佐藤和真“英雄化”計画【未完】 (大淵 蒼夜)
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異世界編
プロローグ


回想を考えている内にだんだんと話が広がっていったので大幅に改造しました。
和真が引きこもったのは中学校3年の夏とし、そこから転生する高校2年生までの約二年間を仮面ライダーマギとしての物語としてます。
日常回と戦闘描写は作者の実力の都合で無くなりました。他にも書かないといけない場面が多数存在しますが実力的と時間的な限界から存在しません。

それでも良いという方のみ読んでください。お願いします。


 

 

 

 

 

 

 

 その日、天界の上層部に一枚の企画書が提出された。

 

 それは魂を送還し、来世へと送り行く冥府の女神 オーレギオンが提出したもの。

 

 それはゆっくりだが確実に破滅へと向かう世界を救済する企画。

 

 それは1人の少年の人生をねじ曲げる提案。

 

 そう、ここに『佐藤和真“英雄化”計画』が提出された。

 

 

 

 

 

 

 

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 目が覚めると俺は、見渡す限り真っ白な部屋にいた。

 

「佐藤和真さん、ようこそ死後の世界へ。あなたはつい先ほど、不幸にも亡くなりました。短い人生でしたが、あなたの生は終わってしまったのです」

 俺は唐突にそんな事を告げられた。

 

 突然の事で何がなんだか分からない。

 俺は重症を負ったのか? それは死ぬほどだったのだろうか? そんな疑問を胸に抱きながら、俺に人生の終了を告げてきた相手を見る。

 

 部屋の中には小さな事務机と椅子があり、相手はその椅子に座っていた。

 

 目の前の彼女も俺が前に出会った女神を自称する女と同じ様な美貌を持っている。潔く柔らかな印象を与える透き通った水色の長い髪。きっと、水の女神かなんかだろう。

 

 外見上の年は俺と同じくらいだろうか。 外見は完璧で、淡い紫色の羽衣とゆったりとした水色の服に包まれている。内面はどんなもんかわかったもんじゃないが…。

 その女神は、透き通った水色の瞳で状況が掴めず固まったままの俺をじっと見ていた。

…………俺は先程までの記憶を思い出す。

 

 

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 仮面ライダーとして最高のハッピーエンドを掴み取った俺はライダーとしての力を失い、一般人として生活していた。

 

 そんな時、3DSをいじりながら俺の前を歩いていた女子中学生が、信号が青になったのを確認して、そのままロクに左右も見ずに横断歩道を渡っていった。

 

 そんな女の子の横に迫る大きな影。それは、高速で迫る大型トラックだった。

 俺は、頭で考えるよりも先にその子を突き飛ばしていた。そして………

 自分でも不思議なくらいに落ち着いた心で、目の前の美少女に静かに尋ねた。

 

「.....一つだけ聞いても?」

 

 俺の質問に女神が頷く。

 

「どうぞ?」

 

 大切な事だった。情けないことに、トラックに轢かれる寸前に気を失ってしまったのだ。ライダーとしての力を失って、気が弱くなっていたのだろうか。命をかけて助けに入って、間に合わなかったなんて悔し過ぎる。

 

「あの女の子は。……俺が突き飛ばした女の子は、生きていますか?」

 

「ええ、生きていますよ? もっとも、足を骨折する大怪我を負いましたが」

 

 良かった……。

 女の子は怪我はしたが、無事命は助かったようだ。

 ほっとした様子の俺を見た女神は、小首を傾げた。

 

「まああなたが突き飛ばさなければ、あの子は怪我もしなかったんですけどもね?」

 

「……は?」

 

 この女神なんつった。

 

「あのトラックは、本来ならあの子の手前で急カーブをして誰もいないところに追突して止まったんです。物理法則を完全に無視したあり得ないくらいの急角度のカーブをして。つまり、あなたはヒーロー気取りで余計な事したって訳です。……プークスクス」

 

 落ち着け。こいつは仮にも女神だ。俺が生前に大切な仲間に出会えたのもこいつの同僚のおかげなんだっ! だから、何を言われようと……

 

「……つまり、俺はの死因はトラックに轢かれて死んだって事か。」

 

「轢かれて死んだ? いえ、トラックはあなたに当たる寸前でかわしたので、トラックには轢かれてませんよ?」

 

 …………え?

 

「あなたはトラックに轢かれそうになった恐怖で失禁しながら気を失い、近くの病院に搬送。医者や看護師から処置を受け、目を覚ますまで病院のベットで寝かされて………」

 

 女神は耳を塞いでいる俺に近寄ってくると、にまにまと笑みを浮かべながら、わざわざ俺の耳元で、

 

「病室のベッドに寝かされていた所を、病院で有名なドジッ子看護婦が、本来絶対に間違っちゃいけない系の薬を、点滴待ちしていた他の患者と間違えてあなたに……」

 

「あ…」

 

「あ?」

 

「ァぁぁぁあああ! 嘘だぁぁああ!! これでも俺、仮面ライダーだったんですけど! 世界救ったんですけど! そんな情けない死に方ってあんまりだろおおおおお!」

 

「はぁ?あんた何言ってんの?」

 

「あんたみたいな死に方をした奴があの仮面ライダーなわけないでしょ。バチが当たるわよ。ほら、謝って!。謝ってよ!。仮面ライダーの名前を汚した事を謝ってよ!!」

 

 確かに俺は、神造の仮面ライダーだ。神々によって物語のレールを敷かれ、その上を途中までは走り抜けてきた自覚がある。こんな俺が仮面ライダーを名乗って良いのかと自問自答した時期もあった。

 

 それでも仲間に支えられて、凶悪な黒幕を倒して、最高のハッピーエンドを掴み取った。

だが、この扱いはなんだ?おかしくないか?

 

 いや、それとも俺は仮面ライダーにならなくともこの運命によって異世界転生していたのか?俺は神によって人生を歪められたが、死後は少なくとも悪いようにはしないと聞いていた。

 

「話が違うじゃねぇかぁぁあ!!」

 

 絶叫しながら、何故俺が仮面ライダーになったのか、どんな軌跡を歩んできたのかを思い出していた。

 

 

 そう、あれは確か俺が中学三年の夏休みの最終週。東京都の秋葉原に初回限定版特典付きのゲーム『M○F』を買いに行ったことで始まったんだ…………。

 

 

「…………さて、私のストレス発散はこれくらいにして──────」

 

 

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 照りつけるような日差しの中、俺は前から欲しかったゲームの初回限定版。限定CDが付いた『M○F』を秋葉原に買いに来ていた。

 

「ふぅ、やっと買えたぜ」

 

 並ぶこと8時間、店の開店前から列び、見事初回限定版を手にいれたのだ。

 店の前にはまだ長蛇の列ができており、このゲームの人気の高さが伺えた。昨日の夜から列んでて良かったと我ながら自画自賛する。

 

「しかし、運営も酷いことするよな。初回限定版が店舗販売のみなんて……」

 

 そう、今回のゲームの初回限定版はネット販売がなく、店舗限定だったのだ。

 そのために引き籠もりを始めてから滅多に外に出なかった俺は、目当てのゲームを買うためにわざわざ秋葉原まで出てきたのだ。

 そうしてホクホク気分で秋葉原の帰っていた所までは良かったんだけど……。

 急に目の前を光に襲われた俺は、あまりの眩しさに目をつむり、光を手で遮ろうとした。そしてそのまま気を失い、気がつくとゲームの入ったビニール袋を握り占めてどこかの浜辺で横に倒れていた。

 

「なっ、ここは何処だ?」

 

 周囲には俺と同じように拉致されたのか沢山の人が横たわっていた。

 

 空はついさっき秋葉原にいた頃は明るかったのにすっかり暗くなっていた。そして、太陽が月に覆われて黒い円の回りが光っていた。うろ覚えだから確証はないけどたしか日食、それも金環日食って現象だったと思う。

 

 なぜこんなことになっているのか。取り敢えず携帯を取り出して、110番通報をしようとしたその時、

 

 地面に赤色のヒビが入っていき、周囲が赤紫色に塗り潰されていく。そして………

 

「ぐぁぁあああああああ!?」

 

 なんなんだろうか。何で俺は、こんなにも絶望しているのだろう。気が付いたら、ふとした瞬間に思い出したくもない黒歴史を思いだし、絶望の縁に立たされていた。

 

 そして、俺の体にも地面と同じような紫のヒビが広がっていく。

 

 ピシッ、ピシピシピシピシ。

 

「ウッ!?」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」

 

「あぁぁぁぁァアア!!」

 

「きぁぁああああああ!?」

 

「ヴァァァァァァァァ!」

 

 バリッ、バキバキ。ピシッ

 

 悲鳴が聞こえて周囲を見渡してみるとみんな俺と同じような状態になっている。酷い人は硝子のように砕け散っている人もいた。

 

 パキッ、パキャン

 

 そして……、俺は何を見ているのだろう。これは錯覚なのか?。いま、ひび割れて消滅した人の中から化け物、怪人が飛び出して来たような…。

 

 いや、錯覚じゃない。さっきまで周囲にいた人も怪人になってる。俺もあんな風になるのか……

 

 嫌だ。

 

 俺はあんな怪人にはなりたくない。たしかに、将来結婚の約束をした幼馴染みを寝取られて絶望したし、中二病になったときに執筆したポエムを見られた時も恥ずかしさで死にたくなった。そして、義理の妹が欲しいから離婚して女の子、それも年下の子がいる人と再婚してくれと親に言って殴られた時も…………いや、これは俺が悪いな。

 

 だが、俺は死ねない。

 

 俺は幼馴染みを寝取られ、ポエムを暴露された。しかし!俺は怪人にはなりたくない。

 

 そして、そんなことよりも!

 

 なによりも!!

 

「俺はまだ、買ったばかりの『M○F』をプレイしてないんだ!!」

 

「こんなところで化け物になって死んでたまるかぁ!」

 

 そう言った途端、未来への展望を、希望を述べた途端に俺の体の紫のヒビは修まっていった。次の瞬間、全身が光ったと思うとまたも気を失っていた。

 

 そして、次に目覚めたのも同じ浜辺だったが、空は晴天で俺以外の人は誰もいなかった。

 

 一先ず、此処が何処なのか確認しようと後ろを振り替えると、化け物がいた。そいつは喋ることもなく俺に襲い掛かってきた!!

 

 恐怖から目を積むったが、そいつは俺の前に現れた白い魔法陣に阻まれて、俺にはたどり着けたいでいた。そして、吹き飛ばされた。

 

「よく、希望を捨てずに生き残ったな」

 

 ふと、後ろから声がした。肉声のようで違う、若干だけどエコーがかかったような変な声。後ろに振り向くと、そこには白っぽい衣装に身を包んだ人が佇んでいた。

 

「お前は魔法使いとなる資格を得た」

 

「魔法…使い?」

 

 この人は、何を言っているのだろうか。魔法?そんなものあるわけが……いや、目の前で実演されてるな。さっきも変な怪人が魔法陣で吹き飛ばされてたし。

 

 この人はとりあえず、白い衣装に身を包んでいるので、白い魔法使いと呼ぼう。

 

「ファントムを倒し、パスを集める。ただ一つの道だ。」

 

 白い魔法使いが手をかざすと白い魔法陣が現れ、俺にベルトと指輪を投げ渡してきた。

 そして、そのまま何も言わずに去ろうとするので、

 

「ちょっ、ちょっと待てよ! ファントムってなんだ! あんたは俺が巻き込まれた儀式らしいモノに関わって………!」

 

 質問したのだが……無視された。やつは呼び出した魔法陣を通り抜けてこの場から去っていった。

 

「ま、マジでか………」

 

 そうして浜辺に残された俺の手には何かの指輪と、おかしな形をしたベルト。そして購入したばかりのゲームが残った。

 

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 そうして俺は魔法使いになった。使い方が解らなかったが同封されていた取り扱い説明書によって大体は解った。ベルトの名前は“マギアドライバー”ということや、指輪は“マギアリング”といって魔法使いが魔法を使うのに必須のアイテムということも知った。それ以外にも色々なことを知ったが割愛しておく。

 

 最初の頃はロクでもない使い方を考えては実行に移そうとしていた。けど、思ったように行かなかったり、失敗ばかりしていた。その度に俺は白い魔法使いに言われた言葉を思い出しては本当にこんなことに使って良いのか考えてた。その末に俺は白い魔法使いの言う通りにファントムを退治してパスを集める道を選んだんだ。

 俺がファントムを倒す正義のヒーローみたいな事を始めたのは……簡単に言えば女子にモテたかったからと、ファントムに対抗できるのは魔法使いだけと知ったからだ。

 

 この頃は地元から東京に通ってて、交通費が痛かったな。魔法使いになったから、とは言わないけど学校にも通うようになった。世界にはいろんな理由で絶望する人たちを知ったから、彼女でもない人を寝取られただけで引きこもりになのが何だか可笑しくなってきて。週に一回、東京都に出掛けてはゲートを探したり、ファントムを退治したりする日々。

 

 始めの頃はファントムの行為で絶望してファントムを生み出しそうになったゲートの精神世界(アンダーワールド)で実体化する前のファントムを始末していた。けど、俺の中にいるファントムのマギアースドラゴンは言うことを聞かないし、召喚すれば見境なしに攻撃してくるし、毎回操縦機を着けて無理矢理にでも操作しないといけなかったな。

 

 そうしている内にファントムを誕生させようとしている奴らは俺のことを煩わしく思ってきたようだった。だからか、ゾンビみたいな唸り声をあげる怪人が数人、派遣されてきた。

 

 後から知ったのだが、そいつらはファントムが魔石を使って召喚する戦闘員らしい。4種類で4段階の強さに別れている。その中でもコストが一番かからないのがページ。一番コストがかかるのがキングらしい。まぁ、コストがかかるっていっても魔石を三個程度らしいが。そいつらは正直言って雑魚だったのでたいした苦労もなく始末できた。

 

 けど、そうしている内にファントムが一人やって来た。そいつの名は愚者のオスロキ。初めて戦った実体化したファントムで、初めて苦戦した相手。能力は自分を中心とした一定効果領域内における魔法発動の完全封殺。ヤツの能力が発動した後で効果範囲内にいると変身もできないから、物凄く面倒な相手だった。幸いなことに、あいつも魔法使えてなかったけど。理由を聞いたら、

 

「お前、バカか? 俺を中心に発動するんだから、俺も効果範囲内に入るに決まってんだろ!!」

 

 と、言われた。すごい腹が立った。魔法が使えないのなら条件は同じだろ、と思って戦いを挑んだのだが、ヤツは物凄く格闘術に長けていたんだ。格闘なんてロクにやったことがなかった俺は初戦[エヘイエースタイル]の能力をなんも活かせず、何もできずにボコボコにされて敗北した。

 

 それから、幾つかの対策を立てた。奴の能力は魔法の無効化じゃなくて、発動の封殺ということ。魔法無効ではなく封殺ならまだ勝てると見込みはある。まず、封殺発動前に変身している事を前提とする。第一に不意打ちでありったけの魔法を打ち込むこと。第二に魔法で拘束して[エヘイエースタイル]の能力である【光の操作】で魔力を光弾に変換して打ち込むこと。

 

 俺は、奇襲作戦を主軸に作戦を立てたんだ。第一案は周囲に出る被害が大きすぎることから断念した。

 

 だから、やつが一人になった瞬間を狙って不意打ちで拘束魔法を仕掛けた。拘束されて不意打ちを食らった事に気が付いて能力を発動するも、もう遅し。拘束された奴にありったけの光弾を撃ち込んだのだが、オスロキのヤツは生き残っていた。

 

 そこからは魔法発動と封殺能力発動との読み合いになった。俺の魔力にも、あいつの魔力にも限界はあるし、二人とも能力にも限界がある。俺は銃、オスロキは拳を武器としてお互い魔法と能力を相手に発動させないように立ち回った。

 

 最終的には俺が[エヘイエースタイル]の固有魔法を使って〔ホー〇ーマ〇〕の様に弾幕を展開。一度発動すると最大で36万発の光弾を放てるので、間髪なく蜂の巣にできた。発動にも少量の魔力しか消費しないので扱いやすい。弾幕の展開には大量の魔力を消費するけど。

 

 ちなみに、そいつからファントムたちに俺が「宝珠の魔法使い」仮面ライダーマギと呼ばれていることを教えられた。

 

 奴を倒すと”アレフ“のパスが出現した。まるでドロップアイテムみたいだなと思ったのは印象的だった。そのパスを拾うと“ケテルマギアリング”が輝きだして、“コクマーマギアリング”が誕生した。

 

「なるほど。こんな感じで能力が強化されていくのか…」

 

 この頃から俺はファントムを生み出しそうになったゲートの精神世界(アンダーワールド)でファントムを退治するだけでなく、実体化したファントムとも遭遇して戦闘をするようになった。

 

 次に戦った魔術師のイグラムも強敵だった。

奴の人間形態の名は宮火(みやび) 晴登(はると)。警視庁捜査一課の課長だった。奴は警察の身分を利用してゲートを犯人にでっち上げようとしていた。色んな所に潜入しては偽造証拠を処分したり、警察官の洗脳を解いたりと非常に忙しかった。

 イグラムの能力は支配領域内の焔の完全支配。つまり、自分の支配する領域ならどこでも焔を出して操れるということだった。しかも、焔を操る能力以前に魔法も使ってくるし、とにかく手数が多い相手だった。焔の温度は際限知らずだし、燃焼物なくても燃えてるし、ほんとキツかった。

 

 戦法としては《コピー》の魔法で分身を複数呼び出して集団戦法を取り、分身が燃え尽きたところを不意打ちして倒した。

 

 イグラムからは“ベート”のパスを獲得して、“ビナーマギアリング”を得た。

 

 そうして学業の傍ら魔法使いとして過ごし、中学生活の終わりが見え始めてきた二学期末。

 

 ここで俺は一生涯の仲間といえるアイツ等に出会う場所、私立天津高等学校(しりつあまつこうとうがっこう)への進学を決めたんだ。

 進路で悩んでいるときに、白い魔法使いから私立天津高等学校、通称“天地校”に入学してみないかと、誘われのが始まりだっけ。東京の学校に入学したら交通費は無くなるなとは思っていたけど………。たしか、白い魔法使いから利便性を説明されて、それでも家を借りないといけない、家事炊事を一人でやらないといけないとか色々なことで悩んで渋ってたら決めたんだっけな。

 

 あれ、この流れおかしくね?なんで俺こんなにすんなりとこの天地校への進学を決めたんだっけか。

 

 白い魔法使いから誘いを受けて、それで悩んで「ちょっと待ってください」って言ってから意識がボーッとしてきて…………って、俺これ完全に意識誘導されてるな。そうか、俺がこの天地校を選んだのは白い魔法使いに誘導されたからなのか。なんかショックだ。

 

 冬休みが明けて三学期に入っても俺の魔法使い活動は変わらなかった。

 

 そうして、次に戦った相手は女教皇のブワラット。こいつは前の二体よりは苦戦しなかった。

 

 何故なら、こいつの能力は対魔法使いに特化しているわけではなく、火力が高く手数が多いわけでもない。単純にゲートを絶望させてファントムを誕生させることに特化していたのだ。

 

 人間形態の名前は富岡(とみおか) 彩妃(さき)。カウンセラーを営んでる奴だった。今思えば、その立場を利用してカウンセリングに来た人たちの個人情報を得て、仲間たちに流していたんだろう。カウンセラーであればそいつが何を希望にしているのか、心の支えにしているのか。どうすれば絶望するのか、そう言った情報が入りやすいからな。

 戦闘能力は高くなく、固有魔法を使うまでもなく簡単に倒せたが、こいつのせいで絶望した複数のゲートを救うのはギリギリだった。何せ同時にこれだけの魔法を併用したのは初めてだったからだ。《コピー》《オート》《エンゲージ》《キックストライク》《イナーブルフォトン》《フィエルザケル》……etc.

 

 何よりキツいのは巨大なファントム相手に《ドラゴライズ》を使えないことだ。だって、《コピー》で増やしてもマギアースドラゴンは増えないからな。《コピー》で増やした俺は俺と同じ動きしかしないから、《オート》の魔法で自動化しないといけないし……。

 

 ゲートを全員救い終わった後は魔力の使いすぎで昏倒して、次に目が覚めたら病院だった。どうやら俺は体調不良で倒れたと勘違いされて救急搬送されたらしい。

 

 ブワラットからは“ギーメル”のパスを獲得して“ティファレトマギアリング”を得た。

 

 中学校を卒業して春休みから東京で一人暮らしを始めた。

 そんなとき、白い魔法使いが訪ねてきた。

 毎回、思うんだけどどうやって住所を特定しているのだろう。

 どうやら頼み事をしに来たらしい。俺と同じサバトの生き残りのリオって言う少女の面倒を見てもらいたいそうだ。

 そして俺の許しを得る前にリオを置いてどっかに行った。

 それからリオと一悶着あったけど仲を深められた。あの時は美少女と同居だぁーって一人盛り上がってたっけ。

 この頃からかリオを妹として溺愛し始めたんだっけな……。

 

 私立天津高等学校に入学した直後の頃に戦った女帝のダパイルは時間操作による高速移動と強固な結界を展開するファントムだった。重力を重くする結界、業火で覆われた結界、極寒の結界など多彩な結界を高速移動で無数に展開する厄介な奴で、近接戦闘能力も高い。

 人間形態の名は沼尻(ぬまじり) 千奈里(ちなり)。塾の講師をやっていて、塾生の中からゲートを見繕っていたんだ。

 

 こいつと激突した俺は現在の能力では倒せないと踏んだ。だからマギアースドラゴンに力を寄越せと要望したのだが……。どうやら俺から直接接触したのは俺を絶望させようとするマギアゴンにとっては格好のチャンスだったらしい。

 

 俺にとってのトラウマを見せつけて絶望させようとして来た。そう、将来結婚の約束をした幼馴染みが不良の先輩のバイクで2人乗りをして走り去っていく場面を…。

 

 まぁ、今となっては彼女でも何でもないアイツのことなんてもうどうでもいいんだけどな。

 だから、マギアースドラゴンからの絶望を跳ね除け、力を更に引き出すことに成功した。それがこのとき誕生した“オソールマギアリング”だ。

 

 ダパイルからは“ダレット”のパスを獲得して“コクマーマギアリング”と“ビナーマギアリング”の繋がりの強化を得た。

 

 この戦いの後から東京都内じゃなくて、私立天津高等学校内部の生徒がゲートとしてファントムに狙われる様になって、学校内部での戦いが始まったんだ。

 

 それから女帝のダパイルによってファントムを己の精神世界(アンダーワールド)に誕生させて、なおファントムを実体化させなかった椿(つばき) 琴葉(ことは)は白い魔法使いからドライバーとリングを受け取って魔法使いとなっていた。

 

 だから、クラスメイトの椿と桜の奴に仮面ライダーだって正体がバレていたことは驚いた。しかも、椿が魔法使いになってたことも。それからそいつらと一緒に黒魔術部を創部したな。

 

 椿 琴葉(仮面ライダーアールヴ)の初陣で、黒魔術部の初陣でもある皇帝のグラン戦は厳しいものになった。だって皇帝のグランは異常に強かったからだ。絶対に椿の初陣に出会う相手じゃなかった。13個の命と、魔法を打ち消すことができる赤き魔刀「魔法殺し」を武器としていた。魔刀の弱点は右手で振るわなければ性能を発揮できないということだが、それでも強敵だった。剣術に長けているだけでなく、火の魔法も上手く、まるで小さい恒星の様な球体を放ってきたのだから。

 

 奮闘の末、撃退して“ヘー”のパスを獲得して“コクマーマギアリング”と“ティファレトマギアリング”の繋がりの強化した。

 

 それからも法則を操作して様々な物理現象および超常現象を起こす能力を持ったファントム、教皇のエクスイゼ。

 絶世の美貌で相手を魅了して我がものとし、操る能力を持ったファントム、恋人のオルファア。

 物理的、魔法的な攻撃を無効化するほどの頑丈さを持つファントム、戦車のウサンム。

 超光速機動を行い、打撃、斬撃、射撃全てを無効化する防御能力を持つファントム、力のカイレツ。

 

 それぞれを倒して“ヴァヴ”、“ザイン”、“ヘット”、“テット”のパスを獲得して“ケセドマギアリング”、“ビナーマギアリング”と“ティファレト”の繋がりの強化、“ゲブラーマギアリング”、“ケセドマギアリング”と“ゲブラーマギアリング”の繋がりの強化を獲得した。

 

 つまり、これまでに合計8体のファントムを退治したんだっけか。

 

 私立天津高等学校での戦いが始まって五ヶ月が経過した頃、つまり夏休み明けの事だ。うちのクラスに清瀬(きよせ) 快星(かいせい)ってヤツが転校してきた。驚くことにソイツは仮面ライダーで、復讐鬼だった。

 

 ファントムがよく出没するこの学校に復讐対象が現れるのではないかと、推測して転校してきたらしい。

 

 清瀬 快星(仮面ライダーイカルガ)が戦うのは復讐対象と出会う、自分が強くなるために最も効率が良いからであり、そこにゲートを救う目的や、ファントムからゲートを守るといったことはありはしない。

 

 だから快星の奴とは信念の違いから喧嘩した事もあった。最初にあった頃は俺と椿の二人で挑んでやっと戦えるくらい強かったからな、あいつ。まあ、それ以降は仲良くなれたけど。

 

 ファントムとの戦いでは椿、快星と協力して戦える様になってからは分担ができて苦戦する事もなくなったし。

 

 

 

「1つは天国的なところで────」

 

 

 

 次に、巧妙な気配遮断、消音、透明化、無臭といった隠密能力に特化し、知略を張り巡らせるファントム、隠者のソーシル。

 他者から吸収した幸運と限定的な運命操作で、自身に都合の悪い結果を回避し、自身に対する行いへの報いを受けさせるファントム、運命の輪のハノムゲ。

 相手と自身の能力がどれ程の差があろうと均衡を保てる様に自身の力が増減するファントム、正義のブ二リグ。

 優れた直感と英知、そして処刑台を武器として操るファントム、吊された男のオイスカー。

 見た相手の仮死/活性を自在に操り、全身を消し飛ばされなければどのような状態からでも復活する死神のアミア。

 

 そいつ等を倒して、“ヨッド”、“カフ”、“ラメド”、“メム”、“ヌン”ののパスを獲得して“ケセドマギアリング”と“ティファレトマギアリング”の繋がりの強化、“ネツァクマギアリング”、“ゲブラーマギアリング”と“ティファレトマギアリング”の繋がりの強化、“ホドマギアリング”、“ティファレトマギアリング”と“ネツァクマギアリング”の繋がりの強化を得た。

 

 それからも魔法使いが増えていったのは驚いたな。他クラスの沢木(さわき) 士紋(しもん)金坂(かねさか) 結捺(ゆうな)が魔法使いになったんだよな。たしか、沢木 士紋(仮面ライダーカンライ)金坂 結捺(仮面ライダーヨトン)だっけか。

 この頃からファントムは魔法使いを増やすことを目的としていることやファントムを統制する組織『フォンタスマ』があることがわかったんだ。

 

 士紋と結捺は二人とも黒魔術部所属じゃないし、同じクラスでもないから、正体を見つけるのにも苦労した。あと、ファントムに精神支配されていたから、正気に戻すのも大変だったな。正気に戻した後はなんやかんやの末に勧誘に成功して、最終的には黒魔術部には四人の魔法使い(仮面ライダー)が所属したんだっけか。

 

 そして、閃光の如き素早さと、あらゆる行動の消費エネルギーが本来の三分の一となる能力を持つファントム、節制のキギタル。

 高い身体能力を持ち激烈で、暴力的。拘束能力と精神干渉による洗脳能力、限定的な未来視による未来固定能力を持つファントム、悪魔のビサイ。

災難を起こし、落雷を自在に操り、記憶を失わせ、相手の能力と対象となる能力を獲得できるファントム、塔のアリーン

 

 こいつらを倒して“サメフ”、“アイン”、”ペー“のパスを獲得して、“イェソドマギアリング”、“ティファレトマギアリング”と“ホドマギアリング”の繋がりの強化、”ネツァクマギアリング”と“ホドマギアリング”の繋がりの強化を得た。

 

 

 そうして、『フォンタスマ』幹部、四天王と呼ばれる最強の4体と、〈切り札(ジョーカー)〉と呼ばれる1体。

 

 そいつらと戦うことになった。

 

 星のエラメドルには物凄く、苦戦したっけな。何せあいつ時間止められるからな。まぁ、流石は幹部たちだ。苦戦しなかったヤツなんていないからな。

 

 月のモンパルもとんでもないヤツだった。ヤツは非常に高度な幻術使いで、世界に幻術をかけることで虚構を事実に変えることができたからだ。その幻は実態を持ち、その(事実)に関する記憶すらも書き換えられる。ただし、違和感に感づかれると、看破されやすくなり、幻術の効果は自身にも及ぶため、たまに事実か虚構かが判らなくなる欠点がある。それでも、この幻術はコイツの固有能力ではなく、幻術を極めた先にある極致、単なる魔法の延長線上にあると言うのだから驚きだ。

 

 なんたって、現実をねじ曲げて生徒に扮し、黒魔術部に潜入してきたんだから。

 

 太陽のハーソトルは魔力減衰や体調不良といった阻害効果を与える能力と自身が望む者を創造する能力、約束された将来を具現化する能力を持ってた。

 

 審判のロナージは俺達が今まで倒してきたファントムを転生という形で復活させる能力と覚醒といって仲間の能力を向上させる能力を持ってた。そして、自分の情報を絶えず更新して何度でも復活してきた。

 

 世界のレジセアズは何でこんなに強いのってレベルで強かった。正確無比の攻撃に、相手を完全攻略するためにあらゆる弱点を見抜く能力。これまでのファントムを上回る総合的な能力の高さ。欠点という欠点や弱点が見当たらない完成されたヤツだった。

 

 激戦の末に“ツァディー”、“コフ”、“レーシュ”、“シン”、“タヴ”のパスを獲得して“ネツァクマギアリング”と“イェソドマギアリング”の繋がりの強化、“マルクトマギアリング”、“ホドマギアリング”と“イェソドマギアリング”の繋がりの強化、“ホドマギアリング”と“マルクトマギアリング”の繋がりの強化、“イェソドマギアリング”と“マルクトマギアリング”の繋がりの強化を得た。

 

 四天王のファントムを全部倒して、パスを全部集め終えた後に激突した愚者のオスロキ戦で“ダアトマギアリング”が誕生したんだっけ。

 

