ラブライブ!サンシャインR (χ-u-魚)
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第1話 輝きとの邂逅

 

 

 

 

ンバァアアアアアア...パアアアアアン...

 

ダイヤ「今宵も多いですわね、ルビィ」

 

ルビィ「うゆ、そうだね...今夜の走り屋さん達はどう思う?おねいちゃあ」

 

ダイヤ「そうですわね、有名な言葉を借りるならば…」

 

「ジャリぞろい、ですわね」

 

 

ギャラリー1「おい、見ろよあれ!ジュエリーシスターズのセンチュリーじゃないのか!?」

 

ギャラリー2「すげぇ...沼津の峠を制覇した伝説の走り屋、ジュエリーシスターズだ...」

 

ガヤガヤガヤ...

 

ダイヤ「さ、着きましたわよルビィ」

 

ルビィ「おねいちゃあ、運転ありがとう!」

 

ギャラリー「うわぁ、スゲェ美人...あんななのにドラテクも一級品だなんて信じらんねぇよ!」

 

ルビィ「暇つぶしに来てみたけど、やっぱりめぼしい走り屋さんはいないね」

 

ダイヤ「そうですわね、いつ来ても全く変わり映えしませんわ。まぁ、その方がかえって落ち着くのですがね。」

 

今の私を満たしてくれる物はこの峠にはない。

それが分かっていてもここへ来てしまうのは、憂さ晴らしなのか、輝きを追いかけていたあの時の気持ちを忘れたくないからなのか...

今の私にはそれを確かめる術など、持ち合わせていない。ただ、騒がしくこだまするエキゾースト音と、流れ去っていくテールライトを眺めながら、私は3年前を思い出していた。

3年前、私は友人たちとあるひとつの輝きを追い求めていました。

 

ラブライブ。学生がユニットを組み、アイドルとして活動するスクールアイドルの頂点を決める大会。私達はその頂点の輝きを目指して、日々切磋琢磨していました。

ですが私達は結果として、ステージの上で歌えませんでした。いえ、歌いませんでした。怪我をしても、自分の未来の可能性を捨ててでもラブライブに挑もうとする友人を見ていられなかったから。

しかしそれが原因で私達はすれ違いを起こし、ユニットは解散になりました。

私は、自分の全てを投げ打って挑んでも叶わない夢、届かない場所があることを知り、そこへ挑むことの虚しさを感じました。程なくして、私は無免許で車に乗るようになりました。自暴自棄になっていました。この虚しさを忘れられるなら、どんな事だってすると...

 

 

 

ルビィ「おねいちゃあ、そろそろ帰ろ?これ以上はここにいても何もないよ。」

 

ダイヤ「ここへ来てもう2時間ですわね...帰りましょうか。」

 

沼津一帯の峠を制覇してもなお、この虚しさは消えてはくれません。あぁ、この虚しさは、いつになったら消えてくれるのでしょう...

 

ヴオオオオオオオ...

 

ルビィ「うゆ?何この音?聞き慣れないね、このエンジン音」

 

ダイヤ「? えぇ、あまり聞いたことのないエンジン音ですわね...近づいてきてるみたいですし、確かめてみましょうか。」

 

ヴオオオオオオオオオオオオバアアアアアアアアァァァァン

 

「!!!!!!!!!!」

 

ダイヤ「行きますわよ!ルビィ!!!」バタン!!

 

ルビィ「お、おねいちゃあ!?どうしたの!?」

 

ダイヤ「早く!!!!」

 

ヴバアアアアアババババババ!!!!

ギャギャギャギャギャギャギャギャ!!!!!!

 

ギャラリー「ジュエリーシスターズのローンチコントロールだ!!!!スゲェーーー!!!!!」

 

久しぶりにローンチコントロールなんてやってしまいましたわ。ですが、それほどまでにあの車は私の心を強く惹き付けたのですわ。私達の目の前を駆け抜けて行った白い流星の正体、それは...

 

 

軽トラですわ。

 

 

 

バアアアアアアアアアア!!!

 

ルビィ「ど、どうしちゃったのおねいちゃあ!こんなに飛ばして!」

 

ダイヤ「あの軽を追いかけてるのですわ。」

 

ルビィ「確かにあの軽トラしゃんけっこう速かったけど、おねいちゃあが相手するほどじゃないと思うよ!ストレートでスピードが乗ってただけだし!」

 

ダイヤ「...いいえ。あの軽は只者ではありませんわ。見た瞬間、身体中に電流が走りましたもの。」

 

ルビィ「け、軽トラしゃんだよ!?いくらなんでもこのセンチュリーしゃんに勝てるわけないよ!」

 

ダイヤ「ッ!!...それは、走ってみてからでないと分かりませんわよ、ルビィ。」ニヤリ

 

あの軽トラの姿を捉えましたわ。日産のクリッパートラックですわね。ナンバーは...白!?...あぁ、オリンピックナンバーですのね。ですがこの車から発せられるオーラは、只者ではありませんわ!どこまでやれるのか、見せて頂きますわよ!!!

 

ヴォオオオオオオオ!!!!!

バアアアアアアアア!!!!!

ギャギャギャギイイイイ!!!

 

フフフ、なかなかにやりますわね。ですがそれくらいでないと拍子抜けですわ。

 

しかし!この緩いコーナーの先はタイトな低速コーナーセクション!私のセンチュリーではパワーがありすぎて踏んでいけませんが、それは向こうも同じ!軽トラの車体と足回りでは、どうしても横Gで車体がロールして姿勢が崩れるため、踏んでいけない!さぁ、どう切り抜けるんですの!

 

ヴォオオオ ヴァオッッ ヴァオオオオオ!!!!

ギャギャギャギャギャ!!!!!

ヴァアアアアアアア!!!!

 

ダイルビ「!?!?!?」

 

ルビィ「どうしてあんなスピードで!!」

 

ダイヤ「コーナーをクリアしていけるんですのおおお!?!?」

 

不可解ッ!不可解ですわ!あんなスピードで突っ込んでおきながら、リアを滑らせてはいなかった...ドリフトではなく、グリップでクリアした…あんなスピードで突っ込んだら、間違いなく横転クラッシュだと言うのに...!

 

ルビィ「見てた?おねいちゃあ...あの軽トラしゃん、車体が全くロールしてなかったよ...!!!」

 

「!?!?」

 

もしや、サスペンションのセッティングを変えている?いえ、軽トラなどの足回りはマクファーソンストラット式...セッティングを変えたくらいで曲がっていけるわけがありませんわ...だとすれば一体何なのです!?くぅぅぅぅ!ますます理解不能ですわッ!!!

 

ルビィ「おねいちゃあ!もうすぐ峠が終わっちゃうよ!」

 

ダイヤ「ハッ!離されるまいと必死で、コースの現在地を失念していましたわ...」

 

ダイヤ「大人気ないようで少々心苦しいですが、エンジンパワーに任せて、この先のハイスピードセクションで取り返させて頂きますわよ!

吠えなさい!1GZォ!!!!!」

 

バアアアアアアアア!!!!!!

 

ヴォオオオッ ンヴァアアアアッ ンヴァアアアアアアア!!!!!

 

ダイヤ「そんなッ!?!?!?」

 

ルビィ「ピギィ!!!!」

 

差が縮まるどころか...離れていく...!!!

有り得ませんわよ…だってここはハイスピードセクション、しかもストレートですわ...

それなのに、5リッターV12のセンチュリーが、たかだか660CCの軽トラに、加速勝負で負けるなんて...!

悪い夢でも見てるんですの!?それとも片バンク死んでしまったんですの!?

有り得ません...有り得ませんわッ!!!

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ルビィ「軽トラしゃん、すっかり遠くに行っちゃったね…」

 

ダイヤ「...えぇ...久しぶりですわ...」

 

ダイヤ「こんなにも心が踊るのは...!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第2話 彼女の『日常』

 

 

 

千歌「ふわあああああ~~~」

 

曜「うわ、千歌ちゃん大きなあくびだね...またお店の手伝い?」

 

千歌「そうなんだよぉ〜、お父さんも志満ねぇも、こぉーんなうら若き少女に朝早くからジュウロウドウさせすぎなんだよ〜」

 

曜「中学に上がってからずっとだっけ?大変だね〜。」

 

千歌「いいなぁ曜ちゃんは。家族にこんな理不尽な使いっ走りさせられてなくて!決めた!私曜ちゃんの妹になる!」

 

曜「いつでも大歓迎であります!...じゃなくて、そんな冗談言わないの!志満ねえたち悲しむよ?」

 

千歌「えぇ〜〜〜...」

 

曜「そういえば部活、どうするの?静真に統合になってからまだ決めてなかったよね?」

 

千歌「う〜ん...そうは言っても、うちの手伝いあるしなぁ〜...」

 

曜「...まぁそうだよね、なんかごめんね?変な事聞いちゃって。」

 

千歌「いやいやいや!曜ちゃんが謝ることないよ!悪いのはうちの家族だから!もういっそ直談判するよ!私の代わりに美渡ねえをこき使ってくれって!」

 

曜「あはは!そんな事言わないの、美渡ねえに聞かれたらこってり絞られちゃうよ?」

 

千歌「あ、それもそうか〜!」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

曜ちゃんと一緒になにかできる機会、これでもう最後だもんな〜...私達ももう高校3年生だし...

なにか一緒にできること、ないかなぁ〜...

"うちの手伝い"、一緒にやる?...いやいや流石にダメだよ!危ないし!あんなの大事な友達にさせたくないよ〜...どうしよう、時間がどんどんなくなってっちゃうよ〜!

 

千歌「うわぁーーーん!どうすりゃいいのーーー!!!」

 

「あ、千歌じゃん。やっほー。」ドゥンドゥン!!

 

千歌「あ、果南ちゃん!」

 

 

果南「へぇ〜、これが最後のチャンスだから、一緒になにかしたいってねぇ〜。」ドゥンドゥン!!

 

果南「アルバイトとかやってみたら?って言っても、この辺じゃまず募集ないもんね〜」ドゥンドゥン!!

 

果南「まぁでもあたしらも、卒業してからも頻繁に会ってるからそんな心配することないんじゃない?」ドゥンドゥン!!

 

千歌「...ごめん、全然聞こえない...」

 

果南「え?なんて?」

 

千歌「きーーこーーえーーなーーいーー!!!」

 

果南「あ、あぁ〜!」ドゥンドゥン...

 

千歌「いっっつも思うんだけど、果南ちゃんの車派手すぎだよ!なんかいつも光ってるし、ユーロビート?って言うんだっけこういうの?ずっと大音量で流れてるし、何より見た目が怖い!夜中のドンキにいるヤンキーと変わんないよ!」

 

果南「えぇ〜そうかなん?私これ結構気に入ってんだけどなぁ〜。特にこの、でぃーえーでぃーってやつ。なんかカッコイイじゃん。」

 

千歌「ヤンキーみんな貼ってるよこれ!果南ちゃん穏やかなのにこういうところだけ何か飛び抜けてるよね。」

 

果南「いいじゃん、ギャップ萌えってカンジで?よく知らないけどさ。」

 

果南「そういえばさ、"うちの手伝い"の方はどうなの?夜中にやってんでしょ?」

 

千歌「相変わらずきついよ〜!あれだけやってたら道も覚えちゃうけど、とにかく眠いんだもん!居眠りしないようにするのが精一杯だよ〜...」

 

果南「ほうほう、それで"あのレベル"なんだ〜、...恐ろしいね〜。」

 

千歌「え、どうしたの?」

 

果南「なんでもないよ。それよりほら、家着いたよ。」

 

千歌「ほんとだ!送ってくれてありがと〜!

果南ちゃんとこも今度遊びに行くね!」

 

果南「うん、いつでも来な〜。基本暇してるから。」

 

千歌「分かった〜!じゃあね〜!」

 

ブオオオオオオオ...ドゥンドゥン...

 

 

ピピピピ ピピピピ ピピピピ

 

千歌「...んえ...あ、配達...」

 

千歌「ほはほょ〜」アクビ

 

志満「千歌ちゃんおはよう。今日も頼むわね〜。」

 

千歌「う〜ん。分かった〜。」

 

 

今日もみかんいっぱいだなぁ...眠気覚ましにいっこたーべよ...!

美味し〜!眠いけど、今日も頑張るか!

 

キュキュキュ...ヴォゥ!!ドゥドゥドゥ...

 

エンジンの調子は...っと

 

フォォン!!フォォン!!フォォォォン!!!!

 

よし、大丈夫そう。じゃあ今日も行きはゆっくり、帰りは超特急で!

 

千歌「全速前進、ヨーソロー!ってこれは曜ちゃんか。」

 

ヴォオオオオッ ヴァオオオオオッ ヴァオオオオオ...

 

 

 

「そう...あれが...」

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

曜「あはは、千歌ちゃんまた眠そう。今朝もお疲れ様であります!」

 

千歌「でへへ〜...曜ちゃんの笑顔が眩しくて癒されるよ〜...」

 

曜「うわぁ〜、なんかオジサンみたい!」

 

千歌「えぇっ!?曜ちゃん酷いよ〜!私18歳だよ!?」

 

アハハハハハ!!!

 

「高海さん、ちょっといい?」トントン

 

千歌「ぅえっ、なに?」

 

 

 

 

桜内「私とね、バトルして欲しいの。」

 

 

 



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第3話 初めての公道バトル

 

 

 

 

 

千歌「...へ?ばとる?」

 

曜「えっ、なにそれ?」

 

桜内「私は桜内梨子。詳しい事は後で話すから、放課後校舎裏に来てもらえる?じゃ。」スタスタ

 

 

曜「千歌ちゃん、バトルってなに!?格闘技とか習ってたの!?」

 

千歌「いやいやいやそんなわけないじゃん!やるんだったら曜ちゃんも誘うし!」

 

曜(えっ、それって...)

 

千歌「それより、あの桜内さんって人だよ!多分誰かと勘違いしてるだろうから、放課後誤解といてくるよ!」

 

曜「いや、案外分かんないかも!実は千歌ちゃんの知らないところで、桜内さんの恋敵に...とか!」

 

 

想像桜内『高海さん。貴方は私にとって邪魔です。貴方がいるとあの子が私に振り向いてくれないの。だから今ここで決着を付けましょう...いざ!』

 

 

千歌「何そのラブコメみたいな展開!もしホントだったら笑えないよ〜!」

 

 

ー放課後ー

千歌「あの〜桜内さん、バトルってなんの事ですか?」

 

桜内「単刀直入に言うわね。私と、車でバトルしてほしいの。あなた、車に乗ってるでしょ?」

 

千歌「う、うん...(ええええ〜!なんで私が車に乗って配達してること知ってるの〜!?)」

 

桜内「見たのよ。あなたが車を運転してどこかへいくのを。それであなたが只者じゃないってすぐに分かったわ。」

 

千歌(なんかこの子、すごくグイグイ来るなぁ...)

 

桜内「別に断ってくれてもいいのよ?私のワガママだし。」

 

千歌「あっ、じゃあ遠慮しときm

桜内「でもその代わり、あなたが無免許で車に乗ってること、学校にバラしちゃうかも。」

 

千歌「......分かった、バトルするよ。」

 

桜内「話が早くて助かるわ♥じゃあ、金曜の夜にいつも通ってる峠でね!」タタタッ

 

千歌「選択肢ないじゃん...」ヘナヘナ

 

ルビィ(金曜の夜にバトル...!絶対面白いよ!おねいちゃあに知らせなきゃ!)

 

 

 

曜「それでどうなったの?あの子とは。」

 

千歌「それがさ〜、勘違いじゃなかったし、バトル受けるしかなくなっちゃったんだよ〜...」

 

曜「えぇ〜!?バトルの内容ってどんななの!?」

 

千歌「それなんだけど、ごめん!どうしても言えないんだ!色々と事情があって...」

 

曜(えっ...)

 

曜「そ、そうだよね〜!校舎裏で話すぐらいだもん、そりゃ聞いちゃまずいよね〜!」

 

千歌「曜ちゃん、ほんとごめんね!」

 

曜「い、いいよ〜!...」

 

 

小さい頃からずっと一緒にいた千歌ちゃんが、私に言えない隠し事をしてる...

私の知らないところで、千歌ちゃんが一人で戦おうとしてる...

 

私って、そんなに役不足なのかな…

 

 

 

 

ダイヤ「当ッ然!!見に行くに決まってますわよ!非常に興味深いですわ!」

 

ルビィ「えへへっ!きっとおねいちゃあが喜ぶと思ったんだぁ!」

 

ダイヤ「んまー可愛い妹でちゅわね〜!」

 

 

果南「へぇ〜、千歌がバトルかぁ。初めてなんじゃない、そういうの?」

 

果南「ま、美渡ねえと志満ねえの特訓がどれくらい身についてるか、確かめるにはちょうどいいんじゃない?」

 

千歌「果南ちゃん、なんの話してんの?」

 

果南「ん〜?なんでもないよ?(折角だし、見に行ってみるかぁ)」

 

 

曜(千歌ちゃんに、こっそりついて行ってみようかな)

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

ガヤガヤガヤ...

 

ダイヤ「いつもと変わらないところを見ると、ほかのギャラリーは何も知らないようですわね。しかし、思いの外早く着きすぎましたわ...」

 

ルビィ「ルビィも、ワクワクしすぎて授業に集中できなかったよ〜!」

 

ダイヤ「ところでルビィ、ひとつ聞きたいことがあるんですが。」

 

ルビィ「うゆ??」

 

ダイヤ「そのトヨタ アリストはもしや...」ワナワナ

 

ルビィ「うゆっ!!おばあちゃあの形見だよっ!!」キャッキャッ

イエローフォグ交換

フルストレートマフラー

ローダウン

フルエアロ

 

ダイヤ「んまーーーーーーーーっ!!!!!」

 

 

果南「お、賑やかだねぇ〜」

 

果南「まあ金曜の夜だし、人は多いよな〜...って、あれ...」

 

果南「ダイヤじゃん...」

 

 

 

桜内「高海さ〜ん!こっちよ〜!」

 

(あ、いた)ペコリ

 

桜内「この時を心待ちにしていたの。すごくワクワクしてる!」

 

千歌 「こちらこそ、よろしくお願いします...」

 

桜内「じゃあ早速ルール説明をするわね。

あのコーナーを曲がったところでスタートするわ。先行後追い形式で、どっちかが突き放すか追い越すまで上りと下りを繰り返してアタックする。それでいいかしら?」

 

千歌「え、あ、うん、それでいいよ!」

(どうしよう、専門用語多くて分かんなかった...)

 

桜内「...後追いはあなたに譲るわ。きっと高海さんなら私についてこれると思うから。」

 

千歌「そうなんだ〜、ありがと〜!」

(ありがたいことなのかな?)

 

桜内「じゃあそろそろ始めましょうか。これはバトル、手加減は無しよ?全力でお願いね。」

 

千歌「分かった。全力で走るよ!」

 

バタン

 

千歌「とは言ったものの、ルール分かんないから手加減も何もできないよ〜!後追いだから、私が桜内さんを追い越したら勝ちってことでいいんだよね?」

 

桜内「ついてこれるとは言ったものの...正直大人気ないわよね。だって向こうが660CCの軽トラなのに対して、こっちは1.3Lターボですもの。車体構造もまるっきり違うし...」

 

桜内「ま、このバトルを受けたのは高海さんの方だし、手加減してあげる義理もないから卑怯だろうとなんだろうと全力で行くだけよ...私とこの、ZC33sでね!」



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第4話 決着!千歌対梨子

ブオオオオォォォォォッ パシュン!

 

桜内「フフッ、しっかり着いてきてるわね...そうでなくちゃ。」

 

やっぱり期待通りの走りをしてくれる。私も高海さんも無免許。家は隣同士だし、こんな偶然ってあるかしら?

 

そもそも私が無免許で車を運転するようになったのは、内浦に引っ越してきてからだった。当時の私は得意だったピアノでスランプに陥って、学校の雰囲気についていけなかった。インスピレーションを養うためと、一度ピアノから距離を置くという意味で自然豊かな場所で暮らすことにした。でも私のスランプは続く一方だった。ストレスが溜まる中で、ほんの好奇心から、うちで使っている車...このスイフトスポーツにこっそり乗ってみた。うちのはATだったから、運転に慣れるまでそう時間はかからなかった。

 

とても楽しい!

乗りこなせるようになってきて初めに思ったことだった。誰かに見つかるのが怖くて夜しか運転してなかったけど、月明かりに照らされる内浦の海を見たり、夜景を見に行ったりもした。でもそれ以上に、鉄の塊を操るという爽快感がたまらなかった。初めてピアノを触った時に覚えた感動ととてもよく似ていた。自分の意のままに音を紡ぐことが出来るピアノと車の性質が似ていたからなのかもしれない。

私はそのうち、峠に足を運ぶようになった。スイフトスポーツは軽くて小さくて、だけどパワーがしっかり出るエンジンを積んでいるから、峠をとても走りやすかった。コーナリングやブレーキングの際に全身に掛る横Gが心地よいくらいだった。この車とならもう誰も怖くない!私はそうやってスイフトスポーツにのめり込んで行った。そして、走ることを心から楽しんでいた。

 

そんな時だった。私の目の前に高海千歌さん、あなたが現れたのは...

 

ブオオオオオオオ!!!

 

ヴァオオオオオオ!!!

 

千歌「ちょっと車間近いかなぁ?桜内さんに何かあった時が怖いから開けてるけど...でも追い越さないと負けちゃうしなぁ...」

 

千歌「よし!ちょっと先のくねくね道で追い越そう!あそこ走るのは自信あるんだよねー!」

 

桜内「もう少ししたらギャラリーのストレート、そしてそこからまた少し行けば中低速セクション。いくらあなたの車が軽トラで軽いからって、パワーがなければ私に勝つことはできないわよ!このまま2本目に持ち込んで、上りのパワー勝負で決着を付けるわ!」

 

 

ザワザワザワ...

 

...ォォォォン...

 

ギャラリー「おーい、なんか来るぞー!道開けろー!!」

 

ダイヤ「いよいよ来ましたわね、注目のバトルですわ。」

 

ルビィ「どんなバトルになってるんだろう!楽しみだね!」

 

果南(千歌...あんなじゃじゃ馬を5年乗って、どれほどの腕になってるか見せてもらうよ)

 

桜内「さぁ!このストレートで一気に引き剥がすわよ!ついてこれるなら来てみなさい!」

 

キュゥゥボアアアアアアアアア!!!!

 

千歌(あっ、桜内さんがスピードあげた!)

 

千歌「それならこっちも!」

 

ヴォオオアアアアアア!!!!!!

 

ギャラリー「2台突っ込んできたァ!」

 

ダイルビかな「!!!」

 

 

ルビィ「スイスポしゃんと!!!」

 

ダイヤ「あのクリッパーですわあーーー!!」

 

 

桜内(付いてきた...!?まさかそんな...有り得ない、きっと私の踏み込みが甘かったんだわ…この先の中低速セクションでキッチリカタを付ける!)

 

千歌(よぉーし、もうすぐくねくね道だ!桜内さん、覚悟ーっ!!)

 

ブオオオッ パシュブオオッ パシュブウオォォォ!!

 

ヴァオオヴァオオヴァオオオオオ!!!

 

千歌「行けるっ!今だ!」

 

桜内(こんなコーナーでオーバーテイクですって!?)

 

桜内「させないわよ!」クンッ!!

 

ギャギャッ

 

千歌「邪魔してきた〜!?」グッ

 

ギャギャギャッ!

 

桜内(危なかった...でもどういうこと!?コーナリングスピードが明らかに私よりも速かった...!スイフトでもかなり横Gかかるコーナリングなのに、それでなんでクリアできるの!?)

 

千歌「もぉ〜!ぶつかりそうだったじゃん!次こそは追い越してやる!」

 

ヴァオオォォ ヴァオオォォ!!!

ギャギャギャギャ!!!

 

桜内「また来た!」クンッ!

 

千歌「げぇ〜!また塞がれた!ならもう一回!」

 

桜内(ありえないわ...リッターオーバーのターボ車が、ただの軽トラに突っつかれてる!?)

さっきのストレートしかり、やっぱり何かがおかしい!この車の不調?そんなはずはないわ、だってそれならこの峠へ来るまでに気付くはずだもの......とすると、こっちの不調ではなく、向こうに何かとんでもないカラクリがあるっていうの!?

 

千歌「んも〜怒ったぞ〜!おこりんぼ大会だ〜!!S字カーブで絶対追い抜いてやるんだもん!」

 

桜内「この先はS字コーナー...進入で向こうのアタマさえ押さえ込んでしまえばやり過ごせる!)

 

ヴァオオオオオヴァオオヴァアアオ!!!!

 

桜内「!!??」

 

離れた...減速タイミングが早い!?ローパワー車で立ち上がり勝負するつもり!?

 

 

千歌「行っけえぇぇぇぇ!元気全開だああぁぁぁぁ!!!

 

ヴォオオオオアアアアアアア!!!!!!

 

桜内「アウトからッ...!!」

 

速い!?

しまった、ブロックが間に合わない!

 

ヴァアアアアン!!!!!!

 

桜内「追い...抜かれた...」

 

ほんの一瞬だった。減速が早いことに一瞬気を取られた。アウト側にラインを取ったと思った時には、既にブロックできない距離まで詰められていた。S字コーナーではインとアウトが入れ替わるけど、私はものの見事に走行ラインから押し出される形になった。

あの軽トラが只者ではないことに気付いていたはずなのに、『立ち上がり勝負で勝てるわけがない』と、一瞬でもタカをくくった私の負けだ。

 

完敗だわ...高海さん...

 

 

千歌「もぉ〜!もう少しでぶつかりそうだったじゃん!危ないよ〜!」

 

桜内「ごめんね?でもバトルってそういうものだし…」

 

千歌「あぁ、そっか!そういえばバトルしてたんだった!あっははは...」

 

桜内「でもすごいね。あのS字コーナー、あんなに見通しが悪いのにあんな速度で抜けていこうだなんて、普通だったら思いつかないわよ?」

 

千歌「うーん、でももう5年も走ってるし道がどんな感じかなんて覚えちゃってるんだもん。」

 

桜内「5年!?」

 

千歌「はっ、しまった!あんまり人に言っちゃいけないんだった...!」

 

5年もこの道を走ってて、あんなキレた走りができるのに、車をおりるとどこにでもいる女子高生と何ら変わりなくなる...

 

梨子「ほんと...変な人ね...」フフッ

 

千歌「あ〜!それどういう意味〜!?」

 

梨子「なんでもないわよ♪それより、梨子でいいよ、名前。」

 

千歌「分かった!じゃあ私も千歌でいいよ!よろしくね、梨子ちゃん!」ダキッ

 

梨子「えっ、えぇぇぇ!?!?////」

 

 

 

 

ー少し前ー

 

キコキコ...

 

千歌ちゃん、バトルするって言うから出かけるだろうとは思ってたけど、まさか車を運転して出かけちゃうなんて...

千歌ちゃんが車を運転できるなんて知らなかった...ずっと一緒にいたのに...

 

曜「確か、こっちに行ったよね...」

 

 

『あ〜!それどういう意味〜!?』

 

 

千歌ちゃんの声?あの駐車場からだ...

誰と話してるのかな?

 

『よろしくね、梨子ちゃん!』ダキッ

 

 

 

 

 

曜「そんな......どういう事......?」

 

 

 

 

 

 



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第5話 †天使たちの戯れ†

カタ...カタカタ...

「フフ...ククク...!時は満ちた...さぁ、今こそ我が力を解放する時...!」

 

カタカタッターン!!!

 

『来店予約が完了しました』

 

「あとは我が眷属が召喚されるのを待つのみ...」

 

「ふぅ...あ、ママ〜!この車でよかったんだよね〜?」ドタドタ バタン!

 

メルセデス・ベンツ SL55 AMG

 

 

花丸「ずらぁぁぁぁああああ...」

 

ルビィ「どうしたのヘナールチャァ、そんなにため息ついて」

 

花丸「オークションでまたブロックされたずら...マルはただ質問を送っただけずら!酷い輩ずら!」

 

ルビィ「へ、へぇ〜、ちなみになんて送ったの?」

 

花丸「これを見るずら!」ズイッ

 

ZRMR『恐縮ですが質問させていただきます。こちらのEJ20エンジンは以前スバル インプレッサスポーツワゴンで使用されていたと書かれておりますが、日産 モコに搭載は可能でしょうか?お返事頂けると幸いです。』

 

出品者『逆になんで載ると思うんですか?』

 

この出品者にメッセージを送ることはできません

 

ルビィ(日産モコにEJ20エンジンを積もうなんて、ヘナールチャァ、気でも触れちゃったのかな)

 

花丸「もうこれで5件目ずら...なんでこんな簡単な質問しただけで突っぱねられるずら...世間は世知辛いずら」

 

ルビィ(どう考えても乗るわけないって気付かない方もなかなかだよ、ヘナールチャァ...)

 

花丸「オラのモコに今必要なのは絶対的なパワーずら!圧倒的なトルク!そこから生み出される加速力!パワーずら...パワーずらあぁぁぁ!!!!」

 

ルビィ「ピギィ!ヘナールチャァがついに壊れちゃったよぉ!」

 

担任「ホームルーム始めるので席に着いてくださーい。出席を取ります…って、津島さんは今日も来てないのね...。」

 

花丸「善子ちゃん...」

 

 

 

ー昼休みー

 

ルビィ「あ、そうだヘナールチャァ!最近ね、峠に面白い車が来てるんだよ!」

 

花丸「面白い車?」

 

ルビィ「そう!見た目はただの軽トラなんだけど、ものすごく速いんだ!おねいちゃあのセンチュリーでもちぎられちゃったんだよ!」

 

花丸「ダイヤさんのセンチュリーがちぎられたずらか!?にわかには信じ難いずら...それは是非とも見てみたいずら!」

 

ルビィ「でしょ!だから今週末の夜、一緒に峠行こ?」

 

花丸「あ〜でも、オラのモコはエンジンの調子悪いから〜。もしその軽トラと会えても走れないずら。」

 

ルビィ「大丈夫だよ!ルビィが迎えに行くから、横乗りしてもらえれば一緒に行けるから!」

 

花丸「ずら?ルビィちゃんって車持ってたっけ?」

 

ルビィ「ふっふーん!それは今週末のお楽しみだよ!」

 

善子ママ「ありがとうね、善子。あなた学校行ってないからってこのまま引きこもりになっちゃうんじゃないかって、母さん心配してたのよ。」

 

善子「ママには浦の星にいた時から迷惑ばっかりかけてるから...学校には行けてなくても、自分の力で生きていけるってことを証明したかったの。」

 

善子「その証明としてこの車をママにプレゼントするわ!」

 

 

私、堕天使ヨハネは学校へ行っていない。この世に生まれ落ちたその瞬間から、この世の叡智を授けられたから行く必要などないのよ。決して周りに馴染めなかったとかじゃないわ。もし仮に、万が一そうだったとしても、堕天使という存在は元来孤独なもの...一人で生きる運命にあるのよ...。

しかしこの世界での私は仮にも学生。私は同居人に己の力を見せるため、リトルデーモンのアーティファクト、スパチャを使って同居人に車を買い与えたわ。実に2年...堕天使の寿命からすればほんの一瞬だったわ。車はよく分かんなかったから、べんつとかいう高級車にしたわ。

 

 

善子ママ「ありがとうね...善子!大切にするわ!」ウルウル

 

善子「ッ...!!うん!!」

 

...いけないいけない。危うく絆されるところだったわ。

ヨハネが車を手に入れた目的は、本当はもう一つあるのよ...。

 

キュキュキュ フヴォオオン!!!

 

善子「フフフ...堕天使は夜の漆黒の闇でこそ、輝けるというもの...いざ!約束の地、ラグナロクヘ!」

 

フゥゥヴォォォアアアアア!!!!

 

 

花丸「ルビィちゃん、迎えに来るって言ってたけどどうやって来るんだろう...いつもダイヤさんのセンチュリーに横乗りしてただけだったのに。」

 

...バアアアアアアアア!!!

 

花丸「遠くでもうるさいずらねぇ...こんな夜中にど直管で走ったら警察呼ばれることくらい察しろずら...」

 

バアアアアアアアア!!!!

花丸「って、音がだんだん近づいてくるずら...まさか...!」

 

バアアアアブアアブアアブアアアアア!!!!!!!!!

 

ルビィ「花丸ちゃ〜〜!!!」

 

花丸(げぇぇ!!音の正体はルビィちゃんだったずら...!)

 

ブアンブアンブアンブアアアババババ!!!!!

 

ルビィ「迎えに来たよ〜!!!」

 

花丸「わ、分かったから人の家の前でレブ当てするのはやめようね…」

 

 

バアアアアアアアア...

 

花丸「それにしてもアリストなんて、どこから引っ張ってきたずら?」

 

ルビィ「おばあちゃあの形見だよっ!おばあちゃあ丁寧に乗ってたから、すっごくキレイなんだよ!」

 

花丸「おばあちゃんの形見でこんなことしてるずらか...だいぶバチあたりずらね」

 

ルビィ「ヘナールチャアだっておばあちゃあのモコで魔改造してるじゃん!言いっこなしだよ!」

 

花丸「マルのおばあちゃんはまだ死んでないずら」

 

ルビィ「そんな事より!今夜もあの軽トラ来てるといいね!」

 

花丸「そうずらね、センチュリーを振り回して沼津一を取った、あのダイヤさんをちぎる

ほどの腕前、絶対に見てみたいずら...!」

 

 

ガヤガヤガヤ...

 

ヴォヴォヴォヴォヴォオ...

 

バタン

 

善子「着いたわね...約束の地、ラグナロク...」

 

同居人の車が小さな軽だった時からヨハネはここに足繁く通っている。人の道を外れた堕天使たちが夜な夜な集うこの場所が、とても心地よい。皆、夜の闇の中でこそ輝ける夜の眷属...堕天使ヨハネもその一人であるッ!!

でも流石に鉄馬を駆る堕天使たちには辟易したわね...なんて言ってたっけ、確か『繚乱弍死牙裂愛弗同好會』だったかしら...まぁでも、そんな並外れたアウトローすらも包み込むのが夜の闇の素晴らしいところ...

 

...バアアアアアアアア!!!!

 

今宵もまた、闇に飢えた堕天使が来たわね…

 

「今日も来るといいね、あの軽トラ!」

 

「そうずらねぇ...もし来たら追走お願いするずら!」

 

ずら...ずら丸!?なぜここに!堕天使ヨハネの過去を知りし者!気づかれる前にここから行方をくらまさなければ!いやしかし間に合わない...ならば!闇の精霊の力を借りてこの夜の闇に溶け込む術式‪を使えば...!となれば詠唱を!我が名は堕天使ヨハネ...数多の闇の精霊たちよ...我にその力を与え、我の糧となれ...」ボソボソ...

