俺のヒーローアカデミア エネルギッシュ! (すぱーくしーど)
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序章
1話


ヒロアカのオリ主作品となります。

基本的に、主人公目線での物語進行になります。




 

 今の社会を一言で表すなら、ほとんどの人がこう答える。「個性社会」だと。そして、個性社会を象徴するものとして挙げるものはヒーローだ。

 

 ヒーローはいい。正義でカッコいいからね。その中でも特にすんごいのが、オールマイトだ。

 

 No.1ヒーロー、圧倒的パワーでヴィランを蹴散らす。人を助け、悪を倒す。オールマイト含め、そんなヒーローに俺は、この瞬間も憧れている。

 

 

 

「お前たち、中学卒業後の進路希望表は書いたか?今日の夕方ホームルームまでに提出だからな」

「はーい」

 

 

 俺は、このきさらぎ第3中学校を卒業したら、あの名門雄英高校を第一志望として、勉強と個性の訓練(大々的に個性は使えないので、こっそりと)に明け暮れている。

 

 俺の個性はエナジーだ。この個性は、限界がどの程度かにもよるが、中々使い勝手が良い個性だと自負している。自慢じゃないけどね。

 

 エネルギーを纏う、エネルギー弾として放つなどなど。どう?悪くないでしょ。

 

 エネルギーを纏えば、身体能力が上がる。流石にオールマイト並になるのは、無理かもだけど、もっと訓練すれば、そこに近づけるんじゃないかなと思う。近づければいいな。

 

 エネルギー弾については、ド○ゴンボールみたいな感じを想像してほしい。気弾みたいなね。いつかは、かめ○め波みたいなの撃てればいいなって考えてる。でも、素早いヴィランには当たらないかも。

 

 目標として考えているのは2つ。1つはエネルギーを纏い空を飛ぶことだ。ヒーローは速ければ速いほどいい。だって速ければ救助もヴィラン退治も危険性が少なく済む。

 

 2つ目は、エネルギー譲渡だ。エネルギーを纏えば身体能力が上がる、これは、自分以外にも当てはまることが実は分かっている。マラソン大会終わりに疲れている友人にこっそり、エネルギーを送る感じでやってみたら上手くいった。ごく少量で試してみたため、体力が少し回復したぐらいだったけど、当の本人はびっくりしてたのを覚えている。

 

 それに、これは予想だけど、エネルギー譲渡は、個性も一時的に向上できるような気がしている。もし、そうなれば、副作用などなければ、ヒーローから引っ張りだこ間違いなしだ。

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、入試当日になった。実物の雄英高校が目前にある。やっぱり大きい、さすが名門だ。

 

 この雄英高校で、俺はヒーローになってみせる!

 

 

 

 

 まずは、雄英高校に受からないとだけどね。倍率は300。難関名門校は伊達じゃない。いや、本当に300ってなに?

 

 

 




よろしくお願いします。

主人公の見た目は、リボーンの沢田綱吉を黒髪にしたイメージです。

そして、ツナをヒロアカの画風にして想像してみてください!



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入試編
2話


 

 雄英高校入試の筆記試験が終わった。結構難しかったけど、合格ラインには到達しているんじゃないかと思う。後で自己採点しておこう。

 

 筆記も大事だけど、名門雄英高校には、実技が大切だ。すごい規模で実技試験があるみたいだけど、詳細はこれから説明される。

 

 試験番号で指定されている席に座っていると、鳥の頭をした男の子が隣りに座った。一応、会釈をすると、相手も返してくれた。鳥の個性なのだろうか?

 

 そんなことを考えていたら、実技の説明が始まった。なんと、説明してくれるのはあのプレゼント·マイクだった!

 

 しかし、入試説明であのテンションはさすがに厳しいんじゃないかな。シーンってしてた。さすがに、この空気感でイエーイ!とはならない……。誰か1人ノッてくれたら、俺もノレてた。いや正直、緊張してノレなかったかも。

 

 

 

 

 

 

 説明がおわり、実技試験の場所まで移動することになった。さすが雄英、試験場所の広さが桁違いだ。ここだけで、普通の町ぐらいの大きさがあるんじゃないのか?

 

 実技試験前に、簡単な試験の説明がされている。そろそろ始まるんだなと緊張がさらに高まるのが分かった。周りの空気もピリついている。

 

「改めて説明をするぜ!この町を模した試験場のヴィランロボットを破壊するんだ!それぞれポイントが割り振られているから、そういうの考えて動けよ!?あと、0ポイントの奴もいるからな!?わかったら行って来い!!おい!何チンタラしてる!?もう試験は始まりだ!!実際のヒーロー達がよーいスタートで動くと思うか!?早くいけいけ!!」

 

 

 号令がなく、いきなり実技が開始されたことで、皆意表を突かれたのか、ザワつきながらのスタートだった。もちろん、俺もビックリした。

 

 

 最初から本気でいく。身体にエネルギーを纏い、身体能力を向上させて、走り出す。周りの人達から飛び出していき、ヴィランロボを探す。

 

 いた、あれだ。四本脚のロボ、2ptかな?とりあえず破壊しよう。エネルギーを重点的に腕に溜めて、脚の関節部分を殴り抜く。

 

 手応えはあった。あとは、エネルギー弾を何発か頭部にぶちこんで終了。これで2ptゲット、この調子でガンガン行こう。

 

 ふと閃いた。エネルギーを剣みたいに形成して、切ったりできるんじゃないか?次のロボットで実験しよう。

 

 

 

 

 

 

 試験が終了した。実験は成功し、斬り裂くというより、叩き切るみたいな感じではあったが、意外と上手くいった。

 

 また、あの鳥頭の子を試験会場で目撃した。そのとき、影?を使ってロボを攻撃していたので、影についての個性だろうか。中々強い個性だ。威力·射程共に申し分無かった。俺のエナジーに活かせそうだ。

 

 しかし、驚いたことが別にある。今日1番驚愕したかもしれない。オジャマヴィランロボット、0ポイントなのに、とんでもなくデカい奴が出てきたのだが、そいつを一撃で吹き飛ばしたやつがいたらしい。

 

 遠目で一度0ptロボを見たが、俺のエナジーでは、奴を倒すのは一苦労しそうだ。少なくとも一撃は非常に難しい、というか無理かも。エネルギー砲(まだ名前は決めてない)を使っても、ダメージを与える程度だと思う。地道に攻撃して倒すしか今は、思いつかない。

 

 

 ざっと10体そこらのロボットを破壊したけど、これで合格出来るだろうか?出来るといいな。そんなことを考えていると、帰りの電車の中では爆睡していた。

 




入試編おしまい!はやい!


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3話

 

 

 合否結果の通知書類が届いた。両親が俺より緊張した様子で通知書類を持ってきた時は、少し笑ってしまったが、上手く誤魔化せただろうか。緊張しすぎて手足が少し震えてしまっていた。

 

 雄英高校、今の日本で知らない人はいないだろう。それぐらいの名門。現在のNo.1,2ヒーローが卒業した学校で、ヒーローを目指すなら、誰しもが一度は考える所だ。

 

 駄目だ。震えが止まらない。試験当日も緊張していたが、あれはアドレナリンが出てたのか、こんなに緊張はしていなかった。

 

 一度、机に座る。ゆっくり深呼吸をしよう。早く見たところで結果は変わらないんだ。せめて結果は落ち着いた状態で確認したい。

 

 息を吸って、吐く。このとき、鼻で吸い、口で吐くのがポイントだ。息を吐くとき、鼻以上の脱力感を覚えるだろう。

 

 覚悟を決めた。あぁ、決めた。後悔も反省もない。いざ封を切る……!

 

 

 

「わーたーしーがー!投影された!!」

「うわぁ!!オールマイト!?」

「そう!オールマイトだよ!といっても、動画を投影してるだけだから、会話はできないけどね!!多分、『うわぁ!!オールマイト!?』って感じで驚いてるんじゃないかな!?」

「……。」

「そう、この私オールマイトは、今年度から雄英高校で教鞭をとることになったんだ!教育の経験はないから、君たちと一緒の1年生って訳だね!あ、巻け?分かった分かった。じゃあ、本題に入ろう。絵音 流義哉君、試験の結果だが……。」

「なんで溜めるの?これ不合格なら結構えげつないよ。」

「おめでとう!!合格だ!!ようこそ、雄英高校へ!!ではまた4月に会おう!!」

「へ……?」

 

 

 おめでとう、合格だ?……。う、受かったぁぁ。おかしいな。喜んでいるけど、力が抜けて上手く喜べない。もっと叫んだりすることを考えていたんだけど……。

 

「ルギア、どうだった……?」

「あぁ、母さん。うん。」

「え……?嘘……。」

「受かった。」

「やったわね!!!お父さんにもメール入れとくわ!!今日の夕飯は豪勢になるよ!!」

「ありがとう。唐揚げが食べたいな。」

「まっかせなさい!とびっきり美味しいの作るよ!!」

「よろしくね。ありがとう。」

 

 嵐みたいに母さんが去っていった。人に伝えたことで、改めて実感が湧いてくる。受かったんだ!!あの雄英に!!

 

「やったぁぁぁぁぁ!!!」

 

 不思議と声が出ていた。これからのことを考える余裕はなくて。ただただこの瞬間に全力で喜んでいた。

 

 

 

 弟と父さんも帰ってきて、みんなで夕飯を食べた。この唐揚げの味を俺は一生忘れないだろう。父さんは大喜びして、弟は自分のことのように喜んでくれた。

 

 エネルギーの消費といつもの勉強も終わったから、ベッドに入る。今日はいい夢が見れそうだ。

 

 あれ?そういえば、オールマイトが雄英高校の先生になるの!?あのNo.1ヒーローが?俺の高校の先生になるのか……!早く4月にならないかな!

 

 興奮しすぎて、夜中の3時まで起きていた。全力でエネルギー弾を形成して、形を整えようとしたら、限界が来て意識を失った。

 

 




多分、今後もこんな感じで書いていくと思います。
もしかしたら、文章力が上手くなって今より格式を整えるかもしれません。
しかし、エネルギッシュの題の通りで、勢いのままこんな感じで書いていきたいと思っています。


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個性把握テスト編
4話


テンポよく行きたいですねぇ


 

 

 遂に4月、雄英高校に始めて生徒として登校している。電車に揺られ、これからの高校生活を想像しながら、楽しみと不安、ワクワクが感情に入り混じる。

 

 俺が進学したのはヒーロ科で、そのヒーロー科にはA組とB組の2つのクラスがあるようだ。俺は、A組に所属している。

 

 昨日も、エネルギーの総量を増やすため、限界までエネルギーを使った。しかし、最近は家で出来る個性訓練では、現在のエネルギー総量を使い切ることは出来なくなってきている。

 

 小学生の頃から訓練をしていて、最初は体の一部だけしかエネルギーを纏えなかったし、エネルギー弾を1発撃って限界だったのに、今では体全体に纏えて、エネルギー弾も、質にもよるけど、100発くらいは撃てるんじゃないだろうか?

 

 とにかく、雄英高校でヒーローとしてのイロハを学び、将来のために頑張ろう。あと、勉学も頑張らないとな。雄英といっても高校であることには変わらない。学生は勉強が仕事だ。

 

 

 

 

 そんなことを考えていたらいつの間にか寝てしまった。雄英高校の最寄り駅まで、残り二駅の所まで来ている。流石に入学初日に遅刻は不味い。入学式の最中に遅れてやってくるなんて、どこの不良漫画の主人公だろう。

 

 

 雄英高校が見えてきた。校門をくぐると、その壮大な大きさに改めて感動する。まだ、このスケールに慣れないようだ。

 

 登校している生徒達がちらほらいるが、その中に以前見かけた鳥頭の少年がいた。少し挨拶したいなと思って声を掛ける。

 

 

「おはよう、入試以来だね。君も雄英高校合格したんだね!一緒に頑張ろう!」

「あぁ、おはよう。そうか、あの時の……。そういえば、名前は?」

「俺の名前は絵音。エネ ルギアだよ。よろしくね。君の名前は?」

「俺は常闇。常闇踏陰(とこやみふみかげ)だ。これから、よろしく頼む。エネよ」

 

 話をしてみると、常闇も俺と一緒のヒーロー科A組所属になったらしい。雄英での初めての友人が出来たので、素直に嬉しい。

 

 常闇と一緒に、A組の教室までやってきた。扉が大きい。個性のあれこれを考えているのだろうか?軽く3mはある。

 

 教室には、ちらほらと人がいて、赤髪のツンツンヘアーの男の子や、髪型がボリューミーな女の子。眼鏡を掛けたキリッとした子に、耳たぶがイヤホンジャックになってる女の子。

 

 その他にも人がいるが、どの子も凄い個性的だった。流石雄英。個性が強いな。そう思っていると扉が開いた音がした。扉が開くと、つい見ちゃうんだよね。入ってきたのは、ツンツン、いや爆発みたいな髪型の男の子だ。

 

 そういえば、実技のとき爆発しながら空飛んでた子がいたな。この人だった気がする。見すぎてしまったからだろうか。彼が視線に気付き、こちらに向かってくる。

 

「おい!何ジロジロ見てやがる?何か付いてるか?」

「ごめんごめん、実技で凄い動きしてた人だと思ってね。それに、扉が開くとそっち見ちゃうんだよ」

「そうか。あんまジロジロ見んな」

 

 彼はそう言うと自分の席に座る。機嫌が悪いのだろうか?それとも常に不機嫌なのか。結構威圧を感じた。苦手な人もいるだろうなぁ、あの感じ。

 

 

 

 




人気投票1位の人と初コミュニケーションです!

