も無かった。

 

「やっぱりステゴロはいいな」

 

そろそろ霧の排出口に行くか

 

 




キリ悪くてすみません。


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狂気

出来るだけ投稿します


 

 

 

 

 

「ここか」ガコッ

 

私は霧の排出口らしき場所を見つけた。蓋のようなものがされていたが、こじ開ける。

 

「こっからも中に入れそうだな」

 

私には害は無いので排気口を進んでいく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バコッ…

 

 

「ん?なんだここ」

 

出てみると巨大な図書館があった。少し異質なのは棚が幾つも倒れていたり、部屋の所々が破壊されていたりしている所だ。

 

(こりゃドンパチしやがったな。あーあ、本がボロボロだ)

 

乱雑に本が吹っ飛ばされている。穴が空いているものも沢山ある。

本が落ちているのを拾っていると

 

「だ、誰ですか⁉︎そこにいるのは」

「む…」

 

振り向くと頭と背中から小さな悪魔の様な翼を生やした女がいた

 

「突然すまない。お前さんはここの司書かなんかか?」

「えぇ、まぁそうですけど…」

「私はジンというものだ。なんだかんだあって、異変解決に手伝う事になった者だ」

「なんだかんだって適当過ぎません?……あ!なら助けて頂けませんか⁉︎妹様が……!」

 

妹様?誰のだよ。もしかしてここの当主は姉妹なのか?

 

「落ち着いて一つずつ話せ。全く話が見えん」

「はっ!す、すみません…実は先程来た侵入者がパチュリー様と戦闘になりまして…あ、パチュリー様は私の主人です。その余波で妹様の封印が解けてしまい…」

「待て、封印というのはそいつは罪人か何かか?」

「い、いえ能力の制御が出来ずに呑まれているんです。それで致し方なく…」

 

成程。だがいいのかコイツ、誰とも知らん相手にこんなに情報話して。

まぁいい、これも手伝いの内だ

 

「特別だ。手伝ってやる」

「ほ、ホントですか!ありがとうございます!」

「で、そいつは何処にいる?」

「ええっと、お嬢様の部屋の方に向かった筈です。」

「道が分からん。案内しろ」ヒョイ

「ええっ!?」

「行くぞ、道案内は頼んだ」

「ちょ⁉︎、待ってえぇぇぇぇ……………」

 

私はコイツを担いで爆速で走った。座標が分からなければテレポートはできんからな

 

 

「おい!道これで合ってんのか!」

「はいぃぃぃ!あの角を曲がって直進すれば…」

「面倒だ、ぶち破る」

「はい⁉︎」

 

  ドゴオァァァアンッッ‼︎‼︎

 

「どらあぁぁっ!!」

「ひいぃぃぃ!」

 

面倒だったので直線距離で行く。

 

「な、何!?」

「ジンさん!?」

「小悪魔⁉︎何やってるの!?」

「また侵入者ですか!」

「何やってるんだぜ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ〜新しいおもちゃ?今度は長く保ってよ♪」

 

あいつか、その妹様っていうのは。完全に目がイってるな。

 

解析…種族 吸血鬼 能力 『ありとあらゆる物質を破壊する程度の能力』か

 

確かに力に呑まれてもおかしくは無い

 

「さて、お仕事開始だ」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

少し遡って…

 

 

大図書館では魔理沙とパチュリー・ノーレッジが、玄関ホールでは霊夢と十六夜咲夜が戦闘を行い、どちらも異変解決組が勝利を収めた

 

「ほら、約束通り主犯のとこまで案内しなさいよ」

「…分かってるわ、約束は守る」

 

勝利した条件として霊夢は主犯格のいる部屋へと咲夜に案内させていた。だがいかんせん、館内が広すぎるためかなり長い事歩いている

 

「ここよ」

「へぇこんな大きい扉つけて、これだけで幾らかかってるのよ」

「そこらの家二、三軒くらいは買えるわ。んんっ…お嬢様、博麗の巫女をお連れしました」

「入れ」

 

霊夢は想像よりも幼い声が聞こえた事に少し驚きながらも、咲夜に続いて部屋に入った。そこには豪華な椅子に座ったコウモリの様な羽根を生やした幼女がいた。しかし見た目こそ幼けれど、内包するのは紛れもない魔力。その保有量が相手の強さを物語っている。

 

「ようこそ紅魔館へ。私はレミリア・スカーレット。ここの主人よ」

「あんたがこの異変の主犯ね?迷惑だから今すぐ止めなさい」

「断るわ。あの霧は私達吸血鬼が行動するのに必要なものなの。止める事は出来ないわ」

「…なら力づくでやめさせるまで!」

 

そう言って霊夢はお札を取り出し、投げつける。

 

「神槍『スピア・ザ・グングニル』‼︎」

 

それは相手が出した槍によって阻まれたが、レミリアの横を通り過ぎた瞬間爆発した。

一瞬仕留めたかと思ったが、人影が見え

(まぁ、そんな訳ないわよね)

 

「フハハハハ!今のは良かったが吸血鬼を倒すには少々威力不足だな!!」

「その余裕崩してやるわ」

 

言い草に若干イラついたのか、既に大技の準備をしていた

 

「後悔しても遅いわよ!霊符『夢想封印』‼︎」

 

そう宣言すると様々な色や大きさの弾幕が出現し相手に飛んでいく

 

「っ!」

 

この弾幕は妖の類が最も嫌う光を纏っており、下級の妖怪であれば掠っただけで封印されてしまう。上級妖怪でも当たればただでは済まない

 

レミリアは槍で何とか捌いているが、先ほどまでの余裕は無くなっていた

 

「弾幕ばかりに集中していいのかしら!?」

「ぐっ!」

 

それを見逃す霊夢では無い。相手の隙を集中的に狙いながら戦う

 

「…舐め…るなぁぁ!!」

「!」

 

チクチクした戦いにストレスが溜まったのか大振りの攻撃を繰り出す。だが冷静さを欠いた攻撃は隙の他何でもない

 

「掛かったわね。霊符『夢想封印』」

「きゃあぁぁああ!?」

 

レミリアはもろに夢想封印を食らい、再起不能となった。

 

「ふぅ、取り敢えず解決かしら」

 

すると

 

バゴォォオン!!

 

「ぐあっ!」

「ま、魔理沙!?」

「霊夢!あいつはやばい!気を付けろ!!」

 

アイツ…?主犯格以外にも強力な奴がいるの?

 

「キャハハッ!モットアソビマショウ?」

 

崩れた壁から出てきたのはレミリアと似た吸血鬼の少女だった。違うところといえば、翼が様々な色の宝石で構成されている事や、明らかに正気ではないところだ

 

「フラン!?出てきては駄目だと言ったでしょう!?」

「お姉さまばかりずるいよ〜、こんなに楽しそうな事私抜きでやるなんて?」

「フランっ…」

 

何か訳ありね。どちらにせよアイツも倒さないと被害が拡大するわね。どうにかしないと…

 

「パチュリー!封印はどうしたの!?」

「…ごめんなさい。さっきの戦闘の余波で術式が崩れた。また構築し直さないと…」

 

 

すると

 

 

   ドゴオァァァアンッッ‼︎‼︎

 

「どらあぁぁあ!」

「ひいぃぃぃ!」

 

ジンさんが壁をぶち破って来た。

 

「な、何!?」

「ジンさん!?」

「小悪魔⁉︎何をしてるの!?」

「また侵入者ですか!」

「…何やってるんだぜ」

 

そして今に至る




めちゃ長くなった


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神と悪魔

 

 

 

 

「また新しいおもちゃ?せいぜい壊れないでね♪」

 

禁忌『レーヴァテイン』

 

フランと呼ばれた吸血鬼は炎を纏った剣を取り出した

こいつか、件の妹様とやらは。確かにイっちゃってるな

 

剣か…久々に使うかあれ

 

大太刀『天斬』 亜空間から取り出して構える

 

「な、何あれ…」

「凄まじい力をあれから感じる…!一体あれは」

 

この天斬はかなりの神力を包容しているので、存在しているだけで妖怪には毒だろう。そんなものを使えばオーバーキルになる。

…なら何故使うのか、だと? そんなの使いたいからに決まってんだろ! 仕方ないだろ?神以外で馬鹿強い奴に出会わなかったんだから、多少マシな奴見つけたら使いたくなるんだよ!!(切実)

そのせいで軽く五百年くらいは出番なかったぞ!?これ

 

 

 

…ふぅ落ち着こう。獲物は逃げない。一発で終わらせてやる

 

「ま、待って!フランは…フランはただ狂気に呑まれてるだけなの!私が姉としての関わりを疎かにしたから…!お願い…フランを殺さないで…」

「悪いが、私は監視者であってもカウンセラーでは無い。」

「っ…なら私が殺してでも止めるわ!」

「その体でか?それに五百年近く放ったらかしにしていた貴様が今更姉面か?…まだ奴はお前に対する好意を捨てきってはいない。そこで大人しく見ていろ」

 

私はゆっくりと大太刀を抜刀する。月明かりに照らされて刀身が神々しく光った。

 

「キャハッ♪」

 

それを皮切りにして、フランが距離を詰めてきた。

常人ならば視認する事もできずに切り捨てられるであろう速度である。だが早い奴ならもっと他に見た事がある。西欧にいたヘルメスなんかは特に速かった。

それを見てきた私にとってはスローに見える

 

「ふんっ」

「あらっ?防がれちゃったー。今のは当たったと思ったのに」

「まさか今のが最高速度なのか?だとしたらがっかりだ」

 

狂気に呑まれていながらも挑発が効いたのか、表情を凶悪に歪め

 

「おもちゃは黙って壊れておけばいいのよ! きゅっとして〜…」

「!ジン!それはヤバイ!!」

「ん?」

 

魔理沙が何かを言う

奴はこちらに手を向け

 

「ドカーン!!」

 

 ドガアァァアン!!

 

ジンがいた所を中心として大爆発が起きた。これが悪魔の妹フランドール・スカーレットの能力『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』である。対象は粉々に破壊される

 

煙が晴れるとそこには、ジンの倒れた下半身しか存在していなかった。

 

「あ……」

「ジンさんっ!!」

 

霊夢は普段出さないような悲痛な声を上げた。こうならない為の『弾幕ごっこ』であるのに、早速死者を出してしまった。霊夢にしては珍しく

自分の無力さを呪った。

 

「なぁーんだ、つまんないの。すぐ壊れちゃった」

「貴方…!」

 

霊夢がフランを睨む。正気を失っているとはいえ、許されない事をした。完全に退治してしまう事も視野に入れて考えていると

 

「うんうん、吸血鬼にしては中々やるようだ。人妖大戦以来か?こんな奴は」

『!?』

 

その場にいた全員が目を疑った。フランでさえも驚き、恐怖している。自分が壊したモノが生き返るなんて経験には出会った事がなかったからだ。

そして倒れていた下半身がいつの間にか立ち上がり、声を発している。

 

「ちょいと油断したな。反省だ」

 

そう言うと下半身の周りに粒子が発生し、集束していく。誰もその光景を見て声を出す事ができなかった。

1秒にも満たない時間で、先程と変わらぬ様子で立っているジンがいた。

 

「え、ジ、ジンさん?それ…どうなってるのよ?」

「?ただ再生しただけだ。そもそも私は神だ。概念的なものに足突っ込んでいるから、この程度では死なん」

 

例え神であってもあの傷を一瞬で再生するのなんて不可能だ。そんな事が出来るのは原初より存在する神くらいだ。

 

「さてと。少しおいたが過ぎるな?フランドール・スカーレット」

「ひっ!」

 

改めて標的をフランに定める。そしてただフランに向かって歩き始める。何も特別な事はしていない

 

「…!」

 

一歩、また一歩此方に進む度に重圧が増してくる。初めて感じる恐怖とのし掛かる重圧でフランは動く事ができなかった。

 

そして一閃

 

「…あ」

 

フランは糸が切れた人形のように倒れ込む。だが外傷は何故か見当たらない。

 

「我が"天斬"は目に見えぬものを斬る事ができる。存在、概念…感情でさえも」

「それってつまり…」

「今一時的に狂気をコイツから切り離した。目を覚ましたら正気に戻っているだろう。そこでもう一度姉妹水入らずで話し合ってみろ」

「!えぇっ…ありがとう…!」

「さっさと介抱してやれ。狂気とはいえ、感情を切り離したんだ。そのままほっとくと妙な後遺症が残るぞ」

「咲夜!」

「畏まりました、お嬢様」

 

慌てたレミリアは咲夜と呼んだメイドにフランを運ばせた。今一瞬時空の歪みが発生したな。そして瞬間移動…時間停止か

人間にしては良い能力を持っている

 

「…ジンさん、本当に大丈夫なの?」

 

そばに来ていた霊夢が少し心配そうに聞く

 

「さっき問題無いと言ったろうに、心配するな」

「いやあんな光景見せられたら誰でも心配するぜ」

 

魔理沙もやってきた。神の殺し合いでは普通だがな

 

「ま、後の家庭事情はあっちに任せて終わりだ。霧も止めたし、これにて異変解決か?」

「えぇそうね。…はぁ、また宴会の準備しなきゃ…」

「宴会?」

「異変を起こした妖怪達は宴会を通して幻想郷に受け入れられる。暗黙の了解みたいなものよ。…それを何でうちの神社でやるんだか…」

「その…なんだ、大変だな?」

 

随分と憂鬱そうな顔をしている霊夢を見ていると、少し哀れに思えてくる。まぁ頑張ってくれや

 

 

 




キリ悪いなぁ…締め方が分からなくなってきた


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風習

 

 

 

 

 

 ワイワイ ガヤガヤ…

 

異変後、霊夢の言った通り当事者である紅魔館の奴意外にも様々な妖怪や妖精などが、この博麗神社に集まっていた。

 

私はそこから離れた所である者と連絡をとっていた

 

「聞こえるか?アメノ」

『あ、もしもーし?聞こえてるよー』

「調査に来てはみたが、今では問題無く結界も稼働していて、もう漏れる事は無いだろう」

『へぇ〜そうなんだ。じゃあ一応問題は片付いたのかな?』

「そういう事になる。そちらはどうだ?」

『天照はよく働いてくれてるよ。私も助けられてる』

「そうか、なら良かった。」

『…あ!そういえば』

 

アメノが声を張り上げるなんて珍しい。なんだ?

 

「どうした?」

『実は最近ちょくちょく月から探査船が地上に送られてくるんだ』

「何…?」

『そのせいで地上のテレビ局はUFOだかなんだかって大騒ぎ。後何か地上浄化っていう名目で、地上と環境破壊もしてるみたい』

 

 

…あの時の伝言が上手く伝わらなかったのか?もし伝わっていたとしたら舐められたものだ。あちらがその気ならこちらにも手がある

 

「分かった。報告ありがとう。もう暫く此方で調査を進める」

『…うん。分かった、なるべく早く帰ってきてね?』

「出来れば、な」

 

そう言って念話を終了する。

 

「おーい!ジン、そんなとこいないでこっちで飲めよ〜!」

「分かった、今行く」

 

呼ばれてしまったな。久しぶりの宴会だ

 

 

 

 

 

魔理沙に連れられ、宴会の中心まで来る。

 

「皆んな!今から私の友達を紹介するぜ!」

「お?私はお前と友人だったのか?」

「え、ちがうのか?まあ細かい事いいんだよ!」

 

コントのようなやり取りをしながら魔理沙の前に立つ。横に立つ意味は対等である事を表すからだ。まだコイツには私と対等と言える程の実力は無い。残念だが

 

「紹介にあづかった岡迅一郎だ。こんな成りだが、神だ」

 

神、という単語を聞いた途端騒がしくなる。

 

「まぁ神とは言っても今はお前らをどうこうしようって話では無い。仲良くしてくれると助かる」

 

拍手が起こった。此処の妖怪は神に対する嫌悪感情が薄いのか?

どちらにせよ都合は良い

そう思いながら見渡していると、見覚えのある姿が見えた。あいつは確か…

 

「射命丸文と犬走椛、だったか?」

「あ!ジンさん!?貴方も幻想郷に来てたんですか?」

「ま、仕事の一環でな」

 

やはり合っていた。ぶっちゃけ烏天狗とか白狼天狗とか皆同じにしか見えんが、最低言葉を交わした相手は覚えている

 

「お前ら二人だけか?他の奴らは?」

「あ、いえ実は結界が張られた時に妖怪の山がそのまま範囲に入っていたみたいで…」

「鬼供がキレなかったのか?あいつらは短気だからな」

「…えぇ、最初は萃香さんが『ジンと喧嘩出来なくなる!』って言って少し荒れましたが…」

 

何だか表情が一気に沈んだように見える。大変だったんだな

 

「じゃあ今度会いに行ってやるか、山に」

「あ、いえ鬼達は皆んな地下に行ってしまいましたよ?」

「はい?」

「何でも、地上が面白く無くなったとかで…」

 

…力で劣る人間が格上に勝つには、技術と策略が必要だ。策略の中には嘘も含まれるだろう。真正面からの喧嘩が好きな鬼にとっては嫌で仕方なかったんだろう。

 

「…そうか、じゃまた別の機会にしておこう。山にもいずれ行くかもな」

「了解しました。また上には話を通しておきます」

「私も哨戒天狗に連絡しておきます」

「あぁ、助かる」

 

こんな所で旧知の者と出会う事になろうとは。人生何があるか分からんものだ。

そんな感情に浸りながら酒を嗜んでいると、レミリアがメイドも付けずにこちらへやってきた。

 

「よう、妹は元気か?」

「えぇお陰様で。…貴方には感謝しかないわ、フランと話し合えるチャンスをくれて」

「私は何もしとらんよ、ただ鎮静剤打っただけだ。関係を修復出来たのはお前の努力に他ならない」

「フフ、そう言ってくれるなんて、優しいのね貴方は」

「勿論、神の中ではニ、三番目に優しい自信はある」

「あら?一番はだれなのかしら」

「アメノとか言う原初神様だよ。全く奴のお人好しと言ったら歯止めが効かん」

 

 

レミリアはあの後しっかりと話し合い、蟠りを除き関係を修復できたようだ。姉妹だから出来る事、他人同士じゃ絶対不可能である

 

「妹に伝えておいてくれ。私は優しい、とな。会う度怖がられては敵わん」

「えぇお安い御用よ。そう伝えておくわ」

 

うむ、家族愛というのは素晴らしい。五百年のうちに出来てしまった壁を破壊できるほどだ。

…もしあの時あいつらが生きていたらどうなってたろうなぁ

 




あいつらとは、ジンのかつての家族や仲間の事です


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異常気象

今さらですが作者は東方にわかです。なので時系列が可笑しければ報告お願いします。


 

 

 

 

 

 

「寒い…」

 

そう言った吐いた息が白く漂う。私は今人里にある民家に住んでいる。神社にいつまでも世話になる訳にはいかない。私は自立した立派な大人だぞ?

それにしても寒い。もう五月だ。四月でこれならまだしも、春が本格的に始まる五月で雪が降るなんてあり得ない

 

「異変…か」

 

異変、それは妖怪が引き起こす異常現象の事を指す。霧の異変から一ヶ月も経たない内にまた起きた。

こんな周期で起きて大丈夫なのか?幻想郷

 

 コンッコンッコンッ

 

そう思っていると扉がノックされた。開けてみるとそこには魔理沙が居た。

 

「どうした」

「ジン!異変だぜ!」

「わかっとるわアホタレ。朝からでかい声出すな」

「じゃあ何で動かないんだ?」

「それは博麗の巫女とお前とかの役目だろう。動く必要がない」

「ええっ、じゃああの霧の時は!?」

「あれはこの幻想郷のルールを知る為、同行しただけだ。そもそも神が

特定のどちらかに味方につく事なんて本当に稀だ」

 

来た時は弾幕ごっこやらシステムが分かっていなかった。それを理解して慣れる為について行っただけなのだ。例外というものだ

 

「めんどくせぇなぁ、神って」

「そういうもんさ、神なんて。ほら早くしないとまた霊夢に先越されるぞ?」

「あ、ホントだ!じゃあ行ってくるぜ!」

 

箒にまたがってすぐに飛んでいってしまった。嵐のように来て嵐のように去っていったな。

さ、仕事の続きでもするか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くして

 

 

「ん?」

 

各地域からの神々の報告書を纏めていると、私が今いる場所、つまりは摩多羅隠岐奈が担当神としている幻想郷に関する報告書が無い。

多忙で出し忘れたか?…どちらにせよあまりよろしい事では無い。

仕方ない、行くか

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

後戸の国 ありとあらゆる世界へと通ずる扉が無数に存在する、幻想郷の賢者の1人、摩多羅隠岐奈の住処である

 

「最近お師匠様、ずっと忙しそうだねー。もう何年も表に出てきてないし」

「腰でも痛めたんじゃ無い?車椅子新調してたよ?」

 

そしてこの2人は摩多羅と師弟関係にある爾子田里乃と丁礼田舞である。元々人間であったが、部下になった際人外へと至った

 

「…心配だね、あの人私達がいないとただの要介護者だよ?」

「だね〜」

 

すると突然、数ある一つの扉からノックが聞こえた。

 

「「え?」」

 

だがそれはあり得ない事である。この扉は一方通行であり、こちらから開ける事は出来てもあちら側から干渉する事は、摩多羅隠岐奈本人以外には不可能である筈なのだ

 

 コンッコンッコンッ

 

「「ひっ…」」

 

しかし絶えず音は聞こえてくる。そしてついに

 

 

 ガチャッ

 

「っ、舞!」

「えぇ!」

 

とうとう扉が開かれた。舞と里乃は臨戦体勢に入った。

そこから現れたのは2メートルはあろうかという男だった。男は窮屈そうに身を屈めながら入ってきた。

 

「…ふぅ、通るのにも一苦労だなこれは」

「あ、貴方誰よ⁉︎」

 

師匠の妖術に何でもないかのように干渉してきたこの男には、正直勝てる気もしないし、恐怖しか湧いてこない。だがせめて素性は暴こう

 

「お前らは…摩多羅の部下か?なら丁度いい、摩多羅に書類の不備があったと伝えておいてくれ。後それが終わったら提出し直すように」

「「え?」」

 

暫く二人が呆然としていると

 

「舞〜、里乃〜、服着替えさせて〜」

 

突然現れた扉から、少し寝ぼけている摩多羅隠岐奈本人がヨボヨボと歩いて出てきた

 

「あ、師匠!」

「何だ、居留守を使っていたのか」

「へ?……お、お、岡様!?」

 

隠岐奈は驚き、直ちに姿勢を正す。…その姿が寝巻きで無ければもう少しマシだったかもしれない

 

「お前が提出する筈だった書類がまだこちらに届いていない。早急に出して貰わないと困る」

「も、申し訳ありません!今すぐ準備を…」

 

舞と里乃は初めて見る師匠の態度に驚いた。ジンの事を全く知らない二人からすれば何がなんやら分からないだろう。ただ一つわかる事は師匠の上司にあたる存在だろうという事だ

 

「…あ、ここの書類に関しては紫が担当していますので、私では分かりかねます…」

「なるほど、二人で兼任しとる訳か。分かった、其方に向かおう」

「い、いえそんな!私達の落ち度ですので私が取りに行きます!」

「いや、最近体を動かしてないものでな。散歩がてら行くさ」

「左様でございますか…」

 

ついでに人里で買い物してから帰るか

 

「じゃあ私は行ってくる。あぁそうだ、摩多羅よ」

「何で御座いましょう?」

「あまり無理するな、神が過労死なんて笑えんぞ」

「!了解致しました。お心遣い感謝致します」

 

ふ、私に隠し事など十億年早いわ。神であっても疲労は溜まる。特別な事がない限り死ぬ事はないだろうが、気をつけた方がいいに決まっている。

…少し長居したな。早く行ってしまおう

 

私は空間に穴を開け、そこに入る

 

 

 

 

「お師匠様、あの人は一体…」

「あの方は…私が知る中で最も強く、偉大な方だ」

 

(お師匠様がそこまで言うなんて…今度はゆっくり話してみたいな…)

 

ジンに興味が湧いた二人であった

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「よっと」

「じ、ジン様!?何故ここに⁉︎」

 

八雲紫の気配を感じた場所に転移してみると、どうやら奴のスキマ内部に出たみたいだ。相変わらず気色の悪い見た目をしている。

 

「何故、だと?貴様がさっさと報告書を提出せんからだろうが。結界や幻想郷の管理は摩多羅と自身の式に振っておいて、少しは仕事をしろ」

「はい…すみません…」

 

全く…こいつの仕事ぶりを聞いた時は頭沸いてるじゃないかと錯覚した。アメノの方がまだ全然仕事してたぞ

 

「因みに何をしていた?こんなとこでコソコソ何を見ていた」

「えっ、いやそれは…」

 

普段胡散臭く、掴みどころの無い紫がここまでしどろもどろになるのは、どう足掻いてもジンには隠し事が出来ないと身を持って体感したからである。だから良くて誤魔化す程度しかできない

 

 私は開いているスキマから外の様子を伺う

 

「どれどれ…ふむ、西行妖か」

「…ご存知でしたのね」

「当たり前だ。こんなタチの悪い妖怪忘れる訳が無い……まさかこれを咲かせようとしていたのか?」

 

紫はこれ以上隠しても無駄だと思ったのか正直に話す

 

「…はい。私の友人西行寺幽々子の願いで、西行妖に封印された何者かを知りたいと…」

「知りたい…という事は西行寺は知らんのか、誰がそこに埋まっているのか」

「はい、しかしそれを直接伝えるのも酷かと思い…」

 

気持ちは分かるが共感はしない。そんな事の為に春を奪い、西行妖を復活させるなど、言語道断である

 

「ふん、理由はそれだけでは無かろう?…まぁ聞くような事はせん。既に解っている」

「フフッ、敵いませんね…」

 

スキマの外に視線を移すと、霊夢と魔理沙が西行寺幽々子と戦っているのが見えた。私と違って普通の人間なのに頑張っているな。これだけ有能な者が居れば、此処も安泰だろう

 

「おっ」

「…終わりましたわね」

 

見事霊夢が幽々子を打ち倒した。

何か話しているが、春を返すとか、宴会とかの話をしているのだろう。ご苦労な事だ。

 

 

「…感傷に浸っているが、書類の事忘れてないよな?」

「あっ…」

「貴様…」

「あ、いや違うんですよこれはあぁぁぁぁあ!?」

「ふん…」

 

少々電流を流してやった。このくらいは罰だ。認められる範囲だ

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

同時刻

 

「これに懲りたらふざけた事はしない事ね」

「えぇ分かったわ、春は返す。桜は諦めるわ」

「桜なんてこっちで見ればいいじゃ『あぁぁぁぁあ!?』っ!?」

「この声は…紫!?」

 

ふわふわした雰囲気の幽々子でさえ突然響いた友人の断末魔に驚きを隠せないでいた。

 

すると空間がパックリ割れ、ジンと紫だったものが出てきた

 

「お疲れさん、霊夢」

「ジンさん!来てたの?」

「ちょっとこいつと"お話"をしていた。」

「あぁ…成程ね……」

 

詳しい事情は分からないが、また何かやらかしたというのは理解できた。懲りない妖怪である

 

「また宴会するのか?ほんと飽きないよなここの連中は」

「そうね…まぁそんな雰囲気も嫌いじゃないけど」

「⁉︎霊夢がデレたぜ!これはスクープだ!」

「魔理沙!?いつの間に…」

「スクープと聞いて!清く正しi」

「あんたは帰れ!」

「あああああ…」

 

何か関係無い奴も居た気がする。ま、んな事どうだっていい。今日もまた平和である




初めて三千字行った…!


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決断

今日も投稿頑張るぞい


 

 

 

 

 

 

"月が綺麗ですね"

日本が誇る大文豪、夏目漱石が人に愛を伝える時に言った言葉であるらしい。ユーモアがあり、外国人にも人気のある言葉である。

だが私は月そのものがあまり好きで無い。なぜなら…

 

「夜が終わらない…」

 

月が数時間前から移動しない。当たり前だ、この月は"偽物"だからだ。よく出来てはいるが月からの魔力に敏感な神や妖怪にはすぐ分かる。本来なら既に日が昇り始めてもおかしくない時間帯である。大体こういうのは月の民が関わっている為、ストレスが溜まっていく。

これは本気で対策せねば

 

 

私は携帯を取り出す。ちなみにこれはグレードアップされ、外で言うところの『スマホ』というのに近い形になった。

 

 プルルルル プルルルル ピッ

 

『もしもーし?ジン?』

「私だ。少し話がある」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

地獄にて

 

 

私は今ヘカーティアと向かい合って座っている

 

「あの、私に何か用でしょうか?私何かしてしまいましたか?」

「いや、そうではない。先程決まった事を伝えに来た」

「決まった事…ですか?」

「あぁ、臨時神議会で"月面対策委員会"というものが樹立された」

「!?」

 

そう、先程の通話の後臨時神議会を私名義で開いた。

月の民による地上干渉が露骨になってきている事を背景に、これ以上勢い付く前に手を打とうという事で樹立された独立組織『月面対策委員会』である。月の民による地上干渉は神王法典の"正しい生態系を維持する"に反するとして、それが起こった場合いつでも対処できるようにしたものである。

本来滅びる筈だった旧人類が存続し、今もなお新人類に干渉する事は異常なのである。

 

「という事でお前達は公に月に干渉する事が認められるようになった。委員長と副委員長はお前らのどちらかに決めろ。私は最高顧問を務める」

「な、なるほど。了解しました。純狐にもそう伝えておきます。」

「…奴は今どこだ?」

「部屋で嫦娥に対する恨み節を綴っています」

「そうか…まぁ決まったら提出しておいてくれ。」

 

これが形式だけのものにならない事を祈るばかりだな。

アメノは月の民や月読の事を気に入ってるから渋ってはいたが、いい感じに言いくるめて認めさせてやった。

対策は早いに越したことはない

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

地獄から幻想郷へ帰って来たが、まだ夜が続いている。既に半日経ったが、まだ霊夢は動かんのか?

一体何をしているのやら。案外めんどくさがって動かないだけかもしれんな

 

「仕方ない、様子を見に行くか」

 

空を見上げるとまん丸の不自然に真上で止まった月がある。月に関しては私が動くことにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、霊夢いるか?」

「あら?ジンさん、何しに来たの?…あ、お賽銭はそこね」

「神社の巫女が神に賽銭たかるなんて、どうかしてるな…」

 

そう言いながらも五百円玉を入れてやる。本当にここ立地悪いな。今いれた時チラッと見えたが何故か葉っぱしか入ってなかったぞ。ていうか誰がいれた?

 

「ま、そんな事どうでもいい。霊夢、まだ動かないのか?」

「動くって何がよ」

「月の事だ。」

「月?何も変わらないじゃない」

「まさか今までずっと寝てたのか?」

「えぇ、私にしてはえらく早起きしたなーとは思っていたけど」

 

oh… まさか気付いてなかったのか。まぁ月とか夜とかに関係が深い妖怪とかなら気付くが、人間には感知しづらいのかもな

 

「因みにもう半日経ったぞ」

「え、嘘。」

「これこのまま日が出てこなければ地上の気温がどんどん下がって死滅しちまうぞ」

「大変じゃない!すぐ行かないと!」

 

夜が明けない。言葉にすると『それが?』となるだろうが、実際はもっと恐ろしい。日が出なければ気温が上がらない。それが何日も続くような事が有れば、ほんの三日程で人間は行動不能になり、一週間もすれば全生命が地上で生きる事は出来なくなるだろう。

早くせねば割と大変な事になる

 

それにしても月では目立った動きは無かった。ヘカーティアもそう証言している。ならば何故…?

この現象が起きているのは幻想郷内だけ。まるでこの幻想郷を月から隠しているような…

 

 

 

 

……いや心当たりのある人物がいる。あの二人なら多分大丈夫だろう。

 

蓬莱山輝夜と、八意永琳。どちらも月の関係者である。八百年ほど前に反逆を起こし、月から追われる身となった者だ。

幻想郷内だけでやるなら別に構わん。だがそれを博麗の巫女が許すかどうかだな。ま、許さないからさっき動いたんだろうが

 

 

月との関係はどうなることやら




最近文字数多いような…


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迷いの竹林

難産ってやつですかね…


 

 

 

 

 

「幻想郷にこんなとこあったっけか」

 

突然だが私、岡迅一郎は絶賛謎の竹林で困っている。暇だから霊夢の異変解決を上から見ていたのだが、霊夢がこの竹林に入った瞬間正確な座標が導き出せなくなった。

私も入ってみると不思議な感覚に襲われた。常時発動している電磁波感知の精度が著しく下がった。どうやら此処には磁波を狂わせる効果があるようだ。きっと何の対策もせずに入った人間は朽ち果てるまでここで迷い続ける事になるだろう。

まぁ私は"座標"を設定すれば何時でも出れるのだが、霊夢達が心配だ。いつのまにか死んでましたは笑えない

 

「割と厄介だなこの竹林は」

 

竹林の中を歩いていると、不意に予感を感じた。

咄嗟に上へ飛び退くと先程までいた地面に大穴が空いた。かなりの深さがある。

誰が仕掛けたんだ?

 

「う〜ん残念、行けると思ったんだけどなぁ」

「ん?」

 

すると聞き逃してしまうほどの小さな呟きが私の耳に入った。その方向を見るとかなり離れた場所に兎の耳を生やした少女が立っていた。

どうやら見られている事には気づいてないようだ

 

「失礼」

「え?うわっ!あんたいつの間に⁉︎」

 

いい情報源がいた。ここで色々聞かせてもらおう

 

「あの罠はお前が仕掛けたものか?」

「え、え〜と…」

 

めちゃめちゃ目が泳いでる。これは確定でいいだろう。

 

「まぁいいさ、私は質問がしたい。これに答えてくれれば"あれ"のことは不問にしてやろう」

「!誰が知らない奴の質問に答えるもんか!じゃあねっ!」

 

そう言うと脱兎の如く逃げ出した。無駄な事を、私に個人の"座標"を握られた者は何処へ行こうと逃れることは不可能である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……ここまで来れば…それにしても何だったんだあの人間は…」

「私別に純粋な人間って訳じゃないんだけどね」

「そうなんだ〜……って、え?」

「やぁ」

 

割と遠い場所まで逃げたな、かなりの距離を移動した感じがする。

外から見たらそんなに大きくなかったが、ここも空間拡張されてるのか?

 

「な、なんで」

「私に逃げるという行為は無駄だ。何処へ行こうと必ず見つけ出す」

「…規格外だねぇ」

「それよりも質問いいかな?」

「あぁもういいよ、どうせ逃げられないんだし」

 

そう言うとやつは近くにあった岩に腰掛ける。私も空気椅子をする。因みに私の空気椅子は一般的な筋トレを指すものではない。空気を凝固させてそれに座っている為本当の空気椅子である。

 

「…それどうなってるのさ」

「いずれ教える。先にこちらからだ、因幡てゐ」

「⁉︎何で名前を…」

「お前、大国主の系譜の者だろう?奴から聞いた」

「大国主様から⁉︎…じゃああんたも神様ってこと?」

「そんなものだ。質問に移るぞ、お前の様な神の眷属の様な者が何故こんな竹林に引き篭もっている?」

「…それは私がある人に仕えているからさ」

 

ある人…大体察しはつくが一応聞いておこう。

 

「ある人ってのは銀髪と黒髪の女か?」

「知ってるのかい?ならあんたの想像と同じ人だよ」

 

やはりか、確かに身を隠す所としては最適だろうが自分達も出れなくなっては本末転倒では?

 

「今更だがお前達はどうやって暮らしているんだ?こんな所住みづらいだろうに」

「私はこの竹林の構造がわかるんだよ。だから道案内を任されてるのさ」

 

驚いた、この複雑な造りの場所を理解できるとは。頭の出来もかなりいいらしい。大国主も良い部下を持ったものだ。

私も眷属を作ろうかね…

 

「素晴らしいな、私の眷属にしたいくらいだ」

「馬鹿言わないでおくれよ、私の主人は大国主様以外にあり得ないよ」

「ハハッ、そうだったな」

 

残念だ。私の方が早く逢っていたら勧誘できたのに。ま、昔のことを悔やんでも仕方ない。眷属作りは別の機会にしよう

 

「質問に答えてくれてありがとう。じゃあ私は永琳のところに行くとしよう」

「あんた道分かるのかい?案内するよ」

「先程此処を"解析"した。もう迷う事はない」

「反則だねぇその能力とやらも」

「そんな事ないさ、これを使うのにもかなりの力量が無ければ死ぬ事もあるからな」

 

私があの時生き残れたのは貪欲な生存本能と精神力、後は脳の許容量が仲間より少し多かったからできた事だ。あの時これの一つでも欠けていたら私は此処には存在しなかった。

 

「お前も来るか?」

「勿論さ、あっちがどうなってるか気になるしね」

「それでは行くとしようか」

 

私とてゐは並んで歩き出す。2メートル近い男と130センチほどの少女が並ぶと少々面白い

 

「こうやって見るとホント子供だなお前」

「何言ってるんだい、こう見えて四十万年くらいは生きてるよ」

「なら全然子供だな、私はこう見えて五十億年は生きてる」

「ごじゅ…!?お師匠よりも長いじゃないか」

 

談笑しながら私たちは2人が住む『永遠亭』へ向かう




頑張った…


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永遠亭

文章力欲しい…


 

 

 

 

 

「なぁ」

「何?」

「一つ聞いていいか?」

「うん」

「お前らはこんなボロボロな所に住んでるのか?」

「…いや」

 

私達は今門が吹っ飛んでいる永遠亭の前に立っている。門以外にも屋根やら外壁やらが酷い事になっている。

まぁ十中八九、霊夢たちだろうな。歯止めが効かない奴は何するか分からん。

 

「うぅ…」

「あ、鈴仙」

「鈴仙?こいつがか」

 

門だった場所の近くでてゐと同じような1人の兎少女が倒れていた。その少女は鈴仙と呼ばれ、先程の話で出てきた者と一致する

 

「…あ、てゐ!貴方何処に行ってたのよ!侵入者を防ぎきれなかったじゃない!」

「ちょっと散歩にね〜」

「あんた…」

 

なんか完全に置いてけぼりにされている。おじさん悲しい

 

「ちょっといいか?」

「え?…うわぁっ!?デカッッ!」

「むしろ何で気づかなかったのさ…偶にそういうとこ抜けてるよね鈴仙って」

 

やっとこっちに意識が向いてくれた。意図的に無視されたかと思っていた。

 

「もしかして赤色の巫女服か、白黒の服を着た少女にやられたのか?」

「何でその事を…もしかして仲間っ!?」

「そんな訳ないでしょうが、だったら私と一緒にいないでしょ」

「む、確かに…」

「既に中では永琳と霊夢が戦っとる訳か。だが綿月家の指南役だった永琳に霊夢が勝てるのかねぇ。ま、その為の弾幕ごっこなんだろうが」

「師匠の事まで…一体何者なの?」

「一応それなりに偉い神様だよ。少なくとも月読よりはな」

「⁉︎月読様と面識が?」

「面識はあるにはある。月には色々と因縁があるからな」

「ヒエッ…」

 

そういやコイツ地上の兎と何か違うな。コイツの周りの波長が狂っている。こんな能力、地上の兎妖怪には無い。

思い当たるのはヘカーティアから聞いた『玉兎』だ。それに該当する。

 

「それにしても派手にやられたな。門なんて原型留めてないぞ」

「…地上の人間を侮っていました。これじゃ師匠に顔向けできません…」

「それで怒るような奴では無いだろ。私もついていって話してやる。とりま案内してくれ」

「…分かりました。では案内致します。」

 

さて、どんな事になっているかねぇ。

八意永琳…能力は完全後方支援型ではあるが、戦闘センスは月でも最強と呼ばれた綿月姉妹でさえも上回る。弾幕ごっこで制限はあるだろうが、それでも霊夢達が簡単に勝てる相手ではないだろう。結果が楽しみだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「何これ」

「こりゃ随分と吹き抜けがよくなったね」

「そんな事言ってる場合⁉︎天井まで飛んでるじゃない!」

 

永遠亭の内部も中々酷い事になっていた。天井が消えて月がくっきり見えてしまっている。その月明かりに照らされて、永琳と霊夢達か戦っているのが見えた。何で紅魔館勢もいるんだ?ここで株を上げておこうという魂胆か

 

「あら?ジンじゃない」

「お、見当たらないと思ったらそんな所に引きこもってたのか」

「姫様!」

 

考察していると馬鹿みたいにある襖の一つから蓬莱山輝夜が出てきた。タイミングの良いこった。

 

「お前さんは加勢しないのか?流石に霊夢と紅魔館の奴らを同時に相手にするのは骨が折れるぞ?」

「…永琳が1人で行くと言ったのよ。私にまだ負い目を感じてるみたいね」

「お前が薬飲んだのはもう何億年か前だろ?メンタル弱すぎか」

「人の心っていうのは複雑なのよ…」

 

人の心、か。私は今それを持っているのだろうか。今の私は普通に神、妖怪、人も普通に殺す。最早残ってないのかもな

 

「…ま、それがお前らの選択なら尊重はする。後追手に関しては気にしなくていい。月の連中が大結界を越える事は不可能だ。」

「あら、そうだったの?二度手間だったわね」

「そうだな、ぶっちゃけ何でこんな事するか意味が分からんかった。一応今回の事は八雲に謝っておけよ。」

「八雲ってこの幻想郷の管理者かしら?」

「そうだ、よく知ってるな……終わったみたいだぞ」

 

上空で永琳が霊夢の『夢想封印』と魔理沙の『マスタースパーク』で挟み撃ちにした。よくできた連携だ。永琳の防御壁を突破するとはやるもんだ

 

「ま、そういうこった。此処で起こる面倒事は全て八雲紫のとこまでな」

「フフッ、分かったわ。何かあれば八雲紫に、ね」

 

 

暫く全てあいつに仕事させるのも悪くはない。サボってたツケだ。ありがたく受け取っておけ

また事後処理が待っているぞ。




戦闘シーン書けなくてすみません


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日常

主人公のイラストに対してのご指摘がありました。もし私の方が上手く描けるッッ!という方は是非ご提供お願い致します。


 

 

 

 

英知界にて

 

 

クッソ 最近は妖怪の活動が活発過ぎて報告書が絶えん。特に魔界らへんだな。これじゃ処理しても仕切れない。宇宙から発せられるエネルギーの管理もせねばならん。誘われてしまったが、やる事が多いから今回の宴会には行けないかもな。一応連絡は入れておこう。

英知界の情報技術を使い、幻想郷の様子を投影する。

 

『この度はお騒がせして申し訳ありませんでした。』

「おっ、永琳だ」

 

映ったのは博麗神社で永琳が紫に謝罪している場面だった。偉くなると多方面に顔出さないといけないから面倒臭い事この上ない。

 

「…輝夜め、永琳に全部丸投げして飲んでやがる」

 

肝心の輝夜というと、宴会の中心で他の奴らと酒を飲み交わしている。既に出来上がってるな。

もう霊夢今いねぇからあいつに連絡しとこ

 

「よぉ輝夜」

「あら?ジンじゃない。…どんな格好よそれ」

「うわっ、ジン⁉︎ そこにいたのか、何してたんだぜ?」

 

魔理沙もいたのか。丁度良い。魔理沙にも伝えてもらうか

私は今空間に穴を開け、境界越しで話している。どこぞのスキマ妖怪みたいな事をしている。

 

「どうでもいいじゃないか、そんな事。因みに私はこの宴会には参加できない。仕事が舞い込んで来たのでな」

「えーっ!なぁんだつまんないのー。サボればいいじゃない。」

「アホ抜かせ。お前のような感覚でサボってたらこの宇宙はお終いだ」

 

マジでそれはヤバイ。高位の神が仕事しなくなったら宇宙レベルで世紀末だ。外で流行ってる○斗の拳みたいになっちまう。

 

「ともかく、私は忙しい。これから多方面の神に会いに行かないといけない。お前が手伝ってくれるなら楽なんだが」

「さ!ジンいってらっしゃい!私は飲み直さないといけないから忙しいの」

「ハッ、言ってろ」

 

何年経っても生意気な奴だ。この態度は何故かそれほど不快じゃない。良いところだな、幻想郷ってのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…殺してやる。蓬莱山輝夜……!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

魔界 それは名前とは裏腹に文明の発達した、現代社会にも劣らない世界である。実は最近ここの住人が人間界へと流れ込むという現象が多発している。

魔界に住む魔人は厳密には妖怪ではないのだが、それを恐れる人間が存在するのも事実。よって私は人間界と魔界の付き合い方について、魔界の創造神と話し合う事になった。創造神というのはかなり神格の高いもので、各地域の最高神にも匹敵する者がいる。

 

 

「…一応私からは人間界に干渉しないように呼びかけてはいるのですが、あまり効果は見られず…」

「そりゃお前は魔界人から見れば優しいお姉さん扱いだもんな。ちょいと優しくしすぎたんじゃないか?」

「うっ…そう言われると否定できませんね…」

 

今私が話しているゆるーい雰囲気の神が、かの創造神『神綺』である。魔界の全てを創造した神である。また、見た目と性格も相まり神々の中でも莫大な人気を誇っている。勿論本人は知らないが

 

「優しくすると親密度は上がるが、それと同時に舐められやすくもなる。そこの線引きが大事だぞ?」

「難しいですね、そこらへんの事は…」

「もう既に民間企業が容易にあちらと行き来できる技術を開発してしまったからな。私が技術統制等の法令を作り公布するのが手っ取り早いが、抜け穴を見つける奴はいずれ出て来るだろう。そこら辺はお前の人望に任せる」

「私に出来るでしょうか…」

「アホタレが、出来る出来ないじゃない。やるんだよ」

 

プライドはそれなりに高いくせに変なところで弱気な奴だ。いつも通りやればいいんだよ、いつも通りに。

 

「…そういや魔界と言ったら、何百年か前に魔界(ここ)誰か封印されなかったか?」

「封印?…あぁ!確かに誰かここに来ましたね。正確にはここの端の方にある"法界"にですが」

「法界?また新しく作ったのか。暇な奴め」

「むー、そんな言い方ないじゃ無いですかー」

「因みにそいつは魔法使いだったか?」

「え?いや詳しいことは何も…」

「そうか、分かった。ありがとう。後今回の件に関してはしっかり法令を出すこと。一定期間でいいから厳しい厳罰を課すのもいい。私は魔界と人間界の間に関所を作るように提言しておく。頼んだぞ」

「はい。了解しました。」

 

問題は次から次へとやって来る。スピード感持ってやらないと溜まるばかりだ。

 

…それにしても法界か。様子を見に行くのもありだな。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

神綺に言われた通り魔界の端まで飛んできてみた。確かにこの辺りだけ白い壁の様なもので隔てられている。この中にアイツはいるのか。

試しに中に脳波を送ってみる。

 

(誰か…誰かいないか?)

 

暫く送ってみるが返答はない。この中で死ぬ事はない筈だが、イレギュラーでも起こったか?

 

(……その声は…)

 

! 漸く返答がきた。神綺曰く、そこはまだ住人は誰も入れていないので、いるとすれば例の魔法使いだろうとのことだ。

 

(ジンさん…ジンさんなのですか?)

(あぁ、私だ。久しぶりだな聖白蓮。と言っても姿は見えないが。…それにしてもしっかり生きていたのだな。驚きだ)

(あの子たちを残しては死ねませんもの。それにまだ目的を達成しておりません。)

 

…まだ信念を曲げていなかったのか。

 

(人間にあれ程の事をされてまだ考えは変わらんのか?)

(私はきっと死ぬまで曲げませんよ。だって私、頑固ですもの)

(ハハハッ!随分と変わったな、お前も。面白くなったようだ。復活する日が待ち遠しい。…それか今ここで解除してやろうか?)

(フフッ、いえ大丈夫です。あの子達が私の為に頑張ってくれているのでしょう?ならばそれを待ってみたいと思います。)

(そうか、ではまた次会える時まで…)

(えぇ、また……)

 

思ったより元気そうで良かった。会うのが楽しみになってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

「そろそろ私も部下が欲しいな。神綺、お前はどうしている?」

「私は基本的に創造していますのでなんとも…」

「創造か…私は物質を操作して器くらいなら造れるが、魂とかの話になるとな…」

「あれ?貴方できませんでしたっけ?」

「いやまぁ出来るんだが、疲れるんだよな。だから今までしなかった。かと言って式にしたらそいつ本来の力が弱まるから嫌だしなぁ」

「…もうこの際ロボットとかにしたらいいんじゃないですか?」

「何だと……?」

「えっ、いや今のは意見の一つというか…」

「機械ッ!それは盲点だった!助かったぞ神綺っ!」

「へっ⁉︎ あ、喜んで頂けたなら幸いです?」

 

 

それにしてもロボットか……私の頭脳であれば外で流行っている漫画や映画を遥かに超える人工知能が造れるだろう。

帰ったら試してみよう




結構長め?