 

ルビィ「...あの人何言ってるんだろう...」

 

花丸「シッ!聞こえちゃうずらよ!ああいう手の人は近づかないことが...って、」

 

「善子ちゃん?」



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第6話 †天使たちの戯れ† †その弐†

善子「何だと!?我が術式をいとも簡単に見破るとはなかなかやるわね...しかも我が名はヨハネ!って...ずら丸!?いつの間にここまで!?」

 

花丸「面白い車を探して歩いてたら、駐車場の隅でブツブツ言ってる人がいたから気になったずら」

 

ルビィ「うゆ、ヘナールチャアこの人と知り合いなの?」

 

花丸「ずら。この子は津島善子ちゃん。オラの幼稚園の時の知り合いずら。クラスで一人だけ来てない子いるずら?あの子ずら。」

 

ルビィ「ど、どうも...黒澤ルビィです...」

 

善子「我が名は堕天使ヨハネ...この夜を司りし者...」

 

花丸「善子ちゃん、浦の星の時からずっと学校来てなかったから心配だったけど、元気そうで良かったずら」

 

善子「善子じゃなくてヨハネ!我が力の源は闇と負のエネルギー。学校などという檻の中では生まれない...」

 

ルビィ「善子さん、ここに来てるってことは峠も走るんですか?」

 

善子「善子じゃなくてヨハネ!私は堕天使たちのロンドを観賞する者...舞台には立たないわ。」

 

花丸「AMGに乗っててそれは勿体ないずら。スペックだけで言えばここにいる車の中ではダントツずら。」

 

善子「AMG?何それ?べんつって言われたから買ったんだけど?なっ、もしや詐欺...!?ククク...この堕天使ヨハネともあろうものが、小賢しい人間の罠にハマるとは...堕ちたものね...」

 

ルビィ「堕天使だったらもう堕ちてるんじゃ...」

 

善子「うげッ...う、うっさいわね!」

 

花丸「ボロ出して恥ずかしいずら。それに詐欺じゃないずら。これはベンツの中でも更に上級のブランド、より速く走ることに重きを置いた、スポーツブランドずら。」

 

善子「つまり、特別...ってこと?フフフ...やはり堕天使ヨハネ、特別な者同士惹かれ合う運命にあるんだわ!」

 

ルビィ「ちょっと変な人だけど、悪い人じゃなさそう...」

 

花丸「そうずら。色々と見ててきついところはあるけど、実はとっても優しいずら。だからルビィちゃんも善子ちゃんと仲良くしてほしいずら。」

 

善子「私が優しい...?フフ...そんな言葉をかけられたのは一体いつぶりかしら...そうね、あれはまだ私が下界へ落ちる前だったかしら?あの日もこんな夜だったわ...」ブツブツ

 

ルビィ「よ、よろしくね!善子ちゃん!」

 

善子「善子じゃなくてヨハネ!でもそうね...貴方を私のリトルデーモン2号にしてあげるわ...」

 

 

 

ボオオオオオオオオ...

 

花丸「今日は来なかったずらね、噂の軽トラ。」

 

ルビィ「うゆ...でもいいんだ!軽トラには会えなかったけど、代わりに新しいお友達もできたから!」

 

花丸「そうずらね。善子ちゃんもあんな感じだけど、裏では多分すごく喜んでると思うずらよ。あんな性格だからあんまり人が寄り付かないし、そもそも善子ちゃんが人と関わるのが得意じゃないから...」

 

ルビィ「そうなんだ...ルビィ、花丸ちゃんと善子ちゃんと一緒に学校でたくさんお話したいな!」

 

花丸「善子ちゃんもだけど、ルビィちゃんはもっともっと優しいずらね。マル、ルビィちゃんと友達で良かったずら。」

 

ルビィ「え、そう!?それほどでもないよぉ〜!」グググッ

 

ボアアアアバアアアアアアアア!!!!!

 

花丸「そ、その調子でもうちょっとご近所さんにも優しくできたらなお良いずら...」

 

 

 

 

久しぶりに、人と話したな...

あんな変なことばっかり言って、普通だったら気味悪がられてもおかしくないのに、あの二人は最後までずっと変わらず接してくれた...

また、会えるといいな…。

 

善子「そろそろ帰るか…」

 

フヴォオオン フヴォオオン フヴォオオオアアア!!!

 

 

フヴォオオオオオ...

善子「少し遅くなりすぎたわね...ふあ...少し眠いわね、ゆっくり帰ろ...」

 

チカッ チカチカッ

 

善子「?...何かしら、後ろの車?」

 

チカチカッ チカチカッ

 

善子「なに...退けって事かしら?分かりましたよー、っと」

 

ウゥヴォオオオオオオオ!!!!

 

うわ、すごいスピードで追い越して行ったわ...それにしても随分シャープなデザインの車だったわね、エンブレムはLのマークで高級感漂う感じ...セレブでも乗ってるのかしらね。

 

 

「沼津...久しブ〜リデスね〜♪」

 

ウゥヴォオオオオオオオ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 



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第7話 対決前夜、それぞれの思い

久しぶりに、この番号に電話をかける。昔はいつも一緒にいたのに、今では電話どころかメッセージすら送らない。いつからこうなったのだろう。

本当は分かっている。きっとあの日から、心は離れ始めていた。離れ始めた心をもう一度つなぎ止めてくれる存在は、1台の軽トラだった。

 

『お久しぶりですわね、果南さん。』

 

果南「久しぶり。実はダイヤに話があるんだ。」

 

ダイヤ『数年も話さなかったのにこんなタイミングで電話をかけてくるんですもの、余程のことなんでしょうね。』

 

 

 

果南「ダイヤ、あのクリッパートラックとバトルしてみたくない?」

 

 

 

千歌「ジュエリーシスターズ?」

 

梨子「そう。私も詳しくは知らないんだけど、あの峠を拠点にして、沼津の峠を制覇したすごいドライバーがいるんだって。千歌ちゃんなら見たことあるかなって思ったんだけど。」

 

千歌「そうは言ってもな〜、私、人と走ったのこの前梨子ちゃんとが初めてなんだよ〜。」

 

千歌「それ以外はいっつも朝早くに運転してるから、そういう人たちと会うことは少ないんだよね。」

 

梨子「そうなんだ。千歌ちゃんすごく運転上手いから、もしかしたらその人たちと競ったら勝てちゃうかもしれないと思ったんだけどね。」

 

千歌「やだな〜、そんな褒められるほどの事じゃないよ〜!」ニヘニヘ

 

梨子「本音は顔に出てるけどね?」

 

千歌「えぇ?そうかな?そんな事ないよ〜!ねー曜ちゃん!」

 

曜「......」ボー

 

千歌「曜ちゃん?曜ちゃーん?」

 

曜「......」ボー

 

千歌「曜ちゃんの一番好きな制服は?」

 

曜「水兵さんのセーラー服...ハッ!どうしたの千歌ちゃん?」

 

千歌「それはこっちのセリフだよ〜。どうしたの曜ちゃん?なんか元気ないよ?」

 

曜「う、ううん!!なんでもないよ!ちょっと最近部活が忙しくてね!」

 

千歌「そっか〜、あんまり無理しないでね?」

 

曜「...うん」

 

梨子「......」

 

千歌「あ、果南ちゃんからメッセージきてる。放課後松月集合か〜。暇だしいっか。おっけー、わかったよ、っと。」

 

梨子「どうしたの?」

 

千歌「ん〜、友達から放課後に呼ばれたんだ。ちょっと話すことがあるから来てって。曜ちゃんと梨子ちゃんも来る?」

 

梨子「えぇ?いいの?込み入った話かもしれないのに。」

 

千歌「大丈夫でしょ。そんなに大事な話するような人じゃないし。曜ちゃんも行こ?」

 

曜「...いや〜、私はいいかな〜」

梨子「いや絶対行きましょ!」グイッ

 

曜「ゔぇっ!?」

 

梨子「千歌ちゃんも大丈夫って言ってるから。だから行きましょ?」ゴゴゴ...

 

曜「桜内さん...圧が強いよ...」

 

梨子「そう?気のせいだと思うけど。あと、梨子でいいよ。」

 

曜「は、はぃぃ...」

 

千歌「やった!じゃー決定!」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

ー松月にてー

 

千歌「......」

 

梨子「.......」

 

曜「......」

 

ダイヤ「......」

 

果南「早速なんだけどさ千歌、ダイヤとバt」

ダイヤ「ちょっとお待ち頂いてもよろしくて!?」

 

ダイヤ「聞いてた人数とだいぶ違うのですけれど!?」

 

果南「だねぇ。まぁいいじゃん、そんな大した話じゃないんだし。」

 

ダイヤ「電話越しにあれだけ重苦しい雰囲気で切り出しておきながら、ちょっと能天気すぎませんこと!?」

 

千歌「果南ちゃんって、昔っから何か考えてるようで何も考えてないこと多いんですよね〜」

 

ダイヤ「えぇ、確かにそうですわね。長い付き合いですのに、この人のアイデンティティとも言える部分を失念しておりましたわ。」

 

果南「えぇ〜、長い付き合いなのに忘れられちゃってるのちょっと傷つくな〜。」

 

ダイヤ「長い付き合いと言いながら、2年ほど連絡を取らなかったのはお忘れですの?」

 

果南「長い付き合いって先に言い出したのはダイヤじゃんか〜。」

 

ダイヤ「うぐっ...何も考えてない割には痛いところを突いてきますわね...!」

 

千歌「なぁんだ、2人とも仲良いんじゃん!」

 

果南「そうでしょ〜?ダイヤとは長い間話さなくても阿吽の呼吸なんだよ〜」

 

ダイヤ「黙らっしゃい!」

 

ようりこ(私たちは何を見せられてるんだろう...)

 

 

ダイヤ「コホン。先程は取り乱してしまい失礼しましたわ。黒澤ダイヤと申します。よろしくお願いしますわ。」

 

千歌「高海千歌です!よろしくお願いします!」

 

果南「自己紹介も済んだ所で、本題に入ろうか。千歌。ダイヤと車でバトルしてほしいんだ。」

 

千歌「それはいいんだけど、どうして?別に私じゃなくても他にあそこ走ってる人はいっぱいいるのに。」

 

果南「いや、千歌じゃないとダメなんだよ。これはただのバトルじゃない。千歌とダイヤ、両方の実力を見定めるためのものだからね。両者とも運転の腕は同じくらいだから。」

 

梨子「ちょっと待ってください。」

 

果南「お、どうしたのかなん新顔ちゃん。」

 

梨子「桜内梨子です。千歌ちゃんとは一度走ってるので分かるんですけど、千歌ちゃんのレベルはかなり高いと思います。少なくともあの道ではトップレベルだと思います。ダイヤさんには失礼ですが、到底かなうレベルではないかと...」

 

ダイヤ「む...」

 

果南「そうだね。もしダイヤが並の腕なら間違いなくかなわない。でも梨子ちゃん、君もこの『地域』を走ってるんなら一度は聞いたことあるんじゃないかな?」

 

梨子「?......!?」

 

果南「気付いたね。そう。ダイヤは沼津最速の、『ジュエリーシスターズ』の異名を持ってる。」

 

果南「スイフトスポーツ戦で偶然ダイヤを見かけた時、ダイヤの顔はすごく輝いてた。久しぶりにあんな顔を見たよ。そして確信した。ダイヤはもっと成長できる。千歌にはそれができる。そしてそれは逆もまた同じこと。お互いがお互いを成長させることができるんだよ。」

 

果南「だからこれはただのバトルじゃない。2人とも、今自分がどこにいるのかを確かめ、

更に上を目指すためのきっかけ作りなんだよ。」

 

 

 

結果としてこのバトルを千歌は快諾してくれた。私なりに最もらしい理由を作るのに苦労した。互いを切磋琢磨させるためなんかじゃない。はっきり言って、さらに上を目指したところで、その先になにかあるのかと言われても肯定できない。

これは私の単なるエゴでしかない。

 

本当は。

 

本当は、ダイヤの輝いた瞳を見たいだけなんだ。

3人で、同じ場所をひたすらに追いかけていた時と同じ、あの輝きを......

 

 

ついていけなかった。

同じ場所にいたのに、あの場所にいた皆がどこか遠くにいるみたいで、あの場にいてよかったのか分からなくなる。車とか、沼津最速とか、私にとっては全然訳わかんなかった...

 

 

梨子「曜ちゃん。」

 

曜「さくr...梨子ちゃん...。」

 

梨子「ひょっとして、『みんなの話題についていけなくて、仲間はずれにされたかも』って思ってない?」

 

曜「あはは...」

 

梨子「今はそれでいいの。というか、無理に分かろうとしなくていいの。」

 

梨子「曜ちゃんは千歌ちゃんのそばにいてあげるだけ、それで良いんだよ。たとえ今は何もできなくても、いつか必ず、千歌ちゃんが曜ちゃんの力を必要とする時が来るよ。」

 

梨子「じゃなかったら曜ちゃんのこと、初めから誘ってないはずだよ?曜ちゃんを誘ったのは、そばにいて欲しいからだよ。だからそんなに自分を責めないで。」

 

曜「...すごいや、梨子ちゃんは...」グスッ

 

曜「私のこと、全部お見通しなんだもん...」

 

梨子「打ち明け話するけどね、私、浦の星にいた時からふたりがずっと羨ましかったんだ。いつでも一緒で、息もピッタリなふたりが。」

 

梨子「今までそんな深い仲の人っていなかったから、そうやってどんなことも共有できるふたりみたいになりたかったんだ。」

 

梨子「だから、こうやってふたりと繋がりができて、とても嬉しいの。だから、二人の支えになれるならどんな事だってしたい。」

 

曜「梨子ちゃん...私、梨子ちゃんのこと誤解してたよ...。ありがとう...。」

 

梨子「泣かないで。今度のバトル、絶対に二人で応援しに行きましょう?」

 

曜「うん!絶対行こう!」



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第8話 リベンジマッチ センチュリー対クリッパー

ガヤガヤガヤ...

「おい聞いたかよ!ジュエリーシスターズが久々にバトルするらしいぜ!」

「ここいらの走り屋で勝てるヤツはいないだろ、どっかの遠征チームじゃないのか?」

「久しぶりにあの天才的なドラテクが見られるなんて楽しみだなぁ!」

 

 

果南「あーあ、噂が広まっちゃってるなぁ。本当はあんまり知られずにやりたかったんだけど。」

 

梨子「仕方ありませんよ。あのジュエリーシスターズのダイヤさんが動くんですから、ちょっとしたキッカケでも噂はあっという間に広がります。」

 

曜「そんなすごい人とバトルするんだね、千歌ちゃん。なんか不思議な気分だな〜。」

 

 

ルビィ「おねいちゃあ、もうすぐ来るよ!楽しみだね、ヘナールチャア!」

 

花丸「沼津最速バーサス、内浦のダークホース...しかも二人とも実力はほぼ互角...きっとすごいバトルになるずら。」

 

善子「で、なんで私も呼ばれてんのよ...」

 

花丸「普段学校に来ないから、こうでもしないと善子ちゃんと仲良くなる機会はないずらねぇ〜」

 

善子「私には学校なんて必要ないのよ!あとヨハネ!」

 

ルビィ「善子ちゃあ!一緒に応援しよ!」

 

善子「うっ......分かったわよ…」

 

 

......バアアアアアアアア!!!

 

......ヴォオオオオオオ!!!

 

ルビィ「あっ!来たぁ!」

果南「来たね。」

 

「センチュリーだ!いよいよ始まるぞ…!」

「相手はどこにいるんだ!?」

 

 

千歌「ごめんね果南ちゃん!ちょっと遅くなっちゃった!」

 

ダイヤ「随分騒がしいですわね、どこかから話が漏れていたのでしょうね。」

 

果南「そこはもうしょうがないよ。バトルは賑やかな方が面白いし、このままやろうか。二人とも、車の調子は大丈夫?」

 

千歌「私のは大丈夫だよ!」

 

ダイヤ「...私も大丈夫ですわ。いつでも行けます。」

 

梨子「千歌ちゃん、頑張ってね!」

 

曜「事故だけはしないでね!」

 

千歌「分かった!私、頑張るよ!」

 

果南「よし、それじゃあスタート位置に車を並べようか。」

 

 

 

ブオオアアン!!!ブオオアアン!!!

 

フォオン!!フォオン!!!フォオオン!!!!

 

「センチュリーの相手って軽トラかよ...」

「ジュエリーシスターズも随分舐められたもんだな。」

「こんなのバトルする前から勝敗決まってんじゃんか!」

 

ルビィ「ほねいちゃあーー!!!!がんばえーーー!!!」

 

果南「カウント行くよー!」

 

「5!4!」

ブオオアアアアアアアアア!!!!!

 

ヴォオオオオオオアアアアア!!!!!

「3!2!1!」

 

 

「GO!!!」

 

バアアアアバババババ!!!!!ギャギャギャギャ!!!!!

 

フォオオオアアアアア!!!!!!

 

「スタートは互角だぞ!あの軽トラどうなってんだ!?」

 

ルビィ「おねいちゃあのセンチュリー、様子が変だった...どうしたのかな?」

 

花丸「マルもはっきりとは分からないけどきっと、それがダイヤさんの隠しダネずら...

あのクリッパーにリベンジを果たすための...」

 

善子「???」

 

バアアアアアアアア!!!

ヴォオオオオオオ!!!

 

ダイヤ「先頭はいただきますわよ。」

 

やはりこのクリッパー、只者では無いですわね。しかしこのバトルは2度目!同じ手は2度も通用しませんわ!

 

千歌「すごい...!こんな大きい車をダイヤさんが運転してるんだ...!私も負けてられない!」

 

先頭は譲っちゃったけど、ここから抜き返すんだ!

 

 

プルルルル プルルルル

 

果南「...来たんだね。...今のダイヤはまた新しい輝きを見つけた。悪いけど、誰にも止められないよ。たとえ『鞠莉』であってもね。」

 

鞠莉「No problem. 私が必ず止めてみせる。ダイヤはこんなところで燻っていていい存在じゃないもの。」

 

果南「そう。無駄だってことはちゃんと伝えたからね。」

 

鞠莉「えぇ。ありがとう、果南。」

 

 

ブオオオアアアアアア!!!! ヴァアアアアアア!!!!!!

 

ダイヤ。あなたは逃げ続けてるだけよ。過去の挫折から逃げ出して、いつまでも向き合えないでいる。輝いてるあなたはとても眩しいのに、勿体ないわ。

 

「センチュリー先頭で突っ込んでくるぞー!!!!」

バアアアアアアアア!!!!!

ヴァオオオオオ!!!!

 

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!!!!

 

 

鞠莉「!!」

 

果南の言った通りね。今のあなたはとても輝いてるわ。"あの時"と同じように。でもあなたが本当に輝ける場所はここじゃない。こんなところにいていい存在じゃないわ。

それを私が証明してみせる。

 

 

 

アクセルを踏んでいける!コーナーでの立ち上がりのストレスが格段に減っている!

 

ダイヤ「やはり!私の読み通りですわ!これなら勝てる!」

 

千歌「沼津一って言ってたもんなぁ...やっぱりすごい速いや!俄然勝ちたくなるじゃん!」

 

バアアアアアアアア!!!!!

ヴォアアアアアアアア!!!!!

ダイヤ「さぁ、いよいよ正念場、中低速セクションですわ!以前のようには行きませんわよ!千歌さん!」

 

千歌「追い越すなら、先のくねくね道しかない!やってみせるよ!曜ちゃん、梨子ちゃん!」

 

バアアアアアアアアッッ ンバアアアアアア!!!!!

 

ダイヤ「刮目しなさい!これが沼津最速の走りですわ!!!!」

 

ギャアアアアアアアアアアアア!!!!!

「す、すげぇぇぇえええ!センチュリーで四輪ドリフトォーーーーー!?!?!?」

 

「5リッターもあるエンジンだぞ!アクセルワークをミスればクラッシュ必至だぜ!」

 

「しかもそれをこんな狭い道で...まさに神業...」

 

 

千歌「!?」

は、速い...!!思っていた以上に速いよ!あんなに大きい車体を、どこにもぶつけずに滑らせて曲がっていくなんて!

もしかしたら...

 

 

フフフ...やはり私の策は功を奏しましたわ。

私のセンチュリーは5リッターのV12エンジン、こんな場所で四輪ドリフトなど、間違いなく自殺行為...

ですが!センチュリーには一つだけ突破口がありましたわ…それが、『左右独立バンク制御』!片側6気筒にトラブルが発生した場合でも走行できる機能ですが、私はそれを利用して意図的に片バンクを殺し、パワーを落としているのですわ!

これで実質2.5リッターの直6エンジン!

こうすることでアクセルワークがよりストレスなく行えるのですわ!

そして何より、アンダーパワーになったことで、コーナー出口での立ち上がりで躊躇なく踏んでいける!つまりは立ち上がり勝負で最大の不安要素を打ち消したのですわ!

 

今の私とセンチュリーは、無敵ですわ!

 

 

千歌「カーブで追い抜こうにも...来たっ!!」

 

ギャアアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

道路いっぱい使って車を滑らせてるから、追い抜く隙がない...!梨子ちゃんの時みたいに邪魔されてると言うより、もはや壁...私の前を猛スピードで走る壁だ...!どうしよう、このままじゃ!

 

千歌「こうなったらー、次のカーブまでに差を詰めるーーっ!!!!」

 

フォオオオオアアアアア!!!!!

 

ダイヤ「差を詰めて来た...!?やはり並外れたパワーは健在ですわね!ですが!」

 

千歌「やば!曲がれないッ!」

ギャギャギャギャーーッ!!!

 

千歌「あっっ、ぶなぁぁ...」

 

カーブの途中で追い抜きははやっぱり無理か...

ならこの先のS字で、この前の梨子ちゃん時みたいに一気に!...それもダメだ、ダイヤさんが先だとまたあの走り方で塞がれちゃう!

 

千歌「だったら!」

 

 

もうすぐ中低速セクションも終わる...千歌さんに残された逆転のチャンスは、最後の高速コーナーのみ。ジュエリーシスターズの名前と、沼津最速の称号にかけて、絶対に前には出させませんわ!

 

ボオオアアアアアアア!!!!!

 

ヴォアアアアアアアア!!!!!

 

 

 

 

 



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第9話 怪物の正体

ダイヤ(高速セクションまであとコーナー2つ、そこを過ぎると緩い高速コーナーの連続...いくら向こうにパワーがあると言えど、それはこちらも同じこと!コーナーふたつ凌ぎ切りさえすれば、あとはもう純粋なエンジンパワーのみがモノを言う世界!)

 

「千歌さん!この勝負、私がもらいましたわ!」

 

千歌(思い出した...これはバトルなんだ...普通に道を走ってるんじゃない。梨子ちゃんが私にしたみたいに、邪魔もしていいんだ!)

 

(ダイヤさんが私の追い越しを邪魔するんだったら...)

 

「私もそれを邪魔すればいいんだ!」

バオオオオオオオ!!!!!

 

ヴォオオオオオオ!!!!

 

ダイヤ(距離を詰めてる...!またコーナーでオーバーテイクするつもりですわね!)

 

「何度やっても答えは同じですわよ!」

 

ギャアアアアアアアアアアアア!!!!

 

千歌(違う...ここでは追い抜かない...ぶつからないギリギリのところで止めておくんだ...!)

 

 

ダイヤ(今のでだいぶ距離を詰められましたわね...ですが追い抜かれてはいない...この先の右コーナー、そこさえ抑えてしまえば、私の勝ちは確実なものとなる!冷静に...今まで通りの事をやるだけですわ!)クンッ

 

 

勝負は......

 

千歌「ここだぁッ!!!」ググッ

 

ヴァアアアアアアアア!!!!

 

 

ダイヤ「なっ!?!?」

 

しまった!!!

さっきよりも一瞬早く、こちらがドリフトのために頭をインに向ける、その瞬間をついてアウトから並びかけてきた!

 

「くぅっ!!!」

 

ギャギャッ ボアアアアアアア!!!!

 

まさかアウトに張り付いてこちらのドリフトを封じるとは!ドリフトを見せてからこんな短時間で対応してくるなんて...車もバケモノですが乗り手も相当なものですわ...!

 

千歌「よしッ!決まった!」

私が横にいる限り、ダイヤさんはもう道を塞げない!これであとは思いっきりアクセルを踏んでいくだけ!追い越せれば私の勝ちなんだ!

 

「行っけぇぇぇ!!!」

 

 

 

確かにドラテクと吸収力は光るものがありますわ。

 

...ですが!並びかけることはできてもオーバーテイクはできなかった!という事は、コーナリングスピード、コーナーからの脱出速度が上なのはインに付いているこの私!

あなたのタイヤには、これ以上スピードを上げてコーナリング中に私を追い越すだけの余裕は無い!

更に!片バンク殺しているとは言え2500CC直6エンジン!パワーは伊達ではないのですわよ!つまり、このコーナーを抜ける時前にいるのは...!

 

バアアアアアアアアアア!!!!!

ヴォアアアアアアアア!!!!

 

千歌「そんな...!どんどん引き離されていく!めいっぱい踏んでるのに!」

 

ダイヤ「...私の勝ちですわね。」

 

バアアアアアアア......

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

千歌「ダイヤさん、すごく強かったです!負けちゃいました〜!」

 

ダイヤ「えぇ。伊達に沼津最速を名乗っている訳ではありませんからね。ですが千歌さん、私はあなたから教えていただいたこともあるんですのよ?」

 

千歌「へ?そうなんですか?」

 

ダイヤ「時として、エンジンパワーを落として走った方が速いこともある、という事ですわ。あなたと走らなければ、私はこの先ずっとこのことに気付かなかったかも知れません。」

 

ダイヤ「それに私、以前千歌さんには一度負けてますのよ?」

 

千歌「えぇ〜!?そうなんですか!?そんなこと全然記憶にないですよ!」

 

ダイヤ「フフッ、無理もないですわ。だから千歌さん、今回の私の勝利で丁度引き分けということですわ。今回のバトルを引き受けてくれて、本当にありがとうございました。バトル抜きにして、また一緒に走る機会があれば、その時はよろしくお願いしますね。」

 

千歌「...!!はい!!よろしくお願いします!ダイヤさん!」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ワイワイ

 

梨子「...こんなに集まるのね...」

 

曜「千歌ちゃんちの軽トラ見たいって言う人が、こんなにいるんだ...」

 

 

ルビィ「おねいちゃあと互角に戦える軽トラしゃん、見ておかなきゃね!ヘナウェルチャア!」

 

花丸「なんたってあのセンチュリーと立ち上がりで並びかけるずらよ?そんなクルマの秘密ならぜひ見ておきたいずら!」

 

善子「我がリトルデーモンがどうしてもと言うから、仕方なく降臨したまで。光栄に思いなさい、リトルデーモンたち...!」

 

花丸「善子ちゃん、暇だったから着いてきたって素直にいうずら。」

 

善子「人を暇人みたいに...!あんた達が連れ出したんでしょーが!ていうか善子じゃなくてヨハネ!」

 

ダイヤ「この機を逃す訳にはいきませんわ!さぁ、どんなからくりがあるんですの!?」

 

 

千歌「あっははは...」

 

果南「いや〜、ダイヤだけの予定だったのにまさか人づてに広まって、こんなに集まるなんてね...ちゃっかり梨子ちゃんも来てるじゃん。」

 

梨子「いや、私は家が隣だから...」

 

曜「でも梨子ちゃん、すごい見たがってたじゃん。気になるって言って」

 

梨子「それは、まぁその...」

 

 

花丸「エンジン!エンジンはどこずら!?ここずらか!?」

 

千歌「あぁ、エンジンは荷台の方にあるんだ。」パカッ

 

ダイヤ「まさかのミッドシップですの!?」

 

ルビィ「ふえぇ...独特なエンジンしゃん...ヘナウェルチャア分かる?」

 

花丸「...分からないずら...。」

 

 

 

善子「?????」

 

 

花丸「千歌さん、このエンジンの型式とか分かりますか?」

 

千歌「うーん、えっと、ぜっとえっくすてぃーにーまるえー、だとか言ってたっけ...?」

 

ルビィ「ヘナウェルチャア、どう?聞いたことある?」

 

花丸「原動機の型式名があるからワンオフのオリジナルエンジンではないずら...でもこんなコンパクトなエンジンでこれだけハイパワーだったら、きっとみんな積むはずずら...」

 

美渡姉「そりゃそうだよ、それバイクのエンジンだから。」

 

ダイりこはなまルビィ「えぇーっ!?」

 

 

美渡姉「足回りはカプチーノのを丸々移植、ミッションはシーケンシャル、んでエンジンはZXT20Aっていう、元世界最速のバイクのエンジンで排気量が1200CC!ミッドシップで後輪駆動!これが高海家伝家の宝刀、スポーツカー殺しの軽トラだ!」

 

ダイヤ「スペックがめちゃくちゃすぎますわ…というか誰ですの?」

 

千歌「うあぁ〜ごめんなさい!私の姉の美渡姉です!この車持ってきたのも美渡姉なんだ!」

 

梨子「どんなコネを持ってたらこんな怪物軽トラ持ってこれるのよ...」

 

美渡「千歌はこれにもう5年は乗ってんだよ!ドラテクは志満姉直伝だし、高海姉妹総出で鍛え上げた内浦のダークホースってことよ!」

 

善子「車のことはよく分かんないけど、何を目指してるのか分からないくらいブッ飛んでるってことは何となく分かったわ...」

 

曜「千歌ちゃんちって旅館だよね??」

 

果南「何ならアタシも美渡姉志満姉に鍛えられたんだよ?」

 

ダイヤ「あなたも走ってたんですの!?初耳ですわ...」

 

果南「言うタイミングなかったからね〜。エンジンブローしたっきりもう走ってないけどね。」

 

 

 

すごいなぁ...

車っていうひとつの共通点だけで、こんなにも人が集まって、ひとつのことで盛り上がれる!こんな素敵なことってないよ!車の性能とか、バトルとか、車に乗ってるかどうかすらも関係なくここに集まってる...

この出会いをくれたのは、私が乗ってるあの軽トラなんだ!あの軽トラが、ここにいる人たちと出会わせてくれた!

きっとこれからも、色んな人と出会って仲良くなれるんだろうなぁ...!

これからがすごく楽しみだなぁ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第10話 モコ、復活

プルルルル プルルルル

 

 

善子「おはようリトルデーモン、今日も朝から堕天日和よ...」

 

花丸「もしもし善子ちゃん?マルのクルマ直ったから、今夜ちょっと走りに行くずらか?」

 

善子「上級リトルデーモンには申し訳ないのだけれど、今夜は名も無きリトルデーモンたちと夜を共に過ごす約束があるの。だから行くことはできない...」

 

花丸「配信ずらね、それなら分かったずら、じゃあまた今度〜」

 

善子「ちょっ、何であんた配信のk」ピッ

 

花丸「善子ちゃん、今夜は忙しいみたいずら。」

 

ルビィ「うゆ、そうなんだぁ...ちょっと残念だけど仕方ないね。じゃあ今日は二人だけで行こ!」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

ルビィ「すっごい...ヘナウェルチャア、こんなエンジンどこで手に入れたの?」

 

花丸「エンジン本体はオークションで買ってきて、オーバーホールとチューニングをショップに任せたずら!」

 

ルビィ「そうなんだ!でも、それだけやっちゃうとお金いっぱいかかったんじゃ...?」

 

花丸「心配ないずら。お坊さんというのは煩悩とはかけ離れた存在だと思われがちだけど、実は煩悩にまみれてるというのは昔からよくあることずら!いくら古いと言えど、潤沢な活動資金はすぐに手に入るのがお寺の強みずらね!」

 

ルビィ「お寺の人が一番言っちゃいけないことだよそれ...」

 

花丸「それに!マルはお金と引き換えに絶大なパワーを手に入れたずら!マルのモコには今、140馬力の心臓が入ってるずら!車体の軽さと圧倒的なパワー!内浦のダークホースである千歌さんを倒す日も近いずら...!」

 

ルビィ「ヘナウェルチャア!女子高生がしちゃいけない顔になっちゃってるよぉ!」

 

 

 

という訳で、新しく載せ替えたエンジンの調子を確かめるためにルビィちゃんと軽く流すことにしたけど、果たしてどれくらいフィーリングが違うのか...楽しみでもありおっかなびっくりでもあるずら。

 

 

ルビィ「ヘナウェルチャア、ルビィは準備バッチリだよ!いつでもどうぞ!」

 

ボボボボボ...

 

花丸「それじゃ、行くずら!!」

 

ベエエエエエアアアアア!!!

 

ルビィ「!!前のエンジンよりも凄く速くなってる!すごいよヘナウェルチャア!」

 

花丸「...そうずらね...ッ!」

 

ルビィ「??」

 

メカチューンというのはここまでパワーを引き出せるものずらね...3000rpmまではトルクがスカスカで進まないけど、パワーバンドに入った途端、軽とは思えない加速を始めるずら...ギア比も絶妙で、パワーバンドから外さずにシフトチェンジできる!素人のターボチューンなんか比じゃないバランスの良さとパワー!

 

それ故に車体と足回りが付いてこれてないのが現状の課題ずらね...これは、ボディ剛性と足回り部品一式マルっと見直しずらね...

 

花丸「ルビィちゃん、今からちょっと攻め込んでみるから、しっかり掴まってるずら。」

 

ルビィ「うゆ、分かったよヘナウェルチャア!」

 

花丸「行くずら...!」

 

ヴェアアアア ファシューッ ンヴェアアアアアア!!!

 

ルビィ「ピギッ!!乗り心地すごいことになってるよぉ!!」

 

花丸「しょうがないずら。エンジンパワーに対してまだ何もかも釣り合ってないから、攻め込んだ時に不安定になるのは当然ずら。」

 

ルビィ「で、でもぉ!!」

 

花丸「今日はエンジンと車体のバランスを見るために来たんだから、ルビィちゃんにはもうちょっと我慢してもらうずらよ!」

 

ルビィ「ピ、ピギエエエエエエエ!!!

ほねいちゃああああああ!!!!」

 

ヴェアアアアア!!!! ギャギャギャ!!!!

 

 

花丸「うん。車体のセッティングのイメージはだいたいできたずら。付き合ってくれてありがとうね、ルビィちゃん!」

 

ルビィ「ヘナウェルチャアの役に立てて...ルビィ、嬉しいよ...」ズルズル

 

花丸「じゃあ、あとはゆっくり上まで戻るずら。もう全開走行しないから安心してね。」

 

ルビィ「ありがとぉ...」

 

ベエエエエエエエ...