本作の主人公と会話したとき、彼は少し喜びつつも当然だろ!という優越感と自負心を覚えてます。
あと、見下してた同級生の事を考え、少し不機嫌です。


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5話

バトル描写練習したいので、今後少しテンポ悪くなるかもしれません。
ご容赦……。


 

 

 教室に着いてから、常闇と少し話したり、机や椅子、教室を確認したりしていたらあっという間に時間が過ぎた。ほとんどの人が教室に到着したようだ。

 

 爆発頭の子は、悩ましげに何か考えているのだろうか。少し仏頂面をしている。足を机の上に乗せた状態でだ。肝が据わっているというか、何というか、大物になりそうだな。

 

 その様子を見た眼鏡の子が、足早に向かっていった。うわ、何か注意してる?

 

「学校の関係者!ひいては机の製作者に申し訳ないと思わないのか!?」

「あぁ!?知ったことかよ。つかてめー何中だよ?」

「聡明だが」

「聡明!?糞エリートじゃねぇか!ぶっ殺し甲斐があるぜ!」

「ころ……!?君酷いな。とてもヒーローを目指している者の言葉遣いとは思えない」

 

 あまりの口の悪さに驚いたのか、それとも新たに教室に入ってきた少年に用があったのか。会話を切り上げ、教室の扉近くまで向かっていった。

 

「すまない。ぼ、俺は君のことを見誤っていたよ。試験のシステムがどういったものか、君は知っていたんだね。謝罪させてくれ」

「え……。いや、あれはたまたまというか、何というか……」

 

 試験での知り合いだろうか。眼鏡の子も怖そうに見えたが、意外と良い人なのかもしれない。それに、あの子は……。なんだろう、特にこれというものがなさそう、あ!優しそうではある!

 

「そのもさもさは地味めの!?」

「あ!あのその、試験のあの直談判は本当に、ありがとうございました。そのおかげで合格出来たといっても……」

「直談判?なんで知ってん?」

「あ!いや!何でもないです……」

「入学式ってどんな感じかな!?担任の先生だれになるんだろ、緊張するよね!」

「お友達ごっこがしたいなら他所へ行け」

 

 青春の1ページを一言で真っ白へ変えた。その声は大きくないはずだったのに、何故かクラスへ響き渡っているような気がした。

 

「君たちは合理性に欠けるね。静かになるまで8秒掛かった。時間は有限なんだ」

「先生……なのかな?」

「ってことは、この人もプロヒーロー?」

「担任の相澤消太です。よろしく。早速だがこの体操服を着てグラウンドに行くぞ」

 

 癖が凄い人が担任になったなぁ。なんなんだこの人!?

 

 20分程で、皆グラウンドへ集合した。この体操服良いね。スマートで、見た目も良い。

 

 1-A生徒が集合したのを確認したのか、先生が説明を始めた。

 

「これから、個性把握テストを行う」

「「個性把握テスト!?」」

「入学式は?ガイダンスは!?」

「ヒーローになるんだったら、そんな悠長な行事に出る暇ないよ。雄英は自由な校風が売り文句。それは生徒だけじゃないってことだ」

 

 ……?

 

「ほら、中学の時あったろ?体力テスト、あれだよ。国は未だに昔の規格で測り続けてる。怠慢だよ。合理的じゃないんだ」

「体力テストならやったことあるけど……」

「なんで、今それを?」

「そうだな。おい、爆豪。中学のソフトボールの記録は?」

「67m」

「そうか、なら個性を使え。円から出なきゃ何でもいいから早よ、思いっ切りな」

「んじゃまぁ……死ねぇ!!!」

 

 ソフトボールが爆発で飛んでいった。爆風がこちらにも届いている程の勢いだ。間近でみるとなかなか凄い……。

 

 ボールが落ちる。先生が端末で記録を確認している。

 

「まず、自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段だ」

「なんだこれ!?すげー面白そう!」

「705mってマジかよ!」

「個性思いっきり使えるんだ、流石ヒーロー科!」

 

 ここなら……もっと個性を鍛えることが出来る!!

 

「やった!これなら個性訓練が思う存分できる!!」

「……、面白そう……か。ヒーローになるための3年間。そんな腹づもりで過ごす気かい?ならこうしよう。トータル成績最下位の者は見込みなしと判断。除籍処分だ」

 

 

 

 




適宜修整加えて行きます。


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6話

 

「「最下位は除籍処分〜!?」」

「ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」

 

 この先生、冗談で言ってる気がしないぞ!?本気なのか……?最下位は無いと思うが、この中の誰かがいきなり退学なんて……。いや、今は人の心配じゃないな、自分の心配をしなくては……。

 

「いや雄英高校といっても、いくらなんでもやりすぎです!」

「そうですよ!入学初日に……いや初日じゃなくても理不尽すぎる!!」

「確かに、君たちの言い分も一理ある。しかし、自然災害、大事故、そして(ヴィラン)……。ヒーローは理不尽を覆していくものだ。放課後マックで談笑したいならお生憎、雄英高校は3年間試練を与え続けるぞ。Plus Ultra(更に向こうへ)さ、全力で乗り越えて来い」

 

 分かった、分かってしまった。この先生、いや相澤先生は本気だ。理不尽と戦えと言っているんだ。ならやってやる、少し前から考えていた新技をここで使う!出し惜しみはなしだ!!

 

 まずは50m走からだ。俺の前でちらほらと速い記録が出てきている。飯田(眼鏡)が今の所ダントツトップだ。3秒か……。負けてられないな。

 

 今まではただ、エネルギーを纏ってた。それだけである程度身体能力は向上していたから。でも、これからは威力不足が否めない。爆豪はロボットを1発で爆破していたし、緑谷はお邪魔ロボットを一撃……。つまり、更に身体能力を向上させる。血液の流れや筋肉の動き、細やかな肉体動作にエネルギーを送る意識を……。

 

 これで、ただエネルギーを纏うより、身体能力は向上するはず……。今まで、意識もしてなかった所を意識的にやれば効率は更に高まるはずだ。

 

 目を瞑り、イメージする。エネルギーを体の内部へ。血流·筋肉の躍動を促進させる!

 

「次!絵音と尾白。はいスタート」

 

 行ける。スタートの号令とともに、全力で走り抜ける。今までより体が軽く感じた。あっという間にゴールへたどり着く。

 

「記録!4秒、5秒!」

 

 よし!4秒ジャスト!この新しいエネルギーの使い方……。名前付けたいな。よし、内部でエネルギーを使用するこのモードを、「ドライブ」と名付けよう。

 

 しかし、全力で4秒か……。本当に飯田は速いな。凄いな。素直に悔しい。

 

 

 それからも、順調に種目をこなしていった。全ての種目の中で、1つも1位を取れていないが、順位で考えれば全て半分以上にはなっている。確定だ。除籍はないな。

 

 今は、最後のハンドボール投げだ。爆豪が700m台を出したが、麗日という女の子が無限を叩き出した。ついでに俺は500mだった……。

 

 緑谷はあんまり成績が振るっていない。使いづらい個性なのだろう。一回目のときは先生と何か話していたし。

 

 緑谷が2回目のボールを投げた。記録は706mだった。負けた……。しかし、指が紫色で腫れている。本当に痛そうだ。少し、エネルギー譲渡を試してみよう。

 

 

 

 

「みんな、お疲れ様。じゃ、全員の成績をこのディスプレイで表示するぞ。あと、最下位除籍は嘘。合理的虚偽。やる気出ただろ?」

 

 

 俺の成績は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もう一話だけ続くんじゃ。


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7話

個性把握テストもおわりです!


 

 

 結果は4位だった。なんとも……。21人の内、4位はかなり高い順位だ。しかし、4か……。なんとも微妙な……。

 

 切り替えていこう。緑谷がソフトボール投げで指がとんでもないことになっていたため、付き添いで保健室へ共に向かった。

 

「緑谷の個性はすごいなぁ。かなりピーキーじゃないか?俺MAXでもお邪魔ロボット1発は厳しいよ。それにその指……。痛いだろ?」

「アハハ……。まだ力の制御が上手く効かないんだ。この個性だしあんまり試せなくて……。それに、付き添い来てくれてありがとう。エネ君だよね?個性はエナジー、エネルギーを駆使して様々な用途で使えるんだよね。非常に万能な個性だと思う。これから更に鍛えれば、万能の幅が広がるんじゃないかな。それこそ、空を飛んだりもできるかもしれないし、それを考えたら、他人に対してエネルギーを纏わせて飛ばすことが出来る可能性もあるのか……。ブツブツブツブツ」

「おーい、緑谷?どうしたー?」

 

 自分の世界?すごい早口で呟いている。俺の個性の話をしていたため、恐らくだが、俺の個性について、自分の見解等を考えているのだろうか?これは……。緑谷は、俺の個性について、俺以上に考えられている……。個性オタクなんだろうか?

 

「おい!緑谷!」

「っ!ごめん!エネ君、つい自分の世界に……」

「それは全然大丈夫なんだけどさ、いや、実は緑谷に付き添ったのには訳があるんだよ」

「へぇ、そうなんだね。どんな訳なの?」

「俺の個性エナジーなんだが、相手にエネルギーを譲渡する事も出来るんだよ。それで、保健室の先生は、治癒系の個性だと聞いているから、そういった話を聞きたくて……」

「エネルギーを譲渡すると、怪我を治癒するってこと!?回復系個性はかなり貴重だよ!?もしそうなら、ただでさえ万能な個性なのに、すごいね!!」

「あ、チョット待ってくれ。回復するかは分からないんだよ。ただ、他の人に譲渡出来ることと、譲渡した場合、体力がちょっと回復することは分かってるんだ。だから、緑谷。お前が良ければ、俺のエネルギーを受け取ってみてくれないか?」

「もちろん!!エネルギーを受け取ることで、体力が回復することが分かっていて、もし、怪我も治癒するってんなら、戦闘においてこれほど有用なことはないよ!それに、保健室には治癒系の個性の先生もいる!!うん!僕で良ければ喜んでエネルギーを受け取るよ!」

「ハハ、ありがとう緑谷。本当に凄いやつだよ。指パンパンに腫れてんのに(笑)」

「それを今から治してもらいに行くんじゃないか(笑)」

 

 

 しばらく談笑していると、すぐに保健室に着いた。

保健室に入ると、おばあちゃん先生が座っていた。

 

「失礼します、緑谷です。相澤先生からこれを……」

「失礼します、エネです。緑谷の付き添いで来ました。」

「はーい、分かったよ。早速、傷を見ようかねぇ。ありゃ、これまたこんな怪我して……。本当に個性が体に馴染んでないねぇ。じゃあ、治癒するよ。」

「先生!待ってください。実はカクカクシカジカ……」

「なるほど、エネルギーの個性で、それを他人へ渡す……。そうさね……。私の個性と相性がいいさね。もしものために、一応相澤先生を呼んでおこう。」

 

 しばらくすると、相澤先生がやってくる。

 

「お待たせしました。うちの生徒がなにかやらかしましたか!?」

「違うよ、少し治癒をするだけさ。ただ、少し特殊な方法でやるから、念の為、来てもらったんだよ。」

「なるほど、個性関係ですね」

「そうさね。早速だけど、やるよ。ほら早く怪我したところ出して。君は個性使う準備はいい?」

「「はい!お願いします!」」

「俺はいつでも問題ありません」

「それじゃあ、いくよ!」

 




もう少しだけ続くんじゃあ


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8話

 

 まず、俺がエネルギーを緑谷に渡す。今まで、エネルギー譲渡は非常に力を抑えた一回しかやったことがないが、今回は相澤先生とリカバリーガールがいるため、ある程度なら問題は無いと判断して、中々のエネルギーを譲渡する。

 

「緑谷、これがエネルギー譲渡だ。体調は大丈夫か?」

「これは……。すごいよ!エネ君!体力が湧き出てくるというか!指の痛みも軽減、何なら無痛って感じだ。これなら、戦闘中は痛みを抑えて、体力が回復?湧き出るこの感じを考えると個性もブツブツブツブツ」

「あ、リカバリーガール。治癒の方をよろしくお願いします。相澤先生も、もしもの時のために、準備をお願いします」

「分かっている」

「ほいさね。いくよ、チユー」

 

 いつ見ても、リカバリーガールの治癒は独特というかなんというか……。チューでチユーだ。つまり、チューで治癒している。この個性というのは本当、遊び心も感じるな。この世界にもし神がいるのなら、ユニークに違いない。

 

 怪我はすぐに治癒した。治癒が終わってからも、緑谷がしばらく無言なことに気づいて、心配になり声を掛ける。

 

「緑谷?大丈夫か?」

「……」

「相澤先生!何かマズかったでしょうか!?」

「いや、見ていたがマズイってことはなかった。それに、リカバリーガール。貴女も問題はないと判断したはず。そうですよね?」

「そうさね。私の個性は人の治癒力を活性化させるだけの個性。治癒するには体力が必要だから、普通はどっと疲れるはずなんだけどね。場合によっちゃ体力を持ってかれすぎて逆に死ぬなんてこともあるかもしれないね」

「死っ……!?」

「そんな不安にならなくても大丈夫さね。それに、もしかすると君の個性は私の治癒と相性が良いのかもしれないね」

「というと……」

 

 無言の緑谷が、フルフルと震え始めた。もしや、これはもうダメなのではないか。そう思ったとき、緑谷が非常に興奮した様子でこちらに振り向いた。

 

