ポケモンに翻弄される現代社会、あるいはのうてんきミュウツー (ミュー(なきごえ))
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第1話 ミュウツー(憑依) 特性:ノーてんき

現代社会にポケモンが現れる奴がもっと読みたい!……ので書きました。
このジャンルもっと流行れ!


 ポケットモンスター、縮めてポケモン。

『ゲームフリーク』が生み出した、長年愛されている大人気コンテンツだ。

 

 シリーズごとに架空の世界の一地方を巡り、各地に生息する不思議な生き物『ポケモン』を捕まえ旅をする。

 ポケモンは生活と密接に結びつき、ポケモン無しの暮らしなど考えられない。

 そんな世界で人々はポケモンと共に生き、暮らし、働き、試合(バトル)をする。

 その一員として世界を旅するロールプレイングゲームである。

 

 

 …………ならばもし、”ポケモンがいないのが当たり前”の世界に、ポケモンが現れれば、一体どうなってしまうのだろうか。

 

 

 

 

 

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 ”私”はどこにでもいる、ごく普通の人間だった。

 ゲーマーで、特にポケモンが好きだったが、やりこみや厳選に苦手意識があって、ストーリー全般や図鑑埋めくらいで満足するライト層。

しかし今は、洞窟の中で、指が3本しかない手を見ながら自問自答している。

 

 湧き水に映る自分の姿は、ポケモンのミュウツーそのもの。

 そして、この姿で目覚めた時に脳裏に響いた美●明宏ボイスの”知らぬ者たちとポケモンとの懸け橋となれ”という言葉。

 

 ーーーーーーははーん、つまりこの世界は『Pokémon LEGENDS アルセウス』的なあれですね?

 ポケモンを警戒する人間と、ポケモンとの仲を取り持てと。

 ならばミュウツーの身体は都合がいい。

 ポケモンが気軽に人間に『わざ』をぶっぱしてくる世界で、生きてられるのは主人公補正ないとムリムリ。

 その点ミュウツーは種族として強いし、一応は二腕二脚で人型だし、テレパシー使えるエスパータイプだしな……最後に関してはアニメだと伝説・幻のポケモンは気軽に喋ってる印象だが。

 いきなりミュウツーにされていることに思うところがないといえばウソだが、”宇宙の創造神”相手じゃ何言っても無駄だろう。

 とにかく、”人とポケモンの架け橋(仮)”として、人間たちに友好的に接触しなくては……!

 

 

 

 

 

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【緊急厳戒態勢】謎の生き物が現れて世界がヤバい 3【発令】

 

151:怯える名無し

大事件だけど、意外に何も起きてないな

 

152:怯える名無し

確かに。家から出るなって言われても、いつもと変わらん

 

155:怯える名無し

>>152

あっ(察し)

 

156:怯える名無し

引きこもりは置いといて、謎の生き物の被害って意外に出てないよね

 

159:怯える名無し

逃げた奴を追いかけてこないからなぁ

 

160:怯える名無し

代わりに縄張りに入るともれなく威嚇してくるが

 

163:怯える名無し

今のところ、自宅待機にしとけば家壊してまで入ってこないみたいだしな

 

164:怯える酪農家

ワイ酪農家、牛に餌はやらなきゃいけないから作業してたら、牛舎に牛っぽい謎の生き物がおる・・・

 

167:怯える名無し

こっわ。暴れられたら大変じゃん、大丈夫なの?

 

170:怯える酪農家

なんかウチの自動搾乳機で自分の乳搾って餌も食ってる・・・

居座る気じゃないですかー!やだー!

 

173:怯える名無し

>>170

南無・・・

代わりに搾った乳を宿代にもらって飲めばええんちゃう(鼻ホジ)

 

176:怯える名無し

安全性の確認無しに謎の生き物の体液を飲むとか蛮勇過ぎる

 

179:怯える名無し

畜舎には入り込んでくるのか・・・

でも家畜が襲われたって報告ないよね。みんな草食なんかな?

 

180:怯える名無し

それならそれで農家の被害が少ないのがおかしい件

 

181:怯える名無し

そういや謎の生き物出現と同時に謎の植物なんかも見つかってるらしいね

 

184:怯える名無し

ああ、うちの畑にもいつの間にか謎の果実がなった木が生えててビビったわ

 

185:怯える名無し

>>184

マジで!?

ちなみにどんな実がなってんの?

 

188:怯える名無し

それが、統一性のない見た目のがごちゃっと鈴なりになってんのよ

奇形にしても見た目が違い過ぎる

 

189:怯える名無し

マジか・・・

謎植物に謎生物とか、これから一体どうなるのか・・・

 

 

 

251:怯える名無し

おい皆、ニュース見ろ!!

 

 

 

 

 

 

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『今日の午前10時20分ごろ、T県U市市役所に謎の人型生物が現れ、言語を介さないコミュニケーション方法で接触を試みてきたとの情報が入りました』

『事態を重く見た政府は”彼”との会談を設け、突如出現した謎の生物たちの情報を早急に得る方針を固めています』

『会談の内容次第ではありますが、世界中に現れた謎の生き物についての確度の高い情報が近日中に公開される見込みです……』

 

 

 



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第2話 会談

 洞窟の外に出てみて思った、ヒスイ地方じゃないじゃんね。

 ビルも普通にあるし、線路や道路もある。

 森や林のあちこちにはポケモンの姿はあるが、外を行きかう人の姿が無い。

 あまり気は進まないが、エスパータイプのテレパシー能力で周辺の意識を読んで情報を集めてみた。

 

 ありゃー……『LEGENDS アルセウス』じゃなくて『G●TE』とかそっちの現代パニック系ですねこれは。

 1週間ほど前にポケモンたちが突如出現、現在政府から厳戒態勢で不要不急の外出自粛が指示されている。

 そして何より、この世界の人間には”ポケモンの知識がない”のだ。

 アルセウスも人間以外の生き物を全部ポケモンに置き換えるとかしてないのが唯一の救いか。

 ポケ食はいろいろと意見が分かれるところだからな……

 

 何はともあれ、こうなれば早急に『偉い人』にポケモンについて伝えなくては! 

 

 

 

 

 ……というわけで、最寄りの市役所に入ってアポイント取ろうとしたら、そりゃあ大パニックよ。

 最初の反応は、街に降りてきたクマみたいだった(白目)

 私がミュウツーでテレパシー使えなかったら詰んでたんじゃね? 

 そこからは市役所の人が上手いこと偉い人に連絡を取ってくれて、トントン拍子で詳しい話をするための場所へ案内された。

 思った以上にスピーディに事が運んで、市役所の方々には感謝しかない。

 

 ……偉い人を待ってる間に気が付いたけど、もしかして私の態度でポケモンも推し量られちゃう? 

 ただでさえ特性が『きんちょうかん』になりそうな感じなのに……

 私は劇場版、私は劇場版、私は劇場版……よし落ち着いた*1

 とにかくポケモンについて良いところを伝えるんだ! 

 

 

 

 

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 日本の内閣総理大臣、田頭 聡。

 任期2年目に入って、このような大事件が起きたことでほぼ眠れない日々を過ごしている。

 世界中で突如現れた大量の謎の生き物。

 日本もまた例外ではなく、各地で謎の生物との遭遇報告が相次いでいた。

 幸いにも彼らは攻撃性の低い個体が多く、攻撃的な個体も縄張りの外まで追いかけてきたりすることは少ない。

 それでも不幸な事故を防ぐため、警察・消防・自衛隊は各地で奮闘、生物学者たちは少しでも情報を集めようと必死に動いていた。

 

 そんな中にT県知事から政府に挙げられた報告。

 ”謎の生物”側から人間への知性的接触の報だった。

 信じがたいことに、謎の生物は『精神感応』……いわゆるテレパシーで現地の人々に意思を伝えてきたとのことである。

 遭遇報告書では物理法則的に不可解なものも居るとのことだったが……テレパシーまでとは恐れ入る。

 恐怖がないとは言わないが、相手は理性的にこちらと接触を図ろうとしていて、情報は今まさに我々が喉から手が出るほど欲しいものだ。

 官房長官は自分が応対するというが、今後この応対が基準になるかもしれないことも考えれば正式な会談とする方がいい。

 

 ──────そうして行われた謎の生物と人間との、歴史的会談。

 向かい合うように席に座った相手は大まかには人型ではあったが、3本しかない指・存在感を持つ尻尾・角のようにも見える頭の突起などやはり人間ではないことをまざまざと見せつけていた。

 

 最初の挨拶で初めて相手の名が『ミュウツー』ということと、頭の中に直接響くテレパシーを知った。

 

 会談で真っ先に出たのはやはり”貴方たちは何者なのか、なぜ突然現れたのか”ということだった。

 前者に対する答えは明瞭で《私たちはポケットモンスター、縮めてポケモンと呼ばれていた生き物だ》というもの。

 後者への答えはやや不明瞭で、”正確にはわからないが”と文言が前に付いた上で《ポケモンの世界とこの世界が混ざってしまったのだろう》とのことだった。

 

 世界が、混ざる。

 理解の範疇を超えた現象を軽く語るミュウツーに”原因に心当たりがあるのか、戻す方法は考え付くか”という問いが出たが、彼は想定していたようですぐに答えてくれた。

 

《原因はポケモン世界の宇宙の創造神”アルセウス”のみが知るだろう。戻す方法もアルセウスなら知るだろうが、会うには手順を踏む必要がある》

 

 初めはポケモンたちの宗教観を持って回った言い方をしているのかと思ったが、『宇宙の創造神と会う方法』の手順が確立しているとなると話が違う。

 ”貴方の世界には神が実在するのか”という問いは《ポケモン世界では伝説に残る強力なポケモンが神と呼ばれている》との答えに押し黙ることになる。

 つまり今の騒動は、あちらの世界の”宇宙を創った”と言われるほど強力なポケモンとやらが関わっているかもしれないらしい。

 すぐに”そのポケモンと会う方法を教えてほしい”と言ったが、《元の世界の特別な場所で行う必要があるため、この世界のどこでやればいいのかわからない》と光明は消えた。

 そうなると、我々はまずポケモンとは何かを知らなければならない。

 幸いなことに、ミュウツーは聞かれることほぼすべてに時折考えながらも答えてくれた。

 だが、結果はどうだ? 

 ミュウツーのようにテレパシーや念力を使える者のみならず、火を吐く者、電気を発する者、毒を生成する者など危険性には枚挙に暇がない。

 その上、体力の限界が来ると存在を縮小して消えるように隙間に隠れるから殺すことは至難、だと? 

 駆除もできない危険生物が山ほど…………眩暈がする思いだ。

 

 唯一の対抗策は、ミュウツーが作ったという『モンスターボール』だろう。

 一連の騒動と同時に生えたという謎の植物の一つ、向こうの世界で『ぼんぐり』と呼ばれた木の実を加工した道具。

 これを弱らせたり、力を認めさせたポケモンに投げれば、存在を縮小して内部に入らせて、持ち主との主従関係を刷り込むことができるらしい。

 刷り込みは最低限であって無条件で従うほどではないらしいが、危険生物を制御する方法があるのは朗報だ。

 

 有効な対策が見つかり会議室が喜びに沸く中で、一人の官僚がおずおずと口にした”それはあなたも捕らえる可能性があるのでは? ”という言葉に場が沈黙する。

《なんだ、捕まえたいのか?》とからかうように言うミュウツーに一同が首を横に振る。

 彼の情報が無くては社会の混乱は終息の兆しも見えなかった。

 その恩を仇で返すのは、さすがに人の道に外れよう。

 それでもこの問いが出るのは止められなかった。

 

「貴方はなぜ他のポケモンと違い、こうして助けてくれるのですか?」

 

 それに対する答えは、一筋の光明と、どの世界でも変わらぬ人の業を感じさせた。

 

《私は、あの世界の人間に作られた人工ポケモン(ミュウツー)として、人とポケモンの架け橋になりたい》

 

 

 

*1
落ち着いてない



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第3話 世紀の会見とおきらくミュウツー

 ドーモ、人間=サン。ミュウツーです。

 ”日本の偉い人”に『ポケモンはいろんなことできるよ!』という渾身のセールストークをして、なかなか好感触を得られたと思う*1

 お偉いさんの『田頭さん』も人間とポケモンの交流に積極的で、”とにかくモンスターボールを量産してほしい”とせっつかれた。

 専用の工作機械がないからミュウツー的念力でモンスターボールをとにかく作っているが、それほど難しい仕事じゃない。

 ヒスイ地方では、レシピがあれば子供でも作れる機構だからね。

 

 作り方は簡単、ぼんぐりの実の中が中空になるように削って、開閉機構をつける、おしまい。

 ……いや本当なんだって。

 流石にアニメ版みたいなボタン一つで小さくなったり、赤いビームでポケモンを収納したりできないけど、一応はモンスターボールだ。

 たぶんアニメのは時代が進んで機械式になったからこそなんだろう。

 私のポケモンとしての感想からいうと、ぼんぐりの実自体にポケモンを安心させるような成分があるんだと思う。

 だからポケモンはボールの中に入っちゃうし、巣の持ち主ということで主従の刷り込みもできるんだな。

 問題は削り方の塩梅がちょっとデリケートなこと。

 ぼんぐり部分を削りすぎると捕獲率が下がるし、削らなさすぎると居心地が悪くなってなつき度が上がりにくくなる、多分。

 そう考えると、ちょうどいい加減でボールに仕上げて、付加効果までつけるガンテツさん*2は本当に職人だったんだなぁ……

 私にはそんな加減はできないので、あかぼんぐりだろうがももぼんぐりだろうがくろぼんぐりだろうが、全部モンスターボールよ。

 白の防腐塗料で塗ってあるので、見た目はプレミアボールっぽいけどね。

 作る上で副次的に分かったけど、一度使われたモンスターボールにもう一度入れられるのって、内覧して合わなかった物件を不動産屋に猛烈プッシュされてるような気持ちなんだと思う。

 そりゃあ二度目は無条件で”嫌!”って言うよ。

 使い捨てみたいになるのはフレンドリィショップの陰謀じゃなかったんだな……

 

 今は自衛隊やら警察やらが私の作ったボールで捕獲大作戦を展開しているらしい。

 とはいっても、粗製乱造のボールで一発で捕まえられるのなんて、レベル一桁から毛が生えたくらいまでだ。

 私のアドバイスに従って、まずは成長の早いむしポケモンから始めて、徐々に強いポケモンを捕まえるロードマップが組まれている。

 

 ボールづくりが一段落したら、今度は薬の調合に入らないといけないな。

 偉い人に用意してもらった仮住まいに毎日送られてくる未確認植物をどんな効果か書いてより分けて、見本分以外はクラフトしちゃう。

 ヒスイ地方のレシピなので『きずぐすり』もスプレー式ではなく軟膏だが、全体量でみた効果はそんな変わらないかな。

 1回のクラフトでスプレータイプの3倍くらいの量ができるから。

 より分けた植物はそのまま研究機関に送られて効果や安全性が確認されているらしいが……効くならいいんじゃないのかな? *3

 

 

 

 

 

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 その日、首相官邸で行われる記者会見には国内外問わず、多くのメディアが関心を寄せていた。

 世界に先駆けて、突如現れた謎の生物と知性的接触を行ったこと。

 そこから得られたであろう黄金にも等しい情報を、世界中の国々が欲していた。

 彼らは何者なのか? 何処から来たのか? 

 主要先進国の中にはいち早く武力的対応をとった国もあるが、死骸が回収されたことすらない。

 謎が積み重なり出口が見えない迷宮のようになった状況で、誰もが新たな道標を探していたのだ。

 

 そして始まった記者会見で明かされた情報。

 ”情報源が1つであるため確かとは言えないが、もたらされた情報の矛盾点の無さと現在の状況から鑑みて発表するべきと判断した”との言葉から始まった異例の会見。

 世界が混ざった? 

 命の危険に瀕すると存在を縮小して隠れる生物? 

 生物単体で火や水、電気を生成する? 

 

 誰もが田頭首相の正気を疑いたくなる内容だったが、彼がポケットから白いボールを取り出し、蓋をひねって開けたことで更に場は混沌に騒めく。

 光とともにボールから現れた、緑の巨大な幼虫。

 アゲハチョウの幼虫にも似た見た目だが、目測で30~40cmとサイズが違いすぎる。

 首相に頭を擦り付けて甘える幼虫を手であやしながら、今日もっとも反響を呼ぶ情報が飛び出した。

 

『提供された道具により、この生き物たちを指示に馴致させる方法が見つかりました。

 我々は最早、如何を問わずこの生き物たちと共生する生活を取らざるを得ません。

 この生き物たちをあちらの世界に倣い、ポケットモンスター、縮めて”ポケモン”と呼ぶことを周知し、

 各国大使には馴致に必要な道具の作成方法を提供する用意があります』

 

 この後も田頭首相による重大情報は多くあったが、これを上回る衝撃を与えることはなかった。

 

 

 

 

 

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謎の生き物に関する記者会見を視聴するスレ

 

386:固唾を吞んで見守る名無し

世界が混ざるって、そんなことありゅ?

 

387:固唾を吞んで見守る名無し

正直疑い9割だけど、そうでもないと説明はつかんわな

 

390:固唾を吞んで見守る名無し

それにしたって苦しくない?

 

392:固唾を吞んで見守る名無し

でも混ざったあっちの世界の生き物がそう言うんなら・・・

 

394:固唾を吞んで見守る名無し

ただの謎生物出現騒動かと思ったら、異世界案件とはこのリハクの眼をもってしても(ry

 

396:固唾を吞んで見守る名無し

てか、あっちの世界には人間おらんかったんかね?

 

400:固唾を吞んで見守る名無し

世界の全てが来てたら地球の表面積が2倍にならんとだろうが

 

404:固唾を吞んで見守る名無し

存在自体を縮小して身を隠す生物? ハハッナイスジョーク

 

405:固唾を吞んで見守る名無し

本気も本気なんだよなぁ

 

407:固唾を吞んで見守る名無し

異世界案件なら物理法則なんか知ったこっちゃないだろうし、ありえるのか?

 

410:固唾を吞んで見守る名無し

お隣で軍が制圧したのに死骸が見つからなかったてのはそういうことなのか

 

412:固唾を吞んで見守る名無し

駆除もできないとかク〇すぎる

 

413:固唾を吞んで見守る名無し

しかも火や水、電気を単体で生成できる!?

 

414:固唾を吞んで見守る名無し

しかも脳波コントロールできる!

 

417:固唾を吞んで見守る名無し

誰だ今の

 

418:固唾を吞んで見守る名無し

(こんな危険生物と共存するとか)いやーきついでしょ

 

423:固唾を吞んで見守る名無し

しかし絶望的な展望しか見えないな

 

426:固唾を吞んで見守る名無し

は?

 

427:固唾を吞んで見守る名無し

ひ?

 

428:固唾を吞んで見守る名無し

ふ?

 

429:固唾を吞んで見守る名無し

へ?

 

430:固唾を吞んで見守る名無し

ほあああーーー!?

 

440:固唾を吞んで見守る名無し

>>430

うーん、これは審議

 

441:固唾を吞んで見守る名無し

そんなこと言ってる場合か!

今の丸い球からの出方、這い出たとかじゃなかったよな!?

 

443:固唾を吞んで見守る名無し

でかいイモムシ・・・虫嫌いだけど、こいつはちょっとかわいいかも

 

446:固唾を吞んで見守る名無し

正気か? 田頭首相との大きさ冷静に比較してみろ

軽く30㎝はあるぞ

 

451:固唾を吞んで見守る名無し

あの球に特別な何かがあるのか、ポケモンがあの球に反応するのかで意味が変わってくるな

 

453:固唾を吞んで見守る名無し

じゅんち?

 

458:固唾を吞んで見守る名無し

じゅんち is 何?

 

459:固唾を吞んで見守る名無し

ふーん、じゅんちじゃん

 

461:固唾を吞んで見守る名無し

馴致:慣れさせること、馴染ませること。騎乗用馬の訓練の「騎乗馴致」などがある

 

464:固唾を吞んで見守る名無し

>>461

サンクス

 

466:固唾を吞んで見守る名無し

つまり、どういうこと?

 

471:固唾を吞んで見守る名無し

あの球で、イモムシに指示に従わせる訓練ができるってことだ

 

472:固唾を吞んで見守る名無し

マジで!? ほかの生き物にもできるのかな?

 

473:固唾を吞んで見守る名無し

可能性はあるな

 

476:固唾を吞んで見守る名無し

【速報】謎の生き物の呼称”ポケットモンスター”に決定

 

481:固唾を吞んで見守る名無し

略したポケモンのほう推すの何で?

 

485:固唾を吞んで見守る名無し

あースラングがあるから・・・

 

488:固唾を吞んで見守る名無し

おい、おれのポケットモンスター♂を見てくれ。こいつをどう思う?

 

491:固唾を吞んで見守る名無し

すごく、おおきいです・・・

 

494:固唾を吞んで見守る名無し

そんな意味はなくとも、卑猥に取られない方を押すのは正解だな

 

497:固唾を吞んで見守る名無し

各国にあの球の製法を教えるのか、もったいなくない?

 

498:固唾を吞んで見守る名無し

今回の騒動は世界規模だぞ?

