この素晴らしい世界にハイライトを! (青は澄んでいる)
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幕開け

 

 

俺の名前は最上英須。

 

前の世界で工事中だった建物の鉄骨の崩落事故に巻き込まれて、死んだその先にいた青い髪の女神アクアから異世界に転生して特典としてマサムネとかいう物凄い刀を貰って魔王とやらを討伐する為にこの世界に転生した。

 

 

 

 

けど、最初は元の世界では味わえなかった戦いを味わえて良かったのだが段々と1つの装備で戦う事につまらなさを感じていた。

 

勿論その他の武器も試したけど満たされる事なんて無かった。

 

 

そんな時だった。あの女が現れたのは。

 

「おめでとうございます。

厳正なる審査の結果、今日から貴方は仮面ライダーです」

 

 

その時、俺は何となくだけど。この退屈から抜け出せる気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜現在〜

 

どこかホテルの広間を思わせる様な雰囲気の部屋。

 

そこには、4人の人間がいた。

 

1人は全身黒尽くめで、右手には白いリボルバーの様な何かを持っていた。

 

「どうやら今回の“モンスター討伐ゲーム“は、俺の勝ちみたいだな」

 

「…悔しいけどそうみたいだね」

 

そんな男、英須の目の前で壁にもたれているのは全身を鎧で覆った勇者の様な格好の男だった。

 

「何が俺の勝ちみたいだなよ!アンタはそれで遠距離から撃ちまくってキョウヤの獲物を横取りしたりもしたじゃない!」

 

「そうよ!ちゃんと正々堂々と勝負しなさいよ!」

 

「何を言っている?俺は目の前の敵を倒しまくっただけだ。

そんなに不満なら運営にでも掛け合ったらどうだ?」

 

「「くっ」」

 

キョウヤと呼ばれた男の両隣にはそれぞれ緑と赤の髪の毛の女が居て英須に突っかかったが、英須の言葉に何も言えなくなる。

 

「止めるんだフィオ、クレメア。これは勝負の結果だ。

僕達は3人いたんだから、僕が2人に好きな様に動かせていればきっと結果は違った筈なんだ」

 

「キョウヤの所為じゃないわ!」

 

「そ、そうだよ。私たちだって」

 

「羨ましいなぁ、色男は。ま、俺にはどうだって良いが」

 

4人それぞれ、と言うより内2人は英須に対して嫌悪を顕にしていると突然白い執事服の様な服を着た男が現れた。

 

 

「皆さま、新たなジャマトが現れました」

 

「ッ⁉︎次はどこに!」

 

キョウヤは男の言葉に驚愕し、男からそのジャマトと呼ばれる存在の居場所を聞こうとする。

 

男はそんなキョウヤに対しても笑みを絶やさずに、手に持っていたタブレットを操作して広間の中央にモニターを出現させた。

 

「今回のジャマト達は2カ所に出現しており、

一カ所はベルセルク王国付近の岩場。もう一カ所はアクセルの街周辺です」

 

男の指し示したポイントに各々はどちらへ向かうか思考を巡らせる。

 

がしかし、英須は迷わずに1つの場所を選択した。

 

「俺はアクセルの方に行く」

 

「ほう、随分お早い決断ですね」

 

「俺の拠点にしてる街だからってだけだ。深い意味は無い」

 

「そうですか。

それでは、バッファ様はどちらに?」

 

男は英須の回答にも笑顔で応えると、次にキョウヤをバッファと呼び返事を待った。

 

「彼がそちらに行くのなら、僕はベルセルク王国の方に向かいます。

片方の街だけに集中して、もう片方が危機に晒されるなんて見ていられませんから」

 

「さっすがキョウヤ!」

 

「ホント、あのズルギツネとは違うわ!」

 

「ふ、2人とも…」

 

キョウヤの仲間であるフィオとクレメアはその回答に満足したのか彼の腕に抱きつく。

 

 

そんな彼らを他所に、部屋にはもう1人の来訪者が現れる。

 

その来訪者は長い髪をサイドテールにして、白と黒のどこか非対称な格好をしていた女性だった。

 

「皆さま、どうやら次の目的地が決まった様ですね。

それでは転送を開始します♪ご武運を」

 

女性がそう言うと、英須とキョウヤは立ち上がってそれぞれデザインは同じだが真ん中に収められている“IDコア“のデザインが異なるバックルを腰に当てた。

 

 

 

《デザイアドライバー》

 

 

バックルは腰に当てられるとベルトになり、2人の頭上にはゲートの様な物が現れフィオとクレメアはキョウヤの隣に立つ。

 

「見てなさいよズルギツネ!」

 

「そうよそうよ!今度こそアンタに吠え面かかせてやるんだから!」

 

「ふ、2人ともっ⁉︎危ないからじっとしてて!」

 

キョウヤ達の様子に英須は余裕の笑みを見せる。

 

「仲がよろしい事で。

ま、俺の向かう先もな中々賑やかな場所か」

 

英須は手に持つ1つのバックルを見ながら細く笑む。

 

「さあ、今回こそは手に入るかな。新しいバックル」

 

 

 

 

 

 

 

「それでは皆さま、頑張ってください♪」

 

 

女性の激励の言葉の後に、4人の頭上にあったゲートは下された。

 

ゲートが下がった時には、もう4人の姿は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に英須の目の前に広がっていたのは“大量のキャベツが空を飛んで、そのキャベツを追いかけ回す人々のいる光景“だった。

 

そしてその中には、明らかにキャベツじゃない何かが居た。

 

 

「やっぱりキャベツの襲来だったか。

稼ぎどきだな」

 

英須は手に持つバックルを、デザイアドライバーにセットした。

 

 

 

 

《SET》

 

 

 

ここに、一度死に自らの願いを叶える為に戦う男が降り立ち物語が始まった。

 

 

 

 

 

 

 



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白い狐

そういえば前回で書き忘れていましたが、主人公達が使った移動手段はドンブラザースの物を丸いゲートにしたものです。
















 

どうも皆さん、俺は佐藤和真です。

 

 

俺は前の世界で色々あって死んでしまい、現在ではアクアとかいう人の死に様をストレス発散として馬鹿にした女神を巻き込んでこの世界に転生した。

 

 

そこで、ファンタジー系主人公の様に俺の華々しい冒険者生活がっ

 

 

 

 

 

 

 

 

待ってたら良かった。

 

実際、待っていたのは明日生きる為の金を稼ぐための土木工事のアルバイト。

更には、やっとクエストを受けても最弱モンスターであるジャイアントトードというデカいカエル相手にも死にかけ、やっと仲間になった魔法使いは一発限りの爆裂狂ときて後から入ってきた女騎士のダクネスという人もなんだかアカン気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな俺は現在、ギルドの要請により空を飛ぶキャベツというふざけた奴らを討伐或いは捕獲していた。

 

だが、1つだけ言わせてほしい。

 

 

 

「明らかにキャベツじゃねヤツ混じってんだろ!」

 

キャベツに紛れて明らかに人型のモンスターがキャベツっぽい鎧を着て槍を振るいながら俺を含めた冒険者達を襲っていた。

 

 

カズマさーん!(カズマだよ!!)なんか変なモンスターが出てきたんですけど!明らかに私たちを殺る気満々なんですけど!」

 

か、カズマ!(カズマです!)何なんですかあの変なモンスター達は!あんなモンスター見た事ありませんよ!」

 

この世界の住人のめぐみんも知らないのか!?

それによく見たら他の冒険者達も対応に困っている。って、ダクネスはどうして嬉々として頬を赤らめながら突っ込んで行くのかな?

 

「み、未知のモンスターだと!?皆下がれ!このモンスターの鬼畜p…攻撃は私が受け止める!」

 

「おいお前今なんて言おうとしやがった!それより早く戻れ!」

 

チクショウ!さっきのキャベツに突撃されて喜んでるの見て嫌な予感はしたけどコイツドMかよ!

 

って、そんな場合じゃねえ!何とかしねえと。

 

「カズマさん!カズマさーん!助けてぇ         ッ!!!」

 

「・・・はぁっ!?」

 

アクアあの駄女神!よりにもよってモンスター引き連れてコッチに来やがった!

 

「おいこら馬鹿!何でコッチに来るんだよ!お前多分運が悪いから追いかけられてんだろ!

別の方行けよ!」

 

「嫌よ!私たち一蓮托生でしょ!?だったら私を特典にしたカズマも一緒に巻き込まれるべきよ!

それにアンタ運だけは良いんだから助かるかもしれないじゃない!」

 

「それをお前の最高クラスの不運が帳消しにしてんだろうが!」

 

クソッ!コイツの運の悪さと知力の低さを甘く見ていた。

マズイ、このまま闇雲に逃げてもいつか疲れて追いつかれる!俺の覚えてるスキルじゃあいつ等に通じるかも分からないし他の冒険者も手一杯で俺たちを助ける余裕なんてない。

アクアに期待しようにもコイツの場合何故かとんでもない事をやらかしそうな気がする。

 

・・・あ、もうダメだ。

よく考えたら短い人生だった。お母さん、生んでくれてありがとう。お父さん、こんな親不孝な息子でごめんね。

 

 

・・・。

 

「って冗談じゃない!こんな所で死ねるかー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《SET》

 

 

 

 

俺たちが逃げていると、急にそんな音が聞こえて来て謎のモンスター達もその音声に反応したのか急に立ち止まってそちらを見る。

 

 

 

「だ、誰だアレ?」

 

俺たちの視線の先には、この世界には合わないどちらかと言うと俺の元居た世界に有りそうな服装に腰にベルトみたいな物を着けた奴だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~NOside~

 

カズマ達の前に現れた男、英須はモンスターに向け指でキツネの影絵を作り、中指と親指でフィンガースナップをする。

 

「変身」

 

英須はその言葉の後に右腕をデザイアドライバーの右側に装填された大型のレイズバックル、マグナムレイズバックルのアプルーバルリボルバーを回転させ、ストライクトリガーを押すとそこから赤い弾丸が発射される。

 

その弾丸は、英須の横に現れていた「MAGNUM」の文字を撃ち抜くと白い鎧が現れる。

 

 

 

 

 

 

《MAGNUM》

 

 

 

 

 

その音声と共に鎧は出現した機械碗の様な物でエントリーフォームという姿の英須に装着された。

 

そして鎧を纏ったその姿は、頭部がキツネ面を被せた様になっている上半身に白い鎧が纏われ首からはキツネの尻尾を思わせるマフラーが見えていた。

 

 

 

《READY FIGHT》

 

 

その姿は仮面ライダーギーツ・マグナムフォーム。

 

変身を完了した英須は具合を確かめる様に手足を軽くスナップさせると、手に持っていた片手銃マグナムシューター40Xを構える。

 

 

 

「さあ。ここからが、ハイライトだ」

 

その言葉を合図にしたかの様に人型のモンスター、キャベツジャマトは槍を持って襲い掛かって来てギーツは引き金を引く。

 

 

 

その放たれた弾丸は先頭を走っていたジャマト2体に命中しそれが開戦の合図となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!」

 

ギーツは槍を振るってきたジャマトの攻撃を銃で受け止め足で裁くなどをして受け流しながらインファイトの容量でジャマト達を攻撃する。

 

中には槍だけでなく剣や長い棒の様な形をした銃を持っているジャマトも居りそいつ等の攻撃も的確に裁く。

 

「ふっ、ほいっ」

 

ギーツは2体のジャマトが槍を突き出してきたのを極力その場から動かず最小限の動きだけで避けてその突き出された槍の1本を掴む。

 

「よっと」

 

その槍をもう片方の槍に絡める様に重ねて動きを制限し動きが止まったところでマグナムシューター40Xで2体を撃ち抜く。

 

2体のジャマトが倒されたのも構わず銃を持ったジャマトが一列に並んで銃を乱射してくる。

 

「あっぶね!」

 

その攻撃にギーツは慌てて走り後ろから銃撃が命中した火花が追って来る様に迫ってくる。

ギーツは軽いジャンプの容量で跳躍し銃を持ったジャマトに横なぎで銃を乱射してそのジャマト達を倒す。

 

 

ギーツが前転の要領で受け身を取った地点には他の剣を持ったジャマトが数体居て、今度はギーツを取り囲み全員が両手を広げて回り始めた。

 

「昭和の子供の遊びかよ。

確かに大抵の奴なら惑わされるかもな。…だが」

 

ギーツがそこまで言うとジャマトの内の1体が背後から剣で突きの攻撃を放って来た。

 

「甘い」

 

その攻撃を首を横に反らす事で躱してマグナムでその剣を撃つ事で弾く。

 

「ほらよっと!」

 

マグナムで剣を弾かれて体制を崩したジャマトはギーツによって蹴り飛ばされる。

 

周りのジャマトも負けじと攻撃を放ってくるがそれも全て躱され返り討ちに合う。

 

 

 

「流石にこの数を銃1本は厳しいか。なら数を増やすだけだ」

 

ギーツは腕部に備えられた固定式短銃アーマードガンの左腕部分を展開した。

 

「乱れ撃つぜ!なんてな」

 

その展開されたガンとマグナムを両手を広げる事で文字通り乱射し始める。

ジャマト達に向けて乱れ撃たれたその銃弾は的確にジャマト達を撃ち抜いていく。

 

時折前に向けて両手をクロスさせ撃ったりして的確に討伐していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「す、スゲェ…」

 

そんなギーツこと英須の戦いぶりを見てカズマを含めた冒険者達はいきなりの事に唖然としていた。

 

 

「か、カズマ。何なのですかあの紅魔族の琴線に響く鎧を着た人は!」

 

カズマに背負われた体制でめぐみんは目を赤く輝かせてカズマに聞いてきた。

 

「し、知らねえよ俺だって。

お、おいアクア。お前この世界に俺以外にも転生者送ったって言ったよな?アイツもそうだったりするのか?」

 

「知らないわよそんな事。私だって全ての転生者を覚えられる訳ないじゃない。

それに、私あの仮面ライダーの特典なんてあげた覚えは無いもの」

 

「仮面、ライダー?」

 

カズマは初めて聞いた単語にアクアに言及しようとした。

が、それは次のダクネスの一言で中断させられた。

 

「お、おいっ!モンスター達が合体し始めたぞ!」

 

「「「はぁっ!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、ギーツの目の前でジャマト達は突然集まりだしたかと思うと緑色の光に包まれやがて巨大なキャベツ型のゴーレムへと姿を変えた。

 

「は!?(キャベツのゴーレムって誰徳だよ!)」

 

そんなツッコみをしている間にも巨大なゴーレムに変貌したジャマト、名付けるならキャベツゴーレムジャマトはその巨大な腕を力任せに地面に叩きつける。

 

それにより地面は砕け衝撃波となりギーツを襲う。

 

「うおっ!?」

 

ギーツはその衝撃波によって巻き上げられた形が異なる破片や瓦礫をパルクールの様に咄嗟ながらも躱す。

 

そして、衝撃波の攻撃範囲外に出たギーツはKGジャマトを見据える。

 

 

「予想以上の破壊力(それにあの体からすると硬さも中々有ると見た。ならマグナムだけだと火力不足か)」

 

ギーツはドライバーのマグナムレイズバックルを引き抜き、今度は赤いバイクのハンドルの様な大型のレイズバックル、ブーストレイズバックルを取り出す。

 

「そろそろコイツの出番か」チュッ

 

ギーツはブーストバックルにキスするとそれを右側に装填する。

 

 

 

《SET》

 

 

 

その音声の後にブーストバックルのハンドルレバー、ブーストスロットルを数回回す。するとバックルが開いたようになりバイクのブースターの様な部分から炎が噴き出し横にBOOSTの文字と赤い鎧が展開され、マグナムと同じ様に機械碗が現れマグナムの鎧が消え代わりに装着される。

 

 

《BOOST》

 

 

《READY FIGHT》

 

 

『変わったぁ!?』

 

突然別の鎧に代わったギーツの姿を見てカズマ達は驚愕に目を見開き声を上げる。

 

 

「さあ。ハイライトpart2だ」

 

ギーツのその言葉の後にギーツの隣にブーストバックルや今のギーツと同じデザインの専用バイク、ブーストライカーがどこからともなく現れそれに跨り目の前のKGジャマト目掛けて走り始める。

 

 

KGジャマトはそんなギーツ目掛けて先ほどの衝撃波の攻撃を再び放つ。

しかしギーツはブーストライカーを巧みに操作し飛んでくる瓦礫を躱す。

 

「す、凄い。あの攻撃を全部避けてるぞ!」

 

「何者だあの鎧野郎!」

 

 

 

 

「ば、バイクだ。ファンタジー世界にバイクが出て来た…」

 

「カズマカズマ!何なのですかあのカッコいい乗り物は!」

 

「な、何という攻撃の嵐だ…私もあの間に…」

 

「ちょっと!アイツがあの変なモンスターを相手にしている間にキャベツ捕まえるわよ!」

 

 

「だぁ!煩い!お前ら少しは落ち着け!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「盛大に打ち上げだ」

 

KGジャマトの攻撃を避けながらギーツはブーストバックルのハンドルを2回捻る。

 

 

 

《BOOST TIME》

 

 

 

その音声の後にすかさずもう一度捻る。

 

 

 

《BOOST GRAND STRIKE》

 

 

その音声が鳴り響くとギーツとギーツが乗っていたブーストライカーが熱を帯びた様な光を纏いそれはやがて巨大な炎のキツネへと変貌する。

 

 

そのキツネはKGジャマト目掛けて強力な体当たりを仕掛ける。

 

「ハァアアアアアアアアッ!!!」

 

ギーツは叫びを上げながらKGジャマトへと激突する。

 

KGジャマトは、炎のキツネの攻撃を受けて激しい炎を巻き上げながら爆発四散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~英須side~

 

俺はギーツのブーストフォームの必殺技でキャベツジャマトの巨大ゴーレムを倒した。

 

 

「ふぅ…ん?」

 

バイクから降りて一息ついていた俺は、ブーストバックルから煙が上がっているのを確認する。

 

「あ、やべっ」

 

俺は慌ててバックルが嵌ったままのドライバーをブーストバックルをなるべく上に向ける様にして止まる。

 

 

すると、ブーストバックルはまるで暴走したマシンの様に火や煙を噴き出しながらドライバーから飛び出しそのままどこかへと飛んで行ってしまった。

 

ブーストバックルは、一度ブーストタイムを使っての技を使うと今の様に何処かへと射出されてしまいもう一度使うには再び自分の手で手に入れるしかないのだ。

 

ブーストバックルが無くなった俺の姿は、エントリーフォームという目の光が消えて上半身や下半身が鎧らしい物が殆どない目立つ黒いインナーがメインの言わば最弱の姿へと変化していた。

 

 

「(まあこういう一度きりのアイテムがあるのもデザイアグランプリの醍醐味だよな。これだからこの戦いは止められない)」

 

 

 

 

 

 

「な、なあ!」

 

「?」

 

 

そんな事を思っていた俺を呼び止めたのは、緑色のジャージ姿の見た感じ俺と同じ日本人らしき男だった。

 

 

「何だ?」

 

「た、助けてくれてありがとうな」

 

助けてくれて?

 

・・・ああもしかして、今のジャマトの事か?

 

「気にするな。俺の得物だったから奴らを倒しただけだからさ」

 

「それでもだよ。ありがとう」

 

 

どうやらバッファと違って面倒くさいタイプじゃないみたいで安心した。

 

けど、俺の用事は済んだからさっさと帰ろう。

 

と、俺がそんな事を思っていると頭上に此処に来た時と同じゲートが出て来た。

 

「悪いけど時間みたいだ。俺はもう行くよ」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!せめて名前を教えてもらえないか?(もし次会う時にパーティに引き込めそうだから)」

 

名前ねぇ、本名を馬鹿正直に教えるわけにもいかないし。

・・・アレで良いか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギーツ。

仮面ライダー、ギーツだ」

 

「仮面ライダー…ギーツ」

 

「ま、俺とお前はもう会う事は無いだろうから、忘れてもらっても構わない。

それじゃあな」

 

「あっ、まっ…」

 

まだ何か言おうとしていたジャージの男の言葉を待たずしてゲートは俺に降りて来て、俺は元の場所へと飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、俺はこの時知らなかった。

 

まさかあのジャージの男と、また会う事になるだなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







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招待

 

俺はあのキャベツジャマトを始末してミッションを終えた。

 

しかし今回は残念ながら新しいバックルは手に入らなかったな…。まあ大量デザイアマナはゲットしたから良しとするか。

 

「お帰りなさいませ」

 

「…ああ」

 

ミッションを終えて俺を出迎えたのは、ツムリとかいう俺にデザイアドライバーを渡してきてこの最終目標が”魔王討伐”ということを目的としてゲーム、”デザイアグランプリ”に参加をさせてくれた女だった。

 

「今回の”アクセルの街周辺に現れたキャベツジャマトの討伐”お疲れさまでした」

 

「本当なら大量スコアより新しいバックルが欲しかったけどな」

 

ジャマトについては不明な点が多いが、今回のキャベツジャマトの様に大量のデザイアマナを落とすジャマトなどが存在している。

 

今回は結構な大物だったのでスパイダーフォンを見てみると「100万」と俺のデザイアマナ欄に表示されていた。

 

「仕方ありません。今回のジャマトはバックルをドロップしないタイプでしたので。

ですがご安心を、デザイアマナは…」

 

「この世界の金に変換できる。だろ?ちゃんと覚えてるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー!あのズルギツネが一番乗り!?」

 

 

と、そんな俺たち以外にもこの空間に戻って来た連中が居るようだ。

 

 

「どうやら今回の一番乗りは俺だったみたいだな、バッファ」

 

「そのようだねギーツ。それに僕の方は収穫もあった」

 

そういうとバッファ。確か本名はミツ…ミツラギだったか?が、懐から2つのバックルを取り出して見せて来た。

 

それは水色の蛇口と青い盾の小型のレイズバックルだった。

 

「ウォーターにシールドか。

良かったな、生憎こっちはバックル無し。オマケに持っていたブーストもさっきのミッションで使っちまった」

 

「はっ!いい気味ね!」

 

「私たちを馬鹿にするからそうなるのよ!」

 

「こら2人とも!

で、でも貴方程の人がブーストを使うなんて。どんなミッションだったんですか?」

 

うーん…普通なら相手に情報を与えるのは避けたいけど。これは別に問題ないか。

 

 

「今回のミッションはキャベツのジャマトでな、大量のスコアやデザイアマナを貰える代わりなのか難易度が中々高かった」

 

「「「キャベツ!?」」」

 

まあ驚くわな。

その後はまあ適当にキャベツが合体して大型ゴーレムになってソイツにブーストを使ったと説明した。

 

 

「という訳で、生憎スコア的には俺がまだレベルがトップなんだよ」

 

「「ぐぬぬ…」」

 

おーおー、バッファの取り巻きが悔しそうにしておる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さま、お疲れ様です。それから申し訳ありません。

皆さまが獲得なされたバックルは全て皆さまの手から失われてしまいます」

 

 

「「「「は?」」」」

 

俺たちが話をしていると、タブレットで何やら確認したツムリが笑みを浮かべて俺たちを見る。

 

それに真っ先に抗議したのはミツラギ?の取り巻きの女達だった。

 

「ちょっとどういう事よ!」

 

「そうよ!折角集めた装備が無くなるって!」

 

「それにつきましては今から説明させていただきます」

 

そう言うとツムリはタブレットを操作して1つの画面を開く。

そこには俺とミツラギ(仮)のIDコアとは別のマークが幾つもあった。

 

 

「皆さまがミッションを熟していた間に、とうとう他の仮面ライダーの選別が終わりました。

彼らの参加により、公平性を保つ為皆さまのお持ちのバックルは大型小型問わずリセットされます」

 

成程、とうとう来たか。

 

 

実は俺たちが今行っているデザイアグランプリは言わば正式実装前のβテスト。

正式に開催されるまでは俺とバッファとその取り巻きだけでひたすらにミッションを熟していた。

 

 

「勿論、ミッションによってスコアによりアップしたレベルもデザイアマナも変わらず皆さまの元に残りますのでご安心を」

 

「そういう事を言ってるんじゃないわよ!なんで私たちが」

 

「フィオ、そこまでだ」

 

「ッ!キョウヤ…」

 

取り巻きの1人がなおも突っかかろうとすると、ミツラギ(仮)が止めに入った。

 

「これは仕方のない事だ。僕たちだけが装備を失う訳じゃないし、今も説明されただろ?

それにバックルはまた手に入れれば良いさ」

 

 

「どうやらお話はまとまったようですね。では、皆さまのバックル回収後すぐに新たな参加者の皆さまをお呼びしますのでそれまでの間、ゆっくりと寛ぎください」

 

 

ツムリはそこまで言うとその場から姿を消し、俺たちの所持していたバックルも後から来た運営の奴が回収しに来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~カズマside~

 

 

俺たちはあのキャベツ収穫のハプニングも乗り切り現在はギルドで報酬を受け取っていた。

 

が、どうやらアクアが捕まえたのは殆どがキャベツで報酬が少なく、現在俺に集りに来ていた。

 

その際アクアが俺の夜のアレコレを暴露しようとしていたので、俺は仕方なくコイツの酒代のツケを支払う事になったのだ。

 

「ふふふ♪カズマ、仲間って良いわね!」

 

コイツ人の金でよくもまあこんなに良い笑顔浮かべられるな…。今度本気で泣かしてやろうか?

 

「それにしても先ほどのキツネの人はカッコ良かったですね」

 

「ああ、あの未知のモンスター相手に怯みもせず向かって行くとは」

 

そういえば、さっきのキツネ仮面の男。確か仮面ライダーギーツって言ったけ?

 

あの後アクアから聞いたけど仮面ライダーっていうのはどうやら悪の怪人やらと戦う正義の味方みたいなやつらしい。

 

彼らは目的などは違えど幾つもの世界の中心に位置するライダーは目的自体は違えど人々の為に戦っていたらしい。

 

そしてあの仮面ライダーギーツも新しく誕生したライダーだという事も聞いた。

 

 

「なあアクア。お前本当にあの仮面ライダーの特典与えた覚え無いんだよな?」

 

「ええ無いわ。大体、仮面ライダーの力って一歩間違えれば悪と同じだから下手に転生者に渡すとそれこそ浅倉とかの再来になりかねないのよ」

 

いや誰だよ浅倉って。

 

でもという事は、アイツは転生者じゃ無いって事か?

 

 

「それよりクエストよ!

ツケ払ってもうお金が無いの!儲かるのを受けましょう!」

 

「いいえ!ここはモンスターが大量に居るのを!」

 

「一撃が重いモンスターにしよう!」

 

ああもう!まとまりがない!

 

いつの間にかダクネスは勝手に仲間になるし、コイツ等と魔王討伐なんて無理に決まってんだろ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おめでとうございます。

厳選なる審査の結果、今日から貴方は仮面ライダーです」

 

 

「え?」

 

そんなストレスが溜まりまくった俺の目の前に、見たことない女の人が立っていた。

 

「えっと…どちら様で?」

 

「申し遅れました。私はツムリ、貴方は今日、仮面ライダーになる資格を得ました」

 

どうやら目の前の美女はツムリと言うらしい。

というかちょっと待て。今仮面ライダーって言ったか!?

 

「はぁー!?カズマが仮面ライダー!?

ちょっとアンタ、そこのヒキニートを誰の許可を得て仮面ライダーなんて大層なものにならせようってのよ!」

 

「それにつきましては、これから向かう場所で”他の参加者の方”と一緒に説明させていただきます。

サトウカズマ様。どうぞこちらに、パーティーメンバーの方もよろしければ」

 

ツムリさんはそこまで一方的に告げるとそのまま背を向けて歩き出した。

 

普通なら怪しくて幾ら美女といえどとてもついていこうとは思えなかったが…。

 

 

 

 

 

 

 

”さあ。ここからが、ハイライトだ”

 

 

 

 

 

 

俺の脳裏には、白いキツネの仮面ライダーの姿とその戦いぶりが思い浮かぶ。

 

俺にとって、目の前で繰り広げられたあの戦いはとても印象に残っていてツムリさんは俺にライダーになる資格があると言った。

 

俺は、あの仮面ライダー、ギーツの様になれるならと自然に体が動いていた。

 

 

 

「行きます」

 

「ちょっ!カズマ待ちなさいよ!」

 

「か、カズマ、アクア待ってください!」

 

「お、おい待ってくれ!」

 

 

後ろから聞こえる声を無視して、、俺は彼女についていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツムリさんに連れられて俺たちはギルドから出て街にある人通りの無い裏通りにまで来た。

 

 

「それでは、これから移動いたします。

その場所ではあらゆる戦闘行為などが禁止されておりますので、皆さま。お気をつけて」

 

「らしい。特にアクア、お前勝手な行動はするなよ」

 

「はぁ!?どうして私だけ注意されるわけ!」

 

お前が今のところ碌な行動起こしてないからだよ。

 

「それでは移動を開始します」

 

ツムリさんは俺たちの様子も気にせず、手を上に上げると丸い円の形をしたゲートが出て来た。

 

「なんじゃこりゃ!?」

 

「ご安心ください。テレポートの様なものです」

 

そういう問題じゃないんですがね!

 

俺のそんな気持ちも無視され、俺たちはそのまま降りて来たゲートによってその場から移動させられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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デザイアグランプリ・開幕

 

光に包まれたツムリによってカズマ達は謎のゲートに飲み込まれる様にとある場所に転送された。

 

そこは、まるで空中に浮いた神殿の様な場所でそこにはカズマ達以外に様々な服装の冒険者達がいた。

しかもよく見ると、全員が黒髪黒目や茶髪など殆どが日本人らしき特徴の人ばかりだった。

 

「こ、ここは?おいお前ら、大丈…え?」

 

カズマは仲間達の安否を確認しようと後ろを振り返るが、そこには彼の仲間の姿は無かった。

 

「お、おいアクア⁉︎めぐみん⁉︎ダクネス⁉︎お前らどこに行ったんだよ!」

 

よく見るとカズマの周りの冒険者達も自分の仲間を探している様子だった。

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん、お待たせしました」

 

「⁉︎」

 

そんな困惑しているカズマ達の前に、その空間の中央に位置する場所に先程カズマ達をこの空間へと連れてきたツムリが立っていた。

 

彼女は笑顔で周りを見渡すと言葉を続けた。

 

「本日は神々が魔王討伐の為に開催したゲーム、デザイアグランプリへの参加ありがとうございます♪

先程申し上げました様に、皆様は今日から仮面ライダーです」

 

彼女はまるでファンタジーゲームなどのオープニングの様なセリフを発した。

 

そして、当然状況を理解できていない冒険者達からは次々と疑問が投げかけられた。

 

「な、なあ。思わず誘いに乗ってついて来ちまったけどよ、結局その仮面ライダーってのは何なんだ?」

 

「それに、俺の仲間達はどこに居るんだよ!」

 

「ねえ、そもそも此処は何なの?デザイアグランプリって何?」

 

 

「皆さま落ち着いてください。皆様のお仲間は別室にて待機していただいておりますのでご安心ください。

そして、今から皆様の疑問について説明いたします。

ですが、その前にコチラを配布いたします」

 

ツムリは手に持っていたタブレットを操作し始めた。

そしてその操作を終えると、突然カズマを含めた冒険者全員の目の前に宙に浮いた状態で黄色い箱“ビックリミッションボックス001“が現れた。

 

目の前に現れたそれをカズマ達は手に取って色んな角度から見たりし始める。

 

「これは?」

 

「その箱の中身をご確認ください」

 

「中身?」

 

ツムリの言葉に彼らは次々と箱の蓋をスライドさせてその中身を確認した。

 

そしてその中身を見てカズマは目を見開いた。

 

「⁉︎(これって!)」

 

その中身とは、カズマが見たギーツという仮面ライダーが付けてたのと同じベルトと、ギーツとは違うが緑色の狸らしき絵柄が描かれたIDコアだった。

 

「それらは、皆様が仮面ライダーとして戦う為のアイテム。

デザイアドライバーとライダーの証であるIDコアです。皆様にはそれらを使いデザイアグランプリに参加していただきます」

 

「な、なあ。そのデザイアグランプリって何なんだ?」

 

「それにつきましては、今から説明いたします。

皆さま、コチラのモニターをご覧ください」

 

ツムリは再びタブレットを操作し始め彼女の隣には大きなモニターが現れ、そこには先程カズマ達が遭遇したジャマトが映っていた。

 

「彼らはジャマト。この世界の魔王軍に寝返った転生者が生み出した怪物です」

 

『はっ⁉︎』

 

(て、転生者⁉︎というか、今の反応からして此処に居る奴ら全員そうなのか?)

 

カズマは彼らの転生者という単語への驚きようから自分と同じ日本人だと推測する。

事実、この場に集められたのは殆どがカズマと同じ日本人だった。

 

 

「お、おいどういう事だよ!」

 

「…実は、その転生者は限定的ですが“モンスターを生み出す“という特典を得てこの世界に転生しました。

しかし、彼は魔王討伐の中でいつしかモンスターでモンスターを倒すのではなく、自分で生み出したモンスターで人間を殺す快楽を見出してしまいました。

そしてその転生者は、その能力で役にたつという条件で魔王軍へ寝返り、魔王の加護によって更に強化されてしまったその特典で謎の生命体“ジャマト“を生み出したのです」

 

ツムリの説明に周りは静まり返り、中には絶句したり話についていけていない者もいた。

無理もない、話が突拍子すぎるのだから。それに構わずツムリは続ける。

 

「その転生者がもたらした影響は余りにも大きく、このままではこの世界のパワーバランスが魔王軍の勝利に傾きかねないのです。

そこで我々は、そんなジャマトと転生者に対抗する為にこのデザイアグランプリを開く事を考えました」

 

ツムリはタブレットを操作し、次にモニターに映されたのは

赤いクワガタの様な姿の戦士。

赤い竜の戦士。

黒い体に赤のラインがある戦士。

黒と緑の戦士。

マゼンタの戦士。

オレンジの鎧武者。

顔にライダーと書かれた戦士。

赤い炎の剣士。

そして、ピンクの2人で戦う悪魔の戦士達。

 

そんな戦士達がさまざまな怪人達と戦っている映像だった。

 

「仮面ライダー。

それは、悪と同じ力を持ちながらも人々の為に戦った戦士達の事です。

皆様に渡したそれは、そんなライダー達になれるアイテムです。

そのライダーの力を使いジャマトとその生みの親である転生者を打ち倒すために行うのが、デザイアグランプリ。

命をかけたゲームです」

 

「命をかけた…」

 

「ゲーム……」

 

ツムリの最後の言葉に、集められた者達の間に瞬く間に緊張が走る。

 

命をかける。

この世界の冒険者というものは、元々そういったものだが、改めて言われると再びその重みを再認識させられた。

 

「このゲームでジャマトや他のモンスター。更にはそれ以外の存在であろうと倒されてしまえば、その方はこの世から退場。即ち死んでしまいます」

 

『!』

 

「ですので、我々は無理強いはいたしません」

 

ツムリは手をかざす。

すると、空間の一番端に光の扉が開かれる。

 

「もし、このデザイアグランプリに参加したくないという方は、あちらからお帰りいただけます」

 

『………』

 

その言葉にその場は沈黙が訪れた。

 

彼らは悩んだ。

このままグランプリに参加して生きるか死ぬかの戦いに身を投じるか。

それともこのまま退場して、冒険者として自分たちのペースで魔王討伐を目指すか或いは平和に過ごすか。

 

 

 

 

そして。彼らの選択は……。

 

 

 

「俺は残るぜ」

 

「俺もだ。どっちにしろ、冒険者と死ぬ確率は変わんないだろ」

 

「アタシもやる!それに、仮面ライダーってなんかカッコいいし!」

 

彼らはどうやら残る事を選んだ様だった。

 

そしてカズマはというと。

 

(死ぬかもしれないのかー。空気を読まずに俺だけ帰るか?