「すごい!すごいよ!エネ君!これは……。君から譲渡されたエネルギーで、僕の体力が上限以上になった感じがしたんだ。その後、治癒によって体力が持っていかれたような気はするんだけど、それでもそんなに疲れは覚えてないんだ。例えると、いつもは早起きじゃないんだけど、偶に早起きした朝に15分くらい散歩したイメージかな。ちょっと疲れはあるけど、どちらかというとスッキリ……。爽快感があるんだよ!それに、さっきの体の感じはもしかしたら個性にも何か影響があったかもしれない!A組の誰かに協力してもらって、このエネルギー譲渡をさらに検証した方がいいと思う!」

「なるほど。それは、今後ヒーロー社会において非常に重宝される可能性が高い。絵音、緑谷。俺が許可するから、お前たちの空いた時間で絵音の、エネルギー譲渡について検証を進めてくれ。もし、個性を使うなら、俺に言ってくれれば、個性が使用出来る場所の使用申請を出しておく。くれぐれも無許可で個性ぶっ放したりするなよ?特に緑谷。お前はまだ個性の制御が出来ていない様だからな。分かったか?」

「「はい!」」

 

 やっぱり、このエネルギー譲渡は……。想定以上だ。しかも、緑谷の話からすれば、痛みも軽減出来るらしい。まさか、いないだろうが、常に痛みと戦いながら生活している人がいれば、その人の生活をさらに豊かにできるだろう。それに、緑谷も言っていた個性への影響……。これを確かめるのには、誰の個性が良いか……。

 

「なー、みどりやー」

「なに?エネ君」

「明日からでもさっさく譲渡の検証したいんだけどさ、いいヤツいないかな?緑谷の個性は怪我しちゃうかもだからさ。」

「そうだよね……。ごめん……」

「いやいや、謝るなって!これからパワー制御していこうぜ〜。それにしても、あの力……間近でみて驚いたよ。なんというか、オールマイトぐらいのパワーだったんじゃね?」

「え!?お、オ、オールマイトのパワーだなんて、そ、そんな訳ないじゃないか〜!……。まだまだだと思う」

「そっか。お前って結構自分に対してストイックなのな。悪くないしカッコいいと思うけど、あんまり無茶すんなよ?」

「ありがと。エネ君」

 

 2人で話しながら校門を出ると、後ろから飯田が声を掛けてきた。

 

「緑谷君!君、怪我は大丈夫だったのかい!?それに、エネ君は付き添いか?」

「そうだよ」

「わ!飯田くん!うん、治ったよ。リカバリーガールとエネ君のおかげでね!」

「……?なぜそこでエネ君の名前が?」

 

 飯田の頭上にハテナマークが浮かんでいる様な気がしたため、説明をしようとした時、後ろからまた別の声が掛けられた。

 

「3人方〜?もしかして駅まで?待ってー!」

「君は∞女子」

「うららかさん……だよね?」

「そう!麗日お茶子です!えっと絵音流義哉くんと飯田天哉くんに緑谷…デクくん!だよね!!」

「デク!!?」

「あれ?テストの時爆豪って人がデクてめぇー!!って」

「あの……本名は出久(いずく)で……デクはかっちゃんがバカにして……」

「蔑称か」

「爆豪と知り合いなのか」

 

 緑谷と爆豪が昔馴染みであることが分かった。あの爆発の個性、エネルギー譲渡の検証に役立つような気がする。ぜひ協力してもらいたい所だ。

 

「えーそうなんだ!ごめん!」

「でもデクって頑張れ!!って感じで、なんか好きだ私。響きが」

「デクです」

「「緑谷(くん)!?」」

「浅いぞ!蔑称なんだろ?」

「まぁまぁ、いいじゃんいいじゃん」

「コペルニクス的転回……」

「コペ?」

 

 そんな感じで、初日は4人で帰った。さっそく友だちができたんじゃないだろうか。常闇に飯田、麗日に緑谷。これからも仲良く出来たらうれしい。

 

 

 

 

 

 後、緑谷は極端に女子慣れしてない。すごい分かる、素人でも見たら分かるよ。そんな感じの挙動だったもの。

 

 




個性把握テスト編終了です!


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屋内対人戦闘訓練編
9話


個性把握テストから1日が経った。昼休みが終わり、それまでは普通に英語や他の科目を授業として受けた。

 

 普通だった……。昨日の個性把握テストの衝撃で、普通の授業がビックリするぐらい普通に感じた……。

 

 しかし、お昼ごはんは非常に美味しかった。なんと、食堂にもプロヒーローが常勤しているらしく、毎日美味しいご飯が学食として提供されるのだ。これは嬉しい誤算だった。

 

 お腹も膨らみ、少し眠くなるような時間帯に、ヒーロー基礎学はやってくる。どのような授業をするのだろうか……。

 

「わーたーしーがー!!」

「来っ」

「普通にドアから来た!!!」

 

 高笑いしながら現れたのは、誰もが知っているNo.1ヒーロー、オールマイトその人だった。

 

「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地をつくるために様々な訓練を行う科目だ!!早速だが今日はこれ!!戦闘訓練!!!」

「戦闘……訓練!」

 

 ポージングしながらカードを前に掲げるオールマイト。カードには「BATTLE」の文字。

 

「そいつに伴って、こちら!入学前に送ってもらった個性届と要望に沿ってあつらえた……」

 

「「戦闘服(コスチューム)!!!おおお!!!」」

 

 おお、手元にコスチュームだ……。これはワクワクせざるをえない……!

 

「着替えたら順次グラウンドβ(ベータ)に集まるんだ!」

「「はーい!」」

 

 着替えが終わり、グラウンドへ出る。不思議とタイミングが重なり、ほぼ全員が横並びの状態となっていた。

 

「格好から入るってのも大切なことさ、少年少女!自覚しろ!!今日から自分は……ヒーローなのだと!!!さあ!始めようか有精卵ども!!戦闘訓練のお時間だ!!!」

 

 緑谷と麗日が話をしている。仲が良さそうでなによりだ。ロボットのようなコスチュームの生徒が手を挙げて質問をしている。声を聞くまで飯田だと分からなかった。カッチョいいコスチュームだぜ。

 

 先生が吹き出してる……。何か面白いことでもあったのだろうか?しかし、俺からは何も分からなかった。

 

「先生、ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか?」

「いいや!もう二歩先へ踏み込む!屋内での対人戦闘訓練さ!!ヴィラン退治は主に屋外で見られるが、統計だと、屋内のほうが凶悪なヴィランの出現率は高いんだ」

 

 知らなかった……。結構外でバチバチやり合うイメージが強かったから、屋内のほうが凶悪なのか……。

 

「監禁、裏商売……。このヒーロー飽和社会において、真に賢しいヴィランは屋内にひそむ!!君らにはこれからヴィラン組とヒーロー組に分かれて2対2の屋内戦を行ってもらう!」

「基礎訓練もなしに?」

「その基礎を知るためさ!」

「いいかい!?状況設定は核兵器を保有するヴィランが建物にいて、ヒーロー組はその核兵器を処理するのが目的だ!ヴィラン組は制限時間を過ぎるか、ヒーロー側を捕縛しても勝利。反対にヒーローは核兵器の回収か、ヴィランの捕縛が勝利条件だ!そして、肝心のチームはクジだ!」

「適当なのですか!?」

「でも、プロヒーローは任務によってほか事務所のヒーローと急造チームを組むこともあるから……」

「なるほど!先を見据えた取組……。感服しました!」

「じゃあ!チームはこうだ!!」

 

 俺は……。尾白と透明の……、葉隠とのチームCだ。クラスは21人だから2人組が9個と3人組が1つ出来ることになる。3人組の俺たちが有利な気がするが、どうするのだろうか?

 

「早速行くぞ!まずは、ヒーローはAコンビ!ヴィラン側はDコンビだ!ヴィランチームは先に準備を!ヒーローは5分後に潜入開始だ!」

 

 AとDか……。Aは緑谷、麗日、で、Dは爆豪、飯田か……。

 

 ヴィランが準備開始してから、5分が経過した……。さっそく屋内対人戦闘訓練がスタートする……!

 

 

 

 




入りました!屋内対人対戦編です!


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10話

 

 

 第一戦は激戦であった。爆豪と緑谷の決闘の様な形で、屋内対人戦闘訓練の要素は、麗日と飯田の核防衛戦で少しみられたという印象だ。

 

 とにかく、緑谷はまた大怪我を負ったが訓練ではなんとか辛勝することが出来ていた。しかし、保健室に運ばれて行ったので、また譲渡が必要かな。しかし、試合は次だから、準備しないといけない。

 

 相手は障子、そして個性把握テストで2位だった轟だ。これは、全力で戦わなくてはいけない、そうでないと勝てない相手だと分かる。ちょうど個性把握テストで1位だった八百万の個性でインスピレーションが湧いている。色々と試せそうだ。

 

 

 緑谷と爆豪によって建物が半壊したため、別の建物に移り準備を始める。俺達はヴィラン側で、障子·轟ペアはヒーロー側だ。あの氷の個性は厄介だ。範囲や威力が未知数のため、最悪建物ごと凍らされる可能性もある。そのため、この準備時間でどれだけ対策出来るかが鍵になる。

 

「なぁ、お前ら少しいいか?」

「あぁ、大丈夫だけど」

「もちろーん!大丈夫よ!」

 

 

 

 第二戦開始……!葉隠と尾白には核を守ってもらい、俺は外へ飛び出す。挟み撃ちの形を狙うが、上手く行くだろうか?いや、上手くいくようにする!

 

 外へ飛び出した刹那、建物が氷漬けとなった。余りの範囲と威力に少し驚くが、もしもの為の策も考えている。氷の範囲にもよるが、恐らくなんとかなるはずだ。

 

 氷をエネルギーパンチ(エネルギーを纏ったパンチ)で叩き割り、屋内へ侵入する。

 

 

「二人共!動けるか!?」

「あぁ、なんとか!」

「私も〜、でも寒い〜……」

「奴らの姿を見かけたら連絡してくれ!」

 

 二人はなんとか無事なようでよかった。そして、策が上手くいったみたいで一安心だ。そう、今回の策は相手が氷で、建物や人含め丸ごと凍らせた場合、どこまでをその範囲に含めるかが鍵だった。屋内対人戦闘訓練ということもあり、そこまで氷で拘束はしないだろうとの予測のもと、エネルギー譲渡の応用で、エネルギーを靴の形に形成、一発では凍らない工夫をしたため、一回で完封されることはない。

 

 後は、俺達の頑張り次第だ……。核や尾白たちは三階に陣取り、敵も恐らくそこまで向かう必要がある。

 

 氷の上を滑らないように、エネルギースパイクで走りながら、三階へ向かう。

 

 三階の核がある部屋の前で轟らと尾白を発見する。尾白が2対1で、応戦しているが、そろそろ危なそうだ。

 

 距離は離れているが、この距離なら問題ないだろう。今までは、遠距離攻撃の手段はエネルギー弾しかなかったが、今はアレを試すときだ!

 

 手を銃の形で構え、狙いを定める。指先にエネルギーを集中させ、銃弾のように回転し飛んでいくイメージを加えて放つ!

 

「エネルギーマグナム!!」

 

 




もちろん、威力はちゃんと抑えてます。

イメージは霊丸です……。


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11話

 

 

 ヒーロー側になった轟と障子。訓練開始後、障子はすぐさま、個性で索敵を行う。

 

「三階に2人、足音が変だ。何か細工してる可能性がある。それに一人走っているな。なにが目的なんだ……?とにかく、核は三階で間違いないだろう」

「わかった、……障子だよな。危ないから少し離れててくれ、すぐに終わる」

 

 轟がそう言うと、建物全体を個性で凍らせてしまった。あまりの範囲、そして速度に障子が少し驚いていると、轟が何も言わず屋内へ進んでしまう。

 

「おい、待て!」

「氷、転けないように気をつけろよ」

「あぁ……わかった」

 

 一階、二階と特に問題なく進んだ轟と障子。あまりのあっけなさに、障子は索敵を怠っていた。

 

 そのため、轟達が三階に着いた時、襲撃に気づかないのも不思議ではなかった。

 

 障子が迫ってくる尾白に気づいたのは、すでに尾白が轟に切迫している時だった。

 

「轟!!」

 

 障子が複製腕を伸ばす。しかし、コンマ1秒遅かったのか、尾白が尻尾を振り抜き、轟が目の前から消える。

 

 轟は動揺していた。自分の氷で確実に動きを止めたと思っていたからだ。しかし、結果は自分が攻撃されているという事実。障子の声で、防御姿勢は取れたが、ギリギリだったため、反撃することは出来なかった。

 

「なぁ、索敵頼めるか?」

「わかった。一人は、足音がしないが恐らくどこかに潜んでいる。もうひとりは1階、走ってこちらに向かってきている!」

「それなら、短時間で決着をつける」

 

 轟が氷を走らせる。尾白はそれを避け、轟に接近しようとするも、障子が前に出てそれを拒む。

 

「すまねぇ、障子。氷の射線に被っちまう。後ろか横に避けてくれねぇか?」

「わかったが、大丈夫なのか?あの尻尾、当たりどころが悪ければ即気絶するんじゃないか?」

「なんとかする」

 

 再度、尾白の方へ氷を走らせる。尾白は氷を躱し、轟へ近づいた。難なく近づけたことに、少し疑問を抱くが、直ぐに頭から消え、懐から捕獲テープを取り出す。

 

「確保だ、轟!」

「轟!!」

「大丈夫だ」

 

