恩返し ~Homeless cat and examinee's certain stories (べるん様)
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恩返し ~Homeless cat and examinee's certain stories
2月8日のこと。
高校受験まであと四日に迫っているときのこと、俺はいつも通り迷い猫(野良猫)ののんと、少し肌寒い外で遊んでいた。
のんと出会ったのは2月2日で、町で会合を開いた帰りにのんと出会った。
草の茂みから出てきたのんはどこまでも俺を追いかけてくる。
しまいには舐めてきた、多分なついている。
そこで、名前をつけてあげることにした。名前は「のん」と命名した。
ネーミングセンスがイマイチだと気付いた一瞬。
「のん~。そっち行っちゃ駄目だぞー」
「にゃ~?」
のんが不思議そうにこちらを見つめて鳴きかえす。
のんは野良猫なので危険な場所も普通に足を踏み入れる。
俺はのんが何処まで行けるかを知らないので、自分で判る危険な処へはのんを入れないようにしている。のんは随分入りたさそうだが。
「颯太(そうた)? そろそろ勉強再開したら?」
「うん。判ってるよ」
家に入ろうとすると、忽ちのんが止めようとする
「にゃ~にゃ~」
よほど遊びたいのだろうか。俺を家に入れようとさせない。
でも、入っちゃうんだけど・・・・・・
「にゃー!」
「あ、駄目だのん!」
家に無理くり入ろうとするのんを抱きかかえる。
「駄目だぞのん。家には入れないんだ」
「にゃー?」
のんが家に入れないのは母が猫アレルギーだからである。
昔母は猫に腕を嚙まれ、その傷口からウイルスが侵入し、アレルギー化してしまったのだ。幸い、猫の居る部屋へは入ることが可能だが、触ったりは出来ない。
触ってしまうと(毛も含め)炎症を起こしてしまう。
「わかったかのん、また遊んでやるからさ。休憩時間に入ったらこの鈴を鳴らすからそれまでこの辺りで遊んでいてくれ」
「にゃー」
のんは了解したかのように鳴き、腕から飛び降り、どこかへ行ってしまった。
*
「ふぅ。試験勉強はホント疲れるなぁ」
高校入試まで後四日。もうスパートを掛けなければいけないとき。
俺の成績は学年でも上でも下でもない、真ん中程度。
高校もそこそこの所へ行くつもり。
入りたい部活も無い為、自分の将来に向かって勉強に集中できる。
「颯太? おやつ置いとくわよ」
「ありがとう母さん」
母は定期的に受験勉強中の俺におやつを持ってきてくれる。
「今回はパンケーキか。美味そうだな」
や、柔らけぇ! なんだコレ?
母はパティシエをやっていて、料理の腕はピカイチなのだが、このパンケーキ、上手過ぎだろ。
この前行った一つ星レストランで食べたパンケーキより美味い。
「母さん・・・・・・二つ星じゃね? ふふふっ」
不気味な笑みを浮かべる。一瞬、誰かに見られてないか周囲を見回す。
よかった。誰も見てない・・・・・・イイイッ!!?