いや、でもなー……)

 

悩んでいた。

そもそもキャベツやカエル相手にも死にかけるのだから迷うのも無理はない。

 

「迷ってるのか?」

 

「…へ?」

 

そんな悩んでいるカズマに、1人の男が話しかけて来た。

 

「戦う事、迷っているのか?」

 

「い、いや…その…って、アンタ誰?」

 

「名前は今この際重要じゃない。

今の問題は、お前は戦いたいのか戦いたくないのかって事だ」

 

男はカズマに問いかける。

 

「俺は……

(正直めっちゃ逃げたい。タダでさえポンコツのパーティー抱えてるのに、更に死ぬ可能性が高くなるとかゴメンだ。

………でも)」

 

そんなカズマの脳裏には、自分を助けてくれた白いキツネが浮かんだ。

 

自分も、あのギーツの様になれるかもしれない。

引きこもりだった自分にも、なれるかもしれない。

 

彼はこのデザイアグランプリに誘われた時、確かにそう思った。

 

「…やるよ。やってやるっ」

 

「…死ぬかもだぞ?」

 

「心配ありがとうございます。

けど、こちとら問題児ばっかり抱えてるんでもうそんな大差無いんすわ」

 

「………」

 

男はカズマの色々吹っ切れた様な、諦めた様な何とも言えない顔に一瞬呆気に取られるもすぐに笑みを浮かべた。

 

「そっか。それじゃあ、頑張れよ」

 

「はい、どこの誰かは分かりませんがありがとうございます」

 

カズマはどこかで聞いた事がある様な内容な声の男に礼を言い、男はそのまま人混みの中へ消えていった。

 

そして、各々は決心したのか全員がツムリの方を見る。

 

 

「………どうやら、皆さま覚悟は決まった様ですね。

では此処に、デザイアグランプリを開催します!」

 

彼女の号令と共に、周りからクラッカーの様なものが炸裂し花火も上がり始めた。

 

こうして、魔王軍を倒すためのゲームが開催される事となったのだ。

 

 

「皆様、今日は私共が用意した控え室にてお休みください。

明日は、記念すべき1回目のゲーム“宝探しゲーム“を開始します。

そのゲームの詳細やデザイアグランプリの詳細の説明。そして私共からせめてもの贈り物としてユニフォームやスパイダーフォンをその控え室にて用意しております。

それと、お仲間の皆様にも別のスタッフ達から説明は受けている筈ですので、お仲間の皆様も一緒に出場するかも控え室にてお話し合いください」

 

ツムリの説明の後に周りに光の扉が現れる。

 

「今現れた扉は、それぞれの控え室に繋がっております。

皆様、ごゆっくりお休みください」

 

そこで説明は終わったツムリはどこかへと歩き去り、周りの冒険者達もその扉に向けて足を進め、カズマもその扉に向かった。

 

 

 

 

そんな中、カズマの方を先程の男が見据える。

 

「あのジャージの男…確かキャベツジャマトの時の…」

 

男、最上英須は少し驚いたふうに呟く。

 

「まさかまた会うことになるなんてな。

ま、そういう奇妙な出会いもデザイアグランプリの醍醐味か。どちらにせよ、面白くなりそうだ」

 

英須は楽しそうに笑みを浮かべながら、他の参加者と同様に扉を潜り抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 



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宝探しゲーム・開始

 

カズマは、ツムリからの説明を終え用意された控室で仲間と再会していた。

 

「「「カズマ!」」」

 

「お前ら!」

 

アクア達はカズマが無事で戻って来たことに安堵の表情を見せる。

自分のことを心配してくれていた事に、カズマは何故だか無性に感動していた。

 

「良かったです。カズマがいなくなったらまた別のパーティーを探さなくちゃいけないところでした」

 

「アンタがいないと、私が作っちゃったツケ払う人が居なくなっちゃうところだったわ」

 

「せっかく私の理想のプレ…パーティーに出会えたのだ。ここで死んでなくて良かった」

 

「お前ら、俺を心配してたのかそれとも自分の今後を心配してたのかハッキリしろよ………」

 

前言撤回、どうやら彼女達は平常運転の様だ。

 

「しかし、先程白いスーツの人が来て色々説明してくれましたけど。カズマの方はどうでした?」

 

「俺の方も多分お前らと似た様な説明だ。

とにかく、情報を整理しておこうぜ」

 

カズマは自分が聞いた情報とアクア達が聞いた情報をまとめた。

 

その結果、大方の説明は殆ど同じでカズマは3人に渡されたデザイアドライバーとIDコアを見せていた。

 

 

「そんで、これが渡されたデザイアドライバーとIDコアってやつだ」

 

「おぉっ!!」

 

それに真っ先に反応したのはめぐみんだった。

彼女は目を赤く光らせ、それでいて生き生きした感じでそれを見る。

 

「それは!あの仮面ライダーという人が付けてたのと同じ物ではないですか!

羨ましいです!カズマ、後で私にも貸してください!」

 

「お、落ち着けって。とにかく目を光らせるのは止めろ怖いから…。

っと、それより俺はこのデザイアグランプリ参加しようと考えてるけど、お前らはどうすんだ?」

 

カズマはアクア達に参加するのかどうかを聞いた。

元々彼女達は参加するなんて言ってないし、ここで無理に誘っても後味が悪いだけだ。

 

「私は当然やりますよ!

んんっ!…我が爆裂魔法で、ジャマトとかいうモンスターも魔王諸共葬ってやろう!」

 

「私もだ!そのジャマトとかいう奴らがどんなプレ…イを繰り出してくるのか楽しみだ!」

 

「お前言い切ったな⁉︎とうとう言い切りやがったな⁉︎」

 

自分の欲望を隠すことのない2人にというかダクネスに対して思わずツッコミを入れる。

 

「ねぇ私は嫌なんですけど。こんな仮面ライダー関連のゲームとか絶対ろくな事にならないわ!

大体、私女神なのにこんな事が起きてるだなんて知らないんだけど!これはアレよ、神を気取った奴らの仕業に違いないわ!」

 

「………は?」

 

カズマはアクアの発言に思わず呆気に取られる。

 

「知らないって、このデザイアグランプリって神様が開いたって話だけど」

 

「だから知らないわよそんなもの!

そんなたいそうな事が行われてたら、私が知らないはずが無いもの!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにつきましては、私の方から説明いたします」

 

そんなカズマ達の前に、1人の白いタキシードの男が手に紅茶が入った4つのカップを持って控え室に入って来ていた。

 

「あ、アンタは?」

 

「申し遅れました。私はこのデザイアグランプリのスタッフの1人です。

皆様に紅茶をお持ちしました」

 

「あ、どうも」

 

「ちょっとそこのアンタ!この私の前で神を名乗るとは不届にも程があるわ!」

 

「お前はちょっと黙ってようか⁉︎」

 

「何よ!神が舐められたままで居られるもんですか!」

 

「「………神?」」

 

「を、名乗ってるイタイ奴なんだ。悪いけど合わせてやってくれ」

 

「イタイ奴って何よ!私は正真正銘の女神…」

 

アクアが煩いので、カズマは受け取って紅茶を一口啜りスタッフと名乗る男の話を聞く事にした。

 

「ふぅ…。それで、何の様なんですか?」

 

「はい。コチラには明日行われる宝探しゲームとライダーについての説明に来たのですが。

それらを話す前に、佐藤和真様、アクア様。お2人は少しこちらへ」

 

男は控え室の出口の外にカズマとアクアを案内しようとしていた。

 

「おい待て。私達の仲間をどうするつもりだ!

も、もし何かするつもりであれば、2人の代わりに私が!」

 

「話がややこしくなるから、お前は黙ってようか!」

 

「これは少々内密なお話になりますので、申し訳ありませんが」

 

スタッフはカズマ達に向けて頭を下げる。

それを見て、流石に断るわけにはいかず。

 

「わ、分かりました。行きますから頭を上げてくださいって!

ほ、ほらアクア行くぞ!めぐみんとダクネスはちょっと待っててくれ!」

 

カズマは強引にアクアの手を引っ張りつれていく。

 

「ちょっとカズマ⁉︎何であんなペテン師の言うことなんかって痛い痛い痛い!

分かった!分かったから私の大事な髪の毛を引っ張らないでちょうだい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?どういった了見で神を騙ったのか聞かせてもらおうじゃない」

 

「ちょおまっ⁉︎

す、すみませんウチのチンピラプリーストが」

 

「誰がチンピラよ!」

 

「お前以外の誰が居るってんだこのポンコツ女神!」

 

2人は部屋の外に出るや否や取っ組み合いになりそうなところでスタッフの男が止めに入った。

 

「んんっ!…お2人とも、話を始めてよろしいですか?」

 

「「アッハイ」」

 

「それで、先程のアクア様の質問に対してですが。

このデザイアグランプリは、間違いなく神々の手によって開催されたものです」

 

「だから!そのデザイアグランプリなんてもの、私は知らされてないんですけど!

もし仮に本当に神が開催したにしても、どうして日本担当のエリートである私が知らされていないわけ⁉︎」

 

「落ち着いてください。

えー、アクア様にもちゃんとその情報は渡されていた筈ですが?」

 

「はぁ⁉︎なにアンタ、自分の失敗を認めたくないからってとうとう私のせいにしようっての⁉︎」

 

「そう言うわけではありませんよ。確かに情報はアクア様にも回されました。

………ただ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜回想〜

 

「アクア様、ただ今エリス様の担当世界に関する会議が行われます。

議題は魔王軍に寝返った転生者の対応との事ですが」

 

「えー?エリス?

大丈夫よ、あの子少し頼りないところあるけどしっかりしてるから」

 

「い、いえ。ですから、その会議への参加を」

 

「それじゃあ貴方が代わりに行って結果だけ教えてー。私今手が離せないから。

あっ!沖◯さんの腕が肩ごと斬られた⁉︎このダー◯◯!ゲームだと星3の癖にめちゃくちゃ強いじゃないのよ!」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

〜回想終了〜

 

 

 

「その後、その御付きの天使はアクア様に報告したのですが、その天使曰く“ゲームやってそっちに集中してたので聞いていたか分からない“との事でしたので」

 

「………」

 

「お、お前…」

 

その話を聞いたカズマはドン引きしていた。

無理もない、少しどころか完璧に話をまともに聞いてなくて忘れていたアクアが悪いのに、先程まで彼女は上から目線で怒鳴っていたのだから。

 

「そ、そそそそ、そういえばそんな事も聞いた気がするわね…,。

ま、まあ女神誰しも間違いはあるわ。で、でも一応謝っておくわね。ごめんね…」

 

「………」

 

余りの事に最早言葉も出ないカズマ。

スタッフの男も、苦笑いを浮かべていた。

 

「じゃ、じゃあ私はもう部屋に戻るわ!」

 

アクアは逃げる様に部屋へと戻っていった。

 

「…ホント、あの駄女神がすみません…」

 

「いえ。

あ、それから佐藤様」

 

「?」

 

「このデザイアグランプリは、もし勝ち残り魔王を倒す事が出来た方には、報酬として願いを叶える権利をもう一つ増やす事ができ、つまりはどんな願いも2つ叶えられるという事です」

 

「マジっすか⁉︎」

 

「ですので、今宵のデザイアグランプリ。頑張ってください」

 

まさかの情報に、カズマは更にやる気を激らせる。

 

 

「(そういえば、あのギーツって人。出てるかな)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜翌日〜

 

『皆様、昨晩はよく眠れましたでしょうか?

本日はこれよりデザイアグランプリの記念すべきファーストミッション。宝探しゲームを始めます!』

 

その日の朝、カズマ達は控え室の巨大モニターから話しかけるツムリの前で立つ。

 

「か、カズマカズマ(はいカズマ)!アレは何なのです⁉︎何かの魔法なのですか⁉︎」

 

テレビなどを知らないめぐみんはそのモニターに興奮し、ダクネスもめぐみんほどでは無いが驚いていた。

 

「落ち着けって、話が聞けないだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『宝探しゲームとは、仮面ライダーの皆さまが使うアイテム”レイズバックル”を手に入れる為のミッションです。

ルールにつきましては昨日、控室に準備したルール説明書を読み既に理解していると存じますが改めて説明いたします』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この宝探しゲームは、今から皆さまを転送する森の中に現れた盗賊ジャマト達の中の数体が隠し持っておりライダーとそのパーティーメンバーの皆さまには、協力してそのジャマトからバックルを奪い取ってもらいます。

戦法は自由ですが幾つか注意点があります。

まず、他の方が手に入れたバックルを無理矢理奪い取ったり他のプレイヤーを殺害または攻撃してしまうと、スコア減点、あるいは強制退場しそこで脱落となります。妨害行為をしてもそれは適用されます。

それから、このゲームには制限時間がございます。なので、制限時間までにアイテムを手に入れられなかったパーティーもそこで脱落となりますのでご注意ください。

それでは、皆さま。転送開始及び第一ウェーブまで残り1分です』

 

 

 

 

 

 

 

ツムリの説明が終わり、モニターにはカウントダウンが表示される。

 

 

「いよいよだな。お前ら、分かってるとは思うけど勝手な行動だけはするなよ?」

 

「大丈夫よ!少しは私たちを信用なさいな(信用出来ないから言ってんだよ)!」

 

「あぁ…いよいよ始まるな。いったい私はどのような目に合うのだろう(いやだから勝手な行動はするなよ?)!」

 

「ふっふっふっ!いよいよ開幕ですデザイアグランプリ!我が爆裂魔法が火を噴くぜ(止めろよバックルごと爆裂される)!」

 

 

とまあ、色々と不安が残るがもう決めた事なのでやるしかない。

とそんな時、めぐみんがカズマの今の服装に興味を持ち始めた。

 

「そういえばカズマ、その服ですけど。昨日言っていた支給品のゆにふぉーむ?でしたか。見ない服装ですが中々似合ってますね」

 

「お、そうか?あんがと」

 

今のカズマの服装はいつもの緑のジャージから紺色の服(原作ギーツのデザイアグランプリでの服装)を着ていた。

少しSF感漂う服装でファンタジー世界に合ってない気はするが、それでもジャージよりはマシであった。

 

 

そんなやり取りの間に、カウントはもう1桁になっていた。

 

「よし、行こうぜ!」

 

 

 

カズマの掛け声と共に、カウントはゼロになり彼らは他の控室の参加者も含め頭上に現れたゲートによって転送された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~宝探しゲームの舞台の森の中~

 

 

「・・・ここか」

 

転送された森に英須は立っていた。

周りには、彼以外の数人のベルトを付けた参加者とその参加者のパーティーメンバーらしき冒険者たちもいた。

 

 

「バッファやアクセルで見たあの男は居ないか」

 

 

 

「お、おい!何か来たぞ!」

 

『!?』

 

そんな時、1人の男の声でその場の参加者が英須も含めてその方向を見る。

 

 

 

「ジャ~」

 

そこには、見るからに盗賊風な装いのジャマト達が現れた。

 

 

「早速お出ましか」

 

 

 

ジャマトたちは、プレイヤーを認識し手に持っていたサーベルなどの武器で襲い掛かって来た。

 

 

「お、おいま、待っ!うわぁああああああ!」

 

「ちょっと!い、いきなりっ」

 

参加者たちは、いくら闘い慣れした冒険者たちとはいえいきなり安全だった場所から敵地に送り込まれたのは初めてだったのか対応が遅れ中にはジャマトにいきなり切り裂かれた者まで居た。

 

 

「本番前のジャマト達より手強そうだな」

 

「ジャ~!」

 

「おっと」

 

関心していると、ジャマトの1体がサーベルで切りかかってきたので慌ててそれに応戦する。

 

「っと、関心してる場合じゃねえ…な!」

 

2体3体と次々と襲い掛かって来るジャマト達の攻撃を的確に裁く。

 

振るわれてくるサーベルを躱してはカウンターを入れ、躱しては武器を持っている腕を掴みそのまま蹴りを入れた。

 

そうすることで、ジャマトの1体が持っていたサーベルを落としたので直ぐに拾いそれを使って別のジャマトに斬りかかる。

 

「ジャッ!?」

 

斬りかかられたジャマトは当然防御するが、何回も連続で切りつけられた事によって防御しきれなくなり遂に胴体に1撃入れられる。

 

 

すると、切り裂かれて地面に転がったジャマトからはピンクの箱”ミッションボックス”がドロップした。

 

「おっ、ラッキー」

 

「ジャあああああああっ!!」

 

想定より早くアイテムがドロップした事に英須はサーベルを倒れたジャマトに突き刺し止めを刺し、ボックスを拾い早速中身を確認する。

 

「さてさて、中身は何かなっと」

 

手に入れたミッションボックスを鼻歌を歌いそうなほど上機嫌で拾い上げスライド式の蓋を開ける。

 

その中には、ピンク色のハンマーの形をした小型のバックルが入っていた。

 

「ハンマーか」

 

英須が手に入れたのは以前使っていた大型ではなく、小型のレイズバックルだった。

普通であれば当たりの大型を引けなかったことに落胆するところだが、彼の顔色にはそういったものは一切なかった。

 

「新しい武器か。面白い」

 

そうやって喜んでいる間にも、他のジャマトが彼にジリジリとにじり寄って来る。

それを彼も確認し、表情を引き締め直す。

 

「試してみるか」

 

 

《SET》

 

 

英須は早速手に入れたバックルをドライバーの右スロットにセットする。

すると、彼の右側にはピンクのハンマーの絵柄とローマ字で”HAMMER”の文字が浮かんでいた。

 

そして、変身ポーズを取りジャマトに人差し指を向ける。

 

「変身」

 

彼はバックルのハンマーヘッドを下に押す。

 

すると、肩に装甲や拡張装備”マゼンタオーバープレート”が装着され右手には片手持ちハンマー”レイズハンマー”が装備される。

 

 

《ARMED HAMMER》

 

《REDAY FIGHT》

 

ギーツ・ハンマーフォームに変身した英須は、感触を確かめる。

 

「おお、良いね。前のマグナムは遠距離だったから、久々に近距離戦が出来るな」

 

レイズハンマーを色々な角度で見つめて、数回素振りをするなど感触を確かめていると近寄って来たジャマトが斬りかかって来た。

 

「うおっと!」

 

それをレイズハンマーで防ぎ、その後ろから次々と襲い掛かって来るジャマト達の攻撃をハンマーで防いだりサー別の腹を蹴ったりし的確に対応していく。

 

「ほらよっと!」

 

そんなジャマト達の攻撃をいなしていき、その内の2体の頭と右から顔目掛けて一撃を入れる。

 

すると、流石に頭部への攻撃は堪えたのか2体のジャマトは絶命し動かなくなった。

 

「意外と使いやすいなコレ」

 

「じゃ、ジャマッ!?」

 

「ほれほれドンドン行こうか!

ハンマークラッシュ!」

 

ギーツはレイズハンマーを腕で回し、残りのジャマト達に向けて攻撃を繰り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな、森の各地点で戦闘が開始されている中、カズマ達はというと。

 

「ぎゃああああっ!危ねっ!」

 

「か、カズマさん!カズマさーん!」

 

「ちょっ!?ち、近すぎます!これでは爆裂魔法が」

 

「フハハハハッ!どうして、お前達の攻撃はこんなものか!」

 

只今絶賛ピンチ(約一名喜んでおりジャマトを困惑させているが)に陥っていた。

 

「こ、コイツら多分下手なモンスターより強いだろ!」

 

「ねえどうするの!?これだとめぐみんの爆裂魔法も使えないし、ダクネスは攻撃当たってないし、私もあいつ等相手だとほぼ何も出来ないんですけど!」

 

もしこれが、まだジャイアントトードであれば違ったかもしれないがジャマトは未知のモンスターなだけあってカズマ達は苦戦を強いられていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ふ、伏せてください!『ライト・オブ・セイバー』!」

 

「「「「!?」」」」

 

突如聞こえた少女の言葉に、カズマ達はカズマがダクネスを無理矢理地面に倒しその他も慌てて伏せる。

 

すると、ジャマト達を横なぎの光が薙ぎ払いなぎ倒していった。

 

ジャマト達は断末魔を上げ、その内の2体がミッションボックスをドロップして爆発四散していった。

 

 

 

「い、今のって…」

 

 

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「へ?」

 

困惑しているカズマ達の元に、一人の少女が駆け寄って来た。

その少女は、主に黒い服に身を包み白いミニスカートを履いた少女で彼女の腰にはカズマと同じデザイアドライバーが巻かれていた。

そして、彼女の瞳はめぐみんと同じ赤色だった。

 

「あ、アンタは?」

 

「わ、私はその…あっ!」

 

カズマが名前を聞くと、少女の視線は伏せた状態から立ち上がっためぐみんに向けられた。

 

「め、めぐみん!久しぶりね!」

 

「え?めぐみんの知り合いか?」

 

「どりゃああああああああっ!」

 

「ええっ!?」

 

彼女の明らかに友人に再開したらしい口ぶりに対し、なんとめぐみんは彼女に襲い掛かり胸倉を掴んだ。

 

「何ですか!何ですか今の完璧すぎるタイミングは!

しかも!?どうして貴方までそのベルトを付けてるんですかズルいですよ!」

 

「ちょっ!?止めてよめぐみん!どうしていきなり掴みかかって来るの!?」

 

「お、おい落ち着けって。結局この子は誰なんだよ」

 

カズマは掴みかかっているめぐみんを引きはがし、荒い呼吸を整えて彼女の紹介を始めた。

 

「彼女はゆんゆん。私と同じ紅魔族なのですが、紅魔族が誰しもやるカッコいい名乗りが出来ないので里ではいつも浮いていました」

 

「ちょ、ちょっと!今はそれは関係ないでしょ!

って、そ、それより!」

 

ゆんゆんと呼ばれた少女は、めぐみんの紹介と説明に赤面しながらジャマトからドロップした2つミッションボックスの内の1つをカズマに差し出した。

 

「こ、コレどうぞ!」

 

「え!?良いのか?」

 

「は、はい!もともと私が皆さんの得物を横取りした様なものですから」

 

「それじゃあそっちも渡してください。ケチ臭いですよ」

 

「ええっ!?」

 

「おいやめろよ!お前はチンピラか何かか!」

 

カズマはゆんゆんに1つで良いと言ってミッションボックスを受け取り、2人はそれぞれ自分が手に入れたバックルを確認する。

 

カズマが確認した箱の中には、バイクのハンドルの様な赤い大型バックル”ブーストレイズバックル”が、

ゆんゆんの確認した箱の中には爪の様なパーツが着いた小型のバックル”クローレイズバックル”だった。

 

「これって、この前の凄いヤツか!」

 

「私のは、何だか爪っぽいですね」

 

「まあ何にしても、これで脱落って事は無くなったな。

後は、何とかあいつ等にやられないようにするだけだ!」

 

こうしてカズマたちは無事バックルを手に入れ、その後は途中で遭遇したゆんゆんと共にジャマト達と戦闘を行っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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宝探しゲーム最終ウェーブ:チーム分け

 

宝探しゲームの第一ウェーブが終わり、カズマ達仮面ライダーは元の控室に戻されていた。

 

「つ、疲れたー…」

 

カズマは控室に着くなり部屋に備えられたソファーにぐったりと倒れた。

 

あの後もカズマ達はゆんゆんという紅魔族の少女と共に襲い来るジャマト達を迎え撃ち倒されないようにしつつ、目的のレイズバックルを獲得していった。

 

結果としては

カズマ:ブースト アロー ウォーター

 

ゆんゆん:クロー ハンマー 

 

というカズマが1つ多く手に入れる結果に終わった。

 

「全くだらしないですよ。その調子ではこの先の戦いで真っ先に脱落するのが私たちになっちゃうじゃないですか」

 

「そうだぞカズマ。そんな簡単に音を上げるとは何事だ」

 

「そーよ。手っ取り早く魔王討伐できるかもしれないこのチャンス!早々に脱落するなんて許せないわよ!」

 

「て、テメェ等…」

 

仲間たちの自分を労う言葉にイラつくカズマだったが彼が怒ってるのは別の事だ。

 

彼女たちは確かにカズマと一緒にジャマトと戦いはした。

しかし、実際のところはめぐみんは爆裂魔法を撃って戦えなくなった上にバックルごと消滅させた事で本来であれば手に入る筈だったバックルを手に入れられなかったこと。

ダクネスは攻撃が全く当たらず、それどころか自分からモンスターに突っ込んで行くので折角隠れてジャマトを不意打ちしようとしても全てが台無しになる。

最後にアクアだが、彼女はアンデッドでないとほぼ無力な上に自分からジャマトに突っ込むくせに追いかけられるとギャン泣きして逃げて来て更にピンチに陥る。

 

そうしたことで、本来であれば上級職ばかりのパーティーで今以上にバックルを取れた筈なのに3つという結果に終わったのだ。

 

 

つまり何が言いたいかと言うと、ウチのパーティーメンバー使えねぇ。

 

「ま、まあでも。クリア条件のバックルは手に入れたんだ、少なくともこのミッションは大丈夫だろ」

 

「そうですね。

しかし、その赤い大きいバックルと違って他2つは小さいのですね。どうしてでしょう」

 

「そうだな。

お、このルールブックという物に書いてあるな。

”バックルには大型と小型の2種類があり、大型は小型と比べ物にならない力を持つ”と書いてあるな」

 

「えーつまり私たちが手に入れたのってアタリ1つとハズレ2つって事?

カズマ、アンタ使えないわね」

 

ブチッ

 

アクアのこちらの気も知らない言動。

いつもなら耐えるところだが、流石の彼も我慢の限界らしい。

 

「おーまーえーなー!

良いか!?多分、というかもう確実に!お前の不幸が俺の幸運をかき消してむしろマイナスにしてるんだよ!

そんな中で?アタリを引けただけでもありがたく思え!

というかお前は寧ろジャマトに勝手に喧嘩売って?ギャン泣きして?その後はほぼ俺とゆんゆんって子に任せきりで隠れてたろうが!

そこまで大口叩くなら?少しは役立ってから言いやがれこの駄女神がぁっ!!!」

 

「ぬぁんですってぇえええええ!!!」

 

カズマの爆発した怒りの言葉にアクアは目尻に涙を浮かべるどころか、最早涙を流しカズマに掴みかかりとのまま取っ組み合いが開始された。

めぐみんとダクネスはというと、コレは自分たちの手に負えないと半分諦めムードでその光景を見ていた。

 

 

 

 

 

『皆さま、お疲れ様でした』

 

 

そんな時、控室のモニターにツムリが映し出される。

カズマもアクアも流石に取っ組み合いを止めてモニターに目を向けた。

 

 

 

『今回の宝探しゲーム第一ウェーブ。盗賊ジャマトの持っているライダー達は御覧の方々になります』

 

ツムリが端末を操作するとモニターには幾つものライダーのマークが表示され、その後にほぼ殆どのマークに×が入れられる。

その中で、×が付いてないのはカズマを含めたたった6人だった。

 

「お、おいおい。こんなに脱落したのか?」

 

 

『今回のゲームで生き残ったライダーは、仮面ライダーバッファ、仮面ライダーパンクジャック、仮面ライダーウルフ、仮面ライダーナーゴ、仮面ライダータイクーン、

そして、仮面ライダーギーツです』

 

「「「「!?」」」」

 

ツムリの読み上げた最後のライダーの名前に、カズマ達は驚愕する。

それは、以前アクセルの門前でキャベツジャマトから助けてくれて、カズマがデザイアグランプリに参加しようと決意するキッカケになったライダーだったからだ。

 

『残ったライダーは此方の方々となりましたので、バックルを手に入れられなかった方々はこれで脱落となります』

 

ツムリはそう告げるとライダーのマークが×印の物全てが消え、残ったのは6つとなった。

 

『それでは、皆さまには第二ウェーブに備えてしてもらう事があります』

 

「え?第二?

まだあんの?」

 

 

『恐らくライダーの皆さまは第二ウェーブがある事に驚いている事でしょう。

しかし、皆さまが遭遇した盗賊ジャマトには親玉となるジャマトが2体いるのです。

その第二ウェーブでは、その親玉の盗賊ジャマトを皆さまに討伐してもらいます。

ですが、親玉は常に周りに手下を連れているため1パーティーで倒すのは恐らく厳しいでしょう。

更に、これから先のミッションに出て来るジャマトも全力で参加者の皆さまを倒しに来ます』

 

ツムリの淡々とした説明にカズマは少し戸惑う。

自分たち以外のライダーが早々に退場してしまう力を持つジャマト達。自分たちは偶々ゆんゆんが居たから大丈夫だったが、これから先も上手くいくのかどうかと。

 

 

『ですので、我々運営はライダーの皆さまたちにチームを組んでもらう事にしました』

 

 

ツムリの言葉の後に、カズマのライダータイクーンのマークを含め裏向きにして隠されシャッフルされ始める。

 

そして、数回その裏返しにされたカードが最終的に3対3になるように並ぶと表に返される。

 

そこには、白い狐、緑の狸、黄色の猫。

紫の牛、オレンジのパンダ、青の狼のマークが並べられた。

 

『皆さまには、ギーツ、タイクーン、ナーゴチーム。そしてバッファ、パンクジャック、そしてウルフチームとなりました。

皆さまには、御覧のチームで次のミッションとそれ以降のミッションを熟してもらいます。

勿論、チームでのバックルの貸し借りは可能でミッションクリア時の経験値やスコアも皆さまで共有することができます』

 

これはカズマ達にとって渡りに船だった。

 

「ちょっとギーツって前に会ったあの白い狐のライダーでしょ?

なら、このデザイアグランプリの事も熟知してるに違いないわ!」

 

アクアの言葉にはカズマも同じ気持ちだった。

この何が来るか分からないデザイアグランプリで、ギーツという自分たちよりこのゲームを熟知しているライダーが同じチームなのはとても心強かった。

 

『皆様には、これからこのチームでミッションに挑んでもらいます。

それでは、次の第二ウェーブに備えて休息と共にチームでの親睦を深める為に皆様の控え室をチーム専用のものへと変更させてもらいます。

皆さま、部屋の変化に驚くと思われますが危ないのでしばらくその場から動かずにいてください』

 

 

ツムリのその言葉と共にカズマ達が居る控室が床も含めて白い光に覆われあ。

 

「おわっ!?な、なんだ!?」

 

「ちょちょっと!なんだか部屋が光ったんですけど!」

 

カズマとアクアだけでなく、めぐみんとダクネス(彼女は何故だか何か期待するように頬を赤くしているが)も驚いて部屋を見渡す。

 

 

 

すると、彼らのいた控室はまるでデータが作り替わるように崩れていった。

その代わりの様に、その崩れた場所に新たな部屋が現れた。

 

その部屋は、先ほどの控室より広い中央にモニターと赤いソファーが備えられ、部屋の端の方にはカウンター席の様なものが設けられていた。

 

「こ、ここって…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「め、めぐみん!?そ、それに皆さんも!」

 

「?」

 

急な事に困惑する彼らの前に、つい先ほど、具体的にはジャマーエリアとなった森の中で聞いた少女の声だった。

 

「ゆんゆん!」

 

「ぐ、偶然ですね!皆さんと私が同じチームだなんて」

 

「カズマ、私たちのチームはどこにいるのでしょう」

 

「めぐみん!?」

 

「お前止めてやれよ。可哀そうだろ」

 

どこか興奮した様子のゆんゆんにめぐみんが無慈悲というか酷い言葉をかける。

この言葉から、彼女たちはいじめっ子といじめられっ子という間柄なのだろうと何となく察したカズマであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前達が俺のチームメンバーって事で良いのか?」

 

「!?」

 

突然聞こえて来た、どこかで聞いた様な男の声が今度は聞こえて来た。

 

 

カズマたちが振り返ると、そこにはカズマやゆんゆんと同じデザイアグランプリの運営から支給された服を着たカズマより1つか2つ程年上らしい男がいた。

 

そしてその腰には、中心に白い狐のIDコアを嵌めたデザイアドライバーが巻かれていた。

 

「あ、アンタは。さっきミッションが始まる前に会った…」

 

「こうやって直接顔を見せて話すのは2度目か?仮面ライダータイクーン」

 

その男は、カズマが宝探しゲームが始まる前に話しかけられた男、最上英須だった。

 

「アンタが、ギーツだったのか」

 

「ああ。アクセルの街では、お互いこんな形で再会するとは思わなかったな。

アクセルだと必要ないと思って名乗らなかったが改めて自己紹介しておく。

仮面ライダーギーツ、最上英須だ。エースって呼んでくれ」

 

「あ、俺佐藤和真って言います。カズマで良いですよ」

 

「そうか、まあこれから同じチームなんだ。よろしくなカズマ」

 

カズマはエースの人の良い笑顔に少し緊張が解け差し出された手を掴み握手を交わす。

 

「次は私ね。

私は、清く美しくも麗しい水の女神、アークプリーストのアクア様よ!」

 

「と、思い込んでる可哀そうな奴なんです」

 

「なんでよー!」

 

 

 

「ふふふ、我が名はめぐみん!

最強の攻撃魔法である爆裂魔法を操り、このデザイアグランプリに爆風を巻き起こす者!」

 

「私はダクネス。クルセイダーだ」

 

「よろしく」

 

アクアの自己紹介は色々言われ、めぐみんはいつもの中二病を発揮しダクネスだけは何とかまともな自己紹介を終え、次はゆんゆんの番となった。

 

「え、えっと…私は、その…」

 

「早くしてくださいよ。

早く紅魔族特有のカッコいい名乗りをしないと、絶好ですよ」

 

「えぇっ!?ま、待って!や、やるから!ちゃんと自己紹介するから絶好は止めてぇ!」

 

めぐみんの容赦のない言葉の刃が襲い掛かり涙目になるゆんゆんを見て「もうやめたげてよぉ」と言いたい衝動を何とか抑えるカズマを他所にゆんゆんはポーズを取り始めた。

 

「わ、我が名はゆんゆん!

アークウィザードにして、上級魔法を操る者!そして何れは紅魔族の長となる者!」

 

 

「「「「・・・・」」」」

 

沈黙。只々、沈黙がその場を支配した。

 

「うっ(や、やっぱり恥ずかしい…)」

 

「そ、そうか。ゆんゆんって言うのか。

よ、よろしく…」

 

「あ、はい…」

 

何とも、何とも気まずい空気だけがその場を支配した。

そして、彼らはそんな気まずさから抜け出すのに約数分を費やしたとか。

 

ちなみに事の張本人であるめぐみんは、一人どこ吹く風という感じで平然でしていたとか。

 

 

 

 

 

 

 



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宝探しゲーム:最終ウェーブ

 

ゆんゆんの紅魔族特有の自己紹介で少しばかり衝撃を受けたがその後は何とか持ち直し、遂に宝探しゲームの最終ウェーブが来ようとしていた。

 

「なあ、そういえばエースさん」

 

「呼び捨てで良いぜ。お前も変に敬語とか疲れるだろ?」

 

「じゃあエース。

アンタってそういえばどんなバックル持ってるんだ?ゆんゆんのはさっき一緒に戦ったから知ってるけど。

これから同じチームなんだしさ、味方の手の内は知っておきたいだろ?」

 

カズマの言葉にエースは成程と納得する。

確かにこれから行われる宝探しゲームに現れるというジャマトは他の盗賊ジャマトより手強い。

だからこそチームを組ませたわけで、これから共に戦うなら情報共有は大切だろう。

 

「ああ、それなら」

 

エースは目の前に指を振り下ろす動作をする。

すると、彼の目の前によくゲームにあるシステムメニュー(開く時の動作はソードアートオンラインのアレ)が開かれそれをカズマに見せる。

 

「こんな感じだ」

 

「すっげ(ファンタジー感台無しだけど兎に角スゲェ)」

 

内心で様々な葛藤を抱え抑えつつ、カズマはエースが渡してきたモニターを見る。

 

 

そこには、エースの所有しているバックルの画像と名称が記されていた。

 

 

 

 

所持バックル:ハンマー ウォーター シールド

 

 

エースが所持していたのは、カズマの予想に反して小型のバックルばっかりだった。

 

「あれ?」

 

「ガッカリしたか?」

 

カズマの少し間の抜けた表情で彼がどう思っているのかを察したエースは苦笑いを浮かべる。

 

「何よ、ハズレバックルばっかりじゃないの!

