この糞貴族に祝福なんてあるわけねぇだろ! (ジューク)
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マジでノリで書いたのでご勘弁を。


 

 

 

 A月k日『取り敢えず書いとく』

 

 

 取り敢えずこの日からの色々を記す為に日記を買って貰った。まぁ、買って貰ったと言っても曾祖父の代からここで執事をやっているという爺に頼んで、だけど。

 

 

 さてここで爆弾発言。

 

 

 この私…アレクセイ・バーネス・アルダープは所謂憑依転生者である。

 

 

 産まれて数年…まぁ大体五年は経過したこの身体に生まれ変わったと知った時、私は思った。

 

 

 これ詰んでね?と。

 

 

 まぁそうだろう。原作ではたった一人の女…と言ってもその中身は周囲から王家の懐刀認定されるほどの大貴族のご令嬢(尚ドM)だが、まぁそれはこの際置いておく。

 

 

 話を戻す。ダクネスというたった一人の女に、それも幼少期から執着し、神器で悪魔を召喚してまで手に入れようと画策するも、主人公+αたちによって悉く失敗。最終的には地獄に堕ちる運命を辿るのだ。

 

 

 ……うん、自分で書いてて軽くヒくぐらいには詰んでるかな。

 

 

 つまり、私がするべきことは一つだ。

 

 

 原作無視して綺麗なアルダープを目指す!!

 

 

 …いや無理じゃね?(二度目)

 

 

 

 A月l日『身辺整理』

 

 

 取り敢えずは身辺整理、ここからだ。

 

 

 まず、このだだっ広い屋敷には当主である私と執事やメイドが十数人住んでいるようだ。どうやら母親は病死してしまっているらしい。そして父親は、その母親の病気を治す為に必要な素材を集めるために強力なモンスターに単身挑み、そのまま帰らぬ人となったそうだ。ちなみに母親はめっちゃ社交的で良い人だったそうな。

 

 

 いやいやいや。なんでそんな二人から産まれたアルダープ(私)があんなゴミカスになるの??あれか?親を失なった悲しみをダクネスに求めた的な?歪んでるどころの騒ぎじゃねぇな。

 

 

 そして財産。ここに関しては、腐っても貴族…それもかなりの土地や鉱山、その他諸々を有する大貴族、とでも言うべきか。少なくともざっと十数億エリスはある。日本円にして1円=1エリスだから相当だぞ。

 

 

 そして個人的にこれが一番大事な私の戦闘能力だが…はっきり言おう。

 

 

 酷い。かなり酷い。

 

 

 知力に関してはまぁまぁ。そして意外なのが、幸運が三桁に入りそうなんだよな。けど筋力ゥ…20ってモヤシじゃねぇかよ。そりゃあんだけぶくぶく太るわ。

 

 

 だがこの世界、無論外にはモンスターがウジャウジャ湧き出す魔境なわけであるからして、それなりの自衛能力は必須だ。

 

 

 つまり、『筋力に関係なく、且つそれなりに高い火力を出せる武器』が必須だ。

 

 

 …ん?火力?

 

 

 …閃いちゃった。

 




人気出たら続く…かな?


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またまた勢いで…


 

 

 A月m日『そうだ、銃火器作ろう』

 

 

 先日も言った『筋力に関係なく、且つそれなりに高い火力を出せる武器』…もうそんなので思いつくのは一つしかないだろう。

 

 

 そう、銃火器である。

 

 

 これなら反動に耐え得る最低限の筋力さえあれば問題なく扱える。そして何より、『前世の私が製図に関してそこそこ詳しい』というのが大きい。

 

 

 そもそも銃火器とは精密部品の塊だ。僅か数ミリのズレが命中精度、耐久性などに大きく影響する。文字通り、少しの妥協が命取りとなるデンジャラスなモノである。つまり、それを製作する際の失敗作を考慮した上でかなり多めに金属などの材料が要るのだ。

 

 

 しかし、私の家は大貴族。当然金属を多く産出する鉱山を保有しており、そこから現ナマの鉱石や、それを精錬したものがゴロゴロ手に入るわけで…まぁつまり、銃火器を作る環境としてはこの上ないわけだ。

 

 

 更に言えば、この世界における『鍛冶スキル』を使えば精密部品を比較的簡単に作れる。

 

 

 …あれ俺天才か?

 

 

 

 A月n日『最初っから計画変更クライマックス』

 

 

 悲報。この世界に火薬がない。

 

 

 これは大問題だ。銃火器に火薬が無いなど、日本食に米が無いのと同義である。まさか黒色火薬すら無いとは想定外だ。

 

 

 まずい。非常にまずい。何か代用できるものは無いのだろうか。

 

 

 取り敢えず屋敷の書庫で色々と漁っているが、やはり火薬に関するものはない。原作では明らかなオーバーテクノロジー&死亡フラグのミックスジュースであった機動要塞デストロイヤーを開発した転生者の国に関する文献に一縷の希望を抱いたが、よくよく考えたらあんな頭がトチ狂ったとしか思えない兵器があるんだから火薬とか要らないか。くそ、中途半端にしてくれやがって。

 

 

 …取り敢えず今日は疲れたのでもう寝る。もしかしたら明日には何か案が思いつくかもしれないしな。睡眠、大事、マジで。

 

 

 A月o日『こ☆れ☆だ』

 

 

 突然だが、マナタイトという鉱石を知っているだろうか。

 

 

 原作では、中二病全開爆裂狂ロリヒロイン(めぐみん)の愛用する杖にも使われている鉱石で、魔力をストックすることが可能となっている。中の魔力を使い終えたら再びチャージしないといけない上に、無駄に高い。つまりはゴミ金属扱いされている。当然、市場に出しても買い手は少ない。

 

 

 だが、私はこのマナタイトに目をつけた。

 

 

 実はこのマナタイト、魔力を籠めた状態である程度の衝撃を加えると、爆発するのである。ちなみに加える衝撃の強さと籠める魔力で調整可能。

 

 

 いやドンピシャア!!!