 〈切り札(ジョーカー)〉として甦ってきた愚者のオスロキは魔法発動封殺能力だでなく、アンダーワールだ内部のファントムにも直接攻撃できる能力を新たに獲得してた。つまり、ライダーに攻撃すると変身者と魔力の源にして相棒のファントムにダメージを与える事ができたのだ。

 

 すごい大変だった。だってマギアースドラゴンは一回殺されるし、他の皆は封殺能力で変身できなくなるし、とにかく大変だった。まぁ、勝ったけど。

 

 

 

「いい? 天国的な所ってのは───」

 

 

 

 それからは三大柱って呼ばれる『フォンタスマ』のトップ直属の配下、峻厳のフリーク、慈悲のファテイ、均衡のサンライとの戦いが始まった。そうして、最終決戦へのカウントダウンが始まったんだ。

 

 峻厳のフリーク、慈悲のファテイ、均衡のサンライは三大柱の名に恥じず今まで戦ってきたファントムよりも強かった。性格的にも能力的にも。

 

 けど、“ダアトマギアリング”の力はそれ以上で、峻厳のフリークと互角以上の戦闘を繰り広げて勝利した。他の皆も慈悲のファテイと均衡のサンライを連携技や連撃をあわせて撃退。

 

 そうして三大柱との激闘を征した直後、賢者の石を狙っていたファントムにリオを連れ去られてかけたんだ。そのファントムは何回蘇るんだと突っ込みたくなる程何回も蘇る、愚者のオスロキだった。オスロキは突如、空から現れた白い魔法使いによって撃退されたけど。そこで俺たちは白い魔法使いの正体を知った。彼は俺たちが通う学校の理事長、千明(ちあき) 誠馬(せいま)さんだった。

 彼は俺から“ダアトマギアリング”を強奪するとリオを連れて何処かへ行ってしまった。それから、俺たちは魔法を行使してリオの行方を探したが一行に見つからなかった。皆が必死で探している中で俺は若干だけど、千明のリオの誘拐を容認し始めていた。リオの体は限界が来はじめていたし、活動に必要な魔力量も段々と上がってきていた。だから、リオを救うために、千明を信用しようとした。

 

 そんな時、俺たちの元に愚者のオスロキが訪ねてきた。リオを失った元凶の一人に一触即発の雰囲気になるもオスロキは戦うつもりはなく、交渉と説明に来たらしい。

 

 そして彼は俺たちに千明さんはリオの父親であることその目的と計画を話した。元々、私立天津高等学校は千明 誠馬(白い魔法使い)の実験のための箱庭だってこと、私立天津高等学校にゲートが多いのもそれが理由だったらしい。

 千明 誠馬(白い魔法使い)は娘を蘇らせるためにサバトに俺を含めた複数のゲートを生け贄にして引き起こしたが、失敗。そのサバトを生き延び、セフィロトの宝珠に適合した俺に希望を見いだした千明 誠馬(白い魔法使い)は俺と言う存在を使って魔法使いの量産と“ダアトマギアリング”の完成を目指した。

 それが今までファントムたちと繰り広げてきた戦いの真相。量産した魔法使いを人柱とし、ダアトマギアリングを使うことでリオを完全に蘇らせるためにこのファントム対魔法使いの構図を作り上げたようだ。

 

 その事実に俺は愕然とし、今まで信じて戦ってきたモノが、これまでの出来事が全て誠馬さんの策略の内であったと気付く。

 愚者のオスロキは賢者の石を手にいれることが目的で、そのために協定を結びに来たらしい。俺たちはリオを手放す気はなかっため、その協定を拒否しようとしたが快星の提案で受けることにした。誠馬さんとの戦いのあとで賢者の石を巡って争った方が堅実的で確実だから、と理由を聞かれた快星は答えていたが本音はどうかは今では分からない。

 そのあと、協定を結んだ愚者のオスロキは「お前たちには攻撃しない」とだけ言って帰っていった。

 リオがいなくなってしまう、その事に絶望して話を聞いた直後は失意に溺れてリオのためなら人柱になってもいいかもな、って思っていた。けど、そのサバトで無関係の人たちまで犠牲になることを知った。仲間にも諭されて俺はサバトに、賢者の石に頼らないリオの蘇生方法を見つけ出そうと誓った。

 

 改めて全力でリオを探していると、オスロキを消滅するために躍起になり、リオの監視を千明が疎かにしたことで、屋敷から抜け出せたリオと公園で再開した。

 俺は姿を見るとリオにかけよって、見たがその体は魔力が尽きかけて限界を迎えていた。俺は彼女の延命のために魔力を渡そうとしたが拒絶されてしまった。

 そして彼女はおれに“ダアトマギアリング”を託して意識を失った。

 俺は急いで彼女を連れ帰ろうとしたのだが……リオが千明さんのもとから逃げ出すのも折り込み積みだった様で、俺たちが再開したこの場所で第二のサバトが始まった。

 

 けど、前から準備をしていたのかサバトは絶望させる旋律の影響を受けない快星と士紋の手で阻止された。

 

 そうして迎えた誠馬さんと最終決戦だと思っていた戦いでは、誠馬さんには勝利したけど、誠馬さんは愚者のオスロキに殺されてしまうし、リオは賢者の石を抜き取られて消滅してしまった。

 

 その後にオスロキと激闘の末に賢者の石を取り返したけど、リオは復活を望まなかったからそのまま消滅してしまった……。

 

 そうしてファントムを統率する組織はいなくなり、平和が訪れたと俺たちは思っていたが、全くそんなことはなかった。ファントムの残党を倒していくうちに、ファントムの数がこれまで以上に増えていること、そしてこれまで以上に強くなってきていることに気がついたからだ。

 

 高宮(たかみや) 聖夏(ひなつ)神野(かの) 叶恋(かれん)がファントムたちの新組織『ミズガルド』を率いて現れた時は驚愕した。それからはそいつらと戦いながら、ファントムを打ち倒していった。

 

 『ミズガルド』の本拠地まで高宮 聖夏(仮面ライダーテイタン)神野 叶恋(仮面ライダーオリス)を追い詰めて、挑んだ決戦では無事、二人を倒すことに成功した。

 

 これから聖夏と叶恋を話を聞こう、というときにヤツらは現れたんだ。そいつは自分のことを全てのファントムの父“ルシファー”、長男“鴨志田(かもしだ) 龍之介(りゅうのすけ)”と名乗った。そうして、

 

「ああ、そうか。お前さんたちは知らなかったのかい。高宮 聖夏と神野 叶恋は幻造人間で、俺達が計画のために造り上げた道具なんだよ。短命だから、お前たちが何をしようともうすぐ死ぬんだよ。」

 

そう俺たちに告げてきたんだ。あと、二人は用済みであるから、好きなようにしろ。そして、お前たちはいい御飾りだった、いい操り人形だったと伝えてくれと。

 

 

 

「だからね、そういう若くして死んだ人たちを─────」

 

 

 

 そして、俺たちに感謝の意を告げてきたんだ。今まで俺達の思い通りに動いてくれてありがとうと。そこで、俺たちは衝撃の事実を知った。

 

 “セフィロトの宝珠”と呼ばれる最善の魔宝石を使ったマギアリング。“クリフォトの宝玉”と呼ばれる最悪の魔宝石を使ったマギアリング。その両方があいつらの計画には必要だった。誠馬さんも鴨志田とルシファーの奴に利用されて、セフィロトの宝珠を磨きあげる研磨剤として使われたんだ。つまり、誠馬さんとの戦いはセフィロトの宝珠を完成させるためのモノで、全部鴨志田の手の内だったんだ。

 

 そして俺たちは鴨志田に教えられて、『佐藤和真“英雄化”計画』という神々の計画によって敷かれた物語のレールを走り抜けてきた事を知った。そして、鴨志田たちはその物語を破壊して、自分達のモノにするために動いてきたことも。

 

 あいつらが神々に叛逆しようとしてたのも自分達が使い捨ての道具じゃないということを思い知らせてやろうってのが根源だったしな。

 

 

 

「あれ? ちょっと────」

 

 

 

 自分のしてきた事が全ての誰かの手の内で、自分達の掴み取った結果だと思っていた事は全部、予定調和だったって知ったときはキツかった。

 

 そして、自分も世界が滅ぶ理由の1つとなっているってのは絶望したな。確かに、俺という存在がいなければ神々は『佐藤和真“英雄化”計画』なんてモノを実行どころか発案すらしなかったのだから。

 

 鴨志田たちは魔宝石の世界を基点としてセフィロトの宝珠とクリフォトの宝玉を使って世界を侵食してファントムの世界へと作り替えようとしいたんだ。そうして増やしたファントムを自ら取り込み、ファントムの神となって神々に叛逆する。これが鴨志田たちの計画の最終目標だった。

 

 教えられた真実と厳しい現実に絶望して自問自答している俺たちを完全に無視して、絶望へのカウントダウンは進んでいたんだ。そう、既にあいつらの計画は最終段階に移っていたんだ。

 

 始まりはなんだったか。2月が過ぎても冬が終わらないことか。南半球で夏の気候が一夜にして冬の気候に変わったことか。

 

 そして、太陽と月が文字通り物理的に消滅したことか。

 

 気づいたときには遅かったんだ。

 

 そう、俺たちがどんな手を打ったとしても取り返しのつかないところまで、事態は進行していたんだ。

 

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

『昨日、N〇SAは緊急会見を開き、太陽と月が物理的に消滅したことを正式に発表しました。NA〇Aは原因究明を急いでいますが………』

 

 静かな黒魔術部の部室にテレビの音だけが響く。

 

「和真、不味いことになったな。」

 

「ああ。きっとあいつらの、鴨志田たちの計画が最終段階を迎えたんだ。」

 

 快星と俺の言葉が響くこの部室。今現在、学校は臨時休校だ。いや、冬が続く異常気象や太陽と月の消滅によって政府をはじめとした公的機関は混乱している。日本だけじゃない、どの国も混乱状態だ。そのうち、電気消費の削減とか言って、テレビも映らなくなるどころか、テレビ局自体が無くなるだろう。

 

「ねぇ、和真君、快星君。私たちで何ができるのかな」

 

 唯一の救いは太陽が消滅したにも関わらず、気温が低下していないことか。これは、ファントムを生み出す為に必要な人間を絶滅させるためにはいかないからだろう。

 

 こんな異常事態なんだ。鴨志田とルシファーの計画を阻止しに行かなければならない。

 

「決まってるだろ。そんなこと。鴨志田とルシファーの奴を止めにいくんだよ。」

 

 そうだ、この絶望を招いたのは俺なんだ。だから、その責任は俺がとる必要がある。例え俺がどんなことになろうとも、責任は果たさなければ……。

 

「そうだな。それは確実だろう。しかし、どの様に動き回るのか作戦を立てる必要がある」

 

「何よりも、今は俺と和真と椿の3人しか揃っていない。まずは他のメンバーが揃うのを待ちながら、情報を精査をしよう」

 

「これが今現在の俺が調査した資料だ。急造だから、見にくいところがあるかもしれんが。それは我慢してくれ。」

 

 そう言って、快星は懐から資料を取り出した。

 

「マジかよ、快星。お前、いつの間に……」

 

「お前が腑抜けている間にだ。和真、例えお前が造られた英雄だとしても、俺たちが出会ったのは計画があったからだ」

 

「まず、周知の事実だと思うが太陽と月が消滅してから異様な魔力が満ち溢れるようになった。」

 

「これは日本上空に展開された魔宝石の世界“ユグドラシル”によるものだ」

 

「ユグドラシル?」

 

「ああ。名前の由来もあるが、それ以外にも重要なことがある。」

 

「まず、今までにない奇病が流行している。ファントムの影響ではないのに全身に紫のヒビが入る病気だ。そして、ここが一番重要だ。国連軍がファントムと戦っている。」

 

!!!!!!

 

「やつらはどうも最初は魔力を使わない攻撃でも倒せる特別製のファントムを投入したらしい。だか、普通は魔法を使わなければ倒せない。特別製のファントムを倒し終えて快進撃を見せる国連軍の前に通常のファントムを繰り出して絶望させる算段だったのだろう。」

 

「見事に成功し、ファントムは無数に誕生。もう、すでに国連軍は敗走し始めている」

 

「そして、俺が魔宝石の世界をユグドラシルと名付けた理由だが……攻め混んできたファントムの名前や姿が北欧神話に登場する神獣や神に瓜二つだからだ」

 

 

 

『きっ、緊急速報です。げ、現在、未確認、せっ生物と交戦中だった、自衛隊を含めた………各国の……連合軍は……ざっ惨敗……………』

 

『も、もう間も無く日本にも攻め込まれると思われます!!』

 

 この時、俺たちは悟ったんだ。この世界は終わったんだと……。

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

 

 黒魔術部のメンバー全員が揃い、作戦をたてた俺たちは、答えを得ないまま、あいつらの計画を阻止するために、更なる被害を食い止めるために仲間たちと共に戦いに挑んだ。

 

 

 金坂 結捺(仮面ライダーヨトン)は大阪で白銀の大狼のファントムが率いるファントムの軍隊と激突。

 

 沢木 士紋(仮面ライダーカンライ)は猛毒を持った竜のファントムとの激戦。

 

 神野 叶恋(仮面ライダーオリス)は冥府の犬のファントムとの戦い、高宮 聖夏(仮面ライダーテイタン)と終わりの笛を鳴らすファントムと戦いに挑んだ。

 

 椿 琴葉(仮面ライダーアールヴ)は世界を焼き尽くすファントムと戦う。

 

 (仮面ライダーマギ)清瀬 快星(仮面ライダーイカルガ)はユグドラシルへと侵入するも、読まれていたらしく、清瀬 快星(仮面ライダーイカルガ)はそこで待ち構えていた幹部と激突する。

 

 (仮面ライダーマギ)はユグドラシルの深奥で、鴨志田龍之介、ルシファーと激突する。

 

 それぞれが強敵に苦戦し、一度は負けかけた。苦しい展開が続く戦いの最中、何度も訪れるピンチの中で、相棒たちや仲間たちの支えを思い出してそれぞれの答えを出した俺たちは相手を撃破した。

 

 

 

「ねぇ、聞いてる?───」

 

 

 

 しかし、撃破したのは俺だけで、仲間たちは皆、敵と相討ちするか、善戦の末に敗北していた。

 それを知らずにユグドラシルで快星と別れを済ませてユグドラシルから人世界へと帰ってきたら、滅んでたからな。世界。生き残った人たちは少なく、統率を失ったファントムの残党が跋扈していた。あの時はすごい悔しかったし、悲しかったし、負の感情が溢れまくってたな。

 

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

 仲間を探して日本中を駆けずり回り、どこを探してもアイツらがいないことに絶望した。

 

 そんなときに、4人の女神を自称する美少女、美女がコンタクトをとってきた。そいつらは『佐藤和真“英雄化”計画』のメンバーで、計画を実行する神々をまとめる会長と副会長らしい。そいつらは自分のことを「冥府の女神 オーレギオン」「時の女神 ディア」「空間の女神 ルキア」「相反の女神 ラティナ」と名乗った。どうやら世界が滅亡しかけるのは神々にも想定外だったらしい。「オーレギオン」曰く、

 

「すまなかったな。正直に言うと、この計画は天界の上層部のみが知る極秘なんだ。だから、世界がこうなるのは困るんだ。他の神に計画が露見してしまう。だが、私達の手で世界を修復する、と言うわけには行かないんだ(まぁ、長い時間をかけて干渉していけば修復は可能なんだかな。だが、それでは計画の成功には至らない。英雄にはこれくらいの困難は乗り越えてもらわなくては……)」

 

だから、

 

「一度創ったモノを壊すのは楽だけど、改編するのは大変なんです。ちょっとしたミスで壊れてしまいかねませんからね。」

 

「そんな面倒なことをするのなら、改編する相手に自分で自分を改編してもらった方が楽。だから、君はこの歴史を改編のために、その起点を作ってきて。」

 

「ふぁいと」

 

 と「ディア」「ルキア」「ラティナ」に言われて、彼女たち3人の神格が持つ力をそれぞれ込めた魔宝石“金剛玉(こんごうだま)”、“真白玉(ましらたま)”、“白金玉(はっきんだま)”を貰った。自分勝手なやつらだな、コイツら!!。と思ったいたが、どうやらコイツらは人の心を読めるらしい。

 

「此方にも事情があるのだよ」

 

 俺の心を読んだ上で返答してきた。そして、心を読めるのに、俺の気持ちを無視して話を進めだした。

 

「別に悪い話ではあるまい。君はこの結末を変えたいと思っているだろう」

 

 たしかに、話から察するにこの力があれば時間跳躍、つまり過去に行ける様だ。だが、1つだけ知りたいことがある。

 

「なぁ、『佐藤和真“英雄化”計画』ってなんなんだよ。どうして俺が選ばれたんだ?」

 

「その計画は私が発案したものだ。だが、別にそれは君が気にする事ではない。そうだな、強いて言うなら世界救済のための計画で、君が適任だったから…だな」

 

「それに、君にも悪い話ではないはずだが。この計画がなければ君はあのまま不登校になり、今の仲間とも出会うことはなかったはずだか?」

 

 ぐっ。痛いところを突いてきやがる。

 

「確かにあんたたちの言う通り、魔法使いになってなければ、英雄化計画がなければ俺は引き籠もりのままで今の仲間とは出会わなかっただろう」

 

「なら、話は早いな。君は過去に跳んで叛逆計画を実行に移す前の原初のファントムとその息子。つまり、ルシファーと鴨志田を倒せばいい。これで、この世界にファントムがいたと言う歴史は消滅し、この未来もなかったことになるろう。」

 

 そうか。それでこんな未来はなくなるのか。その事にホッとした俺は…………あれ?ファントムがいた歴史がなくなる? それじゃ、

 

「それじゃ俺の、仮面ライダーマギの歴史もなくなるんじゃないのか?」

 

 そうなると、黒魔術部も仲間と出会ったこともなくなるんじゃないか?

 

「その件に関しては君が考えている通りだな。しかし、それは先の戦いで敗北した君の責任だ。それに今回の改編はこの未来を救済するためのものであって君達を助けるためではない」

 

 なっ。なんだよ!それ………

 

「君の仲間はもう既に死んだのだ。君の行いで改編された未来で君の仲間は、君とで会うことのなかった、ファントムが存在しない世界での未来を歩むことになる。安心しろ。君のことを思い出すこともないが、ファントムと戦うこともない」

 

 たしかに、俺の仲間はもう死んでしまった。それは現実からの目を背けたくてウジウジしてた俺の責任だ。ライダーの責任から逃れて籠っていた俺が原因だ。けど、俺の知る皆じゃなくなっても、俺は快星や椿たちに生きていてほしい。だから、俺は行くよ。

 

「分かったよ。俺は皆を助けるために。皆には生きていてほしいからさ」

 

「そうか。なら準備をして行くといい。なに、君の死後は悪いようにはしないさ」

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

 

 それから俺は貰った魔宝石をマギアリングに加工して、そのリングで魔法を発動。時間跳躍で過去に遡って。

 

 

 

「ねぇ、ちょっと?、あんた──」

 

 

 

 計画に移る前の鴨志田とルシファーを消滅させることが出来たんだよな。

 

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

 時間を遡っているとき、俺は今までの俺の軌跡を思い返していた。楽しかったこと、辛かったこと、皆でバカをしたこと。いろんな思い出が溢れ帰ってきた。

 その都度に俺の中には悲しみと怒りと、憎しみが貯まってゆく。時間移動を終える頃には限界まで憎悪と怒りがたまっていた。憎き仲間の仇。世界を滅ぼした怨敵。時空間を抜けた過去の世界にて、一目散に奴等の元にたどり着いた俺は、

 

 

「ルシファァァァ!!、鴨志田だあああぁぁぁ!!!、」

 

〔ガチョイン〕

 

 ハンドオーサーを右に傾けて、

 

〔ルパッチマジッ《エクスプロージョン》!!〕

 

 絶叫しながら、爆発魔法を奴らに向かって放った。

 

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

 そうして“アインマギアリング”に覚醒したり色々して勝ったんだ。

 

 思い返してもよく、鴨志田とルシファーを倒せたよな……。現代でも、過去の世界でも厳しい戦いだったしな。

 

 それから無事、歴史の改編が行われて鴨志田とルシファーの計画がない世界となった。計画によって人生を狂わされた誠馬さんと里桜の千明家や快星の清瀬家は無事に生活できていた。

 

 その代わり私立天津高等学校が無くなってたけど。まぁ、当然だな。誠馬さんは魔法使いになる必要も、実験をする必要もないんだから。

 

 その後も色々調査したけど、他の黒魔術部のメンバーがどうなったのかは解らなかった。

 学園がなくなったこともあるけど、皆の無事を確かめている途中で俺の魔力が切れたからだ。いや、正確には切れたというよりは歴史改編の影響でファントムがいない世界となったからだな。相棒のマギアースドラゴンが存在を保てなくなったのだ。あの別れはキツかったなぁ…。

 

 そうして魔法使いでない中学校生活を送り、仲間のいない高校生活の途中で亡くなって。

 

 そして、今に至るのか。

 

「ちょっと!! 何、ボーッとしてっ、え? ちょっとどうしたの? なんで泣いてんのよ? 大丈夫?」

 

 思い出に浸っていると、どうやらしびれを切らしたのか、女神が声を上げて迫ってきていた。ようだが……?困惑している感覚が伝わってくる。

 

 ふと、気づいた頬を流れる液体の感覚。どうやら俺は泣いていたらしい。この女神でも、さすがに目の前で泣かれたら女神らしく有ろうとするらしい。涙をぬぐいながら、俺は感心した。

 

「気にすんな。こっちの話だ」

 

「ふーん、まぁいいわ。そんなことより、あんた、さっきから生返事ばっかりじゃない。 絶対にきちんと話を聞いてなかったでしょ! 女神の私を放ったらかしにて良いと思ってるわけ?」

 

 前言撤回。こいつ何も変わってねぇ。

 

「なっ、少しぐらい思い出に浸ってもいいじゃねえか!!」

 

「はぁ? 何いってんの? 後がつかえてんのよ。いい? あんたみたいな面白しょうもなく死んだ人に使える時間は長くないの! あんたをさっさと案内して次の人に移りたいんだから!」

 

 こいつ! 俺を誰だと思ってんだ! 数多のファントムと互角以上に渡り合い、世界を救っ…世界をすくっ、世界救えてないな………。

 

「もう一度言うけど、あんたには三つの選択肢があるからとっとと決めてちょうだい」

 

 どうしようもないから、全部なかったことにしただけだし……。

 いやもう、話が進まないから黙っとこう。

 

「一つは記憶を消して人間として生まれ変わり、新たな人生を歩むか。そしてもう一つは、天国的な所で、永遠にひなたぼっこでもしながら世間話をする暮らしをするか」

 

 なにその身も蓋もない選択肢。しかも、天国的な所って天国的よりも地獄的なんですけど。

 しかし、赤子になってもう一度人生やりしか……。いや、まだ二つしか選択肢を聞いてない。

 

「三つ目はなんなんだ?」

 

「三つ目は異世界転生よ。」

 

 異世界転生?なんだろう、物凄く胡散臭い。まあ、他の選択肢はできるなら選びたくないし、詳しく聞いてみるか。

 

「異世界転生ってどんなのなんだ? できれば教えてくれ」

 

「えぇー。さっき話したじゃない。仕方ないわね~。いい、一度だけしか言わないからしっかりと聞いときなさいよ」

 女神の説明を要約すると、こうだった。

 ここではない世界、すなわち異世界に魔王がいる。 そして、魔王軍の侵攻のせいでその世界がピンチらしい。 その世界では、魔法があり、モンスターがいて。 言うなれば、有名ゲーム、ド〇クエや〇フ〇フのようなファンタジー世界があるらしい。その世界で死んだ人達ほほとんどが、その世界での生まれ変わりを拒否。このままでは人口は減る一方。それなら他の世界で死んじゃった人達をそこに送り送り込もうということになったらしい。

 

 何という移民政策。

 って

 

「これかぁぁぁぁぁぁアああ!」

 

 これが俺が巻き込まれた計画の原因か! 何やってんだよ先代転生どもは!!

 

「ちょっとなによ!急に叫びだして!」

 

「悪い、悪い。こっちの話だ」

 

「まっ、いいわ。続けるわよ。で、どうせ送るなら、若くして死んだ未練ある人を、異世界転生させるのよ。転生特典をつけてね。別に悪い話じゃないでしょ」

 

 なるほど、確かに悪くない話に思える。

 と言うよりも、むしろテンション上がってくる。 ゲーム好きな自覚はあるが、まさか自分が、大好きなゲームの世界みたいな所に行けるとか。

 

 と、その前に。

 

「 えっと、聞きたいんですけど、向こうの言葉ってどうなるんです? 異世界語とか喋れるの? 」

 

「その辺は問題ないわ。私達神々の親切サポートによって、異世界行く際にあなたの脳負荷を掛けて、一瞬で習得できるわ。」

 

 親切? 基本お前ら神々が俺に親切だったことってほとんどないだろ。全部、自分達の都合じゃねぇか。

 

「もちろん文字だって読めるわよ? 副作用として、が悪いパーになるかもだけれど。

 

・・・・・だから、後は凄い能力か装備を選ぶだけね」

 

「今重大な事が聞こえたんだけど。 運が悪いとパーになるって言ったか? 」

 

「言ってない☆」

 

「言ったろ」

 

 先ほどまでの緊張感もなく、相手は女神だというのに、俺は既にタメ口だった。

 しかし、これは確かに魅力的な提案だ。 もしかしたらパーになるかもという恐怖はあるが、自慢ではないが運強さに関してだけは、子供の頃から自信がある。と、俺の目の前に女神がカタログの様な物を差し出した。

 

「選びなさい。たった一つだけ。あなたに、何者にも負けない力を授けてあげましょう。例えばそれは、強力な特殊能力。それは、伝説の武器。さあ、どんなものでも一つだけ。異世界へ持って行く権利をあげましょう」

 

 女神の言葉に、俺はそのカタログを受け取ると、それパラパラとめくってみる。 そこには〈怪力(かいりき)〉〈超魔力(ちょうまりょく)〉 〈気配遮断(けはいしゃだん)〉〈精霊召喚(せいれいしょうかん)〉〈ドラゴン召喚(しょうかん)〉〈聖剣(せいけん)アロンダイト〉〈聖刀(せいとう)クサナギ〉〈聖刀(せいとう)マサムネ〉〈魔刀(まとう)ムラマサ〉〈魔刀(まとう)倶利伽羅(くりから)〉〈魔剣(まけん)ダインスレイフ〉〈魔剣(まけん)ティルフィング〉〈光槍(こうそう)ブリュナーク〉〈紅桜(べにざくら)〉〈木刀(ぼくとう)洞爺湖(とうやこ)〉〈ノロワ・レター・メガネ〉〈ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲〉〈無限の爆弾(アンリミテッド・ジャスタウェイ・ワークス)〉〈斬魄刀(ざんぱくとう)〉〈無限の剣製(アンリミテッド・ブレイド・ワークス)

 

 その他諸々色々な名前が記されていた。 って〈紅桜(べにざくら)〉? これ伝説の武器でもなんでもないよな。たしか『銀○』って言う漫画の機動兵器だったと思うんだけど……。いや、これ以外にも伝説の武器でもない他の創作物の能力や武器が混ざってる。 いいのか?これ。 しかも、〈無限の剣製(アンリミテッド・ブレイド・ワークス)〉って。これ固有結界(リアリティ・マーブル)で衛宮士郎専用の能力じゃなかったか? 嫌だぞ、能力に人格が侵食されて衛宮士郎の様になるのは。しかし、参ったな。これだけあると目移りする。 と言うか、ライダーの勘だが、創作物の能力以外もこれらは反則級の能力や装備の予感だ。

 

 いや、待てよ。これ、創作物の能力は小さく<注意:これは本物ではありません>とか<注意:自分で成長させましょう>って書いてあるな。パチモンじゃねーか。

 

 つまり、〈無限の剣製(アンリミテッド・ブレイド・ワークス)〉は剣を創造できる能力で、固有結界(リアリティ・マーブル)なんかは無い。〈斬魄刀(ざんぱくとう)〉は死神の誰かのを使えるワケじゃなくて自分で成長させる必要があると……。創作物の能力は選ばない方がいいな。純粋に異世界系の能力にしよう。

 

「ねー、早くして! ? どうせ何選んでも一緒よ。 引き篭もりのゲームオタクに期待はしないから、なんか適当選んでサクッと旅立っちゃって。 何でもいいから、はやくしてはやくして! 」

 

「オタクじゃないっ!出掛けてて死んだ訳だし、引き籠もりは克服したんだよ!」

 

 大声で声で言い返すが、女神は自分の髪の先の枝毛をいじりながら、俺には全く興味無さそうに言った。

 

「そんな事どうでもいいから早くしてー。この後、他の死者の案内が、まだたくさん待ってるんだからね?」

 

 言いながら、女神は椅子に腰掛けこちらを見もせずに、スナック菓子をぼりぼりと・・・

 

 こいつ、初対面のくせに人様の死因を思い切り笑ったり、さっきからちょっとばかかわい可愛いからって調子に乗りやがって。 女神の面倒臭そうな投げ船なその態度に、流石に俺もカチンときた。 早く決めろってか。 じゃあ決めてやるよ。 異世界に持っていける“モノ”だろ?