抱え込んだら袋叩きにされるわ

 

501:固唾を吞んで見守る名無し

製法があるってことは、いつか民間にも出回るのかな

 

506:固唾を吞んで見守る名無し

流石に警察や自衛隊が先だろうけど、将来はあり得るかもな

 

508:固唾を吞んで見守る名無し

どうやって使うのか知らないけど、危なくない方法であることを願うばかりだ・・・

 

 

 

*1
そう思うんならそうだろうな、お前の中ではな。

*2
ぼんぐりから特別なボールを作る職人。ガンテツ製のボールは希少性からオシャレボール扱いもされる

*3
臨床試験は必ずしましょう



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第4話 のんきなミュウツーと受け入れる世界

連続で掲示板するのもどうかと思って挟みました


 どーも、専用工作機の調整が終わったのでボール作りから解放されたミュウツーです。

 元となるぼんぐりが全部同じ形なわけじゃないから私が作った方が品質は良いんだけど、大量生産は正義なのよ。

 おかげで多少自由な時間ができた。

 ミュウツーの身体の地頭がめっちゃ良いおかげでポケモン世界由来の植物の仕分けもスラスラ終わったし、思い出すのも一発だしね。

 聞いた話だと、各国政府にモンスターボールの製法の公開が終わったらしく、これから本格的にポケモンとの共生が始まるだろう。

 一般人にもボールが出回るのはいつになるのかなー、でもそしたら悪の組織みたいなのも出てくるのかなー。

 まあ正直、悪の組織がポケモンで悪事を働くのは相当難しいだろうけど。

 自衛隊のキャタピーがトランセルに進化した時に緊急で呼び出されて他の捕獲されたポケモンとも触れ合って分かったが、ポケモンは賢くて優しい。

 その上、森で人が遭難していたらきのみを分けてあげるくらいに良識があるのだ。

 縄張りや仲間を守るためには凶暴にもなるが、たとえボールでポケモンを捕まえても悪事をさせる前に言う事を聞かないだろう。

 ”主人の為なら悪事もする”というのは相当な信頼関係が必要なのだ。

 ……まあ中にはあくポケモンとか言う良識のネジが外れた奴も居るんですけどね。

 でもそれを新しくポケモンを利用しようという犯罪組織が使うのは難しいんじゃないかな、どれがそうなのか分かんないだろうし。

 私にできることはボールを所持してる人たちのところに定期的に視察に行って、テレパシーで悪事を企んでないか頭を覗くくらいだ。

 プライバシー? しゅ、守秘義務は守るから……

 

 

 

 

 

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 日本政府から各国に謎の生物”ポケモン”の捕獲と馴致に使われる『モンスターボール』なる道具の製法と現物が提供されたが、一部の国、特に日本の隣国であるC国は窮していた。

 C国は広大な国土と人口を誇る屈指の大国の一つだが、大陸におけるモンスターボールの原料『ぼんぐり』の自生数は少ない。

 他の未確認植物と同じで1日程度で結実する成長速度には目を瞠るものがあるが、現在のところ植樹したぼんぐりが上手く成長した例は報告されていないのだ。

 代わりに総称して『きのみ』と呼ばれるらしい果実の木は多数自生が確認されているが、その味は甘味を呈するものが少なく、苦味・辛味・渋味・酸味が強く食用に堪えないものがほとんど。

 膨大な国内需要、そして輸出大国としてボールを輸入に頼ることの是非など頭を悩ませる要因は多い。

 更に国父の肖像が飾られた旧王朝の城の門に龍にも似たポケモン*1が現れたことで、反政府勢力が散発的な行動を起こしつつある。

 すぐさま軍が鎮圧したものの、死骸が見つからなかったのは日本政府の言う”存在を縮小して隠れた”ということなのだろう。

 ただでさえ、鎮圧時に火を吐いたり暴れたりしたので怪我人も出ているのに……成果がないのは士気にも関わる。

 情報部の調べではT自治区の修行僧たちがボール無しに一部のポケモン*2と友好関係を築いているとの報告もある。

 独立しようと蜂起などしなければいいが……

 国内での出現数も考えれば、排除などもう机上の空論だ。

 うまく利用できれば、その力は国力の増加に大きく寄与することだろう。

 問題はそれの前提を整えることなのだが……

 C国高官たちの悩みは尽きない。

 

 

 

 

 

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 世界に冠たる大国である自負のあるA国では、先進的なポケモン研究と『きのみ』の効果検証が始まっていた。

 同盟国・日本を通して、史上初めて人間と意思疎通したポケモン”ミュウツー”からもたらされた知識。

 身体の硬直・まひに効果がある『クラボのみ』と複合的な毒の症状に効果がある『モモンのみ』から研究は始まった。

 動物実験の段階で効果は極大、『ありえない』としかいえない程の効果が計測された。

 故意に遺伝子異常を起こした下半身不随マウスは元気にケージを走り回り、致死量の毒と混合したきのみ飼料を平気で食べてピンピンしている。

 ポケモンの出現によって世界は変わったが、この成果が世に出ればまた一段世界が変わるのは明白であった。

 それと同時に研究する化学者たちは困惑する。

 効果の反応メカニズムが全く分からないのだ。

 どの成分が効果をもたらしているかが分からない、体内でどんな反応が起きているのかが分からない、反応後生成物ですら見つからない。

 解毒のプロセスに至っては、『きれいサッパリ消え去った』としか言いようがないほどだ。

 解明のカギと目されているのは、工業地帯で捕獲され研究機関に連れてこられた紫の泥状のポケモン*3

 ヘドロや産業廃棄物を食料とし、それらで容易に誘引できるため飼育には困らないが、体組織の採取には安全を期して必ず化学防護服の着用が義務付けられている。

 あまり過激な方法は存在の縮小による脱走を招くだけなので、嫌がらない程度、わずかなサンプルの採取に留まっているが成果はある。

 このポケモンは他の生物にとって毒性の高いものを好んで食すが、それに『モモンのみ』を混ぜて食べさせても毒性をまとったその身体が消えてなくなったりはしない。

 有害物質を食べるこの生物……生物? 

 とにかく、このポケモンの身体できのみの効果が解明できれば大きく研究が進歩するのは間違いない。

 その時にこそA国は世界で最も偉大な評価を得るに違いないのだ。

 研究員たちの実験は続く……

 

 

 

 

 

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「おお、よしよし。ちょっと前歯が伸びてきてるな。ほらネズ、かじる用の木材」

 

「コラッ、ラターッ♪」

 

「……」

 

「ああ、イモスケ。そんな怒るなって」

 

 自衛隊某駐屯地にて、自室でポケモンとたわむれる隊員。

 ポケモンに指示を出し、従わせるには強い信頼関係が必要との上からのお達しの為、このようなことができる時間も用意されている。

 この隊員は手持ちにキャタピーから進化したトランセルとその後捕まえたコラッタがいるが、このような隊員は少なくない。

 逃げやすいとりポケモンを持つ隊員はごく一部、大半は既定のロードマップに従い毒針を持たないむしポケモンから始めている。

 2匹目にどのポケモンを選ぶのかは捕獲する地によって大きく異なり、コラッタであったり、オタチであったり、ジグザグマであったりする。

 中でもコラッタは餌につられやすく捕獲が容易なため、たまに現れる電気を放つ黄色いネズミポケモンと違い人気だった。

 

 この隊員のように捕まえたポケモンに名前をつける者は意外に少ない。

 それはイモムシやネズミの姿をしていてもポケモンは賢いので、文脈から自分を呼んでいるかどうか判断できるからである。

 作戦行動中に呼びやすいこともあって個別の名前を付けない者も多いが、ポケモンたちに不満はないようだ。

 自然界の中では個別の名前を持たない彼らにとって、そこら辺はどうでもいい話なのか。

 名前を付ける派に言わせれば、”愛が足りない”とのことだが。

 

「ほーら、こしょこしょこしょー」

 

「ラタラターッ♪」

 

「……」

 

 トランセルの冷たい視線を受けても、ヘソ天になったコラッタをくすぐれるこの隊員は、確かに”愛に溢れている”と言えるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 それらはほんの一部ではあるが、ポケモンの存在は徐々に世界へ受け入れられていく……

 

*1
ジジーロン

*2
アサナン・チャーレム

*3
ベトベター



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第5話 掲示板での反応

海外のポケモン関連スレッド翻訳まとめ

 

元URL:https://×××××……

 

 

・Anonymous

謎の生き物はポケモンって言うんだってね

みんなの周りにはどんなポケモンがいる?

 

・Anonymous

ボクはビーバーみたいなポケモンと仲良くなったよ!

あのボールは持ってないけど、友好的にすれば仲良くしてくれるみたい

 

・Anonymous

ウチの農場では虫型のポケモンがあちこちに現れて大変・・・

収穫の時に機械に巻き込まれたりしちゃわないかな

 

・Anonymous

海での仕事は商売あがったりだよ

仕掛けた網にポケモンが掛かって、網を破いたりするんだ

 

・Anonymous

町で暮らす分にはそんなに問題なさそう

鳥型のポケモンも、新種のハトだと思えばそう気にならない

 

・Anonymous

ゴミ収集の仕事をしてるんだけど、回収しようとしたゴミ袋に手足が生えて逃げ出したんだ!

あれもポケモンだったのかな

 

・Anonymous

子どもが毛虫みたいなポケモンと仲良くなって、飼いたいって言うんだ

危なくないか心配・・・

 

・Anonymous

いいなー、私もポケモンを飼ってみたい!

でも、虫は嫌よ?

 

・Anonymous

私の家は川に近いんだけど、遊びに行くと仲良くなったポケモンが寄ってきてくれるの

ウーパールーパーやオタマジャクシみたいな子たちでとってもかわいい!

 

・Anonymous

途上国でポケモンが雨を降らせたって話もあるみたい

天候を変えるなんてありえるの?

 

・Anonymous

あんなボールの中に入っちゃうのに何を今更・・・

 

・Anonymous

飼育するってなったら、何を食べさせたらいいのかな?

 

・Anonymous

新しく現れた木の実でいいんじゃない?

彼らのほとんどはあれを食べてるみたい

 

・Anonymous

苦いのや渋いのもあるのに喜んで食べてるよね

 

・Anonymous

好き嫌いはあるみたい

同じ姿のポケモンでも、嫌いな木の実が違うみたいだから

 

・Anonymous

○○社にはポケモン用のペットフードを開発してほしい!

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 

 

 

【共生】ポケモンと共に生きるスレ 5【強制?】

 

25:共存する名無し

この前、初めてポケモンを連れた自衛隊員見たわ

キャタピーとかいうイモムシポケモンの糸をロープ代わりにしとった

 

26:共存する名無し

警察にもポケモン配備進んでるらしいね

でも、コラッタとかネズミにしてはでっかいけどそんなに役に立つの?

 

27:共存する名無し

アホか、ポケモンと対峙すること考えてみろ

捕まえたポケモンは倒れたら存在縮小してボールに帰るから実質残機無限だぞ

 

29:共存する名無し

それって、ゾンビアタックって・・・コトォ!?

 

30:共存する名無し

そうでなくても、あのネズミ時間かければ鉄パイプも齧り切れるらしいしな

 

31:共存する名無し

こっわ・・・見る目変わるわ

 

33:共存する名無し

まあ非常時の対応が手厚くなるのは悪いことじゃないだろ

 

35:共存する名無し

そういやサナギ連れてる隊員もおったけど、あれイモムシがああなったってことか?

 

36:共存する名無し

田頭首相の話聞いてないやつがここにまた一人

 

37:共存する名無し

『ポケモンは経験を積んで、別の姿に”進化”する』って会見の後の方で言ったんだよなぁ

 

40:共存する名無し

変態じゃなくて進化なの未だに納得いかない

 

41:共存する名無し

情報提供者”ミュウツー”さんが『形態の変化ではなく存在の次の段階への進化』って言ったらしいからね

仕方ないね

 

44:共存する名無し

実際、ミュウツーさん謎に包まれてるよなぁ

 

47:共存する名無し

・ポケモンだが意思疎通可能

・だいたい人型

・ボールを作る技術力アリ

 

50:共存する名無し

これ、ポケモンと化した向こうの世界の人間の生き残りとかなんじゃ・・・

 

51:共存する名無し

やめやめろ

 

52:共存する名無し

あまり核心を突いた言葉を使うな、怖く見えるぞ

 

53:共存する名無し

消されたらどーしてくれる!

スレじゃなく俺らが

 

55:共存する名無し

タイミングよく来たAmyazonのインターホンに漏らしそうなほどビビった

 

58:共存する名無し

ヤメローシニタクナーイ!!

 

 

 ・

 ・

 ・



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第6話 海のポケモン、ふしぎ発見

感想欄で意見を頂くのでアンケートを設置しました。

感想欄は筆者への要望を書くところではないので、ご協力をお願いします。


 

ワ──! ウェミだ────! 

 

 どーも、ミュウツーです。

 今日は海に遊びに来ている…………わけではなく、『水中におけるポケモンの生態と特定進化形体の情報収集』というなんとも御大層な名目でのフィールドワークである。

 ”海は全ての命のみなもと”という言葉があるように、ポケモンも水辺で生きる者はかなりの数にのぼる。

 それゆえにタイプにおいてみずタイプが多いのは自明の理であり、海という広大な生息域がそれを支えているのだ。

 

 しかし、実際のところはどのような生態系になっているのかはよく分からない。ゲームでもあまり直接的に描写されないし。

 そこでちょっとばかし釣りあげて、テレパシーでいろいろ聞き取り調査しようという試みである。

 潜るのもバリアーとか張ればいけないこともなさそうだけど、やっぱあっちのホームグラウンドに行くのは不利だもんね。

 

 というわけで、偉い人に用意してもらった”そこそこいいつりざお”を使って水面にキャスト! 

 ……お、引いてる引いてる! そしてフィ──ーッシュ! 

 投げてから喰いつくまでその間、僅か5秒! 釣りってこんなんだっけ……? 

 まあ、いい。本日の初釣果兼聞き取り対象を用意済みの水槽へ移す。

 

「コォ……コココッ!」

 

 予想通りというか、予想以下というか。

 釣れたのはみずポケモン雑魚代表、コイキング。

 戦闘能力のすべてを環境適応に回したような弱さのさかなポケモンである。

 

《よくぞ俺を釣り上げたな……しかし我らコイキングは釣り四天王の中でも最弱……》

 

 ──────みたいな思念がテレパシーで伝わってくるが、今の釣り内容でよくそこまで強がれるな……

 なんなら針に餌すらつけてなかったんだが、大丈夫か釣り四天王。

 

《すまないが、海の中についてと……君たちの進化先について聞きたい》

 

《……よかろう、敗者は勝者に従う。何でも聞くがいい》

 

 だからなんでそんな強者感出すんだ、その勝負実質10秒かかってないよ? 

 

 

 

 

 ▼▲▼

 

 

 

 

 

 謎に強者感を出そうとするコイキングに聞き取り調査を行い、貴重な情報が幾つか得られた。

 

 まず、水中においてポケモンで主に食料とみなされているのはコイキングとヨワシ。

 ポケモンの間でも弱肉強食はあるのか……とちょっと悲しくなったが、聞くとそう簡単な話ではないようで。

 他のポケモンに捕食されると、残りの体力に関係なく存在を縮小して隠れようとする。

 その時に発散される、残っていた体力分の余剰エネルギーを捕食者側は吸収しているらしい。

 もちろん捕食されるのは嫌だから逃げるが、自分たちが彼らを支えているのだという誇りのようなものも感じているのだとか。

 

 次にこの世界の元からいる生き物との関係。

 ほとんどのポケモンはたとえ自分と似ていても他の生き物に大きく干渉せずに生活しているらしい。

 捕食しないのか、という質問には”馴染みが無いから食指が動かない”という身もふたもない回答が得られた。

 

 最後に、一番重要なこと。

 野生のコイキングはどれくらいでギャラドスになるのか、という質問。

 きょうあくポケモン、破壊の権化として知られるギャラドスだが、ゲームでの進化レベルは20と意外に低い。

 その日の気分で街を焼くような危険性の高いポケモンにどの程度で進化するのか、コイキング自身ならば知っているはず。

 だが、その回答は拍子抜けなものだった。

 いわく、ギャラドスになるにはコイキングが登竜門と呼ばれるような急峻の滝を登りきる必要があるらしい。

 体力・力・若さ・元気、あらゆる要素が揃ったコイキングのみが成し遂げられる偉業。

 それをなし得なければ、ただコイキングとして齢を重ねるのみなのだと。

 

 ……まあゲームでもレベル20以上のコイキングとかもいるしな。

 緩やかな川の流れでも流されるとかなんとかいう図鑑説明もされてるくらいなのに、気合の入った事だ。

 というか、コイキングはたきのぼり覚えないだろう、と言ったら『はねる』と気合でのぼる、と返された。マジですか。

 ”人間の助けを得て、修行をしたのなら別だろうが”との言もあったので、トレーナーがレベル上げすればまた別なのだろうけど、バトル制度が整備されてないこの世界でコイキングを育てるのは難しいだろう。

 相当な愛があればあるいは……まあその時は懐いているだろうから大丈夫か。

 

 一応、偉い人には急流の滝近くに網とか設置するように進言しよう。

 私は協力者(コイキング)をリリースすると、同時進行で岩場のコソクムシの捕獲をしていたSPたちに撤収を告げるために歩き出した。



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第7話 仕事をするのうてんきミュウツー

 どーも、ミュウツーです。

 偉い人の用意してくれた住まいを借りて日々を暮らしている私だが、それはそれとして仕事はある。

 海外の研究機関とかへの出向の要請とかは結構来ているらしいんだけど、偉い人がそこらへんは止めてくれているらしい。

 ミュウツーの誕生経緯はかいつまんで説明したから、地雷だと思われてるのかな。

 まあ、おかげで私はきのみをかじりながら仕事するぐらいの余裕があるわけだが。

 今日もナナシのみが美味い! ミュウツーになってから酸味が強い果実が好きになった。

 ……おかしいな、私の性格は”れいせい”か”しんちょう”ではないのか? *1*2

 性格によるポケモンの味の好き嫌いも共存には重要だから、既にまとめてから伝達済みだ。

 ちなみに私は組み合わせをポロックとポフィンで覚えました(非対戦勢)

 

 

《それでは、始めようか》

 

「分かりました」「I'm ready」

 

 私のテレパシーに、新たに配属された書記官的な人たちが応える。

 最近の仕事は”暫定ポケモン図鑑”の編纂だ。

 この前のコイキングの例もあるのでゲームの時の図鑑説明が全部信用できるかと言えばそうではないが、情報が無いよりは有る方がいい。

 私がポケモンについての情報をテレパシーで伝えて、書記官が文章にまとめる形だね。

 テレパシーで相手の言語問わず意思が伝えられるから、私が各言語で打ち込むよりそれぞれの言葉が使える人がまとめてくれた方が早い。

 まとめられた情報はあくまで参考資料として各所に送られ、生物学・生態学に詳しい研究機関がその理由に関する推論を添えてフィールードワーク側に広めていく。

 

 例えば、ごうわんポケモン”キテルグマ”の『仲間と抱きしめ合う習性があり、怪力で背骨を砕かれる人間も多い』という情報。

 他のかくとうポケモンでも鯖折りで背骨を砕くことは可能だろうが、キテルグマはとりわけ特徴的に言われていた。

 これに対し研究機関は”進化前のヌイコグマの『抱きしめられるのが大嫌い』という特徴は群れのコミュニティにおいてキテルグマの抱擁を避ける意味があると考えられ、直立二足歩行の人間を仲間と認識した上での事故ならば、緊急時はヌイコグマと同じ四足歩行を示すことで回避が可能かもしれない”という補足を添え、実際に危機が回避された事例がある。

 それが偶然だったのかそうでないのかはまだ研究を待たねばならないけれど、対策になりうる意見を出せるあたり、頭がいい人というのはすごいものだ。

 

 ちなみにこの暫定ポケモン図鑑、タイプについても言及しているが、それもあくまで参考情報に過ぎない。

 リージョンフォームとかで同種類でもタイプが違うことはあり得るし、特性でタイプを無効化するものも居る。

 現在はまだ発見されていないが、ビリリダマなどはこの世界では多分”ヒスイのすがた”だろう。

 モンスターボールはぼんぐり製の物しかないからね、気難しい普通のビリリダマより扱いやすいといいんだけど。

 

 そんな穴だらけな図鑑ではあるが、将来的に裏付けが取れて『暫定』がとれた正式版は扱いとしては機密情報の塊になる。

 緊急性の高い情報は先じて各国に大使を通して共有されてはいるが、あくタイプや伝説のポケモンに関してなどはまだ外には漏らせないから。

 せめて格闘タイプやフェアリータイプのポケモンが警察などに配備されてからじゃないと……私じゃタイプ相性最悪だからさ。

 

 自衛隊や警察(そっち)に配備されたポケモンは、むしポケモンが最終進化して2匹目のノーマルポケモンは進化直前あたりだ。

 自衛隊の方は戦闘訓練があるので、すでに進化したポケモンも多い。

 ポケモンは進化すると基本的に大きくなるから、彼らもモンスターボールのありがたみが分かってきたことだろうね。

 

 3匹目が整ったら一般や企業へのボールの普及が始まる。

 もちろん許可証の申請やら書類の審査やらもあって個人が持つにはまだちょっとハードルが高いけれど、大きな一歩だ。

 民間の一部においては、もうボールを介しない交流が生まれ始めているらしいから、ボールの供給を渋ろうと遅かれ早かれだったし。

 

 申請したら私も許可証もらえるかな? 

 流石に劇場版みたいに”ポケモンがポケモントレーナー!? 馬鹿な! ”とか言う人はいないと思うけど。

 可能ならば私もぜひトレーナー気分を味わってみたいものだ。

 

*1
ハハッナイスジョーク

*2
もしかして:のんきorのうてんき



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第8話 ポケモン共存板・本スレ(掲示板)

【ポケモンと】謎の生き物が現れて世界がヤバい 16【共存】

 

 

386:共に生きる酪農家

・・・というわけで、牛型ポケモン”ミルタンク”の居住する施設として、行政に認めてもらえました!

おかげで牧場閉めなくて済みそうです

 

389:共に生きる名無し

よかったじゃん!

 

390:共に生きる名無し

前々スレで牛型ポケモンが3匹に増えてた時はどうなることかと・・・

 

391:共に生きる名無し

生き物だもんなぁ

そりゃ安全なねぐらがあったら群れで共有よ

 

394:共に生きる名無し

でもそいつらも餌喰うわけじゃん?

資金繰りとか大丈夫なんかね

 

397:共に生きる酪農家

研究所がポケモンのミルクを研究用に買ってくれるんでむしろ黒字まである

畜舎の清掃や飼料運びも手伝ってくれるし、怖がってたのが申し訳ないくらいです

 

400:共に生きる名無し

はえー、上手く付き合ってるんだなぁ

・・・まぁ上手くいってない人もいるんですがね

 

403:共に生きたい漁師

>>400

言うな

 

406:共に生きる名無し

出たな漁師ニキ

 

410:共に生きる名無し

4回も網を破られてるのに今の混沌とした海に出るのを諦めない漢の中の漢

 

412:共に生きる名無し

前回のは何だったか、特別製の網だっけか

 

415:共に生きる名無し

クモっぽい虫ポケモンを懐柔して、分けてもらった糸で編んだやつだな

良いとこまでいった(本人の主張)けど・・・

 

417:共に生きたい漁師

強度は十分で、魚も取れたんだが

中にクラゲ型ポケモンが混じってどうしようもなかった

 

419:共に生きる名無し

ポケモンが現れる前も、クラゲが網にかかる話はあったからなぁ

 

421:共に生きる名無し

それがポケモンともなれば言わずもがなよ

諦めたら?(無慈悲)

 

422:共に生きたい漁師

諦めんぞ

 

424:共に生きる名無し

このガッツは評価したい

 

426:共に生きる名無し

でも正直、手詰まりじゃない?

はえ縄はダメ、定置網もダメ、引き網はもっとダメとなって網漁がそもそもダメじゃなぁ

 

430:共に生きる名無し

基本的にポケモンの方が魚よりデカいし、なぜか針への喰いつきもいいから・・・

完全に漁場荒らし

 

433:共に生きたい漁師

次の作戦は完璧だ

なぜもっと早く思いつかなかったのか

 

434:共に生きる名無し

私にいい考えがある!

 

437:共に生きる名無し

コンボイ司令官!?

 

440:共に生きる名無し

嫌な予感しかしないが・・・

ちなみにどんな作戦?