 

 

 

ー2週間後ー

 

 

花丸「とりあえず、足回りとボディ剛性の見直しができたから、今からその試走をやるずら!」

 

ルビィ「この前よりも走りやすくなってるといいね!ルビィも楽しみだよ!」

 

花丸「ルビィちゃん、ありがとう!じゃあ善子ちゃん、今回のナビシートよろしくずら!」

 

善子「いきなりすぎるわね…っていうかヨハネなんだけど!なんか特別なことしといた方がいいの?」

 

花丸「特に準備はいらないずら。試走の時は横に誰か乗っててくれた方が落ち着くってだけずら!」

 

善子「そう...フフ、さすが私のリトルデーモン第1号、案外可愛いところもあるのね...」

 

花丸「じゃ、早速横乗りお願いするずら!」

 

善子「よかろう!可愛いリトルデーモンの頼みとあれば!」

 

ヴェアアアアアアアア!!!!! ファシューッ ヴェアアアアアアアア!!!!

ギャギャギャギャギャギャ!!!!

ガクガクガク!!!!

 

善子「何が『特に準備はいらない』よぉぉ!!!!覚悟の準備が必要じゃないのぉぉぉぉ!!!!!」

 

善子「全っぜん可愛くないわよぉ!!!!!ちょ、リトルデーモン!!!ブレーキ!!!!ずら丸!!!!ブレーキ踏んで!!!!!は゛な゛ま゛る゛っ!!!!」

 

花丸「ここでブレーキずら」

 

ギャギャギャアアアアア!!!!!

 

善子「ぶつ゛か゛る゛ぅぅぅ!!!は゛な゛ま゛る゛さ゛ぁぁぁん!!!!!」

 

 

 

 

 

善子「う゛っっ...う゛ぅっっ...」

 

ルビィ「よっっ善子ちゃん!!どうしたの!?」

 

花丸「全開走行が怖かったみたいずら。走り屋の走りを見てるから大丈夫だと思ったずらが...」

 

善子「花丸ちゃん...こ゛わ゛い゛よ゛ぉ...」

 

ルビィ「口調が変わっちゃうほど怖かったんだね...ルビィもこの前は怖かったから分かるよ...」

 

善子「じゃあなんで言ってくれないのよ!」

 

ルビィ「ピギィッ!ご、ごめんなしゃい...」

 

花丸「セッティングはバッチリだったから、もう帰ろっか?善子ちゃん、送っていくずらよ?」

 

善子「イヤ!イヤ!もう乗りたくない!」

 

花丸「もうあんなに飛ばさないから、ゆっくり帰るずら、ね?」

 

善子「そ、そうだルビィ!ルビィの車で送ってよ!」

 

花丸「ルビィちゃんの車はご近所さんの迷惑になるからダメずら。」

 

ルビィ「酷いよヘナウェルチャア...ルビィのアリストさんはちゃんと走るもん!」

 

花丸「フルストレートのアリストで沼津を走ったら警察呼ばれちゃうずらよ。善子ちゃん、もう帰ろ?」

 

善子「.......分かった。でも絶対飛ばさないって約束してよね!」

 

花丸「分かった!約束するずら!」

 

 

ベエエエエエエエ...

 

本当にゆっくり走るのね...

ずら丸って飛ばす時はあんなに危ないし荒っぽいけど、車はどこにもぶつけてないし、ゆっくり走るとすごく運転上手いし...

幼稚園以来だけど、まさか知り合いがこんな風になってるなんて思いもしなかったわ...

学校ではどんな感じなんだろ...ずっと学校に行ってないから何にもわかんないや...

ずら丸だけじゃない、学校でのルビィってどんな感じなのか知りたいな...

 

学校、行ってみようかな...

 

善子「あ、あのさずら丸...ちょっといい?」

 

花丸「ん?なんずら?」

 

善子「私さ、ちょっとやってみたいことがあるんだけど...」

 

花丸「うん、やってみたいことって?.....!?」

 

善子「実はその...が...」

 

花丸「......」

 

善子「が...がっ...」

 

花丸「......」

 

善子「...学校に...」

 

花丸「ごめん善子ちゃん、話は後ずら。アシストグリップしっかり握っとくずらよ。」

 

善子「へ?」

 

花丸「ゆっくり走るって約束、守れそうにないずら。ごめんね。」

 

善子「え?え゛?ちょっと待ってどういうこと!?まだ心の準備が...」

 

花丸「行くずら。」

 

 

ヴェアアアアアアアア!!!!!! ファシューッ!!!!!

 

「ぎええええええええええ!!!!!!!」

 

ギャアアアアアア!!!!!!!

 

 

 



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第11話 謎のZ

花丸「...!?」

 

ヘッドライトの光!?マルが気付かないうちに、後ろに付かれてたずら...車種は分かんないけど、このシルエットはスポーツカーずらね。

 

丁度いいずら。マルのフルチューンモコで、引き剥がしてやるずら!

 

ヴェアアアアアアアア...!!

 

これくらいのスピードなら善子ちゃんを怖がらせずに走れるずら。これで付いてこられないようなら、まだまだずらね。

 

ウオォォォォォォ...

 

そりゃ付いてくるか...そうでなくちゃ張り合いがないずらよ。

次はもう少し上げて、本気度60%で行くずらよ!さぁ付いてくるずら!

 

ヴェエエアアアアアア!!!

 

ウオォォォォォ...

 

素人ならもう付いてこれないスピードずら。これでもまだ付いてくるってことは、ある程度は腕に覚えがあるずらね...

 

ピカッ ピカピカッ

 

「!?」

 

パッシング!?

...マルとモコも随分と舐められたものずらね...そんなにマル達が邪魔なんだったら、今すぐ退いてやるずら...

すぐに引き剥がして、お望み通り視界から消えてやるずら!!!

 

花丸「ごめん善子ちゃん、話は後ずら。アシストグリップしっかり握っとくずらよ。」

 

善子「へ?」

 

花丸「ゆっくり走るって約束、守れそうにないずら。ごめんね。」

 

善子「え?え゛?ちょっと待ってどういうこと!?まだ心の準備が...」

 

花丸「行くずら。」

 

 

ヴェアアアアアアアア!!!!!! ファシューッ!!!!!

 

ここから先は道幅も狭くてコーナーもきついセクション...車のスペックとドラテク、両方揃って高くないとここを最速で駆け抜けることは出来ないずらよ!

マルはここのスピードレコードを持ってるずら。しかもその記録は載せ替え前のK6Aエンジンでの記録!フルチューンされて生まれ変わった、新生K6Aならもっと行けるずら!

 

花丸「善子ちゃん、突っ込むずらよ!気合い入れるずら!」

 

善子「いやああああああああぁぁぁ!!!!」

 

ヴェアアアアアアアア!!!!ギャギャアアアアアアア!!!!!

 

行ける!今のモコならストレス無くコーナーをパスできる!これなら次のコーナーも振りっぱなしで突っ込める!

 

ヴェオオオアアアアアア!!!ギャアアアアアアア!!!

 

善子「ふ゛つ゛か゛る゛!!ふ゛つ゛か゛る゛か゛ら゛!!!!」

 

行ける!次のS字もこのままのスピードで...!

 

ヴェアアアアアアアア!!!!ギャギャギャギャギャギャアアアアアア!!!!

 

花丸「行けたずら!!これならスピードレコード更新も余裕ずら!」

 

バックミラーには...ヘッドライトの光はないずらね。

所詮、マルがここで全開走行すれば付いてこられる人はいないずらね...

 

花丸「ふぅ...」

 

 

マルがエンジンスワップをしてでもモコにこだわり続けることには、モコへの愛着以上に、意地もあるずら。

ただの軽自動車だとタカをくくって図に乗るスポーツカーを片っ端から堕としていくことで、軽でもここまで戦える、軽の意地を見せつける、という意味もあるずら。

峠において最強なのはスポーツカーじゃなく、峠と無縁だと思われている軽自動車ずら!

見るずら!これが660CCという制限の中で生まれた、最強のマシンの実力ずら!!

 

 

 

ヴェアアアアアアアア!!!

...ウオォォォォォ...

 

 

 

何かおかしいずら...!きっちり引き剥がしてバックミラーからも消した...なのに拭いきれないこの違和感の正体は一体何ずら!

 

 

花丸「あ...?」

 

 

夜道なのにいつもより明るい...いや、ヘッドライトの照射範囲が広い......

 

花丸「まさか!!!」バッ

 

ウオオオォォォォォ!!!!!!

 

花丸「よ、横に並んでたずらか〜〜!?」

 

いや違うずら!この車は、バックミラーとサイドミラー、両方の死角になる位置に陣取ったまま、車間距離も大して変えずにずっと走ってたずら!

ドライバーはマルの死角になる位置も車間距離も、これがマルの全力の走りだという事も全部見抜いた上でこの位置をずっと走ってたずらか!?

 

そういう事ができるということは、それだけドラテクやスピードレンジに余裕があるということ...さっきの走りはマルのほぼ100%の走りずら。あのペースならもうスピードレコードは更新してる...なのにあのドライバーは、その更に上を行くずらか!?

 

花丸「か、勝てないずら...」

 

チカッチカッチカッ

 

ウウウオォォォォォ......

 

テールランプの形を見るに、あれはフェアレディZ...

エメラルドブルーのZ...覚えておくずら...

 

恐らくあれだけのドラテクなら、千歌さんかダイヤさん、もしくはそれ以上の腕ずら。やっぱり、上には上がいるって事ずらか?

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

花丸「善子ちゃん、善子ちゃん。おうち着いたずら!起きるずら!」

 

善子「う、うぅ...あれ?私、何してたんだっけ...」

 

花丸「オラとルビィちゃんと3人で峠に行った帰りずらよ。しっかりするずら。」

 

善子「うーん...あんまり覚えてないわ...まあいいわ、送ってくれてありがとう。」

 

花丸「うん。また今度も一緒に遊ぶずら。」

 

ベエエエエエエエ...

 

善子「な〜んか嫌なことがあったような、なかったような...」

 

 

 

「『これ』使うのは3年ぶりだなぁ。直してからしばらく放置してたから心配だったけど、調子よさそうだし大丈夫みたいだね。」

 

「腕と感覚も思ったより落ちてなくて、ひとまずは安心かな?『ブラインドアタック』も一応は成功したし、私もまだまだ負けないよ!なんてね。」

 

「鞠莉がダイヤに対して何か企んでる...。それを止めるにしろ見届けるにしろ、その役は同じ過去に囚われてる私がやらなきゃいけない。千歌やその周りの子たちじゃダメなんだ。」

 

果南「だから頼んだよ。『サンパチ』。」

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ルビィ「えぇ!?あそこでヘナウェルチャアより速い車がいたの?」

 

花丸「そうずら。オラも最初は振り切れるって思って攻めてたんだけど、相手はそんなオラにずっと付いてきてたずら。しかも全開走行してる時に、ミラーの死角に入ったままずら。」

 

ルビィ「そんなぁ...。ヘナウェルチャアってあの区間のスピードレコード持ってたんだよね?」

 

花丸「うん。しかも昨日のそれでスピードレコードは間違いなく更新してるずら。でもあのZは確実にそれより早く走れる実力を持ってたずら...。」

 

ルビィ「ルビィ、昨日は早く帰っちゃったから見られなかったのが悔しいよ。ルビィも見たかったなぁ...。」

 

花丸「エメラルドブルーのフェアレディZだから、見ればすぐ分かるはずずら。もしかしたら峠にも来るかもしれないから、探すのもいいかもしれないずら。」

 

ルビィ「うゆ、そうだね!もしかしたらおねいちゃあも知ってるかも知れないから、聞いてみるよ!」

 

 

 

 

 

ダイヤ「エメラルドブルーのフェアレディZ、ですか...」

 

ルビィ「うん!ヘナウェルチャアがね、もしかしたらおねいちゃあと同じくらいのドライバーなんじゃないかって!何か知らない?」

 

ダイヤ「う〜ん...聞いたこともないですわね...。沼津でそれほどの方であれば、私が知らない訳がないですから。もしかすると外から遠征に来ていた方かも知れませんわね。それか、最近になって復帰した方の可能性もありますわね。」

 

ルビィ「そっかぁ...おねいちゃあでも知らない走り屋さんかぁ...一体どんな人なんだろう?」

 

ダイヤ「レコード保持者の花丸さんよりも速く走れるということは、コースを熟知していることと、テクニックも相当のものでしょう。恐らく、私たちとはかなり年の離れた方だと思いますわね。」

 

ダイヤ「何にせよ、そうやって峠で目撃されたということは少なくとも走る意思があるという事。探せば案外簡単に見つかるかもしれませんわよ?折角ですし、週末にでも探しに行ってみましょうか。」

 

ルビィ「ほんとぉ!?やったぁ!!ルビィ、会えるかもしれないと思ったら今からワクワクするよ!おねいちゃあありがとぉ!」

 

 



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第12話 過去のわだかまり

 

 

 

バオオオオオオオ!!!!

 

バタン

 

ルビィ「この前見たって言ってたのは別の峠だったけど、きっとここにも来てくれるよね!」

 

ダイヤ「えぇ、そうですわね...。ですがルビィ、その前にひとつ聞きたいことがあるのですが。」

 

ルビィ「うゆ?どうしたの?」

 

ダイヤ「このマフラー、どうにかなりませんの?」

 

ルビィ「えへへ!いいでしょこのマフラー!この方がアリストしゃんにも似合うと思ったんだぁ!」

 

ダイヤ「...」

「ブッッッブーーー、ですわ!!!!!」

 

ルビィ「ピギィ!」

 

ダイヤ「ルビィ!いくらあなたでもこれは許容できませんわよ!黒澤家の娘ともあろうものが、あろうことかフルストレートなどという、野蛮ではしたないカスタムなどして!あなたは走り屋である前に女子高生ですのよ!?もっと慎み深い立ち振る舞いをしなければ、網元である黒澤家のメンツ丸つぶれですわ!だいたいこのアリストも...」

 

 

鞠莉「その声は...ダイヤじゃない!!」

 

ダイヤ「!?」

 

「ま、鞠莉さん...」

 

 

ダイヤ「鞠莉さん、なぜ貴方がここにいるのです...?」

 

鞠莉「そんなことは今どうでもいいわよ!久しぶりね〜!留学に行った時以来だから、3年ぶりかしら!随分とLADYになったわね〜!」

 

ダイヤ「えぇ...貴方もあの頃よりもずっと大人びていますわ...」

 

鞠莉「そうだ!お互い積もる話もあると思うし、どこかでお茶しながらでも話さない?もちろん私持ちで!」

 

ダイヤ「あ、あの...」

 

鞠莉「決まりね!どこかこの時間でも開いてるrestaurantはあるかしら?まぁ開けてもらえばいっか!それなら〜...」

 

ダイヤ「鞠莉さん!」

 

鞠莉ルビ「!?」

 

ダイヤ「お気持ちは嬉しいですが、今日はあいにくそういう気分ではないので...。

申し訳ありませんが、また次の機会にお願いしますわ。」

 

ダイヤ「ルビィ、車を出してください。帰りますわよ。」

 

ルビィ「え、でも...」

 

ダイヤ「いいのです。だから早く。」

 

ルビィ「う、うゅ...」

 

 

バアアアアアアアア......

 

 

鞠莉「...first contactは失敗ね。」

 

果南「チャンスはまだあるから焦らなくてもいいよ、鞠莉。」

 

鞠莉「焦ってなんかいないわ。...ただ嬉しかったのよ。ダイヤが元気そうだったのと、久しぶりにダイヤと話せた事が。」

 

果南「でも、鞠莉がこれからやろうとしてることは、せっかく繋がりかけたダイヤとの関係を、また壊すことかもしれないんだよ?それでもいいの?」

 

鞠莉「えぇ、分かっているわ。でもそれくらいの覚悟で向き合わないと、ダイヤは振り向いてはくれないわ。だからいいの。」

 

果南(鞠莉...だいぶ本気みたいだね...なら、私はもう鞠莉のことは止めない。二人を見守る役に徹するよ。)

 

 

 

バオオオオオオオ......

 

ルビィ「おねいちゃあ...あの人って誰なの?おねいちゃあが話したくないなら、ルビィも聞かないけど...」

 

ダイヤ「そうですわね、この際だから話しますわ。別に隠していたことではないですし、もしそうだったとしても、もう時効ですから。」

 

 

3年前、私と果南さん、そして先程の鞠莉さん。その三人で私たちは『スクールアイドル』という活動を行っていましたわ。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ー3年前ー

 

ダイヤ『今日の練習はここまでにしておきましょうか。イベントまでそう日もありませんし、ここで体を壊したら元も子もありませんからね。』

 

鞠莉『じゃああとは各自自主練ってことでOK?』

 

果南『そうだね。基礎練習とかランニングなんかは家でできるから、そういうのがいいかもね。』

 

鞠莉『All right!じゃあ、私は先に帰るわね〜!』タタタッ

 

ダイヤ『鞠莉さん、最近は特に熱心ですわね。』

 

果南『リーダーのダイヤよりも熱意がすごいよ。まぁ、あのダンスフォーメーションで一番重要な場所を任せてるからね。』

 

ダイヤ『そうですわね。私たちも、鞠莉さんに負けてられませんわ。イベントまでの残り短い期間、気を引き締めていきましょう。』

 

果南『フフッ、そうだね。頑張らなくちゃ!』

 

 

ーイベント前最後の練習日ー

 

ダイヤ『鞠莉さん!その足の包帯、大丈夫ですの!?』

 

鞠莉『自主練してたらちょっとぶつけちゃって...。お手伝いさんったら大袈裟で、ちょっとのキズなのにこんなに包帯巻いてくれちゃって〜!』

 

ダイヤ『んもー!少しの怪我でも、イベントに差支えがあったら元も子もないと言ったでしょう!貴方は大事なポジションなんですから、特に気をつけていただかないと!』

 

鞠莉『oh!ダイヤったら、cuteなFaceが台無しだよ〜?』

 

ダイヤ『ま〜り〜さ〜ん〜!!!!』

 

鞠莉『No!助けて果南!』

 

果南『鞠莉はおっちょこちょいだなぁ〜。今回は大事なさそうでよかったけど、気をつけなよ〜?』

 

鞠莉『off course!!』

 

 

ーイベント当日ー

 

ダイヤ『私たちの出番はもうすぐ...おふたりとも、気を引き締めて行きましょうね。』

 

果南『さ、舞台袖に移動しようか。』

 

鞠莉『...そうね。行きましょう。...うぅっ!』ガクッ

 

ダイヤ『鞠莉さん!?』

 

鞠莉『大丈夫!!ちょっと足がもつれただけ!平気だから!』

 

果南『...』

『ちょっと触るよ、痛かったら言ってね。』

スッ ズキッ!!!

 

鞠莉『あぅ...っ!!』

 

果南『かなり腫れてる...この前ちょっとぶつけたっての、嘘でしょ?』

 

鞠莉『...』

 

果南『ダイヤ、ちょっと話があるからこっち来て。』

 

ダイヤ『...分かりましたわ。』

 

 

 

果南『今回のイベントは辞退しよう。』

 

ダイヤ『そうするしかありませんわ...。私の...私のせいですわ...』

 

果南『違う。ダイヤのせいじゃない。鞠莉にだって非はあるし、そもそも誰のせいでもないよ。しょうがなかったんだよ。』

 

ダイヤ『でも!あの時自主練をOKしたのは私で、あのフォーメーションを考えたのも私ですわ!あんなことさえ考えなければ...!』

 

果南『ダイヤ、自分を責めないで...またチャンスはあるから...。』

 

 

 

こうして、私たちはそのイベントを辞退した。そしてその後、再びスクールアイドルとして活動することはありませんでしたわ。

 

鞠莉さんには当時、海外留学の話がいくつか来ていました。ですが鞠莉さんはその全てを断って私たちとスクールアイドルを続けていました。

スクールアイドルとしての活動がなくなり、私と果南さんは鞠莉さんに海外留学する事を強く勧め、結果として鞠莉さんは留学した。鞠莉さんの未来を奪うまいと、私と果南さんが考えた、精一杯の策でした。

結局その後、在学中に鞠莉さんと会うことはなく、廃校阻止のために始めたスクールアイドルも辞め、学校は統廃合になった...

 

 

ダイヤ「これが果南さん、鞠莉さんとの事の顛末ですわ。」

 

ルビィ「...そうなんだ...」

 

ダイヤ「ルビィが気にすることなんてひとつもないですのよ?これは私たち三人の問題。既に解決しましたし、これから進展することもないのですから。」

 

ルビィ「でもおねいちゃあ、だったら...」

 

「どうしてそんなに寂しそうな顔をしてるの?」

 



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第13話 宣戦布告

 

 

 

千歌「ダイヤさんとルビィちゃんのお家って、こんなに大きかったんですね〜!」

 

曜「さすが網元なだけあるね〜。でも本当に良かったんですか?私たちがお邪魔しても。」

 

ダイヤ「構いませんわ。ここでお茶会をしようと言ったのは他ならぬ私ですから。遠慮なさらなくてもいいのですわ。」

 

梨子「ありがとうございます。そういえば、果南さんは来てないんですね。」

 

千歌「果南ちゃんも誘ったんだけどね〜、なんか大事な用があるみたいだったから断られちゃった。」

 

ルビィ「善子ちゃんどうしたの?なんか元気ないよ?」

 

花丸「ルビィちゃんの家の雰囲気に圧倒されて、いつもの設定も出せないくらいしおらしくなってるずら。」

 

善子「せ、設定言うなし...」

 

ダイヤ「善子さん?そんなにかしこまらなくてもいいのですよ?今日は皆さんに楽しんでいただきたいので遠慮は不要ですわよ。」ニコッ

 

善子「は、はいぃ...!」

 

(なに、この包容力は...!これが姉たる者の力というの...?うぅっ!なぜだか懐かしい気分になる...!)

 

花丸「善子ちゃんがダイヤさんの気高さに触れて苦しんでるずら。」

 

ダイヤ「みなさん、今回はここに集まっていただいて本当にありがとうございます。知り合えたのも何かの縁ですし、より親睦を深められればと思いますわ!」

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

梨子「善子ちゃん、ベンツ乗ってるんだ〜!今度乗せてもらってもいい?」

 

善子「よかろう...しかしそれ相応の対価が必要...」

 

梨子「えぇ...」

 

花丸「ダイヤさん、センチュリーはこれからどうしていく予定ですか?良ければ教えて欲しいです。」

 

ダイヤ「今のセンチュリーでも良いですが、私としてはセンチュリーにこだわらず、他の選択肢を取るのもいいんじゃないかと思ってるところですわね。具体的には...」

 

 

 

ピンポーン

 

ルビィ「うゆ、お客さんが来たみたい。ルビィが見てくるね。」

 

ダイヤ「いえ、ここは私が出ますわ。ルビィはいいですわよ。」

 

ルビィ「はーい!」

 

 

ダイヤ「お待たせしました。どう言ったご要件でしょうか。」

 

鞠莉「チャオ〜☆この前ぶりね、ダイヤ!」

 

ダイヤ「うっ......ご、ご要件は〜?」

 

鞠莉「んもぅ〜、この前といいvery coldじゃない?Mary悲しいわぁ〜!」

 

ダイヤ「ですから、ご要件は...」ピキピキ

 

鞠莉「そうカタイこと言わずに!今からどこかでお茶しない?もちろん私持ちで!」

 

ダイヤ「ご要件がないようですので失礼させていただきますねー」ガラガラ

 

鞠莉「wait!!要件ね!要件なら話すから!」ガッ

 

ダイヤ「分かりました。ではご要件は。」

 

鞠莉「その前に〜、お家にあがらせてもらってもいいかしら?」

 

ダイヤ「お引き取りください。」ガッ

 

鞠莉「wait wait!! it's joke!!」

 

ダイヤ「だったら早く要件を話しなさいな!!」

 

千歌「ダイヤさん!泥棒ですか!?」

 

梨子「泥棒にしてはなんか仲良さそうだけど...」

 

鞠莉「え、そぉ!?なら良かったわ〜!私、ダイヤのストーカーなの!」

 

一同「泥棒よりヤバい人だーー!!!」

 

ダイヤ「根も葉もないこと言わないでくださる!?!?」

 

 

 

鞠莉「改めて自己紹介!私は小原鞠莉!ダイヤと同い年よ!ついこの前までイタリアにいて、最近内浦に戻ってきたの!」

 

鞠莉「こう見えてもホテルオハラの総支配人の秘書であり...ダイヤのストーカーでもあるわ!」

 

ダイヤ「鞠莉さん!おやめなさい!シャレになりませんわ!」

 

曜「ホテルオハラ...って、淡島にあるあの高級ホテルの、ですか!?」

 

鞠莉「That's Right!知っててもらえて嬉しい限りね!」

 

善子「でも、そんな内浦のVIPみたいな人がなんでわざわざ出向いてくるの?普通だったら使い魔...じゃなかった、使用人に伝言とか任せればいいじゃない。」

 

鞠莉「ムッ!察しがいいわねそこのオダンゴGirl!そう、私には目的があってここに来たの!」

 

善子「善子だしヨハネなんだけど!」

 

一同(いやどっち...?)

 

鞠莉「ダイヤ!!!」ゴソゴソ

 

ダイヤ「は、はい!?」

 

鞠莉「この果たし状を受け取りなさい!!!」バッ

 

鞠莉「ダイヤ、私はあなたに決闘を申し込むわ!詳しいことはその果し状に書いてあるから後で読んどいてね〜!」

 

鞠莉「ではでは〜!」

 

 

一同「......」

 

花丸「嵐みたいな人だったずら...」

 

ダイヤ「言えてますわね...さて、この果し状に決闘の内容が書いてあると言っていましたが...」

 

 

ウオォォォォ...

果南「随分長かったね。一悶着あった感じ?」

 

鞠莉「いいえ。お友達がたくさんいて、とっても楽しかったわ。」バタン

 

果南「そっか。にしても、やるんだったら今乗ってる車でも十分だと思うんだけどね。」

 

鞠莉「大人気ないと言われても構わないわ。やるからには絶対に勝つ。生半可な覚悟じゃいけないの。」

 

果南「これだから金持ちは...」

 

 

 

ダイヤ「こ、これは...!」

 

ルビィ「おねいちゃあ、どうしたの!?」

 

ダイヤ「これは絶対に負けられないバトルですわ...。」

 

曜「バトルってことは、決闘の内容は車でのバトルなんですか?」

 

ダイヤ「えぇ。しかも相手は格上...センチュリーでは到底敵わない相手ですわ。」

 

千歌梨子「相手は一体なんなんですか!?」

 

ダイヤ「それは...」

 

 

果南「今乗ってるLC500でも十分だってのに、まさかLFAを持ち出してくるなんてね。

これはダイヤにも勝ち目あるかどうか分かんないや。」

 

 

 

鞠莉さん、大人気ないですわよ...。反則級の切り札をいとも容易く出してくるなんて。

しかも私が負けた場合は、『車を降りる』ことを条件に出している。世界でもトップクラスのカーブランド、レクサスが送り出した和製スーパーカー、LFAを使ってでも私をこの世界から離れさせたいということですのね。あなたのその熱意、昔と全く変わりませんわね。

 

ならば私もその熱意に応え、全身全霊で挑ませて頂きますわ。あなたの敗北時の『金輪際私と関わらない』という条件をかけて。

 

 

梨子「ダイヤさん、どうするんですか?」

 

花丸「いくらジュエリーシスターズの異名を持ってしても、こんなにスペック差のある相手じゃ勝負は...」

 

ダイヤ「分かっていますわ。ですが私はそれでもこの決闘、受けてたちますわ。」

 

ルビィ「おねいちゃあ!無謀すぎるよぉ!これに負けたらおねいちゃあは...!」

 

ダイヤ「大丈夫ですわ。受ける以上、丸腰では挑みません。私にも策はあるのですよ?」

 

千歌「それって、どんな策なんですか!?」

 

 

ダイヤ「そうですわね…まずは手始めに、」

 

「センチュリーを廃車にしますわ。」

 

 

 

 

一同「えぇーーーーーっっ!?」

 



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第14話 ダイヤの秘策

 

 

 

 

ー果たし状をもらってから2週間後ー

松月にて

 

 

曜「ダイヤさん、本当にセンチュリーを廃車にしちゃったね...これからどうするんだろ?」

 

花丸「これでダイヤさんの車はなくなったずら...バトルは2週間後、こんなタイミングで車を手放すなんて、理解できないずら...」

 

ルビィ「そんな...おねいちゃあ、センチュリーのことすごく気に入ってたのに...!一体どうしちゃったんだろう?」

 

梨子「でもダイヤさんは、センチュリーを廃車にすることが対抗策の第一段階だって言ってたよね?」

 

善子「もしや、『センチュリーはかりそめの姿...ヴェールを脱いだ真のセンチュリーは、誰にも止められない...』ってこと!?さすがダイヤさん!堕天使とは何たるかを分かってる!」

 

梨子「よっちゃん、今はそういうノリじゃないのよ...」

 

一同「......」

 

千歌「...私たちが不安になっても仕方ないよ。それに、あのダイヤさんだよ?私の軽トラとバトルする時だってちゃんと対抗策を考えて来るんだから、スーパーカー相手に何も考えずに挑むなんてこと、絶対ないよ!」

 

「だから信じよう?ダイヤさんを!」

 

 

 

ダイヤ「完成まではあとどれくらいかかりそうですの?」

 

メカニック「そうですね、大体10日くらいを目処に考えていただきたいですね。」

 

ダイヤ「そうですか...できればあと一週間で完了させていただきたいですわ。車のフィーリングを少しでも体に覚え込ませたいので。」

 

メカニック「分かりました。できるだけ急ピッチでやってみます。しかし黒澤さん、今回のは間違いなく今までで一番ピーキーな乗り味になると思いますよ。いくらあなたとは言え、今回ばかりは保証できませんからね。」

 

ダイヤ「えぇ、重々承知しております。そのうえで誓約書にサインをしたのですから、遠慮なく作業を進めてください。」

 

メカニック「分かりました。どうかお気を付けて。」

 

 

 

ルビィ(車庫の隅に置かれたセンチュリー...おねいちゃあ、あんなにお気に入りだったのに、どうしてあんなに簡単に廃車にするって言ったんだろう...)

 

すごいや、いつもおねいちゃあがお手入れしてたから、ピッカピカだよ…もう、おねいちゃあがこの車と走ることはないと思うと、なぜか寂しくなる...

 

「あれ...?」

 

ボンネットが閉まりきってない...エンジンでも眺めてたのかな?乗り換えるって決めても、ずっと一緒に走ってた車だもん、きっと名残惜しいよね…

 

「ルビィも眺めとこ...」

 

おねいちゃあがいつも自慢していた1GZ-FE、これで見納めになっちゃうけど、忘れないよ… ガパッ

 

「!!!」

 

どういうこと!?センチュリーの車体から...

 

エンジンだけがきれいになくなってる...!

 

 

 

千歌「鞠莉さんとダイヤさんのバトルって、確か高速道路だったよね?」

 

梨子「そうね。新東名高速道路の駿河湾沼津サービスエリアから、浜松サービスエリアまでの区間ね。」

 

花丸「LFAの力を遺憾無く発揮できる場所はそこくらいしかないずら。でもいくら深夜とはいえ、一般の車もいるから常に危険と隣り合わせずら。」

 

善子「私たちはどうやって観戦するの?」

 

曜「いつもみたいに途中で観戦はできないから、スタートとゴールのサービスエリアで二手に分かれて待っとくしかないかも。」

 

千歌「そうだよね〜。着いていくって言っても、そんなにパワーのある車って私たち持ってないもんね。」

 

花丸「あるずらよ。1台だけ。」

 

一同「......」ジーッ

 

 

善子「え、私!?」

 

花丸「持ち主のせいであんまりパッとしなかったけど、善子ちゃんの乗ってるSL55は最大で500馬力出るずら。あの二人に追いつけるスペックの車は現状で善子ちゃんだけずら。」

 

善子「我が眷属にそんな力が秘められていたとは...さすがは堕天使ヨハネ、眷属も超一流ね!まさにデスティニー!」

 

曜「じゃあ誰かが横に乗ってビデオ通話しながらだったらバトルの様子も見られそうかも!」

 

千歌「あ!それいいね!じゃあそうしよっか!」

 

 

ヴォボボボボボボボ...

 

この車が『完成』してから5日...扱い方がやっと分かり始めてきましたわね...ですがあのメカニックが言った通り、ピーキーすぎる...じゃじゃ馬ですわ。

ですがこれくらいでないと鞠莉さんには勝てない。

貴方が全力で来るのなら、私も今の全力をもって迎え撃つ...

 

それが、「かつて友人だった方」への私なりの礼儀ですわ。

 

 

 

 

ーバトル当日ー

駿河湾沼津サービスエリア

 

鞠莉「チャオ!みんなギャラリーとして集まってくれたのね!Maryも嬉しいわ!」

 

千歌「果南ちゃん!果南ちゃんは鞠莉さんを応援するの?」

 

果南「いや、応援っていうよりは見守り役って感じかな。このバトルは私たち三人の話だからさ。それに、鞠莉1人だけだったら可哀想だしね。」

 

鞠莉「んもぅ、果南ったら優しいのね!」

 

「ところで、私の決闘相手はどこかしら?」

 

曜「それが...まだ来てないみたいなんです。」

 

鞠莉「まさか、土壇場になって逃げ出した、なんてことないでしょうね?」

 

ルビィ「お、おねいちゃあは絶対来ます!ただちょっと遅くなってるだけで...」

 

鞠莉「It’s joke!ちょっとからかっただけよ。ダイヤがそんな人じゃないのはずっと昔から知ってるから。」

 

 

ヴォオオオオオオオオ...

 

果南「お、来たみたいだね。」

 

 

花丸「!!あの車は...!」

 

ヴォボボボボ...

