仮面ライダーディライト-世界の光導者- (トラグマアーク〜不動のスカポン作者〜)
しおりを挟む

第1導 プロローグ

自惚れてるつもりは毛頭ございませんが、嘗て書いてたライダーの二次作をより多くの方に知って頂く為にこのサイトでも連載する事に致しました!!

知識不足で不愉快な思いをさせてしまうでしょうが、何卒御容赦下さいませ!!


―とある地で、一人の男が戦っていた…。

 

「…はぁ…はぁ…全く…随分…しつこく…湧いて…くるなぁ…はぁ…はぁ…」

 

と、疲れ気味た表情をした男の名は煌闇影(きら・みかげ)。漆黒色の短髪に茶色のジャケットそして、髪と同じ色をしたジーパンと今風の若者を現わした格好だ。何故疲れているかというと…

 

 

 

『グォォォォォォッッッ!!!』

 

『ヒヘヘヘヘヘ…』

 

『お前の望みを言え…言わないと勝手に決めちゃうよ…「楽に死にたい」ってなぁぁぁぁぁぁっっ!!!』

 

 

 

見ての通り…無数の各ライダー達の世界の怪人が闇影を囲んでいるからだ。彼は襲いかかる怪人を千切っては投げ、千切っては投げ…と素手で戦っている。だが、新たな怪人は次々と現れてくる…。こんな事が続けばバテるのは当然だ。

 

『もう終わりか?だったらさっさと死になっ!』

 

『人間ごときが俺達怪人に敵うと思ってんのかよっ!』

 

確かにただの人間が「怪人」という異形の存在に立ち向かって戦うのは無謀だ…。

 

 

「ただの人間」ならば…。

 

「…やっぱり、『これ』を使うしかないな…。」

 

そう言いながら、懐からカメラ状のアイテム「ディライトドライバー」を取り出しそれを腰に当てた時、ベルトが現われ巻き付いた。更にバックルを開き、一枚のカードを装填した…。

 

 

 

KAMEN-RIDE…

 

 

 

「変身!」

 

 

 

DELIGHT!

 

バックルを閉じた瞬間、電子音と共に闇影の身体に複数のライダークレストが重なり、オレンジ色のスーツに包まれ、金に近い黄色のライドプレートが頭部に刺さった、青色の複眼を輝かせた戦士、世界の光導者「仮面ライダーディライト」に変身した。

 

『さて…輝く道へと導きますか!!』

 

…どうやら、これが彼の決め台詞らしい。どこぞの電車ライダーじゃあるまいし…。

 

『ふざけんなぁぁぁぁぁっっっ!!!』

 

と、ディライトの決め台詞に怪人がぶちキレている…。当然だ。自分達に劣ると思っている人間が突然ライダーに変身し挙げ句、変な台詞をほざけば何か言いたくなるのは仕方ない…。

 

『死ねぇぇぇぇっっっっ!!!』

 

先程ぶちキレた怪人は勢いのままディライトを襲いかかるが…

 

『あらよっと!!』

 

バックステップで攻撃をよけつつ、ライトブッカーをガンモードに変形し、カードをドライバーに装填した。

 

ATTACK-RIDE…LASER!

 

ライトブッカーを構え、ライトオレンジ色のレーザーを三発同時に放つ「ディライトレーザー」で怪人を狙撃した。

 

『グァァァァッッッ!!』

 

撃たれた怪人は爆発音と共に消滅した。

 

『あーびっくりしたー…急に飛び出してくるから…。《』

 

と驚きながら、今度はライトブッカーをソードモードに変形させ…

 

『せいせいせいっ!!』

 

『ギャァァァッッッ!!!』

 

目にも止まらない速度で、敵を次々と斬り裂いていくディライト。

 

『クソがぁ…こうなったら一気に攻め込むぞぉぉぉっっっ!!!』

 

『グォォォォォォッッッ!!!』

 

その一言で怪人数十体がディライトに一斉に襲いかかった。…だが…

 

『一斉攻撃か…ここは援軍を「作る」か!』

 

ディライトは一枚の黒いカードを取り出し、ドライバーに装填した。

 

FINAL-SHADOW-RIDE…FA・FA・FA・FAIZ!

 

電子音が鳴りドライバーから光がディライトの「影」を射し込む。その瞬間、影がディライトの隣に現れ、赤いスーツに銀色のアーマーを纏った金に近い黄色の「φ」の複眼をした戦士「仮面ライダーファイズ」の最終形態「ブラスターフォーム」に変化した。

 

『な、何だコイツ!何故影がライダーになったんだ!』

 

『いや、そんな事言われても…こういう仕様なんだから仕方ないだろ?』

 

FINAL-ATTACK-RIDE…FA・FA・FA・FAIZ!

 

ディライトは答えになってない返答をしながら必殺技用のカードを使用し、ガンモードに切り替えたライトブッカーを構えた。S(シャドウ)ファイズBFもそれに合わせてファイズブラスターを構え、二人同時に「フォトンバスター」を回る様に放った。

 

『こ、答えになってな…グァァァァッッッッ!!』

 

襲いかかってきた怪人達は一瞬で消滅した。ディライトのライダー実体化能力に狼狽した怪人諸とも…。

 

『まだだ!続けぇぇぇっっっ!!』

 

ディライトの強大な能力に怯まず、怪人達はまた一斉攻撃を仕掛けた。

 

『あまり倒したくないんだけどね。』

 

FINAL-SHADOW-RIDE…KI・KI・KI・KIVA!

 

ライダーにしては珍しい発言をしながらディライトはまたも黒いカードを使用し影をライダーに実体化させ、金の鎧を纏い、赤いマントをした蝙蝠をイメージさせるライダー「仮面ライダーキバ」の最終形態「エンペラーフォーム」を実体化した。

 

FINAL-ATTACK-RIDE…KI・KI・KI・KIVA!

 

ディライトは素早くソードモードに切り替えたライトブッカーを、SキバEFはザンバットソードを構え、刀身を赤く光らせ剣を振るう「ファイナルザンバット斬」を怪人達に喰らわせた。

 

『此処までやって悪いけどもう降伏しないか?それ以上やってもそっちの被害も増える一方だし。』

 

なんと、ディライトは怪人軍団に降伏を勧めた。普通ライダーは怪人を倒すのが定石なのだが、このライダーだけは違う考えの持ち主らしい…。

 

『な、舐めてんじゃねぇぞォォォォッッッッ!!このクソがぁっ!!降伏だと!?んな事すると思ってんのかよ!さっきからふざけた態度を取りやがって…大体手前が何で追われてんのか理解してんのかよ!この…「裏切り者」がぁっっ!!』

 

『!!!』

 

ディライトの降伏勧告を全く聞かずに彼に罵詈雑言を放つ怪人。そして、ディライトは最後の言葉に強く反応した…

 

 

 

「裏切り者」という言葉に…。

 

 

 

 

『ガァァァァァッッッッ!!!!』

 

怪人は腕を大きく広げ、他の怪人達を黒いオーラに変換し体内に吸収した。

 

『オオオオォォォォッッッッ!!』

 

みるみる内に怪人の肉体は黒く染まりながら巨大化していった。さらにそれは複雑に変化し、翼を拡げ、大きな二本の角を生やした黒い影の悪魔の様な姿になった。

 

『グォォォォォォッッッ!!』

 

こうした怪人達を吸収した黒き集合体…その名は「シャドウイーヴィル」…。

 

『グォォォォォォッッッ!!!』

 

『うわっ!!』

 

シャドウイーヴィルは巨大な爪をディライトめがけて大きく振りかぶったが、ディライトは真横になんとか避けた。

 

『影の集合体か…こっちも一気に決めますか!』

 

体勢を整えたディライトは、左腰のカードホルダーから裏が黄色いカードを取り出し、ドライバーに装填した。

 

FINAL-ATTACK-RIDE…DE・DE・DE・DELIGHT!

 

『はぁぁぁぁ……!!』

 

ディライトは両手を胸の前で覆うように構え、光の球体エネルギーをチャージして大きくし、そして…

 

『はぁぁぁぁっっっっ!!!』

 

『グァァァァッッッッ!!!』

 

両腕を強く突きだし、エネルギー波を打ち出した。まともに喰らったシャドウイーヴィルは悲鳴をあげながら爆発音と共に消滅した…。これがディライトのFAR「ディメンションプロミネンス」である。

 

『ふう…やっと終わったか…。』

 

ドライバーを腰から外し、ディライトから闇影の姿に戻った。 が…

 

「はぁ…はぁ…やっぱあまり無理するもんじゃないな…。」

 

闇影は、手で支えながら片足の膝先を地に付いた。最初に生身で怪人を投げ飛ばしたり、変身して必殺技を使い過ぎたのだ。疲労が激しいのも頷ける。

 

「…少し休んでから 動こう…。もう怪人も現れそうにないし…。」

 

そう思っていた瞬間…!

 

 

 

『ジネェェェェッッッッ!!!』

 

死んだと思っていたシャドウイーヴィルの分身なのか?黒い影の怪人が手から黒いエネルギー弾を闇影に向かって放った…!

 

「うわぁぁぁぁっっっっ!!!」

 

闇影はに直接エネルギー弾を受けてしまい大きな爆発に巻き込まれた。

 

 

 

―謎のオーロラ

 

 

 

背景全体が真っ黒の空間の中で、闇影は大の字で浮いた状態のまま仰向けになっていた。その表情は、まるで魂が抜けた様にやや虚ろだった。

 

―…あれ?ここは…何処だ?…そういや俺、敵の攻撃を諸に喰らって…それから…?…ああ、死んだんだな、俺。…て事は、ここは…地獄か…?

 

どうやら今いる場所を地獄と思い込んでいるようだ…。

 

―…ここまでか…。

 

嫌だ…。まだ死ねない…死んでる場合か…。こんな所で終われない…。俺には…やるべき事があるんだ…「あの人」と約束したんだ…初めて信じてくれたあの…人…と……き…さ…ん…。

 

闇影の意識はそこで落ちる寸前だった…。その時…

 

「起きて下さい…ディライト。」

 

闇影以外誰もいない筈の空間に黒い服を着た一人の青年が現れた。

 

「君は今居るのは『闇の牢獄』・・・。ここに閉じ込められた者はまず意識が薄れていき、感情が一つずつ失っていき…最後には『心』を失ってしまうんだ・・・。」

 

ここは地獄ではないと判明したが、状況的には何ら変わらない。だが、この青年が呼び掛けてくれたおかげで意識を取り戻した。未だまともに喋れないが…

 

「『本来の君』なら自力でこの空間を抜け出す事が可能だけど、今の状態では無理だね…。」

 

青年は悲しげな表情でそう呟いた。彼の言う通り此処から出る事は出来ないのか?そう悲観的になっていた時、彼は口を開いた。

 

「けど・・・今回は僕の力で何とかするよ・・・。」

 

なんと青年は此処を出る術を持っていたのだ。正に「地獄に仏」とはこの事だ。…実際それに近いのだが。そう思っている内に、青年が両腕を垂直にして瞑想した。すると…

 

―な、何だ?体が…光ってきたぞ…!

 

闇影の身体に光が包まれている。おそらくこれは空間移動の類だろう…。

 

「ディライト、君には何れ大きな使命が待っている···。」

 

―待ってくれ!使命って何なんだっ!?それに君は何者なんだ!?そもそもどうして俺の事を知ってるんだ!?

 

「…何時か解るよ。これは君にしか出来ないんだ。『『闇』を操る光の戦士』である君にしか…。」

 

―待ってくれっ!!おいっ!!まっ…て、くっ…!!意識が…

 

光に包まれ、闇影の意識は完全に閉じた…。

 

 

 

降りしきる大雨の中、一人の制服を着た少女は傘も差さずに下を向いて歩いていた…。

 

「……。」

 

少女の名は白石黒深子(しらいし・くみこ)。カチューシャかけた漆黒色のセミロングの髪に整った顔立ちと、世の男がほっとけないくらいの美少女だ。そんな彼女が何故雨の中で悲しそうな表情をしているのか?

 

「…どうしたらいいんだろう…私、人を…クラスメイトを…殺し…ちゃっ…た…うぅ…!」

 

なんと、黒深子は同級生を殺してしまったのだ。その美しい外見からとても考えられない事…だが、本当に「ただ」殺しただけなのだろうか?次の言葉でその疑問は解消される。

 

「わ…た…し…、ぐすっ…!灰色の化物になって…人を…人を…うぅっ…!うぅっ…!」

 

そう… 黒深子は一度死を経験した者が全身灰色の異形に変貌する「ファイズの世界」の怪人、「オルフェノク」に覚醒してしまったのだ。彼女がずっと悲しげな様子なのは、その後悔の念に苛まれていたからだ…。

 

「これから…どうすればいいのかしら…。私…。」

 

異形の存在になり、更に人を殺めてしまったというどうにもならない現実に苛まれる黒深子。あれこれ思考をしながら歩き続け、漸く自宅が見えてきたその時…

 

「ん?何だろあれ?」

 

自宅の前に何かの物体がある…。近づくごとにそれははっきりと見えてきた。黒深子が見た物体の正体は…。

 

「って!エェェェェッッッッ!!!!????」

 

思わず大声で叫ぶ黒深子。家の前にあるそれは「物体」ではなく…

 

「は…腹…減っ…た…。」

 

あの謎の空間から脱出した、闇影という青年だ。

 

「だ、大丈夫ですかっ!?」

 

黒深子は闇影の近くにかけより声を掛けた。闇影は今かなり衰弱している。このままでは死んでしまうだろう。

 

「おお…これは天の恵みかな…?林檎が…二つも…。」

 

そう言いながら、闇影は手を伸ばした…

 

 

 

 

…黒深子の胸に…。

 

 

 

「!!!!////」

 

幻覚を見ているのか?今の闇影には黒深子が林檎の木に見えているのだろう。そして、黒深子の胸が林檎に見えたのでそのまま掴んだのだ。だが…

 

「…き…」

 

「キャァァァァッッッッ!!!!何すんのよッ!この変態!!!!////」

 

「ぐぉっ!!」

 

幻覚を見てる事など微塵も知らず、黒深子は顔を林檎みたく真っ赤にしながら闇影の顔面にパンチを繰り出した。

 

「…って!ごめんなさい!大丈夫ですかっ!?」

 

黒深子は殴った事を謝罪し慌てて完全に闇影の身体を揺さぶりながら呼び掛けるが、完全にKO(ノックアウト)した彼の耳にそれが届く事はなかった…。

 

これが、「闇を操る光の戦士」ディライトと一人の少女の出会いだった…。




御覧の通り、ディライトの能力は「歩くライダー図鑑」とは真逆です。

御意見がありましたらドシドシどうぞ!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

主人公&ライダー紹介

それ以上でも以下でもありません。


煌闇影(きら・みかげ)/仮面ライダーディライト ICV:草尾毅

23歳。本作品の主人公。前髪がカールがかった黒い短髪で、服は茶色のジャケットを着こみ、上はワイシャツ、下は黒ズボン。明朗活発で誰に対しても(無害な怪人も含む)優しく、他人の悩みに真剣に相談に乗り力になりたがる熱血漢な男。その性格故に他人からは疎ましく思われる事がよくあり、最悪騙されてしまう事もある。

基本的に争いは好まないが自分と関わった人間を侮辱したり、他人の夢や悩みを笑ったり、傷つける者がいればその相手に怒りを露にするという若干血がのぼりやすい性格の持ち主。

 

 

【挿絵表示】

 

 

仮面ライダーディライト

闇影がディライトドライバーで変身するライダー。別名「世界の光導者」。外見はディケイドに酷似しているが、体色はライトオレンジ(前側)と白(後側)で、プレートは金色に近い黄色で、胸のXの部分は黒で、複眼は青色。クウガ~キバの9つのシャドウライドカード(最終フォーム)を所持している。

戦闘能力はディケイドより高いが、ディケイドの様に他のライダーにカメンライドは出来ないが、シャドウライド(後述)が使用可能。

 

 

【挿絵表示】

 

 

FAR

ディメンジョンプロミネンス

ディライトのFAR。両手にライトオレンジの次元エネルギーを球状に凝縮、拡大させ敵に放つ。

 

ディメンジョンフィスト

拳にライトオレンジの次元エネルギーを籠めて正拳突きをする、所謂ライダーパンチ。

 

ディメンジョンレッグ

ディケイドのディメンジョンキックと同じだが、カードビジョンカラーはライトオレンジでカードのライダークレストはダークライダーの物となっている。

 

ディメンジョントリガー

ライトブッカー・ガンモードの銃口周囲にライトオレンジのカードビジョンが円状に囲み、引き金を弾くと強力なライトオレンジのエネルギー波が射出される。

 

ディライトドライバー

外見はディケイドライバーに酷似しているが、色はライトオレンジ。ライダークレストはクウガ、響鬼、カブト、電王、キバ以外はダークライダーの物となっている。

 

ライトブッカー

こちらもライドブッカーのライトオレンジカラーバージョン。柄を伸ばしてスピアモードに変化可能。

 

シャドウライドカード

裏が黒色のライダーカード。ディライトドライバーに装填する事で自身の影をカードに描かれたライダーに変化する。ディケイドコンプリートフォームの様なシンクロ攻撃やディエンドの召喚ライダーの様な援護攻撃に切り替える事が可能だが、このライダーが受けたダメージを本体も同じく受けてしまうというデメリットがある。




次回はヒロインとの邂逅です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2導 闇への旅立

今回、闇影に話し掛けた人物の正体が明らかになります!!

そして、次回からダークライダーの世界に突入します!!


「いや~すいません!食料が無くて四日間ずっと水だけで過ごしてましたから…あ、おかわり下さい!」

 

ここ、白石家で飯をほおばる闇影は頭を掻きながら、お椀を差し出した。それにしても、何杯目になるのか…。いくら死にかけたとはいえ図々しいとは思わないのだろうか…。

 

「いいえ、いいんですよ。遠慮せずにどんどん食べて下さい。」

 

そう優しく返し、差し出されたお椀を受け取り白飯をよそい闇影に差し出したのは、白石影魅璃(しらいし・えみり)という女性。

 

彼女は先程闇影に鉄拳を喰らわせた黒深子の母親である。三十代後半の年齢なのだが、容姿がそれを思わせない程とても美しいのだ。

 

「もう一時はどうなるかと思いました…。本当にありがとうございます!」箸を止め、闇影は感謝の言葉と共に深く頭を下げた。

 

「元気になって何よりです。あら、黒深子…今上がったの?」

 

開いたドアから、湯気を立たせながら、頭にタオルを巻いて白いTシャツに生地が薄い青いズボンと、湯上がりの格好をした黒深子の姿が見えた。

 

「……。」

 

しばらく闇影の姿を見て、すぐに違う方向に向いて、自分の部屋に向かった。

 

「こら、闇影さんに挨拶しなさい!黒深子!」

 

「あれ?どうしたんだろう?俺何か悪い事したかな?」

 

何も言わずにこの場を去った黒深子に首を傾げた闇影。

 

「ごめんなさい、闇影さん。でもあの子、何時もは人に挨拶はするのにどうしたのかしら?」

 

影魅璃は闇影に詫びながら、何時もと違う娘の態度に疑問を抱いた。「(ふむ…何か悩みでもあるかもしれないな…。よし!!)」

 

闇影は顎に親指と人差し指をあてながら、黒深子が悩みがあると推測した。そして…

 

「影魅璃さん!」

 

「は、はい!何でしょう?」

 

「助けてくれたお礼がしたいので、この家の手伝いをさせて下さい!お願いします!」

 

なんと、闇影は命を救われた恩返しの為にこの家の手伝いを影魅璃に申し出した。この言葉に影魅璃は唖然とした…。

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

 

黒深子は部屋に閉じこもり、ベッドの上に仰向けになり天井を見つめながら、今日の出来事を思い返していた…。

 

 

 

「キャアッ!い、痛いッ!やめて!」

 

「白石…てめぇ、ちょっと男子にちやほやされて調子こいてんじゃねぇよっ!」

 

「お前、マジでムカつくんだよっ!」

 

校舎の屋上で、黒深子は複数の女子生徒に囲まれ一人の女生徒に髪を掴まれながら振り回されている…。所謂いじめを受けているのだ。理由は容姿端麗で、成績優秀、友達も何人もいて、男子生徒からも人気があった黒深子が気に食わないからだ。いじめはどんどんエスカレートし、黒深子の頬を叩き、腹に蹴りを入れた。

 

「ううっ!!い…痛い…!」

 

「いい気味。さっさと立てよ!」

 

腹の強い痛みに悶絶する黒深子に構わず再び彼女の髪を掴むリーダー格の女生徒。そのまま、黒深子を屋上の出入口の壁に強く叩きつけた。

 

「キャアァァァァッッッッ!!」

 

大きな悲鳴をあげながら、黒深子は下から力が抜けた様にずり落ちて気を失った。

 

…壁に頭の部分に「赤いもの」を残して…。

 

「お、おい!今鈍い音が鳴らなかった?しかもなんか壁に血がついてるし!」

 

「これってヤバくない?」

 

流石に流血沙汰は不味いと感じ、女生徒達が動揺し始めた…。その中でリーダー格の女生徒は、

 

「…このままこいつを落としちまおう。事故死って事にしちまえばいいんだよ。」

 

事もあろうに、黒深子を屋上から突き落として事故死に見せかけようととんでもない提案を出した。

 

「で…でもそれって犯罪じゃない?」

 

「元々こいつが悪いんだよ。それにあんた達も同罪じゃない。逃げようなんて考えるなよ。」

 

その言葉に恐れを感じ、やむなく提案を受け入れる他の生徒は黒深子の身体を持ち上げた。

 

 

 

―コノママデイイノ?

 

―…?…誰?

 

意識を失い、暗闇の中にいる黒深子はその中で謎の声を耳にした。

 

―ワタシハアナタノ影…イイエ、モウ一人ノアナタト言ウベキカシラ…。

 

謎の声は黒い人影となって黒深子の前に現れた。そして、自分は「もう一人の黒深子」と名乗った…。

 

―な、何言ってるのよ!あなたが私だなんて…!冗談を言わないで!そ、そう…こんなの…夢よ!夢なんだわ!

 

黒深子は強く否定した。これは夢だ、有り得ない…。そう否定した。―否定スルノハ勝手ダケド、アナタガ今死ンデイルト言ウ事ハ本当ヨ。

 

―!!!!

 

その言葉に黒深子は激しく動揺した。そして、影は続けた。

 

―ダケド、アナタヲ生キ返ラセル事ハ出来ルワ。

 

―え!それ、本当!?

 

なんと、影は黒深子を生き返らせる事が出来ると言うのだ。だが…

 

―エエ、本当ヨ。但シ、タダ生キ返ル訳ジャナイ…。

 

―何?

 

―アナタハ普通ノ人間トハ違ウ存在ニ生マレ変ワルノ。最モ、何ニ生マレ変ワルカハ分カラナイケドネ。

 

―な!何よそれ!それって化物になるって事!?嫌よ!そんなの!

 

黒深子は人間とは違う異形の存在に変わってしまう事に強く拒絶した。当然だ。化物に生まれ変わってしまうなんて事実を受け入れれる訳がない。―別ニイイノヨ。コレハアナタガ決メル事ナンダカラ。私ハアクマデ生キルカ死ヌカノ選択権ヲアナタニ与エタダケ…。

 

―!…それは…!…それは…。

 

このまま黙って死ぬなんて御免だ。かといって化物に生まれ変わってしまうのも嫌だ…。

2つの選択肢の中、黒深子が選んだ答えは…

 

 

 

「……っ!」

 

「な、何こいつ!?まだ生きてる!」

 

暫く意識を閉ざしていた黒深子が急に目を見開いたので、身体を背負おうとした女生徒達は驚いた。そして、黒深子は立ち上がり女生徒達を睨みつけた。

 

無表情のまま…。

 

「な、何よ!やる気っ!?あのまま死んどけばよかったのに…。」

 

「そ、そうよ!あんたが悪いのよ!」

 

「さっさと死ね!」

 

等と黒深子に罵詈雑言を吐きまくる女生徒達。彼女等は「自分達は悪くない。」「こいつが悪いんだ」と自分達の行動を棚にあげて正当化しているのだ。罪の意識等欠片も感じていないのがよく分かる…。だが、暫くすると黒深子に異変が…!

 

「………!」

 

黒深子の顔に何かの形をした薄黒い模様が浮かび、みるみる内に彼女の身体は灰色の異形へと変化していった…。

 

「キャアァァァァッッッッ!!!!な、な、何よアレ!?」

 

白石黒深子「だった」存在は、頭が「龍騎の世界」の白鳥をイメージしたライダー「仮面ライダーファム」、身体は「電王の世界」の白鳥をイメージしたイマジン「ジーク」、ボディラインは「ファイズの世界」の「クレインオルフェノク」より細いという特徴をした「スワンオルフェノク」に変わり果てた…。

 

『ハァァァァッッッッ!!』

 

スワンOは、悲鳴をあげる生徒達に急速に近づいていき、手元から実体化した細剣で心臓を突き刺した。

 

「ギャアァァァァッッッッ!!」

 

「い、嫌ァァァァッッッッ!!」

 

「た、助けてぇ…!グァッ!!」

 

彼女達の命乞いを耳に貸さず、殺戮を繰り出すスワンO…。その瞳には一つの感情だけしか感じ取れなかった…。

 

「憎しみ」の感情しか…。

 

 

 

雨が降ってきた…。生徒「だった」大量の灰も溶けていき、降ってくる雨の速度はどんどん増していった…。

 

『う…うふふふふふふふ…あは…あはははははは…あーっははははははは!!!!』

 

灰色の身体の影から聞こえる彼女の狂った様な笑い声と共に…。

 

『あは…あははは…はは……うぅっっ…!うぅぅぅぅぅ…!!』

 

同時にそれは彼女から狂気を洗い流し、後悔と悲しみの感情を露にした…。

 

 

 

(私…何であの時「生きる」事を選んでしまったのかしら…。)黒深子は「あの空間」での自分の選択を後悔していた…。

 

(どうして、わざわざ化物に生き返ってまで人を殺したの…?あんな事をしたって何も解決しなかったのに…!こんな事になるくらいなら…いっそ…!)

 

そう考えていた時…!「黒深子ちゃん?いるかな?俺だよ!」

 

「!!!」

 

ドアのノックと共に闇影の自分を呼ぶ声が聞こえた。

 

「…何の御用ですか?」

 

「ちょっと話がしたくてね…。開けてくれるかな?」

 

闇影は黒深子と話をする為に部屋に入れるよう尋ねた。

 

「(何?話がしたい?今日会ったばかりの人間に対して馴れ馴れしくない?今、話す事なんて…事…なんて…。)」

 

黒深子は少し疎ましく感じたが、こうしていたって何も変わらない…。まあ、少し話す程度なら…と考え、

 

「…いいですよ。」

 

闇影の部屋への入室を許可した。

 

「失礼します。いや~綺麗な部屋だな~!」

 

闇影は入るや否や部屋の事を誉め出した。

 

「そう言えばまだ自己紹介してなかったね。俺は煌闇影。職業は…教師…かな?助けてくれて本当にありがとう!」

 

闇影は自己紹介をし始め、同時に救われた事を感謝した。職業が曖昧なのが気になるが…。

 

「私は、白石黒深子…。高校二年生です…。」

 

「そっか、高二かぁ…。もし解らない事があったら何でも聞いてくれ!家庭教師になってもいい!勿論無料で。」

 

「は、はぁ…それはどうも…って、え?」

 

黒深子は闇影の言葉に疑問を感じた。今のはまるで暫くこの家にいる様な口振りではないか。

 

「ああ、実は俺、暫くここの家で家事を手伝い事になったんだ。君のお母さんには許可も貰ったよ。」

 

等と彼女の疑問に答える様に話す闇影…。

 

「ええええぇぇぇぇっっっっ!!!!」

 

黒深子は部屋一帯をつんざくように驚き叫んだ。確かにいくら命を救われたからって見ず知らずの男が女手しかいないこの家で家庭教師だの家事だの、しかも無償で行うなんて…こんな馬鹿げた話は後にも先にもこれだけしかない。

 

「今言った事以外で困ってたり、悩みがあるなら俺に話してくれ!何時でも相談に乗r…「出てって下さい。」るぞって…え?」

 

闇影は熱く語るも、黒深子の冷たい一言にポカンとした。

 

「ここから出ていって下さい!」

 

黒深子は闇影の背中を強く押し、部屋から追い出しドアを閉めた。

 

「ちょっ…ちょっと待ってくれ!お母さんは君が何時もと様子が変だと心配していたぞ!今日何かあったのか?話してくれないか?」

 

閉まったドアを叩きながら尚も悩みを聞き出す闇影。

 

「…私に構わないで下さい…。」

 

「黒深子ちゃん…。」

 

そう言った後、黒深子は眠りについた…。

 

「(…そうよ。私に構わないで…いや、構われちゃいけないの…。)」

 

黒深子は異形になった自分は誰とも関わってはいけないと思い、闇影を拒否したのだ。

 

 

 

―翌朝

 

 

「ふぁぁぁぁ…お母さん…おはよ…って、えっ!?」

 

「ああ!おはよう!黒深子ちゃん。」

 

目覚めてダイニングルームに入った黒深子が見たものは、三角巾にエプロンをし、朝食の準備をしている闇影の姿だった。

 

「な!何で貴方がいるのよ!?帰ったんじゃなかったの!?」

 

「何でって…言っただろ?『この家の手伝いをする』って。」

 

黒深子の疑問に闇影はニッと笑い、そう言った。

 

「ホントに家事を手伝うなんて…」

 

黒深子は顔に手を当てて、闇影の能天気ぶりに呆れていた。

 

「こら、黒深子。突っ立ってないで早く食べなさい。学校に遅れるわよ?」

 

「あ、ごめん…って違うわよ!何でこの人を家においてるのよ!?」

 

「だからって…ああ、もう…。」

 

母・影魅璃のこれまた能天気な発言に黒深子は両手に頭を抱えた。

 

「それにしても、美味しそうですね。私より上手いかも。」

 

「いえいえ…。それより早く召し上がって下さい。冷めてしまいますよ?」

 

「そうですね。黒深子、食べましょ。」

 

「…はぁ、わかったわよ…。」

 

「では、いただきま~す!」

 

黒深子は観念して椅子に座った…。

 

「いってきます…。」

 

「はい、いってらっしゃい。気をつけてね。」

 

黒深子は家を出て、学校に行った。

 

「さて!掃除しますか!」

 

闇影が掃除をしようとした時、

 

「闇影さん。」

 

「はい。何でしょう?」

 

「あの子、お弁当を忘れていってしまったみたいで…申し訳ないんですが、黒深子に渡してもらえませんか?」

 

影魅璃は黒深子に弁当を渡すよう、闇影に頼んだ。

 

「分かりました!俺が黒深子ちゃんに渡してきます!」

 

闇影は快く承諾し、弁当を片手に家を出た。

 

 

 

―通学路

 

 

「お~い!黒深子ちゃ~ん!!」

 

「…何ですか?あと余り大声で話かけないでください。」

 

「あ~ごめん!君、弁当を忘れてたぞ!ほれ!」

 

闇影は黒深子に弁当を渡した。

 

「…ありがとうございます。では。」

 

「ああ!ちょっと待ってくれ!」

 

再び学校へ向かおうとする黒深子を闇影は呼び止めた。

 

「まだ何か用ですか?私、急いでるんで。」

 

自分を呼び止めた闇影に少し苛つきながらも、話を聞く黒深子。

 

「余計なお世話かもしれないけど、何か悩んでないか?見かけた時、君ずっと元気がなかったから…。」

 

「…そんなの…貴方には関係ありません。」

 

闇影はやはり黒深子に何か悩みがあるのかを問いただした。しかし、彼女は相変わらず冷たく返した。

 

「関係ない事ないだろう?俺は君に命を救われた。だから今度は俺が君の助けになりたいんだ!悩みがあるなら…俺が、「ほっといてって言ってるでしょ!!」」

 

「!!!」

 

黒深子はしつこく話かける闇影に大声で怒鳴った。

 

「さっきから聞いていれば、『私に命を救われたから』?『私に悩みがある』?全部貴方が勝手に思い込んでるだけじゃない!昨日今日会ったばかりの貴方に私の何が分かるのよ!」

 

続けて黒深子は闇影を捲し立てた。

 

「…今日中にあの家から出ていって。二度と私の前に現れないで!!」

 

そして闇影に家を出るように告げ、黒深子は踵を返して再び学校へ向かった。

 

 

 

―通学路

 

 

「全く…!どこまでしつこいのよ…。あの人は!」

 

黒深子は闇影のしつこい心配に未だ怒りを感じながら歩いた。が…

 

「…少し言い過ぎたかな…。私、一度頭にカッと来るとつい余計な事を言っちゃうからなぁ…。」

 

先程の闇影に対する怒号を悔やみ出した…それと同時に彼女の足は止まった。

 

「…お節介はともかく、さっきの事は後で謝ろう…。」

 

黒深子は闇影へ先程の発言を謝罪する事を決めた。…やはり言い過ぎた、と。

そう心に決めたその時…!

 

「な!何!?急に辺りが暗くなった…!」

 

未だ夜でもないのに突然周囲が暗くなった。黒深子の様に今のこの現状に驚くのは無理もない。

 

「…学校に行ってみよう!」

 

黒深子は急いで学校に向かって走り出した。…その時…

 

「……。」

 

「な、何か用ですか?すいません!今急いでいますの…で?」

 

突如、スーツを着たサラリーマン風の男が目の前に立っていたので、急いでいる事を告げたのだが、全て言い切る前に男に「ある異変」が起きた…。

 

 

 

「ウォォォォッッッッ!!」

 

男は、全身から黒いオーラを発しながら、顔からステンドグラス状の模様を浮かばせ、同じくステンドグラスの皮膚をした異形「キバの世界」の怪人・ファンガイアに変貌したのだ。

 

「な、何でっ!?何で人が化物に!?」

 

『ヘャァァァァッッッッ!!!!』

 

「キャアッッッッ!!!!」

 

ファンガイアとなった男は、人間からライフエナジーを吸い取る二つの牙「吸命牙」を黒深子の頭上から急降下させた。だが、黒深子は何とかそれを避けた。

 

「い、嫌ァァァァッッッッ!!!!」

 

黒深子はその場を逃げ出した。だが、ファンガイアは逃がすまいと追って来る。

 

「と、とにかく早く家に戻らないと!」

 

尚もしつこく追ってくるファンガイアから何とか撒いた黒深子はとりあえず、自宅に戻る事にした。その途中で彼女は信じられない光景を目にした。

 

「こ、これは!?」

 

 

 

『グァァァァッッッッ!!!!』

 

『シャァァァッッッッ!!!!』

 

それは信じがたい光景だった…。人々が先程の男と同様に謎の黒いオーラを全身から発しながら悶絶していたのだ。そして、中には異形の怪物に変貌する者がいた。

 

「…どうして…どうして、こんな事に!?」

 

黒深子はただただ困惑していた。突然辺りが暗くなったり、人から黒いオーラが出て、怪物に変貌したりと、あまりに常識から逸脱した現実にうちひしがれている…。そして、更なる現実が彼女を襲う。

 

「あ…貴女は!?」

 

「……。」

 

何と黒深子の前に、昨日「異形になった自分」が殺した筈のいじめグループのリーダーが現れたのだ。

 

「白石ぃ…よくも私を殺してくれたわねぇ…。…やっぱアンタムカつくわ…!」

 

黒深子に呪詛を吐きながら、少女は次第に顔から紋章の様な物が浮かばせて豹をモチーフとしたジャガーオルフェノクに変貌した…。

 

『今度はアンタを殺してやるよ!』

 

「ひ…。」

 

黒深子はオルフェノクに変貌した少女に怯えの顔を見せた。

 

『何ビビってんの?アンタだって同じ姿になってんじゃん。何だったら今度は殺し合う?どっちかが「もう一回死ぬ」までさぁっ!!』

 

「い、嫌…。来ないで…。」

 

そう言いながら、黒深子は後ずさっていった。その度にジャガーOは近づいてくる…。

 

『どうしたの?かかって来なよ。あん時見たく、あたしを殺してみなよ!白石ィィィィッッッッ!!!!』

 

恫喝の如く挑発しながら、ジャガーOは黒深子に自身の爪を降り下ろした…。

 

「い、嫌ァァァァッッッッ!!!!」

 

『ギャァァァァッッッッ!!!!』

 

黒深子が悲鳴をあげたと同時に別の悲鳴が聞こえた。その理由は…。

 

『………はっ!!』

 

気が付いたら黒深子はスワンオルフェノクに変化しながら、細剣でジャガーOを突き刺していた…。

 

『グッ…また…アンタに…殺される…なんて…』

 

再びスワンOに殺された事を悔やみながらジャガーOの身体は全身を青白く燃えて灰と化した…。

 

「わ…私…また…人を…!」

 

スワンOは黒深子の姿に戻りつつ、また人を殺してしまった事を悔いている…。その時…。

 

「く…黒深子…ちゃん…。」

 

「!!!み、闇影…さん…!」

 

最悪な事に今までの一部始終を闇影に目撃されてしまった…。言い逃れなど出来ない事実を…。

 

「…そう言う事だったのか…。」

 

「ち、違うわ!わ…私は…私は…!」

 

殺したいから殺したんじゃない。勢いあまって殺してしまったと弁明するつもりだった黒深子。しかし、どんな言葉を並べたってやった事の罪が消える筈がない…。そう考えている時…!

 

『グァァァァッッッッ!!!!』

 

『ヘャァァァッッッッ!!!!』

 

『ゲギギギギギギギ…』

 

無数の怪人達が闇影と黒深子の周囲を囲む様に現れた…。

 

「くそっ!また囲まれたかっ!こうなったら…!」

 

闇影はディライトドライバーを取り出し腰に巻き、カードを装填した。

 

「変身!」

 

KAMEN-RIDE…DELIGHT!

 

闇影はオレンジを主体としたライダー、ディライトに変身した。

 

「…!?み、闇影さんが…変身した…!?」黒深子はディライト(闇影)の変身を初めて目の当たりにし、驚いた。

 

『黒深子ちゃん。ちょっと目を瞑ってて!』

 

ATTACK-RIDE…FLASH!

 

ディライトは自身が白く輝いているイラストのカード「フラッシュ」を使い「ディライトフラッシュ」を発動させ、全身から強烈な白い光を発し、怪人達の目を眩ませた。

 

『グアッ!!ま、眩しいっ!!』

 

『この隙に逃げるよ!』

 

「は…はい…。」

 

ディライトは黒深子の手を取り、高速移動の様に怪人の群れから逃げ出した。

 

 

 

『ふう…。此処まで来ればとりあえず大丈夫だろう。』

 

ディライトと黒深子は人気の少ない公園まで移動した。

 

「あ…あの…闇影さん。その姿は何なんですか?貴方は何者なの?それに何故さっき私を助けたんですか?」

 

黒深子は矢継ぎ早に問いただした。ディライトもとい闇影は何者なのか?何故異形である自分を助けたのか?聞きたい事は沢山あった。

 

『それは…』

 

『見つけたぞ…。貴様等…。』

 

黒深子の疑問に答える前に先程の怪人達が再び現れた。

 

『やっぱ目眩まし程度じゃ駄目か…。こうなったら援軍を作るか!』

 

FINAL-SHADOW-RIDE…KA・KA・KA・KABUTO!

 

ディライトは自身の影を、銀色の特殊装甲「カブテクター」を纏った青く輝く複眼の赤いカブトムシを模した戦士・最速の守護神「仮面ライダーカブト」の最終形態「ハイパーフォーム」にFSRした。

 

『一瞬でカタを付けるぞ!!』

 

ATTACK-RIDE…HYPER-CLOCK-UP!

 

「ハイパークロックアップ」のカードを使用した瞬間、ディライトとSカブトHFは姿を消した…様に見えるが、実際はハイパークロックアップ空間に突入しただけだ。このクロックアップは通常のそれ以上の速度を持ち、過去と未来を行き来する程の力を持っている。そこでは通常空間にいる者は全て止まって見えると言う…。

 

『ハァッ!ハァッ!セイヤッ!』

 

ディライトとSカブトHFは「止まっている」怪人達をライトブッカー・ソードモードと金色のカブトムシの角を模した特殊武器「パーフェクトゼクター」で次々と切り裂いていった。

 

『脱出!』

 

『ギャァァァァッッッッ!!!!』

 

彼等が脱出した時には、怪人達は何が起きたのか理解する前に爆死し、SカブトHFは元の影に戻った。

 

『ふう…これで敵は片付いて…「キャァッッ!」黒深子ちゃん!』

 

『ギヘヘヘ…其処までだ。ディライト…。この女の命がどうなってもいいなら俺ごと撃ってみろよ!』

 

「あ…ああ…。」

 

『貴様ッ!!』

 

一体だけ残った怪人は、黒深子の首筋に爪を当てて人質にした。

 

『どうした?この女は俺達と同じ「化物」何だぞ?何も気兼ねする必要はない筈だぜ?』

 

『くっ…!』

 

ディライトが如何に強いとは言え人質を、黒深子を見殺しには出来ない…。手に持っているライトブッカーを手放そうとしたが…

 

「…いいよ。撃っても。」

 

『…!!黒深子ちゃん!?』

 

なんと、黒深子は自分に構わず怪人ごと撃てとディライトに言った。

 

「もういいの…。私、どの道今日死ぬつもりだったの。」

 

そして、最初から死ぬつもりでいたのだった…。

 

「だってそうじゃない?そもそも私は一度死んでるんだし、人だって何人も殺しちゃってるもの。その上こいつ等と同じ化物に変わり果てて…本当に救い様の無い存在なの…。だから、さっさと殺し…『…れ…な…。』!!?」

 

黒深子の投げ遣りな言葉をディライトが遮った。

 

『甘ったれるなっ!!救い様の無い命なんてこの世には無い!!』

 

ディライトは黒深子の発言に激怒していたのだ。優しそうな彼からは想像出来ない程の怒りだった。

 

『君…自分が死んで残った人間がどういう気持ちになるか想像出来るか?死んだ者は一瞬だが、残った者はずっと悲しい思いをするんだぞ!』

 

「!!!!」

 

『君がやった事は確かに許されない事だ。でも、そこで死んでしまうのはその事実から逃げる事になるんだぞ!それは人を殺める以上に許されない事だ!』

 

ディライトは黒深子に続けて語り出した。

 

『一度死んでまた生き返ったって事は、君は未だこの世界に必要な存在だからなんだ。君にしか出来ない何かがきっとある!それを探して生きるのも悪くないぞ。俺も手伝ってやる。』ディライトは、最初の怒号とは違った優しい口調で黒深子を諭した。すると…

 

「う…うぅ…。」

 

気付けば彼女の目から涙がこぼれ出していた。

 

『何ゴチャゴチャ言ってんだ!この女がどうなってもいいのか…『撃つさ。』って!オイッ!』

 

ディライトはライトブッカーガンモードを構えて狙撃の準備をした。

 

『しょ、正気か?テメェッ!?この女ごと撃つつもりかッ?』

 

ATTACK-RIDE…LASER-BLADE!

 

カードを使用した瞬間、銃口から細い光の刃が伸びて、真っ直ぐ突き抜けた。

 

怪人の脳天めがけて…。

 

『そ…そんなバカなァァァァッッッッ!!!!』

 

頭だけ爆発し、残った体は力が抜けて黒深子から離れた。これがディライトの技の一つ「ディライトレーザーブレード」である。

 

「大丈夫か?黒深子ちゃん。」

 

「え…えぇ…だい…じょう…ぶ…。」

 

変身を解いたディライトは黒深子の涙を見て、こう言った…。

 

 

 

 

「辛かったんだな…。いじめにあって、一度死んで…オルフェノクになってしまって…本当に辛かったんだな…。苦しいなら、思い切り泣け。顔は隠してやる。」

 

その言葉を聞いた瞬間、黒深子の悲しみの感情は一気に爆発し、闇影の胸に抱きついた。

 

「う…う…うあああああああああ!!!!」

 

自分はなんて愚かなんだ。ずっと心配してくれていたのに、それを拒んでいたなんて…。そう思いながら黒深子は闇影の胸の中で子供の様に泣きじゃくった…。

 

「…スッキリした?」

 

「…うん。///」

 

「そうか。」

 

闇影は黒深子の頭をゆっくりとくように撫でながら落ち着かせた。もう安心だ…。そう思っていた時…。

 

「…ディライト。」

 

「!!き、君はあの時の!!」

 

「久しぶりですね、ディライト。」

 

謎の灰色のオーロラと共に謎の青年は闇影達の前に現れた。

 

「そう言えば、お礼を言うの忘れてたよ。ありがとう!」

 

「助けられたって…どういう事ですか?」

 

「ああ、それは…」

 

闇影は青年にあの時の危機を救ってくれた事に感謝し、黒深子の質問に答えようとしたが、青年は話を続けた。

 

「ディライト。今世界がどうなってるか解るかな?」

 

「ああ、人々の身体から黒いオーラが出て怪人になってしまう現象だろ?」

 

「うん。今からその原因を説明するよ。」

 

青年は、一息ついて口を開き出した。

 

「まず『負』の感情について…『負』は人の心の中にある怒り、憎しみ、妬み、裏切りそして殺意…。それらの黒い感情を『負』の感情と言うんだ。そして今、この感情が強まった者は『闇の牢獄』に閉じ込められてしまうんだ…。」

 

「確か、意識が薄れて感情がなくなり、最後には『心』をなくす…。だったよな?も少し詳しく話してくれないか?」

 

闇影は以前説明された通りの言葉を青年に返した。

 

「ここで言う『心』を失くすと言うのは、厳密には人間としての『心』を失ってしまう事なんだ。」

 

「!!!!」

 

黒深子はその言葉に心当たりを感じていた。

 

「そう言えば、私もあの中にいた時、何か人影みたいなモノに話しかけられました!『自分はもう一人の自分だ』って!」

 

「それは多分、君の負の感情の集合体だよ。そして、生きるか死ぬかの選択を出されたと思うけど、心当たりは?」

 

「…はい。間違いありません。そして怪人に生き返るか死ぬかの選択で、私は…」

 

「そうだったのか…。だが、今の話と何の関係があるんだ?」

 

「…これを見て。」

 

青年が腕をあげると、空に真っ黒になりかけている9つの地球の絵が浮かび出した…。

 

「な、何だ。地球が、世界が闇に染まっている…。」

 

「この9つの影の世界は『闇の牢獄』に支配されそうになっているんだ。このままでは全ての人々が怪人と化してしまう…。」

 

ここまで言えば、彼が何を言うのか想像はつくだろう…

 

「ディライト、君には9つの影の世界を救う旅に出てもらうよ。」

 

「俺が!?」

 

「君にしか出来ない事なんだ!!『闇を操る光の戦士』である君にしか…!!」

 

闇影は少し悩んだ。このままでは世界が怪人達の世界に変わる…。黒深子の様な人間が増える可能性もある。…この事態を捨て置けない。彼の答えは…

 

「世界が闇に支配されるなら…俺が光へ導いてやる!」

 

闇影は世界を救う旅に出る事を決意した。

 

「ありがとう。その間、僕や僕の仲間達が進行を食い止めるよ。」

 

その言葉を最後に闇影達は光に包まれた。だが…

 

「待ってくれ!最後に一つ聞かせてくれ!君は何者なんだ!?」

 

青年は自分の素性を問われ、名前だけ名乗った…その名は…

 

 

 

「…野上良太郎…またの名を…仮面ライダー電王…。」

 

 

 

闇影と黒深子は何時の間にか白石家の前に立っていた。

 

「あれ?ここ家じゃない?さっきまで公園にいたのに。」

 

「とりあえず中に入ろう。」

 

「そうですね。」

 

闇影と黒深子はとりあえず家の中に入った。

 

「「ただいま!!」」

 

「お帰りなさい。ってあら、二人で到着?いつの間に仲良くなったのかしら?」

 

「「あ…い、いや…これは…その…///」」

 

影魅璃は二人の仲の進展をからかい、二人は顔を赤くした。

 

「も、もう!何言い出すのよ!ねぇ?…『先生』。」

 

「え…今俺の事、『先生』って言ったのか!?」

 

黒深子は闇影を「さん」付けから「先生」と呼び方を変えた。

 

「私の家庭教師なんだから『先生』でいいでしょ?後、私の事は…呼び…捨てでいいから…。これから一緒に旅していくんだし。///って!聞いてる?先生。」

 

 

「…ああ、すまん!先生って呼ばれて嬉しいんだ…って、一緒にって…君もついていくのか!?危険だぞ!」

 

闇影は「先生」と呼ばれた事に嬉し泣きをしていると、黒深子の旅の同行の意思に驚いた。

 

「先生お人好しだから、一人で行く方が危険でしょ!それにこれは私の旅でもあるの…。」

 

「君の旅?」

 

闇影の言葉に頷き、彼女は言った…。

 

「そう。私にしか出来ない事を探す旅なの…。」

 

黒深子の決意は固かった。ここまで腹を決めているなら追い返すのは野暮な話だ。

 

「わかった。一緒に行こう!そして見つけよう!君の…黒深子の夢を!」

 

「先生…///」

 

こうして二人の9つの影の世界を巡る旅は始まった…。

 

「ねぇ、黒深子。そう言えば、昔貴女が使ってた絵のキャンバスが見つかったんだけど…。」

 

影魅璃は昔黒深子が使っていたという大きな白いキャンバスを持ち出した。

 

「何で今頃そんな物が…って!え!何!?これ…。」

 

黒深子はキャンバスに絵が勝手に浮かびあがり驚いた。

 

その絵は二人の西洋の兜風のバイザーを着けた赤い戦士と黒い戦士が背中合わせになっており、背景は無数の鏡に囲まれるという奇妙な絵だった…。

 

その絵を見て闇影はこう呟いた…。

 

「…リュウガの…世界…!!」




謎の声の正体は電王で御馴染みの良太郎でした!!但し、見た目は本編そのものですが、実年齢は20前後でございます。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1章 9つのダークライダーの世界編
第3導 リュウガの夢


ダークライダー編スタート!!

最初に言っておく!ダークライダー編は全て前後合わせた2話編成でございます。


「こ、これって、私が中学の美術部の時に使ってた…」

 

「今日、押入れを整理してたら見つかったの。まだ綺麗だったから出してみたんだけど…。」

 

このキャンバスは黒深子が中学生の時に使用していた物らしい。

 

「この絵は何なんだろう…?」

 

黒深子はキャンバスに描かれている二体の戦士の絵が何を意味しているのか考えている…。

 

「言っただろ?ここはリュウガの世界だって。」

 

「そうじゃなくて、これがどういう意味…って!先生!何?その格好!?」

 

黒深子が闇影の方を振り向いてみると、彼の格好に驚いた。

 

「どうやらそのキャンバスに描かれている絵がどのライダーの世界なのかを教えてくれるようだね。」

 

「ああ、成程…じゃないわよ!何で○子の○将みたいな服着てるのよ!」

 

闇影は構わずキャンバスの絵について説明するが、黒深子は闇影の○子の○将の料理人の様な服装について全力で突っ込んだ。

 

「分からない。多分この世界での俺の役割なのかもしれないな。」

 

「○子の○将の料理人が?何故に?」

 

黒深子は闇影の返答に疑問を抱くが…

 

「お~い!注文をしたいんだが~!」

 

「すいませ~ん!ラーメンが食べたいんですが~!」

 

そうこうしている内にどういう訳か、客が次々と来客してきた。

 

「え?え?え?ちょ、ちょっと待って下さい!ウチはラーメン屋じゃありませんよ!」

 

黒深子は突然入ってきた客達にここはラーメン屋じゃないと訂正するが…

 

「何すっとぼけてんだよ!看板が出てるじゃねぇかよ!『光導軒(こうどうけん)』って看板がよ」

 

「えっ?何?どういう事?」

 

客の返答に「?」で頭の中がいっぱいになっている黒深子は家の玄関を出てみると…

 

「な!ちょ、え、ええぇぇぇぇっっっっ!!!!い、家が変わってるぅぅぅぅっっっっ!!!!」

 

確かに『光導軒』という大きな看板がデカデカと出ていた…それと同時に白石家も変化していた。

 

「分かったか?さっさと注文を聞いてくれ!腹減ったぜ!」

 

「お客様!申し訳ありません!此方の席へどうぞ!黒深子!お客さんの注文を聞いてきてくれ!俺は厨房で調理するから!」

 

外に出てきた闇影は客を席へ誘導し、黒深子に的確な指示を出して、中に戻った。

 

「よぅし!調理開始!」

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

 

「ふ~…つ…疲れた~…!!」

 

昼時なのか客が多かったおかげで店はてんてこ舞いだった。そのせいか黒深子は相当疲れた表情をしている。

 

「それにしても先生、凄い手際よく調理していたわね。プロ顔負けかも。」

 

「ホントね。もう、惚れ惚れするくらい…。」

 

「い、いやぁ…///」

 

黒深子と影魅璃の称賛に指で頬をなぞり照れる闇影。その時…

 

「な、何だ!この嫌な音は!?」

 

「うぅぅ~…鳥肌が立つ~…」

 

突然聞こえてきたガラスを引っ掻いた様な音に不快感を持つ闇影と、それを過剰に感じる黒深子。この音の正体は何なのか…そう考えていた時…

 

「現れたか!ミラーモンスター!」

 

「ミラーモンスター?」

 

声を上げたのは、一人の女性の客だった。白い帽子を被った茶髪のポニーテールに、きりっとした目と強気な性格を強調した女性である。この耳障りな音の正体を知っているようだ。

 

「あ、あの…」

 

「今度こそ手掛かりを掴んでやる!」

 

黒深子の言葉に耳を貸さずに女は懐から白く四角い物体を取り出し、壁に掛かってる鏡にそれを写す様に突き出した。その瞬間、鏡から黒いベルト「Vバックル」が実体化し彼女の腰に装着された。そして…

 

「変身!」

 

そう叫びながら、四角い物体…カードデッキをベルトに装着した時、彼女の身体に何かの影が纏われ、白鳥をイメージさせる戦士「仮面ライダーファム」に変身した。そして、そのまま鏡の中に飛び込んだ…。

 

「…どうやら『ミラーワールド』の中に入ったようだな。さっきの人なら何か知ってるかも…変身!」

 

KAMEN-RIDE…DELIGHT!

 

『それじゃ…行って来る!!』

 

闇影もディライトに変身し、鏡の中に侵入した。

 

「気をつけてね…先生。」

 

 

 

―ミラーワールド

 

 

『ギギギギギギギギ…』

 

『く…なんて数だ…!キリが無い…。』

 

ファムはレイヨウを模したミラーモンスター「ギガゼール」の大群に苦戦していた。

 

『グギャアァァァァッッッッ!!!!』

 

『……!!』

 

万事休す…!!そう覚悟した時…

 

ATTACK-RIDE…LASER!

 

『グギャアァァァァッッッッ!!!!』

 

ディライトの放つディライトレーザーがファムに襲い掛かったギガゼールに命中し、爆発した。

 

『だ、誰なんだ?お前は!?』

 

『仮面ライダーディライト…!!はっ!ていっ!そりゃっ!』

 

『グァァァァァッッッッ!!!!』

 

ファムの質問を簡潔に返したディライトはライトブッカー・ソードモードで次々とギガゼールを切り裂いていった。

 

『数が減ってきたからこいつで止めだ!!』

 

FINAL-ATTACK-RIDE…DE・DE・DE・DELIGHT!

 

『はあぁぁぁぁっっっっ…はあっ!!』

 

『グギャアァァァァッッッッ!!!!』

 

ディライトは自身のFAR・ディメンションプロミネンスで、残り少ないギガゼールの群れを消滅させた。

 

『ふぅ…こんなとこかな?さて、貴女に聞きたい事があるんですが…。』

 

『ディライト…?そんなライダー、今回のバトルにいたのか?』

 

『今回のバトル?何の事ですか?』

 

ファムの「今回のバトル」という単語に首を傾げるディライト。

 

『…周りを見れば解る…。』

 

『うん?周り?…って!何だこれは!?』

 

ファムの言葉にディライトは馬鹿正直に周りを見渡す。その光景とは…

 

 

 

SHOOT-VENT

 

STRIKE-VENT

 

『『ウオォォォォッッッッ!!!!』』

 

ディライトの視線は銃撃を仕掛ける緑の牛をモチーフとしたライダー「仮面ライダーゾルダ」と、それをかわしながら巨大な爪でゾルダに向かう白虎をモチーフとしたライダー「仮面ライダータイガ」達に向いていた。

 

『俺の願いの為に倒されてくれな?』

 

FINAL-VENT

 

ゾルダはそろそろ決着を付ける為に必殺技用のカード「ファイナルベント」を使い、緑色の牛を模したロボットの様な外見をした契約モンスター「マグナギガ」を召喚しタイガを倒そうとするのだが…

 

FREEZE-VENT

 

『何!?凍っただと!?』

 

マグナギガは、タイガ特有のライダー以外の物を凍らせる特殊カード「フリーズベント」で凍ってしまったのだ。

 

『そっちこそ僕の素晴らしい人生の足掛かりになってもらうよ。』

 

FINAL-VENT

 

タイガはすかさず自分のファイナルベントを発動させ、二足歩行の獰猛な白虎を模した契約モンスター「デストワイルダー」を召喚した。そして、デストワイルダーはゾルダの身体に爪を突き刺し倒したら、タイガの下まで引き摺り、

 

『ぐ、ぐあぁぁぁぁ!!!』

 

タイガの装備する巨大な爪「デストクロー」でゾルダを突き上げ結晶爆発させた。

 

『ギャアァァァァッッッッ!!!!』

 

これが、タイガのファイナルベント「クリスタルブレイク」の威力だ…。

 

『…な…何でだ…。何で人と人がこんな戦いを!?』

 

ディライトは先程の戦いに強い憤りを感じていた。人と人が殺し合う戦いに…。

 

『これが三年ごとに行われる、ライダー同士が最後の一人になるまで戦い合うバトル「ライダーロワイヤル」だ。』

 

『ライダー…ロワイヤル…。』

 

『そして、勝ち残った者にはどんな願いも叶える「ウィッシュスフィア」が手に入る。だから皆あんなに躍起になってるのさ。』

 

『そんな…人の命を踏みにじってまで願いを叶えるなんて…』

 

『この世界では勝ち残ったライダーのみが望みを叶える事など当たり前になっている。』

 

ファムの冷静な言葉にうちひしがれるディライト。

 

『じゃあ…貴女も?』

 

『…違う!』

 

ディライトの質問に先程の冷静な声とは違い、強い口調で否定した。

 

『私はこんな他人を踏みにじる下衆なバトル等どうでもいい!私が戦っているのは…』

 

どうやらファムは他のライダーとは違いライダーロワイヤルにも、ウィッシュスフィアにも、興味を示していないようだ。彼女が他に戦う理由を語るその時、龍の顔を象ったバイザーを付けた黒い戦士が現れた。

 

『…!ついに姿を現したか!龍騎!』

 

ファムは突如現れた黒い戦士を「龍騎」と呼び白鳥型のバイザー「羽召剣ブランバイザー」を構えた。だが…

 

『……!!』

 

黒い戦士は龍騎ではないと、無言で両腕で×の字を作って否定の合図を出した。

 

『来ないならこっちから行くぞ!!はあぁぁぁぁっっっっ!!』

 

間違いだと言う否定のサインを気にせず、黒い戦士に斬りかかるファム。このままでは危険だと判断し黒い戦士は黒い龍の形をしたバイザーにカードを読み込ませた。

 

SWORD-VENT

 

黒い戦士の手元に日本刀を模した黒い剣「ドラグセイバー」が出現し、そのままブランバイザーと斬り結んだ。

 

『何故だ!何故私の前から姿を消したんだ!…コウイチ!』

 

『……。』

 

ファムは黒い戦士に問い詰めるが、彼は一言も口を開かなかった。このままでは拉致があかないと感じ、ファムは斬り結びをやめ間合いを取り、ファイナルベントのカードを使おうとするが…

 

『…くっ…!時間切れか!』

 

突然、ファムとディライトの身体が粒子化し始めた。このミラーワールドに十分間留まると、身体が粒子化し最後には消滅してしまうのだ。『一先ず退却だ!だが、次こそはお前を止めて見せるぞ!コウイチ!』

 

そう言って二人はミラーワールドから脱出した。

 

 

 

―現実世界

 

 

「あっ!帰ってきた!どうだった?何か分かった?先生。」

 

ミラーワールドから帰ってきた闇影に黒深子はリュウガについて聞いた。

 

「くそっ!やっと龍騎を見つけたのに…!」

 

ファムだった女性は拳を握り締め、悔しそうな顔をしていた。

 

「いや、あれは龍騎じゃないですよ?」

 

「何を言っている!あれはどう見ても…!」

 

「龍騎は赤色じゃないんですか?」

 

「あ…///」

 

女性は色の違いに気付き、顔を真っ赤にした。

 

「じゃあ…あれは何だ?」

 

「あれは仮面ライダーリュウガ…俺達がこの世界で救うべきライダーです。」

 

闇影は先程のライダーの名前を女性に教えた。だが、同時に目的まで言ってしまった…。

 

「リュウガ?この世界?お前達は一体何者なんだ?」

 

「…ああ、そうでした。実は…。」

 

闇影はこれまでの経緯を女性に語った。そして、この世界の仕組みについて彼女に質問した。

彼女の名前は羽鳥(はっとり)ミホ。三年前のライダーロワイヤルで行方不明になっていた仮面ライダー龍騎である親友の赤鏡(あかがみ)コウイチを探す為に仮面ライダーファムとしてこのバトルに身を投じていたのだ。

 

「この世界が闇に支配されそう…か。にわかに信じ難い…が、お前達が嘘をついている様には見えんな。」

 

「分かるんですか?」

 

「カメラマンを職業としているから、顔の表情で本当か嘘かよく分かるんだ。」

 

「なんか凄いですね!」

 

「あまり自慢にはならんがな。それにしても、あいつは何処にいるんだ…。」

 

ミホは龍騎の行方を気にしていた。何故自分の前から姿を消してしまったのか…

 

「まあまあ、ミホさん。きっとコウイチさんって人は無事ですよ。貴女が信じている限り、きっと…ね?」

 

ミホの暗い表情を察して影魅璃は彼女に優しい言葉を掛けた。

 

「ああ…そうだな!ありがとう。」

 

「どうでもいいけど、お母さん…何でチャイナドレスを着てるのよ!」

 

黒深子がツッコミを入れるのも無理はない…。影魅璃の服装が何故か緑色のチャイナドレスになっていたのだから。

 

「あら?一応中華料理店なんだからそれっぽい格好を…「せんでええわ!!」」

 

「す、凄い格好ですね…///」

 

闇影も顔を赤らめながら影魅璃の姿を見ていた。

 

「先生も見ないで!!」

 

「ぐほッ!!」

 

だが、黒深子の正拳突きで地に沈んだ。

 

「(こ…こいつらにこの世界を任せていいのか?)」

 

ミホは闇影達のやり取りに一抹の不安を感じた。

 

 

 

―ミラーワールド

 

 

 

ただ一人佇んでいる黒い龍騎、リュウガ…。本来ライダーでも十分間しか留まれないミラーワールドに何故いるのか…。それは彼はこの世界で生まれたライダーだからなのだ。この無人の世界で彼は何を思っているのか?

 

『「アイツ」は一体何処にいるんだ。この世界にいる筈なんだが…。』

 

リュウガもとある人物を探している様だ。その時、彼の元に黒い龍を模した契約モンスター「暗黒龍ドラグブラッカー」が現れた。

 

『……!!』

 

『大丈夫だよ、ブラッカー。もう一度探せば見つかるって。』

 

通常、契約モンスターとライダーとは主従の関係でしか無いのだが、このリュウガとドラグブラッカーのそれは友情で結ばれている様だ。

 

『……!!』

 

『え?この戦いが「まとも」なら何を願うかって?』

 

ブラッカーはリュウガの願いについて聞いた。

 

『そうだな…。あの現実世界で生きてみたい…。ここから向こうの人達の生活を見ていたら俺も…って思ってな…なんてね。』

 

リュウガの願い、それはミラーワールドではなく現実世界で暮らす事だ。

 

『……!!』

 

『そうか…ありがとう。でも俺には…いや、誰の願いも叶えられないんだ…。「今の状況」じゃ…な…。』

 

仮面から表情は読み取れないが、リュウガは何故か悲しげな顔をしている。何故誰の願いも叶わないのか?「普通」や「今の状況」という言葉にその真意が隠されているのか?それから彼は一言も話さなくなった。

 

 

―現実世界

 

 

白石家で一晩世話になったミホと闇影はもう一度ミラーワールドに行こうとしている。

 

「今日こそ龍騎を…」

 

「俺はリュウガを…」

 

「「見つけるぞ!!」」

 

見事にハモった二人、だが目的は違う。ミホは龍騎を、闇影はリュウガを探すからだ。

 

「とりあえず、龍騎が見つかるまでは一時停戦といこうか。煌。」

 

「いいですよ!俺もミホさんの手伝いをしたいし。」

 

「ふん、好きにすればいい。さて…見つけたらどんな仕置きをしてやろうか…。」

 

「「((何か怖い事言ってるんですけど…!!))」」

 

闇影と黒深子はミホの最後の言葉に恐怖した。出来れば自分達が先に彼を見つけようかと考える程…。

 

「と、ともかく、十分しか時間が無いから早く探しましょう!」

 

「ああ、そうだな!」

 

闇影はディライトドライバーを、ミホはカードデッキを鏡に移し、Vバックルを装着した。

 

「「変身!!」」

 

KAMEN-RIDE…DELIGHT!

 

闇影はディライトに、ミホはファムに変身し鏡の中に飛び込んだ。

 

 

 

―ミラーワールド

 

 

『ギギギギギギギギ……』

 

二人が到着した瞬間、無数のミラーモンスターが待ち構えていた。

 

『くっ!ウジャウジャ現れて!』

 

『時間は掛けられないから一気に片付けるか!援軍を作るぞ!』

 

FINAL-SHADOW-RIDE…RYU・RYU・RYU・RYUKI!

 

ディライトは自身の影を、赤い龍を象ったアーマー、バイザーの真上に金色の龍を象った飾りが特徴の、ファムが血眼に探している龍騎の最終形態「龍騎サバイブ」にFSRした。

 

『影が龍騎に!?でも違う…。煌…お前は一体?』

 

ディライトの影が龍騎となった事に驚きを隠せないファムは彼の素性を改めて気にした。

 

『…後でお話しますよ。お互いの目的が果たせたらね!』

 

FINAL-ATTACK-RIDE…RYU・RYU・RYU・RYUKI!

 

『グギャアアアアァァァァッッッッ!!!!』

 

龍騎のFARを発動し、ディライトはライトブッカーを、S龍騎SVは赤い龍の頭部を象った拳銃型の武器「ドラグバイザーツヴァイ」を構えてエネルギーをチャージし、巨大な火炎弾「メテオバレット」を放ちミラーモンスター達を焼滅させ、それと同時にS龍騎SVは影に戻った…。

 

『凄い…これが煌…ディライトの能力か…!』

 

ファムはディライトの他のライダーとは一転した能力に感嘆の声を漏らした。だがその時…

 

 

 

『ディライト…ディライト…だと!?』

 

二人が後ろを向くとドラグセイバーを携えたリュウガが現れた。仮面で表情は見えないが、ディライトに対して強い敵意の視線を感じる。

 

『おおおおぉぉぉぉっっっっ!!!!』

 

『くっ!おい!いきなり何をするんだ!』

 

突然ディライトに向かって斬りかかるリュウガ。だが、間一髪の所を剣状に変形したライトブッカーで防いだ。

 

『ついにこの世界に現れたか!ディライト、いや…世界の灰塵者!』

 

『な、何の事だ!』

 

『とぼけるな!お前は全ての世界を焼き付くす存在だと聞いている!だが、この世界はお前の思うようにはさせない!』

 

ディライトには全く思い当たりが無い事ばかりだ。自分が世界を焼き付くす存在?灰塵者?全く聞かない単語が彼の頭の中でぐるぐる渦巻いている…。

 

『…何か知らないけど、いきなり斬りかかるのは感心しないな!』

 

ディライトはリュウガの剣を斬り払い、彼の身体に蹴りを入れた。

 

『ぐっ!こいつ!』

 

STRIKE-VENT

 

蹴られた事により間合いを空けられたリュウガはストライクベントを発動し、腕に黒い龍の形をした「ドラグクロー」を装着し、黒い炎をチャージした。

 

『そっちが肉弾戦で来るならこっちも!』

 

FINAL-ATTACK-RIDE…DE・DE・DE・DELIGHT!

 

ディライトも自身のFARを発動し、右腕に光のエネルギーを込めた。

 

『はあああぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

『うおおおぉぉぉぉっっっっ!!!!』

 

ディライトの「ディメンションフィスト」とリュウガの「ドラグクロー・ファイヤー」。

二体の必殺技が激突しようとしたその時…

 

 

 

STRIKE-VENT

 

別の電子音が鳴り、巨大な火炎弾が二人を襲った。

 

『『ぐわああぁぁぁぁっっっっ!!!!』』

 

『煌!大丈…!お、お前は…!』

 

火炎弾の爆炎がやむと、そこには龍を象ったバイザーを付けた赤い戦士が立っていた…。

 

『…今度は間違えんぞ…。龍騎!!』

 

ファムはその人物にブランバイザーを向けた。彼こそ、彼女が探していたライダー「仮面ライダー龍騎」であった。

 

『……!』

 

『く…!まさかここで出てくるなんて…!』

 

ディライトは大ダメージを受けたが、なんとか無事であった。しかし…

 

「…くっ!」

 

リュウガは先程の攻撃により変身が解除され、首に銀色のプレートアクセサリーをぶら下げた、黒いレザージャケットに白いシャツを着た黒いズボンの肩までパーマがかった長い茶髪の青年の姿へと戻る。すると…

 

『何故だ…!!』

 

『…ミホさん?』

 

ファムは変身の解けたリュウガの正体を見て愕然としていた。その理由は…

 

 

 

『何故お前がリュウガなんだ…コウイチ!!』

 

『!!!!』

 

なんと、リュウガの正体は、ファムが探していた龍騎の正体である筈の赤鏡コウイチだった…。

 

 

 

一方、ディライト達の様子を赤いフードを着込んだ謎の女性が見下ろしていた。

 

「ついに現れたか。ディライト…。お前の存在は世界を焼き付くす。このまま龍騎によって抹殺されるがいい!」

 

どうやらリュウガにディライトが灰塵者であると告げたのはこの女性の様だ。

彼女の思惑は?灰塵者とは何か?リュウガの謎は?

そして、最後に望みを叶えるのは誰だ!?




探していた龍騎が見つからず、襲ってきたリュウガの正体は何故かコウイチだった!?

その謎は次回明らかになります!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4導 真なる虚像

リュウガ編後半!リュウガがコウイチならば龍騎は何者なのか…!?


『コウイチ…!!』

 

ファムは変身が解けたリュウガ…コウイチと同じ顔をした男を見て唖然としていた。

 

「くっ…!!」

 

コウイチに似た青年は分が悪いと感じ、この場を去っていった。

 

『お、おい!待て!!』

 

『煌!今は放っておけ!それより…』

 

『……!』

 

『こいつを止めるのが先だぁぁっっ!!』

 

ファムはブランバイザーを構えて、龍騎に斬りかかっていった。

 

SWORD-VENT

 

龍騎はブランバイザーに対抗する為に、ソードベントで剣を呼び寄せてそのまま斬り結んだ。

 

『な…何!?貴様!何故それを持っている!?』

 

ファムは龍騎が使っている剣に疑問を抱いた。何故なら、彼専用の武器「ドラグセイバー」ではなく紫の蛇をモチーフとしたライダー「仮面ライダー王蛇」の専用武器「ベノサーベル」を使用しているからだ。

 

『……!!』

 

『な、何故なんだ!どうして他のライダーの武器を使えて…ぐわぁぁっっ!!』

 

僅かな隙を付かれたのか、ファムはブランバイザーを勢いよく弾かれベノサーベルの袈裟斬りを受けてしまった。

 

『ミホさん!!』

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

 

『うっ…くっ…!!』

 

『ミホさん!大丈夫ですか!?しっかりして下さい!』

 

ファムの受けたダメージは相当大きくまた、ベノサーベルによって斬られた傷に毒素が入り込み、彼女の身体を蝕んでいる。

 

『な…なんとかな…。だが、何故奴が別のライダーの武器を使えるんだ…?』

 

ファムはふらつきながらもなんとか起き上がり、武器を構えた。だが…

 

【TRICK-VENT】

 

今度は紺色の蝙蝠の騎士をイメージしたライダー「仮面ライダーナイト」のトリックベントを使い、「シャドーイリュージョン」で四人に分裂した。

 

『何!また別のライダーのカードを!?』

 

龍騎が王蛇だけでなくナイトのカードを使用した事に動揺するファム。そんな事は構わず分裂した龍騎四人がディライトとファムに襲いかかる。

 

『くそっ!ミホさんは休んでて下さい!俺がやります!』

 

ディライトはライトブッカー・ソードモードで龍騎二体の攻撃を防ぐが、流石に一人で二体相手では分が悪い。そして、他二体の龍騎の攻撃を受けてしまう。

 

『ぐああぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

『き…煌…!うっ…!傷が…。』

 

ファムは胸を押さえながら、ディライトの身を案じる。だが、傷の痛みで身体がまたふらつく。

 

『くっ…ここまでか…!!』

 

龍騎四体がベノサーベルをディライトに振り上げるその時…

 

『……!!』

 

龍騎の身体が粒子化し始めた…。時間切れを現わす証拠だ。

 

『……!!』

 

龍騎は一体に戻り、その場を去っていった。

 

『俺達も…戻りましょう…ミホさん…。』

 

ディライトはファムの身体を支えながら担ぎ、ミラーワールドから脱出した。

 

 

 

―現実世界

 

 

現実世界に戻った闇影とミホは、黒深子と影魅璃から治療を受けた。闇影の傷は大事には至らないが、ミホの方は傷が激しい為しばらく寝かせる事にした。

 

「二人共、大丈夫!?」

 

「俺は大丈夫だが、ミホさんが…。」

 

黒深子の心配する言葉に闇影は眠っているミホの方に目をやりながら無事だと返した。

 

「それにしても、リュウガの正体もコウイチって人だったなんて…。」

 

「ああ、おまけに龍騎も他のライダーの能力を使える様だし…一体何がどうなってるんだ。」

 

闇影と黒深子は先程の出来事に頭を悩ませていた。その時…

 

「…ん?こ…ここ…は…?」ミホの目が覚め、弱りながら身体を起こした。

 

「ミホさん!まだ寝てなきゃ駄目です!」

 

無理に起きようするミホを黒深子が抑えて寝かした。

 

「煌…すまないな…。お前を巻き込んでしまって…。」

 

「気にしないで下さい。こんな怪我、大した事ありませんから。」

 

ミホはそう闇影に謝罪するが、当の本人は然程気にはしてなかった。

 

「そうか…私は…もう一度…ミラーワールドに向かう…。龍騎は…コウイチは私が止める…。絶対に!」

 

「何言ってるんですか!貴女はまだ傷が治ってないじゃないですか!」

 

なんとミホは三度ミラーワールドへ向かうと言い出した。当然それを許さない闇影は強く注意した。だが彼の制止を振り切ったミホはカードデッキを出し、鏡につき出してVバックルを実体化しデッキを装着した。

 

「変…身!」

 

ファムに変身したミホはそのままミラーワールドへと向かおうとするが…

 

『…!な、何をする!放せ!』

 

闇影がファムを抑えつけた。

 

「駄目だ!行ってはいけない!傷が治ってからでも遅くはない筈だ!」

 

『そんな悠長な事を言ってられるか!!』

 

「ぐっ!!」

 

「先生!!」

 

ファムはあくまで行かせようしない闇影を力任せに突き飛ばし、ミラーワールドへ向かった。

 

 

 

―ミラーワールド

 

 

『くっ…!く…そ…僕は…素晴らしい人生を過ごしたいだけなのに…。』

 

別の場所でタイガは、何者かに倒されうつ伏せになっていた。スーツアーマーは所々傷付いており、デストクローも全て折られている。

 

『……。』

 

そんな彼を冷たく見下ろすのは、ファムが探している龍騎であった。そしてそのままタイガに近づく。

 

『ひっ!な…、何だよ、お前!僕に何をするつもりだよ!や、止めろ!止めてくれ!うわああぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

タイガは龍騎が「何か」しようとし、怯えていた。だがその願いは叶わず、彼の悲鳴が消えた頃にはその場には龍騎だけしかいなかった…。

 

 

 

『(コウイチ…。お前は一体どうしてしまったんだ…!)』

 

一方、ミラーワールドに到着したファムは再び龍騎を探しながら、三年前の事を思い返していた…。

 

 

―三年前

 

 

「う~む。なかなか良い景色が見つからんな。」

 

ミホはカメラを構えながら良い景色を探すが、なかなか見つからないようだ。その時…。

 

「ほれっ!」

 

「きゃっ!冷たい!」

 

背後からミホの顔に缶コーラを当てたコウイチ。

 

「コウイチ~…何しとるんだ!!貴様ぁっ~!!」

 

驚かされたミホはコウイチにヘッドロックをかけた。

 

「ぎゃあぁっっ!!ゴメン!ギブギブ!もうやりません!!オーディンに誓ってもやりません!!」

 

「全く、人が悩んでいるのに…。」

 

目の前の男は直ぐに良い景色を見つけ撮影してるのに、ミホはそれが見つからなくて悩んでいる。そのせいなのか、目が普段以上に鋭くなっている。

 

「ああ、本当にゴメン。でもなミホ…。」

 

ようやく解放されたコウイチはミホに謝りつつ、何かを言おとする。

 

「景色を撮るのにちょっと力いれ過ぎじゃねえか?」

 

「え?」

 

ミホの悩みに気付いたのか、コウイチはアドバイスの言葉を言う。

 

「良い景色って奴はな、目で追うだけじゃなく、もう一つ大事な事があるんだ。」「もう一つ?何だ、それは?」

 

コウイチは勿体ぶるように間を空け、右手を胸に当てて口を開いた。

 

「それはな――」

 

 

 

『…!見つけたぞ!龍騎!!』

 

『……!!』

 

SWORD-VENT

 

漸く龍騎を発見したファムは、龍騎にそう声を掛けた。すると龍騎は無言のままバイザーにカードをベントインしてドラグセイバーを構えた。

 

『龍騎…いやコウイチ…お前は…私が止める!!』

 

SWORD-VENT

 

ファムもまたブランバイザーにカードをベントインし、薙刀型の武器「ウィングスラッシャー」を構え、龍騎に斬りかかった。

 

『……!!』

 

『コウイチ、いい加減こんな戦いを止めるんだ!!人を犠牲にしてまで叶えたいお前の願いは何なんだ!!』

 

ファムは龍騎に戦いを止めるよう呼びかけるが、彼は一言も喋らない。

 

『……。』

 

『黙ってないで何とか言え!!』

 

ファムは龍騎と斬り払い、間合いを空けて距離をとった。

 

『チッ…!こうなったら…』

 

FINAL-VENT《/edge》】

 

『キィィッッ!!』

 

このままでは埒があかないのか、ファムはファイナルベントのカードで白鳥を模した自身の契約モンスター「ブランウィング」を召喚するが…

 

FREEZE-VENT

 

『!!こ…凍った!!』

 

なんと龍騎は、先程倒したタイガの専用カード「フリーズベント」を使いブランウィングを凍らせた。

 

『…またか!一体何故なん…ぐっ!!』

 

まだ傷が完治していないファムの身体に痛みが走り体勢を崩し膝を地につけた。龍騎は彼女に近づき止めをさそうとするが…

 

『うおぉぉぉぉっっっっ!!!!』

 

『……!!』

 

間一髪の所を黒い龍騎…もといリュウガが駆けつけ、龍騎と同じ剣で止めの一撃を受け止めた。

 

『ミホ…!大丈夫か!?今の内に早く逃げろ!!』

 

『…え?そ、その声はコウイチか!?』

 

ファムはリュウガの声に覚えがあった…自分が先程まで戦っていた相手の正体の筈の…コウイチの声に…。

 

『…俺は…コウイチであって…コウイチじゃないんだ…。』

 

『?一体どういう事だ!?…なら、あの龍騎は誰なんだ!?』

 

リュウガの不可解な言葉にファムは困惑していた。その時、龍騎に異変が… 【改ページ】

 

 

 

『ギギギギギ…どいつもこいつも間抜けな奴等だよなぁっ!!オラァッ!!』

 

『ぐあぁっ!』なんと今まで口を開かなかった龍騎が喋り出したのだ。

 

『…喋った!?おい!お前は誰なんだ!』

 

『あぁん!?俺が誰かって?ギギャギャギャギャギャギャギャ!俺はコ・ウ・イ・チだよ!た~だし…』

 

ファムの質問に、小馬鹿にするような態度で返事をする龍騎。そして…

 

『「身体」の話だがなぁっ!』

 

『な!何だと?どういう事だ!?』

 

『答えの通りですよ!ミホさん!』

 

ATTACK-RIDE…LASER!

 

『グギャアッ!!』

 

ファムに追ってきたディライトはディライトレーザーで龍騎の顔を撃った。

 

『…痛って~なぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

撃たれた龍騎の割れた仮面の下半分の中は、透明の顔に三日月の様に裂けた口がついており、胸部に黒いオーラが渦巻いた水晶玉のような物が浮かび上がってきた。

 

『な!何なんだ!?その姿は!?』

 

ファムは龍騎の奇怪な身体に畏怖しながら問い詰めた。

 

『あ~あ。バレちまったか!なら自己紹介してやるよ!俺の名はスフィアミラージュ。元はこの水晶玉…ウィッシュスフィアが俺そのものだったんだよ!』

 

龍騎…もといスフィアミラージュは胸部に親指を指し、自分はこのバトルの賞品、ウィッシュスフィアであると言った。

 

『俺は他人の身体に取り込み内側から喰らい尽くす事で力を手に入れてきた!そして、三年毎にあるこのバトルの優勝者の身体を何度も何度も取り込みまくってやったぜ!』

 

『その方法で前のライダーロワイヤルで彼を取り込んだのか!?』

 

ディライトは怒りをなんとか抑えながらスフィアミラージュに問い出した。

 

『ああ、その通りだよ。こいつの願いってのが笑えて堪えんのに必死だったぜ。その願いってのがよぉ…「その女が良い景色とであえますように」だってよ!!マジで笑えたぜ!』

 

『貴様…!』

 

『だが、俺に取り込まれる寸前に肉体と魂を分離する「スピリットベント」を使って魂だけを切り離した。そしてその魂の正体が…』

 

『止めろ!それ以上言うな!』

 

リュウガの制止の言葉を無視し、スフィアミラージュは続けた。

 

『そこにいるリュウガなのさ!奴は赤鏡コウイチの「亡霊」なんだよ!未練がましいったらありゃしねぇぜ!』

 

ADVENT

 

スフィアミラージュは龍騎のアドベントを発動し、ドラグレッダーを召喚して腕を上げた。

 

『ライダーの身体になっちまったせいでどの世界にも長時間いられなくなっちまった。だが、お前を取り込めば俺は二つの世界を支配する事ができる!だからよぉ…』

 

彼は腕を振り下ろし、ドラグレッダーにリュウガを襲う様に促した。

 

『さっさとくたばれ!!!!』

 

「グオォォォォッッッッ!!!!」

 

『く…クソォォォォッッッッ!!!!』

 

リュウガは自分の無力さを嘆いて叫んだ。その時…

 

『キャアァァァァッッッッ!!!!』

 

なんとファムがリュウガの前に立ち彼を庇った。そして代わりに彼女が喰われてしまい、噛みつかれたまま宙を舞い地面に叩きつけられた。

 

『チッ!』

 

『お、おい!大丈夫か!?しっかりしろ…!ミホ!』

 

リュウガはファムの身体を支えながら呼び掛けた。

 

『…やっぱり…お前が…コウイチなんだな…。』

 

『あ…ああ…。』

 

リュウガは先程のスフィアミラージュの言葉を気にしているのか返事に言い淀んでいる。

 

『お前が…名乗らなかったのは…アイツが言った事を…気に…しているから…だろ?』

 

『そ…それは…。』

 

ファムはリュウガの考えている事をそのまま聞いたので、リュウガは更に焦った。

 

『私は…そんな事気にしていない。』

 

『!!』

 

ファムはリュウガの事を「亡霊」だとは思っていないのだ。

 

『あの時…お前が私に言った言葉…覚えて…いるか?』

 

『ああ…良い景色は目で追うだけじゃなく、』

 

『『心で感じるものだ。』』

 

ファムとリュウガは、あの時の言葉を同時に言った。

 

『あの時は…何の事だかよく分らなかったが…今は分かる…。こうして…お前と…心の固まりなお前と話していると…な。』

 

ファムの声はだんだん弱々しくなってきた。『おい!しっかりしろ!すぐに病院に連れてってやる!』

 

リュウガはファムを病院に連れていこうとした。この傷では手遅れだと分かっていても…その時だった。

 

『…コウ…イチ…最後に…言って…おきたい…。』

 

『最後なんて言うなよ…!!縁起でもない!!』

 

ファムは力を振りしぼり、最後の言葉をリュウガに伝える。

 

『お前は…生きろ…!自分の夢を…本当に叶えたい夢の為に生きるんだ!』

 

『ミホ…。』

 

『私の為…に戦っていたんだな…あ…りがとう…』

 

ファムは仮面の中で涙を流しながら、リュウガに感謝の言葉を言った。その時…

 

「グオォォォォッッッッ!!!!」

 

『!!!!ミ…ミホォォォォッッッッ!!!!』

 

ドラグレッダーがファムの身体を咥えてスフィアミラージュの前まで近づけ、彼の口が大きく裂けファムを喰らった。

 

『ああ。やっぱ旨ぇなぁ…ライダーの身体はよぉ…特に女ってのが最高のグルメだぜ!!何も出来ねぇまま悔しんでる野郎の女を野郎の前で喰うってのはよぉっっっっ!!!!ギギャギャギャギャギャギャギャギャ!!!!』

 

スフィアミラージュは、聞くに堪えない下卑た笑い声を上げながらファムの身体を喰った。どうやら今まで奴が他のライダーの能力を使えたのはそのライダーを文字通り喰ってきたからだ。

 

『う…うあぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

リュウガは怒りに身を任せてスフィアミラージュに向かっていった。

 

『弱ぇくせに突っかかってんじゃねぇよ!』

 

STRIKE-VENT

 

スフィアミラージュはタイガのデストクローを装備しリュウガを引き裂き、蹴飛ばした。そのはずみでリュウガは変身が解けてしまった。

 

「くっ…!くそっ!」

 

『亡霊のてめぇには何も出来ねぇ!虚像のてめぇには何も守れねぇ!偽者のてめぇなんかが夢を持つ資格なんてねぇんだよ!!』

 

「そうだ…こんな姿になって未練がましく生きて…大事な人を守れなかった…そんな俺に…夢を持つ資格なんてないんだ!!!!」

 

コウイチは自分の存在を強く否定され、完全に心を折られてしまい、その場で両膝を付いた。ずっと顔を伏せたまま…

 

 

 

『…人の夢を…』

 

『あぁ?』

 

突然ディライトがスフィアミラージュの前に現れ、そして…

 

『馬鹿にするなぁぁっっ!!』

 

『ぐあぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

そのまま力の篭ったパンチを叩き込んだ…。

 

『こいつの…いや、人の夢や命を否定する資格なんて誰にも無い!!』

 

『何だと…。』

 

『こいつは、例え自分がどんな存在になろうと…大切な人の為にずっと一人で戦ってきた!!』

 

「……!!」

 

『…!ウゼぇんだよっ!!てめぇっ!!』

 

スフィアミラージュはドラグクローから炎を放ち、ディライトに直撃させた。

 

「…!おい!ディライト!」

 

コウイチはいつの間にか敵だった彼の身を案じていた。だが…

 

「この誰もいない空間にずっと一人でいる事は想像できない程の苦しみだった筈だ…。」

 

闇影は、それでも強く真っ直ぐな視線を向け話を続ける。周りの炎が、今の彼の闘気を思わせる程燃えていた。

 

「それに負けずに戦い続けていたこいつの心は…偽者なんかじゃない!!」

 

闇影は虚像であるコウイチのファムへの想い…「心」は偽者ではなく本物だと断言した。そして、目線を彼の方に向け…

 

「例えお前がどんな存在だろうと、夢を持つ資格は誰にでもある。一緒に戦おう…コウイチ!!」

 

「……!!闇影…。ああ!!」

 

闇影に手を差し伸べられたコウイチは手を取り立ち上がった。その瞬間、ライトブッカーから三枚のカードが闇影の手元に飛び出して黒と黄色のカードに変化した。

 

『てめぇ…一体何者だ!!』

 

スフィアミラージュの問いかけに闇影はディライトのカードを見せつけるように前に出しこう言った…。

 

 

 

「お節介教師な仮面ライダーだ!!宜しく!!」

 

闇影はカードを装填し、コウイチもカードデッキを持った右手を左斜めにし、

 

「「変身!!」」

 

闇影はオレンジのボディに黄色いライドプレートが突き刺さったディライトへ、コウイチは灰色の人型がオーバーラップしその身体は闇を現わす「黒」だが、心は真実の「光」を示す龍の戦士、リュウガへ変身した。

 

『さてと…輝く道へと導きますか!!』

 

『うしっ!!』

 

ディライトはまたも決め台詞を言い、リュウガも両方の拳を握りながら気合を入れ、声に力を入れて叫んだ。

 

『舐めんじゃねぇぇぇぇっっっっ!!!!』

 

SWORD-VENT

 

STRIKE-VENT

 

今の行動に頭にきたスフィアミラージュは先程喰らったファムの武器「ウィングスラッシャー」を、犀をイメージしたライダー「仮面ライダーガイ」のストライクベント「メタルホーン」を装備し、二人に突撃した。

 

『そんな単調な攻撃じゃ…』

 

ATTACK-RIDE…LASER-BLADE!

 

『俺たちは倒せないぜっ!』

 

STRIKE-VENT

 

『ぐあぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

ディライトはディライトレーザーブレードのライトオレンジの光の刃でウィングスラッシャーとメタルホーンを破壊し、リュウガの放つドラグクロー・ファイヤーの黒炎でスフィアミラージュを迎撃した。

 

『く…クソがぁぁぁぁっっっっ!!!!人間と虚像風情がぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

『よし!止めだ!』

 

『待て!コウイチ!まだ何かある…』

 

FINAL-VENT

 

『これで…最後だぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

制止するディライトの話を聞かず、リュウガはファイナルベントでドラグブラッカーを召還し、「ドラゴンライダーキック」で止めを刺そうとするが…

 

CONFINE-VENT

 

『何!?ブラッカーが消えた!?』

 

突然、ドラグブラッカーがガラスが割れた様な音をたて消滅した。

 

『やはりそうか…。ガイのカードを使った時、まさかと思ったが…』

 

そう。これがガイの特殊カード…あらゆるカードの発動を一切無効にする「コンファインベント」の能力である。そして、スフィアミラージュは指をVサインしながらこう語る…。

 

『二枚だ。このカードをガイは二枚持っていた…だから次にてめぇがどんなカードを使おうとあと一回だけ無効に出来る!』

 

コンファインベントはあと一枚持っている…つまりリュウガは次の手をいつでも塞がれてしまう事になってしまったのだ。

 

『大丈夫だ!あと一撃で奴は倒せる!』

 

『闇影…。それは分かるけど、俺はもう必殺技は使えないし他のカードも使えなくなっている…手は』

 

『まだある!!「お前」がいる。』

 

リュウガの不安の言葉をディライトが被せた。「リュウガがいる」と言う発言に首を傾げるリュウガ。するとディライトは先程の黄色いカードを装填した。

 

FINAL-FORM-RIDE…RYU・RYU・RYU・RYUGA!

 

『力を抜け。』

 

『へ?』

 

ディライトはリュウガの背中に手で叩いた。その瞬間、彼の腕にドラグシールド、ドラグセイバーが装備された。

 

『な、何じゃこれ!』

 

リュウガはカードを使用してないのに自分の武具が全て装備されたので驚いた。

 

『虚仮脅しがっ!串刺しにしてやる!』

 

SPIN-VENT

 

今度は鹿をモチーフにしたライダー「仮面ライダーインペラー」のスピンベント「ガゼルスタッブ」でリュウガを貫こうとした。しかし…

 

『そうはさせるか!ほいっ!』

 

『うわぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

ディライトはリュウガの肩を掴み、後ろへ倒した。その時、リュウガの身体が契約モンスター「ドラグブラッカー」に酷似した姿「リュウガドラグブラッカー」へと変形した。

 

『お、俺がブラッカーになってる!?』

 

Rドラグブラッカーはあまりの展開に困惑していた。

 

『…だけど、強い力を感じる…これならいけそうだ!』 

 

『そうだ!その意気だ!』

 

だが、彼はこの力に強い自信が湧いてきた。敵を倒せるという自信が…。

 

『見たか。これが夢を持つ者の力だ!』

 

『ざけんじゃねぇぇぇぇっっっっ!!!!何が夢だ!そんなモン、俺の餌にしかなんねぇんだよぉぉぉぉっっっっ!!!!』

 

スフィアミラージュは激昂し、そのまま突っ込んだ。

 

『夢を嘲笑うお前に…』

 

FINAL-ATTACK-RIDE…RYU・RYU・RYU・RYUGA!

 

『夢を持つ俺達が…負けるかぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

ディライトはジャンプし、Rドラグブラッカーは宙を舞い黒い炎をディライトに宿した。そして、黒い炎に包まれたディライトは急降下飛び蹴りをするという、リュウガの必殺技に似たFAR「ディライトワイバーン」がスフィアミラージュの罅割れた身体に直撃した。

 

『ギギャアァァァァッッッッ!!!!』

 

強い爆発音と共に龍騎「だった」スフィアミラージュは完全に消滅した。…だが、

 

『ギ…ギギャギャギャギャ…それで勝ったつもりか?』

 

黒いオーラが漂う水晶玉が浮かび上がってきた…。これがスフィアミラージュの本体、ウィッシュスフィアである。

 

『俺は取り憑いた身体を捨てれば生き延びる事出来る…。そして、願いを叶えたり、俺に触れた奴は身体を奪われる…。』

 

つまり、彼を倒す手段は皆無に等しいのだ…このままでは同じ悲劇が繰り返されてしまう…。

 

『人の欲望がある限り…俺は…永久に不滅だ…ギ…ギギャギャギャギャ…』

 

『…お前を倒す方法は一つだけある…!』

 

リュウガはスフィアの元に近づき、こう願う…。

 

 

 

『…ウィッシュスフィアよ!消滅しろ!』

 

 

 

リュウガの願いはウィッシュスフィアの消滅即ち、スフィアミラージュの死を願った。

 

『な!な!な!何だとっ!俺を消すだとっ!?』

 

その瞬間、スフィアの内側が光り出した。

 

『ギギャアァァァァッッッッ!!!!な、何故だぁっ!!何故自分の願いを犠牲に出来るんだぁっっっっ!!!!』

 

光に包まれたスフィアから悲痛の叫びが聞こえる。そして、リュウガはこう言った。

 

『お前が争いの元になるくらいなら…そんな物、ない方がいい!その為なら、俺は自分の願いなんて捨ててやる!』

 

『い…イヤだ…イヤダ!イヤダ!イヤダァァァァッッッッ!!!!ギギャアァァァァッッッッ!!!!』

 

悲鳴をあげるスフィアの黒いオーラは完全に消滅した。その時…

 

――ありがとう

 

 

『『!!!!』』

 

黒いオーラが消えたスフィアから謎の声が聞こえた。

 

『貴方は…?』

 

『私の名は…ウィッシュスフィア。勝ち残ったライダーの願いを叶える存在…。』

 

『それは知っている!何故そのライダー達の願いを踏みにじる真似をした!』

 

ディライトはこれまでのスフィアの非道な行いを問いただした。

 

『…先程貴方達が消した黒いオーラ…。あれが私を操っていたのです。』

 

『何!黒いオーラだと!』

 

ディライトは黒いオーラの名前を聞き、驚いた。

 

『数年前、この世界に突然現れ、私を操り、多くの勝ち残ったライダー達に取り憑き続けたのです。』『黒いオーラの影響がそこまで及んでいるのか…一体何なんだ』

 

ディライトは悲しげに呟いた。他者まで操る黒いオーラの正体は一体何なのか…。

 

『ですが、貴方達があのオーラから私を救って下さった。ご自分の願いを犠牲にしてまで…。本当にありがとう。』

 

ウィッシュスフィアは改めて二人に感謝した。

 

『お礼に、貴方達の願いを一つだけ叶えて差し上げましょう。』

 

ウィッシュスフィアは礼として願いを一つ叶えてくれるようだ。

 

『コウイチ。願いを言え。』

 

『闇影…。いいのか?』

 

『この世界のライダーであるお前が叶えるのは当然じゃないか。』

 

『そうか…。じゃあ、俺の願いは…』

 

一度ディライトの方を向き、真っ直ぐに向いて願った。

 

『旅がしたい!世界中の大切な人を守る旅がしたい…!闇影達と一緒に!!』

 

その瞬間、ディライトとリュウガは光に包まれて、現実世界へと向かった。

 

 

 

―これで良かったんだよな…。ミホ。

 

 

 

―現実世界

 

 

「あら、新しい絵がキャンバスに…良い絵だわ。」

 

影魅璃はキャンバスに描かれた新しい絵を賞賛した。その絵は、旅に向かうリュウガを龍騎とファムが見守っている光景だった。

 

「存在が人と違っても、心は人と同じ…か。」

 

「それだけ人々は平等に夢を持つ資格があるんだ。」

 

「そう言えば、闇影。何であの『龍騎』が偽物だって解ったんだ?」

 

「うん…お前と斬り結んだ時、何かの勢いを感じたんだ。だが、奴にはそれが感じられなかったんだ。」

 

「心が無かったから、それが偽物だって解ったのね。」

 

闇影は龍騎とリュウガの心の違いでどちらが偽物かを判別出来たようだ。

 

「まあ、そんなとこかな?それよりコウイチ、本当についてくるのか?」

 

「おいおい。何言ってんだよ。言ったろ?大切な人を守る旅に出るって。それにはお前の旅について行くのが一番だと思ってな。」

 

「そうか!これから宜しくな!コウイチ!」

 

闇影は握手の手を差し伸べ…

 

「ああ!こちらこそ!」

 

コウイチはその手を握り二人は握手を交わした。

 

「なんか良いわね。男同士の友情って。宜しくね、コウイチ君。」

 

「悪くはないけどね。宜しく、コウイチ。」

 

黒深子と影魅璃もコウイチを歓迎した。

 

「じゃあ、コウイチ君の仲間入りを記念して、今日はご馳走に…」

 

影魅璃が料理の準備をしようとした時…

 

「な、何これ!?」

 

突然、キャンバスに新しい絵が被さった。それは、巨大なビルの正面の左側に黒い戦士、右側に白い戦士が立つ光景だった。その絵に闇影はこう呟いた…。

 

「オーガの世界か…。」




と言う訳で、コウイチこと仮面ライダーリュウガが闇影達の仲間に加わりました!!

こいつのポジションは言わずもがな、クウガ=ユウスケでございます。

次回はオーガ編、出番があるのは勿論…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5導 オーガは反逆帝王?

オーガはファイズのダークライダー。

ファイズの怪人はオルフェノク。

それ即ち…?


―バーバー・フラッシュ

 

 

「いや!変わるの早過ぎでしょぉぉぉぉ!!!!何!?バーバーフラッシュって!?」

 

ここ「オーガの世界」に移動した瞬間、白石家の形状が唐突に変化した為、黒深子の強烈なツッコミが炸裂した。

 

「く、黒深子ちゃん!落ち着いて!」

 

コウイチはそんな彼女を宥めようとした。

 

「それと同時に俺の服装…というより役割も変わるんだ。」

 

「って!普通の流れっぽく話さないで!…んで、その格好は?」

 

多少落ち着きを取り戻した黒深子は現れた鋏等の道具を挟んだベストを着た闇影の服装について聞いた。

 

「ん?ああ、多分美容師の仕事かな?二人共、折角だから髪切らない?」

 

どうやらここでの闇影の役割は美容師の様だ。そのついでに黒深子とコウイチに髪を切るかを尋ねた。

 

「今のとこそんな予定はないわよ。先生。」

 

「俺はちょっと整えて貰おっかな。」

 

黒深子は切るのを断り、コウイチは切って貰う事にした。その時…

 

 

【…次のニュースです。数ヶ月前に起きた流星学園の展示物…二つの「帝王のベルト」の内一つの「オーガギア」窃盗事件の直後に起きたオルフェノクの灰化事件が今月に入って五十件を越えました。…警察の調査によると…】

 

 

「オーガギアが盗まれた直後に、オルフェノクが倒されている…流星学園の関係者…事情は粗方解った。」

 

今のニュースを見て、闇影は事件の状況を把握出来た様だ。

 

「えっ?解ったって、犯人が?」

 

「いや違う。流星学園から盗まれたベルトの力でオルフェノクを倒しているのは、当然そのベルトの使い方を知ってる人物なんだ。つまり…」

 

「流星学園にいる誰かがオーガに変身してるって事だ!」

 

闇影はオーガの変身者は流星学園の内部の人間だと推測した。

 

「そうと分かれば、早く行こう!」

 

コウイチは直ちに流星学園に行く提案を持ち出した。

 

「でも、そう簡単にいかないわよ。」

 

影魅璃はいつの間にか開いたパソコンで流星学園のサイトを見て、侵入は困難だと判断した。

 

「な、何でですか?」

 

「あの学校はオルフェノクしか入れないのよ。」

 

そう、流星学園はオルフェノクのみで編成された学校なのだ。下手に侵入すれば自分達の命に危険が及ぶ。そう考えていた時…

 

「ねぇ、先生…私が調べるわ!」

 

「「何だって!?」」

 

なんと黒深子は自分がオーガの事を調べると言い出した。

 

「私だったら…オルフェノクだから侵入しても怪しまれないわ。だから…私が潜入してオーガの事を調べてみる!」

 

「ダメだ!一人じゃ危険だ!もしバレたら君の命が危な「前に!」」

 

闇影は当然この提案に反対した。だが、全て言い切る前に黒深子がそれを遮った。

 

「前に先生、言ってたよね?『私が蘇ったのは私にしか出来ない事がある。』って。多分、それが今だと思うの…。」

 

黒深子は闇影があの時自分に向けて言った言葉の意味が今の状況の為に行動する物だと強く反論した。

 

「…分かった。」

 

「み、闇影!?」

 

「そこまで言うなら、君に任せるよ。但し…!」

 

闇影は少し考え、黒深子の提案を承諾した。そして、条件を提示した。

 

「無理はしないでくれ。危なくなったら直ぐ逃げる!これだけは絶対守ってくれ!」

 

「先生…はい!」

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

 

―流星学園

 

 

「え~、皆さん。今日からこのクラスの一員になる白石黒深子さんです。」

 

とあるクラスの朝礼で、担任の先生の言葉に、男子生徒は「おぉっ~!!」と声をあげた。

 

「初めまして、白石黒深子です。宜しくお願いします!」

 

黒深子の挨拶が終わると、大きな拍手と口笛が喝采された。外見が美少女な為、男子生徒達の目線は黒深子へ向かっていた。

 

「では好きな席に座って。」

 

先生の言葉に従って空いてる席に向かった黒深子。そこへ…

 

「あ!ここ空いてますよ!」

 

一人の女子生徒が手を上げてその隣に座る様にアピールした。その生徒の特徴は黒髪のおさげに縁なしの丸眼鏡と、おとなしめな印象を表していた。

 

「ありがとう。貴女は?」

 

「私は鶴見(つるみ)ユカ。宜しくね、白石さん!」

 

「こちらこそ宜しく!」

 

見た目と違ってはきはきとした口調のユカだが、黒深子は彼女と友達になった。

 

「(こういうの久しぶりだな…。)」

 

潜入捜査とは言え、久々の学校生活に嬉しさを感じる黒深子だった。

 

 

 

―休み時間

 

 

 

黒深子のクラスメイトから転校生お約束の質問攻めを受けていた。前はどこの学校だったとか、部活は何部だったとか等…。この場は聞かれた質問に全て答えて、逆に「あの事」を聞いた。

 

「ねぇ。オーガについて知ってるかな?」

 

「……!!」

 

それを聞いた瞬間、教室にいた生徒達は静まりかえった。そして急によそよそしくなり、分からないといい離れていった。その後も他の生徒にもオーガの事を聞きまわったが、誰も話そうとせず、中には怯えて逃げ出す者もいたと言う…。

 

「はぁ…。やっぱりオルフェノクを殺す様な人の話なんかしたくないよなぁ…。」

 

裏で一休みした黒深子は皆がオーガの事を話さない理由を薄々理解し始めた。普通の人が近くに彷徨いてる殺人鬼の話なんかしたくないように、オルフェノクを殺すオーガの話をここの生徒達が話したがるはずもない。

 

「おい、白石!」

 

すると、そこに同じクラスの複数の女生徒が黒深子の前に現れた。

 

「な、何ですか?」

 

「お前、何男子達に色目使ってんだよ!」

 

「キャアッ!!」

 

突然言いがかりをつけて黒深子を壁に突き飛ばした。そして「あの時」の恐怖が頭を過ろうとした時…

 

「お~いおい!つーか一人に寄ってたかって何やってんだよ!」

 

金髪で目つきも悪く、制服も着崩している不良の男子生徒が現れた。

 

「な、何の事…ヒッ!」

 

「俺ーゃな!そういう奴見てると無性にムカつくんだよ!とっとと失せろ!」

 

不良は壁を拳で砕き女生徒達を脅した。それを見て、彼女達は逃げ出した。

 

「あ…あの…助けてくれてありがとう。」

 

「あぁ?何の事だよ。ちょいとムカつく事があったからそれ発散しただけ。つーかこの辺を一人でウロウロすんなよ、白石。」

 

「な、何で知ってるんですか?」

 

「つーか、俺お前と同じクラスだから。俺、蛇塚(へびづか)ナオヤ。じゃな。」

 

この不良生徒、ナオヤは黒深子と同じクラスメイトだったのだ。名を名乗り右手を横に振りながら去ろうとした。

 

「待って、蛇塚君!ちょっと聞きたいんだけど、貴方オーガについて知ってる?」

 

黒深子の質問にナオヤはその場に止まり、怪訝そうな顔で振り向いた。

 

「お前、オーガを探してんのか?」

 

「え!?え、ええ…。そう…だけど…。」

 

黒深子はナオヤの質問に怯みながらも肯定した。すると…

 

「…ちょっと顔貸せ。」

 

「え?え?え!?ちょ、ちょっと離して!痛い痛い痛い!!」

 

ナオヤは黒深子の手を掴み、何処かへ移動した。

 

―とある部室

 

 

「おーい。相馬ぁ!連れて来たぞ。オーガ探してる奴。」

 

「蛇塚君。また無茶をして…先生に見られたら変に誤解されるよ?」

 

そこには、ナオヤの無茶な部室案内に注意をする丸っぽく短い茶髪の生徒に…

 

「本当よ。ま、学校クビになりたいなら止めないけどね♪」

 

皮肉を込めた冗談を飛ばすおさげの女生徒がいた。

 

「うるせぇ。鶴見!おめぇはいつも一言多いんだよ!」

 

「え?つ、鶴見さん!?」

 

女生徒の一人はなんと仲良くなったばかりのユカだったのだ。

 

「ユカでいいよ、クミちゃん。私達友達じゃん。」

 

「…ありがとう。ところでここは何部なの?」

 

黒深子はユカにここは何部かを聞いた。

 

「その前に自己紹介をするよ。僕も君と同じクラスの相馬(そうま)ユウジ。ここ『救事部』の部長さ。」

 

「救事部?」

 

黒深子は聞いた事の無い部活の名前に首を傾げた。

 

「うん。僕達は色々な学園行事の手伝いをする…。所謂助っ人部みたいな物だよ。」

 

「部活やその試合の助っ人に物探しに倉庫の掃除等…かなり大変な部活動なの。」

 

「へぇ…そうなんだ。何か凄いわね。(…先生が聞いたら絶対ここの顧問になる!っていいそうな部活だわ。)」

 

闇影の性格なら確実にそう名乗り出るだろうと思いつつ、黒深子は救事部の活動に関心を持った。

 

「あっ、そうだ。私がオーガを探してるって言ったらそこの…蛇塚君に連れられたんだけど…」

 

黒深子は自分がここに連れてこられた理由を尋ねようとした時…

 

「その部活動もVery用事があればのTalkですガネ。」

 

部室の入り口に四人の生徒が立っており、ウェーブのかかった金髪のリーダー格の男子生徒が話しかけてきた。

 

「…薔薇ノ(ばらのみや)先輩。」

 

「おっと、Sorry。転校生がいらしてたんデスネ。私は生徒会「ラッキークローバー」会長の薔薇ノ宮キョウジと申しマース。Nice to meet you.」

 

キョウジは英語混じりの言葉で黒深子に挨拶をした。彼等がここに赴いた理由とは…。

 

「その生徒会長様がこんなチンケな部室までご苦労なこった。」

 

ナオヤはあからさまに嫌味ったらしく、彼等に挨拶した。

 

「貴方、会長に失礼ですよ!」

 

四人の内、唯一の女子生徒が今のナオヤの発言をきつく注意した。しかしキョウジは左手を上げ、落ち着く様に諫めた。

 

「例の、オーガをSearchする件はどうなっていマスカ?」

 

「その件でしたら、申し訳ありませんが未だ見つかっていません。何せ誰がオーガなのかの検討もついていませんので。」

 

ユウジは丁寧にオーガの行方は未だ不明だとキョウジ達に告げた。

 

「あれからTwo mouth 経つのに未だ見つからないノデ、そろそろユー達に依頼のStopをかける為、ここにComeしまシタ。」

 

キョウジはユウジ達が何時まで経ってもオーガが見つけられない事に痺れを切らしてオーガの捜索を中止する為に救事部まで赴いたのだ。

 

「もう少しだけ待って頂けませんか。お願いします。」

 

「ふむ…、まあいいでショウ…。もう少しダケ捜索を任せマス。But…」

 

キョウジは頭を下げるユウジを見て、オーガの捜索を暫くは続ける事を許可した。が、

 

「見つけ次第必ずEraseしなさい…。オーガは我々同胞を殺した裏切り者…絶対に許しはしない…!」

 

キョウジは一瞬だけ顔にオルフェノクの紋章を浮かばせ、口調も変わり、拳を血が出る程握り激昂した。どうやらこれが彼の本性のようだ。

 

「…!Sorry…私とした事が…。とにかく、オーガの件は頼みましタヨ。」

 

キョウジは落ち着きを取り戻し再度依頼をした後、彼等は部室を去った。

 

「あ…あの…。」

 

その場の不穏な空気の中で黒深子は声をかけようとしたが…

 

「んじゃ、さっさとオーガを探してますか!」

 

「うん。」

 

「そうね。行こ!クミちゃん!」

 

何故か今のやり取りが無いかの様に三人は部室を出てオーガの捜索をしようとした。

 

「会長…。よろしいのですか!?あの件を彼等に未だ任せるなんて…」

 

「何…見つかればそれでGood…見つからなければそれをReasonにKillすれば良いのデス…フフフ…」

 

キョウジも内心では救事部を快く思っていなかったのだ。

 

「それよりも『あの方』をSearchする事に専念して下サイ。」

 

「…はい!」

 

キョウジ達もオーガとは別の「何者か」を探しているようだ。

 

 

 

―バーバー・フラッシュ

 

 

「そっか…黒深子ちゃんがオルフェノクになったのはそういう事があったのか…。」

 

コウイチは首から下に布を被さり座りながら、黒深子がオルフェノクになった経緯と潜入を買って出た理由を闇影から聞いていた。

 

「ああ。あの子は自分なりに考えていたんだな。自分にしか出来ない事を…。…ん?」

 

闇影はコウイチの髪を切りながら黒深子の想いに感心していた。その時、ガラス越しに何かを目撃した。

 

「おい、このガキ!人にぶつかっといて詫びの一つも言えねぇのか!?」

 

「ぶつかった詫び料として二万で勘弁してやるよ。」

 

それは、少年は二人の大柄な男達に因縁をつけられ金品を奪われようとしていた光景だ。

 

「……」

 

「何とか言えよ!オラッ!!」

 

少年が一言も喋らない事に頭に来た男は彼を殴ろうとしたが…

 

「おい!子供相手に二人がかりで何だ!!」

 

闇影は男の拳を掌で受け止め、少年を救った。

 

「あんだよ、おっさん!てめぇにゃ関係ねぇだろっ!」

 

「関係ある無しの問題じゃない!」

 

「んだとぉ…!」

 

二人の男は顔に紋章を浮かばせ、仙人掌をイメージした「カクタスオルフェノク」と蟷螂をイメージした「マンティスオルフェノク」に各々変化した。

 

「…!オルフェノクか!」

 

オルフェノクを目の当たりにした闇影はディライトドライバーを装着した。

 

「変身!」

 

KAMEN-RIDE···DELIGHT!

 

闇影はディライトに変身し、オルフェノクに立ち向かった。

 

『はぁっ!!せいっ!!』

 

『グッ!!』

 

ディライトはカクタスOに打撃と蹴りを打ち込んでいくが…

 

『シャアッ!!』

 

『ぐあっ!!』

 

マンティスOに背後から攻撃を受け、その隙に反撃を受け、吹き飛んでしまう。

 

『くっ…!やっぱ二人はきついな…。だったら!』

 

闇影は起き上がりながら、黒いカードを装填した。

 

SHADOW-RIDE…RYUGA!

 

その瞬間、ディライトの影はコウイチが変身する仮面ライダーリュウガにシャドウライドした。

 

『更に…これだ!』

 

ATTACK-RIDE…STRIKE-VENT!

 

ディライトとSリュウガは黒いドラグクローを装備した。だが、ディライトのそれは全身が真っ黒の物だった。

 

『はあああっっっっ!!!!』

 

『『グギャアァァァァッッッッ!!』』

 

ディライトのドラグクローの黒い炎がマンティスOを焼き尽くし、身体が青白く燃えて灰化した。

 

『グッ…!』

 

しかし、カクタスOはダメージを受けながらも何とか生きている様だ。

 

『まだ生きているのか…だったらこの場は見逃してやる。早くいけ。そして、これを教訓に二度とこんな事はするな。』

 

ディライトは生き残ったカクタスOにそう注意して、見逃そうとしている時…

 

「…君は…今何してたの?」

 

そこへユウジが現われ、先程とは打って変わった怒りの表情をしてディライトを睨み付けた。

 

『た!助けてくれ!こ、こいつに連れを殺されて俺も殺されそうなんだよ!』

 

カクタスOは、突然現れたユウジに自分がディライトに殺されそうだと嘘を言いその場から逃げた。

 

「…という事は、君がディライトなのか!」

 

ユウジは強い剣幕を立て、鞄からベルトを取りだし腰に装着した。そして、茶色を基本とした携帯電話を開きボタンを押した。

 

0・0・0

 

STANDING-BY…

 

くぐもった警告音が鳴り響き、携帯を真上に翳しベルトに装着し…

 

「変身!」

 

COMPRETE!

 

ユウジの身体にクリアブラウンのフォトンブラットが包まれ、強い光を放った。それがやんだ時、そこには全身黒を基調としたローブを纏っており、赤い「Ω」の形をした複眼のライダー「仮面ライダーオーガ」の姿があった。

 

『こんな若い子が…オーガ…!』

 

ディライトはこの世界のライダー・オーガの正体がまだ十代の少年である事に驚愕した。

 

『だあああっっっっ!!!!』

 

『くっ…!』

 

突然殴りかかってきたオーガの攻撃をディライトは腕を掴み阻止した。

 

『お前がこの世界を焼き尽くそうとしているのは分かっているんだ!灰燼者ディライト!』

 

『またか…何の事なんだ!』

 

『黙れ!』

 

またも灰塵者と呼ばれ襲いかかられたディライトは困惑しつつもオーガは距離を取り、専用武器「オーガストランザー」で斬りかかった。

 

『ちっ…!手を出すなよ!』

 

ATTACK-RIDE…SWORD-VENT!

 

Sリュウガに手を出さぬ様命令し、またも全身が黒いドラグセイバーを構えオーガと斬り結んだ。

 

『倒れろ!倒れろ!』

 

『くっ…!落ち着け!』

 

オーガは幾重も剣を打ち込み、ディライトも負けじとドラグセイバーで防ぐ。だが、大剣と日本刀では重量の差でいずれ後者が不利になるのは時間の問題、そして…

 

『お!折れたぁぁっっ!!』

 

予想通りドラグセイバーは重量に負け、刀身が折れてしまった。この機を逃すまいとオーガはディライトを斬ろうとするが…

 

「ちょ、ちょっと待って!相馬君!」

 

『……!』

 

突然黒深子の、オーガを止める声が聞こえた。同時にナオヤとユカもこちらに走って向かって来た。

 

『『く、黒深子/し、白石さん!!?』』

 

―バーバー・フラッシュ

 

 

「もう、相馬君!いくら叫び声が聞こえたからって一人で突っ走らないで!」

 

「そーだぜ!つーかおめぇ足速すぎ!」

 

黒深子とナオヤはオーガことユウジの単独行動に注意をした。

 

「ご、ごめん…。それと…煌さんも先程はすいませんでした!」

 

ユウジは単独行動と闇影への襲撃を素直に謝った。

 

「いや、気にしないでいいよ。それより君達はどうやってオーガギアを?」

 

闇影はユウジ達がオーガギアを所有している理由を尋ねた。

 

「今から数ヶ月前…僕達救事部は何時もの様に夜の見廻りをしていたんです…。すると、謎のオーラの中から赤いフードを被った女の人が現れてこれを渡してこう言ったんです。」

 

 

 

―いずれお前達の前に灰塵者、ディライトが現れる…。奴は全ての世界を焼き尽くそうとしている。その時は、全力で排除しろ!!

 

 

 

「謎のフードの女…か…。」

 

「俺と同じだ!俺もその人にリュウガのデッキを渡されてそう言われたんだ!」

 

「コウイチもか!?」

 

先の「リュウガの世界」でコウイチ=リュウガに襲われた理由が判明した。どうやらその赤いフードの女が関係している様だ。

 

「一体…灰塵者って何の事なんだ…?何故排除する必要があるんだ…?」

 

闇影は自身が何故灰塵者と呼ばれているのかを自問していた。

 

「それより、闇影…。」

 

「?どうしたんだコウイチ?」

 

「何時まで俺をこの髪型にしとくつもりだっ!」

 

「…あっ!!」

 

闇影は未だ髪を散髪中の為、コウイチのもみあげが片方だけ短くなっているのに今頃気づいた。それを見て一同は笑い出した。

 

「ぶっははははは!!な、なんだよ…それ!」

 

「コ、コウイチ…の髪が…お、面白い!!」

 

「わ、笑ったら悪いよ、クミちゃ…あははは!!」

 

「笑うなぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

ナオヤ、黒深子、ユカに大笑いされたコウイチは涙目で叫んだ。だが、これがきっかけで闇影の心が和らいだ。

 

「ごめんごめん、直ぐに整えるからな。」

 

闇影は謝りながらコウイチを席に座らせた。

 

「…そう言えば一つ聞きたいんだけど…。」

 

闇影は話題を切り替えユウジに質問した。

 

「何ですか?」

 

「君達はオーガの力でオルフェノクを倒す以外に誰を探しているんだ?」

 

黒深子から聞いた話では、ユウジ達は人間に危害を及ぼすオルフェノクを倒す以外に「何者」かを探している様だ。「オーガを探す」という名目で…。

 

「そ、それは…」

 

ユウジが話すのを躊躇っていたその時…

 

「…!な!何だ!」

 

突然、理髪店に大きな光弾が直撃し爆発した。その為、中の物損が激しくなった。

 

「見つけましたよ。オーガ…いや、Mr.相馬!」

 

光弾を撃ったのはキョウジだった。傍らには他のメンバーと先程の男も一緒にいた。どうやらあの男がオーガの正体を密告した様だ。

 

「残念デスヨ…Mr.相馬。Youは一番信頼していたというノニ…。」

 

キョウジはそんな言葉とは裏腹に物凄い顔つきでユウジを睨んだ。

 

「私の期待を裏切った報い…」

 

オルフェノクの紋章を浮かばせ…

 

『…死を持って償って貰おうかぁぁっっ…!!』

 

薔薇をイメージしたオルフェノク「ローズオルフェノク」へ変化した。それに伴って他の者もオルフェノクに変化した。

 

「…全員集合か…。皆!行くぞ!」

 

闇影が全員に戦う様号令をかけたその時…、

 

「な!何だ!?」

 

突然謎のオーラの壁が現れ、闇影はその中に飲み込まれる様に包み、その場から姿を消した。

 

「せ、先生が消えた…。」

 

「何処に行ったんだ、あいつ…。」

 

黒深子とコウイチは突然消えた闇影の安否を気にするが…、

 

「余所見して場合じゃねぇぞ!!」

 

「今はあの人達を倒す事に専念して…」

 

「それから煌さんを探しましょう!!」

 

0・0・0

 

STANDING-BY…

 

「変身!!」

 

ナオヤは蛇をイメージした「スネークオルフェノク」、ユカは鶴をイメージした「クレインオルフェノク」に、そしてユウジはオーガに変身した。

 

「俺も戦うぞ!変身!」

 

「(先生…。…ごめんなさい!後で探すから!)」

 

コウイチもリュウガへ変身し、黒深子は心の中で闇影に謝りながらスワンオルフェノクに変化した。

 

『(…そう言えば、さっきの子何処に行ったのかしら?)』

 

スワンOは先程闇影が助けた少年の行方を気にした。

 

 

―謎の場所

 

 

「…ここは、何処なんだ?コウイチ!黒深子!相馬君!」

 

謎のオーラによって周囲が複数の巨大なビルが建った場所に移動させられた闇影は、コウイチ達の名を叫んだ。だが、その返事が返る事はなかった。

 

「ビル街の筈なのに携帯も圏外。普通の場所じゃないな…。」

 

確かに周りにビルがあるのに携帯が圏外になるのはおかしい。となると、ここは何らかの力で創られた空間なのかもしれない。等と思考していたその時…

 

『バーンッ♪!!』

 

突然、紫色の光弾が闇影を襲った。だが、間一髪の所を辛うじて回避した。

 

「誰だ!…ラ、ライダーだと!?」

 

『お前が持ってるベルト、僕が貰っても良いよね?答えは聞かないけど!』

 

闇影を襲ったのは紫色の龍の仮面を着けた、宝珠を掴んでる様な龍の爪のアーマーを纏った子供っぽい口調が特徴の、時を守るライダー「仮面ライダー電王 ガンフォーム」だった。

 

「君…何故俺のベルトが必要なんだ!?誰に言われたんだ!?」

 

『赤いフードの人が、お前のベルト持って帰ったら時の列車の車掌にしてくれるんだって!良いよね~♪』

 

「赤いフード!?」

 

闇影は電王GFの赤いフードという単語に強く反応した。つまり彼は、例の赤いフードの女の刺客なのだ。

 

「粗方解ったよ…。だが…!」

 

闇影はディライトドライバーを腰に巻き…

 

「今はやらなきゃいけない事があるんだ!変身!」

 

KAMEN-RIDE…DELIGHT!

 

カードを装填し、ディライトへ変身した。

 

『不本意だが、君を倒して戻らせて貰う!』

 

『倒せたらの話だけどね!』

 

ディライトはライトブッカーをソードモードにし、電王GFに斬りかかった。だが、彼は軽快なステップを踏み、攻撃を受け流した。元々電王の基本フォームの中で彼は瞬発力が速く、攻撃が回避され安いのだ。反面、攻撃に打たれ弱いのが弱点だが。

 

『くっ…!なかなか当たらない…!』

 

『そんなんじゃ駄目だって!ふっ!それっ!』

 

『ぐっ…!ぐわっ!!』

 

電王GFはその軽やかな動きと共にディライトに素早い打撃を繰り出した。攻撃力も相当強い様だ。

 

『まだまだっ!!』

 

更に打撃でディライトとの距離がかなり離れたら、銃を乱射した。

 

『があぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

その攻撃でディライトはビルの壁まで押し出された。

 

 

 

一方、ユウジ達は…

 

 

『くっ…!』

 

『どうしマシタ?この程度なノカ?』

 

『何とか二人倒せたのはいいが…コイツは別物だな…。』

 

あれから、二人のオルフェノクを倒したのだが、ローズOはその中でもかなり上位の力の持ち主だ。オーガやリュウガ、オルフェノク三人の力を持ってしてでも倒す事は敵わなかった。

 

『ま…まだだぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

『だ…駄目だ!ユウジ!そんな真正面から言っても…!』

 

リュウガの忠告を無視し、オーガストランザーでローズOに斬りかかるオーガだが…

 

『何!?』

 

その瞬間、ローズOは薔薇の花弁となり姿を消した。

 

『何処だ…何処にいる!』

 

『ここにいマスヨ。』

 

『な!ぐああああっっっっ!!!!』

 

ローズOはオーガの背後を取り、後ろに強く蹴り上げ光弾を撃ち出した。その弾みでオーガの変身は解除され、ベルトはローズOの足下まで吹き飛んだ。

 

『オーガギア…確かに返して貰いまシタヨ。』

 

そして、そのまま拾い上げた。

 

『やりましたね!会長!』

 

「エエ…。さて、後は彼等をEraseしたらあの方をSearchしましょう。我々の…『オルフェノクの王』を!」

 

キョウジ達の真の目的は「オルフェノクの王」を探す事だったのだ。

 

『オルフェノクの…王…?』

 

「Yes!我々オルフェノクは一度Deadし蘇り、強大なPowerを手にシタ。But、そのPowerに肉体が着いていけずやがては滅んでしまいマス…。」

 

『……!』

 

スワンOはキョウジの言葉に驚愕した。オルフェノクはその力に人間の身体が着いていけず、最終的には自身が滅んでしまうのだ。

 

「だが、あの方は…Kingはその崩壊の危機から我々をSafeするPowerを持っていマス!そして、そのKingはまもなく目覚メル!それを守る為に作られたのがこの帝王のベルト、オーガギア…そして…!」

 

『……か。』

 

『?相馬君?』

 

ユウジは下を向きながら何かを呟いていた。

 

『王の復活なんて…絶対に…させるかあぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

ユウジは強い咆哮をあげ、顔にオルフェノクの模様を浮かばせ、チェスの駒「騎士」をイメージしたオルフェノク「ホースオルフェノク」へと変貌した。

 

『ウオォォォォッッッッ!!!!』

 

そして、そのままキョウジに向かって走り出した。彼が王の復活を其処まで阻止する理由は…?




次回はもう一つの「アレ」も出ます!!

そして…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6導 限りある命、限り無き想い

オーガ編後半!

オーガと対なす「アイツ」…言うまでもありませんね。


『ウオォォォォッッッッ!!!!』

 

ユウジ=ホースオルフェノクは魔剣を携えて、キョウジに向かって突進した。

 

「ふっ!!」

 

だが、それは片手で軽々と受け止められてしまった。そしてもう片方の手から光弾を撃った。

 

『グアァァァァッッッッ!!!!』

 

その衝撃でホースOは壁まで打ち出された。だが…

 

『…王は…復活させない!!グアァァァァッッッッ!!!!』

 

またも咆哮をあげたホースOは足を四本にし、ケンタウロス形態となりキョウジに再び突撃した。

 

「ふっ…この程度のAttack等…何っ!グガッ!!」

 

キョウジはホースOを甘く見過ぎた為、彼の急スピードな突進を諸に受けて吹き飛んだ。そして、その弾みで持っていたオーガギアを落としてしまったのだ。

 

『…オーガギア…!!』

 

ホースOはすかさずそれを拾い上げ、距離を取った。

 

『会長!!大丈夫ですか!?』

 

先程の生徒会の副会長で唯一の女生徒らしきオルフェノクが自身の影を伸ばしながら、キョウジの身を案じた。

 

「くっ…!!一旦、退きマスヨ…!!」

 

キョウジ達は花弁を散らし、その場から姿を消した。

 

『待てっ!!逃がすかっ!!』

 

『お、落ち着けって!相馬!つーか今は煌の野郎を探そうぜ!』

 

スネークOは尚も戦おうと頭に血がのぼってるホースOを羽交い締めして抑えた。

 

『黙れ!!あいつ等を倒し…オルフェノクの王もこの手で殺してやるっ!!』

 

スネークOの言葉にも耳を貸さず、ホースOは殺意を撒き散らしていた。その時…

 

『相馬君、ちょっとゴメンね。うりゃっ!!』

 

『ぐはっ!!』

 

『『『ええええぇぇぇぇっっっっ!!!!何やってんのぉぉぉぉっっっっ!!!!』』』

 

リュウガ、スネークO、クレインOはスワンOの正拳突きで気を失いホースOからユウジの姿に戻った光景に大きくツッコんだ。

 

「これで静かになった。さ、ウチに運ぼ?」

 

『『『は、はい!了解しました!!!!』』』

 

三人は黒深子の笑顔に怯え、敬礼してユウジを運んだ。

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

一方、ディライトは、

 

『うっ…!くっ…!』

 

壁に打ち付けられ、ダメージが大きくなかなか動く事が出来ない。

 

FULL-CHERGE!

 

電王GFは止めを刺す為、ベルトにパスをセタッチした。そして、エネルギーが集中したデンガッシャーの銃口をディライトに向けた。

 

『最後いくよ、いい?…答えは聞いてない。』

 

『く、くそっ!』

 

ATTACK-RIDE…ILLUSION-SHADOW!

 

ディライトは一枚のカードを装填する。それに気づかない電王GFは決め台詞を言いながら自身の必殺技「ワイルドショット」を放ち直撃させた。しかし、爆風が晴れたその場にディライトはいなかった。

 

『あれ?いない。消えたのかな?』

 

電王GFはあのまま消えたのだと推測していた瞬間…

 

『後ろだ!はぁっ!』

 

『ぐあああっっっっ!!』

 

なんと電王GFの背後からディライトが攻撃した。

 

『な、何で!?何で何で!?』

 

予想外の事態に狼狽する電王GF。そんな彼に対してディライトは種明かしに一枚のカードを見せた。

 

『この「イリュージョンシャドウ」のカードを使って自分の影分身を作って身代わりにしたのさ。ちょっと悪い事したけどね。』

 

ディライトは攻撃が来る寸前に力を振り絞り今のカードを使い、身代わりの影分身を作り何とか攻撃を回避したのだ。

 

『形勢逆転だな。君の負けだ!』

 

ディライトはライトブッカーをガンモードに変形させ、電王GFに向けた。

 

『ど…どうしよ…!パ、パスは…!?』

 

電王GFはパスを探すが、先程の攻撃の際投げ捨ててしまった為何処にあるのか分からなかった。

 

「電王、もういい…。此処は下がれ…。」

 

突如謎のオーロラから赤いフードの女が現われ、電王GFに退避するよう命じた。それと同時に彼はそのオーロラへ吸い込まれる様に包みこまれた。

 

『いやだいやだ!!僕があいつをやっつけるんだぁっ!!』

 

電王GFは駄々をこねながらオーロラの中へ消えていった。

 

『お前は…誰なんだ…!』

 

ディライトはダメージを受けた体を抑えながらフードの女に尋ねた。

 

「私の名は紅蓮(グレン)…。影を監視する者だ…。」

 

『紅蓮…。影を監視…?』

 

謎の女、紅蓮の「影を監視する者」という言葉にディライトは眉をひそめた。

 

「私は、影の世界に何らかの影響が及ばないかを監視、排除する使命…。」

 

『俺はその排除の対象になっているのか…!』

 

「ディライト…、貴様が現れた事でこの世界に目覚めぬ筈の王が目覚める…!王を越えし王…オルフェノクの『帝王』が!!」

 

『!!オルフェノクの…帝王…!?』

 

紅蓮は「オーガの世界」に目覚めぬ筈の「オルフェノクの帝王」が目覚めると言った。

 

「そして貴様は、その帝王に滅ぼされる運命を辿るのだ!!」

 

そう言い切った紅蓮は謎のオーロラの中へと消えていった。

 

『ま、待てっ!!』

 

ディライトは紅蓮を呼び止めようとするが、自身もオーロラに包まれた。

 

 

 

「…!ここは…戻って来たのか…?…黒深子の家に戻ろう。ん?君は…。」

 

いつの間にか変身が解け元の世界に戻った闇影は、一先ず黒深子達と合流する事にした時、ある人物と出会った。

 

 

一方、白石家では…

 

 

「ふぅ…。一先ずここへ寝かせましょう。」

 

家まで戻った黒深子達は気を失ったユウジをソファーに寝かせた。

 

「それにしても、相馬君はどうして彼処まで王を倒す事に拘っていたのかしら?」

 

黒深子は、あの温厚なユウジが王を倒す事に強い執着心を持っていた事に疑問を感じた。

 

「つーかおめぇ、あまり無茶すr「何か言った?」すいません。」

 

ナオヤは先程の黒深子の行動を諫めたが、拳を握った彼女を見て即座に謝った。

 

「それよりこれからどうするの?オーガの正体がバレちゃったから学園には迂闊に近づけないわよ?」

 

確かに、ユウジがオーガである事がキョウジに知られた今、迂闊に流星学園に行くのは無謀だ。

 

「…今は下手に彷徨くより、暫く私の家にいた方がいいよ。」

 

黒深子はユウジ達に自分の家に匿う事を提案した。

 

「…いいの?迷惑かけちゃって。」

 

「私達友達でしょ?友達が困っているのを助けちゃ駄目?ユカちゃん。」

 

ユカは黒深子に迷惑をかけてしまう事を案じるが、彼女の優しい言葉にその懸念は消えた。

 

「クミちゃん…ありがとう!」

 

「んじゃ!お言葉に甘えるぜ!」

 

ユカとナオヤは黒深子に感謝し、この家に匿わせてもらう事にした。

 

「ただいま~。」

 

そこへ闇影の声が玄関から聞こえた。それを聞いた黒深子達は玄関へ向かった。

 

「ただいまって…先生!大丈夫だったの!?」

 

黒深子は闇影の能天気な口調に呆れつつ心配をした。

 

「ああ、何とかね。」

 

「でも…無事で良かった…。で、何でその子も?」

 

黒深子は闇影の無事な姿に安心した。しかし、一緒に連れている先程因縁をつけられていた少年に注目した。

 

「ああ。帰る途中で見かけて、何か一人で突っ立ってたんだ。何を聞いても全然答えないから、とりあえず此処で預かろうと思ってな。」

 

「また勝手なお節介を…何で警察に行かなかったの?」

 

謎の少年をこの家で預かろうと言う闇影に額に手を当てる黒深子は尤もな疑問を問うが…

 

「そうしようとしたら手を引っ張って首を振るんだ。何か嫌な事があるのかと思って…」

 

「この結果って訳ね…。」

 

「そゆ事。」

 

「はぁ…もういいわよ。三人も四人も変わらないし…。」

 

「ありがとう!よかったな、テルオ君!」

 

「何でその子の名前知ってるんだ?」

 

コウイチは何故少年の名前を知っているのか闇影に尋ねた。

 

「ん?ほら、付けてる名札に『流星小学四年生 華方(はながた)テルオ』って書いてるだろ?」

 

「「「「あ、さいですか…。」」」」

 

四人は普通過ぎる闇影の返答に呆れながら納得した。

 

「あら、今日は沢山料理をつくらなきゃね。」

 

こうして四人は黒深子の家で厄介になった。(その後ユウジは目覚めた)その日の夕食はとても賑やかであり、有意義な時間だった。夕食後は皆でゲームをしたり談笑したりと申し分がないくらい楽しんだ。女性陣が風呂に上がった時、何故かコウイチとナオヤが横たわっていたのを除くと…。そんな日が数日続いた。

 

 

―翌朝

 

 

「あれ?相馬君とテルオ君は?」

 

皆が目覚めた時、ユウジとテルオがいなくなっていた。

 

「おいおい!やべぇんじゃねぇか!?」

 

「相馬君は大丈夫かもしれないけど、テルオ君だけだと危険だわ!」

 

「落ち着いて!二人一緒かもしれないだろ!?」

 

二人がいなくなった事で皆は騒ぎだした。

 

「とにかく二人を探そうよ!」

 

「そうだな。」

 

二人を探そうと決めた時…

 

 

【朝のニュースです。オルフェノクの硬化した遺体が発見される事件が再び発生しました。最初の二丁目で起きた事件から今回で十件目です。警察の調査によると…】

 

 

何故かつけっ放しになっているテレビからのニュースが闇影の耳に流れた。

 

「(オルフェノクの帝王……固まった遺体…二丁目…)!!」

 

「先生!どうしたの!?」

 

「急がないとまずい事になる!!」

 

闇影は突然その場を駆け出して、家を出た。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!先生!」

 

 

 

―とある森

 

 

オーガに変身したユウジがテルオにオーガストランザーを振り上げようとした時…

 

「止めろ!!」

 

闇影と黒深子がその場に現れた為、オーガは寸止めをして変身を解いた。

 

「二人共、どうして此処に?」

 

「君こそ何しようとしてたんだ!!」

 

闇影はユウジの質問には答えず、逆に彼の行動を指摘した。

 

「僕は…を…」

 

「??」

 

「僕は王を…オルフェノクの王を殺そうとしているだけだ!!」

 

「「!!」」

 

なんとユウジは、テルオの正体がオルフェノクの王だと言うのだ。

 

「何言ってるのよ!!テルオ君が王だなんて…そんな事…!」

 

「いや。間違いないよ。」

 

「先生!?」

 

「最初のオルフェノクの固まった遺体が発見されたあの二丁目は…俺がテルオ君を見かけた場所だったんだ…。」

 

「だからって…」

 

「それだけじゃない!その子が通っていた学校にも聞いたんだ!そしたら彼は植物状態で入院していてずっと出席していなかったんだ!そしてその病院も彼以外皆灰になっていたんだ…。」

 

闇影は密かにテルオの近辺調査をし、その結果と先程のニュースを照らし合わせた結果、彼が王だと判断したのだ。

 

「そんな…。」

 

「分かっただろ?奴が僕の…『僕達』の人生を…」

 

「『僕達』?…!!テルオ君がいない!!」

 

ユウジの言葉に疑問を持っていた時、いつの間にかテルオの姿が消えていた。

 

「奴め…何処に!?」

 

「…王は覚醒の為にオルフェノクを多く喰らう必要がある…。そしてその餌場に相応しいのが…」

 

「…!!流星学園!!」

 

テルオは王の覚醒の為に流星学園に向かったのだと闇影は推測した。

 

「コウイチ達も其処で彼を探しに行っている…。直ぐに行こう!!」

 

「!!あいつは、僕が…刺し違えてでも…!!」

 

「相馬君…君は其処にいるんだ…。」

 

流星学園に向かおうとするユウジに闇影はこの場で待機する様に言った。

 

「何故ですか!?」

 

「自分が今何を言ったのか全く解っていないからだ!!」

 

「!!…何を言って…!!」

 

納得のいかないユウジは闇影に近づこうとした時…

 

「先生、私が説得するわ。」

 

黒深子は闇影を庇う様に前を遮った。そして、ユウジを説得すると言うのだ。

 

「黒深子…けど!!」

 

「相馬君の気持ちは私がよく分かるの…だから先に行ってて。」

 

「…分かった。また君に任せるよ。先に行く!!」

 

闇影はこの場を黒深子に託し、流星学園へと向かった。

 

「…さて、貴方に聞きたい事があるの。貴方がそこまで王を倒そうとする理由は何かしら?」

 

「…。」

 

「『僕達』の人生って事は、蛇塚君とユカちゃんも…って事?」

 

「…!!」

 

ユウジは一向に口を開かなかったが、今の言葉に反応し口を開き始めた。

 

「…それだけじゃない…。」

 

「何が?」

 

「僕達は…人間としての命だけじゃなく、大事な物迄奪われたんだ!!」

 

「!!」

 

 

―流星学園

 

 

「ん?あれって…」

 

学園迄探しに行ったコウイチ達はテルオが園内に入るのを見かけた。

 

「テルオ君!!無事で良かっ…」

 

テルオの下へ彼等が駆け寄ろうとしたその時…

 

「…!!」

 

「うぐっ!!」

 

「!!…え?」

 

テルオの影から飛蝗…と言うより、「守護のベルト」ファイズ・カイザ・デルタギアの主本(モデル)であるオルフェノクの王「アークオルフェノク」が現れ、掌からレーザーの様な物を生徒達に放った。その瞬間…

 

「グアァァァァッッッッ!!!!」

 

「ギャアァァァァッッッッ!!!!」

 

生徒達は青白い炎に包まれ、その身体は化石の様に固まってしまった。そしてオルフェノクは固まった生徒達を喰らった。

 

「うっ…!!」

 

あまりの惨たらしい光景に目を反らすコウイチ達。

 

「つーか何なんだよ…これ…」

 

「最近ニュースでやってるオルフェノクの硬化事件に似ているわ…。」

 

「でもなんでテルオ君が…」

 

「そのBoyこそ、我々のKingなのデース!!」

 

「その声は…!」

 

コウイチ達の前にキョウジと副会長の女生徒が現れた。

 

「つーかあの坊主が王って…どういう事だよ!!」

 

「いや、正確にはそのBoyはKingの依り代にしか過ぎまセン…。」

 

「…!!どういう事だ!!」

 

「Kingは九死に一生したChildの中に宿り、そのChildの意識やSoulを喰い尽クス…」

 

「何…!?」

 

「そして!自身をAwakeするべくオルフェノクを喰らう為のWalkするDollになるDestinyなのデース!!」

 

キョウジはテルオの現状を高らかに説明した。

 

「てめぇ…そんなくだんねぇ事の為にテルオを!!」

 

「お前は絶対に…!!」

 

「許さない…!!」

 

テルオを「人形」扱いするキョウジの発言に怒りを露にするコウイチ達。ナオヤとユカはスネークオルフェノクとクレインオルフェノクに変化し、コウイチはVバックルを召喚し…

 

「変身!」

 

カードデッキをセットしリュウガに変身した。

 

「ふ…。邪魔はさせまセンヨ。」

 

キョウジは女生徒からアタッシュケースを受け取り、そこからベルトを取り出し腰に巻きつけ「ある物」も取り出した。

 

『お前…まさかそれは…!!』

 

キョウジが取り出した物は、全身が白色の携帯電話だった。無論只の携帯ではない…。

 

「『帝王』のベルトは何もオーガだけでは無いのデスヨ…。お見せしまショウ!もう一つの帝王…」

 

【315】【STANDING-BY…】

 

「『天の帝王』の名を持つ…サイガのPowerを!!Change!!」

 

キョウジは白い携帯「サイガギア」で入力コードを押し、携帯を閉じてベルトにセットした。

 

【COMPRETE!】

 

その瞬間、キョウジの身体に青白いフォトンブラットが包まれ、強烈な光を放つ。光がやんだ時、全身を白を基調としたスーツと「Ψ」の形をした複眼が特徴の「仮面ライダーサイガ」へと変身した。

 

『It's show time!!』

 

サイガはそう言いながら親指だけ出した右手を首の左側まで持っていき右側にずらす、所謂「首斬り」のジェスチャーをした。

 

『あれが…もう一つの帝王…!!』

 

『こいつは気を引き締めねぇとな!!』

 

『そうね…行くわよ!!』

 

SWORD-VENT

 

リュウガはドラグセイバーを召喚し、三人はサイガに向かって突撃した。しかし、ドラグセイバーは片手で受け止められ、スネークOのパンチももう一方の片手で彼諸共弾かれ、クレインOの手刀も首を反らして回避し、サイガギアをガンモードに変形しリュウガとクレインOに銃撃した。

 

【BURST-MODE】

 

『ぐあぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

『きゃあぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

『無駄デスヨ。』

 

更にサイガは、背中に装備された専用アタッチメント「フライングアタッカー」で空中に浮かんだ。

 

『と、飛んだ!?』

 

『おいおい!!つーかあんなん反則だろ!?』

 

スネークOの反論もむなしく、サイガはフライングアタッカーから光子バルカンの雨をリュウガ達に浴びせた。

 

『『ぐあぁぁぁぁっっっっ!!!!』』

 

『きゃあぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

三人はサイガの空中からの乱射攻撃を諸に受け、地に伏せてしまった。

 

『これで始末しまショウ…。』

 

【EXCEED-CHARGE!】

 

サイガはギアを開き、「ENTER」のボタンを押した。サイガは右腕にフォトンエネルギーを集中させ、空中からの急降下パンチをする必殺技「スカイインパクト」で止めを刺そうとした。その時…

 

『これでFinis…『させるかっ!!』グギャアァァァッッッッ!!』

 

上空から専用マシン「マシンディライター」に乗ったディライトが、サイガを轢き飛ばした。そして、そのまま激しく着地した。

 

『皆!!遅れてすまない!!大丈夫か!?』

 

『な…何とかな…。』

 

『つーか無茶すんなよな…。』

 

『助かりました…。』

 

リュウガ達はディライトの姿を見て身体を支えながら立ち上がり、無事だと言った。

 

『き…貴様ァァッッ!!よくも私に恥をっ!!』

 

サイガは轢かれた事に激しく憤りながらも立ち上がった。

 

『あれが…王…。』

 

ディライトは身体を光らせ力を溜めているアークOの姿を見て、このままでは覚醒するのは時間の問題だと分析した。

 

『完全に復活する前に倒すぞ!!』

 

FINAL-SHADOW-RIDE…FA・FA・FA・FAIZ!

 

ディライトは完全覚醒しようとするアークOを倒すべく、自身の影をファイズ・ブラスターフォームにFSRさせた。

 

FINAL-ATTACK-RIDE…FA・FA・FA・FAIZ!

 

ディライトとSファイズBFはライトブッカーとファイズブラスターを構え、必殺技「フォトンバスター」を射出しようとするが…

 

『テ、テルオ君!?』

 

なんとテルオがアークOの前に立ち塞がったのだ。

 

『くそっ…!!これじゃ攻撃でき…うわぁっっ!!』

 

ディライトは躊躇った隙をつかれ、女生徒が変化したロブスターオルフェノクの不意討ちを受けた。

 

『王の邪魔はさせない…。』

 

『Good jobデース!!あとどれくらいでAwakeしマスカ?』

 

『あと一人分のオルフェノクを喰らえば王は復活します。』

 

アークOの復活にあと一体のオルフェノクを文字通り「生け贄」が必要だと言ったロブスターO。それを聞いたサイガは…

 

『I see…ならば…。』

 

フライングアタッカーの操縦捍を引き抜いた「トンファーエッジモード」でロブスターに攻撃した。

 

『うあっ!!な、何をするんですか!?会ちょ…!!』

 

ロブスターOは突然サイガから攻撃を受けて困惑したが、アークOの面前迄倒され光線で貫かれその身が青白く燃えた時、一瞬で理解した…。

 

自身が「生け贄」である事を…

 

『そんな!!何故ですか!?会長!!』

 

『喜びなサイ…。Youの犠牲により、Kingを蘇る!!』

 

『そんな…そんな!!私は!!会長…の事…ガッ!!』

 

ロブスターOの最期はサイガの裏切りを受け、王の「餌」となり喰われる無惨な最期だった…。

 

『お前…仲間を犠牲にして何とも思わないのか!?』

 

『おお…ついに…ついにKingが!Kingが!Kingが!!』

 

ディライトの非難にも耳を貸さずに、サイガは更に輝くアークOを見て狂った様に叫んでいた。黒いオーラを纏いながら…。

 

『…ゥウウウウッッッッ…!!』

 

するとアークOの身体が徐々に点滅する様に光りだし、その身体は変化しつつある。同時にテルオの肉体が崩れ始めてきた。そして…

 

『ウオォォォォッッッッ!!!!』

 

『『『『!!!!』』』』

 

華方テルオ「だった」存在は崩壊し、アークOは違う「何か」に変化…いや、進化した。

 

『フフフ…ようやく復活出来ましたね。』

 

見た目とは裏腹に少年の様な声で話すその「存在」は、身体がオーガで頭がサイガのそれと酷似した姿をしていた。これこそ「王を越えし王」…帝王「カイザーオルフェノク」である。

 

『あれが…オルフェノクの帝王…。』

 

『何て威圧感なんだ…。』

 

ディライト達はカイザーOの禍々しいオーラに戦慄していた。

 

『フハハハ…!!目覚メタ!!我らの帝王がついに復活したノダ!!』

 

サイガは帝王の誕生に歓喜しながら、彼の下へと近づいた。

 

『帝王よ…。新たなお姿でのご復活おめでとうございます。』

 

『薔薇ノ宮キョウジ…。貴方のこれまでの働きには感謝しています。此方へ。』

 

『!!では!!』

 

カイザーOは右手を前にかざし、サイガにエネルギーを与えた。サイガは元のローズOの姿に戻り、トゲの付いた蔦が鎧の様に全身を覆ったローズオルフェノク激情態へと変貌した。

 

『フハハハ…!!力が溢レル…。私は不死の存在とナッタ!!』

 

ローズOは不死となった自身に完全に酔いしれていた。そして自身の蔦で細剣を作り出し、ディライト達に襲いかかった。

 

―とある森

 

 

ユウジは自分が何故王を倒そうとするのかを話した。ある日、王が現われ両親と幼馴染みの木下チエと共に殺害され、自身も王の手によりオルフェノクにされたのだ。ナオヤもギタリスト志望だったのだが、王によって腕を負傷され二度とギターが弾けなくなった上に殺害、更にオルフェノクにされ、ユカも恋人の菊川ケイタロウと共に殺され、自身もオルフェノクにされたのだと言う。

 

「その復讐としてなの?」

 

「いいや…。僕は僕自身も許せないんだ!こんな化物としてのうのうと生き延びている自分が!」

 

ユウジは自身がオルフェノクである事を許せないでいた。

 

「だから、王を倒した後は…死んでも…!!」

 

「……!!」

 

王を倒した後に死のうと考えるユウジに黒深子は平手打ちをした。

 

「死ぬなんて…簡単に言わないで!!」

 

「……。」

 

「死ぬ為だけに生きるなんて…私は絶対に許さない!!」

 

「…!!君に何が解るんだ!!」

 

「解るよ!!私も…そうだったから…。」

 

黒深子はこれ迄自分の身に起きた事を話した。自身も死を望んでいた事、闇影との出会いで変われた事を…。

 

「私は自分が何の為に生き返ったのか見つける旅をしているの…。相馬君にだってある筈よ。」

 

「僕が…何の為に生き返ったのか…。僕は…僕は…。」

 

 

 

―流星学園

 

 

『『ぐわぁぁっっ!!』』

 

カイザーOとローズOの圧倒的な強さに倒されるディライト達。ナオヤとユカ、リュウガは気絶し、ディライトも変身解除される程追い込まれた。

 

「くっ…。何て強さなんだ…!!」

 

闇影は肩を押さえながら膝を付いて彼等の強さに恐怖していた。

 

『残るは貴方だけですね。』

 

カイザーOは右腕を剣状に変化させ、闇影に近づき振り上げようとした。

 

「させないわ!!」

 

『グアッ!!』

 

黒深子が乗ったホースOケンタウロス態の飛び蹴りがカイザーOに炸裂した。

 

「先生!!大丈夫!?」

 

「黒深子…。ああ、何とかね。それより…。」

 

闇影は立ち上がりながらホースOの方に視線を向けた。

 

『…まだ答えが見つからないけど…今まででは駄目だと言う事は解りました!』

 

「そっか…。」

 

『おや?君はあの時の…また死にに来たのですか?』

 

『何故僕達の大切な人達を殺し、僕達をオルフェノクにした!!』

 

ホースOは声を荒げてカイザーOに尋ねた。すると…

 

『誰でも良かったんですよ。』

 

『何!?』

 

『私は人間を確実にオルフェノクにする能力を持っています。しかし、三回使うと一時的に睡眠状態に陥ってしまう…そうなる前に…。』

 

『人が「絶望」する姿を見たいんですよ!!大切な物を全て失い、自身は異形の存在として生き、悩み!!苦しむ様を!!』

 

カイザーOは両腕を広げ高らかに叫んだ。人を絶望の淵まで落とし、苦しめる事を楽しんでいるのだ。

 

『それだけの為に…両親を!!チエを!!ウオォォォォッッッッ!!!!』

 

ホースOは強く咆哮し、全身に鎧の様な鱗を纏った「激情態」へと変貌しカイザーに襲いかかった。

 

『無駄デスヨ!!はぁっ!!』

 

『グアッ!!』

 

ローズOが掌から光弾を放ち、ホースOを返り討ちにされ、その衝撃でユウジの姿に戻ってしまった。

 

『このまま死ぬのは嫌でしょう?私の力で不死になりませんか?そうする事で死の運命から逃れられるんですから。』

 

倒れたユウジを見下す様にカイザーOは彼に不死の力を得る事を勧めた。

 

「…人は、遅かれ早かれ何れ死ぬ。それはライダーも…オルフェノクも同じだ。だからこそ皆精一杯生きようとしているんだ!」

 

『!?』

 

「限りある時間の中で限りない夢や想いを抱いて生きるからこそ、命はとても尊い物なんだ!」

 

「限りがあるからこそ…命は尊い…。」

 

「相馬君。君はどう生きたいんだ?」

 

闇影はユウジにどう生きたいのかを尋ねた。彼の答えは…

 

「僕は…オルフェノクとして…人間として生きる!!」

 

ユウジは立ち上がり強く宣言した。その答えに闇影は微笑んだ。そして手元の三枚のカードが輝きを取り戻した。

 

『貴方…一体何者なんですか!?』

 

「お節介教師な仮面ライダーだ!!宜しく!!」

 

闇影はディライトドライバーを、ユウジはオーガベルトを装着そしてギアのボタンを操作した。

 

0・0・0

 

STANDING-BY…

 

「「変身!!」」

 

KAMEN-RIDE…DELIGHT!

 

COMPRETE!

 

闇影はディライトへ、ユウジはオーガへと変身した。

 

『さて、輝く道へ導きますか!!』

 

『ならば此方は死の道へ導きましょう!!』

 

ディライトはライトブッカーを、オーガはオーガストランザーを構えてカイザーOとローズOに斬りかかった。

 

『はぁっ!せいっ!そりゃっ!!』

 

『くっ!!あの瀕死の身体の何処にそんな力が…グアァッ!!』

 

『帝王!!おのれ、貴様ラ…ウアァッ!!』

 

カイザーOとローズOは二人の斬撃を防いでいたが、予想以上の底力に押されダメージを受けてしまった。

 

『おのれぇ…こうなったら!!』

 

カイザーOは全身から触手の様な物を校舎迄伸ばし生徒達を喰らってエネルギーを供給しようとした。

 

『頂きますよ!!貴方達の命を…何!?』

 

突然触手が上空に浮くサイガの光子バルカンによって全て灰となった。

 

『先生!!こっちは任せて!!』

 

サイガの正体はなんと黒深子だった。

 

『黒深子!!いつの間に!?』

 

『今校舎にいる人達はコウイチ達が安全な場所に誘導しているわ!!』

 

『く、くっそぉぉぉぉっっっっ!!!!』

 

『グッジョブ、黒深子!さて、こっちも…。』

 

サイガにサムズアップしたディライトは新しいカードを装填した。

 

FINAL-FORM-RIDE…O・O・O・ORGA!

 

『力を抜いて。』

 

『えっ?うわああっっ!!?』

 

ディライトがオーガの背中に手を当てた瞬間、オーガは自身の武器・オーガストランザーを模した巨大な大剣「ストランザーオーガ」に変形した。

 

『でぇりゃあっっ!!』

 

『『ガァッ!!』』

 

ディライトの一振りでカイザーOとローズOは強いダメージを受けた。

 

『ウオオオオッッッッ!!!!』

 

カイザーOとローズOは片手に全エネルギーを込めた巨大光線をディライトに放ち、ディライトもストランザーオーガを正面に向け切っ先から巨大な光の刃のレーザーを放った。

 

『これで決めるぞ!!』

 

FINAL-ATTACK-RIDE···O・O・O・ORGA!

 

『撃ち斬れぇっっっっ!!!!』

 

『『ギャアァァァァッッッッ!!!!』』

 

切っ先のレーザーは更に大きく伸び、横一文字に斬り裂くFAR「ディライトバニッシュ」がカイザーOとローズOを斬り裂き、「Ω」の文字を残し青白く燃え灰化した。

 

 

 

「何だよ。俺達に話って。」

 

「僕は、オルフェノクの崩壊を防ぐという目標…夢が見つかったんだ。君達にそれを手伝って欲しいんだ!!…駄目かな?」

 

二人は暫く沈黙をしていたが…

 

「当たり前だ…んなモン幾らでも手伝ってやるよ!!」

 

「部長命令だしね♪」

 

「二人共…ありがとう…!!」

 

三人が楽しく話しているのを嬉しそうに見守る闇影達。彼はその場からひっそり去っていく。

 

 

 

「夢を見つけた少年少女達…若いって良いわね~♪」

 

影魅璃はユウジ達三人が楽しく研究している絵が描かれたキャンパスを嬉しそうに眺めていた。

 

「彼等なら実現出来るさ。オルフェノクの運命を変える事が!」

 

「Yes!!」

 

「「Yes?」」

 

黒深子が英語で頷いたのを聞き、首を傾げる闇影とコウイチ。

 

「黒深子ちゃん…まさかサイガに変身したせいで…!!」

 

「あの生徒会長みたくなったのか!?何かの病気なのか!?」

 

「No!Don't touch!」

 

闇影と黒深子は部屋中でおいかけっこの如く走り出した。その時…

 

「また絵が変わったわ!」

 

新たなキャンパスには無数の薔薇の花弁が散る部屋に空席の玉座と、その傍らに剣が飾られた絵が描かれていた。

 

「闇の…キバ…。」




前の世界で出番がなかった分、オーガの世界と言う事で黒深子には今回多く活躍させました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7導 裏楽章・憂うる闇のキバの王

タイトル通りダキバ編、私の一番好きなダークライダーです!!


