陰キャのソムリエ三日月ちゃん (不知火勇翔)
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1話

※陰キャの来歴紹介みたいなものです。三日月フェイスも考えましたが、どもる三日月は違和感がありすぎたので止めました。オリジナルガンダムは(自分が)あんまり興味無いので止めました。


「いやー、素晴らしい肉壁だったよ!」

 

 気づいたら真っ白い空間で1人、座っていた。耳に響く明るい声はお日様のような暖かみがあり、不可思議な状況だが何故か心が落ち着いた。

 

「君は陰キャの誉れだね!中学時代からのその献身!自分を自分で貶めることで前を向くその姿勢!素晴らしい!」

 

 よく分からないが、絶賛されているらしい。素晴らしい肉壁って、ちゃんと褒めてるつもりなのかな?

 

「あ、ど、どうも」

 

 どもった。初手に陰キャムーヴをカマスのは慣れているが、なんだろうか。なんとなく変なかんじがした。

 

「さて。君は死んだよ。覚えてる?」

 

 謎の声に言われるまま記憶を思い返す。うん。確かに僕は死んだ。

 

 バイトをしていたある日のこと。突然隣国が僕の母国へ侵攻した。相手は100年後を考えて動く国だったので仕込みは100年分だったらしく、ウダウダと先取防衛を守り続けた母国はアッサリと制圧されていった。まぁ戦車が信号機で止まる国だから、軍の失態ではないと思う。どんどんと軍人が死んで、やがて国は義勇兵を募るようになった。陰キャで自分の価値を探していた僕はそこの一期生として応募して従軍し、そして肉壁となって仲間を守った。別にカッコ良くもない最期だったけど、ダサい奴なりに頑張ってたとは思う。

 

「そう。君は死んだ。自己評価は低いみたいだけど、結構カッコ良かったよ」

 

「あ、あざます」

 

「それでね。僕は君という魂をこのまま輪廻の輪に送るのはもったいないと思ったんだよ」

 

「・・・はぁ。輪廻の輪」

 

 僕も陰キャの例に漏れずオタクなので、『輪廻の輪』と呼ばれるソレが何なのかは察しがついた。そして、この後の展開も。

 

「だからね。別の世界へ君を転生させようと思うんだ。好きでしょ?転生もの」

 

 好きではある。でも死ぬほど痛いのは嫌だ。あとリアルなチーレムは陰キャに毒なので避けたい。

 

「・・・その、そこは痛い思いをしたりは・・・」

 

「・・・うん。選択によっては痛い思いはするかもね」

 

「選択・・・」

 

「・・・君を思っての転生だよ。そこは信じて欲しい。あ、転生特典もあげるよ!何がいいかな?」

 

 転生特典。俺Tueeeee作品ではよくある神様チートがもらえたら最高なんだけど、そっか。選べるシステムなんだ。

 

「じゃあ『顔』を、イケメンじゃなくて良いので、その、マシ?なものに変えて下さい。それで充分なので」

 

 僕の顔面は絶望的に酷かった。無駄に顔だけが骨格を含めて肥大化していて、眉毛と唇は異様に太く、ヒゲが伸びまくり鼻は太く逞しくなり、ブツブツばかりで誉める部分の方が少ない顔だった。なので同級生からは色々言われ、付いた渾名は顔面凶器。刃のように攻撃力のある顔面らしい。曲がり角で鉢合わせたら、うわっ、と言われて距離を離されたりしたし、職務質問も2回経験した。店に入れば高い確率で万引きを疑われて睨まれる。そんな顔面をしているので恋愛を含めて色々と青春を諦めた僕だが、それでも悔しくはあった。

 

 だから望んだのは『マシな顔』だ。少なくとも普通の人として扱われるぐらいには、できれば顔採用で落とされないくらいにはなりたい。絶対に。

 

「言うと思ったよ。手元の鏡を見てみて」

 

 いつの間にか手鏡を握っていたのでその鏡で自分の顔を見た。そこに映っていたのは、ピンク色の長髪。ピンク色の瞳。左目はガーゼみたいな眼帯で隠れていた。

 

 なんと言うか、美少女というか、男の娘?