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初めての部下

今日はあんまり投稿できないかもです…


 

 

 

 

 

「ここを…こうして、プログラムは…まぁ後でいいか…」

 

神綺に助言を受けてから早速私は製作に取り掛かった。魂を創造しようとすると、100%覚醒しなければならない。それは割と疲れるのだ。70%の比ではない。

機械であれば量産もできる。これで仕事をサボゲフンゲフン…分担できるな。

 

そんなこんなで一応器は完成した。見た目は拘らなかったのだが、何処から聞きつけたのかアメノが『外見は私と似たような感じにして!』と言ってきた。最初は渋っていたが反抗するだけ無駄と思った私は要望通りにしてやった。

外観はアメノと同じく白髪である。が少しでもアメノ感を減らしたかった私は髪の長さをショートにしてやった。何故かがっかりしていた様だが、そんな事関係ない。してやったりである。

それに英知界に居てまで奴の顔を四六時中見たくは無いので仮面を付けさせた。

次にプログラムを設定してしまえばいいのだが、自己決定意思を持たせるか待たせないか…そこで悩んでいる。

持たせれば自身で考え成長していってくれるが、命令に従わない場合も出て来る。かといって持たせなければ、ただ仕事をこなす作業用ロボットへと変貌してしまう。

 

「困ったな……そうだ、自己決定意思は持たせて強制プログラムを設定すればいいのか」

 

こうすればいざという時、謀反を起こす事も無いだろう。それが外から見てどうなるかは知らんが

ならば…プログラム実行だ

 

 バチバチバチッ… ピーー

 

「…失敗か?」

「初めまして。これから貴方様に仕えさせていただく、自律思考型ロボットで御座います。」

 

無機質な声が響き、成功した事を実感する。それにしても『自律思考型ロボット』か。長いし呼びづらいな。

 

「…名前を付けようか」

「私に名前など必要ありません。雑用とでも思ってくれれば良いです。」

「呼びづらいから名前を付けるのだ。お前が決める事ではない。」

「申し訳ありません、出過ぎたことを」

「いい、大丈夫だ。……名前…白髪…」

 

折角髪が白色なのだからそれに関する名前を付けようと考えていると、いつぞやの投影された宇宙図が目に入った。

…そういえば天体の中には日の沈まない現象が起きるものがあったな。確か…

 

白夜(びゃくや)

「はい?」

「白夜、それがお前の名だ。これからそう名乗るといい」

「!…ありがとうございます。この白夜、貴方に誠心誠意仕えさせていただきます。」

 

声こそ無機質ではあるが、少し表情に変化があった。既に感情が生まれ始めているのか。流石私が作った人工知能だ(自画自賛)

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「はっ、ふっ!」

「甘い、脇がガラ空きだ」

「くっ…」

 

私達は今戦闘訓練を行なっている。業務の中には人妖の制圧も含まれる。私の部下ともあろう者がそこら辺の妖怪に負けていてはいかん。よって訓練をつけている訳だ。

人工知能というのは飲み込みが早い。口頭で伝えただけの技をものの1分足らずで物にしてしまう程だ。だが使えるだけではいけない。実戦でどれだけ臨機応変に戦えるかが大事なのだ。そこら辺がまだ甘い。

 

「今日はここまでにしておくか」

「了解致しました。ご指導ありがとうございます。」

 

…固いな。もう少し楽にしてくれてもいいのに。感情の無いロボットという訳ではあるまいし。ま、奴がそれでいいと言うなら構わないが。

顔こそアメノに似ているが性格は真逆だ。礼儀正しく、聞き分けがいい。また日常が楽しくなりそうだ

 




せめて2話は投稿したい…!


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因縁

妹紅ってどのタイミングで出てきたんでしょう…


 

 

 

結論から言うと白夜の教育は上手く行った。通常業務も問題無くこなせるし、強さだって上級神にも匹敵しうる。その事もあり、英知界での残りの業務は白夜に任せ、再び幻想郷へ来てのだが…

 

 

 

「殺してやるっ!蓬莱山輝夜!」

「ちょ、あんたさっきから何なのよ!アンタなんか知らないわよっ!」

「何やってんだお前等」

「ジン!ちょっとコイツどうにかしてよ!全然話聞かないんだけど⁉︎」

 

何故か帝から不老不死の薬を強奪した少女と輝夜が殺し合っていた。とは言ってもどちらも不死である為、殺しては再生殺しては再生を繰り返しているため、不毛である。

見たところ輝夜に対する恨みは千年以上経っても風化するものではないらしい。何でも自分の親が輝夜に恥をかかされたという。直接の関係者でない奴があそこまで激昂するのは不思議なものだがこの際何も言うまい。

だが輝夜に攻撃するその様は、自暴自棄にも見える。大方途中で不老不死が嫌になり、でもやめれず行き場のない気持ちを恨みと一緒にぶつけているのだろう。警告は正しく受け取られなかったようだ。

 

「千年ぶりか?少女よ」

「!あんたは……」

「言っただろう?不老不死は想像以上にキツいとな」

「っ……じゃあアンタがどうにかしてくれよ!あんた神様なんだろ⁉︎何でも出来るんじゃないのかよ‼︎」

「一度忠告してやったのにも関わらず、後から来てどうにかしろだと?愚かしいにも程がある。それに神は誰か個人の為に何かすることは殆ど無い」

「……!」

 

普通の生活と復讐を天秤にかけ、復讐を選んだのは他でも無い自分自身である。後悔こそすれど、それを他人のせいにするのは精神が幼いと言わざるおえない

 

「…ちくしょおっ!」

「フン…」

 

激昂した少女が炎を纏い突っ込んでくる。常人が当たればまず命は無い。だが私は普通ではないのでね。炎を纏った渾身の蹴りを片腕で止める

 

「っ!?」

「どうした、お前の想いはそんなものか」

「があぁぁあ!」

 

触れた部分から私を焼き尽くそうとするが、本物の地獄の火を浴びてきた私にとってはぬるま湯同然である。そして脚を掴んだ手をこちら側に引く。

 

「うわっ!?」

「えいっ」

「ガッ……!」

 

バランスを崩したタイミングで首に手刀を打ち込む。そのまま奴は気絶した。

 

「…はぁ、もう襲ってこないわよね?」

「安心しろ、暫くは起きんさ」

「そいつ何処連れて行くのよ?」

「人里にいる半妖の寺子屋にでも放り込んでおく。そこでコイツには此処で生きる目標を見つけてもらう。慧音からの説教付きでな。このまま廃人になるのを見届けてもいいが、コイツの境遇は不憫でもあったからな」

「随分と世話を焼くのね。貴方からは考えられないわ」

「ま、これも一種の実験だ。何処まで人が変われるかのな」

「うん、そっちの方が貴方らしいわ」

 

一回慧音の頭突きでも喰らえば多少落ち着くだろう。一々騒ぎを起こされては敵わん。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

私は人里にある寺子屋に来ている。此処には昔気まぐれで迫害から守ってやったワーハクタクがいる。ワーハクタクとは神獣のハクタクと人間のハーフの事である。

何故助けたか、それは命蓮寺に入り浸っていた頃くらいに出会ったからだ。奴の教えも無駄では無かったという事だな。

 

 

「で、ここへ来たと?」

「そういう事だ。こういうのはお前の得意分野だろう?」

「はぁ……勝手に言ってくれるよ。ま、やれるだけの事はするさ。君には恩義もあるしね」

「そうか、じゃ任せた」

 

物分かりの良いやつで助かった。…今思えば慧音を眷属にしても良かったな。神獣の血が流れているし。

 

「そういやまだ此処で子供の為に教育するのか?」

「あぁ、君が此処に居場所を私に与えてくれた。まだここから離れるつもりは無いよ」

「そうか。気が変わったら私の元で働くか?」

「ハハ、考えておこう」

 

それ絶対考えないやつだな。恐らく死ぬまでここにいるだろう。勧誘する時期を失敗した。

まぁいい。私には白夜がいる。暫くすれば量産体制にも入れるだろう。今暫くの我慢だ




文字数このくらいでキープした方がいいですかね


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再会

間に合わなかった…!


 

 

 

 

 

現代社会 ここに置いて妖怪、神、妖精などは空想上のものとして考えられている。これは人間の文明の発達を意味する。

私は今その現代社会日本にある博麗神社にて新聞を読んでいる。ぶっちゃけ読まなくても勝手に情報は入ってくるのだが、誰かが書いたものを読むのもまた一興。『文々。新聞』よりは幾らかマシだ。少々情報に偏りが出来ているのが気になるが

 

「…それにしてもここまであっという間に感じるな」

 

現人類が誕生してから二十万年。時間感覚が狂っている自覚はある。まぁそれは置いておくとして。

この人類が今の月の文明に追いつこうとすると後百五十万年くらいは考えておくべきだろう。今思えばこれ程の文明をその三分の一の時間で達成するのがおかしかったのだ。それもこれも月読がやったせいだが。

 

 

「『若者による急激な政治離れ。この国の未来は』か。この国というか世界も危ういな。この調子じゃあ、月の文明に追いつくどころか途中で果てちまう。」

 

この人類はいい線行くと思ったが、雲行きが怪しくなってきた。また同じ光景を見るのは堪える。頼むから滅びないでくれよ

 

「にしても幻想郷にあるのより汚いな。整備する奴雇ってないのか?」

 

私は新聞を閉じ、ロクに掃除もされてない縁側から腰を上げる。老朽化が激しい為、ズボンに細かい木屑がつく。

 

「ふぅ…また新調するか。……………………ん、この気配は…」

 

そう言って現世を見て回ろうと考えていると、懐かしい気配を感じた。それも人間では無い神、それに二柱だ。奴らしかいない

 

「…そういやまた会おうと言ってから何百万年と経っている…臍を曲げてなければいいが」

 

旧知の者と再会だ。土産でも持って行ってやるか

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「あーうー……早苗〜、神奈子〜暇だよ〜…」

「五月蝿いねぇ、そんなに暇なら湖に蹴り落としてやろうか?この蛙が」

「あ、あははは…」

 

ここに居るのは喋った順に洩矢諏訪子、八坂神奈子、東風谷早苗である。現世に残る数少ない神である。因みに東風谷早苗は厳密には現人神で、人間でありながら神力を扱う者である。

 

「…っていうかそんな事言ってる場合ですか?今この瞬間にも信仰は減っていっているというのに」

「そうは言ってもね〜…人の流れは制御出来ないんだよ」

「あぁ、それが出来たら他の神も神界には帰らんさ」

 

しかしこの二柱も例外ではなく信仰が無ければ現世で存在出来ない。その対策を練ろうと毎日考えているのだがいい案が思いつかず、何日何年もズルズルと過ごしているのである。

 

「信仰無しで存在できる神はいいな〜、明日の事なんて考えなくていいんだもん」

「アンタ私達より高位の神に聞かれてたら消されるよ」

「えっ?信仰なしでも生きれる神様がいるんですか?」

「ん?あぁ勿論いるよ。確かジンは『高位の神が人間に左右されてたら既に世界は終わっている』って言ってたな〜」

「へぇ〜……そのジンさんっていう人も神様なんですか?」

「そうだ。あの方は最高神に次ぐ存在であられるからな」

「そんな人が……ん?誰だろう…」

 

二柱と一人が喋っていると、この守矢神社に誰かが来た気配がした。出迎える準備をする為、立ち上がった。

 

「すみません、信者の方かもしれませんので出迎えてきます」

「わかった〜」

「ん、頼んだぞ」

 

二柱の返事を聞き外に出る。そこには二メートルはあろうかという男が立っていた。893のような見た目をしているせいで、少し怖気付いてしまう。それでもこういう人でも信者になってくれるならありがたいと思い出迎える。

 

「ようこそおいで下さいました。私はこの神社の巫女をやっております、東風谷早苗と申します。本日はどの様なご用件で?」

「ん?お前は…まぁいいか、此処に洩矢諏訪子と八坂神奈子はいるか?」

「え」

 

何故二人の事を?この人にも見えている?色々な疑問がの中を駆け巡る。少し警戒しながら声を掛ける

 

「あの、貴方は…」

「これは申し遅れた。私の名前は岡迅一郎という。諏訪子達とは……まぁ友神の仲だ」

 

友人?という事はこの人も神様?というか迅一郎って……さっきのジンっていうのが愛称だとしたら…

 

「あの失礼ですが、誰かに『ジン』と呼ばれた事は?」

「ん?なぜお前が私の渾名を知っている?…いや聞いたのかアイツに」

 

やはりそうか。この人が例の神様なのか。

 

(まさかここまで早く会うなんて)

 

「何か私について言っていたのか?」

「あっいえ、私が諏訪子様に神様について教えて貰っていたもので…」

「成程、勉強熱心なのはいい事だ」

「早苗〜?どうしたの、こんなに時間がかかる…なん…て」

「どうした諏訪子?何がい…る?」

 

するとお二人が待ちかねたのか中から出てきた。そしてこの人を見るなり明らかに顔色が変わった。諏訪子様は喜色を浮かべ、神奈子様は…何故か顔が引き攣っていた。

 

「久しぶりだな諏訪子、神奈子」

「ジーーン!!」

「うおっと…」

「ちょ、諏訪子…!」

 

諏訪子様はジンさんを見た瞬間飛びついて行った。それを避ける事なく受け止め、頭を撫で始める。その姿はまるで親子のようだった。

 

「何、構わんさ。元気してたか?」

「うん勿論だよ!…それにしても会いに来るのが遅いよ!」

「あれから色々あったんだ。休暇はあるにはあったが、精々数日だ」

「五十億年で?」

「あぁ」

「…体壊してない?ちょっと異常だよそれ」

「天界が異常なのは元からだろ。だから誰も帰りたがらないんだ」

 

何やら神様事情のようなものが聞こえて来る。偶に生々しい話も出てくるので人前ではしないでほしい。

…それにしてもあんなに嬉しそうな諏訪子様は初めて見た。どういった関係かより一層知りたくなった

 

 

 

 

 

 

 

 




すみません。次からは最低一本出せるように出来る限りします…


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課題

久しぶりの連続投稿


 

 

 

 

「へぇ、要するに信仰が足りない訳か。そりゃ困った」

「ホントだよ!人間達は皆んな神がしてあげた事を忘れちゃうんだもん。」

「私も同感だ。恩着せがましく言うつもりは無いが今の人間はそれを感じ取れていない傾向にある」

「どうしよう…これじゃいつ消えるか分からないよ…」

 

私達は今後の二柱の存続について話している。神奈子はこの会話に参加できていない。まだ私が恐れ多いとかで一向に話出さない。嫌われているのかね?まぁそんな事今はどうでもいい。神はいないものとして考える現代で信仰を集めるのは厳しい。

だがその為の楽園があるではないか

 

「…そうだな。お前らは『幻想郷』ってものを知っているか?」

「幻想郷……あ!そういえば千年くらい前に議会で決まったってやつ?」

「その通りだ。そこではいずれ現代で完全に消えるであろう非科学的な存在が集結する場所だ。神も例外ではない。」

「そこに行けばいいの?」

「確実にここよりは信仰を得られるだろう。その代わり此方には戻れなくなるが」

 

二柱は考え込む様な顔をした。暫く沈黙が続いた後、口を開いた

 

「…うん!私達は幻想郷へ行くよ」

「そうか、なら八雲には私から伝えておこう。胡散臭い奴だが、間違っても殺す事にはならないようにな?」

「も〜〜分かってるよ〜!流石にそんな事しないよ〜」

 

…後ろで神奈子達が『んな訳あるか』とでも言いたそうな顔をしている。一体何をやらかしたんだコイツは…

 

「ジンもそこに住んでるの?」

「私か?私は基本的に英知界にいる。幻想郷へ行くのは調査の時くらいだ」

「ふーん?その"えーちかい"っていうのにはどうやって行くの?」

「…行こうと思って行ける所では無いな。あそこは何処にでも繋がっていて、何処にでも存在する世界だが到達できる者は今のところ私以外には居ない。仮に到達できても死ぬだけだ」

「え、何で?」

「この世の真理が到達する場所だぞ?入った瞬間、膨大な量の情報が脳に押し込められて耐え切れなければ脳死する。所謂廃人だな」

「…何でそんな所に住んでるのさ」

「一番都合が良い場所だからなら決まっているだろう。作業効率が上がるんだよあそこだったら。それに私だったら問題ないからだ」

 

あの時は地獄の苦しみだったものも今では息をするのと同じくらい自然に行われている。時間の流れというのは怖いものだ

 

「ま、何はともあれこれで解決だ。あの判断も間違いではなかったという事だな」

「うん!ありがとうジン!またこれで生きられるよ!」

「私からも感謝致します、岡様。この御恩は…」

「気にするな。私は提案しただけに過ぎない。……さてと私もそろそろ行くとしよう」

「へ?行くって何処へさ」

「そりゃあ勿論」

 

 

 

 

 

「幻想郷だろ」

 

 

 

 




今回短かったですね


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転移

今日も一日頑張るぞい


 

 

 

 

「ここは…大体ここら辺がいいか…」

「ジンさん?何をしているんですか?」

 

守矢神社お引越しの準備をしていると早苗が話しかけてきた。私の行っている作業が気になったらしい

 

「これは"座標"を設定しているのだよ」

「座標?」

「座標とは物体がどの場所に存在するか証明する為のものだ。今から転移させる場所の座標が分かっていなければ、最悪その場所にある物体に埋もれ潰れる可能性がある」

「ヒェッ…そんな事が…」

「まぁそれは適当にやった時だけの話だ。正確に観測したから失敗はしない」

 

それに転移先は妖怪の山にしておいた。人里なんかに転移させたら無関係の人間が神社に潰されるかもしれない。そうなれば博麗の巫女が黙ってないだろう。今は関係が拗れるような事はしたく無いな

 

幻想郷(あっち)でまた神社建てるのは面倒だろ?だから建物ごと引っ越すんだよ。その為の正確な座標を割り出している」

「ほぇ〜…何だか凄い話ですね。それって私にも出来ますかね?」

 

普通の人間にか…出来ないことは無い。だがこれは物質エネルギーとかも絡んでくるからある程度の理解はなくてはならない

 

「そりゃちょっと難しいかもな。だが簡易的なものなら出来るかもな。また教えてやるさ」

「本当ですか!じゃあその時はお願いします!」

 

元気のいい奴だ。育て甲斐がある

 

「そろそろ良いだろう。これでいつでも転移できる。諏訪子と神奈子に伝えてくれ」

「分かりました!約束、忘れないでくださいね!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「へぇ〜、これで本当に行けるの?」

「勿論だ。何のための作業だったと思っている」

「確かにね〜、じゃあ行こうか皆んな」

「あぁ」

「楽しみです!」

 

準備は整った。いざ幻想郷へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社

 

 

「はぁ…最近ジンさん来ないわね…」

「何だ何だ?霊夢が恋煩いか?」

「あの人が持ってくる土産で食いぶち繋いでたのになぁ…」

「…どこまで行ってもやっぱり霊夢は霊夢か…」

 

いつも通り霊夢と魔理沙は暇をしていた。数ヶ月前みたいに頻繁に異変が起きていないため、基本する事が無いのだ。よって二人は和室の中でダラダラと過ごしている

 

 

 ズオォッ……

 

 

「………!魔理沙行くわよ」

「へ?いきなりどうしたんだ?」

「結界が揺らいだ。何かがこの幻想郷に来たみたいね」

「久しぶりの異変か!今回は負けないぜ!」

「全くアンタは…」

 

異変が起きて喜ぶなんてどうかしている。だが自分も暇だった為、何も特に何も言わずに外に出る

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「お〜っ、此処が幻想郷ですか〜」

「あまりうろちょろするな。今の妖怪の山はピリついている。何かしたら天狗が飛んでくるぞ」

「え、もしかして許可取ってないんですか?」

「いや天魔とは話をつけた。だが基本的に天狗は排他的だ。良く思わん奴も少なからずいる」

「じゃあ私達もその天魔ってやつに話つけなきゃいけないね」

「あぁ、早めにしといた方がいい」

 

妖怪の山、転移先にどうして此処を選んだのか。ぶっちゃけ信仰自体は人間のモノでなくていい。妖怪からのでも別に構わんのだ。人というのは新しい存在に対して特に否定的だ。ならそんな場所よりも同じ部類に入る妖怪からの信仰を受ける方が効率的である。

 

「それにしても中々いい場所だねぇ、幻想郷ってのは」

「神奈子ったら、ここで戦争起こしたりしないでよ?」

「何言ってんだ、諏訪子じゃあるまいし」

 

二人とも着いた瞬間からバチバチだな。ま、喧嘩するほど仲が良いとも言う。…本当に何があった?

そんなやり取りを側で見ていると、先程話題に出た天魔と複数の烏天狗がやってきた。やはり烏天狗は射命丸以外は分からん。

 

「もうお着きになられたのですか」

「天魔か。まぁな、準備が済めば一瞬だからな」

「それでは早速ですが、話し合いの席を設けましたので…」

「そうだな。諏訪子、神奈子、行ってこい」

「え?ジンは?」

「此処に住むのはお前らだろうが、何故私が話し合いをせねばならんのだ」

 

すると諏訪子は納得したような顔をし、天魔たちに着いて行った。神奈子は最初から分かっていたみたいだが。

 

「あの〜ジンさん。私はどうすれば…」

「ん〜早苗はちょっとここら辺を回ってきたらどうだ?今のうちに交流を深めておけ。私も着いて行ってやる」

「ホントですか!ありがとうございます」

 

最初に会わせるのは……射命丸か犬走でいいだろう。特に射命丸と早苗は気が合いそうな感じがする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここらへんで安定させようかな…


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いざこざ

3話連続だお


 

 

 

 

「何よ、あれ……」

「ん〜?ありゃ神社に見えるぜ」

 

霊夢と魔理沙は結界の揺らぎを感じた場所に来ていた。そこが妖怪の山であった事には驚いたが、それ以上の衝撃が霊夢を襲っていた

 

「んなもん見りゃ分かんのよ!何よあれ!博麗神社(ウチ)への当てつけのつもり⁉︎」

「お、おう。まず落ち着くんだぜ霊夢」

「落ち着いてなんかいられないわよ!これ以上お賽銭減らされてたまるもんですか!」

「あ、ちょ霊夢〜〜!」

 

霊夢は衝動に駆られ一人飛んで行ってしまった。魔理沙は悩んだ。異変では無さそうだが行った方がいいのか?流石に新しく出来ただけの神社にカチコミに行くのはどうなのか?色々考えた結果

 

「まぁいいや!何かありゃ全部霊夢のせいだ!」

 

割と最低な事を言いながら魔理沙も自慢の箒で追いかけていった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「…でここは主に私達白狼天狗が哨戒をしています」

「なるほど〜、この範囲を…凄いですね〜」

 

おやぁ?何か早苗の奴犬走の方と仲良くなってるぞ。私と射命丸が蚊帳の外だ

 

「私は何を間違えたんでしょう…」

「やっぱり取材による質問58連打が不味かったんじゃないか?」

「うぅ…つい記者としての本能が…」

「まぁあいつの中じゃちょっと変なやつくらいにしか思われてないから嫌われてる事はないと思うが」

「へ、変なやつ…」

 

もしかしてトドメを刺してしまったか?メンタル弱し射命丸文。頑張れ

 

「山も随分と変わった。むかしは力による統治で、今は規律による統治か。やはり鬼の影響も強かったんだな」

「あの時は驚きましたよ…貴方を人間だと思っていたから絶対死んだって思いましたもん」

「格闘戦を見直す良い機会だった。萃香とも喧嘩しなければな」

「えぇ…そんな約束貴方ぐらいしかしませんよ…私だったら自慢の翼で逃げますね」

「そういやお前速かったな。どうだ、幻想郷一周でもしないか?」

「あややっ…ご遠慮させて頂きます。」

 

なんだつまらん。流石に私でも通常形態での勝利は厳しいだろう。試してみたかったんだが

そして何気なく空を見上げると、小さな点が見えた。霊夢だ

 

「霊夢のやつ忙しそうだな。あんなに飛び回って」

「…ん?ジンさんアレなんかこっち来てません?」

「……確かにこっちに来てるな。あの速度だとクレーターできるぞ」

「それってやばいんじゃ」

 

 ドゴオォォォオン!!

 

「ひゃっ!な、何ですか⁉︎」

「敵襲っ!?」

「椛…こんな時に千里眼使わなくてどうするんですか…」

「い、いや今のは油断してたっていうか…」

 

お二人さん呑気に話している場合か?なんか突っ込んでくる時の顔、すげぇキレてたな。

すると衝撃で出来た砂埃の中から霊夢が飛び出してきて

 

「文屋!あの神社は何なのよ‼︎」

「れ、霊夢さん落ち着いてください!怪しいものではありませんから!」

「妖怪が怪しくないって言われても説得力ないわよ!」

「じゃあ何で説明させたんだ…」

「あ、ジンさん」

 

やっと気づいてくれた。このまま無視されたらどうしようかと思った。

 

「そんな鬼の様な形相をしてどうした?金に困ったのか?」

「違うわよ!山の頂上にある神社に文句言いに行くのよ!」

「んー?何でだ?」

「信仰取られたら誰も博麗神社(こっち)に来なくなるじゃない!」

「いや今まで誰も来た事ないだろ」

「お、魔理沙もいたのか」

 

要するに八つ当たりだな。

 

「別の神社の巫女さんですか?私は守矢神社の巫女をしている東風谷早苗です。よろしくお願いします!」

 

そう言って早苗は手を差し出した。握手だ

 

「…はん、誰が商売敵と手なんか…」

「ここは素直にやっとけ」

「ちょ、ジンさん⁉︎」 ギュッ

「!」パアァァア

「う…」

 

早苗にそこまで嬉しそうな顔をされては流石の霊夢も怒り切れなかったか。恐るべし東風谷早苗

 

「でも結局どうするんだぜ?この神社が出来た事で少なからず博麗神社の信仰は減っちまうんだろ?」

「そんなの簡単だ。互いの神社に分社を作れば良い。幸運な事に博麗神社は何を祀っているかよく分からない所だ。他の場所に分社作っても問題は無かろう。」

「なるほどね……それだったら信仰は減るどころか寧ろ増える可能性だってある…」

「流石ジンさん!早速諏訪子様に伝えてきます!」

「あ、もう行っちまいやがった。」

 

元気な奴だ。烏天狗びっくりの速度で駆け上がっていった。後は諏訪子たちが納得するかだな

 

「…ジンさん」

「ん?どうした霊夢」

「さっきはありがと。あのまま行ってたら戦闘になってたかもしれなかったわ」

「気にするな。商売敵が現れたらピリつくのは現代社会でも当然ある事だ。特段間違った行為ではない」

「ふふ、そう言ってくれると助かるわ」

「おおっ!霊夢がデレ『夢想封印!』あぁぁぁああ!?」

 

馬鹿な奴だ。余計な事を言わなければよかったものを。

とにかく穏便に済んでよかった。仕事が増えないからな




あと一話は行きたい


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冥界

ギリギリ!


 

 

 

守矢神社

 

「あーー……なんかめっちゃ花咲いてね?10月だぞ」

 

私は博麗神社と守矢神社の仲介人として話し合いに出席した。話し合いは割とスムーズに進み、私が言った方法が採決される事となった。

そして今日は泊まっていけという諏訪子の気遣いに甘えて一夜を明かしたのだが、何故か枯れ始めていた筈の花が満開になっていた。

 

 

「確かにね〜、ていかこれ幽霊じゃない?」

「ん〜?植物に憑依してんのか。だからこんな狂い咲いてる訳か」

 

言われてみれば魂の気配を感じる。ここら辺は少ないが、幻想郷全域にソナーを出して調べるとかなりの数が存在していた。

 

「こりゃ100とかいうレベルじゃないぞ。軽く万は超えてる」

「ええっ、なんでこんなことに?」

「冥界で何かあったんだろうな〜…。はぁ…また私が行かなきゃならんのか…」

「あー、そういえばジンって監視者だったね。」

「あぁ個人が起こすレベルの異変は出ないが、神界の重要機関に何かあったと言うのなら話は変わってくる。」

 

それもよりによって冥界だ。地獄と現世を繋ぐ場所が潰れれば現世がパンクしてしまう。それだけは避けなければならない

 

「それじゃあ行ってくるとしよう」

「気をつけてね〜」

「いってらっしゃ〜い!」

 

折角の休日が…もしサボってたとかだったらしばく

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

どこも一面咲き乱れている。一つの花につき一匹の幽霊だとしてもかなりの数だ。しかも憑依していない幽霊だけでも千はいる

 

「んー………お、あれは…」

 

暫く飛んでいると見覚えのある花畑が見えてきた。向日葵だけが咲き誇る畑など私は一つしか知らない。

よく観察していると向日葵に紛れて傘を刺した女がいる事に気付いた。私は降り立って話しかける

 

 

「お前は確か…風見幽香だったか?」

「!貴方は……」

「やはりそうか。奇遇だな、こんな所で会うなんて」

 

やはり風見幽香その人であった。というよりその気配は割と記憶に残るので、忘れようと思っても簡単にはいかないだろう。

 

「私もよ、ねぇこの異変は一体…」

「これは冥界から溢れた霊が花に取り憑いているのだ。性格を表す花は幽霊と相性がいいのだろうな」

「それは困るわね。私の大切な向日葵に何かしてもらっては…」

 

うん、かなり怒っているな。コイツにとって花とは命と同等に扱っているから、それを弄られるのは物凄く不快なのだろう。それに自然に咲いた花と、憑依する事で無理矢理咲かされた花では全く違う。とても美しいとは言えない

 

「時間があれば一勝負でもしたのだが、今はこれを解決するのが最優先だな」

「あら残念。それじゃあまたの機会に…」

「あぁ悪かったな。突然押し掛けて」

「次会った時に存分にやりましょう?」

「ハハ、お前はそればかりだな」

 

また約束が増えた。萃香ともせねばならんのに多忙な身である

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

冥界 この世とあの世の中継地点であり、ここで死者達の裁判を執り行う。これで地獄行きか極楽行きかを決定する

 

「はぁ……こりゃ暫くはサボれそうにないねぇ」

 

そうぼやくのは死神という、死者を冥界へ運ぶ役割を持つものである。名前を小野塚小町。サボり魔である

だが今回の騒動は一概にこの死神のせいとは言えない。確かにサボっていていつの間にか増えていたというのもあるが、今年は六十年に一度の幽霊大量発生期なのである。

 

「この状況でサボる選択肢が出てくる事に驚きだがな」

「っ⁉︎誰だアンタ!」

 

だが不運な事にその呟きは最高位の神に聞かれてしまっていた。特にヤバい奴に

 

「私は岡迅一郎だ。監視者だ」

 




頑張ったぞい


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閻魔

なんかマンネリ化して来たかも…


 

 

 

 

小野塚小町は混乱していた。何故なら突然神界のNo.2が目の前にやって来たのだから。

 

「突然だが、君の上司の場所へ連れて行ってくれないか?」

「へ?じ、上司…映姫様の事ですか?」

「エイキ…確かそんな名前だったか。頼めるか?」

「し、しかし仕事が…」

「それについては問題ない。白夜」

「はっ、此処に」

「⁉︎」

 

ジンが呼ぶと、隣に突然人が現れた

 

「ここの仕事を一時的に任せる。霊をあちら側へ運ぶだけだ」

「了解致しました。」

 

簡潔にそう言うと、また消えた。気づくともう既に仕事に取り掛かっていた

 

「さぁこれで大丈夫だ。頼めるか?」

「は、はい」

 

これで案内せざるおえなくなった小町。渋々歩き出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裁判所

 

「次の霊は…これは黒ですね」

 

霊の生前の姿を映す『浄玻璃の鏡』を見ながら裁判を執り行っているこの閻魔は此処の最高裁判官、四季映姫ヤマザナドゥである。今日も今日とて裁判を行う

 

 コンッコンッコンッ

 

「ん…次の霊ですか。入りなさい」

「し、失礼します」

「…小町?何をしているのです?仕事を放棄して、罰せられたいのですか?」

「それについては問題ない。私が許可した」

 

映姫は目を疑った。小町の背後から、最高神に次ぐ監視者が現れた

 

「か、監視者様…⁉︎な、なんで……」

「あぁ、ちょっと様子見にな。」

 

ジンはそう言うと何処からか出した椅子に座った。小町はどうすれば良いか分からずおどおどしている。

 

「色々聞きたい事はあるんだが、良いか?」

「え、えぇ大丈夫ですが」

「感謝する。この幽霊供は後どれくらいで裁き切れる?」

「…それは明日までには」

「そうか、それを聞いて安心した。取り敢えずサボっていた訳では無いそうだな。そこの死神を除いては」

「小町っ!」

「た、たははは……すみません…」

 

映姫は頭を抱えたくなった。だが上司がいる手前、なんとか抑える。

 

「だがこれだけは言っておこう。霊が外に漏れ出る数が例年よりかなり多かった。出来るだけ気をつけてくれ。この冥界は神界の中でも重要機関なのだから」

「了解しました。態々ありがとうございます。」

「後私の部下が出来るだけ処理しておいた。もう彼岸にいる霊はおらんだろう。残りは裁判だけだ」

「何から何まで……すみません」

「気にするな。私は何もしていない。礼なら白夜に」

「お呼びでしょうか」

「⁉︎」

「あ、あの人は…」

 

小町は既に見ているが、映姫は白夜を見るのは初めてである。なので突然現れたことに驚きが隠せない

 

「紹介しよう。私の部下の白夜だ」

「お初にお目にかかります、四季映姫様。私岡迅一郎様の補佐官を務めさせて頂いている白夜と申します。」

「え、えぇ。こちらこそ業務を手伝っていただきありがとうございます。」

「立場が下の私に敬語は不要で御座います。」

「いえ、これは癖なので」

「これは申し訳ありません。出過ぎた真似を」

「…何か似たような事前にもあったな」

 

何かジンが言っているが、特段大事な事ではないだろうと映姫は聞き流すことにした。

すると裁判所の扉が乱暴に蹴破られ、巫女服を着た少女二人と箒に乗った少女、メイド服を着た少女、刀を携えた少女、うさ耳を生やした少女など、大所帯が入ってきた。

 

「何でアンタ達までついてくるのよ!私だけで十分だっての!」

「私はお嬢様の命令で」

「良いじゃないですか〜、私まだここのルールに慣れてませんし」

「細かい事は気にしちゃ駄目だぜ!」

「私はここまで来るつもりは無かったのに…」ガタガタガタ

「ま、まぁ妖夢。冥界だからって幽霊がいる訳じゃ…」

 

五月蝿い。とにかくうるさい。当たり前だ、元々4人いた空間に6人追加されたのだから。お陰で耳が痛い。

流石に注意しようと思ったのか、映姫が動き出そうとするがジンが片手で『大丈夫だ』と静止させる

 

「お前ら揃いも揃って何をしている」

「「あ、ジンさん」」

 

5人がシンクロしてこちらを見る。

 

「?えーと、皆さんこの方は…?」

「あら、そういえば妖夢は初対面だったかしら。」

「そうだな。見かけた事はあるが、話した事はない。私の名前は岡迅一郎という。こう見えて神だ」

「神様⁉︎…よかった…幽霊じゃなくて…」

『いやお前半分幽霊だろ』

 

またまた見事に他の5人がシンクロした。半霊なのに幽霊が怖いとは

不思議な事もあるものだ

 

「まぁそれは置いといて、私達はこの異変を解決しに来ただけよ」

『右に同じく』

「あー………異変ならもう解決したぞ?というより放っておいてもあまり影響のあるものでも無かったしな」

『えっ』

 

その瞬間全員がピシッと固まった。そして霊夢がギギギっと壊れたロボットの様に此方を見て

 

「じゃあもしかして私たち……無駄足?」

「まぁそうなるな」

「……チックショォォォオオ!!!」

 

その日、冥界には複数の叫び声が響いたという

 




あと一話は行きたい


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約束

平日投稿キツスギィ!


 

 

 

 

 

霊夢たちの断末魔が収まり映姫から全員説教を受けた後、いつも通り宴会を開く事となった。今回は私も参加しようと思う。元々何もなかった日だから丁度良かった。楽しませてもらう

 

「お〜い、飲んでるか〜?ジ〜ン」

「魔理沙か、もうベロンベロンじゃねぇか。まだ始まって10分も経ってないぞ」

「あ〜?なんか今日は気分がいーんだよ〜」

 

うん、これ外じゃあ一発アウトだな。未成年飲酒ダメ絶対。ま、ここじゃ関係ない。私も一升瓶ごと煽る。

 

「おおっ、ジン景気良いな〜」

「ふん、この程度酔う兆しも見えんわ」

「ジンさんって見た目以上に強いのね」

「あ、霊夢」

 

まぁ博麗神社だからいるわな。霊夢もかなり飲んでいる様に見える。可笑しいな。霊夢がここまで酔っているのは初めて見た。普段ならあり得ない事だ。それに"何か"が空間を漂っているのも気になる。

 

「よく鬼共と飲み比べしたからな〜。まぁ全部勝ってやったが」

「さっすがジン〜!そこにシビれるあこがれるぅ!」

「へぇ〜鬼とも交流あったんだな。なんか納得だ」

「奴ら歯止めが効かんからな。毎回酔い潰れるまでやる」

 

私はある空間に目をやりながら言う。萃香め、飲みたいなら自分が出てくればいいものを。

そう呆れながら酒を飲んでいると、白夜と早苗という珍しいコンビを見つけた。

 

「へぇー!じゃあ白夜さんはロボットなんですね!」

「…はい。岡様に作って頂いた自律思考型機動人形です。このプログラムは宇宙最高峰であると仰られていました。」

「それは凄いですね!私そういうのが好きなんですよ〜。」ズイッ

「そ、そうですか…」

「体とかってどうなってるんですか?普通の人と変わらないんですか?」

「ど、何処を触っているのですか…!」

 

いつも冷静な白夜が早苗の行動に追いつけないでいる。これは珍しい。記憶しておこう。まだ想定外の行動に弱いようだが、こればかりは経験を積ませねば。

 

そうして"1日目"の宴会は終わった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

2日目

 

今夜も各陣営から参加者が集い、宴会が始まる。まるで何かに操られているかのように。

だか今回の私は宴会ではなく別の用事を済ませる為に博麗神社へと来た。奴がいるなら丁度いいと思ったからである

 

 

「おーし!今日はじゃんじゃん飲むぞー!」

「今日"も"だろうが。よく飽きもせず飲み続けられるな」

「そーいうジンだって来てるじゃないか」

「私は別用で来た。ま、酒は貰うが」

 

ここでちゃっかり酒は確保しておく。ここで飲まれるのはかなり上等な酒である。外の技術にも負けないくらいには旨い。

まぁそれは置いといて。私は神社の裏側へと移動し、

 

「出て来るなら早くしろ。私も酒が飲みたいんだ」

「………」

「だんまりか?ならこれから行われる全ての宴会で酒を全部飲み干してやろうか?その程度では酔いもせんが」

「…いやぁまさか気付かれるとはねぇ〜」

 

奴に効く脅しを掛けてやったら思いの外すんなり出てきた。空中から何かが収縮し、一匹の妖怪を型作る。初期の妖怪の山で出会った鬼の四天王・伊吹萃香である。

 

「私も最初は気づかんかったさ。というより鬼は全て地底に行ったんじゃなかったのか?それにあそこは出るのが難しいと聞いていたが」

「私は地上が好きだからね。この能力があれば誰も検知出来ずに脱出できるからね、鍛えたんだよ?便利なんだ」

「成程、宣言通り腕を上げた様だ」

「へへっ、そう言ってもらえると嬉しいね。じゃあわざわざ此処に呼んだって事は…」

「あぁ、約束を守ろうとしてな」

 

ようやく約束が果たせる事が出来る。コイツは神出鬼没だから見つけるのも一苦労である。八雲紫は存在が一つしかない為、感知の範囲を広げれば容易だが、伊吹萃香は自分自身を素粒子レベルで分解し世界中に飛び回る為、特定が困難なのである。

それはともかく、萃香は鬼の中では珍しい能力特化型である。力も当然大きいのだが、その能力に依る所もあるだろう。戦闘狂としての血が騒ぐ



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鬼は強し

連続投稿、意外といける?


 

 

 

 

博麗神社にて

 

私と萃香は睨み合う。見た目こそ少女そのものだが纏う覇気は鬼の四天王のそれだ。とても一般人が足掻いても勝てるような存在では無い。

 

「っとその前に」パチンッ

「?これは…」

 

不意に音が消えた世界に萃香は訝しむ。私達は少しズレた空間に移動した。私達以外の者は居ない仮の世界である。ここで幾ら暴れようが、現実の世界に何ら影響は無い。

神社の備品を壊したりなんかしたら大結界にどんな影響があるか分からない。それに霊夢に大目玉を食らってしまいそうだからな

 

「これなら好きなだけ暴れられる。それじゃあ始めようじゃないか

「相変わらず規格外だけど…良いねぇ!俄然やる気が湧いてきた!」

 

 ドゴォォォオン!!

 

全く、気分の良くなった鬼はいつもこれだ。萃香は両腕を地面に叩きつけ、破壊する。この衝撃波だけで中級妖怪は消し飛ぶ。恐ろしいものだ。

 

「どうしたんだい?怖気付いたかい?」

「まさか、改めて鬼は凄いと感じていただけだ。これなら多少力入れても問題ないだろう」

「じゃあ見せてみなっ!アンタの力を!」

 

萃香は腕についた鎖を分銅のように振り回してこちらを牽制する。近づける程隙は無さそうだ。

なので勇儀とやった時に見せたアレをやる。超高速で空気を掌底で叩き、衝撃波を送る遠距離型攻撃"遊撃掌"である。

 

「うおっと」

「む……」

 

しかし萃香はその波に呑まれた瞬間、粉々になった。いや能力によって自身を粒子レベルで分解したのだ。これは私の自動防御機構に似通った部分がある。

 

「ほぉ〜う…いざ自分が体感してみると中々厄介だな。」

 

索敵はしているが奴は自分自身を分解している為、今感知に反応している千を超える信号は全て伊吹萃香である。『密と疎を操る程度の能力』…素晴らしいな

 

「だからと言って対処法がない訳ではない」

 

私は空気中の原子を超振動させ高温にする。摩擦により熱せられた空間は急激に大気の集束を開始する。すると拡散していた萃香を巻き込み、姿を現れさせる

 

「うおっとぉ!?」

「やっと出てきたな。もうその手は効かんぞ?」

「流石に力技が過ぎるんじゃない?…まぁそういうのも含めて"強さ"なんだろうけどさっ!」

「ぬぅん!」

 

腕に拡散させていた力を集め、私に殴りかかる。私はそれに対して蹴りで対抗する。脚は単純計算して、腕の三倍の筋力を持つ。割と力入れたから相当痛いだろう。というか腕があらぬ方向へ曲がっている。やり過ぎたか?

 

「!ったぁ〜……こりゃヤバイね」

「腕をやっている様だが、まだやるか?」

「もちろんさ、こんなに楽しい喧嘩途中でやめられるもんか」

「…変わっとらんなお前は」

 

喧嘩好きもここまで来たら呆れる。生まれ持っての性なんだろうが。私も人の事は言えないか

 

「では敬意を表して特別にあの技を使ってやろう」

「あの技……?」

 

私は15%覚醒させて、認識可能ギリギリの速度で接近する。

 

「っ⁉︎はぁっ!!」

「ふっ」

 

萃香は持ち前の反射神経で迎撃しようとする。が、私はしゃがみ込む事で萃香の拳の軌道範囲外、下に潜り込む。そして相手の腹に拳を当てる。

 

「!鬼符『ミッシングパワー』‼︎」

「"寸勁"」

 

萃香は咄嗟にスペルカードを発現させ、身体能力を向上させる事で防御力を上げた。

しかしこの中国拳法の技術・寸勁は肉体の防御関係なく、内側にダメージを与えるものである。よってその行為は無意味である。

 

「ガハッ!?…な、なにを………」

「直接内蔵にダメージを与えた。もう復帰できまい」

 

因みにこの技も例の老師に教わったものである。久しぶりに中国に渡った際にまた会ったのだ。……本当に人間か疑ったくらいだ。私の記憶では人間の最高年齢は125歳だった筈なんだが。あの爺さんは何百年も生きている。…しかし診断の結果、妖怪の類ではなかった。本当に何者なんだ。

 

「…確かにこれは効いたよ…やば、もう立て…」ドサッ

「勝負あったな。…ふぅやるようになった」

 

私はズボンを捲る。萃香と打ち合った箇所を見ると、軽く痣が出来ていた。

 

「地上も侮れなくなったな。また修行し直さなければ」

 

私は決意を胸に歩き始めた。…伸びてる萃香を担いで




あと一話は…!