 

「............じゃあ、アンタ」

 

 俺は女神を指差した。女神は、こちらをキョトンとした顔で見て、ぼりぼりとスナックをかじっている。

 

「ん。それじゃ、この魔法陣の中央から出ない様に............」

 

 そこまで言って、女神はハタと動きを止めた。

 

「今何て言ったの?」

 

 と、その時だった。

 

「承った。これからのアクアの仕事は私とこいつが引き継ぐ」

 

 何もない所から、白く輝く光と共に、突然二人の女性が現れた。片方は一言で言えば、天使みたいな翼が生えている。

 

「(へぇ、この水髪の女神はアクアって言うのか)」

 

 今さらだが、今この女神の名前を知った。アクアの名前から察するにどうやら本当に水の女神だったようだ。

 

 もう片方のは一人黒い服装を見にまとった少女が……って

 

「オーレギオンじゃねえか! 話が違うぞ!どうなってんだ!!」

 

 そう。奴こそ俺の人生を歪めた元凶。善かれと思って世界や人の人生を歪めるヤツだ。ヤツには感謝もしているが、文句の一つくらいは言ってやりたい。ヤツは俺の方を向くと満面の笑みを浮かべ、異世界へと転送準備を始める。

 

「......えっ」

 

 呆然と呟くアクアの足元と、そして俺の足の下に青く光る魔法陣が現れた。

 

「ッ!」

 

 これは転送の魔法の超高位版か?いや、違うな。なんの魔法なんだ? なんの魔法か解らないと止めることができない。このままだと、オーレギオンに文句を言う前に異世界へいってしまう。

 

「ちょ、え、なにこれえ、え嘘でしょ? いやいやいやいや、ちょっと、あの、おかしいから!」

 

「女神を連れてくなんて反則だから! 無効でしょ? ! ? ! ? こんなの無効よね! 待って! 待って! 嘘だって言ってよレギオン先輩!」

 

 涙目でオロオロしながら、滅茶苦茶に慌てふためき、オーレギオンに縋り付くアクア。

 

「おい、待てオーレギオン!! ちょっと話をさせろ!」

 

 そのアクアに、

 

「行ってらっしゃいませアクア様。 後の事はお任せを。無事魔王を倒された時には、こちらに帰還するための迎えの者を送ります。 それまでは、あなた様の仕事の引き継ぎはこのわたくしとオーレギオン様にお任せを」

 

「頑張れ、アクア。和真は我々の手によって造られた神造の仮面ライダーだ」

 

 と、オーレギオンと天使は無慈悲に告げた。

 

「待って! ねえ待って! 話聞いてよ! 私、女神なんだから癒す力はあっても戦う力なんて無いんですけど!魔王討伐とか無理なんですけど!! あと、仮面ライダーってなに? カズマって本当にライダーだったの!?」

 

 そしてオーレギオンは俺に。

 

「和真。貴様は我々の想定以上の力を手にいれた英雄だ。その調子で頑張れ」

 

 と、俺の文句を受け流して言い放った。

 

 そして天使は、泣きながらすがるアクアを尻目に、俺に笑みを浮かべ。

 

「佐藤和真さん。 あなたをこれから、異世界へと送ります。 魔王討伐ための勇者候補の人として魔王を倒した暁には、神々からの贈り物を授けましょう」

 

「おい!話を聞けよ! 」

 

 何で天界の奴らは話を聞かないのが多いんだろうか。

 

 ん? ………贈り物?

 

 何がもらえるんだろうか。ここはおとなしく聞いておくべきだ。

 

「贈り物?」

 

 オウム返しの様に聞いた俺に。その天使は、穏やかに微笑んだ。

 

「そう。世界を救った体業に見合った贈り物。…………………たとえどんな願いも。たった一つだけ叶えて差し上げましょう」

 

「おおっ!」

 

 それはつまり、冥府の女神 オーレギオンに文句が言えると言うことだろうか。

 

「ねえ待って!そういうカッコイイを告げるのって、私の仕事なんですけど!」

 

 いきなり現れた天使と先輩女神に仕事を奪われ、泣いてすがるアクア。 アクアのその姿を見られただけで、俺は1つを除いて満足していた。俺はそのままアクアを指差し。

 

「散々バカにしてた男に、一緒に連れてかれるってどんな気持ちだ?おい、俺が持っていく“者”に指定されたんだ、女神ならその神パワーとかで、精々俺を楽させてくれよ! 」

 

「いやあー!こんな男と異世界行きだなんて、いやああああああああ!」

 

「さあ、勇者よ!願わくば、数多の勇者候補の中から、あなたが魔王を打ち倒す事を折っています。······さあ、旅立ちなさい!」

 

「わああああああーっ! 私のセリフー! 」

 

高らかに天使が告げる中、泣き叫ぶアクアと共に明るい光に包まれた・・・・・・

 

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

アクアと和真、そして後任の天使が出ていった後の死者を導く部屋。

 

誰もいなくなったはずの部屋にいる人影。それは、冥府の女神 オーレギオン。佐藤和真の人生を歪めた張本人。

 

「しかし、まさか平行宇宙であんな情けない死に方をした彼が、この世界では英雄らしく誰の命を救って逝こうとするとは。これも英雄となって成長した彼の姿かな?」

 

そう言ってため息を着いた彼女は安堵の表情を浮かべた。

 

「ふぅ、一応、情けない死に方の運命のまま固定しておいて良かった。そうしないと彼は全自動蘇生特典(アクア)を連れていってくれないからね。平行宇宙での彼の活躍には水の女神の協力があってこそ成し得たものと判明している。連れて行ってくれないとこちらも困るんだ。この異世界での経験を得て、怠惰で我が儘だが無駄に能力の高い駄女神の彼女も更生するといいんだがな……」

 

「さて、ディアエゼル様とアルディアス様の許可も戴いたことだし、佐藤和真(仮面ライダーマギ)。折角、お膳立てをしてあげたんだ。必ず、企画通りに魔王を討伐して世界を救ってくれよ」

 

オーレギオンが見つめる紙には 『佐藤和真”英雄化“計画』 その提案内容が記されていた。

 

 

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》

 

企画名:『佐藤和真“英雄化”計画』

提案者:冥府の女神 オーレギオン

共同企画者:勝利の女神 カノン

 

<現状>

異世界(以下世界Bと呼称)は魔王軍の侵略によって危機に瀕しており、死した人間は恐怖から世界Bに再び転生することを拒否。人口減少が少しずつ加速している。それを防ぐために移民策として、地球(以下世界Aと呼称)の若くして死した人間を強力な能力と共に送り出し、魔王討伐を促しているが成功例は無し。

 

<問題>

世界Bに転生した世界Aの人間は、強力な能力による冒険者としての金稼ぎによって満足してしまっており、魔王討伐という使命を抱くものはごく僅か。このままでは魔王討伐は失敗し、人口減少が加速、人類は敗北する可能性が高いと言える。

 

<主題>

平行宇宙において魔王討伐を成し遂げた佐藤和真の同一の存在である世界Aの佐藤和真を世界Bに転生する以前から強化することにより、魔王討伐の成功を促す。また、世界Aにて様々な出来事を体験させることにより精神的成長を促す。そのために世界Aの歴史や世界Aの人類に様々な干渉を行い、佐藤和真を主人公とした物語「仮面ライダーマギ」を展開する。

 

 

<賛同神>

「冥府の女神 オーレギオン」「勝利の女神 カノン」「傀儡と復讐の女神 レジーナ」「不死と災いの女神 ゼナリス」「陽光と月光の女神 ソラス」「闘争と守護の神 エルセウン」「絶滅と誕生の女神 ゼノア」「大地と大海の女神 シャーレイム」「大地の神 ラグンド」「海の神 イオガ」「天空の神 レウザ」「時の女神 ディア」「空間の女神 ルキア」「相反の女神 ラティナ」「雷の神 ゼロム」「炎の女神 レラム」「氷の女神 キムレ」「生命の女神 ネアス」「破壊の神 イベル」「護りの神 コケコ」「護りの女神 テテフ」「護りの神 ブルル」「護りの神 レヒレ」「太陽の神 ソルガ」「月の女神 ルナール」「暗黒の神 ロズマ」「剣の神 シアン」「盾の神 マゼンタ」「無限の神 ダイナ」「古の女神 コライ」「未来の女神 ミライ」

 

<許可神>

「創世神 ディアエゼル」

「創造神 アルディアス」

 

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》

 

           <To Be Continued>

 

 

 

 

 




ちなみに、日本担当のアクアが和真が仮面ライダーであることを知らない理由は簡単に言えば『佐藤和真“英雄化”計画』が天界の中でも上層部、それも世界創造クラスの神とその直属の配下の独断で行われたからです。和真の手によって『仮面ライダーマギ』の歴史がなくなったことも都合がよく、他の神話派閥にバレないように隠蔽工作をしなくてよくなりました。後、『佐藤和真“英雄化”計画』が進行していた時の日本での異変に気が付けなかったのは単にアクアの怠慢です。世界滅亡の際には昼寝してました。天界の時間は地球を流れる時間よりも遅いので、和真が頑張って奮闘している頃、アクアは寝てました。



下記の内容は読み飛ばしても構いません。自分で作成した特典の詳しい概要です。この二次創作のものなので、このすば原典の特典はこの能力ではありません。

特典の能力一覧

怪力(かいりき)
筋力、生命力のステータスが最高峰レベルに高くなる。

超魔力(ちょうまりょく)
魔力、知力のステータスが最高峰レベルに高くなる。
注意:この特典は必ずしも魔法がすぐに扱えることを保証するものではありません。

気配遮断(けはいしゃだん)
気配を断つ能力。余程の事がない限りはそこにいることはばれないが、探知系の魔法や特典には発見される恐れがある。そして、此方から相手に殺気や攻撃的な行動を起こすと発覚しやすくなる。

精霊召喚(せいれいしょうかん)
精霊を召喚する。野良精霊と契約をするのではなく、転生の際にこの特典を選んだ転生者の思念から転生者が思う姿の精霊を誕生させる。転生者と精霊の仲が険悪になった場合、精霊の方から一方的に契約を破棄される場合がある。

〈ドラゴン召喚(しょうかん)
ドラゴンを召喚する。野良ドラゴンと契約するのではなく、転生の際にランダムで選ばれるドラゴンと契約する。転生者とドラゴンの仲が険悪になった場合、ドラゴンの方から一方的に契約を破棄される場合がある。

聖剣(せいけん)アロンダイト〉
不壊の剣。その切れ味や強度は落ちることはない。竜殺しの特性を持ち、ドラゴンには特効効果を持つ。保有者に身体能力強化の加護を授けるが、魔剣(まけん)グラム程ではない。

聖刀(せいとう)クサナギ〉
日本刀。高い火力を持ち、剣先から光線を放つ。魔法《ライト・オブ・セイバー》の様に込めた魔力次第で威力・射程ともに変化する。魔力効率も魔法《ライト・オブ・セイバー》よりも高い。身体強化、魔力強化の加護を保有者に授けるが、魔力強化の方が強化比率が高い。また、両方強化しているため中途半端であり、身体能力も保有魔力も一流とまではいかない。

聖刀(せいとう)マサムネ〉
日本刀。魔剣(まけん)グラムと同様に使用者に強化な身体能力強化の加護を授ける。

魔刀(まとう)ムラマサ〉
日本刀。斬り付けた対象から魔力を吸収し、保有者の身体能力を限定的に強化し、魔力や体力を回復させる能力を持つ。

魔刀(まとう)倶利伽羅(くりから)
日本刀。対霊系モンスターに特化した剣。あらゆる不浄を浄化し、問答無用で霊を成仏させる。

魔剣(まけん)ダインスレイフ〉
自動追尾機能を持った剣。この剣を振るえば必ず的に命中する。しかし、名刀電光丸の様に相手の攻撃を自動では防いでくれないため、剣を振り続けないといけない。剣を振り続けると対処の出来る限りの範囲で、自動で相手に攻撃を当て、相手の攻撃を防いでくれる。保有者に身体能力強化の加護を授けるが、魔剣(まけん)グラム程ではない。

魔剣(まけん)ティルフィング〉
剣。錆びることなく、手入れをする必要もない。切れ味も高く、剣筋の補正機能を持つ。保有者に身体能力強化の加護を授けるが、魔剣(まけん)グラム程ではない。

光槍(こうそう)ブリュナーク〉
五つの穂先を持つ槍。五つの切っ先からそれぞれが別方向に飛ぶ光線を放つ。しかし、命中させるのは至難の技。全部同じ方向に向けた方が楽。また、投げると自動的に相手に向かって飛んでいくが、帰ってはこないので取りに行く必要がある。保有者に身体能力強化の加護を授けるが、魔剣(まけん)グラム程ではない。

紅桜(べにざくら)
漫画『銀魂』に登場する対戦艦用機械機動兵器の模造品。電魄(でんぱく)という人工知能を持ち、周囲の状況把握(レーダー)と搭載されている迎撃システムで戦闘経験を積んでいき、能力を向上させていく。原典の寄生能力は失われている。名刀電光丸に近いシステム構成で、保有者の体を操って自動戦闘をしてくれる。そのため、本人の鍛練が(おろそ)かになりがち。使い慣らせば戦艦十隻に匹敵する戦闘力を獲得できるが、使いこなせた者はほとんどいない。

木刀(ぼくとう)洞爺湖(とうやこ)
漫画『銀魂』に登場する木刀の模造品。非常に堅固な木刀。真剣よりも軽く、神器なので切れ味も抜群。手入れは紙ヤスリできる。それだけ。『銀魂』原典の様に洞爺湖仙人などはいない。

〈ノロワ・レター・メガネ〉
漫画『銀魂』に登場する眼鏡の模造品。あらゆる真実を見抜く眼鏡。異世界系定番のスキル“鑑定”の様な能力。音声ガイドつき。しかし、表示されるのはVikipediaの抜粋がほとんど。執筆者は天界の暇してる神及び女神。一度着けると取り外せない欠陥がある。そして強度は普通の眼鏡と変わらないので簡単に壊れる。

〈ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲〉
漫画『銀魂』に登場する大砲の模造品。魔力を弾に変換して放つ。神器なので堅固で壊れにくい。それだけ。

無限の爆弾(アンリミテッド・ジャスタウェイ・ワークス)
漫画『銀魂』に登場する爆弾、ジャスタウェイを無限に創造することができる能力。創造できるジャスタウェイは原典と同じく、出汁を取ることができ、目覚まし時計、機械のパーツにもなる。創造するのには魔力を必要とする他、両手に一個づつしか創造できないという制約がある。

斬魄刀(ざんぱくとう)
漫画『BLEACH』に登場する日本刀の模造品。霊力ではなく魔力で出来ている。破損すれば魔力で修復できる。漫画に登場する死神の誰かの斬魄刀が手に入るわけではない。原典と同じく浅打(あさうち)から始まり、己の魂を写し取って斬魄刀に仕上げる必要がある。霊を浄化させる能力は備わっており、柄の印鑑を押すか、斬るかで成仏させられる。アンデットの類いにも有効。始解(しかい)卍解(ばんかい)に至るにはそれなりの修練が必要。そのため、この特典を選らんだ者は沿いも揃って退魔師の道を選ぶ。そして、修練を重ねて始解(しかい)卍解(ばんかい)に至る者と諦めて放り投げる者の二択となる。なお、卍解(ばんかい)に至れたものは極僅かで、それも全盛期を通り越した老人となってから。そのため、この特典を選らんだ場合は担当者から忠告を入れることが義務となっている。また、原典と同じく卍解(ばんかい)は破損したら治らない。そして、保有者以外にとってはただの切れ味の良い刀となり、他人が始解(しかい)卍解(ばんかい)を使えた原典とは異なる。

無限の剣製(アンリミテッド・ブレイド・ワークス)
『Fate』シリーズに出てくる英霊エミヤの宝具を神々の手によって再現した能力。そのため、固有結界(リアリティ・マーブル)を由来とする能力ではなく、単に剣の贋作を製作する能力となっている。一度見た剣はその材質・構造から創造理念まで完璧に解析するが心象風景に貯蔵するのではなく、特典として脳内に与えられた本棚に記録する。剣を創造する際はそこから必要な情報を読み出し、魔力を用いる。その剣の持つ能力や効果に応じて消費魔力は増減する。また、神器は創造できない。そのため、固有結界(リアリティ・マーブル)を展開することなんでできないし、『Fate』に出てくる宝具の贋作を投影することもできない。正真正銘、剣の贋作を創造する能力。性質的には『Fate』の無限の剣製(アンリミテッド・ブレイド・ワークス)よりも『ハイスクールD×D』の魔剣創造(ソード・バース)聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)の方が近い。というか、剣の模造機能がついて、属性付与した剣の創造機能が失われた魔剣創造(ソード・バース)及び聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)そのものである。


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宝珠の魔法使いと駄女神様
異世界生活一日目


続きです。かなり遅くなりましたが続きです。低クオリティで、原作改変が含まれます。そして、キャラが崩壊してます。戦闘描写はかなり雑です。ご了承ください。それでも問題ないという方のみ読んでください。 変身音は考えてなかったけど、一応考えました。気に入らなければ嫌だと感想でいってください。ゼロワンの変身音を参考にしました。


 

 

 

 

 石造(いしづく)りの街中を馬車(ばしゃ)が音を立てて進んでいく。

 

異世界(いせかい)だ。マジで本当に異世界(いせかい)だ。今までは魔宝石(まほうせき)世界(せかい)とか、過去(かこ)世界(せかい)には行ったことはあったけど…」

 

 街中を見渡(みわた)して、()()く人達を観察してみる。

 

「あ……ああ……ああああ…………」

 

「獣耳? あれが獣耳ってことは獣人だよな。そして、あれはエルフ耳で美形だからエルフか。他には……ドワーフもいるな…」

 

 ワクワクが止まらない。異世界(いせかい)モノの小説では定番の住人たちだ。前の世界(せかい)には“ファントム”という怪人はいたけど、こんなにもファンタジー感が溢れているのは始めてだ!

 

 そして、さっきから気になっていたんだけど俺の方にも若干の違和感(いわかん)がある。得に、腰の方が。なんかさっきよりも、重いような…?。

 恐る恐る下を見てみると……そこには失われたはずの“マギアドライバー”と“マギアリング”が連なったホルダーがぶら下がっていた。

 

「えっ? …おいおい、本気でマギアドライバーだ。えっ? 本当に、ライダーの力が戻ってきたのか? 」

 

 色々と触ってみたが本気で俺が使っていたマギアドライバーだ。所々に見覚えのある傷が付いてるし、何よりもベルトの部分には俺の相棒の印が付いてる。

 

 って、そうだ! この印があるってことは相棒(あいぼう)復活(ふっかつ)したってことじゃ……。

 それに気が付いた途端(とたん)意識(いしき)が引きずり込まれていく。たぶん、これは…………

 

『ふん、久しいな。』

 

「マギアドラゴン!! 」

 

 何度も見て、見慣れた俺の精神世界(アンダーワールド)景色(けしき)が広がるその中心、俺の真上には俺の相棒が佇んでいた。

 

『まさか、こうしてお前ともう一度合間見(あいまみ)る事になるとは、思わなかったぞ……』

 

 禍々(まがまが)しい風貌(ふうぼう)をした全てを吸い込むような黒と光輝(ひかりかがや)く美しい白の体毛、黒い甲殻(こうかく)(うろこ)。頭部に緑色の隻眼(せきがん)の瞳と黒の二本の角を持った西洋型の巨体のドラゴン。あぁ。以前と変わらない姿だ。

 

『今回、俺が蘇ったのは相棒の心意気(こころいき)でも、絆の力でもない。 何者かによって俺は復元されたのだ。相棒の元から消えた後でな』

 

『俺の主観では相棒と別れてすぐに意識が覚醒し、気がつけばお前の精神世界(アンダーワールド)にいた』

 

『なぜ、お前と再び合間見(あいまみ)れたのかはわからないが、この再開を嬉しく思う。さて、相棒にこの現象の心当たりはないか?』

 

 心当たりか。うーん………ん? まてよ、たしか俺が仮面ライダーになったのって……。ああ、なるほど。オーレギオン(アイツ)の仕業か……。

 

「大丈夫だ。心当たりはある。」

 

 だから、と続けようとしたのだが、

 

 

 ズン!

 

 

 精神世界(アンダーワールド)が大きく揺れて遮られた。

 

『どうやら、現実で何かあったようだな。』

 

「あぁ、そうみたいだな」

 

 そうして、現実に意識を向けると、

 

 

「あああぁぁぁぁぁっっっ!!!」

 

 泣きじゃくるアクアに掴みかかられていた。俺の体がアクアの揺さぶりによってがくがくと揺れている。今にも首を絞めそうな勢いだ。

 

「悪い、マギアドラゴン。話は後だ。」

 

『あぁ、分かった』

 

 そう言った俺は意識を現実に戻し、掴みかかっているアクアの方に向いた。

 

「おい、辞めろよ。ったく、悪かったよ。ライダーの力も戻ってきたし、そんなに嫌なら帰って貰っていいからさ」

 

 涙目で俺の服を掴んでいるアクアの手を取り払う。

 

 すると、アクアは手をわなわなと震えさせた。

 

「あんた何言ってんの!? 帰れないから困ってるんですけど! どうすんの!! ねえ、どうしよう! 私これからどうしたらいい??」

 

 アクアは泣きながら取り乱ていた。顔面を崩壊させそうな勢いで泣きじゃくり、首を振って長い髪を振り乱し、頭を抱えて足をバタバタさせている。

 

 なんてこった。黙っていれば凄い美少女なのにこれではどう見てもヤバイ女だ。 正直見てられない。

 

 仕方ない。こうなったのには俺も一枚噛んでるし、カッとなってつれてきた俺も悪い。

 

「おいアクア、落ち着け。こういう時の定番はまず聞き込みだ。 魔法で調べても良いけど、この世界の魔法がどんなのかはわからないしな。それに大体、異世界系ってのは酒場とか冒険者(ぼうけんしゃ)ギルドとか情報が集まる場所があるのが定番だ。だから、そこにに行って情報収集から始めよう」

 

 それに、この世界のモンスターの強さもわからない。もし、ファントム級のモンスターがいるのなら警戒しなくては。

 

「なっ……! ゲームオタクの引き篭もりだったはずなのに、なぜこんなに頼もしいの? あと、今、私の事呼び捨てにしたでしょ。まぁ、いいわ。できれば、女神様って呼んで欲しかったけど。私、この世界で崇められている神様の1人だから、正体がバレると人だかりができて魔王討伐の冒険どころじゃなくなっちゃう」

 

 えっ、お前みたいな神の宗教がこの世界にあるのか……。絶対にロクなもんじゃないぞ。

 

 そう思う俺の事の後ろをバタバタとアクアはついて来る。

 

 さて、こういった時には魔王に対抗するための組織だとか、冒険者(ぼうけんしゃ)を統括して効率よくモンスターを討伐のための冒険者(ぼうけんしゃ)ギルドとかがあるはずだ。

 

 アクアに場所を聞こうかとも思ったが、こいつの担当は日本だし、俺がライダーだってことも知らなかった。だから、こいつは大した情報を持ってないだろうと当たりを付けて、聞かないことにした。

 

 せいぜい、世界の常識とか自分の好みの情報を知ってるくらいだろう。

 

 周囲を見渡して、質問できそうな人を探す。

 男性に聞くのはガラの悪い相手だと面倒だし、若い女性だと俺の異世界の風貌にふさわしくない今の格好では怪しまれる。寛容性が高くて、人生経験の長い人の方がやり(やす)い。

 

 俺は丁度通りすがったおばさんに尋ねる。

 

 

「すいません、ちょっといいですか? 道に迷ってしまって……。冒険者(ぼうけんしゃ)ギルドってここからどうやって行けばいいですか?」

 

「あら、この街のギルドの場所を知らないなんて、ひょっとしてから来た人かしら?」

 

 おばさんの言葉に、やはりギルドがあったかと安心する。

 

「いやあ、ちょっと遠くから冒険者(ぼうけんしゃ)になりにきたもので。 ついさっき、この街に着いたばかりなんですよ」

 

「あらあら……………駆け出し冒険者(ぼうけんしゃ)の街、アクセルへようこそ。ここの通りを真っ直ぐ行って右に曲がれば、看板が見えて真っ直ぐよ」

 

「どうも、ありがとうございました!...…ほら、行くぞ」

 

 なるほど。駆け出し冒険者(ぼうけんしゃ)の街か……。死んだ人を異世界に送って活躍させるための準備地点としては良い場所だろう。だが、この町の冒険者(ぼうけんしゃ)全てが駆け出しなら周囲のモンスターもそう強いものではないだろう。つまり、俺TUEEEEEができる先代転生者たちはもう次の町に移動してしまってるだろうな……。

 

 しかし、冒険者(ぼうけんしゃ)ギルドか……。ハローワークなら良かったんだが、ギルドとなるとゲームの様に無料登録とはいかないだろう。おそらく、冒険者(ぼうけんしゃ)登録をするのにも、初期装備を受けとるのにも、金がいるだろうな………。

 

 そんなことを考えながらおばさんに礼を言い、教わった道を歩いて行く。

 

 すると、後ろをちょろちょろついて来るアクアが、ちょっと尊敬の眼差しを交えながら感嘆の声を上げた。

 

「ねえ、あの言い訳とか、なんでそんなに手際がいいの? こんなにできる男な感じなのに、なんでオタクだったの? なんで毎日閉じ篭もってヒキニートなんかやってたの?」

 

 ヒキニート? 引き籠もりとニートを足すなよ。俺はニートと呼ばれる年齢じゃないぞ。しかし、なんで俺を引き籠もり扱いしたがるんだ? コイツ………。

 

「あのさ、聞こうと思ってたんだけど俺って天界でどんな扱いを受けてんの? 何でアクアは俺の事を引きこもりのオタク扱いするんだよ。」

 

「俺は別に引きこもりでもニートでもないぞ。きちんと学校にも通ってたし、親友とは言えなくとも、話をする友達くらいならいたぞ。」

 

 そうアクアに質問すると、

 

「だって、渡された資料にそう書いてあったんだもの。まぁ、私はカズマの私生活を見てたわけじゃないしね。導く死者に関しては下から渡される資料でしか知らないわよ。」

 

 資料? どんな内容だったんだソレ。しかし、なんで間違った情報が伝わってるんだ? 結構、重大な問題だと思うんだけど…。

 

 

 …………あぁ、そうか。オーレギオン(アイツ)が手回ししたのか。何でそんなに俺の経歴を誤魔化したがるんだアイツは。そんなに俺をダメ人間にしたいのか?。

 

 さて、アクアは仮にもこの世界の女神らしいし、世界の常識ぐらいは知っているだろう。

 

 「なぁ、アクア。冒険者(ぼうけんしゃ)になるのって金とかいるのか? 」

 

 「え、なに言ってるの? いるに決まってるじゃない。カズマったら全部無料だと思ってたの?」

 

 こいつ!!

 

「はぁ、アクア。お前、金持ってるのか?」

 

「はぁ!? 何言ってるの? あんなことで急につれてこられたんだから、持ってるわけないじゃない!!」

 

「だよな…」

 

 最初は《コネクト》で何か呼びだそうかとも考えたが、《コネクト》の魔法は場所と場所を結ぶ魔法なので、今は使えない。

 仕方ないので、立ち止まって何かないかと自身の身辺を探すことにした。現在の持ち物はジャージにマギアドライバー、複数のマギアリング、財布、巾着袋(きんちゃくぶくろ)

 

 巾着袋?

 

「なんだこれ」

 

 見たこともない巾着袋がポケットに入っていた。中身を見ると三枚の紙幣(しへい)の様なモノと()(たた)まれた紙が入っている。紙はどうやら手紙のようで、差出人は不明。

 

 ひとまず、読んでみるか。

 

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》

 

 和真、この紙を見ているということは、お前は無事、異世界に転生できたようだな。さて、お前の事だから、他の転生者と同じように冒険者(ぼうけんしゃ)ギルドで冒険者(ぼうけんしゃ)登録をしようとしているのだろう。だが、冒険者(ぼうけんしゃ)登録には金がいる。一人当たり千エリスだ。アクアは急に連れていかれたから金なんかもって無いだろう。なので、私の方から送らせてもらう。お金の価値は千エリス=千円だ。三千エリス同封するので大事に使えよ。

 

追伸:魔王討伐よろしく!!

 

             オーレギオンより

 

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》

 

 

 オーレギオン(アイツ)はそんなに俺に魔王討伐をしてほしいのかよ……。

 

 だが、これで金の問題はなんとかなった。歩き始めながら、手紙を巾着袋に戻す。

 

「おい、アクア。金の方はなんとかなったから、冒険者(ぼうけんしゃ)ギルドへ向かうぞ」

 

「えっ、カズマさん。どんな手を使ったの?まさか、盗んだんじゃ……」

 

「ちげーよ。お前の先輩からの送りモノだよ」

 

 そんな会話をしていると、目の前に冒険者(ぼうけんしゃ)ギルドの入り口が見えてきた。

 

 アクアの誤解を解きながら冒険者(ぼうけんしゃ)ギルドに入っていく。

 

 

 冒険者(ぼうけんしゃ)ギルド。それはファンタジーゲームや異世界系の小説に出てくる組織。例え、冒険者(ぼうけんしゃ)ギルドという名前でなくても類似組織は必ずと言って良いほど存在する。主な内容は冒険者(ぼうけんしゃ)に仕事をしたり、もしくは支援したりする。 つまり異世界のハロワ的な存在だ。まぁ、国営でないから金がかかるのが常だが。

 

 そこはかなり大きな建物で、中からは食べ物と酒の匂いやが漂っていた。 さて、異世界系でよくある様な新参者に絡む荒くれなんかはいないだろうが、それでも注目は浴びるかもしれない。だって、後にいるのは黙っていれば美少女の女神だからな……。

 

 そんな考えをしながら中に入ると..

 

「あ、いらっしゃいませー。お仕事案内なら奥のカウンターへ、お食事なら空いてるお席どうぞー!」

 

 短髪赤毛のウェイトレスのお姉さんが、愛想よく出迎えた。猫耳と尻尾があるので獣人だろう。

 

 どことなく薄暗い店内は、酒場が併設されている、と言うよりは大きな酒場にカウンターが併設されているみたいだ。格テーブルにはパーティーを組んでいるのか、その場で集まったのかはわからないが、色々や人が集まっている。鎧を着た人やローブを着てる人、軽装の人、昼間から酔っぱらってる人。その人たちは楽しそうに何らかの話し合いをしたり、食卓を囲んだりしている。特にガラの悪そうな人は見当たらない。 だが、やはり新参者は珍しいのかやけに注目を集めている。

 

 やはり……と、俺は予想が当たったことを感じて、面倒なことにならないと良いなと思った。

 

「ねえねえ、いやに─────」

 

 アクアが何か言ってるが、どうせとぼけたことだろうし、コイツの容姿は優れている事はわかっている。黙っていれば美少女だから、目を巻いているのだろう。 とりあえず視線とアクアの小言は無視して、当初の目的を達成しよう。

 

「………いいかアクア、登録すれば駆け出し冒険者(ぼうけんしゃ)が生活できる様に色々チュートリアルしてくれるのが冒険者(ぼうけんしゃ)ギルドだ。駆け出しでも食っていける簡単なお仕事を紹介してくれ、オススメの宿も教えてくれるはず。 異世界系じゃそんなもんだ。幸い、オーレギオンのヤツがくれた金がある。最低でも冒険者(ぼうけんしゃ)登録はできる。せめて冒険者(ぼうけんしゃ)登録をするくらいの金はお前がくれても良いと思うんだがな……。 まぁ、今日はギルドへの登録と装備を揃えるための軍資金入手、そして泊まる所の確保まで進める」

 

 しかし、転生者への初期投資(しょきとうし)が雑すぎないか? 強い能力を与えればそれて良いってもんじゃないだろうに………。いや、もしかしたら、この世界にも天界の回し者がいて手助けをしてくれるのか?