―バイオリン工房・輝(かがやき)

 

 

「ぜ…ぜんぜい…。何…ぞの液体…。」

 

「凄ぇ臭いだぞ…。」

 

黒深子とコウイチは鼻をつまみ顔をしかめながら、擂り潰した「何か」を悪臭がする謎の液体に混ぜている闇影に尋ねた。

 

「ああ。この魚の骨はバイオリンのニスの材料になるんだ。だからこうやって混ぜてるんだ。」

 

「だがらっで…うぅっ…。」

 

「もう少しで終わるか…」

 

突然、インターホンが鳴り、影魅璃はすぐさま玄関まで駆けつけた。

 

「は~い。」

 

ドアを開けると、白いジャケットに白手を着けた長髪の男が立っていた。

 

「あのぉ…ここって喫茶店ですか?」

 

「いいえ、ここはバイオリン工房です。」

 

「ああ、バイオリン。あれは素晴らしいですね~。」

 

どうやらこの男はここを喫茶店と勘違いしているようだ。そして影魅璃の訂正の言葉を聞いても話が噛み合わない返答をした。

 

「コーヒーでしたら、ウチで飲んでいきません?工房の見学も自由ですよ。」

 

「おお、それはありがたい。ではお邪魔します。」

 

影魅璃の言葉を受け男はここでコーヒーを飲む事にした。そしてコーヒーが出来る迄工房をせわしなく見学した。

 

「ほぉ。これは素晴らしい工房ですね。」

 

「ありがとうございます。」

 

工房を称賛する男に闇影は感謝の言葉で返した。

 

「こう素晴らしい物ばかり見ていると胸が熱くなって『脱ぎ』たくなりますね…。」

 

そう言うと男の顔にステンドグラスの模様が浮かび、そのまま蜘蛛をイメージしたスパイダーファンガイアへと変化した。

 

『チューリッヒヒヒ…。』

 

「!!ファンガイア…!!」

 

「あっ!おい、コウイチ!!」

 

『ウグッ…!!』

 

闇影が制止する前にコウイチはスパイダーFを殴り倒した。すると…

 

『な、何するんだびっくり!!いきなり殴るなんて酷いじゃないか!!』

 

「へ?」

 

スパイダーFの怒りの訴えにコウイチは間抜けな声で反応する。

 

『この店はファンガイアを差別するのか!!「親衛隊」に訴えてやる!!』

 

あまりの理不尽な対応にスパイダーFは怒りながら工房を出ていき、影魅璃が持ってきたコーヒーを「いらない!」と告げ外へ出た。

 

「ちょっと!あのまま出ていったら大変よ!」

 

「そうだな、急ごう!」

 

闇影達が外へ出た時、スパイダーFが中年の女性に近づこうとしていた。

 

「あの人が危ないわ!先生!!」

 

黒深子は闇影に変身を促すが、スパイダーは中年の女性に向かって走り出し…

 

『おばちゃ~~ん!!!!あの人がファンガイアだからっていきなり殴って来るんだぁぁぁ~!!』

 

なんとスパイダーFはその女性に泣きついていったのだ。すると…

 

「あんたぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

「ぐぎゃぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

その女性もとい近所のおばちゃんが此方まで菷を持って全速力で駆けつけ、コウイチをぶっ叩き三時間程説教を喰らわせた。「ファンガイアを差別するな!」「あんたどういう教育受けてんだ!」等々…。戻ってきた時には回覧板を持ちながら頭をクラクラさせていた。

 

「コウイチ…大丈夫か?」

 

「だ…大丈夫な訳…ねぇだろ…。」

 

「その回覧板には何が載ってるの?」

 

コウイチはふらつきながらも黒深子に回覧板を渡した。

 

「えっと…『ファンガイアとのコーラス会の募集』に『王城キャッスルドランの見学ツアー』…って、えぇっ!?」

 

回覧板の内容に驚く黒深子。それを横で見ていた闇影は顎に指を添えて結論を出した。

 

「…粗方解ったよ。この世界は人とファンガイアが共存する世界だ。」

 

「だからさっきの人がファンガイアを殴った事であんなに怒っていたのね。」

 

「ああ。此処ではそれが当たり前なんだな…。良い世界だ。」

 

闇影はこの人と異形が共存する世界を嬉しく思い、感動していた。

 

「後はこの世界のライダー『闇のキバ』を見つけるだけなんだけどなぁ…。」

 

三人は闇のキバことダークキバが何処にいるのかを考えていた時、二人組の男が現れた。

 

「…人間だ…。」

 

「ああ…人間だな…。」

 

「?どうかしまし…!!」

 

黒深子が尋ねた時、男達の顔にステンドグラスの模様が浮かび、ファンガイアへと変化した。だが、何故か顔にミイラの様なマスクを着けていた。

 

『『人間は…餌だ!ヘャアアアアッッッッ!!!!』』

 

突然ファンガイア達は吸命牙を浮かばせ、闇影達のライフエナジーを奪おうとした。

 

「うわっ!!おい!!人間とファンガイアの共存はどうしたんだ!!」

 

間一髪の所を回避しながら、闇影は共存について問いかけた。しかし…

 

『共存…愚かだな…。』

 

ファンガイア達はそれを無視し、無表情のまま攻撃を続けた。

 

「くっ…戦るしかないのか…変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

闇影は悔やみながらディライトへと変身した。

 

『新しい力でいくか!』

 

【SHADOW-RIDE…ORGA!】

 

【ATTACK-RIDE…ORGA-STRANSER!】

 

ディライトは自身の影をオーガへとシャドウライドさせ、専用武器「オーガストランザー」を召喚し互いに持たせた。

 

『はっ!せいっ!そりゃっ!!』

 

『『グガァッ!!』』

 

ディライトとSオーガは一瞬の隙を見せずにファンガイア達を斬りつけ、そのまま後退させた。

 

『止めだ…!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…O・O・O・ORGA!】

 

『斬り裂けぇぇっっ!!』

 

『『グギャアァァァッッッ!!!!』』

 

ディライトとSオーガの剣の切っ先から光の刃が伸び、そのままファンガイア達を「オーガストラッシュ」で斬り裂き、彼等は硝子の様に砕け散った。その瞬間…

 

『な、何だ!?』

 

突然複数の兵士がディライト達を囲みだした。そして一人のリーダーらしき女性が顔を出しこう言った…。

 

「全員動くな!!私は「王牙親衛隊」副隊長のユリだ。貴様等をファンガイア殺害の容疑で身柄を拘束する!!城まで来て貰うぞ。」

 

『「「ええぇぇぇっっっっ!!!!」」』

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

 

―キャッスルドラン・謁見の間

 

 

「だから誤解だって言ってるじゃないッスか!!」

 

「あのファンガイア達から襲って来たんですよ!!」

 

黒深子とコウイチは自分達は潔白だと強く訴えている。

 

「えぇい黙れ!!当事者同士の証言等信用出来ん!!」

 

が、ユリは全く聞く耳を持ってくれなかった。

 

「おいおいユリ。話くらい聞いてやれよ。『奴等』の居場所が分かるかもしれねぇんだぜ?」

 

「はっ!王の御前で申し訳ありません!」

 

茶髪でミュージシャン風の服を来た男の軽い口調の命令を聞き、ユリは左足を前にして膝まずいた。

 

「さて、自己紹介すっかな。俺の名はオトヤ、この国の王様だ。堅っ苦しくせず楽にしようや。」

 

この世界のファンガイアの王・オトヤという男はとても王とは思えない軽い口調で闇影達に自己紹介した。

 

「ありがとうございます。実は…」

 

闇影はオトヤ達にこれ迄の経緯を全て話した。

 

「ふーん。黒いオーラが人を怪人にする、ねぇ…。もしかしたら『今起きてる事件』と関係してるかもしれないな。」

 

「事件とは?」

 

「最近一部の人やファンガイア達がテロを起こしてるんだ。デモ、略奪、暴動果ては…自爆。」

 

「「「!!!!」」」

 

「今の行政、いや掟に不満を感じているテロリスト達が後を絶たねぇんだ。人とファンガイアの共存するって掟にな。」

 

どうやら今の掟に異を唱える者達によるテロ事件が後を絶たないようだ。そしてその事件の影響で民からの王家の信用に亀裂が生じ始めている事態なのだ。

 

「そんな事が…!!」

 

「一つ質問、お前等を襲ったファンガイア達の様子はどんなだった?」

 

「無表情な感じで、何故か顔にミイラの様なマスクをしていました。」

 

「無表情…顔にミイラのマスク…。」

 

オトヤは口元に手を覆い、怪訝な目をして何やら考え事をし…

 

「…お前達の言葉が本当なのか確かめる為にテロ撲滅に協力して貰う。」

 

「王よ!なりません!こんな素性の分からぬ者達を…」

 

「余計な口を出すな。これは『命令』だ。お前達、俺の部屋に来い。案内する。」

 

オトヤは闇影達の証言を確かめる為、テロ行動撲滅の協力を要請した。ユリはそれに反対だが「王の命令」ならばと渋々従った。

 

 

 

―王室

 

 

「私(わたくし)はマヤ。この国の王妃でございます。この度は貴方方を巻き込んでしまいまして大変申し訳ありません。」

 

「いえ。此方こそ何の事情も知らずにとんだ迷惑をかけてしまい申し訳ない限りです。」

 

腰まで届いた長い黒髪に黒い服を着たファンガイアの王妃・マヤは闇影達を巻き込んだしまった事を謝罪し、闇影も自身の行動が原因だと謝り返した。

 

「(それにしても、綺麗だな、マヤさん…特にあの胸が…痛でっ!)」

 

「(ああ、本当に…がっ!)」

 

闇影とコウイチはマヤのその美しい容姿に見とれていた。(コウイチは胸中心)その時、二人の足元に激痛が走った。それは…

 

「(何見とれてんのよっ!馬鹿っ!!)」

 

黒深子が怒りの表情で二人の足を踏んでいたからだった。

 

「オトヤさん、その仮面のファンガイアについて何かご存知でしょう?」

 

「!!」

 

「さっきその話を聞いた時、何か難しい顔をしてたんで何か知ってるんじゃないかな、と思って…。」

 

「…やれやれ、お前さん案外鋭いねぇ…。いいだろう、話してやる。」

 

オトヤは自分の考えを見通した闇影に感嘆し、話す事にした。

 

「今から数百年前に俺達ファンガイア族より性質の悪い種族がいた。それは…」

 

「レジェンドルガ…我等ファンガイア以上の力を持っており多種族を洗脳する事が可能な種族。しかし、嘗ての戦争で奴等は先代の王によって封印された…。」

 

オトヤの言葉に続いて話を進めたのは、白髪のパーマに片眼鏡をかけた黒いコートを着た細身の男だった。

 

「ビショップ…。」

 

「おっと、失礼。私は王の参謀を勤めるビショップと申します。実は王にお話したい事がございます。」

 

ビショップはオトヤに話がある為此処に着た様だ。彼の慇懃無礼な態度に少し顔を顰めながらオトヤは話を聞く体勢を取った。

 

「此処最近起きてるテロについてですが、あまりに奴等が王家がよく立ち入る場所で起きているので、若しかしたら此方の情報が漏洩しているやもしれないのです。」

 

「テロの首謀者は王家内部の者…って事か?!」

 

「あくまで可能性の話です。が、自分以外の者をあまり信用なさらぬよう用心に越した事はありません。

貴方はこの国を支える王…努々それをお忘れなきようお願い致します。」

 

そう言うとビショップは一礼をし、王室を後にした。

 

「……。」

 

「何よ!感じ悪い!」

 

「彼は彼なりに王を、この国を思っている故にあのような事を仰っているだけなのです。今はご勘弁を。」

 

黒深子はビショップの言動に不快感を抱くが、マヤはそれを庇護した。

 

「そのレジェンドルガが関係しているかもしれないんだな…。マスクのファンガイア達のテロを防がないと!」

 

「今日会ったばかりのお前達にこんな事を頼んで本当にすまないな…後で何人か兵をよこしておく。」

 

「はい!では行ってきます!」

 

闇影達はすぐさま王室を後にした。その時…

 

「頼んだぞ…うぅっ…!!」

 

オトヤは突然目頭を押さえてふらつき出た。

 

「オトヤ!大丈夫ですの!?」

 

「だ…大丈夫だって…ちょっとこけそうになっただけ…。」

 

「何処が大丈夫なものですか!貴方…最近全然休んでないでしょう?」

 

「んな事ないって…うっ!」

 

「オトヤ!!」

 

全く休息を取っていないという言葉を否定する前にオトヤは倒れそうになったが、マヤがそれを支えた。

 

「ほら、やっぱり疲れてる。少し働き過ぎではありませんの?」

 

「大丈夫だって…それに、俺には王として…一日でも早くテロを止めないといけねぇし…何より、俺には夢が…!!」

 

マヤは、あくまで王としての責務を果たすと言うオトヤを抱き締めた。

 

「貴方は王である前に、私の大切な夫です。少しだけ休みましょう…ね?」

 

「マヤ…。」

 

「オトヤ…。」

 

マヤは抱き締めたままオトヤの耳元でそう囁き、二人は唇を重ね合った…。

 

 

 

―闇影SIDE

 

 

「なかなか見つからないなぁ…。」

 

「ホントね…手がかりゼロだわ。」

 

闇影達は親衛隊の兵士団と外でミイラの仮面のファンガイアの情報を探ししていた。しかし、黒深子が口を尖らす様に有力な情報も見つからないでいた。

 

「二人共、弱音を吐かない!必ず見つかる筈だ…。絶対に!」

 

「ここまで根性のある人間は珍しいな…。我が兵にもこれ程骨のある者がいればな。」

 

「ルークさん…。」

 

闇影を称賛した長い黒髪の巨漢の男はルーク、「王牙親衛隊」の隊長である。彼は元々闇影達にユリ程敵意を抱いておらず極めて友好的だった。その後、二人は話が弾み意気投合し始めた。

 

「ん!そこにいるのは誰だ!?」

 

何かの気配に気付いた突然ルークは物陰に怒号を飛ばし、兵士達は武器を構えた。すると、一人の男性が現れた。

 

「俺?三条。なんてな。只のファンガイアさ。」

 

「ならば貴様に聞きたい事がある。ミイラの仮面をしたファンガイアについてだ。」

 

ルークはこの三条という男にミイラの仮面のファンガイア達の情報を持っているかどうか聞き出した。

 

「さてな…。それは力づくで聞いてみな!」

 

三条は縞馬をモチーフにしたゼブラファンガイアに変化した。それと同時複数のファンガイア達が現れ闇影達に襲い掛かった。

 

『『『ヘャアァァァァッッッッ!!!!』』』

 

「くっ…そうきたか…!皆の者!行くぞ!!」

 

『うおぉぉぉぉっっっっ!!!!』

 

ルークは敵の攻撃を腕で掴んでは投げ、掴んで投げと全く物ともせず屠っていき、殴りかかってきた者も蹴り飛ばしていき、兵達も次々と敵を薙ぎ倒していった。

 

「す、凄い…。これが親衛隊の強さ…!」

 

闇影達はルーク達親衛隊の戦いぶりに呆ける様に見ていた。

 

「何だ?この程度で王家に歯向かう等笑わせる。」

 

『うるせぇっ!!』

 

ゼブラFは剣を装備しルークに斬りかかった。しかし、それはいとも簡単に振り払われた。その反動で彼の服から幾つもの菓子が零れ、ファンガイアが知らずに踏んづけてしまい粉々になってしまった。すると…

 

「貴様…よくも俺のお菓子を…!!」

 

ルークはゼブラFにドスの低い声で怒りを露にした。

 

『はぁ?お前菓子なんて持ち歩いてんのか?案外ガキだな。』

 

その言葉を聞きルークの怒りは頂点に達し、顔にステンドグラスの模様を浮かばせ…

 

「許さん…!!俺は貴様等に罰を与える!!」

 

彼本来の姿、百獣の王・ライオンをモチーフとした「ライオンファンガイア」へと変化した。

 

『ウオォォォォッッッッ!!!!許さん!許さん!許さぁぁぁぁっっっっん!!!!』

 

『グギャアァァァァッッッッ!!!!』

 

ライオンFは棍棒を振り回し次々とファンガイア達を薙ぎ倒していった。

 

「「「(たががお菓子でそこまで怒るかぁ?!!)」」」

 

食べ物の恨みは怖いとは言うが、彼処まで怒り狂う必要があるのかと思う闇影達であった。ライオンFは倒れたファンガイアの腹に足を乗っけていた。

 

『まだだ…こんなものでは終わらないっ!!』

 

『ちっ!いい気になんなよ!!』

 

ゼブラFはこれ以上のライオンFの暴走を許すまじと再び剣で斬りかかろうとした。

 

「ルークさんが危ない!変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

闇影は走りながらディライトへと変身し、それと同時にカードを装填した。

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DE・DE・DE・DELIGHT!】

 

『はあぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

『何っ!?グギャアァァァァッッッッ!!!!』

 

巨大な十枚のカードが現れ、ジャンプしたディライトがそれを通過し飛び蹴りをするFAR「ディメンジョンレッグ」がゼブラFに炸裂した。

 

「闇影、助かったぞ。ありがとう。」

 

『いえいえ。何のそのこれしき…!!』

 

自分を救ってくれたディライトに礼を言うルーク。ディライトがそれを手を振って謙遜していたその時…

 

『…へへへ…結構…やるじゃねぇ…か。あんた等にならアイツ等を倒せるかもな…。』

 

ディライトのFARを受けても尚立ち上がるゼブラFは何やら意味深な発言をした。

 

『「アイツ等」?どういう事だ!?お前達は仮面のファンガイアとは無関係なのか!?』

 

『半分は…な…。教えてやるよ…。俺達はな…』

 

 

 

―王室

 

 

「…落ち着きましたか?」

 

「ああ…お前のお陰でな。しかし、何回も『する』事ないだろ。///」

 

「だって…貴方も後から乗気になってきましたから…つい…///」

 

二人があの後何をしていたかは解る者には解り、解らぬ者には解らぬ…という事にしておこう。しかし、オトヤの顔色が先程より良くなっていた。

 

「申し上げます!!」

 

突然、兵士が慌てて王室に入ってきた為、二人はそそくさと距離を取った。兵士は少し頭を捻っていたがオトヤはそれより前に用事を聞きだした。

 

「急に何だ!!何が起きた!!」

 

「し、城の前に、例のテロらしき軍勢が現れました!!」

 

「!!俺も行こう!マヤ、お前は此処にいろ。いいな。」

 

「オトヤ、お待ちなさい!貴方はまだ休まないと…!!」

 

マヤの制止を聞かずにオトヤは此処の警備を誰かに任す様、兵士に命令しながら王室を飛び出した。

 

 

 

―城前

 

 

「貴様等!!此処を何処だと思っている!!」

 

「ああ知っているとも…脆弱な人間と共存する腑抜けた王がいる城だろう?」

 

ユリが警告するも、テロ軍のリーダー格の男は人との共存するオトヤを腑抜けと言い捨て挑発した。

 

「貴様っ!!王を愚弄するか!!」

 

「こりゃまたえらい人数のお客様だな…用件は何よ?」

 

「王よ、お下がりください!あの程度の敵、王の手を煩わせるまでもありません!!」

 

ユリはオトヤに下がる様促すが、彼は手を出し「任せろ」の合図をして敵の話を聞く体勢をとった。

 

「知れた事、元来ファンガイアは人間共を喰らって生きる種族…然るに貴様等は食糧である人間と共存をし、ファンガイアの誇りに泥を塗った!故に我等は今の腐った政治や堕落した王家を滅ぼし、世界を浄化し、新たなる世界を再建するのだ!!」

 

『おおおおぉぉぉぉっっっっ!!!!』

 

男が「世界の浄化」を宣言すると、テロの軍勢が大きな雄叫びをあげた。

 

「…その為に、何の関係の無い民衆を巻き込んだのか…。」

 

オトヤは俯きながらドスのきいた低い声で呟いた。

 

「我等の築く理想世界にとっては…小さき犠牲だ!!」

 

「許さねぇ…貴様は絶対に許さねぇ!!来い!キバット!!」

 

『漸く出番か。待ちわびたぞ。』

 

男の冷徹な言葉にオトヤは怒り、全身が赤く鋭い黄色の目をした蝙蝠「キバットバットⅡ世」を呼び出した。そして…

 

『有り難く思え。絶滅タイムだ。ガブリッ!!』

 

オトヤはキバットを掴み、自分の手の甲を噛み付かせた。すると、オトヤの顔にステンドグラスの模様が浮かび腰に黒いベルトが巻き付いた。キバットを前に突き出し…

 

「変身!」

 

逆さにしたキバットをベルトに装着した瞬間、オトヤは全身がダークレッドカラーの鎧、蝙蝠の形をした装甲の真中に装飾された三つの魔皇石、同じく蝙蝠を模した緑の複眼が特徴の「真のキバ」エンペラーフォームに酷似した闇のキバ「仮面ライダーダークキバ」へと変身を遂げた。

 

『掟に背いた貴様等への判決は…死だ!』

 

「死ぬのは…貴様だ!!全軍かかれっ!!」

 

テロ軍は一斉にミイラの仮面を着けたファンガイアへと変化し、ダークキバに襲い掛かった。

 

『オオオオォォォォッッッッ!!!!』

 

『あの程度の雑魚にはこれで十分だ…ふっ!!』

 

対してダークキバは足元に巨大な黒いキバの紋章を展開し襲い掛かってきた敵達の足元迄動き出し背後から捕らえると、強力な電流が発生した。

 

『ギャアァァァァッッッッ!!!!』

 

魔法陣の電流をまともに受けたファンガイア達は一瞬でガラス体となり、砕け散った。

 

『ば、馬鹿なっ…全滅だと…!!?』

 

リーダー格の男の正体、アリジゴクをイメージした「アントライオンファンガイア」はダークキバの強大な力を目の当たりにし呆然としていた。

 

『あとはお前だけだ…。ふっ!!』

 

『何!?うわっ!!は、離せ!!離せ!!』

 

ダークキバは再び魔法陣を展開しアントライオンFを捕らえると、黒い笛「フエッスル」を取り出しキバットに吹かせた。

 

『ウェイクアップ・1』

 

『はあぁぁぁぁ…はあぁっ!!』

 

『グアァァァァッッッッ!!!!』

 

パイプオルガンの様なメロディが流れると同時に周囲が闇に包まれた。そして、ダークキバは空中へジャンプし、エネルギーを込めた右拳でパンチする第一の必殺技「ダークネスヘルクラッシュ」をアントライオンFに叩き込み大爆発させた。

 

「王よ、見事です!これで世界に平和が戻ります!」

 

『ああ、そうだ…な、何だっ!!』

 

ユリがダークキバに駆け寄りテロ根絶を喜んでいたその時、城内で爆発音が聞こえた。それと同時に黒い影がそこから去っていった。

 

「まだ仲間がいたのか!追え!!」

 

ユリは兵士にあの人影を追う様に怒号を飛ばした。そして、ダークキバはある人物の安否を心配した。

 

『城内で爆発…はっ!!マヤッ!!』

 

ダークキバはマヤの身を案じて颯爽と城内の王室へと向かった。しかし、王室は大きく荒らされておりマヤの姿はなかった。先程の人影が彼女を拐ったのだ。

 

「マヤッ…!!くそっ!!俺がここにいろと言ったばかりに…!!」

 

オトヤは自分のせいでマヤが拐われたのだと思い込み、壁に拳を叩き付けた。

 

 

 

―闇影SIDE

 

 

「…早く急がないと!!」

 

闇影達はマシンディライターに乗り(コウイチだけ何故か徒歩)、キャッスルドラン城へ向かいながら、ゼブラFの言葉を思い出していた。

 

 

 

―数分前

 

 

『俺達はな…最初の内は略奪と破壊行動だけやらかしてたんだ…。だが、「アイツ」が現れたせいで、一部の奴等はレジェンドルガだけの世界を作る為に王家や全ての人間、ファンガイアを殺すためにテロ行動を過激化させやがったんだ…!』

 

「!!…なら今までの爆破事件や大量のライフエナジー吸引は…」

 

『ああ…全部レジェンドルガ側についた俺達の元同胞だ…。だが俺等は腐ってもファンガイア。その事だけは誇りに思ってる…!!それで残った俺等だけでやってみたんだが…この様だ。』

 

「…最後に聞きたい…。『アイツ』とは誰なんだ?」

 

『そいつは…ガァッッ!!』

 

「!!お、おい!!しっかりしろ!!誰が首謀者なんだ!?」

 

先程のダメージが大きく、ゼブラFの身体に罅が入った。そして、最後の力を振り絞った…

 

『お…王家の…』

 

全て言い切る前にゼブラFはガラスの様に砕け散った。

 

「ビショップさんの言う通り、王家内部の人間がテロの…レジェンドルガのリーダー…だとしたら…オトヤさん達が危ない!!直ぐに城へ戻ろう!!」

 

 

 

「くそっ…!!無事でいてくれよ…!!」

 

闇影はマシンディライターの速度を上げて城へと向かった。

 

 

 

―とある場所

 

 

「くっ…。手に傷を負ったか…。だが王妃は我が手中にある!!これで蘇る…レジェンドルガ達の王(ロード)・アークが…!!フフフ…。」

 

傷を負った手を押さえながら不気味に笑っていたのは、城からマヤを拐った人物だった。レジェンドルガの王・アークの復活にマヤが必要な理由は…?




今回から少しだけムフフなシーンも描写致します。(笑)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8導 フィーリング♪心の音楽を奏でろ

これで漸く三分の一まで進みました(汗)

そして今回は少しだけエロに近い描写を…(笑)


―キャッスルドラン城内・謁見の間

 

 

「何ですって!!?マヤさんが拐われた!!?」

 

城に戻ってきた闇影達はテロ集団…否、レジェンドルガ側に付いたファンガイア達の襲撃があった事や、マヤが彼等に拐われた事を耳にし驚いた。

 

「我々が…王がレジェンドルガ軍を倒された直後に仲間が城内に侵入し…王妃様を拐っていったんだ…。」

 

ユリは苦虫を噛み潰した様な顔をしながらそう頷いた。

 

「そちらの方では何か情報を掴んだのですか?」

 

ビショップは片眼鏡に人差指を当てながら、闇影達にレジェンドルガについての情報を手にしたのかを尋ねた。それを聞いた彼等はその場で起きた事を全て話した。

 

「何だと!?王家内部の者がこの一連の事件の首謀者だと!?馬鹿な!!」

 

その話を聞いたユリは信じられないと言わんばかりに驚愕し、一部の臣下や兵士達も動揺しだした。今迄自分達を苦しめていたテロ事件の首謀者が自身達身内の誰かだと知れば、騒ぎ出すのも無理はない。

 

「王妃様を拐った輩は腕に傷を負っているとお聞きしました。王よ、この中の誰かが首謀者やもしれません。また潜りこんで何か企んでいる事を考え、城内にいる全ての者の腕を確認いたしましょう!…王?」

 

ルークは城内の人間の腕を確認するという案をオトヤに申し立てた。しかし、彼は玉座に座ったまま呆然としていた。

 

 

 

「ねぇオトヤ。しょうらい、おうさまになったらどうするの?」

 

「うーん、そうだなぁ…にんげんもふぁんがいあもみんながなかよくなれるせかいをつくりたいな!それと…///」

 

「?それとなぁに?」

 

「マ、マヤをおよめさんに…あーーうるさい!!なんでもいいだろ!!///」

 

「あぁ!まってよ!ジロウのゆめは?」

 

「ぼくのゆめはおじいさまのようなびしょっぷか、おいしゃさんですね。」

 

「へぇ。かなうといいね。」

 

「あ…あと…///」

 

「おーい!なにやってんだ!おいてくぞ!マヤ!ジロウ!」

 

 

 

「王よ!如何いたしましたか!?」

 

「はっ!!あ…ああ、すまねぇ…。腕の確認だったよな…構わねぇ…ぞ…。」

 

ルークの怒号にオトヤは我に返り彼の案を許可した瞬間、視界がぼやけ出し、意識も朦朧としその場倒れた。

 

「!!オトヤさん…?オトヤさんっ!!」

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

 

「オトヤくん。どうしてにんげんとふぁんがいあがなかよくなれるせかいをつくりたいのですか?」

 

「なんだよ?なんかへんか?」

 

眼鏡をかけた少年・ジロウはオトヤが何故人間とファンガイアが共存する世界を作りたいのかを尋ねた。

 

「だってにんげんってぼくたちふぁんがいあのことをきらっているんですよ?なのに、どうして?」

 

ジロウは人間がファンガイアを忌み嫌っている事から、オトヤの語る理想について疑問を抱いていた。

 

「まぁ、なんつーか…おれ、おうさまになったあとのことってあんまかんがえてなかったんだよな。」

 

「えっ?じゃあなんであんなこといったの?」

 

マヤの問いかけにオトヤはこう答えた。

 

「むかし、ばいおりんがうまくひけなくてなげやりになっていえとびだしたとき、ばいおりんもったへんなおっさんとあったんだ。んで、そのおっさんは――」

 

「へぇ…。それでそういうこたえがでたのね。」

 

「そっからおれは、なやんだときはメイドたちのスカートめくりをするときめたんだ!」

 

「なんですって…そんなことしてたの…。」

 

「げっ!やべっ!にげろ!!」

 

「まちなさぁ~い!!おしおきです!!」

 

二人が立ち去った後にジロウは一人考え込んでいた。

 

「…なんでそんなりゆうだけであんなこといえるの?ぼくには…わからない!!」

 

そう口にしていた時、周囲が黒い闇に包まれていった――

 

 

 

「う…ん…。」

 

「気が付きましたか?良かった…。」

 

「闇影…。此処は?」

 

目覚めたオトヤは、此処は何処かを尋ねながら起き上がろうとしたが、闇影に制止された。

 

「まだ寝てて下さい。此処は医務室です。急に倒れて皆心配していましたよ?」

 

「そうか…迷惑かけたな…。」

 

「マヤさんは俺達が助けます。だからゆっくり休んでくだ…「くそっ!!」!!」

 

「あいつ等の侵入を許したうえに、マヤも拐われた…。国も…大切な奴も守れなくて…何が王だっ!!くそっ…!!くそっ…!!」

 

オトヤは布団に何度も拳を叩きつけて、己の無力さに憤っていた。その悔しさが闇影の心にも伝わる程…

 

「オトヤさん…。」

 

 

 

「えっ!?誰も腕に傷がなかった!?」

 

「うん…ルークさんとユリさんと一緒に、城の中にいた人達の腕を見たんだけどそれらしい傷を負った人はいなかったわ。」

 

闇影は、黒深子とコウイチから城内全ての人間の腕に傷が無い事を聞き愕然とした。

 

「じゃあ、一体誰がマヤさんを拐ったんだ?」

 

「う~ん…先ず王室に言ってみるか。何かの手掛かりがあるかもしれないし。」

 

「犯行現場に証拠あり…だな!」

 

こうして三人は誘拐の手掛かりを探す為王室に向かった。だが…

 

「う~ん、なかなか見つからないな…。」

 

「ああ…。それにしても酷い荒らされ様だな、これ。こん中から探すのかよ…。」

 

目当ての物が見つからず、災害が起きた後の如く荒らされた王室を見て嘆く始末。

 

「ん?ねぇ先生。これ…。」

 

黒深子は一枚の写真を拾い、闇影に見せた。

 

「?この写真は?」

 

「落ちてたから拾ってみたんだけど、あんまり関係無いかも。」

 

黒深子が拾った写真には三人の子供が映っていた。元気一杯な茶髪の少年、長い黒髪の優しそうな少女そして、眼鏡をかけたおとなしめな白髪の少年が…。

 

「この二人は子供の頃のオトヤさんとマヤさんだな。後の子は…ん?」

 

「どうしたんだ?闇影。」

 

「いや、この白い髪の子…何処か見覚えがあるんだよな。何処かなぁ…?」

 

闇影は写真の白髪の少年に見覚えがあるようだ。それが誰かを考えていた時…

 

「大変だっ!!オトヤ様がいなくなったぞ!!」

 

「!!何だってっ!!?」

 

なんとオトヤが城から姿を消し、周りの人間が慌てて彼を探しているようだ。

 

「オトヤさんがいなくなったって本当ですか!?」

 

それを聞いた闇影は兵士を捕まえ、それが本当なのか尋ねた。

 

「ああ。メイドが医務室に食事を持ってきた時にはもぬけの殻だったんだ。ベットのシーツを紐代わりにして窓から出られたようなんだ。」

 

「何で城から出たのかしら…?」

 

「…責任を感じていたのかもしれないな。レジェンドルガに城を攻められた上、マヤさん迄拐われた事で自分がしっかりしてなかったから…だと自分を責めていたからな…。くそっ!真近で聞いていながら…」

 

闇影はオトヤが城を出た原因を、顔を少し俯かせながら語った。彼の苦悩を聞いていたにも関わらず、脱走を許してしまった自分を責めながら…。

 

「先生…。」

 

「とにかく!今はオトヤさんを探そうぜ!」

 

「でも、探すって言っても何処に?」

 

「うっ…!それは…」

 

確かに何の手掛かりも無いのに探すのは無謀という物だ。そんな中、闇影は先程の写真を見て何か考えていた。

 

 

 

―とある場所

 

 

「う…ん…。此処は…?!!何、これ…!?」

 

漸く目を覚ましたマヤは此処が何処なのか辺りを見回し時、腕に違和感を感じた。それもその筈、彼女の両腕は鎖付きの鉄の様なバンドがはめられているのだから…。これを見た彼女は自分が何者かによって監禁されたのだと理解した。

 

「漸くお目覚めですか。王妃様。」

 

「あ…貴方は…誰なのです!?何の目的でこんな真似を!?」

 

マヤの目の前に、悪魔の様な仮面を被った黒いフードの人物が現れた。一瞬驚いたが、彼女は強気な発言で何が目的なのかを尋ねた。

 

「囚われているのに随分と勇ましいですね…いいでしょう、お答え致します。我々レジェンドルガの王(ロード)・アークの復活には貴女の力が必要なのです。貴女特有の…他者に自身のライフエナジーを供給する能力が…!」

 

「!!何故それを…!?」

 

マヤは自分が拐われた理由を聞き驚愕したと同時に疑問に思った。確かに自分はライフエナジーを他人に与える事が可能なファンガイアだ。だがそれを知っているのは王家のみ。如何にレジェンドルガの知能が優れているとは言え、あまりにも熟知し過ぎている。王家の者でない限り…

 

「…!!まさか…貴方は…!?」

 

マヤは一つの、最も考えたくない答えを口にしようとした。しかし…

 

「お喋りは…其処までだっ!!」

 

「きゃあっ!!」

 

突然フードの人物は豹変した様に彼女を平手打ちにした。あまりの強さに血が出る程口が切れてしまった。

 

―早ク…復活サセロ…!我ヲ…コレ以上待タセルナ…!!

 

フードの人物は自分とは違う「何者か」の意思によって操られている様だ。だが、今のマヤにはそれを知る由も無かった。

 

「くっ…!失礼。では、早々に復活の準備を始めましょうか…。」

 

フードの人物は片手で頭を押さえながら先程の口調に戻り、復活の準備に取りかかろうとした。

 

 

 

―キャッスルドラン・謁見の間

 

 

「一体、王は何処へ行かれたのか…。」

 

「場所の見当が全くつかないな…。」

 

ユリとルークは、オトヤの居場所の心当たりが解らなくずっと悩んでいた。

 

「場所の見当なら解りましたよ。」

 

「煌…それは本当なのか!?何処だっ!?」

 

闇影達は一人の老兵士を連れて、オトヤの居場所が解ったと言った。それを聞いたユリは声を荒らげながら彼に掴みかかり尋ねた。しかし、闇影はそれに怯まず懐から写真を取り出した。

 

「この写真に写ってる三人の子供…オトヤさん達の後ろの黒い建物…ここがその居場所であり、同時にマヤさんが囚われている場所でもあるんです!」

 

「根拠は何だ!?何故そう言い切れる?」

 

「根拠は、この人が知っています。」

 

闇影は老兵士に今の理由を話す様に促した。

 

「あぁ。そこはオトヤ様達が昔、よく遊び場にしていた場所じゃ。こっそりと忍び込んで秘密基地にしていたらしく、儂等はそれを見つけては何度も説教したものじゃのぅ。」

 

老兵士は懐かしげに写真に写った居場所について語った。

 

「そしてその城の名は…魔界城。嘗てレジェンドルガの王族達が住んでいた城であったが、彼奴等が滅んだ今、只の廃墟と化しているがのぅ。」

 

「「!!」」

 

老兵士の話を聞いたユリとルークは驚愕していた。もしそれが事実ならばオトヤとマヤは今危険な目に遭っているのかもしれない。そう予想した彼等は…

 

「全兵士!直ぐに魔界城へと向かうぞ!お前には案内して貰うぞ。」

 

当然魔界城へと出撃しようとした。その時…

 

「ふふ…あーっはははは…!!」

 

今迄ずっと黙していたビショップが突然笑い出した。

 

「何が可笑しい!?ビショップ!」

 

「いやはや…愛しい者の為に城を飛び出し救いに行く…此処まで愚かな王だとは思わなかったよ。」

 

「何っ!?」

 

「もっとも、そのお陰で王家内部に攻め入る事が出来たのだけどな…。」

 

豹変したビショップの言動に眉をひそめる一同。しかし、その原因は直ぐに解決される。

 

「な…何だ!?ビショップの身体が…!?」

 

ビショップの身体に頭から爪先迄無数の横線の様な模様が浮かび出し、それらは長く白い包帯の様になり、新たに身体の形を作り始め、ミイラの姿をした異形「マミーレジェンドルガ」へと変化した。

 

『ククク…』

 

「ミイラの仮面に、腕の傷…貴様が…!!王達をどうしたっ!?」

 

『ああ、我等が王復活の為に必要なんでね…預からせて貰ってるよ。』

 

「ふざけるなっ!!」

 

ユリは剣を抜きマミーLに斬りかかった。しかし、マミーLは身体を包帯に変えて攻撃を回避し再び元の姿に戻った。

 

『所詮人間の力などこの程度…今より本当の絶望を与えてやろう…。』

 

マミーLは右腕を上に上げ、そこから禍々しいエネルギーを放出しこの場にいる兵士達に命中させた。すると…

 

「があああぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

「ぐぎぎぎ…!!」

 

そのエネルギーを浴びた兵士達は、顔にミイラの仮面が現れて苦悶の悲鳴を上げ出し、暫く経つと静かになりゾンビの様な唸り声を上げながら剣を抜き、無事だった味方の兵士に斬りかかってきた。

 

『ウゥウウゥ…ガアァァアッッ…!!』

 

「ぐあぁっ!!」

 

「くっ…!!よせっ!!止めろっ!!」

 

『アッハハハ!!どうだ?変わり果てた仲間達の姿は!?』

 

「そうやって今迄同胞を操ってきたのか…!!」

 

ルークは、今すぐにでも目の前の外道を殴り飛ばしたい感情を抑えながらマミーLに尋ねた。

 

『あぁ、そうだとも。この呪いは俺が死なない限り解ける事はない…そして、我等が王が復活すればこいつ等は完全なレジェンドルガと化し二度と元には戻れなくなるのだ!!』

 

「!!ならば…」

 

「貴様を倒せばいいだけの話だっ!!」

 

ユリは再び剣を構え、ルークはライオンファンガイアに変化した。

 

「くそっ…!オトヤさん達を見つけないといけないし、ここの人達を放っておく事も出来ない…。どうすりゃいいんだ!?」

 

「…どっちも見捨てる事が出来ないなら、第三の選択だ。」

 

「へっ!?どういう事?先生。」

 

「時間が無いから手っ取り早く説明する。つまり――」

 

 

 

―魔界城

 

 

「くっ…!離し…なさい…!!///」

 

『あんま暴れると綺麗な肌がもっと見えちゃいますぜ。王妃様♪』

 

ベッドに寝かされたまま腕を鎖で拘束されたマヤは、顔を幾度も殴られ、衣服も破られ顔を赤くしながら抗っていた。こうなった理由は、復活に一向に協力しようとしない彼女に暴行を加えたがそれでも首を縦に振らない為業を煮やしたフードの人物は、レジェンドルガ化したファンガイア達に口を割らせようと考え、この様な事態となった。

 

「貴女が協力しようとしないからです。さあ、早くしないと彼等に穢されてしまいますよ。」

 

『ヘヘヘ…ファンガイアつっても所詮は女か…。』

 

『王妃様の生まれたお姿を拝見できるなんて…光栄ですな。』

 

「貴方達!目を覚ましなさい!ファンガイア族の誇りはどうしたのですか!?この者達の軍門に下ってこんな不埒な真似を…!ひゃっ!!」

 

『んなやらしい身体で変な声出しといて何が「誇り」だよ!この淫乱王妃がよっ!!』

 

『これは新しい時代を築く為の王政…申し訳無いが協力する迄貴女には少々苦痛を味わって頂きますよ。』

 

そう言うと、二人の男はマヤにじりじり近づいていった。捕らえた獲物を食べようとする獣の様に…

 

「い、嫌…来ないで…。誰か…誰か助けて…誰か助けてっ!!オトヤーーーーッッッッ!!!!」

 

『マヤに触れるな。このゲス共が!』

 

『『グアッ!!』』

 

そこへキバットⅡ世が現れ、男達に攻撃し、それに怯んだ彼等はその場から逃げ出した。そして…

 

「マヤッ!!大丈夫かっ!?」

 

「オトヤ!!オトヤ!!」

 

「もう大丈夫だ、マヤ。」

 

ファンガイア達の王であり、彼女の夫でもあるオトヤが現れた。マヤは彼に抱きつき涙した。それをオトヤは彼女に上着を着させて頭を優しく撫でた。

 

「これはこれは…わざわざ死にに参ったとは…。」

 

「…何でだ…何でこんな事をやらかしたんだっ!ビショップ、いや…ジロウ!!」

 

「ふふ…」

 

「そんな…!!」

 

フードを脱ぎ捨てたその正体はビショップであり、オトヤとマヤの幼馴染みであるジロウだった。

 

「何故僕だと解ったのですか?」

 

「…ガキの頃、兵士のじいさんが此処が昔レジェンドルガの城だった聞いた事を思い出したのがきっかけだ。此処を知っているのはレジェンドルガを封印した先代の王…俺の親父か、此処でよく遊んだ俺達三人しかいねぇ…。」

 

ビショップ…ジロウの問い掛けにオトヤはそう答えた。

 

「何故ですの!?何故貴方がこんな事を!?この国を良くする為誰よりも頑張っていた貴方が、何故…?」

 

「…今の世界を壊し、新しい世界を創る為ですよ。」

 

ジロウの冷たい視線を見てマヤはゾクッとした。あの大人しく優しい彼がこんな目をするなんて…

 

「家畜である人間と共存?笑わせる。そんな世界等絶対認めない!!両親を殺した家畜共と馴れ合う世界等、破壊してくれる!!」

 

「!!何…だと…!?お前の親が人間に殺されたって…そんな話初めて聞いたぞ!」

 

ジロウが今回の事件を引き起こしたのは、両親を人間に殺害された事が理由の様だ。それを初めて聞いたオトヤとマヤは驚愕した。

 

「自分達とは違う存在だから…化物だから…それだけの理由で両親を殺した人間を僕は許さない!そしてそんな家畜共と馴れ合おうとするファンガイア達も!全て葬りレジェンドルガだけの新たな世界を創造する!!その為には…!!」

 

全ての人間とファンガイアを対して大きく呪詛の如く罵倒したジロウは、自身の姿を変化させた。それは自身の髪の色と同じ白い蝙蝠の骸骨に似た顔、悪魔を思わせる肉体を特徴とした「スカルバットレジェンドルガ」へと…

 

『貴女の命が必要なんです…。マヤ。』

 

「ジロウ…その姿は…!!」

 

「チッ…!!あの頭でっかちがっ!!マヤ!下がってろ!こいつは…俺が止める!!」

 

マヤを再び下がらせたオトヤは、顔にステンドグラスの模様を浮かばせ、赤い蝙蝠と鬼が合わさった姿「バットファンガイア」に変化した。

 

『いいんですか?闇のキバの鎧を使わなくて…?』

 

『へっ!お前みたいなガリ勉君に使うのは勿体ねぇんでな…こいつで充分だっ!!』

 

バットFはスカルバットLの挑発に乗る事はなかった。本来の姿の方が闇のキバより攻撃力が高いからである。しかし本当の理由は…

 

『(あれは魔皇力をかなり消耗しちまうリスクがあるからな…あれ相手に短期戦は無理がある。だったら…!)』

 

闇のキバの鎧は強大な魔皇力を持っている反面、その消耗力は並の者だと命を失う程の代物だ。オトヤでさえ使用しても、体力の大半を奪われてしまうのだ。

 

『ならば…貴方を殺してからマヤを頂きましょう!』

 

『俺の女は…奪わせねぇぜっ!!』

 

二体の蝙蝠の異形は互いに駆け出し、攻撃を仕掛けた。バットFはパンチを幾度も繰り出そうとするが、スカルバットFはそれを全て軽々とかわしつつ、後方へと離れていった。

 

『どうした!?逃げてばっかじゃ俺は倒せねぇぞ!!』

 

『逃げたのではありません…。こうする為ですよ!!』

 

『何っ!?ぐあぁぁっっっ!!』

 

スカルバットFは羽の内側から無数の赤い骨の様な針を飛ばした。真正面に進んでいるバットFは諸に受けてしまい、そのままオトヤの姿に戻ってしまった。

 

「くっ…あの攻撃だけでここまでダメージが大きいのは…予想外だぜ…。」

 

オトヤは、地に伏せたまま動こうとしない…いや、ダメージが大きく動けないのだ。スカルバットLは止めを刺す為、そのままゆっくりと彼に近づいた。

 

『残念ですね…。もし協力して下されば、幼馴染として命だけは助けようとしたのに…レジェンドルガとと化せば、もう王という重い「悩み」から解放されるのですよ?そう…悩みという心から…。』

 

『そして、楽しいという心も感じなくなってしまうのだな。』

 

『…!!誰だっ!!』

 

「お…お前は…!!」

 

 

 

―キャッスルドラン

 

 

「く…ここまで…強いとは…!!」

 

ユリ達はレジェンドルガ化した兵士を何とか退きマミーLに攻撃を仕掛けようとしたが、やはりその力の差は圧倒的であり地に伏せる結果となった。

 

「私には…幼い頃に騎士だった両親を先の戦争で亡くした時、王が…オトヤ様が救って下さった御恩がある…。あの方はファンガイアでありながら、人間と手を取り合っていく世界を築こうとしている。私も…その夢のお手伝いをしたいと願い…血反吐を吐く思いで親衛隊にまで上り詰めた…!それを思えば…これしきの攻撃でやられない…やられて…たまるかぁぁぁぁっっっっ!!」

 

『終わりだ…人間っ!!』

 

ユリがここまでオトヤに忠誠を誓うのは、ファンガイアでありながら人間である自分を拾ってくれた恩があったからだった。マミーLは瀕死寸前の彼女に止めを刺そうとした。しかし…

 

『何っ!!貴様は…!?』

 

マミーLは自分を阻む存在を見て驚愕した。何故なら、黄金の鎧に、真紅のマントそして王の証である剣「ザンバットソード」を構えるキバ・エンペラーフォームがこの場にいたからだったからだ。

 

「オ…オトヤ…様…?いや、違う…。」

 

『あれは闇影の影が実体化したキバですよ。大丈夫ですか?ユリさん。』

 

『本物の先生は魔界城へオトヤさん達を助けに行きましたよ。』

 

「その声…赤竜と…白石か?」

 

ユリの疑問に答えたのはリュウガとスワンオルフェノクだった。そう、あれはディライトの影がFSRしたキバEFである。

 

『ええ。これが先生の第三の選択です!』

 

 

 

―数十分前

 

 

「俺はこの人と魔界城へ行く。だが、お前達はここで兵士達をくい止めてくれ。」

 

「そんなの無理よ!先生でないとあの化物は倒せないよ!」

 

「解ってる!だが、俺の能力を忘れてないか?」

 

「は?どういう事だよ?」

 

「百聞は一見にしかず。まあ見てな。変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

『そして…ここはキバでしょ?』

 

【FINAL-SHADOW-RIDE…KI・KI・KI・KIVA!】

 

『ここを護ってくれ!』

 

「そうか!その手があったか!」

 

『そういう事。だから…お前達を信じて此処を任せる!』

 

「分かったわ!先生!」

 

「此処は俺達に任せな!」

 

「よし、行くぞ!」

 

 

 

『と、いう訳なんです。』

 

闇影の立てた「第三の選択」はディライトのFSRで援軍を作り出しそれを切り離し、此処の危機を救わせ自分はその間に魔界城へ行くという、何ともシンプルな作戦だった。

 

『おのれ…そんなまやかしのキバ等、葬ってくれるわぁぁっっ!!』

 

『…!!』

 

『ガァァァァッッッッ!!!!わ、我等の…時代が…』

 

キバEFのザンバットソードの一振りにより、マミーLはあっさりと斬られて爆死した。

 

『早っ!まあいっか。後は先生だけだわ…。』

 

 

 

―魔界城

 

 

『そうして俺は此処まで来たって事です。』

 

「第三の選択…か…成程、俺はそんな考え方をした事がなかったな。」

 

『いいえ。これ俺があの場で思いついた答えなんです。』

 

「思いつき…だとっ!?」

 

なんと、この作戦は即興で思いついた物だったらしい。それを聞いたオトヤは愕然とした。

 

『別に悩む必要はありませんよ。いえ…悩んだっていいじゃないですか。だって、それが答えを出す為の特攻薬になるんだから!心で感じた事をそのままやればいい。』

 

「!!その言葉…何処かで…。」

 

『さっきから御託を並べて…貴様、何者ですか?』

 

『お節介教師な仮面ライダーだ!!宜しく!!』

 

「悩む必要は…無い。俺は…俺の思ったままの行動でこの世界を築いていく!!仲間と一緒に!!キバット!!」

 

『一皮剥けたな…オトヤ。絶滅タイムだ。ガブリッ!!』

 

「変身!」

 

吹っ切れたオトヤは立ち上がり、キバットに掌を噛ませてダークキバへと変身した。

 

『さて、輝く道へ導きますか!!』

 

ディライトとダークキバはそのままスカルバットLへ突撃した。しかし、先程バットFを苦しめた羽から赤い骨の針を飛ばしてきた。

 

『そんな攻撃は…こいつで防ぐぜ!』

 

ダークキバはマントを大きく翻し針を防いだ。そしてその隙にディライトがライトブッカーでスカルバットLを切り裂いた。

 

『馬鹿なっ!!ぐあっ!!』

 

そのまま押し切られたスカルバットLは後方へ倒された。だが、直ぐに立ち上がり羽を広げ天井を突き破り飛翔した。

 

『ハハハ…!!此処まで攻撃は届くまい!!さあ、これはどうします?』

 

『それは…これでいく!』

 

【FINAL-FORM-RIDE…DA・DA・DA・DARK-KIVA!】

 

『力を抜いてください。』

 

『おぉっ!これは!?』

 

背中に手を当てられたダークキバは、鍔が巨大なキバットⅡ世の形をしたファンガイアの王の証であるザンバットソードを模した巨大な剣「ダークキバソード」へとFRRした。

 

『何ですか…その力は…!?』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DA・DA・DA・DARK-KIVA!】

 

『はあぁぁ…』

 

『絶滅タイムだ。』

 

『はあぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

ディライトがダークキバソードを天に掲げると刀身が紅く染まり、そのままスカルバットLに向かって振り上ると、そこから赤い衝撃波を出すFAR「ディライトブラッディ」を放った。

 

『ぐあぁぁっっ!!』

 

そして元の姿に戻ったダークキバとディライトは、すかさず其々の必殺技を発動した。

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DE・DE・DE・DELIGHT!】

 

『ウェイクアップ・2』

 

『『はあぁぁぁぁ…はあぁぁぁぁっっっっ!!!!』』

 

『グアァァァァッッッッ!!!!』

 

ディライトの「ディメンジョンレッグ」とダークキバの「キングスバーストエンド」の強力な飛び蹴りを受けたスカルバットLはそのまま、陸地へ倒れていった。

 

 

 

「ジロウ…。」

 

「…僕は…レジェンドルガの王の復活なんて…どうでも…良かったんだ…。」

 

ジロウは、仰向けになり声を絶え絶えになりながら自分の本心を話し出した。

 

「僕は…ずっとあの二人の事を…妬んでいたんだ…真っ直ぐに自分の夢を信じて歩む彼等が…羨ましかったんだ。そして…」

 

間を空けてマヤの方に目をやりながら話を続けるジロウ。

 

「オトヤ君と一緒になったマヤちゃんの関係にも…嫉妬していた…。それ等の僕の弱い心を黒いオーラが…アークが支配して皆を傷つけてしまった…本当に…ごめんなさい…!!」

 

ジロウは涙ながらにオトヤとマヤに謝罪した。オトヤは顔を横に背け、マヤは「いいえ」と首を横に振った。

 

「俺、昔悩んでいた時にあるおっさんからアドバイス貰ったって言ったよな。その時の言葉が…」

 

「『心で感じままに動け。それが悩みの一番の特効薬になる。』ってな。」

 

「ああ…そうだったんですね…。僕も心で感じたまま生きて…」

 

それを聞き安堵したジロウの身体に罅が広がり、やがてガラスの様に砕け散った…。

 

―皆と一緒に仲良く出来る世界を…創りたかった…です…。

 

「…馬鹿野郎っ…!!」

 

 

 

「三人共、とても穏やかな表情をしてるわね…。」

 

影魅璃はオトヤとマヤ、そしてジロウが笑顔で笑っている絵をそれと同じ表情で見ていた。

 

「心でそう感じるからそういう感想が出るんだね…やっぱり心って大事よね!先…生?」

 

黒深子は闇影に話を振ろうとしたが、何故か悲しい表情で俯いていた。

 

「(また黒いオーラか…。その影響でレジェンドルガ達が復活した。俺が現れたせいなのか?)」

 

「先生!!」

 

「わっ!!な、何だよ黒深子。脅かすなよ…。」

 

「先生が返事しないからでしょ!?どうしたの?」

 

「ん?ああ…ちょっと…ね。」

 

闇影は黒いオーラについて悩んでいる事を何とか隠そうとした。が…

 

「先生のせいじゃないよ。先生は今まで世界を救ってきたんだから!」

 

どうやらバレていたらしい…。

 

「だから先生も自分が思ったままにやっていこ?」

 

「黒深子…ああ!そうだな!」

 

闇影は黒深子の言葉を聞いて元気を取り戻した。その時…

 

「絵が次の世界の物に!?」

 

コウイチの言う通り、キャンパスに次の世界を現わす絵が被さった。それは黒い柱の様な物を中心に、黒い蟷螂の様な戦士と黒いカミキリ虫の異形が対峙した絵だった。

 

「カリスの世界…だな。」




少し読み返してみると酷い文面だなぁ…とつくづく思っちゃいました。今もですがね(苦笑)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第9導 カリスマな鯛焼きはいかが?

カリスですがムッコロは出ません!!が、ちょびっとだけ新キャラ登場です。


―フラッシュ薬局

 

 

「う~ん…腹が痛ぇ…。」

 

「大丈夫?コウイチ君。」

 

「全く…皆で食べようと思ったたい焼きを一人で全部食べるから罰が当たったのよ。」

 

「ち…違う…それ俺じゃない…期限切れの牛乳を飲んじまったからだ…。」

 

ここ「カリスの世界」でコウイチは、腹痛を起こし腹を抑え寝ながら苦しんでいた。

 

「それよりコウイチの腹痛を直さないと。俺が処方した腹痛用の薬を飲め。」

 

「闇影…お前って奴は…って、えっ!?」

 

白い服を着た「薬剤師」の闇影の言葉に一瞬感動したコウイチだが、「処方した薬を飲め」という言葉を聞いて顔を青ざめた。

 

「安心しろ。蝉の脱け殻に乾いた百足、鼠の目玉その他漢方薬諸々を擂り潰した物だ!」

 

満面の笑みを浮かべた闇影が持っているのは、今上げた物を全て擂り潰して粉にした物を乗せた紙だった。

 

「安心出来るかっ!!って、お、おいっ…!ちょっと待てよっ!?んなモン本気で飲ます気かっ…!く、口に無理矢理流し込…む…ゲェヤアァァァァッッッッ!!!!」

 

薬を無理矢理口に流し込まれたコウイチは、この世の物とは思えない物を見た様な悲鳴を上げ、泡を吹かせてバタンと死んだ様に倒れた。

 

「これで良し!」

 

「ええっ!?これで良い訳無いでしょ!?ちょっと!!先生!!?」

 

闇影の薬のおかげ(?)で落ち着いたコウイチを置いて、闇影は黒深子と共に、新しいたい焼きを買いに出た。

 

「んふふ…ご馳走様…♪」

 

それを影から見ていたのは、たい焼きを食べた犯人だった。どうやら女性らしい…。

 

 

 

「さて…たい焼き屋もだけど、カリスは何処にいるんだろうな?」

 

「(…先生と二人でいるのは久しぶりね。なんか…デートみたい…///)ねぇ先せ…」

 

「うわぁぁぁぁっっっっ!!ば…化物だぁぁっっ!!」

 

『グゥゥッッ…!!』

 

黒深子が闇影に話掛けようとした時、バックルをした赤い百足の異形「センチピードアンデッド」が人々を襲い、人々がそれから逃げる光景を見た。

 

「あれは…アンデッド!」

 

アンデッドとは、一万年前に行われた「バトルファイト」という自らが世界の支配者になるべく、戦い合う異形である。その名の通りいかなる方法でも死なず、倒すには「ラウズカード」というカードに封印するしか無いのだが…

 

「俺はその方式を無視して倒す事が出来る!変し…「待たんかい!待たんか~い!」って、あらっ!」

 

ディライトに変身しようとする闇影だが、突然アンデッドに向かって走る青年の叫びに驚いてコケた。

 

「見つけたで、アンデッド…人様の平和を台無しにする奴は、お天道さんが許しても、この噛矢切人(かみや・キリト)が許さへんでっ!」

 

黒い髪を一本結いにした頭にバンダナをし、腰にエプロンを着けた青年・切人はセンチピードUを挑発した。そして、腰に赤いハート型のバックル「カリスラウザー」が現れると、片手で蟷螂の絵が描かれたトランプの様なカード、ハートA「チェンジマンティス」を読み込ませた。

 

「変身!」

 

【CHANGE】

 

電子音が鳴った瞬間、切人の身体が揺めき、黒い蟷螂をイメージしたハート型の複眼のライダー「仮面ライダーカリス」へと変身した。

 

「あれが…カリス…!」

 

『行っくでぇぇっっ!!』

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

 

『そりゃそりゃそりゃあぁぁっっ!!』

 

『グ…グガァァッッ!!』

 

カリスは自身の武器「醒弓カリスアロー」でセンチピードUを素早く攻撃をした。

 

『グウゥゥ…ガアッ!!』

 

だが負けじと、センチピードUは猛毒を持った爪でカリスに反撃を仕掛けようとしたが…

 

【BIO】

 

カリスは、ラウザーをセットしたカリスアローにカードを通しハート7「プラントバイオ」を発動させるとアローから無数の蔦が表れセンチピードUを拘束し、此方に引き寄せると…

 

『ほんでもって…こいつやっ!』

 

【CHOP】

 

ハート3「ヘッドチョップ」を発動させ、片手で手刀を作り引き寄せたセンチピードUに叩きつけた。

 

『何でや…ねんっ!!』

 

『グアァァッッ!!』

 

何故かツッコミの台詞を言ったカリスの手刀でそのまま吹き飛んでいった。そして、止めを刺すべく二枚のカードをラウズした。

 

『これで終いやっ!!』

 

【DRILL・TORNADO】

 

【SPNING-ATTACK!】

 

『おりゃあぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

『ガアァァァァッッッッ!!!!』

 

ハート5「シェルドリル」とハート6「ホークトルネード」のコンボにより、カリスは風を纏った全身回転蹴り「スピニングアタック」をセンチピードUに喰らわせた。すると、アンデッドバックルが開き出した。

 

『カテゴリー10か…おもろいな!』

 

カリスが何も描かれていないラウズカード「プロパーブランク」をセンチピードUのバックルに投げつけると、緑の光を放ちながらそれにに吸い込まれていき、円を描く様にカリスの手元に戻った。これがアンデッドを「倒す」唯一の手段「封印」である…。

 

『ふぅ…これにて一件落着やっ!さてと…』

 

【SPIRIT】

 

アンデッドを封印し終えたカリスはハート2「ヒューマンスピリット」を発動させ、切人の姿に戻った。

 

「(?あれって…)貴方がこの世界のライダー、カリスなんですね。」

 

「んん?何やお前。らいだぁ?一体何のこ…「ゴラァァァァッッッッ!!!!キリィィィィッッッッ!!!!」とばぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

闇影の突然の問い掛けに首を傾げる切人だが、その直後に彼をキリと呼ぶ女性によって首を思い切り蹴られ吹っ飛んだ。

 

「アンタ、またお客さん放ったらかして…何油売っとるんやっ!!」

 

「何すんや!アマネ!俺はさっき迄人助けを…痛でででっっ…耳引っ張んな!!」

 

「人助けすんのなら、今待たせとるお客さんにさっさとたい焼き作らんかいっっ!!」

 

「貴方達…たい焼き屋さんなんですね!丁度良かった。」

 

「「へ?」」

 

 

 

―たい焼き屋・ふじはら

 

 

「いや~すまんすまん!まさかアンタ等たい焼き買いに行く途中やったん…ヘブッ!!」

 

「お客さんに対してんな態度あるかっ!!」

 

闇影達に砕けた口調で謝る切人を殴った、跳ねた黒髪に髪止めをした女性は藤原(ふじはら)アマネ。この店の一人娘だった。

 

「一人娘…?ご両親は?」

 

「うん…おかんはウチが生まれて直ぐに亡くなって、昔はおとんとやっとたんやけど…四年前に亡くなってな…。」

 

「あっ…ごめんなさい…!」

 

家族の死を思い出させ、表情を暗くさせてしまった黒深子はアマネに謝った。

 

「あっ、気にせんでええよ!今はコイツと何とかやってってるから大丈夫や!」

 

しかし、アマネは直ぐに表情を明るくしながら「気にするな」と手を降り黒深子を安心させた。

 

「切人さんはどうして此処でお世話に?」

 

「キリでええよ。俺がこの店で世話になったんは…ん?この感じ…!」

 

闇影の質問に答えようとする切人は何かを察知すると、突然飛び出していった。

 

「あっ、コラ!また何処行くんや!?」

 

「俺が様子を見てくるから此処で待ってて下さい。黒深子、頼む!」

 

「分かったわ。」

 

 

 

『グウゥゥゥ…!!』

 

『ジャアァァ…!!』

 

切人が察知した場所には二体のカテゴリーK、金色のカブト虫をイメージしたスペードの「コーカサスビートルアンデッド」と同じく金色のクワガタ虫をイメージしたダイヤの「ギラファアンデッド」がいた。

 

「二体共カテゴリーKかいな!」

 

「被害が出る前にケリをつけましょう!」

 

「おうよ!行く…「「待てっ!!」」ってあらっ!?」

 

切人はカリスに変身しようとしたが、現れた二人の若者の叫びによりズッコケた。

 

「カテゴリーKが二体…いけるか?ハルカ。」

 

「うっせーな…たりめーだろが!シン!」

 

同じ黒い半袖のジャケットを着た緑のシャツに茶髪に緑のメッシュを入れた男性と、赤いシャツに黒髪ショートヘアの赤いメッシュを入れた男勝りな口調の女性は互いに言い争いながら、真ん中に「A」のマークをしたバックルにカードを入れ腰に当てベルトが巻き付くと、真ん中のスイッチを展開させた。

 

「「変身!!」」

 

【【OPEN-UP!】】

 

バックルから現れた緑のゲートをシンという男が、赤のそれをハルカという女性が潜るとダイヤの形をした複眼に、胸に「A」のマークが付いたアーマーが特徴の戦士、緑の槍使い「仮面ライダーランス」と赤の弓使い「仮面ライダーラルク」が現れた。

 

「あの人達もライダーなのか…。」

 

「……。」

 

『せいっ!せいっ!せやぁっ!!』

 

『グァッ!ギャッ!ガァッ!!』

 

ランスは槍状の専用武器「醒杖ランスラウザー」でコーカサスビートルUを素早く突いていった。

 

『ガアァァッッ!!』

 

『ぐあっ!…この野郎っ…!!』

 

【BLIZZARD】

 

『グゥ…ガ…ガ…。』

 

反撃を受けて頭に来たランスはクラブ6「ポーラーブリザード」でランスラウザーから吹雪を出し、コーカサスビートルUを凍らせ、止めに一枚のカード「マイティインパクト」をラウズした。

 

【MIGHTY】

 

『はあぁぁ…はあっ!!』

 

『グギャアァァッッ!!』

 

ランスラウザーを突き刺すとそこから衝撃波を放つ必殺技「インパクトスタッブ」によりコーカサスビートルUは倒されバックルが開かれた。

 

『そらよっ!』

 

ランスがプロパーブランクのカードを投げ付けると、コーカサスビートルUはそれに封印された。

 

『くっ…全然効いてねぇ…このぉっ!!くたばれっ!!』

 

【BALLET】

 

一方、ラルクはギラファUと交戦するが、その攻撃が全く効かず苦戦していた。業を煮やしたラルクはダイヤ2「アルマジロバレット」をボウガン状の専用武器「醒銃ラルクラウザー」にラウズし、連射攻撃を放った。しかし…

 

『ジャアァァ…。』

 

『今迄効かなかったのはバリアを張ってたからかよ…うわぁっっ!!』

 

それはギラファUが作り出したバリアにより防がれ、ラルクは攻撃を受け吹き飛ばされてしまった。

 

「あの人が危ない!変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

傍観していた闇影はディライトに変身し、ラルクの下へと駆け出した。

 

「あれが…ライダー…。」

 

『てやあぁっっ!!』

 

『グァッ!!』

 

ディライトは駆け着けたままジャンプをし飛び蹴りでギラファUを吹き飛ばした。

 

『女性に危害を加えるのは関心しないな。キングにはキングで行くか!』

 

【SHADOW-RIDE…DARK-KIVA!】

 

ディライトは自身の影をダークキバにシャドウライドさせ、もう一枚カードをドライバーに装填した。

 

『更に…ガルル、解放だ!』

 

【ATTACK-RIDE…GARULU-SAVER!】

 

ディライトドライバーから青い狼の彫刻に金色の刃が付いた武器「ガルルセイバー」が実体化し、Sダークキバの手元に装備された。

 

『行くぞっ!!せいっ!はぁっ!そらっ!!』

 

『グッ!!グガァァッッ!!』

 

ディライトとSダークキバはライトブッカーとガルルセイバーでギラファUに斬りかかるが、またもバリアを張り防ぎ二振りの剣で二人に反撃した。

 

『ぐぁっ!!…痛たたた…成程、一筋縄ではいかないな。なら、力で一気に叩く!ドッガ、解放だ!』

 

【ATTACK-RIDE…DOGGA-HUMMER!】

 

今度は紫と黒のフランケンシュタインの形をした「ドッガハンマー」を実体化し、Sダークキバと共に装備した。

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DA・DA・DA・DARK-KIVA!】

 

『ドッガバイト!』

 

ドッガハンマーの拳が開くと、掌にある単眼「トゥルーアイ」の光がギラファUの身体を固めた。

 

『これでバリアは張れないだろ!はあぁぁ…止めだぁっ!!』

 

『グガアァァッッ!!』

 

必殺技「ドッガ・サンダースラップ」により二つのハンマーを叩き付けられたギラファUは爆発と共に倒された。

 

『ふぅ…こんなところか。』

 

『アンデッドを…倒した…?』

 

『お前…何なんだよ…何モンなんだよ!何でアンデッドを倒せるんだよっ!?』

 

不死のアンデッドが突然現れた謎のライダーによって倒され、ランスはディライトに駆け寄り喧嘩腰で掴み掛った。

 

『何でと言われても…こういう仕様なんだとしか言えないよ。』

 

『なっ…ふざけんな!!』

 

当然そんな理由で納得がいかず、ランスの怒りは更に爆発した。

 

『…一先ずコイツを連れてくか。院長なら何か解るかもしんねぇし。』

 

『…チッ!!』

 

ラルクの提案を聞き、ランスは渋々とディライトを離した。

 

『良いですよ。俺も貴方達の話を聞きたいし。ねぇ、キリさん?』

 

「いや…俺ええわ。アンデッドもいなくなったし、店に戻んねぇとアイツにどやされるしな。」

 

切人は何故か難しい表情をし、店に戻ると言いその場を去った。

 

『(??どうしたんだろう?)そうですか、分かりました。』

 

 

 

―BOARD(ボード)病院・院長室

 

 

この病院の看護士見習いであるランスの変身者・緑川(みどりかわ)シンとラルクの変身者・赤麻(あかま)ハルカに連れられた闇影は、黒いオールバックに眼鏡をかけた院長の坂黄(さかき)ジュンイチと面会した。

 

「初めまして。院長の坂黄です。この度はウチの部下がとんだ無礼を働いてしまって誠に申し訳ない。」

 

「いえ、いいんですよ。頭を上げて下さい。」

 

頭を下げたジュンイチに、闇影は上げる様言った。それを見ていたシンとハルカは顔を顰めていた。

 

「成程、その為に旅を…しかし、その心配は無用です。」

 

「何故ですか?」

 

「我々には頼れる戦士がいます。それが彼等です。彼等のお陰で人々は平和に過ごせているのですから。」

 

ジュンイチの言葉を聞き、二人は闇影を見下す様な態度で勝ち誇った顔をした。

 

「それは解ります…でも、それ以上の脅威が現れた時を想定すると…やはり俺も…」

 

「おい、てめぇ…院長の言葉聞いたか?」

 

「アンタは「必要ねぇ」って言ってるんだよ。とっとと帰んな!!」

 

シンとハルカは不遜な態度で闇影に突っ掛かっていったが、ジュンイチが手を上げてそれを制止した。そして肩を竦めた彼は席から立ち上がった。

 

「ついてきたまえ。本当は一般の者に見せるべきではないのだが、特別に案内しよう…このBOARDのもう一つの姿を…。」

 

 

 

―地下研究室

 

 

ジュンイチが案内した場所は、辺りに実験器具や機械が設置された薄暗い部屋だった。そこには封印されたアンデッドのカードが置かれたデスクもあった。よく見るとカードの怪物が蠢いている。

 

「アンデッドは不死の力を持つ未知の存在…未だその全ては解明されていない。故に私は独自でこの施設を建設し、日夜研究を行っているのだよ。」

 

「凄い…独自で此処までの施設を作ったなんて…。」

 

ジュンイチの行動力に、闇影は大きく驚嘆した。

 

「私には更に大きな夢があってね。アンデッドの不死の謎が解明されれば、多くの不治の病に苦しむ人々を救う事が出来る。誰もが元気でいられる世界を築きたい…。それが私の夢だ。」

 

「いい夢ッスね!俺、その夢実現するのに何でも手伝います!」

 

「オレもです!…どうだ、これでも力不足だと思うか?旅のライダーさん。」

 

「…出直してきます。」

 

ハルカは不遜な態度で闇影にそう吐き捨てた。ジュンイチのカリスマ性、夢への具体的な行動力を知り闇影はそのまま研究所を後にした。

 

「こらハルカ、そんな事を言うんじゃない。彼も彼なりにこの世界を思ってくれているのだから。それより君達にまた一仕事を頼みたいのだが…」

 

ジュンイチは一枚の写真を二人に見せ、仕事を依頼した。

 

 

 

―たい焼き屋・ふじはら

 

 

「へい!たい焼き三つお待たせ!」

 

「ありがとう!」

 

「またのご来店を!…はぁ…。」

 

店に戻った切人は仕事をこなすが、闇影と別れた時から表情がずっとそのままだった。

 

「キリ、お疲れさん…ってどしたんや?そんな顔をして。」

 

「お…おう!何でもねぇよ!」

 

アマネは切人の表情がおかしく心配をするが、切人は何でもないと誤魔化した。

 

「嘘や…アンタウチに何か言いたい事があるんちゃうん?」

 

「…!!」

 

「やっぱそうなんや…何や?仕事がキツイんか?」

 

「そんなんやない…。」

 

「アマネさん、今洗濯が終わっ…」

 

「じゃあ何なんや!?言いたい事があんならハッキリ言い!ウチはな、隠し事をする奴が一番嫌いなんや!ウチが気に食わんのならこっから出てきっ!!」

 

アマネは切人の言い淀んだ態度に苛立ち、大きく出て行けと怒鳴った。

 

「…!!ああ、言われんでもこんなとこ、こっちから出てくわ!!」

 

これに頭にきた切人はブチ切れて店を飛び出して行った。

 

「アマネさん!どうしたんですか?」

 

「…見苦しいとこ見せたな…アンタは知らんでええ。」

 

「でも…キリさんが「知らんでええって言っとるやろっ!!」!!」

 

「…ごめん…ちょっと頭冷やして来るわ…。」

 

「アマネさん…。」

 

 

 

闇影はジュンイチの夢に何か違和感を感じていた。確かに彼の理想は素晴らしい物だ。だが、もし平和を望むアンデッドがいれば?やはり封印するのだろうか?それはアンデッドの存在を認めない事になる。それで理想と言ってしまっていいのかと、まるでそれに心当たりがある様な思考をしていた。

 

「(もし良いアンデッドがいたらそれも封印してしまうのか?俺はそれを『一体だけ』知っている…。)ん?あれって、キリさん?」

 

「くそっっ!!俺のアホッッ!!何でや…何で…」

 

闇影は、小石を蹴飛ばしながら腹を立てている切人を見かけ、彼に近づいていった。何故彼は苛立っているのか?

 

「何で言えへんのや…俺が…俺がアイツの親父さんを…!!」

 

「アマネさんのお父さんをどうしたんですか?キリさん。」

 

「闇影…。」

 

「悩みがあるなら俺に話して下さい。少しは楽になりますよ?」

 

「いや…こればっかは言われへん…!俺は…!!誰やっ!!」

 

闇影の「お節介」を拒否する切人。その時、何者かが彼に攻撃を仕掛けてきた。

 

『見つけたぜ…カリス…いや、「ジョーカー」!』

 

『お前はいるだけで危険な存在なんだよ…大人しく封印されなっ!』

 

「ジョーカーやない…俺は…人間やっ!!」

 

それは、ランスとラルクだった。ジュンイチが彼等に依頼したのは「ジョーカーの封印」だった。切人の否定の言葉を無視し、彼に攻撃し続けた。

 

「くっ…このままやられるか!変身!」

 

【CHANGE】

 

「粗方解らないけど、止めないと!変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

切人と闇影はカリスとディライトに変身し、カリスはカリスアローにカードをラウズし、ディライトもカードを装填した。

 

【TORNADO】

 

【ATTACK-RIDE…LASER!】

 

カリスは「ホークトルネード」の突風、ディライトはディライトレーザーで反撃をした。が…

 

【SMOG】

 

【REMOTE】

 

ランスはクラブ9「スキッドスモッグ」とクラブ10「テイピアリモート」のカードをラウズし、周囲に黒い煙を出した。

 

『何やっ!?周りが暗くて見えへん…!』

 

『落ち着いて下さい!煙が止んできました。…!!これは!!』

 

煙の止んだ先には、ランスとラルクの前に二体のアンデッド・クラブのカテゴリーQの「タイガーアンデッド」とカテゴリーJの「エレファントアンデッド」倒れていた。

 

『甘かったな…俺はこの「スモッグ」と「リモート」を使って煙幕の中でこいつ等を解放して俺等の盾になってもらったんだよ!』

 

倒れたタイガーUとエレファントUは再びカードへ封印され、ランスの手元に戻っていった。

 

『何て事を…そんな事をして心が痛まないのかっ!?』

 

いくらアンデッドとはいえ、平気で盾代わりにするランスの行動にディライトは憤怒した。

 

『別に。どーせ死なねぇんだから盾にしたって問題ねぇだろ?そこの化物と同じよう…。』

 

『それとも何か?アンデッドにも生きる権利があるって言いたいの?笑わせるね!』

 

今の二人の発言にディライトの怒りを爆発した。

 

『許さない…お前達の腐った根性、叩き直してやるっ!!』

 

『はっ!!やれるモンならやって…うわっ!!』

 

互いに武器を構えた瞬間、突然爆発が起きた。その爆風から全身が黒く、獰猛な三つの顔の狼の異形が現れた。

 

『な…何だっ!あれは?』

 

『あれは…ケルベロス!!』

 

『グガアァァッッ!!』

 

ケルベロスはそのままカリスに突撃しようとした。

 

『コイツ…ヤバイ奴やでっ!!』

 

【DRILL・TORNADO】

 

【SPINNING-ATTACK!】

 

『喰らい…やがれぇぇっっ!!』

 

カリスは「スピニングアタック」で一気にケルベロスを倒そうとした。だが…

 

『グガァッ!!』

 

『な…何やとっ!!は…離せっ!!』

 

ケルベロスはカリスの足を掴み、そのまま地面に叩き付け掌を前に彼に向けると、カリスの身体から数枚のカードがケルベロスの身体に吸収されていった。

 

『これはまさか…アンデッドを吸収する能力…?』

 

ケルベロスの能力、それはアンデッドを自らの身体に吸収する能力である。無論それが封印されたラウズカードも例外ではない。

 

『キリさん!大丈夫ですか!?キリさ…え?』

 

叩き付けられたダメージが大きいのか、カリスは変身解除し、切人の姿へと戻った。すると、彼の身体に異変が…

 

「は…離れ…ろ…闇…影…うぐっ…うっ…うっ…ゥガアァァァァッッッッ!!!!」

 

『キリさん!!』

 

切人は突然苦しみ出し、その姿は揺らめき全身が黒く、緑のバイザーに、胸部にある緑の核が特徴のカミキリ虫の様な異形「ジョーカー」へと変貌した。

 

『本当にジョーカーだったなんて…!!』

 

『ガアァァッッ!!』

 

『うわっ!!完全に正気を失っている…。』

 

ジョーカーの攻撃を回避したディライト。その時、黒深子からの携帯が鳴り出した。

 

『どうした!黒深子!?』

 

『先生!!キリさんがお店を飛び出しちゃったんだけど、見てない?』

 

『いるにはいるけど…今会えそうにないよ。後でかけ直す!』

 

『えっ!?どういう事、先せ…!』

 

携帯を切ったディライトは今の状況をどうするか考えている。ジョーカーとケルベロス、そしてランスにラルク、この戦いをどうやって止めるのか?

 

『グガァァァァッッッッ!!!!』

 

考えている間にジョーカーはディライトの方へ駆け出し、攻撃を仕掛けようとした。

 

『くっ…どうすればいいんだ!!どうすれば…!!』

 

 

 

一方、ディライトの危機を空から見下す様に見ている紅蓮。

 

「ディライト…貴様は自ら生み出した世界の異変により滅ぼされるのだ!!」

 

表情が見えない赤いフードの中で紅蓮は冷たく笑っていた…。




カリスが関西弁なのは剣のとあるキャラをモデルにしたからです。誰かは聡明な皆さんならご存知です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10導 カリスジョーカー

遂に10話突破です!!特に言う事は無い!!(オイ)

今回もちょびっとだけもう一人新キャラを登場させました。 


ケルベロスにラウズカードを奪われジョーカーに変貌した切人は、ディライトに襲いかかってきた。この事態にディライトは、彼を気絶させようと攻撃を仕掛けた。

 

『くっ…一度気絶させるしかないか…キリさん、ちょっと痛いですよ!』

 

【ATTACK-RIDE…LASER!】

 

止むを得ずディライトは「ディライトレーザー」でジョーカーを狙撃した。

 

『ガァッ!!』

 

しかし、ジョーカーはそれを全く物ともせずそのままディライトへ近づき攻撃を仕掛けた。

 

『そんなっ!?効いていな…ぐあぁぁっっ!!』

 

ジョーカーの攻撃を受けたディライトは背後へ吹き飛んだ。

 

『くっ…なんつー強さだ!!攻撃が全く効かねぇ…!!』

 

『攻撃だけじゃなく、防御も高過ぎるぜ…。』

 

一方、ランスとラルクはケルベロスと交戦していたが、ケルベロスの強大な強さに翻弄されていた。

 

『グオオォォッッ!!』

 

『!!こいつスピードも半端ねぇぞ…うわぁっ!!』

 

猛スピードでランスに襲いかかり、その鋭利な爪で引き裂き、彼を地に伏せさせた。

 

『シン!!』

 

そして、倒れたランスを掴み上げ先程のカリスの様にカードを奪おうとした。その時…

 

『ふっ…!! 』

 

『『グガアァァァァッッッッ!!!!』』

 

突然、ジョーカーとケルベロスが何者かの襲撃を受けた。彼等の背後にいるのは…

 

『な…何故だ…何故此処にいる筈の無い怪人がいるんだ…!?』

 

ディライトが驚くのも無理は無い…。何故なら本来「キバの世界」または「ダークキバの世界」にいる筈のマーマン族の生き残りの緑の海魔「バッシャー」がいるからだ…。

 

『僕、参上♪』

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

 

『ねぇねぇ!僕、君達のライフエナジーが欲しいな。頂戴♪』

 

バッシャーは手を差し出しながら子供の様な無邪気な口調で恐ろしい事を言い、その場にいた者に恐怖心を煽った。

 

『くれないのなら…力づくで貰うよ!ふっ!』

 

機嫌を損ね、声のトーンを下げたバッシャーは、緑の銃でディライト達を無差別連射し始めた。

 

『うわっ!!なんて無茶苦茶な…!!』

 

『ガアァァァァッッッッ!!!!』

 

この攻撃を受けたジョーカーは気を失いダメージが大きいのか、切人の姿へと戻った。

 

『キリさんっ!!』

 

ディライトは切人の下へ駆け寄ろうとするが、バッシャーもまた彼に駆け寄った。

 

『さーてと…先ずこの人のから頂こっ…って、えぇっ!?もう終わり!?なんかつまんなーい!』

 

切人のライフエナジーを吸収しようとしたバッシャーだが、突然一人言を言い出し、現れた灰色のオーロラの中へと消えていった。

 

「一体何だったんだ…?っと、それよりキリさんを連れ出さないと…!黒深子の家まで行くか…。」

 

闇影は、今は気絶した切人を担ぎ白石家へと移動した。

 

「ったく…世話の焼ける奴だな…。」

 

それを背後から見ていた謎の青年は、闇影に悪態をついていた…。

 

 

 

―フラッシュ薬局

 

 

あれから黒深子に連絡し直した闇影は、事情を聞き自分も話すから此方に一度帰る様黒深子に告げ、切人を布団に寝かせに現在に至る…。

 

「そうなんだ…キリさんが…アンデッド…ジョーカーなんだ。」

 

「あぁ…それにしても俺と別れた後にそんな事があったなんて…。」

 

二人は双方の事情を交換し合った。切人のジョーカー化、アマネとの大喧嘩。どちらも深刻な問題だった。

 

「う…うぅ…こ…此処は…何処や…?」

 

切人は目を覚まし起き上がろうとした。だが、闇影によって抑えられた。

 

「まだ寝てないと駄目ですよ!此処は黒深子の家です。」

 

「闇影…そっか…あの後ジョーカーになって暴れだして…ホントにすまん!!」

 

「それより…何故、ジョーカーである貴方があの店でお世話になってたんですか?」

 

「ちょっと、先生!」

 

「…見てしもうた以上、隠し事は出来ひんな…四年前、俺達アンデッドはある日突然封印から解放されたんや。原因は黒いオーラの様なモン…やったかな?」

 

「!!黒い…オーラ…!!」

 

闇影はアンデッド達が解放された原因がまたもあの黒いオーラである事を知り、愕然としていた。切人の話は未だ続く…。

 

「解放されたアンデッドは、もう一度世界の支配権を巡って『第二のバトルファイト』を始め出したんや…俺もそれに参加していた。」

 

「でも、それがどうして今の姿に?」

 

「それは、この『スピリット』のカードの効力の為や。そのカードの影響で俺はジョーカーでありながら、人間の心を持つ事が出来た。」

 

切人は「スピリット」のカードを片手に、自分が今の姿でいる原因を語った。ジョーカーは封印されたアンデッドのカードを用いる事でその姿に変化する事が可能である。そしてハート2「ヒューマンスピリット」の影響により人の心を持てたのである。

 

「やがて体力が衰弱して倒れた所を、ある人が救ってくれたんや。」

 

「それが…アマネさんのお父さん…。」

 

「ああ…親父さんは、こんな得体の知れん俺を何も言わずに面倒見てくれた…俺はその恩を報いるべく親父さんのやっとった今の店を手伝うようになったんや。同時に破壊衝動を抑えるべくハートカテゴリーのアンデッドを封印する為に戦った。やけど…」

 

「破壊衝動が、また目覚めてしまったんですね…。」

 

「それをずっとアマネに今日まで言えずにいた…それを言った後、俺は…あいつ等に封印されるつもりや…。」

 

「でも…何もそこまでしなくて「それにや!!」」

 

「もしジョーカーである俺が生き残れば、世界のリセットを意味する…!!どの道生きてとったらアカンのや…俺は…!!」

 

切人はアマネに全てを打ち明けてから、封印される事を宣言した。自分がバトルファイトに生き残ってしまうと世界がリセットされる事を危惧して…。拳を握り顔を俯かせながら悲しげにそう語っていた。

 

「そうするのはアマネさんに話をしてからでも遅くはない筈です…。それに、未だそうなるとは限らないですよ。」

 

「いや、解るんや!!今度ジョーカーになれば、俺は完全に意識を失くす…!そうなったらお前達やアマネを傷つけてしまう…。だから…俺はもうアマネに会う事は出来ない…!!」

 

「その時は俺が倒します…!何せ…灰燼者ですから…。」

 

「先生…。」

 

もし切人が今度ジョーカーになり意識を失くした時、闇影は自分が倒すと自嘲気味に言い出した。自らを灰燼者と呼びながら…

 

「闇影……解った。一度戻ってアイツに話するわ!」

 

「キリさん…。俺達も一緒に行きます!」

 

「ええ!行きましょう、キリさん!」

 

「おう!ほな、戻ろか!」

 

 

―アマネSIDE

 

 

店を出たアマネは、俯き歩きながら先程の事を考えていた。自分のあの言い方に反省はしていたが、それ以上に何かを考えていた。

 

「(キリの奴、最近何かおかしい…おとんが死んでからたまに店出てくし、何よりおとんの話を言い出したら表情をさっきみたく暗くしとったし、どっか変や…。もしかしたら、おとんが死んだんと何か関係が…?)」

 

アマネは、父を亡くしてからの切人の行動がおかしい事にずっと疑問に感じていた。そして、その疑問に何かを悟り始めた。その時…

 

「…!!んんっ!!んーーーっっ!!んーーーっっ!!」

 

突然背後から何者かがアマネを襲い、彼女を捕獲した。

 

「(キ…リ…。)」

 

 

 

―シンSIDE

 

 

「ちっ…!暫く休んでろ…か…。」

 

あれからシンはケルベロスの襲撃の傷をBOARDで治療したが、ジュンイチから当分は戦わず暫くは休む様言われ帰宅中である。しかし、その決定に不満の様だ。

 

「こんな傷、大した事ねぇっての…。俺は…未だ戦える!っ痛ぅぅ…。」

 

と、腕を振り強がっていたが、傷が再び痛みだした。その時…

 

『グゥゥゥ…。』

 

「…ケルベロス!!」

 

突如ケルベロスがシンの前に現れた。今の彼は傷を負っていて戦うのは危険だ。しかし、シンは笑いながらランスバックルを装着した。

 

「へっ…丁度いいじゃねぇか!お前を封印すれば院長も認めてくれる!変身!」

 

【OPEN-UP!】

 

シンはランスに変身し、ランスラウザーを構えた。

 

『俺は…ガキの頃に両親を亡くしずっと荒れた人生を送っていた…そんな俺をあの人は…院長は救ってくれた。そして、俺に生きる意味を教えてくれた…。見ず知らずな俺にここまでしてくれたあの人の為なら死ねる…!!うおぉぉぉっっっ!!』

 

『フンッ!!グオォォッッ!!』

 

『うあぁぁぁっっっ!!』

 

構えたランスラウザーを回しながらケルベロスに突撃したが、片手で受け止められそのまま強烈なキックを喰らい吹き飛ばされた。

 

『くっ…なら、「リモート」で…!!』

 

ランスは、「リモート」のカードでアンデッドを解放し戦力にしようとしたが…

 

『ムンッ…!』

 

『何っ…!こ…れ…は…。』

 

ケルベロスが掌を前に掲げると、スペード10「スカラベタイム」の効果の様にランスの動きが止まった。その隙に彼が持っているクラブスートのカードを全て吸収し、強烈なパンチでランスを吹き飛ばし、その衝撃でランスの変身は解除されてしまった。

 

『ガアッ!』

 

「ぐあああっっっ!!な…何で「タイム」の力を…!?」

 

『それは、私が彼にそのカードの力を付加させたからだよ…シン。』

 

シンの疑問に答えたのは、ランスとラルクと同じダイヤの単眼、胸の「A」マークのアーマーが特徴の黄色い戦士「仮面ライダーグレイブ」だった。ゆっくりとシンに近づきながら…。

 

「てめぇ…何で俺を知って…まさか、お前…グハァッ!!」

 

グレイブは、自分の正体に気付き始めたシンを気絶させた。

 

『余計な詮索は禁物だよ…。ん?』

 

「変身!」

 

【OPEN-UP!】

 

ハルカはバイクに搭乗しながらラルクに変身し、そのままジャンプしてグレイブに突撃しようとした。しかしそれを横に回避され、バイクを着地した。

 

『お前…シンに何を…!?』

 

『おやおや…随分と乱暴な行動に出る女性だね…。』

 

『うるせぇっ!!お前等をぶっ倒してやるっ!!』

 

【GEMINI】

 

ラルクはラルクラウザーにダイヤ9「ゼブラジェミニ」をラウズし自分の分身を作り出した。そして分身をケルベロスに戦わせ、ラルク自身はグレイブと交戦した。

 

『うらっ!はっ!でやっ!』

 

ラルクはグレイブから距離を取って銃撃した。しかし、グレイブはそれを軽々とかわした。そして、剣状の専用武器「醒剣グレイブラウザー」にカードをラウズした。

 

【MAGNET】

 

『えっ!?武器が…!!』

 

『女性に武器は似合わない…。』

 

スペード8「バッファローマグネット」を発動し、彼女が持っていたラルクラウザーをグレイブの手元に吸い寄せた。

 

『ざけんなっ!オレはずっと女であるせいでいろいろ差別を受けてきた…だが、あの人はそんなオレ…あたしを差別せず今の環境を与えてくれた…「差別の無い世界を一緒に作ろう」って言ってくれた。それを報いる為なら…あたしは女も!命も!あの人に…院長に捧げてやる!!』

 

ラルクもシン同様、ジュンイチに自分の人生を救われていた。だからこそ、彼等はジュンイチを強く信頼していた。それを聞くとグレイブはベルトを外し、変身を解除した。

 

『え…?そ…そんな…な…何で…?』

 

「なら、今からする事に協力してくれるかな…?ハルカ。」

 

なんと、グレイブの正体はジュンイチだった。つまり先のケルベロス襲撃は彼の仕業だったのだ。それを知ったラルクは今迄信じてきた者に裏切られてしまい…

 

『う…うああああぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

半狂乱したままジュンイチに殴りかかったが、簡単に受け止められてしまいそのまま腹に拳を叩きつけた。ラルクは変身を解除されつつ、ジュンイチの足元にしゃがみこんだ。変身解除と同時に、分身も消え去った。

 

「うぐっ…!何でだ…不治の病に苦しんでる人を救い、誰もが元気でいられる世界を創るんじゃなかったのかよっ!!」

 

「ああ、勿論だとも。『私が支配者になった』世界でね。」

 

ジュンイチは明るい笑みを浮かべたまま自分の真の目的を語った。

 

「それには君達の力が必要なんだ。『君達が集めたラウズカード』が、そして…君達の細胞もね!」

 

【THUNDER】

 

『うあぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

ジュンイチはグレイブラウザーにスペード6「ディアーサンダー」をラウズし、その電撃でハルカを気絶させた。

 

「ついに揃った…。ライダーとアンデッドの融合素材が…!!」

 

 

 

―たい焼き屋・ふじはら

 

 

「はあ…着いちまったぜ…って、ん?何やこれ?」

 

店に戻った切人達は玄関先で一通の手紙を見つけた。それを読んでみると切人の顔色が変わった。何故なら…

 

『ジョーカーよ。藤原アマネの身柄は預かった。返して欲しくば残りのラウズカードを持参し、BOARD地下研究所に来るべし。 坂黄ジュンイチ』

 

その手紙は、アマネが誘拐された事を示す脅迫状だからだ。

 

「坂黄さんが…アマネさんを…!?じゃあ、さっきの襲撃はあの人が!?」

 

「野郎…アマネを巻き込みやがって…!!直ぐにBOARDにカチコミじゃあっっ!!」

 

手紙を握り潰しながら切人は、裏社会の人物の様な物騒な事を言いながら店を飛び出した。

 

「ちょ、ちょっとキリさん!?あ~あ、行っちゃった。行先解るのかしら?」

 

「とにかく急いでBOARDに行ってくる!黒深子は家に戻ってろ!」

 

「気を付けてね…先生。」

 

闇影は切人の後を追うべく、マシンディライターに搭乗しようとするが…

 

「ねぇ、此処今お店やってないの?」

 

「ああ、お客様すいません。只今店の者が材料の買い出し中で…」

 

客らしき銀色の短髪に赤いジャケットの中に大きな胸の谷間が目立つ黒いスリットの入った服を着た、赤いショートパンツに赤いガーターベルトを着け、黒いブーツを履いた妖艶な雰囲気の女性が、店は営業していないのかを尋ねてきた。闇影は適当な理由を言って帰ってもらおうとした。

 

「えぇ~!私まだ満足できな~い…って、あら…」

 

「申し訳ありま…って、え?」

 

「お~い!!どしたんだ?」

 

「此処の店今人いなくてやってないんだって。それより…」

 

「何だよ…って、お前かよ…。」

 

「お前等…何で…?」

 

今度は黒髪の長い黒髪のウェーブを後ろに括った、水色のジャケットに白シャツに、黒い半ズボンを履いた大柄で屈強な男性が現れた。どうやらこの二人は闇影を知っている様だ。

 

「随分と丸くなったもんだな…。」

 

「み・か・げ・君♪」

 

「くっ…!!」

 

顔を笑いながらそう言った二人の言葉に強い衝撃を受け、頭をグラっとする闇影。気付いた時には彼等の姿は消えていた。

 

「先生、大丈夫!?今の人達…先生の知り合い?」

 

「…今はキリさんを追うのが先決だ。行ってくる!」

 

闇影は話を逸らし、切人の後を追いBOARDへ向かった。

 

 

 

―BOARD・地下研究所

 

 

「この装置は人間の細胞データを電気に変換する事が出来る。これで…」

 

ジュンイチはシンとハルカの身体に奇妙なケーブルを装着し、それと繋がっている機械のスイッチを作動した。

 

「があぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

「うあぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

作動した瞬間、ケーブルから強い電流が流れ出し二人は大きな悲鳴を上げた。そして、その電流は隣の機械へと移動しその真下の台にあるグレイブバックルに流れていった。電流が流れ終わり、手袋をした手でグレイブバックルを掴み、そこから一枚の黒い絵柄のカードを取り出し恍惚な表情で見つめていた。

 

「これがケルベロスにアンデッドの細胞データ、そして人間の細胞データを凝縮した究極のアンデッド…。これがあれば、新たな世界を創り出す事が出来る…!!」

 

「それは俺を封印してから語れや。おらぁっ!!」

 

切人は研究所のドアをぶち破り、中に侵入した。

 

「ようこそ。噛矢切人君…いや、ジョーカー…。」

 

「アマネは何処や?大人しく返せば半殺しにまけたる。」

 

「安心したまえ、彼女は院長室で眠っている。私の目的は、君だからな。」

 

そう言うとジュンイチと切人は、互いにベルトを召喚し…

 

「「変身!!」」

 

【CHANGE】

 

【OPEN-UP!】

 

切人はカリスに、ジュンイチはグレイブに変身すると二人は高速移動の如く天井を突き破り、外の廃工場付近へ移動した。

 

『おりゃおりゃおりゃあぁっ!!』

 

『くっ…!なかなかやるな…だが…!』

 

カリスの怒涛の攻撃に、グレイブはわずかに押されていた。しかし…

 

『何時からかな…?彼女を騙してきたのは。』

 

『!!なんやと…!?』

 

グレイブは突然カリスに、何時アマネを騙したのかと揺さぶりかけた。するとカリスの攻撃が緩み出しその隙を付いた。

 

【SLASH】

 

『はあっ!』

 

『ぐあぁっ!!』

 

スペード2「リザードスラッシュ」でカリスを切り裂き背後へ追いやるグレイブ。

 

『何…出鱈目こいてんねん…!!俺がアイツを騙したやとぉ!?』

 

『そうではないのか?彼女の父親を殺し、のうのうとその娘と一緒に暮らしてきた。一切事実を語らずに。』

 

『…まれ…。』

 

『今の平和な一時が崩れてしまうのを恐れて、真実を話さずに生きて来た君に平和の為に生きる私を非難出来るのだろうか?』

 

『黙れぇぇぇぇっっっっ!!!!…グッ…グ…ガ…。』

 

グレイブの挑発に乗せられたカリスは切人の姿に戻り、怒りでジョーカーの破壊衝動が目覚めだし、姿が揺らめきながらその場でもがき出した。それを見たグレイブは何故か変身を解除した。

 

「最後にいい物を見せてやろう。アンデッドと人間の細胞を凝縮した新たなケルベロス…」

 

【OPEN-UP!】

 

ジュンイチは黒い背景のカテゴリーA「チェンジケルベロス」のカードをグレイブバックルに入れてスイッチを作動すると、頭部に黒い黄色の眼をした狼のヘルムと右が緑の、左が赤い眼をした黒い狼のアーマーが装着し、右腕に巨大な爪を装備した異常なグレイブ「グレイブケルベロス」へと変貌した。

 

『ケルベロスの力を極限まで引き出せるライダーアンデッドの力を…はあぁぁ…!!』

 

Gケルベロスは力を貯め出すと、周囲に強力な黒いオーラが湧き出した。

 

「くっ…何や…あのけったいな姿は…それに…この真っ黒なモンはなんや…?めっちゃ苦しい…。」

 

Gケルベロスの発する黒いオーラに押されそうになる切人。そこに…

 

『…!!』

 

『何っ?ぐあぁぁっっ!!』

 

工場付近の廃車の車体から黒龍の戦士・リュウガが飛び出し、ドラグセイバーでGケルベロスを切り裂き、これによりオーラが止みだした。

 

「ありがとな!せやけど誰や?アンタ。」

 

切人の疑問に一切返事しないリュウガ。そこへ、マシンディライターに乗ったディライトが現れた。

 

『ふう…やっと間に合ったか…。』

 

「闇影!って事はこの黒い奴は…。」

 

『俺の影ですよ。』

 

そう、このリュウガはディライトがシャドウライドで作った物だった。あらかじめSリュウガを召喚し先にミラーワールドに潜らせ、切人の危機を救ったのだ。

 

「影でライダー作れるって…お前、一体…」

 

『あれがシン達が言っていたディライト…興味深いな。』

 

『話は後です!ここはこの援軍で行きますか!』

 

【FINAL-SHADOW-RIDE…B・B・B・BLADE!】

 

Sリュウガの姿は、全てのスペードスートのアンデッドと融合した金色の騎士「仮面ライダーブレイド」の最終形態「キングフォーム」へとFSRした。

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…B・B・B・BLADE!】

 

『これで…決まれぇぇぇぇっっっ!!!!』

 

ディライトとSブレイドKFの前に、黒と金色の五枚の巨大なスペードのラウズカードのビジョンが現われ、二人はライトブッカーと専用武器「重剣キングラウザー」を構えて必殺技「ロイヤルストレートフラッシュ」を繰り出した。が…

 

『ふっ…リフレクト…。』

 

『何っ!跳ね返されて…うわぁぁぁぁっっっ!!!!』

 

Gケルベロスが両手を前に広げるとハート8「モスリフレクト」を発動し、そこから光の燐粉が盾の様に広がり、それが衝撃波を跳ね返し逆にディライトとSブレイドKFに大ダメージを与え、ディライトを変身解除に追い込んだ。

 

「闇影!!今のは…『リフレクト』!?何でラウズせんと発動したんや!?」

 

『このGケルベロスは、ラウズしなくても吸収したアンデッドの力を発動が可能なのだよ…。もっとも、一体につき一回だけだけどね。』

 

「なんやと…ぐっ…!!?ぐああああっっっっ!!!!」

 

Gケルベロスの能力に愕然としていた切人は再び苦しみ出し、ジョーカーになりかけるが、それでも未だ必死に抗っていた。

 

『愚かな事だ…。あの娘を騙してまで人間になりたいとは…化物の考える事は理解しがたい。』

 

Gケルベロスは自分の姿を棚に上げ、ジョーカーへ戻るのを抗うレイを嘲笑った。

 

「…化物はどっちだ…彼は…自分の為だけに人間になろうとしてるんじゃない!」

 

切人への侮辱の言葉に憤り、闇影はふらつきながらも立ち上がった。

 

『ほう…未だ立ち上がるかね。では何の為に?』

 

「彼は…恩を返す為…大切な人の為…その人と生きる為に、愛情を学び、人間になろうと必死に戦っているんだ!!」

 

「大切な…人…。」

 

闇影の言葉を聞く内に、切人のジョーカーへの変化が止まっていた。

 

「そして、新しい未来を築く為に戦い続ける為だ!!」

 

『君は…一体何者だね!?』

 

「お節介教師な仮面ライダーだ!!宜しく!!」

 

「ははっ!なかなかおもろい事言うな、闇影!ほな、いっちょやるか!」

 

切人は嬉しそうな表情をしながら、闇影の隣に駆け寄りカリスラウザーを出現させ、闇影もディライトドライバーを装着した。

 

「「変身!!」」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

【CHANGE】

 

闇影はディライトへ、切人はカリスへと変身した。

 

「さて、輝く道へと導きますか!」

 

『ほざくなっ!!マッハ!』

 

Gケルベロスはスペード9「ジャガーマッハ」で高速移動し、その巨大な爪でディライトとカリスを引き裂こうとした。

 

『甘い…そのスピードが命取りになる!はぁっ!!』

 

『何っ…!?ガアァァッッ!!』

 

ディライトはライトブッカー・スピアモードでGケルベロスの腹を突き刺し大ダメージを与えた。高速移動の弱点…それは、そのスピード故に防御面がやや脆く、小さな攻撃でも受ければ大きなダメージを被るリスクがあるのだ。

 

『クッ!…ガ…ギ…!!』

 

『さて、これを使うか!』

 

【FINAL-FORM-RIDE…CU・CU・CU・CULLIS!】

 

『キリさん、力を抜いてください。』

 

『は?』

 

ディライトがカリスの背中に手を当てると、なんとカリスはジョーカーの姿へと変化した。この結果にジョーカー(?)は…

 

『てめぇっ!!何やらかしてくれとんのじゃゴラァァッッ!!ジョーカーにしてどうすんねん!?』

 

当然、ディライトに荒々しい口調で食って掛かるジョーカー(?)。しかし、ディライトは逆に落ち着いた口調で…

 

『破壊衝動は起きないでしょ?それに、よく見てください。』

 

『何言って…って、あれ?俺ジョーカーやのに意識持っとる。それに…』

 

確かに外見はジョーカーであるが、バイザーや胸の核等、緑色だった部分が全て赤い物だ。これがカリスのFFR形態「カリスジョーカー」の特徴である。

 

『これは、貴方を救う為の力です!』

 

『何やそうやったんか…怒鳴って悪かったな。なら、最終ラウンド開始や!』

 

『何処までも私を虚仮にしやガッテ…キエロ!!ジョーガァァァッッ!!』

 

Gケルベロスは急に狂った様な口調になり、爪で黒い衝撃波を飛ばした。

 

『野郎、ついにトチ狂ったか…!けど、コイツで防ぐ!リフレクト!』

 

Cジョーカーは両手から光の燐粉を広げ、その攻撃を跳ね返した。Cジョーカーは全ハートカテゴリーの力をGケルベロスの様にラウズ無しで発動する事が可能である。

 

『バガナァァァァ!!グアァァッッ!!』

 

『止めだっ!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…CU・CU・CU・CULLIS!】

 

『おっ…!行ったれ!!闇影!!』

 

Cジョーカーの掌に赤いエネルギーの塊が生まれ、それをライトブッカー・ソードモードの切先にぶつけた。

 

『はあぁぁぁぁ…行っけぇぇぇぇっっっっ!!!!』

 

『ヤメロォォォォ!!!!グアァァァァッッッッ!!!!』

 

それは大きな光の刃となりGケルベロスを切り裂き大爆発が起きた。これがカリスのFAR「ディライトデスサイズ」である。

 

 

 

「……。」

 

「許せとは言わへん!気の済むまで殴ってくれ!」

 

アマネにこれまでの事を全て話した切人は、土下座したまま彼女に自分を殴る様言った。しかし…

 

「顔上げぇ…ふんっ!!」

 

「ぐあっ!!」

 

アマネは切人の頬にパンチを減り込むぐらいに殴った。そして…

 

「今のでチャラや…。」

 

「何?そんな程度でええんか!?俺は親父さんを…」

 

「何ウダウダ言うとんねん!今のは隠し事をした罰や!おとんは『事故』で死んだんや!!」

 

「え…?」

 

「せやからあんたはこれからもここで働いてくれたらええんや!…二度も言わすな。」

 

「アマネ…おおきに!」

 

「…は、早よ帰って仕込みの準備や!帰るで、キリ!///」

 

「ああ!」

 

アマネは照れながら店へと向かったが、その顔はとても嬉しそうだった。闇影はそれを微笑ましく見守っていた。

 

 

 

「二人共、とてもいい顔をしてるわね。」

 

影魅璃は、切人とアマネが並んで笑顔で調理する絵が描かれたキャンバスを嬉しそうに見ていた。

 

「ええ。本当ですね。あっ、キリさん達からお礼という事でたい焼きを貰ったんです。みんなで食べましょう!」

 

闇影は持っていた二つの袋をテーブルに置くと、腹痛が回復したコウイチも含んだ全員そこに集まり、たい焼きを頬張った。

 

「う~ん。チョコ味が甘くて美味ひぃ~♪」

 

「俺は定番の餡子味がいいけどな。」

 

「抹茶も美味ぇな…この二つ目の袋は何味だろなぁ…。」

 

抹茶味を堪能したコウイチは、二つ目の袋に入ってるたい焼きを一口齧った。すると顔が龍騎の様に真っ赤になり出し…

 

「んがあぁぁぁぁっっっっ!!!!辛れぇぇぇぇっっっっ!!!!」

 

口から火を吐きながら、部屋中を走り回った。コウイチが食べたのは、レイ試作のハバネロに山葵ソースを練り混ぜた激辛たい焼きだった。よく見ると袋には「試作品」と明記してあった。

 

「最後までそれなのね…って、また絵が…!!」

 

黒深子が呆れていたその時、キャンバスに次の世界が描かれていた。それは、無数の桜吹雪が舞う古い建物が並んでおり、絵の真ん中には大きな太鼓と撥が描かれていた。

 

「歌舞鬼の世界…か…。」




次回から新キャラ2人の正体が明らかになります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第11導 人拒む歌舞鬼

今回からディエンドポジのキャラクターが登場します。


―何でだ…何で…俺を…?

 

―決まって…るだろ…?俺は…お前の…――だからだ…よ…。

 

―!!…おい…おいっ!!……う…うああああぁぁぁぁっっっっ!!!!

 

 

 

「はっ!!…ふう…また『あの夢』か…。」

 

闇影は謎の悪夢に魘されて目を覚ました。体中に大量の汗をかきながら…。これまで何度も同じ夢を見ていた様だ。その時…

 

「ぅんん…おはよ…闇影君…。」

 

「ああ…おはよ…」

 

この部屋にいる筈の無い女性の声に挨拶をした闇影だが、その人物を見た瞬間、全思考が停止した。そして…

 

 

 

―黒深子の部屋

 

 

「ふぁああ…もう朝ね…。」

 

「おはよう。麗しのお嬢さん♪俺様の朝のキスはいるかな?」

 

黒深子も目を覚ましたが、そこに謎の男が立っており、訳の分からない台詞をほざいていた。そして…

 

「おはよ…って、嫌ぁぁぁぁっっっっ!!!!誰よアンタァァァァッッッッ!!!!」

 

「フゴガアァァッッ!!」

 

当然こんな状況を従事出来る程、世の年頃の女の子は優しくなく、黒深子は悲鳴を上げながら男に御馴染の正拳突きをお見舞いして壁が減り込むぐらいに吹っ飛ばした。

 

「は、早く先生に伝えないと「うっぎゃああああぁぁぁぁっっっっ!!!!」って、先生!?」

 

闇影の悲鳴を聞いた黒深子は、急ぎ足で彼の部屋に駆け込んだ。

 

「先生!!どうし…た…の…。」

 

「あっ…黒深子…ちっ、違う!!違うんだっ!!」

 

黒深子が見た光景は、脱ぎ散らかされた女性用の衣服に、上下の下着、そして、闇影の隣に生まれたばかりの姿をしている妖艶な女性がベッドにいる。これを見て考えられる答えは一つしかない…。

 

『ぬぁ~にが違うのよ!!この…ド変態教師がぁぁぁぁっっっっ!!!!///』

 

「あんぎゃああああぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

闇影は必死に弁解するも、黒深子は顔を真っ赤にしながらスワンオルフェノクに変化して制裁を加えた。これにより闇影は本日二度目の悲鳴を上げることになった…。

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

 

―甘味処・かがやき

 

 

「ホンットにごめんなさい、先生!!」

 

「いや、いいんだ黒深子。あの状況じゃああなるのは無理ないからね。それより…何でお前等が此処に居るんだよ!!」

 

黒深子は手を合わせて、先程の行動をひたすら謝った。闇影は顔中にマミーレジェンドルガの如く、包帯を包みながらそれを許した。そして、謎の男女に何故此処に居るのかを尋ねた。

 

「あら、久しぶりに会ってそれはないんじゃない?闇影君。私達はこないだのたい焼きのお礼をしに来たのよ。」

 

「じゃあ、あの時の犯人って…貴女なの!?」

 

「ええ。私、彩盗巡(さいとう めぐる)。よろしくね黒深子ちゃん♪」

 

「そして、俺様は戴問周(だいもん しゅう)さ♪スープをどうぞ。」

 

謎の女性・巡が自己紹介した直後に、周という男は、スープの入った皿や料理をテーブルに配膳した。どうやらこれがその「お礼」らしい。

 

「あら、これ美味しいわ。全部周君が作ったの?」

 

「YES、マドモアゼル…。食後のデザートはいかがです?」

 

周は料理が得意であるが、影魅璃の様な美しい女性には優しく…

 

「おい、お前!人参残ってるだろ!残さず食え!!」

 

「俺は人参嫌いなんですよ!!」

 

人参を残したコウイチに注意する等、男性には厳しいという典型的なフェニミストである。

 

「それで、その礼を返しに来ただけなのか?」

 

「私達は、この世界のお宝を貰いに来たの。」

 

巡は、食事を食べながらこの世界の宝を手に入れるのが目的だと話した。

 

「この世界の宝?」

 

「そ。でも、もうひとつは…んふふ♪」

 

「えっ…ちょ、ちょっと!何してるんですか!!///」

 

巡は闇影に近づき、彼のシャツの胸元の隙間を指でなぞりながら耳元でこう囁いた…。

 

「貴方の様子を見ておきたかったの。嘗て『死神』と呼ばれていた貴方がどうしてるのかを…ね。」

 

「…!!」

 

闇影はそれを聞いて全身を硬直させ、目は見開き、額から汗を垂らし出し、気づけば二人の姿が其処になかった。

 

「あの人達、また消えたわ…。って、先生、大丈夫?」

 

「…ん?あ、ああ…大丈夫さ。心配しないで。さあ、外に出よう!」

 

黒深子の言葉に意識が戻った闇影は、リビングを出て玄関へと向かった。しかし、表情はずっと浮かないままだった。

 

「先生…。」

 

「あいつ…ホントに大丈夫なのか?」

 

 

 

―森の中

 

 

「この世界のライダーは一体何処に居るんだろう?なぁ…闇影。」

 

「…。」

 

 

 

―お前、何なんだよ!俺に構うんじゃねぇよ!

 

―まぁまぁ、気にすんなよ。お前の悩みは俺が解決してやるって!

 

 

 

コウイチは闇影に歌舞鬼の居場所の話を振ったが、返事が返ってこないので大声で話し掛けてみた。

 

「おいっ!闇影!!」

 

「!!な、何だよコウイチ。びっくりするじゃないか!!」

 

「お前が返事しないからだよ!どうしたんだ?さっきから。」

 

「そうか…すまない。」

 

「ねぇ、先生。さっきの巡さんって人に何を言われたの?」

 

黒深子は、闇影の異変の原因は先程巡に言われた事が原因ではないかを尋ねた。

 

「それは…」

 

「きゃあぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

「「「!!!?」」」

 

突然、何者かの悲鳴が森中に響いた。闇影達は辺りを見回してみると、三人の幼い子供達が二体の異形に襲われている光景が見えた。

 

「あれって…!?」

 

「ああ、魔化魍だな!ここは俺が行く!!」

 

そう言うと闇影は、彼等の下へと駆け寄った。魔化魍は、音撃でしか倒せない異形である為、普通のライダーでは倒せない。しかし、ディライトである闇影ならその方式を無視して倒す事が可能であるのだ。

 

『コケケケ…!』

 

『クコココ…!』

 

「はぁ…はぁ…ど、どうしよう…。アイツ等…はぁ…未だ…追って…くるよ…。はぁ…はぁ…。」

 

「…。」

 

三人の内の一人の前髪が揃った長い黒髪の少女は、走り過ぎた為息絶え絶えとしていた。もう一人の同じく前髪が揃っているが此方はボブカットヘアな寡黙な少女も同様だった。それに構わず魔化魍達はじりじりと彼等に近づく…。

 

「ちっくしょぉっ!!逃げ切れねぇなら…!!」

 

「な、何するの!?キョウスケ!」

 

キョウスケと呼ばれた額にゴーグルを着けた跳ね返った茶髪の活発な少年は、地面に落ちてる太目の木の棒を拾い構えて、魔化魍と戦う様だった。

 

「こいつ等は俺がなんとかする…!カスミとヒナカは先に逃げろ!!」

 

「無茶だよ…!!キョウスケじゃ勝てないよ!!」

 

「うるせぇ!やってみねぇと分かんねぇだろ!!…初めに言っとくぜ…俺はとーてーも、強い!!」

 

「気持ちは分かるけど、無茶は駄目だよ。ふっ!」

 

『コガッ!?』

 

闇影は遠くから魔化魍に石を投げつけて、注意を自分に向けさせた。

 

「後は任せて…。変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

『子供を襲う奴にはお仕置きが必要だな…行くぞ!』

 

闇影はディライトに変身し、魔化魍に「お仕置き」宣言した。

 

「誰だ…?アイツ。」

 

『はあっ!ぜいっ!それっ!やぁっ!』

 

『コカッ!コケッ!コォッ!』

 

ディライトはライトブッカーで魔化魍を斬りつけていき、正面蹴りを喰らわせた。しかし、もう一体の魔化魍が後ろから攻撃した。

 

『ケケィッ!!』

 

『ぐあぁっ!!くっ…そっちが二体なら、こっちも二体だっ!!』

 

【SHADOW-RIDE…CULLIS!】

 

ディライトはカードを装填し、自身の影をカリスへとシャドウライドさせ、もう一枚カードを取り出し…

 

『特別に…これだっ!』

 

【FORM-SHADOW-RIDE…CULLIS!JACK!】

 

「特別」と称したカードを使用すると、Sカリスは複眼の色がメタルレッドになり、両肩には金色の三本の爪の様な物が生え、胸に金色の狼の絵が刻まれたアンデッドクレストが浮かんだ戦士「仮面ライダーカリス ジャックフォーム」にフォームチェンジした…。

 

『ク…クカアァァッッ!!』

 

『コ…コカアァァッッ!!』

 

魔化魍達はその姿に少し怯んだが、それでも尚彼等に襲いかかった。

 

『これで…終わりだ!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…CU・CU・CU・CULLIS!】

 

『はあぁぁ…喰らえぇぇっっ!!』

 

『『グガアァァァァッッッッ!!!!』』

 

ディライトとSカリスJFは右腕に強力な風を纏いながら素早くダッシュし、手刀を叩きつける「J(ジャック)・スピニングウェーブ」を魔化魍達に叩きつけると大爆発した。

 

「ふう…大丈夫?」

 

変身を解除した闇影は、子供達に怪我はないのかを尋ね心配をした。

 

「は…はい。ありがとうございます。」

 

「魔化魍を倒すなんて…おっさん、何者だよ。」

 

「お、おっさんって…俺は煌闇影、旅人さ。君達は?」

 

「私はカスミです。彼はキョウスケ。で、この子はヒナカ、私の妹です。」

 

「……。」

 

長い髪の少女・カスミは自分達の名前を闇影に紹介した。しかし、彼女とは正反対のボブカットの少女・ヒナカは口を閉ざしながらこくんと会釈した。

 

「あれ、どうしたの?」

 

「ヒナカは口が利けないんだよ。目の前で両親が魔化魍に殺されたとこを見てからずっとな…。」

 

「!!ご、ごめん!!俺知らなくて…!!」

 

「……。」

 

なんとヒナカは、両親が目の前で魔化魍に殺されたショックから声を失ってしまったのだ。それを知った闇影は、彼女に頭を下げた。するとヒナカは首を横に振った。おそらく「気にしないで」と言う返事なのだろう…。

 

「私達、この森で山菜を採りに行ってたんですが、途中であの魔化魍達に襲われて…。」

 

「そうだったのか…よし、俺が君達の家まで送ってあげるよ!」

 

「えっ!!でもなんか悪いですよ。」

 

「気にしないで。それにさっきみたいな事が起きるかもしれないし。」

 

「先生~!!大丈夫!?」

 

こうして闇影の何時もの「お節介」がまた始まった。その後、黒深子とコウイチと一緒に子供達の自宅迄歩いた…。

 

 

―孤児院・かぶきの庵

 

 

「ここが…君達の家…?」

 

闇影達が着いた場所は、木造の大きめな建物で出来た家と言うよりキャンプのロッジに近い物だった。

 

「はい!送って下さってありがとうございます!どうぞ入って下さい。お茶をご馳走しますから。」

 

「なんか悪いなぁ…じゃあ、お邪魔します。」

 

中に入ると、カスミ達と同じ位の年齢の子供達が沢山いた。遊んでいる子もいれば、何かの作業をしている子もいた。

 

「うわぁ…子供がいっぱいいるわね…。」

 

「カスミちゃん、ここって一体…?」

 

「ここは…親を事故で亡くしたり、魔化魍に殺されたりした子を引き取る場所なんです…。」

 

「「「!!!」」」

 

「さっきも言いましたが、私もヒナカもキョウスケもその一人なんです。そんな子達をカブキさんが皆引き取っているんです。」

 

「カブキさん?」

 

「カブキさんはな、俺等の面倒を見たりしてくれてるんだ。とっても強くて、こないだなんて大きな猪を仕留めてたんだ!そんだけ強い理由はな…」

 

「おい、キョウスケ…あまり余計な事を喋るな。」

 

キョウスケの背後から、肩迄伸びた黒いボサボサの頭に、鋭い目をした、猟師の様な服装を着た無精髭の男性が現れた。

 

「カブキさん、お帰り!」

 

「カスミ、キョウスケ。こいつ等は?」

 

「あっ…すいません。なんか勝手にお邪魔しちゃって。」

 

「この人達は私達が魔化魍に襲われているのを助けてくれたの。だからそのお礼をしたくて…。」

 

「余所者は帰れ…二度とこの家の敷居を跨ぐな…。」

 

「え…出て行けって、どういうこ…!?」

 

カブキは、闇影達にこの家から出る様言うと、持っていた猟銃を突き付けた。

 

「もう一度言う…死にたくなければここから出て行け…今すぐに!!」

 

「ちょっとカブキさん!!いくらなんでもそれは…!!」

 

「分かりました。勝手に上がって申し訳ありません。黒深子、コウイチ、帰るぞ。」

 

「えっ…!?ってちょっと先生!?待ってよ~。」

 

「おい、闇影!お~いってば!?」

 

闇影は一切反論せず、カブキに一礼してこの家を出て行った。黒深子とコウイチも追う様に出た。

 

「銃はやり過ぎじゃねぇか…?」

 

「カブキさん…まだ『あの事』を…?」

 

「…晩飯の準備をするぞ…。」

 

キョウスケとカスミの言葉を無視し、カブキは夕食の準備をする為部屋を出た。

 

 

 

 

―森の中

 

 

「いきなり出て行けって言いながら銃を突き付けてくるなんて…。」

 

「先生、これからどうするの?」

 

「…!!悪いけど、先に帰ってて。俺用事思い出したから。」

 

「えっ?忘れ物?だったら一緒に行くわ。」

 

「いや、いいんだ。俺一人でいい。」

 

「ふう…分かったわ。後でね。」

 

「じゃ、黒深子ちゃん。森は危険だから俺から離れないで。」

 

「コウイチが一番危険な気がするんだけど。」

 

「ぐはっ!!そんなぁ…って待ってよ黒深子ちゃん!!」

 

黒深子の辛辣な言葉に打ちひしがれるコウイチだが、気付くと黒深子は先に進んでいた。闇影は二人がいなくなったのを見計うと…

 

「隠れてないで出て来たらどうなんだ、巡、周!!」

 

そう叫ぶと、木の影から饅頭を頬張りながらその袋を持った巡と火の付いた煙草を咥えた周が現れた。

 

「あぁむ…ふふ…気付かれちゃった♪」

 

「相変わらず鋭いのなんの…。」

 

「あの家で妙な視線を感じてな…。目的は何だ?」

 

「今朝も言ったじゃない…『この世界のお宝を貰う』って。」

 

「邪魔すんなとも言ったがな…俺様達が狙っているのは、野郎の持つ『黒の変身音叉』。ありゃ戦国時代に作られた物で、今じゃ超レアな宝な…んごっ!!」

 

周は煙草を吸いながら、自分達の目的を聞いても無いのに闇影にベラベラと話した為、巡から顔面にパンチを喰らった。

 

「余計な事迄喋らないで。」

 

「ご…ごめんよ、巡ちゃ~ん。」

 

「じゃあ、やっぱり彼がこの世界のライダー…?」

 

「当り♪戦国時代のお宝なんて…手に入れて当然じゃない。」

 

「この世界のお宝は俺様達が戴く。だからよ、邪魔はすんな。」

 

「もし邪魔するようだったら…闇影君を殺す…。」

 

巡と周は、闇影に邪魔立てしない様釘を刺した。巡に至っては殺すとドスの利いた声で恫喝していた。

 

「なら俺は…それを止めるまでだ。子供達を守る為に必要な力は、絶対に奪わせない!!」

 

「けっ!ホントすっかり優等生だな…昔『死神』と恐れられたてめぇが…よっ!!」

 

「くっ…!!」

 

周は闇影の「優等生な言葉」が気に入らず、彼に回し蹴りを繰り出した。しかし、闇影はそれを腕で受け止めた。

 

「おまけにそれがばれる事にビビってるみてぇだな。さっきあいつ等を先に帰したのがその証拠だぜ。やっぱお前変わっちまってるよ。」

 

「…。」

 

「と・に・か・く!仕事の邪魔はしないでね闇影君。じゃね♪」

 

「あばよ、死神さんよ。」

 

「待てっ!くっ、また消えたか…。」

 

巡と周は、またも闇影の前から姿を消した。彼の嘗ての名前を言いながら…。

 

「…だったら、俺のすべき事は…」

 

そう言うと闇影は、ある事を思い付き出した…。

 

 

―甘味処・かがやき

 

 

「先生…絶対何か悩んでいた。そんな気がする。」

 

「あの二人が何か知ってるかもな…。」

 

「そういえば闇影さんが初めてここに来た時に、何か独り言を呟いてるのを聞いた事あるわ。」

 

「えっ、そうなのお母さん?どんな事!?」

 

影魅璃は、闇影がこの家に来た時に独り言を言っていたのを聞いていた様だ。黒深子はその話を母に聞き出した。

 

「何だったかしら…『俺のせいだ…。俺があの人を殺したんだ。』って…。」

 

「殺したって…先生が!?そんな…。」

 

黒深子はそれを聞いて愕然とした。あの優しい闇影が人を殺したという信じられない話に耳を疑った。その時…

 

「えっ?な、何っ!?」

 

突然謎のオーロラが表われ、黒深子を時が止まった様な空間へと移動させた。そこに赤いフードの女性・紅蓮がいた…。

 

「突然ですまないな…白石黒深子。私の名は紅蓮、影の監視者だ。」

 

「紅蓮…?そう…貴女がコウイチや相馬君に先生が灰燼者だなんて吹き込んだのね!?」

 

黒深子は、紅蓮がコウイチや相馬ユウジ/仮面ライダーオーガを嗾けて闇影を襲わせた事を知り、彼女に憤慨した。

 

「私は事実を言った迄だ…。奴の存在は世界の調和を乱し、やがて全てを焼き尽くす…!!悪い事は言わない…あの男から離れろ。」

 

「違う…違うわっ!!先生は灰燼者なんかじゃない!!これまでずっと世界を…私達を救って来た!!」

 

黒深子は、闇影が灰燼者ではないと紅蓮に強く反論した。オルフェノクになり人を殺めてしまった自分や鏡の中でしか生きられなかったコウイチ、そして数々の世界を「光」へ導き救って来た彼が世界を焼き尽くす筈がないと…

 

「…今は話しても無駄の様だな…今日の所は引き下がろう。だが、奴が灰燼者であり『死神』である事は絶対の真実。それを忘れるな…。」

 

「待って!!貴女は先生を知っているの!?『死神』って何の事なの!?」

 

そう言うと紅蓮はオーロラに包まれ消えていった。同時に黒深子もオーロラにより元の場所へと帰っていった。

 

「待ってっ!!…って、あれ、何時の間に…?」

 

「黒深子ちゃん!!どうしたんだ?急に寝たと思ったら大声出して。」

 

「凄い汗かいてるけど、嫌な夢でも見たの?」

 

「(え?寝た?今の…夢だった?)ううん、大丈夫。ちょっとシャワー浴びてくる。」

 

黒深子はリビングから出て行き、風呂場へと向かった。

 

「(先生が『死神』…もしかして、巡さんが言った事と関係があるのかも…。)」

 

 

 

―孤児院・かぶきの庵

 

 

夕食後、カブキは子供達が風呂に入っている間竃にくべる為の薪を取りに行こうとした時、闇影が現れた。

 

「またお前か…。今度は何の様だ?」

 

「夜分遅くに申し訳ありません。今、貴方の持つ『黒い音叉』が狙われています。ですから、暫くの間貴方を守ろうと決めました!」

 

「…は?」

 

なんと闇影は、巡と周に音叉が盗まれるのを防ぐ為、カブキを守ると決意したのだ。あまりの唐突な話にカブキは呆れていた。

 

「勿論、ここの手伝いもしますよ!あわよくば、貴方の悩みも解決…「ふざけるなっ!!」」

 

「さっきから何を訳の分からない事を言ってるんだ!?今日会ったばかりのお前に俺の何が分かる!?音叉が盗まれる等、一体何の話だ!?」

 

カブキは怒りを露にして闇影を怒鳴った。確かに、初対面の人間がいきなり自分を守る等、悩みを聞く等言うのは怪しいと感じるのは当然だ。だが彼の場合、それとは別の理由がある…

 

「俺は他人等誰も信用しない…誰も信じられるか!!」

 

「カブキさん…何故そこまで…何か理由があるんですか?」

 

「まだ言うのか!!いい加減に…!!」

 

『おいしそうなにんげんがいるね。』

 

『ああ、それもふたり。あのいえにもたくさんいるよ。』

 

「「!!」」

 

闇影とカブキの前に、女の声をした男と男の声をした女の奇妙な二人が現れた。彼等は童子と姫…魔化魍の教育係に当る人物である。

 

『おまえたち!!出番だ!!』

 

『コカカカ…!!』

 

姫が叫ぶと、その背後から無数の魔化魍が数十体程現れた。人を喰える為、涎を垂らしている者が沢山いた…。

 

『いいか?いえにいるやつらはさらうだけだからな。くっていいのはあのふたりだけだ!』

 

童子は、何故か家の中の子供達は喰わずに拐う様に命令した。それを聞いた魔化魍達はやや不満そうだった…。

 

「子供達には手を出させんぞ!!魔化魍共!!歌舞鬼…。」

 

カブキは懐から黒い変身音叉を取り出し、長靴に軽く叩き音を出すと、それを額に近づけた。すると、彼の額に鬼の紋章が浮かび、全身を桜吹雪が包んだ。そして…

 

『むうぅぅん…はぁっ!!』

 

頭部の右が緑、左が赤色の伸びた角、黒いスーツに金色の肩当てが特徴のこの世界のライダー「仮面ライダー歌舞鬼」へと変身した…。

 

「やっぱり、貴方が…」

 

『ここは俺が片付ける…お前はさっさとここから消えろ!!』

 

「逃げるなんてとんでもない…変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

歌舞鬼をあくまで守るという闇影も、ディライトに変身した。

 

『絶対に貴方を守ります!何があっても…!』

 

 

 

―ここは俺に任せとけ!お前は、俺が守ってやるから。

 

 

 

『ふん…!勝手にしろ。だあっ!ふっ!ぜやああぁぁっっ!!』

 

『ギャアアァァッッ!!』

 

歌舞鬼は、黒い音叉を「鳴刀・音叉剣」に変化させ、魔化魍を次々と斬り裂いていき、背後からの敵も回し蹴りで蹴散らしていき、時には拳で殴る等、その怒涛の勢いは、正に「鬼」そのものだった…。

 

『凄い…今までのライダー達も強かったけど、カブキさんは格段に強い…はあっ!!』

 

『グモオォォッッ!!』

 

ディライトは敵を斬りながら、鬼神の如く戦う歌舞鬼の戦いぶりを見て、息を飲んだ。

 

『でも、何故だろう…?彼から憎しみ…いや、悲しみの気しか感じ取れない…。』

 

『くたばれっ!消えろっ!化物がぁっ!!』

 

『グガアァァッッ!!』

 

ディライトの言葉通り、歌舞鬼からは「守る」為の闘気より、「殺す」為の邪気が感じられる。その証拠に、魔化魍の顔面に音叉剣を突き刺したり、両腕を斬り裂いてから鬼火で焼き払う等、戦い方がどんどんえげつない物へと変貌していった…。その時…

 

「随分と賑やかねぇ…あむ…お姉さんも混ざっていいかしら?」

 

「おっ!こりゃ凄ぇな…。」

 

『巡、周!!何で此処に!?』

 

そこに、おにぎりを頬張った巡と周が颯爽と現れた。その目的は当然…

 

「決まってるじゃない…私達の目的は…」

 

「お宝あるのみ!!」

 

改めて自分達の目的を言うと、巡は赤とピンクが基調の短刀を、周は水色と藍色が基調のハンドボウガンを手元に持ち、二人は一枚のカードを取り出した…。そして、巡はそれを短刀の刃と鍔の間にカードをスラッシュし、周もボウガンの横側にカードをスラッシュした。

 

『お前達…まさかそれは…!!』

 

【【KAMEN-RIDE…】】

 

「「変身!!」」

 

【DITHIEF!】

 

【DISTEAL!】

 

巡が短刀を縦に振ると、全身に赤いスーツが包まれ、振った場所からピンク色のライドプレートが左肩以外に突き刺さり、右が黄色、左が黒の複眼の戦士「仮面ライダーディシーフ」に変身し…

 

周が真上にトリガーを引くと、全身に水色のスーツが包まれ、そこから藍色のライドプレートが突き刺さり、右が黒、左が紫の複眼の戦士「仮面ライダーディスティール」に変身した。

 

『ディシーフに、ディスティールだと…!?そうか、それで…』

 

『まぁ見・て…てっ!!』

 

ディシーフはクロックアップの様に高速移動すると、ディシーフドライバーで魔化魍達を切り裂いていった。

 

『グギャアァァッッ!!』

 

『俺様に射抜けねぇモンは…無い!!うりゃりゃりゃりゃあぁっっ!!』

 

ディスティールは軽口を叩きながらディスティールドライバーを連射して、光の矢で魔化魍達を射抜いていた。

 

『グアァァッッ!!』

 

『なんだこいつら…!!?おにじゃないのに…。』

 

『鬼じゃないわよ。』

 

『俺様達は、盗賊だ!!』

 

【KAIZIN-RIDE…GARULU!】

 

【KAIZIN-RIDE…SWALLOWTAIL-FANGIRE!】

 

ディスティールは二枚のカードを読み込ませてボウガンを撃つと、青い狼の姿をしたウルフェン族最後の生き残り「ガルル」とアゲハチョウをイメージしたファンガイア「スワローテイルファンガイア」が現れた。

 

『行ってきな。』

 

『グオオォォッッ!!』

 

『ヘャアァァッッ!!』

 

『グギャアアァァッッ!!』

 

ディスティールの号令を聞き、ガルルは鋭い爪で敵を引き裂いていき、スワローテイルFは掌から光弾を放ち、魔化魍達を殲滅していった、

 

『これが…あいつ等の力…。』

 

『さてと、そろそろ…』

 

『ケリを付けるか!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DI・DI・DI・DITHIEF!】

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DI・DI・DI・DISTEAL!】

 

『これでお終い♪はぁっ!!』

 

『光のシャワーを浴びてみな…おらぁっ!!』

 

『ギャアァァァァッッッ!!!!』

 

ディシーフがカードを読み込ませると、彼女の正面に十枚の巨大なカードが並び出し、それをドライバーで振り上げると、大きな衝撃波の斬撃が敵を殲滅するFAR「ディメンジョンスライサー」を発動した。

 

ディスティールがドライバーを宙に向けると、その周囲に無数のカードで出来た円が現われ、ガルルとスワローテイルFはそれに吸収された。それにめがけて矢を射つと、上空から無数の光の矢が雨の様に降り注ぎ敵を一掃するFAR「ディメンジョンスコール」が発動した。この二つの強力なFARにより、魔化魍達はほとんど消滅した。

 

『グ…ガ…ガ…。』

 

『しぶてぇ奴がいるな…こいつは「貰っとく」か!』

 

【STEAL-RIDE…MA・MA・MA・MAKAMOU!】

 

『グゥッ…!?グッ…グギャアァァッッ!!!!』

 

『魔化魍が…カードになっていく!?』

 

ディスティールは僅かに生き残っていた魔化魍にボウガンを撃つと、魔化魍は光に包まれカードとなり彼の手元に吸い寄せられた。この「スティールライド」のカードはライダーや怪人をライドカードにして「奪う」能力を持っているのだ。

 

『ここはいちどひいたほうがいいな。』

 

『「あのかた」にはなさないと。』

 

童子と姫は戦況が悪いと判断し、その場から消えていった。

 

『あら、逃げちゃったわね…まいっか、じゃあ、お仕事と行きますかっ!』

 

【KAMEN-RIDE…ZERONNOS!】

 

ディシーフがカードを読み込ませると、緑の牛の電仮面に胸の金のレールが特徴の戦士「仮面ライダーゼロノス アルタイルフォーム」の姿にカメンライドした。

 

『最初に言っておくわ!私はかーなーり、強いわ!!』

 

『貴様等も敵か!?ならば…殺す!!』

 

DゼロノスAFと歌舞鬼はドライバーと音叉剣で斬り結び合い、互角の戦いを繰りひろげていた。しかし、背後から別の攻撃を喰らってしまった。

 

『ぐあぁっ!!』

 

『俺様も忘れんなよ。うらああぁぁっっ!!』

 

背後からディスティールの射撃攻撃が襲ってきた。正面にDゼロノスAF、背後にディスティール、どう見ても歌舞鬼の分が悪く攻撃を避けながら戦う彼のスタミナが所除に切れていき…

 

『くっ…しまった!』

 

『やったわ!これは頂き…』

 

その隙を付かれ音叉剣を弾かれてしまい、それを回収しようとしたDゼロノスAFだが…

 

『させるかっ!!』

 

【ATTACK-RIDE…LASER!】

 

『きゃああっっ!!?』

 

ディライトは、そうはさせじとディライトレーザーでDゼロノスAFの行動を阻止した。その衝撃でDゼロノスAFは元のディシーフの姿に戻った。

 

『お前…何で…?』

 

『邪魔しないでって言ったでしょ!?闇影君!』

 

『こっちも奪わせないと言ったはずだ。カブキさんは…俺が守る…ぐあぁっ!!』

 

歌舞鬼を守ると言い張るディライトは、背後からディスティールの射撃を受けた。

 

『よくも巡ちゃんに当てやがったな…許さねぇ…てめぇを殺してから奪ってやる!!』

 

【ATTACK-RIDE…SPARK!】

 

『ぐあっ!!か、身体が…痺れて…動かない…!!』

 

ディスティールは水色の電撃「ディスティールスパーク」をディライトに撃つと、彼の身体に電流がほど走身動きを取れなくした。

 

『これで避けられねぇだろ。最後に…』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…】

 

ディシーフを攻撃されて怒りを露にしたディスティールは、ディライトを本気で抹殺すべく自身のFARを発動しようとした。

 

『くたばりやがれっ!!』

 

『くっ…!!』

 

いかにディライトでも、FARをまともに喰らえば確実に死んでしまう…。彼の運命やいかに!?




待て次回!!(短)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第12導 悲しみ無き明日

これが闇影の響…!!

と言う冗談は置いといて、歌舞鬼編後半です!!


ディシーフを攻撃された事に激怒したディスティールは、自身のFARでディライトを抹殺しようとするが…

 

『ふっ!!』

 

『何っ!?ぐあっ!!』

 

歌舞鬼は、動物の絵が刻まれたディスク「アニマルディスク」をディスティールの手元に投げつけてドライバーを叩き落し、彼を変身解除させた。

 

『カブキさん!』

 

『勘違いするな。俺は敵の攻撃を阻止しただけだ…。更に…喰らえっ!』

 

歌舞鬼は、緑色の炎を灯した翡翠色の撥「音撃棒・烈翠」を取り出しディシーフと周に向けて太鼓を叩く様に振ると、無数の炎が彼等を襲った。

 

「熱っちちちっ…!!どうすんだ、巡ちゃん!?」

 

『ここは一旦引き上げるしかないわね…次こそ必ずその音叉を戴くから。じゃあね♪』

 

【ATTACK-RIDE…SMOKE!】

 

『うわっ!煙幕か!?』

 

ディシーフは「スモーク」のカードを使い煙幕を作り出し、それが止んだ時には二人は姿を眩ましていた。

 

「ふぅ…何とか退いたか…カブキさん、さっきは助けて下さってありがとうございます!」

 

「何度も言わせるな。俺は敵の攻撃を防いだだけで、お前を助けた覚えはない。」

 

「なら最初から音撃棒で攻撃すれば良かったのに、態々アニマルディスクを投げつけてから攻撃したんですか?」

 

「あ、あれは…「カブキさ~ん!!」」

 

カブキは闇影を助けた覚えは無いと否定するが、彼から尤もな反論を受け言い淀んでいた。丁度その時、庵からカスミ、キョウスケ、ヒナカの三人が出て来た。

 

「大丈夫ですか!?どこか怪我はしてませんか!?」

 

「馬~鹿。んな訳ねぇだろ。カブキさんはとーてーも強ぇんだからよ!」

 

「ああ、とても強かったよ!それにさっきなんか俺を「少し顔を貸せ。」えっ?ちょっ、ちょっと!!」

 

闇影は三人に自分がカブキに助けられた事を話そうとした時、彼に少し離れた場所迄引っ張られた。

 

「さっき起きた事は絶対あいつ等に言うな。」

 

「え?何でですか?」

 

「い・い・か・ら絶対に言うな!今日一日ここで泊まらせてやるから!」

 

カブキは小声で、先程の行動を一日泊まらせる事を条件に闇影を必死に口止めしだした。

 

「は、はい…。」

 

あまりの勢いに闇影はつい了承し、それに安心したカブキは彼と共に子供達の下へと戻った。

 

「…昼間の礼としてこいつを一日だけ泊める事にした。」

 

「「ええっ!?あのカブキさんが人を泊めるっっ!?」」

 

カブキは「昼間に子供達を助けた礼」として闇影を泊める事を子供達に話した。すると、自分達以外の人間が嫌いなカブキからこんな言葉を聞いた彼等は、大層驚いていた…。

 

 

 

―森の中

 

 

『なんてやつらだ。おにでもないのにこどもたちをたおすとは…。』

 

『ここはいちど「あのかた」に…』

 

『妾(わらわ)に会わずとも話は耳に入っているぞえ。』

 

『『!!あ…ああ…』』

 

童子と姫はディライト達の事を「ある人物」に報告しようとした時、何処からか「その人物」の声が聞こえ、それを聞いた二人は何故か怯えていた。

 

『何者かは知らぬが、中々興味深い人物じゃのう。…彼奴等のせいで妾の今宵の食料を確保出来なんだ…という話かえ?』

 

ディライト達の話に興味を持っていた「人物」は、彼等のせいで子供達を拐えなかった二人に憤りを感じ、そして…

 

『『ひっ…!た、たすけ…ぐああぁぁぁぁっっっっ!!!!』』

 

童子と姫は森の奥から現れた黒い何かに捕われ、引き摺り込まれていき断末魔の如く叫び闇の中へと消えていった…。

 

『使えぬ奴等じゃ…こうなれば妾が直接行くしかあるまいな…。』

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

 

―お兄ちゃん!助けてっ!

 

―こ、これはどういう事だ…?また「あの」光景が…!?ア、アスミッ!?

 

―お兄ちゃんっ!!…カムイお兄ちゃん!!助けてっ!!

 

―ま、待てっ!!アスミッ!!

 

―お兄ちゃぁぁぁぁんっ!!!!

 

―アスミィィィィッッッッ!!!!

 

 

 

「はっ!?また…あの夢か…また俺は…くそっ!!」

 

目覚めたカブキは、夢の中での自分に苛立ち、拳を叩き付けた。どうやら、何度も同じ夢を見ている様だ…。

 

「…とりあえず朝食の準備をするか…。」

 

少し落ち着きを取り戻したカブキは、朝食の準備をするべく台所へと向かった。すると…

 

「あっ、カブキさん!御早うございます!」

 

そこに、三角巾を被りエプロンを着けた闇影が朝食の準備をしていたのでカブキは思わずズッコケた。

 

「なっ、何でお前が準備をしているんだっ!?」

 

「何でって…一晩泊めて下さったお礼をするのは当然じゃないですか。」

 

「だからって…」

 

「御早う…。うわぁ…凄いいい匂いがする。」

 

「凄っげぇ旨そうなぁ…これ全部闇影兄ちゃんが作ったのか?」

 

起きてきたカスミとキョウスケは闇影の作った大量の料理を見て賞賛した。

 

「うん!沢山食べてね。他の皆も起きてくるからそろそろ座って。さ、カブキさんも。」

 

「はぁ…こいつを泊まらせたのは間違いだったな…。」

 

カブキは闇影を泊めた事を後悔し、額に手をあてながら食卓に着いた。

 

 

 

「綺麗にするのは掃除♪御歳暮品はソーセージ~♪…っと!」

 

その後も闇影は、楽しそうに家事をしたり、子供達の遊び相手になったりしており、今も訳の分からない歌を歌いながら菷で掃除をしていた。

 

「さって!一通り終わったし、皆のおやつに団子でも作ろっかな!」

 

この世界での闇影の役割は和菓子職人の様であり、それを活かして子供達のおやつを作ろうと考えた時、カブキが現れた。

 

「煌…。」

 

「あっ、カブキさん。どうかしましたか?」

 

「何故、お前は俺を守ろうとする?」

 

「何故って、それは…」

 

「あの二人が音叉を狙っているから…だけでは無いのだろう?」

 

カブキは、闇影が何故昨日今日会ったばかりの自分を守ろうとするのか、巡と周が音叉を狙っているだけでは無いと思い、その真意を尋ね出した。

 

「…貴方は、昔の俺とよく似ているんです。誰も信じられなかった自分と…。」

 

「何?」

 

「だけど、ある人にこう言われたんです。『人を信じられないのなら、人を信じられる自分を信じてみろ。』…と。」

 

「人を信じられる自分を…信じる…。」

 

「今の自分があるのはその人のお陰なんです。だから、俺にしてくれた事をやればカブキさんも変われるんじゃないか、と思ったんです。」

 

なんと、闇影も嘗ては他人を信じられない人間だったのだ。今迄の行動も、「ある人」の言葉により自分が変われた為、自分にしてくれた事をカブキにしてみようと考えての行動の様だ。するとカブキは、口を開き…

 

「…俺は、いや俺達は…人間に見殺しにされたんだ。」

 

「…えっ!?」

 

 

 

「…♪」

 

一方、カスミ達は闇影へのお礼の為に川原で綺麗な石を探したり、花を摘んだりしていた。どうやらカブキが闇影を助けた事を皆薄々気付いている様だ。

 

「ヒナカ、それとても綺麗ね~。闇影さん、喜ぶよ。」

 

「…♪」

 

「(闇影さんが来てから、よく笑う様になったわね…本当に良かった。)」

 

ヒナカは、カスミに摘み集めた花を綺麗と言われ頷きながら笑みを浮かべた。闇影が来てから今迄以上に明るくなった妹を見て、カスミも嬉しそうに笑みを浮かべていた。その時…

 

「…!!」

 

突然、黒く太い何かがヒナカを捕らえ、そのまま彼女を引き摺る様に連れ去っていった。

 

「ヒナカ!ヒナカァァッッ!!」

 

「カスミ!ヒナカ!どうしたんだっ!?」

 

「キョウスケ…ヒナカが…ヒナカが…ぐすっ…。」

 

「泣くなよ!急いでカブキさん達に知らせようぜ!」

 

 

 

「俺の家族は代々、魔化魍から人を守る為に戦う鬼の子孫なんだ。」

 

「鬼の…子孫…。」

 

「当時の俺も、人を守る事を誇りに思いながら戦い、旅をし続けていた。だが…」

 

「だが?」

 

「ある村から、大型の魔化魍の討伐の依頼を受けて、そこに赴いた。流石に大型相手には俺達だけじゃ手が足りないから村の連中にも多少の協力を頼み了承してくれた。ところが…。」

 

カブキは少し顔を険しくし、血が出る程拳を握りながら話を続けた。彼がそれほど強い憎悪を抱くその事実とは…

 

「奴等は最初から村を捨てるつもりで俺達にその魔化魍を押し付けてさっさと逃げやがった…!!あの連中は、俺達を身代わりにする為に依頼をしただけに過ぎなかったんだ!!」

 

「…!!そんな…!!」

 

「結局俺達だけで戦ったが、力の差は歴然…俺以外皆喰い殺されたよ…。父も、母も、俺の妹も…!!」

 

カブキが人間不信になった理由―それは、守ろうとした人間達により文字通り「生け贄」にされてしまい、それにより魔化魍に家族を殺された事が原因であった。

 

「辛うじて生き残った俺は、それ以来他人を守る事を止め、魔化魍に親を殺された子供達を救う為だけに戦う事にした…。」

 

「御自分と同じ境遇の子供達を放っておけなかったからなんですね…。」

 

「…。」

 

そして、自分の様に家族を失った子供達を救うべく「かぶきの庵」を築いたと言う…。話が終わった後、二人は暫く沈黙していた。その時…

 

「「カブキさ~ん!!」」

 

カスミとキョウスケが血相を変えながら、闇影とカブキの下へ走ってきた。

 

「二人共、どうしたんだい?」

 

「ヒナカが…拐われたんだ!!」

 

「!!…何だとっ!?」

 

「太くて黒い何かがヒナカに巻き付いて、遠くへ連れ去っていったの…。」

 

「(太く、黒い何か…まさか…!!)…ヒナカが最後にいた場所迄案内しろ。」

 

「えっ?何で…?」

 

「いいから早くしろ!何処に連れ去られたのかが分かるかもしれないんだ!!」

 

「う、うん…。」

 

カブキは、ヒナカが最後にいた場所迄案内する様子供達に言った。

 

 

 

―花畑

 

 

「此処からどの方角に連れ去られていったか分かるか?」

 

「えっと…多分あっちの方だけど…。」

 

カスミは、ヒナカがあの黒い何かに連れ去られた方角をカブキに聞かれ、その方向に指を差した。

 

「(やはり『奴』か…!)解った…後は俺に任せてお前達は家に戻ってろ。」

 

それを見たカブキは、子供達に庵に戻る様促し心当たりがあるのか、カスミが指を差した場所迄行こうとした。

 

「待って下さい!俺も行きます!」

 

当然、闇影もカブキについて行こうとしたが…

 

「お前、さっきの話を聞いてなかったのか!?俺は…」

 

「貴方こそ忘れたんですか!?俺が貴方を守るって!!」

 

「なっ…!」

 

「それに、もし相手が複数だった事を考えたら、一人でも戦える人間がいた方がいいでしょう?」

 

カブキは闇影が来るのに無論反対だが、それでも尚、「自分を守る」と言う彼の言葉に少々たじろいだ。

 

「カブキさん。闇影さんを信じてあげて!」

 

「カスミ…。」

 

「俺からもお願いだ!この人もとーてーも強いから、一緒に戦えばどんな魔化魍なんか目じゃないぜ!」

 

「キョウスケ…。」

 

カスミとキョウスケも、闇影を連れて行く様に頼んだ。二人が闇影を強く信頼しているのを見て、彼の「自分を信じられる自分を信じてみろ」という先程の言葉が頭を過った。そして…

 

「…足手まといになるなよ…。さっさとついて来い!」

 

「カブキさん…はいっ!」

 

 

―森の中

 

 

「ヒナカ…無事でいろよ…!!誰だっ!?」

 

突然、何者かがカブキの足元に光の矢を放った。その正体は…

 

「はい、スト~ップ。」

 

「大人しく音叉を渡せばそれで良し。渡さないと…今度は威嚇じゃ済まないわよ。あむ…。」

 

煙草をくわえながらドライバーを構える周と、団子を食べながら片手に同じくドライバーを構えた巡だった。

 

「巡…周!」

 

「そこを退け…貴様等に構っている暇は無い!」

 

「知るかよ。俺様達の仕事に関係無ぇ事だ。」

 

「子供の命が懸かっていると知ってもか?お前達の仕事はその子の命より大事か?」

 

「「!!」」

 

子供の命と聞くと、二人は少し眉をひそめた。と言っても宝を手に入れる為なら手段を選ばない彼等に何を言っても聞かないだろう。そう思考していた時、あの灰色のオーロラが現れた。そして…

 

「なっ、これは…うわぁっ!!」

 

「煌!!」

 

それは闇影を包み込み、彼の姿をこの場から消し去った。おそらく「オーガの世界」の時の様に、別空間へ移動したのだろう。

 

「くっ…二対一か…!!」

 

闇影が消えた事で此方の分が悪くなったカブキは、巡達と戦う覚悟を決めようとしたが…

 

「これは…あの人の仕業だな。」

 

「ここは一旦仕事は中断ね。私達も行くわよ!せいっ!!」

 

何故か二人は、音叉を奪う「仕事」を中断すると言い出し、巡がディシーフドライバーで空を斬る様に振り上げると、そこに大きな次元の切れ目が生まれた。二人がそこに飛び込む様に入ると同時に、切れ目も消えていった。

 

「あいつ等も消えた…!!一体どういう…煌の行方も気になるが、今はヒナカが先だ!!」

 

今起きた事が気にはなるが、ヒナカを救うのが先決だと決めたカブキは、再び走り出した。

 

 

 

「ここは…ミラーワールド!?」

 

闇影が移動した空間は、全ての建物が反転した空間だった。この事から、コウイチのいた「リュウガの世界」にある「ミラーワールド」だと推測したが…

 

「少し違うな…。此処はそれに似ただけの異空間に過ぎない。」

 

「!!粗方解ったよ…これもお前の仕業なんだな…紅蓮!!」

 

闇影が叫ぶように、自分をこの空間に移動させたのは、彼を「死神」だと罵る赤いフードの女性―紅蓮だった。

 

「ディライト…貴様は全ての世界に在ってはならない存在…此処で葬ってくれる!!出でよ!オーディィィィン!!」

 

紅蓮が叫びながら両手を拡げると、灰色のオーロラから黄金色の鳳凰をイメージしたその神々しい姿は、正に「神」と呼ぶに相応しいライダー「仮面ライダーオーディン」だった…。

 

『……。』

 

「残念だけど、此処で死ぬ訳にはいかないっ!変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

『はあぁぁっっ…!!』

 

闇影はディライトに変身するや否や、ライトブッカーでオーディンに斬り掛かったが…

 

『……。』

 

【SWORD-VENT】

 

オーディンは錫杖型のバイザー「鳳凰召錫ゴルトバイザー」にカードを読み込ませると、二振りの黄金の剣「ゴルトセイバー」を召喚し、×の字にして斬撃を防ぎ…

 

『くっ…!防がれ…ぐあぁっ!!』

 

ゴルトセイバーを広げてディライトの腕を浮かせて、その隙をついで攻撃した。

 

【ADVENT】

 

更にオーディンは、黄金色の鳳凰をイメージした自身の契約モンスター「ゴルトフェニックス」を召喚し、ディライトを襲わせた。

 

『ぐあぁぁっっ!!』

 

ゴルトフェニックスの強力な攻撃を受けたディライトは、あまりのダメージの大きさに変身を解除させられた。

 

「何か焦っている様だが、それで勝てる程オーディンは甘くない!」

 

「くっ…!早く…カブキさんの所へ行かないといけないのに…此処で…終わるのか…?」

 

確かに紅蓮の言う通り、闇影はカブキの手助けをしたいが為にどこが焦りを感じており、それが彼の手を鈍らせていた。その時…

 

「終わらせないわよ。」

 

突然空間に切れ目が生まれ、そこから巡と周が現れた。

 

「お前達…!どうやって…いや、何で此処に!?」

 

「貴様等も来たか…ディシーフ、ディスティール。」

 

「紅蓮さん。貴女には悪いけど、彼を未だ死なせる訳にはいかないのよね。」

 

「こいつを倒すのは、俺様達だから…な!」

 

「「変身!!」」

 

【KAMEN-RIDE…DITHIEF!】

 

【KAMEN-RIDE…DISTEAL!】

 

巡と周は、闇影を死なせないと言いながらディシーフとディスティールに変身した。

 

『相手がオーディンなら、これよね♪』

 

【KAMEN-RIDE…KNIGHT!】

 

『行ってきな。』

 

【KAIZIN-RIDE…CRAB-ORPHNOCH!】

 

『ハアァァ…。』

 

ディシーフは紺色の蝙蝠の騎士をイメージしたライダー「仮面ライダーナイト」にカメンライドし、ディスティールは蟹の特性を持った左腕が機械鋏のオルフェノク「クラブオルフェノク」を召喚した。

 

【ATTACK-RIDE…SWORD-VENT!】

 

『はあぁぁっっ!!』

 

Dナイトは契約モンスター「ダークウイング」の尾を模した剣「ウイングランサー」で オーディンに斬り掛かっていった。初めの内は、彼が優位に立っていたが…

 

『フッ!!』

 

『……!!?』

 

クラブOは、左腕の機械鋏をワイヤーの様に伸ばしオーディンを捕らえ、そこから電流を流した。更に…

 

『相手は巡ちゃんだけじゃねぇんだぜ!!』

 

【ATTACK-RIDE…LASER!】

 

ディスティールは水色のレーザー「ディスティールレーザー」でオーディンを狙撃した。前からDナイト、後ろからディスティール、流石に彼の分が悪くなってきたが…

 

『……!!』

 

『えぇっ!!嘘でしょっ!?そんなの…きゃああぁぁっっ!!』

 

『グアァァッッ!!』

 

それに構わず力ずくでクラブOの鋏から抜け出し、そのままの勢いで二本のゴルトセイバーを真横に振り上げて衝撃波を放ち、クラブOを破壊し、Dナイトをディシーフの姿へと戻した。

 

『巡ちゃん!!大丈夫っ!?』

 

『…流石は神のライダーと呼ばれるだけあって手強いわね…。』

 

『向こうが神なら、こっちは帝王でいくか!!』

 

【KAMEN-RIDE…ORGA!】

 

ディスティールがドライバーにカードをスラッシュして放つと、黒き地の帝王・オーガが現れた。そして、そのままオーガストランザーでオーディンに斬り掛かっていった。

 

『はっ!ふっ!せいっ!!』

 

『……!!』

 

オーガストランザーとゴルトセイバーで斬り結び、ほぼ互角の戦いを繰り広げるオーガとオーディン…そして…

 

『はぁっ!!』

 

『……!!』

 

オーガは僅かな隙を付き、オーガストランザーをオーディンに突き刺し大ダメージを与えたが…

 

『……!!』

 

『ぐあぁぁっっ!!』

 

それすら物ともしないオーディンはオーガストランザーを抜き捨て、丸腰になったオーガにゴルドセイバーで斬り付けた。

 

「もはやオーガに勝ち目は無い。無駄な足掻き…『でもねぇぜ。』!?」

 

【FINAL-FORM-RIDE…O・O・O・ORGA!】

 

『じっとすりゃ直ぐ終わる。』

 

『うっ!?』

 

ディスティールはドライバーでオーガを射ち抜き、オーガをストランザーオーガにFFRさせた。

 

『そんだけダメージ受けりゃ、いくら神様でもひとたまりもねぇだろ。』

 

「貴様…まさかその為にわざと…!!」

 

そう、ディスティールは最初からオーガをFFRさせるべく、彼(?)を囮にしダメージを負わせてから武器に変形させて止めを刺す為に召喚したのだ。

 

「ちぃっ…オーディン!!」

 

【FINAL-VENT】

 

紅蓮が指示すると、オーディンはファイナルベントのカードでゴルトフェニックスを召喚し必殺技「エターナルカオス」を発動しようとしたが…

 

『遅いぜ…!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…O・O・O・ORGA!】

 

『おぉぉぉ…撃ち斬れぇぇぇっっっっ!!!!』

 

ディスティールはストランザーオーガから放つ水色の光の刃のFAR「ディスティールバニッシュ」でゴルトフェニックスごとオーディンを斬り裂き「Ω」のマークを残し爆発させたが…

 

『……。』

 

爆炎が止むと、なんとオーディンは胸を押さえながら辛うじて生き残っていた。

 

『しぶといな…その力、戴くぜ!』

 

【STEAL-RIDE…R・R・R・RIDER!】

 

『……!!』

 

しかし、ディスティールのスティールライドにより、オーディンは呆気なくカードに変換、回収されてしまった…。

 

「まさか、ライダーまでカードに変換出来るなんて…!!」

 

「くっ…ディシーフ!ディスティール!貴様等がどういう了見でディライトを助けたのか知らぬが、そいつは全てを焼き尽くす『死神』…!それだけは忘れるな!!」

 

そう言うと紅蓮は、険しい顔をしながら灰色のオーロラの中へと消えていき、それに伴い闇影達もオーロラに包まれて元の場所へと戻った…。

 

 

 

「戻ってこれたわね…。」

 

「とりあえず礼は言っておく…。」

 

闇影はカブキの元へ再び行こうとしたが、周が前を遮った。

 

「ちょっと待ちな。これで『はい、おしまい』で済むと思ってんのか?」

 

「何だと…!?」

 

「てめぇを救ってやった報酬として、あの音叉を奪って俺様達に渡しな。」

 

「まぁ、命の報酬としては安い物だと思うけどね♪」

 

「…それが目的か。呆れて物が言えないな。」

 

闇影は、巡と周が自分を助けた理由を聞き怒りを通り越して呆れていた。

 

「俺は、自分の命を懸けてでも守りたい『宝』を救う手助けをしに行く。それを邪魔するなら…お前達でも容赦しない。」

 

闇影は目で鋭く睨みながら恫喝し、踵を返してカブキの元へ走っていった。

 

「命を懸けてでも守りたい宝…か…。」

 

 

―森の大広場

 

 

「此処か…いい加減に姿を現わしたらどうなんだ!!黒蛇(くろち)!!」

 

『ホホ…相も変わらず思い上がった物言いじゃのぅ…。』

 

大きな地震と共に森を荒らしながら、上半身が蛇の様な顔付きをした女性の身体で下半身が無数の太長く黒い大蛇がうよめいた巨大な魔化魍「黒蛇」が現わした。一匹の大蛇がヒナカを巻き付けながら…

 

「……!!」

 

「ヒナカ!!黒蛇、貴様…!!」

 

『最近魔化魍が次々倒される話を聞きこの小娘を拐い誘き寄せて見れば、うぬらだとはな…。』

 

「何故俺を狙わずヒナカを拐った!?」

 

『この方が妾にとって都合が良いから…じゃのう。』

 

「ふざけるなっ!!貴様は此処で倒す!!家族の敵…今こそ取らせてもらう!!」

 

この黒蛇こそ、カブキの家族を皆殺しにした張本人の様だ。それと同時にヒナカを拐った事に強い怒りを抱いたカブキは、歌舞鬼に変身し直ぐ様音叉剣で斬り掛かっていった。

 

『おおぉぉっっ!!』

 

『たった一人で妾に勝てると思うてか…笑止!!』

 

『シャアァァッッ!!』

 

『ぐああぁぁっっ!!』

 

だが下半身の一匹の大蛇が勢いよく突撃し、向かって来た歌舞鬼を木が数本へし折れる程撥ね飛ばした。

 

「!!」

 

ヒナカは、そんな彼を見て声を出そうと口をパクパクさせていたがなかなか喋れず歯痒く思っていた。

 

『くっ…黒蛇…黒蛇!クロチィィッッ!!』

 

直ぐ様立ち上がった歌舞鬼は、憎悪と怒りをこめて咆哮しながら身体から黒いオーラを生み出し、再び黒蛇に向かっていった。それが彼女に吸収されている事に気付かないまま…。

 

『往生際が悪いのぅ…ハァッ!!』

 

『ぐっ…ぐがあぁぁっっ!!』

 

数体の大蛇の吐く炎をまともに喰らい、もう数体が先程の様に突撃された歌舞鬼は変身を解除されてしまい、その勢いで音叉が飛んでいってしまった。

 

「くっ…くそっ…!!」

 

「もう終わりかえ?ならばさっさと喰『わせるかぁっ!!』グガァッ!!」

 

カブキを喰らおうとした黒蛇は、ディライトの乗るマシンディライターに撥ねられ大きく身を仰け反った。

 

『カブキさん!大丈夫ですかっ!?』

 

「煌…。あ…ああ…。」

 

『貴様が童子と姫の言っていたディライトとやらか?少しは骨があると良いのぅ…。』

 

『ここで一気にケリを付けるっ!!』

 

【FINAL-SHADOW-RIDE…HI・HI・HI・HIBIKI!】

 

ディライトは、自身の影をディスクアニマル達が融合した朱色の鎧が特徴の戦士「仮面ライダー響鬼」の最終形態「装甲響鬼」にFSRさせた。

 

「あれは…伝説の鬼『響鬼』…!!煌…お前は一体…!?」

 

 

 

―何してんだよっ!?俺から離れろっ!!

 

―安心しろ…お前の「闇」は…俺が止めてやるっ!!

 

 

 

『(―さん…。)俺は…』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…HI・HI・HI・HIBIKI!】

 

『俺はもう…大切な人を失う悲しみを…誰にも味わって欲しく無いんだぁぁっっ!!』

 

ディライトとS装甲響鬼は、ライトブッカーと装甲声刃の刃に黒と赤の炎を宿し敵を斬り裂くFAR「鬼神覚声」を黒蛇に喰らわせた。しかし…

 

『ホホ…今何かしたのかえ?ハァァッッ!!』

 

『何っ!?そんな…ぐああぁぁっっ!!!!』

 

「煌!!」

 

二人分のFARを受けながらも全くダメージを負っていない黒蛇は、大蛇達の吐く炎でディライトとS装甲響鬼を焼き尽くし変身を解除させた。

 

「くっ…何て強さだ…!!」

 

「あらあら…派手にやられちゃってるわねぇ…。」

 

「いい様だぜ。」

 

「お前達…!!それは…!!」

 

突撃現れた巡と周は、目当ての音叉をくるくる回しながら地を這っていた闇影を嘲笑った。

 

「まっ、ブツが手に入ったし別にいいけどな♪」

 

「貴様等…。」

 

「怒らないの。あまり怒ると相手の思う壺よ。」

 

「どういう事だ…?」

 

「怒る…憎しみ…!!そうか!奴は怒り…負の感情に比例して力を増していく魔化魍なんだ!だから黒蛇はカブキさんに負の感情を強める為にヒナカちゃんを拐ったんだ。」

 

黒蛇の能力―それは、負の感情を吸収する事によりその力を増長させるのだ。ヒナカを拐ったのも、カブキの憎しみを強める為であった。

 

『人は負に囚われ易い愚かな存在…保身の為に村や他人を犠牲にする者、それにより憎悪を抱いたまま生きる者…そんな奴等なぞ消えて当然よのう。』

 

「負の感情を持つ事を愚かな事だとは…俺は思わない。」

 

『何じゃと?』

 

「確かに人は、大なり小なり他人に対して憎しみを抱いている…だが、人を思いやり、守りたいという思いがそれを打ち消してくれる!」

 

「思いやり、守りたいという思いが…憎しみを打ち消す…。」

 

「だから人と人は手を取り合って生きていける!悲しみのない明日の為に!!」

 

『うぬら…一体何者じゃ!?』

 

「お節介教師な仮面ライダーだ!!宜しく!!変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

『さて、輝く道へと導きますか!』

 

闇影はディライトに変身し、何時もの台詞を言いながらカードをドライバーに装填した。

 

【ATTACK-RIDE…LASER-BLADE!】

 

『はぁっ!!』

 

『ギャアァァッッ!!』

 

ディライトはライトブッカーから放つ「ディライトレーザーブレード」で一体の大蛇を斬り裂いた。その時…

 

「…キさん…って…。」

 

「???」

 

「カブキさ~んっっ!!闇影さ~んっっ!!皆、頑張ってぇぇっっ!!」

 

「!!ヒナカ…お前、声が…!!」

 

何とヒナカは声を取り戻し、大声でカブキ達を応援した。彼女もまた、闇影の「導き」の言葉に勇気付けられたのだ。

 

「あらあら、子供の期待に応えるのが大人の務めよね…周!」

 

「特に女の子の声援は力がみなぎるぜ…あいよ巡ちゃん!」

 

巡と周は、少し笑いながら音叉をカブキに投げ渡し自分達の変身ツールを構えた。

 

「俺は…ずっと弱かった自分を憎んでいただけだった…そのせいでヒナカをあんな目に逢わせてしまった…だが…!」

 

「「変身!!」」

 

「あの子達の、そして自分の明日の為に…俺は戦う!!歌舞鬼!!」

 

【KAMEN-RIDE…DITHIEF!】

 

【KAMEN-RIDE…DISTEAL!】

 

巡と周はディシーフとディスティールに、そしてカブキは音叉で歌舞鬼に変身し、ディライトの応戦に向かった。

 

『お前達、どういうつもりだ!?急に音叉を手放すなんて!』

 

『勘違いすんなよ。俺様達は子供を利用する奴が嫌いなだけだからな!』

 

『それに、未だ見てないからよ。自分の命を懸けてでも守りたいお宝を、ね♪』

 

ディライトの疑問に二人戦いながら、子供を利用する輩が嫌い、命を懸けてでも守りたい宝を見たいという理由で音叉を返したのだと言う。

 

『くっ…おのれぇぇっっ!!図に乗るなよ!人間がぁぁっっ!!』

 

ディライト達の攻撃に業を煮やした黒蛇は、大蛇同士をまとめ上げ、龍に近い一匹の大蛇に変化させ、その口から巨大な黒い光弾を放った。それによりヒナカは解放され、地面へと落ちていった。

 

「きゃああぁぁっっ!!」

 

『まずいっ!!ヒナカァッ!!』

 

【ATTACK-RIDE…BARRIER-FORCE!】

 

光弾により辺り一帯が吹き飛び、クレーターの様な物が出来た。しかし、爆風が止むとドーム状の透明なバリアに囲まれたディライト達がいた。

 

『残念だったな。俺様達は生きてるぜ。』

 

『なっ、何故じゃぁぁっっ!?』

 

『それは、このカードのお陰よ♪』

 

ディシーフは、カードを見せ付けながら「バリアフォース」により光弾から身を守ったのだと説明した。

 

『力を出し切ったお前に、勝ち目は無い!』

 

【FINAL-FORM-RIDE…KA・KA・KA・KABUKI!】

 

『カブキさん、力を抜いて下さい。』

 

『何…おわっ!?』

 

ディライトが歌舞鬼の背中に手を当てると、歌舞鬼は黒と黄色の鴉の様な模様が刻まれた巨大なアニマルディスクを模した「カブキアニマルディスク」にFFRした。

 

『行っけぇぇっっ!!』

 

『ウガアァァッッ!!』

 

ディライトはKアニマルディスクをフリスビーの様に振り投げて黒蛇の腹に直撃させた。Kアニマルディスクは回転したまま宙を浮いていた。

 

『これで…最後だっ!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…KA・KA・KA・KABUKI!】

 

Kアニマルディスクは、巨大なディスクアニマル「消炭鴉」を模した「カブキケシズミガラス」に変形すると、翼を広げて大きく鳴き出した。

 

『キィィィィッッッッ!!!!』

 

『グゥッ…頭が…割…れ…ガアァァァァッッッッ!!!!』

 

黒蛇は、Kケシズミガラスの放つ清めの超音波のFAR「ディライトハウリング」により大爆発した。

 

 

 

「ヒナカ、お前の声のお陰で黒蛇を倒す事が出来た。」

 

カブキは、ヒナカの応援により怨敵・黒蛇を倒す事が出来た事に感謝するが、彼女は首を横に振った。

 

「ううん。私が声を取り戻せたのは闇影さんのお陰なの。だから…」

 

「そうだったな…俺やヒナカの心を救ってくれてありがとう…煌。」

 

 

 

一方、巡と周は黒蛇が倒された場所で何かを探していた。

 

「お前達、何やってるんだ?」

 

「あったぜ巡ちゃん!!アニマルディスク!!」

 

二人は、三枚のアニマルディスクを見つけて嬉しそうにしていた。

 

「三枚揃っているからそれなりの価値はあるわね♪これが命を懸けてでも手に入れたい『お宝』なのね闇影君。ありがと♪」

 

「違う!俺が言ってるのは…!!」

 

闇影は、自分と彼等の命を懸ける価値がある『宝』の見解の違いを指摘しようとしたが…

 

「また何処かで会いましょ、闇影君♪」

 

「あばよ。」

 

二人は、次元の切れ目を作り出しその中へと消えて行った…。

 

 

 

「本当の家族みたいで素敵な絵だわ…。」

 

「そうですね!ヒナカちゃんも声を取り戻せて本当に良かった。」

 

影魅璃と闇影は、キャンバスに描かれたカブキとヒナカが手を繋ぎ夕日に向かって歩いている絵を嬉しそうに見ていた。

 

 

 

―奴が灰燼者であり「死神」である事は絶対の真実。それを忘れるな…。

 

 

 

「(先生が「死神」なんて…そんな事絶対に有り得ない…!!)」

 

「ん?どうしたんだ黒深子。」

 

黒深子は、紅蓮の言っていた言葉を思い返していた時、闇影に声を掛けられた。

 

「え?ううん、何でもない。それよりも…とりゃあぁぁっっ!!」

 

「ぐがぁぁっっ!!?」

 

突然、黒深子は闇影のこめかみに向かって回し蹴りを喰らわせた。

 

「ちょっ、黒深子ちゃん!?」

 

「連絡しないで外泊した罰です!反省して!!」

 

「ご…ごめんなさい…。」

 

それとは余所に、次の世界を表わすキャンバスに黒鬼と複数の人物が国会議事堂に向かおうとする絵に変わった。

 

「ネガ電王の世界…青い…縞縞…。」

 

闇影は、黒深子の下着の色と共に次の世界の名前を言い、そのまま倒れた…。




次回は「別格」なアイツの登場です!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ディシーフ&ディスティール人物紹介

タイトル通りです。


彩盗巡(さいとう・めぐる)/仮面ライダーディシーフ lCV:伊藤静 

23歳。闇影の過去を知る人物であり、銀髪のショートヘアに巨乳が特徴で、スリットの入った胸元が目立つ黒い服に赤いジャケットを着込み、下のに赤のガーターベルトを付けた妖艶な雰囲気を持った女性。冷静沈着で宝の為なら何でも利用する打算的な性格だが、大食家で常人の5倍は食べないと気が済まなく、就寝時は基本全裸だという変わった一面もある。宝以外の事には興味はそれ程無いが、弱者に非道な行為をする者は許さない一面もある事からさほど悪い人間では無い。周以外の男性には基本的に「君」付け、女性(年下)には「ちゃん」付けして呼ぶ。

 

【挿絵表示】

 

 

仮面ライダーディシーフ

巡がディシーフドライバーで変身するライダー。特徴は頭部がディケイド、身体がディエンドだが、赤いスーツに桃色のライドプレートが左肩以外に刺さり、複眼は右が黄色、左が黒である。クロックアップに匹敵する俊敏な動きで敵を翻弄していき、ディケイドの様に2号ライダーにカメンライドする事が可能である。(外見の違いはバックルのみ)

 

FAR/ディメンジョンスライサー

正面に十枚の巨大なカードヴィジョンが並び出し、それをドライバーで振り上げると、大きな赤い斬撃波で敵を殲滅する。

 

 

ディシーフドライバー

刃が赤と桃色を基調としたサバイバルナイフ型の変身ツール。刃の模様はディエンドライバーに酷似している。刀身と鍔の間にある切れ目にカードをラウザーの様にスラッシュし振り上げる事で変身可能。武器としても使用出来、次元の切れ目を作り出し異空間へ移動する事も可能である。

 

戴問周(だいもん・しゅう)/仮面ライダーディスティール ICV:平田広明

23歳。巡同様闇影の過去を知る人物であり、ウェーブの黒髪を後側だけ括り、白いシャツの上に水色の半袖ジャケットを着込み、黒い半ズボンが特徴のクールな雰囲気を持った男性。ヘビースモーカーでもあり、よく煙草をくわえている。巡と同じく宝の為なら手段を選ばずやや荒っぽい性格で男性には厳しいが、無類の美女好き(子供も対象内)で軟派なフェミニストであり、女性に危害を加える者は誰であろうと許さない。(子供が危害に遭うのも同様)料理が得意であり、その腕は闇影以上である。(自称)巡に好意を抱いているが基本的に無視されている。一人称は「俺様」。

 

【挿絵表示】

 

 

仮面ライダーディスティール

周がディスティールドライバーで変身するライダー。外見はディシーフと同じだが、こちらは水色のスーツに藍色のライドプレートが右肩以外に刺さり、複眼は右が黒、左が紫である。ディシーフ同様に動きが俊敏であり、クウガペガサスフォーム並の鋭い感覚で敵を確実に狙撃していくのが戦法である。最大の特徴は、ディエンドの様にライダー(但し、主人公ライダーに関してはフォームライドしか所有していない)や怪人(ダグバ等のラスボスのカードは所有していない)を召喚、援護攻撃をさせる事と、ライダーや怪人をカードに変換する「スティールライド」を使用する事である。

 

 

ディスティールドライバー

水色と藍色が基調のハンドボウガン型の変身ツール。外見はペガサスボウガンとギャレンラウザーを複合させた物。横にある切れ目にスラッシュしトリガーを引く事で変身可能。また、射撃武器としても使用出来る。

 

 

スティールライドカード

背面が青色のライドカード。ライダーや怪人をカードに変換する事が出来る。元々は、世界の秩序を乱すライダーや怪人を封印する為の物であり、文字通り存在を「奪う」カード。ライダーの場合は力のみをカードに変換する事が可能だが、怪人の力を抜き取る事は不可。

 

 

FAR/ディメンジョンスコール

ディスティールドライバーを宙に向ける、その周囲に無数のカードビジョンで形成された円が頭上に現われ、召喚したライダーや怪人を吸収し、そこに目掛けて矢を射つと、上空から無数の光の矢が雨の様に降り注ぎ敵を一掃する。尚、吸収しなくても発動可能である。

 

ディメンジョンスプラッシュ

上記のディメンジョンスコールを真正面に放つ必殺技。こちらも召喚したライダーや怪人を吸収しなくても発動可能である。




次回こそネガ電王編開始です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第13導 苦悩するネガ電王

クライマックスには到底程遠いですが、読んでくれますよね?