ねえ、この前の凄いヤツはどうしたのよ」

 

「お前はもう少し言葉を選ばんかい!」

 

「いや良いって。

実は、前もっていたバックルは色々とあって俺の手元にはもう無くてな。また一から集め直しって訳だ」

 

「「な、成程…」」

 

もう何度目になるか分からない取っ組み合いになる前にエースの説明を受けえた事でカズマとアクアは出そうとした手を引っ込める。

 

しかし、だからといってカズマの不安が消えた訳でも無かった。

 

「(しかし、この前の銃のヤツは無いのか。

とすると、大型は俺の持ってるブーストバックルだけ…)」

 

「まあ安心しろ。

まだ状況が不利なままと決まったわけじゃない」

 

カズマの少し不安げな様子を察したのか、エースは余裕を崩さずにカズマに説明を始めた。

 

「俺たちがこれから戦う盗賊ジャマトとその親玉はついさっき戦ったジャマト同様にバックルを落とす可能性があるんだ。

つまり」

 

「…次のゲームで盗賊ジャマトの中にまだ他にもバックルを持ってる奴が居る。

だから、ソイツからバックルを奪えれば」

 

「一気に状況が有利になる」

 

「そういう事」

 

エースの言葉にカズマとゆんゆんが(ゆんゆんの事を若干忘れかけていたのは秘密である)続ける事で状況を把握する。

 

「つまり、私たちは盗賊ジャマトっていう奴の下っ端を蹴散らせば良いのね!」

 

「それなら、私の出番ですね!」

 

「そのジャマトとやらの攻撃を受けるのは、私に任せろ!」

 

 

 

 

 

 

「言っとくけど、お前ら今のところ何の役にも立ってないからな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『皆さま、準備は整いましたでしょうか。

それでは、宝探しゲーム最終ウェーブ。頭領ジャマトと盗賊ジャマト討伐ミッションを開始します』

 

 

第一ウェーブから数十分後。

いよいよ宝探しゲームの最終ウェーブが開始されようとしていた。

 

それぞれのチームの控室では、勝ち残った面々がライダーはドライバーを装着しそのパーティーメンバーたちは各々の武器を持ち準備は完了していた。

 

『今から皆さまを頭領ジャマトが居るエリアに転送します。

尚、2体の頭領ジャマトの位置は離れているので他のチームとの協力は望めないものとご理解ください。

それでは、転送を開始します』

 

ツムリの号令と共に、それぞれのチームの頭上に転送用のゲートが出現する。

 

そしてゲートは、参加者全員を覆う様に降りていき降り切った時には全員の転送が完了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~バッファside~

 

僕の名前は御剣響夜。

このデザイアグランプリでは仲間のフィオとクレメアと共に戦い僕自身は仮面ライダーバッファとして参加している。

 

今回の正式版らしいこのデザグラでは、どうやらチームで行動するらしく僕ら以外のライダーはパンクジャックというオレンジの熊?の人は”木村正義(きむら まさよし)”という茶髪で陽気な感じの人。

そしてウルフという青い狼の人は”東条霧葉(とうじょう きりは)”という長い黒髪を後ろで結んでいる人だった。

 

そんな彼らとチームを組んだ僕たちは、今は頭領ジャマトとその他複数体いる盗賊ジャマトの前に居る。

 

「皆さん、気を引き締めていきましょう!」

 

「任せてキョウヤ!」

 

「私たちの力、見せてやりましょう!」

 

「おっ、アンタ等ノリが良いな。こりゃ楽しくなりそうだ」

 

「無駄話はそこまでにしておけ。行くぞ」

 

とまあ、僕も含めて正確とか色々とまとまりが無いけどこれから一緒に戦っていく仲間なんだし頑張っていこうと思っている。

 

 

そう思っている間に僕らは、フィオとクレメアを除いてデザイアドライバーを腰に巻きそれぞれのバックルをセットする。

 

 

 

《SET》

 

僕は紫の大型バックル”ゾンビレイズバックル”のレバーを捻って戻し、マサヨシさんとキリハさんもそれぞれ小型のチェーンアレイバックルのアレイ部分を引き大型の前回ギーツが使っていたマグナムバックルのシリンダーを回し引き金を引いた。

 

「「「変身!」」」

 

《ZOMBIE》

 

《ARMDO CHAINARRAY》

 

《MAGNUM》

 

《LADY FIGHT》

 

 

僕たちは同時に変身して、僕は仮面ライダーバッファ・ゾンビフォーム。マサヨシさんは仮面ライダーパンクジャック・チェーンアレイ。そしてキリハさんは仮面ライダーウルフ・マグナムフォームに変身した。

 

僕はチェーンソー型の片手剣”ゾンビブレイカー”をマサヨシさんはオレンジ色のチェーンアレイを、キリハさんは”マグナムシューター4OX”をライフルモードにして構えフィオとクレメアもそれぞれ短剣と槍を構える。

 

 

「よし、行きましょう!」

 

「「ええ!」」

 

「おう!」

 

「…ああ」

 

あ、キリハさん一応返事は返してくれるんだ。意外と良い人なのかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ギーツside~

 

俺たちは転送されて早々に、件の頭領ジャマトと複数体の盗賊ジャマトに出くわした。

 

「おいおい、いきなりかよ!」

 

「ど、どうするんですか!?」

 

「落ち着け、取り合えず変身しないことには始まらない」

 

俺は少しばかり動揺する仲間を宥めて直ぐに変身するために各々が手に入れたバックルを手に取る。

 

俺はハンマーとシールドを。カズマはアローとブーストを。そしてゆんゆんはクローを取り出しセットする。

 

《SET》

 

「「「変身!」」」

 

各々の変身ポーズを取り、俺はハンマーを下に押しシールドを押す。カズマはアローの弓部分を引きブーストのハンドルを捻る。そしてゆんゆんはクローの爪部分を引く。

 

 

 

《DUAL ON》

《ARMDO HAMMER》

《ARMDO SHIELD》

 

《DUAL ON》

《BOOST》

《ARMDO ARROW》

 

《ARMDO CROW》

 

《LADY FIGHT》

 

 

 

俺たちはそれぞれ、ギーツ・アームドハンマーシールド、タイクーン・ブーストアームドアロー。そしてナーゴ・アームドクローに変身した。

 

「おお!これが仮面ライダーか!」

 

「私も初めて変身しましたけど、なんだか力が湧いてきます!」

 

「ぬぅ…分かってはいましたがやっぱりカッコいいしズルいです…」

 

それぞれ恐らく初めて変身する仮面ライダーだからか感動しているのは今は置いておこう。

 

その間に、頭領ジャマトを戦闘に他の盗賊ジャマトがこちらにジリジリと迫って来る。

 

「トビオズグオエインビカカル!」

 

頭領ジャマトは何か言いながら恐らく俺たちに攻撃しろ的な事を言って指示しているのだろう。

 

「ったく、ここではリントの言葉で話せっての」

 

「…リント?」

 

「いや、何でもない」

 

何か言わなくちゃいけない気がしたから言ったが、何だったんだ今の。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~NOside~

 

ギーツたちは変身を終えると、パーティーメンバーを含め戦闘を開始した。

 

ギーツは右手のハンマーでジャマト達を攻撃し盾で防御もしつつ、タイクーンは距離を取りアローで攻撃しながらブーストの機動力で立ち回る。

そしてナーゴは、魔法も交えてクローによる攻撃を行っていた。

 

「今度こそ目に物見せてくれるわこのよくわかんないモンスター共。

《ゴッドブロー》!」

 

アクアは、流石に今まで好き勝手にやられて苛立っていたのか右手にエネルギーを集め強力な右ストレートを繰り出す。

その拳は盗賊ジャマトの顔面に命中し、ジャマトはそこから木片の様な物を飛び散らせ砕け散った。

 

「ふふん!私が本気になればこんなもんよ!」

 

「凄いですアクア!

ってダクネス!コッチから別のジャマトが!」

 

「何!?任せろ!」

 

めぐみんは爆裂魔法がまたしても使えず、結果としてダクネスに防御をしてもらい杖を鈍器のようにして殴る戦法を取っていた。

 

「にゅうっ!ど、どうした!お前達の攻撃はこんなものか!」

 

最早カズマ達は驚かないが、ダクネスはジャマトの攻撃を受けて顔を赤くしていた。

 

しかし、その様子に慣れていないギーツは思わずダクネスの様子にドン引きする。

 

「な、何であの人…顔赤くして嬉しくしてんの?」

 

「すみません…ホントウチの仲間がすみません…」

 

 

と、そんな漫才擬きを繰り広げている間に頭領ジャマトがギーツに襲い掛かる。

 

「危なっ!」

 

「ジピトルクビトケチャ!」

 

「だから、何言ってるのか分からないっての!」

 

頭領ジャマトが両手に持つ片手斧による攻撃を繰り出し、ギーツは盾で的確に攻撃を防いだり裁いたりしながらハンマーで攻撃を行う。

しかし、矢張り小型では限界があるのか相手を退かせる程度のダメージしか与えられていない。

 

「ちっ(前回もそうだが、やっぱりボス系のジャマトには小型だと効果は薄いな。せめてブーストで攻撃出来れば)」

 

ギーツはブーストを持っているタイクーンを見るが、そちらも他のジャマトを相手にしていて援護をしてもらう余裕は無い。

ギーツは頭領を抑えていて仮に今タイクーンを呼んで援護してもらったとしても他の盗賊ジャマトに襲われて形成は更に不利になってしまう。

 

 

 

 

 

 

が、その時タイクーンの方で動きがあった。

 

 

「ッ!?これは!」

 

タイクーンがアローで仕留めたジャマトの内の一体が、偶然にもマゼンタ色のミッションボックスを落としたのだ。

 

タイクーンは急いでそのボックスを拾い蓋を開ける。

すると、中には大型のシアンカラーのバックルが入っており、海賊の髑髏マークの下に、交差する剣と銃が意匠に入っていた。

 

「大型のバックル!」

 

タイクーンはようやく二つ目のアタリを引けた事に喜び直ぐ様それを使おうとする。

しかし、そこで頭領ジャマトと戦っているギーツの姿が目に入る。

 

「あっ」

 

そこで彼は考えた。このバックルを自分が使うかギーツに使わせるか。

 

普通に考えれば、ここは自分が使おうと考えるところだろう。

だが、彼の脳裏にはもう一つの光景。つまりは以前キャベツジャマトに襲われた際にギーツに助けられた光景が過ぎる。

 

「………」

 

先に言っておくが、タイクーンこと佐藤和真という男は決して常に流されやすいタイプではない。

やる時はやるし相手がたとえ可愛らしい見た目のモンスターや女でもドロップキックを喰らわせられると自負している程だ。

しかもその覚悟はこの世界でアクア達に振り回されている内に徐々に硬くなったと言っても良いだろう。

 

 

だが、それと同時に彼も捻くれているとはいえ1人の男だ。

彼にとって、一度助けられてそのままというのは、何故だか無性に気持ち悪かった。

 

「(ハァ…折角手に入れたってのに)しょうがねえなぁ!」

 

タイクーンはそう叫ぶとバックルをギーツ目掛けて投げた。

 

「エース!これ使え!」

 

「⁉︎」

 

タイクーンの呼び声にギーツは頭領ジャマトにハンマーを投げつけて後退したった今タイクーンが投げてきたバックルをキャッチする。

 

 

「これは…」

 

「これで助けられた礼はしたからな!」

 

タイクーンはサムズアップした後再び他のジャマトとの戦闘を再開する。

 

「アイツ…

ハハッ。とんだお人好しだな。(だけど、助かった)」

 

ギーツは受け取ったバックルを見て思わずほくそ笑んでしまう。

 

そして、バックルを見る。

 

「これは、パイレーツか。

盗賊と海賊。夢の対決と行こうじゃないか」

 

ギーツは既にセットしているバックルを外し、新たに新しく手に入れたバックル“パイレーツレイズバックル“をセットする。

 

《SET》

 

音声と共に待機音が流れ、フィンガースナップをし頭領ジャマトを見ながらギーツは新たな姿への変身を行う。

 

「変身」

 

その言葉と共に、パイレーツバックルの剣と銃の部分をスライドさせた。

 

すると、ギーツの横にPIRATESの文字と共に1つの鎧が海の泡のエフェクトと共に生成される。

その鎧は出現した機械碗によってハンマーとシールドを弾き飛ばす形で装着される。

 

 

 

《PIRATE》

 

《LADY FIGHT》

 

 

 

その鎧は、肩のアーマーがガレオン船の先に部分になっており、胸部は海賊の船長がするような胸アーマーになっていた。

そして、右手にはサーベル型の武器”パイレーツサーベル”。左手にはピストル型の武器”パイレーツガン”がそれぞれ握られ、ギーツの複眼の色もシアンカラーに染まっていた。

 

「ラサラチャオ!?」

 

「相変わらず何言ってるか分からんが」

 

 

 

 

 

 

「さあ。ここからが、ハイライトだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パイレーツフォームに変身したギーツはサーベルで、頭領ジャマトは手に持つ片手斧で接近戦を仕掛ける。

 

「そら!」

 

「ジャッ!」

 

ギーツの放った攻撃は頭領ジャマトの両手に持つ片手斧によって防がれ、攻撃を止められれば逆の手に持つ片手斧に反撃されてしまう。

 

しかし、ギーツは左手に持つパイレーツガンで至近距離から弾丸を乱発する。

 

「!?」

 

「態々近接戦に付き合う必要は無いよな!」

 

頭領ジャマトはパイレーツガンによる連続射撃により徐々に後退させられていく。

 

「テ、テピゼラデラサ!」

 

「!」

 

頭領ジャマトは遠距離で撃たれることに痺れを切らしたのか、左手に持っていた斧をギーツ目掛けて投げる。

 

 

斧はギーツの眼前の地面に突き刺さったかと思うと起爆し土煙を上げた。

頭領ジャマトの持っている斧は爆弾にもなり、その威力は喰らえば例えライダーであろうとタダでは済まない威力だった。

 

 

しかし、ギーツはそれを起爆する直前にバク宙で後方に回避したことで凌いだ。

 

「!?」

 

「生憎、その武器のカラクリはもう見てんだよ」

 

ギーツは軽くステップすると一気に頭領ジャマトに近づきサーベルで滅多切りにする。

 

「ジャッ!がっ!?ごっ!」

 

「ほらよっと!」

 

数回切りつけよろめいた頭領に対し、右足で蹴りを与える事で頭領を後退させ片膝を着かせた。

そしてその先にベルトの上からボタンを押し半回転させる。

 

《REVOLVE ON》

 

すると、ギーツの体はドライバーと同じく半回転して上下が入れ替わるだけでなくその工程の途中で下に来るはずの上半身が上に、上に来るはずの下半身が下になったままとなり、鎧も下半身に装着される。

 

そんなギーツの変化に、他のライダー達も驚く。

 

「えっ⁉︎あんな事出来んの!」

 

「ちょっと!今ギーツの身体が凄いことになってたんですけど⁉︎」

 

 

 

 

「さーて、盛大に打ち上げだ」

 

ギーツは一旦サーベルを腰に帯刀すると、ドライバーに嵌められたパイレーツバックルを戻しもう一度スライドさせる。

 

すると、ギーツの背後に巨大な骸骨がシアン色のオーラで形成されて現れギーツが上に向かって跳躍したのと同時に続くように跳ね上がった。

 

 

 

《PIRATE STRIKE》

 

 

 

「ハァーッ!」

 

ギーツは頭領ジャマト目掛けて片足を突き出し足には鬼火の様なエネルギーを纏い”パイレーツストライク”を放つ。

 

「ジャ      ッ!」

 

頭領ジャマトは、最後の悪あがきと言わんばかりに片手斧でガードするが、キックが直撃した直後に粉々に砕かれ、その後直ぐに迫って来た口を開けた骸骨に食らいつかれてそのまま頭領本人も含めて爆発四散した。

 

 

爆発したその地点に残っていたのは、キックを終えた残心の体制から立ち上がるギーツの姿だった。

 

 

『MISSION CLEAR』

 

 

 

その後に響いたアナウンスと同時に、盗賊ジャマト達は頭領の後を追う様に消滅していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「す、スゲェ…」

 

そんな様子を、タイクーンはジャマトが居なくなった事で構えを解き見ていた。

 

そんなタイクーンに、ギーツは近づいて話しかける。

 

「よっ。バックル、サンキュー」

 

「良いって。それより良かったな、クリア出来て」

 

「だな。だが、これで終わりじゃない。

このデザイアグランプリは、まだ始まったばっかりだ」

 

そう、ギーツの言う通り今倒したジャマトは所謂中ボス。

これからのミッションでは、今以上に強力なジャマトが現れ続ける。

 

「マジかー…」

 

「ま、気楽に行こうぜ。カズマ」

 

「…はぁ。そうだな、もうここまで来たらなるようになりやがれってんだ」

 

「その意気だ」

 

そんな談笑をしている間に、彼らの頭上にはゲーム開始時と同じゲートが展開された。

 

「そろそろ時間みたいだな。…ッ!?」

 

「どうしたんだ?」

 

エースはゲートが降りようとした際に、何かの視線を感じた。

それは、周りの仲間の物ではない第三者によるものと思って慌てて周囲を見渡すが、その視線の正体は見つからなかった。

 

「…いや、何でもない」

 

どこか不気味なモノを感じながらも、転送用のゲートはギーツたちに降ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宝探しゲームが終了し、ジャマーエリアが解除された森の中。

そこには、つい先ほどまでギーツたちが居た場所に、灰色のボロボロのコートを纏った存在が居た。

 

「いやー、アレが仮面ライダーギーツか。

確かに面白い奴だ。他の仮面ライダーもそうだけど、いやはやデザイアグランプリというのは面白い」

 

その存在は、女性の様な声で楽しそうにステップを踏みながら戦闘があった形跡のある森を歩き回る。

 

「にしても、この世界に力が落ちたとはいえ女神がそのまま着ているとは。しかも、あの悪名高いアクシズ教のご神体ときたもんだ。

折角エリスが直接干渉が余りできないのに、奴が好き勝手に動き回ったら折角の準備が台無しになるかもね。アクアって昔から人の邪魔をする事だけは得意だから…」

 

女性は、少しゲンナリした感じで肩を落とす。

しかし直ぐに我に返った様に動き始める。

 

「おっと、余り長居してると”カイン”に気付かれちゃうかな。

それじゃあね、仮面ライダー諸君。精々、楽しいゲームにしてよね♪」

 

フードの女は、辛うじて見える口元に笑みを浮かべまるで最初からその場にいなかったかのように消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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デザイアグランプリ本格始動

 

デザイアグランプリ最初のゲーム、宝探しゲームが終了しエースたちは元の控室に戻されていた。

 

「な、何とか勝ったな…」

 

「お疲れ」

 

カズマは初めてのライダーとしてのデビュー戦だったからかかなり疲れており、よく見るとゆんゆんも似たような状態だった。

 

そんな彼らとは裏腹にアクアたちは逆に元気が有り余っている様子だった。

 

「ふふん!今回はちゃんと活躍出来たわよ!

何よジャマトだかジャガイモだか知らないけど大したこと無いじゃない!」

 

「爆裂魔法が撃てなかったのは残念で仕方ありませんが、まあ私の力はここぞという時にこそ力を発揮するのです!ですから、そうやすやすと見せるものではないのですよ!」

 

「あのジャマト達の攻撃、少し物足りない…いや待て?この先進めて行けば、もっと重い一撃をする奴もっ!くふぅっ!たまらんぞ!」

 

3人共、変わらず平常運転の様子だ。

 

そんな3人をカズマはジト目で見ていると、ゲームナビゲーターのツムリが彼らの目の前に現れた。

 

 

「皆さま、本日の記念すべき一回目のゲーム。お疲れ様でした」

 

 

「ツムリか。今回の報酬はどれくらい入っている?」

 

「報酬?」

 

ツムリが現れるとエースは彼女に近づきそう言う。

当然今回初めて参加したカズマ達はその言葉の意味を理解出来ずにいた。

 

「なあ、報酬ってどういう事だ?」

 

「それについては今から説明いたします」

 

ツムリはカズマの疑問に答えようと会話を一旦区切りタブレットを操作し始める。

 

すると、エースたちの前に1つの映像が映し出された。

 

「デザイアグランプリでミッションをクリアすると、先ほどモガミエース様が仰った様にそのミッションによって報酬が渡されます。

今回のミッションの報酬は、皆さまが倒された盗賊ジャマトと頭領ジャマト1体の討伐合計を合わせて50万エリスとさせていただきます」

 

「「「「「ごっ!?」」」」」

 

「ま、中ボスクラスを倒せばこんなもんか」

 

ツムリの掲示した金額にカズマ達は驚愕を隠せずにいた。

 

「ど、どうしてそんな大金が?」

 

「デザイアグランプリは命を懸けたゲームです。

ですのでその倒したジャマトに応じて、我々運営からその結果などに応じてこの世界の金銭を報酬として皆さまに譲渡しております。

なお、この賞金は現実のお金としてご利用も可能ですが余りにも大きな金額を動かく際にはスタッフに手続きが必要となりますのでご了承ください」

 

 

「ちょっと待って、つまりこのデザグラでジャマトって奴らを倒しまくれば億万長者も夢じゃないって事!?」

 

「という事は、拠点を買う金も稼げて馬小屋暮らしからはおさらばって事か!」

 

カズマにアクアはデザイアグランプリの仕組みの一部を聞いてこれからの未来に期待を膨らませ目を輝かせる。

 

「そう簡単だったら良かったのにな」

 

「どういう事だ?」

 

 

「モガミエース様の言う通りです。

今回のジャマト達は他のジャマトよりステータス的にも一番弱い分類のジャマトです。ジャマトとは進化する生命体、即ちこれから先今回の様に順調に倒せるとは限らないという事です」

 

「あっ」

 

そこまで聞いてカズマは今さっきのエースの言葉を思い出していた。

そういえばRPGなどでも段々と強くなってジャマトというのも同じなのだろうと考え始める。

 

「ですが、仮面ライダーもバックルが手に入ればいくらでも強化できプレイヤーの皆さまのレベルも上がればそれと合わさり強力な力になる事は間違いありません。

それでは皆様、報酬の授与も終わりましたのでこれより皆さまを元居たエリアに転送いたします」

 

「え!?ここに居ちゃダメなの?」

 

「そうよ!私ここを家にして住もうと思っていたんですけど!」

 

「申し訳ありませんが、この控室はデザイアグランプリでの作戦会議やゲームが始まるまでの待機場所としてしかご利用できず、ここを生活空間にすることは出来ません」

 

「「なんだぁ…」」

 

カズマとアクアは目に見えてガックリとした。

まあ、彼らからしたらこれから訪れるであろう冬を越せる拠点を手に入れられたと思ったからだ。

 

「ま、何事も自分達でやれって事だ諦めな」

 

「それでは、そろそろ予定の時刻となりますので転送を開始いたします」

 

残念がるカズマ達を他所にツムリは転送準備を始め、そのままカズマ達は元居た場所へと飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~エースside~

 

カズマ達が転送されたというのに、何故か俺だけその場に残された。

 

「おい、ツムリ。どうして俺だけ残されたんだ?」

 

「モガミエース様には仮面ライダーバッファ、ミツルギキョウヤ様から伝言を預かっています」

 

「伝言?」

 

ツムリの言う伝言にも勿論驚いたがその伝言の相手がバッファだという事に俺は困惑した。

 

そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、ツムリはタブレットそ操作し音声を再生した。

 

 

「『今回のデザイアグランプリでも、絶対に生き残ってください。チームの人達とも上手くやってくださいね。

それから2人は貴方に対して結構キツイ態度をしていますが、2人なりに貴方に”あの事”を気にしないようにしてもらうために考えた結果なんです。少しきつ過ぎるところもありますが…。だから、2人の事はどうか許してあげてください。

それと、エースさん。”ギンペンさん”達の事は貴方だけの責任ではありません、だからあまり思いつめないで下さいね。だけど、デザイアグランプリの勝ちだけは譲る事は出来ません。

それでは、これで伝言は終わりです』」

 

そこまでミツルギの声が聞こえ音声は終了した。

にしてもアイツ・・・。

 

「相変わらず、お人好しなこった」

 

「ミツルギ様も前回のデザイアグランプリには参加していらっしゃいましたし、あの時の事は我々としても残念に思います。だから彼なりに同じ生き残りである貴方を気遣っての事でしょう」

 

「・・・」

 

 

 

ツムリの言うあの時とは、まだこのデザイアグランプリの参加者が俺とアイツのパーティーメンバーを含めて数人しかいなかった時の事だろう。

 

 

 

 

 

あの時、あの悲劇は起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『おい!しっかりしろ!おいっ!』

 

『エース…』

 

今でも目をつぶれば、あの光景がまるでついさっきの事の様に感じてしまう。

 

『死ぬなよ!お前、願い叶えて幸せになりたいんだろ!』

 

ソイツは人生そのものに絶望していた。だからその時のデザイアグランプリでそれを覆そうと賭けに出た。

実際ソイツの実力は申し分無かったし、他のライダーも苦戦はしても死ぬ事は無いと思っていた。

 

 

 

 

だが、そんな時に最悪なジャマト達と遭遇して結果俺とミツルギ達を除いて全滅した。

 

『ごめん…やっぱり、俺には無理だった…みたいだ』

 

俺の手の中でソイツは、途切れ途切れな震える声で言葉を紡ぎ腰のドライバーに嵌められたIDコアは無常にもひび割れていた。

 

『エース…こんな、俺の友達…に、なってくれて…ありがとう…』

 

『嫌だ、死ぬな!こんな形で死ぬなよ!せめて最後くらい幸せになって死ね!』

 

俺の必死の叫びも虚しく、ソイツの体は無情にも崩れ去ってっ仕舞った。

最後にそこに残ったのは、ソイツが使っていたマグナムのバックルだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なあ、ツムリ。ミツルギに俺から伝言で『安心しろ、もう乗り越えた』って送っておいてくれ」

 

「畏まりました。それではモガミエース様、ファーストミッションお疲れ様でした。

これより転送を開始します」

 

 

俺はツムリにそう言い残し彼女の手によって転送される。

 

 

 

このデザイアグランプリ、絶対に魔王の討伐だけは誰にも譲れない。

俺の願いを叶えるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~NOside~

 

デザイアグランプリの運営でありゲームマスターに選ばれた男”ギロリ”は焦っていた。

 

「どういう事だ…」

 

「ギロリ、どうした?」

 

「ッ!カイン様!」

 

そんなギロリの前に、このデザイアグランプリを任された神であるカインと呼ばれる男が立っていた。

 

「何やら慌てているが」

 

「はい、実は今回のデザイアグランプリで只今のゲームでジャマトに倒され脱落した人間の魂を確認したのですが。

何度数え直しても数が合わないのです」

 

「何だと?」

 

このデザイアグランプリは命を懸けたゲーム、だからジャマトに殺されてしまった人間の魂は運営が責任を持って天界に送り、ただ脱落した人間はグランプリに関しての記憶だけを消して元の生活に戻していた。

 

だが、今回の死んだ人間の魂をギロリが担当の者と共に確認したがどうしても数が合わないのだ。

 

「前回のデザイアグランプリでも、死んだ方々の魂が幾つか行方が分からない事態がありました。

最初は天界へは行かずそのまま輪廻の輪に行ってしまったと思いましたが、今回も足りないとなると…」

 

「…デザイアグランプリの運営に、何かしらの裏工作を行っている者が居る可能性があるな…。

分かった、ギロリ。君は変わらずゲームマスターとしてパンクジャックとツムリと一緒に公平にプレイヤー達をサポート。

私は魂たちの行方を可能な限り捜索しよう」

 

「畏まりました」

 

 

カインはギロリにそう告げるとその場を後にし、行方不明となった魂の散策の為に動き始める。

 

 

「一体、何がどうなってるんだ…」

 

 

 

 

 

この時のギロリ、そしてカインを含めたデザイアグランプリの運営だけでなく、エース達仮面ライダーはこの時まだ知らなかった。

まさかこれが、これから始まるであろう悪夢の幕開けだっただなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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墓地浄化の前の話

あの宝探しゲームから数日、俺はアクセルの街で魔道具専門の店を手伝っていた。

 

実はこの店は俺がこの街に来て最初に立ち寄った店なんだが、その時にこの店の店主が空腹で倒れてるところに飯を奢って以来、この店の経営難な状態を見かねて手伝い始めた次第だ。

 

俺がある程度なんとかしてるからまだギリッギリのところで踏ん張ってはいるが、うっかりデザイアグランプリやクエストで稼いだ金を全て彼女に渡せば明日食うのも困る始末である。

なので俺はデザイアグランプリで稼いだ金を彼女に気づかれない様に秘密裏に使ったり、そもそも使わせない様にするしかないのだ。

 

 

 

 

 

 

なのだが…。

 

「あー、ウィズ…。俺がお前に渡した150万エリスだが」

 

「はい、何でしょう?」

 

「………まさか、この“カエル殺し“ってヤツに全額使ったとか言わないよな?」

 

「はい!でも安心してくださいエースさん!

今回は何と、このカエル殺しを半額で親切な商人の方が売ってくれたんです!」

 

「………」

 

 

またこれだ。

彼女の名前はウィズ。元は凄腕のアークウィザードだったが今はどうやら訳あって“魔王軍の幹部“をやっており、現在の種族もアンデッドの王と名高いリッチーとなっているらしい。

 

最初は驚いたが人に害を加えてるわけでは無いのでそのまま放置してる。この店で働かせてもらってる恩もあるしな。

 

 

だけど、彼女はよくよく分からない商品を仕入れたり。更には品質は確かだが明らかにこんな駆け出しの街では貴族でもなければまず購入できない品物まで金さえあれば隙あらば仕入れる。

 

オマケに、今回みたいな彼女にとっては美味しい話に簡単に食いついて今回みたく散財してしまう始末だ。

この店が繁盛しない理由の殆どは彼女のこれにある。

 

 

「…ウィズ」

 

「?」

 

「しばらくウィズの分のおかず一品少なくするのと、小遣いカットね」

 

「えぇ⁉︎何でですか!

私、お店が繁盛する様にって頑張ったんですよ!」

 

うん、その頑張りがダメな方向だから妥当な案だと俺は思ってる。

というか、どうしてこうも貧乏なのに自分の散財には胸を張れるんだこのリッチーは………。

 

寧ろ小遣い全カットじゃないだけありがたく思って欲しい。

 

「お店を繁盛させたいなら、口より先に手を動かして。はい、このポーションそっちの棚にお願いね」

 

「うぅ…私一応この魔道具店の店長なのに…」

 

 

ポンコツリッチーが何か言ってるが俺は構わずに店の準備に取り掛かる。

今日少しでも売って稼がないと。

デザグラの賞金も下手に取り出せばコイツに全て使われそうだから本当に生活が苦しいんだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばエースさん、まだ…デザイアグランプリを続けてるんですか?」

 

「………前にも言ったろ、俺にはあのゲームで勝ち残らなきゃいけない理由があるんだ」

 

ウィズは俺がデザイアグランプリに参加してるのを知っている。

そもそもこの店には、俺と後もう1人が居て3人で店を切り盛りしていた。

アイツは少し後ろ向きなところもあったけどいい奴で、ただ戦うことを楽しみたかった俺とは違う。

生きる価値があった。それなのに…あの日…。

 

「あの人みたいに、死ぬかもしれないんですよ!」

 

「冒険者をやってれば、死ぬ危険性は変わらない。

デザグラではそれが更に身近になっただけだ」

 

「そういう事を言ってるんじゃありません!

デザイアグランプリでは死んだ人の遺体さえ残らないんですよ⁉︎

大切な誰かにさえ伴ってもらえないんですよ!あの人だって「ウィズ」っあ」

 

俺はウィズを黙らせる。

これ以上言わせると、俺はコイツに酷い事を口走りそうになりそうだったからだ。

 

「アイツの事を覚えてくれているのは俺も嬉しいよ。

だけど、お前が言ったところで俺は止まらない。俺の願いを叶えるまでは」

 

「………どうしても、デザイアグランプリを止めるつもりは無いんですね?」

 

「そう言ってる。心配しなくても、勝つのは俺だ。

それだけは絶対に譲れない」

 

「………分かりました。私からはもう、何も言いません」

 

「………少し外の空気を吸ってくる」

 

「はい…」

 

俺は彼女に断って店を出た。

 

 

お互いが落ち着くまでしばらくは店には戻らない方が良いだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エースが去った店で、ウィズは店の奥で一つの腕輪を撫でていた。

 

「あの人、貴方が居なくなっちゃって随分変わりました。

前までは本当にただの戦闘狂だったのに、今となっては貴方を生き返らせるのが目標なんですよ」

 

その腕輪は所々ボロボロだったが、彼女はそれさえも愛おしそうに撫でていた。

 

「このお店も、少し静かになっちゃったんです。

貴方が居たら、多分エースさんもまだ昔みたいに騒がしかったでしょうね。

貴方は、ちゃんと天国に行けましたか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チヒロさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜、何やってんだ俺」

 

俺はあの後店を出て適当に散歩をしていた。

 

しかし、ウィズには少しキツく当たっちまったな。あれは俺自身の問題だってのに………。後で詫びとして食い物買って帰るか。

 

 

「しかし…」

 

俺は懐に手を入れ、この前の宝探しゲームで手に入れたパイレーツバックルを見る。

 

このバックルは確かに強力だ。オマケに剣と銃を両方使える近接遠距離どちらも熟せる万能型。

だが、矢張りマグナムを使ってた時と比べて少し違和感を感じる。

矢張りマグナムでないとギーツは本来の力を発揮できないか。

 

「かといって、都合良く目当てのバックルが手に入るわけもないか…」

 

前までの俺ならそれもまた面白いと全力でデザグラを楽しんだだろう。

たとえ自分が勝てなくても構わないと。

 

だが、事今回においては状況が変わった。俺は勝ち残らなくちゃいけないんだ。

 

「そういえば今晩墓地の浄化に行くとか言ってたっけ」

 

なら夜までにある程度の準備はしておかないとな。

その時に詫びとして食い物も買っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

デザイアグランプリ。

今回はどうやらチーム戦みたいだが、どんな形になろうと関係ない。

 

 

 

最後に勝つのは、俺だ。

 

その決意を胸に俺は街の散歩を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リッチーがこんなところに出るとはふとどきな!

待ってなさい!この魔法陣を壊した後はアンタを浄化してやるわ!」

 

「やめて!やめてえぇぇぇぇっ!

何なの⁉︎何で急に現れたかと思ったら私の魔法陣を壊そうとするの!

エースさん助けてえぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!」

 

 

 

その時の俺は全く予想してなかった。

 

まさかその日の夜に、アイツらとまさかの形で再会し、そいつらの中にあるアークプリーストの手によって更に面倒な事になるだなんて…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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墓地でのひと騒動(前編)

 

俺はあの後日没前にウィズの店に戻った後、彼女と一緒に街近くの墓地に来ていた。

 

何故、俺たちがこんなところに来てるかというのには理由がある。

実はこの街の近くにある共同墓地には夜な夜な成仏しきれない霊やアンデッドが出没するのだ。

 

本来であれば協会のプリーストや浄化魔法が使えるプリースト職の冒険者の役割だのだが、この街の冒険者は何かと拝金主義者が多い為、金にもならない慈善活動などする奴が少ない。

なので、こうして墓地の霊が放置されたままにされているのだ。

 

このままではよろしくないし、万が一にも霊やアンデッドによって街の連中が被害に合う可能性が高い。

 

なのでこうしてウィズが定期的に墓地の除霊に来ているのだ。

 

「はい、次の方どうぞ」

 

「相変わらず真面目だなウィズは。

別に毎回毎回受ける必要は無いだろう。その気になればギルドに頼んで墓地浄化のクエストを出させたり、色々あるだろ」

 

「私がやりたいからやってる事ですから。それに、この人達がちゃんと成仏できれば、チヒロさんが万が一にも迷っていたら一緒についていけると思いますから」

 

「…昼だけど、店では悪かったな」

 

「気にしてませんよ。

その代わり、戦うからには…絶対に勝って、生き残ってください。そして、帰ってきてください」

 

「…ああ」

 

 

…ホント、ウィズにはいつも心配ばっかりかけてるな。

 

コイツは例えアンデッドの王であるリッチーとなっても、心は人間のままだ。

だからもういない人間にさえ、ここまで優しく出来るのだろう。

 

そんなコイツの為にも、あの願いを絶対に叶えてやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あああああああああああ!!!!!!!」

 

 

「「!?」」

 

そんな俺たちの耳に、一人の女の叫び声が聞こえて来た。

 

というかその声は、つい最近聞いたばかりの声である。

 

 

「リッチーがこんなところに出るとはふとどきな!

待ってなさい!この魔法陣を壊した後はアンタを浄化してやるわ!」

 

大声を上げながら此方に向かって来たのは、確かアクアとかいうタイクーンと一緒に居たアークプリーストの女だったか。

そいつは此方に走って近づいてくると、ウィズが張っていた除霊用の魔法陣を踏みにじり始めた。

 

というか消え始めてないか?

 

「やめて!やめてえぇぇぇぇっ!

何なの⁉︎何で急に現れたかと思ったら私の魔法陣を壊そうとするの!

エースさん助けてえぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!」

 

「煩いわよリッチー!

どうせこの魔法陣を使って何か悪事を働こうとしてたんでしょう!」

 

…何だコイツ。

いきなり出て来たかと思えば失礼な奴だな。

 

というかこのアクアって奴、名前と容姿があの女神と同じ名前だが…まさか。

 

 

「違います!この魔法陣は、この墓地に居る成仏できていない霊の方々を天に帰すためのものなんです!」

 

「誰がそんな嘘信じるもんですか!

というか仮に本当だとしてもリッチーがそんな清い行いなんてしてんじゃないわよ!

ここは清く正しくも美しい私みたいなアークp(がんっ!)って痛い!…誰よ!私の頭を殴ったのは…ってアンタ!確かエースっていった白い狐!」

 

「ギーツだ」

 

騒がしい奴だな。

ライダーでいうとバッファタイプか?

…いや、少なくともアイツはもう少し知的に行動するタイプか。

 

 

 

「おーい!何やってんだ。

ってエース!?何でここに居るんだ!」

 

「タイクーン…いや、カズマか」

 

危ない危ない。デザグラの参加者を覚えやすいからってライダー名で呼ぶ。俺の癖だな。

アイツにも散々それでやれ「そんな人を番号とかみたいな感じで呼ばないの!」とか「名前は大事なものなんだからちゃんと覚えてあげなくちゃ!」とか言われてたっけ。

 

っていうかよく見るとカズマの後ろからめぐみんとかいう紅魔族のアークウィザードと、ダクネスというクルセイダーも居た。

 

「そっちこそどうしたこんな時間に。こんな墓地を対象にしたクエストなんて設けられてたか?」

 

「ああ実は」

 

カズマの話を簡潔にまとめるとこんな感じだ。

 

・実はアクセルの街近くの共同墓地(つまりは俺たちが今いる墓地)でゾンビメーカーが出現している。

 

・カズマ達はそのクエストを受理して、現在そのゾンビメーカーを探していた。

 

・だが、実際に来てみるとゾンビメーカーではまずありえない程のゾンビが出現していた。

 

・その時アクアが突然ゾンビメーカーらしき影(つまりウィズ)に雄たけびを上げながら走って行った。

 

 

との事だ。

 

「成程、つまりゾンビメーカーと思っていたらアンデッドでは大物中の大物であるリッチーが居た訳か」

 

「そういう事よ!さあ、そこのリッチーを引き渡しなさい!私が浄化してやるわ!」

 

「おい落ち着けよ。見た感じエースの知り合いみたいだし。

というかよ、お前カエルだのキャベツだのにはそこまで敵意全開で行かないだろ。一体どうした?」

 

「そうですよアクア、どうしたのです?」

 

「そりゃ敵意むき出しにもなるわよ!