 轟は焦っていなかった。左側からの攻撃を右手で迎え撃つようにしている。

 

 尾白の尻尾の威力に、片腕だけでは完全に防御出来ないと障子は思い、援護に駆け寄ろうとするが、斜め後方からの足音に気づいた。

 

「俺からみて右後方にいるのはわかっているぞ」

「……!」

 

 足音が遠ざかる。代わりに足音ではなく、大声が横から響いてきた。

 

「エネルギーマグナム!!」

 

 飛んできたエネルギー弾が、轟の右手に当たり、手が跳ね上がる。それと同時に尾白の尻尾が轟の身体へ吸い込まれた。

 

 轟が吹き飛ぶ。3メートルほど飛んだ轟は、再度驚いたような表情をしていた。

 

(最初の戦闘訓練だからとたかをくくっていたが、まさかここまでやられるとはな。少し甘くみてた)

 

 轟が起き上がり、障子へ話しかける。

 

「尻尾の方は、お前に任せる。さっきのやつは俺がやるから、透明のやつに注意しといてくれ。足音聞こえたら、すぐ教えてほしい」

「わかった、次は油断するなよ」

「バレたか、分かってる」

「なら、行くぞ!」

 

 戦況は轟と絵音、尾白と障子、隙を伺う葉隠という状態になっていた。

 

 




つづきまぁす


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12話

 

 

 エネルギーマグナムが当たった!昨日、なんとなく思いついた技ではあるが、無事成功したようでなによりだ。それに、威力もちゃんと非殺傷に抑えることができている。

 

 尾白と合流し、3対2(葉隠は奇襲要員のため、実質2対2である)の戦況になる。

 

「尾白!大丈夫か!?」

「あぁ、助かったよ、エネ」

「速い遠距離攻撃持ってるやつは厄介だな」

「轟、お前の範囲攻撃と俺の近接攻撃……。連携を意識して訓練を行おう」

「あぁ……。そうだな……!」

 

 轟が初撃程の範囲で氷を作る。連携といった筈なのに……と障子が思っていると、轟が走り出すのが見えた。

 

「目くらましだ!まず、遠距離持ちを叩く!」

「了解だ」

 

 

 エネは高揚していた。始めて個性をフルに使用して戦闘訓練を行う。初日に相澤先生から言われた心持ちの話は現状、頭に浮かぶことはなかった。

 

 

 

 

 氷が来た!更に考えていた新技を使う!!エネルギーをただ纏うだけじゃない。胴回り以上の広さでエネルギー纏い、殴ると同時に、エネルギーを前に押し出すことで、エネルギーの消費を抑えつつエネルギーパンチ以上の威力を引き出す……。そう、この技の名前は……

 

「エネルギースタンプ!」

 

 新技は成功し、あっけなく氷が割れる。今までの氷の威力を考えると、こんなに脆いだろうか、と思う反面、新技が強いのだと、自尊心が高まる。

 

 そこに、油断が生まれた。

 

「エネ!左だ!!」

「!?しまっ!」

「その遠距離攻撃、先に封じさせてもらうぞ」

「尾白、お前も余所見している場合じゃないぞ?」

「こっちも!?」

 

 目くらまし攻撃後の、先程の声掛けはフェイク。どちらか1人を狙うと見せかけ、それぞれ片方を狙いに行く。一見、連携していると言われると疑問に思えるが、バラバラだったコンビの戦い方の方針が纏まった瞬間であった。

 

「尾白!確保!」

「しまった!ごめん、二人共……!」

「グゥゥ……」

「片腕はもらったが……」

 

 優勢かと思われたエネ、尾白、葉隠トリオだったが、あっという間に劣勢になってしまう。

 

 

 

 

 

 左腕を凍らされた……!!それに、尾白も……。この状況、ちょっとヤバいぞ……。エネルギーで溶かせるか?やってみるか…!

 

 エネは、轟と距離を取った。そして、左腕の凍った部分をエネルギーで纏い、そのエネルギーを高速で動かすことで、氷を溶かそうとする。しかし、その隙を轟は見逃さない。

 

「お前も確保だ」

「あっ……」

 

 エネは、氷を溶かす隙を狙われ、あっけなく確保されてしまった。残った葉隠は、状況の悪さに手も足も出せない。

 

「降参しろ、そうすれば氷漬けにはならない」

「……呼吸の音で分かる、部屋の隅にいるな。隙を狙っていたようだが、尾白との戦闘中、俺はお前の警戒を常にしていたからな。足音1つも聞き逃さないぞ」

「……。参りました」

 

 

 第2試合ヒーロー側、轟アンド障子コンビwin!

 

「エネ……だったよな?」

「ん?」

「ちょっと来てくれ」

「……?わかった」

 

 エネは轟に近づき、轟は右手を氷につける。気づくと建物全体の氷が溶けていた。

 

「お前……熱も使えるのか?」

「あぁ……」

「そ、そっか。ありがとな」

 

 態度が豹変した轟に驚き、エネはそれ以上聞くのをやめてしまった。

 



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13話

 

 

 屋内対人戦闘訓練が終わった。それぞれの個性を活かして、全員奮闘していたと思う。訓練が終わり、すぐに保健室へ向かったが、リカバリーガールの説教の声が聞こえてきたため、大人しく教室へ戻った。

 

 訓練の時から、爆豪には声を掛けておきたいと思っていた。理由はもちろん、エネルギー譲渡の個性影響についてだ。爆破、個性に影響しているかどうか、本人含め分かりやすいと思ったから。

 

 荷物を纏めて、帰ろうとする爆豪へ声を掛ける。

 

「なぁ、爆豪。少しいいか?」

「ア!?何のようだふぬけ面」

「ふぬけ面って……。まぁいいや。俺は絵音。俺の個性の検証を手伝ってもらいたい。協力してくれ!」

「はぁ?お前の個性検証で、俺に何のメリットがある?」

 

 爆豪は、席を立ち、リュックを背負って立ち上がった。しかし、ここで協力してもらはないと、検証が進まない!

 

「お前にとってのメリット、それは、個性能力の引き上げだ」

「は?」

「もちろん、まだ予測、仮定の段階ではあるけどな!だから、是非協力してもらいたい」

「……。それ、センコーから許可得てんのか。個性の無許可使用は禁止じゃねぇか?」

「それについても、相澤先生から許可は得ている。申請すれば、個性も場所も使えるはずだ」

「……能力向上か。嘘だったら爆殺するからな」

「こわいこわい。仮定が外れたら、ストレス発散も兼ねて、軽い個性訓練でもするか!」

「けっ……」

「じゃあ、職員室行こうぜ」

「……」

 

 返事はないが、着いてきてくれているのが分かったので、そのまま職員室へ向かい、無事申請が許可されたグラウンドへ向かった。

 

 

「おい、ふぬけ面。テメーの個性検証で、俺の個性の能力が引き上がる可能性があるのは分かった。やり方はどーやんだ?」

「それはね、カクカクシカジカ」

「エネルギーか……そういやあの氷野郎に撃ってたなあれか」

「そうだね。あれはエネルギーを攻撃に転化させたもので、今回のはエネルギーそのままを譲渡するイメージ。痛覚現象や疲労回復などが実際確認された効果だよ」

「……、なんでそん時個性の影響も確認しなかったんだ?」

「それは、彼の個性が安全じゃなかったからね。下手したら大怪我しちゃうかもだったから」

「……そうか」

「じゃあ着いたし、早速やってみよう!」

 

 グラウンドに着き、爆豪に準備を頼む。爆豪は荷物を端に置き、こちらへ声を掛けた。

 

「準備できてる、早くしろ」

「どうして、そう口調が……まぁいいや。いくぞ!」

 

 エネルギーを譲渡する。前回緑谷に渡した時より少し多めに送った。その後すぐに、爆豪が両手を確認する。

 

「……!これは、確かに疲労が取れてる感じがするな、個性使うぞ」

「いつでもどうぞ」

「死ねぇぇぇ!」

 

 爆豪が右手を上げて爆破を行う。個性把握テストのときもそうだったが、掛け声がいちいち物騒なのはなんとかならないのだろうか?

 

「確かに、いつもより楽に個性が使える。それに、威力も少し高ぇかもな。おい、ふぬけ面離れてろ。威力強めでやってみる」

「あぁ、わかったよ。譲渡」

「クタバレぇぇぇぇぇ!!」

 

 こちらまで、爆風がやってきて少し飛ばされそうになってしまった。あの籠手がなくてもこれほどの威力が出せるのか……強い個性だ……

 

「てめぇの事を疑ってたが、これは、マジに個性への影響はあるな」

「お、マジ?ならこれからもちょくちょく協力してくれよ。他の人にも手伝ってもらうけどさ」

「あぁ、俺も少し個性の伸びしろを感じたし、成長できることがわかったからな、検証するときは俺も呼べ。予定がなければ、俺も手伝う。それに!!」

 

 

 BOMB!!!!!!!

 

 

 爆豪が個性を使った。いきなりすぎて少し驚いている。なんなんだろうか?

 

「個性を自由に使うってのはなかなか出来ねぇしな」

 

 

 こいつ、クレバーなのかクレイジーなのかわからない奴だ。しかし、個性検証の協力者が1人から2人に増えた!この調子で頑張ろう!……次の訓練では負けないように、譲渡以外も練習しておこう。

 

 

 




そろそろ、USJ……


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14話

 

 

 屋内対人訓練が終わって、何日か過ぎた。クラスメイトとも少しずつ話すようになったし、個性検証も順調に進んでいると思う。

 

 個性検証といっても、エネルギー譲渡のみに限った話で、一個人の個性をしっかりと検証するなんてことは時間やコスト的にも厳しいものがある。

 

 だからだろうか。自分の個性が、エナジーじゃなくてエネルギー譲渡のような感じがしてしまう。今までは純粋に個性を検証するのが楽しかったのになぁ。余談だが、今同じグラウンドにいるのは同クラの爆豪だ。

 

 なんでも、緑谷とは犬猿の仲?くされ縁らしい。そこのところは詳しく話してはくれないが、過去になにかあったのだろう。

 

「おい、ふぬけ!譲渡!!」

「ったぁ、言い方……」

 

 エネルギーを譲渡する。今までは対象に触れるか、近づいてエネルギーを送らないといけなかったが、今ではエネルギー弾のような形で、多少距離が離れても問題なく譲渡出来るようになった。

 

 それにしても、爆豪の口の悪さはどうにかならないのか?初日でも飯田がこのことに触れてたような触れてないような……

 

 爆豪が個性を使う。気のせいかな、前より威力や範囲が上がってる気がする。

 

「なぁ、爆豪」

「あぁ!?」

「個性さぁ、前より少し強くなってねぇ?」

「微々たる差だが、実感はある。個性が強くなってる」

「だよなぁ……」

「なんだぁ?ふぬけ面。お前、顔みてぇにふぬけてんな」

「だなぁ……」

「まぁ、俺には関係ねーが」

「……」

「……」

「はぁ……」

「うっとーしいわ!!何なんだお前は!?悩んでますアピールなんていらねぇんだよ!!! 」

 

 爆豪が叫ぶ。声が爆発しているみたいに大きい。いや、もう単純にうるさい。でも、これは彼なりの慰めなのだろう。きっとそうだ。

 

「個性検証っていうけどさぁ、結局エネルギー譲渡しか見られてないのかなと思うと……」

「?……何言ってんだお前。この時間に譲渡以外も練習しとけばいいじゃねぇか」

「んー、でも譲渡のための時間だし……」

「……お前、意外と生真面目なのな」

「爆豪とは違って?」

「はぁ!?テメェ!!爆破するぞ!?」

 

 爆豪と話をしていたら、うだうだ悩むのが馬鹿らしくなってきた。たまには、派手に暴れるのもありかもしれないな!

 

「爆豪!レクリエーションやらないか!?」

「どんなレクだァ?クダラねぇモンだったらパスだぜ」

「攻守交代個性使用鬼ごっこだ。タッチの代わりに攻撃当てれば交代。簡単だろ?」

「お前、俺にそれ挑むのバカじゃねぇか?俺が負ける未来が見えねぇんだが」

「まぁまぁ。やってみようぜ!俺が鬼な!マグナム!!」

 

 不意打ちでマグナム。当てるつもりだったが、避けられてしまった。反射神経すごいな。

 

「こいやぁ!ボコボコにして本当にふぬけにしてやらぁ!!」

「うるせぇよ!爆泣きさせてやる!!」

 

 エネルギーを身体に循環させて……。エネルギードライブ!!

 

 早く攻撃を当てないとな!マグナムの威力を下げて、加速・連射させる意識……。新技!

 

「エネルギーマシンガン!!」

 

 

 

 結果はさんざん。頭がアフロになってしまった。

 

 




そろそろ、本当にUSJ……


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USJ編
15話


いきます!USJ!!


 

 

 屋内対人戦闘訓練の日から、色々なことがあった。爆豪は鬼ごっこの帰りに緑谷と話をしたみたいだし、雄英のゲートが壊されたり、委員長を決めたりした。

 

 クラスの委員長は、色々とあって飯田になった。確かに真面目な性格だから、上手くクラスを纏めることが出来るのではないかと思う。

 

 俺は、最近個性検証を控えめにすることにした。止めた訳ではないけど、入学してから毎日やってたから、週に3日ほどにした。

 

 理由としては、屋内対人戦闘訓練から、遠距離攻撃だけでなく、近距離攻撃も強化しなければならないと実感したから。そのため、最近は筋力トレーニングに努めている。

 

 切島や砂糖、それに爆豪など、インファイトが出来る連中は総じて筋肉がある。俺にももちろん筋肉はあるが、人並みよりちょっとある程度だ。

 

 俺の個性で、身体能力は上げられるが、相澤先生のような個性を消すなんて個性をヴィランが持っていたら……。そのようなときの場合に備え、個性うんぬん関係なくある程度身体がしっかりしていないと、近距離での交戦で不利になる可能性が高い。

 

 そういえば、明日のヒーロー基礎学は、どんな授業、訓練になるのだろうか?