答えは聞いてない!!(黙れ)


―喫茶店・導きの光玄関前

 

 

「此処がネガ電王の世界か…。」

 

「そうね…で先生、その格好は?」

 

黒深子が指摘する様に、闇影の服装が薄青いワイシャツの上にベージュのエプロンを着けた物に変わっていた。

 

「微かに珈琲の香りがするから、喫茶店のマスターか何かか?」

 

「まあ、こういうのも良いかもね…ん?」

 

「どうしたんだ?」

 

闇影がエプロンのポケットに手を突っ込んでみると、中から一枚のカードの様な物が出てきた。

 

「これは…ライダーチケット!」

 

「何でそれが先生のポケットに?」

 

「ネガ電王だからかな?う〜む…。」

 

三人がライダーチケットをずっと見つめながら考え込んでいたその時…

 

「きゃああぁぁっっ!!」

 

「たっ、助けてくれぇぇっっ!!」

 

『ケケケ…!!』

 

「あれは…イマジン!?」

 

ハロウィンの南瓜の様な頭に黒タイツの姿をした複数のイマジン「パンプキンイマジン」が人々を襲っていた。そして…

 

「助け…うぐっ!?」

 

運悪く逃げ遅れた男性の背中を扉の様に開いたパンプキンIは、そこに手を入れて光の球の様な物を取り戻した。するとその男性はそのまま意識を失い倒れた。

 

「!!あいつ等…!!」

 

「え…?何だ今の違和感…。ん?」

 

闇影が何らかの違和感を感じていた時、一台の紫色のバイクに乗った何者かが闇影達とパンプキンI達の間に割って入って来た。そして、ヘルメットを取りバイクから降りようとした青年は、何故か足を躓かせて顔から地面にコケた。

 

「「「(ええっ!?何でっ!?)」」」

 

「痛たたた…。」

 

(おいっ!何で何も無い所でコケるんだよ!?)

 

「ご、ごめん…。」

 

黒髪のショートヘアに紫色の眼をした中性的な顔立ちの青年は、鼻を押さえながら自分を注意する謎の声に謝った。

 

(ちっ、まあいい…さっさとやるぞ!)

 

「うん!行くよ、ネガタロス!」

 

声の主・ネガタロスに促された青年は、四つのボタンが付いた銀色のベルト「デンオウベルト」を腰に巻き付け、ボタンを押しトーンの低い警告音が鳴り出すと黒いパス「ライダーパス」をセタッチした。

 

「変身!」

 

【NEGA-FORM!】

 

すると青年の身体が黒の素体スーツに包まれると同時に、半透明の黒鬼の様な物が入り込み、禍々しい模様が付いた紫色のオーラアーマーが装着され、最後に紫色の桃の形をした電仮面が顔のレールにスライドし二つに割れた戦士「仮面ライダーネガ電王 ネガフォーム」へとに変身した。

 

「あれが…この世界のライダー、ネガ電王…!」

 

『強さは…別格だ。行くぜっ!!』

 

別人の様に口調が変わったネガ電王NFは、専用の武器「デンガッシャー」の刃先をイマジン達に突き付けて挑発し、そのまま突撃した…。

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

?『ふっ!はっ!せいっ!!』

 

『ガァッ!ギィッ!グアッ!!』

 

ネガ電王NFは、デンガッシャー・ソードモードで隙の無い素早い攻撃でパンプキンI達を次々と斬り倒していくが…

 

『ケケケ…。』

 

『ちっ!キリが無ぇな…!』

 

パンプキンIは、戦闘力こそ低く通常のイマジンより弱く倒し易いが、如何に弱いとはいえ数があまりにも多過ぎる為、ネガ電王NFも次第に苦戦し始めていた。

 

「加勢に行って来る…!変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

ネガ電王NFの戦況が不利だと感じた闇影はディライトに変身し、彼の下へと走り出し…

 

『とりゃあぁぁっっ!!』

 

『ウガッ!?』

 

その勢いのまま、跳び上がってパンプキンI に強力なキックをお見舞いした。

 

(あの人…何でボク達を…?)

 

『はいっ!せいっ!そらっ!!』

 

『ギャッ!ギッ!グェッ!!』

 

そしてライトブッカーでパンプキンIを次々と斬り裂いていき、数が少なくなったのを見計らうとカードをドライバーに装填した。

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DE・DE・DE・DELIGHT!】

 

『これで…最後だっ!!』

 

『グギャアァァァァッッッッ!!!!』

 

ディライトは自身のFAR「ディメンジョンプロミネンス」の巨大な光弾でパンプキンI達 を一掃した。

 

『ふぅ…何とか終わったか…。』

 

「闇影!危ないっ!!」

 

『え…?うわぁっ!?』

 

突然ネガ電王NFが、デンガッシャーでディライトに斬り掛かってきたが、コウイチの呼び掛けに気付きライトブッカーで防いだ。

 

(ちょっとネガタロス!何やってんの!?)

 

『お前、中々やるじゃねぇか…ちょっと面貸せっ!!』

 

『粗方解らないけど、随分な挨拶だねぇっ!!』

 

『ぐがっ!?』

 

ディライトは剣を斬り結びんでいる内に、ネガ電王NFの腹を蹴り飛ばした。

 

『チィッ…!やってくれるじゃねぇか…。』

 

(ネガ男…あたしもやるわ!)

 

立ち上がったネガ電王NFの頭に、女性の声が聞こえ自分も戦うと言い出した。

 

『その呼び方はやめろ!!後余計な事すんな!!』

 

(別に変わらなくてもいいわよ…でもその代わり…)

 

(えっ…?ペルシア、何する気!?)

 

(他の身体を使って戦うわ!!)

 

声の主・ペルシアは別の人物に憑依して戦うと言いながら、何処からか茶色の光の珠となり現れ憑依した。その人物に選ばれたのは…

 

『ゴメンね…ちょっと身体借りるわよ♪』

 

(ええっ!?ちょっ、ちょっと!!何この格好っっ!!?///)

 

『「ええっ!!?黒深子!!?/黒深子ちゃん!!?』」

 

なんと黒深子の身体だった。すると、髪の一部が茶色のツインテールに茶色の瞳、頭には猫耳バンドを着けたメイド服に猫足ブーツと所謂アキバ系の姿に変わっていた。

 

『んじゃ、行くわよ…変身!』

 

【CLAW-FORM!】

 

P黒深子がベルトの茶色のボタンを押しパスをセタッチすると、身体が黒い素体スーツに包まれ、肩に爪が付いた茶色のロッドフォームの様なオーラアーマーと、手の甲に茶色の鉤爪、そして三本の茶色の爪を象った電仮面が装着された「クローフォーム」に変身した。

 

『あんた、あたしに引っ掻かれてみない?』

 

『生憎そんな趣味は無いよ…。黒深子、ちょっと我慢してくれ!』

 

【SHADOW-RIDE…KABUKI!】

 

ネガ電王CFの決め台詞を一蹴したディライトは、黒深子に我慢する様告げながら自身の影を歌舞鬼にシャドウライドさせた。

 

『何あれ!?影がカラフルな鬼に変わった!?』

 

『向こうは任せるよ!』

 

【ATTACK-RIDE…MEITOU-ONSAKEN!】

 

更に黒い刀「鳴刀・音叉剣」をS歌舞鬼に装備させると、ネガ電王NFに斬り掛かっていった。しかしそれはデンガッシャーで防がれて剣同士が斬り結ぶ形となった。

 

『くっ…こいつ、影の癖に…!!』

 

『影なんかに手こずってんじゃないわよ!ネガ男!…って!!』

 

ネガ電王CFは手の甲に付いた大きめの鉤爪「ペルクロー」で、ディライトのライトブッカーの斬撃を防いだ。

 

『黒深子の身体を返してくれないかなぁ…!』

 

『女に容赦無く攻撃してくるなんて…マナーの悪い男よねぇっ!!』

 

ネガ電王CFはディライトの攻撃を弾き距離を取ると、ペルクローで反撃に乗り出した。

 

『少し手荒に行くよ…!』

 

【ATTACK-RIDE…LASER!】

 

ディライトはライトブッカーをソードからガンモードに変形し、ディライトレーザーで迎撃しようとしたが…

 

『当たらないわよっと!』

 

ネガ電王CFは、猫の如く素早く動いて攻撃を回避しながらディライトへと近付き鉤爪で攻撃を仕掛けようとした。

 

『くっ…だが、近付いたのは命取りだね…はあっ!!』

 

たがディライトはすかさずライトブッカーをスピアモードに変形させ、ネガ電王CFを突き刺して回し蹴りで後方に吹き飛ばした。

 

『きゃあぁぁっっ!!』

 

『……!!』

 

『ぐっ!?野郎…ん?どうした雌猫。偉そうに出て来た割には随分と苦戦してるじゃねぇか。』

 

『うっさい!!こうなったら必殺技で一気にケリを…!!』

 

S歌舞鬼に苦戦しているのを棚に上げ嘲笑するネガ電王NFの言葉で頭に来たネガ電王CFは、必殺技を発動すべくパスを取り出そうとしたが…

 

(ゴラァァッッ!!あんた達いい加減にしないかぁぁっっ!!)

 

『『げっ!!』』

 

突然、ネガ電王達の頭に女性の怒鳴り声が響くと上空からレールが敷かれ、それと共に紫色の電車「ネガライナー」が現れた。

 

 

 

―ネガライナー・乗客室

 

 

「本当にごめんなさいっ!!」

 

「いや…いいんだよ。」

 

ネガ電王の変身者・反田(はんだ)リョウタロウは、闇影達に深々と謝った。闇影は彼が悪いんじゃないと然程気にはしていなかった。

 

「あんた達、ウチのモンが迷惑かけちまって本当に悪かったね。」

 

このネガライナーのオーナーである、禍々しい刺青が彫られた大きな胸が目立つ程大きく開いたシャツと黒ズボンに、橙と紫のメッシュを入れたウェーブの髪をした活発な女性・トキナも闇影達に謝罪した。

 

「まさか、ただ運動したかっただけであんな事を…。」

 

『ふんっ…!』

 

『メンゴ、メンゴ〜♪』

 

拳骨を貰い頭にタンコブを付けた黒鬼のイマジン・ネガタロスはそっぽを向いて不貞腐れており、白茶色の猫にブーツを履いた女性イマジン・ペルシアは誠意のこもって無い謝罪をした。事情を聞いた闇影はそんな二人を見て呆れていた。

 

『二人共、馬鹿な事をしてリョウタロウ様に迷惑をかけるんじゃありません!』

 

テーブルに座って折り紙を弄くりながら二人を注意したのは、右が白く、左が黒い体色をした山羊の女性イマジン・カプラである。

 

『何よ、この良い子ぶりの山羊!喋り方マジムカつくんですけど〜?』

 

『貴方達みたいな野蛮な輩の非難なんて、負け犬の遠吠えにしか聞こえませんわ。』

 

『なっ…何ですって〜!!』

 

『おい…馬鹿でかい声を出すな雌猫。頭に響く!』

 

『あんたが五月蝿いのよ!ネガ男!!』

 

『何だとぉっ!?このっ…!!』

 

「いい加減にしろやっ!!」

 

『ウガッ!』

 

『ギャッ!』

 

『ハウッ!』

 

トキナは、性懲りも無く言い争いをする三人のイマジンに拳骨をお見舞いして黙らせた。

 

「((トキナさん、強っ!!))」

 

闇影とコウイチは、そんな彼女の強さに戦慄していた。

 

「暫く黙ってな!…ん?」

 

乗客室のドアが開くと、紺色の燕と忍者を合わせた様な女性イマジンが怪我の手当てが済んだ黒深子と共に現れた。

 

「大丈夫か?黒深子。」

 

「うん…ツバキさんが手当てしてくれたから平気よ。」

 

『拙者共のせいでお主に怪我を負わせてしまって…申し訳無い!!』

 

ツバキはやや固めな口調で、自分達の行動により黒深子に怪我を負わせた事をリョウタロウ同様、深々と謝罪した。

 

「いや、もういいんだって。」

 

「ところで、あのイマジン達は何故契約しないままで『過去の扉』を?」

 

闇影は、先程の違和感についてトキナに尋ねた。イマジンは過去の時間を得る為に人間と契約をし、その人間の過去へ跳び時間を改変するのだが、その手法が違う事に違和感を感じていたのだ。

 

「あんた随分と詳しいわね…。あれは人の記憶を『喰らった』のさ。」

 

「記憶を…喰う!?」

 

「ああ。記憶ってのは時間、そして時間は存在を繋ぐ大切な物なんだ。それをイマジンが喰らう事で『時間』を、『過去』を手にする事が出来、それを失くした人間は…何れ消滅する…!」

 

「「「!!!」」」

 

トキナは何処からか珈琲を取り出し啜りながら冷静な口調で恐ろしい事実を話し、それを聞いた闇影達は言葉を失っていた。

 

「そんな…何か手は無いんですか!?」

 

「喰らった奴を倒せば記憶が戻るけど、そいつ等のボスを叩いた方が効率がいいわ。あの南瓜達は分身に過ぎないからね…。」

 

「あれ全部が分身かよ…。」

 

「でも、どうやって?」

 

『それについては心配無用。我々は全員、イマジンを探知する事が出来る。』

 

「なら、俺達に憑いて手分けして捜せばいいんですね!」

 

「はぁ…それしか無いわね…。」

 

イマジン達が探知能力を持っていると聞いた闇影は、自分達に憑かせてイマジンの親玉を捜す事を提案した。黒深子は先程の事があった為、複雑な顔をしたが渋々了承した。

 

「……。」

 

「ん、どうしたんだい?リョウタロウ君。」

 

「…少し、いいですか?」

 

 

―喫茶店・星のカーテン

 

 

闇影とリョウタロウはベルの付いたドアを開き店に入ると、長い黒髪に紫の瞳をしたにこやかな女性がカウンターにいた。

 

「あら、いらっしゃいリョウタロウ君。そちらの人はお友達?」

 

「あ…はい。」

 

「初めまして。煌闇影と言います。」

 

「此方こそ初めまして。反田アイリです。」

 

「!!えっ…?」

 

「ちょっと待ってて下さいね。今珈琲を煎れますから。」

 

闇影はカウンターの席に座りながら、小声リョウタロウに話しかけた。

 

「リョウタロウ君、あの人ってもしかして…?」

 

「はい…ボクの姉です。でも、今は…」

 

「イマジンに記憶を喰われたんだね…。」

 

そう、リョウタロウの姉・アイリもイマジンにより記憶を喰われていたのだ。弟に他人行儀な呼び方なのが何よりの証拠だ。

 

「でも大丈夫。イマジンを倒せば解決するさ。」

 

「ええ…それはそうなんですけど…そうなると姉さんは…自分で死ぬかもしれないんです…。」

 

「!?それってどういう…!?」

 

闇影はリョウタロウの「アイリが自分で死ぬ」という言葉に強く反応し彼に問いただそうとした時…

 

「お待たせしました。はい、珈琲が二つ。」

 

「あっ!い、いただきま…!!熱つつつっ!!」

 

アイリが珈琲を差し出したので、リョウタロウは慌ててカップを取り口にしようとしたが、何故かカップの取っ手が壊れてしまい顔面に中身をぶちまけてしまった。

 

「いや嘘ぉっ!?大丈夫かい!?リョウタロウ君!」

 

 

 

―黒深子(ツバキ)&コウイチSIDE

 

 

『う〜む…この付近にはいない様だな…ってコウイチ殿!真面目に捜す気があるのか!?先程からお主の視線が此方にいってる気がするのだが。』

 

「ん?あ、あぁっ!勿論ちゃんと捜しているさ!それに視線がいってるのは気のせいだって!」

 

コウイチは、慌ててT黒深子に弁解をした。しかし、髪の一部が紺色のポニーテールに紺色の瞳、鎖帷子が付いた生地がかなり薄い忍装束の姿をしており、少しでも風が吹けば下着が見えてしまう程露出度が高く、視線がそっちに行くのも無理は無い。

 

「(風よ!吹け吹けっ!!そして純白の光景を俺に!!)」

 

(コウイチ…後で殺すっ!!)

 

コウイチは心の中で意味不明な祈りを念じており、それを悟った黒深子は心の中で強い殺意を抱いていた。そこに複数の男性達が彼等の前に現われた。

 

「フヘヘ…お嬢ちゃん、凄ぇエロい格好してんなぁ…。」

 

「誘ってんのかねぇ…俺等が遊んでやろっか?」

 

(うわっ…やっぱりこういう連中が沸いてきたわね…ウザッ!!)

 

男達の上から下まで舐め回す様ないやらしい視線に、黒深子は強い不快感を感じていた。その時…

 

(ツバキ…ちょっと変わりなさい!)

 

『カプラ!一体どうし…うわっ!?』

 

カプラが突然T黒深子の身体からツバキを追い出し憑依すると、白と黒が混ざった山羊の角の様な巻き髪に、右が白の左が黒色の瞳に灰色のロングスカートのドレスの姿に変わった。

 

『貴方達!私(わたくし)にそんな無礼な口を利いて只で済むと思いまして!?』

 

「お、おいっ!カプラ!」

 

C黒深子は男性達の下劣な言動に余程不快に感じたのか、凛とした態度で彼等に訴えかけ、コウイチがそれを宥めようとしたその時…

 

「やっと見つけたよ…ネガ電王!!」

 

突然男性達の身体から大量の砂が零れ落ちると倒れ出し、砂はパンプキンI達の姿に変わった。恐らくカプラはこれに気付いて表に出たのだろう。

 

『ケケケ…!!』

 

『行きますわよ…!変身!』

 

【SHIELD-FORM!】

 

C黒深子はデンオウベルトを巻き付け灰色のボタンを押しパスをセタッチすると、灰色のアックスフォームのオーラアーマーが装着され、右が白、左が黒色の山羊の角を象った電仮面が装着された「シールドフォーム」に変身した。

 

『楯突く者には、痛みでお返ししますわ!!』

 

ネガ電王SFは自身の電仮面に似た山羊を象った盾「カプリールド」を構え、パンプキンI 達を押し付ける様に攻撃した。

 

『グガァッ!?』

 

「俺もやるぜ!変身!」

 

コウイチもVバックルを出現させカードデッキを装着し、リュウガに変身した。

 

『久しぶりに行くぜっ!!』

 

【SWORD-VENT】

 

『だぁっ!せいっ!おりゃぁっ!!』

 

『ガギャアッ!!』

 

リュウガは久々の活躍に張り切り、ソードベントカードをドラグバイザーにベントインしてドラグセイバーを召喚し、パンプキンI達を次々と斬り裂いていった。

 

『やっ!はいっ!それっ!!』

 

ネガ電王SFも盾で舞う様に攻撃をし、背後からの攻撃も腕を後ろにして防ぐ等して敵を倒していくのだが…

 

『だぁ〜っ!!いくら斬っても斬ってもキリがねぇっ!!』

 

リュウガが苛立つように、パンプキンI達の数が一向に減らないでいた。

 

『ですが、敵を倒しても全く減らないのは少しおかしいですわね…ん?』

 

ネガ電王SFは、倒したイマジンの一体の身体から砂の様な物が溢れているのを見かけた。するとそれは、パンプキンIの形を作り上げた。

 

『曲者っ!!姿を現わしなさいっ!!』

 

ネガ電王SFはデンガッシャー・ガンモードで、砂が溢れている個体を射撃した。しかし、それは立ち上がり回避した。

 

『…気付かれた以上、姿を隠すのは無意味の様だな。』

 

突然喋り出したパンプキンI(?)は、頭の南瓜が割れ黒タイツを破れると、大きな角が生えた白い馬と南瓜が合わさった王子の様な姿をしたイマジン「ユニコーンイマジン」へと変化した。

 

『こいつが…親玉か…!!』

 

『死んだ分身の中に隠れていたなんて…!!』

 

『分身達が人間共の記憶を喰ってくれたお陰で、余は過去に頼らずとも実体を得る事が出来た!!』

 

『何だとっ…!』

 

『自分は手を汚さず、分身達が奪った人々の記憶だけを得る…浅ましい輩めっ!!』

 

リュウガとネガ電王SFは、ユニコーンIの強欲さを非難しながら各々武器を構えた。

 

『ふっ…余に勝てるかな?』

 

『勝ってやるさ…行くぜっ!!』

 

『参りますわっ!!』

 

 

―闇影&リョウタロウSIDE

 

 

あれから店を出た闇影とリョウタロウは、歩きながら先程の話を続きをした。

 

「姉さんには婚約者がいたんですが、四年程前に事故で亡くなったんです…。」

 

「そんな事があったのか…。」

 

「手首に包帯が巻いてあったでしょう?あれは手首を切った後なんです…。」

 

「…!!まさか、アイリさんは自殺しようと…!?」

 

リョウタロウは無言で頷いた。それを見た闇影は、彼が記憶を取り戻す事に消極的だった理由を理解した。アイリの記憶が戻れば恋人を亡くした記憶も戻る。そうなればまた何をしでかすか解らない…。

 

「『自分で死ぬかもしれない』というのはそういう事だったのか…。」

 

「ボクは…姉さんの記憶を取り戻したい!!でも…戻った後の事を思うと…。」

 

「リョウタロウ君…。」

 

イマジンを倒さなければアイリは消えてしまう…かと言って倒せれば記憶が戻りまた自殺するかもしれない…。そんなジレンマを抱えたリョウタロウは涙を流していた。その時…

 

「はぁ〜い、闇影君♪」

 

「巡…。」

 

パンが入った袋を片手に持った巡と、周が現われた。巡の軽すぎる口調に闇影は少し苛立った顔をした。

 

「おっ!そこのカワイ子ちゃんは誰だ?いいのかねぇ…黒深子ちゃんがいるのに。」

 

「お前もいたのか、周。後、この子は男の子だぞ。」

 

「えぇっ!!?お、男おっ!!?」

 

周はリョウタロウが男だと聞き、orzの体勢で落ち込んだ。中性的な顔立ちに華奢な体つきから少女だと思い込んでいた為相当ショックだったようだ。

 

「そんな事より何の用だ?また宝か?」

 

「決まってるじゃない…。神の路線に行けるパスをネガ電王が持ってるって聞いてね。だ・か・ら…マスターパス、頂戴♪」

 

『ざけんなっ!!てめぇらにやるモンなんか無ぇよっ!!』

 

「きゃっ!?」

 

巡達の横暴な物言いに頭に来たネガタロスは、リョウタロウに憑依し黒いドレッドヘアに赤いサングラスをかけた不良の様な姿となり、巡に近付き突き飛ばした。

 

「おい、てめぇ…巡ちゃんを突き飛ばして生きて帰れると思うなよ!?」

 

「まっ、おいそれとは手に入らないわね…。」

 

巡を突き飛ばされた事に頭に来た周は、直ぐ様立ち上がりドライバーを構え、巡も起き上がり身体を払い、ドライバーを構えた。

 

「「変身!!」」

 

【KAMEN-RIDE…DISHIRF!】

 

【KAMEN-RIDE…DISTEAL!】

 

パスを力づくで奪うべく巡はディシーフに、周はディスティールに変身した。闇影もそんな二人に肩を竦めながらドライバーを装着した。

 

「全く、この大事な時に…変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

『お前等…まとめてぶっ潰してやる…変身!』

 

【NEGA-FORM!】

 

闇影はディライトに、Nリョウタロウはデンオウベルトを巻き付けボタンを押しパスをセタッチしてネガ電王NFに変身した。

 

『強さは…別格だ!』

 

『此処は電王バトルと行きましょ♪特別カードよ!変身!』

 

【KAMEN-RIDE…NEW-DEN-O!】

 

ディシーフが「特別なカード」をドライバーにスラッシュすると、赤い三角錐の電仮面、銀のオーラアーマーが装着された青いスーツが特徴の「仮面ライダーNEW電王 ストライクフォーム」カメンライドした。

 

『行ってきな。』

 

【KAIZIN-RIDE…MOMOTAROS!】

 

ディスティールはカイジンライドで、赤鬼と桃が合わさったイマジン「モモタロス」を召喚した。胡座を掻いてスプーンを持った間抜けな状態で…。

 

『ん?あぁっ!?何処だ此処はっ!?俺プリン食おうとしてたのにっ!!』

 

何故か自我を持ったモモタロスは、プリンを食べる寸前で呼び出された事を地団駄を踏みながら怒り散らしていた。

 

『んな馬鹿な事言ってねぇでさっさと行け、馬鹿モモ。』

 

『あぁ!?んだとてめぇ…俺の大事な一時を邪魔しやがっ…『後でプリン作ってやっから。』よっしゃ行くぜっ!!』

 

『(やっぱ馬鹿だコイツ…。)』

 

プリンに釣られた馬鹿モモもといモモタロスは、ディスティールに馬鹿扱いされている事を知らずディライト達を倒そうと前に出ようとしたが…

 

『待ちな。ほれっ!』

 

『あぁ?って、これは…!!』

 

ディスティールは、モモタロスにライダーパスとデンオウベルトを投げ渡した。

 

『大事に使えよ。そいつは別の世界で手に入れた貴重な宝なんだからな。』

 

『へっ!こいつがあっての俺だからな…変身!』

 

【SWORD-FORM!】

 

モモタロスが巻き付けたデンオウベルト赤いボタンを押し軽快なメロディを鳴らし、パスをセタッチすると、赤と銀のオーラアーマーを装着した赤い桃が割れた電仮面が特徴のネガ電王と同じ姿をした「仮面ライダー電王 ソードフォーム」に変身した。

 

『俺、参上!!』

 

電王SFはお馴染みの決め台詞を叫び、左手と右足を前に、右手と左足を後ろに突き出し歌舞伎の様なポーズを取った。

 

『「また」現われたか…俺の「計画」を潰してくれた馬鹿が…。』

 

『ウダウダ煩せぇよ猿真似野郎!いいか?俺に前振りは無ぇ。俺は最初から最後までクライマックスなんだからなぁっ!!行くぜ行くぜ行くぜぇぇっっ!!』

 

ネガ電王NFの言葉は気になるが、電王SFは構わずデンガッシャー・ソードモードで斬り掛かっていった。だが、ネガ電王NFは同じ武器でそれを防いだ。

 

『ふっ…少しはやる様だな…。』

 

『その減らず口、今すぐ黙らせてやるぜっ!!オラァッ!!』

 

電王SFは斬り結びを止め、ヤクザキックでネガ電王NFを蹴り飛ばした。だが、ネガ電王NFはデンガッシャーをガンモードに切り替え射撃した。

 

『ぐあぁっ!!』

 

『はっ!せいっ!せやっ!!』

 

『やっ!えいっ!せぇいっ!!』

 

一方、ディライトとDNEW電王もライトブッカーとディシーフドライバーで斬り結びをし戦っていた。そして、互いに一旦距離を取る。

 

『お前達に構っている暇は無いんだ!!退いてくれっ!!巡!!』

 

『マスターパスを渡すなら、止めてあげる♪』

 

【ATTACK-RIDE…MOMOTAKEN!】

 

DNEW電王はカードをスラッシュし、柄がモモタロスの顔をした大きな剣「モモタケン」を召喚、装備変更し再びディライトに斬りか掛かっていった。

 

『せぇぇいっっ!!』

 

『くっ…!!』

 

 

 

『邪魔だっての!!行けっ!ブラッカー!!』

 

【ADVENT】

 

『グオォォォォン!!』

 

『ギィヤァァァァッッッッ!!!!』

 

『やあっ!せいっ!えいっ!!』

 

『グガァッ!!』

 

一方、リュウガはアドベントカードで契約モンスター「ドラグブラッカー」を召喚し、吐き出した黒い炎で無数のパンプキンIを焼き尽くし、ネガ電王SFも盾で攻防していくが、幾ら倒しても中々減らずにいた。軈て二人の体力も尽きかけて来た。

 

『くそっ…はぁ…はぁ…どうすれば…はぁ…いいんだ!?…はぁ…。』

 

(御主は休め、カプラ!後は拙者がやる!)

 

『なら…はぁ…御言葉に甘えますわ…はぁ…。』

 

【FEATHER-FORM!】

 

ネガ電王SFが紺色のボタンを押しパスをセタッチすると、カプラが黒深子の身体から離れ代わりにツバキが入り込み、紺色の燕の羽根を象った電仮面と紺色のウイングフォームに似たオーラアーマーが特徴の「フェザーフォーム」にフォームチェンジした。

 

『貴様等に不幸を届けてやる…拒否は許さん!!』

 

【FULL-CHARGE!】

 

『秘技!斬双燕舞(ザンソウエンブ)!!』

 

『ゲギャアァァァァッッッッ!!!!』

 

ネガ電王FFはブーメランモードに切り替えたデンガッシャーと、燕の羽根の形をしたブーメラン「ツバメラン」を構え直ぐ様パスをセタッチしフルチャージした。すると、紺色のフリーエネルギーが篭った二振りの武器をブーメランの様に投げつける必殺技「斬双燕舞」でパンプキンI達を爆発音と共に一気に殲滅した。

 

『す…凄ぇ…。』

 

『残るは貴様だけだ!!覚悟しろっ!!』

 

驚嘆の言葉を溢させる実力を見せたネガ電王FFは、デンガッシャーとツバメランを構えてユニコーンIに突き付けた。しかし…

 

『ふはは!!覚悟だと!?余がただ分身共を襲わせただけだと思うか!?上を見てみろ。』

 

何故か高笑いをするユニコーンI。彼は自分の真上に指を差し空を見る様、ネガ電王FFとリュウガに言った。

 

『何の事…なっ、何だあれはっ!!?』

 

『何だよ…これ…!!』

 

二人が上を見ると、空に巨大なエネルギーの塊が集結していた。ユニコーンIはこの為に、パンプキンI達を囮にしたのだ。

 

『このエネルギー波で、この世界の全てを消滅させる!!』

 

『はぁっ!?正気かてめぇっ!?んな事したらお前もただじゃ済まねぇぞっ!?』

 

『ふん…余が何の考えも無く世界を消すと思うか?愚かな…。』

 

ユニコーンIの目的は、この世界を消滅させる事だった。だがリュウガの言う様に自身も消滅してしまう…にも関わらず何故か笑っている。その理由は…

 

『!!まさか貴様、主と同じ…!?』

 

『ふはは!!左様!!余は特異点…故に世界が消えようとも余は生き延びる事が可能なのだ!!』

 

何とユニコーンIは特異点の力を持ったイマジンであり、世界が消えても彼の記憶…人々から喰らい、奪った記憶を支点に再生するのだ。

 

『この後は、余だけによる、余の為の世界を築くのだ!!』

 

『そんな事…!!』

 

『させるかぁぁっっ!!』

 

ネガ電王FFとリュウガは、腕を伸ばし始めたユニコーンIの行動を阻止すべく走り出したが…

 

『時既に遅し…消えろっ!!』

 

ユニコーンIが腕を振り降ろした瞬間、エネルギー波は下界に急落下した。その激しいエネルギーの影響で世界が歪み、崩壊し始めた…。

 

 

 

『なっ、何だこの歪みはっ!?黒深子達は無事なのか…うわぁっ!!』

 

場の空間が歪み始め、ディライトが黒深子達の安否に気がいった瞬間、DNEW電王の攻撃をまともに受けてしまった。

 

『戦いの最中に気を逸らさないでちょうだい…止めよ!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…N・N・N・NEW-DEN-O!】

 

『必殺、私の必殺技!ディシーフバージョン!!…なんてねっ♪』

 

DNEW電王はFARを発動すると、赤いフリーエネルギーを籠めたモモタケンでダッシュ斬りをする必殺技「ソードエクストリーム」をディライトに喰らわせた。

 

『ぐあぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

『ああああっ!!?あの女…俺の台詞パクリやがってぇぇ…!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DI・DI・DI・DISTEAL!】

 

『へっ…?って!まっ、待てぇぇっっ!!俺まだプリン貰って無ぇのにぃぃぃぃっっっっ!!!!』

 

電王SFが文句を言っていると、ディスティールが発動したディメンジョンスコールの空中のカードの円に訴えも空しく、吸い込まれていった。

 

『これでくたばりやがれっ!!』

 

『その前にくたばるのはお前だ。』

 

【FULL-CHARGE!】

 

ネガ電王NFもパスをセタッチし、デンガッシャーの切っ先にフリーエネルギーをフルチャージし敵を斬る必殺技「ネガエクストリームスラッシュ」でディスティールに斬り掛かっていった。

 

『うおぉぉぉぉっっっっ!!!!』

 

 

 

―その時、この世界が真っ白い光に包まれ街も、人々も、全て跡形も無く消滅した…。

 

「この世界は完全に焼き尽くされた…ディライトが現われたせいで…。」

 

紅蓮はこの世界が消滅したのはディライトのせいだと、上空で浮きながら見下ろす様に呟いていた…。




どうでもいい話、別のサイトで書いてた時カプラがお気に入りだと言う読者の方がいました。自分のキャラを気に入ってくれているのは嬉しい限りです(感涙)。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第14導 ネガわない記憶を取り戻せ!

何時かこれのトリロジーを作ろうか…なんて大それた事を考えてました(大汗)

謝る!!


―ネガライナー・乗客室

 

 

「…ん、こ…此処は…ネガライナー…?」

 

闇影が目を覚ますと、いつの間にかネガライナーの乗客室の席に乗っかっており、テーブルには珈琲に入ったカップが置いてあった。

 

「気が付いたかい?闇影。」

 

「トキナさん…!!黒深子達は!?」

 

「安心しな。別の車両でぐっすり寝ているよ。」

 

「そうですか…。」

 

闇影は黒深子達の無事を聞き安心すると、出された珈琲のカップを取り戻す口にしながらトキナからこれ迄の経緯を聞いた。ユニコーンイマジンが分身のパンプキンイマジン達に人々の時間を奪わせ、特異点の力で生き残り、一度世界を消滅させ自分だけの世界を創造しようと企んでいた事を…。

 

「そんな事が…でも何で無事だったんだろう…。特異点のリョウタロウ君も巻き添えになったのに…。」

 

「それは恐らく『超異点』の能力だね。」

 

「『超異点』…?」

 

闇影は「超異点」という聞き慣れない単語に首を傾げていた。トキナはゆっくりと乗車内を往復しながら胸の谷間から何故か珈琲の入ったカップを取り出し、口にしながら説明し出した。

 

「『特異点』は、あらゆる時間の干渉を受け付けない存在…これは知ってるよな?んで、『超異点』ってのが…」

 

トキナの言葉に頷く闇影。そして彼女は一旦間を置き珈琲を飲み干し、谷間にカップを入れそこから新しい珈琲を取り出しながら話を続けた。

 

「時間を…世界を『固定』する存在…。」

 

「……!?それってどういう事ですか?」

 

「特異点とは違い、超異点はその存在…記憶が現存するだけでどんな時間の歪みも『本来の時間や存在を戻す』能力さ。但し、その人間の存在を消す事は可能だけどな。例えば、超異点の過去に行ってその人間を消す等してね。」

 

「超異点の記憶をそのイマジンが取り込んでいたのが不幸中の幸いだったんだな…。!!だとしたら…!?」

 

「奴さんは、間違い無くその超異点を突き止めようとするだろうね。」

 

トキナは、闇影の悪い予想を頷き口にした。

 

「早く何とかしないと…!!」

 

それを聞いた闇影は、イマジン達の企みを阻止するべく動き出そうとしたその時…

 

『リョウタロウの奴、何処行きやがったんだ!?』

 

「何だい、騒がしいわね。」

 

「リョウタロウ君がどうかしたのか?」

 

『あの子がいないのよ。全車両を見たけど何処にもいなかったの。』

 

『意識も締め出されていて、感知する事が出来ませんわ。』

 

『主は一体何処に…?』

 

乗客室に現れたネガタロス達の行動を闇影が尋ねると、どうやらリョウタロウが姿をくらましたようだ。

 

「…あそこかもね。」

 

「えっ?」

 

「あんた達はイマジン達の散策をお願い。リョウタロウはあたしが探すわ。」

 

『知ってんなら教えろよ!!ババ…ブッ!!』

 

「誰がババァじゃコラァッ!!乗車拒否にされたくなかったらさっさと行けっ!!」

 

リョウタロウの居場所に心当たりがあるトキナは闇影達にイマジン散策の指示を出した。ネガタロスは悪口を言いながら居場所を聞き出そうとしたが正拳突きを喰らい地に沈んだ。

 

「わ、分かりました!!皆、早く行こう!!」

 

彼女の怒号と行動に驚いた闇影はペルシア、カプラ、ツバキと共に乗客室を後にした。

 

 

 

―ネガライナー・操縦室

 

 

「…。」

 

リョウタロウは、ずっと専用マシン「デンバード」が搭載したコックピットを見つめながら「ある事」を考えていた。

 

「(…もし、ユウトさんが亡くなる前の時間に行けたら姉さんが悲しまなくて済むかもしれない…。だけど…)」

 

なんと、アイリの婚約者・葉月(はづき)ユウトが事故で命を落とす前の時間に行き彼の死を防ごうと考えていたのだ。だがそれは、時の運行を護る者として決して許されない行為だ…。

 

「やっぱ此処にいたか…。」

 

「!!オーナー…!!」

 

「あんたまさか、『過去に行ければ…』とか考えてんじゃないだろうね?」

 

「…!!」

 

トキナの鋭い指摘に、リョウタロウは図星を差され目を見開き即座に伏せ、怯えた様に驚いた。

 

「そ…それは…。」

 

「いいかい、『過去の時間での自分勝手な行動は御法度だ。』と何度も言い聞かせたわよな?それ以上は言わなくても分かるだろ?」

 

「は…はい…。」

 

トキナは厳しい表情でリョウタロウを諫め、そのまま踵を返し操縦室を後にした。

 

「ボクは…どうすればいいんだ…!?」

 

リョウタロウはその場で膝を付き、下を向きながら悩み出した。

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

『チィッ…超異点の存在を計算に入れるのを忘れていたとは…!!』

 

一方ユニコーンイマジンは、先程のトキナが話していた超異点の存在を失念していた事に舌打ちをしながら悔やんでいた。

 

『完全に世界を消すには、超異点の過去に行き、その人間を始末せねばな…!!行けっ!!分身共!!』

 

『ケケケ…!!』

 

案の定、ユニコーンIは超異点の存在を抹殺すべく身体から無数のパンプキンIを生み出した。

 

『超異点の存在をしらみ潰しに捜し出せっ!!その間余は喰らった記憶を辿り、その人間を確定する。』

 

『ケェェッッ!!!!』

 

本体の命に従い、パンプキンI達は人々を襲いに動き出した。

 

 

 

(!!ねぇディライト!イマジンが動いたわ!!)

 

ペルシアは、イマジンを探知した事をマシンディライターに乗った闇影の意識に呼び掛ける。

 

「そうか!場所は?」

 

(私達が教えた通りに進んで下さいませ!)

 

 

 

―都内中心

 

 

『ケケェェッッ!!!!』

 

「う、うわあぁぁっっ!!!!」

 

「きゃあぁぁっっ!!!!」

 

パンプキンI達は人々を襲い、蹂躙し捕らえた人間の過去の扉を開き超異点の存在を探っていた。そこへ…

 

「止めろぉぉっっ!!!!変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

闇影はマシンディライターに乗った状態でディライトドライバーを装着し器用な手付きでカードを装填しディライトに変身し、マシンから飛び降りた状態からパンプキンIにキックを喰らわせた。

 

『グガッ!!?』

 

『うじゃうじゃいるな…此処は援軍を呼ぶぞ!!』

 

【FINAL-SHADOW-RIDE…DE・DE・DE・DEN-O!】

 

ディライトは自身の影を、中心に電王の基本四フォームの電仮面が特徴の赤い大剣「デンカメンソード」を装備した、時の大型列車「キングライナー」をイメージした赤と白を基調としたオーラアーマーが特徴の、電車の中の電車王「仮面ライダー電王 ライナーフォーム」にFSRさせた。

 

(あれは…電王!?)

 

(でも、あたし等のとは違うみたいね…。)

 

【ATTACK-RIDE…RYU-GUN!】

 

ディライトがカードを発動させると、S電王LFのデンカメンソードのターンテーブルが回転し、一番上がガンフォームの電仮面に切り替わる。そのまま、二手に分かれてパンプキンI達と戦った。

 

『はぁっ!やぁっ!せいっ!!』

 

『グギャアッ!!』

 

 

『……!!』

 

『ギィヤァッ!!』

 

ディライトはライトブッカーで敵を次々と斬り裂いていき、S電王LFはガンフォーム独特の軽快なステップを取りながら切っ先から紫色の光弾をパンプキンIに連射し、そして…

 

『数は粗方減った!止めと行くか!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DE・DE・DE・DEN-O!】

 

ディライトが電王のFARを発動すると、彼の横側に黒の、S電王LFの横側に金色のレールが敷かれ、背後からデンライナーのオーラが超スピードで現れた。二人は武器を持った状態でその上に乗り、電車の如く滑走し…

 

『はあぁぁぁ…電車斬りっ!!』

 

(((ええぇぇっっ!!!?センス無〜いっ/悪過ぎますわっ/無さ過ぎだっ!!!!)))

 

『グギャアァァァァッッッッ!!!!』

 

オーラを纏ったまま横一文字に斬り裂きパンプキンI達は大爆発した。必殺技は「フルスロットルブレイク」…なのだが、ディライトが何故か「電車斬り」と呼ぶ。三人のイマジン達は、センスが無いと批評する。

 

「ふぅ…これで終わった…。」

 

(闇影!直ぐにリョウタロウの所へ行け!その南瓜達は単なる囮だっ!!)

 

「何ですって!?場所はっ!?」

 

変身を解除した闇影は、トキナから先程のイマジン達は囮だと聞き、リョウタロウの場所を聞き出した。

 

 

 

「……。」

 

一方、リョウタロウは無言のままとぼとぼと街を歩き、姉のいる「星のカーテン」へと向かっていた。

 

「…もう一度姉さんの様子を見に行こう。」

 

記憶を取り戻さない限りこんな事をしても無意味なのは分かっているが、ついそこに足を運ぶリョウタロウ。すると…

 

「あら、リョウタロウ君。こんにちは!」

 

「ね…ア、アイリさん!こ、こんにちは!!」

 

買い物袋を持ったアイリが現れ、何時ものにこやかな笑顔で挨拶をしてきたので、リョウタロウもぎこちない笑顔で挨拶を返した。彼女が姉だと言う事は伏せて…。

 

「あ、あのっ…!!」

 

「んー、何かしら?」

 

「ボ、ボクは…貴女の…!!」

 

リョウタロウは、自分が弟である事をアイリに告げようとしたその時…

 

『見つけたぞ…この世界の超異点、反田アイリ…!!』

 

「「!!」」

 

突如ユニコーンIが二人の前に現れ、アイリをこの世界の超異点だと告げた。

 

『記憶を辿って見れば、よもやネガ電王の姉が超異点だとは…灯台もと暗しとはよく言った物だな!!』

 

「姉さんが…超異点…!?」

 

「姉…さん…!?リョウタロウ君、この人何言ってるの?」

 

「そ、それは…。」

 

アイリはユニコーンIの寝耳に水な言葉に困惑しており、リョウタロウもそれに答えるかどうか迷っていた。しかし、それとは裏腹にユニコーンIが近付き出した。

 

『さて…貴様の過去の時間に跳ばせて貰うぞっ!!』

 

「や、止めろぉっ!!アイリ…姉さん!!早く逃げてっ!!」

 

だがそうはさせじとリョウタロウはユニコーンIを押さえ、アイリを姉だと呼び逃げる様叫んだ。

 

「う…うん…!!」

 

アイリは少し戸惑ってはいたが、リョウタロウの言葉に従い、逃げる為走り出した。

 

『くっ…!離せ!無礼者!!』

 

「うわぁっ!!」

 

だがその華奢な身体ではイマジンはおろか普通の人間を長い間押さえる事は出来ず、リョウタロウは引き剥がし投げ飛ばされてしまった。

 

「はぁ…はぁ…はっ!!」

 

『逃がさぬぞ…超異点よ!!』

 

「い…いや…止め…!!はうっ…ぅうん…。」

 

アイリは逃げようとしたが、ユニコーンIは馬の如く素早く彼女の正面に回り込むと、すかさずアイリの身体に腕を突っ込みかき回し、過去の扉を開きその中へと飛び込んだ。そしてアイリは目から輝きを失い、呆然とした。

 

「姉さん!しっかりして!!姉さんっ!!」

 

「リョウタロウ君!!」

 

「闇影さん…姉さんがっ…!!」

 

「落ち着いて。えーと、チケットは…。」

 

リョウタロウはただただアイリの身体を揺すり動揺していた。そこへマシンディライターに乗った闇影が現れ、リョウタロウに落ち着く様宥めてライダーチケットをアイリに翳した。すると、チケットにユニコーンIの絵と「2007年1月28日」の日付が記された。

 

「この日は…!!」

 

「早く行こう!!」

 

 

―2007年1月28日・天文台付近

 

 

「ユウト…ユウトが…!!」

 

そこではアイリは、天文台の頂上の柵にもたれ掛かりそれが突然壊れた為落下死した婚約者を白い布で包んだ担架を見て目の輝きを失い呆然としていた。

 

「可哀想にな…。」

 

「あんな美人を残しちまうなんて…。」

 

「うっ…!?」

 

周りの人間がそんな彼女を哀れんでいた時、アイリの身体から大量の砂が零れ落ちそれはユニコーンIの姿となり実体化した。

 

「う…うわあぁぁっっ!!何だっ!?」

 

「化物だあぁぁっっ!!」

 

『着いたは良いが…小煩い人間共が邪魔だな…はぁっ!!』

 

ユニコーンIはアイリを始末する前に、周囲の人間が邪魔だと判断し掌から光弾を建物や人々に放ち、破壊活動を行った。そこへ、ネガライナーが走り出し中から闇影とリョウタロウが現れた。

 

「酷い…!!」

 

「…。」

 

荒れ果てた天文台や傷付いた人々を見て、闇影は悲しみと怒りを感じていた。だがリョウタロウは未だ浮かない顔をしていた。

 

『あの超異点さえ消せば、余は新たな世界の支配者となれる!!』

 

「そんな事させるかっ!変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

「…変身!」

 

【NEGA-FORM!】

 

闇影はディライトに、リョウタロウはネガ電王NFに変身し ユニコーンIと戦おうと前に出た。

 

『痛つぅ…強さは…別格だ!』

 

『さて、輝く道へと導かせるけど…リョウタロウ君、大丈夫かい?』

 

(は…はい…。)

 

『世界を導くのは…余だっ!!』

 

ユニコーンIは、剣を取り出し二人に斬り掛かっていった。だが、ディライトはライトブッカー・ソードモードを、ネガ電王NFはデンガッシャー・ソードモードを構えて斬り結んだ。

 

『ふんっ!はっ!ぜやっ!!』

 

『くっ…!!数ではこっちが上なのによ…!!』

 

『弱気になるなっ!!必ず隙は見つかる!!』

 

ネガ電王NFの言う通り、数の上では此方が有利なのにも関わらずユニコーンIの方が強く押され気味になり嘆いていたが、ディライトはそんな彼に集中する様諌めた。

 

『貴様等に余は倒せんよ…倒せばネガ電王の姉が失意にかられ、自ら死を選ぶのだからなぁっ!!』

 

(……っっ!!)

 

『知った事か。お前は俺の目の前で平伏す事になってるんだからなぁっ!!』

 

ユニコーンIはアイリが死を選ぶかもしれない事をディライト達に告げ揺さぶりかけたが、ネガ電王NFはそれを一蹴し再び斬り掛かろうとした。しかし…

 

(待って!!ネガタロス!!)

 

『なっ…!?リョウ…タロウ…何の…真似だっ!?』

 

『リョウタロウ君…!!』

 

ネガ電王NFはデンガッシャーを上に持った状態で、そのまま硬直した様に動かなくなった。リョウタロウが特異点の力でネガタロスを止めたからだ。

 

『はははっ!!これはいい的となったな!!はぁっ!!』

 

『ガァッ!!』

 

ユニコーンIはネガ電王NFが動かないのを良い事に、光弾を放った。そして、ユニコーンIは、自身の身体から無数のパンプキンIを生み出した。

 

『ケケケ…!!』

 

『またか…!こうなったら…!!』

 

【SHADOW-RIDE…DARK-KIVA!】

 

【ATTACK-RIDE…GARULU-SAVER!】

 

事実上戦力が一人と化したディライトは、自身の影をガルルセイバーを装備させたSダークキバにシャドウライドさせ、パンプキンIと戦う戦力を増やした。

 

『……!!』

 

『ギャアッ!!』

 

Sダークキバは次々と敵を斬って行き、ディライトも同じ様に倒し、パンプキンI達を全滅させた。

 

『中々やるな…だが…はぁっ!!』

 

『ぐあぁぁっっ!!』

 

ユニコーンIは、掌から光弾を放ちディライトとSダークキバにダメージを与えた。

 

『く…くそっ…!!』

 

『おい!リョウタロウ!!何時までそうしてるつもりだっ!?』

 

(分かってるよ!!自分が何を仕出かしているのか!!でもボクは、姉さんが悲しむ顔を…もう見たく無いんだ…!!)

 

リョウタロウは、心の中で涙ながらに叫んでいた。彼が躊躇う理由、それはアイリが悲しむ顔を二度と見たく無かったからである。

 

『戦う意思を無くし、腑抜けたネガ電王等取るに足らん!もう一発…喰らうがいいっ!!』

 

『くっ…!!ヤバいぜ!!避けきれ無ぇっ!!』

 

ユニコーンIは、未だ動こうとしないネガ電王NFに再度光弾を放った。 既に回避する事が出来ない距離迄光弾が近付いてきた。そこへ…

 

『……!!』

 

『ぐあぁぁっっ!!』

 

『ディライト!!』/(闇影さんっ!!)

 

突然、Sダークキバがネガ電王NFの前に立ちはだかり光弾を受けて消滅した。影がダメージを受けた事で、ディライトもそのダメージを受け、身体から煙を出し胸を押さえて苦しんでいた。

 

『うっ…くっ…!!しっかりするんだリョウタロウ君!!確かに、君のお姉さんの悪い記憶を取り戻す事が嫌なのは分かる!!俺だって…忘れたい記憶を持ってるから…!!』

 

(えっ…!!)

 

『だけど…何時までもそれを怖がってばかりはいられない!!良い記憶も、嫌な記憶もその人の「現在(いま)」を表わす、一つでも失くしてはいけない大事な物だから!!』

 

(……。)

 

『例え傷付くとしても、それを恐れていたらその未来(さき)を手にする事は出来ない!!だからこそ、君は今自分に出来る事をする時なんだっ!!』

 

(ボクが今、出来る事…!!)

 

リョウタロウは、ディライトの言葉を聞き自分が何をすべきなのかを考え出した。

 

『リョウタロウ…お前は俺や雌猫、山羊女、燕忍者とこう契約したよな?「自分に出来る事…時の運行を守る手助けをして欲しい」ってな。あの時のお前の目、悪くなかったぜ。』

 

(ネガタロス…。)

 

『だからお前は、自分が決めた事をやれば良いんだ…。仮にもこの「究極の悪」である俺を従えたんだからな!もう少し自身を持てっ!!』

 

(うん…さっきはごめん。それと…ありがとう!!)

 

『ふ、ふんっ!!俺以外の悪党は、計画の邪魔になるからお前を利用してるだけなんだからなっ!!///』

 

(はは…分かってるよ。)

 

ネガタロスは不器用ながらもリョウタロウを励まし礼を言われたが、ユニコーンIが自分の「計画」の邪魔になると言って照れ隠しをした。

 

『先程から余を無視しおって…貴様、何様のつもりだっ!?』

 

『何様でも無いさ…お節介教師な仮面ライダーだ!!宜しく!!』

 

『ほざけっ!!こうなれば貴様を一気に潰してやるっ!!ングッ!!グオォォォォッッッッ!!!!』

 

ユニコーンIはディライト達を潰すべく、何故か自分で自分の胸を剣で突き刺し全身に黒いオーラを纏い姿を変化させた…。

 

『な、何だっ…!?黒いオーラがどんどん大きくなっていく!?』

 

『グオォォォォォォォン!!!!』

 

『自分で暴走しやがったか!!だが、何だあの姿は!?』

 

黒いオーラが止むと、イマジンがイメージを暴走した姿「ギガンデス」が現出された。上半身が三本角の黒牛「ヘル」、背中に「ヘブン」の白い翼、そして下半身が「ハデス」の金色の龍の腹部と三体のギガンデスが複合した「ギガンデスキメラ」として…。

 

『あんなの今迄見た事なかったぞ!?だが、此処はネガライナーで…!!』

 

ネガ電王NFはギガンデスKを倒す為、ネガライナーを呼び出したが…

 

『ガァァァァッッッッ!!!!』

 

『なっ!!』

 

(ネガライナーがっ!!)

 

だが、そうはさせじとギガンデスKは口から黒い炎弾を放ち、ネガライナーを使用不能にさせた。

 

『くそっ!!ネガライナーをやられちまったらあいつは倒せねぇぞっ!!』

 

『なら君が「なれば」良いじゃないか。こいつでね。』

 

【FINAL-FORM-RIDE…NE・NE・NE・NEGA-DEN-O!】

 

『二人共、力を抜いて。』

 

『ンガッ!?/(うわぁっ!?)』

 

ディライトがネガ電王NFの背中に手を当てると、ネガ電王NFは途端にネガライナーその物に変形した。これがネガ電王のFFR「ネガデンオウライナー」である。そしてディライトは何処からか現れたマシンディライターに乗って走り出しそのままNライナーのコックピットに乗り込んだ。

 

『おいディライト!何だこれは!?』

 

『あれに勝つにはネガライナーしかないだろ?行くぞっ!!今からが本当のクライマックスだっ!!』

 

『答えになるかぁぁっっ!!』

 

(諦めよ…ネガタロス。)

 

ネガタロスの叫びを無視し、Nライナーはレールを螺旋状に敷いて走りつつ、正面のバルカン砲でギガンデスKに連射した。

 

『グギャアァァン!!ガァッ!!』

 

だがギガンデスKも口から黒い炎弾を吐きながら、翼から無数の尖った羽根を撃ち出した。

 

『おっと!当たらせないよっ…と!!』

 

ディライトが方向を切り替える事で、Nライナーは今の攻撃を上手く回避する事が出来た。

 

『リョウタロウ君!!止めいくけど…もう大丈夫だね?』

 

(はいっ!!)

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…NE・NE・NE・NEGA-DEN-O!】

 

『これで…終わりだぁっ!!』

 

『グギャアァァァァッッッッ!!!!』

 

ディライトがカードを装填すると、Nライナーは正面のバルカン砲、全車両から黒鬼、猫、山羊、燕の形をしたミサイルを放つFAR 「ディライトトレイン」でギガンデスKを大爆発させた。

 

 

 

―希望ヶ丘病院

 

 

「姉…さん…。」

 

現在の時間に戻ったリョウタロウは、恐る恐るアイリの病室に入り姉の名前を呼んだ。

 

「リョウちゃん…。」

 

「(…良かった。)」

 

イマジンを倒した事により、記憶が戻り呼び方も元に戻りリョウタロウは内心をした。

 

「あ…あの、姉さ「私ね…できたみたいなの。」あぁ、そうなん…って、え?まさか…!!」

 

アイリは頷きながら起き上がり腹を摩り出した。何と彼女は、妊娠していたのだ。

 

「それでね、お医者様にこの手首の事で怒られたの。『これから母親になる人が命を粗末にするな!』って。」

 

「……。」

 

「だから私、ユウトの為にも、この子の未来の為に頑張る事を…って、リョウちゃん?」

 

「良かっ…た…良かった…うっ、うぅっ…!!」

 

リョウタロウはその場でしゃがみ込み、嬉しさと安心感で涙を流していた。

 

「あらあら、泣き虫な叔父さんね…。」

 

 

 

「素敵な家族の絵だわ…。」

 

リョウタロウとアイリ、そして茶髪の青年・ユウトと少女が一緒に星空を見ている絵を見て 影魅璃は感激し、闇影は目頭を押させていた。

 

「本当…ですね…。」

 

「それにしても、まさかアイリさんに赤ちゃんができてたなんてね…。」

 

「その子の未来の為にリョウタロウ君は頑張っていくだろうね。自分の出来る事をして…。」

 

「だなっ!俺も自分に出来る事を生かしていいモン手に入ったしな!」

 

「ん?コウイチ、何持って…って!!何これっ!?」

 

黒深子はコウイチの持っている物を取り上げ、怒りを露にした。それは、ペルシア達が憑依した自分のセクシーポーズを取った写真だったのだ。どうやら彼女が眠ってる隙に憑依し、無断撮影した様だ。

 

「やべっ!!逃げろっ!!」

 

「待ちなさ〜いっ!!」

 

黒深子は怒りの表情のまま、コウイチを追い回した。

 

「全く…二人共暴れな…!!」

 

闇影が二人に注意しようとした時、次の世界を表すキャンバスに、無数の隕石が東京都内に墜落した光景と複数の昆虫が飛び交った絵が描かれた。

 

「ダークカブトの世界か…。」

 

 

 

「くそっ!!結局お宝は手に入らず終いかよっ!!」

 

「まぁまぁ、次の世界で挽回すれば良いじゃな…!?」

 

今回、全く出番が無く宝も入手出来ずに苛立つ周を、次の世界で挽回すれば良いと冷静に切り替える巡は、何者かの視線を感じ背後を向き出した。

 

「どうしたんだ、巡ちゃん?」

 

「ううん。何でも無いわ。(さっきの視線は一体…?)」

 

 

 

「ウククク…。」

 

巡が感付いた謎の視線の人物は、不気味に笑いながら灰色のオーロラを潜り、この世界から姿を消していった…。




最後にちょびっとだけ出た人物…今後のストーリーに関わったり関わらなかったりする…とだけ言っておきます!!(何だそりゃ)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第15導 ダークカブトは逃走中?

七番目の世界です。ここで闇影が「あのライダー」に…


―白石家

 

 

「"NEO-ZECT(ネオゼクト)行動隊長 煌闇影" …これがこの世界での役目か。でも家に変化が無いなぁ…。」

 

と、自分の名刺を読みながら考え込む闇影。何時もなら世界が移動する度に白石家は何かしら変化するのだが、今回は闇影の服装が紺色のスーツの姿以外特に変化が無い…と思いきや…

 

「せ〜んせ♪早くご飯食べよ♪」

 

「って!!うわぁっ!?///な、何で抱きつくんだっ!?黒深子!!///」

 

突然、フリルの付いた可愛らしいエプロンを着けた黒深子が闇影に抱きついて来た。闇影は顔を赤くしながら彼女に尋ねた。すると黒深子は信じられない事を言った…。

 

「何でって…良いじゃない。私達『夫婦』なんだから♪」

 

「ああ、そっか、そうだ…ね…って…」

 

何と闇影と自分が夫婦だと、満面の笑みを浮かべてそう言った。闇影は一瞬納得したが、直ぐに我に返り沈黙し、そして…

 

「ええええぇぇぇぇっっっっ!!!?ふっ、夫婦ぅぅぅぅっっっっ!!!?」

 

大声で絶叫すると、家中が震度8の地震が起きたが如く揺れまくった。そりゃそうだ、突然身近にいた女の子が「妻です。」だなんて唐突過ぎた話を聞いて冷静でいられる筈が無い。

 

「(何で!?何時!?何処で!?どうやって!?いやいやいやいや落ち着け煌闇影!!教師たる者、生徒とこんな関係になるのは断じて有ってはあらない…!!だが…だが…!!)」

 

冷や汗を垂らし頭を抱え、テンパりながらあれこれ考え込む闇影。いつの間にかテーブルに座らされているとも気付かずに…。

 

「は〜い先生。朝御飯たっくさん作ったよ♪どうかなぁ?私料理するの初めてだから自信無いけど、先生に喜んで貰う様頑張ったんだから!」

 

「ん?あ、ああ!!そうなんだ!!どれ、どんな料…理…なん…!!」

 

ふと我に返った闇影は黒深子の作った朝食に目をやると、怪訝げな顔をした。何故ならテーブルの上にある料理が全て真っ黒い物体にしか見えないのだ。皿を取ってみると、何故か「助けてぇ…助けてぇ…。」という呻き声が聞こえて来たので慌ててテーブルに置き戻した。

 

「(お、おい闇影…お前、何か黒深子ちゃんを怒らせる様な事でもしたのかよ!?)」

 

「(こっちが聞きたいよ…急に夫婦だとか言い出すし、料理は得体が知れないし…。)」

 

「どうしたの先生?早く食・べ・て♪」

 

闇影とコウイチは、黒深子の豹変振りにただただ恐れ、困惑していた。しかし、それ以上に恐ろしいのは彼女の料理だった。食すか否かと迷っていたその時…

 

「あっ!!いたいた!!何してんスか隊長!!ワームが現れましたよ!!」

 

「えっ!?ちょ、ちょっと!引っ張らないで!!」

 

そこへ突然、黒い軍服を着たツンと尖った茶髪の青年が闇影の手を掴み、その場から颯爽と彼を連れ去っていった。

 

「何だったんだ?闇影連れていかれたし…。」

 

「も〜う!!ご飯も食べてくれない上に『言ってきます』のキスもしないなんて〜っ!!」

 

「キ、キスッ!?///黒深子ちゃん、ホントどうし…!!」

 

「私がどうしたって?コウイチ。」

 

「そうだよっ!!もう一人の黒深子ちゃんも何か言って…って、え?」

 

何時もとは違い過ぎる黒深子の豹変した態度に疑問を持つコウイチは、背後から声がしたので振り返って見ると…

 

「ええぇぇっっ!?く、黒深子ちゃんが二人いるっ!?」

 

そこには黒深子が「もう一人」いたので、コウイチは目を見開き驚いた…。

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り、その瞳は、何を照す?

 

 

 

―とある港近くの廃工場

 

 

『ブブブ…!!』

 

『ギギギ…!!』

 

そこでは蝿の特性を持ったワーム「ミュスカワーム」と複数の緑色の成虫前のワーム「サナギ体」複数と、NEO-ZECT所属の黒蟻に似たスーツを着た複数の「ゼクトルーパー」が交戦していた。

 

『全弾!てぇぇっっ!!』

 

『グギィィッッ!!』

 

『き、効かな…ぐああっっ!!』

 

一人の戦闘員の号令でゼクトルーパー達はマシンガンの様な銃器でミュスカW達に攻撃した。しかし、それらは全く効かず逆にワーム側の迎撃で隊員が数人死傷してしまった。そこへNEO-ZECT側に一台の車が止まり、闇影と先程の青年・部隊副隊長の壬銅(みどう)テツキが降りてきた。

 

「あれがこの世界の怪人、ワームか…。」

 

「被害が酷いッス…俺達でやっちゃいましょう!!お前等下がってろッス!!」

 

『隊長と副隊長が戦うそうだ…皆、下がれ!!』

 

テツキはゼクトルーパー達に下がる様命令し、闇影と共に前線に出た。無論何の手も無く戦う訳では無い。

 

「来いッス!!」

 

テツキが右腕を上に翳すと、空中から銅色のケンタウルスオオカブト型の昆虫コア「カブティックゼクター」が飛来し彼の手元に収まった。

 

「ゼクターか…。よし、俺も…って、おわっ!?」

 

闇影も変身すべくディライトドライバーを取り出そうとしたが、突然謎の物体が彼の目の前に飛んで来たので驚きとっさに掴んだ。

 

「これって…ザビーゼクター!?」

 

闇影が掴んだ物、それはNEO-ZECT行動部隊長の証である蜂型の昆虫コア「ザビーゼクター」であり、よく見ると左手首にブレスレット型アイテム「ライダーブレス」が装着されていた。

 

「行くッスよ…隊長!変身!」

 

【HENSHIN!】

 

【CHANGE-BEETLE!】

 

「何か粗方解らないけど、行くぞっ!!変身!」

 

【HENSHIN!】

 

二人がライダーブレスにゼクターをセットすると、テツキはケンタウルスオオカブトを模した銅色のライダー「仮面ライダーケタロス」に、闇影は蜂の巣をイメージした銀色と黄色のアーマーを纏った戦士「仮面ライダーザビー マスクドフォーム」に変身した。

 

『あれ?壬銅君のはちょっと違うんだね。』

 

ザビーの言う様に「ダークカブトの世界」を初めとするカブト系統の世界のライダーは皆、第一形態に特殊金属「ヒヒイロノカネ」で構成されたアーマーが装着されるのだが、ケタロスの様に最初から「ライダーフォーム」に変身すると言う例外もある。

 

『なら俺も…キャストオフ!』

 

【CAST-OFF!】

 

『グガァァッッ!!?』

 

ザビーMFがザビーゼクターの羽「ゼクターウィング」を上げた後、内側に回転させると、アーマーが展開され全てミュスカW達めがけて弾け飛び…

 

【CHANGE-WASP!】

 

複眼が怪しく光り、黄色と黒を基調とした凶暴な雀蜂に似た顔付きが特徴の「ライダーフォーム」へとフォームチェンジした。

 

『ふぅ…身軽になったし…戦闘開始!!』

 

『どゅりゃ!せいっ!せいやっ!!』

 

『グギィィッッ!!』

 

ザビーとケタロスは走り出し、ミュスカW達と交戦を開始した。ケタロスは専用武器「ゼクトクナイガン」をクナイモードにして、サナギ体達を素早く斬り裂いていった。

 

『武器が一つか…。良い機会だし此処は素の力で行きますか!!ほいっ!ふっ!ふっ!だぁぁっっ!!』

 

『グッ!ガッ!ギャアァァッッ!!』

 

一方ザビーは、ケタロスとは違い武器がゼクターに装着されたザビーニードルしか無く、これを機に肉弾戦で戦う事に決め、ミュスカWやサナギ体達を目にも止まらぬパンチを連打し、囲まれても逆立ちして両足を大きく伸ばし、蹴り回るという荒々しい戦法を取った。

 

『グッ…!!グガガ…』

 

『逃げても無駄さ!!』

 

『ギャアッッ!!』

 

サナギ体一体がザビーに恐れをなして逃げようとしたが、そうはさせじとザビーニードルから放つ針状の攻撃を受け爆死した。

 

『す…凄いッスね、隊長。』

 

『止めだっ!!行くよ壬銅君!クロックアップ!』

 

【CLOCK-UP!】

 

『了解ッス!!クロックアップ!』

 

【CLOCK-UP!】

 

ザビーとケタロスは、ゼクターを作動しクロックアップを発動し時間流の空間に突入した。すると、ミュスカW達の動きや援護射撃の弾丸の動きも全てゆっくりに見え、二人は高速移動しワーム達に近付いた。そして…

 

【RIDER-BEAT!】

 

『はぁぁぁ…アバランチスラッシュ!!』

 

【RIDER-STING!】

 

『ライダー…スティング!!』

 

『グギャアァァァァッッッッ!!!!』

 

ケタロスは「ライダービート」のタキオン粒子で強化した右腕のゼクトクナイガン・クナイモードで弧を描く様に斬る「アバランチスラッシュ」でサナギ体達を斬り裂き、ザビーはクロックアップの速度を上乗せしつつ、ザビーニードルでミュスカWの脳天を「ライダースティング」で貫き、ワーム達を爆破させた。

 

「ふぅ…これにて一件落着コンプリート…ってね!!」

 

変身を解いた闇影は、某世界の赤い刑事と侍の台詞をごちゃ混ぜにした台詞を言い任務完了を宣言した。その時、彼の携帯が鳴り出した。

 

「はい、もしもし。」

 

『闇影!直ぐに家に戻って来てくれ!なんか黒深子ちゃんが二人いるんだ!!』

 

「??黒深子が二人…!!ワームかもしれない…分かった!直ぐに戻る!」

 

「ワームがいるなら、俺も行くッス!!」

 

コウイチからの電話を切った闇影は、直ちに白石家に向かった。テツキもワームを倒すべく一緒に同行した。

 

 

 

―白石家

 

 

「先生、私が本物よっ!!」

 

「偽者の言う事なんか聞いちゃ駄目だよ先生っ!!」

 

「う〜ん…どっちが本物なんだ?」

 

「難いッスね…。」

 

どちらかが黒深子に擬態したワームなのは分かっているが、「自分が本物、向こうが偽者」だと言う二人に闇影達は困惑していた。

 

「此処は俺に任せろ…。スリーサイズはいくっ…!!」

 

「「んなもん答えるかぁぁっっ!!」」

 

「つ…ゲボガハァッ!!」

 

「「(二人分の正拳突き…死んだなあれ…。)」」

 

馬鹿な質問をし出したコウイチは、二人の黒深子から正拳突きを喰らい、死んだ様に地に沈んだ。

 

「能力まで同じだと本当に…ん?待てよ…。だったら…!!いや〜ホント凄かったよねぇ黒深子。」

 

「「??」」

 

何かを思い付いた闇影は急に話し出し、二人の黒深子は何の事だかと首を傾げていた。

 

「『激しくして欲しいの。』とか『普通じゃ嫌。』とか言って来るからびっくりしちゃったよ。」

 

「な!な!な!///何言い出すのよ先生!!///私そんな事言ってないわよ!!///」

 

「そうよ!!昨日の夜、私先生を部屋になんか招いてない…か…ら…!!」

 

「何で昨日の夜の事だと分かったのかな?俺は『凄かったね』としか言ってないのに。」

 

「くっ…くそっ!!」

 

ワームは擬態した人間の技術や記憶をもコピーする事が可能である。それを逆手にわざと本人の知らない事を話し出し、その反応で正体を割り出す…。これが闇影の作戦である。そして、その策に嵌まった黒深子(?)はサナギ体へと変化し、コウイチを踏みつけて壁を突き破り逃走した。

 

「待てっ!逃がすかっ!!」

 

「私に化けて先生を誘惑するなんて…絶対息の根を止めてよねっ!!先生!!」

 

「怖っ!ま、待てっ!!」

 

闇影とテツキは壊れた壁を通ってサナギ体を追い掛け、走り出した。同じくコウイチを踏みつけながら…。

 

「壁から出ちゃ駄目でしょ!行儀悪い!!」

 

「…誰も俺の心配しないのね…ガクッ。」

 

影魅璃は、サナギ体や踏みつけられたコウイチには触れず、闇影達が壁を出た事に怒っていた。それに突っ込み気絶するコウイチ…。

 

 

 

「待てぇぇっっ!!」

 

『し、しつこい…。こうなったら…グォォォ!!』

 

執拗に追って来る闇影達に業を煮やしたサナギ体は「脱皮」をし、白蟻を模した「フォルミカアルビュスワーム」に変化し、クロックアップで再び逃走しようとしたが、二人の男女がいるのを見かけ…

 

『あいつ等捕まえて人質にでもすっか!!シャアァァッッ!!』

 

「まずい!!お~いそこの人達!!早く逃げて下さいっ!!」

 

急遽フォルミカアルビュスWは、彼等を人質に捕らえようとクロックアップを使い近付き出した。が…

 

「逃げる?その必要はありませんよ。」

 

銀色がかった白い短髪に眼鏡をかけた知的な雰囲気を持つ男性は、飛来した銀色のカブティックゼクターを掴み、そして…

 

「変身!」

 

【HENSHIN!】

 

【CHANGE-BEETLE!】

 

左手首のライダーブレスにゼクターをセットすると、男性はヘラクレスオオカブトを模した銀色のライダー「仮面ライダーヘラクス」に変身した。

 

「あの人もライダーなのか…!」

 

【RIDER-BEAT!】

 

『楽にさせますよ…はぁっ!!』

 

『グギャアァァッッ!!』

 

ヘラクスは直ぐ様ライダービートで強化した腕でゼクトクナイガン・アックスモードを縦一文字に振り上げ、敵を切り裂く「アバランチチョップ」でフォルミカアルビュスWを撃破した。

 

「凄い…たった一撃で…「きゃあっ!?」」

 

『ギギギ…!!』

 

「またかっ!!変し…!」

 

闇影は、素早くワームを倒したヘラクスを見て息を呑み驚いていた時、一緒にいた女性に別のサナギ体が近付いて来た。闇影は今度こそディライトに変身しようとした瞬間…

 

 

 

【CLOCK-UP!】

 

『…!!』

 

『ギィヤァァッッ!!』

 

「…えっ!?」

 

【CLOCK-OVER!】

 

「黒い何か」が音も出さず、目にも見えぬ速度でサナギ体に近付くと、一瞬で爆破させた。その正体は…

 

「黒い…カブト…!」

 

胸に赤いラインが入った漆黒のボディアーマー、妖しく光る黄色の複眼が特徴の黒いカブトムシをイメージした戦士、この世界の守護者「仮面ライダーダークカブト」だった…。

 

『現れたなダークカブト!!そのライダーシステムは我々ネオゼクトの所有物だ。返して貰おうか!!』

 

『…。』

 

【CLOCK-UP!】

 

ヘラクスは、ダークカブトにライダーシステム「ダークカブトゼクター」を手を差し出しながら返還する様要求した。ネオゼクトの名を出した事から、ヘラクスもネオゼクトの一員の様だ。しかしダークカブトは一言も喋らず、クロックアップを使いこの場から去って行った。

 

『くっ…!逃げられましたか…。』

 

「貴方は…一体…?」

 

「どうでしたか隊長…って、そっ、総帥!!」

 

「へ?」

 

闇影に追い付いたテツキは、ヘラクスを見ると驚いた表情で「総帥」と呼び姿勢を整え敬礼をした。

 

 

 

―黒角(くずみ)家

 

 

ヘラクスの変身者であり、NEO-ZECTの総帥・銀城(ぎんじょう)ヒデナリと一緒にいた彼の婚約者、長い黒髪をポニーテール状に丸めた女性・黒角ヒヨリの自宅に招かれた闇影達。

 

「またダークカブトを逃してしまいましたか…!」

 

「落ち着いてヒデナリさん。お茶でもどうぞ。皆さんもどうぞ。」

 

ダークカブトに逃げられ憤慨するヒデナリに、ヒヨリは茶を差し出し、落ち着く様宥めた。

 

「あのダークカブトは、一体何者なんですか?」

 

「…五年前、NEO-ZECT…当時のZECTはとあるワームの軍勢と戦っていました。私と壬銅、そして…」

 

「私の弟、ソウタもZECTの隊員だったんです…。」

 

「『だった』?」

 

ヒヨリは、棚にある自分とヒデナリの間にいる青年・ソウタを写した写真立てに悲しげな表情で目をやって答えた。

 

「彼は若くして他よりずば抜けた実力を持った隊員であり、懸命にワームと戦っていました。しかし、僅かな隙を付かれワーム達に拐われてしまい行方が分からなくなり結果、我々とワーム側は共に敗北…同時に彼の持つダークカブトゼクター迄奪っていった…。」

 

ヒデナリが躍起になってダークカブトを捕まえたい理由、それは、ソウタの持つダークカブトの力をワームが悪用しているやもしれないからであり、何より…

 

「奴等からソウタ君を奪い返くべく、そしてワームの驚異から人々を守る為に、私はゼクトをネオゼクトに再建しました。私の弱さ故に起きた過ちを自分でケリを付ける!!それがゼクトを創設した私の責任、私なりに出来るヒヨリへの償いです…!!」

 

自分が弱いが故に起きた事態を自身で解決すると言うヒデナリは、それがネオゼクトを創設した自身の責務、そしてヒヨリへの償いだと強く言った。

 

「余りお気になさらないで下さいヒデナリさん。貴方は貴方で弟の事を想ってくれているのは解っていますから。それにね、もしかしたらソウタは生きてるかもしれないの。」

 

「どういう事ッスか?」

 

「弟が行方不明になってから、私がワームに襲われそうな時には何時もそのダークカブトが現れるんです…。だからあれは弟なんじゃないかって…。」

 

ヒヨリがこれ迄何度もワームに襲われそうになった時に何時もダークカブトが現れる為、彼女はそのダークカブトこそ、行方不明になったソウタなのだと推測した。

 

「でもそれなら、何で戻って来ないんスか?」

 

「それは…。」

 

「うーむ…。」

 

 

 

「弟さんが戻らない理由か…。何なんだろう?」

 

闇影が歩きながらソウタが戻らない理由を考えていたその時、コノハムシを模したワーム「フォリアタスワーム」が現れた。

 

『ブブブ…!!』

 

「ワームか…!三度目の正直…行くよ!変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

闇影は、ワームに会った回数を「三度目の正直」と言いながら同じく三回目にして漸くディライトに変身した。

 

『ブブブ…!!』

 

『何っ!?つむじ風に変わった…って、ぐあぁっ!!』

 

フォリアタスWは強いつむじ風に変化し、クロックアップを用いてディライトに突撃し、近くの廃工場内迄吹き飛ばした。

 

『痛たた…こっちはクロックアップを使えないのに…こうなったら…!!』

 

クロックアップが使えないと嘆くディライトは、立ち上がりライトブッカー・ソードモードを構えたままで動きを止めた。フォリアタスWは再びつむじ風と化し、クロックアップでディライトに近付いたが…

 

『(クロックアップが使えないなら、目を閉じて感覚を研ぎ澄ませるんだ…。後ろから5m…4、3、2、1…)…そこだっ!!』

 

『ブギャアァァッッ!!』

 

目を閉じて感覚を研ぎ澄ませたディライトの居合い斬りの如く一振りにより、フォリアタスWは爆死した。

 

『ふぅ…こんなもんだ…うわぁっ!?』

 

ディライトが敵を倒した直後に、何者かの銃撃が襲い掛かった。それは、十数人のゼクトルーパーを率いたヘラクスとケタロス達NEO-ZECTだった。

 

『煌君…いやディライト!!まさか君が世界を焼き尽くす灰塵者…死神だったなんて残念です…!!』

 

『…。(俺はそうは思えないッスが、かと言ってNEO-ZECTを裏切る真似は出来ないッス…!!)』

 

『此処でもか…紅蓮の仕業だな…。』

 

ヘラクス達が襲撃した理由は、ディライトが灰塵者であり死神だと言う事を紅蓮から聞いた為である。だが、ケタロスはディライトが灰塵者だとは思ってないが、NEO-ZECTを裏切りたくないと心の中で葛藤していた。

 

『さて、戦力を更に増やしましょうか…来なさい!!蠍姫!!』

 

『はい…!!』

 

ヘラクスの命令を聞き現れたのは、ツインテール状にした腰まで届く長い紫色の髪に、髪と同じ色のワンピース型の服を着た寡黙な表情をした14、5歳程の少女だった。

 

『女の…子…?』

 

『本当は隠し玉としたかったんですが、相手が死神ならばそうは言ってられませんのでね…。行きなさい。』

 

「はい…。おいで…サソードゼクター…!」

 

蠍姫と呼ばれた少女は、紫色の剣「サソードヤイバー」を取り出すと何処からか紫色の蠍型のコア「サソードゼクター」が地を這いながら彼女の手元に飛び上がり、そして…

 

「変身…!」

 

【HENSHIN!】

 

蠍姫はサソードヤイバーの鍔部分にゼクターをセットすると、銀色と紫色のアーマーを纏った戦士「仮面ライダーサソード マスクドフォーム」に変身し、更に…

 

『キャストオフ…!』

 

【CAST-OFF!】

 

『おわっ!?わっ!わぁっ!!』

 

【CHANGE-SCORPION!】

 

サソードMFがサソードゼクターの尾部を倒してその先端部「サソードニードル」をサソードヤイバーに差し込むとアーマーが展開、キャストオフをしアーマーをディライトに向かって弾き飛ばすと、鋭い緑の複眼に、紫色の蠍を模したライダーフォームに変わった。因みにディライトは、弾き飛んだアーマーを全て回避した。

 

『ディライト、貴方は…私が抹殺します!』

 

『…っと!サソード迄来ちゃったか…。此処は新しい力で行きますか!』

 

【SHADOW-RIDE…NEGA-DEN-O!】

 

サソードの登場で分が悪いと感じたディライトは、自身の影をネガ電王・ネガフォームにシャドウライドさせた。

 

『更に…これだ!』

 

【ATTACK-RIDE…TSUYOSA HA BEKKAKU DA!】

 

『強さは…別格だっ!!』

 

ディライトはネガタロスの決め台詞を言いながら、Sネガ電王NFと共にライトブッカーとデンガッシャー・ソードモードを突き出しサソード達を挑発した。

 

『ふざけないで下さい…!はぁっ!!』

 

サソードは今のふざけた台詞が気に食わず、サソードヤイバーでディライトに斬り掛かったが、彼の前に出たSネガ電王NFのデンガッシャーで防がれた。

 

『はっ!やっ!えいっ!せいっ!!』

 

サソードは隙の無い素早い斬撃でSネガ電王NFと剣で斬り結ぶが、軈てその速度にSネガ電王NFは徐々に押されそうになって来た。

 

『このままではやられる…!!防御力アップだ!』

 

【ATTACK-RIDE…ITAMI DE OKAESHI SHIMASUWA!】

 

『い、痛みでお返しします…わ。///』

 

ディライトはSネガ電王NFをシールドフォームにフォームチェンジさせ、仮面の中で顔を赤くしながらカプラの決め台詞を言った。…結構恥ずかしい様だ。

 

【ATTACK-RIDE…CAPRIRLD!】

 

ディライトは、カプリールドを装備させたSネガ電王SFをサソードの正面に立たせて、連撃を防いだ。

 

『コロコロと…!やあぁぁっっ!!』

 

姿の変化に苛立つサソードは、剣を目にも止まらぬ速度で乱れ突きをした。一点の狂いも無い突きをまともに受ければどんな強固な盾も破壊出来る…。その言葉通り、カプリールドの中心に罅が入り砕けてしまった。

 

『まずい…!だったら…!』

 

『いい加減にして下さい…!!』

 

【CLOCK-UP!】

 

『でぎゃあぁぁっっ!!』

 

盾が砕かれた焦りで対応が遅れたディライトは次のカードを使おうとしたが、堪忍袋の緒が切れたサソードのクロックアップの突撃により、Sネガ電王SFと共に奥の方迄吹っ飛ばされた。

 

『総員!サソードに続きなさい!!』

 

『はっ!!』

 

ヘラクスはサソードの支援に回る様、ケタロスとゼクトルーパー達に命令した。そこに…

 

「ダークカブトゼクターを奪う為に闇影君を着けてたら、何か凄い事に…モグモグ…なってるわね。」

 

「ザビーになるわ、サソードの美少女ちゃんに襲われるわ…微妙に羨ましいぃっ!!」

 

おでんをくわえた巡と、煙草を吸いながら闇影を羨む周が現れた。今回の彼等の目的は、ダークカブトゼクターの様だ。

 

『何ですか貴方達?ディライトの仲間ですか?』

 

「はっ!冗談!俺様達はその言葉が嫌ぇなんだよ!変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DISTEAL!】

 

「折角だから、次いでに貴方達のゼクターも頂こうかしら…。変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DITHIEF!】

 

仲間という言葉を嫌う周と巡は、ヘラクス達のゼクターを「ついで」に奪うべくディスティールとディシーフに変身した。

 

『虫軍団には虫軍団と行くか!』

 

【KAMEN-RIDE…CULLIS!】

 

【KAIZIN-RIDE…DARK-ROACHES!】

 

ディスティールは黒い蟷螂のライダー・カリスと、黒いゴキブリに似た異形「ダークローチ」三体を召喚した。

 

『ゲゲェェッッ!!』

 

『な、何だ!?こいつもワームか!?』

 

ゼクトルーパー達はダークR達をワームだと思い込みながら、交戦し始めた。

 

【ATTACK-RIDE…SLASH!】

 

『せえぇぇいっっ!!』

 

ディシーフは、赤いエネルギーを纏ったドライバーを振るった「ディシーフスラッシュ」でヘラクスに攻撃を仕掛け…

 

『くっ…!!我々とは違うライダーシステムか!?何て強さだ…!!』

 

『ほいやっ!!』

 

カリスもカリスアローでケタロスに斬り掛かるが、二人共ゼクトクナイガン・アックスモードでその攻撃を防いだ。

 

『わっと…!この蟷螂も相当強いッス…!!』

 

ヘラクスとケタロスは、ディシーフやカリス、そしてダークRと言う、自分達とは違うライダーシステムや、ワームとは違う異形の存在に戸惑いを隠し切れなかった。そして…

 

『一気にやっか…。』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DI・DI・DI・DISTEAL!】

 

『喰らいなっ…!!』

 

『ぜっ、全員退避…うっ、うわああぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

ディスティールはFARを発動し、無数のカードの円を正面に作り、ダークRとケタロスと交戦中のカリスを吸収し、ディメンジョンスコールを水色の極太のレーザーにしてゼクトルーパー達に発射し大きく吹き飛ばした。

 

『貴様…!!』

 

『安心しな、一応加減はした。』

 

『遊びは此処迄にして、闇影君のとこに行きましょ。』

 

『あ、遊びだとぉっ!?』

 

『あんた等がいると宝盗んのに邪魔だからな…。ま、良い準備運動が出来たって事で。じゃあな。』

 

『ごきげんよう♪』

 

【【ATTACK-RIDE…WARP!】】

 

ディシーフとディスティールは、「ワープ」のカードを使い、この場から姿を消した。彼等がネオゼクトと戦ったのは、ダークカブトゼクターを奪うのに邪魔だと言うだけの理由だった。そして二人が消え去ったのを見てヘラクスとケタロスは変身を解除した。

 

「あいつ等〜…ムカつくッス!!」

 

「放っておきなさい…ディライトは蠍姫に任せて、我々は『例の計画』を進める為に一度本部に戻りますよ。」

 

二人の態度に激怒するテツキとは対称に、ヒデナリは冷静な態度で何かの計画を進める為、ネオゼクトに帰還する様言った。

 

「例のって…『あの計画』の事ッスか?」

 

「その通りです。さぁ、早く戻りましょう…。」

 

「!!りょ、了解ッス…。(何だったんスか…)」

 

テツキは、「計画」という単語を聞いた時のヒデナリが一瞬見せた表情に寒気が走った。

 

「(総帥が…笑ってた…。)」

 

冷たい笑みを浮かべた彼の表情に…。

 

 

―地下倉庫

 

 

『あっ…くっ…!!』

 

『はぁ…はぁ…もう、諦めなさい…はぁ…!!』

 

一方ディライトは、サソードの高速攻撃を受け過ぎ体力を消耗していた。だが、彼は無意味に受けている訳では無い。

 

『(あの子の使うクロックアップ、普通の何かと微妙に違う気がする…。まるで「二人分」の速度だ…。)』

 

幾度もサソードのクロックアップを見極めた彼は、「二人分」の速度だと推測した。現に彼女もスタミナが切れかかっている。反撃するなら今しか無い…。

 

『生憎、俺の辞書に「諦める」って言葉は無いんでね…。』

 

『ならそれは不良品って事ですね。クロックアップを使えない貴方に勝ち目は…』

 

『はは…こりゃ一本取られたね。確かに俺は「クロックアップ」は使えないよ…でもね。』

 

体制を整えたディライトは、一枚のカードを取り出した。確かにクロックアップは使えないが、それに対応出来る手段が無い訳では無い。

 

『あまり使いたく無いけど、こいつで行くしかない!!』

 

【ATTACK-RIDE…SONIC!】

 

『うっ…!』

 

ディライトがカードを装填した瞬間、辺りを照す程全身がライトオレンジに光り輝き、サソードはあまりの眩しさに腕で視界を覆った。すると…

 

『…!!クロックアップ!』

 

【CLOCK-UP!】

 

突然ディライトが光を纏いながら超スピードでダッシュしてサソードに向かって来た。それに感付いた彼女はとっさにクロックアップを使い横に回避した。

 

『これは…!?』

 

『この「ソニック」は、俺の全体力をスピード力に転換させる力を持ってるんだ。反面、走る度に体力が削られるけど…これで対等に渡り合える!!』

 

『…何故そんな簡単に能力の種を明かしたんですか…?』

 

サソードはソニックの能力を全て明かしたディライトに疑問を持った。ソニックは全体力をスピードに変える力、即ちそれが切れればディライトの敗北を意味する…にも拘らず、それを敵にである自分に話した事が理解出来なかった。

 

『何でかなぁ…君が手の内を晒して戦ってるのに、俺だけ隠すのはずるいなぁ…っと思ったからかな?』

 

『そんな理由…だけで…?』

 

『後戦ってて思うんだけど…君の心に迷いを感じたよ。』

 

『…!!』

 

『何だか君の戦いは、何処か無理に戦ってる様な気がしてならないんだけど…もし良かったら俺に…『私が使用したのは「クロックデュアル」です…。』って、え?』

 

サソードはディライトの言葉を遮り、自身が先程使用していたクロックアップを「クロックデュアル」だと言い出した。

 

『貴方を見てると、隠す気にならなくなった…それだけです。』

 

『そっか…んじゃ、続き行くよ!!』

 

『変な人ですね…。行きます…!!クロックデュアル!!』

 

【CLOCK-UP!】

 

ディライトとサソードは、ソニックとクロックデュアルを用いながら超スピードの戦いを繰り広げた。時にぶつかり剣を斬り結び、時に離れてまた斬り合うという高速の戦いを何処か楽しげに行なっていた。二人の超速度の突進で辺りの壁が崩壊していった。

 

『見切りました…!!』

 

【RIDER-SLASH!】

 

『ライダー…スラッ…あっ!!』

 

ディライトの僅かな隙を見切ったサソードは、サソードヤイバーにタキオン粒子を凝縮した斬撃「ライダースラッシュ」を放とうとしたが、長時間のクロックデュアルの多用により足元がぐらつき倒れてしまい、その弾みで変身が解けてしまった。

 

「あ…足が…!!」

 

『大丈…!!危ないっ!!』

 

蠍姫は今の転倒で足を捻ってしまいその場から動けないでいた。その時運が悪く、崩壊した壁の瓦礫が彼女の頭上に落下し出した。

 

「あっ…くっ…!!ソニックの影響で身体が…!!畜生!!」

 

闇影もソニックの影響で体力が無くなり、変身が解け動けないでいる。このままみすみす彼女を死なせてしまうのか…と悔しげな顔をしていたその時…

 

『クロックデュアル!』

 

【CLOCK-UP!】

 

黒い影ことダークカブトが、なんとサソードと同じクロックデュアルを使い瓦礫が落下する直前に蠍姫を救い出した。

 

「あの子と同じ、クロックデュアルを…!?」

 

「う…うぅ…はっ!!退きなさいダークカブト…!!家族の仇!!」

 

「何だって!?」

 

蠍姫はダークカブトから離れ、再びサソードヤイバーを構え彼を「家族の仇」だと言った。その時…

 

 

 

『ウグゥゥッッ!!?ガガッ…!!ウッ…ガアァァァァッッッッ!!!!』

 

「「!!?」」

 

ダークカブトは突然苦しみ出し、その身に「ある異変」が起きた。それは、上半身が「カリスの世界」にいた「コーカサスビートルアンデッド」の様な強固な漆黒の鎧に似た姿に、四つの妖しく光る黄色の複眼、背中や肩に鋭い棘が特徴のワーム「ビートルワーム・ジークフリード」へと変貌した。

 

「ワーム…!!」

 

『グッ…グガァァ…。』

 

【CLOCK-UP!】

 

しかし、直ぐに元のダークカブトに戻り、クロックアップを使いこの場から消え去って行った。

 

『へぇ…ワームねぇ…。』

 

『尚更ゲットしねえとな…。』

 

ディシーフとディスティールは物陰でそう呟きながら、その後を追って行った。

 

「一体…どういう事なんだ…?」

 

ダークカブトの正体がワームである知り、困惑する闇影。果たして行方不明のソウタなのか?クロックデュアルとは?そして、彼を「家族の仇 」だと言う蠍姫の真意は…!?謎が謎を呼び深まっていく…。




次回は思わぬ展開が待っています。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第16導 絶対不変の絆

この世界を光へ導いた時…


闇影と蠍姫にワームだと知られ、クロックアップで逃走するダークカブト。そこへ突然、ディスティールの放つ光の矢が彼を襲った。

 

『!!』

 

『逃がさねぇぜ、ワームさんよ。』

 

上手く回避し、背後から逃走しようとしたが…

 

『残念♪そのゼクターを私達に渡して貰えないかしら?…優しく言ってる間に、ね?』

 

ディシーフに阻まれ、挟み込まれてしまった。そして彼女はダークカブトゼクターを渡す様、最終通告をしながら自分に手を差し出した。

 

『…!!』

 

『そう…それが返事なのね…だったら力づくで奪うわ!』

 

【KAMEN-RIDE…GARREN!】

 

ダークカブトが専用武器「カブトクナイガン・クナイモード」を構え出したのを見て、ディシーフは力づくで奪うべくドライバーにカードをスラッシュすると、胸にダイヤのマークが刻まれた赤い鍬形を模したライダー「仮面ライダーギャレン」にカメンライドし…

 

『ここはコイツ等で行くか!』

 

【KAIZIN-RIDE…MOLECH-IMAGIN!】

 

【KAIZIN-RIDE…RABBIT-ORPHNOCH!】

 

ディスティールもドライバーにカードを二枚スラッシュさせて、鎌の様な短剣を持った緑の蜥蜴をイメージしたイマジン「モレクイマジン」と兎の特性を持ったオルフェノク「ラビットオルフェノク」を召喚した。

 

『ふんっ…!ハァッ!!』

 

モレクIは突然武器を投げ捨て、何故かジャンプをし出し倉庫内の壁を蹴っては飛び、蹴っては跳びと、まるで飛蝗の様なトリッキーな動きをした後ダークカブトに跳び蹴りをかました。

 

『…!!』

 

【CLOCK-UP!】

 

だが、そんな単調な攻撃がダークカブトに当たる筈も無く、クロックデュアルで簡単に避けられてしまった。すると…

 

『どうせ俺なんて…飛蝗の様に跳べやしないただの蜥蜴さ…。』

 

『お、落ち込まないでくれよ!兄貴!』

 

『いや、お前等兄弟じゃ無ぇだろっ!?』

 

モレクIは回避された事にいじけ出し、ラビットOがそんな彼を何故か「兄貴」と呼び慰める…と言う奇妙な事が起き、ディスティールはツッコミを入れた。

 

『あんた達何やってんのよ!?』

 

『フッ…!』

 

【CLOCK-UP!】

 

『…って、きゃっ!?』

 

Dギャレンもそんな三人に注意しながら、クロックデュアルでタックルをするダークカブトから回避した。すると…

 

『おい…今俺を笑っただろ…?』

 

『いや、笑って無ぇけ…『行くぞ…弟よ。』『いいぜ…兄貴!!』…っておい、コラ待てぇぇっっ!!?』

 

モレクIは、先程のダークカブトの小さな掛け声が自分を嘲笑った物だと勝手に勘違いをして怒りを募らせ、ラビットOを何故か「弟」と呼び彼と共にダークカブトの方へと向かった。

 

『ったく…どうする巡ちゃん?』

 

『あの子達の動きに合わせてこっちが援護するしか無いわね…。』

 

『さいですか…。』

 

Dギャレンとディスティールの嘆きを尻目に、モレクIは先程同様ダークカブトの周囲を飛蝗の様に素早く跳び回り、ラビットOも兎の如く彼の頭上を残像が生まれる程連続ジャンプをした。如何にダークカブトと言えど、相手の姿を捕らえなければ手の打ちようが無い…。

 

『良い感じね。だったら…』

 

【ATTACK-RIDE…SCOPE!ROCK!】

 

攻撃のチャンスを見つけたDギャレンは、「バットスコープ」で命中率を強化し、相手を石化する「トータスロック」のカードをスラッシュしたディシーフドライバーをダークカブト目掛けて狙いを定めた。

 

『ガッチガチに固めてア・ゲ・ル♪そこっ!!』

 

Dギャレンは味方の二体に当たらない様照準すると、ドライバーの切っ先から赤い刃状のエネルギー弾をダークカブトに放った。が…

 

『…!!』

 

『なっ!何っ!?ガァァッッ!!』

 

『あっ、兄貴!!』

 

刃が当たる寸前にダークカブトは跳び回っているモレクIの足を瞬時に掴み、地上に下ろし彼を盾にして攻撃を防いだ。その結果、モレクIは石化してしまいカブトクナイガンで一瞬に斬り刻まれ、消滅した。

 

『クロックデュアル!』

 

【CLOCK-UP!】

 

『し…しまっ…ギャアァァッッ!!』

 

モレクIを失い呆然としていたラビットOも、クロックデュアルの速度を乗せた斬撃によりあっさり爆死した。

 

『オイィィィィッッッッ!!!?お前等マジで何しに来たんだよっ!?全然役に立って…あぎゃああぁぁっっ!!!?』

 

『全くね…って、きゃああぁぁっっ!!?』

 

ディスティールが二人の呆気ない敗北にブチ切れながらツッコみ、Dギャレンが呆れていると、ダークカブトのクロックデュアルのタックルが彼等を倉庫の天井がぶち破れる程、空の彼方へと吹っ飛ばした。

 

『私達の活躍はボドボドダァッ!!』

 

Dギャレンは吹っ飛ばされる間際に何やら妙な事を言っていたが、気にしてはならない…。

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

?「痛っ…!!ソニックのダメージはそう簡単に引かないか…。」

 

一方闇影は、肩を押さえながら白石家に帰宅していた。あれから小休止をして普通に歩ける程度迄回復をしたのだが、完全にソニックのダメージが完治した訳では無い…。

 

「そう言えば…あの子大丈夫かな…?」

 

闇影は、先程自分と戦った少女・蠍姫の事を気にし始めた。

 

 

 

「とりあえず応急手当はしておいたけど…大丈夫かい?」

 

「大丈夫…です…。」

 

闇影は応急手当として、持ち歩いてる冷却スプレーを蠍姫の捻った足首にかけ、そこに破いた自分の服の切れ端をくくり付けた。

 

「ネオゼクトとは連絡が付かないし、一度家に来てちゃんとした手当てをするよ。さあ。」

 

ネオゼクトと連絡が付かぬ以上、闇影は蠍姫の手当ての為に彼女を一旦白石家に連れて行くべく手を差し伸べたが…

 

「放っておいて下さい…。自分で戻れま…痛っ!!」

 

手を取らず自力でネオゼクトに戻ると言い、立ち上がろうとする蠍姫。だが無理に立ち上がった為、足の捻挫が痛み出した。

 

「ほら!無理をするから…。」

 

「構わないで下さい…!!私は、普通の人とは違うから、この程度の怪我なんて…!!」

 

「…えっ?」

 

「!!いえ…何でもありません…。」

 

蠍姫の「普通の人とは違う」という発言を聞き唖然とする闇影。その反応を見た彼女は何でも無いと言い、話を中断させた。

 

「…今日の所は見逃します。次に会った時こそ、必ず貴方を抹殺します…!!」

 

そう言うと蠍姫は足を引き摺る様に歩き、この場から去って行った…。

 

 

 

「『普通の人とは違う』って…どういう事なんだろ…って、おっとっとっと…!!」

 

闇影は足元を躓き、倒れそうになり両手をバタバタさせて地面にコケそうになった…が、間一髪の所何者かが彼の手を掴み、支えた。

 

「あ、ありがとうございま…って!!」

 

「大丈夫ですか?闇影さん。」

 

「ヒヨリさん!!」

 

倒れそうになった闇影の手を掴んだのは、買い物途中のヒヨリだった。

 

 

 

―白石家

 

 

帰宅した闇影は、これ迄起きた事を黒深子達に話した。ネオゼクトの内情、ヒヨリの事、蠍姫の事、そして、ダークカブトのワーム化についてを…

 

「そんな事があったんだ…。」

 

「粗方解ったぜっ!そのダークカブトの正体はヒヨリさんの弟に擬態したワーム!!そうだよな!?」

 

コウイチは急に立ち上がり、闇影の口癖をパクりながらダークカブトの正体はワームが擬態したソウタだと言い切った。確かにそう推測するのが普通である。「普通」ならば…。

 

「そうかな?もしあのダークカブトがワームだったら、俺はとうに殺されていただろう?けど、そうはせず苦しみながらワームになっただけでそのまま逃げて行った…。」

 

「うーん…何でかしら?」

 

「(苦しみながらワーム化…もしかしたら、闇の牢獄が原因か…?それとも…。)」

 

ダークカブトのワーム化が嘗て黒深子をオルフェノクに変えた、自身の強まった負の感情によりその身を怪人にする現象、闇の牢獄が原因なのかと推測しながら、それとは別の原因があるのかを考える闇影。

 

「ワームが…あの子に…?なら…」

 

「大丈夫よヒヨリさん。まだ弟さんが亡くなったって決まって無いわ。もう少し信じて見ましょう?ね?」

 

今の話を聞き、ダークカブトの正体がソウタに擬態したワームならば既に弟は殺されてしまったのでは、と考え暗い表情をしたヒヨリを、影魅璃が微笑みながら肩を添えて励ました。

 

「ええ…分かってます。」

 

 

 

―ネオゼクト本部

 

 

「きゃあっっ!!?」

 

「全く…ディライトを倒せないばかりか、ダークカブトも捕まえ損ねるとは…!!」

 

「もっ、申し訳ありま…うぐぅっっ!!?」

 

この施設の最下層にある、薄暗く狭い個室で蠍姫はヒデナリからディライトの抹殺に失敗した事の責として付き倒され、腹に足を思い切り踏まれる。彼女の頬は何度も殴られり、ひっぱたかれて赤くなっていった。

 

「おまけに手当をされて、勝手に見逃す…!!使えませんねぇっ…!!『お仕置き』ですね…!!」

 

「!!おっ、お願いですっ!!それだけは!!それだけは…い、嫌ぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

蠍姫はヒデナリの「何か」に怯え、彼の足元に縋りそれをしない様懇願した。しかし、「それ」をやられた彼女は泣き叫びんでいた…。

 

「いいですか?今度無様な失態を犯せば、永遠に『そのまま』でいて貰いますからね。はい…約束ですよ。」

 

 

 

『報告します!「例の計画」は最終段階に移ります!!」

 

「そうですか…。それではあのダークカブトに『お仕事』を作ってあげましょうか…。」

 

ゼクトルーパーの報告を聞き、ヒデナリは不気味な笑みを浮かべてながら奇妙な事を言い、本部を後にした。

 

 

 

「(ソウちゃん…。どうして帰って来ないの?これ以上…私を一人にしないで…!!)」

 

あれから白石家を後にしたヒヨリは、ソウタが帰って来ない事に悲しんでいた。普段は気丈に振る舞っているが内心、寂しく感じていたのだ。

 

「ヒヨリ。」

 

「ヒデナリさん…。お仕事の方は大丈夫なんですか?」

 

「それより聞いて下さい。ソウタ君の行方が分かりそうなんです!」

 

「!!本当…なんですか!?」

 

「ええ。ここじゃ何だから本部でお話します。着いて来て下さい。」

 

ヒヨリの前に現れたヒデナリは、ソウタの行方が分かるかもしれないと言い彼女をネオゼクト本部へと連れ出した。

 

 

―ネオゼクト本部

 

 

「ねぇ、ヒデナリさん。ソウタは…何処にいるんですか?」

 

「直に会えますよ。それには…」

 

ヒヨリの答えにヒデナリは立ち止まり、指を鳴らした。すると…

 

「きゃあっっ!!?」

 

「貴女の存在が必要なんですよ…!!」

 

何処からか数人のゼクトルーパー達が現れ、ヒヨリを拘束した。突然の事にヒヨリは動揺し出した。

 

 

 

「遂に完成しましたか…!!」

 

本部の研究室らしき場所で、中くらいの鉄塔の様な装置が建てられており…

 

「ヒデナリさん!!離してっ!!」

 

そこにヒヨリが両腕を鉄具で拘束されており、ヒデナリに離す様叫んでいた。

 

「総帥!!これは一体どういう事ッスかっ!?ヒヨリさんをこんな目に遭わせて!!」

 

「さて壬銅、君に『例の計画』について詳しくお話しましょう。これはワームの全細胞、全神経を活性化させてワームを意のままに操る『活性装置』、そして…」

 

ヒデナリは、テツキの質問に答えず謎の装置「活性装置」について説明しながら懐から緑色の石を取り出した。

 

「何スか…それ?」

 

「ワームの細胞で構成された『ワームストーン』。これを人間の身体に埋め込む事でワームの細胞が侵食し、その身はワームと化す…。『これを持っていればワームに襲われません。』と言えば、どうなりますか?」

 

テツキは「計画」の内容を聞き理解すると同時に、身を凍らせた。ワームストーンを一般人に配り身に着けさせる事でワーム化させ、その活性装置を作動すれば、ワーム化した人間は全てネオゼクトの意のままになる…。

 

「そして、今からダークカブトを誘き寄せる為に『前から捕縛していた』ワームに彼女を襲わせるんです。本来の目的が達成出来る上に装置の実験が出来る…。まさに一石二鳥じゃないですか!!」

 

人命を躊躇無く危険に晒し、ましてやそれを「実験」だと高らかに言うヒデナリにテツキは怒りを感じた。

 

「な、何考えてるんスか総帥!!これが『人々からワームを守る』計画だなんて間違ってるッス!!こんな、人の心を踏みにじるやり方を…婚約者を平気で実験台にするなんてまる…で…!!」

 

激昂したテツキはヒデナリを捲し立てていると、途中で言葉を詰まらせた。目の前で信じがたい事が起きたからである。

 

「まるで何ですか?まるで…」

 

「あ…ああ…!!」

 

『まるでワームみたいなやり方じゃないか、と言いたかったのかァッ!?人間。』

 

ヒデナリがビートルWに酷似した、体が銀色で腕が六本あるヘラクレスオオカブトの特質を持ったワーム「ヘラクルヴァワーム」に変貌した為に…。

 

「ヒ、ヒデナリさんがワームに…!?」

 

「じゃ、じゃあ総帥は…!?くっ!!総員!戦闘準備を…!?」

 

『ギギギ…!!』

 

『ギャアァァァァッッッッ!!!!』

 

テツキが戦闘準備の命令をしようとした時、一部のゼクトルーパー達がサナギ体に変化し、その隙を付かれた普通の隊員達は殺害されてしまった。

 

「そ…そんな…!!」

 

『やれ。』

 

『ギギィィッッ!!』

 

「がっ!!?ぎっ!!うぐっ!!かはっ!!」

 

「止めて!!お願い止めてっ!!」

 

ヘラクルヴァWの冷たい一声で、サナギ体達はテツキに殴る蹴る等の暴行を加えた。ヒヨリの悲痛な制止の声に耳を貸さずに…。

 

「始末したら適当に放り棄てなさい。他の者はこの活性装置の実験の準備をしなさい。」

 

ヘラクルヴァWは再びヒデナリに擬態し、テツキの処遇と実験準備の命令を下した。

 

「(ヒデナリさん…!!)」

 

 

 

―白石家

 

 

「はい、どちら様…!!みっ、壬銅君!!」

 

インターホンの音が聞こえ、闇影が玄関迄来てドアを開けると全身が傷だらけで頭から血を流し衰弱したテツキが倒れていた。どうやら力を振り絞って此処まで来たのだろう。

 

「う…うぅ…た、隊…長…!!」

 

「どうしたの先生、大声出し…って、壬銅さん!?」

 

「ひでぇ怪我だ…!!」

 

「コウイチ!壬銅君をソファーに寝かせるのを手伝え!黒深子、影魅璃さん!救急箱とお水を!」

 

黒深子達に的確な指示を出した闇影は、コウイチと共にテツキをリビングのソファー迄肩を担いで移動した。

 

「総…帥が…ワーム…活性…装置…ヒヨリ…さんが…危ない…!!」

 

「えっ!?なっ、何て!?」

 

テツキは、息絶え絶えに先程の出来事を喋るとそのまま気を失った。コウイチはよく理解出来ないでいるが、闇影は…

 

「粗方解ったよ。総帥がワームで、ヒヨリさんを囮にしてダークカブトを捕まえようとしてるって事を!」

 

「嘘ぉぉっっ!!?」

 

今の言葉だけで何時もの台詞を言いながら完全に理解した。これにはコウイチも驚かざるを得なかった。

 

「(なら、ダークカブトは…)コウイチ、後は頼んだぞ!!」

 

「えっ?お、おいっ!?待てよ闇影!!」

 

テツキをコウイチに預けた闇影は、家を出てマシンディライターに乗り込み、単身でネオゼクト本部へと向かった。

 

 

 

―ネオゼクト本部

 

 

「遂にこの時が来ました…。活性装置、作動!」

 

ヒデナリの合図で活性装置は作動し、それは緑色のエネルギーが放たれた。すると…

 

『ハァァッッ…!!』

 

「ひっ…!!ワ、ワーム…!!」

 

弁髮の形をした毒針に、全身が銀色の蠍を模した姿が特徴のワーム「スコルピオワーム」が現れ、ヒヨリに近付く。

 

「ふふ…さぁダークカブト!!早く来ないとこいつが殺されてしまいますよ!!」

 

ヒデナリの挑発に答える様に、何処からか扉を強く叩く音が聞こえ出した。そして…

 

『…!!』

 

扉がぶち破れると予想通り、ダークカブトが現れスコルピオWの前に阻んだ。しかし…

 

『ウッ…グッ…グゥゥッッ!!』

 

突然苦しみ出し、またも上半身のみがビートルワームに変化した。この活性装置の影響で身体が上手く動かせない様だ。しかし、ビートルWはそれに抗った為身体中に緑色の電流が流れ、その姿は揺らめき徐々に人の形へと変化していく。その正体は…

 

 

「あっ…く…くっ…!!」

 

「!!ソ、ソウタッ!!」

 

ビートルWの正体を見て目を見開き、愕然とするヒヨリ。それもその筈、ビートルW…ダークカブトの正体は、ウェーブがかった短い黒髪に、黒いTシャツの上に薄手の白シャツを羽織った少年は、彼女の弟・ソウタなのだから…。

 

「でも…何で?貴方は今年で21になる筈なのに、どうして五年前と姿が変わって無いの!?」

 

「…。」

 

「くく…あーっはははっっ!!実験は成功です!!この活性装置とこの新システムがあれば、我々は世界を支配出来る…!!」

 

ヒデナリは、活性装置の性能を見て狂った様に高笑いをしながらデスクの上にある銀色のアタッシュケースの「中身」に目をやり…

 

「そしてようやく捕まえましたよ…『もう一人の実験体』がぁっ!!」

 

「…ぅがあぁぁぁぁっっっっ!!?」

 

ソウタに近付き、彼を実験体と言い腹を強く踏みつけた。

 

「ソウタ!!」

 

「さて…何故こいつが五年前と姿が変わって無いかを教えてやろう…。それは…」

 

「それは、彼の身体にワームストーンを埋め込みワーム化した為、肉体の体内時間が停止したから…だろ?」

 

「!!」

 

ヒヨリの先程の疑問をヒデナリが答える前に闇影がゆっくりと現れ、代わりに全てを話した。ワームストーンを埋め込まれた人間は、その影響で肉体の成長が停止してしまい、永遠に歳を取らなくなるのだ。

 

「闇影さん!!」

 

「ふん…壬銅から聞いたのですね。」

 

「…それもあるけどね。」

 

闇影が更に近付こうとした時、ヒデナリがスコルピオWに顎を彼に向けて動かし、襲う様命令を下した。が…

 

『ハァァッッ…グッ…!!』

 

「!!」

 

何故か動こうとせず、緑色の電流を全身に流しながらその場でもがき、そのまま倒れるとその姿が揺らめき出し…

 

「はぁ…はぁ…!!」

 

「!!君は…!?そうか…これが『普通の人とは違う』理由なんだ…。」

 

スコルピオWの正体は、何とあの蠍姫だったのだ。闇影は愕然としながら、彼女のあの時の言葉の意味を理解した。

 

「チッ…やはり全く使えませんね。」

 

「貴様…こんな子供をワームにするなんて…!!」

 

まだ十代の少女である蠍姫をワームに改造した上に、「使えない」と道具の様に吐き捨てるヒデナリに憤る闇影。しかし…

 

「違いますね。こいつは銀城がゼクトを立ち上げた時からいた実験体だ…。」

 

「?どういう…事だ?」

 

彼女をワームに改造したのは、自分では無くゼクトの仕業だとと言うヒデナリ。闇影は眉をひそめながらそれについて尋ねた。

 

「五年前…我々ワームはゼクトと戦い、銀城はその前線に立って私と戦った…。そして私は奴の記憶を読み取り、そこの女に擬態して油断した隙を付き、殺してやった…。」

 

「貴様…!!」

 

「そして奴に成りすましネオゼクトを再建した私は、一人のゼクトルーパーから銀城も知らない、秘密裏に行なっている『ある実験』の存在を知った。その実験とは…くく…。」

 

ヒデナリは此処まで話すと、発作の様に笑いを堪えながらその実験についてを話し出した。

 

「人間とワームが融合した存在、『ネオティブ』の研究だよ!!それには私の心を大きく刺激させられた!!そしてそれにより強靭な肉体と化した奴等はライダーシステムのクロックアップとワームの本来のそれを合わせた、クロックデュアルを生み出した!!」

 

ヒデナリは目を大きく見開き、高らかに叫ぶ様に言った。人間とワームの融合体『ネオティブ』…これがゼクトが秘密裏に行われていた実験の正体であり、クロックデュアルはそのネオティブが変身したライダーシステムのクロックアップとワームのそれを同時発動する物である。

 

「そして…そいつはワームに変えた人間を支配する為に、ヒデナリさんと同じ方法で油断させて捕まえた僕にワームストーンを埋め込んだんだ…!!」

 

「はははっ!!その通り!!だがお前は逃げ出してそのワームの力を逆に使いこなす為…そしてワームに取り込まれて暴走しない為に姿をくらました…!!」

 

「…えっ!?」

 

ソウタがヒヨリの下に戻らなかった理由とは、ネオティブの力を制御する事と、その力によりワーム化して姉や周囲の人間を傷付けない様にする為である。

 

「なら…私の両親を殺したって話は…!!」

 

「嘘に決まっているだろう…!!その実験のサンプルはお前なんだからなぁっ!!記憶を消去した事も聞き、お前にダークカブトを捕らえさせようとしたのだ!『両親を殺したのはダークカブトだ』と吹き込んでなぁ…ギハハハハッッ!!」

 

「…!!」

 

顔を歪ませて下卑た笑いをするヒデナリから真相を聞いた蠍姫は、ショックを受けて顔を俯いた。腕をワナワナと震わし、殺意の篭った目をして右腕のみをワーム化させて…

 

「…うああああっっっっ!!!!」

 

半狂乱したが如く叫びながら、ヒデナリに向かいその腕を振るって殺そうとした。

 

「無駄だっ!!ふっ!!」

 

「きゃああぁぁっっ!!」

 

だがヒデナリが掌を前に突き出すと、そこから緑色の音波エネルギーが放たれそれを受けた蠍姫は再び地に伏せられた。

 

「甘いですねぇ…私は活性装置程では無いが、一体迄ならワームの動きをコントロールする事が出来るんですよ!」

 

「貴方は…絶対許しません…!!」

 

「大人しく我々ワームの言う通りに生きれば良いものを…人間でなくなったお前達なんて誰も受け入れないんだよっ!!」

 

「違う!!人間でなくなったから誰も受け入れられないなんて事は…絶対じゃない!!」

 

「何ぃ?」

 

「例えどんな姿に変わり果てたって、互いを想う心が…相手を想い合う絆があれば、そんな物は関係無い!!俺と黒深子の様にな…。」

 

「相手を…想い合う絆…。」

 

「姿を隠して自分の運命と戦い、影で家族を守ってきた彼の絆の力は誰よりも強い!!私利私欲の為に人の心を利用するお前より強いんだ!!」

 

「黙れっ!!黙れ黙れ黙れぇぇっっ!!そんな戯言…貴様等を葬り人類をネオティブ化させれば…!!」

 

闇影の言葉に激怒したヒデナリは、デスクを思い切り蹴飛ばし、かけていた眼鏡を叩き付けて激昂し彼を葬った後計画を実行すると息巻くが…。

 

「どうかな?俺は全てを焼き尽くす灰塵者であり死神だ…。例えお前がどんな世界を築こうともそれを焼き尽くし、光へ導く!!」

 

「貴様ぁっ!!一体何者だっ!?」

 

「お節介教師な仮面ライダーだ!!宜しく!!」

 

「僕も…戦います!!来るんだ!」

 

ソウタは自分も戦うと言いながら、闇影の隣に近付き飛翔するダークカブトゼクターを右手に掴み…

 

「「変身!!」」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

【HENSHIN!】

 

闇影はディライトに、ソウタはライダーベルトにゼクターをセットしヒヒイロノカネの鎧を纏ったダークカブト・マスクドフォームに変身し…

 

『キャストオフ!』

 

【CAST-OFF!】

 

【CHANGE-BEETLE!】

 

ゼクターを操作しキャストオフをすると、アーマーが展開、弾け飛びライダーフォームへと変化した。

 

『さて、輝く道へと導きますか!』

 

『ほざくなぁぁっっ!!やれっ!』

 

『ギギィィッッ!!』

 

ヒデナリはヘラクルヴァWと化し、複数のサナギ体が現れディライトとダークカブトに襲いかかった。だが…

 

『はっ!ふっ!せいっ!!』

 

『やぁっ!えいっ!ぜぇぇいっ!!』

 

『グギャアァァッッ!!』

 

ディライトはライトブッカー・ソードモードで、ダークカブトは片腕をワーム化してカブトクナイガン・クナイモードでサナギ体達を素早く斬り裂き、あっという間に爆発させた。

 

『おのれぇぇっっ!!』

 

『クロックデュアル!』

 

【CLOCK-UP!】

 

『何!?グアァァッッ!!』

 

ヘラクルヴァWはクロックアップを使いディライト達に襲いかかるが、ダークカブトのクロックデュアルの速度に敵う筈が無く斬り付けられた。

 

『くそっ…!!』

 

分が悪いと感じたヘラクルヴァWは、再びクロックアップを使い天井を突き破り、飛んで逃げ出した。

 

『逃がすか…!!』

 

【FINAL-FORM-RIDE…DA・DA・DA・DARK-KABUTO!】

 

『力を抜いて。』

 

『え?』

 

ディライトはダークカブトの背中に手をやると、彼の仮面を模したダークカブトゼクターに変形しディライトの右足に装着された。これがFFR『ゼクターダークジャッキ』である。

 

『ライダー…ジャンプ!!ふっ!!』

 

ディライトがジャンプをし出すと、クロックアップの速度でヘラクルヴァWが空けた天井の穴に向かって急上昇した。このFFRを装備するとクロックアップが使用可能になるのだ。

 

 

『くそっ…!!この私が追い込まれるとは…!!』

 

『待てっ!!』

 

羽根を拡げ浮遊するヘラクルヴァWが嘆いていると、ディライトが穴から現れ、Zジャッキはダークカブトの姿へと戻った。

 

『おのれぇぇっっ!!私は全ての人間共をネオティブに変え、この世界を支配する!!それを邪魔する者は全て消し去ってくれるっ!!』

 

『お前の支配する世界なんて…』

 

『僕達は…認めない!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DA・DA・DA・DARK-KABUTO!】

 

【ONE-TWO-THREE!RIDER-KICK!】

 

ディライトがFARを発動すると、ダークカブトはゼクターのボタンをテンポ良く押してゼクターホーンを操作した後、再びZジャッキに変形しディライトの足に装備された。

 

『ライダージャンプ!!』

 

ディライトはライダージャンプで空中迄勢い良く飛び、バック宙をした後に右足を振り上げて…

 

『はあぁぁ…せいやぁぁっっ!!』

 

踵落としの様に足を思い切り降り下ろすと、Zジャッキは分離してクロックアップの速度でヘラクルヴァWに向かって急降下し…

 

『クロックデュアル!!そして、ライダー…キック!!』

 

『そ、そんな馬鹿なっ!!?グアァァァァッッッッ!!!!』

 

速度を落とさずダークカブトの姿に戻り、クロックデュアルを使用してその速度を上乗せしたままライダーキックをするFAR「ディライトドロップ」をヘラクルヴァWに喰らわせて爆破させた。

 

 

 

「……。」

 

「姉さん…ごめんなさい。僕は姉さんに迷惑がかからない様にずっとこのワームの力を制御する為に今まで戻らなかったんだ…だから…!!」

 

「ど……んじゃ…。」

 

「え…?」

 

ソウタはヒヨリに今迄戻らなかった理由を全て話し、謝罪した。しかし彼女は小さい声で何かを呟き…「何処ほっつき歩いとったんじゃっ!!このクソガキャアァァァァッッッッ!!!!」

 

「ゲヤァァァァッッッッ!!!?」

 

「ええぇぇぇぇっっっっ!!!?」

 

突然、実の弟の顔面に飛び膝蹴り(シャイニングウィザード)を喰らわせて吹っ飛ばした。傍にいた闇影もヒヨリの本性(?)を目の当たりにし、目玉が飛び出す程驚いた。

 

「おどれが帰って来んからアタシャ、昼のパートの仕事の稼ぎじゃ足んねぇから夜はキャバクラで働いて食い繋いどったんじゃぞっ!!分ぁっとんのか!?ワレェッ!!」

 

「ベブブブッ!!!!」

 

「(何処で働いてるんですかっ!?しかも口調変わり過ぎ!!)」

 

吹っ飛ばしたソウタに跨がり、彼の顔面にクロックアップ並の速度で往復ビンタをしながら、とんでもない家庭の事情を訴えるヒヨリ。そして、気が済んだのか一方的な制裁は止めるとソウタを抱きしめ…

 

「もう…誰も私を…一人にしないで…うぅ…うぅっ…!!」

 

「ごめんなさい…姉さん…。ただいま。」

 

「グスッ…お帰り…ソウちゃん。」

 

「良かった…。」

 

 

 

「ヒヨリさん、弟さんと再会出来て良かったわね…。」

 

「ええ。遠くに離れたり、ワームになっても、互いを想い合う絆があればあの二人は絶対に離れませんからね。」

 

影魅璃と闇影は、キャンバスに描かれたソウタとヒヨリが抱きしめ合う絵を見て二人の絆の強さに感動していた。

 

「やぁやぁ闇影君。景気はどうかな?」

 

そこへ水色のラインが入った銀色のアタッシュケースを持ちながら、満面の笑みを浮かべた包帯を巻いた周が現れた。

 

「何だよ、何時も以上に気色悪い顔をして。巡はどうした?」

 

闇影は、そんな彼を見て気色悪いとキツイ言葉を投げ付けた。しかし周は一切怒らなかった。その理由とは…

 

「巡ちゃんは傷の具合が俺より悪いから休んでんだよ。それよりこれ見て見な。ジャーン!!」

 

周がケースを開けると、中には水色の蜻蛉型のコア「ドレイクゼクター」が入っていた。彼が上機嫌な理由は一目瞭然だ。あの後、ネオゼクト本部から盗み出したのだろう。

 

「はぁ…お前また敵を倒した後に盗んで来たのか。」

 

「そうゆうこった。じゃあな!」

 

周の抜け目の無さに手を当てて呆れる闇影。そして、彼はそのままリビングから出て行った。すると…

 

「おっ!君は…ほうほう…なるへそ。早く行っといで。じゃあね。」

 

玄関先で周は誰かと話をしており、早く行くよう勧め白石家を後にした。その人物はリビングに入って来た…。

 

「君は…!?」

 

「……。」

 

その人物とは、何とソウタと同じくネオティブにされた蠍姫だった。彼女の用事とは…?

 

「私には…貴方の言う絆がどんな物なのかよく解らないんです…。」

 

蠍姫は、闇影の言っていた「絆」が何なのかを知る為に此処へ来たのだった。すると闇影は微笑みながらこう言った。

 

「絆って言うのは、仲間に家族や友達、恋人を互いに想い、支え合う物なんだよ。」

 

まるで父親が子供の質問に答える様に優しく話す闇影。すると蠍姫は少し考えて口を開いた。

 

「貴方と居れば、絆がどんな物か解るかもしれません…。だから…私を貴方達の旅に連れて行って下さい!お願いします!!」

 

蠍姫は自分の絆が何なのかを知る為に、何と闇影達の旅について行きたいと言い出した。

 

「勿論さ!!俺達と一緒に君の『絆』を見つけよう!!」

 

「はい…!!ありがとうございます…。」

 

無論闇影は、この申し出を了承した。それを聞いた蠍姫は笑顔で感謝した。

 

「蠍姫じゃ何か固いから、名前を決めないとね。えぇと、サソードでクロックデュアルを使うから…ツルギ…諸刃(もろば)ツルギって言うのはどうかな?」

 

闇影は、蠍姫の名前を諸刃ツルギと名付けた。確かに剣使いのサソードらしく、またクロックデュアルも体力を大きく消耗する、諸刃の剣な為、彼女に相応しい名前である。

 

「ではその名前で…。」

 

「宜しくな!ツルギちゃん。」

 

「宜しくね。」

 

「はい、宜しくお願いします…。」

 

こうして、蠍姫改め諸刃ツルギが闇影達の仲間に加わった。そこへ…

 

「痛たたた!!?って、えっ!?ザビーゼクター!?何?自分もついて来るって!?痛い痛い!!分かった、分かったから!!」

 

何処からか飛んできたザビーゼクターも闇影について行きたい様だった。しつこく頭をつつくザビーゼクターに闇影は彼(?)の同行も許可した。

 

「それじゃあ…新しい仲間が二人出来た記念に今日はご馳走にしよう!!」

 

「私も手d…「「勘弁して下さい!!」」」

 

「何でよっ!?」

 

黒深子が料理を手伝うと聞き、闇影とコウイチは土下座をしてそれをしない様懇願した。それに突っ込む彼女を見てツルギは小さく笑った。その時…

 

「絵が…変わりました…。」

 

次の世界を表わすキャンバスに、上側は神、中段には無数の天使、そして下側には人々が長蛇の如く歩く絵が描かれた。

 

「アナザーアギトの世界…。」




てな訳で、闇影達に新しい仲間が1人+αが増えました!!

次回は闇影サイドの仲間について紹介します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メインキャラクター紹介

そのまんまです。

物語が進むにつれて随時更新していきます。


白石黒深子(しらいし・くみこ)/スワンオルフェノク

本作品のヒロイン。17歳。黒髪のセミロングにカチューシャを着けた美少女。言いたい事ははっきり言う活発な性格であり、怒ったり照れると得意の正拳突きを相手に喰らわせる。彼女を妬んだいじめグループにより一度命を落とすが、『闇の牢獄』の影響によりスワンオルフェノクに異質覚醒した。当初は闇影を疎ましく思い、前述の事情により死を望んでいたが、彼の励ましにより考えを改め、闇影の事を「さん」付けから「先生」と呼び慕うようになった。(闇影が自分の家庭教師をやると言い出した事から)

 

【挿絵表示】

 

 

スワンオルフェノク

一度死亡した黒深子が「闇の牢獄」の影響によりオルフェノクとして覚醒した姿。

特徴は、頭部が仮面ライダーファムのバイザー部分に鋭い目が付いており、身体は仮面ライダー電王のイマジン・ジークに近く、翼はクレインオルフェノクのそれを棘々しくした物。空中に飛翔しつつ翼を模した柄が特徴のフェンシング型の細剣で斬り付ける戦法と正拳突きが得意。使徒再生方法は、細剣で心臓を突き刺すのだが、この能力はあまり使用しない。

 

白石影魅璃(しらいし・えみり)

黒深子の母親。年齢は30代後半で、茶色の長い巻き髪にボリュームのある胸が特徴だが、20代後半にしか見えない程美しい容姿をしている。性格はやや天然ボケで、滅多な事ではあまり動じない度量の持ち主。彼女の夫、つまり黒深子の父親は数年前に姿をくらましている。

 

 

赤鏡(あかがみ)コウイチ/仮面ライダーリュウガ/仮面ライダー龍騎

「リュウガの世界」の主人公。23歳。(肉体年齢は後述の理由により20歳)特徴は肩まで伸びたウェーブがかった長い茶髪で、女性好き(子供は論外)だが、スケベだが明るい性格である。

その正体は、三年前のライダーロワイヤルにスフィアミラージュに取り憑かれた時、スピリットベントで肉体と分離した魂が自身の「虚像」として生まれた存在である。

事情を知らない羽鳥ミホ/仮面ライダーファムが龍騎を倒そうとしているのを知り、謎のフードの女・紅蓮からリュウガの力を受け取り変身し先に龍騎を倒そうとしつつ、ミホを見守っていた。彼女とは親友以上恋人未満の間柄である。ディライトとの協力の元、スフィアミラージュ(ウィッシュスフィア)を倒し、黒いオーラから解放されたウィッシュスフィアの願いにより現実世界の住人となり闇影達の旅に同行した。

名前の由来はドラグレッダー(「赤」い龍)+虚像(「鏡」の存在)+初代龍騎・榊原「耕一」。

 

【挿絵表示】

 

 

FR/リュウガドラグブラッカー

リュウガのFFR形態。外見は自身の契約モンスター「暗黒龍ドラグブラッカー」と酷似している。また、自在に元の姿に戻る事も可能。この時のリュウガにはソードベント、ストライクベント、ガードベントによる武具が装備される。これらは仮面ライダーガイのコンファインベント等によって無効化されない。

 

FAR/ディライトワイバーン

リュウガドラグブラッカーのFAR。上空に飛び上がったディライトに黒い炎のエネルギーを付加し、そのまま急降下の飛び蹴りをする。龍騎及びリュウガのファイナルベント「ドラゴンライダーキック」と酷似した連携技。

 

諸刃(もろば)ツルギ/仮面ライダーサソード/スコルピオワーム

「ダークカブトの世界」の出身で、「蠍姫」と呼ばれるネオゼクト秘蔵の暗殺者である美少女。年齢は14歳(推奨)。紫色の長い髪をツインテール状にした紫色のワンピース型の服が特徴で、口調は基本敬語(年上には皆「さん」付け、年下には呼び捨て)で、あまり感情は出さず物静かで大人しく感情の起伏が少ない。その正体は、謎の人物により人間をワームに変える「ワームストーン」を埋め込まれた、人間とワームの融合体「ネオティブ」であり、記憶も消された為過去は存在せず、名前も素性も本来の年齢も不明。また、当初の「蠍姫」と言う名前もスコルピオワームが元となった為に付けられた仮の名前である。

闇影の言う「絆」がどんな物なのかを知る為に彼から新しい名前を貰い、彼等の旅に同行した。

名前の由来は、「両刃」の剣+神代「剣」。

 

【挿絵表示】

 




前に書いてたサイトではツルギと巡が非常に人気がありました(笑)

黒深子は闇影の嫁、残りは読者様の嫁…なのでしょうか?(苦笑)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第17導 アナザーアギトによろしく!

残り2つ!!


―レストラン・サンライト

 

 

「二番テーブルに太陽ランチ四人分!!六番にティラミスパフェ三つ!!」

 

「「は〜いっ!!」」

 

客からのオーダーを聞き、真っ白な料理服に黒エプロンにコック帽を被った「コック長」の闇影と、同じ服装で黒いバンダナを巻いたコウイチは大きく返事をしながら今のオーダーより前の料理を作っていた。特に闇影は手際良く調理し、皿の目玉焼きが乗っかったハンバーグにオレンジ色の鶏ガラソースをかけて定番ランチ「太陽ランチ」を完成させた。その見た目は名前通り、太陽の様なランチだった。

 

「は〜い!!一番テーブル、太陽ランチ四人前出来たよっ!!」

 

完成した料理をカウンターに置いた闇影は、直ぐ様次のオーダーの調理に入った。その後も業務をこなしていき、午前中は無事終了した。

 

「ふぅ…何とか終わったね。皆お疲れ様!」

 

「しかし闇影、お前凄ぇよな!四人分のランチをほんの五、六分で作っちまうなんてよ。」

 

「そういうお前だって、デザートを作るのが得意だなんて初めて知ったぞ。」

 

「ホントよね。特にティラミスパフェが絶賛だったわよ。」

 

昼休みの昼食中、コウイチは闇影の手際の良さを賞賛するが、闇影もコウイチがデザートの料理が得意な事を知り賞賛した。影魅璃の言葉通り、午前中のデザートもバニラアイスとチョコアイスの間にティラミスが挟まったパフェ「ティラミスパフェ」のオーダーが多かったのだ。

 

「へっ、まぁな!何れは『お菓子の城』を作ってみるつもりだぜっ!!ほれ、これが設計図。」

 

コウイチは何れ「お菓子の城」たる物を作りたいと豪語しながら、何処からか大きな城の形をしたお菓子の絵が描かれた設計図を取り出し、自慢気に見せた。

 

「こりゃ凄いな…実現したら是非試食させて貰うよ!」

 

「ねぇ…何で皿洗いしかさせてくれなかったの?」

 

「「(ギクッ!!)」」

 

皿洗いしかさせて貰えなかった為、不機嫌になっている黒深子の声を聞き、身体を硬直させる二人。理由は勿論、前回の「ダークカブトの世界」で彼女の料理があまりに壊滅的だった事を知った為、それ以後闇影は、黒深子に絶対料理をさせない様にすると決めたから…なんて事は口が裂けても言えない。

 

「あ、い、いや…それは…ん?ツ、ツルギちゃん、どうしたの?」

 

この話題からどうにか話を逸らそうとする闇影は、たまたま自分の方をずっとしげしげと見つめているツルギに話し掛けた。

 

「あ、あの…闇影さんがいつも持ってるカードが気になって…少し見せて貰えませんか?」

 

「うん、良いよ。はい。」

 

ツルギは、闇影がディライトとして戦う際に使うカードが気になり見せて欲しいと言い出した。それを聞き闇影は、ライトブッカーから九枚全てのFSRのカードを取り出し彼女に渡した。

 

「ありがとうございます…。」

 

カードを手渡されたツルギは余程興味があったのか、一枚ずつ食い入る様真剣に眺め一言も喋らなくなった。

 

「珍しいカードが好きなのかな…って夢中に眺めちゃってるね。」

 

「ちょっと先生!話逸らさないでよっ!!」

 

ツルギの方へ話を逸らされた黒深子は、怒って闇影に抗議し出した。その時…

 

「きゃあぁぁぁぁ!!!!」

 

「な、何だっ!?お客様!どうかしましたか!?」

 

突然店内で悲鳴が聞こえ、直ぐ様駆け付ける闇影達。(ツルギは除く)しかし、店内に特に変わった事は起きていなかった。何かと思っていたら店の外で謎の異形二体が人々を襲っていた。

 

「アンノウンか…釣りはいらん!取っておけっ!!」

 

「えっ!?ちょ、ちょっと!お客様!!何だ急に…ってえぇっ!!?こっ、こんなにっ!?」

 

すると突然、黒いコートを羽織い赤いサングラスをかけたオールバックの長身の男性と小学二年生程の身長をした赤いボブカットの少女がテーブルに勘定を置いて店を出た。闇影はその男が置いた分厚い札束を見て驚いた。

 

「百万はあるんじゃ無いか…?って、そんな場合じゃない!!早く助けないと!!」

 

闇影はあまりにも大き過ぎる「勘定」を見て呆けていたがそれは後回しにして、アンノウンに襲われる人々を救うべく店を飛び出した。

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

「た…助けて…!!」

 

『ヒトハ…ヒトノママデイイ…!!』

 

「うわぁぁっっ!?」

 

赤く鋭い海星を模したアンノウン「スターフィッシュロード」二体がこの言葉を念仏の様に呟きながら、一人の男性に向けて口から水を吐き出しじりじりと近付く。彼等アンノウンは、人々が「アギトの力」を持つのを恐れその力を持った人間を抹殺する事を目的に動いているのだ。

 

「ひいっ…!?」

 

スターフィッシュRが腕を降り下ろし、その力を持ってるらしき男性を始末しようとしたその時…

 

「その人達から離れろっ!!変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

『とりゃあぁぁっっ!!』

 

『グガァッ!?』

 

闇影は腰にディライトドライバーを装着し、カードを装填するとディライトに変身し、勢いをつけた跳び蹴りをスターフィッシュRにお見舞いした。

 

『早く逃げて下さい!…行くぞっ!!はっ!ふっ!やっ!せいっ!!』

 

襲われていた人々が逃げるのを見届けたディライトは、スターフィッシュR達に素早い連続パンチと回し蹴りを喰らわせる。

 

『グッ…!!ナラバ…!!』

 

反撃をするべくスターフィッシュR達は、その身体を凶器の様に鋭い巨大な海星の姿に変化し急回転しながらディライトに斬り掛かった。

 

『ぐあっ!!くっ…そっちがスピードならこっちもスピードだ!』

 

【SHADOW-RIDE…DARK-KABUTO!】

 

ディライトは自身の影をダークカブト・ライダーフォームにシャドウライドさせて、もう一枚カードを装填した。

 

【ATTACK-RIDE…CLOCK-UP!】

 

クロックアップを使い、再び回転して襲い掛かるスターフィッシュR達の正面に高速移動で近付くディライトとSダークカブト。そしてディライトはすかさずFARのカードを装填し…

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DA・DA・DA・DARK-KABUTO!】

 

『はあぁぁ…ライダーキックッ!!』

 

『グギャアァァッッ!!?』

 

ディライトとSダークカブトは、タキオン粒子のエネルギーを凝縮しスパークさせた右足で勢い良く回し蹴りをする「ライダーキック」をスターフィッシュRに叩き込み、爆破させた。

 

「ふぅ…さっきの人何処に行ったんだ?」

 

「危なくなってもう遠くへ逃げたんじゃないの?」

 

「かもしれないな…仕方ない、店に戻ろう。」

 

変身を解いた闇影は辺りを見渡し先程のコートの男性を探すが、その人物は見当たらなかった。やむを得ず店に戻ろうとしたその時…

 

「おっ、おい闇影!!あれっ!!」

 

「うっ…うぅっ…!!」

 

「さっき逃げた人!?大丈夫ですかっ!?」

 

コウイチに呼び止められた闇影が背後に目をやると、先程のスターフィッシュRから水を喰らった男性が呻き苦しんでいるのを見かけ、慌てて駆け付けて身体に触れようとしたが…

 

「触るなっ!!」

 

「…えっ…!?」

 

突然、先程のコートの男性が怒号を飛ばしながら少女と共に此方に近付き、苦しむ男性の近くにしゃがみ込んだ。

 

「はいは〜い!いまからちぇんちぇいがこのひとろなおすんらからじゃましらいで!!」

 

少女は舌っ足らずな言葉で闇影達にコートの男性の邪魔をするなと、ジャンプしながら注意した。

 

「あ…ああ、ごめんよ…ってこの人お医者さん?」

 

「ちょうなのよ!」

 

「マナ、ちょっと静かにしろ。治療に集中出来ん。」

 

「はいなのさ!」

 

闇影の質問に大きな声で答えるマナと呼ばれた少女は、男性に静かにするよう注意され敬礼のポーズを取って返事をした。

 

「この液体はアギトの力を持った者のみを猛毒に冒す特殊な毒液だ…。」

 

「え…?アギトって事は、貴方が…!!」

 

アギトの名前を出した男性の言葉を聞き、闇影は彼がアギトと関係があるのかを尋ねようとしたが、男はそれを無視し右の掌を毒で苦しむ男性の額に近付けた。すると、掌にアギトの紋章が緑色に輝き男性の額から黒い煙の様な物が現れ、掌に吸収されていった。

 

「うぅ…ん?か、身体が楽になった!!」

 

毒で苦しんでいた男性は、身体が楽になって喜びながら立ち上がった。だがここでコートの医師は…

 

「そうか、なら治療代に百万を払って貰おうか。」

 

「「「「ひゃっ、百万!?」」」」

 

「命が助かったんだからそれくらい安いもんだろ?」

 

何とコートの男性は、男に今の治療代として百万を払えと言い出した。あまりの法外な治療代に闇影達も大きく叫んだ。

 

「何だよ!?そんな大金払える訳無ぇだろっ!?」

 

確かに治療代が百万なんて大金を一般人が容易く払える訳が無い…。男がコートの男性に怒鳴り出していると、横から闇影が割り込み…

 

「百万だったらありますよ!はい。」

 

「おっおい、闇影!!」

 

先程この男性が店に置いていった「勘定」の百万を、少し顔をしかめながら治療代として手渡した。

 

「まあ…誰から貰ってもいいんだがな。」

 

「チッ、ぼったくってんじゃ無ぇよ!!ヤブがっ!!」

 

治療代を貰い納得した医師に男性は暴力的な言葉でなじり、激怒しながらその場を去って行った。

 

「お前さんも変わってるよな。他人の治療費を肩代わりするなんて…。」

 

「それより貴方のさっきの力、アギトと何か関係が…」

 

「私の名は森野(もりの)カオル。通りすがりのただの医者だ。そしてこっちは…」

 

「じょちゅの地羽(ちば)マナらのさ!」

 

闇影の質問には答えず自分達の名を紹介する医師・カオルと助手のマナ。彼等は世界各地で病気で苦しむ人々の治療をする旅をしているのだと言う。

 

「そうなんですか…マナちゃんも頑張ってるんだね。」

 

「あったりまえなのら!わたちはちぇんちぇいのおくちゃんらから!」

 

「ははは…奥さんだなんて可愛い事言うね。」

 

「しちゅれいね!こーみえてもわたちはにじゅうごなんらから!!」

 

マナがカオルの奥さんだとは信じない闇影の言葉に、彼女はぷんすか怒りながら年齢が25だと言うが…

 

「「「ぷっ…ぷはははっ!!」」」

 

「マ、マナちゃん、う、嘘付いちゃ駄目だよ。」

 

「そ、そうそう。でもこういう所が可愛いわね。」

 

「じゅっ、十年経ってから、い、言いなよ…ぶ…ぶはははっっ!!」

 

信じるどころか嘘だと決め付け、大笑いする三人にマナは目に涙を浮かばせ…

 

「うっ…うっ…うわあぁぁぁぁんちぇんちぇえぇぇぇぇっっっっ!!!!」

 

周囲の建物に響く程大きく泣き叫び、カオルの足下に引っ付いた。無論あまりの煩さにカオルは耳を塞いでいる。

 

「あ…ああ、ごめんごめん!!言い過ぎたよ。それでカオル先生、さっきどうして此処から離れたんですか?」

 

「お前さんには関係無い…。面倒事に首を突っ込みたくなかっただけだし、たまたま人が倒れていたから医者として治療してやった…これで満足か?解ったら私達を…!!マナ、逃げるぞ!!」

 

「ヒック…はいらのさ…。」

 

「あっ!待って下さい!!まだ聞きたい事が…!!」

 

何かを感じたカオルは、闇影の制止に耳を貸さず漸く泣き止んだマナと共にこの場から颯爽と去って行った。すると、頭部に巻き貝を被り肩にも同じ貝が付いたアンノウン「シェルロード」三体が此方に現れた。

 

『シェアァァ…!!』

 

「何でアンノウンが近付き出したら逃げるんだよ…。」

 

「話は後だ!今はこいつ等を倒す事に専念しろコウイチ!!」

 

カオル達が逃げた事に嘆くコウイチに目の前の敵を倒すのが先だと檄を飛ばす闇影。二人は、互いの変身ツールを取り出し変身しようとしたその時…

 

『グガァッッ!?』

 

「な、何だっ!?」

 

「あれは…G3-X!!」

 

青と白を基調とした専用バイク「ガードチェイサー」に乗った、青と銀を基調のアーマーに、頭部に二本のアンテナが特徴の「仮面ライダーG3-X」が此方に近付きながらシェルR達を銃撃した。

 

『一般人の方は下がって下さい!!アンノウンは、我々警視庁が討伐致します!!』

 

ガードチェイサーから降りたG3-Xは、一般人である闇影達にこの場から離れる様言うと、バイクからガトリング銃型武器「GX-05 ケルベロス」を取り出し構え、シェルR達に向けて正確に一体のみを連射した。

 

『グッ…グギャアァァッッ!!』

 

「凄い…正確に一体だけ撃って倒すなんて…!!」

 

一点狙いの攻撃に一体のシェルRは、頭から青い天使の輪の様な物を浮かばせて爆破した。闇影は、そんなG3-Xの正確な射撃能力に感嘆の声を上げた。

 

『オノレェ…ヒト風情ガッ!!』

 

同胞を倒され怒りを募らせるシェルR達は、頭部と肩から槍の形をした貝をG3-Xに向けて乱射した。

 

『グッ…グアァァッッ!!』

 

貝を無数に喰らったG3-Xは仰け反りそうになるが、何とか体勢を立て直し…

 

『くっ…!!何のその…これしきっ!!』

 

ケルベロスに、先程威嚇射撃に使った銃「GM-01 スコーピオン」を連結させて、ロケットランチャー型武器「GXランチャー」を完成させた。

 

『全弾…持ってけぇぇっっ!!』

 

『グギャアァァッッ!!』

 

GXランチャーのトリガーを引き、無数のミサイルをガトリング砲の様に放つ「ケルベロスファイヤー」によりシェルR達は爆破した。

 

『グゥッ…!!ア、アギト以上ニ厄介ナ奴ダ…!一度退クカ!!』

 

だが内一体は辛うじて生き延び、G3-Xをアギトと同じく厄介な存在だと声を漏らしながら撤退していった。

 

『くそっ!!一体逃げられたか…!!』

 

『緋山(ひやま)君!!またGXランチャーを使用許可も無いのに勝手に使ったわね!!あれは強力なアンノウンが出た時にしか使うなと、何回言わせる気!?』

 

『お、大澤(おおさわ)さん!!すっ、すいません!!』

 

G3-Xの無線から大澤と言う女性の怒鳴り声が聞こえると、緋山と言う男性は身を縮こませて謝った。GXランチャーは許可が出ない限り使用が許されないのだが、大沢の言葉から、彼はこれ迄何度もその許可を得ずに無断使用している様だ…。

 

『…もういいわ。さっさと戻って来なさい!』

 

『りょ、了解!!では、皆さん!これにて失礼致します!!』

 

帰還命令を聞き無線を切ったG3-Xは、闇影達に敬礼してからガードチェイサーに跨がると、そのまま警視庁へと向かって行った。

 

「何か…えらく怒られてたみたいだな…。」

 

「確かにね…。っと、そんな事より俺、カオル先生の所に行って来る!まだ何も聞いてないからね。店は任せたぞコウイチ!!」

 

「…っておい、闇影!!」

 

「ちょ、ちょっと先生!!場所解るの…って…。はぁ…また何時もの病気が始まった…。」

 

カオルから話を聞く為、単身で彼の元へと走り出す闇影。コウイチと黒深子は、彼の何時もの『病気(おせっかい)』が始まったと、呆れ顔で呆然としていた…。

 

 

―警視庁・モニター室

 

 

「全く…!アンノウンを倒したのは良いけど、命令を無視した戦いは止めなさい!!」

 

「す…すいません…。」

 

あれから帰還した茶髪のスポーツ狩りをした警官服の男性、G3-Xの装着者・緋山マコトは、髪を一くくりした警官服の女性上官・大澤スミコから先程の命令無視について説教を喰らっていた。

 

「はぁ…この二ヶ月で貴方の命令無視した戦い方には目に余るわ…。何でこんな真似を?」

 

一通り怒鳴り終えたスミコは、溜め息交じりにマコトの命令無視した戦いの理由を落ち着いた表情で尋ねた。

 

「…俺、子供の時に家族をアンノウンに殺されたんです…。」

 

「え…?」

 

「その時俺は、何も出来なくてあいつ等の良いようにされたのがとても悔しかったんです…!!それから俺、アンノウンを倒す事を決めて警察官になったんです。だから…!!」

 

「貴方の気持ちは解らなくは無いわ…。でもね、私達警察は組織で戦ってるの!私情で戦われると迷惑なの!!」

 

マコトのこれ迄の命令無視の理由、それは幼少の時に家族をアンノウンの不可能犯罪により皆殺しにされた事から、全てのアンノウンを討伐するべくこの警視庁の門を叩いたのだと言う。度重なる命令無視した戦い方も、その信念を貫き過ぎた為による物だったのだ。 しかし、警察と言う「組織」で戦う以上、彼の行動が罷り通る事は無い。そう厳しく言ったスミコは…

 

「…一ヶ月間、貴方の出撃は控えさせて貰うわ。暫く頭を冷やしなさい。」

 

「りょ…了解しました…。」

 

マコトにアンノウン討伐の出撃を一ヶ月停止、つまり事実上の謹慎命令を下した。

 

 

 

「一ヶ月出撃停止…か…。はぁ…っ痛てっ!!」

 

「おい後輩!な〜に辛気臭い面してんだ?」

 

「な、南条(なんじょう)さん…。」

 

出撃停止命令を下され、通路の椅子に座り落ち込んでいるマコトの頭をはたいたのは、眼鏡をかけ身長がやや低い壮年の男性、彼の先輩である南条トオル。彼もまたG3-Xの装着者であるが、身体能力がマコトにやや劣る為、補欠要員とされている。

 

「聞いたぜ。お前また命令無視した戦いやらかして遂に出撃停止になったんだってなぁ。ほれコーヒー。」

 

「あ、ありがとうございます…。」

 

嫌味な台詞を吐きながらも、持ってた二本の缶コーヒーの内一本をマコトに手渡した。

 

「ったく…!何時も馬鹿面しながら『この町の平和は、俺が守るんだぁっ!!』とか馬鹿でかい声出しながら運動場を何周も走る程騒がしい馬鹿なお前はどうしたんだ?」

 

「実は……」

 

マコトに何度も「馬鹿」と言いまくりながらも相談に乗ろうとしているトオル。先程の事情や行動からトオルはマコトの能力を妬み嫌っている様に見えるが、内心彼の事を誰よりも気に掛けているのだ。マコトは自分の胸の内を彼に話そうとしたが…

 

『緊急警報!緊急警報!アンノウンが発生!!G3-Xの装着者は直ちに戦闘準備をして下さい!繰り返します…!! 』

 

「…アンノウン…!!」

 

突然、アンノウンの発生による緊急警報のサイレンが鳴り響いた。それを耳にしたマコトは直ぐ様G3-Xの装着準備をしようとするが…

 

「お〜っと待て!お前ホンット馬鹿だな!?さっき言われた事もう忘れてるな。俺が行くからお前はコーヒー飲んで待機しとけ!良いな?」

 

マコトの首根っこを引っ捕まえたトオルは、自分が出ると言いながらその場を走り去って行く。一歩進む度に指を指しながら待機しろと念を押しながら…。

 

「…俺は…。」

 

 

 

一方シェルRの襲撃から逃げたカオルは、橋に肘をつきながらその下にある川原をずっと見ていた。まるで何か考え事をしているかの様に…。

 

「ねぇちぇんちぇい、もしかちて『あのじけん』についてかんがえてんの?ちぇんちぇいのおとうとさんの…」

 

「マナ!その話はするなと言った筈だっ!!」

 

「ひっ!!ごめんなちゃい…。」

 

「…すまない…。」

 

マナがカオルの弟の話を口にし出すと、彼の怒鳴り声に怯み泣きそうな顔で謝った。しかし少し閥が悪いのか、カオルは呟く様に謝ると再び川原の方に顔を向けた。

 

「あっ!いたいた!カオル先生〜!!」

 

「ん?…あっ!ちゃっきのコックしゃん!!」

 

そこへ、お節介モードな闇影が此方に向かって走って来た。カオルはそれを見て少し鬱陶しいそうに肩を竦めた。

 

「何だ?まだ何か私に用か?」

 

「まだ貴方に聞きたい事があるんです。どうしてアギトの力で治療が出来るのか、どうしてアンノウンが来ると戦わずに逃げるのか、それに…」

 

「悪いがその話なら話すつもりは毛頭無い。これが最後だ…二度と私に関わるな。行くぞ、マナ。」

 

しつこくアギトの力について尋ねてくる闇影に、カオルは話すつもりは無いとコートを翻しながらマナと共にこの場から去ろうとしたその時…

 

「ちぇ、ちぇ、ちぇ、ちぇんちぇい!!かわからなんかがあがってくゆよ!?」

 

「ちっ…!!『奴』か…!?」

 

マナが指を指した方を見ると、川原から大きな水の塊が浮かび上がり闇影達の前に飛んで着地し、スライムの様に形を変えて行く…。

 

「アッチョンプリケ〜〜ッ!!みじゅがしゅらいむみたくぐにょっとなってゆ〜〜っっ!!」

 

『ブフフ…見つけたヨン。もう一人のアギト…!!』

 

水の塊は青い螺旋状の杖を持った、頭部に王冠の様な角に細長い腕、水瓶の様な胴体をし、内部にある一つの赤い目玉が特徴のアンノウン「ウォーターロード・アクエリアス」が現れた。

 

 

 

―警視庁・モニター室

 

 

『アンノウンが発生しました!!繰り返します。アンノウンが発生しました!!…』

 

「何ですって!?新しいアンノウンがっ!?南条君!!聞こえる今別の現場でアンノウンが発生したわ!今から言う場所に至急向かって!!」

 

一方警視庁では、トオルに向かわせた現場とは別の、現在闇影達が遭遇したウォーターRの発生を知ったスミコは、至急トオルにその現場に向かうよう要請した。

 

「アンノウンがっ…!!」

 

「待ちなさい緋山君!!貴方には襲撃停止を命令した筈よ!それに、G3-Xは一つしか無いのよ!?」

 

それを知ったマコトは直ぐ様そこへ向かおうとしたが、スミコに出撃停止した筈だと呼び止められた。仮に出撃出来たとしても、G3-Xのシステムは一つしかないと言う。

 

「まだ『あれ』があります!!…『G4システム』が…!?」

 

「だっ、駄目よ!!あのシステムはまだ試作段階でどんなリスクがあるのか解らないのよ!?」

 

それを聞いたマコトは、G3-Xとは別のシステム「G4システム」を使用すると言い出した。しかし、そのシステムはまだ試作段階でありリスクも不明な為、スミコはそれを断固反対した。

 

「どんなリスクを被うとも、アンノウンと戦えるなら…!!」

 

「待ちなさい!!緋山君!!」

 

それでも構わんと言わんばかりにマコトは、スミコの制止に耳を貸さずに現場へと向かって行った。

 

 

「やはり貴様が現れたか…!!」

 

『久しいネェ…あれから二年は経つんじゃないのカイ?…我輩がお前の弟、本物のアギトを殺してからネ…。』

 

「!!…何だって!?カオル先生の弟さんもアギトで、あいつが殺したっ!?」

 

『ブフフ…それからだったかネェ…?どんな方法か知らないけどお前がアギトの力を目覚めたノハ。尤も、本物ではなく紛い物の力だけドネ。』

 

なんと、ウォーターRは二年前にカオルの弟・森野テツヤ/仮面ライダーアギトを殺害したアンノウンであったのだ。その時に、カオルもアギトの力に目覚めた様だ。但し、テツヤと同じアギトでは無くアナザーアギトの力を得て現在に至ると言う…。

 

『アギトである以上、お前を野放しにはしなイヨ…現レヨ!!水面に眠りし同胞達ヨ!!』

 

『グギョギョ…!!』

 

『ヒトハ…ヒトノママデイイ…!!』

 

『同胞ノ仇…!!』

 

ウォーターRが杖を構えると、彼の体内から赤い真蛸を模した「オクトパスロード」と、白い烏賊を模した「スクィッドロード」、そして、先程のシェルRが現れた。

 

「海の幸でいっぱいか…コックらしくまとめて調理してやる!!変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

闇影は、自分の役割であるコックらしくアンノウン達を調理すると言いながらディライトに変身した。

 

『こっちも援軍を作るか…!!』

 

【SHADOW-RIDE…CULLICE!】

 

ディライトは援軍を作るべく、自身の影をカリスにシャドウライドさせた。

 

『はあぁぁっっ!!やっ!はぁっ!せいっ!!』

 

『グッ…グギョォォッッ!!』

 

ディライトはライトブッカー・ソードモードでオクトパスRを素早く斬り付けて行く。しかし、オクトパスRは口から威力のある墨を吐き出した。

 

『おわっと!!蛸は調理する時、墨を吐いてくるからね…。先ずは大人しくさせる!』

 

【ATTACK-RIDE…SPARK!】

 

『グギョォッ!!』

 

ディライトはオクトパスRを「スパーク」を纏った剣で斬り付けて痺れさせ…

 

『続いて微塵切り!!せ〜い…ややややぁっっ!!』

 

『グッ…!ギョギョォォッッ!?』

 

ライトブッカーでオクトパスRの八本の腕を目にも止まらぬ速度で切断していき…

 

『仕上げは火力で焼いていく!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DE・DE・DE・DELIGHT!】

 

『蛸の姿焼…一丁上がりぃっ!!』

 

『グギョギョォォッッ!!』

 

止めにディメンジョンプロミネンスを放ち、オクトパスRを焼き尽くし、ディライトの「調理」は完成した。

 

『……!!』

 

『クッ…アギトデハ無イガ、コレモヒトヲ越エシ力…抹殺スルッ!!』

 

一方、Sカリスと交戦中のスクィッドRはSカリス、正確にはディライトの力もアギトと同じ「人を超えた力」と見なし、彼(?)を抹殺する事に決め、十本の腕を鋭い槍の様に伸ばして串刺しにしようとするが…

 

【ATTACK-RIDE…BIO!】

 

『ナッ、何ッ!!グゥッ!?』

 

カリスアローから、ディライトが発動した「プラントバイオ」による無数の蔦が飛び出し、スクィッドRを捕縛し此方に勢い良く上空に引き上げたSカリスは…

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…CU・CU・CU・CULLICE!】

 

『……!!』

 

『グアァァッッ!!』

 

逆立ちをしながら竜巻を纏ったスピニングアタックの回転蹴りで、スクィッドRを撃破した。

 

「しゅ…しゅっご〜いっ!!しゅごいよあのコックしゃん!!」

 

『ブフフ…中々やるようだネェ…。けど我輩の力はこんなモンじゃ無イヨ!現れレヨ!!』

 

アンノウンを二体倒したディライトの実力を目の当たりにしても余裕の態度を取るウォーターRは、不気味に笑いながら再び体内から無数の水棲生物のアンノウンを呼び出した。

 

『そっ…そんな…!!』

 

『ブフフ…どうすルン?もう一人のアギト。その力で戦わないのカネェ?』

 

「私は二度とこの力で戦わないと誓った…。弟の…テツヤの為にも…!!ん?」

 

無数のアンノウンの出現で窮地に追い込まれたディライト。カオルはそれでも頑なに戦わないと言い張る。するとそこに、一台のヘリが耳をつんざく程のプロペラ音と激しい突風を巻き起こしながら現れ、ヘリからワイヤーの様な物が垂れると「何か」がそれを伝って降りてきた…。

 

「なっ、何なんだ!?」

 

『あれは…!!』

 

ディライト達が見た物…それは「仮面ライダークウガ」の様な角をしたアンテナに青い複眼、そして全身が銀色がかった黒色のボディが特徴の「仮面ライダーG4」だった…。

 

『目標捕捉!!』

 

G4はそう言うと、G3-Xが使用していたスコーピオンを改良した銃「GM-01改四式」を構え、アンノウン達に向けてマシンガンの如く連射した。

 

『ギャアァァァァッッッッ!!!!』

 

『うくっ…!!正確に半分は狙えたのは良いけど、身体に凄い負担がかかるなぁ…でも、アンノウンを倒せるなら、この程度…!!』

 

システムの負荷による痛みに耐えるG4は、左のニの腕に装着された電磁コンバットナイフ「GK-06 ユニコーン」を改良した「GK-06改四式」を取り出し、アンノウンの軍勢に特攻した。

 

『うおぉぉっっあぁぁっっ!!』

 

『ギャアァァッッ!!』

 

G4はGK-06改良型四式で確実に死亡する様に正確な位置を狙い、尚且つ素早い動作で残ったアンノウン達を斬り付けていった。まるで機械の様に正確に…。すると…

 

『ハァ…ハァ…ハァ…ウグッ…!!ヘヘ…これがG4システム…何て素晴らしい力なんだ!!これで全てのアンノウンを倒せる!消せる!コロセルッ!!』

 

G4の圧倒的な性能に酔いしれる装着者(マコト)は、その力に徐々に飲み込まれつつあり口調も物騒な物に変わっていく。G4システムはG3-Xとは違い、装着者の意思とは無関係に動作する…つまり、装着者をパーツとして起動するスーツなのだ。当然、長時間装着し続ければ装着者を死に至らしめてしまう。 これがG4システムのリスクである…。

 

「そんな危険なお宝は…」

 

「俺様達が戴くに相応しいぜ!!」

 

『あ、あいつ等!!いつの間に!?』

 

「「変身!!」」

 

【KAMEN-RIDE…DITHIEF!】

 

【KAMEN-RIDE…DISTEAL!】

 

ディライトが気付かぬ内に現れた巡と周は、G4システムを奪うべくディシーフとディスティールに変身した。

 

『作られたライダー同士で行くか!』

 

【KAMEN-RIDE…ALTERNATIVE!】

 

『……。』

 

ディスティールは「人に作られたライダー」で対抗するのか、黒い蟋蟀に似た擬似ライダー「オルタナティブ」を召喚した。

 

『なら私は…』

 

ディシーフもライダーカード【KAMEN-RIDE IXA】のカードをスラッシュしようとしたが…

 

 

 

―どういう…事…?何で…何でこんな事に…!?