 

「知らないわよそんなもの。私の仕事は、死んだ人を導く事だもの。でも、分かったわ。こういった世界での常識やお約束ってヤツね。私も冒険者(ぼうけんしゃ)として登録すればいいのね?」

 

 こいつがこの調子じゃ、手助けする人がいるのかわかったもんじゃないがな。

 

「そういう事だ。よし、行こう」

 

 俺はアクアを引き連れ、真っ直ぐカウンターへと向かう。

 

 今の時間帯は空いているようで、四つも窓口があるにも関わらず、職員は一人しかいない。

 

 

「はい、今日はどうされましたか?」

 

 受付の女の人はおっとりした感じの美人だ。

 

 「冒険者(ぼうけんしゃ)になりたくて、田舎から出てきました。けど、よく分かってなくて……」

 

 田舎から来たとか遠い外国から来たとか言っておけば、受付が勝手に色々教えてくれる。

 

 そう、それがチュートリアルだ。

 

「そうですか。では登録手数料が掛かりますが大丈夫ですか?」

 

 後は受付の人の言う事に従っていけば大抵の事はなんとかなる。

 

「はい、大丈夫です。」

「では、登録料はお一人千エリスになります」

 

 オーレギオンから貰った金が三千エリス。 ここで二千エリスを失うのは痛いが、仕方ない。

 

 ここからは、受付のお姉さんからの冒険者の説明だった。要約すると冒険者とはモンスターの討伐から配達、道具の手入れまで大抵の仕事は引き受ける何でも屋みたいなもの。冒険者にはそれぞれ職業が存在し、その特性や能力を生業(なりわい)にしている。

 そして受付のお姉さんが俺とアクアの前に差し出した免許証ぐらいの大きさのモノは冒険者(ぼうけんしゃ)カードと呼ばれるものらしい。 どうやらこのカードで自分のステータス管理を行うらしい。レベルやステータス、スキル、職業などの欄がある。他にもモンスター討伐の記録や自分の経験表示もしてくれるらしい。

 

 

 まんま、ゲームだな。コレ……。

 

 

 次に差し出された書類に身長体重、年齢といった必要事項を記入。そしてカードでステータスを計り、職業を決めるらしい。職業によっては専用スキルがあるらしいので、その辺を踏まえた方が良さそうだが。

 

 そんなことを考えながら、俺は内心緊張気味でカードに触れた。

 

「……はい、ありがとうございます。 サトウカズマさん、ですね。えっと………はあああああっ!!!! なんなんですか貴方!! 魔力と知力が飛び抜けて高いですよ!! しかも、魔力にいたっては紅魔族並みかそれ以上です。それ以外のステージは普通ですが、このステータスなら魔法使い職なら何でも就けますよ。あ、あと幸運値も非常に高いですね。まぁ、冒険者(ぼうけんしゃ)に幸運ってあんまりありませんけど……。さて、サトウカズマさんは中級魔法を主に操る〈ウィザード〉、強力な攻撃魔法を操る〈アークウィザード〉に就くことができます。あと、あまりおすすめはしませんが、基本職の〈冒険者(ぼうけんしゃ)〉も選択できますよ。」

 

「へぇ、やるじゃない。カズマさん……」

 

 感心した様に呟くアクアを無視して俺が何に就くべきかを考える。なるほど、魔力が異様に高いのはたぶんマギアースドラゴンの影響だろう。でも、魔法職に就いても、あんまり意味ないんだよな。だって、マギアリングで魔法使えるし…。

 

 でも、それ以外だと基本職の〈冒険者(ぼうけんしゃ)〉か。

 

 

「あの、〈冒険者(ぼうけんしゃ)〉ってどんな職業なんですか?」

 

 〈冒険者(ぼうけんしゃ)〉について聞くと、困惑した顔をされた。そんなに就きたい人が少ないのだろうか。

 

「この〈冒険者(ぼうけんしゃ)〉という職業は、冒険者(ぼうけんしゃ)という総称が指す様に、あらゆる職業をまとめたと言いますか……。あらゆる職業の雛型と言いますか……。全ての職業のスキルを習得して使うことができる利点はあるのですが……。スキル習得には大量のポイントが必要になり、職業補正がないので同じスキルでも本職には及ばない欠点を持っています。つまり、貧乏器用な職業となります」

 

 なるほど、魔法が既に使える俺にとってはもってこいの職業だな。スキルという形で技能が増えるのだから。このスキルと魔法があれば……。

 

「あの、冒険者(ぼうけんしゃ)でお願いします」

 

「えっ。本当によろしいのですか? こちらとしては〈アークウィザード〉がオススメなのですが……」

 

「大丈夫です」

 

「は、はい。わかりました。それではどうぞ」

 

 そう言われて俺は受付のお姉さんから冒険者(ぼうけんしゃ)カードを受け取る。職業の欄には〈冒険者(ぼうけんしゃ)〉と記されており、それ以外には自分のステータスや持っているスキルポイント等が記されている。それらを感慨深く眺めていると……。

 

「はっ?? はああああっ!?」

 

 受付のお姉さんの叫び声が聞こえてきた。俺の時よりも大きい。聞く限りでは、どうやらアクアのステータスが凄まじかったようだ。どれも平均値を大幅に越えていて、魔力に至ってはあり得ないくらいらしい。

 

  …………まぁ、如何に駄目そうでも一応は女神。能力は高いのか。…………知力以外は。

 

 その“凄い”ステータスの持ち主のアクアは最初からほとんどの上級職に就くことができた様で、アクアはその中から〈アークプリースト〉を選択したようだ。

 

「アークプリーストですね! あらゆる回復魔法と支援魔法を使いこなし、前衛に出ても問題ない強さを誇る万能職ですよ!では 冒険者(ぼうけんしゃ)ギルドへようこそアクア様。 スタッフ一同、今後の活躍を期待しています!」

 

 お姉さんはそう言って、にこやかな笑みをアクアに向けて浮かべた。

 

 どうやら俺は、ステータスが高いのに上級職に就かない変人と思われているらしい。見向きもされない。

 

 こうして、異世界での冒険者(ぼうけんしゃ)生活が始まった。

 

 今現在の俺たちの資金は千エリス。こんなんでは宿にも泊まなければ、晩飯も食べれやしない。だから、資金稼ぎのために俺たちは早速《クエスト》を受けることにした。

 

 お姉さんにオススメを聞くと【ジャイアントトードの討伐】を勧められた。どうやら、異世界系定番の薬草取りや街の近くのモンスター討伐といった仕事は無いらしい。このアクセルの町周辺のモンスターはとっくに駆除。危険を犯すわけでもないので、わざわざ金を払って依頼するより自分で取りに入った方が良いらしい。

 

 なるほど。そんな現実は知りたくなかった……。

 

 

 まぁ、そんなことを言っても資金が増えるわけでもないのでそれを受けてみることにする。

 

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》

 

【ジャイアントトードの討伐】

概要:三日間でジャイアントトードを合計で五匹討伐。

危険度:◎◎◎

討伐報酬:二万五千エリス(推定)

達成報酬:十万エリス

※:討伐報酬はジャイアントトードを討伐した当日に移送費を差し引いた金額が支払われます。一匹あたり五千エリスです。

※:討伐したモンスターの状態で討伐報酬は変わります。

※:三日間過ぎても討伐数が五匹未満の場合はクエスト失敗となり、違約金を払うことになります。

 

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》

 

 

 俺はお姉さんから受け取った依頼書をそのままカウンターへと持っていき、手続きをしてもらった。そのあと直ぐにアクセルの街を出て、ジャイアントトードが出没するという街の外に広がる平原地帯へ向かうことにした。

 

 

〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉

 

 アクセルの外側の草原を俺とアクアで歩いていく。黄昏時の空はオレンジ色に染まっており、夕焼けが綺麗だ。

 

 その草原地帯には牛よりも巨大な体躯(たいく)をしたジャイアントトードが数匹、跋扈(ばっこ)していた。見た目は巨大なカエルなのだが、山羊や農家の人たちを丸呑みにして捕食する恐ろしいやつだ。街の周辺の駆除されるような弱いモンスターよりはよっぽど危険視されている。

 

 ギルドの職員の話ではこの頃からジャイアントトードは繁殖期に入り、体力をつけるために人里にも降りてくるらしい。正確には、あと一週間後からが本格的な繁殖期らしいのだが、気の早いジャイアントトードはこの頃から出没するようだ。

 

「さてと……」

 

 今からあの巨大カエルと戦うのだし、あれからマギアースドラゴンと話もできてない。だから変身しとくか……。そう思って俺は、懐から“ドライバーオンマギアリング”を取り出し、腰のベルトにかざした。

 

 

〔ドライバー オン!!〕

 

 

 スペルエンチャンターから発せられる詠唱と共に腰に“マギアドライバー”が出現する。

 

「えっ? カズマ? それ何?」

 

 急に響いた音に驚いたアクアがこちらを向き、急に出現した腰のベルトを見てまた驚いた。

 

「なにって、アクア。 見ればわかるだろ。ベルトだよ、ベ・ル・ト!!」

 

 次にハンドオーサーを左側に傾け、“マギアリング”を懐から取り出し、

 

 

〔シャバデゥビ タッチ ヘンシン!!〕

 

 

「変身!」

 

 マギアドライバーにかざした。

 

〔ネクサム オン!! ケテル!〕

 

 

 

 

『相棒。お前の中から色々と見ていたが、随分と面白い事になっているな。異世界とは……』

 

『だが、どの世界であろうとも。これからもよろしくたのむぞ』

 

「あぁ、これからもよろしくな。マギアドラゴン」

 

 

 

〔プリーズ クリライス テューン Pillars of light representing diamonds and Neptune〕

 

 

 大小様々な歯車を伴った魔法陣が俺の体の真上と真下に出現。

 

 それらが歯車を回しながら俺の体を通過していく。

 

 通過した部分から変身が始まり、丁度二枚の魔法陣が腰の部分で重なり合って変身は完了する。

 

 このスタイルは[エヘイエースタイル]。外見は白を基調としたデザインで、はフェイスガードセンターストーンや胸部ケテルラングストーンの色は白。センターストーンやルーンイヤーは逆台形をしている。

 

 

 武器は白い銃だ。能力は【光の操作】で主な使い方は俺の魔力を変換した光弾を放つこと。けど、一番の強みはこの銃を最大36万挺も量産できるってこと。つまり、時間と魔力さえあれば36万発の光弾を相手に食らわせられるってことだ。

 

 まぁ、そんな魔法使う機会なんてないと思うけどな。

 

 さて、と。

 

 まずは、手始めに………

 

 ハンドオーサーを右に傾け、魔法を発動。

 

 〔ルパッチマジ《バインド プリーズ》〕

 

 

 《バインド》でカエルを拘束して、

 

 もう一度、ハンドオーサーを右に傾ける。

 

〔《チョーイイネ!! キックストライク! サイコォォォォオ!!》〕

 

 俺の真下に白い魔法陣が出現。右足にエネルギーが集中し、白く光っていく。

 

 俺は空に舞い上がり、一条の白い光線となってジャイアントトードにキックをお見舞いした。

 

 

 

 さて、一撃でジャイアントトードを始末できたのは、良かったんだが……。

 

「か、カズマさん。やるじゃない!!」

 

 

 どれくらいの経験値を得られたのかを知ろうと冒険者(ぼうけんしゃ)カードを見て気がついた事がある。

 

 経験値がほとんど入ってねぇええ!!

 

 ま、まさか……これは…RPGのゲームで良くあるアレか? レベルが高すぎると、序盤の町周辺のモンスターからは大した経験値貰えないヤツ……。

 

 ちっくしょおおーーー!!。

 

 楽してレベルとステータス上げて、異世界系テンプレの俺TUEEEEEできると思ったのにぃいいー!!。

 

『はぁ、世の中そんなに上手くは行かないよな』

 

 

 落ち込む俺の隣で、やる気を出していたアクアは、

 

「私も女神として、負けてられないわ!」

 

 そう宣言して離れた場所にいるジャイアントトードに向かって駆け出していった。

 

「くらえぇぇぇぇ!! ゴッドブロォォォォーー!!」

 

 そのまま拳を白く光らせて、ジャイアントトードの腹に殴りかかった。

 

『おい。待て、アクア! ジャイアントトードに打撃は通用しにくいって………』

 

「ゴッドブローとは、女神の怒りと悲しみを乗せた必殺の拳!! 相手は死ぬぅぅぅ!」

 

 

 ボヨン……

 

 

 その必殺の拳とやらは、ジャイアントトードの腹に容易く受け止められてしまった。

 

『あぁ、そうか。あいつ、他人(ヒト)よりも知能が低いんだったなぁー』

 

 そう呟きながら魔法を発動させる俺を尻目に、

 

 殴られたカエルは、そのまま何事もなかったかのようにアクアを見つめ……

 

「カ、カエルってよく見ると可愛いと思うの」

 

 アクアを捕食しようとした………寸前で俺が《バインド》で拘束して、止めた。

 

 

 

『ったく。 おい、アクア。お前のギルドの人の話を聞いてなかったのか? カエルには打撃は効きづらいって言われただろ』

 

 

 拘束したカエルを始末したあとで、俺はアクアに何故、打撃技を選択したのか問い詰めていた。

 

「きっ、聞いてたわよ! 聞いてたけど忘れただけよ」

 

 言いながら、目を泳がせていたアクアは、何か思い付いたのか、こちらを向いてきた。

 

「そ、それにしてもカズマさん、やるじゃない。ほんとにライダーだったのね。う、疑ってた訳じゃないのよ。あなたがそこはかとなくいい感じなのは感じてたから………」

 

 そこはかとなく良い感じってなんだ。良いところないなら無理に誉めようとするなよ………。こいつ、話をすり替えようしてやが…

 

「って、そうよ!! カズマがライダーなんだったら、地球にいたときからチート持ちだったってことじゃない。だったら、私という素晴らしい恩恵を授かったことは無効よ、無効!! 今すぐに私を天界に送り返してよ!! 」

 

 

 ん?

 

 

 たしかに、そうだな。オーレギオンたちは俺と言う神造ライダーを作り上げたのに、アクアっていう特典を一緒に行かせたよな………。

 

 まさか、アクアがいないと対処できない相手や事象がこの世界には溢れかえってるのか??

 

 その事をアクアに聞こうと顔を上げると、

 

 学習能力のなかったアクアさんは無謀にもカエルに挑み、頭から補食されていた。

 

『って、おい!! 食われてんじゃねぇぇぇ!!』

 

 駆けながらハンドオーサーを右に傾け、《バインド》を発動。

 

 アクアを補食するために動きを止めたカエルは容易く捕まり、()(すべ)もなく俺に倒された。

 

 

 

 

 

「う、うぁぁぁぁぁぁっっ!、ぐずっ……」

 

 俺の隣で粘液まみれになったアクアが号泣している。

 

「かじゅまさん……… ありがどねぇぇーー、ぐず……ひっく…… 」

 

 無事、カエルの口から救出されたアクアは、一度は捕食されかけ、二度目に捕食されたことで非常にショックを受けている様子だった。

 

 このままではクエストは続行できないと踏んだ俺は泣きじゃくるアクアをつれて、アクセルの町に帰還した。

 

 

〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉

 

 一緒にいても生臭いだけなのでアクアに残りの千エリスを持たせて公共浴場に直行させ、俺は冒険者ギルドで討伐報酬の受け取りを行っていた。

 

 ギルドのお姉さんには、ジャイアントトードを倒したことを驚かれたが、なんとかなった。

 

 そうして、公共浴場でアクアと合流し、そのまま泊まれる宿屋を探してそこで晩飯を食べた。

 

 金の関係で宿の一室しか借りれなかったけど、仕方ないか。俺は公共浴場に入浴しにいって、そうして、寝た。

 

 こうして、俺たちの異世界生活1日目は終了した。

 

 

 

             <To Be Continued>

 




<◆>《◆》〈▲〉の使い分けは

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>
は回想、場面移動、

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》
は書類や紙類の表示、

〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉
は場所移動

にしてます。

 続きは………気が向いたら書きます。



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異世界生活二日目

この素晴らしい世界に祝福を!の時系列がよくわかりません……。ファンブックにはカズマは春頃?に来たことになっています。ところが、このファンの世界やファンブックではキャベツは秋に来るとなっているので、カズマは秋ごろに異世界に来たことになります。もし、春頃に来たのなら作者が採用している先代転生者の日記に基づいた〈異世界生活〇〇日目〉だと、一巻で360日ぶんの話を書かなければならず、とてつもなくオリジナル展開が含まれることに気がつきました…。よって、『このファン』時空を採用し、カズマは秋頃に来たことにします。
あと、今回は最初の方は原文から改造したのではないので、キャラが迷走してます。
 場面が切り替わるところに、《このすば!》といれてみたのですが、必要でしょうか?
 そして、このすばの八巻を読んでないと把握できない内容が含まれます。
 流れがおかしいところがありますが御留意ください。


 

 

 

 

「はぁ……。異世界生活ってラノベやゲームみたいに上手くいかないもんだな………」

 

 俺は宿屋で格安の朝食を食べながら、昨日《きのう》のカエル討伐を終えてからのことを思い出していた。

 

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

こ の す ば/KONO SUBA

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

 アクアを公共浴場に送り出した俺は、冒険者ギルトのカウンターへ行き、クエストの報告を行っていた。

 

「えっと……受付のお姉さん。クエストの討伐報告に来たんですけど…」

 

「えっ!! もう、あのクエストを達成されたんですか!!」

 

 そんなに驚くことなのか。日本からの転生者の相手をしている人たちだからもう慣れているものだと思っていたんだが。

 

「ああ。いえ、達成はしてないんですけど、ジャイアントトードを3匹討伐したんで……」

 

「なるほど。わかりました。では、冒険者カードを見せてください」

 

 冒険者カード? 疑問符を浮かべながら、お姉さんに自分のカードとアクアから預かったカードを見せる。

 

「あぁ。そういえばサトウさんはクエストの報告はこれが始めてでしたね。討伐したモンスターの種類(しゅるい)討伐数(とうばつすう)は冒険者カードに記録されていくんですよ」

 

 なるほど。便利なことだ。科学の代わりに魔法が発達した結果なんだろうが、この世界の技術もあながちバカには出来ない。

 

 俺から受け取ったアクアと俺のカードをカウンターに置いてある箱の形をした魔道具(まどうぐ)を操作して、それだけでチェックを終えていた。

 

「はい、確かに。ジャイアントトードを3匹討伐したことを確認しました。」

 

 お姉さんから、受け取ったカードを改めて見ると、そこには冒険者レベル1と記されている。

 

 …………レベルが上がってねぇ。

 

 

 わずかに経験値は入ってるようだが、それ以外の変化は全くない。

 こういう所は似て欲しくはないが、本当にゲームみたいだ。

 

 まぁ、唯一の救いはスキルポイントの欄には22とそれなりの数値が記載されていることだろうか。

 

「それで、サトウさん。ジャイアントトードの買い取りですが、移送サービスを利用されるということでよろしいでしょうか?」

 

 そう、モンスターの討伐報酬というのは基本的にモンスターの買い取りによるものだ。

 今回、俺たちはギルドにカエルの肉を売って報酬を得た。

 しかし、あんな巨大なカエルは俺たち二人じゃ運べない。そこで、ギルドの移送サービスを利用することにした。

 

「しかし、サトウさん。凄いですね……。あのクエストは本来なら四人から六人のパーティーで行うものなんですよ。」

 

「では、ジャイアントトード3匹の討伐報酬から移送費を差し引いた金額として一万五千エリスとなります。ご確認くださいね」

 

 それにしても、あの巨大カエル3匹の討伐で一万五千か。

 だいたい、一匹辺り移送費込みで五千円程度での買い取り。

 そして、さっきのお姉さんの話ならこのクエストは四から六人のパーティーを組んで行うもの様だ。

 なので、普通の冒険者の相場だと、今日1日命懸けで戦い、カエル3匹の報酬、一万五千円。五人パーティーだったとして、一人当たりの取り分が三千円。

 

 

 

 .......割に合わねぇー。

 

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

こ の す ば/KONO SUBA

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

 

 昨日の回想をしながら朝食を食べ終えた俺は、財布を見て、もう一度ため息を着いた。

 

「はぁ。ほんとゲームとかラノベとかの世界って、冒険者に都合良くできてたんだなぁ……」

 

 周りを見渡すと、駆け出しから半分抜け出した冒険者たちが俺よりもちょっと格の高い朝飯を食べていた。

 

 俺とアクアみたいな駆け出し冒険者は一人もいない。

 基本、駆け出しの冒険者は貧乏だ。

 まず、冒険者は基本的に収入が不安定だ。

 だから、毎日宿屋で部屋をとって暮らすなんてことはあり得ない。

 

 本来の駆け出し冒険者は、大勢で金を出しあって雑魚寝(ざこね)か、馬小屋で寝るのが普通らしい。だから、俺たちのような駆け出し冒険者は珍しいようだ……。

 

 その点では他の駆け出し冒険者よりはまだましな生活を送っているかもしれない。

 そして、異世界の人たちから見れば俺たちもチート持ちの日本からの異世界転生者と変わらないのかもな……。

 まぁ、資金難には代わりない。

 

 まず、昨日のカエル討伐の報酬は3匹で一万五千エリス。

 次に俺たちが泊まった宿は一室1泊七千エリス。

 これで、貯金なんてない俺たちは残り五千エリス程度しか残金が残ってない。

 かなりの痛手だが、これでも格安ってのは驚きだ。

 

 資金難に関してはライダーの力を使えば解決はできる。できるが、経験値が入らないという最悪のデメリットが存在している。

 

 けど、変身しないと使える魔法が制限されるし、セフィロトの宝珠を由来とする固有魔法も使えなくなる。

 

 さらに、変身しなければ俺の身体能力は常人とあまり変わらない。つまり、威力の高い魔法が使える固定砲台みたいになってしまうのだ。

 

「はぁ、どうすっかなー」

 

 昨日知ったことだが、街の近くの森に住んでいたモンスターは、とっくの昔に軒並み駆除されたらしい。

 門番もいるが、(あり)の子一匹(いっぴき)出入りさせないなんて警備をずっと続けるより、それ程大きな森でないならとっとと人に害をなすモンスターを駆除すればいい話だ。

 

 ゲームみたいな素人に毛が生えた程度の冒険者でも簡単に見分けが付く様な薬草や(きのこ)だのを、森に入って半日ほど採取しただけで、その日のホテル代と三食分の金が稼げる。

 

 そんな都合の良い仕事なんて、現実にはあるわけないってか。

 

 考えてみれば、裕福な日本ですらホテル暮らしのフリーターなんていないからな。

 最低賃金や労働基準法なんてない異世界だ。

 最低限の文化的な生活なんて保証してくれるはずもない。

 

 まぁ、ここの女将の話では強力な武器やステータスを持った駆け出しが何人かは誕生していっているようだが。

 

 絶対に俺たち同様、日本からの転生者だと思うけどな。

 

 駆け出しを乗り越えた中堅の冒険者なら、もう少しよい宿に泊まっているらしいが……

 

『異世界生活とやらも、そう上手くはいかんようだな……』

 

 そう言ってくるのはマギアドラゴン。

 

 どういうわけかはわからないが、こいつは精神世界(アンダーワールド)内部から直接話しかけられるようになったらしい……

 

 また、オーレギオン(アイツ)が手を加えたのだろうか。

 

 

 

 昨日、俺たちが借りることができたのは時間帯や資金の関係で一室のみだった。

 

 この女神が

 

「女神の私をソファーなんかで寝かせて恥ずかしくないの!? 私はベットじゃないと嫌よ!!」

 

 と、駄々をこねたので仕方なく、俺がソファーで寝て、アクアの奴はベットで寝た。

 

 そして、案の定……朝になって俺が起きても、コイツは気持ち良さそうに“ぐーすか”寝たままだった。

 

 何回か起こそうとはしたが、寝言を言うだけで起きる様子を見せない。

 

 仕方がないので俺だけ身支度を済ませて下の食堂で朝飯を食べることにする。

 

 そうして朝食を食べながら、食べ終えた後もアクアを待っていたのだか、いっこうに降りてこない。

 

 仕方がないので見に行くことにした。食堂から客室がある二階に行くにはまず廊下に出て、階段を上る必要がある。

 

 経年劣化でギシギシとなる廊下や階段を進んで上りなから、“この宿も長いんだなー”とか、色んな事を考えていると、二回の廊下に出た。

 

 階段から見て廊下の右側の一番端から入る201号室。それが俺たちの借りた部屋だ。

 

 鍵を使って扉を明け、玄関から見て右側にあるシングルのベットを覗くとアクアの奴は……まだ寝ていた。

 

「おい、アクア!! 起きろ! 朝だぞー」

 

「ったく! こいつ、気持ち良さそうに寝やがって……」

 

 色々と呼び掛けてみるが、いっこうに起きないのでアクアが寝ている布団を引っ剥がし、無理矢理起こすことにした。

 

 

 布団を剥がされるのに巻き込まれたアクアはベットから落下したが、その衝撃で目は覚めたようだった。

 

「ちょっと何すんのよ!!」

 

「もう、朝御飯の時間過ぎてんだよ!!」

「女将さんを待たせてるからさっさと身支度して降りてこい!」

 

「ちょ、ちょっと待ってカズマ!!」

 

 俺を止めるアクアを無視して食堂に戻り、女将さんにアクアが目覚めたことを伝えて、朝食の準備をしてもらうことにする。

 

 そうして、少し待っていると駆ける音がすると共に、アクアが勢いよく食堂に入ってきた。

 

「置いてくなんてひどいじゃない!!」

 

「いや、お前が朝食の時間になっても降りてこないのが悪いんだろ…」

 

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

こ の す ば/KONO SUBA

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

 

「へぇ、なかなか行けるわね、この定食!」

 

 そういいながら、定食を簡単に済ませたアクアと今日は何をするか話し合うことにした。

 

「おい、アクア。今日も昨日のクエストの続きだ」

 

「え、それって……カエル狩りってこと?」

 

「そうだよ。」

 

 嫌そうな顔で返事をしたアクアに向かって答える。

 

「えぇぇぇーー、 違うのにしましょうよ」

 

「仕方がないだろ……。昨日、討伐目標数に到達できなかったんだから」

 

「嫌よ、カエルはもう嫌!! また、私が食べられるに決まってるじゃない!!」

 

 いや、昨日のはお前が考えなしに突っ込んで行ったからだろ……

 

「とにかく、お前がなんと言おうと今日はジャイアントトードの討伐だ!!」

 

 そういった俺は泣きじゃくりながら拒否をするアクアを無理やり宿から引っ張り出し…

 

 アクセルの街を抜けて、外側の平原地帯へと向かった……

 

 

 

〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉

 

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

こ の す ば/KONO SUBA

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

 

〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉

 

 アクセルの外側に広がる平原地帯。昨日は黄昏時に来たから空は夕焼けだったが、今日は雲一つ無い快晴だ。

 

 今、視認できる範囲にいるジャイアントトードは二匹。一匹は遠くにいるがこちらに気付いて向かっている。もう一匹のジャイアントトードも逆方向にいるが、こっちに向かってきている。

 

 懐から“ドライバーオンマギアリング”と“オソールマギアリング”を取り出すと、マギアドラゴンが話しかけてきた。

 

『変身はせんのか?』

 

「ああ、昨日は変身してカエルと戦ったけど、経験値が入らなかったからな……」

 

 そういった俺は“ドライバーオンマギアリング”を腰にかざし、“マギアドライバー”を出現させる。

 

「おい、アクア。今日は変身せずに魔法だけでアイツらと戦うことにするな。近い方からまず倒すから、お前はここで待っててくれ。あ、あと、眩しいから目を閉じていてくれよ…」

 

 ハンドオーサーを右側に傾け、

 

〔ルパッチマジック タッチ ゴー!〕

 

 エンチャンターから流れる音に反応したアクアが、カエルを見るのを止めて話しかけてきた。

 

「ねぇ、カズマ。聞こうと思ったんだけどその音なんなの? 」

 

「仕様だ。気にするな。」

 

 “オソールマギアリング”をかざす。

 

〔ルパッチ《オソール プリーズ》〕

 

 右手の方向に黄色の魔法陣が出現。

 その魔法陣の中心がバチバチと螺旋状に放電し、球体が形成されていく。

 

 1、2秒で完成した中心部が蒼く外側が黄色い雷の球体は、さっきよりも激しく放電しながら、回転している。

 

 カエルに狙いを定めて、球体の回転を止める。

 

 それと同時に……

 

 落雷の様な轟音、眩しい閃光と共に、稲妻の砲撃がカエルに向かって放たれた。

 

 

 

 平原に一条の閃光が走り抜ける。

 目も眩む光を放つ閃光はそのままカエルに突き刺さり、カエルを木端微塵に消滅させた。

 

 

「ちょっと、カズマ!! あんなに眩しいなら一言ぐらい言っといてよ!」

 

 先程の閃光で目をやられたらしく、アクアが文句を言ってきた。

 

「いや、だから目を閉じてろっていったのに。 もうちょっとキチンと人の話聞けよ……。」

 

 ほんと、天界のヤツは人の話聞かねーな……

 

「おまえ、仮にも女神だろ……。もうちょっと女神らしいところを……」

 

 そう言ってる俺と向かってくるジャイアントトードをみて何らかの結論に至ったアクアは

 

「そうよ、女神がたかがカエルに黙って引き下がってどうするのよっ…………。カエル相手に引き下がったなんて知れたら、美しくも麗しいアクア様のなが廃るわ!! 見てなさいカズマ!! 」

 

 そう言いって遠くにいるジャイアントトードに向かって駆け出し、拳を前に突きだした。

 

「ゴッドレクイレム!!」

 

 拳を中心にピンクと金のオーラがアクアの前を覆うように展開していく。

 

「いや、レクイエムって、鎮魂歌だろ。それ絶対に対アンデット系の魔法じゃ……」

 

「ゴッドレクイレムとは女神の愛と悲しみの鎮魂か………ヒグッ」

 

 

 食われた。

 

 

「お、お前ぇぇぇぇえ!! 食われてんじゃねぇええ!!」

 

 俺は、アクアが身を挺して動きを封じたカエルにとどめを刺し何とか、三日以内にジャイアントトード五匹討伐のクエストを完了させた。

 

 

「うっ……うぐっ……ぐすっ……。生臭いよう……。生臭いよう」

 

 アクセルの町に向かう俺の後を粘液まみれのアクアがめそめそと泣きながら付いて来る。

 

「ねぇ、カズマ……。カエルの……体内って………臭いけどいい感じに温かいのよ」

 

「知るか!!」

 

 余計な知識を増やすんじゃねぇ。

 

「はぁ、どうするアクア。この時間帯だと公共浴場開いてないぞ…………」

 

「えぇぇぇぇーー。かじゅまさーん、なんどがじてよーー」

 

 

 はぁ、とりあえず《ウォーター》でカエルの粘液を洗い流して……

 

 

 

 ん?