 

ダイヤ「皆さん、お待たせして申し訳ありませんわ。」バタン

 

鞠莉「wow...!驚いたわ。まさかセンチュリーじゃないとはね。」

 

善子「すごい...真っ赤なスポーツカーに変わっちゃってる...ずら丸、あれなんて車なの?」

 

花丸「あれは...トヨタ スープラずら。トヨタきっての名車中の名車ずら...でも、本当にあれに乗り換えただけで勝てる見込みがあるとは思えないずら...」

 

ルビィ「そうか...そうだったんだ...ルビィ分かった...!」

 

梨子「ルビィちゃん、何が分かったの?」

 

ルビィ「お姉ちゃんがしたこと...どうやって鞠莉さんに勝とうとしてるのか...」

 

ルビィ「お姉ちゃんは、千歌さんや花丸ちゃんと同じことをセンチュリーでやったんだよ!」

 

曜「同じこと...?......もしかして!」

 

花丸「そんな...!確かにそうすれば互角以上に戦えるけど...でも非現実的ずら!第一上手くいったとして扱えるかどうか...!」

 

ルビィ「お姉ちゃんは本気なんだ...それくらいお姉ちゃんは鞠莉さんに勝ちたいんだ!」

 

千歌「どういうこと?私たちとやってる事が同じって...」

 

梨子「つまりあのスープラには、センチュリーのエンジンが丸ごと載せられてるってこと。あの車はスープラであってスープラでない...それだけじゃなく、多分スペックを上げるためにかなりチューニングしてあると思う。文字通りモンスターマシンよ。」

 

ダイヤ「まずはお礼を。私の得意分野で勝負しようと言ってくださり、本当にありがとうございます。」

 

鞠莉「そんな事は気にしなくていいのよ。あなたの目を覚まさせるために、あなたの得意分野で勝負して、勝つ。それが挑戦者としての私なりの礼儀よ。」

 

ダイヤ「私の土俵で勝負を挑まれた以上、負けるつもりはありませんわ。」

 

鞠莉「お互いに士気は十分みたいね。」

 

ダイヤ「さぁ、そろそろ始めましょうか。」

 

そして終わらせましょう。過去のわだかまりに決着をつけるのです。

 

鞠莉「えぇ、そうね。」

あなたには戻ってきてもらう。その世界を捨てて、あの時のように私たちの元へと。

 

 

だから。

 

だから。

 

 

負けられないっ!!!

 

 

 

 

 

 

 



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第15話 激突!ダイヤ対鞠莉

 

 

 

 

ヴォオオオオオオオオ!!!!

 

ファアオオオオオオオ!!!!!

 

 

ダイヤ(できることは全てやった...多分それは鞠莉さんも同じこと。後は私と鞠莉さん、どちらの意志が強いかで勝負が決まりますわ。)

 

鞠莉(あと2km、そこから先はダイヤと私、ふたりだけのフィールド...いえ、ステージと言っても過言ではないかしらね。あの時立つことができなかった、眩く輝くステージ...)

 

バアアアアアアア!!!

 

梨子「みんな、聞こえてる?スタート地点まであと2km切ったわ。いよいよ始まるわよ、ダイヤさんと鞠莉さんの全開バトルが。」

 

千歌『私がバトルするわけじゃないのに、すごくドキドキしてきた〜!』

 

曜『私もだよ〜!高速道路のバトルなんて、今まで見たことないよ!』

 

花丸『車のスペックはどちらも未知数ずら!これはどっちが勝ってもおかしくないずらよ!きっと沼津の走り屋に語り継がれる一戦になるずら!』

 

ルビィ(おねいちゃあ...どうか無事に帰ってきてね...)

 

梨子「私も楽しみだわ。生きているうちにそう見られる対決じゃないもの、この目で見届けるわ!」

 

善子「で!なんで私の車をリリーが運転してるのよ!」

 

梨子「よっちゃんの腕じゃあのスピードにはついていけないでしょ?この前乗せてもらった時も、何度もぶつけそうになってたじゃない。危なっかしいから今回は私が運転するわ。」

 

善子「ぐぬぬ...」

 

曜『ほぉ〜う?『リリー』と『よっちゃん』ねぇ...』

 

千歌『二人ともいつの間にそんなに仲良くなったのかなぁ〜?』

 

梨子「ちがっ!よっちゃんとは別にそんなんじゃ...!」

 

善子「ちょっとリリー!何動揺してんのよ!ハンドルちゃんと持っててよ!」

 

花丸『学校には来ないのにちゃっかり仲良くなってるずらね〜、よっちゃん。』

 

ルビィ『ルビィ、梨子さんよりも先に善子ちゃんと仲良くなったのに...』

 

善子「あんた達までなによ!これは...その...属性の波長がシンクロしただけよ!」

 

梨子『みんな、もうすぐ始まるわよ!よっちゃんも準備して!』

 

千歌「始まるって!みんな集まって!果南ちゃんも一緒に、って、あれ?果南ちゃんどこ行ったの?」

 

 

鞠莉「行くわよ!!!」

 

ダイヤ「望むところですわ!!!」

 

ヴオオオアアアアアアアア!!!!!

 

ファアアアアアアアアン!!!!!

 

 

梨子「私達も!!」

 

ヴァアアアアアアアアア!!!!

 

善子「む、向こうの方が圧倒的に速い!500馬力あるんじゃなかったの!?」

 

梨子「トラコンがかかって全然進まない!そんな!トラコン切っときなさいよ!」

 

善子「知らないわよそんな事!とにかく追いかけるしかないじゃない!」

 

曜(痴話喧嘩しか聞こえないよ...)

 

 

 

ダイヤ(周りの車が止まって見える...!慣らしで走り込んでいましたが、このスピードレンジがまさかここまで恐ろしいとは...!)

 

ダイヤ(恐ろしいのはスピードだけじゃない、この加速力!迂闊にセンチュリーの時のように踏めば、凄まじいGと共にシートに体が押し付けられる...!これはもはや車ではなく戦闘機ですわ!)

 

 

鞠莉(ダイヤの車も中々のパワーね...やっぱりLCじゃなくLFAを選んでいて正解だったわ。だけど、残念ながらあなたはLFAには絶対に勝てない。スピードレンジもパワーも、全て最初から考えられて作られたこの車が、有り合わせの車体とエンジンを組みあわせただけのカスタムカーに負けるわけがない!)

 

鞠莉(ダイヤ、あなたはこの決闘を引き受けた時点で、負けが決まってるのよ...)

 

鞠莉(だからこそ疑問に思う...賢いあなたがそれを分からないはずがない。それなのにこの決闘を引き受けたのは何故...?)

 

鞠莉「考えても仕方ないわ。早速お手並み拝見と行きましょう。さぁダイヤ、その車でどこまで着いてこれるかしら!」

 

 

キャアアアアアアアアアアアン!!!!

 

 

梨子「なんて綺麗な音色...!これが本当に車のエキゾースト音なの!?」

 

花丸「LFAの最大の特徴と言っても過言ではないこのエキゾースト音...通称『天使の咆哮』ずら。まるで楽器のような音色とは裏腹に、これが聴こえた時には0-100km/h を3.7秒という暴力的な加速が始まるずら。まさに天使と悪魔、両方の顔を持つスーパーカーずら。」

 

 

ダイヤ「くっ...!!」

 

離されて...たまるもんですか!!!

 

キュウウウウウファアアアアアアアアアアン!!!!!

 

LFAの恐ろしさは重々承知!それを見越した上で、この1GZスープラにはそれ相応のチューニングを施してあるのです!様子見程度の加速で離されては、ジュエリーシスターズの名折れですわ!

 

 

鞠莉「付いてきた!そう来なくっちゃね、ダイヤ!」

 

ダイヤ「当たり前ですわ...!私は沼津市の走り屋、ジュエリーシスターズの黒澤ダイヤですわよ!」

 

ファアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

オーバーテイクしようとしているの!?このLFAを!!

 

鞠莉「そういう訳には、いかないわっ!!」

 

キャアアアアアアアア!!!!

 

ダイヤ「かかりましたわね、鞠莉さん。」

 

やはり私の読み通りですわ。あなたは確かにLFAのスピードレンジやパワーに慣れていますわ。車に慣れているという点ではあなたに軍配が上がりますわ。

 

しかし!ストリートバトルというものは、単に乗る車に慣れていれば良いというものではありませんわ!バトルというものは常に相手がいて成立するもの...つまり!

 

駆け引きや心理戦、プレッシャーといったものにも慣れていなければ、勝利を掴むことはできませんのよ!

 

鞠莉さん、あなたはバトルをしたことがない!それに加え、ムキになって熱くなる性格も相まって、少しプレッシャーをかけただけで見るからに焦っていますわ!

 

バトルの素人と玄人、この両者がチキンレースを展開した時に優位に立てる方...それは玄人である私ですわ!!

 

 

ファアアアアアアアアアアア!!!!

キャアアアアアアアアアアアア!!!!!

 

 

鞠莉「アクセルを踏んでるのに...離れない...!」

 

今のアクセルは7割...あと3割踏み込めば恐らくは引き離せる...だけど...だけど!

でも離さなきゃ勝つことはできない...どうするの、鞠莉!

 

ここからは我慢比べですわよ...根負けした方が後ろに下がる!さぁどうするんですの!鞠莉さん!

 

 

鞠莉「...これ以上は...!」

 

 

ファアアアアアアアアアアア!!!!

 

 

善子「ダイヤさんが前に出た!ダイヤさんが勝ってるわよ!」

 

千歌「そのまま引き離せるかな!?頑張って...ダイヤさん!」

 

 

私を前に出しましたわね...。鞠莉さん、もうあなたに勝ち目はありませんわよ!あなたにはこのままゴールまで、スープラのテールランプだけしか見せませんわ!

 

鞠莉「ダイヤにしてやられたわ!!」

 

どこかで取り返すチャンスを見つけなきゃ...!ダイヤの意表も突けて、なおかつ前に出られるチャンス...

 

 

 

 

...ヴアアアアアアアアアアアアア!!!!!

 

 

出るのが少し遅かったかもしれないな...ふたりに追いつけるか分かんないけど、やるだけやってみるか。結果はどうあれ、私たちの過去に決着が付くバトルになるんだから。私にはあのバトルを見届ける義務がある。だから意地でも間に合わせるよ。

 

 

 

 

 

 

 



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第16話 大切なもの

 

 

 

 

鞠莉「何とかして前に出ないと...!なにかチャンスは!」

 

ダイヤ「このまま前を死守しますわ!鞠莉さん、あなたの負けです!」

 

 

梨子「このままダイヤさんの勝ち逃げで勝負が決まるの...?」

 

花丸「いや、バトルは最後まで何が起こるか分からないずら。ほんの少しのきっかけで大どんでん返しが起こるずら。」

 

ゴアアアアアアアアアア!!!!

 

キャアアアアアアアアアアア!!!!

 

 

 

ダイヤ(あれは車のブレーキランプ...3車線とも塞いで走って、鬱陶しいですわね。)

 

(ここはハイビームで気づいてもらいましょう。)

 

ファアアアアアアオオオオオ...

パッ

 

 

鞠莉(あれは...!ダイヤは気づいてない、仕掛けるならここしかない!)

 

鞠莉「今よっ!!!」

 

バッ

キュアアアアアアアアアアンン!!!!!

 

ダイヤ「んなッ...何を...!」

 

しまった!!あれは!!

 

善子「あぁっ!!ダイヤさんが!」

 

一同「抜き返された!!!」

 

 

やられましたわ...!!車線を塞ぐ車に気を取られて、完全に見落としていた...

道の左端に、ギリギリ車1台通れる分の路肩があることに...!

もし気付いていてもノーマークだった...鞠莉さんならきっと、砂利の多い路肩を走るなんてリスキーなことしないとタカを括っていたから!

 

 

 

梨子「マズイわね...ダイヤさんが劣勢に立たされつつあるわ。」

 

千歌「まだ分かんないよ!これくらいの差なら、ダイヤさんはきっと取り返すよ!」

 

花丸「いや、実際はもっと厳しいずら。鞠莉さんのあのオーバーテイクは、ダイヤさんのメンタルに大きいダメージを与えてるずら。ダイヤさんの意表を突いてアクションを起こしたこと。それによってオーバーテイクを成功させ、ダイヤさんの心の余裕を奪ったことずら。そして鞠莉さん自身は、多少の無茶で突破口を開いたことによる自信と、優位に立てたことで心に余裕を生みだしたずら。」

 

梨子「この状況で心に余裕ができると、今までかかっていた心のリミッターが解除される...そうなったら」

 

曜「ダイヤさんはダメージから立ち直るのに時間がかかって、鞠莉さんはその分もっと差を広げられる...」

 

ルビィ「おねいちゃあ!負けないで!!ルビィも行くから!!!」

 

千歌「ルビィちゃん、今から行っても追いつけないよ。今はここで信じよう?ダイヤさんが勝つのを」

 

ルビィ「う、うぅ...!」

 

 

なんて速さですの...!?先程までとは全く違う走り、まるで別人ですわ!ジワジワと差が開いていく...!このままでは...!

 

ダイヤ「余計なことは考えない!私は鞠莉さんに追いついて、追い越してみせます!」

 

ファアアアアアアアアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!

 

 

善子「ゴールまであと50kmもないわよ!ダイヤさんは少しずつ差を詰めてるけど、このままじゃ追い越せない!」

 

ルビィ「おねいちゃあ...!」

 

千歌「ダイヤさんはまだ諦めてないよ!だから差が詰まっていくんだよ!」

 

曜「勝負はまだ分からない...!」

 

 

 

鞠莉(また車線を塞がれてる...さっきと同じように、路肩を使わせてもらうわ。)

 

ダイヤ(こうなったら、一か八かの賭けですわ...。これでダメなら私はここまでというだけの事...覚悟を決めますわ!)

 

キュウウウウウファアアアアアアアア!!!!!!!

 

梨子「ダイヤさん、何をするつもり!?」

 

花丸「トレーラーに突っ込むつもりずらか!?」

 

 

ダイヤ(突破口は...ここに!!!)

 

ギャンッ!!!

 

千歌「ダイヤさんの車が...消えた!?」

 

善子「違うわ!隣の車線のトレーラーの前に出たのよ!ダイヤさんは、トレーラーが横一列ではなく互い違いに走っていることを分かっていたのよ!」

 

花丸「それもちょっと違うずら...ダイヤさんはきっとそうなってる事は分かってなかったずら。」

 

曜「という事は、トレーラーに追突する覚悟で、互い違いに走ってる事に賭けたってこと!?」

 

花丸「にわかには信じられないけど、そうとしか言えないずら...!常人離れしてるずら!!」

 

ダイヤ「やりましたわ...」

 

上手くいった!!タイヤのグリップのおかげで、辛うじてトレーラーをオーバーテイクできた...これで鞠莉さんとの差が更に詰まりましたわ!

あとは...

 

ダイヤ「1GZ、力を見せなさい!フラットアウトォーーーッ!!!」

 

ファアアアアアアアアアアアアア!!!!!

 

あぁ...1GZが叫んでいるのが分かりますわ...

私のセンチュリーが、1GZが死んでいくのが、手に取るように分かる...

それでも。私はあなたの命を削ってでも、鞠莉さんに勝たなければならないのです。私は、あの日からあなたと走り続けてきた日々を、否定されたくはないのです。

 

だから、もう少し私のわがままに付き合っていただきたいのです。

 

 

鞠莉「ダイヤが、追い上げてくる!!」

 

さっきのオーバーテイク後から調子が崩れていたように見えたけど、持ち直しつつあるって事ね...。ゴールももうすぐそこ、どんな小細工も駆け引きも通用しない。ここから先は、純粋な思いの強さと車のスペックのみの世界!

 

鞠莉「さぁ勝負よ!ダイヤ!!あなたの意地を見せて!!!」

 

キャアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

 

ファアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

 

ダイヤ「行っっけぇぇええええ!!!!」

 

 

 

梨子「2台とも速すぎて追いつけない!けど、ダイヤさんが鞠莉さんに並びかけてる!」

 

ルビィ「行けぇーーっ!!おねいちゃああーーー!!!」

 

 

鞠莉(あぁ...今、すごく楽しい!!肩書きも地位も全部忘れて、またこうしてダイヤと肩を並べて、しのぎを削ることができてる!!あの時みたいに...Aqoursとして果南とダイヤと3人で、同じ場所を目指してた時みたいに...!)

 

 

私の独りよがりだってことは分かってる。ダイヤをこの世界から引き離したとしても、あの日々はもう戻ってこないことも、ダイヤがあの時の輝きを取り戻すことがないことも。

でも私は...私はただやり直したかった。あの時私のせいで、追いかけることを諦めなければいけなかったダイヤに、謝りたかった。そしてもう一度、ダイヤや果南と同じ時間を過ごしたかった。

 

でも、そんな願いも叶わない。ダイヤの車は私のLFAに並びかけて、私はもうじき追い抜かれる。でも悔いはないわ。こうして最後に、眩いあなたの輝きをもう一度見られたのだから...。

 

 

 

ダイヤ「行ける...!」

 

私の1GZが、スープラが僅かにパワーで上回っている!あと一息で、あと一息で前に出られる!!

そうすれば私は鞠莉さんに勝てて、この世界を諦めずにいられる!!

 

 

 

なのに...何故、涙が出るのでしょうか...?

 

 

 

 

本当は嬉しかった。海外に渡って以来音信不通だった鞠莉さんと3年ぶりに会えて、涙が出るほど嬉しかった。でも喜ぶことは許されなかった。否、許せなかった。私のせいで未来を失いかけた鞠莉さんに、私が再び歩み寄ることは許されなかった。例え鞠莉さんが許したとしても、私が私を許すことができなかった。でも、せめてバトルの中だけでも一緒にいたかった。だから勝ち目のないバトルだと分かっていても、形は違っていても、もう一度だけ同じ目標を目指して共に走りたかった。

でもまた私は、勝ちたいという自分の思いを優先して、繋がりかけた糸を断ち切ろうとしている。

 

勝ち負けなんか本当はどうでもいい。もし許されるなら、私はあの時と同じように3人で一緒にいたい。大切な誰かを失いたくない!

 

鞠莉「ダイヤの加速が...止まった...?」

 

ダイヤ「もう二度と会えないなんて...嫌です!!!」

 

このまま並走してゴールできれば...このバトルは引き分け!あと10kmも持ちこたえれば、それで全て終わりますわ!

 

ガゴッ!!!

フワッ...

 

ダイヤ「あっ...!?」

 

道路の隆起で、車体が...!

今のタイヤでは車体を立て直せるだけのグリップ力はもう残っていない...

 

ギャギャギャギャギャギャギャ!!!!

 

 

鞠莉「ダイヤ!!!」

 

一同「ダイヤさん!!!」

 

ルビィ「おねえちゃん!!!!」

 

私は、自分の願いすら叶えられないまま...

 

 

 

 

ヴアアアアアアアアアアアアアアアンンンン

 

梨子「あれは!?」

 

 

ギャギャギャギャ ガシャン!!!

 

善子「あのスポーツカー、ダイヤさんの車に体当たりして止めようと...!」

 

 

果南「鞠莉!!!」

 

鞠莉「果南っ!!!」

 

キャアアアアア!! ガシャンッ!!

 

ギャアアアアアアア......

 

 

曜「何が起こったのか、全然分かんなかった...!」

 

梨子「コントロールを失ったダイヤさんの車のスピンを、車二台で両側から挟んで止めたのよ...説明してても信じられないわ...」

 

 

シュウウウウウウ...

 

 

ヴォオオオオオ...

梨子「よっちゃん!停止表示板と発煙筒出して!」

 

善子「わ、分かった!!」

 

 

鞠莉「ダイヤ!!」バタン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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最終話 これから

 

 

 

ー浜松サービスエリアにてー

 

ダイヤ「...一体何が起こったのです...?」

 

私のスープラは道路の隆起を踏んで、制御不能に陥ったはず。なのに、気付けば車2台に挟まれる形で停止していました。1台は鞠莉さんのLFAなのは分かりましたが、もう1台は一体誰のもの?

 

鞠莉果南「ダイヤ!」

 

ダイヤ「鞠莉さん...と、果南さん!?」

 

鞠莉「急にスリップするからもうダメだと思ったわよ!」

 

果南「バトルには間に合わなかったけど、こっちには間一髪間に合ってよかったよ〜。鞠莉、上手く合わせてくれてありがとね。」

 

鞠莉「No problem!ダイヤのためならお安い御用よ!」

 

ダイヤ「という事は、このフェアレディは果南さん、あなたのものですの?」

 

果南「そうだよ。だいぶ前にエンジンブローしたのを直したっきり眠らせてたのを、引っ張り出してきたんだ。」

 

ダイヤ「そうでしたの...でもお二人とも、私のせいで車を傷だらけにしてしまって、申し訳ありません...このお詫びは必ずいたしますので!」

 

果南「いいよそんなの。私も鞠莉も、ダイヤを助けられたんだから気にしないよ。」

 

ダイヤ「で、ですが!」

 

鞠莉「ダイヤがどーしてもって言うんなら、考えちゃおっかな〜?」

 

果南「ちょっと鞠莉!」

 

ダイヤ「いいですわ果南さん。私はどんな事でも構いません。」

 

鞠莉「ん〜っと、そうね〜。...そうだ!」

 

 

鞠莉「果南と3人でお茶しない?ダイヤったら久しぶりに会えたのにずっと冷たいんだもん!バトルもDrawで終わっちゃったんだし、いいでしょ?」

 

 

ダイヤ「それは...。私には鞠莉さんと一緒にいる資格なんて...友人である資格なんて...!」

 

鞠莉「果南から聞いたわよ。ダイヤ、あの時自分のせいで私が怪我したと思ってるんでしょ?」

 

鞠莉「バカねぇ。あれは無茶した私が悪いんだからダイヤが責任を感じる必要なんてないのよ?それに、私のせいでダイヤと果南にラブライブを諦めさせてしまったことを謝りたかったの。」

 

鞠莉「一体何年、3人一緒にいたと思ってるの?そんな些細なことで崩れるほど私たちの関係はダテじゃないでしょ?」

 

鞠莉「だから、友達じゃないなんてそんな悲しいこと、言わないで。」

 

ダイヤ「...鞠莉さん...!」

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

千歌「車の、チームですか?」

 

ダイヤ「えぇ。こうしてこれだけの人が集まったのも、きっと何かの縁ですし、これを機に思い切ってチームを結成するのも悪くないかと思いまして。」

 

梨子「いいんですか?チーム結成ということは、やっぱりそれなりに実力のある人じゃないと、バトルやスピードレコードの面で、あんまりよくないんじゃないかと思ってしまうんですが...」

 

ダイヤ「その点は気にしなくても大丈夫ですわ。私が結成しようと思った目的はあくまで私達の交流のため。スピードを競ったり、他のチームとバトル、なんてことはありませんから心配しなくても良いですわ。」

 

曜「それじゃあ、私みたいに車を持ってなくてもいいんですか?」

 

ダイヤ「えぇ、それも構いませんわ。必ずしも車で集まる事もありませんわ。私はこの9人で集まることができればいいのです。」

 

 

 

千歌「スピードを競ったりバトルしたりもしなければ、車に乗ってなくてもいいって、ダイヤさんって不思議なこと考えるね〜。」

 

曜「ね。私なんか千歌ちゃんや梨子ちゃんに乗せてもらって峠に行ってるだけでなんにも知らないのに、それでもいていいって言ってくれるんだもん。」

 

梨子「でも、そういうダイヤさんの考え方って何だか分かる気がするんだよね。今はまだ言葉にしづらいけど...」

 

 

 

ルビィ「お姉ちゃん、いきなりチームを作るって言い出したからビックリしたけど、特に決まりがないことの方がビックリだよ。」

 

花丸「そうずらね。ダイヤさんのことだからてっきり、車のバトル漫画みたいに自分は一線を退いて、少数精鋭の遠征チームでも作るのかと思ってたずら。」

 

善子「そうなの?私としては、入る時やチームにいる時に変な隔たりを感じなくていいと思うんだけど。」

 

花丸「それもそうずらね...マルもそっちの方が居心地はいいかも。」

 

ルビィ「返事は来週で大丈夫って言ってたけど、みんなどうするのかなぁ...」

 

 

鞠莉『本当にあんな条件でよかったの?今までのダイヤなら、更に強いチームを作ろうとか思ったはずじゃない。』

 

ダイヤ「今でもそういう野心のようなものはありますわ。ですが今本当に必要なものはそのような目標ではなく、気兼ねなくいられる雰囲気だと思いますの。」

 

果南『気兼ねなくいられる雰囲気、ねぇ。』

 

ダイヤ「えぇ。速さを追い求めると言っても、追い求める手段やその舞台は人によって様々。もっと言えば、車で走る理由、目的ですらも人それぞれですわ。私を含め、目的も手段もバラバラな9人がこうして集まった意味は、そのような「速さ」や「強さ」を追い求めるというところにはないと思いますの。」

 

鞠莉『つまり、ただ一緒にいるだけでいい、それこそに意味があるってこと?』

 

果南『ま、3年も離れ離れになった経験を持ってる人が言うんだから、説得力はあると思うけど?』

 

ダイヤ「茶化さないでくださいまし!...まぁ入る入らないは個人の自由ですし、強制はしませんが、他の方々も事の本質は理解していると思っています。」

 

 

 

 

ー数日後ー

 

 

ヴォオオオオオオオ...

 

千歌「うぅ〜、なんか落ち着かなくてやっぱり来ちゃったよ...誰かいるかな?」

 

梨子「誰にも連絡はしてないし、平日の夜だから知り合いは来ないんじゃない?」

 

曜「週末だったら集まってたかもね〜...ってあれ?」

 

ベエエエエエエエエ...

 

花丸「あれ!千歌さんたちずら!どうしたんですか?」

 

千歌「花丸ちゃんと善子ちゃんじゃん!2人こそどうしたの?」

 

善子「ヨハネよ!リトルデーモンがどうしても走りたいって言うから、夜会を中断して付き合ってんのよ。」

 

曜「善子ちゃん、すごい友達思いだね!」

 

善子「だからヨハネだってば!...うわ、治安悪そうな車来た...」

 

ドゥンドゥンドゥンドゥン...

 

果南「あれ、千歌たち揃ってんじゃん。おーい、どうしたのー?」

 

鞠莉「チャオ〜!こんな偶然ってあるのね〜!」

 

千歌「うわ、果南ちゃんに鞠莉さんまで!2人ともこんな時間にどうしたの?」

 

果南「いや〜暇だったからさ、ドンキ行こうと思って鞠莉誘ったら、鞠莉がここ行こうって〜。」

 

鞠莉「夜中のドン・キホーテもexcitingだけど、こっちの方が楽しいわね!」

 

梨子「社長令嬢がそんな治安の悪い車に乗っちゃいけないですよ!誰に見られてるか分からないですよ!」

 

鞠莉「WOW!梨子ってば優しいのね〜!」

 

果南「別に普通だと思うけどなぁ〜。...お、これで全員揃ったんじゃない?」

 

バアアアアアアア!!!!

 

花丸「相変わらずの爆音ずらね...」

 

ルビィ「着いたよお姉ちゃん!...って、みんな!何で集まってるの?」

 

千歌「いや〜、なんか偶然が重なってね〜!」

 

ダイヤ「こんなことってあるんですのね...。せっかくですし、この前の答えを今ここで聞いてもよろしいですか?」

 

曜「いいですよ!もうみんな答えは決まってるだろうし!」

 

梨子「そうだね。」

 

花丸「もういつでも大丈夫ずら!」

 

善子「我が心の内に秘めたる思いは既に決まっていた...」

 

ルビィ「みんな決まってたの?って、ルビィもなんだけど」

 

果南「私も話を聞いた時から答えは決まってたよ。」

 

鞠莉「むしろそれ以外に選択肢はないデース!」

 

千歌「みんな、思いはひとつだったんだね!」

 

千歌「作ろう!みんなでひとつのチームを!みんなの居場所と、これからの未来を!」

 

 




一応最終話です。ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
読んでいただいてる方々は薄々気づいているかもしれませんが、私のモチベーションの波が酷く、投稿頻度がバラバラです。
続編は書いていますが、ある程度書き溜まったら一定間隔で投稿していこうと思います。
今後ともよろしくお願いします。


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第2部 第1話 函館から来たふたり

 

 

 

 

ウォオオオオオオオ!!!! フヴァアオオオオオオ!!!!!

 

 

花丸「だいぶ慣れてきたみたいずらね。最初よりかは良くなってるずら。」

 

善子「堕天使ヨハネの手にかかれば、これくらい造作もないことよ!あぁ!我が才能が怖い...!」

 

花丸「上手いとは言ってないずらよ〜 。及第点にはまだまだ届いてないずら。」

 

善子「ぐえっ...なによ!ちょっとくらい褒めたっていいでしょ!」

 

花丸「ほらほら、今は運転に集中するずら〜。」

 

 

千歌「善子ちゃん、頑張ってるね!」

 

梨子「花丸ちゃんもルビィちゃんも走ってるのに、自分だけ走れないのはちょっと悔しかったんでしょうね。」

 

千歌「そっかぁ〜。運転もいい線いってるし、すぐに上手くなりそうだね!」

 

梨子「運転センスはあるんだけど、いかんせん車が扱いにくいせいで伸び悩んでるわ。初心者にあれだけのハイスペック車は無理があるわね。」

 

千歌「うーん...思ったより道は険しそうか〜。」

 

 

花丸「今のコーナー、ブレーキングはもう少し遅らせても大丈夫ずらよ。」

 

善子「我が第六感が告げていた!今のはあれくらいで良いと!」

 

花丸「そんなこと言ってると速くなれないずら...って言っても、善子ちゃんのペースで頑張るのが1番ずらね。自信がついてきたらもう少し遅らせてみるといいずら。」

 

善子「善子じゃなくてヨハネ!って、急に優しくなるのね。なんか怖いわ...」

 

花丸「何言ってるずら、マルはいつも優しいずらよ?」

 

善子「そういうこと自分で言わないのよ!」

 

 

千歌「でも、なんだかんだ楽しそうで良かった。」

 

梨子「そうね。今までは一人で配信して、画面越しのリアクションを貰うだけだったから、きっとどこかで寂しいと思ってたんでしょうね。」

 

千歌「配信?なんのこと?」

 

梨子「いや!!特に意味は無いのよ?よっちゃんが寂しそうって言うのが言いたかっただけだから!」

 

千歌「ふ〜ん、そっかぁ。」

 

梨子(あっっぶなかったぁ〜〜!)

 

 

ブオオオオオオオ....

 

千歌「わ!梨子ちゃんあれ見て!函館ナンバーだよ!」

 

梨子「ほんとだ!こんなところまでわざわざ車だなんて、観光かしら?」

 

 

 

「今日は少ないですね。この地域のドライバーに聞いた限りでは、ここが最も有名だという話ですが。」

 

「...」

 

 

 

聖良「今夜は軽く流して、また明日見に来ましょうか、理亜。」

 

理亜「...うん。」

 

ブオオオオオオオ!!!!......

 

 

 

千歌「こんな時間にここに来るなんて、あの車の持ち主も走り屋なのかなぁ?」

 

梨子「車がWRX STiだということと今の走りから見れば、恐らくは走り屋でしょうね。ただ、わざわざ函館からこんなところに来る理由がわからない。ここまで来なくても、関東エリアには有名な峠も沢山あるのに...」

 

千歌「まぁ理由なんて人それぞれだし、たまたまここが近かったってだけかもしれないよ!バトルの相手って訳でもないんだし、あんまり気にする事ないと思うよ?」

 

梨子「そうね。私の考えすぎだわ。ありがとう千歌ちゃん。...よっちゃんたち戻ってきたわね。」

 

ウオォォォォォ......

 

花丸「千歌さん梨子さん!さっきものすごく速いWRXとすれ違ったずら!ね、善子ちゃん!」

 

善子「善子じゃなくてヨハネよ!運転に集中してたし、速かったからよく分かんなかったわよ。このヨハネの邪眼を持ってしても捉えられないとは...不覚!」

 

千歌「白い車でしょ?さっきここで見かけたよー。函館ナンバーだったよ!」

 

花丸「北海道ずらか!?そんな遠くから来ててなおかつあんな速さだなんて...恐ろしいずら!」

 

梨子(花丸ちゃんがこれだけ驚くほどの速さ...並大抵の走り屋ではなさそう。それにさっきのあの様子...一応気にかけておいた方が良さそうね。)

 

千歌「明日学校だし、今日はもうこれくらいにして帰ろっか。みんな気を付けてね!」

 

よしまる「はーい!」

 

 

ー翌朝、学校にてー

 

梨子「千歌ちゃん。申し訳ないんだけど、今夜もちょっと走らない?」

 

千歌「いいよー!でもどうしたの?梨子ちゃん平日はあんまり走らないのに。」

 

梨子「ちょっと気になることがあってね。今夜はチームの人をできるだけ集めておきたいと思ってるの。」

 

千歌「じゃあダイヤさんたちにも声掛けといた方がいいね!」

 

 

ー昼休みー

 

千歌「あ!ルビィちゃーん!」

 

ルビィ「千歌さん!どうしたんですかー?」タタタッ

 

千歌「今日の夜って集まれそう?梨子ちゃんが集まってほしいんだって!」

 

ルビィ「次の日がきつそうですけど、がんばルビィすれば大丈夫です!」バッ

 

千歌「さすがルビィちゃん!頼もしいね!花丸ちゃんと善子ちゃんにも聞いてもらっていい?できるだけ多い方がいいんだって!」

 

ルビィ「分かりました!」

 

 

千歌「曜ちゃん!今夜って予定空いてる?」

 

曜「空いてるよー!もしかしてみんなで集まるの?」

 

千歌「話が早いねー!そうだよ!できれば曜ちゃんにも来て欲しいなって!」

 

曜「ヨーソロー!千歌ちゃんの頼みとあれば、たとえ火の中水の中!どこでも行くであります!」

 

千歌「やったー!じゃあ夜に迎えに行くね!」

 

曜「フッフッフ、その必要はないであります!善子ちゃんが近所に住んでるから、善子ちゃんと一緒に行くよ!」

 

千歌「え!善子ちゃんの家って近かったんだ!じゃあ善子ちゃんと一緒にいつものところでね!」

 

曜「ヨーソロー!!」

 

ー夜ー

 

ワイワイ

 

梨子「鞠莉さん、ダイヤさん以外のメンバーは揃ったわね...」

 

果南「千歌からいきなり連絡来たから、何事かと思ったよー。」

 

善子「リトルデーモンたちとの集いがあったというのに...」

 

花丸「梨子さんからお誘いだなんて、珍しいずら。」

 

梨子「みんなに集まってもらったのは、見ておいてほしい走り屋がいるからなの。」

 

千歌「え?それって昨日の白い車のこと?」

 

梨子「えぇそうよ。あの車、只者じゃないわ。」

 

花丸「でも北海道から来てるんですよね?今夜もまた現れるとは思えないずら。」

 

梨子「いいえ。あの車は必ずここへ現れるわ。」

 

昨日のあの様子...あれは明らかに"獲物"を探していた。私たちはバトル目的のチームでは無いけれど、あの車のバトルの様子は必ず私たちの糧になるものがある。そう確信している。

 

ブオオオオオオオ.......