 

―何て顔をしてるんだ?困った――だ…なぁ…。

 

 

 

『……。』

 

何故かスラッシュせず、腕が震えていた。そして、ライダーカードをホルダーに戻した。

 

『巡ちゃん?どうしたんだ?』

 

『え?ううん、何でも無いわ!行くわよ!!』

 

ディスティールは心配するが、直ぐに何時もの表情を取り戻したディシーフはドライバーを構えてG4に向かって行った。

 

【SWORD-VENT】

 

『…!!』

 

『グゥッ!!?』

 

オルタナティブは右腕の召喚機「スラッシュバイザー」にソードベントカードをスラッシュし、契約モンスター「サイコローグ」の両足を模した剣「スラッシュダガー」を装備し、G4と斬り結びを行った。

 

『私も忘れないでね♪はぁっ!!』

 

『俺様もな。』

 

『ガァッ!?グァッ!!』

 

ディシーフはその背後からドライバーでG4に斬りかかり、ディスティールも遠距離から光の矢を放った。だがそれでもG4は止まらない。

 

『ブフフ…ホントにヒトと言うのは愚かだネェ…。』

 

『何だか粗方解らないけど、先ずはあのアンノウンを何とかしないとね…。』

 

ディライトは、この事態を落ち着かせる為先ずははウォーターRを倒すべく、アギトのFSRカードを取り出そうとしたが…

 

『あれ?なっ無い!?あっ!!』

 

 

 

―うん、良いよ。はい。

 

 

 

『ああぁぁっっ!!FSRのカードを忘れたぁぁっっ!!』

 

ツルギにFSRのカードを全て渡してしまった事を思い出したディライトは、大絶叫しながらカードを忘れた事に嘆き出した。

 

『(どうするんだよこれ…。)』

 

『ブフフ…そのまま同士討ちになった方が楽かモネ。バイバ〜イ♪』

 

ウォーターRはそう言うと、身体を液体化しながら撤退して行った。G4の暴走、アナザーアギトの逃走の理由、そして、何故ディシーフはイクサへのカメンライドを躊躇したのか…各々の思いが複雑に絡み合う…。




カオルとマナのモデルは言わずもがなですwww


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第18導 乗り越えろ、その力!

アナアギ編後半です!!

残りは…


『ウオォォォォアァァァァッッッッ!!!!』

 

試作段階のシステムを使用した為、その脅威的な力に飲み込まれたG4=マコトは、獣の様な唸り声を上げながらGK-06四式改でオルタナティブを勢い良く斬り付ける。

 

『……!!』

 

『ちっ…これじゃ埒が明かねぇな…コイツで大人しくしてなっ!!』

 

【ATTACK-RIDE…CROSS-ATTACK!】

 

ディスティールは暴走するG4を完全に止めるべく、召喚したライダーに必殺技を発動させる「クロスアタック」をドライバーにスラッシュした。

 

【FINAL-VENT】

 

『……!!』

 

オルタナティブはスラッシュバイザーにファイナルベントのカードを読み込ませると、何処からかサイコローグがバイク状に変形した「サイコローダー」が現れ、オルタナティブは直ぐ様それに搭乗し独楽の様に超回転して突撃する必殺技「デッドエンド」でG4を倒そうとするが…

 

『小賢しいだよォォォォッッッッ!!!!ウアガアァァァァッッッッ!!!!』

 

『ガァァッッ!!』

 

再び獣の様に叫びながら、肩に掛けてある多目的巡航4連ミサイルランチャー「ギガント」で四基の小型ミサイルを発射して、真正面に特攻してくるオルタナティブに放ち大爆発を起こした。

 

『あちゃ〜…やっぱ擬似じゃ相手にならなかったな…。』

 

『でもあの威力は凄いわね…んふ、益々欲しくなってきたわ♪』

 

ディシーフとディスティールはG4の聞きしに勝る脅威的な戦闘力を目の当たりにし、一層そのシステムを手に入れる意欲を高め、体制を整えているその時…

 

『ん…?あれは…。』

 

そこへ、ウォーターロード・アクエリアスの出現とG4システムの暴走を聞きG3-Xを装着したトオルが、ガードチェイサーに搭乗して此方に走って来た。

 

『あらあら、お巡りさんがきちゃったわね。此処は一先ず退こうかしら♪』

 

『あばよ。』

 

【【ATTACK-RIDE…WARP!】】

 

G3-Xを「お巡りさん」呼ばわりするディシーフ達は、ワープのカードを使いその場から姿を消した。

 

『…ったく世話の焼ける後輩だな…おい後輩、さっさと帰…!!』

 

『ガアァッ!!』

 

ガードチェイサーから降りたG3-XはG4に近付き帰る様促そうと手を伸ばしたが、GK-06四式改で突き刺そうとした。G3-Xがそれを避けるとG4は…

 

『ウゥッッ……ウガアァァァァッッッッ!!!!』

 

『あっ!おいコラ待て!!』

 

突然武器を落とし尚も呻きながら頭を抱え、その場から逃げる様に去って行き、G3-Xはガードチェイサーに乗ってを追いかけて行った。

 

『何がどうなってるんだ…?…ってカオル先生が居ない!?』

 

騒ぎが一時的に収まった事に安堵するディライトだが、カオルがいつの間にか姿を消していた。恐らく今の騒ぎに乗じて逃走したのだろう…。と、思いきや…

 

『うぅっ……うぅっ……!!』

 

『マナちゃん!?』

 

そこにはなんと、立ったまま一人で泣いているマナの姿があったのだった…。

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

―レストラン・サンライト

 

 

「はい、太陽ランチとティラミスパフェをどうぞ♪」

 

「ハグググ…!!…ングッ!!…うぇぇん…ハグググ…!!…ングッ!!…うぇぇん…ぢぇんぢぇ…。」

 

「食べるか泣くかどっちかにしなよ…。」

 

「まぁまぁ…。あの後一体何があったのかな?」

 

マナは太陽ランチを勢い良くかっ込む様に食べては泣き、ティラミスパフェを食べては泣き…を繰り返す。それに突っ込むコウイチを宥めた闇影は、あの後どうしたのかを彼女に尋ねた。

 

「ヒック…じちゅは…」

 

 

 

「マナ、奴の気は今煌に向いている…。だから今の内に逃げる。だがお前は煌の所へ一度残れ。お前との旅は此処までだ。」

 

「…え?」

 

ディライトがウォーターロード・アクエリアスと戦っている最中にカオルは、マナに闇影達の所に残る様言いもう旅には連れて行かないと言い出した。突然自分から離れろと言われたマナは…

 

「なっ…なんでっ!?」

 

「私が生きている限り、奴は何度でも襲って来る。そうなったらお前に迄被害が及ぶ。だから此処で別れるんだ。後の事はもう人に頼んである。」

 

目を見開き理由を尋ねた。その理由は、アギトの力を持つ自分と一緒にいると、ウォーターRがこの先何度も自分に襲って来る為、その巻き添いを受けない様にする為だと淡々と語るカオル。

 

「いやよいやよ!!マナはちぇんちぇいといっちょにいたいの!!ちぇんちぇいがいにゃいとしゃびしぃの…!!あぶないことらったらへっちゃらよ!!だから…「…く…だよ…。」え…?」

 

「迷惑なんだよ!!お前みたいな子供がウロウロして!!どれだけ私の診察の邪魔をすれば気が済むんだ!!」

 

「……!!」

 

「話は済んだ。もうお前とは会う事は無いだろう…。じゃあな…。」

 

聞き分けの無いマナにカオルは、彼女がいると迷惑で邪魔だと大声で捲し立ててその場から去って行った。

 

「あっ…まって!!まってよちぇんちぇぇぇぇぇいっ!!グスッ…ヒック…!!」

 

 

 

「うぅっ……うわぁぁぁぁっっっっんっ!!!!」

 

「ま、前も聞いたけど凄い泣き声だ…。」

 

事情を話終えたマナは、今の話を思い出し再び大声で泣き出した。あまりの煩さに耳を塞ぐ闇影達。そこへレストランのドアが開き、頭の天辺が禿げた口元に白い髭を生やした男性が入店して来た。

 

「あ、いらっしゃいませ!」

 

「いやいや、ワシは客じゃないんです。ここに地羽マナって子はいますかな?」

 

「ええ、いますよ。」

 

「マナちゃん、迎えに来たよ。」

 

「うえぇぇんっ…!!ん、あ、マスター…。」

 

「えっ、じゃあさっきの話でマナちゃんの事を頼んだ人って、この人?」

 

来店して来た老人を見て泣き止んだマナ。この老人は、カオルとマナ行き付けの喫茶店「フルヴォン」の店主(マスター)であり、彼等とは親密な関係で結ばれている。マナの面倒を見て貰える程の…。

 

「さっマナちゃん、今日からはわしが君の面倒を見るか…「いや…」ら…?」

 

「やだやだやだやだ!!じぇっっっったい!!いやぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

「あっ!マナちゃん!!」

 

マスターが手を差し出そうとすると、マナはカオルと離れるのが嫌な為、大声で駄々をこねながらジタバタした後、そのまま店を飛び出して行った。

 

「はぁ…無理も無いか…二年間も一緒にいたカオル君から突然離れる様言われたらな…。」

 

「カオルさんも冷てぇよなぁ…急に離れろだなんてよぉ…。」

 

マナが出て行った事に無理も無いと額に手を当てるマスターを見て、カオルの態度が冷たいとぼやくコウイチ。それを聞いたマスターは…

 

「カオル君がマナちゃんを突き離したのは、アンノウンからの襲撃に巻き込みたくないだけじゃないんだよ…。」

 

「え…?」

 

「もしかして…二年前に弟さんが亡くなった事に関係が…!?」

 

「うむ…本当はカオル君自身が話した方が良いんじゃが…場合が場合じゃし事情を話すよ。」

 

二年前のカオルの弟・テツヤ/仮面ライダーアギトの死についてを語り出す…。

 

 

―二年前

 

 

『ブフフ…見つけたヨン、アギト…。』

 

「なっ、何なんだコイツは…!?」

 

当時、周囲から「天才」と呼ばれる程の技術を持つ外科医であったカオルとテツヤが病院の研修に向かう最中に、ウォーターRがアギトの力を持つテツヤを抹殺するべく襲撃に現れた。

 

「アンノウンか…兄さんは下がってて!!」

 

狙いが自分だと知りカオルに離れる様促したテツヤは、腰に中心が目の様な形をしたベルト「オルタリング」を出現させ…

 

「変身!」

 

オルタリングの両サイドのボタンを押したテツヤの身体は輝き、二本のクロスホーンが特徴に、金色の龍をイメージした戦士「仮面ライダーアギト グランドフォーム」に変身した。

 

「テ…テツヤ…その姿は…!?」

 

『後で話すよ…。行くぞ!!はぁぁぁあっっ!!』

 

初めて見る、自分のもう一つの姿に驚くカオルにアギトGFは事情を後で説明すると言い、ウォーターRに向かって走り出した。そして、パンチやキックを素早く繰り出すが…

 

『ブフフ…無駄無駄♪我輩の身体は液体に変化する事が出来るかラネ♪』

 

ウォーターRの、自身の身体を液体に変える能力によりアギトGFの攻撃は水を切ったかの様に全く効いていなかった。更に…

 

『あ〜言い忘れてたケド…液体なら何でも変えれルヨ。普通の水でも海水でも…』

 

『何っ…!!グッ…!?身体が…!!』

 

『毒液にモネッ!!』

 

『グワァッ!!』

 

毒液の身体に変化したウォーターRに触れたアギトGFは、それにより身体を蝕み体力が消耗していき苦しみ出し、そこに更にウォーターRの振るった杖から放つ青い光弾によりアギトGFを壁まで吹き飛ばした。

 

「テツヤッ!!」

 

『グッ…!!』

 

『ブフフ…止め…ギィエェェッッ!!?』

 

ウォーターRがアギトGFに止めを刺そうした時、カオルが護身用のスタンガンをスイッチを入れた状態で放り投げてアギトGFを守った。

 

『に…兄さん…!!』

 

『やってくれたネェ…我輩達神の使いを邪魔した罪は重イヨ…!?』

 

アギト抹殺の邪魔をされた事に頭に来たウォーターRは、アンノウンの禁忌「アギトの力を持たない人間の抹殺」をしようと標的をカオルに変更して杖から青い光弾を放った。

 

「喰らいナヨ!!」

 

「あ…ああ…!!」

 

『兄さあぁぁっっん!!ウアァァァァッッッッ!!!!』

 

 

 

「……ん、い…生き…てる…。っ痛…!!左目が見えん……!!そうだ!!テツヤ、テツヤはど…!!」

 

意識を取り戻したが左目の視力を失ってしまったカオル。直ぐ様アギトGFを探そうとしたが、目の前の光景を見て絶句した…。何故なら…

 

「……。」

 

「テ…テツヤ……テツヤ!!」

 

カオルを庇うようにボロボロの身体で仁王立ちをしたテツヤの姿がそこにあったからだ…。力が抜けたテツヤは後ろ向きに倒れ出したが、カオルがそれを支えた。

 

「テツヤ!!しっかりしろ!!テツヤ!!」

 

「ぅ、うぅっ……!!にい…さん…もしかして今左目…見えない…でしょ…?」

 

「何故それを…!?ってそんな事はどうでも…!!」

 

「ずっと前から…兄さんの左目が見えなくなる夢を見て…もしかしたら予知夢…なのかもね…。…兄さんはこれから…沢山の人の…命を救って…いくんだから…目が見えないと…駄目だよ…。だから…僕が死んだら…僕の左目を使いなよ…。ゲホッ…!!」

 

テツヤは息絶え絶えに予知夢で見たカオルの左目の失明について話すと、自分の死後に自分の左目を移植する様言った。カオルの医者生命を経たせない為に…。

 

「分かった…分かったからもう喋るな!!私が直ぐに治してやるから…テツヤ…?テツヤ!!ウオォォォォッッッッ!!!!」

 

テツヤは息絶えてこの世を去って行き、カオルは弟を救えなかった無力さに大きく泣き叫んだ…。

 

 

 

「それから目を移植したカオル君の周りで異変が起きたのが原因で周囲の人間から気味悪がられて、彼は病院を追いやられ、医者免許も剥奪されたんだ…。恐らくその異変が…」

 

「アギトの力か…粗方解りました。そうと解れば…!!」

 

カオルの過去を聞いた闇影は、彼の持つアナザーアギトの力は移植したテツヤ、即ちアギトの左目が原因であり、アンノウンから遠ざかりマナをマスターに預けたのも、彼女を弟と同じ運命を辿らせない為だと理解した。すると闇影は立ち上がり、今の話をマナとカオルを探そうと店を出ようとしたが…

 

「待って下さい闇影さん…これ、お返しします…。返すのを忘れてごめんなさい…。」

 

ツルギは預かったままのFSRのカードを謝りながら闇影に返却した。

 

「ありがとうツルギちゃん!行って来る!!」

 

 

「……。」

 

一方カオルは…

 

「(そうだ…これでいいんだ…これで…もうテツヤの時の様な思いは御免だ…。今の私は…疫病神だから…。)」

 

闇影の思っていた通り、自分のせいでマナをテツヤと同じ運命に遭わせないが為に彼女から離れたのだった。自らを「疫病神」だと思い込みながら宛もなく歩いていた。すると…

 

「ちぇんちぇ〜い!!」

 

「なっ!!マナ!!」

 

そこへ、別れた筈のマナが泣きながら自分に向かって走り、袖にしがみついて来た。

 

「どうして戻って来たんだ!!お前みたいな足手まといは…!!「うちょちかないで!!」」

 

カオルの「マナが足手まとい」だと言う言葉を彼女は嘘だと遮った。

 

「ちぇんちぇいはマナをおとうとしゃんとおなじようにちなせなくないからあんなことをいったんでちょ!?」

 

「!!何のはな…!!」

 

「マナだっておとなのれでぃよ!!ちぇんちぇいのきもちくやいじゅっといたんらからわかるのさ!!」

 

「だがそれでもお前が私に付いてくる理由には…!!」

 

マナは、カオルが自分を突き離した真意に気付いていたのだった。だがカオルの言う様に、二年間ずっと一緒にいたから自分の気持ちが解る理由になっても、自分に義理堅くついてくる理由にはならない。そう言い出そうとすると…

 

「…マナもちぇんちぇいとおなじあぎとのちからをもっててまわりからきらわれておちこんでるところをちぇんちぇいがたしゅけてくれた…ちぇんちぇいはマナのいっちょうのおんじんらから、そのおんがえちをしたいのさ!!」

 

「!!…何だとっ…!!」

 

何とマナもまたアギトの力を持つ者だったのだ。彼女がカオルをここまで慕っている理由、それはその力を持つが故に周囲から疎遠されて孤独にうちひしがれていた所を彼が救ってくれた為である。

 

「そういう事だったのか…。」

 

カオルは今のマナの話を初めて知った様でありただただ驚いていたその時…。

 

『ガアァァァァッッッ!!!!』

 

「「!!!!」」

 

『おい後輩!!止めろ!!止めろって!!』

 

『グアァァッッ!!』

 

『うわあぁぁっっ!!』

 

丁度カオル達がいる近くの廃工場で、暴走したG4がギガントを使い周囲に攻撃をしていた。G3-Xは彼に羽交い締めをして暴走を止めるで呼び掛けるが、その声は届かずG4に力ずくで振りほどかれてしまう。

 

『おい馬鹿後輩…お前、何時までそんなガラクタに振り回されてんだよ…お前の馬鹿が付くほどの信念はんなガラクタなんかに負ける程弱かったのかよ…。んな馬鹿なお前を心配する俺が分かんねぇのかよ!!……緋山!!』

 

『グ…グ…グ……!!ナン…ジョウ…サン…!!』

 

G3-X(トオル)は倒れても尚、G4(マコト)に呼び掛ける。今まで「後輩」と呼んでいた彼を「緋山」と苗字で呼んだのもこれが初めてである。するとG4の意識も徐々に正気に戻りつつあった。

 

「何なんだあれは…!?」

 

「アッチョンプリケ〜〜!!ろ、ろ、ろ、ろぼっとがなんかあばれてるぅぅっっ!?」

 

カオルとマナは、そんな二体のロボットライダーのやり取りを目を奪われていた時、『最悪』な事が起きてしまった…。

 

『ブフフ…聞〜いちゃっタヨ♪まさかそこの子供もアギトだったなんテネ♪これは一大事だヨネェ恐いヨネェ…。』

 

「「『!!!!」」』

 

そこにウォーターRが現れ、今の話を聞きマナもアギトの力を持っている事を知られてしまった。「一大事」だとか「恐い」とかわざとらしい言葉を出しながら、スライムの様に身体を歪ませG4へと近付いて行く…。そして…

 

『グガアァァッッ!!?』

 

「緋山!!」

 

「貴様!!何をっ!?」

 

ゲル状になったウォーターRはG4のボディ全体を包む様に覆い出した。その異様な行動に何のつもりだと尋ねるカオル。

 

『前に言った筈ダヨ…我輩は全身を液体に変える力を持っているッテ…。液体には色々あるんダヨ…。』

 

「!!『液体』金属…!!」

 

『ブフフ…!!その通り!!』

 

「液体」金属に変化したウォーターRは、G4のボディを溶かし液体金属に変えてそれを自身の身体に取り込んでいき、装着者のマコトを追い出した。するとウォーターRは、G4の形をした銀色の液体状の身体に、内部中心にある赤い単眼が特徴のG4システムとアンノウンが融合した特異体「ジーフォーアクア」へと変貌した。

 

『ブフフ…!!これがアンノウンとG4とやらが融合した我輩の新たな姿…元気百倍!!力も百倍!!この力で愚かなヒト共を皆殺しにしてやルヨ!!ブフフ…!!』

 

ジーフォーAはG4システムを取り込んだ影響なのか、アンノウンの禁忌とされた「アギト以外の人間の抹殺」を平然と口にしながら、身体から銀色の身体をした無数のアンノウンを生み出していく。

 

『ヒトハ…ヒトノママデイイ…!!』

 

『グルルル…!!』

 

『ジャァァッッ!!』

 

「ちぇんちぇい…。」

 

「くっ…このままでは…!!」

 

無数のアンノウンを目の前に危機を感じているカオルとそれに怯え彼にしがみつくマナ。そこへ…

 

【ATTACK-RIDE…LASER!】

 

『ギャアァァッッ!!』

 

『何ダネ!?』

 

突如黄色いレーザーが放たれアンノウン達を狙撃した。その人物は勿論…

 

『カオル先生!マナちゃん!大丈夫ですか!?』

 

「「煌!!/こっくしゃん!!」」

 

マシンディライターに乗ったままライトブッカー・ガンモードを構えたディライトだった。

 

『前は失敗したけど、今度こそアギトを援軍に出す!!』

 

【FINAL-SHADOW-RIDE…A・A・A・AGITO!】

 

マシンディライターから降りたディライトは前回のミスを反省しながら、自身の影を太陽の如く熱き赤と、太陽の如く輝く白のボディをした光輝への目覚め、仮面ライダーアギトの最終形態「シャイニングフォーム」にFSRさせた。

 

「あれはテツヤの…!!煌…お前は一体…!?」

 

SアギトSFを目の当たりにしたカオルは、自身の影をテツヤと同じアギトに変化させたディライトの能力に感嘆の声を上げていた。

 

『一気に料理してやる!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…A・A・A・AGITO!】

 

『はぁぁぁぁ…シャイニングクラッシュ!!』

 

『グギャアァァァァッッッッ!!!!』

 

ディライトとSアギトSFはライトブッカー・ソードモードとシャイニングカリバーを大きく振るい、黒と白の斬撃波「シャイニングクラッシュ」を放ちアンノウンの軍勢を言葉通り「料理」した。

 

『ブフフ…中々やるネェ…。ならこちらもお返ししないとネェ…!!シェルギガント!全弾発射!!』

 

『うわぁぁっっ!!』

 

ジーフォーAは右腕をギガントの形に変化させて、無数の銀色の槍貝を模したミサイル「シェルギガント」をディライトとSアギトSFに放ち爆発を起こしてSアギトSFを破壊し、ディライトを変身解除させた。

 

「くっ…!!これが…G4システムとアンノウンの能力を合わせた力か…!! 」

 

闇影はジーフォーAのG4システムの破壊力とアンノウンの神に近い力と言う、全く異なる力同士が合わさった脅威的な力に戦慄していた。

 

「ちぇんちぇい!!このままじゃこっくしゃんがあぶない!!あぎとのちからでたしゅけてあげて!!」

 

「私は…テツヤの命を奪ったアギトの力をこれ以上使いたくない…!!ましてや戦う為に…!!」

 

闇影の危機にマナはカオルにアギトの力で助ける様に頼むが、彼はテツヤの命を奪い切欠となったアギトの力を使う事を躊躇っていた。

 

『ブフフ…ホントヒトってのは愚かだネェ…。我輩は前から思うんだけど、そもそも世界にとって必要無いのはヒトそのものじゃないのカイ?』

 

「なにかってなこといってんのよアンタ!!」

 

ジーフォーAは右腕を元に戻しながら、人間の存在そのものを全否定し始めた。それを聞いたマナは、飛び跳ねながら怒り出した。

 

『だ〜ってそうじゃなイカ…。アギトの力といい、このG4システムとやらといい、あまりに分不相応な力を弱いヒト共が持てば世界が危なくなると思わないカネ?』

 

「しょっ…!しょれは…!!」

 

ジーフォーAの言う様に、確かにアギトの力やG4システム等の人知を超えた強大な力は、一歩間違えれば世界に悪影響を及ぼしかねない代物だ。現にマコトも不完全とは言え、G4システムのリスクにより自我を破壊寸前にまで追い込まれていたのだから…。

 

『そんなヒト共が世界を動かしているなんて…笑い話にもならなイヨ…。だからこそヒト共は全て根絶やしにして、より良い世界を我輩達アンノウンが築いてあげルヨ!!』

 

「だからって…人を皆殺しにする権利なんて誰にも無い…!!」

 

『何だッテ?』

 

「お前の言う通り、人は強大な力に飲み込まれる程弱い…。だけど、それを乗り越えられる強さも持っている!!」

 

『ブフフ…ただの綺麗事ダヨ…。』

 

立ち上がる闇影の言葉をジーフォーAは綺麗事だと言い一蹴する。しかし…闇影は言葉を続ける。

 

「綺麗事だとしても!異なる力を持ってしまったとしても!人は自分の気持ち次第でそんな運命も変える事を…乗り越える事が出来るんだっ!!」

 

「……。」

 

カオルは無言のまま何を思ったのか、腰に特殊ベルト「アンクポイント」を出現させながら闇影の隣に近付く。同時にライトブッカーから三枚のカードが闇影の手元に飛び出した。

 

『お前…何者ダネ…?』

 

「お節介教師な仮面ライダーだ!!宜しく!!変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

闇影は何時もの決め台詞を言うと、ディライトドライバーでディライトに変身した。そして…

 

「乗り越えて見せる…!!自分の運命を…!!変身!」

 

カオルが両腕を下にクロスさせると、アンクポイントから光を放ち彼の身体をマフラーを巻いた黒に近い緑色の飛蝗に、常時展開したV字のクロスホーンに赤い複眼と凄まじき形相をした、ライダーと言うより怪人に近い姿をしたこの世界の守護者「アナザーアギト」へと変身させた。

 

「さて、アンノウンに代わって輝く道へと導きますか!」

 

『あまり調子に乗るナヨ…!!現れよ、我が同胞達よ!!』

 

『グルルル…!!』

 

『ゲゲゲ…!!』

 

ディライトの言葉に勘に触ったジーフォーAは、再び体内から銀色のオクトパスロードとスクィッドロードを生み出し彼等を襲わせた。

 

『もう一度調理するまでさ!はいっ!やぁっ!せいっ!!』

 

『グガァッッ!!』

 

『たぁっ!せやっ!むんっ!!』

 

『ゲガァッッ!!』

 

ディライトはライトブッカーで素早くオクトパスRを斬り付けていき、アナザーアギトも目にも止まらぬ速度でパンチとキックをスクィッドRに繰り出した。

 

『むぅぅぅぅん…!!はあっ!!』

 

『『グガアァァァァッッッッ!!!!』』

 

二体のアンノウンを背後に追いやると、アナザーアギトは腕をクロスさせながら足元に緑色のアギトの紋章を輝かせると口のクラッシャーを開き鋭い歯牙を露出させるとジャンプし、飛び蹴りをする「アサルトキック」でアンノウン達を撃破した。

 

『おのれ…!!シェルギガント!!』

 

『『うわぁぁっっ!!』』

 

これに怒りを感じたジーフォーAは、シェルギガントをディライトとアナザーアギトに放ち出した。

 

『もう一人のアギトもそこのオレンジもヒト共も…全て始末してヤル!!』

 

『そうはいかん…皆が死ぬと治療が出来なくなり私が儲からなくなるからな…。』

 

『ははは…まあ理由は兎も角、人を見下すお前に人が力を乗り越える所を見せてやる!!』

 

【FINAL-FORM-RIDE…A・A・A・ANOTHER-AGITO!】

 

『カオル先生、力を抜いて下さいよ。ほっ!!』

 

『何…だぁぁっっ!!?』

 

ディライトがアナザーアギトの背中に手を当てると、アナザーアギトは自身の専用バイク「ダークホッパー」をスライダー状にした「アナザーアギトホッパー」へとFFRした。

 

「アッチョンプリケ〜!!ちぇ、ちぇ、ちぇ、ちぇんちぇいがへんけいしちゃってゆ〜っっっっ!!」

 

『よっ…と!!行きますよ!!』

 

ディライトがAホッパーに乗ると、それは突然動き出し低空を滑走させながらライトブッカー・ガンモードでジーフォーAに連射した。

 

『グワワワ!!何のつもりか知らないけど…そんな攻撃じゃ我輩は倒せなイヨ!!シェルギガント!!』

 

ジーフォーAは三度シェルギガントを使い、ディライトとAホッパーを破壊しようとするが…

 

『よっ!ほっ!はいっ!!』

 

まるでスケートボードの様に軽快な動きを取り、シェルギガントのミサイルを全て回避した。そして…

 

『止めと行きますか!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…A・A・A・ANOTHER-AGITO!】

 

『これで…終わりだぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

『ギィエェェェェッッッッ!!!!』

 

ディライトがFARを発動させると、Aホッパーは一度地に着陸させると飛蝗の様に上空を垂直に飛び上がり、そこからジーフォーAに向けて正面に緑色のアギトの紋章を浮かばせ、周囲に緑色の風を纏いながら超スピードで一直線に滑走し、ディライトのライトブッカー・ソードモードで一閃するFAR「ディライトゲイル」でジーフォーAの赤い単眼を斬り裂き大爆破させた…。が…

 

『あれ?…って!!うわっ!わっ!わっ!わっ!!わあぁぁぁぁっっっっ!!!!ぎゃべっ!!』

 

その直後にAホッパーが急にストップしアナザーアギトの姿に戻ってしまった為、ディライトはそのまま勢い良く投げ出され、廃工場近くの電柱に顔面を激突してしまった。

 

『痛っつ〜〜!!も…戻るなら戻るって言って下さいよぉっ!!』

 

『す、すまん…。』

 

 

「えっ…ちぇんちぇい…いま…なんて…?」

 

「今言った通りだ。アギトの力を持っているなら、お前は今までみたく私と一緒について来いと言ったんだ。…嫌か?」

 

「ううん…!!やったぁぁぁぁっっっっ!!!!ちぇんちぇいといっちょにいられゆ!!」

 

「良かったねマナちゃん!…それで、これからも旅を?」

 

「あぁ。まだ私達の様にアギトの力を持っている人達がいるからな…その人達が苦しんでいたら助けようと思って…な。だがその前に、あの青年を治療してからだがな。」

 

カオルは、G4システムの影響で意識を失ったマコトの治療を終えてから自分達と同じ力を持ち苦しむ人々を救う為の旅をするようだ。

 

「そうですか…。貴方達なら必ず救えますよ!!力を乗り越えた貴方達なら!!」

 

「ふ…お前さんも自分の使命とやらを全うして行けよ。そろそろ行くぞ、マナ!」

 

「あ〜らまんちゅ〜〜♪」

 

 

 

「あらあら…今回も宝は手に入らず終いか…。」

 

「自分の運命を乗り越える…か…。」

 

G4システムが不意になってしまい今回も傍観のみだった巡と周は、二人の様子を陰から見ていた。周は、何故かやや暗い表情で呟き…

 

 

 

―やめて…やめてよ…!!――!!

 

―あんたなんか――!!

 

―やめろぉぉぉぉっっっっ!!!!

 

 

 

「……。」

 

「周?」

 

「…ん?いんや、何でもねぇ。さ〜て!さっさと次の世界の宝を目指そうぜ!!」

 

何かを思い出していた周は、巡の言葉にハッとなり次の世界の宝を目指すと言ってその場を後にした…。

 

 

 

「マナちゃん、カオル先生と一緒に旅が出来て良かったね。」

 

影魅璃は、満面の笑みを浮かべて走るマナとそれを後ろから小さな笑みを浮かべたカオルが旅をする絵が描かれたキャンバスを見て感激していた。

 

「ええ。苦難を乗り越えたからこそ絆が強まったんでしょう…。さっ、晩御飯にしましょう!今日は魚介類のバーベキューだよ!!」

 

「ぅおほっ!!旨ぇぇっっ!!」

 

「んん〜♪ホント美味しい!!どう、ツルギちゃん?」

 

「はい…美味しいです…。」

 

「いや〜良かった!『無料』で手に入った食材だから食費が節約出来て良かった良かった!!」

 

「「「!!!?」」」

 

闇影の食材が『無料』だと言う言葉を聞き、身を凍らせる三人。

 

「おい闇影…もしかしてこの食材…!!」

 

「ん?あぁ、丁度戦いが終わった後に何体か蛸や烏賊があったからそれを拾って…」

 

「「「ぶーーーーっっっっ!!!!」」」

 

コウイチの質問に闇影はついベラベラと真相を語り、それを聞いた三人は口に含んだ具を吹き出した。(因みに影魅璃は平然と食べている)そして顔を険しくし…

 

「闇影ェェッッ!!」

 

「先生ェェッッ!!」

 

「闇影さん…やっぱり貴方を抹殺します!!」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ。三人共顔が恐い…ってうわああぁっっ!!」

 

「とんでもない事」をやらかした闇影は黒深子・コウイチ・ツルギに追い回されていく。すると、次の世界を表すキャンバスには山の背景の真ん中に全身真っ黒の鍬形の戦士が立っている絵が描かれた。しかし、その戦士は点滅するかの様に消えたり現れたりしていた。

 

「最後は…クウガの世界か…ぎゃべっ!!?」

 

闇影は次の、最後の世界を確認した直後に、コウイチ達からの制裁を受けて地に沈んでいった…。




最後は消去法でクウガです!!

その変身者は意外な人物です!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第19導 崩壊する黒きクウガ

最後のダークライダー編!!

今回はアイツがメインです。


―お休処・煌星(きらめきぼし)

 

 

「何でこの絵のクウガが消えたり現れたりしてるんだろう…?」

 

闇影は真剣な顔付きで、この「アメイジングクウガの世界」を表わすキャンバスの絵の黒いクウガが点滅するかの如く、現れたり消えたりすると言う奇妙な現象を見て考え込んでいる。

 

「その格好で考え込んでもあまり説得力が無いよ先生。」

 

「…ん?そうか?」

 

「「あぁ。/はい。」」

 

黒深子のツッコミに反応する闇影に、コウイチとツルギも同時に頷く。何故なら闇影が白い登山用の帽子に緑茶色の登山用ジャケットに茶色の登山靴、そして背負ってある大きなリュックサックと「登山家」の格好をしているからだった。

 

「まぁそれは兎も角、登山がてらにクウガを探すよ。」

 

「お前って奴は…。」

 

と、格好をさらっと流し登山しながらクウガを探すと言う闇影の呑気な言葉に頭を項垂れ呆れるコウイチ。そこに一人の女性客が入って来た。

 

「はい、いらっしゃい。」

 

「これを売ってくれ。」

 

「はいどうぞ。ありがとうござ…あら、貴女は…?」

 

商品を渡し客の顔を見た影魅璃は、その客に見覚えがあるかの様な反応をした。それを裏迄聞こえた闇影達が様子を伺い、店の表に現れた。

 

「どうしたんですか?影魅璃さ…えっ…!?」

 

「お母さん、何かあった…の…!?」

 

「う…嘘だろ…!?あんたは…!?」

 

闇影・黒深子・コウイチの三人がその女性客を見ると、信じられないと言わんばかりに驚いた表情をした。それもその筈、その客が…

 

「「ミホさんっ!!?」」

 

「ミホ…!!?」

 

白いキャップ帽を被った茶髪のポニーテールに鋭いツリ目が特徴の、コウイチのいた「リュウガの世界」でこの世を去った羽鳥ミホ/仮面ライダーファムに瓜二つだからである…。

 

「…ん?」

 

「…誰ですか?」

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

「誰かと間違ってねぇか?オレの名前は才牙(さいが)ソラ。ミホじゃねぇよ。」

 

「え…ミホじゃない…?あっ!良く見たら前髪に黒いメッシュがある…!!」

 

ミホと瓜二つの登山家・ソラの名前を聞きコウイチは、ミホには無かった前髪の黒いメッシュや言葉遣いで、他人の空似だと言う事に気付く。

 

「違うって解ったか?そろそろ店出たいんだけどなオレ。じゃあな。」

 

他人の空似だと理解されたと分かったソラは時間を少し取られた為か、顔を少ししかめながら買った商品をリュックの中に入れると店を後にした。

 

「……。」

 

「ちょっと違う部分があったけど、それ以外は全部ミホさんだったよね…?」

 

「うん…顔だけじゃなく声まで一緒だったわね…。」

 

「あの…そのミホさんってコウイチさんのお知り合いですか?」

 

闇影と黒深子がソラの外見について話していると、ツルギがミホの事について尋ねて来た。

 

「あぁそっか、ツルギちゃんは知らないんだったね。ミホさんって人はね…」

 

闇影は、事情を知らないツルギにミホの事を話した。彼女はコウイチと同じ「リュウガの世界」の住人であり、行方不明になった当時仮面ライダー龍騎だったコウイチを捜す為「ライダーロワイアル」に参加し仮面ライダーファムとなった。その最中に闇影達に出会い、コウイチとも再会出来たのだが、龍騎の肉体を乗っ取ったスフィアミラージュにより若くしてその生涯を閉ざされてしまった事を…。

 

「そんな事があったんですか…。」

 

「ミホさんは私と先生にとっても忘れられない人だったからね…。」

 

「コウイチを除けば最初に会ったライダーだったからね…。」

 

闇影と黒深子の言う様に、ミホはコウイチ…リュウガを除けば二人が「最初に出会ったライダー」である為、彼等にとっても印象に残る人物であり、それ故ソラはミホを強く思い出させる存在であるのだ。すると…

 

「……っ!!」

 

「コウイチ、何処行くんだ?」

 

「俺、ちょっと行って来る!!」

 

「えっ!?ちょっと待て!コウイチ!!」

 

暫く呆然と立っていたコウイチは闇影の制止を余所に、突然駆け出して店を後にした。おそらくあのソラという女性を追いかけに出たのだろう。

 

「やっぱり、さっきの人が気になってたのよね…。」

 

「あぁ…。」

 

 

 

「よっ、そこのお姉さ〜ん♪リュック重たいでしょ〜?俺が持ってやるよ。」

 

「結構だ。それにオレは今まで何度も山登りしてるから平気だ。」

 

「んな冷たい事言うなって。俺等も君と同じ登山家の仲間じゃないか〜♪んで一緒に頂上に着いたら『絶頂に登る』気分に…」

 

二人の若い登山家の男達が、登山中のソラに馴れ馴れしい口調や態度で接する、所謂軟派をしてきた。そして男の一人がソラの肩に手をやり、下まで滑る様に身体をなぞり尻を撫でながら下心を丸出しにしていると…

 

「…ふんっ!!」

 

「ィギャアァァッッ!!!?」

 

当然不快感を感じたソラは、その男の股間に力一杯怒りの蹴りを入れた。大声を上げて倒れた男は、激痛が走る「急所」を押さえながら情けない表情で悶絶していた。

 

「こ、このアマ…!!優しくしてりゃ付け上がりやがっ…!!」

 

もう一人の男は、その行動に激昂してソラを無理矢理襲おうとしたが…

 

「せいっ!!」

 

彼女は突然、近くの太い大木に拳を叩き込むと大木は叩き込まれた部分からポッキリ折れ、ドッスンと大きな音を立てて倒れた。

 

「て…ヒィィッッ!?」

 

「オレをどんな気分にするんだって?」

 

「「すっ!!すいませんっしたぁぁっっ!!」」

 

目以外満面の笑みを浮かべるソラに、男達は彼女の超人的な強さに戦き土下座をしながら蛙の様に跳び跳ねて謝罪しつつ逃げて行った。

 

「ったく…!あんな奴等も登山家だと思うと情けな…「お〜いっ!!」ってまた…!!」

 

今の男達に憤っていた時、コウイチが後ろから自分を追って走って来た。しかし、今最悪のタイミングである事を彼は知らなかった…。

 

「…しつこいんだっ…よぉっ!!」

 

「グィギャアァァァァッッッッ!!!?」

 

先程の男達が戻って来たのだと思い、ソラはさっき以上の怒りを籠めてコウイチの「急所」に蹴りを入れた。当然そんな事を知る由も無い彼は、その激痛に悶絶し倒れる運命に遭ったのだった…。

 

 

 

「す、すまない…。てっきりさっきの奴等かと思ってつい…」

 

「つっ、使い物にならなくなったらどうするんですか〜〜!!(この、思い込んだら直ぐ行動に移す所まで似てるとはなぁ…。)」

 

勘違いで股間を蹴られ涙目で「急所」を擦るコウイチに謝罪するソラ。コウイチは、この猪突猛進な性格までミホに似ていると心中呟いていた。

 

「んで、オレに何か用か?言っとくが万引きなんてしてねぇからな。」

 

「あぁいや、そんなんじゃなくて…!!ちょっとあんたが俺の知り合いに似てるから…気になるっつーか何つーか…ね…。///」

 

ソラに何の用事かを尋ねられたコウイチは、頭を掻きながらミホに似ていて気になる、と少し照れながら言い淀んでいた。しかし…

 

「悪いが軟派だったらお断りだ。じゃあな。」

 

「あっ!!待ってくれ!!」

 

コウイチの言葉が軟派だと思ったソラは、素っ気ない態度でその場を離れた。それに手を伸ばし待つように呼び止めるコウイチに…

 

「…後一つだけ…二度とオレなんかに構うな…。」

 

「…えっ…?それってどういう…ってお〜い!!待ってくれって〜!!」

 

ソラの意味深な忠告に「?」のマークを浮かべるコウイチは、そのまま無言で去って行く彼女を再び追って行った。

 

 

一方闇影達は、クウガの情報収集の為麓街に向かうべく山を降りていた。

 

 

「コウイチの事も気になるけど、俺達の目的はクウガに会う事だ。先ずは麓まで降りてみよう。」

 

「ねぇ…良いの先生?コウイチの事放っておいて。」

 

「ん?あぁ、良いんじゃないか?あいつがそうしたいならあいつの思う様に動いたら良いさ。」

 

「そんな無責任な…。」

 

黒深子はコウイチの行動について闇影に尋ねるが、本人の自由に動けばいいと言う。ツルギの指摘する様に些か無責任な発言をしているが…

 

「…あいつはずっと気にしてるのかもしれないな…ミホさんを守れなかった事を…。だからあのソラさんって人を見て、居ても立ってもいられなかったんだろうね…。」

 

「「……。」」

 

闇影は、コウイチがソラの事を気にかけていたのは単にミホに似ているだけでは無く、スフィアミラージュから彼女を守りきれなかった事を悔いていた為だと、哀しげな表情で語った。それを聞き目を伏せる黒深子とツルギ。その時…

 

『『オォォッッ!!』』

 

『『ゲェアァァッッ!!』』

 

「「「!!!?」」」」

 

黒い全身にボロボロの布を巻いた唸り声を上げる異形の四人は、自身の爪や持っている武器で互いに争っていた。

 

「先生!あれって確か、グロンギ…だよね?」

 

「うん…グロンギに間違い無いんだけど…」

 

黒深子が指摘する様に、あの四人…否、四体の異形はこの世界の怪人「グロンギ」なのだが、闇影は何故か眉をひそめていた。

 

「どういう事だ…!?グロンギ同士が殺し合ってる…!!まさかこれが『ゲゲル』のルールなのか…?」

 

ゲゲル、それはグロンギ達が自分の階級を上げる為に「定めた期間内に設定した数の人間を殺害する」と言う、一種の殺人ゲームである。しかし、彼等は何故か味方同士で殺し合っている為、闇影はそれを疑問に感じていた。

 

『ガギヅサパバギロボザ?(あいつ等は何者だ?)』

 

『ゲゲルゾリサセダ…ボゾザベダ!!(ゲゲルを見られた…殺さねば!!)』

 

グロンギ達は闇影達の存在に気付き、自分達のゲゲルを見られてしまい口封じに始末するべく彼等に襲い掛かってきた。

 

「俺達が危ないかもしれないな…。変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

闇影はグロンギ達の言葉が自分達を襲う物だと悟り、ディライトに変身した。

 

「私も行きます…!変身!」

 

【HENSHIN!】

 

ツルギも戦うべく、何処からかサソードゼクターを呼び出しサソードヤイバーにセットしサソード・マスクドフォームに変身した。

 

『黒深子は安全な所に!!ツルギちゃん、半分は任せるよ!』

 

『分かりました!』

 

『さて、新しい力を使ってみますか!』

 

【SHADOW-RIDE…ANOTHER-AGITO!】

 

ディライトは黒深子に安全な場所に行く様に、サソードMFには二体のグロンギを任す様に指示すると自身の影をアナザーアギトにシャドウライドさせた。

 

『バギ!?ゴセザクウガバ!?(何!?それはクウガか!?)』

 

『またガギゴギ言って…。行くぞ!!ふっ!たぁっ!はいっ!!』

 

『グォッ!?』

 

Sアナザーアギトをクウガだと思い込むグロンギ達を尻目に、ディライトは彼(?)と共に強力なパンチとキックを繰り出した。

 

『やっ!はっ!せいっ!!』

 

『グゥッ…!!』

 

『ヂョグギギボスバ!!(調子に乗るな!!)』

 

一方サソードMFは、サソードヤイバーでグロンギ達を斬り付けて背後まで追いやった。しかしそれに怒ったグロンギの一体が持っている武器で彼女を攻撃しようと突撃したが…

 

『キャストオフ!』

 

【CAST-OFF!】

 

『『グアァァッッ!!』』

 

【CHANGE-SCORPION!】

 

サソードゼクターを操作してキャストオフをし、弾き飛ばしたアーマーを直撃させてライダーフォームとなった。

 

『クロックデュアル!』

 

【CLOCK-UP!】

 

サソードはクロックデュアルを発動し、超スピードでグロンギ達に近付き、そして…

 

『ライダースラッシュ…!!はぁっ!!』

 

【RIDER-SLASH!】

 

『『グアァァァァッッッッ!!!!』』

 

その速度のままダッシュしながらライダースラッシュを発動しグロンギ二体を一気に斬り裂いた。サソードがクロックアップ空間から出た直後、グロンギ達は斜めに斬れて黒い煙を上げ、爆発した。

 

『俺も止めと行きますか!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…A・A・A・ANOTHER-AGITO!】

 

『はあぁぁ…はぁっっ!!』

 

『『グガアァァァァッッッッ!!!!』』

 

ディライトも止めを刺すべくFARを発動し、Sアナザーアギトと共に緑と黒のアギトの紋章を足元に出してジャンプをし「アサルトキック」を叩き付け、残りの二体を爆発させた。

 

「ふぅ…何とか終わりましたね…。」

 

「うん…でも何でグロンギ達は、味方同士で殺し合ってたんだろう…?」

 

戦いが終わり変身を解除した二人。しかし闇影は、未だに先程のグロンギ達のゲゲルの内容について腑に落ちないでいた。

 

「ともかく、早くクウガの情報を集めに行こ…!!えっ!?」

 

黒深子が闇影とツルギの下へ近付こうとした時、灰色のオーロラが彼女を包み込み別の空間へと移動させた。

 

 

 

「また此処…?って事は…!!」

 

黒深子はこの全ての時間が止まった空間に連れられた事がある為、誰が此処に移動させたか見当が付いていた。その人物とは…

 

「白石黒深子…もう一度だけ言う、ディライトから身を引け…!!さもなくばお前も死ぬぞ…!!」

 

「紅蓮さん…どういう事なの!?どうして先生の邪魔ばかりするの!?」

 

予想通り紅蓮の仕業だった。そして再度闇影から離れる様言い出した。しかし黒深子は、逆に何故何度も闇影の邪魔をするのかを尋ねた。

 

「お前も見ただろう?この世界のグロンギが殺し合っている光景を。本来はこの様な事は決して有り得ない…。それだけじゃない、今までの本来起こり得ない現象がディライトが辿った世界で起きていた。これらは全て奴が現れたせいなんだ。だから…「…して…」?」

 

紅蓮は先程の異質なゲゲルの原因や、今までの世界で起きた変わった現象が闇影が現れたせいだと淡々と語る。再三彼から手を引く様言う紅蓮の言葉に黒深子は…

 

「いい加減にして!!だからって何で全部先生のせいなの!?仮にそれが本当だとしても先生はそれを全部救って来た!!これ以上先生を死神だとか灰塵者とか悪く言うと…!!」

 

激昂し、今まで闇影はそれらの世界の異常を全て救って来たのだと声を荒げて訴え、目を灰色にし顔にオルフェノクの紋章を浮かばせ…

 

『…殺すわよ…!?』

 

スワンオルフェノクに変化し、細剣を紅蓮の首に突き付けて「殺す」と恫喝した。

 

「…ならば勝手に信じるがいい…死んで後悔する時まで…な…。」

 

『まっ、待ちなさいよっ!!』

 

尚も氷の様に冷たい表情の紅蓮は、スワンOの説得を諦め出現した灰色のオーロラを潜りその場から消えて行った。そしてスワンOもそれに包み込まれていった。

 

 

 

「…こ…!!深子…!!…黒深子!!」

 

「はっ!?せ、先生…ツルギちゃん…。」

 

黒深子が気が付くと、自分の肩を必死に揺さぶる闇影とツルギの姿が眼前にあった。いつの間にかあの空間から脱出していたのだ。

 

「大丈夫ですか?」

 

「はぁ…。急に意識が飛んだ様に寝ちゃったからびっくりしたよ…。」

 

「(えっ…?私また眠ってて…!?)う、ううん!?大丈夫。ごめんなさい、びっくりさせて。さっ、早く麓まで降りよ?」

 

二人に心配をかけた事を謝った黒深子は、今の事は話さず麓に降りるべく先頭を歩いた。

 

「(先生は死神でも、灰塵者でもない…!!私、先生の事信じる…!!)」

 

 

 

一方コウイチは、ソラをしつこく追っていたのだが途中で見失ってしまい軽く迷子になってしまっていた。

 

「くそっ…見失っちまったなぁ…。ん?あれは…?」

 

「……♪」

 

コウイチが見た物、それは近くに滝がある川原で水浴びをしているソラだった。しかも一糸纏わぬ姿で…。

 

「(うおおおおっっっっ!!!?まさかのラッキータイム発動!!凄ぇ良い身体してんなぁ…///)」

 

と、物陰からソラの山登りで鍛えられたスタイルの良い肢体をエロい目でこそこそ見るコウイチ。しかし、そんな愚か者に今天罰が下る…。

 

「ん?うわぁぁぁっっ!!雀蜂だっ!!って…うわっわっわっ…!!ああああぁぁぁぁっっっっ!!!」

 

コウイチの眼前に一匹のザビー…ではなく雀蜂が飛び交いそれに驚き仰け反ると、土に突起した石につまづきそのまま倒れて川原まで転がっていった。

 

「痛つつ…ん?これは…?…!!」

 

倒れたコウイチは何故か女性物の下着を握っており、それと同時に背後からただならぬ殺気を感じ、恐る恐る振り向くと…

 

「何をしているのかな?」

 

一糸纏わぬ姿で満面の笑みを浮かべながら仁王立ちをしたソラがいた。片手に大岩を持った状態で…。この事態にコウイチは…

 

「あっ、いや!これはその……洗濯サービスです☆」

 

「んなサービスなんて……いるかぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

「ま!待てっ!!話せば分かっ…!!グヮギャアァァァァッッッッ!!!!」

 

当然そんな言い訳が通じる筈も無く、持っていた大岩を不届き者(コウイチ)に容赦無く降り降ろした。さらばコウイチよ、南無…。

 

「生きとるわっ!!」

 

 

 

「全くしつこい奴だな…お前。」

 

「ずびばぜん…。」

 

惜しくも生きていたコウイチは事情を説明するも、覗きの罰として夕飯のカレーを作らされ顔に包帯を巻きミイラの様な状態でそれを一緒に食べ現在に至る。

 

「んん?このカレー美味いじゃねぇか!」

 

「そっか!そりゃ光栄。」

 

ソラはコウイチの作ったカレーが美味いと正直に褒め、コウイチもそれが嬉しく笑顔で返した。

 

「なぁ…昼間言ってたあれ、『オレになんか構うな』ってどういう意味だ?」

 

「ん?そりゃ、お前の様な変態に近付くなって意味で…」

 

「いやそうじゃなくて、何で『オレなんか』って言ったんだよ?」

 

コウイチは、ソラの「自分なんかに構うな」と言う、何処か彼女自身を自虐的に扱った言葉が気になり尋ねた。するとソラは、少し間を置いて口を開いた…。

 

「もし…もし自分が他人と違う存在だったら…お前はどうする…?」

 

「…えっ…?」

 

急に悲しげな表情で語り掛けるソラの言葉に、コウイチは目を見開いた。

 

「いや…何でもない!!忘れてくれ。それより、お前の話を聞かせてくれ。お前の旅の話や、そのミホって人の話を…。」

 

「お、おぅ…いいぜ。」

 

今の話を忘れる様言ったソラは、コウイチにこれまでの旅の話や、ミホの話をするよう頼んだ。コウイチはそれに応え笑顔で語り出した。それを聞き、笑みを浮かべるソラ。そんな他愛無い楽しい会話は延々と夜まで続いた…。

 

 

―コウイチ…お前は…生きろ…!自分の夢を…本当に叶えたい夢の為に生きるんだ!

 

―私の為…に戦っていたんだな…あ…りがとう…。

 

―ミ…ミホォォォォッッッッ!!!!

 

 

 

「…はっ!!夢か…。何で今更あの夢を…。」

 

コウイチは「あの日」の夢から目を覚まし、寝汗を拭い溜め息をついた。「ミホを守れなかったあの日」の夢を…。

 

「…って、もう朝になったのかよ…。ってあれ?ソラは…?」

 

今の時間が朝だと気付いたコウイチは、辺りを見渡すとソラが近くに建てていた筈のテントと彼女の姿がそこに無かった。

 

「…!!しまった!!どうりでやけに大人しかった訳だ!!」

 

ソラの行動にしてやられたコウイチは、慌てて彼女を探しに走り出した。

 

 

 

「ふぅ…ちょっと気が引けるが何とかあいつから撒いたぜ…。」

 

コウイチから身を離す事に成功したソラは、急ぎ足で山を降りようとした。若干罪悪感を感じるが…。

 

「…オレみたいな奴に彼処まで構う奴はあいつが初めてだったな…。」

 

少し苦笑いをし、旅の話をした時のコウイチの笑顔を思い出し口が少し綻んでいたその時…

 

「!!誰だっ!!」

 

「あら、気付かれちゃったわね♪」

 

「そう恐い顔をしなさんなって。美人が台無しだぜ?」

 

「ソラ〜!!やっと見つけ…巡さんに戴問さん!?何であんた等が此処に?」

 

何らかの気配を感じたソラが険しい顔付きで叫ぶと、木の陰から巡と周が現れた。そこへコウイチも追い付いた。

 

「あら、コウイチ君もいたのね。それはそうと…単刀直入に言うわ。貴女の力を私達に差し出して。…クウガの力を。」

 

「!!ソラが…クウガ…!?」

 

巡達の目的、それはソラの持つクウガの力である。彼女をクウガだと言う巡の言葉にコウイチは驚きを隠せないでいた…。

 

「心配しなさんな。このカードで力を抜き取るだけで命までは取らねぇよ。」

 

「何処で嗅ぎ付けた知らねぇけど、『はいそうですか』と言って渡す程…人間出来ちゃいねぇんだよっ!!」

 

スティールライドのカードをちらつかせて軽口を叩く周に激昂したソラは、腰に中心に黒い「霊石アマダム」が埋め込まれた特殊ベルト「アークル」を出現させ、変身ポーズを取り…

 

「変身!」

 

アークルの両サイドに手を当てると、ソラは両足両手首に金色の装飾品「マイティアンクレット」が装備された黒い鎧とスーツに包まれた、鍬形の様な金色の角をした黒い複眼の戦士「仮面ライダークウガ アメイジングマイティ」に変身した。

 

「本当に…クウガだったのか…!!」

 

「やれやれ…女性相手に力づくってのは気が引けるんだけどな…。」

 

「この世界はもう手遅れなの…だからそうなる前に貴女のクウガの力を頂くわ!!」

 

「手遅れ…?」

 

「「変身!!」」

 

【KAMEN-RIDE…DITHIEF!】

 

【KAMEN-RIDE…DISTEAL!】

 

巡の「この世界が手遅れ」と言う言葉が気になるコウイチを余所に、二人はディシーフとディスティールに変身した。

 

『ここは鍬形バトルと行きましょ♪』

 

【KAMEN-RIDE…GATTACK!】

 

ディシーフはAクウガに対抗する為か、赤い複眼をした青い鍬形の戦士、戦いの神こと「仮面ライダーガタック ライダーフォーム」にカメンライドし…

 

『なら、こいつだな♪』

 

【KAIZIN-RIDE…GIRAFFA-UNDEAD!】

 

ディスティールは「ブレイドの世界」や「カリスの世界」の怪人・鋏の様な双剣を持った、純金の体色のギラファノコギリクワガタを模したダイヤのカテゴリーKの上級アンデッド「ギラファアンデッド」を召喚した。

 

『お前等が何者か知らねぇけど…全部ぶっ飛ばしてやるっ!!』

 

『言葉遣いがなってないわね…。こっちも行くわよ!』

 

DガタックはAクウガの話し方に口出ししながら、ギラファUと共にディシーフドライバーを構えて彼女に向かって行った。

 

『グオォッ!?』

 

『中々やるわね…でも素手じゃあ厳しいんじゃない?せぇぇいっ!!』

 

『うあぁぁっっ!!』

 

向かってくるギラファUの攻撃をかわし、パンチとキックの連撃で背後まで吹っ飛ばしたがDガタックの攻撃まで防げず、ドライバーで斬り付けられからキックを受けて同じく背後まで吹っ飛ばされるAクウガ。

 

『くそっ…!!確かに素手はキツイよな…だったら…超変身!』

 

武器を持つ相手では此方が不利だと感じたAクウガは、地面にある木の棒を掴み身体から黒いエネルギーをスパークさせ、それを青い棒の武器「ライジングドラゴンロッド」に変化させ、青い複眼の「アメイジングドラゴン」へとフォームチェンジした。

 

『これなら…どうだぁぁっっ!!』

 

『グォォッッ!!』

 

『猪突猛進な娘を捻じ伏せるのも悪くないわね…はぁぁっっ!!』

 

ADクウガはライジングドラゴンロッドを片手にグルグル回転させながらギラファUとDガタックの正面へと走り出し、立ち上がったギラファUは双剣を構え、Dガタックもディシーフドライバーを構えて彼女の下へと走り出す。

 

『ガアァァッッ!!』

 

『勢いは良いが…スピードなら…!!ふっ!やっ!はっ!せぃや!!』

 

『ガッ!ギッ!グッ!ゲッ!ゴォッッ!?』

 

『きゃあぁぁっっ!!』

 

互いの武器で攻防繰り広げるが、ADクウガは俊敏力の高さを生かしてギラファUの双剣を弾き、がら空きになった腹にロッドを連続で打ち突け、Dガタックもろともそれを横に勢い良く振り回し、吹き飛ばした。

 

『くっ…!スピードならこっちも負けてないわよ!』

 

【ATTACK-RIDE…CLOCK-UP!】

 

『うあぁぁっっ!!』

 

Dガタックはカードを使い、クロックアップの連続ダッシュ攻撃でADクウガを翻弄した。

 

『だったら超感覚で行くぜっ!超変身!』

 

ADクウガはクロックアップの対抗手段に、Rドラゴンロッドを緑のボウガン「ライジングペガサスボウガン」に変化させ、緑の複眼の「アメイジングペガサス」に超変身し、感覚を研ぎ澄ました。

 

『…見えた!!そこだぁっ!!』

 

『きゃあぁぁっっ!!』

 

『巡ちゃん!!』

 

APクウガは超感覚でDガタックの居場所を特定し、ボウガンの一撃を見舞った。

 

『ペガサスは時間が短いからさっさと変わる!超変身!』

 

アメイジングペガサスは基本四フォーム中一番変身時間が短い為、APクウガは即座にRペガサスボウガンを紫の大剣「ライジングタイタンソード」に変化させ紫の複眼の「アメイジングタイタン」に超変身した。

 

『こっちも武器をチェンジするわ…!!』

 

【ATTACK-RIDE…GATTACK-DOUBLE-CALIBUR!】

 

DガタックはAクウガの連続フォームチェンジによる武器変換に合わせ、ガタックの専用武器である鍬形虫の顎を模した刃が特徴の二本の曲剣「ガタックダブルカリバー」を実体化、装備して走り出しATクウガのRタイタンソードと斬り結んだ。

 

『そのクウガの力、ずっと持ってたら何時か貴女に良くない事が起きるわ…だから降参してその力を私達に譲って。』

 

『そうだ。これは君だけでは無く、この世界の為でもあるんだ。だから…』

 

Dガタックは、斬り結びを行いながらATクウガに降伏する様促す。その口調は、何時もの宝を奪う時の余裕のそれとは違い、何処か真剣な物だった。ディスティールもまた同じ口調で彼女に忠告している。

 

『黙れっ!!何が世界だ、お前等の言う事なんか信じられるかっ!?こうなったらこれで一気に片付けてやるっ!!はあぁぁぁぁっっっっ…!!!!』

 

しかしATクウガは、彼等の言葉を腕をはらって一蹴し元のアメイジングマイティに戻り、凄まじいエネルギーをほど走らせながら右腕を斜めに構えた。周囲に黒いオーラを発生させながら…。

 

『まさかあれは、「究極の闇」に…!?マズイわ!!早くケリを付けないと…!!』

 

Aクウガの行動、それは今の力の十倍、いや本来の力にあたる「究極の闇」の異名を持った形態(フォーム)「アルティメットフォーム」に変化しようとしている。それに気付いたDガタックは不都合なのか、そうはさせじと彼女に向かって走り出した。が…

 

 

「変身!」

 

【SWORD-VENT】

 

コウイチはリュウガに変身し、直ぐ様ドラグバイザーにカードをベントインしドラグセイバーを召喚し、Aクウガの前に立ち、Dガタックのドライバーの攻撃を防いだ。

 

『邪魔しないでコウイチ君!早く彼女を止めないと危険だわ!!』

 

『どうかな…俺からしたらろくに事情を説明せず力を寄越せと言って襲ってくるあんた等の方が危険なんだけどな…!!』

 

【ATTACK-RIDE…LASER!】

 

『うわぁぁっっ!!』

 

『巡ちゃんの…いや、俺様達の邪魔をしてんじゃねぇよ!!おい!!』

 

Dガタックの邪魔をされた事に腹が立ったディスティールは、ディスティールレーザーをリュウガに放った。そして、ギラファUにAクウガの超変身を阻止する様命令する。

 

『グオォォッッ!!』

 

双剣を構えながら突進するギラファUはAクウガの懐にまで行き着くと、その刃が大きく振るわれる。その時、誰も予想がつかない事態が起きた…。

 

 

『!!なっ!!何だっ!?アマダムに罅が…!?』

 

アークルの中心にあるアマダムが、突然罅が入り出した。そして…

 

『『『『『!!!!?』』』』』

 

『う、嘘だろっ…!?アークルが壊れるなんて…!?』

 

リュウガの言う様に、アマダムが割れてアークルにも罅が入り完全に砕ける様に壊れてしまったのだ…。そしてそのまま変身が解除された。

 

「だっ…駄目…!!こ、こ、こ…壊れちまったらオレは…オレは…!!」

 

『危ない!!ソラ!!』

 

ギラファUの剣がソラの頭に振り下ろされ、もう回避不可能な所まで接近してきた上に、動揺している為リュウガの叫び声が届かないでいる。絶体絶命の時、彼女に異変が…!!

 

 

「ウオアァァァァッッッッ!!!!」

 

『ウギャアァァァァァッッッッ!!!!』

 

突然ソラの全身からドス黒い強力なエネルギーが爆発する様にほど走り、ギラファUを一瞬で消滅させてしまう。しかし、これで終わりでは無い…。

 

『何だ!?ソラの身体が…!?』

 

解かれた長い髪を靡かせながら、肌が黒に近い褐色になり、瞳が血の様に赤くなり目元に隈取りが現れ、爪も鋭くなり、頭に悪魔の様な角が生える等、人間とは異なった姿へと変貌するソラ。

 

「お〜いっ!!大丈夫ですかっ!?…って、コウイチ!巡!周!?お前達何で此処に…!?」

 

「ちょっと先生!あれって…!?」

 

「何なんですか…あれは…!?」

 

『あれは…本当にソラなのか…!?』

 

騒ぎを聞き付け現れた闇影・黒深子・ツルギは、今起きている現象を見てただ驚く事しか出来ず、リュウガもそれに答える余裕等全く無かった。

 

『やっぱり起きてしまったのね…「ハーフグロンギ」の力の暴走が…!!』

 

『ハーフ…グロンギ…!?』

 

 

 

―お休み処・煌星

 

 

「あら?クウガさんの絵が消えちゃった…?」

 

この世界を表すキャンバスの絵のAクウガは、影魅璃の言う様に消えて無くなってしまった。

 

 

 

「おのれディライトめ…!!この世界のクウガを焼き尽くしてしまうとは…!!」

 

上空から彼等を見下ろす紅蓮は、歯軋りをして闇影を睨み付け罵倒した。

Dガタックの言う「ハーフグロンギ」とは!?そして壊れてしまったクウガの力は!?果たして闇影達は、この世界の危機をどう光へ導くのか!?




てな訳で、アメイジングクウガはファム=ミホと瓜二つの女性ライダーでした!!

次回がダークライダー編最終回!!その結末は…!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第20導 陸牙

タイトルの意味は、読めば分かる…読めばな…。


アマダムが壊れ、クウガの力を失ったソラは、人間とはかけ離れた異形の姿と化しただ咆哮する…。

 

『ガァァァァァッッッッ!!!!』

 

『ソラッ!!』

 

「これは一体、どういう事なんだ…!?」

 

『言ったでしょ?彼女はハーフグロンギ…人間でもグロンギでも無い存在…。』

 

「ハーフ…グロンギ…?」

 

リュウガはソラの身を案じ、闇影は今の状況が何なのか皆目見当が付かないでいると、D(ディシーフ)ガタックはソラがハーフグロンギであると話す。闇影は聞き慣れない単語を聞き、眉をひそめた。

 

『オォォォォッッッッ!!!!』

 

『!!』

 

Gソラは、近くにある木に腕を殴り付けて折ってしまう。その脅威的な力に息を飲む闇影達。しかし…

 

『ウガッ…!?ウッ…グッ…グアァァァァッッッッ!!!!』

 

突然頭を抱えたGソラは、大声を上げながら苦しみ出す。そしてそのまま、山奥まで逃げる様に走り出しこの場から去って行った。

 

『待ってくれ!!ソラ…!!』

 

『はぁ…最悪の展開になっちまったなぁ…。』

 

「最悪の展開?一体どういう事だ?」

 

『ハーフグロンギは文字通り、人間とグロンギの混血児…彼等は強靭な肉体能力を持っていて普通のグロンギより強い存在…。だけどグロンギの血が暴走し易くて、自分以外の存在を殺すまで暴れて、手が付けられなくなるの…。』

 

『それがあんた等の目的と何の関係が…?』

 

Dガタックはハーフグロンギの詳細を語るが、リュウガはそれが彼等の目的とどう関係あるのかを尋ねた。すると彼女は間を空けて…

 

『先ず言っておくと…全てのライダーのいる世界に共通点が一つ、その世界のライダーが全て居なくなるとそれは消滅してしまう…。』

 

「「「『!!!!?』」」」

 

『無論この世界でただ一人のライダーであるクウガが消滅しちまえば、ここは消える…。』

 

「なっ、何言ってるんだ!?そんな事ある筈が無い!!もしそうなら俺達は当に死んでしまうじゃないか!!現に今…!!」

 

『そ。今はまだライダーである私達がいるから崩壊は免れている…。』

 

Dガタックとディスティールの話を聞き、闇影達は「信じられない」と言わんばかりに動揺し、愕然としている。彼等の話はまだ続く。

 

『だが逆に言えばライダーが、ライダーの力が消滅しなければ世界は滅ばない事になる…。ところが今の彼女がハーフグロンギの力が暴走寸前である事を知り、このままではそれによってクウガの力を破壊しちまうかもしれない…。そこで俺様達は、クウガを破壊せずに力だけを抜き取ってこの世界を「ライダーのいない世界」にする事にした…。』

 

彼等の目的、それはクウガを消さずに「力」のみを存在させて「ライダーのいない世界」にして崩壊を防ぐ事だった。

 

『でもあの子はそれに応じない上に、貴方が邪魔をしたせいでクウガの力は破壊してしまった…。こうなった以上、最後の手段を取るしか無いわ…。』

 

リュウガの介入のせいでそれが全て水泡と化した事を彼に指を差して訴えるDガタック。そして彼等は「最後の手段」を取る事にした。それは…

 

『…あの子を含めたこの世界全てのグロンギを抹殺する…。』

 

「「「『!!!!』」」」

 

『あの子にゃ罪は無いけど、世界が無くなっちまうよかマシ…『ざけんな…。』…って、は?』

 

何と、ハーフグロンギであるソラをも含めたこの世界のグロンギを抹殺する事だと言う。それを聞いたリュウガは静かに怒り…

 

『ふざけんなよっ!!ソラが何したってんだよっ!?世界救う為にあいつを殺すだと!?んな事死んでも納得出来っかよっ!!』

 

「落ち着けコウイチ!!周に当たっても仕方無いだろ!!」

 

当然そんな事に納得出来ないリュウガは、ディスティールの胸ぐらを掴んで激昂する。そんな彼の手を力づくで引き剥がし落ち着く様宥める闇影。

 

『ならどうするってんだ?このまま世界が消えちまっても良いのかよ!?あぁっ!?』

 

『くっ…!!ブラッカー!!』

 

『おっ…やる気か?だったらてめぇから片付けてやるか…。』

 

「止めろ二人共!!今争ってる場合じゃ…!!」

 

【ADVENT】

 

『グオォォッッン!!』

 

リュウガはアドベントカードをベントインすると、上空からドラグブラッカーが現れた。闇影は、リュウガとディスティールに争うのを止める様注意するが…

 

『ソラを探してくる…!!はぁっ!!行ってくれブラッカー!!』

 

『グオォォ…!!』

 

しかしリュウガはディスティールとは戦わず、ドラグブラッカーに飛び乗りソラを探す為上空を後にした…。

 

「おい、待てっ!!待つんだコウイチ!!」

 

『ちっ…!!勝手にしろ…!!』

 

『私達は私達でやらせて貰うわよ…。』

 

【【ATTACK-RIDE…WARP!】】

 

Dガタックとディスティールも、ワープのカードを使いその場から消えて行った…。

 

「コウイチ…。」

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

『(ソラ…。)』

 

上空を舞うドラグブラッカーの背中の上に立つリュウガは、ソラの身を案じながら彼女があの時言った意味深な言葉を思い返している…。

 

 

 

―もし…もし自分が他人と違う存在だったら…お前はどうする…?

 

 

 

『くそっ…!!んなの決まってるじゃねぇか…!!』

 

『グオォォッッン!!』

 

その言葉にどう答えるかを分かり切っているリュウガは、更に速度を上げて進んで行った…。

 

 

 

「まさかソラさんがハーフグロンギだったなんて…。」

 

「だからコウイチさんに構うなと言ってたんですね…。私もネオティブだからあの人の気持ちが少し分かるかもしれません…。」

 

「ツルギちゃん…。」

 

一先ず家に戻ろうとする闇影達。黒深子とツルギはその道中、ソラがハーフグロンギである事について話している。ツルギは自分も人間とワームの融合した存在・ネオティブである為、ソラの気持ちが少し分かると言う…。

 

「兎に角、今はソラさんを何とか救う方法を考えないとな…。手掛かりはハーフグロンギって情報だけ。どうすれば…。」

 

闇影はソラをどうにか救う方法を模索するが、手掛かりは彼女がハーフグロンギである事しか無く情報が不足している。そう嘆いていた時…

 

「…て…い…。」

 

「「!!?」」

 

「ついて…来い…。」

 

突然ツルギの瞳が光を失ったかの様になり、何かを呟きながら何処かへゆらりと歩き出した。

 

「えっ!?ツ、ツルギちゃん、どうしたの!?」

 

「解らない…後を追ってみよう!!」

 

ツルギの突然の異変に困惑する闇影と黒深子は、原因が解らないまま彼女の後を追いかけた。

 

 

 

―謎の洞窟

 

 

「……。」

 

「ツルギちゃん!!一体どうしたの急に…って、先生…?」

 

「待って!…君、ツルギちゃんじゃないね…?一体誰なんだ?」

 

見知らぬ洞窟に辿り着き棒の様に立っているツルギ(?)を見かけた黒深子は彼女に近付こうとするが、闇影が腕を横に伸ばしてそれを遮った。そして、怪訝な顔をして彼女に何者なのかを尋ねた。

 

『…突然すまないな…。ほんの少しだけこの娘の身体を借りるぞ…。』

 

「なっ、何!?ツルギちゃんの身体が光った…!?」

 

するとツルギ(?)の身体が全身を包み込む様に淡く光り出し、それが止むと赤いドレスを着た腰まで届く長い黒髪、鋭い目付きに、黒い口紅を塗った唇が特徴の女性に変化した…。

 

「我はン・クアマ・ゼラ…この世界の究極の闇『だった』存在であり、クウガ…才牙ソラの母だ…。」

 

「「!!?」」

 

謎の女性・クアマの正体は、嘗てのグロンギ達の王「究極の闇」であり、何とソラの母親であると言う。それを聞いた闇影と黒深子は愕然とした表情をした。

 

「貴女が…ソラさんのお母さん…!?」

 

「…我はグロンギ達の女王でありながら、先のクウガである男に惹かれ、そして結ばれ一人の幼子を儲けた…。」

 

「何だって!?彼女の父親もクウガ!?それって一体…!?」

 

「…話は十数年前に遡る…。当時クウガである男と我は、リントとグロンギの間に子供を儲けた大罪によりグロンギ達により命を狙われる事になった…。」

 

闇影の言葉に頷くクアマは、十数年前に何が起きたのかをゆっくりと話し出した…。

 

 

―十数年前

 

 

『はぁっ!せいっ!やぁっ!だりゃあっっ!!』

 

『グアァッ!!』

 

『消え去れ…はぁっ!!』

 

『『ウガアァァッッ!!』』

 

炎の様に赤い鎧と複眼に、金色の鍬形の角をした戦士「仮面ライダークウガ マイティフォーム」と悪魔の様な黒い角を生やし、外見もそれに近い姿をした赤い異形と、本来の姿をしたクアマ・グロンギ態は「人間とグロンギとの間に子供を産む」と言う大罪を犯した為、無数のグロンギ達に襲われており、それ達と戦っていた。

 

『本当に…キリが無い…!!』

 

『弱音を吐くな!ジョウ!!そんな事ではソラを守れんぞっ!!』

 

「頑張って、父さん!!」

 

あまりの数の多さに嘆くクウガMFの変身者・才牙ジョウに激を飛ばすクアマの言葉と、彼女の魔力による球体のバリアに包まれた幼いソラの声援を聞いた彼は…

 

『あぁごめんなソラ…お父さん頑張るからな!!はぁっ!!せぇいっ!!』

 

弱音を吐いた事をソラに向かって手を合わせて謝った後、サムズアップをしてグロンギ達に回し蹴りをした。

 

『ゴボセ…クウガギグサギシロソンキュグキョブンジャリレ…ゴソジデジャス…!!(おのれ…クウガに裏切り者の究極の闇め…殺してやる…!!)ズオォォッッ…!!』

 

『何だっ!?グロンギ達が一つになっていく…!?』

 

一体のグロンギが腕をクロスさせて力を溜め出すと、瀕死状態の者や現在生き残っている味方のグロンギ達が黒いオーラの様なエネルギーとなり、その一体の身体に取り込まれていく…。軈てそのグロンギは全身が黒くなった悪魔の様な異形の姿「シャドウ・イーヴィル」と化した…。

 

『何だこれは…!?グロンギにこんな能力は無かった筈だ…!!』

 

グロンギの頂点に立つクアマですら、その存在を知らず未知の存在であるSイーヴィルの禍々しさに息を飲んでいた。その時…

 

「アッグ…!?グッ!グッグウゥッ…!!グアァァァァッッッッ!!!!」

 

『『ソラ!!?』』

 

突然ソラが頭を抱えて苦しみ出し、身体から先程のグロンギの様に黒いオーラを放ってバリアを破壊し、茶色の髪が黒く染まり、悪魔の様な角を生やした異形の姿へと変貌した。更に…

 

『グオォォォォッッッッ……ハァッ!!』

 

『ゥグアァァッッ!!』

 

背中から悪魔の様な翼を生やし、空中まで翔んだGソラは、両腕の剣の様に鋭い爪でSイーヴィルを素早く斬り裂いた。そして…

 

『スゥゥゥゥ…ハアァァッッ!!』

 

『グィギャアァァァァッッッッ!!!!』

 

大きく息を吸い込むと、口から黒いレーザー砲の様な物を放ち、Sイーヴィルを一気に消滅させた。

 

『何て力だ…。』

 

『グゥ…ギッ!?』

 

『!!まずいっ!!我等の方に目を向けてきたぞっ!?』

 

『ジィヤアァァッッ!!』

 

『くっ…!!超変…!!』

 

クウガMFの呟きに反応したGソラは、視点を彼等に向けて超スピードで襲い掛かって来た。それに対してクウガMFは、防御力を上げる為にタイタンフォームに超変身しようとしたが…

 

『はっ…早い…!!』

 

『ジャアァァッッ!!』

 

予想以上のスピードで懐に近付かれた為超変身が間に合わず、Gソラの爪がクウガMFの腹を貫かれようとした…が…

 

『ウグゥッ…!?』

 

『クアマ!!「瞬間転移」を使ったのか…。』

 

何故か彼とクアマのいた場所が入れ替わり、彼女はGソラの爪により腹を貫かれていた…。

あの瞬間、クアマは自身の能力の一つ「瞬間転移」と言う自分と相手の場所を入れ替える能力を使い、クウガMFの代わりに刺されたのだ…。

 

『カ…カア…サン…!!』

 

『やっと…意識が戻ったんだな…じゃじゃ馬娘…め…ゴホッ!ゴホッ…!!』

 

『クアマ!!くそっ…俺は…家族一つも守れないのかよっ!!』

 

Gソラの意識が戻りつつあるのを確認し安心したクアマは、致命傷を受けた為口から黒い血を吐き出した。クウガMFは、家族を守れなかった自身の不甲斐無さに地面に拳を叩き付ける。

 

『クアマ…俺のクウガの力を抜き取って…この子に渡してくれないか…?』

 

『!!おい…どういう…つもりだ?』

 

『元々クウガとグロンギは似た存在だって、前に言ってたよな…?だから、このアークルの封印エネルギーを利用すればグロンギの力を上手く抑える事が出来るかもしれない…。』

 

クウガMFの提案、それは自身のクウガの力を抜き取りソラに与える事で、彼女の中にあるグロンギの血を制御する事が可能なのかもしれないと、二人に近付きながら語る。

 

『馬鹿を言うなっ!!お前…それが何を意味するのか解って言っているのか!?』

 

『解ってるさ…アークルはもう俺の身体の一部、心臓の様な物になっている…だからそれを抜いたら俺は…死ぬ…。けど…』

 

そう…。クウガの力を抜き取る事は、変身者であるジョウの死を意味する…。しかし、彼の顔に迷いが一切無かった。

 

『二人が命懸けで頑張っているのに、俺も命を懸けないでどうするんだっ!!このまま何もせず二人が苦しんでいるのをみすみす放っておく程人間出来ていないんだよっ!!』

 

クウガMFは既に覚悟を決めていた…。クウガとして、そして父親として身を削り我が子を救う覚悟を…。

 

『馬鹿…者がっ…!!我が全魔力を用いて、彼の者の力をこの娘…我が最愛の夫の間に産まれし我が最愛の娘…ソラに与えよ!!』

 

彼の強固な覚悟を見たクアマは、目から大量の涙の大粒を流しながら全魔力を籠めて魔術詠唱を唱えた。心から叫ぶ様に…。

 

 

 

―転!魔!譲!移!

 

 

「「……。」」

 

「…その後、我はそこで息絶えて肉体を失い、魂だけの存在のままソラを見届ける様になった…。」

 

話を聞き終えた闇影と黒深子は、悲しげな表情をしたまま言葉を失っている。

 

「だが…クウガの力も今や失ってしまったか…。こうなっては…『あれ』を止める者はもういない…『究極の闇』を越えし新たな闇…『禁断の闇』を止める者が…。」

 

「禁断の闇…!?それって一体…!?」

 

闇影は聞き慣れない言葉を聞き、眉をひそめ、クアマに尋ねた。しかし、彼女がそれに答える事は既に不可能だった。何故なら…

 

「クアマさんの身体が…光り出した!?」

 

「も…もう現世での実体化に限界(リミット)が来たか…!!最後に…頼む…!!ソラを…我が娘を救ってくれっ…!!」

 

ツルギに憑依、現世に実体化する時間に限界が来た事により、クアマの身体が光り始めた。そして、ソラを救う様に闇影達に頼むとクアマの姿は光と共に消え去っていき、ツルギはそのまま倒れ出した。

 

「ツルギちゃん!!」

 

「…大丈夫だ。気を失ってるだけだよ。」

 

「そう…。でもどうするの?これから。」

 

「…黒深子。ツルギちゃんを任せていいかな?先ずコウイチを探して来る。」

 

倒れたツルギを抱えた闇影は、コウイチを探す為黒深子に彼女を任せていいかを尋ねた。

 

「それは良いけど…場所判るの?」

 

「あいつとは随分一緒に居たから…粗方解るさ。行ってくる!!」

 

と、相も変わらず根拠の無い台詞を言いながら闇影は洞窟を後にして走り出した。が、その直前、足元に何かが光ったのでそれを拾った。

 

「ん?これは…?」

 

 

 

『何処だ…何処に居るんだソラ…!!』

 

一方リュウガは、未だソラを探すべくドラグブラッカーに乗って散策しているが、一向に見付からないでいた。

 

『コウイチ、少し落ち着けって。』

 

『んだよ闇影!?邪魔すんな……って、エェェッッ!?なっ!何で空を…!?』

 

突然横からいない筈のディライトが、某メガヒット漫画の戦闘馬鹿な主人公の如く空を舞い、横から肩を叩いてきたので心臓が飛び出す程びっくりしたが…

 

『…って、何だ…カリスの力を使ってただけか…。』

 

『一度降りろ。ソラさんの事について話がある…。』

 

彼の横に同じく空を舞うカリスを見て、リュウガは二人のそれが「ドラゴンフライフロート」の力を使った物だと知り、胸を撫で下ろして安心した。

 

 

 

『はぁっ!やぁっ!せぇいっ!!』

 

『オラオラオラァッ!!』

 

『『グギャアァァッッ!!』』

 

一方ディシーフとディスティールは、この世界のグロンギ達を全て倒すべく無数のそれと戦っており、その数は今や十数人まで減っていた。

 

『残り少なくなってきたし、そろそろ仕上げと行きましょ♪』

 

『だな。』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DI・DI・DI・DITHIEF!】

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DI・DI・DI・DISTEAL!】

 

『はあぁぁ…せいっ!!』

 

『光のシャワーを…受けてみな!!』

 

『『グィギャアァァァァッッッッ!!!!』』

 

ディシーフとディスティールは、ディメンジョンスライサーの赤い斬撃とディメンジョンスコールの水色のレーザーの雨で十数体のグロンギ達を一気に殲滅させた。

 

『ふぅ…宝以外の事で動くなんて…私達もヤキが回ったわね…。』

 

『同感。まっ、それも悪くは無いけどな…って、何だあれは…!?』

 

『黒い煙が…一つに集まっている…?』

 

戦闘を終えた二人が愚痴を溢していると、グロンギを倒した場所から黒い煙が天に上り一つに集まっていると言う奇妙な現象が起きていた。そしてそれは、雲の様に何処かへ流れて行った…。

 

『何だか…嫌な予感がするわね…。』

 

『同感…。行ってみるしかねぇよな、これ…。』

 

 

 

「……と言う事があったんだ…。」

 

「マジかよ……!!」

 

一方、クアマが先程聞いた話を闇影から聞いたコウイチは、愕然とした表情をした。そして…

 

「……っ!!」

 

「おい待て!どうするつもりだ!?」

 

「決まってるだろ!!もう一度ソラを探すんだよ!!」

 

「だから落ち着けって。」

 

「落ち着いていられるかよっ!!俺は…!!って、これは…?」

 

再度ソラを探そうとするコウイチに落ち着く様宥め、引き止めた闇影は、先程洞窟で拾った物を彼に手渡した。

 

「もしかしたら、それがソラさんを止める切欠になるかもしれない…。」

 

「闇影…お前…。」

 

「行って来い!!そして今度こそ守るんだ!!お前にとって大切な人を!!」

 

「へっ!サンキューなっ!!」

 

闇影からの励ましを聞いたコウイチは、サムズアップをして彼に感謝し再び走って行った。

 

「頑張れよ…コウイチ。!!ん?この気は何なんだ…!?」

 

闇影は突然何らかの気を感じ、怪訝げな表情をした。先程ディシーフとディスティールが見たあの黒い煙の集合体が関連しているやもしれない…。

 

 

 

『ウゥッ…!!ガッ…ガァッ…!!』

 

一方Gソラは、木にもたれて頭を抱えながら歩いていた。どうにかグロンギの血の暴走を抑え自我を取り戻そうと抗っているのだ。そこへ…

 

「此処にいたか…ソラ。」

 

『グゥゥッッ…!!』

 

「事情は粗方聞いたよ…あんたの両親がクウガと究極の闇だって事をな…。」

 

コウイチが現れ、彼女の過去をクアマから聞いた事を話した瞬間…!!

 

『オォォッッ!!』

 

突然Gソラはコウイチに襲い掛かり、自身の爪を彼に振り上げた。しかし…

 

「ガアァッ…!!くっ…!!」

 

『……!?』

 

コウイチは何故か避けようせず、彼女の爪で肩を斬られた。にも関わらず彼はその痛みに耐えて肩から血を流しながら、振り上げたGソラの腕に手を掴み…

 

「…あんたはそんな両親を誇りに思っている筈だ…!!だけど自分の血が両親を死なせてしまった事からそれが憎くて…恐ろしくなったから人から遠ざかった…違うか!?」

 

『グッ…グッ…グゥッ…!!』

 

「でもそれを怖がる必要なんか無い!!あんたは…あんたの両親が自分の命を懸けて救う程、愛されていたんだ…!!そんな両親達の血は恐ろしくなんか無い…誇れる血だっ!!」

 

『ウググ…グゥッ!?』

 

コウイチは必死な呼び掛けてはいるが、Gソラは未だ自我が戻らないでいた。すると、ポケットから先程闇影から託された物を取り出し彼女に見せた。

 

『…イヤ…リング…。!!』

 

彼女が見た物、それは悪魔の角の形をした黒いイヤリングだった。それを見たGソラは、幼い頃の過去を思い出した…。

 

 

 

―母さん…そのイヤリング綺麗だね。

 

―ん?あぁ…これは父さんがプレゼントしてくれた黒曜石で出来たイヤリングなんだ。気に入ったのか…?

 

―うん!!

 

―なら、お前が大人になった時に授ける約束をしよう…。構わんな?

 

―うん!!約束だぜっ!!

 

 

 

『うぅっ…うぅっ…!!父…さん、母さん…!!』

 

Gソラは、幼き日の事を、両親の事を思い出し、目から涙を流し出した。すると…

 

「身体が…元に戻っていく…!!」

 

コウイチの言う様に、Gソラはグロンギの者から次第に人間の姿へと戻って行った。そして、コウイチから母のイヤリングを受け取り、握り締めた。

 

「母さん…。」

 

「良かったな!!これで元に戻っ…!!なっ!!何だっ!?」

 

ソラが人間の姿に戻りコウイチが喜ぼうとした時、あの黒い煙の塊が宙に浮いておりそれは柱状の強烈なエネルギーと化し下界に衝突した。

 

「何なんだよ…あれは…!?人の形に変わっていく…!!」

 

ソラが呆然と呟いていると、柱状のエネルギーは次第に大柄な人の様な形となっていき光が止み出すと、金色の月の輪熊の様な姿をした、黒く鋭い爪、胸に悪魔の角に似た模様が特徴のグロンギの王「究極の闇」を越えし「禁断の闇」のグロンギ「ヴェトア・ゼツ」が姿を現した…。

 

『ジョグジャブレザセダ…(漸く目覚めた…)我が名はヴェトア・ゼツ…!!「禁断の闇」を持ちし者…!!』

 

目覚めたヴェトアはグロンギ語で話すが、途中から人間の言葉に変わり、自身を「禁断の闇」だと名乗った。

 

「禁断の闇だと…!?究極の闇じゃねぇのか!?それに『ン』の称号はどうしたんだっ!?」

 

ソラは矢継ぎ早にヴェトアに尋ねた。そもそも彼女の指摘する様に、グロンギの頂点「究極の闇」を表す「ン」の称号が無い事が疑問だった。

 

『答えてやろう…我々グロンギは究極の闇を超えた力を欲した…その為には「グロンギ同士が殺し会い、最後に生き残った者が禁断の闇を得る」と言う特殊なゲゲルを行わなくてはならない…。しかし、それにより力を得た者は「同胞殺しの罪」の怨みを背負い、グロンギの名を剥奪される事となる…。』

 

「…闇影達が見たゲゲルがそれか…!!」

 

『しかし、この世界の「純血のグロンギ」は何者かにより全て滅んだ筈なのだが…何故か我は目覚めた…。』

 

ヴェトアの言う様に、この世界の「ソラを除いたグロンギ達」はディシーフとディスティールにより全て滅ぼされ、禁断の闇を得る者は居ない筈なのだが…

 

『まぁ良い…。残っているそこの「混ざり者」やリントを始末してやるか…。はあぁっ!!』

 

「「うわぁぁっっ!?/きゃあぁぁっっ!?」」

 

ヴェトアは掌から強力な衝撃波を放ち、コウイチとソラを吹き飛ばした。

 

「くそっ…!!俺は肩に怪我を負ってるし、ソラはグロンギ化して体力を消耗している上に変身も出来ない…。それでも、やるしか無いか…!!」

 

ソラはクウガに変身出来ず体力を消耗しており、自身も彼女から受けた傷が深く戦うことがままならないでいるコウイチ。しかし、彼はそれでも何とか戦おうと傷の痛みに耐えて構えようとしたが…

 

【ATTACK-RIDE…RECOVER!】

 

「!!体力が…!!」

 

「肩の傷が治った…!?って事は…!?」

 

『無理はするなよ…コウイチ、ソラさん!!』

 

「闇影!」

 

その場に現れたディライトとSカリスは、彼等の傷や体力を「キャメルリカバー」で回復させた。

 

『そうか、貴様が灰塵者ディライト…!!我が目覚めた理由はやはり貴様の存在が原因か…。』

 

『話は粗方解った。でもこれで一気に決めるよ!!究極の闇でね…!!』

 

【FINAL-SHADOW-RIDE…KU・KU・KU・KUUGA!】

 

ディライトは、Sカリスを金色のラインが入った黒いアーマーと金色の鍬形の角に赤い複眼が特徴の、アメイジングマイティの真の力にあたる究極の闇、クウガの最終形態「アルティメットフォーム」にFSRさせた。

 

「蟷螂がクウガに…!?あいつは一体…!?」

 

『ほう…影をクウガに変えられるのか…。』

 

『二人共、危ないから下がってて!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…KU・KU・KU・KUUGA!】

 

『アルティメット…キィィックッ!!』

 

コウイチとソラに離れる様指示したディライトは、SクウガUFと共に超自然発火能力で黒と赤の炎を纏った足で放つライダーキック「アルティメットキック」をヴェトアに繰り出そうとした。が…

 

 

『だが最早究極の闇なぞ…時代錯誤の古き力だっ!!ずあぁぁっっ!!』

 

『なっ、何っ…!?ぐあぁぁっっ!!』

 

「闇影!!」

 

SクウガUFの力―究極の闇を時代錯誤だと罵倒するヴェトアは、片腕を振り払い黒い衝撃波を放ちSクウガUFを消滅させ、ディライトを変身解除させた。

 

「くっ…!!究極の闇のクウガを一瞬で消し去るなんて…!!」

 

『絶望したか…?ならば更なる絶望の闇へと落としてやろう…はあぁぁぁぁ……!!』

 

「何だ…!?あいつの身体から黒い何かがあちこちに飛んでいってる…!?」

 

ソラが指摘する様に、ヴェトアの身体から無数の黒いオーラが周囲に拡散していった。すると…

 

『『グオォォ…!!』』

 

『『ジィエェェ…!!』』

 

「どういう事だ…!!グロンギ達がこんなに現れるなんて…!!まさか…!?」

 

闇影達の周りから、亥や虫を模した黒いグロンギが無数に現れ囲み出した。それを見たソラはヴェトアの能力に気付き始めた。

 

『フハハ!!!生きとし生ける全ての生物をグロンギに変える力…それこそが禁断の闇の力よ!!』

 

「人間だけじゃなく…虫や動物まで…!!」

 

『更にだ…この力によりグロンギとなり魂を支配されし者は…来世でもグロンギと化すのだ…未来永劫な…フハハハ!!』

 

「貴様…!!」

 

生きとし生ける全ての命や魂を弄び、高笑いをするヴェトアを見て憤る闇影。

 

『最早誰も我を止める事は出来ぬ!!クウガの力も無く、仲間も家族も居ぬ哀れな混ざり者よ…我の配下にならぬか?』

 

「何だとっ…!?」

 

『混ざり者の貴様には良い話だとは思わないか?人間でもグロンギでもない孤独な貴様には…!!』

 

「…さっきから何寝言ほざいてんだ…熊野郎…!!」

 

『何ぃっ…!?』

 

「こいつは…ソラは一人なんかじゃない!!こいつはずっと家族と一緒に居るんだっ!!」

 

『戯言を…何処にそんな者がいると言うのだ!!』

 

「ここさ…!!ソラの両親はこいつの心の中でずっと生きている…!!ソラが生きている限り、ずっとな…!!」

 

コウイチは胸に拳を当てて、ソラは一人では無いのだと強くヴェトアに向かって主張した。すると、ソラの背後にクウガMFとクアマが半透明の状態で現れた。娘に微笑みながら…。

 

「父さん…母さん…!!」

 

「それに、俺も居る!!どんなに一人になろうとも、両親を誇りに思い、仲間の事を思っていればそいつは決して一人なんかじゃない!!お前みたく、自分以外の命を弄んでる野郎には一生分かんねぇさっ!!」

 

「おいっ!!それは俺が言う台詞!!」

 

「そうだ…オレはずっと一人だと思っていた…でも違う…!!オレの心の中には父さんと母さんがいる!コウイチもいる!オレは一人なんかじゃ無い…見えない絆でずっと繋がっているんだっ!!」

 

闇影の嘆きはスルーされ、ソラはコウイチの言葉を聞き、完全に吹っ切れ彼と共に闇影の下に近付いた。すると、彼女に異変が…

 

 

「なっ!何だこれは…!?」

 

「黒い…アークル…!?」

 

何と、ソラの腰に上の部分が二本の小さな角が出ているのと、黒い色以外アークルに似たベルト「ランドル」が装着され、中心には赤色の霊石アマダムに似た「霊石チダム」が埋め込まれていた…。

 

「もしかして…これがオレの…!?」

 

「そうだ…!!これがあんた自身の本当の力だ…!!」

 

『貴様…一体何者だっ!?』

 

ヴェトアの問いを聞いたコウイチは、リュウガのカードデッキを前に突き出し「あの台詞」を叫んだ…!!

 

「へっ…お節介カメラマンな仮面ライダーだっ!!脳味噌に刻んどきなっ!!変身!」

 

「だからそれ俺の台詞!!」

 

闇影の抗議をまたしてもスルーした上に彼の決め台詞を叫んだコウイチは、カードデッキをVバックルに装着すると、彼の身体に幾つもの人影がオーバーラップし黒き龍騎士―リュウガに変身した。

 

「いい加減にしろよな…変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

コウイチに何時もの決め台詞を言われた闇影は、そんな彼に苛つきながらディライトドライバーにカードを装填し、ディライトに変身した。

 

「父さん…母さん…見ててくれよ!!これがオレの…変…身!!」

 

ソラは、斜めにした右腕と左腕を即座にベルトの両サイドに移した。すると彼女の身体にダークレッドの色をしたクウガに似た鎧に、同じ色の複眼に、鍬形の角の部分が黒い牛の角の様な物が特徴の、陸の戦士「仮面ライダーリクガ ベヒモスフォーム」へと変身した…。

 

『何だその力は…!?クウガ以外の戦士なぞ知らぬぞっ!?』

 

『そうか…それがクウガの…!!』

 

見た事の無い、クウガ以外の戦士の登場に狼狽するヴェトアに対し、ディライトは冷静に理解をした…。彼女のそれがクウガの影の世界の力だと、それこそがこの世界ですべき事だと…。

 

『さて、輝く道へと…導いてやっか!!』

 

『…って!!はぁ…もういい…。』

 

その隙にリュウガはまたまたディライトの決め台詞を叫び、それを聞いた彼は抗議をしようと拳を握ったが、諦めたのか溜め息をついて頭を項垂れて脱力した。

 

『ほざけっ!!全て葬ってくれるっ!!やれぇっ!!』

 

『『『『ギッシャアァァッッ!!』』』』

 

ヴェトアの命を聞いたグロンギの軍勢は、ディライト・リュウガ・リクガBFに襲い掛かっていく。

 

『派手に逝こうぜっ!!はあっ!ぜいっ!えいっ!だりゃあぁっ!!』

 

『『グアァッ!!』』

 

『字間違ってるって!!…っと!ツッ込んでる場合じゃねぇなこれ…!!んなら俺は…!』

 

【STRIKE-VENT】

 

『派手に燃やすぜっ…!!おらぁぁっっ!!』

 

『『グガアァァッッ!!』』

 

リクガBFは某赤き海賊の戦士の口癖を言い、グロンギ達をパンチやキック等の格闘技で撃退していく。リュウガは彼女のとんでもない一字違いをツッコミながらバイザーにストライクベントカードを通し、ドラグクローファイヤーの黒炎でグロンギ達を焼き尽くした。

 

『ジィエェアァァッッ!!』

 

『っと!!そっちが武器で来るならこっちも武器だっ!!遥変身(ようへんしん)!』

 

武器を振るうグロンギに対抗すべく、リクガBFは落ちてある木の棒を拾い「遥変身」と叫ぶと、ダークレッドの部分が全てダークブルーに変わり、角が蛇の様な形をした「ナーガフォーム」にフォームチェンジし、先端にダークブルーの蛇が巻き付いた杖「ナーガシャフト」を携えている。

 

『はあぁぁ…それそれそれそれぃっ!!アーンド噛み付けぃっ!!』

 

『グィギャアァァッッ!!』

 

リクガNFは、ナーガシャフトをドラゴンロッドの様に回転させながらグロンギを連打していき、距離が取れると先端の蛇の部分がグロンギを襲い、噛み付くと爆破した。どうやらあの蛇は生命を持っている様だ。

 

『面白れぇ…今度は何だろな…。遥変身!』

 

リクガNFは新たな武器の性能を楽しみながら今度はダークグリーンの鎧に、三つのドリルの様な角をした「ユニコーンフォーム」遥変身し、ユニコーンの顔を模した銃「ユニコーントリガー」を手にした。

 

『撃っちまっくれっ!!だだだだ…っ!!』

 

『グガガガガァァッッ!!』

 

リクガUFは、ユニコーントリガーから緑色の角の形をしたエネルギー弾をグロンギ達に連射しまくった。

 

『オイィィッッ!?何かこっちにも飛ん…デデデデェェッッ!!?』

 

『あぶあぶあぶ危ないっ…テテテテェェッッ!!?』

 

…一部、ディライトとリュウガも巻き込みながら…。

 

『おっとやべっ!!んならパワーで一気に…遥変身!』

 

ディライトとリュウガを巻き込んだ事に気付き反省(?)したリクガUFは、力で一気に決めるべくダークパープルの重厚なタイタンを丸っぽくした鎧に、ベヒモスのそれが逆さになった角が特徴の「ギガースフォーム」に遥変身し、両腕にタイタンの胴体とドッガハンマーを複合させた様な巨大な籠手「ギガースガントレット」を装備していた。

 

『おぅりゃっ!でいっ!はぁっ!!』

 

『ゴッフッ!!』

 

『止め!行っくぜぇぇ……おぉぉぉうりゃああぁぁっっ!!』

 

『『グァガァァッッ!!』』

 

リクガGFは何体かのグロンギを殴り飛ばすと、ギガースガントレットに封印エネルギーを籠め、ハンマーの様にそれを一気に地面に叩き込んで生じた地震を起こす必殺技「クェイクギガース」でグロンギ達を爆破させた。

 

『凄い…これがリクガの力か…!!』

 

『暴れまくりでやべぇけどな…。』

 

ディライトとリュウガは、リクガの圧倒的な強さに息を飲んでいた。その一方で彼女の暴れぶりをツッコミながら…。

 

『おのれぇぇ…ずぇあぁぁっっ!!』

 

『『『うわぁぁぁぁっっっっ!!!!』』』

 

怒り心頭のヴェトアは、腕を払い黒い衝撃波を起こしディライト達を吹き飛ばした。その衝撃でリクガGFは元のベヒモスフォームに戻ってしまった。

 

『まだあいつがいたんだったな…!』

 

『しかもグロンギ達はまだ一向に減らねぇ…どうすりゃいい…!!』

 

『安心しろ…まだ手はある!!』

 

【FINAL-FORM-RIDE…RI・RI・RI・RIKUGA!】

 

『力を抜いて下さい!!』

 

『はっ?何…はっ…あぁぁんっ!!///』

 

ディライトに背中を押されたリクガBFは、艶かしい声を出しながらゴウラムに似た黒い角をした赤い牛の形をしたマシン「リクガタウラム」にFFRした。そしてディライトはRタウラムに乗り疾走し、グロンギ達に激突していく。

 

『それそれそれぇぇっっ!!』

 

『『グアァァッッ!!』』

 

『馬鹿な…我は禁断の闇を得、グロンギをも超越した存在…!!それが、名も知らぬ戦士如きに負ける事等…有り得ない…有り得ないんだぁぁっっ!!』

 

ヴェトアはRタウラムにより倒されていくグロンギ達を見て、激しく狼狽しディライト達に負けじとそのまま彼等に向かって突撃して行った。

 

『お前の敗因は、心から信じられる仲間が居ない…俺達にはそれがある…。その違いだけだ…!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…RI・RI・RI・RIKUGA!】

 

『これで…終わりだぁぁっっ!!』

 

『ウガァァァァッッッッ!!!!わ…我に…仲間なぞ…ふ…よ…!!』

 

ディライトがFARを発動すると、Rタウラムの角がヴェトアの身体に幾度も往復して激突し、最後に赤いエネルギーを纏った直撃を放つFAR「ディライトマタドール」でヴェトアを爆発させた。

 

『ふぅ…遂に終わったな…。』

 

と、ディライトが一息つき始めたその直後…

 

 

…『なっ何だっ!?黒いオーラがまだ消えていない…!!』

 

ヴェトアが破壊された場所に黒いオーラがまだ残っており、それは軈て巨大な悪魔の様な姿をした異形―シャドウ・イーヴィルへと変貌した。更に…

 

「ぅおのれぇぇっっディライトォォッッ!!こいつで始末してやるぅぅっっ!!」

 

その横から灰色のオーロラが現れ、そこから紅蓮が顔を歪ませてディライトを始末すると激昂してまた姿を消して行った。

 

『オォォォォッッッッ!!!!』

 

『『『うわぁぁぁぁっっっっ!!!!』』』

 

突然Sイーヴィルは爪をディライト達に振り上げた。しかし彼等は無事回避したが、それにより地面が大きく抉れた。

 

『あれは…俺が黒深子の世界に飛ばされる前に見た影の悪魔…!!』

 

『オレのグロンギの血を暴走させる切欠になった奴か…!!』

 

『でもどうすんだよっ!?あんなの俺達だけじゃ勝ち目がねぇぜ!?』

 

『せめて…せめてあと二人は必要かも…!!』

 

と、ディライト達が戦力の不足に嘆いていたその時…

 

【KAMEN-RIDE…FAM!】

 

【FORM-RIDE…DEN-O!AX!】

 

突然ディライト達の前に、金の形と斧を複合した電仮面に、黄色と黒のオーラアーマーにデンガッシャー・アックスモードを携え腕を組んだライダー「仮面ライダー電王 アックスフォーム」と白鳥をイメージした白いマントに薙刀型武器・ウィングスラッシャーを携えた、嘗てミホが変身していたライダー「仮面ライダーファム」が現れた。

 

『俺の強さにお前が泣いた!涙はこれで拭いときっ!!』

 

『いや拭かねぇよ。それより…』

 

『……!!』

 

電王AFが撒き散らす金色の懐紙吹雪と決め台詞をスルーしたリュウガは、ファムを見て呆然としていた。しかしファムは電王AFの様に喋る事は無かった。何故なら…

 

『巡…周…!!これはお前達が!?』

 

当然それは、木の上に立っているディシーフとディスティールの仕業であった。何故自分達に力を貸したのかを尋ねるディライト。

 

『勘違いすんなよ…俺様達はてめぇ等を撃ち殺してその隙にお宝を奪おうとして、照準を間違えただけなんだからな。』

 

『うふふ…素直じゃないのね♪ホントは最初から様子を見てて、あの子達が心配だからライダーを寄越したのにね♪』

 

『ほっ、ほっとけ!!///きょ、今日はもう帰る!!行くぞ巡ちゃん!!』

 

『はいはい…。まさか新しいライダーの力を目覚めさせるなんてね…うふふ♪楽しみが一つ増えちゃった♪じゃあね♪』

 

『何しに来たんだ…?あいつ等…。』

 

照れ隠しをしてディスティールは去って行き、ディシーフもリクガの力を目覚めさせたディライト達に興味を持ったと言い、去って行った。理由はどうであれ、今の戦力補充は有難い…。

 

『何でもいいぜ…さっさとこの悪魔をぶっ倒そうぜ!!』

 

リュウガが金色の翼が描かれたカードを手にすると、左腕のドラグバイザーが黒い炎と共に黒い龍の頭部を模した拳銃型のバイザー「ブラックドラグバイザーツヴァイ」に変化し、龍の口をした銃口にそのカード「SURVIVE 黒炎(こくえん)」をセットすると…

 

【SURVIVE!!】

 

『おぉぉぉぁあぁぁぁぁっっっっ!!』

 

するとリュウガは黒い炎に包まれ、黒い龍の顔を模したアーマーとあちこちに金色の装飾品が装備された「生還者」の名を持つ最終形態「リュウガサバイブ」へと進化を遂げた…。

 

『オレも行くぜ!!はあぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

リクガBFも構えを取ると、全身に金色のエネルギーを纏い五本の黒い雷に似た角、アルティメットクウガのそれに似た黒いラインが入った金色の鎧、ダークレッドの複眼が特徴の「正しき禁断の闇」の力を持ちし最終形態「フォビドゥンフォーム」へと進化を遂げた…。

 

『凄い…!!これがコウイチ、ソラさんの本当の力…!!』

 

ディライトは、リュウガSとリクガFF…二人のダークライダーの最終形態の強い威圧感に息を飲んだ。

 

『行こうぜ闇影…この世界を光へ導こう!!』

 

『…ああっ!!』

 

リュウガSの落ち着いた呼び掛けに、ディライトは力強く頷きライトブッカーを手にし、五人の仮面の戦士達は、Sイーヴィルに向かっていった。

 

【SWORD-VENT!!】

 

『『はあぁぁぁぁっっっっ!!!!』』

 

『グィギャアァァッッ!!』

 

『そ〜らそらそらそらっ…ドスコイやぁっ!!』

 

『……!!』

 

『ゴァァッッ!!』

 

ディライトとリュウガSは、ライトブッカー・ソードモードとドラグセイバーを強化した武器「ドラグブレード」でSイーヴィルを斬り付け、電王AFもデンガッシャー・アックスモードで斬り付けて、両手で連続突っ張りをし、ファムもウィングスラッシャーで素早く攻撃をした。

 

『オ〜ラオラオラオラオラオラオラァァッッ!!』

 

『グガガガガガガァァッッ!!』

 

リクガFFもアルティメットクウガと同じ、超自然発火能力により発生した金色の炎を拳に宿し、Sイーヴィルに連続ラッシュをかけた。

 

『止めと行きますか!!』

 

『『『おうっ!!/よっしゃっ!!』』』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DE・DE・DE・DELIGHT!】

 

【FINAL-VENT!!】

 

『『はあぁぁぁぁ…はあぁぁっっ!!』』

 

『ガアァァァァッッッッ!!!!』

 

ディライトとリクガFFは、ディメンジョンレッグと足に金色の炎を纏ったライダーキック「フォビドゥンレッグ」を叩き込み…

 

『俺の強さは…おぉぉ…!!泣けるでっ!!』

 

『ギャアァァッッ!!』

 

電王AFはデンガッシャーを宙に投げ、それに向かってジャンプしてキャッチして、瓦割りの要領で勢い良く斬り付け…

 

『これで…終わりだぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

『ギィヤアァァァァッッッッ!!!!』

 

そしてリュウガSは、武器を構えたファムが上に乗っておりバイク状に変形した黒い炎を纏ったドラグブラッカーが進化した黒いドラグランザー「ブラックドラグランザー」に乗り込み突撃するファイナルベント「ドラゴンファイヤーストーム」を発動させ、ファムの斬撃と共にSイーヴィルを大爆発させた。

 

『ダイナミックチョップ…半生!!』

 

『お前が〆んのかよっ!!』

 

電王AFが〆ると同時に、召喚ライダーである為彼とファムは役目を終えて消滅した。

 

―よくやったな…コウイチ…。

 

『!!ミホ…?』

 

その直後、リュウガSはミホの言葉が聞こえた気がした…。本人の魂なのか、ただの幻聴なのか…それは誰にも解らなかった…。

 

 

 

「これから…どうするんだ?」

 

「そうだな…あの力でまた新しいグロンギが現れちまったから…そいつ等から人を守る旅に出るよ。…人の笑顔を守る旅に…な。じゃあな!」

 

コウイチに今後の事を尋ねられたソラは、ヴェトアの力により生まれたグロンギの脅威から人を守る旅に出る決意した。この「リクガの世界」で「人の笑顔を守る」と言う新たな目的を抱き彼女は進もうとしたが…

 

「あっそうだ…。コウイチ…」

 

急遽足を止めてコウイチに近付いたソラは…

 

「ん、どうした?何か忘れも…!!んんっっ!!?///」

 

コウイチの唇に自分の唇を合わせ、彼にキスをした…。そしてゆっくり口を離し…

 

「お前のお陰でオレ…あたしの生きる目的が出来た…。本当に…ありがとう…。」

 

「……。///」

 

ソラが人生の目標が出来たのはコウイチのお陰だと、一人称を「オレ」から「あたし」と呼び彼に感謝し、今度こそ旅立った…。

 

 

「あらあら若いわね〜二人共♪って…あれ?」

 

影魅璃は、先程の二人の様子とそれを見守る黒髪の男性とクアマが描かれたキャンバスを見てからかう様に笑った。しかし、何時もなら闇影の同意の言葉が聞こえる筈なのだが、それが無かった。何故なら…

 

「……。」

 

「……///」

 

闇影は窓際で椅子に座ってむくれた顔をしており、コウイチは先程のキスの刺激が強く、帰ってからずっと呆然としていた…。

 

「先生、いい加減機嫌を直してよ…。良いじゃない今回くらい…ほら、カードだって全部集まったんだから。」

 

「あぁ…解ってるよ…。」

 

闇影は今回、殆どの出番をコウイチにかっさらわれたせいで機嫌を悪くしていた。しかし黒深子は、机に並べていた九枚のダークライダーのシャドウライドカードを手に取り機嫌を直すよう説得した。

 

「これで9つの影の世界は全て巡り終えたのですね…。闇影さん、何か変わった事は?」

 

「う〜んどうだろう…俺も彼から言われた事をやった後どうなるのか解らないんだよ…。」

 

ツルギに質問された闇影自身、それを成し得た後どうするのかを彼―野上良太郎から聞いておらず解らないでいた。その時…

 

 

 

「なっ!何なんだこれは…!?」

 

突然時間が全て凍った様に止まり、闇影以外全ての者も止まった。この異変に闇影が動揺していると…

 

―ウククク…おめでとう闇影…。遂に9つの影の力を全てを集めたんだね…。」

 

何処からか若い青年らしき声が聞こえ、闇影に賞賛の言葉を与えた。しかし闇影は…

 

「貴様…!!俺に何の用だ!!貴様からの労いの言葉等ヘドが出る…!!」

 

何故か青年の労いの言葉を、普段とは違う言葉遣いで否定した。いや、それ以前に青年の声を聞く事自体耳障りらしい…。その証拠に歯軋りをし殺意に満ちた目をしている。

 

―何って…お祝いのメッセージを送りに来ただけだよ…嘗て『緋眼(ひがん)の死神』だった君に…ね…。

 

「……!!」

 

青年は闇影の事を「緋眼の死神」だと口にすると、闇影は両目を血の様に赤く光らせて天井を睨んだ。

 

―ふーん…目は『当時』のままなんだね…。ま、今日の所は引き下がるよ。精々今の仲間達を『あの時』みたく死なせない様頑張るんだね。ウククク…!!

 

そう言うと青年の声はもう聞こえなくなり、それと同時に全ての時間が再び動き出した。

 

「…って闇影さん…!!私、何かお気に障る事を仰いましたか!?」

 

「え…?あぁ〜!!ごめんごめん!!まだコウイチに出番を取られた事を気にしててね!でももう大丈夫さ!あ、はははは…!!」

 

先程の怒りの表情のままだった闇影は、それに驚くツルギの反応を見て即座に謝り、何とかはぐらかした。

 

「(あいつは…『奴』だけは死んでも許さない…!!何が目的か知らないが、黒深子達を絶対死なせない…!!『あの人』の二の舞は…もう沢山だ…!!)」

 

と、闇影は心の中で先程の青年を憎み、黒深子達を死なせないと強く誓った。「あの人」とは?青年の正体は何者なのか?そして「緋眼の死神」とは何なのか…?

9つの影の世界を巡り終え、彼の瞳は、何を照らす…?




クウガのダークライダー・リクガ…勝手に作ってしまいました!!(土下座)

これにてダークライダー編は終了です。新章前にダークライダー編の詳細を書いていきます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

8人のダークライダー達の人物紹介

リュウガ(コウイチ)はレギュラーなので差し引いて8人です。



相馬(そうま) ユウジ/仮面ライダーオーガ/ホースオルフェノク

「オーガの世界」の主人公。17歳。流星学園二年生救事部部長。茶色のボブヘアが特徴で温厚な性格の少年だが、後述の事になると性格が激変する。同じ部員の蛇塚ナオヤと鶴見ユカとは同じクラス(黒深子も同じクラス)であり、部活の際彼等と行動を共にする。

アーク(カイザー)オルフェノクにより、両親と幼馴染みの木下(きのした)チエと共に殺害されたが、一人で生き残る絶望を与える為に、使徒再生によりホースオルフェノクとして蘇生された。(ナオヤとユカともこの事件を切欠に知り合った。)これにより彼は、アークのみならずオルフェノクと化した自身を強く憎んだ。

名前の由来はホースオルフェノク=「馬」+木場「勇治」から。

 

 

【挿絵表示】

 

 

FFR/ストランザーオーガ

オーガのFFR形態。外見は自身の専用武器「オーガストランザー」を巨大化した物である。刀身から金色の刃型のフォトンエネルギーを放ち、敵を斬り裂いていく。本編では語らなかったが、このFFRは大剣ではなく、基本はビーム砲型のブラスターモードである。無論ソードモードに切り替える事も可能。

 

FAR/ディライトバニッシュ

ストランザーオーガのFAR。ソードモードの刀身から光の刃状のエネルギーを噴出させ、敵を切り裂く。また、ブラスターモードに切り替えて巨大なレーザーを放出する事も可能である。

 

 

オトヤ/仮面ライダーダークキバ/バットファンガイア

「ダークキバの世界」の主人公。27歳。ファンガイア達の王であり、王妃マヤの夫。特徴はパーマがかった茶髪にキバ本編過去編のキングと同じミュージシャンの様な服装であり、気さくな性格でやや女好きだが、妻のマヤを心から愛している。王としてのカリスマ性も持っており民からの信頼も高い。人間とファンガイアとの共存に成功したが、一部の民(主にファンガイア)がそれに不満を持つ事や、王としての重責をかけられている事から「自分が何とかしなければ」と、一人で全てを抱え込んでしまう繊細な一面を持つ。

名前の由来は紅「音也」から。

 

 

【挿絵表示】

 

 

FFR/ダークキバソード

ダークキバのFFR形態。外見はファンガイアの王の証であり、その者にしか扱えない魔剣「ザンバットソード」を巨大化した物だが、柄の部分がキバットバット?世になっているのが特徴。

 

FAR/ディライトブラッディ

ダークキバソードのFAR。刀身が赤く染まり、振り上げる事で赤い刃の衝撃波を放つ。また、この時キバットバット?世は決め台詞『絶滅タイムだ!』と叫ぶ。

 

 

噛矢切人(かみや・キリト)/仮面ライダーカリス/ジョーカー

「カリスの世界」の主人公。25歳(外見年齢)。藤原父娘が経営する「たい焼き屋・ふじはら」で住み込みのアルバイトをしており、一本結いにした長い黒髪が特徴で、藤原父娘の影響なのか関西弁で話し、困ってる人をほっとけない義理人情の厚い性格の持ち主。愛称は「キリ」。

その正体は、一万年前に封印された筈だが、四年前に黒いオーラの影響により解放されたアンデッド「ジョーカー」であり、その姿もハート2「ヒューマンスピリット」の力で人間の姿になった物である。満身創痍であった所をアマネの父親に救われ、それ以降彼の世話になっておりその恩に報いるべく働く事を決意した。しかし、ジョーカーの破壊衝動にかられ彼を殺害してしまい、その罪を償うべく全てのアンデッドを封印し終えれば自分も封印されようと考えていた。

名前の由来は、ジョーカーのモチーフ(「カミ」「キリ」ムシ)、カリスアロー(「矢」)、ヒューマン(「人」)アンデッドから。

 

 

【挿絵表示】

 

 

ジャックフォーム

カリスがカリスラウザーにハートJ「ウルフフュージョン」をラウズする事でフォームチェンジ可能。複眼の色がメタルレッドに変わり、両肩には狼の爪の様な物が装着され、胸に金色の狼の絵が刻まれたアンデッドクレストが特徴である。俊敏さに長けており、そのスピードを生かし敵を倒す戦術が得意である。

必殺技は、スピニングウェーブに「狼の俊敏さ」を加え、超スピードで敵に接近しそれを上乗せした風を纏った手刀を叩き突ける「J(ジャック)・スピニングウェーブ」。

 

FFR/カリスジョーカー

カリスのFFR形態。外見はジョーカーそのものだが、緑色の部分が赤くなったものである。ハートカテゴリーの力を一枚一回のみ、ラウズせずに発動する事が可能(しかし、元がライダーなのでカリスの状態の時の様にカードを使用する事が可能な為、実質二回同じ力を使う事が出来、カリスアローも使用可能)。本編では語らなかったが、このFFRの影響によりジョーカーの破壊衝動は完全に制御された(ディライト曰く、「彼を救う為の力」)。

 

FAR/ディライトデスサイズ

カリスジョーカーのFAR。掌に籠めた赤いアンデッドエネルギーをライトブッカー・ソードモードの刀身に移し、ディライトが敵を斬り裂く必殺技。

 

 

カブキ/仮面ライダー歌舞鬼

「歌舞鬼の世界」の主人公。35歳。孤児院「かぶきの庵」の院長。本名は神逆(かみさか)カムイ。肩まで伸びたボサついた黒髪に鋭い目に無精髭が特徴で近寄りがたい雰囲気を持つが、面倒見が良く子供好きだという意外な一面も持っている。しかし、後述の理由より子供以外に対しては排他的である。

嘗ては両親と妹のアスミと共に、魔化魍から人々を守る為に旅をしていたが、ある村から黒蛇の襲撃から守る依頼を受けたのだが、実際は、最初から村を捨てるつもりであり彼等に依頼したのも逃げる時間稼ぎとして利用したに過ぎなく、結果的にカブキ以外の家族は殺害されてしまった。後に、彼等を見捨てた村人達は黒蛇に殺害され、カブキの家族の犠牲は無意味となってしまった。

その事件以降、人々を守る事を放棄し自身と同じ境遇の子供達を救い、守る為にのみ生きる事を決めた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

FFR/カブキアニマルディスク

歌舞鬼のFFR形態。外見は巨大な黒と黄色の模様が特徴のアニマルディスク。他にも巨大な消炭鴉を模した「カブキケシズミガラス」に変型する事も可能。本編では語らなかったが、ディライトがぶら下がって飛翔し、空中から攻撃するという方法も可能である。

 

FAR/ディライトハウリング

カブキアニマルディスク(ケシズミガラス)のFAR。アニマルディスクモードからケシズミガラスモードに変型し、翼を広げて清めの超音波を放つ。因みにこの超音波は人間には綺麗な音色に聞こえるが、魔化魍にとっては不快な音波にしか聞こえない。

 

 

反田(はんだ)リョウタロウ/仮面ライダーネガ電王

「ネガ電王の世界」の主人公。16歳。黒髪のショートヘアに紫色の瞳と、中性的な顔立ちをした青年。大人しい性格で運も悪く、その外見からよく女と間違われるのを気にしているが、一度やると決めた事は最後までやり通す強い意志を持っている。

姉のアイリがユニコーンイマジンに記憶を奪われ、事故で亡くした婚約者・葉月(はづき)ユウトの記憶を失くした事で、前述の性格故その記憶を取り戻す事に苦悩している。名前の由来はネガ=「反」転+野上「良太郎」から。

 

 

【挿絵表示】

 

 

クローフォーム

猫型イマジン・ペルシアが憑依しデンオウベルトの茶色のボタンを押しパスをセタッチする事で変身。特徴は三本の茶色の爪を模した電仮面と、両肩に三本の茶色の爪が装着された茶色のロッドフォームのオーラアーマーである。手の甲の専用武器「ペルクロー」で敵を切り裂く前衛タイプだが、猫の様に柔軟な動きも持ち回避力は高い。

必殺技はペルクローにフリーエネルギーをフルチャージし、クロスさせた腕を振り上げ爪型の斬撃を飛ばす「スクラッチクロス」。

変身時の決め台詞は「あんた、あたしに引っ掻かれてみる?」。

 

シールドフォーム

山羊型イマジン・カプラが憑依しベルトの灰色のボタンを押しパスをセタッチする事で変身。特徴は右が白、左が黒の山羊の角を模した電仮面と灰色のアックスフォームのオーラアーマーである。

自身の電仮面を模した盾「カプリールド」で敵を押し退けるという奇妙な攻撃を得意とさる。無論通常の盾の様に攻撃を防御出来、自身も防御力が高い。

必殺技はカプリールドで防いだダメージをフリーエネルギーに変換し一気に放出する「リバースペイン」。

変身時の台詞は「楯突く者には、痛みでお返ししますわ!」。

 

フェザーフォーム

燕型イマジン・ツバキが憑依しベルトの紺色のボタンを押しパスをセタッチする事で変身。特徴は紺色の燕の羽根を模した電仮面と紺色のウィングフォームのオーラアーマーである。

燕の羽根の形をしたブーメラン「ツバメラン」とデンガッシャー・ブーメランモードを手裏剣の様に投げ付ける攻撃が得意で、忍者の如く動きが素早く、白兵戦向きのフォームである。無論飛行能力も備えている。

 

必殺技はフリーエネルギーをフルチャージしたツバメランとデンガッシャー・ブーメランモードを手裏剣の様に投げ付けて敵を斬り裂く「斬双燕舞(ザンソウエンブ)」。主に複数の敵を倒すのに使われる。

決め台詞は「貴様に不幸を届けてやる!拒否は許さん!」。

 

FFR/ネガデンオウライナー

ネガ電王のFFR形態。外見は時の列車「デンライナー」の赤い部分が紫色の「ネガライナー」そのもの。性能はネガライナーと全く変わらず、内部のコックピットをマシンディライターで操縦可能。先頭車両からバルカン砲を放ち、火器も搭載されている。

 

FAR/ディライトトレイン

ネガデンオウライナーのFAR。上記で語ったバルカン砲に加え、車体から黒鬼、猫、山羊、燕の形をしたミサイルを一斉射撃をする。

 

 

黒角(くずみ)ソウタ/仮面ライダーダークカブト/ビートルワーム・ジークフリード

「ダークカブトの世界」の主人公。NEO-ZECT(前・ZECT)隊員。21歳。(外見年齢は16歳)黒のウェーブがかった短髪の青年。通常隊員の中で最も頑張り屋であり、姉思いな性格の持ち主。しかし、五年前のワームとの戦いで姉・ヒヨリに擬態したヘラクルヴァワームの姿を見て動揺し、その隙を付かれ彼女の婚約者でありZECT総帥である銀城(ぎんじょう)ヒデナリ/仮面ライダーヘラクス(彼に擬態したヘラクルヴァワーム)によりワームストーンを埋め込まれ、ネオティブと化してしまいその影響で永遠に歳を取らなくなってしまう。

それ以降、ZECTから逃走しヒヨリからワーム化による暴走の危機を避ける為に彼女の下へは戻らず、陰ながら見守っている。尚、ネオティブ化した事によりクロックデュアルが使用可能になった。

名前の由来は黒角=「黒」いカブト虫の「角」+天道「総」司から。

 

 

【挿絵表示】

 

 

ビートルワーム・ジークフリード

ワームストーンを埋め込まれたソウタのワーム態。「カリスの世界」の黒いコーカサスビートルアンデッドと「キバの世界」のビートルファンガイアを複合した黒い身体に、四つの黄色い複眼、鋭い棘の様な触手が真っ直ぐ生えた背中が特徴のワーム。

防御力が高く、肉体を鋼鉄に硬化させてクロックアップ(デュアル)を使った突進攻撃が得意である。また、カブト虫である為飛翔も可能。

 

FFR/ゼクターダークジャッキ

ダークカブトのFFR形態。外見は黒いゼクターカブトだが、羽の部分がダークカブトの仮面であり、右足に装備可能。このFFRを装備している間、クロックアップが使用可能となる。

 

FAR/ディライトドロップ

ゼクターダークジャッキのFAR。ゼクターのスロットルボタンを押したダークカブトが再びFFRして足に装備し、クロックアップ状態でライダージャンプをした装備者は踵落としの様にそれを降り下ろし、元に戻ったダークカブト自身もクロックアップ(デュアル)を使用し、その速度をも上乗せしたライダーキックを叩き込む。

 

 

森野(もりの)カオル/仮面ライダーアナザーアギト

「アナザーアギトの世界」の主人公。38歳。黒いコートを羽織った黒髪のオールバックに赤いサングラスをかけた無免許医者。揉め事に巻き込まれるのが嫌いでやや拝金主義な面もあり、法外な治療費を請求する為他人から煙たがれているが、後述の理由により得たアギトの力を利用し、同じアギトの力を持つ患者を救う優しさもある。

元々は普通の人間だったが、二年前にウォーターロード・アクエリアスが弟・テツヤ/仮面ライダーアギトを抹殺するべく襲撃した際に、彼が自分を庇って死んだ後自身も左目を失明し、彼の左目を移植した時にアナザーアギトの力を得てしまう。この力を持つが故に周囲の人間から疎まれ、医師免許も剥奪され、その後はウォーターロードから逃げる為転々と旅を続け、テツヤの命を奪う切欠となったアギトの力で戦う事を拒否している。

名前の由来は「木」野「薫」+「林」。

 

 

【挿絵表示】

 

 

FFR/アナザーアギトホッパー

アナザーアギトのFFR形態。外見は専用バイク「ダークホッパー」をスライダー状にした物。要はアギトトルネイダーのアナザーアギト版。

低空飛行が可能であり、スケートボードの要領でトリッキーに動き敵を翻弄する戦術を取る。

 

FAR/ディライトゲイル

アナザーアギトホッパーのFAR。飛蝗の様に勢い良く垂直に飛び上がり、敵に斜めに向かって緑色の風を纏い、アギトの紋章を浮かばせながら急降下して搭乗したディライトがライトブッカーで斬り裂く。

 

 

才牙(さいが)ソラ/仮面ライダーリクガ

/仮面ライダーアメイジングクウガ

「リクガの世界(アメイジングクウガの世界)」の主人公兼ヒロイン。25歳(推定)。容姿は「リュウガの世界」の羽鳥ミホ/仮面ライダーファムと瓜二つだが、前髪に黒いメッシュが入っており一人称は「オレ」と、言葉遣いも男性っぽい。性格は排他的で他人と関わるのを嫌い、特に自分を軟派してくる男性には容赦無く「急所」に蹴りを入れるが、後述の理由で他人を巻き込むのを嫌う繊細な面もあり、裸体もあまり隠そうとしない女性らしかぬ行動を取る大胆な面もある。

また登山家である為、体力も鍛えられておりスタイルも良く、その力は大木を蹴りで倒したり、片手で大岩を持つ程の怪力の持ち主である。

実は、先代の仮面ライダークウガである父親の才牙ジョウと母親である究極の闇であるン・クアマ・ゼラとの間に生まれたハーフグロンギであり、驚異的な体力もグロンギの血による物である。前述の性格も、自分がこの力を暴走し周囲に被害を与えないようにする為であり、アメイジングクウガの力もクアマの転移魔術によりジョウから譲り受けた物である。

「ひょんな事」からそれは失われてしまったが、後にリクガの力を覚醒させグロンギの血も暴走しなくなった。

名前の由来はクウガ=「空牙」→「(ソラ)」「()」。

 

 

【挿絵表示】

 

 

仮面ライダーリクガ

赤い霊石アマダム「霊石チダム」が埋め込まれた黒いアークル「ランドル」により変身する仮面ライダー。外見はクウガに酷似しているが、角の部分が鍬形では無く、黒い牛の角の様な物である。漢字表記は「陸牙」。

あまりにも強大な力を秘めており通常の人間やグロンギには扱えないが、ソラの様なハーフグロンギと言う特殊な力を持った物にしか変身出来ない代物であり、その強さはアメイジングクウガと同等。

また、クウガの様にフォームチェンジが可能であり、その際「遥変身(ようへんしん)!」と叫ぶ。

「クウガの世界」にはダークライダーがいない為、本作オリジナルのダークライダーである。

 

 

ベヒモスフォーム(黒き紅のリクガ)

リクガの基本形態。複眼とアーマーの色は、ダークキバと同じダークレッド。クウガマイティのと同じく全基本フォーム中、力のバランスが均等であり格闘戦に長けている。

必殺技は右足に封印エネルギーを籠め、ダークレッドの炎を纏ったライダーキック「ベヒモスレッグ」。

 

 

ナーガフォーム(黒き蒼のリクガ)

複眼とアーマーの色はダークブルーで、角の部分が黒い蛇の様な形をしている。

ドラゴンクウガ同様、スピードタイプのフォームであり、武器は先端に青い蛇が巻き付いた杖「ナーガシャフト」。尚、この武器の蛇はリクガの意思により生物の様に動かす事が可能で、相手に噛み付かせて猛毒を与える能力を持ち、グロンギが喰らうと即死する。

必殺技は、封印エネルギーを籠めたナーガシャフトを地面に突き刺した所から無数の毒を持った青い蛇のエネルギー体を相手の身体に打ち込み死に至らせる「ストリームナーガ」。

 

 

ユニコーンフォーム(黒き翠のリクガ)

複眼とアーマーの色はダークグリーンで、角は三本の黒いドリルの様な形をしている。

ペガサスクウガ同様、超感覚を用いて敵を射抜く戦術だが、ペガサスクウガと違い変身の制限時間が無い。武器は緑色のユニコーンの形をした銃「ユニコーントリガー」。緑色の角の形をした銃弾を放つ。

必殺技は、封印エネルギーを籠めたユニコーントリガーから緑色のユニコーンの形をしたエネルギー弾を放つ「バーストユニコーン」。

 

 

ギガースフォーム(黒き紫のリクガ)

複眼とアーマーの色はダークパープルで、角は小さいベヒモスのそれを逆さにした物であり、アーマーはタイタンのそれを丸っぽくした物。

タイタンクウガ同様、パワーが優れているフォームであり並の攻撃では決して仰け反らない。武器は手の甲がタイタンの胴体で、手部分がドッガハンマーのそれに似た籠手「ギガースガントレット」。

必殺技は、封印エネルギーを籠めたギガースガントレットで地面を叩き付けて地震を起こし敵を爆発させる「クェイクギガース」。

 

 

FFR/リクガタウラム

リクガのFFR形態。外見はクウガの特殊マシン「マシンゴウラム」を角が黒い赤い牛の様な物にした物である。

闘牛の如く、獰猛な動作で敵に突進し倒していく。

 

 

FAR/ディライトマタドール

リクガタウラムのFAR。黒い角で敵に超スピードで往復して激突していき、止めに全身を赤くして突進する。




次はダークライダーの世界の登場人物の紹介です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

登場人物紹介(ダークライダーの世界編)

更にイメージキャストも紹介します。


リュウガの世界

 

羽鳥(はっとり)ミホ/仮面ライダーファム

「リュウガの世界」のヒロイン。23歳。職業はカメラマン。白い帽子を被った茶髪のポニーテールと鋭いツリ目が特徴であり、性格は思い込んだら直ぐ行動と、猪突猛進なキャラで口調も男勝りだが、中々良い景色の写真を撮れずに悩む一面がある。

ライダーロワイヤルに参加した理由は、前回のバトルで行方不明になった赤竜コウイチ/仮面ライダー龍騎(後のリュウガ)を探す事であり、ロワイヤルにもウィッシュスフィアにも興味は無い。

名前の由来はブランウイング=(白「鳥」)と「羽」+霧島「美穂」から。

 

 

【挿絵表示】

 

 

オーガの世界

 

蛇塚(へびづか)ナオヤ/スネークオルフェノク

流星学園二年生救事部。17歳。金髪のツンツン頭が特徴の不良で、性格も偽悪的で面倒臭がり屋だが、陰湿な人間を毛嫌いしており、いじめに遭った黒深子を助ける等根は優しい。口癖は「つーか〜」。

ギタリスト志望だったが、アーク(カイザー)オルフェノクに殺害されオルフェノクに使徒再生させられた上、その際に指に致命的な怪我を負い、二度とギターを弾けなくなってしまう過去を持つ。

名前の由来はスネークオルフェノク=「蛇」+海堂「直也」から。

 

鶴見(つるみ)ユカ/クレインオルフェノク

流星学園二年生救事部。17歳。黒髪のおさげに縁の無い眼鏡と地味な外見と裏腹に誰とも親しく話しかける活発な性格だが、思った事ははっきりと言うやや毒舌家な少女である。オーガ散策の為、学園に潜入捜査した黒深子と親しくなり、彼女を「クミちゃん」と呼ぶ。

アーク(カイザー)オルフェノクに恋人の菊川(きくかわ)ケイタロウと共に殺害され、自身はオルフェノクに使徒再生させられた過去を持つ。

名前の由来はクレインオルフェノク=「鶴」+長田「結花」から。

 

 

ダークキバの世界

 

マヤ

「ダークキバの世界」のヒロイン。27歳。ファンガイア達の王妃であり、オトヤの妻。彼やビショップのタカトとは幼馴染みの間柄である。黒いロングスカートを着た腰まで届く黒い長髪と巨乳が特徴で、落ち着いた性格の持ち主だが芯も強く、オトヤを幼馴染みとして、王として、夫として愛し支えている。どんな相手でも丁寧語で話す。ファンガイア態は不明だが、キバ本編のクイーンと同じくパールシェルファンガイア(オレンジ)。

また、自身のライフエナジーを他人に分け与えると言う他のファンガイアには無い特異的な能力の持ち主である。

名前の由来は紅「真夜」から。

 

ユリ

「王牙親衛隊」の副隊長を務める人間の女戦士。22歳。オールバック状に茶髪をポニーテールっぽくまとめ、ツリ目が特徴である。性格は生真面目で、オトヤに強い忠誠心と僅かな恋心を抱いており、彼に敵対する者は人間でも許さない。武器は、刀身が鞭になる特殊な剣。

元は騎士の名家の令嬢であったが、幼少の頃両親をレジェンドルガとの紛争で亡くした所をオトヤや先代の王である彼の父親に救われ、人間とファンガイアの共存を夢見る彼の理想に惹かれ親衛隊に入隊、副隊長に登り詰めた。

名前の由来は麻生「ゆり」から。

 

 

カリスの世界

 

藤原(ふじはら)アマネ

「カリスの世界」のヒロイン。20歳。たい焼き屋・「ふじはら」の店主。髪止めを付けた跳ね返った黒髪のショートヘアに、関西弁を話すのが特徴である。性格はかなりお転婆で口より先に手が出るタイプだが、行き倒れていたキリを父親同様面倒を見る優しい面もある。

母親は彼女が生まれた際に亡くなり、父親もジョーカーの破壊衝動にかられたキリにより殺害される。

名前の由来は栗原「天音」から。

 

緑川(みどりかわ)シン/仮面ライダーランス

総合病院「BOARD」の見習い看護士。21歳。短い茶髪に緑色のメッシュを入れた青年。後述の理由から院長の坂黄(さかき)ジュンイチ/仮面ライダーグレイブを慕っておりそれ以外の者には辛辣な態度を取る嫌味な性格。

両親を早くに亡くし荒んでいた所をジュンイチに救われ、誰もが元気でいられる世界を目指す彼の理想に惹かれた。

名前の由来はランスのカラー=「緑」+禍木「慎」から。

 

赤麻(あかま)ハルカ/仮面ライダーラルク

シンと同じくBOARDの見習い看護士。21歳。黒髪のショートヘアに赤いメッシュを入れた女性。一人称は「オレ」と男っぽい口調で話す。

女である事から色々損をし、様々な職を転々としている所をジュンイチに救われ、シン同様彼を慕い他人に対して素っ気ない態度を取る。

名前の由来はラルクのカラー=「赤」+「ディエンドの世界」の三輪「春香」から。

 

 

歌舞鬼の世界

 

カスミ

「かぶきの庵」に住む少女。12歳。ヒナカとは双子の姉。前髪が切り揃った黒い長髪に、家事全般を手伝う等しっかりとした性格だがやや泣き虫な面がある。

両親を魔化魍に殺害された所をカブキに拾われて以降、彼を父親の様に慕っている。

名前の由来は立花「香須実」から。

 

ヒナカ

カスミとは双子の妹。12歳。姉と同じく前髪が切り揃っておりボブカットの髪型をしている。本来はよく喋り言いたい事ははっきりと言う明るい性格だが目の前で両親を魔化魍に殺害された所を見たショックで言葉を失ってしまっている。姉と同じくカブキを慕っている。

名前の由来は立花「日菜佳」から。

 

キョウスケ

「かぶきの庵」に住む少年。13歳。跳ね返った茶髪にゴーグルを着けた活発な性格。

カスミやヒナカとよく行動を共にし、彼女達と同じくカブキを慕っている。口癖は「とーてーも~」。

名前の由来は桐矢「京介」から。

 

 

ネガ電王の世界

 

反田(はんだ)アイリ

「ネガ電王の世界」のヒロイン。22歳。リョウタロウの姉で、天文学者・葉月(はづき)ユウトの婚約者。喫茶店「星のカーテン」を営んでいる。特徴は長い黒髪に紫色の瞳でおっとりとした性格。リョウタロウを「リョウちゃん」と呼ぶ。この世界唯一の超異点である。

ユニコーンイマジンにより記憶を喰われ、リョウタロウや事故死したユウトの事を忘れてしまう。その為、リョウタロウの事も常連客の少年だと認識してしまっている。

名前の由来は野上「愛理」から。

 

トキナ

ネガライナーのオーナー。年齢不詳。右に橙、左に紫色のメッシュを入れたウェーブの髪に、ネガ電王・ネガフォームの電仮面と同じ禍々しい刺青を彫った巨乳に、胸元が空いたシャツに黒いズボンが特徴の女性。口調や性格ががさつで、騒ぎを起こすネガタロス達に制裁を加える程身体能力は通常の人間のそれより高い。また、胸の谷間から珈琲を取り出したり、逆に空のカップをそれに入れるとまた同じ珈琲を取り出す等奇怪な技を持つ。

得体の知らない人物を受け入れる等度量は大きいが、その一方で時の運行についてはかなり厳しくこれを犯す者は決して許さない。

 

リョウタロウと契約したイマジン(ネガタロス以外)

このイマジン達は、元はネガタロスと同じく時の狭間の中にいたはぐれイマジンであったが、リョウタロウの「時の運行を守りたい」と言う願いを聞き入れ契約をした。

その為実体を持っているのだが、契約者であるリョウタロウ以外の人間にも憑依する事が可能である。

尚、ネガタロス以外皆女性イマジンである。

 

ペルシア

2011年の現在に現れた未来人のエネルギー体が「長靴を履いた猫」の猫をイメージしたイマジン。茶色のブーツを履いた女性っぽい括れと茶色の爪を持っている白茶色の猫の姿をしている。

自由奔放な性格でギャルっぽい口調で話す。ネガタロスの事を「ネガ()」と呼び、逆に彼からは「雌猫」と呼ばれる。趣味は爪磨ぎ、ネイルアート。武器は茶色の鉤爪「ペルクロー」。ネガ電王にクローフォームの力を与える。

名前の由来は「ペルシャ」猫から。

 

カプラ

2011年の現在に現れた未来人のエネルギー体が「黒山羊と白山羊」の山羊をイメージしたイマジン。右が白、左が黒色のカール状の角をした全身が灰色の女性っぽい括れを持った山羊の姿をしている。

お嬢様口調でやや高飛車な性格だが、リョウタロウには「様」付けで呼ぶ等彼には下手。ネガタロスからは「山羊女」と呼ばれる。趣味は折り紙遊びで好物は紙。武器は右が白、左が黒色の角をした灰色の山羊を象った盾「カプリールド」。この盾は防御は勿論、ダメージを吸収し、灰色のエネルギー弾を放つ事も可能。ネガ電王にシールドフォームの力を与える。

名前の由来は山羊=「カプリコーン」を女性っぽい名前にした物。

因みに彼女のイメージの元となる「白山羊と黒山羊」は童話では無く童謡なのは、作者曰く「他に良い童話が思い付かなかった。」との事。

 

ツバキ

2011年の現在に現れた未来人のエネルギー体が「幸せの王子」の燕をイメージしたイマジン。忍者服の様な身体をした女性っぽい括れを持った紺色の燕の姿をしている。

性格は極めて真面目でやや古風な話し方をし、四人のイマジンの中でリョウタロウに強い忠誠心を持ち彼を「主」と呼び、ネガタロスからは「燕忍者」と呼ばれる。趣味は情報収集に鍛錬。武器は紺色の燕の羽根を象ったブーメラン「ツバメラン」。ネガ電王にフェザーフォームの力を与える。

名前の由来は「燕」を女性っぽい名前にした物。

 

 

ダークカブトの世界

 

黒角(くずみ)ヒヨリ

「ダークカブトの世界」のヒロイン。26歳。ソウタの姉でNEO-ZECT総帥・銀城(ぎんじょう)ヒデナリ/仮面ライダーヘラクスの婚約者。長い黒髪をポニーテール状にした清楚な雰囲気を持ち芯の強い気丈な性格で、ソウタを「ソウちゃん」と呼ぶ程弟想いだが、一度怒らせると凶暴な性格に変貌する一面も持っている。

普段はパートの仕事をしているのだが、ソウタが失踪してから少ない生活費を工面するべく、夜はキャバクラ「シルバースピリット」で働いている。

名前の由来は日下部「ひより」から。

 

壬銅(みどう)テツキ/仮面ライダーケタロス

NEO-ZECT行動部隊副隊長であり、闇影の部下。21歳。茶髪のツンツン頭をし、語尾に「〜ッス」と付ける等後輩気質でワームから人々を救う事に燃える正義感の強い性格。闇影を「隊長」と呼ぶ。

五年前から入隊しており自分にケタロスの資格を与え、部隊副隊長に任命してくれたヒデナリの期待に応え彼を慕うが、NEO-ZECTが闇影を敵と認定した事を知り、建前と本心の間に迷い悩む面がある。

名前の由来はケタロスのカラー=「銅」+大和「鉄騎」から。

 

 

アナザーアギトの世界

 

地羽(ちば)マナ

「アナザーアギトの世界」のヒロイン。25歳。カオルの助手で妻(自称)。舌っ足らずな口調に赤いショートヘアで、身長は小学二年生並。これは彼女にとって大きなコンプレックスであり、実年齢を言っても信じて貰えず、子供扱いされて相当悔しい思いをしている。

実は彼女もアギトの力を持っており(但し変身不可)、それにより周囲から疎外され孤独に悲しんでいる所をカオルに救われ、彼を「しぇんしぇい」と呼び恩人として、恋人として慕っている。

名前の由来は「風」谷真魚の(「風」の対義語→「地」)+「真魚」から。

 

緋山(ひやま)マコト/仮面ライダーG3-X/仮面ライダーG4

警視庁未確認生命体対策部隊所属の警察官。23歳。スポーツ狩りの茶髪をした体育系の男性。正義感が強く、アンノウンから人々を守る為に日々努力している。しかし、その正義感が強過ぎたが故に承認許可無くGXランチャーを使用したり、実験段階のG4システムを無断で装備する等の命令違反を度々犯している。

その理由は家族をアンノウンに殺害された過去を持っており、それ以降一体でも多くのアンノウンを倒す事を誓った為であり、警視庁に入ったのもそれが目的である。

名前の由来は氷川誠の(「氷」と「川」の対義語→「()」と「山」)+「誠」から。

 

南条(なんじょう)トオル/仮面ライダーG3-X(補欠)

警視庁未確認生命体対策部隊所属の警察官。36歳。七三分けの髪型に眼鏡をかけた壮年の男性。性格はやや嫌味で捻くれており、マコトを「後輩」か「馬鹿」と呼んでいる。

元はG3-Xの装置志望者なのだが、身体能力がマコトより劣る為補欠要員として扱われた。前述の性格も相俟ってマコトを恨んでいると思いきや、内心彼の事を心配する先輩らしき一面を持っている。

名前の由来は北条透の(「北」の対義語→「南」)+「透」から。

 

大澤(おおさわ)スミコ

警視庁未確認生命体対策部隊の主任であり、G3-XやG4システムの開発責任者。29歳。ユリの様にオールバック状に巻いた黒髪が特徴。規律正しい性格でありそれを守らない人間を嫌っており、マコトの度重なる命令違反に頭を悩ませている。

名前の由来は小沢澄子の(「小」の対義語→「大」)+「澄子」から。

 

森野(もりの)テツヤ/仮面ライダーアギト

カオルの弟。享年30歳。二年前に自身を抹殺しようと現れたウォーターロード・アクエリアスと交戦中、カオルが彼を守るべくウォーターロードを妨害しそれによりその矛先をカオルに変更しその攻撃から彼を庇い致命傷を負い、予知夢によりカオルがこの事件により左目を失明する事を知り、死に際に自分の左目を移植する様頼み死亡した。

名前の由来は津上翔一の本名・沢木「哲也」から。

 

 

リクガの世界(アメイジングクウガの世界)

 

才牙(さいが)ジョウ/仮面ライダークウガ(先代)

クアマの夫であり、ソラの父親。享年29歳。十数年前に「究極の闇」であるクアマと結婚、ソラを儲ける。しかし、それはグロンギの間では禁忌でありそれによりグロンギ達から命を狙われる様になる。その際にグロンギの血が暴走したソラを止める為、自身のクウガの力をクアマの能力により抜き取り彼女に移し死亡。それほど、クアマやソラの事を心から愛していた。

名前の由来はオリジナルクウガの「中の人の名前」から。

 

ン・クアマ・ゼラ

ジョウの妻であり、ソラの母親。享年28歳(人間体の外見年齢)。人間体は赤いドレスを着た腰まで届く長い黒髪に、ツリ目で黒い口紅を塗った妖艶な雰囲気を持った女性。グロンギ態は黒い角と赤い悪魔の様な姿をしている。この世界における「究極の闇」であるが、元々グロンギ達の中で珍しく戦いを嫌う性格をしており、ジョウの優しさに触れたのを相俟って彼に惹かれ結婚、ソラを出産する。

転移能力を保有しており、これにより暴走したソラにジョウから抜き取ったクウガの力を彼女に移した。しかし、その際彼女はジョウを庇ってソラの攻撃を受けて致命傷を負い、最終転移術「転魔譲移(てんまじょうい)」を使用した直後に死亡。その後は魂としてソラを見守っている。時間は限られているが他人の身体に憑依し現世に実体化をする事が可能。ジョウと同じくソラを愛していた。

名前の由来は「悪魔」のアナグラムから。

 

 

 

設定用語

 

・闇の牢獄

心の中にある負の感情が一定以上に高まると、「もう一つの自分」を名乗る黒い影が現れ、怪人になるかならないかの選択肢を説いて来る現象。それに応じるとそのライダーの世界に準じた怪人の力を得、拒否すると死んでしまう。(例:クウガの世界だとグロンギに、555の世界だとオルフェノクになる。)

但し、一度命を落としてこの現象に遭った者は自動的にオルフェノクと化す。(黒深子がその例)

 

・ライダーロワイアル

「リュウガの世界」で三年に一度行われるライダーバトル。十三人のライダーが互いに戦い合い、最後に勝ち残った者はどんな願いでも叶える水晶「ウィッシュスフィア」の獲得権を得る。

 

・ワームストーン

見た目は緑色の石。これを埋め込まれた生物は全身の細胞をワームのそれに変わり、最後には完全なワームと化してしまう。

 

・ネオティブ

上記のワームストーンにより細胞はワームと化しているが、意識は元の人格である人間。所謂、人間とワームの融合体。しかし、それには強靭な精神力を持たねば忽ち意識は完全にワームの物となってしまう。長時間ワーム態でいる場合でも同じ。

無論通常のワームの様にクロックアップも使用出来るが、人間の状態でもそれが使える。また身体の一部のみをワーム化する事も可。

 

・クロックデュアル

上記の者がマスクドライダーシステムで変身したライダーのみが使えるクロックアップの亜種。ライダーシステムのクロックアップとワームのそれを同時発動する事により発動。速度はそれの2乗。しかし、長時間多様するとその反動により体力を大幅に消耗するデメリットがある。

 

・禁断の闇

グロンギ達の頂点である「究極の闇」を超えた力。これになる為には「同族同士で最後の一人になるまで殺し合う」と言う異質なゲゲルを行わなければならない。その資格を得た者は強大な力が手に入るが、「同族殺し」の罪を背負い、その代償として頭の文字を失いグロンギではなくなる。生物をグロンギ化させる黒いオーラを放つ能力を持つ。これによりグロンギと化した生物は、死んで生き返っても永久にグロンギにしか生まれ変われなくなる。但し、リクガに倒されればそれは無効となる。

 

 

 

■脳内キャスト一覧■

 

煌闇影…草尾毅

 

 

白石黒深子…名塚佳織

 

 

赤鏡コウイチ…吉野裕行

諸刃ツルギ…桑島法子

 

彩盗巡…伊藤静

戴問周…平田広明

 

 

羽鳥ミホ/才牙ソラ…進藤尚美

 

 

相馬ユウジ…下野絃

鶴見ユカ…田村ゆかり

蛇塚ナオヤ…うえだゆうじ

薔薇ノ宮キョウジ…高杉Jay二郎

 

 

オトヤ…松風雅也

マヤ…篠原恵美

キバットバットニ世…杉田智和

ユリ…住友優子

ルーク…高原知秀

ジロウ…野島健児

 

 

噛矢切人…遠近孝一

藤原アマネ…高木礼子

緑川シン…鈴木千尋

赤麻ハルカ…木内レイコ

坂黄ジュンイチ…池田秀一

 

 

カブキ…浜田賢二

カスミ/ヒナカ…釘宮理恵

キョウスケ…竹内順子

 

 

反田リョウタロウ…木村亜希子

反田アイリ…川澄綾子

ネガタロス…緑川光

ペルシア…柚木涼香

カプラ…根谷美智子

ツバキ…今井由香

トキナ…平松晶子

 

 

黒角ソウタ…保志総一朗

黒角ヒヨリ…雪野五月

壬銅テツキ…山口勝平

銀城ヒデナリ…千葉進歩

 

 

森野カオル…大塚明夫

地羽マナ…水谷優子

緋山マコト…関智一

大澤スミコ…小山茉美

南条トオル…八嶋智人

森野テツヤ…陶山章央

 

 

才牙ジョウ…高橋広樹

ン・クアマ・ゼラ…緒方恵美

 

 

カイザーオルフェノク…真柴摩利

黒蛇…勝生真砂子

ユニコーンイマジン…小杉十郎太

ウォーターロード・アクエリアス…茶風林

ヴェトア・ゼツ…黒田崇矢

 

 

謎の青年…鳥海浩輔

 

 

野上良太郎…佐藤健

 

 

白石影魅璃…井上喜久子

 

 

紅蓮…皆川純子




如何でしょうか?

次は闇影の過去が明らかになります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ディライトの過去編①
第21導 ディライト・ビギンズライト~眩き出会い~


サブタイトルがWの映画っぽいのは気にするな!!


これまでの仮面ライダーディライトは…

 

 

―地球が、世界が闇に染まっている…。

 

―ディライト。貴方には9つの影の世界を救う旅に出てもらいます。貴方にしか出来ないんです。『闇を操る光の戦士』である貴方にしか…。

 

野上良太郎が語る、全世界で人間が異形の姿に変わる恐ろしい現象…。

 

―世界が闇に支配されるなら…俺が光へ導いてやる!

 

それを救う為に9つの影の世界を旅する決意をした煌闇影こと、仮面ライダーディライト…。

 

―これは、私にしか出来ない事を探す旅なの…。

 

―言っただろ?大切な人を守る旅に出るって。

 

―私を…貴方達の旅に連れて行って下さい!

 

その旅の道中に新たな仲間を加え、数々の世界を光へ導いていった。そして…

 

―久しぶりね、闇影君。

 

―この世界の宝は、俺様達が戴くから邪魔すんなよな。

 

彼の過去を知る彩盗巡と戴問周こと、ディシーフとディスティール…。

 

彼等の介入等紆余曲折もあり、遂に9つの影の世界を全て光へ導いた…。

 

―ウククク……おめでとう闇影。いや、「緋眼の死神」…。

 

―ディライト……貴様は全ての世界に在ってはならない存在…。

 

ディライトとは一体何者なのか?全てを焼き尽くす灰塵者なのか?それとも…?

 

 

―お節介教師な仮面ライダーだ!!宜しく!!

 

 

 

―白石家

 

 

「…で、ここでこの公式を使うと…っとなるんだ。」

 

「うん…うん…!!出来た!!」

 

あれから9つの影の世界を旅が終わって数日経つが、未だに何の変化も無く暇を持て余している闇影は今、黒深子に勉強の師事をしている。但し、彼女が解いている問題は大学レベルの物だった。

元々黒深子は成績が優秀である為通常の高校の問題は全て解く事が出来、「それなら大学の勉強でもしないか」と言う闇影の提案に賛成し現在に至る。 そして、彼から話を聞く黒深子はそれをゆっくり解いていき問題を全て終わらせた。

 

「どれどれ、うん…うむ…全部正解だよ!凄いじゃないか黒深子!!今日教えたばかりの問題が全部出来てるよ。」

 

「先生の教え方が上手かっただけだよ。////」

 

問題の採点を終えた闇影は、それが全問正解だった為黒深子の飲み込みの速さを賞賛した。彼女は彼の教え方が上手いだけだと謙遜するが闇影は首を横に小さく振り…

 

「俺はあくまで基礎を教えただけさ。それを上手く応用出来たのは君の実力だよ。」

 

「先生…。///」

 

と、にこやかに彼女自身の実力だと言う。

 

「お〜い、イチャついてるとこに水を差して悪いんだが俺等が居んのを忘れんなよ。」

 

「……。///」

 

「なっ!///何言ってるんだコウイチ!?別にイチャついてなんか…!!///」

 

そこにコウイチの声が耳に入り、そちらに視界を移した闇影は顔を赤くして否定し、ツルギも何故か顔を赤くしている。…ここで黒深子が少しムッとしたのは秘密の話。

 

「まっ、良いけどよ。にしても黒深子ちゃん、ホント凄ぇよな。俺なんか聞いてもさっぱり分かんねぇし。」

 

「本当ですね。私も勉強を習いたいです…。」

 

「なら今度見てあげるよ。…コウイチはどうする?」

 

ツルギの言葉を聞き今度彼女の勉強を見る事を約束した闇影。コウイチにも参加をするかを少し意地悪な笑みで尋ねたが「いや、いい。」と断られた。

 

「先生ってホント何でも出来るんだねぇ…戦いも強いし料理も上手いし頭も良いし、何よりとても優しい!ねぇ、先生は誰から勉強を習ったの?」

 

知性も高く、腕も器用で容姿も優れておりライダーとしても強い闇影を、正に「完璧超人」だと賞賛する黒深子。そんな完璧超人に誰からそれ程の実力を教え込まれたのかを尋ねた。

 

「…俺の両親が学者だったからその下で育っただけだよ。…もういないけどね。」

 

「「「!!!?」」」

 

闇影は黒深子の質問に少し悲しい表情をして語った。彼の両親は当に亡くなっていたのだった。

 

「ごっ、ごめんなさい!!嫌な事思い出させちゃって!!」

 

「いや、大丈夫だよ。」

 

自分の軽はずみな質問のせいで闇影に両親の死を思い出させてしまった事を深く詫びる黒深子。しかし彼は首を横に振り大丈夫だと言う。

 

「なっ、なら質問を変えてよぉ!お前、何処でディライトの力を手に入れたんだ?」

 

重い空気が流れそうになり、何とか話題を切り換えようとするコウイチは別の質問をし、闇影が何処でディライトの力を得たのかを尋ねた。

 

「…この力は『ある人』が封印を施した事で生まれた物なんだ…。」

 

「えっ?」

 

「…悪い。あまり具合が良くないから少し昼寝でもしてくる…。」

 

ディライトドライバーを取り出してそう呟く様に話す闇影は、またも浮かない表情をして質問には完全に答えず、昼寝をすると言って部屋を後にした。

 

「…もしかしてこれも余計な事だった?」

 

「…みたいですね…。」

 

「でも先生ってあまり自分の事を話したりしないわね…。」

 

またしても重い空気になり、気まずい表情をするコウイチ。それを少し呆れた目で見るツルギ。黒深子は自分の過去を話そうとしない闇影を心配している。「封印を施して生まれた」ディライトの力とは何なのか、それを頭の中で考えていると…

 

「話せない程ヘビーな過去だからよ。」

 

「やっぱまだ話してなかったんだな…。」

 

「「「!!!?」」」

 

三人が驚き振り向くと、居ない筈の巡と周の姿がそこにあった。テーブルに座り上に赤い何かを乗せたプリンを食べながら…。

 

「巡さん、戴問さん。いつの間に!?って言うか人の家のプリンを食べないで下さい!」

 

「まぁ、それは気にしないで♪彼が話さないのなら私達が話してあげるわ。闇影君の過去を…。」

 

「気にします!…って、えっ!?」

 

「まっ、野郎の口から言うのが普通なんだが…何れは知らねぇとヤバイ事態になった時の事も考えねぇとな。」

 

「先生の…過去…。」

 

と、何やら意味深な言葉を口にしながらも巡と周は、黒深子達に闇影の過去についてを語り出す…。

 

 

 

―闇影の部屋

 

 

「…俺は…人から思われる程立派な人間じゃない…。だって…七年前の『あの時』の俺は…。」

 

ベッドでうつ伏せになった闇影も、自身の過去について思い返し始めた…。

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り終え、その瞳は、何を照らす?