 

442:共に生きたい漁師

泳げるポケモンと仲良くなって漁に連れて行き

漁場からポケモンを追い出してもらう

 

444:共に生きる名無し

ええ・・・(ドン引き)

 

448:共に生きる名無し

まさかそこまでストロングスタイルとは

 

452:共に生きる名無し

まあ・・・ある種の追い込み漁の変種だと思えば・・・

 

454:共に生きる名無し

漁場荒らし返しとか発想がおかしい

 

458:共に生きたい漁師

吉報を待て

 

462:共に生きる名無し

そのアグレッシブさを他に活かせなかったのか

 

465:共に生きる名無し

でも積極的にポケモンと交流してる点はすごいよね漁師ニキ

モンスターボールとやらの一般流通はもうちょい先みたいなのに全くひるむ様子がない

 

469:共に生きる名無し

人間の住むところに現れる奴は仲良くしようとすれば難しくないからな

 

471:共に生きる名無し

分かる

土方の現場で仕事してたら親切に角材やら運ぶの手伝ってくれるポケモンもいる

鉄骨も運べる奴が居るのは流石としか言えんが・・・

 

473:共に生きる名無し

恐怖感も薄れてきて、街の人通りも増えて来たな

 

476:共に生きる名無し

公園で子供と仲良く遊んでるポケモンもいたよ

紫の風船みたいなやつ

 

477:共に生きる名無し

無邪気な子供の方が距離を詰めるのが早いのかもしれんな

でもウチの近くでは風船みたいなポケモンなんて見たことないな

 

481:共に生きる名無し

珍しいんかね?

まあ子供と遊んでたそいつもすぐに帽子被ったカラスみたいなポケモンに攫われてって子供が泣いてたけど

 

485:共に生きる名無し

oh・・・

 

487:共に生きる名無し

やはりポケモンでもカラスは害獣なのか・・・

 

490:共に生きる名無し

食うためなのか風船みたいだったからなのか知らんが、ひでぇことしやがる

 

492:共に生きる名無し

そういうポケモンもモンスターボールが手に入れば言うこと聞くようになるかもなんだろ?

夢が広がるなあ

 

495:共に生きる名無し

カラスだし賢そうではある

でもかわいい系のポケモンも捨てがたい

 

497:共に生きる名無し

個人的に虫以外なら何でもいい

でも警察とか見るに、虫の率が高いんよな・・・

 

501:共に生きる名無し

やっぱ男ならカッコいい系だろ

怪獣みたいならなおよし!

 

504:共に生きる名無し

それ、ボールに入れる前に野生で出会うこと忘れてないか?

 

505:共に生きる名無し

そもそも、そんな奴いるのかな

見たことないが

 

506:共に生きる名無し

街中で見たら大事件だろうが

 

507:共に生きる名無し

林業やってる者だが、山の土砂崩れの跡の確認してたらそれっぽいの見たよ

2mくらいで2足歩行の鎧着た恐竜みたいなやつ

 

508:共に生きる名無し

マジで!?

人里離れた所にはそんなのもいるのか・・・

 

510:共に生きる名無し

崩れた斜面に木を植えてた

 

511:共に生きる名無し

はい?

 

 ・

 ・

 ・



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第9話 ミュウツーとエスパータイプ仲間

読者の方々によって解釈違いになるかとは思いますが、

優しい世界の場合、生命エネルギーが吸えないこっちの人間をポケモンはことさらに狙わないし、ポケモン世界のあの世がこっちに無いので連れ去ろうとしてから困惑します。

厳しい世界の場合、周りのポケモンが止めないと、まあ想像通りになります。


 どーも、ミュウツーです。

 警察や自衛隊の方々の手持ちのむしポケモンが状態異常の三種の粉わざを使えることで、ポケモンの捕獲難易度はグッと下がった。

 おかげで3匹目に捕獲されるポケモンはバリエーション豊かで、なかなか距離を詰めるのに苦労するという話も聞いている。

 生息域や生態の実地調査はフィールドワーク組が馬車馬のように働いてデータを集めているが、一方でタイプ別のわざについての調査も始まった。

 これに関しては一番話の通じる(ミュウツー)へ来るエスパーわざ解明のための調査協力要請も多く、偉い人たちが断るのも難しくなってきたので一部要請を受けることに。

 おーし、せっかくだからがんばっちゃうぞー☆ と気合を入れて念力で鉄骨ひん曲げたりバリアーで障壁を作り出したりしたんだけど……

 結果、規模が大きすぎて初期研究には不適との烙印を押されてしまった。

 まあね? たしかにちょっと調子に乗ってやり過ぎた所はあったかもしれない。

 ──────嘘です、みらいよちの座標ミスって壁に大穴開けてごめんなさい。

 

 そんなこともあり、新たに捕獲された3匹のエスパータイプポケモンが私の所へ人間との付き合いを学ぶべく送られてきたのだ。

 

 これからのエスパーと科学を繋ぐイカれたメンバーを紹介するぜ! 

 

「…………Zzz」《…………ムニャムニャ》

 

 まずはケーシィ(♂)! 

 テレポートで、捕獲の為に投げられたモンスターボールとポケモンの間に出現して捕獲されてしまったアンラッキーボーイ。

 日に18時間寝るせいか、今のところ起きているのを見たことがない。

 研究能力はテレポート、現在の能力の強さは自分+5kgの荷物を2つ隣の部屋に飛ばす程度だ。

 

「やぁん?」《ほぇ?》

 

 次にピンクの身体がチャーミング、3匹の中の紅一点ヤドン(♀)! 

 水辺でしっぽで釣りしているところを捕獲されるまで一切の反応を示さなかったまぬ……剛の者。

 研究能力は念力、金属のスプーンがほんのり曲がる。

 

「ラル? ラル、ラルラルー!」

 

 今回やってきた3匹の中ではかなり珍しい部類、言ってしまえばSSR枠! ラルトス(♂)! 

 性別ゆえに進化後にキルリアくんちゃんになることが内定している業の深い子でもある。

 野生出身でありながら特性:テレパシーという選ばれし者だ。

 研究能力はもちろんテレパシー、現状ではなんとなく機嫌を伝えられるくらい。

 

《なんですか? ジロジロ見ないでください、ボクはそんな安いオスじゃありませんので!》

 

 ──────思念を読むとこんな感じなので、たぶん性格はなまいき。

 

 

 以上の3匹で初期研究が進められることになった。

 

 人間との付き合いを学ぶので、私の仕事場であるポケモン図鑑(仮)編纂の場にも連れて行くのだけれど、書記官方からの反応はすこぶる良い。

 特に可愛がられているのはラルトスで、可愛いかわいいと褒められてまんざらでもなさそう。

 次に好感度が高いのはヤドン、居るだけで空気が無限にゆるむので休憩中以外は窓際でポケーッとしている。

 ケーシィとは若干ギクシャクしているが……顔合わせるときにだいたい寝てるからね、反応を測りづらいんだと思う。

 

 来て3日ほどで書記官方もラルトスにテレパシーできのみをねだられたりケーシィが突然消えてまた戻ってきたりするのにも慣れたが、ヤドンが書記官のデスクにしっぽを引っかけてもげた時には大騒ぎだったな……

 獣医や生物学者が駆けつけて診察し、本人────本ポケモンも痛がっていない事からトカゲの自切に近いという結論が出たからいいものの、デスクの持ち主は顔面蒼白だったよ。

 まあ2日ぐらいで元通り生えてきたし、10日に3回ぐらいどこかしらに引っかけて取れちゃうのでもう誰も動じないけど。

 取れたしっぽは貴重なサンプルとして研究機関へ、ヤドンもしっぽが取れた日は栄養補給にきのみが多めにもらえるのでむしろ嬉しそうだ……特性:さいせいりょくなんじゃないかという疑惑は残ったが。

 

 3匹はエスパータイプということで私の所へお鉢が回ってきたが、各地の研究所で独自に研究は進んでいる。

 イトマルやビードルなどのむしポケモンの針の毒成分の解明だったり、ガーディなどのほのおポケモンの吐く火の温度と範囲だったり、珍しいところだとミルタンクからとれるモーモーミルクの安全性の検証をしているところもあるとか。

 それらはポケモンを理解しようとする努力の発露だと言えるだろう。

 少しずつだが、ポケモンと人は近づいている。

 

 願わくば、この世界ではミュウツー()が生まれませんように……

 

 



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閑話 破壊の落とし子、落日の夢

今話は、優しい世界を求める場合は見る必要はあんまりありません。


 

 一体、なんでこうなってしまったのだろう。

 

 かつてビルだった建築物の残骸を利用して作られた防壁を眺めながら一人ごちる。

 いまや、世界中で繁栄していた人類の文明の火は消えかけ、急場しのぎの防壁の中でなんとか都市機能を延命しながら暮らしていた。

 昼夜問わず狂乱するポケモンたちの襲撃に怯えながら、まだ狂っていないポケモンの力を借りてギリギリで生きている。

 そうなってしまった原因は……ある意味では私自身だ。

 

 某国が、人間に協力的な圧倒的強さのポケモンとしてミュウツー()のクローンを生み出して使役しようと考えた。

 もちろん、当時の科学技術でポケモンというとんでも生物のクローンを作るのは夢物語。

 ゆえに、同じくポケモンの力をもってその計画は進められた。

 へんしんポケモン”メタモン”。

 全てのポケモンの因子を持つという幻のポケモン”ミュウ”の他で、唯一『へんしん』のわざを使うことのできるポケモン。

 クローンの培養槽はおおよそ62匹のメタモンを犠牲にして、調えられた。

 私の知らない間に採取された体組織を元にクローンは順調に育ち、大きな問題もなく完成した。

 ……問題があるとするのなら、クローンには私の精神は無く、ただ純粋なる破壊衝動のみであった事だろう。

 

『はかいのいでんし』、ミュウツー()を構成する因子であり、ポケモンの攻撃性を格段に高める代わりに正気を奪う。

 かつてポケモンの世界で” 体はつくれても優しい心をつくることはできなかった”と評されたそれでできたクローンは、研究所を、某国の街を、目につくもの全てを破壊せんとする衝動を持って世界に生まれ落ちた。

 破壊衝動のままに行動する”彼”は時に自らも傷つけたが、圧倒的な”じこさいせい”能力をも持ち合わせていたが為に傷だらけになりながら暴れ続ける。

 その体液にも高い濃度の『はかいのいでんし』が含まれており、”彼”が暴れた地域のポケモンは暴走をはじめ、多くの都市が暴れるポケモンたちによって灰燼へと帰した。

 

 私も止めようとしたが……私が強いサイコパワーを使おうとすると、”共鳴”した”彼”──────便宜上、私と区別するために同種ではあるが『ミュウスリー』と呼ばれている──────を誘引してしまうから、結果的に被害は減らせなかった。

 この街が今も何とか小康状態を保っているのは私の他に3匹の強力なポケモンが居るからだ。

 ミュウスリーを引き寄せない為に私が使える能力は制限され、戦闘には金属の装甲と銃火器などの武装を併用せねばならない。

 ”アーマードミュウツー”にしても物騒だな、と思うのは、現実逃避からだろうか。

 

《すまないな、貴重な武装なのに》

 

 前の戦闘で壊してしまった右腕の装備を整備していた技師に礼を言うと、申し訳なさそうに返される。

 

「いえ、守護者殿の安全が第一ですから。……言いにくいのですが、補給は今回で最後になります。弾薬の備蓄が底をつきました」

 

《そうか……よく今までもった、というべきか》

 

 以前は城塞化した工業地帯で弾薬も生産されていたが、狂乱したポケモンが放った”マグニチュード10”によって壊滅して久しい。

 装備の新調もできず食い合わせで騙しながら来たが……ついに弾切れか、来るものが来たということだな。

 

《最終作戦の前に補給ができただけで十分だ。……今まで世話になったな》

 

「これが、戦えない私のできる職務ですから」

 

 そう言う技師の片足は義足だ。

 原因を聞いたことはないが、このご時世だ。ポケモンが関わっていないことはあるまい。

 あるいは私に恨みをぶつけてもおかしくないのに、真摯に接してくれたことには感謝しかない。

 技師は退出前に”最終作戦前に三賢の方々もお見えになるそうですよ”と伝えてくれた。

 ”三賢”か、彼らも偉くなったものだ。

 

 

 

《ボクらと一緒にフーディンも顔を出したがっていたんですが……散発的な襲撃があって指揮所を離れられないそうです》

 

 そうテレパシーで告げるのは、サーナイト。

 相棒のフーディンは指揮所の要だから、襲撃があるなら来れないのも仕方ない。

 彼ならその頭脳で、通常の襲撃程度なら捌いてしまえるだろう。

 

《みぎて~、だいじょうぶ~?》

 

 心配してくれるのはヤドラン。

 普段、最前線に出て皆の盾になる役割をしている彼女の方が心配されるべきだと思うが。

 

《最終作戦が成功したらすぐに戻ってきてくださいよ! ボクは本当は後方要員なんですから!》

 

《げんきがいちばん~、だ~よ~》

 

《ああ、どう転んでも、次が最後の戦いだ》

 

 最終作戦では私がサイコパワーを全開にして、逆にミュウスリーをおびき出す。

 戦闘の間、激化するだろう他ポケモンの襲撃を防ぐのが彼らの役目だ。

 配置につくまでの時間はそう長くない。

 サーナイトは言いたい事を言ったらさっさと持ち場へ向かったが、ヤドランは残ってジッと私を見つめていた。

 

《もしかして~、おわかれ~?》

 

《……ッ!》

 

 ……ズルいなぁ、一番鈍いようで、一番鋭い。

 ”内緒だよ? ”と伝えると、《かなしいの~》とテレパシーで答えながら彼女も持ち場へ向かう。

 

 最終作戦、ミュウスリーと私がガチでやり合って何とか体力を減らした瞬間を狙い、特製のボールに一瞬でいいから奴を捕らえる。

 奴が本能で存在を縮小したら、”サイコブレイク”で物理的にボールごと消滅させるのだ。

 もし作戦が成功したら、生き残った人間の守護者としての私にもケリが付けられる。

『はかいのいでんし』は元々私由来のもの。

 私が居る限り、いつでも状況は今に逆戻りしてしまう。

 

 かつて、人とポケモンの架け橋を目指した者として、人とポケモンの間を引き裂く私の因果を、断ち切らなければならないのだ……! 

 

 

 

 

 

 ▼▲▼

 

 

 

 

《……という夢を見たんだ》

 

「……(白目)」

 

 エスパータイプのポケモンが見る夢を研究しているというので、最近見たやたらリアルな夢について話したら白目をむいてしまった。

 ごめんて、私がそういう風に思ってるわけじゃないんだって。

 

 

 後日、警護がしばらく厳重になったりやたら優しく接されたりした。

 いや、だから夢なんだって、あくまで夢の話なんだよ!? 

 

 どっとはらい。



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第10話 のうてんきミュウツーと道具と進化

 どーも、なんかよくわからないうちに警護を増やされたミュウツーです。

 しばらくの間は外に出るのに煩雑な手続きがいるので、屋内でできる作業がメインになる。

 暫定ポケモン図鑑の作業も一段落して実態調査した情報とのすり合わせが必要な段階に来ているので、ポケモン世界の植物や鉱物などの『道具』をより分ける作業なんかに割く時間が多くなったね。

 

 ポケモンは特定の道具に反応して進化するものもいる。

 一番有名なのは『かみなりのいし』『ほのおのいし』『みずのいし』『リーフのいし』などの『進化の石』だろう。

 実は進化の石は採石場などで結構な数が見つかっていて、中でも『たいようのいし』はクサイハナの出現対策の為に各地に配備されている。

 なにせ、”2km先から気絶させるほどの悪臭”だという話だから、初期は異臭騒ぎが起きないかとかなり警戒されていたのだが。

 後の実験で、ポケモンが出す悪臭や毒性など悪影響を及ぼすものは、そのポケモン自身の精神状態に大きく左右されることが分かってきている。

 例えばある国の実験では、有毒な身体を持つベトベターでも、懐いている研究員と一緒にいる時は採取した体組織から毒成分が検出されないという。

 ──────明らかにおかしい結果ではあるが、ポケモンはふしぎないきものであるゆえ致し方ない。

 つまるところ、ポケモンが出す脅威というのはほとんどが戦闘時、もしくは逃走時に起こる『闘争か逃走(ファイト・オア・フライト) 反応』によるものであり、自身が脅かされない状況で発揮されることは稀であると言うことだ。

 もちろん、軽々に扱えば恐ろしいほどの被害を出すこともあり得るので、危険度としては『見えている地雷』といったところか。

 よくもまあポケモン世界の住人は気軽に野生ポケモンに喧嘩売れるものだな……

 

 話を戻そう。

 ポケモンが自然界に由来するものに反応して進化する、なるほど、おかしくはない。

 進化の石は自然界に元々あるものであり、大きなエネルギーを秘めている。

 これを取り込んだポケモンの身体に変化が起きるのは、棲んでいる地域によって生態が変わるのと同じくらい自然な事だろう。

 だが、ポケモンの中には人間のつくった道具に反応して進化するものも存在する。

 有名どころだと通信交換で効果を発揮する”メタルコート”なんかが挙げられるだろうか。

 ストライクはヒスイ地方では自然物の”くろのきせき”でバサギリになるのに、それ以降の時代ではメタルコートによってハッサムになる。

 環境に適応するか状況に適応するか、研究者の推論だと『通信交換という状況が一時的にポケモンの身体を不安定にして外部刺激に反応しやすくしているのでは』ということだ。

 実際に交換進化ができるのなら研究も捗るけれど。

 

 ポケモンの世界でもかなりフシギな要素である『通信交換』。

 モンスターボールに収納したポケモンを電子化して他人のパソコンに預けてしまえるというぶっ飛んだ内容。

 研究者に伝えた時は、真顔で『ムリです』って言われたよ。

 まあたしかに、半ば以上科学じゃない所に踏み込んでいる気はする。

 一応、解決の糸口になりそうなポケモンが捜索されているが、見つかるかどうか……

 

 そのポケモンは『ポリゴン』。

 ミュウツー()とは違い、電子的なアプローチで作製された人工ポケモンだ。

 ポケモンを電子化し、また元通り実体化させられるなら、プログラム上で組まれたポケモンも実体化させられるという論理だね。

 研究できれば飛躍的な進歩が見込めるんだけど……探す場所が現実と電子の海の両方じゃ砂漠で一粒の真珠を探すのと変わらない。

 そもそも存在するかも怪しいので、そっちの研究は滞っている。

 

 植物の方はもう臨床試験に入りそうな具合なのにね。

 今日も研究所に送るために、強烈な独特の匂いがする『ちからのねっこ』や『ふっかつそう』をより分ける。

 ……ラルトスやケーシィが匂いだけで凄いイヤそうな顔をしている。

 飲んだことないのに匂いだけで苦そうな気配が分かるんだろうか。

 よく見れば特に反応していないヤドンもいつものようにボーっとしているが、若干顔にしわが寄っている気もする。

 

 私だって好きじゃないんだけどね、この漢方薬みたいな匂い……

 




ラルトス《なんでめざめいしは見つからないんです?》


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第11話 ポリゴン、その影は遥か(掲示板)

 

3Dモデラー互助掲示板 その62

 

493:初心者3Dモデラー

ありがとうございました!

おかげで初の動画投稿までたどり着けました

 

495:名無しの3Dモデラー

>>493

ええんやで

趣味でモデリングする界隈は今後のためにも後進は大事にせなアカンからな

 

496:名無しの3Dモデラー

しかしモデリングのためのソフト動かすのにPC自作まで行くとは・・・

若いっていいな(遠い目)

 

497:名無しの3Dモデラー

でも程度のいいパーツのキメラみたいなもんだからどうなるかねぇ

録画や編集でカクツいてもおかしくない

 

500:名無しの3Dモデラー

PCスペックがカツカツやからな

せやけど、もし思った出来と違くてもここまで来た経験は無駄にならんはずや

 

502:名無しの3Dモデラー

自作PCだから余裕ができたら増設やパーツ交換も視野に入れれるしな

 

505:初心者3Dモデラー

ニマニマ動画に動画投稿完了しました!

以下URLになります

ttps://nimavideo.jp/×××××……

 

506:名無しの3Dモデラー

お、キタキタ

 

507:名無しの3Dモデラー

新鮮な初作品を拝みに行くとしよか

 

509:名無しの3Dモデラー

>>507

あんま叩いてやるなよ?

 

510:名無しの3Dモデラー

>>509

そんなことせえへんわ

ここまで来るまでフォローしてから叩くとかどんな鬼畜やねん

 

513:名無しの3Dモデラー

再生した

キャラのダンス動画か、鉄板だな

 

514:名無しの3Dモデラー

ファッ!?

 

516:名無しの3Dモデラー

なんやこのテクスチャ!?

 

518:名無しの3Dモデラー

うっわ、リアル・・・

これ自作とかマ?

 

521:名無しの3Dモデラー 

キャラのモーションとかカメラの配置でようやく我に返れるレベル

 

523:名無しの3Dモデラー

粗が無いとは言わんけど、これは期待の新星ですわ

 

526:初心者3Dモデラー

見ていただきありがとうございます!

どうでしたか?

 

528:名無しの3Dモデラー

テクスチャの完成度が尋常じゃなかった

 

530:名無しの3Dモデラー

キャラのロボットの質感がリアルな分、ぬるぬる動くモーションに違和感を感じるくらい

 

532:名無しの3Dモデラー

ロボットだからむしろよかったけど、モデルが所々ポリポリしてたな

 

534:名無しの3Dモデラー

いやー、ひさしぶりに驚いたわ

 

535:名無しの3Dモデラー

おしむらくは、世間のポケモンフィーバーの中じゃこの界隈の動画はまず伸びないんだよなぁ・・・

 

536:名無しの3Dモデラー

ランキング上位全部ポケモン関係やもんな

 

539:名無しの3Dモデラー

ポケモンの3Dモデル作ればワンチャン?

 

540:名無しの3Dモデラー

現実に不思議生物がいるからカメラで撮った方が早いわ

 

542:名無しの3Dモデラー

ところでどんなソフト使ってテクスチャ作ったん?

俺も使ってみたい

 

544:初心者3Dモデラー

PCにプリインストールされてた『Porygon.exe』ってやつ使ってます

サクサク動いておすすめです

 

545:名無しの3Dモデラー

・・・ん?

 

546:名無しの3Dモデラー

組んだPCのOSにそんなデフォルトソフトあったっけ・・・?

 

548:名無しの3Dモデラー

オオオ

イイイ

(安全性が)死んだわあいつ

 

549:初心者3Dモデラー

え・・・?

標準搭載のソフトじゃないんですか?

 

552:名無しの3Dモデラー

そんなの聞いたことないゾ

 

555:名無しの3Dモデラー

サクサク動いてるとかいう感想も、勝手にクラウド化されてデータ抜かれているまであるな

 

558:名無しの3Dモデラー

念のため聞くけど、見た目どんな感じ?

あと、開発会社名

 

561:初心者3Dモデラー

>>558

カクカクしたマスコットキャラみたいなのの出してるダイアログボックスに入力して適したプログラムを開くような感じです

イメージ的にはテキストエディタのイルカ

開発会社は『シルフカンパニー』です

 

562:名無しの3Dモデラー

真っ黒の黒で草

 

563:名無しの3Dモデラー

シルフカンパニー調べたけど全然違う会社しかヒットしなかったんじゃが・・・

 

565:名無しの3Dモデラー

こらあかんな

 

568:名無しの3Dモデラー

絶対そのパソコンでパスワード入力とかするなよ?

秒で抜かれてもおかしくない

 

570:初心者3Dモデラー

ええ・・・怖い・・・

 

573:名無しの3Dモデラー

他の作業もするならアンインストールしとけ

 

576:名無しの3Dモデラー

プリセットソフトにされてるなら初期化通じないしなぁ・・・

 

577:初心者3Dモデラー

あっ

 

580:名無しの3Dモデラー

>>577

どしたん?