 

 

 これだよ!私が求めてたのはまさしくこれ!!しかも売ってもあまり意味ないけど無駄に採れるから使い放題!!大当たり~~!!(某ジ○リの神隠し風)

 

 

 うっしゃ!早速明日から取りかかるぜ!

 

 

 尚、現在の時刻は夜11時。あまりに良いアイデア過ぎてガンギマリで書いてる。

 

 

 睡眠?知らん。

 

 

 A月p日『なぜ最弱職なんだ…?』

 

 

 今日、私は冒険者ギルドへ向かった。

 

 

 というのも、貴族だろうが平民だろうが、何らかの職業を得るためには全員冒険者ギルドでカードを貰わないといけないからだ。

 

 

 無論私が得るのは原作主人公と同じ『冒険者』である。

 

 

 これを聞いた受付嬢は、珍獣を見るような目でこちらを見てきた。爺には事前に目的を説明した上で冒険者を得ると言ってるので無表情である。

 

 

 いつでも転職は可能なんだから、そんなに驚くことではないんだろうがな。

 

 

 というか『冒険者』はスキルポイントの効率の悪ささえ解決すれば強いと思う。

 

 

 考えてみろ。ソードマスターの攻撃スキルにアークプリーストの支援魔法を自分でかけ、そして距離を取ったと思ったらアークウィザード級の魔法攻撃をしてくる上にクルセイダーの防御スキル+アークプリーストの回復魔法でほぼ傷を負わないもはやチートクラスの存在を。

 

 

 それが可能なのが冒険者だ。はっきり言って頭おかしい。

 

 

 そして私は貴族。当然食事は経験値豊富なものばかりで、手に入るスキルポイントも多い。

 

 

 結論。貴族と冒険者は相性バッチリである。

 

 

 取り敢えず速攻で鍛冶スキルを取ったので、あとは実践あるのみじゃい!!

 

 

 

 

 

 

 …以下、ほぼ走り書きで読めない…

 

 

 

 

 

 

 E月s日『うあぁあぁぁああぁぁ!!(歓喜)』

 

 

 …長かった………。まさかここまで難しいとは想定外だったわ…。副産物は色々とあったけど、本命が時間を喰いすぎたよ…けど、ようやく完成!

 

 

 名づけて、『反動利用式自動回転方式中拳銃:アレクセイ=フォーマンスス・オートマチック・リボルバー(11ミリ口径)』!

 

 

 引金を引き、弾を撃った反動でゼンマイ仕掛けが作動し、シリンダーの回転と撃鉄のセットを同時に行える!!ちなみにこの手の拳銃ではわりと旧式!!一応ライフリングも搭載済み!!

 

 

 作業時間、だいたい4ヶ月!!完成までに失敗したり副産物生産したりで消費した金属、鉄とマナタイト合わせて約1t!!(内訳は鉄約950㎏、マナタイト約50㎏)

 

 

 肝心の威力!だいたいゴブリンやコボルトなら一発で倒せる!!

 

 

 結論!大成功!!

 




フォーマンスス=Four months(4ヶ月)
ベースは『ウェブリー=フォスベリー・オートマチック・リボルバー』



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チラッと見たらなんか赤ゲージになってた
マ?


 

 

 

 G月l日『時間が経つのって早いよな』

 

 

 なんだかんだで日記も続いて、もう何冊目かは憶えていない。ただ、初期と比べて領地も武装もかなり充実しているのは間違いないだろう。

 

 

 何せ、私ももう二十歳。この世界では既に成人に達している。ちなみに酒はあまり飲んでない。精々嗜む程度だ。

 

 

 さて、ここで貴族特有のある問題が出てくる。

 

 

 そう、嫁と跡継ぎの問題だ。

 

 

 個人的にあまり結婚はしたくない。というのも、原作の(アルダープ)が自身の欲望のために血の繋がった息子すらも己の道具にしていたからだ。

 

 

 が、跡継ぎがなければ最期まで私たちを気にかけたまま亡くなってしまった爺にも顔向けできん事態になりかねない。

 

 

 …まぁ、まだ時間の余裕はある。ここで焦って地獄√RTA開始なんてなってたまるか。

 

 

 取り敢えず武装に関してなのだが、先日念願のアレが完成してしまった。

 

 

 スナイパー御用達たる対物ライフルこと蛇砂、名付けて『バレット(アレクセイ)82』!!ベースは前世でミリオタだった私どころか、銃火器に多少詳しければ誰でも知ってる、アメリカ軍が30年以上愛用している『バレットM82』!!