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 廃れたビル内、その1室に暗めのBARが存在する。そこで男二人が話をしていた。

 

「決行は明日です、準備は大丈夫ですか?死柄木弔」

「あぁ。あのクソオールマイトを殺す……準備はできてるさ。黒霧」

 

 

 悪意が蠢き始めた。

 

ーーーーーー

 

 

 今日のヒーロー基礎学は、なんとバスで授業現場へ行くことになった。救助訓練を行うため、専用の場所へ向かうらしい。雄英高校敷地内ではあるが、少し遠くになるため、車両を使って移動するんだ……さすが雄英……。

 

 

「私、思ったことを何でも言っちゃうの。緑谷ちゃん、あなたの個性オールマイトに似てる」

「蛙吹さん!?」

「梅雨ちゃんと呼んで」

「え!?いやっ!僕の個性は!?違うんだヨ!」

「そうだぞ、オールマイトは怪我しねぇぜ?」

「そうそう、それに前まで無個性申請だったんだろ?パワーの制御うんぬんも、個性が良くわかってなかったからなんじゃないの?」

「……」

「そっかぁ。でも単純な増強系はいいな!派手だし出来ることも多い!俺の硬化は、対人はいいが、地味だからなぁ」

「いやいや!プロにも顔負けしない良い個性だと思うよ!」

「プロな〜!しかしプロも人気商売みたいなとこあんぜ!?」

「僕のネビルレーザーは派手さも強さもプロ並み✨」

「でもおなか壊しちゃうもんね!」

「……」

「いやぁ、やっぱ派手で強えってーと、轟と爆豪だよな!」

「ケッ」

「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気でなそ」

「んだとぉ!!出すわボケが!!」

「ほら」

「いやー、爆豪すげぇよ。この短時間でクソを下水で煮込んだ性格だって認識されてんだもん」

「クソ下水煮込みwwwww」

「てめぇのボキャブラリーはなんだぁ!?それに、笑ってんじゃねぇ!!殺すぞ!!!」

 

 談笑していると、前に座っていた相澤先生がこちらを振り向く。

 

「そろそろ着くぞ。いい加減にしとけ」

「「はい!」」

 

 

 やばい……ツボだ……クソ下水w煮込み……w。上鳴は面白い奴だと言うことがわかった。

 

 

 




来ました!USJ編!


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16話

 

 

 救助訓練の場所に着いた。本当に広いし、それになんだか某遊園地みたいだ……。

 

 訓練について説明してくれる先生は宇宙服のコスチュームを着ている。確か、救助関係のヒーローだったような?

 

「本日、救助訓練を担当する13号です。オールマイトは少々予定が立て込んでまして、時間が経てば合流すると思います。なのでしばらくは、私とイレイザーで訓練を行います。まずは、簡単に場所の説明です。ここは、USJ(ウソの災害や事故ルーム)、ここで、救助訓練を行います」

「「本当にUSJかよ!!」」

「うわー!すごい!13号だ!!」

「災害救助や人命救助に長けたプロヒーローだよ!」

 

 麗日と緑谷は名前を知っていた。流石ヒーローオタクの緑谷だ。麗日は意外だったな……。確かに、先生も宇宙関係の個性だろうし、親近感などはあるんだろうな。

 

「まず、訓練を始める前に小言を1つ、いや2つ、3つ……。」

「小言が増えてる!!」

「まず、私の個性について簡単に説明します。私の個性はブラックホール、引き込んだ物を塵にします。その気なら人すら塵に出来ますので、個性の扱い方には本当に注意しましょう。いいですか?皆さんは、個性把握テストで、自分の個性がどこまでやれるのか。そして、屋内対人戦闘訓練では、個性を人に向ける危険性を知れたと思います。しかし、ヒーローの1番の目的は、ヴィランを倒すことではなく、人命を守ること、人を助けることにあるんです。今日は、自分の個性が人命救助にどのように役立つか学びましょう」

 

 エナジーで人命救助か……。正直、ヒーローとして人を助けるということは当たり前すぎて、余り考えていなかった様な気がする。人を守るためにヴィランと闘う必要がある……。この目的は忘れないようにしよう。

 

「お前ら!一固まりになって動くな!!」

「……。あー、またすでに訓練は始まってるっていうアレ?」

「違う!あれは……ヴィランだ!!」

 

 

 

 中央の噴水広場に黒い渦が現れ、そこからゾロゾロと人が出てくる。特に大量の手を体に付けた人物の雰囲気は、狂気的で恐ろしさすら感じた。

 

「あれ?おかしいですね。先日頂いた資料によるとオールマイトもいたはずですが……」

「ほんとだ……。そうだな、子供殺せば来るんじゃないか?」

「先日のセキュリティゲート云々はやはりヴィランの手引きか……」

「皆さん!僕の後ろに下がってください!」

 

 ヴィランはどんどん出てくる。既に20いや30~40人はいるだろう。

 

「これが、ヴィラン……!」

「っても、なんでヒーローの学校にヴィランが突っ込んで来るんだ?」

「さぁ?」

「みんな!冷静に!!まずは学校に……電波が届かない!?」

「ヒーローの学校にカチコミ来てるんだ。そういう個性持ちもいるってことだろ。奴ら、用意周到に計画している可能性がある」 

「上鳴!個性使って学校に連絡できるか!?飯田!お前は学校へ行ってこの状況を伝えて来てくれ!」

「了解です!やってみます……」

「……しかし!」

「電波が届かないこの状況では、お前の脚で確実に現状を伝える必要があるんだ。委員長だろ!頼んだぞ」

「っ!」

「行ってこい!プロヒーロー連れてきてくれよ!俺たちは大丈夫だからさ!」

「クソヴィラン共なんざ、蹴散らしてやるよ」

「待て!!お前ら!積極的に交戦はするな。自分の命、仲間の命優先で動け。交戦はその後だ。13号の指示に従え。俺は、ヴィランを制圧する」

「待ってください!イレイザーヘッドの戦闘スタイルは多対一で交戦するようなものじゃないですよね!?」

「その通りだ。しかし、プロは一芸だけでなれるもんじゃない」

 

 相澤先生が敵の元へ走っていく。雄英高校にヴィランの侵入。そして俺は、初めてヴィランと対峙することになる。

 



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17話

 

「13号!任せたぞ」

「へへっ!一人デ突っ込んで来やがった!」

「射撃隊!いくぞぉ!!」

 

 飛び出したイレイザーヘッドに対し、遠距離攻撃を用いるだろう敵が構えた。しかし、一向に攻撃は無く、ヴィランも動揺しているのか、手元を見ている者もいる。

 

 相澤先生はその隙を見逃さない。個性が出ず、慌てふためくヴィランを捕縛紐で拘束し、地面に叩きつける。仲間がやられたことを知り、数の暴力で相澤を押さえつけようとしたヴィランは、他のヴィランと凄まじい勢いでキスをする羽目になってしまった。

 

「相澤先生……。多対一が得意な人だったんだ!個性を消して、リーチが長い紐で攻撃。近距離では肉弾戦も可能……。さすが雄英教師……」

「緑谷君!分析してる場合か!とりあえず、生徒は一時避難だ!相澤先生の様子を見て、ここから……」

「失礼。それは見過ごせませんね。はじめまして、雄英高校の皆さん。我々は敵連合(ヴィラン連合)。オールマイトがこちらにいると伺っていたのですが……。まぁ、私の役目はこれ」

 

 黒い霧が俺達の周りを囲い、じわじわと範囲を狭めてくる。これは不味い……。

 

 エネルギードライブを発動し、様子を伺うが、そもそもこの霧に俺のエネルギーは通用するのか?そんなような事を考えてばかりで、身体が動かなかった。

 

SKLIT! BOOOOM!

 

「その前に俺たちにやられることは考えてなかったか!?」

「危ない危ない。生徒といえど、彼らは金の卵……」

「ダメだ!ドキなさい!二人共!!」

 

 

        散らして嬲り殺す

 

 

 ヤバい!!咄嗟に上へ跳躍したが、黒い霧は前後だけでなく、上方向にも伸びていたため、あっさりと霧に捕まってしまった。

 

 

 視界が黒に染まる。直後、泥のような地面が見えた。

 

 エネルギードライブを起動していたため、難なく着地。周りを見渡すと、ヴィランが見える。

 

 どうやってこの場を切り抜ける……?そう考えていると、後ろから声が響いた。

 

「跳べ!エネ!!」

「りょーかい!!」

 

 考える暇もなく、全力で上へ跳ぶ。エネルギードライブで強化された身体能力に加え、脚部にエネルギーを纏う事で、数10Mは跳んだ、いや跳躍した。しかし、着地方法はどうしようか?このまま、落下して打ち所が悪く死亡なんて事にはならないだろうか……

 

「もう降りてきていいぞ!」

「少し待ってくれ!今、着地を!……あれ、飛んでる……」

 

 ゴールテープみたいな感覚だ。ゴールテープを切るために走っている訳ではないが、一生懸命走って、ゴールを通過した際にはテープが切れている。

 

 もちろん切れなかったら大変なことなのだが、とにかく、意図していなかったのだ。しかし、結果はこの通り。

 

 俺は、空を飛んだ。

 

 




作者は基本、徒競走ビリだったのでゴールテープを切る経験は……


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18話

 

 人生初めて飛んだ余韻を味わいながら、緩やかに着地する。地面は氷漬けになっているため、一度使ったエネルギーシューズを履いている状態だ。

 

 それにしても轟の個性は強い。約20対1ほどで、多数を一撃で潰してしまった。それに、相手は全身氷漬けだ。屋内訓練の際は少し加減をしていたのが分かる。

 

「怪我はないか?」

「……。あ、あぁ。そうだ、他の奴らが心配だ。早く広場に戻らねぇと」

「いや、少しこいつらから情報を集める。こんな無茶は普通しねぇ。それに、オールマイトを殺すって言ってた。何か策があるはずだ」

「そうだな……!」

 

 俺は、皆やプロの元へ戻る一心だけだったが、轟は違った。この敵襲を受け、情報収集を行おうとは個性同様、クールな男だぜ……

 

 轟は一番手前のヴィランへ尋問を開始した。

 

「おい。オールマイトを殺すって策はなんだ?」

「誰が……、そんな……、ことを、言うか……」

「なら、別のやつに聞くだけだがな?なぁ、今はただ寒くて冷たいだけかもしれない。だけどこれ以上凍ったままだったら、その内、肉体は壊死しちまうんだよ。そんなことはお前らだって避けたいだろ?」

「ヒッ……聞いてねぇよ、こんなヤベェガキがいるなんて」

「そこなんだよ。お前らはただのチンピラレベルだ。しかし、そんな奴らが束になったってオールマイトには勝てねぇ。なぁ、オールマイトを殺すんだろ?どうやるんだよ」

「……黒いやつだ」

「霧の奴か?」

「違う。脳が剥き出しになってる化物だよ。アレが対オールマイトだと聞いてる」

「分かった。」

 

 轟は情報が聞けて満足だったのか、こちらに向きを変え歩いてきた。

 

「エネ、さっきみたいに飛ぶの、あれ飛行は出来るか?広場に向かわねぇと他の奴らがヤバいかもしれねぇ。オールマイト用の化物なら、誰も対抗出来ねぇ」

「多分いける!そうだな、皆のところへ行こう!ついてこれるか!?」

「あぁ、問題ない」

 

 轟を右手で抱え、左手で支える。立った人を介抱するみたいな感じだ。

 

 エネルギードライブと、エネルギーを脚部に纏い、全力で跳ぶ!……よし!いけた!賭けではあったが、なんとか飛べたみたいで良かった。落ち着いたら、どういう流れで飛べているのか確かめたい。

 

「轟!方角分かるか!?」

「分からねぇ!だが、あのデカいゲートは目立つはずだ。それに目印の噴水もある。一度高く飛んで様子を見てくれないか!?」

「分かった!高度上げるぞ!」

 

 高度15mほどだったが、30m近くまで飛んでみた。周りを見渡す。……あった!!結構遠いな。皆無事なら良いんだけど……!

 

「轟!見えたぞ!早速向かう!」

「頼む」

 

 広場に向かって飛ぶ。大体距離は800mほど。2分もあれば到着するだろう。

 

「そういえば轟、氷溶かさなくて良かったのか?壊死がなんとかって」

「そんな簡単に壊死はしない」

「そっかぁ……」

 

 やっぱり、この子冷たいなぁ……氷だけに。いや、今のはだめだな。本当に面白くない。流れで言おうかと思ったけど、口は閉じておこう。

 

 広場に着いたとき、俺達は想像もし得なかった光景を目にすることを、このときは、まだ知らなかった。

 

 

 

 



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19話

 

 

 広場に到着した俺と轟は、おぞましい光景を目の当たりにした。オールマイト用と言われた黒い化け物が、相澤先生の腕を枝のようにへし折っている。

 

「……っ!!!」

「抑えろ、エネ。ここで注意を引くな!」

「でも……!いや、わかった。本当に冷静だな、助かるよ」

「あぁ」

 

 相澤先生が倒れている広場の奥、池の方で、様子を伺う緑谷達の姿が見えた。緑谷達が何か話しているが、もしかして相澤先生を助けるというのだろうか。

 

「やるのか、緑谷?」

「どうした?」

「ほら、池の方に緑谷達いるだろ?相澤先生を助けるんじゃないか?」

「現状、動きづらいな。化け物に、黒い霧、それにリーダー格の手野郎がいる。あいつの個性も分かってない状況じゃ動いたらやられる可能性が高い」

「それでも!!」

「よく考えろ!相澤先生がここまでやってる意味はなんなのか!俺たちが下手打ったら、先生の行動が無駄になっちまう!」

「そうだよな……。俺たちがやられたら、先生がここまで身体張った意味がなくなっちまう……。くそっ!!」

 

 拳を握りしめていると、手野郎がいつのまにか緑谷の方にいて、蛙吹の顔に触れていた。緑谷達はかなり焦っている。あの手野郎……そんなにヤバい個性持ちなのか?