「のん!?」
えマジ?嘘でしょ?と叫びたくなるくらい吃驚した。
雪が5㎝程積もった屋根にのんが立っていた。
「待てなくなったのか?全く、我慢できない奴だなぁ」
ガラっ。窓を開け、身を乗り出してのんを抱えようとしたそのとき。
「おあっ!!」
前方に体重を掛け過ぎたか、屋根に頭から落下してしまった。
そしてその反動で地面へと落ちる。
「あ、危ねっ!」
目を閉じて落下の衝撃を待ち受ける、雪が積もっているから少々和らげるだろうけど、流石に地上8mから落ちたら誰でも怪我はする。
ドサッ!! 雪がクッションになってくれたおかげで大怪我は免れたが、手から出血していた。
当り所が良かった。他の処をぶっていたら間違いなく受験どころでは無いのは判る。
「痛たたた。嗚呼、血出てる」
幸い母には気付かれなかったようで・・・・・・。いや本当に危なかった。
「のんに来てもらえば良かったな」
少し行動をミスったことを後悔する。
「さて、早く勉強の続きをしないと!」
家に入り、部屋へと向かう。
部屋には、すでにのんが入っていた。
「にゃー」
迎え入れる様にのんが鳴く。
少し悲しそうな、気がした。
「ゴメンなのん。抱えようとしたら落ちちまった」
「にゃ~?」
なんで落ちたの?自分一人で部屋に上がれるもん。という感情を込めたよう。
少し疑問形で鳴きかえしてくる。
「よし、さっさとワーク終わらせるぞ」
と意気込んでペンを持とうとしたが・・・・・・
「痛っ!」
手が痛む。ペンは辛うじて持てるが、書くのは難しい。
このままではワークを終わらせられないじゃないか。
「くそっ。どうすっかな? ワーク終わらせられねぇ・・・・・・」
悩んだ、俺はすごく悩んだ。
手の痛みに耐えてワークをするか、治ったあとにワークをやるか。
効率はどちらも悪いと言える。
手の痛みに耐えながらワークをやると、ペンを持つのが辛うじての為、書くのが非常に遅い。
然も、治ったあとにやると、受験当日に治る可能性もある。
受験まであと四日だし・・・・・・。
「にゃー」
「ん?」
のんが俺の手を舐め始めた。そうか!
のんが舐めれば、粘膜が作られて痛みが軽減するはず、痛みがきたらもう一度のんに手を舐めて貰えば!!
「あ、でも野良猫だから舌って汚いか」
のんは野良猫だから当然舌は汚い筈、だって野良猫だもん。
色んな処を舐めてんのかな? 正直怖い。
「よし、少し舌を洗ってやるか」
のんを抱きかかえ、洗面台へ向かう。
のんは手を舐めてくる。ちょ、汚いっつの。
母に見つかるとヤバいのだが、幸い母はテレビを見て爆笑している。
「お笑いでも見てんのかな? 今がチャンスだな」
母がテレビを見ているならバレる心配も少ない。さっさと向かう。
「よーし着いた」
蛇口を捻り、のんの下を出す。
一体どんな舌が待ち構えているのか。
「うわお、汚っ!! やっぱ野良猫だな。相当汚いぞこれ」
やっぱ野良猫に舐められて感染症を起こす人もいるものだ。
舌の奥深くま茶色い土みたいな物が付着している。しかもドロドロ。
唾液で溶けたんだろ絶対(笑)
「のん、大人しくしてろよー?」
「にゃー!」
「これは嫌がってんのか? 怒ってるのか嫌がってるのか分からねぇ」
ジャーーーっと水が音をたてている。改めて聴いてみるとなんか新鮮。
だけど今はこんな事に気を取られていてはいけない。
ちょちょいと舌を洗ってしまおう。
「にゃーにゃー!!」
「そうか。のん嫌がってるな・・・・・・」
猫は寒いのが苦手って言うし、冬だから水は冷たいし、猫にとっちゃ嫌な条件が二つも重なってるじゃん。 のんにとっちゃ最悪だな。
「どうすっかなぁ。指に付けてみてはどうだろう?」
水を指に付けてのんの口内へもっていく。これなら冷たくも無い。
「♪♪」
「随分気持ちよさそうだな、効いたんだな」
少し体温が加わる訳だから水も少し暖かくなるんだ。猫にとって普通の水温だろうか。
水浴びしている時みたいの反応を示している。
「よし、終わった」
のんの舌を洗浄完了と言ったところで、部屋へと戻る。
おかげで俺の指は冷え切ってますよ。
「にゃ~」
のんは俺の指をペロペロ舐める。痛みが和らいでくる。
「粘膜できてんのかな?」
理科的なことを言いながら痛みが消えるのを待つ。
案外早く痛みが消えてきた。
「にゃー!」
「ありがとうのん。痛みが収まったよ」
これでワークがやれる。でも、痛みまた戻って来るんだよな。
せめて十分位持ってほしい。粘膜って薄いんじゃね?