 

 

 このスナイパーライフルには、弾薬として使っている最高純度マナタイトの強力な爆発に耐え得るために最強金属と名高いアダマンタイトを本体に使用することで、計測弾丸初速を原型の853m/sを大きく上回る1000m/sに上昇!更に私の高い幸運と相性最高の『狙撃』スキルとスコープを併用することで、最大有効射程を原型の2000mから2500mまで延長させることに成功したのである!!

 

 

 ちなみにそれまでは(アサルト)(ライフル)(サブ)(マシン)(ガン)などこそ完成していたが、肝心のスナイパーライフルに必要な素材が中々手に入らなかったのでこんなにも時間がかかってしまった。

 

 

 そして、この十五年で私はこの銃器たちに更なるアップデートを遂げさせたのだ!

 

 

 名付けるならばシンプルに『魔弾』としよう。

 

 

 弾薬としてだけでなく弾丸にもマナタイトを使用することで、着弾と同時に敵に籠められた攻撃魔法を当てることができる優れものだ!!

 

 

 試しに最初に作ったオートマチックリボルバーにこれを装填し、雷系魔法が弱点であるブルータルアリゲーターに中級魔法の『ライトニング』(私が習得したもの)を籠めた魔弾を装填して撃ってみると、見事に発動した。更に、使用するマナタイトの純度が高ければ、それだけ籠められた魔法の強さも増す。理論上は金さえ積めば爆裂魔法をサブマシンガンの速度と数で相手に叩き込めるという仕様である!!

 

 

 …うん。とんでもないものを作ってしまった。

 

 

 

 G月J日『大切なのはその者に罪があるか否か』

 

 

 先日、寝ついたと思ったらなんか見覚えのある空間の椅子に座っていた。あれここはもしかしてと思ったら、出てきたのはとんでもない人…人?だった。

 

 

 女神エリス。

 

 

 私の上司であるベルゼルグ王国の国教であるエリス教の御神体にして、ある意味私と明らかに敵対するであろう存在。

 

 

 …そう、彼女は生粋の悪魔嫌いだ。

 

 

 どんな過去があったかまでは知らないが、彼女は悪魔が関わると性格がジャック・ザ・リッパーみたいなジェノサイド女神に切り替わる。

 

 

 そして、(アルダープ)は原作でそんな悪魔の親玉クラスを召喚し、悪事の限りを繰り返した。そんなことが知られたら、どうなるかなんてわかったもんじゃない。

 

 

 そんなアレコレを考えていると、彼女はゆっくりと自己紹介をしてきた。悪魔が関わると豹変するとはいえ、その顔はまさに女神だった。無論鼻の下を伸ばす真似はせず、あくまで貴族らしく厳格にこちらも名を返す。

 

 

 するとここで、早速エリス様が爆弾発言。

 

 

「貴方は、その…転生者、なのですか?」と。

 

 

 流石に一瞬、表情を崩しそうになった。同時にやはりバレていたかと思う。というか十五年も時間があったのに随分間が空いたなとも思った。

 

 

 取り敢えずはいと答えると、彼女は突然「本当に申し訳ありませんでした!!」とお手本クラスの土下座をしてきたので空いた口が塞がらなかった。

 

 

 仮にも国教の御神体が純悪の権化に土下座しちゃいけねぇよ、という本音をぐっと堪えなんとか頭を上げるよう嘆願すると、七回目ぐらいで漸く頭を上げてくれた。

 

 

 いきなりどうしたんだと聞くと、「十五年も異変に気づかず放置してしまっていたことへの謝罪をしなければいけないと思った」とのこと。真面目過ぎだってと思ったが、どうやらそんなに簡単な話ではないらしい。

 

 

 曰く、「本来は死んだ時点の姿で転生するはずなのだが、別世界の他人の体に憑依する事態は初めて」なのだそうだ。そして「元の体と魂に分離しますので」と言い始めた。

 

 

 これには流石に焦って全力で止めた。

 

 

 なぜなのかと聞かれたので、あまり言いたくはなかったが、いくつか(原作知識)を切るしかあるまい。

 

 

 まず最初に説明したのは、「『多元宇宙論(マルチバース)』について知っているか」という話。どうやら知らないそうなので、軽く説明。

 

 

 言うなれば、これは並行世界の話で、その世界では当然常識なども違い、この世界が私の世界ではフィクション、つまりはある種の物語扱いされていると説明すると、エリス様は目を見開いていた。

 

 

 そしてここからが本題だ。私はあまりこの世界のストーリーについて詳しくはないものの、この体がどれだけ悪人であるかを、マクスウェル(原作の私が呼び出した悪魔)の話を交えて説明した途端、マジで性格が豹変した。「…そうですか、その身体の本来の持ち主は、そんな屑に成り果ててしまう運命だったのですね」と冷えた声で呟き始めたので慌ててストップをかける。流石に肝まで冷えきった。

 

 

 一応「貴女がどうしてそこまで悪魔を嫌うのかは野暮なので聞きませんけど、悪魔の中には人間がいないと生きていけない者たちだっているでしょう。流石にそこまでのレベルは偏見ですよ?(意訳)」と話すと、「では貴方は悪魔を手を結ぶのですか?」と更に冷えた声で質問してくる。

 

 

 どうやら俺をこの原作アルダープと同じ屑扱いしてるようなので、ここまでの十五年で培った私の本音をぶちまける。

 

 