 

583:初心者3Dモデラー

アンインストールを実行したら、マスコットが悲しそうに去るアニメーションが出てから消えました

そしてPCがすごく重kkkkkkkk

 

585:名無しの3Dモデラー

あーらら

 

587:名無しの3Dモデラー

これは最後っ屁かまされたか

芸の細かいプログラムだ

 

590:名無しの3Dモデラー

次回作にも期待したかったが、これは厳しいかもわからんね

 



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第12話 世紀の発見は遠慮したいミュウツー

 どーも、ミュウツーです。

 記念すべきことに、本日から一般向けのモンスターボールの供給が始まった。

 厳正な書類審査やら証明書発行などハードルが高いので申請者のほとんどは企業や団体だけど、ポケモンが社会に溶け込む大きな前進だ。

 モンスターボールでの捕獲は、相手のポケモンの同意があればレベルとの性能差があっても大丈夫、という前評判につられて結構な強気の企業もあったが、そうすんなりとはいかない。

『飯を食わせてもらって感謝しているし頼まれたら助力はするが、それはそれとして指示に従うのは気に食わないし寝床を勝手に決められたくない』というポケモンはそれ相応にいるものだ。

 土建屋を手伝ってたゴーリキーやドテッコツ狙いの企業なんかは特に多く失敗している。

 失敗した場合は次の二次募集での再申請と改善点の提示が義務付けられるので、意気消沈していたね。

 成功していた例としては、養蜂家とミツハニーであったり、変わったところだと漁師とフローゼルの組み合わせなんかもあった。

 これはあくまでモンスターボールの所持のための申請なので、ボールの必要無しで共生する人たちはまだすべては把握できていない。

 偉い人たちは”危険度の高いポケモン”に絞って報告義務をつけるか、”比較的安全なポケモン”以外すべてに報告義務をつけるかで意見が割れているらしい。

 どちらにせよ現段階ですべての報告を義務化するのは難しいだろうという見解だ。

 コイルみたいな明らかにポケモンじゃないとありえない見た目ならまだしも、アーボとかは初見じゃわからないだろうしなぁ……蛇は大きいのは大きいらしいし。

 

 ちなみにモンスターボールの一般供給は今のところ日本だけだ。

 他の国では人口が多すぎて一般に回せるほどの数が出回っていない。

 人口の少ない小国の場合は国土も小さいので採れるぼんぐりも比例して少なくなるので結局供給しきれないのが現状だ。

 この国ではやたらぼんぐりが採れるので、輸出品に入れないかという話も出ているくらいなのにね。

 まあ、ボール無しで交流できるくらいならば、ボールの利点は携帯性だけとも言えるので致命的な問題ではない。

 それでもいろんな国が躍起になってボールを作ってるけど。

 

 

 通信交換についての情報共有の後、この国と同盟国の間でポリゴンの大捜索が行われたんだけど、意外なところで見つけることができた。

 発見したのはA国、航空宇宙局。

 先日打ち上げられた小惑星探査機が、妙に詳細なデータを送ってくるので調べたところ管制プログラムにポリゴンがいると判断された。

 A国には”シルフカンパニー”の話が伝わっていたからこそ判明したことである。

 本当ならすぐに捕まえるかしたいところなのだが……

 小惑星探査機はすでに宇宙空間に旅立っており、目標地点まで2年、そこから地球に戻ってくるまで5年かかる。

 つまり確実に会うことのできるポリゴンは7年後まで地球上に存在すらしていないのだ。

 この事実に多くの研究者は歯噛みし、予定を変更して探査機を地球に帰還させようとしたが、ポリゴンが頑としてミッション続行を望んだためか叶わなかった。

 ……設定に、宇宙開発用だというのもあったからなぁ、その意志は固いのだろう。

 結局ポリゴンの帰還は待つことになり、航空宇宙局のスタッフはミッションの成功率が上がったのを喜んでいいやら悲しんだらいいやらだね。

 ポリゴンへの期待が大きかった分、肩透かしを食らったがっかり感は大きい。

 

 

 そうそう、同じA国で研究されていたきのみ原料の薬は臨床試験を突破してついに実用化された。

 最後まで反応の過程は解明できなかったらしいが、一般的な薬剤などとの併用での問題が発生しないことから実用化に踏み切ったらしい。

 どこよりも先んじての発表のために特例扱いで最短距離で突っ走ったんだとか、無理するよねぇ。

 出来た薬は内服薬もあるけど、ゲームでおなじみのスプレー式の浸透薬もあるらしい。

 とりあえず発表されたのは『汎用解毒新果実由来薬』と『汎用筋硬直改善新果実由来薬』、つまり”どくけし”と”まひなおし”だ。

 どくけしは神経毒・細胞毒両方を種類問わず解毒できる夢の薬。しかしその時点での解毒なので自家中毒など原因が残ったままだと対症療法にしかならないとか。

 まひなおしは筋肉の硬直を解き、自由に動かせるようになる薬。後遺症でのまひやけいれん・ひきつけなんかにも効くらしい。

 この発表で、開発に携わったA国研究所の所長はノーベル賞確実と目されている。

 日本の研究所も”『きずぐすり』の実用化が間に合えばミュウツー()さんがヒト以外初めての受賞者になったでしょうに……”と言っていたが、そんなの恐れ多いよ。

 レシピもゲーム知識からこねくり回して作ったんだから、そういうのは一から研究して作り出した人がもらうべきもんじゃないかな。

 

 そんなこんなでエスパータイプの研究に来てる人も”我が国から世界的な発見を! ”と意気込みがすごい。

 感情を読み取れるラルトスなんかは微妙に引いているよ? ケーシィの方は……逃げたなアンニャロウ。

 

 我関せずとぽやぽやしているヤドンが唯一の癒しだね。

 



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第13話 伝説と次世代ボールとのうてんきミュウツー

 どーも、ミュウツーです。

 ポリゴンとの7年後の再会を待ちわびるA国航空宇宙局から、とんでもない爆弾を渡された。

 物自体は単なる衛星写真なのだが、写っているものが問題である。

 高速で飛翔していた上に拡大に拡大を重ねたため大まかな形しかわからないが……緑色の細長いフォルム、推定10m近い大きさで高度20km以上を飛んでいた謎の物体。

 心当たりがありすぎるのがつらい……完全にレックウザです本当にありがとうございました。

 

 いや、現実逃避している場合じゃない。逆に考えるんだ、まずほとんど地上に干渉してこない相手でよかったと考えるんだ……! 

 とりあえず概要としてオゾン層を生息域としている”伝説のポケモン”の1匹であること、ドラゴンタイプの中でも非常に強力であること、空気中のチリや水分、隕石を食料としていて滅多なことでは地上に降りてこないことを伝えた。

 薄々ポケモンではないかと考えていたあちら様も、そんな危険生物とは思っていなかったようで本国に緊急連絡して大騒ぎである。

 不幸中の幸い、と言っていいのかわからないが、レックウザは既存のレーダーに検出されないようで、対空ミサイルの誤作動による被害(地上側)は無かった。

 ……逆に言えば、オゾン層よりさらに上の衛星からの撮影でしか動向も掴めないのだが。

 

 A国とは『ミュウツーさんなんとかできたりしない? ダメ? そっかぁ……』みたいなやり取りを経て、不干渉が一番賢いという結論に至った。

 すみませんね、勝算が怪しいのもあるけど人のためにポケモン相手に戦うっていう構図はちょっと……

 ”れいとうビーム”があれば4倍弱点だし同じくらいの実力なら勝てなくもないと思うんだけどね、わざマシンないから覚えてないけど。

 

 食性的にも他の生き物を襲うようなポケモンじゃないし、間違えて先制攻撃でもしない限り安全じゃないかな。*1

 まあ隕石を食べるという習性があるので、もしかしたら弾道弾みたいな高高度に侵入して高速落下する物は狙われるかもしれない。

 宇宙への行き来、特に帰りの安全のためにはレックウザにテレパシーするエスパーポケモンが同伴する必要があるかもしれないな。

 一番良いのはテレポートで行って帰れる事なんだけどね。

 

 

 

 

 ▼▲▼

 

 

 

 

 

《原理的にはこれで問題ないはず……》

 

「でも、本当にこれでいいんでしょうか?」

 

 クラフトを手伝ってくれた研究員さんもさすがに疑問の声を出す。

 いろいろクラフトでヒスイ地方のレシピを再現してきたが、非常に物議をかもす物が出来上がってしまった。

 

『スーパーボール』、モンスターボールよりも捕獲率を上昇させたボールだ。

 

 金属製の部品で開閉機構に補強が入っており、一度閉じると開きにくくなっている。

 ……そう、ポケモンが入ってボールが閉じると物理的に開きにくいことで捕獲率を上昇させるスーパーストロングスタイルだ。脳筋ともいう。

 物件の内覧に来たら不動産屋に部屋の外から鍵をかけられて一晩過ごすことで”この部屋でもいいかな……”という妥協をさせるような、ちょっと道徳的にどうかと思う仕様である。

 代わりにその捕獲率は脅威の5割増し、非力なポケモンほど捕獲率が高まるオマケ付きだ。

 あまり金属部分を大きくすると金属臭でぼんぐりの捕獲作用が弱まるので、結構繊細な作りになって量産性が下がったのが欠点と言えば欠点か。

 少なくともぼんぐりをくりぬいてちょちょいと作ったモンスターボールと比べると倍以上の製作費が掛かっている。

 これでもパワーの強いポケモンには力不足だし、あまり多用するにはコスパが悪いのが実情かな。

 正直この方向性で『ハイパーボール』に強化するのは難しそうだ。

 いろんな鉱石系アイテムは見つかってるけど、まだ『たまいし』は見つかってないんだよねぇ……

 鉱山とか採石場じゃなく別の場所を探さなきゃいけないのかな? 

 

 一応『スーパーボール(仮)』はレシピとともに提出したが、捕まえたポケモンとは遊んだりコミュニケーションを多くとるよう推奨しておいた。

 

*1
のうてんきな感想



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第14話 ミュウツーさんについて考察するスレ

 

ミュウツーさんについて考察するスレ その150

 

 

1:深読みする名無し

・このスレはジョークスレです。それっぽい情報があっても全ては妄想に基づく虚構で実在のミュウツーさんとは関係ありません。いいね?

 

・ここはあなたの考えた「さいきょうのぽけもんみゅうつー」を発表する場所ではありません。そちらは別スレの『最強ポケモン談義スレ』へ。

 

前スレ

ミュウツーさんについて考察するスレ その149

ttps://××××××……

 

4:深読みする名無し

>>1

サンキューイッチ

 

7:深読みする名無し

ついにこのスレも150スレ目か・・・

 

9:深読みする名無し

ここまでスレが消されずに来れたということはこれまでの俺たちの考察は的外れなのでは?

 

10:深読みする名無し

おっと、ここはジョークスレで考察は妄言だ、いいね?

 

11:深読みする名無し

>>10

アッハイ

 

12:深読みする名無し

ここまで来るのにいろんな説が出てきたのにかすりもしてないとすると謎が深まる

 

15:深読みする名無し

・ポケモン世界に住んでいた人間のポケモン化説

・ポケモン因子を入れて改造された人間説

・ポケモンに人間の因子を入れて知能強化された特殊ポケモン説

・精神が人間と入れ替わったポケモン説

 

色々あったが、そろそろ新機軸が必要か

 

17:深読みする名無し

正式発表されている情報なんて

・超能力が使える”エスパータイプ”ポケモン

・人間とテレパシーで意思疎通ができる

・外見

くらいのもんだししゃーない

 

20:深読みする名無し

ソース怪しい非公式情報をどこまで採用するかが考察民の腕の見せ所よ・・・

 

22:深読みする名無し

”海で釣りしてた”という非公式情報を採用した『ミュウツーさん釣りキチ説』面白かったwww

 

25:深読みする名無し

人間と交流するすべての理由を『まだ見ぬ魚を釣りにいくため』に繋げてたあれかw

 

28:深読みする名無し

スレにたまに現れる切れ味の鋭いバカ

 

30:深読みする名無し

その発想力は讃えたい

 

32:深読みする名無し

でも実際ミュウツーさんの目的、ないしあっちへの利益みたいなの見えてこないからなぁ

 

34:深読みする名無し

モンスターボールや新薬剤みたいな向こうの技術をタダで教えるはずがないという常識が考察を阻む

 

35:深読みする名無し

事実、ミュウツーさん情報が無かったらA国発表の新薬剤とか実用化にもっと時間かかるはずだもの

 

36:深読みする名無し

医者が青くなる勢いで完治患者が出てるらしいな新薬剤

 

38:深読みする名無し

俺はまだ疑ってる

外傷由来だろうと脳由来だろうと筋肉麻痺が治るとかどういう原理なの?

 

41:深読みする名無し

リアル『どくけしそう』とか『まんげつそう』が手に入るとはいい時代になったもんだ

 

42:深読みする名無し

日本もはようリアル『やくそう』の実用化をしてもろて

 

43:深読みする名無し

外科手術とかの術後回復がめちゃ早くなるんだろうなぁ

 

46:深読みする名無し

でもそんな薬を開発できる向こうの世界の人間が一人も来ないの不思議だね

 

49:深読みする名無し

>>46

そこに触れてしまうか・・・

 

51:深読みする名無し

その技術にミュウツーさんが妙に詳しいのも含めて闇しか感じない件

 

54:深読みする名無し

①向こうの人間は超技術で世界の混在から逃げ切った

②向こうの人間は既に宇宙に旅立ち、地球にはいない

③向こうの人間は既に絶滅している

 

好きなものを選びたまえ

 

57:深読みする名無し

アッアッアッ

 

59:深読みする名無し

ミュウツーさん友好的だから考えたくないけど、ミュウツーさんが滅ぼしたまでありそうなのがまた・・・

 

60:深読みする名無し

もしそうだとしても、他の世界の人間には敵意を向けないとしたら相当人間ができてるよ

 

62:深読みする名無し

ポケモンだけどな

 

64:深読みする名無し

待て、そもそもポケモン世界の人間とこっちの人間の姿が完全に同じと考えるのがおかしいのではあるまいか

 

66:深読みする名無し

なるほど、ポケモンなんて生物が跋扈してるんだからもっと特殊な進化をしてるだろうってことか

 

67:深読みする名無し

まず生き残ってるんだから力はあるな

 

68:深読みする名無し

特殊な能力にも目覚めてるかも

 

69:深読みする名無し

あっ(察し)

 

70:深読みする名無し

多少姿は違うかも

 

72:深読みする名無し

でも理性的ではあるんだろうな

 

73:深読みする名無し

>>67、>>68、>>70、>>72

もうミュウツーさんやんけ!

 

76:深読みする名無し

だって該当する項目が多すぎるし・・・

 

78:深読みする名無し

なんでもかんでもミュウツーさんにしている自覚はある、だが私は謝らない

 

79:深読みする名無し

A国が出してる国内ポケモン生息域情報では、荒野で頭部の大きい人型ポケモンが目撃されてるしいぞ

 

80:深読みする名無し

リトルグレイか何か?

 

81:深読みする名無し

名前や情報はまだ公式公開されてないが、エスパータイプだってタレコミはあるな

 

82:深読みする名無し

増える人型エスパーポケモン情報・・・

やはり向こうの人類は・・・

 

83:深読みする名無し

収斂進化の可能性だってあろうもん

 

86:深読みする名無し

頭部がでかくなるなら直立二足歩行はありうる選択肢

 

87:深読みする名無し

政府内で保留されてるっていうポケモン情報がいつ公開されるかが気になるなぁ

 

89:深読みする名無し

ミュウツーさんの情報だけ伏せられてたら?

 

90:深読みする名無し

君のセキュリティクリアランスにはその情報は公開できないんだ

わかるね?

 

93:深読みする名無し

アッハイ

 

 ・

 ・

 ・

 

 



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第15話 のうてんきなミュウツーとの戦闘訓練

 どーも、ミュウツーです。

 ウチに派遣されてきたエスパータイプのポケモンたちは基本的には人との交流の学習に来ているのだが、サイコパワーの成長のためにも定期的な戦闘訓練が課されている。

 通常は警察とか自衛隊とかSPが持ってるポケモンとの試合だが、マンネリになるといけないと思い、10回に1回くらいは私が受け持つことにした。

 もちろん本気でやりはしない、怪我しちゃ元も子もないしね。

 ケーシィは攻撃手段が無いのでテレポートでとにかく避ける訓練、ヤドンは機敏に動けないので”ねんりき”で押し合う訓練、消去法で普通の戦闘訓練ができるのはラルトスだけである。

 先手はラルトスに譲っているので、彼が攻撃しないと始まらないのだが、開始前にテレパシーで何度も念を押してくる。

 

《いいですか! 本当に手加減してくださいよ! ボクはか弱いんですからね!?》

 

《安心しろ、みねうちだ》*1

 

《サイコパワーのどこにみねがあるんですかぁーっ!》

 

 みね? ……そんなもの、ウチにはないよ。言いたかっただけです。

 まあサイコパワーの出力はめちゃくちゃ絞ってるから、たぶんレベルにして10くらいまで。

 

《くぅっ、こうなったら!》

 

 覚悟を決めたラルトスが飛び出すと、その姿がぶれて無数の残像が現れる。

 ”かげぶんしん”か、前回の訓練では”さいみんじゅつ”で終わらせようとして”しんぴのまもり”に阻まれたから回避率を上げに来たんだね。

 

《どうですか! これならどれが本物のボクか分からないでしょう。あとは制限時間まで逃げれば……》

 

 でも残念、”スピードスター”どーん! 

 

《ぎゃわ────っ!?》

 

 星形の光を受けて分身に紛れていたラルトスが吹っ飛ぶ。

 …………やっば、この技はサイコパワー関係なかったわ。

 救護班! 救護班──っ! 

 

 

 

 

 

 ▼▲▼

 

 

 

 

 

 訓練終了後、”げんきのかけら”で復活したものの、頬を膨らませてご立腹の()()()()が居た。

 そう、今回の訓練の成果でついにラルトスは進化したのだ! ……あまり喜ぶと感情を読めるキルリアの機嫌が底の底に下がるのでほどほどにしておこう。

 ”きずぐすり”をつけて包帯を巻いているからそのうち治るだろうが、軟膏状のきずぐすりの欠点として効き始めは効果がじんわりとした感じなんだよね。

 そういうわけで、現在私は不機嫌なキルリアに指先をちゅうちゅう吸われています。

 ……いや、別にやましい事じゃなくてね。直接的な生命エネルギーの補充として”ドレインキッス”を受けているんです。

 ”すいとる”や”メガドレイン”のような吸収回復攻撃わざは、体液とかを啜ってるわけではなく生命エネルギーを奪うのが主目的のようで。

 もちろん”きゅうけつ”とかはより効率的に生命エネルギーを吸うために嚙みついているので痛みが半端ないだろうが、”ドレインキッス”くらいなら体力差もあるし許容範囲内である。

 ただ、絵面が非常にヤバイ。

 女の子っぽい姿のキルリア(性別:♂)に指先を吸わせているミュウツー(性別:ふめい)とそれを見守る護衛の人たち(ほとんど男)とか……地獄かな? 

 なんというか……すごく気まずい。

 思わず護衛の人たちに視線で助けを求めるが、秒で視線をそらされた。

 くっ、味方はいないのか……! 

 

 奇妙な居心地の悪さからの救世主はのっそりとやってきた。

 

《みんな~おわった~~?》

 

《あ、ヤドンちゃん。終わりましたよ》

 

 一気に緩む空気、ヤドンはいい意味で空気を壊してくれるから助かる。

 キルリアも同期の中ではケーシィよりヤドンと仲がいいので機嫌が和らいだようだ。

 

《ゆびなめて~どうしたの~?》

 

《ミュウツーさんに傷つけられたので、その分返してもらってるだけですよ》

 

《わたしも~じぶんのしっぽのさきなめるのすき~~あまい~の~》

 

 訓練を思い出してキルリアの機嫌がまた下がりかけるが、それに気づかないヤドンが幸せそうな顔で話すのでキルリアも毒気を抜かれている。

 彼女はマイペースだけど、それが逆に助かるなぁ。

 キルリアの機嫌が多少戻ったのを見計らい、私は戦闘訓練場からの撤収を告げた。

 

 

 それから5日後……

 

 

《……あれ~ラルトスちゃん~~せがのびた~~?》

 

《え、今になってそれ言います?》

 

 ……うん、どんかんさも含めて個性だからね!

*1
みねうちは覚えない



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第16話 のうてんきなミュウツーでも嫌がるアイデア

 どーも、ミュウツーです。

 ラルトスが進化してキルリアになったけど、その進化にかかった期間が今までの記録よりかなり短かったらしく、他のポケモンとの実践訓練もしてくれないかと持ち掛けられた。

 まだ捕獲されたポケモンたちとの間には圧倒的なレベル差があるので負けることはないが、『こうかばつぐん』の技をくらった時の腹の底から体が震えるような不快感はどうも慣れないね。

 まあ相手もどくタイプやかくとうタイプ持ちなら同じ思いをしてるんだろうけど。

 それでもトレーナーと絆を育んだポケモンは相性不利のバトルでも逃げたりしないんだから、たいしたものである。

 あまりこっちにばかり構ってもいられないので、急遽短期集中実践訓練合宿『ミュウツー'sブートキャンプ(仮名)』を開催し、勝ち抜き戦や乱戦もして短期間で鍛えるだけ鍛えさせてもらった。

 現状捕獲されたポケモンの中でも一線級の者たちが集まったようなものなので、研究者たちも貴重なデータが取れてホクホク、トレーナーはポケモンを強くできて嬉しいと一石二鳥だ。

 治療のための『きずぐすり』や『げんきのかけら』の量産ラインの限界試験にもなったし一石三鳥かな?

 深刻な問題も起きなかったし、三方良しだな。俺にヨシ、お前にヨシ、うーんヨシ! 

 ただ最後にやった私を相手にした乱取りが、途中からなぜかレイド戦みたいになっていたのはなんか納得いかない……

 

 

 

 

 

 

 ▼▲▼

 

 

 

 

 

 せっかく貴重なデータが集まったから、ということで研究者の人たちとディスカッションみたいなことをした。

 ポケモン世界で通用したことがこちらでは通用しないこともありうるし、ポケモン世界での『当たり前』が画期的なアイデアの元にもなりうるから、こういう話し合いもデータが集まるとたまに行われている。

 私が”実力差があっても相性不利な相手との戦いは忌避感がある”という話をしたら、それを利用してポケモン向けの忌避剤が作れないかとアイデアが出た。

 今までの研究はヒスイ地方のレシピを基にした『よせだま』のような誘引剤で、音を鳴らして追い散らす『ばりばりだま』は別の道具で代用する方がマシという意見が主流だったが、ここにきてタイプ相性を基にした忌避剤の提案である。

 たしかに、ポケモンには捕食・被食関係のポケモンもいるし、タイプ間での忌避感はどんな実力差があっても存在することは私自身実感している。

 むしタイプ除けに、ポッポなど(とりポケモン)の羽毛の匂いを混ぜた散布剤、みずポケモン除けにはメリープ(でんきタイプ)の毛なども使えるかもしれない。

 強力な個体にはあくまで”避けたくなる”程度の効果しかないだろうが、同レベル帯の個体であれば死活問題だから必死で避けるだろう。

 何気にこれはすごいアイデアなのでは? 