 

 

 

「どうしたのよカズマ? 急に立ち止まったりして……」

 

「いや、ここからちょっと離れた場所で結構な魔力の流れがあった気がしてな……」

 

「ああ、そういえばそんな感じがするわね」

 

 

〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉

 

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

こ の す ば/KONO SUBA

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

 

〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉

 

「はい、確かに。ジャイアントトードを三日以内に五匹討伐クエストの完了を出し ました。ご苦労様でした」

 

 アクアの生臭さはどうなるかと思ったが、アクアの魔法と俺の魔法でなんとかなったので冒険者ギルドの受付に報告をして、規定の報酬を貰う。

 

 仕留めたカエルの内一体は《オソール》で消滅したが冒険者カードに討伐数は記録されているので問題はなかった。

 

 俺は改めて自分のカードを見ると、そこには冒険者レベルと記されている。 あのカエルは駆け出し冒険者にとってレベルを上げやすい部類のモンスターなのだそうだ

 

 今日は俺一人でカエルを二匹狩った訳だが、それだけで一気にレベルが3に上がった。

 

 低レベルな人間ほど成長が速いらしい。 カードに記されているステータスの数値が多少は上がっているが、あまり強くなったという実感は無い。

 

「…………しかし、本当にモンスターを倒すだけで、強くなるもんなんだなぁ・・・」

 

 

 カードにはスキルポイントと書かれていて、そこに25と表示されている。

 

 昨日から3、数値が上がっている。

 これを使えば、俺もスキルを覚えられるわけだ。

 

「ではジャイアントトード二匹の買い取りとクエストの報酬を合わせまして、 十一万エリスとなります。 ご確認くださいね」

 

 十一万か。

 

 あの巨大なカエルが、 移送費込みで五千円程での買い取り。

 

 そして、カエル五匹を倒して報酬が十万円

 

 五人パーティーだったとして、一人当たりの取り分が二万二千円。

 

 

・・・・・・割に合わねー。

 

 

 クエストが一日で済めば日当二万五千円。

 

 これだけ見れば一人にしてはいい稼ぎに思えるかもしれないが、命懸けの仕事にしては割に合っていない気がする。

 

 一応ほかのクエストにも目を通すと、そこに並んでいたクエストは......。

 

『森に悪影響を与えるエギルの木の伐採、報酬は出来高制(できだかせい)

 

『迷子になったペットのホワイトウルフを探して欲しい』

 

『息子に剣術を教えて欲しい〈ルーンナイトかソードマスターの方に限る。〉』

 

『魔法実験の練習台探してます〈強靱な体力か強い魔法抵抗力を必要とします〉』

 

『マンティコアとグリフォンの討伐』

 

『イシヤキイモが接近中のため進路の偵察』

 

『タワーオブパンプキンを筆頭とするカボチャの群れが接近中のため進路の偵察』

 

『畑のサンマの収穫の手伝い』

 

『街の郊外にある屋敷の墓掃除』

 

『共同墓地でのゾンビメーカー討伐』

 

『家出したお嬢様の捜索』

 

『泉の水質調査。土木工事の急な増加により、廃棄された土砂が湖に流れ込んでいるとの報告あり』

 

 

 うん。

 

 この世界で生きていくのは甘くない。

 

 冒険開始二日目だが、異世界生活よりも日本での生活の方が楽だと知った。

 

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「なあ。聞きたいんだがスキルの習得ってどうやるんだ?」

 

 午後、俺たちはギルドで遅めの昼食をとっていた。

 

 アクアはジャイアントトードの唐揚げを片手に手近な店員を捕まえて酒のおかわりを注文している。

 

 アクアがジョッキを片手にこちらに向き直ると、

 

「スキルの習得? そんなの、カードに出ている、現在習得可能なスキルってところから......。ああ、そういえばカズマさんの職業は冒険者だったわね。初期職業って言われてる冒険者は、 誰かにスキルを教えてもらう必要があるのよ。 まずは目で見て、そしてスキルの使用方法を教えてもらう。 そしたら、カードに習得可能スキルという項目が現れてるから、ポイントを使って必要なスキルを選べば習得完了よ」

 

「そして、スキルポイントってのはね………」

 

 頼んでもいないのに、スキルポイントの概要まで説明し出した。まぁ、分からないところもあったし、一応聞いておくか。

 

「職業に就いた時に貰える、スキルを習得するためのポイント よ。優秀(ゆうしゅう)な者ほど初期ポイントは多くて、このポイントで様々なスキルを習得するの。 例えば、 超優秀(ちょうゆうしゅう)な私なんかは、まず宴会(えんかい)芸スキルを全部習得し、 それからアークプリーストの魔法も全て習得したわ」

 

「……宴会芸スキルって何に使うものなんだ?」

 

 アクアは俺の質問を無視して先を続ける。

 

「スキルは、職業や個人によって習得できる種類が限られてくるわ。 」

 

「で、宴会芸スキルってのは何時どうやって使うものなんだ?」

 

「例えば水が苦手な人 ふつう は氷結や水属性のスキルを習得する際、普通の人よりも大量のポイントが必要だったり、 最悪、習得自体ができなかったり……………」

 

 宴会芸スキルについて聞いているのにいっこうに返事が帰ってこない。

 

「はぁ、もういいか……」

 

 上級職にも就けたが、〈冒険者〉を選んだのは初期職業だから全てのスキルを習得できるっていうメリットからだ。

 そのメリットを活かすためにもなるべく複数の職業のスキルを獲得したい。

 

「なあ、アクア。 お前なら便利なスキルたくさん持ってるんじゃないか? 何か、スキルを教えてくれよ。 習得にあまりポイントを使わないで、それでいてお得な感じの」

 

 俺の言葉に、アクアは水の入ったコップを握り、しばらく考え込む 。

 

「…………しょうがないわねー。本来なら、誰にでもホイホイと教えるようなスキルじゃないんだからね?」

 

 勿体(もったい)を付けるアクアだが、教えてもらう立場なのでここはじっと我慢だ。

 俺は神妙(しんみょう)に頷きながら、アクアがスキルを使う所を観察する。

 

「じゃあ、まずはこのコップを見ててね。この水の入ったコップを自分の頭の上に落ちな いように載せる。 ほら、やってみて?」

 

「いや、ちょっと待て。それ、なんのスキルなんだ? 宴会芸スキルじゃないよな?」

 

「え? 宴会芸スキルを教えてほしいんじゃないの? 」

 

「何でだよ! 〈アークプリースト〉のスキルを教えてくれって頼んだんだよ!!」

 

「ええーーーーー!?」

 

 

 なぜかショックを受けたらしいアクアが、しょぼんとしながらテーブルの上でどこからか取り出した種を指で弾いて転がしている。

 

 何を落ち込んでいるのかは知らないが、目立つから頭の上のコップを下ろして欲しい。

 

「あっはっは! 面白いねキミ! ねえ、キミ、有用なスキルが欲しいんだろ? 盗賊スキルなんてどうかな?(彼が、レギオン先輩たちが私たちに無断で進めてた『佐藤和真“英雄化”計画』の主役ですか………。)」

 

 それは、横からの突然の声。

 

 となりを見れば隣のテーブルには一人の女性がいた。

 

 俺に声をかけてきたのは革の鎧を着た、身軽な格好をした女の子。

 頬に小さな刀傷があり、ちょっとスレた感じだがサバサバとした明るい雰囲気の銀髪の美少女だ。

 

 俺より一つ二つ年下だろうか。そして、よくわからないが、若干ながら申し訳なさそうな顔をしている。

 

「えっと、盗賊スキル? どんなのがあるんでしょう?」

 

 俺の質問に、盗賊風の女の子は上機嫌で。

 

「よく聞いてくれました。盗賊スキルは使えるよ! (わな)の解除に敵感知(てきかんち)潜伏(せんぷく)窃盗(せっとう)。持ってるだけでお得なスキルが盛りだくさんだよ。 キミ、初期職業の冒険者なんだろ? 盗賊のスキルは習得にかかるポイントも少ないしお得だよ? どうだい? 今なら、クリ ムゾンビア一杯でいいよ?(申し訳ないですし、なるべく協力はしたいです)」

 

 安いな!

 

 と思ったが、よく考えればスキルを教えた所でこの子にはリスクなんてない。

 

 本気で俺が盗賊スキルを教えて欲しければ、そこらの他の盗賊に頼んでもいい訳だし。

 

「よし、お願いします! すんませーん、こっちの人に冷えたクリムゾンビアを一つ!」

 

「あ、あとスキルを教えるにはもう一人いるから、君の相方もつれてきてもらっていいかな?」

 

「あ、はい。わかりました」

 

 

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「まずは自己紹介(じこしょうかい)しとこうか。あたしはクリス。見ての通りの盗賊だよ。」

 

「俺はカズマって言います。クリスさん、よろしくお願いします」

 

「私の名前はアクア!! そう、アクシズ教団で崇められている水の女神、アクアよ!!」

 

「女神?」

 

「──を自称してる可哀想な子なんだ。たまにこう言ったことを口走ることがあるんだけど、そっとしておいてやって欲しい」

 

 首を絞めにくるアクアをあしらいながら、クリスに向かってそう答えた。

 

「女神? ま、まさかね……」

 

 

 冒険者ギルドの裏手の広場。

 

 俺とクリス、そしてアクアの三人は、人気()のない広場に立っていた。

 

「では、まずは《敵感知》と《潜伏》をいってみようか。罠の解除とかは、こんな街中に罠なんてないからまた今度ね。じぁあ………アクアさん、ちょっと向こう向いててくれる? 」

 

「えぇぇー………」

 

「おい、アクア。話がすまないから、早くしてくれ」

 

「はぁ、しょうがないわねー」

 

 アクアが、言われたとおりに反対を向く。

 

 すると、クリスはちょっと離れた所にあるタルの中へ入り、上半身だけを出す。

 そしてアクアの頭に、何を思ったのか石を投げつけ、そのままタルの中に身を隠した。

 ひょっとして、これが潜伏スキルだとか言う気だろうか。

 

「ねぇ、ちょっとなにするのよ!!」

 

 石をぶつけられたアクアが、怒りを(あらわ)にしながら、ぽつんと一つしかないタルへ歩いていく。

 

「敵感知......。敵感知……アクアさんの怒ってる気配をピリピリ感じるよ! ごめん!! アクアさん!! これはスキルを教えるために仕方なくやる必要があったんだよ!! 」

 

「そんなこと関係ないわ!! 謝って! 私に石をぶつけたことを謝ってよ!」

 

「ご、ごめん。アクアさん。後でお酒おごるから」

 

「本当? お酒だけじゃなくておつまみも忘れないでね」

 

……こ、これでほんとにスキルを覚えられるんだろうな……。

 

「さ、さて。それじゃあたしの一押しのスキル、窃盗をやってみようか。 これは、対象の持ち物を何でも一つ(うば)()るスキルだよ。相手がしっかり握っている武器だろうが、(ふところ)の奥にしまい込んだサイフだろうが、何でも一つ、ランダムで奪い取る。スキルの成功確率は、ステータスの幸運値に依存するよ。 強敵と相対した時に相手の武器を奪ったり、大事に隠しているお宝だけかっさらって逃げたり、色々と使い勝手のいいスキルだよ」

 

 アクアに服を捕まれて揺さぶられ、目を回していたクリスが復活し、説明をしてくれる。

 

 確かに、スキルはなかなか使えそうだ。

 

 しかも、成功率が幸運依存って事は、俺の2番目に高いステータスを活かせるって事だ。

 

「じゃあ、キミに使ってみるからね? いってみよう!『スティール』ッ!」

 

 クリスが手を前に突き出しと同時、その手に小さな物が握られていた。

 

 それは………。

 

「あっ! 俺の指輪!」

 

 あろうことかクリスは俺のマギアリングを窃盗したのだ。

 

「おっ! 当たりだね! まあ、こんな感じで使うわけさ。 それじゃ、この指輪を……」

 

 クリスは、俺に指輪(マギアリング)を返そうとして、そしてにんまりと笑みを浮かべた。

 

「……ねえ、あたしと勝負しない? キミ、早速窃盗スキルを覚えてみなよ。 それで、あたしから何か一つ、スティールで奪っていいよ。 それが、あたしのサイフでもあたしの武器でも文句は言わない。 どんな物を奪ったとしても、キミはこの自分の指輪と引き換え・・・どう? 勝負してみない?」

 

 いきなりとんでもない事を言い出す子だ。

 

 そんなことをせずに俺としてはすぐにマギアリングを返して欲しいのだが……

 

 彼女は俺が勝負を受けなくとも指輪は返してくれないだろう。

 

 俺はしてやられたのだ。

 おそらく、彼女は俺から金を巻き上げようとするたちの悪い冒険者なのかもしれない。

 

 もし、彼女が本当にたちの悪い冒険者なら、さらに小細工(こざいく)を重ねている可能性もある。

 

 それに、俺は幸運値が高いらしい......。

 つまり、スキルに失敗したら何も貰えないって事じゃないだろう。

 

 ………やってみるか。

 

 これはおそらく、先輩冒険者からの洗礼だろう。これを乗り越えられれば、それなりに冒険者としてやっていけるはずだ……

 

 自分の冒険者カードをすると、そこに習得可能スキルという欄が新たに表示されているのを確認した。

 

 そこを指で押してみると、三つのスキルが表示される。

《敵感知》1ポイント

《潜伏》 1ポイント

《窃盗》1ポイント、

 

 俺はひとまず、カードの中のスキル《窃盗》《敵感知》《潜伏》を習得する。

 

 25ポイントあったスキルポイントが消費され、残りスキルポイントが22になる。

 

 なるほど、こんな感じでスキルを覚えるのか。

 

「早速覚えたぞ。 そして、その勝負乗った! 何盗られても泣かないでくれよ?」

 

 そう言って右手を突き出す俺に、クリスが不敵に笑って見せた。

 

「いいねキミ! そういう、ノリのいい人って好きだよ! さあ、何が盗れるかな? 今ならサイフが敢闘(かんとう)賞。当たりは、魔法が掛けられたこのダガーだよ!こいつは四十万エリスは下らない一品だからね! そして、残念賞はさっきアクアさんにぶつけるために多めにっといたこの石だよ!!」

 

「マジか……。できれば当たってほしくなかったぜ……」

 

 クリスが取り出した石を見て、思わず呟く。

 

 確かにゴミアイテムを持っておけば、大事なアイテムがられる確率も減り、スティール対策になる。

 

「これどんなスキルも万能じゃない。 こういった感じで、どんなスキルにも対抗策はあるもんなんだよ。 一つ勉強になったね! さあ、いってみよう!」

 

 勉強にはなった。

 それに心底楽しそうに笑うクリスを見ていると、俺がマヌケな気分にすら思えてくる。

 

 なるほど。ここは日本じゃない、弱肉強食の異世界だ。

 

 ここでは俺の常識は通用しない。法律は存在するだろうが、日本ほど細かくはないのだろう。

 

 ここでは甘っちょろいヤツが悪いのだ。

 それに、勝負の分が悪くなったってだけで、まだ残念(ざんねん)賞に当たるとは決まっていない。

 

「よしっ! 昔から運はいいんだ! 『スティール」』ッ!!」

 

 叫ぶと同時に、俺が突き出した手には何かがしっかりと握られていた。

 

 成功確率は幸運依存といっていたが、一発で成功した所を見ると、やはり俺は運には恵まれているらしい。

 

 自分が手に入れた物を広げ、マジマジと見ると

 

「…………なんだこれ?」

 

それは一枚の布切れだった。

 

それを両手で広げにかざして見ると・・・・・・。

 

「ま、マジでかぁぁあ!!」

 

「いやああああああああ!ぱ、ぱんつ返してええええええええええええええ」

 

クリスが自分のスカートの裾を押さえながら、涙目で絶叫した。

 

 

 俺にパンツを盗られたクリスがアクアになだめられて落ち着いた頃。

 

「ねぇ、カズマさん。さすがに人の下着を盗るのはどうかと思うの」

 

「いや、《スティール》で盗るのはランダムだから今回のは偶然なんだよ……」

 

 アクアに弁明をしながらクリスの方に向き直り、

 

「おい、クリス。パンツを返してほしかったら、俺の指輪を返せ。」

 

「ほんとに? 指輪を返したらパンツを返してくれるの? 」

 

「ああ。悪かったから、早く交換してくれ……」

 

 

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 スキルを覚えて冒険者ギルドに帰ってくると、なんだか騒々しくなっていた。

 

 近くにいた冒険者に話を聞いてみると、

 

「ああ、それがな。近くの森で悪魔型のモンスターが目撃されたらしいんだよ。それも、上級の。」

 

「悪魔? それって」

 

 と冒険者を話している最中に、背中から睨むような視線を感じ、

 

 後ろを振り返ると……

 

「ねぇ、今、悪魔っていった?」

 

「悪魔なんて害虫はこの世に存在しちゃいけないんだよ」

 

 物凄(ものすご)威圧感(いあつかん)を出すアクアとクリスがいた。

 

 

 

 冒険者ギルドの一角のテーブルにて

 

「ねぇ、カズマ。悪魔なんてのはね、人間の感情がないと生きられない寄生虫みたいなものなのよ。今すぐに討伐にいきましょう。」

 

「そうだよ。アクアさんの言う通りだよ。すぐに討伐に行こう。」

 

「いや、ちょっと待てよ。アクアとクリスが悪魔を嫌ってるのはわかったからさ。まずは、偵察とか」

 

「クリス。こんなところにいたのか」

 

 アクアとクリスが悪魔討伐の話を押し進めようとしているところで、誰かが話しかけてきた。

 

 声のした方向を見ると、クールな印象を受ける女騎士、それもとびきりの美人がいた。

 

「ああ、ダクネス。実はね────」

 

 クリスの知り合いらしいその金髪碧眼(きんぱつへきがん)の美女は事情を聞いて、

 

「なに!? 悪魔だと! エリス教徒として見過ごすわけにはいかんな……。カズマといったか。頼む。一緒に討伐に行ってくれないだろうか。」

 

 クリスの意見に同意した。

 こいつ等どんだけ悪魔嫌いなんだよ……

 

「はぁ、わかったよ」

 

 とりあえず悪魔討伐を行う方針で話を進めることにしよう。

 

「まずは、情報収集とかアイテム補充とか、色々と準備を進め───」

 

「いいえ、そんなことをする必要はないわ!! 」

 

 自信満々の様子で俺の言葉を遮ったアクアは

 

「この〈アークプリースト〉たる私がいるのよ。 どんな悪魔が来たとしても問題ないわ!!」

 

 と、宣言した。確かにゲームではプリーストは対悪魔のスペシャリストだが……

 

 

 

「あ、あの!!」

 

 またか……

 

 声のする方に振り向くと、いかにも魔法使いと言った風貌をした紅い瞳の少女が話しかけてきた。

 

「あ、悪魔の討伐に行かれるんですよね……」

 

 なぜか途中から声がしぼんでいっているが。

 

「あ、ああ。そういうことになってるんだけど、君は?」

 

「あっ、えっと、え…ぇっ…」

 

 俺に名を訪ねられて、あたふたしていた彼女は決心したのが、バサッとローブをはためかせ……

 

「我が名はゆんゆん! アークウィザードにして中級魔法を操りし者、やがては紅魔族(こうまぞく)(おさ)となる者! 」

 

 一風変わった自己紹介をしてきた。

 

 いや、ゆんゆんってなんだ。

 

「・・・・・・その赤い瞳。もしかして、あなた紅魔族?」

 

 アクアの問いにその子はこくりと(うな)いた。

 

「・・・・・・ええと。 カズマに説明すると、紅魔族は、生まれつき高い知力と強い魔力を持ち、大抵(たいてい)は魔法使いのエキスパートになる素質を秘めているわ。 紅魔族は、名前の由来 となっている特徴(とくちょう)的な紅い瞳と………。 そして、それぞれが変な名前を持っているの」

 

 疑問符(ぎもんふ)を浮かべた俺に、アクアが言った。

 

「えーっと、ゆんゆん……だっけ? 何のようだ?」

 

「えっと、あの……。実はですね……その悪魔が来た理由に……ちょっと心当たりがあるというか………私のライバルが関係してそうっていうか……」

 

 ゆんゆんのライバルが悪魔に関係してそうと聞いたからだろうか。

 

 アクアとクリスがゆんゆんに(つよ)(せま)り出した。

 

「ねぇ、ゆんゆん。あなたのライバルが悪魔に関与してるってどういうこと?」

 

 と、アクア。

 

「事と次第によってはそのライバルも………」

 

 と、クリス。

 

「ち、違います。私のライバルの使い魔がこの前も上位悪魔(じょういあくま)に狙われてて……。もしかしたら今回もかな……って」

 

「なるほどな……。まぁ、事情はわかったよ」

 

「んで、そのライバルはどこにいるんだ?」

 

 ゆんゆんが(ゆび)()した先には……ギルドの椅子に寝転がったゆんゆんと同じく紅い瞳の少女がいた。

 

 俺たちに見られていることに気がついたのだろうか、俺たちの方に向き直った彼女は、

 

「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業(なりわい)とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操るもの!!」

 

「何をしているのですかゆんゆん!!なぜ、一緒に討伐をする話になっているのですか! どうにかして彼らの討伐を諦めさせ、我々で手柄を独り占めする作戦だったではないですか!!」

 

 いや、なんで寝転がりながら自己紹介してんだこいつ。しかも、その後とんでもない事を言ってるぞ。

 

「めぐみん!! もしもアーネスみたいな上位悪魔だったらどうするのよ!! 頭数は多い方が良いに決まってるでしょ!!」

 

「そんなんだからゆんゆんは紅魔の里でボッチだったんですよ!! もっと紅魔族らしくしないと!!」

 

 めぐみんとゆんゆんは紅魔族らしさか慎重さのどちらを優先するかで喧嘩を始めた。

 

「なぁ、なんで寝転がりながら自己紹介して、喧嘩してんの?」

 

「えっと、めぐみんは爆裂魔法っていう高威力の魔法を使えるんですけど……」

 

 爆裂魔法?

 

「消費魔力が大きすぎて、1日1発しか撃てないんです。今日はもう放ってしまったので、魔力が枯渇してしまってるんですよ」

 

「あぁ、なるほど。魔力の使いすぎか……」

 

「ねぇ、カズマ。早く悪魔を退治しに行きたいんですけど」

 

 我慢ができなくなったアクアから、催促が来た。ダクネスは普通にしているが、クリスも早く行きたそうにしている。

 

 これは急いだ方が良さそうだ。

 

「それで、ゆんゆんは悪魔討伐について来るのか?」

 

「えっーーと」

 

 ゆんゆんはどうするのか渋っているようだが……

 

「なっ!! なに抜け駆けをしようとしているのですか!! 行くとしたら私もついてきますよ!」

 

 なるほどな、めぐみんがものすごく駄々をこねている。ゆんゆんが渋っていたのはこれが理由か……。このまま放置していったら後で恨みを買いそうだ。

 

「はぁ、わかったよ。めぐみんの魔力不足は俺が何とかするから、ゆんゆんはめぐみんを背負うなりして、連れてきてくれ」

 

 

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 鬱蒼(うつそう)と木々が生い茂る森の前にて。

 

「それで、どうやって私の魔力を回復させるんですか?」

 

 ゆんゆんの背中でめぐみんが疑わしげな顔でこちらを見てくる。

 

「それじゃ、この指輪をまずは指に()めてくれ」

 

 そうやって俺は“プリーズマギアリング”を差し出した。

 

「ちょっと、カズマ。なにを考えてるの? 初対面の指輪を渡すなんて」

 

 想像の通り、不味いことなになった。アクアや周囲の女性から蔑みの視線を受けることになる前に弁明をせねば……

 

「いや、俺の魔法は相手に直接効力を及ぼすためにはこうするしかないんだよ……」

 

 そういった俺は“ドライバーオンマギアリング“を腰にかざした。

 

〔ドライバー オン!!〕

 

 スペルエンチャンターから流れる詠唱と共に“マギアドライバー”が出現する。

 

「お、おおおお!! カズマと言いましたね。そのカッコいいベルトはいったいなんなのですか!?」

 

 ……そんなにカッコいいのだろうか。まぁ確かに俺もこのドライバーを着けて魔法使いになった頃は興奮したしな。

 

「これは……簡単に言えば俺の魔法の杖……だな。そんじゃあ、指輪を着けた手をこのドライバーにかざしてくれ」

 

 そう言いながら、ハンドオーサーを右側に傾ける。

 

「こうですか?」

 

〔ルパッチマジック 《プリーズ プリーズ》 〕

 

「お……おおおお!! す、すごいですよカズマ!! 魔力が、魔力が流れてきます!! 」

 

「へぇ、そんな魔法があるんですね……」

 

 いや、この世界の魔法については詳しくないからな…………。あるのかは知らん。

 

 

 

「おい、めぐみん。それなりの魔力を送ったはずなんだけど……もういいか?」

 

「うーーん。まぁ、いいでしょう。爆裂魔法を撃てるぐらいには回復はしましたしね。本来ならばもう少し欲張りたいところですが、カズマに戦力外になってもらっては困りますから。」

 

 

「それじゃあ、俺も準備しますかね……」

 

「準備? 魔法の杖を出現させたのに、まだ何かあるのですか?」

 

「えぇ、そうよ。カズマは私の従者にふさしい変身があるのよ」

 

「いつ俺がお前の従者になったんだ……。て言うか、ふさわしい変身ってなんだ?」

 

 そんなことを呟きながら、ハンドオーサーを左側に傾け、“マルクトマギアリング”を取り出し、

 

 

〔シャバデゥビ タッチ ヘンシン!!〕

 

 

「変身!!」

 

 

 マギアドライバーにかざした。

 

 

〔ネクサム オン!! マルクト!〕

 

 

〔プリーズ ベラ ザ カプティム Prison warrior representing crystal and earth〕

 

 

 大小様々な歯車を伴った魔法陣が俺の体の真上と真下に出現。

 

 それらが歯車を回しながら俺の体を通過していく。

 

 通過した部分から変身が始まり、丁度二枚の魔法陣が腰の部分で重なり合って変身は完了する。

 

 このスタイルは[アドナイメレクスタイル]。外見は紫を基調としたデザインで、フェイスガードとセンターストーン、胸部マルクトラングストーンの色は紫。センターストーンやルーンイヤーは円形をしている。

 

 武器は片刃の大剣で、剣の柄にはハンドオーサーがあり、そこに“マルクトマギアリング”を読み取ることで必殺技を発動できる。

 

「おおお! カッコいい! カッコいいですよカズマ!! これ程、紅魔族(こうまぞく)の琴線《きんせん》に触れるとは、なかなかやりますね!!」

 

 

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 森の中を、俺を先頭にしてどんどん奥へと進んでいく。

 

 森の中のちょっと開けま場所にて、そこにいたのは───。

 

「『セイクリッド・エクソシズム』ーー!!」

 

「ぐぁぁぁぁああああ!!」

 

 そこにいた悪魔と(おぼ)しき存在は、遭遇して早々に放たれたアクアの破魔(はま)魔法によって、大ダメージを負った。

 

 金属(きんぞく)の様な光沢(こうたく)を放つ漆黒(しっこく)の肌はボロボロに。

 

 蝙蝠(こうもり)を思わせる巨大な羽は穴が開き、

 

 オーガーですらねじ伏せそうな体格は衰え、角はへし折れてしまっている。

 

 本来ならばどこからどう見ても最終ダンジョンに住んでそうなのに、もう見る影もない。

 

「てめぇら…………何しやがる!!」

 

 その悪魔は無機質な瞳ながら、怒りを露にしていた。

 

 が、めぐみんの方を見て驚いた様子を……いや、これはめぐみんやゆんゆんよりも、紅魔族に反応してるのか?

 

「なぁ、お前ら二人って紅魔族だよな。それに、ウォルバク様の臭いもしてやがる。さて、」

 

「我が名はホースト。でっけえゴブリンではなく上位悪魔にして、やがてはとあるガキに使役される予定の者…………どうだ! 俺様の挨拶は。お前ら紅魔族だろ! こんな感じの挨拶が──」

 

 

「いい、めぐみん。こんな害虫の言うことなんて聞くこと無いわ」

 

「そうだよ、めぐみん。こんなゴミは私とアクアさんで始末しちゃうから」

 

 そう言って悪魔の言葉を遮ったアクアが白い炎を放ち、

 

「『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』ーー!!」

 

 クリスが悪魔に斬りかかった!!