「少なくとも、私はそんな存在にならないように今までの十五年、努力と研鑽を欠かさなかった。だが、所詮人間では救えない領民だっている。貴族として、民を守るのは当たり前だ。同時に、私は血を好む性格ではない。どちらも互いを害することなく手を結べるなら私は悪魔とも手を結ぶし、一人でも多くの領民を幸せにできるなら、悪魔と契約することも厭わない。では聞くが、貴女は犯罪者を許すか?女子供…自分より弱い者のみを虐げ、殺すことでしか快楽を得られないような者を」と。

 

 

 無論、エリス様はそんな者は絶対に許さないと告げた。ならばと私はこう言い返した。

 

 

「では、同じ人間である我々は貴女によって殺されるべきですな」、とね。

 

 

 なぜそうなるんだとエリス様は聞くが、こちらも当然反論する。

 

 

「生まれたての悪魔がその瞬間人を殺すような器用なことはできないだろう。だが、貴女の理論は『他の同族(悪魔)の犯した罪を、同じ種族であるという理由で何の罪もない悪魔にも着せる』ことと同じであり、それならば人間にも適用されて然るべきだろう」

 

 

 事実、デストロイヤーという災害を解き放っておきながら、何の罪悪感も持たないような輩が人間の中にいるのだ。彼の造ったデストロイヤーがもたらした被害など、並大抵の悪魔と比べればよっぽど甚大だ。それに比べて多少人の精気を吸うだけであり、むしろ犯罪の減少に一役買っているサキュバスたちの方がよっぽど利がある。

 

 

 無論、だからと言ってすべての悪魔の肩を持つつもりはないがね、と言うと、エリスはまるで憑き物が落ちたように無表情になっていた。

 

 

 一応聞くと、今までそんなことは考えたこともなかった、とのことだ。

 

 

 その後はかなりスムーズに見慣れた(アルダープ)の身体を持っていつもの私室に帰還できていた。

 

 

 …認めてくれたということでいいんですかね、エリス様や。 

 

 




なんかちょっと道徳的というか漢文的な何かになってしまった…
よくよく考えたら魔法をストックできるってわりと頭おかしい使い方できそうですよね。
あと一応下のアンケートに回答願います。
個人的にただの息抜き程度の認識だったんですがね


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受かったったぞてめぇらあああぁあああ!!!!
どうも皆さん、ジュークです。(豹変)
というわけで、無事第一志望ではないけど良いとこに受かった記念で一発目、どうぞ!!


 

 

 

 G月K日『ご都合主義的都市計画報告』

 

 

 実は私は、以前からとある計画を進めていた。

 

 

 それは、以前まで私が住んでいた屋敷から離れた領地内に新しい都市を建設しようという計画だ。

 

 

 この計画を実行する理由は二つある。

 

 

 一つは機動要塞デストロイヤーのフラグ回避。

 

 

 これは私がアルダープの憑依体である以上避けては通れないことだ。一応調べさせたところ、やはりと言うべきか、デストロイヤーは以前まで私が住んでいた屋敷を通過するルートを暴走しているらしい。原作ではクセが強いとはいえ、上級職ばかりで固められた主人公のパーティですらギリギリだったのだ。たとえ銃器があろうと、悔しいがあれに勝てる自信は皆無である。

 

 

 そんなところに住み続けるメリットは無い。確かに先祖代々住み続けていただけあって歴史ある建物だが、それとメイドや執事たちの命を天秤にかけるなら、私は躊躇わず後者を選ぶ。歴史のために死んでいい人間など、私の屋敷にはいないのだからな。

 

 

 二つ目は、銃器に必要な金属や、それを買うための資金集めだ。現在考えている、あるものを実装させるには領地内の資源だけでは少々心細い。故に都市を建設し、なるべく領地内の資源の使用を控えよう、という二つの理由から、私が十六歳、ベルゼルグ王国の法律で成人した時に掲げた一大プロジェクトである。

 

 

 そして今更こんなことを書いていることからもわかる通り、都市は無事完成した。

 

 

 その名も、技術都市『アルモーダン』。私のアイデアが詰め込まれた現代(にこの世界の技術でできる限り近づけた)都市である。

 

 

 都市の形状としては、水堀の内側にある円形の外壁の更に内側に商業区画と居住区画。その中央に壁と内側の水堀を挟んで私の現在の屋敷がある、といった構図だ。ドーナツの縁が外壁で、穴の中央に跳ね橋で行き来する屋敷がある、といえばわかりやすいだろうか。

 

 

 このアルモーダンの最大の目玉は何といっても内側の壁から八方向に、そして外側の壁に沿って走る路面鉄道である。

 

 

 当初は都市同士を繋ぐ長距離大型蒸気機関車を計画していたが、速い物に反応するリザードランナー、硬い物に反応する走り鷹鳶とかいう畜生や、初心者殺しなどのある程度の知性があるモンスターに線路を壊されるなどの問題点が浮上したことで却下となった。

 

 

 その代案が都市内を走る路面鉄道である。

 

 

 電車でない理由としては、魔力を用いて発生させる蒸気が動力、エネルギーは別の大型マナタイトを充電器代わりに蓄えた魔力と、電気を使用していないからだ。

 

 

 八方向の路面鉄道は内側の壁兼操車場と、外側の壁の近くとを往復、外側の壁を走る路面鉄道は、そのまま外周をぐるぐる回るものが、それぞれ二本ずつ走っている。一応駅もあるが、速度自体は敢えて走って飛び乗れる程度に抑え、乗りやすくしている。速くし過ぎたら事故ることもあるだろうし。