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酒は飲んでも飲まれるな

転スラ新刊でないかなぁ


 

 

 

 

私と萃香は平行時間軸、先程戦闘を行っていた空間から出た。そして宴会に戻ると殆ど全員が撃沈しているという光景が広がっていた。

 

「何だこれ」

「こりゃ皆んな潰れてるねぇ」

「私達が此処から離れてから20分も経ってない筈なんだが」

 

一体どんなペースで飲んだんだ。大樽が50程転がっているが無視する。……鬼でも無い癖にこんなに飲んだのか。自殺志願者か?取り敢えず起こすか。誰からに…あ、そうだ

 

「白夜、いるか?」

「はい、ここに」

 

何だか疲れている様に見えるのは気のせいではないだろう。少々気になる。

 

「…何があった?」

「あの後鬼の四天王を名乗る者が現れ、天狗は逃げ出し、妖精は気絶、博麗の巫女により場は収まりましたが皆この様な状態に…」

「勇儀かぁ〜やりかねないね」

「お前も似たもんだろうが。でお前はどうしてそんな疲れているんだ?」

 

私が一番気になっていたのはそれである。まさか対応できなかった訳ではあるまい

 

「早苗殿にずっと絡まれていたからです」

「…あぁ成程。外の人間だから人工知能に興味があったのか」

「そのようです」

「まぁ私が作ったプログラムだ。心を解明した私には造作もない」

 

心とは何億、何兆という電気信号の集まりである。時間がたっぷりある神だからこそできる芸当である。やろうと思えば不老不死の魔女や月人でもやれるかもしれないが

 

「英知界に帰ったら久々に更新するか。後量産体制も整えよう」

「了解致しました。早急に準備致します。」

「頼んだ」

 

そういうと白夜は消えた。私が渡しておいた特殊暗号機によって瞬間移動したのだ。因みに特殊暗号機は最低八意永琳程のIQが無ければ解けない。仮に解けても行き方が書いているだけで、それを実行できる者は殆ど居ない。

例えば死ぬ事を前提としたものであるならば不死人でしか出来ないなど。ほぼ完璧なセキュリティである

 

「ちょいジンさんや、この惨状はどうするつもり?」

「あ?お前んとこの不始末だろうが。自分でどうにかしたまえ」

「そ、そんなぁ〜」

「…まだ裏に酒樽があったな。あれを賃金としてやる」

「やらせて頂きますジンさん」

「やめろお前に敬語を使われると違和感しかない」

 

鳥肌たったわ今。違和感がここまであるとキツイ。もう二度とさせないようにしよう。

 

「そういえばお前何でこんな事したんだ?宴会好きとは知っていたがここまでだったとは」

「いやぁ前の異変で春が来なくなっただろ?だから宴会の回数が減っちゃって退屈だったんだよ」

「ふむ、いかにもお前らしい。一応他の奴にも説明しておけよ。」

「分かってるって」

 

霊夢のやつ、妖怪だからっていきなり戦闘にならなければいいが。心配事しかない

 




キリ悪い…


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地獄

話の都合上、時系列が変わります。
東方儚月沙が起きなかったのは、月に関する事は月面対策委員会が一任している為、八雲紫も月側も目立った動きが出来なかった事にあります。


 

 

英知界

 

 

「…ふむ、やはり量産型だとオリジナルより性能は劣るな。ま、だから量産できるんだけどなぁ。」

「お疲れ様です。少し休憩されては?」

「ん〜?…まぁそうだな。一旦区切るか」

 

私は白夜の量産機の製作に移っていた。

出来るだけ性能を維持しつつ量産体制に入れるのに手こずっている。何せ白夜は私が作った中で最高傑作だから、簡単にはいかない。

 

「どうしたもんか…こんな時には温泉でも行きてぇなぁ。熱海とか城崎とかが懐かしい。」

「…その事なのですが、最近博麗神社付近に間欠泉が出たらしいですよ」

「…間欠泉?あそこにそんなもの通ってなかったと記憶しているが」

「理由は不明です。現在調査中との事です」

 

突如温泉が湧く?そんな事があり得るのか、いや無い。どう考えても可笑しい事である。

確か博麗神社(あそこ)の下は……………あ、旧地獄だ。

ちょっと今回は不味い、あそこに溜まった怨霊が湧き出る可能性がある。というより旧地獄を幻想郷内に入れるならしっかり管理しとけや八雲紫め。

 

「放っておかれたらちょいと不味い。…また行くか、幻想郷へ。準備しろ」

「了解致しました。」

 

まずは現状確認だ。後八雲にもオハナシがある。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

博麗神社

 

「…霊夢、これを使うのはあまり良くないと思うわよ」

「えぇ…折角いいモノが出来たと思ったのに」

「こればっかりは仕方ないわ。これが原因で怨霊が広まったなんて言われたら大変でしょ?」

「まぁ…そうね…」

 

こんな話をしているのは、紅魔館の大図書館に住む魔法使いパチュリー・ノーレッジと、お馴染み博麗霊夢である。

霊夢は最初温泉により参拝客が増えると喜んでいたが、パチュリーと八雲紫の解説により、あまりよろしく無い事が判明してしまった。それが分かった時の落ち込みようといったら見ていられなかった。

 

「何はともあれ、地下で何が起きているか知る必要がありそうね。霊夢、行ってくれるかしら?」

 

そういうのは八雲紫である

 

「そうね、妙な影響があれば元も子もないわ」

「私達妖怪は地底に干渉できないから、地上からサポートするわ」

 

そんな感じで話が纏まりかけた時、紫のスキマのすぐ隣に新しい空間の裂け目ができた

 

「な、何!?」

「や〜く〜も〜〜」

「か、かかか監視者様⁉︎」

 

出てきたのはジンであった。ジンはニコニコしながら(しかし目が全く笑っていない)紫の頭をガッチリ掴む。

 

「聞いてないなぁ〜〜?旧地獄まで幻想郷に入れていたとはねぇ〜?報告書に無かったよなぁ〜?」

「あ………忘れてました、てへっ⭐︎」

「はっはっは、殺す」

「ちょ、冗談ですってああぁぁぁぁぁぁああ!?」

 

ジンは握力をどんどん上げ、紫の頭から鳴ってはいけない音が聞こえ始める。

 

「ジ、ジン?そこまでにしとかないと紫本当に死ぬわよ」

「こんな紫初めて見た……」

 

パチュリーはジンを落ち着かせ、霊夢は自身が見た事無い紫の姿を目に焼き付けておく。後ほど弄れそうなネタである。

そこからジンが手を離すまで30分程掛かったという。

そしてジンを混ぜての話し合いが再開した。因みに紫は部屋の後ろで寝込んでいる。

 

 

「成程、もう既に対策は練られた訳か」

「えぇ私達は行けないから霊夢達人間に行ってもらう事にしたわ」

「ん〜〜、一つ気掛かりがあるから私も着いていこう。元々神の管轄下だったんだ。行っても問題なかろう」

「え、えぇ好きにして貰えばいいわ。じゃあ霊夢、一緒に行ってくれるかしら?」

「分かったわ。じゃあよろしくねジンさん。こうやっていくのは紅魔館以来かしら?」

「だな。まさかもう一度こんな時が来るとは」

 

ジンと霊夢は立ち上がり、神社から出て行く。最初から最後まで蚊帳の外だった紫の姿は哀愁漂っていた

 

 

 




ちょっと話の展開早かったですね


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源泉

深夜投稿だぁ


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社から飛ぶ事およそ20分。妖怪の山へと来ていた。八雲から聞いた情報が正しければ、この麓付近にあるはずだ

暫く捜索していると霊夢がそれらしきモノを見つける。

 

「ここが地底の入り口かしら?」

「あぁ、この籠った妖気は間違いない。旧地獄跡へ続く道だ」

 

一見すれば少し大きな穴程度にしか感じられないが、そこから漏れ出す妖気は地上のものとは明らかに違っていた。地底の妖気はより粘着質でどんよりしている。一度感じたら忘れる事は無い。

 

「さてと、さっさと済ますか」

「えちょ……行っちゃった。って私置いて行かれてるじゃない!」

 

背後から慌てた様子で霊夢が追いかけてくる。私は程々の速さで中を飛ぶ。中に入れば入る程穴が大きくなっていく。

 

「この様子だとあと1時間くらいかね」

「1時間⁉︎どんだけ遠いのよ…」

「仕方ない。元々地獄として使われていたんだ。このくらい地上から離れてなければ意味は無い」

 

寧ろこれでも浅い方だ。最低怨霊が出てこれない程度の距離なのだから。

 

 

 ヒュルルルル………

 

話しながら飛んでいると、頭上から空気をきる音が聞こえた。確認してみると頭に何かが落ちてこようとしていた。私はスピードを落とさないかつバランスを取りながら片手でそれを上手くそれをキャッチした。

 

「何だこれ」パシッ

「…釣瓶?」

 

釣瓶……井戸で水汲む時に使うあれか?というか何か入ってるな

凝視していると、中から突然妖怪が出てきた。

 

「…な、なんなのさアンタ!今の普通キャッチ出来る⁉︎」

「知らん、出来るからやった。というかいきなり何なんだお前は。喧嘩売ってんのか?」

「へ?い、いやあたしは人間が通ろうとしてたからいつも通りこれを落としてやろうと思っただけで…」

 

なんだ、ただいつも通り活動してたら私達が来ただけか。なら別に問題は無い。人間を脅かすのが妖怪の仕事だからな。責めはしない。

 

「ねぇ、結局コイツどうするの?退治する?」

「ひっ…」

「いやこいつには奥まで案内してもらう。道中で別の奴と戦闘になるのは面倒だ。こいつを連れていたらいきなり攻撃される事はないだろう」

「なるほどね。それは都合が良いわ」

「い、いや私一度も案内するなんて」

「あ?」

「しっかりやらせて頂きます!」

 

霊夢さんや、ちょっとドス効かせ過ぎでは?今のお前妖怪より怖いぞ

 

「ジンさん?今何か失礼な事考えなかったかしら?」

「まっさか〜はっはっは」

 

勘鋭過ぎないか?エスパーかな?今後は気をつけよう

 

「…なら良いんだけど」

 

納得してくれたようで何より。早く行かないと、怨霊は増え続ける。対処は早い方がいい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ〜?キスメ何やってるの?その人間は?」

「あ、ヤマメ」

「知り合いか」

「うん、よく一緒にいるんだよ」

 

暫く飛んでいると蜘蛛のような妖怪に出会った。ヤマメというらしい

 

「…後ここら辺にどれくらい妖怪がいる?」

「ん〜、あと50匹くらい?」

 

霊夢はその数を聞いて絶句していた。私も同じ気持ちである

 

「…妖怪に会うたび一々止まってたらヤバい。霊夢、ぶっ飛ばすぞ」

「…えぇ」

「へ?な、何なの?」

「キスメ?結局この二人は…」

 

キスメとヤマメだけが状況を理解できていない。まぁ理解してもらう必要も無いが。

私と霊夢はアイコンタクトを取り、先程の倍以上の速さで飛ぶ。

 

「うわあぁぁぁぁぁぁあ⁉︎」

「キスメぇぇぇぇぇえ⁉︎」

 

これ以上は時間が惜しい。霊夢にキスメの釣瓶の部分を持たせ、案内させながら飛ぶ。最初からこうすれば良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧地獄に通ずる橋

 

 

 

「…分かってはいたけど、本当に誰も来ないわね」

「お〜?パルスィじゃないか。相変わらずシケた面してるねぇ」

「…勇儀またこんな所フラフラして…全くその自由さが妬ましいわ」

「お前そればっかりだな」

 

橋姫・それは旧地獄を外敵から守る為に置かれる守護者である。それが今鬼の四天王の1人星熊勇儀と喋っている妖怪、水橋パルスィである。

 

「誰か面白い奴でも来たか?最近骨のある奴がいなくてねぇ」

「知らないわよそんなの。地上で幾らでも探せば良いじゃない」

「アタシは萃香みたいに自由に出入り出来ないんだよ。…誰か来ないかね。できれば噂の人間巫女とやってみたいね」

 

この二人は割と仲が良く、この橋周辺でよく駄弁っている場面が多く見られる。

 

「はぁ…そんなの来られても困るだけでしょう」

「あはは、そりゃそうだ……………!パルスィ、何か来るよ」

「え?……本当ね、何か聞こえる…」

 

 …あぁ…ぁ

 

「「?」」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁああ!?」

「な、何だあれ!?」

「あ、あれってキスメ⁉︎何で捕まってるのよ!」

 

悲鳴の様なモノが聞こえた方向をじっと見つめていると、高速でこちらに向かう影が三つ見えた。一つは先程話に出ていた巫女で、二つ目は…何故かその巫女に鷲掴みにされたキスメ、そして三つ目は勇儀に見覚えのある人物だった。

 

「えぇっ⁉︎ジン、何やってるんだい⁉︎」

「ん?…あぁ勇儀じゃないか、地底に行ったっつーのは本当だったんだな」

 

鬼と神、数百年越しで邂逅する

 

 

 

 

 




キャラ口調難しい…


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一悶着

地霊殿キャラ難しいなぁ


 

 

 

あれから高速でぶっ飛ばしていたら勇儀とパルパル言ってるよく分からん妖怪に遭った。変なやつだ……確か橋姫?だったか。ま、それは後でいい。それよりもこんなとこで勇儀に会うとは奇遇だ。何か知っている事でも有れば聞こう

 

「あーー‼︎アンタこの前の宴会で乱入して来た奴ね!」

「おや?噂をすれば巫女まで来てくれたのかい?」

 

コイツまさかここでやるつもりか?鬼はいつもそうだ。腕の立つ奴と出会えばすぐこうなる

 

「おいここで始めるなよ。時間を無駄にはしたくない」

「固いこと言うなよ〜折角機会が来たんだからさ〜」

「じゃあ今から三秒で終わらせてやる」

「…分かったよ。じゃ!また次の機会にな」

 

力と力のぶつかり合い、拮抗した白熱する喧嘩を好む鬼にとっては一瞬で終わる勝負程つまらないものは無い。よってこの手はよく効く

 

「あ、そういや勇儀、最近地底で何かあったのか?怨霊が地上に出て困っとるんだが」

「んあ?…あーそういや、さとりのペット?とかが何かやってるとは聞いたね」

「ペットだと?そんな奴がこんな騒動起こせるのか?」

「知らないさ。私が聞いたのはそこまでさ。」

「…成程、助かった。今度酒でも奢ってやろう」

「おっ!気前がいいねぇ。忘れるなよその約束!」

「わーってるよ、じゃ行くか霊夢」

 

まぁまずは旧地獄を統括している場所に行かなければな。ていうか霊夢はいつまで勇儀睨んでんだ

 

「おい、さっさと行くぞ」

「全く!次会ったら酒代請求するわよ!」

「…何やってるんだか」

 

抜かりなく請求していく霊夢のがめつさに呆れながら再び飛び上がる。そして一応置いていかれてる橋姫にも声を掛けておく

 

「急に押し掛けて悪いな。こっちも急ぎの用なんだ」

「…何者かは知らないけど、勇儀と知り合いなら問題はないわね…全くその関係の広さが妬ましい」

「はいはい、わかった分かった」

 

これ以上話してもほぼ変わらないだろう。そろそろ行くとするか

 

「…あ、あのー私はいつまで着いていけば…」

 

あ、完全にキスメ(こいつ)のことを忘れていた。

 

「もう大丈夫だ。帰っていいぞ」

「…妖怪に対してこんな扱いするのアンタらぐらいだよ…」

 

何かブツブツ言いながら何処かへ飛んで行った。あいつも災難だな(元凶) 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

旧都・昔は地獄の一部であり、人手不足と資金の問題により放棄された場所である。だがそんな事は忘れたかのように目覚ましい発展を遂げている。道は整備され、店も多くの客により賑わっている。

 

「ほぉー、まさか百年ちょっとでここまで変わるとはな。ここの主は相当優秀だったとみえる」

「そうね、旧地獄なんて言うからもっと酷い所を想像したわ」

 

いやしかしパッと見は特に不審な点は見当たらない。住人も普通に生活しているし、何かあったようには見えない。ここで調査するより地霊殿に向かった方が早いか?

 

 

 ドゴ……ォォ…ォォン

 

「!」

 

今微かにだが都より更に奥、地霊殿のある方角から何か爆発する様な音が聞こえた。

 

「霊夢、恐らく彼方に元凶がいるようだ。行くぞ」

「え?…ホントね。何か聞こえるわ」

 

聞いた感じかなり大きな規模の爆発だ。早く行かなければ地底が沈む。地霊殿、崩壊してなきゃいいけどな…もう遅いか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー……これは…」

「…これが地霊殿?」

 

地霊殿は見るも無惨な事になっていた。建設された当初は五階建てだった筈なんだが今はどう見ても四階建てにしか見えない。こりゃ直すの面倒くさいぞ

 

「…取り敢えず入るか」

「え、えぇそうね。元凶を確かめないと」

 

私は立派な門だったものに手をかけ開ける。しかし相当なダメージが入っていたのか開けた瞬間崩れ落ちた

 

「…これは」

「ようこそ地霊殿へ、人間さん?」

「!誰よアンタ……」

 

崩れ落ちた門の向こう側に見えたのはピンク色の髪をした不思議な妖怪だった。突然の登場に霊夢は驚きつつも警戒する。

 

「申し遅れました。私ここの主を務めている古明地さとりといいます。どうぞ宜しく」

 

胸にある第三の目……覚妖怪か




地霊殿難しいーー!


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覚妖怪

なんか地霊殿長くなっちゃいました


 

 

私の名前は古明地さとり。地霊殿の主人にして旧地獄の管理者。今私は旧地獄へやってきた人間達への対応を行なっている。1人は脇の空いた巫女服少女ともう1人は外で言うスーツ?というものを着ている。ここでそれは暑いでしょうに

 

「名乗られたからには返さなくてはな。私は岡迅一郎という」

「…博麗霊夢よ。貴方がこの異変の首謀者かしら?」

「異変…地上に湧いた間欠泉と怨霊ですか」

「やっぱり何か知ってるのね?」

「いえ、今のはただ貴方の心を読ませていただきました」

「!」

 

そう、これが私の覚妖怪としての能力『心を読む程度の能力』。人の考えている事は全て私に分かる。私の誇る能力だ

(さて、こちらの御仁は何を考えているのかしら?)

 

「それはあまりお勧めしない」

「⁉︎」

 

私が心を読もうとしたのを悟られた?まさか相手も……いや覚妖怪には見えない。なら何故?

止まらない疑問を抑えながら冷静を装い質問する

 

「……それは何故でしょうか?」

「私の思考はお前では処理し切れない。やったらえらい事になるぞ」

 

そんな事を言われてしまっては好奇心が抑えられなくなるのが覚妖怪というもの。私はどうしてもこの男の考えている事を知りたい。そして能力を行使する

 

「警告はしたぞ」

「ぐっ⁉︎あぁぁぁぁぁぁぉああ‼︎」

 

能力を行使した瞬間、耐え難い痛みが頭の中を走った。膨大な量の情報が流れ込んでくる。頭が割れそうだ。思考が纏まらない。

 

(痛い、苦しい、痛い、痛い、苦しい……死…)

 

「あーあ、だから言ったのに。まぁここまで耐えれればマシな方か」

「ジンさん?何をしたの?」

「いんや、私の思考回路を読んだだけだ。それでも全情報の1%にも満たないが」

 

これで全てでは無いのか。もう意識が朦朧としてきた。二人の声がだんだん遠ざかり、私は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぅ……ここは…」

「やっと起きたのね。何で私が妖怪の看病なんか…」

 

目が覚めると私はベットの上で寝かされていた。地霊殿の一室である。ふと傍らを見るとあの巫女が居た。何か文句を垂れている。

…まだ頭が痛む。能力も上手く使えそうにない。痛む頭を押さえていると誰かが部屋に入ってきた

 

「お、起きたか。まだ痛むのか?」

「貴方は…」

「表面意識とはいえ私の思考を読むなんて自殺行為にも程がある。まぁ破壊された分の脳細胞は再生しといてやったから、後遺症は残らないだろう」

「はぁ、ありがとうございます…あの」

「何で助けたか、か?」

 

!この人は覚妖怪でもないのにこちらの思考を読んでくる。不思議なひとである。だが不快ではない

 

「えぇ…少なくとも、今会ったばかりで助け合うような関係でもないのに…」

「…私はただそんな死に方をする奴を見たく無かっただけだ」

 

…今は心は読めないが、これに関係する何かがあったというのは分かる。

 

「お優しいんですね」

「ははっ、私が優しかったら全人類聖人君子だよ」

「いい雰囲気のとこ悪いけど、早くこの異変を解決しに行きたいんだけど?」

「おおそうだった。早速で悪いが何か知っている事は無いか?」

 

 

知ってる事…確かにある。お空…私のペットの一匹が突然妙な力を手に入れた事である。それは凄まじく、昔の灼熱地獄を復活させてしまう程であった。

…しかしこれを伝えていいものか。言ってしまえば討伐されてしまうのではないだろうか。能力が危険だと判断されて仕舞えばあり得ない話では無い

 

「心配せずともお前やその身内を特にどうこうするという話では無い。あくまでも調査、ましてや討伐なんぞはしない」

 

信じて良いのだろうか。人はいつもそう言って…

 

「私は神だ。約束を違える事は無い。この名に誓おう」

「神……」

 

でも、少しなら信用してもいいかも…

 

「分かりました。お話致します


 

 

 




次で終わらせたい…!


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既視感

すみません。この三日間研修旅行で投稿出来ませんでした。出来るだけペースを上げるので何卒…


 

私達はこの旧地獄に存在する『灼熱地獄跡』へ向かっている。

あの後さとりに全てを話してもらい、事の顛末を聞いた。彼女が従えているペットの一匹、霊烏路空という地獄烏の妖怪がいるらしい。彼女は最初は普通の妖怪だったのだが、突然『核融合を操る程度の能力』なんていう神にも匹敵しうる能力を得たらしい。その力を使い、灼熱地獄を再興させたのだが勢い余って地上にも漏れたらしい。この影響が間欠泉として表れたのだ

だがそんな強大な能力が生まれついて以外で、自然発生する事はあり得ない。ならば誰かに与えられたという説が有力になる。こちらも要調査だな。

 

「ジンさん。核融合?を操るってどんなものなのよ?」

 

私が思考していると霊夢が話しかけて来た。どんなもの、か…

 

「そうだな。そもそも核融合というのは目に見えない程小さな物質"原子"の中心にある原子核同士が合体する事だ。これにより強力なエネルギーが発生し、それは軽く街を破壊できる」

「それって大変じゃない!何かある前に退治しないと」

「それについては問題ない。核融合は核分裂とは違い、安全性が桁違いだ。暴走する事は殆ど無いと思っていい」

「…そうかしら…」

「ま、今回は暴走した訳では無いんだ。必要以上の事をする必要は無いだろう」

 

私としては力を与えた存在の方が気になる。そこは問いただした方がいい。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

灼熱地獄跡

 

 

「熱い…」

「確かにこれは熱いな」

「そんな事言って全然汗かいてないじゃいの。説得力が無いわよ」

 

そうは言っても耐性が付いてしまっているし、どうしようもない。生きてきた環境が違うのだ。

だが流石元地獄という事もあり、私が『熱い』という感情を出す程の温度である。むしろこれに耐えれている霊夢が異常だ。

 

 

「うにゅ?貴方達だぁれ?」

「ちょっとお空、もう少し警戒ってものを…」

 

灼熱地獄の中を歩いていると、炎の中から黒い翼を持った妖怪と猫の耳が付いた妖怪が表れた。

翼が生えている方が"お空"と呼ばれたので、さとりが言っていた霊烏路空で間違いないだろう。そしてもう片方がよく一緒に行動している火焔猫燐であると考えられる

 

「私は岡迅一郎という。お前達は霊烏路空と火焔猫燐だな?」

「あれ?私たち名前言ったっけ?」

「君達の飼い主から聞いた。まぁそのなんだ…奴とは友人だ」

 

隣から霊夢が"嘘つけ!さっき会ったばっかりだろうが"と言いたげな目をしている。頼むから黙っていてくれ

 

「そうだったんだね!私は霊烏路空、よろしくね!」

「いや、名前は聞いたと言ったんだが…」

「うにゅ?そうだっけ?」

「あー…さとり様のご友人さん?お空は鳥頭だからちょっとね」

「あぁ…なるほど」

 

そういやさとりの奴そんな事も言ってたな。こりゃ時間がかかりそうだ。取り敢えず本題に入ろうかね

 

「あれー?何だか貴方とは初めて会った気がしないよ?」

「え⁉︎お空が何かを覚えている⁉︎」

 

…本題に入ろうとしたら突然話しかけられた。

それにしても会った事あるっけな。一度話した相手なら忘れない筈なんだが……いや待て、八咫烏って…

 

「もしかしたら八咫烏の力を得た時に記憶も引き継がれたのか?」

 

可能性としてはそれが一番高い。私があの時会った八咫烏とは別であるが、お空にとっては久しぶりの感覚なのだろう。

 

「うにゅ?よく分かんないけどやっぱり会ったことあったんだー」

「いや直接的には会ったことは…はぁ、もういい。そうだよ会ったよ百年くらい前に」

「そうなんだー!よろしくね!」

 

…何か疲れてきた。早く本題に入って帰りたい…天照にも連絡せねば…

 

 

 

 




何度もすみません。タグを追加いたします


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解決?

少し独自展開入ります


 

 

 

「へぇ〜、じゃあ要するに灼熱地獄(ここ)での活動をやめて欲しいってことね」

「…あぁそういう事だ。お前が居てくれて助かった。お前が居なければ一体何日掛かったことやら」

「ま、まぁお空のあれは仕方ないさ。直せるもんじゃないよ」

 

あれからお空と話していたのだが段々話がループし始めたので、お燐が見かねて代わりに話してくれた。因みにお空と霊夢は後ろの方で弾幕ごっこをしている。

 

「というより怨霊は貴様のせいだったんだな。大体分かってはいたが」

「まぁね、こうでもしないと地上に異常を伝えれないからね。あの力はお空には大きすぎたんだよ」

「だからその発散として霊夢とやり合ってる訳だな。…全く無責任にそんな力を与えたい奴にはO☆HA☆NA☆SHIが必要だな」

「ヒェッ…なんかあんた怖いよ?」

 

おっといかんいかん。力が漏れ出てしまった。感情のコントローンも出来んとは、歳のせいか?

 

「悪いな、気にせんでくれ……あちらもそろそろ終わりそうだな」

「そうだね……あー、やっぱり巫女ってのは強いんだねぇ」

「そりゃそうだ。でないと調停者なんてやってられんだろ」

 

勝負の結果としては霊夢が勝った。事前に能力のレクチャーや、模擬戦もしてやったから慣れていたのだろう。成長が著しく、喜ばしいことだ

 

「うー…負けた〜」

「ったく、もう馬鹿な事すんじゃないわよ」

「…は〜い」

 

こってり縛られたな。時間が経てば間欠泉もいずれ止まるだろうし、お燐が怨霊を地上に出す必要も無くなる。さとりに報告だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この度はご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」

 

最初にさとりに言われたのがこれだ。律儀な事にしっかりと謝罪をしてくれた。

まず報告のため地霊殿に戻った。一通りの出来事を伝え、この後の地上関係の事も話した。関係が拗れないようにだ。

 

「それなら霊夢に言え。コイツまだ機嫌が悪いからな」

「ちょ、ジンさんそれじゃ私がガキみたいじゃない」

「事実、まだ子供だろう?別に情緒が安定しないのは恥ずかしいことでは無い」

「そうじゃなくてねぇ…」

何か言いたげであったが黙り込む。むぅ、女というのは何億年経っも分からないものだ。

 

 

 

 

 

 

…何かおかしい。部屋の中には私、霊夢、さとり、お空、お燐の5人の筈であるのに気配がもう一つする。

大体…ここら辺か?私はそのナニカを摘み上げる

 

「わー、見つかっちゃったー」

「…何だこいつは」

 

触ると突然目に見えるようになった。黒い帽子をかぶった薄い緑髪の少女だ。胸の所にさとりと同じ第三の目がある。こいつも覚妖怪か

 

「こいし⁉︎何処行ってたのよ、心配したのよ!」

「知り合いか?」

「…えぇ、私の妹です…」

「こいしだよー、よろしくね」

 

何と姉妹だったか。何となく顔立ちが似ているとは思ったが姉妹とは。纏う雰囲気が全く異なるので分からなかった。

 

「…第三の目が閉じている…どういう事だ?」

「んー、こいしはねー?皆んなに嫌われたく無いからこの目を閉じたのー。そしたら皆んな私が見えなくなっちゃってねー?」

 

…解析、古明地こいし 覚妖怪 『無意識を操る程度の能力』…なるほどな。

しかし第三の目は覚妖怪にとって重要器官だ。人間で言うところの大脳が封じられる様なものである。それを閉じてしまえばこんな事になってしまうのは明白の筈。

…それを厭わない程、相当辛い事があったのかね…

 

「皆んなに見えなくなるとは、姉に見つけて貰えなくて寂しいとかは無いのか?」

「んー…そりゃ寂しいけど嫌われるよりはマシかなーって」

 

嘘だな。一瞬心に揺らぎがあった。これを見て何も思わない程私は鬼では無い。

 

「もし心が読めないまま姿を認識して貰えるようになる、と言ったらどうする?」

「え?…そりゃそっちの方がいいけど?」

「なら話は早い。少し此方へおいで」

「何をし………え?」

 

私はこいしの頭に手を置き、脳内に干渉する。第三の目は勿論脳内に直結している。まずはそこの器官を修復し、第三の目を開かせる。

 

「こ、こいし貴女…目が!」

「うにゅ⁉︎こいし様が居る?」

「え…?ま、待って、私心なんて読みたく…」

「分かっている。もう少し待て」

 

そして第三の目の管と脳に繋がる管の間に"弁"を挟む。これによりこいし自身の任意により、心を読む、読まないを切り替える事が出来る。勿論ずっと読まない事も可能だ。

これなら単純に目を閉じるより脳に負担がいかない為、心が虚無になる事も認識されないなんて事も無くなる

 

「気分はどうだ?」

「目が…開いてる…こいしが見える…」

「お、お姉ちゃん…私が見えるの…?」

「っ!えぇっ…見える、見えるわ…!」

「う、あぁぁ……お姉ちゃぁぁぁあん!」

「こいしっ!」

 

妹が見るようになった事が嬉しかったのか、さとりがこいしに抱きついた。こいしもさとりに手を回し、抱き締める。

 

「お節介だったかね?」

「…!いえ、お恥ずかしいところを…」

「問題無い。久々の姉妹の時間を楽しむと良い。身内に会えない気持ちは痛い程分かる」

 

…もう何億年も前なのにコレだけはどうしても覚えてしまっている。慣れないな

 

「…ジンさん?」

「おっと、そろそろ私は行かなければ。呼び出しを食らっているものでね」

 

私は誤魔化すように懐から端末を取り出す。呼び出しを食らっていたのは嘘ではない為怪しまれる事はなかった

 

 

「じゃあ私は今からスキマを呼び出すから細かい話はそいつとしてくれ」

「スキマ…?まぁ分かりました。何から何までありがとうございます」

「気にするな……フンッ!」

「あだだだだ⁉︎あああ頭はやめてぇ!」

「うわぁ…痛そう…」

 

私は空間を裂いて八雲紫を呼び出す。まだ頭が痛むのか、痛みに悶えている。

 

「今度は何なの⁉︎」

「数時間ぶりだな。早速だがこいつと話せ。これからの地底と地上の関係の話だ」

「えぇ…いきなり…」

「何か言ったか?」

「いえっ、何でもありません!」

 

それでいい。今までどれだけ式に任せていたんだ…見たこと無いが同情する。

さて、私も私のする事をやるか

 

 

 

 

 




こいしを改造してしまいました…
もしいつものこいしが好きな人はすみません…


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事態の変化

ここからほぼ時系列とか展開とかおかしいです。原作遵守の人は注意してください


 

 

 

私は地底から逃げるようにして英知界へと帰った。最近昔を思い出す事が多くて敵わん。やっぱり歳のせいか

すると白夜が心配そうに私の近くに来る

 

「大丈夫ですか?気分が優れないように見えますが…」

「…お前が思っている程深刻では無い。心配するな」

 

私はこんなところでくよくよしていられん。また月関係で神界へと呼ばれた。しっかりとあれとはケジメをつけなければ

 

「白夜、私は今から神界に行ってくる。会議の間は量産機に業務をこなさせろ。お前は守矢神社に行け。諏訪子と神奈子に"程々に"と伝言を」

「了解致しました。それでは行ってらっしゃいませ」

「あぁ、分かった。」

 

話は変わるが、結局お空に八咫烏の力を与えたのは守矢神社にいる二柱だった。何でも核融合を利用したエネルギー革命を起こせば、自分達の名が幻想郷に轟くと思ったらしい。

妖怪にとはいえ、大きすぎる力を一妖怪に渡すのはやめて欲しい。よって白夜に警告させにいく。素直に聞いてくれればいいが

 

ま、そこは白夜に任せて私は私のするべき事をするだけだ

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

神界

 

 ザワザワ…ザワ…

 

相変わらずやかましい所だ。いい年したら神が静かに待てんのか

神達を見渡していると、一柱異常に震えているのを見つけた。月読だ

 

「久しぶりだな?月読」

「⁉︎…お、お久しぶりです。岡様…」

「自分の配下の手綱も引けないとは堕ちたものだ。今回は何をやらかしたんだ?……いやそれは議会で聞くとしよう。ただ良い結果は期待するなよ」

「…了解しました…」

 

ここで問い詰めても意味は無い。自覚のないものは公の場で吊し上げる。これが効果的だ。

 

 ゴーン…ゴーン…

 

議会収集の鐘が鳴る。伝達神ヘルメスだ。皆一斉に議会場へと動き出す。私も行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

副議長席に座ると、隣に座るアメノの顔が暗い事に気付いた。

 

「何だ、もうすぐ始まるのだからシャキッとしろ」

「…ねぇ、この月人達はどうなっちゃうのかな…」

「知らん。内容を聞いてからでないと此方も決めかねる。だからまずは姿勢を正せ」

「…うん」

 

何なんだ。こんな雰囲気になる議会は久しぶりだ。これは主に私とアメノの意見が別れる時に感じられるものだ。…面倒な事にはならないよう祈ろう

 

『それでは第〜回臨時神議会を開催致します。起立っ!』

 

私がそう言うと全員が立つ。

 

『礼!』

 

そして礼、全員が一斉に座っていく。だが数十名は立ったままだった。こういうのは集礼を掛けた神が立つことになっている。

ヘカーティアを筆頭とした『月面対策委員会』の面子である。

 

「今回は我々の集礼に応じて頂き感謝致します。今回集まって頂いたのは他でも無い月に関する事です」

 

ヘカーティアがそう言うと、周りからは"またか"や"月読は何をやっている"等と声が聞こえて来る。話が止まりそうだったので私は片手を上げて沈めさせる。

 

「ありがとうございます。私達が問題視するのは月人達による地上侵攻です。この数年間、月からの調査船の来航が絶えず、"地上の浄化"を名目とした環境破壊や地上民の殺害等が行われています。地上の報道機関では不審死や異常現象という事で纏められていますが、それが露呈するのも時間の問題でしょう。このままでは地上民が月人により殲滅されてしまいます。その可能性を報告しに参りました」

 

かなり長い報告が終わった。前々から問題になっていた月人の地上侵攻。これは放ってはおかない。

本来もう存在しない筈の月読率いる旧人類はアメノと天照により保護されて来た。だが原則今地上で進化を続けている新人類を最優先にして考えなければいけない。

その旧人類が新人類に仇なす事をしているのであれば、守ってやる義理は無い。寧ろ消滅だ

 

『ヘカーティア・ラピスラズリ、説明感謝する。つまり君達は月人達が存続に値するかそうで無いか、を確かめる為ここにきた訳だな?』

「はい、その通りです。今生きている人類を放棄してまで、過去の存在である月人を保護する必要はあるでしょうか?それを此処にいる皆様方に判断していただきたく馳せ参じました」

 

全く、お前はただ嫦娥に復讐したいだけだろうに。まぁ消滅という意見には賛同だ。とても擁護し切れるものでは無い

 

『…了解した。ではこれより一年の猶予をとる。それまでに各々の自身の意見を取り、次回の議会で投票して貰う。それにより"存続"か"消滅"かを決定する。それでいいですね?議長殿』

『…う、うん。それで良いよ…』

『よし、これにて議会は閉会する。各自解散!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

議会が終わるとアメノが私の元まで走ってきた。

 

「ね、ねぇ!消滅って本気なの⁉︎」

「ん?あぁそれも視野に入れている。これ以上地上に被害が出る前に手を打つ。それだけだ」

「…月にいる子達だって生きてるんだよ?そんな私達の判断で消滅なんて…」

 

こいつは本当に最高神か?神としての自覚が足りなさ過ぎる

 

「はぁ……いいか、私達は神だ。この世界の管理者だ。私達は自然な生命の進化を見守り、あらゆる異常を排除する立場にある。それが大前提なんだ。今回は私達の守るべき生命は"地上民"で異常とは"月人"の事だ。」

「神は何でも救ってやるお人好しじゃ無い。守るべき生命を繋ぐため最善をとる存在だ。害にしからならない存在は要らないのだ」

「…それでも私は納得いかない…理屈は分かるけど…納得出来ないよ!」

「…もう良い。結果は一年後だ。それまで待つ事だな」

「ジン…昔はそんなんじゃ無かったのに…見損なったよ…」

 

話にならない。これ以上話しても無駄だ。早急に帰って仕事でもしよう。

 

私とアメノが決定的に決別した瞬間だった。




完全オリジナル展開です。
因みにジンは原作キャラ達の敵に回る予定です。

ジンの月嫌いは八雲紫の天人と同じくらいです。


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日常

頑張って平日投稿だあ


 

 

 

神議会が行われているその一方で…

 

守矢神社

 

「う〜ん、いい天気だなぁ」

 

この神社の巫女、東風谷早苗はくつろいでいた。毎日信仰を得るため人里へ布教活動をしているが、今日は休暇を取っていた。久々の休暇であった故にこちらへ近づいてくる気配に気づけなかったのだろう。

 

「失礼致します」シュバッ

「うわぁ⁉︎び、白夜さん⁉︎何しにここへ?」

「あの方からの伝言で御座います。諏訪子様と神奈子様に直接言うようにと」

「な、なるほど。お二人ならまだ中にいると思いますが…」

「ありがとうございます」

 

白夜は答えを聞くなり直ぐ中へ入っていった。あまりの展開の速さに早苗は追いついていなかった。

 

(何か避けられるような事したかなぁ)

 

※自覚は無いが、間違いなく宴会の時体を弄った件である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コンッコンッコンッ

 

「ん、誰だい?早苗かい?」

「うーん、早苗にしてはちょっと神力が高いような?まぁいいや、入っておいで」

「失礼いたします」

「おや、アンタは岡様の所の…」

「白夜で御座います。お初にお目にかかります」

 

お互いジンを介して知ってはいたが、直接会うのは初めてである。

 

「で?ジンのとこのが何の用?」

「岡様からの伝言で"程々に"との事です。」

「!」

 

二柱は思い当たる事があるのか少し気まずそうにした。

 

「はは、ジンには何でもお見通しだね」

「あぁ、何も隠し通せる気がしないな」

「…岡様は少しですが怒りの感情が見えました」

「「え」」

 

白夜の言葉を聞くと二柱は錆びたブリキのようにギギギっと此方を向いて

 

「まじ?」

「何でもO☆HA☆NA☆SHIがあるとか…」

「い、いやだぁぁぁぁぁあ…」

 

その日、守矢神社には諏訪子の絶叫が響き渡った

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ぶえっくし!」

「お、神様も風邪を引くんだな」

「いや、今のは誰かが噂してたな」ズビッ

 

私ジンは人里に来ている。最近ここらでも怪しい動きがあるとか無いとかという事で散歩がてら調査に来た。道中で会った霧雨魔理沙と共に行動している。何でも今から香霖堂に行くらしい

 

「香霖堂か。何しにあそこへ行く?」

「ん?私の八卦炉があるだろ?あれあそこで作ってもらったんだ。前にお前に技の完成度が"酷い"って言われたから見てもらおうと思ってな」

「…確かに言ったな。そしてその原因は八卦炉では無くお前自身にあるという意味で言ったんだが」

「あれー?そうだっけなー?」

 

こいつ…一回幽香のマスパ喰らってこい。そしたら差が分かる筈だろう。

 

「…よし、私がお前を鍛えてやろう。本物の魔法とは何かを教えてやる」

「え?お前魔法使えたのか?初耳だな」

「まぁ科学に基づいたものだがな。無駄な話ではないだろう」

「何でもいいや、吸収できるものは全て取ってやるぜ!」

 

素質はある。一から鍛え直せば素晴らしい成長を遂げるだろう。

こうやって特訓するのは諏訪子と白夜以来だ。楽しみである

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

迷いの竹林にて

 

「教えてくれるのはいいけど何でここなんだぜ?」

「ここならいくら魔法打っても勝手に修復するし、周りの被害を気にする必要が無いからな」

 

結界が元々張られているから貼り直す必要も無い。実験には好都合だ

 

 

「で?結局どうするんだ?コツでもあるのか?」

「まず魔法とは何か、だ。魔法は何でもできる摩訶不思議な力では無い。しっかりと自然法則に従った上で発動するものだ」

「それはどう繋がるんだぜ?」

 

まずは魔法とは何かを理解するところからだな

 

「お前が得意とする『マスタースパーク』の正体はなんだと思う?」

「は?マスパの正体?……う〜ん、分からないぜ。魅魔様に習った時はそこまでは教えられなかったからなぁ」

「ならば教えよう。そもそもお前らが使っているビームやら光球とは、粒子の集合体であり、流れである」

「まぁマスパだけに限られた事では無い。この幻想郷に存在する他の弾幕にも言える事だ」

 

魔理沙は益々"分からない"といった表情を作る。少し長ったらしく言い過ぎたか?

 

「要するにイメージだ。マスパをただの魔力の塊だと思うんじゃない。一つ一つ微小な粒子の集まりでそれが高速で移動していると思え」

「へぇ、でもそれだけで変わるのか?」

「原理を理解しない前よりは良い結果が出る。全ての物事に言える事だ」

「んじゃやってみっか」

 

魔理沙は竹林のある方向へ向き、何かを呟き始める

 

「マスパ……粒子…流れ……高速移動…」

 

すると今までムラのあった魔力が綺麗に整えられ、魔理沙の中へ集束していく。無駄が省けた事で魔力許容量も増えたみたいだ

魔理沙は突然目を見開き、宣言する

 

「恋符『マスタースパーク』!!」

 

 

 ズドオォォォォォォォオオン!!

 

 

爆音が鳴り響き閃光が視界を埋める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石だな。飲み込みが早い」

「へ……あ、これ私が…?」

 

光が収まると、魔理沙が向けて打った方向にあった竹林は全て消し飛んでいた。迷いの竹林なんて呼ばれるここでこんな現象はあり得ない。竹を壊しても、一瞬で再生するからだ。

しかし魔理沙はその再生が追いつかない程の威力で竹林を消しとばした。これがどれだけの力か想像は容易い

 

「…なんだこれすっげぇ!私こんなの打てたのか!」

「元々打てる能力はあったが、使い方が少し下手だっただけだ。お前が積んできた努力は意味のないものでは無い」

「!……さんきゅ、ジン!」

 

魔理沙は余程嬉しかったのか笑顔で礼を言ってくる

 

「私は力の使い方を教えただけだ。力自体はお前が持っていたものだ。感謝されるような事では無い」

「ははっ、ジンらしいな」

 

諏訪子の時も思ったが、誰かに物を教えるのは楽しい。まるで自分の子供が出来たみたいだ。

…ま、私にはそんな事は二度と出来んが

 

「?ジン、どうしたんだぜ?」

「ん…いや何でもない。弟子の成長を喜んだだけだ」

「いやいつから師弟関係になったんだよ」

 

そんなくだらない応酬をしていると

 

「なん……じゃこりゃあぁぁぁぁぁあ⁉︎」

「ん?」

「あれは…」

 

叫び声の方を向くと白髪の不死人、藤原妹紅がいた

 

 

 




キリ悪くてすみません


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久々

アンケート投票ありがとうございます


 

 

取り敢えず目の前の不死人を宥める

 

「おい落ち着け」

「これお前達がやったのか⁉︎どんだけ威力強いんだよ!わっけ分かんないわ!」

「いいから落ち着け」ペシッ

「あだっ」

 

少しは落ち着いたか?今日の竹林は賑やかだな(主犯格)

 

「ふぅ……悪かった。ここじゃ絶対見ない光景だったからつい」

「それは私も賛同するぜ。まだ自分がやったって実感無いからな」

「お前だったんかい!」

 

何故私は目の前でコントを見せられている?仲が良い事は結構だが、忘れられるとちょっと悲しい

 

「…でもお前そんなに強かったか?前見た時はそうじゃなかった気がするんだけど」

「これも私の努力の賜物だぜ!」

「ははっ、調子の良い奴め」

 

先程までの謙虚さは何処へ行ったのか。物凄い掌返しである。

 

「で?お前さんは何してたんだ?」

「いや、筍掘ってたら凄い音が聞こえたもんだから…そこにあんたらがね」

「筍か。だがその量は一人で食うには多すぎないか?」

「ん?あぁ違う違う。これは慧音の寺子屋に送る分だ」

 

慧音…割と上手くやっているのだな。少し前に寺子屋に寄ったら頭突きの音が聞こえるから、上手くやれていないのかと思った。

 

「しっかり人里の生活に馴染んでいるな」

「…ま、これも慧音とアンタのお陰だ。特にアンタには慧音に会わせてもらって……感謝してるよ」

「何でどいつもこいつも私に礼なんて言うんだ。私は何もしとらんと言っとるだろうに」

「何言ってんだ。まんざらでも無さそうにしやがって」

「やかましい」

 

魔理沙にそう言われて否定するが、礼を言われるのは悪い気はしない。いい歳したおっさんが言われるのも変だが、甘んじて受け取っておこう

 

「そういや香霖堂はもういいのか?」

「あ………」

 

 

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「魔理沙……まだかなぁ…」ズズッ

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「やべっ!ちょっくら行ってくるぜ!」

「あ、おい!…行っちまった…」

「元気な奴だなぁ、はっはっは」

 

魔理沙はまだ空いている竹林の跡を箒に跨って飛んでいった。これが直るのは後どれくらい時間が必要だろうか

 

「…後数時間くらいで直る…筈だ」

「筈って……まぁ困るのはあの女くらいだろうし、私にとっちゃ好都合だ」

「何だ、まだ殺し合ってたのか?飽きない奴だ」

「別にいーだろ、だってあいつはよ……」

 

 

この何でも無い時間が好きだ。この瞬間だけは色んな問題を忘れて過ごせる。今まで一人で各地を回り、誰かと共に行動したりするなんて殆ど無い。よってかけがえの無い時間なんていうのとは無縁だと思っていたが、そうでも無いらしい。

 

「…で輝夜の奴がよって聞いてんのか?」

「ん?あぁ勿論聞いていたとも」

「な〜んか怪しいなぁ〜?」

「はっはっは、そんな事無いさ〜」

 

妹紅は私に詰め寄る。そして私は空を飛んで逃げる

 

「あ、ちょ待てー!」

「ふはははは!捕まえてみろ、不死鳥君?」

「ぐうぅぅ……腹立つぅ…」

 

因みに空中での追いかけっこは半日続いたという

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

博麗神社

 

今日も参拝客の居ない神社で霊夢は黙々と境内の掃き掃除をしていた。こんなにも参拝客が来ないのに何故生活出来ているのかが不思議になるレベルである

 

「よっと…あ」ビュオッ!

「あ……」ブワァ

 

突然現れたジンが境内に降り立った風圧で折角集めた枯れ葉が全て吹き飛んでしまった。

 

「あー……悪い」

「ちょっとそこ直れ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、今度からは気をつけなさいよね。あ、後賽銭よろしく」

「いやぁ悪かった悪かった、割と妹紅に速く追いかけられてな」

「あんたら何やってんのよ…」

 

霊夢の説教は割と長く続いた。というか誰でも頑張った結果を無駄にされては怒るものなのだ。しかしここでちゃっかり賽銭を回収している霊夢は流石である

 

「それにしても乾燥してるわね。梅雨入りしたってのに全然雨降らないじゃない」

「ん?言われてみればそうだったな。洗濯物がよく乾いていいじゃないか」

 

 

私は最近晴れが続いてラッキーだとは思っていたが、確かに少し異変臭いかもな

 

「んー……そんなものかしら」

「そんなもんじゃないか?………………霊夢、今から五秒後にデカいのが来る。踏ん張れよ」

「は?いきなり何言って…」

 

 

 ゴゴゴゴゴッ ゴガアァァァァァアン!

 

「きゃあ!」

「おっと」

「あ、ありがとう…」

 

突然の事に対応出来なかった霊夢を支える。かなり強い地震である。

地震は暫く続いた。この強さは震度6強はある。これは人里が心配だ

 

「な、なんだったのかしら。というよりよく倒壊しなかったわねこの神社」

「私が倒れないように強化したんだよ。ここは結界の要所だから崩れては困る」

「あー……なるほどね」

 

此処に何かあったら外界に妖怪が出て、大きな被害が出てしまう。それだけは避けなければ。

しかしこんな地震滅多に起きない。私でも経験するのはそこまで多くない。人里の様子を見に行くか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何?被害は出てない?」

 

私達は人里の様子を見にきた。しかし会った慧音からの話によると何も被害は出ていないらしい。

 

「あぁ、そんな建物が倒壊するほどの地震を感じなかったなんて事は無い。私たちの所ではそんなもの起きてないぞ?」

 

おかしい。仮に震源地が博麗神社だったとしても多少なりと人里にも影響はいく筈。個人の周りでしか発生しない地震だと?それは能力かなにかじゃないとあり得ない

 

「霊夢、分かっているとは思うがこれは異変だ」

「えぇ私の神社をぶち壊そうとした奴にはそれなりの報いを受けてもらわなくちゃね…」ワラァ…

 

感情が昂り過ぎて髪の毛が逆立っている。私も今回のこれには多少なりと怒っている。どいつもこいつも要らん事ばかりしおってからに

もし主犯が現れたら

 

「「ブチのめしてやる」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




緋想天入りました。月関係でごちゃごちゃしたので時系列が少しズレました。原作遵守の皆さん申し訳ありません


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天人

緋想天やった事無いので色々おかしいです。注意してください


 

 

 

「ジンさんまだなの?」

「ちょっと待て、今探っているから」

 

私は地震の主犯を見つけるため、幻想郷全域を対象にソナーを飛ばしている。覚醒を100%にすればこんな事しなくても済むのだが、普通に疲れるからあまり使いたく無い

 

「…幻想郷の地底や地上には居ない」

「地上に居ないってもしかして冥界とかそんなとこからやってるのかしら?」

「いや、冥界には地震だけを起こす様な能力持ちは居ない。ならば幾つかは絞れてくる」

 

幻想郷のソナー範囲外といえば、冥界、地獄、魔界、天界、神界、畜生界、英知界などだ。これでも十分広いが、宇宙全体を管理している私にとってはここから探し出すのは朝飯前である。

 

「…地獄はあり得ないな。魔界は神綺がいる、神界と英知界は論外だ」

 

ならば残りは畜生界、天界か……正直どちらが起こしていても不思議では無いくらいには不安定だ。だが畜生界には特に誰かが統率している訳ではないから難しいだろう。

ならば必然的に天界になる

 

「天界……あそこの奴らは傲慢ではあるが、考え無しにするような奴らでは無かった筈だ…」

「何でもいいわ。とにかく疑わしい奴は潰すまでよ」

「血気盛んだな」

 

取り敢えずそこしか無いから行ってみるか?

 

「!ジンさん、上から何か来るわよ!」

「ん?」

 

霊夢に呼ばれ空を見ると岩のようなものがこちらに降ってきていた。

しかしそれが人里に墜落する事は無かった。何故かって?私が止めたからに決まっているだろう。

私ほどになれば物体の速度を殺して空中静止させる事など造作もない

それはそうとして…

 

 

「まさか主犯が出張ってくれるとは、手間が省けたな」

「…あれが今回の元凶って訳?」

 

霊夢が訝しげに空を見上げる。そこにはいかにもという感じで踏ん反り返った1人の少女と女性が居た。

この気配は…天人か

 

「その通りよ!私の名前は比那名居天子!天人よ!崇めなさい‼︎」

「うるせえ」

「総領娘様、そこまでにしておいた方が良いかと」

 

こいつは…ただの妖怪、いや竜宮の使いか。割と格の高い方の妖怪だな。大妖怪には及ばないが

 

「あんた達のせいで危うく神社が倒壊しかけたのよ!もしなってたらどうしてくれてたのよ!」

「え?…あぁ、そんな事?別に良いじゃない。神社の一つや二つくらい。こっちも暇だったのよ…ふわぁ…」

「アンタ…自分の行動には責任持ちなさいよ…!」

 

すると天子と名乗った少女は頭に疑問符を浮かべ、

 

「責任?何でそんなものを?」

「は?いやアンタ神社壊しかけたでしょうが」

「それの何が問題なの?この私の暇つぶしになれたのよ、光栄に思いなさい!」

 

あ、やべ。霊夢がブチギレそうだ。ここは一時避難しておこう。

霊夢は天子と同じ高さまで浮遊し、人里に影響が行かない場所まで誘導する。

 

「…?貴方は何処へ?」

「竜宮の使いよ、悪い事は言わない。ここから離れた方が良い」

「それはどういう…」

「『夢想封印』!!」

 

 

 ドオォォォォン!

 

「ぐっ⁉︎これは…!」

「あああああ!?」

 

一歩遅かったか。霊夢がスペルカードを宣言すると同時に紅魔館の時とは比べ物にならない程の威力が放たれた。私が忠告するも虚しく、竜宮の使いは天子と一緒に沈められていった。

 

 

「何か威力上がってないか?」

「私だって成長するのよ」

 

成長……つまり、あの霊夢が鍛錬をした⁉︎あの才能の塊で才能にかまけた脇巫女が⁉︎…こりゃ明日は雪が降るな

 

「…何か失礼な事考えてないかしら?」

「いや別に?…それにしても何で鍛錬なんか」

「…この前魔理沙に負けたのよ、弾幕ごっこで」

「何だって?」

 

負けた?霊夢が?…いや成長した魔理沙ならあり得なくはないか。あの後すぐ決闘申し込んだんだな。あいつらしい

 

「私だって悔しいのよ。あいつに負けるのは」

「それで鍛錬を」

「で、どうやったんだって聞いたら『ジンが教えてくれたんだぜ!』って言ってやり方まで聞いたわ」

 

魔理沙…いくら勝てたのが嬉しいからって教えちゃいます?こうなるのわかってたろうに

 

「よくあんな抽象的なアドバイスで成長できたな」

「そうかしら?結構分かりやすかったわよ?」

「はは、なら教師にでもなれるかね」

「ジンさんが教師かぁ…絶対子供泣くわね」

「何だとてめぇ」

 

くだらない争いが発生し、私と霊夢の逃走劇が始まった。

 

「ちょっと待てや、おっちゃんと話しようや」

「何で関西弁なのよ…ってかアンタ速くない⁉︎」

「ふははは、この程度神では常識だ!」

 

その様子を死んだ目で見つめている者が2人

 

「うぅ……」

「…あれ…もしかして私たち出番終わり…?」※終わりです

 

その天人と竜宮の使いの後ろ姿は物悲しかったという(慧音談)




アンケート回答ありがとうございます!