 

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!」

 

 悪魔はアクアの破魔魔法で大分弱っているらしく、クリスのダガーでもかなりのダメージを与えられているらしい。

 

 もう、一網打尽にできそうな勢いだ。

 

「しょうがない……か」

 

 もう、この調子では普通に戦うとか、そんな空気ではない。

 

〔ルパッチマジック 《マティン プリーズ》〕

 

 この[アドナイメレクスタイル]の能力は【拘束】。固有魔法の効果は簡単に言えば《幽閉》だ。この固有魔法によって幽閉されたものは解除しない限り、どうあがいても外には出ることはできない。

 

 悪魔を中心として魔法陣が展開され、悪魔を拘束する。

 

 

「おい、ゆんゆん、ダクネス。おもいっきり攻撃を食らわしてやれ!!」

 

「めぐみんは爆裂魔法の詠唱をして待機してろ!!」

 

 そう指示を出しながら、俺も次の魔法の準備をする。

 

「『ライトニング』ッ!!」

 

 ゆんゆんが中級魔法を放ち、

 

「はぁぁぁあああ!!」

 

 ダク…ネ…ス…が………ダクネスが斬撃を外し、

 

「ゴッドブローォォォオ!!」

 

 アクアの拳が炸裂し、

 

「たぁぁぁぁあ!!」

 

 クリスの攻撃が追撃する。

 

 

「いきますよ。我が必殺の爆裂魔法!!」

 

「よしっ!! 行くぜ必殺!!」

 

 武器の剣にあるハンドオーサーに“マルクトマギアリング”をかざし、

 

 

〔キャモナスラッシュ! スラッシュストライク!〕

 

 

 自分の死期を悟ったのか悪魔は、まるで愚痴る様に独白すると。

 

「《残機(ざんき)》が一人、減っちまうなあ。ウォルバク様との契約(けいやく)も、強制解除(きょうせいかいじょ)で晴れてフリー ……まいったな。 この流れだと、いつか本当にあのガキんちょに喚び出されて、使役(しえき)されちまいそうだ」

 

 そんな、よく分からない事を満更でもなさげに呟いた。

 

「…… 『エクスプロージョン』ツッッ!!!」

「………《レグーマ グラディオ》ッ!!」

 

 名も知れぬ悪魔は、めぐみんの爆裂魔法と俺の必殺技で跡形もなく消し飛ばされた。

 

 

「そういえば、あの悪魔この街に何しに来たのかしら」

 

「めぐみんの使い魔がどうとか言ってたけど……」

 

「なにも話さずに逝ってしまわれましたからね」

 

「あっ!! あの悪魔、ホーストというらしいですよ。冒険者カードにそう記載されてますから」

 

 

〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉

 

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

こ の す ば/KONO SUBA

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

 

〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉〈▲〉

 

 悪魔討伐を終えた俺たちは冒険者ギルドへ帰って、報告をし、

 

「え、えぇぇぇぇ!! 討伐されたんですか! あの悪魔型のモンスターを!!」

 

「おおおおおお!!」

 

「やるじゃねぇか!!」

 

 驚く受付のお姉さんと、冒険者たち。そして冒険者カードを見せびらかして自慢するめぐみん、それをなだめるゆんゆんを眺めながら、こういう生活も悪くないな……と、今朝とは全く違う感想を抱いた。

 

 冒険者が上位悪魔の討伐に沸き立ち、盛り上がりを見せる。

 

 酒場の店員はせわしなく料理や、飲み物を各テーブルにはこんで忙しそうにしている。

 

「今日は宴よっーー!! カズマも早くこっちに来なさいよ!!」

 

 アクアに呼ばれた方向を見ると、クリスとダクネスを連れて、もう席を確保したらしい。

 店員を捕まえて注文をしている。

 

 俺はため息をつきながら、どこか楽しくなってきて少し笑い、

 

 アクアたちがいるテーブルの方に手続きを終えためぐみんとゆんゆんを連れて向かった。

 

「もう、遅いじゃないカズマ。なにしてたのよ!」

 

「悪い悪い、めぐみんたちの手続きが思いのほか時間かかかってな……」

 

「私もお酒がのみたいです!!」

 

「いや、めぐみんにはまだ早い。」

 

「ねぇ、めぐみん!! このお肉美味しいよ!!」

 

「まぁ、たまにはこんな日も悪くないよね!!」

 

 こうして、異世界初の宴を堪能しながら、俺の異世界生活二日目は思ったよりも充実して終えた。

 

 

 

          <Not To Be Continued>




基本的に時系列はファンブックの内容を採用します。そして、このファンの物語は内容から時系列を推測し、作者が勝手に組み込みます。そして、都合を会わせるために改編します。

今回の主な改編点

◆カズマがクリスにスキルを教えてもらう際の実験台がアクア。

◆栗ネズミを討伐しためぐみんが宿に帰らず、ゆんゆんと共にギルドに残る。

◆めぐみん、ゆんゆん、カズマ、アクア、ダクネス、クリスが本来よりも早く会合する。

◆ホーストが本来の討伐日よりも早く討伐される。

◆レックス達が登場しない。セシリーが登場しない。

前回の主な改編点

◆アクアの神託がゼスタに届かない。

◆冒険者の登録料に困らない。

◆アルバイトに勤しまない。


─────────────────────

そして、クリスがたちの悪い冒険者と同じことをしようとしていたと読み取れる記述は『この素晴らしい世界に祝福を! よりみち』の『世にも幸運な銀髪少女』に存在しています。けして、クリスを陥れるつもりはありません。

 この世界でファントムのマギアースドラゴンは冬将軍やメルの様な大精霊と同じ扱いにしています。


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異世界生活三日目

 

 

 

 朝早くに目が覚めた俺は、昨日の段階で決めていたことを実行すべく、冒険者ギルドに来ていた。

 

 普段なら朝から酒をのでいる冒険者や、クエストを物色(ぶっしょく)している冒険者がたくさんいるのだか、朝早いとのことでそんなに人はいないようだ。

 

「おーい、ゆんゆん、めぐみん」

 

 冒険者ギルドのテーブルでトランプに(きょう)じている二人に話しかけた。

 

「おや、カズマではないですか。おはようございます」

 

「カズマさん。おはようございます」

 

「ああ、二人ともおはよう」

 

 二人は俺に挨拶を返すとすぐ、めぐみんが質問をしてきた。

 

「今日はアクアとは一緒ではないのですか?」

 

「あーー、アクアなら二日酔いで寝坊だよ」

 

 昨日の宴会の後、お酒の飲み過ぎでデロデロになったアクアは歩くこともままならなかったので、俺が背負うことになった。宿屋では同じ201号室を取り、そのままアクアをベットに放り投げた。

 

 今朝起きても、昨日と同じ形で寝ていたのでそのまま放置してきたのだ。

 

「そんなことより、クリスとダクネスはまだ来てないのか?」

 

「クリスとダクネスですか? えぇ、二人ならまだ来ていませんよ」

 

 そうか……。どうせなら全員揃った状態で話したかったんだが。まあ、まずはゆんゆんとめぐみんからだけでも良いか。

 

「えーーっとだな。ゆんゆんとめぐみんに頼みがあるんだ」

 

「頼みですか?」

 

「えっと、そんなに難しい内容じゃななければ…………」

 

 なぜ、ゆんゆんは内容を聞く前に承諾しようとしているんだ。

 

「いや、そんなに難しい内容じゃなくてな……。どっちかっていうと、ゆんゆんやめぐみんたちに決めてもらわないとダメな内容なんだ。クリスとダクネスにも後で同じ頼み事をするつもりなんだよ」

 

 そう言った俺は覚悟を決めて、

 

「頼む。俺とアクアのパーティーに入ってくれないか?」

 

 パーティーの勧誘をした。

 

「パーティーの勧誘ですか…………。昨日は上手く戦えたと思いますし、まあ、いいでしょう。我が強大な力は大勢から疎まれていますからね、爆裂魔法を撃たせてくれると言うのであれば文句はありませんよ」

 

 めぐみんには二つ返事で承諾を、

 

「あのっ……えっと………」

 

 ゆんゆんはどうやら考えているようだ。

 

「いや、ゆんゆん。嫌なら別に無理してパーティーに入る必要は───」

 

「なにをしているのですか、ゆんゆん。ボッチの貴女に相手からパーティーに誘ってくれる機会なんて滅多にないのですから。このチャンスを逃す手はありませんよ」

 

「べ、別に嫌だってことはないわ!! た、だだ魔法使いが三人もいることになっちゃって、大丈夫かなって………」

 

「なにそんな小さいことを気にしているのですか……。そんなこと別に気にする必要はありませんよ」

 

「そうだぞ、ゆんゆん。俺も魔法が使えるといってもこの世界の上級魔法並みに高火力なモノは少ないからな。それに、ゆんゆんとは違って発動に若干のラグがあるから、ゆんゆんにも入ってもらった方がありがたいんだよ。」

 

 なるほどな。確かに魔法使いからすれば同じパーティーに魔法使いが三人もいるというのは死活問題だろう。

 

 まあ、大丈夫だと思うけどな。

 

「俺は基本的には変身して魔法剣士的なスタイルで行くつもりだから」

 

 まぁ、変身してクエストをこなすと大した経験値が貰えないんだけどな……。

 高難易度のクエストを達成しても、ジャイアントトードを討伐した程度の経験値しか貰えない。

 だって、昨日倒した上位悪魔のホーストからも大した経験値が手に入らなくて、レベルは2しか上がらなかった………。

 

「さて、それではクリスたちが来るまでに今日、どのクエストを受けるのかを考えにいきましょう」

 

 そう言っためぐみんは席を立ち、掲示板の方に向かったので、俺とゆんゆんも後を追った。

 

 

 

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》

 

【秋の帝王 マツタケの討伐】

概要:アクセル付近の山に出没するマツタケの討伐。

危険度:◎◎◎◎◎◎

達成報酬:二百万エリス

※クエストを失敗すると違約金を払うことになります。

 

 

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》

 

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》

 

【タワーオブパンプキンの偵察】

概要:アクセルの街付近に『命の収穫災』タワーオブパンプキンが接近しています。進路の偵察と予測をお願いします。

危険度:◎◎◎◎◎

討伐報酬:五十万エリス

※:クエストを失敗すると違約金を払うことになります。

 

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》

 

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》

 

【カワサギの採集】

概要:森の木の上などにいるカワサギの採集。

危険度:◎◎◎

採集報酬:一匹二千エリス

※:クエストの報酬は出来高制となり、何匹採集できたかで決まります。

 

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》

 

 

 

 ────────等々─────────

 

 しかし、ほんとにロクなクエストがないな………。『命の収穫災』とか『秋の帝王』ってなんなんだよ……。絶対に南瓜(かぼちゃ)(きのこ)に付ける異名じゃないだろ………。

 

「なるほど、高難易度から低難易度まで様々なものがありますが、私としては威力が上がった爆裂魔法が撃てるクエストが良いです」

 

 それにめぐみんの爆裂魔法への執着はいったいなんなんだ……

 

「おはよー。カズマくん、めぐみん、ゆんゆん」

 

「ああ、カズマ、めぐみん、ゆんゆん。三人ともおはよう」

 

 めぐみんとゆんゆんと、今日どのクエストを受けるか、掲示板を見ながら話し合っていると、後ろからクリスとダクネスの声がした。

 

「おっ、ダクネスとクリス。二人ともちょうど一緒みたいだな」

 

「うん。あたしとダクネスはパーティーを組んでるからね」

 

「あーー、そうなのか」

 

 薄々そうなんじゃないかと感じてはいたが、実際にパーティーを組んでいたようだ。

 

「あ、あのさ。もし良かったらなんだが……俺たちのパーティーに入ってくれないか?」

 

「え、いいの? いやーちょうど私たちもパーティーメンバーを募集してたところなんだよ。って言っても、不定期のメンバーなんだけどね……」

 

 そう言ったクリスは掲示板に張られているメンバー募集の張り紙を一つ剥がし、手渡してきた。

 

「どれどれ……」

 

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》

 

パーティーメンバー募集中。

当方、クルセイダーと盗賊の二人組。鬼畜(きちく)性癖(せいへき)趣味(しゅみ)を持つダメ人間もしくはドS。後衛職二名。良識のあるまともな人を求めています。

 

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》

 

「……………なぁ、クリス。この上から線を引いて消したところに書いてある文章はいったい」

 

「き、気にしなくていいから!!」

 

「えーっと、でもクリス。この貼り紙通りなら、前衛職を俺がやるとしても、めぐみん、ゆんゆん、アクアって後衛職が三人もいることになるけど……」

 

「それは大丈夫。アクアさんは後衛職でも、回復魔法とかのエキスパートだから問題ないよ。魔法使い職二人に前衛職二人。回復役にサポート役。結構バランスがいいパーティーだと思うな」

 

 

 ん? アクア……“さん”? そういばクリスは最初からアクアの事をさん付けで呼んでいたよな。一体なんで───

 

 

「そうですよ、カズマ。それに私は爆裂魔法しか使えません。なので、魔法使い職は実質的にはゆんゆんしかいないと思ってください」

 

 

 …………え?

 

 

 クリスがアクアをさん付けで呼ぶ理由を聞こうとしたら、めぐみんから衝撃の発言がされた。

 

 「ねぇ、めぐみん。どういうこと? 爆裂魔法が使えるなら、他の魔法も使えてもおかしくないと思うんだけど………」

 

「どういうことだ、クリス」

 

 何で爆裂魔法が使えたら他の魔法も使えることになるんだ?

 

「えっと、爆発系(ばくはつけい)の魔法は複合属性(ふくごうぞくせい)って言って、火や風系の魔法のかなりの知識が必要な魔法なんだ。しかも爆裂魔法は爆発系の中でも最上位(さいじょうい)で、威力はどの上級魔法をも上回ってる。だから、爆発系の魔法を習得できるくらいの魔法使いなら、他の属性の魔法なんて簡単に習得できるはず………なんだけど」

 

「爆裂魔法なんて最上位魔法が使えるなら、下位の他の魔法が使えない訳が無いって事か」

 

 めぐみんがマントを翻し、自信満々呟いた。

 

「私は爆裂魔法をこよなく愛するアークウィザード!!。爆発系統の魔法が好きなのではありません!! ()()()()だけが!! 好きなのです!!」

 

「火、水、土、風。 この基本属性の上級魔法や中級魔法を取っておくだけでも楽に冒険ができるでしょう。 ......でも、ダメなのです。 イヤなのです!! 私は爆裂魔法しか愛せないし、使いたくない!!。たとえ今の私の魔力(まりょく)では一日一発が限界だとしても!。魔法を使った後は倒れるとしても!。それでも私は、爆裂魔法しか愛せない! 私は爆裂魔法を使うためだけに、アークウィザードの道を選んだのですから!」

 

「それに、いざとなればカズマに魔力を分けて貰えることが分かりましたからね」

 

「おい、最後なんつった。あの時はアクアたちが急かすから魔力を分け与える方法を選んだだけで、何時(いつ)も与えられる訳じゃないからな」

 

「なぜ、そんなケチなことを言うのですか……。一日に二発も爆裂魔法を撃てたのは昨日がはじめてだったのです」

 

「だからなんなんだよ。あの時が特別なだけで、普段から魔力を分け与えるつもりはないからな!!」

 

 俺とめぐみんが魔力の件で言い争っていると、クリスが驚愕の発言をして来た。

 

「あ、あと私はずっとこのパーティーにいられる訳じゃないしね」

 

 

 …………え?

 

 

「え? クリスはダクネスと組んでるんだろ? その流れで俺たちのパーティーに入ってくれるんだと思ってたんだけど………」

 

「ああ、それなんだが。私もクリスとずっと組んでいるわではないんだ。クリスはああ見えて多忙らしくてな。都合の着いたときだけ、組んでもらっているのだ」

 

 なるほど、クリスと組んできたダクネスが言うのだから事実なのだろう。

 

「ま、そういうこと。不定期とはいえパーティーメンバーに代わりはないからよろしくね」

 

「ああ、よろしく。それでクリス。今回のクエストは同行してくれるのか?」

 

「そりゃ、もちろんだよ。なんたって今回のクエストはこのパーティーで初めて請けるクエストだからね」

 

 ふう、良かった。これで拒否なんかされたら───

 

 俺の考えを遮るように、バン! という大きな音ともにギルドのドアが勢いよく開き、アクアが入ってきた。

 

 そのままの勢いで俺に掴みかかり、

 

「ちょっとカズマ!!昨日に続いて今日も置いて行くなんてどういうつもり!!」

 

 攻め立ててきた。

 

「悪かったって。いつまでも寝てるお前が悪いんだろ……。そんなことより、クリスやめぐみん達とパーティーを組んで、これからクエストを請けることになった」

 

「それで、今から請けるクエストを決めるんだけど、皆はどんなクエストがいい?」

 

 アクアの手を振りほどきながら、皆の方に振り替えって聞いた。

 

「ここは強敵を狙うべきだ。大きくて一撃が重く、気持ちいいモンスターを」

 

 いの一番にダクネスが返答した。のだが…………気持ちいい?

 まさかとは思うがダクネスって───

 

「いえ、討伐に行きましょう。それも沢山(たくさん)のモンスターがいるヤツです!! 威力の上がった爆裂魔法を試すのです」

 

「いいえ、お金になるクエストをやりましょう」

 

 

 …………………………

 

 

「クリスとゆんゆんはどのクエストがいいと思う?」

 

「あたしはアクアさんに賛成かな。ダンジョンとかならお宝も狙えるし」

 

「わ、私は皆さんが良いならそれで………」

 

 

 ………………………

 

 

 俺が誘って結成したパーティーなんだけど……こうもまとまりが無いとは………。

 

 

「はぁ、えっとそれじゃあ………。みんなの意見をまとめると……」

 

「強くて一撃が重くて」

 

「ああ」

 

 と、頷くダクネス。

 さっきからそうなんじゃないかと思っているんだが………もしかしてドMなんじゃないか?

 

「お金になって、」

 

「ええ!!」「うんうん」

 

 と、頷くアクアとクリス。

 この二人も性格は似てないのに何処か似ている気がするんだよなぁ………

 

「爆裂魔法を撃ち込められればいい……と」

 

「なぁっ! 私の意見だけ扱いが雑じゃありませんか!!」

 

 と、文句を言うめぐみん。

 

「いや、お前の場合はさっきの話から察するに爆裂魔法を撃ち込められればどんなクエストでもいいだろ」

 

「良くありませんよ!! カズマは私の事をなんだと思っているのですか!! それになんにでも撃ち込めばいいというものではありません。こう、破壊したとか、撃破したとかそう言った感じの快感が得られるものじゃないとダメなんです!」

 

「爆裂卿候補だったんだけど、今の話を聞いて爆裂狂に変更だよ」

 

 突っ掛かってくるめぐみんをあしらいながら、冒険者経験の長いクリスに質問する。

 

「それで、結局どのクエストがいいと思う?」

 

「うーん、そうだね………これなんかいいんじゃない? ダクネスとアクア、私の要望も満たさせるし、めぐみんも爆裂魔法を使えると思うよ」

 

 そう言ってクリスが渡してきた貼り紙は……

 

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》

 

【一撃熊の討伐】

概要:サムイドーの村付近に出没した一撃熊の討伐。

危険度:◎◎◎◎◎

達成報酬:百八十万エリス

※:クエストに失敗した場合は、違約金百万エリスを払うことになります。

 

 

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》

 

 なるほど……。このクエストを成功すれば一人辺り、三十万エリスは貰えるな。

 

「けど、難易度が高すぎるんじゃないか?」

 

「大丈夫だよ。ウチには固いダクネスだっているし、火力持ちもいる。それに回復役にサポート役もいるしね。結構充実してるパーティーなんだよ」

 

「俺たちよりも冒険者経験の長いまクリスが言うなら大丈夫だろ。それじゃあ、俺はこのクエストを受付のお姉さんに言って請けてくるな」

 

「あ、カズマ。受付のお姉さんの名前はルナさんって言うんだ。いつまでも受付のお姉さんって呼ぶよりはいいと思うよ」

 

「そうか、わかった」

 

 貼り紙を手にした俺は受付の元へと向かい、ルナさんに話しかけた。

 

「あの、ルナさん……」

 

「あ、サトウさんおはようございます。今からお伺いしようとしていたところなんです」

 

 ん?

 

「実は……サトウカズマさん率いるパーティーには上位悪魔を討伐したことから特別報酬が出ています」

 

「マジかよ」

 

「やったねカズマさん。今日は宴会よ!!」

 

 アクアのヤツは本当に宴会……というか酒が好きなんだな……

 

「いや、昨日もしただろ……」

 

「やりましたね」

 

「ああ」

 

「やったねカズマくん」

 

「それでは特別報酬一千万エリスを受け取りください!」

 

「おおおおおお!!!」

 

 いっ、一千万エリス!!

 

「カズマ、カズマ!! やりましたね! 一千万ですよ一千万!」

 

「すごいじゃない、さすが私たちね!!」

 

「ああ、中々見れる金額ではないな……」

 

「い、一千万エリス……………」

 

「やったね、カズマくん」

 

「ああ!! 一先(ひとま)六等分(ろくとうぶん)して、銀行(ぎんこう)(あず)けよう!!」

 

 

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KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

こ の す ば/KONO SUBA

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

 

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「あの、ルナさん、このクエストを受けたいんですけど」

 

 必要な分以外は銀行に金を預けて、再び冒険者ギルドを訪れた俺たちはルナさんに請けようとしていたと依頼書を見せていた。

 

「はい、『サムイドーの村付近に出没した一撃熊の討伐』ですね。一撃熊は凶暴なモンスターで、鋭い爪による一撃を得意とします。気を付けてくださいね」

 

「このクエストではサムイドーまで依頼人が案内してくれるそうなので、まずは依頼人と合流してください」

 

「はい。わかりました、」

 

 へぇ、依頼人が案内してくれるなんて珍しいな。

 

「サムイドーの村はその名前の通り雪原地帯にあり、秋の時点で雪景色なっていることで有

名です。依頼人は約二時間後に来るそうなので、それまでに防寒具などの準備を整えておいてください」

 

「あ、あと魔王軍の幹部が魔王城を出たという噂もありますので十分に気を付けてくださいね」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

 

 ルナさんからクエストの注意点等の説明を受けた俺たちはサムイドーの村にいくための準備をするために、ギルドの一角にいったん集まっていた。

 

「さて、と。それじゃあ防寒具を揃えるために買い出しにいこうと思うんだけど、ここは効率を考えて別れて行動しようと思う」

 

「ああ。それがいいだろう。なら、私はクリスと回ろう」

 

「うん、オッケー」

 

 ダクネスはクリスと回るようだ。この流れならたぶん俺はアクアと回ることになるだろう。

 

「では私はゆんゆんと買い出しにいくことにします」

 

「えっ!! ほんとに? 」 

 

「嘘をいってどうするのですか。行きますよゆんゆん」

 

「ま、まってよ。めぐみん」

 

 …………ゆんゆんはいったいどんな環境で育ってきたんだ?。めぐみんのことをライバルだと言い張ってるのに、何でめぐみんの誘いを疑うんだ………

 

「おーい。今から一時間半後にギルドに集合だぞ!!」

 

「了解でーす」

 

 めぐみんの返事が聞こえたところで、テーブルに突っ伏して寝ているアクアに話しかけた、

 

「おい、アクア。クエストでサムイドーの村に行くことになったから準備をしに行くぞ」

 

 

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KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

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 さて、今回のクエストに会わせて防寒具を買うことになったわけだが、いい機会なので装備も調えておこうと思う。

 

 幸いにも上位悪魔討伐報酬のお陰で財布は潤っている。

 

 それに、今の格好は異世界に来たときから来ているジャージのみ。武器に至っては購入すらしていない。

 

 せめて、変身する前も自衛手段を確保しておきたい。

 

 (おも)たい(よろい)といった重装備(じゅうそうび)は無理だろうから、革製(かわせい)の鎧や革製の胸当て、金属(きんぞく)籠手(こて)鎖帷子(くさりかたびら)膝当(ひざあ)て、脛当(すねあ)て等を手に入れたいところだ。

 

 そう思った俺は、アクアを連れて防寒具を買う前に防具ショップに向かった。

 

「ねぇ、どうして私がカズマの買い物に付き合わされないといけないわけ?」

 

 アクアは文句をたれながら着いてきており、装備を整える気は一切無さそうだ……。

 

「いや、アクア、お前の装備ってそのヒラヒラした羽衣だけだろ? 良い機会なんだから、装備調(ととの)えた方がいいぞ。俺はジャージだけど、お前も似たようなもんじゃないか」

 

 異世界に来てから二日しか経っていないので仕方がないとはいえ、アクアも俺と一緒にこの世界に来たままの格好だ。

 

 アクアはその水色の(かみ)(ひとみ)に合わせた様な、(あわ)紫色(むらさきいろ)(うす)い羽衣を着ている。

 

 一昨日は寝間着(ねまき)に着替えた後に、宿屋のバケツで羽衣をジャブジャブ水洗いして藁と一緒に干していたのを見た。

 昨日はコイツは酔い潰れてそのまま寝たので洗ってないが……。

 

 俺がそう言うと、アクアは呆れたと言わんばかりの表情で、

 

「バカねー。私は女神なのよ? この羽衣だって神具(しんぐ)に決まってるじゃない。あらゆる状態異常(じょうたいいじょう)を受け付けず、強靭(きょうじん)で様々な魔法が掛けられた至高(しこう)逸品(いっぴん)よ? これ以上の羽衣の装備なんて、この世界に存在しないわ」

 

 いや、そんなに大層なモノなら藁と一緒に干すなよ。

 

「それは良い事を聞いたよ、アクア。もし、今のお金がなくなって生活に困窮(こんきゅう)するようになったら、その神具を売ることにするよ。おぉ、この鎖帷子(くさりかたびら)とか良い感じじゃないか? それに、隣の籠手(こて)とかも結構イケてるな。あ、あそこの革製の胸当ても───」

 

 丁寧な感じでアクアに向けて言うと、アクアは予想通りに狼狽(うろたえ)え出した。

 

「……ね、ねえ、冗談………よね? この羽衣は私が女神である証のような物なのよ? 売らないわよね? う、売らないわよ?」

 

「とりあえず、今は売らないよ。そんなことより、俺は買う防具を決めたから買ってくる。アクアは防具買わないなら、先に服屋に言っておいてくれ」

 

「何よ。売らないのなら……いま、とりあえずって言った? ねぇ、本気で売る気じゃないよね……。ねえっ────」

 

 話し掛けてくるアクアを無視し、欲しい防具を手にして防具ショップのおっちゃんに話し掛けた────

 

 

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KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

こ の す ば/KONO SUBA

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

 

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「……………うん、見違えたよ」

 

「おおー。カズマがキチンとした冒険者に見えるのです」

 

 あれから防寒具と武器を購入して冒険者ギルドに戻ると、皆が勢揃(せいぞろ)いしていた。

 そしてクリスとめぐみんが俺の格好を見るや、呟いた。

 

 いや、なら今までは冒険者でなく、 いったい何に見えていたのかと聞きたい。もしかして、不審者じゃないだろうな。

 

 今の格好は、こちらの世界の下着の上から鎖帷子(くさりかたびら)。服の上から革製の胸当(むねあ)てと金属製の籠手(こて)、同じく金属製の脛当(すねあ)てを装備している。

 

 武器はとりあえずショートソードを購入した。本来ならロングソードをとか大剣の方が使いなれているのだが、筋力が足りなくて持ち上げられなかったのだ……。

 

 なので、使いなれてないとはいえ自衛手段を手に入れるためショートソードにした。

 

 仕方がない……か。

 

「さて、と。皆の揃ってるし、そろそろ時間だし、馬車の待ち会い場に向かおう」

 

 

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KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

こ の す ば/KONO SUBA

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

 馬車の待ち会い場で依頼主を待っていると、おっとりとした感じの美人の獣人さんが話しかけてきた。

 

「あの……初めまして、皆さんがクエストを請けてくれた方達ですか?」

 

 彼女が依頼主の様だ。

 

「はい、貴女が依頼主さん、ですよね」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 依頼主さんはここまでは後ろの馬車できたみたいで、そのままこれにのって向かう様だ。

 

「では、この馬車に乗ってください。サムイドーの村までは途中までは馬車でいくことができるんです」

 

「途中までって事は何処かで降りるんですか?」

 

「はい、サムイドーの村の周辺は積雪が凄いので馬車が通れない場所があるんです」

 

 なるほど。そこからは徒歩か。

 

「わかりました。それじゃあ、乗るか」

 

 そう言って、俺、アクア、めぐみん、ゆんゆん、クリス、ダクネス、依頼主さんの順番で馬車に乗り込んだ。

 

「それじゃあ、御者さん。お願いします」

 

 依頼主の掛け声で馬車が走り出す。そこで、ハッと気付いたような表情になった依頼主がこちらを向いてきた。

 

「あ、申し遅れましたが私の名前はエイミーと申します」

 

「よろしくお願いします、エイミーさん」

 

「よろしくね!」

 

「よろしくお願いします」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「よろしく頼む」

 

「よろしくね」

 

 それぞれが挨拶をし終えたので、エイミーさんに討伐するモンスターの特徴を聞くことにする

 

「エイミーさん。今回、俺達が討伐するモンスターってどんな特徴があるんですか?」

 

 エイミーさんは思い出すようにしながら、答え始めた。

 

「えっと、 一撃の重さに定評のあるモンスターらしくて――――」

 

「重い一撃!!」

 

 早速、ドM(ダクネス)が喜びだした。

 

「一撃熊って名前よ。 ......ただ、普通の一撃とはちょっと違ってるらしくて.......」

 

「一撃が雷属性(かみなりぞくせい)を帯びていて。 くらうと同時にビリビリ感電しちゃうらしいの」

 

 なるほど……な。一撃熊は凶暴だってルナさんが言ってたけど、そんな厄介な能力を持ってるなんて。

 

「か、感電する重い一撃!! 滅多に味わえるものではないな!! 」

 

 うん、確実にダクネス(コイツ)はドMだな。もう否定の使用がない。

 

「そ、そうだカズマ。今のうちにいっておかなければならないことがある」

 

 喜びの表情から一転、真剣な顔をしたダクネスがこちらを向いて話を切り出した。

 

「実はな私は防御力には自信があるのだが、不器用すぎて攻撃を当てられんのだ」

 

「なんだ、そんなことか………………ん? いま、攻撃が当たらないっていったか?」

 

「ああ。そのとうりだ」

 

 そういえば昨日の戦いもダクネスだけ攻撃をはずしてたな。

 

「いや、でも《両手剣》とかの攻撃スキルをとればどれだけ不器用っていっても補正がかかって当たるようになるだろ。ま、まさかとってないのか? なんで?」

 

「それだと敵をあっさりと倒せてしまうではないか。わ、私は敵に果敢(かかん)に挑むも敗れ去り、無理矢理(むりやり)、くくく組み伏せられると言うシチュエーションんが好きなのだ!! 」

 

 そんなに嬉しそうな表情で言われてもなぁー

 はぁ、も、もう何も言うまい………

 

「あ、あの!! 皆さん、よかったらボードゲームとかしませんか?」

 

 ダクネスの衝撃発言によって静まり返った馬車の中にゆんゆんの声が響いた。

 

 皆が一斉にゆんゆんの方向を向いたので、沢山の視線に驚いたのだろう。ゆんゆんが固まって……

 

「い、嫌ですよね。ボッチの私の提案なんて……」

 

「別に嫌じゃありませんよ。ただ、ボッチのゆんゆんの発言に驚いただけです」

 

 めぐみんの返答に最初は顔をを輝かせていたが、ボッチと言われて曇っていった。

 

「それで、どんなゲームを持ってきたの?」

 

 アクアの質問に答えるためにゆんゆんは持ってきている鞄の中をあさり、トランプ、魔法のチェスにその他もろもろ。

 

「どんだけ持ってきたんだ……」

 

「み、皆さんと楽しく遊べたらなーって……」

 

「せっかくゆんゆんが持ってきてくれたんだし、みんなで遊ぼうよ」

 

 クリスの鶴の一声で、ボードゲームをすることが決まり、エイミーさんも入れて七人でボードゲームに興じ、現地へ着くのを待った。

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

こ の す ば/KONO SUBA

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

 馬車から降りた俺たちはエイミーの案内で目的の場所へ向かっていた。

 

「ごめんね、わざわざこんな遠くまで……………」

 

 道案内をしながら顔を伏せるエイミーにたいしてダクネスが返答した。

 

「気にするな、 何ということはない。もともとこのクエストは私たちが受けたものだからな。それに、最後に極上のご褒美がもらえると思えば······!」

 

「ダクネスの言うと通りだよ。このクエストは俺達が受けたいと思ったから受けたんだ。まぁ、最後のダクネスのごほうびってのはドM限定のご褒美だけどな!」

 

「その通りですよ!私は爆裂魔法を撃てるなら、たとえ地の果てだろうと行ってみせますから!!」

 

「それに、雪原ではまだ爆裂魔法を使ったことがありませんからね。どんな風になるのか楽しみです!」

 

 めぐみんは自信満々で何を呟いているのだろう。

 

「ねぇめぐみん。爆裂魔法を打つのは良いけど、私が氷の彫刻を作った後にしてちょうだい? さて、どんな氷像を作ろうかしら」

 

 そして、アクアも、だ。俺たちは彫刻を作りに来たんじゃないぞ………

 

「しかし、コイツらはモンスター討伐なのに、ピクニック気分か。 先が思いやられるな………」

 

「あははは。まぁ、変に気負ってるよりは良いじゃないか」

 

「いや、だけどさ──」

「だ、大丈夫ですよ。めぐみんの爆裂魔法の威力は本物ですし、私もできる限りのサポートはしま────」

 

「グルアァァアアア!!」

 

 ゆんゆんとクリスとアクアたちについて話していると、大きな咆哮と共に、黄色い体をした一撃熊が出現した。

 

 

「出たわよ!一撃熊!」

 

 1番始めに反応したのは雪をかき集めて彫刻を作ろうとしてたアクア。

 

「現れましたね。 私とあなた、どちらの一撃が重いか勝負です!」

 

 次に爆裂魔法を撃つ構えをとっているめぐみん。

 

「おい、撃つなよ」

 

「重い上にビリビリ来る貴様の一撃、 私に食らわせてみろ!」

 

 と、一撃熊に突貫していくダクネス。

 

「おい、ちょっと待てよ!!」

 

「さて。それじゃあ、いってみよう!!」

 

「そ、それじゃあ、行きます!!」

 

 と、クリスとゆんゆん。この二人は問題を起こさなさそうなので安心できる。

 

「ったく 変身!!」

 

〔シャバデゥビ タッチ ヘンシン!!〕

 

〔ネクサム オン!! マルクト!〕

 

〔プリーズ ベラ ザ カプティム Prison warrior representing crystal and earth〕

 

 大小様々な歯車を伴った魔法陣が俺の体を通り抜け、変身完了。

 

 武器の大剣を召喚し、みんなに号令(ごうれい)を取る。

 

『みんな、 準備はいいな!? 前方は俺が受け持つ。クリスは攪乱(かくらん)、アクアは援護(えんご)。ゆんゆんは隙を見て魔法を打ち込んでくれ! ダクネスは守護(しゅご)を頼む。めぐみんは時が来るまで待機してろ!!」』

 

「おっけー!」

 

「わかったわ!」

 

「はい」

 

「任せろ!」

 

「わかりました!!」

 

 皆の返事が聞こえると共に、俺は一撃熊に突撃した。

 

 ガキン!!