 

 

 運賃は、基本的にどこまで乗っても一人一回百エリス。お財布にもなるべく優しくしてある。

 

 

 二つ目の目玉は、徹底した都市内の衛生管理の仕組みだ。

 

 

 アルモーダンには、東西南北4ヵ所の門兼検問所と、北西、北東、南西、南東の4ヵ所の冒険者ギルドが外壁と合体する形で建設されている。冒険者ギルド内での依頼は基本的に4ヵ所共通だが、そこでは他の都市にはあまりない、『冒険者以外でも受注できる依頼』がある。

 

 

 内容は『都市内清掃』と、至極単純。

 

 

 受注した者には、その場で四つの細長い筒状の籠を纏めた背負い袋式ゴミ籠とゴミ拾い用長トングが支給される。そして、受けた当日以内にできる限り都市内に落ちている生ゴミ、紙系ゴミ、ビン、鉄クズを拾って籠にそれぞれ分別しながら収集し、都市内のゴミ処理場兼肥料販売所まで持っていけば、その量に応じて報酬が支払われる。

 

 

 相場は生ゴミ、可燃ゴミは1gで五十エリス、ビンは1本百エリス、鉄クズは1g二百エリスとなっている。尚、ゴミ処理場にて生ゴミは新たに開発した魔法で急速発酵させ、紙系ゴミは燃やして灰にして、『クリエイト・アース』で作った良質の土と混ぜた合成肥料として販売所で1キロ一万エリスで販売している。どうやらクリエイト・アースで作った土と生ゴミや灰から作った肥料は丁寧に混ぜることで相乗効果を発揮するらしく、購入した農家からは高評価を頂いている。ビンは浄化魔法で綺麗に洗浄して再利用、鉄クズは溶かして精錬し直し、新たな金属類や、銃器の原材料として有効活用だ。

 

 

 都市が完成したばかりの当初はまだ衛生管理がそこまで浸透しておらず、それぞれ五分の一での買い取りだったが、子供たちのちょっとしたお小遣い稼ぎや、駆け出し冒険者の糊口凌ぎのために都市中のゴミというゴミが集められた結果、ゴミが激減したため、この価格となった。

 

 

 ちなみに、ゴミをわざと自分たちで作ったり、都市内の飲食店などの店が集積所に集めたゴミを使われたりしないよう、買い取りの際には魔道具を用いた確認が行われている。基本的にはないが、たま~にそういったズルがあるのだ。

 

 

 更には地下下水道の清掃。こちらはこれまた支給された清掃した面積を計測できる魔道具を搭載した清掃道具で清掃した面積に応じて報酬が支払われる。相場は1㎡につき千エリス。浄化魔法での清掃は十エリス。魔法で手抜きせず地道にやってくださいという私からのメッセージである。床だけでなく、壁や天井も報酬の該当範囲に含まれるので意外と面積は広く掃除場所には困らないが、やはりゴミ収集よりは大変なので報酬も多めだ。

 

 

 そして最後が、『都市内への武器類の持ち込み禁止』というルールである。

 

 

 まず、東西南北にある門兼検問所に隣接する形でのみ設置されているテレポート屋や馬車などでアルモーダンを訪れた者は、一部例外を除いて隣接された預かり所へ武器(剣、槍、盾、斧、短剣などから、杖やステッキなどの物も含めて全部)を預け、預けた預かり所の文字(例えば、西門の預かり所に預けた場合はWの意味を持つ文字)と番号が彫られたプレートを渡され、都市から出る際にプレートを返して武器を受け取る、といった方式となっている。万が一プレートを紛失した場合はすぐに最寄りの衛兵駐屯地か門へ行き、番号と預けた武器を言えば、魔道具による確認の後に予備のプレートが発行される仕組みだ。

 

 

 これは、都市内で武器を持つ者をできる限り犯罪鎮圧のための衛兵(パラライズやスリープなど、動きを封じる状態異常系魔法を籠めた魔弾が装填されたライフルを標準装備させている)、それも訓練所で厳しい精神的、技術的、身体的試験を合格し、銃を持つ許可を与えられた者のみに留め、犯罪鎮圧、予防をより効果的にするためである。

 

 

 ちなみにだが、私が今まで開発した銃はすべて外へ持ち出すことは禁止している。というのも、流出した銃や魔弾の技術が魔王軍に知られ、悪用されてはたまったものではないからだ。なので、衛兵たちは魔道具などを用いて採用した、外に銃などの技術を持ち出さないような人格者を大前提としている。

 

 

 個人的にこの都市計画の中で思ったことだが、何と言うか、『早起きは三文の徳』と、入り鉄砲に出女ならぬ『入り武器に出銃』とかいう江戸時代じみたことになってる気がするのは気のせいだろうか…?まぁ、都市内の清潔さの向上や犯罪率の低下に繋がっているから、結果オーライではあるのだが。

 

 

 

 





最近耳にするSDGsに配慮した都市となりました(このすば世界にSDGsという概念があるかどうかは不明だが)

路面鉄道は某天空の城で○ズーたちが乗った機関車と某夢の国の今は無きジョ○ートロ○ーから思いついたぜ。ありがとうジョリ○トロリ○。夢の国(厳密にはシーの方)には小学校低学年の時に親に半ば無理矢理タ○ー・オブ・テラーに相乗りさせられてギャン泣きしてその晩悪夢に魘されたトラウマがあるが、お前は平和だった…。