 大発明の予感にみんなが沸き上がる中、一人の研究者が呟いた。

 ”相性が悪くなくても、圧倒的強者の匂いが用意できれば汎用忌避剤にできるのでは? ”と……

 大変遺憾なことに、皆の視線は一様に俺へと向かった。

 さらに、それを聞いたオブザーバーとして参加していたキルリアがテレパシーで《ミュウツーさんぐらい強かったらボクなら避けますね!》と言ったものだから始末が悪い。

 キルリアくんちゃん、この前ぶっ飛ばしたの絶対根に持ってるでしょ。つぶらなひとみで『きりゅあ!』って鳴いても分かるんだよ。

 

 ……この後、研究者にごねにごねられて体臭のサンプルを取られるという非常に恥ずかしい作業を受けた。

 体液や体組織ではなく、あくまで揮発成分の採取ということを念押しして主張されたのは何に対する配慮だったんだ……? 

 そんなアレコレがあって、数週間後には大変不本意なことに試作品である汎用ポケモン忌避剤(ゴールドスプレー)(ミュウツーの香り)が出来上がった。

 

 効果も上々で、可能な限り早く製品化したいとのことだが、私にとっては複雑極まりない。

 ポケモンと人間の共存に必要でも…………自分の匂いの製品とか納得できないよ!!



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第17話 ポケモン発電と蚊帳の外ミュウツー

 どーも、ミュウツーです。

 先日は自分の体臭の製品化などというドえらい辱めを受けたが、代案の1つも出せない者には断固拒否の姿勢はできないのだ……

 私の羞恥心という尊い犠牲のもとに、それなりの効力のポケモン忌避剤は開発され各地で実地試験が行われている。

 他国からの引き合いもあるというけど……別のポケモンの匂いに変えてくれないかなぁというのが正直な感想である。

 だって、その、自分の体臭だよ? 役に立つからって世界に流通するのはいろいろ複雑だ。

 ”きよめのおふだ”や”きよめのおこう”みたいな代用アイテムが無いかとも思ったんだけど……ああいうのはポケモン世界のマジもんの霊能力者監修で作られてるだろうから参考にならないんだよねぇ。

 こっちの世界で開発するために自称霊能力者に協力要請とかもしてみたけど、ゴーストポケモンで実地試験されると聞いたらみんな断るんだもの。

 まあポケモン世界の霊能力者でも憑依して操られたりしてるくらいだから、仕方ないといえば仕方ないけど。

 

 さて、汎用ポケモン忌避剤”ゴールドスプレー(仮)”が使われるようになって、今まで気付かなかった場所に潜んでいたポケモンの発見情報も多く上がっている。

 葉っぱ部分以外を地面に埋めて隠れていたナゾノクサだったり、電線にくっついて電気を吸ってたコイルだったりしたが、大半は問題にはならなかった。

 問題になったのはごく一部……例えば、廃棄予定の不良品モンスタボール置き場で発見されたビリリダマとかね。

 ビリリダマ、モンスターボールによく似た姿をしているのが特徴で、ちょっとしたショックで自爆するのでポケモン界でも有名な厄介者だ。

 しかしそれは通常のすがたの場合……ぼんぐり製のモンスターボールしかないこの世界ではビリリダマもそれに似た”ヒスイのすがた”である。

 でんき・くさの複合タイプで、頭頂部(?)の穴から種子を飛ばすくさタイプの特徴と、テンションが上がると大笑いしながら放電するでんきタイプの特徴を持つ。

 厄介なことにこのヒスイビリリダマ、種族全体がいわゆる『ゲラ』で笑いの沸点が異常に低いのである。

 ツボに入ると延々笑いながら放電するし、ほんの些細なことでも笑い出すので気が抜けない。

 なかなか扱いづらいこのポケモンをどうするべきか悩んでいたところ、ある電力会社がその手を挙げた。

 今まで、でんきポケモンの力で発電をする試みは電圧が安定しないことから実現できていなかった。しかし、モンスターボール登録で複数体のコイルを捕獲したその会社は新しい発電の形を思いついたのだ。

 コイルは鋼の胴体と2対の磁石のようなユニットを持つポケモン。電気を食べ、ユニットから電磁波を放出することで宙に浮かぶことすらできる。

 電力会社はこの性質を利用して、コイルを間に挟むことで安定した電力を発電できると考えたのだ。

 

 まず、コイルがでんきポケモンの発した電力を吸収する。

 コイルは蓄えた電力をユニットから指向性の強力な電磁波として放出し、人間側は電磁波発電のアンテナで電磁波をキャッチ、電磁波を電力に変換する。

 コイルは食べる電力の電圧なんか気にしないし、放出した電磁波で空中に静止できるほど電磁波の安定した扱いができる。

 つまり、最初の電力を賄えさえすれば、安定した電圧の電力に変換できるのである。

 そしてヒスイビリリダマは笑わせられれば簡単に電力を出力してくれる非常に便利な存在であった。

 

 業界としてはかなりベンチャーな部門ではあるが、『ポケ(りょく)発電』は共存にかなり貢献してくれるんじゃないかな? 

 ポケモンの扱いや稼働体制など政府側からかなり詰めた質問をされていたが、それくらい期待も大きいんだろうね。

 実用化・普及がされれば夢のクリーンな発電方法だ。

 ドサ回りの芸人でも簡単なヒスイビリリダマを笑わせるのが発電の要なので『笑力発電』と言ってもいいかもしれない。

 コメディアンで電力を生み出すとか、字面で改めて見るとわけわかんないな……

 

 これを受けて政府側でもマグカルゴに体温を加減してもらって原子力発電の核分裂反応の代わりに蒸気を発生させてもらう『ポケ火力発電』みたいなのの構想を練ってるらしい。

 ここらへんは技術屋の仕事だからあまり助言できないけど、頑張ってほしい。

 ポケモンは適度な運動と好みのきのみが対価にあれば、大概は協力してくれるだろうし。

 

 ポケモンの能力と人間の技術の合体、これもまた共存の一歩だね!



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第18話 のうてんきミュウツーと発掘事情

 どーも、ミュウツーです。

 最近、新たに発見された素材がたくさん入ってくるので今日も今日とてクラフトざんまいである。

 きっと試掘・発掘現場にディグダとかが配属されたおかげなんだと思うけれど、地表では発見されなかった素材の報告も結構来た。

 モンスターボールをより高性能にするための『たまいし』なんかも見つかっていて、新たな改良の道が拓けそうだね! 

『たまいし』はできれば純度の高いものが好ましいのだが、今見つかっているのは不純物が多い『くろいろたまいし』やスカスカの『そらいろたまいし』が多い。

 そもそも鉱脈があるかも分からないし、ここら辺は要調査だね……

 

 私が新しい素材を使って”そーれ がっちゃんこ! ”とクラフトしていると、珍しく起きているケーシィがテレパシーで尋ねてくる。

 

《……それ、新しいの?》

 

《ああ、試しに”くろいろたまいし”を組み込んだものだね》

 

 試作品の『ヘビーボール(仮)』とその強化版『メガトンボール(仮)』である。

 職人ガンテツの作るボールにも”ヘビーボール”というものがあったが、これはそこまで上等なものではない。

 あっちは『体重が重いほど捕まえやすくなるボール』だったが、これは単にボール自体が重いだけだ。

 重量自体はヘビーボールで2倍弱、メガトンボールに至っては5倍近くあるんじゃないかな。

 

《重そう……》

 

《まあ、遠くには飛ばせないだろうな。だが、このボールはふいうちで後頭部にぶつけることで相手を朦朧(もうろう)とさせ、飛躍的に捕獲率を上昇させるんだ!》

 

《…………鈍器?》

 

 

 ボールです。(強弁)

 

 

 

 

 

 ▼▲▼

 

 

 

 

 

 新たな素材やアイテムが手に入ってホクホク……と言えればいいんだけど、どうにも扱い兼ねるアイテムもまた存在する。

 割と頻繁に出土して、扱いに困っているのが”カセキ”である。

 かつてポケモンの世界の古代に生息し、絶滅して化石となった彼らの痕跡。

 驚くべきことにポケモン世界の科学力では『化石復元マシン』が実在し、化石を基に割と気軽に当時のポケモンに戻せてしまう。

 ロマンはわかるが、生命倫理はどこいったんだ。まあ(ミュウツー)が言うのも今更過ぎるが。

 ガラル地方では異なるカセキ2種を合体して再生する異形のカセキポケモンたちもいて、”カセキメラ”なんて蔑称で呼ばれたりもしていた。

 化石ポケモンには悪いけれども、正直再生に向けて努力する気は今のところない。

 完全にジュ●シックパーク案件で、現代に甦っても厳重な管理下で研究くらいしかされないだろうし。

 彼らに罪はないんだけど、化石から古代ポケモン復元とか進めると第2の(ミュウツー)フラグ立ちそうだしね……

 

 復元できていたという情報を除いて、考古学界隈にもポケモンの化石が出現していることは伝えたので、結構な騒ぎになっている。

 フィールドワークで馬車馬の如く駆け回り新論文が飛び交う生物学界隈を見ていたから、顔が青ざめたことだろうか? それとも逆かな? 

 ポケモンのカセキ自体は後から出現したものなので地層の年代とかあてにならないから結構苦労しそうだけど、界隈に新たな風が吹くのは間違いない。

 ポケモン考古学か……ポケモン化石展示とかあったら見てみたい気もする。

 古代生物が持つロマンは分かるだけに……ちょっと惜しいね。

 

 

 

 

 

 

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《こ、今回はどうでした!? 出ましたか!?》

 

《やみのいし、リーフのいし、たいようのいし、かたいいしなんかが出たな》

 

《あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛》

 

《ケーシィちゃん~、キルリアちゃんどうした~の~?》

 

《……いつもの発作。そっとしておくといい》

 

 発掘で出たアイテムの目録に目を通していたら、キルリアが結果を聞いてきた。

 未だに『めざめいし』が見つかっていないからね、だんだん戦闘訓練もレベル上がってきたから切羽詰まってきてるんだと思う。

 まあ結果を聞いて、穴掘り兄弟のスタミナの方が採掘1回で終わったみたいな落胆してるけど。

 ここ最近、成果を聞くたびにこうなっているのでケーシィも慣れたものだ。

 いいじゃないか、別にオスでサーナイトでも。レベルアップだから正統進化だよ? 

 正直キルリアの時点で大概だと思うが、やっぱり選択肢があるのとないのとじゃ大違いなんだろうか。

 

《次! 次はこっちの山のところを掘りましょう! 今度こそ当ててやります!》

 

 山を当てる。(文字通り)

 ……まあ、発掘候補地から選定するくらいなら問題ないか。

 エスパーの直感ゆえか、結構レアなアイテムが出るところばかり指定してるみたいだし。

 

 でも、肝心のめざめいしは出てないんだけどねぇ……

 



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第19話 ポケモン共存板・専スレ(掲示板)

【買ってみよう】新時代の美食を体験するスレ その3【食ってみよう】

 

1:グルメな名無し

このスレは安全性が確認されて新たに流通が始まった新時代の食材”ポケモン関連食品”について語るスレです

食べたことのある人は大いに語ろう

食べたことない人は買って食おう

 

52:グルメな名無し

スレタイに釣られて来たけど、ポケモン関連食品って何?

もしかしてここ猟奇的なスレ?

 

55:グルメな名無し

>>52

お、初見さんかい? 肩の力抜けよ

 

58:グルメな名無し

説明しよう! ポケモン関連食品とは生産にポケモンが関わっている特殊な食料品のことだ!

ポケモンは瀕死になると姿を隠すので基本的にはポケモンの身体が食材のことは少ないぞ!

 

59:グルメな名無し

>>58

解説サンクス

・・・ん?基本的には?

 

62:グルメな名無し

へへへ・・・何事においても例外ってもんはあってね・・・

ポケモンが自切し、再生可能な部分については一部食材として認可が出てるんだよ・・・

 

64:グルメな名無し

カニ型ポケモンのハサミとか、ラッキーっていうピンクの有袋類なポケモンのタマゴとかな

 

66:グルメな名無し

タマゴ!? 

 

68:グルメな名無し

見た目からタマゴと呼ばれてるが、厳密にはタマゴじゃなく余った栄養を保存するための部分らしい

本人(本ポケモン?)も怪我したら自分で食べるらしいし

 

69:グルメな名無し

それにニワトリの無精卵は普通に食べるし、文化圏によっては有精卵でも食うだろ

普通普通

 

70:グルメな名無し

やはりここは猟奇的なスレなのでは・・・

 

72:グルメな名無し

ま、まあそういうギリセーフな食材の話ばかりじゃないから・・・(目そらし)

 

75:グルメな名無し

俺はツボツボっていうポケモンが作った木の実ジュースってのが好き

材料の木の実の酸味とかの尖った部分がすごくまろやかになってるんだよ

 

78:グルメな名無し

同じ木の実のレシピでも、作ったツボツボの個体ごとに味の傾向が違うらしいな

 

79:グルメな名無し

自分はミツハニーの集めた「あまいミツ」かな

ポケモンは賢いから単花蜜も作りやすいらしくお手頃価格なのもうれしい

 

80:グルメな名無し

「あまいミツ」って生産ポケモンが2択になってるよな

植物ポケモンと虫ポケモンで

 

82:グルメな名無し

植物ポケモンのミツでやたら安くて癖の強い種類があったが、あれなんなの?

 

83:グルメな名無し

あれはクサイハナってポケモンから取れる濃密なやつを希釈したものだ

あの癖がたまらないって人も結構いるんだと

 

85:グルメな名無し

あれクサイハナの蜜なの!?

自治体の注意喚起出るようなのからも食材出てるのか・・・

 

86:グルメな名無し

やっぱ使い勝手がいいのは「モーモーミルク」だろ

濃厚でコクのある味と抜群の栄養価!

含まれる成分が違うから乳糖不耐性にもやさしい

 

89:グルメな名無し

製菓業界からも注目されてるよね

個人的には飲んでもお腹がゴロゴロしないミルクという時点で満点です

 

91:グルメな名無し

・・・だが忘れていないか?

その栄養価という名のカロリーの高さを

 

93:グルメな名無し

ウッ

 

96:グルメな名無し

ヴァッ

 

97:グルメな名無し

ヴォッ

 

100:グルメな名無し

やはり美味いものはカロリーが高いの法則はどこの世界も一緒か

 

101:グルメな名無し

そうでもないぞ?

カロリーが低く旨味があり、それでいて腹にたまるという夢のような食品もある

 

104:グルメな名無し

マジで!? 教えて教えて!

 

105:グルメな名無し

ヤドンのしっぽ

 

108:グルメな名無し

あのおまぬけかわいいヤドンちゃんの肉を食えと申すか!?

 

111:グルメな名無し

自切したものだとしてもポケモン肉を食うのはちょっと抵抗あるなぁ

心情的にも、本当に無害?という疑問的にも

 

112:グルメな名無し

一応人体に悪影響はないから認可が下りたんだろう

心情的なハードルが高いのは変わらんが

 

113:グルメな名無し

ヤドンちゃんの肉食うくらいなら素直に太ります・・・

 

116:グルメな名無し

いやそこはダイエットしてもろて

 

117:グルメな名無し

>>116 草

 

118:グルメな名無し

でも気持ちはわかる

肉よりは植物性の物の方が気持ち的に食べやすい

 

120:グルメな名無し

モンジャラの蔓なんかはどう?

ハーブ扱いだったからパスタに使ってみたけど、清涼感があっていい感じ

 

123:グルメな名無し

モンジャラ? どんなポケモン?

 

126:グルメな名無し

知らん。フィーリングで買った

 

129:グルメな名無し

>>126

なんというチャレンジャー

 

131:グルメな名無し

見た目を知らない方が憂いなく食べられる←分かる

フィーリングで買った食材を気にせず食べる←分からない

 

134:グルメな名無し

うわ

 

136:グルメな名無し

>>134

? どうした?

 

137:グルメな名無し

・・・いや、モンジャラの画像見つけたんだが、一応閲覧注意

【××××.jpeg】

 

138:グルメな名無し

ぎゃあああああああ!

 

141:グルメな名無し

ぎゃあああああああ!

 

142:グルメな名無し

ぎゃあああああああ!

 

143:グルメな名無し

・・・やっぱ知らん方が幸せなこともあるんやね

 

 



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第20話 一般主婦Aさんの日常

あけましておめでとうございます。


「ハァ……」

 

 久しぶりの晴れ間でキレイに乾いた洗濯物を畳みながらため息をつく。

 結婚して、子供も生まれて、日々の幸せを嚙み締めながら平穏無事に過ぎていた時間が、今はとても遠く思える。

 子どもが気ままに遊ぶようになって少し手がかかるようにはなったが、それは嬉しさと紐づいているので苦ではない。

 問題は、件の”ポケモン事変(ショック)”から激変した環境である。

 夫は警察官で、ポケモンが現れた直後は忙殺され、落ち着いてきた頃に仕事の一環で捕獲したというポケモンを連れて帰った。

 私は……その、虫は苦手ではない方だと思うが、さすがにあのサイズの虫には忌避感がある。

 だって、一抱えもあるイモムシなのだ。尻込みしても責められるいわれがあるだろうか。

 息子はでっかいイモムシに大興奮で、仕事の都合でもあるのだから拒否することなどできなかったが、今思えば序の口だったのだ。

 イモムシのポケモンはしばらくして、サナギを経て蝶に姿を変えた。

 大き目の複眼にちょっと思うところがあったけど、見た目はイモムシの頃よりだいぶマシだ。

 風変わりなペットを飼うことになったと思うことにして自分を納得させた頃に、夫は2匹目のポケモンを連れ帰った。

 やけに赤茶けた体毛に黒の縞が入った子犬のような『ガーディ』というポケモンで、こちらは私の感性でも受け入れやすかった。

 ”子どもが生まれたら犬を飼いなさい”という言葉があるように、息子の情操教育にも良い影響があるのではないかと思えたし、私自身子犬を飼ってみたい気持ちはあったのだ。

 犬を飼っているママ友に世話の苦労を聞いて青ざめたりもしたが、ポケモンは思ったより手が掛からない。

 すこし意地っ張りなところはあるものの、言いつけを理解する賢さがあり、躾はほどなく済んだ。

 辛い木の実を好んで食べるせいで、息子が木の実をつまみ食いして大泣きしたことはあったが、この子のせいではないだろう。

 しかし毎日の散歩に息子が進んで立候補し、夫もポケモンが一緒ならと賛成するため送り出すが、私は今でも心配だ。

 町中のポケモンは敵対的な者は少ないというものの、散歩道で危険なポケモンにあっていないか憂いは尽きない。

 

「ただいまー!」

 

「バウバウッ!」

 

 玄関が開く音とともに息子の元気な声が聞こえてくる。

 ああ、この幸せな日常が崩れなければいいのだけれど……

 

 

 

 

 

 ▼▲▼

 

 

 

 

 

「……で、これは一体何?」

 

「たまご! サンタクロースのとりさんからもらった!」

 

 机の上に置かれたのは息子の身体では抱えるほどの大きさのタマゴ。

 鶏卵など比較にならない大きさで、何やら緑の水玉のような模様が入っている。

 

「きょーりゅー! きょーりゅーのたまご!」

 

 息子は大興奮だが、そんなことがあるとは思えない。

 しかし、現実的に見てありえないタマゴが目の前にあるからには、ポケモンとの関連を疑わざるを得ない。

 

「このタマゴは明日お父さんの職場で見てもらいましょう」

 

「や゛だ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛! ぼく゛がそ゛だて゛る゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!」

 

 大泣きする息子に心が痛むが、この子の安全のためにも退くわけにはいかない。

 夫の職場の話から漏れ聞くに、ポケモンには毒を持っているものも多いとのことだ。

 そんなポケモンが孵っても、うちでは持て余すだけ。

 心を鬼にして、タマゴに抱き着く息子を引きはがす作業に移った。

 

 

 

 

 

 ▼▲▼

 

 

 

 

 

 夫が職場に持って行ったタマゴは、なぜかうちに戻ってきた。

 夫が言うには、タマゴを孵すには相性のいいポケモンや人の近くにいるべきなのだが、現在一番相性がいいのが私たち家族なのだと。

 持て余すようなら孵った後で引き取るので、孵るまでの記録を取ってほしいと高そうな撮影機器まで送られてきた。

 これもまた仕事の都合……警官の妻として分かっていたことだが、吞み込むべきことは多い。

 生まれたばかりのポケモンは抵抗しないのでもしもの時は、と私にも”モンスターボール”とやらが渡された。

 息子は少しでもタマゴと一緒に居ようと散歩の時ですら自分が赤ん坊の時に使っていた抱っこひもでタマゴを連れ歩くほど。

 もし孵ったのが危険なポケモンなら、私が何とかしなければ……! 