 

 大きな金属音と共に俺の大剣と一撃熊の拳がぶつかり合う。

 

 雷属性を帯びているというのは、本当のようだ。こちらに向けられている拳は常に帯電している様に見える。

 

「『バインド』ッッ!!」

 

「グァァアアア!!」

 

 クリスのスキルによって、一撃熊がとらえられ………

 

「よーし、今ね! こっちに気を向けさせれば、カズマ達が攻撃しやすくなるはず」

 

「『フォルスファイア』ッ!!」

 

 アクアはモンスターを引き寄せる魔法を放った。

 

「グルアァァ!!!!」

 

 アクアの魔法に引かれた一撃熊は………クリスのバインドを引きちぎり───

 

『なんで、そうなるんだ!! 俺は支援魔法とか回復魔法で援護してくれって頼んだんだよ! 余計なことしてんじゃねぇ!!』

 

「なんでよぉぉ!! 私だって良かれと思ってやったんだから起こんないでよぉーー」

 

 こいつ!!

 

「『フリーズガスト』ッ!」

 

「ガァッ!!」

 

 ゆんゆんの魔法で足止めを食らっている。

 しかし、極寒の地に生息しているこの一撃熊には効果は薄いようだ。だが──

 

『ナイスだ! ゆんゆん』

 

 今ので十分チャンスは得た!!

 ハンドオーサーを左に傾け、

 

「いくぜッ!!」

 

〔ルパッチマジック タッチ ゴー〕

 

 俺は魔法を発動しようとした途端、

 

「なっ!!」

 

 一撃熊が放電を行い、今までとは比べ物にならないスピードで動き出した。

 

 そのまま俺の方へと放電した拳を───

 

 バチィッッ!!

 

「あああっっ! いい!!」

 

 俺が両手をクロスにして防ごうとした一撃は俺の前に出たダクネスが庇って防いでくれたようだ。

 

『大丈夫か! ダクネス』

 

「あ、あ……。いい、いいぞ!! もっとだ! もっと撃ってこい!!」

 

 よ、(よろこ)んでるみたいだから問題はないな。

 

 『クリス、ダクネス、ゆんゆん、あいつを足止めする。俺がチャンスを作るからもう一回やってくれ!』

 

「ねぇ、カズマ! 私は何をすれば良い?」

 

『お前はなにもするな!! 厄介事が増えるだけだ!!』

 

「ちょっと、なによその言い───」

 

『いくぞ!!』

 

 もう一度、一撃熊に斬りかかるが、すんなりと(かわ)されてしまう。

 

「グルアァァアアア!!!」

 

 一撃熊の大きな叫び声と共に、一撃熊が殴りかかってきた。

 

 よし、避けられ───

 

 バリバリッ!!

 

『なにっ!!』

 

 俺が拳を避けたことからなのか、拳を開いてこちらに向かって放電してきた───

 

『マジかよっ!』

 

 バックドロップで間一髪避けられたが、次の一撃は間に合わない。

 

 バリッッ!!

 

「あああっっ! たまらん!! いい、いいぞ!!」

 

 またも俺はダクネスに庇われたらしい。

 が、今がチャンスだ。

 

『クリス!ゆんゆん!』

 

「『ロックバインド』ッ!!」

 

「『ワイヤートルネード』ッ!!」

 

「グ、グルアァァアアア!!」

 

 一撃熊は岩とワイヤーで雁字搦めにされていて、身動きは取れそうにない。

 

『めぐみん、今だ!!』

 

「えぇ、任せてください!! 」

 

「穿て! 『エクスプロージョン』 ッッッ!!!」

 

「グ、グルァアア......」

 

 大きな爆音と共に衝撃波が襲ってくる。それと同時に爆裂魔法を受けた一撃熊は雪原の上に崩れ落ち、大きな雪煙が舞った。

 

「やったわね!」

 

「エイミーの話の通り、重い一撃だったな…………!」

 

「ダクネスさん、ぼろぼろじゃない。 大丈夫?」

 

「皆を守るクルセイダーとして、避けるわけには いかなかったんだ………!」

 

 まぁ、確かにダクネスは盾役として活躍してくれたしな。

 

『今回はダクネスに助けられたな……。ありがとう。それに大したケガもないようだし、 お前が満足ならよかったよ」

 

 変身を解除しながら、ダクネスに向かってお礼を言った。

 

「そ、そうか。なら良かった」

 

 俺たちの戦いを見ていたエイミーが近付いてきて、討伐した一撃熊を見ながら提案してきた。

 

「討伐した一撃熊を、サムイドーの村まで運びましょう。 みんなに美味しいご飯をご馳走するわ」

 

「サムイドーの村は野菜が美味しいことで有名ですからね。 今日の晩御飯が楽しみです」

 

「え! そうなの。それは楽しみね。でもどうして一撃熊を運ぶの?」

 

「ふふっ、村に着いてからのお楽しみよ」

 

 誰も反対しなかったので、そのままサムイドーの村へと案内された俺たちはそのままエイミーの誘いで宿屋に泊まることになった。

 

「夕飯をご馳走になる上、 ただで宿屋に泊めてもらうなんて。 なんだか悪い気もするが......」

 

「いいのよ、 一撃熊も倒したんだし。 お言葉に甘えましょう。 アクセルには明日のお昼に帰ればいいわ。その後、冒険者ギルドで報酬を頂きましょう」

 

「爆裂魔法で仕留めたから毛皮とかは使い物にはならないしね。ご馳走してくれるんだから、いいと思うよ」

 

「私は、 朝一番に爆裂魔法を撃って雪原を剥き出しの大地に変えたいです!」

 

「めぐみん、爆裂魔法はちょっとは控えた方が……」

 

 みんなで話し合ってると、エイミーが大きな鍋を持って現れた。

 

「みんな、お待たせー。 晩御飯を持ってきたわよー」

 

「すんすん、なんだか新鮮な匂いね。普段は嗅いだことないわ」

 

「でも食欲がそそられますね!」

 

「ふふっ、これはね…………熊鍋よ♪」

 

 そういってテーブルの上においた鍋の蓋を取ると、煙と共に良い香りが漂ってきた。

 

「もしかして、さっき倒した一撃熊の鍋なんですか?」

 

「そうなの。 村にいる狩人にお願いしてさばいてもらったのよ」

 

 とうやら、ゆんゆんの予想は当たっていたらしい。まあ、みんな同じことを考えていただろうけど。

 

「なるほどね。だから村まで一撃熊を運んで来たのね。やるじゃない!」

 

 アクアが顔をほころばせながら、どこからか取り出した(シュワシュワ)をコップに移している。

 

「あと、鍋とは別にもう1品あるのよ。これなんだけど……………」

 

 エイミーが取り出したのは強烈な匂いのするナニかだった。

 

「うぇ、グロいわね...... これは本当に食べ物なの?」

 

 アクアの言う通り、けっこうグロくあまり見たいとは思わない。

 

「す、すごい見た目だね。しかも匂いも……う!?」

 

 クリスも顔をしかめ、鼻をつまんでいる。

 

「これは一撃熊の肝よ」

 

 一撃熊の肝?

 

「肝……ですか。 一撃熊の肝はどす黒い色をしてるんですね。あの、見たところ生だと思うのですが......?」

 

「生で食べるのよ。 ものすごく苦いけど、その分効果も高いわ。 栄養満点で、精もつくし、とっても体にいいのよ?」

 

「本当はみんなに食べてほしいんだけど、 今回は一個しかとれなかったから………。できればでいいんだけど、カズマくんにあげてもいいかしら?」

 

「え!?俺!?」

 

 エイミーが衝撃発言をした。なぜ、俺?

 

「「「「「どうぞどうぞ!!」」」」」

 

 アクアたちはともかくクリスやゆんゆんまでもが、首を降りながら俺に肝を譲ろうとしている。

 

 そんなに嫌なのか……。俺も嫌だけど。

 

「よかったわねカズマくん。 一撃熊の肝はとても高価なのよ?」

 

「とても体にいいのに、 他のヒトに勧めて食べさせようとすると、なぜか逃げちゃうのよねぇ…....」

 

 見た目もグロいし匂いもきついし、 逃げ出したくなるのも当然だと思うぞ……。

 エイミーの相手を思う気持ちは確かなんだろうが……こう、もうちょっと美味しく食べる工夫をだな……

 

「カズマくん、 今日はなんだか疲れた雰囲気だったから。だから、これを食べて元気になってほしくてね」

 

「お、お気持ちはうれしいですが、気持ちだけで十分です!」

 

「………カズマくん?食わず嫌いは、だめよ?」

 

「ほら、騙されたと思って食べてごらんなさい。 あーん…………」

 

 くっ、平時(へいじ)なら喜ばしいイベントのはずなのに、 まったく喜べない!!

 

「すいませーーん!!!!」

 

 エイミーの包囲を勢いよく脱出した俺は謝りながら、

 

「あっ、ちょっと、カズマくーん? 元気にならなくていいのー?」

 

「いや、十分元気なので大丈夫でーす!!」

 

 この後すぐに肝がなくなることを祈って、部屋を飛び出し、扉から中の様子を伺うことにした。

 

「確かにあれだけはしりまわれるな、だいじょうぶね。 それじゃあ、代わりに皆さんがこの肝を───」

 

「「「「お鍋だけいただきます.....…」」」」

 

 逃げたした俺が言うことではないが、みんなスゲー嫌そうな表情してるな……。あのゆんゆんすらも顔にイヤ!って書いてある。

 

「すごく体にいいのに………」

 

「もったいないわね………私が食べちゃうわね?」

 

 肝をよくわからない表情で完食したエイミーと一緒にパーティーメンバーたちと鍋を囲み、異世界生活三日目を終えた。

 

            <To Be Continued>

 

 

 

 

 




今回の主な改編点

◆ゆんゆんがパーティーメンバーに入る。よって『あの愚か者にも脚光を!』の内容が大幅に改変される。

◆クリスが不定期のパーティーメンバーに入る。ただし、ほとんどに登場しない。

◆エイミーとは『この素晴らしい世界に祝福を! ファンタスティックデイズ』とは異なった会合をする。

その他

◆ちなみにクエストは全てオリジナルですが、モンスターは『この素晴らしい世界に祝福を! ファンタスティックデイズ』に登場しています。

◆後半の話の原典この素晴らしい世界に祝福を! ファンタスティックデイズのイベント『賞金首討伐! ~一撃瞬殺熊編~』

◆あと、一撃瞬殺熊がゼラオラに似ているように見えたので追加した能力の設定はゼラオラの生態を参考にしました。

◆このカズマの異世界生活に異世界編とつけた理由ですが、本来はこの『佐藤和真“英雄化”計画』は地球編と異世界編の二部構成だったんです。ところが、地球編を書き始めると上手くいかず、気が付けば全部回想で終わらせてました。なので地球編は異世界編が完結するか、気が向けば書きたいです。

◆下の内容は一発ネタです。短いです。本編を書いてる途中で思い付きました。

─────────────────────

 俺の名前は佐藤和真。相棒学園中等部に通う1年生だ。

 つい先日、俺はついに憧れのバディレアを引き当てた───のだが

「ちょっと、カズマ! ABCカップに出場するためのチーム作りしなくていいの? やるって言ってから結構日にちたってると思うんだけど……。もしかして、チームに入ってくれっていったのに断れちゃったんですかぁ~。プークスクス。チョー受けるんですけど!! 言うことだけはいっちょまえなのに全然行動に移せてないじゃないですかぁ~~」

 こいつ、ものすごくウザイ。モンスター名は「水の女神 アクア」といい、能力は

モンスター/サイズ:1
ワールド:ダンジョンW(ワールド)
属性:アクシズ教団 神 水
攻撃力:8000
打撃力:3
防御力:7000
<概要>
■【コールコスト】ゲージ1を払い、君のデッキの上から1枚をソウルに入れる。
■【起動】“花鳥風月(かちょうふうげつ)”君のターン中に相手とのバトルに勝利したなら、この能力を発動してよい。君の場の《冒険者》は攻撃力、防御力共に+1000する。この能力は1ターンに一回だけ使える。
■【対抗】【起動】“セイクリッド・ハイネス・エクソシズム” ゲージを1払う。払ったなら《72柱》を含むモンスターの攻撃を無効化し、そのモンスターを破壊する。
『ソウルガード』


 で、結構優秀なのだが性格がそれら全てを台無しにしている。

 こいつを引き当てた際に入っていた他のカードも曲者揃いで正直いって使いにくいのばっかりだ。

 「ナイス爆裂!! めぐみん」「溢れる歓喜 ダクネス」「エクスプロージョン」っていう名前のカードなんだけど、「ナイス爆裂!! めぐみん」は「エクスプロージョン」の糧にしかならないし、「溢れる歓喜 ダクネス」は攻撃できないし………………。

 つーか、他の俺が持ってるカードってアクアから貰ったものばっかだから曲者(くせもの)が多いのか?

 はぁ、ABCカップに出場するためのチーム作りは何人かに頼んだんだけど、連続でと断られちまったしなぁ~。

 ああ、気が重い。

─────────────────────
バディファイトはバディファイト100(ハンドレッド)までは漫画で読んでました。うろ覚えなのでどこかおかしいところがあります。

以下の内容は自分で作ったこのすばデッキです。こんなデッキ構成で勝てるわけないだろ!!とか言わないでください。カズマらしくない!!とも言わないでください。作戦なんて全く考えてません。とりあえず、みんなの能力をカードで表しました。アクアはその特性上、対悪魔に特化しています。

<<使用デッキ>>

<ブレッシング>
ルミナイズ口上:この素晴らしい世界に祝福を!。ルミナイズ!ブレッシング!。

〈FLAG〉
「〈ダンジョンW(ワールド)〉」
〈ダンジョンW(ワールド)〉と〈ジェネリック〉のカードが使える。最初の手札を6枚、ゲージを2、ライフを10とする。

〈BUDDY〉
「水の女神 アクア」

[モンスター]

「水の女神 アクア」×1
モンスター/サイズ:1
ワールド:ダンジョンW(ワールド)
属性:アクシズ教団 神 水
攻撃力:8000
打撃力:3
防御力:7000
<概要>
■【コールコスト】ゲージ1を払い、君のデッキの上から1枚をソウルに入れる。
■【起動】“花鳥風月(かちょうふうげつ)”君のターン中に相手とのバトルに勝利したなら、この能力を発動してよい。君の場の《冒険者》は攻撃力、防御力共に+1000する。この能力は1ターンに一回だけ使える。
■【対抗】【起動】“セイクリッド・ハイネス・エクソシズム” ゲージを1払う。払ったなら《72柱》を含むモンスターの攻撃を無効化し、そのモンスターを破壊する。
『ソウルガード』

「ナイス爆裂!! めぐみん」×2
モンスター/サイズ:0
ワールド:ダンジョンW(ワールド)/マジックW(ワールド)
属性:冒険者 紅魔族 爆裂 魔術師 ヒロイン
攻撃力:4000
打撃力:1
防御力:5000
CV:-
<概要>
■このモンスターは攻撃できない。
    
「溢れる歓喜 ダクネス」×3
モンスター/サイズ:1
ワールド:ダンジョンW(ワールド)
属性:冒険者 騎士 ヒロイン
攻撃力:8000
打撃力:3
防御力:12000
CV:-
<概要>
■このモンスターは攻撃できない。
■【対抗】“庇う”君か君のモンスターが相手に攻撃されるときこのモンスターが代わりに攻撃を引き受けてもよい。バトルした相手のモンスターは破壊されない。

「めぐみんの友達 ゆんゆん」×2
モンスター/サイズ:1
ワールド:ダンジョンW(ワールド)/マジックW(ワールド)
属性:冒険者 紅魔族 魔術師
攻撃力:5000
打撃力:1
防御力:4000
CV:-
<概要>
■“雷霆轟く者”場に《爆裂》を含むモンスターがいるなら、このモンスターに『2回攻撃』を与える。
『移動』

「空跳ぶ盗賊 クリス」×2
モンスター/サイズ:1
ワールド:ダンジョンW(ワールド)
属性:冒険者 盗賊
攻撃力:2000
打撃力:1
防御力:4000
CV:-
<概要>
■このカードが登場したとき、君の手札を1捨ててよい。そうしたなら君のデッキからサイズ2以下の《エリス教団》を1枚手札に加え、シャッフルする。
■【対抗】【起動】“ワイヤートラップ” ゲージを1払う。払ったならその攻撃を無効化し、君のデッキの上から1枚をゲージに置く。

「チンピラ冒険者 ダスト」×2
モンスター/サイズ:1
ワールド:ドラゴンW(ワールド)
属性:冒険者
攻撃力:4000
打撃力:2
防御力:4000
CV:-
<概要>
■【コールコスト】君の手札からカードを1枚、ソウルに入れる。
『ソウルガード』『貫通』

「氷の魔女 ウィズ」×2
モンスター/サイズ:2
ワールド:ダンジョンW(ワールド)/マジックW(ワールド)
属性:リッチー 冒険者 魔術師 爆裂 魔王軍幹部
攻撃力:11000
打撃力:2
防御力:6000
CV:-
<概要>
■【コールコスト】ゲージ1を払い、君の手札から《魔術師》を含むモンスターを1枚をソウルに入れる。
■“ノーライフキング”《髑髏(どくろ)武者》《妖怪》《百鬼》を含むモンスターの攻撃を無効化する。
『ソウルガード』

「魔王 八坂恭一」×2
モンスター/サイズ:2
ワールド:ダンジョンW(ワールド)
属性:魔王 魔王軍
攻撃力:15000
打撃力:2
防御力:10000
CV:-
<概要>
■【コールコスト】ゲージ2を払い、君のデッキの上から2枚をソウルに入れる。
■【起動】“魔王の加護”ゲージを2払う。ゲージを払ったならば君の場の全てのモンスターの攻撃力、防御力共に+5000し、打撃力を+1する。この効果は複重しない。
『ソウルガード』

「幸運の女神 エリス」×2
モンスター/サイズ:2
ワールド:ダンジョンW(ワールド)
属性:エリス教団 神 幸運
攻撃力:9000
打撃力:2
防御力:7000
CV:-
<概要>
■【コールコスト】ゲージを1払う。
■“ブレッシング”自身の魔法カードの効果でジャンケンを行うとき、必ず勝つ。
『ソウルガード』

「怠惰の女神 ウォルバク」×1
モンスター/サイズ:3
ワールド:ドラゴンW(ワールド)
属性:ウォルバク教 神 怠惰 爆裂
攻撃力:5000
打撃力:1
防御力:3000
CV:-
<概要>
■【コールコスト】ゲージを2払う。
■“怠惰の女神”君の場にカードが1枚もなければ、このモンスターを【コールコスト】を支払わずに召喚してもよい。 
『2回攻撃』『移動』

「暴虐の魔獣 ちょむすけ」×2
モンスター/サイズ:0
ワールド:ダンジョンW(ワールド)/デンジャーW(ワールド)
属性:魔獣 神 使い魔
攻撃力:3000
打撃力:1
防御力:3000
CV:-
<概要>

「禁断の冒険者 アクア」×1
モンスター/サイズ:3
ワールド:ダンジョンW(ワールド)
属性:禁断 冒険者 神 水
攻撃力:12000
打撃力:3
防御力:13000
CV:-
<概要>
■【コールコスト】ゲージ2を払い、君のデッキの上から2枚をソウルに入れる。
■【起動】“禁断のゴッドブロー” ゲージを1払う。払ったなら《72柱》のモンスターとバトルするとき、攻撃力+∞。
■【対抗】【起動】“ゴッドレクイエム” ゲージを1払う。払ったなら《72柱》《髑髏武者》《魔王》を含むモンスターの攻撃を無効化し、そのモンスターを破壊する。
『ソウルガード』『2回攻撃』

「伝説の冒険者 めぐみん」×1
モンスター/サイズ:1
ワールド:ダンジョンW(ワールド)/レジェンドW(ワールド)
属性:伝説 冒険者 紅魔族 爆裂
攻撃力:6000
打撃力:1
防御力:5000
CV:-
<概要>
■このモンスターは攻撃できない。
■このカードが場に出たとき、ライフを1回復する。
■自分の《紅魔族》のモンスターの【コールコスト】を1少なくする。

「伝説の冒険者 ダクネス」×1
モンスター/サイズ:2
ワールド:ダンジョンW(ワールド)/レジェンドW(ワールド)
属性:伝説 冒険者 騎士
攻撃力:8000
打撃力:3
防御力:20000
CV:-
<概要>
■【コールコスト】ゲージ1を払う。
■自分のゲージゾーンにゲージが4以上あれば、このモンスターが行動する事にライフを+1する。
■【起動】“防御の号令”君の場のモンスターすべての防御力を+3000する。
■【対抗】“庇う”君か君のモンスターが相手に攻撃されるとき、このモンスターが代わりに攻撃を引き受けてもよい。バトルした相手のモンスターは破壊されない。
■このモンスターは攻撃できない。


[魔法]

「スティール」×2
魔法/サイズ:―
ワールド:ダンジョンW(ワールド)
属性:盗賊
攻撃力:―
打撃力:―
防御力:―
CV:-
<概要>
■【使用コスト】ゲージを1払う。
■相手と一回ジャンケンをする。君がジャンケンに勝利したなら、以下の内容から1つ選ぶ。
◆相手の装備しているアイテムまたは設置魔法を1つ選んで窃盗し、自身の所有物とする。自身の所有物となったカードは、アイテムならその場で装備し、設置魔法なら設置して効果を発揮する。
◆相手の手札を見ずに1つ選び、そのカードを自分の手札に加える。

「ダブルドレインタッチ」×2
魔法/サイズ:―
ワールド:ダンジョンW(ワールド)/マジックW(ワールド)
属性:魔術師
攻撃力:―
打撃力:―
防御力:―
CV:-
<概要>
■【使用コスト】ゲージ1を払う。
■相手と一回ジャンケンをする。君がジャンケンに勝利したなら、相手のライフを-3し、君のライフを+3する。君がジャンケンに負けたなら相手のライフを+3し、君のライフを-3する。

「リザレクション」×2
魔法/サイズ:―
ワールド:ダンジョンW(ワールド)
属性:蘇生
攻撃力:―
打撃力:―
防御力:―
CV:-
<概要>
■君の場に《神》《水》を含むモンスターがいるなら使える。
■ドロップゾーンにある好きなモンスターカードを1枚、手札に加える。

「セイクリッド・ブレイクスペル」×2
魔法/サイズ:―
ワールド:ダンジョンW(ワールド)
属性:破壊
攻撃力:―
打撃力:―
防御力:―
CV:-
<概要>
■君の場に《神》《水》を含むモンスターがいるなら使える。
■場の魔法1枚を破壊する。

「爆裂女神ララティーナ」×2
魔法/サイズ:―
ワールド:ダンジョンW(ワールド)
属性:冒険者 ドロー
攻撃力:―
打撃力:―
防御力:―
CV:-
<概要>
■君は君のデッキをシャッフルして上から三枚を取る。その3枚カードがモンスターカードで、サイズの順番が0、1、1なら手札、ドロップゾーン、デッキからを場に【コールコスト】を払って「ナイス爆裂!! めぐみん」「水の女神 アクア」「溢れる歓喜 ダクネス」を召喚する。

「ジャイアントトードの討伐」×1
魔法/サイズ:―
ワールド:ダンジョンW(ワールド)/マジックW(ワールド)
属性:ドロー
攻撃力:―
打撃力:―
防御力:―
CV:-
<概要>
■【使用コスト】ゲージ1を払う。
■君の場の《冒険者》が破壊されたとき、君のデッキの上から1枚をこのカードのソウルにいれる。
■ソウルが3枚以上になったら、このカードのソウルを手札に加え、このカードをドロップゾーンに置く。
■「ジャイアントトードの討伐」は君の場に1枚だけ『設置』できる。

「アルカンレティアでの湯治」×1
魔法/サイズ:―
ワールド:ダンジョンW(ワールド)/マジックW(ワールド)
属性:アクシズ教団 回復
攻撃力:―
打撃力:―
防御力:―
CV:-
<概要>
■『設置』(このカードは場に置いて使う)
■【使用コスト】ゲージ1を払う。
■君の《冒険者》が破壊された時、君のドロップゾーンから《冒険者》1枚までを手札に加え、ライフを+3する。その後、このカードをドロップゾーンに置く。

「この素晴らしい世界に祝福を!」×1
魔法/サイズ:―
ワールド:ダンジョンW(ワールド)
属性:冒険者
攻撃力:―
打撃力:―
防御力:―
CV:-
<概要>
■『設置』(このカードは場に置いて使う)
■場にある自分のモンスターすべては《このすば!!》を得て、攻撃力、防御力共に+1000され、『反撃』を得る。


[アイテム]

「名刀 ちゅんちゅん丸」×2
アイテム/サイズ:―
ワールド:ダンジョンW(ワールド)
属性:名刀?
攻撃力:2000
打撃力:1
防御力:―
<概要>
■場に《このすば!!》を含むモンスターがいるなら、1ターンに一回だけデッキから1枚、ゲージゾーンに置く。

[必殺技]

「エクスプロージョン」×4
必殺技/サイズ:―
ワールド:ダンジョンW(ワールド)/マジックW(ワールド)
属性:爆裂
攻撃力:―
打撃力:―
防御力:―
<概要>
■場に《爆裂》を含むモンスターがいるなら使える。
■【使用コスト】ゲージ4を払う。
■相手にダメージ10。相手のモンスター全てを破壊する。このカードのダメージは減らない。
■使用後、《爆裂》を含むモンスターを1体破壊する。


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幕間の物語〈冥府の女神と幸運の女神〉①



初めて三人称視点です。女神エリスとクリスの性格が混じってます。

短いです



 佐藤和真が水の女神 アクアを連れて異世界に旅立った次の日の事。

 

 天界にある一室、そこで冥府の女神オーレギオんが己の職務をこなしていると、

 

 バン!!