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どうも皆さん、ジュークです。
というわけで、古都内乱編が難産なので気分転換に投稿です。
では、どうぞ。


 

 

 G月l日『これ大丈夫か?』

 

 

 

 少々まずいことになった。

 

 

 ダスティネス家から四歳になる娘の誕生日パーティーの招待状が届いたのだ。

 

 

 娘の名はララティーナ。

 

 

 そう、アルダープの堕落の原因の一つであるあの金髪ドMクルセイ…おっと、これ以上言ったらダスティネス家に潰されるな。

 

 

 とまぁ、そんなこんなで誕生日パーティーに呼ばれたので行ってみることにする。というか行かないと色々まずい。王家の懐刀認定されるほどの大貴族の誘いを易々と断るわけにもいかないのである。

 

 

 正直、行きたくないのが本音であるが。

 

 

 

 G月o日『誕生日パーティー当日』

 

 

 早速現地、ダスティネス家の屋敷に着いた。

 

 

 しかし、道中で風景を覗いてはいたが、やはり大貴族、それも寛容な性格で知られるダスティネス家。他の貴族の領地と比べて民衆の顔に暗い色は殆どない。それだけ統治が上手くいっている証拠だ。ダスティネス家の課税は他の貴族の領地に比べればかなり軽いらしい。というより他の貴族の課税が高すぎる、というのが正解だが。

 

 

 着いて早々に「ようこそいらっしゃいました。アレクセイ殿。お噂はかねがね…」と当主殿が挨拶してくるので、こちらも「いえいえダスティネス殿。今回は、お招きいただき感謝します。娘さんも、お元気そうですね」とこちらも返しておく。まぁ、ここら辺は社交辞令だな。

 

 

 そのまま会場の方へ歩いていくが、途中ですれ違う中堅層の貴族からは

 

「あれが最弱職の貴族か…」

 

「貴族の誇りすら忘れる愚か者め…」

 

「汚ならしい最弱職の臭いだ…誰か香水を撒け」

 

 

 だのなんだのほざいているが、だったら俺を超える発明でもしてみろボケという話である。現に、経済発展においてはこのパーティーに参加している貴族の中でも五指に入るぐらいだからな。統治の上手さにかけてコイツらに遅れは取らん。

 

 

 だいたい、冒険者が最弱なのはスキルポイント効率の問題であって、逆に考えれば効率の問題さえ解決すれば誰でも英雄級の実力を手に入れ得る可能性を秘めているのだから、最弱などと言うのはそれすら分からぬ愚者と自己評価しているに等しい。

 

 

 ちなみに現在の私の保有スキルとしては、銃火器製作に必須の『鍛冶スキル』、そして銃火器と相性が良い『狙撃』と『敵感知』、『千里眼』。後はそれを補助するためのアークプリーストの『ブレッシング』、接近された時のために、クルセイダーの防御、及び状態異常耐性スキル。そして緊急離脱のために、アークウィザードの『テレポート』と『魔力増強』を取得している。食事でかなりの経験値とポイントが取れるとはいえ、スキルや魔法習得、それも上位のものとなるとかなり多くのポイントが失くなるので、かなり慎重に取った結果がこれだ。

 

 

 これにより、幸運値を増幅させて精度を上げ、打たれ強く、魔力が続く限り位置を変えながら狙撃する最悪のスナイパーが完成したのだ。尚、剣による近接戦闘のスキルは取っていない。そこまでスキルポイントに余裕が無い上に自身のあまり高くない筋力では焼け石に水ならぬモヤシに重い筋トレだからである。正直セイクリッド・ハイネスヒールズとまではいかなくても、ヒールぐらいは取るべきかとも考えたが、テレポートに使う魔力は確保しないといけないのでやめた。

 

 

 そして、なんやかんやで誕生日パーティーが始まった。大きな広間の奥、段の上に設置された豪華な椅子にちょこりんと座っているのは、まだ(←ここ大事)無垢さが残る、それでいてどこか緊張気味の金髪幼女…このパーティーの主役であるダスティネス・フォード・ララティーナだ。

 

 

 一部の貴族たちが鼻の下を伸ばしながら挨拶に行っているが、正直自分としてはこんな視線に晒されたからあの性癖に目覚めたんだろうかとジト目で見ながら料理に舌鼓を打っている。

 

 

 しかし、やはり料理とは大切だ。

 

 

 具材は生前の日本準拠(ただし生態や入手方法はその限りではない)なので、必然的に生前の料理は再現可能だ。特に、アルモーダンの外にある私の直轄地では魚の栽培、及び畜産をメインに推し進めている。麦畑を併設することで、そこで収穫できる小麦の籾殻を飼料や肥料として流用し、かなり品質の良い、それでいて大量に生産できる肉や魚介が獲れたので、カツにしたり刺身にしたりと試行錯誤を繰り返している。

 

 

 こういった貴族の集まりで出てくる高級料理も良い。しかし、それはあくまでたまに食べるから良さが浮き出るのであって、日常的に食べれば飽きる。というか味が上品過ぎて安らぐべき食事の時間すらも堅苦しくなってしまう。それはよくない。

 

 