「ふぅ。作業に集中できる。やっぱ舐めて傷口を治すってアリだな」
少し自覚しながらワークの問題を解いていく。
ちなみに今しているワークは英語だ。英語は得意科目なのでどんどんページが進んでいく。
「しかし、ここの英単語間違ってるぞおい」
ワークの問題が間違っていることに気付き笑う。
こういうことって有るんだな(笑)
でも、二十分程で痛みは戻ってきて」
「痛て。もう戻ってきたのか? のん、出番だ!」
「にゃ~?」
「また舐めてくれ」
「にゃー」
のんって人の言った言葉が理解できるのか?
反応が違うぞ? 言葉を理解できる猫か。
「ん?」
俺は異変に気付く。なんと傷口が塞がってきたのだ。
「あれ? これって治ったんじゃね? マジで?」
「にゃ~?」
のんは気付いていないだろう。手の傷口が塞がってきたのだ。
舐めるって本当に治癒能力が有るなと思った。
「よし、のん。もう舐めなくていいぞ」
*
受験当日。母に見送られ試験会場へと向かう。
のんのおかげで傷口は完治し、もう傷と言う程でもない。
ただの瘡蓋。
「ここが試験会場か。立派だな~」
会場に気をとられながらも中へ入る。
受験生は沢山居る。ここって有名な所だったのか。
俺が選んだ高校は先生からもお勧めされた学校。
俺の学力からして、将来に役立つ資格がとれるような学校だし、ギリギリとは言わないが、ちょっとの努力で入れる程度。
中学校の同級生は居ない。
学力が本当に普通な所なので、他の皆はレベルが高い所に挑戦してみたりレベルが低い所に軽く入るような気持ちで行ったらしい。
この場合っておちるんじゃないのか? と思うんだが・・・・・・。
現在時刻は10:30。入試まであと二時間程有るから、のんの所へ向かうか。
「のんに恩返しされたな。あの時拾っておかなければこのような出来事は無かったのか」
怪我した手を見る。俺は指で瘡蓋を取った。
「痛っ!」
周りから少し目を向けられたが気にする数じゃない。
「すいませんw」と頭を下げて家へ戻る。
*
「おーい、のん?」
「にゃー?」
「お、いたいた」
のんは玄関から出てきた。 なんで母さんにバレないんだろうと不思議に思ったけど、どうでもいいことだな。
「のん。ありがとな。お前のおかげだ」
抱きかかえているのんに語り掛ける。
本当に世話になった。のんが居なければ怪我する事も無かったけど。
「にゃーにゃー」
「どういたしましてってか?」
「にゃー」
のんが頭を縦に振る。 本当に人間の言葉を理解しているようだ。
「あら? 颯太! 忘れ物?」
「うん。筆箱忘れちゃってさ。危なかった~」
「気付いて良かったわねぇ」
「だよな」
にしても危なかった。母が部屋に来るとき足音が聞こえたからのんを押入れに入れたのだ。 もし足音に気付かなかったら、母さんどうなってたんだろう?
険悪に考え過ぎたか、不気味な方向へ思考が進んでしまう。
「っとと、そろそろ行かなきゃな。じゃあなのん。行ってくるよ」
「にゃー」
のんが見送る様に鳴く。とても儚い鳴き声だった。
これが最後の、のんの恩返し・・・・・・。
皆さん、どうもです。べるんです。(フルネームは「べるん様」ですかw)
ハーメルンにユーザー登録したのは今日。初めてのハーメルン小説投稿です。
まぁ今回の小説は、プロットも起てずに自分の思うが儘に書いてみただけなので、意味が不要な事が書き込まれていたり、無駄な設定を組んでいたりします。
その辺は気にせず、物語全体に目を通して頂ければ幸いです。
次回からは少し物語らしく書こうと思う所存。プロットも張と起てようと思います。
最後になりますが、此処まで長々と目を通して下さった皆様。誠に有り難うございます。
皆さんの期待に負けないような強いレベルの小説を目指していきますので、是非是非応援宜しくお願い致しますm(__)m
それでは、御機嫌よう!! byべるん
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