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懐かしの場所

すみません、今までツクヨミの漢字を『月読』としていたのですが、確認してみると正しくは『月夜見』でした。これからは気をつけます


 

今日も幻想郷は平和だなぁ

 

「で?何か言うことは?」

「…ずびばぜんでぢた……」

 

平和……

 

「お賽銭」

「はい……」

 

へい……

 

「ああん?これっぽっち⁉︎シけてるわねぇ」

「待て待て待てい。何やっとるんだ貴様は」

「あらジンさん、居たの?」

「居たの、じゃねぇわ。だから何やっとるんだ」

 

なに真っ昼間から妖怪からカツアゲしとるんだ。茨城のヤンキーびっくりの手法だぞ

 

「だって今神社修理中じゃない。ただでさえ少なかった参拝客が完全に居ないのよ。だから退治した妖怪から巻き上げてるのよ」

「倫理観狂ってんな」

 

 

 一応保護者枠に八雲紫はいるのだが、今絶賛神社修復中である。私は建物の倒壊は防いだが、『要石』はそうはいかなかった。要石とは結界を構成するために必要な道具である。

弾幕ごっこ中に天子が投げていたのが要石だったのだ。これにより八雲紫はブチギレて、既にボロボロだった天子を死体蹴りした。そして八雲紫、藍、比那名居天子、永江衣玖の4人で修復中である。

 私面倒臭かったので辞退した。結界系は修復が複雑なのだ

 

 

「はぁ〜どっかから宝でも落ちてこないかしら」

「馬鹿言ってないで仕事しろ…っと電話だ。ちょっと失礼」

「それ高そうね。売ったら幾らかしら」

「ちょっと黙ってろ」

 

危ない視線で携帯を見られたので直ぐに隠す。そして人気のない場所で着信をとる。相手は魔界の神、神綺だった。実は携帯の様な連絡器具は神界で普及させた為、もう殆どの神が持っている。効率重視だ

 

『もしもし?あ、繋がった』

「神綺か、珍しいなお前が電話なんて」

『実は相談したい事がありまして…あ、烏滸がましいようですが魔界に来て頂けませんか?こちらでしか話せない内容なのです』

「了解した。待っていろ、すぐ向かう」

 

そう言って通話を切る。神綺の相談事…また部下が言う事聞かない系かね。だとしたら魔界の住人は実に厄介だ。はっはっは……笑い事でもないな

 

「あ、もう戻ってきたの?」

「おう、実は仕事でちょっくら外に行く。土産は期待するな」

「あら残念。ま、いいわ。行ってらっしゃい。」

「霊夢が…せびらないだと…!」

「はっ倒すわよ」

 

おお怖い怖い。私は逃げるようにして幻想郷を後にした

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

魔界

 

 ここの発展ぶりにはいつも驚かされる。来るたび新しいものが出来ていて飽きないのだ。実はここに来るのが楽しみだったりする。

この会談が始まる前に数時間程魔界の歓楽街で遊んでいた。年甲斐も無く楽しめた。少し長く遊びすぎて、神綺に"ずるい"とまで言われたくらいだ

 

 まぁそれは置いといて、私はあの時の様に神綺と向かい合って話している。偶に『夢子』と呼ばれたメイドのような魔界人が部屋に出入りするくらいだ。他には誰も居ない

 

 

「で、今回はどうした。やはりあの法案では上手くいかなかったか?」

「…いえ、それに関しては状態は良好になっています。しかし、今度は魔界から外界ではなく、外界から魔界への干渉が増えてきまして…」

 

外界からの干渉……この魔界に態々干渉しにくるような奴らは私は………知ってたわ、しかも団体で

 

「…具体的には?」

「魔界、というよりここの端にある法界に来る事が多く、住人たちに危害を加える事もないので一応監視はしているのですが…」

 

はい確定。法界には聖しか居ない。そんなところに来るやつは寺の連中くらいだろう。

 

「そいつらは放っておいても大丈夫だ。多分私の知り合いだ」

「あら、そうだったんですの?じゃあ大丈夫ですね」

「因みに干渉が始まってどのくらいだ?」

「…う〜ん、大体三百年くらいですかね」

 

三百年…ならもう封印が解かれていても不思議では無い。なんなら今すぐにでも解かれそうだが…

 

「神綺様!法界の封印が解かれました!」バタンッ!

 

 そらきた。監視を行なっていたと見られる魔界人が必死の形相で部屋に入ってくる。

 

「報告ありがとう、後はこちらで何とかしておくわ。戻っていいわよ」

「は、はい。了解致しました。失礼しました」

 

神綺がそう言うとそそくさと出ていった。

 

「ふむ、多少は言う事聞くようになったようだな」

「ええ、私だってやるときはやるんですよ」

 

神綺は得意げにそう言う。もしこれが見られていたらまたあの時に逆戻りだったな。

 

「神綺様…可愛い…」

 

 夢子がこちらを覗いている。手遅れだったか。頑張れ神綺、きっとどうにかなるさ




神綺のキャラ合ってますかね


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千年越しの再会

やっと星蓮船入れた…


 

 

魔界の空に不思議な船が浮かぶ。それは止まる事なく一点を目指して悠々と進んでいく。

 

「あれですか。貴方の知り合いというのは」

「ん、まぁそんなとこだ」

 

私達は話し合いをしていた部屋から外を眺めている。そこには見覚えのある船が空を飛んでいた。恐らくあれは村沙にやった海賊船だろう。見た目はかなり改造されているが

 

「お前的にはどうなんだ?法界の封印が解かれる事については」

「う〜ん、私としましては魔界に害が無ければ問題は無いと思いますがねぇ」

 

 昔よりは大人しくなったか?前は結構プライドが高くて、周りに好き勝手されるのが嫌いだったのに。神は不変だというが、成長するのだな。感心感心

 

「あれ?今何か落ちましたね」

「何だと?……本当だ、何か落ちてる。行ってみるか」

 

遠目からだが、船から何かが落ちていくのが見えた。めちゃ気になる

私と神綺は現場に急行した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

船内

 

「本当にこんな所にいるのか?そのヒジリって奴は」

「間違いない。ここから反応が来てる。恐らくあそこだ」

 

 魔理沙がそう問うと『賢将』ナズーリンがダウンジングロッドが指した方向を見ながら言う。

何故か魔理沙はついさっき見つけた不審な船を追いかけると、成り行きで乗ってしまっていた。魔理沙だけでなく、霊夢、早苗まで居た。最初こそ戦闘になったものの、早苗の交渉術により一時休戦となった。

 

 

「お〜い!何か見えてきたよ〜!」

「な、何なの?あれは」

 

 

この船の舵を切っている村紗が大きな声で全員に知らせる。気になり、乗員が表まで出てくると巨大な白い壁の様な結界があるのが見えた。

 

 

「ここまで近づかないと視認できないなんて…これを創った方はどれほどの力の持ち主なのでしょう…」

「…考えるのは後だよご主人。今は封印を…」

「あーーっ!?」

 

 

ナズーリンと星が話していると、ぬえの声が聞こえた。

 

「どうしましたか⁉︎ぬえ!」

「ぬえ、どうしたんだい!?」

「飛倉の欠片が……無くなってる!!」

 

 

その言葉に寺のメンバー達は衝撃に打たれた。封印を解くには全ての宝物が集まらなければ実行できない。その為ナズーリンと早苗が交渉して、霊夢の持つ『飛倉の欠片』を手に入れたのだが、それが消えているという

ナズーリン達が船内を捜索していると、船の底に小さな穴が空いているのを見つけた。

 

 

「これは…まさか弾幕で開いたのか…⁉︎」

「もうかなり進んでしまっていますよ…早く下へ探しに行かないと!」

「無茶よ!この魔界どれだけ広いと思ってるのよ!それに手練れもかなりいるし、危険よ!」

 

 

ここまで来て、と言うときに絶望が船内を包み始めた。あの宝物は唯一無二であり、予備は無い。万事休すか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢さん方、探し物はこれかな?」

「え……?」

 

 

全員が驚き周りを見渡すと、いつの間にかいた男が『飛倉の欠片』をこちらに差し出していた。

 

 

「あ、貴方は……!」

「ジン………?」

「はいはい、ジンさんですよ〜」

 

 

 そこには千年以上も昔に別れ、ずっと会う事の無かったジンが立っていた。久しぶりに会えた上に宝物まで持ってきてくれて喜びの感情が湧き上がるが、別れ方が良いものではなかったので気まずい雰囲気になってしまった。

 

 

「…まぁお前らは私を恨んでいるだろうな。自ら神と名乗っておいて、それらしい事が出来た記憶も無い。神失格だ」

 

 

ジンは自嘲気味に肩をすくめた。その姿は千年前とは違って物悲しく見えた。

故に寺の者達は咄嗟に言葉が出た

 

 

「そ、そんな事ない!」

「そうです!恨んでなんかいません。寧ろ感謝すらしています!」

「…前に酷い事言ったのは謝るから…そんな事言わないでよぅ」

 

 

ぬえなんて柄にもなく泣いてしまって抱きつくくらいであった。普段の彼女ならあり得ない事である。それほど昔の事が彼女の中で響いていた。

ジンは刺激しないようにそっとその頭を撫でてやる

 

「あぁ分かった分かった、だから泣くな。天下の大妖怪だろ?神なんかに感化されてていいのか?」

「…今は大丈夫だから…もう少しこのまま…」

「変わったな、お前も」

「あ、そう言えばぬえったら別れた後『何であんな事言っちゃったんだ』って泣いてたな〜」

「ちょ、一輪⁉︎まだ覚えてたのそんな事!」

 

 

何だか一気に明るくなった雰囲気についていけないのが4人。

霊夢、魔理沙、早苗、神綺である

 

「…何?知り合いだったの?」

「そんな事私が知る訳ないぜ」

「良いなあ頭撫でられてる…」

「あら、なら私が"いい子いい子"してあげようかしら」

「「「アンタ誰だよ!!」」」

 

 

こちらはこちらで騒がしかったのであった




あの審議の結果が出るのを三ヶ月後と書きましたが、それだと間隔が短すぎたので一年に変更致しました。


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復活

結末が上手く思い浮かばない…


 

 

 あれからなんやかんやあったが無事法界まで来る事が出来た。いつ見てもこの法界の結界には感嘆させられる。完成度の高い隔絶障壁。それは博麗大結界にも匹敵するほどである。

 

 

「本当にこれが無いと解けないのかしら?」

「それは気になってた。やってみようぜ!『マスタースパーク!』」

 

 

 本当に壊れないのか気になった魔理沙はありったけの力を込めて強化されたマスタースパークを打つ。しかし結界はびくともせず変わらずそこに存在していた。

 

「おお…マジか…」

「そんなに悲観する事は無い。この結界が異常なだけだ」

「そうですよー。これは諏訪子様でも難しいと思いますよ」

 

 

 自信のあった技を受けてなお壊れない結界を見て、魔理沙は少し凹む。早苗と私が声を掛けると少しは機嫌が直った

 

 

「じゃあ…やるよ」

「えぇ、頼みましたよナズーリン」

 

 

 そんな事は構わず、解除の準備を進めていく寺のメンバー達。ナズーリンと星が一歩前に出て持っている宝物を掲げる。

すると封印を解くのに必要な宝物が浮遊し、円を作り回り始める。そして大きな光が一、二回辺りを満たした。

 

 

 ピシッ…ピシピシピシッ……バリンッ!

 

 

 まるでガラスの割れる様な音がして、びくともしなかった法界の壁の一部が崩れ始めた。全員がそこを注視していると結界の中から人影が見えた

 

 

「そんなに見られると出づらいのですが…」

「「「聖!!」」」

 

 

 聖白蓮が出て来ると同時に星とナズーリン以外の者達が抱きつく。やっと目的は果たされたのだ。千年越しになってしまったが

 

 

「あら、ジンさん。割と早くまた会いましたね」

「全くだ。あの時から数ヶ月しか経っていないというのに」

「え?二人って既に会ってたの?ジンでもその時は解けなかったの?」

「いや出来たぞ」

「じゃあなんで?」

 

 私達の会話に違和感を感じた村紗は問いかける。他のメンバー達もうんうんと頷いている。

 

 

「解いてやろうと思ったのだが、こいつときたらお前らを待つと言って聞かなかったんだよ。何せ頑固だからな」

「ふふふっ、そうでしたね。それに貴方達の働きを無駄にはしたくなかったんですもの」

「うぅ…ひじりぃ…」

 

 

 その言葉を聞き、一輪なとはまた泣き出してしまった。喜んだり泣いたりと忙しい奴らだ。目的はもう達成したし、そろそろ戻ろうか

 

 

「あれ?何処いくの?ジン」

「いい雰囲気のところ邪魔はできんだろ?だからそろそろお暇する」

 

 

するとぬえに見つかりそう聞かれた。だから答えてやると

 

 

「駄目だよ、ジンも一緒に来るんだ」

「そうだ!一緒にご飯でも食べに行きましょう!聖の復活祝いという事で!」

「だがまだ仕事がなぁ」

「…来てくれないのか?」

 

 

寺の者達が悲しそうな顔をする。そんな顔されては断れないではないか

 

 

「分かった。分かったからそんな顔するな。一緒に行ってやるから」

「やったー!じゃあ早速行こう、ほら早く早く!」

「そうだな…近道をするか」

 

 

 現世から魔界までくるのは時間がかかっただろう。帰る時は魔力の流れに飲み込まれる可能性があるからもっと時間がかかるかもしれない。だから私は船の前に亜空間を開く

 

 

「ここに入りゃ幻想郷まで一直線だ」

「へぇ〜、便利だね…」

 

 

そんな事を話しながら私達は船の中へと入っていく。

 

 

 

「私達……また出番少なかったわね」

「そんなのまだいい方だぜ」

「そうですよ、この方なんてセリフさえ無かったんですから」

「…完全に…空気だった…」

 

 その後には凹む四人の少女と創造神が居たという。神綺には悪い事したな。今度幻想郷土産でも持っていってやるか

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

月の都

 

 それは今現在いる人類よりも前に生まれた種族が住む場所である。そこの文明レベルは常軌を逸しており、大妖怪が複数体いても撃退できるほとである。

 しかしそこの統率者、月夜見は頭を抱えていた。言わずもがな、先の神議会での事である。恐らくこのままいけば月の都の消滅は免れない事となる。前科が複数できてしまっているからだ。

 

 しかしこれは一概に月夜見の責任という訳では無い。最近月の中での権力争いが絶えず、多くの者が月夜見に台頭しようとしている。

 その中でも『嫦娥派』という勢力が最も権力がある。名前の通り嫦娥を筆頭とした過激派である。彼らが掲げるのは『月人絶対主義』と『地上への帰還』である。

 

 元々月人はプライドが高いので一つ目はそこまで珍しい事ではない。ただその思想が強すぎるのが問題だが。

 二つ目の『地上への帰還』。先程言ったように月人はプライドが高い。故に穢れが地上を覆われ、ロケットで脱出した時に『何故我々が住処を追われなければいけないのか』と言う者が出てきた。

 

 これらの要因により『嫦娥派』は地上への帰還を目論み、時には月夜見の権力を凍結させ暴挙に出る事があるのだ。

 

 

 

「月夜見様。気分が優れないようですが…」

「えぇ……実は不味い事になりましてね」

 

 

 月夜見に話しかけたのは『稀神サグメ』。八意永琳に続く月の賢者である。永琳が月を去ってからはサグメが業務を引き継いでいる。

 

 

「もしやまた嫦娥派が…?」

「…関係はあります。一年後、私達の"消滅"が議会で決定するかもしれません」

「⁉︎」

「もし…もしそうなってしまったら……月の都を凍結してください。そしてあの方の手が届かない所まで民を隠すのです」

 

 

 あの方…名前は伏せているが恐らく『監視者』の事だろう。直接会った事はないが、強大な力を持つと聞いた事がある。

 

 

「サグメ、貴方だけにこんな大役を任せるのは主神失格だとは思います。しかし…頼まれてくれませんか…?」

 

 

 サグメは考える。周りは部下の手綱を引くことが出来なかった月夜見にも責任があると言う声が聞こえる。確かにそれもある。だが今のこの衰弱しているこの方を見て同じ事が言えるだろうか。

 

 サグメはいつでも主神である月夜見に付き従ってきた。故に答えは既に決まっていた。

 

 

「了解しました。私にお任せください」

「ありがとう…サグ…メ…」 トサッ

「月夜見様!?………寝ている…」

 

 

 突然月夜見が倒れてしまい慌てて駆け寄るが、ただ眠っているだけだと分かり、ひとまず安心する。そして決意を固めた

 

 

(監視者……どれほどの者かは知りませんが、月夜見様をこんなにしてただで済むとは思わない事ね)

 

 

 

 

 

 

 

 神界と月がぶつかるまで長くはないだろう




ちょいシリアス?


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視察

ギリギリ朝にできた…


 

 今日も変わり映えのしない仕事(ゴミ)を片づけなければ。放っておくと溜まる一方であるため時々消費しなければならない。我ながらつまらない仕事に就いたものだ

 

 

 

 

 そんな事を考えながら作業する事半日余り、休憩無しぶっ通しでやった為、向こう10年くらいの分は終わらせてやった。やったぜ

 

 地上へ団子でも食いにいこうか。現世の団子屋も勿論美味いのだがどうしても添加物の味が気になってしまう。自慢では無いが神は味覚が優れているため、そういうのには敏感なのだ。

 

 よって未だ添加物が存在しない幻想郷へ食いに行く事が多い。もうこの数年くらいは団子しか体に入れてない気がする。まぁそれで体調を崩すことは無い。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

幻想郷

 

「うむ、やはり此方の方が美味いな」

 

 

 結局態々幻想郷に赴き、人里で団子を食べていた。私は諏訪子や神奈子と違って神である事を公言していないから割と人里には来やすい。時々こうして時間を過ごすのが好きである

 

 

「突然すみません。貴方が岡迅一郎さんで間違いありませんね?」

「何だ貴様は」

 

 

 突然声を掛けられた為、仕方なく団子をさらに置き声がした方に向き直る。私の至福の時間を邪魔したのは、えらくちっこい少女だった。座っているこの状態でもかなり見下しているほどだ。

 

 傍らには付き人と思しき女が立っているが、何故か怯えて私と目を合わせようとしない。…私はそんなに怖いか?

 

 

「申し遅れました。私は稗田阿求といいます。幻想郷の歴史を記す『幻想郷縁起』の作成をしています」

「稗田……あの転生を繰り返している一族か。そんな奴が私に何の用だ?」

 

 

 稗田家、それはその家の当主が転生できる能力持ちという不思議な家系である。地獄で何度か見かけた事はある。姿は毎回異なるが

 

 

「実はその幻想郷縁起なのですが、それには妖怪などの情報も纏めているのです」

「…成程な。つまりは私の情報を寄越せと」

「…言い方は悪いですが、そうなります」

 

 

 私は今折角激務を終わらせて、久々の休息に入っていたというのに邪魔された事で少々気が立っている。一万年に一度在るか無いかの完全休暇は貴重なのだ。

 

 

「ちょっと、こんな所で騒ぎ起こすんじゃないわよ」

「おや、霊夢居たのか」

 

 

 少しだけ空気がピリついた時、団子屋の影から霊夢が出てきた。まぁ勿論気付いてはいたが。やはり護衛として付いていたか

 

 

「勿論だ。私もこんな所でやり合えば人里なんか消し飛んでしまうだろうからな」

「アンタが言うと洒落に聞こえないわね…」

「あ、あのー……」

 

 

 おっと、コイツの存在を忘れていた。今ので気分は晴れたから話には乗ってやろう。

 

 

「そちらの要求は分かった。協力してやろう」

「あ、ありがとうございます。ここで話すのもアレですので、是非屋敷に」

「了解だ」

 

 

 取材なんて妖怪の山で射命丸にされた時以来だ。必要以上の事は答えてやるつもりは無いがな

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

稗田家

 

 

 私と霊夢(勝手に付いてきた)が客間へ通され、態々茶と菓子を出してくれた。私は茶だけ貰い、霊夢は菓子を貪っていた。自重をしろ自重を。

 

 すると襖が開き、巻物と筆を持った稗田阿求が来た。今から始まるらしい。

 

 

「では早速取材を行いたいと思います」

「具体的に何を聞くんだ?」

「貴方の人に対する接し方と能力について教えてもらえれば」

 

 

 ふむ…人間に対する友好度を計ろうという事か。どうだろうな。私は守るべきものは守るし、排除するべきものは排除する。それが人間だろうと神だろうと妖怪だろうと変わらない

 

 

「そうだな、神は基本的に人間に対して害を成す事は無い。だが排除すべきものはしっかり駆除する」

「え?神?」

「え?」

 

 何?もしかして気づいてなかったのか?転生前に何度か会った筈だが

 

 

「あぁ…そういえば転生は完全じゃないから記憶が無いんだな」

「もしかして以前何処かで…?そうであれば大変な御無礼を…」

「仕方ない。お前は少々特殊なんだ。気にしたらおしまいだ」

 

 

 記憶の無い者に前世なんかの話をしても意味はない。赤子にこの世の真理を教えるようなものだ。

 

 

「まぁ気を取り直して…種族は神だ。能力は『粒子を操る程度の能力』とでも言っておこう。」

「概要としては粒子を操作して物質を構成したり、レーザーとして応用する事も可能だ」

 

 

 嘘は言っていない。ただ数ある内の一つだけを言っただけである。上手い嘘のつき方は完全なる虚実では無く、事実を織り混ぜながら言うのだ。

 

 

「あら?でもジンさんって空間に穴を開けたりも出来るわよね。あれはどうなってるのかしら?」

「あれは能力と神力のゴリ押しで実現しただけだ。力業だな」

「へぇ〜なるほどね」

 

 

 少し怪しまれたかと思ったが、私が何を隠しているのかまでは分からなかったらしい。勘が鋭い奴だ

 

 

「成程……では簡単にですが重要な所は纏めることが出来ました。ご確認願います」

「どれどれ」

「私にも見せて頂戴」

 

 

 "幻想郷縁起 幻想郷の神々" ふむ、妖怪と神で載っている範囲が分かれている。

 よく見ると諏訪子や神奈子の名前も載っている。神はそんなに危険度は高くない筈なんだがな、やはり自分達より強大な力を持つものは恐れられるのか

 

 

 それはそうとして、索引で「あ行」を開いて見ていく。

 

 

 

名前 岡迅一郎

 

種族 神

 

能力 粒子を操る程度の能力

 

人間友好度 中

 

危険度 中

 

目に見えない微小な粒子を操り、物質構成、攻撃に転じたりする事が出来る

 

 

 ま、こんなものだろうな。この地上民"には"危害を加える事は無い。中々良い出来だ。手札を必要以上に晒す事も無い

 

 

「ご確認は済みましたでしょうか?何処かご不満な点は?」

「いや大丈夫だ。良い出来だ」

「人間友好度はともかく強さに関してはぶっちぎりだから危険度はもうちょっと高くてもいいんじゃない?」

「なんだ、まるで私が破壊神であるかのような扱いを受けるのだが」

「あはは…」

 

 

 全く…危険度で言うならブラフマーの方が高いぞ?話通じない上に踊っただけで惑星破壊だ。まぁそうなる前に沈めたが。今頃印度辺りにでも居るのだろう。あいつはシヴァ大好きだから着いて行ったに違いない

 

 っと、脳内で考え事をしていたら割と長くなってしまった。そろそろお暇しよう

 

 

「こんな時間か、私はそろそろ帰るとしよう」

「はい、貴重なお時間ありがとうございました」

「じゃ私も帰ろうかしら。今日は疲れたわ」

「お前ずっと菓子食ってただけじゃないか」

「いいのよ細かい事は」

 

 

 素敵な楽園の巫女はいつでも自由だな。そんな性格だから慕われるんだろうが。

 それはいいとして、早く帰って少しでも寝てやろう。ん?通知が来ている…緊急案件だと…⁉︎

 嗚呼…私の休日が…

 

 




アンケートありがとうございます


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動向

朝に間に合うか?これ


 

 

現世

 

 

「ふむ…まぁこんなものか」

「岡様、こちらも片付きました」

 

 

 地球に存在するある国の密林にて、ジンと白夜は行動を開始していた。彼らの目の前には、スクラップと成り果てた月からの探査船があった。近くには搭乗員の玉兎"だった"ものが幾つも散乱している。

 

 

「うぅ……あ、アンタら一体何なんだよ…」

「まだ息のある奴が居たか。…いや丁度いいな」

 

 

 ジンはその玉兎の頭を掴み、強制的き起き上がらせる。

 

 

「がっ…な、何を…」

「さてと、今からお前に質問する。誰からの命令で"浄化"を?」

「…嫦娥様と、嫦娥派の幹部の方々です…」

 

 

 ジンが質問すると、その玉兎は目が虚になり無機質に質問に答えていく。脳波に干渉する事によるマインドコントロールと呼ばれるものだ。

 

 

「嫦娥ねぇ…月の事聞いたらどいつもこいつも嫦娥嫦娥と言うばかり。何処まで部下の管理が出来とらんのだ月夜見(あいつ)は」

「ですね。いくら嫦娥が力のある月の女神とは言えど、月夜見様であれば問題無く対処する事が可能です」

「部下に処罰が下せない甘ちゃんなんだよ」

 

 

 ジンはやれやれと肩をすくめた。そして玉兎に向き直り

 

 

「回答ご苦労だった。楽にしてやろう」

「あ………」

 

 

 ジンが玉兎の額をトンッと押すと、そのまま後ろへ倒れ込んだ。白夜が確認をしに行くと既に息をひきとっていた。

 

 

「さて、これが地上民に見つかるのは不味い。処分するか」

 

 

 探査船の残骸と玉兎達の遺体に掌を向ける。すると緑色の炎がそれらを包み込んだ。そして一瞬のうちにその全てが灰も残らず燃え去った。

 

 プラズマ放射、対象を電子で融解させながら燃やす。液体、固体、気体という三つの性質を持った矛盾したモノである。

 

 

「プラズマ放射。ゴミ掃除にゃピッタリだ」

「ゴミと言っても生ゴミですが」

「はは、違いない」

 

 

 探査船の駆除は量産型にも任せてあるが、数が多い為ジン達が直接手を下す事がある。むしろこれが監視者としての仕事でもある。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

幻想郷

 

 

「ふぅ、後は量産型にでも任せておけばいいだろう。休憩に入ろう」

 

 

 あれだけ忠告しても干渉を辞めないとは。嫦娥とやらはそこまで自信があるのか、思想的なもので"神界など恐るるに足らず"と言った感じか。

 

 

 それとも神界(私達)を敵に回しても問題無い環境と勢力が存在するのか?もしくは誰かの後ろ盾か。そうであれば懸念材料でしか無いな。対応を急ぐとしよう

 

 

「岡様、一つ確認なのですが地上に居る月関係者はどう致しますのでしょうか?」

「そんなの決まっているだろう。勿論"対象内"だ」

「では幻想郷にも侵攻すると?」

「摩多羅と八雲には話を通してある。妨害される事は無いだろう」

 

 

 障害は少ない事に越した事は無い。たがもし裏切る様な事があればそれ相応の覚悟はしてもらわなければ。

 

 

 

 

 

 神議会まで後半年…

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 月の都

 

 

 私は綿月依姫。月の都の軍事を司る綿月家の娘にして、自慢では無いが月の最高戦力の1人でもある。勿論姉様と並んでだが。

 

 よって綿月家は月の賢者程ではないがそれなりに重要な立ち位置にある。月の今後の動向を決定する定例会議にも出席するのだ。

 

 しかし今回は定例会議では無く、サグメ様の名によって開かれた臨時会議なのだ。これが開かれる時は早急に対処しなければならない事が起きた時に限る。

 しかし今まで月の脅威らしいものは現れなかった為、形だけの会議として存在していた。なので今回の会議で話される事は今までで最も重要な内容であるのは誰にでもわかる事だろう。

 

「あらあら、こんな会議は初めてだわ。何があったんでしょうね〜」

「姉様…こんな時くらい桃を食べるのは控えて頂けませんか?」

「だって美味しいもの〜」

 

 …姉様はこんな事態にも関わらず平常運転である。まぁそのお陰で多少は肩の力を抜く事ができる。でも少しは自重して欲しい

 

「はっ、会議の場であるのにも関わらず呑気に食事か。綿月家といえど所詮政治など解らぬ兵士に過ぎぬな」

「…何だと?」

 

 声がした方を向くと痩せ気味の不健康そうな男が立っていた。その男は最近力を増してきている"嫦娥派"の幹部である。最近の会議でよく槍玉に挙げられる問題の派閥ではあるが、今回ばかりは相手が正しい。

 だが口調が嫌味ったらしくどうしても頭にきてしまい、突っかかってしまう。

 

「それは申し訳ありませんわ。何せ余りにも美味しいものですので、お一ついかが?」

「要らぬわ!…もう良い、好きにしろ」

 

 姉様の雰囲気に毒気が抜かれたのか、ため息をついて席に向かっていく。言っている事だけは大体正しいのでこちらは何とも言えない気持ちとなる。

 

 

「あら、貴女達はまだ席に着きませんの?もうすぐ月夜見様がいらっしゃると思いますよ」

「!貴女は…嫦娥様…」

「お久しぶりでございます。豊姫様、依姫様」

 

 

 あの男と入れ替わるようにして会議室へ来たのは先程挙げられた"嫦娥派"の代表嫦娥様である。地上で仙人となり、つい最近まで八意様が開発した『不老不死の薬』を飲み、幽閉されていた女性だ。

 

 何があったかは分からないが、幽閉を解かれて自身の派閥を作ってしまうくらいには力を持った方だ。なので綿月家とは関係は良好とは言えない。それに何を考えているか全く理解できないのだ。

 

 

「…今回の議題…また貴女達が…?」

「さあ?それはどうでしょう?」

「…いずれ何を企んでいるのか吐いてもらいますからね」

「ふふ…その時が来れば、ですが」

 

 

 私と嫦娥様が睨み合っていると、今回収集をかけたサグメ様が入ってきた。私達はすぐさま自身の席へと着く。

 

 

 するとサグメ様はいつも月夜見様が座る席へと着き、会議を始めようとする。その様子に疑問を持ったのか、1人の月の幹部がおずおずと手を挙げた。

 

 

「何でしょう」

「あ、あの…今回、月夜見様はどうされたのですか?見当たらないようですが…」

「月夜見様は今回どうしても外せない用事があるという事で、代理として私が会議を進めさせていただきます」

「は、はぁなるほど…」

 

 

 サグメ様はこの質問が来るのが分かっていたように淀みなくスラスラと答える。何か隠しているのだろうか

 

 

「では今回集まって頂いた理由をお話しします。今現在この月の都は消滅の危機にあります」

「⁉︎」

「なんと…」

「あらあら」

 

 

 集まった者達は三者三様の反応を見せる。サグメ様が話を続ける。

 

 

「つい半年前に行われた『神議会』で、地上への過度な干渉を危惧する声が出、月の都の処遇について話し合われる事となりました。」

「月夜見様の見解では十中八九、この月の都の消滅が決定されるとの事です」

「では我々も一緒に消されてしまうと?」

「そういう事になります」

 

 

 何という事だ。神議会の決定は絶対。これを回避するのは殆ど不可能であるというのか

 

 

「クソッ…今は純狐で手一杯だと言うのに…」

「その純狐が神議会に居ました。恐らく今は協力関係にあると見ていいでしょう」

「⁉︎……ならもう手の打ちようが…」

「手の打ちようがあるから今回私達を呼んだのでは?」

 

 

 そう言ったのは嫦娥様である。声の主が誰かわかると、サグメ様は少し顔を顰めて言った。

 

 

「…えぇ勿論あります。それは月の都を凍結する事です」




三千字近く…頑張った…


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解決策

投稿遅れてすみません!行事が色々重なって出来ませんでした…
謝罪の意を込めて少し長めです


 

 

 

「…月の都を……凍結?」

 

 サグメ様の口から出たのは、私には理解の及ばない事であった。

 

 

「そうです。この月の都を一時的に放棄して『夢の世界』へ住居を移すのです」

「そんな事が可能なのですか?」

「今回は"獏"に協力してもらい、現在夢の世界にて月の都を複製中です」

 

 

 そんな大掛かりな計画が既に進んでいたとは。いつもサグメ様の手腕には驚かされる。計画、準備、実行まで1人でこなしてしまった。その獏から協力を取り付けるのも楽では無かっただろう

 

 

「な、ならば直ぐに民に通達を…」

「いえ、民達には知らせません。今余計な情報を出して混乱をさせる訳にはいきません」

「ではどうすれば…」

「大丈夫です。ドレ……獏の能力を使えば、月の都が完成次第、夢から誘導する事が出来ます。寝ている内に避難が完了するので問題はありません」

「な、なるほど…」

 

 

 恐らく今この事を月にいる人々に伝えても混乱して、最悪暴動になりかねない。ならこの判断は賢明といえる

 

 

「本来の月の都には綿月家、私、そして精鋭部隊を置きます。意識を出来るだけ夢の世界へ向かさせないようにするのです」

「成程…であればイーグルラヴィも置いていた方が自然ですね。月人かまいて、玉兎がいなければ不自然に思われるかもしれませんし」

 

 

 会議が進むにつれ、私はある思考が頭をよぎった。月に来る前に稽古をつけてくれたあの人の事を思い出した。あの後すぐ知ったがあの人も神であると

 

(そういえば師匠は今どうしているのでしょうか。もしかしたら私は師匠と…)

 

 

 少し嫌な予感がしたが頭を振って思考を掻き消した。それだけは避けたかった。

 

 

 そんなこんなで話は続いた。その後もサグメ様からの通達は続き、面白いほど会議は進んでいった。ある1人の人物が怪しげな笑みを浮かべているのに気づかずに…

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 人里

 

「ジン〜、なんか良い魔法教えてくれよ〜」

「んなもん紅魔館にでも行ってきたらいいだろうが」

「だってよ〜最近入り込めないくらい警備が固いんだよ。あれは流石に無理だぜ」

 

 

 最近何故か魔理沙が私の家に入り浸るようになった。紅魔館の一件以来から私の住所が割れ、よく尋ねてくるようになった。何でも私から魔法について聞こうというのだ。

 

 

「それに私は魔法使いでは無い。専門職のやつに聞け」

「だってパチュリーの奴は何故か出て来てくんないしなぁ」

「…まずは返済を滞納してる魔導書返してこい。だから警備が固いんだ」

 

 

 前に紅魔館から飛び出す魔理沙を見た事あるが、あの時持っていたのが大体30冊くらいだった。あれを毎日繰り返しているとすれば、パチュリーがキレて本気で対策するのも納得がいく。

 

 

「…人間の私には時間が無いんだよ。アイツに追い付くにはもっと必要なんだ」

「時間、ねぇ。んなもん私の中ではとっくの前に狂っている」

 

 

 最早私に時間が無いとかそういう概念は無い。例えこの宇宙が滅びようと永遠と生き続ける。そういう生き物なのだ

 

 

「…そういやジンって元人間なんだよな。魔法使いでもないのにどうやったんだ?私にも出来るのか?どうやったらー」

「やめておけ」

「⁉︎」

 

 

 昔神子にも聞かれたがこれはおすすめしない。一生後悔する事になる。あれはとても今の人間が耐えれるものではない。私は幸運だっただけだ。魔理沙が私の仲間だった者のようにならないよう少し圧を掛ける

 

 

 

「時間が無いんだろ?ならその時間をさらに短くするような真似は止した方が良い」

「あ、あぁ分かったぜ…」

 

(ヤバかった…ちょいとビビっちまったぜ…。…それにしても昔ジンに何があったんだ…?)

 

 魔理沙は新しい疑問ができたが藪蛇だと思い、聞くのはやめておいた。

 

 

「そうだ、アリスにでも聞いてみたらどうだ?」

「アリス?」

「あぁ少し前に魔界で神綺って神に会っただろ?そいつの娘だ」

「へぇー、あの神さん娘いたのか」

「何でも魔界でも指折りの魔法使いだと聞く。今丁度この幻想郷に居ると言っていた。そこに行ってみたらどうだ?」

 

 

 私が昔魔界を訪れた際、神綺のそばにちっこいのが居た。それが初めてアリスと会った時だ。しかしもう何百年も会ってないし、子供だったから覚えているか微妙なところではある。

 

 

「そうなのか!で、そいつは何処に居るんだ?」

「あー…確か『魔法の森』とか言ってたような…」

「めちゃくちゃ近場じゃねぇか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔法の森

 

 

「へぇ、こんなとこにあったのか。私の家からもそんなに離れてないな」

「寧ろ何で気づかなかったんだろうな。歩いて10分も経ってないぞ」

 

 

 本当に魔理沙の家から五キロも離れていなかった。飛んだら数秒で着く位置である。見た感じ割と質素な家で分かりづらくもある。

 

 さて、アリスは私を覚えているだろうか。覚えられてなくて突然攻撃とかは洒落にならない。少し不安になりながら扉をノックする。

 

 

「は〜い、珍しいわねこんな所に客なん、て…」

 

 

 ノックすると結構早く出てきてくれた。そして私を見るなり硬直してしまった。やはり覚えられてなかったか?

 

 

「ジンさん⁉︎何でここに?」

「よかった、覚えられていたようだ」

「貴方みたいな大男、見たら忘れないわよ」

「それもそうだな」

 

 

 神綺の娘だから覚えてない確率が高かったが、いい意味で彼女とは似なかったようだ。立派に育ってくれたようで何よりだ

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「へっくし!」

「風邪ですか?神綺様」

「いや…何か失礼なことを言われた気がして…」

「?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「本当に久々ね。一体何年ぶりかしら」

「そうだなぁ、お前はあの時ちっこかったからなぁ。時間が経つのははやいな」

「見た目も相まって益々おじさん臭いわね」

「誰が加齢臭だコラ」

「んな事言ってないわよ⁉︎」

「あー…そろそろいいか?」

 

 

 私とアリスがコントを始め出した時、魔理沙からストップがかかった。ここに来てから一言も喋れていない。というより忘れていた。

 

 

「そうだった、ここに来た理由を忘れていた。コイツは魔理沙、自称普通の魔法使いらしい」

「自称ってなんだよ、私は本当に至って普通だ」

「普通の奴は魔法使ったりなんかせんわ」

「…で、私にどうしろと?立ち話もなんだし、先ずは部屋に入ったら?」

「それもそうだ。ではお言葉に甘えて」

「お邪魔するぜ」

 

 

 中に通されると部屋の中はかなりの数の人形が置いてあった。アリスはこんなに人形好きだったのか

 

 …いや違う。よく見ると人形一つ一つに目に見えない程細い糸が繋がっているのが見えた。大方これを使ってゴーレムのように扱うのだろう。

 こういう操作系の魔法はその場で即席の強力な人形を作るのが強みであるが、強力故に効果時間が長くはない。それを事前に作り、半永久的に使えるようしたのか

 

 

「ほぇー、すっげぇなこの数。でもこんなに作ってどうすんだ?」

「それは見た方が早いんじゃないかしら」

「え?」

 

 

 アリスの言葉が理解できなかったのか、魔理沙が首を傾げる。すると突然目の前の人形達が一斉に動き出した。

 

 

「うおっ⁉︎」

「シャンハーイ」

「ちょ、何なのぜこいつ!…あ、コラ帽子にのぼるな!」

「ほぅ、流石魔界随一の魔法使いだ。これ程の事を軽くこなしてしまうとは」

 

 

 アリスの手に繋がっている人形は両手に2体ずつつの合計4体だ。そのそれぞれの人形に浮遊魔法をかけながら、尚且つ細かい動きを各個体にさせている。

 これは他の魔法使いには真似出来ない芸当であろう。この分野では勝てる気がしない

 

 

「ふふ、驚いた?これ全部私が動かしてるのよ。まだ自律した人形は作れないからこうやって操作してるのよ」

「…何というか…色々すげぇな」

「フフン、そうでしょう!」

「だがそうやって直ぐ調子に乗る癖は治した方がいいな?」

「うっ…」

 

 

 私が指摘するとギクッと分かり易い程動揺した。今こそは殆ど無くなったが、実はアリスは魔界で割と負けていたのだ。それも実力不足とかではなく、戦闘中に調子に乗った為である。

 これは戦いにおいてはかなり致命的だが、多少は改善されたようである。

 

 

「そ、そうだ!ジンさんが態々訪ねてくるって事は何か頼み事でもあるんでしょ⁉︎」

「無理して威厳保とうとするな。手遅れだ」

「うぅ…私のイメージが…」

「それはそうとこの魔理沙に魔法をレクチャーしてやってくれ」

「!…私が?」

「そうだ、お前がだ。お前にしか頼めん」

「私にしか…」

 

 

 よし、後もう一押し

 

 

「頼まれてくれるか?魔界一の魔法使い」

「私に任せなさい!さぁ魔理沙!何が聞きたいの?何でも教えてあげるわ!」

「うおっ!いきなり何なんだぜ⁉︎ちょ、ジン!」

「後は頑張れ〜」

「ジイィィィン!!」

 

 

 背後で魔理沙のすごい声が聞こえるが無視する。ここでなら嫌という程研究ができる。奴にとっては夢のような環境だろう。

 私はそう思いながら部屋を出る。

 




投稿ローテーションが崩れた…


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神霊

今日は後もう一話は…!


 

人里

 

 

今日はいい朝だ。とても気分が良い。こんな時には外にでも出掛けたいな。

 

 

「すみませ〜ん。郵便です〜」

「は〜い、少し待ってて下さーい」

 

 

 私に手紙?まさか神界からか?いや、それなら使い魔を通す筈だしな。一体誰が…

 

 

「ここに署名を…」

「あ〜…ほいっと、確かに受け取りました」

「ありがとうございました〜」

 

 

 今の男は神界の使いでもなさそうだ。ただの人間だな

 

 

「さてとなになに…"命蓮寺"?送り主は……あぁ聖か」

 

 

 そういえばそんな名前の寺を建てたと言っていたな。この幻想郷では昔と違って人も訪れるようになったらしい。とは言ってもまだ妖怪の信者の方が圧倒的に多数を占めている。

そして今や幻想郷の勢力の一角を担っている重要な場所である。

 

 

「…"相談したい事があるから来て欲しい"か。奴らしくも無い弱々しい言葉だな。一体何があったんだろうな」

 

 

 まぁ昔の馴染みだ。手は空いているし、行ってやろう。直ぐに行けばきっと驚くだろうな。楽しみだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう思って飛んでいたのも束の間、私は段々異変を感じ取っていた。奴らの住む命蓮寺に近づけば近づくほど『神霊』が増えているのだ。

 

 神霊とは通常の霊とは違い、人の欲望の感情から生まれた少し特殊な霊である。はっきりした欲望が存在する為、通常よりも強力な個体もいる。

 

 十中八九、これの事だろうな。別に専門外という訳でもないが、何故私なんだろうな

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

命蓮寺

 

 

「ほぉ…中々良い感じの寺じゃないか。立地もいい。これなら期待できそうだ」

 

 

 

 昔拠点としていた寺とは違い、整備が行き届きしっかりしていた。見た目は大事だ。恐らくこのイメージアップにより人間の信者も現れたのだろう。

 

 寺に向かって足を進めていると、門の前で掃き掃除をしている妖怪の少女が居た。聖達が何処か聞こうとと声を掛けようと思い近づくと、あちらの方が此方を向いて口を開いた

 

 

おはよーございまーす!!!

「ぎゃあぁぁぁぁあ!?」

 

 

 突然の大声を至近距離で浴びせられた。下手したらこの声は強化ガラスにヒビが入るくらいだ。私は殺気の無い行動に対応が遅れ、もろに食らってしまう

 

 

「耳が、耳があぁぁぁあ!?」

「な、何の音ってジンさん!?」

「ぐおぉぉぉお……」

「ちょ、響香!いきなりはやめなさいと言っているでしょう!ああどうしよう…」

 

 

 寺の中から聖やら星やらナズーリンやらが出てきたが今の私には些細な事である。私は様々なものに耐性を持っていると思ったが、まだこんな弱点があったなんて…しかしこれでまた耐性ができた

 

「しっかりするんだジン!」

「ふ、ふふ……これでまた…私の弱点が減っ…た…な」

「ジーーーン!?」

 

 

 流石にこれはヤバい。落ち着くまで暫く時間はかかりそうだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 命蓮寺 応接間

 

 

「本当にすみません…!こちらからお呼びしたのに…」

「構わんさ。あのくらいの年頃だと元気なのは当然だろう。あの娘は挨拶をしたに過ぎない」

「そう言って頂けると幸いです…」

 

 

 聖から謝られたが私は特段気にしてない。寧ろ弱点克服出来た為、感謝すらしているほどだ。

 今まで様々な爆発音を聞いてきた為大した事ないと思っていたが自惚だったようだ。

 

 

「とはいえあれは普通の人間だったら死んでてもおかしくはない。それだけは気を付けてくれ」

「はい、響香には言っておきます」

 

 

 ふむ、あの妖怪は響香というのか。要注意リストに追加だな

 

 

「それはそうと今回の件、もしかしなくてもこの漂っている神霊の事だな?」

「流石お見事ですね、やはり貴方には何でもお見通しなんでしょうか」

「ただ勘が当たってただけだ。これだったら何処ぞの巫女でもう出来る」

 

 

 私は状況から推測して答えを導き出すが、霊夢はその過程をすっ飛ばして結論に至る為、思考回路が分からない。一度頭の中を覗いて見たい程だ。

 

 

「そうだ、霊夢にでも頼めば良かったんじゃないか?こういうのは専門だろう」

「その…彼女だと少し過激というか……というよりもう先程行ってしまいました」

「あぁ…(察し)」

 

 

 あいつの妖怪退治は聖から見ればあまりよろしい事ではないんだろう。それで私にお鉢が回ってきた訳か。

 

 

「そういう事なら聞いてやろう」

「ありがとうございます。少し前からこの神霊が墓地から湧くようになりまして…経を唱え、成仏できるようにしてはいるのですが、増える一方でして」

「…来る時から薄々感じ始めていたのだが、この地下に何かあるのか?」

 

 

 私は命蓮寺に来た時から感じ始めていた懐かしい気配について探った。どうやらこの反応は地下から発せられているものだった。

 

 

「…実はこの命蓮寺の下には、遺跡があります」

「遺跡?何のだ?」

「分かりません。しかし一つだけ分かるのは、強力な力を持ったものがそこで眠っているという事です」

「それの復活を阻止する為、封印も兼ねて寺を建設という訳か」

 

 

 これは要チェックだな。未確認の勢力は把握しておくに越した事はない。ヤバイ奴だったら手遅れになる。

 

 

「よし、そこに行ってみるか」

「…まぁ避けられないでしょうね。あそこに行くのは余り気乗りしませんが」

「しかしもう既に霊夢達が行ったのだろう?ならば私達に出来るのは事後処理のみだ」

「それもそうですね。なら行きましょうか」

 

 

 

 私達は重い腰を上げ、動き出した




最近戦闘描写無い…


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聖徳王

遅くなってすみません


 

 

「それにしても…あだっ、狭いなこの洞窟は…」

「まぁ仕方ありません。その身長では…」

 

 

 今聖に道案内をして貰いながら洞窟を歩いているのだが、私には少々狭い。生まれて初めてこの身長を恨んだかもしれない。

 仕方ない、縮むか

 

 

「…ふっ!」

「え?」

 

 

 私が力を行使すると、2m10㎝あった私の身長が180cm程に縮んだ。30センチも縮めば屈まずに歩く事くらいは出来るはずだ

 

 

「ジンさん、今…」

「んあ?余りにも鬱陶しいから細胞変化させただけだ。気にするな」

「気にしますよ⁉︎びっくりしましたよ、いきなり縮まれたら!」

「悪い悪い。余りに狭いからつい、な」

「はぁ…何でもアリですね…」

 

 

 聖は少し疲れたように言い、再び歩き出した。

 

 暫く歩いていると何か見覚えのある青い奴が見えてきた

 

 

「あら芳香ちゃん、酷くやられたわね〜」

「それは青蛾も同じなんだぞー」

 

 

 ありゃもしかしなくても霍青蛾じゃないか。だが見覚えのない奴を連れている。であればもしかして此処は…

 

 

「お〜い、青蛾娘々〜」

「お知り合いですか?」

「あら?これはこれはジン様ではないですか。お久しぶりですね〜」

「本当に千年生き延びたとは驚きだ。…後そいつはどうした?」

「そいつじゃないぞー、芳香だぞー」

 

 

 これが中国に伝わるキョンシーというものか。見た目こそ腐ってはないが、脳の方がやられている為どうしても喋り方がアホっぽく聞こえてしまう。

 

 

「ふふ…世の中には知らなくて良い事もあるんですのよ?」

「なるほど、こりゃ藪蛇だな」

「青蛾ー、こいつ誰だー?」

「これは申し遅れた。私は岡迅一郎、ジンとでも呼んでくれ」

「よろしくなージンー」

 

 

 今気づいたが、芳香の腕がヤバい方向に向いている。しかしやはり死体だからか痛みを感じている様子は無さそうだ。それにしても青娥がここにいるという事は、神霊廟までもが幻想郷の一部になったわけか

 

 

「青蛾、ここで赤い巫女を見なかったか?」

「えぇ見ましたとも。私も芳香ちゃんもその方にやられましたわ」

「弾幕ごっこ初陣であればしょうがないとは思うけどな。因みにもうあいつらは起きているのか?」

「そうですね、先程から戦闘音が響いてきますので」

 

 

 異変解決は割とどうでもいいが、少し顔を出しにいってやろう。全員が尸解に成功したか見てみるものいい

 

 

 

「あの、ジンさん?この方達は…」

「心配せずとも私の旧知だ。問題無い」

「そうですか…あ、私は聖白蓮といいます」

「あら、では改めまして霍青娥ですわ。または青蛾娘々と呼んでくれても構いませんわ♪」

 

 

 娘々(にゃんにゃん)とは中国における女性仙人に対する呼称である。だから初めて聞いた奴には理解されない場合がある

 

 

「にゃ、娘々……」

「そんな顔してやるな。別にコイツはふざけてる訳じゃ……いやふざけているかもな」

「千年前から私の扱い酷くないですか?」

「気のせいだ、気のせい」

 

 

 珍しく表情を崩してジト目を向けてくる青蛾を無視する。すると奥から何かが光り、こちらに飛んできていた

 

 

「?なんだありゃ……いってぇ⁉︎」

「ジンさん!?」

「あらあら」

「痛そーだなー」

 

 

 目を細めて見ているとそれがレーザー状の弾幕だという事に気付いた。しかし完全に戦闘モードを解除していた為、反応が遅れて目に直撃した。

 いくら絶対的な存在の神とはいえ、目は痛いのだ

 

 

「目がぁぁ…目があぁぁぁぁあ」(某大佐)

「ああどうしましょう…」

「…あいつら許さん」

「え?」

 

 

 私はこの場に居る者全員が認識する前に高速で移動した。せめて一発入れてやらないと気が済まない。

 あとサングラス割れた…長年愛用してきたのに…直るか?これ

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

神霊廟内部

 

 

「召喚『豪族乱舞』!!」

「我にお任せを!」

「やってやんよ!」

「またアンタ達⁉︎3対1なんて卑怯よ!」

 

 

 神霊廟深部では霊夢とかの聖徳太子・豊聡耳神子と戦闘を行なっていた。しかし倒した筈の物部布都、蘇我屠自古が召喚され、不利な状況へと持ち込まれていた。

 

 

「眼光『十七条のレーザー・逆らう事なきを宗とせよ』!!」

「ぐっ…!」

 

 

 神子が持っている笏からレーザーを放つ。霊夢は持ち前のポテンシャルと反射神経でなんとか避ける。そして反撃に移ろうとしたその時

 

 ……ぁぁぁあ…目があ…ぁぁぁ……ぁ

 

 

「「!?」」

「な、なんなんだ今の声は?」

「何だか…聞き覚えのあるような声じゃが…」

 

 

 突然神霊廟に響いた声に驚き固まる4人。布都と屠自古が何か言い、神子は霊夢と共に固まって動かないでいた。

 

 しかし霊夢は何か嫌な予感がした。聞き覚えがある…いやつい最近も話したような声に似ている。もし想像通りの人物であれば、少し不味いかもしれない

 

 

「ま、まぁ良い。そこの巫女!再戦といこう!」

「ちょ!…あぁもう良いわよ!さっさと潰してやるわ!」

 

 

 神子が腰に差した七星剣を、霊夢がお祓い棒を構えて互いに接近戦へと持ちこむ

 

 

「はあぁぁぁぁぁぁあ!!」

「そこだあぁぁぁぁぁあ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パシッ、パシッ

 

 

 しかしそれらがぶつかる音は聞こえなかった。聞こえたのは想像よりもずっと軽い音であった。

 

 

「え……」

「え?あ……」

 

 

 その音の発生源を恐る恐る見ると、そこにはサングラスの片目の方に穴が空いたジンがいた。その手には七星剣とお祓い棒が握られている

 

 

「あ、あらジンさん。イメチェンしたの?に、似合ってるわよ」

「ひ、久しぶりですね、ジン殿…えっと…その目「人の……」え」

 

 

「迷惑を考えろおぉぉぉぉぉお!!」

 

 

 ゴスッ!、ゴスッ!