 どこかのノッキングなマスターの言葉を借りるようだが、食事はどんな時に食べても美味い。それが不味いと感じるのは、心が不調だからである。どれほどの高級料理だろうと、毎日堅苦しく食べるようでは不味くなる。

 

 

 なので、私はたまにアルモーダンにある料理店で一般人と一緒に食事をする。

 

 

 最初の頃は目を見開く者が多かったが、何度もしている内にそれも収まっていった。たまに「領主のおじちゃんだ!」とか言って子供が寄ってくる始末だ。それを青ざめて咎め、平謝りする親が大半だが、個人的には子供が元気なのは領地が元気な証拠なので、大変よろしいと思っている。

 

 

 ちなみに、美味いと思った料理店には精進してくれとの願いを込めて無償の資金を私のポケットマネーから出している。こうすることで、他の料理店を刺激してより食事の発展に努めるためだ。

 

 

 と、そんなことを考えている内に広間が暗くなり、当主からのスピーチが始まる…そんな時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 轟音と共に屋敷が揺れた。

 




 現在のアルダープを一言で表すと、スキル同士のシナジーがスナイパーとして最強クラスのものになるように構成されており、近接戦闘になってもある程度は対処できるが、複数人でフルボッコにしてくるなどの戦術がめっぽう苦手。
 つまりこのアルダープを倒すために最適な戦術としては、「ひたすら人海戦術とゾンビアタックで魔力切れを狙い、魔力が切れたらゾンビアタックで多対一の近接戦闘に持ち込んでフルボッコにする」という脳筋戦法か、「銃火器では傷つかない程に硬質の装甲で身を固めて魔力切れを狙い(以下略)」という脳筋(以下略)などが挙げられる。
 尚、クルセイダーのスキルはあくまで保険の類いであり、このアルダープの本職は冒険者(後衛主体)なので、遠距離火力は高く、防御と体力はそれなりだが、近接火力がゴミなので近接戦闘に弱いということである。  
 そのため、本職のタンク職がヘイトを買うなどしてアルダープへの近接戦闘を避けると◎。
 …あれ?ダクネスルート凸った?


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6ページ目

どうも皆さん、ジュークです。
古都内乱編、ムズいよォ…!!
そしてブーストマークⅢがレギュレーション入りほぼ確定しました!ヤッタネ!もう一フォーム使えるドン!
というわけで、どうぞ。


 

 

 

 

 G月o日『技術、それ則ち智にして力なり』

 

 

 

 爆発というものは、基本的に何かしらの異常事態の合図でもある。最近私も調合ミスって爆発して使用人が慌てて入ってくるけど「あ、いつものやつ(発明)か」ってスルーしてくるのがたまにあるし。

 

 

 しかし、私の屋敷でも、ましてやアルモーダンでもないこの場所でそんなことは普通ありえない。慌てて私を含めた数人の貴族が爆発音がした方角の窓を覗く。

 

 

 

 窓から見えたのは、屋敷に向かってくる松明。それも一本二本では済まない、それこそざっと五百ほどの炎がゆらゆら揺れている。

 

 

 貴族たちは慌てて護衛に「奴らを仕留めろ!」と指示を出したり、馬車で逃げようとしたりしている。半ばパニック状態だ。

 

 

 だが、私はその松明に違和感を覚えた。

 

 

 幾本かの松明が同時に揺れたのだ。それだけなら特に何とも思わなかったが、そうではない。同時に、同じ方向へ、同じ軌道を描いて揺れている。その松明の纏まりが幾つもあるのだ。例えどれほど揃った軍隊であろうと、さすがにそれは不可能であり、ましてや身長などもバラバラの魔王軍がそれを実行できるのは不自然だ。

 

 

 怪しいと思った私は慌てている貴族たちを無視し、バルコニーからなんとかして屋根に登り移り、敵感知のスキルを前方のみに集中させる代わりに距離を伸ばして発動させる。

 

 

 すると、やはりと言うべきか。肉眼で見えている松明の数に比べて、明らかに数が少ない。精々百人かそれ以下だ。

 

 

 もしやと思った私は、今度は方向を変え、真後ろへ向けてスキルを使う。

 

 

 すると、今度は明らかに多くの反応があった。数はおよそ七百か。

 

 

 この状況に私は何故か既視感を覚えた。記憶を辿ると、やがて私の記憶はある出来事を割り出した。

 

 

 倶利伽羅峠の戦い。

 

 

 倶利伽羅峠の戦いは、源氏の木曽義仲が平氏の軍勢を倒すためにとった作戦で有名だ。

 

 

 まず、源氏の象徴である白旗を大量に立てる。しかし、それはあくまで旗だけ。旗を立てている兵士はほんのわずか。だが、平氏から見れば源氏の大軍がこちらを睨んでいるように見えた。しかし、実際はほぼ旗だけの囮で、昼間は何も起こさない。そうして平氏軍が旗の囮に釘付けになってる内に退路に源氏軍を配置する。夜になったところへ大きな音を立てながら襲撃し、平氏の軍を混乱させて誘導する。そこから、角に松明をくくりつけた牛を大量に放ち、平氏の軍勢を谷へ落とす『火牛の計』を実行し、勝利したというものだ。

 

 

 牛云々はフィクションらしいが、今回の状況はそれを異世界アレンジしたようなものだ。

 

 