良い?そもそもアンデッドや悪魔っていうのはね、神々の断りに背いて存在しているナメクジだのの親戚で、悪魔にいたっては人の悪感情を食べてないと存在すら出来ない寄生虫なのよ!

しかもコイツはリッチー!アンデッドの中でも最上位の奴よ!女神としてそんな存在放っておけるわけないでしょうが!」

 

…女神、ね。

 

少し気になった俺はカズマに耳打ちして話しかける。

 

「おいカズマ。アクアってまさかだが、俺たちを転生させた女神か?」

 

「ああ。エースの考えてる通りだよ」

 

「けど何でこの世界に来てるんだ?

女神とかはこの世界に基本干渉出来ないから俺たち転生者を送り込んでるんじゃないのか?」

 

「………実は」

 

カズマは少し間を取って話し始めた。

 

どうやらカズマは前の世界で………こいつの名誉の為に伏せておくが色々あって死んだらしい。

その時のコイツを担当したのがアクアだったが、その時のコイツの対応ときたらとても適当だったらしい。

 

挙げ句の果てにはストレス発散の為に死因を馬鹿にされたのでイライラしてアクアを腹いせに特典として連れてきたらしい。

 

 

 

だが、女神だと期待したコイツは戦闘やその他の面で土木工事とか宴会芸くらいでしか今のところ役に立っていないらしい。

 

 

「…何というか、大変だな」

 

「全くだよ…」

 

「どうしたのだ?2人とも」

 

「「いや、何でも無い」」

 

コイツもコイツなりに苦労してるらしい。

まあでも今はアクアをどうにかしないとな。

 

「おい、ウィズに手を出すなよ。

もし手を出すなら、こっちにも考えがあるぞ」

 

俺はドライバーを取り出して一応脅しをかける。

 

「な!?エースがどうしてリッチーの味方を………まさか、なんか魔法使って傀儡にしてるのね!」

 

「違います!私そんな事してません!

エースさんも落ち着いて!」

 

いや今消されそうになってるのお前だろ。

ただのプリーストなら大した問題じゃなかったが、アークプリーストでしかも女神が相手だといくらウィズでも不味いからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジャ〜」

 

『!?』

 

 

そんな色々とややこしくなってる俺たちの元に、俺にとってはもう聞き飽きた声が聞こえてきた。

 

全員がそちらを見ると、そこには大量のジャマトが出現していた。

 

しかも、血のついた服を着ているということは、ゾンビか。

 

「あ、あれはジャマトじゃないですか!」

 

「何故こんな所に!?」

 

「お、おいエース!何でジャマトがこんな所に出るんだよ!」

 

「落ち着け。実はジャマトはゲーム以外でも野良で出現する場合があるんだ。

今回もその類だろう。しかもあの見た目からするに、恐らくゾンビジャマト」

 

「マジかよ!」

 

カズマはデザグラに参加して間もないから無理もないが、これで驚いてたら持たないぞ?

 

「とにかく戦うぞ。それから、めぐみんとダクネスだったか?

2人はアクアがウィズに手を出さないように見張っていてくれ」

 

「は、はい!」

 

「分かった」

 

「ちょっと!どうして私が見張られなくちゃいけないの!?

見張るならこのリッチーでしょ!というかあのジャマトってゾンビでしょ!

だったらアークプリーストである私が出るしかないでしょ!」

 

あーそういえば言ってなかったな。

 

「ジャマトに浄化魔法は効かないぞ。アイツら、ゾンビだのキャベツだのの情報を得ただけの生命体だからな」

 

「え?つまり…」

 

「奴らを倒すには基本的にライダーの仕事って事だ」

 

《デザイアドライバー》

 

「お、おい待てって!俺も行くよ!」

 

《デザイアドライバー》

 

俺とカズマはドライバーを腰に装着し、それぞれバックルを取り出す。

俺はカズマから渡されたパイレーツを。カズマはブーストとアローを取り出した。

 

《SET》

 

俺はパイレーツを右側に、カズマらアローを右側にブーストは左側にしてセットした。

 

そして俺が指で狐を作りフィンガースナップを、カズマは一瞬手を交差させて右手を斜め下にスライドさせるような構えをした。

 

 

「変身」

 

「変身!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜NO side〜

 

エースとカズマが変身した丁度その頃。

どこかの空間で、豪華なソファーに腰掛けてるもの達がいた。

 

1人は白のシャツの上から黒いコートを羽織った青と白のメッシュが入った青年。

もう1人?はテーブルに乗るほどの大きさのスーツを着たカエルの置物だった。

 

「今回はゾンビか。ギーツなら楽勝だね」

 

「はっ、それは俺の推しの戦いを見てから決めてもらおうか」

 

2人は目の前のモニターに目を向けながらそんな話をしていた。

 

その映像には、丁度ゾンビジャマトと戦闘を始めたギーツとタイクーンの2人の姿が映し出されていた。

 

「そうは言うけど、この前の宝探しゲームで一番活躍したのはギーツだ。

君の推しはそこまで活躍はしてないじゃないか」

 

「へっ、分かってねえな。ああいう捻くれた奴が仮面ライダーでいうところの主人公になる存在なんだよ。

それにそのゲームだって、アイツがパイレーツをギーツに渡してなけりゃMVPは間違いなくアイツだったんだよ!

それに、お前あのギーツってライダーを気に入ってる割に毎回出すバックルをランダムにするなんざ、推しへの貢献が足りてねえんじゃねえのか?」

 

「彼は変に強いバックルを手に入れ易いよりも、手に入れにくいからこそ全力を出すタイプなんだよ。

それに勝負を決めるのはバックルの性能だけじゃない。それは分かってる筈だよ」

 

2人はお互いに険悪という訳ではないが、それでも色々とバチバチしているのは間違いないらしい。

 

「はっ!今に見てろ、絶対に今回はタイクーンが活躍してやる!

(だから頼むぜ佐藤和真。俺の出した“シークレットミッション“をクリアしてみせろよ)」

 

「それは楽しみだ

(今回も楽しませてくれよ最上英須。これは新しいデザグラの開幕祝いだ、シークレットミッションをクリアしてませな)」

 

2人は言葉の裏で自分たちの推しとやらの為に色々と仕組んだらしい。

 

しかし、一見娯楽のように見えるが彼らの目的はただ1つ。

 

そんな彼らの思考など知らず、モニターに映るギーツとタイクーンは戦い続ける。

 

 

 

 

 

 

 



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墓地でのひと騒動(後編)


今回は分かる人には分かるとある作品の物をレイズバックルとしてぶち込みました。










 

「はっ!」

 

共同墓地に現れたゾンビジャマトを倒す為にギーツはパイレーツフォーム。タイクーンはアローブーストフォームになって応戦していた。

 

タイクーンに変身したカズマは近づいてきたジャマト達と格闘を繰り広げ、遠距離にいたジャマトはアローの弓で次々とジャマト達に攻撃を当てるが、少したじろいだり倒れたりするだけで直ぐに復活して再び襲いかかってくる。

 

「えぇっ⁉︎何で立つんだ!」

 

「ああ、言い忘れていたが。っ!」

 

何故か立ち上がるゾンビジャマト達に少し不気味さを感じていたカズマの疑問に答えるように、ギーツに変身したエースはパイレーツガンをジャマト達のうちの一体目掛けて放った。

 

「ジャアッ!?」

 

すると弾丸が頭部に直撃したジャマトは、その体を木片の様なものを飛び散らせて崩れ去った。

 

「ゾンビの弱点は頭。常識だろ?」

 

「それを早く言えや!」

 

カズマは文句を言いながらもアローの攻撃を放つ為に狙いをつける。

 

 

 

《SECRET MISSION CLEAR》

 

 

「「ん?」」

 

 

そんな彼らの耳に、何処からともなくそんなアナウンスが聞こえてきた。

 

「な、何だ?」

 

「これは…」

 

いきなりのアナウンスに驚くカズマと何かを察したエース。

エースはそのアナウンスの後にライダー全員に支給されたスパイダーフォンを確認する。

 

“最速でジャマトを一体以上倒せ“

 

そこにはそう書かれており、それを確認しているとエースの目の前に一つのミッションボックスが出現した。

 

「え!?ミッションボックス!何で?」

 

「ああ。実はデザグラの中には一定の条件をクリアするとこうしてバックルが貰えるシークレットミッションってのがあるんだ。

さーて、今回は何かなーっと」

 

エースは現れたミッションボックスを早速開けて中身を確認する。

 

ボックスの中に入っていたのは戦車の操縦桿のようになっている迷彩柄の大型バックルだった。

 

「これは…ッ!」

 

そのバックルを手に取った瞬間、エースの頭の中にとあるイメージが浮かんだ。

 

説明しよう。

実はこのデザグラのライダーは、手に入れたバックルに触れるとそれの使い方を瞬時に理解し、使用してる時の動きなども脳内にインプットされる仕組みとなっている。

 

そのこの世界のデザグラライダーの特性によりそのバックルについて理解したエースは仮面の下で笑みを浮かべる。

 

「…成程、タンクバックルか。

文字通り戦車のバックルみたいだな」

 

「良いなぁ、俺今持ってるのブーストだけで…ってあぶねっ!」

 

感心していたところに突然ジャマトが2体エースを背後から襲いかかって来たので、カズマは慌ててアローの矢を乱射する。

 

「ジャッ!?」

 

「ガッ!」

 

カズマ放った矢はたった今エースに教えてもらった弱点である頭部にしっかりと命中し、2体のジャマトは撃破された。

 

「おぉ、やるな」

 

「落ち着いとる場合か!ったく、凄いやつなのは分かってるけどもう少し警戒して」

 

 

 

《SECRET MISSION CLEAR》

 

 

「「え?」」

 

 

突然予想もしてなかったアナウンスが再び鳴り響く。

 

すると、カズマの目の前にエースと同じミッションボックスが転送されて置かれていた。

 

因みにこの時のカズマのスパイダーフォンには

 

 

“他のライダーのサポートをせよ“

 

 

と表示されていた。

 

 

「ウソーン」

 

「お前、よっぽど運が良いんだな…っと」

 

「あぶっ!」

 

呆気に取られているとジャマト達が攻撃してきたので、カズマはボックスを持ちエースと一緒に慌てて回避しジャマトから距離を取る。

 

 

「っと、あぶねー」

 

「間一髪っと。で?中身は?」

 

「あ、そうだった」

 

エースに促されカズマはミッションボックスを開ける。

 

その中に入っていたのはエースが獲得したのとは別のバックルだった。

 

それは、外側から深い緑と黄緑、そして白のカラーリングで、まるで2本の鎌の刃が片方は逆さで背を合わせてる様な造形をしていた。

 

「これは?」

 

「触れてみろ」

 

エースに言われカズマも彼と同じようにバックルに触れる。

 

「おわっ!?」

 

するのカズマの脳にも、バックルの情報がインプットされる。

初めての感覚にカズマは思わず驚くが、情報はしっかりと彼の脳内に流れてきた。

 

「イガリマ…?(このバックルは、大型の鎌で相手を切り裂く。更には相手がゾンビジャマトやアンデッドなどの不死性を持つ相手はそれを無視して撃破できる…って!めちゃくちゃ凄くないか!?)」

 

手に入れたバックル、イガリマレイズバックルの情報にカズマは思わず驚いてしまう。

 

「どうやらその感じだと、お前も中々に当たりを引いたらしいな」

 

「…ああ。中々どころか、この状況なら大当たりだ!」

 

「へぇ。なら、早速試すか」

 

「おう!」

 

2人はお互いに笑みを浮かべながら頷き合うと、迫ってきていたジャマト達に対して銃と矢を乱射して動きを止める。

 

そして土煙が上がりお互いの姿が見えなくなったところで、それぞれ右側にセットしているバックルを外して新しく手に入れたバックルをセットした。

 

 

《SET》

 

 

「さあ。ここからが、ハイライトだ」

 

 

エースのセリフと共に、エースは操縦桿を引っ張り出して主砲のスイッチを押す。そしてカズマはバックルの上にあるスライド部分を左に少し動かすとロックされ、その後に横のボタンを押す。

 

すると、エースのバックルからは大砲の砲弾の幻影が横に放たれ《TANK》の文字と共にアーマーが形成され、カズマは背中合わせの鎌のパーツが回転し横には複数の緑の音符と一緒に《IGALIMA》の文字が鎧と共に現れる。

 

 

《TANK》

《READY FIGHT》

 

《DUAL ON》

《GET READY FOR BOOST & IGALIMA》

《READY FIGHT》

 

 

変身が完了すると、2人の上半身のアーマーが換装される。

 

エースはパイレーツのアーマーから迷彩柄の戦車のようなアーマーで、肩には戦車を模した盾が装備された。

カズマはアローから主に深い緑色のアーマーで、肩には鎌の刃の様なものが収納されており、タイクーンの左目の複眼には黒いXが刻まれていた。

そしてエースの手にはグリップ部分にダイヤルのようなものが付いたグレネード弾が、カズマの手には翠の大鎌が握られていた。

 

 

 

〜獄鎌・イガリマ〜♪

 

すると、カズマのバックルから何やら歌が流れてきた。

 

「ほぉ、グレネード弾ね。マグナムとどう違うのか………にしても、カズマ。お前のから何か曲流れてないか?」

 

「ああ、何でだ?

…けど、何か歌が流れてると力が漲ってくる!」

 

カズマは大鎌を両手で握り構える。

 

「そうか。じゃ、この曲と一緒に俺たちのハイライトといきますか。

あ、それから。あのジャマト達に噛まれるとゾンビになるから気をつけろ」

 

「おう!………ちょっと待って?今なんて言った?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エースはタンクの拡張装備であるタンクグレネードガンをゾンビ達に向けて放つ。

 

「ジャッ!?」

 

「ジャガッ!」

 

「ジャマ〜ッ!」

 

「ほらほらぁ!」

 

エースの放った弾丸はジャマト達に命中すると小規模な爆発でジャマト達を弱点の頭部諸共吹き飛ばす。

 

しかし一発打つごとにわずかだがタイムラグが発生し、そこを他のジャマト達に接近される。

 

「ほらよっと!」

 

「ガッ!?」

 

だがその接近してきたジャマト達はタンクグレネードガン本体を鈍器のようにして扱い頭部を殴打したり逆にその質量や硬さを生かしてアッパーの容量で殴り飛ばしたり、一旦動きを止めてから受け流すなどを行なっている。

 

「はっ!」

 

格闘を繰り広げ何とかジャマト達の間から抜け出したエースは再びタンクグレネードガンを数発放つ。

 

 

「このままでも中々の威力だが」

 

エースはタンクグレネードガンのグリップの針を黄色の真ん中から左側の青色の方へ回す。

 

《ガトリングモード》

 

「一気に終わらせるには、恐らくこれか」

 

エースはタンクグレネードガンを再びジャマト達に向けると、少し狙いを比較的密集している地点に向けると引き金を引く。

 

「おわっ!?とっと」

 

すると銃口から先程とは違いグレネード弾が連射され始めた。

放たれた弾丸は先程より威力は低いが、何度も炸裂してジャマト達を確実に一体ずつ削って行ってる

 

しかし、これだけでは終わらない。

 

「ほらよ、持ってけトリプルだ!」

 

エースの掛け声と共に彼の肩に装着されている戦車のような肩アーマー兼盾は分離し、地面に着くとそれぞれが独自に稼働し始めてジャマト達に小型の砲弾を次々と浴びせていく。

 

 

「おぉ、意外と使い勝手良いなこれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダァもう!こうなりゃやったらぁ!デース!」

 

一方カズマはというと、大鎌を振るいジャマト達と戦闘していた。

 

カズマの振るった大鎌は、何と本来なら頭部が弱点である筈のゾンビジャマト達の胴体を真っ二つに切り裂いたのだ。

 

それ以外も切り裂くまでは行かなくても深く切りつけたりするとそのダメージにより戦闘不能になる者までいた。

 

「うぉっ!本当に効いた(でも、今の俺の掛け声何か変じゃなかったか?)」

 

カズマは少し違和感を感じながらも、こちらに向かってくるゾンビジャマト達に気付き気を引き締める。

 

「って、それどころじゃないか。噛まれたらゾンビとか冗談じゃ…」

 

今度は大鎌を長く両手で握り、足のブーストのバイクのマフラー部分の片方を逆向きにしてから角度を調整。

そして、それが終わると一気にブーストしまるでコマのように高速回転を仕掛ける。

 

「ねーぞーッ!!!」

 

その高速回転する鎌の攻撃にジャマト達はただ切り裂かれるしかなかった。

 

「ジャ〜〜〜〜〜ッ!」

 

「じゃっ!」

 

「ジャマーーーッ!」

 

「そらそらぁ!死神様のお通りじゃー!」

 

次々とゾンビジャマト達を絶命させたいき、ある程度切り裂いたら今度はブーストのスペックを活かして真上に高くジャンプする。

 

そして鎌を振りかぶると、なんと鎌の刃が二つ増えた。

 

「そらよっ!」

 

増えた鎌の刃をそのまま空中で振るうと、2枚の刃はまるでブーメランを投げたかのように回りジャマト達を切り裂いていく。

 

刃は打ち終わると新たにまた2枚追加されカズマはそれを次々と放っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼らの奮闘を、アクア達は唖然としながら見守って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いるわけではなかった。

 

 

「ちょっと離しなさいよ2人とも!

そこにいるのはリッチーなのよ?モンスターなのよ?どうせあのジャマトもソイツが呼び出したに違いないわ!

ならさっさと浄化しなくちゃでしょうが!」

 

「落ち着いてくださいアクア!分からないでも無いですが、エースの知り合いらしいので浄化したらまずいですよ!

それにしてもカズマのあの鎌。紅魔族的に死神っぽいのでアリですね」

 

「アクアよせ!確かにアンデッドが見逃せないのは分かるが、知り合いの友人なら勝手に浄化なんかしたら色々と不味いぞ!

………ま、まあそうなって怒られる役割は私が引き受けるがな」

 

「ひぃ〜〜〜〜っ!」

 

 

このように、ウィズを浄化しようと襲い掛かろうとしているアクアを2人が何とか抑えている状況だ。

幸いなことに今は霊達は戦闘に巻き込まれないためか大人しくしており、ゾンビジャマト達もエースとカズマを最優先に狙っている為襲っては来ない。

 

しかしこの場面をエースがみたら、アクアへの説教待ったなしである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなアクア達をよそに、エースとカズマは次々とゾンビジャマト達を撃破していき、いよいよ残すはあと数体となっていた。

 

「よしカズマ。後は必殺技で一気に決めるぞ」

 

「合点承知デス!」

 

「………お前そんな喋り方だったか?」

 

「仕方ねえだろ!何故かこのバックル使ったら油断したら出てくんだから!」

 

カズマの謎の語尾というか言葉に疑問を感じるエースだったが、直ぐにバックルに手をかけそれぞれの技を放つ工程に入る。

 

 

エースはもう一度スイッチを押し、カズマも刃のパーツを回転させブーストバックルのハンドルを2回ひねる。

 

《BOOST TIME》

 

ブーストタイムに突入し、カズマはもう一度ハンドルを捻る。

 

「盛大に打ち上げだ!」

 

エースの背後には巨大な戦車の幻影が現れ、肩アーマーの小型戦車が分離し、その小さな砲身にエネルギーを溜める。

カズマはその場で跳躍すると、鎌が変形して垂直になりそれを足に装着してキックの体制を取る。

 

《TANK STRIKE》

 

《BOOST IGALIMA GRAND VICTORY》

 

ゾンビジャマト達に、エースの肩から分離した小型の戦車と背後の大型の戦車の幻影から放たれる強力な砲撃は、頭部どころか体全てを巻き込み大多数のゾンビジャマトを葬り去った。

 

そして。

 

「どりゃあああああぁっ!!!」

 

カズマのキックはブーストの加速も合わさりもの凄いスピードと威力を伴い残ったゾンビジャマト数体を巻き込み一気に殲滅していった。

 

2人の必殺の攻撃は、全てのゾンビジャマト達を撃ち漏らすことなく撃破し爆発を引き起こした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ジャマト達を倒したことによる爆発が晴れるとそこには、キックの残心から立ち上がったカズマとそんなカズマに近づくエースの姿があった。

 

「お疲れ様。それと、本当の意味での初陣おめでとう」

 

「サンキュ。しかし凄いなこのバックル、ゾンビジャマト達を簡単に倒せて…ん?」

 

カズマはイガリマバックルの性能の高さに感心していると、ブーストバックルが突然煙を上げ始め、今にも暴走しそうだった。

 

「えっ!?ちょちょっと!

なんか、煙上げてるんですけど!」

 

「あー悪い。言い忘れてたけど、ブーストバックルを使って必殺技をするとブーストバックル自体が使用後飛んでっちまうんだよ」

 

「はぁ!?てことはこれ今から無くなんの!

てか待て待て待て!これどうするんだよ!」

 

「こういう時は……伏せる!」

 

 

エースは慌ててその場で伏せる事を選んだ。

 

 

 

 

そして、ブーストバックルはカズマのバックルから自動的に勢いよく外れてエンジンを吹かしながら暴走して飛び回る。

 

「あっぶね!」

 

カズマは体を反射的に逸らした事で直撃を免れ、ブーストバックルはそのまましばらくその場を飛び回ったかと思うと。

 

 

 

 

「あだっ!?」

 

ウィズに襲い掛かろうとしていたアクアの頭部に直撃しノックアウトして今度こそ飛び去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

こうして、カズマにとっての本当の意味での初陣は、一応無事に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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襲来の幹部

 

〜カズマ side〜

 

あの墓地騒動の後、何とか俺たちはゾンビジャマト達を倒すことが出来た。

あの後アクアの方は何とか落ち着かせ(本人は納得していないようだったが)あの共同墓地は元々はこの街のプリーストが浄化をしてこなかったのでアークプリーストであるアクアが(それはものスッゴイ不満そうにしながら)引き受けた。

 

その結果俺たちのパーティーはゾンビメーカー討伐のクエストを失敗して報酬は貰えず終い。

 

まあ新しいバックルが手に入っただけでも良しとするか。

 

けど、駄女神に一発屋にドM。この先どうやってまともにクエストをこなせば良いんだ………。

 

せめて後1人くらいはまともなパーティーメンバーが…メンバーが?

……………あっ。

 

 

 

「アアァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

「ど、どうしたのよカズマ⁉︎急に奇声なんて上げて…」

 

俺の隣で真っ昼間からシャワシャワを飲んでいるアクアが驚くが今はそんな事を気にしている暇はない!

 

「どうしたもこうしたもあるかぁっ!!

よくよく考えたら、デザグラってチーム戦じゃん!だったらこの前エースをパーティーに加入させるチャンスだったんじゃねえのか!

つまり俺たちは新たな戦力を迎えるチャンスを棒に振ったって事だよ!」

 

「・・・…ッ!アアァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

 

どうやらアクアも気づいたようだな。

そうだよ、俺たちに必要だったのは何か!

 

俺みたいな手数が多いだけの最弱職か?アクアみたいな無駄に回復魔法だけは出来る腕前か?めぐみんみたいな一発屋か?ダクネスのような攻撃が当たらないドMか?

 

いや違う!俺たちに必要なのはエースみたいな確かな実力を兼ね備えた戦闘のプロだ!

しかも俺が参加する前のデザグラに参加して、大型のバックルも順調に持っていてジャマトの倒し方も熟知している。

 

今の俺たちに必要過ぎる人材だ!

 

「そうよ!そうだったわ!

私たちに新しいパーティーメンバーが増えるかも知れなかったんじゃない!このままじゃ不味いわ。

最弱職で弱々なカズマじゃいくら仮面ライダーになったところで脱落する未来がまだ見えるわ!

何としてもエースを仲間に引き入れないと!」

 

「その余計に一言多い長台詞!今回は特別に見逃してやる。

今はエースだ!そういえばアイツこの街のどこに居るんだ?」

 

この前の一件で一応この街にいることは聞いたが、生憎どこにいるかまでは聞いていなかった。

 

畜生!折角まともなパーティーメンバーを見つけてたのに勧誘し忘れるとはぁ!!

 

ゲームだと折角の強キャラ加入イベントが発生したのに選択肢間違えて仲間になってくれなかったパターンに酷似してやがる!

しかもブーストバックル使っちまった今じゃ尚更引き入れなくちゃいけなかったのに!

 

 

 

 

「落ち着け2人とも。そんなに叫んだって仕方ないだろう」

 

「そうですよ。それに、エースみたいに安定した火力が入ってしまったら私の出番が無いじゃないですか」

 

「お前らはもう少し危機感というものを待てぇええいっ!!

良いか?例え俺が仮面ライダーに慣れたとしても安定した火力が無けりゃ碌にクエストを熟せない事はここ数日で既に立証されてんだよ!

それにこのままじゃ来るべき冬を越すための宿代さえ確保できないんだ!」

 

 

そう。実はあの騒動があって数日、俺たちのパーティーは試しに仮面ライダーに変身せずにクエストに出たのだ。

 

 

しかし、そのどのクエストでも、アクアは勝手にカエルにチョッカイ出して喰われて、ダクネスは攻撃は全く当たらずあまつさえ勝手に強そうなモンスターに考えなしに突っ込む。

そしてめぐみんに至っては、爆裂魔法は絶対に撃つなって言ってるのに撃っては動けなくなる体たらくだ!

 

つまり失敗!失敗!失敗!失敗の連続なのである!

 

「私は貯金してますし、問題ありませんが?」

 

「ドヤ顔で自分だけは大丈夫発言しやがったなテメェ!

もう良い!こうなりゃもう爆裂散歩なんぞは付き合わないし行く事も許さん!金輪際爆裂魔法禁止にされたいか!」

 

「何としてでもエースを仲間にしましょう!」

 

変わり身早⁉︎

ま、まあ良い。これでこのロリッ子の方はどうにかなった!

 

「ダクネスもよく考えてみろ!

安定した火力が居るのと居ないのとでクエストの攻略効率が上がると思わないか?」

 

「ふむ…確かにカズマの言う通り、クエスト達成の成功率を考えればエースを迎え入れるのが妥当なのだろう」

 

「そうだろ⁉︎なら「しかしそれではダメだ」・・・はい?」

 

おんやぁ?ダクネスの様子が。

 

「確かにエースは実力は確かだ。

しかし!それではパーティーに入った時に私へのモンスターの攻撃が減ってしまうし何より強いモンスターを全て倒されてしまうかもしれない!それでは私の望み通りのプレ………イをしてくれる者が居なくなってしまうではないか!!」

 

こ、コイツ…とうとう隠しもせずにプレイとか言い切りやがったぞ…。

にしてもウチのパーティー自分の欲を優先する奴多すぎだろ!

この前もアクアが自分の取り分が減るから反対!とか言うのに苦労したのを今思い出したよ。

 

 

ふっ、だが甘いなダクネス。

短い間ではあるが、パーティーを組んだ俺はお前への攻略法を既に見つけている。

 

 

そう!つまりドMなお前はこの提案を絶対に断らないと!

 

 

「ダクネス。もし、エースを仲間に入れるのを協力してくれるのなら………………………今度お前にスティールを繰り出した後のお前の望む“プレイ“とやらを考えなくはない」

 

「エースを仲間にするぞ!」

 

 

………ほんと、アクアといいめぐみんといいコイツといい、自分の欲望に素直過ぎるだろ。

 

だがこれで、後はどうやってエースを勧誘するかだ!

 

 

 

 

 

 

「おい、貴様ら。さっきから騒がしいぞ」

 

そんな事を考えていると、俺たちに話しかける人物がいた。

 

そちらを振り返ると、そこには長い黒髪を後ろで結んだ少し目つきが鋭い人だった。

 

 

やばい、騒ぎすぎたか?

 

「す、すいません。ちょっとゴタゴタしちゃって!

直ぐに黙りますんで勘弁してください!」

 

俺は知ってんだぞ!

この手の目つきの鋭いキャラって高確率でここで謝らないと後が怖いんだよ!

 

 

「いや、そこまで大袈裟に謝らなくて良い。

ただ、このままでは他の冒険者も迷惑になるし、アンタらにも嫌な評判が立ってしまう可能性があったからな。

騒ぐなとは言わないが、話す内容にだけは気をつけた方がいい」

 

「あっはい…」

 

この人が言ってるのは多分、俺がダクネスに言った内容だろう。…改めて考えると公の場で凄い発言してたな俺…。

 

というかこの人、めっちゃ良い人じゃん。

 

「ん?お前…何処かで…」

 

「えっ?」

 

目の前の人は、俺の顔に何か思ったのか顎に手を当てて何やら考える仕草をしていた。

 

あれ?そういえば、この人どっかで見た様な…。

 

 

 

 

 

 

 

『緊急!緊急!冒険者の皆さんは、直ちに武装をして正門前に集まって下さい!』

 

 

 

そんな俺の思考は、ギルドに突然鳴り響いたアナウンスによって掻き消された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜正門前〜

 

ギルドのアナウンスに従って武装した俺たちと他の冒険者、そしてさっきの見た目の割には良い人も正門前に来ていた。

 

 

「………」

 

 

そんな俺たちの視線の先には、小さな丘の上に首のない馬に跨っている鎧を着た首のない騎士が、頭らしきものを片手で持ちながら佇んでいた。

 

「何だアイツ⁉︎メチャクチャ強そうだぞ!」

 

「アレは、デュラハンか!」

 

デュラハン。ファンタジー物ではお約束と言っても良いアンデッド系統のモンスターだな。

しかも雰囲気からして、カエルとかそんなもん目じゃないくらいに大物だって事が分かった。

此処、一応駆け出しの街だよね?

 

 

「………俺は先日、この街の近くの古城に越してきた魔王軍の幹部の者だが…」

 

 

魔王軍の幹部⁉︎

何でこんな駆け出しの街にんな奴が来るんだよ!

 

そんな俺の心の中のツッコミなど知る由もなく、魔王軍の幹部は話を続ける。

 

それも、何故か体を震わせながら。

 

 

「………毎日毎日毎日毎日!おっ、俺の城に!毎日爆裂魔法を撃ち込んでくる!あっ!頭のおかしい大馬鹿はっ!

誰だぁあーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

 

 

魔王軍の幹部は、それはもう、お怒りだったぁ〜………。

 

 

というかちょっと待て?爆裂魔法?

 

「な、なあ爆裂魔法って」

 

「ああ。爆裂魔法といえば」

 

そんな言葉と共に、その場にいる全員の視線がさっきの良い人以外全てめぐみんに向いた。

 

「ッ…プイッ」

 

全員の視線に晒されためぐみんは、それを回避する為か全く別の方を見る。その先には、めぐみんとは別の魔法使い職らしき女性がおりめぐみんに釣られて冒険者の視線はその女性に向く。

 

「えっ⁉︎何で私見られてるの!私爆裂魔法なんて使えないよ!

嫌だまだ死にたくない!まだ小さい弟も居るのに!」

 

「うっ…」

 

その女性の取り乱しっぷりに流石に気まずさを感じたのか、めぐみんは観念してデュラハンの元に歩み出た。

 

 

 

「お前が…」

 

そして、アイツがたどり着くとデュラハンは相当溜め込んでいたのだろう。溜まった鬱憤を吐き出す様に叫び出す。

 

「お前が!毎日毎日爆裂魔法を撃ち込んでくる大馬鹿者か!

俺が?魔王軍の幹部と知ってて喧嘩を売ったのなら?堂々と城に攻めて来るがいい!そうでなければ、街で震えているがいい!

ねぇ、何でこんな陰湿な嫌がらせするのぉ?

どうせ雑魚しかいない街だと放置しておれば!毎日毎日ポンポンポンポンポンポンポンポン!撃ち込んできよって!

頭おかしいんじゃないか貴様ぁ!」

 

うわぁ、こりゃ相当に怒ってるよ。

と言うかちょっと待て?そういえば最近めぐみんの爆裂散歩とかいう頭のおかしい日課に付き合っていつもアイツが爆裂魔法を撃ち込んでる古城があったよな?

 

もしかしてアレか⁉︎

 

 

「…我が名はめぐみん!

アークウィザードにして、爆裂魔法を操る者!」

 

「………めぐみんって何だ、馬鹿にしてるのか!」

 

「ちっ、違うわい!」

 

めぐみんの紅魔族特有の名乗りにデュラハンはツッコミを入れる。

うん、めぐみんには悪いが俺も最初はそう思った。

 

「我はこの街の随一の魔法の使い手!

私が貴方の城に爆裂魔法を撃ち続けたのは我が作戦の内!

…たった1人でノコノコと出てきたのが、運の尽きです」

 

 

 

 

 

 

 

「おい、いつから作戦になったんだ?」

 

「ああ。しかもサラッとこの街の随一と豪語したぞ…」

 

「シーッ!良いからここは黙っててあげなさい!

今日はまだ爆裂魔法を撃ってないし、後ろに他の冒険者も控えてるから強気なのよ」

 

 

ホントに、アイツ変なところで意地っ張りだよな。

 

 

 

 

「…その赤い目、そうか貴様紅魔族か。

成程、ならばその珍妙な名前も納得がいく」

 

「おい、両親から貰った私の名前に文句があるなら聞こうじゃないか!」

 

「ふんっ、まあ良い。俺は貴様ら雑魚にチョッカイかけに来たのではない。この街には突如落ちて来たという謎の光についての調査に来ただけだ。

良いか?これからはもう、爆裂魔法は使うなよ?」

 

 

そこまで言うとデュラハンは帰ろうとしていた。

 

ほっ。どうやら戦うことにはならなさそうだな。

いくらアンデッド特攻のバックル持ってるにしても幹部相手に真っ向から戦うとか冗談じゃない。

 

 

 

 

 

 

たが、そんな俺の安堵の気持ちを、ウチの爆裂馬鹿は見事に破壊しやがった。

 

「無理です。紅魔族は一日に一度、爆裂魔法を撃たなきゃ死ぬんです」

 

「お、おい!聞いたこともないぞそんな話!

適当な嘘を吐くな!」

 

俺も初めて聞いたわそんな話。

 

「もう良い!貴様と話していても埒が開かん!

仕方ない。貴様には苦しんで「おい」ん?」

 

デュラハンが何かしようとしていると、それを遮ってさっき俺たちがギルドで話していた人が奴の前に出て来ていた。

 

 

「お、おいアンタ!危ないぞ!」

 

「心配ない。それに、魔王軍の幹部の実力がどれほどのものか知る良い機会だからな」

 

そう言うと、その人は懐からある物を取り出した。

ってアレは!

 

《デザイアドライバー》

 

その人は腰に俺やエースが持っているのと同じデザイアドライバーを腰に巻くと、懐から大型のレイズバックルを取り出す。

 

《SET》

 

以前エースが持っていた白い銃の様なバックルをセットし、横にMAGNUMの文字と鎧が形成されると左手をまるで鉤爪の様に形を取り首をゆっくり切り裂く動作をした後、その言葉を口にする。

 

「変身」

 

その人はバックルのシリンダー部分を回してトリガーを引いた。

 

すると、その人の体がエントリーフォームに変化して頭には深い青色の狼の頭になり、白い前回エースが纏っていた鎧を身に纏った。

 

そして彼の右手にはエースが使っていた片手銃が握られていた。

 

「か、仮面ライダー⁉︎」

 

「まさか、デザイアグランプリの参加者だったのか!」

 

「ねえ、あの人の鎧この前エースが使ってたのじゃないの⁉︎」

 

あの人が持ってたのかよ!

 

 

「き、貴様!まさか奴の言っていた仮面ライダーか!」

 

「ほう、仮面ライダーの事を知ってるか。

手合わせついでに、色々と聞かせてもらうぞ」

 

仮面ライダーになったあの人は銃を構えてデュラハンと今にも戦闘が始まりそうな雰囲気だった。

こりゃあ俺も参戦した方が良いな。

 

俺は懐に忍ばせていたドライバーとバックルを手に取ろうとする。

 

「(不味い。奴がどのライダーかは知らんが、タイクーンとかいうライダーだった場合我々アンデッドに対する切り札を持っていると聞く。ここは撤退するが賢明か)仮面ライダーよ、今は貴様と戦う時ではない。今回は特別に見逃してやろう!」

 

デュラハンはそう言うと、馬を操り勢いよく俺たちの方から背を向けて走り去って行った。

 

どうしたんだ?