 

 

 

「「あぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!?」」

 

 

 

 

 その日、神霊廟には2人分の悲鳴と鈍い音が響いた




あれ?私にはキリ悪く終わらせる才能でもあるのでは?


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事後処理

学校に投稿ペース乱された…許さん


 

 

「「すみませんでした…」」

 

 

 目の前には正座した霊夢達が居る。特に霊夢と神子の頭には大きなたんこぶが出来ている。やったのは私だが

 

 

「あれが私だったからまだしも、普通の人間が通りかかっていたら死んでたぞ。流れ弾は危険だ。気をつけろ」

「こんなとこ来る普通の人間なんて居ないでしょうが」

「まぁ確かにな。だが可能性はゼロじゃあない。気をつけるに越したことはない」

 

 

 命蓮寺の近くだから割と人は来る方ではある。人というのは事実がどうであれ噂が一番なのだ。もし博麗の巫女が戦闘中に一般人に怪我を負わせたなんて話が流れたら信頼度は地に落ちる。確実にな

 

 ……ん?今気づいたが屠自古だけなんか足霊体になってないか?

どういう事だ

 

 

「それはそうとして、尸解は成功したんだな。1人除いて」

「あぁ、この布都(バカ)のせいでな」

「…何やらかしたんだ?」

「コイツが私の依代になる壺割っちまったんだよ。急遽焼いてない壺を代えとして用意したんだが、耐久が低かったようでな」

「…すまんなのじゃ」

「分かったからもう良いって」

 

 

 どうやら布都は何処まで行ってもアホの子らしい。昔から会う度に何かやらかしていたから今更驚きはない。であればどうやって存在しているんだコイツは?

 

 霊体は長持ちせんから、持っても百か二百年くらいしか存在できない筈だ。

 

 

「じゃあその体はどうやって存在している?私の記憶では霊体は長くはないと思っていたが」

「その事については私がお話ししますわ」

「青蛾!」

 

 

 屠自古が何か言おうとすると、背後に穴が開き青蛾が顔を覗かせた。コイツが絡んでいるということか

 

 

「蘇我様が霊体になられた時に私が神力を注入しましたの」

「神力…ってまさかお前」

「えぇ貴方のものですわ。物部様に放った神力の残滓を保管させていただきましたの」

「気持ち悪い事する奴だな。だから邪仙なんて呼ばれるんだ」

「酷くないですか?……コホン、まぁ貴方級の神力を取り入れれば存在が確立できる、そう思ってじっけゲフンゲフン…試させていただきました」

「やっぱり潰そうぜコイツ」

「そうだな、それが良い」

「冗談ですよー、私だって本当に心配したんですから〜」

 

 

 嘘だ。コイツは情なんかで動く奴じゃない。自身の好奇心に従って生きる者だ。こういうのは信用してはいけない相手の特徴でもある。

 

 

「ったく、それにしてもどうすっかなーこのグラサン」

「質屋にでも入れたらどうじゃ?割と高く売れそうじゃが」

「あ゛あ゛ぁ?」

「すみません何でもないです」

 

 

 布都の奴がふざけた事を抜かしやがったので裸眼で睨む。思った以上に効果は出たようで、すぐに引っ込んだ

 

 

「そういえばジンさんの素顔見るのって初めてね」

「確かに言われてみればそうですね。貴方昔からそれ着けてましたし」

「目が弱いんだよ」

 

 

 適当にあしらっておく。手札を相手に必要以上に見せる事はない。これが今後の戦いで勝敗を決める事にもなり得るのだ。

 

 

「ふぅ…一度帰ってから直すか。流石にここじゃ無理だな。材料無いし」

「…すみません、壊してしまって……弁償はします」

「いやいい。もう一発入れたんだ。それで満足だ」

「ははは……」

 

 

(ジンさんの目……金色なんだ…綺麗………って何考えてるのよ私!!)

 

 

 霊夢が頭を振り始めて少し心配になる。さっきの拳骨で頭のネジが外れてしまったのだろうか。次からは手加減しよう

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 神界

 

 

 神界のアメノの屋敷にてアメノと天照は向かい合って話していた。内容は半年後に行われる神議会の投票会の事である。

 

 

「…ジンは神界の業務を幅広く担当してるから他の神にも顔は効く。最低見積っても神議会議員の三分の一は彼の味方に回ると考えないとね」

 

 

 ジンは神議会が設立されてからの初期メンバーである。そして通常業務以外にも、執行部としても活動するので着実に彼の影響は大きくなっていた。

 それこそ最高神であるアメノと同等に並ぶ程の権力はある。もしかしたら僅かに彼方の方が上かもしれない

 

 

「…しかしそれならば最高神様でも同じ事では?」

「あまり期待しないで。私の派閥はジンほど大きくないんだ」

 

 

 勿論アメノの派閥が小さい訳でもないが、比べられると少し見劣りする。どうすれば、せめて半数は確保できないかを考える。

 

 

「では何とか日本神話(私の所)では全面的に支持します。オリュンポスや天竺辺りにも声をかけましょう。あそこの神々は人間に対して好感が高いですから」

「!…そうだね。これで多少はやりあえる程度にはなる。…ここまで来るともう賭けだね」

 

 

 

 アメノは悩んでいた。確かに月人はやり過ぎた。それこそ惑星規模で。しかし月に住んでいる人口の殆どは、上の人間がやる事を知らない。

 そして何も知らない民間人達が消滅させられる。上の人間の独断でやった事を民にも償わせるべきか?アメノはそうは思わなかった。

 故に億規模の生命を奪ってしまうのを躊躇していたのだ。自身が生み出した世界の一部を消してしまうのは来るものがある

 

 

(…それにジンにこれ以上変わって欲しくない。ジンが手を汚せば汚す程、昔とはかけ離れていっちゃう……これはエゴかもしれない。ジンが望んでいないかもしれないけど、もう一度だけで良いから昔みたいに気さくに笑ってほしい…)

 

 

 一人、まるで懺悔をするようにアメノは心の中でそう思う

 

 




遅れてすみません…


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懸念

投稿遅れてすみません…


 

 

 

英知界

 

 

「う〜む……」

「どうかされましたか?」

 

 

 私は自身の作った量産機を見ながら唸っていた。それを不思議に思った白夜は声をかける。丁度よかった。白夜にも聞いておくか

 

 

「いや実はな、量産機に"顔"についてちよっと考えていた」

「顔?……あぁなるほど」

 

 

 量産機の元となった白夜はオリジナルの機体であり、量産機を遥かに超える性能を持っている。それは『外見』にも言えた事だった

 

 

「お前の顔はアメノをモデルとしているのだが…あいつは無駄に顔が良いせいで量産機一つ一つに顔を作ってやるのはとんでもなく面倒なんだ」

「そのせいで今はのっぺらぼう…改めて見ると不気味ですね…」

 

 

 そう、今の量産機は顔が無いのっぺらぼう状態なのだ。これでもし使いになんて出したら妖怪判定されて無駄に戦闘が起こるかもしれない。

 すると白夜が何かを思いついたように話す

 

「では私のこの仮面を付けさせれば良いのでは?」

 

 

 白夜は自身が着けていた仮面を外し、私に見せる。

 

 

「…やはりそれしか無いか…だが白夜には申し訳ないがそれだと他と見分けがつかなくなってしまうんだな〜」

「私は別に構いません」

「私が困るんだよ」

 

 

 試しに量産機に仮面を着けさせて白夜と並ばしてみると、本当に分からなくなって焦ったのは別の話である。

 

 最終的には服を変えるという結論に至った。今の白夜は白い羽衣のような服装である。無論他の量産機も同じである。それで見分けをつける為、服を白夜とは真反対の黒のスーツにした。

 服の作りも色も違うのでこれで間違える事は無くなったが、仮面をつけたスーツ姿のロボットという事で白夜に少し怖がられてしまった。

 自我の乏しい量産機達が分かりやすく項垂れていたのは滑稽であった。

 

 

「ふむ…では今後の騒動の対応はお前らに一任する。これからは『執行部』と名乗れ。これから多くの任務を任せる事になるだろう」

『了解致しました。ご期待に添えるよう精進して参ります』

 

 

 量産機達が一糸乱れぬ動きと声で私に敬礼する。この『執行部』が英知界において主力となった。

 

 そうだ、『執行部』を作ったなら"アレ"も作っておくか。これは役に立ちそうだ

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

幻想郷…無縁塚

 

 

 ザッザッザッ…!

 

「はぁっ…はぁっ…はぁ…」

 

 

 幻想郷の外れにある縁者のいない者が弔われる共同墓地。そこには名も無き妖怪が必死に走っていた。まるで何かに怯えるように

 基本的に捕食者側に回る妖怪が怯えて逃げ回るなんていうのは有り得ない事だ。しかし事実、今追われている。

 

 

「っ!な、何なんだよっ、アイツはぁ!?」

 

 

 元々この妖怪は無縁塚へ迷い込む外来人を狙い、狩りをしていた。そして何かの影が見えたので飛びかかろうとした。だが妖怪の生存本能が痛い程に"アレはヤバい"と警鐘を鳴らした。顔は黒いモヤのようになっていてよく見えない。

 そしてこちらに気づいたのか、恐ろしい速度で此方へと迫ってきたのだ。博麗の巫女に遭遇してしまった時以上の恐怖感。大妖怪級の禍々しさに気がつけば逃げ出していた。

 しかし距離は縮んでいくばかり。そしてついに

 

 

 ガッッ

 

 

「うっ!?」

「……………」

 

 

 妖怪は捕まってしまった。頭をがっちりと掴まれ、逃げ出すのは不可能となっていた。しかし捕まえた張本人は何も言わずただこちらを見ているだけ

 

 

「き、気に障った事をしたなら謝る!だからどうか命だけは…!」

「…………」

 

 

 相手は変わらず黙っている。すると不意に黒いモヤのような顔に変化があった。

 

 

 ガパァ……

 

 

 人間1人は飲み込めそうなほどの大きさの口が表れた。そして掴んだ妖怪を口の上にまで持ってくる

 

 

「ひっ‼︎だ、誰か助けてくれえぇぇぇえ!?ガッ……」

 

 バキョッッ

 

 妖怪の命乞い虚しく、食われてしまった。そして"ソレ"の体が隆起する。"ソレ"はそこで初めて口を開いた

 

 

「…足りない。まだだ、もっとだ。…アイツを……殺すには……監視者ァ…!」

 

 

 

 事態は少しずつ変わっていく

 

 

 

 

 




短くてすみません


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月神戦争
実行


最近用事が立て込んでいて投稿が出来ませんでした…すみません
そしてとうとう紺珠伝(改)に入ります


 

 

 

神議会…投票会当日

 

 

 今日はある銀河の行く末を決める為の重要な場。雰囲気はいつもより重苦しかった。この場には皆が聞いた事はあるであろう名だたる神達が集結している。

 そしてそれらの神の頂点に立つ者、天之御中主神ことアメノ。神々の動きを制御し、統括する監視者・岡迅一郎ことジン。二人が議会に入ってくると場にいる全ての者達に緊張が走る。

 

 

「…ジン、もう一度聞くけど本気なんだね?」

「そんな事を聞く為にここに来たのか?私の考えは変わらん」

「そう……」

 

 

 歩きながら喋るその姿はお世辞にも仲が良いとは言えなかった。ジンとアメノはその後は何も話さず席に着いた。その様子を見て他の神々も急いで座っていく。

 そしてジンが号令をかけ、話を進めていく

 

 

『それでは事前より通達していた投票会を行う。概要は既に伝えてある。最後に数分考え直す時間を与える。よく考えて投票せよ』

 

 

 ジンがそういうが、誰も考え直すような素振りは見せない

 

 

『何だ、要らないのか?…なら良い。早速始めるとする。採決は簡単だ。ただ今回の"月人排除"に賛成か反対か。それに応じた札を挙げてくれればいい』

 

『それでは投票を開始する』

 

 

 皆んな次々に自分の票を入れていく。ある神は冷静に、ある神は何か懇願するように、またある神は緊張した面でその様子を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてついに投票が終わった。八百万の神が投票し終わるにはかなりの時間が掛かった。小1時間程は経っただろうか。月夜見なんて汗を滝のようにかいて、震えている。彼女にとっては永遠とも呼べる時間だったのだろう。

 

 そして開票が終わり、結果が出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 賛成488万6023票  反対311万3977票

 

 

 

「なっ……」

「ふむ、割と反対派が多かったな。五分五分と言ったところか」

 

 

 結果は圧倒的に差がついた訳では無いが、これで排除が決まってしまった。その事実にアメノを始めとする反対派は動揺の色を見せる。

 

 

「な…なんで……」

「何故、か……それが分からんようではどの道未来は無かったな」

 

 

 ジンの言う事が理解できない。アメノ達は何もしてこなかった訳では無い。自身に賛同する協力者を得て準備をしてきた。推定ではもっとこちらの方が多かった筈である。

 そんな事を考えていると、ジンが答えを言う

 

 

「そりゃお前、格の高い神より低い奴の方が多いに決まっているだろう」

「っ!!」

 

 

 そこでアメノ達は初めて自身が犯したミスに気付いた。

 

 

「格が高かろうが低かろうが、同じ一票に過ぎない。貴様らは声をかける層を間違えたんだ」

 

 

 そう。これは人間社会でも同じことである。会社で言えば多くの社員の上に1人の社長が存在する。そして各地域の土地神の上に最高神がいる。役職が高ければ高い程、人数が少なくなるのは当然のことである。

 

 よってアメノ達よりも、土地神達に声をかけたジンの方が票数が多くなったのだ。

 

 

「ま、これで決まりだな」

「っ……」

『あー…コホンッ それでは投票結果を通達する。賛成488万6023票 反対311万3977票。賛成多により、月人の排除を決定する』

『決行日はこれより1週間後。それまでこの情報は他言無用であるそれでは解散!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 殆どの神が議会から退席した後も、ジンとアメノは2人残っていた、

 

「何事も思う通りにはいかないものなのだよ、アメノ」

「……」

「分かっているとは思うが、余計な事はするなよ」

「……」

「ふむ…まぁ良い。もう結果は覆らんのだ。お前も腹を括れ」

 

 

 簡潔にそれだけ言うとジンも議会から出て行った。その姿を見つめていたアメノの両拳は血が出る程に握り締められていた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

英知界

 

「ふぅ…どうなる事かと思ったが、計画通りいきそうだ」

「お疲れ様でした。結果はやはり…?」

「あぁ勿論可決された。これより一週間後に"排除"を行使する」

 

 

 とうとうこの時が来た。全く、解決に一億年もかからせやがって。まぁこれで問題の一つは片付いた。後は月と幻想郷に軍を送って終わりだ

 

 

「それはそうと岡様、一つ耳に入れておいて欲しい事が…」

「何だ、言ってみろ」

「先日執行部と共に設立された『諜報部』から早速連絡がきております」

 

 

 "諜報部"……執行部とほぼ同時期に設立された組織である。実は「執行部があるなら諜報部も欲しいな〜」という結構ノリで作った側面もある。

 しかしこれが中々優秀で、投票会の時にアメノ達が根回ししているという情報は諜報部が持ってきてくれた。それで迅速な行動が出た訳だ。この組織には隠密、暗殺などに長けた量産機改造型を入れている。それにより通常より純粋な戦闘能力は少し下がってしまったが、それ以上の性能を手に入れている

 

 

「月での動向に関してです。情報によると、月の都を"夢の世界"へ移す計画が進んでいるようです」

「随分思い切った事をする。長居すると悪影響しかない世界だというのに。ヘカーティアには神兵と妖精を使うように指示しろ」

 

 

 "生命力=穢れ"の奴らにとっては妖精は天敵だろう。夢の世界を封殺し、そこを神兵で殲滅する。綿月家は純狐が相手する筈だ。

 

「それと一時的な避難所として幻想郷にも侵攻するようです」

「あー……それは執行部を送るか。流石にあそこは神兵のみでは難しい。では永遠亭に執行部、神兵はその周辺を警戒しろ」

「了解しました。そのように伝えておきます」

 

 

 可決されても問題は山積みだな。胃が痛くなりそうだ

 

 

「あ、後一つ重要な情報が…」

 

 

 まだあるのか?

 

 

「何だ」

「実は嫦娥派についてで……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…成程な。嫦娥の奴が強気で出る訳だ。これは失敗だったな」

「どうされますか?」

「月人殲滅と同時進行でやる。作戦は後に伝える」

「了解しました」

 

 

 嫦娥め。誰かがバックについているとは思っていたが、よりによってあいつとはな。面倒臭いことになりそうだ

 

 

 




あいつとは誰でしょう


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動き出す事態

ようやく本編に入れる


 

 

幻想郷

 

 

「…はぁ、暇ね……」

 

 

 素敵な楽園の巫女こと博麗霊夢は絶賛暇をしていた。いつも来る筈のマスゴミも来ないので益々何もする事が無い。

 巫女にらしからぬ格好でグデーっと寝そべっていると見覚えのある顔がこちらに来ているのに気付いた。それがこちらに到着するまでに姿勢を正して見る

 

 

「お〜い、霊夢〜」

「魔理沙、丁度良かったわ。暇潰しになりなさい」

「いきなり酷くないか⁉︎…ってそんな事どうでもいいんだ。」

「どうでもいいのね」

 

 

 やって来たのは魔理沙である。そういえば最近見ないから存在を忘れかけていた。どこまでも自由である、この巫女は。

 

 

「ジンを見てないか?人里の家に行っても居ないんだぜ」

「ジンさん?……そういえばこの1ヶ月くらいは見てないわね。何かあったのかしら」

「まさかアレにやられたとか…」

「アレ?」

「まだ霊夢は知らないのか。これだよこれ。ま、ちょっと時間は経ってるがな」

 

 

 魔理沙が差し出したものを見る。それには『文々。新聞』と書かれている。先程話に出た射命丸文(マスゴミ)の作成している新聞である。書いてある内容は大体誇張が酷いのでまともに見ていない。

 しかし見出しを見てみると気になる記事を見つけた。

 

 

「何これ……"鉄の蜘蛛"?」

「あぁ、こいつが妖怪の山に現れたんだ。そして森を枯らして回ってるんだぜ。天狗が出張っているがまだ討伐は出来てないらしい」

 

 

 印刷されている写真に写っているのは、奇妙な形をした鉄の塊であった。それが通った後は植物が枯れている。新種の妖怪だろうか。少なくともこの幻想郷では見た事が無い。

 妖怪の山は今それの対処に追われているようだ

 

 

「ふーん……ま、でも一つ分かるのは、こんなのにジンさんは負けないわよ」

「まぁそりゃそうだな。アイツが負ける所なんて想像が出来ないぜ」

 

 

(それにしても…この新聞、1ヶ月前に刷られた奴ね。ジンさんが消えたのと同時期……まさかね)

 

 

 妙な予感が頭をよぎったが、その思考を振り払う。あの男がわざわざ幻想郷全域を敵に回す程馬鹿だとは思えない。いや、もしかしたら出来るかもしれないが、無駄な事はしない筈だ。

 

 

(…そう、これは偶然…偶然よ……)

 

 霊夢は自分にそう言い聞かせるが、拭い切れない不安に襲われるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 ブロロロロ……

 

 

 幻想郷ととある山の中、この大自然には似つかわしくない無機質な金属の塊が走っていた。今話題となっている"鉄の蜘蛛"こと月の探査車である。

 そしてそれに搭乗している、玉兎の精鋭部隊『イーグルラヴィ』のメンバー"清蘭"と"鈴瑚"である。

 

 

「う〜ん…あんまり楽しくないなぁこれ」

「そりゃそうさ。ここ(幻想郷)を浄化しきるのに後何日かかることやら」

 

 

 この二匹はジャンケンで負けたという理由それだけで、地上への派遣を決定された割と可哀想な状況にいる。

 ただ車を走らせるだけであるから楽ではあるが、楽しいものでは無かった。

 

 

 ガッッ!! ドゴォン!

 

 

「うわぁ!?」

「な、何。何が起きたの!?」

 

 

 突然探査車が急停止してしまった。止まる直前に何かにぶつかるような衝撃と音が聞こえたが、それらしきものはメインカメラには映っていない。2匹が原因を探っていると

 

 

 コン、コン、コン……

 

 

「っ!…清蘭……」

「うん…」コクリ

 

 

 探査車のハッチの部分からノックをするような音が聞こえた。その音を聞いてすぐに二匹は臨戦体勢をとる。清蘭が杵を構え、ハッチに近づく。

そして

 

 

 ガチャッ

 

 

「せえりゃあぁぁぁぁあ!!」

 

 

 ハッチが開けれられた瞬間、杵を思い切り振る。清蘭は玉兎の中でも力には優れている方である。普通の人間がそれを喰らえば上半身が消し飛ぶだろう。それはハッチを開けたナニカに当たったように見えたが

 

 

 ガッッ…

 

 

「………え?」

 

 

 掴まれた。清蘭自身も止められると思っていなかったのか、呆然としている。そしてそのナニカが喋る

 

 

『お前ら、玉兎だな。神議会の決定に基づき、貴様らを排除する』

 

 

 ソレはスーツ姿に仮面と、奇妙な姿をしている。機械音声で喋るソレに、鈴瑚はある記憶を蘇らせる。

 あれは別の探査船が地上へ派遣された時、突然通信が途切れたのだ。何度も呼びかけるが応答は無い。そして最後に送られてきた記録映像にソレが映っていたのだ

 

 

「っっ‼︎清蘭!逃げて!」

「え?」

 

 

 そう警告した瞬間、清蘭の胸に赤い花が咲いた。"ソレ"が清蘭の胸を手刀で貫いたのだ。手を引き抜くと清蘭の体から力が抜け、そのまま倒れ込む。

 

 

「清蘭っっ!!お前ェ!!」

『排除を続行する』

 

 

 手の指で鉄砲の形を作り、光線を発射する。しかしそれは相手が放った光弾に相殺された。その衝撃波で探査車の壁に穴が開く。その隙を見逃さなかった

 

 

(今だ!)

 

 

 相手が動きを止めた一瞬の内に探査車に常備されている閃光弾を掴み、投げつける。そして自分と清蘭には目を伏せさせる。突然の場面の移り変わりに対応出来なかった"ソレ"は閃光をモロに喰らう

 

 それにより相手は動きを止めた。どうやらメイン回路がショートしたらしい。ピタッと止まって動かない

 

 

「よし…今のうちに…」

 

 

 鈴瑚はまだ息のある清蘭を抱えて、その場から逃走する。しかしここは山の中。あの天狗に見つかれば容赦なく攻撃されるかもしれない上、奴もいつ復旧して追いかけてくるか分からない。早くここを離れなければ。

 

 

「あややっ?貴女達は初めて見る顔ですねぇ。この山に何の用でしょうか」

「っ!」

 

 

 しまった。考えている側から遭遇してしまった。それに相手は鴉天狗。先日見かけた白狼天狗とは訳が違う。一体どうすれば……

 

 

「ん?…あぁ大丈夫ですよ、別にいきなり攻撃なんてしませんよ。何処ぞの白狼天狗じゃあるまいし。だからそんなに警戒しないでください」

「……本当か?ならいいけど…」

 

 

 どうやらそこまで好戦的ではないようだ。話の通じる相手で助かった。…では清蘭をどうするか…

 

 

「ところでその兎さんは大丈夫なんですか?見るからにヤバそうですが」

「!…今会ったばかりで図々しいのは分かってる。でも…どうか清蘭を助けてくれないか…早くしないと…」

「…ふ〜ん、何かワケありみたいですが……まぁ良いですよ」

「すまない!恩に着る!」

「取り敢えずついてきてください。私の家で治療しましょう」

 

 

 鈴瑚はただ頷いてついていくことしか出来なかった。

 

 

(お願い……清蘭、もう少しだけ耐えて…!)

 

 

 息が弱くなっていく清蘭に負担がかからないよう慎重に、慎重に運んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピシッ…ピシッ……バチィッ!

 

 

『…復旧完了。こちら諜報部。執行部に告ぐ。妖怪の山中腹で月の探査車を発見。戦闘の末、これの逃亡を許した。排除を願いたい』

『こちら執行部。了解した。諜報部は引き続き情報の収集を頼む』

『諜報部、了解した』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




投稿頑張るぞい


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思惑

投稿遅れたあぁぁぁぁあ!!


 

 

 

「…っと、取り敢えずこれで傷は大丈夫ですよ。……しかし熱が出てますね…まぁ後で永遠亭にでも連れて行きますか」

「助かった…!本当に感謝する…!」

 

 

 何とか応急処置が間に合い、清蘭は命を落とす事はなかった。しかし傷から病原体でも入ってしまったのか、少し熱が出て苦しそうにしている。

 

 

「…何か出来ることがあればやらせて。恩は返したい」

「あややっ、いいんですか?」

「…最初からその気だったんでしょ…」

 

 

 鈴瑚は理解している。底なしのお人好しなら何も考えずに助けるだろうが、大多数は何か思惑があって、助けた見返りとして何かを求める。それは人も妖怪も同じである

 

 

「では取材をさせていただけませんか?」

「取材?私みたいな奴のこと聞いたって面白くないと思うけど…」

「いえいえそんな事ないですよ〜。だって貴女達、あの鉄の塊に乗っていたんでしょう?」

「…!」

 

 

 やはり気付かれていた。鴉天狗は基本事務作業をしているので、外回りをすることはあまり無い。そんな妖怪に偶然あの時間、あの場所で会ったというのは少し考えづらいのだ。

 であれば最初から監視されていたと考えた方が良い。

 

 

「…ま、私の知りうる範囲でなら答えられるよ」

「本当ですか!あ、私射命丸文と言います。取材は永遠亭に行く道中でお願いします」

「ん、分かった。私は鈴瑚、よろしくね」

 

 

 そう言って鈴瑚は苦しそうにしている清蘭を抱え、射命丸と共に家を出る。また奴に襲撃されるのを危惧していたところ、ここは妖怪の山の管轄内だからさほど気にする事は無いとのこと。

 そして取材が始まった

 

 

「では早速ですがあの鉄の乗り物は?」

「あれか…あれは月で作られた"浄化"装置だよ」

「ほうほう…浄化、とは?」

「月人曰く、地上は穢れているから全てを無に返すんだって」

「…成程、それはまぁ過激な………頼んでおいてなんですが、良いんですか?こんなに情報喋ってしまって」

「ん?…まぁぶっちゃけ私達玉兎にとってはどうでもいい事だからね。必要以上に従う理由は無いね」

 

 

 玉兎は月人にいいように使われる奴隷同然である。勿論良い感情を持っている訳が無く、規律違反を起こす奴は珍しくないのだ。

 鈴瑚もその内の一匹である

 

 

「ふむふむ…地上の生命力を枯らす"浄化"……霊夢さんに伝えた方がいいかもしれませんね」

「霊夢?」

「あぁ、そういえば言ってませんでしたね。霊夢さんはこの幻想郷の調停者で怒らせると凄く恐いんですよ〜」

「へ、へぇ〜……」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ハクション!」

「何だ、風邪か?」

「…いや、なんかイラッときて…」

「は?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「あ、そろそろ竹林が見えてきますよ」

「竹林?…うわぁ、これは……迷うね…」

 

 

 しばらく歩いていると、山を抜けて竹林が見えてきた。波長を操れる玉兎だから分かるのか、この竹林の異常さがよく理解できる。磁場が狂っているので、他の玉兎との通信は出来なさそうだ

 

 

 

 

 

 ゾクゾクッ!

 

「!?」

 

 そんな事を考えていると、鈴瑚は背筋に冷たいものが走る感覚に襲われ、濃密な殺気に当てられた。咄嗟にそれを感じた方を見ると、あの時の仮面男に似たモノが空に浮かんでいた。

 あの時と違うのは、腕に赤い腕章のようなものが付いているところだろうか。恐らくあの個体とは別の者であろう。

 

 

「っ!まずい…先回りされてた…!」

「え?何がですか……って、白夜さん?」

 

 

 白夜、射命丸は奴の事をそう読んだ。もしかして顔見知りなのだろうか。もしそうだとしたら、かなり不味い。今の殺気も私だけに当てられたようで、射命丸は感じていなかった。ならばこの仮面は射命丸と何らかの関係があるのか。どちらにせよあまり良くない状況だ。

 とにかく今は冷静に相手の出方を見ながら、射命丸も注意しなければならない

 

 

『こちら執行部。対象を発見した。これより排除を実行する』

「ちょ、ちょっと待って下さい白夜さん!え、排除って何ですか?彼女と何があったんですか⁉︎」

 

 

 突然のことに頭がついていかないのか、射命丸は質問を連呼する。

 

 

『訂正する。私は白夜様では無い。私はあの方の複製に過ぎない』

「複製…?もしかしてその白夜って奴の量産型か?」

『肯定。…無駄話は終わりだ。射命丸文、無関係者はここから立ち去れ』

「…それは訳を話して貰わなければ出来ませんねぇ」

 

 

 そう言いながら射命丸が扇を出して構える。すると奴は口を開き(口は見えないが)

 

 

『そこにいる月勢力が神議会において不要と判断されたのだ。その決定に基づき、排除する必要がある』

「…なるほどねぇ。それは大変でしょう。ですがそれで"はいそうですか"と言って怪我人を引き渡す程、私も腐ってはないので」

 

 

 

 

「お断りします」 ブォン!!

 

 

 射命丸が扇をあおぐと竜巻のような強大な風が発生した。白夜(仮)は巻き込まれそうになるが、素早く空を蹴る事で何とか免れた

 

 

「鈴瑚さん、早く行って!」

「!分かった。済まない!」

 

 

 射命丸は鈴瑚に声をかけて竹林に向かわせる。中に入れば追って来れないだろう。それに妹紅かてゐに出会えば問題無く永遠亭へ行ける。

 

 

『…交渉の決裂を確認。本部、戦闘許可を』

『こちら本部、戦闘を許可する』

 

 

 量産型は誰かに通信をした後、射命丸に迫った。側から見れば十分速いのだが、それはいとも容易く避けられる

 スピード勝負では射命丸に分配が上がった。幻想郷最速と謳われた彼女の速さは伊達では無い。量産型ではあまり対応できず、少しずつダメージが蓄積していく

 

 

「ふっ!」 ビュオォォォォオ!!

『……』

「う〜ん、随分と硬いですねぇ。本当に攻撃が通っているのか怪しいくらいです」

 

 

 だが相手は金属製という事もあり、風の攻撃では中々有効打にはなり得ない。射命丸は思案しながらも攻撃の手を緩めない。

 するとここで初めて相手に動きがあった。

 

 

『…電磁パルスの実行。開始する』

「んなっ⁉︎」

 

 

 バチバチバチィッッッ!!

 

 

 そう相手が呟くと、奴の体から電気を纏った衝撃波が放たれた。相手の動きが捉えられないのなら、広範囲で攻撃しようという寸法である。

 突然広範囲攻撃を繰り出した為、近くに接近していた射命丸はしっかりと食らってしまい、麻痺状態になる

 

 

「うっ…ぐぅ、これは…かなり効きますね…」

『対象の移動速度低下。攻撃に転ずる』

「!」

 

 

 ゴオォォォォォオオオ!!

 

 

 相手はこちらに手を向ける。すると掌から超高温度の火炎が放射された。直撃は免れたものの、やはりスピードが落ちているため多少食らってしまった。そしてあまりの高温に羽に燃え移ってしまった。

 

 

「う、あぁぁぁああ!!」

『対象の更なる機動力低下を確認。仕上げに入る』

「ぐぅ……熱い…」

 

 

 何とか火は消えたが、未だ残る火傷の痛みにまともに飛行する事が出来ない。それを見て量産機はまたしても同じように手を向ける。

 

(…ふふ……あれだけ啖呵切ってこの様…我ながら恥ずかしいですね…)

 

 

 心の中で自嘲する。そして視界が炎で包まれようとした時

 

 

 ピュイン!  バチィ!!

 

 

 いつまで経ってもあの火炎放射は来ない。その代わり妙な音がした。恐る恐る目を開けると、仮面の顔に穴を開けた量産機が手を此方に向けた状態で静止している姿が目に入った。

 

 

『…ガガッ……メ、メインプログラムのののノそんショウを確ニン……行動…テイ…し…』 ブゥン…

 

 

「と、止まった…?一体誰が…」

「ご無事ですか?射命丸さん」

「鈴仙さん!」

 

 

 量産機の背後から出てきたのは、永遠亭に住む元月の兵士の鈴仙・優曇華院・イナバであった。

 

 

 

 




キリ悪ぅ


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一安心?

うおぉぉぉお!!(意味不明)


 

 

 

「いやぁ鈴仙さんが来てくれなければどうなっていたことやら」

「いえいえ、礼なら鈴瑚に言って下さい。あいつが必死に駆け込んで来てくれたんですよ。…昔の同僚が突然来たのも驚きましたが」

「ははは…」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 少し前…

 

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

 

 

 鈴瑚は文に言われるがままに、竹林の中を走り続けてきた。しかしどの方向へ行っても何故か元の場所に戻ってきてしまい、肉体的にも精神的にも疲弊していた。これ以上時間を掛ければ清蘭がどうなってしまうか分かったものではない。これ以上ないくらいに焦っていたその時

 

 

「…ん?おーい!誰か居るのかー?」

 

 

 竹林の前方から、若い女性の声が聞こえた。それに気付き、希望を見出した鈴瑚は大きな声で返事をする。

 

 

「こっちだー!怪我人がいるー!!」

「何だって?…おぉこりゃ酷い…」

 

 

 声の主もこちらに気づき、一瞬でこちらにやって来る。それに少し驚きはしたがそんな事考えている場合では無い。

 

 

「すまない、永遠亭という場所まで行きたいんだけど…道に迷ってしまって…」

「そりゃ迷うに決まってるだろ…迷いの竹林なんて呼ばれてるんだから……まぁいいや。そっちの子もヤバそうだから早速案内しよう。私は此処の案内人みたいのをしてるからな」

「助かる…!」

 

 

 そういって女性について行く。すると自分が歩いていた時には同じ景色しか見えなかったのに、今は段々と周りの雰囲気が変わっていき、目の前に屋敷が現れた。一体どんな仕組みなのだろうか

 

 

「ここだよ、永遠亭ってのは。ちょっと待ってな…おーい!鈴仙!急患だ!」

「…はぁーい!少々お待ちください!」

 

 

 女性が中に向かって叫ぶ。すると直ぐに返事が返ってくる

 

(…ん?鈴仙…?……いやまさか)

 

 

 鈴瑚は何か聞き覚えのある名前と声に動揺する。もしかしたら同姓同名の相手かもしれない。そう考え、心を落ち着かせる。しかしそれは中から出てきた人物に全て吹っ飛ばされた

 

 

「すみません妹紅さん。お待たせしま…し……た」

「…鈴仙?」

「何だ?知り合いか?」

 

 

 鈴仙はこちらを見て硬直する。そして鈴瑚も同じような状態に陥る。そしておずおずと鈴仙が口を開く

 

 

「え、えっと…患者をお連れしますね…」

「アッハイ」

「…お前ら本当に何なんだ?」

 

 

 あまりの情報量の多さに少し硬直してしまった鈴瑚であったが、ここへ来たもう一つの目的の為、鈴仙を引き止める

 

 

「あ、ちょ、ちょっと待って!」

「うえぇぇぇ!?い、いやぁ私は鈴仙なんかじゃありませんし月の事だってなぁんにも知りませんよハイ!!」

「お願い、聞いて鈴仙!助けて欲しいんだ!」

「…え?捕まえにきたとかじゃなくて?」

 

 

 どうやら鈴仙は捕らえられると思ってここまで動揺したらしい。いや、鈴仙は脱走兵であるから一応捕縛対象にはなっているのだが今は関係ない

 

 

「違うってば!今外で射命丸さんがヤバい奴と闘ってるんだよ!私達を逃すために」

 

 

 彼女が自分達を逃してから数十分は経っている。射命丸だって実力者だ。そんな簡単にやられるタマではないだろうが、"アレ"は間違い無く強い。念には念を押すのだ

 

 

「射命丸さんが⁉︎……まぁ分かりました。詳しい話は後でしよう。妹紅さん、患者を中へ連れて行って下さい」

「あ、あぁ分かった」

「それでは行ってきます」ボッッ

 

 

 先程までの動揺ぶりが嘘のように、キビキビと動き飛んでいった。すると妹紅と呼ばれた女性がこちらに話しかけてくる

 

 

「何でそれを私に言わなかったんだ?言ってくれれば私が行ったのに」

「…いや恐らく相手は機械だから、機械学に多少精通している鈴仙の方が適任かと思って……ごめん」

「何、謝る必要はないよ。そういう事なら良いんだ」

 

 

 何も妹紅を侮って頼らなかった訳じゃない。単純に妹紅の強さを知らなかっただけである。

 そして鈴仙が飛んでいき、今に至る

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「おお…それは中々に濃い内容ですね……」

「私も何が何だか。また後で話を聞かないと…」

 

 

 鈴仙からすれば、訪ねてきた急患が何故か月にいた頃の同僚で尚且つよく分からないナニカと戦っていたなんていう話をされて、正直頭がパンクしそうである。

 射命丸に同情されながら歩き、永遠亭へ再び戻る。

 

 

「それにしてもコレ持ってきちゃった良かったんですかね」

「…相手を知るにはこれしか無いと思い…師匠なら何か解るかもしれませんし」

「はぁ…成程…?」

 

 

 ついでに言うと、撃退したこの機械を引き摺りながら歩いている。もしかしたらまだデータが生きているかもしれない。そうであればコレを送り込んだ張本人にも近づける。

 …だからと言って引きずるのはどうなのか。射命丸は口には出さずに、その疑問は呑み込む。

 

 永遠亭に入ると永琳が玄関に丁度いた。こちらに気づくと労いの言葉をかける

 

 

「あらお帰りウドンゲ。それに新聞屋も………って何それ」

「あ、あははは…」

 

 

 やはりというべきか、永琳は鈴仙が引きずっている謎の物体に目を丸くする。射命丸はその異様な光景に苦笑いするしかなかった。

 

 

「先程撃退した襲撃者です。機械のようなので、師匠なら何か解るかと」

「はぁ…私の専門は機械工学じゃなくて薬学なんだけど……やれるだけの事はやってみるわ」

「本当ですか!ありがとうございます!」

「あ、後あの玉兎、清蘭って言ったかしら?目を覚ましているわよ」

「!…では詳しく話を聞くとしましょう」

「面白そうな話してるじゃない。私も行くわ」

 

 

 話していると奥の間から蓬莱山輝夜も出てきた。恐らく今回の話は月絡みのようなので、身内全員で聞いた方がいいだろうと判断した。

 

 

「分かりました。姫様も病室まで」

「分かったわ」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

清蘭の病室

 

 

「良かった…本当に良かった…」

「あー…ごめんね?心配かけて」

 

 

 清蘭が目を覚ました。時間としては半日も経っていないが、鈴瑚にとっては永遠とも呼べる時間だったのだろう。普段の冷静さが見えなくなるほどに心配をしていた。その証拠に目を覚ますまでの間、ブツブツ言いながらずっと病室の中を歩き回り、時折清蘭の手を握ったりもしていた。

 

 

「えーと…2人共少し良い?」

「うん……ってええ!?鈴仙!何で此処に⁉︎」

「私達も居るわよ」

「はぁ〜い」

「八意様と輝夜様まで⁉︎…もう何が何だか…」

「はは…まぁそれは後で話すわ。先ずは貴女達に何があったか教えてくれない?」

 

 

 清蘭と鈴瑚は顔を合わせると頷き、事の顛末を話しだす。

 

 

 

 

 

 

 




鈴瑚の口調が訳わかんなくなってきた


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顛末

やっと投稿できたあぁぁぁぁあ!


 

 

「私達はサグメ様の御命令で、幻想郷に一時的な避難所を作りにきました」

 

 

 清蘭がポツリポツリと話し始める。すると早速輝夜が質問をする

 

 

「避難所?どうしてまたそんなものを?」

「…近々、月と神界の全面戦争が始まるからです」

「「「!?」」」

 

 

 質問をするととんでもない言葉が返ってきた。この幻想郷には外の情報なんてものは入ってこないとはいえ、予想の遥か上をいった回答に永琳も少なからず動揺する。

 

 

「この戦争は恐らく人妖大戦など比でない程の被害が出ると予想されています。大規模な戦争となるので、その住民の避難所として幻想郷が選ばれたのです」

「…それで作成途中に襲われた、と…」

「はい、"神議会"と言っていたので、アレは恐らく使いの者かと」

 

 

 永琳は自身の部屋に置いた、スクラップと化した使いの者を思い出す。少しプログラムを覗いてみたが、あれは非常に高度な技術で作られており、恐らく月の技術でも再現不可能であると結論づけた。

 よってあれが自分達を追ってきた月の使者では無いとは解っていたが、まさか神界の者だったとは

 

 

「…でも神界にはそんな高度な機械を作れる文明も、神も居なかった筈なんだけど」

 

 

 神界は人間界とは違い、文明ではなく能力が発達している為、人間が作るようなものは神界にはないのだ。逆に能力を使った兵器や武器もあるので、人間とは別の方向で発展しているとはいえる。

 

 

「いや……居るわ、一柱だけ」

「え…それは誰なんですか?師匠」

 

 

 永琳はもう誰だか気づいたようだ。しかしその顔はかなり険しいものとなっており、輝夜も同じようなことになっている。

 

 

「…でも永琳、そうと決めるにはまだ…」

「いえ姫様、もうこれは…決まりでしょう」

「おいおい、結局誰なんだよ?」

 

 

 永琳と輝夜が二人で話し込んでしまったのを妹紅が止める。まだその相手が解っていない者達はウンウンと頭を動かす。

 

 

「そうね…本当にアイツが相手だと骨が折れるわね」

「だ〜か〜ら、だ・れ・な・ん・だ・よ!!」

「じゃあ私が何言っても文句垂れるんじゃないわよ」

 

 

 いい加減イライラし始めた妹紅に、輝夜が一言前置きしてから言う

 

 

「恐らく相手は…監視者、もといジンよ」

「…………は?」

 

 

 妹紅は輝夜の口から予想外の言葉が飛び出した事で、脳が思考を停止する。そして漸く気持ちの整理がついたのか、絞り出すような声で反論する

 

 

「い、いやいや…あり得ないって……だってジンは…そんな事する奴じゃ」

「いえ妹紅さん。あの使者を送ったのは間違いなくジンさんです」

 

 

 その苦し紛れの反論を容赦なく叩き切ったのは、射命丸文であった。彼女は先程まで翼の治療を受けていたが、それが終わってやってきた所だった。

 

 

「あの使者が付けていた仮面、白夜さんが付けていた物と酷似していた上に本人が"自分は白夜さんの複製だ"という事を話していました」

「…これは決まりね」

「そんな…嘘だろ…?」

 

 

 皆当たって欲しくない予想が的中してしまい、雰囲気が重苦しくなる。単純に相手が厄介で憂鬱であるのも原因の一つだが、やはり親交のあった旧友とことを構えるのは気が進むものではなかった

 

 

「…何でジンはこんな事するんだ?」

 

 

 なんとか立ち直った妹紅が意気消沈とした様子で聞いてくる。

 

 

「詳しい事は聞いてませんが月が神界の脅威になり得るからだ、との趣旨のことは聞いていますが」

「…まぁ確かに最近色々やってるものね」

「消されても仕方ないウサ」

 

 

 そう言い合い、考察を重ねていると鈴仙が何かに気づいたように声を上げる

 

 

「ね、ねぇ清蘭、鈴瑚。月の勢力の排除って…もしかして私達も含まれるの?」

「「「!!」」」

「え?…いやどうだろう。確かに月に関するものは全て消すって言ってたし…」

 

 

 その言葉を聞いて鈴仙の顔は青褪める。それならばここも狙われているではないか。

 

 

「でも此処は結界張ってるから大丈夫なんでしょ?じゃあ問題無いんじゃないの?」

「そんなのアイツにとっては大した問題じゃないさ。前に会った時に"ここはもう解析した"って言ってたし」

 

 

 意外な事にてゐから衝撃的な発言を受ける。その話が本当なら、きっとそのデータも『使者』に組み込まれているのではないか。

 そしてふと永遠亭の周りに多数の気配を感じた。は

 

 

「っ!師匠!!」

「ええっ、分かっているわ」

 

 

 永遠亭戦闘要員の鈴仙が真っ先に外に出ると、永遠亭を囲むように五十人以上の使者達が待ち構えていた。

 

 

『こちら執行部。配置に着いた。排除を実行する』

「っ、もう来たのか!」

『…No.58と戦闘を行なっていた玉兎を発見。警戒して当たれ』

『『『了解』』』

 

 

 どうやら奴らの間で情報は共有されていたようだ。先程の使者と戦闘を行った鈴仙を警戒しているようだ。今回は一筋縄ではいかなさそうである。

 

 それと相手の発した"No.58"という言葉

 

(やっぱりあれは量産機の一つに過ぎなかった訳ね……チッ、面倒臭いわ…)

 

 

 心の中で毒を吐きながら戦闘態勢をとる。すると自身の肩ち手が置かれた。驚き振り返ると、そこには弓を携えた永琳が立っていた。

 

 

「お待たせ、じゃあ始めましょうか」

「な、何で師匠まで?私だけで十分と…」

 

 

 基本的に永遠亭での荒事は鈴仙が担当しているので、永琳や輝夜が出ることはなかった。しかし彼女が今この場にいるという事はそれ程の自体という事である。

 

 

「柄にもなく嫌な予感がするのよ。今回は私もやるわ」

「…分かりました。背後、お願いします」

「誰にもの言ってるのよ」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

場所は変わって、月の軌道上にて…

 

 

 

 

 私は今、数十分後に月が通る軌道上にて指揮をとっていた。 

 この場には月に侵攻する為の部隊が整えられていた。まずは主力となる"神兵軍団"、そして私の所からは"執行部"、各神話に属する守神…インドで言えば"天"などが入る。

 

 その総数実に2万。ぶっちゃけるとこれでもまだ少ない方である。月には無駄に強い奴が居る。数的有利が通用しない事もあり得る。まぁその為にヘカーティアと純狐を抜擢した訳だが。因みにヘカーティアには夢の世界の制圧へ向かわせている。地獄に満ちる生命力は月人が忌み嫌うものであるから、殆ど何もせずに封殺できるだろう

 

 

「岡様、少し宜しいでしょうか」

 

 

 私が作戦の再確認をしていると、執行部の一人が話しかけてきた。

 

 

「何だ、手短に話せ」

「はっ、先程地上を警戒していたNo.58との連絡が途絶えました」

「そうか。もう下でも動き始めたか。残りの執行部を連れて地上制圧に向かえ。必要とあればまた量産を開始しよう」

「了解しました。では」

 

 

 量産型はそれだけ言うと風のように去っていった。それにしてももうやられたか…ま、問題あるまい。

 

 

「…あ、あの…少し質問よろしいでしょうか?」

「ん?」

 

 

 私がまた思考に耽ていると、神兵を纏め上げる神兵長がおずおずと話しかけてきた。

 

 

「どうした?」

「あの執行部殿の強さは存じているのですが…量産機ということは全て同じ戦闘力なのでしょう?…であればそれを倒せる者がいる場所にそれ以上送っても効果は薄いのでは…」

 

 

 なるほど。確かにその意見は尤もだ。この神兵長、中々に鋭いな。だがそれを想定しない私では無い

 

 

「何だそんな事か。そんな事は問題は無い」

「…それは何故か聞いても?」

「奴らには少々特殊な"能力"がある」

「能力?」

「特別に教えておいてやろう。それは…」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 バシュッ!バシュッ! ズダダダダッ!