 

 

 

―七年前

 

 

『ギャアァァッッ!!』

 

『なっ、何なんだこいつ!?たった一人で…ウッ、ウギャアァァッッ!!』

 

『……。』

 

とある世界――空が暗く、荒れ果てた荒野で、一体の怪人は同胞を倒した「何者」かを見て愕然としていると、直ぐ様その者からの攻撃を受けて爆死した。

 

『…これでこの世界の怪人は全て死んだか…。』

 

腰の紫色のカメラ型のバックルに、全身が闇を思わせる紫のスーツに刺さった、闇を思わせる黒いプレート、そして憎悪の炎を思わせる禍々しい赤き複眼が特徴の「世界の灰塵者」の称号を持ちし戦士「仮面ライダーディシェイド」は先程倒した怪人の死骸を、氷の様に冷たく見下した。周囲には彼が抹殺した怪人達の惨たらしい首、腕、足、目玉や肉片があちこちに飛散し、その下は赤く濁った血で染まっていた…。そして、先程倒した怪人でこの世界の怪人は全て死滅した様だ。

 

「おぉ、あんたがこいつ等を全部退治してくれたのか…。ありがとうございます。あの連中には儂を初め、ここの者達は家族を奴等に殺され残った儂等もどうしたらいいのか困っていた時にあんたがそ奴等を退治してくれた。これは…神の救いだ。」

 

そこに岩陰に隠れていた一人の傷付いた老人の男性が現れ、彼だけではなく十数人の女子供や老人も顔を出した。どうやら彼等は、先程ディシェイドが倒した怪人達により家族を殺され、大切な物も良い様に蹂躙されていた為、それ等を倒したディシェイドを「神の救い」だと崇めた。

 

『……。』

 

ディシェイドは無言でその老人に近付いた。これを見た者は、心身共に傷付いた老人に「もう大丈夫ですよ。」と救いの手を差し伸べる物だと思うだろう。が…

 

 

 

『――何勘違いしてるんだ?』

 

「あぐっ!!?なっ!何故…!!?」

 

それは見事に裏切られ、ディシェイドは紫色の四角いカードホルダー型の剣「シェイドブッカー・ソードモード」で老人の心臓を突き刺した。老人は突然の裏切りに戸惑う暇も無く倒れ、絶命した。

 

『俺の目的はこの世界を焼き尽くす事…。あの屑共がこの世界を人間を殆ど殺したのを見計らい始末し…』

 

ディシェイドの目的、それはこの世界その物を焼き尽くす事であり、怪人達が人口の殆どを抹殺し数少なくなった所で倒す…。そこまで淡々と語りながらシェイドブッカーの刃に手を滑らせると…

 

『残った人間は全て俺が始末する…。悪く思うなよ。』

 

「ヒッ!!ヒィィッッ…た、助け…ギャッ!!」

 

「あんたは人間じゃない…人の皮を被った悪魔だ!!ギャァッ!!」

 

「この子だけは…この子だけは助け…キャアァァッッ!!」

 

「ママーッ!!」

 

再び構えて、生き残った人々を躊躇い無く斬り殺し、時にはガンモードで撃ち殺していった。命を乞う叫び声、ディシェイドを悪魔だと言う罵倒する言葉、親を殺され悲しみ泣き叫ぶ幼子…そんな彼等の血飛沫や飛散する肉片を見ても、恐怖の叫びを聞いても尚、ディシェイドは一切無言だった。

 

『安心しろ…痛みを感じる間も無く消してやる…。』

 

【ATTACK-RIDE…TIME!】

 

そう言うとディシェイドは、ドライバーに「仮面ライダーブレイド」のアタックライド「スカラベタイム」を発動し自分以外の全ての時間を停止させ、逃げ惑う人々の動きを止めた。更に…

 

『全て…焼き尽くす…!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…ZO・ZO・ZO・ZOLDA!】

 

何と「仮面ライダーゾルダ」のFARを発動した。すると、彼の頭上から緑色のミノタウロスと二足歩行ロボットを合わせた契約モンスター「マグナギガ」が舞い降りた。そしてマグナギガの背中にシェイドブッカー・ガンモードをセットし引き金(トリガー)を引くと…。

 

『エンドオブワールド…。』

 

ゾルダのFAR「エンドオブワールド」が発動され、マグナギガの全身から無数のミサイルやレーザーが放たれ、当然タイムの力で身動きが取れない人々は虐殺される運命に終わった…。

 

 

 

『これで「任務完了」だな…。』

 

全てが燃え盛り、後は焼き尽くされるだけの世界をディシェイドが後にしようとした時…

 

「ねぇ…ぱぱとままは、どこ?えほんをよんでほしいのに…。」

 

そこにまだ生き残っていた小さな一人の少女が両親が何処にいるのかを彼に尋ねた。その両親を殺した張本人だと気付かずに…。ディシェイドは彼女に近付き…

 

『安心しろ…直ぐ会わせてやる。』

 

そう言った瞬間、少女の意識はそこで途切れた…。何故なら、彼女の脳天に銃撃により貫かれたからである…。すると、灰色のオーロラが現れディシェイドがそれを潜った瞬間、この世界は完全に消滅した…。

 

 

 

―とある基地

 

 

「任務は完了した…。」

 

―ご苦労、ディシェイド。いや、煌闇影君。「緋眼の死神」…。

 

真っ黒な長い階段の下でポケットに手を突っ込む黒いフード付きのローブを着込み、両目を赤く輝かせた金色の長い髪をポニーテール状にし、右耳に金色の太陽の形をしたピアスをした青年―仮面ライダーディシェイドこと煌闇影は、冷たい表情で階段の上にいる謎の人物に任務完了の報告をした。

 

「……。」

 

―これまでの君の仕事ぶりには目に余るよ。三年前にこの『ダークショッカー』に入り、その僅か一年後に君は幹部にまで登り詰めた…。それからは私の指示通りに仕事をこなしていきとても助かるよ。

 

「下らん話はいい…。それより忘れてはいないな?俺の望みを…」

 

―勿論だとも。君が「とある目的」の為にここの技術研究施設の技術長になり施設を好きに使う事を…その見返りに私が指示した世界を破壊する…という事をね。

 

闇影がこの「ダークショッカー」に所属し幹部になった理由、それは「ある目的」の為にここの研究施設を使用する事であり、条件として指示された世界を破壊する事である。

 

「そろそろいいか?俺はまた研究に入りたいんだがな。」

 

―構わんよ。もう下がって良い。ああ、それと一つだけ。今日から君に部下を二人つく事になるから宜しく頼む。

 

闇影が研究の為この場から立ち去ろうと踵を返した時、階段の上にいる謎の人物から自分の下に部下が付くという話を聞くが、まるで興味は無くその場を後にした。

 

 

 

―研究室

 

 

「こいつにはこの細胞が適合するな…。ならこれで…」

 

広い空間の周囲に、怪人や人間が入ったガラス張りの培養カプセルが無数にあり、闇影はその中心の手術室にある様な台の上に寝かせてある実験体らしき「者」に、何かしらの措置を施している。

 

「闇影様、貴方に用事があるとの事で…」

 

「ちっ…!!」

 

そこに一人の研究員が現れ、闇影に用事がある者が尋ねて来た様だった。恐らく先程言っていた自分の部下の事だろう。そう思った闇影は舌打ちをしながらその部下に会いに行った。

 

 

 

「お目にかかれれて光栄です。私、彩盗巡と申します。」

 

「戴問周…。んだよ、カワイコちゃんだと思ったら野郎かよ…。」

 

銀髪のショートヘアにボディラインがくっきり見える黒タイツの大人びた少女・巡とウェーブの黒髪の後ろ髪の一部をくくった同じ黒タイツの少年・周が挨拶に来たが、闇影は…

 

「ふん、貴様達に頼める仕事等無い。用が済んだらさっさと消えろ。」

 

と冷淡な態度で応対し、研究室を出る様吐き捨てた。

 

「随分冷血な上司様で。うっひゃ〜…凄ぇなこれ…お!一番奧に美少女の裸ハッケ〜ン!!」

 

「何…!?」

 

「ど〜れ。もうちょい下の方から覗いて…うおっ!?」

 

闇影の言葉を無視した二人は研究室の周囲を見て回った。そこで周は、一番奧にある中に長い髪をした全裸の少女が入った培養カプセルを見つけよく見る為にカプセルに触れようとした時…

 

「そいつに触るな、ゴミが…!!」

 

シェイドブッカー・ガンモードの銃撃が周の頬をかすった。背後から撃った闇影は殺意の籠った表情で睨んでいた。

 

「…の野郎…いい気になってんじゃね…ガボッ!?」

 

当然それに頭に来た周は、闇影をぶん殴ろうとズカズカ近付こうとしたが、巡が周の頭に思い切り拳骨を喰らわせた。

 

「申し訳ありません…。彼の無礼はこれでお許し願えますか?」

 

そして闇影に、周の行動を許す様詫び跪いた。

 

「ちっ、さっさと消えろ…目障りだ。」

 

「ありがとうございます。行くわよ、周。失礼致しました。」

 

「ケッ…!!」

 

それを聞いた巡は、苛ついてる周と共に研究室を後にした。

 

 

 

「くそ、あの野郎…俺様の顔に傷を付けやがって…!!巡ちゃんも何であんな野郎なんかに頭下げたんだよ!!」

 

かすった頬に手をやり闇影の尊大な態度に憤る周は、巡に何故彼に頭を下げたのかを尋ねた。すると巡は胸元から黒い小型の機械を取り出し小さく笑う…。

 

「ふふ、良いのよこれで♪あの子の身体に盗聴器を忍ばせておいたわ。これで何処に『アレ』があるか分かる筈…。」

 

「いつの間に…。」

 

巡が闇影に近付いた、いや、二人がそもそもこのダークショッカーに潜り込んだのは「ある物」を手に入る為だったのだ。それには幹部である闇影に近付き、盗聴器を付けて彼の言葉からそれが何処にあるのかを知る必要があった。

 

「さて、様子は…」

 

巡が盗聴器に耳を当てると…

 

 

 

―研究室

 

 

「すまない――。大丈夫か?あんな奴に触られるなんて嫌なんだよな?俺があいつ等を此処に入れたのが間違ってたんだ。本当に、すまない…。」

 

闇影は先程の少女が入ったカプセルに手をやり、周の行動について何度も謝っている。先程までの冷たい表情とはうって変わり呪詛の如く少女に謝り続けていた。

 

「もう少しだけ待っててくれ――…必ずお前を――から…。くくく…。」

 

闇影はカプセルに手に当てる力を増して、左耳に銀色の月のピアスを付けた少女に語りかける。赤い目をドロッと濁らせて、口を三日月の様に妖しい笑みを浮かべて笑っていた…。

 

「……!!」

 

その時、設置してあるパソコンからアラームが鳴り出し、それに目をやる闇影。

 

「ちっ、また任務か…。少し待っててくれるか?直ぐ戻ってくるからな。」

 

パソコンからの内容、それは新しい任務を知らせる物だった。舌打ちした闇影はカプセルの少女に任務に出る事を告げて、研究室を後にした。

 

 

 

「今の話…本気で言ってるのかしら?」

 

「だとしたら相当イカれてるぜ…あいつ。」

 

盗聴器で今の話を聞いた巡と周は、闇影の目的を知り愕然としていた。

 

 

 

―とある世界の荒野

 

 

「…この世界も大分人が減っているようだな…。まぁ俺にはそんな事はどうでもいい…早く片付けるか…。」

 

灰色のオーロラから現れた闇影は、この世界の人間が減っている事を「どうでもいい」と一蹴する。いや、それだけではない…自分自身の目的以外の全て無関心であった。そう思いながら歩いていると…

 

「ん?あれは…。」

 

『グガガガ!!人間の「肉」ってのはいつ喰っても美味ぇな…。』

 

『あぁ…ホントだな兄貴。ギギギギ…!!』

 

そこには、通常のそれより身長が一回り大きく体格の良い二体の魔化魍、「兄貴」と呼ばれた金色の身体に黒い角を生やした「金角」と同じ身体に角を生やしているが、此方は体色が銀色で眼が一つだけである「銀角」は、人間の頭を鷲掴みにしてそれを思い切り楫っていた。その傍らに数十体の死骸が転がっている事から、この世界の人々は奴等によってほぼ殺害された様である…。

 

「おい、そこのデカブツ二匹。最後の晩餐は済んだか?」

 

そこへ颯爽と近付いた闇影は、金角と銀角に喧嘩を売る様な口調で話し掛けた。無論、餌だと思っている人間如きにそんな口を叩かれて只で済ます程、この魔化魍は甘くない。

 

『あぁ?何だそこの人間(エサ)…。』

 

『俺様達最強の魔化魍である「金銀角兄弟」にんな口利くってこたぁ、自殺志願者か?』

 

「違うな…俺は貴様等を始末しに現れたんだ…。この世界の人間を全て始末してくれた貴様等をな…!」

 

闇影は、目を赤く光らせて無表情な顔のまま紫色のカメラ型のアイテム「ディシェイドライバー」を腰に当てるとそこからベルトが伸びて巻き付いた。そして…

 

「変身…。」

 

【KAMEN-RIDE…DISHADE!】

 

紫色のライダーが描かれたカードをドライバーに装填すると、闇影はディシェイドに変身した。

 

『俺の眼に映った者は…全て、焼き尽くす…!!』

 

『ほざいてんじゃねぇ!!人間風情…!!』

 

ディシェイドの挑発らしき台詞に頭に来た金角はその巨大な右腕をハンマーの様に降り降ろし彼を叩き潰した…

 

『がっ…!?ギィヤァァァァッッッッ!!!!』

 

『あ、兄貴!?』

 

…筈がそれより前にディシェイドは、シェイドブッカー・ソードモードで一瞬で彼の右腕を撥ね飛ばした。あまりの激痛に斬られた部分から血を流しながら悲鳴をあげる金角。

 

『……!!』

 

『アッギャアァァッッ!!?ガッ!!グゥッ!!ゲェアァァッッ!!』

 

『このクソ人間…!!只で済むと思っ…!!』

 

ディシェイドは無言のまま、シェイドブッカーで金角を幾度も斬り付けて圧倒していく。銀角は、背後から両腕を降り降ろしディシェイドを叩き殺そうとしたが…

 

『……ッ!!』

 

『ィギャアァァッッ!!?うっ、腕がぁぁっっ!!?』

 

僅かに背後を向き、銀角の両腕を一瞬で斬り落とした。そして再び金角の方に目をやり…

 

『鬼にはこいつで止めを刺すか…。』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DE・DE・DE・DEN-O!】

 

『エクストリームスラッシュ…ふっ!!』

 

『ギィヤァァァァッッッ!!!!』

 

ディシェイドは、金角の外見が「鬼」に見えると言いながら「仮面ライダー電王」のFARを発動し、ソードフォームの必殺技「エクストリームスラッシュ」を使い、刀身に赤いフリーエネルギーを籠めたシェイドブッカーを振り上げて金角に斬り付けて爆発させた。

 

『あっ、兄貴!!ヒッ…ヒィィィィッッッッ!!!!たっ、助けてく…!!』

 

「最強の魔化魍」だと自負していた自分達が目の前の、それも餌だと見下していた筈の人間によってあっさり兄・金角を倒された事に恐怖した銀角は、ディシェイドから逃げ出そうとしたが…

 

【ATTACK-RIDE…CLOCK-UP!】

 

『尻尾を巻いて逃げるのが「最強の魔化魍」だとはな…化物の命乞い程見苦しい物は無い…。』

 

『れっ!?ヒッ…!?ヒギャアァァッッ!!?』

 

ディシェイドは「カブトの世界」のライダー達が共通して持つ超加速システム「クロックアップ」を使い、銀角の横に瞬時に現れ顔面を殴打した。

 

『た、頼む!!も、もう人を喰ったりはしねぇから、い、命だけは見逃してく…!!』

 

倒れた銀角は、ディシェイドに命を助ける様懇願、命乞いをした。しかし…

 

『…れぁっ!!?』

 

『言った筈だ…俺のこの眼に映った奴は必ず焼き尽くすと…。』

 

【ATTACK-RIDE…ONIBI!】

 

シェイドブッカー・ソードモードで首を撥ね飛ばし、分かれた身体と頭に彼等魔化魍を討伐する戦鬼「仮面ライダー響鬼」の「鬼火」を発動し、掌から紫色の炎を放って消炭にした…。

彼の眼に映った者は、絶対の死を約束される…。それがディシェイド(闇影)が「緋眼の死神」だと謳われるが所以だった…。

 

 

 

「命乞いしてる奴を躊躇い無く殺すなんて…容赦無いねぇ…青年。」

 

『!!?』

 

そこへディシェイドの無慈悲なやり方を飄々とした口調で指摘する、銀色がかった柔らかく尖った白髪に左目に掛かった黒い眼帯、下は黒ズボンの、銀色の着流しの上に茶色のジャケットを着込んだ三十台前半の男性が現れた。

 

「まっ、仏さんがとんでもない人喰いだった事を踏まえればどっちもどっちなんだけどねぇ…。」

 

『誰だ貴様は…?』

 

「成程…お前が『あいつ』の言ってたディシェイドか。」

 

『何故、俺の名を知っている…!?』

 

謎の男は、頭をポリポリ掻きながら彼がディシェイドだと口にした。ディシェイドは彼が自分の名を知っている事に驚きながら睨み付ける。

 

「凄まじい邪気と殺気を感じるねぇ…ここは少し『稽古』をつけてやるか…。」

 

ディシェイドの尋常でない邪気と殺気を感じ取った男は、彼に「稽古」をつけると言いながら懐から全身が銀色の音叉を取り出した。

 

『それは…音角!!まさか貴様…!?』

 

「そう言やぁ、自己紹介がまだだったな。俺の名はマバユキ、お節介な鬼のおじさんさ…青年。」

 

謎の男・マバユキは、尚も飄々とした口調で自己紹介をし音角を指で弾いてそれを額に近付けると、そこに鬼の紋章を浮かべて全身が銀色の炎に包まれ…

 

『眩鬼(まばゆき)…推参!!…ってね。』

 

腕を振り払うと炎は止み、マバユキは外見は装甲響鬼に酷似しているが、体色が銀色で、のっぺりした複眼は黒では無く、空の様に澄んだ青が特徴の戦鬼「仮面ライダー眩鬼」へと変化した…。

 

『眩鬼…だと…!?』

 

『さて、眩い道へと導きますか!!』

 

『その前に貴様を死に導くまでだ…!!』

 

『おっ!ふっ!よっ…と!!』

 

ディシェイドはシェイドブッカー・ソードモードで眩鬼に斬り掛かって行く。しかし、最小限の動きだけでそれをかわされた。

 

『この…ちょこまかと!!』

 

攻撃を回避され苛つくディシェイドはガンモードに切り替えて眩鬼に連射するが…

 

『あらよっと!!』

 

身体をバレエ選手の様に、後ろに大きく反らして銃撃を全て回避した。

 

『勢いだけで斬れる程戦いは甘くないよ。』

 

『黙れ!!ならばこいつで…!』

 

【FINAL-KAIZIN-RIDE…O・O・O・ORPHNOCH!】

 

ディシェイドがドライバーにカードを装填すると、仮面に何らかのの紋章を浮かせてその身を死から蘇りし灰色の不死王「アークオルフェノク」にFKRした。

 

『あらら…怪物になるとはね…。』

 

『減らず口はそこまでだ…!!』

 

DアークOは、未だに軽い口調を叩く眩鬼に向けて掌から青白いレーザーを放ち、彼の身体を硬化させようとするが…

 

『ならこっちも「変身」しちゃおうか…変化、凍鬼!』

 

両手で印を結んでそう叫び、全身が吹雪に包まれると眩鬼の姿は、白熊を模した戦鬼「仮面ライダー凍鬼」の姿に変化した。但し、何故か全身が銀色である。そして、身体から冷気を放つとレーザーは逆に凍結、粉砕してしまう。

 

『何!?貴様!何故他の鬼の姿になり力を使える…!?』

 

『凍鬼だけじゃないぜ…変化、羽撃鬼!』

 

DアークOは、眩鬼に何故他の音撃戦士に変身する能力を持つのかを尋ねた。しかし、M凍鬼はそれに答えず再び印を結び、今度は鷹をイメージした戦鬼「仮面ライダー羽撃鬼」に変化した。またしても全身が銀色である。

 

『トビマストビマス!!ってね♪これなら攻撃は届かない。さて、どうする?』

 

M羽撃鬼は変化した直後に翼を広げて空を飛び、DアークOにどう対処するのかを学校の授業の様に問い掛ける。

 

『…ふざけるなっ!!』

 

【KAIZIN-RIDE…GOLDPHOENIX!】

 

当然それに神経を逆撫でしたDアークOが再びカードを装填すると、「仮面ライダーオーディン」の契約モンスターである黄金の鳳凰「ゴルトフェニックス」にカイジンライドし、同じく空を飛びM羽撃鬼に襲い掛かった。

 

『グィアァァッッ!!』

 

『…せいっ!!』

 

DゴルトフェニックスとM羽撃鬼は、空中で互いに交差するかの様に激突してはまた近付いては激突する…を繰り返している。

 

『チィィッ…!!』

 

このままでは埒があかないと判断したDゴルトフェニックスは降下してディシェイドに戻り、M羽撃鬼も地上に降下して眩鬼に戻った。

 

『どうした青年。もう終わりか?』

 

『…っ!!舐めるなっ!!』

 

【FINAL-KAIZIN-RIDE…I・I・I・IMAGIN!】

 

徐々に冷静さを失うディシェイドは、全身が砂に包まれると死神からイメージされた灰色のイマジン「デスイマジン」にFKRした。

 

『こいつになったからには…貴様を確実に殺す!!ウオォォッッ!!』

 

どうやらディシェイドがこのイマジンにFKRするのは、本気でその相手を抹殺すると決めた時のみの様である…。DデスIは灰色の大鎌を実体化させ、それを振り回しながら眩鬼に向かって行く。が…

 

『うおっと!!』

 

『何だとっ!?』

 

何と眩鬼は、降り降ろされた大鎌を片手で受け止めた。

 

『お〜やおや?それで全力かい?青年。』

 

『何なんだ…この男…!?』

 

その状態で尚も飄々とした口調で話す眩鬼。DデスIは、彼の未知なる力に戸惑いを感じていた。すると…

 

 

『なぁ青年、そんな風に力を振り回して人を殺して虚しく無いか?』

 

『……!!』

 

『お前が何の目的でこの力で沢山の人間を殺し、世界を焼き尽くしたのかは知らない。だがそんな事をしてもお前の望みは叶わない…。』

 

突然眩鬼は、DデスIに彼自身の行動が虚しく無いのかを尋ねる。しかも何故か彼が人間を大量に虐殺し、世界を焼き尽くした事実を知っているかの様な口振りだった。

 

『何で知ってるのか…?って顔してるな?顔見えないけど。お前の攻撃からは虚しさと何かに固執している気持ちが凄く伝わるんだよな。俺は結構そう言うのには敏感なんでね。』

 

何と眩鬼は、ディシェイド…闇影の心情を彼からの攻撃を通して知ったのだと言う。これまでディシェイドの攻撃を避け防戦一辺だったのは、彼の心を知る為だった。

 

『もし悩んでいるのなら、俺が…『…が…る…』ん?』

 

『貴様に…貴様なんかに何が解る…!!家族を…世界を何もかも全て失った奴の気持ちがぁぁっっ!!』

 

『何っ…!!ぐあっ!?』

 

眩鬼からの言葉を聞き、激昂するDデスI。何と彼は、自身の世界を失った過去を持っていた。そして彼を蹴飛ばし距離を取りディシェイドの姿に戻る。

 

『うあぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DI・DI・DI・DISHADE!】

 

完全に感情的になったディシェイドは、自身のFARを発動した。しかし…

 

『なっ!!何だこれはっ!!?』

 

ドライバーから凄まじい電撃エネルギーを纏った黒いオーラが湧き上がり、それは周囲一体を覆い出した。

 

 

 

「何だありゃ…!?」

 

「あれが彼の力なのね…。尤も、完全に制御出来てないけどね。」

 

ディシェイドと眩鬼のいる岩場から遠く離れた場所で傍観する巡と周。ディシェイドの強大な力を目にして息を呑む周だが、巡はまだ制御しきれていない物だと冷静に語る。

 

 

 

『止すんだ青年!この力を早く止めるんだっ!!』

 

『黙れぇぇっっ!!俺は…俺はっ…!!』

 

眩鬼はディシェイドにFARの力を止めるよう強く呼び掛けるが、それに耳を貸さないディシェイド。その時、彼の足下に亀裂が入り…

 

『!!うっ、うわあぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

『青年!!』

 

足場が自分自身の力により瓦解し、ディシェイドはそのまま真っ逆さまに落下して行く…。

 

ディシェイドとは?謎の人物・マバユキとは何者なのか?ダークショッカーとは?そして、闇影の「ある目的」とは何なのか?

闇(闇影)と光(マバユキ)が出会う時、何が起きるのか…今、その真実が明らかになる…。




今の闇影と昔の闇影の性格が全く違う事に驚く方が何人いる事やら…。

マバユキの性格はヒビキさんをイメージした物です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第22導 DISHADE TO DELIGHT~闇から光へ~

これがディライト誕生の瞬間です!!


―ん…此…処は…?!!何故だ!?何故またこの光景がっ…!?

 

闇影が見た物、それは全てが炎に包まれた世界でありその周囲には無数の人間が息絶えていた。そして、彼が足下に目をやると…

 

―!!そ…そんな…おい!しっかりしろ!!おい!おい!!おいっ!!

 

―自分と同じ年齢に近い少女が横たわっており、闇影は彼女を支え目を覚ますよう何度も呼び掛けた。しかし少女はそれには応えない―いや、応えられないと言うのが正しい。それもその筈、彼女は既に死んでいるのだから…。

 

―うっ…うっ…うぅっ……うああああぁぁぁぁぁっっっっ!!!!

 

そう悟った闇影は顔を黒い空に向けると、血の涙を流しながら悲しみと怒りを籠めて咆哮した…。

 

 

 

「はっ…!?くっ…はぁ…はぁ…またあの夢か…。」

 

意識を戻し、全身に大量の汗を流しながら勢い良く起き上がる闇影。どうやら先程の夢の内容は「彼が嘗ていた世界」が焼き尽くされる物の様だ…。

 

「おっ、気が付いたか青年。」

 

「……!!何故貴様が此処に…ぐっ!!」

 

テントの出入口からマバユキが覗き込む様に現れ、意識が戻った闇影の身を案じる。よく見ると、上の服だけ脱がされ包帯が巻かれていた。闇影は立ち上がろうとしたが、身体の全身が痛み出す。

 

「おいおい、まだ本調子じゃないんだから動かない方がいいぞ。」

 

「黙れ…!貴様の世話になるくらいなら…今死んだ方が…うっ…!!」

 

マバユキの世話を受けた事に死以上の屈辱を感じている闇影は、尚も立ち上がろうとするが再び身体に激痛が走り、体力が衰弱しているのも相俟ってその場で倒れたしまう。

 

「やれやれ…こりゃ困った死神君だねぇ…。」

 

マバユキは、そんな闇影を見て頭を掻きながら呆れていた…。

 

 

 

―世界の光導者・ディライト!9つの影の世界を巡り終え、その瞳は、何を照らす?

 

 

 

「闇影君、何処にいるのかしら?」

 

「この惨状じゃ生きてんのも怪しいよな…。」

 

一方巡と周は、ディシェイドがFARを発動し崩壊した場所で闇影を探していた。荒れ果てた瓦礫の惨状を見る限り、彼が生きているのが怪しいと呟く周。

 

「このまま死なれると私達の目的が果たせなくなるわ…何としてでも見つけないと…!!」

 

「だな。」

 

どうやら二人が闇影を探しているのは彼の身を案じる為ではなく、自分達の目的の為であった。

 

 

 

「……。(こんな所で油を売っている暇は無い。早く任務を達成させて組織に戻り『あの研究』を続けないと…。)」

 

場所は換わり、あれから目を覚ました闇影は早く「この世界を焼き尽くす」と言う任務を遂行し、ダークショッカーに戻り「とある研究」に取り掛からねば、と考えている。この世界の人間は全て始末…をした金銀角兄弟は始末した。後は…

 

「気が付いたか青年、あんま無茶すんなよ。ほれ、飯が出来たぞ。」

 

そう考えている最中、片手に食事を持ったマバユキがテントに入って来た。

 

「(この男を始末すれば…!!)」

 

「ちゃんと食わないと体力が回復しないからな、ほい。」

 

目の前のこいつを始末すれば…と考える闇影の思惑を知らないマバユキは彼に食事を食べる様勧めるが…

 

「……っ!!」

 

闇影は差し出された食事の入った容器を勢い良く手で払って引っくり返した。

 

「……!!」

 

流石のマバユキもここまでされれば激怒、またはそれを通り越して呆れる見捨てるだろう、そうなれば殺し易い…と闇影は考えるが…

 

「あ〜らら、好みに合わなかったのかなぁ?」

 

「……。」

 

そう言いながらマバユキは、文句一つ言わずに引っくり返った食事を片付け出した。闇影は、んな彼に少し目をやるが、直ぐに逸らした。それから数日経ち、闇影の体力も完全に回復をした。初めは食事を口にはしなかった闇影だが、マバユキを殺すにしても、世界を焼き尽くすにしても、当面は体力回復に専念すべくだと考え已む無く食し、手当ても素直に受けた事により回復が早まったのだ。

 

「おおっ、やっと治って良かった良かった!」

 

「ふん…本来ならば貴様も始末するつもりだったが、治療費として今回だけは見逃してやる。精々俺と目を合わさない事だな。」

 

と、闇影は自分を治療したマバユキを「治療費」として見逃すと言いながらこの場を去ろうと踵を返した。が…

 

「ちょ〜〜っと待った青年!!」

 

突然マバユキは大声で闇影を呼び止めた。それを聞いた彼は足を止めて…

 

「何だ…まだ何か用か?」

 

振り返り不機嫌な表情で顔をしかめ、何の用なのかを尋ねた。

 

「お前、このまま組織に戻ってどうするつもりだ?また人殺しの仕事でもするつもりか?」

 

「……。」

 

「前も言ったけど、そんな事をしてもお前の願いは叶わない…。だからいっその事、組織なんて辞めてしまったらどうだ?」

 

「何…!?」

 

「そんでもし悩みがあるなら、俺がお前の先生になって相談に乗ってやる。」

 

マバユキは、このまま闇影がダークショッカーに戻る事を良しとせず「自分が彼の悩みを解決する」と言い、彼に組織から抜ける様勧めた。

 

「ふざけるな…そんな事は俺の勝手だ。貴様に指図される謂れは無い…。」

 

「そのままの状態で放っておくのは俺の性に合わないんだよなぁ…。」

 

当然闇影がそれを聞き入れる筈が無かった。しかし、マバユキもそれを放っておけないと飄々としながらも一歩も引かなかった。

 

「……っ!!」

 

「うおっと!!?」

 

そんなマバユキの言葉に苛立った闇影は、シェイドブッカー・ガンモードで彼の顔をかする程度に射撃した。

 

「お前…何なんだよ…これ以上俺に構うなっ!!」

 

「何って言われても…こういう性分なんだから仕方がない、としか言えないしなぁ…。」

 

銃を向けられても尚、落ち着いた口調で今のお節介な言葉を「性分」だと語るマバユキ。しかし、それはかえって闇影の神経を逆撫でる。そして…

 

「…っ!!だったら今ここで俺と戦え!!お前が勝ったら生徒にでも何でもなってやる!だが、負けたらお前の命を貰う!!」

 

何と闇影はこの場でマバユキと戦う様言い出し、自分が負ければ彼の生徒になると言い、勝てば彼の命を貰うと言う何とも無茶苦茶な約束を提示した。

 

「良いよ。それでお前が満足するならな。但し、条件がある。」

 

マバユキもそれを了承し、戦う事を決めた。しかし、何やら条件がある様だ。その条件とは…

 

「お前はどんな能力を使っても良いが、俺は変身せず生身のままで戦う。」

 

「何…!?」

 

マバユキの条件とは、何と自分は「変身せず生身で戦う」とハンデを付ける事だと言う。あまりにも自身で不利な状態で戦いを臨む彼の考えに理解が出来ず眉をひそめる闇影。

 

「俺はお前を倒すのではなく、お前を説得する為に戦う。さ、早く変身しな。」

 

「舐めた口を…後悔するなよ…!!変身…!」

 

【KAMEN-RIDE…DISHADE!】

 

生身で自分に挑むと言うマバユキに感に障った闇影は腰にドライバーを装着、カードを装填するとディシェイドに変身した。

 

「んじゃ、授業開始!」

 

『ふざけるなっ!!おぉぉっっ…!!』

 

マバユキは懐から本を取り出し、読みながら空いた手でディシェイドに来る様に挑発した。そんな態度が気に食わないディシェイドはシェイドブッカーをソードモードに切り替えてマバユキに斬り掛かった。

 

「[その時サエコはキリヒコに『服を脱いで尻を出しなさい!』と命令し…]…っと!!」

 

『何っ!?』

 

しかし、マバユキは動じる様子も見せず涼しい顔で本を朗読しながら指二本で刃先を受け止めた。

 

『くっ…!!はっ!ぜいっ!しぇあぁぁっっ!!』

 

ディシェイドは何度もシェイドブッカーで斬り掛かるが、同じ方法で攻撃を全て指二本だけで受け止められる。

 

『くそっ…!!』

 

「[キリヒコは無言のままで言われるがままに衣服を全て脱ぎ、自分の尻を突き出した…。]ん、どうした青年?」

 

『…ならこいつでどうだ!!』

 

【ATTACK-RIDE…CLOCK-UP!】

 

ディシェイドは苛立ちながらカードを装填し、クロックアップを使いマバユキに突撃し出した。如何に回避が優れているとはいえ、生身の人間にクロックアップを回避する術など無い筈、そう思いながらマバユキに高速のタックルを見舞った…かに見えたが…

 

『なっ!?奴の身体が消え…はっ!?』

 

それはまるで蜃気楼の存在だったかの様にマバユキの身体をすり抜けると、彼は消滅した。その時、ディシェイドは背後から何らかの気配を感じた為直ぐ様振り向いた。すると…

 

「[サエコは薔薇の棘が付いた鞭を勢い良く伸ばし、キリヒコの尻に…]って、うわっ…!えげつないねぇ…。ってあれ?俺何時の間に青年の後ろにいたんだ?本読んでて気付かなかったなぁ…。」

 

何事もなかったかの様に本を朗読するが、内容が「えげつなく」なったと声を漏らしながら読んでいた本を懐にしまうマバユキの姿がそこにあった。そんな彼は、何時の間にかディシェイドの背後にいた事におどけた様子で驚く。

 

『(いや違う…奴は俺がクロックアップで突撃する直前に音を立てずに走ったんだ。それも残像が生まれる程の超速度で…!!一体何故なんだ…!?)』

 

そう。マバユキはあの瞬間、ディシェイドのクロックアップを正面から「音を立てずに」走り出したのだった。それも本人以外には「止まって見える」残像を生み出す程の超スピードを用いて…。

 

「今のは『鬼走術(きそうじゅつ)・幻足(まぼろあし)』って技さ。」

 

『……!!』

 

マバユキはディシェイドの思ってる事を知っていたかの様に今の回避技を「鬼走術」だと明かした。

 

『鬼走術だと…!?そんな技聞いた事無いぞ…!!』

 

「クロックアップかぁ…。これは『一回見た』だけで出来るかどうか分からんけど…粗方コツは掴めたぞ!」

 

『??お前、何を…!?』

 

マバユキの「クロックアップのコツが掴めた」という発言にディシェイドが疑問を抱きながら眉をひそめていると、突然マバユキの姿が消えて無くなった。

 

『また奴が…消えて…!?』

 

「…油断大敵火がボーボー…ってな!!」

 

『馬鹿…なっ!?人間がクロックアップの速度で…ぐああああぁぁっっ!!』

 

ディシェイドが戸惑っている隙にマバユキは彼の懐に近付き、掌底を放ち彼を岩壁まで吹き飛ばした。

 

『ぐっ…!!このっ…!!』

 

ディシェイドは叩き付けられた痛みと衝撃に耐えながらもシェイドブッカーをガンモードに変え、マバユキに反撃しようとするが…

 

『なっ…!?』

 

「はい没収。」

 

その直前にマバユキが再びディシェイドの眼前に近付き、彼の手から素早くシェイドブッカーを取り上げて銃口を向け…

 

「バーン!!」

 

『……っ!!』

 

「…何てね。お前の負けだよ青年。」

 

「バーン!!」と掛け声を出して撃つ真似をするが本当に撃たず、シェイドブッカーを投げ捨てた。思わず目を逸らしたディシェイドは…

 

『…何故殺さない?俺を仕留めるチャンスがあっただろう…。』

 

「今から生徒になる奴死なせたら意味が無いっしょ?」

 

今の攻撃で確実に始末出来たのにも関わらず、何故自分を撃たなかったのかをマバユキに尋ねる。理由は勿論、ディシェイドを生徒にする為だと言うマバユキ。

 

『寝言を言うな…誰がお前なんかの弟子になるか…!!』

 

「おいおい、俺は『組織を辞めろ』とは言ったけど、『生徒になれ』なんて一言も言って無いぞ?それはお前が言い出した事じゃないのか?勝手に約束して勝手に負けた上に自分で約束を破るって、格好悪くないか?」

 

『なっ!くっ…!!///』

 

ディシェイドは、自分が勝手に口にした約束をマバユキに指摘され反論が出来ず、仮面の中で顔を真っ赤にし、口を濁らせながら暫く考え…

 

『…良いだろう…だが勘違いするな!俺はあくまで死神としてお前を始末する為に居るだけだからな!!///』

 

「それでも良いよ。宜しくな!青年♪」

 

結果、ディシェイドは約束通りマバユキの生徒になる事になった。しかし本人曰く、あくまで「緋眼の死神」である自分が見た者を必ず殺すと言う法則に従っての事だと顔を赤めながら天の邪鬼な口調で断言する。

 

 

―ダークショッカー本部・首領の間

 

 

「…はい…。ディシェイド、煌様の散策が僕の任務でなんですね?首領。」

 

―うむ。彼に任務を与えてからここ数日間、何の連絡が無いのが気になってな。済まないが、連れて帰ってくれないかね?

 

黒い階段の上にある玉座に座っている「首領」と呼ばれた者は、その遥か下で跪いている二十代の青年に未だ連絡が着かない闇影の散策を命じ、青年はその任務について再度確認をしている。

 

「仰せのままに。」

 

―処遇については君に任せよう。場合によっては…

 

首領に闇影の処遇についてを一任された青年は、その続きを聞くまでも無く悟り、妖しく笑い…

 

「…全てはダークショッカーの為に…。」

 

そう言いながら闇影を散策する為、目の前に突然現れた灰色のオーロラを潜り、彼の居る世界に移動しこの場から消えた…。

 

 

 

「はぁっ!ぜいっ!ぜりゃぁっっ!!」

 

「おっと…!そうやって振り回すだけじゃ俺は倒せないよっ…と!!」

 

不本意ながらマバユキの生徒となった闇影は、竹刀を持って彼に向けて攻撃を仕掛けている。しかしマバユキはそれを紙一重の所で全て避けている。

 

何故竹刀を使用しているのか、それはマバユキの「授業の間は武器では無く竹刀を使え」と言う指示を受けたからである。無論闇影は納得しなかったが、「これで俺から一本取れない奴が武器で殺せる訳が無い」と言われた為渋々従ったのだ。そのせいか闇影はずっと殺気立った顔をしている…。

 

「はぁ…はぁ…。くそっ…!!何故当たらないんだ…!!はぁ…はぁ。」

 

もうかれこれ三時間以上この授業を続けている為、闇影は汗だくになりながら息を切らして何故自分の攻撃が当たらないのか分からないでいた。

 

「はぁ…確かに青年の攻撃は普通より高いけど、まだ粗削りな部分が多いな。ちゃんと相手の動きを見極めてから攻撃しないと。」

 

「黙れ…!はぁ…はぁ…。」

 

「それにこういう敵が現れた場合でもそれだと隙を付かれやすいぞ。こういう…」

 

マバユキは闇影の攻撃の方法を指摘しつつ、彼の前から姿を消し…

 

「クロックアップ…だったっけ?こういう素早い動きをする敵が現れた場合でも…ね?」

 

「何っ…!?また…うあああぁぁっっ!!」

 

…たかの様に素早く動いて闇影の背後に立ちって回し蹴りを見舞い、彼の身体を吹っ飛ばした。

 

「続けて行くぞ?」

 

「ぅくっ…!また消えた…いや、そう見える速度で走り回っているのか…。どうすればあの『クロックアップ擬(もど)き』を破れるんだ…!?」

 

マバユキが再び消えたかの様に素早く走り回っているのを見た闇影は、立ち上がりながら竹刀を構えるが、「クロックアップ擬き」の打開策が見つからないでいた。

 

―どうした青年?まさかこれでギブアップなんて言うんじゃないだろうな?これが実戦だったら死んでるぞ〜?

 

「…っ!!黙れ!!誰が降参等するか!!お前の姿を捉えて必ずその能天気な脳味噌を叩き潰し…!!」

 

何処からか聞こえたマバユキの言葉に声を荒げて反論する闇影。しかしその時、彼は自分で言った言葉に何かを気付き始めた。

 

「(そう言えば、俺は奴の動きを充分に見て攻撃しているのだろうか…?いや違う、俺は奴の姿だけ見ていて、奴の動きを正確に見極めようとしていなかった…。)」

 

竹刀を構えつつ思考を巡らせる闇影は、マバユキの言葉を思い返している。

 

「(見えない動きを捉えるには…見るのではなく、感じる事…!!)」

 

彼の言っていた言葉の真意を悟り、目を閉じて感覚を研ぎ澄ます闇影。目に頼るのではなく、心の「眼」で相手の動きを感じ取る事でマバユキのクロックアップ擬きを破るつもりである…。

 

「(感じる…奴の僅かな息遣い、足音…それが徐々に大きくなってきたのは、俺に近付いて来ている証拠。背後からだな…。)」

 

研ぎ澄ませた感覚からマバユキの動きを読み始め、徐々にその存在を掴みつつある闇影。それによりマバユキは背後から近付いているのだと気付くが、竹刀は振らず構えたままだ…。

 

「(未だだ…。奴が完全に近付いてから攻撃しなければ…!!…よし、後ろから…5m…4、3、2、1…!!)そこだっ!!」

 

完全に自分の範囲に踏み込んだと確信した闇影は、目を見開き構えた竹刀を勢い良く背後に振り上げ、遂にマバユキに攻撃を当てる事が出来た…!「惜しかったねぇ…俺にもう一つの足技があったのを忘れてたね。」

 

「!!しまっ…!!」

 

「せぇぇぇぇいっっ!!」

 

「うあああぁぁっっ!!」

 

…かに見えたが、それは足技・幻足を使って生み出したマバユキの幻影であった。そして本物は瞬時に闇影の正面に近付き、彼の襟を掴んで身体ごと背負い投げで投げ飛ばした。

 

「うっ…!!く…くそっ…!!」

 

「でもま、目に頼らず感覚を研ぎ澄ますやり方を身に付いたから合格だ。今日はこの辺にしとこう。」

 

 

 

「くそ…!」

 

「はいはい青年。何時までも腐ってないで飯でも食べよう。ほれ、俺の特製カレーだ。」

 

先程の授業でマバユキから一本を取れずに不貞腐れている闇影は、カレーが乗った取り皿を受け取った。

 

「ちっ…っておい、何故カレーに麻婆豆腐が混ざっている?」

 

闇影は渡されたカレーに挽き肉や豆腐に七味と、麻婆豆腐の具が混ざっているのを見て眉をひそめてマバユキに尋ねた。

 

「こいつは俺が独自で開発した、カレーライスに麻婆豆腐を組み合わせた新しいカレー…その名は、『マーボーカレー』だ!」

 

「何が独自開発だ。ただ単にカレーに麻婆豆腐を混ぜただけだろ…。」

 

「そう言わずに一回食べてみな。美味いぞ〜。」

 

「どうせ大した味じゃ…!!」

 

あまりにそのまま過ぎるアイデアカレーに不評の声を漏らす闇影は、マバユキの言われるがままにマーボーカレーを口にした。すると彼は一瞬だけ目を大きく見開いた。

 

「…どうだ?」

 

「ふん…ま、悪くは無いな…。」

 

素っ気ない感想の言葉を返す闇影だが、内心その意外な絶妙な味に顔を少し綻ばせていた。

 

「それは良かった…。ほら、まだおかわりはあるからな。それ食い終わったらデザートに『ラー油プリン』があるからな。」

 

「何だその意味不明なデザートは!?どうせなら甘いのか辛いのかはっきりした物を出せ!!」

 

闇影はまたしても意味不明な食べ物の存在を知り、普段の冷淡な感情を捨てて全力でマバユキに突っ込んだ。そんなこんなで闇影の授業の第一日が過ぎて行った…。

その後の数日間、闇影はマバユキから様々な授業と言う名の「修業」の手解きを受けた。効果的な防御法、効率的な回避法、怪人の特性把握の学問等その他諸々…。そして、それを受けている内に闇影の感情も徐々に変わりつつあり、当初の任務「この世界の排除」も彼の口癖で言うと「どうでも良く」なったらしい…。

 

「ふぅ…今日も終わったか…っておい、前から気になっているんだが、お前が何時も読んでいるその本は何なんだ?」

 

今日もまた授業を終え一息付いた闇影は、マバユキに彼が何時も読んでいる小説について尋ねた。

 

「これか?これは『ドキドキユートピア』って言うシリーズだ。」

 

「何なんだその訳の分からない小説は…って待て、シリーズって事は他にもあるのか!?」

 

「ああ。初代の『W(ダブル)』を初め、『ACCEL(アクセル)』に『EXTREME(エクストリーム)』、初代過去編の『SKULL(スカル)』とあるんだ。で、今俺が読んでるのは『AtoZ』さ。何れも18禁だから青年は読めないけど何?そう言う年頃か~?」

 

「誰が読むかっ!!そんな有害書籍!!///」

 

マバユキの愛読書「ドキドキユートピア」シリーズはどうやら18禁物の官能小説らしく、その話を持ち出した闇影に「興味があるのか?」と冷やかすマバユキだが、彼は顔を赤くして全力で否定した。

 

「ふん…!!そう言えばお前、何故生身でクロックアップ擬きを使う事が出来るんだ?」

 

ここで話題を変えた闇影は、何故マバユキが変身もせずにクロックアップ擬きを使えたのかを尋ねた。本来クロックアップは、「カブトの世界」全てのライダー、若しくはその世界の怪人である、人間を殺害しその者に擬態し成り代わる昆虫型生命体「ワーム」、そして…全てのライダーの力を使える、自身が変身するディシェイドのみの筈なのだが…

 

「ん、あれか?あれは…何と言うか…青年がやってるのを見て、見よう見まねでやったんだよなぁ…。」

 

「…は?」

 

「だから、一回見たから出来る様になった…と言う事だって。」

 

マバユキからの質問の返事を聞いた闇影は、思わず間の抜けた声を出した。クロックアップを見様見真似で使用しただなんて答えが返ってくればそうなるのも無理は無い…。同じ質問をされたと思ったマバユキは、再度同じ答えを口にすると…

 

「ふざけるな!!そんな理由で納得が出来るかっ!!全然答えになって無いだろうが!!」

 

「まぁまぁ…明日青年にもこの技を生身で使える方法を教えてやるから。」

 

当然闇影はそれに激怒して、答えにならない答えを口にしたマバユキを捲し立てるが、この技を教えると言いながら落ち着く様宥められる。

 

「…そういやさっきから俺が答えてばっかだよな。今度は青年に聞きたい事があるんだよなぁ…。何故ダークショッカーとか言う組織に入ったのかを…ね?」

 

マバユキは、闇影が何故ダークショッカーに与したのかを顔付きを真剣な物にして尋ねた。それを聞いた闇影は、少々顔を俯かせて考え出し「はぁ…。」と小さく溜め息を出して口を開いた…。

 

「良いだろう。教えてやる…俺の目的を…。」

 

闇影は、考えた末に自分がダークショッカーに入った理由を話す事にした。

 

「今から三年前…俺の住んでいた世界に突然灰色のオーロラの様な物が発生して、そこから見た事の無い怪人達の軍勢が現れて人間を全て殺したんだ…!!」

 

何と闇影は、嘗て自分のいた世界を灰色のオーロラから現れた怪人の軍勢に蹂躙されていたのだった。

 

「だが連中は何故か俺だけは殺そうとしなかった。そのお陰で生き延びたんだがな…。」

 

そして、生き延びたのは怪人達がどういう訳か自分のみを殺さなかった為だと、腕を震わせ、拳から血が出る程握り絞めながら言う。

 

「それはまるで地獄…いやそれ以上の光景だった…。街や建物全ては炎に包まれ、人々は断末魔の叫びを上げ、道は全て人々の死骸で埋め尽くされていた…。それを目にした俺は、絶望感と孤独感に苛まれていたよ…。もう自分には何も残されていない…そう思っていた時だった…。」

 

 

 

―煌闇影君。君の願いを叶える術を授けよう…。もし君にその気があるのなら、我が組織…ダークショッカーに入らないかね?そこの技術力を用いれば君の望みが叶うやもしれぬ…。ここで一人で死する時まで生きるか、死する思いで望みを手にするか、二つに一つ。さぁ…どうする?

 

―良いだろう…何のつもりか知らぬが、俺の――が――なら悪魔とでも手を結んでやる…。

 

―ふむ…良い目だ。気に入った。では行こうか。闇で全てを司る為に…!!

 

 

 

「そうしてダークショッカーに入った俺は、血の滲む努力を惜しまず日々研鑽し、一年足らずで幹部にまで登り詰め、技術長にもなり、そして…!!」

 

「ディシェイドの力を貰ったって訳だね…。」

 

「俺は…俺の目的の為なら、手段は問わない…。世界を消し、人間を殺す事で叶うのならば迷わず実行する…。無論お前の命でそうなるのならば俺は…お前を殺す!!」

 

全てを話し終えた闇影は、マバユキに指を指し例え彼の命で自分の目的が達成出来るのならば、その命を迷わず奪うと宣言した。

 

「ふぅ…お前の目的や言いたい事は粗方解った。だがな、これはもう何度も言ったけど覚えろ…そんな事をしてもお前の願いは叶わない。」

 

「何だと…?」

 

「仮にそんな方法で叶ったとしても、きっとお前の心は救われない…。それで救われると思っているのはお前だけ、ただの自己満足に過ぎない…。」

 

闇影の目的を粗方理解したマバユキは、汚れた手段で叶った願いに何の意味を持たない、彼の自己満足だと、やや厳しく諭した。

 

「…っ!!お前に何が解るっ!?当たり前にあった物を突然全て失くした奴の気持ちが解るのか!?それが再び手に入るかもしれない、僅かな望みを抱いて何が悪いっ!?…何だったら、お前の目の前でお前の大切な人間を一人残らず殺してやろうか…?」

 

それを聞いた闇影は激怒し、マバユキに掴み掛かり激昂した。彼にとって今のマバユキの言葉は、失う事の悲しさを知らない人間の台詞だと思い、彼の大切な人間を目の前で殺すと恫喝した。

 

「……。」

 

「そうすれば解る筈だ…今言った綺麗事がどれだけズレているかをな…。」

 

暫く黙していたマバユキは、闇影の怒号を聞き終えると口を開いた…。

 

「…そうして貰って結構。それでお前の気持ちが解るのならばね…。でも、それは出来ない…。もう…皆死んじゃった。」

 

「……っ!!」

 

「俺の両親は、俺が生まれて間もない時に魔化魍に殺されたんだ…。んで、俺を拾って鬼の修業を叩き込んでくれた師匠も、同じ教えを受けてた戦友も…皆、死んだんだ…。」

 

何とマバユキも、魔化魍により両親や自分を拾い、鬼の修業を師事してくれた恩師や、同じ志を共にした戦友を全て奪われた過去を持っていたのだ。

 

「そん時は流石に思ったさ…『何故自分の大切な人を奪われなきゃいけないんだ』、『何故自分だけおめおめ行き永らえたんだ』…と、そう腐っていた時期があったさ…。」

 

「……。」

 

「けど、それじゃ駄目だと言う事に気付いた。自分だけ不幸だと思っても、自分を閉ざしていちゃ駄目だ…。変わらなければならない…。そう思い、自分に何が出来るのかを必死に考え、それ目指して必死に生きる決意をしたよ。『心を闇に閉ざした奴を救う』って目標を立ててな。」

 

「……。」

 

しかし彼はその過去に甘えず、自分に出来る事を考え抜き「心を闇に閉ざした人間を救う」為に必死に生きる事を決意したと言う。気付くと闇影は、いつの間にかマバユキの胸ぐらから手を離していた。

 

「ま、こんな愚痴を聞いてどうこうしろとは言わない。もしそれでも綺麗事だと思うのならこの言葉を覚えときな。『人を信じられないなら、人を信じられる自分を信じてみろ。』」

 

「人を信じられる自分を…信じろ?」

 

「それをするかどうかは青年次第だけどね。話はお終い!さっ、寝るぞ。」

 

話を終らせたマバユキは、テントから出した寝袋に入り、そのまま眠りに付いた。

 

「…俺は…。」

 

 

 

―翌朝

 

 

「ん…んあぁぁ…よく寝たよく寝た。って青年、もう起きてたのか。」

 

寝惚け眼で気だるそうに起き上がったマバユキは、自分より先に起きて竹刀を持って修練していたであろう闇影の姿を見た。

 

「…俺は、あんたの言い分を認めるつもりは無い…だから、一つだけ別の目的を果たそうと決めた…。」

 

闇影はそう言うと、持っていた竹刀をゆっくりとマバユキの方へ向けて…

 

「『あんたの上に立つ』事だ…。」

 

「そうか…良い目標が出来たな。んなら、今日も打ち込みの授業から行きますかっ!!」

 

「マバユキの上に立つ」のが目的…そう宣言する闇影。それを聞いたマバユキは、嬉しそうな顔をして本日の授業開始の声を上げた。

 

 

 

「行くぞっ!!はああぁぁっっ…!!」

 

闇影はマバユキに向かって勢い良く走り出し、竹刀を振り回した。

 

「はぁっ!ふっ!せいっ!!」

 

「ぅおっ!とっ!とっ!?ま、前以上に攻撃にキレが入って来たねぇ…!!」

 

闇影の攻撃に何らかの変化を見出だすマバユキは、それに少々驚きつつも何とか回避した。

 

「動きも無駄無く、効果的に力を入れた攻撃が出来てる…やるじゃないか青年。なら…これはどうするかな!?」

 

「消えた…?いや、クロックアップ擬きだな。」

 

マバユキは闇影の成長ぶりを誉めると、不敵な笑みを浮かべて姿を消した…。そう、闇影の言う様にクロックアップ擬きを使ったのだ。

 

―さぁ…どうする?青年。

 

「解りきった事を…。」

 

マバユキの声を聞いた闇影は、「聞くまでも無い」と呟き感覚を研ぎ澄ます為に目を閉じる。

 

「(今日こそは…今日こそは必ず奴の技を破ってやる。背後から5m…4、3、2、1…!!)」

 

―ふっ…背後から来ると思ってるな。けど、俺は…

 

無音で闇影に近づくマバユキは、彼がまた、以前の様に背後から来ると予想しているのだと悟り、前回と同じく幻足で幻影を作り油断させようと考えるが…

 

「…そこだっ!!」

 

―甘いよ…青ね…!?

 

すると闇影は一瞬だけ揺らめいたかの様に姿を消した。しかし、次の瞬間…!!

 

「なっ!?ぐああぁぁっっ!!?」

 

マバユキの身体に巨大な刃の様な風圧が直撃し、彼を大きく吹き飛ばした。…かに見えたが…

 

「何っ!?これも幻影…だと!?」

 

「そ〜の通り♪」

 

「なっ!?上からっ…がぁっ!!うあああぁぁっっ!!」

 

それもマバユキの幻影であり、本物は上空から現れそのまま落下運動の力を利用し、僅かな隙を見せた闇影の肩に強力な手刀を浴びせ、止めに掌底を放ち逆に彼を吹き飛ばした。

 

「うぐぅっ…!!」

 

「ちょっと追いつれたかなぁ…。青年の奴、『足を数十回一瞬で蹴り上げて走る』鬼走術・銀靴(ぎんぐつ)…クロックアップ擬きの応用で幻影を作り出すとはね…。」

 

「くそっ…!!後一歩の所で…!!」

 

「あいつ、あっという間に目標を達成するかもしれないな…。」

 

岩場に叩き込まれて悔しがる闇影を余所に、マバユキは彼の成長の早さを見て「自分より上に立つ」という目的を達成出来るのも時間の問題だと、嬉しそうに呟く。

 

 

 

「凄いじゃないか青年。たった一回見ただけで銀靴をマスターしちまうんだからな!」

 

「ふん…あんな物、種が割れれば造作も無い事だ。」

 

昼食時、マバユキはクロックアップ擬き―銀靴のコツを一度見ただけ完全に修得した闇影の呑み込みの早さを賞賛した。しかし、当の本人にとってそれは造作でも無い事の様だった。

 

「それにしても青年。お前、変わったな。」

 

「???」

 

「俺が初めてお前を見た時は物っ凄い無愛想で暗い顔をしてたけど、今はかなり明るくなってるぞ。」

 

「大きなお世話だ…。」

 

そんな何でもない会話をしながら昼食のマーボーカレーを口に運ぶ闇影とマバユキ。

 

「そうだ。青年に良い物を見せてやろう。俺の家族の写真をな。」

 

「家族は死んだんじゃなかったのか?」

 

「俺を産みの親はな。見せたいのは『今の俺の家族』だ。」

 

「お前…結婚していたのか!?」

 

「俺くらいの歳になれば所帯を持ってても可笑しくないだろ〜?後、子供もいるんだぜ。」

 

何とマバユキは既婚者であり、その家族の写真を見せようと懐を探り銀色のロケットペンダントを取り出した。

 

「子供もいるのか。ふん、さぞ能天気でろくでもない性格をしてるだろうな。」

 

「そう言うなって、きっと青年も気に入――隠れてないでこっち来て一緒にカレーでも食わないか?」

 

ロケットペンダントを開けようとしたマバユキは突然、姿の見えない何者かの気配を感じ取り能天気に声を掛け出した。すると灰色のオーロラが現れ…

 

「ウクク…普段は能天気な性格だけどやはり鬼なんですねぇ…。」

 

中から女性の様に艶があり分け目のある長い黒髪に、女性の様な睫毛をした緑色の瞳をした目に縁の無い眼鏡をかけた黒のスーツジャケットの下に首元をはだけた白いワイシャツを着た端正な顔立ちの若い男性が不気味に笑いながら現れた。

 

「…何故なんだ…?」

 

「青年…?」

 

謎のスーツジャケットの青年の顔を見た闇影は、額から汗を流し戸惑った表情をしている。「緋眼の死神」と恐れられた彼がこれほど動揺したのは初めてなのかもしれない…。

 

「何故貴様がここに居るんだ!?貴様は…『あの時』――!!」

 

「ちょっと静かにしてもらえないかな?」

 

「……っっ!!」

 

闇影が青年の事について話し出そうした時、彼は右の人差し指から黒いレーザーの様な物を闇影の額に放った。撃たれた闇影は、そのまま背後へ倒れ出した。

 

「青年!!大丈夫か青年!!」

 

「う…うぅん…。」

 

マバユキは、倒れた闇影に必死で呼び掛けた。直ぐに目を覚ます事から、どうやらダメージは全く受けていない様だ。

 

「…青年に何をしたんだ…?」

 

「ウクク…ご心配なく。ちょっとした『引き継ぎ』をしただけですよ。」

 

先程の行動を「引き継ぎ」だと言う青年は、人差し指から黒いレーザーを再び出すと、それを掌で数枚のカードに形を変えて懐にしまった。

 

「さて…煌闇影いや、仮面ライダーディシェイド。与えられた任務を完全に遂行していない上にダークショッカーの素性をそこの鬼に話した…。任務不履行及び停滞、情報漏洩。総合して君を『反逆者』としてみなす!!」

 

「何だと…!?」

 

「そして反逆者…裏切り者には…!!」

 

青年は闇影を「反逆者」だと宣告し、右手の中指と親指でパチンと音を鳴らすと…

 

『グオォォォォッッッッ!!!!』

 

『ヘェヤァァァッッッ…!!!!』

 

『ヒャーヒャッヒャッ…!!!!』

 

灰色のオーロラが現出し、そこから「9つの仮面ライダーの世界」全ての怪人の軍勢が現れた。闇影を反逆者と認定し、且つ無数の怪人の軍勢、この二つの要素から考えられる答えは一つしかない…。

 

 

 

「『死』あるのみ…。」

 

そう、闇影を始末する事であった…。

 

 

 

「…チィッ!!」

 

このままむざむざ殺される程甘くない闇影は、ディシェイドライバーを取り出そうとするが…

 

「待ちな青年。お前はさっき授業受けたばっかで体力はまだ完全に戻ってないだろ?ここは俺が行く…。」

 

マバユキがそれを制止し、体力が完全に回復していない闇影を戦わせず代わりに自分が戦うと言い彼の前に立ち怪人の軍勢の方を歩き出す。

 

「何を言ってる!?いくらあんたが俺より強くてもあの軍勢相手じゃ話が違う…!!俺が行かないと…!!」

 

敵は9つの世界全ての怪人が無数、対してこちらはたったの二人。そんな多勢に無勢な戦いは無茶だと呼び止める闇影。それを聞いたマバユキは立ち止まり…

 

「はっはっはっ!!」

 

「何が可笑しい!?」

 

「いや〜すまん。青年が初めて俺を心配する様な事を言うからつい嬉しくてね…。」

 

闇影が自分の身を心配する言葉を口にした為、マバユキは「嬉し笑い」をし出した。

 

「ばっ、馬鹿っ!!///お前は俺が必ず殺す予定だから今死なれるのが困るだけだからだよ!!///勘違いするなっ!!///」

 

と、顔を赤めて自分が彼を倒す為だと言い心配していないと否定する。

「死なれると困る」と言ってる時点で心配しているとは気付かず…。

 

「ははは!!分かった分かった。ま、ここは俺に任せとけ!お前は、俺が守ってやるからな。…眩鬼。」

 

「闇影を守る」と言い切ったマバユキは真剣な顔付きをしながら音角を鳴らし、額に近付けると眩鬼に変身した。

 

『さてと、全員眩い道へと導きますか!!』

 

『何消えただ…トバァァッッ!!?』

 

決め台詞を言った眩鬼は「姿を消した様に素早く走る」銀靴を使うと、十数体の怪人が突然爆発し出し、その直後に眩鬼は姿を見せる。

 

『こ…この野郎!!一気に攻めろ!!』

 

『『『ウオォォォォッッッッ!!!!』』』

 

一体の怪人の言葉を皮切りに、数十体の怪人達が一斉に眩鬼に襲い掛かる。

 

『あらら。あれが全部女の子だったらいいのになぁ…。』

 

ピンチが迫っているのにも関わらず尚も軽口を叩く眩鬼は、先端が銀色の炎を灯した銀色の撥「音撃棒・烈銀(れつぎん)」を両手に持ち…

 

『音撃打・火炎連打の型!!はっ!はっ!せいやっ!せいゃっ!はぁぁぁ…はぁっっ!!』

 

『『『ギャアアアアァァァァッッッッ!!!!』』』

 

勢い良く怪人の軍勢に向けて振り降ろすと無数の銀色の炎弾が放たれ、怪人達は銀色の炎に焼かれ大爆発した。

 

『まっ…まだだ!!まだこっちの方が圧倒的だ!!やっちまえ!!』

 

『『『ウオォォォォッッッッ!!!!』』』

 

『はぁ…しつこいねぇ…。人数もあれだし、ここは「もう一つの技」と行きますか!!影変化(えいへんげ)!!響鬼!威吹鬼!斬鬼!』

 

「もう一つの技」を使うと決めた眩鬼が印を結ぶと、彼の影が三つに分かれ人の形になると…

 

「!!なっ!これは…!!?」

 

三つの影の人形(ひとがた)は各々、複眼の周りの縁取りと腕が青く、トランペット型の武器を持った黒い戦鬼「仮面ライダー威吹鬼」、複眼と腕が銅色でエレキギター型の武器を持った緑の戦鬼「仮面ライダー斬鬼」、縁取りと腕が赤く、同じ色の撥を持った紫の戦鬼「仮面ライダー響鬼」が実体化した…。

 

『忍法・影分身の術!!…なんてね♪援軍、宜しく!!』

 

『『『……!!』』』』

 

眩鬼の号令を聞き怪人達に向かって走る三体の鬼達…。

S威吹鬼はトランペット型の銃「音撃管・烈風」を吹き銃口からを空弾を敵に放ち、S斬鬼はエレキギター型の剣戟武器「音撃震弦・烈斬」で次々と敵を斬り裂いていき、S響鬼は炎を灯した赤い撥型の武器「音撃棒・烈火」で敵を素早く勢い良く殴り付けていく。

 

「影を鬼に…ライダーに変える力…!!」

 

影が鬼…ライダーに変化すると言う前例に無いマバユキの能力を目の当たりにした闇影は呆然としていた。

 

『俺も参戦と行きますか!!』

 

眩鬼も、銀色の装甲声刃「装甲声刃・銀世界(ぎんせかい)」を片手に怪人の軍勢に銀靴で突っ込んで行った。しかし、数秒も立たない内に眩鬼は怪人達の背後に現れた。そして…

 

『『『ギャアアアアァァァァッッッッ!!!!』』』

 

数十体の怪人達は一気に大爆発をした。この一瞬で彼は一体何体の怪人を斬り裂いていったのだろうか…。しかし…

 

『ふぃ〜…昔は十回往復出来たけど俺も年かなぁ…。五回程度しか出来なかったよ…。』

 

「何だと!?今ので五回往復して斬っただと!?」

 

何と眩鬼は、今の一瞬で五往復して敵を斬ったと言う。目にも止まらぬ速度で通り過ぎた為、闇影も数回往復した事にはかなり驚いていた。

 

『さて…数も減ってきたし、止めに大技と行きますか!!はぁぁぁ…!!』

 

今の攻撃で十数体程度に減った怪人達に大技で止めを指すと宣言した眩鬼は、装甲声刃・銀世界の刃の部分を左腰に向ける様に構えを取り仮面の中で目を閉じながら静かに気合いを込め出した。

 

『何だぁ?あいつあんなボーっと遠くで構えてやがる!この隙に殺っちまおうぜっ!!』

 

『『『ウオォォォォッッッッ!!!!』』』

 

怪人達はこの場から一切動かない眩鬼を見て、この隙に彼の命を奪う為一斉に襲い掛かった。それが命取りだとは気付かずに…。何故なら、装甲声刃・銀世界の刀身が白銀色に淡く光り出し、一体の怪人が眩鬼から僅かに離れた場所に足を踏み入れた瞬間、眩鬼の目が鋭く開眼されると…

 

『……!!』

 

眩鬼の姿が突然消えたと思いきや、一瞬で怪人達の背後に現れた。すると眩鬼は…

 

『光(未来)を奪おうとしたお前達の未来は…闇(死)だ…!!』

 

と、普段の穏やかな口調とは違うドスの利いた声で冷たくそう呟き、装甲声刃・銀世界を地面に刺した瞬間…

 

『『『ギャアアアアァァァァッッッッ!!!!』』』

 

怪人達は突然、無数の銀色の光の斬撃に斬り刻まれると共に大爆発した。あの時眩鬼は、銀靴を使い目にも止まらぬ速度で怪人達を全て斬り裂いていったのだ。これが眩鬼の必殺技「鬼神覚醒・瞬閃(しゅんせん)」である…。

 

『ふぃ〜…一丁上がりっと!!』

 

「ウクク…やりますねぇ…。」

 

『青年は諦めてとっとと帰った方が身の為だぞ。こいつはもう、お前さん達の組織から抜けて俺の生徒になるんだからな。』

 

怪人の軍勢を殲滅した眩鬼は、青年に闇影から手を引くよう言った。

 

「生徒になる…だって?ははは!!笑わせるよ!!君はそいつが何者なのか分かっているのかい!?そいつに魅入られた人間は必ず死ぬ…そいつは居るだけで周りに死をもたらす死神…!そんな奴を人間扱いする必要なんて無いんだよ…。」

 

「……っっ!!」

 

しかし青年は闇影を「死神」だと罵倒しながら彼を生徒にすると言う眩鬼の言葉を聞いて大きく嘲笑した。それを聞いて少し辛そうに顔を俯かせる闇影。

 

『…知ってるよ。』

 

「???」

 

『こいつがどうしようの無い悪ガキだって事は知ってたさ。確かにこいつが今までして来た事は決して許される物じゃない…。でもな、それでも一つの光(生きる目標)目指して生きれば、そんな闇(過去)なんて関係無い。』

 

「ふっ…その程度で人はそう簡単に変われませんよ。」

 

『変われる自分を信じなければ、永遠に変われない!!光を信じる自分を信じなければ、決して闇から抜け出せやしない!!人は、自分を信じる事で変われるんだ!!』

 

「…お前…。」

 

『それに…こいつはもう変わったんだ。新しい目標を見つけたんだからな。』

 

闇影の存在を全否定する青年の言葉に対し眩鬼は、人は自分を信じる事で変わる事が出来ると断言し、新しい目標を見つけた闇影は変わったと優しく話す。

 

「…やれやれ…折角彼をここまで『堕としてやった』と言うのにね…。」

 

「堕として…やった…?どういう…事だ…!?」

 

すると青年は、「闇影を堕とした」と意味深な言葉を口にした。そして、衝撃の真実を語り出す…。

 

 

 

「君の世界を壊したのは…僕だよ。」

 

「『なっ…!!?』」

 

「君が『その世界』では素晴らしい知識の持ち主だと言う事を知り、ダークショッカーはそれを欲した。しかし、拐って連れ出しても協力はしないだろう…。だから逆に『向こうから協力する』様に仕向ける為に怪人達を襲わせたのさ!!」

 

「…何…だと…!?」

 

「更にその頃、ダークショッカーでは『強大な闇を持った者』にしか使えないディシェイドライバーの適合者も探していた…!!そして君は!!その適合者だったんだよ!!ウクク…嬉しいねぇ!!ここまでこちらの都合の良い様に話が上手く転がるなんてねぇっっ!!」

 

『お前…!!』

 

「…さ…ん…。」

 

『って青年?』

 

闇影のいた世界を破壊したのは自分だと明かす青年。全ては彼の知識を手中に収めるべく仕組まれた物だった…。そんなダークショッカーの非道なやり方に怒りを募らせる眩鬼だが、闇影は顔を俯き…

 

「許さん…許さん許さん許さんっ!!!!絶対にっ!!許さないっ!!変身!!」

 

【KAMEN-RIDE…DISHADE!】

 

顔を上げると血が出る程歯を食いしばり、激しい殺意の籠った目を血の如く赤く光らせながらドライバーを装着し、ディシェイドに変身した。

 

『ウアアアアァァァァッッッッ!!!!ユルサンユルサンユルサン!!!!ダークショッカァァァァッッッッ!!!!』

 

ディシェイドは、全身から黒いオーラの様な物を沸き出しながら顔を上に向けて咆哮した。自分の持つ知識…たったそれだけの為に世界を奪われてしまった彼の怒りや悲しみは尋常では無かった…。

 

『青年!!落ち着っ…うわっ!!』

 

眩鬼はディシェイドに落ち着く様宥めるが、彼の放つ黒いオーラが鋭い鎌鼬の様に一陣の風となり、眩鬼を近付けさせない様にしている。更にS響鬼、S斬鬼、S威吹鬼の三体もその風に斬り刻まれ消滅した。

 

『ウアアアアァァァァッッッッ!!!!』

 

ディシェイドは絶えず青年に向けて咆哮している。そして、シェイドブッカー・ソードモードを構え彼斬り掛かろうとした時…

 

『ウグゥッ!!?グッ…グッ…グアアアアァァァァッッッッ!!!!』

 

『な、何だっ!?青年の周りの黒い風が…!!』

 

突然ディシェイドが苦しみ出すと、彼を取り巻く黒い風が大きくなり周囲の地面を抉り出していき、それは時間を増す毎に大きくなっていく…。

 

「ウクク…暴走する者には…むんっ!!」

 

青年が右手を前に翳すと、地面に落ちたシェイドブッカーが浮かび出しそこから9つのカイジンライドカードのみが飛び出し…

 

「過ぎた力ですからねぇ…これは。」

 

それを自分の手元に収め、懐に閉まった。

 

『お前…青年に何をした!?』

 

「何をした?ウクク…僕は何もしてない、彼が勝手に暴走しているだけですよ。さて、任務も完了しましたしそろそろ引き上げますか…。」

 

青年は自分の任務を完了させたと言い、灰色のオーロラを出現させダークショッカーに戻ろうとした。

 

『待て!!』

 

「そいつの闇は何もかも全てを壊す…そんな彼に光を求める権利なんて無いんですよ。彼にそう伝えて貰えませんか?尤も、どちらも無事ならばの話ですけどね。ウクク…アッハッハッハッ…!!!!」

 

そう言うと青年は、高笑いをしながら灰色のオーロラをくぐりこの世界から消えていった…。

 

『くそっ!そんな事より青年を止めないと!!』

 

『ウガアアアアァァァァッッッッ!!!!』

 

『落ち着くんだ青年!!あいつはもう引き上げた!!もう変身を解くんだ!!』

 

青年が去った後も、ディシェイドの暴走は止まらないでいた。眩鬼はそんな彼に落ち着く様呼び掛けるが、ディシェイドは聞く耳を持たなかった。すると眩鬼は…

 

『うおぉぉっっ!!』

 

ディシェイドの周りにある黒い風に斬り刻まれながら彼に向かって走り出す、という無茶を冒しディシェイドの肩を強く掴んだ。

 

『落ち着け青年!!もう敵はいない!!もう戦わなくていいんだ!!だから目を覚ませ…目を覚ますんだ!!闇影!!』

 

尚も必死でディシェイドに呼び掛ける眩鬼。いつの間にか闇影を「青年」ではなく、名前で呼んでいた。すると…

 

『…な…ろ…!!』

 

『青年!!』

 

『離れ…るん…だ…!!』

 

その叫びを聞いたディシェイドは意識を取り戻した。しかし彼は、眩鬼に自分から離れる様言い出す。

 

『もう離れない…お前は俺の大事な生徒だ…!!何があっても…『離れろよ…』!!』

 

『離れろよ!!離れてくれ!!俺の闇は全部を壊してしまうんだっ!!もうあんたまで…失いたくないんだよっ!!』

 

ディシェイドは泣きそうな声で眩鬼から離れる様叫んだ。もう自分の目の前から何も無くなって欲しく無いから…。

 

『安心しな。お前の闇は…俺が光へ導いてやる!!』

 

『……!!』

 

『――…最後の一仕事をやるぜ…。』

 

 

「ん…くっ…あ、あいつは何処に…?…!!か、髪が…!?」

 

意識を取り戻した闇影はマバユキを探すべく周囲を見回すが、自分の髪の色が金から黒に変わっている事に気付く。

 

「一体何が…っっ!!」

 

自分の起きた異変に疑問を抱いている時、目の前で全身が傷だらけのマバユキが倒れているのを見かけた闇影は、急いで彼の元へと駆け出した。

 

「おいっ!!しっかりしろ!!一体何があったんだ!?」

 

「…青…年…おお…どうやら…『封印』は…成功した…みたい…だな…。」

 

「封印…?何の事だ…?」

 

「全生命力を用いて…相手の「闇」を完全封印する…鬼封術(きふうじゅつ)…闇冥縛封(あんめいばくふう)…この術で…青年の中の強い闇を…封印…したんだ…。」

 

マバユキの「封印」と言う言葉に反応する闇影。彼は、自らの命を代償に相手の「闇」を完全封印する「鬼封術・闇冥縛封」を使い闇影の強い心の闇を封じたと言う…。

 

「だが…お前が…強い憎しみを抱くと…強烈な苦痛を味わう事に…なる…から…要注意…な…。」

 

「馬鹿野郎…!!何でこんな勝手な事をしたんだ!!あんたは俺が必ず殺すって…言っただろうが…!!」

 

しかし闇影は、マバユキの行動に憤っていた。「自分が彼を殺す」約束をしていた為に怒っていると言うが…

 

「いいや違う…俺は世界を失くしてから誰も信じられず孤独だった…だからあんたの「お節介」を拒み続けていた…。でも本当はそれが嬉しかった…!何時しかそれに憧れた俺は…あんたになりたい…あんたを超えたくなったんだ…!!」

 

それは嘘…本当は死神と謳われ孤独だった闇影は、マバユキのそんなお節介で人の事を真剣に想う所に惹かれ、何時かは自分もマバユキの様になりたい、彼を越えたい…それが真の「新しい目標」だと、涙ながらに答える闇影。

 

「ははは…そう言ってくれて…嬉しいねぇ…。俺を越えたいなら…お前みたいに悩んでた奴を助けてやれ…!!そうすりゃ…何時かは越えられるかも…な…ぅぐっ!!」

 

「おいっ!!死ぬな!!俺はまだあんたから学ぶ事が沢山あるんだ!!」

 

息絶え絶えになるマバユキに必死に呼び掛ける闇影。やっと自分の本当の気持ちに気付いたのに…彼から未だ未だ学ぶ事が沢山あるのに…。

 

「俺の教えれる事は…全部教えた…大丈夫…青年は…俺の自慢の…生徒だ…自信を持て…誰が何と言おうと…俺はずっと…青年の味方だ…!!」

 

「何でだよ…何で俺にここまでしてくれるんだよ!?」

 

「決まって…るだろ…?俺は…お前を…本当の息子みたいに思ってる…からだ…よ…。頑張れよ…闇…影…。」

 

そう言い切ったマバユキは、そのまま眠った様に息を引き取った…。最期に闇影を「本当の息子」の様だと言い遺して…。

 

「…ん…キさん…マバユキさぁぁぁぁぁぁんっっ!!!!うあああああああああぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

闇影は目から涙を流し、叫ぶ様に号泣した…。自分のせいでまた大切な人を失ってしまった…。自分が信じられる人間がやっと現れたのに…。そう悲しみに暮れていたその時…

 

「……!!何だ…これは…」

 

近くに落ちていたディシェイドライバーにある「異変」が起きていた。それは、ドライバーの色が紫から金に近い黄色い物となり、周囲の怪人の紋章もライダーのそれに変化していた…。

 

「ディシェイドライバーが変化した…!!これもマバユキさんの力なのか…!?」

 

闇影は、ディシェイドライバーの変化がマバユキの使った鬼封術に関係しているのかと推測しながらドライバーを握り締めると…

 

「感じるぞ…あの人の魂を…マバユキさんは生きている…!!ずっと俺を見守ってくれてるんだ…!!見ててくれよマバユキさん、あんたの意志を受け継いで俺の様に闇に囚われた人達を、光へ導く!!」

 

マバユキの意志を受け継ぎ、自分の様に「闇」に苦しむ者を「光」へ導いて行くと、強く決意した。

 

 

 

―ダークショッカー・本部

 

 

『くそっ…!!反逆者は何処だ!?』

 

『俺は向こうを探す!!お前はあっちを探せ!!』

 

基地本部では「何者」かが「ある物」を盗み出し、その者が内部で騒動を起こし隠れている為、二人の戦闘員らしき人物は基地内を隈無く探し二手に別れた。戦闘員がいなくなると天井のダストから二人の人間が降りて来た…。

 

「ふぅ…何とかお目当ての物は手に入ったわね♪」

 

「ああ。しかし、結局手掛かりが見つかんねぇから一回基地に戻って研究室漁ってみたらあっさり見つかったなぁ…。」

 

その人物とは、言わずもがな巡と周だった。あれから結局闇影に仕掛けた盗聴器から大した情報を得れず、已む無く一度組織に戻り闇影の研究室を漁り目当ての物を手に入れたのだが、戦闘員に見つかり騒ぎとなり現在に至る…。

 

「何にしても私達の目的は達成した。後は…」

 

「あぁ…。」

 

目的を達成した二人は無言で目をやりながら手に入れた目当ての物―赤いサバイバルナイフの様な物と水色のハンドボウガンの様な物を取り出し…

 

【【ATTACK-RIDE…WARP!】】

 

「アタックライド ワープ」のカードをスラッシュすると、二人はその場から姿を消した…。

 

 

 

―あの子/野郎の様子を監視しないと…ね/な…。

 

「闇影を監視する」と言う、次の目的の為に…。

 

 

 

『グオォォォォッッッッ!!!!』

 

『ヘェヤァァァァッッッッ!!!!』

 

「裏切り者には死あるのみ…解りやすいな…。」

 

闇影の前には無数の怪人の軍勢が立ちはだかっている。理由は勿論、裏切り者の制裁である…。しかし闇影は、それを恐れるどころか、逆に落ち着いた表情をしながら着ていた漆黒のローブを脱ぎ捨て、ナイフで長い髪を切ってマバユキが着ていた茶色のジャケットを着込んだ。

 

『貴様!!こんな所で断髪して何のつもりだ!?』

 

「そうだな…心機一転…かな?」

 

『ふざけるな!!貴様は一体何様のつもりだ!?』

 

断髪をして心機一転をすると言う、前までの彼とは考えられない闇影の能天気な言葉にキレる怪人は何様だと尋ねた。

 

「何様だって…ふっ、俺は…!!」

 

尋ねられた闇影は小さく笑いながら黄色のディシェイドライバーを腰に装着し、オレンジ色のディシェイドが描かれたライダーカードを怪人達に見せ付け「あの台詞」を言った…。

 

 

 

「お節介教師な仮面ライダーだ!!宜しく!!変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

カードをドライバーに装填すると、闇影は白いスーツに黄色のライドプレートが刺さった青い複眼にライトオレンジのボディが特徴の戦士「仮面ライダーディライト」に変身した…。

 

『さて、輝く道へと…導きますか!!』

 

『ほざくなっ!!かかれぇっ!!』

 

『『『ウオォォォォッッッッ!!!!』』』

 

一体の怪人の言葉を皮切りに、ディライトに襲い掛かる怪人達。しかしディライトは、尚も落ち着いた様子で黄色のシェイドブッカー「ライトブッカー」をソードモードにして構え始めた…。

 

『マバユキさん…あんたが教えてくれた事は決して忘れないからな…!!うおおぉぉぉぉっっっっっっっっ!!!!』

 

ディライトはただ一人、怪人の軍勢に向かって走り出した…。緋眼の死神は、光を導く者「光導者」となり、全ての人々の「闇」を「光」へ導く為に戦い続けて行く――。

 

 

「ぅん…んん~~…はぁ…何時の間にか寝てたのか…。」

 

何時の間にか眠っていた闇影は、寝惚け眼で腕を伸ばし屈折をした。

 

「思い出しちゃったな…あの時の事を…。」

 

ベッドから起き上がった闇影がシャツの胸元をはだけると、胸には「響鬼の世界」や「歌舞鬼の世界」の黒いマークが真ん中にあり、その周囲には円状のまじないらしき物が印されていた。おそらくこれが、マバユキの施した闇冥縛封の封印陣なのだろう…。

 

「…風呂にでも入るか…。ん、何だこれ?」

 

風呂に入る為闇影が部屋を出ようとした時、足下に落ちていた何かを気付き、拾い上げた。

 

「太陽の形をした金色のピアス…何でこんな物持ってるんだ俺?まいっか、一応持っとこう。」

 

闇影は拾ったピアスをジャケットの懐に閉まい込み部屋を後にした。そのピアスが自分の物だとは何故か気付かずに…。

 

 

 

―脱衣場

 

 

「ふぅ…っておっとっと…!ジャケットから何か落ちちゃったな…。マバユキさんのロケットペンダントかぁ…。」

 

ジャケットを脱ぐと、中からロケットペンダントが転がってしまいそれを拾い上げまじまじと見る闇影。しかしそれを何故か開けなかった―いや、開ける事が出来ないのだ。その理由は、ロケットペンダントが殆ど焦げてしまい変型した為開ける事が出来なくなってしまっているからだった…。

 

「一体どんな人達何だろう…?マバユキさんの家族の人って。」

 

中にあるマバユキの家族の顔が気になっている闇影は、開かないペンダントをジャケットに閉まい込み、衣服を全て脱ぎ脱衣籠に収めて風呂場のドアをガラリと開けると…

 

「…〜♪…ってあら…闇影さん。」

 

「え!え!え!影魅璃さんっ!!?///すっすっ、すみませんでした!!見てませんから!!///でで…出直しますっ!!///」

 

そこには何時もの茶色の巻き髪が濡れて全て豊満な胸を覆い隠しており首にペンダントらしき物をくくっている以外、一糸纏わぬ肢体に付いた泡をシャワーで洗い流す影魅璃の姿がそこにあった。それを諸に見てしまった闇影は顔を真っ赤にし、鼻からは赤い液体を垂らしながら平謝りして立ち去ろうとしたが…

 

「逃げなくていいんですよ。何時も黒深子がお世話になってるんですから、お背中くらい流させて下さい。」

 

娘が世話になっている礼に背中を流すと言う影魅璃に手を捕まれ、浴場に引き込まれてしまい…

 

 

 

―い、いや…ホント結構ですからっ…!!///ってちょっと!!背中流すだけなのにどこ掴んでるんですかっ!!///

 

―うふふ…闇影さんってここも立派なんですね…。

 

―え…って何でそれをここに…ってくあぁっっ…!!///おっ…お願いですからやめて…!!///ぅえっ!!あ、あまり動かさないで…アッー!!!!

 

―んふ…やっぱり若いですねぇ…。

 

 

 

「はぁぁぁぁ…///」

 

風呂場から上がり全身を真っ赤にした闇影は、首にタオルを巻いた状態でゾンビの様に上半身を思いきり下を向きながらとぼとぼリビングに向かって歩いていた。影魅璃に何をされたのかは聞かない方が身の為だと言っておこう…。

 

 

 

―リビング

 

 

「「「………。」」」

 

「…以上が闇影君の過去よ。」

 

一方、巡達から話を聞き終えた黒深子・コウイチ・ツルギは呆然としていた。

 

「んまぁ、それで俺様達はお宝を探しつつ野郎の監視もしてたって訳だ。今は大丈夫でも何れ何かの拍子でまた暴走しかねねぇから…」

 

「勝手に決めるな…!!」

 

「「「「「!!!!!」」」」」

 

そこへ闇影がリビングに入って来た。少し険しい顔をしながら…。

 

「せっ、先生…!!わ、私達は…!!」

 

「人の過去を勝手に黒深子達にベラベラと…!!」

 

理由は勿論、二人が自分の過去を勝手に黒深子達に話した為である。今の闇影の表情を見て、黒深子は慌てた出すが…

 

「確かに俺は罪も無い人達を殺して来た…。それは決して許されない事だ…。だがな、ある人…マバユキさんと会ってそれが間違いだと言う事に気付いた。だからこそ俺は、自分の犯した罪を背負いつつ沢山の人達の『闇』を『光』へ導き救う事をしていく。それが、俺に課せられた償い、使命だと思っている…。」

 

「先生…。」

 

しかし闇影は、自分の犯した罪からは逃げず人々の「闇」を「光」へ導き救う事を心に誓ったのだと改めて打ち明けた。今まで自分が殺めてきた人達への罪滅ぼしの為に…。

 

「まぁ尤も、こんな事で償いになるのかは解らないけどな…って、あ〜〜っっ!!」

 

テーブルに目をやった闇影は突然大声を上げ絶叫した。その理由とは…

 

「お前等!!俺の『モモタロス印のラー油プリン』を二個も勝手に食べたなっっ〜〜!!」

 

「「何!?その意味不明なデザートは!?」」

 

『モモタロス印のラー油プリン』なる物を巡と周に食べられたと言う、何ともしょうもない理由だった。当初は自分も黒深子とコウイチの様につっこんでいたにも関わらず、何時の間にかそれが好物になっていたのだった。

 

「あら、中々美味しかったわよこれ♪」

 

「てめぇに今まで邪魔された分はこれでチャラにしといてやるよ。」

 

「何がチャラだ…釣りがくるわこれ!!」

 

「さて、用は済んだしもう帰るわね♪」

 

「闇影の楽しみを盗めたし結果オーライだな。じゃあな。」

 

【【ATTACK-RIDE…WARP!】】

 

そう言って二人は、ワープでその場から姿を消した…。

 

「くそ〜〜!!風呂では散々な目に遭うし、プリンは食われるし…最悪だっ!!」

 

確かに、自分の過去を勝手にバラされるわ、風呂上がりのデザートを食われるわ、挙句の果てに風呂では影魅璃に何かされるわと、今日起きた様々な不幸を嘆く闇影。

 

「ねぇ先生…その組織で何をして…たの…?巡さんからは目的について何も言ってなかったから…。」

 

黒深子は闇影に何の目的でダークショッカーに入ったのかを恐る恐る尋ねた。実は巡達から彼の目的については何も聞いてなかったのだと言う。しかし…

 

「えっ?目的?何ってそれは…!!ん?キャンバスに絵が…!!」

 

闇影が口を開こうとした瞬間、世界を表すキャンバスに絵が描かれた。それは、幾多の人々が幸せそうに暮らす街の中央に四体のライダーがそれを護る様に構えている、と言う奇妙な光景だった…。

 

「この世界は…一体何なんだ…!?」

 

これまでとは違う世界に眉をひそめる闇影。これから嘗て無い世界が彼等を待ち受けている事を未だ知らない…。




マバユキのポジションが完全におやっさんでしたwww

そんな彼とディシェイドの詳細は次回お教えします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ディシェイド&眩鬼人物紹介

そのまんまでございます。


煌闇影/仮面ライダーディシェイド

16歳。ダークショッカーの幹部であり、技術研究責任者でもある。金色の長髪をポニーテール状に纏め、右耳に金色の太陽のピアスを付けており、鋭い目つきをした赤い瞳にフード付きの黒いローブが特徴。(服のイメージはゴーカイジャーで小津魁が着ていた物)身体能力は高く、知識も一度見た物を完全に記憶してしまう程高い。

性格は冷酷無慈悲であり自分の目的以外の事には素っ気無く、「光る赤い目に見入られた者は絶対の死を約束される」事から「緋眼(ひがん)の死神」と謳われる。しかし、自分が一度決めた事を実行する実直な面があり、自分をよく思ってくれている人間にはややツンデレな態度で接する。

三年前に自分の知識を欲したダークショッカーが彼の世界を「彼のみを生かして残りを始末、消滅させ絶望に暮れている所を救う」と言う手段で組織に引き入れられた。

マバユキとの出会いで価値観が変わりつつあった為に謎の青年の「何らかの攻撃」を受け、「反逆者」と見なされる。

後に彼から真相を聞き激しい怒りと憎悪の感情を引き出しディシェイドの力を暴走させてしまうが、マバユキの命を懸けた「鬼封術・闇冥縛封」により闇の力を封じ込まれ、髪の色が黒く、性格も素直な物に変わりマバユキの意志を継ぎ人々の「闇」を「光」へ導く旅に出た。また、その際過去と決別する為に断髪した。

尚、本編では明かさなかったが他人を呼ぶ時は全てフルネームである。

 

 

仮面ライダーディシェイド

七年前の闇影がディシェイドライバーで変身する仮面ライダー。別名「世界の灰塵者」、「死神」。

外見はディケイド激情態と酷似しているが、紫を基調とした黒いライドプレートと黒いスーツ、複眼は赤。

戦闘能力はディライトのそれを遥かに上回り、全てのライダーの力を使う事が出来る。(但しカメンライドやシャドウライドは使用不可。)

また、「9つの平成ライダーの世界」のラスボスに変身出来る「ファイナルカイジンライドカード」も所有している。

マバユキの闇冥縛封によりディライトに変化し、その力は九割激減する。

このライダーの変身者が負の感情を一定以上まで増大すると…

 

FAR

色が紫である以外はディライトのそれとほぼ同じである。また、他のライダーの必殺技をもディシェイドの状態で使用可能。

 

ディシェイドドライバー

闇影がディシェイドに変身する為のツール。外見はディケイドライバーに酷似しているが色は紫で、周囲にはライダークレストではなく、グロンギからファンガイアまでのカイジンクレストが印されている。

尚、このドライバーは「強大な心の闇を持った者」にしか適合しない。

 

 

マバユキ/仮面ライダー眩鬼 ICV…井上和彦

年齢は30代前半。本名や世界は不詳。

特徴は柔らかく尖った銀色がかった白髪、左目には黒い眼帯を付けており、銀色の着流しの上に茶色のジャケットを羽織り、下は黒いズボン。

常に飄々として掴み所が無く非常に温和でお節介焼きな性格。闇影の事を「青年」と呼ぶ。得意料理はマーボーカレー、愛読書は「ドキドキユートピア」シリーズ。全ての音撃戦士の中でずば抜けた身体能力を持っている為、生身でもディシェイドと渡り合える程。また、瞬間記憶能力にも優れており、一度見た技を完全に自分の物にする事が可能。家族に妻と子供が一人いるらしい。幼少の頃に両親を魔化魍に殺され、その時に彼を拾い音撃戦士に育て上げた師匠や自分と同じその師匠の教え子である友人も全て失ってしまった過去があり、上記の性格も相俟って闇影にしつこく構う。

自身の闇の力を暴走させたディシェイドを救うべく鬼封術・闇冥縛封を使用し、自らの命を犠牲に闇影を救い「闇」に囚われた全ての人々を「光」へ導けと言い遺して息を引き取った。

この事件を切欠に闇影は現在の性格に変わり、彼の着ていたジャケット(イメージは響鬼本編二つ目のEDにヒビキが着ていた物)と家族の写真入りのロケットペンダント(但し、封印時に焼け焦げて変形している為開封不可)を形見とした。

 

 

 

仮面ライダー眩鬼

マバユキが変身音叉・音角で変身するライダー。外見は装甲響鬼と酷似しているが、全体の色は銀色であり複眼は青。全ての音撃を極めし者にしか変身出来ない最強の音撃戦士。

他の音撃戦士に印を結んで「変化、~!」の掛け声でディケイドのカメンライドの様に変身する事が可能。但し、配色は全て眩鬼の物である。(身体が銀色で複眼は青)

更に自身の影も印を結んで「影変化(えいへんげ)、~!」の掛け声でディライトのシャドウライドの様に音撃戦士に変化させる事も可能。こちらは色はそのまま。尚、本編では明かされなかったが上記の通り全ての音撃を使える為、他の音撃戦士に変身しなくてもその鬼の技を使う事が出来る。

 

 

専用アイテム・武器

 

変身音叉・音角

外見は響鬼のそれだが、全体の配色が銀色。

 

装甲声刃・銀世界(ぎんせかい)

外見は同じく響鬼のそれと酷似しているが、全体の配色が全て銀色。

尚、この武器はあまり使う事は無く、大型の魔化魍や怪人の軍勢等、強敵や複数の相手にしか一切使用しない。

 

 

 

鬼走術(きそうじゅつ)・幻足(まぼろあし)

足音を立てずに幻影が生まれる程の超速度で走る回避技。

 

鬼走術・銀靴(ぎんぐつ)

一瞬の内に足を数十回蹴り上げてクロックアップ級の超速度で走る技。(要はONE PIECEの六式の一つ「剃」と同じ原理)

本編でマバユキがディシェイドのクロックアップを見様見真似で編み出した技である。闇影曰く、「クロックアップ擬き」。

 

鬼封術(きふうじゅつ)・闇冥縛封(あんめいばくふう)

自身の生命力と引き替えに、対象の「闇」の力を封印する技。

これは本来、強力な巨大魔化魍を自らの命を籠めた清めの音により、それを延々と対象の魂に響かせて封印する物である。

この封印を受けた対象の身体には、真ん中に響鬼の世界のマークがある円状のまじないが印される。また、その者が負の感情を一定以上に高めるとまじないが光り出し、苦痛を与える。(イメージはNARUTOの九尾の封印式と封邪法印をあわせた物)

 

 

必殺技

 

鬼神覚醒・瞬閃(しゅんせん)

通常のそれとは違い、目を閉じて集中しながら居合いの構えを取り装甲声刃・銀世界の刀身を銀色の光をした「清めの光」を輝かせ、銀靴を使いつつ敵を一瞬の内に斬り付け背後を通り過ぎて武器を地面に刺した瞬間、敵の身体に無数の銀色の斬撃を刻み爆発させる。

 

それ以外に、他の音撃戦士の必殺技も使用可能。但し、技の色の配色は全ての眩鬼の物になる。(例:響鬼の「音撃打・火炎連打の型」の炎の色は銀になる)




マバユキの見た目はカカシ先生をイメージした物です。性格もややそっくりwww

さて、次回から第2章開幕でございます!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2章 未だ見ぬ平行世界編
第23導 訪れた日常 有幻夢の守護者達


第2章開幕です!!

今回は原典キャラが1人登場します。


―白石家

 

 

「この世界は何なのかしら…?」

 

「全然見当が付かねぇな…。」

 

黒深子とコウイチは、目の前にある今回の世界が描かれたキャンバスを前にここが何の世界なのかを首を傾げて考えている。

 

「本当ですね…闇影さんはどう思いますか?」

 

ツルギもまた二人と同じ意見であり、闇影からも意見を聞く為話を振った。

 

「さぁ、俺もよく解らないよ。だから取り敢えず外に出て見よう。そうすれば解るかもしれないしね。」

 

「相変わらず呑気な答えだな…。ま、お前の能天気は今に始まった事じゃ無ぇからな。」

 

「ふふ、そうね。こうしていても仕方ないし先生の言う通り外に出て見ましょ。」

 

「そうですね…では、行きましょう。」

 

ライダーの世界に詳しい闇影ですら解らない様だが、「一度外に出て見る」と提案し出した。コウイチは彼の呑気な提案に頭を項垂れるが、この能天気な答えは何時もの事だと呆れながらも笑みを浮かべてその提案に賛同する。残りの二人も闇影の意見に賛同し、四人は外へ出る事にした。

 

 

 

「う〜ん…これと言って特に変わった事は無いね。」

 

「そうよね…殆どの人が普通に暮らしてるしね。」

 

外の様子を一通り見たものの、これと言った異変は全く起きていない。寧ろ平和そのものと言って良い程、人々が生活をしているくらいだ。

 

「こうも平和だと俺等って必要なくね?」

 

 

あまりの平和な光景にコウイチは自分達が居る意味は無いと言い出す。しかし、それでは何故彼等がこの世界に訪れる事になったのか説明が付かない…。

 

「何だろうな…もう戦う必要は無いって事かなぁ…?」

 

 

 

「ああ、その通りだぜ。」

 

「「「「!!!!?」」」」

 

何処からか何者かがその通りだと答える声が聞こえ、四人が一斉に背後を向くと…

 

「お前等の旅はもう終わったんだよ。これからは自分の好きな事をすりゃあいい。」

 

青いジーパンに、ベージュのワイシャツ型の上着の下に白いシャツを着た首の後ろまで届いた少し長めの茶髪をした無愛想な青年が一切の気配を感じずに立っていた。

 

「君は…?」

 

「面倒くせぇが名乗ってやる。乾巧だ…。」

 

「乾…巧…?」

 

闇影に名前を聞かれた青年、巧はまたも無愛想かつ面倒くさそうな態度で名を名乗った。

 

「まぁそんな事はどうでもいい。煌…お前はもう戦うなんて面倒くせぇ事しなくていいんだよ。」

 

「ちょっと待ってくれ!さっきから旅は終わっただの、戦わなくて良いだので話がよく見えないんだけど。もしそうなら、どうして俺達はこの世界に来たんだ?」

 

闇影は、先程巧の言った言葉の数々について矢継ぎ早に尋ねた。自分の旅は9つの影の世界を光へ導くだけで本当に終わりなのか…?その疑問がずっと頭から離れないでいた。すると巧は…

 

「はぁ…あんまいっぺんに聞くんじゃねぇよ、面倒くせぇなぁ…。簡単に言うとな…」

 

またまた面倒くさそうに頭をポリポリ掻いて顔をしかめながらも、簡潔に闇影の質問に答えるべく彼の真横まで近付き立ち止まると…

 

 

 

「ここがお前の旅の終点…お前の居るべき世界…。」

 

「えっ…?それってどういう…!!」

 

そう呟いた巧の言葉に反応した闇影は彼の方を振り向いたが、何時の間にか巧は姿を消していた…。

 

「い、居ない…。」

 

「何だったのかしら?今の人…。」

 

「俺の…居るべき世界…?」

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り終え、その瞳は、何を照らす?

 

 

 

「はぁ…歩いても歩いても何も起きねぇ…いい加減歩くのにうんざりしてきたぜ…。」

 

「少し…疲れました…。」

 

巧が消えてからも暫く街中を歩く闇影達だが、未だに何の異変も起きないでいる為コウイチは不満を溢し、ツルギも長時間歩き続けて疲れ始めてきている。

 

「そうだね…これ以上歩いても仕方ないし、何処かお店で食べよっか?」

 

「賛成。私、もうお腹すいた〜。」

 

「じゃあ、そこのお店で…!!」

 

歩き続けて疲れ出した闇影達は、何処かで昼食を摂るべく近くの店に向かおうとした時…

 

「「「!!!」」」

 

「紅蓮…!!」

 

目の前に突然紅蓮が現れた為、警戒体制を取る四人。だが…

 

「ディライトよ…この世界で貴様には素晴らしい幸福がもたらされる…。精々楽しむがいい…。」

 

普段の様な憎悪の籠った静かな口調ではなく、やや穏やかな口調で且つ不敵な笑みを浮かべながら闇影に祝福の言葉を送った。

 

「は?何言って…!!あれ?消えた…。」

 

普段とは違う彼女の言葉に眉をひそめる闇影。その理由を尋ねようしたが、紅蓮は何時の間にか姿を消していた。

 

「どういう事…でしょう…?」

 

「解らない…。さっきの人といい、あいつといい、俺に何かが起きるのか…?」

 

サソードヤイバーの構えを解いたツルギと闇影は、先程の巧の言葉や紅蓮の言葉の意味を考えるもその答えを出せずにいた。

 

「…一先ずこの話は後にしてご飯を食べようか。行こう、黒深…!!」

 

一旦この話題は切り上げて、昼食を摂るべく黒深子に話掛けようとした闇影だが、何時の間にか彼女とコウイチまでもが姿を消していた。

 

「黒深子とコウイチがいない!!」

 

「何処へ行ったのでしょう…!?」

 

「解らない…兎に角、二人を探そう!!」

 

二人が消えた事に焦り出す闇影とツルギは、急いで彼等を探そうと走り出す。この世界が何なのか解らない上ではぐれてしまうのは非常に危険である為急いで合流しないと…!!そう思いながら走る二人だが…

 

「そこの人すいませ〜ん!!」

 

「貴方、煌闇影さんですよね?写真撮らせて貰えませんか?」

 

「握手して貰って良いですか!?あたしファンなんです!!」

 

突然複数の女子高生達が闇影の前に立ち塞がり、写真撮影や握手を求めて来た。

 

「はっ?えっ?ファン?何言って…」

 

突然の出来事に頭を混乱させる闇影だが…

 

「おい、あれって煌闇影だろ?アイドル教師で有名な。」

 

「スゲ〜!!本物だよ!!」

 

「テレビで見るよりカッコいいよね!!」

 

「ウソ!マジで!?」

 

「一緒に居る子誰?彼女か何か?」

 

すると、暫く何の音沙汰も無かった周囲の人々が闇影を囲み出して彼を「アイドル教師」だと口々に言い賞賛し出した。中には写メールやカメラで闇影を写す者も。

 

「闇影さん…これって一体…!?」

 

「どうなってるんだ…!?」

 

突然の「人気者」への急上昇にただただ困惑する闇影…。

 

 

 

「先生達は何処に行ったんだろう…?携帯も繋がらないし。」

 

一方、闇影達とはぐれた黒深子は彼等を探すべく街中を彷徨っていた。携帯で連絡しようも、中々繋がらず徒歩に暮れていると…

 

「黒深子〜!!」

 

「ん?あれって…?」

 

ボーイッシュな印象をした跳ね返った緑の短髪にオレンジのシャツにジーパンを履いた少女が手を振りながら此方へ近付いて来た。よく見ると一人だけではなく三人の少女達だった。

 

「黒深子、久しぶり!!暫く連絡が無かったけど大丈夫?新しい学校で何かあったの?」

 

「全く…それならそうと私達に相談してくれば良い物を。」

 

「ホントだよ、も〜。」

 

黒いショートヘアにニット帽を被った青いジャケットに黒いシャツとジーパンを履いた少女は連絡をしなかった黒深子にぼやき、栗色のツインテールにピンクのワンピースを着た小学生くらいの身長をした童顔の少女はそんな黒深子に顔をふくらせる。

 

「瞳…鞘華に早苗!?ホント久しぶり〜!!皆元気にしてた!?」

 

三人の少女達を見て黒深子は、瞳と呼んだ少女の手を握り喜び出した。

緑色の短髪の少女は火室瞳(ひむろ・ひとみ)、黒髪のショートヘアの少女は刀道鞘華(とうどう・さやか)、栗色のツインテールの少女は甲田早苗(こうだ・さなえ)。彼女達は黒深子の中学生時代の同級生であり、今でも連絡し合う親友でもあった。しかし…

 

「(あれ?という事はここって…もしかして私の世界!?)」

 

本来ならここには居ない筈の自分の知り合いが居るという事は、この世界は自分の元居た世界なのでは?と推測する黒深子。

 

「どしたの黒深子?」

 

「顔色が悪いけど大丈夫?」

 

早苗と瞳はそんな黒深子の様子を見て心配し出すが…

 

「…あっ!ううん、何でもない。」

 

「なら良いけどな。」

 

ハッと我に返った黒深子は、何でもないと言って首を振った。

 

「そ、それより皆こそ三人で集まってどうしたの?」

 

「う〜ん、何か久しぶりに黒深子達に会いたくなってあたしが連絡したの。」

 

「最近皆で集まって遊んでないから今日遊ぼうってメールがあったんでな。」

 

「で、黒深子だけ中々連絡が取れなかったからあたし達三人だけで遊びに行こうってなったんだけどそこで偶然貴女を見つけたって訳。」

 

どうやら早苗が発信源であり、「久々に皆で遊びに行こう」と、瞳と鞘華に連絡したのだが、黒深子だけ連絡が付かない為已む無く三人だけで遊びに行こうとした時に偶然黒深子を見つけて現在に至ると言う…。

 

「そうだったの…ゴメンなさい。」

 

「いいのよ。それよりこうして黒深子に会えて嬉しいよ!!」

 

「ああ。」

 

「そうそう!さ、今日は思いっきり遊ぼうね!」

 

「皆…。」

 

闇影達と長い旅をしていた為、親友からの連絡に気付かないでいた黒深子は三人に謝るが、彼女達がそれを笑顔で許したのを見て涙を浮かべる。

 

「ほらほら泣かない!行こ行こ♪」

 

「う、うん!!」

 

泣き止む様元気付けながら黒深子の背中を押す早苗。その時…

 

「…!!(あれ?私、何か大事な事があった気が…!!)」

 

黒深子の頭の中から「大事な何か」が失われ、その違和感により立ち止まる彼女。

 

「どしたの黒深子?早く行こ?」

 

「(…ま、いっか。)ええ、行きましょ♪」

 

しかし黒深子はそれを気にはせず 、早苗達と共に街中を歩き出す…。

 

 

 

「闇影達は何処行ったんだ?さっきから何度も携帯で連絡してんのにどっちも繋がんねぇし…。」

 

一方、コウイチも闇影達に再三連絡をしているのだが黒深子同様、彼等からの返事は一切返って来ないでいた。

 

「チッ…もういいや。俺だけでも先に食って…!!な、何でだ…!?」

 

連絡が付かずに少し苛つくコウイチは自分だけ先に昼食を摂ろうとした時、偶々目に行った近くのビルを見て目を見開いた。

 

「ORESAMA(オレサマ)ジャーナル…俺の会社…!!」

 

そのビルは、コウイチとミホがカメラマンとして勤めている編集社「ORESAMAジャーナル」であった。

 

「つー事は、ここってリュウガの世界!?何時の間にか里帰りしてたんだ…!!」

 

勤めている会社が目の前にあった為、自分は「リュウガの世界」に里帰りしたのだと思い込むコウイチ。その時、ビルから一人の女性が現れ…

 

「おっと、すいま…なっ、な!?」

 

通路を塞いでいた事に気付き直ぐ様避けながら謝るコウイチだが、その女性の顔を見てまたも目を見開き驚いた。

 

「あっ!探したぞコウイチ、こんな所に居たのか!!」

 

「ソラ…!!いや違う…ミホ!!?」

 

何故ならその女性は既にこの世に存在する筈の無い、羽鳥ミホ/仮面ライダーファムが居たからである…。

 

「(どういう事だ…!?ミホは確か死んだ筈じゃ無いのか!?ならこれは夢…いや、俺は寝た覚えは無いし…。…もしかして今まで俺は『起きてる夢』を見ているのか…!?だったら…!!)」

 

今自分は夢の中に居るのかと自問自答を繰り返すコウイチは、これは夢か現実なのかを確認する為…

 

「ひゃっ!!?///」

 

自分の頬をつねるのではなく、ミホの胸を強く揉み出した…。

 

「う〜む…この手触りは本物だから確かに夢じゃないな…。」

 

触った感触が本物であるようでこれは夢では無いと確信するコウイチ。しかし…

 

「…///気は済んだか?なら早く来い。編集長が呼んでるぞ。」

 

「えっ…!?あ、ああ…。」

 

胸を揉まれるというセクハラ行為を受けたにも関わらず、ミホは激怒せず普通の態度でありコウイチに会社に入る様促した。

 

「変だな…何時もなら俺の手首の骨を折って掴んで投げ飛ばす筈なんだけどなぁ…?」

 

普段のミホならばここで制裁を喰らわせる筈なのだが、それが一切こなかった事に疑問を抱きながらビルに入るコウイチ。というか分かってるなら自重しろと言ってやりたい。

 

 

 

―ORESAMAジャーナル・編集部

 

 

「な、なぁミホ。俺が編集長に呼ばれる用事って…やっぱクビ?」

 

「さぁな。私は呼んで来てくれと言われただけだからな。」

 

コウイチは編集長が自分を呼んだ用件とは解雇を言い渡されるのでは?と考え段々不安な表情になる。三年前、スフィアミラージュに肉体を奪われ、魂が虚像の存在となりずっとミラーワールドにいたのだ。当然、会社もその分無断欠勤しているのだからそれが理由でクビだと宣告されてもおかしくない…。

 

「おぉ、赤鏡!やっと来たか!!」

 

そこへその当人である、白髪のオールバックに茶色のスーツを着た中年の男性、編集長の小久保(こくぼ)ダイスケが二人の前に走って現れた。

 

「へ、編集長!!あ、あの…!三年も勝手に休んでてすいませんでした!!」

 

編集長室にいる筈のダイスケが突然自分の前に現れた事に驚くコウイチは、即座に会社を「休んで」いた事を謝り出すが…

 

「そんな事より赤鏡…おめでとう!!君の撮った写真が景(ビュー)ティフル賞に入賞したぞ!!」

 

「はい!!入賞してしまってホントに…!!って、へ?入賞?」

 

「凄いじゃないかコウイチ!!景ティフル賞と言ったら私達カメラマンが目指している世界的栄誉賞だぞ!?それに入賞したなんて…!!」

 

ダイスケからの景ティフル賞入賞の言葉を聞き唖然とするコウイチ。その賞の入賞は、全国のカメラマン達にとっては大きな夢であり、自分の撮影した写真が世界的に美しくなければ取れない程難しい入賞である。それを取れる事はノーベル賞を獲得するに等しい物なのだ。それを聞いたコウイチは…

 

「マ…マジかよ…ぃよっしゃああぁぁっっ!!!!」

 

先程の不安な表情から一転して顔を明るくして頭が天井にぶち当たりそうな程飛び上がって大喜びし、着地と同時にミホに抱き着いた。

 

「お、おめでとうコウイチ…///でもちょっと離れてくれないか。恥ずかしいから…///」

 

「お、おぉ!!すまね!!(ってあれ?何時もならここで『調子に乗るな!!』と言って腰掴んで窓から突き落とす筈なんだけどなぁ…?)」

 

ミホに抱き着くのを止めたコウイチは、またも制裁を加えない彼女の態度に疑問を抱いた。二度目だが自重しろと言いたい。

 

「あ…あの…赤鏡さん…にゅ…にゅ…にゅ…///」

 

「ん?」

 

コウイチの背後からおどおどした口調で下を向きながら話し掛ける黒髪のおさげにグルグル眼鏡に紺色のスーツと地味な印象の女性、凰神(おうみ)ユイが彼の入賞を祝う言葉を送ろうとしているが、極度の恥ずかしがり屋で人見知りが激しい為中々それが言えないでいる。

 

「おお、ユイちゃんか。どしたんだ?」

 

「にゅ…にゅ…乳輪おめでとうございます!!///」

 

「へっ…?」

 

「あっ!!///ごっごめんなさい!!間違えました!!///」

 

あまりに緊張し過ぎて入賞を乳輪と大声で言い間違えてしまったユイは、顔を真っ赤にしてコウイチにペコペコ平謝りした。

 

「「「ぷっ…あっははははは!!!!」」」

 

「ごめんなさい!!間違えてごめんなさい!!///」

 

「あはは…いや、良いんだよププ…あ、あり…ありが…と…ははは!!」

 

「うぅ〜〜〜…///!!」

 

三人に大笑いされて真っ赤な顔をしたユイは涙目になる。コウイチは彼女のメッセージを痙攣したかの様に笑いながら受け取った。

 

「はは…とまぁ置いといて、今日はその記念に飲み会をしようと思うんだがどうだね?」

 

「「喜んで!!」」

 

コウイチの景ティフル入賞祝いに飲み会を開くと言うダイスケの提案に快く賛同するコウイチとミホ。

 

「それじゃあ今日は定時までにしようか。」

 

「おっし!!今日は飲みまくって…!!ん?」

 

飲み会を楽しみに喜ぶコウイチだが、突然彼は何らかの違和感を感じ出した。

 

「(そういや俺、何しようと思ったんだろ…?何か大事な用がある気がしたんだが…)」

 

「どうしたんだコウイチ?」

 

「わ、私また何かしちゃ…いました…?」

 

「(…ま、いっか。)いや、何でも無ぇ。」

 

ミホとユイに声を掛けられるが、コウイチはその違和感を気にせず何でも無いと言って返す。

 

 

 

「あ〜今日は本当に楽しかった♪」

 

一方黒深子達は、早苗の家で寛いでいた。あれからショッピング、ゲームセンター、カラオケと様々な所で暗くなるまで遊びまくり、共働きで両親が居ない早苗の家で泊まる事となり現在に至る…。

 

「うん!私も黒深子とこうしてまた遊べて本当に楽しかったよ!!」

 

「ああ。私も本当に嬉しいさ!」

 

黒深子は久しぶりに級友と出会えた事をとても嬉しく思い、瞳と鞘華もまた同じ気持ちでありその思いを口にした。

 

「ところで…皆もう高校で彼氏とか出来た〜?」

 

「「ぶっ!!?///」」

 

すると早苗が突然、三人に高校で彼氏が出来たのかを聞き出した。その質問を受けて黒深子と鞘華は食べていたお菓子を噴き出した。

 

「なっ!?何聞いてるんだ!?///そんな事…!!」

 

「鞘華ぁ…こういうコイバナは女の子にとって一番大事な話なんだよ?ぶっちゃけそれが聞きたくて集めたんだからね♪」

 

「はぁ…。」

 

早苗が今日黒深子達を集めた本当の理由は、彼女達の恋の進展についてを聞き出す為であった。それを聞いた鞘華は後悔したかの様に頭を項垂れる。

 

「ねぇねぇ!黒深子はどう?」

 

「えっ!?わ、私から!?///私は…///ま…だそんなんじゃ無いけど尊敬している人なら…///」

 

最初に聞かれた黒深子は顔を赤くしながら、好きかどうかでは無く尊敬はしていると言いながら闇影と自分が写った写真を皆に見せた。

 

「おっ!黒深子の彼氏、だ〜い発表〜…!!」

 

その写真が出るや否や、早苗は即座にそれを毟るかの様に取り上げで目にするが、一瞬だけ目が今までとは違う感情の籠ってない鋭い目付きをし…

 

「え?どうしたの…って、瞳、鞘華?」

 

「……。」

 

「……。」

 

黒深子は早苗のそんな様子を伺うが、瞳と鞘華も同じ目付きをして早苗にアイコンタクトで合図をし出した。すると…

 

「うわっ…メッチャイケメンじゃん!!」

 

「あ、あぁ…ここまで良い顔付きをした男性は初めてだ…!!///」

 

「本当ね…この人とはどんな関係?」

 

直ぐ様元の表情に戻った三人は、黒深子に闇影とはどんな関係なのかを尋ねる。

 

「(何だ…ただ驚いただけか…。)う、うん…家庭教師の先生で…今ウチに居候してるの…///」

 

「「「ええぇぇっっ!!!?一緒に住んでる!!!?あの男嫌いの黒深子が!!!?」」」

 

黒深子の話を聞いた三人は目を大きく見開いて大声で驚いた。中学時代の黒深子は、元々男性は皆スケベである為あまり関わりたくない人種らしく、告白されてもそれを全部蹴る程だった様である。その彼女が家庭教師とは言え、男性を住み込ませていたのだから驚くのは無理も無かった。

 

「まさか黒深子がそこまで進んでたなんてねぇ〜…もうエッチとかはしちゃった?」

 

「ぶっ!!///な、な、何言ってるのよ早苗!!///私先生とはそんな関係じゃ無いわよっ!!///(まぁ…ちょっとして見たいけど///)」

 

早苗が急にブッ飛んだ質問をした為、黒深子は顔を真っ赤にして全力で否定した。とは言え、心中ではそれを多少期待はしているが。

 

「照れてる所があ〜や〜し〜♪…あ、もうお菓子無いや。ねぇ、黒深子に彼氏が出来たパーティーも兼ねてお菓子買いに行かない?」

 

「うん♪おめでたい事だしね♪行こう行こう!!」

 

「だな。黒深子は残ってろ、私達だけ行くから。」

 

黒深子に彼氏が出来た記念のパーティーを開くべく、お菓子がなくなった事も相俟って早苗達は黒深子を残して新しいお菓子を買いに出るつもりである。

 

「え?ちょっ、ちょっと待って。私も行くよ!」

 

「駄目駄目。黒深子は主役なんだから残らないと!」

 

「そうそう。何かいるやつがあったらそれ全部買ってくるから。」

 

黒深子も行こうとしたが、主賓である彼女は残るよう引き止める三人。

 

「…分かったわ。じゃあお言葉に甘えて任せるわ。」

 

「んじゃ、行ってくるね♪」

 

その言葉に甘える事にした黒深子は残り、三人はお菓子を買いに出る為家を後にした。

 

 

 

―居酒屋・具理羅酢(ぐりらす)

 

 

「え〜それでは。赤鏡コウイチ君の景ティフル賞入賞を祝って…乾杯!!」

 

『かんぱ〜〜〜〜〜いっっっっ!!!!』

 

一方此方では、コウイチの景ティフル賞の入賞祝いにORESAMAジャーナル馴染みの居酒屋で社員全員が飲み会を開き、ダイスケの乾杯の音頭により皆が酒を一杯煽りテンションを上げた。

 

「おめでとうコウイチ!!」

 

「お前はORESAMAジャーナルのエースだ!!ほれ!もう一杯!!」

 

「あざ〜っす!!んぐんぐ…ぷはぁっ!!///」

 

「「おぉ〜〜っっ!!」」

 

先輩達から祝いの印として、空になったジョッキにビールを大量に注がれそれに感謝しながら一気に飲み干すコウイチ。そのせいで既に顔が真っ赤である。

 

「いや〜ホントに凄いよコウイチは。ここでよく枝豆摘まみながらミホさんと一緒に資料やら書類とにらめっこしてたあのコウイチがね。はい、これも食って!!」

 

同じコウイチを誉める、青いエプロンを着た頭にバンダナを巻いた髪を寝かせた様にペタンとした黒い短髪の男性、ここの店主である二島(にとう)ゴロウはコウイチの前に料理が載った小皿を置いた。この店でコウイチとミホがよく料理を食べながら仕事をしている為、ゴロウとは顔馴染みである。

 

「サンキュー、ゴローちゃん!おっ!これは俺が好きな海老餃子!!はむっ…んんっ!美味ぇっ!!」

 

大好物の海老餃子が来たため、コウイチは満面の笑みを浮かべながらそれを口にすると最高に上手かったのか顔を大きく綻ばせた。

 

「あかがみさ〜〜〜ん…のんれまふか〜〜〜〜///」

 

そこへ顔を真っ赤にして何時もかけてる眼鏡を外しおさげ髪を解き別の雰囲気を持ったユイが、完全に酔っ払った状態でコウイチに絡み出してきた。

 

「ぅおっ!!?///ちょっ、ちょっとユイちゃん…!!出来上がり過ぎ…ていうか君、酒飲めん筈でしょ…!?」

 

コウイチの言う様に、本来ユイは酒の類等一切飲めず普段の飲み会では烏龍茶くらいしか飲まない。その彼女が異性に抱き付く程酔っているという事は、誰かが無理矢理飲ませのかもしれない…。

 

「わ〜〜たひがおひゃけのんららだえなんてほ〜りふ…いつれきたんれひゅか!!///ヒック…!!///」

 

「わ、分かったから離し…!!(ぅおっ!?///む、胸が当たって…しかも…かなりデカい…!!これは思わぬダイヤの原石を見つけたかも…!!)」

 

完全に呂律が回らないでいるユイは、更にコウイチに抱き付く。その時、彼の身体にユイの胸が当たる。意外に大きいらしく、その感触を少し楽しむ。更に…

 

「も〜うあつくらってきたからわたしぬぎま…!!///しゅ〜〜……zzz」

 

「わーわー!!ちょっと待て!!…って、何だ寝ちゃったのか…。(ちょっと惜しい気が…。)」

 

ユイのテンションは最高潮に達し、遂には着ている衣服を全て脱ぎ出そうとしたが、その寸前に彼女は突然倒れそのまま深い眠りについた。コウイチはそれに安心するも、内心残念がっていた。

 

「やれやれ…コウイチ、ユイちゃんは少しここで休ませるからもうそろそろ二次会に行きなよ。」

 

「悪りぃなゴローちゃん…って、えっ!?もう二次会!?」

 

酔い潰れたユイを介抱するゴロウに感謝するコウイチは、何時の間にか二次会の時間になっていた事に驚く。泥酔したユイの豹変ぶりに翻弄された為にここまで時間を掛けていた事に気付かなかったのだった。

 

「どうすっかなぁ…。」

 

泥酔したユイはゴロウに任せるとして、コウイチは二次会に行くかどうか迷っている時…

 

「コウイチ、お前はどうするんだ?」

 

「おっ、ミホか。俺はまだ飲めるけど、二次会だと色々めんどい事させられそうだからあんま行きたくねぇんだな。お前は?」

 

やや顔が赤くなってるミホが、二次会に参加するのかどうかを尋ねて来た。まだ飲めるのだが、会社の二次会で余興だの恋愛話だの、自身の過去を根掘り葉堀り聞かれる事が好ましくない故に参加を渋るコウイチ。

 

「そうか…だっ、だったら…///私の…家で…二次会をひ、開かない…か…?///」

 

「え…?」

 

それを聞いたミホは赤くなっている顔を更に赤くし、急にどもった口調で自分の家で二次会を開く事を提案した。普段のミホなら家に泊めろと迫れば、息の根を止められる程首を締められるのだが、その彼女が逆に自分の家に招くのだと聞きコウイチは口をポカンとしながら呆ける。

 

「い…嫌か…?///嫌なら良いんだ!無理に誘ってすまん!!///」

 

「い、いや…そうじゃねぇけどよ…お前、何かおかしいぞ?何時もならそんな事言わな…!!」

 

コウイチは何時もとは違うミホの様子を伺おうとしたが…

 

「っ痛!!うぅぅっ!!な…何なんだよ…この頭痛は…!?ミ…ミ…ホ…!?」

 

突然頭に強烈な痛みが走り出しその場で悶絶しながら、焦点の合わない濁った目をしたミホを見たのを最後に、意識を失い倒れてしまう。

 

 

 

「コウイチ…大丈夫か?」

 

「ぅ…んん…ミ…ミホ…こ、此処は…?」

 

「私の家。急に頭を抱えて倒れたから家まで運んだんだ。具合はどうだ?」

 

コウイチが目を覚ますと、一台のベッドの上で仰向けになっておりミホがその横で座っていた。どうやら此処は彼女の家の様だ。

 

「そうか…悪りぃな…。」

 

「まだ寝てろ。もうちょっとしたらお粥が出来るからそれまで横になってろ。」

 

起き上がろうとしたコウイチを寝かせたミホは、粥を作る途中の様でありリビングへと向かった。

 

「(そういや俺、あいつに聞きたい事があったんだけど…何だっけ…?)」

 

コウイチは、自分が倒れる直前にミホに聞きたい事があったのだが、それが何なのかをいくら考えても思い出せないでいた。

 

「ほら、出来たぞ。玉子粥。」

 

そこへ熱々の玉子粥が入った器が乗ったおぼんを持ったミホが現れた為、一度この話は切り上げる事にした。

 

「おっ、美味そうだな。いただきます。ふーっ、ふーっ、ふーっ…はんむ…んん…!!美味ぇっ!!」

 

れんげで掬った玉子粥をフーフーしながら口に運ぶコウイチ。味はとても美味いらしい。

 

「ほっ、本当か!?///」

 

「ああ…けど何かちょっと味は濃いけど問題無く美味しいぜ。身体もちょっと元気になってきたかな?」

 

「そうか…。」

 

「ふう…大分落ち着いてきた…な…!?」

 

玉子粥を平らげ体調の具合も和らいだコウイチが横になろうとした時、突然ミホは彼の手を優しく取り…

 

「コウイチ…」

 

顔を赤くしながら上目使いで見つめ…

 

「な、な、な…///急にどうしたんだよミ…んんっっ…!!?///」

 

 

 

―好き…。

 

 

 

コウイチの唇を奪った…。

 

 

 

―森の中

 

 

「はぁ…はぁ…何なんだこの世界は…!!」

 

「先程まで静かだったのに、突然闇影さんを有名人と言って騒ぎ出しましたからね…。」

 

一方闇影とツルギは、あの後何とか闇影を追い掛けるファンから逃げ切りこの森の中へと姿を隠し、騒ぎが収まりかけたのを見計らい一旦休み現在に至る…。

 

「一体ここは何の世界なんだ…!?」

 

「随分な有名ぶりね闇影君♪」

 

「安心しな。もう連中は追ってこねぇよ。尤も、『初めからそんな奴等は居ねぇ』けどな。」

 

「巡、周…。どういう事だ?」

 

一本の木陰から巡と、煙草をくわえた周が現れた。闇影は、自分を追う連中は「初めから居ない」と言う周の言葉がどういう事なのかを尋ねた。

 

「ここは『有現夢(ゆうげんむ)の世界』…人の内在する夢や願っている幸福を現実に変える世界…。」

 

「有現夢…!?」

 

「ま、簡単に言やぁ自分の望んだ夢が現実になるって言うファンタジーな世界さ。」

 

「夢が現実に…!!まさか、黒深子さんとコウイチさんが居なくなったのは…!?」

 

「その夢となった現実空間に囚われているからか!?」

 

この「有現夢の世界」の特徴を聞いた二人は黒深子とコウイチが突然消えた理由を理解した。彼等は、普段は言わない心の内に秘めた願い…夢が現実の物となった空間に囚われいるのだった。

 

「よう、どうだこの世界は。楽しめたか?」

 

そこへ再び巧が現れ、この世界の居心地について闇影に尋ねた。

 

「楽しいも何も、こんなまやかしの世界で楽しめる訳が無いだろ!!黒深子とコウイチは何処だ!?」

 

当然、たった今この世界の仕組みを知った闇影が喜ぶ筈も無く、黒深子とコウイチの居場所を怒号の如く尋ねる。

 

「ああそうか…ま、そんな事より、今からお前に一個だけテストを出すぜ。」

 

「テストだと…!!そ、それは…!?」

 

「ああ。」

 

巧は闇影の質問には答えず、何時の間にか腰に銀色のベルトを巻いており、手元には携帯電話の様な物を持っていた。そして、「5」のボタンを三回押し「ENTER」のボタンを押すと…

 

【555】【STANDING-BY…】

 

「お前が『アレ』を持つ資格があんのか、試させて貰うぜ…変身!」

 

【COMPLETE!】

 

警告音が鳴り響く携帯を閉じ、右手で持ったそれを上に掲げてベルトにセットすると、巧の身体に赤いラインが纏い、赤い光を放つと同時に銀色のアーマーに赤いフォトンストリーム、そしてギリシャ文字の「Φ」を模した黄色の複眼が特徴のライダー、夢の守り人「仮面ライダーファイズ」へと変身した。

 

「ファイズだって…!?」

 

『俺だけじゃ無ぇぜ。おい。』

 

愕然とする闇影を余所にファイズが声を掛けると、瞳、鞘華、早苗、そしてゴロウとユイが現れた。彼等は初めからファイズの仲間だったのだ。しかし、絶望はまだ終わらない…。

 

「「「「変身…。」」」」

 

「響鬼…。」

 

【TURN-UP!】

 

【HENSHIN!】

 

瞳は赤い縁取りに紫色のスーツの戦士・響鬼。

 

鞘華は紺色のスーツに銀色のヘラクレスオオカブトを模したアーマーに赤い複眼の戦士「仮面ライダーブレイド」。

 

早苗は赤いカブトムシを模した青い複眼の戦士「仮面ライダーカブト ライダーフォーム」。

 

ゴロウは騎士の兜を模した銀色のバイザーに緑が基調の牛を模したライダー「仮面ライダーゾルダ」。

 

ユイは嘗て闇影を苦しめたオーディンなのだが、通常のそれとは違い「サバイブ-無限-」の力を得ておらず、角や肩の突起が小さく金色の部分が黄色となっている「アンスキル・オーディン」にそれぞれ変身した…。

 

「熱烈大歓迎って奴か…。巡!周!…って居ない!?」

 

計六体のライダーを前に状況が悪いと判断した為、巡と周は何時の間にか姿を消していた。

 

「あ〜い〜つ〜等〜〜っっ!!」

 

こんな時だと言うのに…と、そんな二人に怒りを募らせて拳を握る闇影。

 

「こうなったら私達だけで戦いましょう!闇影さん!」

 

「…そうだね。行くよ!!」

 

「「変身!!」」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

【HENSHIN!】

 

已む無く二人だけで戦う事を決めた闇影とツルギは各々、ディライトとサソード・マスクドフォームに変身した。

 

『キャストオフ!!』

 

【CAST-OFF!】

 

【CHANGE-SCORPION!】

 

そしてサソードはキャストオフをし、ライダーフォームにフォームチェンジした。

 

『さて…ここは最後のダークライダーの力を披露するか!』

 

【SHADOW-RIDE…RIKUGA!】

 

そう言うとディライトはドライバーにカードを装填し、自身の影をリクガ・ベヒモスフォームへとシャドウライドさせた。

 

『更に…忍法・影分身の術!!…何てね。』

 

【ATTACK-RIDE…ILLUSION-SHADOW!】

 

ディライトは、何故か師・マバユキや何処ぞの火影を目指す青年の様な台詞を言いながら、イリュージョンシャドウのカードでSリクガBFを三体に増やした。

 

『そして…遥変身!!』

 

【FORM-SHADOW-RIDE…RIKUGA!NAGA!UNICORN!GIGAS!】

 

更にその三体は各々ナーガフォーム、ユニコーンフォーム、ギガースフォームへとフォームチェンジした。

 

『君達とツルギちゃんは響鬼とブレイドとカブトを、俺はファイズと残りを倒す。』

 

『闇影さん、私もあの二体と戦いますから貴方はファイズと戦って下さい!私なら大丈夫です。』

 

ディライトは響鬼・ブレイド・カブトをSリクガ達とサソードを任せ、残りを自分が引き受けると提案するが、サソードはディライトの負担を減らすべくゾルダとUオーディンと戦うと言い、彼にファイズと戦う様言う。

 

『ツルギちゃん…分かった。君の健闘を祈るよ!!行くぞっ!!』

 

ディライトの言葉を皮切りに、十一体のライダーが戦いを繰り広げる。三体のSリクガは各々の特殊武器を構えて響鬼・ブレイド・カブトに向かって行き、サソードもサソードヤイバーを構えてゾルダとUオーディンに向かって行く。そして残るディライトとファイズは…

 

『『おおおおぉぉぉぉっっっっ!!!!』』

 

互いに走り出し、パンチやキック等格闘戦を繰り広げる。二人共に互いの攻撃にラッシュを掛けるが、それを紙一重の所で避ける…を繰り返していき組手を行い…

 

『中々…やるな…!!』

 

『どういたしまし…てっ!!』

 

『ぐあっ!?』

 

ファイズがディライトの実力を少し評価するが、彼はそれに返事を答えながらファイズの腹にキックを叩き込み背後まで吹っ飛ばした。

 

『ちっ…なら剣で試すか!!』

 

ファイズは舌打ちしながら赤い刀身をした誘導棒の様な剣型武器「ファイズエッジ」を取り出しディライトに向かって行く。

 

『こっちも剣で勝負!!はあぁぁ…!!』

 

それに対しディライトもライトブッカー・ソードモードを構えてファイズの猛攻に応対し、互いの武器で斬り結びを行う。

 

『ふっ!はっ!やぁっ!!』

 

『……!!』

 

一方サソードも、サソードヤイバーでUオーディンの持つ一振りの黄色のゴルトセイバー「ライトソード」で斬り結びを行っていた。互いにほぼ互角の戦いを繰り広げているが…

 

【SHOOT-VENT】

 

『ギガキャノン…。』

 

『…っ!!クロックデュアル!!』

 

【CLOCK-UP!】

 

そこにゾルダがシュートベントを発動し、マグナギガの両足を模した巨大なビーム砲「ギガキャノン」で強力な銃撃を仕掛けるが、サソードはそれに勘付きクロックデュアルによりそれを難なく回避した。

 

『何て威力…!!』

 

上手くかわした物の、それにより森の一部が大きく抉れてしまったのを見てギガキャノンの威力に息を飲むサソード。そこへ…

 

『きゃあっ!!』

 

『余所見厳禁…!!』

 

その隙を付かれ、Uオーディンのライトソードの斬撃を受けてしまう。

 

『はっ!やっ!せいっ!!』

 

一方ファイズは、ディライトとの斬り結びでやや押され気味であった。が…

 

『くっ…!!剣も結構やるな…けどな…!!』

 

【106】【BURST-MODE】

 

『うわぁっ!!』

 

『戦いは剣だけじゃ無ぇんだよ。』

 

片手でファイズギアを取り外してフォンブラスターに変形し、慣れた手付きで専用コードを入力し、ファイズギアのアンテナからレーザーを三発ディライトに放つ。

 

『その通りだ…戦いは剣だけじゃないんだ…ね!!』

 

『がぁっ!?』

 

攻撃を受けて怯んだディライトは、その反撃としてライトブッカー・ガンモードから緑色のユニコーンの角を模した銃撃をファイズに放った。

 

『俺は今、三つのリクガの力を共有しているからね。更…にっ!!』

 

『ぶあっ!!?』

 

『そして…はっ!!』

 

『ぅぐあっ…!?』

 

更にディライトは、ファイズに走って近付きダークパープルカラーの封印エネルギーを纏ったパンチで殴ると彼を大きく吹き飛ばし、すかさずライトブッカーをスピアモードに変形し、その刃先からダークブルーカラーの蛇型のエネルギーを放ち、ファイズを拘束した。

 

『さてと…ちょっと卑怯かもしれないけど、このまま止めを刺させて貰うよ!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DE・DE・DE・DELIGHT!】

 

『はあぁぁ…はぁっ!!』

 

『く…くそっ…!!』

 

ディライトは自身のFARを発動すると同時に大きくジャンプすると、十枚のカードビジョンが斜めに並び、それをすり抜けてディメンジョンレッグを拘束されたファイズに叩き込もうとした。が…

 

『これで…終わ…!!』

 

 

 

『…りだと思ってんのか…?ふんっ!!』

 

『なっ…何っ!!?だけど…この距離なら…!!』

 

『だから…それで終わりだと勝手に決めんな…。はぁっ!!』

 

『なっ…何だこの光は…!!?』

 

突然ファイズは蛇型エネルギーの拘束を解除した為ディライトは動揺するが、構わず攻撃を続ける。しかしファイズは全身から赤とは対称的な白い光をディライトに放ち出した。すると…

 

「こ…攻撃の威力が勝手に止まった…!?しかも変身まで…!?」

 

謎の光を浴びたディライトのFARは本人の意思とは無関係に停止し、変身まで解除されてしまう。だが、「異変」はそれだけでは無い…。

 

「カ…カードが全部真っ白に…!!?」

 

闇影の手元にあるカードが、全て真っ白な物に変わってしまっているのだ…。

 

『形勢逆転だな…。』

 

「くっ…!!」

 

『闇影さん!!』

 

カードが全て使用不可となり形勢が逆転してしまい、ファイズエッジを突き付けられる闇影…。

 

 

 

「う〜ん…皆と…ずっと一緒…zzz」

 

 

 

「はっ…!!はっ…!!///」

 

「夢」に囚われた黒深子とコウイチは、このまやかしから目を覚ませるのか?

巧の言う「アレ」とは…?

そして、闇影の運命は如何に…?




もしも皆様が今回の闇影達の様に、自分にとって都合の良い事ばかり起きたらどうしますか?

次回は少し過激(?)なシーンがあります。

そして…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第24導 偽りの光を破れ!混沌纏いし死神

ディライトのパワーアップ編です!!

予め言っておく!この小説は前のサイトから移植した物である為、他の人のキャラも登場していますので悪しからず!!(土下座)


「カードが…全部使えない…!!」

 

『これで形勢逆転だな…。』

 

「くっ…!!」

 

ファイズの放った謎の光により全てのライドカードを使用不可となり、ファイズエッジを向けられ完全に詰まれてしまった闇影。しかし…

 

『…やめだ。』

 

「何…!?」

 

『テストはここまでだ。取り敢えずは合格って所だな。「あの宝」を手にするのに…な…。』

 

止めは刺さず、「テスト」の終了と合格を宣言しながらベルトを外して変身を解除する巧。

 

「まぁ、その内お前は自分からこの世界を受け入れる…。それまで気長に待つとすっか。お前等、もういいぞ。」

 

『『『『『はっ!!!!!』』』』』

 

巧の戦闘終了の命令を聞いたブレイド・響鬼・カブト・ゾルダ・アンスキルオーディンはサソードとの交戦を中止しその場から忍者の如く颯爽と消えた。

 

「……っ!!はぁ…はぁ…!!み、闇影さんは…!?闇影さんが危ない…!!」

 

多勢に無勢なのか、五体ものライダー達戦った為、息を切らして変身を解除するツルギ。そして、膝を付いた闇影を見て彼の元へ駆け付ける。

 

「そう簡単にこの世界を受け入れると思っているのか?」

 

「その内したら、そんな台詞吐けなくなるぜ…『その内』したら…な。あばよ。」

 

巧は、意味深な言葉を言い残してその場から立ち去ってしまう…。

 

「待て!!どういう事だ!?くっ…!!」

 

「闇影さん!!大丈夫ですか!?」

 

「ああ…。だが、カードが使えなくなってしまった…。」

 

「そんな…!!」

 

駆け寄ったツルギは闇影の無事を確認したが、ライドカードが全て使用不可と聞き愕然した。

 

「ふ〜ん、お宝ねぇ…それは耳寄りな情報ね♪」

 

「けどよ、あの野郎間違ってるぜ。その資格はこいつじゃなくて俺様達なのによぉ…。」

 

「お前達…!!」

 

多勢の敵ライダーを見て姿を消していた巡と周が、巧の「宝」と言う言葉を聞き付けて今頃になって現れた。闇影はそんな二人の行動に腕を震わせながら静かに怒る…。

 

「どんなお宝なのか私達が見に行ってあげる♪じゃあね♪」

 

「あばよ♪」

 

【【ATTACK-RIDE…WARP!】】

 

巧の言う「宝」がどんな物なのかを知る為、巡と周はワープを使いその場から消え去った。

 

「……っ!!もういい…!!今は黒深子とコウイチを探すのが先だ。行くよ、ツルギちゃん。」

 

「はい!!」

 

黒深子とコウイチを探すのを優先した闇影は踵を返し、ツルギと共に再び彼等を探しに走り出した。が…

 

「なっ、何だこれはっ!?」

 

突然二人の前に謎の亀裂が現れ、それが大きく裂けるとブラックホールの様な物が発生し、強力な吸引力で闇影とツルギを吸い寄せようとする。

 

「くっ…!!このままじゃ…うわああぁぁっっ!!」

 

「み…闇影さ…きゃああぁぁっっ!!」

 

必死の抵抗も空しく、二人はブラックホールに吸い込まれてしまい同時にその亀裂は完全に閉ざされてしまった…。

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!9つの影の世界を巡り終え、その瞳は、何を照らす?

 

 

「コウイチ…///」

 

「よ…止せってミホ…!!///こんなの…こんなのお前らしくないぞ…!!」

 

一方ミホに唇を奪われたコウイチは、彼女のその妖艶な顔つきと麗しい瞳に見つめられその場を動けないでいた。そしてそのまま彼の衣服を脱がそうとするミホ。コウイチはそれ以上の事はさせまいと、ミホの手を取って制止を促す。しかし…

 

「私らしくないって…?ならお前にとっての私って一体何なんだ!!?お前に拒絶されて…お前に愛されないで平気な顔をしているのが私らしいと言うのか!!?」

 

ミホはコウイチの肩を掴んで激しく揺らしながら、彼の言葉に食って掛かる。自分がこんなに彼を愛していると言うのに、その自分を否定する言葉にに怒りを露にしている。すると…

 

「…れた…ない…。」

 

「え…?」

 

「もう…二度と離れたくない…から…!!やっとまたお前に会えたのに…お前が別の奴と何処かへ行ってしまうかと考えると怖かった…だからこうするしか無いと思って…すまない…うぅっ…!!」

 

「ミホ…。」

 

ミホの目から涙の粒が零れたのを見てコウイチは思った。自分と彼女は一度、二度と会う事の無い永遠の別れをしていた。何が原因かは不明だが、それがこうして実現された。正直な話、自分は普段は平然を保っていたが実の所、ミホを失った事がとても辛かった。そして彼女もまた自分と同じ気持ちだった事を知り、切なくも嬉しくなり心が揺らぎ出した。

 

「分かったよ…お前はずっと辛かったんだよな…。俺も、お前が居なくなってからとても胸が苦しくて…死ぬ程辛かった…!!なのにお前を拒否しちまって…ホントにすまない…!!」

 

「いや…私が悪かったんだ…お前の意思を無視した私が…!!」

 

ミホの気持ちを理解したコウイチが彼女を拒否した事を詫びると、ミホもまた自分勝手な行為をしてしまったと詫びる。そして…

 

「だから…そのお詫びとして…私の『初めて』を貰ってくれない…か…?///」

 

その非礼の詫びとして、自分の処女を捧げると言いながら身に着けている衣服を脱ぎ出し、引き締まってスタイルの良い身体が目立つ下着姿となった。

 

「き…綺麗だ…!!///」

 

「で…でも…ちょっと怖いからコウイチ…『享受する』と言って私に踏ん切りを付けさせて欲しいんだ…!!///」

 

自分の美しい肢体に見惚れるコウイチにミホは、いくら自分から求めたとは言え「この手の行為」は初めてで少し怖く、その踏ん切りを付ける為、彼に「享受する」と言って貰うよう上目遣いで頼む。

 

「い、今更だけどよ…本当に俺なんかで良いのか?///」

 

「勿論だ…だから言ってくれ…お願い…。」

 

「ミホ…。」

 

コウイチを選んだと決めたミホは、優しい表情の顔で彼の身体に抱き着く…。コウイチも、そんな彼女の表情を見て穏やかな笑みが浮かべながらミホの背中に手をやる…。

 

 

 

彼女の顔に、一瞬のみ白いヤゴを模した怪人の顔が浮かんだ事に気付かずに…。

 

 

 

「ん…此処…は…っっ!!?」

 

一方あのブラックホールに吸い込まれて意識を失っていたツルギが目を覚ますと、何故か手術用の大きなベッドの様な物に手足を拘束されている事に気付く。

 

「これは一体…!?はっ…!!」

 

突然、十数人の黒い軍服を来た男性達が現れ、ツルギの周囲を囲み出した。まるでゴミを見るかの様な冷たい視線を彼女に送りながら…

 

「(この光景って…まさか…!?…誰か来る…えっ!?)」

 

「さて皆さん。我々NEO-ZECTが日々戦うワームの生態、特性を良く知る為に、このネオティブの身体を隅々まで調べる事となりました。」

 

「銀城…ヒデナリ…!!なら此処はダークカブトの世界…!?」

 

現れた人物とは何と、嘗てディライトである闇影と黒角ソウタ/仮面ライダーダークカブトが協力して倒した筈のNEO-ZECTの総帥・銀城ヒデナリ/仮面ライダーヘラクス…に擬態したヘラクルヴァワームであった。つまり此処は、自分の居た「ダークカブトの世界」のNEO-ZECT本部であると悟るツルギ。

 

「何故貴方が此処に!?それに…これは…きゃあぁっっ!!」

 

「中途半端なネオティブ風情が私を呼び捨てにするな…!!何時から人間らしい口が利けたのかは知りませんが、どうやら何時もの『日課』を忘れた様ですね…皆さん、その身体に叩き込むのと同時に『解析』しなさい!!」

 

『はっ!!!!!』

 

ネオティブであるツルギが自分に口を利くのが気に食わないヒデナリは彼女の頬をひっぱたき、「日課」であるネオティブの「解析」をする様黒い軍服の男性達、ゼクトルーパーの隊員達に強く命令した。

 

「嫌っ!!止めて!!止めてください!!」

 

その命令を聞き隊員達は一斉にツルギの身体に触りまくり、彼女の着ていた衣服を無理矢理破き始めた。当然ツルギは抵抗の意を唱えるが…

 

「何が『止めて…』だよ?」

 

「お前は俺様達、NEO-ZECTの道具でしか無いんだよ!!」

 

「フヒヒ…ロリワームを好き放題に調べられるんだから最高〜♪」

 

「どんだけヤっても、ワームだから罪になんね〜しラッキーだぜ!!これがもうちょい成長したらな〜…まっ、総帥のご命令とあらば…さっさとヤっちまおうぜ!!」

 

「い…嫌あぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

その訴え等全く耳を貸さず、ネオティブ…ワームであるのを良い事に「ネオティブの生態調査」に託つけてツルギを欲望のまま蹂躙する隊員達。彼女がどれだけ泣き叫ぼうがツルギが人間では無いのを良い事に、その行いを止める事は無かった…。

 

 

 

「此処は何処なんだ…?おーーい!!ツルギちゃーーん!!…やっぱ居ないか…。」

 

一方、ツルギと同じくブラックホールに吸い込まれた闇影は、空が暗い荒れ果てた荒野へと飛ばされていた。ツルギの名を大声で叫ぶが、返事は返って来なかった。

 

「しかし、此処って『あの時』の光景を思い出すなぁ…。」

 

闇影はこの荒野を見て「あの時」を思い出し始めた。七年前、謎の組織「ダークショッカー」の幹部として「世界の灰塵者」仮面ライダーディシェイドとして、組織の命により幾つもの罪無き人々を抹殺してきたおぞましい過去を…

 

「ん?な、何だ…!?身体が勝手に…動く…!?」

 

すると、闇影の足が本人の意思とは無関係に勝手に前に出て、そのまま歩き出す。しかし、異変はそれだけではない…。

 

「服と髪が『あの時』の物に…!?それに、この人達は一体…?はっ…!!」

 

着ていた衣服が何時もの格好ではなく、黒いローブに金色のポニーテール、右耳には金色の太陽のピアスと、ダークショッカーの幹部としての姿へと変化していた。気付くと何時の間にか、数十人の人々がいる場所まで辿り着く。これらの奇妙な現象に、闇影は巧の言っていた言葉を思い出す…。

 

 

 

―まぁ、その内お前は自分からこの世界を受け入れる…。『その内』したら…な。

 

 

 

「くそっ!!そういう事か!!」

 

闇影は巧の言う「その内」の意味を漸く理解した。この「有現夢の世界」は、その世界に踏み入れた人間の内在する夢や願いを現実の物にする世界である。しかし、内在する夢や願いが実体化する為には、その者の「記憶」を読み取られるという事となる。つまり、「叶えたい夢や望んだ願い」とは逆の…

 

「くっ…!!」

 

 

 

「忘れられない悪夢や望まない願い」をも実体化するという事になる…。

 

 

 

「あんた…何者なんだ…!?」

 

一人の男性の問い掛けを聞くと、闇影の手が勝手に動き「ある物」を構えた。それは…

 

「死に逝く貴様に答える義理は無い…!!(……!?口が勝手に…!?よせ!!止めろ!!)」

 

「があっ!!?」

 

紫色の本の様な形をした銃・シェイドブッカーであり、男性の頭をそのまま撃ち抜く…。

 

「き…きゃああぁぁっっ!!」

 

「に、逃げろ!!うわああぁぁっっ!!」

 

「逃がさん…!!」

 

それを見た一人の女性の悲鳴を皮切りに、人々は恐怖を抱きながら一斉に走り出す。しかし闇影も、その人々達を追う為に走り出した。無論、本人の意思とは無関係に…

 

「た…助け…あがっ!!?」

 

「死にたくない…死にたくないよぉっっ!!ぎゃっ!!」

 

「子供だけは…子供だけは助けて…きゃあぁっっ!!」

 

「(止めろ!!止めるんだ!!止めてくれ…止めてくれ!!)」

 

闇影は逃げ行く人々の命乞いや悲鳴を聞いても、それを一切聞き入れずにシェイドブッカー・ソードモードで無表情のまま無慈悲に殺害していく。しかしそれは本意では無く、闇影は心の中で止める様呼び掛けるが、身体は言う通りにならない…。

 

「止めろおおおおおおおおおおっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!」

 

 

 

「この分だとあいつの心が壊れかけるのも時間の問題だな…。」

 

謎の空間で、巧は真上にスクリーンの様に写した今の光景を見て闇影の心が壊れかける様子を腕を組みながら見ていた。

 

「此処までは『計画(シナリオ)』通りだ…。後は…」

 

どうやらこの世界で今まで起きた現象は、全て巧の仕組んだ計画であったのだ…。そして写していた「闇影の過去」の映像を別の「夢」に切り替えた。

 

「こいつをどうにかするだけだな…。」

 

「黒深子の願った平穏」と言う、偽りの夢に…

 

 

 

「ん…ふぁぁ…気が付いたら寝ちゃってたな…あれ?早苗達はまだ帰ってないの?」

 

一方、この現実(ゆめ)が仕組まれた物とは知らずに眠りから目が覚めた黒深子は、身体を伸ばしながら早苗達が未だ買い物から帰って来ない事に気付く。

 

「もう…何処まで買い物に行ってるのよ…!!…繋がらないし。」

 

半分怒りながら心配しつつ彼女達に携帯で連絡を取るが、三人共電話に繋がらないでいた。

 

「「「ただいま〜!!」」」

 

そこへ、早苗達が大量の袋を持って漸く帰ってきた。

 

「あ、黒深子。今起きたんだ。」

 

「何処行ってたのよ…!!」

 

「ゴメンね黒深子。ちょっと用事が出来てね。」

 

「その用事が長引いてしまって、それが終わって帰るついでに朝マ○クを買いに行ってたんだ。」

 

「それならそうだと連絡ぐらい入れてよ…。」

 

「ゴメンって〜。さっ、朝マ○ク食べよ♪」

 

「もう良いよ。こうして帰ってきたし私も転た寝してたのが悪かったし、許すわ。」

 

黒深子は自分も転た寝していた事も差し引いて三人を許し、朝食に朝マ○クの袋からマフィンを取り出し頬張る。

 

 

 

「ねぇ。今日は何処行く?」

 

「そうだな〜…今日は最新のゲームが発売してるからそれ見に行きたいんだけど!!」

 

朝食を済ませた黒深子達は、今日も遊びに出掛け出す。早苗が今日は何処へ行くかを三人に尋ねると、瞳が最新のゲームが発売していると言い、ゲームショップに行く事を提案した。

 

「んじゃ、今日はゲームショップから行こっか♪」

 

「「賛成♪」」

 

最新のゲームが買えるかもしれない期待を抱く黒深子達は、意気揚々とゲームショップに向かおうとした時…

 

『はい!今日のゲストは何と!あの有名な「アイドル教師」・煌闇影さんです!どうぞ!!』

 

『どうも皆さん、初めまして!!煌闇影と申します!』

 

「ぶっ!!?せ、先生!?」

 

巨大なビルのモニターテレビに、何らかの番組に闇影がゲストで写っているのを見た黒深子は、盛大に吹き出しながら驚いた。因みにこの闇影は「本物」では無い…。

 

「黒深子…もしかしてあれがあんたの彼氏…?」

 

「か、彼氏じゃ無いわよ!!///皆、ゴメン…私、用事が出来たわ!!また遊びましょ!!」

 

「ちょ、ちょっと黒深子!!」

 

闇影の顔を見て「大事な用」を思い出した黒深子は急遽早苗達と別れ、闇影の下へと走り出す。

 

「ふ…予想通りの行動だな…。」

 

その直後に、早苗は最初に闇影の写真を見た時と同じ、冷たく感情の篭ってない目で遠くまで走る黒深子を睨み付けた…。

 

 

「はぁ…はぁ…!!先生…何処なの…!?携帯にも繋がらないし…!!」

 

あちこち闇影を探す黒深子だが、何処を探しても全く見付からず携帯に連絡しても繋がらなく、途方に暮れていた。

 

「見つからなくて当然よ…だってその人は『別の夢の世界』に居るんだから…。」

 

「貴方は誰…!!?」

 

「私は貴女…この『有現夢の世界』の白石黒深子よ…。」

 

闇影が見付からないとぼやいている黒深子の疑問に答えたのは、何と自分と同じ顔をした灰色のコートを着込んだ少女であり、この世界の白石黒深子だと名乗った。しかし、コートに付いたフードを深被りをし、左目には何故か包帯を巻いていた。

 

「この世界の…私…!?有現夢…!?別の夢ってどういう事!?」

 

この世界の自分、Y黒深子の言葉に黒深子は混乱しつつも彼女に尋ねた。

 

「この世界で起きる都合の良い現実は、現実の様であって現実ではない、されど夢の様であり夢でない…。それがこの『有現夢の世界』の『真実』よ…。」

 

「この世界が…夢…!?」

 

「その現実(ゆめ)から逃げ出そうとした人間は皆、夢の守護者や管理者によって粛正、若しくはその人にとっての『悪夢』を見せ付けて心を壊し、『夢の世界』に幽閉するの…永遠にね。」

 

「そんな…そんなのって…!!」

 

「この世界に『本物』は何一つ無いの…。そして、この世界を『現実』と完全に享受した人間は…心が完全に無くなり生きたまま死に絶える…!!」

 

「嘘よ!!嘘言わないで!!もしそれが本当なら私の…いいえ、貴女の友達はどうなるのよ!?それならこの世界は危ないって知らせる筈じゃない!?それをしないって事…は…!!」

 

黒深子はY黒深子の言葉を全否定した。もしそれが真実ならば、この世界の早苗達はどうなのかと怒りのまま尋ねようしたが…

 

「ま…まさか…!!」

 

「そう…此処にいる人間達は皆怪人が化けているの…そして、あの子達は…さっき言った守護者達に化けているの…本人達を殺してね…!!」

 

「嘘よ…嘘よそんなの!!」

 

この世界の人間達が全て怪人が早苗達は夢の守護者達に殺害、成り代わられてしまったと言う事実を知り、困惑する黒深子。

 

「私もあの時、一緒に居て守護者達に凌辱されて酷い暴行を受けたの…!!」

 

「ひっ…!!」

 

そう言うとY黒深子は頭に被ったローブのフードを取り包帯をほどくと顔のあちこちに守護者達に殴られた痛々しい痣があり、一番酷いのはくり貫かれた左目の周りに火傷の様な傷跡であった…。あまりの酷い傷に目を背ける黒深子。

 

「でも足掻きとして、奴等から『ある物』を奪って逃げ出したわ…。」

 

Y黒深子はローブの懐から、巧達守護者から足掻きとして奪った「ある物」を取り出した。それは、ライトオレンジカラーのタッチパネルの様な機械だった…。

 

「これって…ディライトの顔っぽい形をしてるわね…まさかこれって…!!」

 

黒深子がそのタッチパネルの形状をディライトの顔に似ていると気付き、「一つの答え」が頭に過った瞬間…

 

「黒深子、やっと見つけたよ♪」

 

「さ、早くそれを私達に渡してくれないか?」

 

「あたし達、友達でしょ?」

 

瞳・鞘華・早苗の三人が現れ、黒深子にタッチパネルの機械を渡すよう何時もの笑顔で要求するが…

 

「あんた達には渡さない…渡してたまるもんか!!」

 

「そうかよ…なら力づくでぶんどるだけだよ!!」

 

当然、Y黒深子は断固拒否の意を唱えた。すると、本性を表した早苗はドスの利いた低い声で力づくで奪うと言い出し、二人の黒深子に詰め寄る。

 

「逃げるわよ!!」

 

「えっ!?う、うん…。」

 

彼女達から逃げる為、Y黒深子は黒深子の手を引き走り出した。

 

 

 

「コウイチ…早く言ってくれ…。ふぅ…!!」

 

「うぅぅ…!!///」

 

一方、ミホはコウイチに「享受する」 と言わせる為、彼の下着越しに「分身」を擦り出し耳元に息を吹き掛ける。その驚異的な快感に身悶えするコウイチ。ここまでされればどんな男でも全て墜ちてしまう…。

 

「お…俺は…この光景を…きょ…!!」

 

筈なのだが、コウイチはミホの身体を見て「ある事」に気付き始めた。

 

「ミホ…一つ聞きたい…『傷』はどうしたんだ…?」

 

「え…!?」

 

「俺とお前が仕事に慣れて半年後、取材途中にナイフ振り回した通り魔事件の事は覚えているか?その時お前、俺の制止を振り切ってその通り魔をとっちめたけど、そのナイフが誤って右の脇腹に刺さっちまって病院で治療したけど、その傷は思った以上に深くて一生残ったんだ…。だけど、今のお前にはそれが無い!!」

 

そう。ミホの脇腹には通り魔による傷がある筈だが、目の前の彼女の身体にはそれが無い事にコウイチは疑問に思ったのだ。

 

「で…でもそれは…!!」

 

「それにだ…お前は早合点はし易いけど、こんな他人の意思を無視するやり方は間違ってもしないし、何より…お前料理下手だっただろ?」

 

疑問を指摘されてしどろもどろになるミホとは裏腹にコウイチの指摘はまだ続く。彼女は早合点はするが、他人の事を思いやれる性格であり、その意思を無視する真似は絶対にしない。そして、決定的なのは料理の腕でありその腕は黒深子とほぼ同等であるらしいようだ。

 

「だから今更ながら気付いたよ…お前はミホじゃない!!いい加減正体を現したらどうなんだよ!!このっ!!」

 

『ぐっ…!!人間風情ガ…良イ気ニナルナヨ!!』

 

このミホが偽者だと知ったコウイチは彼女を蹴飛ばすと、ミホ(?)は怒りの表情でその姿を揺らめると、白いヤゴを模したミラーモンスター「シアゴースト」に変化した。

 

「ちっ…道理で何もかもが上手すぎると思ったぜ…ってヤベッ!!デッキ、ズボンのポケットの中だった!!」

 

リュウガに変身しようとするコウイチだが、デッキがズボンの中にある事に気付き、いきなり窮地に追われてしまう。

 

『アノママイレバ永遠ノ快楽ニ酔イシレタ物ヲ…死ネェェッッ!!』

 

シアゴーストの鋭い爪がコウイチに振り降ろされるその時…!!

 

『ウグゥッ…!?ナ…何故…ダ…!?グアァァッッ!!』

 

何者かの攻撃により、シアゴーストは何が起きたのか理解出来ずに消滅した…。

 

「いっ、一体誰が…!?」

 

 

 

―コウイチ…。

 

「えっ…!?その声は…!!」

 

すると何処からか、白い光が発生しコウイチを呼ぶ謎の声が聞こえ始めた。その正体は…

 

「コウイチ…久しぶりだな…。」

 

「ミホ…!!」

 

その光は剣を持った白鳥を模した女騎士のライダー・ファムへと変わり、変身が解除され羽鳥ミホの姿となった…。

 

「お前…本当にミホなのか…!?」

 

このミホも実は偽者では無いのか、そう疑問に思ったコウイチは…

 

「……!!///」

 

ミホの胸を揉み出した…。

 

「いきなり…何やってるんだあぁぁっっ!!///」

 

「ぎゃあぁぁっっ!!痛い痛い痛い!!すんません!!マジですいませんでした!!」

 

いきなりのセクハラ行為に、ミホは顔を真っ赤にしながらコウイチの両手首を千切ってしまうかの様な勢いで力強く握り潰そうとする。その痛みのあまり、コウイチは何度も彼女に平謝りした。

 

「痛つつ…ま…間違い無く本人だ…!!でも、良かった…。」

 

自分への制裁を忘れていない事を確認したコウイチは、それを受けながらも少しだけ嬉しい表情をする。やっと本来の彼女を見る事が出来たから…。

 

「お前がピンチになっているのを見兼ねていたら、何故かこうして力を貸せたんだ。」

 

「あの時聞こえた声は、やっぱ幻聴じゃなかったんだな…。」

 

あの時…嘗て「リクガの世界」で自分にだけ聞こえた彼女の声はやはり幻聴では無かったのだ。

 

「コウイチ、お前はこんな所で終わるつもりは無いんだろ?なら早く煌や黒深子達の所へ戻るんだ。私が案内する。」

 

「たりめぇだ。んなとこでくたばる程俺の命は安くねぇからな!」

 

「その前に良いか…?」

 

「ん?何だよ?」

 

「早く服を着ろ!!///何時までそのままでいるつもりだ!!///」

 

元の世界に戻ろうとするコウイチだが、顔を真っ赤にしたミホから服を着る様に怒鳴られた。それもその筈、今の彼の姿はトランクス一丁と確実に警察にお縄に着いてしまう格好だから…。

 

「ったく…脱がせたのはお前の偽者なんだけどな…。」

 

ぶつくさ言いながら着替え終えたコウイチがミホの手を握ると、二人の全身があの白い光に包まれて宙に浮き出す。

 

「ぅおっ!!?」

 

「行くぞ…仲間の下へ!!」

 

「頼むぜ!!」

 

二人を包む光が更に大きく輝くと、コウイチとミホはこの空間から消えて脱出した…。

 

 

 

「はぁ…はぁ…!!///も、もう…止めて…!!///」

 

一方、あれから隊員達に数時間に及ぶ凌辱を受けたツルギは全裸のまま息絶え絶えになり、目も虚ろとなり涙も枯れ果てていた…。

 

「へへへ…なかなか『良い結果』だったぜ…もう一発いくか?」

 

「ひっ…!!?」

 

あれだけ蹂躙したにも関わらず尚もツルギを嬲ろうと、じりじりと彼女に触れようとする隊員達。が…

 

「消えろ…ゴミ共…!!」

 

「ンガァッ!!?」

 

「グギャアッッ!!?」

 

「ひ…ひぃっっ!?た、助け…ギャアァァッッ!!」

 

突然何者かが現れ、彼等の首をはねたり喉を突き刺し、真っ二つに斬り裂いて虐殺を行った。その人物とは…

 

「み、闇影さん…!?」

 

現在、自身の過去を見せ付けられ錯乱していた筈の闇影だった。そして、ゼクトルーパー達の首無し死体を蹴飛ばし拘束されたツルギを解放する。

 

「可哀想に…でも、もう安心だよ…。」

 

「あ…あの…闇影さ…!!///」

 

闇影は、解放したツルギを優しく抱き締め安心させようとする。ツルギも闇影の突然の抱擁に顔を赤くしながら戸惑う。今自分が全裸である事も忘れて。しかし…

 

「もう君が戦う必要が無い世界に連れてってあげるから。」

 

「え…!?」

 

巧が言っていた台詞と同じような事を口にした闇影の言葉に絶句した。すると、闇影の背後に黄色に輝くオーラが現れた。それと同時に、ツルギの破かれた衣服が元の状態に戻る。やはり、先程起きた現実は夢(まぼろし)だったのだ…。

 

「服が戻った…!?いえ、それより闇影さん!!これは一体…!!」

 

「この光の向こうには、君を苛めたり利用する人達が居ない世界が待ってるよ。さあ、早く行こ?」

 

ツルギの疑問に答えない闇影は彼女の手を強引に引っ張り光の中へ招こうとするが、ツルギはその手を振り払う。

 

「嫌っ!!」

 

「ツルギちゃん…!?」

 

「貴方は…私の知ってる闇影さんじゃない…!!この世界での幸せは嘘だと言う事に気付いている筈です!!」

 

ツルギは、今此処に居る闇影は偽者だと強く断言した。理由は勿論、本物はこの世界の仕組みを理解している筈である為だ。

 

「何だと…折角助けてやったのに…幸せな世界を用意してやったと言うのにィィィィッッッ!!」

 

「!!」

 

すると闇影(?)は、激昂してシアゴーストへと変化しツルギに襲い掛かりその首を締め付ける。

 

「うっ…ぐ…ぐぅっ…!!」

 

『ヘェハハハ…!!俺ヲ受ケ入レナイ奴ハ死ンデシマエェェッッ!!』

 

「くっ…こ…このぉっ!!」

 

『グアッ!!?ジ…ジネェェッッ!!』

 

ツルギは苦しみながらも何とか力を振り絞り、足で蹴飛ばした。それにブチ切れたシアゴーストは再び彼女を襲い掛かろうとするが…

 

「闇影さんへの侮辱は…!!」

 

『エッ…!?コ…コレハ…!?グアァァッッ!!』

 

「死を以て償いなさい…!!」

 

闇影に化けた事に対する怒りを内に秘めたツルギのサソードヤイバーの一太刀により、胴体を真っ二つにされ爆死した。それと同時に、ツルギの身体がコウイチやミホの様に白く光り出した。

 

「私は信じています…闇影さんも必ずこの空間から脱出出来る事を…!!」

 

ツルギは、闇影の脱出を信じながら宙に浮きこの空間から脱出した…。

 

 

「……。」

 

一方、辺り一面が闇で統一された空間で「自身の過去」を強制的に再現させられた闇影は、その場で膝を付いて呆然としていた。目の色に光は無く涙も枯れ果てている等、彼の精神は崩壊寸前だった…。

 

「嫌な過去を再現した気分はどうだ?」

 

「(ダレダ…?コノヒトハ…?)」

 

そこへ目の前に巧が現れた。しかし、今の闇影は精神が崩壊しかかっている為巧である事を認識出来ないでいる。

 

「な?人は皆何かしら思い出したくない過去や都合の悪い記憶を持っている…だからこそそれから逃げたいが為にこの世界での幸せにすがる。それが例え、夢でしかなくてもな…。お前はどうだ?この過去から逃げたいだろ?嫌な記憶を忘れたくなっただろ?」

 

「(ナンダ…?イッテルコトガヨクワカラナイ…!?タスケテ…クレルノカ…?)」

 

人の心理を長々と語る巧の言葉を聞いても、内容がよく理解出来なくなってしまっている闇影。

 

「だからよ、この光の中へ入れ。この中に入れば色んな幸せが待ってるぜ。どんな物でも手に入るし、どんな願いも簡単に叶う…そんな夢の世界がな。」

 

巧が指を鳴らすと、先程ツルギが見たあの黄色いオーラが現れた。そしてこの中に入るよう闇影を唆す。

 

「(アノムコウニ…シアワセガ…!!)」

 

「ああ、そうだ。」

 

「(ナラ…イコウ…。コノカナシイキモチヲナクシタイ…!!)」

 

巧の言葉を完全に鵜呑みにした闇影は、彼の言われるがままオーラに足を運ぶ。この世界での「幸福」を受け入れない者にはその者にとっての「悪夢」を強制的に見せ付ける、或いは実行させて精神を崩壊させた所に再度「幸福」をちらつかせる…それこそが「有現夢の世界」の仕組みである。闇影がオーラの一歩手前まで近付いたその時…

「ん?」

 

オーラが発生している場所とは別の場所にそれと同じ色の光が輝き、その中から前髪がストレート、後ろ髪にパーマがかかった黒髪、首には黄色のトイカメラ、左手首に黄色のブレスレットをした黄色いシャツの上に黒い上着を着たジーパンの青年が現れた…。

 

「俺の親友(なかま)に随分なもてなしをしてくれたな、巧…。」

 

「何で…何でお前が此処に来れんだよ…。近藤渚…仮面ライダーディライド!!」

 

巧は謎の青年・渚の姿を見て声を荒げる。近藤渚、「世界の破壊者」と呼ばれる門矢士/仮面ライダーディケイドとは別の次元戦士「もう一人の破壊者」仮面ライダーディライドである。彼と闇影が出会うのは実はこれが初めてではない。一度目は新たなる9つの世界の一つ「ネオ電王の世界」、二度目はライダーの居ない「スーパー戦隊の世界」の一つの「ボウケンジャーの世界」、そして三度目は現在…。

 

「さあな。俺にもよくは分かんねぇ…だがな、大事な仲間が危ない目に遭ってんのを見過ごす程人間出来ちゃいねぇんだよ!!」

 

「面倒臭ぇ真似させんじゃねぇよ…!!」

 

【555】

 

「変身!」

 

【STANDING-BY…COMPLETE!】

 

『はぁっ!』

 

「うおっと!!」

 

巧は渚に余計な真似はさせまいと、面倒臭がりながらファイズに変身した。そしてその勢いのまま渚に殴り掛かろうとするが、あっさりかわされる。

 

「そっちがそう来るなら俺も…!!」

 

そして渚はディライトドライバーに似た金色のバックル「ディライドライバー」を取り出し、腰に装着し…

 

「変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DERIDE!】

 

ドライバーにカードを装填すると、外見はディライトに酷似しているが体色はディープイエロー、複眼は青、シグナルポインターは薄ピンク、ライドプレートが右目に斜め右上に三本、左目に斜め左上に三本、真ん中と右目と左目に一本ずつ装着されたもう一人の破壊者、または「輝く光の戦士」の名を持つライダー「仮面ライダーディライド」へて変身した…。

 

『闇影、今回だけお前の台詞を使わせて貰うぞ…輝く道へと導きますか!!ってな。』

 

ディライドは左手首を握りながら、ディライトが変身後に言う決め台詞を言った。

 

『ふざけんな!!』

 

当然それに腹を立てたファイズは、片手にファイズエッジを構えてディライドに斬り掛かっていく。対してディライドも金色の本型の武器「ライドブッカー」をブックモードからソードモードに切り替えて応戦する。

 

『はっ!ふっ!おらっ!!』

 

『よっ!せいっ!はぁっ!!』

 

ディライドとファイズは、互いに僅かな隙を見極めながら武器で斬り結びを行なっている。

 

『くっ…くおおぉぉっっ…!!』

 

『お…押されてしまう…うあっ!!』

 

『今だ!!』

 

【ATTACK-RIDE…SLASH!】

 

『せぃやっ!!』

 

『ぐあぁぁっっ!!』

 

暫くするとファイズの方が徐々に押されて気味になり、ディライドはそれを見逃さずに力を更に強めて押し出しファイズエッジを弾いた。更にカードを装填し、ディライドスラッシュでファイズを後退させた。

 

『未だだぜ近藤…!!』

 

【106】【BURST-MODE】

 

『ぐあぁぁっっ!!』

 

しかしこのままファイズが簡単にやられる筈もなく、ファイズフォンをフォンブラスターに変形させて赤いレーザーをディライドに連射した。

 

『ちっ…ファイズにはこいつでいくか!変身!』

 

【KAMEN-RIDE…EPSILON!】

 

ファイズに対抗するべくカードをドライバーに装填すると、ディライドの身体に青いフォトンブラッドが纏わり、黒いスーツに緑の複眼にEを横倒しにした青いラインが入った緑の複眼に銀の装甲と、ファイズに酷似した姿の新たなる9つのライダーの一人「仮面ライダーイプシロン」にカメンライドした。

 

『何だ…!?カイザやデルタとは違うライダー…!?』

 

『ま、そういうこったな。』

 

【ATTACK-RIDE…EPSILON-SHOT!】

 

『はあっ!!』

 

『んぐあぁっっ!!』

 

ファイズやカイザ、デルタ等「守護のベルト」、オーガとサイガ等「帝王のベルト」とは違うライダーを見て困惑するファイズを他所に、Dイプシロンはデジタルカメラ型の武器「イプシロンショット」を右手に装着してファイズを殴り飛ばした。

 

「……。」

 

暫く傍観していた闇影は、そんな二人の戦いを無視してオーラに入ろうとする。

 

『なっ!?おい闇影!!その中に入んな!!俺だ、渚だよ!!おいっ!?』

 

「……?」

 

それを見たDイプシロンは闇影の下に駆け寄って彼の身体を掴み、オーラに入るのを阻止した。しかし、闇影はDイプシロンの姿を見ても全く無反応だった。

 

『お前…俺の事まで忘れちまったのかよ…があぁぁっっ!!?』

 

『そいつの夢を邪魔した落とし前、つけてもらうからな…はっ!うらっ!せいっ!!』

 

『がぁっ!!ぎっ!!ぐあぁぁっっ!!』

 

「他人の夢を邪魔した」事から、Dイプシロンの背後にファイズエッジを幾度も斬り付けるファイズ。しかし、Dイプシロンはそれでも闇影から一切離れようとしない。

 

『ぐっ…!!聞け闇影…人は各々何かしら忘れたい記憶(やみ)を持っているし、叶えたい夢や希望(ひかり)も持っている。だが、その闇から逃げて光だけにすがる事が本当に正しいのか!?自分の中の闇と向き合って戦い、光を得る事が「闇を光へ導く」事だろ!?』

 

「……。」

 

『つまんねぇ講釈たれてんじゃねぇよ!!』

 

Dイプシロンは、ファイズからの攻撃を受けながらも必死に闇影に呼び掛ける。「闇を光へ導く」と言う言葉の真意を語りながら…。

 

『ぐぅっ!!はぁ…はぁ…!!闇影…お前が闇の中で得た物は悪い記憶だけなのか?お前はこれまでの旅で沢山の世界を巡り、何を得たんだ?』

 

「…ナ…カマ…?」

 

『そうだ…そして仲間達はお前が戻って来る事を信じている。勿論俺もだ。だから、お前も自分を信じろ!!闇影!!』

 

「(…そ…うだ…俺は忘れていたよ…闇の中で得た仲間が居る事を…コウイチ…ツルギちゃん…黒深子、そして…!!)」

 

『いい加減に…!!ぐあっ!!』

 

突然ファイズは何らかの攻撃を受けて、Dイプシロンから大きく離れた。その攻撃の正体は…

 

「渚も居た事もね…!!」

 

ライトブッカー・ガンモードを背後に構え、完全に自分を取り戻した闇影である。カードは使えなくてもライトブッカーは武器として使用する事が可能であり、それによってDイプシロンをファイズの攻撃から守ったのだ…。

 

『やっと目が覚めたか、闇影。』

 

「ああ。すまない渚、君に迷惑を掛けてしまって…。」

 

『気にすんな。俺もやっとあの時の恩を返せたからな。』

 

闇影はDイプシロンに自分のせいで彼に傷を負わせてしまった事を詫びるが、Dイプシロンも「ネオ電王の世界」で自分の窮地を救ってくれた恩返しが出来た為、然程気にはしなかった。

 

『さっきから気色悪くくっちゃべりやがって…お前等は一体何なんだよ!?』

 

「お節介教師な仮面ライダーと…」

 

『輝く光の戦士だ!!』

 

「『頭に叩き込んどけ!!』」

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…E・E・E・EPSILON!】

 

「『はあぁぁぁぁっっっっ!!!!』」

 

『ぐあぁぁっっ!!』

 

闇影とDイプシロンは、イプシロンショットを装備した右腕に青いフォトンブラッドを集中させたパンチ「グランインパクト」とライトブッカー・ソードモードでの一太刀をファイズに向かって走り出し、同時に繰り出す事で青い「Ε」の文字を浮かばせ爆発させた。が…

 

「ちっ…!!まだ終わってねぇからな!!」

 

『しぶとい奴だな…。』

 

変身が解除したのみであり、巧は舌打ちしながら現実世界へと帰還して行く。それを見計らったDイプシロンは変身を解除した。

 

「ありがとう渚、君のお陰で俺は大切な事を思い出したよ。あらゆる闇に負けず、それに立ち向かい乗り越えて光を手にする…それが『闇を光へ導く』って事をね。」

 

「そうだ。そしてお前は闇の中で得た仲間達と共に、これからも全ての世界を光へ導いて行くんだろ?」

 

「ああ!!」

 

闇影は、改めて自分の使命を思い返した。どんな闇にも負けず、立ち向かい乗り越えて光を手にする事が「闇を光へ導く」事だと。そして渚が左手で闇影の手を握ると…

 

「これは…!?」

 

「今度は俺がお前を救ってやる…。」

 

「渚…本当にありがとう…!!」

 

「しっかり掴まれよ!!」

 

二人の身体が白い光ではなく、金色に輝き出すと、コウイチやツルギの時の様に同じく宙に浮き出す。そして二人が更に輝くと、この空間から姿を消した…。

 

 

 

「や〜っと捕まえたよ♪手間掛けさせんじゃねぇよ…!!」

 

「くっ…!!」

 

一方、二人の黒深子はあれから自分の友人に化けた守護者達から逃走したが、黒深子が途中で足をつまづいてしまい早苗に捕まってしまう。

 

「助けたかったら…」

 

「我々から盗んだ『宝』を返すんだな…。そうすれば二人共命は助けてやる。」

 

そして、黒深子を解放したいのならばあのタッチパネルを返還する様Y黒深子に要求する。

 

「渡しちゃ駄目!!そんな事をしてもこいつ等が約束を守る筈が無いか…きゃっ!!」

 

「何勝手に口動かしてんだよ…死にたいのか?あぁ?」

 

守護者達の要求を呑む事を拒否する様Y黒深子に叫ぶ黒深子。それに感に障った早苗は黒深子を殴った。

 

「…分かったわ…要求は呑むからもう一人の私を解放して!!」

 

「賢明な判断だね…さぁ、早く渡せ。」

 

それを見たY黒深子は彼女等の要求通り、タッチパネルを返還する。要求が叶った事を確認した早苗は、突き放す様に黒深子を解放した。

 

「ふん…!!」

 

「きゃあっ!!」

 

「どうやら、何とか宝はこっちに戻った様だな…。」

 

「仰せの通り、この『カオスタッチ』を無事返還しました。」

 

それと同時に灰色のオーロラから巧が現れ、早苗達がライトオレンジカラーのタッチパネル「カオスタッチ」を取り戻した事を確認し、それを受け取った。その時…

 

「なっ!?」

 

「ふ〜ん、これがこの世界のお宝なのね♪」

 

「中々のお宝じゃねぇか。」

 

「お前等…!!」

 

【555】【STANDING-BY…】

 

「変身!」

 

【COMPLETE!】

 

巡と周が、超スピードで巧の手元からカオスタッチを掠め取った。それが気に食わない巧はファイズに変身した。

 

「悪いけど、一度手にしたお宝を手放す程…」

 

「俺様達は優しくねぇぜ…。」

 

【【KAMEN-RIDE…】】

 

「「変身!!」」

 

【DITHIEF!】

 

【DISTEAL!】

 

巡と周も、一度手にした宝を手放すまいと宣言し、ディシーフとディスティールに変身した。

 

『お前等!!やれ!!』

 

「「「はっ!!!」」」

 

「響鬼…。」

 

「「変身!!」」

 

【HENSHIN!】

 

【TURN-UP!】

 

「黒深子の友人」に化けた守護者達もそれぞれの変身ツールを取り出し、瞳は響鬼、鞘華はブレイド、早苗はカブトへと変身する事で各々本来の姿へを戻った。そしてそのままディシーフとディスティールに襲い掛かる。最初はそれなりに戦えていたが、三対ニとやや此方が不利な為攻撃を受けてしまい、カオスタッチが弾かれ黒深子の前に落ちていった。

 

「初めから…私を騙していたのね…!!私は…一体何を信じれば良いの…!!分からない…分からないよ…先生…!!」

 

目の前のカオスタッチに目もくれず、自分がこの世界で味わった日常や幸福、そして嘗ての友人達が全て偽物であった事を知り、うちひしがる黒深子。自分は一体何を信じれば良いのか分からず声を殺しながら涙を流す…。

 

 

 

―自分を信じられる自分を信じれば良いんだよ、黒深子…。

 

「えっ…!?」

 

黒深子の前に黄金色に輝く光のオーロラが発生し、そこから己の使命を再確認した闇影が現れた。

 

「せっ…先生…!!」

 

―頑張れよ…闇影…!!