 

 

そんな俺の疑問を他所に、周りの冒険者からは歓喜の声が上がる。

 

「スッゲェ!魔王軍幹部を戦いもせずに退けやがった!」

 

「それに何だあの鎧!見た事ねえぞ!」

 

「とにかく助かったぜ鎧の兄ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

「………」

 

周りの冒険者の歓喜の言葉を他所に、あの人は変身を解除してめぐみんを引き連れて俺たちの方に近づいて来た。

 

「おい、無茶をし過ぎるな。

俺が出て来たから良いものを、そうでなければ死んでたかもしれないぞ。お前も、パーティーメンバーなら手綱くらいは握っておけ」

 

「す、すいませんウチの頭の可笑しいのが」

 

「おい、悪いとは思ってるが頭の可笑しいという所は外してもらおうか!」

 

お前以外の何者でもないんだよ頭の可笑しいの。

 

「それよりお前、その手に持ってるものだが。お前も仮面ライダーだったんだな」

 

「へ?」

 

狼の仮面ライダーに言われて自分の手を見てみると、俺の手には取り出して腰に当てようとしていたドライバーとセットしようとしていたイガリマバックルが握られていた。

 

「あっ、いや。これは…」

 

「別に隠さなくても良い。そのIDコア、確かタイクーンとかいうライダーだったな」

 

「そういうアンタは、青い狼って事は…」

 

 

 

 

 

「ああ。仮面ライダーウルフ、東條霧葉だ。

ここでは何だ、場所を変えて話がしたい」

 

「………はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デュラハンが立ち去り、カズマがキリハという男と話している時、街の城壁の上でその様子を見ていた者がいた。

 

 

それは、タンクフォームのギーツに変身していたエースだった。

 

実はエースはギルドのアナウンスが鳴り響いた時、カズマ達とは別で行動し壁の上でタンクグレネードガンでいつでもデュラハンを狙い撃てる様にしていたのだ。

 

「どうにか戦闘にはならずに済んだな。

………にしても」

 

エースは先程キリハが変身したウルフの使っていたマグナムの姿を思い返していた。

 

「マグナムのバックル、アイツが持っていたのか(無理矢理奪うのは論外だし、かといって今の俺のバックルは、どうやら奴とは“相性が悪い“らしいしな)」

 

 

 

「ま、なる様になるか」

 

エースは変身を解除して、壁の上から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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青の狼との話 そして…

 

〜???〜

 

魔王城。

そこは、人々を苦しめる魔王とその配下のモンスター達が蔓延る正しくゲームでいうところの最終ステージに当たる場所。

 

そんな魔王城にあるとある庭園の様な場所には1人の男がいた。

その男は農家の様な格好をしており、男がいる庭園にはまるで人の様なナニカが木の実の様に庭園の木々から生えていた。

 

「ふんふふん♪ふーふん♪ふんふん♪」

 

そんな不気味な空間にも関わらず、男はまるで自分の部屋の様に楽しげに肥料を撒いたりしていた。

 

「愛しい愛しいジャマト達♪栄養を一杯蓄えて、大きくなーれ♪」

 

男は木から生えてる人の様なナニカをとても愛おしそうに、まるで自分の子供の様に撫でている。

 

 

「へぇ、今回も着実に育ってる育ってる。喜ばしいねぇ」

 

そんな男に話しかける1人の女がいた。

 

男は誰かと思いそちらを振り返ると、そこには灰色のボロボロのフード付きのマントを羽織り、そこから覗く白い髪に赤と青のオッドアイの目をした見た目年齢的には20代ほどの女が笑顔で立っていた。

 

「おぉ!アベル様!珍しいですねこんなところに来るなんて」

 

「いやなに、せっかくデザグラを面白くする為に魔王軍に手を貸したんだから、私が送り出した君の様子を見ておきたくてね」

 

アベルと呼ばれた女性を見た男は作業を一旦中止して彼女に向きなおる。

しかしデザグラという単語を聞いた途端に一気に不機嫌そうになっていった。

 

「デザグラ…そして仮面ライダー。

私が丹精込めて育てたジャマト達を倒しやがってッ…!」

 

「あー、まあ君にとっては良い気分では無いよね〜。

ま、そんなことは今はいいじゃないか!それより、新しい“肥料“を持ってきたよ」

 

アベルは虚空に手をかざすとその空間に小規模な歪みが発生する。

すると、そこから出てきたのは“赤黒い“色をした肥料が入っている袋だった。

それを見た男は先ほどまでの不機嫌さなど吹き飛んだかの様に喜びに満ちた表情となる。

 

「おぉ!これはこれは、いつもありがとうございますアベル様!

おぉーいお前達ー!新しい肥料だぞ〜!」

 

男はその肥料を人型のナニかに向けて嬉しそうに見せ早速それを活用し始めた。

 

 

そんな様子を、アベルはただ笑みを絶やさずに見ていた。

 

「いや〜喜んでくれて何より。その調子でもっとジャマトを育ててくれよ(そしてデザイアグランプリを、もっと美しくも残酷なゲームにしてやりな)」

 

彼女は誰もが見惚れそうな笑顔の裏で何かドス黒い何かを企んでいた。それを悟らせないのだから彼女の演技の上手さが窺えるだろう。

 

「(そういえばこの前ベルディアくんにタイクーンには気をつけろって言ったけどどんな見た目か教え忘れたなー。まぁいっか。

しかし“ケケラ“の奴面白い事考えるよね、まさか別世界の戦士の力をバックルにするなんて)」

 

アベルはそんな事を考えながら、男が肥料をまいて殺虫剤などの準備をする様子を見学し続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜カズマside〜

 

キリハという人が仮面ライダーウルフに変身してデュラハンを退けた後、俺はその人に仲間と一緒に再びギルドに戻ってきていた。

因みにライダー同士での話には大して興味が無いのかアクアはギルドの中央で宴会芸をしており、めぐみんやダクネスもその芸を他の冒険者達と一緒に見ていた。

 

「さて、改めて挨拶を。先程も言ったが、トウジョウキリハだ。職業はルーンナイトをしている。

よろしく頼む、仮面ライダータイクーン」

 

「お、おう。サトウカズマだ。職業は冒険者。

それにしてもさっきはありがとうな、ウチのパーティーメンバーを助けてくれて」

 

「気にするな。俺も人の子だ、そのくらいは当然の事だ」

 

すみません、俺の周りにはそんな当然の事をされる程の人物が今のところエースやウィズくらいしか居ないんです…。

それに今回の事って結果として俺たちの所為なんです…。

 

「そ、そういえば俺たちに何の用なんだ?確か俺たちとアンタってそもそものチームが違う筈なんだが…」

 

「ああ、いや大した深い意味は無い。

強いて言うなら、“あの“ギーツと同じチームのライダーがどの様な人間か気になっただけだ」

 

へぇ、エースと同じチームの俺についてね。

………ってちょっと待て。

 

「アンタ、エースについて知ってるのか?」

 

「ああ知ってる。というより、俺のチームにギーツと同じく前回のデザグラに参加していたライダーが居てな。ソイツから聞いて知っていたといった所だ」

 

え?エース以外の前回までのデザグラ参加者⁉︎

 

ってよく考えたら不思議でも無いから。前回までの参加者がエースだけだったらチームバランス的にこっちだけが有利な事になる可能性があるからチーム分けの段階で上手く調整してるのか。

 

「へぇ。それで?実際にアンタから見て俺はどんな感じに見えたんだ?

アンタの素直な感想を聞かせてくれ」

 

「む?そうか?では遠慮なく言うぞ」

 

俺はここで普通に聞くのではなく大物感を出して聞いてみる。

RPGゲームとかではこうやって大物感を出した方がそれっぽいし、相手にこちらを大きく見せられる。

 

さえ、向こうから見た俺の評価を聞こうじゃないか。

 

 

 

 

 

 

「率直に言って、見るからに貧弱そうな男という印象だ」

 

 

・・・あれ?

 

 

「まず、多少鍛えてはいたのだろうがそれでも一流の戦士の体には程遠い。

オマケにこれは完全に勝手なイメージとなるのだが、根性も無さそうでどちらかといえば引きこもって何時間もゲームに当てそうなどこか暗さを感じた。

それに今のその喋り方も去勢を張ってるのが丸わかりだ。本質はとても捻くれた性格をしていそうだと感じた」

 

 

………ヤバイ、滅茶苦茶好き勝手言われたけど何一つ間違って無い…。

土木工事のバイトで多少鍛えられたけど確かに付け焼き刃な部分もあるし、前の世界ではちょっとトラウマがあって引きこもって一日中ネットゲームに時間を費やしていた。

あまつさえ俺の完璧な演技も見抜かれただと⁉︎

 

 

「だが…」

 

「?」

 

 

 

「それでも悪人では無い事は、これも何となくだが分かった。

人間観察は得意な法でな」

 

「そ、そうですか…」

 

…何だろう、俺の周りがアレなだけにこんな普通に褒められるのって少し照れ臭いな。

 

「そ、そういえば1つ気になったんだけど、アンタが使ってたバックルだけどさ…」

 

「ん?ああコレか」

 

俺の質問にキリハは懐に手を入れそこから先程使っていた確かマグナムだったか。それのレイズバックルを取り出して見せてきた。

 

「これはこの前の宝探しゲームで手に入れたバックルでな。

強力なのは間違い無いが、どうにも俺には合わない様でな」

 

「へ?そうなの?」

 

「ああ。どうやらIDコアには大型バックルとの相性があるみたいでな。

俺のウルフのIDコアはこのマグナムとは合わないらしい」

 

つまりはアレか。

ゲームで言うところの専用武器みたいな感じか。

ソイツが装備するとかなりステータスアップするけどそれ以外が装備するも大して意味がないアレ。

 

という事は。

 

「なあ、ものは相談なんだけどさ」

 

「バックルならやらんぞ。相手チームに有利になる様にしてどうする」

 

デスヨネー。そんな上手い話無いよなー。

 

 

「だが、お前の持ってるバックル次第では、交換も考えなくは無い」

 

「交換?」

 

「ああ。俺も銃撃戦は性に合わなくてな、剣を使えるバックルとコレを交換。それならば応じよう」

 

「マジで⁉︎待ってろよ今すぐに取り出すから!」

 

よし!これならエースの戦力強化に使えるどころかこれをダシにしてアイツをパーティーに引き入れられるかもしれない!

確かこの前のパイレーツっていうバックルは剣も使えた筈!

 

俺はそうと決まれば早速懐に手を入れてそのパイレーツバックルを取り出して…取り出して………。

 

 

「あれ?」

 

取り出そうとしたけど、いくら探しても手に当たるのは小型のバックルとイガリマだけ。パイレーツが見当たらない。

………あっ。

 

「しまったアァァァァァァァッ!」

 

そうだよ!確かこの前の宝探しゲームでエースに渡してそのままだったよ!

チクショウ!俺とした事が!

これだと戦力増強&エース勧誘がオジャンじゃねえかよ!

 

「まさか…持ってないのか?」

 

「…はい、そうなんです」

 

「…まあ、俺も焦ってるわけでは無い。もしバックルを手に入れて交換したい場合はスパイダーフォンで登録したライダーに連絡できる様だ。だからそう気を落とすな」

 

「うん…ってちょっと待て。今なんて言った?」

 

「ん?だから気を落とすなと」

 

「いやその前だよ」

 

なんかとんでもない言葉が聞こえた気がしたぞ。

 

 

「スパイダーフォンで登録したライダーに連絡できる。のところか?」

 

「・・・やらかしたアァァァァァァァッ!!」

 

そうだよ何で忘れてたんだ俺は!

俺たちに支給されたスパイダーフォンは要するにスマホだ。つまり宝探しゲームかあの共同墓地に居る段階でエースの連絡先貰って会える機会はいくらでも作れた筈だ!

つまり態々街中を探す必要も本来は無い筈だったんだよ!

 

あぁ…なんかどっと疲れが…。

って、今はそれどころじゃ無い!

 

「な、なあ!アンタえー…じゃなくてギーツの連絡先知ってたりしないか⁉︎」

 

「ど、どうした⁉︎い、いや俺は知らないが…」

 

「そうか…」

 

まあこの人もエースと知り合いって感じじゃ無かったし無理もないか。

あーあ…。

 

「そういえば、確かバッファがギーツと知り合いらしかったぞ。

もしかしたら奴ならギーツの連絡先を知ってやもしれん」

 

「マジで⁉︎なあその」

 

「言っておくが、連絡先を知ってはいるがバッファは現在別のクエストを受けて街には居ない。戻ってくるにしても明日以降になるだろう」

 

「あ、そうっすか…」

 

まあそんな上手い話無いわな。この世界に来て俺はそれを学んだ。

大丈夫、こんな事初めてのバイト先で畑に魚取ってこいって言われたり馬鹿でかいカエルに追いかけ回されたりするよりは精神的疲労はマシだ。

 

「すまない、役に立てず」

 

「あっ、いや良いって!それだけ教えてくれただけでも助かったよ!

ささっ!今回は助けてくれた恩もあるんだし奢るよ!」

 

「い、いや俺の分の食事代は自分で」

 

「良いから良いから!」

 

俺はキリハを宴会芸をするアクアやそれを見て盛り上がってるめぐみんやダクネス達の元に連れて行きそのまま流れに任せてその時間を楽しんだ。

 

言っとくが、決してこれから先の為にキリハに借りとかを作ろうとかそんな事は一切考えてない。ホントダヨ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜???〜

 

アクアの宴会芸を楽しみ始めたカズマ達。

 

そんな彼らをギルドの外から窓越しに見ている人物がいた。

 

 

その人物は、マゼンタ色のワイシャツの上から黒いジャケットを羽織り黒の長ズボンを履いている。

そして首には二眼レフの同じくマゼンタ色のカメラがぶら下げられていた。

 

「ここが、仮面ライダーギーツの世界か。それも正史とは全く別の」

 

男はカメラで宴会を楽しむカズマ達の様子を撮ると、後ろに向けて声をかける。

 

「そんなに警戒するな、俺は偶々この世界に流れ着いただけだぞ?

“幸運の女神様“」

 

彼がそう呼びかけると、背後の建物の影から1人の少女が出てきた。

それは、動きやすさを重視した露出の多い格好をした銀髪のショートカットの少女で彼女の頬には刀傷が付いていた。

彼女は男を油断なく睨みつけ、その手は腰に帯刀されたダガーをいつでも抜刀できる様に添えられている。

 

「何故、貴方がこの世界に居るんですか…何が目的なんです?」

 

「さあな。

だが、何かを“破壊“する事だけは確かだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故なら、俺は通りすがりの仮面ライダー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界の、破壊者だ」

 

男の正体とは何者なのか。その時のカズマ達は知る由もない。

だが、この世界に何か異変が起き始める事だけは確かなようだ。

 

 

そして、この世界の仮面ライダー達の物語がどの様な方向へ進むのか。

それは神にさえ分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 



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ワニワニパニック

 

青い空、白い雲、緑の草原。

そして、目の前に広がる濁った湖。

 

カズマ達パーティーは、今とある湖に来ていた。

カズマ、めぐみん、ダクネスの視線はその湖につけられている“青髪のプリースト“が入れられた檻に向けられている。

 

「おーいアクアー!進捗はどうだー?」

 

「浄化は順調よー!」

 

「そっかー!トイレー!行きたくなったら言えよー?

引っ張り上げてやるからー!」

 

「あっ、アークプリーストはトイレになんて行かないわよ!」

 

「(お前は昔のアイドルかよ…)」

 

彼らは今、この湖の浄化に来ていた。

 

 

だが何故アクアがこうなのかは約数十分程前に遡る。

 

 

 

 

彼らはこの日も金を稼ぐ為にクエストを受けようとしたのだが、めぐみんは大量にモンスターが居て爆裂魔法を撃てるクエスト。ダクネスは一撃が重いモンスターのクエスト。そしてアクアは大金が手に入りやすいクエスト、もしくはジャマトを倒しに行って手っ取り早く金を稼ぎたいと全く纏まりが無かった。

 

そもそもジャマトもいつどこに現れるのか分からないのでそうホイホイと討伐に出られる訳でもないのだ。

 

 

そうやってどのクエストを受けるか悩んでいて目に入って来たのが“湖の浄化クエスト“だった。

どうやら街近くの湖がとても濁っているらしく、更にそこにブルータルアリゲーターというワニ型のモンスターが住み着いているらしい。

普通に考えればかなり危ないクエストだが、アクアは水の女神なだけあり湖に触れるだけで時間は掛かるが浄化する事が可能らしい。

そしてカズマの考えで特注の檻の中にアクアを入れて後は紅茶のティーパックよろしくアクアを湖に放り込んで今にいたらという訳だ。

 

 

「しかしこの調子だと、問題なく終わりそうですね」

 

「そうだな。今のところ件のモンスターも現れないし、大丈夫だろう」

 

「お、おいやめろよ!フラグを立てるんじゃない!」

 

だが実際のところ、確かに問題なく静かなままだし問題は無いと思う。

カズマはそう考えてると同時に、一つのことを考えていた。

 

「(しかしキリハから聞いたライダーの連絡先だったり俺って色々見落としてたんだな…)」

 

カズマは昨日話していた仮面ライダーウルフことキリハとの会話を思い出していた。

この世界の厳しい現実に直面し、更にはデザイアグランプリという願いを叶える為に世界を救うゲームに参加したは良いが、それでも元の生活とは何も変わっていない。

せめてエースを仲間に引き入れられたらと考えはしたがそれも中々達成できずにいた。

 

「そういえばカズマ、昨日あのウルフという仮面ライダーと何を話していたのですか?あの時はアクアの芸を見ていて全く聞いてなかったので」

 

「そうだった。何を話していたのだ?」

 

「いや、実はな…」

 

俺は昨日の事をめぐみんとダクネスに簡潔に話した。

 

「だから、エースを確実に仲間に引き入れる可能性が最も高いのは、俺たちがキリハの持ってるマグナムと釣り合う剣を使えるバックルを手に入れる必要になってくるって事なんだよ」

 

「成程、それは大変そうですね」

 

「なあ、この前のシークレットミッションとやらがあっただろう。

アレを狙う事は出来ないのか?場合によっては」

 

「それは俺も気になって後でスパイダーフォンで元々登録されてた運営に問い合わせたんだけどさ“シークレットミッションは文字通り秘密のミッションですので、内容を明かす事は出来ません“って言われたし、結局は当てずっぽうで行くしか無いんだよなー………」

 

「「成程」」

 

適当にモンスターも倒していけばどうにかなると思ったけど、世の中上手くいかないもんだなー。

 

 

「ま、何事も地道な努力が大切って訳だ。頑張れよ」

 

「おう、ありがとうなエース。

………ん?」

 

あれ?なんか聞き慣れて尚且つ今この場で聞こえるはずのない声が聞こえた様な…。

そう思った俺は、そっと後ろの方を見てみる。

 

 

「よう、墓地ぶり」

 

「何だエースか。………ってエースぅ⁉︎」

 

何でここに居るんだ⁉︎

 

「おぉ、ナイスツッコミ」

 

「おやエースではないですか。どうしてここに?」  

 

「俺は単なる散歩だ。それより、お前達こそここで何してんだ?

というか、どうしてアクアは檻に入って湖の中に?」

 

エースが聞いた来たので俺たちがここに来た目的を話して、何故アクアが檻に入っているかを説明する。

 

「へぇ、水に触れるだけで浄化できるねぇ」

 

「アイツ、こういう時だけは役に立つからな。あっそうだそんな事より、エース「パーティーメンバーになって欲しい、か?」そうそう。…って何で知ってんの⁉︎」

 

俺エースの前でこの事を言った覚えが全く無いんだけど!

 

「いや、実はお前が昨日話してるのを陰で聞かせてもらってな。

因みに、昨日の魔王軍幹部が襲来して来た時に時も壁の上に居たぞ」

 

「マジかよ⁉︎」

 

そんな前から居たの⁉︎って今はそれどころじゃ無い!

 

「なら話が早い!エース、俺たちのパーティーに「ああ、良いぞ」入ってって即答かよ!」

 

結構アッサリ決めたなオイ!

 

「ただし、お前達がマグナムのバックルを手に入れて渡してくれたらな」

 

「あっ、やっぱりそこも聞いてるよね」

 

「世の中そんなに甘く無い。よくある話だろ?

それに、昨日のウルフとかいうライダーの話を聞く限り、俺の持ってるコレを渡せば交換してくれそうだしな」

 

そう言うとエースは、懐からパイレーツのバックルを取り出して俺たちに見せてくる。

 

「それは、確か前にカズマが引き当ててエースに渡した」

 

「パイレーツ、でしたっけ?」

 

「てかちょっと待て!それってそもそも」

 

「ああ、お前が引き当てたバックルだ。

だが、借りは返したって事はこれはもう俺のバックルって事だよな?」

 

「うぐっ…そ、それはそうだが…」

 

くっ、善意で渡したバックルが仇になるとは…。

しかしどうするか。スティール使うにしても確か相手のバックルを無理矢理奪うのって即脱落の可能性があるって言ってたっけ。

 

それにこの前クリスにスキル習った時レベル差があり過ぎるとそもそもスティールが効かないって聞いた事がある。

…終わりやん。

 

「だが、お前が新しいバックルを手に入れれば良い。まあ頑張れよ」

 

「…あい」

 

仕方ない、こうなりゃこのクエストが終わった後適当にモンスター倒してシークレットミッションを引き当てるしか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁああああああっ!」

 

「「「「⁉︎」」」」

 

そんな俺たちの耳に、1人の女の断末魔にも似た悲鳴が聞こえて来た。

 

 

誰であろう、アクアである。

 

 

「ねぇちょっと⁉︎なんか湖から沢山モンスターが出て来たんですけど!

というかワニ何ですけど!カズマさーん!」

 

アイツの言う通り、アイツの入ってる檻に向かってゆっくりと何かが近づいていた。

 

何であろう、ワニである。

恐らくギルドで聞いたブルータルアリゲーターだろう。

 

驚いている俺たちを他所にブルータルアリゲーターはアクアの入ってる檻に噛みついていた。

一応特別製の檻だから簡単には壊れないとは思うが、流石に怖いのか一心不乱に浄化魔法をかけ始めた。

 

「ピュリフィケーション!ピュリフィケーション!ピュリフィケーション!ピュリフィケーション!ひぃいいいいいっ!」

 

しかし、湖はそれなりの広さを誇っており如何にアークプリーストのアクアでも一瞬で浄化は出来ない。

 

「おーい、もう無理だったら言えよー!引っ張り上げてやっからー!」

 

「嫌よ!ここで諦めたら報酬が貰えないじゃない!」

 

アイツ変な所で頑固だよな。

まあカエルに食われたりとかしたから多少の耐性でも付いてんのか?

 

 

「ひぃっ!今メキッって言った!檻から聞こえちゃいけない音が鳴ったんですけどー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おい、どうするんだ?アレ」

 

「いや、アクアが頑張って浄化すれば自然にアリゲーターもいなくなるだろ。心配しなくてもあの檻はかなり頑丈らしいから大丈夫だ!」

 

「う、うわぁ…」

 

「さ、流石はカズマだ。その容赦のない姿勢!ああ!あの檻の中に入ってみたかった!」

 

煩い外野はほっといて進捗を見るか。

 

 

 

 

「ジャッジャッジャッジャッ」

 

「⁉︎」

 

そんなアクアの頑張りに期待していた俺たちの元に、もういい加減に聞き慣れた声が聞こえて来た。

 

「おいまたジャマトかよ!」

 

しかもこの前のゾンビと違って、今度は白い紋様の黒い体に片手がまるでワニみたいな形をしていた。

 

「あのタイプは初めて見るな。が、見た目から察するにアリゲータージャマトってとこか」

 

「なあ、前々から思ったけどもしかしてジャマトってその場にいるモンスターとか環境とかの影響受けやすいわけ?」

 

「よく気づいたな」

 

やっぱりかよチクショウ!

空飛ぶキャベツだったり巨大なカエルだったりで大変なのにその上その場に応じて変化する奴らだと?ザケンナ!

 

「とにかく倒すぞ」

 

「ダァもうやったらぁ!」

 

《デザイアドライバー》

 

俺たちはドライバーを装着し、エースはパイレーツを、俺はイガリマを取り出してベルトの右側にセットする。

 

《SET》

 

俺たちの横にはそれぞれのバックルを示すローマ字が表示され、俺とエースは各々変身ポーズを取る。

 

「変身」

 

「変身!」

 

そしてバックルを起動させ変身する。

 

《TANK》

 

《IGALIMA》

 

《READY FIGHT》

 

俺はイガリマ、エースはパイレーツフォームに返信してそれぞれ鎌と銃に剣を構えてジャマトとの戦闘を開始する。

そして今回も俺のバックルからは音楽が流れ出す。

 

「よしやるか」

 

「あのカズマ、私たちはどうすれば?」

 

「めぐみんはどうせこの状況じゃ爆裂魔法は使えないから後ろで待機。ダクネスはジャマトからめぐみんを守ってやれ」

 

「任せろ」

 

よし、ダクネスは守りだけは硬いからアリゲーターの噛みつきを受けても耐えられるだろう。…多分!

 

そんな事を思っていると、もうエースはジャマト達を攻撃していた。

 

って遅れ取っちまった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜NO side〜

 

「はっ!」

 

エースはパイレーツガンを乱射してジャマト達を攻撃する。

 

「ジャッ!」

 

しかし、ワニの様な形の片手を前に出してガードの体制を取る。

すると、確かに弾丸は直撃したが少したじろぐ程度で大してダメージが入っていなかった。

 

「なに?」

 

困惑するエースを他所にジャマト達はワニの形をした手の口を開いて噛みつこうと攻撃してくる。

 

エースは咄嗟にそれを回避して、カズマも何とか鎌で防ぎ横から襲って来た個体に対してはワニの手に気をつけて蹴りを入れて捌いている。

 

「おい!なんか蹴った感じ硬かったんですけど!」

 

「…成程そう言うことか」

 

「どう言うことだ⁉︎」

 

「なあカズマ、ふっ!お前、ワニの体が何で覆われてるのか知ってるか?はっ!」

 

「は?」

 

突然の問いかけに困惑するカズマ。しかも戦闘中なのでそんな事を考える暇も無い。

エースもそれを理解しているのだろう、直ぐに答え合わせをする。

 

「答えは鱗板っていう硬い皮膚だ。恐らくこのジャマト達は、ちょっとやそっとの攻撃じゃ倒せないんだろう」

 

「はっ⁉︎じゃあどうすんだよ!」

 

「慌てんな、要するにゴリ押しで行けば良いんだよ」

 

エースは特に慌てた様子を見せずにジャマト達の攻撃を躱して行き、もう一つのバックル“タンクバックル“を取り出してベルトを180度回す。

 

《REVOLVE ON》

 

そして、半回転して右側となった何も嵌められてない方にタンクバックルをセットする。

 

《SET》

 

セットしたタンクバックルの操縦桿を引っ張り出して主砲のスイッチを押し、パイレーツをスライドさせる。

 

《DUAL ON》

《TANK & PIRATES》

 

《READY FIGHT》

 

体がリボルブリングに包まれ宙で半回転する。

そうして上半身と下半身が入れ替わると、上半身にタンクの鎧が纏われる。

ギーツはタンクパイレーツフォームとなり手にはタンクグレネードガンが握られる。

 

「ほらっ」

 

そしてそれを一体のアリゲータージャマトに放つ。

 

「ジャーッ⁉︎」

 

するとアリゲータージャマトはガードこそしたが、先程とは違い火花を散らしながら吹き飛ばされた。

 

しかしそれでも一撃で撃破とはいかない様だった。

 

「中々硬い。だが、倒せない訳じゃ無いな。はっ!」

 

エースはアリゲーター達の強度を測りながらグレネードガンを次々と撃って攻撃していく。

 

ジャマト達はその攻撃により次々と吹き飛ばされ、中には数発受けて撃破された個体も居た。

 

 

 

「相変わらずスゲェなぁ…っとあぶね!」

 

カズマも負けじと応戦するが、矢張り火力不足が否めず多少退ける事はできるが撃破までには至ってない。

 

「チクショウ硬すぎるだろ(こんな事ならあの時ブースト使うべきじゃ無かったな…それに俺ってそもそもそんなにステータス高くなかったよな…)」

 

ここに来て自分のステータスの低さを痛感させられる事になるとは思わなかったカズマは仮面の下で苦い顔をする。

 

 

そんな時、アリゲータージャマトに襲われているダクネス達が目に入った。

 

「やべっ!待ってろダクネス!今助け…え?」

 

慌てて助けに入ろうとしたカズマだったがその手を止めてしまう。

 

 

その理由は。

 

「くぅ!良い!良いぞ!

こんな女1人にモンスターどもご獣の様に私を蹂躙してくるぅ!」

 

「だ、ダクネス⁉︎どうして嬉しそうなんですか!

かかっカズマ!カズマー!なんとかしてください!」

 

「お前は偶には性癖を制御できんのか!」

 

ダクネスが顔を赤くして3体ほどのアリゲータージャマトに噛みつかれているからだ。

 

それを見たカズマは堪らずバックルを操作して必殺技を放つ。

 

《IGALIMA STRIKE》

 

その音声が鳴ると、肩のアーマーにマウントされていた4枚の鎌が展開され緑色のエネルギーを纏う。

そして勢いよく飛び上がり体に回転をかけてそのエネルギーを纏った斬撃をダクネスに群がっているジャマト達に浴びせる。

 

「ジャー⁉︎」

 

「ガァー!」

 

「ケケゼラー!」

 

ジャマト達は断末魔を上げながら爆発していく。

どうやら、必殺技による一撃なら撃破は簡単らしい。

 

 

 

《SECRET MISSION CLEAR》

 

「えっ?」

 

「カズマ、この音って」

 

突然の声にカズマはポカンとし、めぐみんも満足気なダクネスを放っておいて驚愕している。

 

すると、カズマの目の前に“2つ“のミッションボックスが置かれた。

 

「2つ⁉︎み、ミッションの内容は!」

 

カズマは慌ててスパイダーフォンを確認する。

 

シークレットミッションの内容は。

 

“一回の攻撃でジャマトを3体以上撃破“

 

“自身のパーティーメンバーを援護“

 

とあった。

 

「マジかよラッキー!さてと中身は」

 

カズマはいつのまにか復帰してスキルであるデコイを使ってダクネスがジャマト達を引き付けている間に二つのボックスを開く。

 

ボックスの中にはそれぞれ、四角形の青い本体の中心にエメラルドグリーンの円形の物がある大型のバックルに、もう一つは小型の白い救急箱の様なバックルだった。

 

「1つは小型か。まあでと大型が1つ手に入ったから良いか」

 

カズマはそれら2つを回収して、ダクネスに群がってるジャマト達を鎌の大振りで吹っ飛ばす。

 

「エース頼んだ!」

 

流石に硬い相手をまともに撃破するのは部が悪いと判断したのだろう、カズマは残りのジャマトをエースに押し付け(ゲフンゲフン…)任せるとエースもそれを確認したのか一旦距離を取ってタンクグレネードのグリップ部分を赤い部分に合わせる。

 

《ボムモード》

 

「おっと、全くちゃっかりしてるなお前(しかも一度に2つもバックルを。どうやら幸運値はかなりのものらしいな)」

 

そんな事を考えながらタンクグレネードの銃口を集合して自分に襲い掛かろうとして来たアリゲータージャマト達に向ける。

それと同時に肩のアーマーの砲身も向ける。

 

「この状態だとどうやら威力が高いらしいから、今回の打ち上げは地味に終わるか」

 

エースは照準を合わせ、迫り来るジャマト達にその一撃を放つ。

 

「ぐっ…!」

 

その一撃は彼の予想した以上の威力で、彼は反動で地面を少し削りながら後ろに後退する。

 

 

「ジャッ…」

 

ジャマト達にタンクグレネードと肩のアーマーからの砲撃が直撃すると、直撃したその場所は通常時での攻撃とは比べ物にならない爆発が発生し黒煙を巻き起こす。

 

 

 

そして爆発による煙が晴れると、その爆発地点にはジャマト達がおらずその代わりにクレーターだけが残っていた。

どうやらアリゲータージャマト達は消しとばされてしまった様だった。

 

「す、スゲェ威力…」

 

「あ、あんな物所詮は爆発魔法程度の威力!我が爆裂魔法には遠く及びませんよ!」

 

「あ、アレほどの威力を魔法の詠唱無しで…」

 

「お前…今あの砲撃を食らいたいとか思ったろ」

 

「…思ってない」

 

カズマ達はエースの放った一撃にそれぞれリアクションを示しカズマは変身を解除する。

エースの方も変身は解除したが、彼はドライバーから外したタンクバックルを見ていた。

 

「………(まさか跡形もなく消し飛ばず威力とはな、これは本当に使い所を見極めないとな)」

 

「エース、どうした?」

 

「…いや、何でもない。

それよりアクアだが、大丈夫か?」

 

「「「あっ」」」

 

どうやら、今の戦闘でワニに襲われている仲間の事を忘れかけていたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

カズマ達は慌てて湖の方へ向かうと、どうやら既に浄化は完了してブルータルアリゲーターも全て退散した様だ。

しかしアクアは、透き通る様な湖となったその場所でボロボロになった檻の中で体育座りの状態のまま動かなかった。

 

「おーい、アクアー?おーい」

 

「………」

 

返事はないただの屍の様だ。と、出て来そうなほどに全くの無反応。よく見ると目からも生気が感じられなかった。

 

「おいっつってんだろ!」

 

「………うぅっ、ぐすっ…ううぅ」

 

「ったく、怖いなら途中でリタイアするなりしろよな」

 

アクアの変な所に頑固なところにカズマは呆れる。

が、流石にこの状態で労わない訳にはいかないだろう。

 

「な、なあアクア。今回のクエストの報酬なんだけどさ、今回はお前が独占して良いぞ。

今回のお前はよく頑張ったからな。めぐみんにダクネスもそれで良いよな?」

 

「え、ええそうです!今回は全部アクアのお手柄ですからね!」

 

「そうだな!羨ましいぞアクア!」

 

「よく頑張ったな」

 

各々が今回は流石に気を遣ったのだろう、とにかく労いの言葉をかけ続けた。

 

しかし、普段なら調子に乗って偉そうにするのに未だに生気らしい物は一切見られない。

 

「お、おいアクアいい加減出てこいよ。クエストはもう終わったしそろそろ檻をギルドに返さないと「このまま連れてって…」…お前今なんて言った?」

 

 

 

 

「檻の外の世界怖い…このまま街まで連れてって…」

 

 

「………」

 

その彼女の言葉に、カズマだけでなく彼のパーティーメンバーやエースでさえ何も言えなくなった。

 

どうやら、今回の出来事は彼女に相当なトラウマを植え付けてしまったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜???〜

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

とある燃える大地。そこには、身体中を切り刻まれたドラゴンの死体と、その死体の上にまるでチェーンソーの様な剣を突き立てて立つ紫の牛の頭の戦士の姿があった。

 

彼は肩で息をしながらその変身を解除する。

すると、そこにはボロボロの鎧姿の誰が見ても好青年といった雰囲気の男が鎧だけでなく体のあちこちがボロボロになっている姿だった。

 

そんな彼に、2人の女性が近づいて行く。

 

「「キョウヤ!」」

 

「…フィオ…クレメア。やったよ」

 

「ええ!エンシェントドラゴンを倒したのよ!」

 

「やっぱりキョウヤは凄いよ!」

 

2人は男の無事を喜びながら彼に肩を貸す。

 

「さ、早く治療しましょう!」

 

「キョウヤ、体は大丈夫?」

 

「うん…見た目よりは悪くなかったけど。少し休息を取った方が良いかもしれない」

 

彼らはドラゴンの死体の上から降りると近くの手頃な岩場で女性2人が直様男の体から鎧を脱がせてその下にあった傷に持って来ていた包帯を巻いていく。

 

「休息を終えたら、直ぐに街に戻ってプリーストにしっかりとした治療をしてもらいましょう」

 

「それが良いね。

キョウヤ、とりあえずこのポーション飲んで。少しは疲れが取れる筈だから」

 

「ああ…」

 

治療を受けながら彼、ミツルギキョウヤは自身の手を見ながら考えていた。

 

「(まだ“魔剣グラム“を使ってた時の癖が治ってない。それに、アレに頼りきっていたツケが予想はしていたがこんな形で返ってきた。

今回は何とか倒せたけどこのままじゃダメだ…)」

 

彼の脳裏に浮かぶのは、彼が目標としている1人の男と、そんな男の他の中でまるで塵の様に消え去っていく彼の友の姿だった。

 

「(強くならないと、あの人みたいに。

そして叶えるんだ。僕の願いを…)」

 

彼は決意する。必ずこの世界を救うゲーム、デザイアグランプリを勝ち残ると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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遭遇する者達

 

俺たちはあの後、なんとかアクアを檻から出そうとしたのだが結局そのまま街に戻って来た。

その間何度もコイツに檻から出る様に言ってるんだが、コイツ檻の中を聖域だの絶対守護領域だのと分けのわからん事を言い始める。

 

そんでその状態のまま街に戻って来てしまったのだが、そろそろ街の人の視線が痛いんだよ。

しかも終いには変な歌まで歌い始めやがった…。

 

「おいアクア、良い加減に檻から出ろよ。街の人達からの視線が痛いんだよ」

 

「嫌よ…この中こそが私の聖域、いえ理想郷(ユートピア)よ。

外の世界は正しく地獄(ヘル)。そんな世界に出るなんて冗談じゃないわ…」

 

ダメだコイツ…完全に心を閉ざしてやがる。

このまま行くと、よくわからん紫の亀裂でも出て来そうだな。

 

 

「カズマ、アクアはどうする?」

 

「仕方ねえからこのままギルドまで連れて行って引っ張り出すしか無いだろ」

 

檻も返却しなくちゃいけないし、そもそもコイツ檻から引っ張り出さないと話進まないし。

それに、早くキリハに会って今回手に入れたバックル渡してマグナムと交換しないと。あのバックル2つに触れてみたら、どうやら俺の手に入れた今回のバックルは、小型は違うが大型の方はアイツと相性良さそうだったしな。

 

オマケにエースはパイレーツを持ってるから、エースより早くキリハを見つけて渡さないと。

一応スパイダーフォンで連絡(この前話した時に連絡先を交換した)しても良いが、俺の会話からエースに待ち合わせ場所なりに先回りされる恐れがある。だから俺の幸運に頼るしか無い。

 

「しかし、順調にバックルが手に入ったな。

この分だと、あの幹部との戦いにも備えられる」

 

なんかエースが突然ワクワクした様子で物騒なワードを口にしたんですけど…。

 

「おいおい冗談じゃ無えぞ。アッチは魔王軍幹部で、お前やキリハみたいなタイプは兎も角俺なんて最近ライダーになる以前に最近転生して来たばかりだからな?幹部との戦いとか無理だかんな?」

 

「何言ってんだ?俺が言ってるのは1対1の勝負の話だが」

 

「ああ成程、それなら俺関係ないから安心…って言うと思ってんのか⁉︎馬鹿なのかお前!」

 

しかもよく見たら今すぐにでも戦いたくてしょうがないって顔してるし!