 

 

「くっ…倒しても倒してもキリがないわね」

「師匠!また来ます!」

 

 

 あれから幾つ時間が経っただろうか。鈴仙と永琳は未だに減る気配の無い使者達とずっと戦いを繰り広げている。

 

 

「っ…それに、全っ然当たんないしぃ!!」ピュインッ!

「まさか…学習している…?それも恐ろしい速度で…」

 

 

 そう、この量産機達には少し特殊な能力が備わっている。

それは『学習能力を共有する程度の能力』。自身に対するありとあらゆる行動を分析し、次の行動を最適化するのだ。量産機を倒す度にその攻撃が解析され、無効化される。つまり一度に全て倒さなければ一方的にこちらの手札を晒す事になり、最終的には封殺される

 

 

「はっ!」バシュッ!

『……』ガキイィィィン!

「!?(攻撃が通らない⁉︎)」

 

 

 すると今度は永琳が放った矢が簡単に弾かれてしまった。つい先ほどまで金属製の使者にも、豆腐を射抜くように刺さっていた矢が弾かれるようになった。

 これも能力によるものである。量産機には基本性能として無限機関が積まれている。これにより半永久的な稼働や自動修復が可能とされている。要するに攻撃を解析された上に、次はその攻撃が無効化されるようにさらに固く、頑丈に修復されるのだ。

 

 

「(こんなの…厄介過ぎるわ‼︎…仕方ないわね…ここは…)」

「ウドンゲ、今から博麗神社に行ってこの事を伝えて来なさい」

「はいぃぃぃい!?」

「ここは私が食い止めるわ。何としてでも博麗霊夢を連れてくるのよ」

「そんな…師匠だけ残して…」

「いいから行きなさいっ!!」

「!!」

 

 

 鈴仙は滅多に聞かない自身の師匠よ怒声に弾かれたように走り出す。彼女は師匠と使者が戦う音を背景に必死に博麗神社へた向かうのだった

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「はぁ……そんな能力が…これ今回神兵(私たち)要りましたかね?」

 

 

 神兵長は執行部のぶっ壊れ性能を聞いてげんなりする。これであれば自分たちは必要なかったのではないかと

 

 

「いやいや、まだ執行部は経験不足だ。ここはベテランが居た方がいい。それに月の都攻略には生命力の権化たる君達が必要なのだ」

「!」

 

 

 その言葉を期待されていると解釈したのか、神兵長の顔に色が戻り敬礼をする

 

 

「我ら神兵団、ご期待に添えるよう精進して参ります!」

「うむ、頑張ってくれ……さてでは我々も始めるとしよう」

 

 

 ジンは目視できる距離まで近づいてきた月を見ながら、指令を下す

 

 

『これより月の都侵攻作戦を開始する。総員、かかれ』

『『『了解!』』』

 

 

 

 




遅れて誠にすみません


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侵攻

キツかった…


 

 

 私は玉兎。この月の何処にでもいる、ありふれた玉兎である。自慢では無いがそれなりに強く、鍛錬を積み、イーグルラヴィにも配属された割と優秀な個体だ。今日は久々に与えられた休日だったというのに、私の小隊は何故か月の防衛最前線へと送られた。全くもって遺憾である

 

 

「はぁ…何で私たちがこんな事……」

「ていうかこんなとこ誰も攻めないでしょ。月に喧嘩売るとかもうそれはバカよ。敵さんは何考えてるのかしら」

「さぁね〜、私としてはもうとっとと来て貰って、倒して帰りたいんだけどね〜」

 

 

 他の玉兎が言うと皆首を振って肯定する。

 

 

「だよねー!攻めるのにこんなに時間かけて…貴重な休みが削れるじゃない!」

「それか案外ビビってるのかもよ?」

「あり得るー!」

「「「あははは!!」」」

「おい!警戒を怠るな!」

 

 月人の司令官に怒られてしまった。しかし仕方なかった。この時私達には、早く敵を倒して残りの時間を何をするか、その事ばかりが頭にあった。

 

 あんな事になるとも知らずに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはは「ピュインッ」…は、は?」ドサッ

「……え?」

 

 

 一瞬なにかが視界を掠めた。すると仲間が、倒れた。先程まで、話していた仲間が。頭から、血を流して。地面が、赤く染まる。何処から、誰が、一体何が起きてー

 

 

 ピュインッ

 

 

「あ゛っ……」バタッ

「ヒッ!」

 

 

 またあの音だ。また1人、倒れていく。手が震えて武器をまともに握れない。周りを見渡す。すると、ある一点が光っているのが見えた。

 

(あれは……?)

 

 その光は段々と大きくなり、ある姿を形作った。

 

 

(ふ、船……?)

 

 現れたのは全長200メートルはあろうかという巨大な黒塗りの船だった。それも二十隻以上。どうやら先程のはこの船から放たれたようだ。

 

 

「て、敵襲!敵襲ーっ!!」

「総員構え!!」

 

 

 やっと我に帰った月人の司令官が大声で通告をする。その声で私も気を取り直し、未だ震える手を抑えながら武器を取る。

 

 

「撃てーーっ!!!」

 

 

 スダダダダッ! ダダダダッ! ドオォォォン!!

 

 

 残っている数百名以上の玉兎全員で銃を撃つ。中には固定砲まで取り出して発砲する者もいた。

 

 

「撃つ手を休めるな!一点集中せよ!!」

「「「了解!!」」」

 

 

 いつもはただうざったるい司令官が少し頼もしく見えた。そしてそれが功を成したのか、集中的に狙っていた先頭の船が少し高度を落とした

 

 

(よし、まずは一隻!)

 

 

 少しの達成感に包まれながら、私達は別の船に照準を定める。すると沈んだ筈の船から思わず目を瞑るほどの光が発せられ、

 

 

 それが私の見た最期の景色となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや〜すごいですなこの船は。あれだけの猛攻を受け、傷一つ無いとは」

「当たり前だ。私の最高傑作の一つだからな」

 

 

 私は今とある船に乗って侵攻を行なっていた。この船の名は『ナグルファル』。本来なら世界の終末時"ラグナロク"に使用される、神界の最終兵器とも言えるものだ。この船が通った後には生命は残らず、全てを殲滅する代物。自動照準の粒子砲と無限機関によるシールドが備え付けられており、攻守共に素晴らしい効果を発揮する。

 

 何故そんな大層な物を使うかというと、単純に相手が強いからだ。なのであまり出し惜しみをして負ける事があってはいけない。もう一つの理由は試運転だ。何気にコレが出動するのは今回が初めてだ。性能把握をしておく為でもある。

 

 

「さて、粗方ここら辺の奴らは殲滅し終わったな。後は……」

 

 

 

 ドゴオォォォォォオン!!!

 

 

 

 突然背後から爆音が鳴り響き、一隻のナグルファルが火の手を上げながら落ちていく。

 

 

「か、監視者様!一体これは…」

「落ち着け。"アレ"は私が対処する。お前らは残党の処理だ。行け」

「り、了解!」

 

 

 私はナグルファルから飛び降りる。反重力操作をしながらゆっくりと月面へ降り立つ。そして船を落とした張本人に目を向ける。

 

 

「やっと来たか。ちょうど探していたところだった」

「師匠……どうして…」

 

 

 私と向かい合うのさ刀を構えた綿月依姫、その人であった。月の誇り高き軍人と神の成り損ないは1億年の時を経て相対する。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

博麗神社

 

 

「はぁ〜?何で私がそんな事しなきゃいけないのよ!」

「そこを何とか…」

 

 

 場所はまた変わって博麗神社。ここでは博麗の巫女たる霊夢と玉兎の鈴仙が口論を繰り広げていた。

 鈴仙は永遠亭の救助を求める為、霊夢に頼みに来たのだがここで少し揉めてしまった

 

 

「お願い!今師匠が時間稼いでくれてるの!」

「何で私が妖怪同士の戦いに首を挟まなきゃいけないのよ。あくまでも私は人間の味方よ」

 

 

 そう。博麗の巫女は正義の味方ではなく、常に人間を優先して行動するのだ。妖怪同士のいざこざには手を出さないのが普通である。

 

 

「正確には妖怪じゃなくて蓬莱人だし!それに私も妖怪じゃない!」

「それはそうかもしれないけど、人里の人間からすれば同じなのよ」

「ぐぬぬぬ…」

 

「おーい!霊夢、何やってるんだぜ?…あれ、鈴仙まで」

「あ!魔理沙!」

 

 

 説得に難航していると空から霧雨魔理沙がやってきた。彼女は珍しい組み合わせに気になり話を聞く。鈴仙もここぞとばかりに魔理沙を味方に引き入れようとする。

 

 

 

 少女説明中…

 

 

「なーるほどね〜。そりゃ大変だな」

「そうでしょ!?なのにこの巫女ときたら…」

「あ゛?何よ」

「イエ、ナンデモゴザイマセン…」

 

 

 魔理沙は普段の行いからは見えないが、割と理知的である。第三者の魔理沙ならこの平行線の話をどうにかしてくれる筈…!と勝手に鈴仙は思っている。

 

 

「うーん…まぁ永遠亭は人里に割と欠かせないしなぁ。別に助けても問題ないんじゃないか?それにこれで恩を売っておくのもアリだぜ」

「それ本人がいる前で言う?」

「…ふぅん。魔理沙にしてはまともな事言うじゃない」

「"にしては"は余計だぜ」

 

 

 鈴仙は少し文句を垂れるが、話がいい方向に行きそうなので余り気にしないでおく。すると決心したように霊夢が鈴仙の顔を見据える

 

 

「良いわ。じゃあ助けてあげる」

「本当⁉︎ありが…」

「ただし、それが終わったらコ・レ・よ♪」

 

 

 霊夢は人差し指と親指で輪っかをつくり、鈴仙に見せる。

 

 

「うわぁ、抜け目ねぇな」

「うるさいわね。こっちは死活問題なのよ」

「うぅ……師匠と相談してみます…」

 

 

 鈴仙は頼んでいる側なので、渋々それを了解し、早速重い気分となる。だがそんなことをしている暇はない。一刻も早く戻らねば。あの量はいくら永琳でも厳しいものがある。

 

 

「じゃあ早速いこう!早くしないと師匠が…」

「はいはい分かったわよ」

「ところで相手は誰なんだぜ?出来れば大元を叩きたいんだが」

「岡迅一郎よ」

「「……は?」」

 

 

 突然出てきたパワーワードに柄にもなく霊夢と魔理沙は思考停止する。すると霊夢が少し不機嫌気味に鈴仙へ詰め寄る

 

 

「…いくらアンタでも度が過ぎる冗談ね」

「ほ、本当だよ!嘘じゃないって!」

「鈴仙、流石にそれは私も許せないぜ。タチが悪い」

「魔理沙まで……本当なんだって!師匠も文さんも断言してたし!」

「永琳と文屋が…?」

 

 

 月の頭脳とも呼ばれた永琳が下らない嘘をつくとは思えないし、射命丸は情報に関してはしっかりしている。ならば本当に……

 

 

「じゃあ一ヶ月前に姿を消したのもこの為…?」

「だったら早く止めに行かないと!」

 

 

 魔理沙と霊夢が意気込み鈴仙と共に飛んでいこうとすると、目の前にに見覚えのある"スキマ"が現れた。そして鈴仙を捕縛する

 

 

「それはいけないわ」

「紫⁉︎何で邪魔するのよ!」

 

 

 突然現れた賢者、八雲紫に警戒する。彼女は普段見せない程の威圧感を放っている。それに少し動揺しながらもお祓い棒を突きつけ詰め寄る。すると紫は美しい顔を歪めながら答える。

 

 

「この異変には博麗の巫女ですら関与する事を禁じます。分かったら戻りなさい」

「答えになってないわよ…!」

 

 

 紫の明らかにおかしい様子に疑心を持つ。そしてさらに詰め寄る。

 

 

「っ!!」バッッ!

「霊夢!紫、何のつもりだ!」

 

 

 霊夢が近づいた瞬間、死角からのスキマによる弾幕が発射された。霊夢は持ち前の鋭い勘で紙一重で避ける。突然の攻撃に魔理沙は激昂し、ミニ八卦炉を取り出す

 

 

「あの方は今回の件に一切の不干渉を取り決めた。これは私達にどうにか出来る範囲ではないわ」

「あの方……ってジンさんの事…?」

「……」

「沈黙は肯定と取るわよ」

 

 

 紫はただ黙っているだけ。何も話さない紫に苛立ちつつも平常心を保ち、会話を試みる。すると珍しくあちらの方から口を開いた

 

 

「…この幻想郷は、神界の承認によって成り立っている。今この時期の神界に逆らえば、幻想郷はあの方に消されてしまう。それだけはいけない」

「消すって…まさかジンが?ははは…あり得ない、だろ…そんな事…」

「魔理沙…」

 

 

 魔理沙はわなわなと震え出す。そして勢いよく顔を上げるとキッと紫を睨みつけた。

 

 

「私は自分の目で見た事しか信じないぜ。そこを退くんだぜ」

「まだ言っても分からないの?…もういいわ。そんなに自分の押し通したい事があるなら、やる事があるでしょう」

「!」

「弾幕ごっこ、始めましょう?」

 

 

 

 

 

 




文才が欲しいぃぃぃぃい!


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亀裂

生きてます。申し訳ありません。学校行事が重なって中々投稿出来ませんでした…これからも遅れるかもしれませんが、何卒…


 

 

「じゃあ始めるとするぜ、弾幕ごっこを…」

「良いわよ、来なさい」

「ひょわっ!?」

 

 

 魔理沙はミニ八卦録を取り出す。八雲紫は受け立つ為に、スキマで拘束していた鈴仙を放り投げる。

 

 

 霊夢達と紫は睨み合う。本来妖怪と人間の戦いなど勝負にすらならない。しかしこれを可能とするのが『弾幕ごっこ』であり、幻想郷のルールである。いつもと違う雰囲気の紫に気圧されながらも、しっかり目を見据える。

 緊迫した空気になる。先にその静寂を破ったのは霊夢達であった。

 

 

「先手必勝!魔符『スターダストレヴァリエ』!!」

「あら、珍しいわね。貴女が脳筋プレイをしないなんて」

「うるさいのぜ!」

 

 

 魔理沙はスペルカードを取り出して宣言する。星形の弾幕が次から次へと紫へと降り注ぐ。だが紫はそれを難なく避けていく。美しく、その弾幕の合間と優雅に通っていく。

 

 

「はっ!」 

 

 

 そして偶に自身が放つ弾幕で相殺していく。それにより人為的に隙間を生成する。すると直ぐ目の前に霊夢が現れた

 

 

「夢符『封魔陣』!!」

「(数で押すつもり…?)芸が無いわね」

 

 

 しかしこれは2対1。魔理沙の弾幕の僅かな合間を埋めるように、霊夢の弾幕が飛び散っていく。本来避けれない弾幕の使用は禁止であるが、本当にほんの少し合間を開ける事によって後で言い訳できるようにした。コスい。

 紫は流石に避ける事が不可能と判断したのか、スキマを作り、そこは弾幕を逃していく。

 

 

「っ!魔理沙!」

「うおっ!?」

 

 

 霊夢達の背後にスキマが出現し、自分達が放った弾幕が己に牙を剥く。霊夢は相変わらずの変態的までの反射神経と勘で避ける。しかし魔理沙は少し被弾してしまったようだ。

 

 しかし、これが霊夢達の狙いであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーあ!私被弾しちまったからもう戦えないわー!!」

「……?一体何を言っているのかしら」

 

 

 突然魔理沙がわざとらしく声を張り上げ、大袈裟にやられた仕草をとる。先程とは打って変わって感情が変化する魔理沙に怪訝な表情を見せる。何をそんなに喜ぶ事があるというのか

 

 

 しかし八雲紫は賢者とも呼ばれた大妖怪である。そう時間もかからず、彼女達が一体何を狙っていたのかを瞬時に理解してしまった。

 

 

 

「っ!まさかー」

 

 

 少し考えて漸く霊夢達の狙いが分かった。この弾幕ごっこは2対1。数的には紫が不利だが、そんな話は関係ない。弾幕ごっこは相手を『倒したら勝ち』てはなく『当たれば負け』なのだ。つまり魔理沙か霊夢、どちらかが被弾すれば、被弾した方がここから離脱する事になる。

 

 

「最初からこれを狙って…」

「そうよ、貴女と正面からやり合ったって勝てるか分からないもの」

「じゃ、私は失礼するぜ!」

 

 

 先程までここから2人を逃がさないようにしていたのに、幻想郷のルールに則り、合法的に戦闘から離脱された。慌てて振り返り、止めようとする

 

 

「ま、待ちなさー」

「貴女の相手は私よ」

「!」

 

 

 やはり直ぐに行手を阻まれる。どんどん魔理沙は遠ざかっていく。しかし霊夢の相手をしなければならない。勝負は最初から決まっていたのだと八雲紫は実感した。

 

 

「ほら、行くぜ!鈴仙!!」

「うえぇぇぇえ…酔うぅぅぅぅ」

 

 

 …しっかり鈴仙も忘れずに飛んでいった。

 

 

 

「しっかりしろ!今の情報源はお前しかいないんだぞ!」

「じゃあもう少し安全運転で……」

「もたついてたら永琳達がやられちまうぜ!」

 

 

 それはそうなのだが、流石の鈴仙でも平衡感覚のないスキマに放り込まれた後に高速飛行はかなりくる。人間ならば既にピーーッを吐いているところだ。

 

 しかし時間がないのも事実。鈴仙もその事を理解している為、渋々と頷く事しかできなかった。

 

 幸い幻想郷はそこまで広くない。故に高速飛行をしていれば5分もかからずに行く事が出来る。そしてそれが現実となり、もう竹林が見えてきた

 

 

「よし!もうすぐだ!」

 

 

 鈴仙の指示の下、猛スピードで竹林を抜けていく。体感時間で二分程飛んでいると、永遠亭が見えてきた。しかしそれは記憶にあるものとは違いボロボロで、あちこちに大きな穴が開いている。

 

 そしてその近くには再生しながらも大量の血を流しながら量産機と闘う永琳と輝夜、妹紅の姿があった。

 

 

「ッッ‼︎師匠っ!!」

「ウドンゲ!…と魔理沙?」

『増員か…面倒な……』

「全員そこから離れるんだぜ!!」

 

 

 永琳達の返事を聞く前に魔理沙は八卦炉を取り出し切り札を準備する。永琳達は魔理沙が何をするのか察したのか、直ぐに退散する。そして残っている量産機に向かって

 

 

「魔砲『ファイナルスパーク』!!最大出力!!」

『⁉︎高エネルギー反応、全員退避ー』

 

 

 

 ゴオォォォォォォォオン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あたりの煙が晴れると、そこには何も残っては居なかった。量産機の再生速度を超える破壊力で消滅させたのだ。因みに永遠亭も一緒に消えた

 

 

「え、永遠亭が…」

「…まぁ命には変えられないわ。仕方ない事よ」

 

 

 永琳はそう言っているが、疲れのせいか少し顔が引き攣っている。自分の家が破壊されたのだ。助けてもらったとはいえ、何も思わない訳ではない。だが彼女も大人である。礼はしっかりと言う。

 

 

「それはそうとありがとう、魔理沙。来てくれたのが貴女で助かったわ」

「別に構わないぜ。でも何で私で良かったんだ?悔しいが、実力なら霊夢の方がまだ上だぜ?」

「あの量産機の耐久と再生を超える破壊力、尚且つ広範囲の技を持つ貴女じゃないと駄目なのよ。あれ以上強化させないように闘い続けるのは骨が折れたわ」

「うへぇ〜、そりゃきつい」

 

 

 要するに永琳達は鈴仙が助けを呼びに行ってからずっと、百体以上の量産機と戦闘をしていたのだ。それも出来るだけ強化再生されないよう、チマチマと攻撃をして。

 量産機を倒すには一度に全ての個体を、塵も残さないよう完全に消し飛ばすしかないのだ。その点では魔理沙と相性が良いのである。偶然ではあるが、魔理沙が来てくれたのは僥倖であった。

 

 

 すると魔理沙は思い出したように永琳に聞く

 

 

「…なぁ、後さっき倒した量産機、もしかしてー」

「えぇ、恐らく白夜をベースにしたジン直属の量産機隊よ。あの仮面を見たでしょう」

「そうか…」

 

 

 恐る恐る聞いた魔理沙は少し落ち込む。やはりこの異変を解決するにはジンとの衝突は避けられないだろう。それは気分の良いのものではない。

 

(もしかしたらジンにも致し方無い事情があるのかもしれないぜ。まずは会いに行かないと…)

 

 

「永琳!ジンは今何処にいるんだ⁉︎」

「…恐らく月の都でしょうね。神界がそこに大軍をぶつけてると聞いたわ」

「じゃあ早く行かないと!」

「待ちなさい。宇宙空間は大気が無いのよ。今行けば普通に死ぬわ。だからこの薬を飲みなさい。体が対応するわ」

 

 

 魔理沙は差し出された薬を摘みながら、永琳の顔を見る。

 

 

「…随分と準備が良いんだな。もしかして最初から私を行かせるつもりだったんじゃないか?」

「さぁ、どうでしょうね?」

「…紫っぽくて嫌いだぜ」

「あら、失礼ちゃうわね」

 

 

 

 魔理沙がその薬を飲もうとして口に投げ入れる。すると何処からか声がし、手が伸びてきてその薬をつかみ取ってしまった。

 

 

「!これは…スキマ⁉︎じゃあもしかして…」

「こんにちは、魔理沙。さっきぶりね」

 

 

 手が伸びているスキマが段々と大きくなり、1人の女性が姿を現した。先程博麗神社で弾幕ごっこをした八雲紫その人である。その手には先ほどの薬が握られている。

 

 

「八雲紫…!何でここに…」

「私も貴女に倣って被弾したのよ。でもあの娘ったら当てないように上手くやるもんだから時間がかかっちゃったわ」

 

 

 やれやれと言ったように紫は溜息をつく。来るとは思っていたがここまで早いのは想定外だ。この場には永琳が居るとはいえかなり消耗している。ここでほぼ無傷の紫とやり合うのは危険である。

 

 

「無駄な抵抗はやめなさい。今貴女が行ったところで何も変えられないわ。貴女の勝手な行動で幻想郷を危機に晒すのは許さないわ」

「そ、それは……」

「それにもしそうなった時、貴女は責任を取れるのかしら?この幻想郷はあの方の匙加減で存続も消滅もするのよ」

「ジンはそんな事しない!ただ脅しただけだぜ‼︎」

 

 

 事実、ジンはこの幻想郷が好きだと言っていた。忘れ去られた者たちが辿り着く楽園であると。ジンがそう評した事で他の神も訪れるようになり、『神々が愛した幻想郷』なんて呼ばれるようにもなった。

 確かにジンがこの幻想郷を消すと言ったのは十中八九脅しである。しかしそう簡単にはいかない

 

 

「そうね…その可能性は低いかもしれないわね。でもそれは問題じやないのよ。あの方が実際に実行できる実力を持っているのが問題なの。それを無視して動く事は出来ない」

「何で…どいつもこいつもジンを悪く言うんだ⁉︎そんなにアイツが信用出来ないのか?」

 

 

 魔理沙はまだ子供である。まぁ情緒はかなり安定している方だろう。しかしそれは一般的な同年代と比べてである。まだ己の理解出来ない事や納得できない事に直面すれば、自身の感情を制御出来なくなる

 

 それに感化された訳ではないが、八雲紫は苦虫を噛み潰したような顔をして

 

 

「…私だってこんな事したくはないわ。あの人が根っからの悪神ではないことも知ってるわ」

「じ、じゃあ…」

「でもこの幻想郷の命とは引き換えられない。お願いだから…何もしないで頂戴」

 

 

 

 紫は悲痛な声で訴える。彼女はただ幻想郷を守るのに必死なのだ。しかし魔理沙にも意地がある。友人が一体何をしようとしているのか、何故こんな事をするのか、沢山聞きたい事がある。だが自分が勝手な事をすれば幻想郷が危機に陥りかねない。意地と理性が彼女の頭の中でせめぎ合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな異様な雰囲気の中、不思議な声が聞こえた

 

 

『お辞めなさい』

「「!?」」

 

 

 その場にいる全員が、身体が硬直し動けなくなった。体に何かが巻きつくような感覚に襲われ、誰一人として抵抗できなかった。魔理沙は唯一動く頭を声がした方に向ける。

 

 

 

 そこには白い長髪と法衣のような物を纏った少女が立っていた。しかし見た目とは裏腹に、底知れない力を感じる。背筋に冷や汗が流れる。この気配…神奈子や諏訪子と同じものを感じる。

 するとその少女は徐に口を開いた

 

 

「私の名は"天之御中主神"。原初の神にして全ての始まり」

「何ですって…?」

「天之御中主神…⁉︎」

 

 

 紫と永琳は少女が名乗った名前に驚愕する。だがそれがいまいち理解できなかった魔理沙が聞く

 

 

 

「紫、永琳…?何か知ってるのか?」

「知ってるなんてものじゃないわよ…!」

「あの神は…神界を束ねる最も格の高い…最高神よ」

 

 

 永琳の口から出た情報に軽く驚く。何故今戦争中の神界のトップがこんなところにいるのか。一体何をしに来たのか。もしかすると月の住人であった永琳達を殺しにきたのかもしれない。

 そう考えて密かにスペルカードの準備をしようとする

 

 

「大丈夫だよ、私はそんな事しない」

「…!」

「…へっ、心でも読んだか?さとり妖怪みたいによ」

 

 

 しかしそれは相手の言葉で中断されてしまった。魔理沙は観念したように息を吐く。こう封殺されてしまっては何も出来ない。しかし相手もそれをする気は無いとのことで一先ずは臨戦体制を解く

 

 

「そう警戒しないで欲しいなぁ…私はただ貴女達にやって貰いたい事があるだけなの」

「はぁ?」

 

 

 魔理沙は思わず声を上げる。その最高神が自分のような者に一体何を頼むと言うのか。ますます怪しくなってきた。しかし目の前の最高神はそんな気持ち知らずか、話し続ける

 

 

「貴女達に……月の住民を救ってほしいの」

「「「…はあぁぁぁぁぁああ!?」」」

 

 

 突拍子もない言葉に、紫や永琳ですら素っ頓狂な声を上げてしまう。

 

 

「ゼェ…ゼェ…紫ぃ…!やっと追いつい…何かの状況」

 

 

 そして紫に逃げられ、遅れてやってきた霊夢はこの状況に目を点にしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




駄文だぁ


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衝突

ちょっとやっつけ感が大きいですね


 

 場所は変わって月の都

 

 

「師匠…どうして……」

 

 

 綿月依姫は、自身が想定していた最悪の事態に陥ってしまった。自分に戦闘のいろはを教えて貰い、何かと世話を焼いてくれた人物と武器を持って相対してしまっている。

 月を守る為に出撃したとはいえ、その心境は複雑である。

 

 

「"どうして"だと?まさか本当に心当たりがない訳じゃあるまい」

 

 

 絞り出すように言った言葉は容赦ない一言で両断される。依姫だって分かっているのだ。自分達月の民が何をしてこんな事になっているかくらいは。

 

 

「私は…何故貴方と戦わなくてはならないのでしょう…?他の神でも…」

「無理だ。お前は強すぎる。だから私が来ただけのことだ」

「……」

 

 

 その言葉は師弟関係時代であれば、大いに喜んだだろう。しかし今この状況では、純粋に喜ぶことが出来ない。ジンの皮肉が込められているのにも気づいているからだ。

 

 

「私は貴方と戦いたくありません。どうか、退いてくれないでしょうか」

 

 

 それでも何とか自分の心境を伝えたい。昔は多少なりとも信頼関係を築けた筈だ。相手も自分に対して何も思うところがない訳ではないだろう。そう期待して、再三言葉をかける

 

 

「私は仕事に私情は持ち出さない主義だ。…まぁ確かにお前と戦うのは心苦しい。」

「だが遅すぎたのだ。お前らが何処かで踏みとどまっていればこんな事にはならなかった」

 

 

 過激派の動きを察知し、止める事が出来なかった自分達に非がある。それに一回だけに留まらず複数回も。神界が本腰を入れる訳である。だがそれで何も抵抗せずに消される自分達ではない。その為にサグメが案を出したのだ。もう自分も腹を括るしかない。

 

 

「……それに"アレ"は駄目だ。庇い切れん…」

「…"アレ"、とは?」

「ん、いや何でもない。こちらの話だ」

 

 

 するとジンがとても小さな声で何かを呟いた。詳しく聞こうと思って声をかけるがはぐらかされてしまった。

そして話をすり替えるようにまた話しかけられる

 

 

「あぁ、そういえば」

「…何ですか」

「嫦娥とやらは何処にいる?」

「……え?」

 

 

 唐突にそんなことを聞かれる。てっきり月の賢者サグメや月夜見の居場所を聞いてくるとはがり思っていたので、少し間抜けな顔をしてしまう。

 

 

(…都の中枢を担う賢者や月神ではなく、実行犯の嫦娥派のトップを優先するのか…?分からない…一体何を考えて…)

 

 

 効率的に殲滅するのであれば、実行犯よりも先に月の機能を停止させる方が良いハズ。態々時間のかかりやすい方法を何故取るのか疑問が残った。

 

 

(何を考えているかは分からないけど…簡単に答える訳にはいかない…)

 

 

「…素直に答えるとでも?」

「そうか、知ってはいるんだな。なら安心だ」

「っ‼︎」

 

 

 ドゴオォォォォォオオン!!!

 

 

 一瞬相手の手がブレた。すると今までにない程の危機感が体を襲い、神がかった反射神経でその場から離れる。轟音が鳴り響き、空中から見下ろすと自分が居た場所か大きく抉られていた。

 ジンの手を見るといつの間にか仕込み杖が握られていた

 

 

「おや?今のは避けられないと思ったが…素晴らしい」

 

 

 ジンは不気味な笑みを浮かべながら称賛する。が、今の依姫はそれどころではなかった。

 

 

(今の動きを予備動作無しで…⁉︎まるであの時みたいに…)

 

 

 依姫は、初めてジンと出会った頃の出来事がフラッシュバックし、息を呑む。だが慌てて頭を振り、気を落ち着かせる。今度はどんな一挙一動も見逃さぬよう、地面へ降り立ち刀を構える。

 

 

「…本当にやるんですね」

「今の私には時間がない。さっさとケリを着ける」

「あんまり舐めないで下さい、よっ!!」

「む……」

 

 

 ガギイィィィンッッ

 

 

 耳障りな金属音が鳴り響く。そこからは最早神の領域の戦いが繰り広げられた。

 

 

「はぁっ!!」

「フンッ」

 

 

 刀と刀がぶつかり合う。依姫は全く無駄の無い動きで剣技を繰り出し、相手の動きを封じ込めようとする。しかしその軌道が読まれ、刀を滑り込ませる事により止められる。

 そして滑り込ませた仕込み杖を、ジンは走らせながら依姫を切り裂こうとする。これを依姫は手首を返すことにより、走らせていた杖の軌道をずらして回避する

 

 

「ほぉ…昔だったら絶対にやらなかったろうに」

「私も成長しているんですよ」

 

 

 手首を返して刀を回転、そして軌道をズラす。これはジンがよく使う技である。しかし強度のある直刀でだからこそ出来る技であり、湾曲していて、横からの力に弱い日本刀でやろうとすれば折れてしまうだろう。それを咄嗟に実行に移し、尚且つ成功させる依姫の技量は計り知れない。

 

 

「生意気な奴だ。が、これは真面目にやらんと負けそうだな」

「(やはり本気には程遠かったか…なら本気になる前に倒す!)」

 

 

 今思えばジンとの能力を使った闘いは初めてである。ならば自身の力を理解していない最初に一気にケリをつけるしかない。相手の能力が分からない以上、長期戦は危険である

 

 

「『祇園様の力』!!」

「…む」

 

 

 依姫が宣言をする。するとジンの周りに無数の剣が現れ、取り囲む。この剣には神力が一つ一つに宿っている。これであればダメージを与える事は出来る。

 

 

「"神下ろし"…か。大層な力を持ったものだ。」

 

 

 そう。綿月依姫の能力、それは『神霊を呼ぶことができる程度の能力』。八百万の神をその身に下ろし、力を行使出来るのだ。八百万とは数が多いの意ではなく、文字通り八百万の神を下ろせるのだ。

 その姿を見てジンは少し顔を歪める

 

 

「(迂闊だった…。神界の者には月に対する協力を禁じたが、これなら"能力によるものだから仕方ない"と反対派が主張するかもしれん。…面倒だ…)」

 

 

 この能力があるのをいいことに、アメノを始めとした奴らが協力するかもしれない。オリュンポス辺りはまだジンの影響が大きいので無いと考えられる

 

 

「まぁ良い、その時はその時だ…それにしても"祇園"……須佐男(スサノオ)か」

「正解です。そこから一歩でも動けば祇園様の怒りに触れるでしょう」

「…ははっ」

「……?」

 

 

 依姫はがそう言うと、ジンの顔には何故か笑みが浮かぶ。気でも触れたのかと、怪訝な表情で睨む。するとジンは口を開き

 

 

「上司に対して怒りの矛を向けるとは。とんだ命知らずだな?須佐男」

「っ!」

 

 

 カツンッ……カツンッ…

 

 

 ジンがそう言い、莫大な量と密度の神力解放される。

次の瞬間、依姫は自身の目を疑った。須佐男から借りた力によって生成し、浮かべていた剣が一つ、また一つと力無く落下していくではないか。

 これが意味しているのは、須佐男の神力をジンが上回ったという事だ。神や妖怪は生きた年月に比例して強くなっていく。勿論例外も存在する。能力の強さや応用で、その差を覆す猛者もいるが大方がそうである。

 須佐男が生まれたのは凡そ10億年前。天照よりも5億年遅いが、それでも強力な神である。しかしジンは神に進化してから40億年が経っている。単純計算にして、最低でも4倍の実力差があるのだ。

 

 

「フン…少し威圧しただけで弱腰とは…。お前に殺された八岐大蛇が泣くぞ」

「(神力を通す攻撃は不利だったか…!なら…)」

 

 

「『愛宕様の火』!!」

「おいおい、もう次にいくのか。さっきとは打って変わって積極的だな?」

「軽口を叩けるのも今のうちです。この火は…少し熱いですよ?」

 

 

 アメノに次ぐ日本神話の全てを生んだ最高位の神、イザナミを焼き殺した最強の炎を纏い、威圧的に言う。それを見て、ジンは再び仕込み杖を構える

 

 

「なら黙らせてみろ。だが、神界の二番手をあまり舐めない方がいいぞ?」

 

 

 

 さぁ第二ラウンドだ




連続ぅ!


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誤算

突然失踪してしまいすみません…電子機器没収されて投稿できませんでした。もしかしたらまた遅れるかもしれませんが何卒…


 

 

「せあっ!!」

「甘いわ!むぅん!!」

 

 

 依姫とジンの戦闘は苛烈を極めていた。下手に介入しようものならば、消し飛ばされかねない勢いだ。

状況はまさに一進一退。互いに相手を見極め何十手先を読みながら行われる剣技のぶつかり合い。地は割れ、大気は震える。しかしこれでも尚この二人は本気でないのだから末恐ろしい

 

 

 今依姫は高温度の炎を纏いながら戦っている。それは周りの物体を燃やし、溶かす。それは武器も例外ではなかった。

 

 

 ドロォ……

 

 

「!」

 

 

 壮絶な打ち合いと炎によって限界が来た仕込み杖はとうとう溶けてしまった。勿論、その隙を見逃す依姫ではない。

 

 

「そこっ!!」

「ぐっ…」

 

 

 依姫は炎を纏った刀で仕込み杖ごとジンを切る。ジンもなんとか直撃は免れたが、その余波で吹き飛ばされた。

 

 

 ドゴォォッッッ!!

 

「ぬぅ…ちと油断した…」

 

 

 たった一振りでかなりの距離を飛ばされてしまった。依姫が来る前に体勢を整えようとする。そしてジンは初めて自分が飛ばされた場所を知る。そこは凍結された月の都である

 

 

「ここは…月の都か。"奴"の気配は無い…急がねば」

 

 

 それだけ呟くと、ジンは虚空から一振りの大太刀『天斬』を取り出し構える。そしてこちらに接近する依姫を視界にとらえた。

 

 

「速度、動作、距離、共に良し。元師匠を舐めたツケは払ってもらうぞ」

 

 

 そう言っている間にも相手はぐんぐん近づいてくる。自分との距離、1000m……500m……100m……そしてとうとう…10m、もう直ぐ目の前だ

 

 

「覚悟!」

 

 

 超接近した依姫の刀がジンの胸へと振られる。そしてジンの胸を切りー

 

 

 斬ッッッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な…何が……」

「フン…」

 

 

 ー裂かなかった。依姫は動揺を隠せない。自身が振るった刀は折れ、逆に自分が袈裟斬りにされている。自分は確かに相手を捉えた筈だ。だが胸に走る痛みがそれを否定する。

 

 

「私の能力の事は頭に入れてなかったのか?最後まで詰めの甘い奴だ」

「ッ!!」

 

 

 そうだ。相手は、ジンは、この戦闘で一度たりとも能力を使用していなかった。相手が能力を使うことを完全に頭から排除していたのだ。つまり戦い始めた時点で、相手の策に嵌っていたのだ。

 

 

 ジンが行ったのは間合いの調整。自分と相手の間に存在する空間を膨張させる。膨張した大気に押され、相手は体勢を崩し距離を取る。そしてその隙に切る。この間実に1秒未満

 

 

 依姫は未だ体を流れる痛みを堪えながら、ジンを見る。2mを越す巨体。その巨体を優に超える、さらに大きな太刀。自分が対峙していた者の存在の大きさに気付かされている

 

 

「(私は……こんなにも、偉大な人と戦っていたのか…)」

 

 

 今から殺されるというのに、不思議と恐怖はなかった。先程まで脅威としか感じられなかった神力は、今では心を安らげている

 

 

「息が乱れてきたな。安心しろ。出来るだけ楽に殺してやる」

「師匠…」

 

 

 ジンが大太刀を振り下ろす前に声を絞り出す。ジンの動きがピタリと止まった。

 

 

「…今まで、お世話になりました」

「…!」

 

 

 依姫が最後に取った行動。それは命乞いなどではない。自分をここまで育ててくれた師匠への感謝である。流石に予想外だったのか、少なからずジンに動揺が走る。

 

 

「…この馬鹿弟子が」

「ふふ…ゴホッ…まだ弟子と呼んでくれるのですね…」

「フン…」

 

 

 ジンは再び太刀を構える。それを穏やかな笑みで依姫は見ている。依姫が最後に見た景色は、悲痛に歪むジンの顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

 

 ジンはドカッと地面に座り込む。その隣には一定のリズムで呼吸を繰り返す依姫の姿があった。

 

 

「私も甘くなったな」

 

 

 結局殺さずに、意識を刈り取り気絶させるだけに留まらせた。一昔前の自分ならこんなことはしなかっただろう。改めて自分の変化に驚かされる。

 

 

 

 プルルルル……プルルルル…

 

 

「…む、着信…?白夜からか」

 

 

 考え込んでいると、自分が所有する端末に着信が入った。相手は白夜だ。

 

 

「私だ。どうした」

『岡様、地上に派遣した執行部が全滅致しました』

「何…?」

 

 

 珍しく白夜の無機質な声に焦りのようなものが感じられた。冗談を言っている様子でもないし、言うような奴ではない。だからこそ、その連絡内容が信じられなかった

 

 

「全滅だと?永遠亭勢力を殲滅するには十分過ぎると思ったが」

『…理由は分かりませんが、幻想郷全体が敵に回ったようです』

「八雲はそんな馬鹿をする奴では無い…ならば何処かから干渉されたか…」

 

 

 勿論そんな事しでかす奴など、ジンは一柱しか知らない。間違いなくアメノだろう。

 

 

「舐めた真似をしよって…」

『如何されますか?』

「私が行く。残りの執行部を収集しろ。全員だ。月の指揮はヘカーティアに取らせる。伝達しろ」

「了解致しました。お気をつけて」

 

 

 ピッ……

 

 

 端末を切る音だけが寂しく月の都へ響き渡った。ジンは一度だけ依姫を見る。

 

 

「…まぁ死にはせんだろう」

 

 

 それだけ言うと踵を返して亜空間を開く。その中へジンは溶け込むように消えていった。これは一時的に見逃すだけ。助けるのでは無い。そう自分に言い聞かせながら

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 永遠亭跡

 

 

「ちょ、ちょっと待て…少し整理させてくれ…」

『うん、いいよ』

 

 

 一歩その頃、唐突に現れた天之御中主神・通称アメノと接触した魔理沙達は混乱の極地にいた。

 月を滅ぼそうとしている神界の親玉が、月を救ってくれなんて言ったのだ。混乱もするだろう。

 

 

「…まず、何でアンタが月を助けようなんて言うんだ?最高神なんだろ?」

『神界も一纏まりじゃないんだよ。私や他の少数の神々は今回の事に反対してる』

 

 

 アメノは真剣な顔でそう言う。話によると神界は今、月勢力を排除しようとする"過激派"と、そこまでする必要は無いという"穏健派"で割れているという。"過激派"筆頭ジンと"穏健派"筆頭アメノを主にして。

 

 しかし直近の神議会で、武力行使が閣議決定されてしまったようだ。監視者と多数の神々の賛成の前には最高神の威光も無意味であった。これを阻止するには同等以上の武力が要る。だが最高神の彼女は表立って動けない。故に、この幻想郷へ協力を仰いだという

 

 

「(頭が痛くなる話ね…)」

 

 

 八雲紫は頭を抱えた。月勢力を救済しようとする神がいる事には驚いたが、それを実行に移すとは。この神は生きた年月に相応しくないほど精神年齢が低い。

 いい歳した神が、正式決定した事に対してクーデター紛いの事をしようとしているのだ。とても最高神とは思えない。

 

 

 だが、既に神界の尖兵を倒してしまった以上協力する他ない。この最高神は一応幻想郷の安全を約束するらしい。後は上手く立ち回るしかない。八雲紫は脳内でそう結論付けると、ため息混じりに霊夢に言う。

 

 

「…霊夢、私は今から幻想郷全体に通達をしに行くわ。ここで監視者様を迎え撃つ」

「えっ……信じていいのかしら、この神…」

「今の所あの方とまともにやり合えるのは最高神様だけよ。とは言ってもサポート止まりでしょうが」

「難儀ね…」

 

 

 何はともあれ、神界勢力を迎え撃つ為に準備か必要だ。この最高神の加護を受ければ何も出来ずに"消滅"はないだろう。後は何とか此処のルールに引き摺り込めばいい。それに賭けるしかない。まともにやって勝てる相手では無いのだ。

 

 

『ん〜……一応協力してくれるって事でいいのかな?』

「ええ、本当は嫌ですがね」

『…そこまで嫌われる事したかな』

 

 

 まだ気づいてないのかこの神は。その場にいる全員が白けた目で見るが気づいていない。それを尻目に来たる戦に備えるのだった

 

 

 

 

 




やっつけ感がありますね…文才が欲しい…


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戦火

待たせてしまい申し訳ありません…


 

 

 

 無縁塚

 

 

 外の世界から様々なモノが流れ着くこの場所、幻想郷で最も結界の薄い場所である。恐らく相手は此処からやって来ると思われる。

 此処には多くの強豪が揃っていた。八雲紫が呼びかけ、来たる脅威に対して防衛部隊を急編成したのだ。前線には霊夢や魔理沙、妖夢といった異変解決組に紅魔館や白玉楼、神霊廟、地霊殿の面子。里の守護には命蓮寺、守矢神社、永遠亭など。

 その他雑兵として妖怪の山から天狗が駆り出されている。

 

 

 そしてそれらの先頭に立っているのは霊夢である。八雲紫から前線部隊の隊長に任命された。その顔はいつも以上に真剣で厳しいものだ。

 すると前線メンバーの一員である、伊吹萃香が話しかけてきた

 

 

「なぁ霊夢、ジンがここを滅ぼそうとしてるって本当なのか?」

「…それは少し違うわね。目的遂行の為には幻想郷が邪魔なだけよ」

「ふ〜ん…ま!いいや。アイツとまた喧嘩ができるならね」

 

 

 こんな時にも萃香は平常運転だ。その姿に霊夢も少し気が緩む。しかしそこに割って入る者がいた

 

 

『その認識は改めた方がいいよ』

「…あ?なんだいカミサマ。なんか文句でもあったかい?」

『神に対してその口の聞き方…まぁいいや。君はジンと戦った事があるの?』

「ん…あぁ、あとちょっとでやられちまったけどね!次は勝つよ」

 

 

 唐突にそんな事を聞かれ、怪訝に思いながらも答える萃香。するとアメノは首を振り言う。

 

 

『もしこの中でジンと戦った事がある子がいたら、その時の感覚は忘れなさい』

「??」

「ちょっと、どういう事よ」

 

 

 言葉の意図を汲みかねた霊夢や他の者はアメノを見る。アメノはゆっくりと答える

 

 

『ジンが今までで本気を出したのはこの50億年近くでたったの2回。それも神同士の戦いでだよ。つまり君達は能力を活用しなかったジンとしか戦った事がない事になる。一度戦っただけの経験で同じように挑んだら……最悪死んじゃうよ』

「ほぉ…?随分とこちらの事を過小評価しているのだな?」

 

 

 話しかけてきたのは紅魔館の主、レミリア・スカーレットである。後ろにはメイド長・十六夜咲夜が鋭い目つきでアメノを見ている。

 

 

『過小評価なんてしてないよ。ジンがどれだけ規格外かを教えているだけだよ』

「どうだかねぇ…」

 

 

 そちらから協力を仰いでおいて、まるで期待していないと言わんばかりの態度に少し苛立つ。なんだかピリついてきた空気を変えようと、霊夢が話しかけようとするー

 

 

 

 ゾワァッッッ……!!

 

 

 

「っ!!」

 

 

 結界が揺らいだ。博麗大結界の管理をしている霊夢だからこそ気付けた。一瞬で後ろを振り返る。そこには先ほどまではなかった空間の歪みが発生していた。

 

 

「全員!来るわよ!!」

「「「!!」」」

 

 

 先程までの険悪な雰囲気は消えて、全員が戦闘態勢に入る。

 

 

 

 しかしいつまで経ってもソレは出て来なかった。しかし何処からか視線を感じ、何気なく空を見上げる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

「ッッ!?」

 

 

 居た。

 アイツが。

 ジンが空に浮かんでいた。冷たい目でこちらを見つめている。いや、正確には自分の隣にいるアメノを見ているのか。

 するとゆっくりとした動作で徐にこちらに掌を向ける。脳がけたたましい警鐘を発する。

 

 

『ッ!"創造"!!』

 

 

 咄嗟にアメノも掌を突き出し、宣言する。ジンとアメノの間で凄まじい衝撃波が発生する。

 

 

「ぐうぅぅぅぅ!!??」

「踏ん張りなさい!吹き飛ばされるわよ!!」

「んな事言ったってよぉぉぉ!!」

 

 

 妖夢、霊夢、魔理沙は一番近くにいたので、モロに衝撃波を受ける。少し離れたところにいた紅魔館、白玉楼、神霊廟、地霊殿の者達も苦悶の表情を浮かべている。

 

 すると先程の歪みからも、何かが出てこようとしていた。見てみるとかなり大きなモノである。

 

 

 

 

 

 

「船………?」

 

 

 

 現れたのは二百メートルを越えようかという巨大な黒塗りの船だった。それも五隻。

 するとそれを視界に入れたアメノは焦ったような声を出す

 

 

『ナグルファル…!?これは少し不味いね…』

「知ってるの?」

『簡単に言えば神界の兵器だよ。あれ一隻で国を滅ぼせるくらいさ』

「そんなのが5隻⁉︎…どう考えても過剰戦力でしょう!!何で教えなかったのよ!」

『知らないよ!まさかまだ月に出張ってないのがあるなんて思わなかったんだよ!!』

 

 

 そんな事言っている間にもナグルファルからは無数の光線が飛んでくる。それを避けながら文句を言い合っているのだから案外余裕なのかもしれない

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

sideジン

 

 

 

 やはりと言うべきか、幻想郷に到着すると防衛線が張られていた。幻想郷に住まう者の殆どがいる。どいつも手練ればかりだ。

 

 

 見たところ永遠亭の者達の姿は無い。大方後方支援に回っているのだろう。しかし何処にいようが、私の"消滅"から逃れる事は不可能だ。ある一点を除けば。

 

 私は手を突き出し、呟く

 

 

「"消滅"」

 

 

 しかし何も起こらない。やはりあそこにいる駄神が邪魔をしたのだろう。奴の加護を受けているのならば、この幻想郷に"消滅"は一切効かなくなる。

 

 

「チッ……面倒な…」

 

 

 舌打ちせずにはいられない。こちらには時間がないのだ。もしかしたらアイツもここに居るかもしれない。

 

 そう考えると憂鬱になる。とにかくこの場はナグルファルと執行部に任せることにしよう。

 

 

 

 

 

 




短めですね…


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反抗

もうすぐ一年が終わりますね…


 

 

「いくらナグルファルの防御壁とはいえ、強力な能力待ちであれば破壊は容易…もう少し連れてくるべきだったか。計算ミスだな」

 

「それに……ふむ…思ったよりも住人が集まっているな…一人一人相手にしている時間は無い…保険をかけておくか…」

 

「白夜」

「はっ、ここに」

「一つ頼み事があるー」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「やっべぇ霊夢!船が一隻人里に行っちまったぞ!!」

「何ですって!?」

 

 

 戦況はかなり厳しいものであった。いくら強力な能力持ち集団とはいえ、相手は訓練され熟練度の高い軍隊である。急拵えの前線部隊では少し力不足であった。

 

 

 現にあの不気味な船を一隻、突破を許してしまった。一隻だけでも十分脅威になり得る。しかしそちらに手を出せる程余裕もなく、八方塞がりだった。

 致し方なく、今この場にある船に全力を注ぐことにしたのだ

 

 

 

『ターゲット確認。速やかに排除せよ』

『『『了解』』』

「げぇっ!またコイツらかよ!!」

 

 

 

 魔理沙が声を上げると同時に、上空から殺傷能力の高い光球が飛来した。そこには少し前に自分が戦った"執行部"だ。それも二百体以上いる。

 

 それだけの数がこちらの動きを予測するように飛んでくるので避けにくい事この上ない。あの不気味な船だけで手一杯だというのにだ。

 

 

「うぉっ!?」

 

 

 すると、飛来してきた光球の一つが箒に掠ってしまった。熱を持つ光球は箒に引火し、魔理沙の飛行能力を一時的に封じる。

 

 そこを見計らって執行部達が自身に追い討ちをかけにくるのが見える

 

 

「(あ…やっべぇ……)」

 

 

 魔理沙もヤワではないので恐らく死ぬ事はないだろうが、それなりのダメージは受けるだろう。かと言って自由の効かない空中での回避は間に合わない。覚悟を決め、防御体制を作る

 

 

 

 瞬間、突風が吹き荒れる

 

 

 

 ブオォッッ!! バキィィッッ!!