 

「おかーさん! タマゴうごいてる!」

 

 いよいよだ。

 タマゴはクッションの上でぐりんぐりんと動き、時折中からタマゴの殻を破ろうとしている音が聞こえる。

 一体どんなポケモンが出てくるのか、かすかに震える自分の身体を押さえつけ平静を装う。

 大丈夫、ボールがある。危険そうならすぐに使う。それで大丈夫だ。

 

 タマゴの上部にひびが入り、それが徐々に広がっていくと、殻は一気にバラバラに割れた。

 

「ギャウ?」

 

「うわぁ、かいじゅーだぁ!」

 

 生まれたのはサメのような頭に小さな手足をくっつけたようなポケモン。

 頭部と胴体の区切りが分からない程で、それゆえに口の大きさが際立って見える。

 丸っこいフォルムは可愛いと言えなくもなかったが、大きく開いた口にしっかりした牙を見た私はためらいなくボールを投げた。

 

 

 

 

 

 ▼▲▼

 

 

 

 

 

 タマゴから生まれたポケモン……『フカマル』という種類らしいが、彼(オスだった)もうちで暮らすことになった。

 さみしがりで家族の誰かがいないと泣き出してしまうので、”特例だ”と夫は言っていた。

 なんでもこの子は『600族』と呼ばれる強いポケモンになる可能性があるから大事に育てたいのだとか……600族って何が600なのかしら。

 一緒に暮らしているかぎり、さみしがりで甘えたで、寒がりでガーディのお腹によくくっついてる姿からはそうは見えないのだけれど。

 息子はこの子を『サメくん』と名付けて、毎日のように砂遊びをして泥だらけで帰ってくる。

 夫の職場や役所からの補助で家計には余裕が出たのだけれど……急に子供が増えたみたいだわ。

 なにより、この子のモンスターボールの登録者が私だなんて。

 私はただの主婦なのだけど……

 




ミュウツー「最終進化するとガブリアスというポケモンになる。600族で環境でも上位のポケモン……らしい」

研究者「(環境で上位……生態系の上位者ということか)」

研究者「ところで600族とは?」

ミュウツー「特に強いポケモンの分類の一つだ」

研究者「何が600なんです?」

のうてんきミュウツー「……なんだろうね?」


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第21話 共存するポケモンの生態

 どーも、今日は戦闘訓練の予定が無いので一日デスクワークのミュウツーです。

 とはいっても、暫定版ポケモン図鑑は既にできているので、各地の生物学者が送ってきたフィールドリサーチのレポートに目を通して私見を添えるくらいのものなんだけどね。

 広い海がある水棲のポケモンは実態がつかみにくいけれど、陸上のポケモンは観察によっていろいろなことが分かってきている。

 普通、動物の縄張りは寝床と食料を得る場所、あとは水飲み場あたりを含めた範囲になるが、ふしぎなふしぎな生き物であるポケモンも一応それに準じたものだ。

 まず一等地はきのみの木の周辺、独占しようという個体もいないわけではないようだが、それをすると結託した他のポケモンたちとの連戦むれバトルになるので独占状態は長くはもたない。

 それにきのみの味も性格による好き嫌いがあるから、案外仲良くシェアしている感じだ。

 それでもきのみは有限、あぶれたポケモンたちがどうしているかというと、クスリソウなどと同様に現れている”ころころマメ”や”ごりごりミネラル”などのポケモンを誘引する”よせだま”の材料になるものがある場所の近くに居を構えている。

 実験レポートではきのみの方がよせだまの材料より誘引力が強いという結果が出ているようなので、やはり味に原因があるのだろうか……

 そんな感じで割と色々なところに生えているきのみの木やよせだまの材料のある場所周辺に大きく分布が偏っているのだが、原生の生物たちとの関係はどうかというと……驚くことに悪くはない。

 原生の生物ではポケモンに敵わないので挑まないというのもあるが、最近のレポートでは一部の動物とポケモンが共生関係を築いているとの報告もある。

 もともとポケモンは群れで戦う場合に、別種のポケモンが救援に駆け付けたりすることもある。

 一部においては動物とポケモンが寄り親・寄り子のような関係を構築しているとみられる群れもあったそうだ。

 もっとも、それはだいぶ希少な例で、ほとんどの場合は相互不干渉、ケンカを売られない限り無視しているような状態のようだ。

 原生の動物たちもそれを上手に利用しているのかもしれないな。寄らば大樹の陰というし。

 

 他にも興味深い報告はある。

 普通の野ネズミを捕まえたとりポケモンが、そのままネズミを放して逃がしたというものだ。

 同じような報告は複数あり、どれもポケモンが動物を捕まえて何もせずに逃がしたというものになる。

 おそらくコラッタなどの小さなポケモンと誤認して動物を捕まえたものの、生命エネルギーを放出して小さくならないから困惑して放した、というところだろうか。

 もしかしたらポケモンの中では肉を実際に食べたことのある者は少数派なのかもしれない。

 いくらゲームの知識があっても、いくらでも未知の部分が出てくる。本当にポケモンは不思議な生き物だ。*1

 

 概ねにおいてポケモンと原生の生物はうまく共生しているようだが、割を食っている者たちはもちろんいる。

 一番ひどい目にあっているのは昆虫をはじめとする虫だろう。

 敵対してこないポケモンをうまく利用するほどの知恵が無く、守ってくれるほど同族意識があって強いむしポケモンが少ない。

 大きな群れを作り、同系種を守り縄張り意識が強いスピアーでさえ普通の蜂を同族とは見なさないのだ。

 それでいて時に迷わずケンカは売ってしまうのだから、割を食ってしまうのも致し方ないと言える。

 不衛生な環境を好むポケモンはある意味で不衛生な環境に住む虫と共生しているといえるかもしれないが、得てしてそういうポケモンはどくタイプであることが多く、その毒性で殺虫してしまうことも少なくない。

 有り余る繁殖力と個体数ゆえに問題にはなっていないが、今まさに虫は不遇の時代を迎えていた。

 

 

 

 

 

 ▼▲▼

 

 

 

 

 

 ……ふぅ、各レポートに私見の意見も添えて、今日の仕事は終わりだ。

 何が悲しいって、どのレポートにも汎用ポケモン忌避剤(ゴールドスプレー)の効果への絶賛とかが添えてあるんだもの。

 たしかにフィールドワークでは必須級の効果があるんだろうけれど……褒められても全く嬉しくないねぇ。

 私の強い羞恥を感じ取ったキルリアくんちゃんはプププと笑いをこらえているし。

 くっそぅ、覚えてろよー……戦闘訓練でキルリアくんちゃんをもっと鍛え上げて、いつか汎用ポケモン忌避剤(中)(シルバースプレー)を作らせちゃうからね! 

 同じ気持ちを味わうがいい!!

*1
なおミュウツーの感想である



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第22話 のうてんきミュウツーの情報発信準備

 どーも、今日はいつもと違って他の子たちが外出でお留守番になったミュウツーです。

 キルリアくんちゃんのテレパシーの精度もかなりのものになってきたので、ここらで私の助け無しで頑張ってみるというところだ。

 舞台は、政府主催で行われる人間とポケモンの交流イベント。

 一般人も抽選で参加できる大規模なもので、私も『出たい!』と主張してみたのだけど、警備の難しさを理由に断られてしまった……

『私が居る、それに勝る警備などない』と主張してみたりもしたけど、しょっぱい顔をされてしまった。解せぬ。

 まあ参加できないのは残念だけど仕方ない、あとでキルリアくんちゃんたちに話を聞くのを楽しみにしておこうか。

 

 思えば、私ってメディアとか外への露出少ない? 

 貸してもらってる住居で寝起きしてるし、外に出るには予定を組んで護衛が付く。

 パソコンとか情報端末も使わせてもらってるけど、これインターネットにはつながってないしね。

 あら、意外に箱入りミュウツーだわ。

 

 うーんでもなぁ……急にオープンに情報発信したいって言っても偉い人も困るだろうし……

 そもそも私、テレパシーでは問題なく会話できるけど、録画越しとかだと会話内容伝わらないからテレビとか向きじゃないんだよね。

 筆談とか……コラムとかみたいな感じで文字になる方が助かるかな。護衛ぞろぞろ連れていく必要もないし。

 ちょうど暫定ポケモン図鑑の翻訳してた人たちも手すきだろうから、ちょっと打診してみようかな? 

 

 

 

 

 

 ▼▲▼

 

 

 

 

 

 帰ってきたキルリアくんちゃんたちの話を聞くに、イベントは大盛況だったようだ。

 キルリアくんちゃんは思う存分ちやほやされてご満悦だし、ケーシィくんもテレポートを絶賛されて得意げだね。

 ヤドンちゃんは小さい子たちと遊んであげたとのことだが、他の子たちの証言の感じだと遊具みたいに遊ばれてたみたい……気づかなかったわけじゃないよね? 

 イベント全体的に見ても成功だったようで、一般市民とポケモンとの交流・警察や自衛隊などの対応力の誇示・要注意ポケモンの周知とかなりの成果が上がったとのこと。

 テレビ中継なんかもされて、国際的にも注目が集まった催しになったようだ。

 

 他の子たちもメディアデビューしたんだ、私も負けてられないな! と強く思いこの間に思いついた話をすることにした。

 とは言っても、やっぱり何もないところからいきなりの提案はしづらいわけで。

 なので、この前のイベント良かったらしいですね、他の子たちはメディアでも大きく取り上げられたらしいじゃないですか、いやーやっぱ参加したかったなぁー、と恨み節を込めたかんじで情報発信について偉い人に打診したら、条件付きだがOKが出た。

 やけにあっさりだなと思って話を聞いたら、他の国からの圧力がかなりのものらしい。

 身柄をよこせとまではさすがに言わないが、情報を引き出せる場が欲しいと思うのはどこの国も一緒だからね。

 この国としても、一応の選別と検閲が入るのを了承するのならガス抜きできるからアリ、という判断だそうだ。

 うーん、私としては匿名質問ボックスへの回答みたいなのを想像してたんだけど、事が大きくなってるような……? 

 ま、いっか。つまりは意味不明な質問とか事前にはじいてくれるし炎上対策もしてくれるってことだよね! *1

 私だって質問で『湿ったチワワ』とか貰ってスペースミュウツーになりたいわけじゃないし、これはナイスフォローをされたのでは!? 

 この国の偉い人には頭が上がらないねぇ、いつもお世話になってます。

 せっかくGOサインが出たんだから、問題が起きないようにこの案件、気合入れて頑張らなきゃな! 

 

 どんなかんじのタイトルがいいかな……

 シンプルに『ミュウツーの質問箱』とか『ポケモンFAQ』? 

 いやいや、とっつきやすいように『ミュウツーだけど何か質問ある?』なんてどうだろう! 

 

 

 

 

 

 全部却下されました(涙)*2

 

 

*1
これは性格:のうてんき

*2
残念でもなく当然である。




短編ですしそろそろ話を畳みに入りたい……


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第23話 情報調査室職員の戸惑い

『内閣情報調査室』。

 私が所属している防衛省情報本部や公安調査庁と並ぶこの国の情報機関の一つだ。

 政府直下で国内の各情報機関を取りまとめる役割を担うこの組織においても、今や各国の注目の的である『ミュウツー』の詳細な情報を知る職員は限られている。

 他国との折衝に関わる上層部はどうだか知らないが、私のような下働きの職員にはNeed To Knowの原則*1に基づき情報が厳重に遮断されているのだ。

 知りたいという気持ちが無い訳ではないが、他国も血眼になっている情報に好奇心だけで近づくほどの愚かさは持ち合わせていない。

 好奇心は猫を殺す。長生きするコツは、無理に賢くあろうとしないことである。特にこの界隈では。

 そんな私に、件の『ミュウツー』と接触する任務が回ってきたのはまさに慮外の事だった。

 

 人間とかわらない知性を持つというポケモン、ミュウツー。

 かのポケモンに会うまでに幾つものふるいにかけられた。

 行動審査、倫理審査、精神鑑定……相当厳重な審査だ。なんなら他国の要人に会う時より厳しい。

 私はこれを機会に野心を抱くほど若くはないが、吹けば飛ぶしたっぱとは格が違う存在と会うことになるかと思うと武者震いしそうになる。

 ミュウツーご自身に会う前に情報の開示許可が出た為、専用の部屋へと向かう。

『機密閲覧室』、通称ゴーストルーム。

 この部屋は建物の間取りの中に存在しない、地下2階にある。

 入室には専用のエレベータでのみ入ることができ、内部に収められた資料は部屋から一歩持ち出すだけで機密漏洩の嫌疑で拘束されうるほどの厳重さ。

 収容限界を考え一部の資料は電子化されているが、この部屋に備え付けの専用機器でのみ閲覧が可能であり、転写防止措置がかけられてもいる。

 外部からの一切のネットワークが遮断され、ここに入った者だけが記憶にのみ写し取ることだけを許可される、幽霊のような場所だ。

 

 入室し、網膜・指紋認証で本人を確認されるとようやく情報にアクセスできる。

『ミュウツー』、エスパータイプポケモン。体高およそ2m、体重およそ122kg……これだけでも人間にすればかなりの巨漢並みだな。

 だがそれだけではない、念動力に類するESP能力を複数有し、自己再生能力・時間差での座標指定攻撃すら可能……

 ポケモンは物理法則を無視したようなものが多いが、これは輪をかけてだな。

 しかし、これらの情報は情報開示許可の中でも最もレベルが低い、”浅い”ものに過ぎない。

 これらより”深い”情報とは一体……? 

 別ファイルとしてまとめられた情報に、パスコードでアクセスすると、信じられない内容が飛び込んでくる。

 

 ポケモン世界で最も珍しいとされる”全てのポケモンの遺伝子を持つ”と言われるポケモン『ミュウ』。

 その遺伝子を元に、遺伝子組み換えで戦闘力を強化した末に生まれた人工ポケモンが『ミュウツー』。

 これまでの『ミュウツー』からの情報提供と実際のポケモンとの差異は、『ミュウツー』が元の世界で実際に他のポケモンを見たことが無い可能性を示唆している。

 同種族別個体が元の世界で起こした「逆襲事件」(別ファイル添付)を鑑みるに人類と敵対する可能性は高かったことは明白であり、現在の友好関係は『ミュウツー』の好意によるものだと忘れてはならない。

 元の世界にはポケモンの戦闘能力指標がLv.1~100で存在したが、『ミュウツー』の戦闘能力指標は不明。これは前述の理由の他に、戦闘能力向上に伴って他のポケモンの指標で測定が困難になったためではないかと推測される(集団合同訓練結果からの類推)。

 重要参考ファイル『夢』【アクセスエラー】【貴方にはこのファイルは情報開示が許可されません】

 

 なんだこれは……

 

 

 

 

 

 ▼▲▼

 

 

 

 

 

 今日からミュウツーの生活する施設の防諜人員の一人として配属される。

 あの情報を見た後だとガラにもなく緊張するのを抑えられない。

 ある意味、人間の悪意にさらされ続ける立場にあり、別個体ではあるが明確な敵対を起こすこともあった強力なポケモンとの接触。

 命の危険も当然あり得るだろうが、この職に就いたところで覚悟すべきことであったのかもしれない。

 

 全体から見れば名も無き職員の一人でしかない私のためにいちいち面通しなどは行われない為、私が初めて実際にミュウツーを目にしたのはかのポケモンの何気ない日常の一コマだった。

 

 

 

 間の抜けた顔をしたピンクのポケモンの背に顔をうずめたミュウツーが大きく息を吸っていた。

 

 

 

 なんだこれは……(呆れ)

 

 ……のちに、ミュウツーの何とも言えない異常なユルさにさらされ緊張など何処かにいってしまうのは別の話。

*1
情報漏洩を防ぐため、『必要とする人にのみ情報へのアクセスを許可し、不要な人によるアクセスは禁止するべき』という考え方



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第24話 食べ過ぎのうてんきミュウツー

以前、私のうかつな書き方で感想にネタを書き込ませてしまいました。
ありがたくはあったのでお話しにしましたが、規約的にアウトなので、感想に書いてほしいネタを書いたりしないようにしてくださいね!
私も、そう取られかねない発言を書き込まないように注意します。


 どーも、ミュウツーです。

 突然だが、知的生物はその脳を働かせるために多くの栄養を必要としているのを知っているだろうか? 

 人間では脳という臓器を働かせるために基礎代謝の約19%を割り振っているといえば、脳がどれだけ大喰らいなのか分かるだろう。

 そして(ミュウツー)はエスパーポケモン、強力なサイコパワーの源はその頭脳と言って間違いない。

 ゆえに、サイコパワーの出力を維持するには多くの栄養が必要なのだ! 

 

《……最近食べ過ぎでは?》

 

 ……必要なのだ!! 

 

《ミュウツーさん、ボクも流石にどうかとおもいますよ》

 

 …………必要なのだ!!! 

 

《たべすぎたら~おなかイタイイタイ~よ~?》

 

 ………………ごめんなさい、ヤドンちゃんに言われるのは堪えるわ。

 

 技術再現実験の一環でポフィンを作ってみたのだけれど、材料が良かったのかビギナーズラックなのか、まろやかな上出来のポフィンができたのよ。

 酸味が主体のまろやかポフィン、なまものだしすぐに手を付けるじゃん? そしたら美味しいし止まらないじゃん? 

 心なしか食べてから毛づやもよくなった気がするし*1、せっかくだからレシピ確立してみようと思ったわけで。

 結果、しばらくの間ポフィンを焼いては食べる生活が続いて皆から注意されてしまった……反省してます……*2

 

《まったく! ミュウツーさんはただでさえ大きいんですから、太ったら床が抜けるかもしれませんよ?》

 

 あー! キルリアくんちゃん、それはライン越えじゃないかなー! 

 いくら(ミュウツー)が身長約2m、体重100kg超えの恵体だといっても、それは種族からくる仕方がないもの。

 元となったミュウの高さは0.4m、重さ4kg。ミュウツーの高さは2.0m、重さ122kg。どうして差がついたのか……慢心、環境の違い……いいや違う、種族として生まれ持った差なのだ。

 結論! 種族差をイジるのよくない! 

 

《……でも、誰でも食べ過ぎたら太る。当たり前のこと》

 

《え゛》

 

 ケーシィくんの言葉に凍り付く私。

 そんな! ポケモンは不思議な生き物だから実質カロリーゼロではないのか!? 

 

《最近はふぃーるどわーく? っていうのにも出てませんでしたし、やっぱり食べすぎですよ。カビゴンみたいにならないといいですね? プププ》

 

 そ、そんなわけ……あれだよ! 毛づやが良くなって相対的になんやかんやあってそうみえるだけだよ! *3

 私、別にふくよかになってないよね職員さん!? と縋るような眼で彼らに目を向けると、なぜか彼らは全員私から背を向けるように直立不動で壁を向いている。

 ノ、ノゾミガタタレタ……! 

 

《だいじょうぶだよ~~》

 

 や、ヤドンちゃん……

 っぱヤドンちゃんよ、私の味方は君しかいない! 

 

《しっぽがとれれば~そのぶんすぐにやせる~よ~~?》

 

 ヤドンちゃん、(ミュウツー)の尻尾は取れないし、取って生やして痩せるのは嫌です……

 …………ダイエットしよ。

 

 

 

 

 

 ▼▲▼

 

 

 

 

 

《……で、この流れでボクがミュウツーさん相手の戦闘訓練やらされるの完全に巻き込み事故じゃありません!?》

 

《ダイエットの基本は、やはり運動からだろう?》

 

《だからって百本組手させられてるボクは貧乏クジじゃないですかぁ──っ!!》

 

 仕方ないじゃんね、私と戦闘訓練できる中で一番強いの暫定でキルリアくんちゃんなんだし。分かり切った結果である。

 けっして、けっしてキルリアくんちゃんに煽られたのを根に持っているわけではない。

 さあダイエットの時間だ! 

 ドわすれ! ドわすれ! ドわすれ! ガードスワップ! 

 いくぞサイコキネシス! 100%中の100%だぁ────っ!! 

 

《ぎゃわ──────っ!!!》

 

 

 

 全力戦闘訓練(局所的にする加減はアリ)をした後の身体検査で、体重は日々の変動の範囲内にまでなっていた。

 ポケモンは不思議な生き物である。

 

 

*1
原種であるミュウは全身に微細な体毛がある。この作品ではミュウツーもそれに準拠するものとする。

*2
後悔しているとは言ってない。

*3
相対的の意味をいっぺん辞書で引いてこい



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第25話 ミュウツーの語る過去の悪例

 どーも、ミュウツーです。

 政府のえらい人とは結構な回数の交流を重ねて、基本的にはこちらの提案を受け入れる方向で考えてくれるので助かるのだが、どうしても通してくれない案件がある。

 

 ポケモンバトル制度、いわゆる『目と目が合ったらバトルの合図!』ってやつだ。

 

 賞金のその場支払いとかはカツアゲになりかねないからダメにしても、勝敗でポイント付与して道具と交換みたいなのであればイケると思うんだけどなぁ。

 専用のバトルコート*1の整備が難しいんだろうか……いっそ競技場とかでイベントみたいな形での定期開催でもいいか。

 ポケモンの中には闘争本能旺盛(おうせい)なものもいるし、バトルの形で発散させる方法も整備しなくちゃいけないと思うんだけど。

 えらい人は、『通常時にポケモンを動物愛護法の保護下に置くか否か』『バトル制度に加わるトレーナーを資格制にするか否か』『関連法整備においてバトルに参加させるポケモンをどう定義すべきか』って感じで結構もめてるんだよね。

 警察や自衛隊の人たちのポケモン所持と戦闘訓練に関してはカッチリ整備されてるみたいで、彼らをバトル制度に入れるのは難しいみたいだし……可能なら虫取り少年でも参加できる制度にしたいのに、これじゃあ成人以下は参加難しくない? 

 ポケモンのゲームではカブトムシとかのムシ相撲並みに気軽に行われてたバトルだけど、裏にはすごい苦労があるんだなぁ。

 でもゲームの作中で語られるように、ポケモンバトルはポケモンを鍛えて自衛力を高めるだけではなく、ポケモンとトレーナーの絆を深めるものでもあるのだ。

 むずかしい事は……まあ、えらい人に任せるとして*2、今後もバトルに関しては定期的にプッシュしていこう。

 

 

 

 

 

 ▼▲▼

 

 

 

 

 

 大いなる力には大いなる責任が伴う、いい言葉だ。

 だが、その責任をかなぐり捨ててしまう人たちというのもままいるものなのだ。

 特にそれが、ポケモンという外付けで手に入れられる力だと。

 

 警察の人たちの中にはポケモンの力を利用した犯罪、『ポケモン犯罪』を防止、摘発、鎮圧するための部署が新たに設けられ、実働する人たちはみんなポケモン所持者……つまりはトレーナーだ。

 犯罪に限らず、大抵の物事というのは過去に類似の事例があることが多い。

 愚者は経験に学び、賢人は歴史に学ぶ。まあ簡単に言うなら、過去の事例がたくさんあった方が対策は立てやすいということだ。

 そういう訳で、ポケモン世界での犯罪例、いわゆる『悪の組織』について、警察のえらい人たちに伝えることになった。

 最新作に近いほど露骨な犯罪描写は少なくなっているが、昔は『黒いゲーフリ』、闇を感じさせる設定は割とあったからね。

 

 ポケモンを悪事に利用し、ポケモンの乱獲・違法売買・企業脅迫などを行ったポケモンマフィア『ロケット団』。

 超古代ポケモンを利用し、現代の環境を改変しようと目論む過激派環境団体『マグマ団』『アクア団』。

 神と呼ばれるポケモンを利用し、現在の世界を破壊して新たな世界を創造しようとした『ギンガ団』。

 ポケモンの人間からの解放を謳い、裏では自分たちだけがポケモンを保有し優位に立とうとした『プラズマ団』。

 古代の最終兵器をもって人類を間引くことで争いの無い世界を実現しようとした『フレア団』。

 

 極端に危険だった部類を挙げるだけで、これだけある。

 しかもゲームではどれも野望達成直前まで行ってるのだから、ポケモン世界は相当な薄氷を踏んでいたことになる。

 あらためて各主人公スゲェな……

 

 この中では唯一フレア団だけが『古代兵器』が無いために実現不可能だが、フレア団の勧誘が『争いが無い世界で生きるためにはフレア団に入る必要がある』『加入条件は上納金500万円』などと非常にカルト宗教に近い方法をとっていた為、警察の人たちも真面目に聞いていた。

 特に詳細を聞かれたのはロケット団についてだったね。まあ目的が金儲けで取った手段も現実的だし一番卑近だったのだろう。

 ギンガ団の『神と呼ばれたポケモンを利用する』というのは聞いててなんのこっちゃだろうし。

 

 ちなみに、今回ロケット団の話をするにおいて『ミュウツーの逆襲』と『レインボーロケット団』については触れないように口止めされている。

 アニメ時空とゲーム時空の両方にロケット団は存在するけど、初期のアニメはゲームの影響が強いからサカキさんも結構なワルだもんね。

 あまりアニメのサカキさんのやりようをゲームの方のサカキさんに着せない方がいいかなと私も思うし頷いた。

 レインボーロケット団については……まあ、隕石が落ちてくるのを心配するようなものだと思う。

 

 出来る事前準備なんてポケモンを鍛えておくことぐらいだし、やっぱバトル制度の制定しか対策無いんじゃないかな! 