 

「……。手野郎は触れることが条件の個性に違いない……!」

「あぁ、それに相澤先生の肘を見ろ。崩れているような跡がある。化け物にそんな個性は確認できないから……おそらく、あの手野郎の個性は触れたものを崩す個性に違いないな」

「なら、蛙吹が……!!」

「いや、大丈夫だ。俺らの担任はただの先生じゃねぇ」

 

 蛙吹の顔が崩れてしまうかと思ったが、実際はそんなことはなく、ボロボロになりながらも相澤先生が個性を使い、手野郎の個性を抹消していた。しかし、それも束の間、顔面を地面に叩きつけられて……

 

「!!!!」

「SMASH!!」

 

 少しでも、先生が楽になれるように……。その願いを込めてエネルギーを先生へ放った。もちろん、攻撃ではなく譲渡の方だ。それに、緑谷も蛙吹を守るために攻撃したみたいだ。これは……やったか?

 

 

「おい、お前……」

「エネルギー譲渡だ。多少体力や傷に効くから……。せめて……」

「……わかった」

 

 緑谷のパワーは凄いもので、砂煙でよくみえない。状況がわからない……!

 

 砂煙が開くと、そこには、化け物に手を掴まれた緑谷と、手野郎に触れられる寸前の蛙吹と峰田の姿があった。

 

 刹那、出入り口の扉が吹き飛ぶ。そこには、No.1ヒーロー、オールマイトの姿があった。

 

「もう大丈夫!!私が来た!」

 

 手野郎が、オールマイトを睨んでいるような気がした。



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20話

 

 

 オールマイトが来た!正直、ヴィランの数がいくらいようが、オールマイトがいれば問題はないだろう。

 

 今も、6~8人のヴィランを戦闘不能にし、相澤先生を救出。間髪入れずに化け物と手野郎に攻撃し、緑谷達を救出した。

 

 さすが、No.1ヒーローだ!しかし、物事はそう上手くいかないようで……

 

 よく見ると化け物にはあまり、攻撃が効いていない様に見える。それに、黒い霧もまだいるし、思ったより油断ならない状況に変わりはない。

 

「なぁ、轟。緑谷たちの方へ向かわないか?何かあったとき、あいつらのサポートがしたい。それに重症の相澤先生もいるんだ」

「確かに……、オールマイトもいるこの状況なら……そうだな、そうしよう」

 

 轟と俺は、広場にいる緑谷たちの方向へ走る。数分で合流することが出来た。

 

「緑谷!大丈夫……ではなさそうだな!?指また折れてるな!?」

「エネ君!うん……折れたけどなんとか大丈夫だよ。それに、相澤先生が……」

「そうだな、相澤先生を守らないとな」

「なら、蛙吹だっけか。先生頼めるか?この中ではお前が1番適任だと思う」

「分かったわ」

「蛙吹だけじゃねぇ!オイラも守るぜ!」

「……。あー、頼んだ」

「峰田!助かるよ!ありがとう」

 

 蛙吹と峰田が相澤先生を守り、俺と轟、緑谷はそれを守るような役割だ。まず、緑谷のグロテスク指をなんとかしなくちゃな。怪我は治せなくても、痛覚を和らげるくらいなら……

 

「緑谷、譲渡だ。指、少しでも楽になるように」

「ありがとう!だいぶ痛みが引いたよ!……この個性ブツブツ」

「どうした?緑谷、他にどこか痛むのか?」

「あー、これは癖。大丈夫だと思うぜ」

 

 オールマイトが化け物と本格的に闘い始めた。オールマイトのいち挙動が、ここまで風を運んでくる。本当にとんでもないパワーだ。……!?あれは……。

 

「霧野郎……、あんな使い方も出来るのか……」

「おいおい、オールマイト大丈夫だよな?もう大丈夫なんだよな!?」

「落ち着いて、峰田ちゃん。オールマイトで駄目ならもう皆終わりよ」

「そんなこと言われて落ち着いてられるかよ!!!」

「まぁ、落ち着」

 

 俺も反応が少し遅れた。少し意識を逸らした内に、ブツブツと聞こえていたひとり言が聞こえなくなっており、当の本人は化け物に対して、既に向かっていた。そのスピードもあり、反応が遅れてしまったのだ。

 

「オールマイトのフォロワー、1人死亡」

「攻撃はさせませんよ」

 

 手野郎の腕に黒い霧が掛かっており、手野郎の掌の先は、緑谷の顔の前に来ていた。

 

 あ……、緑谷……

 

 友達が一人死ぬ。その光景がスローモーションのように流れていた。

 

 

BOOOOOOOMB!!

 

 

「クソ霧は俺がぶっ殺す!!」

 

 声と爆破の主、爆豪がそこに現れた。

 



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21話

 

 

 危険な状態であった緑谷を助けたのは、意外にも爆豪であった。

 

「邪魔だぁ!デク!!」

 

「……かっちゃん!」

 

 爆豪は、黒い霧を爆破し、攻撃を中断させた。黒い霧は一旦距離を取って引いている。その間に、切島が走って合流した。

 

「はぁ……。お前速えって!こっちは走りだぞ!?」

 

「あぁ?走ってでも何でも良いから追いついてこいや!クソ髪!」

 

「ナイス爆豪!緑谷助けたな!」

 

「助けてねぇわ!攻撃したらそうなっただけだ!あぁ!?」

 

「霧野郎……、攻撃されてもオールマイトへの妨害は続けてやがる……。だがなお前らごときが平和の象徴はやれねぇよ」

 

 

 轟が氷を足元から流し、化け物の半身を氷漬けにする。その隙にオールマイトは霧と化け物の拘束から脱出した。

 

「嫌らしい戦い方をするね……。そのパワー、それにその再生……。嫌なヤツを思い出すよ」

 

「私は潔癖で、霧の中にも血や肉片は入れたくありませんが、あなたの物なら話は別ですよ、オールマイト。しかし、逃げられてしまいましたか。脳無の半身が崩れてしまった……。酷いことをしますね、雄英高校の生徒は」

 

「オールマイトォ!これを!!」

 

 俺は、エネルギー総量の半分ほどを込めて、エネルギー球をオールマイトへ放った。

 

「絵音少年!?こ、これは……!!」

 

「光る球……。能力強化の個性でしょうか?しかし……」

 

 オールマイトになんとかエネルギー譲渡が成功したようだ。しきりに身体の調子を確かめている。

 

「よし!ヴィラン……。今の私は絶好調だ。全員捕まえてやるぞ、そのヴィランのことについても聞きたいしな」

 

「そう、出来るものならやってみれば?お前のために用意したんだ。脳無やれ」

 

 オールマイトが、脳無に拳を繰り出す。しかし、全くと言っていいほど、相手に効いている様子は無かった……。

 

「効いてないのかな……?」

 

「ショック吸収さ、お前の100%の打撃も効かないんだ。言ったろ?お前のために用意したって」

 

「へぇ、吸収ね。なら限界があるはずだ!!」

 

 オールマイトが拳による連撃をはじめた。今では両手の残像しか、見えていない。オールマイト……、No.1は圧倒的だな……。

 

「私の100%が効かないのなら、それ以上で殴り続けよう!!105%、120%……まぁ、とにかく……!ヴィランよ、こんな言葉を知っているか!?さらに向こうへ!!PLUS ULTRA!!(プルスウルトラ!!)

 

 オールマイトの連撃は、敵を浮かし、ついにはショック吸収?とやらの個性の限界を超え、脳無をUSJ外へと吹き飛ばした。圧倒的パワーが、そこにはあった。これが、オールマイト……!

 

「あれ?限界が……?ん?まぁいいか。まだやるかい!ヴィラン達よ!それに、ここに来たのは私だけではない!!」

 

「1-Aクラス委員長飯田天哉!!ただいま戻りました!!!」

 

 ゲート入り口から飯田が、他の先生を連れやってきた!13号先生の手当や、残っているヴィランの一掃を開始している。

 

「あぁ、クソ。ゲームオーバーだ。だけど、終わりじゃない……。何度でもコンティニューしてやる……!」

 

 スナイプ先生が、手野郎の肩、足を狙い撃つ。しかし、黒い霧が手野郎を回収してそのまま姿をくらませてしまった。

 

「待てっ!……。ワープの個性か!?相手方は奇襲に有利な個性を持っているな!!しかし、逃げられたなら話は別だ!生徒の皆!無事かい!?」

 

「ほんと……ワープなんて個性、重宝されるでしょうに……」

 

「俺たちァ問題ねぇよ」

 

「先生が!!13号と相澤先生が!!」

 

「急いで治療室へ!!って、緑谷少年!!手と足!!君も医務室行きだ!!!」

 

「オールマイト!!脇腹や……その調子の方は?」

 

「あぁ、なんかね、絶好調!!痛みも全然感じない!!!」

 

「そうだったんですね……。それはあの状況を考えると、エネ君のエネルギー譲渡による影響の可能性が1番高い……?稼働限界時間も延長されてる?それに絶好調ってことは痛みはもちろん、パワーやスピードも……」

 

「おおっと、緑谷少年独り言マシンガンのようだ。とにかく医務室へ、良いね?」

 

「はい、分かりました!」

 

 緑谷の手だけじゃなく、オールマイトへ向かったときの影響で足までボロボロのようだ。本当にとんでもないパワーの個性だな……

 

「緑谷!お前にもこれを……」

 

「エネ君、ありがとう!痛みも治まってきたよ。これで治癒でもそんなに体力持ってかれないや!」

 

「ほんっと、あんまムチャすんなよ?まだ入学してそんなに経ってないんだから……怪我しすぎ!」

 

「わかった、わかったよー!ありがとねー!エネくーん!!」

 

 そういって緑谷は、ロボットが持つ担架に乗り、運ばれていった。

 

 ヴィランからの強襲、戦闘が終わった。

 

 



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22話

 

 

 USJのヴィラン襲撃から1日が経った。皆は明るそうに振る舞うが、たまに表情に影が差す時がある。それはそうだろう。相澤先生と13号先生は重症、皆もチンピラヴィランに襲われてしまったのだから。

 

 あの怪我だから今日、相澤先生は来ないだろう。代わりに他の先生が担当になると思う。果たして誰が来るのだろうか。

 

「おい、お前ら席につけ。朝のHR始めるぞ」

 

 聞き覚えのある声がクラスに響いた。声の方向に視線を向けると、そこにはミイラのように包帯をグルグル巻きにしている、相澤先生の姿があった!(顔がわからないため、声と髪で判断)

 

「「相澤先生!!」」

 

「身体は大丈夫なのですか?」

 

「いや、見ての通り重症ではある。戦闘は出来ないが、HRや授業を行うことは出来るからな。俺が休んでいる間、誰かに担任を頼むこと、またそこで生じる諸々の時間ロスを考えれば、俺が担任をしたほうが良い。合理的だ」

 

「すごい……。ミイラみたいな感じだけど相澤先生だ……」

 

「でも包帯グルグルで動きづらそうだな」

 

「黒板の板書とか大丈夫なんですかー?」

 

「君達!先生の前だ!静かにしないか!!」

 

「いいじゃんか飯田〜」

 

「お前ら!いい加減静かにしろ!」

 

 先生の髪が逆立つ。それと同時に教室が静まり帰った。

 

「HR始めるぞ。委員長、号令を」

 

 襲撃があった次の日でも、授業は、学校は始まりを告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 USJでの襲撃で、手傷を負ったのはヒーロー側だけではなかった。ヴィラン側も相当なダメージを受けていた。

 

「イテテテテ、黒霧もっと優しく!」

 

「申し訳ない、死柄木弔。しかし、我慢してください、これもあなたの傷を治すためなのです」

 

「クソ、あいつら回復系がいるから多少無理できるんだろうけど、こっちにはいねーんだよ。容赦なく銃撃しやがって……」

 

「それに、かき集めた連中の大半は使い物にならなくなりましたし、脳無も反応なしです。恐らく捕まったかと」

 

「クソっ!おい、先生!話が違うじゃねぇかよ!オールマイト弱ってなかったぞ!」

 

「……。弔。あいつが全盛期の状態だったら、君たちは既に刑務所、いやタルタロスにいるだろうね。君たちがそこにいるということが、あいつが衰えている証明だよ。ただ、気になることはあるけどね」

 

「先生!人数もほぼいなくなっちまった!これからどうする?」

 

「弔、死柄木弔。落ち着くんだ。君はヴィランの長として行動しなければならない。それに、奴らは有象無象……。個性が強い、少数精鋭のメンバーをまず集めた方が良い。黒霧、サポート頼んだよ」

 