オマケに俺が反論したら「何言ってんだコイツ?馬鹿なの?」って逆に馬鹿にされた感じがする!

 

「単身で敵のボスに挑む戦士…紅魔族としては燃えるシチュエーションですが、エース。流石にそれは無謀過ぎますからやめといた方が良いですよ」

 

「確かに、そんなシチュエーションなら私がなりたいぞ」

 

「めぐみんの言うとおりだ!あとダクネス、お前は余計な事言うな」

 

いつもの様にまとまりが無いパーティーは一旦放置だ。

不味いぞ、エースの発想は正にバトルジャンキーかそれに近い何かだ。

 

ていうかちょっと待てよ?

 

「なあ、そういばまだエースの職業を聞いてなかったな」

 

「俺か?

冒険者っていう、モンスターと戦う職業ですが?」

 

「いやそうじゃなくてだ…」

 

あ、こりゃダメだ。聞いてもパーティーに入るとかしないと絶対に教えてくれないパターンだ。

 

まあ良い、職業についてはパーティーに加入してもらった後にでも知れるからな。

今は兎に角早くギルドに着かないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

「女神様?女神様じゃないですか!って痛っつつ…」

 

「キョウヤ!傷口が開くからあんまり激しく動いちゃダメだよ!」

 

「急に走り出してどうしたの?」

 

 

「?」

 

何だ?

ギルドに向かう俺たちの元に、1人のボロボロの鎧を着た男が痛がりながら近づいて来て、後ろから軽装な女性2人がついて来ていた。

 

「何だ、ミノノノギじゃないか」

 

「あ、エースさんどうも。って僕の名前はミツルギですよ!」

 

「すまん、噛んだ」

 

「いえ絶対嘘でしょ⁉︎しかも噛む要素無かったしあったとしてもおかしいでしょ!」

 

「……カミマミタ!」

 

「わっ、ワザとじゃない⁉︎」

 

何だこの茶番は…。

なんかいきなり出て来たイケメンの頭にアホ毛が生えてそうな光景だな。

 

「なあエース。コイツら知ってるのか?」

 

「そう言えばお前達は知らなかったな。

コイツはミツルギキョウヤ。仮面ライダーバッファだ」

 

仮面ライダー⁉︎しかもバッファて確かこの前キリハが言ってたエースの事知ってるってライダーで、前のデザグラの参加者でもあるライダーだったよな⁉︎

 

この明らかに主人公ですって雰囲気のなんかムカつくイケメンが⁉︎

 

「そんで後ろにいる緑と赤の髪がフィオとクレメア。まあ取り巻きその1その2で覚えてくれ」

 

「「誰が取り巻きよ!誰が!」」

 

 

「あははは…まあ兎に角、ミツルギキョウヤ。職業はソードマスターをしている。よろしく」

 

「お、おう。よろしく…」

 

くっ、イケメン特有のモテオーラを感じるっ…。これが、イケメンか!

 

「ところで、どうして女神様は檻に?」

 

「あー実は」

 

俺はミツルギという目の前の男に、どうしてアクアが檻の中にいるのかについて説明した。

 

 

 

 

 

「な、成程…湖の浄化でそんな事に…」

 

説明を終えると物凄い引き攣った顔をされた。

まあ無理もない事だけども。

 

「……」

 

「ん?どうかしたんですか?エースさん」

 

「いや、お前以前にアクアの事を恩人の様に語っていたからもう少し荒ぶると思ったから意外でな」

 

「えっ⁉︎」

 

何?この人アクアの事を信仰してんの?人の好みにアレコレ言うつもりは無いがこの人にはやめといた方が良いと言いたい。

だってコイツとまだ短い間だが一緒に居た俺だから言えるが、コイツ碌でもない奴だよ?

 

「まあエースさんの言う通り、前までの僕ならきっと話も聞かずに詰め寄ってたでしょうね。

…でも、僕の思い込みや勝手な判断で、もう後悔はしたく無いしさせたく無いですから…」

 

「「……」」

 

あれ?何か雰囲気が暗く…。

 

「ったくお前は」

 

「アタッ⁉︎」

 

ミツルギ達の雰囲気が暗くなるとエースがアイツの頭に軽くチョップを入れた。

 

「アレはお前の所為じゃ無い。

アレは仕方なかった事だ。それに、アレは俺がしっかりしてれば起こらなかった事だしな」

 

「ッ!エースさん…貴方は!」

 

 

 

「あのぉ、お話中申し訳ないのですが…」

 

 

ヒートアップしそうな雰囲気の中めぐみんが遠慮しながら話に入ってくる。

正直助かった、理由は不明だけど何だか重い話になりそうな雰囲気だったからな。

 

「どうした?めぐみん」

 

「いえ。この人がアクアを女神と呼んで事など気になる事が色々と有りますが、早くアクアをギルドに運ばないと。

流石に先程から周りの視線が気になって…」

 

「あーそうだな。なあエース、話はギルドに着いてからに出来るか?

それとアンタ、ミツルギだっけ?アンタもギルドでアクアに傷治してもらった方が良いぞ。見たところボロボロだし、アクアはアークプリーストだから回復魔法も得意だしな」

 

「俺は構わないぞ」

 

「えっ?あっ。僕もそれで良いよ。

フィオ、クレメア。君たちもそれで良いかい?」

 

「私はキョウヤが良いならそれで大丈夫よ」

 

「私も」

 

「決まりだな」

 

と言うわけで俺たちはギルドに向かった。

けど道中でアクアが「ドナードナー」だの何だなと歌うから街の人たちの視線がスッゴイ痛かったけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「(エースさん…どうして貴方は、僕を“責めてくれない“んだ…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

カズマ達がギルドに向かっているのと同時刻、ウィズ魔道具店ではいつも通りウィズが今回も来ない客を待って項垂れていた。

 

「うぅ…何でお客さん来ないのぉ。売れるのに…今回は絶対に売れるのにぃ…」

 

彼女は今回はエースに内緒で以前購入したカエル殺しを売れると判断して店頭に並べたのだが、そもそも使い捨てな上にかなり金のかかるその道具を買える人物などこの駆け出しの街に居るはずもない。

 

なので、今回も絶賛赤字なのだ。

 

「これじゃ、またエースさんからお金を出してもらう事にぃ…」

 

 

 

 

 

 

 

「お邪魔しまーす」

 

そんな彼女の店に1人のフード付きのマントの女が入って来た。

 

「あ、いらっしゃいま…せ…」

 

最初はいつもの様に挨拶をしようとしたウィズだったが、その女性の人間離れした美しい容姿や赤と青のオッドアイを見て一瞬言葉を失う。

 

「……」

 

「あれ?私の顔に何か付いてるかい?」

 

「あっ…。いえすみません!とても綺麗だったからつい…」

 

「ふふっ♪嬉しいねぇ。

まあ私の容姿の話は置いといて、この店って魔道具を取り扱ってるんでしょ?何か良いやつ無い?」

 

「あっ、それでしたら最近カエル殺しを入荷していまして」

 

「マジで⁉︎じゃあそれちょーだい」

 

「えっ⁉︎良いんですか!こちらかなりお値段が張りますが」

 

「良いよ別に。それに私の知り合いがカエル関係で困っててねぇ、だからプレゼントでもしようかなって」

 

女はウィズに紹介されたソレを手に取ってある程度眺めると、カウンターにその金額の分だけ硬貨を置く。

 

「これで良いかい?」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

「いやいや気にしなくて良いって大袈裟だなぁ。兎に角今日はいい買い物が出来たよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それじゃあね、“アンデッドの王様“♪」

 

「えっ?」

 

女の最後の言葉が気になり呼び止めようとしたウィズだったが、その時にはもう既にその女は店の外へ出てしまっていた。

 

「ま、待ってください!」

 

慌てて彼女も店の外に出たが、もう女の姿は何処にも見えず夕陽によってオレンジ色に彩られた街並みが見えるだけだった。

 

「今の人は、一体…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、ケケラへの嫌がらせ道具探すついでに行ってたけど、まさか本当に人間社会に紛れ込んでるとは」

 

フードの女は自分が消えて慌てた様子のウィズを、屋根の上から見ていた。

 

「しかも表面上は上手く取り繕ってるけど、どうやらチヒロくんが死んで堪えてるのは当たりだったみたいだね。この分なら」

 

女は懐から1つのひび割れたIDコアを取り出した。

その絵柄はよく見るとペンギンの様にも見える。そしてそれと一緒に後もう一つ、何かの檻のようなバックルが握られていた。

 

「ふふっ♪もしコレを使ってギーツにけしかけたら、彼はどんな風に絶望してくれるんだろう♪」

 

その2つのアイテムを見ながら、女は狂喜的な笑みを浮かべて笑うのを堪えている。

それがどれだけ女が異常なのかを物語っていた。

 

 

 

 

 

「そこまでです、“アベル先輩“」

 

「…あー、最悪だよ。折角良い気分だったのにクソ真面目な後輩の所為で台無しだよ。

どうしてくれるのかな?“エリス“」

 

女、アベルが明らかに不機嫌そうに後ろを振り向く。

 

そこには、ショートカットの銀髪の女性が腰に帯刀してあったダガーの刃を彼女に向けている姿があった。

 

「どうしたもこうしたもありません!貴方は、自分が何をやっているのか分かってるんですか⁉︎」

 

「……その感じだと、どうやら私が“デザグラで死んだ魂の一部をくすねた“り、オマケに“ジャマト側に協力している“って事も知ってるみたいだね」

 

「それだけじゃありません!

先程確認したところ管理していたデザイアドライバーが幾つか減ってる上に、管理者権限を持つ“ヴィジョンドライバー“の1つまでも盗まれた事が判明しました。

その場に残っていた神気の残穢から貴方が盗んだ事も判明しています」

 

「へぇ、そこまでバレてるんだ」

 

自らの悪事が暴かれてると言うのに、アベルは不機嫌そうだがそれ以上に不機嫌にはならず、寧ろ段々と先程の笑みを取り戻しつつあった。

 

 

「まあお前がやった事はそれだけじゃ無いんだがな」

 

「ッ⁉︎…おやおやおや驚いたなぁ。

まさか君まで出しゃばって来るとはねぇ。

 

 

 

 

 

 

何の様かな、“門矢士“くん。それとも仮面ライダーディケイドって呼んだ方が良いかな?」

 

アベルはエリスとは違う方向から聞こえて来た方向を見て彼女が出て来た時より動揺を見せていた。

 

彼女の視線の先には、マゼンタ色の鎧に緑の複眼をし、腰に巻かれたドライバーはデザイアドライバーでは無くマゼンタ色のまるでカメラの様なベルトだった。

 

その戦士は、本と剣が一体化した様な武器の切先をアベルに向けている。

 

「お前だろ?最近、“他のライダーの世界にダークライダー達の偽物を出現させた“のは。

俺の今まで周った世界にも、倒したはずの怪人どもまで何体か復活してたしな」

 

「……成程カインの奴が調べたのか。

他の世界に干渉出来る権限を持つ神は多く無いからね」

 

「はい。そしてそれを突き止めたカイン先輩は、私に門矢士と一緒に貴方を捕えろと命令しました。

さあ、もう貴方に逃げ場はありません。大人しく捕まってください。私も、同じ女神相手に乱暴な事はしたくありませんから」

 

「流石はエリス、絵に描いたような優等生ちゃんだねぇ。

だけどねエリス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たかが生真面目な後輩と世界を超える出しゃばり者が、私を捕らえられると本気で思ってるのかな?」

 

「⁉︎」

 

「ッ!チッ」

 

アベルの雰囲気が変わった事に狼狽えるエリス。士は舌打ちをしながら彼女を逃すまいと剣を振るう。

 

 

しかし、その剣は彼女を捉える事なく空振り、気がつくと彼女の姿は見えなくなっていた。

 

「…逃したか」

 

「アベル、先輩…」

 

標的を流した事に2人はやり切れない気持ちを抱える。

そしてそこに残ったのは、アベルが魔道具店で購入したカエル殺しとソレに貼られている「あ、これケケラの奴に渡しといてね♪」という紙だけだった。

 

 

 

余談だが、律儀にそれを守ってケケラとやらにそれを渡したエリスは、こっぴどく怒鳴られたとか何とか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

あの後俺たちは無事にギルドに着いた。

その後ギルドのお姉さんに事情を説明してアクアを引っ張り出すのに協力してもらった。最初はかなり激しく抵抗されたが、ミツルギが「女神様は、出て来てください」の“女神“という単語に反応して何とか復活して自分から檻から出て来た後、ボロボロだったミツルギに回復魔法をかけてくれた。

 

その後、アクアは儲けた金でいつも通りシュワシュワを飲み気をよくして宴会芸を披露する。

 

めぐみんとダクネス。そしてミツルギのパーティーメンバー達はそれに夢中となり、俺とエース、そしてミツルギの3人は少し離れた席で話していた。

 

「しかし驚いたよ。まさか君がエースさんのチームメンバーだなんてね」

 

「ああ、俺も同じチームにエースが居てくれて心強くは思ってる。

ただ、パーティー組めてないから日頃のクエストが大変なんだよ」

 

「え?でも君のパーティーって見たところアークプリーストのアクア様にアークウィザードとクルセイダーの女性の3人が居る上に仮面ライダーの君も居るんだろう?

そんな君たちが駆け出しの街のクエストで苦戦するところなんてあんまり考えつかないな…」

 

コイツの言う事は正しい。

俺だって最初は?隠された力に目覚めるとかのチート系主人公になれるかもとか、仲間は上級職だから楽にクエストを熟ると思っていた。

 

 

だが現実はそんなに甘く無くて、俺は最弱職だし、パーティーメンバーも一点特化でバランス取れたないし。

オマケに目を離すと問題ばかり起こして、この前の幹部の時もそうだったけどいつかとんでもない問題起こしそうだから怖いんだよ。

 

「ミツルギ、コイツの言う事は本当だ。

特に性格面に難ありだ」

 

「え、エースさんがそう言うならそうなんですね。

君も何と言うか…大変なんだね…」

 

「あんがと…」

 

くぅ、相手がイケメンだが今はそれさえも俺にはありがたかった。

正直この世界に来てまともに同情してくれる相手って少なかったよな〜。

パーティーメンバーは皆んな我が強いし。

 

まあ俺が同情してもらえないのってクリスの時のパンツスティール事故があったからなんすけどね…。

 

 

 

 

「サトウ、居たのか」

 

 

俺が色々と浸っていると、俺の後ろからキリハが話しかけて来た。

どうやらコイツもいまギルドに来たみたいだな。

 

「あっキリハさん!どうも」

 

「何だ、ミツルギも居たのか」

 

「丁度良かった!なあキリハ、このバックル」

 

俺は懐から今回のアリゲータージャマト討伐の時に手に入れた大型バックルをキリハに渡す。

 

そしてそれを受け取ったキリハは俺たち全員に共有されてる能力のお陰でそれを瞬時に理解したのか少し笑みを浮かべていた。

 

「これは…“エクシアバックル“。成程、これは俺と相性が良いバックルだな。なら約束通り」

 

俺の渡したバックルが気に入ったのかキリハも懐からマグナムのバックルを取り出した。

 

「ほら、約束のバックルだ」

 

「おぉ!ありがとうなキリハ!」

 

俺は直ぐ様そのバックルを受け取りエースに渡す。

 

「ほらエース、これで俺たちのパーティーに入ってくれるんだろ?」

 

「おっサンキュー。なら」

 

バックルを受け取ったエースは俺にパイレーツのバックルを渡して来た。

 

「これは返す」

 

「えっ⁉︎いやでもソレは…」

 

「これはあくまでお前にマグナムを任せた方が楽に事が進みそうだから保険として物質にさせてもらった。

それに俺がコレをチラつかせれば、お前はマグナムを確実に手に入れてくれるとは思ったよ」

 

「うっ」

 

つまりは完全にコイツのいいように動いてただけだったのね。

 

「まあでも、パーティーには入ってやるから安心しろ」

 

「いやアッサリだなお前!」

 

「約束だったしな。そもそも俺が最初に手に入れても入るつもりだったし」

 

「え?じゃあ態々マグナム手に入れる為にコレチラつかせる必要無かったんじゃない?」

 

「その方が俺の戦力アップの確率が上がるからな。

大体お前にパイレーツ返してやったんだから、文句無しで頼むぜ」

 

いやそれは良い、それは良いんだけどさ⁉︎

なんか利用された感が有って色々釈然としねえんだよ!

 

「……」

 

俺がそんな事を思ってると、何やらキリハがエースの方を見ていた。

 

「なあ、お前が仮面ライダーギーツ。モガミエースで良いのか?」

 

「ああ、それで間違い無いが」

 

「…そうか、ならば丁度良いな」

 

「キリハさん?」

 

どうしたんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

「実はお前に頼みがあってな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は、お前との決闘を所望する」

 

 

 

………え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





はいと言うわけで今回はここまで!
いやしかし、最近YouTubeで混血のカレコレというチャンネルにどハマりしてしまい投稿に力が入りませんでした。
でも、とても面白くてハマるチャンネルなのでYouTubeを見ていて少し興味のある方にお勧めします。

では、次回まで期待せずにお待ちください。






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決闘の狐と狼

ようやく新しい話を投稿できました。
それと、この話のスパイダーフォンには色々とオリジナルの機能を付けてあります。










 

「俺と決闘?」

 

「ああ、俺はお前と戦ってみたい」

 

ギルドでカズマから俺の目当てだったマグナムのバックルを手に入れた後、仮面ライダーウルフことトウジョウキリハに決闘を申し込まれていた。

 

「お、おいキリハ。いきなり決闘とかお前何言って…」

 

「いや、決闘事態はそれほど珍しくもく無いよ。スパイダーフォンの左下にあるアイコンが有るだろ?」

 

「え?」

 

カズマはミツルギに言われる通りに自分のスパイダーフォンを取り出して画面を見る。

恐らくアイツの画面には、全員共通の画面とその左下にある「vs」の文字と赤と青に分かれた配色のアイコンが有る事だろう。

 

「あ、ホントだ」

 

「そのアプリを使って近くにいるライダーに決闘の申し込みを行う事が出来るんだ。

勿論その決闘で誰か死ぬ事はない。ただ、決闘をするにしても相手ライダーからの承認をある必要があるから一方的に相手と決闘する事は出来ないけどね」

 

ミツルギの言う通り、デザグラにはライダー同士で決闘してお互いを高め合うというライダーデュエルというものが存在する。

普通ならライダー同士の戦いが禁じられているデザグラだが、これを通してでの決闘は許可されている。

 

「勿論これは俺の個人的な要望でメリットなどは無いに等しいが…」

 

「どうするんですか?エースさん」

 

トウジョウとミツルギは俺の反応を伺っておりそれはカズマも同じだ。

 

だが、俺にとっては別チームのライダーの実力を知れるまたとない機会だしな。

 

 

 

「良いぜ、受けてやるよ。その決闘」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

あの後俺たちは宴会芸をやっているアクアとそれに夢中になってるカズマとミツルギパーティーを連れて人気の無い空き地に来ていた。

 

「ね〜ぇ〜、何で私達もお外に出るの?私まだまだ披露してない芸があったんですけど」

 

「はいはいこれが終わったら幾らでもやって良いから我慢しろ、宴会芸の神様」

 

「誰が宴会芸よ!こちとら水の神様よ!あの湖での浄化見て…なか、った…の…」

 

「か、カズマ!アクアのトラウマが再発しそうになってるぞ!」

 

外野が煩いが決闘を始めるのには何の支障も無い。

 

「さて、始めるぞ。決闘の申請はどちらから行う?」

 

「じゃあ俺の方から」

 

俺はスパイダーフォンを操作してアプリを開き、その中にある青い狼のマーク、つまりは仮面ライダーウルフの印をタッチする。

するとスパイダーフォンは蜘蛛型に変形して俺とトウジョウの丁度中間地点に陣取る。

そしてトウジョウの方も恐らく俺から来た決闘の申請を承諾したのだろう、アイツのスパイダーフォンも俺の物と同じ場所に陣取る。

 

「あの、今から何が始まるんですか?」

 

「それは見てのお楽しみってやつだね。ただ、僕たちはこの場から動かない方が良いと思う」

 

 

スパイダーフォン2機は、その場に移動する。

 

 

『仮面ライダーギーツ、仮面ライダーウルフによる1対1の決闘(デュエル)の申請、及び認証を確認しました。

これより周囲への被害防止のため、バトルフィールドを展開します』

 

 

スパイダーフォンからその様な音声が鳴ると、突如として光る蜘蛛の糸の様なものを上に向かって射出した。

その蜘蛛の糸は俺とトウジョウ、そしてカズマ達を覆う様にしてドームの様な空間を形成して行く。

 

 

 

 

 

 

そしてその場が隙間なく糸で埋め尽くされると景色は一変した。

 

 

 

俺とトウジョウは先程よりも距離は離れており、カズマ達も宙に浮かぶまるで観客席の様な場所に移動していた。

 

更に周りの風景は先程までの街ではなく、俺やミツルギ達が居た日本にありそうな工業地帯だった。

 

 

「うおっ⁉︎景色が変わりやがった!」

 

「これは、魔法なのか?だがあのスパイダーフォンとやらが発生させていたが。まさか未知の魔道具?」

 

 

 

 

「ズルギツネー、あんまり無様な戦い方すんじゃないわよー!」

 

「トウジョウって奴も、負けんじゃないわよー!」

 

「2人とも…もう少し言い方…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、ミツルギのパーティーと何かあったのか?」

 

「いいや別に。それにアレも、遠回しに応援してくれてるだけだよ」

 

あの日から俺が変に塞ぎ込まない様にって前と変わらない態度で接してくれてる。分かりにくいが奴らなりの優しさだ。

 

けっこう分かりにくい気遣いだがな。

 

「そうなのか…。まあ良い、始めるぞ」

 

「ああ」

 

気を取り直して俺たちはドライバーを装着。

俺はマグナムを、トウジョウはカズマから貰ったエクシアとかいうバックルを取り出して右側にセットする。

 

《SET》

 

すと俺の横にはMAGNUM、トウジョウの横にはEXIAの文字が緑の粒子と共に現れ、まるでSFにでも出てきそうなロボットっぽい青と白の鎧が展開される。

 

俺たちはお互いに変身ポーズを取りあの言葉と共にそれぞれのバックルを操作する。

 

「「変身」」

 

俺はマグナムのシリンダー部分を回して引き金を引き、トウジョウはバックルの横にある2つのボタンの内、上の緑のボタンを押すとバックルが中央のパーツを中心に青のパーツが四方向に展開する。

 

 

そしてそれらの鎧は俺たちに装着される。

 

《MAGNUM》

 

《EXIA》

 

《READY FIGHT》

 

 

俺はマグナムフォームに、トウジョウは緑色の粒子と共に青と白を主体とした配色で胸にはエメラルドグリーンの宝玉の様な丸い部分がある鎧を纏い複眼の色もエメラルドグリーンとなっていた。

恐らくバックルの名前から察するにエクシアフォームといったところか。

 

そして俺は右手にマグナムシューター40Xを、トウジョウは左手に盾を、右手にはまるで盾と大剣が一体となった様な片手剣を装備している。

 

「やっぱりマグナムが一番しっくり来るな」

 

「これは…ロボットか?(それに頭に浮かんだ名前は…ガンダム?)まあ良い、始めるぞ」

 

「ああ」

 

 

こうして、俺とトウジョウとの1対1の決闘が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

決闘が開始して直ぐに、エースはマグナムによる銃撃を開始した。

 

「ッ!」

 

キリハも負けじと左手の盾で銃弾を防ぐ。そして剣の間合いに入るために一気に距離を詰めようと走り出す。

だがエースも間合いに入らせるつもりが無いのかマグナムシューターで応戦しながら的確に距離を空けている。

 

「くっ、近づかせないつもりか」

 

「態々お前の間合いで勝負してやる理由は無いからな。悪いがこのままの距離でやらせてもらう」

 

特に悪びれる様子もなくエースは弾丸を放ち続けキリハは盾で防ぐので手一杯になっていた。

 

 

…いや、手一杯になってるのは最初だけの様だ。

 

「モガミ、お前はこのバックルには触れたか?」

 

「いや?触れてないが…」

 

「ほぅ、ならば」

 

仮面の下でキリハはほくそ笑み右手の剣、“GNソード“の刃の部分を折りたたむ。

すふと、剣の盾の様な部分から銃口の様な場所が露見する。

 

「これの事は知らないな!」

 

「⁉︎」

 

その銃口からキリハは桃色のビームを一発発射する。エースはそれを間一髪で避けるが、そのビームが着弾した地点は小規模ではあるが焼け焦げて直撃した場合の恐ろしさを物語っていた。

 

「コイツは…ビームを撃てるのか」

 

「そういう事だ!」

 

「ッ、ちぃ!」

 

キリハはビームの威力を確かめると、ライフルモードにしたGNソードからビームを発射し続けエースもそれに当たるまいと工場の建物や荷物などを盾にして銃弾を撃ち続ける。

しかし、銃一本のエースに対してキリハは盾を持って弾丸を防ぎながら徐々に距離を詰め始めている。

 

しかも、実弾と違いエネルギーで形成されているビームは被弾する度に何処かしらを削り取る。なのでいつまでも一箇所には止まれない。

 

「ちっ、厄介な物持ってるな…」

 

「コチラとしては有難い装備だがな。それに」

 

キリハはエースとの銃撃戦を続けてると突然背中にある突起から緑色の粒子が噴き出す。すると彼の体は浮き始めて一気に距離を詰める。

 

「なっ⁉︎」

 

「ここは、俺の距離だ!」

 

距離が近づいたところでキリハはGNソードの刀身を再び展開すると一気に切り掛かる。

 

大振りだったので咄嗟に回避したが、それでも距離を詰めてくるのでエースは後ろに後退しながらの回避を余儀なくされている。しかも足で動いている彼と違いキリハは何かの動力源によって浮遊して突撃してくるのでエースと違いバランス面では上手だ。

そんな状態で剣に切り付けられては回避して格闘戦を仕掛けるエースだったが、相手の防御を突破できずにいる。

 

「ッ(マズイな、このままじゃジリ貧だ)」

 

流石にこのままでは不利だと判断したエースはマグナムシューターのレバーを引く。

 

《BULLET CHARGE》

 

「!」

 

そうする事により威力の高まった弾丸をエースはキリハに

 

 

 

 

 

ではなく、彼の目前の地面へと薙ぎ払う様にして放った。

それにより着弾地点には火花が飛び散り煙が上がる。

 

キリハ一瞬怯んだが直ぐにソードを横薙ぎに薙ぎ払い煙を払う。しかしその時にはもうエースの姿は見えなくなっていた。

 

「隠れたか。直ぐに見つけてやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

一方その頃、カズマ達はエースとキリハの戦闘の様子を表示されたモニターで観戦していた。

映像ではキリハがエースを探し、エースは煙に紛れて近くの建物に身を隠していた。

 

「エースが追い詰められてる⁉︎」

 

「キリハさん、僕が思った以上の実力者の様だ。あのエースさんをあそこまで苦戦させるなんて」

 

 

「ああもう、何やってんのよズルギツネ!このままじゃ負けちゃうじゃないの!」

 

「でも相手は盾持ってるし…」

 

「うぬぅ…キリハの鎧もカッコいいですが、新しいパーティーメンバーがいきなり敗北というのは避けたいですね…」

 

「ああ、だがキリハの太刀筋は見事な物だ。流石のエースもこれでは」

 

「ていうかあのバックルってカズマが最初に持ってたんでしょ?何か弱点っぽいのって知らないの?」

 

各々がそんな反応をしていると、アクアの何気ない呟きから全員の視線がカズマに向く。

 

「あーあのバックルな……。ヤバイ、確かあのバックルって名前は忘れたけど緑の粒子発生させる永久機関とかで永久的にエネルギーが供給されるからエネルギー切れとかは無い。

しかも鎧が上半身の状態でも今持ってる剣以外にも剣隠し持ってるから、今持ってる剣を手放させてもまた取り出してくるぞ」

 

「えっ⁉︎そ、それじゃあ打つ手無しって事かい⁉︎」

 

「いやでもキリハ自身は遠距離より近距離の方が得意っぽいから、そこさえ上手く出来りゃ良いんだろうけど…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「奴が居るとすればこの建物内か」

 

キリハはエースを見失っていたが、煙が上がっていた時間と建物の配置を見て一番近くて隠れやすい建物にアタリをつけて突入していた。

 

 

 

そして案の定キリハの読みは当たっておりエースはその建物内の物陰に身を潜めていた。

 

「(一応奴の機動力を制限する意味で潜り込んだは良いが、ここじゃ逃げ場も無い…)さてどうするか」

 

彼はマグナムをいつでも撃てる高さに構えながら次の一手を考えていた。

幾ら屋内に入って機動力を削いだとしても、あの手に持ってる盾をどうにかしなければまともにダメージすら与えられないだろう。

そして下手に狭い空間内に逃げて仕舞えば逃げ場が無くなる上にビームライフルの一撃で終わる。

 

だがそれを考えてる内に、キリハはエースを見つけるだろう。

 

「これ、マジで終わるか……ん?」

 

色々考えて何とか打開策は無いかと考えていたエースの目に、恐らく工場で使うのであろう細いワイヤーと作業で使った後なのか鉄屑が所々に落ちていた。

 

普通なら何にも使え無さそうな物ばかり。

 

「……」

 

だがエースはそれを見てしばらく考える仕草を取る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キリハはエースを探しながら建物内内の物資や邪魔な扉などを切り裂きながら進んで行く。

 

しかも彼は手当たり次第に隠れ場所を潰しているのでエースが隠れる場所を制限している。

エースの取れる手段が限られて行く中でキリハの脳裏にはある事が過っている。

 

「(ここまでは俺の優勢、モガミの銃の腕前は想定以上の精密性故に同じバックルを使っていれば負けてたのは俺だろう。

だがそれでもこのバックルを手に入れられたのは幸運だった。…だが、ミツルギから聞いた通りの男ならばこのまま終わるとは思えんな)」

 

彼は優勢にこそなれど相手を侮ることはしなかった。

いつどの位置から奇襲を受けても対応できる様に周囲に意識を向けている。

 

しかしそれでも、脳裏に抱えた目の前に居ない男のまだ見ぬ実力に警戒を強めていた。

 

 

 

 

 

 

そしてそうやって進んで行く内に彼は建物の開けた空間に出てくる。

ここに来るまでにエースの姿はなかった。

 

「居ないだと?まさか別の建物に…」

 

キリハはこの空間に来るまでにそれなりに時間をかけて来たので、もしかしたらその間に違う建物に移ったのかもしれない。

そう思い次の建物を探そうとするキリハ。だが…。

 

 

 

「おいおい、諦めるのが早いんじゃないのか?狼男」

 

「ッ、まだ居たか」

 

空間内に突然エースの声が響く。直ぐに声の出所を探ろうとするキリハだったが、いかんせん建物の中という事もあって何処から声が出てるのか特定出来ずにいる。

 

「狼ってのは一度狙った獲物は最後まで食い尽くすまで逃さない生き物だと思っていたが、俺の買い被りだったか?」

 

「…随分と達者に回る口だが、それならば隠れずに出てくれば良い。

そうすれば、望み通りに切り裂き食い破ってやる」

 

「おぉ怖い怖い。だがな、1つお前に先輩として教えといてやるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「狐ってのは、人間を化かしてこそだって事をな」

 

 

 

エースのその言葉の次の瞬間、キリハの背後から「コンッ」という何かがぶつかる音が響いた。

 

「ッ!そこか!」

 

キリハは自身の後ろ上の場所。丁度ガス容器が2本ほど置いてあった場所目掛けてビームライフルを連射する。

そして撃った内の一発が容器に直撃すると、中のガスに引火して爆発を引き起こしその部分を小規模の爆発が吹き飛ばす。

キリハの方にその爆発によって熱風が吹き瓦礫が降ってくるが、彼はそれを気にせずにそちらを見る。

 

「大層な言葉の割には意外とアッサリと決着が着いたな」

 

キリハはもう勝負は着いたと判断し周囲への警戒を解き、そして爆発の中から満身創痍になったであろうエースの姿が出てくるのを待つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、その爆発の中から出てきたのはエースでは無く、見失う前に彼が持っていた筈の武器“マグナムシューター“がボロボロになって落ちてきたのだ。

 

「何⁉︎(武器だけだと!ならば奴は何処にっ)」

 

予想していた物と全く違う光景に動揺するキリハは再び周囲を警戒しようとする。

 

だが、その前に狼の背後から狐は牙を剥く。

 

 

 

「ハッ!」

 

「ぐあっ!」

 

キリハの背後からエースが両手のアーマードガンを展開して彼の背中の突起目掛けて連射してきて、それに対応できなかったキリハはまともに背中にダメージを受ける。

 

その際に彼の背中の突起の装置が大破して見るからにもう使い物にはならないだろう。

そしてそれに追い打ちをかける様にしてエースは格闘戦を仕掛け始める。

 

「ッ!くっ…」

 

「流石にここまで近づけば、その剣は振れないな!」

 

エースはキリハの使うGNソードの剣の間合いを把握し、振らせない様にする為に超近距離での戦闘を選んだ。

しかもこの距離であれば、盾で防ごうとしても払い除ける事が可能だ。

 

この好機を逃すまいとエースはキリハの鎧の襟元を掴み拳を打ち付ける様にしてアーマードガンの銃撃をゼロ距離で浴びせ、時折膝蹴りを比較的鎧がない部分に的確に打ち込んで行く。

 

そしてその連打によりバランスが崩れたところで一旦離し足蹴りを2、3発ほど入れてバランスを崩させ倒れさせる。

 

「ぐぅっ…!舐めるな!」

 

だがこれをチャンスと見たキリハは少しエースと距離が空いた事でビームをエースに放とうとする。

 

 

しかし、その銃口からビームが出てくる事はなかった。

 

「ッ⁉︎何故だ!何故攻撃できない!」

 

「そりゃあ、俺がお前の“動力源“を潰したからな」

 

「どういう意味だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「実はお前の背中のソレが気になってな、見た事もない緑色の粒子を散布し始めたかと思えば突然浮遊したりスラスターの様に噴き出して突撃してきたり。

更にはお前がビームを撃った際に一瞬だが、ビームの中に色こそ違うが粒子の様な物が見えた。ならお前の背中のソレを潰せば少なくともお前の機動力を奪えると判断したんだが、どうやら予想以上の効果はあった様だな」

 

「!(コイツ、そこまで判断して俺の弱点を⁉︎)」

 

 

キリハはこの瞬間、最上永須という男の恐ろしさはその戦闘力だけでは無い事を理解した。

彼の恐るべき所はその観察眼、敵の弱点らしき物を見逃さないまるで狩人の様な鋭さ。そして瞬時にそれを実行する行動力。

目の前の男は、自分の想像以上に戦いなれしている。

 

しかしだからといって彼の戦意が消えることは無い。

 

「(ライフルが使えないのから剣を使うまで!)」

 

キリハはGNソードの刃を展開してエースに斬りかかろうとする。だがエースはそれをバク宙の要領で彼の後ろに移動する様にして躱わすと、彼の体に先程見つけた細長いワイヤーを絡ませる。しかもよく見るとそのワイヤーの端には屑鉄が巻かれており、キリハの鎧に引っ掛けそのまま彼の体を拘束する為に動き回る。

 

「なっ⁉︎」

 

「そんな大振りじゃ、俺は捕まらないぞ!」

 

エースは空間内を縦横無尽に動き回りその度にキリハへの拘束は複雑になって行き、遂にはGNソードを震えない程度には体に巻き付いた。

 

「これは…ワイヤーだと⁉︎」

 

「俺特性の狼男捕獲戦術だよ」

 

軽口を叩きながらもエースはその手を止めずにマグナムバックルのシリンダーを回して引き金部分を引く。

 

すると、アーマーガンの銃口にはアプルーバルリボルバー型のエネルギーが溜まって行きエースはそれを叩きつける為に拳を打ち付ける体制に入る。

 

《MAGNUM STRIKE》

 

「ハァーーーーッ!」

 

気合いの叫びと共にエースは拳を打ち付ける。するとその瞬間に銃口からはとてつもないエネルギーの弾丸が先程のビームとら比べ物にもならない規模や威力を伴いキリハを吹き飛ばした。

 

「グアァァァァァッ!!」

 

 