 

 

『ぬぅ!?』

『ぐぉっ』

『ガッ…!』

 

 

 迫り来ていた執行部達は見事にハモりながら、破壊されて吹き飛ばされる。

 

 

「霊夢さん、魔理沙さん!ここは我々に!!」

「文屋!」

 

 

 竜巻という言葉すら生温い風を発生させた張本人、射命丸文。彼女が魔理沙を助けた。彼女の周りにはその他の白狼天狗や烏天狗、鼻高天狗までいる。

 

 

 天狗というのは全体的にプライドが高い。射命丸もその例に漏れず、かなりのプライドがあった。故に一度敗北した執行部に対しての敵意は他の者の比ではない。

 

 

「サンキュな文!そいつらは任せた!私はあの船だ!」

「ええ、頑張ってください!」

『ぐっ…損傷率68%…戦闘続行…』

「あら、随分復活が早いですね。なら早速始めましょうか!!」

『ぬうぅぅぅ!?』

 

 

 再び戦闘が始まる。執行部は完全に妖怪の山勢力に意識がいったようだ。これで多少はこちらに気が回せる。

 

 

 そう思った矢先ー

 

 

 

 

 

 

 ドゴオォォッッッッ!!!!

 

 

 

『ぐっ!!』

「!?」

 

 

 突如、轟音と共にアメノがこちらへ突っ込んできた。ジンを止めようと一騎打ちで勝負をしていた……のだが、あまり相手になっていない。

 空中を見ると、余裕がある表情でこちらを見つめている。そしてゆっくりとこちらに近づいてくる。

 

 

「お前が阿呆なのは知っていたが、まさかここまでだったとは。アメノ」

『う…』

 

 

 決してアメノが弱いわけでは無い。寧ろ最高神であり、神の中では最も強い部類に入る。しかしジンは歯牙にも掛けないといった様子でいる。

 

 それもそうである。最高神故に今まで必要以上に動けず、神界にいたアメノと、常に戦場に身を置いてきたジンでは、踏んできた場数が違うのだ。それに素人目から見てもあまり上手いといえる戦い方ではなかった。

 

 

「戦闘経験が殆ど皆無のお前が私に勝てる道理など無いだろう。…とにかくお前は邪魔だ。"此所から消えろ"」

『…!!』

 

 

 ジンは脳を40%以上覚醒させ、発言し、その隣に空間を開く。アメノは脳内にナニカが入り込んでくるような不快感を覚えた。直接相手の頭に干渉し、意のままに操るマインドコントロールだ。

 

 体に指令を出す中枢器官である脳を乗っ取られる為、時にはアメノの『神言』以上の効果をもたらす。

 

 

『……』

「ちょ、ちょっとどうしたの!?何処行くのよ!」

 

 

 霊夢が呼びかけるが反応はない。それどころかジンが開いた亜空間の中へと自ら入っていくではないか。

 

 

「暫く神界の隅にでも引きこもってろ」

 

 

 たったの10分程度で最高神が無力化された。かといって全くジンにダメージがないかと言われればそうではないが。

 ジンは此方を射殺すような目付きで霊夢に言う

 

 

「博麗霊夢、今私は虫の居所が悪い。永遠亭の連中が何処にいるか教えろ。そうすれば殺すのだけは止めておいてやる」

 

 

 圧倒的。その言葉が霊夢の頭の中に浮かんだ。こんなのに本当に勝てるのか?背筋に冷や汗が流れる。空気が重い。だが此処で引けば幻想郷が消えてしまいかねない。

 

 あちらにも訳はあるのだろうが、こちらにも守りたいものがある。そのプライドと使命感だけで、霊夢は何とか立ち向かえていた。

 

 しかし霊夢は目の前にいるジンに、少し違和感を覚えた。何がかは分からないが、自身の勘がそう訴えかけてくる。

 

 

「恋符『マスタースパーク』!!」

「む……」

 

 

 突然聞き慣れた声と共に、異常な熱量を持った光線がジンへと襲来する。ジンは避ける事が不可能と判断したのか、腕を交差させ真正面から受ける。

 

 

「魔理沙!!」

 

 

 言わずもがな、ソレを放ったのは霧雨魔理沙だ。すると間髪入れずにもう一つの影がジンへと飛びかかる

 

 

「人符『現世斬』!!」

「ぬぅ……!」

 

 

 影の正体は妖夢だ。マスタースパークが消えた瞬間にジンに斬撃を何本も叩き込む。これには堪らずジンも後方へ吹き飛ばされた

 

 

「大丈夫⁉︎霊夢」

「妖夢まで…貴女達、あの船はどうしたの?」

「あんなの、ただのデカい的だぜ!!」

「魔理沙がアレを一撃で堕としたのは驚いたよ…」

 

 

 霊夢がジンと戦っている間、他の者達はナグルファルと戦闘を繰り広げていた。ナグルファルには正に鉄壁の防御機構が備え付けられていた為、皆攻めあぐねていた。

 

 しかしこの攻撃力に全振りした上、ジンとの訓練で魔改造された脳筋魔女には関係なかったようだ。とはいえ最大出力で打たないと突破できない為、そう効率は良くないが少しずつ押し返している

 

 

「それに他の奴だって負けてないぜ」

「え?」

 

 

 魔理沙が顎をしゃくった方を見る。そこにはフランの姿があった

 

 

「きゅっとして〜……ドカーン!!!」

 

 

 バリイィィィィン!!!

 

 

「かったーい!でも壊し甲斐があるわね!!」

「フラン!危ないからあまり前に出過ぎないで頂戴!」

「あ、お姉様。ごめんなさーい!」

「貴女って子は…」

 

 

 他にも

 

 

 

 ナグルファル船内…

 

 

「右翼艦艇の障壁が破られたぞ!?」

「馬鹿な……そんな簡単に破られていいものか!!」

 

 

 目の前で起きるあり得ない事態に、兵士たちは混乱する。

 

 

「あの方が設計されたのに…欠点など何処にも…」

「狼狽えるな!破壊された艦艇は一時撤退だ!それから艦隊を組み直す!」

「あらあら、それで間に合いますかね〜」

「黙れ下士官‼︎ここの指揮権は私にある!」

「あの…何も言ってませんが…」

「え…?」

 

 

 振り返ると見覚えのない簪を刺した青髪の女がいた。

 

 

「き、貴様何処から…」

「ごめんあそばせ。楽しそうな声がしたのでつい♪」

「何がつい♪だぁぁぁ!!殺してy」

「二名様ご案内〜♪」

「「は?…ああぁぁぁぁぁああ!?」」

 

 

 

 断末魔だけを残し、二人の神兵は外へと放り出された。その様子をニコニコと変わらない顔で見つめる者が1人。

 

 

「いい声で鳴きますね〜。さ!芳香ちゃん、これ全部食べちゃっていいわよ」

「わかったぞ〜せいが〜」

 

 

 青蛾と呼ばれたその人物は、そそくさと船の側面に穴を開け退避する。そしてすぐ外にいた神霊廟の面子と合流する

 

 

「青蛾、どうだ?」

「ふふ、問題ありませんよ豊聡耳様。首尾よく進んでいますわ♪」

 

 

 

 バギィ! バリバリバリイィィ!!

 

 

「相変わらずやる事がえげつないのぅ…」

「同感だ。船員に同情すら覚える」

「微笑ましい姿ですわね〜」

「「「どこがだ」」」

 

 

 外に放り出された神兵達は、1人の少女にナグルファルが喰われていくのをただ茫然と見上げている。

 

 

「ケプッ……まぁまぁだったぞー」

「俺…もう帰る」

「私も…」

 

 

 一部の神兵達は泣きべそをかきながら退散していく。だが敢えて追わない。出来るだけ体力を温存する為だ。今こうしている間にも戦況は変わっていく。

 

 未だあの船は3隻残っている。もう同じ手は食らうまいと、複雑に散開して攻撃してくる。

 

 

「青蛾、もう一度出来るか?」

「…それは難しいですね。今のを見られてましたわ。船を囲む結界も強化されたようですし、何より距離を取られています」

「そうか、なら良い。新しい手を考えるとしよう」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「皆んな…凄いわね…」

「霊夢、今は皆がいるんだぜ?いつもみたいに1人で背負い込むなよ。もう少し私たちをたよってくれ」

「!えぇ、そうね」

 

 

 失念していたが、今は幻想郷全体で戦っているのだ。いつもの異変のように1人では無い。そう思うと肩の荷が降りた。深呼吸をし、ジンが飛ばされた方向を見据える

 

 

「ゲフッ…余所見とは舐められたものだ」

「貴方がなんの目的でこんな事をするのかは分かってるわ。でもこっちにも守るもんがあるのよ。博麗の巫女として、貴方を止めます」

「戯言を…お前達はこの異変について何も理解していない。今私を止めれば、世界…いや宇宙全体が終わるぞ」

「その時はその時よ」

 

 

 これ以上の押し問答は無駄と悟ったのか、双方構えをとる。

 

 

 大気が震えた

 

 




今一話から見直したら、かなり文脈が酷くて泣いた作者です


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偽神

 話の都合上、主人公の設定を少しだけ変更しました。しかし話自体には影響はありません。

 あと遅れてすみません…


 

 

 

「断命剣『冥想斬』!」

「『隔絶』」

 

 

 ドゴオァァァァン!!

 

 

……おかしい

 

 

「魔符『スターダストレヴァリエ』!!」

「『衝波』!」

 

 

…何かがおかしい

 

 

 霊夢は、魔理沙と妖夢の二人と互角の戦いを繰り広げるジンを見ながら考える。弾幕ごっこのルールを無視した攻防を行う三人。魔理沙の魔法を防ぎ、妖夢の斬撃をいなし、二人を弾き飛ばす

 

 

「どうした?来ないのか」

「!夢符『封魔陣』!!」

 

 

 思考に沈んでいると、自分の目の前まで急接近してくる。それを難無く落ち着いて対処する。()()()()()()()

 

 戦闘が始まる前から抱いたいた違和感。少しずつではあるが、それが何であるか分かってきた。

 

 

 

 弱い

 

 

 いや、こう言ったら誤解を生むかもしれない。正確には、想定よりも強くないという事だ。

 

 数多の神々の戦争で生き抜いてきたジン。それがたったの三人の少女に翻弄されている。もしかしたら別の場所で消耗したのかもしれないが、それを抜きにしても異常な状況である。

 

 

「フンッ!」

「やっ!」

 

 

 ジンが振り抜いた拳とお祓い棒が拮抗し、鍔迫り合いを起こす

 

 

「…」

「どうした博麗霊夢。何か言いたげな顔だな?」

 

 

 何気ないその一言。それで霊夢は予感を確信へと変える。

 

 

「貴方は………誰?」

「は?」

「れ、霊夢?こんな時になに言ってるの⁉︎」

「…質問の意味が解らない」

 

 

 ジンは眉を顰めてこちらを見る。魔理沙と妖夢は、霊夢が気が触れたのかと心配し始める

 

 

「ごめん、少し黙ってて。…で、どうなの?()()()()

「にせっ…⁉︎」

「……」

 

 

 当の本人はこちらを見たまま黙っている。

 

 

 そして数瞬の後

 

 

「驚きました。まさかこんなに早く暴かれるとは」

「「!?」」

 

 

 突如、ジンの身体がスライムのようにグニャグニャと変形し始めた。そして見上げる程の巨躯は、霊夢達と然程変わらない平均的な少女の身長へと変化する。

 

 髪は黒から透き通るような銀へ。服はスーツから純白の法衣の様なものへ。顔は若干幼さを残しながらも整った顔立ち。しかしそれは直ぐにあの執行部達と同じ仮面で隠されてしまう。

 

 変化が終わった時そこにいたのはジンではなくその腹心、霊夢達とも面識のある白夜であった。

 

 

「…いつから気づいていたのですか?」

「違和感を感じたのは最初から。確信したのはさっきね。ジンさんは私の事フルネームでは呼ばないもの」

「偶然、とは考えなかったのですか?」

「あの人、真面目だけどめんどくさがりだからね」

「そういうものですか」

 

 

 すると漸く硬直から解かれた魔理沙達が疑問をぶつける

 

 

「いやいやちょっと待て!じゃあ何でお前ジンの能力が使えたんだよ⁉︎」

「そうだよ!どういう事なの⁉︎」

「そうですね…どうせもうこの戦争も終わるので教えてあげましょう」

 

 

 白夜は仮面の上からでも分かるくらいに、不気味な笑みを浮かべているのが分かった

 

 

「私はあの方の配下として1番最初に作られた自立型思考人形だというのは知っていますね?」

「あ、あぁ…」

「その際私の心と脳は、あの方をモデルとして設計されました。そして私には備え付けられた『学習能力を共有する程度の能力』があります」

「それにより、親和性の高いあの方の力をある程度行使できるのです。伊達にあの方の最高傑作を名乗ってはいません」

 

 

 一番ジンと近しい存在であるからこそ成し得る所業。魔理沙達は開いた口が塞がらない。

 

 

「は…え、じゃあジンは……?」

「さぁ?今頃月の賢者でも狩ってるんじゃないですか?」

「まさか…!」

 

 

 霊夢は先程取り逃したナグルファルを探す。一隻なら人里防衛隊がいるから大丈夫だろうと思い、向かわせてしまったあの船だ。

 ナグルファルを一撃で堕とせる魔理沙が逃してしまったのも頷ける。

 

 

「博麗の巫女は気付いたようですね」

「チッ!…そういう事かよ!」

「魔理沙、妖夢!ごめん、私は人里に行くわ!」

「「分かった(ぜ)!」」

 

 

 聞くやいなや霊夢は方向転換をし、人里へと飛ぶ。しかしそれを白夜が邪魔をする

 

 

「行かせると思いますか?」

「アンタに構ってる暇はないのよ!」

 

 

 白夜が霊夢に追撃を行おうとしたその瞬間

 

 

「神槍『スピア・ザ・グングニル』!!」

「っ‼︎」

 

 

 紅く、鋭い槍が白夜の顔を掠めた。白夜は上を見上げる。

 

 

「私達の事を忘れてもらっては困るな?神の使いよ」

「…レミリア・スカーレット」

「霊夢、コイツは私に任せて行きなさい」

「舐めるな、吸血鬼風情が…」

 

 

 白夜が手の中へエネルギーを収束させてその時、周りを無数のナイフが取り囲んだ

 

 

「!!」

「お嬢様への侮辱、その身で償って貰います」

 

 

 ガキィッ! バキバキバキィッ!!

 

 

 白夜は自身の金属質の体でナイフを弾いていく。が、幾らか体に刺さる

 

 

「ぐっ…」

「さぁ行きなさい。コイツは私達で十分抑えられる」

「そうね…任せたわ!」

 

 

 霊夢は背後から聞こえる戦闘音を聞きながら、人里へと向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人里 門前

 

 

 後方支援部隊

 

 命蓮寺、守矢神社、永遠亭などで構成された集団。人里と関わりの深いこの勢力ならば、良い連携を取ってくれるだろうという八雲紫の采配である。

 

 もう既に神界に逆らった為、元凶である月の民・永遠亭の者達を隠す事はせず、全面的に戦闘へ参加させるつもりである。

 

 

 人里には二柱の神が結界を張っている。並の妖怪なら近づくことすら不可能である。それを覆い隠すように展開している

 

 

「な、何か凄い音がするわね…」

「落ち着きなさい一輪。今皆さんが最前線で戦って下さっています。私達はここの守護に専念するのです」

 

 

「早苗、アレの準備はいいかい?」

「勿論です。…出来れば使わない事を祈りますが」

「何言ってるんだい、今から戦うかもしれない相手はそれくらいしないと勝てないよ」

「諏訪子の言うとおりだ。覚悟はしておけよ」

 

 

「師匠…私達どうなるんでしょうか…」

「分からないわ…ただ私たちに出来る事は、徹底的に反抗する事だけよ…」

「師匠らしくない脳筋戦法ウサ」

「てゐ、黙りなさい」

「怖っ」

 

 

 全員、緊張の面持ちでいた。かの最高神の情報によると、相手は太古の大戦にて二百万もの神を殺した武闘派である。昔と比べると多少老いて力が衰えているとはいえ、油断ならない相手だ。

 

 

 

 

 

 ドゴオォォォォオオン……

 

 

 

「「「!!」」」

 

「今のは…」

「無縁塚の方からね…」

 

 

 無縁塚から離れた人里まで響く程の爆音がする。全員いつでも動けるよう戦闘体勢に入る。こちらへ接近する物が遠目で見える。

 

 

「とうとうお出ましって訳かい…!」

「神奈子…あれって……」

「あんなもの態々引っ張り出してくるなんてねぇ…あちらさんも本気って訳かい」

 

 

 神奈子は視界に捉えた物を見て顔を顰める。軍神である彼女は勿論アレの正体は知っている。世界の終末時に使用されるという、死を運ぶ船。

 

 神奈子が昔見た時はまだまだ試作段階だったが、今回の件で前倒しにしたのだろう。心なしか、設計当時に想定されていた程の力は感じない。

 

 

「(…ん?)」

 

 

 

 神奈子がそう考察していると、船が光り、その光が段々と大きくなっていくのが見えた。訝しげにそれを見つめていると、軍神としての本能がソレの正体に気づいた。そして結界に触れて言う

 

 

「不味い!諏訪子、踏ん張れ!!」

「へ?……やばっ!?」

 

 

 諏訪子もソレの正体に気づき、結界に触れる。その瞬間

 

 

 

 

 ズガガガガガガガッッ!!

 

 

 

「きゃあ!」

「な、何⁉︎なんなの!?」

 

 

 何かが結界に直撃し、結界ごと人里を揺らす。皆何事かと困惑する。

 

 

「ぐっ…ぐおあああああああぁ!!」

「耐えろ諏訪子!ぐぅ……」

「神奈子様⁉︎諏訪子様⁉︎」

「離れろ早苗!吹き飛ばされたいのか!」

 

 

 異常事態にパニックになった早苗は神奈子達に近づこうとするが、大声で静止される。そして神奈子達が抑えているものを見た

 

 

「こ…これは……!」

 

 

 結界に直撃していたのは、高エネルギーを持った、超高密度光線だった。幽香や魔理沙のマスタースパークがかわいく見える程の規模。ソレは船から進行形で放たれており、結界を削り続けている。それを二柱の神が修復しての繰り返しだ

 

 それが続いたのは1分程であったが、本人達にとっては何時間にも感じられた。

 

 

「はぁ…はぁ…ゴホッ」

「お…終わった…?」

 

 

 光線を防ぎ切った時には既に二柱はかなり消耗していた。しかし疲弊して尚、ある一点へ意識を向ける。

 

 先程まで豆粒程度に見えていた船が、ほんの50メートル手前くらいで停止していた。他の者達も警戒を強める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おや?割と強めに撃った筈だが、まさか無傷とは」

 

 

 その瞬間、聞き慣れた声が上方から聞こえる。

 

 

「ジン…」

 

 

 目の前には、いつもと変わらぬ様子のジンこと岡迅一郎がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 




 


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隔絶

 先月友人に小説投稿をしてるのがバレました。その際にオリ主の名前について「ジンはいいけどなんで苗字が岡なん?」と聞かれ、慌てて見返してみると苗字の由来について書くのを忘れておりました。

 由来としては昔修学旅行で行った奈良に岡寺という場所があって、名前のテンポが良いのでこう致しました。

 神奈子の苗字も神社から取られているそうですなので…
 長文すみません…


 

 

 

「ジン…」

「お、諏訪子か。今のを防ぎ切るとは驚きだ。また腕を上げたか?」

 

 

 目の前にはジンがいた。静かに地面へ降り立つとこちらへ向き直る。その目にはいつものような優しさは宿っておらず、冷徹にこちらを品定めするような目付きだ。

 それに結界越しからでもひしひしと殺気が感じられる。それは主に永遠亭に向けられたものだが、関係無い者まで悪寒を覚えるような殺気であった。

 

 自分の知るジンとは少し違う事に戸惑いながらも、諏訪子は声を紡ぐ

 

 

「今のはジンが…?」

「そうだが、それがどうした」

「自分が何したか分かってるの⁉︎もし防ぎ切れなかったら大勢の人里の人間が死んでたんだよ!!」

 

 

 そう言うとジンは心底不思議そうな顔で言う

 

 

「元より幻想郷ごと消すつもりだったんだ。人里だけがその範囲外という事はあるまい?」

「なっ…」

 

 

 平然とそう言い放つジンに対して驚愕する。昔自分に民の大切さを説いた神格者とは思えない発言だ。

 そんなジンの変わりように諏訪子は悲しそうに目を伏せる。

 

 

「何がそこまでジンを変えたのかは知らないけど……このまま放っておける事でもないよ」

「まぁ待て。私の最優先事項はそこの月人だ。そいつさえ引き渡せば此処は引き下がってやろう」

「どうせまた来るんでしょ?幻想郷を消しに」

「当然だ。業務に支障のある不安因子は残しておけん」

 

 

 交差する視線。対話は平行線を辿る。それを悟った皆は戦闘態勢に再び入る。

 

 

「何だ、お前達まで私の邪魔をするのか?聖白蓮」

「私はただ、貴方を教え正すだけです」

「ジン……」

 

 

 そう言っている間にもジンは手にエネルギーを溜める。空気がひりつく。それだけで威力を想像するのは容易だ

 

 

「対話は無理そうですね…」

「これは戦争だ。対話で済めばそもそもこうはならん」

 

 

 ジンの目が一気に据わる

 

 

「っ!来るぞ!」

 

 

 話の真っ只中だというのにジンは不意打ち気味に光弾を放ってきた。弾幕ごっこ用の非殺傷のものではなく、殲滅用である。それもあってか、先程の攻撃で耐久に限界がきていた結界に穴を開けて入り込んできた。それはバチバチと嫌な音をたてながら地面へ抉り込む。

 対話での交渉は不可能と判断した各々はジンを取り囲むように散開する。

 そして諏訪子が地面へ手をつき

 

 

「諏訪子、やれ!!」

「言われずとも!」

 

 

 その瞬間、ジンの立っていた場所が崩れ去った。

 

 

「む…これは…」

「まだまだぁ!!」

 

 

 そのすぐ後に神奈子が展開していた結界を解き、それを集束させた爆風を巻き起こす。

 

 

 ジンは吹き飛ばされ、バランスを崩しそうになりながらも体を捻って着地する。それを見越して能力で創造した鋭く巨大な針が無数にジンへと襲い掛かる。

 

 ジンは虚空から大太刀『天斬』を取り出す。そして鯉口を切る

 

 

「似たような技を…」

「‼︎」

 

 

 すると信じ難い事に、そこかは漏れ出した神力だけで全ての針が押し潰され、霧散した。

 しかし他の皆も冷静に対処する。

 

 

「皆んな、今だ!!」

「!」

 

 

 すると今度はその場にいた全員からジンに向かって弾幕が飛来する。数えるのも億劫になる量。大太刀を構えた状態のジンには回避する方法は無い

 

 

「「「(獲った!)」」」

 

 

 皆がそう思った

 

 

 

ー筈だった。

 

 

 

 バチッ…バチバチィッッ!!

 

 

 パンッ!パンパンパンッッ!

 

 

 

「……え」

 

 

 

 しかし奇妙な音をたて、突如全ての弾幕が破裂した。あまりの光景に皆が硬直する。

 その中で永琳だけは冷静に状況を見極め、気づいた

 

 

「まさか…さっきの弾幕…電磁誘導…?」

 

 

 ハッとした様子で永琳はジンが最初に放った、消えずにめり込んだままになっている光弾をみた。未だ消失する気配も無く、電気を纏い嫌な音を発し続けている

 

 

「お、今の一瞬で気づいたか。流石賢者と呼ばれるだけはある」

 

 

 この技は一度、紅美鈴との戦闘の際に使用したものである。放った同時に近くに存在する敵や障害物に雷撃を加える特殊弾。それが全ての弾幕を撃ち落としたのだ

 

 

「まぁ全て撃ち落とせるかは賭けだったが上手くいったようだ。……では次はこちらだな」

「皆んな、逃げー」

 

 

 

 ズンッッ!!!

 

 

 

「ガッ……!」

「な、重…⁉︎」

 

 

 ジンがそう言った途端に、ほぼ全員が他に伏した。体に何かが押しかかるようか感覚に襲われる。それも押しつぶされそうなほどに。

 

 

「ぐっ…このっ……ああっ!」

 

「(不味い…このままじゃ…!)」

 

 

 鈴仙が何とか弾幕を放とうと手を上げようとするが、それも叶わずさらに強い力で押さえつけられる。

 全員が何とかこの状態から抜け出そうともがく。だがそこから抜け出せたのは極一部。自身に身体強化を施した聖白蓮はふらつきながらもジンを見据える。

 その様子を見てジンは首をコキコキと鳴らしながらため息をつく。

 

 

「ふぅ……歳は取りたくないもんだ。一度重力操作しただけで疲れる」

「重力操作…⁉︎貴方の能力は『粒子を操る程度の能力』では…」

「何だ、あんな書物を当てにしていたのか?手札は無闇に晒さないのが戦闘の基本だろう」

 

 

 此処にいる者全員が"幻想郷縁起"を読み、それの対策をしてきた。だがそもそもの話、ジンは馬鹿正直に自身の能力を記したりはしていない。全てが嘘ではないが、当てにはならないだろう

 

 

「三流っぽくてあまりこういうのは言いたくないのだが…どうせ最期だ。私の能力を教えておいてやろう」

 

「私の能力は『解を求める程度の能力』だ。簡単に言えばこの世に存在するモノならば何でも再現可能だ。例えば今見せたように、重力だって操れる」

 

 

 ーそんなの反則ではないか。

 

 

 全員が思う。俗に言うチートとやらではないか。中には人のこと言えない奴らも混ざっているがそこは気にしないらしい。

 

 

「ま、私はさっさと仕事を終わらせるだけだ。そこを退け、聖白蓮」

 

 

 聖は負傷した鈴仙を背に庇うように立ち塞がる。仏の道を歩む者としての矜持が彼女をそうさせているのか、目には固い決意が見える。

 

 

「…相手が退けと言われて退いてくれると?貴方はそんなおめでたい頭をしていない筈ですが」

「僧侶としてあるまじき発言だな」

「相手を改心させるには、時には必要な事です」

「言うようになったじゃないか。だが私は私に楯突く者は許さないんでな」

 

 

 そう言うとジンは亜空間に『天斬』を収納し、重力に押し潰されていた者達(永遠亭を除く)を亜空間ゲートに放り込む。それと同時に重力から解放された永遠亭の者達が弾き飛ばされる

 

 

「うわっ⁉︎」

「ちょ、ちょっと何これー」

 

 

 

「なっ!」

「安心しろ、ただ別の場所に送っただけだ。死にはせんさ」

「……」

 

 

 こんな事をいとも簡単にやってのけるジンに戦慄しながらも、戦闘態勢は崩さない。

 

 

「幸運な事に時間はたっぷりとある。そこにいる月人共と手を組んで私と戦うもよし、もしくはそいつらを囮にして逃げるもよし。好きにするがいい」

「住職さん、私達の事は放っておきなさい。ここは私達だけで何とかするわ」

 

 

 永琳は早く逃げるよう聖に言うが、

 

 

「私は…もう失いません。あの時のような事にはしたくありません。…なので、それは出来ない相談です」

「それがお前の答えか?聖白蓮」

 

 

 ジンが冷めた目でこちらを見る。その威圧を受け流しながら、聖は永琳に手を差し伸べる

 

 

「ええ、さぁ立ちましょう。諦めなければ道は開けます」

「…後悔しても知らないわよ」

「覚悟はとっくにできています」

「……分かったわ。背中は任せて」

「ふふ、心強いです」

 

 

 聖が拳を構え、永琳が弓を携える。それに呼応してジンも構えをとる。

 

 そして火蓋が切られた

 

 

 

 

 

 




締め方雑スギィ!


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怠慢


評価が上がってる…!?そしていつのまにかお気に入りが100件超え!

ありがとうございます!!


 

「っと、その前に」

 

 

 ジンがパチンッと指を鳴らす。すると自分達を囲むように、広範囲結界が張られた。

 

 

「これは…」

「即席だが、強度は折り紙つきだ。音も衝撃も外に漏れない。中の様子も外からは見えん。貴様らの墓場にはピッタリだな」

 

 

 かなりの範囲で結界が張られた。これでより外部からの干渉・救助は見込めなくなった。背中に嫌なモノが走る感覚を抑えながらジンを見る

 

 

 ダッッッ!

 

 

「南無三!!」

 

 

 最初に動いたのは聖だった。限界まで自身の身体能力を強化し、相手の急所を正確無比に狙い撃つ。だが、

 

 

「甘い」

「!」

 

 

 拳の軌道が見切られ、一つ一つ丁寧に対処されてしまう。

 

 

「足がガラ空きだぞ」

 

 

 そう言って掴んだ聖の拳を思い切り引き寄せる。バランスを崩した聖に追い討ちと言わんばかりにジンは足に蹴りを叩き込む。

 

 

「うっ……はあぁぁぁぁ!!」

 

 

 だが聖は太腿の筋力のみで、無理矢理足を前方へ移動させる。流石に意表を突かれたのか、ジンはまともに喰らう。そして怯んだジンに向かって矢が飛来する。

 

 

「喰らうかッ!」

 

 

 ジンは自分に食らいつき離さない聖を次元移送で距離を取る。そして飛来する矢に対応しようとした、が

 

 

 ブォン!

 

 

「!!」

 

 

 まだ十分に距離があった矢の大群が突然眼前に出現したのだ。咄嗟に神力を解放するが、全ては落とし切れずに肩に刺さった

 

 

「ぬぅ…今のは輝夜か」

「げっ、こっち見てる…イナバ、背中貸して!」

「ちょ辞めて下さい姫様ぁ‼︎洒落になりませんて!」

 

 

 ジンが見つめる先には、鈴仙の背中へ隠れる輝夜の姿がある。今のは彼女の『永遠と須臾を操る程度の能力』によるものだ。飛来する矢の時間を凝縮したのだろう。擬似的な時止めのようなものである。

 

 

「余所見とは感心しませんね!」

「ぬぅ…!」

 

 

 ジンは紙一重で聖の上段蹴りを躱す。いくら神とはいえ元人間の体。今の状態の聖の攻撃がまともに入れば、それなりにダメージはくるだろう。

 

 それに加えて無駄に人数が集まっていた時よりも密度の濃い連携が出来ている。少しずつではあるが、押し始めていた。ジンの方は依姫戦の時にかなり消耗したのか、動きにキレが無くなってきている。

 その証拠に、ジンの体に傷がつき始めている。

 

 

「はああああああああ!!」

「ぬっ、ぐっ、ぐおっ⁉︎」

 

 

 依姫との戦闘の際は能力の行使が出来ない程に剣技の応酬が続いていた。その集中力は通常の能力行使の際に起きる疲労の比では無かった。

 

 そして聖はとうとうジンの動きを見切った。その拳がジンの鳩尾へと吸い込まれー

 

 

 

「舐めるな小娘共が!!『ガンマ線バースト』‼︎」

 

 

 ゴオォッッッ!!

 

 

「ぐあぁあああああああ!!?」

「うっ⁉︎…こ、れは…!!」

「聖さん!?師匠⁉︎しっかりしてください!!」

 

 

 拳が入る前に、ジンは無差別に攻撃を行った。射程範囲内に居た聖はそれをモロに食らう。その上近くに居た永琳も食らってしまう。

 遠くに居た輝夜、鈴仙、てゐはそれの影響を受けずに済んだ

 

 

「はぁっ…はぁっ……ったく、こんな技を使わせよって…!」

 

「うっ……ゲホッ…!」

 

 

 聖は口から黒い塊を吐き出す。色濃く染まった血液である。その様子に気を取られ、一同攻撃の手を止めてしまう

 

 

 永琳は立ち上がり、急いで駆け寄る。すると聖の長い髪の毛数本が、スルスルと抜けていく

 

 

「この症状…被爆してる…⁉︎あり得ない…いくら何でも早すぎるわ…!」

「師匠、大丈夫ですか!?」

「来ては駄目ッッ!貴女も被爆してしまうわ!」

「ッ…」

 

 

 

「今すぐ治療しないと不味いわ…でこの場では出来ないし…出来ても相手が許してはくれないでしょうね」

 

 

 永琳が見つめる先には、息を整えながらネクタイを締め直すジン。とんでもないモノを放ったジンに憤りを覚える永琳。

 

 

「"ガンマ線バースト"…下手したら貴方が守るべき地球が破壊されかねないのよ?そんな物を使うなんて、気でも触れたのかしら」

 

 

 ジンが使った『ガンマ線バースト』は、本来は宇宙空間において膨大なエネルギーがガンマ線として、短時間に放出される現象である。

 電離放射線であるガンマ線に直接触れてしまえば、忽ちその物体は原子の結合を破壊され、形を保つ事が出来なくなる。

 

 今回は咄嗟に撃ったのと最小限に範囲を狭く設定した為、本来のものとは威力は遠く及ばない。それによりこの場にいる者は何とか生きている。

 

 

「安心しろ。ちゃんと範囲は絞ってある。威力もそんなに出てないしな。…それにしても、これでも死なんとは、蓬莱人もそこの住職も面倒な物だ」

 

 

 相手の冷え切った目に、その場にいる者は背筋が凍るような思いをした。人の命をなんとも思っていないような発言だ。

 だがそんな雰囲気の中でも気圧されずに声を上げる者が居た

 

 

「そ、そんな事よりも!今ので此処に拡がった放射能はどうするつもりなんですか⁉︎こんな量…万が一外の世界に漏れ出せば、大変な事に…!」

「うっ……ハァ…ハァ…」

「拙いウサ。脈拍が弱くなってきてる」

 

 

 するとジンは何か考え込むような素振りを見せる。

 

 

「そうだな…万が一の事もある……よし、ならば今の内に除去しておくか。…貴様らと一緒にな」

 

 

 するとジンの手に光が集まり、輝きを増していく。今アレに当たれば良くて致命傷、悪くて即死だろう

 

 

「(どうする…⁉︎姫様の能力で此処を離脱……は難しいわね。空間能力を持ってる相手には効果は薄い…外からの救援も見込みが無い……何とか、一瞬でもいいから気を逸らさないと…!)」

 

「さらばだ。来世は月人なんかには生まれるなよ」

 

 

 そしてとうとうジンの手から極光が放たれた。

 

 結界内が光で満たされる。

 

 衝撃により土が舞い上がる。

 

 そして土埃が晴れー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霊符『夢想封印』!!」

「ぐおっ!!?」

 

 

 ドゴォッッッ!!!

 

 

 瞬間、土埃を一気に掻き分け複数の弾幕が迫ってきた。ここからの反撃があるとは思いもしなかったジンは真正面から受けて、吹き飛ばされる

 

 

 土埃が晴れたその先にはーーーそこには見慣れた姿の博麗の巫女が、永琳達を守るように立って居た。

 

 

「あんたら揃いも揃って何やってるのよ。」

「え…?れ、霊夢?」

 

 

 突然自分達の前に現れた霊夢に、鈴仙は戸惑いの声を隠せない

 

 

「何よ、助けてあげたのに礼の一つも無い訳?」

「れ、霊夢ぅ!」

「うわ引っ付くな気持ち悪い‼︎」

 

 

 鈴仙が感極まった様子で霊夢に抱きつく。それを見たせいで張り詰めていた空気も何処かへ去ってしまった。

 しかし永琳は一つ疑問を感じた。それを解明すべく霊夢に質問する

 

 

「それにしても…霊夢、どうやって此処に来たのかしら?此処は外からは感知出来ない筈なのだけれど」

「あーもう、だから離れなさいって!……ん、あぁそんな事?外に居た奴らに聞いたのよ」

 

 

 未だに体に張り付く鈴仙を引き剥がしながら霊夢は答える。

 

 

「外に居た奴ら…?」

「来る道中に山の神様二柱に会ったのよ。まさか頭上から降ってくるとは思わなかったわ。それで場所を教えてもらって、紫にこじ開けてもらったの」

 

 

 霊夢がこちらへ向かっている途中、突然頭上に亜空間ゲートが開き大所帯が降ってきたのだという。とんでもない偶然だ

 

 

「そんな事よりも、敵さんもかなり怒ってるわね」

 

 

 全員がハッとした様子で顔を上げると、既にジンは復帰してその場に浮かんでいた。しかしその胸には三つ程、拳大の穴が空いている。

 だがその傷は塞がる事無く淡く光るだけだ。どうやら再生が阻害されているようだ

 

 

「フン…嫌な力だ。魔に属するものだけでなく、神ですら封じるとは」

「知らなかった?博麗の巫女はね、強いのよ」

 

 

 霊夢がそう言うと、ジンは鼻を鳴らして構える

 

 

「話し合いは…無理そうね」

「元よりそのつもりだったのだろう」

「…まぁね」

 

 

 霊夢は少しだけ悲しそうな顔をすると、直ぐに引き締めお祓い棒を突きつける

 

 

「ま、いいわ。お話は弾幕ごっこが終わってからにするとしましょう」

「減らず口を…やれるものならやってみるがいい」

 

 

 偽神と博麗の巫女の最終決戦が今始まる

 

 

 





もう少しで本編完結しそうです


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狂神

最近上手い人の小説を見て自信を粉砕された作者です…

どうやって書けば持ち味をイカせるのでしょう


 

 

 頭が痛い。

 

 これは能力の行使によるものか、それとも夢想封印による影響か。

 

 胸に手を当てる。ヌメりとした感触と共に、手が血で濡れる。そこには拳大の穴が三つ程空いている。

 

 正直に言って、驕っていた。地上には、月の住民程……ひいては依姫より強い者などは居ないと思っていた。

 無論、個の強さでは依姫が頭一つ飛び抜けている。だが幻想郷(ここの奴ら)は個ではなく集団だ。それを念頭に置くのを忘れていた。様々な能力が集結する事で、強力な一つの矛となる。そんな事にも気づかないとは、私も堕ちたものだ。

 

 認識を改めなければならない。コイツらは強い。私は相手を見くびり過ぎた。もう手加減して勝てる相手ではなくなっている。

 

 

(はは…私は一体何を遠慮していたのだろうな)

 

 

 "アレ"が来るのにも時間が無い。どうせ幻想郷が"アレ"に破壊されてしまうくらいなら、私が破壊してしまおう

 

 

 ブチッ…! ブチブチブチィッッ!!

 

 

 そう思うやいなや私は未だ再生を阻害する夢想封印の残滓を、周りの肉ごと引きちぎる

 

 

「ちょ、ちょっと!?何やってるのよ!」

 

 

 霊夢が何か言っているが、無視して残りの二つの穴も同様に処置する。そこで漸く再生が始まり、程なくして穴は塞がった。

 何としてでも、"アレ"が来る前に終わらせなければ。

 

 

 

 …それにしても、ここまでの傷を負うのはいつぶりだろうか。

須佐男を斬り合った時か、オーディンと殺し合った時か、シヴァと踊り狂った時か…それとも二百万の神々の連合軍と戦争をした時か

 

 どれもこれも遥か昔の出来事であるが、今の私には、その頃の感覚が蘇りつつあった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 ブチッ…! ブチブチブチィッッ!!

 

 

「ちょ、ちょっと!?何やってるのよ!!」

 

 

 霊夢はジンの突然の奇行に思わず声を上げてしまう。恐らくは傷の修復の効率を上げる為、無駄な部分を除去したのだろう。

 

 しかしいくら神で再生できるとしても、痛みが消える訳ではない。それ相応の激痛が伴うだろう。

 だが私の目の前にいるジン…岡迅一郎はそれを躊躇無く、何ともない事のように行った。控えめに言ってイカれている。

 

 

 それと同時にある事に気がついた。

 

(ジンさん…笑ってる……?)

 

 一瞬だが、ジンの顔が狂気に満ちた笑みを浮かべるのを見てしまった。博麗の巫女としての勘がけたたましい警鐘を鳴らす

 

 

「永琳!貴女は早く聖を連れて逃げなさい!私が足止めするから、紫がのスキマを使いなさい!」

「霊夢はどうするの⁉︎いくら何でも一人じゃ無茶よ!」

 

 

 鈴仙が会話に割り込み、提案を拒否する。

 

 

「私なら問題ないわ。こっちにだって策があるのよ!」

「…分かったわ。私達はこれで撤退させてもらうわ」

「師匠⁉︎」

「話が早くて助かるわ。それじゃあ…紫!」

 

 

 霊夢はそう叫ぶと、何もない空間から見慣れた不気味な裂け目"スキマ"が現れる。

 永琳達は聖を抱えて、そこへ入っていく。だが何故か鈴仙だけは入らずに残っていた

 

 

「何してるのよ」

「私も戦う」

「ジンさんの第一目標の奴らが何言ってるのよ。残ったら後悔するわよ」

「私は…自分たちの尻拭いをさせた挙句、友人を置いて逃げる程白状じゃないわ」

 

 

 上っ面ではない、本気の声で迫られてどうするべきか悩む。

 

 

「…今なら尻尾まくって逃げてもいいのよ?誰も責めはしないわ。相手が相手だもの」

「しないってば」

「そう…ならせいぜい足を引っ張らない事ね」

「言われずとも!」

 

 

 結局、鈴仙だけは残る事になった。彼女の申し出は正直に言うと嬉しかったし、何より戦力的にも安心だ。

 鈴仙の能力で波長を狂わせれば、ジンといえど能力にムラが出来るだろう。そこに賭ける

 

 ふと、静かになっているジンが気になり顔を向ける

 

 

「感謝する、博麗霊夢。私の驕りを破壊してくれて」

「え?」

 

 

 突然ジンが喋り出し、その内容に底知れぬ感覚を覚える。

そんな霊夢達に構わず、ジンは淡々と話していく

 

 

「先程の一撃で、色々吹っ切れた。お陰で…昔の感覚を取り戻せた。もう先程のような事にはならんだろう」

 

「だから……悪いが此処で果ててくれ」

 

 

 ジンがそう言った瞬間、右手と左手にそれぞれ冷気と熱気が発生する。

赤熱化した右手からは周りが歪んで見える程の高音が、氷の膜を張り始めた左手からは此方にいる自分達の肺が凍てつく程の冷気が出ている。

そして左手を此方の方向へ振り抜いた

 

 

「危ない!」

「うおっと!?」

 

 

 パキイィィィィン!!!

 

 

 向かい来る冷気の斬撃を私達はそれぞれ左右に飛び退く事で回避する。冷気はそのまま消える事なく、大気を冷やして巨大な氷山を作り上げた

 

 そして間髪入れずに右腕を振り抜く。極限まで高められた熱気が炎の刃となり飛来する。

 しかし何故かそれは霊夢達にではなく、直ぐ後ろにある氷山へ向けられていた

 

 

「ッッ!!霊夢避けて!!!」

「え?」

 

 

 霊夢は鈴仙の言葉を理解出来ず、一瞬だけだが動きが止まってしまった。

 炎により急激に温度を変えられた氷山が膨張し、水蒸気爆発を起こした

 

 

(あ…これヤバー)

 

 

 

 ドゴオァァァァァァアン!!!

 

 

 

 

 あまりの爆音と衝撃に耐え切れず、最初に張っていた結界が跡形も無く消し飛んだ。結界が破壊された後にも影響は残り、周りは完全に焼け野原になっていた。もしここが人里近くであったら、軽く消し飛んでいただろう。

 

 焼け野原となった場所へジンが降り立つ。周りを見渡すと、ジンはほくそ笑む

 

 

「随分と熱烈な歓迎だな、お前ら」

 

 

 そう言って見渡す限りには、幻想郷へ住まうありとあらゆる人、妖怪、神が集っていた。ジンを囲うように包囲網を形成していた。

 それらの遥か上から見ているのは幻想郷の賢者・八雲紫である。彼女が開いているスキマからは霊夢と鈴仙がぐったりした様子で顔を出している

 

 

「それにしても前線部隊の奴らまでここにいると言う事は…白夜は負けたのか」

「ええそうよ。あの人形もどきはこのレミリア・スカーレットの前に敗れ去ったわ!」

「むぅ…お姉様ったら結構ギリギリだった癖に〜。皆んなで戦ってやっと勝てたんでしょ」

「ぐっ…!!」

「…仲良いなお前ら」

 

 

 フフンと威張るレミリア。そこへ事実という名の爆弾を投下するフラン。こんな時にもマイペースな姉妹に若干呆れ顔のジン。すると直ぐに八雲紫から宣告される

 

 

「もう貴方以外の勢力は殲滅、もしくは撤退したわ。投降する事をお勧めしますが」

「尖兵を下しただけでもう勝ったつもりか?勘違いも甚だしい」

 

 

 八雲紫の最後通告ともいえる言葉を、ジンは鼻で笑う。紫はその顔を険しくし、ジンは対照的に笑みを深める。

 

 するとその様子に我慢がならなくなったのか、周りからも声が上がる

 

 

「ジン…!もうやめてよ‼︎」

「そうですよ!何故こんな事をするのですか⁉︎」

「ジン…!馬鹿な真似はもうやめるんだ!」

 

 

 命蓮寺の者達である。聖は治療中の為いないが、他の者は揃っている。ジンは懐かしい面子を見渡しながら微笑を浮かべる。

 

 

「何故態々そんな事を聞く?月人の殲滅の為だと聞いていなかったか?」

「それは…罪無き人々を巻き込んでまで、する事なのですか⁉︎」

 

 

 寅丸星は怒り、悲しみ、動揺が混じった表情でジンに問いかける。だが帰ってきた答えは非情なものだった

 

 

「勿論だ。あの危険因子を摘むには今しかない。それに多少の犠牲も致し方ないだろう。」

「それは、本気で…言っているのですか?」

「ああ。そもそもの話、最初から月人を差し出していれば此処を破壊する予定もなかった。それに神界(我々)に逆らうと言う事の重大さを知ってもらうにはいい機会だ」

 

 

 そう言って不敵な笑みを浮かべるだけ。昔見た面影など一欠片も存在しない表情。昔"仕事"で機嫌の悪いジンを見た事はあったが、それの比にならない暗く、深い感情が渦巻いている。

 そしてとうとう我慢できずに行動に移す者が現れる

 

 

「こんの…!バカあっっ!!!」

「む…」

「ぬえ⁉︎」

 

 

 ジンが喋る度に、ぬえの中では自分の知っている…尊敬すらしていたジンの像が音を立てて崩れていく。

 感情を爆発させ、周りの静止も聞かずに槍を構えて飛び込んでいく。その突きは瞬発的な速さなら最速の鴉天狗すらも凌ぐ。が、ジンはそれ以上の反応速度で難なく槍を掴む

 

 

「ぐっ…!」

「流石、平安の都を恐怖に陥れた大妖怪、中々の力だ。しかし少しばなり力が足りんな」

「うるさい!黙って聞いてれば…!」

「どうした、私は何かおかしい事を言ったか?何よりお前は人間が大嫌いなんだろう。人間が幾ら死のうとお前には関係ないだろう?」

「昔のアンタはそんな事言わなかった…!なのに…一体どうしちゃったんだよジン‼︎」

「!」

 

 

 そう言ってありったけの妖力を叩きつける。至近距離での攻撃。喰らえば無事では済まない筈だ。そしてそのまま離脱しようとする。

 

 

「⁉︎」

「ふん…」

 

 

 ジンはしっかりと槍を掴んだまま離さない。変わらない様子でそこへ佇んでいる。

 

 

「悪いな。ついさっき遊んでいたら痛い目をみてな。これからは割と本気でいく事にしているんだ」

「は……」

「そら、お返しだ」

「ガッ…⁉︎」

『ぬえ!!』

 

 

 ジンはぬえが放った量と同じだけ神力をぶつける。なんの工夫も技術もない、ただの力の放出。だがそれだけでぬえは意識を刈り取られ飛んでいく

 

 

「っ…!」

「よくもぬえを…!ジンさんとはいえど、許さない!!」

「こうなったらぶん殴って目を覚させてやるわ!」

 

 

 ぬえがやられたのを皮切りに、命蓮寺の面子が特攻を仕掛けてくる。村紗はアンカーを構え、一輪は雲山を呼び出し、星は槍を構える。全員が無駄のない動きで散開しながらジンを取り囲む。

 

 

「待ちなさい!無闇にいくのはー」

「"開心流"」

 

 

 紫が静止させようと叫ぶ。だがその前にジンが静かに呟く。

一同は何か来るのかと身構えるが、その様子は見られない。妙なしこりを残したまま攻撃に移る寺の者達。

 

 

「ふっ‼︎」

 

 

 まずは牽制に寅丸星が俊敏な動きで槍を突き出す。ジンは半歩足を下げるだけで回避する。そこへ狙いすまして村紗が地面へアンカーを振り下ろす。

 

 

「せえぇぇりゃあぁぁぁ!!」

「む…」

 

 

 その衝撃で地が割れ、僅かにジンの重心がズレた所に一輪が来る

 

 

「雲山‼︎」

『オオオオオオオオオ!!!』

「……」

 

 

 雲山がジンの両腕を掴む。だがジンは数々の神と戦ってきた。その中には山を投げ飛ばすような者とも戦った事がある。単純な力だけでも神界の上位に入る。そんな神を入道が抑え込める時間は数秒もないだろう。だが、それでいい

 

 

「今よ!」

「ナズ、お願いします‼︎」

「!」

 

 

 チュドオォォォォォオオン!!!