 

*1
ゲームで中心にモンスターボール柄がある長方形の試合場。

*2
ミュウツー「わかんにゃい」



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第26話 海外の反応 (掲示板)

 

家にポケモンがやってきた! 海外の反応

 

元URL https://×××××……

 

 

・Anonymous(スレ主)

ついに僕の家にもポケモンがやってきたよ!

image:xxxxxx.jpeg

 

・Anonymous

ワォ! やったね!

もしかしてだけど、あのボールがもらえたの?

 

 ・Anonymous(スレ主)

 ううん、ボールがもらえたわけじゃないんだ

 でも、州からの審査を通ったから正式に僕の家族の一員さ!

 

・Anonymous

いいなあ、私の住んでいる所ではまだ審査の枠組みすら決まってないわ・・・

私もビーバーちゃんと一緒に暮らしたい!

 

・Anonymous

でも、彼らはびっくりするパワーを持っているからね

政府がきっちりルールを決めてくれるのは心強くもあるよ

 

・Anonymous

そうなの?

ウチの牧場にいつのまにか羊のようなポケモンが何匹か混じってたけど、そんな風に見えないよ

転がって移動するのには驚いたけどね:p

 

・Anonymous

画像を見るにヨークシャーテリアみたいなポケモンなんだね

僕の地元にも犬みたいなポケモンがいるけどだいぶ姿が違うみたいだ

 

・Anonymous

私のところではコーギーみたいな子がいるわよ

黄色い毛と短い脚が可愛いの!

 

・Anonymous

自分のところはプードルみたいな見た目だね

毛が伸びるのがすごい早くて、飼い主は週替わりで刈り方を変えて楽しんでるよ

 

 ・Anonymous

 そんな頻度でトリミングしたら嫌がるんじゃない?

 

  ・Anonymous

  まったくの逆で、彼らはそれを好んでいるみたい

 

・Anonymous(スレ主)

小型犬くらいの大きさだけど、進化したら大型犬並みになるかもって言われたよ

どんな姿になっても彼は僕の大切な家族だけどね!

 

・Anonymous

ポケモンは普通の動物と違うから、飼育の上で注意すべきこともあるからね

ワニみたいなポケモンなのに湿気が大嫌いだったりするから

 

・Anonymous

審査の時に注意事項を教えてくれるけど、そもそも満たせないときは審査も通らないし

許可が下りた人の話はいくらでも聞きたい

 

・Anonymous

ウーパールーパーちゃんと暮らすのに必要な事ってある?

 

・Anonymous

ビニールプールくらいの広さの水場は必要だって

あと青い肌から出てる粘液は敏感な人はかぶれるかもって注意された

 

・Anonymous

え?ウーパールーパーくんって茶色くない?

 

 ・Anonymous

 別のポケモンと勘違いしてると思う

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 

 

 

【賛否】A国で実施されたポケモン捜査官制度に対する海外民の反応翻訳まとめ【両論】

 

元URL https://×××××……

 

 

・Anonymous(A国)

先進国で初めてポケモン捜査官制度が実施されたのは誇らしいけれど・・・

正直、そこまで信用できるの?ってところも一部あるよね

 

・Anonymous(A国)

犬型ポケモンの利用は分かるよ

捜査犬より調教も早くて、意思疎通が簡単らしいからね

 

・Anonymous(E国)

このネイティオ捜査官の『限定的な過去視』って信じていいの?

僕はにわかには信じられない

 

・Anonymous

一応、過去視で証拠を見つけることが目的だから、過去視の内容自体が根拠になるわけじゃないらしい

ポケモンの能力の広さには脱帽だねX(

 

・Anonymous(K国)

そもそも読心ができるESP能力を持つポケモンがいるなら、容疑者の心を読めば早いんじゃないか?

 

 ・Anonymous(不明)

 君はプライバシーという言葉を一度辞書で調べてみるべきだね

 

・Anonymous(F国)

今まで夢に見ていたESP能力が現実のものになったからといって、それに全てを任せるのは怠慢だよ

 

・Anonymous(R国)

捜査官には戦闘班もいるのかい?

 

・Anonymous(A国)

ドラマの見過ぎだよ。彼らの仕事は事が起きた後に真実を明らかにすることなんだ

 

・Anonymous(不明)

まあでもポケモンなんだから、普通の捜査犬なんかよりずっと強いんだろうけどね

 

・Anonymous(G国)

未解決や難事件が彼らによって解決されるようになるといいな!

 

・Anonymous(N国)

彼らに期待しすぎるのはよくないよ

公表された彼らの能力を信じるかどうかは結果が出てからだ

 

・Anonymous(D国)

ポケモンという新たな力が現れたことは、新たなポケモン犯罪の誕生と同義だよ

この制度はそれを抑止するための牽制だと思う

 

 ・Anonymous(D国)

 そのうちに街の警官もポケモンを持つようになるだろうさ

 

・Anonymous(A国)

ポケモンは拳銃より可愛いから、景観を損ねないね:D

 

 ・

 ・

 ・

 



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第27話 ポケモンバトルもどきとポケセンのアレ

 どーも、ミュウツーです。

 以前えらい人たちに打診した情報発信の準備が整ったので、その内容を何にするか話し合いが行われた。

 私はね、今も自衛隊の人たちがやってる戦闘訓練にルールを課した形でポケモンバトルの文化を伝えたかったんだけど……

 うん、没くらっちゃった、解せぬ。

 ポケモン所持数の少なさから原則1on1、使用できる技を事前に申請した4つに限定したフルコン空手みたいなルールを提唱したんだけど、『刺激が強すぎる』『暴力要素が大きく容認できない』とまぁ、たしかにそういう向きがあるのは否定できない。

 でも話し合いに参加している人は国の選りすぐりの人たちだから、対案とか改善案無しに一方的な否定だけを叩きつけてくるわけじゃない。

 暴力要素を取り払い、純粋な技の披露を目的とした競技にしてはどうかと提案されたのだ。

 事前申請した技を互いに好きな順番でくり出し、表現力・技巧・芸術点などで優劣を競う文化的なスポーツという改善案を渡された訳だけど……これってポケモンバトルというより、コンテストだよね? 

 まあ、ポケモンの戦闘欲求というか、フラストレーションの解消には多少なるだろうからいいんだけど……個人的には生ポケモンバトルを観戦したかったなぁ。

 この世界では全くリーグ戦をしないポケモンリーグとかできないんだろうか? そうだとしたら少し残念である。

 しかし、まずはポケモンで競うという価値観を受け入れてもらうことが大事なので、この明らかにコンテストであるポケモンバトル案に同意した。

 審査員が必要だから道端で『目と目が合ったらポケモンバトル!』とかはできないが、現実問題として技を披露する場所を確保する必要があるので、場所を用意しての定期開催と噛み合っているし。

 競う方向性が違いすぎると問題になるので、本家コンテストにならった5つの部門*1や審査基準を提唱した。

『かっこよさ』が『力強さ』に変更になったくらいで、他はほぼ素通しだったね。暴力要素が無いだけでここまで話が早いとは……なぜだ、暴力はすべてを解決するのではないのか? 

 モヤモヤしつつも、初回の情報発信の目玉はポケモンバトル(?)に決定し、専門の担当者が公開できる情報を適宜公開、分からない情報要求があれば私にも回ってくるとのこと。

 なら、これから私がするべきはポケモンバトル(?)の映像準備だね! まずは各部門の評価される技をお手本で見せるのが先かな? 

 可愛さの部門は……キルリアくんちゃんに任せるとして、私はやっぱり賢さの部門の技を披露するかな! 

 

 

 

 ……なお、サイコブレイクとサイコキネシスの威力から映像検閲でストップがかかり、OKがでたサイコカッターの評価が高かったせいで力強さ部門に回された。大変遺憾である。

 

 

 

 

 

 ▼▲▼

 

 

 

 

 

 前にポケモンの食物連鎖について調べた時、捕食されそうになったポケモンは生命エネルギーを放出して縮小し、捕食者はそれを吸収していることが分かった。

 この放出される生命エネルギー、実はゲームにおいて実際に利用されたことがあるのだ。

(むげんだい)エナジー』、デボンコーポレーションがエネルギー源として実用化したり、フレア団が使おうとした古代の最終兵器はこのエネルギーをもって驚異的な威力を出すという。

 宇宙ロケットにも転用できるほどだというから結構なエネルギーなんだろうけど、ポケモンから生命エネルギーを吸収する時点でやり口が悪の組織なんだよねぇ。

 デボンコーポレーションは多分、ジムやポケモンリーグでのバトルで倒れたポケモンからエネルギーをかき集めるカードゲームアニメの黒幕みたいなことをしてたんだろうけど、この世界ではそんなことできないしね。私は想像力足りてるから。*2

 かといって、手つかずのエネルギーがもしあるなら、利用しない手はないわけで。

 実証実験として、野生で捕獲された中でも非常に珍しいラッキーとニョロトノによる『はらだいこ&いのちのしずく』による生命エネルギー放出を行ってみた。

 エネルギーとしての計測は残念ながらできなかったものの、なぜかは分からないが蛍光グリーンをした謎の液体が実験の結果として得られた。

 この怪しい緑の液体、のちの実験でポケモンに対してのみ回復効果があることも分かり非常用に備蓄されることが決定したのだが……もしかしてこれ、ポケモンセンターで使われてたやつなのだろうか? 

 

 即時回復効果があるのは非常に助かるのだけれど、ポケモン世界の闇を垣間見てしまった気分だ……

 

*1
かっこよさ、美しさ、可愛さ、賢さ、逞しさ

*2
ヒガナ「……」



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第28話 ポケモンマスター(仮)とのうてんきミュウツー

 

『ポケモンマスター』

それは

子供たちの永遠の憧れ

だがその頂点に立てるのは

ただ、一組……

そんなサバイバルな業界に

8人のトレーナーと

8匹のポケモンが

足を踏み入れる!

 

 ……どーも、ミュウツーです。

 ポケモンバトルがコンテストの趣きを強く持つことになったからには、広報のために芸能界の力を借りないわけにはいかない。

 幸い、向こうも『ポケモンで魅せる』というブルーオーシャンに我先に参入したがっていたから渡りに船だろう。

 選ばれたのは8人。

 人気子役から老齢の俳優、バラエティタレントからアイドルまで幅広く集めた。

 初回はまず競い方を確立するため全員に同じ種類のポケモンをパートナーとしてもらう。

 

 

「ぶい~」「ぶい!」「っぶい」「ぶい?」「Zzz……」

 

 

 用意されたのは、しんかポケモン『イーブイ』。

 不安定な遺伝子を持つがゆえに環境への適応力に優れ、8つの進化先を持つ可能性のけも……ポケモンである。

 カントーやジョウトでは希少種のはずなんだが……適応力が強く働いているのか、8匹捕獲するのに苦労はなかったらしい。

 性格もそれぞれなので、相性のいいパートナーが見つかるといいな。

 

 芸能人の彼らの中から、パートナーにしたイーブイと共に5つの部門でしのぎを削り、各部門での成績の総評で栄えある初代ポケモンマスター(仮)を選出する予定だ。

 全員、方向性は違えども『魅せ方』に一家言ある者たちを集めたのだ。結構見ごたえのある試合(?)になることが予想される。

 実際の試合までの触れ合いやトレーニングの間に進化してエーフィやブラッキー、ニンフィアになる子が出てもまずいので、全てのイーブイに『かわらずのいし』が持たせられた。

 石の数が足りなくてキルリアくんちゃんの分が回収されたのは余談である。

 

「私、この子にする!」「僕はこの子!」「はっはっは、では私はこの子にしましょうか」

 

 次々とパートナーが成立するのを私は…………マジックミラーを隔てて部屋の外側から見ている。

 今日この場に私が居るのは、選ばれた参加者が妙なことを考えてないかサイコパワーでチェックするためである。

 結果としては問題なし、特に企みなどもないようなのでイーブイと交流する参加者を平和に眺めている。

 

 政府のえらい人たちもそこまでカリカリしなくても……と思わなくもないが、万が一があってはいけないというのも理解できるので……ううむ。

 まあ問題が無かったことを素直に喜ぶべきだね! 

 ちなみに、初回のバトル(?)大会が完了して初代ポケモンマスター(仮)が決まった後は、トラブルが無ければそのまま参加者とともにパートナーのイーブイたちは芸能界デビューすることになっている。

 進化も解禁されるし、キルリアくんちゃんの山当てで在庫がだぶついてる進化の石も申請すれば給付されるらしいから、将来はいろんなブイズがお茶の間を賑わすことだろう。

 第2回大会からはポケモンの種類を統一せずに一般参加も募るということで、参加者の工夫と技巧が問われることになる。

 

 ……私もキルリアくんちゃんとタッグで出ちゃダメかな? 

 ちゃんと変装するから! 参加名もマスクドM2とかにするから! *1

 ダメ? …………はい。

 

 

 

 

 

 ……今回は引き下がるけど、いつか必ず出て見せるからね。

 そしてリアルポケモンマスターの称号を手に入れるのだ! 

 それまでは、うつむかないへこたれないあきらめない!

*1
なぜそれでイケると思ったのか



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閑(完)話 調和の架け橋、続く未来

筆が進まないのでとりあえず落としどころを投稿します。

もし続くとしても番外編な形で書きたいところを書き、不定期になると思います。
長らくお付き合いありがとうございました。


「ぐすっ……ママぁ、どこぉ……?」

 

 ある日の街角。

 母親とはぐれた女の子が、涙目になりながら辺りを見回している。

 本当はその場から動かないのがベストなのだが、不安に駆られた女の子は母を探してふらふらと移動していく。

 しかし、目当ての母親は一向に見えず、元の場所へ戻る道も分からない。

 押しつぶされそうな不安に、女の子はただお気に入りのホシガリスのぬいぐるみを強く抱きしめていた。

 

 

《おやおや、悲しむ思念が聞こえると思ったら迷子ですか》

 

「え……?」

 

 女の子の頭の中に直接響く声、思わず振り返るとそこにはこちらを見ている者が居た。

 大まかには人の姿をしているが、頭髪に見えるところや腕は薄い緑色をしていて、白い肌とふわりと広がるスカートのような部分は一体化している。

 遠目で見れば白いワンピースを着た女性にも見えただろうが、近くで見ればそれが人間とは違うことは女の子にも分かった。

 

「ポケモンさん……」

 

《ええ、そうですよ。さあ、貴方のお母さんを探してあげましょう》

 

 ポケモンの目が不思議な輝きを放ち、胸にある赤い部分から何らかのエネルギーの波が辺りに広がる姿は幻想的で、泣いていた女の子もつい見惚れてしまう。

 輝きが収まると、ポケモンは一つ頷き女の子に手を差し伸べた。

 

《さあ、お母さんのところに行きましょう。こっちですよ》

 

「う、うん……!」

 

 ポケモンは女の子の腕を引き、スルスルと人ごみを通り抜けていく。

 そしてあっけないほど簡単に女の子を探す母親のもとに辿り着いた。

 安堵して互いに駆け寄り喜び合う母娘、母親はしきりに頭を下げてポケモンに感謝を伝えたが、ポケモンは”お気になさらず”と鷹揚に答えた。

 

「ありがとね! ポケモンのおねーちゃん!」

 

《お、おね……!? ボクはこれでも……いや、いいです。もう迷子にならないようにするんですよ》

 

「うん!」

 

 なぜか女の子に礼を言われた後、不思議としょんぼりした様子で去っていったことが母親の印象に残っていた。

 

 

 

 

 

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 この世界に突然現れたポケモンという命、しかし現在では彼らとの共生は当たり前のこととなっている。

 農業、林業、畜産、漁業などの一次産業においてポケモンが関わっていないことはなく、電子産業においてもポリゴンやポリゴン2、ロトムとの協力により業務形態は大きく変わった。

 高速演算が可能なメタグロスや、直接プログラムのコードを調整してくれるポリゴン系統、電気製品に入り込み性能を強化するロトムはこの世界の技術をポケモン世界に近づけるのに大いに貢献したのだ。

 出現当時は大きな脅威であったポケモンの扱いも、尊重すべき隣人という立場を確立し、トレーナー制度、関連法整備の完了をもってポケモンはこの世界に根付いたと言っていい。

 そんな折に、私の夢にかの創造神アルセウスが出てきた。

 かつて聞いた貫禄あふれる美●明宏ボイスで”人とポケモンは調和を成した。架け橋たる其方は見事役目を果たした”と褒め(?)られて照れ臭いやらだったけど、疑問が一つ生まれた。

『役目を果たした私は元の世界に戻されるのか?』ということだ。

 この機を逃したら言う機会なんてないから、すぐにこのめちゃくちゃいい声の創造神に問いかけると思ってもみない返答をされた。

 いわく、”其方は私が選んだ人間の精神の写しをその身体に込めたもの。戻る世界などない”とのこと。

 えぇ……私コピーだったん? それをミュウのコピーの身体に入れるとか皮肉が強すぎん?? まあ正直楽しんでたところあるからあまり不満無いけど*1

 LEGENDSアルセウスの感想では邪神とか言われてたもんね、神様こちらの都合考えない、知ってた。

 

 そんな褒められたのか裏切られたのか分からない夢を見た数日後、私のサイコパワーの出力が目に見えて落ちた。

 不調にしてもおかしかったので専門の病院で精密検査を受けたんだけど、全身の細胞単位でガタがきているそうだ。

 ミュウツーはもともと戦闘能力を高めるための調整をして生み出された。

 元となったミュウは無限の生命力を秘めているとまで言われていたが、どうやらサイコパワーの出力上昇のためにそこらへんは犠牲にされたらしい。

 つまり今回のは不調でもなんでもなくミュウツーの身体自体の限界、寿命なのだ。

 お医者さんからはここまで不調なく保ったのが奇跡的と言われたので、創造神の加護はあったんだなぁと思ってみたり。

 ここのところは身体に負担をかけないようにサイコパワーの使用を避けて、安静にする生活が続いている。

 頃合い、だろうか。

 昔とは違う意味で外に出られなくなった私の代わりに、外で迷子を助けた話をしてくれるサーナイトくんちゃんに、考えていたことを話した。

 

 

 

 

 

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《ねぇ、本当にやるんですか? わざわざこんなことしなくたって……》

 

《どちらにせよ、遅かれ早かれだ。それにどうせなら、君たちに送ってもらいたい》

 

《……》

 

 ずいぶん前に見た夢のことを気にしてるわけじゃないけど、ミュウツーの身体である以上”はかいのいでんし”は取り出せるだろう。

 生きてる間は良いけど、死んだ後に遺体がどうなるかはちょっと分からない。

 なら、今のうちに手が届かないところにやっておこうってわけで。

 

《急ぐ必要、無いと思う。なんなら私たちが墓守をする》

 

《フーディン、気持ちは嬉しいが、それとて君たちが居なくなった後は分からないのは理解しているだろう?》

 

《……》

 

 私が成長を手伝ったポケモンたち。

 そのサイコパワーでマイクロブラックホールを作り、私の身体ごと消し去る。

 サーナイトが生み出し、フーディンが閉じ、ヤドランが周囲を保護する。

 高レベルのエスパーポケモン三体が揃っているからこそできる荒業だ。

 

《おわかれ~や~なの~》

 

《もうそろそろテレパシーも限界になる。悲しいが、お別れなんだ》

 

《……や~》

 

 全幅の了解は取れなかったが、渋々でも協力してくれた彼らはミュウツーになってから得た真の友だろう。

 サーナイトくんちゃんがサイコパワーを集中し、重力場が歪み始める。

 ヤドランちゃんが周囲を守ってくれるおかげで、影響があるのは私だけだ。

 最期のなけなしのサイコパワーで、彼らに”ふしぎなまもり”をかける。そう長続きはしないだろうけど。

 

 

 どうか、彼らとこの世界のポケモンたちが人々と永く平和に歩めますように……! 

 

 

 

 

 

 

《──────という夢だった》

 

 いつぞやの破滅的な夢以来、定期的に夢の内容を聴取されるんだよねぇ。

 個人的には夢日記みたいでちょっと嫌なんだけれど。

 昨日の夢は研究員さんのツボに刺さったらしく、『げっ”じでぞん”な”ごどざぜま”ぜん”がら”!』とボロ泣きである。

 まあまあ泣きやみなよ、キルリアくんちゃんたちがめちゃくちゃ不審そうな顔でこっち見てるから。

 たかが夢なんだから、そんなに真に受けなくても……

 

 まあポケモンと人間の完全な共生もまだまだ道半ば、たとえ正夢でもまだまだ寿命まで時間はある。

 それまでせいぜい面白おかしく楽しんで、おいしいものを食べながら頑張るだけだ。

 

 ……それはさすがに”のうてんき”すぎかな? 

 

*1
のんきでも、もうちょっと怒ってもいいのよ? 



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【番外編】ポケモン(ゲーム)がある世界と、のうてんきアルセウス

(アルセウス)自身がのうてんきになることだ……!


交流先がポケモン(ゲーム)のある世界で主人公がのうてんきアルセウス(若干アホ)だった場合。
ジャンルとしては異星間交流ものに近い。



 気が付いたら創造神(アルセウス)だった。いやマジで。

 目が覚めてナチュラルに猫みたいな伸びの仕方してからたっぷり5分は固まったね。

 何? 私これから宇宙創造すんの? と思ったけど、創造神(アルセウス)感覚的に宇宙はもう出来てるっぽい。

 今居る宇宙空間みたいなところと少し"ズレた"世界に空間と時間、反物質を司ってる例の(ポケモン)たちも居るっぽいし。

 創造神(アルセウス)アイを凝らして人間のいる星を探してみると、ポケモンでいっぱいの星が見つかる。

 さてさて、ポケモン世界はどんな様子なのかな~と覗いてみると、某地方で某大穴に某ライドポケモンが4人の子供を乗せて降りていくところが見えた。

 ……あ~、はい。私の出番もうないわ。終了、お疲れ様です! 

 このままポケモン世界を眺めているのもいいけど、急に創造神(アルセウス)になった私としては、前世の世界が気になる。

 うしっ、と気合を入れた私は創造神(アルセウス)フィーリングに任せて前世の世界へ向けて旅立った。

 途中、何枚か世界の壁を突き抜けたような気がするのは気にしないものとする*1

 

 前世の世界の地球は相変わらず青かった。

 っていうか、創造神(アルセウス)ボディは宇宙空間へっちゃらなのねと今更ながらに思う。

 さて降りようか、と思ったところで猛スピードで近づく物を感じた。

 え? 隕石? デッッッッカ! 危ないなぁ、とりあえず"さばきのつぶて"をくらえ!! 

 

 ……幸い、ポケモン世界と違って破壊した隕石の中から宇宙人(デオキシス)みたいなのが出てくる展開は無く、無事に隕石は粉々になった。

 "わざ"を使ってみて分かったけど、私の中にプレート全部あるし、そもそもこの身体の種族値とか分身出力じゃないんじゃない? 割と簡単にデカい隕石砕けたんだけど。

 まあいいや、強くて困る事なんてそうないだろうし。さー降りるかー! 