 

一同「来た!!」

 

ルビィ「梨子さんすごい!白い車、本当に来た!」

 

バタン バタン

 

曜「女の子2人組だ!私たちと同じくらいだね。」

 

 

聖良「昨日よりは多いですね。これは期待できそうですね、理亜」

 

理亜「うん。」

 

聖良「あそこの集団に聞いて情報を集めましょうか。」

 

スタスタ...

 

善子「げ!こっち来てるわよ!ここは堕天使の聖なる力で気配を消すしか...ギラン!」

 

聖良「すみません、私たち北海道から来てるんですけど、ここってバトルとかも行われてるんですか?」

 

善子「あ、あ、あと、えと、わ、私あんまりよく分かんにゃいんで、そっちの人たちに聞いてもらってもいいでしゅか?」

 

聖良「分かりました。ありがとうございます。」

 

善子「は、はひぃ...」

 

曜「あぁ!善子ちゃんがやられた!」

 

ルビィ「まさか話しただけでやられちゃうなんて...!」

 

花丸「彼女はチームの中でも最弱...想定内ずら」

 

聖良「すみません。この峠ってバトルは行われてないんですか?」

 

梨子「やってますよ。私達も一応、この峠をホームコースにしてるチームです。」

 

聖良「そうなんですね!それなら話が早いです。実は、バトルを申し込みたいと思っているのですが。」

 

一同「!!」

 

理亜「...」

 

聖良「下りの一本勝負でお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」

 

梨子「バトルを専門にしてる訳ではないので、ご期待に添えるかは分かりませんが、私たちで良ければ受けますよ。」

 

理亜「...」

 

聖良「そうですか!ありがとうございます!では...」

 

理亜「姉様。こんなチーム、相手しなくていいよ。」

 

一同「!?」

 

聖良「理亜!」

 

理亜「あれ、アンタたちの車でしょ?見なよ。型落ちのヴォクシーに田舎ヤンキー仕様のアリスト、軽のモコに挙句の果ては軽トラ。いくら初対面だからってそんな車で相手しようだなんてよく言える。私たちは遊びで言ってるんじゃない。」

 

聖良「理亜!言葉を慎みなさい。相手に失礼ですよ!」

 

理亜「事実を言ったまでだよ、姉様。」

 

善子「こんの...!!」

 

花丸「善子ちゃんが復活したずら!」

 

曜「押さえるよ!」ガシッ

 

梨子「お連れの方はああ言ってますが、どうしますか?」

 

聖良「妹が不躾なことを申し訳ありません。バトルはあなたがたにお願いしたいです。」

 

梨子「分かりました。こちらもご期待に添えるようにしますので、よろしくお願いします。」

 

聖良「ありがとうございます。では以後の情報交換用に、連絡先を...」

梨子「はい。お互い有意義なバトルにしましょう。」

 

聖良「えぇ。必ず。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




長らくお待たせしてしまい申し訳ありません。ある程度話が書き溜まったので投稿していきます。
1週間に1話のペースで投稿していきたいと考えていますので、何卒よろしくお願いします。


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第2部 第2話 走る理由

ダイヤ「ムッッキーーーーー!!!!」

 

曜「ダイヤさん落ち着いて!」

 

ダイヤ「落ち着いてなどいられるものですか!なんですのその無礼千万な輩は!」

 

ダイヤ「挨拶もろくにしないでおいて、言うに事欠いて挑発など、ふざけているにも程がありますわよ!」

 

善子「さっすがダイヤさん!!ダイヤさんならそう言ってくれると思ってたわ!」

 

ダイヤ「それほどでもありますわよ!なんと言ってもこの私は沼津一の走り屋、ジュエリーシスターズの黒澤ダイヤですわよ!」

善子「ダイヤさん!あんなじゃりん子たちなんかコテンパンにしちゃって!なんたって沼津一なんだもの!」

 

ダイヤ「フフフ...言われなくたって、」

 

善子「おおぉーー!!!」

 

ダイヤ「できませんわ。」

 

善子「なんでよ!!!」

 

梨子「それはそうでしょ。ダイヤさんのスープラはこの前のバトルで壊れちゃったから修理中なんだもの。」

 

善子「うわぁ〜ん!そうだった〜!」

 

ダイヤ「面目ないですわ...」

 

果南「しょうがないよ。この前のアレは不可抗力だし、仮に事故ってなくてもあんな挑戦者が現れるなんて誰も予想できないし。」

 

鞠莉「一番の問題は、誰がbattleするかってことよね。ダイヤ以外にも実力のある人はいるんだもの。」

 

花丸「バトルの条件は向こうが全部指定してるんですよね?」

 

梨子「えぇ。期日は3日後、場所は『西伊豆スカイライン』。」

 

花丸「地元民のマルたちの方が土地勘と経験値では有利ずら。有利と言っても、よっぽどの用事がない限りはあの道は走らないから、アドバンテージと言えるかは微妙だけど...」

 

ダイヤ「そう考えると...候補は千歌さん、花丸さん、果南さんの3人でしょうか?御三方とも実力はありますし、勝機は十二分にあるかと。」

 

果南「あー、私はパス。その日は家の用事があるから走れないや。」

 

ルビィ「そうなると、あとは花丸ちゃんと千歌さんの2人になるね。」

 

花丸「マルは何度か走ってるからある程度慣れてはいるけど、実力と車のスペックは千歌さんのが断然上だし...」

 

千歌「でも私、手伝いでいつも使ってるのは下の道だから、西伊豆はあんまり走ったことないんだよね〜。」

 

一同「うーん...」

 

曜「じゃあ、実際にコースを走って、どっちが速いかで決めたらいいんじゃない?」

 

ダイヤ「いいですわね。花丸さんと千歌さん、2人でバトルして勝った方がバトルを受けるということにしましょう。」

 

 

ー翌日、西伊豆スカイラインー

 

ヴォオオオオオ...

 

花丸「まさかこんな形で千歌さんと走る日が来るとは...」

 

千歌「花丸ちゃん、よろしくね!手加減なしで行くよ〜?」

 

花丸「はい!オラも手加減なしの全力で走らせてもらうずら!」

 

 

梨子「ダイヤさんはこの勝負、どちらが勝つと思いますか?」

 

ダイヤ「花丸さんはコースレイアウト、相手の走り方やマシンスペックなどの情報を知識として理解して走る方です。一方、千歌さんはそのような情報を感覚で掴んで走る方です。前もって分かっている情報が多ければ多いほど花丸さんが有利ですが、だからといって千歌さんの分が悪いわけではありませんわ。あらゆる情報を感覚で掴み、即座に対処する適応能力の高さ...あれは土地勘や知識などと言った情報を凌駕する可能性も秘めてますわ。」

 

梨子「つまり、どちらが勝ってもおかしくない...バトルの選考とはいえ、ますます気になる一戦ですね。」

 

 

ルビィ「あれ?善子ちゃんと曜さんは?」

 

果南「あぁ。善子ちゃんはあの2台の追走って感じで参加するみたいだよ。最近走る練習してるし、あの二人に引っ張ってもらえば感覚も掴みやすいだろうしね。」

 

鞠莉「曜は単に近くで見物したいってだけらしいわ。好奇心旺盛ね〜!」

 

 

善子「頑張ってついて行こうとは思うけど、期待はしないでよね?」

 

曜「ヨーシコー!安全運転でお願いするであります!」

 

善子「善子って言うな!ヨハネ!」

 

曜「ほらほら、もう始まっちゃうよ!」

 

善子「え!?ウソ!?」

 

 

ルビィ「カウントいきまーす!5!4!3!2!1!」

 

フォオンフォオンフォオン!!

 

ヴァアアンヴァアアン!!

 

ルビィ「ゴーー!!!」

 

ギャギャギャギャ!!!

 

ファアアアアン!!!!

 

ヴェアアアアアアア!!!!

 

曜「全速前進!ヨーシコー!」

 

善子「ヨハネだってば!」

 

ウヴァアアアアア!!!!

 

 

千歌「まずは花丸ちゃんの後ろについて様子見しようかな。」

 

この道は初めて走るけど、そんなにキツいカーブもないし、道の状態もそこまで悪くない。道幅も割と広いし、走りやすい道だ。これなら今から前に出ても走れそう。

 

花丸「流石に付いてくるずらね。そうじゃなくちゃ、ダイヤさんを圧倒した相手とは言えないずら。」

 

いくらマルの後ろを付いてきているとは言え、普通初めて走る道をこんなスピードで走らないずら。ドラテクもそうだけど、千歌さんは並外れたハートの強さも持ってるずらね。

 

フォアアアアアアアアア!!!!

 

ヴェアアアアアアアア!!!!

 

 

曜「うわ、あっという間に2人とも見えなくなっちゃったよ!」

 

善子「この堕天使ヨハネを振り切るとは、人間風情がなかなかやってくれるわね...」

 

曜「善子ちゃんはまだ始めたばっかりでしょ。無理せず走ろ?」

 

善子「承知!...にしても、あまり土地勘のない千歌さんでさえあんなスピードで走れるのに、北海道から来たって言うあの二人はなんでこの場所を対決場所に選んだのかしら?」

 

曜「うーん...何事においても経験っていうのは大きなアドバンテージになるからね。それ無しで勝算があるとすれば、よっぽどテクニックに自信があるとか?あ、ここもうちょいアクセル踏めるよ。」

 

善子「あ、うん。...あの妹はともかく、姉の方はそんな自信家には見えなかったけど。何か企んでるというか、考えがありそうな顔をしてたわね。」

 

 

ヴェアアアアアアアア!!!

 

花丸「依然として千歌さんに動きはないずらね。」

 

千歌「道の様子はだいたい掴めてきた...そろそろ前に出るよ!」

 

ファアアアアアアア!!!!!

 

千歌さんが加速した!ここで仕掛けるつもりずらね!

 

花丸「させないっ!」

 

ヴェアアアアアアアア!!!!!

 

千歌「!?」

花丸ちゃんの車、速い!!

軽自動車なのにパワーが全然違う!エンジンを載せ替え?したって言ってたけど、こんなにも変わるものなんだ...!

 

花丸「いけるずら!」

怪物軽トラを相手に、マルのモコがサイド・バイ・サイドをキープしてる!やっぱり、スズキが世に送り出したK6Aエンジンは最高で最強のエンジンずら!だからこそ...だからこそこの勝負、負けられない!

 

花丸「マルの車と、テクニックが!一番速いということを証明してみせる!!」

 

 

千歌「花丸ちゃん、すごい気迫...車からでもすごく伝わってくる!」

 

花丸ちゃんは、私よりも運転は上手くないって自分で言ってた。そして車のことも。でも花丸ちゃんは、私が持ってないものをたくさん持ってる。車の性能や部品に関する知識、道の走り方や運転の基本的な技術。そして何より、自分が乗る車に対しての自信と誇り。

花丸ちゃんのその熱意は、私なんかよりもずっと大きいし、もしかするとチームの中で一番大きいかもしれない。それってすごく素敵なことだし、羨ましい。

私は...

なんで走ってるんだっけ?

 

 

 

 

花丸「うぅ...やっぱり適わなかったずら...」

 

ルビィ「花丸ちゃんは頑張ったよ!それ以上に千歌さんが速かっただけだよ!」

 

梨子「次のバトルは千歌ちゃんが出るってことで決まりね。」

 

ダイヤ「違う場所から来ているとはいえ、挑戦者はこちら側。相手がどんな策を講じてくるか分かりませんわ。気を引き締めて臨むのですよ。」

 

千歌「はい...でも、明日のバトルは花丸ちゃんに出てもらった方がいいかもしれないです。」

 

一同「え!?」

 

鞠莉「what's!?いきなり何を言い出すの千歌っち!」

 

千歌「このバトルでは勝ったけど、やっぱり少しでも走り慣れてる人の方がいいと思うし、勝ったって言っても最後の最後までずっと並走してたから...」

 

梨子「それでも勝ったことに変わりはないのよ?自信を持って、千歌ちゃん。」

 

花丸「マルは、千歌さんに走ってもらいたいずら。負けちゃったのは悔しいけど、それでも同じチームだから、自信を持って送り出したいずら!」

 

ルビィ「そうですよ!千歌さんなら絶対にあの二人に勝てますよ!」

 

千歌「花丸ちゃん...みんな...」

 

「...分かった。私頑張るよ。」

 

 

曜「...」

 

 



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第2部 第3話 Saint Snow

ファアアアアアアアアン......

 

『信じて送り出したいずら!』

 

『千歌さんなら絶対にあの二人に勝てますよ!』

 

 

本当にそうなのかな...?

 

ファアアアッ ファアアアアアアア!!!!!

 

花丸ちゃんは全力で私に向かって来てくれた。『負けたくない』って気持ちもすごく伝わってきた。それに対して私は、あの2人とバトルする理由どころか、車に乗って走る理由すら見つけられてない。ただ美渡ねぇ志満ねぇに言われたから乗ってるだけで、みんなといるのは楽しいけど車が好きな訳でもない。

花丸ちゃんと比べたら何もかも中途半端なのに、あのバトルで勝ったからって、本当に私でいいのかな...?

 

 

ウヴァアアアアアアア...

 

善子「千歌さん、だいぶこの道にも慣れてきたんじゃない?タイムも上がってきてるし。これなら明日は問題なく勝てそうね。」

 

曜「そうかな?私はなんか引っかかるんだよね〜。」

 

善子「そうなの?とてもそんな感じには見えないけど。」

 

曜「なんか元気ないって言うか、上の空って言うか...ここもうちょいイン寄せられるよ。」

 

善子「オッケー。」

 

ギャアアアアアアアアア!!!

 

善子「元気の塊みたいな千歌さんにそんなことあるの?」

 

曜「どんなイメージなのそれ...見てれば分かるよ。千歌ちゃんとはずっと一緒にいるし」

 

善子「おぉ...!魂の契約!友人という関係を超越した、まさに闇の眷属!」

 

曜「闇って!悪者みたいになってるじゃん!そんなんじゃないよ〜!次キツめの右カーブだよ。」

 

善子「承知!!†インフェルノ・コーナリングッ†!!!」

 

ギャギャギャギャ!!!!!

 

曜「うわあぁぁ!!やりすぎだよ!」

 

 

 

バタン

 

千歌「はぁ...」

全然ダメだ...いつもみたいに走れなくなってる...バトルは明日なのに、こんなんじゃみんなに合わせる顔がないよ...

 

 

曜「千歌ちゃん。」

 

千歌「曜ちゃん...」

 

曜「千歌ちゃん、無理してない?」

 

千歌「っ...!だ、大丈夫だよ!コースもだいぶ頭に入ってきたし、明日は調子よく走れそうだよ!」

 

曜「そっか。でも千歌ちゃん、無理は絶対にしちゃダメだよ?私ができることだったら何でもするからね?」

 

千歌「うん...ありがとう、曜ちゃん!頑張るよ!」

 

 

 

ー翌日、待ち合わせ場所にてー

 

 

梨子「いよいよね。千歌ちゃん、準備はいい?」

 

千歌「うん。大丈夫だよ。」

 

曜(千歌ちゃん、やっぱり元気ない...みんなは気づいてないみたいだけど)

 

花丸「千歌さんなら絶対勝てるずら!自信を持って走って!」

 

ルビィ「千歌さん、がんばルビィ!」

 

ダイヤ「気持ちを強く持つのですよ!北海道に負けてはなりませんわよ!」

 

千歌「うん!精一杯やってみるよ!」

 

ブオオオオオオオ...

 

善子「来たわね。」

 

ルビィ「あ、来たよ!」

 

善子「それにしても、曜の言う通り千歌さんが本調子じゃないって言うなら、このバトル勝てるの?」

 

曜「私の予想でしかないけど、このままだと千歌ちゃんは...負ける。」

 

善子「!!」

 

聖良「お待たせして申し訳ありません。」

 

梨子「いえ。約束の時間まではまだありますから。バトルの詳細をもう一度確認しておきましょうか。」

 

聖良「そうですね。バトルのコースは西伊豆スカイライン、同時スタートで先にゴールに着いた方の勝ちということで。」

 

梨子「スタートはこの広場で、ゴールは戸田峠駐車場でしたよね。」

 

聖良「えぇ。ところで、対戦相手はどなたでしょうか。」

 

ダイヤ「高海千歌さん。この方があなた方の対戦相手ですわ。」

 

千歌「...高海千歌です。よろしくお願いします。」

 

聖良「鹿角聖良です。いいバトルにしましょう。」

 

理亜「鹿角理亜。よろしく。」

 

梨子「ではそろそろ始めましょうか。車をスタート位置に並べてください。」

 

 

 

千歌「いつまでもウジウジしてられない!みんなのために勝たなきゃいけないんだから!」

勝たなきゃ...勝たなきゃ!!

 

 

ルビィ『各ポイント準備OKです!対向車もいません!』

 

梨子「わかったわ、ありがとう。それじゃあカウントいきまーす!」

 

「5!4!3!2!1!」

 

ファン!ファン!ファン!ファアアアアアアア!!!!

 

ヴォン!ヴォン!ヴォン!ヴォオオアアアア!!!!!

 

梨子「ゴーーー!!!!!」

 

 

ファアアアアアアアアア!!!!!!

 

バアアアアアアアアア!!!!!

 

ギャギャギャギャギャギャ!!!!

 

梨子「インプレッサの立ち上がりが速い!さすが4WDね。でも千歌ちゃんも負けてない!」

 

聖良「まずは様子見、お手並み拝見させてもらいますよ。」

 

ファアアアアアアア!!!

 

千歌「前をとった!これなら何とか持ちこたえられそう。」

 

 

バアアアアアア!!!!

 

理亜「白ナンバー。エンジンの排気量が変わってるみたい。」

 

聖良「えぇ。この軽らしからぬパワーとスピードはそれが原因でしょうね。侮りがたい相手です。」

 

千歌(大丈夫、このコースはきついカーブが少なかった。私ならブレーキをかけずにギアを落とすだけで突っ込んでいくこともできる!)

 

ファアアアアアッ ファアアアアア!!!!!

 

理亜「!」

 

聖良「車の性能もさることながら、ドライバーのテクニックも相当なものですね。それでこそ私たち、『セイントスノー』の相手に相応しいというものです。」

 

 

善子「第一セクション、千歌さんが先頭で通過したわ!」

 

(曜が心配してたの、やっぱり思い過ごしだったみたいね。あのキレのある走りなら大丈夫そう!)

 

 

ファアアアアアア!!!

 

ヴォアアアアアア!!!!

 

千歌(ほぼ全開で走ってもなかなか離れない...やっぱり向こうから条件を言ってくるくらいだもん、相当自信あるはずだよね。)

 

千歌「でも...絶対に勝ってみせる!」

 

 

 

ダイヤ「これはマズいですわね...このバトル、いよいよ分からなくなってきましたわ。」

 

ダイヤ『こちら第2セクション戸田駐車場。辺り一帯に霧が立ち込めてきましたわ。』

 

梨子「霧が...!分かりました。一般車の情報はまだ入っていないのでバトルは続行しますが、事故などのトラブルに注意してください。他のオフィシャルの方にはこちらから伝えておきます。」ピッ

 

霧...バトルに限らず、運転において夜の闇よりもドライバーにとって脅威になる存在...千歌ちゃん、気を付けて...

 

 

 

フッ

千歌「なにこれ...霧!?うぅ、急に視界が悪くなった!」

 

アクセルを踏みたくても、視界が悪いせいで踏んでいけない!でもそれはきっと相手も同じはず!条件は全部同じだよ、焦るな私!

 

 

 

聖良「霧ですか...。どうやら気候は私たちの肩を持つようですね。準備はいいですか、理亜。」

 

理亜「オッケー。いつでもいいよお姉様。」

 

聖良「任せましたよ。ッ!!」

 

 

ヴォアアアアアアアアアア!!!!

 

千歌「な、なにっ!?追い上げてくる!?」

 

ギャアアアアアアアアア!!!!!!

 

ヴァアアアアアアアア!!!!

 

カーブ手前で追い抜かれた!霧のせいで視界が悪いはずなのに、私よりも上のスピードでカーブを抜けていった...!どういうこと!?

 

千歌「ッ!!追いかけなきゃ!」

 

ファアアアアアアアアア!!!!

 

テールライトの光がうっすら見える。霧が晴れるまではあの光を追いかけていれば、引き離されるなんてことはないはず!そこから、追い越してみせる!

 

 

 

理亜「次キツめの左。ブレーキ使って。」

 

ヴァアアアアアオオオオ!!!!! キャアアアアアアア!!!

 

理亜「3速で踏めるだけ踏んで。」

 

ヴォアアアアッ ヴォアアアアアアアアアア!!!!!!

 

理亜「緩めの右。そのまま突っ込める。」

 

ヴァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!! キャキャキャキャ!!!!

 

 

 

恐らく相手は『土地勘のある方が有利』だと考えたことでしょう。従来であれば全くもってその通りです。ですが私たちは違う。私たちの前では土地勘などという曖昧なものは意味をなさない。私たちなら悪天候ですらも味方に付けられる。

さぁ千歌さん、あなたがどうやって私たちに

挑んでくるのか、見せてもらいますよ。

 

 

 

 



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第2部 第4話 ともだち

 

 

 

 

 

ファアアアアアアア!!!!

 

どうして?どうしてあんなスピードで走れるの?こんなに見通しのきかない霧に覆われてて、土地勘もないはずなのに!

ダメだ、勝たなきゃ!勝たないとみんなに合わせる顔がない!

 

ヴァアアアアアアアア!!!!

 

スピードが一気に落ちましたね...土地勘はあまりないということでしょうか。だからと言って手を抜くことはしませんよ。

 

理亜「次短いストレート。ギアそのまま全開で。」

 

 

千歌「どうすれば...」

 

テールライトがどんどん見えなくなっていく...!どうすればいい?どうすればあの二人に勝てるの?

 

 

ダイヤ「千歌さんが追い抜かれて、しかも差が開いてますわ!一体何が起こっていますの!?」

 

梨子「そんな...!千歌ちゃん、練習は十分していたはず!」

どうしちゃったの、千歌ちゃん...!

 

花丸「もしかして、マシントラブルずら!?」

 

善子(違う...千歌さん、やっぱり大丈夫じゃなかったんだ!やっぱり曜の言う通り、負けてしまう...)

 

 

理亜「姉様、あの軽トラ遂に見えなくなったよ。やっぱり大したことなかったね。」

 

聖良「...あのキレのある走りは見間違いだったんでしょうか...」

 

 

 

 

ファアアアアアアア......

 

テールライトを追いかけながら走ってるけど、それももう限界...あの二人との差がどんどん開いてる。やっぱり私じゃダメだったんだ...

 

みんな、ごめんね。私じゃ勝てなかった。走る目的のない私じゃ...

 

ファアアオオオォォォ...

 

 

...ヴォアアアアアアアア!!!!

 

千歌「!」

 

聖良「今はバトル中ですよ。こんなところで何をしてるんです?」

 

千歌「それは...」

 

聖良「対戦相手がこんな調子では話になりませんね。戦う意思のない相手と走っても、それはバトルとは言えません。」

 

千歌「...すみません...」

 

聖良「あなたの走りには光るものがありました。決して実力がないという訳ではないのにこんな結果になってしまって、残念でなりません。このバトルは取り消しです。」

 

理亜「私たちは遊びでストリートバトルをやってるんじゃない。そんなふざけた態度で相手しようなんて、バカにしないで。」

 

聖良「...行きましょう、理亜。」

 

 

千歌「...」

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ー翌日ー

 

キーンコーンカーンコーン

 

花丸「やっとお昼休みずら〜」

 

ルビィ「それにしても昨夜のバトル、まさかあんなことになるなんてね。」

 

花丸「千歌さんがバトルを放棄してバトルは取り消し、再戦が週末の夜ずら。どうして千歌さんは途中でやめたんだろう?」

 

ルビィ「うーん...ご飯食べ終わったら、千歌さんの様子見に行く?」

 

花丸「そうしてみるずら。」

 

 

 

梨子「千歌ちゃん、一緒にご飯食べよ?」

 

千歌「うん。」

 

曜「あ、私も一緒にいい?」

 

梨子「もちろん!千歌ちゃんもいいよね?」

 

千歌「うん、いいよ。」

 

千歌「...昨日はごめんね。みんなあんなに応援してくれたのに、あんなことしちゃって。」

 

梨子「誰も怒ってないから大丈夫よ。それよりも、千歌ちゃんらしくない行動だったからみんな心配してるわ。あの時何があったの?」

 

千歌「...ほんのささいな事だよ。だからあんまり気にしないで。」

 

曜「千歌ちゃん...」

 

千歌「それよりさ!次のバトルって誰が出るの?あの二人、すっごく強かったからなにか作戦も考えないと!」

 

梨子「そ、そうね...バトルに出る人はまだ決まってないわ。できれば花丸ちゃんか果南さんに出て欲しいなとは思っているけれど...」

 

千歌「そっかー、花丸ちゃんもすごく速いから、きっと勝てるよ!果南ちゃんは...走ってるところ見た事ないからなぁ〜、どうなんだろ?」

 

曜「千歌ちゃんはそれでいいの?」

 

千歌「...え?」

 

曜「千歌ちゃんは本当にそれでいいの?悔しくないの?」

 

千歌「そ、それは...」

 

千歌「...理由はどうあれ、あの二人には適わなかったんだから、私じゃダメだったんだよ!でもあんな速い人たち見たことなかったから、すごく勉強になったな〜って!」

 

梨子「千歌ちゃん...」

 

千歌「あ、そうだ!私先生に呼ばれてたんだった〜!ちょっと職員室に行ってくるね〜!」タタタタ...

 

 

梨子「やっぱり話してくれないわね、千歌ちゃん。」

 

曜「多分、みんなに心配かけたくないのかもしれない。」

 

梨子「どうしたものかしら...」

 

ルビィ「こんにちは〜」

 

花丸「こんにちはずら〜、ってあれ、千歌さんはどこずら?」

 

曜「花丸ちゃんとルビィちゃん!どうしたの?」

 

ルビィ「千歌さんが心配だったのでちょっと見にきました。」

 

花丸「でもいないですね〜。」

 

梨子「ふたりとも...ありがとう!」

 

ルビィ「それで、様子はどんな感じですか?」

 

曜「あんまり良くないね。なにかあったのは確実なんだけど、千歌ちゃん話そうとしないし...」

 

一同「うーん...」

 

 

花丸「こうなったら、最終手段に出るしかないずらね...」

 

ルビィ「そうだね、それが一番効果があると思う!」

 

梨子「私たちに残された道は一つだけね。」

 

曜「そうだね...(何の事だろ...?)」

 

ジーーーー...

 

 

 

 

曜「...え?私!?」

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

夜、三津浜にて

 

ザザーーーン......

 

千歌「私、どうしたらいいんだろ...」

 

みんなそれぞれに走る理由があってあの峠を走ってる。でも私は、美渡ねぇや志満ねぇが乗れって言うからずっと乗ってて、あの道もずっと走ってたから速いだけで、走る理由なんてなかった。

みんなと競ったり、それで仲良くなれた人が増えたりするのが楽しかったから私はみんなと一緒にいただけ...速く走る理由なんて、どこにもない。

あの日のバトルだって、本当は花丸ちゃんの方が走りたかったはずなのに、私が勝ったからって譲ってくれた。それなのに私、全然走れなかった。

 

私、もしかしたらあのチームにいるべきじゃないのかもしれない。

 

千歌「......」

 

チカチャーン...

 

曜ちゃん、あの時すごく心配してくれてたのになぁ...きっとあの時、私が悩んでることバレてたんだろうなぁ。

 

ちかちゃーん!

 

なにか一緒にしたいってずっとずっと思ってたのにできなくて、心配してくれたのに打ち明けられなかった。これじゃ友達失格かも。

 

千歌「ずーっと一緒にいたのになぁ...」

 

曜「ちーかちゃんっ!!」

 

千歌「あ...曜ちゃん...」

 

 

千歌「...って!曜ちゃん!?」

 

曜「ヨーソロー!渡辺曜であります!」

 

千歌「なんでここにいるの!?終バスもう終わっちゃったのに!うわ、汗びっしょりじゃん!」

 

曜「ふっふっふ〜、千歌ちゃんのためなら自転車でだって駆けつけるよ!」

 

曜「ずっと一緒にいた仲なんだよ?千歌ちゃんの悩み、聞かせてよ。」

 

 

私、バカチカだ...

こんなに私のことを思ってくれる友達がすぐそばにいてくれたのに、一人で勝手に塞ぎ込んで、みんなから逃げるような事までして...

 

千歌「...しいよ...」

 

千歌「私、悔しいよ!!」

 

千歌「鹿角さんたちに負けたのも悔しい!だけどそれ以上に!応援してくれたみんなの気持ちに答えられなかった自分が!走る目的なんかないのに何となくで花丸ちゃんからチャンスを奪ったことが!悔しいんだよ!!」

 

曜「...やっと言ってくれた。」

 

曜「走る理由は必ず、千歌ちゃんの心の中にあるはずだよ。今はそれに気づいてないだけ。そうじゃなかったら、千歌ちゃんはこんな風に悔しいって思えないよ。」

 

千歌「でも、本当に思いつかないよ...!」

 

曜「だったら今度のバトル、一緒に走ろうよ!今すぐには見つからないなら、千歌ちゃんが見つけられるまで私がサポートする!」

 

千歌「え...?」

 

曜「私、ずっと千歌ちゃんと一緒になにかしてみたかった。千歌ちゃんの力になれたらってずっと思ってたんだ。だからきっと、今がその時なんだよ!」

 

そうだったんだ...私と曜ちゃんの気持ちはずっと一緒だったんだ...!!

 

千歌「曜ちゃん、ありがとう!!」

 

曜「今度のバトル、絶対に勝とうね!!」

 

 

 

 

 

 

 



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第2部 第5話 千歌復活

 

 

 

 

 

 

聖良「あなたは......戦う意思のない人とはバトルしませんよ。前回のバトルでそれは分かってるはずですよ。」

 

理亞「アンタ、どこまであたし達をバカにすれば...!」

 

千歌「この前は、私の勝手な理由でバトルを中断してしまって、本当にすみませんでした。」

 

千歌「私は聖良さん、理亞さんともう一度バトルしたいです。だから来ました。」

 

聖良「でも、この前のあなたにはバトルする理由はおろか、走る理由すらないように見えました。こんなことを言うのは申し訳ないですが、そんな状態でバトルしても結果は同じだと思いますが。」

 

千歌「聖良さんの言う通り、私には走る理由がありません。でも、だからこそ私はバトルしたいんです。私が走る理由を見つけるために。それに、私はひとりじゃありません。」

 

曜「今日のバトルは、私も乗って行おうと思います。いいですよね?」

 

聖良(なるほど...私たちと同じように走ろうと言うわけですか。これなら彼女の本当の走りを見られるかも知れませんね。)

 

聖良「はい。構いませんよ。千歌さんの考えもよく分かりました。このバトル、受けて立ちましょう。」

 

理亞「姉様...!」

 

聖良「千歌さんの意志の強さは彼女の目を見ればよく分かります。全力で迎え撃ちましょう、理亞。」

 

理亞「......」

 

 

 

ルビィ『ゴール前、準備整いました!いつでも大丈夫です!』

 

梨子「コースの準備はOKです。聖良さん理亞さん、準備は大丈夫ですか?」

 

聖良「えぇ。いつでも大丈夫ですよ。」

 

理亞「はい。大丈夫です。」

 

梨子「千歌ちゃん曜ちゃんも、準備大丈夫?」

 

千歌「いつでも大丈夫。」

 

曜「私も大丈夫だよ。」

 

梨子「千歌ちゃんをお願いね。」

 

曜「分かってる。必ず勝たせてみせるよ。」

 

梨子「...ありがとう。」

 

梨子「それじゃあカウント行きます!」

 

梨子「5!4!3!2!1!」

 

フォン!!!フォン!!!フォオオオオンン!!!!

 

ヴォン!!!ヴォン!!!ヴォオオオオン!!!!

 

梨子「GO!!!」

 

フォオオオオヴァアアアアアアアアア!!!!!

 

ヴォオオオオオバアアアアア!!!!

 

 

梨子「始まったわね。頼んだわよ、曜ちゃん...」

 

 

曜「このまま前に出よう!」

 

千歌「分かった!」

 

ファアアアアアアアアアアア!!!!!

 

理亞「この前同じやり方で負けてるのに、同じ手を使ってくるなんて。」

 

聖良「普通に考えれば悪手。クレバーだとは言い難いですね。ですが敢えてそういう手を取るということは、向こうにも何か考えがあるということでしょう。」

 

バアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

曜「次、緩めの右の後にキツい左カーブ来るよ!」

 

千歌「分かった!ちょっと我慢してね!」

 

ファンンン ファンンン!!! ファアアアアアアアア!!!!!!

 

ギャアアアアアアアア!!!!

 

曜(すごい横G!今まで体感したことない!!こんな速度で千歌ちゃんはいつも走ってるんだ...!)

 

聖良(あのコーナリング、やはり伊達ではありませんね。あとはその走りを生かせるモチベーションだけですが、どうカバーするんでしょうか。)

 

曜「次、右のヘアピンカーブ来るよ!」

 

ファアアアアアアアアアアア!!!!!

 

ギャギャギャギャ!!!!!!

 

千歌(曜ちゃんすごいよ...この先がどうなってるのか考えなくても走れるから、運転に集中できる!これなら、勝てるかもしれない!)

 

 

花丸「第1セクション伽藍山駐車場ずら。もうすぐ2台が通過するずら!」

 

ダイヤ「分かりましたわ。そのまま順位を教えてください。」

 

ルビィ『千歌さん、大丈夫かなぁ?』

 

花丸「きっと大丈夫ずらよ。今度は絶対に負けないずら!」

 

...ファアアアア ...バアアアアア ...ギャアアアアア

 

花丸「来たずら!!」

 

ファアアアアアアアアアアアア!!!!!!!

 

バアアアアアアアアアアア!!!!!

 

花丸「千歌さんが先ずら!!」

 

花丸「千歌さんが先頭で、少し遅れてインプレッサが後ずら!千歌さんが勝ってるずら!」

 

ダイヤ「そうですか...!分かりましたわ。ありがとうございます。」

 

ダイヤ(本調子に戻りつつありますわね…ですがその先は高速セクション、気を抜いてはなりませんわよ。)

 

 

曜「ここからはカーブがあまりないよ、相手が追い上げてくるから気を付けて!」

 

千歌「う、うん!」

 

聖良(序盤の低速セクションでのあの走り...正直、あのレベルの走りをするとは思いませんでしたね。後のバトル展開を考えると、このまま前を走られると厄介ですね。)

 

聖良「エンジンパワーにものを言わせるのは不本意ですが、ここで前に出させてもらいましょうか。」

 

ヴォアアアアアアアアアアアアアッ ヴォアアアアアアア!!!!!!!