 

 

 覆い被さるようにジンと力比べをしていた雲山の雲の体を突き抜け、高速でレーザーが飛来する。宝塔を持ったナズーリンが放ったのだ。雲山に動きを一瞬とはいえ封じられた。回避する事は叶わない。

 星達が当たりもしないを行っていたのは決して気が狂った訳ではない。この瞬間の為である。雲山の体から突然出てくる光線。完全に不意を突いた

 

 

「…やったか?」

 

 

 誰もがそう思っただろう。だが最初に止まるよう指示した八雲紫は、厳しい表情で見つめている。土埃が晴れていき、惨状が顕になる

 

 だが

 

 

「ふむ…作戦としては悪くはないが…いかんせん、威力が足りんな」

「え……」

「な、何で…?」

 

 

 しかしそこには微塵も効いた様子はなく、つらつらと攻撃の評価までし始めるジンがいる。よく見ると、ジンの周りに何かが揺らいで漂っている。ジンが作り上げた大気障壁である。

 

 だが星達は完全に相手の不意を突いたと確信していた。だから可笑しいのだ。まるで分かっていたかのように、そこに障壁が存在する事が

 

 

「何で…か。まぁお前らがそう来るのは我が開心流にて()()()()()()()

「わかって……いた…?」

 

 

 『開心流』…ジンがその人生の殆どの時間をかけて確立させた古流武術である。主に剣術、拳法、妖術などの全てを効率良く掛け合わせた実践式の戦闘方法がある。

 

 だが『開心流』の真髄はただの武術に非ず。この流派の真骨頂は、極限集中する事で相手の脳波を読み取り、擬似的な()()()を実現する事である。故に相手の心を開く、『開心流』なのだ

 

 

「言っただろう?これからは本気でいくとな。」

「そんな…⁉︎」

「さて、先ずは貴様らからだ」

「ーっ!避けなさい‼︎」

 

 

『開心流奥義…天割(そらわり)

 

 

 ザンッッッ!!!

 

 

「かはっ…!」

「な……⁉︎」

「ぐあっ!!」

 

 

 ジンが両手を挙げ、空を引き裂くような真似をした。その時突如、空間がズレた。回避に移ろうとしたのも虚しく、体に真一文字の斬り傷が刻まれる。

 

 それだけに留まらず、ソレは背後の景色すらもズラして()()()()()()()()()

 

 

「なんて…!馬鹿げてるのかしら……‼︎」

「さぁ小娘共。もう小細工は通用せんぞ。真正面から来るがいい。私は逃げも隠れもしない」

『ーっ!!!』

 

 

 悪魔はまだ始まったばかりだ

 

 

 




もう直ぐ本編が完結すると言ったな。ーあれは嘘だ

普通にまだ続きます。戦闘シーン難しい…


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嫌な予感

戦闘シーンもう少し続きます


 

 

「全員、全力で当たりなさい‼︎加減は要らないわ!」

『了解‼︎』

 

 

 ジンの本気度を悟った八雲紫は、力を制限する『スペルカードルール』の一部停止を宣言し、本気で戦う事を通達する。そうでなければ勝てない相手だからだ

 

 

「さぁ来い小娘共。直ぐに終わらせてやる」

「軽口を叩けるのも今の内よ!!吸血鬼の恐ろしさ、教えてあげるわ!!」

 

 

 早速仕掛けたのはレミリアだ。自身の何倍もある紅の槍を構え、突貫する。だがジンは眉一つ動かさず片手で捌いていく。レミリアは別段それに驚く事なく、瞬時に後退する

 

 

「わかってはいたけど…厄介ね。その未来視とやらも」

「貴様も似たようなものだろう。まさか卑怯とは言うまいな?」

「当然よ!紅符『不夜城レッド』‼︎」

「うむ、いい判断だ。『荷電粒子砲』」

 

 

 飛びずさりながら十字架型に魔力を放出する大技を放つが、それは瞬時に相殺される。それなりの火力が出た筈だが、意に介した様子もなく対処する。

 レミリアは自身の技が最も容易く捌かれた事に内心驚嘆しつつも、冷静に動きを観察する。

 

 

「いっくよーー‼︎禁忌『レーヴァテイン』‼︎」

「あ、ちょ!フラン待ちなさい‼︎」

 

 

 突然、情勢を見守っていたレミリアの横をフランが猛スピードで駆け抜けていく。威力だけを見れば凄まじいが、戦闘センスでは姉であるレミリアに劣るようだ。事実、それも受け止められてしまっている

 

 

「うわっ、何で掴めるの⁉︎熱くないの!!?」

「こんなもの熱い内に入らん」

「舐めてくれちゃって…!"きゅっとして〜……"」

「遅い」

「っ!"目"が消えた!?」

 

 

 ジンは体を粒子化させて高速移動する。フランの能力は対象となる物体の一番弱い箇所"目"を手繰り寄せ、握り潰す事で発動する。だがその前に対象が億を越える粒子に分裂されてしまえば破壊どころの話ではなくなる。

 

 

「はぁッッ!!」

「ぐっ…ああっ!!」

「フランっ!!」

 

 

 "目"が消えた事で一瞬動揺したフランの背後にジンが神力を込めた腕を振りかぶる。だが人外特有の反応速度で何とか反応し、レーヴァテインで受ける。フランは勢いを殺しきれずそのまま吹き飛ばされる

 

 

「潰れろ『重力砲』」

「させないわ!幻世『ザ・ワールド』」

 

 

 地に落ちたフランに強力な重力波が放たれる。しかしそれが届く事は無い。地に伏していたフランはいつの間にか消えており、重力波は何もない地面を地底まで届くのではないかというくらいに陥没させた。

 

 少し離れた所で咲夜がフランを抱えて現れる。もしあれに当たっていれば、凄まじい再生力を誇る吸血鬼でも危険であっただろう。それを回避させた咲夜は凛とした表情でこちらを見つめ、メイド長として相応しい佇まいをしている。……鼻から忠誠心が出ていなければ

 

 

「んぅ……さ、咲夜?」

「ご無事ですか?妹様」

「うん…って咲夜鼻血出てる⁉︎どうしたの?もしかしてやられた!?」

「いえどうと言う事はありません。少し興奮しまして…」

「?」

 

 

 鼻から忠誠心を垂れ流しながら咲夜はジンへ向き直る。目の前で空気感にそぐわない光景を見させられ、表情は複雑になっている。だがそれも一瞬だけ。ジンは空を蹴り、手を赤熱化させて高速でこちらへ接近する。

 

 

「幻符『殺人ドール』!!」

「……」

 

 

 世界が灰色に染まる。時間停止したこの世界では、彼女以外動ける者は存在しない。ジンは目と鼻の先でこちらへ肉迫した体勢で静止している。あと少し発動するのを遅れていたら首を刎ねられていただろう。

 

 その事実に戦慄しながらも咲夜はナイフを取り出してジンの周りへと散らばめていく。その時だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パリッ…

 

 ギョロッ……

 

 

「っ!!?」

 

 

 突然、ジンの体に細かい雷が走った。その瞬間なんと咲夜以外の存在が止まった世界で、ジンの目がサングラス越しに()()()()()()()のだ。咲夜は背に冷たい物が走ったような感覚を覚え、咄嗟に飛びずさる。

 

 

(今目が…⁉︎まさか時間停止が解けた…?いや、能力は正常に作動してる…もしかして時間操作まで出来るというの!!?)

 

 

 一瞬気のせいかと思った。しかし今度は目だけではなく、少しずつではあるが手や足までもがピクピクと動き出したのだ。今まで誰もこの空間で動けた者など存在しなかった。初めての経験に咲夜は恐怖と動揺で動けなくなってしまう。そしてついにー

 

 

「あ…あー……ふむ…こんなものか」

「…!」

 

 

 ジンが発声し、肩を回しながら完全に動き出した。基本的には咲夜自身が対象に何らかの工程を加えなければ、喋ることはおろか動く事や認識すら出来ない。

 

 能力の定義を完全無視した動きに咲夜の警戒度が最大限までに引き上げられる。舐めてかかった訳ではない。初めて会った時から異常性は感じ取っていた。だがそれが想定の遥か上を行っていたに過ぎない

 

 

「『何故動けるの』とでも言いたげな顔だな」

「ーっ、当たり前よ。こんな事一度だって無かった。一体何をしたと言うの?」

「随分切り替えが早いな。…それにしても自分の能力についてあまり理解が深くないと見えるな?」

「…どう言う事よ」

 

 

 するとジンはやれやれと肩をすくめながら話し始める。この隙に…と考えた咲夜だが、ジンが全てを見透かした様な目線で見てきたので思い留まった。

 

 

「まず前提から言っておくと、お前の能力は『時間停止』でも『時間操作』でもない」

「は……?」

 

 

 こいつは何を言っているのだ。今この状況が見えていないのか?全ての物体…ジンを除くモノの活動が停止し、放たれたままの体勢でいるナイフの群。今更何をと思った

 

 

「そもそもの話、時間が本当に停止したのなら我々は生きてはいられん」

「だからどうしてよ!」

「お前が今考えた通りじゃないか。()()()()()()()()()()()()()()のだぞ?それは我々を取り囲む大気の動きだって例外ではない」

「大気……まさか…」

 

 

 咲夜がある事に気づくと、ジンは満足そうに頷いた。

 

 

「そうだ。空気すらも停止してしまえば、それに包まれている我々は動く事も出来ず、呼吸すらままならない」

「そして能力の解除も不可能……」

「その通り」

 

 

 ジンは「満点だ」と言って浮遊していたナイフの一つを掴み、こちらは放物線を描いて投げ渡す

 

 

「ーっ…なら……なら私の能力は何なのよ⁉︎これならまだ貴方が時間操作出来ると言ってくれてた方がマシだったわ!!」

 

 

 咲夜はいつも使用してきた、自分が最も理解していると自負していた能力について疑心を持ち始めていた。自分が最も使いこなせるが故の絶対的自信。だがその能力が何か分からなくなり、自信も崩れ掛けていた

 

 

「まぁ落ち着け。言うなればお前の能力は『加速』だ」

「か、そく…?」

「そうだ」

 

 

 加速…そう言われてもいまいちピンと来ない。これが自分の時間停止とどう繋がるのか

 

 

「速度というのは不思議な物でな、自分が加速し、それ以外のものが通常よスピードで運動しているとゆっくり見えるんだ。だがお前はゆっくり見えるどころか止まって見える程。つまりお前は通常のスピードの何千、何万、何億倍という速さで行動する事が出来るんだ」

「じ、じゃあ貴方は…」

「お察しの通り。私も身体能力強化に加えて体に強めの電気を流し、肉体の動きを加速させているのだ。まぁかなり体に負荷を掛けるから、お前のように幾らでも出来る訳じゃないがな」

 

 

 そう言ってヒラヒラと手を振る。自分の能力が分かったのは思わぬ収穫だったが、それを自分とは違いゴリ押しでやってのけるジンに驚愕する。

 

 

「ーさて、少し話し過ぎたな。とは言っても現実世界じゃ1秒も経っていないだろうが」

「しかしカラクリが分かったところで…!」

「おいおい、もう私が言ったことを忘れたか?要は加速さえすればいいのだ。お前よりもな」

「何をー」

 

 

 瞬間、咲夜の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然ピクリとも動かなくなった咲夜を見て、ジンは顎髭を弄る。

 

 

「さて…厄介な能力持ちは塞ぎ込めた…後はアイツか」

 

 

 そう言って周りを見渡す。その目線の先には博麗霊夢が居た。奴さえ、博麗の巫女と賢者が死ねば士気の低下は免れないだろう。

 

 

「それにしたって…もう少し上手く立ち回れなかったものかね。2人共優秀だったから、いつかは神界にでも取り立てようと思っていたのだが」

 

 

 そんな事を言っても返事が返ってくる訳でもないが、そう言わないと気が済まない。本当に、この幻想郷を消すのは惜しいと思っている

 

 

「月人とアイツのせいでこんな事になるとはな……っと、そろそろ限界だな」

 

 

 だれにも聞こえない愚痴を漏らしながら、周りにいる各々を一箇所へ集める。動けないように一応神力の鎖で縛っておく。この空間では触れる事は出来ても攻撃は出来ない。私の空間断裂も重力波も、スピードは著しく落ちている。これが相手に届く前に何万、何億年と待たなくてはいけないのは御免被る。

 

 それに元より老体に鞭を打ち、擬似的な時間停止などという荒技をやってのけていたのだ。それを咲夜以上に行えば体にガタがくる。

 

 

(しかし…何だろうな、この感覚。まるで何かを忘れているような…)

 

 

 ジンは解除する直前、言い知れぬ感覚に陥ったが気のせいだと断じた

 

 

「まぁ良い、それでは"解除"」

 

 

 ジンがそう言うと世界に色が戻り、通常の速さで時間が進んでいく。

 

 

「きゃあっ!!?」

「な、何⁉︎なんでこんなに密集してるの!?」

「ちょ、離れてよ!動けな……」

「縛られてる…⁉︎いつの間に…」

 

 突然の状況に理解が追いついていないのか、おしくらまんじゅう状態で喚き声を上げる。驚きすぎて上空にいるジンにすら気づいていない様子だ

 

 

「フン…都合が良い。それでは諸君らには華々しく散ってもらおう」

「っ!皆んな上よ!!!」

『!?』

 

 

 霊夢が直感で気づき、声を上げるがもう遅い。ジンは人差し指を天高く上げる。そしてその体勢のまま、何かを引っ張るように指を曲げる。

 

 すると空から何かが近づいてきていた。眩い光を放ちながら"ソレ"は凄まじいスピードでこちらへ向かって来ている。圧倒的な熱量を伴いながら。

 

 拘束されている者達の中で最初に"ソレ"の正体に気づいたのは、天に関する能力を持つ八坂神奈子だった。

 

 

「まさか…太陽から()()()()()()()のか……!?」

 

 

 そう、ジンは己の持つ空間操作と重力操作を最大限に使い、無重力空間の宇宙に『道筋』を作り、太陽の炎を手繰り寄せたのだ。

 

 太陽の表面を走るプロミネンス。本来は精々6000程度しかないモノだが、『道筋』を通り加速していく中、それは太陽の中心温度1500万度にも及ぶ温度で幻想郷目掛けて降ってくる。

 

 全てを無差別に焼き尽くすー正に『天罰』としか言い表わしようのない光景であった

 

 

「燃え尽きろ『紅炎』

 

 

 

 幻想郷は巨大な焔に焼かれ、跡形も無く消え去るーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「核熱『ニュークリアフュージョン』!!!」

 

 

 ドゴオォォォォォォォオオン!!!

 

 

 

「きゃああぁぁあ!!!」

「何だ……!!?」

 

 

 何故か太陽光線が突如何かと拮抗していた。さらに信じられない事に、膨大な質量と熱量を持っている筈の太陽光線が徐々に押し返されているのだ。

 

 これには撃った本人であるジンですら目を剥いた。ジンは先程から頭の中に引っかかっていた違和感の正体を掴んだ。

 

 

「こんな事が出来るのはただ一人……貴様か!霊烏路空!!!

 

 

 ジンは今まさに太陽光線を押し返している張本人、霊烏路空を見据えた。

 

 

 

 




戦闘シーン次で最後です…

話が飛び飛びで滅茶苦茶だぁ…

次作品はもっと精進しないと…


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崩壊

まだ完結してないのに新しい作品作りたくてたまらない作者です


 

 ジンside

 

 

「貴様ぁ!霊烏路空!!!」

「ぜりゃあぁぁぁぁぁああ!!」

 

 

 私は太陽光線を核エネルギーで撃ち返している霊烏路空を見やる。何か見落としている点があるとは思っていたが、まさかコイツの事だったとは。

 

 しかし何故だ。核融合などと言う馬鹿げた火力を保有する者が前線は愚か、戦場にすら現れないなんて不可解としか言いようが無い。

 

 

「凄い……!アレを押し返してる!!」

「いっけーー!!お空ーー!!!」

「うにゅ!!」

 

 

 こう考えている間にも徐々に私の技は押されている。当たり前だ。私が放っている太陽光線は1500万度。それに対して霊烏路空の核融合エネルギーは最低でも1億度はある。下手をしたらそれ以上だ。太陽光線を上回る熱量とエネルギーにより、段々と技自体も焼き尽くされていく。

 

 さらに言えばおかしな事は他にもある。これほどの温度の光線が衝突しているというのに、周りに全く被害が無い。余波だけでも十分焼けるほどの温度だというのにだ。

 

 私は何とか体勢を持ち直し、周りを見渡す。するとただ1人だけ、この状況に驚かず冷静に見ている八雲紫の姿が見えた。……成程、この事は織り込み済みだった訳か

 

 それに恐らく、八雲は自分達と周りの温度の"境界"を弄ったのだろう。あの一瞬でその判断が出来るとは思いづらい。ならば最初から知っていたと考える方が筋は通る。

 

 

(拙いな…このままでは……)

 

 

 そうこうしているうちにも私の技は押し返される。寧ろ相手の熱でこちらを焼かれる始末だ。

 

 

(クソ!出来ればこれで終わって欲かったというのに……!)

 

 

 あまりこの戦いが長引くのは良くない。今のでどれだけ手札を晒した?これ以上は不味い……。

 

 とにかく相手の戦意を削ぐには指導者・八雲を排除せねばならない。もしくは博麗の巫女のどちらかだ。私は右腕でなんとか霊烏路空を抑えながら、空いた手で八雲紫に攻撃を仕掛ける

 

 

(これなら奴が知覚する前に仕留められる筈……だが"見られて"いたら拙い……ええい!もうどうなでもなれ!!)

 

 

「朽ちろ!!『超電磁砲』!!!」

 

 

 私は左腕にありったけの力を込め、生涯最高レベルの速度で技を放つ。しかしこの時の私はまた一つ、見落としている事があるのに気づいていなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おじさん、ごめんなさい!!!」

「!?」

 

 

 突如、私の放った超電磁砲が逸れた。…いや、放つ前に逸らされた。左腕に衝撃が走り、咄嗟にそちらを見る。そこには私の左腕にしがみつく、薄緑色の髪と閉じた第三の目を持つ少女、古明地こいしがいた

 

 

(まさか…こいつが……)

 

 

 少し考えれば分かる事だったというのに。

 

 

ー何故その違和感に気づかなかった?

 

ー何故今の今まで霊烏路空(コイツ)の存在を忘れていた?

 

ー何故こんな事が出来る者の存在を忘れていた?

 

 

「『無意識』か……!」

 

 

 古明地こいしは旧地獄に住む覚妖怪。当然ペットである霊烏路空もそこに住む。霊烏路空が出てきた時点で気づけなかったのは、奴の所有する『無意識を操る程度の能力』によるものだろう。

 

 そして恐らくは私がここに来る前に、幻想郷最高火力を誇る地獄鴉を含めた自分達の存在を認識の範囲外へ置く。私は、ここに来た時点でまんまと奴らの策にはまっていたのだ。

 

 

「ぬぅ…放せ!邪魔だ!!」

「やだ!離さない!!」

 

 

 何とか振り払おうともがくが片腕である事と、思いの外しっかりとしがみついているので中々離れない。これでは隙が出来てしまう。『粒子化』しようにも、奴が脳に直接『無意識』を掛けてくるので上手くいかない。

 

 そしてとうとう片腕で維持していた太陽光線も完全に焼き尽くされ、私の右腕が吹き飛ぶ。

 

 

「今だ!"アレ"をやれ早苗!!」

「はい!分かりました!!」

 

 

 それから間髪入れずに声がかかる。振り向くと何やら妙な雰囲気を纏った東風谷早苗が浮かんでいる。これは…何処かで感じた事がある。そう思った瞬間、東風谷早苗の神力が急激に強くなる

 

 

「これはまさか…『神降ろし』か!!」

 

 

 『神降ろし』というのは綿月依姫が使用する能力だ。だがこれは依姫特有の能力ではなく、神社の巫女も正当な手順を踏めば可能となる代物だ。依姫の場合はその手順を省略し、瞬時に行使できる事から強力な戦士として活動していた。

 

 だが早苗にはそんな力は無い。ならば考えられるのは、神下ろし一歩手前の手順を既に済ませ、機会を伺っていたと言う事だろう。

 

 

「…誰を降ろすつもりかは知らんが、その程度では私は倒れんぞ」

「分かっています、そんな事。……だから私がこの身に降ろすのは…………ジンさん。貴方です」

「……何?」

 

 

 ……私を降ろす?今目の前に居るのにか?この状況でトチ狂ったのか?それに私の能力を行使すれば現人神とはいえ死ぬ危険性があるのにか?

 

 

「いや、まさか……!」

 

 

 違う。一つだけ……一つだけ方法がある。私はその結論に至り、急いで拘束を解こうとしたが、遅かった

 

 

「神降ろし『ジン』!!!」

 

 

「ぐっ……ぐおぉぉぉぉおお!?」

 

 

 私は体の芯から神力が吸い取られるような…いや実際に奪い取られている。奴は、東風谷早苗は私の能力ではなく、神力そのものを中心に体に降ろしているのだ。

 

 神ではなく、神が持つ神力のみをその身に降ろす。そんな限定的な事が出来る巫女は全国を探しても居ないだろう。それ故私はその可能性を頭から消していたのだ。こんな事になるとも知らずに

 

 それはそうと本格的に拙い。神力をほぼ吸い取られ、失った右腕を回復させる余裕も無い。能力を使おうにも古明地こいしがいる。

 

 そしてその瞬間を狙い澄ましたように、いつの間にか来ていた博麗霊夢、霧雨魔理沙、東風谷早苗など、いつものメンバーが目の前に浮遊していた。三人とも油断無くこちらを見ている為、逃げ出す隙も無い。

 

 

(終わった……もう止められん)

 

 

「チェックメイト、ね……」

 

 

 霊夢が私の喉元なお祓い棒を突き付ける。私は諦め、ゆっくりと降下していく。…もう、この地球はお終いかもしれない

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 霊夢side

 

 

 

「…観念するんだぜ、ジン」

「……」

 

 

 先程とは打って変わって静かになった戦場で、魔理沙が先陣切って口を開く。対するジンさんは、抵抗する気力も無いのか腕にこいしがしがみ付いた状態を放置している

 

「…何とか言ったらどうなの」

「……」

「っ!おい、ジンッ!!!」

「落ち着いてください!魔理沙さん!」

 

 

 それでも尚何も喋ろうとしないジンさんに痺れを切らしたのか、魔理沙は怒りを露わにする。雰囲気が悪い方向ばかりに向くのを感じた早苗が何とか宥めている。

 

 正直言って、未だ油断を許せる状況ではない。先程もそれで手痛い反撃を食らった。何を考えているのか分かったものではない。

 

 

「お前ら……自分達が何をしているのか分かっているのか?…………いや、事情を知らん相手に言っても意味は無いか…」

「…?一体何を言っているのかしら…」

 

 

 すると漸く口を開いたかと思ったら、よく分からない事を言い出す。

 

 

「何をやったか?あぁ勿論分かってるぜ。幻想郷を滅ぼそうとしたバカ神を止めたって事はな!」

「ちょっと魔理沙、そんな言い方…」

「でもどう考えたってやり過ぎなんだぜ?何人かはかなりの重症だし、妖怪の山だって消し飛んだんだぜ?」

「…それもそうですねー」

 

 

 妖怪の山という言葉に、早苗が死んだ目で棒読みの返答をする。…そう言えば山頂にあったわね、コイツの神社。

 

 と、今はそんな事は関係無い。問題はジンさんの処遇だ。未だ俯いたまま何もしようとしない姿を見て、敵として戦っていたとはいえ痛ましく感じる。とは言えこちらもするべき事がある。取り敢えず博麗神社

 

 

「ほら、いつまでもそんな格好してたって何も無いわよ。…紫」

「えぇ分かってるわ。…こいし、少し離れて頂戴」

「はぁい…」

 

 

 簡潔に会話を済ませると、紫はジンさんに簡易結界を張り連行する準備をする。突然暴れても対処できるよう、ジンさんの周りを取り囲むように皆んなが着いている。

 

 先頭は私だ。側から見れば、その姿はまるで罪人のよう。

 

(…どうして、こんな事になっちゃったんだろう……)

 

 ほんの一月前まで何事もなく普通に話し、一緒に異変を解決したり、一緒にものを食べたりしていたのに。何処かで間違えたのだろうか。私が気をつけていればどうにかなったのだろうか。

 

 ふと後ろを見ると、変わらず俯いたまま後ろをついてくるジンさん。その姿には覇気はなく、とても神界を束ねた神には見えない。

 

 

 

 私の中で様々な感情や思考が渦巻いている中、それは突如起こった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…聖?」

 

 

 今、永琳の治療を受ける為に戦線離脱した筈の聖白蓮が私の行く先へ立っていた。その体には先ほど受けた傷は見当たらず、何事もなかったかのように、笑顔を浮かべながら立っている。

 

 当然、命蓮寺の者達は驚き声をあげる

 

 

「姐さん⁉︎もう動いて大丈夫なの?」

「えぇ、八意さんのお陰で」

 

 

 当然、命蓮寺の者達は驚きの声をあげる。それに優しい声で返す聖。それだけを見れば何てことのない微笑ましい光景なのだが………。今までずっと俯いたままだったジンさんが、突然弾かれたように顔を上げた。

 

 

「…ジンさん?」

「アイツ……!」

 

 

 ジンさんが尋常ではないほどの汗をかいている。何故そうなったのかは分からない。聖への罪悪感から冷や汗をかいている…とは考えづらい。あまりにも不自然過ぎる。

 

 そんな事を考えていると、聖が私の元へ近づいてきた。恭しく頭を下げると

 

 

「ありがとうございます、霊夢。私の代わりに戦ってくれて」

「え?あぁまぁそれが私の仕事だし。気にしないでいいわよ」

 

 

 改まって聖が私に礼を言う。だが何故だろうか。彼女に非常に違和感を感じてしまっている。博麗の巫女としての勘、だろうか。この時の私は、複雑な感情で心の中を満たされていた為、次に起こる事に対処出来なかった。

 

 

「えぇ……本当に、ありがとうございます。そこの監視者(ゴミ)を倒してくれて」

「え……」

 

 

 聖の雰囲気が一変し、それに気づいた時にはもう腕を振りかぶっていた。その拳は私を狙っていた。突然の事に誰もが驚き、動けなかった。

 

 

「れ、霊夢!!」

「霊夢さんッッ!!?」

 

 

 皆んなが声を上げるが、もう遅かった。そしてその拳は吸い込まれるように私の鳩尾へ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドシュッッ…………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …いつまで経っても来ない衝撃に違和感を感じて、ゆっくりと目を開く。目の前にはいつの間にかジンさんが立っていて、背中から腕が生えていた

 

 

「…ガフッッ………!」

「え……?」

 

 

 ジンさんが口から血を吐き、そのまま膝をつく。皆んなも何が起きたのか分かっていなかった……だが目の前の光景に理解が追いついていない

 

ー異変は各地にも起きていた

 




 今話を見返してみたらかなり修正点が多いですね…

 クオリティに関しては次回作にご期待下さい…


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手遅れ

 久しぶりの連続投稿


 

「…ガフッッ………!」

「え……?」

 

 

 ジンが膝をつき、血を吐き出す

 

 

「あら?博麗の巫女を仕留め損ないましたか。何処まで邪魔をするのね、監視者(あなた)は」

「ひ、聖…?何言って…」

 

 

 聖はジンさんをゴミを見るような目で見て、そのまま勢いよく腕を引き抜く

 

 

「ゴホッッ……!」

「え…あ……?ジ、ジンさん⁉︎な、なんで……⁉︎」

「ジン⁉︎大丈夫か!?」

 

 

 先程まで敵だった事も忘れ、皆ジンさんに駆け寄る。傷は塞がらず、夥しい量の血が溢れ出る。だがジンさんはそんな事も構わずに立ち上がる

 

 

「ちょっと!?動かない方が……」

「血が…!血が止まらない…!」

「誰か止血を!!」

 

 

 止めようとしたが、片手で制される。口から血を流しながら、話し出す

 

 

「その姿……ゲホッ…既に幻想郷に、居たとは…な」

「あら、まさか一発で見破られましたの?監視者の名も伊達ではないですわね〜」

「気持ち悪い喋り方を…するな。そんな性格でもないだろう……()()()

 

 

 ジンさんは聖に向かって何か言っている。『トガミ』……?一体何の話をしているのだろう。だがその名に一番敏感に反応した者がいた。山の神社に住む、二柱いる神の内の片割れ、八坂神奈子だ。

 

 

「トガミ…!?お前、あの時死んだ筈じゃ…」

「これはこれは神奈子様。歳をとられると記憶の方もお粗末になられるのですか?」

「何を…!」

 

 

 『トガミ』と呼ばれた、聖の姿をした女は神奈子の言葉を笑い飛ばす。次の瞬間、聖の体が真っ黒に染まり、スライムのように変形していく。神力と妖力が混ざったような…禍々しさと神聖さを併せ持つ混沌とした気配を感じる。

 

 その気配が治った時には全てが終わっていた。前に会ったアメノとは真逆の漆黒の法衣を纏った、黒髪の美人と言って差し支えの無い女がいた。だがその顔に浮かべる微笑は、底冷えするような非常に不気味なものだった。

 

 

「神奈子!コイツの事知ってるの⁉︎」

 

 

 目の前の存在の言葉に激昂しそうになったが、諏訪子の問いかけにより一時鎮火する。そして重い口調で話し始める

 

 

「あぁ…そう言えばあの時諏訪子は居なかったな…。コイツは"トガミ"。太古に神界に牙を剥いた邪神……私の元眷属神だ」

「んな…⁉︎」

 

 

 未だに皆はトガミの名にピンと来ていない様子であったが、神の系譜の者や、思慮深い者は顔を青褪めさせる。

 

 

 トガミ……嘗て存在した二百万の神々とは違い武力ではなく、類い稀なる知識と狡猾さで、知力と策略による神界の掌握を行っていた。

 

 その侵食度は上位の神ですら気付けず、それどころか懐柔される始末であった。恐らくあの時偶然監視者が摘発し、始末していなければ神界は彼女の手に渡り世界を超越する力を得ていただろう。

 

 その危険度故に神界では二百万の神々よりも『禁忌』として扱われ、表にその名が出る事はなかった。

 

 

「確かに私はあの時……忌々しいことに、そこにいる監視者に無限地獄へ堕とされましたわ」

「ならどうやって…!」

「しかしまぁ幸運な事に、私を復活させようとする酔狂が居たのですよ。知りませんか?嫦娥とかいうイカれた人間を」

「嫦娥、だと…?あの月の仙人が…!」

 

 

 思わぬ名前が出た事で、どよめきが広がる。特に紫は月についてよく調べていたので特に知っていたようだ。太古の邪神と月の仙人が繋がっていたとは、誰が考えただろうか。

 

 

「何億、何兆にも分解され、世界中に散らばった体を……態々全て集めたのか…⁉︎何の為に…!?それに簡単には融合出来ない筈…!」

「さぁ?仙人の考える事など知った事ではありませんよ。融合に関しては、態々『蓬莱の薬』なんてものをくれたくらいです。余程私の力が欲しかったのでしょう」

 

 

 何が可笑しいのか、笑みを浮かべながら淡々と話すトガミ。そしてある方向へ向き直りため息をつく。

 

 

「まぁ唯一の誤算は……監視者(ゴミ)に気付かれていた事くらいですかね。あちこちで妨害を受けて大変でしたよ」

「「「え?」」」

 

 

 思いもしない言葉がトガミの口から飛び出して、全員の視線がジンにいく。ジンはいつの間にか出血を止めており、しかし未だ額に汗をうかべている。

 

 

「随分とペラペラと情報を喋るんだな…あの時の策略家ぶりは鳴りを潜めたか?」

「どうせ全部知っているんでしょう?なら隠す必要も無い」

 

 

 トガミは頭に青筋を浮かばせ、邪神の名に恥じぬ恐ろしい形相で睨みつける

 

 

「何度幻想郷に来ようとしても次元を遮断されるし、何度も住民と接触しようとしても"執行部"とやらに邪魔されるし、何度呪いを掛けても直ぐに『解析』される……一体何度憤死しそうになったことか」

『!?』

 

 

 幻想郷の住民達は、自分たちのあずかり知らぬ所でそんな事があったのか、と驚愕する。では自分達は今まで何をしていたのだろうか…?

 

 

「ちょ、ちょっと待てよ⁉︎何でジンが幻想郷を守るんだよ?ジンは滅ぼそうとしてたんじゃないのか!?」

 

 

 あまりの情報量に頭がパンクし掛けた魔理沙が声を荒げて言う。それはその場にいる者全員の気持ちを代弁した物だったが……

 

 

「ふっ…ふふ………あはははははは!!!

「な、なんなんだよ!?」

 

 

 突然トガミが大声をあげて笑い出す。何処にそんな要素があったのか分からない魔理沙は激昂して言い返す。

 トガミは心底可笑しそうに笑い、目に浮かんだ涙を拭き取る

 

 

「ふふ…お前らは、あんなのをこの男の本気だと思っていたのか?」

「は?」

「別にコイツはお前らとは本気ではやっていなかったぞ?寧ろ手加減していたな。コイツには幻想郷を滅ぼそうなんて意志は殆ど無い」

「なっ!?」

 

 

 そんな筈は無い。ジンは確実に此方を排する気で攻撃を仕掛けていた筈だ。事実、何人もの手練れが深い傷を負っているというのに

 

 

「どう言う事なんだぜ!?ジン!!」

「……まぁ大方はソイツの言ってる事と相違は無い」

「じゃ、じゃあ何だったんだよ…?さっきの戦いは…何のためにあんな事…」

「それは私の"能力"を危惧していたんだろう?監視者」

 

 

 会話に割り込んでトガミが喋り出す。トガミは両腕を広げて、高らかに言う。その圧倒的な姿に、誰も不意打ちをかけようなどとは思えなかった

 

 

「冥土の土産に教えておいてやろう。私の能力は『見たものを完全模範する程度の能力』。私に相応しい、偉大なる能力だ!!」

「『完全模範』…?まさか…!」

「そう、そのまさかだ」

 

 

 今言った事が本当ならば、とんでもない事になる。もしこの邪神が、この戦争が始まってからその全てを見ていたとしたら…?

 答えは簡単だ。この邪神は、この幻想郷に住む住民の殆どの技を手にしたことになる。

 

 

「そうだな…例えばこうすれば分かるか?…『重力砲』」

 

 

 ズンッッッ!!!

 

 

「ぐっ……!!」

「「「ジン(さん)!!!」」」

 

 

 なんとトガミは徐に手を突き出すと、そこから強力な重力波…ジンが先程使っていた『重力砲』を使用したのだ。その威力は本家と遜色無い凄まじい破壊力。ジンは堪らず飛ばされる

 

 ジンは何とか空中で姿勢を整えるが、無理に体を動かした為、また傷が開いて出血をしている。近くにいた早苗、諏訪子が駆け寄る

 

 

「ジン…!傷が…」

「今止血を…!」

 

 

 応急処置の為、ジンに近づいた早苗。だが

 

 

「…早苗、少し耳を貸せ」

「え?」

「ーーーー……」

「!…分かりました。出来るかは分かりませんが、やってみます」

 

 

 ジンは早苗に何か言った後、トガミに向き直る

 

 

「貴様にこんな力は無かった筈…ゴフッ……後天的なものか」

「ははは、お前の"分解"のお陰で新しく生まれ変わった気分だ。恐らくその時に手に入れたんだな。その点に関しては感謝しているよ」

 

 

 トガミの独白は止まらない

 

 

 

「見たか?この力を。…さっきの戦いなら奴の能力を完全掌握出来るかと思ったが、気付かれていたせいで殆ど手札を見せやがらなかった。その上何度もお前らを幻想郷外へと逃がそうとするのだから…妨害してやったとはいえ、全く忌々しい…」

 

 

 その言葉で漸く皆は理解した。自分達は"幻想郷を守る為"と盲信的に動いて、ジンを排そうとした。だがジンは初めから自分達の事を敵などと見ていなかった。寧ろ更なる脅威から自分達を守っていたのだ

 

ーーー二百万の神々と戦い、勝利してしまうようなジンが自分達程度にここまでやられる訳が無い。手加減されていた。

 

ーーー亜空間ゲートを開き、そこへ自分達を投げ込んだのは邪神の手にかからないようにする為

 

ーーー幻想郷に『執行部』や『諜報部』を送り込んだのは、月人の排除だけでなく、寧ろ守る為…

 

 

 今思えば可笑しな所は多々あった。だがそれに気づいた時にはもう遅い。この邪神に対抗出来るジンは、自分達の手で戦闘不能にしてしまった。ならば自分達でどうにかするか…?いや無理だろう。自分達が使う技は相手も使う。それに相手は万全、こちらは満身創痍。勝機は……殆ど無い

 

 

「さて…無駄話は此処までにしておきましょう。此処にいる全員の能力を奪い、神界へ進出する。下剋上の始まりだ……」

「!そんな事…させると思っているのかしら…!」

「霊夢…!」

 

 

 唯一霊夢は、巫女としての使命感と誇りにより正気を保てていた。邪神相手に臆さず、お祓い棒を突きつける。

 が、邪神は凶悪な笑みを浮かべる。口調も昔の野蛮なモノに変わり、とても神とは思えない気配を放つ

 

 

「ーっ!」

「どうだ?苦しいか?常人なら即死する瘴気だ。満身創痍のお前らが何処まで耐えれるだろうな?」

「う、あぁ……」

「駄目だ…霊夢…!戻れ…!」

 

 

 少しずつ、心も身体も蝕まれていく。霊夢程影響を受けていない者達は何とか救い出そうとする。だが身体が動かない。体が恐怖している。トガミに近づくのを本能的に拒否しているのだ。

 

 

「クソッ…クソッ…!動け…動けよ…!」

「霊夢…いま、い…く……」

 

 

 魔理沙と妖夢が顔を青褪めさせながら近づこうとする。だが他の者と比べて少し進むくらいで、何の解決にもなっていない。

 

 

「ははははは!!無様だなぁ⁉︎博麗の巫女とやら!先ずはお前からだ!」

 

 

 本当に、手遅れになってしまった。

 

 霊夢は意識を失いかける直前、視界の端で黄金の光を見た

 

 

 

 

 

 





次は月sideです


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終わりの始まり

今思えば月side全然書いてませんでしたね…反省です


 

 

 凍結された月の都

 

 

 全ての住人が避難をし、誰も居ない寂れた風景が広がる。そこに、傷を負った1人の剣士が倒れていた。

 

 綿月依姫。月を代表する最高戦力である。そんな彼女が、傷を負って倒れている。他の月の民が見れば発狂しかねない姿だ

 

 

「うっ……!…ん…ここは…?」

 

 

 胸に走る痛みを堪えながら、ゆっくりと背を起こす。依姫は神界の監視者・岡迅一郎との戦闘の末、殺された…かと思ったが、何の気紛れか彼女は傷を負いながらも生きていた

 

 

「あれ…私、なんで生きて……」

 

 

 穢れの存在しない月では傷口からの感染症も起こらず、月人特有の治癒能力で既に血は止まっていた。

 自分は決闘に負け、殺される筈だったのに。何故自分が生かされたのか見当もつかない。

 

 

「師匠…?」

 

 

 岡迅一郎が討ち損じた…とは考えづらい。彼は不安因子は徹底的に排除する男だ。息があるのを見逃すような人物ではないだろう。ならば彼がわざと生かした…というのが一番考え易い。

 

 依姫はまだ師が自分の事を見捨てていないのではないか、と淡い期待を胸に抱く。それが原動力かは分からないが、体に活力が漲る。そうして立ち上がったその時

 

 

 ドゴオォォォォ………

 

 

「!…今のは……」

 

 

 微かに爆発音が遥か遠くから聞こえる。恐らく月の都とは真反対に位置する『月の裏側』からだろう。神界勢力が最初に攻め込んで来た場所だ

 

 

「姉様…!早く行かなければ…!」

 

 

 自分は一体どれだけ寝ていた?その間ずっと姉・綿月豊姫が軍を指揮している。早く戻って加勢しなければ。

 焦る気持ちを胸に、依姫は走る

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 月の裏側

 

 

「撃て!手を休めるな!気を抜いたら死ぬぞ!!」

「があっ!?う、腕が…腕があぁぁ…!」

「オイ⁉︎大丈夫か!…クソッ、あの不気味な船め!」

 

 

 光の弾丸と、閃光が吹き荒れる。船から発せられるレーザーに、腕を飛ばされる者。破壊される固定砲台。神兵に槍で穿たれる者。積み重なる死屍累々。

 正に地獄。今まで無敗を貫いてきた月の精鋭達が苦戦を強いられている。こちらの戦線は後退するのに対し、相手側は不気味な船と共にどんどん押し入ってくる。

 

 

「クソッ!先ずはあの船を何とかしないと!」

「依姫様は何処にいらっしゃる⁉︎相手の司令官を倒されたのか⁉︎」

「だったら進軍は止まる筈だ!…考えたくないが、もしかしたら依姫様は……」

 

 

 月の兵士達の士気も下がってきた。敗色濃厚なこの戦いに対する意欲が無くなってきたのだ。そしてまた戦線を押される。

 

 

 ゴウッッッ!!!

 

 

 その時だった。突如強風が吹き荒れた。直後、目の前に迫り来ていた船に乗っていた者を除く神兵達の軍勢が一瞬で塵と化した。

 

 

「なっ…!」

『何だ今のは⁉︎何処からの攻撃だ!』

『分かりません!風が吹いたと思ったら、急に…』

 

 

 あまりの出来事に相手はおろか、月の兵士達も何が起きたか理解できていなかった。

 

 

 

『落ち着きなさいッッ!!!』

「この声は…!」

「豊姫様!!」

「え、援軍!援軍だ!!」

 

 

 そんな兵士達に一喝する者が1人。いつの間にか、兵士達の背後に佇んでいた、扇を手に持つ綿月豊姫。普段の雰囲気からは想像できない剣幕で声を張り上げる。その後ろには大勢の援軍を引き連れている。

 

 

『月を守る貴方達が弱気になってはいけません!私達はここで勝利しなければなりません。誇り高き月の兵士なら、最期まで戦い抜くのです!!』

「「「う…オオオオオオオオオオォ!!!」」」

 

 

 正に天からの救い。思いもよらなかった援軍により士気は先程とは比べ物にならないくらいに上がる。

 それに危機感を感じたのか、神兵達を率いる神兵長は指示を飛ばす

 

 

『っ…!皆の衆、船を旋回させろ!第一艦艇は左翼に、第三艦艇は右翼へ回り込むようにしろ!あの女が持つ扇に気をつけろ!!』

「「「りょ、了解!!」」」

 

 

 豊姫が持つ扇の危険性を一発で看破した神兵長は、狙いを定まらせないよう散開させる。事実、それで豊姫は狙いを絞る事ができず、すぐには攻撃には移せなかった為、この判断は賢明だったのだろう。

 

 後に起こる事を除けばー

 

 

 

 ドゴオォォォォォオオオン!!!

 

 

『な…』

「うわあぁぁぁぁあ!!?」

 

 

 散開して独立したナグルファルの一隻が、真っ二つになり火の手を上げながら墜落していく。そして船は墜落した後、大爆発を起こす。

 

 その炎のシルエットに映るのは、長い髪をポニーテールにまとめた、刀を携える女。

 

 

『綿月…依姫……!』

 

 

 神兵長が苦虫を噛み潰したような顔をする。自身の出した指示で、守りが薄くなった船に被害が出てしまった。まさかこのタイミングでの綿月姉妹の参戦は予測していなかった。ジンからの連絡ではもう少し()()()()()()()()()

 

 

「姉様!大丈夫ですか!?」

「依姫⁉︎その傷……!」

「私は大丈夫です!それよりもこちらは…」

「…えぇ、貴女のお陰で形勢は逆転したわ。ありがとう。来てくれた所すぐで悪いのだけれど、協力してくれないかしら?一気に巻き返すわよ」

「勿論です!」

 

 

 綿月姉妹の参戦により、月の兵士やイーグルラヴィ達の士気は最高潮に昇る。

 

 

「勝てる…勝てるぞ!」

「神界の者達に目にモノ見せてやる!!」

「綿月様に従え!!」

『ウオオオオオオオ!!!』

 

 

 分かりやすく兵士達は興奮し、こちらに突っ込んでくる。神兵達は何とか持ち堪えるが、それも時間の問題だろう。

 

 

『くっ…少し早いが……仕方ない…!』

「姉様!船が…」

「今更撤退する気…?」

 

 

 先頭にいた一際大きい司令官が乗る船が後退を始め、他の船も追随するように下がっていく。これを見て兵士達は我先にと突貫していく

 

 

「敵が下がったそ!」

「今だ押せーー!!」

「っ!待ちなさい!相手が何をするのかも分からず突っ込むのはーーー」

 

 

 

 

 

『純狐殿!お願い致す!!』

「んなっ!?」

 

 

 月の兵士達の攻撃が船に到達する前に、神兵長が大きな声で月の仇敵の名を呼ぶ。

 

 次の瞬間飛び交っていた銃弾諸共、兵士達も微小な素粒子と化し絶命していった。

 

 

「全く…待ちくたびれたぞ。あの男の指示でなければこんな事はしなかった」

『…重ね重ねお詫びする。ですが確実に敵を討つにはこれが最適なのだ。』

「…まぁ良い。貴様らが何を考えていようと、私には関係の無い事。せいぜい利用されてやろう」

 

 

 超人的な聴力で敵方で交わされる会話を聞く依姫。その声に顔を険しくさせる。ある意味、監視者よりも厄介な人物が来てしまった

 

 

「姉様!」

「…まさか純狐が神界と繋がってたなんて…いや、ヘカーティアが居れば不自然ではないわね…。どちらにせよ、好ましい状況ではないわ」

 

 

 今の『純化』で兵士の半数以上が減らされてしまった。残ったのは状況理解に優れた賢い者だけ。これでまた勢力は五分五分となった。

 

 

「あぁ…遂に、遂にこの時が来た……一体何万年待ったことか。綿月、貴様らを含めた月のゴミ共をこの手で殺せる日が」

「純狐…!しつこい奴め…!一体この為に何人の命を犠牲にするつもりだ⁉︎」

「復讐の為ならいくらでも。最初は貴様らが嫦娥ただ1人引き渡せばよかったものを、頑なに拒むものだから皆殺しにするだけだ」

「そんな簡単に引き渡せる訳ないだろう!」

「依姫、諦めなさい。アレに口論するだけ無駄よ」

 

 

 もう何度繰り返したか分からないやり取り。しかし恐らくは何万年も続いたこの因縁も、今日ここで決するだろう。

 

 

『純狐殿、先ずは綿月妹の方を…』

「黙れ、私に指図するな」

『っ…!しかし、私は岡様からここの指揮権を持たされている。ここでは純狐殿であろうと、勝手な行動は困る』

「フン…あの男の指示か…。なら仕方ない。この機会をくれた借りはある」

 

 

 神兵長と何やら揉めた後、純狐は嗜虐的な笑みを浮かべてこちらへ向き直る。今まで様々な強敵と戦ってきた綿月姉妹ですら冷汗を禁じ得ない。勝機が無い訳ではないが、まともにやり合えばこちらとてただでは済まないだろう

 

 

「周りの雑兵共が邪魔だな。お前ら離れていろ」

『全艦に告ぐ、後退せよ!』

「総員、撤退しろ!!また『純化』されるぞ!!」

 

 

 純狐が物騒なことを呟いた後、その力を解放し始める。先頭にいた者から徐々に『純化』されていき、死んでいく

 

 

「ギャッッッ」

「な、何が起きーーー」

 

 

 目の前で次々と死体が積み上がっていく。いくら月の精鋭とはいえ、生存競争を行わない殆ど実践経験のない兵士には目の前の光景は刺激が強過ぎたようだ

 

 

「ひっ!」

「い、嫌だ!死にたくない!!」

「おい押すな!逃げれないだろうが!!」

「た、助けーーー」

 

 

 純狐から逃れようと恥も外聞もなく逃げ出す。依姫も何とか救い出そうとするが、下手をすれば自分でも『純化』されかねない。目の前の光景を歯噛みして見ている事しか出来ない。依姫は己の無力さを嘆いた。こんな時、師匠ならどうするだろうか等と場違いな事も考えながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、誰かと思えば純狐じゃない」

「!?」

 

 

 その声が響いた瞬間、戦場は静まり返った。その予想外の声に、純狐ですら攻撃の手を止めてしまった。

 

 何故なら、その人物は今此処に居ない、居てはならない人物だからだ。

 

 ある者は驚愕し、ある者は疑惑の目を向け、ある者は顔を憤怒に染めた。

 

 

「何故貴女がここに…⁉︎」

「あら、別に良いじゃないですか。こんなにも顔見知りがいるのに、私だけ除け者扱いですの?」

「"夢の世界"で待機せよと指示が下ってはずですが…?」

「あんな穢れだらけの世界にいろと?私は御免ですわ」

 

 

 純狐と綿月姉妹に挟まるように浮いているその人物は飄々とした雰囲気を崩さず、ただ妖美に微笑みかけるだけ。

 

 

 

まさかお前から来てくれるとはな…!嫦娥ァ……!!

 

 

 

 少しずつ、『終わり』へと近づいていく

 

 




 場面飛び飛びですが、許してください…

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