 

「渚、ありがとう…。俺はもう…闇を恐れない…これからも光へ導く為に…戦い続ける!!」

 

渚の何処ぞの「星を清める宿命の騎士」の様な励ましの言葉を目を閉じながら聞いた闇影は、彼に感謝しつつ二度と闇に負けず光へ導き続ける事を決意し、黄金色に輝く両目を開眼した。更に…

 

「ぃよっと!!闇影、黒深子ちゃん。やっと会えたな。」

 

「私も居ます…!!」

 

「コウイチ…ツルギちゃん…!!」

 

闇影の両サイドに白い光のオーラが発生し、そこからコウイチとツルギも現れた。これにより今まで散々になっていた仲間が漸く集結した…。

 

『これが最後の警告だ、煌。この世界の幸福を受け入れろよ。さっきみたいな目に遭いたくなければな…!!』

 

ファイズは、この後に及んで闇影にこの世界での幸福を受け入れる様最終通告をした。しかし、今までとは違い半ば脅迫めいた口調だった。

 

「もうお前の言葉には惑わされない…!!お前の言う通り、人は逃げ出したい現実や都合の悪い嫌な記憶、闇から逃げる程弱い…。だけど、それから逃げずに立ち向かって光を手にする強さも持っている…!!そうだろ?皆。」

 

闇影の言葉を聞き、黙って強く頷く三人。人は皆、生きている限り「闇」を持っておりそれから逃れたい弱さを持つが、それに立ち向かい「光」を手にする強さも持っている。闇影達もまた、各々辛い経験を受けてきたが、それ等を乗り越えたが為に今の絆を築く事が出来た…。

 

「夢は叶えて貰う物じゃない…あらゆる困難を乗り越えて自分で叶える物なんだ!!その思いや努力を汚したり、邪魔する権利は誰にもない!!」

 

『お前…一体何なんだよ!?』

 

ファイズの問い掛けに答えようとした瞬間、ライトブッカーから十一枚のカードが闇影の手元に飛び出た。内十枚は、元の色に戻った九枚のシャドウライドカードとディライトのカード、そして最後の一枚は、それらのライダーの紋章が記された「コンプリートカード」である。

 

「さっきも言っただろ…俺は、お節介教師な仮面ライダーだ!!変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

復活したディライトのカードをファイズに見せ付けるかの様に突き出しながら何時もの決め台詞を叫んだ闇影は、ディライトに変身した。

 

『舐めんなよ…おいっ!!』

 

ファイズもまた、カブト達「夢の守護者」とは別のライダー、ゾルダとアンスキルオーディンを呼び出した。ディライトを襲撃するよう命じる。

 

「闇影、こいつ等は俺等に任せな!!変身!」

 

「あのライダー達は私達が食い止めます!!変身!」

 

【HENSHIN!】

 

『行くぜツルギちゃん!!』

 

【SWORD-VENT】

 

『はい!!』

 

コウイチとツルギは、ゾルダとUオーディンの相手をするべくリュウガとサソード・マスクドフォームに変身し、ドラグセイバーとサソードヤイバーを構えて彼等に向かって行く。

 

『お前等!!』

 

『『『はっ!!!』』』

 

カオスタッチが黒深子の前に飛んで行ったのを見たファイズは、それを奪う様カブト達に命令をした。するとカブト達は、攻撃の矛先をディシーフとディスティール達から黒深子に変更した。そしてファイズは指を鳴らし、灰色のオーロラから無数のシアゴーストを呼び出しディシーフ達を襲わせた。

 

『黒深子には指一本触れさせないよ…!!うおぉぉっっ!!』

 

しかしそうはさせじとライトブッカー・ソードモードを片手に響鬼・ブレイド・カブトから黒深子を守ろうとするディライト。しかし、いかに彼と言えども、三体ものライダーを相手に苦戦を強いられてしまう。

 

『くっ…くそっ…!!』

 

『はあっ!!』

 

【BEAT】

 

『ウェイッ!!』

 

『ふっ…!!』

 

『ぐあぁぁっっ!!』

 

響鬼の炎を灯した音撃棒・烈火の打撃、ブレイドがブレイラウザーでラウズしたスペード3「ライオンビート」の打撃、そしてカブトのカブトクナイガン・アックスモードの斬撃を諸に受けてしまい後退するディライト。

 

「先生!!そうだ…これがあった…!!これ、受け取って!!」

 

戦況を見兼ねた黒深子は、目の前のカオスタッチを拾ってディライトに投げ渡した。

 

『これは…!?』

 

カオスタッチを受け取りまじまじと見つめるディライトだが、迷わずそれに先程のコンプリートカードを挿入し、画面に浮かび上がった9つのライダークレストを特定の順番にタッチしていく…。

 

【RIKUGA!ANOTHER-AGITO!RYUGA!ORGA!

CULLIS!KABUKI!DARK-KABUTO!NEGA-DEN-O!

DARK-KIVA!】

 

カオスタッチから警告音が鳴り響くと、すかさずディライトのライダークレストにタッチする。

 

【FINAL-KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

すると、ディライトにある「変化」が起きる。身体の色がライトオレンジから金と白、複眼の色はライトオレンジに変わり、胸には9つのダークライダーのシャドウライドカードのヒストリーオーナメント、頭部には自身のカードが額に貼り付き、最後にディライトドライバーを右にスライドさせて代わりにカオスタッチをバックルに装着する事により、9つのダークライダーの闇の力とディライトの光の力が融合した最終形態「仮面ライダーディライト カオスフォーム」へと変化した…。

 

『さあ…光へ導くぞ!!』

 

『『『うあぁぁぁぁっっっっ!!!!』』』

 

ディライトCFはライトブッカー・ソードモードを構えてカブト達に向かってゆっくり歩き出し、それに対してカブト達はディライトCFに走って襲い掛かる。

 

『ふんっ!はぁっ!せいっ!やぁっ!!』

 

『『『きゃああぁぁっっ!!!!!!』』』

 

しかし、ディライトCFは無駄な動き無く攻撃を回避し、的確に攻撃をしてカブト達を後退させる。戦闘能力が格段に上がったディライトCFの前には、カブト達は手も足も出なかった。

 

『音撃打・火炎連打の型!!せぇぇいっ!!』

 

響鬼は音撃棒・烈火に灯した炎を幾度も飛ばす必殺技、音撃打・火炎連打の型をディライトCFに仕掛ける。すると、ディライトCFはバックルのカオスタッチを取り外し…

 

【KABUKI!CHAOS-RIDE…ARMED!】

 

歌舞鬼と「F」のマークをタッチして再びバックルに装着すると、ディライトCFの胸のヒストリーオーナメントが全て歌舞鬼の最強フォームのシャドウライドに変わり、両サイドに九体の黒い歌舞鬼のシルエットが現れてそれらが彼に集結すると、胸に黄金色の消炭鴉を象った装甲、両方の角に小さな金色の角が生え、全身が翡翠色をした歌舞鬼の最終形態「仮面ライダー装甲歌舞鬼」へカオスライドした。

 

『すぅぅぅ…喝ぁああああつっっ!!!!』

 

『……っっ!!』

 

そしてD装甲歌舞鬼が大きく息を吸い込み大声で喝を飛ばすと強力な衝撃波が生まれ、無数の炎弾を全てかき消した。

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…KA・KA・KA・KABUKI!】

 

『本鬼(き)で斬り裂く!鬼神覚声!翡翠桜(ひすいざくら)!!』

 

『きゃああぁぁぁぁっっっっ!!』

 

D装甲歌舞鬼はFARのカードを装填したドライバーをタッチすると、実体化させた装甲声刃を構え刀身に翡翠色の炎を灯し、響鬼目掛けて一気に降り降ろして斬り裂く必殺技「鬼神覚声・翡翠桜」を放ち爆発させた。上空には翡翠色の桜が美しく散る。それと同時にD装甲歌舞鬼は元のディライトCFへと戻る…。

 

【KICK・THUNDER・MACH】

 

『オォォォ…!!』

 

【LIGHTING-SONIC】

 

『ウェェェェイッ!!』

 

ブレイドはブレイラウザーにスペード5の「ローカストキック」、6の「ディアーサンダー」、そして9の「ジャガーマッハ」の三枚をラウズし、右足に雷の力を宿し高速ダッシュのスピードを上乗せしたライダーキック「ライトニングソニック」をディライトCFに仕掛ける。

 

【CULLIS!CHAOS-RIDE…WILD!】

 

ディライトCFがカオスタッチのカリスと「F」のマークをタッチすると、ヒストリーオーナメントがカリスの最終形態のシャドウライドカードに変わり、両サイドに黒いカリスのシルエットが現れて一体化すると、全身が赤く、胸には緑色のパラドキサアンデッドの紋章が刻まれたハイグレイドシンボル、緑のハートの複眼が特徴の、十三体のアンデッドと融合したカリスの最終形態「ワイルドカリス」にカオスライドした。

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…CU・CU・CU・CULLIS!】

 

『撃ち抜く切札!ワイルドサイクロン!!』

 

『うあぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

Dワイルドカリスは、赤い二振りの鎌「ワイルドスラッシャー」がセットされたカリスアローを弓矢の様に構え、強力な赤い衝撃波「ワイルドサイクロン」を放ち、突撃するブレイドを滅殺した。そして、元のディライトCFへと戻る。

 

 

『はぁっ!えいっ!ふ〜ん、あれがあのお宝の威力なのね…。』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DI・DI・DI・DITHIEF!】

 

『せぇぇいっっ!!』

 

『グアァァッッ!!』

 

ディシーフは、ディライトCFの驚異的な強さを見てそう呟きながらディメンジョンスライサーでシアゴーストの集団を撃滅した。

 

『うらうらうらっ!!さて、嘘の世界には「嘘付き」で行くか…。』

 

【FORM-RIDE…DEN-O!ROD!】

 

ディスティールもドライバーでシアゴーストを撃ち抜きながら、この「有現夢の世界」に因み、カードをスラッシュしてライダーを召喚した…筈だがその姿は全く見えない。ディスティールが辺りを見回すと…

 

『あれ?何で出て来ねぇんだ…?あぁっ!!』

 

『お嬢さん、僕と貴女が此処で会えたのは何かの運命だろう…僕に釣られて見…グボッ!!?』

 

『てめぇ!!何巡ちゃんを軟派してんだよ!?』

 

青い亀の甲羅を模した電仮面に青いオーラアーマーが特徴のライダー「仮面ライダー電王 ロッドフォーム」は、事もあろうにディシーフの手を握り、「釣り」と言う名の軟派をやらかしていた。当然ディスティールにとって気に食わない状況であり、彼に拳骨を見舞った。

 

『痛いなぁ…この嵐波の様に騒がしい状況で漸く見つけた人魚姫を見つけて感傷に浸っていたのに。』

 

『あら、人魚姫だなんて嬉しい事言うじゃないの♪』

 

『それより、気をつけた方が良いよ。』

 

『???』

 

電王RFは頭を擦りながら、「人魚姫」であるディシーフの軟派を邪魔されて少し不貞腐れる。しかし、直ぐ様真剣な声で何らかの忠告をする…。

 

『この世界もだけど、あのボクちゃんからも潮の香りの様に嘘の匂いがぷんぷんするよ…。』

 

『『えっ!?/何っ!?』』

 

この世界は言わずもがな、ボクちゃん…ファイズから「嘘の匂い」がすると二人に告げる。電王RFは、話術に長ける「詐欺師の品格」をも持ち合わせている為、その勘からファイズが怪しいと睨んだ。

 

『まっ、用心するに越した事は無いけどね。とりあえず、あの敵を何とかするよ。』

 

そう言いながらデンガッシャー・ロッドモードを構えて、シアゴーストの群れに特攻する。

 

 

 

【FINAL-VENT】

 

一方ゾルダは、自身のファイナルベントを発動し「マグナギガ」からミサイル等の火器を一斉射撃する必殺技「エンドオブワールド」をリュウガに繰り出そうとするが…

 

『遅せぇんだよ。来い!ブラッカー!!』

 

【FINAL-VENT】

 

『グオォォォォンッ!!』

 

発動には少々時間がかかる為、その隙にリュウガもファイナルベントを発動してドラグブラッカーを召喚し…

 

『はあぁぁっっ!!』

 

『グアァァッッ!!』

 

黒い炎を身体に纏い、ドラゴンライダーキックでゾルダを撃破した。

 

『はいっ!やぁっ!せいっ!!』

 

『くっ…!!』

 

一方サソードMFは、Uオーディンのライトセイバーによる連撃をサソードヤイバーで防御していた。何故直ぐにキャストオフをしないのか、その疑問は次の動作で明らかになる…。

 

『はぁぁぁ…!!』

 

Uオーディンがライトセイバーを持った右腕を大きく振り上げた瞬間…

 

『キャストオフ!!』

 

【CAST-OFF!】

 

『きゃああぁぁっっ!!』

 

【CHANGE-SCORPION!】

 

サソードMFはキャストオフをし、弾き飛ばしたアーマーはUオーディンに直撃した。

敵の攻撃の隙を付き、そのタイミングでキャストオフをし確実にダメージを与える、これがサソードの作戦である…。そして…

 

【RIDER-SLASH!】

 

『ライダースラッシュ…はあぁぁっっ!!』

 

『きゃああぁぁっっ!!』

 

Uオーディンが直撃したアーマーのダメージに怯んでいる隙にライダースラッシュを放ち、遠くまで吹き飛ばした…。

 

 

 

【ONE!TWO!THREE!】

 

一方、最後に残ったカブトはゼクターのスロットルボタンを押して必殺技、ライダーキックの準備をする。

 

【DARK-KABUTO!CHAOS-RIDE…HYPER!】

 

ディライトCFもカオスタッチでダークカブトと「F」のボタンをタッチすると、ヒストリーオーナメントがダークカブトの最終形態のシャドウライドカードに変わり、両サイドのダークカブトのシルエットと一体化すると、姿はカブト・ハイパーフォームと酷似しているが、黒銀色のアーマーに特殊装甲「カブテクター」が装備され、金色の複眼が特徴の、ダークカブトの最終形態「仮面ライダーダークカブト ハイパーフォーム」へとカオスライドした。

 

【RIDER-KICK!】

 

『はっ!!』

 

カブトはゼクターを操作して、タキオン粒子を凝縮した右足でキックするライダーキックを放つが、従来のカウンター型ではなく、ジャンプしてキックする方法でDダークカブトHFを倒そうとするが…

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DA・DA・DA・DARK-KABUTO!】

 

『天駆ける蹴撃!ハイパーキック!!』

 

『くっ…うあぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

DダークカブトHFも、カブテクターを展開して右足にタキオン粒子をチャージして飛び上がってキックする「ハイパーキック」を放ちカブトのライダーキックと激突するが、スペックの差でカブトをあっさり押し返して撃破しつつ着地すると、元のディライトCFへと戻る…。

 

『ヒッ…!?う…うわぁぁっっ!!た…助け…!!』

 

Uオーディンは、ディライトCF達の圧倒的な強さを前に恐怖し、逃げ出した。しかし次の瞬間…

 

『…えっ…!?』

 

『役立たずには用は無ぇよ…!!』

 

突然ファイズがUオーディンの近くに現れ、その身体を真っ二つにして爆発させた。但しその方法は自身の武器ではなく、オーディン本来の武器、ゴルトセイバーを用いた物だった…。

 

『貴様…!!』

 

ディライトCFは今のファイズの行動に怒りを露にする。しかしファイズは悪びれる様子もなく、何故かそのまま変身を解除した。

 

「お前の戦いぶりは十分に見させて貰った…流石は『死神』と呼ばれるだけの強さだな…俺も嬉しいよ。」

 

『乾巧…お前は一体何者なんだ?今使ったのはクロックアップとオーディンのソードベントだろ…?何故使える…?何が目的だ!!』

 

ディライトCFは、先程ファイズがUオーディンを始末する際に、クロックアップとゴルトセイバーを使用したのを見て巧の正体に疑問を抱き、目的や素性を尋ね出す。すると…

 

 

 

「ウクク…まだ僕の正体に気付かないみたいだね…。」

 

『なっ!その口調は!!』

 

巧は今までとは違う口調や不気味に笑い方に変わる。しかし、ディライトCFはその口調や笑い方に聞き覚えがあった。すると巧の姿が揺らめき出し、長い黒髪に黒のスーツの下にはだけたワイシャツを着た緑色の瞳に縁無しの眼鏡をかけた青年へと姿を変えた…。

 

「ウクク…久しぶりディライト、いや煌闇影。七年ぶりだね…。」

 

『貴様は…貴様のその顔と名前だけは死んでも忘れないぞ…!!創士傀斗(つくし かいと)!!』

 

ディライトCFは謎の青年・創士傀斗の姿を見て更に声を荒げる。彼こそが今回の首謀者であり、ディライト(闇影)にとって因縁の相手だった。

 

『貴様のせいでマバユキさんは…!!』

 

「おや?違うだろ。奴が死んだのは僕のせいじゃなくて、君が殺したんだろ?自分の闇を暴走させてね…。」

 

『黙れ!!貴様が発端で起きた事だろ!!』

 

創士はマバユキが死んだのは自分のせいではなく、ディライトが原因だと笑いながら返す。しかしディライトCFにとってはそんな事は関係無い。

 

「先生!!」

 

『闇影!!』

 

『闇影さん!!大丈…夫…!?』

 

そこへ、黒深子・リュウガ・サソードの三人が駆け付けた。しかし、サソードが創士の顔を見ると昔の記憶が脳裏を過った…。

 

『あ…貴方は…!!』

 

 

 

―遂に完成しましたか…!!人間とワームの融合生命体「ネオティブ」が…!!

 

 

 

「どうしたのツルギちゃん?」

 

『あの男は…私をネオティブに改造した研究者なんです…!!』

 

『『「!!!何だって!?/何ですって!?」』』

 

ツルギをネオティブに改造したのは創士だと知り愕然とする三人。その事実を知り更に激昂するディライトCF。

 

『貴様ぁぁっっ!!』

 

「ウクク…何を怒ってるんだい闇影?元はと言えば、この研究は君が発案した物じゃないか。」

 

『何!?どういう事だ!?』

 

「解らないか…まぁ仕方ないね。なら、少しだけ披露してあげるよ。君の研究がどんな物なのかね。」

 

しかし、ネオティブの研究の発案者が闇影だと言う創士。それを証明すると言い出すと、彼に「異変」が起きた…。

 

『なっ!?それは…!!』

 

「これはゴルトフェニックスの力…そして…!!」

 

創士の背中に黄金色の鳳凰の翼が広がり、空中を浮遊する。これは仮面ライダーオーディンの契約モンスター「ゴルトフェニックス」の力を得た物らしい。彼がゴルトセイバーを使用した理由が判明した。しかしこれだけでは無い…。

 

「これがグリラスワームの擬態能力だよ…。」

 

創士の身体がワームの擬態能力の様に揺らめき、巧の姿へと変わった。これは最強のネイティブ「グリラスワーム」の力を得た物であり、この力で巧に擬態しクロックアップも使用出来たのである。そして再び元の姿へと戻る。

 

『何故だ…何故人間の身で怪人の力を使えるんだ!?まさか…!?』

 

「そう。これは昔、君から奪ったカイジンライドのカードの力を僕が取り込んだんだ。これが君が発案した研究、異なる細胞同士の融合させる『セルフュージョン』。そして、僕の様に人間の身で怪人の力を使う者を『混ざり合う悪意(ミクリス)』と呼ぶのさ。」

 

創士が怪人の力を生身で使えた理由、それは闇影が発案したとされる異なる細胞同士を融合させた「セルフュージョン」による物であり、創士はこの方法で嘗て闇影から奪ったカイジンライドのカードの力を取り込んだのだ。それにより力を得た者を「混ざり合う悪意(ミクリス)」と呼ぶ…。

 

『セルフュージョン…ミクリス…!!』

 

「全く、これを思い付く君は凄いよ。でも、君がダークショッカーを裏切るかもしれないと知り、君の記憶を幾つか抜き取らせて貰ったよ。『セルフュージョンの研究』と…『ある目的』の記憶についてね。まぁそのお陰で僕は君の後釜になれたけどね。」

 

『ある目的…?それはどういう事なんだ!?言え!!』

 

「さてね。今日は挨拶に来ただけだからね。」

 

ディライトCFは自身の記憶についてを尋ねるが、創士は挨拶に来ただと言い彼の質問には答えずゴルトフェニックスの力で翼を広げて宙に浮く…。

 

『まっ、待て!!』

 

「僕は創士傀斗!!ダークショッカー幹部兼技術開発責任者さ!!次の世界で会える事を楽しみにしているよ…最高の『シナリオ』が思い付いたらね。ウクク…アッーハッハッハ!!」

 

そして灰色のオーロラを生み出しその中へと入り、消えて行った…。

 

 

 

「本当に…大丈夫なのかい?」

 

「……。」

 

闇影はY黒深子の身を案じる様に心配する。この世界の現実にいる人間は巧…創士達により殆ど抹殺され、生き残りは数える程度しかいない様だ。しかし彼女は、それでもこの世界で生き抜く事を決意していた。

 

「私も、闇に負けずに乗り越えて光を手にします…。何時か必ず…!!」

 

「そうか…頑張れよ、もう一人の黒深子…!!」

 

「…はい!!///」

 

闇影はY黒深子の肩を掴み激励の言葉を贈り、Y黒深子も何故か顔を赤めながら力強く返事を返す…。

 

 

 

「あら、黒深子が二人いる…?」

 

影魅璃は黒深子とY黒深子が握手をしているキャンバスを見て、自分の娘が二人いる事に首を傾げる。

 

「そっか…渚さんに会ったんだ。」

 

「ああ。彼が居なかったら俺はあの世界の幸せとやらに取り込まれる所だったよ…。(渚…本当にありがとう。俺は戦うよ、全ての闇を光へ導くまでね…。)」

 

闇影は、心の中で自分の窮地を救ってくれた親友に感謝した。そしてカオスタッチを握りしめてより一層戦う決意を固めた。

 

「しかしよぉ…前行った『ボウケンジャーの世界』と言い、今回の世界と言い、色んな世界があるもんだなぁ…。」

 

「世界はまだまだ沢山ある…と言う事ですね。」

 

「その通りだ。世界は無限にある、だからその世界の闇を俺達は光へ導いていく…!!」

 

「「「ええ!/おう!/はい…!!」」」

 

世界は無限にある…つまりその世界の数だけ「闇」も存在する…。闇影達はこれからもそれらの平行世界(パラレルワールド)を「光」へ導く事を改めて決意する…。その時…

 

「絵が変わったわ…えっ!?この世界って…!?」

 

次の世界を表す絵がキャンバスに浮かび出す…それは、ディシーフの指名手配書が無数に散らばり、中央には金色の十字架を模した仮面をした白い戦士が剣を構えた絵だった…。これを見た闇影は…

 

「巡…?」

 




早い話、ディケイドの真逆でございます。

次回はカオスフォームの紹介です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ディライトカオスフォーム&ダークライダー達の最終フォーム紹介

登場する度に更新します。

ワイルドカリスは公式の為除外してます。

1/23にてオーガの最終形態を変更しました。  

23/4/9にてアナザーアギト、ネガ電王の最終形態追加。コンプリートしました。


仮面ライダーディライト カオスフォーム

ディライトが特殊アイテム「カオスタッチ」使用する事で変身する、彼の真の姿でもある最終フォーム。ディライトの「光」の力とダークライダー達の「闇」の力が融合したライダーである為、別名「混沌纏いし死神」。

特徴はディケイド・コンプリートフォームと酷似しているが、体色は金と白であり、複眼はライトオレンジ。胸部には左から歌舞鬼・ダークカブト・ネガ電王・ダークキバ・リクガ・アナザーアギト・リュウガ・オーガ・カリスのシャドウライドカードが貼り付いており、9つ全てのダークライダーの力を使う事が出来、戦闘能力も格段に上がっている。最大の特徴は、自身をダークライダー達の最終フォームの影の姿に変える「カオスライド」を使用する事である。

 

例:リュウガのボタンと「F」のボタンを押す。

 

【RYUGA!CHAOS-RIDE…SURVIVE!】

 

すると、胸のオーナメントカードが全てリュウガサバイブのFSRカードとなり、ディライトCFの周囲に9体のリュウガの黒いシルエットが現れ、彼と一体化しリュウガサバイブの姿に変わる。

 

更に、そのライダーの武器も具現化させる事も可能。その際カードは不要だが、特殊能力にはカードが必要である。但し、FARを発動後は強制的に元の姿に戻ってしまう。また、シャドウライドも使用出来るが通常のそれとは違いそのライダーをFFRさせる事が可能。必殺技は通常のディライトと同じだが名前の上に「カオス」と付く。

 

 

 

カオスタッチ

カオスフォームに変身する為のタッチパネル型のツール。手順は、ケータッチと同じで9つのダークライダークレストが入ったカードを装填し、リクガ・アナザーアギト・リュウガ・オーガ・カリス・歌舞鬼・ダークカブト・ネガ電王・ダークキバのマークを順に押して最後にディライトのマークを押す事で変身。外見や機能はケータッチのそれだが、色はライトオレンジと黄色。また通常の携帯電話として使用も可能。

 

 

 

ダークライダー達の最終フォーム

 

 

仮面ライダーリクガ フォビドゥンフォーム

リクガの最終形態。五本の稲妻の形を黒い角に、複眼の色はダークレッドの複眼に、アルティメットクウガに似た黒いラインが入った金色のアーマーが特徴。チダムの色は金。別名「正しき禁断の闇」。

アルティメットクウガ同様、超自然発火能力を使用出来るが炎の色は金色。戦闘能力はライジングアルティメットと同等である。

必殺技は超自然発火能力により金色の炎を纏ったライダーパンチ「フォビドゥンナックル」、同じくライダーキックの「フォビドゥンレッグ」。

 

 

仮面ライダーアナザーアギト ダークネスフォーム

アナザーアギトの最終形態。外見はアギトグランドフォームに酷似しているが、スーツはモスグリーン、金色のV字型のクロスホーンに赤色の丸い複眼、黒い装甲と首に巻いたライトオレンジのマフラー、腰のアンクポイントの中枢にある賢者の石の色はライトオレンジが特徴。

変身者の精神が安定し、真に戦うべき物、守るべき物を見出す事が進化条件である。

基本形態よりスペックが低くなり戦闘スタイルも徒手空拳のままだが、固有能力「闇魂昇醒」の能力を持つ。

必殺技は、口元のクラッシャーを剥き出しにし、クロスホーンから金色の光を伸ばす様に光らせ、足元に黒いアギトの紋章を浮かばせ、そのエネルギーを纏った跳び蹴り「ダークネスアサルトキック」。

 

闇魂昇醒(ダーク·アップ)

ダークネスフォームの固有能力。身体の一部にアギトの力を集中させる事で一時的に強化するが、デメリットとして別の部分が低下する。

 

(パワー):攻撃力が上昇するが、スピードが低下する。

 

(ガード):防御力が上昇するが、攻撃力が低下する。

 

(スピード):スピードが上昇するが、防御力が低下する。

 

 

仮面ライダーリュウガサバイブ

リュウガの最終形態。外見は黒龍の顔を象ったアーマーを纏い、あらゆる部所に金色の装飾品が付いているのが特徴。簡単に言えば黒い龍騎サバイブのアーマーが龍の顔に象った様な物。

変身方法は「SURVIVE 黒炎(こくえん)」のカードを黒い龍の顔を象った拳銃型バイザー「ブラックドラグバイザーツヴァイ」にセットする事で変身。

必殺技は、バイク状に変形した黒いドラグランザー「ブラックドラグランザー」に乗り込み、黒い炎を纏って突撃する「ドラゴンファイヤーストーム」。

 

 

仮面ライダーオーガ セイバーフォーム

オーガの最終形態。外見はアーマーが金色でフォトンストリームが黒色と、オーガのアーマーとフォトンストリームを入れ替えたカラーリングで複眼と胸のコアはライトオレンジで手の甲両方と両肩にはオーガストランザーを模したバルカン砲「ゴルド・ランチャー」が装備されている。フォトンブラッドは金。

ファイズブラスターに酷似した特殊武器「オーガセイバー」により変身。

ファイズ・ブラスターフォーム以上に強力なフォトンブラッドを放出しており、その威力は上級オルフェノクを一瞬で灰化させる程。

必殺技は、オーガセイバーでエクシードチャージし、強力な斬撃や斬撃波を放つ「セイバーブレイド」、オーガセイバーで相手を貫くようにして、フォトンブラッドのエネルギー弾を放つ「セイバーブラスト」。そして、オーガストランザーとの二刀流で刀身にフォトンブラッドを纏った斬撃()「デュアル・オーガストラッシュ」。

 

オーガセイバー

外見はファイズブラスターと酷似しているが、色は赤い部分が金で銀の部分が黒のトランスボックス型トランスジェネレーター。ブレイドモードにしかファイズブラスター同様、オーガギアをセットすると【AWAKENING】の音声が鳴り【000】のコードを入力する事により変身。

 

ブレイドモード

【103 ENTER】とコード入力し【BLADE-MODE】の音声と共に変形。その斬り具合は強固な物質でも薄い紙を切るかの様に鋭い。刃の型をしたフォトンブラッドを「撃つ」かの様に飛ばす事も可能。

【0032 ENTER】とコード入力する事でセイバーブレイド、またはセイバーブラストが発動。

 

 

仮面ライダー装甲(アームド)歌舞鬼

歌舞鬼の最終形態。外見は全身が翡翠色で、胸に金色の消炭鴉を象った装甲を纏い、両方の角に付いた小さな金色の角が特徴。

変身方法は音撃増幅剣「装甲声刃」を構え、「歌舞鬼、装甲!」の掛け声により変身。肉声が清めの音と同じ波長となり、大声で叫ぶだけで並の魔化魍を倒す事が可能。

必殺技は装甲声刃に翡翠色の炎を纏い、振り上げると無数の緑色の桜の花弁と共に敵を斬り裂く「鬼神覚声・翡翠桜(ひすいざくら)」。

 

 

仮面ライダーダークカブト ハイパーフォーム

ダークカブトの最終形態。外見はカブト・ハイパーフォームと酷似しているが、カブトで青い部分が全て黄色であり、黒い部分もやや銀色がかっている。

変身方法は銀色のカブト虫型の特殊コア「ハイパーゼクター」をライダーベルトの左部分にセットし、ゼクターホーンを倒す。

無論過去と未来を行き来する程の速度を持つ「ハイパークロックアップ」、全てのゼクターの力を集結させる特殊武器「パーフェクトゼクター」も使用可能。

必殺技はハイパーゼクターのゼクターホーンを倒しそのエネルギーをゼクターに送りチャージしたライダーキック「ハイパーキック」、パーフェクトゼクター・ソードモードを使用した「マキシマムハイパータイフーン」、ガンモードを使用した「マキシマムハイパーサイクロン」。

 

 

仮面ライダーネガ電王 エクスプレスフォーム

ネガ電王の最終形態。外見は電王・ライナーフォームに酷似しているが、全体の色は紫で、胸部の黄色の部分は青、白と黒の部分は逆、両サイドに上から茶・灰・紺色の突起物がある右側にネガフォームと同じ禍々しい炎の模様がある紫の複眼が特徴。

とある理由でイマジン達に憑依出来ず、力も発揮出来ないでいた変身者にとある理由で入手したデンカメンソードが、強敵との戦いの最中でネガカメンブレードに変化し、ライダーパスをセットしてこの形態に変身した。

必殺技は、虚空から現れた紫色のレールに滑走、ネガライナーのオーラを纏いながら敵を斬り裂く「ハイスピードクラッシュ」。

 

ネガカメンブレード

とある理由でトキナが管理していたデンカメンソードにネガタロス・ペルシア・カプラ・ツバキが憑依した事により変化した武器。外見は紫色を基調しており、鍔の部分であるネガ電王4つのフォームの電仮面が特徴。無論デンカメンソード同様、柄であるデルタレバーを引いて刀身側に向けた電仮面に対応するフォームの力を得る。

 

 

仮面ライダーダークキバ デモンズウイング

ダークキバの最終形態。外見は鎧の色がダークパープル、複眼と鎧の魔皇石の色はダークレッドとなり、マントも同色の悪魔の翼に変わり、頭部の蝙蝠の羽の部分もダークグリーンカラーの悪魔を模したの角となり、胸部の蝙蝠を模した部分も更に翼を広げた状態となる。

変身方法は、左腕にスロット型モンスター「デビロット」が装着される事によりダークキバの闇の潜在能力が暗黒覚醒(イーヴィルウェイクアップ)する。

飛行能力が付加され、戦闘能力や魔皇力も数十倍に跳ね上がり、エネルギー系の攻撃は全て自身のライフエナジーに変換、吸収する事が可能だがその反面、通常以上の魔皇力を消耗する為、選ばれたファンガイアでも長時間使用すれば死に至る危険性も持つ。

必殺技は、自身のライフエナジーを右足に集中させ、周囲を夜に変換させ翼を広げて跳び蹴りをし、対象に赤いキバの紋章を刻みそこからライフエナジーを吸収する「イーヴィルエクスプロイトクラッシュ」。

 

デビロット

太古に滅びた筈の「人の中に眠る闇の潜在能力を引き出す」能力を持つ魔種族「デモン族」最後の生き残りでデモンズウイングになる為のキーモンスター。外見は体色がダークパープルの小悪魔の様な姿をしており、その身体の中心にはタツロット同様インペリアルスロットがあり、頭部のデビルホーンを引く事で回転する。

性格はキバット二世同様厳格で真面目なだが、その状態でボケをやらかす面がある。




次回はディシーフ編です。

少しエロ描写ありです。(笑)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第25導 ディシーフは御尋ね者?縛られた正義

少しだけエロ表現があります。(笑)

そして、またも原典キャラが…


「これって巡さんの世界…だよね?」

 

「はい…ですが、どうして指名手配されているのでしょう…?」

 

キャンバスに描かれたディシーフの指名手配書の絵を見て、何故巡が指名手配されているのかを考える黒深子とツルギ。

 

「あいつが今までやってきた事を考えたら別に不思議じゃないさ。いや、もしかしたら余罪もあるかも…強盗や窃盗の他に殺人、恐喝、暴行、逆痴漢、強姦、未成年略取、監禁…とかね。」

 

「お前、相変わらず巡さんや戴問さんにはきついのな。」

 

しかし闇影は、今まで彼女がしてきた事を思返せば指名手配されてもおかしくないのだと然程気にはせず、冗談混じりに有りもしない余罪を推測する。

 

「もう!真面目に考えてよ先生!!」

 

「あ〜ごめんごめん、冗談だよ。ただ、あいつが何をしてこの世界で指名手配されるのか気にはなるな…。」

 

その冗談を黒深子に叱責されて軽く詫びる闇影は、巡が何故この世界で指名手配されたのかを真剣な顔付きで考え出す…。

 

 

 

「ふぅ…七年ぶりになるかな♪私の世界。」

 

同時刻、巡もこの世界に到着…いや七年ぶりに帰還した。しかし、何故か何時も居る筈の周の姿が見当たらなかった。その理由は…

 

「周には無理言って、今回は私用で戻って来ただけなんだけどね。」

 

今回この世界に戻って来たのは何時もの宝探しでも、単なる里帰りでも無く「私用」で戻って来たのだった。その為、周には先に次の世界に行く様に言い現在に至る…。

 

「さてと…このまま目的実行したいけれどその前に…!!」

 

「彩盗巡…世界の敵めぇ…!!」

 

すると、巡の背後に鉄パイプや金属バット等殺傷力のある道具を構えた十数人の人々が殺意の籠もった目付きで彼女に迫る…。

 

「この人達を何とかしないと…ね♪」

 

それを見た巡は、右脚に巻き付けたホルダーからディシーフドライバーを取り出して、刃の部分を舌でペロリと舐めながら人々に向かって行く…。

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!数多の平行世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

 

「先ずは情報収「こんにちは。」こんにちは…情報収集する事だけど…」

 

闇影達はこの世界についての情報収集の為に街を歩き回っている。しかし彼は何故か表情を暗くしている…

 

「何で俺だけこんな格好をしてるんだああああぁぁぁぁっっっっ!!!!///」

 

「「「ぷっ…くくっ…!!」」」

 

自分の格好に嘆き絶叫する闇影。それもその筈、家を出た瞬間に彼の服装が、警帽に紺色のサスペンダー服を着た虹色の鼠のマスコットの姿となっているからだ。その姿を見た黒深子達は歩きながら笑いを堪えている。

 

「…それ確か、警察のイメージマスコットの『ニジマスくん』だったよな…くく…!!」

 

「え、ええ…そうだったわ…ね…ふふ…!!」

 

「そんなに笑わなくて良いだろっ!?けど、これで俺達の行く場所が警察なのが分かった。あそこなら指名手配犯の情報があるからな。」

 

今回の闇影の役割「警察のイメージマスコット」である「ニジマスくん」とは、正義の赤、希望の橙、勇気の黄、安全の緑、平和の青、愛の藍、友情の紫を意味した七つの色をした愛らしい「鼠のお巡りさん」である。その格好を見て笑いながら説明する黒深子とコウイチに憤慨する闇影だが、皮肉にもこれが切欠で彼等の行き先が警察関連の場所に確定した。警察署や交番ならば指名手配犯の情報を自分達以上に把握している筈…。

 

「でも問題は「こんにちは。」こんにちは。問題は私達一般人に情報をくれるかどうかよね…。」

 

「とりあえずは行って「こんにちは。」あっ、はいこんにちは。…行って見るのが一番だと私は思います…。」

 

「そういう事。」

 

「…なぁ、さっきから気になってんだけどよ…何で行く人行く人が挨拶してくるんだ?」

 

「良い事じゃないか。寧ろそれが当たり前にならない方がおかしいだろ。」

 

コウイチの言う様に、先程から通り過ぎる人々がすれ違い様に挨拶をしてきているのだ。しかし闇影は、他人と挨拶するのは当然だと思っている為全く不審がらないでいる。

 

「お嬢ちゃん達、煎餅でも食わんか?ほれ。お茶も持ってけ!」

 

「あ、ありがとうございます…。だけど…何か変なのよね…。」

 

「はい…。」

 

とは言え、何処か不気味な雰囲気を漂っており不安になる黒深子とツルギ。中には菓子やお茶等を差し出す者も。その時…

 

「退いて下さーーいっっ!!」

 

「「「「!!!!」」」」

 

反対側から自転車に乗った少年が猛スピードで自分達の方へ向かって来る。そして…

 

「「「「うわぁっ!!?/きゃあぁっ!!?」」」」

 

突っ込む勢いで向かって来た為慌てて両側に避ける闇影達。一歩間違えば大怪我になっていたのかもしれない…。

 

「おいコラッ!!危ねぇだろっ!?」

 

「ごめんなさい!!急がないと塾に遅れてしまいそうだから!!あの!今のは通報しないで下さい!!」

 

「通報?」

 

コウイチの怒号に少年は去り際に何度も平謝りする。自転車を飛ばしていた理由は「塾に遅れそうだった」為である。しかし、その後の彼の怯えた様に「通報はしないで欲しい」と懇願する言動に、闇影は首を傾げる。その時…

 

「うっ…うわああぁぁっっ!!」

 

「「「「!!!!?」」」」

 

『貴様…決められた速度以上のスピードで自転車に乗ったな?』

 

「ごっごめんなさい!!ホントに急いでたので…あの…!!」

 

『言い訳無用!!定められた法律を守れない貴様は…悪だ!!』

 

『『法律違反は悪だ!!悪は許されない!!』』

 

「たっ助けてぇぇっっ!!」

 

少年の目の前に黒い鼠とカラスの嘴を複合した様な姿をしたステンドグラスの怪人「ラットファンガイア」が二体現れ、「自転車のスピード違反」と言う、良い事ではないのだが「悪」と言う程では無い罪により彼を捕獲しようと襲い掛かる。

 

「先生!!あれってオトヤさん達がいた世界の…!!」

 

「ああ、ファンガイアだ。でも、あの世界にしかいない筈のファンガイアがどうして…!?」

 

ラットFを目撃した闇影は、本来ならばオトヤ/仮面ライダーダークキバのいる「ダークキバの世界」等キバ系統の世界にしか存在しない筈のファンガイアが何故この世界にいるのか疑問を抱く。

 

「考えるのは後だ!!今はあの子を助けないと!!」

 

しかし今は考えている暇は無い、このままでは目の前の少年が危険な目に遭ってしまう…そう思い直ぐ様現場に駆け付けようとする闇影。だが…

 

『『グワァッ!?』』

 

「え…!?」

 

突然ラットFに謎の銃撃が襲う。闇影達が銃撃が放たれた方向に目を向けると、オールバック状にした黒髪のポニーテールをした黒いジャケットに同じ色をしたホットパンツの女性と逆立った短い黒髪に黒い服と同じ色をしたブーツの男性が銃を構えていた。

 

「早く逃げて!!」

 

「はっ、はい!!」

 

『貴様等…!!』

 

「せやせや。お前等の相手は俺等や!!早よ来いや!!」

 

女性の指示を聞いた少年はそのまま急いで逃げ去っていき、それに憤慨するラットFは二人の男女を睨み付ける。そして関西弁で話す男性はラットF達に自分達の方へ注意を引き付けるかの様に中指を立てて挑発する。

 

「さてと、こいつ等を片付けるわよ襟立君!!」

 

「おう!!」

 

ラットFを片付けると宣言する女性と襟立と呼ばれた男性は何処からか機械型のベルトを腰に巻き付けて装着し懐から黒いナックル型の機械を取り出し…

 

「「変身!!」」

 

【【FI・S・T・O・N】】

 

それをベルトにセットすると、二人の姿は女性は頭部が赤色の十字架、襟立は緑色の十字架を模したバイザーをした全体が白いアーマーが特徴の「仮面ライダーイクサ セーブモード」に酷似したライダー「イクサトルーパー」へて変身を遂げた。

 

「あれはイクサ…!?でも、微妙に違う…?」

 

『行くわよ!!/行くで!!はあぁぁ…!!』

 

『ギャッ!!ギッ!!グャアッ!!』

 

『ガッ!!グッ!!ベェアッ!!』

 

女性が変身したイクサトルーパー・レッドクロスは専用武器「トルーパーカリバー・ソードモード」でラットFを素早く斬り付け、襟立のイクサトルーパー・グリーンクロスは先程のナックル型の機械「トルーパーナックル」でパンチを繰り出してはキックをするという格闘スタイルでラットF達を徐々に後退させる。

 

『はい。後は止めね♪』

 

『終いや!!』

 

【【R・I・SE・U・P】】

 

『『はあぁぁ…はぁっっ!!』』

 

『『ギィヤアアァァッッ!!』』

 

イクサトルーパーRCが金色の笛「カリバーフエッスル」を、イクサトルーパーGCが銀色の笛「ナックルフエッスル」をベルトに読み込ませると、RCは刀身に赤い光を纏ったトルーパーカリバーで斬り裂く「トルーパージャッジメント」を、GCはトルーパーナックルに緑色のエネルギーを籠めた強力パンチ「トルーパーブロウクン」を放つと、二体のラットFは全身に罅が入りガラスの様に砕け散った。

 

『どうにか片付いた…って、貴方達まだいたの!?逃げなさいって言った筈でしょ!?』

 

「君達は一体…!?」

 

『『『『ヘェヤァァッッ…!!!!』』』』

 

『恵の姉ちゃん!!今度は四体来よったで!?』

 

恵と呼ばれたイクサトルーパーRCは、未だにこの場に留まっている闇影達を目にして再度逃げる様怒号を飛ばす。しかしその時、別個体のラットFが今度は四体現れた。

 

『やはり貴様等か!!我が同胞を殺した平和を脅かす愚かな無法者共…!!』

 

『こんな堅っ苦しいルール作って何が平和よ!!』

 

『黙れ!!「絶対正義」の名の下に貴様等を粛正する!!』

 

「絶対正義」の題目に「無法者」であるイクサトルーパー達を始末するべく、ラットF達は彼等に襲い掛かろうとした。四対二と、数の上ではこちらが勝っている為始末するのは容易い、そう確信していた。しかし、その考えには一つ誤算があった…。

 

「悪いけど、多勢に無勢な戦いを見逃す程俺は甘くない。変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

『ふっ!!』

 

『ギャアッ!?』

 

目の前の危機を見逃せない闇影はディライトに変身すると同時に、ライトブッカー・ガンモードの銃撃をラットF達に放った。

 

『貴方…何者…!?』

 

『お節介教師な仮面ライダーです、宜しく。』

 

『貴様も仲間か!?ならば死ぬがいい!!』

 

イクサトルーパーRCは突然現れた自分達とは違うライダーの存在を知り彼に何者かと尋ねた。その質問にディライトは、何時もの台詞で自己紹介する。一方ラットF達は、自分達にとっての誤算(ディライト)の存在を見てイクサトルーパー達の仲間だと推測し、始末する為彼に一斉に襲い掛かる。

 

『ファンガイアにはこれでいくか。絶滅タイムだ…何てね♪』

 

【SHADOW-RIDE…DARK-KIVA!】

 

ディライトはキバットバット二世の決め台詞を言いながら、ラットFの相手に相応しいライダーとして自身の影をダークキバにシャドウライドさせる。

 

『何!?影がキバに!?』

 

『あれ…「渡」の金ぴかのキバに似とる!?』

 

【ATTACK-RIDE…BASSHAA-MAGNUM!】

 

シャドウライドの能力に唖然とする一体のラットFとイクサトルーパーGCを余所に、ディライトはドライバーにカードを装填し、Sダークキバに緑色の海魔を模した銃「魔海銃バッシャーマグナム」を実体化、装備させた。

 

『これだけ未だ使ってないから使わないと可哀想だからね。ふっ!はっ!やあっ!!』

 

『『『『グガアアァァッッ!!!!』』』』

 

意外にどうでもいい理由でバッシャーマグナムを選んだディライトだが、Sダークキバと共にライトブッカーで素早く水の銃弾「アクアバレット」を連射してラットF達を迎撃する。

 

『さて…止めといくか!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DA・DA・DA・DARK-KIVA!】

 

『バッシャーバイト…ってね♪これで終わりだぁぁっっ!!』

 

『『『『グギャアアアアァァァァッッッッ!!!!』』』』

 

ディライトが止めとしてFARのカードを発動すると、彼等とラットF達の周囲のみ全体が薄暗い水の空間「アクアフィールド」と化し、その水を全て巻き上げて作り出した巨大な水流弾を放つ「バッシャー・アクアトルネード」をSダークキバと共に射出するとラットF達は全身に罅が入り砕け散った…。

 

『ふぅ…それにしても、今のファンガイアは何だったんだろう…?』

 

『貴方こそ何者なの!?突然変身したと思ったら、影をキバに変えちゃうなんて…!!』

 

戦闘を終えたディライトは、ラットFが何故先程の少年を襲おうとしたのかを疑問に思っている時、イクサトルーパーRCが彼の素性を声を荒げて尋ね出す。

 

『俺は…!!』

 

「ライダーめぇ…!!」

 

「法を犯す無法者共めぇ…!!」

 

ディライトが自分の素性を明かそうとした時、十数人の人々が殺意の籠った表情で道具等を持って突然現れ、彼とイクサトルーパー達にじりじりと近付き出す…。

 

『ちっ…やりづらいなぁ…!!』

 

「な…何…!?さっきまで優しかった人達が急に…!!」

 

「あんた等大丈夫か!?あのライダー達に何もされて無いか!?」

 

「わ…私達別に何もされてないですよ?それにあのオレンジのライダーは私達の…!!」

 

道具を持った連中の中の一人の男性が黒深子達の身を案じる言葉を掛ける。黒深子は、先程まで親切だった人々の豹変ぶりに戸惑いつつディライトは自分達の仲間だと告げようとした時…

 

『ちっ…折角上玉が二人も見つかったのに…!!ここは退くぞお前等。』

 

『『はあっ!!?』』

 

「えっ…!?」

 

突然ディライトがまるで悪人になったかの様な台詞を言ったり、イクサトルーパー達のリーダーを気取り出した為、イクサトルーパー達はすっとんきょうな声で呆れ驚き、黒深子も目を見開いて驚く。

 

「やっぱりかぁ…!!ライダーは平和を乱す無法者だ!!」

 

「三人共捕まえるぞ!!」

 

『おっ、おいあんた!!一体何のつも…!!』

 

『分かったわリーダー。襟立君、退くわよ!!』

 

『は!?ええっ!?何のこっちゃ!?』

 

「逃がすな!!追えぇぇっっ!!」

 

イクサトルーパーGCはディライトの突然の行動を問い質そうとしたが、イクサトルーパーRCはその言葉の真意を汲み取ったのか、ディライトを「リーダー」と呼びGに退く様促しその場から立ち去って行き、人々はそれを逃がすまいと彼等を追って行く…。

 

「あいつ、一体どういうつもりだ…?急にさっきの人達の仲間だと言い出して…。」

 

「私もよく分かりません…。」

 

「もしかしたら先生、私達を守る為にあんな事を言ったのかも…。」

 

「「え?」」

 

「考えて見て。もしさっき私が先生の仲間だって言ってたらどうなってたのかを。」

 

「「あ…!!」」

 

黒深子は先程のディライトの不可解な行動を推測した。もし彼女が彼の仲間だと言ってしまえば、自分達まで「無法者」の仲間だと見なされてしまう…。それを瞬時に察したディライトは、イクサトルーパー達の仲間だと名乗り、黒深子達からその矛先を自分に向ける為にあの様な行動を取ったのだと…。

 

「ん?先生からメールが来たわ…!!」

 

「何て送って来たんだ?」

 

「『後で合流しよう』だって。」

 

「なら、取り敢えず安心ですね…。」

 

その時、黒深子の携帯に闇影からメールが届いた。「後で合流しよう」と言う内容を見て彼の無事を確認して一安心する三人。

 

「(先生…気を付けて戻って来て…!!)」

 

 

―神社境内

 

 

「成程な、あの嬢ちゃん達から守る為に俺等の仲間のふりをしたんか…。」

 

「うん…彼女達にまで危ない目に遭わせられないからね。」

 

「それより!あんた一体何者!?そのライダーシステムは何なの!?」

 

黒髪の青年・襟立健吾は先程の闇影の行動の真意を漸く理解するが、ポニーテールの女性・麻生恵は改めて彼の素性を矢継ぎ早に問い詰める。

 

「先程も言ったでしょ?お節介教師な仮面r…「余計な事しないで!!」」

 

再び何時もの台詞で自己紹介をしようとする闇影だが、「余計なお節介」だと怒号を飛ばし中断させる恵。

 

「所で、あのファンガイア達の目的は何ですか?さっきの子が自転車のスピード違反をしたのを理由に襲おうとしてましたけど…。」

 

「それは…!!」

 

「いたぞ!!無法者共!!」

 

「誘拐犯共め…!!」

 

「ヤバいで!!追い付かれてしもうた!!」

 

「あ〜もう!!あんたのせいで変な余罪まで付けられたじゃない!!」

 

恵が闇影の質問に答えようとした時、先程の人々がここまで追い付いて来た。恵は、黒深子達を危険から遠ざける為に言った嘘のせいで自分達に余計な罪を増やした闇影に憤慨しながら、健吾と共にこの場から立ち去っていく。

 

「一体全体どういう事なんだ…!?」

 

彼等から具体的な話を聞けないまま、闇影も急いでこの場から立ち去る。それを追い掛けて行く人々も居なくなりガランとした神社の境内の中央に灰色のオーロラが発生し、その中から紅蓮が現れ…

 

「ディライト…貴様はこの世界の『正義』により断罪される運命にある…!!」

 

そう言うと再びオーロラの中へと入り消えていった…。

 

 

 

―白石家

 

 

「ただいま。」

 

「先生!!大丈夫だった!?」

 

「ああ。あの着ぐるみを脱いで帰って来たから取り敢えず狙われる事は無いよ。」

 

「良かった…。」

 

あれから合流場所はここだと連絡があり先に戻った黒深子達は、着ぐるみを脱いだ闇影が無事に帰って来たのを見て安心した。

 

「で、結局あの人達は何者だったんだ?」

 

「それを聞こうとしたらさっきの人達が追い掛けて来て聞けず終いになったよ…。」

 

「やはり警察関係の人に合って話を聞くしかありませんね…。」

 

「そうだね、行こう。」

 

ツルギの言葉通り、闇影達は当初の目的の場所・警察関連の場所へ赴く事にした。

 

 

 

「ふぅ…生身で戦った後の水浴びは最高よね〜♪」

 

同時刻、巡は先程の人々との戦闘を終えて汗をかき、川原に入ってゆったりとしていた。尤も、戦闘と言ってもドライバーの柄で殴って気絶させただけだが。

 

「彩盗巡…無法者には罰を…!!」

 

「あらら…囲まちゃったわね♪」

 

そこへ殺意の籠った表情をした人々が川原を取り囲み、巡がそこから出るのを防いだ。衣服は全て川の外、しかしそこは人々が居て取りに行けない。更に一人の男は川原に入って彼女に近付き出す。通常の女性なら自身の裸体を人前に晒す様な真似は気恥ずかしくて出来はしないが…

 

「しょうがないわね…超特別大サービスよ!!ふっ!!」

 

「何…!!ブゴゴゴ…!!///」

 

何と巡は、自らその男に近付きドライバーを片手に柄で殴って気絶させ川に沈めた。何故丸腰の身で武器を持っていたのか…その答えは彼女が川原から上がる事で判明した。

 

「生憎、普段は右足のホルダーにドライバーをしまっているのよ♪因みにカードホルダーは左にね♪」

 

よく見ると、巡の両足には黒い帯が付いたホルダーが巻かれていた。彼女は通常、ディシーフドライバーとカードホルダーは肌身離さず持つ為にこの様な処置を取っていたのだ。と、ウインクしながら答える。

 

「かっ…構うもんか!!///全員で襲い掛かれぇぇっっ!!」

 

『うおおおおぉぉぉぉっっっっ!!!!』

 

「あら、随分正直な行動よね♪で・も…」

 

全裸になった女性が相手でもお構い無しに再び襲い掛かる人々。それに対して妖艶な笑みを浮かべて笑う巡は…

 

「うぶっ!!」

 

「そう簡単にヤラれる程私は甘くないわよ!!」

 

襲って来た男にその豊満な胸を揺らしながら長い右足で顔面に蹴りを叩き込む。その後も足を大きく開いた蹴りや、胸が当たるのを承知で抱き締める形でプロレス技を掛けたりと、今自分が全裸である事をまるで自覚していないかの様な攻撃を繰り出す…。

 

 

 

「あ〜あ、こんなに汚しちゃって…どっかから服を調達しないとね。」

 

彼等を全て気絶させた巡は、今の騒動で汚れてしまった衣服を拾って愚痴を溢しながら、代わりの衣服を調達するべくこの場から立ち去った…。

 

 

 

―交番

 

 

「すいません。ちょっとお尋ねしたいんですが…」

 

『ヘヤァァ…何の用だ…!?』

 

「「「「!!!!?」」」」

 

「な、何で交番にファンガイアが居るんだ!?」

 

一方、交番に訪れた闇影達一行。しかし、中には誰も居ない為奥にいるかもしれないと、声を掛ける闇影。すると、奥から警察帽を被ったラットFが現れた為一行は大きく驚く。

 

「(いや…見た目だけで判断しちゃ駄目だ…。)じ、実はあの…指名手配犯の彩盗巡についてお尋ねしたい事があるんですけど…。」

 

予想外の存在に驚きつつも、闇影はラットFに巡の情報について尋ねる。すると…

 

『何!?彩盗巡だとっ!?こうしては居られん!!直ぐに「あの方」に連絡だ!!』

 

「え、え…?何事…?」

 

巡の名前を聞いた瞬間、ラットFは急に慌て出し机にある電話で「あの方」なる人物に連絡し出した。突然の慌てぶりにただ困惑する闇影達。そして…

 

 

 

「凄っごいな〜…!!」

 

「うん…何せリムジンで送迎してくるくらいだからね…。」

 

「如何にもって感じのとこだな…。」

 

「ええ…。」

 

十数分後、彼等は今「あの方」なる人物が住んでいる真っ白な豪邸の屋敷内にいる。あの後、黒深子の言う様にリムジンが交番に走ってきて闇影達を特別な客としてもてなし出したのだ。案内されるまま屋敷に入ると、ありとあらゆるゴージャスな家財が装飾されておりまるで高級ホテルにでも来たかの様な内装だった。

 

「ようこそお越し下さいました。こちらへ御案内致します。」

 

「あ、はい。こちらこそどうも…。」

 

そこへスーツを着た中年の男性が現れ、闇影達を責任者の元へ案内する。その途中に…

 

「「いらっしゃいませお客様。」」

 

「えっ…あ、うっ…こ、こんにちは…///」

 

「うぉっ…凄ぇモンが見れたぜ…!!」

 

首にタオルを巻きエアロビ用のレオタードを着た二人組の女性とすれ違い、その姿にどぎまぎした闇影は顔を赤くしながら挨拶をし、コウイチは彼女達の姿を見て鼻の下を伸ばす。

 

「彼女達はここのトレーニングルームで無法者達と対抗する為に日々訓練をしている戦士なんです。」

 

「そうなんですか…。ん?さっきの人達の胸の所の…」

 

「何だ闇影。お前もやっと普通の男として目覚め始めたか〜?まぁ、スタイルは良いけど胸はあまり形が良くねぇけど…」

 

「お前と一緒にするな!そうじゃなくて、さっきの人達が着ていた服の胸に書いてあった数字だ。確か『31103』って書いてあったような…まぁ特に意味は無いけどね。」

 

意味不明な事を言ってからかうコウイチを注意する闇影。彼が気にしていたのは先程の女性二人が着ていた服の胸元に書いてあった「31103」と言う数字である。しかし、あまり意味の無い事だとその話題を終わらせた。

 

「此方でございます。少々お待ちを…。お客様をお連れ致しました。」

 

気が付くと、責任者の部屋の前に辿り着いた闇影達。男性は彼等を連れて来たと言いながらドアをノックする。しかし、いくら叩いても返事が返って来ない。その代わりに何やら大きな音量で音楽が聞こえて来る。

 

「もしや…。」

 

男性は責任者が返事をしない理由を考えながら、合鍵を使いドアを開けた。すると…

 

 

 

「イクササァァァァイズッッ!!」

 

「「「「はい?」」」」

 

「やはり…!!」

 

闇影達が目にした物、それは耳がつんざく程の大音量で音楽を流しながら白い文字で「31103」と書かれた青いTシャツと黒い半ズボンが特徴の、端正な顔立ちをした黒髪の二十代の男性がハイテンションで歌いながら何やら謎の体操をしていると言う、何とも言い難い光景だった。そして、音楽が鳴り終えると…

 

「その命…神に返しなさい…!!」

 

指を差して、謎の決め台詞を自信満々にほざく。これを見た闇影達の思った第一印象は…

 

「「「(変人だぁぁぁぁっっっっ!!!)」」」

 

「(変人ですね…!!)」

 

と、散々な物である…。

 

 

 

―三十分後

 

 

「待たせて申し訳ない。トレーニングに夢中になり過ぎてとんでもない所を見せてしまったよ。本当に…申し訳ない。」

 

「い、いえ…お構い無く…。(あれトレーニングだったんだ…。)」

 

先程の男性はさっきの様な簡素な服ではなく黒いズボンと、黒いジャケットの下にネクタイを締めたワイシャツと身形を整えた姿となり、三十分間も待たせてしまった事を闇影達に詫びた。闇影は先程のそれを「トレーニング」だと聞き、少し眉をひくつかせながらも「気にはしていない」と返す。

 

「それで、彩盗巡の事について何か聞きたい事があると伺ったけど…君達は彼女とどういう関係で?」

 

「実は……」

 

男性の質問に闇影はこれまでの経緯を話した。巡が度々自分達の近くに現れては宝を奪う「仕事」をし続けていた事を…。無論、念の為自分がライダーである事は伏せて…。

 

「成程…君達の行く先々で彼女が宝を奪う為に彷徨いている…。彼女らしいと言えば彼女らしいな…。」

 

「あの人って…何をしたんですか?」

 

「彼女は、何が気に入らないのか…この平和な世界を破壊しようとしている…!!」

 

「えっ!?こんな平和な世界を!?」

 

「巡さんが…!?」

 

黒深子の質問に答える男性。巡が指名手配された理由、それはこの世界の平和を破壊しようとしている為である。それを聞き目を見開いて驚くコウイチと悲壮な表情を浮かべるツルギ。

 

「うむ。一つの小さき悪は、大きな悪を招く…そうならない為に我々はこの世界を守るべく日々研鑽している!!皆が平和に暮らせる世界を!!」

 

男性は拳を強く握り締めて、この世界の平和を守る為には一つの僅かな悪をも見逃さずに徹底して排除する、そう力強く豪語する。

 

「そうですか…。あ、そう言えばまだ自己紹介してませんでした。煌闇影と言います。貴方は?」

 

「おっと、忘れていたね。私は世界犯罪撲滅組織『WONDERSKY(ワンダースカイ)』元帥兼最高戦闘部隊長・彩盗啓介だ。」

 

「「「「えっ…!!!!?」」」」

 

「と言う事は…まさか…!?」

 

「その通り…彩盗巡は私の実姉にあたり、私は彼女の弟だ。」

 

「「「「ええええぇぇぇぇっっっっ!!!!?」」」」

 

男性の名前を彩盗啓介と聞いた闇影達は絶叫して驚いた。

 

「まさかあいつに姉弟がいたなんて…!!」

 

「意外だよね…。」

 

「でもあんま似てねぇな…。」

 

「お二人のなさっている事が見事に対称的ですからね…。」

 

盗賊である彼女の下に秩序を守る事に勤勉な弟がいると言う、ここまで対称的に割れた姉弟の存在に各々思う事を口に出す四人。

 

「こんな事を赤の他人である君達に頼むのは変なのかもしれないが、もし何か情報を入手しましたら連絡して欲しい。」

 

「は…はい…。」

 

 

 

再びリムジンに乗り、家に戻ろうとする四人だが、何故か闇影だけ乗ろうとせずにいる。

 

「どうしたの先生?」

 

「ごめん、ちょっと用事があるから先に帰っててくれないか?」

 

「それは困ります!!元帥からはお客様を御自宅まで丁重にお送りする様仰せつかりましたので…!!」

 

用事がある為黒深子達だけを帰させようとする闇影だが、運転手の男は啓介の命に背く様な真似は出来ないと困り顔で呼び止める。

 

「ああ、大丈夫です。用事がてらに買い物にも行きますので、この子達をお願いします。」

 

「え、あ…ちょっと!!お客様!!」

 

「闇影の奴、どうしたんだろ?」

 

「用事というのが気になりますね…。」

 

「(本当にただの用事なのかしら…?先生がああいう行動をする時は必ず何かありそうな気がするわ…。)」

 

しかしそれでもやんわりと断り、黒深子達を任せてその場を後にする闇影。黒深子は彼の後ろ姿を見て「彼の用事には何かがある」と推測する…。

 

 

 

「さっきのお節介男、何者なのかしら?」

 

「せやな、俺等とは違うライダーに変身して影を真っ赤なキバに変えよるしな…。」

 

一方人々から逃げ切った恵と健吾は、小休止しながら闇影の素性について話している。突如自分達とは違うライダーに変身し、影を真っ赤なキバ、即ちダークキバに変えるディライトの能力について…。

 

「あのおっちゃん、どっか『師匠』に似てるとこがあると思うんやけど…恵の姉ちゃんはどない思う?」

 

「まぁ、ちょっと無駄にお節介な所がそうかな。『あの人』と…。」

 

そして闇影が「師匠」や「あの人」等、「とある人物」と似ている所があると言い出す。すると恵は、その人物の事について思い出し始める…。

 

 

 

―行くぞ!!恵!!健吾!!

 

―良いわよ!!啓介君!!

 

―何時でも行けるで!!師匠!!

 

―変身!!!

 

【【【FI・S・T・O・N】】】

 

とある人物…啓介は恵と健吾を率いて、トルーパーナックルで白いアーマーにディープイエローカラーの十字架を模したバイザーが特徴の「イクサトルーパー・イエロークロス」に変身し、恵のRC、健吾のGCと共に複数のラットFを率いている人物に向かっていく…。

 

―ふふ…。

 

【REA・D・Y】

 

―変身…。

 

【FI・S・T・O・N】

 

イクサナックルを構え、左目が隠れる程腰まで届く銀色の長髪に紺色のスーツを着た巡が変身した金色の十字架を模した赤い複眼に白いスーツが特徴の戦士・イクサに…。

 

 

 

「師匠は…ホンマの平和を取り戻す為に全力で戦っとったんや…俺やかみさんになる恵の姉ちゃんと一緒に…!!それをあの女が…!!」

 

「……。」

 

啓介は元々彼等のリーダーであり共に戦う仲間であり、健吾はその弟子に当たる存在、そして恵は彼の婚約者であったのだ。それをその姉である巡によりラットF達に奪われてしまった事を掌に拳を叩き付けて憤慨する健吾と静かに怒る恵。その時…

 

『見つけたぞ!!無法者共…!!』

 

八匹のラットF達が彼等に銃撃を仕掛けながら現れた…。

 

「さっきより多なっとるな…!!」

 

「何匹来たって関係ないわ…全部叩けばいいのよ!!」

 

先程より二倍の数でラットFが現れた為ややたじろぎながらトルーパーナックルを構える健吾だが、恵はそれを気にせず同じ動作をする。

 

「「変身!!」」

 

【【FI・S・T・O・N】】

 

恵はイクサトルーパーRC、健吾はイクサトルーパーGCに変身しトルーパーカリバー・ソードモードとガンモードでラットF達に立ち向かう。最初は一匹ずつ倒す等優勢に見えるが…

 

『ヘェヤァァッッ!!』

 

『きゃあっ!!』

 

『ぐわぁっ!!』

 

やはり数的に不利なのか、一匹のみに集中していると他の個体がその隙に攻撃を仕掛けて来る為、直ぐ様追い詰められつつある…。そこへ…

 

「はぁっ!!」

 

『グアァァッッ!!』

 

胸元が大きく目立つ赤いタンクトップに素足が見える程極端に短いショートパンツと、異常に露出度の高い格好をした巡が、ディシーフドライバーでラットF一匹を斬り付けると、罅が入り砕け散った。

 

『あんたは…巡!!』

 

『何しに来たんや!?』

 

「話は後にして!!変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DITHIEF!】

 

イクサトルーパーGCの非難の声を後にする様に言った巡は、ドライバーにカードをスラッシュしディシーフに変身しラットF達に斬り掛かっていく。素早い動きで五匹のラットFを翻弄しては隙を付いて斬り付けていき、一通り動きが鈍くなったのを見計らい距離を取ると…

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DI・DI・DI・DITHIEF!】

 

『止めよ…せぇぇいっっ!!』

 

『『『『『グギャアァァァァッッッッ!!!!!』』』』』

 

自身のFARのカードをディシーフドライバーにスラッシュしてディメンジョンスライサーを発動し、ラットF達を一斉に殲滅させた。

 

『ふぅ…。』

 

『巡…あんたもライダーの力を…!?』

 

『んな事はどうでもええ!!お前のせいで師匠はな…!!』

 

戦闘を終えたディシーフにイクサトルーパーGCは彼女の肩を掴み勢い良く突っ掛かろうとした時…

 

『ジ…ジネェェッッ!!』

 

『!!しまった…まだ一匹生き残って…!!』

 

内一匹生き残っていたラットFは、息絶え絶えになりながらも黒い銃でディシーフ等を撃ち殺そうとした。が…

 

【ATTACK-RIDE…LASER!】

 

『グアァァッッ!!』

 

別方向からディライトのディライトレーザー三発がラットFに直撃し、今度こそ完全に撃破された。

 

『詰めが甘いぞ、巡…。』

 

『闇影君…。』

 

『『お節介男!!/影のおっちゃん!!』』

 

『おっ、おっちゃんって…俺まだ23だよ!?…って、そんな事より色々聞きたい事があるんだけど…。』

 

イクサトルーパーRCの「お節介男」はともかく、イクサトルーパーGCに「おっちゃん」発言にズッコケながらも、自分はまだそんな年齢ではないと反論するディライトは彼等の事情について聞き出す…。

 

「啓介は何処にいるの?」

 

「お前…あんな事しといてよくもぬけぬけと師匠に会おうするなんてええ度胸しとんな…!!」

 

一旦人気の無い場所に移動した四人。巡は啓介の居場所を尋ねたが、健吾は答えるつもりは無いと彼女に突っ掛かる。

 

「あんな事…?どういう事だ?」

 

「闇影君には関係の無い事よ。」

 

「関係無くは無いな。俺はお前の弟さんに会って来たぞ。」

 

「えっ!?じゃ、じゃあ啓介が何処にいるのか知ってるのね!?何処にいるの!?」

 

闇影に事情の説明を尋ねられた巡は関係無いと一蹴するが、啓介に会ったと言う話を聞くと一変してその所在を尋ね出した。その様子は普段の冷静な彼女らしくなく、何処か焦っている様に見える…。

 

「はぁ…人の質問に答えず一方的に質問するな。先ず何があったのかを言え。」

 

自分の質問に答えず逆に質問して来た巡に不快感を感じ溜め息を吐く闇影は、最初の質問に答える様ドスの利いた声で尋ねる。

 

「ここまで関わったのならあんたに話すわ…。この世界はラット達が法に則った支配をしているの…。」

 

「ラット?あのファンガイア達の事か。」

 

「そう。あいつ等は人々に徹底した正義や規則を無理矢理守らせているの。僅かな悪事も全て厳しく取り締まったりしてね…。」

 

「そうか、だからあの時の子はあんなに怯えていたのか…。」

 

恵からこの世界のルールを聞いた闇影は、あの自転車のスピード違反を犯した学生が異様に怯えていた理由を理解した。この世界の「平和」や「正義」は全てラット達のよる支配によって成り立っており、例え一寸足らずの悪事も彼等にとっては「重罪」に値するのだ…。

 

「そして、その『重罪』を犯した人間は皆ラット達によって操られて絶対正義を遵守させられるの…。」

 

「なら、啓介さんもラット達に操られているかもしれないな…。」

 

 

 

―白石家前

 

 

「ぅん…あぁぁ〜…堅苦しかったなぁ…。」

 

「そうですね、少し息苦しく感じました…。」

 

一方、家に到着した黒深子達。コウイチとツルギは啓介達の過剰なもてなしが堅苦しかっった為か、大きく背伸びをしたり肩を動かしたりして身体を解している。

 

「にしても闇影の奴何処にいんだ?まさか一人で軟派しに行ったりとか?」

 

「あんたじゃあるまいし…携帯にかけて見たら?」

 

「そだな。え〜と携帯はと…あったあった。」

 

コウイチは、闇影が今何処にいるのかを知る為にズボンのポケットから携帯を取り出して連絡しようとした時…

 

『貴様!!家の前にゴミを捨てたな!?』

 

「えっ、えっ!?俺ゴミなんか捨てて…」

 

『とぼけるな!!なら貴様の足下にある物は何だ!?』

 

突然ラットFが三匹現れ、コウイチがゴミを捨てたのだと言い出し彼に詰め寄る。しかし、当の本人はゴミを捨てた覚えは無いと言うが、ラットFはコウイチの足下にあるポケットティッシュに指を差す。恐らく、先程携帯を取り出した時に一緒に落ちたのだろう。

 

「ちょ、ちょっと待てよ!?今のは偶々落ちただけで別にゴミをポイ捨てした訳じゃ…!!」

 

『黙れ!!僅かな過ちは軈て大きな過ちへと繋がる…!!「完璧な人間」への再教育の為、貴様を連行する!!』

 

確かに、ゴミをポイ捨てしたのならいざ知らず、ポケットティッシュを、それも落としたのは偶然である為それを罪と問うのは無理のある話なのだが、ラットF達にとっては「町を汚す」愚行である様で、コウイチを「完璧な人間への再教育」の為彼を捕獲しようと迫る。

 

「はっ…離せよっ!!」

 

『抵抗する…グァッ!?』

 

「コウイチさんから離れて下さい!!」

 

無理矢理コウイチを連れ去ろうとするラットFに、ツルギはサソードヤイバーで斬り付けて阻止をする。が…

 

『貴様…我々に武器を向けたな?我々の正義を邪魔する貴様も重罪だ!!おい!!』

 

今の抵抗がかえってラットF達の逆鱗に触れた為、ツルギも「反逆罪」と見なした。今の彼女の行動こそ、理不尽な「罪」で連れ去られようとするコウイチを助ける為の正当防衛に当たるのだが、ラットF達にとっては「反逆」に値するのだった。そう息巻くと…

 

『ヘェヤァァッッ…!!』

 

「なっ、何なんだよこれは…離せ!!離せよ!!」

 

「急に数が増えて…っ痛…!?」

 

突然二十匹のラットFが一斉に現れ、コウイチとツルギを囲み出し彼等に抵抗の隙を与える事無く拘束し連れ去って行った。

 

「コウイチ!!ツルギちゃん!!早く先生に連絡しないと…!!」

 

唯一ラットF達に反抗しなかった(と言うよりする間が無かった)為無事だった黒深子は、急いで今起きた事を闇影に連絡するべく携帯に電話を掛ける…。

 

 

 

―WONDERSKY本部兼???邸

 

 

「ふぅむ…奴等が別世界の人間か…。」

 

「はい。残念ながら彼等はラット達に反抗する等間違った道を歩んだ哀れな迷い子ですが、直ぐに真人間へと更正しますでしょう。」

 

青いウェーブのかかった髪に青いスーツを着た褐色肌の男性は、巨大なモニターに写っている別室に鎖で拘束されたコウイチとツルギを見て、彼等を「別世界の人間」だと言い興味深い目で眺め、啓介はラットF達に反抗した彼等を「哀れな迷い子」だと言い放つ。

 

「我等WONDERSKY総帥・アークス・ヴァルヴァロス様に忠誠を誓う正義の使徒として。」

 

「フフフ…全ては我が理想郷、絶対正義の世界の為に…!!」

 

「はっ…。」

 

この青いスーツの男、WONDERSKYの総帥・アークス・ヴァルヴァロスこそがこの世界に「絶対正義」の思想を押し付けている元凶である。彼はその思想を豪語しながらモニターに写るコウイチとツルギに目をやる…。

 

 

 

「くそっ…これが正義かよ…こんなやり方が平和の為になんのかよ!?」

 

「くっ…手を縛られて動けない…!!」

 

コウイチとツルギは動きを封じられた身でありながらも、暴れるかの様にもがき続けている。そこへ、複数のラットF達が彼等に近付き、その動きを無理矢理押さえ込む。

 

『無駄な抵抗は止めろ…今から貴様等は新しい人種へと生まれ変わる…。』

 

「あれは…黒い吸命牙…!?まさか…俺達を…!?」

 

一匹のラットFは背後からファンガイアの特徴とする、生物のライフエナジーを吸収する牙・吸命牙をコウイチとツルギの頭上へと出現させた。しかし、通常のそれとは違い真っ黒に染まっていた。

 

『安心しろ。痛みは然程感じない筈だ…!!』

 

「やっ…止めろ…止めろ!!止めてくれっ!!アアアアァァァァッッッッ!!!!」

 

「アアアアァァァァッッッッ!!!!」

 

ラットFは黒い吸命牙をコウイチとツルギの頭部に躊躇わす突き刺した…。

 

 

 

「つまりその黒い吸命牙に刺された人間は皆、そのアークスと言う人によって操り人形(まにんげん)にされる…と言う訳か…!!」

 

「……。」

 

「事情は粗方解った。だが巡、お前が何であいつ等に追われているんだ?」

 

「……。」

 

闇影は恵達の話を聞き、この世界での「秩序」を理解した。しかし、何故巡が指名手配にされてまでWONDERSKYの連中に追われているのかが解らないでいた。

 

「こいつは元々WONDERSKYの元帥で、アークスの奴と結託しよったんや!!」

 

ずっと黙している巡に代わり、その疑問に健吾は彼女に指を差し、元はWONDERSKYの元帥であり、アークスの側近である事を捲し立てるかの様に答えた。

 

「お前が…?」

 

「…そうよ。これで満足かしら…?」

 

その事実を知り驚きながら巡に目をやる闇影。すると今まで黙していた巡が重い口を開いてその事実を認め、「これ以上の詮索をするな」と意味を取れる台詞を呟く様に言い放つ。その時…

 

「「「「!!!!」」」」

 

突然四人に向かって銃撃が襲って来た。辛うじて回避した彼等が目にした先にいるのは、凶器を持った複数の人々と黒い銃を構えた十六匹のラットFの群れだった。

 

「あれがそのアークスに『真人間にされた』結果か…!!」

 

「せや、この女が師匠を裏切ったんが原因でな…!!」

 

「……。」

 

「あの人達を危険な目に遭わせる事は出来ない…一旦此処を離れるよ!!」

 

操られているだけの人々を巻き込めない為、闇影達は一度この場から人々とラットF達のいる方向とは逆の方向へと立ち去って行く。ある程度人気が居ない場所まで移動したのだが…

 

『ヘェヤァァッッ…!!』

 

「ちっ…別のとこからも来よったか…!!」

 

「何処へ逃げても現れるんだったら、倒すしか無いわね…!!」

 

「分かった…皆、行くよ!!」

 

そこにも三十二匹のラットFが待ち構えていた。これ以上逃げ切れ無いと判断した恵の言葉に従い、四人は各々の変身ツールを構える。

 

「「「「変身!!!!」」」」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

【KAMEN-RIDE…DISHIRF!】

 

【【FI・S・T・O・N】】

 

闇影はディライト、巡はディシーフ、恵はイクサトルーパーRC、健吾はイクサトルーパーGCへと変身しラットF達と交戦する。各々ライトブッカー・ソードモード、ディシーフドライバー、イクサカリバー・ソードモードで斬り伏せて行くが、敵の数が一向に減らない。

 

『こいつ等…弱いけどいくらでも湧いてくるからキリ無いわ…はぁっ!!』

 

『流石に三十二匹相手は初めてね…えいっ!!』

 

『はぁっ!!なら、ここは一気に叩く!!』

 

【FINAL-SHADOW-RIDE…B・B・B・BLADE!】

 

数に物を言わせるラットF達に対して巨大な攻撃で一気に片付けようとするディライトは、自身の影をブレイド・キングフォームへとFSRさせた。

 

『皆、離れろ!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…B・B・B・BLADE!】

 

『はあぁぁ…ロイヤルストレートフラッシュ!!』

 

『グギャアァァァァッッッッ!!!!』

 

ディシーフ達に離れる様指示を出しつつFARのカードを発動すると、ディライトとSブレイドKFは黒と金、二つのロイヤルストレートフラッシュを放ちラットF達を全て殲滅させ、役目を終えたSブレイドKFは元の影に戻った。

 

『これで一安心…何っ!?』

 

『ヘェヤァァッッ…!!』

 

敵を全て倒し一安心するディライト達だが、またすぐに別のラットF達が現れた。それも、今度は今の倍の六十四匹で…

 

『そんな…あれだけ倒したのにまだ来るなんて…!!』

 

『無駄よ…ラット達は普通のファンガイアと違って一個体じゃなく複数で一匹なの…。』

 

『お前が呼んだんちゃうやろな…?』

 

『は?』

 

あれだけの数を倒したにも関わらず、先程の倍の数のラットFが現れて嘆き出すイクサトルーパーRC。基本的にラットFは、通常のファンガイアとは違い一匹で一体ではなく、複数の群れが集まって一体なのである。そう淡々と答えるディシーフにイクサトルーパーGCは彼女が呼んだのでは、と疑い始める…。

 

『お前の事やから、裏切ったふりして俺等をあぶり出して一気に叩く真似は平気でやりかねへんからな!!』

 

『おい、今はそんな事言ってる場合じゃ…!!』

 

『ヘェヤァァッッ!!!!』

 

『『『『ぐあぁぁっっ!!/きゃあっっ!!』』』』

 

イクサトルーパーGCがディシーフを捲し立ててる隙を狙われ、ラットF達に一斉射撃を諸に喰らってしまう四人。

 

『くっ…!!』

 

立ち上がったディライトはカオスタッチを取り出し、コンプリートカードを挿入して操作する。

 

【RIKUGA!ANOTHER-AGITO!RYUGA!ORGA!

CULLIS!KABUKI!DARK-KABUTO!NEGA-DEN-O!

DARK-KIVA!】

 

【FINAL-KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

ディライトドライバーを右腰にスライドさせカオスタッチをバックルにセットすると、ディライトはカオスフォームへと変化する。

 

『あんた…まだこんな力を持ってたの…!?』

 

『さぁ…導くよ!!』

 

ディライトCFはライトブッカー・ソードモードを構えて走り出し、ラットF達を素早く斬り裂いて行く。

 

『はっ!やっ!ふっ!せいっ!だあぁっ!!』

 

『グアァァッッ!!』

 

『鼠には猫で行くか…!!』

 

ディライトCFはラットF、即ち鼠に対抗するべく天敵の猫をモチーフとしたネガ電王・クローフォームの特殊武器・ペルクローを実体化、装備した。

 

『必殺!猫まっしぐら!!にゃにゃにゃにゃにゃにゃあぁぁっっ!!』

 

『ガアァァッッ!!』

 

『ニャめんなよっ!!てね♪』

 

そしてラットF達に向かって文字通り、まっしぐらに進みながらペルクローで斬り裂いて行き、自分と同じ声の某魔法猫の様な台詞を言う。

 

『さてと、数も大分減ったし大技で行きますか!!』

 

【ORGA!CHAOS-RIDE…SAVER!】

 

ディライトCFはペルクローを解除し、カオスタッチのオーガと「F」のボタンを押すと、胸のヒストリーオーナメントカードが全てオーガの最終形態のシャドウライドカードに変わり、両サイドに現れた黒いオーガのシルエットと一体化すると、アーマーが金色に、複眼の色がライトオレンジ、両方の手の甲と両肩にはオーガストランザーを模したバルカン砲「ゴルド・ランチャー」が特徴の、オーガの最終形態「仮面ライダーオーガ セイバーフォーム」へとカオスライドした。

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…O・O・O・ORGA!】

 

『帝王の名の下に、光の鉄槌を下す!!デュアル・オーガストラッシュ!!』

 

『ギィヤアアアアァァァァッッッッ!!!!』

 

DオーガSFはファイズ・ブラスターフォームの特殊武器・ファイズブラスターに酷似した黒と金のカラーリングがされた特殊武器「オーガセイバー」とオーガストランザーを構え、尖端から放つ巨大な金色のフォトンブラッドの刃を十文字に薙ぎ払った斬撃「デュアル・オーガストラッシュ」でラットF達を一瞬で消滅させ、金と黒のマーブルカラーの「Ω」のマークを残し、元のディライトCFに戻った…。

 

『ふぅ…今度こそ何とか終わっ…!!』

 

六十四匹ものラットFを殲滅し、今度こそ一安心したディライトCFがディシーフ達の方に目をやると…

 

『なっ、何をするの健吾君!!』

 

『ちょっと!!止めなさいよ襟立君!!』

 

『やかましい!!この落とし前はお前の命で償って貰うで!!』

 

イクサトルーパーGCがディシーフを付けさせるべくトルーパーカリバーで彼女に斬り掛かっていた…。




てな訳で、巡の23…ではなく弟は753、もとい31103でした!!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第26導 ディシーフ・オブ・ジャスティス

2章から盗賊コンビの衣装を変更させようと思います。(どうでもいい)


『くたばれぇぇっ!!』

 

『くっ…!!』

 

イクサトルーパー・グリーンクロスはアークスやラットファンガイア等WONDERSKYに与し、「正義」を貫いたが為に自身の師匠である啓介を自分達の敵に変えた巡、ディシーフに「落とし前」として彼女の命を奪うべくトルーパーカリバー・ソードモードで斬り掛かる。

 

『何をやってるんだ!?今そんな事をしている場合じゃないだろ!!』

 

『うるせぇっ!!俺にとっての敵はこの女なんや!!』

 

ディライト・カオスフォームはそれを止める様彼を諌めるが、聞く耳を持たずに怒鳴り返し、その勢いのまま再びディシーフに向かおうとするが…

 

『落ち着いて襟立君!!』

 

『離せって!!姉ちゃんは師匠があいつのせいでああなってしもうたのに平気なんか!?』

 

イクサトルーパー・レッドクロスが羽交い締めにしてそれを阻止した。イクサトルーパーGCは啓介を敵に変えた原因であるディシーフを倒す事を何故止めるのかを怒鳴り声で尋ねる。そこへ…

 

「彩盗巡…世界の敵めぇぇ…!!」

 

ラットF達により「真人間」と化した人々が数十人現れ、ディライトCF達を囲うかの様に襲い掛かる。

 

『ほれ見てみぃ…この人等がこうなってしもうたんは全部この女のせいや!!』

 

『……!!』

 

押さえられながらも尚、事の発端であるディシーフへの非難を止めないGC。それを反論出来ないでいるディシーフ。

 

『兎に角、今はここから離れよう!!皆、目を閉じるんだ!!』

 

【ATTACK-RIDE…FLASH!】

 

『うああぁぁっっ!?め…目が…!!』

 

『この隙に撤退だ!!』

 

ディライトCFは、ディシーフ達に指示を出しながらディライトフラッシュを発動し、全身を光らせて人々の目が眩ませた。四人はこの隙に各々別方向へと走り出す。

 

 

 

「姉ちゃん!!何で止めたんや!?」

 

「…さっきの行動を見て、今の巡は昔の巡とは違う気がするの…。もしもまだラットの仲間だったら奴等と敵対する筈が無いし。」

 

「…そんなん俺等を混乱させる為の演技とちゃうんか?」

 

人気が無い草原まで逃げた恵と健吾。健吾は先程と同じ質問を彼女に尋ねる。その理由は、もし今も巡がラットFの仲間ならば先程の様に奴等に反逆を犯す筈が無いとの事。しかし健吾は、それを演技だと決め付ける。

 

「そうかもしれない…でも…(啓介君の居場所を聞いたり、襟立君に非難された時の表情、本当に昔のままなのかしら…?)」

 

 

 

「はぁ…はぁ…!!くそ…!!早く操られた人達を元に戻さないと…!!」

 

恵と健吾とは別の草原へと逃げ切り息を切らしながら、アークスやラットF達に操られた人々を元に戻す事を口にする闇影。その時、懐の中の携帯が鳴り出した為それを取る。

 

「…はい。」

 

『大変なの先生!!コウイチとツルギちゃんが…!!』

 

「…何だって!?」

 

黒深子からの電話で、コウイチとツルギがラットF達に囚われた事を聞き闇影は大きく驚く…。

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!数多の平行世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

―白石家

 

 

「黒深子!!…ん?これは…。」

 

大急ぎで飛び込む様家に帰ってきた闇影だが、玄関を目にするとその勢いが収まった。何故なら、拐われた筈のコウイチとツルギの靴やブーツがそこにある為である。

 

「先生!!大変なの!!」

 

「大変って黒深子、二人共帰ってきてるじゃ…まさか!?」

 

闇影は、玄関に現れた黒深子にコウイチとツルギの靴がある事から二人は無事じゃないか、と言おうとしたが突然「嫌な予感」を察知しリビングへと駆け込んだ。

 

「コウイチ!ツルギちゃん!大丈…!!」

 

そこで闇影が見た物とは…

 

 

 

「お帰り闇影、今日も平和で何よりだな。」

 

「その平和を、ふっ!守り続ける為に、ふっ!日々鍛錬、ふっ!!していかないと!!」

 

「31103」と書かれた黒いTシャツを着込んで雑誌の束を荷造りしているコウイチと、頭に紫のタオルを巻き、胸に同じ数字が書かれた同じ色のスクール水着に近いレオタードと、刺激的な格好をしたツルギが鍛錬としてヒンドゥースクワットをしている光景だった…。

 

「何これ!?どゆ事!?」

 

「こゆ事なの…。」

 

二人の奇妙な変貌ぶりに大声でツッコむしか無かった闇影。特にツルギの場合、普段の彼女は如何にあれが鍛錬用の衣装だとしても、人前であんな格好は絶対にしない為驚くのも無理は無い。すると、荷造りを終えたコウイチが束ねた雑誌を捨てようと外へ出ようとする。

 

「ちょっと待てコウイチ、それってお前が何時も締まりの無い顔で読んでた大事な雑誌じゃないのか?」

 

コウイチが捨てようとする束ねた雑誌の正体は、普段年頃の少女達(黒深子とツルギ)の目をも憚らず締まりの無い顔で読んでいた「男の聖書」だった。それを捨てる等普段の彼からは考えられない。しかし…

 

「こんな男の目に毒な淫らな本は即処分しねぇと駄目だ…!!おかしいか?」

 

「「ええええぇぇぇぇっっっっ!!!?」」

 

コウイチの口からここまでくそ真面目な言葉を聞き絶叫して驚く闇影と黒深子。ある意味ツルギ以上に変貌しているのかもしれない。当の本人は、そんな二人を素通りして雑誌を捨てに外へ出る。

 

「…やっぱりあの鼠達に何かされたせい?」

 

「ああ。これがラット達の『正義』のあり方なんだ…!!」

 

両足を大きく広げて上半身を大きく前に反らして柔軟体操をしているツルギを横目にラットF達のやり方を溜め息混じりに口にする二人。

 

「二人は俺が必ず元に戻す…!!黒深子は此処にいるんだ。

 

「先生一人だけじゃ危ないよ!!私も…!!」

 

「外は今、ラット達の言いなりになっている人達がいるから危険だ!!分かるね?」

 

皆を元に戻すべく単身で動こうとする闇影に黒深子は自分も行くと言い出すが、家に待機する様指示される。理由は言わずもがな、外にはラットF達に操られた人々が蔓延って危険であるからだ。

 

「…分かった…。」

 

「じゃ、行って来る。」

 

納得した黒深子を見て、改めて外へと向かう闇影。その様子を伺う為玄関に向かいドアを開けて確認した彼女は…

 

「やっぱり私も行く…!!」

 

そのまま外へ出て、闇影の後をこっそり尾行して行く…。

 

 

 

―WONDERSKY本部

 

 

「お帰りなさい姉さん。こうして顔を合わせるのは…」

 

「七年ぶりね。ただいま。」

 

一方巡は、単身でWONDERSKY本部に向かい強行突破をしようとしたのだが、啓介は何の抵抗もなく彼女を自分の部屋に向かわせて七年ぶりの再会を果たし、現在に至る…。

 

「変わってしまいましたね姉さん。嘗ては正義を直向きに信じていた貴女が、現在じゃ泥棒になってしまうとは…。」

 

「貴方も随分と変わったわね、啓介…。」

 

「変わった?いいや、俺はあの方のお陰で己がするべき事に気付いたんだ。更に言えば、貴方が嘗てやっていた事をなぞっているだけに過ぎない。七年前の様に…ね。」

 

 

 

―七年前

 

 

「がぁっ!?ま…待て…!!もう強盗したりしねぇ…!!だ、だから…もう…!!」

 

「勘弁してくれって…?散々人様の物盗んどいて…」

 

「ぁぐぅっ!!?」

 

「許されると思ってるの…?」

 

左目が隠れる程腰まで届く長い銀髪に紺色のスーツを着た巡は、数十件もの強盗事件を起こした男を捕まえ、顔の形が変わるくらい殴打し、男の「もうやらない」と言う言葉を聞いても一切容赦せず、腹をハイヒールで思い切り踏みつける。

 

「だ…だずけ…!!」

 

「ま、この辺までにしておくわ。」

 

漸く過剰な暴行を止めた巡は、男をWONDERSKY本部に引き渡すべく首根っこを無理矢理掴んだ。

 

 

 

『ヘァ…ヘァ…!!』

 

『食べ物を盗むなんて最低ね…!!』

 

金色の十字架を模したバイザーに赤い複眼をした白いアーマーが特徴の戦士「仮面ライダーイクサ バーストモード」に変身した巡は、食物を盗んだ熊を模したファンガイア「グリズリーファンガイア」を捕らえようと追い詰める。しかし…

 

『頼む!!ウチにはもう金が無くて、家族に食べさせる食べ物が買えないんだ!!だから…!!』

 

グリズリーFは、已む無く盗みを犯した動機を必死にMイクサに弁明するが…

 

『だから見逃せと…?それで盗みが正当化されるなら…!!』

 

【I・X・A・KNU・CK・LE・R・I・SE・U・P】

 

『WONDERSKYは要らないわよ…。はぁっ!!』

 

『や…止めてくれぇぇ…グィアアァァッッ!!』

 

犯罪事態許せない彼女の耳に届かず、イクサベルトにナックルフエッスルを読み込ませて、イクサナックルから拳を突き出す様に強力なエネルギーを放つ「ブロウクン・ファング」を発動しグリズリーFを爆散させた。如何に窃盗を犯したとは言え、家族に対して思い遣りの心を持つ者ですら躊躇い無く排除する事に何の違和感も感じず、無言でその場を去ろうとする。そこへ…

 

『姉さん、また罪を犯したファンガイアを殺したのか…。』

 

そこへ、啓介の変身したイクサトルーパー・イエロークロスが現れ姉の過剰なまでの裁きを嘆く。彼の発言から、これまで何度も犯罪を犯したファンガイア達を独自に排除していた様だ…。

 

『それがWONDERSKYの定めた法律(ルール)だからよ。そうでもしないと同じ事をする奴が増えちゃうからね。』

 

しかしMイクサは、犯罪を犯した物を容赦無く痛めつける事は「同じ罪を犯そうとする者への見せしめ」の為だとあっさり言う。それがWONDERSKYの定めた法だと…。

 

『人やファンガイアが犯した罪を一人の人間が無断で裁いて良い筈が無い!!然るべき裁きを受けさせて…!!』

 

「なら然るべき裁きとかで、私達の家族を理不尽に崩壊させた奴等が裁かれないのはどうしてなのよっ!?」

 

イクサトルーパーYCは人やファンガイアが犯した罪は個人では無く、法で裁く物だと言うと、突然変身解除した巡は声を荒げながら上半身の服のみ脱ぎ出し背中を見せる…。

 

「忘れたの!?あいつ等のせいで、父さんは母さんや私達もろとも無理心中で火事を起こして死のうとして死んで、私は背中に大きな火傷が残った!!にも関わらず、連中は今ものうのうと生きている…!!」

 

その背中には大きな十字架の様な火傷の後が刻まれていた。巡と啓介の父・聖(ひじり)は有名な大企業の社長であったが、その会社を友好的に装った別の会社により全株を騙し取られて会社を乗っ取られ、妻・義弥(よしみ)と子供である巡と啓介共々、火事を起こし無理心中を図り命を断とうとしたが、両親だけ死に、巡の火傷はその時にできたのである…。

 

「だから私は…この組織に入ったの…!!」

 

巡は服を着替えながらWONDERSKYに入った理由を語り終え、去って行く。父を理不尽な死に追いやった連中や法で裁かれない連中を自分で裁く為だと語りながら…。

 

『姉さん…。』

 

 

 

『無法者共め…グアァァッッ!!』

 

『その命、神に返る事を祈ろう…!!』

 

『カッコ付けてる場合じゃないでしょ啓介君!!はぁっ!!』

 

『構へんやん、それが師匠のあり方なんやから。「決められたあり方」を押し付ける奴等にかましたって下さい!!せいっ!!』

 

ラットFをトルーパーカリバー・ソードモードで斬り裂き爆散させたイクサトルーパーYCは倒した敵の命が神の下に返る様呟き、RCはそれを諌めながら敵を斬り裂いていき、GCは師匠らしいと逆に賞賛しながら同じく斬り裂いて敵を減らしていく。

 

『そうだな…行くぞ二人共!!』

 

『『ええ!!/了解!!』』

 

『おのれ無法者共がぁぁ!!かかれ!!』

 

ここまでイクサトルーパー達に好き勝手にやられ怒りを顕にするリーダー格のラットFは、一斉にかかる様怒号を飛ばす。イクサトルーパー達も武器を構えてそれに立ち向かって行く。

 

『にしても、キリ無いなぁ…!!』

 

『ホンット鬱陶しい…!!』

 

『弱音を吐くな!!必ず打開策はある!!』

 

一体一体は弱いとは言え、限り無く無数に出現するラットF達に嫌気が刺しそれを愚痴り出すGCとRC。YCは、そんな二人に戦い続ければ策は見つかると諌めながら突撃して行く。が…

 

『『ヘェヤアァァッッ!!』』

 

『なっ!!?別動隊だと!?』

 

彼等の背後から正面とは別のラットF達が無数に現れ襲い掛かって来た。突然の襲撃に対応が遅れたイクサトルーパー達は、隊列を乱され徐々に押されつつある。そして…

 

『ぐっ…!!くそ…!!』

 

『『啓介君!!/師匠!!』』

 

二、三体のラットFに羽交い締めにされ、YCは捕獲されてしまう。RCとGCは彼を救うべく駆け付けようとするが…

 

『俺はいい!!お前達だけでも早く逃げろ!!』

 

押さえられつつも、自分を置いて逃げる様叫ぶ。

 

『せやけど…!!』

 

『襟立君、逃げるわよ…!!』

 

『何言っとんねん!!師匠見捨てて逃げるなんて…!!』

 

『解らないの!?今あたし達まで捕まったらそれこそ終わりなのよ!?』

 

GCは、師匠であるYCを置いて逃げる事は出来ないと躊躇うが、RCは自分達まで捕まれば完全にこちらの全滅を意味するのだと言う彼の真意を知り、言う通りに撤退する様叱咤する。

 

『くっ…!!師匠…すんません!!絶対に助けますから!!』

 

GCは仮面の奥で歯を軋り、悔しげな表情をしながら必ずYCを救うと誓いRCと共にラットF達を蹴散らしながら撤退して行く…。

 

 

 

―WONDERSKY本部・アークスの部屋

 

 

「良くやったな彩盗巡。お前の考えた陣形によって無法者を一匹捕らえる事が出来た…。」

 

「いいえ、これしきの事…。」

 

どうやらイクサトルーパー達を無数のラットFを挟み撃ちの陣形を取り捕らえる作戦を立てたのは巡だった。アークスはそんな彼女を見事だと賞賛する。

 

「さて…これまで数々の犯罪者をここに捕らえ暫くしてから解放すると、その者は二度と同じ過ちを犯さなくなる…その理由は何故だと思う?」

 

「いえ…こちらで再犯防止の為の再教育をし、更生した為だと思いますが…?」

 

「そうか、お前は知らなかったのか。ならば教えてやろう…。」

 

アークスは、巡が今までここに捕らえた犯罪者全てが完全に更生した理由を知らないと聞き、その全貌を教えるべく部屋にある巨大なモニターを写し出す…。

 

 

 

「離せ!!お前達の考えは間違っている!!偏った正義を無理矢理押し付けるやり方は絶対に…グッ!!?」

 

『ガタガタ煩い奴だ…!!早くこいつを「真人間」に戻してやれ!!』

 

モニターには、鎖で全身を拘束された啓介がラットF達に押さえ付けられている光景が写し出されていた。そして…

 

「止めなさい…止めろぉぉっっ!!うああぁぁっっ!!」

 

例の黒い吸命牙を頭部に深々と刺されると、意識を失いその場に倒れてしまう…。

 

『これでこの男も我々のいや、アークス様の忠実な「正義の使徒」へと生まれ変わる。今までこいつの姉が捕らえて来た奴等と同じ様にな…!!』

 

 

 

「な…!?アークス総帥!!これは一体どういう事なんですか!?」

 

「どうしたも何も…これが貴様の望む『絶対なる正義』ではないか?私の力により同じ過ちを犯す愚かな人類を支配し、正義の為だけに動く者のみが生きる穢れ無き世界…!!これも貴様の飽くなき正義への執着心のお陰!!感ぁ〜ん謝するぞっ!!」

 

今の光景を目の当たりにした巡は、アークスにどういう事かと問い詰める。するとアークスは、先程までの落ち着いたら態度とは一変してエキセントリックな口調で、犯罪者達は皆この施設で「再犯防止の再教育プログラム」と銘打ち、実際はラットFの黒い吸命牙により彼の言うがままの真人間(にんぎょう)になるのだと演説家の如く大きく語り出す。

 

「そ…そんな…じゃあ私は…啓介を…!!そんなの…!!」

 

巡は、その異常なまでに固執した正義感をアークスにただ利用されただけだと知り絶望する。そこへ…

 

「やぁ姉さん。俺は漸く本当の自分に目覚める事が出来たよ!!さぁ、これからは共に絶対正義で溢れた穢れ無き世界を築いていこう!!」

 

「啓…介…!!何で…何でこんな事に…!?」

 

先程まで自分達に立ち向かっていた姿勢とは打って変わり、にこやかな表情で共に正義感溢れる世界を創るよう啓介が呼び掛ける。巡は顔を青ざめてゆっくり後退していく。イクサナックルを落とした事にも気付かず…。

 

「何て顔をしてるんだ?困った姉さんだ…なぁ…。」

 

「嘘よ…嘘よこんなの!!」

 

尚もにこやかな弟の顔とアークスの邪悪な笑みをこれ以上直視出来なくなり、巡はその場から逃げる様に去って行く。自らの犯した罪から逃れる様に…。

 

 

 

「しかし、残念な事ですねぇ…今や人様の大切な物を無理矢理奪う泥棒に成り下がっているのは…。」

 

「(どうして外へ出たのかしら…?)」

 

何時の間にか屋外に出た二人は尚も会話を交わしている。巡は何故態々外へ出る必要があるのか?と疑問を抱きながら啓介の後に付いていく。

 

「それにより次元ライダーとやらの力を奪ったそうですね…。そうと分かれば…!!」

 

「(…まさか…!?)」

 

【REA・D・Y】

 

突然次元ライダー、ディシーフの力の話題を持ち出し漸く気付き出す巡だが時既に遅く、啓介は腰にイクサベルトを巻き、イクサナックルを掌に打ち付け…

 

「貴女の罪を裁かせて貰います…変身!」

 

【FI・S・T・O・N】

 

ナックルをベルトにセットし、イクサ・バーストモードへと変身を遂げる。姉の罪を裁く為に…

 

『その罪、償いなさい…!!』

 

イクサは巡に罪を償えと呟きながら、イクサカリバー・ガンモードを彼女に向かって連射する。しかし巡は、地面に転がる様に回避してディシーフドライバーとカードを構える。

 

「くっ…変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DITHIEF!】

 

直ぐ様ドライバーにカードをスラッシュしてディシーフへ変身し、ドライバーを構えてイクサに斬り掛かる。しかしイクサは、素早くイクサカリバーをソードモードに切り替えてその攻撃を防ぐ。

 

『ふむ…流石は前任だけあって、見事な瞬発力だ…。だが…!!』

 

『なっ…!!押され…きゃあぁぁっっ!!?』

 

『その程度で俺には勝てない…。』

 

互角に押し合っていた筈だが、イクサが力を少し籠めるだけでディシーフは徐々に押されつつあり、軈てその勢いに打ち負けて吹き飛ばされてしまう。そして再びガンモードに切り替えてディシーフを攻撃しようと引き金を引こうとするイクサだが、そこへ謎の銃撃が彼を襲った。

 

『くっ!!何者だ!?』

 

『あまり無茶をするなよ、巡。』

 

イクサが銃撃の飛んできた方向には、闇影の変身したディライトが銃口から煙を出したライトブッカー・ガンモードを構えている姿があった。

 

『余計なお節介は止めて。これは私の問題なんだから…!!』

 

しかしディシーフにとっては「無用なお節介」であり自分自身の問題だと言い切り、ディライトの助太刀を拒んだ。

 

『その声は煌君か…!?不法侵入の上に犯罪者を助ける真似をするなんて残念だよ…!!彼女もろとも捕まえなさい!!』

 

『『ヘェヤアァァッッ!!!!』』

 

イクサは、侵入者であるディライトの正体が闇影だと分かり残念そうな口調を漏らし、複数のラットF達を呼び出し彼とディシーフを捕らえる様命じる。

 

『ふっ!!目を覚ますんだ啓介さん!!はぁっ!!巡は…貴方の姉さんは貴方を救おうとしているんだ!!はぁっ!!』

 

『目を覚ませ?それは君に言いたいね。犯罪者に加担する愚かな行為をしている君こそ目を覚ますべきだ。』

 

ディライトは襲い掛かるラットF達をライトブッカー・ソードモードで斬り倒しながらイクサに目を覚ます様呼び掛ける。しかしイクサに自分は正気だと淡々と語る。

 

 

 

「先生、やっぱり苦戦している…!!ここは私も…!!」

 

一方、アークスの豪邸まで闇影を尾行していた黒深子は、今の様子を見てディライトが苦戦をしている様に見えた為、スワンオルフェノクに変化して乗り込もうとした時…

 

『貴様!!そこで何をしている!?』

 

『不法侵入だな…犯罪は悪だ!!罪は許されない!!』

 

「きゃあっ!!ちょっと離してよ!!」

 

『ん、何…く、黒深子!?』

 

背後から、警備をしていた二体のラットFによって捕まり、騒ぎ出した。その騒ぎにディライトが目をやると、黒深子の姿に気付き驚いた。

 

「ごめんなさい先生…!!私先生が心配で…!!きゃあ!!ちょっと、どこ触ってんのよ痴漢!!」

 

『黒深子!!くそ…黒深子を解放しろ!!』

 

捕まりながらも、ディライトの言い付けを破り勝手な行動を起こした事を謝る黒深子。しかし、ラットF達は彼女を「真人間」にする為の処置を施すべく豪邸内へ連れ込む。ディライトは、黒深子を開放する様イクサに要求するが…

 

『一旦逃げるわよ闇影君…!!』

 

『ふざけるなっ!!黒深子を置いていける訳が…!!』

 

『私達まで捕まったらそれこそ終わりよ!?それに…連中は黒深子ちゃんを殺す真似はしないと思うわ…。奴等の目的はあくまで支配する事だから…!!』

 

『くそっ…!!』

 

ディシーフは彼の隣に近付き、一先ずここから撤退する様言い出す。当然ディライトは、黒深子を置いていく事に納得出来ないが、自分達まで真人間に変えられる訳にはいかない、と言う理由を聞かされ、仮面の奥で歯を軋りながらも納得した。

 

【【ATTACK-RIDE…WARP!】】

 

ディライトとディシーフがカードをドライバーに装填、スラッシュしてワープを発動すると、その場から一瞬で消え去った…。

 

「…どうする?健吾君。」

 

「…聞くまでも無いやろ…!!」

 

その様子を一部始終見ていた恵と健吾は、何かを決意しながらその場を去って行く…。

 

 

 

―WONDERSKY本部・アークスの部屋

 

 

「ほう…またも異世界の人間を矯正させたか…。」

 

「はい…全てはアークスの仰せのままに…ぐぅっ…!?」

 

啓介は異世界の人間…黒深子を捕らえ「真人間」に変えた事をアークスに報告するが、その最中に突然激しい頭痛が起きた為、頭を抱え出す。恐らく彼の洗脳が解け始めている為である。

 

「どうした?何を迷う?何を考え出す?その苦痛は貴様に何らかの迷いや疑問を抱いているが故に起きている…迷いを捨てろぉっ!!何も疑うなぁっ!!貴様はただ正義を貫いて戦い抜けば良いのだぁ…!!」

 

「ぐっ…はっ…!!」

 

しかし、アークスの言葉を聞き頭痛が治まると再び彼に忠誠を誓う啓介…。

 

 

 

「俺も指名手配されてしまうのは仕方ないけど…」

 

一方闇影は、自分の指名手配の写真を貼られている掲示板を見て何故か憂鬱な表情をしていた。理由は指名手配犯になったからではなく…

 

「あいつの相方として扱うのは止めて欲しいな…。」

 

その写真に「彩盗巡の相方」と、彼女と同類扱いとして書かれているからである。普段、巡や周を好ましく思っていない闇影にとっては大変迷惑な事だと言う…。

 

「悪かったわね。私が相方じゃ御不満で…!!」

 

そこへ巡が現れ、今の闇影の独り言について少し不機嫌な表情をしている。

 

「…さっきの昔話、聞かせて貰ったぞ。まさかお前にそんな事情があったとは意外だったな。」

 

「闇影君…少し黙っててくれない…?」

 

「俺は今まで、お前がただ単に宝が欲しい為に管を撒いていたと思ってたけど、実際はそうじゃなかったんだな。」

 

「同じ事を二度も言わせないで…!!」

 

「お前は家族を奪った社会悪が許せなくて『自分の正義』とやらを貫き通して来た。だが、そのせいで弟さんをあんな目に遭わせてしまったばかりか、その正義までも利用されていた。」

 

「いい加減にしてくれる…!?」

 

闇影の次々と紡ぐ言葉に、巡は冷静を保ちながらも静かに怒りを感じている。しかし、闇影の言葉はまだ続く…。

 

「だからお前は宝を、ライダーの力を沢山集める事に拘り始めた。弟を救う為に…。だがそれは――ぅぐっ!!?」

 

「解った様な…解った様な口を利かないでっ!!」

 

遂に怒りを爆発させた巡は、闇影の顔面を思い切り殴り飛ばした。その勢いで倒れた闇影に跨がって拳を強く握り…

 

「貴方にっ!!何が解るのよっ!!ずっと信じて来た物をっ!!グチャグチャにされた私の気持ちがっ!!碌に見向きもしない癖にっ!!偉そうに説教するなんてっ!!何様の…!!」

 

何度も何度も闇影の顔を殴り続けていく。理不尽な社会悪によって両親を亡くした悲しみや、自分の信じていた正義を利用され踏みにじられた悔しさや怒りを籠めて。更に拳を振り上げようとするが…

 

「何様の…つもり…なの…!?」

 

怒りと悲しみの表情をしつつ、涙によりグチャグチャになった顔をしながら、何故か拳を伸ばしたままでこれ以上殴るのを止めて闇影から離れる…。

 

「…だがな…それだけであの連中に勝てる程甘くない…そうやって自分一人だけで戦おうとしてる限りな…!!」

 

闇影は血が混じった唾を吐きながら立ち上がり先程の話の続きを口にし…

 

「だから…俺が手を貸してやる。だが勘違いするなよ、お前の事はどうでも良い…お前がどんな正義を示すのかが気になったから手を貸すだけだ…。形だけの物じゃなく、『本当の正義』をな…!!」

 

「本当の…正義…。」

 

言い方は相変わらず憎まれ口だが、巡の示す「本当の正義」を見届けると言いながら彼女に力を貸す事を言う闇影。そこへ…

 

「あたし達も見させて貰うわよ。」

 

「ふん…!!一回だけチャンスをやるわ…!!」

 

恵と健吾も現れ、巡に力を貸すと言う。健吾も健吾で、一度だけチャンスを与える形で手を貸すとぶっきらぼうに言う…。

 

「…御自由に…!!」

 

巡は、そんな二人と闇影に背を向けて「勝手に付いてこい」と呟く。小さい笑みを溢しながら…。その時、巡の携帯から着信音が鳴り響く。

 

「はい。」

 

『姉さん、取引をしないか?貴女が降伏すればこちらで預かっている女の子を返しましょう。取引場所は、北側にある採石所で行う。』

 

電話の相手は啓介であり、巡の身柄と引き替えに黒深子を解放すると取引話を持ち掛ける。これに対し巡は…

 

「…解ったわ。」

 

「明らかに罠だろ!どうして応じたんだ!?」

 

そう言うと巡は携帯を切った。今の話を真横で聞いていた闇影は、明らかに罠なのは明白にも関わらず取引に応じた巡を注意するが…

 

「勿論、ただ引っ掛かる真似はしないわ♪」

 

何やら考えがある様に先程までの泣き顔とは打って変わり、何時もの妖艶な笑みを浮かべる巡…。

 

 

 

―採石所

 

 

「作戦は今言った通りよ。」

 

「そんな方法で上手く行くのかしら?」

 

「策が無いよりずっとマシだよ。」

 

巡が立てた作戦、それはわざと敵に降伏の意を伝えるべく精巧に作られた偽のディシーフドライバーを投げ捨て、それと同時に黒深子が解放されたら闇影が本物を巡に投げ渡すと言う何とも無茶な物である。

 

「そうだ巡、お前に聞きたい事がある。」

 

「今日はノーパンノーブラよ♪因みに穿いてた下着は…」

 

「誰がそんな事を聞いた!!この痴女ライダー!!///…お前の事情は粗方解った。が、一つだけ解らない事がある。何故お前や周は毎回俺の周りに居るんだ?俺の過去の目的について、何か知っているんじゃないのか?」

 

闇影の巡に対する質問…それは七年前、創士により自身の過去の記憶の一部を奪われた為、過去に自分が何の目的を持ってダークショッカーに与したのか解らないでいた。が、当時その記憶を持っていた時に接触して来た二人なら何か知っているのではないかを彼女に尋ねた。

 

「それは…「闇影さ〜ん♪」!!」

 

「やっと来よったか…!!」

 

「(くっ…!!やはりあの子もやられている…!!)」

 

何故かそれを話す事を躊躇う巡。その時、向こう側から「31103」と書かれた黒いTシャツを着た黒深子を連れた啓介、そしてアークスも現れた。闇影は、彼女の口調を聞いて洗脳されたのだと直ぐ様感付く。

 

「さぁ、取引を始めようか…!!」

 

「解ったわ…はい。」

 

巡は偽物のディシーフドライバーを啓介達の足下に放り投げて降伏の意志を示す。次にそのまま彼等の下へ近付き、そのタイミングで本物を投げ渡そうとする闇影だが…

 

「……!!」

 

「なっ!?」

 

「残念だったね姉さん!!彼女は既にこちら側の人間だ!!」

 

突然黒深子は無表情な顔付きになり、巡の首に腕を巻くように拘束し出した。やはり闇影の思った通り、黒深子は既にアークスにより支配されていたのだった。

 

「黒深子ちゃん、ゴメンね…ふっ!!」

 

「ぅぐっ…!!」

 

「闇影君!!」

 

「受け取れ!!」

 

「作戦変更!!アークスを叩くわよ!!変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DITHIEF!】

 

巡は、洗脳された黒深子に謝り肘で彼女の腹をつついて気絶させ、闇影からディシーフドライバーを受け取りディシーフに変身し、三人にアークスを倒す様指示を出す。

 

「作戦もへったくれも無いだろ…変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

「行くわよ襟立君!!」

 

「やらいでか!!」

 

「「変身!!」」

 

【【FI・S・T・O・N】】

 

闇影はディライトに、恵はイクサトルーパー・レッドクロスに、健吾はグリーンクロスに変身して戦闘態勢を取る。

 

「無法者共を…全ては抹殺しろぉっ!!」

 

『『『『ヘェヤアアァァァァッッッッ!!!!』』』』

 

「今度はその命、神に返しなさい…!!変身!」

 

【REA・D・Y】

 

【FI・S・T・O・N】

 

アークスは無数のラットF達を呼び出し、ディライト達を抹殺する様命じ、啓介は完全に命を奪うと宣言しながらイクサ・バーストモードへて変身する。因みにラットFの数は…

 

「この三千の軍勢を相手に何処まで耐えられるかな?」

 

『さっ…三千やとぉぉっっ!!?』

 

『でもやるしか無いわよ!!お節介男!巡!こいつらはあたし達が食い止めるからあんた達は啓介君とアークスを!!』

 

『解った!!』

 

三千匹という途方も無いラットFの軍勢に大きく驚くGCだが、RCはディライトとディシーフにイクサとアークスの下へ行く様に言う。それを了承したディライトはアークス、ディシーフはイクサの下へと走って行く。

 

『行くわよ啓介!!』

 

『審判の時間だよ、姉さん…!!』

 

互いにディシーフドライバーとイクサカリバー・ソードモードで斬り結ぶディシーフとイクサ。二人は一進一退しながらも互角に渡り合う。イクサトルーパーの二人も三千もの軍勢相手とは言え、今までのラットFよりやや弱体化している為どうにか優位な位置で戦っている。

 

『はああぁぁっっ!!』

 

一方ディライトは、仲間を元に戻す為アークスに向かってライトブッカー・ソードモードで斬り掛かろうとするが…

 

「特別に『真の姿』で相手をしてやろう…アークキバット!!」

 

『ドロ〜ン♪行きましゅか〜♪』

 

『アークキバット…まさかっ!?』

 

「変身…!」

 

『へ〜んし〜ん♪』

 

そう宣言したアークスは、浮遊しながら腰にベルトを出現させ、何処からか飛んできた骸骨を逆さにした機械の様な蝙蝠型モンスター「アークキバット」がベルトに逆さになって装着すると、空は突然闇夜に包まれ3m以上の巨体をした黒い悪魔を模した妖しく光る黄色の複眼に、巨大な腕を生やした蔦と蔦の間に炎が出た巨大な翼、そして胸の中心の禍々しい単眼が特徴の、レジェンドルガ達の王(ロード)・「仮面ライダーアーク」の真の姿「レジェンドアーク」へと変貌を遂げた…。

 

『はぁっ!!あれがアークス様の真のお姿…!!』

 

『グオォォォォッッッッ!!!!』

 

『くっ…!!』

 

『危ない闇影君!!』

 

【ATTACK-RIDE…BARRIER-FORCE!】

 

『無ぅ駄だぁぁっっっ!!』

 

『『うわああぁぁっっ!!/きゃああぁぁっっ!!』』

 

レジェンドアークは肩から巨大な火球をディライトに向けて放つが、直ぐ様ディシーフが近付きディシーフバリアフォースを発動して防御するが、長くは持たずに粉砕され大きく吹き飛ばされた。

 

『愚ぉかな奴等よぉ…!!私の「正義」に支配されていれば永遠に平和に暮らせていた物をぉぉ…!!』

 

レジェンドアークは、「自身の掌で操られて生きる事が幸福」だと本音を吐きつつ、それを邪魔するディライトとディシーフを罵る。

 

『そんな平和…お断りよ!!』

 

『そうだ!!お前の「正義」は自分の都合しか考えてない。「正義」は、一つの存在によって決まる物じゃない、自分の意志や信念を持って必死に生きる事なんだ!!独り善がりの「正義」を押し付けるお前こそ…悪だっ!!』

 

『貴様…一体何ぁ者だぁっ!!』

 

『お節介教師な仮面ライダーだ!!宜しく!!』

 

ディライトは立ち上がりながらカオスタッチを取り出し、コンプリートカードを挿入し操作し…

 

【RIKUGA!ANOTHER-AGITO!RYUGA!ORGA!

CULLIS!KABUKI!DARK-KABUTO!NEGA-DEN-O!

DARK-KIVA!】

 

【FINAL-KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

ディライトドライバーを右腰にスライドさせバックルにカオスタッチをセットするとカオスフォームへと変化し…

 

『私は…私の正義を信じる…!!本当の正義を…!!』

 

【KAMEN-RIDE…IXA!】

 

ディシーフも自分の本当の正義を信じると、迷いを振り切ったかの様に立ち上がりながらドライバーにカードをスラッシュし、啓介と同じイクサ・バーストモードへとカメンライドした…。

 

『さぁ、光へ導くよ!!』

 

『ほざけ青二才があぁぁっっ!!』

 

レジェンドアークはディライトCFの言葉が勘に触り、肩から先程と同じ巨大な火球を二人に向けて飛ばした。しかしディライトCFは落ち着いた様子でカオスタッチを操作する…。

 

【DARK-KIVA!CHAOS-RIDE…DEMONS-WING!】

 

火球はディライトCFとDイクサに直撃し、跡形も無く焼き払い消滅させた…

 

『フ…ハッハッハッハッ!!!!所詮は脆き人間だったか!!ハッハッハッハッ…グワァァッッ!!?』

 

…かに見えたが、突然レジェンドアークに謎の攻撃が襲い掛かって来る。その正体は…

 

『甘いな…!!そう簡単にやられはしない!!』

 

ダークキバの鎧の色がダークパープル、複眼と鎧の魔皇石の色はダークレッドとなり、マントも同色の悪魔の翼に変わり、頭部の蝙蝠の羽の部分もダークグリーンカラーの悪魔を模したの角となり、胸部の蝙蝠を模した部分も更に翼を広げた状態となり、左腕に装着されたダークパープルカラーの小悪魔を模したスロット型モンスター「デビロット」が特徴のダークキバの最終形態「仮面ライダーダークキバ デモンズウイング」にカオスライドし、飛翔したディライトCFのザンバットソードによる斬撃だった…。

 

『ぅおのれぇぇぇぇっっっっ!!!!』

 

レジェンドアークはDダークキバDWに向けて火球を連続で放つが、何故か避けずに正面に向かって飛翔して来る。すると…

 

『馬鹿なっ!?何故効かんっ!!?』

 

火球は全て彼の身体に吸収されていく。これはダークキバDW特有の「エネルギー系の攻撃を全て自分のライフエナジーに変換し、吸収する」能力である…。

 

『絶滅タイムだ…!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DA・DA・DA・DARK-KIVA!】

 

『黒き絶望の時を永遠に刻め…イーヴィルエクスプロイトクラッシュ!!』

 

『くっ…来るな…来るなああぁぁぁぁっっっっ!!!!ブルアアァァァァッッッッ!!!!』

 

DダークキバDWは止めを刺すべくFARを発動し、自身のライフエナジーを右足に集中させ、翼を広げて飛翔しキックする必殺技「イーヴィルエクスプロイトクラッシュ」を叩き込むと、レジェンドアークの身体に赤いキバの紋章を刻まれ…

 

『ウガアアァァァァッッッッ!!!!力が…力が奪われ…!!』

 

その紋章から赤いライフエナジーが彼に吸収される。しかし、まだ倒すに至らないでいる。が…

 

『行け!!巡!!』

 

突然Dイクサがレジェンドアークの頭上目掛けてディシーフドライバーを構えながら落下して来た。無論ただ落下する為じゃない…。

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…I・I・I・IXA!】

 

『その命!!私が奪い去る!!イクサ・ジャッジメント!!』

 

『ブルアアァァァァッッッッ!!!!』

 

落下速度が合わさった、太陽の様に熱きエネルギーを宿したディシーフドライバーで一刀両断するDイクサのFAR「イクサ・ジャッジメント」が見事レジェンドアークに炸裂し、DイクサはDダークキバDWにより無事キャッチされ地上に降りた…。

 

『何故だああぁぁっっ!!?何故闇のキバ如きに敗れなければならんのだぁぁっっ!?…いや、奴の腕にあるデモン族…それと同等の力さえあればこんな奴に…こんな奴に負ける事…!!この力を授けたのはそういう事だったのかあぁぁっっ!!?創士傀斗ォォォォッ!!!!』

 

レジェンドアークは、今和の際に謎の種族・デモン族の力に着目しつつ、今の自分の力を授けた創士に断末魔の如く恨みを籠めて咆哮しながら爆発した。どうやらこの世界の異変の黒幕は創士が原因だったのだ…。

 

『ラット達が…!!』

 

『皆消えよった…!?』

 

「あれ?何で私こんなダサいシャツ着てるんだろ?」

 

「良かった…これで皆元通…!!」

 

レジェンドアークの消滅に伴いラットFの大軍勢は一瞬で消え去り、黒深子も正気を取り戻した。変身解除した闇影は、それを見て安心するが…

 

「俺は…俺はなんて取り返しの付かない事をしてしまったんだ…!!」

 

同じく正気を取り戻し変身を解除した啓介は、今まで自分の仕出かしてきた事に後悔と罪悪感に苛まれてイクサカリバー・ガンモードをこめかみに当て自害…

 

「駄目!!」

 

「っ痛…!?何故止めるんだ姉さん!?」

 

…しようとしたが、変身を解除した巡の投げたカードが啓介の手に当たってイクサカリバーが落下して未然に防がれた。何故止めたのかと彼女に訴える啓介。

 

「貴方はこれまでアークスによって支配されたこの世界を自分なりに救おうとした。それを貫いていく姿勢が貴方の『正義』であり、彩盗巡の理想の『正義』だった。自分以上に正しい『正義』を貫いていたからこそ、そんな貴方を死なせたくなかったからなんですよ…!!」

 

巡が啓介の自殺を止めたのは家族だからと言うのもあるが、自分より彼の方がより理想の「正義」を貫いておりそんな彼がこのまま死ぬのは忍びないと感じたからだと語る闇影。

 

「…あれが…俺の本当の『正義』だったのか正直解らない…だから俺は探して見る…自分自身の本当の『正義』を…な。」

 

「啓介君!!」

 

「待って下さい師匠…師匠!!」

 

啓介は、今までやって来た事自体本当の「正義」だったのか解らない。だからこそ、自分自身の本当の「正義」を見つけるべく、一人その場を去って行く。恵と健吾の制止の声にも振り返らず…。

 

「やっぱり姉弟なんだな。自分の求める物を探そうとする所がよく似てるよ。」

 

「全然違うわよ。私は自分が欲しいと思うから手に入れようとしているだけ。さ〜て、また新しいお宝でも探そっかな♪例えば闇影君の命とか…何てね♪じゃね♪」

 

巡は、冗談混じりな言葉を口にしながらまた新たな宝を探すべく闇影に投げキッスをしてその場を去っていく…。

 

 

 

へぇ…別々の『宝』を探して行く姉弟かぁ…。」

 

影魅璃は、キャンバスに描かれた各々反対の道を迷い無き表情で進んでいく巡と啓介の絵を見て賞賛する。

 

「それがどんな宝(しんねん)でどんな価値なのかを決めるのは自分自身ですけどね。それより…」

 

「うおおぉぉぉぉっっっっ!!!!俺の聖書があぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 

「う〜ん…う〜ん…!!///」

 

闇影が目をやった先には、洗脳が解け、自身で「聖書」を捨ててしまいorzの体制で泣きながら絶叫しながら落ち込み、ツルギはあられも無い姿を闇影に見られた気恥ずかしさで熱を出して寝込んでいる光景だった。

 

「この二人が元に戻るのは時間が掛かるよなぁ…。」

 

「そうだね…。」

 

二人が元に戻るのは時間が掛かるだろうと、苦笑いしながら分析する闇影と黒深子。その時…

 

「絵が変わったわ!!」

 

何時もの様にキャンバスには次の世界を示す絵が描かれた。その絵は、曇り空から降り頻る雨に打たれて佇んでいるディスティールのそれだった…。

 

「今度は周の世界か…。」




次回は周の世界ですので巡は出ません!!

巡ファン(いるのかな?)の皆様、申し訳ありません!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第27導 咎人ディスティール 止まぬ心の雨

サブタイトルから何のライダー系統かは予想がつきますよね(笑)


―とある世界

 

 

『はぁ…はぁ…!!』

 

とある山奥の河原にて、腰には四つ葉のクローバーの紋章が特徴のベルト「レンゲルバックル」を巻き、深緑の鎧を纏い、紫の複眼と金色の蜘蛛の様な仮面が特徴の戦士「仮面ライダーレンゲル」は、クローバーの形をした先端の刃が特徴の杖「醒状レンゲルラウザー」を構えつつ何故か息を切らしつつ「敵たる人物」を睨んでいた…。

 

『随分粘んなぁ…俺様の射撃かわしたり召喚したモンを全部ブッ倒したり…。いい加減諦めて宝を渡したらどうなんだ?』

 

敵たる人物…ディスティールはそんなレンゲルを見て肩を竦め、宝を差し出す様声を掛ける。ここまでレンゲルが疲弊する原因は、ディスティールの射撃を回避したり、彼のカイジンライドにより召喚された怪人等を倒す等して体力が消耗した為である。

 

『ふざけるな!!厳しい訓練を続けて漸く手に入れたこの力を…みすみす渡してたまるかぁぁっっ!!』

 

【BITE・BLIZZARD】

 

【BLIZZARD-CRASH】

 

『はああぁぁっっ!!』

 

当然敵のそんな身勝手な申し出を受け入れる筈も無く、レンゲルは体力の関係上一気にケリをつけるべくラウザーにクラブ5「ベノムバイト」と同じく6の「ボーラーブリザード」のラウズカードをラウザーの柄尻付近にスラッシュし、大きく跳び上がり冷気を吹き付け、氷漬けにした相手を両足で挟み砕くライダーキック「ブリザードクラッシュ」でディスティールを倒そうとする。が…

 

『やれやれ…折角俺様が最後のチャンスを与えてやったってのに…』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DI・DI・DI・DISTEAL!】

 

『面倒臭ぇ真似させんじゃねぇよっ!!』

 

『なっ…ぐああああぁぁぁぁっっっっ!!!!?』

 

自分の最終警告を聞き入れなかったレンゲルにまたも肩を竦めるディスティールは、ドライバーにカードをスラッシュさせて自身のFARを発動しディメンジョンスコールで彼を返り討ちにした。しかし、レンゲルは身動きこそ取れないが死んではいない。無論、情けを掛けた訳では無い…。

 

『その力、戴くぜ!!』

 

【STEAL-RIDE…R・R・R・RIDER!】

 

『ぐああぁぁっっ!!?あっ…あぁっっ…!!?』

 

ディスティールは戦闘不能となったレンゲル目掛けてスティールライドの水色のエネルギーの矢を放つと、彼の全身に同色の光を包み込みそれがカードの形となりディスティールの手元に収まると、レンゲル「だった」者は10代後半の青年の姿となる…否、元に戻ったと言うのが正しい。このレンゲルのライドカードこそがディスティールの目的(たから)だったのだ…。

 

『返せよ…俺のレンゲルの力…返せ…!!よ…。』

 

レンゲルだった青年は、奪った力を返す様ディスティールに手を伸ばすも、体力が少ない上に大きなダメージを受けたせいで気を失ってしまう。

 

『ま、恨むんだったら自分の弱さを恨むんだな。あばよ。』

 

そんな最後の小さな訴えを無視したディスティールは、突然現れた灰色のオーロラを潜って用済みとなったこの世界から姿を消した…。

 

 

 

「うっし、大量大りょ…!?」

 

オーロラから出て別の世界へと足を踏み入れた周は、先程入手したレンゲルのカードを含めた別の世界で奪ったライダーの力が元となった数枚のカードを扇子状に束ねて顔を綻ばしていると、突然冷たい水滴が彼の頬を伝う。そしてそれは徐々に勢いを増し、やがてはシャワーの様な雨と化す…。

 

「…何時の間にか里帰りしちまってたんだな…。」

 

どうやらこの世界は、彼自身…「ディスティールの世界」だと言う事に今頃気付く周。すると、戦利品(たから)であるカードをカードホルダーにしまい、懐から煙草とライターを取り出し火を付け、それを咥える。

 

「ふぅ…ちっ!相変わらずやな天気だな…!!」

 

口から煙草の煙を吐き出しつつ、曇天から降る雨を見上げる周は、何やらこの空の如く不機嫌な表情でそう吐き捨てる…。

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!数多の平行世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

?―白石家

 

 

「はぁ…今日は一日中ずっと雨かも…。」

 

窓越しに外の様子を眺める黒深子は、一向に止む気配を見せない雨を見て溜め息混じりに憂鬱な気持ちになっていると…

 

「まぁまぁ…これ食べて気持ちくらい晴れ晴れしなよ。」

 

右が赤、中心が黄、左が青く、真ん中に右が白で左が赤い翼の様なワンポイントが特徴のエプロンを付けた闇影は、そんな彼女の気持ちを察し、持っていたいろんな野菜を大量に載せた篭からトマトを取り出して食べる様勧める。

 

「あ、ありがと…て言うか、どうしたのこの大量の野菜は?」

 

「うん、なんか家の外に農園が出来てて、実がなってたからそれで、ね。」

 

黒深子に指摘された闇影は、相も変わらずあっけらかんな返答をする。どうやらこれが闇影のこの世界の役割…「野菜農業家」らしい。

 

「ここが戴問さんの世界なら、今度はあの人の悩みとかを何とかすんのか?」

 

「巡さんの時みたく…でしょうか?」

 

コウイチとツルギは闇影の横から現れつつ野菜篭から胡瓜を一本ずつ取ってかじり、この世界ですべき事は前回の巡同様に、周を…ディスティールを「光へ導く」事なのかを闇影に尋ねる。

 

「その為には先ず、外へ出てこの世界について調べてみないとな…。いんば、いぶよ(皆、行くよ)。」

 

この世界ですべき事は何なのか…それを知るには外で情報を集める必要があると判断した闇影は、嘗て「ボウケンジャーの世界」で共闘した「轟轟戦隊ボウケンジャー」の一人・高丘映士/ボウケンシルバーの様に、野菜篭からセロリを取り出し勢い良くかじり口に含みながら、皆に外へ出る準備を促し行動を開始する…。

 

 

 

―美杉病院・集中治療室

 

 

「……。」

 

周はこの治療室の外から透明の窓から見える、複数本のチューブが繋がれた人口呼吸器の透明マスクを付けた昏睡状態の40代の女性を悲痛な表情で立ったまま見据えている。暫くしてその中に入るべくドアノブに触れようとするが…

 

「……くっ…!!」

 

更に辛い表情をしながら伸ばした右手で拳を握り、中へは入ろうとせずそのまま足早に立ち去って行く。因みにこの病室のドアの横にある患者名が明記されたプレートにはこう書かれていた…。

 

 

 

―"戴問翔子(しょうこ)"―

 

 

 

「…あぁ?まだ降ってんのかよ…クソ忌々しいなぁ…!!」

 

病院出入り口の自動ドアから出た周は、今も尚止む気配を見せない雨を見て「チッ!!」とまたも舌打ちをしつつ濡れるのもはばからずにズボンのポケットに両手を突っ込んでそのまま歩き出す。

 

「何してんだろうね俺様は…。」

 

雨で濡れ普段のパーマがかった髪がストレート風に下りた事に気にも留めず、身体を斜め下に向けて何やら自嘲めいた表情で呟く周。その時…

 

「うわああぁぁっっ!!?逃げろぉぉっっ!!」

 

「きゃあぁぁっっ!!?」

 

「!?」

 

何処からか人々の悲鳴が聞こえた為、直ぐ様その方向へと駆け出す周。

 

 

 

「あ…ああっっ…!!?」

 

『ヒトハ…ヒトノママデイイ…!!』

 

とある広場にて人々が逃げ惑う原因である、梟を模した半獣半人の姿をしたアンノウン「オウルロード・ウォルクリス・ウルクス」が、逃げる際に躓き異形の存在に怯えて動けないでいる男性にじりじりと近付いていた。オウルRの言から、この怯えた男はアギトの力を持つ者である事が分かる。

 

「アンノウンか…どうせなら巡ちゃんクラスのセクシー御姉様か黒深子ちゃんかツルギちゃんクラスの美少女襲ってくれりゃお礼のデートを期待出来たのに…なっ!!」

 

『グオオォォッッ!!?』

 

現場に辿り着いた周は、人の命が懸かっている緊迫した状況にも関わらず、相変わらずの下心丸出しの発言をしながらディスティールドライバーでオウルRに射撃した。その攻撃に怯んだ隙にる男は一目散に立ち去って行った為、オウルRはその邪魔をした周を睨み付ける。

 

「生憎、今日の俺様はかーなーり機嫌が悪い。運が悪かった、と命を諦めるんだな。変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DISTEAL!】

 

周は、自身に出会った事が運の尽きと…自信ありきな台詞を吐きながらドライバーにカードをスラッシュしてトリガーを引き、ディスティールへと変身した。

 

『アギト…ジャナイ…!?ダガ…オマエハキケンダッッ!!』

 

オウルRは目の前の周(おとこ) がアギトとは違う存在(ディスティール)に変化した事に一時戸惑うが、アギトを上回る脅威を本能的に察知し、排除せんと襲い掛かる。

 

『俺様に迫っていいのは美女美少女限定、それ以外はお・こ・と・わ…りっ!!』

 

【ATTACK-RIDE…LASER!】

 

『グガガガァァッッ!!?』

 

ディスティールはまたしても軽口を叩きつつ、余裕綽々とした態度でディスティールレーザーでオウルRに放ち背後に追いやると、カードホルダーから黄色のカードを取り出しディスティールドライバーにスラッシュして読み込む。

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DI・DI・DI・DISTEAL!】

 

『退屈しのぎにすらなんねぇ程弱ぇな…とっとと消えな…!!』

 

『グアアアアァァァァッッッッ!!!?』

 

ディスティールは圧倒的な差を見せ付けつつ、自身のFARを発動しディメンジョンスコールをオウルRの頭上に叩き込み光の輪を浮かばせて爆散させた…。

 

『はぁあ…時間の無駄だったな…ぐああぁぁっっ!!?』

 

敵は始末したが、別段価値のある宝を手にした訳でも、美女美少女からのお誘いの言葉が来る訳でも無い為、実質「ただ働き」をしてしまった事にディスティールが溜め息を吐いていると、背後から彼に何者が攻撃が仕掛けて来た。

 

『フフフ…!!』

 

ディスティールが背後を振り替えると、先程攻撃を仕掛けたであろう右腕を前に翳している半獣半人の隼を模したアンノウン「ファルコンロード・ウォルクリス・ファルコ」と剣や槍、斧等の武器を持った軍隊蟻を模したアンノウン「アントロード・フォルミカ・ペデス」が10体そこにいた…。

 

『成程な…さっきの梟擬きの「アギト狩り」は単なる「餌」。本命はさっきの野郎じゃなくて最初っから俺様だった訳ね。』

 

ディスティールは先程のあの呆気ないオウルRとの戦い…以前からその存在に対する小さな違和感の正体に気付いた。もし先程逃げた男を始末するのなら人気の無い場所で実行すれば確実なのにも関わらず、わざわざ人気のあるこの広場で殺害しようするメリットは無い。

 

そして、敢えてオウルRを倒させたのも戦いが無事に終わった隙を狙いディスティールを始末しようとした…のだが、そうも簡単では無かった様だ。

 

『俺様を狩りたきゃ見た事無い程の美女美少女(エサ)を用意するんだな。そんでもって後悔しな…俺様の首を狙おうとした事をなぁぁっっ!!』

 

ディスティールは、自分を追い詰められた「獲物」だと認識しているアンノウン達を返り討ちにせんと、扇子状となった数枚のカードを片手にドライバーを構えて「狩人」の如く走り出した…。

 

 

 

「一通り回ってみたけど、なかなか情報が見つからないなぁ…。」

 

「欲しい情報ってのは一通り回ったくらいじゃ見つかんねぇさ。俺に良い考えがあるぜ。」

 

一方闇影達は、様々な場所を歩き続けては見たものの、中々周についての有力な情報が掴めないでいた。するとコウイチが、カメラマンと言う職業上、情報収集に手馴れている立場から意見を口にし始めた。

 

「戴問さんってさ、宝の次に大事なのが美女美少女ってのは知ってるよな?」

 

「あんたみたくね。それで?」

 

何やら周とは関係ありそうでそうで無い話をするコウイチ。黒深子はそれを小さく肩を竦め呆れ顔で続きを聞く。

 

「だから、自分についての話は女の子達には言ってそうなんだ。」

 

「…それがどうかしたんですか?」

 

「「!!?」」

 

あまりに勿体付けた話し方に表情には出さないが、ややイラっとした感じで続きを聞くツルギ。闇影と黒深子は、そこまで話した内容からコウイチが何を言いたいのか理解した…。

 

 

 

「即ち!人生の荒波を潜って来た大人達の『オアシス』にその情報を知っている人間がいるかもなんだ!!だがしかし…その為にはある程度の『情報料』が必要になる…!!てな訳で闇影先生!俺に金をk…「「貸すかぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっ!!!!!!!!」」…ブキャアアァァァァッッッッ!!!?」

 

 

 

あまりにウザ過ぎるドヤ顔で「要はキャバ嬢と遊ぶ金クレ」的な事を打開策と力説して金をせびろうとするアホ(コウイチ)に待っていたのは、死神と灰の白鳥からの某やさぐれた兄弟をも凌駕するであろう鉄拳と鉄脚の同時制裁だった…。しかも顔面に。

 

「珍しくまともな意見を言うのかと思ったら…!!」

 

「あんたの頭ん中は一体どうなってんのよ!!?」

 

「りょ…りょうらんらってぇぇ…(じょ…冗談だってぇぇ)!!?」

 

闇影達がボドボト…もといボロボロと化したコウイチを踏みつけたりサソードヤイバーで刺す等、何時ものコントじみたやり取りをしていると…

 

『『グアアアアァァァァッッッッ!!!!?』』

 

突然、複数の怪人の断末魔と共に大きな爆発音が起きた為その方向へ一行が向くと…

 

「情報じゃなく本人が見つかったみたいだな…。」

 

そこには、今先程ディメンジョンスコールにて二体のアントRを葬ったディスティールとそれと対峙するアンノウン達の姿があった。どうやら無意識の内に周本人がいる広場付近にまで歩き着いていたようだ。

 

「何で戴問さんがアンノウン達と…!?」

 

「良くは解らないが、取り敢えず手助けくらいしてやるか…!!」

 

腰にディライトドライバーを装着しつつ、相も変わらずディスティールに対して上から目線な闇影の発言を皮切りに、コウイチとツルギもカードデッキやゼクター等、各々の変身ツールを構え…

 

「「「変身!!!」」」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

【HENSIN!】

 

『キャストオフ!!』

 

【CAST-OFF!】

 

【CHANGE-SCORPION!】

 

『黒深子は安全な場所に避難するんだ!行くぞっ!!』

 

闇影はディライト、コウイチはリュウガ、ツルギはサソード・マスクドフォームから即座にライダーフォームとなり、ディライトが黒深子に離れる様声を掛けるとディスティールやアンノウン達がいる戦いの場へと駆け出す。

 

『てやああぁぁっっ!!』

 

『ぐあぁぁっっ!!?』

 

『この程度の敵に手こずる様じゃお前の力の底は知れてるな、周。』

 

『んだと闇影てめぇ…余計な真似すんじゃねぇ!!』

 

【ATTACK-RIDE…LASER!】

 

ディライトは走り出すと同時に、ファルコンRに跳び蹴りを喰らわせつつディスティールに近付き挑発めいた嫌味を吐く。それにムカッとなったディスティールはディスティールレーザーを彼目掛けて放つ…。

 

『グアアァァッッ!!?』

 

…但し、それはディライトの背後で剣を構えたアントRの心臓に命中し光の輪を浮かべて爆散した。

 

『雑兵程度にレーザーなんか使ってるからそう言われるんだ…よっ!!』

 

『うおわっ!!?てめぇ…仕返しのつも…!!』

 

ディライトは先程のディスティールの戦い方にケチを付けながらライトブッカー・ガンモードで彼目掛けて数発放った。それにかすりそうなった為、彼に食って掛かろうとするディスティールだが…

 

『『グアアアアァァァァッッッッ!!!?』』

 

『お前や巡だけには借りなんか作りたくないからな…。』

 

『チッ…!!』

 

その彼の背後で槍や斧を構えたアントR二体が今の銃撃により爆散した。口喧嘩をしつつも、倒すべき敵はきっちり倒す次元戦士(闇影と周)。尤も、本人達にとっては本気で命を狙ったが、それが偶々敵に当たっただけだったり、借りを返す程度の結果に終わっただけである。

 

『コイツラ…イッタイナンナンダ…!!?』

 

『ただの腐れ縁さ。縁切りたいけどねっ!!』

 

『ナニッ…ハヤッ…ガッ!ギッ!!グアァァッッ!!?』

 

蹴飛ばされたファルコンRは、ディライトとディスティールの味方同士で攻撃し合い、それにより敵を撃破する…と不可解な戦い方に立ち上がりながら困惑していると、ディライトがそれに答えつつ一瞬で自身の眼前に現れて、ソードモードに切り換えたライトブッカーの連撃を受けて背後によろめく。

 

『偶にはこの必殺技にしてみるかな。』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DE・DE・DE・DELIGHT!】

 

『これで…終わりだぁぁっっ!!』

 

『グガアアァァッッ!!?』

 

ディライトはドライバーに自身のFARを発動させると、正面に十枚の巨大なライトオレンジカラーのライドカードヴィジョンが円上に現れ、ガンモードに切り換えたライトブッカーの引き金を弾くと、カードヴィジョンと同色の強力エネルギー波「ディメンジョントリガー」が放出し、ファルコンRを一瞬で焼き尽くした…。

 

『俺等もケリつけるぞ、ツルギちゃん!!』

 

【FINAL-VENT】

 

『グオォォォォン!!』

 

『はい!!クロックデュアル!!』

 

【CLOCK-UP!】

 

『そして、ライダースラッシュ…!!』

 

【RIDER-SLASH!】

 

ディライトとディスティールが敵を撃破しているのを見て、リュウガはファイナルベントカードを発動してドラグブラッカーを召喚、サソードはクロックデュアルにてクロックアップ空間に突入と同時にサソードゼクターを操作して必殺技のプロセスを行い…

 

『はあぁぁ…でりゃああぁぁっっ!!』

 

『ライダースラッシュ…!!』

 

『『『『『グガアアアアァァァァッッッッ!!!!!?』』』』』

 

【CLOCK-OVER!】

 

リュウガは召喚したドラグブラッカーの放つ黒炎を纏い、飛び上がりドラゴンライダーキックで二体のアントRを撃破し、サソードはクロックデュアルによるスピードダッシュをしつつ、紫色のタキオン粒子のエネルギーを纏ったライダースラッシュで三体のアントRを居合い斬りの如く瞬時に斬り刻み、彼女がクロックアップ空間から抜け出たと同時に爆破する。

 

 

 

「さて、この世界について色々話して貰おうか。」

 

「…てめぇに説明してやる義理はねぇ。大体誰が助けてくれなんて頼んだんだよ…!!」

 

変身を解除した闇影は、当初の目的通りこの世界についての情報を周に尋ねるが、彼を毛嫌う本人は話す気は無いと拒否するばかりか、助太刀をした事を非難しつつ踵を返してその場から立ち去ろうとする。

 

「なら質問を変えよう…お前はアギトなのか?」

 

「……!!」

 

しかし、簡単に食い下がらない闇影の放った「アギト」と言う単語を聞きその場で足を止める周。

 

「アンノウンはアギトの力を持つ人間の命しか狙わない、且つそのアンノウンはお前を襲って来た…ならお前はディスティールになる前はアギ…「下らねぇな。」」

 

先程の戦いの一部始終を目にしていた闇影は、それらが「周=アギト能力者」だと確信して言葉を続けるが、周はそれを一蹴し、振り返り…

 

「人の過去ほじくり回して楽しいか?前々から思うけどよ…そのお節介、見ててマジで鬱陶しいから自重しな?」

 

自身の事について触れようとした事を疎ましく感じた周は、彼の知りたい情報を教えるどころか、彼の「毎度のお節介」は見ていて不愉快だと罵る。

 

「貴方ねぇ…いい加減に…!!」

 

「よせ黒深子。」

 

闇影からの質問に対する周の態度に腹を立てた黒深子は前に出ようとするが、右手を真横に伸ばす闇影によって制止させられる。そして、何故か肩を竦めながら小さく溜め息を吐き…

 

「確かにそうだな…お前みたいな自己中心的な人間を気に掛けようとした事自体間違ってたよ。あのままアンノウンに殺された方が良い薬になったかもな。」

 

「てめぇ…今ここで死にてぇみたいだなっ!!」

 

明らかに侮蔑、またはそれ以上の発言で挑発する闇影。流石の周も此処まで言われて黙っている筈も無く、顔を真っ赤にしながらづかづか近付き、闇影の胸元を勢い良く掴んだ。

 

「だっ、戴問さん落ち着いて!!」

 

「闇影、お前も言い過ぎだぞ!!」

 

「ここは謝られた方が…!!」

 

闇影と周(このふたり)が掴み合いになれば喧嘩どころか、殺し合いに発展しかねない…。そう察した黒深子達は一方を抑えつつ宥め、一方に詫びさせる様促していると…

 

「なっ…これは…!?」

 

例の灰色のオーロラの壁が現れ、彼等を包み込みこの場から消し去る…否、別の場所へと強制移動させた…。

 

 

 

「うわわわぁぁっっ!!?ここここ…ここ!!う、海…海がぁぁっっ!!?」

 

オーロラから抜けると、足下が青く広々とした大海原だった為、「落ちる!!落ちる!!」と必死に跳び上がり、両手で空を泳ぐ真似をしてテンパるコウイチだが…

 

「落ち着けコウイチ。これは異空間だ。」

 

「へっ…?」

 

対してここが本物の大海原ではない事を見抜いている闇影は、冷静に彼をツッコむ。確かに足下は海そのものだが、それ以上下には落ちない為、まるで水面に立っているかの様な感覚だった。

 

「大した空間だな。」

 

「こんな妙な空間に連れ出して一体何の用なんだ…?紅蓮!」

 

「「「えっ…?」」」

 

闇影の発言を聞き黒深子達が背後を振り向くと、この妙な空間へと移動させた張本人…紅蓮がそこに立っていた。周も然程驚いていない事から、彼も紅蓮の仕業だと見抜いている様だ。

 

「ディライト…」

 

「『貴様は死神、世界を焼き尽くす存在』、だろ?みなまで言うな。」

 

紅蓮が言い切る前に彼女の自分に対する普段の第一声を右手を前に出し、ややうんざりした表情で先に言う闇影。しかし、紅蓮の言葉は…

 

「ディスティールに関わるな。」

 

「やっぱりな…ディスティールに関わるなって…えっ…!?」

 

「……。」

 

何時もの罵りでは無く、ディスティール…周への干渉を禁じろという警告めいた物だった。それを聞いた闇影は眉を顰め、周は跋の悪い表情をして目線を下に向けた。

 

「…出来ればそうしたいけど、こいつが俺の周りをウロウロして来るんだよ。」

 

「貴様がディスティールに関われば、そ奴は勿論、世界にとって厄介な事が起き得る。話は理解したなら警告に従え…良いな?」

 

周の方が自分に近付いて来る、と肩を竦めて遠回しに彼へ毒づいた発言をしつつ反論する闇影だが、それを無視し一方的に警告に従う様釘を差し、現出した灰色のオーロラを潜りこの空間から姿を消し、それと同じに闇影達は元の場所へと自動的に戻る…。

 

 

 

「はぁ…勝手な奴だな…。」

 

「……。」

 

「おい。紅蓮がああ言ってるって事は、やっぱりお前は…「…けぇな…。」?」

 

紅蓮の一方的な物言いに溜め息を吐く闇影は、未だに目を伏せて黙する周に先程の会話の流れで彼がアギトなのかを再び尋ねるが…

 

「…しつけぇなつってんだよ!!さっきからアギトアギトって馬鹿の一つ覚えによぉっっ!!俺様はっ……うおっっ!!?」

 

あまりの執拗な同じ質問に、わなわな身体を震わせたと思いきや、力強く拳を握り勢い良く顔を上げつつ、声を荒げて激怒する周。そのまま言葉を続けようとするが、突然何者かからの攻撃が襲い掛かる。

 

『ヒトハ…ヒトノママデイイ…!!』

 

「さっきより数が多い…!!」

 

「ちっ…こっちにもしつけぇ奴が来やがったな…!!」

 

攻撃したのは一体のアントRだった。が、その数はなんと30体であり、その軍勢に立ち向かうべく闇影と周はディライトドライバーとディスティールドライバーを構えようとするが…

 

 

『やれやれ…まだ自分がどういう立場なのか解って無いみたいだね。』

 

 

 

「「!!?」」

 

突如、空中から少年の様な口調をした透き通った翼を広げ、ダークレッドの丸い複眼のくすんだ水色の蜻蛉を模した異形が舞い降りた。その存在に平伏すアントR達の姿勢から見て、恐らく彼等より上位のアンノウンの様だ。

 

「お前がこのアンノウン達の頭目だな。」

 

『頭目だなんて古臭いよぉ…色々言い方があるでしょ〜。リーダーとかキャプテンとか色々あるんだからさぁ…。』

 

蜻蛉の異形…「ドラゴンフライロード・インテゲル・リヴェルラ」のどこかおどけた様な口調で喋り出すが、闇影達はその内面に秘められた底知れぬ「何か」を感じさせる為そう容易く警戒心を緩めない。緩めるつもりも無いが。

 

『まぁそれはそこに置いといて…そこの「半端な存在」の命を盗るからちょっと退いてくれる?』

 

「……!!」

 

ドラゴンフライRは、右人差し指で周を「半端な存在」だと罵倒しつつその命を奪う邪魔はするなと、闇影達に悪びれる事無く軽々しく命じる。

 

「…それを『はい』と素直に答えるとでも思っているのか…!?」

 

当然そんな事を承服する筈も無く、闇影はディライトドライバーを腰に装着し、コウイチやツルギも変身ツールを構えている。

 

『そうしてくれれば僕もあまり「面倒な仕事」をしなくても済むんだけどなぁ〜。』

 

「なら、それをさせなくするまでだ!変身!!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

邪魔をすればお前達も消さざるを得ない…そう遠回しに発言するドラゴンフライRを倒すべく、闇影はドライバーにカードを装填し、ディライトへと変身した。

 

「「変身!!」」

 

【HENSHIN!】

 

「キャストオフ!!」

 

【CAST-OFF!】

 

【CHANGE-SCORPION!】

 

コウイチもリュウガへ、ツルギは初めから全力で戦うつもりなのかサソード・マスクドフォームに変身すると、即座にライダーフォームへとキャストオフした。

 

【SWORD-VENT】

 

『その舐めた態度…教育し直してやるっ!!はあぁぁっっ!!!!』

 

ディライトはライトブッカー・ソードモード、リュウガはドラグセイバー、サソードはサソードヤイバーで欠伸をしつつ腕を回す等、余裕な態度を取るドラゴンフライRに「教育」すべく勢い良く走り出し斬り掛かろうとする。

 

『『『グルァァァァッッッッ!!!!』』』

 

しかし、それを簡単に許さないとアントR達がドラゴンフライRの前を庇う様に割り込みディライト達に襲い掛かる。

 

『くそっ!!邪魔だぁぁっっ!!』

 

『グアッッ!!?』

 

『こうも多いと厄介だぜ…おらぁぁっっ!!』

 

『同感です…はあぁぁっっ!!』

 

『『グアァァッッ!!?』』

 

ディライト達はやや苛立ちながらもアントR達を斬り伏せて行く。が、如何せん数がかなり多く、中々本命のドラゴンフライRまで辿り着かないでいる。

 

『おい周!!ボケッとしてないでお前も変身しろっ!!』

 

「……。」

 

ディライトは、先程からその場で呆然と立ち尽くしている周に変身して戦うよう怒号を飛ばす。しかし、その声は彼の耳に届いていない…。

 

『はぁぁっっ!!おい!!返事しろこのロリコン木偶の坊!!せいやぁぁっっ!!』

 

「…はっ…誰がロリコン木偶の坊だって!!?このクソ不純異性交遊死神がぁぁっっ!!変身!!」

 

【KAMEN-RIDE…DISTEAL!】

 

ディライトからの悪口での怒鳴り声が聞こえたのか、漸く我に返った周はそれに対して悪口で返しつつドライバーを構え、ディスティールに変身した。

 

『虫相手ならこいつで行くか!!』

 

【KAMEN-RIDE…DARK-KABUTO!】

 

【KAMEN-RIDE…LENGEL!】

 

ディスティールは、アントRやドラゴンフライR等昆虫をモチーフにした相手に倣って、ダークカブトとこの世界に戻る前に奪ったレンゲルを召喚した。

 

『でもって、こいつで終いだ…!!』

 

【ATTACK-RIDE…CROSS-ATTACK!】

 

【BLIZZARD】

 

『……!!』

 

『『『ガッ…ガァァッッ…ガッガッ!!!?』』』

 

【CLOCK-UP!】

 

『クロックアップ…!!』

 

更に召喚したライダーの技、必殺技を発動させるクロスアタックを使用すると、レンゲルはレンゲルラウザーにボーラーブリザードをラウズし、そこから発する吹雪にてアントR達を凍結させ、ダークカブトはクロックアップを起動し、それによる高速攻撃で敵を一気に粉砕、爆散させた…。

 

『ざっとこんなモン…ぐあぁぁっっ!!?』

 

アントRの軍勢を一気に殲滅し、余裕綽々とドライバーをくるくる回しているディスティールだが、突然爆煙の中から見えざる「何か」が直撃し、ダークカブトとレンゲルを爆散させ、彼の変身を解除させた。

 

「『『戴問さんっ!!!』』」

 

『残念でした!兵隊を倒したまでは良かったけど、僕にとっては好都合なんだ。』

 

『今の攻撃は何なんだ…!?全く何も見えなかったぞ…!!』

 

ディライトは、先程ディスティールを倒したドラゴンフライRの謎の見えざる攻撃に仮面の下で眉を顰める。

 

『アギトとは違う戦士の召喚…半端な存在にしては面白い力を持ってたよね。』

 

『半端な存在…?』

 

『ああ、ディライト君は知らないみたいだね。こいつの「正体」をさ。』

 

見えざる攻撃をまともに受けたせいか、その場で倒れている周にじりじり近付くドラゴンフライRは、ディライトに先程口にした「半端な存在」について明かそうとするが…

 

「や…めろ…俺様…の…プライバシーを…勝手に…明かそうと…してんじゃ…ねぇ…!!」

 

虫の息ながら、周はそれを阻止すべく、近くに落ちたディスティールドライバーに手を伸ばし再度変身しようとするが、ドラゴンフライRにそれを奪われしまう…。

 

『ふ〜ん…どうやらこのボウガンが原因みたいだね。』

 

『ドライバーが原因…?一体何…がっ…!!?』

 

ディスティールドライバーの存在がドラゴンフライRの言う「半端な存在」と何の関係があるのか…そう考えているディライトの答えは目前の光景で直ぐに解る事となる…。

 

 

 

「アッ…ガッ…ガアァァッッ…!!グッ…グゥッッ…!!!?」

 

突然立ち上がった周は、苦しむ様に獣の様な唸り声を上げながら全身から血の様に紅く禍々しい光を放ち…

 

 

 

『グルアアアアァァァァッッッッ!!!!』

 

 

 

光が更に輝きを増すと同時に、背中からダークブルーの禍々しい眼の様な模様が付いたダークレッドの8枚の禍々しい形の剣の様な巨大な翼が扇状に勢い良く突き出し、両肩、足先からはダークブルーの嘴を模した爪が突起し、腰の中心にはダークパープルの賢者の石が埋め込まれており、6つの黒い複眼をした全身がダークレッドの孔雀を模した謎の存在「アンギルス・パヴォネ・プルーバー」へと変貌し、空へ飛翔する…。

 

『しゅ…う…!!?』

 

『アッハハハハハハハハ!!!!これで解ったでしょ!?こいつはアギト、いやギルスでも無ければ僕達と同じアンノウンですら無い…どっちつかずの中途半端な存在だって事がさぁっ!!!!』

 

ディライト達は、戴問周「だった」アンギルスPPと言う、アギトやギルス…ましてやアンノウンでも無い未知の存在にただただ驚愕していた。ドラゴンフライRの嘲笑も耳に入らぬ程…。

 

『さ〜てとっ!!こんな化物(あぶないやつ)を放ったからしには出来ないからさ…』

 

ドラゴンフライRは、アンギルスPPを野放しには出来ないと口にしながら彼が持っていたディスティールドライバーに目をやり…

 

『ま…まさかっ!!?』

 

『そのまさかさ!!折角だからこいつの持ってた力で楽にしてあ〜げよっ!!』

 

『止めろ…!!』

 

【KAMEN-RIDE…】

 

『へ〜んしんっ!!えいやっ!!』

 

『止めろぉぉぉぉっっっっ!!!!』

 

 

 

【DISTEAL!】

 

ディライトの悲痛な叫びも虚しく、ドラゴンフライRはディスティールドライバーにカードをスラッシュし、ダークレッドの複眼に背中には透明の翼、「カブトの世界」のライダー・仮面ライダードレイクの胸部に似た、蜻蛉を模した形状となったライドプレートが特徴の「ディスティールフォルム」へと変化した…。

 

『さあ…神罰決行だっ!!』

 

『グルアアアアァァァァッッッッ!!!!』

 

ドラゴンフライRDFは、翼を広げてアンギルスPPに突進するかの様に上空を飛翔し、アンギルスPPもまた、それを迎え撃つかの様にまたも唸り声を上げつつ、翼を展開、滑空して特攻する。何故、周はこの力を得てしまったのか?そして、戴問翔子とは何者なのか?この曇天の如く隠された真実(こたえ)は、彼のみぞ知る…。




と言う訳で、周はただの人間では無かったのです。

次回、その理由が明らかとなります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第28導 (おの)が居場所の為に…覚醒(めざ)めし混沌の魂!