 

千歌「っ!速い!!」

 

このままじゃ、またこの前と同じになっちゃう!なんとかしなくちゃ...!

 

曜「落ち着いて千歌ちゃん!ここは追い抜かせよう!」

 

千歌「でも...!」

 

曜「焦る気持ちは分かるけど、この先で前に出るチャンスは必ずある。だから私を信じて!」

 

千歌「...分かった。」

 

理亞「この前の二の舞ね。やっぱり考えなんてなかったんじゃない?」

 

聖良「こんなことで終わる彼女たちではないはず...策が必ずあるはずです。」

 

前回のバトルから見れば、追い抜かれた時点でまず食い下がろうとしてくるはず。それが今回はなく、すんなりと引き下がった。恐らくはナビシートに座っている方の助言でしょうか。どちらにせよ冷静さは取り戻しているはずですね。

 

 

曜(チャンスは必ずある...この先に!私が千歌ちゃんを勝たせてみせる!)

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

善子「うげ!また霧出てきてんじゃないの!リリーに連絡しとこうかな。」

 

プルルルル

 

善子「もしもしリリー?」

 

梨子『よっちゃんどうしたの?』

 

善子「そこはヨハネでしょ...あせびヶ原駐車場なんだけど、また霧が出てきたわ。」

 

梨子『またなの!?ちょっと苦しい展開になりそうね...一般車や事故に注意して。他の皆には私から伝えておくわ。』

 

 

善子(今回は曜が付いてる。前と同じ結果にはならないはず...信じてるわよ、曜!)

 

...バアアアアア ...ファアアアアア

 

果南「お、近づいてきたね。ダイヤに電話しとくか。」

 

果南「あ、ダイヤ?戸田駐車場なんだけど、もうすぐ通過するよ。」

 

果南「順位は〜...」

 

バアアアアアアアアアアア!!!!! ファアアアアアアアアアアアア!!!!

 

「鹿角さんたちが先、千歌たちは後だね。」

 

ピッ

 

果南「さて。ここからが肝心だよ。千歌、曜。」

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

曜(鹿角さんの車とはだいたい車3台分の距離...この距離なら大丈夫、いけそう。)

 

理亞「この先、左から始まる下りの6連続コーナー。霧が出てるけど気にしないで。」

 

聖良(霧...千歌さんにとっては多少なりとも苦手意識があるであろう条件、ここできっちりマージンをいただきますよ。)

 

ヴァアアアアアアアアア!!!!!!!

 

 

千歌「霧だ...!」

 

この前と同じ状況だ...すぐ先の道が見えなくて、どこを走ってるのか分からなくなる。白い檻に閉じ込められてるみたいな気分になる。

 

でも!

 

今は隣に曜ちゃんがいる。私の一番のともだちが、私の代わりに道を教えてくれる!

だから、霧だって真っ暗闇だって迷わずアクセルを踏める!

 

 

千歌「曜ちゃん。私、曜ちゃんを信じるよ。」

 

曜「...任せて。ふたりで絶対勝とうね!」

 

千歌「うん!!」

 

曜「次は左から始まる6連続カーブだよ!さぁ、アクセル全開で行こう!」

 

ファアアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

ギャアアアアアアアアア!!!!!

 

千歌「ひとつ!」

 

ギャアアアアアアアアア!!!!!

 

曜「ふたつ!」

 

ギャアアアアアアアアア!!!!

 

千歌「みっつ!」

 

曜「見えた!!」

 

 

聖良「来ましたね…」

 

理亞「あの距離なら大丈夫。次四つめ。」

 

 

曜「残りの3つ、ノーブレーキで行けるよ!外からパスしよう!」

 

千歌「分かった!」

 

ファアアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

聖良「っ...!?」

 

理亞「は、速い!!」

 

ギャギャアアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

曜「よっつめ!!」

 

千歌「あと...もう少し!」

 

聖良(こんなに焦るのは久しぶりですね...!!)

 

曜「今だ!アウトから!!!」

 

千歌「うん!!!」

 

理亞「ブレーキどころかアクセルオフすらしない!?」

 

聖良「サイド・バイ・サイド...!!」

 

ギャアアアアアアアアア!!!!!!!! ガッ!!!

 

聖良「!!!」

 

千歌「うわっ!!」

 

ッギャアアアアア!!!!!!

 

曜「そのまま最後!インベタで!!」

 

千歌「う、うん!!」

 

ファアアアアアアアアアアアア!!!!!! ギャアアアアアアアアア!!!!!!!

 

 

 

聖良(オーバーテイクした...

5つ目のコーナーのアウト側は崖...コースアウトすればタダではすまない状況、しかも実際、コーナリング中に路面のギャップでバランスを崩しかけた...それでも尚加速し続けるあの意志の強さ。今ハッキリとわかった。私たちは、とんでもないドライバーを相手にしている!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第2部 第6話 決着、そして波乱の予感

 

 

 

 

 

 

聖良「理亞、ゴールまであとどれくらいですか?」

 

理亞「あと3分の1切ってる。このままじゃ...!」

 

聖良「えぇ、分かってます。逆転のチャンスは残り僅か。全力でアタックをかけるのみです。」

 

理亞「!!」

(姉様が全力を出す...!この道はおろか、函館でも久しく出していないというのに!あの二人はそれだけの実力を持っていると、姉様は認めたんだ...!)

 

ヴォオオオオオオオアアアアア!!!!!!!

 

 

 

曜「後ろは気にしないで、目の前の道に集中してね!」

 

千歌「分かった!」

 

(でも分かる…ミラーを見なくても、じわじわと近づいてくるこのプレッシャー。聖良さんが追い上げてきてる!でも!)

 

千歌「...負けないよ。」

 

だって私には、曜ちゃんがついてる!みんながついてるから!!

 

ファアアアアアアアアアアアア!!!!!

 

聖良(やはりコーナーへの突っ込みの思い切りがいい。前回とはまるで比べ物になりませんね。)

 

ヴァンンヴァアンンン!!!!!

 

聖良(軽量な車体だからこそ実現できる超レイトブレーキング、インプレッサでは太刀打ちできません。ですが!!)

 

ヴァアアアアアアアアアア!!!!!!!

 

千歌曜「速い!!」

 

聖良(もとよりそこで勝負するつもりはありません。4WD最大の武器である、圧倒的なトラクションと、そこから生み出される加速力!それを最大限に生かせるのはコーナーの立ち上がり!)

 

聖良「まだ勝負は終わってませんよ!!」

 

ヴァアアアアアアアアアア!!!!!!

ファアアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

曜(こっちがカーブに入る直前に相手は離れるけど、逆にカーブ出口で一気に差を詰めてくる...直線での加速から見て、車のパワーも多分向こうの方が上だ...事実、差はジリジリと詰まってきてる。)

 

千歌「できるかどうか分かんないけど...やるしかない!」

 

曜「千歌ちゃん、何するつもりなの?」

 

千歌「曜ちゃん、ゴールまであとカーブどれくらいある?」

 

曜「えーと...ちょうど10個だよ!」

 

千歌「分かった!曜ちゃん、ゴールまでちょっと怖いかもしれないけど...我慢してね!!」

 

曜「わ、分かった...」

 

ファンン ファアアアアアアアアアアアア!!!!

 

理亞「姉様、次はタイトな左コーナーだから。」

 

聖良「分かりました。」

 

聖良(急加速した...この先がタイトになっているのは向こうも知っているはず。先程の走りを見れば、私たちのプッシュに焦ったとも思えない...一体何を考えて...)

 

理亞「あの二人、減速しない!?」

 

聖良「オーバースピードです、曲がれません!!」

 

 

千歌「曲っっっがれええええ!!!!」

 

曜「う、うわあああああああ!!!」

 

 

ギャギャギャギャギャアアアアアアアアア!!!!!!

 

理亞「あれは...!」

 

聖良「慣性ドリフト!!」

 

今までグリップ走行だったから思いもしなかった...まさか、ドリフト走行も駆使してくるなんて...!!

しかも慣性ドリフトなんて高度なテクニックを!

 

千歌「行けた...!」

ダイヤさんに教えてもらった走り方、もしかしたらブレーキなしでも行けるんじゃないかと思って試してみたけど、やっぱり行けた!

このまま残りのカーブも全部これで行こう!!

 

ファアアアアアアアアアアアア!!!!!!!

 

理亞「...」

 

聖良「...悔しいですが、あれだけのテクニックとスピードでは、今の私では到底太刀打ちできませんね...」

 

理亞「そんな...!姉様が負けるなんて、私信じたくない!」

 

聖良「理亞。勝負というのは勝者がいれば必ず敗者がいる。当たり前のことです。今回の相手...千歌さんの方が強かった。だから私たちは負けた。たったそれだけのことですよ。」

 

理亞「でも...!姉様と私なら、どんな相手だって倒せると思ってたのに...!」

 

聖良「えぇ、私もそう思ってました。私と理亞の二人なら勝てると。完璧だと。でもそれは慢心だったと教えてくれたのがあの二人です。完璧だと思っていたテクニックにも、まだまだ改善する余地があったということです。」

 

理亞「うぅ...」

 

聖良「負けたことは確かにショックですが、またいつかリベンジすればいいんですよ。今回の千歌さんみたいに。腕を磨いて、次は勝ちましょう?理亞。」

 

理亞「...うん。」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

千歌「本当にありがとうございました!一度負けてるのに、再戦にも快く応じてくれて!」

 

聖良「いえ、全然構いませんよ。それにこちらこそ、ありがとうございました。まだまだ自分たちのテクニックにも改善の余地があると分かりましたから。とても有意義なバトルでした。」

 

千歌「それを言うなら私も聖良さんたちのおかげで、自分が走る理由を考えるきっかけができました。聖良さんたちとバトルしてなかったら、これからもずっと何となく走ってたと思います。」

 

聖良「走る理由、見つかるといいですね。またいつか、チャンスがあればその時は再戦をお願いします。」

 

理亞「次は...絶対負けないから。」

 

千歌「その時は全力で受けて立つので、よろしくお願いします!」

 

千歌「あ、でも!」

 

聖良「?」

 

千歌「バトルじゃなくても、またいつでも来てくださいね!沼津も内浦も、とってもいいところなので!」

 

聖良「えぇ!またお邪魔しますね。その時は案内してもらってもいいですか?」

 

千歌「もっちろん!!チームのみんなで案内しますね!!」

 

聖良「また会える日が楽しみです!」

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

ー学校にて、昼休みー

 

花丸「すごいずら~~~!!!」

 

ルビィ「結果は直後に聞いてたけど、やっぱり凄いです!」

 

千歌「いや〜もう、曜ちゃんがいなかったら間違いなく負けてたよ!」

 

曜「でも、気付いたらバトルも終わってて、鹿角さんたちも帰った後だったんだけどね...」

 

梨子「最後の最後で失神しちゃったんだっけ?」

 

曜「そうなんだよ〜、怖いとかそういう次元飛び越えちゃってたよ。」

 

千歌「ほんっっっとにごめんね曜ちゃん!!」

 

梨子「一体何したのよ...」

 

千歌「前にダイヤさんに教えてもらった、えーなんだっけ、ドリアンみたいな名前のやつ!」

 

花丸「ドリフトずら」

 

千歌「そうそれ!それをね、教えてもらったのはブレーキ使ったやり方だったんだけど、もしかしたらブレーキなしでも行けるかなって思ってやってみたんだ!」

 

ルビィ「それって...」

 

梨子「えぇ、間違いなく慣性ドリフトね...千歌ちゃん、つくづく怪物みたいなセンス持ってるわよね...」

 

花丸「そりゃあ曜さんも気絶するわけずら。」

 

曜「あの走り方で速いなら、これからずっとそれで走ってもいいんじゃないかな?」

 

梨子「いやいや!あなた気絶するほど怖いんじゃないの!?普通やめてとか言うでしょ!」

 

曜「そっちの方が速いならいいじゃん?私は頑張って耐えるだけだし。」

 

ルビィ「ピギィ!ストイックすぎる...」

 

花丸「幼馴染もなかなかの怪物ずら...」

 

千歌「それがね〜、あれやるとタイヤがボロボロになって、未渡姉に『タイヤいくらすると思ってんの〜』ってめちゃくちゃ怒られるからあんまりやりたくないんだよね〜。次の日の朝怒られて、わけわかんなかったよ〜。」

 

梨子「あんな魔改造車作っておいて今更ケチることないでしょうに...」

 

花丸「ところで!みんなは今夜走るずら?」

 

梨子「今のところ予定もないし、呼ばれたら行くけど...何かあるの?」

 

花丸「善子ちゃんが、『だいぶ腕が上がったと思うからちょっと見てほしい』って言ってるから、見てくれる人がいたらなって。」

 

梨子「そういうことなら。」

 

ルビィ「ルビィも大丈夫だよ!」

 

曜「私も大丈夫だから、善子ちゃんと一緒に向かうね。」

 

千歌「ごめ〜ん、今日は私無理だ〜、家の手伝いあるんだ〜。」

 

曜「そうなの?珍しいね、夕方からお手伝いなんて。」

 

千歌「うん、なんか大事なお客さんが来るらしくて、その準備で忙しいんだって。」

 

ルビィ「千歌さんのお家、歴史ある旅館ですもんね。どんな人なんだろう?」

 

千歌「すっごい有名人らしいんだけど、私に教えるとろくなことにならないからって詳しく教えてくれなかったんだ〜。」

 

梨子「そうなのね...」

 

千歌「まぁそういうわけで、今日は行けない!ごめん!」

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ー放課後ー

 

千歌「ただいまぁ〜」

 

志満「千歌ちゃんおかえりなさい。もうすぐお客さんいらっしゃるみたいだから、ぱぱっと着替えてきてくれる?」

 

千歌「分かった〜」

 

 

 

ウォォォォオオオオ...

 

ヴォオオオオオオ...

 

バタン

 

??「ふ〜ん...ここが今日から滞在する宿なのね。随分古めかしいけど、ほんとに大丈夫なんでしょうね?」

 

バタン

 

??「心配ないわ。パパの知り合いもおすすめしてたって言うから間違いは絶対ないはずよ。それに、ホテルオハラだと外出する時に何かと不便でしょ?」

 

??「ま、何でもいいわ。完全オフのお忍びで来てるんだから、しばらくの隠れ家になってくれれば。さっさと入りましょ。」

 

千歌「いらっしゃいませ〜!ご宿泊ですよね?」

 

(わ...二人ともすごい美人さんだ...ていうか、どこかで見たことある顔...)

 

??「えぇ。事前に予約させてもらってたわ。」

 

千歌「えーと...」

 

真姫「西木野よ。」

 

千歌「すみません...あ、ありました。お部屋はもう準備できてるのでご案内します。」

 

真姫「ありがとう。」

 

 

にこ「へぇ...!外から見るとこぢんまりとしてるのに、中は意外と広いのね。部屋も十分大きいし。」

 

千歌「ありがとうございます!で、ではごゆっくり〜...」 ススス...

 

 

ふぃ〜、緊張した〜。なんでいきなり接客なんか任せるかなぁ。優しそうな人たちでよかった〜。

でも、やっぱりどっかで見たことあるんだよね〜...どこだったっけなぁ〜、最近見た覚えがあるんだけど...!

 

 

千歌「スポーツカーが止まってる。あの人たちのかなぁ?」

 

白くて丸いライトの車と、真っ赤で切れ長のライトの車の2台、どっちも速そう〜。

 

花丸ちゃんとかダイヤさんが見たら喜びそうだなぁ。まぁお客さんの車だし教えられないけどね。

 

そんなことより!これから色々手伝わないといけないから、忙しくなるぞ〜!

 

 



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第2部 第7話 憧れの的

 

 

 

 

ダイヤ「以前と比べたら、格段に上達していますわよ。」

 

善子「そう?」

 

ダイヤ「えぇ。ハンドリングから伝わってきていた不安な感じもだいぶなくなりましたし、アクセルワークやブレーキングも洗練されて、安定感のある走りになっていましたわ。」

 

善子「よかったぁ〜。ダイヤさんにそう言ってもらえるなら自信が付くわ!」

 

花丸「5.5LでV8のモンスターマシンをこれだけ扱えるなら十分なレベルずら。まだまだ改善点はあるけど、それはこれから地道に取り組んでいけばいいずら!」

 

善子「あの厳しかったずら丸が...!あぁ、正しく今日こそラグナロクの日!」

 

果南「でも油断しちゃダメだよ?心の余裕がなくなったら、今まで練習してきたことがちゃんと発揮できなくなるからね。一番は平常心を保つことだよ。」

 

善子「我は天界を追放されし堕天使ヨハネ...ちょっとやそっとのアクシデントでは動じぬ...」

 

梨子「またそんな調子のいいこと言って...事故っても知らないわよ?」

 

曜「まぁまぁ!これで善子ちゃんも走り屋の仲間入りってわけだね!」

 

ルビィ「やったぁ!善子ちゃん、今度一緒に走ろうね!」

 

善子「フッ...今度と言わず、今からでも遅くはないぞ?...あとヨハネ」

 

ダイヤ「そうしたい気持ちはわかりますが、皆さん明日も予定があるでしょうし、今日はこの辺でお開きにしましょうか。」

 

梨子「えぇ、そうしましょうか。」

 

......ウウォオオオオォォォォォ

 

......ヴォオオオオオォォォォ

 

曜「スポーツカーだ!2台も来たよ!」

 

花丸「ポルシェと90スープラずら...どっちも戦闘力の高い車ずら。」

 

ダイヤ「こんな時間に来るということは、ただのドライブ目的ではないでしょうね。」

 

梨子「どうします?あの2台の走りを見てから帰ります?」

 

ダイヤ「...いえ。興味はありますがわたくしは明日の朝が早いですし。皆さんも予定があるでしょうから長居は無用でしょう。帰りましょうか。」

 

 

バタン

 

にこ「それらしき車はちらほらいるけど、そう多くはないわね。」

 

バタン

 

真姫「羽目を外して走れる場面ってこういう時くらいしかないから、ギャラリーは少ない方がローリスクだわ。」

 

 

ダイヤ「ん?...え゛ぇ゛っ!!!」

 

ルビィ「ピギャッ!ど、どうしたのお姉ちゃん!?」

 

ダイヤ「ルビィ!あれを見なさいルビィ!!」

 

ルビィ「あれって...あ、あわわ、あわわわわわ!!!!」

 

ダイルビ「まさか!まさか!まさか!まさか!」

 

 

 

ダイルビ「『BiBi』の二人だぁーーーー!!」

 

 

善子「えっ、なんか黒澤姉妹のアリストめっちゃ騒がしいんですけど?」

 

曜「何かあったのかな?ちょっと聞きに行ってみようか。」

 

善子「そうね。ちょっと心配だし。」

 

バタン

 

善子「外まで聞こえてるわよ?ちょっと大丈夫?」

 

曜「何かあったの?」

 

ウィーーーン

 

ダイヤ「あなたたちは...」

 

ようよし「あなたたちは?」

 

ダイヤ「...今すぐここから立ち去りなさい!!!!わたくしとルビィはここに残りますわ!!!!」

 

ようよし「は、はいいぃぃぃ!!!」

 

 

 

ダイヤ「他の方も!!!良い子は就寝の時間ですわよ!!!とっとと帰りなさい!!!」

 

果南「うわ...ダイヤなんか喚いてる。ちょっと止めてくるよ。......ダイヤ!恥ずかしいからやめな!?」

 

真姫「なんか向こうが騒がしいわね...」

 

にこ「ギャラリーの注目も向こうに行ってる事だし好都合ね。今のうちに1本走っとくわよ。」

 

真姫「極力静かに出るようにね。」

 

ウウォオオオオォォォォォ......

 

ヴォオオオオオォォォォ......

 

 

果南「他の人も見てるから喚くのやめなって!」

 

ダイヤ「果南さん!止めないでくださいまし!!これは私にとって一世一代の大!!チャン!!ス!!!この気を逃す訳にはいきませんの!!」

 

果南「うるさい!!網元の娘がみっともない!わけわかんないこと言ってないでさっさと帰るよ!」

 

ルビィ「あーー!お姉ちゃん!!あの二人が!!」

 

ダイヤ「え?んまーーー!私としたことが見逃すとは!!追いかけますわよルビィ!!」

 

ルビィ「うゆ!!おねいちゃあのためならルビィ、がんばルビィするゆぉーーーー!!」

 

ダイヤ「というわけで退きなさい果南さん!怪我しますわよ!」

 

果南「え、あ、はい!」サッ

 

ブアアアアバババババ!!!!!

 

パパパパパン!!!!

 

キャアアアアアアアアアバアアアアアアアアアアア!!!!!!!

 

ゥバアアアアアアアアァァァァ......

 

......

 

花丸「...竜巻でも起こったずらか...?」

 

 

 

バアアアアアアアアアアア!!!!!

 

ダイヤ「もっとスピードあげなさいルビィ!それではあの二人を見失いますわよ!ほらもっとコーナー突っ込むのです!」

 

キャキャキャキャ!!!!

 

ルビィ「うゆゆゆゆ...踏んば...ルビィぃぃ!」

 

ガッ!! ガリガリィ!!!!

 

ルビィ「ピギィ!!アリストしゃんのエアロがぁ!!」

 

ダイヤ「エアロ擦ったくらいでみっともないですわよルビィ!大和撫子たるもの、エアロなどガリってナンボですわ!気持ちを強く持つのです!」

 

何としても私はあの二人に直接会わなければならない...私にはそうする義務がある...

何故ならば...

 

 

私は絢瀬絵里のファンだからですわ!!!

 

 

私がスクールアイドルを目指したのは、μ'sがきっかけですわ。その中でも絢瀬絵里、彼女に強く憧れましたの。凛としていて美しいパフォーマンスを見た時、私は彼女のようなスクールアイドルになって輝きたいと強く強く願いましたわ。夢破れたあとも彼女への憧れだけは消えませんでした。μ'sが解散になったあとも、矢澤にこ、西木野真姫、絢瀬絵里の3人で『BiBi』というユニットを結成し、超人気アイドルユニットへと瞬く間に登り詰めました。スクールアイドルという肩書きがなくなってもなお色褪せないその魅力とカリスマ性があったからこそ、私はずっとファンでいられたのです。

 

そして今しがた、その『BiBi』のメンバーのうち二人が目の前にいました。せめてこの思いを、今までの感謝を伝えられるなら!このチャンスを逃してはならないのです!!

 

ダイヤ「ルビィ!もっと出ないのですか!?」

 

ルビィ「こ、これ以上は無理だよぉ!!」

 

ダイヤ「ぐぬぬぬ...ルビィ!運転を変わりなさい!わたくしが運転しますわ!」

 

バアアアアアアアアアアア!!!!!!!

 

ギャギャギャアアアアア!!!!

 

ダイヤ「絶対に追いついてみせますわよ!!」

 

 

ヴォオオオオオオ......

 

善子「ダイヤさん、すごい剣幕だったわね...」

 

曜「幼馴染の果南ちゃんですら追い返してたよ。それにいきなり飛び出していっちゃうし。一体何があったんだろう?」

 

善子「まさか、伝説の悪魔であるルシファーが憑依した!?それなら何とかしてヨハネの下僕として使役したいものね...」

 

曜「いやそれはないから...ってうわ!見てこの道!すごいブレーキ痕だよ!」

 

善子「絶対ダイヤさんとルビィのじゃない...ここまでして追っかけるってことは、目的はやっぱりあの2台で間違いないわね。」

 

 

 

ルビィ「あ!見えた!テールランプの光だよ!」

 

ダイヤ「捕まえましたわよ...!BiBi、覚悟ぉ!!!」

 

バアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

にこ「む...なんかややこしそうなのが1台、遠くから来てるわね。」

 

真姫『宿はもうすぐそこだし、さっさと宿に入ってやり過ごすのがいいと思うわ。』

 

フォオオオアアアアアア!!!!!!!

 

ヴォオアアアアアアア!!!!!!

 

ルビィ「トンネルに入っていっちゃった!」

 

ダイヤ「やはり沼津方面ですわね。」

 

BiBiほどの人気アイドルユニットともなれば、いくらオフでも高級ホテルに宿泊するはず。ですが沼津市街近辺で宿を取れば、あの2台はかなり目立つ...。パパラッチやファン、移動距離と一般市民の目を避けることを考えれば、宿泊するホテルは限られてくる。淡島の『ホテルオハラ』、三津浜の『松濤館』、そして『十千万旅館』...車を停めてからのアクセスを考えれば、ホテルオハラはなしですわね。となると残りは二つ...一件ずつ確認していくとしましょうか。

 

ヴォオオオオオォォォォ......

 

ルビィ「あれ?なんでスピード落としちゃったの?」

 

ダイヤ「まずは松濤館。」

 

それらしき車はなし、ですわね。となれば...

 

ダイヤ「!!」ニヤリ

 

ダイヤ「見つけましたわよ...!」

 

ルビィ「え!どこ!?」

 

ダイヤ「あそこの駐車場を見なさい、ルビィ。」

 

ルビィ「ほんとだ!さっきのポルシェとスープラだ!」

 

よりにもよって我がチームメンバーの家に宿泊してくださるとは...これは一気にエリーチカへ近づきましたわよ。

 

待っていてくださいまし!エリーチカ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第2部 第8話 ダイヤの執念

 

 

 

 

フォオオオオオオン...

 

千歌「ふわ...眠いなぁ〜...」

 

プルルル プルルル

 

千歌「誰だろ、こんな時間に...って、ダイヤさんだ。車停めよ。」

 

ヴォボボボボボ...

 

千歌「もしもし?」

 

ダイヤ『こんな朝早くに申し訳ありませんわ。』

 

千歌「家の手伝いしてたから大丈夫ですよ〜。でもどうしたんですか?こんな時間に電話なんて。」

 

ダイヤ『その事なんですが、ひとつお聞きしたいことがございましてね。』

 

千歌(急に改まった...なんか嫌な予感がする...)

 

ダイヤ『千歌さんのお宅に、有名な方ってご宿泊されてますわよね?』

 

千歌「い、いや〜?そんなお客さんはうちには泊まってなかったような〜...」

(やっぱりあの二人、有名人だったんだ...でもだからってダイヤさんにだって教えられないよ!教えて広まっちゃったら私が怒られるんだもん!)

 

ダイヤ『そうですか...では少し質問を変えましょう。十千万旅館に『西木野』か『矢澤』名義で宿泊しているお二人を知りませんか?』

 

千歌(うちに泊まってることどころか、名前まで分かっちゃってるよ〜!尚更教える訳にいかないじゃん!!)

 

千歌「い、いやぁ〜、なんのことだかさっぱり...たはは...」

 

ダイヤ『ふむ...あくまで口は割らない、ということですか...』

 

千歌(口ぶりが頭脳派の悪役みたいになってるよ...!)

 

ダイヤ『分かりましたわ。あなたが口を割らない以上、こちらも実力行使に出るまでですわ。では。』ピッ

 

千歌「え?実力行使?」

 

 

 

......バアアアア......

 

千歌「っっうわあぁぁ〜...」

 

...キャキャキャ...バアアアアア......

 

千歌「うわぁ〜、うわぁ〜!!」

 

ファン!!! ファアアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

 

バアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!

 

千歌「うわあぁん!やっぱり来ちゃったよ〜!!!」

 

ダイヤ「絶対に逃がしませんわよ!!!!」

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ー十千万旅館、駐車場にてー

 

ファアアアアアン!!!

 

バアアアアア!!!!

 

バタン!!

千歌「うわあああ!!!」

 

バタン!! ガシッ!!

ダイヤ「もう逃がしませんわよ!往路では上手く撒かれましたが、あなたの実家であるここまで来ればもう逃げ場はありませんわよ!観念して教えるのです!」

 

千歌「嫌ですよ!お客さんのこと勝手に教えるわけないじゃないですかぁ!」

 

ダイヤ「そんなものそちらの都合ですわ!いいから教えなさい!」

 

千歌「い〜や〜で〜す〜!!」

 

ダイヤ「分かりましたわ!どうしても口を割らないのであれば、このフルストレートアリストの爆音をここで響かせるまでですわ!覚悟しなさい!!」

 

千歌「そんなことしたら、ダイヤさんと縁切りますよ!」

 

ダイヤ「そんな!?クッ...卑怯な...!」

 

千歌(あっさり食い下がった!?)

 

未渡「コラァバカチカ!!朝っぱらからうちの前で何騒いでんの!!」

 

千歌「うげ!未渡ねぇ!最悪だぁ...!」

 

ダイヤ「ほれみなさい!縁を切るなどと脅した天罰ですわ!」

 

未渡「アンタもだよ!こんっなうるさいアリストでウチまで乗り付けてきて、一体どういうつもりなの!!」

 

ダイヤ「ピギィ!す、すみません...」

 

真姫「朝から賑やかね。」

 

一同「!!!」

 

未渡「こんな朝早くに申し訳ございませんお客さま〜!」

 

真姫「あぁ、私は別に...眠気覚ましに浜を歩いてただけだから。」

 

真姫「それよりそこのあなた、私たちに何か用があるんでしょ?そのアリスト、この前私たちを追っかけてきたのと同じだし。」

 

ダイヤ「ピギッ!!え、えと、その、あの...」

 

にこ「ちょっと真姫ちゃん!先に起きたんならにこも起こしてよ〜!」

 

真姫「ちょっ!にこちゃん!人前で『ちゃん』付けはしない約束でしょ!?」

 

にこ「どーせ誰も気にしないわよ...ってこのアリスト!この前の!」

 

真姫「そう。この子の車みたい。」

 

ダイヤ「あ、あの!!私、『BiBi』の大ファンで!それで、それで...」

 

にこ「なるほどね...だからこの前ずっと追っかけて来たわけね。ってことは、あの夜にこと真姫が車に乗ってるのも見てるってことね。」

 

ダイヤ「は、はい!2台とも、すごくお似合いでステキでしたわ!」

 

にこ「アンタ、チームとか入ってんの?」

 

ダイヤ「あ、はい!走り専門ではないですけれど、一応あの峠最速ということになってますわ!」

 

にこ「ふ〜ん...」

 

真姫「はぁ〜...ほどほどにしてよね。にこちゃん。」

 

ダイヤ「?」

 

にこ「じゃあさ、アンタのチームとにこたちでバトルしましょうよ。そっちが勝ったら言うこと聞いてあげるわ。」

 

ダイヤ「え!?」

 

にこ「ただし!アンタはバトルに出ちゃダメよ。」

 

ダイヤ「えぇ~~~!!!」

 

 

未渡「...何がどうなってんの、これ?」

 

千歌「さぁ...」

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ー昼、学校にてー

 

曜「それで、その『BiBi』って言う人たちとバトルすることになったんだ?」

 

ルビィ「はい。だけど、お姉ちゃん以外のメンバーがバトルするのが条件らしくて...」

 

花丸「主力中の主力が走っちゃいけないなんて、手痛いハンデずら...」

 

梨子「千歌ちゃんはお家のお手伝いがあるからダメだし。果南さんはどうなの?」

 

ルビィ「この前お姉ちゃんが戸田の駐車場で騒いだり、千歌さんのお家に迷惑かけたことに怒っちゃって、『そんなくだらないことには絶対に手を貸さない』って、断られちゃいました。」

 

梨子「う〜ん、自業自得だけど手痛いわね...」

 

曜「そうなると...花丸ちゃんは確定として、残り一人...梨子ちゃんかルビィちゃん、かなぁ。」

 

花丸「そもそもこれって、絶対に勝たないといけないバトルずら?」

 

花丸「話を聞く限りだと、オラたちが負けた時のことは何も言われてないんだし。バトルする以上全力で挑むのは当然だけど、デメリットがないんだから、何もエースが走るってことはないと思うずら。」

 

一同「確かに...」

 

 

花丸「だからオラは走る気はないずらよ。」

 

曜「あ、そうなんだ...」

(そりゃそうか。)

 

ルビィ「なら、今回のバトルはルビィが出てもいいですか?」

 

「元はと言えば、お姉ちゃんがみんなに迷惑をかけて生まれた話だし、お姉ちゃんが走れない分、勝てなくてもルビィが走りたいです。」

 

梨子「異論なしよ。でも、絶対に無理はしないでね。」

 

ルビィ「はい!」

 

曜「なら、残るはあと一人...」

 

花丸「じゃあ、オラは保健室に行ってくるずら。」ガタッ

 

梨子「えっ?どうして?」

 

花丸「残りの出走者を決めに行ってくるずら!」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ー保健室ー

 

「......」

いつまでもこんな調子じゃ、ダメダメね...

勇気を出さなきゃ、これから先は変わらない。分かってる、分かってるんだけど...