「承知しました」

 

「……。少数精鋭……ね」

 

 悪意は止まらずゆっくりと、確実に増幅していく。

 

 



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23話

CODやってて投稿できてませんでした…


 

 ベッドに寝転び、手を上にかざす。ヴィラン襲撃があったとは思えない、きれいな手をしている。

 

 もちろん、男の手だから少しゴツゴツしてはいるけど。

 

 時刻は夜23時、いつもなら個性の特訓で疲れて眠ってしまうのだけど、今日はなんだかそんな気分になれなかった。

 

 ……。ただまぁ、悪いことだらけだったわけじゃない。あの緊迫感で、目標の1つだった空を飛ぶことが出来た訳だし。

 

 そうだ、個性で今何が出来るのか整理してみよう。こういう時間はきっと大切だ。

 

 

 

 というわけで、俺の個性、エナジーについて振り返ってみる。エナジーは、身体からみなぎるエネルギーを使用して色々な事が出来る、器用な個性だ。

 

 俺がよく使用していたのは、エネルギーを纏った身体能力向上、その状態でのパンチ・キック、ジャンプなどかな。それに、エネルギーを球のように形成し、放出するエネルギー弾を使っていた。

 

 雄英に入学してからは、個性を使う機会が多く、よりエナジーについて探求することができた。

 

 その代表がエネルギー譲渡だろう。これは、攻撃ではないけど、他人の回復や個性の能力向上が分かったから、一時期はこればかりで少し嫌になっていたっけな。

 

 しかし、この経験でエネルギードライブを習得し、エネルギーマグナムやマシンガン、今では飛行にまで繋がったんだ。

 

 これはデカかった。飛行は非常に便利で、ヒーローとしてはかなり重宝されるだろうし、戦闘においても、基本的に上は強い。ヴィランが近接戦闘タイプならそもそも戦いにならずに圧倒できる可能性がある。

 

 つまり飛行は、ランクの高いヒーローになれる確率が高まるって訳だ。しかも、俺には遠距離攻撃手段もある。将来がワクワクだ。

 

 しかし、全てが絶好調という訳ではない。昨日のヴィラン襲撃では、爆豪や切島、緑谷や轟はヴィランとの戦闘という経験を積むことができてる。俺はそれが出来なかった。この差は後々響いてくると思う。

 

 俺の弱点は、万能が故に突出した武器が無いことだろう。ヴィラン襲撃時、この弱点が改めて叩き込まれた気分だった。色々と出来るからこそ、決定打、十八番がないんだ。

 

 俺は、今後攻撃としては2つの方向で固めていくつもりだ。1つは遠距離、2つは近距離だ。特に、今の自分に必要なのは近距離戦闘であることは理解している。

 

 そのため、これからは近距離を優先で特訓。それで、もしものときに備えたい。あんなことがあったんだ、これからは平和だなんて事はないと考えてる。

 

 そんな、ポンポンとヴィランが襲ってくるとは思わないが……。あの黒い霧の個性なら、危険性がある。

 

 ヒーローになる前に、ヴィランに襲われその夢を摘まれてたまるか……。

 

 エネルギーを身体に循環させ、速度を上げる。そのスピードは、エネルギードライブ以上の可能性を有していた。

 

 目が覚めると、既に日は上がっていた。

 

 




てなわけで、オリ主の個性振り返りでした。

近距離
エネルギーを纏う→エネルギードライブ→???

エネルギーパンチ・キック→エネルギースタンプ→???

遠距離
エネルギー球→エネルギー弾(マグナム・マシンガン)→???

特殊
エネルギー譲渡、飛行

ってな感じです!


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雄英体育祭編
24話


 

ヴィラン襲撃から、2日が経った。相澤先生がミイラ姿で教壇前に立っている。この人は本当、トンデモナイ人だと改めて理解できた。

 

「あー、お前らも知ってるだろうが5月には雄英体育祭がある」

 

「「高校生っぽいイベント来た!!!」」

 

「でも、大丈夫なのかな、ヴィランの襲撃があったばかりなのに……」

 

「確かに……」

 

「確かに、雄英高校がヴィランに襲撃され、死者こそ出なかったものの負傷者が出てる……だが雄英高校としては、体育祭を開催し世間に対して堂々とした姿勢を見せるつもりだ。体育祭ではヴィランなんて侵入させない。今まで以上に厳重な警戒態勢で臨む。もちろん、万が一ということがあるかもしれないため、プロヒーロー達にも警戒の依頼をしてる。USJみたいに、大人が足りないなんて事態にはならない」

 

「そんなに対策してるなら大丈夫かな……」

 

「次はぶっ殺す……」

 

「セリフがヴィランだよ…」

 

「こん中にヴィランいるってマジ?」

 

「ヴィランよりヴィランの性格してるわ」

 

「なんだとぉ!!俺は敵を倒し、平和を作っていく…"勝つヒーロー"になるんだ!雑魚は黙ってろ!!」

 

「勝己だけに勝気なヒーローだなw」

 

「つまんねぇよ」

 

「爆豪ちゃんに同意だわ、面白くないの」

 

「確かに、くだらないダジャレだけど、そんなに言わなくても…」

 

「緑谷フォローありがとな、けど1番心に来るかも…」

 

「お前ら!静かにしろ!!」

 

 途端に場が静まる。

 

「よし、じゃあ委員長号令を」

 

 

 体育祭の開催を告げたHRが終わった。

 

 

 時刻は昼休み。俺は飯田や緑谷、麗日と食堂へやってきた。

 

 今日は何を食べようかな〜っと。親子丼にしよ。食券を購入し、職員に渡す。

 

「先、机取っとくな〜」

 

「ありがとう、絵音くん」

 

「よろしく頼む!」

 

「よろしくね〜」

 

 ちょうど4人席があったので、椅子に制服を掛け着席する。ここの学食、本当に美味いんだよなぁ。持ってきた水を口に運びながら、これから食す親子丼に想いを馳せる。

 

 3人が来てから口をつけようと思っていると、ちょうどこちらにやってくる。

 

「「ありがと〜」」

 

「どいたま、んじゃ食いますか」

 

「「いただきます」」

 

 親子丼を食べながら、皆と会話する。ほとんど、いや、全部雑談だ。

「雄英体育祭な〜、テレビでしか見たことなかったから、それに自分も出場するなんて信じられねぇよ」

 

「そうだね……。憧れに近づくんだ……」

 

「デクくん、憧れ?何が?」

 

「子供の頃から、ずっとオールマイトが憧れなんだ。いつかオールマイトみたいなヒーローにって……」

 

「いいじゃん!」

 

「良いと思うぞ。それに、君の個性はオールマイトに似たようなパワー型の個性だろう?なら師事するにもいいのかもしれないな」

 

「お、いいじゃん。オールマイトの弟子みたいな!?」

 

「う…うん…そ…そだね〜」

 

「急にどした?」

 

「No.1の弟子を想像したんじゃないか?スゴいことだぞ、No.1」

 

「そ…そうだ!飯田くんのコスチュームさ、インゲニウムに似てるよね!?なんで?」

 

「よく聞いてくれた、緑谷くん!それは、インゲニウムはぼ…俺の兄だからさ!」

 

「すごい自慢げそう…」

 

「兄ちゃんもヒーローなんだな、凄いな!」

 

「だろう?だろう!?ぼ…俺の兄、いやインゲニウムは素晴らしいヒーローなのさ!」

 

「さっきから、ぼくって言おうとしてない?ぼくでいいのに」

 

「ぼくだと、坊っちゃんみたいだろ?」

 

「別に俺でも坊っちゃんぽいけど」

 

「絵音くん!!」

 

「そっ…そうか…」

 

「ショック受けちゃったじゃん」

 

「ごめーん!」

 

 談笑しつつ、お昼休みは終わりを迎えた。

 

 

 




また、漫画、アニメみて流れを復習せんとなぁ…


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25話

お久しぶりです。
お待たせして申し訳ない…です…


 

 

 5月には雄英体育祭が開かれる……。世界中の優れた選手達が競い合ったオリンピックという大会が、個性が存在しない時代にあったという。今、日本にとってそのオリンピックに代わる物が、この雄英体育祭なのだ!

 

「雄英体育祭ってどんな競技があるんだろ?」

 

「んー、体育祭だしやっぱ徒競走とか!?」

 

「意外に借り物競走もあったり?」

 

「へへ……。女子とくっつける競技ねぇのかなぁ……」

 

「お前さぁ……」

 

 今はお昼休み。昨日、先生に告げられた雄英体育祭の開催に、俺たちは興味をそそられていた。

 

「わーたーしがー……変な姿勢で来た!!」

 

「うおっ、オールマイト!?」

 

「緑谷少年、お昼一緒に食べよ?」

 

「はい!あ、みんな……」

 

「緑谷君、大丈夫だ。行ってきたまえ!」

 

 変なポーズをしながらやってきたオールマイトは、緑谷を昼飯に誘うと、すぐに去っていった。また、それに追いつこうと、緑谷も教室から走って出ていった。

 

「意外にかわいーー!」

 

「え?かわいい?」

 

「かわいいじゃん!誘い方も、すんごくちっちゃく見えるお弁当も!」

 

「……。そっか」

 

「まだまだだねぇ〜」

 

「オールマイトは、緑谷のこと気に入ってんのかな?」

 

「どうした?エネ君、いきなり」

 

「だって、先生が生徒をランチに誘ったりするか?」

 

「これは僕の予想なんだが、彼の超パワーの個性、まだまだ制御出来てないだろう?それで、オールマイトに個人的に師事してるんじゃないか?オールマイトだってパワー系の個性だと言われているからな」

 

「そういえば、オールマイトの個性って明言されてないんだったっけ?」

 

「その通り、メディアやネットでは結構予想がされているが、本人から"これ"と言われてはいないんだよ」

 

 オールマイトと、緑谷の個性か……。確かにパワー系というくくりで言えば似てる。俺もそんなような事言ったことあるし。けど、それにしちゃ個性の反動が、違いすぎないか……。まぁ、個性は色々あるってことでいいか。

 

「もー、二人共早く食堂行こう!もうお腹ペコペコだー!!」

 

「そうだな、腹が減っては戦はできぬ。しっかりと食べることも、大事なことだ!」

 

「そうだなぁ」

 

 

 

 俺達は、昼飯を食い終わり、教室に戻って授業を受ける。時間が過ぎるのはあっという間で、気付いたら放課後になっていた。

 

 

 トイレから教室に戻ってくると、1-Aの前に人溜まりが出来ている。ざわついているようだし、何かあったのだろうか?

 

「なぁ、何かあったのか?」

 

「おう、ほらUSJの1件。あれで気になった奴らが見に来たみたいだ」

 

 教室の前に集まっていたのは、他の科に在籍する生徒達だった。物珍しそうにこちらを見ている人もチラホラいる。

 

 しかし、その直後に場が静まり返った。その要因は、A組の爆豪である。

 

「どけ!モブ共!!」

 

「ちょっ、かっちゃ……」「やべぇって、ばく……」

 

「うるせぇ、カス!!」

 

 とんでもない発言だが、A組からすれば日常茶飯事だ。しかし、他の人はそうもいかない。一人の生徒が、前にやってくる。紫髮の男子生徒だ。

 

「ヒーロー科だから、ヴィランに襲われて返り討ちにしたからってちょっと威張りすぎじゃないか?」

 

「あァ?なんだオマエ?」

 

「俺は普通科だ。知ってるか?成績優秀な生徒は場合によってはヒーロー科に編入出来ることもあるらしい。見物だよ、どんなやつがいるのかなって」

 

「ふん!」

 

 そう言うと、爆豪は教室前の廊下にたむろしている生徒達を押し退け帰っていった。

 




書こうという状態にならなかったので、全然書けてませんでした…

これから少しずつ書いていくつもりです!


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26話

久しぶりに更新〜!!


 

 体育祭当日になった。今は入場口前で待機中だ。体育祭の会場はドーム型になっており、観客は、ざっと一万人は収まる広さになっている。もう、このスケールには驚かないぞ。

 

 「HEY!!リスナー諸君!!今日は待ちに待った雄英体育祭!!準備はOK!?それじゃあ早速、選手入場だ!!カモン!!!」

 

 プレゼントマイクの入場コールが掛かった。俺たちは入場口へと歩いていく。だんだんと前が明るくなり、一瞬明暗の差に目が追いつかなかったが、そんなもの吹き飛んでしまうほどの歓声が響く。

 

「まずは開会式だ!」

 

 開会式が始まる。こういうイベント前の式ってちょっとワクワクするよね。いつもの朝礼とかは面倒くさいんだけどさ。気づくと校長のちょっと長い話も終わって、選手宣誓だ。

 

「選手代表、爆豪勝己君、前へ」

 

 呼ばれた爆豪が壇上へ立ち選手宣誓を始める、筈だった。しかし流石というべきか、爆豪はとんでもない爆弾を落としていった。爆破の個性だからかな?