 ゴブリンなどは基本的に弱いが、代わりに夜目がかなり効く。おそらく曇り空の真夜中でも昼間のように周囲を視認できるだろう。だが、人間はそうはいかない。

 

 

 つまり、今回の魔王軍の作戦はこうだ。

 

 

 まず、鉄の棒か木の棒を組むなどしてイソギンチャクのようなものを作り、そこに大量の松明をくくりつける。それを持つのは少ない小隊。これは囮だ。

 

 

 それを見た貴族は焦り、最大戦力である護衛たちに囮を撃退するために向かえと指示を出すだろう。

 

 

 そうして護衛たちが出払った隙に後方から本隊が突撃、こちらを殲滅する、というものだ。

 

 

 囮は護衛たちを引き寄せた後、その炎を周囲に放つつもりだろう。そうすれば、前方には炎上網、後方からは魔王軍の本隊、こちらは背水の陣ならぬ背炎の陣を敷かざるをえなくなるというわけだ。

 

 

 大概の貴族は戦闘なんてしないだろう。故に、こちらの戦力は護衛とダスティネス家など一部の貴族のみ。その上、こちらにいるのはほとんどが要人。その内の幾人かを人質にでもすれば、魔王軍が優勢になる…

 

 

 というのが(やっこ)さんの魂胆だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが

 

 

 

 

 

 

 

 

 奴らに一つ誤算があるならば

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 此方との圧倒的な『技術』の差があることだ。

 

 

 

 

 

⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪
 

 

 

 屋根からバルコニーに降りたアルダープは、すぐさまダスティネス家の当主の下へ向かった。

 

 

「ダスティネス殿」

 

「どうしたのかね?アレクセイ殿。すぐに避難をせねば、ここにいる全員が危険だ」

 

「いえ、一つ許可を頂きたく」

 

「許可だと?」

 

「この屋敷の裏地…そこを更地にする許可です」

 

「………どういうことだね?」

 

「これは内密にしてほしいのですが、正面の大軍は囮です。本隊は後方からこちらに接近しつつあります」

 

「なんだと!?」

 

「ご安心を。こちらには、それを排除できる武装がありますので。しかし、それを使うとなると、周囲をも巻き込むことになりかねます。ですのでその許可を」

 

「…信じて良いのだな…?」

 

「ええ。もし本隊を殲滅した暁には、更地にした請求をチャラにしてくだされば嬉しいのですが」

 

「………ハッハッハ!なるほど、そう来たか!…ならば、私の答えは一つだろうな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頼んだぞ、アレクセイ殿」

 

「了解した」

 

 

⚫⚪⚫⚪⚫⚪⚫⚪
 

 

 

 G月o日『科学の力ってのァ、凄ェんだよ』

 

 

 

 屋根に登り、得物を本隊の方角へ構える。

 

 

 

 構えたのはバズーカ。銘を『A20』。ベースは朝鮮戦争でも使われた89㎜(3,5インチ)バズーカ『M20』。しかし、それに装填した弾はただの弾ではない。

 

 

 弾頭には領内で採掘された石炭を極限まで細かくしたものを、風魔法を圧縮ガスのように使って空気と一緒に装填したものがこれでもかと詰まっている。着弾したら細かくした石炭の粉末、通称『黒霧』が圧縮された風で周囲に霧散する仕組みだ。

 

 

 まずは第一陣。敵本隊の中央に向けて射出。

 

 

 放たれた弾は見事に本隊の中央で炸裂、大量の石炭の粉末が敵陣を包み込んだ。どうやら突然の出来事に混乱してるようだが、できた隙には存分に付け入らせてもらう。

 

 

 第二陣には回転式弾倉型グレネードランチャー『AMGL』。ベースは『ダネルMGL』だ。

 

 

 それを先ほどの黒霧弾の着弾地点へ射出する。放たれた擲弾は無慈悲な放物線を描いて着弾し…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 直後、先ほどの轟音とは比較にならないほどの音を孕んだ大爆発が敵本隊を呑み込んだ。

 

 

 これを前世の科学に詳しい者が見たらこう言うだろう。

 

 

 『粉塵爆発』と。

 

 

 前世では小麦粉の工場で大規模の粉塵爆発が起きた事例もあるほど。

 

 

 では、それが私の領内で採掘された良質の石炭をキメ細やかな粉末にして、大量の空気と共に程よく空気中に霧散するように計算されたもので起きたとしたら?

 

 

 

 あまつさえ、一点を狙うために、戦力を集中させるために、範囲を狭められた軍勢のど真ん中で起きたとしたら?

 

 

 その答えはただ一つ。

 

 

 殲滅だ。

 

 

 だが、やはりと言うべきか、屋敷の裏地は真っ新になってしまった。ある種の焦土戦術と言えるだろう。私だって、この屋敷の裏地に民家や畑が無いからこそこの作戦を選んだ。そう考えると、敵がこちらに人的被害が無いエリアから仕掛けてきてくれたのは僥倖だった。

 

 

 後ろを見れば、唖然とした貴族たち。顎が外れそうなダスティネス家当主。

 

 

 ついでにララティーナさんや。なんでそんなにキラキラしたお顔をこちらに向けているので?

 




さて、いかがでしたか?
文明って凄いよね。
そして主はこのすばではアイリス王女の次にダクネス推しです。金髪美女は正義なり。さあ、皆さんも金髪美女を称えなさい。
では、また次回で。


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