 

善子「やっぱりダメだぁ〜〜」

 

花丸「失礼します。2年1組国木田花丸です。」ガララッ

 

花丸「善子ちゃん、いつまでも惰眠を貪ってちゃダメだよ〜。」シャッ

 

善子「『堕眠』...それは、天界を追放され人の世に降り立った堕天使が、秘められし力を解放するために必要不可欠な儀式...何人たりともその眠りを妨げてはならない...おやすみ」

 

花丸「漢字が違うずらよ〜。そんなんじゃ、せっかくルビィちゃんや他のみんなと仲良くなったのに、一緒に過ごせる時間が少ないまま卒業しちゃうよ?」

 

善子「...分かってる、けど〜...」

 

花丸「まぁそれはそれとして、善子ちゃん、バトルに興味はないずら?」

 

善子「バトル?ないことはないけど...私が走ったところで結果は分かってるでしょ。」

 

花丸「それはやってみないと分かんないずら。それに今回のは負けても何も問題ないから大丈夫ずら。」

 

善子「それってほんとにバトルって言うの?つまりは誰でもいいってことよね。」

 

花丸「そういうこと。善子ちゃん、練習して走りは良くなってるから、実際にバトルして雰囲気を掴んでおいた方がいいと思ったずら。」

 

善子「そういうことなら...でもあんまり期待しないでよね?私プレッシャーに弱いし、他の人に比べたらそんなに上手くないし。」

 

花丸「心配しなくたって、みんな善子ちゃんに期待するし応援するずらよ!」

 

善子「なんでよ!」

 

花丸「だって善子ちゃんは大事なともだちだし、同じチームメイトだから。走る以上はやっぱり勝ってほしいし、負けたとしても笑ったりガッカリする人なんていないずらよ。だから自分のやってきたことに自信を持って走るずら!」

 

善子「ずら丸...!」

 

 

「フッ、良かろう...この堕天使ヨハネ、秘められた力を全て解放して、

戦いに臨もう...!」

 

 

「しかと刮目せよ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第2部 第9話 エキシビションマッチ

 

 

 

ダイヤ「ちょ、ちょっと待ってください!何故そんな采配なのですか!?」

 

梨子「いや、そう言われても...」

 

ダイヤ「バトルするからには勝ってもらわなければ困るのです!百歩譲ってルビィはともかく、善子さんはまだ未熟!到底あの2台には勝てるとは思えませんわ!」

 

「果南さんと花丸さんに出ていただきたいですわ!梨子さんでも構いませんわ!」

 

鞠莉「ダイヤったらワガママねぇ〜。Ladyがワガママなんて言っちゃNoよ?」

 

果南「それに!ダイヤが勝ちたいってのも、勝ったらあのアイドル2人に言うこと聞いてもらえるからでしょ?そんな理由であたしらを引っ張りだそうとしても無駄だよ。」

 

花丸「そうずら。ダイヤさん自身が出るならまだいいけど、出られないからってオラたちをこき使うのは違うずらよ。」

 

曜「まぁそんなわけで、あくまで『交流戦』ってことで!だからすみませんダイヤさん!ここはこらえてください!」

 

ダイヤ「そんなぁ~~~!」

 

善子「ダイヤさんって意外と子供っぽいところあるのね。」

 

ルビィ「お姉ちゃん、普段は真面目でしっかり者だけど、たまにあんな感じでワガママになっちゃうことあるんだ。ルビィはそんなお姉ちゃんも大好きだけどね!」

 

善子「あ、アンタがそれでいいならいいんじゃないの...。」

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ー数日後ー

 

 

にこ「さて、揃ったわね。オフィシャルはそっちに任せるわよ。」

 

ダイヤ「分かりましたわ...みなさんは事前に伝えておいたポイントで待機しておいて下さい。ルビィと善子さんは各自の車で待機。」

 

一同「はーい。」

 

真姫「にこちゃん、あれ見て。LCよ。」

 

にこ「この子たち、全員にこたちより年下よね?とんだセレブもいたもんだわ...あれがバトル相手の車じゃなくて良かったわ。」

 

 

果南「そういえば鞠莉、LFAじゃないんだ。あれどうしたの?」

 

鞠莉「とってもシャイニーでお気に入りだったんだけどね、パパのお友達でどうしても欲しいって人がいたから譲っちゃったわ。」

 

果南「あれ譲るんだ...お金持ちは規模が違うねぇ。」

 

梨子「善子ちゃんとルビィちゃん、大丈夫かしら...?」

 

花丸「ルビィちゃんはダイヤさんの運転を傍でいつも見てたし、実際の走りもそこそこ速いから大丈夫とは思うけど...」

 

曜「問題は善子ちゃんだね。上達してきたとはいえバトルは未経験...しかもデビュー戦が2対2っていう、あまりやらないバトル形式だし。プレッシャー慣れしてないから不安だね。」

 

梨子「負けてもいいから、どうか無事に走りきって欲しいわ...。」

 

 

ルビィ「善子ちゃん、大丈夫?」

 

善子「こっ、これくらい!堕天使にとってはどうって事ないわよ!このだ、堕天使ヨ、ヨヨ、ヨハネに任せなさい!」

 

ルビィ(善子ちゃん、すごく緊張してる...!ほぐしてあげなきゃ...そうだ!)

 

ルビィ「善子ちゃん善子ちゃん!」

 

善子「な、なによ!」

 

ルビィ「がんばルビィ!!」

 

善子「...フフッ!なにそれおっかしい!」

 

ルビィ「善子ちゃん笑った!ルビィのおまじないだよ!これをすると、すっごく勇気が出てくるんだよ!」

 

善子「ルビィ...ありがとね...」ボソッ

 

ルビィ「うゆ?何か言った?」

 

善子「な、なんでもないわよ!それよりもうすぐ始まるわよ!」

 

ルビィ「そうだね!準備しなきゃ!」

 

善子「ルビィ!」

 

「勝ちましょうね!」

 

ルビィ「うん!!」

 

 

 

にこ「ドライブモードは『NORMAL』に...まずはお手並み拝見と行こうじゃないの。真姫、準備はいい?」

 

真姫「えぇ、こっちは大丈夫よ。向こうの2人も準備できてるみたいだし、そろそろね。」

 

果南「ルビィ、善子。今回はただの交流戦だから、そんなに力まなくて大丈夫だからね。」

 

ルビィ「分かりました。でも手は抜きません!」

 

善子「地獄の悪魔たちの力を借りてこの戦いに臨もう...」

 

果南「まだまだ不安要素多いんだから、そういうノリで無茶しちゃダメだよ。」

 

ダイヤ「何を言うのです果南さん!!大和撫子たるもの、勝負事には常に全身全霊ですのよ!必ず勝たねばこの黒澤ダイヤが許しませんわよ!!」

 

鞠莉「はいはいstay stay〜。アイドルマニアの言うことは気にせず、マイペースで頑張ってね〜!」

 

 

曜「じゃあ皆さん!車をスタート位置に並べてください!」

 

フォオオオオオオオ......

 

にこ「真姫、いつもの戦法で行くわよ、いいわね。」

 

真姫「はぁ...またアレやるの?程々にしとかないといつかにこちゃんが痛い目見ることになるわよ。」

 

にこ「今は説教なんていいのよ!それに、今まで『アレ』をやって負けたことなんて一度もない...無敵の戦法なのよ!」

 

真姫「そこまで言うなら止めないわ。先行は私でいいのよね?」

 

にこ「えぇ。いつも通りよ。」

 

曜「カウントいきまーす!」

 

ルビィ(果南さんはああ言ってたけど、やるからには勝ちたい!ルビィにも戦える力があるって証明したいし、お姉ちゃんの望みを叶えてあげたい...!)

 

善子(始めから全力で行くわよ。今の私の実力が一体どれくらいなのか、ここで見ておきたい。それで負けるようならその程度ってことよね。)

 

曜「...2!1!GO!!」

 

フヴォオオオオオオ!!!!!!

 

バアアアアアアアアア!!!!!!

 

キュキュキュキュ!!!!!

 

果南「ルビィのアリストが先頭だね。」

 

ダイヤ「ルビィーー!そのままぶっちぎりなさいー!!」

 

鞠莉「スープラ、911と続いて堕天使ちゃんが最後尾かぁ。」

果南「あの二人の走り方、なんか嫌な予感がするなぁ...」

 

 

 

フヴォオオオオオオ...

 

善子「最初はこれでいいのよ...後から追い上げて度肝を抜いてやるわ!この堕天使ヨハネを甘く見ない事ね...。」

 

フォオオオオオオオオ...

 

にこ「さてさて、後ろの彼女は一体どこで仕掛けるつもりかしら?楽しみねぇ。」

 

ヴォオオオオオオオ...パパパパ!

 

真姫「最初のターゲットはあのベンツの子ね。可哀想だからあまりやりたくないんだけど...」

 

バアアアアアアアアア!!!

 

ルビィ「BiBiのふたりがあまり追ってこない...様子見してるのかな?」

 

善子「早速で悪いけど、前のを追い越そうかな!我が実力を目の当たりにして、恐れおののくがいい!!」

 

フウォオオオオオオオオ!!!!!!

 

にこ(案外早いタイミングで仕掛けてきたわね。流石AMGなだけあって、加速力もコーナリング性能もピカイチね。)

 

にこ「ドライバーが上手いかどうかは別だけどね。」

 

善子「やったぁ!私だってやってやれないことなんてないのよ!」

 

ルビィ(善子ちゃんがパスした、というより、追い越しをかけ始めた時点でにこさんが意図的にパスさせた?なんだか変だよ...)

 

善子「どんどん離れて行く!クックック!このヨハネに秘められし暗黒の力は!伊達ではないのよ!」

 

にこ「遊んであげるのはここまでよ。二度と私の前を走れなくしてあげるわ!真姫!」

 

チカッチカッ

 

真姫「にこちゃんのパッシング...いよいよね、分かったわ。」

 

ヴァオオオオオパパパパン!!!!

 

ルビィ(にこさんのパッシングで真姫さんが離れた?...っ、まさか!!)

 

ルビィ「逃げて善子ちゃん!!」

 

にこ「あんたはここで終わりよ!!」

 

フォオオオオオッ ヴォオオオアアア!!!!!

 

 

花丸「聞こえてくるマフラーの音が変わった...なんだか不吉ずら。」

 

梨子「そういう嫌な予感は、往々にして的中するのよね。善子ちゃん、大丈夫かしら...」

 

キュキュキュキュ...バアアアアアアアアア.....

 

花丸「スキール音が近くなってる!もうすぐ来るずらよ!」

 

バオオオオオオオオ!!!!

カッ

 

花丸「あの爆光フォグ、ルビィちゃんが先頭ずら!」

 

梨子「後ろを突き放してる!!すごいわルビィちゃん!」

 

パパパパ!!ヴォオオオオオオオ!!!

 

フヴァアアアアアア!!!

 

ヴォアアアアアア!!!ボボボッ!!!

 

花丸「3台固まって突っ込んできた!?」

 

梨子「スープラ、SL、911の順だわ!頑張るのよよっちゃん!前との差はほんの少しよ!」

 

花丸(違う、そんな雰囲気じゃなかった...善子ちゃんのドラテクがまだ発展途上だということを差し引いても、善子ちゃんには余裕がないように見えた...ここはストレートだし、それなりに走り込んでてコースも知ってるはずだから、余裕がなくなるなんてことはまずないのに...)

 

花丸「まさか、相手の作戦...?」

 

 

 



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第2部 第10話 ヨハネ覚醒

ーギャラリー通過の少し前ー

 

 

善子「この調子で前の車も追い抜く!」

 

チカッチカッ

 

善子(なに、パッシング?ヨハネが速いからって負け惜しみしてんじゃないわよ!!)

 

あんた達ふたり、仲良くこの堕天使ヨハネの後ろを走るといいわ!

 

ググッ フヴォアアアアアアア!!!!!!

 

 

 

フォオオオオオ ヴォアアアアアアアアア!!!!!!

 

善子(後ろの車、急に音が大きくなった...どういうこと?)

 

善子「って!追い上げてきてる!?」

 

善子(ここで追い抜かれてちゃたまんないわ!さっさと前の車をっ!)

 

ヴォアアアアアア!!!!

 

善子「追い抜けない!!」

 

まるでこっちが走る場所を読まれてるみたいに、ことごとく塞がれる!これじゃ後ろに追い抜かれる!どうすれば...!

 

 

にこ(ドライブモードを『sports』に変更することで、車体の様々なセッティングがスポーツ走行用に瞬時に切り替わる...それにより、さらに野蛮になったエキゾーストノート!この音色は、あんたが敗北にまみれる絶望の音色よ!さぁ、思う存分聞くといいわ!)

 

ヴォアアアアアアアアア!!!!!!

 

善子(前を塞がれてたら埒が明かないわね...この先のストレートでフェイントをかけて、一気に追い越しをかけてしまえば!)

 

 

真姫(...普通ならそう考えるでしょうね。ストレート手前のコーナーは緩やかな右。相手はインについて立ち上がると見せかけてアウト側にフェイントをかけ、ストレートでパスしようとしてくるはず。そこさえ抑えてしまえば、後はにこちゃんがかけるプレッシャーに負けて手も足も出せなくなる...我ながら、嫌な作戦の片棒を担いでると思うわ...)

フヴォアアアアアアア!!! キュキュキュキュ!!!!

 

ヴァアアアオオオオ パパパン!!!!

 

やっぱりこのコーナーも被せて来たわね...でも!

善子「見てなさい!」

 

インに付く...と見せかけて!

 

キュキュッ!!!

 

 

善子「読まれてるーー!?」

 

にこ「甘いわよ!!」

 

ヴォアアアアアア!!!!

 

善子「や、ヤバい!!詰められてる!!!」

 

にこ「焦ってる焦ってる...さぁ〜、そんな運転で走り切れるのかしら〜?」

 

後ろから追い詰められてるのに、前を追い抜くこともできない!例えるなら、凶悪犯に追いかけられてるのに前が行き止まりで、ジリジリと追い詰められている気分!

 

 

善子「くぅぅぅ!退いてよ!退きなさい!退くのです!!」

 

真姫「...終わりね。」

 

にこ「今よ真姫!退きなさい!!」

 

チカッチカッ

 

ギャギャギャ!!!

 

善子「退いたッ!!」

 

真姫(プレッシャーをかけられて、ストレスを受け続けたドライバーはどうなるか...冷静さを失い、アクセルワークやハンドリングも危うくなる。ストレスから逃れるために必死になり、周りが見えなくなる。普段走っているはずのコースも頭の中から抜け落ち、次がストレートなのか、コーナーなのかすら分からなくなる。そんな状態で、プレッシャーから逃れる術を一つだけ差し出されれば、迷うことなく、縋るように掴みに行く。たとえその先が、絶望であっても...)

 

フヴォアアアアアアア!!!!!

 

善子「が、ガードレール!?」

 

ハンドリングじゃ曲がれない!!ぶつかる!!

 

善子「うにゃあああああぁぁぁぁ!!!」

 

ギャアアアアアアアアアアアギャギャギャギャギャギャ!!!!!

 

ヴォオオオオオオオ.... ヴァアアアオオオオ....

 

 

ルビィ(あれは手加減なんかじゃない、作戦だったんだ!初めにわざと善子ちゃんに追い抜かせて、二人の『射程範囲』に入った瞬間、退くことも追い抜くこともできない『檻』の中に閉じ込めて、じわじわとプレッシャーをかけて堕とす...!例えるなら追い込み漁!入ったら最後、絶対に逃げられない!)

 

ルビィ「お姉ちゃんの願いは叶えられないけど、ルビィだけでも逃げ切って、善子ちゃんの仇をとるよ!」

 

 

にこ(あのアリスト、速い!ATのくせになかなかやるわね...姉譲りのドラテクみたいね。)

 

「でもね!この『Cutie Panther』からは逃れられないわよ!」

 

 

 

花丸「善子ちゃん!!」

 

梨子「まさかスピンしてたなんて...!」

 

花丸「マルのせいずら!マルがバトルしてみないかって誘ったせいで...!」

 

梨子「花丸ちゃんのせいじゃないわ。まずは善子ちゃんの無事を確認しましょう?」

 

ヴォボボボ...

 

善子「...」

 

花丸「善子ちゃん!大丈夫ずら!?」

 

善子「...えぇ。大丈夫よ。」

 

梨子「綺麗にスピンしたのね、車の方はダメージないみたい。でもここは大事を取ってリタイアした方がいいんじゃない?」

 

善子「...いいえ、走るわ。」

 

花丸「完走するのも大事かもしれないけど、こんな事になってまで走る必要なんてないずら!」

 

梨子「そうよ!また無理してクラッシュでもしたら!」

 

善子「大丈夫よ。一人残らず堕としてくる。」

 

梨子「無理よ!今のあなたの技量じゃ、とてもじゃないけど追いつけない!だから...」

 

「いいえ。必ず追い抜くわ。」

 

花丸「!?」

 

フヴォン!! フヴォオオアアアアアアア!!!! キャキャキャキャ!!!!!!

 

梨子「善子ちゃんやめなさい!!」

 

花丸(さっきの善子ちゃんの目、今まで見た事ないくらい、ゾッとするほど冷たかった...いつもの善子ちゃんじゃない!善子ちゃんに何かが起こってるの...?)

 

 

 

バアアアアアアアアア...

 

カッ

 

ルビィ「ピギッ!ヘッドライトの光だ!もう追いついて来たの!?」

 

ヴォオオオオオオオ!!!!

 

真姫「悪いけど、あなたも堕とさせてもらうしかないの。」

 

にこ「ま、ATにしちゃよく頑張ったわ。その努力に免じて、一瞬で終わらせてあげるわ!真姫!」

 

真姫「分かったわ。」ガゴ

 

パパパッ!!!ヴォアアアアアアアアア!!!!

 

ルビィ「ピギィーーーー!!!おねいちゃあーーーー!!!」

 

バアアアアアアアアア!!!!!

 

にこ(無駄よ。いくらアリストでも、スープラRZの加速力には勝てない。アンタは既に、『Cutie Panther』の射程範囲に入ってんのよ!さぁ、あといくつコーナーを抜けられるかしら!?)

 

真姫(次の左でアウトから一気に被せて前に出る。それでこのバトルは終わり。)

 

ルビィ(ごめんねお姉ちゃん、善子ちゃん。ルビィ、頑張ったけどダメだった...)

 

バアアアアアアアアア!!!!

 

ヴォアアアアアアアアア!!!!!

 

 

カッ!!

 

にこ「!!??」

 

ヘッドライトの光!?一般車にしては速すぎる...乱入?いや、それならオフィシャルがとっくに止めてるはず...一体どういうことなの?

 

フォヴォアアアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

は、速い!!速すぎる!!どんどん差を詰めてくる!一体何なのよ!

 

にこ「真姫!作戦は一旦中止よ!乱入者が来てる。」

 

真姫「!分かったわ。場合によってはそっちから片付ける?」

 

にこ「えぇ。というか、ターゲットを後ろの車に変えるわ。バトルに水を差されたんだもの。」

 

どこのどいつか知らないけど、オーバーテイクしなさい。アンタを脱出不可能な檻の中に招待してあげるわ!

 

フォヴォアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!

 

にこ「な゛っ!!!!」

 

この車...

 

さっき堕としたはずの、SLじゃないの!!

 

 

 

なんてこと!あそこでスピンして再起不能だったはずなのに、ここまで追い付いて来たわけ!?一体、どんなスピードで走ってきたってのよ!!

 

にこ「真姫!!コイツはにこひとりで抑えるわ!」

 

このドライバー、只者じゃない!電子制御で完全武装した911の本気で、この車を迎え撃つ!

 

ヴォオオオアアアアアアア!!!!!

 

にこ「並んだわよ...!アンタは大人しく、911のテールランプだけ眺めてればいいのよ!」

 

「.....」 ググッ

 

ゴアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

にこ(なっ!ここから更にアクセル踏むの!?度胸比べってわけね...一度堕とされたくせに...)

 

にこ「生意気なのよッ!!」

 

 

ヴァアアアアアアアアア!!!!!

 

フヴォオオオアアアアアア!!!!!

 

にこ(もうすぐコーナーね。インは取られてるけど、そんな事はこの際どうだっていい。立ち上がりの挙動さえ安定させれば、後はポルシェ特有のリアエンジン・リア駆動によって得られる、地面を抉りとるようなトルクと、そこから生まれる加速力でオーバーテイクは確実に成功するわ!)

 

にこ「さぁ、勝負よ!あんたをもう一度、堕としてみせるわよ!」

 

 

 

 

 

 




いつも読んでいただき、ありがとうございます。
第10話ですが、予約投稿を忘れていたために月曜0時投稿ではなくなってしまいました。
読んでいただいている方にご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした。
第11話からは通常通り、月曜0時投稿とさせていただきますので、よろしくお願いします。


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第2部 第11話 逆襲

 

 

 

 

 

 

 

真姫(にこちゃん、本当にひとりで大丈夫でしょうね...その言葉信じるわよ。)

 

真姫「私は前のアリストに集中するわ!」

 

ルビィ(ポルシェが離れて、相手のフォーメーションが崩れた?何だかよくわかんないけど、ルビィ助かったの!?)

 

真姫「行くわよ!」

 

ヴァアアアアアアアアア!!!!!

 

ルビィ「スープラ一台で追ってきてるよぉー!」

 

バアアアアアアアアア!!!!!

 

真姫(やっぱり速い!このアリスト本当にATなの!?このドライバー、このマシンの特性を高いレベルで理解して走らせてる!見た感じは気弱そうな子だったのに、侮れないわね...!)

 

 

 

にこ「ブレーキングは確実にっ!」

 

ここでは決して焦らない!ここでできる程度の差なら、立ち上がりから次のコーナーまでの加速で覆せる!だからにこはあくまで姿勢制御に専念する!

『ふつうのことをふつうにこなして勝つのみ』って、どっかのエボ使いも言ってたものね!

 

さぁ前は譲るわよ!

 

「......」

 

フヴァアアアアアアアア!!!!!

 

にこ(随分と思い切りのいい突っ込みをかけるのね...余程自信があるみたいね!)

 

「ッ...」

 

ヴァアアアアバババババ!!!!!

 

にこ「の、ノーブレーキィ!?」

 

グリップでその速度は自殺行為よ!...まさかドリフトで!?さっきまでそんな走り微塵も見せなかったじゃないの!

 

 

ギャギャギャ...ギャアアアアアアアアア!!!!!!

 

にこ「バカね!タイヤがタレてグリップしなくなってるじゃないの!」

 

車体も外に膨らんでる!度胸は認めるけどアンタのウデじゃ、そのオーバーステアを立て直すことは不可能!ガードレールにヒットして今度こそ再起不能よ!!

 

 

「...まだ...ッ!!!」 クンッ!! クンッ!!

 

ギャアアアアアアアアア!!!!!!

 

 

フヴァアアアアアアアア!!!!!!!

 

 

にこ「そんな...あそこから立て直せたっていうの...!?」

 

何なのよ...!一体この子、何なのよーッ!!

 

 

 

ルビィ「これ以上は...抑えきれないよ...!」

 

真姫(これだけプレッシャーをかければ、並のドライバーならとっくに堕ちてるけど、この子は粘ってるわね...)

真姫「しぶとい...それでも隙は生まれ始めている。」

もうそろそろ仕掛けようかしら...

 

ルビィ「車に乗ってても伝わるこの雰囲気...いつ仕掛けてきてもおかしくない!」

 

 

真姫「今よっ!」グッ

 

ヴァアアアアアアアアア!!!!!

 

ルビィ「来たぁ!!」

インは絶対に開けない!お姉ちゃんのために!善子ちゃんのために!絶対勝つんだ!

 

バアアアアアアアアア!!!!! キュキュキュッ!!!

 

真姫「くっ...」

 

失敗か...でも今ので、相手のタイヤはもう限界が近いのがよく分かったわ。ゴールももう近いし、次かその次でチェックメイトね。

 

 

カッ!!

 

 

ヘッドライトの光...にこちゃん...

 

フヴォアアアアアアアアア!!!!!

 

...じゃない!?『cutie panther』を受けて一度墜としたはずの、あのSLだわ!にこちゃんがやられた!?

 

ルビィ「善子ちゃん!?善子ちゃんだ!!」

よかった、無事だったんだ!それにここまで追い付いて来られるなんて、すごいよ善子ちゃん!

 

ルビィ「よぉ〜し...ルビィも、がんばルビィしなくちゃ!」

 

バアアアアアアアアア!!!!!!

 

真姫「アリストのペースが上がった!」

 

SLが来たことがドライバーの心境にプラスに働いたのね...仕方ない、アリストは諦めて、技術的に未熟なSLを堕としましょう。

 

ヴァアアアアアアア!!!!!キュキュキュ!!!!

 

フヴァアアアアアアアア!!!!!

 

「......」

 

真姫(やっぱり、走行ラインは私の読み通りね。これならカブせていくのは簡単だわ。)

 

......ヴォアアアアアアアアア!!!!!

 

真姫「ナイスタイミングね。」

 

にこ「さっきはよくもやってくれたわねぇ!もう一度『cutie panther』で仕留めてやるわよ!」チカッチカッ

 

パパパン!!!!ヴァオオオオオオ!!!!

 

「...今...!」ググッ!!

 

ゴァアアアアアアアアアア!!!!!!!

 

にこまき「加速した!?」

 

真姫「逃がさないッ!!」クンッ

 

ヴァアアアアアアアアア!!!!

 

ガアアアアアアアアアアア!!!!!

 

にこ(走行ラインは真姫が塞いでるのに突っ込んでいく!とても正気の沙汰とは思えない!さっきのドリフトといい、スピンした時に頭でもぶつけたの!?)

 

真姫(行ける!スープラならこのスピードでコーナーに突っ込める!ブレーキング勝負でスープラが負けることなんてまず無い!前には出させないわよ!)

 

「......!」ググッ

 

フヴァアアアアアアアア!!!!!

 

真姫(走行ラインをインに取った!?このコーナーならアウト・イン・アウトが最適解!なのに...)

真姫「一体どういうつもり!?」

 

にこ「ヤバい!」

 

ヴォアアアアアアアアア!!!! パパパン!!!キャキャキャキャ!!!!

 

フヴァアアアアアアアア!!!!!ギャアアアアアアアアア!!!!!

 

真姫「ゔえぇ!?」

 

ドリフトで...オーバーテイク!?

 

 

にこ(やられた...!グリップ走行のSLしか見てない真姫は、このコーナーなら相手は自分と同じラインで来ると思い込んでた!でも相手はドリフトでコーナーも抜けられる...!それを知らなかった真姫には防御する術がなかった!)

 

にこ「完っ全ににこ達の負けね...」

 

フヴァアアアアアアアア!!!!!!

 

 

 

バアアアアアアアアア!!!!!

 

ルビィ「あのヘッドライトは、善子ちゃんだ!!」

すごいよ善子ちゃん!初戦で2人組相手に勝っちゃうなんて!

 

決着も着いたし、後はゆっくり走っても大丈夫だよね!

 

バアアアォォォォォ....

 

ゴアアアアアアアア!!!!!

 

...え?善子ちゃんが詰めてくる!?もう終わったんだよね?そうだ!ハザード焚けば流石に分かるよね?

 

チカッチカッチカッ

 

ゴアアアアアアアアア!!!!

 

え!なんで!?なんで止まらないの!?

このままじゃぶつかる!

 

ググッ!

 

バアアアアアアアアア!!!!!ギャギャギャ!!!!ズズッ

 

ルビィ「ピギィ!す、滑る!」

 

さっきまでのアタックで、タイヤのグリップ力が無くなってる!

 

「...!!」

 

ドガッ!!! ギャアアアアアアアアア!!!!!

 

ルビィ「ぴぎゃああああああ!!」

 

ガシャアアアアアン!!!!!

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

気付いたら、朝だった。

バトルの途中、相手からのプレッシャーでスピンしてからの記憶がない。バトルの結果は...って、どうせ負けたんでしょうね。

 

善子「学校...行くかぁ...」

 

曜「善子ちゃん、おはよう。」

 

善子「曜...うちの前で会うなんて珍しいわね。」

 

曜「一緒に学校行こ。善子ちゃんと話したいこともあるし。」

 

善子「えぇ、いいけど。話すことって、もしかして昨夜の?」

 

曜「うん。実はね...」

 

 

善子「...えーと要するに、バトルには勝ったけど、その後私がルビィの車を田んぼに落として、そのまま走り去ってしまったと...」

 

曜「そういう事。クラッシュって言っても、自走はできたから大丈夫なんだけどね。善子ちゃん、あの時どうしてスピードを緩めなかったの?」

 

善子「うーん...そう言われても、そこの記憶どころかスピンしたところから全く記憶がないのよね...」

 

曜「そうなの!?対戦相手の人も『まるで別人みたいな走りだった』って言ってたし、不思議だね。」

 

善子「そんな事よりルビィよ!学校には来るの?」

 

曜「昨夜聞いた時は『何ともないから行く』って言ってたけど...」

 

善子「だったらこうしちゃいられないわ!早く行かなきゃ!」ダッ

 

曜「えぇ!?ちょ、置いてかないでよ〜!」

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ガヤガヤ...

 

善子「ルビィ!!!」ガラガラッ!!

 

「えっ、誰あの子?」

「すっごい美人...!」

「他のクラスの子かなぁ?」

「あんまり見たことないね」

 

ルビィ「あ!善子ちゃん!おはよう!」

 

善子「ルビィ!!!」ダダダッ

 

「ケガは?って、おでこ怪我してる!」

 

ルビィ「軽くぶつけただけだから大丈夫だよ!そんなに心配しないで!」

 

善子「するわよ!!ごめん、ごめんねルビィ!私のせいで...!」ダキッ!!

 

ルビィ「ピギィ!ちょ、善子ちゃん、みんな見てるよぉ...!」

 

善子「構わないわ!よかった...!ルビィが無事で本当によかった...!」ポロポロ

 

ルビィ「うゆゅ...」

 

 

 

花丸「大胆ずら...。」

 

梨子「今まで保健室に来るのがやっとだったのに、こうもあっさり教室に入れちゃうんだから、よっぽど心配だったんでしょうね。」

 

千歌「でも、それだけ大事に思える友達ができたのって、とってもいいことじゃない?」

 

曜「よ〜し!じゃあ今日の放課後は、善子ちゃんの初勝利と初登校をお祝いして、松月でスイーツパーティーだ!」

 

花丸「善子ちゃんとルビィちゃんにも伝えてくるずら!」

 

 

花丸「善子ちゃんルビィちゃん!今日の放課後、みんなでお菓子食べよ!」

 

 

「「うん!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第2部 第12話 カレシ疑惑

 

 

 

 

 

 

ー夜、東名高速道路下りー

 

 

ヴァアアアアアアアアア......

 

果南「しっかし、この車はいつ乗っても落ち着くね〜。」

 

鞠莉「でっしょぉ〜?LCの『L』は『luxury(ラグジュアリー)』の頭文字なんだから!乗り心地も操作もBest of the Best!!」

 

果南「こんなの乗ってたらうちの『サンパチ』なんか最悪だよ〜。どこが『貴婦人』なんだか...」

 

鞠莉「まぁまぁ。隣のGrassはBlueって言うじゃない?それぞれに良さがあると思うの!」

 

果南「そんなもんかねぇ。」

 

 

......ファアアアアアアアアアアア

 

果南「お、後ろから速そうなのが来るよ。」

 

鞠莉「ワオ!とってもシャイニーな音ね!ちょっとついて行ってみない?」

 

果南「無茶しないの。ゆったり走る方が性に合ってるでしょ。」

 

鞠莉「それもそうね〜。」

 

ファアアアアアアアアアアアアアアアァァァァ.......

 

果南(FDかぁ...かなりいじってあるなぁ。)

 

 

ー日本平PAー

 

 

果南「鞠莉は何飲む?アタシ買ってくるよ。」

 

鞠莉「果南ったら優しいのね!じゃあエスプレッソお願い!」

 

果南「はいよ〜。」

 

 

果南(あ、さっきのFDだ。ここで休憩してたんだ。)

 

曜「オッケー、じゃあ買ってくるね!」バタン

 

果南「えっ!曜!?」

 

なんで曜があのFDから出てくるんだろ?とりあえず曜に直接聞いてみるか......

 

??「ふぅ...」バタン

 

果南「!?」

 

あれって...男の子、だよね...?

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

果南「───ってことがあったんだよ〜。なんかアタシちょっとショックだったよ...。」

 

一同「えぇーーー!!!」

 

善子「夜に男と二人っきりでドライブとか、それもうデートじゃない!」

 

花丸「曜さん、大人だなぁ〜。」

 

ルビィ「知り合うとすれば、統合になってからだよね!浦の星は女子校だったし。」

 

梨子「まぁ、誰にでも隠し事のひとつやふたつはあるものじゃないかな?」

 

善子「リリーがヨハネの集いに度々参加してることとか?」

 

梨子「ちょっと!!!それ言わない約束じゃないの!!!」

 

千歌「それにしても聞いた事なかったなぁ〜、曜ちゃんにそんな人がいたなんて。チカになら言ってくれるんじゃないかと思ってた。」

 

果南「問題はそこなんだよ。小さい頃からの付き合いがあるアタシや千歌に言わないってとこが引っかかるんだよね〜。アタシは悲しいよ!今まで姉のつもりで接してきたつもりなのに何も言ってくれないなんて!」

 

千歌「え〜でも、いくらお姉ちゃんにでも言いたくないことはあるよ〜。私だって毎朝配達用のみかんつまみ食いしてるの、美渡姉達に言ってないし。」

 

梨子「それとこれとは話の規模が違う気が...」

 

果南「そこで!アタシは真実を確かめるために何としてもみんなの協力が欲しいんだよ。」

 

梨子「それはいいんですけど...果南さん、仕事は?」

 

果南「ん?あーいいのいいの。この時期うち暇だから。」

 

善子「こうやって放課後に学生に混じって集まってるの、後輩の様子見に来たOBの先輩みたいだわ...」

 

果南「おっ、秀逸だね〜。」

 

花丸「ついこの前まで教室に来れてなかったのに」ボソッ

 

善子「ずら丸今なんてったぁ〜!!」

 

ルビィ「ピギィ!善子ちゃんここお店だよ!」

 

 

果南「というわけで、ここしばらく曜を追っかけてくれないかな?お礼はうちで作った干物で!」

 

千歌「干物ぉ〜!?果南ちゃん家の干物美味しいからいいけどさ〜、もっと他になんかないの〜?」

 

果南「分かったよ〜、ドンキでなんか買っとくから!」

 

梨子「お礼の選択肢が干物かドンキしかないのは何なの...」

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

ー別の日の放課後ー

 

 

千歌「なんだかんだ引き受けちゃったよ〜。」

 

梨子「まぁいいじゃない。千歌ちゃんも曜ちゃんの"カレシ"、気になるでしょ?」

 

千歌「そりゃそうだよ!幼馴染にも黙ってるなんて、全くけしからん!絶対証拠掴むんだもん!」

 

千歌「あ、てかこの前のバトルってどうなったの?バトルに勝ったらダイヤさん、言うこと聞いてもらえる約束だったんでしょ?」

 

梨子「それが、『三人とも応援してます、これからも頑張ってください』ってオドオドしながら伝えたっきりで何もお願いしなかったのよ。」

 

千歌「変なの〜。どうしちゃったんだろうね。」

 

曜「千歌ちゃん梨子ちゃん!おまたせ〜!日直の仕事長引いちゃった!」

 

千歌「あ!曜ちゃん!!」

 

梨子「いいのいいの!私達も今来たとこだから!」

 

千歌「一緒に帰ろ〜!」

 

曜「うん!!」

 

 

 

 

曜「じゃあ私、ここで降りるから!」

 

一同「じゃあね〜!」

 

ブロロロロロ......

 

千歌「今日も一日楽しかったね〜!」

 

梨子「そうね〜。でもなんか忘れてるような...」

 

「「......」」

 

ちかりこ「あ゛っ!!」

 

 

 

ー夜、渡辺邸周辺ー

 

 

善子「全く、あの二人は何やってんだか...」

 

花丸「善子ちゃん家が近所じゃなかったら計画失敗してたずら。」

 

ルビィ「善子ちゃん家にお泊まり会と称して曜さんの追跡...なんだかワクワクするね!」

 

善子「言われてみればそうね...夜の闇に紛れてミッションを遂行するスパイみたい...なんかカッコイイ!」

 

花丸「あっ、曜さんが出てきたずら!」

 

ルビィ「あんなに嬉しそうに、どこ行くんだろ...」

 

善子「ルビィ、ずら丸!追跡するわよ!」

 

 

 

ルビィ「大通りのコンビニまで来たけど、もしかしたらお買い物に来ただけだったんじゃ...」

 

善子「うぐぐ...その可能性は否めないわね...」

 

ヴアアアアアアアア......