 

「せんせー、俺が1位になる」

 

「えー!?何言ってんだ!?」

 

「ふざけんな!選手宣誓ぐらいちゃんとやれ!」

 

「何してるんだ!?」

 

「何やってんだお前ェ!」

 

 B組や観客から当然のようにブーイングが殺到する。

 

「うるせェ!モブ共!!精々俺の活躍に貢献するんだな!!」

 

 ブーイングに、さらなる暴言を浴びせる爆豪。ブーイングしてた人達もびっくりして、一瞬声が止まったように思えた。

 

「おうおうOH!威勢が良いな!爆豪!だけど、威勢だけじゃいけねぇってのは分かるよな!?これから始まる雄英体育祭の結果で示さねぇと口だけ野郎になっちまうぜぇ!?」

 

「言われなくても分かってらぁ」

 

 爆豪が壇上から降りる。後はもうあれよこれよという間に、気づいたら第一種目の開始前になった。

 第一種目は障害物レース。競争というがその距離は1キロなんてものじゃない。結構な距離を走ることになる。そして、この第一種目が大きな足切りとなるようで。

 

「HEY!!リスナー諸君!!これから、第一種目、雄英障害物レースについて説明するぜ!!障害物競争は分かるか!?文字通り、障害物を避けてゴールを競う競技だ!だが、それだけならフツーの障害物競争!雄英は一味、いや七味違うぜ!!ルートには各ステージが設定されていて、それぞれ障害物のギミックが設置されてる!詳しく解説するのは野暮ってもんだから!実際にリスナーの目で確かめてくれYO!!それじゃ、雄英体育祭第一種目、雄英障害物レース始まりだ!!」

 

 ヒーローの現場によーいドンはない。以前、プレゼント・マイクが入試で言っていた言葉だ。他の皆も分かっているのだろう、一斉に動き始める。第一種目が始まった。

 




お久しぶりです。
最近、他作品がモチベ高まっており、全く更新できてませんでした…。
これから、本当に不定期ではありますが更新しようと思いますので、気長にキリンのように首を長くしてお待ち頂ければと思います……。


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27話

 

 

 障害物レースが始まった。正直、空を飛ぶことの出来る爆豪か俺のどっちかが一位じゃないんか?なんて考えているとそう簡単にいかないことを思い知らされた。

 

「エナドリ!お前も飛べるのは知ってんだよ……!吹き飛べ!!」

 

「はぁ!?!?」

 

 想定外のアクシデントは2つあった。1つ目は爆豪が開始早々に俺の妨害をしてきたこと。そして2つ目はその対応で、轟の氷結をモロに喰らってしまったことだ。

 

「ハッ!防御に夢中で足元がお留守になっちまったみてぇだな!」

 

「悪いな、絵音。今回はちゃんとやらなきゃいけねぇ理由があるんでな。妨害させてもらった」

 

「おいおいおい!絵音ばっかに集中してよぉ!オイラたちは眼中にないってか!?」

 

 峰田が叫ぶ。周りを見渡すと、俺以外のA組は全員が轟の氷結を回避して先に進んでいる。

 

 俺は他のA組に追いつかなければいけない。氷を破壊し、エネルギーを溜める。エネルギーの循環……イケる!

 

「エネルギードライブ!」

 

 今回は、飛ぶこと以外にエネルギーは使わない。さっきみたいな妨害は避けて進んでいく。

 

 低空飛行で、ルートを翔ける。目の前には入試の際におじゃま虫として存在した、0ポイントのヴィランマシンが何台か。既に1台は轟によって破壊されているようだった。こちらを妨害しようとしているが、特に問題なく躱して先へ進む。

 

 そして、地面へ着地し、今度は足で駆けた。実は、エネルギードライブによる飛行は燃費が悪い。もっと燃費良く長持ちするように改良していかなければ、空を飛ぶだけでガス欠になってしまう。これは今後の課題だ。いずれは基本空中機動が出来るようになりたい。コスチュームにも工夫が必要かもな等と考えていると今度はロープが伸びる崖エリアに到着した。爆豪や轟は既に最終エリアに向かっている。このままだとアイツらにも負け、足切りになってしまう……。それはだめだ!!

 

「エネルギードライブッ!!」

 

 ロープなんて関係なしに、先へ進む。崖エリアも終盤に差し掛かる時、最終エリアで大爆発が起こった。一瞬ヴィランかと思ったけど、爆豪がしでかしたのか、それともギミックか何かかと気にせず進む。先に進んで答えがわかった。誰かがわざとこの地雷に引っ掛かったのだ。最終は地雷が点在する地雷エリアだった!だけど、何のために?その答えも直ぐにわかることになってしまった。一位がゴールしたからだ。

 

 一位は轟でも爆豪でもなく、緑谷だったという。1位が出たことを知った俺は、後先考えるのは少しやめて飛ぶことに全力を出した。

 

 障害物レースの結果、俺の順位は4位だった。

 



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28話

 

 

 障害物レースが終わり、次の種目は騎馬戦だった。レース順位に応じたポイントを全員分足したはちまきを取り合うんだけど、1位の緑谷はなんと、1000万ポイントという、文字通り桁が違う数字で驚いたものだ。そんな騎馬戦だが、俺はなんとか決勝戦まで残ることが出来た。決勝は個人トーナメントだという。こういう展開、ワクワクするなぁ。

 

 しかし、勝ち抜いた上で尾白はなぜ決勝戦を辞退したのか。そう、尾白や青山がいるチームは決勝に進んだにも関わらず、チームの内半分が辞退するという結果になってしまった。ま、それぞれ事情があるんだろう。

 

 

 

 あっという間に決勝が始まった。最初は緑谷と、普通科の心操という人の対決で、緑谷が場外に出るかと思ったが、すんでのところで留まり、最終的には背負い投げにて決着だった。結構危なかったのでヒヤヒヤしてしまった。

 

 

 そうして、どんどんと試合が進むにつれてついに俺の番になった。俺の最初の相手は青山だ。

 

「青山優雅ァ!個性はネビルレーザー!!ヘソからレーザーをだすぞぉ!そして、もう一人は絵音流義或ァ!個性、エナジー!エネルギーで戦うぅ!さぁ、二人共、悔いの残らないようになぁ!プルスウルトラ!!」

 

「ヘイ!エネ君、僕のネビルレーザーにヤラれても怒らないでねッ!」

 

「はーいはい、そっちこそ同じクラスだからって遠慮はしないぞ、勝ちに行く」

 

 青山がレーザーを発射した。そのレーザーを避け、こちらも、エネルギーピストルを撃ち込む。まずは遠距離で様子見か、という風に錯覚させるのが俺の目的だ。遠距離メインの青山は遠距離戦になれば有利になるのは自分だと考えるだろう。その油断、隙を一瞬で突く。ステージはエナジーとレーザーの弾幕でキラキラと光っている。青山は「トゥインクル!」なんて言っているが、そろそろか?

 

「キラキラ!キラキラが止められないよ!!」

 

「油断してんなよぉ!」

 

 体内で巡らせていたエネルギーを一瞬解放し、瞬きの間に、青山の懐に入り込む。

 

「えっ!そんなスピード……!」

 

「飯田と一緒だ、武器はとっとかなきゃな。エネルギースタンプ!!」

 

 青山がレーザーを放とうとする前に、エネルギーを前方に押し込むようにして放出する。そのエネルギーの赴くままに、青山は場外へと飛んでいった。

 

「青山場外!!勝者は絵音!!絵音流義或!!!ちょっと眩しかったけど、全体的にキラキラしてて、見栄えは良かったぜ!!二人共ありがとな!!」

 

 俺は場外で尻もちをついている青山の元へ向かい、手を差し出す。

 

「ありがとう、青山。お前の分まで勝ち進むよ」

 

「モチロンさ!僕の分まで輝くんだよ!!トゥ」

 

 青山が何か言おうとしていたが、手を掴んで引っ張りあげたので、途中で止めてしまった。

 

 

 

 



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29話

 

 

 青山との試合が終わり、次の試合相手も決まった。次はB組の塩崎茨という女子だ。さっき上鳴との試合を見ていたが、あの髪の毛は凄かった。電気を通さない程の物量で、あっという間に上鳴を戦闘不能まで追い込んだから……(上鳴が放電しすぎてアホになっただけとも言う)。

 

 とにかく、あの髪の茨は脅威だ。某ゲゲゲみたいに、使いすぎると無くなって頭がツルツルになるみたいなことは恐らくないだろう。限度があるとしてもツルツルなんて女子は絶対に嫌だろうから、ある程度の制限はしているだろうと予想する。

 

 そんなことを考えている内にあっという間に試合開始時間になった。待合室からステージまでの道のりを歩いていく。すると、エンデヴァーと緑谷が何か話しているのを目撃した。しかし、開始時間ギリギリだったので話は全然聞けず、そのままステージへ向かった。それに、聞き耳を立てて良いような雰囲気でもなかった。

 

 ステージに入ると、向かいには塩崎。茨を少し動かしていて、準備は万端のようだ。

 

「さぁ、次の試合は先程輝かしい試合をした絵音と、上鳴の電気を完封した塩崎の対決だ!!二人共盛り上がる試合期待してるぜ!?レディゴー!!!」

 

 最初に動いたのは俺だった。相手に向かって真っ直ぐ進む。もちろん、エネルギードライブを使用しての速い移動だ。

 

「その個性は長引けば厄介そうだ!早めに終わらす!!」

 

「反対に、あなたの個性はパワフルで短期決戦に向いていそうですね。ですので、急がず行きましょう?」

 

 塩崎の茨が、まるで波のようにこちらへ向かってくる。おれはその波を躱さず、新技にて対応する。

 

「その茨を切り裂く!!エネルギースラッシュ!!」

 

 エネルギードライブを発動しているため、通常より強力なエネルギーを使用できる。このぐらいの茨波なら問題なく切断できる。

 

「女子の髪を切り裂くなんて、なんて罪深い人……。おお、神よ許し給え」

 

 しかし、切断されたからなんだというように、ドンドンと茨がこちらに押し寄せてくる。そのため、今回は攻撃せず、普通に躱すことにした。

 そして、その判断は正解だったと今なら言える。

数秒前にいた場所の地面から大量の茨が突き出してきたのだ。そのままそこにいたら、あっという間に雁字搦めで茨に確保されていただろう。油断ならない相手だ。

 

「おいおい、アッブねぇじゃん……」

 

「今のを避けますか……それなら!」

 

 

 塩崎は茨を左右から同時に展開し、こちらへ向かわせている。俺はその間を通り、塩崎に近づこうとするが、新たな茨が邪魔をして中々近づくことが出来ない。

 

「厄介な茨だ……」

 

「褒め言葉として受け取りましょう……」

 

 

 



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30話

 

 

 状況は拮抗していた。近付こうとする俺と、近づかせまいとする塩崎。エネルギードライブでの高速移動も、全面に展開される茨で妨害されてしまう。このままでは、茨の限度が不明な塩崎が有利だろう。それに気を抜くとあっという間に茨に絡め取られてしまうだろう。

 

「埒が明かないな」

 

「ええ、降参されてもいいのですよ」

 

「んなわけ!」

 

 ダメ元でエネルギーマグナムを撃ってみるが、全ての茨を貫通するほどではない。 

 

「クソっ!」

 

 エネルギードライブ中は、エネルギーを体内で循環させ、運動能力やエネルギーの生成量も増幅される。しかし、使いすぎるとスタミナ、いやエネルギー切れになってしまうので注意が必要だ。現状のエネルギー消費は5割程だろう。ずっとエネルギードライブを使用しているのはキツイことが分かった。

 

 しかし、俺の個性はまだまだ発展途上である。この状況を打開する技、もしくは策を思い付けば……

 

 ふと、策を2つ閃いた。1つは圧倒的なスピードで背後を取り制圧。騎馬戦で飯田が使っていた技みたいな物をぶっつけ本番で使用するイメージだ。しかし、今まで伏せていた飯田の技と違って、俺の技は精査もしていない思いつきの技である……いや、割と今まで思いつきでやって来てたな、ならいけるか。

 

「クライマックスにしようか、塩崎」

 

「負けを認めるんですか?大丈夫です、その敗北を神はお許しになるでしょう」

 

「そのセリフ、すぐに返してやるよ」

 

 エネルギードライブは、中長期で使えるように調整した状態だ。エネルギードライブ時のエネルギー循環を大体40とすると、今回は、その倍80程で試してみる!

 

 今までの倍のエネルギーが身体を巡る。身体の中を循環するだけの筈が、そのエネルギー量から体外に弾き出されている。そして、体の熱が高まり、気分も高揚してきた。今なら轟や爆豪にも勝てる気がする!そうだ、この状態もちゃんと名前を付けておこう。エネルギードライブよりも更に身体に循環するエネルギー量を増やしたこの状態……

 

「エネルギーフルドライブ!トバスぜ……」

 

「すこしバチバチしてるからって!……!?」

 

 飯田には少し劣るが、それでも圧倒的なスピードだったのではないだろうか?塩崎が茨を展開しようとした瞬間には背後を取り、茨の大部分をエネルギースラッシュで両断。間髪入れずに場外まで塩崎を運び出すことに成功した。文字通り、間に髪が入る余地も無く、長期戦も考えていた勝負は、瞬きをする間に終わってしまった。

 

「おおっと!?絵音の姿が少し変わったかと思えば、優勢であった塩崎があっという間に場外ィ!!!焦れったい試合かと思ったら想像以上に切れ味の良い結末だったぁぁ!!!勝者は絵音、絵音流義或!!!」

 

 

 

 やった、2回戦も勝った……!!これは優勝も夢じゃないな、なんて考えていると

 

「負けてしまいましたか……。まだまだ進めると思っていたのですが……」

 

「あぁ強かったよ、とんでもなくね。でも、俺は試合中に進化した、してみせた!ま、失敗したらフツーに負けてただろうけど」

 

「土壇場って事ですか?」

 

「そのとーり!!」

 

「フフ、さっきまで試合してたとは思えないくらい元気ですね」

 

「だろ?それが俺の個性、エナジーさ」

 

 




ヒロイン……塩崎にしようかな……


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