 

「君の性格的にイケメンは似合わないからね。愛嬌を振りまく系の顔にしたよ。これならイケメンよりもヘイトを集めないハズ」

 

 自分へのヘイトの管理は陰キャの義務みたいなものなので、確かにこれは有り難いのかもしれない。

 

「あ、ぁりがとうございます」

 

 今度は声がカスレたが、なんとか言い切った。

 

「ただ、僕としてもコレを転生特典と言って送り出すのは忍びないから、ちゃんとその左目に仕込んでおいたよ。それが君の転生特典だ」

 

「左目?」

 

「時が来れば分かるハズだよ。それじゃあ、僕は仕事に戻らないといけないから、そろそろ送るね」

 

 お別れらしい。

 

「あ、あの、」

 

「ん?」

 

「ありがとう、ございました」

 

 ちゃんと言い切れるように中盤で切って、全部言い切った。

 

「うん。頑張ってね」

 

 その瞬間、僕の視界が真っ白に染まった。



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2話

◎鉄華団はクーデリア事件があった後ぐらい。あとあと、タグに三日月ポジションって書いたので三日月ポジションでいきます。
※オリキャラを出します。→どうしてもテイワズが関わらない未来が見えなかったってのもあります。テイワズに高校生なんていたっけ・・・、となってオリキャラを作ることになりました。スパイの線も考えましたが、正直便利なキャラが欲しかったってのはあります。
※クッソ長いです。書いててビックリしました。



 『アスティカシア高等専門学園』。企業の御曹司が多く在籍するその学校では、生徒どうしが『大切なもの』を賭け合って『決闘』する。賭けるものは色々で、お金、権利、謝罪、結婚相手などなど。

 

 色んな意味で子供な『鉄華団』の面々はそれを聞いて、妄想の翼を天高く羽ばたかせた。

 

 『鉄華団』というのは『オルガ・イツカ』という1人の男が率いる民間会社のことで、とある一件で急速に規模を拡大させている新進気鋭の企業だ。『宇宙ネズミ』やら『ヒューマンデブリ』などという蔑称を与えられた子供達が母体となっている企業なため(急速に大きくなったのもあって)足元がシッカリしておらず、今は団長『オルガ・イツカ』の采配と『ガンダム』という武力が全面に立って物事を沈静化させていっている、そんな状態だ。

 

 色々とバタついているためオルガの心労は凄いことになっているが、末端の子供達には関係の無いことだった。彼らは最近読み書きを覚えてきたため、今日は知った知識を友人たちに伝え合っていた。

 

「つまりアステカなんたらは「『アスティカシア高等専門学園』」そうソレ!その学園で『決闘』ってのに勝てば何でも手に入るのか!?」

 

 『ライド』という名前の少年が、『チャド』という名前の黒人の青年に期待の目をしながら聞いた。

 

「あ、あぁ。そうなるな」

 

 ここでライドは天才的な閃きをした。

 

「・・・あれ?てことは、御曹司を叩くだけで金が出るってことか?」

 

 話を聞いていた『昭弘・アルトランド』は真剣な表情で、顎に手を当ててライドの案を肯定した。

 

「そうなるな」

 

「え?じゃあさ。『三日月ちゃん』出せばガッポリ稼げんじゃねぇの?」

 

「・・・お前、天才か?(思考停止)」

 

 真剣な顔で驚く昭弘。

 

 話が謎な方向へ飛んでいったため我慢していた常識人代表の鉄華団団長『オルガ』が口を挟んだ。

 

「待て待て待て。そういうのはオジキに話を通してからだな・・・」

 

 

 

☆☆

 

☆☆☆☆

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「・・・分かった」

 

「・・・え、すんません。今何と・・・」

 

「分かった、と言っている。2度も言わせるな」

 

「(ちょっと待ってくれよ・・・OK出ちまったぞ・・・)」

 

「ただ、バルバトスのパイロットにはウチからも人をつける。良いな?」

 

「ありがとうございます!(・・・なのか?)」

 

 

 

☆☆

 

☆☆☆☆

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 という訳で。やって来ました『アスティカシア高等専門学園』。どうも。『三日月・オーガス』に転生した転生者です。転生特典で『美形な顔』を願ったので原作の三日月とはかけ離れた美少女(だが男である)ですが、よろしくお願いします!