 

花丸「ずら!この音はもしや!」

 

ルビィ「マツダ RX-7だ!」

 

ヴォボボボボボボボボ......

 

善子「コンビニに入ってきて...曜さんが乗り込んだ!」

 

善子「ルビィ!あんたドライバー確認してきなさい!」

 

ルビィ「分かった!」

 

花丸「バレないように気を付けるずらよ!」

 

「オラたちは駐車場の隅で夜中にたむろす不良っぽくして様子を伺うずら。」

 

善子「こら!女の子がそんな座り方すんじゃないわよ!」

 

花丸「アァン?なんか言ったずらかァ!?」

 

善子「余計目立ってるわよ!」

 

ウォオオオオオ...

 

ヴォオオオオオ...

 

花丸「あれ?この二台って...」

 

バタン

にこ「あれ?アンタたちこんなとこで何やってんのよ?」

 

真姫「女子高生がこんな時間にコンビニにたむろすのはいただけないわね。って言っても、もっと悪いことしてるんだけどね。」

 

よしまる「にこさん真姫さん!!」

 

花丸「東京に帰ったんじゃなかったんですか?」

 

にこ「長い休みをもらってるから、あと2〜3日は滞在しようと思ってんのよ。」

 

真姫「沼津で新しいブランド米が出たから、買ってきてって友達にも頼まれてるしね。」

 

善子「変わったお友達なんですね...」

 

にこ「それで?アンタたちは何してたのよ?」

 

花丸「それが...色々と込み入った事情がありまして〜...。」

 

キュウウゥゥ ヴァッババババババ!!!!!!

 

真姫「ロータリー?あんなのいたなんて気付かなかったわ。」

 

ルビィ「善子ちゃん花丸ちゃん!あの車が出ていくよ!やっぱり男の人だった!って、にこさんと真姫さん!?」

 

にこ「ターゲットはあのFDってことね。分かったわ。アンタたちふたり!分かれて乗りなさい!」

 

よしまる「えぇ!?」

 

にこ「追うわよ!」

 

真姫「はぁ...面白そうなことにはすぐ首突っ込むんだから...」

 

バタン!!

 

ウウォオオオオオオオオ!!!!

 

ヴォオオアアアアアア!!!!

 

 

 

 

ルビィ「......え!?ルビィは!?置いていかないでよぉ〜!!」

 

 

 



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第2部 第13話 FDの実力

 

 

 

 

善子「バレないように2台くらい後から追ってください!」

 

にこ「オッケーよ!ところで、あのFDを追う理由を詳しく聞かせてくれる?」

 

善子「実は、チームのメンバーの一人が男の人と付き合ってるかもしれないんです。」

 

にこ「なるほど、で、その男が運転してるのがあのFDで、アンタ達は追っかけてその真相を突き止めたいってわけね。」

 

善子「そうです ...こんなしょうもない事に付き合わせちゃって、ごめんなさい!」

 

にこ「何それ...余計面白いじゃない!最後まで付き合うわよ!」

 

善子「いいんですか!?」

 

にこ「別にいいわよ。それに、あんたにはこの前のバトルで申し訳ないことしたし、そのお詫びと思ってくれればいいわ。」

 

善子「そんなの全然気にしてないですよ!」

 

にこ「その割にはあの後すっごいキレのある走りをしてたじゃない。カッとなってたんじゃないの?」

 

善子「いやぁ、それが...あの後の記憶が全くないんですよね〜...気付いたら朝だったって感じで...」

 

にこ「何それ、不思議なこともあるものね...まるで二重人格の片方の人格が出たみたいじゃない。」

 

善子「二重人格...内なる人格...ヨハネのもうひとつの姿...!何それ、カッコイイ!!」

 

にこ「なかなか濃いキャラね...」

 

 

 

プルルルル プルルルル

 

果南「もしもし?ルビィじゃんどうしたの?」

 

ルビィ『曜ちゃんがRX-7の人と一緒に出かけていきました!』

 

果南「ホント!?やっぱ男の人だったでしょ?」

 

ルビィ『はい!髪は短くて、帽子をかぶってて、男物のスタジャンを着てたので間違いないです!』

 

果南「間に合うかどうかわかんないけどアタシも出るよ。ルビィも拾っていこうか?」

 

ルビィ『お願いします!』

 

果南「分かった。曜の家の近くで待ってて。20分もあれば着くから。」

 

ピッ

 

あのFDが行くところとなれば、やっぱり東名だろうな。サンパチであのFDに追いつけるかどうか...

 

果南「ま、ものは試しだ。」

 

ヴァアアアアアアアアア!!!!!

 

 

♬イーオンナニ ナンテナレナイッ アメガキライナ ワータシダカラ♬

 

花丸「あ、この曲アイ・フリハタさんの『パープル・アイシャドウ』ですよね!」

 

真姫「へぇ。知ってるのね。レトロチックな曲だから今の若い子はあんまり知らないと思ってた。」

 

花丸「ルビィちゃんがこの人の曲をカーステレオでよく流してるから、おらも覚えたんです!」

 

真姫「なかなか渋い趣味してるのね。ルビィって、この前バトル後にクラッシュした子よね。大丈夫だったの?」

 

花丸「本人は軽いケガで済んだので大丈夫みたいです。車は時間かかりそうな感じですけど、そっちも問題ないと思います!」

 

真姫「なら良かったわ。それにしても、あの子運転上手よね。AT車をあれだけ扱えるのには驚いたわ。」

 

花丸「ルビィちゃんのお姉さん、ダイヤさんが沼津で有名な走り屋なので、その影響でルビィちゃんも上手いんだと思います。元はふたりで『ジュエリーシスターズ』ってチームも組んでたので。」

 

真姫「そうだったの。それなら納得だわ。」

 

花丸「あ...あのFD、やっぱり高速に乗るみたいですね。」

 

真姫「どこに行くつもりかしら。」

 

花丸「目的地はないと思いますよ。」

 

真姫「え?」

 

花丸「あのFDは、"ここ"を走るために高速に乗るんだと思います。だからもう、目的地には着いてる。そしてここから始まるんですヨ───」

 

ここでしかできない戦いが───

 

真姫(なんでちょっとおじさんっぽい口調に変わったのかしら...)

 

 

 

 

ヴァアアアアアアアアア!!!!! キキーッ

 

果南「おまたせ〜、待った?」

 

ルビィ「はやっ!ドンキにいたんですか?」

 

果南「いや?淡島からだよ。さ、乗って乗って。」

 

ルビィ(連絡をしてからここに着くまで、15分もかかってない...一体どれだけ飛ばして来たんだろ?)

 

 

 

 

 

ファアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

 

ウォオオオオオオオ!!!!!

 

ヴァアアアアアアアアア!!!!

 

にこ「あのFD、かなり速いわね...モード切り替え、『sports』っと。」ピッ

 

ウァアアアア ヴァアアアアアアア!!!!!

 

善子「乗り心地と音が変わった!なんですかこれ!?」

 

にこ「走る状況に合わせて、マフラーの抜け具合とかサスの減衰力なんかを変えられんのよ。アンタのSLにも付いてるでしょ。」

 

善子「そういうのあんまり詳しくないんで...」

 

にこ「そ、そうなの...」

 

にこ(にしてもあのFD、まだまだ余裕たっぷりって感じね。パワーは恐らく400馬力台後半ってとこかしら。)

 

にこ「上等じゃないの。絶対逃がさないわよ!」

 

 

??「ペースの速い車が2台ほどいるみたいだね。ずっと付いてきてる。」

 

曜「えっ?あ、ほんとだ!どうするの?」

 

??「あっちもその気はありそうだ...ちょっとからかってみよっか。」

 

曜「おぉ〜!そう来なくっちゃ!全速前進、ヨーソロー!!」

 

ググッ

 

ファアアアアアアアアアアアアン!!!!!!

 

にこまき「加速した!!」

 

にこ「ちゃんと座ってなさいよ!」

 

善子「は、はい!」

 

真姫「準備はいい?行くわよ!」

 

花丸「ずら!」

 

ヴァアアアアアアアアア!!!!!

 

ヴォアアアアアアアアアアア!!!!

 

 

??「1台はポルシェだな?流石にすぐ離れはしないか〜。もう一台はキツそうだけどね。」

 

真姫(エンジンパワーはともかく、車重で向こうに分がありすぎる!ノーマルのスープラじゃ付いていけない...!)

 

 

花丸(真姫さんのRZスープラがジリジリと離されてる...ロータリーエンジンってだけで、ここまで違うものずら...マルもモコにロータリー積もうかな...)

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「ひえぇ...周りの車が止まって見える...!」

 

果南「これでまだ全開じゃないからね。追いつけるといいんだけどね〜」

 

ルビィ(これでまだ全開じゃないの!?本気で踏んだら、もしかしたら追いつけるかも...?)

 

 

 

 

 

??「からかうのはここまでにして、一気に決着付けちゃうか!」

 

曜「もういいの?」

 

??「うん。早めにクールダウンさせた方が良いに越したことはないからね。じゃあしっかり座っててね!」

 

ググッ

 

キャアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!

 

一同「!?」

 

にこ「逃がさない!」

 

ヴォアアアアアアアアア!!!!!!

 

善子(ダメだわ...加速力が違いすぎる!エンジンが違うってだけでこんなにも変わるものなの!?)

 

真姫「ダメ。スープラじゃ相手にならないわ。諦めるしかなさそうね。」

 

ヴァアアアアアオオオォォォ...

 

花丸(スープラでもダメって...ロータリーはやっぱり化け物ずら...)

 

 

......ヴァァァァァァァァアア......

 

花丸「後ろからまた速いのが来るずら!」

 

にこ「あんな速そうなの追い抜いた覚えないわよ!アクセルも今緩めたばっかだし!」

 

真姫(いくら本気を出してないとはいえ、今の私達でだいたい230km/h巡航だった...それを遥かに上回るスピードで、追ってきてたの?)

 

善子(思い出した...以前ここでハイスピードバトルをした時、スリップしたダイヤさんの車を助けたのは...)

 

(あの時、MAX280km/hにもなるハイスピードバトルに、それを上回る速度で走ってきて追いついてきたのは...)

 

善子「......果南さんだわ。」

 

 



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第2部 第14話 サンパチ

 

 

 

 

 

 

果南「結構速そうなのがいる、って...にこさん真姫さんじゃん。」

 

ヴァアアアアアアアアオオオオォォォ...

 

ルビィ「RX-7はどうしちゃったんだろう?追いかけてたはずじゃ?」

 

果南「様子を見るに、FDにちぎられちゃった感じだね。そんなに速いのかぁ〜。」

 

 

 

日本平PA───

 

にこ「あの加速力じゃとてもじゃないけど追い付けないわ。」

 

果南「やっぱりちぎられちゃったんですね。」

 

 

 

真姫「無理ね。あの音と加速力だと、3ローター化は確実よね。」

 

花丸「やっぱりそうですよね?マルもそう思ったずら。」

 

ルビィ「でもこれで、曜さんの行方は分からなくなっちゃった...」

 

一同「うーん...」

 

善子「ギランッ!ひ、閃いたわ...!」

 

花丸「ヨハネー、アイッ!とか変な設定引っ張り出してくるのはナシずらよ。」

 

善子「ちょっと!設定言うなし!もっとちゃんとした作戦よ!」

 

真姫「どんな作戦なの?」

 

善子「テキトーに理由付けて、電話なりチャットなりで居場所をそれとなく聞けばいいのよ!学年が違ったり、そもそも学生じゃない人が連絡したら怪しまれるから、ここは同級生のリリーと千歌さんに手伝ってもらうの!」

 

にこ「適当に明日の授業のこととか聞くって体でさりげなく居場所を突き止めれば、待ち伏せしてエンカウントもできるって寸法ね。」

 

善子「そゆこと!いい作戦でしょ?」

 

真姫「有効な手段だと思うわ。それで行きましょう。」

 

果南「冗談ばっかり言ってると思ってたけど、意外といい発想するんだ!見直したよ〜!」

 

善子「冗談って...せめて設定とか言って欲しいわね!設定でもないけど!」

 

ルビィ「そうと決まったら、3年生のおふたりに連絡しましょう!ルビィやりますね!」

 

 

善子(あれ、てか...)

 

善子「ずら丸、私のヨハネ・アイ、配信でしか言った記憶ないんだけど、なんでアンタが知ってんの?」

 

花丸「ずら!?そ、そうだったずらか?マルは会った時に聞いた記憶しかないずらねぇ〜!」

 

善子「ふ〜ん...」

(外ではあんまり言わないように気がけてるんだけど...もっと気をつけとこ。)

 

 

 

プルルルル プルルルル

 

梨子「はいもしもし。あ、ルビィちゃん!どうしたの?...ふむふむ、さりげなく居場所を聞き出してほしいと...分かったわ。任せといて!じゃあまた後でね!」

 

梨子(明日の小テストの範囲を聞くって体にして...チャットだと既読から返信にタイムラグがあると思うから、ここは急いでるって設定にして電話してみようかしら。)

 

 

 

プルルルル プルルルル

 

曜『もしもし梨子ちゃん?どうしたのこんな時間に!』

 

梨子「ごめんね〜。明日の小テストの範囲でどうしても聞いときたいことがあったんだけど、今大丈夫?なんかしてた?」

 

曜『全然!さわやかでハンバーグ食べてただけだから!』

 

梨子(さわやか?曜ちゃん家の近所だとあるけど...それならなんで果南さんたちは高速にいるのかしら?)

 

梨子「そうなんだ〜。さわやかって近所にもあるよね?家族で行ってるの?」

 

曜『知り合いのドライブついでに、静岡インターのとこで食べてるんだ〜!楽しいし美味しいしで、一鳥二鳥だよ!』

 

梨子(『一鳥二鳥』って...何だか絶妙に不快感を煽られる言い間違いね...)

 

「それを言うなら一石二鳥でしょ!でも楽しそう!私達も今度行きましょ!」

 

曜『お、いいね〜!みんなで行こう!』

 

......

 

梨子「じゃあまた明日ね〜!おやすみ!」ピッ

 

静岡インターのさわやかね...情報はゲットしたわよ!

 

 

 

ルビィ「はい...はい!分かりました!ありがとうございました!」ピッ

 

ルビィ「曜さん、静岡インターのさわやかでハンバーグ食べてるみたいです!」

 

果南「なるほどね。こっからそう遠くはないかぁ。そしたら、久能山スマートICで折り返して上りのPAで待ち伏せしようか。」

 

にこ「それはいいけど、アンタのZ、あのFDに太刀打ちできるスペックなの?にこと真姫のじゃ厳しかったわよ?」

 

真姫「向こうは少なく見積っても450馬力出てるのは確実よ。それに加えてあの車重...あなたのZも見たところチューンはしてあるみたいだけど、部が悪すぎるとしか...」

 

果南「うちの『サンパチ』、頑張れば600馬力は出るんで!まー何とかなると思いますよ!」

一同「600馬力!?」

 

果南「それより、さっさと移動しようよ。そろそろあのFDが動き出してもおかしくないし。」

 

にこ「そ、それもそうね。エンカウントするチャンスをみすみす逃したんじゃ面白くないし。アンタたちも乗りなさい。」

 

よしまる「は、はい!(ずら)!」

 

果南「ルビィはここで待ってて。すぐ迎えが来るから。」

 

ルビィ「え、えっ!?ルビィまた置いてけぼりなんですか!?」

 

バアアアアアアアアア!!!!!

 

ルビィ「そんなぁ〜!」

 

 

真姫「どうせ追いつけないから、私と善子ちゃんはゆっくり見物させてもらうわ。」

 

キュウウキュキュ!! キュウウウウウ!!!

 

ヴァアアン!!!!

 

フヴォン!!!

 

ヴォオン!!!

 

 

ルビィ「ルビィだってFDとZのバトル、見たいのに〜!」

 

まだ帰りたくないよ〜!!

 

 

 

ヴォオオオオオオオオオ...

 

 

いいなぁ...ルビィもアリストさんに乗ってくればよかった。それか、あんな真っ赤なスポーツカーでも持ってれば...

 

...真っ赤なスポーツカー?

 

ルビィ「あれは...まさか!!」

 

 

 

 

「ほんとにごめんね〜。こっちが誘ったのにご飯代出してもらっちゃって。」

 

曜「いいのいいの!ガソリン代かかるだろうし、私も乗せてもらってる分なにかしたいし!」

 

「曜ちゃん、ほんっとーにありがとう!」

 

曜「そんなことないよ!私たち親戚どうしじゃん!ね、月ちゃん!」

 

月「よーし、じゃあ帰りも...」

 

ようつき「全速前進...ヨーソロー!!」

 

 

 

 

ウウォオオオオオオオオオオオ......

 

 

にこ「...さっきの話引っかかりまくりなんだけど。フェアレディZで最高600馬力なんて、モンスターマシンじゃないの。」

 

花丸「おそらくはツインターボ仕様のVQ38HR、3.8リッターエンジンを載せてると見るのが妥当ですね。」

 

にこ「3.8リッターとなると、ボアアップしたと言うよりはZ34のNISMO、それも380RSのエンジンを引っ張って来てるでしょうね。」

 

花丸「トータルバランス度外視の、まさに最高速チューンずら...これはますます

凄いバトルになりそうな予感がするずら...」

 

にこ(600馬力のじゃじゃ馬に乗って、あのFDにどう挑むのか見せてもらうわよ...)

 

 

 

真姫「バトルが始まったらこの車じゃついていけなくなるけど、それでもよかった?」

 

善子「全然問題ないですよ!車は持ってますけど、メカとかバトルの話なんか分からないことの方が多いですし。」

 

真姫(そんな状態でこの前はあんな走りを見せたんだから、人ってつくづく分からないわね...)

 

真姫「それにしては、中々いい車乗ってるじゃない。ご家族の?」

 

善子「いえ、あの車自体は私がおか...母にプレゼントしたんです。」

 

真姫「ヴエェ!?プレゼントって、アナタまだ高校生でしょ!?学生なのにどうやって...!」

 

まさか、親に隠れて夜の仕事を...しまった、マズイこと聞いちゃった!

 

善子「配信サイトで配信やってるんで、そのスパチャと動画収益のお金を貯めてたんです。」

 

真姫「そ、そういう事ね...でも学生だったらそんなに配信できる時間なくない?」

 

善子「あ゛っ...私...この前まで不登校だったので...」

 

真姫(ヴエェ!油断して大きめの地雷踏んじゃった!)

 

真姫「ごめんなさい!知らないとはいえ、踏み込んだこと聞いてしまって...」

 

善子「あんまり気にしてないのでいいんです!過去の話だし、今はちゃんと学校行ってるので!」

 

真姫「いいえ悪いわ。お詫びにあなたのチャンネル登録しておくから、後で教えてくれない?」

 

善子「え!?私が言うのもなんですけど、やめといた方がいいですよ。多分訳が分からないと思うので...」

 

真姫「なんでもいいわよ。それに、変なノリはにこちゃんで耐性付いてるから大丈夫よ!」

 

善子「はぁ...。じ、じゃあ後で教えますね。」

 

善子(真姫さんってクールでドライな感じの見た目なのに、意外と優しいんだ...)



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第2部 第15話 三つ巴のバトル

 

 

 

 

 

 

 

果南「もうそろそろか...スピード上げとくかな。」グッ

 

ヴァアアアアアアアアアアア!!!!

 

にこ「...いよいよね。」

 

真姫「Zがスピードを上げた...もういつ来てもおかしくない。」

 

花丸(相手を待ってる時のなんとも言えない緊張感...峠とはまた違った緊張感ずら。)

 

善子(道は深夜ってこともあって空いてるのに、何故か重苦しいような、張り詰めたような感じがする...すぐ近くまで来てるってこと?)

 

 

 

 

カッ!!!

 

 

にこまき「来た!!」

 

果南(かなり速いな...250km/hは確実か...なるほど、あくまで私たちに合わせるつもりはない、って事ね。)

 

果南「面白いじゃん!!」ググッ

 

ヴァアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

 

にこ「行くわよ花丸!しっかり座ってなさいよ!」

 

花丸「ずら!!」

 

ウボアアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

 

 

月「かなり速いのが前に2台いる!やっぱり今日はそういう日なんだな〜!」

 

曜「久々なんじゃない?あんなに速い車と会えたの。」

 

月「だね。最近はここを走る人もめっきり減ったからね。こんなにワクワクするのは久しぶりだよ!」

 

曜「運転してる時の月ちゃん、すごく楽しそう!」

 

月「もちろん!こんなチャンス、楽しまなきゃソンだからね!!」

 

 

 

 

 

 

ファアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア......

 

善子「すごいスピードで追い抜いて行った...やっぱりあの車だ!」

 

真姫「向こうもこっちも準備は万端ね。」

 

ファアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!

 

 

果南「まだ『揃って』ないからね。こんなところで堕とされちゃたまんないよ!もちろんそっちも、ね!」

 

 

にこ「ローリングスタートなのが功を奏したわね。まだ付いていけてるわ。」

 

花丸「でもそれだけじゃない...果南さん、本気で踏んでないずら。...何か待ってる?」

 

プルルル プルルル ピッ

 

善子『気を付けて!後ろからもう1台速いのが来るわ!』

 

にこ「嘘でしょ!?にこ達、今まで一度もアクセル緩めてないわよ!?果南のZの他に、この速度で距離を詰めてこれる車がいるっていうの!?」

 

カッ!!!!

 

果南「来たね。これで出揃った。」

 

キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァン!!!!!!!

 

真姫「あのテール、80スープラ!?なんであんな速度が出るの!?」

 

善子「あの赤い車は...!」

 

 

 

ダイヤ「捕まえましたわよ...件のFD!!」

 

ルビィ「やったぁ!間に合った!!」

 

 

よしまる「ダイヤさん!!!」

 

 

月「え!?後ろからもう1台来る!そうか...このZ、これを待ってたのか!」

 

曜「そうなの?」

 

月「うん!その証拠に...!」

 

曜「前の車、加速した!!」

 

 

 

にこ「いくら2JZでも、スープラにあの音と加速力は出せないでしょ!?一体何がどうなってんの!?」

 

花丸「あのスープラにはフルチューンされたセンチュリーのエンジンが載ってるずら。あの車こそ、沼津一の走り屋と呼び声高い、ダイヤさんの愛機ずら!」

 

にこ「センチュリーですって!?アンタそれ、5リッターのV12エンジンじゃない!バケモノね...!」

 

 

ファアアアアアアアアアア!!!!!!

 

キャアアアアアアアアアア!!!!!

 

バアアアアアアアアアア!!!!!!!

 

 

にこ(いくらノーマルとはいえ、ポルシェのハイエンドモデルですらついて行くのがやっと...トータルバランス度外視の最高速チューンを施した車は、こんなにも鋭い走りを見せるものなのね...)

 

 

 

月「あっはは!!すごいや!ここまで出してもまだ並びかけてくるよ!静岡にはまだこんな相手が残ってたんだ!」

 

曜(あれ...あの赤色のスポーツカー、どこかで見たような気が...)

 

 

 

ダイヤ「もっと...速く...!!」ググッ

 

果南「ダイヤがFDに並ぶ...!」

 

キャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

ファアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

曜「...あれぇ!?ダイヤさんとルビィちゃんだ!」

 

月「知り合いなの?」

 

曜「ほら、前に言ってたチームのリーダーだよ!」

 

月「あぁ!こんなところで会えて、しかも一緒に走れるなんてラッキーだよ!」

 

キャアアアアアアアアアアアアア!!!!!

 

ダイヤ「む...」

 

水温と油温が上がってきている...ラジエーターとオイルクーラー、共に大型化しましたが、それでも冷却は追いつきませんか...まぁいいでしょう、このバトルを降りる前に、このスープラの限界性能をしかとお見せしましょう。

 

ダイヤ「ルビィ、しっかり座っておきなさいね。」

 

ルビィ「うゅ!分かった!」

 

ダイヤ「さぁ 、行きますわよ!!」ガコッ ググッ

 

キャアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!

 

曜「すごい...この速度からまだあんな加速ができるなんて!やっぱりダイヤさんってすごいなぁ...!」

 

月「私達も追いかけるよ!ここで離されてちゃ面白くないもん!」

 

ファアアアアアアアアアア!!!!

 

果南「ダイヤ、あんな加速して大丈夫なのかな?」

 

バアアアアアアアアアア!!!!!

 

ルビィ「すごい!FDもZも、どんどん突き放していくよ!やっぱりセンチュリーさんのエンジンは強いんだね!」

 

ダイヤ「えぇ。なんと言ってもトヨタの技術が詰め込まれた結晶ですもの。」

 

「ですが、そのポテンシャルを活かしきるには、バランスというものがとても重要ですわ。」

 

バランス度外視で速さ以外の全てを生贄にしたこのスープラでは、今のこの走りが限界ですわ。

 

キャアアアアアアアアアアアアア......

 

ここで私たちのバトルは終わりですわ。水温も油温も、限界ギリギリの領域です。これ以上は1GZを潰しかねませんわ。

 

チカッチカッチカッ

 

花丸「ダイヤさんがハザードを焚いて減速した...」

 

 

にこ「多分これ以上踏めば車がダメになると悟ったんでしょう。」

 

おそらくは冷却が追いつかないことによってオーバーヒート寸前だったってとこかしらね。いくら強化したところで、メーカーが作ったバランスを崩していることに変わりはない。速さを追い求める代償は必ずどこかにしわ寄せとなって表れる。そこで車を守れるのは、乗り手の理性よ。車に無茶をさせない。限界を越えさせない。車の声を聞いて素直に従う理性が、車を守る最後の砦よ。

アンタのその判断は正しいわ...。

 

ファアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

 

ゴアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

 

ルビィ「果南さんとFDの一騎打ち...!」

 

ダイヤ「両者は互角...どちらが勝ってもおかしくない!」

 

果南(タイヤもまだしっかり食いついてるし、水温は高めだけどまだいける。一番の不安要素はインタークーラーの冷却...今のところは大丈夫だけど、バトルが長引けば危ういね...)

 

果南「悪いけど、こっからは手加減無しだからね!!」ググッ

 

ゴアアアアアアアアアアアアア!!!!!

 

月(前に出てきた!)

 

曜「あれ!?こっちの車は果南ちゃんだ!何がどうなってんの...?」

 

ググッ

 

ファアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!

 

果南(目指すはオーバー300...いや、さらにその先、320km/h...!)

 

ゴアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

 

月「さっきのスープラよりも速い!めちゃくちゃ手強いぞ...!」

 

水温もだいぶ上がってきた...これ以上はヤバいけど!!

 

月「諦めたくはないかなっ!!」

 

 

果南(メーター読みで320km/h...だと、だいたい300ちょいくらいか。この速度域だと、一般車はもはや道路上のパイロンでしかない。この速度感、地面からの突き上げ、ハンドリング...そして背後からのプレッシャー。久しぶりだなぁ、3年振りだったっけ。)

 

ガアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

 

 

真姫「250km/h巡航してるのに突き放されてくなんて、普通じゃ信じられないわね...」

 

「あ、もうすぐ終わりそう。」

 

真姫「え?いきなりどうしたの?」

 

善子「...え?どうしたんですか?」

 

真姫「えぇ?あなた今、自分で『もうすぐ終わる』って言ったじゃないの。」

 

善子「えぇ?いや言ってないですよ。」

 

真姫「どういうこと...?」

 

 

 

月(あのZ、走り慣れてるな...さっきのスープラよりも走りが安定してる..."経験者"ってことか。俄然燃えてきたぞ〜!)

 

ファアアアアアアアアアアアア......

 

月「あれ?あれれ?」

 

曜「どうしたの?」

 

月「踏んでも加速しない...それどころか、落ちてく!どこもおかしいとこないのに...」

 

曜「...月ちゃん、これ!」

 

月「ん?...あっ!!」

 

ようつき「ガス欠だぁ〜〜!!」

 

 

 



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第2部 第16話 好敵手の正体

 

 

 

 

 

 

 

月「あっぶなかったぁ〜〜!」

 

曜「最寄りのガソリンスタンドまで走ってこれてよかったね〜!」

 

真姫「急にハザード焚いて減速するから、てっきりエンジントラブルでも起こしちゃったんじゃないかと心配したわよ。」

 

月「えっへへ...すみませ〜ん...」

 

にこ「それよりも、よ!果南!!何が『曜のカレシ』よ!普通に親戚の女の子じゃないのよ!」

 

善子「ハイスピードバトルの結末がまさかこんなだなんて...」

 

果南「だって〜、初めに見た時は髪短かったんだもん、そりゃ分かんないよ〜。」

 

月「走る時は邪魔になるから、いつも帽子の中に髪をまとめてるので!」

 

ダイヤ「はぁ...血相変えて飛んできた私がバカみたいですわ...」

 

果南「ごめんってば〜!それにルビィだって見間違えてたんだし、しょうがないじゃん!

 

ダイヤ「ルビィは別ですわ!引き合いに出さないでくださいまし!」

 

果南「げぇ!理不尽...」

 

花丸「なんにせよ、これで曜さんの不純異性交友疑惑は晴れたってわけずら!めでたしめでたし、ずら!」

 

曜「あはは!みんな勘違いしてたんだね!もし仮に好きな人ができたら、千歌ちゃんと果南ちゃんにまっさきに相談するはずだよ〜!

 

果南「よ...曜〜〜!!」ハグッ

 

曜「うわわ!ちょっと果南ちゃん、苦しいよ〜!」

 

月「それにしても、皆さん速いですね!曜ちゃんから話は聞いてましたが、噂以上の実力でワクワクしました!」

 

ダイヤ「ま、それほどでもありますわね。なんたって沼津一ですから!」

 

にこ「にこたちはたまたま居合わせただけだから、ダイヤたちのグループとは関係ないんだけどね。」

 

ルビィ「そういえば、月さんはどこに住んでるんですか?」

 

月「みんなと同じ沼津だよ!静真高校2年1組の、黒澤ルビィちゃんだよね?」

 

ルビィ「えっ!?なんで分かったんですか!?ルビィ言ってないのに...」

 

月「ふっふっふ...何を隠そう、私が静真高校の、生徒会長だからだよ!!」

 

よしまるびぃ「生徒会長!?!?」

 

花丸「...あぁ〜!言われてみれば確かに!全校集会で見たことある人ずら!」

 

ルビィ「まさかあんなに速い人が、ルビィたちの高校の生徒会長だったなんて...!」

 

善子「我が記憶には刻まれていない...」

 

ダイヤ「そうだったのですか...!浦の星最後の生徒会長として、我が浦の星の生徒たちを今後ともよろしくお願いしますわ。」

 

月「はい!こちらこそよろしくお願いします!」

 

果南「おーすごい、ただの生徒会長同士の会話なのになんか荘厳」

 

善子(この人めちゃくちゃ水差すわね...)

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

千歌「なぁんだ〜そういうことだったのかぁ〜」

 

梨子「びっくりしたぁ〜。曜ちゃんも遂に、大人の階段を登っちゃったのかと思った。」

 

曜「お、おと!?ナイナイナイ!!」

 

千歌「それにしても、生徒会長も車で走ってるんだ〜。この学校にも私たちと同じように走ってる人が、実は結構いるのかもしれないね。」

 

梨子「それでそれは面白そうだけどね。」

 

曜「私たちみたいに、チームやグループとか作ってるのかな?合同でミーティングとかやったら楽しそうだね!」

 

千歌「あー!いいね〜!だったらもういっそ、部活にしちゃおっか!静真高校自動車部!って感じで!」

 

月「あはは!面白そう!だけど...生徒会としては認められないかな〜。」

 

曜「月ちゃん!」

 

ちかりこ「生徒会長!!」

 

千歌「あっはは〜、やっぱダメですよね〜...」

 

梨子「そりゃそうでしょ。ごめんなさい、千歌ちゃんが変なこと言っちゃって...」

 

月「大丈夫だよ!まぁそれは置いといて、今日は生徒会長じゃなく、渡辺月としてお願いをしに来たんだ!」

 

ようちかりこ「お願い??」

 

月「そう...曜ちゃん、千歌ちゃん、梨子ちゃん!」

 

月「私を、チームに入れて欲しいんです!」

 

 

 

千歌「こんなチームでいいの!?」

 

梨子「私たち、チームは作ってるけど、別にタイムアタックしたりコースレコード塗り替えたりとか、ああいう頭〇字Dみたいなことはやってないよ?」

 

曜「そうそう。みんな気まぐれで集まって、たまにバトルしたり走る練習したり、乗ってる車の種類もバラバラだし、私はそもそも車乗ってないし?」

 

月「だからいいんだよ!」

 

月「車で走り回ってるのって私くらいしかいないと思ってたから、走るのは好きだけどそれを共有する人が今までいなかったんだ。そんな時に曜ちゃんから、私と同じくらいの人達でチームを作ったって話を聞いて、すっごく嬉しくなったんだ!」

 

月「みんな目的や手段がバラバラで、まとまりがないかもしれないけど、そんなみんながひとつに集まれる場所があって、一緒に何かを楽しめるって、とても素敵なことだと思うんだ!」

 

月「だから...これは私のわがままなんだけど、もしもみんなが良ければ、私も仲間に入れてください!」

 

千歌「...分かった!とりあえず、他のみんなにも相談してみるね!でも私たち3人の答えも、他のみんなの答えも、きっと同じだと思うよ!」

 

曜「そうだね!」

 

梨子「えぇ、もちろん!」

 

千歌「私たちは、月ちゃんを歓迎するよ!!」

 

月「ほんと!?本当にいいの!?」

 

千歌「うん!これもきっと何かの縁だし、みんなと同じように車が好きな人なんだもん、誰も嫌だなんて言わないよ!」

 

月「やった〜〜〜!ありがとう!!これから、よろしくお願いします!!」

 

ようちかりこ「うん!!!」

 

月「そうだ!早速なんだけど、チーム名を教えてもらってもいいかな?」

 

千歌「オッケー!お安い御用だよ!えーっと、チーム名チーム名...」

 

曜「...あれ...?」

 

梨子「私たちのチーム名って...」

 

 

千歌「なんだっけ...」

 

 

 

月「えぇ〜〜!?」

 



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