 

 という音をたてて急に部屋の扉が開き、勢いよく人が入り込んできた。

 

「あの!! レギオン先輩!! これはどういう事ですか!!」

 

 彼女の名前は幸運の女神 エリス。普段は温厚な彼女が珍しく、険しい表情で一枚の紙をオーレギオンに突き出していた。

 

 顔を上げて紙を見たオーレギオンはなんでもないように答えた。

 

「ああ、佐藤和真を主役とした計画の事か」

 

「そうです。この計画は佐藤和真さんの人生に干渉しすぎているのではないですか? あまりにも彼の人生や権利を蔑ろにしていると思います。(いく)つもの天界規定に違反してます! 」

 

「それに聞いた話だと、アクア先輩にも知らせてなかったそうじゃないですか!」

 

「仮に企画が通ったのだとしても、世界を管理している当事者がなぜ蚊帳(かや)の外なんですか? なんでなにも説明してくれなかったんですか………」

 

 悔しそうに、どこか残念そうに語るエリスに向かって、オーレギオンは首を降り、

 

「確かに説明をしなかったのは悪かったと思っている。だがね、仕方のないことだったのだよ。アクアはともかく君に話せば必ず反対される。それに、この計画は第一期『異世界転生計画』が失敗した時点で浮かび上がっていたのさ」

 

 こう答えた。だが、それでもエリスには不満があるようで……

 

「確かに、異世界転生計画の一期は失敗しましたけど、その反省を生かして『異世界転生計画』第二期を始めたじゃないですか!!」

 

「ああ、その通りだ。だが、『第二期:異世界転生計画』も失敗の兆しが見え始めている」

 

 オーレギオンは席を立つと説明しながら部屋にある本棚へと向かった。

 

「第一期も最初は上手くいっていた。魔王を討伐して代替わりが起きる。その度に新たな勇者が現れ世界は上手く回っていた。だが、ある転生者が魔王討伐を成し遂げたあとから崩れ始めたのだ。その転生者が孤高のソロプレイヤーという理由から新たな魔王となった。この時点で、転生者から魔王を出した時点で第一期『異世界転生計画』は失敗した。」

 

「その他にも魔道大国ノイズに科学者として勤めていた転生者が機動要塞デストロイヤーを暴走させて世界を脅かす災害を作った。その他にも色々な問題あってな、様々な部署から苦情が来ているのさ」

 

 本棚から一枚の資料を取り出すと、エリスの方に向き直ると説明を続けた。

 

「そうした反省を生かし『第二期:異世界転生計画』を始めた。まずは一期では頭がパーになる可能性からやらなかった強制言語習得を行うことにした。もちろん、技術向上を行った後でな。その他にも転生特典の弱体化、年齢制限の幅を狭めるなどの措置をとった上でだ」

 

「だが、その年代制限が仇となってきているのだ。勇者に憧れる年代が一番優秀な冒険者になるだろう、ということで狭めた年代制限だったが奴等はある程度の金を稼ぎ、ちやほやされた時点で満足してしまっているのだ。」

 

「それに厄介なことに元転生者の魔王が自分の息子に配下を超強化する能力を与えていてな。孤高のソロプレイヤーだった自分のようにはなってほしくないという心情から与えたのだろうが、これはこれで厄介なのだ。その能力のために今の魔王軍は誕生以来の歴史で一位、二位を争う程に強力となっている。」

 

「さらに第二期が始まって以来、一番精力的に魔王討伐に乗り出しているのは、ついこの前に送り出した御剣(みつるぎ)響夜(きょうや)という始末。これではなんのために異世界転生をさせているのか分からないではないか………」

 

 そう言って再び本棚から『第二期:異世界転生計画』と記された資料を取り出した。

 

「だから、歴史に干渉して一から魔王を倒す天界の勇者を造り上げることにしたのさ。」

 

「第一期は我々の管理する世界故に神話派閥のみで行ったが、失敗した。その失敗を取り戻し、信者たちに報いるために他の神話派閥に助力を頼み、第二期を実行している。その失敗を回避するためには『佐藤和真“英雄化”計画』が必要だったのさ。なに、神話派閥のトップには面子(めんつ)というものがある。“失敗を回避するための策に協力してくれ”と頼めば簡単に協力してくれたよ」

 

「なっ………そんな………」

 

「それに、私は全てを救えるとは思っていない。正直言って、最終的に世界が善い方向に進めば、その過程は大した問題ではないと思っている。」

 

 そう言って部屋を出て言ったオーレギオンを追いかけるように、文句の続きを言うためにエリスも出ていった。

 

 部屋にはオーレギオンが取り出した二枚の紙とエリスが持ってきた一枚の紙が机の上に乗っていた……

 

 

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》

 

企画名:『異世界転生計画』

提案者:冥府の女神 オーレギオン

共同提案者:幸運の女神 エリス

     :水の女神 アクア

     :勝利の女神 カノン

 

<現状>

異世界(以下世界Bと呼称)は魔王軍の侵略によって危機に瀕しており、死した人間は恐怖から世界Bに再び転生することを拒否。人口減少が少しずつ加速している。

 

<改善策>

それを防ぐために移民策として、地球(以下世界Aと呼称)の若くして死した人間を強力な能力と共に送り出し、魔王討伐を促す。

 

 

<賛同神>

「冥府の女神 オーレギオン」「水の女神 アクア」「幸運の女神 エリス」「勝利の女神 カノン」「傀儡と復讐の女神 レジーナ」「不死と災いの女神 ゼナリス」「陽光と月光の女神 ソラス」「闘争と守護の神 エルセウン」「絶滅と誕生の女神 ゼノア」「大地と大海の女神 シャーレイム」

 

<許可神>

「創世神 ディアエゼル」

 

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》

 

 

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》

 

企画名:『第二期:異世界転生計画』

提案者:冥府の女神 オーレギオン

共同提案者:幸運の女神 エリス

     :水の女神 アクア

     :勝利の女神 カノン

 

<現状>

異世界(以下世界Bと呼称)は魔王軍の侵略によって危機に瀕しており、死した人間は恐怖から世界Bに再び転生することを拒否。人口減少が少しずつ加速している。第一期『異世界転生計画』で強力な能力共に転生させた者によって魔王討伐を成し遂げていった。だが、一人の転生者が魔王討伐を成し遂げた後、新たな魔王となる自体が発生する。これにより、『異世界転生計画』第一期は一人の転生者が人間関係の失敗によって新たな魔王を作るという失敗に終わる。その他にも厄災を複数誕生させていることを確認している。

 

<改善策>

第一期の反省を活かし、異世界の言葉と日本語の相互変換能力を与えるではなく、異世界語を習得させ、読み書きも可能とさせる。転生特典の性能を弱体化させることで人類への被害を押さえる。そして、転生させる人を十代後半から二十代前半までに制限する。

 

 

<賛同神>

「冥府の女神 オーレギオン」「勝利の女神 カノン」「傀儡と復讐の女神 レジーナ」「不死と災いの女神 ゼナリス」「陽光と月光の女神 ソラス」「闘争と守護の神 エルセウン」「絶滅と誕生の女神 ゼノア」「大地と大海の女神 シャーレイム」「大地の神 ラグンド」「海の神 イオガ」「天空の神 レウザ」「時の女神 ディア」「空間の女神 ルキア」「相反の女神 ラティナ」「雷の神 ゼロム」「炎の女神 レラム」「氷の女神 キムレ」「生命の女神 ネアス」「破壊の神 イベル」「護りの神 コケコ」「護りの女神 テテフ」「護りの神 ブルル」「護りの神 レヒレ」「太陽の神 ソルガ」「月の女神 ルナール」「暗黒の神 ロズマ」「剣の神 シアン」「盾の神 マゼンタ」「無限の神 ダイナ」「古の女神 コライ」「未来の女神 ミライ」

 

<許可神>

「創世神 ディアエゼル」

「創造神 アルディアス」

 

《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》《◆》

 



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異世界生活四日目

続きです。今回はたいしたイベントもなく、短いです。大規模な原作改編が含まれます。
 基本この二次創作の時系列は基本的に全部決めてから書き始めましたが、人物設定に関しては見切り発車です。そのため、ライダーになった格好よいカズマさんというのは存在しません。
 この世界の佐藤和真は原作のカズマに『ライダーとしての責任』『原作以上に仲間を大切にする気持ち』『原作よりも広い地球での交友関係』『仲間を失うトラウマ』を足した存在となっています。あやふやなので矛盾があってもご了承してください。

遅れてすいません。二日に一回投稿は無理です。これまで通り、不定期でやっていきます。


 

 

 

 

 朝起きて見慣れない天井に違和感を覚えたが、 

 

「ああ。そっか、サムイドーの村に泊まったんだったか」

 

 ふと、思い出して納得した。

 

「さて、と」

 

 宿屋のベットから抜け出し、身支度を整える。

 そのまま部屋を抜け出し、食堂のある一階に向かった。

 

 食堂に着いたが誰もいなかったので、俺が一番早起きだったらしい。

 

 座ってゆっくりとしようとすると、マギアースドラゴンが話しかけてきた。

 

『相棒、どうやらこの世界は前にいた世界とは随分と違うようだな………』

 

 どうやら、マギアドラゴンは昨日、エイミーにご馳走してもらった熊鍋について話があるようだ。確かに、あれには驚いた。

 

「(ああ、ほんとだよ。頭おかしいんじゃないか………)」

 

 昨日の熊鍋、美味しいのは美味しかった。

 ところが、意味のわからないことに皿の上に乗っている野菜が飛び跳ね、まるで「鍋に入れられてたまるか!」と言わんばかりの勢いで抵抗するのだ。

 しかも、伸ばした手を叩くと言った反逆をしてくる。

 

『野菜を育てているエイミーや異世界人のめぐみんやダクネスはともかく、あのアクアすらも普通に捕らえて鍋に投入していたな……』

 

「(いや、マジで……。この世界はどうなってんだ……」

 

『昨日の話と通りならタコや秋刀魚(サンマ)は畑で採れ、バナナは川を泳ぐそうだな………』

 

「しかも、この世界では野菜を育てることは栽培じゃなくて、養殖っていうらしい……」

 

 マジで、意味わからん。

 

「あ、カズマさん。おはようございます」

 

 マギアースドラゴンと会話していると、ゆんゆんから話しかけられた。

 返事をしようと顔をあげると、ゆんゆんが同族を見たような顔をしている。

 

「あの、カズマさんも独り言の会話とかしたりすんですね!! 頭の中の自分と会話を──」

 

 

 ん?

 

 

 頭の中の自分との会話?

 

 

 まさか、マギアースドラゴンとの会話が口に出てたのか?

 

 なるほど。それでゆんゆんが勘違いしたのか……

 

 けど、ゆんゆんがそれで納得するってことはもしかしてゆんゆんは一人会話をやってるのか?

 

 

 まあ、いい機会だしゆんゆんたちにも伝えとかないとな。

 

「ああ、これは違うんだよ。えっとさ、ゆんゆんたちには話してなかったけど……えーっと、俺の精神世界っていうか、俺の中には、マギアースドラゴンっていうファントムが居てさ、」

 

「ファン、トム?」

 

「そう、俺の魔力とかの力の源で、変身するのもマギアドラゴンあっての能力だからな。さっきまではマギアドラゴンと話してたんだよ」

 

「へぇーー。そうなんですね……。でも、ファントムなんて聞いたことありませんけど……」

 

「まあ、そうだろうな。コイツはたぶん俺の故郷に伝わる……禁呪っぽいナニでしか誕生しないからな」

 

「き、禁呪…………。あの、差し支えなければどんな禁呪か教えてもらっても……」

 

 禁呪という名前に引かれたのか、顔を輝かせながら聞いてきた。

 

「あ、ああ。えっと禁呪の名前は『サバト』って言って、その術の効果範囲内にいる人の魔力からファントムを誕生させるんだ。」

 

「まぁ、俺みたいに使うにはかなりの条件があると言うか、越えないといけない試練みたいのなのがあるし………。しくじったら自分の持ってる魔力を全部失っちまうしな………」

 

 正確には儀式が終了する前に中のファントムを倒したら魔力を失う……なんだが。

 

 本当に成功させたらファントムを現世に誕生させて死んじゃうからな。

 

 これは伝える必要はないだろ……

 

 

「ま、魔力を全部ですか!!」

 

 ゆんゆんは魔力を失うと聞いて、顔を引き攣らせている。

 

 まぁ、そうだろうな。

 

「そ、その『サバト』って儀式は恐ろしいですね………。私たち紅魔族の天敵と言っても過言じゃないですよ!!」

 

「あー、大丈夫だよ。その『サバト』を引き起こすには複数のファントムと専用の魔道具が必要なんだけど、その魔道具は破壊されちゃったし、俺の知る限りではファントムはマギアースドラゴン以外はいないからな」

 

 俺の故郷ではファントムいたこと自体が無かった事になってるしな。

 

「そうなんですね……。えっと……一安心です。魔力から誕生するなんて、まるで精霊の親戚みたいですね。精霊は魔力を命の源としていますから……」

 

「へぇ、精霊って魔力を命として生活してるのか……。まぁ、若干違うと思うけど、似たようなもんなのかのもな」

 

「あの、カズマの中にいるっていうその、マギアースドラゴンさんには私たちは会えたりしないんですか?」

 

「あー、召喚する方法はあるけど、ここじゃあ狭くてできないな。機会があればやってみるよ」

 

 この世界でマギアースドラゴンを現世に召喚したら、どんな扱いになるんだろうか。

 

 

「そういえば、なんでゆんゆんだけ俺に話しかけてきたんだ? 他の皆はどこに行ったんだよ」

 

「えっと………その………私ってこんな風に誰かとパーティーを組んで旅するのが夢だったから………。朝も夜明け前には起きて、ずっとこの食堂で待ってたんです。で、でも誰も来ないからこの宿屋を探索してたんです。ちょうど、戻ってきたらカズマさんがいたので……」

 

 

 よ、夜明け前って………

 

 そんな早くに起きても誰もいないに決まってるだろ………

 

「な、なるほどな。ゆんゆんがここにいる理由はわかったよ。たぶんだけど、もうじき皆も降りてくると思うぞ」

 

「カズマー、起きてる? ねぇ、ゆんゆんの居場所知らない?朝起きたら居なかったからどこいにいった…………か。か、カズマ、あんたまさか………」

 

 思った通り、アクアがゆんゆんを探して2階から階段を降りてきた。そしてこちらを振り向いて───

 

「とうとう、やってしまったのね………。冒険者から変態にジョブチェンジして、ゆんゆんにあんな────」

 

「してねぇよ!! アクア、お前俺のことなんだと思ってんだ!!」

 

 

 コイツ!!

 

 

「そうですよアクア。この件に関してはカズマは関係ありません。どうせ、ボッチのゆんゆんが誰かと話したくて早起きしたに違いありませんよ」

 

「ボ、ボッチっていわないでよめぐみん!」

 

 ゆんゆんとめぐみんの大声に惹かれたのか、クリスとダクネスも降りてきた。

 

「朝から賑やかだねー君たち」

 

「本当にな。もうすぐエイミーが朝食を持ってくるって言っていたから席に座って待っていよう」

 

 ダクネスのいう通りに席に座り、談笑しているとエイミーが朝食を持って………きたのだか。

 

「な、なぁ。エイミー………………それはなんだ?」

 

 エイミーが持つお盆の上のお皿には、旨そうな野菜が乗せられている。

 が、乗せられた野菜がぴょんぴょんと跳び跳ねている。今にも皿から落ちそうだ。

 

 

 ……………なんだコレ。

 

 

「何って……カズマくん。これはサラダよ?」

 

「サ、サラダ? その野菜が皿の上で跳び跳ねまくってるのがサラダ?」

 

「ええ。今日は思いきって野菜の活け作りサラダに挑戦してみたの。すっごく美味しいから皆も気に入ると思うわ」

 

 野菜の………活け作り?

 いや、野菜の活け作りってなんだよ。

 

「なぁ、昨日も思ったんだけど、何で野菜が跳び跳ねんの? 何でバナナが川で採れて秋刀魚(サンマ)とタコが畑に()るんだよ」

 

「何を言っているのですか、カズマ。バナナが川で採れるのも、秋刀魚(サンマ)やタコが畑に生るのも当たり前のことじゃないですか。」

 

「そうよ、カズマ。さっきエイミーも言ってたでしょ。野菜の活け作りだって。お魚も野菜も新鮮な方が美味しいじゃない」

 

「こんな活け作りがあってたまるか」

 

 そう話すめぐみんやアクアたちは

 

 ヒョイッ

 

 ヒョイッ

 

 と跳び跳ねるアスパラガスやニンジンなどを箸で巧みに捕まえ口に運ぶ。

 

「俺か? これは俺がおかしいのか? 」

 

「はい。カズマがおかしいのです。野菜の活け作りや秋刀魚が畑で採れることを知らないなんて、いったいどんな環境で育てられたのですか?」

 

 

 爆裂狂に言われたくねぇよ。

 

 

「はぁ………。普通の一般家庭だよ」

 

「俺の故郷じゃ野菜の活け作りなんて出てこなかったんだよ。全部、完全に仕留められてから調理されてたからな」

 

「へぇ………。もったいない文化を持った国もあるんですね」

 

 もったいない?

 この世界の頭がおかしいだけだろ。

 

 ヒョイッ

 

 ヒョイッ

 

「あーーもう!! 全然捕まらねぇぇ!! くそっ野菜如きに舐められてたまるか!!」

 

 サラダをひっくり返そうとするも、エイミーに腕を捕まれ、注意された。

 

「ちょっと! ダメよ、カズマくん。食べ物を粗末にしようとしちゃ」

 

「す、すいません」

 

 隣に椅子を持ってきて座ったエイミーは懐から箸を取り出す。

 

「ほら、私が食べさせてあげるから……。あーん……」

 

 そういって、箸で摘まんだ野菜を差し出してくるエイミー。

 

「あ………ありがとうございます」

 

 昨日とは違ってこれはうれしい!!

 そう思って俺はそれに躊躇なく食いついた。

 

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

こ の す ば/KONO SUBA

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

 朝食をエイミーに食べさせてもらい、女性陣の冷たい視線に晒された俺は荷物をまとめ、帰る準備をしていた。

 

「荷物をまとめるっていっても、着る服は昨日と同じなんだけどな」

 

 異世界に来てまだ四日目の俺はたいした荷物を持っていない。

 なので荷物まとめはすぐに終わった。

 

 そのまま一階の食堂に向かうともうすでにアクアは荷造りを終えて待っていた。

 

「カズマーー、早くしましょうよ。早く帰って昨日の宴会の続きを──」

 

「おい、アクア。お前また宴会をするつもりだったのか」

 

 そんなに宴会ばっかりしてたら金銭感覚がおかしくなるぞ。

 

「おや、私たちは二番手だったようですね」

 

「カ、カズマさんたちを待たせてしまいましたか?」

 

「ん? ああ、大丈夫だよ。俺たちもついさっき来たばかりだしな。」

 

 それから暫くしてクリスが降りてきた。

 

「ごめんねー。まった?」

 

「大丈夫だよ。ダクネスは一緒じゃないのか?」

 

「ダクネスももうじき降りてくると思うよ」

 

 俺の質問にたいして、クリスは階段の方に顔を向けて呟いた。

 

 クリスの宣告の通り、数分もしない内にダクネスは降りてきた。

 

「すまない。待たせてしまったようだな」

 

 一番遅れてきたダクネスが合流し、エイミーの案内でサムイドーの村から馬車が乗れる場所へと向かっていた。

 

 ところがめぐみんが急に立ち止まり、皆が止める前に爆裂魔法を雪原に向かって放った。

 

「『エクスプロージョン』ッッ!!」

 

 物凄く大きな爆音と共にクレーターが誕生する。

 

 めぐみんが“ドサッ”という音を立てて倒れるのと同時に、俺はめぐみんに文句を言った。

 

「このバカが!! 何を考えてんだ!! もし今の爆裂で雪崩でも起きたらどーすんだよ。それに、誰がお前を背負って帰るんだ………」

 

「誰でもいいので早く背負ってください。雪が冷たくて寒いです……」

 

 そう、めぐみんが雪に埋もれた声で返事をしてくる。

 

「ったく。しょうがねぇな…………」

 

 めぐみんを背負いながらそう呟いた俺は、少し先のところで待っているアクアたちを目指して小走りで走った。

 

 暫く雪原を歩いて行くと、馬車が止まっているのが見える。どうやら、エイミーが昨日の内に予約してくれていたらしい。

 

「それじゃあ、この馬車に乗ればアクセルの街に帰れるわ」

 

 皆が馬車に乗り込む中、俺はエイミーと話をしていた。

 

「ありがとな、エイミー。色々お世話になったよ」

 

「いいのよ。私がしたくてしたことだし……。あ、もし次にサムイドーを立ち寄る機会があったらもっと村を紹介するわ」

 

「ああ、そのときはよろしく頼むよ」

 

「ミーアちゃんのことも紹介したいし……」

 

「後、もうすぐしたら村の野菜を売りに行く移動販売をするの。もしかしたらアクセルの街ににも行くかもしれないからそのときはよろしくね」

 

「へぇ、あの野菜を売りに出すのか……。」

 

 俺とエイミーの話を馬車で聞いていたのか、めぐみんが話に割って入ってくる。

 

「絶対に売れると思いますよ!!」

 

 馬車が動き出して離れていくエイミーに向けて手を振りながら、それぞれが大きな声で別れの挨拶をした。

 

「まぁ、あの野菜は味は確かだからな。動き回るけど……」

 

「動くのが普通なのですよ、カズマ」

 

 そんな変な内容は聞きたくない。

 

「それじゃあ、そろそろお開きにするか」

 

 無理矢理に話を切り上げて俺も馬車に乗り込む。

 

 そして合図をすると、業者のおっちゃんが馬を鞭で叩いて、馬車を走らせる。

 

 

「それじゃまたねー」

 

「じゃあなーー、エイミーーー。」

 

「また会いましょう!!」

 

「ま、またお会いできたらうれしいです!」

 

「またなーーー」

 

「バイバイ!!」

 

 

 

「またねーーーー」

 

 エイミーがサムイドーの村に戻る姿が見えるまで、俺たちは手を振っていた

 

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

こ の す ば/KONO SUBA

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

 アクセルの馬車停留場で降りた俺たちはクエストほ達成報告をするために冒険者ギルドへ向かっていた。

 

 ふぅ、大した問題もなく、無事にクエストが終わったなぁ……………。

 

 そんなことを考えながら、アクアたちとギルドに向かうアクセルの街道を歩いていると、

 

「め、女神様? 女神様ですよねっ!! なぜこんなところにいらっしゃるのですか!?」

 

 

 突然後ろから大きな声で………おそらくアクアが話しかけられた。

 

 後ろに振りかえると、こちらに走ってくる男が見える。

 

 ソイツは茶色い髪のイケメンで、鮮やかな青色に輝く鎧を身に付けていた。

 

 急いで走ってきたのだろう。後ろからコイツのパーティーメンバーと思わしき腰に剣をぶら下げた美少女と、盗賊職と思わしき美少女が追いかけてきている。

 

 誰だ? と疑問に思いながら男を見ている俺たちを尻目に、その見知らぬ男は、同じく唖然としているアクアの手を掴もうとして······

 

「おい、 私の仲間に馴れ馴れしく触れるな。貴様、何者だ? アクアがお前に反応していないのだが、本当に知り合いか?」

 

 手を取ろうとしたその男にダクネスが詰め寄った。

 

 一撃瞬殺熊に攻撃されて悦んでいたダクネスとは全くの別人のようだ。

 

 なるほど......。攻撃が当たらなくてドMなダクネスだが、キチンとクルセイダーみたいなこともできるらしい。

 

 男はダクネスの方に向き直ると、謝罪した。

 

「す、すまない。いや、絶対にこの場に居るはずのない人がいたのでつい取り乱してしまった」

 

 どうやら礼儀は知っているらしい。

 男は改めてアクアの方に向き直り、質問をした。

 

「あの、アクア様。改めてお聞きしますが……なぜこんなところにいらっしゃるのですか?」

 

 ところが、アクアはその男に対し首を傾げる。

 

「あんた誰」

 

 知り合いじゃない………のか?

 

 いや、知り合いの様だ。

 

 男が、驚きの表情で目を見開いているから。

 

 多分、アクアが忘れているだけなのだろう。

 

 

 

 ん?………あれ?

 

 

 

 この男の顔………どっかでみたことあるような………

 

 

 具体的には、確か二週目の学生生活の中で……

 

 

 こいつ、まさか…………

 

 

「お前………マルナギか?」

 

 俺が男の名前を呼ぶと、ソイツはこちらに気づいたのか……こちらを向いて大声で俺の名前を呼んだ。

 

「き、君は………佐藤和真!! 佐藤和真じゃないか!! いい加減、僕の名前を覚えてくれよ!! 御剣だよ、御剣響夜!!」

 

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

こ の す ば/KONO SUBA

KONO SUBARASII SEKAI NI SYULUFUKU WO!

 

<◆><◆><◆><◆><◆><◆><◆>

 

 

 冒険者ギルドに着いた俺たちは、ミツルギと俺のパーティーで机を挟むように座った。

 

 

「カズマ、カズマ。カズマはこのスカしたエリートと知り合いなのですか?」

 

 ス、スカしたエリートって……。

 どうやらめぐみんは見た感じの印象でそう呼んだらしい。

 

 確かにこいつはナルシストで思い込みの激しい奴だけど……

 

「あーー、こいつな、俺たちの故郷の学校で同級生だったんだよ。まぁ、どんな内容で関わったのかは割愛するけど、簡単に言えば俺が罠に()め…………ある事の手助けをしてあげたんだ」

 

「いま、罠に嵌めたっていいかけませんでしたか?」

 

「き、気のせいだな」

 

「はぁ……まあいい。あの時僕が君の姑息(こそく)な罠に嵌まったのは僕自身の不注意が原因だからな。そんなことよりも、なぜアクア様がここにいるんだ?」

 

 俺は、自分と一緒にアクアがこの世界に来る事になった経緯をミツルギに説明し......。

 

「······佐藤和真。君は何時(いつ)かはとんでもないことを仕出(しで)かす(おとこ)だと思っていたが、僕の予感は当たっていたようだな。女神様(めがみさま)をこの世界(せかい)に引き込むとは」

 

 俺はミツルギに呆れた視線を向けられていた。俺はコイツにどんな風に思われているんだ。

 

「まぁ、過ぎてしまったことはもう仕方ない。佐藤和真、」

 

「カズマでいいよ。いちいち佐藤和真って呼ぶのも疲れるだろ」

 

「わかった。じゃあ、カズマ。アクア様を頼んだぞ。君がこの世界に連れてきたんだ。」

 

 はぁ、仕方ないな。一時期の感情に任せて連れてきたとはいえ、面倒を見ないといけない責任がある。

 例え、使えない子だったとしても──

 

「ああ、わかっ───」

 

「ねぇ、さっきからなんの話をしているの?なんでカズマは見知らぬ人と親しげに話してるの?」

 

 返事をしようとしたところで、アクアに遮られた。

 

 いや、ちょっと待て。コイツ今なんていった?

 

 ま、まさかコイツ、 一番の当事者の癖になんの話をしてるのかわかってなかったのか………

 

「えっと……お久しぶりですアクア様。あなたに魔剣グラムを頂いたミツルギキョウヤですよ。」

 

 そんなアクアに苦笑したミツルギは、改めてアクアに向かって自己紹介をした。

 

 ミツルギの話を聞いたアクアは首をかしげてしばらく考え込み………

 

「ああっ! ごめんね、すっかり忘れてたわ。そういえば送り出した人たちの中にあなた居たわね」

 

 ミツルギの説明で、ようやく思い出したようだ。

 

 若干表情を引きつらせながらも、ミツルギはアクアに笑いかけた。

 

「けどまぁ、お前が旅に出たってことは知ってたけど、まさか、ここにいたとはな………。俺以外の同級生も結構悲しんでたぞ」

 

「旅に出るのは別れることなのですから、悲しむのは普通なのではないですか?」

 

「ああ、こいつな。俺たち同級生に黙って旅立ったんだよ。だから、また明日なって言った次の日には居なかったんだ」

 

「ふーん。なるほどねー」

 

「しっかし、お前。キチンと人の話を聞くようになったんだな」

 

「君にそれを言われると痛いな……。君の仕掛けた罠に僕が嵌まった一番の理由は、僕が人の話を聞かず、相手の事情を考慮しなかったことだからね」

 

「あれからは人の話をよく聞いて、よく考えてから行動するようにしてるんだけど………今回の件は反省だな……」

 

 ミツルギの台詞で静まり返った状況を打開するかのごとく、挙手をしたゆんゆんが答えるのが難しい質問をしてきた。

 

「あ、あの! 1つ気になったんですけど、アクアさんってカズマさんの故郷でどんな扱いを受けてたんですか? カズマさんとミツルギさんの話を聞いてると、ものすごく重要な人物に感じるんですけど………」

 

「あ、それあたしも気になるな。なんでミツルギ君はアクアさんを様をつけて読んでるの?」

 

「それに、先程からアクアのことを女神様と呼んでいるようだが、なんの話なんだ?」

 

 ゆんゆんに続くクリスとダクネス。

 ………まあ、あれだけミツルギが女神様と連呼していれば気になる当たり前か。

 

 いや、この際だ。

 ミツルギもいることだし、ウチのパーティーメンバーには言ってしまってもいいか?

 

「言っていいと思うか?」

 

 ミツルギに視線を向けて話しかけると、若干だが否定的な答えがかえってきた。

 

「いや、言っていいと思うが信じてもらえるかは判らないな」

 

 だよなー

 

 次に“それでも良いのか”とアクアに視線をやると、どうやら良いらしく、アクアがこくりと頷く。

 

 そして、アクアは珍しく真剣な表情で、ダクネスとめぐみん、ゆんゆんとクリスに向き直る。

 

 ダクネスたちも、ミツルギのパーティーメンバーも、そのアクアの雰囲気を察し、真剣に聞く姿勢に入った......。

 

「黙っていたけれど、あなた達には言っておくわ。.....私はアクア。アクシズ教団が崇拝(すうはい)する、水を(つかさど)る女神。………そう、私こそが女神アクアなのよ......!」

 

「「「「

 

 っていう夢を見たのか

 

 っていう夢を見たんですか

 

 っていう夢を見たんだね

 

 っていう夢を見たのか

 

            」」」」

 

 見事にハモるめぐみん、ゆんゆん、クリス、ダクネスの四人。

 

「違うわよ!何で皆ハモってんのよ!」

 

 これにはアクアも反発し、みんなに食って掛かっている。

 

 

 ……………まあ、こうなるわなぁ......。

 

 

「「まぁ、大方予想通りだな」」

 

 

 ミツルギは席を立つと俺たちに向けて別れの挨拶を告げた。

 

「じゃあ、カズマ。僕たちはこれからもクエストに出掛ける予定なんだ。僕のパーティーメンバーも待たせてるし」

 

 そう言ってパーティーメンバーと合流したミツルギは冒険者ギルドを出ていたた。

 

 そして、ミツルギに続くようにしてクリスも席を立った。

 

「ん? クリスもなんか用事があるのか?」

 

「うん。ちょっとね。 『スロットル』という街に用事があるんだ。また、都合がついたらパーティーにいれてね。しかし、もしかしたらって思ってたけどアクアさんが先ぱ────」

 

 そう言ったクリスはぶつぶつとなにかを呟きながら、冒険者ギルドをあとにした。

 

 

 その後、ギルドへのクエスト達成報告をした俺たちはそれぞれの宿へと帰った。こうして、俺の異世界生活四日目を終えた。

 

 

              <To Be Continued>

 




今回の改編

◆ミツルギが人の話を聞くようになり、勇者として磨きがかかった。

◆ミツルギの狂信度の低下

◆カズマとミツルギの因縁が地球から続いている。

◆ミツルギとは原作とは異なり、早く会合する。

◆ミツルギは地球でカズマの罠に嵌まりまくり、精神的にボコボコにされた。

◆魔剣グラムが売られない。

◆『スロットル』という原作にはない街の登場。


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