皆さん、大変お待たせしました!!漸くディスティール編後半開始です!!タイトル通り周は…その目でご確認下さい!!


『グルアァァァァァァァァッッッッッッッッ!!!!!!!!』

 

空中にて、ディスティールドライバーを奪われたが為にアギトでもギルスでも、増してやアンノウンでも無い謎の存在…アンギルス・パヴォネ・プルーバーへと変貌した周は、ドライバーを奪いその力を纏ったドラゴンフライロード・インテゲル・リヴェルラ・ディスティールフォルムに攻撃を仕掛けるべく、翼を広げて勢い良く突進するが…

 

『能無しに突っ込むとかまるで獣みたいだね。そんな単純なやり方で倒せる程、僕は甘くないよ!』

 

【ATTACK-RIDE…LASER!】

 

ドラゴンフライRDFは、そんな単調過ぎる彼の攻撃方法を文字通り「獣」だと揶揄しながらドライバーにカードをスラッシュし、ディスティールレーザーを直撃させた。しかし…

 

『グッ!グゥッッ…グルアァァァァッッッッ!!!!』

 

『うっ…嘘でしょ!!?モロ直撃してるのに…ぐああああぁぁぁぁっっっっ!!!!?』

 

攻撃をまともに受けたにも関わらず、アンギルスPPはそのままドラゴンフライRDFに接近して彼の肩を掴み、一気に地上へと下降して地面が抉れる程押し付け続ける。

 

『がっ!ぐっ!!ぐぅっ!!!このっ…離…せぇぇっっ!!』

 

『グガァァッッ!!?』

 

アンギルスPPの拘束から逃れるべく、ドラゴンフライRDFはディスティールドライバーで銃撃を放ち、どうにか彼から離れる事が出来た。両者睨み合うも、アンギルスPPは未だに唸り声しか上げないもののダメージは然程少なく、ドラゴンフライRDFは装甲の一部が破損、息もやや絶え絶えと肉体的ダメージも大きくどちらが有利なのか一目瞭然だ。

 

『はぁ…はぁ…ヒトの癖に…それも僕達アンノウンの力と憎きアギトの力を持った半端者の分際でこの僕に傷をつけて…もうマジムカついた…お前みたいな奴は僕の制裁を受けてさぁ…!!』

 

アンギルスPPに…人間でもアギトでも、ましてアンノウンですらない相手に身体や自尊心プライドを傷つけられた事に憤るドラゴンフライRDFは、苛立ちながらドライバーにカードをスラッシュし…

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DI・DI・DI・DISTEAL!】

 

『とっとと死ねよぉぉっっ!!』

 

口調が荒々しくなり、彼への明確な殺意を吠えながらFARを発動し、通常のそれとは違う禍々しい形をした黒がかった水色の天使の翼を模した円状のエネルギーの中心から同色のディメンジョンスコールを彼の頭上へと放つ…。

 

『くっ…周!!』

 

その様子を見ていたディライトは状況を完全に把握をしていないものの、アンギルスPP…周が危険である事だけを理解し、彼を守ろうとカードを取り出そうとするが…

 

『オオオオォォォォッッッッ…!!!!』

 

アンギルスPPが両腕を頭上に掲げると、ディメンジョンスコールの円状のエネルギーより更に上の空間に、三重になったダークレッドの禍々しい形をした複数のアギトの紋章で形作られた円状のエネルギーを発生させると…

 

『ばっ…馬鹿なっ!!?僕の技が!!?』

 

ドラゴンフライRDFが発動したディメンジョンスコールのエネルギーは全てその円の中心に吸収されてしまい、その中心にあの禍々しいアギトの紋章が浮かび上がる…。

 

『オオオオォォォォッッッッ…ガァァァァッッッ!!!!』

 

アンギルスPPが両腕を勢い良く降ろして地面が砕ける程叩き付けた瞬間、円の中心から無数のダークレッドの極太のレーザー「ブラッジメント・レイン」が地上に降り注ぐ…。

 

『不味いぞ…皆!!早くここから離れるんだっ!!』

 

ディライトはブラッジメント・レインの未知なる威力に危機を感じ、仲間達に今居る場所から攻撃の範囲外に直ぐ様離れる様大声で呼び掛け、自身も急いでそこから避難する…。

 

『何だ何だ…うおあわああぁぁっっ!!?』

 

「『きゃああぁぁっっ!!?』」

 

『『『『グギャアアアアァァァァッッッッ!!!!?』』』』

 

ディライトからの突然の避難の警告に、リュウガは慌てふためきながらも滑り込む様に伏せて、サソードも黒深子を抱え悲鳴を上げながらどうにか避難出来たが、アントロードの軍勢は逃げ遅れてしまい直撃、消滅しその犠牲となってしまう…。

 

『ふぅ…み、皆…大丈…こ…これは…!!?』

 

「え…ええ…何と…か…!!?」

 

『闇影こそ大丈夫なん…か…!!?』

 

『私も無事で…す…!!?』

 

攻撃が止んで安全だと確信したディライトは仲間達の安否を心配しながら立ち上がり、彼等も無事だと返事しようとするが…

 

『なんて威力なんだ…何もかも滅茶苦茶だ…!!』

 

先程まで居た場所は、黒がかった炎や爆煙が上がり、地面も無数の亀裂やクレーターの如く無数の陥没した跡が残る等、まるで廃墟と化してしまう程…。そんな光景を目の当たりにしたディライト達は、ブラッジメント・レインの威力にただただ絶句するしかなかった…。

 

『そっ…そうだ、周は…あいつは何処なんだ!!?』

 

我に返ったディライトは、この燦々たる光景を作った原因であるアンギルスPP…周を探そうと首を振って辺りを見回していると…

 

『……。』

 

『何だそこに居たんかよ…お〜い戴問さん、流石にこれはやり過ぎなんじゃ…

『待てコウイチ!!迂闊に近付いたら…!!』

 

微動だにせず仁王立ちの状態で見つかり、今の技について苦言を漏らしながら一先ず戦いが止まった為か、警戒せずスタスタと彼に近付くリュウガ。しかし、それは大きな間違いだった…。

 

『グルアァァァァァァァァッッッッッッッッ!!!!!!!!』

 

『なっ…ぐああぁぁっっ!?』

 

『コウイチ!!』

 

突然目覚めた肉食動物の如く、その鋭い爪を勢い良く振り下ろし不用意に近付いた獲物(リュウガ)を引き裂くアンギルスPP…。そう、戦いは未だ終わっては居ない。彼が元の戴問周(すがた)に戻る迄は…。

 

『グルァゥッッ!ガヴルッッ!!ガアァァァァッッッッ!!!!』

 

敵アンノウンの姿が見えないにも関わらず、虚空で爪を幾度も振るったり、広場にあるベンチやゴミ箱等を乱暴に投げ飛ばして破壊したり、何故か時計の柱に自ら頭を何度もぶつけたりする等、アンギルスPPの暴走は止まらない…。

 

『っくっ…ふふふ…そら見ろ…ヒトなんかが使えもしない強大な力を持つからそうなるんだ…!!』

 

『!!あいつ…まだ生きて…!!』

 

『今日の所は一先ず退いてあげるよ…。ま、このまま僕が手を下さなくてもそいつが勝手に死んでくれるかもしれないだろうけどね…。』

 

唖然としているディライトの背後から、ブラッジメント・レインの直撃こそ免れたが、その余波により装甲が更に破損してボロボロの状態となったドラゴンフライRDFが立ち上がり、アンギルスPPに冷ややかな言葉を吐く。直ぐに戦闘体勢を取るディライトだが、彼は一時撤退の意を示しながらも意味深な言葉を投げ掛ける…。

 

『どういう事だ…!?』

 

『直に解るさ…強大過ぎる力がヒトを蝕んでく様をね…。』

 

『待て!!』

 

そう告げたドラゴンフライRDFはディスティールの力を得たのか、あの灰色のオーロラを発生させその中に入り、オーロラと共に消え去った…。

 

『あの力が周を蝕む…?一体どういう…!!』

 

ディライトは手に顎を添えながら、ドラゴンフライRDFが最後に残した言葉の意味を思考する。しかし、その疑問は直ぐに解明される。アンギルスPPの様子に目をやった瞬間に…。

 

『ガァァァァッッッ!!!!グルァゥッッ!!グルアァァァァァァァァッッッッッッッッ!!!!!!!!』

 

先程まで周囲の公共物を破壊したと思えば、今度は自身の胸部や喉を血が流れる程引っ掻き、またも時計台の柱に頭をぶつけたりと自傷行為をしたり、再び暴れ狂ったりと不可解な行動を取り続けるアンギルスPP。そして時間が経つ程、まるで毒を呷ったかの様に苦しげな表情となる…。

 

『何やってんだよ戴問さん!!いい加減やめ…うわぁっっ!?』

 

『落ち着いて下さ…きゃあっっ!?』

 

そんな彼を制止させるべく宥めようとするリュウガとサソードだが、彼等の言葉が通じて無いのか、腕で勢い良く振り払い再び同じ行動を取り始める。

 

『!!そういう事か…。取り敢えず、このままあいつを野放しには出来ん…!!』

 

ドラゴンフライRDFが去り際に放った言葉の意味を理解したディライトは、自傷行為や暴走を繰り返すアンギルスPPの動きを抑えるべく、何故かディライトドライバーを外して変身を解除しそれを彼の腰目掛けて投げ付け器用に巻き付けさせると…

 

『ウォッ!!?ウッ…グッ…グオオオオォォォォッッッッ…!!?』

 

ディライトドライバーの中心からライトオレンジの光が輝くと、徐々に落ち着きを取り戻し元の姿へ戻ると同時に糸の切れた人形の如く倒れ込む周…。

 

「ふぅ…何とか元に戻ったか…。」

 

「ね、ねぇ先生…どうしてディライトのベルトを巻き付けたら戴問さんが…」

 

「話は後だ、早くこいつを家まで運ぶよ。」

 

「う、うん…。」

 

黒深子は何故周がディライトドライバーの力により元の姿に戻れたのか闇影に尋ねようとしたが、周の手当てが優先させる彼の言葉に遮られ、一先ずそれに従い仲間と共に自宅へ帰宅する…。

 

 

 

「恐れていた事が起きてしまったか…。このままではディスティールも…!!おのれ…ディライト…!!」

 

その直後に灰色のオーロラが発生し、そこから紅蓮が現れ、周の異変の原因は闇影にあると一方的に思い込み歯を軋ませて彼を憎み、再び発生させたオーロラの中に入り、未だ炎に包まれた現場から立ち去っていく…。

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!数多の並行世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

 

―白石家

 

 

「これでお終い…っと。暫く此処で休ませておきましょ。」

 

「帰ってきて早々にすいません。」

 

「気にしないで。周さんは闇影さんのお友達、そして闇影さんは黒深子の先生…娘がお世話になってる方のご友人を助けるのは当たり前でしょう?」

 

帰宅後、先の戦闘での怪我の手当てを済ませた周をソファーに寝かせ毛布を掛け、当面は彼をこの家で休息を取らせる様勧めた影魅璃に、闇影は申し訳なさそうな表情で面倒事を持ち込んだ事を彼女に詫びる。しかし、当の本人は娘の恩人である闇影の友人(だと思っている)である周を救う事に何の疑いも無く微笑む。

 

「いや、こいつとは別に友達じゃないんですけどね…。」

 

「にしても、まさか戴問さんがあんな姿になるとは正直驚いたぜ…。」

 

「アギトやギルスは疎か、アンノウンですら無い存在。ならあの姿は一体何なのでしょう…?」

 

「そして苦しみながら暴走を繰り返してたけど、先生のベルトがそれを防ぎ元の姿に戻した…。どういう事なの?」

 

影魅璃に周とは友達だと思われ困り顔で否定する闇影に、黒深子達は先の戦闘で起きた周の異変についての疑問を彼に尋ね出す。

 

「俺もあの姿が何なのかは解らない。だが、あの時周が苦しんでいたのは、恐らくアギト、若しくはギルスとアンノウン…その相反する力を持っていたが故に、激しい拒絶反応が起きてこいつの身体を傷付けていたのかもな…。」

 

闇影自身も何故周がアンギルスPPの力を得たのかは見当が付いてはいないが、彼があの様な暴走を起こした理由については、光アギトと闇アンノウン…その敵対する二つの力が拮抗してその生命力を削っていたのが原因だと推測する。

 

「そして、その二つを上回る力…ディスティールの力が今まで制御していたのだろう。だが、それをあのアンノウンに奪われたせいでまた制御出来なくなってしまった…。ならばそれと同じ力で防ぐしか無いと思い、ああしたんだ。」

 

アギトやギルス、そしてアンノウンを超えた力…次元ライダーの力であるディスティールドライバーが周の力をこれまで制御していたのだが、ドラゴンフライRにより強奪された…。さすれば同等…それ以上の力で制御するべく、闇影はディライトドライバーを装着させたのだと説明する。

 

「そうなんだ。でも、それじゃ先生が変身出来なるんじゃ…。」

 

「大丈夫だよ黒深子。それより、周(こいつ)の力を持ってしまったあのアンノウンを何とかしないと…」

 

周が元に戻った理由に納得した黒深子は、それと引き換えに闇影がディライトに変身不能となってしまった事に懸念するが、当の本人は「心配ない」と安心させ、ディスティールと化したドラゴンフライRを倒すのが先だと口にした時…

 

「…ん…ぅう…んっ…!!?」

 

「あ!気が付いたみたいね。」

 

「影魅璃…さん…?此…処は…んぷっ!?///」

 

「あぁ…まだ起きちゃ駄目ですよ。此処は私の家、周さん大怪我で倒れちゃって闇影さん達が運んできたんですよ。」

 

漸く目が覚めた周は怪我の痛みに耐えて立ち上がろうとするが、近くにいた影魅璃の豊満な胸に顔を勢い良く突っ込む形で抱き止められ再び横になる。

 

「全く…散々暴れ回って皆に迷惑を掛けた挙げ句、目覚め始めにセクハラか。良い気なもんだな。」

 

「…んだとてめっ…んぷぅっ!!?///」

 

「まだ寝てなきゃ駄目ですよ。」

 

不可抗力とは言え、影魅璃の胸に顔を突っ込ませた周の所業セクハラに不快を感じて顔を顰めながら悪態を吐く闇影。それに癇に障った周は彼に掴み掛かるべく再び起き上がろうとするが、またも影魅璃に止められ、胸に顔を突っ込ませる事となる。

 

「…ぷはぁっ!!///チッ…影魅璃さんのおっぱいに免じて今は勘弁してや…これはディライトの…!!?」

 

影魅璃の胸から顔を離して横になった周は、舌打ちしながら今の「To Love る」なおいしい思いに怒りを抑えると、自分の腰にディライトドライバーが巻き付けられている事に漸く気付く。

 

「絶対に外すなよ。それがお前のあの凄まじい力を抑えているんだからな。」

 

「…なら今の俺様はてめぇの力に守られてるって訳かよ。くそっ…!!」

 

ドラゴンフライRにディスティールドライバーを奪われた上、ディライトドライバー…闇影の力によりアンギルスPPの力が制御されている今の自分の現状に苛立つ周は、三度立ち上がりリビングの出入り口に向かう。

 

「何処へ行く?」

 

「決まってるだろ。あのアンノウンのガキから盗られたモン取り返すんだよ。」

 

「勝手な行動は慎め。今のお前じゃディスティールの力を得たアンノウンは疎か、雑兵レベルの怪人すら倒せん。影魅璃さんの御好意で暫くはこの家で大人しくしてろ。」

 

「これ以上てめぇのお節介は受けたくねぇつってんだよ!!あのアンノウンは…あのアンノウンだけは俺様の手でブッ倒す!!それが俺様自身の汚名返上になる!!」

 

ドラゴンフライRDFからディスティールドライバーを奪回するべくこの家を出ようとする周に、闇影はまたも悪態を吐いて制止するも、周が自分から力を奪った敵を倒す事が盗賊としての矜持を守る事となると、声を荒げて反論し、白石家を後にする。

 

「はぁ…また俺達に迷惑を掛ける気か、あいつ。」

 

「どうするの先生?」

 

「あのまま放っておいたらまたさっきみたいな事になりかねないからな。行ってくる。」

 

意地でも自分の手は借りないと言い放ち、怪我も碌に治っていないにも関わらず単身で敵の下へ赴こうとする周の行動に額に手を当てて溜め息を吐く闇影は、先程の様に彼が暴走する恐れを懸念してその後を追って行く…。

 

 

 

『ふぅ…やっと体力が戻ったか。さ〜て!そろそろアギトハンティングの続きをしましょっか♪むんっ!!』

 

とあるビルの屋上にて、先の戦闘の傷が完全に癒えたドラゴンフライRDFは、アギトの力を持つ人間の抹殺の続行を「アギトハンティング」と称す等、まるで中断したテレビゲームの再開を楽しむ子供の様に喜々とした表情をしながら寝転がった状態から飛び上がる様に立ち上がり…

 

『『『グロロロォォォォッッッッ…!!!!』』』

 

『あの中途半端男から奪った力の内容も大体解ったからそれを試してみたいしね…!!』

 

身体のライドプレートから無数のアントロードを生みだし、回復の間に奪ったディスティールの力を学び、それを試しがてらに彼等を率いてビルの屋上から飛び降り、アギトハンティングを開始する…。

 

 

 

「何処までついてくんだ!!ストーカーかてめぇは!?」

 

「ストーカーはお前と巡の方だろ。またさっきみたいな暴走ことが起きないとも限らないし、素のままのお前自身の性癖も危ない、寧ろそっちが心配だ。」

 

しつこく自分の後ろについて回る闇影に怒鳴る周に、闇影はまたも罵倒に近い憎まれ口を叩き、挙げ句彼の悪い性癖(年齢問わず美女美少女好き)についてまで懸念する等喧嘩を売る発言をする。

 

「おい…いい加減俺様に対する口の利き方を気を付けねぇとマジで殺…!!」

 

「「「う…うわああああぁぁぁぁっっっっ!!!?」」」

 

「「!!?」」

 

闇影の自分に対する挑発的な発言に苛立つ周は、彼を睨みつけて再び食ってかかろうとするが、突然人々の悲鳴が聞こえた為闇影共々その方角へと目を向け、走り出す…。

 

 

 

『ヒトハ…ヒトノママデイイ…!!』

 

「ひっ…た…助け…!!」

 

「でりゃあぁぁっっ!!」

 

『グアァッ!!?』

 

「早く逃げて下さい!!」

 

「は…はい!!」

 

街中で無数のアントRがアギトの力を持つ人間を抹殺する為だけに暴れ回り、その目的の人間である会社員の男を見つけたのか、彼を所持した剣で殺害しようとするが、現場に駆け付けた闇影の跳び蹴りで吹っ飛ばされた隙に逃げられてしまう。

 

「にしても凄い数だなぁ…。」

 

「お…おいコラ、何一人でしゃしゃり出てんだよ!!」

 

「何だ足手纏い、随分と遅かったな。」

 

「誰が足手纏いだ!!てめぇが邪魔したからだろうがっ!!」

 

無数のアントRを前にそう声を漏らす闇影 の下に、何故か漸く辿り着く周。その理由は、此処へ赴く途中で闇影に足を引っ掛けられ転んでしまったせいである。それについて闇影を責め立てようとするが、眼前の敵を前にそれを止める。

 

「アント達は俺が倒す。お前は死にたくなかった尻尾巻いてさっさと逃げろ。」

 

「俺様に指図すんじゃねぇ。つーかてめぇだって変身出来ねぇだろが。」

 

アントRの軍勢を自分一人で倒そうとする闇影は、またも憎まれ口を叩いて周に逃げる様勧めるが、彼からの指図を嫌う周の言う通り、自分の力を制御する為にディライトドライバーを装着させた為、彼も変身が出来ない事を指摘するが…

 

「ふん、何もディライトにしか変身出来ない訳じゃない。来い!!」

 

突然闇影が右腕を上に伸ばすと、何処からか黄色い雀蜂を模したメカ…ザビーゼクターが飛来し、彼の右手に収まる。そう…闇影にはまだザビーと言う、もう一つの力があったのだ。

 

「…ダークカブトの世界で得た力かよ。」

 

「理解出来たなら逃げ…!?」

 

闇影が二度の警告を口にする直前、周の下にも水色の蜻蛉を模したメカが飛来し、彼の頭上で動き回る…。

 

「その世界での俺様のゲットしたお宝が何なのか忘れてねぇよなぁ?闇影先生よぉ…。」

 

周は不敵な笑みを浮かべ、闇影と同じく「ダークカブトの世界」で入手した宝、ドレイクゼクターが…戦う力がある事を誇示しつつ、懐から細長い黒と青を基調としたグリップ「ドレイクグリップ」を取り出す。

 

「チッ!なら、精々俺の足を引っ張らない程度に戦え。邪魔だと判断されて俺に始末される覚悟を持ちながらな…!!」

 

「そっちこそ、間違って俺様に撃ち殺される恐怖にビビりながら戦いな!!」

 

「「変身!!」」

 

【【HENSHIN!】】

 

この非常時にも互いに憎まれ口を叩き合いながらも、闇影は左手首のライダーブレスにザビーゼクターをセットし、ザビー・マスクドフォームに、ドレイクグリップの上部分にドレイクゼクターがセットされると、周はヤゴを模した水色と銀色の潜水服をイメージしたアーマーが特徴の「仮面ライダードレイク マスクドフォーム」へと変身する。

 

『『キャストオフ!!』』

 

【【CAST-OFF!】】

 

【CHANGE-WASP!】

 

【CHANGE-DRAGONFLY!】

 

更にザビーMFがゼクターウィングを上げて内側に回転させると、アーマーが飛散しライダーフォームへ、ドレイクMFがドレイクゼクターの尾部のレバー「ヒッチスロットル」を引き、ドレイクグリップのトリガーを引くと、全身のアーマーが全て飛散し、水色の蜻蛉を模した複眼、胸にある赤と白の蜻蛉の羽根の様な装甲が特徴のライダーフォームへとそれぞれキャストオフした…。

 

『さて…蟻退治と行きますか!!』

 

『ふっ…全て撃ち抜いてやるぜ!!』

 

ザビーは左の掌に右拳を勢い良く叩き付けてアントRの軍勢へと走り出し、対してドレイクはその場から動かずドレイクゼクターをクルクル回してから構えて、蟻退治たたかいを開始する。

 

『はっ!やっ!!せいっ!!!でりゃあぁぁっっ!!』

 

『全弾喰らいなっ!!』

 

『『『グッ!!ガァッ!!ギィッ!!ンベェッ!!グガァァァァッッッッ!!!?』』』

 

ザビーの無駄が無く且つ素早く正確な打撃、蹴撃等の格闘術でアントR達は一匹…また一匹と吹っ飛ばされ、ドレイクの機関銃マシンガンの如く放たれる銃撃…二人の今の行動だけでほぼ半数は爆死していった…。

 

『ギギィィッッ!!』

 

しかし未だ残るアントR達は、ザビーとドレイクの二人を相手にするのでは無く、どちらか一人を集中して狙う様作戦変更したらしく、一匹の合図したと共にそれを実行開始した。その最初の標的としてドレイクの方へと襲い掛かる…。

 

『手負いの俺様なら十分殺せる、とでも思ってんのか…。さっきの事と言い、今と言いてめぇ等…!!』

 

先の戦闘での傷が完全に癒えておらず、且つディスティールドライバーを奪われ弱体化したのだと思い込まれたドレイクは、先の戦闘前に仕掛けられた罠(アギト狩り)の事も相俟って、侮られた事に身体をワナワナと震わせ…

 

【RIDER-SHOOTING!】

 

『俺様を嘗め腐んのも大概にしやがれぇぇっっ!!ライダーシューティングッ!!』

 

『『『グギャアアアアァァァァッッッッ!!!?』』』

 

激しくブチ切れ怒りを爆発させながら、ドレイクゼクターのゼクターウィングを折り畳みヒッチスロットルを引き、グリップの引き金を弾くと、銃口にタキオン粒子のエネルギーが収束され、それを凝縮した水色の強力なエネルギー弾「ライダーシューティング」が放出し残ったアントR達全てを消滅させた…。

 

『はぁ…はぁ…!!俺様を虚仮にするからそうなん…!!』

 

大声で怒鳴りながら必殺技を放った為、少々息が荒くなりそれを呼吸で落ち着かせるドレイク。が…

 

『『『ギギィィィィッッッッ!!!!』』』

 

『(何っ!?後ろからもかっ!?ブチ切れ過ぎて反応に気付かなかったのかよ…くそっ!!)』

 

何とその背後から、別のアントR達が一斉に彼へ飛び掛かって来た…。先程ドレイクが倒したアントR達は最初から囮であり、今の作戦により自分達に弱く見られたドレイクが怒りにより別働隊うしろの注意を逸らさせ、眼前の敵のみを倒す事だけに専念させたのだった…。虚を付かれクロックアップも反撃も出来なくなり、己の注意を悔やみドレイク。しかし…

 

【CLOCK-UP!】

 

【RIDER-STING!】

 

『ライダースティング!!』

 

『『『グギャアアアアァァァァッッッッ!!!?』』』

 

『なっ…!?』

 

【CLOCK-OVER】

 

突然アントR達が横真っ二つに「斬られて」爆発すると同時に、何時の間にかクロックアップを使用したザビーが、左腕を横一文字に伸ばして構えた状態でクロックアップ空間から帰還した…。

 

『チッ…お前なんかをこの新しいライダースティングで助けるなんて…俺も焼きが回ったよなぁ…。』

 

『何だとてめ…ってちょっと待て、新しいライダースティングだって!?』

 

今日だけでもう何度目になるのか、自分に対して憎まれ口を叩くザビーに詰め寄ろうとするドレイクだが、彼の言った「新しい必殺技(ライダースティング)」と言う単語に反応をする。

 

『まあな。方法は…うわああぁぁっっ!!?』

 

ザビーがドレイクに新しいライダースティングの詳細について語ろうとした時、突然背後から何者かの攻撃を受けてしまう…。

 

『やれやれ、中途半端男の次はディライト君の雀蜂か。』

 

攻撃をした者の正体は言わずもがな…卑劣にもアギト能力者を炙り出す為だけに、態々それ以外の人間を襲うようアント達に指示を出した張本人、ドラゴンフライRDFだった…。

 

『そっちから出向いてくれて好都合だぜ…俺様の力、返して貰うか…。てめぇの命ってレンタル料込みでなぁっっ!!』

 

ドレイクは彼が現れるや否や、仮面の中で盗賊である自分からディスティールドライバーを奪った事に対する怒りや憎悪により歯を軋ませ、レンタル料として討伐しようとドレイクゼクターの連射を放つ。

 

『おっと!いきなり乱射とは野蛮なだねぇ。どうやってあの姿から戻れて僕と同じ蜻蛉になったのかは分からないけど、生きているならもう一度駆除しないとね。』

 

【KAIJIN-RIDE…ANTHOPPER-IMAGINS!】

 

それを飛翔して難無くかわしたドラゴンフライRDFは何故彼が正気を取り戻したのかを疑問に思いながらも、今度こそドレイクを抹殺くじょすると口にしつつ、ドライバーにカードをスラッシュ、トリガーを弾くと、右半身が緑のキリギリス、左半身が黒蟻を模したイマジン「アントホッパーイマジン」が2体召喚された。

 

『虫が虫の駆除か…まぁ、命令なら始末するまでだ…!!』

 

『虫虫駆除〜?ニャハハハハ!!始末しちゃおっか〜?始末しちゃうってばよ〜!!?ニャハハハハハハハ〜ッ!!!!』

 

2体のアントホッパーIの内、スコップを模した剣を持つ冷静な性格の個体(A)とヴィオラを模した剣を持つ甲高い声で笑い他人を小馬鹿にする性格の個体(B)は、ザビーとドレイクに向かって行く。

 

『今度は蟻とキリギリスで来たか…。此方も駆除させて貰うよ!!』

 

ザビーは、ドラゴンフライRDFが召喚したアントホッパーI達のモチーフについて軽く触れると駆除(返り討ち)にするべく同じく彼等に向かって走り出す。

 

『はっ!やっ!!そいやっ!!ふっ!!でりゃあぁぁっっ!!!』

 

『ニャッ!ニュッ!!ニョオオォォッッ!!?』

 

ザビーは先程同様、2体の攻撃をかわしつつ激しいパンチやキックの連撃を一方的に叩き込み吹き飛ばした。そして、彼等が立ち上がるのを見計らうと…

 

『よく見ておくんだな周。クロックアップ!』

 

【CLOCK-UP!】

 

『…クロックアップ。』

 

【CLOCK-UP!】

 

ザビーは先程中断されたの新しいライダースティングの詳細をドレイクに教えるべく、それを知るべくドレイクも取り敢えずクロックアップを発動しその時間流に突入し…

 

【RIDER-STING!】

 

『なっ!?』

 

何と、アントホッパーI達との距離が離れすぎているにも関わらずザビーゼクターを操作しライダースティングを放つ準備をした彼に驚くドレイク。本来その必殺技は近距離向けの物であり、それを遠距離で使う物では無い。しかし、ドレイクの疑問に答える様にザビーは両拳を握り、脇を閉めて左拳を後ろにと、黒深子の得意とする正拳突きの構えを取り…

 

『ライダースティング…突!!』

 

『ニギャアアアアァァァァッッッッ!!!?』

 

左拳を勢い良く前に突き出すと、ザビーニードルの先端から黄色いタキオン粒子のエネルギーで構成されたレーザー状の攻撃がアントホッパーIBの心臓目掛けて貫通、爆発した。

 

これぞ、クロックアップの速度にライダースティングを正拳突きの拳圧を乗せて威力を倍増させた「ライダースティング・突(レーザー)」である…。

 

『これが…!!』

 

『驚くのは…まだ、早い!!』

 

【RIDER-STING!】

 

ライダースティング・突の威力に驚くドレイクを余所に、ザビーは残るアントホッパーIAを倒すべく再度ザビーゼクターを操作し、左拳を後ろに構えて同じ技の準備をし…

 

『ライダースティング…一閃!!だだだだぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

『グガアァァァァッッッッ!!!?』

 

最初の一撃を右へ突くと、次の一撃一撃を徐々に左へ徐々にずらし横一文字を描く様にライダースティングを拳圧で飛ばし、まるで横一文字の斬撃を受けたかの様にアントホッパーIAの胴体は真っ二つに裂けて爆発した。

 

これが新しい必殺技、ライダースティング・突の応用技である「ライダースティング・一閃(いっせん)」である…。

 

【【CLOCK-OVER】】

 

『ふう…何か解らないけど非常にスカッとしたなぁ。』

 

『お前、何の話してんだ?』

 

2体のアントホッパーIを倒したと同時にクロックアップの発動時間が過ぎ、クロックアップ空間から脱出したザビーは、何やら少し機嫌良い気持ちだと口にし、同じく脱出したドレイクはそれに小さくツッコむ。それに関しては「2つの意味」でと付け加えとこう…。

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DI・DI・DI・DISTEAL!】

 

『なら、あの世でその続きを浸りなよ。』

 

『『なっ…ぐああああぁぁぁぁっっっっ!!!?』』

 

僅かに油断したのか、ドラゴンフライRDFの放ったディメンジョンスコールをまともに直撃したザビーとドレイクはその激しいダメージにより変身解除してしまい、あっという間に窮地に立たされてしまう。

 

『アント達やイマジン…って言うの?今の君達だったらあいつ等でも充分倒せると思ってたけど、中々手子摺らされてたみたいだったから作戦を変えて見たよ。そしたら大成功♪』

 

ドラゴンフライRDFは、まるでゲームの攻略法の様に今の作戦を喜々として語る。初めこそ次元ライダーへの変身を封じられた闇影と周相手ならば、雑兵レベルのアントRや召喚した怪人だけで抹殺しようと考えたが、マスクドライダーシステムと言う別の変身手段とその実力を見て、差し向けた敵に集中した2人の隙を狙って必殺技を放ったのだ…。

 

「くっ…くそっ…!!」

 

『ふ〜ん、まだ動けるなんて凄いね。でもさ…』

 

今の攻撃を受けても尚、フラフラしながらも立ち上がる闇影を見て感嘆の声を漏らすドラゴンフライRDFは、ある方向に向けて人差し指を指す。彼の指し示す物、それは…

 

「ぁ…くぅぅっっ…!!?」

 

『あいつはどうだろうねぇ…!?』

 

「!!?」

 

身体全体がボロボロとなり大量の血を流し身動き一つ取れない程動けなくなる等…正に文字通り、虫の息状態と化した周の姿がそこにあった…。普段の彼ならば闇影同様どうにか立ち上がる事が出来るかもしれないが、やはり先の闘いで受けたダメージが影響していたのだろう…。

 

「周!!くっ…此処は一旦退くしか無いか…!!」

 

このまま戦い続けていたら確実に負ける…そう判断した闇影は、傷を押して重傷の周を担ぎ込んで、病院へ向かうべく退却しようとする。

 

『逃げられるとでも思って…うわっっ!!?』

 

当然それを許さないドラゴンフライRDFはディスティールドライバーで2人を狙撃しようとするが、闇影のライトブッカー・ガンモードの威嚇射撃により僅かに怯んだ為、彼等の逃走を許す事となった…。

 

『…まぁいいや。彼奴等の始末なんて何時でも出来るし、暫くは他で遊ぼっか♪』

 

しかし、それも何時でも闇影と周を抹殺出来ると余裕綽々なドラゴンフライRDFは、当面は他での遊び、即ち周とは別のアギト能力者の抹殺をするべく、飛翔してその場から立ち去って行く…。

 

 

 

―美杉病院

 

 

「っ痛…!!はぁ…周のおかげでとんだ出費をする羽目になったな…。」

 

頬にガーゼや絆創膏、手首に包帯を巻き治療を終えた闇影は、僅かな身体の痛みに顔を顰めつつ、余計な治療費しゅっぴの要因の1つであろう周に対して愚痴を零す…。

 

「…にしても、此処に来るまであんな状態から殆ど回復してたのは少し驚いたなぁ…。」

 

同時に、彼が病院に着くまでには意識を取り戻し全身の傷が殆ど無くなる等、「軽傷レベルの怪我をした状態」まで回復したと言う事実も…。

 

周の異常な程の超回復力の正体は言わずもがな、ギルスの持つ「再生能力」による物。アンギルスPPはギルスにやや近い外見である為、それと同じ再生能力せいしつを持っていても不思議では無い。

 

「やはりあいつから詳しい話を聞かないとな。」

 

何故周がそうした力を得たのか未だに解らない闇影は、もう一度彼から詳細を聞くべく動き出そうとする…。

 

「すいません。貴方は…戴問周さんのお知り合いの方ですか?」

 

「…まぁ、そんなところで…!!」

 

そこへ、この病院の医師であろう白衣の男性が闇影に周の知人なのかを尋ねて来た。そう尋ねて来た理由は、恐らく闇影が周を担いでここに訪れた所を見て、知り合いなのかと思ったからであろう。事実とは言え、自分の嫌いな人間と知り合いなのかと尋ねられ、闇影は少し眉間に皺を寄せて肯定しようとするが…

 

「もしかして…あいつ何か大きな病気でも!?」

 

「いや、あの人では無くて彼の…」

 

突然周が大病を患っているのかを尋ね出す闇影。無論彼の身を案じての事ではなく、この病院の医師が周の名前を知っているのならば、彼の事情の一端を知っているのだと踏んでそこから詳しい情報を得ようとしての行動だった。そして、医師から周についてある事を口にする…。

 

 

 

―屋上

 

 

「ふーっ…。」

 

病院の屋上にあるフェンスに肘を付きながら煙草を吹かして憂えた表情をする周。普段の彼なら、この病院のナースや入院患者の若い女性(幼女含む)を口説いているのだが、そうする気配も一切無い。

 

「此処にいたのか、誰かさんのせいでこっちは怪我して身体が痛いんだから無駄に動かさせるなよ。」

 

「ああ?誰かさんって誰ですか?そうなったのは自業自得だろが。」

 

そこに闇影が怪我をした事を軽く責めつつ懲りずに憎まれ口を叩きながら現れた為、周はそれを彼自身のせいだと言い返しつつ懐から携帯型灰皿を取り出し、それに吸っていた煙草の吸い殻を捨てて立ち去ろうとする…。

 

「お前が気にかけている女の人…とても大切な人なんだな。」

 

「……!!お前…何で知ってんだよ…!?」

 

闇影の口から「自分が気にかけている女性」と言う言葉を耳にして立ち止まった周は、首のみを後ろに向けて彼を睨み付ける…。そして、闇影の次に発する言葉は…

 

「さっき先生から聞いたぞ。お前はその人の為に、それも1年や2年じゃなく8年間も入院費を払い続けている。戴問翔子さん…お前の…!!」

 

「黙りやがれっっ!!てめぇが…てめぇなんかがお袋の名前を口にすんじゃねぇっっ!!」

 

突然周は目を血走らせながら闇影にづかづか近付き、彼の胸倉を勢い良く掴み、これ以上戴問翔子…自分の母親の名前を口にする事に声を荒げて止めさせる…。

 

「お前にそんな親思いな所があるとは意外だったな。8年間も律儀に入院費を…その金も今まで盗んだ宝で…!!」

 

掴まれても尚、闇影の話は止まらない。8年間と言う長い年月分の入院費や治療費となれば、当然その額も相当な物である。その事から、周がこれまで様々な宝を奪い続けてきたのも、全ては母親の為なのだと推測する闇影。

 

「何も知らねぇ癖に俺様の事を知った様な口で利いてんじゃっ…!!」

 

「何があったんだ…?8年前にお前のお母さんが意識不明になる程の重体…そして、お前のあの力の正体…いい加減話してくれないか…。」

 

それに更なる怒りを募らせる周に対し、闇影はそれまでの憎まれ口では無く、真剣な表情で彼の事情について冷静に尋ねる。それを見た周は、徐々に冷静さを取り戻し…

 

「ちっ…!!」

 

舌打ちしつつ闇影の胸倉を掴んでいた両腕を解放し、懐にあるライターと煙草1本取り出し、口に咥えて火を付けて再び吹かし出す…。

 

「ふーっ…ホンッと人の過去にずかずか踏み込んでくるムカつく野郎だなてめぇはよ。んなに聞きたきゃ教えてやるよ…。」

 

煙草を吸った事で更に落ち着きを取り戻した周は、闇影のあまりのしつこさに悪態を付きながらも自分の過去について語り出す…。

 

 

 

ガキの頃に親父が事故で亡くなってから、お袋は女手一つで俺様を育ててくれた。苦労した事は何度かあるけどお袋は俺様を可愛がってくれたよ。そして俺様も、そんなお袋を少しでも楽にさせたくて色々家事を手伝ったりしたし、休みの日にはよく一緒に旅行にも行った。そうした毎日が俺様にとって一番幸せで、ずっと続く物だと信じていた。あの日が来るまでは…

 

 

 

―8年前

 

 

「ただいま母さん!」

 

「お帰り周、早かったわね。」

 

「そりゃ早く帰るよ。だって今日は母さんの誕生日なんだから…沢山ご馳走を作るらないとな♪」

 

あの日…お袋の誕生日だと言う事ですっ飛んで学校から帰った俺様は、鞄や制服を放り投げて、料理の準備や祝う事だけで頭がいっぱいだったな。

 

「今年も目一杯楽しい誕生日にするからな。んで、プレゼントは今度の休みに『あかつき号』に乗った船旅に行こうな♪」

 

「…いつもありがとうね、周。貴方は母さんの為に色々やってくれてとても嬉しいわ。でもね…」

 

だけどお袋は、小さな笑みを浮かべ申し訳なさそう表情をしながら俺様の手を握って普段の俺様の行動に感謝しながらこう言った…。

 

「母さんはね…貴方が友達を作って遊んだり、将来やりたい事の為に頑張ってくれる事が一番嬉しい事なの。勿論、貴方のやってくれてる事が嫌な訳じゃないわ。ただね…その為に貴方が自分の時間を全て割いてしまう事は無いの。」

 

どうもお袋は、自分のせいで俺様が俺様自身の人生を犠牲にしててそれを申し訳無く思ってたんだろう。けど、俺様はそうは思ってない。寧ろそれが俺様のやりたい事なんだからな…。

 

「見つけたわよ戴問翔子!!」

 

「な…何だあんた!!?人の家に勝手に上がり込んで!!」

 

「……ッッ!!」

 

「きゃっ!!?」

 

そこに玄関のドアから茶髪のセミロングをした水商売風の服を着た30代くらいの女…瑞木璃紗(みずき・りさ)が突然乗り込んで、お袋を睨み付けると直ぐ様近付いて平手打ちをしてこう言った…。

 

「あたしの男を…哲麻(てつま)を誑かさしていけしゃあしゃあとくっついて…挙げ句子供まで作りやがって!!」

 

その璃紗とかいう女は親父の昔の元カノらしく、お袋がそいつから親父を寝取ったとかなんとかと、凄まじくドロドロな因縁がある様でな。でも…

 

「違う…あの人は元々、貴女が浪費癖や浮気癖が酷くて嫌気が差してて悩んでいる時に私と出会い、普通の友達として付き合い始めた。最初はそれだけのつもりだったけど、暫くして私といると心が安らぐ、一緒になりたい…そう言われた私はそれを受け入れた…。それだけの事よ。」

 

璃紗の方に非の打ち所がありまくりで、親父はそれとは正反対なお袋に惹かれてくっ付いた。ま、親父に振られた逆恨みって奴さ。

 

「嘘言わないで!!どうせあんたの方からモーション掛けたんでしょ!!あたしの男を寝取った罪を裁いてやるわ!!はあぁぁっっ!!!!」

 

けど、お袋が言い寄ったんだと思い込んだ璃紗は、全身からドス黒いオーラを発してその姿を蜜蜂を模したアンノウンへと変化させた…。恐らく闇の牢獄で得た力だろう…。

 

「ひっ…!!?」

 

『死ねぇぇっっ!!』

 

「うっ…うわああぁぁっっ!!?」

 

『くっ…人間風情が小癪な…!!』

 

蜂のアンノウンが剣でお袋や俺様を斬り殺そうと襲い掛かったが、どうにか避けたお陰でそれはテーブルに食い込み斬られずには済んだ。けど、どうにか剣を引き抜いてまたお袋にジリジリ近付こうとしたが、何故か動きを止めた。

 

『そうね…あんたを確実に殺すには…この方が良いかしら!!』

 

「えっ…うっ…うわああぁぁっっ!!?」

 

蜂のアンノウンは標的をお袋から俺様に変更して襲い掛かって来た。突然の出来事に対処出来ない俺様はただビビって動けなかった。けど…

 

「周ぅぅぅぅっっっっ!!!!」

 

お袋は、そこに勢い良く割って入って俺様を抱き締める様に庇った。そのせいでお袋は左足を斬り付けられてそこから大量の血を流した。恐らく、蜂のアンノウンはこれを狙っていたんだな…。

 

「か…母さん!!大丈夫!!?」

 

「だ…大丈夫…よ…!!周…も…大丈夫…!?」

 

『ふん…あんたが悪いのよ。あんたさえ出しゃばりゃなきゃあたしは幸せになれたのよ…!!あんたなんか…あんたなんか…!!』

 

「お願い…!!この子だけは殺さないで!!」

 

「止めろ…やめろよ…!!」

 

蜂のアンノウンはお袋への恨み言を呟きながら、剣を構えてまたジリジリと近付き出した。お袋は足の痛みに耐えながら俺様を庇って俺様の命だけを助ける様懇願し出した。正に絶体絶命の状況に「アレ」が現れた…。

 

 

 

―…母サンヲ助ケタイカ?

 

―お前は…誰だ!?

 

―俺ハオ前ノ闇…オ前ソノ物サ。マア、ソンナ事ヨリダ…母サンヲ助ケル為ノ力ガ欲シクネェカ?

 

突然周囲が真っ黒な空間になって、目の前に「アイツ」が現れた…。奴は俺様の闇…俺様自身だと言って「お袋を救う力をやる」と持ち掛けて来た。

 

―母さんを助ける為の力って…!!もしかして、あの女の人も…!?

 

―ホウ…流石ハ俺自身、察シガ良イナ。ソウダ、アノ女モコノ「闇ノ牢獄」ノ力デアンナ姿ト化シタノサ。

 

―闇の…牢獄…。俺もあんな化物に…!!

 

普通の奴だったら化物になんのは御免だと拒否るだろうな。無論俺様も最初は戸惑った。お袋を傷付けたあの女と同類にはなりたくねぇからよ。だけど…

 

―…俺は…俺は、母さんを守りたい…!!例えこの身が化物に変わり果ててでも…俺が母さんを守る!!だから力を寄越せ!!

 

―フッ…良イゼ。思ウ存分コノ闇ノ力ヲ使イナ…!!

 

闇の牢獄の力を得る決意をした瞬間、アイツは俺様の中に入り込んだ。そして、そのまま怪人の姿となりお袋を守れる…そう思っていた。だが…予想だにしない事が起きた…。

 

―ぅああああぁぁぁっっっっ!!!!なっ…何だ…身体が…痛い…苦しい!?俺の…意…識…ガ…飛…ん…グルアアアアァァァァッッッッ!!!?

 

突然、俺様の身体に言い知れ様のねぇ激痛や苦痛が襲い掛かり、その身体を白と黒の光が交互に発生しつつ、別の「何か」へと徐々に変化させていくと同時に意識をもブッ飛ばしていき…そして……!!

 

 

 

『母サンヲ…母サンヲ傷付ケル奴ハ…誰デアロウト俺ガ…全テ殺シテヤルッ!!グルアアアアァァァァッッッッ!!!!』

 

『ひっ…何よあれ…!!?あんなガキの何処にこんな強大な力が…!?ヒギャアアァァッッ!!?』

 

お前の言う「ギルスでもアンノウンでも無い力」とやらに覚醒した俺様は、全身から赤い光を放ち、お袋を殺そうとした璃紗を倒す事が出来た…だが…!!

 

「はぁ…はぁ…!!も…もう大丈夫だよ母さ…」

 

「…………。」

 

「母さん…母さん!!しっかりして!!目を開けてよ!!母さん!!母さ…!!」

 

覚醒したてで制御出来ずに発生した力の余波を諸に受けてしまったお袋は、目を開けたまままるで死んでしまったかの様に意識を失っていた。俺様はそれを揺さぶって無理矢理起こそう身体に触れると…

 

「こ…これって…血…!!母さんの血…!!俺が…母さんを守ると言ったのに…俺が…母さ…ん…を…!!」

 

その両手はお袋の流した血で真っ赤に染まり、それは……

 

「う…うわああああぁぁぁぁっっっっ!!!!母さああああぁぁぁぁんっ!!!!」

 

 

突然降り始めた大雨によって、まるで俺様自身の血の様にダラダラと流れ、それにショックを受けてぶっ倒れちまった…。

 

 

―美杉病院

 

 

「うぅ…はっ…!こ…此処は…!?」

 

「あ、漸く目を覚ましましたね。3日間も気を失ったままだったんですよ。」

 

「3日間も…!!母さん…そうだ、母さん!!」

 

「あ!駄目ですよ!!まだ安静にしてないと!!」

 

何時の間にか病院に運ばれて、そこで目を覚ました俺様は直ぐ様お袋のいる病室まで駆け付けて行った。だが、そこにある現実は残酷な物だったよ…。

 

「なっ…母…さん…!?」

 

お袋は身体中に包帯を巻いて、医療用のチューブに繋がれた上、目を見開いたまま意識不明と無惨な状態となってたんだ…。俺様はせめて声を掛けようと近付こうとしたが…

 

 

 

「患者を目撃した人の話によれば、羽を生やした化物がいてそいつの仕業じゃないかって言ってましてな。」

 

 

 

「…………っっ!!」

 

「化物の類は有り得ないとしてだ…この状態じゃ目を覚ますのもどうか怪しいな…。」

 

「(羽…化物…!!そうだ…そうだった…。母さんをあんな状態にしたのは俺…そして羽の化物も俺…そんな俺が母さんに声を掛ける資格なんて…!!)」

 

「…………っっ!!」

 

全ては自分が元凶だったと理解した俺様は病院から飛び出し、そこからは当ても無く、訳も解らないまま彷徨い続けた…。

 

 

 

「…………。」

 

「皮肉な話だよな…お袋を、自分が愛した女性を守る為に手に入れた力が逆に傷付けてしまってるんだからよ。挙げ句の果てにはそっから逃げ出した…はは、最低の男だよ俺様は…。」

 

全てを話終えた周は、顔を少し俯かせながら過去の行いについて自嘲した。その姿を見た闇影は、周の無類の女好きの理由を、全ての女性を嘗て守れなかった女性ははおやと重ねていたのだろうと、大凡理解した。

 

「…これもお医者さんから聞いたが、それほど気にかけていた筈のお母さんの病室に一度も入ってやらなかったそうだな?」

 

「……っっ!!」

 

「入院費だけ払っておけば親と顔を合わせなくて良い…等と言う程度で親思いだと思ってるんじゃ無いだろうな?」

 

「…何が言いてぇ…!?」

 

それまで黙して話を聞いていた闇影は、母親である翔子に何故一度も近付かなかったのかを周に尋ねた。その質問に彼は眉間に皺を寄せて闇影を睨み付ける。

 

「意図的では無いにせよ、親を傷付けてそのままでいるお前に『親思いな子供』の資格は無いって言ってるんだよ!!」

 

「……!!てめぇっっ!!?」

 

その言葉に激昂した周は、勢い良く闇影の胸倉に再び掴み掛かる。しかし、闇影は尚も変わらず落ち着いた表情で言葉を続ける…。

 

「怖がってるだけだろ?お母さんの傷付いた姿を見て、過去の悲劇をより思い出す事に…お母さんが目覚めた時それを責められてしまうかもしれない事に怖がってるんだ!!その癖、金だけ送って安心して親孝行な子供面をして『何が母さんを守る』だ!!そんな中途半端な事だから、アンノウンにドライバーを奪われたり、力を暴走させたりするんだよ!!」

 

「……!!闇影ェェェェッッッッ!!!!」

 

更なる罵倒、でもある叱咤に完全に頭に血が上った周は左手だけで掴んだまま闇影の顔面を殴ろうと、勢い良く右拳を振り上げるが…

 

「今のお前はライダーでも盗賊でも無い…居場所を失う事に恐れた…ただの臆病者だっっ!!」

 

「なっ…!?うおっ…ぐああぁぁっっ!!?」

 

それを右手で周の右手首を掴み阻止した闇影は、そのまま彼の身体を持ち上げて振り下ろす…片手一本背負いで地面に叩き付けた。

 

「だから中途半端だと言ったんだ。」

 

「くっ…くそっ…!!」

 

「俺に殴りかかる程の力があるなら、先ずは自分自身の闇と向き合って、そいつをぶん殴ってからにしろ…!!」

 

地に倒され悔しがる周を見下ろす闇影はそう告げた後、屋上の出入り口のドアへと向かおうとしたその時…

 

「なっ…何だ!!?」

 

ここからそう遠くない場所で、爆発音と人々の悲鳴が聞こえ出した。無論その原因は、ドラゴンフライRDFの仕業なのだと容易に予想出来る。

 

「てめぇをぶん殴るのはあのガキを倒してからだ…。」

 

「何を寝惚けた事を言っている!!いくら傷が回復したからって、ドレイクじゃ勝てないのはさっき知っ…!!」

 

それを耳にした周はドラゴンフライRDFを自分の手で倒すべく立ち上がるが、先の戦闘でマスクドライダーシステムでは次元ライダーの力を得た敵に勝機は無いのだと闇影は指摘するが、彼の行動を見て言葉を止めた…。

 

「なら、俺様自身の闇って奴なら可能性は高いよな?グルアアァァァァッッッッ!!!!」

 

周はディライトドライバーを外し、地面に落としその身をアンギルス・パヴォネ・プルーバーへと変化させた…即ち彼は、アンギルスの力で戦う事を決めたのだ…。

 

「馬鹿かお前!?制御出来ない力で戦ったら余計被害が拡大するだろうが!!」

 

『グルアァァ…て、てめぇの力に守られんのは御免だって…言ってるだろ…!!それにだ…グルアァァ…俺様自身の闇このちからと…向き合ってから…てめぇを殴り…テェシヨ…!?ジャアナ…グルアアァァァァッッッッ!!!!』

 

アンギルスPPはその剣の様な翼を広げ、ドラゴンフライRDFがいるであろう爆発音のある場所へと飛翔し向かって行った…。

 

「あの…馬鹿…!!」

 

アンギルスPPのこれから取ろうとする無謀な手段に頭を抱えて呆れる闇影は、彼が向かったドラゴンフライRDFがいるであろう現場に同じく向かうべく病院の屋上を後にする…。

 

 

 

『フフフ…本当に素晴らしいね。この力を手にしたお陰で…僕はヒトも、ギルスも、アギトも、そして…アンノウンをも超越した存在になったんだ!!』

 

周囲の建物が全て破壊され、炎が燃え盛る廃墟の中心にて、召喚した数十体のアントRを従えたドラゴンフライRDFはディスティールと化した影響により、これまで以上の力を手にした事に改めて歓喜し自身を「超越者」だと嘯いた。

 

この時点でドラゴンフライRは次元ライダーの強大な力に呑まれつつあり、徐々に自分はアンノウン以上の超越者(そんざい)だと思い込み始めている。その証拠に彼やアントRの軍勢の周囲には、先程の悲鳴の正体であろう無数の人々の無惨な死体が横たわっている事が、その傲慢さを顕著になっている…。

 

『後はあの中途半端男やディライトさえ始末すれば、僕は完全なる超越者に…!!』

 

『グルアアァァッッ!!』

 

『なれ…ブガアァァッッ!!?』

 

ドラゴンフライRDFが、あまつさえ未だに自身の力を制御出来ない周や闇影を抹殺する企みを口にしていた丁度その時、その本人たるアンギルスPPの空中下降の勢いを乗せた強烈な飛び蹴りを喰らい吹っ飛ばされてしまう…。

 

『痛ったいなぁ…!!性懲りも無くまた現れた様だけど…そんな姿で僕に楯突く気ぃ?』

 

『グォォォ…ルォォォ…ズゥゥゥ…!!』

 

『ああ、そっか。お前、もう僕の言葉すら理解出来なくなる程理性が無くなっちゃったんだったね。なら、今楽にしてあげるよ…やれっ!!』

 

『『『グオオオオォォォォッッッッ!!!!』』』

 

立ち上がったドラゴンフライRDFは、理性を失ったアンギルスPPを煽るも、それが無駄である事を態とらしく語りつつ、彼を抹殺するべく右手を前に出してアントRの軍勢に襲い掛からせる様指示を出した。

 

『グルアアァァァァッッッッ!!!!』

 

『『『グィガァァッッ!!?』』』

 

『『『グィギィィッッ!!?』』』

 

『『『グィグゥゥッッ!!?』』』

 

『『『グィゲェェッッ!!?』』』

 

アンギルスPPは迫り来るアントR達をその翼を広げて滑走しつつ、その鋭い爪で引き裂き、翼で斬り裂いていき、それによるアントR達のバラバラになった死体を飛散させ、続けて襲い掛かる敵を同じ様に迎撃していく…。

 

『チッ…こいつ徐々に力を使いこなし始めたのか…!!けど…ふんっ!!』

 

『『『グオオオオォォォォッッッッ!!!!』』』

 

『第二撃はどうかな?』

 

僅かながら力を制御しつつ戦うアンギルスPPに危機感を覚えたドラゴンフライRDFは、自身の身体のライドプレートから数十体のアントRを出現させ、再び彼を襲撃させる。

 

『グルアアァァッッ!!』

 

先程と同じ手段ならば同じ様に…そう本能的に察したアンギルスPPは再び翼を広げて滑走戦法を取ろうとするが…

 

『グルァッ…グィガアアァァッッ!!?』

 

突然身体に異変が起き始め、自身の身体を抱えて苦しみ出し倒れてしまう。今はどうにか身体を動かせるくらいにまで制御出来たが、やはりこの相反する力は未だに彼の身体を蝕んでいるのだろう…。

 

『ほ〜ら、やっぱりね。半端なお前にその力は分不相応なんだよ。』

 

『グゥゥ…グゥゥ…ルゼェェッッ…!!』

 

『お前、マジでもう良いよ。あんまヒトの悪足掻きなんて見たくないしさぁ…』

 

そんなアンギルスPPを冷たく見下ろしながら嘲笑うドラゴンフライRDFは、苦しみながらも立ち上がろうとする彼に苛立ちつつ右手を上げ…

 

『いい加減くたばりなっっ!!』

 

『グオオオオォォォォッッッッ!!!!』

 

今度こそ止めを刺すべく腕を振り降ろすと、アントRの軍勢は一斉に襲い掛かる。万事休す…そう思った時…。

 

【ATTACK-RIDE…SONIC!】

 

『はああぁぁっっ!!』

 

『『『グギャアアアアァァァァッッッッ!!!!』』』

 

ライトオレンジの光を纏ったディライトが「ソニック」の力で高速移動ならず光速移動しながらライトブッカー・ソードモードでアントRの軍勢を全て一瞬で斬り刻み、爆発させる。それと同時にソニックのデメリットなのか、強制的に変身解除した。

 

「全く…余計な手間を掛けさせるんじゃない。それよりだ…貴様、とんでもない事をしてくれたな…アンノウンはアギトの力を持つ人間以外殺さないんじゃなかったのか!!」

 

自分の忠告を無視し、窮地に追いやられ拒絶反応で苦しむアンギルスPPを見下す闇影はドラゴンフライRDFの方に怒りの目を向け、その力に溺れ「アギト能力者以外の人間の殺害」という禁忌を破った事を糾弾する。

 

『はぁ?それはアンノウンだった時の話でしょ?今の僕はそれをも越えた神の存在…生かすも殺すも僕次第なんだよ!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…DI・DI・DI・DISTEAL】

 

「ぐあああぁぁっっ!!?」

 

それを一蹴し、「神以上となった」自分は生殺与奪の権利があるのだと豪語するドラゴンフライRDFはFARを発動し、ディメンジョンスコールを未だ苦しむアンギルスPP諸共、闇影の頭上に直撃させた…。

 

『ふっ…跡形無く消え…!!?』

 

「全く…俺も焼きが回ったな…。こいつの事なんかどうでも良いと思ってたのにさ…。」

 

『グゥゥッッ…!!』

 

しかし、闇影はアンギルスPPを担いで咄嗟に鬼走術・銀靴を使い少し離れた場所まで回避し、その行為に皮肉を零す…。

 

『変な事するねぇ…君はそいつとは敵なんじゃないの?ヒトの分際で過ぎた力を持ち、それに振り回されて母親を殺しかけ、挙げ句それから逃げた…。そんな中途半端男や弱っちいヒトなんかを守って何になると言うんだい?』

 

敵対している筈のアンギルスPPを庇った闇影にドラゴンフライRDFは、敵と同族…その何れでも無い存在(周)や、自分達に劣る人間達やそれ等全てを救おうと躍起になる彼の行動を貶した。

 

「確かにな。こいつは他人様の宝(もの)を腕付くで奪おうとするし、人を付け回すし、気に入った異性ならそれが小学生でも手を出そうとする…人間失格の男だ。」

 

『デ…メェェ…!!』

 

アンギルスPPに対する罵倒を肯定し、本人の目の前にも関わらず更なる罵倒を付け足して返答する闇影。僅かに理性を持っていたのか、アンギルスPPはそれに怒りを顕わにするが…

 

「だが…そんな奴でも、どんな姿になろうとも、その力に苦しみながらも、命を懸けてでも己の居場所を…そこに居る大切な人を守りたいと言う強い想いを持っている!!力に溺れて自分を見失ったお前に、こいつを罵倒する資格等…微塵も無い!!」

 

『ミ…カ…ゲ…!!』

 

その言葉を聞き心に届いたのか、アンギルスPPは徐々に理性や姿が戻りつつあり、やがて元の姿…戴問周へと戻る…。

 

『たかだかヒトの分際で神以上の僕に説教垂れやがって…お前、何様なんだよ!!?』

 

「お節介教師な仮面ライダーだ!!宜しく!!変身!」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

ドラゴンフライRDFからの憤怒した問いに、闇影はディライトドライバーを腰に装着、何時もの決め台詞を口にした後、カードをセットし再度ディライトへと変身した。

 

「おい待ちな…この戦いの見せ場は全て…俺様が戴く!!」

 

戻ったとは言え、力の拒絶反応で身体が苦しみながらもディライトの隣に立った周は、この戦いは自分が終止符を打つと宣言する。すると、彼の腰からライトオレンジと紫の光が発生し…

 

「これは…!!?」

 

その光が勾玉状から直ぐ様円を作って止むと、両サイドに禍々しいアギトの紋章を象った、右が橙、左が紫の翼があり、中心には上が黄、左が赤、右が青の三角の光が込められたコアが埋め込まれたベルト「オルタカオス」が出現した…。

 

『そんな…まさか…!!?』

 

『そのまさかみたいだな…!!』

 

「見せてやるぜ…光も闇も越えた俺様自身の究極の魂(たから)をなぁ…!!変身!」

 

周がオルタカオスの翼を引っ張った瞬間、一瞬だけアンギルスPPの姿となるが孔雀の羽根を撒き散らし、ライトオレンジと紫の光が彼を包み、全身がアギトグランドフォームに酷似しているが、スーツは水色で、銀色のV字に折り畳んだ孔雀の翼を模したクロスホーン、胴体、両肩、両腕、両脚に金色の禍々しい天使の翼の模様が刻まれた禍々しいアギトの紋章を模した翼の装甲と、右がライトオレンジのラインが入った白い天使の翼、左に紫のラインが入った黒い悪魔の翼を背中に生やし、右が橙、左が紫の複眼が特徴の戦士「アギトロード・カオスルシファー」へと変身した…。

 

『これが…周の新たなる力…!!』

 

『さぁ…輝く道へと導いてやるか!!』

 

『…って、待て!!人の決め台詞を勝手に使うな!!』

 

アギトロードCLは、ディライトの決め台詞を勝手に宣言しながら、翼を広げて戦闘の構えを取る。彼の姿に驚愕していたディライトは、決め台詞の無断使用にツッコミを入れる。

 

『お前達ぃ…ふざけるのもいい加減にしろぉぉぉぉっっっっ!!!!』

 

『『『グオオオォォォォッッッッ!!!!』』』

 

そんな二人のふざけた(様に見える)やり取りに激怒し咆哮するドラゴンフライRDFは、三度身体のライドプレートから無数のアントRを現出し、彼等に襲い掛からせる。

 

『はっ!やぁっ!!ぜいっ!!!でりゃああぁぁっっ!!!!』

 

『ふっ…!!蟻の三枚卸しと行こうかね!!ずぇぇぇりゃああぁぁっっ!!!!』

 

『『『グギャアアアアァァァァッッッッ!!!!』』』

 

襲撃するアントRの軍勢を、ディライトはライトブッカー・ソードモードで一撃一撃で数十体程を着実に数を減らし、アギトロードCLは、右掌にライトオレンジと紫の光の粒子を集め、水色の禍々しいアギトの紋章が刻まれた天使の翼を模したライトオレンジの刃、悪魔の翼を模した撃鉄とグリップの部分が紫のガンブレード「ルシファーウィングス」を具現化し、一振りで数十体の敵を斬り裂いて爆散させた…。

 

『(馬鹿め…僕はそれを待ってたんだよ…!!)』

 

アントRの軍勢を倒される事を想定していたドラゴンフライRDFは、自信の元々持つ「周囲の風や空気を操る」能力を使い、ディライトとアギトロードCLがアントRの軍勢を倒した際に発生した爆発…爆風を利用し「爆風弾」を形成し、敵を討伐した彼等の隙をついて反撃を企てるが…

 

『あ…あれ…何で…何で力が…!!?そ…それに…か…身体…が…!!?』

 

何故か能力を発動出来ずに困惑し、その上身体から全身の体力に謎の虚脱を感じ、崩れる様に膝を付いた。爆炎が止み二人の姿が顕わになった時、その原因が発覚する…。

 

『どうしたクソガキ、御得意の能力は使わねぇのか?』

 

仮面の下で笑うアギトロードCLの右の翼が左同様悪魔のそれになっており、それら両方の広げた翼から紫色の光の粒子が上空へ向かうと、広範囲の巨大な同色の円を描いていた。

 

これこそがアギトロードCLの能力「全命無円・封邪(アンチサンクチュアリ・イービル)」…この円の直径10km以内の範囲にいる全てのアンノウンは、全能力が封じられてしまうのだ…。

 

『どうやらこん中じゃてめぇは正真正銘、唯のクソガキに成り下がっちまう様だな♪』

 

『こ…の…中途半端野郎がぁぁっっ!!』

 

『『『グオオオォォォォッッッッ!!!!』』』

 

ドラゴンフライRDFは全命無円・封邪により本来の力を無力化され、その張本人…自分が散々見下していたアギトロードCLに激怒して無理矢理立ち上がり、ライドプレートからまたしてもアントRの軍勢を現出させ、四度彼等へ襲撃させる…。

 

『あいつ、完全にブチ切れて戦術がワンパターンになっちまってんな…。』

 

『己を見失った者に勝機は無い…!!それを教えてやる!!』

 

【RIKUGA!ANOTHER-AGITO!RYUGA!ORGA!

CULLICE!KABUKI!DARK-KABUTO!NEGA-DEN-O!DARK-KIVA!】

 

【FINAL-KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

アギトロードCLへの憎悪や怒りにより、同じ戦術しか取れない程我を忘れたドラゴンフライRDFに最後の攻撃を仕掛けるべく、ディライトはカオスタッチを操作、ドライバー本体を右腰に移動させバックル部分に装着してカオスフォームへと変化した…。

 

『さあ…導くぞ!!』

 

【ANOTHER-AGITO!CHAOS-RIDE…DARKNESS!】

 

ディライトCFがカオスタッチのアナザーアギトと「F」のボタンを押すと、胸部のヒストリーオーナメントカードが全てアナザーアギトの最終形態のシャドウライドカードに変化し、両サイドに九人のアナザーアギトの黒いシルエットが現れ、直ぐ様彼と一体化すると、外見はアギトグランドフォームに酷似しているが、スーツはモスグリーン、金色のV字型のクロスホーンに赤色の丸い複眼、黒い装甲と首に巻いたライトオレンジのマフラーが特徴の、アナザーアギトの最終形態「アナザーアギト ダークネスフォーム」へとカオスライドした…。

 

『もう一人のアギト…!!?いやそんなのどうでもいい!!どの道あいつも地獄行きだぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

DアナザーアギトDFにカオスライドしたディライトCFを見たドラゴンフライRDFは、彼もアギト能力者なのかを一瞬疑うも、それを問題とせずアギトロードCL同様、抹殺の対象と認識し怒号を上げる。

 

『やれやれ…ここはひとっ走りで片付けようか。闇魂昇醒・瞬(ダークアップ・スピード)…!!』

 

『消えた…!!?』

 

 

怒りで冷静さを失ってしまっているドラゴンフライRDFに溜め息を吐いたDアナザーアギトDFは、滑らかな動きで走りの構えを取りながら謎の言葉を呟くと、全身にダークブルーのアギトの姿を象ったオーラを纏った瞬間、その姿を消し、直ぐ様敵の軍勢の背後から現れた瞬間…

 

『『『グギャアアアアァァァァッッッッ!!!!』』』

 

実はあの一瞬でDアナザーアギトDFは、超スピードでアントRの軍勢に一撃一撃、即死レベルの攻撃を叩き込んでいたのだが、彼等はそれを理解出来ず一気に大爆散した…。

 

これこそがアナザーアギトDFの、一つの能力ステータスに闇のエネルギーを集中させ超特化させる能力「闇魂昇醒(ダークアップ)」である。その反面、それ以外の能力の一つが著しく低下してしまうのだが、光と闇の力を併せ持つディライトCFには然程関係無い…。

 

『そ…そんな馬鹿な!?あの軍勢を一瞬で…!!?』

 

『これが闇の中でもがき続け、それを乗り越えて得た力を持つ者と…』

 

『ただ強大な力をパクっただけで満足し、挙げ句それに溺れた奴の差だ…!!』

 

『う…うっ…うわああああぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…】

 

追い込まれて自棄になったドラゴンフライRDFはFARのカードを発動し、DアナザーアギトDFとアギトロードCLを葬ろうとする。力を封じられた影響なのか、空中の円を描く為の天使の翼が歪な物になっているのだが、それに気付いていない…。

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…A・A・A・ANOTHER-AGITO!】

 

『止めと行くか…遅れるなよ、周!はっ!!』

 

『指図してんじゃねぇ!!ふっ!!』

 

必殺技を放たれる前に決着を着けるべく、DアナザーアギトDFもFARを発動して、口元のクラッシャーを剥き出しにし、クロスホーンから金色の光を伸ばす様に光らせ、足元に黒いアギトの紋章を浮かばせ、アギトロードCLもクロスホーンの孔雀の翼を扇状に展開し、足元にライトオレンジと紫のアギトの紋章を浮かばせ、二人同時に飛び上がった…。

 

『覚醒せし闇魂(あんこん)の蹴撃!ダークネスアサルトキック!!』

 

『はああぁぁっっ!!』

 

『グガアアアアァァァァッッッッ!!!?か…神を…越えれば…こいつ等を楽に殺せるんじゃ…無かったのかよ…!?創…士…!!』

 

DアナザーアギトDFの黒いアギトの紋章が刻まれ、その黒いエネルギーを纏った右足のライダーキック「ダークネスアサルトキック」とアギトロードCLのライトオレンジと紫のアギトの紋章が刻まれ、同色のエネルギーを纏った右足のライダーキック「カオスルシファークラッシュ」の同時攻撃によりドラゴンフライRDFは、死の間際に自分にドライバーを奪う様けしかけたであろう創士への恨み言を吐き爆散した…。

 

「ふぅ…こいつは俺様以外にゃあ使いこなせねぇ代物なんだよ…。」

 

アギトロードCLは、爆風で吹き飛んだディスティールドライバーを受け取り元の姿に戻りながらこの力は自分にしか扱えないと、討伐したドラゴンフライRに呟く…。

 

 

 

「戴問周…奴までも手にしてしまったのか…『混沌(カオス)』の力を…!!」

 

その様子を物陰で一部始終見ていた紅蓮は、周が新たに入手したアギトロードCLの力を「混沌(カオス)」と呼称しつつ口から血が出る程歯を食いしばり、憎悪の視線をその原因と思われるディライトCFに向ける…。

 

 

 

―美杉病院・翔子の病室前

 

 

「すぅ…はぁ…。よし。」

 

 

黒い海賊風の帽子を被り、水色のYシャツの上に黒茶色のガンマン風の半袖のジャケットを着込み、黒いズボンにブーツを履いた姿に着替えた周は、病室前で深呼吸をし中へと入る…。

 

 

 

「……。」

 

「母さん…俺はとんでもねぇ親不幸者だよな…。母さんをこんな目に遭わせておきながらそれからずっと逃げてばかりで…!!意識を取り戻さねぇのはきっとそのせいなのかもしんねぇ…!!」

 

帽子を取り翔子の近くにしゃがみ込みその手を握った周は、これまで言えずにいた自分の想いを語りかける。その声を徐々に震わせながら…。

 

「けど…俺は…母さんに嫌われるのに…ビビって…最初に言わなきゃなんねぇ事…言ってなかったよ…ごめん…母さん…!!」

握った手を強く握り締め謝罪の言葉を吐き出した周は、その目から涙を零した。その一滴が翔子の頬に伝った瞬間…

 

 

 

「…しゅ…う…?」

 

 

 

「!!母さん…母さん!!」

 

今まで生気の無い瞳に輝きが戻り、弱々しくも今まで閉ざしていた口を開き、8年振りに漸く意識を取り戻した…。

 

「ごめん…ずっと独りぼっちにして!!母さんの傍から離れて本当にごめん!!」

 

「大…丈夫…よ…。貴方が…貴方が…そうして…元気でいてくれれば…母さんの事を…想ってくれれば…それで…良いの…。」

 

意識を取り戻した翔子に周は再び謝罪の言葉を伝えるが、彼女はそれを気にはせず小さく笑い周の健康な姿のみで充分だと呟く様に語る。

 

「あの…外にいる人…周の…お友達…?」

 

「なっ…!!?ちっ…!!あいつは…あいつは…」

 

突然翔子から病室の外にいる闇影の存在を指摘された周は、それに驚くも小さく舌打ちし、少し迷いながらこう語った…。

 

 

 

―俺の…仲間だよ…。

 

 

 

「そ…う…。やっと…やっと周に…お友達が…!!」

 

その言葉を聞いた翔子は、長年の願い…周に友人が出来る事が漸く叶った事に涙を流して微笑んだ…。

 

 

 

「ったく…何時からお前の仲間なんかになったんだよ…!!」

 

その様子を病室の外で見聞きしていた闇影は、周の「自分は仲間」だと言う言葉に悪態を吐いた。顔を俯かせながら口元を緩ませ、一粒の水滴を零しながら…。

 

 

 

「そう…周さんのお母様が意識を…それは良かったわね。」

 

キャンパスに描かれた、ベッドに座る翔子とその傍らにいる周が満面の笑みを浮かべ、背後にディスティールとアギトロードCLが重なった絵を見た影魅璃は、事の顛末を聞き嬉しい表情をする。

 

「あいつ流に言えば、『自分の居場所』と言う、本当の宝を見つかった…ってとこですかね。このまま大人しくしてくれればより一層助かるんだがな。」

 

「そんな事言って〜。本当は戴問さんに仲間って言われて嬉しいんじゃないの先生〜?」

 

「ばっ…馬鹿言うんじゃない!!///晩御飯の準備、手伝いますよ影魅璃さ…ん!!?」

 

最後の最後まで周に対し憎まれ口を叩く闇影だが、黒深子に周から仲間だと言われた事をからかわれ顔を赤くして否定し、誤魔化す様に影魅璃に夕飯の準備の手伝いを申し出るが…

 

「どうしたんですか、この大量の野菜料理は!!?」

 

ふとテーブルを見ると、麻婆茄子・菠薐草のバター炒め・胡瓜と人参の野菜スティック・アスパラガスのベーコン巻き・南瓜の冷ポタージュ・野菜サラダ等の、野菜だらけのフルコースで埋め尽くされている。

 

「ああ…闇影さんが帰って来る前に周さんが来て、怪我の手当てのお礼だって…」

 

「こんなに大量の野菜は何処から…!!まさか!!?」

 

この野菜のフルコースは周が手当ての礼として作った物だと聞いた闇影は、その材料の出所を考えた瞬間、目を見開いて急ぎ足で庭へと向かうと…

 

「あ〜い〜つ〜…この庭の野菜全部使ってどうするんだよぉぉぉぉっっっっ!!!!」

 

案の定、農園にある野菜は全て収穫されてしまい畑のみと殺風景になってしまっており、それを全て調理に使った周に怒りの咆哮を上げた。

 

「先生、落ち着いてって!!」

 

「これが落ち着いてられるか!!人の老後の楽しみの一つ奪っといて何が仲間だ!!やっぱりあいつは敵だ!!あの…馬鹿野郎ぉぉぉぉっっっっ!!!!」

 

どうやら老後の予定に野菜農園の栽培を考えていた闇影は、それを根刮ぎ奪った周を改めて敵だと認識し、キャンパスの絵の周に怒りの鉄拳を叩き込もうとした瞬間…

 

「あ…あれ…!?絵が消えた…!?それに、黒深子もコウイチもツルギちゃんも影魅璃さんもいない…!!?」

 

突然周囲が黒紫色の荒野と化し、黒深子達も居なくなった事に驚きを隠せない闇影。しかし、異変はまだ続く…。

 

「なっ…何だこれは…!!?」

 

何処からか地面に黒いレールが長々と敷かれ、遠くにある灰色のオーロラから正面が骸骨の顔をした全身が黒い不気味な列車が此方に向かって走り出す…。

 




如何でしたか?書きたい事書き過ぎて「長げぇよ!!」と思った方は少なくないでしょう。

周の新たな力、アギトロード・カオスルシファーについての詳細は何れ書きますので、暫しお待ちを。因みにルシファーは堕天使の他に「光を運ぶ者」という意味でもあるんです。正にこの作品に相応しいのだと思ってます。←おい

次の世界の内容は一旦お預けで、次回は闇影があのライダーと対面しますので期待せずお待ちくださいませ。

ちょっと引く話、周と翔子のシーン書いてて泣きそうになっちゃいました。痛い…痛過ぎる…!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第29導 幽霊が語る虚零界の真実 

長らくお待たせ致しました!!現在放映中のゴーストは主人公が幽霊、ならば此方は…!!

今回は初の1話完結、ギャグ無しシリアスのみ、盗賊出番無しと初の大判振る舞いでございます。

内容によっては一部の方々のお怒りを買うかもしれませんがその辺は何卒御勘弁を。

尚、ややグロい描写もありますので、お食事中に読む事はお勧め致しません。(苦笑)

それでは、御緩りと…。


―幽霊列車・車内

 

 

「(一体…この列車は何処へ向かっているんだ…!?いや、そもそも…何故俺だけがこの世界に…!?)」

 

乗客が自分以外居ない薄暗い車内の席に座る闇影は、この幽霊列車の行き先について…そして、何故自分のみがこの世界へ移動された事に疑問を抱いていると…

 

『お客様、大変恐縮ですがチケットをお見せ下さい。』

 

「へっ…?いや、あの…すいません。俺、チケットは…って、あれ?」

 

そこへ若々しい男性の声をしたダークグリーンの帽子を目深に被り、同色のロングコートを着込んだ車掌らしき人物が闇影にチケットの提示を申し出た。成り行きで乗車してしまった為、当然チケットを持参していない闇影は少し慌てるが…

 

「(何で持ってるんだ…!?)」

 

『はい、確かに。ありがとうございます。』

 

何時の間にかジャケットの胸ポケットに「無期限」の判が押された黒い骸骨のイマジンの絵が描かれたライダーチケットが入っており、それに疑問を抱きながらも車掌に提示した。

 

『間もなく、終点に到着します。お降りの際にお忘れ物の無い様に御注意下さい。』

 

車掌が終点到着の知らせを口にすると同時に幽霊列車は停車し、ドアが開いた為闇影は取り敢えず外へ出た。が…

 

「これは…一体…!!?」

 

終着駅だと言うがホームらしき物は無く、目前の景色は最初に見た物と同じなのを除けば、建物全てが倒壊しており、その瓦礫や周囲の公共物や様々な物品が何年も経過したかの様に朽ち果てていると言う、まるでこの世の終わりを体現した物だった…。闇影がそんな燦々とした光景に言葉を失っていると…

 

『如何でしょうかお客様…この「虚零界」は。』

 

背後からあの幽霊汽車の車掌が声を掛け、この荒れ果てた世界…「虚零界(きょれいかい)」なる謎の世界についての感想を彼に尋ねる。

 

「虚零…界…!!?」

 

『御存知ありませんか…なら…詳しくお教えして差し上げねぇとなぁぁ…ヒャハハハハハハハ!!!!』

 

闇影が「虚零界」について何の事か解らず困惑していると、車掌は先程とはうって変わった粗暴な口調でこの世界の詳細について答えると言いつつ、狂った様に笑いながら着用している帽子や車掌服を破くと…

 

「貴様は…!!」

 

薄暗い緑色の体色をした、ボロボロの黒いフードを被った骸骨を模したイマジン「ゴーストイマジン」がその外見と一致した不気味な雰囲気を醸し出しながら姿を顕わにした…。

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!数多の平行世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

 

「イマジン…!!」

 

ゴーストIが自分の命を狙う何者かの…この世界にいる敵の頭目が送り込んだ刺客だと判断した闇影は、直ぐ様距離を取りディライトドライバーを構えるが…

 

『そう構えんなよ死神サマよ。別にてめぇの命を取りに来た訳じゃねぇよ。』

 

「何…?」

 

当のゴーストIは、自分を抹殺する為に現れたのでは無いと、肩を竦めながら右掌を前に出し否定のサインを示す。それを聞き目を見開き驚く闇影だが、警戒心を緩めようとはしない。

 

『俺はただ、てめぇを楽しい「旅行」に行かせ、その案内役を任されただけなんだって。創士の野郎にな。』

 

「…っっ!!貴様、創士の手先か!!うおぉぉっっ!!」

 

謎の「旅行」の案内役らしいゴーストIが創士の配下の怪人だと知った闇影は、目を鋭く、赤く光らせ憎悪の表情でライトブッカー・ソードモードを構えて勢い良く斬り掛かるが…

 

『ちっ…物騒な奴だな…っと!!』

 

「何!?」

 

ゴーストIは、創士に関連するだけで一気に殺意を爆発させる闇影に舌打ちしながら、黒ずんだ緑色の光球となり彼の攻撃を回避、宙へと消え去った。

 

―ククク…死神サマよ。今からあんたにはちょっとした時間旅行を楽しんで貰うぜぇ…死ぬ程な。ヒャハハハハハハハ!!!!

 

「時間旅行だと…どういう事だ!?」

 

―こういう事さ。

 

幽霊の如く姿を消し、嘲笑いながらも何処からか聞こえるゴーストIの語る「時間旅行」について闇影の問いに答える様に、先程何処かへ消えた幽霊列車が異空間から現れ、彼の前を横切った瞬間…

 

「なっ…うわああぁぁっっ!!?」

 

列車のドアが開き、そこから霞んだような白い無数の手が伸びて、闇影を捕獲、強制的に乗車させその場を走り去って行く…。

 

 

 

―幽霊列車・車内

 

 

「痛つつぅぅっっ…!!くそ…こんな列車に乗せて俺をどうするつもりなんだ…!?」

 

謎の無数の手に無理矢理引き込まれた形で乗車され頭部を強く打った闇影は、痛む部分に手を押さえながら自分を再度この列車に乗せた理由について考えていると…

 

『言っただろ?てめぇには時間旅行を楽しんで貰うってな。ヘヘヘ…!!』

 

「…っっ!!貴様ぁぁっっ!!」

 

突如、背後から消えた筈のゴーストIが姿を現わし、自分を時間旅行へ連れ出す為だと小馬鹿にする様に笑いながら再び説明してくるが、そんな事はお構い無しに先程の怒りを再度爆発させ殴り掛かるが…

 

 

『おっと!!まぁ落ち着きなって。これから一緒に同じ旅の仲間同士、仲良くしようじゃねぇか…ヘヘヘ…!!』

 

「誰がっ…!!」

 

『ふぅ…わーったわーった!!この世界…虚零界について教えてやんよ!!』

 

軽く回避され、旅をする者とその案内役の間柄として「仲間」だと心にもない言葉で宥められ更に怒りを募らせる闇影。これ以上彼をからかうと「厄介な事」になると判断したゴーストIは、半ば自棄糞気味に虚零界の詳細を切り出す。闇影も、一先ず怒りを抑えて話を聞く体勢を取る。

 

『この虚零界は言葉通り、全てが「零」な世界…住人も、過去も、現在…未来すら無ぇんだよ。』

 

「……!!全てが…『零』…!!」

 

闇影は、虚零界の詳細…紡いだ過去、動き続ける現在、生み出されるであろう未来、それらに生きる住人…その全てが「零(ない)」と言う事実に目を見開き驚愕し、同時にその惨状や幽霊列車が存在する理由についても理解した。

 

本来幽霊列車は、死者の時間を越える事が可能な時の列車…そして此処、虚零界は住人全てが「零」…即ち「死」である為、それが走っていても不思議では無い…。

 

『そしてそれを創った…いいや、ブチ壊したのは死神サマ…てめぇだよ。』

 

「何…だと…!!?」

 

この虚零界を生み出した…否、世界一つを壊滅させたのは自分だと告げられた闇影は、額から冷や汗を垂らし更に表情を凍らせる。その事実が信じられないからでは無く、それに思い当たる節がある為である。

 

『心当たりがあるみてぇだな?なら、今から思い出させてやるよ。はっきり…鮮明になぁ…!!』

 

闇影の反応から身に覚えがあると判断したゴーストIは、虚零界がどのような経緯で創られたのかを彼に知らしめるべく、右の中指と親指でフィンガースナップを鳴らすと…

 

「なっ…何だこれは…!!?」

 

車内の天井・壁・床の全てが透明になり、外の風景が見えるようになった。しかし闇影が驚いたのはそこでは無く、先程までの廃虚だった風景とは違い、空は快晴で人々が賑わう等、平和その物だった…。

 

『これがこの世界の元々の姿だよ。』

 

「元々の姿だって…!?だが…この世界は…!!」

 

『ああ、確かに過去は跡形も無くなっちまってるさ。だが、てめぇが持ってるライダーチケット…ヴィジョンチケットは「時間を映し出す」仕様になってんだよ。』

 

 

そう…この世界は先程ゴーストIが述べた様に、過去が「零」…即ち存在しない…。にも関わらずその過去がこうして実在しているのは、闇影の持つライダーチケット…過去・現在・未来等…あらゆる時間を風景に投影する、通常のそれとは違う「ヴィジョンチケット」の効力による物である…。

 

「時間を…過去を映し出す…。そんなチケットがあるなんて…!!」

 

『嘗てこの世界の住人達は、過去(いま)の様に平穏な時間を過ごしていました。』

 

闇影がヴィジョンチケットと言う特殊なライダーチケットの存在に驚愕していると、ゴーストIは唐突にこの平穏だった世界が虚零界となった経緯を語り部の様に話し出す。

 

「お前…一体何のつもりだ…!?」

 

『しかし、その平穏が突如として失われる時がやってきたのです…。』

 

「おい!!俺の質問に答え…!!」

 

それに何らかの悪意を感じた闇影はゴーストIに問い質すも、それを無視して話を続ける彼に声を荒げるが、ある光景を見て沈黙する…。

 

「……。」

 

「あれは…俺…!?」

 

何故なら、外の風景…つまりこの平穏だった時の世界の、とあるビルの屋上に例の灰色のオーロラが発生し、そこからダークショッカーの幹部だった頃の自分が現れたからだ…。

 

「この世界に恨みは無いが…焼き尽くさせて貰う…。変身…!!」

 

【KAMEN-RIDE…DISHADE】

 

「あっ…ああぁぁっっ…!!」

 

過去の闇影(以後パスト)は、感情の籠もってない淡々とした口調でこの世界を消滅させるべく、ディシェイドライバーを腰に装着、カードを装填しディシェイドへと変身した。その様子を見ていた闇影は当時の記憶を思い出し、身体を震わせ怯えた表情をする…。

 

【ATTACK-RIDE…GAOH-LINER!】

 

更にディシェイドがドライバーに一枚のカードをセットすると、彼の頭上の空に時の砂漠に繋がる穴が開いてレールが敷かれ、そこから鋭い緑の瞳をした橙色の鰐の頭部を模した列車…全ての時を喰らう戦士「仮面ライダーガオウ」専用の時の列車「ガオウライナーキバ」が、まるで生物の如くその鋭く、大きな口を開閉しながら地上に向かって走り出し…

 

『グバアァァァァッッッッ!!!!』

 

「な…何だあれは…グェアッッ!!?」

 

「きゃああぁぁ…ィギェェッッ!!!?」

 

そこにいる数十人を一瞬で轢き潰し、続けて前進…否、暴走させて行く。突然の大惨事に周囲の人々は、当然悲鳴を上げながら死に物狂いで逃げ惑う。しかし、ただの一般人がガオウライナーキバ…列車のスピードより早く逃げれる筈が無く、後方にいる人間が徐々に轢き殺されて行き、その返り血やミンチの様な肉片を車体に付着させながら爆走すると言う、なんとも凄惨な光景を生み出していく…。

 

「うぅぅ…ああぁぁっっ…!!!!」

 

その場面を透明化した幽霊列車越しに目の当たりにした闇影は、過去の自分が原因である事の激しい罪悪感に苛まれ、その場から崩れ落ちながら頭を抱え、目から大量の涙を流す…。

 

『その後もガオウライナーは停止する事無く絶えず人々を蹂躙し、巨大な化物をも呼び出し街を破壊し続けてました。その原因たる男は、ただ黙ってその様子を見ているだけでした…ってな♪ククク…!!』

 

『グィヤァァッッ!!!!』

 

『ギシャアアァァッッ!!!!』

 

『グオォォッッ!!!!』

 

ゴーストIの態とらしい語りの通り、ガオウライナーキバは人々を轢くだけに飽きたらず背中の鰭からミサイルを発射し、更に闇影(パスト)が独自に改造した車両から飛び出したギガンテスヘブン、ハデス、ヘルが街を破壊、逃げ惑う人々を喰い殺す等暴虐の限りを尽くしていた…。

 

『しかし、それを食い止めるべく勇敢な戦士がいた…!!』

 

ディシェイドの暴虐を制止する戦士の存在を示唆されたと同時に、周囲の光景がビデオのノイズの様な物で見えなくなるが、直ぐまた光景が写るが…

 

「……っっ!!」

 

『……。』

 

次の光景は先程のそれとは違い、中心に佇んでいるディシェイドを剣・槍・斧・銃等タイプが各々違う武器を持った四人の戦士が四方に囲む場面に変わっていた。しかし、それだけでは無い…。

 

『てめぇ…こんだけ好き勝手ブチ壊した挙げ句、デンライナーやおっさんやナオミ…ハナクソ女迄…!!覚悟は出来てんだろうなあぁぁっっ!!?』

剣を…デンガッシャー・ソードモードの切っ先をディシェイドに向けながら声を荒げて怒号を飛ばす赤い桃が割れた仮面の戦士…仮面ライダー電王・ソードフォームの言葉通り、彼等の背後には赤と白を基調とした列車「デンライナーゴウカ」が激しい損傷をした状態で横転しており、中には中年の男性や若い女性乗務員…そして幼い少女が大量の血を流して横たわっていた…。

 

恐らく、あのガオウライナーキバの襲撃に駆け付けて来たのだが、デンライナーに乗り込んだディシェイドが中年の男性・デンライナーのオーナーや乗務員の女性・ナオミ、そして…少女・コハナの命を奪い、車両を破壊し、それに激怒した電王の変身者とその契約イマジン達がそれぞれの電王ライダーとなり、この状況に至る…。

 

『ふん…この世界は何れ焼き尽くされる…。下手にしゃしゃり出なければ寿命が僅かに延びたかも知れぬのに…実に愚かな連中だな。』

 

『口の減らねぇ野郎だな…!!今すぐブッ潰してやっからそこを動くんじゃねぇぞっっ!!行くぜ行くぜ行くぜぇぇっっ!!!!』

 

糾弾されても尚冷淡な態度を取り、更に挑発をするディシェイドに怒りを募らせた電王SFが突撃をすると同時に、残りの三人も同じく彼を倒さんと襲い掛かる。

 

四対一と一見ディシェイドにとっては不利な状況に見えるが、電王SFや電王・アックスフォームのデンガッシャー・アックスモードの斬撃を軽く回避し、電王・ロッドフォームのデンガッシャー・ロッドモードの攻撃を手で受け止めて掴み、投げ飛ばし、電王・ガンフォームのデンガッシャー・ガンモードの銃撃も、シェイドブッカー・ガンモードの銃撃で「同じ弾道を撃つ」と言う神業で相殺する等、互角に渡り合っている。

 

『あ〜もう!!あいつに全然当たんないからムカつく〜!!次の攻撃で絶対にやっつけてやるから良いよね?答えは聞いて…!!』

 

電王GFは自分の攻撃が一度も被弾しないディシェイドに苛立て喚きながら、次の一撃で仕留めんと意気込むが…

 

『…え…!!?』

 

『聞くつもりも聞かせるつもりも無い…!!』

 

瞬く間に自分の眼前に接近したディシェイドのシェイドブッカーの斬撃により両腕と胴体を斬り裂かれ、何が起こったのか理解出来ぬまま息絶えてしまう…。

 

『なっ…鼻垂れ小僧ぉぉっっ!!』

 

『おおおおぉぉぉぉっっっっ!!!!』

 

仲間を倒された事に激昂した電王AFは走り出し、デンガッシャー・アックスモードで斬り掛かろうとするが、ディシェイドはそれを左斜めに向けたシェイドブッカーで防ぎ、互いに押し合う。

 

『大声を張り上げ、勢いだけで敵を倒せると思っている…実に愚かな…。』

 

『どない事でも気合いが大事なんや!それが分からへんお前に俺等は負けへん!!』

 

『そうか…なら気合いとやらが無い俺の強さを見せてやろうか…!?』

 

『なっ…俺が…押されとる…!!?』

 

通常ならばこうした武器の押し合いは腕力の強い者…電王AFが勝つ。だがそれは、相手が並の強さならばの話…通常以上の力を持つディシェイドはその常識を打ち破る様に、片手のみで防ぐシェイドブッカーで電王AFのデンガッシャーを徐々に押していき…

 

『なっ…しもたっ!!?』

 

『ふっ…!!』

 

『ぐあぁぁっっ!!?』

 

 

やがてそれを宙へと弾き飛ばし、がら空きとなった電王AFの腹部から肩口に向けてシェイドブッカーで逆袈裟斬りし、その命を奪った…。

 

『この野郎ぉぉ…熊まで!!』

 

『こうなっちゃ一気に仕留めるしか無いみたいだね…!!』

 

【FULL-CHARGE!】

 

『それっ!!』

 

『なっ…くっ…!!』

 

仲間を二人も倒され、激昂する電王SFとは対称的に冷静さを保っている電王RFは、強力な一撃で倒すべくライダーパスをデンオウベルトにセタッチし、デンガッシャー・ロッドモードをディシェイドに投げつけると、青い亀の甲羅型のエネルギー「オーラキャスト」で拘束する…。

 

『よし…後は…!!』

 

電王RFはその隙にディシェイド目掛けて走り出し、ライダーキックを叩き込む必殺技「ソリッドアタック」を放つつもりだが、拘束し僅かに油断したのが仇となった…。

 

『子供騙しの縛りだ…なっ…!!』

 

『なっ…!?』

 

【ATTACK-RIDE…CLOCK-UP!】

 

『ぁぐっっ!!?う…嘘…でしょ…!!?』

 

『事実だ…。』

 

オーラキャストをあっさりと自力で解除し、クロックアップを発動しそのスピードに乗せた拳で電王RFの左胸に風穴を開けた。電王RFは、あの一瞬でここまでの動作を行うディシェイドの動きについて信じられぬまま死亡するが、当の本人からは一蹴されてしまう…。

 

『亀!!』

 

『これで残りは貴様一人となったな…。苦痛を味わう事無く楽に死ぬか、苦痛と絶望を味わいながらじわじわ死ぬか…世界諸共焼き尽くされて死ぬか…好きな方を選べ。』

 

『ちっ…舐めた口利いてんじゃねぇぇぇぇっっっっ!!!!』

 

完全にこの世界でたった一人の存在と化した電王SFは、シェイドブッカーの切っ先を突き付けるディシェイドからの選択肢になってない選択肢を突き付けられ、怒りのまま突撃するが…

 

『無駄な足掻きを…ふんっ!!』

 

『ぐあぁぁっっ!!?』

 

そんな単調な攻撃が通じる筈も無く、振り下ろされたデンガッシャーをシェイドブッカーで簡単に防がれ、そのまま振り払われ背後へ吹き飛ばされてしまう…。

 

『くそぉぉっっ!!』

 

『まだ立ち上がるか。ここまで力の差を見せ付けてやったと言うのに…本当に馬鹿なのだな貴様は。』

 

『へっ!生憎俺ぁ諦めが悪ぃんだよ!!どっかの誰かさんのせいで…なあ!トクゾウ!!』

 

(ほやな…わしもこのままあいつに屈するんはゴメンやけぇ…!!もう一回行くぜよ…モモタロス!!)

 

『おう!俺は…いや、俺達は最初から最後まで…!!』

 

【FULL-CHARGE!】

 

電王SFは、圧倒的な戦闘力の差を思い知らされても尚ふらつきながらも立ち上がり、この諦めの悪さを自身の契約者…否、相棒である野上トクゾウの影響だとディシェイドに返しつつ彼を見据えながらデンオウベルトにパスをセタッチし…

 

『クライマックスなんだよおおおおぉぉぉぉっっっっ!!!!』

 

赤いエネルギーを切っ先に籠めたデンガッシャーを片手に勢い良く走り出し、ディシェイドの腹部目掛けて横一文字に斬り裂く必殺技・エクストリームスラッシュを見舞わそうとする…が…

 

『なっ!!ぐああぁぁっっ!!?』

 

『そういう単調な部分が馬鹿だと言ってるんだ…!!』

 

右手首を掴まれそれを阻まれた挙げ句、無防備となってしまった腹部目掛けて逆にシェイドブッカーで斬り裂かれてしまい、上半身を前に倒す様にうなだれる…。

 

『貴様の実力(クライマックス)も所詮はその程度だったという事だな。』

 

動かなくなった電王SFを見て、結局は彼も今まで葬って来たライダーと同程度の物だと冷ややかに零すディシェイド。そう思っていた時…

 

『な…何っ!!?ぐぅぅっっ!!?』

 

デンガッシャーの切っ先が分離し、シェイドブッカーを持つディシェイドの右の手の甲に斬り付け、その痛みにより左手で掴んでいた電王SFの右手首を解放してしまう…。そして…

 

『必殺…俺達の必殺技!!大逆転バージョォォォォンッッ!!!!』

 

『ぐああぁぁっっ!!?』

 

突然の事態に虚を付かれて直ぐ様対処出来ず、がら空きになってしまった胸部目掛けて、分離した切っ先が再び接合し、先程以上に大きく輝く赤い光を纏ったデンガッシャーで横一文字に斬り付ける「大逆転バージョン」の一撃でディシェイドを倒した…。

 

(痛つつぅぅ…!!む…無謀な策やったけど…何とか倒せたのぅ…!!)

 

『へっ…肉を斬らせて骨を断つ…ってな!!』

 

電王SFの中にて、トクゾウは今の「大逆転バージョン」を無謀且つ超強引な力押しの技だと最初に受けたダメージで身体を痛がりぼやくも、モモタロスはそれにより強敵を討伐した事に勝利の余韻に浸っている…。

 

 

 

『どうやら貴様を少し見くびっていた様だな…。』

 

 

 

(えっ…!!?)

 

『んな…馬鹿な!!?』

 

『俺の身体はイマジンを含め、此処とは別の様々な世界の怪人達の細胞が施されている…。故に、多少の強力なダメージでは死なぬ…!!』

 

何と、斬り伏せられ倒れた筈のディシェイドがそのままの状態で立ち上がりながら、自身にダメージを与えた電王SFに一定の評価を出す。

 

ダークショッカーの幹部であるディシェイド…闇影(パスト)は、グロンギからファンガイアまで9つの世界の怪人達の細胞を移植手術をして身体の耐久力を持っている為、今の様な必殺技程度では絶命しなかったのだ…。

 

しかし、当の本人は自分の捨て身の攻撃が効かなかった事に唖然として、自身への評価もディシェイドの耐久力の理由も頭に入らず身動きが取れないでいる…。

 

『とは言え…この俺に傷を付けたのは貴様が初めてだ。褒美をくれてやろう…!!』

 

これまで様々な世界のライダーと戦って来たが、誰一人として自分に傷一つ付けた者はおらず、その第一人者である電王SFへの敬意を払い「褒美」を賜わせるべく、ディシェイドは一枚のカードを取り出し、ドライバーへセットする…。

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…GA・GA・GA・GAOH!】

 

セットしたカード…ガオウのFARを発動した瞬間、シェイドブッカー・ソードモードの刀身に銅色の雷の様なエネルギーをバチバチと音を立てながら纏われる…。

 

『存分に喰らうが良い…タイラントクラッシュ…!!』

 

『ぐああああぁぁぁぁっっっっ!!!?』

 

そのまま袈裟懸けで大きく振り下ろし、ガオウの必殺技である「タイラントクラッシュ」で電王SFを斬り裂き、大きく吹き飛ばし変身を解除させる…。

 

『漸くくたばったか…。後は捨て置けば勝手に…!?』

 

「ま…だじゃ…!!まだ…わし等は…負けとらん…!!」

 

この世界の中心である電王SFを倒れた事を確認したディシェイドは、後は焼き尽くされる運命が決したこの世界から立ち去ろうと踵を返そうとした時、茶色の七三分けの青年・トクゾウが血塗れで瀕死状態でありながら、自分を見据え立ち上がる…。

 

「どやっちゃぁぁ…どやっ…ちゃあぁぁっっ…!!」

 

ふらつきながらも尚、戦おうとするべくディシェイドの方へ歩き出すトクゾウだが、今のダメージが致命傷だった為、身体に限界をきたし、その場で倒れ絶命する…。

 

『く…そ…!!ト…クゾ…ウ…!!』

 

うつ伏せて倒れていたモモタロスは、トクゾウの名前を呼びながら彼の方へ右手を伸ばすが、契約者であるトクゾウが死亡した為、全身が砂と化し崩れ落ちて消滅する…。

 

『絶対に敵を倒さんとする、その強き願い、強き力を持ちし者達よ…我が記憶の片隅に留める事を約束しよう…。』

 

トクゾウとモモタロスの最期を見届けたディシェイドは、彼等の鋼鉄の如く強い意志に再度敬意を評し、その存在を肝に銘じる事を誓い、発生した灰色のオーロラを潜り立ち去る。それと同時に、この世界は一瞬で炎に包まれ完全に焼き尽くされてしまう…。

 

 

 

『しかし、立ち向かった戦士達は全て敗れ、支柱であるライダーが殺された事により、この世界は焼き尽くされてしまいましたとさ♪めでたしめでたしってなぁ…ヒャハハハハハハハ!!!!』

 

「……。」

 

この虚零界…数ある一つである「電王の世界」の過去の出来事を一部始終見終えた闇影は、ゴーストIの悪趣味な語りも嘲笑も耳に入らず、己が犯した過ちに苦しみながら崩れ落ちたままでいる…。

 

『どうだったよ?過去のてめぇの格好良い殺しっぷりを拝見した感想はよぉ…。』

 

「…ぅぁ…!!」

 

『町も人間も怪人も…この世界のライダーを理不尽に何もかも滅〜茶苦茶に焼き尽くしたその極悪非道な振る舞い…尊敬するぜ。』

 

「…ぁ…くっ…!!」

 

ゴーストIはまるで神経を逆撫でするかの如く、「この世界が焼き尽くされた」過程…闇影の悪しき過去を自身で閲覧した感想について態とらしく尋ねる。しかし闇影は俯いたまま立ち上がらず、何故か小さく呻きながら身体を抱えて震わせている。

 

『そんな極悪人様が今じゃ「世界を光へ導く」先公だって〜?あまりに虫が良すぎて逆に笑っちまう話だぜ!!ヒャハハハハハハ!!!!』

 

「…ぁあ…ぅぐるぁぁ…!!」

 

『ハハ…ハッ…!?』

 

挙げ句、嘗ての「緋眼の死神」から「光導者」として生きる事に対して「都合が良い」と罵り大声で嘲笑うゴーストIだが、闇影の様子を見てそれを止めた…。

 

「ぁ…かっ…はっ…はがっ…ゥグルアアアアアアアアァァァァッッッッ!!!!」

 

闇影の全身が渦の様な闇の如く黒いエネルギーが纏われ徐々にそれが大きくなり、立ち上がった彼は獣の如く咆哮すると、渦状だったエネルギーは一気に噴火した火山の炎の如く勢い良く放出して乗車しているガオウライナーの上半分を一瞬で吹き飛ばした…。それを気にも留めぬ闇影は、髪の色は金に、瞳は赤く染まる等して外見が変わった…否、嘗ての姿へと戻ったのだ。「緋眼の死神」としての姿に…。

 

「変…身…!!」

 

【KAMEN-RIDE…DISHADE!】

 

何時の間にかディライトドライバーも元のディシェイドライバーに戻っており、それを腰に装着した闇影は、先程とは打って変わり冷静且つ冷淡な口調になりながらカードを装填し、ディシェイドに変身した。その身に闇のエネルギーを纏いながら…。

 

『ハッ!!ブチ切れて遂に本性を見せやがったなぁっ!!そうだ!!どんなに偽善ぶっても、てめぇの本質は結局闇…み…!!?』

 

嘗ての姿へと戻った死神ディシェイドに対し更なる嘲笑と罵倒を吐き捨てる様に飛ばし続けるゴーストIだが、何時の間にかシェイドブッカー・ソードモードを振り降ろそうとするディシェイドの姿が自分の眼前に映った為、咄嗟に柄が緑色の剣を横に構え、盾代わりにして攻撃を防いだ。

 

『くっ…この俺が…押され…ぐあぁぁっっ!!?』

 

しかし、ディシェイドの力が強いのか、咄嗟に防いだ為籠めた力がやや不十分だったのか…徐々に押し込まれ防御を崩されてしまったゴーストIは、がら空きとなった胴体に横一文字の斬撃を受けて背後へ吹き飛ばされる…。

 

『俺の過去をその薄汚れた足で踏み込んだ代償…小さくは無いぞ…!!』

 

ディシェイドは、自身の過去を映し出し、それを面白半分に挑発めいた語りをすると言う、ゴーストIの悪趣味な振る舞いに怒りを感じ、その制裁を下すべくシェイドブッカーを片手に彼の下へ近付く。

 

『くっ…たかだか人間の癖に…この俺を殺せると思ってんのかよ…!!ざけんなよ…ざけんじゃねぇぞぉぉぉぉっっっっ!!!!』

 

立ち上がるも上半身を俯かせているゴーストIは、如何に「死神」と謳われたディシェイドとは言え、所詮は人間である彼にイマジンである自分が地に身体を付けられた事実と「自分を倒す」と言う、思い上がった(様に聞こえる)発言に身体を大きく仰け反らせて激昂し、何処からか中心に金色の縁とその内部が赤い長方形の口の様な形をしたベルトを取り出し、腰に巻き付けた。

 

『…そのベルトは…!?』

 

『御存知みてぇだなぁ…この俺を只のイマジンだと舐め腐った事を…死んで後悔しなぁぁっっ!!変身!』

 

【SKULL-FORM!】

 

腰に巻き付けたベルト「ユウキベルト」を見て驚愕するディシェイドを見てにやけるゴーストIは、ベルトを起動させ単調なテンポ音を鳴らし手元にあるライダーパスをセタッチすると、全身が灰色のスーツに包まれ、周囲に青白い鬼火を纏った複数の黒いアーマーが装着されると、黒い電仮面の額に骸骨、首に巻かれた線路模様の白いマフラーと腰に付加された黒いスカートの様な物が特徴の戦士「仮面ライダー幽汽 スカルフォーム」へと変身した…。

 

『そのライダーの力も創士から与えられたのか…!?』

 

『あぁ?んな事を答えてやる義理は無ぇし、それを聞いても無駄だと思うぜ?てめぇはこれから死んじまうんだからよぉぉぉぉっっっっ!!!!』

 

ディシェイドはライダーの力を授けたのは創士なのかを幽汽SFに尋ねるも、当の本人はその質問には答えず、肩に乗せていた自身の剣を構え、走り出して斬り掛かる。

 

『シャアッ!ハァッッ!!ゼリャアアァァッッ!!!』

 

『……!!』

 

幽汽SFは片手で剣を縦に振り、身体を半回転させその遠心力で横に振り、右斜めに振ると直ぐ様左斜めに振り下ろしたりと素早い斬撃をディシェイドに繰り出すが、ディシェイドは無言のままそれをシェイドブッカーで防いでいる。

 

『どうしたどうした死神さんよぉぉっっ!!そんな防戦一方じゃ俺は殺せねぇぜぇぇっっ!!』

 

『くっ…!!』

 

先程からシェイドブッカーで防いでいるのみで反撃を仕掛けないディシェイドの消極的な戦い方に幽汽SFは、それとは対称的に息つく暇も与えぬ速度で剣を振り回しながら挑発し、数秒間の剣同士の押し合いをすると直ぐ様弾いて互いに距離を取る…。

 

『チッ、偉そうに啖呵切っといて変わったのは見た目だけかよ…!!この俺に上等こいた落とし前をつけさせてやるぜ!!』

 

【FULL-CHARGE!】

 

あれほど自分を倒すと宣言しながら積極的な攻撃を仕掛けないディシェイドに「外見のみ変わった」事に不甲斐なさを感じ、見切りを付けた幽汽SFは、挑発の返礼としてベルトの中心部にライダーパスをセタッチし、剣を中心に構えると…

 

『はああぁぁ…ぜりゃああああぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

彼の周囲に複数の青白い鬼火型のフリーエネルギーが発生し剣の刀身にフルチャージさせたそれを地面に叩き込むと、強力な衝撃波が地を這う様に放つ必殺技「ターミネイトフラッシュ」をディシェイドに仕掛ける…。

 

『……。』

 

この危機的状況にも関わらず、ディシェイドはその場から一歩も動かず迫り来る衝撃波をただ黙視し、やがてそれは自身を巻き込み周囲は大爆発する…。

 

『俺の技にビビって動けなかったのかよ…ケッ…死神つっても大した事なかった…な…!!?』

 

再び剣を肩に乗せた幽汽SFは、自身の必殺技に対し反撃の必殺技を繰り出す事も、防御する事も一切行わなかったディシェイドを「技の威力に萎縮した臆病者」だと罵倒するが、爆煙が止みだした先の光景を見て絶句する…。

 

『どうした?この程度の技では俺は死なんぞ?』

 

『何で…だ…何で…何で何で何で!!?何で死んでねぇんだよぉぉっっ!!!?』

 

爆煙の止んだ先には、ターミネイトフラッシュを直撃した筈のディシェイドが無傷のまま直立し、不敵な言葉を投げつける姿がそこにあった。その光景に幽汽SFは、先程の必殺技で仕留められなかった事に激しく狼狽する…。

 

『喚くな、これで防いだだけだ…。』

 

対して冷静なディシェイドは、爆煙が完全に止むと同時に自身が無傷だった理由を幽汽SFに説明する。手元にはネガ電王・シールドフォームの専用の盾・カプリールドが装備されており、先の必殺技は全てこの盾が吸収した為であった…。

 

『貴様の戦法は粗方理解した。確かに攻撃速度は高く、技の威力も大きい。だが…余りに単調過ぎて、見切るのは容易い…。「たかだか人間」である俺にも見切れるくらいに…な。』

 

『!!て…めえぇぇぇぇっっっっ!!!!』

 

先程まで防戦一方だったのは自分の攻撃パターンを知る為だった事に屈辱を、そのパターンを見切るのは簡単だと勝手に理解した事に激しい怒りを感じた幽汽SFは、咆哮を上げながらディシェイドに向かって走り出し、殺意の籠もった剣を振るうが…

 

【ATTACK-RIDE…PERCLAW!】

 

『ふっ…!!はっ!やぁっ!!ぜぃっ!!!』

 

『なっ…がっ!!?ぎっ!!?ぐあぁぁっっ!!?』

 

ディシェイドはシェイドブッカーからカードを取り出し、ドライバーにセットすると、ネガ電王・クローフォームの専用武器・ペルクローを手の甲に装備し、幽汽SFの剣撃をクロスした腕で防ぎ、それを弾き無防備となった胸部を数回引き裂いて背後へ退かせ…

 

【ATTACK-RIDE…TRUBAMERANG!】

 

『更にもう一撃だ…ぜぇぇいっ!!』

 

『くっ…避け切れねぇ…があぁぁっっ!!?』

 

透かさず次のカードをドライバーにセットすると、ネガ電王・フェザーフォームの専用武器・ツバメランを実体化、円を描く様に投擲し、更なる追加ダメージを与えた。

 

『くそぉ…くそくそくそくそくそがあああぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

【FULL-CHARGE!】

 

【FULL-CHARGE!】

 

【FULL-CHARGE!】

 

『はああああぁぁぁぁ…こいつで…くたばりやがれぇぇぇぇっっっっ!!!!』

 

度重なる攻撃を受け続けて怒り狂った幽汽SFは、ユウキベルトにライダーパスを乱雑に三度セタッチし、先程以上に巨大なフリーエネルギーをフルチャージさせた剣を地面に叩き付けて、通常の倍以上の大きさとなったターミネイトフラッシュをディシェイドに放った…。

 

『乱れた心で放つ強大な技程、脆い物は無い。最後に一つ、指南してやろう…。力は…こう発揮させるのだとな!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…YU・YU・YU・YUUKI!】

 

またしても冷静なディシェイドは、怒りに身を任せる幽汽SFの必殺技に苦言を漏らしつつ、平常心で必殺技を放つ方法を「指導」として幽汽のFARを発動する。

 

『はああぁぁっっ…!!』

 

『馬鹿な!!?何でてめぇも俺の技を!!?』

 

幽汽SFがまたも狼狽する様に、ディシェイドが両手でシェイドブッカー・ソードモードを中心に構えると、彼の全身から複数の鬼火型の次元エネルギーが周囲を囲み、刀身に宿す等…幽汽と同じ必殺技のプロセスを取っている。但し、鬼火は黒がかった紫色で、エネルギー量は幽汽SFより一回り大きい。

 

『地獄と言う名の終着駅に送ってやる…ターミネイトフラッシュ!!』

 

『この俺が…只の人間なんかにこの俺がああああぁぁぁぁっっっっ!!!?』

 

ディシェイドがシェイドブッカーを地面に叩き付けると、巨大な衝撃波・ターミネイトフラッシュが地を大きく抉って走り出し、幽汽SFのターミネイトフラッシュを彼ごと飲み込み、大爆発させた…。

 

「面白半分に触れるべきで無い過去もある。来世で肝に命じておくんだな…!!」

 

変身を解除した闇影は、幽汽SFが消滅した場所の方向に向かって、軽率に他人の過去を干渉する事に警告めいた言葉を放ちながら、敵とは言えその命を奪ったせめてもの償いとして墓を作ろうと近付くと…

 

 

 

『オ前…俺ガ今ノデ死ンダナンテ思ッテンジャネェダロウナァァッッ!!?』

 

 

 

「なっ…!!?」

 

『ヒャッハハハハハハハハァァァァッッッッ!!!!』

 

先の攻撃で消滅した筈の幽汽SFが、闇の様に黒くドロドロとした骸骨と複合した様なエネルギー体となって地面を突き破る様に現われ、狂った様に嗤いながら彼に襲い掛かる…。

 

「往生際の悪い奴め…ぜやぁぁっっ!!」

 

『ギャアアアアァァァァッッッッ!!!!?』

 

幽汽SFの執念深さに眉を顰める闇影は、シェイドブッカー・ソードモードの一太刀により胴体を真っ二つにして今度こそ消滅させた…。

 

 

 

『ナァンテナ…甘メェゼ死神サマヨォォッッ…!!』

 

「何っ…!!?」

 

…かに見えたが、エネルギー体と化し、肉体を失った幽汽SFに物理的な攻撃等無意味であり、そのまま闇影の背後に回り込み、そして…

 

 

 

『ソノ身体…俺ガ貰ッタアァァァァッッッッ!!!!』

 

「なっ…この…離…れろ…!!こ…のっ…ゴバッ!!?ガハァァッッ…ァウグゥゥッッ…!!?」

 

何と幽汽SFは全身をまるで蔦の様に形を変えて絡み付き、闇影の眼・耳・口・僅かな傷口等、全身にかけて憑依した。闇影はそれに身体を動かして抗うも、徐々に体内へと吸収するかの如く入り込まれてしまう…。

 

「ゲホッ!!ゲホッ!!お、お前…俺に取り憑いて何…を…グガアアアアァァァァッッッッ!!!!?」

 

咳き込みながら、自分に憑依した目的を内部にいる幽汽SFに問い詰めようとする闇影だが、そのタイミングで腹部から服越しに闇冥縛封の封印式が発生し、解放された自身の闇がそれ目掛けて吸い込む様に封印され、言い知れ様の無い激痛により身体をのたうち回らせ、徐々に髪や瞳の色が元に戻ると同時に苦痛が和らいでいき、その安心感により意識を手離す…。

 

 

 

『ヒヒヒ…此処が死神サマの精神か…!!』

 

(貴様、最初から俺に取り憑くつもりで…何を企んでいる…!!?)

 

『漸くお目覚めか。気付くのが遅ぇんだよ!!』

 

周囲は闇の如く暗く、しかし無数のライトオレンジの回路の様な物が存在する空間…闇影の精神にて、内部に侵入、更なる先へ流れ進む幽汽SFは、何処からか聞こえる闇影の意識に、自分への憑依が目的なのかと指摘され、時既に遅しと一蹴する。

 

『だがまぁ、目的が果たせたから話してやるよ。本来なら問答無用でてめぇに憑いてやるつもりだったが、直ぐに抵抗されて殺られるか、縦しんば憑いたとしてもディライトとやらの光の力で消されて終いだ。』

 

しかし、既に目的を果たした余裕なのかその理由について話し始める幽汽SF。ただ単に憑依するだけなら闇影を直接襲撃すれば簡単だが、ライダーの力を得た程度の怪人と次元ライダーである彼が戦えば返り討ちにされ、更に憑依したとしても闇影の光…ディライトの力により消滅する危険性もある。

 

『だが…闇の力が解放された時のてめぇならすんなり取り憑ける上、それが封印されちまえば振り払う事も出来ねぇ!!そう考えた創士は、俺に瀕死状態になると自動的に闇の魂を持つ者に「絶対憑依」の力をプログラムした幽汽の力と、てめぇを死神状態にさせる為の策を授けたって訳さ!!』

 

(つまり…全部奴の思い通りに踊らされた訳か…闇のシナリオとやらに…!!)

 

但し、死神…闇の存在と化した状態への憑依ならば問題は無い上、一度憑けば最早抵抗しても手遅れとなる。その為に創士はゴーストIに瀕死時に「絶対憑依」能力が作動する様改造したユウキベルトと闇影をディシェイドに変貌させるべく、今回の「悪趣味な時間旅行」の策を授けた…。それを聞いた闇影は、自分が創士の「闇のシナリオ」通りに動かされた事に憤りを覚える…。

 

『見えたぜ…!!』

 

(何を…あれは…!!?)

 

遂に精神の最深部に辿り着いた幽汽SFが見た物…それは、眠った様な状態で無数の白銀の鎖により封印された過去の姿をした闇影…即ち、彼の闇の力の権化である。この鎖の出所は言わずもがな、師・マバユキが命を代償に施した闇冥縛封の力である…。

 

『ヒヒヒ…俺が業々あんな小細工したり、ムカつきながらも負けたのはな…てめぇのその強ぇ闇の力を乗っ取る為だったんだよ!!』

 

(よせ…止めろ!!そいつはそんな単純な力じゃない!!周囲は疎か…自分すら危険に曝す代物だ!!)

 

『ヒヒヒ…そいつを聞いて尚更手にしたくなったぜ!!支配した暁にゃ…全ての世界で大暴れしてやっぜぇぇぇぇっっっっ!!!!ヒャハハハハハハハァァッッ!!!!』

 

(止めろ…止めろぉぉぉぉっっっっ!!!!)

 

幽汽SF…ゴーストIが敗北すると言う、彼にとって屈辱的な結果を甘んじてまで創士の思惑通りに闇影へ憑依した理由は、彼の中に眠る闇ディシェイドの力を支配、全次元を暴虐の限りを尽くす事であった。その野望の一歩として狂った様に笑いながら闇影の姿を象った闇の権化へと溶ける様に同化した。すると、拘束していた鎖の一部が千切れ出し、闇影(闇の権化)の閉じていた目がカッと見開かれ、彼の視界そこで途絶える…。

 

 

 

―…い…!!…せ…せい…!!先生!!しっかりして!!

 

 

「う…んん…!!」

 

意識を取り戻した闇影が目を開けると、自分を揺すって目覚める様必死に呼び掛ける黒深子の姿と心配そうに見守るコウイチとツルギの姿が映っていた。

 

「先生!!漸く目が覚めたのね…良かったぁぁ…!!」

 

「闇影さん…大丈夫ですか!?」

 

「黒深子…ツルギちゃん…。俺は一体…!?そうだ!!虚零界は!?あの骸骨のイマジンは!?」

 

「はぁ?何言ってんだお前?キャンバスの絵の戴問さんぶん殴ろうとした途端、急に死んだ様にブッ倒れて大騒ぎになったんだぜ?」

 

自分が目覚めた事に喜ぶ黒深子やツルギを余所に闇影は先程目にした事を話すが、それを聞き呆れ顔をしたコウイチ曰く、自分はキャンバスの絵に描かれた周に殴り掛かろうとした途端に意識を失ったのだと言う。

 

「(なら…あれは全部夢だったのか…。)そうだったのか…心配掛けてすまなかった。」

 

もしコウイチの言葉が本当ならば、自分は今まで悪い夢を見ていただけなのだと心の中で思った闇影は、余計な心配を掛けた事を黒深子達に詫びて何時の間にか寝かされてた自室の布団から起きてドアに向かう。

 

「何処行くの!?まだ寝てないと…!!」

 

「もう大丈夫だよ、ちょっと顔を洗いたいだけ。」

 

黒深子からまだ本調子では無いだろうと制止される闇影だが、顔を洗いに行くだけだとやんわり言って部屋を出て、洗面所へと向かった。

 

 

 

「ふぅ…。あれは何だったんだ?夢の割には妙にリアリティがあったし…。」

 

洗面所で顔を水で洗いタオルで拭き取りややすっきりした闇影は、先程見た光景は本当に唯の夢だったのかと疑問に思っていると…

 

『残念ながら夢じゃねぇんだよな、これがよぉ…!!』

 

「!!?そ…その声は…!!?それに…その姿は…!!?」

 

突然、呟いた疑問に答える自分以外の声が聞こえた為、ふと鏡を目にした闇影。そこには何故か普段の姿ではなく、ギザギザの黒いストールを身に纏い、緑のメッシュを入れたボサボサに伸びた白髪と灰に近い白い瞳をし、邪悪な笑みを浮かべる自分と同じ顔…ゴーストIが闇影の姿に似せた姿が映っていた…。

 

『ヒヒヒ…何れてめぇがまた闇に墜ちた時には…この身体は頂く…。其れまではその胸糞悪ぃ偽善ぶりが何処まで続くか見届けさせて貰うぜ…!!』

 

「なっ…待て!!」

 

G闇影は、再び闇影が死神としての姿に墜ちた際には今度こそ彼の肉体を乗っ取ると宣言し、暫くは今後の動向を陰ながら拝見すると言い放つと意識の奥底へと引っ込む…。

 

(そして徐々に思い知るだろうぜ…どんなに偽善ぶろうが、てめぇは世界にとっての死神…いや、疫病神だって事をよぉ…ヒヒヒ…!!)

 

「……っっ!!」

 

最後に「疫病神」だと揶揄され、その心を殴りつけられた様な衝撃を覚えた闇影は、頭の中でそれを反芻し、悲痛な表情をしながら項垂れる…。

 

 

 

―リビング

 

 

「闇影さんが目を覚まして良かったわぁ…。お粥を用意しないとね〜♪」

 

目覚めた闇影の為に粥を用意する影魅璃がキャンバスの前を通り過ぎたと同時に、それは背景が雲の中にある巨大な白い塔、中心に上段が翼、中段が花、下段が波を重ねた金色のエンブレムがあり、周囲には赤い龍・桃色の鳳凰・黒い蛇・黄色い虎・青い鮫・金色の鬣をした白銀の獅子の頭部の様な物が飛び交う不思議な絵だった…。

 

 

 

「ディライトよ…次に訪れた世界に貴様の出る幕の無い…其ればかりか闇(はめつ)へと導く、必ずな…ハハハハハハハハッッ!!!!」

 

白石家の屋根の上にて、次の世界の内容を知る紅蓮は、闇影は不要どころかその世界を破滅させると嘲る様に高笑いをする。

 

果たして次なる世界は?そして、ゴーストIと魂が同化してしまった闇影の運命や如何に…!?




如何でしたか?まさかまさかのディシェイド復活!!&闇影の封じていた闇の力にゴーストIが憑依!!

今回新たに判明した世界・虚零界は呼んで字の如く、全てが「零」の世界であり、それは嘗ての闇影により焼き尽くされた世界の成れの果てで、その犠牲の一つには別次元のチーム・デンライナーも含まれていたんです。電王ファンの方々、本当に申し訳無い…。

その世界の支点(ライダー)である野上トクゾウ、彼の容姿は原典の良太郎ですが、髪は茶髪の七三分けです。名前と口調は今春のドラマから取りました。中々面白いので機会がありましたら是非御覧になって下さい。

次回はなろう時代にネタバレしましたが、「あの世界」です!!

そして、そこから更なる展開も用意する所存ですのでお楽しみに!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第30導 天使、再集結!

今回は初のスーパー戦隊とのコラボ回です!!o(^-^)o

かなり前の戦隊とコラボする為、設定はややうろ覚えな感じなので間違いがあれば御指摘をお願いします。(^_^;)

ここで皆さんに問題。

作中である人物が「とんでもない窮地」に立たされている場面があります。この時、皆さんならどう切り抜けるか(特殊能力等一切無しで)ご感想と共に宜しければお答え下さい。商品はありません!!(^_^;)←オイ

では、御覧下さい!!


「ウククク…此処だね。」

 

とある世界の採石場に灰色のオーロラが現れると、そこから創士が彼独特の笑い声を上げながらこの世界の大地に足を着け、直ぐ様中心へと進むと「ある存在」が突然現われ、それを目にした創士は顔を不気味に綻ばせる…。

 

―貴様…何者ダ…!?

 

「先ずは初めまして。僕は創士傀斗、通りすがりの技術者さ。」

 

創士が目にしたある存在…それは、不気味な雰囲気を漂わせた真っ黒な気体の様な存在が人語を話すと言う奇妙な物であり、それを気にせず…否、最初からこの存在が目当てだったのか、創士は普通に自己紹介をした。

 

―技術者ダト…!?マア良イ…私ニ何ノ用ダ…?

 

「何れこの世界に、ディライトと言う戦士とその仲間が現われる…君にそいつを始末して欲しくてね。」

 

―フハハハ!!笑ワセルナ…誰ガ人間ニ力等貸スモノカ!!

 

謎の存在の、自分の素性に訝しむ様子に全く意を介さない創士は、何れこの世界に訪れるであろうディライト…闇影達の抹殺を依頼する。しかし、謎の存在はそれを一笑し、人間である創士に力を貸す義理は無いと断る。

 

「…『彼等』に報復出来る機会があってもかい?」

 

―……ッッ!!

 

「もし僕のお願いを聞いてくれるのなら、それが出来る様にしてあげるよ?それどころか、より強い力を先にプレゼントして君を蘇らせると言うおまけ付きだけど…どうするんだい?」

 

創士の「彼等への報復」と言う言葉に反応を示す謎の存在。それを見た創士は、彼により強大な力を授けての蘇生を前払いすると持ち掛けた。

 

報復…蘇生…これらの単語から、謎の存在は「彼等」に討伐された身であり、もし創士の言葉が本当ならば、彼にとってはこの上ない好機である…。

 

―…良カロウ…ソノ話、乗ッテヤル…。

 

「ウククク…商談成立だね。なら、こいつで…」

 

―…ッッ!!貴様…ソレハ…オオオオォォォォッッッッ!!!!

 

考えに考えた結果、創士の依頼を聞く事にした謎の存在。それを聞き笑みを浮かべる創士が右手を横に翳すと、そこから空間に穴が開き、そこから平仮名三文字の文様が入った、サイズの禍々しい黒い水晶玉の様な物を取り出し、それに驚愕している謎の存在に向けて埋め込むと、水晶玉は禍々しく光り、黒く激しい稲妻が周囲に発生し、同時に彼は徐々に人の姿へと変化し…

 

『フ…フフ…漲る…これまで以上の力が…漲ってくる!!未熟者共よ、我が理想を不意にし、私を闇に葬った恨み…晴らさせて貰うぞ…ハハハハハハハハ!!!!』

 

漸く自由に動ける肉体と以前までの自分に無い力をも手にし喜びに打ち震える謎の存在は、自分を討伐した「未熟者」達への報復の準備を整えるべく灰色のオーロラを発生させて、復活及び更なる力を手にした喜びが抑えられないのか、高笑いをしながらこの場から消え去った…。

 

「ウククク…精々頑張りなよ。墜ちた『救星主』君♪」

 

ただ一人残った創士は、またも不気味な笑い声を上げながら謎の存在…「救星主」たる彼の健闘を皮肉混じりに祈りながら灰色のオーロラを発生させてこの場から消え去って行く…。

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!数多の平行世界を巡り、その瞳は、何を照らす?―白石家

 

 

「は〜い先生、朝ご飯しっかり食べてね♪」

 

「ああ…んぐんぐ…。」

 

「「…………っっ!!!!」」

 

朝食の時間にて、可愛らしいフリル付きのエプロン姿の黒深子が目線をやや下に向けて浮かない表情をした闇影に朝食を食す様促す光景から、この世界での闇影と黒深子の間柄は「ダークカブトの世界」同様、夫婦の様だ。

 

それを見た非リア充であるコウイチは「爆発しろ!!」と言う殺意の、密かに闇影に想いを寄せるツルギは嫉妬の視線で睨み付ける…筈なのだが、二人は何故か顔面蒼白し、まるで地獄絵図を見たかの如く絶望に満ちた表情をしていた。その訳は…

 

『ギッシャアアァァッッ!!!!』

 

皿の上に乗っかった、無数の不気味な型をした触手を生やした暗い緑色が混じったドス黒い身体をした裂けた口から舌を伸ばして奇声を上げた、おぞましい外見をした爬虫類型(?)の生物…黒深子が作った朝食…らしき物体…。

 

彼女の調理の腕前を知る読者諸君にとってはまだ許容範囲内の出来事であるが、問題は其処では無い…。

 

 

 

「あはぁ…先生が私の手料理を食べてくれてる…。お口に合わないか心配だったけどこうやって食べてくれて嬉しい…とっても嬉しい…!!///」

 

闇影がそんな黒深子の料理(と言う名の殺戮生物)を食している…。

 

闇影がそんな黒深子の料理(と言う名の殺戮生物)を食している…。

 

『ギィィィィッッッッ!!!?』

 

大事な事なので二度言わせて貰った。普通なら冷や汗を滝の様に流し、絶望に満ちた表情で顔を引き攣らせるのだが、闇影は表情一つ変えず料理を箸で切り分け、それによる料理の痛苦な叫びに耳を貸さずパクパクと口に運んでおり、それを見た黒深子は両頬に手を当てて恍惚且つ嬉々とした表情をする。

 

「どう先生、美味しかった?」

 

「ああ…とても美味しいよ…。晩御飯にまた食べたいくらいにね…。」

 

「(オイィィィィッッッッ!!!?何自ら死へと導く様な発言してんだよォォォォッッッッ!!!?)」

 

「(あんな事言ったら黒深子さんは…!!)」

 

「え、ホント!?じゃあ今日は先生の為に晩御飯は腕に縒りを掛けて作るから楽しみにしててね♪」

 

「「(やっぱり……!!!!)」」

 

黒深子に料理の感想を聞かれた闇影は、上の空状態で生返事ながらも美味だと答えたばかりか、彼女に夕飯の調理まで頼むと言う暴挙を犯した。当然それに喜色満面となった黒深子は快諾し、それを陰から見ていたコウイチとツルギは、「夕飯により死へと導かれる」未来に絶望しながらorzの体勢で地に沈む…。

 

 

 

―玄関

 

 

「それじゃ…行って来るよ…。」

 

「あ、待って先生。お仕事に行く前に…」

 

紺色のスーツ姿の闇影は、仕事用の服装やその他諸々が入ったバッグを手に、この世界の役割を行うべく職場へ向かおうと玄関のドアに手を掛けるが、黒深子はそれを呼び止めると…

 

「『行ってきます』のキスを忘れてるよ♪ん〜…」

 

「何…だと…!!?」

 

「何…ですって…!!?」

 

目を閉じ、唇を小さく尖らせてお出掛けの挨拶代わりに接吻をする様促した…。これには流石のコウイチとツルギも額にピキッと青筋を立て、驚愕と怒りの視線をぶつける。そして闇影は顔を真っ赤にしてテンパる、と言う流れになる筈なのだが…

 

「ああ…良いよ。」

 

「「ええええぇぇぇぇっっっっ!!!?///」」

 

何とその予想は大きく裏切られ絶叫して驚くコウイチとツルギを尻目に、闇影は尚も表情一つ変えず同じく口を小さく尖らせて黒深子に接吻した…。

 

 

 

―チュ♪

 

 

 

互いの頬に…。

 

「じゃ、行って来るよ…。」

 

「いってらっしゃ〜い♪」

 

これぞバカップル夫婦の成せる朝の究極儀式、互いの頬に接吻する「クロス・キス」…。それを終えた闇影はドアに手を掛けて外出し、クロス・キスをして御満悦の黒深子は、満面の笑みを浮かべながら愛する旦那(仮)である彼を見送った。何らかの期待をしていた諸君には申し訳無い、謝る。コウイチも心ではそう思ってるから(笑)

 

「思ってねぇよ!!勝手な事ぬかしてんじゃねぇ!!」

 

「誰に怒ってるんですか?そんな事より、最近闇影さんの様子がおかしくありませんか?」

 

「あ?まぁ確かに戴問さんの世界での用事が済んでからなんか変だよな。」

 

コウイチの何者かへの上空ツッコミを軽く流すツルギは、闇影の朝の様子に異変を感じており、それを聞かれたコウイチは「ディスティールの世界」を光へ導いて以降から彼がああなったのだと答える。

 

「確かに先生らしくなかったわね…。だからキスしたり、オムレツ作ったりして元気になって貰おうと思ったけど、効果が無かったみたいね…。」

 

「(あれオムレツだったんかい!?)」

 

「はぁ…いくら先生の為とは言え、我ながら滅茶苦茶恥ずかしかったわ…。///」

 

「(その割に滅茶苦茶ノリノリだったんですが。)」

 

黒深子も、先程までの気持ち悪いくらいキャピキャピしていた態度とは一転して、真剣な表情で闇影の様子が違う事に憂い、彼に元気付けて貰うべくあの様な行動に出たのだ。因みにあの殺戮生物ちょうしょくはオムレツだったらしく、先程までの立ち振る舞いに恥じらい、顔を紅くしている。コウイチとツルギの様にツッコミ所満載なのだが密に、密に…。

 

 

 

「…はぁ…。」

 

(ヒヒヒ…御出勤途中の死神サマよぉ…。あの黒深子とか言う女、随分な上玉じゃねぇか。朝からお熱い事…夜にはヤりまくりってか?ヒャハハハハハハハ!!!!)

 

「(…!!また貴様か…俺は兎も角、黒深子まで侮辱するな…!!)」

 

闇影が職場へ向けて歩きながら溜め息を吐いていると、頭の中に自分や黒深子を囃し立てるゴーストイマジンの下卑た声が聞こえ、それに眉を顰めた彼も頭の中で怒りの意で返す。

 

(御挨拶だなぁ。俺ぁただ、てめぇがこの世界で何をやらかすのか見守ってあげてんだよ。どうやって世界を焼き尽くしちまうのかよぉ…!!)

 

「(黙れ!!貴様がどう思おうと、俺はこの世界で為すべき事をするだけだ!!消えろ!!)」

 

ゴーストIの、自分が灰燼者しにがみとして如何にこの世界を焼き尽くすのかを期待しての煽りに対し、闇影は何時も通りの行動をするまでと強く返し、彼を意識の奥底を追いやり再び足を動かそうとした時…

 

「うわああああぁぁぁぁっっっっ!!!?」

 

「!!?」

 

何処からか人々の悲鳴が聞こえ、何事かと思った闇影は直ぐ様その方角へ走り出し現場を目にすると…

 

『『『ビビーッ!!ビビーッ!!』』』

 

そこには2つの「6」の数字を合わせた様な複眼と、中心に眼の様な物を付いた複数体の黒い怪人が、人々に暴行を加えたり、刀身が曲がった剣を振り回し、同じそれを銃の様に扱って光線を放ち、街を破壊していた…。

 

「何だあの怪人達は…!?見た事が無いな…!!もしかして、此処も『そう』なのか…!?」

 

闇影は、これまで巡って来た様々なライダーの世界とは違う怪人の存在を目にし、この世界を嘗て訪れた「ボウケンジャーの世界」と同じ「スーパー戦隊の世界」なのか推測する…。

 

「だとしても関係無い…!!」

 

例え此処が「スーパー戦隊の世界」だろうと何だろうと、目の前で人々が悪に苦しめられている光景を無視出来ない…そう切り替えた闇影はディライトドライバーを装着しようとするが…

 

「待て!!」

 

「!!?」

 

そこへ龍の絵が描かれた赤いパーカージャケットを着た短い茶髪の男、背中に鳳凰の絵が描かれた桃色のジャケットの茶髪のポニーテールの女、背中に蛇の絵が描かれた黒いジャケットの男、背中に虎の絵が描かれた黄色いジャケットの女、背中に鮫の絵が描かれた青いジャケットを着た男の計五人の若者が駆けつけて、黒い怪人達に破壊活動を止める様叫ぶ赤いジャケットの男の姿を見て、変身を中断し彼等に注目する。

 

「えっ!?な…何でビービ達がいるの!?」

 

「彼奴等はもう出て来ねぇ筈だろ!?」

 

「でもこのビービ達、緑じゃなくて真っ黒よ!?」

 

「気にはなるが今はそんな場合じゃない!!」

 

「皆、行くぞ!!」

 

「「「「おおっっ!!/えぇっっ!!」」」」

 

複数の黒い怪人こと「魔虫兵まちゅうへいビービ」を目の当たりにした彼等は、その存在は「二度と現れない筈」、「色が緑では無く黒」等と自分達の記憶に違えている事を口にするが、それは後回しにし赤いジャケットの青年の声を皮切りに手元のある物を構える…。

 

「あれって…モアイ?」

 

【【【【【GACCHA】】】】】

 

闇影が言う様に、五人の若者は金と銀を基調としたモアイを模したある物…「テンソウダー」の顎部分をスライドさせ、そして…

 

「「「「「チェンジカード!!!!!天装!!!!!」」」」」

 

【【【【【CHANGE…GOSEIGER】】】】】

 

戦士の絵が描かれたカードをそれにセット、テンソウダーの顎部分を閉じた瞬間、それの目が光り出し金色の天使の翼を模した光が彼等を包み込み、胸のエンブレムとジャケットに描かれた動物を模したマスクの部分がそれぞれ違うが、銀色の唇をした赤・桃・黒・黄・青の戦士の姿へと変化した…。

 

『嵐のスカイックパワー!!ゴセイレッド!!』

 

『息吹のスカイックパワー!!ゴセイピンク!!』

 

『巌のランディックパワー!!ゴセイブラック!!』

 

『芽萌のランディックパワー!!ゴセイイエロー!!』

 

『怒涛のシーイックパワー!!ゴセイブルー!!』

 

『『『『『星を護るは天使の使命!!!!!』』』』』

 

『『『『『天装戦隊!!!!!ゴセイジャー!!!!!』』』』』

 

彼等こそ、この世界を守護する戦士たる五人の護聖天使「天装戦隊ゴセイジャー」である…。

 

「ゴセイジャー…!!やはりか…!!」

 

陰から見ていた闇影はゴセイジャーの存在を目の当たりにし、この世界は「スーパー戦隊の世界」である事を確信し、同時に何故かその表情に更なる曇りを見せている…。

 

『はっ!やぁっ!!せいっ!!!』

 

『はっ!やぁっ!!えぇぇいっっ!!!』

 

『はぁっ!だぁぁっっ!!ぜりゃああぁぁっっ!!!』

 

『えいっ!!はぁっ!!おりゃあぁぁっっ!!!』

 

『ふっ!はっ!!甘いっ!!!』

 

『『『ビッッ!!ビビーッッ!!!?』』』

 

一方でゴセイジャー達は、強力且つ正確なパンチやキックに手刀等の基本的な格闘術、持ち上げて倒したり背負い投げ等のパワフルな戦法、宙を舞う様なアクロバティックな動作からの攻撃等トリッキーな戦法等、様々な手段で複数のビービを次々と撃退していく。

 

『よし!止めだ!!』

 

『『『『おう!!ええ!!』』』』

 

ビービの数がある程度少なくなったのを機に止めの一撃で倒そうと、龍のマスクをした赤い戦士・ゴセイレッドの号令により、五人は右腰のホルダーにある銃「ゴセイブラスター」を取り出し、それと同時に赤い龍・桃色の鳳凰・黒い蛇・黄色い虎・青い鮫の頭部を模した機械的な生物「ゴセイヘッダー」五体が現れて、各々の戦士の手元に収まるとそれをゴセイブラスターの銃口にセットし…

 

『ドラゴンバレット!!』

 

『フェニックスバレット!!』

 

『スネークバレット!!』

 

『タイガーバレット!!』

 

『シャークバレット!!』

 

『『『ビビィィィィッッッッ!!!?』』』

 

それを一斉に放つと五色のレーザーは一つにまとまり強力なそれと化し、直撃したビービ達は大爆発を起こし消滅した…。

 

「ふぅ…これで一先ず安心だね。」

 

「でも…あの黒いビービ達は何だったのかしら…?」

 

「ビービを出せんのって『彼奴』しかいねぇしな。」

 

「じゃあ、また『彼奴』の仕業なの!?でも、もう死んだ筈なんじゃ…!?」

 

「此処で考えてても仕方が無い…。その話は研究所でしよう。」

 

変身を解除したゴセイジャー達は、今の黒いビービ達の出所について話し合う。彼等は、あの怪人を生み出せる存在に心当たりがあるのだが、その存在は既に死んでいるそうだ。すると青いジャケットの青年は、この場で話すより、「研究所」と呼ばれる場所にて再度話し合う事を口にする。

 

「そうだね。行こう、研究所へ。」

 

赤いジャケットの青年の声に四人が頷き、彼等は研究所へと向かうべくその場から立ち去って行く…。

 

「研究所か。そう言えば俺も…って、あーーーっっっっ!!!!拙い!!もうこんな時間!!早く行かないと遅刻だぁぁぁぁっっ!!!!」

 

現場に残った闇影は「研究所」に何らかの関心を示しながらふと腕時計を目にすると、自分が向かう職場の始業時間に近い時刻になっている事に気付き絶叫し、初日から遅刻と言う御法度を防ぐべく全速力で職場へと走り出した…。

 

 

 

―天地天文研究所前

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…!!な…何とか間に合ったぁぁっっ…!!はぁ…はぁ…!!オホン!さ、早く中へ行こう。」

 

全速力で走った為、どうにか時間間近に天地天文研究所の門前に辿り着いた闇影。此処が彼のこの世界で「天文研究所助手」の役目を果たす為の場所である。走った直後で荒くなった息とやや乱れた服装を整えて研究所内に足へ踏み込もうとすると…

 

「やっと着いた〜。二年経ったけど全然変わんないね…って、あ。こんにちは、もしかしてお客さんですか?」

 

「え?あ…こんにちは。僕は此処の助手として今日から働く事…に!!?」

 

自分の他にこの天文研究所に赴いた者から挨拶と此処の客人である事を訪ねられ、挨拶を返して助手として働くのだと答えるべく顔を合わせると、目を見開いて驚く闇影。それもその筈、その相手こそ…

 

「どうしたのアラタ?あれ、その人は?」

 

「今日から此処で働く助手さんなんだって。」

 

「マジかよ!?」

 

「此処って助手なんている〜?」

 

「皆、博士や望、その人にも失礼だぞ。」

 

先程まで戦っていたゴセイジャーの五人なのだから…。

 

「あ…あの…貴方達って…!!」

 

「ああ、呼び止めてごめんなさい。俺達も此処に用事がありますので宜しければ一緒に入りましょう。」

 

「え…あの…!!」

 

「そうですよ。あたし達此処に来た事あるんで案内しますよ♪」

 

「そうだねエリ。さ、此方へどうぞ。」

 

「え…あ…あの…ちょっと…!!」

 

闇影は彼等に先程の事を聞こうとしたのだが、研究所に訪れた事があるらしい赤いジャケットの青年・アラタと桃色のジャケットの女性・エリに手を引かれる形で所内に入れられた為その隙を失ってしまう…。

 

 

「相変わらずのマイペースだな…。」

 

「そうだね。」

 

「やれやれ…。」

 

残った三人は、アラタとエリのマイペースさに呆れつつ後に続く様に、研究所内へと入る。

 

 

 

「いや〜皆さんお久しぶりです。こうして元気な姿を見れてとても嬉しいですよ。」

 

「久しぶり。アラタ、エリ、アグリ、モネ、ハイド。」

 

「久しぶり。博士、望。」

 

白衣を着た、濃い髭を生やし、にこやかな顔とふくよかな体型をした坊主頭の中年の男性・この天文研究所の所長・天地秀一郎と、その息子である黒い短髪の中学生の少年・望は、アラタ達ゴセイジャーと久々の対面に喜んでいる。

 

彼等は二年前までこの研究所にてアルバイトとして住み込んでいたが、今は訳あってそれぞれ違う場所にて生活をしている。そして、その二年後である今日…丁度五人共時間が取れたので、此処で再会する事となったのだ…。

 

「望〜お前も大きくなったよな〜。」

 

「そうだね。あたし達が作った野菜のお陰かしら♪」

 

「うん。アグリとモネが送ってくれた野菜、どれも美味しかったよ。何時もありがとう。」

 

黒いジャケットの青年・アグリは、望の頭を軽く撫でながらその成長ぶりに喜んでおり、黄色のジャケットの女性・モネは自分達が栽培し、送った野菜の賜物だと言い、望もそれを美味だと賞賛し、感謝する。

 

「皆…こんな時に悪いんだがさっきの話を…。」

 

「あ…そうだったね。」

 

青いジャケットの青年・ハイドは、再会の時間に水を差してしまう事を申し訳無さそうな表情で、先程の出来事…黒いビービの存在についての話を切り出した為、アラタ達は真剣な表情に切り替える。

 

「…何かあったんだね?」

 

「ああ…。実は…」

 

その様子に望は、何かしらの異常事態が発生した事を察してその話に参加する。それに頷いたハイドは、先程自分達が目にした事を説明する…。

 

「ビービが…蘇った…!?」

 

「うん…それも黒い姿でね。」

 

「そんな…だって巣はもう無いから出て来る筈が無いのに…!!」

 

ハイドから話を聞き終えた望は愕然としていた。本来ビービは、ビービ虫と呼ばれた謎の虫が木偶人形に取り憑き「ビービ兵」として誕生する怪人であり、その虫の巣は破壊され二度と現れる事は無い…。にも関わらず、それが現れたのだから彼が驚くのも無理は無い。

 

「ねぇ…またビービが生まれたのだったらもしかしたら…!!」

 

「有り得ねぇよ!!『彼奴』はアラタがブッ倒したのはこの目で見たじゃねぇか!!」

 

「でもお兄ちゃん、『彼奴』はかなりしぶとかったから有り得なくは無いかもよ?」

 

エリは、ビービが再び蘇った事に要因として「ある推測」を口にしようとしたが、アグリは要因である「彼奴」と呼ぶ存在はアラタが倒した為それを否定するが、妹のモネはその存在は「かなりしぶとい」様であり、エリの推測に同意する。

 

『それについて僕が説明するでっす。』

 

「「「「「「データス!!!!!!」」」」」」

 

エリの推測について、天井から発生した空間から青と白を基調としたゲーム筐体が降り立ち、手足を生やし画面に顔のマークが映った二足歩行のロボットに変形したゴセイジャーのサポートロボ・データスが説明を始める。

 

『お久しぶりです皆さん。望君も天地博士もお久しぶりです。』

 

「データスも久しぶり。でもどうして此処に?」

 

『人間界にまた何らかの危機が起き始めているんだと、マスターヘッドが僕を此処に送ったんです。』

 

「マスターヘッドが…!?」

 

『その通りだ。良く集まった、護星天使達よ。』

 

「「「「「マスターヘッド!!!!!」」」」」

 

望に此処へ送られた理由を訪ねられたデータスが軽く説明した途端、彼の画面は石像の顔を映し出した。この石像こそデータスを研究所へ転送した、ゴセイジャー達の指導者・マスターヘッドである。

 

「マスターヘッド。何らかの危機って、あの黒いビービ達とも何か関係が…!?」

 

『左様。数日前より人間界にてこれまでとは比べ物にならない強大且つ邪悪なエネルギーが発生し、それと同時にあの黒いビービ兵も現れ始めたのだ。』

 

 

アラタの疑問はマスターヘッドの語った通りだった。数日前に発生した謎の邪悪なエネルギー…それがあの黒いビービと関係していた。

 

「そのビービ達が現れた原因に『彼奴』も関係してませんか!?」

 

『確かに、ビービを生み出せれるのは「奴」のみだが、そのエネルギーが同じ物かまでは解らぬ。しかし、可能性としては考えられなくも無い…。』

 

「……。」

 

エリは、自分が抱いていた疑問…黒いビービが存在する要因として「ある存在」が関与しているかどうかマスターヘッドに尋ねるも、そのエネルギー反応が同一の物なのかは不明である様だ。とは言え、彼等の為すべき事はただ一つ…。

 

「その邪悪なエネルギーが何なのか、『彼奴』が関わってるのかどうかは分からないけど、それが人々を苦しめているのなら…俺達が食い止める!!それが俺達護星天使の使命だ!!」

 

「「「「ああっ!!/うん!!」」」」

 

『頼んだぞ、護星天使達…!!』

 

得体の知れない何かがこの世界の平和を脅かしているのならば、それを倒し人々を守る…そう決意したアラタの言葉に残りの四人も頷く。それに安心したマスターヘッドは彼等に全てを託し、通信を遮断した。

 

「着替え終わりました。」

 

「あっ…彼の事を忘れてました。は〜いどうぞ。」

 

それと同時にドアをノックした闇影の声に、博士は先程までの話で着替えをさせていた彼の存在に漸く気付き中に入る様返事する。

 

「失礼します。」

 

着替え終えた闇影は、黒いワイシャツの上に何時ものジャケットでは無く白衣を纏い、何故か黒縁の眼鏡を掛けた知的な姿となって入室した。

 

「うわぁ…何か格好良いよね♪」

 

「うんうん♪博士に悪いけど、この人の方が博士って感じがする。」

 

エリとモネは、闇影のその端正な容姿と相俟った知的な白衣の姿に魅力を感じ好評の声を上げている。元々家庭教師なのだから余計に様になっているのだろう。

 

「あんな奴にモネは渡さねぇからな…!!」

 

一方アグリは、妹モネが闇影に釘付けになってる様子を見て、兄特有の一方的な嫉妬心により彼を睨み付けている。シスコンですね解ります。

 

「え〜煌君。助手と言ってもそんなに難しい仕事ではありません。資料の整理や研究会に必要な物を運ぶくらいの物です。今日から宜しくお願いしますね。」

 

「はい!」

 

博士から助手の仕事内容の説明を受け、快く返事し働く意欲を見せる闇影だが…

 

「いや、真面目にやるのは良いんだけどよ…」

 

「此処って全くと言って良い程暇なのよね…。」

 

その様子を見ていたアグリとモネは、微妙な表情をしてそう呟く。実はこの天文研究所は二人が言う様に、大して忙しくも無く寧ろやる事が無い程暇で、ぶっちゃけ助手なんて必要皆無である。そんな中、インターホンが鳴り出し、望がそれに出た。

 

「はい、天地天文研究所です。はい、煌闇影さんは此方にいますが…はい、少々お待ちください。闇影さん、知り合いの男の人がお弁当を持って来たんだって。」

 

「コウイチが弁当を?分かった、ありがとう。」

 

どうやら来客はコウイチで、入れ忘れた弁当を持って来た様であり闇影はそれを受け取るべく玄関前へと向かう。

 

 

 

「よぅ旦那様よ。愛しの奥さんからお手製の弁当だぜ。ほれ。」

 

「旦那?奥さん?お前を何を言って…るん…だ…!!?」

 

闇影は、意味不明な事を言うコウイチに訝しみながら布で包まれた弁当を受け取ると、彼の言葉の意味を理解すると同時に一瞬で顔を青ざめて恐怖に打ち震える。何故なら、それからはドス黒いオーラを漂わせていてどんな中身なのか容易に想像が付くのだから…。

 

「お前…これ…まさか黒深子が…!!?」

 

「そのまさかだよ。因みに俺が届け役なんは、ツルギちゃんはそれにビビって引きこもっちゃってて、黒深子ちゃんは晩飯の準備で忙しいからだってさ。影魅璃さんはその手伝い役。」

 

「何で止めなかったんだよ!!?」

 

コウイチから事情を聞いた闇影は、涙目になりながら黒深子の蛮行を制止しなかった事を彼の肩を掴んで訴える。

 

「何って…お前が食いたいってリクエストしたからこんな大惨事になったんだろうが!!」

 

「ウゾダドンドゴドーーン!!!!」

 

それに対しコウイチは、闇影が黒深子に夕飯を作る様言ったのが原因だと逆に怒鳴り返す。その事実に闇影は、崩れ落ちながら叫び出す。

 

「嘘じゃねぇよ!!そもそもお前…いや、もう良い。この世界について何か解ったんか?」

 

コウイチは更に闇影を責め立て様としたが、流石に「あの事実」まで教えるのは気の毒だと思ったのかそれ以上怒鳴るのを止め、この世界についての情報を訪ねた。

 

「ん?ああ、実は…」

 

どうにか立ち上がった闇影は、この世界の詳細についてコウイチに語った。此処がライダーでは無く、スーパー戦隊の一つであるゴセイジャー達が守護している事を、そして…

 

「その邪悪なエネルギーって奴が、出て来ねぇ筈の敵兵を復活させていると…。」

 

「ああ。もしかしたら、また創士辺りが何かやらかしたのかもしれない…!!」

 

邪悪なエネルギーにより黒いビービ達の復活に関わっている事を語った。実は、先程のゴセイジャー達の会話を陰から聞いており、創士が何らかの手を加えていたのが原因だと推測する。

 

「かもしんねぇな。んで、一個疑問なんけどよ、何でそのゴセイジャーとやらと話に交わらなかったんだ?お前らしくもねぇ。」

 

「それは…。」

 

ここでコウイチは、何故今の会話やその推測についてゴセイジャー達に接触しなかった事を闇影に尋ねる。何時もの彼ならば、ライダーだろうとスーパー戦隊だろうと無関係にその世界の異常について積極的、お節介に干渉する筈…にも関わらず、今の様に動きが何処か消極的な事に疑問を感じているのだ…。

 

「あ〜ごめんなさい!!ちょっとどいて下さい!!」

 

闇影が言葉を詰まらせている時、研究所からアラタ達五人が走り出して闇影とコウイチに道を空ける様に言いながら何処かへ向かって行く。

 

「あれがゴセイジャーか。何か急いでるって事は今聞いたビービとか言う奴がまた現れたんか…!?」

 

「みたいだな…俺達も行こう!!」

 

ゴセイジャー達が急いでる理由は一つ…あの黒いビービがまた町で暴れているのだと推測した闇影とコウイチは、彼等の後を追って走り出す…。

 

 

 

「あったわよ周。この世界のお宝が♪」

 

「こっちもあったぜ巡ちゃん♪」

 

闇影とコウイチ、ゴセイジャー達が動き出した同時刻、巡と周は相も変わらずこの世界のお宝を手分けして捜索しており互いにそれが発見した為、町の広場にて合流し確認し合っている。巡は平仮名の文様が入った赤、黄色、青の小型の水晶玉を、周は小型の双頭の牛・三つ首の馬・四つ首の羊の頭部を模したフィギュアの様な物を。

 

『待て!!』

 

「「!!!!」」

 

巡と周が宝を手にしご満喫の所に、金色の鬣をした白銀の獅子の頭部を模した機械的な何かが現れ…

 

【CHANGE!GOSEI-KNIGHT!】

 

それは獅子を模したマスクをした赤いゴーグル、胸部に緑色の瞳の獅子を模した顔をした白銀の戦士へと変形した…。

 

「誰だお前?」

 

『星を清める宿命の騎士、ゴセイナイト!!』

 

「その宿命の騎士さんが私達に何か用?」

 

『お前達の持つゴセイオーブとダークヘッダー…それを渡して貰おう。』

 

白銀の戦士…ゴセイナイトは、巡と周が回収した三つの水晶玉「ゴセイオーブ」と三つの様々な動物を複合した頭部を模した小型機械「ダークヘッダー」を渡す様命じた。

 

「いきなり現れて宝寄越せだと…!?何寝惚けた事言ってんだてめぇは!!」

 

「これは私達が先に手に入れたの。それを『はい、そうですか』と後から来た人に譲る程お人好しじゃないわよ。」

 

当然そんな一方的な要求に答えてやる程二人は甘く無く、巡と周はゴセイオーブとダークヘッダーの差し出しに拒否の意を示した。

 

『ならば…力づくで奪い返す!!』

 

要求を拒否されたゴセイナイトは、強行手段でオーブとヘッダーを奪うべく白銀の獅子を模した武器「レオンレイザー」を剣に変形させて構える。

 

「力づくは嫌いじゃないけど…」

 

「俺様達から宝を横取る事がどんだけ恐ろしいのか、分からせてやる…!!」

 

「「変身!!」」

 

【KAMEN-RIDE…DITHIRF!】

 

【KAMEN-RIDE…DISTEAL!】

 

自分達が手にした宝の奪取を阻止、且つそれに対する制裁を下すべく巡はディシーフ、周はディスティールへと変身した。

 

『!!何だ…あの姿は…!!?』

 

『あら、なんか仮面ライダーを知らないみたいだから、たっぷり教えてア・ゲ・ル♪』

 

【KAMEN-RIDE…KNIGHT!】

 

『俺様は巡ちゃんの全部を知りてぇけどなぁ…♪で、てめぇは俺様の恐ろしさを篤と知りな!!』

 

【KAMEN-RIDE…TAIGA!】

 

【KAIJIN-RIDE…LION-UNDEAD!】

 

自分やゴセイジャーとは違う戦士の存在に驚愕しているゴセイナイトを余所に、ディシーフはナイトにカメンライドし、ディスティールはタイガと刺々しい黒い鉄の様な鎧を纏い、右腕に鉤爪を装備した金色の鬣が特徴のライオンを模した怪人「ライオンアンデッド」を召喚した。

 

『お前達が何者なのかは知らぬが、目の前の敵は断罪するのみ!!』

 

『宝が欲しいなら、私を押し倒してみなさい!!』

 

ディシーフとディスティールの使う未知なる力に困惑するゴセイナイトだが、例えどの様な相手でも敵は全て倒すと意気込み、レオンレイザーソードを構えて走り出し、それと同時にDナイトとタイガ、ライオンUも走り出す。

 

『はっ!!えいっ!!それ!!』

 

『……!!』

 

『グオオォォッッ!!』

 

『喰らいな!!』

 

『ふっ!!はぁっ!!ナイトメタリック!!』

 

『グガァッ!!?』

 

『……ッッ!!』

 

Dナイトのドライバーによる斬撃、タイガの白召斧デストバイザーによる攻撃、そしてライオンUの鉤爪攻撃、そしてディスティールのドライバーにより射撃…それらを全てゴセイナイトは無駄なく回避、防御しレオンレイザーソードの赤い刃を銀色に輝かせた斬撃・ナイトメタリックによりタイガとライオンUにダメージを与えた。

 

『バルカンヘッダーカード、天装!』

 

【SUMMON!VULCAN-HEADER!】

 

【474】

 

ゴセイナイトはライオンの頭部を模した携帯電話「レオンセルラー」を開き、その液晶部分にゴセイカードをセットすると、同じくライオンの頭部とバルカン砲を複合させた「バルカンヘッダー」を呼び出し、レオンレイザーをガンモードに変形させ、銃口にバルカンヘッダーを、後ろにレオンセルラーをセットし「ダイナミックレオンレイザー」を完成させ、レオンセルラーにカードをセットし番号を入力する。

 

『断罪のナイティックパワー…バニッシュ!!』

 

『グアアァァァァッッッッ!!!?』

 

レオンセルラーの液晶部分にDナイト、ディスティール、タイガ、ライオンUを照準させ、ゴセイナイトの必殺技、ダイナミックレオンレイザーから無数のエネルギー弾「ナイトダイナミック」を発射し、彼等に直撃、大爆発を起こした…。

 

『オーブとヘッダーを回収す…!!』

 

『甘いわよ!!』

 

敵を全て倒したと確信したゴセイナイトがゴセイオーブとダークヘッダーを回収しようとした時、上空から倒した筈のDナイトがドライバーを構えて奇襲を掛けてきた。が…、

 

『甘いのは貴様だ!!』

 

『きゃああぁぁっっ!!?』

 

それを予想していたゴセイナイトは、レオンレイザーを上空に構えてレーザーを六発放ち、Dナイトに直撃させて撃沈、ディシーフの姿に解除させた。

 

『てめぇぇっっ!!よくも巡ちゃんを!!』

 

『ロックラッシュカード、天装!』

 

【202】

 

【EXPLOSION!LANDICK-POWER!】

 

『なっ…ぐああぁぁっっ!!?』

 

ディシーフが攻撃された事に激昂したディスティールがドライバーで銃撃するも、ゴセイナイトがレオンセルラーにカードをセット、番号入力して発動させた巨大な岩石で攻撃する天装術「ロックラッシュ」により阻まれた上、直撃してしまう…。

 

『あの化物達を倒したにも関わらず、お前達の気配が生きていた…故に私はそれによる奇襲を想定出来たのだ。』

 

ゴセイナイトはナイトダイナミックにより敵を倒した後、僅かながらにディシーフとディスティールの気配を察知し、今の様に彼等の攻撃を予期し反撃を仕掛けたのだ。そして、倒れた二人からゴセイオーブとダークヘッダーを回収しようと近付こうとする…

 

 

「ちっ…見失っちまった…ぜぐぁぁっっ!!?」

 

「お前が途中で立ち止まって女子高生のパンチラを確認してたからだろうがっっ!!」

 

ゴセイジャーの後を追ってた筈の闇影とコウイチだが、コウイチの何時もの変態スキル(パンチラ確認)のせいで見失ってしまい、闇影は彼に拳骨制裁を下す。

 

「全く…ん…!?どうやら別の相手が来た様だな…!!」

 

「え…!?」

 

『フフフフ…!!』

 

ふと闇影が視線を変えると、その先には禍々しい黒いオーラの塊が現出し、それは冷たく笑いながら天使の翼を模した頭部、妖しく光る緑の瞳をした銀色の唇、胸部に中心が丸い窪みの様な物がある丸い金色の鎧を装備し、青い蜘蛛の巣の様な模様がある黒い全身が特徴の怪人へと変貌する…。

 

『貴様がディライトとか言う奴か…!!』

 

「貴様…何者だ!!?」

 

『私はブラジラ…救星主のブラジラ…!!』

 

謎の怪人「救星主のブラジラ」は、ディライトの正体である闇影を見据える。このブラジラこそが、あの黒いビービを復活させた張本人である。

 

本来彼は、今より一万年前の世界にて最強の護星天使と謳われる程の実力の持ち主であり、ゴセイジャーの先達にあたる人物でもある。しかし、怨敵である「地球犠獄集団・幽魔獣」を封印する際に他の仲間を犠牲した為、それを咎められ処罰を受ける前にこの時代へと時間移動をし、幽魔獣を初めとした「宇宙虐滅軍団ウォースター」、「機械禦鏖帝国マトリンティス」等様々な組織に潜り込み、最終的には「地球救星計画」と称し、今の地球を破壊して自分の思い描く「美しい地球」を創星しようと企てたが、それらはゴセイジャー達に阻止され自身も倒された筈だが、それを知る由も無い…。

 

「(何だ…奴のあの強力な殺気とオーラ…!?これまでの敵と段違いだ!!)」

 

『「探し物」はまだ見つからぬが…先に死神と呼ばれた貴様に、新たに得た力の実験台となって貰うぞ…!!』

 

闇影がブラジラの驚異的な殺気とオーラに冷や汗を流しているのを余所に、何やら「探し物」をしていたブラジラは先に創士から授かった力の「実験台」として、闇影とコウイチにじりじりと歩み寄る…。

 

「やるしか無い様だな…行くぞコウイチ!!」

 

「解ってるよ!!」

 

「「変身!!」」

 

【KAMEN-RIDE…DELIGHT!】

 

ブラジラからのプレッシャーを振り払った闇影はディライトドライバーを装着、カードをセットしてディライトに、コウイチは首から下げたペンダントをカードデッキに写してVバックルを装着、デッキをセットしてリュウガに変身した。

 

【SWORD-VENT】

 

『ほう、貴様達もカードで戦うとはな。中々興味深い。』

 

『野郎に興味持たれても嬉しくねぇんだよ!!』

 

『行くぞ!!』

 

二人の変身方法とリュウガがアドベントカードにてドラグセイバーを呼び出したのを見て、自分を破ったゴセイジャー達が使う物とは違うカードを使用した事に関心しながら、右手に発生させた黒いオーラから専用武器・ダークソードを構えるブラジラに対し、ディライトはライトブッカー・ソードモードを、リュウガはドラグセイバーを構えて走り出す。

 

『ふっ!はっ!!せいっ!!!』

 

『はっ!やぁっ!!うりゃあっっ!!』

 

『ふっ…甘い!!』

 

『『ぐああぁぁっっ!!?』』

 

ディライトとリュウガの繰り出す斬撃をダークソードで防ぐブラジラは、彼等の攻撃を物とはせず刀身から強力な黒い電撃を放出し彼等を後退させる。

 

『ちっ…ならコイツで黒コゲにしてやんよ!!』

 

【STRIKE-VENT】

 

リュウガは舌打ちしながら、ストライクベントを発動して右腕にドラグクローを装備し、それを突き出して黒い炎、ドラグクロー・ファイヤーをブラジラに向けて放つが…

 

『この程度の炎…私には効かぬ!!はぁぁっっ!!』

 

『ぐああぁぁっっ!!?』

 

それはダークソードにて一刀両断にされ、背中から巨大な天使の翼を広げてそこから放つエネルギー波により、ディライトごと更に吹き飛ばされる。

 

『どうした?死神とやらの実力はこの程度か!?』

 

『くっ…奴の強さに全くの隙が無い…!!ここは奴に予想出来ない攻撃で隙を作れれば…ん?』

 

ディライトはブラジラの隙の無い驚異的な強さに顔を顰め、何とか彼の隙を作りそこから反撃を仕掛けようと模索していると、ある物を目にする…。

 

『お…おい、それって…!!』

 

『そうか!これなら…どうだぁぁっっ!!』

 

ディライトは迷わずある物…黒深子が自分の為にこしらえて作った殺戮兵器…もとい、弁当をブラジラ目掛けて投げつけた。

 

『いや、んなモン効くかぁぁっっ!!!?』

 

『ふん!!こんなくだらん物で私がっ…!!?』

 

ブラジラはそれを片手で振り払い、弁当を粉砕した。リュウガがツッコむ通り、如何に黒深子の作った弁当が殺傷能力があるとは言え、こんな馬鹿馬鹿しい方法で効く筈が無い…。

 

『ぐああぁぁっっ!!?』

 

…と思ったら、彼の周囲にドス黒い爬虫類生物を模した怨霊らしき何かが纏わり爆発させた。何故なのかは言わずもがな…。

 

『『嘘ぉぉぉぉんっっ!!!?』』

 

リュウガは勿論、投げつけたディライト本人もこの結果に目玉が出る程驚いていた。今朝、上の空状態でこんな物騒なモン食ってたディライトの腹は大丈夫なのだろうか…?