その威力にキリハは堪らず叫び、しかも壁も何枚もぶち破りながら吹き飛び最終的には建物の外まで出た所で地面に倒れる。

 

 

そしてそれにより彼の変身は解除され、元の生身の状態へと戻っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

「見てください!エースが勝ちましたよ!」

 

「ああ、見事な戦術だったぞ!」

 

「へぇ、相変わらずズルいけど腕は鈍ってないみたいね」

 

「私達のキョウヤ以外に負けるとか絶対に許さないけどね!」

 

「にしてもまさかワイヤーなんて使ってくるとはね。もしかしてエースってカズマさんに負けず劣らずのズル賢さを持ってたりするのかしら?」

 

エースが勝った映像が流れた事により、カズマのパーティーメンバーは歓喜の声を上げ、ミツルギのパーティーメンバーは何処か嬉しそうにして皮肉を言う。

 

「おっしゃ!勝った!でもキリハの奴もスゲェよ、エース相手にあそこまで戦える上に追い詰めるなんて」

 

「ああ。フィールドが何も無い場所だったら、恐らくキリハさんに分配が上がっただろうね。

フィールドを上手く利用しての戦い方、流石はエースさんだ」

 

カズマとミツルギも、エースとキリハの戦いぶりを見て2人に賞賛の言葉を贈る。

 

「これは、君たちのチームに負けない様に僕も更に頑張らなくちゃね」

 

「へへっ!俺たちだって負けねえよ。ウチのパーティーは問題児だらけだけどさ、何とかやってやんよ!」

 

「それは楽しみだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

「ッ…くぁっ…。チクショウ….」

 

キリハは自分の変身が解除された事に気づき自分が勝負に負けたと悟った。

だが、今の彼の顔は。

 

 

「勝負に負けたってのに、随分と満足そうだな」

 

「…モガミ。ああ、こんなにも完膚なきまでに負けたのは初めてだからな。何だか少しスッキリした気分だ」

 

「そうか…。良かったな」

 

エースは変身を解除し、キリハの様子に少し笑みを浮かべながら彼に手を差し伸べ、キリハもそれに甘え手を掴み立ち上がる。

 

「それにしてもお前の戦術にはやられたぞ。あのワイヤーは何処にあったんだ?」

 

「ああそれはな、実はお前から隠れてる際に偶然そこにワイヤー2組とバラバラの大きさの屑鉄を見つけたんだよ」

 

 

 

先程までの種明かしをするとこうだ。

 

 

 

まず、最初のマグナムシューターでの囮は、マグナムシューターにワイヤーを縛り付けてガス容器の裏に置いておく。

そうする事であの空間内で声を響かせてキリハの意識を散り散りにした後に、エースは別の場所からそのワイヤーを引いて音を立てる。

そしてそこに意識が向くかそこを攻撃してガス容器を爆発させれば一気に接近戦に持ち込める。

 

そしてもう一本のワイヤーは片方の端に手頃な大きさの屑鉄に巻きつける。

その屑鉄を上手い具合にキリハの使っていたエクシアの鎧に引っ掛けて動き回れば必然的にキリハの動きは一時的にだが一気に鈍る。

 

エースはそれらを使って最後の一撃へと繋げたのだ。

 

「成程、まさかそこまで考えて動いてたとは。恐れ入ったよ」

 

「ふっ、俺の狙い通りに化かされてくれたな」

 

エースは片手で狐を作ると、少し揶揄う様にしてキリハに言う。

それに対してキリハは嫌な顔などせず、寧ろ少し絆された様にして笑っていた。

 

するとエースの目の前に、赤と青の配色のミッションボックスが出現した。

 

「それは?」

 

「知らないのか?これはこの決闘に勝った者に与えられる言わば勝者への報酬だな。だが、中身が大型か小型かは通常通り運任せだ。

さーて、何が出るかなっと」

 

少し鼻歌混じりにそう言うとエースは早速その中身を確認する。

 

そしてその中身は運のいい事に大型のレイズバックルで、それはまるで盾を思わせる丸いバックルだった。そしてその盾の様な物には彼らの元いた世界の国家の1つであるアメリカを思わせる様な絵柄があり、その中心にはシルバーの大きな星が描かれていた。

 

「おぉ、当たりだな。名前は…“キャプテン・アメリカ“?」

 

「見た目がアメリカの国旗の様だからか?何だか何処ぞのヒーローに居そうな名前だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お取り込み中失礼します」

 

そんな彼らの前に、何処からともなくツムリが現れた。

 

「ん?ツムリ?」

 

「何故ここに?」

 

「理由はデザイア神殿にてご説明いたします。今は申し訳ありませんが、一緒に来ていただきます」

 

少し慌てた様子の彼女は、2人にそう言うと彼らと自分の頭上にゲートを展開して直ぐにそれを下す。

 

それはカズマ達も同様で、更には今このフィールドを展開しているスパイダーフォンも一緒に転送されフィールドは解除される。

 

 

そしてフィールドが消えた時には既にエース達の姿は見えず、そこには元の人気の無い空き地の景色だけが広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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やらかす爆裂と現れる異変と決戦準備

 

「皆様、突然のお呼び出しに応じてくださりありがとうございます」

 

俺たちはツムリによって、最初にデザグラの参加者達が集められたのと同じ場所に集められていた。

 

「俺たちを態々両チームとも呼び出すとは、相当な緊急事態って事か?」

 

「はい。ですがその話はあと2名の参加者が来てからにさせていただきます」

 

あと2名か。1人はゆんゆんというめぐみんと同じ紅魔族だとして、もう1人はミツルギのところか。

 

「確かお前達のところはパンクジャックとかいうライダーだな」

 

「ええ。とても頼りになる人ですよ。あの宝探しゲームでも、小型バックルだったのにそれを使いこなして、最後の頭領を相手にする時なんて難なく足止めまでこなしたんですから」

 

「ほぅ」

 

小型であの頭領相手に足止めか。アレはゲームで言うチュートリアルのボスといっても簡単に倒されたりするステータスにはされていない。

そんな相手に足止めをする程の実力者なら、ミツルギ達のチームは曲者揃いだなこりゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーう、何だ何だ俺たちが最後か?」

 

「あぁ!もう皆んな来てる⁉︎」

 

俺がそんな事を考えていると、俺たちが通ったのと同じゲートが降りて来てそこからは仮面ライダーナーゴである確か名前は、ゆんゆんっていう少女と、もう1人。恐らくコイツがパンクジャックであろう男が現れる。

 

「マサヨシさん!」

 

「おうキョウヤ。お前達も来てたんだなって、デザグラに参加してるのって2チームだからそりゃ集まるわな」

 

「なんだ、ゆんゆんですか」

 

「なんだって何よ!ツムリさんから突然呼び出されて何か大変な事が起こってるかもしれないから駆けつけたんじゃない!」

 

「別にゆんゆんが居なくとも、これだけのメンバーが居る上に我が爆裂魔法があるのでゆんゆんの出番は無いと思いますよ」

 

「何ですってぇ⁉︎というか、まだ爆裂魔法にこだわってたの?

この前会った時にカズマさんが言ってたからもしかしたらって思ってたけど。もう!ちゃんと他の魔法も覚えなさいって言ったのにこのバカみん!」

 

「爆裂魔法と私の名前を同時に馬鹿にするとは!良いでしょう!その喧嘩、買おうじゃないか!」

 

 

 

 

 

 

「皆様、突然の招集に応じてくださりありがとうございます」

 

各々がそんなやり取りをしていると、俺たちをここに呼んだツムリが俺たち全員を見渡せるように少し上の段差に立っていた。

 

そして、彼女の後ろには見たことの無い仮面の男が立っている。

 

「招集に応じてくれたこと、感謝する。仮面ライダー諸君、そして冒険者達」

 

「アンタは?」

 

 

 

「私は、このデザイアグランプリのゲームマスターをしている者だ」

 

「ゲームマスター⁉︎」

 

「なっ⁉︎」

 

「!」

 

仮面の男の言葉に、カズマを始めとしたここに集められた面々が驚愕を顕にする。

俺も、まさかゲームマスターが直接出張ってくるとは予想してなかった。それ程までの緊急事態ということか。

 

「じー…」

 

「⁉︎」

 

が、そんなゲームマスターに何故かアクアが怪しむようにして近づいてマジマジと見つめている。どうしたんだ?

 

「な、何でしょう?」

 

「…ねえ貴方、ちょっとその仮面外しなさいよ。なんか聞いたことある声なのよね」

 

「いや、それは出来ない。お、おい出来ないと言って…ちょっと⁉︎はなっ、離してっ…離せコラァッ!!」

 

「何で抵抗すんのよ!ほら、大人しく仮面の下を見せなさいな!」

 

「やめんか!話が進まんだろうが!

すみませんねゲームマスターさん…。ほら、猛獣女神はこっちで大人しくしてようか」

 

「痛っ!ちょっとカズマ離して!あともう少しでって痛たたたたたたっ⁉︎

分かった!大人しくしてるから私の美しい髪の毛を引っ張るのはやめて!」

 

「さ、サトウくん。流石に女性の髪の毛を引っ張るのは…」

 

「女の命とも呼べる髪の毛を容赦なく引っ張るとは…流石はカズマだ!」

 

ゲームマスターとやらの仮面を何を思ったのかアクアが外そうとしていたが、カズマがアクアの髪の毛を引っ張って遠ざけることで一応は落ち着いた。

しかし、痛そうだなソレ…。

 

「……で、では。話を進めよう。今回、君たちを急遽呼び出したのは他でもかい。ギーツとタイクーン、そしてウルフ達が以前遭遇した魔王軍幹部、首無し騎士、デュラハンのベルディアについてだ」

 

『⁉︎』

 

ゲームマスターのその発言により、どこか緩かった場の雰囲気が一気に張り詰める。

 

ベルディア。その名を俺やカズマ達は最近聞いたばかり、というよりは、現在進行形でソイツのおかげで弱いモンスターが軒並みに隠れてしまっている状況だ。

 

「べ、ベルディアってあの魔王軍幹部の⁉︎めぐみん、あんた今度は何したのよ!」

 

「んなっ⁉︎私が何かやったとどうして決めつけるのですか!確かに、この前は私の爆裂魔法の所為であのデュラハンは来てしまいましたそれは認めます。

ですが、今回のこの件は私は関係ないと思うのです!」

 

「てことは最初はあんたの所為じゃないのよ!」

 

「というかちょっと待て。キリハ、お前ベルディアと戦ったのか?」

 

「それは僕たちも初耳ですよ!以前アクセルにそのベルディアが来たと聞いたから、僕たちも急いでアクセルに戻って来たんです!」

 

「すまないな、タイミングが分からなかった。それに戦ったというより、あの場合は偶然に偶然が重なって戦闘すらしていない」

 

そういえばミツルギ達はあの場に居なかったから、俺たちが実際に奴と直接顔を合わせたとは知らないのか。まあ俺はその時に奴には見られてないんだけどな。

 

「で、そのデュラハンがどうかしたのか?まさか奴がまた攻めてくるとか言うんじゃないだろうな?」

 

「おいおいエース、いくらなんでもそりゃ無いだろ。めぐみんがまた爆裂魔法を撃ち込んでるならともかく「ぎくっ」……え?」

 

え?

 

「………」

 

「おい…。お前、まさか」

 

「……………」

 

カズマの問い詰めるような視線に居心地が悪いと言わんばかりにめぐみんの奴は目を逸らす。

それだけで、彼女が何をしでかしたのかは火を見るより明らかだった。

 

「なーにーしーてー、くれてんだ!こんのロリッ子がああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

「いひゃひゃひゃひゃい!いひゃいでふぅ!はなひをひいふぇふだふぁい!」

 

めぐみんの頬をこれでもかと掴んで引き伸ばしていたカズマは、一応弁明を聞く気はあるのだろう、彼女の頬から手を離して聞く体制をとる。

 

「じ、実は今までは何も無い平原に撃つだけで我慢出来たのですが、その…。あの城に撃ち込んでから、大きくて硬い物じゃないと満足できない体に」

 

「もじもじしながら言ってんじゃねえぞこの爆裂娘が!」

 

「てか結局めぐみんの所為じゃないの!嘘ついてまで誤魔化すなんて!」

 

「大体お前、爆裂魔法撃ったら魔力切れで動けなくなるだろう!てことはお前を運んだ共犯者が、少なくとも俺たちのパーティーに居るはずだ!」

 

そこまで言うとカズマの視線は一気に俺、アクア、ダクネスの3人に固定される。

 

これは、アレだな。日本の刑事ドラマよろしくの聞き込み?或いは尋問のパターンだな。

 

「分かってるとは思うが俺は違うぞ」

 

「私もだ。あの湖浄化クエストが有るまでは実家で筋トレをしていたからな」

 

「てことは2人は白か(まあエースがめぐみんの爆裂散歩という頭の可笑しい日課を知らないのは言うまでも無いし、ダクネスは自分の性癖を満たす為にやらかしそうだが流石に街を巻き込んでまではしないだろう…多分。て事は)」

 

カズマは何か合点がいったのかスッと、アクアの方に視線を向ける。

 

「ッ⁉︎ふ、ふゅ〜ふゅ〜ひゅ〜…」

 

「……」

 

どうやら犯人はすぐ側に居たらしい。

 

「おーまーえーなー!」

 

「いひゃいいひゃいいひゃい!だ、だってあのデュラハンの所為で、碌なクエスト受けられなかったから、腹いせがしたかったんだもん!」

 

「開き直ってんじゃねえぞこのクソアマ!最近やたらとどっかに行ってるとは思ったが、テメェ何余計な事してくれてんだよ!」

 

 

 

 

 

「……話を戻すぞ。もう察したとは思うが、そのベルディアが近々アクセルの街に襲撃を仕掛ける可能性が高い。理由は、今の爆裂魔法による物だ。

ツムリ、あの映像を出せ」

 

「はい」

 

ゲームマスターの指示でツムリは手に持っていたタブレットを操作して俺たちの目の前に1つの映像を映し出した。

 

 

それは、恐らくベルディアが寝ぐらにしている廃城なのだろう。そこに、1日一回の大爆発が何度も巻き起こっている光景だった。

 

『………』

 

「…あの爆発にも耐えられるとは、ベルディアは城にどんな細工をしているんだ?」

 

「キリハさん…多分突っ込むべきはそこでは無いと思います」

 

「とまあこの様に、1日一回必ず爆裂魔法を撃ち込まれたベルディアは激怒。恐らくあと1日2日もすれば、アクセルの街襲撃の為の部隊を編成して攻め込んで来るだろう」

 

「すみません!ウチの頭の可笑しい爆裂バカと宴会駄女神が本当に申し訳ありません!」

 

「なっ⁉︎カズマ、今私の事を爆裂はともかくバカと言いましたか!」

 

「ねえ、宴会駄女神って何⁉︎私水よ?水の女神だから!それに駄は外しなさいよ!」

 

 

 

「とにかく、このままではアクセルの街に甚大な被害が出るのは確実だ。最悪の場合は街の人間全員が皆殺しになる事もあり得る。

それに、少々厄介な者まで現れてしまった」

 

「厄介な者?」

 

ベルディアだけじゃないのか?

 

そう思ったのは他の連中も同じな様で、ゲームマスターはその疑問に答えるために再びツムリに指示を出す。

 

 

 

 

そして、彼女によって映し出された映像には予想外の者が映っていた。

 

「これは!」

 

「まさか…」

 

俺たちは言葉が出なかった。何故なら、恐らくツムリか他のスタッフが隠れて撮影したのであろう映像に映っていたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で…」

 

「何で仮面ライダーみたいなのが居るのよ!」

 

全身が水色のまるでサメと西洋の甲冑が合わさったかの様な鎧と、腰に巻かれているデザイアドライバーとは全く別のベルト。そしてそのベルトにはサメのレリーフの様な物が彫られているカードデッキが嵌っていた。

 

俺たちの変身するライダーと異なる点は多いが、その見た目は紛う事なき仮面ライダーそのものだった。

 

「………って、はあ⁉︎何でアビスが居るのよ!

確かアイツ、ディケイドに倒されて封印される事なく地獄送りになった筈なのに!」

 

「アビス?ディケイド?」

 

「それにつきましてもこれから説明いたします」

 

 

 

 

 

「仮面ライダーアビス。

このライダーは本来、仮面ライダー龍騎の世界に存在した仮面ライダーです。

アビスが元いた龍騎の世界では“仮面ライダー裁判“と呼ばれる、仮面ライダー同士の殺し合いによる裁判が行われていました」

 

「仮面ライダー裁判?」

 

「簡単に言ってしまえば、ライダー同士で殺し合いをさせ生き残った1人がその事件に関する裁判の判決を下す権利が与えられるのです。

その人物によって、その被告人が無罪か有罪か、或いは死刑か執行猶予か。それら全てがその勝利者によって決められるのです」

 

「え?つまり、勝ちさえすればソイツの好きな判決にさせられちまうってのか⁉︎」

 

「流石に証拠や法律に則った判決を与えるなどの制約はある様ですが、基本的にはその様になります。

そしてアビスも、その裁判のライダーバトルに参戦してました。しかし、彼の参加した裁判は自分の犯行を別の人物に擦りつける為の自作自演の物だったのです」

 

そこまで説明すると映像が切り替わる。そこには、たった今説明されたアビスの画像。そしてもう一つまるでカマキリの様なジャマトとは違う怪人の画像が映し出される。

 

「仮面ライダーアビスの正体は“パラドキサアンデッド“。仮面ライダーブレイドの世界に存在する、ハートのカテゴリーキング。即ち、上級アンデッドと呼ばれる怪人でした。

この怪人はとある理由で龍騎の世界に人間の姿で暗躍していましたが、それをその世界で勤めていた雑誌編集者の編集長に勘づかれてしまいその方を殺害。

そしてその場にいた別の方に罪をなすり付けて自分は逃げ切る為に、この裁判に勝利してその人物を有罪にしようとしていました。しかし…」

 

ツムリが次に映し出した映像には、デザイアグランプリが開始する前に映像で見せてもらった仮面ライダーの内の1人。ピンク色の鎧で黒いバーカードの様な物が特徴のライダーが映し出された。

 

「その世界を訪れた仮面ライダーディケイドによってその企みは阻止。そしてその次に訪れた世界にて、このアンデッドは倒されました」

 

「な、なんか急にスケールが大きくなった様な」

 

「だが、そうなると1つ疑問が残る」

 

「確かに。何故その倒された筈のパラドキサというアンデッドが復活しているのですか?」

 

「その原因については、“現在調査中“だ」

 

「「ッ」」

 

ゲームマスターのその発言に、ツムリが少し動揺する様な素振りを見せたが直ぐに平然を保つ。

というか、何故パンクジャックまで僅かながら反応を見せたんだ?

 

「けどそれなら大丈夫じゃないのか?アンデッドなんだろ?

だったら回復魔法や浄化魔法は一丁前のアクアをけしかければどうにかなるんじゃないか?」

 

「“だけ“とは何よ“だけ“とは!あんた、お風呂に入ってると冷水しか出ない天罰を与えるわよ。

ていうか無理よ、他のアンデッドなら兎も角、あのアンデッドは無理。

この世界のアンデッドは肉体が朽ちて魔力などを贄にして動いてるけど、パラドキサとかは別。

アイツらアンデッドの風に死者としての不死身じゃなくて生者として不死身だから浄化魔法は効かないわ」

 

「えっ?そうなの?」

 

「そう。それにアイツら色々ややこしいのよねぇ。やれその世界の生きとし生きるもの全ての先祖だったり、カード使わないと封印出来なかったり、挙げ句の果てにはジョーカーが生き残ったら世界の終わりよ終わり。

その世界を担当した女神が何度泣を見たことか」

 

「うん、ヤバいのは何となく分かったがそのジョーカーなり何なりともっと分かる様に説明しろ?」

 

色々と気になる点はあるが、そうなってくると更なる問題が浮上する。

 

アンデッドとは基本的に不死身で、対処するにはプリーストによる浄化やめぐみんの使う爆裂魔法などを使って消し飛ばず。

そして聖水などの様々な手段があるが、浄化が通用しないしかも文字通りの不死身ならば魔法による効果も期待出来ない。

 

「とにかく、このアンデッドは浄化魔法などが効かない。なので、君たちにはこれを渡しておく」

 

そう言うとゲームマスターが、俺たち全員に何かのカードを投げ渡してきた。

 

アクアやダクネス以外が見事にキャッチしてそれを見る。それは、まるでトランプのカードの様でそのカードには恐らく絵柄が描かれていそうな箇所には何かの模様の様な物だけが記されていた。

 

「これは?」

 

「“ラウズカード“。それのオリジナルからコピーした物だ。

パラサドキサを戦闘不能にしてそのカードを奴に突き立てれば、奴をカードの中に封印できる」

 

「こんなカード一枚でですか?」

 

「俄には信じがたいな」

 

「疑う気持ちは分かるが、それの効果はオリジナルが存在している世界で既に立証されている。問題は無いさ」

 

まあ、仮面ライダーなんてのが存在してるんだ、こんなカードがあっても不思議じゃないな。

 

「で?ゲームマスターさんよ。まさか、そんな怪物共相手に俺たちにそのまま突っ込めって言いたいのかい?

この場に集めたって事は、アクセルの街にソイツらが来る前に迎え撃てって事だよな」

 

「その通り。そして、勿論このまま向かえとは言わない。

このデザイア神殿には、君たち冒険者に役立つアイテムを軒並み揃えている。流石にレア物なアイテムまでは置いてないがね。純度の高いマナタイトや回復ポーション、更には筋力や魔力を一時的に上げる為の魔道具も用意してある」

 

「えー?そんなのよりバックルは無いわけ?アイテムくれるのは嬉しいけど、少しケチくさいんじゃないの?」

 

「確かに、魔王軍幹部を相手にするのですから、それくらいはしてもらいたいですね。

そうでなければ真っ先に死ぬのはカズマになるでしょう」

 

「おい待て?仮面ライダーになってからは、少なくとも爆裂魔法撃って動けないお前よりは役に立つ自身はあるからな?」

 

 

「申し訳ない。我々はこの世界に直接干渉するのは本来であれば禁止されている。

だが、何かしらの縛りをもってこうして干渉出来ている。

このデザイアグランプリも、その縛りによって成り立っている。だから、バックルを手に入れたければミッションを熟すしかない」

 

 

成程、そんなに上手い話は無いわけね。コイツらの言う縛りが何かは知らないが、確かにそんな縛りが無ければ神々が好き勝手にする世界が完成してしまうしな。

 

「ここまで言っていて何だが、我々はただ君たちに頼む事しか出来ない。

このミッションには、恐らく君たちが初めて相手にするモンスターなどは複数居るだろう。勿論死ぬ確率もこれまでの比ではない。

それを承知で、君たちはこのミッションに参加するか?」

 

ゲームマスターは、仮面に隠れて表情こそ分からないが、とても真剣な表情をしてるのだろう。

そんな表情で、俺たちを見ていた。

 

 

 

 

だが、その質問は俺にとっては愚問過ぎた。

 

「決まってる。第一このデザグラは魔王を討伐するゲーム。

なら、魔王の幹部くらいは倒さなきゃな」

 

「エースさん…。ええ、確かにその通り。

それに、ここで断ったら僕は仮面ライダー以前にもう冒険者を名乗れない自信がありますよ」

 

「キョウヤが行くなら、私も行くわ」

 

「私も。どこまでもキョウヤについて行く」

 

「…はぁ、しょうがねえなぁ。

このままだとどちらにしろ不味い事態にはなりそうだし、やるっきゃねえか」

 

「私も当然行きますよ。あの者たちに、我が爆裂魔法の恐ろしさを、骨の髄まで味わってもらおう!」

 

「私も行くぞ!魔王との戦闘は必ず1人は捕虜に取られる。

つまり!私が奴に囚われて(ピー)されたり(ピー)されたりする女騎士として望んだシチュエーションを味わえる絶好のチャンス!ここで逃す手はない!」

 

「お前は何を言っている?

ま、俺も当然参加させてもらう。あのデュラハンとは、以前手合わせできなかったからな」

 

「こりゃ、俺も行かなくちゃいけねえ感じだな。元々不参加決めるつもりは無えけどさ」

 

「わ、私だって行きますよ!これでもアークウィザードですから、仮面ライダーとして以外でも力になれますから!」

 

どうやら、この場に逃げる奴は居ないみたいだな。

 

 

俺たちの意思を確認したゲームマスターとツムリは、恐らく側物だと思ってたのだろう。心底安堵した表情をしていた。

 

こうして俺たちは、魔王軍幹部との決戦を決意。

 

 

「ねえ皆んなもう行く雰囲気だけど、私は嫌よ。そんな危ないことに首突っ込むとか冗談じゃないんですけど」

 

『………』

 

前言撤回、1人全く決意していないプリーストが1人いた。

 

「おい、お前何言ってんだ!空気読めや!

今の明らかに皆んなで魔王軍幹部に戦い挑みに行く流れだったろうが!それに元々はお前とめぐみんがまいた種だろうが!」

 

「でも、嫌な物は嫌なのよ!

そんなに私に行って欲しいのなら、私に対する日頃からの無礼な発言を撤回して土下座でもするのが筋じゃないのこのヒキニート」

 

「テメェこの駄女神が!この期に及んで何言ってんじゃ!

良いか?知力が限りなく低いお前に教えてやる、そのパラドキサとかいう奴はともかく他のアンデッドはお前の浄化魔法が必要なんだよ!ここに来て駄々こねんじゃねえぞ!」

 

「また駄女神って言った⁉︎もう許さないわよこの腐れニート!」

 

「もうニートじゃねえから!冒険者として?そして仮面ライダーとして?モンスターと戦ってる冒険者ですが何かぁ⁉︎」

 

売り言葉に買い言葉で、カズマとアクアは取っ組み合いを始めた。

このまま放置してしまえば、面倒くさい展開になるのは目に見えている。

 

 

が、俺たちが止めようとする前にツムリがアクアの元へ近づく。

 

「アクア様、少しよろしいでしょうか」

 

「何?私今この無礼ニートを捌くので忙しいんですけど。それに、私は参加する気は」

 

 

 

 

 

 

「もし、見事幹部を討ち取った暁には、このデザイア神殿にあるワインなどのお酒で好きな物を2つまで差し上げますよ」

 

「参加するに決まってるじゃない!

待ってなさい私のおs…お酒ちゃん!あのアンデッド共を浄化して迎えに行ってあげるわ!」

 

「言い切っちゃうのかよ…。ま、まあとにかくこれで全員参加で決まりだな!皆んな、頑張るぞ!」

 

『………』

 

いや、やる気になったのは良い事なんだが…。何と言うか…、色々滅茶苦茶だな。

 

そしてこの後、ゲームマスターによりミッション開始は明日の早朝と決まり、俺たちはそれまで各々準備に取り掛かり明日の決戦に備え始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

エース達がゲームマスターとの話が終わった同時刻。天界では、1人の美しい女性が椅子に座りながら目の前の同じく椅子に座るスーツの男。門矢士と向かい合っていた。

 

「どうやら明日の早朝に、仮面ライダーの皆さんはデュラハンが居る廃城に向かうそうですね」

 

「ああ。しかし、あのアクアとかいう女神だが欲望に忠実過ぎるだろ。あの海東でももう少し隠すぞ」

 

「ディエンドの事ですか?流石にアクア先輩でもあそこまでは……無い、と思います…」

 

士と向かい合った状態で座っている女性“女神エリス“は、頬を掻きながらどこか誤魔化す様に視線を逸らす。

 

「そ、それより。先程言った様に、万が一の場合は貴方にも動いてもらう事になりますよ」

 

「安心しろ、そこはしっかり働いてやるよ。しかし他の連中が復活してるから予想はしていたが、鎌田の奴まで復活とはな。

この分だと、月影やアポロガイストまで復活してそうだな」

 

「冗談であって欲しいですが、生憎そうもいかないでしょう。

まあ、キングダークや岩石大首領などがが生き返ってない事を願うばかりです」

 

エリスはそう言ってはいるが、彼女の心配事はそれだけでは無い。

 

「(アベル先輩…何故、こんな事を…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

そしてその頃、ベルディアが居る廃城では彼の手下のアンデッドナイト達が続々とアクセルの街に攻め入るための準備を行なっていた。

 

「あんの頭の可笑しい紅魔の娘がぁ!今回ばかりは我慢ならん!

絶対に目にもの見せてやラァ!アンデッドナイト達よ!お前達も心して準備するのだ!」

 

ベルディアは部下達に次々と指示を出し自身も準備に取り掛かる。

 

 

 

そんなベルディアを少し隠れた場所で見ている者、仮面ライダーアビスが見ていた。

 

「ふん、異世界のアンデッドと聞いてどの様な者達かと思えば、腐れた肉体で動き回る汚物共だとはな」

 

 

 

 

「おやおや、アンデッド同士であったとしてもそんな意見持つんだ」

 

「…アベルか」

 

そんなアビスの背後から、フードの女。アベルが話しかけてくる。

 

「ふん、我々の世界のアンデッドは全ての生物の祖である存在だ。あの様な屍共と一緒にするな」

 

「はいはい、ごめんごめんっと。

あ、そうだ。キミに1つ朗報だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キミを倒したライダー、ディケイドがこの世界に来ている」

 

「⁉︎」

 

「必ず会えるかは分からないけど、もしかしたら復讐のチャンスかもね〜」

 

それだけ告げると、アベルを手を振りながらその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

そしてアビスは、アベルの口から出た名前に仮面の下で目を見開いたまま少し硬直する。

 

しかし直ぐに立ち直ると、拳を握り締め怒りを露わにする。

 

「ディケイド…門矢士!この世界に来ているとは好都合だ。待っていろ、今度こそ貴様をあの世に送ってやるっ」

 

こうして、それぞれの者達は明日の決戦へ向けて、ある者達は決意を、ある者達は怒りを、そしてある者は憎悪を。

それぞれの胸内にそれらの感情を秘めながら、明日の決戦へ向けて準備に取り組んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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殴り込み

 

ベルディア討伐の招集が掛かった翌日の早朝。

 

「よーし、そんじゃ大まかな配置の再確認すっぞ」

 

カズマ達は、ベルディアが住み着いている廃城から少し離れた森の中で城周辺の地形などが描かれた地図をスパイダーフォンに映し出して作戦の再確認を行なっていた。

 

「まず、アイツらに勘付かれない距離からめぐみんの爆裂魔法をぶち込む。

エースやゆんゆんを除いた俺たち仮面ライダーと、クルセイダーのダクネス。それからランサーのフィオが前衛を努める。

盗賊職のクレメアはバインドなどのスキルで後方から援護してアクアはそれを支援。

そして、エースは銃でゆんゆんは魔法で後方からの援護射撃を頼む。もし必要なら近接戦闘もOKだ」

 

カズマが用意した地図に次々とそれぞれのライダーとパーティーメンバーの位置を色分けして展開する。

 

「因みに、エースとゆんゆんにはあの丘の端にいるモンスター達を討伐してもらいたい」

 

「端?ベルディアやアビスを狙わなくて良いのか?」

 

「可能ならそうして欲しいが、もし丘の両端から回り込まれて囲まれたら元も子もないからな。だから2人には俺たちが包囲されない様に援護を頼みたい。

ベルディアやアビスはその次だ」

 

「成程。了解した」

 

「分かりました!」

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇー!なんか一杯見えてきたわよー!アンデッドばかりだから、私行ってきても良いかしらー?」

 

作戦会議をしていると、少し離れた場所からアクアの声がしてくる。

 

今は早朝で、太陽はまだ登りきっていない。

アクア曰く「自分は暗闇でも昼間と変わらない程度には目が利く」との事だったので、デザイア神殿にあった魔道具などの中にあったこの世界ではアーチャーの千里眼やそもそも使う機会が少ない理由でそれなりに貴重な品である「望遠鏡」を渡したのだ。

 

そしてそんな彼女が望遠鏡を覗いた先には、ベルディアを先頭に何体ものアンデッドナイト、そしてゾンビジャマト達が隊列を組んでいた。

どう見てもこれから襲撃を仕掛ける前である。

そしてその多さから、ハッキリした輪郭は分からないがカズマ達の距離からでも分かる程だった。

 

「こっちからも確認したー!それと突っ込んで行くな却下だ却下!

それと、ベルディアとアビスって奴は見えるかー?」

 

「……いいえー!ベルディアは見えたけど、アビスは見えないわー!

アンデッド達ならウジャウジャ居るんだけどー!」

 

「アビスが居ない?」

 

その話を聞いてカズマを含めた全員が訝しむ。

確か前情報通りならアビスもあの城に居るはずで、あの軍団の中に居ても可笑しくはない。それにあの水色の鎧はかなり目立つ筈でアクアが見落としたという事は無いだろう。

 

「どうなってんだ?」

 

「…もしかすると、僕たちがここに来る前にアビスだけ撤退したか既にアクセルの街に向かってしまったか…」

 

「だが、それならば運営がそれを知らせる手筈になってた筈だ。あの城から出たとは考え難い」

 

「だとしたら何でアビスって奴だけ出て来ないんだ?俺たちが攻めてくるなんて奴らは知りようが無いしな」

 

『………』

 

全員の出した答えは沈黙。そもそも何故今から攻め込むのに1人だけ城に残るのか、それが謎だ。

 

 

 

 

 

 

 

「とにかく、数の上では向こうが上だ。

ここは下手に手を出さず、ベルディア達が油断し切ったところをめぐみんの爆裂魔法で一網打尽。そこからは各個撃破って形にしようと思う」

 

「それしか無いだろうね」

 

このまま馬鹿正直に突っ込んで行っても一網打尽にされるのがオチだろうし、アビスがどこに潜んでいるのかも分からない。

ここは様子を見てアビスが何処にいるのかを探りつつタイミングを見てめぐみんの爆裂魔法を撃つ方向に変更だな。

 

 

「よし、おーいアクアー!降りてこーい!

とりあえず場所移動して様子見すっぞー!」

 

「分かったわー!」

 

俺はアクアを呼び戻し、皆んなと一緒にここから少しだけ離れたポイントまで移動………あれ?

 

「なあ、誰かめぐみん見てないか?」

 

「めぐみん?そういえば何処だ?」

 

「あれ?エースさん達も知らないんですか?」

 

「俺は見てないぞ」

 

「私もだ。そちらは誰か見てないか?」

 

「ううん。私たちも見てないかも」

 

「嘘でしょ?まさかこの暗さで逸れちゃったとか?」

 

「いやいやいや、めぐみんってあのアークウィザードで三角帽子の子だろ?さっきまで一緒に作戦会議してたろう」

 

全員見てないのか。

アクアじゃないんだしまさか迷子なんて事は…。ん?なんかゆんゆんがソワソワしてるけど……まさか。

 

「ゆんゆん、何か知ってるな?言いなさい」

 

「えっ⁉︎えっと、その…」

 

「怒らないから、ほら。正直に言いなさい」

 

「はい…あの実は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『エクスプロージョン!』

 

ゆんゆんが何か言おうとする前に、俺たちが居る場所からすぐ近くでそんな声が聞こえる。

そして次の瞬間。先程アクアが確認した方向が明るく照らされると同時にとてつもない轟音を響かせる。

 

「ぷぎゃっ⁉︎」

 

次の瞬間には恐らく爆裂魔法の轟音に驚いてバランスを崩したのであろうアクアが落ちて来たが今はそれどころじゃない!

 

 

俺たちは慌てて茂みから顔を出すと、俺たちの目の前に満足気な顔をしためぐみんがうつ伏せで倒れていた。

 

「ふっふっふっ。ナイス…爆裂っ」

 

「何処がナイスじゃこんのっ!ボケガァああああああっ!!」

 

「めぐみん⁉︎アンタ何やってくれてんのよ!お花積みに行くって言ったから黙っててあげたのに!」

 

「花なら積みましたよ。

魔へと通ずる者達への…手向の花を」

 

「無駄にカッコつけて言ってんじゃねえぞこの一発屋の爆裂娘が!

人が頭使って考えてた瞬間に、お前何してくれてんだ!この前のキャベツの時といい今回といい、お前には我慢の2文字を実行する事は出来んのか⁉︎」

 

「何を言ってるのです?カズマ。

爆裂魔法は、撃ちたい時に撃ってナンボです。寧ろ、ここで撃たずしていつ撃つのですか?」

 

「もっとしっかりとしたタイミングでだよ!

どうしてくれんだ!パッと見た感じ撃ち漏らした敵が結構居んだろうが!」

 

「おいカズマ」

 

「あんっ⁉︎」

 

何だ!こっちはこの頭の可笑しい爆裂娘に説教してる夜中なんですが⁉︎

と言いかけた俺だったが、直ぐにエースが何を言いたいのかを悟った。

 

 

 

 

 

 

何と、爆裂魔法を撃ち込まれて恐らく怒り狂ってるのだろう。ここからでも分かるくらいにベルディア達が武器を手に取り向かってくるではあ〜りませんか。って⁉︎

 

「落ち着いてる場合か!」

 

「な、なんというモンスターの軍勢だ。

アレだけの数を相手に、皆を危険に晒す訳にはいかない!カズマ、行ってくりゅ!」

 

「おぉい待てやこのドMクルセイダー!」

 

俺の静止の言葉なんて全く聞かずに、ウチのど変態クルセイダーはこっちに向かってくるモンスター達へと駆け出していった。

 

「だ、ダクネスさん⁉︎

不味い…、すまないサトウくん。こうなったら正面衝突しか無い!」

 

《SET》

 

「あれほどのモンスターが相手なら、斬り甲斐があるな」

 

《SET》

 

「ありゃりゃ。こりゃ悪ノリが過ぎるぜ」

 

《SET》

 

 

「「「変身!」」」

 

 

「だあもう!どいつもこいつも!