 

 

 

 

 

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 地球に迫る巨大隕石。

 進行ルートが想定のままなら人類の破滅は避けられないという最悪の予想。

 大いなる脅威の前に人類はようやく結束し、持ちうる限りの兵器を用いて進路を逸らそうと努力した。

 しかし、足りなかった。

 文明を何十回と破滅させる量があった兵器ですら、隕石の進路を変えるには至らなかった。

 直撃を免れる最終防衛ラインを越えられ、もはや人類は来るべき終わりを受け入れるしかないように思われた。

 

 だが、絶望の象徴であった隕石は、あまりにもあっけなく砕かれた。

 宇宙空間に現れた謎の存在の発した攻撃によって。

 それが完全な未知の存在であったなら、宇宙人か、どこかの国の秘密兵器か、はたまた神の降臨か意見が分かれていたことだろう。

 だが、()()の姿があまりにも似ていたため、あるゲームを嗜む者たちの心に浮かぶのは一つだった。

 

 

『アルセウスじゃん』

 

 

 

 

 

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 地球に降りてきた私は、突然めっちゃ囲まれて困惑した。

 皆号泣しながら感謝してくれるんだけど、私には何が何やら……

 身の丈3m越えだから怖がられてもおかしくないんだけど、子供に至っては目をキラキラさせて脚をペタペタ触ってくる。こそばゆい。

 囲まれすぎて動くに動けないでいると、自衛隊っぽい人たちがきてなんとか人の群れから解放された。

 それからは怒涛の展開で……政治家の偉い人と会って、なんか気づいたら別の世界でポケモンになってこっちの世界に跳んできた話をして、その日のうちに特別住民票まで用意してもらえた。

 晩餐会的なものにもお呼ばれして、ポケモンになったけど味覚は人間っぽいなと感じてみたり。精神が人間だから無意識に味覚を人間に近づけてるのかな? 四足歩行だから犬食いしかできないけど。

 まあそんな感じで数日間お世話になっていたんだけど、さすがにこのままお世話になりっぱなしは精神的によくない。ぐうたらになっちゃう。

 かといって私はポケモンだし別世界出身だからどっちの世界のお金も持ってない。

 ここで私、閃きました! ポケモン世界のものを拾ってきて、換金してもらえばいいのではないかと! 

 "困ったときは周りを見て、落ちているものを使ってもいい" サワロ先生、貴方の教えのおかげです……*2

 思い立ったが吉日なので、"ちょっと稼いできます"と言伝してポケモン世界にワープ! 待っててください、適当になんかいい感じのどうぐ拾ってくるんで! 

 

 

 

 

 

 

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 創作の中のキャラクターが現実に飛び出して、世界の危機を救った。

 今時こんな冗談では笑いなんて取れないし、現実ならなおさら笑えない。

 日本政府はなんとか友好的に接触し、監視下に置くことに成功したが、その圧倒的な戦力のわりに緩すぎる一般人の思考回路をした存在を扱いかねていた。

 同盟国は日本が開発した変態的な生物兵器じゃないかと疑ってくるし、隣国は今は静かなものだが腹に一物を抱えているのは間違いない。

 そんな中、問題児(アルセウス)は"散歩行ってきます!"くらいの気軽さで監視下から消失、本人(本ポケモン?)の言なら家賃を稼いできますとのこと。

 状況が分かっているのか……! 分かってないんだろうなぁ……

 総理大臣の苦労は絶えない。

 

 

 

 

 

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 日本での生活費を稼ぐべく、その辺の森や草原できずぐすりやマヒなおし、どくけしなんかを拾っていたらめっちゃ囲まれました。またですか。

 なんでも彼らはポケモンレンジャーで、強大な未確認ポケモンの噂を聞いて出動してきたのだとか。

 強大な未確認ポケモン(アルセウス)かー、ナンノコトカナー? ……はい、すいません。

 既存のポケモンの縄張りとかガン無視でどうぐを探してたから、いろいろと影響が出ちゃったみたいね。

 一応、話が通じるし悪気はないからとお目付け役一人を残して帰っていったけど、あんまり派手に動いて迷惑かけないようにしないと……

 お目付け役のポケモンレンジャーの"ジャッキー"は雑談が上手でいかにも二枚目って感じ。

 "なんならレンジャーユニオンで道具を用意するが"とも言われたけれど、家賃を稼ぐのに他から恵んでもらってちゃ世話ないし。

 

 その時、私の脳裏に電流走る……! 

 

 ポケモン世界で落とし物を拾って地球で換金したら、余剰分で珍しいものを持ち込んでこっちで換金、そのお金で仕入れれば循環しちゃうのでは? 

 ふふーん、永久機関が完成しちゃいましたね~! これはノーベル賞もののアイデアでは??? 

 ジャッキーさん、次来るときは珍しいもの持ってくるので、換金の手配よろしくお願いします! じゃ、また! 

 

 

 

*1
パルキア激おこ案件

*2
ワガハイ、困惑



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【番外編】ポケモンが馴染んだころの掲示板

 

【てだすけ】仕事を手伝ってくれるポケモンたちへの感謝を挙げてけ【助かる】

 

 

1:名無しの社会人

在宅ワーカーワイ、プラスルとマイナンの応援に癒される・・・いつもありがと・・・

 

2:名無しの社会人

>>1

初っ端から仕事なんも手伝ってもらってないのワロタww

 

3:名無しの社会人

>>1

それはただのポケモンセラピーなのよ

 

4:名無しの社会人

この新生活シーズン、引っ越し業界はゴーリキーさんに足を向けて寝られん

 

6:名無しの社会人

流通業界も同じだな。リフトいらずの腕力には憧れざるを得ない

よっ、肩に重機載せてんのかい!

 

8:名無しの社会人

ポケモンもいろんな業界に進出してるもんな

恩恵受けられないとこある?農業とか?

 

9:名無しの社会人

海外の大規模農場とかならまだしも、中小規模の農家はポケモン利用の農業多いぞ

地面ポケモンの耕耘とか、一部ポケモンによる小規模の天候変更とか

 

12:名無しの社会人

機械農業派でもギアル動力とかでポケモンを利用していることはあるし

なによりどこも草ポケモン由来肥料使ってないとこないしな

 

14:名無しの社会人

出たな、化学肥料より謎に効き目のある有機肥料・・・

 

16:名無しの社会人

使いすぎると野生の草ポケモンの出現率が増えるので申告制にされてるやーつ

 

19:名無しの社会人

天候変更の申請も併せて大きな農家に事務方がある理由

 

20:名無しの社会人

無申請でころころ天候を変えて許されるのはバトル会場くらいだから・・・

 

23:名無しの社会人

ワイ、バトル会場付属のポケモン治療施設勤務。手当を拒否するポケモンも居るので同僚のポケモンにはいつも助けてもらってます

 

24:名無しの社会人

ポケモンにはポケモンをぶつけんだよ!

 

25:名無しの社会人

>>23

その同僚って?ラッキー?タブンネ?

 

26:名無しの社会人

>>25

キテルグマ

 

27:名無しの社会人

 

29:名無しの社会人

医療の現場に真に必要なのは慈愛の心よりパワーなんだよ

 

31:名無しの社会人

わかる。介護現場で働いてるが、カイリキーくんの四腕がっちりホールドはすごい

あの安定感、そして紳士な態度。惚れるぜ

 

32:名無しの社会人

ポケモンプロレスファンとしてはカイリキーバスターの印象が強すぎる

 

35:名無しの社会人

きあいだめによるきゅうしょで1.5倍!タイプ一致で1.5倍!やけどを受けたことによるこんじょうの1.5倍でお前を超える1200万パワーだ!

 

38:名無しの社会人

なお「ちきゅうなげ」である

 

40:名無しの社会人

ショービジネスでも成功してるよなポケモン

 

43:名無しの社会人

第一回ポケモンマスター決定戦で有名アイドルやタレントがイーブイのトレーナーになったし

いまや個々で違う進化をした通称ブイズ

 

45:名無しの社会人

大道芸人としては一緒にジャグリングとか以心伝心でできるパートナーのポケモンには助かってる

だが実際に不可視の壁を作るのはパントマイマーとしては邪道だからやめて欲しい・・・

 

47:名無しの社会人

うちは服飾デザインの仕事をやってるけど、実際にパパっと仮縫いできちゃうハハコモリに大助かり!

 

50:名無しの社会人

??? コウモリが裁縫?

 

51:名無しの社会人

>>50

それはココロモリなんよ

 

53:名無しの社会人

ポケモンの名前間違って話が通じないのあるある

 

56:名無しの社会人

プログラマーワイ、ポケモンが来てから仕事内容がだいぶ変わったけど前より充実してる

サンキューポリゴン!

 

58:名無しの社会人

IT土方と呼ばれた界隈は相当変わったろうなぁ・・・

 

61:名無しの社会人

>>56

実務経験者よりポリゴントレーナーの方が歓迎されるってマ?

 

63:名無しの社会人

>>61

マ。ポリゴンが会社に来てから単純なコードを書くのはほぼ一発だから

代わりに全体の繋がりとかそういう応用部分が人間の仕事よ

 

64:名無しの社会人

先端研究所ではポリゴンを進化させるためのアップデートプログラムとかを開発していると聞くな

 

65:名無しの社会人

応用もポリゴンができるようになったら君は何をするんだい?(つぶらなひとみ)

 

68:名無しの社会人

その時はポリゴンのトレーナー免許とるわ

 

71:名無しの社会人

勝てない勝負はしない。天才じゃったか・・・

 

74:名無しの社会人

いつも漁に出てくれるブイゼルくんありがとう!

あとここの趣旨からは外れるけど、この漁法を考えてくれた漁師さんにもありがとう!

おかげで廃業せずに済みました

 

77:名無しの社会人

ああ・・・・・・

 

79:名無しの社会人

あの伝説の男か・・・・・・

 

82:名無しの社会人

当時はまさかこの漁法がスタンダードになるとは誰にも予想できなかったろう

 

84:名無しの社会人

今あの人何してんの?

 

87:名無しの社会人

通常の漁と共に新たな漁法を開発してるとかなんとか

 

88:名無しの社会人

政府ともつながりのある文字通り第一人者やぞ

 

91:名無しの社会人

現在の最新漁法は鵜飼いの手法にインスパイアされた”ホエルオー漁法”だとか

 

92:名無しの社会人

ええ・・・

 

95:名無しの社会人

食べ物と認識してないものを口に含んで吐き出すんだから、相当な訓練と信頼関係がいるそうだ

 

96:名無しの社会人

(漁場を)荒らされたら荒らし返す、倍返しだ!

 

99:名無しの社会人

倍どころじゃないんですが(白目)

 

102:名無しの社会人

もうポケモンの可愛さに感謝する方がまともに見えてくるわ・・・

 

 




・ホエルオー漁法
魚群をホエルオーが丸呑みにして、あとから吐き出させる漁法。巻き込まれたポケモンは補食されたと判断し縮小化する。
ホエルオーの負担と捕獲難度から相当ハードルが高いが、効率はいい。



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【番外編】のうてんきミュウツーとハロウィン対策

 どーも、ミュウツーです。

 夏の盛りも過ぎ、徐々に涼しくなりつつある中で私を加えた政府のポケモン対策班が会議室にて対応策を議論していた。

 議論しているのはゴーストポケモン対策。

 ゲームのポケモン図鑑ではかなりヤバめな説明の多いタイプのポケモンたちだが、今のところ致命的な大事件には至っていない。

 しかし夏の、いわゆる"お盆"の時期に普段は夕方~夜中くらいしか見かけないゴーストポケモンが昼夜問わず目撃される事態を受けて、彼らポケモン対策班は対応に紛糾。

 彼らの滅私の努力のおかげもあり、"お盆ゴーストポケモン大量発生事案"は事件性を持つことなく終了した。

 ……いやー、あれだけのゴーストポケモンが一体どこから現れたのやら。普段は日が暮れてから偶に見かけたり、曰くつきの廃墟で目撃例があるくらいなのに。

 まあお盆の時のことはもう過去の事だから、来年にどうするかまではまだ余裕がある。

 問題は予想される喫緊に迫ったゴーストポケモンが大量発生するかもしれない日…………そう、ハロウィンである。

 お盆にあれだけゴーストポケモンが現れたのだ、この調子だとハロウィンにも彼らは現れかねない。

 その対策を話し合うためにポケモン対策班は二名のオブザーバーを加えて対策会議を開いているわけだ。

 オブザーバーのうち一名はもちろん私。ゴーストポケモンの習性やわざ傾向、もしもの時の武力行使のための意識合わせも兼ねている。

 もう一人は民間から起用された珍しいゴーストタイプポケモンのトレーナー。

 霊能力者として仕事をしているわけではないが、寺生まれで自称霊感が強め。ゴーストタイプポケモンを三体も手持ちに加えている実践派としてここに呼ばれている。

 ゴーストタイプポケモンの捕獲については許可を与えるかかなり議論があったらしいが、対応できる人材は必要だからと特別に認可が下りたらしい。

 悪用・誹謗中傷などを避けるために実名は伏せられていて私も知らないが、とりあえず仮名でTさんと呼んでいる。

 もしもの時は自衛隊から選抜されたあくタイプポケモン部隊と私、寺生まれのTさんで対応することになるけど、本当に大丈夫かな……

 

 

 

 

 

 ▼▲▼

 

 

 

 

 

 ハロウィン当日。

 懸念された毒性を持つゴース系統のポケモンたちはあまり目撃されず、どこから来たのかバケッチャたちが圧倒的に多かった。

 バケッチャたちは陽気にハロウィンに参加して、人間と諍いを起こすことなく思ったより平穏で肩透かしな感はあったけど、何もないのが一番だよね。

 むしろハロウィンで浮かれて大騒ぎを起こそうとした若者たちに特大サイズのバケッチャやパンプジンがこわいかおで凄む場面もあり、平年より穏やかだったのかもしれない。

 一度緊急出動した寺生まれのTさんチームに所属していた自衛隊員の方から聞いた話だと、Tさんが隠れたゴーストポケモンをみやぶってきあいだまみたいなので倒したとか……Tさんのポケモンがってことだよね? 

 まあきっとシャドーボールかなにかを見間違えたんでしょ。それにしても自称霊感強めというだけはあるね、寺生まれってスゴイ……

 事前にあれだけ議論したけど、実際当日になれば気を揉んだほどの事はなかったね。案ずるより産むが易しってことなのかも。

 今回のゴーストタイプ案件については各国と情報共有をもって各地のあの世関連のイベントで同じことが起きた時のための対策になるらしい。

 この国以外でも応用が利くといいね。

 

 

 

 余談だけど、海外のあの世関連のイベントである11月の「死者の日」では、なんか赤いワニ型ポケモンが現れて歌いだし各地で街角セッションが行われたらしい。

 ご当地色が強すぎて参考にならなかったかぁ……



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【番外編】のうてんきミュウツーと伝説ポケモンたち

仕方なかったけど、伝説ポケモンにほとんど触れてなかったなぁ、と思い書きました。
多分この世界にシリアスはありません。


 春が訪れ、桜の花が咲き誇るころ。とある桜が咲き乱れる土地の一画が政府によって貸し切られ、世界各地から規格外の力を感じさせるポケモンたちが集まった。

 集まりを主催するミュウツーを首座として、この世界に現れたポケモンの中でも尋常ではない実力者たちが集結し……

 

『それでは、今年の伝説ポケモン花見会を始める!』

 

 ……花見をしていた。

 

 

 

 

 

 いやー、初めて伝説ポケモンと対面したのはレックウザだったけど、私と同じような境遇と知って驚いたものだ。

 いきなりレックウザになってしまって大変だったのではないかと思ったが、本人はとてもまじめで『隕石が来たら任せろー!』と普段はオゾン層を回遊しながら地表の風景を眺めて過ごしている。

 この出会いから分かったのだけれど、この世界にいる伝説ポケモンのほとんどは私と同じ境遇で、人間とコミュニケーションが取りづらいので悪影響を与えないようひっそりと暮らしていたらしい。

 エスパータイプでテレパシーに自信がある私を間に挟むことで人間社会と関わりを持つこともできるようになり、年に一度、桜の花見の席で一堂に顔を合わせる気の良い者たちだ。

 

『む、この会社の炎タイプ用ポケモンフーズはまた美味しくなったな。リピしよ』

 

『あ"あ"あ"ー、久しぶりに吸収する天然ものじゃない電気キクわー』

 

 ポケモンフーズと電気をバカバカ食ってるのはフリーザー以外のカントー三鳥組。フリーザーはキュレムと一緒に世界の海水温低下活動で予定が合わなかったので今年は欠席だ。

 ファイヤーはやたら目つきが鋭くて怖く見えるけど、わりとおっとりした常識人……常識ポケモン? うっかりやで発電所から出禁を食らっているサンダーとは大違いである。

 

『また今年も桜が綺麗に咲いてよかったですねぇ』

 

『ええ、今日を晴れにして正解でした』

 

 のんびり話をしているのはルギアとホウオウのジョウト伝説組。この2匹は元だった人格が高齢だったせいか、ひかえめ・おだやかなみんなのおじいちゃんおばあちゃんみたいなポジションだ。

 ルギアは普段は深海調査の協力を、ホウオウは宮内庁でお世話になっている。

 

『お、晴れにするの? 任せときな!』

 

『いや濡れ桜もいいでしょ! 雨にしよ!』

 

『やめんか!』

 

 気軽に天変地異級の天候変化をかまそうとするグラードンとカイオーガにツッコミを入れるレックウザ。豪雨や台風の強制中和に出張るグラードンと乾燥地帯に雨を降らせるカイオーガは普段滅多に顔を合わせないので、ここぞとばかりに絡んでいる。2匹の性格もやんちゃでわんぱく、まじめなレックウザの苦労が偲ばれる。

 

『この世界の時間・空間は私たち無しでもなんとかなるんだからさあ、私たち仕事しなくてよくない?』

 

『分かる』

 

 不穏な話をするのはシンオウ伝説組。普段はそれぞれの場所で時間と空間が正常になっているのを見守っているが、性格がせっかちときまぐれという致命的に役割と嚙み合ってないので頻繁にサボろうとする問題児たちだ。

 なお、誘ってはいるがギラティナはおくびょうなので一度もやぶれたせかいから出てこないひきこもりである。

 

『やはり理想の未来を目指すには、これからの我々の動きが重要となるのではないか?』

 

『しかし本質的な部分、真実の未来をないがしろにすることはできないだろう』

 

 なんか意識高い話をしているのはイッシュ伝説組。れいせいなレシラムとゆうかんなゼクロムはいつもなんか難しい話をしているが、具体的な行動に移しているところは見たことないな。

 その点でいえば世界中で活動しているすなおなキュレムの方が活動的かもしれない。

 

『乗り心地わっる。もうちょっとなんとかならん?』

 

『いや、お前俺から降りたら接地面から生命エネルギー吸い上げるだろ。我慢しろ』

 

『…………桜枯らしたらブッ飛ばすぞ』

 

 ノリは軽いが一番危険なのがカロス伝説組……というかイベルタル。ゼルネアスの背に留まってない限り、接触部から生命エネルギーを無意識に吸収しだすので常にセットで行動している。あれで意外にさみしがりだから、がんばりやなゼルネアスと一緒でも苦じゃないようだけど。

 まあ何かあっても、しんちょうなジガルデ(パーフェクトフォルム)が傍で見ているので安心だが。

 

『Zzz……』

 

 寝ているのはほしぐもちゃん……ではなくコスモウム。パルキアが頑張ってウルトラホールが開くのを防いでいるのでエネルギー不足でもっぱら寝ている。まあ起きてもなまいきな煽り発言を連発して周りを挑発するので寝かせておいた方がいいだろう。

 

 

『あー早く家に帰ってあの子に会いてぇ~。なあ弟?』

 

『同意だ姉者、なんなら一緒に来たかったぜ』

 

『もうやだこの姉弟……ヨ、もう知らん。飲むぞ!』

 

 こいつらはガラル伝説組。ザシアンとザマゼンタの姉弟は同じ牧場で暮らしていて、牧場の一人娘である女の子にメロメロである。このずぶといロリコンどもめ……

 一応お目付け役をおとなしいバドレックスが務めてくれているが……ブリザポスとレイスポスは牧場でお留守番なので手綱が緩んでいるようだ。

 あときのみジュースは飲んでもいいが、貴重なエスパー枠なんだからテレパシー中継とかの仕事はしてほしい。

 

 結構な数の伝説ポケモンがこの集まりに参加してきているが、まだまだ会っていない伝説ポケモンもいる。

 彼らも気の良い奴らだと良いのだが……

 そんなことを考えながら咲き誇る桜を見つつきのみをかじると、その空間が裂けてどこかで見た顔がにょっきり。

 

『ジャッキー! この地球産の道具はどうだ? 高く売れそうだr……』

 

 裂けた空間から顔をのぞかせる、やたらノリの軽い創造神(アルセウス)

 

『『『…………』』』

 

『…………すみません、間違いました』

 

 しゅぽんっと創造神(アルセウス)は顔を引っ込めて、裂けた空間も元に戻って何もなかったかのように桜の花びらを風が運ぶ。

 どうやら、のうてんきなアルセウスのいる次元もあるらしい。




・のうてんきミュウツー
花見主催者。同じ境遇のポケモンたちの交流の場として気楽に催しているが、開催のために毎回政府の偉い人が死にそうなくらい頑張っていることを知らない。

・カント―三鳥
わりと気ままに暮らしている。ファイヤーとフリーザーは火力発電や海水温低下活動など大きなプロジェクトに招かれることもあるが、サンダーは過去の実績から呼ばれないので、もっぱら天候の悪いところをフラフラして地表に落ちそうな雷をつまみ食いしている。

・ジョウト伝説組
優しい祖父母枠。ルギアはその潜水適性と研究者と意思疎通できるエスパー複合なため、各国合同の深海調査に協力。ホウオウはめでたげな見た目から様々な式典に出席している。三犬は生み出せるが特にその気はない。

・ホウエン伝説組
グラードンとカイオーガは精神年齢最年少組。ふざけがちでレックウザによくシメられている。ゲンシカイキ可能だが、すると普段優しいホウオウがわりとガチで怒るのでやらない。

・シンオウ伝説組
せっかちなディアルガときまぐれなパルキアという役割が破綻したコンビだが、一応最低限の仕事はする。おくびょうなギラティナはポケモン溢れる通常世界に出てこないが、2匹とは仲良し。

・イッシュ伝説組
意識が高く思考を巡らすがなかなか行動に移さない2匹。キュレムは考えるよりまず動いてみるタイプ。合体可能だが、主導権がキュレム側にあるのでめったにしない。

・カロス伝説組
傍迷惑な能力を持つイベルタルは相方とニコイチ。万一のためにジガルデが常にスタンバっているが、パーフェクトフォルムである必要は多分ない。

・アローラ伝説枠
エネルギーが足りないのでほとんど寝ている。起きると『こんにちは、にらみつけるさん^^』『デカくて赤いサンドさんチーッス^^』『パルキアのバカヤロー^^』とちょうはつを連打するので寝かせておくのが正解である。

・ガラル伝説組
全員同じ牧場で世話になっている珍しいやつら。見た目のせいでどんなにスキンシップをしても許されると思っているのでバドレックスは非常に苦労している。
たびたび度が過ぎて愛馬と合体した豊穣の王に轢きつぶされる。



・のうてんきアルセウス
日常的に世界の壁を壊してるせいで出る場所を間違えたやつ。
この後、自分の世界のパルキアとギラティナにこってり絞られた。


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