 

『よし!!今がチャンスだ!!』

 

【SHADOW-RIDE…NEGA-DEN-O!】

 

『行くぞぉぉっっ!!』

 

何はともあれ隙作りに成功したディライトは、直ぐ様自身の影をネガ電王・ネガフォームへとシャドウライドし、黒深子の手作り弁当のダメージに怯んでいるブラジラへ同時攻撃を仕掛ける。

 

『はっ!!やぁっ!!それっ!!』

 

『がっ!?ぎぃっ!?ぐぅぅっっ!!?』

 

ディライトのライトブッカーとSネガ電王NFのデンガッシャー・ソードモードの繰り出す斬撃を諸に喰らうブラジラは、ダメージを受けながら徐々に後退していく。

 

『よし!!このまま行…!!』

 

(ほぉ…流石死神サマだな。てめぇの状態を良く理解していて何よりだ…!!)

 

『(こんな時に余計な茶茶を入れるんじゃない!!)』

 

ディライトが善戦する中、彼の頭にゴーストIが何やら意味深な言葉を投げ掛けて来た為、顔を顰めて怒りを示す。だがゴーストIは口を止めずこう続ける…。

 

(忘れちゃいねぇか?表沙汰にはなってねぇとは言え、てめぇは今イマジンである俺に憑かれてるんだぜ。そのお陰でネガ電王とやらの力は何時もより増してる気がしねぇか?)

 

『……っっ!!』

 

ゴーストIの言葉にディライトは目を見開く。確かに先程まで驚異と感じていたブラジラを、ネガ電王にシャドウライドしその力を得た途端、普段以上の力を発揮し彼を追い込めている。それだけなら問題は無いが、ゴーストIは今や自分の闇の権化の一部…そんな彼の力を借りる事は、自分は世界を焼き尽くす存在である事を肯定しているのと同意義である事に気付く…。

 

『図に…乗るなぁぁっっ!!』

 

『ぐああぁぁっっ!!?』

 

『闇影!!』

 

ディライトに僅かな隙が出来たのか、度重なる攻撃に業を煮やしたブラジラが両手を翳すと、突然ディライトの身体に炎が発火しSネガ電王NFは消滅、その隙に彼を蹴飛ばした。

 

『今の技…まさかお前…!!?』

 

炎によるダメージから何とか起き上がったディライトは、今ブラジラが使用した技に覚えがあり彼が内包する力の正体に感付き始める。

 

『創士とやらの言う通り、確かにこれまでに無い絶大な力だ…!!』

 

『やはり彼奴が…創士が一枚噛んでいたのか!!ならばお前はこの場で倒す!!絶対に!!』

 

【RIKUGA!ANOTHER-AGITO!RYUGA!ORGA!

CULLICE!KABUKI!DARK-KABUTO!NEGA-DEN-O!DARK-KIVA!】

 

【FINAL-KAMEN-RIDE…DERIGHT!】

 

ブラジラが得た謎の力の背景に創士が関わっている事が判明し、それを知ったディライトは怒りを爆発させて確実に彼を倒すと息巻きながらカオスタッチを素早く操作し、カオスフォームへと強化変身した。

 

【NEGA-DEN-O!CHAOS-RIDE…EXPRESS!】

 

そして直ぐ様、カオスタッチのネガ電王のマークと「F」のボタンを押すと、胸のヒストリーオーナメントカードが全てネガ電王の最終形態のシャドウライドカードに変わり、両サイドに現れた黒いネガ電王のシルエットと一体化すると、姿は電王・ライナーフォームに酷似しているが、全体の色は紫で、胸部の黄色の部分は青、白と黒の部分は逆、両サイドに上から茶・灰・紺色の突起物がある右側にネガフォームと同じ禍々しい炎の模様がある紫の複眼が特徴のネガ電王の最終形態「仮面ライダーネガ電王 エクスプレスフォーム」へとカオスライドした…。

 

(ヒヒヒ…ムキになりながらちゃんと分かってんじゃねぇか。そうだ…そうやって受け入れな…!!てめぇの悪の部分やみを受け入れりゃ俺もてめぇも…!!)

 

『黙れ!!うおおぉぉっっ!!!!』

 

ゴーストIは更に挑発めいた茶茶を入れるも、Dネガ電王EFは一喝しながらも柄の部分がネガ電王の基本4フォームの電仮面が合わさった紫色の大剣、エクスプレスフォームの専用武器「ネガカメンブレード」を構えてブラジラに向かって走り出す。

 

『はぁっ!えいっ!!ぜりゃああぁぁっっ!!!!』

 

『ハッハッハ!!そんな大振りな攻撃では私に傷一つ負わせぬぞ?はぁぁっっ!!』

 

『ぐああぁぁっっ!!?』

 

Dネガ電王EFは勢い良くネガカメンブレードでブラジラに斬り掛かるが、冷静さが欠けているせいかそれらの攻撃は全く当たらず、またもあの謎の発火能力により炎を喰らってしまう…。

 

『彼奴、何で急にキレ出したんだ?創士の野郎が関わってるからって、ああまで冷静さが無いのは妙だぜ…?』

 

『はぁ…はぁ…だったら!!別格に強力な一撃で仕留めてやる!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE…NE・NE・NE・NEGA-DEN-O!】

 

リュウガもDネガ電王EFの急激な焦りに気付いている中、Dネガ電王EFがFARを発動させると、何処からか紫色のレールがブラジラ目掛けて敷かれ、そこに乗っかるとネガライナーを象ったオーラが現れ、それと同時に滑走する。

 

『別格超特急で闇の終点へ!!俺の電車斬り!!ネガティブバージョン!!』

 

ネガライナーのオーラと共にネガカメンブレードの強力な斬撃を放つ必殺技「電車斬り・ネガティブバージョン」、別名「ハイスピードクラッシュ」を繰り出すが…

 

『(!!この気配…そうか、奴なら…!!)この場は見逃してやろう…!!』

 

何らかの気配を感じ取ったブラジラは、その身を再び黒いオーラに変化させて、気配の下へと向かうべく消え去って行った…。

 

『なっ…何ぃぃぃぃっっっっ!!!!?』

 

対象のブラジラが消えた為攻撃は当たらず、そのまま列車の如く滑走して何処かへと去って行くDネガ電王EF…。

 

『ぅおぉぉぉぉいっっ!!?何処行くんだ闇影ぇぇぇぇっっっっ!!!?』

 

 

 

 

『はっ!!やぁっ!!』

 

『『『ビッ!!ビビーーッッ!!?』』』

 

一方ゴセイジャー達は、再び街中を襲撃していた黒いビービ達を討伐していた。その最中、五人の腰に納めていたテンソウダーから通信音が鳴り出した為、それを手に取る。

 

[皆さん大変です!!此処から南西20kmの方向に彼奴の…ブラジラの反応がありますです!!]

 

『何だって!!?はっ!!』

 

『やっぱりまた蘇ったのね!!えいっ!!』

 

データスの通信内容…倒した筈のブラジラが復活した事をビービを倒しながらも聞き、驚愕するゴセイレッドと自分の推測が間違ってなかった事を確信するゴセイピンク。

 

『だったら早くビービ達を倒さないと!!皆!!』

 

『『『『うんっっ!!/おうっっ!!』』』』

 

ブラジラの下へ向かう為に、一刻も早くビービ達を倒そうと意気込むゴセイレッドは残りの四人に声を掛け、彼等と共にテンソウダーとゴセイカードを構える。

 

『『ツイストルネードカード!!』』

 

『『スパークエイクカード!!』』

 

『スプラッシャワーカード!!』

 

『『『『『天装!!!!!』』』』』

 

【【EXPLOSION!SKICK-POWER】】

 

【【SPARK!LANDICK-POWER】】

 

【SPLASH!SEAICK-POWER】

 

『『『ビビーーーーッッッッ!!!?』』』

 

レッドとピンクが竜巻の天装術「ツイストルネード」、ブラックとイエローが電撃の天装術「スパークエイク」、ブルーが水流の天装術「プレッシャワー」をそれぞれ発動すると、それらは赤、黄、青の光を支点とした巨大な三角状の光のエネルギーとなり放出され、直撃したビービ達は一瞬で消滅した…。

 

『よし、急ごう!!』

 

ゴセイレッドの言葉に皆が頷き、先程のデータスの通信から聞いたブラジラの居場所へと走り出す…。

 

 

 

『ゴセイオーブとダークヘッダーを渡して貰おうか…!!』

 

『くそっ…!!ん?巡ちゃん、何か聞こえねぇか?』

 

『え?あ、ホントだわ。汽笛の音と何か叫んでる声が聞こえるわ。それもどんどんはっきりと…!!』

 

ゴセイナイトに追い詰められている最中、ディシーフとディスティールは此処から遠く離れた場所で汽笛の音と何者かの叫び声が朧気ながら耳に入る。それは時間が経つ程大きく鮮明に聞こえ、その方角に顔を向けると…

 

『『!!!?』』

 

『うわわわああああぁぁぁぁっっっっ!!!?止ぉぉぉぉめぇぇぇぇてぇぇぇぇっっっっっ!!!!』

 

ブラジラに放つ筈の必殺技を回避され、ネガライナーのオーラを纏って、涙を滝の様に流しながらネガカメンソードを構えたDネガ電王EFが、紫色のレールを滑走して此方へ接近する姿が見えた…。

 

『うわああああぁぁぁぁっっっっ!!!!しぃぃぃぃねぇぇぇぇっっっっ!!!!』

 

『は!?ななな何でこっちに来…!!?って、あれ?巡ちゃんいねぇし…ぎぃやぁぁぁぁっっっっ!!!?』

 

この危機的状況に当然困惑するディスティールだが、隣にいた筈のディシーフが何時の間にか自分を差し置いて先に回避した事に気付くと同時に、Dネガ電王EFの振るう必殺技に巻き込まれ、大爆発を起こす…。

 

『ふぅ…幸い周りに人がいなくて良かった…。』

 

「ぬぁ…ぬぁ…ぬぁぁぁぁいにしやがんだてめぇゴラァァァァッッッッ!!!?」

 

FARを発動し終えてカオスライドが解除されたディライトCFは、周囲の人間が巻き添えを喰わなかった事に安堵するが、その背後から今の爆発により髪がアフロの如く焼け、全身がボロボロになり怒り狂って叫ぶ周の姿が其処にあった。

 

『ん?何だいたのか。と言うか何を怒ってる?「危ない!!」って叫んだのに避けなかったお前が悪い。』

 

「嘘つけ!!おもっくそ『死ね』って叫んでただろうがぁぁっっ!!」

 

周の怒鳴り声でその存在に態とらしく気付いたディライトCFは、事前に抹殺宣言きけんつうこくをしたにも関わらずそれに従わなかった彼に非があると淡々と悪態を吐き、余計にその怒りを募らせる。

 

『で、お前等此処で変身までして何をやってたんだ?大方また宝探しとかほざいて他人様に迷惑掛けまくってるんだろうがな。』

 

「無視すんじゃねぇぇぇぇっっっっ!!!!」

 

『う〜ん…それが人相手じゃないのよね。』

 

周の苦情を軽く無視し、相も変わらず余計な一言を添えて何をしていたのかを尋ねたディライトCFは、ディシーフの言葉を聞き彼女の目線と同じ方向に目をやる。

 

『同じ姿の新手…お前も此奴等の仲間か!?』

 

 

『ライオンの…ロボット…!?』

 

『私はヘッダーだ。ロボットでは無い…!!』

 

突如として現れたディライトCFの姿を見て、ディシーフ達の仲間だと思い込んだゴセイナイトは、彼も倒そうとレオンレイザーソードの切っ先を向け、ディライトCFの「ロボット」と言う単語にやや噛み合わない返答をしつつ斬り掛かろうとするが…

 

『少し予想が違っていたが、まさかお前が戦っている相手…ディライトの仲間が私の探し物を持っていたとはな…。』

 

『その声は…ブラジラ!!』

 

『久しいなゴセイナイト…いや、グランディオンヘッダー。』

 

そこへ黒いオーラと化したブラジラが旋風の様に颯爽と現われ、元の姿に実体化してディライトCF達と対峙した。彼の探し物とは、ディシーフとディスティールが回収したゴセイオーブとダークヘッダーの事の様だ。

 

『さっき戦っていた時と違う…!!』

 

ここでディライトCFはブラジラの姿に違和感を口にした。先程とは違い頭部の天使の翼の意匠が先程の白とは正反対に黒く、肩の部分が角の様に尖った、胸部の鎧の周囲には青い蜘蛛の巣模様の黒い装甲が左胸部にのみ覆われ、何より腰には平仮名三文字の文様が入った黒い宝珠が中心に埋め込まれ、その周囲には菱形を描く様に四つの窪みがある黒いベルトが装着されているのだから…。

 

『何だその姿は…!?』

 

『私は創士とか言う人間からこの謎のオーブを授かり蘇ったのだ。だが、今の状態ではビービを作り出す程度の技量しか無くてな。そこで、嘗て私が所有していた全てのゴセイオーブをこのベルトに取り込む事で、更なる進化を遂げるのだ!!』

 

(馬鹿な…あれでまだ全力では無いと言うのか…!!?)

 

ブラジラがゴセイオーブに拘る理由…自身の力を更に強める為だと聞いたディライトCFは、自分が戦っていた時ですら本来の強さでは無かった事に仮面の奥で冷や汗を垂らし、内心戦慄している…。

 

『ブラジラ君…だったっけ?貴方のその姿…もしかして…!!』

 

『これ以上説明してやる義理は無い…はぁぁっっ!!』

 

『『『「ぐああぁぁっっ!!!?/きゃああぁぁっっ!!?」』』』

 

ディシーフがブラジラの姿に「ある存在」を口にしようとするが、更なる問答は不要と言わんばかりにブラジラが掌を翳した瞬間、黒い炎が発生し彼女達にダメージを与え、その弾みでゴセイオーブとダークヘッダーが彼の足下まで転がってしまう。

 

『お宝が!!』

 

『ふふふ…漸く我が手中に戻ったか。これにより私は、救星主をも越えた存在へと進化する!!ふんっ!!』

 

ゴセイオーブとダークヘッダーを拾い上げ、「救星主以上の存在」への進化条件が揃った事に笑みを浮かべながら四つのオーブを上空へと放り上げると、それらはベルト周辺の窪みへと収まる…。

 

『おおおおぉぉぉぉっっっっ!!!!素晴らしい…感じる…絶大な力を感じる…!!創士が言っていた…古より伝わる「究極」の力を!!ふははははははは!!!!』

 

ベルトに埋め込まれた五つのオーブを禍々しく光らせ、全身から凄まじいドス黒いオーラと黒い稲妻を暴風の如く周囲に放出しながら「究極」の力に狂った様に高笑いをするブラジラは、黒い稲妻を纏った、黒い炎の様なエネルギー体となりその身を変化…いや、進化させる…。

 

『やっと見つけたぞ闇影…って、何じゃこりゃああぁぁっっ!!?』

 

『何だ…あれは…!!?』

 

そこへ、ディライトCFを追うべく鏡から現れたリュウガは漸く彼を見つけ、それと同時に現場へ駆け付けたゴセイジャーの五人も現れ、双方共ブラジラの「進化」を目の当たりにし、その禍々しさに驚愕する…。

 

『漸く現れたか…未熟な護星天使達よ。』

 

『やっぱりあの黒いビービを生み出していたのはお前だったんだな…ブラジラ!!』

 

『そうだ…全てはゴセイオーブを手にし、救星主をも越えた更なる存在となり、貴様等や弱き人間共を全て滅ぼし、再び「地球救星計画」を実行する為…!!』

 

ゴセイレッドに黒いビービを生み出した事を指摘されたブラジラは、「進化」した自分がゴセイジャーや人間を全て抹殺し、自分の理想郷を築く「地球救星計画」を再度実現する為だと嘯きながら、「進化」したその姿を露わにする…。

 

『『『『『『『『『「!!!!!!!!!!?」』』』』』』』』』

 

『この私…極元殲士(きょくげんせんし)のブレディメイトが支配する美しくも平和な星に変える為に…!!』

 

頭部の天使の翼の意匠が棘々しいくすんだ金色の鍬形の顎と合わさった物となり、左胸部のみだった装甲は全身に覆われた姿と化したブラジラ…いや、「極元殲士のブレディメイト」の姿を見た一同は、言葉を失う程愕然としている…。

 

『アルティメット…クウガ…!!?』

 

『ほう、この姿について知っているのか。ならば我が実験も兼ねて存分に喰らうが良い…!!スカイックオーブ!超殲装(ちょうせんそう)!スプリム・コンプレッサンダー!!』

 

『『『『『『「ぐああああぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!?」』』』』』』

 

『『『きゃああああぁぁぁぁっっっっ!!!?』』』

 

 

ディライトCFがその姿に「究極の闇」の力を得た超戦士、クウガ・アルティメットフォームの名を呟き、それを耳にしたブレディメイトは、力の試運転や彼等が恐れる自身の姿の原型(アルティメットフォーム)の威力を知らしめるべく、ベルトの赤い宝球・スカイックオーブを禍々しく光らせると、上空から黒い炎と赤い稲妻・スカイックの天装術「コンプレッサンダー」を超絶強化した超殲装術「スプリム・コンプレッサンダー」を彼等に放つと、その驚異的な威力に大爆発し、変身を解除させた…。

 

「あっ…くっ…なんて威力なんだ…!!」

 

「…って…闇影さん…!!?貴方が変身していたんですか…!!?」

 

ブレディメイトの超殲装術の威力に皆が傷を負いながらも立ち上がる中、アラタはディライトの正体が闇影だと漸く気付く…。

 

『今の一撃では早々に死なぬか。護星天使は兎も角…人間とは言え、死神と忌み嫌われた貴様もしぶといな、ディライト。』

 

「「「「「え…!!!!!?」」」」」

 

『何…!!?』

 

「……!!」

 

ブレディメイトがディライト=闇影が死神だと口にした言葉に反応するゴセイジャーとゴセイナイト。そして、闇影もそれを聞き表情を曇らせる。

 

『その様子だと気付いていなかった様だな…その男が此処とは違う数々の世界を滅ぼして来た死神だと言う事に…。』

 

「嘘よ!そんなの嘘よ!!」

 

「出鱈目言って闇影さんや俺等を動揺させようたってそうはいかねぇ!!」

 

『信じようが信じまいがお前達の勝手だ…だが見よ!!』

 

自分達や闇影を動揺させる為の嘘だと否定するモネとアグリの言葉に、ブレディメイトは周囲を見る様促すと…

 

「何…これ…!?」

 

「空間が…歪んでいる…!!?」

 

『私を蘇らせた創士とか言う人間曰く、元よりこの世界に存在せぬ筈の存在がそうした現象を呼び起こしているそうだ…。仮面ライダーと言う存在せぬ異物がこの世界を蝕んでいるのだと…!!』

 

エリとハイドが驚く様に、自分達のいる周囲の空間に何らかの捻じ曲げた様な現象が発生している。これは仮面ライダーと言う存在が、ライダーのいないこの世界に悪影響を齎しているのが原因だとブレディメイトは語る。

 

『まぁその歪みの影響のお陰で、欠片程もなかった私の残留思念が活性化されて、魂が戻れたのだがな。』

 

『なら…貴様の魂が蘇ったのは…!!』

 

『そう…ディライトがこの世界に現れたが為に、私の魂は再生されたのだ!!』

 

「そ…そんな…なら俺は…この世界が取り戻した平和を…!!」

 

全てを聞いた闇影は、自分がこの世界に訪れたせいでブレディメイト…ブラジラが再び現世に蘇生、強化され、結果的に嘗て救われたこの世界の平和に危機を齎してしまった事にその場で膝を付いて落ち込む…。

 

『先ずは計画の邪魔となるお前達護星天使、そして…創り替えた世界すら蝕まんとする疫病神を始末してやろう!!』

 

「!!疫病…神…!!」

 

 

 

―そして徐々に思い知るだろうぜ…どんなに偽善ぶろうが、てめぇは世界にとっての死神…いや、疫病神だって事をよぉ…!!

 

 

 

自身の野望を遂行すべくゴセイジャーや自分達を抹殺しようとするブレディメイトが吐き捨てた「疫病神」と言う単語を聞き心を更に抉られた闇影は、ゴーストIからの罵倒を思い返し、より塞ぎ込んでしまう…。

 

 

 

「そうだディライト…!!貴様の存在は全ての世界において災厄を齎す…。それを思い知り、自らの罪を悔いて死ぬがいい!!」

 

ビルの屋上よりその様子を見ていた紅蓮は、冷たい視線で闇影を睨み付け、ブレディメイトの罵倒を肯定し呪詛の言葉を投げつける…。

 

ライダーの力をも手にし、更なる進化を遂げたブレディメイトを相手にゴセイジャーと仮面ライダー達はどう闘うのか?

 

悪しき過去を思い知らされ、自分の存在が敵を生み出し、世界をも危機に曝してしまった事実に苛む闇影はどう動くのか?

 

今、世界も彼の心も最悪の窮地に立たされている…。

 




まさかの救星主が創士の協力によりアルティメットクウガの力を得て極元殲士のブレディメイトとして復活…如何でしたか?

語源は天道みたく「全ての次『元』を『殲』滅せし究『極』の戦『士』」で、由来はブレドラン(ブラジラの仮名)+アルティメット(究極)です。何故クウガの力を得たのかは次の話で明らかになります。

ディライトをネガ電王にシャドウライドさせたのは、「ブラジラ=過去からの侵略者」に対し、「ネガ電王=イマジンの力→イマジン=未来からの侵略者」と、現在と異なる時代からの侵略者繋がりと言う理由です。他には…おっと、ここから先はネタバレターンになるので秘密です(^_^;)

そしてシンケンジャー編の士以上にナーバスとなった闇影…。黒深子の料理(殺戮兵器)を食べても気にならない程の重症ぶり…果たしてどうなるのか?

次回はある人物に新しい力が、そして仮面ライダーとスーパー戦隊が共闘!!僕流のスーパーヒーロータイムをお見せ致しますのでお楽しみに!!m(_ _)m


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第31導 封印されたゴセイパワー

皆様、大変長らくお待たせ致しました!!ゴセイジャー編、再開です!!最初は二話完結にしようと考えてましたが、見せ場を作り過ぎたせいで次回まで延びてしまいました。申し訳ありません。m(_ _)m

ブレディメイトの姿···ある意味あれがアナザータイム本来の姿かも(^_^;)

ゴセイジャーもあれから十年···今ならキラメイジャーとコラボした方がベストマッチな気がするのは僕だけでしょうか?(^_^;)

前回の闇影と黒深子のクロス・キス···ママリナフニフニはこれが元祖だったのか···!!(←だから何だよ)


「俺達は負けない!!もう一度お前を倒して…この星を護ってみせる!!行くぞ皆!!」

 

「「「「おお!!うん!!」」」」

 

【GACCHA】

 

「「「「「チェンジカード!!!!!天装!!!!!」」」」」

 

【CHANGE!GOSEIGER】

 

『スカイックソード!!』

 

『スカイックショット!!』

 

『ランディックアックス!!』

 

『ランディッククロー!!』

 

『シーイックアロー!!』

 

『『『『『天装!!!!!』』』』』

 

【SUMMON!SKICK-SWORD】

 

【SUMMON!SKICK-SHOT】

 

【SUMMON!LANDICK-AX】

 

【SUMMON!LANDICK-CLAW】

 

【SUMMON!SEAICK-BOWGUN】

 

『『『『『はあぁぁぁぁっっっっ!!!!!』』』』』

 

この星を救うと立ち上がりながら強く宣言したアラタの言葉に残りの四人も立ち上がり、テンソウダーでゴセイジャーに再度変身し、それぞれの専用武器である「ゴセイウエポン」のゴセイカードで赤が基調の剣「スカイックソード」、白と桃が基調の二連装銃「スカイックショット」、黒が基調の斧「ランディックアックス」、黄色が基調の鉤爪「ランディッククロー」、青が基調のボウガン「シーイックボウガン」を召喚、装備して再びブラジラ···いや、ブレディメイトに向かって走り出す。

 

『未熟な護星天使よ、今度はお前達が地獄へ堕ちる番だ···!!』

 

『何!!?』

 

それを前にしても尚、ブレディメイトは余裕の笑みを浮かべてゴセイジャーを抹殺すると宣言も、上空へ飛翔し···

 

『だがその前にそれ以下の···戦意を失い腑抜けた疫病神の始末が先だ。ランディックオーブ!超殲装!スプリム・ロックラッシュ!!』

 

「······。」

 

『『『『『闇影さん!!!!!』』』』』

 

仮面ライダーの、自分の存在が平和だったこの世界に危機を齎した「疫病神」だと投げ掛けられ、意気消沈した闇影を先に始末するべくベルトの黄色の宝球・ランディックオーブを禍々しく光らせ、ロックラッシュを超絶強化させた、黒い炎を纏った大岩の超殲装術「スプリム・ロックラッシュ」を彼目掛けて放った。それに気付いて無いのか、闇影はその場から動こうとしない為、直撃しかけるが···

 

「闇影ぇぇっっ!!変身!!」

 

【GUARD-VENT】

 

走りながらリュウガに変身し闇影を守る様に前に立ったコウイチは、ガードベントを発動し、ドラグブラッカーの腹部と爪を模した盾「ドラグシールド」でスプリム・ロックラッシュを防ぐが···

 

『くっ···ぐああぁぁっっ!!?』

 

『その程度の盾で私の超殲装術は防げぬ···!!』

 

ブレディメイトが嘲笑う様に、ドラグシールドは粉砕しその余波から闇影を庇うも、代わりリュウガがダメージを受けて彼ごと吹き飛びながら変身解除させられた。

 

「お···い···何やってんだ···よ···!!」

 

「はっ···コウイチ!!」

 

『人間にしてはしぶといな。奴も始末せねばな···!!』

 

『させない!!』

 

『『『『『はあああぁぁぁぁっっっっ!!!!!』』』』』

 

『むっ···邪魔だ、はあぁぁっっ!!』

 

『『『『『ぐああぁぁっっ!!!?/きゃああぁぁっっ!!?』』』』』

 

余波とは言え、二度も超殲装術を喰らい尚も生きているコウイチも厄介な存在だと判断したブレディメイトは、闇影諸共抹殺しようと右手を翳そうとするが、そうはさせじと再度ゴセイジャー達が正面から掛かってきた為、右手を強く振るい黒い炎で彼等を焼き払い変身を解除させる。

 

「くっ···うぅぅっっ···!!」

 

『そんなにその疫病神や人間が大事ならば、まとめて葬ってくれよう!!』

 

ブレディメイトは世界に悪影響を与える可能性のある闇影やコウイチを庇うアラタ達諸共排除するべく翼から攻撃を放とうとする。

 

『レオンレイザー!!』

 

【ATTACK-RIDE···LASER!】

 

『ぐあっっ!!?』

 

「此処は一旦退くわよ!!」

 

【ATTACK-RIDE····SMOKE!】

 

『むっ···小賢しい!!』

 

背後からゴセイナイトのレオンレイザーと周のディスティールレーザーの同時攻撃により怯ませられ、その隙に巡が発動したディシーフスモークによる赤い煙幕で周囲が覆われ、それを取り出し振るったダークソードの剣圧で晴れた頃には、既に彼等の姿は無かった。

 

『逃げたか···まぁ良い。この新たな力を良く知る時間を得たと思えばいい···。』

 

ブレディメイトは闇影やゴセイジャーが撤退しても、それを新たに得た力の詳細を研究する為の時間が出来たと頭を切り替えて、黒いオーラの風となりその場から姿を消す···。

 

 

 

―世界の光導者、ディライト!数多の平行世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

 

―天知天文研究所

 

 

『そうか···やはりあれはブラジラだったか···。』

 

「はい、それも···俺達に倒された時より強くなっていました···!!」

 

『仮面ライダーと言う異なる力を纏ってか···。』

 

データスの画面に映ったマスターヘッドは、帰還したアラタ達ゴセイジャーとゴセイナイト、そしてこの世界の異邦人たる闇影達仮面ライダー、更にコウイチから連絡を聞き駆けつけた黒深子とツルギから事情を聞き、件の感知した邪悪なエネルギーがブレディメイトのそれである事に軽く唸らせる。

 

『究極の闇···それは如何なる力を秘めているのかね?仮面ライダー諸君。』

 

「······。」

 

「元々あれは仮面ライダークウガって戦士が優しさの心を失い、怒りと憎しみによって生まれた最終形態よ。」

 

「その力は怪人どころか人類…下手すりゃ世界そのものを滅ぼしかねない代物さ。」

 

「そんな恐ろしい力をブラジラが持つなんて···!!」

 

「人間や世界を滅ぼすかもしれない程の悪しき力だからな。」

 

マスターヘッドの質問に、手当てを受け端の方に立ち黙する闇影に代わって巡と周が究極の闇の詳細を答え、それを聞きモネとハイドがその力を使うクウガに対して悪い印象を持つ様な言葉を口にすると···

 

「···クウガを貶してんじゃねぇ!!」

 

「「「「「「「!!!!!!!」」」」」」」

 

それを耳にしたコウイチはゴセイジャー達に怒鳴り出す。彼は嘗てクウガの変身者だった才牙ソラ/仮面ライダーリクガと強い関わりを持っており、その彼女やその父・ジョウが変身していたクウガを「悪しき力」呼ばわりされる事が、本意では無いせよ彼女が侮辱された様に思えて我慢ならなかったのだ。

 

「···悪い···!!兎も角だ···そのブラジャーメイドとやらが元とは言え護星天使の力とクウガの力を融合させたんだったら、俺等ライダーとあんた等ゴセイジャーが力を合わせるしかねぇ。手を貸してくれねぇか?」

 

直ぐに我に返ってばつの悪い表情で軽く侘びたコウイチは、彼らしい言い間違いをしながらブレディメイトを倒すにはライダーである自分達と護星天使であるアラタ達ゴセイジャーが協力するのが一番だと語り、彼等に要請する。

 

「勿論だよ。」

 

「今は一人でも味方が必要だしね。」

 

「俺達ゴセイジャーとあんた等仮面ライダーが力を合わせれば···」

 

「仮面ライダーの力を持ったブラジラに勝てる!!」

 

「それが妥当だな。」

 

『私はお前達を信用した訳では無い。が、私の使命はあくまで地球を護る事。お前達と手を組む事がそれに繋がるのならば···』

 

「もう···素直に協力しようって言えば良いのに。」

 

アラタ達もそれに快諾し、ゴセイナイトも巡と周の所業のせいで仮面ライダー達に良い印象は持ってないが、自分の使命の為に闇影達と手を組む必要があると回りくどく承諾。

 

「俺は···戦わない···。」

 

「「「「「「「「「「!!!!!!!!!!?」」」」」」」」」」

 

しかし今まで黙していた闇影は、顔を俯かせながら戦いの拒否の言葉を口にし、それを聞いた一同は驚愕しながら彼の方に目を向ける。

 

「先生···?」

 

「闇影さん···?」

 

「···は?こんな時に何笑えねぇ冗談言ってんだよ···?」

 

「冗談なんかじゃ無い···俺は戦わないと言ったんだ。」

 

世界を守る為の戦いの放棄···彼らしかぬ言葉に耳を疑い冗談なのかを確認するコウイチだが、闇影の言葉は変わらない。

 

「おい···何ケツまくってんだよ···このまま放置してこの世界が滅ぼされてもいいのかよ!!あぁ!!?」

 

「コウイチ!!」

 

「コウイチさん!!」

 

「···俺なんだよ!!」

 

「!!」

 

この世界にとってライダーの力と言う未知数の力を持つ敵を前に再び消極的な言葉を口にする闇影に苛立ったコウイチは黒深子とツルギの制止を気にせず、無理矢理彼を立ち上がらせて胸倉を掴み怒鳴るが、それまで黙していた闇影は逆に怒鳴り出す。

 

「···平和だったこの世界に危機を呼び起こしたのは···俺の存在なんだよ···!!奴の言う通り、俺はどの世界でも災厄しか呼ばない疫病神なんだ···。これまでの世界だって、俺が来なければ状況だって悪化しなかった筈だ。だからもう···これ以上余計な事はしたくないんだ···!!」

 

最初とは違い弱々しく卑屈な雰囲気で、この世界に起きた異変の原因は自分にあるとブレディメイトやゴーストイマジンの罵倒を肯定する闇影。そして、これまでの戦いを否定する様な言葉を吐き出す。

 

「······ッッ!!」

 

「ぐっ!!?」

 

「「「「きゃあぁぁっっ!!?」」」」

 

その言葉に激昂したコウイチは、闇影の胸倉を掴んだ力をより強め、右拳で彼を勢い良く殴り飛ばした。普段見せないコウイチの怒りの所業に戸惑う黒深子とツルギ、そしてエリとモネ等女性陣は悲鳴を上げる。

 

「思い上がってんじゃねぇぞ···あ?『てめぇが来なけりゃ悪化しなかった』?『疫病神』?『余計な事』?あの似非天使に二、三言われた程度で腑抜けた事ぬかしてんじゃねぇよっっ!!!!」

 

「落ち着いてコウイチ!!」

 

殴り飛ばした闇影にゆっくり近付き、再び無理矢理起こして胸倉を掴み、怒鳴り散らしながら更に殴りかかろうとするコウイチを見て静観している巡と周、ゴセイナイトを除いた全員がそれを止めようとする。

 

『大変でっす皆さん!!ブラジラが···ブレディメイトが街中を破壊しているでっす!!』

 

「何だって!!?」

 

最悪なタイミングで、データスは画面に三つの護星天使の紋章とクウガのライダークレストを点滅させながらブレディメイトの反応を察知した事を皆に伝える。

 

『ブラジラめ···!!』

 

「お宝を取り返すなら倒すしか無いわね。」

 

「だな。先行ってるぜ。」

 

「···俺達も行こう!!」

 

「······。」

 

「······。」

 

「······。」

 

ゴセイナイトはブレディメイトの暴挙に憤りながら一早く現場へ足を運び、巡と周も取り込まれたゴセイオーブやダークヘッダーを奪還するべく此処を後にする。同じく現場に向かおうとその後を追うアラタ達だが、その場に一旦止まり振り返ったアラタは闇影達の様子を見つめている。

 

「アラタ!!」

 

「うん、分かってる。」

 

エリに急ぐ様声を掛けられ、一瞥しながらもアラタはその場を後にした。

 

「···其処で一生そうしてな。行くぞツルギちゃん。」

 

「は···はい···。」

 

コウイチは突き放す様に闇影の胸倉を解放すると、ツルギと共に現場へ向かおうとドアの前に近付くと何故かその手前で立ち止まる。

 

「闇影、確かにお前のやってる事は余計なお節介だよ。ウザがられても構わず他人の事情に首突っ込んでる様は正直鬱陶しく見えるよ。」

 

「ちょっとコウイチ···!!」

 

すると突然、闇影の普段の「お節介」を貶す様な発言をし黒深子はそれを注意しようとするが、直ぐ様「だがな···」と付け加え···

 

「その鬱陶しさで救われてる奴等も居るんだって事を忘れんな。」

 

「コウイチ···。」

 

先程と違い、闇影の行いを肯定する言葉を口にすると改めてツルギと共に部屋を退出し、現場へと向かった。それを聞いた黒深子は小さく笑みを浮かべる。

 

「兎も角、手当てをしませんとね。」

 

「そうですね。先生。」

 

「······。」

 

秀一郎が手当てする様促した為、黒深子は闇影の手を引いて誘導しようとするが、闇影は軽く手を払って口元の血を拭いながら何も言わずゆらりと退出する。

 

「あっ、先生!」

 

「今は暫くそっとしときましょう。」

 

「闇影さん···。」

 

黒深子は闇影を引き止めようとするが、秀一郎は当分は一人にする様制止する。すると望は何を思ったのかその後を追う。

 

 

 

『『『ビビーーーーッッッッ!!!!』』』

 

「きゃあぁぁぁぁっっっ!!!!」

 

『フフフ···。』

 

ブレディメイト率いる黒いビービの集団により建物は破壊され、あちこちに火災が発生し、人々は恐怖に怯え逃げ惑う等、街中は大混乱に陥っており、ブレディメイトはその様子を嘲笑っている。

 

『ブラジラ!!』

 

『ふっ、現れたなゴセイナイト。』

 

『止めろブラジラ!!』

 

『来たなゴセイジャー。新たな存在に進化した私に怖気づいて逃げ出さなかった事は褒めてやろう。』

 

『はっ!誰が怖気づくか!!』

 

『逃げ出すくらいなら此処に来ないわよ!!』

 

そこへゴセイナイトとこれ以上の破壊を止める様叫びながら駆け付けたゴセイジャー。ブレディメイトは臆病風に吹かれたのかと挑発するがそんな物には乗る者は一人もおらず、ブラックとイエローに至っては逆に啖呵を切るぐらいだ。

 

『ふっ。だが、仮面ライダー達は怖気づいた様だな。特に···あの疫病神は闘う意欲を失っていたぐらいだからな。』

 

その意趣返しとして、ブレディメイトはゴセイナイトの次に現場に向かった筈の盗賊コンビを含めた闇影達仮面ライダーがこの場に来ていない事を指摘する。その中で闇影が戦意喪失してしまった事まで付け加えて···。

 

『貴様···!!』

 

『また闇影さんを悪く言って!!』

 

『闇影さんは必ず此処に来る!!沢山の命を守って闘い続けている彼と俺達は同じ想い、心を持っている···だから必ず···此処に来る!!』

 

ブルーとピンクがブレディメイトに憤慨する中、レッドは自分達と仮面ライダーである闇影の心は同じ故に必ずこの戦場に赴くと強く信じている。その言葉に全員が強く頷く。

 

『ふん···ならば死ぬまで勝手に信じ続けるがいい···!!やれっ!!ダークビービ!!』

 

『『『ビビーーーーッッッッ!!!!』』』

 

『俺達は死なない!!行くぞ!!』

 

『『あぁっっ!!/えぇっっ!!』』

 

ブレディメイトの号令により一斉に襲い掛かる黒いビービことダークビービの集団に、ゴセイジャーとゴセイナイトは走り出す···。

 

 

 

ー天知天文研究所・物置

 

 

「······。」

 

その頃闇影は、様々な備品や破損した道具等が置かれた薄暗い物置部屋に施錠を掛け、その中で暗い表情をしながら体育座りで蹲っていた。ブレディメイトが指摘した通り、戦いを放棄したかの様に。

 

「(俺はもうこれ以上戦ってはいけない···出しゃばったせいで平和を取り戻した世界にすら災いを与えているのだから···!!)」

 

自分が訪れたが為に平和だったこの世界にブレディメイトと言う新たなる脅威を生み出し、再び災いを齎してしまっている結果に自分が世界にとっての「疫病神」だと改めて思い知らされた闇影は、より顔を埋め、両手で両足を強く抑え背中を丸める。

 

(おいおい···先生サマが授業(たたかい)フけて物置に引き篭もりかよ?ん?)

 

(······。)

 

そこへゴーストIが闇影の精神に呼び掛け、今の様子をからかう。しかし闇影は、一言も話さず沈黙を続けている。

 

(だんまりかよ···まあ良い。どうよ、てめぇが疫病神だと自覚出来た感想は?)

 

(······。)

 

(いくら取り繕ったっててめぇは俺と同じ闇側の人間···あぁいや、人間殺しまくってるから鬼畜の間違いだよなぁ···!!)

 

(···れ···。)

 

(そんなてめぇがあの甘ちゃん天使達と同じ立場で居られちゃあ彼奴等だって迷惑だろうなぁ···!!)

 

(···まれ···!!)

 

(だからさぁ···もう認めて楽になっちまえよ···俺にこの身体を譲って何もかも闇でぶっ壊ししまえよぉぉぉぉ!!!!)

 

(黙れって言ってるんだよぉぉぉぉっっっっ!!!!)

 

度重なるゴーストIの罵倒に闇影は心の中で絶叫する。ゴーストIの気配が消えた後も、闇影はその精神がより不安定になる髪をくしゃつかせる。

 

「闇影さん、そこに居るんでしょ?」

 

「···!!望君···。」

 

そこへ望が物置のドアにノックし、闇影に呼び掛けてきた。しかし、それでも此処から出るつもりはない様だ。

 

「出なくても喋らなくても良いから、僕の話を聞いて欲しいんだ。僕がアラタ達と出会ってからの話を···。」

 

しかし、出て来る様説得に来たのでは無く何やら話をするみたいだ。自分がアラタ達ゴセイジャーと出会ってからの出来事を···。

 

天知望は語る。二年前の···ゴセイジャー達と出会う前の自分は何事も直ぐに諦める癖があり、友達と喧嘩になった時ですら仲直りする事さえも簡単に放棄する程だった。しかし、アラタ達護星天使との出会いがそんな消極的だった自分を変えて行き、地球を守ると言う使命のみに固執していたゴセイナイトとも心を通わせる程成長したのだと···。

 

「闇影さんが昔何をやって死神だなんて呼ばれていたかは分からないけど、そんな自分が嫌で変わろうと努力したから···諦めなかったから今の闇影さんがあるんじゃないの?」

 

「······!!」

 

「周りから何を言われても、どう思われても諦めずに戦い続けて沢山の世界を救われたんだったら闇影さんは疫病神なんかじゃない、アラタ達と同じ立派な戦士だよ。」

 

「俺が···彼等と同じ···!?」

 

望の言葉を受けた闇影は、死神だと揶揄される程幾つもの世界を焼き尽くし、其処に住む者達の命を奪ってきた自分が九つのダークライダーの世界や巡と周等盗賊コンビの世界を光へ導けてこれたのは、マバユキの影響とは言え、彼の様に変わろうと自身の心と戦い続ける事を諦めなかったからだと気付かされ、その姿勢が護星天使と似通っていると言う言葉を呟く様に反芻する。

 

「···なんか偉そうな言い方でごめんなさい。僕が言いたいのはそれだけだから。」

 

やや偉そうな物言いになったと思い、闇影に謝りつつ自分が言いたかった事を告げた望は、物置小屋から離れて行く。

 

「······何やってんだろうな、俺···。」

 

暫くして子供に諭される自分を情けなく感じた闇影は、物置小屋のドアを開けて外に出た。未だ迷いは晴れぬ物の、少なくとも今はこんな所に閉じ籠っている場合ではない事だけは自覚した様だ。

 

 

 

『ふっ!!はぁっ!!』

 

『ビビーーッッ!!?』

 

『良し!ゴセイバスターだ!!』

 

『『『『『アセンブル!ゴセイバスター!!』』』』』

 

一方ゴセイジャーは、ダークビービの群れを一体一体次々と各々のゴセイウェポンやゴセイブラスター等の武器を扱いつつ、時には徒手空拳等の肉弾戦で薙ぎ払っていき、ある程度の数に減ったのを確認したレッドの掛け声に合わせて、各々のゴセイウェポンを合体させたクロスボウ型の武器「ゴセイバスター」に組み立てて構える。

 

『『閃くスカイックパワー!!』』

 

『『猛るランディックパワー!!』』

 

『冴えるシーイックパワー!!』

 

【GOSEI-DYNAMIC】

 

『パニッシュ!!』

 

『ビビィィィィッッッッ!!!!?』

 

スカイック、ランディック、シーイック···三種族それぞれの紋章が描かれたダイナミックカードをセットし、レッドの掛け声に合わせて金色のエネルギーがチャージされたゴセイバスターから放たれる強力なエネルギー波「ゴセイダイナミック」により残り少なくなったダークビービ達は跡形も無く消え去った。

 

『ふっ!!はぁっ!!ナイトメタリック!!』

 

『ぐうっ!!?小癪なぁっ!!』

 

『ぐっ···うああぁぁっっ!!?』

 

『ゴセイナイト!!』

 

一方ブレディメイトと単身で交戦しているゴセイナイトは、レオンレイザーソードによる斬撃をダークサーベルで防がれる中でナイトメタリックによってなんとかダメージを与えるも大打撃には程遠く、反撃として片手から放たれた黒い炎により逆に後退させられた所でダークビービを撃退したゴセイジャー達と合流する。

 

『性懲りも無く私に刃向かうか。仮面ライダークウガとやらの力を加えて、以前にも増して強く蘇った私に···。』

 

『当たり前だ!!何度蘇ったとしても、お前の野望は俺達が止めてみせる!!』

 

『ふん、ならば止めてみるがいい!!シーイックオーブ!超殲装!スプリム・プレッシャワー!!』

 

『『『『『『うわああぁぁぁぁっっっっ!!!!!!?』』』』』』

 

幾度復活してもその度に自分の計画を阻止すると豪語するレッドに対して、ブレディメイトは腰のベルトに埋め込まれた青色の宝球・シーイックオーブを禍々しく光らせるとプレッシャワーを超絶強化させた、黒い炎を纏った強力な水流波の超殲装術「スプリム・プレッシャワー」を彼等の頭上に放ち、大ダメージを与えて地を這わせる。

 

『勇んで現れておきながら何の対策も無く進化した私に刃向かうとは···やはりお前達は愚かで未熟な護星天使だなぁ···!!』

 

『ぅぐぁぁっっ···!!?』

 

『これ以上その無様な姿を晒さぬよう、私が直に引導を渡してくれよう···先ずは貴様だ···ゴセイレッド!!』

 

『『『『アラタ!!!!』』』』

 

その姿を目にしたブレディメイトは、超殲装術への対策を用意せず自分を倒そうと意気込む彼等を「未熟」と罵倒しながらゆっくり接近してレッドの背中を力強く踏みつけて身動きを取れない様にすると、手に持つダークサーベルで彼の命を貫こうとするが···

 

 

 

【FINAL-VENT!!】

 

『そうは烏賊の何とやらぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

『ぐああああぁぁぁぁっっっっ!!!?』

 

その寸前で背後に同乗したサソードとリュウガサバイブが乗ったブラックドラグランザー・バイクモードが黒い炎弾を数発放ちながら勢い良く突進する必殺技・ブラックドラゴンファイヤーストームによりブレディメイトは吹き飛ばされてしまう。

 

『遅れてすまねぇ。』

 

『大丈夫ですか!?』

 

『その声は···闇影さんの仲間···!?』

 

ブラックドラグランザーから降りて自分を心配する声から、レッドはリュウガSVとサソードの正体が闇影の仲間であるコウイチとツルギだと気付く。

 

『仮面ライダーのお節介なんて必要無ぇかもしんねぇが···』

 

『微力ながら、私達も協力致します!!』

 

『ううん、とても助かる。さっきはありがとう!』

 

『ふ、そうかい。』

 

「お節介」と溢すリュウガSVとサソードの皮肉を否定し、寧ろ自分達の戦いに協力してくれた事に感謝するレッド。それを聞いて仮面の下で笑みを浮かべながら、リュウガSVとサソードはゴセイジャー達と共に並んでブレディメイトを見据える。

 

『おのれぇ···つぁっっ!!』

 

立ち上がりながら今の不意打ち同然の攻撃に怒りを露にするブレディメイトだが、何故か背中から黒い翼を広げて背後からエネルギー波を放つ。その訳は···

 

『おっと!!』

 

『ちっ···!!』

 

『お前達の気配に気付かぬ程、私は愚かではない···!!』

 

インビシブルのカードで身を隠していたディシーフとディスティールは宙バックしながらその攻撃を回避して距離を取りながらその姿を露にする。どうやら隙を突いて残りの宝であるダークヘッダーを掠めようとしたが、ブレディメイトはそれを察知していた為、失敗に終わる。

 

『は···相変わらず宝に執着するなぁ···。』

 

『ね、何時もあんな感じなの?あの二人。』

 

『あんな感じです···。』

 

『でも、これでこっちに四人も仲間が増えたね!』

 

『確かに···数では此方が上回っている···!!』

 

『これなら行けるかもしんねぇな!!』

 

『ブラジラ···いや、ブレディメイト!!お前が仮面ライダーの力を手にした様に、俺達にも仮面ライダーの仲間が出来た!!これで互角だ!!』

 

盗賊コンビの宝に対する安定の執着心についてイエローに尋ねられたリュウガSVとサソードは、呆れながら肯定する。しかし、ピンクの言う様にゴセイジャー側にもライダーの助力が加わり、数は10対1と此方側が有利となった。目には目を、仮面ライダーには仮面ライダー···これによりブレディメイトと同格の戦力を得たと語るレッド。

 

『フフフ···ハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!』

 

『何が可笑しい!?』

 

『まさかその程度で私と互角だと吠えるとは···実に御目出度い。』

 

『何···!?』

 

『お前達が束になって掛かって来る事等、最初から計算済みだ!!』

 

しかし、それでも尚ブレディメイトは余裕と言わんばかりに高笑いをする。それを訝しむゴセイナイトの指摘に、彼等が仮面ライダーであるリュウガ達と徒党を組む事は想定内だと返し···

 

『お前達に更なる絶望をくれてやる···真の絶望をな!!』

 

両目を怪しく光らせると、彼の身体からそれぞれ黒くくすんだ赤、青、緑、紫の禍々しいオーラが両サイドに人の形を造り出し、ブレディメイトの語る「更なる絶望」が生まれる···。

 

『!!あれは···!!?』

 

『彗星のブレディメイト!!』

 

一つ目の絶望···角ゼミをイメージした怪人···ウォースターでの仮の姿である「彗星のブレドラン」だが、布とウォースターの鎧は無く、頭部の角は金色の鍬形の顎、両手首、両膝、両足首に青い石が施された金の装飾、胸部に装備された青い装甲、腰には中心が青く光ったブレディメイト同様のベルトが装備され、手元には青いロッド等、クウガ・ドラゴンフォームを彷彿させられる姿「彗星のブレディメイト」···。

 

『チュパカブラの武レディメイト!!』

 

第二の絶望···ゲジゲジをイメージした怪人···幽魔獣での仮の姿「チュパカブラの武レドラン」なのだが、頭部の角は金の鍬形の顎、腰には幽魔獣のエンブレムが無く代わりに中心が赤く光った同じベルト、両肩と胸部には赤い装甲が装備され、両手首、両膝、両足首に赤い石が施された金の装飾、赤く染まった両腕の鉤爪等、クウガの基本形態・マイティフォームを彷彿させられる姿「チュパカブラの武レディメイト」···。

 

『サイボーグのブレディMATE!!』

 

第三の絶望···アンモナイトをイメージした重厚な怪人···マトリンティスでの仮の姿「サイボーグのブレドRUN」だが、頭部の角は金の鍬形の顎、アーマーが全て緑色となり、左肩には緑色の巻き貝が鋭い角の様に生え、腰には中心が緑色に光ったベルト、右手の甲にはボウガンが装着される等、クウガ・ペガサスフォームを彷彿させられる姿「サイボーグのブレディMATE」···。

 

『血祭のブレディメイト!!』

 

第四の絶望···蟻地獄をイメージした怪人···嘗て共闘した「侍戦隊シンケンジャー」の怨敵、外道衆の御大将「血祭ドウコク」の姿と酷似した怪人「血祭のブレドラン」なのだが、頭部の上に向いた二本の角のみ金の鍬形の顎、両肩、胸部に紫を縁取った銀の装甲が装備、腰には中心が紫色に光ったベルト、両手首、両膝、両足首に紫の石が施された金の装飾、紫を縁取った銀の大剣等、クウガ・タイタンフォームを彷彿させられる姿「血祭のブレディメイト」···。

 

『何だよこれ···!!?』

 

『まさか···これまで鞍替えしていた組織の姿の分身体にまでクウガの力が···!!?』

 

『その通り。クウガとやらには四つの形態があると知った私は、分身達にその力をそれぞれ分け与えて実体化させたのだ。更に、この分身達は本体である私と同等の力がある。それがどういう事か分かるか?』

 

この異質な分身達を目にしたブラックが思わず愕然とする中で、ブルーはブレディメイトが生前に潜入していた四つの組織(悪しき魂)での仮の姿をした分身体にクウガの力を付加させた物だと冷静に分析した。ブレディメイトはそれを肯定した上で、分身体は本体と同等の戦闘力を持つと告げる。

 

『私達は五人のブレディメイトを相手にする事に···!!』

 

『そんな!!あいつ一人でも厄介なのに、それが五人に増えるなんて!!』

 

『フフフ···絶望に戦きながらあの世へ逝くが良い···行くぞ!!』

 

サソードとイエローの嘆きの声を耳にし彼等が絶望しかけている事を確信したブレディメイトは、ゴセイジャーと仮面ライダーを葬るべく分身体と共に一斉に襲い掛かる。

 

『皆!弱気になっちゃ駄目だ!!』

 

『そうだぜ、増えたんなら分身もぶっ潰すまでだ!!』

 

『···アラタさんとコウイチさんの言う通りです···!!』

 

『そうだね···!!』

 

『あたし達がやらないと、人間界も護星界もあいつに滅ぼされちゃうからね!!』

 

『相手が何人増えようとも全部残らず倒す!!』

 

『それが···俺達護星天使の使命だ!!』

 

『奴はこの地球にとっての疫災···故に排除する!!』

 

レッドとリュウガSVの言葉に、絶望しかけていた皆は気力を取り戻して襲い掛かるブレディメイト達に向かって、それぞれの武器を構えながら迎撃するべく走り出す。

 

『熱いわね~。私達、ああした馴れ合いは好きじゃないけど···』

 

『お宝を取り戻す為には止むを得ないって訳か···しゃあねぇな、俺様達も行ってやりますか!!』

 

普段なら彼等の様に徒党を組んで戦う様な「馴れ合い」行為を嫌うディシーフとディスティールだが、宝を奪還する為の「緊急手段」だと割り切って彼等の後に続く。

 

 

 

『はっ!!はぁっ!!』

 

『無駄だ!むぅんっ!!』

 

ピンクはスカイックショットの二つある銃口より二発以上のエネルギー弾を数発放つが、彗星のブレディメイトは持つ長い棒状の武器、ドラゴンロッドを回転させて全て弾きながら接近して尖端で彼女を突き飛ばそうとするが···

 

【ATTACK-RIDE···SLASH!】

 

『ぐあぁっっ!!?』

 

『私も居る事をお忘れなく♪』

 

背後からディシーフのディシーフドライバーによるディシーフスラッシュの赤いエネルギーを纏った斬撃を諸に受けてしまい、その攻撃は失敗に終わる。

 

『あ、ありがとう!』

 

『別に礼は良いわよ。私はただ、盗られたお宝を取り戻したくて仕方無く手を貸しただけだから。それより、曲がりなりにも相手は古代の超戦士の力を持ってるから、油断しちゃ···』

 

『大丈夫!仮面ライダーが力を貸してくれるなら条件は同じなんでしょ?だったら、何とかなるなる♪』

 

『な、何とかなるなるって···。』

 

難を逃れた事にピンクから礼を言われるディシーフ。しかし、彼女が力を貸したのはあくまでブレディメイトに奪われた宝を奪還する為であり善意から今の行動を取った訳ではないと、やや距離を取って古代の超戦士(クウガ)の力相手に油断せぬ様釘を刺すが、仮面ライダーである自分と組めば「何とかなるなる」と言うピンクの楽観的な口癖にやや戸惑いを覚える。

 

『おのれぇ···まとめて始末してくれる!!』

 

『行くよ、巡さん!!』

 

『(あの子、本気で私を信用してくれてるわね···盗賊である私を···でもね、)』

 

背後からの攻撃に怒りを覚えた彗星のブレディメイトは、ドラゴンロッドを手に二人に襲い掛かる。それを見て気を引き締めて自分を「仲間」だと信頼して共闘を呼び掛けるピンクの言葉に嘘はないと感じ取るディシーフは、ライドホルダーよりカードを取り出し···

 

【KAMEN-RIDE···IBUKl!】

 

『わっ、ちょっと怖そうだけど凄~い!!』

 

『(私は私のやり方で戦うだけ···!!)ありがとね、エリちゃん。さ、天使と鬼による狩りの始まりよ!!』

 

【ATTACKRIDE···ONGEKIKAN-REPPUU!】

 

ドライバーにスラッシュし、青い縁取りをした三本の金の角を生やし、黒いスーツの上半身に同色のベスト状の装甲を纏った仮面ライダー···否、鬼である「仮面ライダー威吹鬼」にカメンライドし、その異形な特徴に率直な意見を述べるピンクの言葉に軽く返しつつ、ライドカードをスラッシュして呼び出したトランペット状の専用銃「音撃管・烈風」で銃撃し···

 

『ツイストルネードカード!天装!』

 

【EXPLOSION!SKICK-POWER】

 

『馬鹿め!!今更そんな天装術が効く訳···ぐぁぁっっ!!?』

 

そこにピンクの発動した天装術・ツイストルネードによる桃色の竜巻との合体攻撃が放たれる。救星主(ブラジラ)の時以上に進化した自分にその程度の技は通用しないと高を括ってそのまま突撃する彗星のブレディメイトだが、ツイストルネードの激しい風により烈風から撃ち込まれた鬼石の銃弾が振動し、擬似的な清めの音が発生して効果が強まりダメージを与える。

 

『やった!!鬼と天使のコラボレーションによる音色、効果ありだね!!』

 

『え、えぇ···そうね。(何故かしら···何故こんな···!?)』

 

漸くブレディメイトにダメージらしいダメージを与えた事に喜ぶピンクを余所に、D威吹鬼はこの好転ぶりに違和感を覚えている···。

 

 

 

『ぬぅぅんっ!!』

 

『はっ!!うらっ!!』

 

『ふっ!!おりゃあぁぁっっ!!』

 

チュパカブラの武レディメイトからの赤い武レドライサー・マイティライサーによる鉤爪攻撃を回避し、ブラックとイエローのランディック兄妹は連携攻撃で反撃しようとするが···

 

『そうは行くか!!喰らえっ!!』

 

武レディメイトは宙高く飛び上がり、右脚に赤いエネルギーを纏い、マイティフォームの必殺技であるマイティキックらしき跳び蹴りを放とうとするが···

 

【ATTACK-RIDE···BARRIER-FORCE!】

 

『何ぃぃっっ···くっ!?』

 

『蛇マスク野郎は兎も角、モネちゃんに足向けてライダーキックかまそうとするとか、クソみてぇな真似してんじゃねぇぞ···!!』

 

乱入したディスティールの発動したディスティールバリアフォースによる水色のドーム状のバリアが二人を覆われた為失敗し、舌打ちしながら宙回転をする。

 

『あ、ありがと。』

 

『大丈夫だったかい、モネちゃん♪ああ、お礼をしたいなら隣町の「男女の総合体育館」で俺様と一晩···』

 

『おい、何どさくさに紛れて妹口説いてんだよ···!!つか、誰が蛇マスクだ!!』

 

『あぁ?何てめ、良い歳こいてシスコンとかキモッ!蛇マスクに蛇マスクって言って何が悪い。』

 

『んだとぉっっ!!?』

 

『お兄ちゃん!!今そんな場合じゃ···!!』

 

イエローに全力で口説いて「男女の総合体育館」に連れ込もうとするディスティールを蛇マスク···ブラックが肩を掴んで全力で止めようとした為、余計な争いに発展しようとしている時···

 

『ふざけおってぇぇっっ!!』

 

『···どうやら、続きは後になるな。』

 

『ちっ···んなこたぁ分かってるよ!!』

 

『行くよ、二人共!!』

 

茶番(コント)めいたやり取りをするディスティールとブラックに怒りを爆発させた武レディメイトが突撃してきたのを見て、一旦争いを中断してランディック兄妹はテンソウダーを、ディスティールはディスティールドライバーを構える。

 

『ロックラッシュカード!』

 

『スパークエイクカード!』

 

『『天装!!』』

 

【EXPLOSION!LANDICK-POWER】

 

【SPARK!LANDICK-POWER】

 

『こんな技で私を倒そう等とは、片腹痛い!!』

 

ブラックの発動したロックラッシュとイエローの発動したスパークエイクによる電撃を纏った巨大な岩石攻撃が繰り出されるも、武レディメイトはマイティライサーで容易く破砕する。が···

 

【ATTACK-RIDE···CROSS-ATTACK!】

 

『何っ···ぐおっっ!!?動けん···!?』

 

何故かロックラッシュの岩石の破片が、武レディメイトの胴体を包み込む様に修復した為、身動きが取れなくなる。だが、その眼前にある姿を目にして思わず絶句する···。

 

『······!!』

 

『なっ···ぐああぁぁっっ!!?』

 

武レディメイトの眼前の相手···それはいつの間にか間にかディスティールに召喚されたキバ・ドッガフォームの構えるドッガハンマーの一振りにより、ロックラッシュを破砕しつつ勢い良く吹き飛ばされてしまう。

 

『くっ···だが何故だ!?何故ロックラッシュが修復して···!!?』

 

思わぬ事態によりダメージを被った武レディメイトだが、何故ロックラッシュが修復したのかが不明だが、ディスティールの背後にいる、二本の角が磁石となった角牛の怪人「バッファローアンデッド」の存在から察した。

 

『面倒臭ぇから詳しい説明はしねぇが、てめぇの想像通りって事にしときな。』

 

突撃前にこのバッファローUを背後に召喚し、ランディック兄妹の複合天装術を武レディメイトが破砕した瞬間にクロスアタックを発動し、スパークエイクの電力を帯びたロックラッシュの破片をバッファローUの磁力により強制的に修復し、巻き込む形で動きを拘束したのが真相である。

 

『他の仮面ライダーだけじゃなくて怪物まで出せるなんて···何気に強くない?』

 

『そう言う事♪これで惚れ直したなら隣町の「男女の総合体育館」に···』

 

『良い加減にしやがれっ!!』

 

ライダーや怪人の召喚、それに自分達の天装術を組み込んだ作戦を即興で発案するディスティールの手札の多さと頭の回転の速さに感心するイエローの声を受けて、懲りずに口説く馬鹿は再びブラックと争う···。

 

 

 

『ふっ!!はぁっ!!』

 

『甘い!!』

 

ブルーはシーイックボウガン、サイボーグのブレディMATEは右腕に装着されたボウガン、ペガサスボウガン···互いに同じ武器を持った二人は双方の攻撃を回避しつつ撃ち合うと言う、激しい銃撃戦を繰り広げていた。

 

『ブレディMATE!お前の思い描く新しい地球は、皆を不幸にするだけだ!!それを阻止する為、今度こそお前を倒す!!』

 

『ふっ···未熟な護星天使風情に私の計画を永遠に理解は出来ぬ。私と渡り合えていると思い上がり、この力の本質を見抜けておらぬ貴様に!はっ!!』

 

『何···ぐああぁぁっっ!!?』

 

ブルーから自分の思い描く地球救星計画の全貌を否定されるブレディMATEだが、それを一蹴し力の本質すら理解していないと返しつつ自分に向かってくるシーイックボウガンの矢を僅かに身体の向きを変えただけで回避し、反撃としてペガサスボウガンの矢を直撃させる。力の本質···それはペガサスフォームの持つ秀でた超感覚能力であり、遠距離であるボウガンの攻撃を察知して回避したのだ。

 

『くっ···!!』

 

『無駄だ!どれだけ大きく離れようとも、私の矢からは逃れる術はない!!』 

 

幾度もシーイックボウガンを放つブルーだが全て回避された事からここよりもっと離れた場所に移動して体勢を整えようとするが、超感覚の前では無策に等しいと嘲笑うブレディMATEの放つ矢に急所を狙われるが···

 

『クロックデュアル!!』

 

【CLOCK-UP!】

 

『はぁっ!!』

 

『何っ!?』

 

【CLOCK-OVER!】

 

『大丈夫ですか、ハイドさん!』

 

『済まない、助かった。しかし、今の高速移動は一体···?』

 

『説明は後程···今はあのライダー崩れを倒すのが先決です!』

 

『···そうだったな、力を貸してくれるか?』

 

『勿論···!』

 

間一髪の所、クロックデュアルの超高速移動で割って入ったサソードの斬撃により矢は弾かれて危機を逃れたブルーは感謝しつつも、先程のクロックデュアルについて尋ねようとするが当の彼女の言う通り、ライダー崩れ···ブレディMATEを倒すのが最優先であり、改めて共闘体勢を見せる。

 

『ふん···雑魚が一匹増えた程度で私を倒せると思うな!ブレドランチャー!!』

 

サソードが加わっても自分の優位に変わりはないと断じるブレディMATEは、ブルー諸共始末しようと両肩のアーマーから複数の発射口を展開し、そこから強力ミサイル・ブレドランチャーを二人に目掛けて放つ。

 

『ディフェンストリームカード!天装!』

 

【EXPAND!SEAICK-POWER】

 

『ぬっ···小癪な···!!』

 

それに対してブルーがテンソウダーにカードを装填し、発動した天装術・ディフェンストリームの水流の壁を形成しブレドランチャーを防がれ、爆発により二人の姿を覆い隠す程の水霧が発生した為、ブレディMATEは憤る。

 

『···作戦は今言った通りだ。行くぞ、ツルギ!!』

 

『はい!!』

 

『ふっ···まさかこの水霧に紛れて奇襲を掛けるつもりだろうが···無駄だ!!』

 

ブルーが立案した何らかの作戦の内容をサソードが理解したと同時に、二人で突撃するかの様にブレディMATEに向かって走り出す。それを水霧で姿を隠しての奇襲攻撃だと看破し、両手に装備したくすんだ金色のブーメラン型の刃・ブレメランを振るい水霧を掻き消すブレディMATEだが···

 

『『はあぁぁっっ!!』』

 

『何!?』

 

二人は二人でもブルーとサソードではなく、ゴセイブルーが「二人」で殴り掛かって来た為動揺しながらも回避した。あの水霧の中、ブルーは天装術・カモミラージュによりサソードの姿を自分と同じ姿にしたのだ。

 

『だが、そんな物は虚仮脅しにもならんぞ!!ブレドランチャー!!』

 

徒手空拳で攻め続ける二人のブルーだが、所詮は虚仮脅しにすらならないと一蹴するブレディMATEは、回避しつつ両脚のブースターで背後に宙を浮きブレドランチャーを放ち、二人の周囲は爆発する。

 

『カモミラージュカード!天装!』

 

【FOCUS!SEAICK-POWER】

 

『まだまだです!!』

 

『チィッ···今度はサソードに化けたか!?』

 

爆煙の中でどちらかのブルーが再度カモミラージュを発動してそこから飛び現れたのはブルー二人ではなく、二人のサソードだった。同じサソードヤイバーで斬り掛かられるブレディMATEは、舌打ちしながらブレメランで応戦する。

 

『接近戦ならば超感覚は無意味と考えている様だが、それで私の力を封じたと思ったら大間違いだ!!』

 

『『うわああぁぁっっ/きゃああぁぁっっ!!!!?』』

 

カモミラージュでの擬態の理由は不明だが、二人の意図は接近戦に持ち込んで超感覚を封じる為だと考えるブレディMATEは、それすらも無意味と断じながらベルトより緑色の電撃を浴びせる。

 

『止めだ!!』

 

『プットオン!!』

 

【PUT-ON!】

 

『何っ···くっ!!?』

 

倒れたままの二人に止めを刺すべくペガサスボウガンを構えるブレディMATEだが、どちらかのサソードがプットオンによりアーマーを纏ってマスクドフォームに戻ると直ぐに、その周囲にある無数のチューブにより身体を拘束して動きを止める。

 

『今だ!!アイストップで···!!』

 

『ふっ···馬鹿め!!自ら正体を明かす愚行を犯すとは!!はぁっ!!』

 

『きゃああぁぁっっ!!?』

 

しかし、ここでサソードMFがゴセイカードとテンソウダーを取り出した事によりその正体が天装術を扱えるブルーである事を露見すると言う痛恨のミスを犯し、それを嘲笑うブレディMATEの放つ電撃によりテンソウダーが弾き飛び、反撃を失敗してしまう。

 

『ふん、大方私の目を攪乱させる為に姿を変えたつもりだが、隠れずに天装術を使っては本末転倒!!己の力を碌に扱えぬ貴様はやはり未熟だったな、ゴセイブルー。』

 

カモミラージュによりそれぞれ同じ姿に変えたのは自分の目を攪乱させる為の物なのだが、如何に姿を模倣しようとも能力までは模倣出来ない事を失念していたブルーを罵るブレディMATEは、そのまま追撃しようとするが···

 

【SPLASH!SEAICK-POWER】

 

『何っ!!?』

 

何と、その身体が突如下半身から胴体までが天装術・アイストップの発動音声と同時に凍結した為動揺する。目の前のサソードに化けていた筈のブルーの行動は確かに阻止した···にも関わらずこうして天装術が発動した事に疑問を持ちながらふと背後を見回すと···

 

『何故だ···何故貴様が···!?』

 

『ふっ···どうしました?天装術が使えない筈のライダーの姿を見て恐怖を感じましたか?』

 

そこには何と、テンソウダーを構えながら自分に挑発的な言葉を飛ばすサソードが居た為ブレディメイトMATEは驚愕する。その疑問に答える様に、背後の"サソード"にある異変が起きる···。

 

『まんまと引っ掛かったな。』

 

『貴様は···ゴセイブルー!?』

 

『貴方の推測通り、攪乱させる為に姿を化けていました。しかし、それ故にあのモアイを私が"持っていた"だけで私に化けたハイドさんだと思い込んだ···と言う訳です。』

 

そう、背後のサソードこそがカモミラージュで姿を変えていたブルーだったのだ。ブレディMATEが考えていた通り、姿を模倣して目を攪乱させ、「モアイ···テンソウダーを持っている=サソードに化けたブルー」だと態と誤認させて目を向けさせ、その隙に本物のブルーが背後に回り込み弾き飛んだテンソウダーをキャッチし、アイストップを発動したのが真相である。

 

『目に見える部分しか見えなかった···だからこんな単純な手に引っ掛かるんだ!!』

 

『おのれぇ···!!』

 

『ライダースラッシュ!!』

 

【RIDER-SLASH!】

 

『プレッシャワーカード!天装!』

 

【SPLASH!SEAICK-POWER】

 

『ぐぅっっ!!ぐあぁぁっっ!!?』

 

特定のアイテムを持つと言う単純な手段で騙された事に憤慨するブレディMATEは直ぐにアイストップの拘束を解こうとするが、この隙を逃すまいとサソードMFはライダースラッシュによる紫色の斬撃波とブルーの発動したプレッシャワーの水流波の同時攻撃を諸に直撃する。

 

 

 

【SWORD-VENT!!】

 

『ふっ!!はぁっ!!』

 

『せいっ!!うらぁっっ!!』

 

『むっ!!つぇぇいっっ!!』

 

『ブレディメイト!!いくら分身と本体(お前達)が仮面ライダーと言う強力な力を持っていても、その使い方を間違えた時点でそれは弱まるだけだ!!』

 

『これ以上てめぇなんかにクウガを穢されてたまるかってんだ!!』

 

ゴセイレッドはスカイックソード、リュウガSVはドラグブレードを用いて血祭のブレディメイトの持つ大剣、タイタンソードと激しい剣戟戦を繰り広げる。最初こそ1対2によりブレディメイトが押され気味になっているが···

 

『くっ···未熟な護星天使と仮面ライダー如きが···図に乗るなぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

『『うわああぁぁっっ!!!?』』

 

自分より力量が下回っていると思っているレッドとリュウガSVに負けかけている事への怒りにより徐々に力を増し、刀身に炎を纏わせたタイタンソードを振り上げて二人を吹き飛ばす。

 

『まとめて三途の川(あの世)まで送ってやる!!ぬあぁぁぁっっっっ!!!!』

 

『不味い!!あの技は!!』

 

『クソが···何処までも闇影を虚仮にしやがって···!!』

 

『空牙・外道血祭弾!!』

 

ブレディメイトはレッドとリュウガSVを共に滅ぼすべく、両手で巨大な紫色のスパークが混ざった鮮血色のエネルギー弾を形成する。以前の戦いでその威力を知るレッドは警戒し、似たプロセスからディライト···闇影を皮肉られた事に憤慨するリュウガSVを他所に必殺技「空牙・外道血祭弾」を二人に目掛けて放つ。

 

『コウイチ、君の力と俺の力を合わせてあの技を止めるよ!!』

 

『分かってらい!!』

 

『ウィンドライブカード!天装!』

 

【SPLASH!SKICK-POWER】

 

『蟻地獄の丸焼きにしてやんよ!!来な、ブラッカー!!』

 

【STRIKE-VENT!!】

 

『グォォォォンッッ!!』

 

『『はあぁぁぁぁっっっっ!!!!』』

 

レッドの発動した風を起こす天装術・ウィンドライブの影響でリュウガSVが発動したストライクベントによりバイクモードから通常の姿に戻ったブラックドラグランザーの口から放つ強大な黒炎「ブラックドラグブレイズ」の威力が更に増し、空牙・外道血祭弾と衝突する。

 

『くっ···まさか···これ程の威力とは···ぐああああぁぁぁぁっっっっ!!!?』

 

衝突、拮抗し合う二つの必殺技だが、僅差でブラックドラグブレイズの方が上回り空牙・外道血祭弾は押し返されて、全てブレディメイトに直撃する。

 

 

 

『ふっ!!はぁっ!!』

 

『ふんっ!!ぃやぁぁっっ!!』

 

ゴセイナイトはレオンレイザーソードでダークサーベルを持つブレディメイト本体と、単身ながら互角に激しく剣をぶつけ合うが···

 

『(おかしい···何故奴は先程の様な技を使わない?剣技にしても、以前より強化されたのならこの程度の筈が無い。それに···態々分身をゴセイジャーや仮面ライダー達に嗾ける真似をしたんだ?)』

 

先程の様に超殲装術を使わず剣技のみで戦ったり、自分一人で圧倒出来る力を持ちながら敢えて作り出した分身にゴセイジャーと仮面ライダー達を嗾けたブレディメイトの不可解な動作に疑問が浮かぶ···。

 

『『『『ぐあああぁぁぁぁっっっっ!!!?』』』』

 

『ふっ···邪魔だ!!』

 

『ぐあぁぁっっ!!?』

 

ゴセイナイトが思考に耽る中、ゴセイジャーと仮面ライダーに押し負けたブレディメイトの分身体達は自分と本体の足下に転がり込む。そのタイミングで僅かに隙を見せてしまったのか、ブレディメイトの剣圧で大きく後退してしまう。

 

『よし、皆!!一気に止めだ!!』

 

『ああっ!!!/うんっ!!/はいっ!!』

 

『私達からお宝を奪った報い···』

 

『地獄で思い知りな!!』

 

『『『『『ミラクルゴセイパワーカード!!!!!』』』』』

 

【SUMMON!MIRACLE-GOSEI-POWER】

 

『『『『『超天装!!!!!』』』』』

 

【SUPER-CHANGE】

 

『奇跡の嵐!スーパーゴセイレッド!!』

 

『奇跡の息吹!スーパーゴセイピンク!!』

 

『奇跡の厳!スーパーゴセイブラック!!』

 

『奇跡の芽萌!スーパーゴセイイエロー!!』

 

『奇跡の怒涛!スーパーゴセイブルー!!』

 

『『『『『護星の想いの熱き結晶!!スーパーゴセイジャー!!』』』』』

 

ブレディメイトの分身体に止めを刺すべく、ゴセイジャーは強化変身用のカード・ミラクルゴセイヘッダーのゴセイカードをテンソウダーにセットすると、それぞれの動物をモチーフにした五つの金色のゴセイヘッダー・ミラクルゴセイヘッダーが招来、彼等に光を注ぎ王錫と剣が一体化した特殊武器・ゴセイテンソードを装備、球状部分にミラクルゴセイヘッダーをセットすると、そこから発するミラクルゴセイパワーにより、ミラクルゴセイヘッダーを模したプロテクター・ゴセイテクターを武装した強化形態・スーパーゴセイジャーへと超天装させた。

 

『また手に入れてぇお宝を見せ付けてくれたなぁ♪』

 

『周、それは目の前のお宝を取り戻してからにしましょ。』

 

『へいへい。』

 

『それは兎も角、野郎をぶっ潰すぞ!!』

 

『これで···終わりです!!』

 

【FINAL-ATTACK-RIDE···I・I・I・IBUKl!】

 

【FINALATTACKRIDE···D・D・D・DISTEAL!】

 

【SHOOT-VENT!!】

 

【RIDER-SLASH!】

 

スーパーゴセイジャーの姿を目の当たりにしてミラクルゴセイヘッダーを手に入れたい新しい宝として見定めるディスティールだが、D威吹鬼からの注意を受けながら共にFARを発動し、そんな軽口を流しながらリュウガSVもシュートベントカードをベントインし、サソードMFもライダースラッシュを起動させる等してブレディメイトへの止めを刺す準備をした。

 

『『『『『スーパースカイランドシーダイナミック!!!!!はぁぁっっ!!!!!』』』』』

 

【SUPER-SKY-LAND-SEA-DYNAMIC】

 

『音撃射・疾風一閃!!』

 

『喰らいやがれっ!!』

 

『狙い撃つぜ···ってなぁ!!』

 

『ライダースラッシュ!!』

 

『『『『ぐああああぁぁぁぁっっっっ!!!!?』』』』

 

スーパーゴセイジャー達がゴセイテンソードの球状部分よりミラクルゴセイパワーをチャージした超必殺技・スーパースカイランドシーダイナミックの超エネルギー波を放つと同時に、D威吹鬼はマウスピース型のアイテム「音撃鳴・鳴風」を銃口にセットした烈風より清めの音を放つ必殺技「音撃射・疾風一閃」を、ディスティールはキバDFとバッファローUを吸収してディメンジョンスコールを真正面に放つ必殺技「ディメンジョンスプラッシュ」を、リュウガSVはブラックドラグバイザーから発するレーザーを目印にし、ブラックドラグランザーの口から黒い炎弾「ブラックメテオバレット」を、サソードMFは先程同様遠距離型のライダースラッシュを飛ばし、その同時攻撃を分身体に直撃させた。

 

『どうだ!!これで本体諸とも分身は吹っ飛んだぜ!!』

 

ブラックの得意気な言葉通り、自分達と仮面ライダーの必殺技を同時に受けた強大な威力により流石のブレディメイトも分身体諸共爆散しただろうと勝利を確信する。

 

『···いいえ、まだ終わってないわよ···!!』

 

しかし、元より先程の分身達の戦いで何らかの違和感を感じていたD威吹鬼は警戒を緩めなかった。そして、爆煙が止み始めると彼女の違和感は的中する光景を目にする···。

 

『ふっ···仮面ライダーの力を合わせればこれ程の威力になるとは···。』

 

『分身を盾に生き延びていたのか!!』

 

『なんて野郎だ!!』

 

四人の分身体が倒れるとその背後には無傷のブレディメイト本体が存在していた。あの瞬間、分身達に自分の盾になる様指示を出していた様だ。自分の分身すらも道具として扱う非道な手段に憤慨するブルーとブラックを意に介さず余裕な態度を取るブレディメイトの様子から鑑見て、この展開は想定内なのかもしれない。

 

『随分余裕な態度取ってくれてるけどよぉ、今ので分身が倒せるなら本体のてめぇもブッ倒せるって事が解った。つまり、てめぇの最期も近いって事よ!!』

 

しかし、今の攻防で本体と同じ戦闘力を持つ分身体を倒せるなら本体をも倒す事が可能である事の証明になると、リュウガSVはブレディメイトを挑発する。

 

『それはどうかな?戻れ!分身達よ!!』

 

『分身達が···ブレディメイトの身体に!?』

 

『それだけじゃない···見ろ!!』

 

そんなリュウガSVの挑発を一蹴しながらブレディメイトは、瀕死状態の分身体を自らの身体に吸収した。その光景に驚くゴセイジャーだが、ゴセイナイトは更なる「異変」が起きている事を指摘する···。

 

『お前達のお陰で、私は更なる力を手に出来た!!感謝するぞ···!!』

 

ブレディメイトが全身に金色のスパークとドス黒いエネルギー電撃が纏われると、複合させたそれがベルトの中心にあるオーブに吸収させると、更なる力を手にしたと豪語しながらほくそ笑む。そして···

 

『出でよ!!分身達よ!!』

 

何とどういうつもりなのか、目を怪しく光らせて先程同様に再び分身体達を実体化させたブレディメイト。しかし···

 

『何だありゃ···!!』

 

『さっきとは···全然違う!!』

 

リュウガSVとレッドはその分身体達を目の当たりにして、先程までのそれとは全く違う事に驚愕していた。何故なら、それぞれの分身体達が纏っていたクウガの四種の基本形態を模した装甲が金色になっているからだ。

 

『ライジングフォーム···!!』

 

『ライジングって?』

 

『瀕死状態のクウガが強力な電気ショックの影響で得るパワーアップ形態だよ。曲がりなりにも野郎はクウガの力を持っている。だから、さっきの俺様達の合わせ技でくたばりかけた分身達を一旦取り込んでからまた実体化する事で擬似的に復活して強化されたんだろうよ。』

 

その姿を見てクウガの強化形態・ライジングフォームの名を溢したD威吹鬼の言葉に反応したピンクの疑問にディスティールが応える。原典のクウガも瀕死状態で電気ショックを浴びた影響でライジングの力を得た様に、ブレディメイトも自分達の必殺技で瀕死になった分身達を取り込み、再度実体化させる事で条件を満たしたのだ。

 

『ですが、既に究極の闇の力を得ているのに何故···!?』

 

『無駄口はそこまでだ、来るぞ!!』

 

『『『『『うおぉぉぉぉっっっっ!!!!!』』』』』

 

『皆、気を引き締めて行···!!』

 

サソードMFが疑問に思う様に、究極の闇と言う強大な力を持ちながらブレディメイトはただ分身達にライジングフォームの力を与える為だけにこんな手の込んだ真似をしたのか?そんな考えに耽る暇は無くゴセイナイトの怒号が飛ぶと、今度はブレディメイト本体も分身達と共に襲い掛かる。それを見たレッドは皆に気を引き締める様声を掛けるが···

 

『動きが速い···うわぁぁっっ!!?』

 

『きゃあぁぁっっ!!?』

 

『ぐわぁぁっっ!!?』

 

『ああぁぁっっ!!?』

 

『がぁぁっっ!!?』

 

『ぐあぁぁっっ!!?』

 

レッドが言い切る前に先程とは桁違いのスピードでゴセイジャーとゴセイナイトの懐に接近すると、ブレディメイトと分身体達は黒くスパークするエネルギーを纏ったそれぞれの得物で彼等の胴体を刺突して吹き飛ばし、変身解除に追い込んだ。

 

『おいっ!!大丈夫か!?』

 

そのスピードはリュウガSV達の目にも留まらなかった為、変身解除されたアラタ達の方に目を向けて身を案じる言葉を掛けるが···

 

『余所見をしている場合か!?はぁぁっっ!!』

 

『『『『うわぁぁぁぁっっっっ/きゃあぁぁぁぁっっっっ!!!?』』』』

 

その隙を付いたブレディメイトと分身体達は、今度はリュウガSV等仮面ライダー達にもそれぞれ連撃を浴びせて吹き飛ばし、変身解除に追い込んだ。

 

「くっ···うぅぅっっ···!!」

 

『最早お前達に勝ち目は無い!諦めるんだな!!』

 

「俺達は···まだ諦めない···諦めたりはしない!!」

 

【GACCHA】

 

「「「「「チェンジカード!!!!!天装!!!!!」」」」」

 

倒れ伏すコウイチやアラタ達を見下しながら自分に抗う事を諦める様促すブレディメイトだが、先に起き上がったアラタ達はそれを断固拒否しながら再び変身するべくテンソウダーにそれぞれのチェンジカードを装填するが···

 

「ん?あれっ!?」

 

「変身出来ない!?チェンジカード!天装!」

 

何故か五人共ゴセイジャーに変身が出来なくなると言う、異常事態が発生した為激しく動揺する。エリが幾度カードをテンソウダーに装填し直しても結果は同じだった。更に、異常事態はそれだけではない···。

 

「うっ···何···だっ···身体が···重い···!!?」

 

「思う様に···動かしにくい···!?」

 

「···まさ···か!?さっきの攻撃で俺達の力を封じる細工でもしたの···か···!?」

 

『フハハハハッッ!!!!その通り!先程の攻撃はお前達の体内のゴセイパワーを封印する為に私が編み出した天封術・エンジェシールを施したのだ!!』

 

『天封術···!!』

 

「エンジェシール···!?」

 

アグリとモネが苦しむ様に、まるで鉛を抱えられたかの様な重い倦怠感が襲い、体の身動きがままらならないでいる。この異様さから、ハイドは先程のブレディメイトの攻撃に何らかの力を加えたのかと推測する。ブレディメイトはそれを高笑いしながら自らが編み出した、護星天使の体内を巡るゴセイパワーを封じる天封術(てんぷうじゅつ)「エンジェシール」の影響だとあっさりと答える。

 

『クウガの持つ封印エネルギーとやらに目を付け、そこにお前達から受けたゴセイパワー、盗賊共の次元エネルギー、仮面ライダーの攻撃エネルギー、更に私自身のダークゴセイパワーと融合させて作り出したのだ!!』

 

「じゃあ···分身達に戦わせたのは···最初から俺達のゴセイパワーを封じる為に···!!?」

 

『言った筈だ、最早お前達に勝ち目は無いと。全ては私の計画通り!!』

 

「やっぱりね···。」

 

巡が分身体との戦いで感じていた違和感の正体···ブレディメイトはゴセイジャーやゴセイナイトの戦力を完全に削ぐ為の天封術(しゅだん)を生み出すべく、自分の持つダークゴセイパワーとクウガの封印エネルギーと融合させる材料として、彼等のゴセイパワーと仮面ライダー達の必殺技による強力なエネルギーを奪う為に敢えて分身体達を嗾けて態と負けさせていたのだ。

 

「俺達まで利用していたのかよ···!!」

 

「アラタさん達の力を封じる為にだけに···!!」

 

「私達からお宝を奪ったばかりか、技のエネルギーまで材料として扱うなんて···!!」

 

「楽に死ねると思うなよ···!!」

 

【【KAMEN-RIDE···!】】

 

「「「「変身!!!!」」」」

 

【SURVIVE!! 】

 

【HENSHIN!】

 

【CHANGE···SCORPION!】

 

【DITHIEF!】

 

【DISTEAL!】

 

コウイチ達四人は、エンジェシールを作り出してアラタ達の力を封じる為の片棒を担がされた事に憤慨し、再度変身してブレディメイトに立ち向かう。

 

『馬鹿め!!たった四人だけで本体と分身体(私達)に勝てると思うな!!行くぞ!!』

 

『『『『うおぉぉぉぉっっっっ!!!!!!!!』』』』

 

アラタ達がゴセイパワーを封じられた今、戦力が大幅に減少したリュウガSV達仮面ライダーだけでは取るに足らない相手だと嘲笑いながらブレディメイトとその分身体達は彼等をも葬るべく迎え撃つ。

 

翼をもがれた天使(ゴセイジャー)、再び闇を彷徨う(ディライト)悪意(ブレディメイト)に抗う仮面旅人(ライダー)···彼等に勝機(ひかり)の道は見えるのか···?




ゴセイジャーと仮面ライダーの共闘シーンを詳しく書きたいだけ書いたせいで、話がかーなーりクソ長くなってしまいました(^_^;)

その為もありますが、ブレディメイトの言葉で完全にナーバスになって引きこもった闇影。こいつにもアイちゃんが必要かな?

ゴセイVSシンケンでも披露していた分身体もクウガ四フォームの力を与えましたが、名前はほぼそのままです(^_^;)

そして、その分身達をも利用してゴセイジャーのゴセイパワーを封じる天封術・エンジェシール、護星天使をも滅ぼしたいと考えるブレディメイトの歪んだ思想にピッタリの凶悪な力だと自負しています(←自惚れ)

その対処法は、意外な形で次回披露致します。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第32導 エピック・エンディライト

皆様、大変長らくお待たせ致しました!!

ゴセイジャー編、「一先ず」完結です!!

「一先ず」の意味は最後の方を読んだら粗方解ります(^_^;)


ブレディメイトが生み出した天封術・エンジェシールによりゴセイパワーを封じられて変身不能に陥ったアラタ達ゴセイジャーに代わってリュウガサバイブ、サソード、ディシーフ、ディスティール等四人の仮面ライダーが本体及びその分身体達と交戦するが···

 

『遅いっ!!ふっ!はっ!!やぁぁあっっ!!』

 

『ぐっ···ああぁぁっっ!!?』

 

『はぁっ!!つぇぇいっ!!』

 

『くっ···ぶぁぁっっ!!?』

 

両端に金色の刃が装飾されたライジングドラゴンロッドを振るう彗星のブレディメイトの先程以上に目で捉えにくい速度で、ディシーフは反撃も防御の隙も与えられず一方的に幾度も刺突され、ディスティールもドライバーから放つ矢をチュパカブラの武レディメイトの装備する金色の鉤爪・(ライ)ジングライサーにより全て弾かれた挙げ句にそのボディを斬り裂かれ···

 

『クロックデュアル!!』

 

【CLOCK-UP!】

 

『無駄だ!!貴様の高速移動等、私の前では鈍重な虫けらに過ぎん!!』

 

『なっ···きゃああぁぁっっ!!?』

 

【CLOCK-OVER】

 

【SWORD-VENT!!】

 

『てめぇ等は···俺がぶっ倒す!!』

 

『己の力量を弁えぬ特攻程、見苦しい物は無い!!』

 

『んなっ、二刀流だとっ!?』

 

『隙だらけだ!!ぃやあぁぁっっ!!』

 

『ぐあぁぁっっ!!!?』

 

サソードのクロックデュアルも、超感覚を持ったサイボーグのブレディMATEの装備した銃口の上に銃剣の刃が装飾されたライジングペガサスボウガンから連射した複数の金色のエネルギーを纏った矢に直撃して破られ、ソードベントにより装備したドラグブレードで斬り掛かるリュウガSVの攻撃も血祭のブレディメイトの持つ金色の刃をした二本のライジングタイタンソードの一つであっさり防がれ、逆にもう片方の剣で腹部を斬り付けられてしまう。

 

『未熟な護星天使もそうだが、お前達仮面ライダーはそれ以上に脆弱だな。まぁ、所詮は愚かで弱い人間なのだから当然の結果か。』

 

『あっ···くぅっっ···!!?』

 

『だが、あの逃げ出した疫病神と同じくお前達はこの世界···いや、私が創る新たな星にとってあってはならぬ存在!!故に私が直々に滅ぼしてくれる!!』

 

倒れ伏したリュウガSV達が人間である事から、彼等を護星天使であるアラタ達より「愚かで弱い」存在だと、生前と全く変わらない傲慢な発言をしながら嘲笑うブレディメイト本体は、自分が創成したい星にとっても厄介な疫病神···闇影同様に仮面ライダーと言う異物である四人に止めを刺すべく、構えた右掌から超自然発火能力を用いようとするが···

 

『ナイトメタリック!!』

 

『ぐぁぁっっ!!?』

 

そうはさせじとゴセイナイトはレオンレイザーソードでのナイトメタリックで斬り付けて怯ませ、リュウガSV達を危機から救う。

 

『仮面ライダー共!何をしている!?』

 

『ゴセイ···ナイト···なんで···!?』

 

『天装術は使えんが、完全に戦えない訳ではない。』

 

これまでの戦いで一定の信頼感が芽生えたのか、未だに起き上がらぬリュウガSV達に叱咤を飛ばすゴセイナイト。彼はあくまでゴセイパワーを封じられているだけであり、今の人型を維持出来ている為こうして彼等を救えたのだ。

 

『僅かでも戦える力があるのならば、諦めずに立ち上がれ!仮面ライダー共!!お前達のターンはまだ終わってないのだろ?』

 

『おいおい、見くびってんじゃないよ···誰が諦めるかってんだ!!』

 

『そうです···闇影さんを散々侮辱した奴に制裁を加えるまで···諦めるつもりはありません!!』

 

『取られたお宝を取り返すまで···』

 

『俺様達は諦めねぇぜ···!!』

 

ゴセイナイトから更なる発破を掛けられたリュウガSV達は「ブレディメイトを倒す」と言う共通の目的から、それぞれ違った想いを表明しながら立ち上がる。そして···

 

「そうだ···俺達も···まだ何か出来る筈だ···!!」

 

「例え変身出来なくても···!!」

 

「天装術が使えなくても···!!」

 

「この身体が動く限り···!!」

 

「俺達は···絶対に諦めない!!」

 

エンジェシールの影響で天装術はおろか、ゴセイジャーへの変身能力すら失っているアラタ達五人もゴセイパワーを封じられた影響で動かしにくい身体を押して立ち上がり、ブレディメイトを見据える。

 

『ふん、翼をもがれた貴様等が加わった所で何が出来る。足掻いても無駄である事が何故解らない?』

 

「無駄かどうかは···やってみなくちゃ分からない!!行くぞ、皆!!」

 

「「おうっっ!!/えぇっっ!!」」

 

ブレディメイトからの嘲笑等跳ね除けてアラタ達は生身のままでリュウガSV達に加勢するべく走り出す。天装術が使えずとも、変身出来ずとも、地球とその星に住む全ての命を守る為に諦めずに立ち向かう。それが彼等、護星天使なのだから···。

 

 

 

ー世界の光導者、ディライト!幾つもの並行世界を巡り、その瞳は、何を照らす?

 

 

 

ー天知天文研究所

 

 

「······。」

 

望の言葉を受けて一先ず物置から出た闇影は、自分が今何を成すべきなのかを見出だせずに廊下を歩き彷徨っている。過去の自分から変わる努力をしたとされる今の自分に何が出来るのかを考えながら···。

 

「···ん、何か騒がしいな?」

 

何やら広間の方で騒がしい声が聞こえた為、その様子を見ようとドアを開けて入る。

 

「いや~影魅璃さんがいらっしゃったお陰でアラタ君達の再会パーティーに出す料理のレパートリーが沢山増えましたよ。ありがとうございます。」

 

「いえいえ。私も皆さんのお力になれてとても嬉しいですわ。」

 

何時の間にか来ていた影魅璃は秀一郎と共にアラタ達との再会を祝したパーティーに出す料理の準備の手伝いをしていた。広間の中心にある真っ白いテーブルクロスが掛けられた長テーブルの上には、秀一郎が作った極大の牛ステーキの上に焼きニンニクが乗った「ニンニクステーキ」やアボカドと中トロとマヨネーズを具にした巻き寿司「博士巻き」に加えて、影魅璃が作った料理等が所狭しと置かれている。

 

「あら闇影さん。今日は戦いに参加なさってないけど、お身体の調子が悪いのですか?」

 

「いえ···それは···。」

 

「おや、闇影君。やっと出てきた様ですね。」

 

「天知博士···先程はお見苦しい所をお見せして申し訳ありません。」

 

「いえいえ、大丈夫ですよ。」

 

闇影は影魅璃から戦いの場に赴かずにこの場に居るのは体調不良なのかと尋ねられてその理由を言い淀みながらも、続けて声を掛けてきた秀一郎に対して頭を下げ、先程コウイチと喧嘩沙汰になった事を謝罪する。

 

「飲み物用のグラスはこのワイングラスで···って先生、もう大丈夫なの?」

 

「···一応引きこもるのは止めたよ。」

 

「闇影さん···。」

 

そこへ人数分のワイングラスを乗せたトレイを手に持った黒深子と2リットルのジュースのペットボトルの2本手にした望が入室し、闇影の姿を目にして彼の身を案じて言葉を掛けるが、表向きは平常を保ちながらも僅かな曇りが見える表情から、まだ心に迷いがある事を察する。

 

『たた、大変でっす!!アラタさん達がブレディメイトにゴセイパワーを封印されてしまったでっす!!』

 

「なっ···何だって!?」

 

「それって、天装術だけじゃなく変身も出来ないって事!?」

 

そんな中、戦況を知り慌てた声でアラタ達がブレディメイトのエンジェシールによりゴセイパワーを封じられた事を知らせるデータスの言葉を受けて驚愕する一同だが···

 

『ですが皆さん、変身しない状態でブレディメイトと戦っているでっす···!!』

 

データスが画面に戦いの場面···アラタ達が生身でブレディメイト相手に食い下がって行く場面をモニターとして写し出しながら状況を伝える。

 

「そんな!生身で戦うなんて無茶だよ!!」

 

只でさえ強敵であるブレディメイト相手に天装術が使えない、ゴセイジャーにすら変身不能なのにも関わらず生身で挑むアラタ達の行動を望が無謀だと称する中···

 

「(力を封じられた状態で戦えばいくらアラタ君達だって只じゃ済まない···!!コウイチ達だけじゃあ長くは持たないかもしれない···!!俺が行けば···いや、駄目だ。俺が手出ししよう物なら、またこの世界に悪影響が···!!)」

 

「先生、このままじゃ皆死んじゃうよ!!早く行ってあげて!!ねぇ!!」

 

「(解ってる···解ってるけど···!!)」

 

このままではアラタ達が命を落とすのは時間の問題、実質リュウガSV達仮面ライダーだけでは力不足が否めず、自分も参戦する事を考えかける闇影だが、「疫病神」である自分が下手に関わってこの世界に更なる悪影響が及ぶ可能性を恐れ、黒深子から戦う様呼び掛けながら身体を揺さぶられて二の足を踏む。

 

 

 

「ぅくっ···はぁぁっっ!!」

 

『無駄だ!天装術すら使えんお前達の抵抗等、有って無い様な物!!失せろ!!』

 

「ぐああぁぁっっ!!?」

 

『お前も邪魔だ!!』

 

『ア···アラタ!!ぐぉっ!!?』

 

エンジェシールの影響により服越しに浮かぶ禍々しい形をしたクウガの紋章に苦しみながらも素手で血祭のブレディメイトを殴り付けたアラタだが、如何に護星天使と言えど生身の拳等ダメージも無いに等しく、逆にライジングタイタンソードの斬撃波で吹き飛ばされ、その身を案じたリュウガSVをも同様に吹き飛ばす。

 

『お前達がどんなに足掻こうとも!!』

 

「きゃあぁぁっっ!!?」

 

『仮面ライダーと言う力を得て!!』

 

「「ぶあぁぁっっ!!?/ああぁぁっっ!!?」」

 

『更なる進化を遂げた私を!!』

 

「があぁぁっっ!!?」

 

『滅ぼす事等!!』

 

『ぅぐあぁぁっっ!!?』

 

『『『『『絶対に不可能なのだぁぁぁぁっっっっ!!!!!』』』』』

 

ブレディメイト本体と他の分身体達もゴセイパワーを封じられて苦戦する残りの四人とゴセイナイトを嘲笑いながらアラタとリュウガSVと同じ場所へと一ヵ所に集まる様に吹き飛ばしていくと、五人のブレディメイトは更なる追撃として掌からそれぞれがくすんだ色をした黒、青、赤、緑、紫のエネルギー波を放つ。

 

『チッ···ブラッカー!!』

 

【GUARD-VENT!!】

 

『グォォォォンッッ!!!!』

 

『せめて···皆さんの盾くらいには···!!』

 

『エリちゃんとモネちゃんは死なせねぇぜ!!』

 

『この子達のお宝、壊されたら私達が困るのよね···!!』

 

【【ATTACK-RIDE···BARRIER-FORCE!】】

 

仮面ライダー達はアラタ達の前に立ち、リュウガSVはガードベントによりブラックドラグランザーの黒い炎の壁・ブラックファイヤーウォールを、サソードは両手を広げて自らを盾に、盗賊コンビは自分達が手にしたい「宝」を守ると言う不純な理由を述べながら赤と青のバリアフォースを二重に展開して防御に徹してどうにか防ぐも···

  

『まだ足掻くか!!はぁぁっっ!!』

 

『『『『ぐああぁぁっっ!!?/きゃあぁぁっっ!!?』』』』

 

「「「「「『うわああぁぁぁぁっっっっ!!!!/きゃあぁぁっっ!!?』」」」」」

 

それを嘲笑うかの様にブレディメイト本体がもう片方の掌を翳して発動させた超自然発火能力で彼等の身体を燃やし、その隙にエネルギー波をアラタ達諸共直撃、大爆発を起こして変身を解除させた。

 

「ぁ···ぅうぅっっ······!!!!」

 

『しぶとい連中だな···だが次で···!?』

 

『はぁ···はぁ···次で何だよ···「次で止めだ」か?勝手にリーチ掛けてんじゃねぇよ···!!』

 

直撃を受けて虫の息ながらも倒れ伏すアラタ達とツルギ達を見てそのしぶとさに辟易して次の攻撃で止めを刺そうとするブレディメイトだが、唯一変身を解除されずに自分を挑発しながら立ち続けているリュウガSVの姿を見て驚愕する。

 

『まだ生きているか···いや、そうしているのが精一杯だと言うのが正しいか。しかし、進化した私の攻撃に耐え続けた褒美として教えてやろう。この新たな力を手にした経緯を。』

 

しかし、鉄仮面のバイザー部分や装甲は罅だらけで息も絶え絶えとしたリュウガSVの状態を見て、戦うどころか立っているのがやっとだと判断して嘲笑うブレディメイトは単なる余裕なのか、自分の猛攻に耐えた「褒美」と称して、手にしたアルティメットクウガの力の出所について語り出す。

 

『二年前、未熟な護星天使共に葬られた私はあのまま消滅した筈だった。だが、あの疫病神や貴様等仮面ライダーが現れた影響で残留思念としてどうにか生きた私の前に創士とか言う男が現れ、貴様等仮面ライダーを始末する見返りとして与えられたこの特殊なゴセイオーブ···クウガオーブの力により現世に蘇ったのだ。』

 

二年前···アラタ達ゴセイジャーの奮闘の末、現在の地球を破壊し新たな地球を創造する「ネガー・エンドの儀式」を阻止され、自らも討伐されて肉体を失ったブレディメイト···否、ブラジラだが、闇影達仮面ライダーと言うこの世界にとっての「異物」の介入による影響で残留思念として辛うじて生き延び、闇影達の抹殺の見返りとして創士から与えられた特殊なゴセイオーブ「クウガオーブ」なるアイテムの力により復活したと、腰のベルトに手をやりながら経緯を説明する。

 

『何だそのオーブは···!?そんなオーブ等···いや、それ以前に何故人間がゴセイオーブを所有している···!?』

 

『創士から貰ったクウガオーブ···クウガの力···!!おい、まさかそれ···!?』

 

『ふっ···そう言えばこのオーブの力を与えられた時、謎の黒い戦士らしき存在が人間の女に戻った途端に化物となって暴れ狂うと言う、実に面白い光景が頭に浮かんだな。』

 

『···面白いだと···!!?』

 

一万年前の護星天使が所有していたゴセイオーブとは全く違うクウガオーブを何故創士(ただの人間)が所持していたのかをゴセイナイトが疑問に思う中、その出所に勘付いたリュウガSVの反応を確認したブレディメイトは一笑して答える。嘗て仮面ライダーリクガになる前の才牙ソラがアメイジングクウガの力を暴走させ、霊石アマダムを破砕させた光景(ビジョン)が頭に浮かんだと、彼女の苦しみを面白可笑く嘲笑いながら···。

 

『あの光景から大凡理解したよ。私がこうして現世に生き返ったのは、その身の程知らずな女がクウガの力を暴走させてその源である宝玉を破壊し、それを創士が拾い上げてクウガオーブに創り替えたお陰だと言う事を。これについては感謝すべきだろうな···分不相応な力を持て余し、暴走させたその愚かな人間に!!フッハハハハハハハ!!!!』

 

その光景と創士との接触を照らし合わせて、クウガオーブは破砕したアマダムを彼が秘かに回収、変造した物だと理解したブレディメイトは、自身の復活の切っ掛け···アマダムを破砕させたソラの行動を愚かだと嘲り、高笑いを上げる。

 

「このっ···!!?」

 

『···てんめぇぇぇぇっっっっ!!!!』

 

経緯を知り、一人の仮面ライダーを侮辱するブレディメイトに身を起こしながら憤慨するアラタだが、それより前に激昂したリュウガSVはドラグブレードの刃に黒い炎を纏った「ブラックバーニングセイバー」を構えて勢い良く斬り掛かって行く。

 

『何をムキになっている?私は新たな力を得た経緯について説明しただけだ。それに貴様と何の関係がある?』

 

『うるせぇっ!!創士の野郎も許せねぇがなぁっ、てめぇはそれ以上に許せねぇ!!』

 

繰り出す斬撃全てをダークサーベルで防ぎつつ激昂する理由を尋ねてくるブレディメイトの疑問を一喝し、リュウガSVは更なる連撃を叩き込む。人々の笑顔を守る為に戦うクウガの力を利用した創士以上に、その力を得て人々の笑顔を奪う為に悪用しその誇りを穢したばかりか、変身者であるソラを侮辱したブレディメイトをリュウガSVは許せなかったのだ。

 

『うおぉぉぉぉっっっっ!!!!』

 

『図に乗るなっ!!はぁっ!!』

 

『ぐあぁっっ!!?』

 

『やれっ!!我が分身達よ!!』

 

『『『『つぇああぁぁぁぁっっっっ!!!!』』』』

 

『がぁっ!!?ぶふぅっっ!!?ぐがぁぁっっ!!?』

 

しかし、そんな勢いだけの単調な攻撃による優勢は長続きせず、ダークサーベルで防がれている事に気を取られ、ブレディメイトのもう片方の掌から電撃をまともに喰らい、更には他の分身体達からの攻撃を受けてリュウガSVは吹き飛ばされてしまう。

 

『所詮、人間の無駄な悪足掻きに過ぎなかった様だな。』

 

「無理だよ···一人だけで五人のブレディメイトを倒すなんて···!!」

 

「いや···まだ···終わりじゃない···!!」

 

ゴセイパワーを封じられ、仮面ライダー達をも圧倒するブレディメイトの強さを目の当たりにして弱音を吐き出すモネだが、アラタは目にした「ある光景」を見て希望を見出だす···。

 

『何っ···!!?』

 

『はぁ···はぁ···どしたブラジャーメイドさんよぉ···?まだ···俺はくたばってねぇぞ···!!』

 

アラタの言葉を聞き、ふと背を向けて見るとブラジャーメイドもとい、ブレディメイトは「ある光景」に目を見開いて驚く。何故なら、先程以上にズタボロとなり、(バーニングセイバー)の刀身も折れ満身創痍になりながらも、リュウガSVは尚も立ち上がっているのだから···。

 

『馬鹿な···何故立ち上がる、何故足掻く!?貴様と私の力の差は歴然、ダメージも最早限界に達した筈···なのに何故だ···何故貴様は私の前に立ち塞がる!!?』

 

『へっ···んなモン答えてやる義理はねぇよ···と、言いたいとこだけど、漸く動揺したみてぇだから特別に答えてやんよ···!!』

 

幾度倒しても再び立ち上がるリュウガSVの諦めの悪さに思わず動揺するブレディメイト。究極(アルティメット)の闇(クウガ)の力を得て、救星主以上の存在に昇華した自分に敵う筈が無いにも関わらず、何故尚も抗うのかを尋ねられ、リュウガSVは意趣返しに彼が動揺(そう)した表情を見せたからだとその理由を語り出す。

 

『今の俺ぁよ、本当ならこの世界どころか現実世界にすら長く居られねぇ鏡像(うそ)の存在だったんだよ。だけど、あの馬鹿は言ってくれた···心さえありゃあ、どんな存在でも夢を持つ資格がある···って、鏡像(おれ)の存在を受け入れて、俺の世界ばかりか、俺自身を光へ導いてくれた···!!』

 

今の自分は本体の鏡像であり、現実世界に長く居る事が許されない嘘の存在だったが、闇影の活躍により世界も自分も救われたのだと、リュウガSVは自嘲を交えながら身の上を語る。

 

『俺だけじゃなくそれ以外のダークライダー達や黒深子ちゃんやツルギちゃん、巡さんや戴問さん等、色んな連中やその世界の闇を光へ導き、その心を救って来たんだ···!!他人から拒否られようとも、頼みもしねぇで勝手にな···!!』

 

『···何が言いたい···?』

 

『今、俺達がこうしててめぇの邪魔出来てんのはてめぇが疫病神とか抜かしてた闇影のお陰だって言ってんだよ!!だから身を以て解らせてやるよ···彼奴のお節介は間違いなんかじゃねぇって事をなぁっ!!』

 

自分以外のダークライダー達だけじゃなく黒深子やツルギ、巡と周等様々な人々やライダーや世界が闇影の手によって光へ導かれた事を前置きしたリュウガSVは、彼の「お節介」によって救われた自分達が彼を否定したブレディメイトを倒す事が、闇影の行動や存在が間違いじゃない事の証明になる···それが諦めない理由だと答える。

 

 

 

「コウイチ···。」

 

データスのモニターでその様子を見聞きしていた闇影は、リュウガSVがそうまで自分に恩義を抱いていた事を知り小さく笑みを浮かべる。自分のやって来た事は決して無駄では無かったのだと。

 

 

 

『ふん、随分とあの疫病神に入れ込んでいる様だが、私に敵わぬと言う事実に変わりは無い。そんな貴様に今更何が出来る?』

 

『ちっ···!!』

 

ブレディメイトが鼻で嗤う様に、如何に意気込みは良くても戦力差に変わりはない。向こうは究極(アルティメット)の闇(クウガ)の力と超殲装術を使い、それと同じ力を持つ分身を含めて五体、一方アラタ達は天装術を使用出来ず、仲間も自分も被ったダメージが大きい等、此方が分が悪い事を承知しているリュウガSVが舌打ちしていると···

 

『ん?なっ···何だこれ···!?』

 

「コウイチさんのカードデッキが···光っている···!?」

 

何と、リュウガSVの腰に装着しているカードデッキがツルギの言う様に虹色に輝き、光を放つと言う不可思議な現象が起きた為本人は勿論、この場に居る全員が驚愕した。

 

『感じる···新しい何かを···!!この戦いを終わらせる為の新たな切り札を!!』

 

何故カードデッキが光っているのかは解らぬが、ブレディメイトを倒す為の···戦いを終わらせる為の新たな(切り札)だと感じ取るリュウガSVは、勢い良くカードをドローする。

 

『う、嘘だろ···何でこれが···!?だが、これなら野郎に対抗出来るかもしんねぇ!!』

 

『何を手にしようとも、私の優位は揺るがぬ!!』

 

ドローした謎のカードを目にしたリュウガSVは先程以上に驚愕の声を上げるも、その内容からブレディメイトに対抗しうる力だと確信するが、(ブレディメイト)はそれを意に介さず襲い掛かる。

 

『そいつはどうだろうなぁ。行くぜ!天装ベント!!』

 

【TENSOU-VENT!!】

 

『なっ···何っ!!?』

 

「嘘!?今、天装って言わなかった!?」

 

「まさか、そんな···!?」

 

リュウガSVは得意気に謎のカード···「天装ベントカード」なる不可思議なアドベントカードをドラグバイザーツヴァイにベントインをした為、襲撃中のブレディメイトは勿論、モネは耳を疑い、ハイドも目を見開く等護星界に関わる者は皆、驚愕し···

 

「何で野郎がゴセイジャーの力を使えてんだ···!?」

 

「こんな事···有り得るのでしょうか···!?」

 

「でも、現にああやってバイザーも読み込んでるから有り得るんだろうけど···!?」

 

巡達仮面ライダー陣営もまた、各々が驚愕し疑問を感じずにはいられないでいる。巡と周、そしてこの場に居ない闇影達次元ライダーですら、スーパー戦隊の力を扱う事は基本的に不可能なのだから当然と言えば当然の反応である。

 

『何だか良く分かんねぇが、こいつでブラジャーメイドをぶちのめしてやんよぉっ!!冴え渡れ、シーイックの力!!』

 

【SEAICK-VENT!! PRESSHOWER!!】

 

『ぐああぁぁっっ!!?』

 

リュウガSV本人すら把握していないのだが、それに構わず先程発動した天装ベントカードを再度発動すると、ブレディメイトの頭上に強力なクリアブラックカラーの水流波が噴出、直撃する。

 

「えっ!?あれって、プレッシャワーだよね!?」

 

「色は違うがな···だが、何故彼奴がシーイックの天装術を···!?」

 

『くっ···こんな紛い物で私を倒そう等、笑止!!やれっ!!我が分身達よ!!』

 

たった今リュウガSVが発動した「ブラックプレッシャワー」を目にしたエリは驚き、シーイック族であるハイドも色の差異を指摘しつつ彼が何故扱えるのかと疑問の声を上げる中、ブレディメイトは自身の分身達に彼を襲撃する様指示を飛ばす。

 

『生憎、こんなコスプレの化け物のハーレムなんざお呼びじゃねぇんだよ。も一丁行くぜ!!』

 

【TENSOU-VENT!!】

 

『猛りやがれ、ランディックの力!!』

 

【LANDICK-VENT!!ROPLANT!!】

 

『『『『ぐあぁぁぁぁっっっっ!!!?』』』』

 

そんな彼等からの襲撃(ハーレム)はお断りと毒吐きながらリュウガSVは先程発動させたシーイックベントカードを再度ブラックドラグバイザーツヴァイにベントインさせ、更にそれを間髪入れず発動させると、分身体達の足元から生えてきた黒い蔦が一斉に彼等を捕縛する。

 

「今度はロープラントを使った!?」

 

「また真っ黒だけどね···!!」

 

今度は蔦により対象を捕縛するランディック族の天装術・ロープラントを黒くした「ブラックロープラント」をリュウガSVが発動した事に、アグリとモネは驚きを隠せずにいる。

 

『ん?一回使ったら元に戻んのか。ちと面倒臭ぇな。』

 

「どうやらあのアドベントカードは状況に合わせて様々な天装術を発動出来るカードに変化するみたいね。」

 

「ストレンジの天装術バージョンってとこか。んで、変化したカードを使ったら元に戻っちまうんだな。」

 

「ですが、ゴセイジャーの皆さんが天装術を封じられている今、心強い戦力ですよ···!!」

 

リュウガSVはバイザーから飛び出したランディックベントカードをキャッチし、それが天装ベントカードに戻っているのを確認するとその特性を理解しつつぼやく。それを目の当たりにした巡と周は、「状況に応じて3種族の天装術と同じ効果を持つアドベントカードに変化する」天装ベントカードをストレンジベントカードの一種だと推測する。一度使う度に元に戻ると言うやや使い勝手の悪さはあるが、ツルギの言う様にアラタ達が天装術を封じられた今、唯一ブレディメイトに対抗出来る戦力である。

 

『おのれぇ···!!』

 

『どうよ、愚かな虚像如きに天装術で振り回される気分は···?』

 

【TENSOU-VENT!!】

 

『最後はこいつで行くぜ!!煌めきやがれ、スカイックの力!!』

 

【SKYICK-VENT!!SKYICK-SWORD!!】

 

護星界とは無関係の自分に天装術で翻弄される屈辱に憤慨するブレディメイトを挑発しながら、リュウガSVはバイザーにベントインしスカイックベントカードに変化した天装ベントカードを再度ベントインさせると、右腕にクリアブラックカラーのスカイックソード「スカイックソード・ダークミラージュ」を武装する。

 

「やっぱり、スカイックの天装術も使えるんだね。」

 

『そゆ事。行くぜ行くぜ行くぜぇぇぇぇっっっっ!!!!』

 

『···舐めるなぁぁぁぁっっっっ!!!!』

 

アラタからの指摘に軽く返事するリュウガSVは、某赤鬼の口調をパクリながらスカイックソードDMを構えて駆け出して行き、ブレディメイトもそれに応じる様にダークサーベルで迎え撃とうとする。

 

『はぁっ!!うらっ!!せいやぁぁっっ!!』

 

『くっ···瀕死に近い筈のこいつに、何故これ程の力があるんだ···!?』

 

『てめぇが馬鹿にしまくった疫病神様譲りの諦めの悪さが伝染っちまったからだよっ!!』

 

『ぐあぁぁっっ!!?』

 

激しく剣戟するリュウガSVとブレディメイト。本当なら瀕死レベルのダメージを負っているにも関わらず自分を押し負かそうとする程の力を秘めている事に動揺するブレディメイトに対して、リュウガSVは闇影譲りの諦めの悪さが原因だと返しつつダークサーベルを弾き飛ばして、スカイックソードDMの一撃を見舞う。

 

『こいつで終いだ···ブラジャーメイドォォッッ!!』

 

『ぐあぁぁぁぁっっっっ!!!?』

 

その隙を突いてリュウガSVは、刀身に黒い炎を纏ったスカイックソードDMで知って知らずかゴセイレッドの必殺技・レッドブレイクを模した必殺技「ブラックバーニングブレイク」の縦一閃により、ブレディメイトを斬り裂いた。

 

『クウガ···オーブに罅が···ゥグアアアアァァァァッッッッ!!!!!!?』

 

今の一撃でブレディメイトのベルトに埋め込まれたクウガオーブに罅が入り、そこからドス黒い靄が勢い良く漏れて行き、それに伴ってある異変が起きる···。

 

『何···だ···!?力が···究極の闇が···抜けて行···く···!?』

 

靄が抜けて行くと同時に、ブレディメイトや分身体達の身体を覆っていた鎧が溶ける様に消失して行く。どうやらアルティメットクウガの力が失われつつある様だ。そして···

 

「身体が···楽に動ける!!」

 

「どうやらブレディメイトからクウガの力が失われた事で、エンジェシールの効果も消えた様だな。」

 

「あ~身体がめちゃくちゃ軽い!!」

 

「ゴセイパワー封印なんてこりごりだぜ!!」

 

「これで思う存分戦えるわ!!」

 

それと同時にアラタ達の身体から封印エネルギーが排出、エンジェシールの効果から解放され、各々が身体の身軽さに喜びの声を上げる。

 

「ゴセイジャーの皆さんが力を取り戻せて何よりです···!!」

 

「そんな事より、何で野郎があんな力を手に出来たんだ···?」

 

「う~ん、生きた虚像···魂その物であるコウイチ君がライダーとは異なる世界に接触した事で何らかの化学反応が起きた···のかも知れないわね。」

 

一方ライダー陣営は何故リュウガSVが天装術を使えたのかを改めて疑問に思い、その理由は心有る虚像···つまり魂その物である彼がスーパー戦隊の世界と言う仮面ライダーとは異質な世界に接触した事による化学反応だと、巡は自分の見解を述べる。

 

「ううん、あれは奇跡だよ。」

 

「「は?」」

 

「闇影さんを、仲間を信じ続ける事を諦めずに戦ったから、彼に奇跡が起きたんだ。」

 

「奇跡って···。」

 

「信じられねぇな···。」

 

「奇跡···ですか。そうかもしれませんね。」

 

しかしアラタは巡の見解に対して首を横に振り、リュウガSVが天装ベントを得たのは、彼を光へ導いた闇影を心から信じて戦い続けた事で起きた奇跡による物だと答える。盗賊コンビはそんな不確かな理由に呆れた表情を取るが、ツルギは妙な理屈よりも納得出来る理由だと肯定する。

 

『よっしゃ!!これでブラジャーメイドもくたばっただろうし、めでたしめでた···!!?』

 

ブレディメイト···否、ブラジラの力の源であり命でもあるクウガオーブが破損した今、最早彼に対抗手段もなくこのまま在るべき場所に帰すのみ···即ち自分達の勝利を確信するリュウガSVだが···

 

 

 

『しっ···!!?』

 

『どうした仮面ライダーリュウガよ?まだ私は生きているぞ?』

 

倒れ伏した筈のブラジラが起き上がり、先程自分が発した言葉をそっくり返しながら反撃としてダークサーベルによる袈裟斬りをその背に受けてしまう···。

 

「馬鹿な!?奴の命を維持していたクウガオーブは壊れた筈だ!!」

 

「そんな···どうして!?」

 

ハイドとモネが驚愕する様にブラジラはクウガオーブを核として命を得た。ならばオーブが破損すれば当然命を失う筈。にも関わらず、何故ブラジラは生きているのか···?

 

『む···?奴のベルトを見ろ!!』

 

「ベルト?あっ!!」

 

「ゴセイオーブがクウガオーブに力を与えてやがる···!!」

 

その疑問の理由を目にしたゴセイナイトは、アラタ達にブラジラが装着しているベルトに注目する様呼び掛ける。巡と周の言葉通り、彼の四隅に埋め込まれた四つのゴセイオーブからクウガオーブにゴセイパワーが流れ込んでいる。

 

『更には分身共を再び取り込んで何とか生き延びた、と言う訳だ。···尤も、その間天装術は使えなくなるが、手負いの貴様達相手なら充分だ。』

 

ブラジラが言う様に何時の間にか消えた分身体達も再度取り込んで体力を回復して辛うじて生き延びた様だ。しかし、オーブの力を命の維持に使う関係上、天装術は使用不能になったが、ダメージの大きいアラタやリュウガSV達相手なら問題無いと、余裕の態度を見せた。

 

『よもや人間如きが天装術を使えたのは正直驚かされたよ···だが!!』

 

『あっ···ぐぅっっ···!?』

 

『所詮は紛い物···その紛い物で私の力を失わせた屈辱、貴様の死を以て晴らさせて貰うぞ!!』

 

『ぐぁっっ!!?』

 

天装ベントと言う予想外の力を得たリュウガSVに一定の評価を下すブラジラだが、その力を「紛い物」と扱き下ろしながら彼の首を掴み上げ、アルティメットクウガの力を消失させた屈辱を晴らすべく、手始めに鳩尾目掛けて膝蹴りを叩き込んだ。

 

 

 

ー天知天文研究所

 

 

「このままじゃコウイチさんが···!!」

 

「先生!!」

 

「(解ってるさ···何時までも指を咥えて見ている場合じゃない事は···!!だけど···ブラジラが弱体化した今なら···もう···俺が行かなくても···!!)」

 

データスのモニター越しでリュウガSVがブラジラに甚振られる様を見て望が心配の声を上げる中、黒深子から呼び掛けられた闇影は、頭では直ぐにでも戦いの場に駆け付けなければいけない事は理解しつつも、アルティメットクウガの力を失い先程以上に弱体化したブラジラ相手ならばゴセイパワーを取り戻したアラタ達とツルギ達だけでも···と、顔を俯かせながら彼らしかぬ他力本願な考えでいると···

 

「闇影君。すいませんが、此方に来てお皿の用意をお願い出来ますか?」

 

「···えっ···?」

 

「お父さん、今闇影さんはそんな場合じゃ···」

 

「お願いします。」

 

「···分かりました。」

 

影魅璃と料理の準備をしていた秀一郎が、皿の用意を手伝う様呼び掛けて来た。今の彼はそんな心境では無く望が難色を示そうとするが、闇影は了承して彼の下へ向かう。

 

「ありがとうございます。あぁ、お皿はその棚の中にありますよ。」

 

軽く会釈して感謝する秀一郎の指示を受けて、闇影は棚から数枚重なった小皿を取り出す。しかし、先程望が難色を示す通り、今の彼はそんな心境では無い。にも関わらず、何故秀一郎は自分を呼んだのか···?

 

「···闇影君。本当は直ぐにでも戦いに向かいたいのではありませんか?」

 

「···えっ···?」

 

それを察したかの様に秀一郎は、自分が今本当は戦いの場に向かいたい···と言う本心について尋ね出した為、闇影は目を丸くしながら驚く。

 

「私は、子供の頃に見た夜空に散りばむ美しい沢山の星を見てすっかり魅了されましてね、その日から天体について興味を持って自分で調べて更に好きになり、何時しかこう思ったんですよ。『あの美しい景色や星をもっと沢山の人達に知ってもらいたい』『他にはどんな星があるんだろう』って。」

 

そして唐突に自分が天体を好きになった切っ掛けについて語り出す秀一郎。興味は趣味へと変わり、「あの日見た星の美しさを多くの人に伝えたい」「未発見の星を知りたい」と、軈て大きな夢へと変わり、この研究所を私設したのだと。

 

「影魅璃さんから聞きましたが、君は沢山の世界を光へ導く為に旅をしているそうですが、それは何故です?」

 

「えっ···それは···昔、ある人のお陰で闇から救って貰ったから、その人の様に全ての闇を光へ導きたいと思って···」

 

「何故そう思ったんですか?」

 

「それは···昔の自分と同じ思いをさせたくないから···!!」

 

「それが答えじゃありませんか?」

 

「!!!!」

 

此処からが本題、影魅璃から事情を知った秀一郎に何故自分は闇を光へ導く為の旅をしたのかを尋ねられ、切っ掛けは亡き師・マバユキに救われた事だと語り、そこから嘗ての自分の様な人間を出したくないと答えた闇影は目を見開いて気付いた。自分の本当の気持ちを···。

 

「私がこうして此処を研究所を開いたのも、アラタ君達がこの世界に残ったのも··そして君が人を光へ導く旅に出たのも、心からそうしたいと願ったからじゃありませんか?」

 

秀一郎がこの天文研究所を開き、正式な護星天使になったアラタ達が今も人間界で暮らし、闇影が闇を光へ導く為の旅に出た···それらの理由は全て他人から言われた事では無く、自分が心から願い、やりたい道を歩んだと言う共通点がある。

 

「君がそう決めたのならば、どんな事があっても諦めずに最後まで君が選び、君だけの道を信じて進みなさい。それが一番大事な事ですよ。···と、少し偉そうでしたかな?」

 

「諦めずに···自分が決めた自分だけの道を信じて進む···。」

 

自分で選んで決めた道だからこそ、諦めずに信じて進め···秀一郎の言葉を反芻しながら闇影は目を閉じて考える。マバユキに光へ導かれてからこれまでの自分が歩んだ道の過程を、そこで生まれた仲間達との絆を···。

 

「(そうだ···俺が選んだ道によって幾つもの闇が「光」になっていたんだ。なのに俺はあんな事を···ホント、馬鹿だよな···。)」

 

嘗ての自分の様な闇に囚われた人間を生み出させない···そう自分で選んだ道を歩み続けからこそ、コウイチを始めとした幾つもの闇から救われた「光」がある。それを全て否定したからコウイチは激怒したのだと漸く気付いた闇影は、自分の浅はかな言葉に自嘲する。

 

「(そんな彼奴や皆が傷付きながら戦っている。なら、今俺がすべき事は···!!)」

 

自分も誰かを闇から光へ救える力があった。そんな自分を信じてくれた仲間やゴセイジャー達が必死で戦っている。ならば、今自分が為すべき事は一つだけ···そう決めた闇影は、テーブルにある均等に切り分けられたアボカド巻きを一つ手に取り一気に頬張り、咀嚼して呑み込み···

 

「天知博士、ありがとうございます!!俺、行ってきます!!」

 

「はい、言ってらっしゃい。」

 

自分を立ち直らせる切っ掛けを作った秀一郎に深々と一礼し、仲間達のいる戦場へと向かって行く。秀一郎もにこやかな笑みを浮かべながら彼の健闘を祈る。

 

「さ。私達も頑張りましょう!」

 

「うん!」

 

「(先生···立ち直って良かった···。)」

 

秀一郎も望も、自分達に今出来る事を為すべくパーティーの準備の再開に取り掛かった。その中で黒深子は、闇影が何時もの調子を取り戻した事に内心喜びながら天知親子の手伝いを続行する。

 

 

 

(オイオイ死神サマよぉ···また変なでしゃばり癖が出ちまったんかぁ?止めた方が良いんじゃねぇか、あぁ?)

 

「······。」

 

マシンディライターに搭乗し戦場へ向かう道中、ライトオレンジカラーのフルフェイス型のメットを被って運転する闇影の精神にゴーストイマジンが再び煽りかけてくるが···

 

(余計なお節介は却って事態を悪化させてるってのは、お前が一番分かってる筈だぜ?今更良い子ちゃんぶるのは止めて「疫病神」らしく本性晒して···「(煩い!!)」なぁっ···!!?)

 

「(煽りたかったら一生そうしてろ!!お前が何を言おうと、俺は俺自身が信じた道を歩く!!」)

 

(てめぇ···!!)

 

自分が本当にすべき事···否、心から望んだ事を改めて気付いた彼にそんな幼稚な手段等通用せず一喝された。これに苛立ったゴーストIは反論しようとするが···

 

「(誰かに言われた程度で止める程、俺の決めた道はラー油プリンの様に甘くはない!!)」

 

(···チッ···!!)

 

続けて一部意味不明な表現でその信念は揺るがぬと押されてしまう。これを受けて何を思ったのか、ゴーストIは闇影への干渉(あおり)を止めて、舌打ちしながら彼の精神内へと消え去る。

 

「待ってろよ···!!」

 

ゴーストIからの干渉を撥ね除けた闇影は気を引き締め直し、仲間の下へ向かうべくマシンディライターのハンドルを強く捻り、スピードを上げて走り出す。

 

 

 

『がふっ···!!ぁ···ガァッ···!!?』

 

『一思いに止めは刺さんぞ?貴様から受けた私の屈辱は、こんな物では無いのだからなぁっ!!』

 

『グァガァァァァッッッッ!!!?』

 

一方、ブラジラは自分からアルティメットクウガの力を失わせた屈辱を晴らすべくリュウガSVを執拗に殴打し、足蹴にし首を掴んで持ち上げながら罵倒して投げ飛ばすと、ダークサーベルから放つ黒い斬撃波を直撃、遂に変身解除させて地に沈めるが···

 

「ぅ···うぅっっ···!!』

 

『まだだ···貴様には更なる苦痛を与えねば···!!』

 

あれ程痛め付けたにも関わらず、更なる苦痛を与えるべく全身から黒いオーラを纏いながらコウイチの方ゆっくりと迫る。元々大きなダメージを受けていた上、先の一方的な暴行によりコウイチは身動き出来ずにいる。

 

『止めろブラジラ!!』

 

しかし、これ以上の暴虐を許すまいとゴセイパワーの封印から解放され、ゴセイジャーに変身したアラタ達五人とゴセイナイトは各々武器を構えながらブラジラに立ち向かっていく。

 

『愚かな。変身出来た所で、私とお前達との力の差は変わらん!!』

 

如何に此方が弱体化しアラタ達がゴセイパワーを取り戻しゴセイジャーになろうとも力量差は依然変わらないと鼻で嗤うブラジラは、目を妖しく光らせて三度四体の分身体を実体化させる。

 

『まだあんな力が!!?』

 

『お前達と仮面ライダー共への強い憎しみが、私の糧となり力となったのだ。』

 

弱体化したにも関わらず分身体を生み出す程の力が残っている事に驚くレッドの言葉を受けたブラジラは、ゴセイジャー達とコウイチ達仮面ライダーへの強い憎悪···闇の感情を昂らせた事で力を回復させたのだと返す。

 

『私の中の闇が尽きぬ限り、お前達が私に勝つ可能性は無い!つあぁっっ!!』

 

『『『『『『うわあぁぁぁぁっっっっ!!!?/きゃあぁぁぁぁっっっっ!!?』』』』』』

 

例えアルティメットクウガの力が無くとも、自分の中の強い闇によって力は無限に増す···ブラジラはそう断言しながら分身体と共に掌から放った黒いオーラを纏った強力なエネルギー波をゴセイジャー達へ直撃、変身解除に追い込んだ。

 

「あっ···くぅっっ···!!?」

 

『フフフ···!!』

 

倒れながら傷の痛みに呻くアラタ達の姿を見てを嘲笑うブラジラとその分身体は、二度と自分の計画の邪魔をさせぬ様、彼等やコウイチ達に止めを刺すべくゆっくりと接近する。が···

 

『むっ!!?』

 

そんな彼の足元に銃撃による火花が走った為、腕を覆いながら自分の邪魔をした何者かに向けて睨み付ける。その邪魔者は、徐々に聞こえるバイクのエンジン音と共に現れる。その正体は···

 

「そこまでだ、ブラジラ。」

 

『貴様···!!』

 

銃口から煙を噴くライトブッカー・ガンモードを構え、マシンディライターから降りてメットを脱ぎ、強い眼差しで自分を見据える煌闇影だった。

 

「闇影···さん···!!」

 

「漸く来て下さったのですね···!!」

 

「皆···遅れてすまなかった。」

 

漸くこの戦場に現れた事に笑みを溢すアラタとツルギを始めとした他の面々に遅れた事を詫びる闇影は、それ以上に詫びなければいけない人物の下へ駆け寄る。

 

「よ···よぅ···大遅刻だぜ先生よぉ···。てめぇが全然来ねぇせいで···らしくねぇ『熱血』を代わりにやる羽目になっちまっただろうが···!!」

 

「コウイチ···。」

 

「あ···後は···任せた···ぞ···!!」

 

最もダメージが大きく瀕死状態のコウイチは、全身の痛みにより失いかける意識を何とか保ちながら笑みを浮かべて、闇影の「遅刻」のお陰で自分が彼の代わりを務めた事を皮肉を交えて報告し、後を託したと同時に眠った様に意識を手放した。

 

「すまない···そして、ありがとうコウイチ···。後は···俺がやる···!!」

 

自分の不甲斐なさや先の暴言等を詫び、諦めずに最後まで自分を信じ、今の状況を代わりに繋げてくれた事を感謝しながら、コウイチを安全な場所まで運んだ闇影は、痛みに耐えながら立ち上がるアラタ達と共にブラジラを見据える。

 

『今更現れて何のつもりだ疫病神よ。よもや、自分一人が加わった程度で世界を救えると思い上がっているのか?』

 

「てめぇ···!?」

 

「確かに何処かでそう思い上がっていたのかもしれない。だが俺は、そんな大層な理由で戦ったつもり一度もない。」

 

しかしそんな睨みを物ともしないブラジラは、尚も闇影を「疫病神」と揶揄しながら罵倒を浴びせる。これにアグリが憤慨しかけるも、当の本人は腕を横に伸ばして遮りながら一部肯定しつつもブラジラの言葉を否定する。

 

「俺が闇を光へ導くのは、昔の自分の様な過ちを犯す人をこれ以上出したくない···だから、目の前にある闇があったら何が何でも光へ導く、それが俺の戦う理由だ。」

 

『やはり愚かな奴だよ貴様は。要は貴様の単なる自己満足に過ぎん理由ではないか。』

 

闇を光へ導く為に戦う理由···それは嘗て「緋眼の死神」として闇に囚われていた頃の自分の様な人間を二度と生み出さぬ為だと改めて気付いた闇影の答えに、ブラジラは彼の自己満足だと自分の事を棚に上げて嘲笑う。

 

「自己満足でも構わない。例え周りからどう言われようとも、俺は自分が信じた道を突き進んで行く。それが、お節介教師な仮面ライダーだ!!」

 

だが自己満足(それ)を自覚していた闇影は揺らぐ事なくはっきりと肯定し、周囲の非難や罵倒を身に受けながらも、嘗ての自身がそうだった様に人々の闇を光へ導く···それがお節介教師な仮面ライダーだと、己が信念を宣言する。

 

「ゴセイジャーの皆、改めて頼みがある···この世界を光へ導く為に俺に力を貸して欲しい!!」

 

「うん!俺達も君の力が必要だ。この星をブラジラから護る為に、一緒に戦おう!!」

 

闇影はこの世界を光へ導く為、アラタ達ゴセイジャーは再び訪れたブラジラの脅威からこの地球を護る為···互いに共通の目的を持った戦士達は、それぞれの変身ツールを構える。

 

【GACCHA!】

 

「変身!!」

 

「「「「「チェンジカード!!!!!天装!!!!!」」」」」

 

【KAMEN-RIDE···DELIGHT!】

 

【CHANGE···GOSEIGER!】

 

闇影はディライトドライバーにライドカードを装填してディライトに、アラタ達五人はテンソウダーにチェンジカードを装填してゴセイジャーにそれぞれ変身を遂げ、世界の(仮面)光導者(ライダー)護星者(スーパー戦隊)···次元を越えた異なる二つの戦士達が巨悪に立ち向かうべく並び立つ···!!

 

『嵐のスカイックパワー!ゴセイレッド!!』

 

『息吹のスカイックパワー!ゴセイピンク!!』

 

『巌のランディックパワー!ゴセイブラック!!』

 

『芽萌のランディックパワー!ゴセイイエロー!!』

 

『怒涛のシーイックパワー!ゴセイブルー!!』

 

『地球を清める宿命の騎士!ゴセイナイト!!』

 

『『『『『地球を護るは天使の使命!!!!!』』』』』

 

『『『『『天装戦隊!!ゴセイジャー!!!!!』』』』』

 

『さぁ、この世界(ほし)を輝く道へと導きますか!!』

 

『ほざけ!!仮面ライダーも見習い共も、まとめて地獄へ叩き落としてくれるわ!!』

 

彼等の名乗り口上や決め台詞に憤慨するブラジラは、今度こそ自分の野望を実現するべく分身体達と共にゴセイジャーとディライトを葬るべく一斉に襲い掛かる。

 

『『はぁぁぁぁっっっっ!!!!』』

 

『ふっ!!はぁっ!!つぁぁっっ!!』

 

ブラックとイエロー等ランディック兄妹はそれぞれランディックアックスとランディッククローでチュパカブラの武レドランへ畳み掛ける様に荒々しい攻撃を仕掛けるが、彼の両腕の武レドライザーにより防御されつつ、クロスした武レドライザーから放つ電撃が襲い掛かるが···

 

『ディフェンストーンカード、天装!!』

 

【EXPAND!LANDICK-POWER!】

 

『今よ、お兄ちゃん!!』

 

『おう!!はぁぁっっ···ブラックアタック!!』

 

『何···ぐあぁぁっっ!!?』

 

イエローが発動した天装術、ディフェンストーンによる地面から発生した巨大な石壁で防御し、その隙にランディックアックスを構えて跳び上がった上空からブラックが垂直に落下する形で繰り出す技、ブラックアタックの強烈な一撃を武レドランに喰らわせた。

 

『シーイックボウガン!!』

 

『無駄だ···ブレドランチャー!!』

 

『はぁぁっっ!!ブルーチェック!!』

 

ブルーはシーイックボウガンでエネルギーの矢を連射しながらサイボーグのブレドRUNに接近するが、彼の両肩から放つブレドランチャーにより相殺され視界が遮断する程の爆煙が巻き起こるも、その状況下の中に於いても怯まず跳び上がって標的を定め、強力な青いエネルギーの矢を高速度で放つ技、ブルーチェックを見舞おうとするが···

 

『甘いぞ!!はぁっ!!』

 

それに勘付いたブレドRUNは投擲した両腕のブレメランでブルーチェックを斬り裂く様に打ち消し、そのままブルーをも斬り裂こうとするが···

 

『アイストップカード、天装!!』

 

【404】

 

【SPLASH!-KNIGHTICK-POWER!】

 

『ぬっ···貴···様···!!?』

 

そこへ間に割って入ったゴセイナイトがレオンセルラーで発動した天装術、アイストップによりブレメランごと全身を凍結させられ、身動きを封じられたブレドRUNは憤慨する。

 

『すまない、ゴセイナイト。』

 

『ゴセイブルー。此処からは、私達のターンだ。』

 

『あぁ、そうだな!ゴセイヘッダーカード、天装!!』

 

【SUMMON!SHARK-HEADDER!】

 

口数は少ないがそこにゴセイナイトから自分への信頼の想いが込められたと感じたブルーは、共にブレドRUNを倒すべくくシャークヘッダーを召喚し、ゴセイブラスターの銃口に装着する。

 

『バルカンヘッダーカード!!』

 

【848】

 

【SUMMON!VULCAN-HEADDER!】

 

『ナイトダイナミックカード!!』

 

【474】

 

ゴセイナイトもバルカンヘッダーを召喚し、レオンレイザーにレオンセルラーと共に装着したダイナミックレオンレイザーを完成させ、必殺技を発動するべく更にナイトダイナミックカードをセット、番号を入力する。

 

『断罪のナイティックパワー···パニッシュ!!』

 

【KNIGHT-DYNAMIC!】

 

『シャークバレット!!』

 

『ぐあぁぁっっ!!?』

 

ダイナミックレオンレイザーから放つナイトダイナミックとゴセイブラスターから放つシャークバレット、二つの強力な銃撃を身動きが取れず回避不能なブレドRUNはそのまま直撃を受ける。

 

『『はぁぁぁぁっっっっ!!!!』』

 

『ぬんっ!!やぁっ!!』

 

レッドとピンク等スカイックの戦士はそれぞれスカイックソードとスカイックショットで彗星のブレドランに攻撃を仕掛けるが、ブレドランサーの華麗な槍捌きで防ぎつつ斬撃と刺突攻撃を繰り出して吹き飛ばし···

 

『彗星弾!!はぁっ!!』

 

『『!!!?』』

 

『ふっ···これで奴等も終わっ···!!?』

 

続けて掌から青い隕石を模した技、彗星弾を二人に放ち直撃させ、爆発を起こした。これを見て彗星(ブレドラン)はレッドとピンクを葬ったと確信を抱くが···

 

『『はぁぁぁぁっっっっ!!!!スカイコンビブレイク!!』』

 

爆炎の中から低空飛行するレッドに掴まるピンクが飛び出し、スカイコンビブレイクなる技を繰り出そうとする。

 

『小癪な···はぁっ!!』

 

自分に劣ると思い込んでるレッドとピンク等スカイック族に自身の攻撃が全く効かない事に同じ種族として屈辱を覚えて憤慨する彗星(ブレドラン)は彗星弾を連発するが、捨て身覚悟で突撃する二人には全く当たらないでいる。

 

『ピンクトリック!!』

 

『ぐぉぉっっ!!?』

 

『レッドブレイク!!』

 

『ぐぁぁっっ!!?』

 

ピンクが構えるスカイックショットから放つ桃色の鳳凰の羽根を模した光弾を拡散して放つ技、ピンクトリックを被弾させ、そこにレッドの持つスカイックソードの技、レッドブレイクの強力な斬撃を彗星(ブレドラン)に直撃させる。

 

『ぬぅぅぅんっ!!』

 

『ふっ!!はっ!!せぇぇいっ!!』

 

ディライトはライトブッカー・ソードモードで刀を持つ血祭のブレドランと激しい剣戟を繰り出し合っている。片や嘗ては「死神」と謳われた(ディライト)、片や「血祭(げどうしゅう)」を騙る(ブレドラン)···互いに正義とはかけ離れた存在だが、その戦いぶりは「侍」に近しい物──

 

『うぁっっ!!?』

 

『私が居る事も忘れるな!!』

 

──等清廉な物ではなく、本体であるブラジラは自身の存在に失念しているのを良い事に、卑劣にもディライトの背後からダークサーベルで斬り付けた。

 

『そうだったな。なら、目には目を、分身には分身だ!!』

 

【FINAL-SHADOW-RIDE···HI・HI・HI・HIBIKI!】

 

しかし、複数の敵相手に対抗するべくディライトも「分身」として、自身の影をアームドセイバーを携えた装甲響鬼にFSRさせる。

 

『これで条件は同じだ、行くぞ!!』

 

人数を合わせて互いに得物を構えながら走り出しディライトは救星主(ブラジラ)と、SA響鬼は血祭(ブレドラン)と相対して戦いを繰り出す。双方、当初こそ互角に渡り合っているが···

 

『くっ···何故だ!!何故貴様如きの剣に私が押される!?』

 

『当然だ。同じ自己満足でも命や世界を光へ導く為に戦う俺と、壊して思い通りにする為に戦うお前とでは、剣の重みが違う!!』

 

『ぐぁっ!!?』

 

徐々に押されつつあるブラジラが嘆き出すのを聞いたディライトは、自分を皮肉りつつ然り気無く彼のやり方も自己満足だと揶揄し、命や世界を救うべく「護る(光へ導く)」自分と、命や世界を自分の思い通りに創るべく「壊す(闇へ誘う)」ブラジラ···それが剣の重みの違いだと応えつつ後退させ···

 

【FINAL-ATTACK-RIDE···HI・HI・HI・HIBIKI!】

 

『はぁぁっっ···鬼神覚声!!』

 

『『ぐああぁぁっっっっ!!!?』』

 

FARを発動し、SA響鬼と共に鬼神覚声による炎の刃でブラジラと血祭(ブレドラン)をそれぞれ斬り裂き、それと同時に他の分身体も彼の近くまで吹き飛ばされて来る。

 

『おのれぇ···戻れ!分身達よ!!』

 

ダメージによろめきながら立ち上がったブラジラはディライトとゴセイジャーを憎悪の眼で睨み付けつつ、倒れ伏した分身体達を体内に取り込み傷を回復した。

 

『ふっ、残念だったな。この能力がある限り、私を倒す事等絶対不可能だ!!』

 

『これじゃキリが無いよ!!』

 

イエローが嘆く様に、分身の実体化と吸収による戦力増加と回復···この循環がある限り完全に倒す事は不可能だとブラジラは自負する。

 

『さぁ、今一度お前達に絶望を与えてやる···!!』

 

『性懲りも無くまた分身かよ!!』

 

ブラックの辟易した言葉を無視しつつブラジラはディライトとゴセイジャー達に再び絶望を与えるべく眼を妖しく光らせて、四度分身体を生み出そうとするが···

 

『なっ···何故だ···何故分身が···くっ···!!?』

 

『恐らくお前は、自分の体力を分け与える形で分身を生み出していたんだろう。その分身達がダメージを受ける事はイコール、お前自身の体力も削れる事を意味する。それを戻して何度も繰り返せば自ずとお前自身の体力は徐々に失われていくんだ。』

 

四つの分身体が半透明で実体化しかける寸前で全て消失してしまい動揺するが、それと同時に身体に謎の疲弊感が発生した為項垂れかけるブラジラに対して、ディライトはその理由について自分なりの見解を答え出す。

 

分身の実体化と吸収による循環能力、確かに強力ではあるがその反面、重大な弱点が存在する。ブラジラは分身を生み出す度に自身の体力をも分散しており、分身体にダメージを与えれば与える程、本体である自分自身の体力が削られていく事に繋がる。それを幾度も繰り返せば、如何に傷を治せても体力は消費、今の様に疲労するのは当然の流れだ。

 

『ゴセイジャーの皆や···コウイチ達の頑張りが俺達の勝機に繋がったんだ···お前の言う「足掻き」は決して無駄なんかじゃない!!』

 

【RIKUGA!ANOTHER-AGITO!RYUGA!ORGA!CULLICE!KABUKI!DARK-KABUTO!NEGA-DEN-O!DARK-KIVA!】

 

【FINAL-KAMEN-RIDE···DELIGHT!】

 

ブラジラが無駄だと一蹴していた分身体達を討伐していたコウイチ達の奮闘が、彼を完全に討伐する事に繋がる事だと評しながらディライトはカオスタッチを取り出し画面をタッチし、カオスフォームへと強化変身を遂げた。

 

『さぁ、光へ導くよ!!』

 

『小癪な···分身に頼らずとも、お前達は私自らの手で葬ってくれる!!』

 

分身による戦力増加まで不能になり徐々に劣勢に追い込まれても尚諦めず···否、往生際が悪く自分自身の手でディライトCFとゴセイジャー達を葬るべくダークサーベルを構えて彼等と正面から激突する。

 

『はぁぁぁぁ···はぁっっ!!』

 

『くっ···ぐぁぁっっ!!!?』

 

しかし、分身の実体化により体力が低下した影響で動きが鈍ったブラジラは攻撃を殆ど回避され、逆にディライトCFとゴセイジャー達の猛攻を一方的に受けて吹き飛ばされる等、戦況は完全に好転してしまう。

 

【RIKUGA!CHAOS-RIDE···FORBIDDEN!】

 

その隙を突いてディライトCFはカオスタッチのリクガと「F」のマークをタッチすると、ヒストリーオーナメントがリクガの最終形態のシャドウライドカードに変わり、両サイドに黒いリクガのシルエットが現れて一体化すると、 リクガ・フォビドゥンフォームへとカオスライドし···

 

【FINAL-ATTACK-RIDE···RI・RI・RI・RIKUGA!】

 

『邪悪なる魂を滅する禁忌の焔!!フォビドゥンキック!!』

 

『ぐああぁぁぁぁっっっっ!!!?』

 

直ぐ様FARを発動すると、DリクガFFの右脚に黒い稲妻と金色の炎が纏いそのまま勢い良く跳び上がり必殺技・フォビドゥンキックをブラジラに叩き込んだ。それと同時にDリクガFFは元のカオスフォームに戻る。

 

『よし、止めだ!!』

 

『『『『『アセンブル!ゴセイバスター!!!!!』』』』』

 

ブラジラに止めを刺すべくゴセイジャー達はそれぞれのゴセイウエポンを合体させ、ゴセイバスターに組み立てて構え···

 

『バルカンヘッダーカード!!』

 

【848】

 

【SUMMON!VULCAN-HEADDER!】

 

『ナイトダイナミックカード!!』

 

【474】

 

ゴセイナイトはバルカンヘッダーを召喚、ダイナミックレオンレイザーを完成させ必殺技を発動するべく、ナイトダイナミックカードをセット、番号を入力し···

【FINAL-ATTACK-RIDE···】

 

更にディライトCFも自身のFARカードをドライバーにセットして必殺技の準備をし···

 

『『煌めくスカイックパワー!!』』

 

『『猛るランディックパワー!!』』

 

『冴えるシーイックパワー!!』

 

『断罪のナイティックパワー···!!』

 

【DE・DE・DE・DELIGHT!】

 

『混沌の光で···滅せよ!!』

 

『『『『『パニッシュ!!!!!』』』』』

 

『バニッシュ!!』

 

【GOSEI-DYNAMIC!】

 

【KNIGHT-DYNAMIC!】

 

『ぐああああぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!?おのれぇぇ···またしても···またしても破られるのか···!?未熟な護星天使だけでなく、仮面ライダーと言う異物共にぃぃぃぃっっっっ!!!!』

 

ゴセイジャーのゴセイダイナミック、ゴセイナイトのナイトダイナミック、そしてディライトCFの身体に九人のダークライダー達の最強形態の幻影が重なり、両掌で構成した勾玉状のライトオレンジとクリアブラックカラーの巨大なエネルギー弾を放つ超必殺技「カオスディメンジョンプロミネンス」の合体技により、悪しき救星主の亡霊は呪詛の言葉を残して爆散する···。

 

 

 

ー天知天文研究所

 

 

「ありがとう。君達のお陰で、この地球はブラジラの手から守れたよ。」

 

「止してくれ。俺は自分の不始末を片付けただけだよ。」

 

仮面ライダー(闇影達)スーパー戦隊(ゴセイジャー)は互いに向き合い、仮面ライダーの助力によりこの地球がブラジラの脅威から救えたと感謝するアラタに対して、そもそもの原因は自分にありその不始末の責任を取っただけだと謙遜する闇影。

 

「ううん。もしも君達が来なかったとしても、ブラジラはああして俺達の前に現れてたと思うんだ。そこに君達と出会えたからこそ、協力してブラジラを倒せた。だから、やっぱり君達仮面ライダーのお陰だよ。改めて、ありがとう。」

 

それでもアラタは、仮に闇影達仮面ライダーの介入がなかったとしてもこれまでの経験上、ブラジラがアルティメットクウガかそれとはまた違う別の力をつけて復活して再びこの地球を狙っていたと推測し、結果論とは言え闇影達仮面ライダーと出会ったお陰でこの戦いに勝利したのだと根拠の無い理由で再度感謝の言葉を送った。

 

「え···あ···まぁ、その···此方こそ···ありがとう···。///」

 

真正面から自分達の様な世界の「異物」 へ感謝の言葉を受け、流石の闇影もこっ恥ずかしく思い、顔を紅くしながら礼を返した。しかし、こうした所がアラタの護星天使としての「力」なのだと実感する。

 

「何かアラタさんって、先生に似てる

わね。」

 

「確かに···。」

 

「闇影って何処かアラタに似てそう。」

 

「うん、似てる似てる。」

 

そんなやり取りを見て黒深子とツルギ、エリとモネ等それぞれの女性陣は彼等二人は似通った部分があると小声で笑いながら話し合う。闇影とアラタ、穏和な性格で大切な物を護るべく絶対諦めようとしない芯の強い所は確かに似通っているだろう。

 

「さ、俺達がこの世界でするべき事は終わりだ。残念だが此処で。」

 

「そっか···。君達の旅が無事に終わる日を祈ってるよ。」

 

「ありがとう···!!」

 

名残惜しいがこの世界で為すべき事が終わった今長居は無用···次の世界への旅に向かうべく研究所を後にしようとする闇影達。アラタは少し寂しい表情を見せつつも、直ぐに明るい笑みを浮かべて彼等の旅が終わる時を祈りつつ、闇影と握手を交わす。黒深子、ツルギ、コウイチと続いて出て行く中、何故か闇影が研究所の出入口のドアの前で一旦立ち止まると···

 

「ゴセイジャーの皆、これからどんな敵が現れても君達は君達が守りたい物の為に戦ってくれ。···どんな敵が現れても···!!」

 

「···!!?」

 

突然彼等護星天使の使命の下、如何なる脅威が現れてもこの(せかい)を護るべく戦う様に告げ出す。普通に聞けば単なる闇影の余計なお節介(エール)で済む話なのだが、「どんな敵」と何やら意味あり気に繰り返した事に少し眉を顰めるアラタだが、直ぐに「分かった」と答える様に無言で頷く。

 

「そっか···。」

 

アラタの返事に安堵した闇影は、僅かに口角を上げて今度こそ研究所を後にした。

 

「(闇影···どうしてあんな事言ったんだろ?)」

 

闇影の言葉に一先ず頷きはした物の、アラタは何故彼が去り際に「如何なる脅威からこの地球(せかい)を護れ」と今更の様に告げたのかを一人考え込む。だが、何やらあまり良い予感とは思えない···それが意味する物は···

 

「アラタ。さっきから突っ立って何考えてるの?こっち来て早くパーティーをしようよ!」

 

「···多分気のせいだよね。」

 

「え?」

 

「ううん、何でもないよ。それより、早くパーティーを楽しもうよ!!」

 

エリに話し掛けられたアラタはこの「予感」を気にしながらも、自分の杞憂だと考えるのを中断して彼女と共に再会パーティーに加わる。

 

だが、この時アラタ達ゴセイジャーは気付かなかった。その「予感」が最悪の形で的中してしまう事を···。

 

 

 

ー白石家

 

 

「ただいま···って、あれ?何で家の中が真っ暗なんだ?電気も点かない···ブレーカーでも落ちたのかな。」

 

仲間達と遅れる形で漸く帰宅した闇影だが、何故か家中がまるで停電状態の様に真っ暗だった為電灯を点けようとするが、幾度スイッチを切り替えても変わらない為ブレーカーが落ちたのだと考える。

 

「皆何やってるんだ···って、ん?リビングがちょっと明るいな。」

 

しかし、それなら何故先に帰宅している筈の黒深子達はブレーカーを元に戻さないのか?と疑問に思いながら歩を進めると、リビングの方から僅かな明かりが灯っているのが見えた為そこに入室する闇影だが···

 

 

 

「ふふふ···おかえり、先生♪」

 

「うわああぁぁっっ!!?」

 

入るや否や、火を灯した蝋燭を刺した燭台を手にして不気味な笑みを浮かべた黒深子が突然現れた為、思わず腰を抜かして後ろに倒れてしまう。

 

「お···威かすなよ黒深子···て言うか、電気も点けないで何やってるんだ!?」

 

「何って···夫婦水入らずで一晩を過ごす為のムード作りに決まってるじゃない♪さ、そんなとこに座り込んでないで一緒にご飯食べよ?」

 

「夫婦水入らずって···あれは只の役割···で···!?」

 

態々部屋を真っ暗にしたのは自分達夫婦だけの特別な一夜にする為の雰囲気作りだと当然の様に答えつつ、共に遅い夕飯を摂ろうと勧める黒深子に対して、あくまでこの世界での「役割」だと返そうとする闇影だが、立ち上がって目にした「物」を見て絶句する···。

 

『『『ギィィィィィィィィッッッッ!!!!!!!!』』』

 

闇影が目にした物···それはテーブルの上に置かれた、黒深子の手料理と言う名の奇声を叫ぶヘドロの様なドロドロした液体を纏ったドス黒い爬虫類の様な不気味な生物が盛られた皿が幾つも並べられていると言う地獄絵図だった。

 

「な···な···何で···!?」

 

「何でって、先生が食べたいってリクエストしたから腕に縒りを掛けて作ったのよ。」

 

「俺が!?いやいや···そんな事頼んだ覚え···あ!!」

 

この地獄絵図は自分が黒深子にリクエストした事だと知らされる闇影は、罷り間違ってもそんな命知らずな真似をしないと否定しようとしたが、ある事を思い返す···。

 

 

 

ーああ…とても美味しいよ···。晩御飯にまた食べたいくらいにね···。

 

ー 嘘じゃねぇよ!!そもそもお前···!!

 

 

 

「(あれかぁぁぁぁっっっっ!!!!!!ならあの時コウイチが言い掛けたのも···!!)」

 

精神的ショックを受けて上の空とは言え今朝自分が申告した事を思い出し、弁当を届けてくれたコウイチが言い掛けた事···それは知らず知らずの内にあの料理(殺戮兵器)を口にしてしまった事実だと悟った闇影は、顔を真っ青にして苦々しい表情をして震え出す。

 

「ちゃんと言った通りにしたんだから、先生が全部食べてよね。」

 

「えっ···いやいやいやいやいやいやいやいや!!!!さ、流石に一人じゃ食べきれないからコウイチ達も···!!」

 

「コウイチ達なら研究所に行ったわよ。『折角だからたまには二人でゆっくりしなよ。』って言って私達だけにしてくれたみたい。彼奴、普段はスケベな癖に中々良いとこあるよね。」

 

「(コウイチの奴めェェェェッッッッ!!!!)」

 

この料理(殺戮兵器)を一人で食する運命が迫る闇影は何とか負担を減らすべくコウイチ達を呼ぼうとする最低の手段を使おうとするが、彼等は天知天文研究所へ向かったと告げられる。そもそもこの家を二人だけで過ごすよう進言したのはコウイチその人だと知った闇影は、自分を「生け贄」にして逃走した彼に怒りを顕にする。

 

「ほら、早くしないと覚めちゃうよ。これ全部食べ終わったら食後の(デザート)もあるからさ。」

 

「ちょちょちょちょちょちょちょちょちょっと待って!!お、俺今お腹空いてないから···って、動かないっ!!?」

 

完全に全ての望みを絶たれた闇影は悪足掻きと言わんばかりにこの悍しい晩餐会から逃げようとするが、食後に自分を「デザート」だと更なる地獄()を予言する黒深子の手により両手両脚を鎖で縛られる形で無理矢理固定される。そして···

 

「はぁい先生。あ~~~~ん♪」

 

「あがああああああああぁぁぁぁっっっっ!!!!!!!?」

 

今、闇影は真の地獄を文字通り味わされている···。

 

それ故に気付いていない。この世界を現わしたキャンバスの絵に更なる絵···黒いレールの上を滑走する赤紫色の桃が特徴をした電車と複数のヘッダーを合体させた巨大ロボットのイラストが追加された事に。

 

···まだ全てが解決していない事に···。

 

 

 

「はぁぁぁぁ···めっちゃくちゃ疲れたなぁぁぁぁ···!!」

 

「確かに···限界を超える程戦いましたからね···!!」

 

とある大きな戦いを終えて限界以上の力を出し切った為か、コウイチはテーブルの上に突っ伏しながら疲弊の声を上げ、ツルギもこのまま眠りに落ちそうな表情でソファーに背凭れながら同様の言葉を漏らす。

 

「二人共お疲れ様。ま、何はともあれこれで諸悪の根源をぶっ潰してめでたしめでたしって感じね。ねぇ、先生?」

 

だがその甲斐あって、全ての世界が今後「諸悪の根源」によって脅かされる事はないと確信した黒深子は、窓際に立つ闇影に声を掛けるが···

 

「(···本当に···これで全て終わったのか?『奴』が最後に遺した言葉もそうだが···そもそも俺は一体何を──としていたんだ···!?)」

 

その「諸悪の根源」が死に際に遺した言葉···何より自分はそこで何を行っていたのか?記憶を辿って考え込む闇影だが、それが何なのか皆目見当が付かないでいる。

 

「ふぅ···♪」

 

「ひゃっ!!?///な、な、な···何するんだ黒深子!?」

 

「それはこっちの台詞よ。さっきから声掛けても返事がないから疲れてるだろうと心配して、吐息サービスを提供したのよ。」

 

一向に返事しないのは疲労が溜まっているせいだと判断した黒深子から不意打ちする形で耳に吐息を吹きかけられた為、闇影は思わず声を裏返し、息を吹かれた耳を押さえながら顔を紅くして動揺する。

 

「しれっと何言ってんの!?でも、ごめん。ちょっと考え事してて···!?」

 

真顔で疲労回復(吐息)サービスだと答える黒深子にツッコミを入れつつ返事をしなかった事を詫びる闇影は、ある物を見て目を見開いて驚く。

 

「何だ···見た事の無いライダー···それも···九人も···!?」

 

何時ものキャンバスに無数の地球が中心にあり、それをこれまで闇影達が出会った事の無い九人のライダー達が、悪魔の様なオーラを纏いながらその地球を両手で掴み摂ろうとしている絵が描かれている。これが意味する物、それは···

 

「どうやら···まだこの旅は終わらないみたいだな···!!」

 

新たなる旅の始まり···そこで彼等が待ち受けている物は何なのか···?

 

そして···煌闇影が嘗て闇に身を堕としてまで手にしようとした「物」は何なのか···?

 

世界の光導者、ディライト!失われし記憶の欠片が揃う時、その先にあるのは闇か?光か?




と言う訳で、今回の話の後に「大きな戦い」がある為、その詳細については別に書く予定でございます。

その「大きな戦い」が終わり次第、新章がスタートする予定ですので当分の間本作の更新がストップしますので何卒御勘弁を!!え、何時もの事だろって?手厳しい···!!((T_T))

とは言え、「大きな戦い」も本編と繋がりがある為「ディライト」その物はまだまだ続けますので御安心を(^_^;)


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 50~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。