ゆんゆん、エース!お前達は予定通りに遠距離から援護!後ついでにそこの大馬鹿を適当に引っ叩くなりしといてくれ!」

 

「了解しました!本当にごめんなさい!」

 

「ま、なる様になるか」

 

「あ、あのカズマ?先程の事は謝りますから私は安全圏にそのまま移動させて欲しいところなのですが…あうっ」

 

「アンタは少しそこで反省してなさい!」

 

よくやったゆんゆん!

それに生憎と、人の話を聞かずに場を引っ掻き回す奴にかける慈悲は無い!

 

「ねぇ!さっきら私木から落ちたのに誰も心配してくれないんですけど⁉︎」

 

「はいはいお前もさっさと行くぞ!」

 

 

S()E()T()

 

「「変身!」」

 

こうして、1人の空気の読めない頭の可笑しい爆裂娘と、1人のど変態ドMクルセイダーの大ボカによって、俺たちは正面からの戦闘を余儀なくされたのであった。

 

 

……ほんと、この世界もうやだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

カズマ達がやむおえず戦闘を開始した直後、離れた場所から彼らを見ている人影が2人居た。

 

1人はアベルで、もう1人はまるでトランプのAを彷彿とさせる赤い一つ目の複眼を持った鎧の戦士で腰には一振りの剣が帯刀されている。

 

「ぷっはははっ!wマジか、何も考えずに魔法ぶっ放す馬鹿なんて初めて見たよ!」

 

「黙れ、気付かれる」

 

「いやいや神様級の隠密魔法を使ってるから、あのバカなアクアには絶対にバレないよ。エリスの時みたいに余計な邪魔が入ったら嫌だからね〜。

それより、そっちこそアビスが負けそうになったらよろしくだよ?」

 

「分かっている。ハートのキングが奴らに封印される前に、俺が奴を封印してやれば良いんだろう?」

 

「そーそー。君にとってもカテゴリーキングのカードは必要でしょ?あ、でも今回の戦闘には参加しないからね。

だからもしもの時は頼んだよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジョーカー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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殴り込み2

 

めぐみんが考えなしに爆裂魔法を撃ち込みやむ終えずカズマ達はほぼいきなりのボス戦を余儀なくされた。

 

「貴様らァアアアアアッ!!また爆裂魔法など撃ち込みよってからに!もう容赦はせんぞ!

行けアンデッドナイト、そしてジャマト共!」

 

「それについては悪いとは思ってるけどさ、こちとら冒険者なんだからモンスターの事情なんぞ知った事かよぉ!」

 

カズマ達は最初の作戦通りに主に近接戦闘メインは仮面ライダーとランサーのフィオが担当する。

因みにカズマ達はそれぞれ大型バックルを使用しており、ミツルギは禍々しい鎧に異形の様な左手をしたゾンビフォームに、マサヨシは青と黄色のツートンカラーでどこかコミカルな印象を受けるモンスターフォームという姿になっておりそれぞれゾンビブレイカーというチェーンソーと剣が一体になった武器と拳で応戦している。

 

「セヤッ!」

 

ミツルギは近づいてくるゾンビジャマト達をゾンビブレイカーの攻撃で的確に頭部を攻撃して撃退し、剣だけで捌ききれない場合は左手で頭部を掴んで叩きつける彼の印象からは考えられない荒い戦いを行なっている。

 

「ミツルギの奴、結構荒々しいなぁ…」

 

「昔はもっと剣士みたいな戦い方、だったのよ!

それよりゾンビジャマトとかいう奴には噛みつかれない様にするのと頭を潰せば一撃で倒せるんだったわね!」

 

「ああ!コイツら基本的に武器使っての攻撃は無いから噛みつきに警戒しろ!」

 

カズマは各々に指示を出しながらイガリマの鎌でジャマト達を倒していた。

ジャマト以外に警戒するべきはアンデッドナイト達なのだが。

 

 

「『ターン・アンデッド』!……って何で浄化魔法が効かないのよおおおおお!」

 

「『バインド』!アクアさん、効きは悪いけど確かに聞いてるから浄化魔法バンバン浴びせちゃって!」

 

アンデッドナイト達はアンデッドの本能によって主にアクアを狙っておりそれに対応する為にアクアは浄化魔法を放っているのだが、アンデッドナイトの身につけている鎧の効力によるものか女神である彼女の魔法でも一撃で浄化できずにいた。

 

だが幸いな事に何回かかけ続ければ問題なく倒せる上にアンデッドナイト達の足をクレメアがバインドのワイヤーで交錯してくれているので問題なく対処出来る。

そしてそれでも彼女達に近づこうとしたアンデッドナイトは。

 

「ハハハハハッ!良いぞ!流石は魔王軍幹部の部下だ!

これほど強い攻めは初めてだ!さあ、お前達の本気を見せてみろ!」

 

 

 

「何というか、貴方の仲間って…」

 

「言わないでください…」

 

仮面の下でカズマが一筋の涙を流している気がしたが、きっと気のせいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おのれっ!不意打ちでまた爆裂魔法を撃ち込んできただけでなくあの女神から聞いていた仮面ライダー共まで居るとはな。

それに…」

 

乱戦となり一気に敵味方が入り乱れる戦場を見ていたベルディアはここから少し離れた森からアンデッドナイトやジャマト立ち目掛けて弾丸と魔法が放たれてくるのを見て悪態をつく。

 

「(奴ら良い指揮官を持ってるな。包囲されない様にまず包囲しそうなジャマト達を確実に削っている。

しかもアンデッドナイト共はあの青髪のプリーストが浄化して行っている)ちっ、駆け出しの街だと侮りすぎたな」

 

 

 

「ほう?ならば駆け出しと侮ったまま」

 

「!?」

 

突如として上から聞こえた声と突然の殺気にベルディアは担いでいた大剣を咄嗟に頭上に構える。

すると構えた瞬間に剣に重さがのし掛かり思わず片膝を着きそうになる。

 

「切り刻まれてもらおうか」

 

「貴様…この前の仮面ライダーか!」

 

剣から重さが無くなって振り払い目の前を見ると、そこにはエクシアフォームになっていたウルフことキリハがGNソードをベルディアに向けた状態で立っていた。

 

「この前とは鎧の形が違うな」

 

「ああ、実はつい最近手に入ってな。

言っておくが、この前の姿よりは手間取ると思った方が良いぞ」

 

「ふっ、そうか。俺は生前は騎士だった。

貴様も剣を使うというのなら、望むところだ!」

 

「ッ!」

 

ベルディアは片手で頭を抱えた状態でありながらも油断なくキリハを見据えたのち、2人は特に示し合わせたわけでも無いが同時に斬りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

「よし、ジャマトの方は結構減らせてる。アンデッドナイト達もアクアの浄化魔法でかなり削れていってる。

ゆんゆん、魔力の方は大丈夫か?」

 

「はい。運営側のお店でマナタイトがそれなりに貰えましたから、魔力はまだまだ余裕があります!」

 

「そうか。じゃあ時折上級魔法で奴らの体を消し飛ばせ。

要は首から上をやれば良いからな」

 

「分かりました!『ライト・オブ・セイバー』!」

 

エースに指示されてゆんゆんの手からは光の刃が伸び今カズマ達が戦っているゾンビジャマトをアンデッドナイトも巻き込んで薙ぎ払い、その際にゾンビジャマト達の頭部が破壊され倒されていく。

 

エースも的確に頭部を撃ち抜き今の所は順調に事が進んでいる。

因みにゆんゆんがまだ変身していないのは、単純に仮面ライダーの状態では遠距離攻撃が出来ないからである。

 

「あのぉ、順調に事が進むのはいい事なのですが…。いい加減この縄を解いてくれませんか?」

 

援護射撃をしている2人の後ろでは、森の木の一本に縛り付けられためぐみんが如何にも不服そうな顔で見ていた。

 

「嫌よ。めぐみん動ける様になったら今度は何しでかすか分かったもんじゃないんだから!そのまま大人しくしてなさい!」

 

「そうは言いますが。私はもう爆裂魔法は使えませんし、もしモンスター達がこちらに来たら私を縛り付けておくのは不味いのでは?」

 

「安心しろ。危なくなったら縄を直ぐに引きちぎって担いで逃げてやる。それまでそこで良い子にしてろ」

 

「エースまで⁉︎こんのっ!こんな物!このっ、外せぇえええええっ!!」

 

ジタバタするめぐみんだが魔力を使い果たしてほぼ無力なので暴れたところで意味はないのだ。

 

だが今はめぐみんに構っている暇はない。エースは頭の片隅で未だに解決していない問題について考えていた。

 

「(これだけ派手に暴れ回ってるのに、アビスは出て来る気配が全く無い。姿を消しているのか?いや、運営からの情報では奴にそんな能力はない筈…)」

 

 

 

 

 

 

《AD VENT》

 

「「「⁉︎」」」

 

突如として彼らの耳に届いた聞き覚えのない電子音。

その音が聞こえた瞬間、エースを何者かが襲ってきた。

 

「ッ!」

 

「エース⁉︎」

 

「エースさん⁉︎」

 

エースは突然謎の襲撃者に反応できずに両腕と肩を掴まれてしまい動きを制限されてしまう。しかもその襲撃者はおそらく2人で、自分を別の場所へと連れて行こうとしていた。

 

「今助けます!『ライト…』」

 

「待て!俺は大丈夫だ!

それより援護を止めるな!」

 

「で、でも!」

 

「俺はコイツらを何とかして直ぐに戻る!頼んだぞ!」

 

エースは出来るだけ手短にそう伝え終えると、エースと襲撃者の背後に“灰色のオーロラ“が現れる。

そのオーロラは現れた瞬間エースと襲撃者達を飲み込まんと迫っていき、やがて彼らの姿を飲み込んでしまった。

 

オーロラが消えた時にはもうそこにエースと襲撃者達の姿はどこにもなかった。

 

「え、エースが…」

 

「消えた…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

「ぐっ、この!」

 

オーロラカーテンが抜けた先は何処かの採石場。エースはいきなり景色が変わった事に驚愕しながらも襲撃者達を振り解いて距離を取る。

 

距離を取りマグナムシューターを構えるて襲撃者の姿を確認するが、そこにいたのはジャマトでは無かった。

 

「人型の…サメ?」

 

エースの目の前には緑色の人型の2体のサメだった。

片方は頭部が大きく、もう片方は胴体が発達した様な見た目をしどちらもエースに向けて殺気の様なものを放っていた。

 

その姿にエースは見覚えがある。

 

「(確か、デザイア神殿で運営が見せてくれたアビスの契約モンスターってヤツか。名前は…)アビススラッシャーと、アビスハンマーか」

 

 

 

 

 

「ほう?矢張り私のモンスターの事は知られているか」

 

「!」

 

目の前の人型のサメ、アビススラッシャーとアビスハンマーの後ろからまた別のオーロラが現れる。

そのオーロラから現れたのは水色のサメの様な鎧の仮面ライダー。仮面ライダーアビスが出てきた。

 

「では、私の事も当然知っているな」

 

「…仮面ライダーアビス。いや、それともパラドキサアンデッドって呼んだ方が良いか?」

 

「ふん、あの“女“から聞いてた通り若いライダーにしては肝が備わっている上に生意気な男の様だな」

 

「(あの女?)」

 

エースはアビスの口から語られた言葉に疑問を抱くが、それはアビスがベルトから一枚のカードを取り出した事で中断される。

 

《SWORD VENT》

 

そのカードを左手のグローブ型の召喚機“アビスバイザー“に読み込ませると、サメの牙の様な剣“アビスセイバー“が一本アビスの右手に握られその鋒をエースに向ける。

 

「おっと、無駄話が過ぎたな。

情報が確かであればこの世界の仮面ライダーで現在厄介なのは貴様らしいな。つまり貴様を倒しさえすれば、残るライダーの殲滅も時間の問題だ」

 

「へえ?随分と評価してくれてるな。けど、俺以外の仮面ライダー達も舐めない方が良いぞ」

 

「ふんっ、所詮貴様やあのバッファというライダー以外はライダーとなって日も浅い。倒すのに然程支障は無いだろう。

貴様を倒した後、ベルディアと奴らを皆殺しにすれば良いのだからな」

 

「なら尚更お前はここで倒した方が良さそうだな。

それに…」

 

エースの脳裏に浮かぶのは、かつて共に戦った男と今も自分と一緒に居てくれて自分の帰りを待ってくれている女性の顔だった。

 

「アイツとは絶対に破れない約束があるからな。お前なんかに殺されてやるかよ」

 

「威勢だけは立派だが、私を相手に勝てるつもりか?」

 

「勝さ。勝ってやるよ。ッ!」

 

その言葉を皮切りにエースは弾丸を放ち、それと同時にアビス達も襲いかかってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

エースとアビスの戦闘はどちらも譲らない戦いとなった。

 

エースの放った数発の弾丸はアビス達に迫るがアビスセイバーにより防がれ、モンスター達はそれに構わず突っ込んでくる。

最初にセイバーがエースへと飛び掛かり躱され、ハンマーとアビスがそれぞれ斬撃と打撃を行うが斬撃はマグナムシューターによって防がれ打撃はエースの身のこなしによって空を切る。

 

《BULLET CHARGE》

 

そんな中囲まれない様にとエースはマグナムシューターの弾丸を強化してアビススラッシャーに連続で弾丸を撃ち込む。

強化された弾丸を何発も受けた事でアビススラッシャーは火花を散らしながら崩れ落ち、その間にエースはアビススラッシャーの頭に手を置いてバク転の様に軽やかに飛びアビス達から距離を取る。

 

「はっ!」

 

「ちっ、小癪な!」

 

直ぐ様引き金を引き続けるが、アビスはアビススラッシャーとハンマーを盾にしセイバーを地面に突き立ててカードデッキから新たなカードを引き抜きバイザーに読み込ませた。

 

《STRIKE VENT》

 

すると今度はアビスの右手にサメの頭の形をした武器“アビスクロー“が装備され突き出したかと思うと口の部分から水がとんでもない水圧で吹き出してエースを襲う。

 

「ぐっ…ぐぁっ、ぐぁああああっ!!」

 

あまりの水圧に耐えきれずエースの体は後方へと吹き飛ばされてしまった。

そして体制を崩したエースに2体のモンスターは一気に襲い掛かる。

 

「ッ!」

 

直ぐに応戦するエースだったが体制が崩れたところからの攻撃だったので一撃目は反射的に防げたが片手が塞がった事によりもう片方からの打撃はモロに腹部に受けそのまま顔や腹部などに何度も打撃を喰らってしまう。

 

「ガハッ!」

 

「ふんっ!」

 

数発喰らって殴り飛ばされて転がるエース。そして立ちあがろうとした彼にアビスは追い討ちを掛けようとモンスター達の肩を踏み台にして飛び上がりアビスセイバーを上段に振り上げ。

 

「ハァッ!」

 

「ガアァァッ!!」

 

エースの体を斜めに一線し切り裂いた。エースは火花を散らしながらもなんとか後ろに後退して片膝をつく。

 

「はぁ…はぁ…。今まで相手にしてきたジャマト達より遥かに強いな、連携までしっかりしてる」

 

「当然だ。高々十数年生きただけの人間が、アンデッドである私に勝てるとでも?」

 

「コイツは手厳しいな。なら」

 

流石に銃一本だけだと部が悪いと判断したエースはもうに一つの大型バックルを取り出す。

 

「ッ!それはっ」

 

「戦い方を変えるまでだ」

 

《REVOLVE ON》

《SET》

 

エースはベルトを180度回しマグナムを左にするともう片方に以前キリハとの決闘の末に手に入れた大型バックル、“キャプテン・アメリカ“のバックルをセットして円盤の様な部分を勢いよく回す。

するとCAPTAIN AMERICAの文字と共にアメリカの国旗を模した様な鎧が展開される。

 

《DUAL ON》

《CAPTAIN AMERICA & MAGNUM》

 

 

マグナムの鎧が下半身に着て、その代わりに上半身にキャプテン・アメリカの鎧が装着され複眼も青くなりギーツの左手にはシルバーの星を中心にした赤と青の丸い盾が握られ右手にはマグナムシューターを構えていた。

 

「盾か。結構しっくりくるな」

 

「ちっ。それがそのベルトを使うライダーの特徴という事か」

 

「盾を使うのは小型以来か?まあ良いか。

それより使うところも意味も全く違うが、これだけは言わなきゃいけない気がするし、折角だから言わせてもらうぜ」

 

エースはマグナムシューターをアビス達に向けてその言葉を口にする。

 

 

 

 

「アベンジャーズ、アッセンブル」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

アーマーが変わった事によりエースの戦い方も先程より変化する。

 

先程までは相手に近づかせない様に立ち回っていたが今度はむしろ盾を前に構えてガードしながら銃で乱射しつつ突撃してきた。

 

いきなり鎧が変わった事に驚いていたアビス達だったが、直ぐに持ち直して弾丸をガードし接近してきたエースと格闘戦を始める。

 

「ふっ、ほいっ」

 

「⁉︎」

 

アビスはアビスセイバーで斬りかかるが盾で防がれたかと思うと後ろから接近してきたモンスター2体はマグナムシューターの弾丸を喰らって退く。

 

「ぐっ」

 

盾で攻撃を防がれたアビスは腹部に蹴りを入れられて後退させられ、その先に弾丸を数発撃ち込まれた。

 

エースの攻撃はそれだけに止まらず今度は2体のモンスター目掛けて、何と盾を“投げた“。

モンスター達はまさかの行動に驚きながら回転しながら突撃してくる盾の攻撃を受け勢いよく倒れる。

更にそれだけでなく、なんと投げた盾がまるでブーメランの様にエースの手に戻ってきた。

 

「何だと⁉︎」

 

「結構便利だな。やっぱり情報を読み取るだけじゃなくて、ちゃんと実戦で確かめないとな」

 

「くっ、小僧ッ…」

 

「ほらお前にも一発!」

 

「ぬっ⁉︎」

 

アビスは咄嗟にアビスセイバーを前に構えてエースの攻撃に備える。

 

 

だがしかし、エースが投げた盾はアビスから左にズレた位置に突き刺さりそれだけに終わった。

 

「ふんっ、何処を狙ってッ⁉︎」

 

エースの行動が理解できなかったアビスだったがその言葉は突然襲ってきた頭により中止させられる。

突然の事に被弾した箇所を押さえながら慌ててエースの方を向くと

 

 

 

 

そこには、先程突き刺した盾に向けていつのまにかライフルモードにしたマグナムシューターを構えているエースの姿があり既に弾丸は放ち終えた後だった。

 

「き、貴様ぁ!」

 

「どうやらこの盾、ヴィブラニウムとかいう特殊な金属を使ってるらしくてな。この程度のレーザーなら簡単に反射してくれるらしい」

 

まさか弾丸を反射してくるとは思わなかったのか驚愕しているアビスに構わず、エースは急ぎ盾を回収してアビスに弾丸を放ち続ける。

 

「ぐっ⁉︎くっ…ぐあっ!」

 

「このまま押し切らせてもらうぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エース達の戦闘を、採石場の崖の上から見ていた者達がいる。

1人はアベルで、もう1人はアベルと一緒に先程まで森にいた筈の黄金の騎士だった。

 

「へぇ、アビスと契約モンスター達相手に上手く立ち回ってるねぇ。

しかも手に入れて今回が初めての実戦投入なのにもう使いこなしてる」

 

「矢張りあのギーツが、この世界のライダーの中での現在の最高戦力なのは間違いなさそうだな」

 

アベルは実に面白そうに、黄金の騎士はギーツに警戒の色を見せている。

 

「だが、これではアビスが倒さられるのは時間の問題だな。

奴の残りのカードでは奴の決定的な隙を突かなければ厳しいだろう」

 

「ああそこは安心してよ。実はアビスには少し細工がしてあるんだ」

 

「細工だと?」

 

「そう。シンプルだけど、ギーツを翻弄するには丁度いい細工♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ」

 

エースの変化した攻撃パターンによりアビスと2体の契約モンスター達は煙を上げながら後退しついには片膝をつくところまで追い詰められる。

 

「多対一なら簡単に片付けられると思ったんだろうが、生憎こっちもこれ以上の人数と強敵なんて五万と相手にしてるんだ。

たった1人と2体で、俺が倒は倒せない」

 

「……」

 

エースに銃口を向けられアビスは俯く。

 

もう観念したのかとエースは考えたがその考えは直ぐに消し去られた。

 

 

 

 

 

「ふふっ、ははは…ハハハハハハハハ!」

 

アビスの口から出てきたのは、追い詰められた者とは思えないほどの余裕に満ち溢れな笑い声だったのだから。

 

「?」

 

「貴様、まさか私が今の段階で全力とでも思っていたのか?」

 

「何?」

 

「まさか早速使うとは思わなかったが、あの女から得た力を使わせてもらうとしよう。ハァァァァ…」

 

アビスは立ち上がると両手を交差させて力を込める。

すると、彼の体から黒色のモヤの様な物が溢れ始めた。

 

「何だ⁉︎」

 

突然の事に驚愕し盾で防御の構えを取るエースだったが、モヤは攻撃に移る訳ではなくアビスの隣に何かの形を形成し始める。

 

そのモヤは段々と人型の形を形成していき、そのシルエットが次第に明らかになって行く。

 

 

 

 

 

 

 

そして、次の瞬間現れたのは。

 

「なっ⁉︎」

 

「私の事を調べていたのなら、私がどの状態でディケイドに敗れたのかも知っていた筈だな?」

 

「……」

 

アビスの隣に立っていたのは、アビスのもう一つの姿であり本来の姿でもある。

エース達がデザイア神殿で見たカマキリの様な人型の怪人。

 

 

 

 

 

 

 

パラサドキサアンデッドが、アビスの隣に出現していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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殴り込み3

 

エースがアビスと戦っていた一方で、カズマ達はベルディアとの激戦を繰り広げていた。

 

《POISON CHARGE》

 

ミツルギはゾンビブレイカーのカバーをスライドさせて戻すと刃にはオレンジ色のエネルギーが纏われる。

そしてそれを皮切りにして、次々と各々の最大出力の攻撃へと移る。

 

 

《IGARIMA》

 

《MONSTER》

 

 

 

 

 

《STRIKE》

 

《TACTICAL BREAK》

 

「「「ハァッ!」」」

 

円陣を組み3方向目掛けてそれぞれのエネルギーの刃と拳が一斉に発動し、その射線上に居たジャマト達とアンデッドナイトたちを次々と爆発させていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、この重い攻撃っ!新感覚だ」

 

「何やっとんじゃあの変態」

 

やっとのことで敵のモンスター達を一掃したところで、爆発した際の煙が晴れて来たところで恍惚とした顔でなにやら呟いているHENTAIがそこには居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

誰であろう変態(ダクネス)である。

 

「だ、大丈夫ですか⁉」

 

「何で自分から攻撃に飛び込んでんだよ頭イカレテんのかアンタ!」

 

「すみません、ウチの変態が本当にすみません…」

 

仲間の醜態を見て、カズマは思わず泣きたくなってきた。

何でこんな普通であれば最後までシリアス展開が続く展開でこの仲間は最後までそれを維持出来ないのだろうか…。

 

そんな時、不意にカズマの肩にフィオが手を置く。

 

「えーっと、大丈夫よ。アンタが頑張ってるのはここまで見てよく分かってるから…」

 

「…本当に、あんがとございます」

 

 

 

「はーやっと粗方片付いたわね。何よ、数多いだけで大したこと無いじゃ……ってダクネス⁉何でそんなにボロボロなのよ!ほら、ヒールしてあげるからちょっと見せてみなさいな!」

 

「お、お構いなく///////」

 

「ねえフィオ、どうしてあの人はボロボロみたいなのに顔を赤くしてるの?それに、心なしかカズマの方は…」

 

「それは聞かないであげて」

 

 

 

 

 

 

 

 

「グァッ!!」

 

『⁉︎』

 

 

 

危うくシリアスからギャグへと突入しそうになっていたところに、一人のライダーが吹き飛ばされてきた事でその状況は避けられた。

 

 

だが、状況が状況なだけに訪れたのは安寧ではなく更なる緊張だが。

 

「キリハ⁉」

 

吹き飛ばされてきたのは、たった今はベルディアと交戦している筈のキリハであった。

キリハの使っているエクシアの鎧は所々傷が入り欠けている箇所まで見受けられるので相当苦戦していたのだろう。

 

そして、そんなキリハが吹き飛ばされてきたという事は。

 

 

 

 

 

 

「中々に面白い鎧に武器だが、俺を狩るにはまだまだ若い」

 

 

 

大将の1人のご登場である。

 

「ベルディア!」

 

「すまない、初撃で不意を突いたまでは良かったのだが。奴め、防御、回避、そして攻撃に状況判断がこちらよりどれも勝っていた。流石は魔王軍の幹部、油断ならんな」

 

 

 

「当然だ、伊達に魔王軍の幹部を名乗ってはいない。だが、貴様の剣の腕は見事なものだ。

どうだ?俺の部下として魔王軍に入る気はないか?」

 

「生憎と、俺は誰かの下に付いて命令されるのは嫌いでな。あくまで対等な関係で動ける今が一番気に入ってる」

 

「成程、貴様の様に誇り高い戦士は皆首を縦に振らぬものか。少々残念ではあるが、貴様らはここで皆殺しに…」

 

 

 

 

 

 

「『ターンアンデッド』!」

 

 

 

 

ミィギャァアアアアアアアアッ!?

 

 

ベルディアが構えた瞬間、全く空気を読まない光が襲って来た。

 

「ッ⁉︎ねえ変よカズマ!私のターンアンデッドが全然効いてないわ!」

 

「いや多分聞いてるよ?物凄い叫び声上げてたし。

それとせめてセリフくらいは最後まで言わせてあげなさいよ」

 

何にしても、ベルディアが大ダメージを食らった事には変わりないので各々が武器を構えようとする。

だがベルディアも魔王軍幹部であるからか、あれだけのたうち回っていたのにも関わらず直ぐに復帰した。

 

「き、貴様…本当に駆け出しの街のプリーストか?この俺にここまでダメージを与える浄化魔法など、高レベルのアークプリーストでもそう多くは無いぞ…。ま、まあ良い、また浄化魔法を唱える前に真っ先に貴様を斬ってしまえばどうとでも」

 

 

 

 

 

 

 

「『ライト・オブ・セイバー』!」

 

 

 

ドォワアアアアアアアアアアアッツ!?

 

 

大剣を構えて最後のセリフを言い終えようとしたその時、カズマ達の間を縫う様にして一振りの光の刃が突き抜けて来た。

それに驚いたベルディアは反射的に大剣を前に出して防ぐが突然の事に踏ん張りが効かず後方へと弾き飛ばされてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん!ご無事ですか!」

 

カズマ達の後ろから声が聞こえたので振り返ると、魔法を撃った張本人であるゆんゆんが慌てて走って来たところだった。

 

「ゆんゆん⁉何でここに…というか、エースとめぐみんはどうした?」

 

「めぐみんは余計な事しかしない上にもう魔力使い果たして動けないので、スパイダーフォンちゃんで連絡して運営の人に引き取ってもらいました!」

 

「キミ、大人しそうな子なのに結構行動力あるよね…(スパイダーフォンにちゃん付けなのは気になるけど)って、じゃあエースさんはどこに?」

 

 

「エースさんは、私と一緒に皆さんの援護をしていたら…変な魚みたいなモンスター達に変なオーロラに連れ去られてしまって…」

 

「何⁉」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふふ、どうやらアビスは作戦通りに分断に成功したみたいだな(まあ、欲を言えばあの紅魔の娘も巻き込んでくれれば更に良かったのだがな)」

 

バルディアのそんな呟きに真っ先に反応したのはカズマだった。

 

「おい!作戦ってどういう事だ!このアクアに浄化魔法掛けられてちょっとビビってるデュラハン!」

 

「びっ、ビビッとらんわ!

ってそうじゃない!お前達の中で一番厄介なライダーはギーツという白い狐のライダーだと話は聞いていたからな、俺とアビスはそれぞれ別行動を取ったのだ。

お前達の隙を突いて奴がギーツをお前達から引き離し確実に始末する作戦をな」

 

「ッ!じゃあお前達の狙いは最初からエースさんだっていうのか!」

 

「その通りだ。幸いな事にお前達は二手に分かれて俺達を相手にしていたから思いのほか楽に分断できたがな」

 

ベルディアから明かされた企みを聞いてカズマは思わず”しまった!”と後悔する。

そもそも情報にあった筈のアビスの存在がこの場に居ないだけでも違和感があったのに、相手がこちらを分断するこ事に気付けなかったのか。

 

「つまり、俺は貴様らを足止めしてアビスがギーツを始末して加勢しに来るのを待てばいい。

先程から貴様らの動きを見て俺に対抗しうるのはそこのウルフとバッファというライダーだけだというのは分かった。

それに仮に俺を倒せたとして、その時疲労しきっているお前達にアビスを倒す事は出来るかな?」

 

「ッ…」

 

 

ベルディアの言う通り、例えアクアの浄化魔法を使っても既に警戒されている状態で再び当てるのは余程油断でもしていなければ無理だろう。

それにベルディアを倒せたとして、いやそうでなくても既にカズマ達は多数のモンスターを相手にしてそれなりに体力を消耗している。そこにベルディアとの戦闘とくればそれ以上の疲労や消耗は免れないだろう。

 

「お、お前魔王軍幹部の癖に恥ずかしくないのかよ!他は知らんが俺達なんて駆け出しの街に居てまだまだひよっこ冒険者だぞ⁉そんな相手に策略巡らせて二段構えとか!」

 

「そうよそうよ!アンデッドの癖に恥ずかしくないんですかぁ~?」

 

「お、おおお前等!人様の城に爆裂魔法撃ちまくった挙句、ついさっきアクセルに向おうとした俺の軍隊に不意打ちで爆裂魔法撃って来た奴らが言う事か⁉」

 

 

ごもっともである。

因みにカズマとアクアの主張に今いるメンバーの殆どが若干引いていたのは内緒である。

 

 

 

 

 

 

 

「待て、奴は俺が倒す」

 

『えっ⁉』

 

各々がカズマとアクアの行動に引いていた時、吹き飛ばされたダメージから起き上がり手足の感触を確かめていたキリハがGNソードを構えてそう言い放った。

当然、たった今ベルディアと打ち合って手傷を負ったキリハがベルディアに再び斬りかかったところで勝機があるとは思えなかった。

 

「何言ってんだキリハ!」

 

「お前1人でどうこう出来る相手かよ!それにお前さっきので結構ダメージ入ってんだろ!」

 

「問題ない」

 

突然の彼の提案が受け入れられる事など当然ある筈がなく彼は仲間から止められるが、それでも彼は止まる様子はない。

 

「それに、試してみたい奥の手がある」

 

「奥の手?」

 

 

 

「おい貴様ら!さっきから何をコソコソと」

 

「すみません!作戦ターイム!」

 

「認める」

 

『認めちゃうんだ⁉︎』

 

 

キリハの奥の手とやらが気になっていたところにベルディアが横槍を入れようとしてきたが、どうやらこの魔王軍幹部、意外とアホらしい。

しかもアンデッド嫌いのアクアでさえいつもの煽りを忘れる程である。

それに構わずキリハは話を進める。

 

「ああ。ただこれは使い終わればかなりの隙が生まれてしまうのでな、援護は任せる」

 

「…本当に大丈夫なんだな?」

 

「サトウくん⁉︎一体何を!」

 

「このままだと無駄に消耗してエースの助けにも行けない!だったら、キリハの切り札とやらに賭けて短期決戦に持ち込むしかない!

それとも他に何か案があるか?」

 

『……』

 

全員から返ってきたのは沈黙。そもそも魔王軍幹部を相手にする上にこの後のアビスとの戦闘さえ考慮に入れなければならない。

しかも問題は恐らく時間はそこまで残っていないと言う事。

 

「…分かった。だけど、エースさんの救援に向かう事も考えると5分。いえ3分で決めないと不味いですよ」

 

「問題ない」

 

 

 

 

「3分だと?くっハハハハハッ!!この俺に対して3分で決着を付けると言ったのか?

だとすればかなり舐められた物だな!」

 

「精々今の内に笑って侮っていろ、魔王軍幹部デュラハン。勇者殺しのベルディア」

 

「3分、それがお前の絶望までのタイムだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トランザム!」

 

キリハのその言葉と共にバックルから眩い光と共が放たれウルフの体は赤く染まっていた。

 

 

 

そしてバックルの中央にはその文字が顕となる。

 

 

 

 

 

 

 

TRANS-AMと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

「ぅっ、ぐっ…!」

 

エースは今、再び窮地に立たされていた。

 

「どうした。その程度か?」

 

「……」

 

アビスが突如として2体に分離しただけでなく、片方はパラサドキサアンデッドという姿を取りエースへと仕掛けてきた。

更に厄介な事に、契約モンスター達は特に変化は無いがアビスとパラサドキサの連携がモンスターと連携していた時とは比べ物にならない程に洗礼されていた。

まるで、相手が次どんな手を使うか知っている様に。

 

「(何なんだ一体!急に分裂したかと思ったら、今度はモンスター達と連携していた時とは比べ物にならない精度で攻撃してきた?

どういうカラクリだよ)まさか。それより聞きたいんだが、アンタさっきいきなり分裂してたけどさ。それってアンデッドとしての能力?

それともアンデッドってのは皆んなプラナリアみたいに分裂でもするのか?」

 

「この状態になっても減らず口とはある意味あの男より大物だな。

なに、簡単な事だ。私はかつて門矢士に倒された。

そしてその際に過去の私と未来の私は融合したままだったので、実質私の中には過去の私が存在したままだったという事になる。

あの女はそこに着目し、私と過去の私を分離する事に成功した。まあ、前回の様に過去と未来の統合が行われてしまえば意味がないのでこちらの私は中身が無い。

しかし操り人形として使えるのでモンスター達よりは扱いやすいがな」

 

過去に仮面ライダーアビスの変身者であったパラサドキサはかつて鎌田という男に擬態していた。

しかしある日やむおえずその世界にいた編集長を殺害する必要が出来てしまいそれを実行。

結果的に殺害な成功したのだがディケイド達の奮闘により時間が巻き戻されてしまった。

 

その際に鎌田自身も過去に飛びそこで過去の自分と融合した。

アビスを蘇らせた者はそこに着目し今のアビスと過去のアビスを分離させる事に成功した。

だが普通であればそんな事をすれば再び歴史の修正力の様な力が働き強制的に1人にさせられる筈だがアビスを蘇らせた者は女神であり神の中でもそれなりに高い力を持つアベルだ。修正力が働かない様に片方は空っぽな操り人形にして“見た目は同じだが中身の全くない別人“という矛盾している様で矛盾していない存在を作り出してしまった。

 

なので空っぽの方のパラサドキサはもう1人の本体の方の思考に合わせて最善の行動を取る事が可能になってしまったのだ。

 

「へぇ、つまりそいつの意識は無いって事ね。

しかし単細胞生物みたいに増えて、今度はイルカならぬサメと虫のコラボショーでも見せてくれるのか?なら喜んで金払ってやるよ」

 

「本当に口の減らないガキだな。

まあ良い。どちらにしろ貴様は死んだ仲間の無念すら果たさずにここで死ぬ」

 

「……なに?」

 

「言葉通りの意味だ。あの女から聞いた話だが、貴様は今のデザイアグランプリが始まる前に仲間を1人失ったそうではないか。

哀れだな、最早死にこの世に居ない人間の為に自分の命さえ惜しくないとは。正に愚の骨頂だな」

 

「………」

 

アビスの口から不意に告げられた言葉にエースの脳裏にはある光景が流れ始めた。

 

それは“彼“と過ごした、短くも幸せな時間。

エースにとって何物にも変え難い、言わば思い出。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして彼の最も触れられたくない部分。

 

「哀れといえば貴様の仲間だった、名は知らないが自分の願いさえ叶えられず死んだライダーだが」

 

「……れ」

 

今、彼には目の前が段々と歪んで見える。

 

「馬鹿なものだ、自らの実力も弁えず仲間を見捨てて醜く逃げ延びれば少なくとも生き残れたものを」

 

「……まれ」

 

今、彼には目の前の怪物達が自分が心待ちにしていた強敵には見えなくなった。

 

 

 

 

「何より滑稽なのは、その男は大した願いもなく、“幸せな生活を送りたい“などと言うちっぽけな願いの為にライダーなんぞになった事だ。

そんな願いの為にライダーになどなったから、貴様の仲間は死n」

 

「黙れ、喋るな」

 

「!」

 

《REVOLVE ON》

 

今、彼の目の前には駆除すべき害虫しか映らなかった。

 

 

「お前は…、お前達は。確実に叩き潰す」

 

今、1匹のサメは1匹の狐の逆鱗に触れてしまった。

 

 

 

 

 

そして次の瞬間、彼らの目の前には灰色のオーロラが現れる事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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