 

 宇宙港からモノレール(?)を乗り継ぐこと数十分。アスなんたらに到着した。モビルスーツの学校なだけあって、敷地内は沢山のモビルスーツが闊歩していて新鮮だった。火星にいるとモビルスーツなんてあんまり見ないんだけど、流石だねー。学生が計器類を触ってるよ・・・。あれ?僕って結構なおのぼりさんなのかな?

 

 ヒヤヒヤしながら歩いていると、「三日月ちゃーん」と僕を呼ぶ声がした。振り返ると、美少女が手を振ってコッチに駆け寄ってきた。あー、たしかテイワズの・・・。

 

「こんにちは!こうやって会うのは久し振りかな?」

 

 この人はテイワズの監視役で、たしか名前は・・・。

 

「改めて!『瀬名・アルモンド』です!よろしくね!」

 

 あ、はい。

 

 僕が心を込めて頷くと、僕の陰キャを察した瀬名さんはスッと僕の隣に移動し、そして歩き出した。・・・ありがたい。陰キャに対面での話し合いはほぼ不可能なのだ。

 

「授業、どこでやるか見た?」

 

 瀬名さんが聞いてきた。あいにくと鉄華団には個人用タブレットを持っている人なんて少ないため(最近増えた)、僕もその例に漏れず操作ができない。一回触ったけど、アレ日本のスマホなんて目じゃないくらい複雑だったので諦めていた。正直ありがたい。

 

 僕が首を横に振ると、瀬名さんは「そっか」と言って持っていたタブレットの画面を見せてくれた。

 

 そこには、『第12戦術試験区域』という文字が書かれていた。・・・これも名前が長いね。戦術試験って何するんだろ。ヤン・ウェンリーが学校でやってたやつかな?

 

 モビルスーツが通るような大きさの通りを歩いていくと、ほどなくして『第12戦術試験区域』と書かれた施設を見つけた。あ、ここか。

 

 中は、バカかな?ってくらい広かった。コンクリートのスペースが手前にあって、奥に広大な砂地が広がっていた。コンクリートのスペースには生徒が複数集まっていて、

 

何かの実習がこれから始まるらしかった。

 

 ほえ~っと声をあげながら辺りを見回していると、背後からコミュ力の怪物が話しかけてきた。

 

「『三日月・オーガス』さんと、『瀬名・アルモンド』さん、で合ってるかな?」

 

 突然話しかけられたので、ビクッとしてしまった。対して瀬名さんは「あ、はい。そうです」と普通に返していた。

 

「あと、そこの人は『スレッタ・マーキュリー』さん?」「はっ、ほい!?」

 

 話しかけてきた女性が、僕と瀬名さんの近くにいた女の子にも話しかけた。『スレッタ・マーキュリー』と呼ばれた女の子は、僕と同レベルの陰キャをカましていた。

 

「実習。見学なんだよね。メカニック科2年の『ニカ・ナナウラ』です。分かんないことあったら聞いてね」

 

 インナーカラー(髪色の話)が青色な黒髪の女の子『ニカ・ナナウラ』さんが話しかけてきた。

 

 名前を知っている、編入生に対して気軽に接する、笑顔、分かんないことあったら聞いてね。この4点を押さえる人なんて火星だとチャドか・・・・・・・・・メリビットさんか・・・、あと誰だろ。とにかく、明らかなコミュ力強者だった。

 

 陽キャの波動に打ちひしがれていると、スレッタさんが一歩前に出てきた。

 

「ひっ!ひぅえれ!よろろろ、よおぅれ!」

 

 勢いのまま頭を下げるスレッタさん。分かるぞ・・・。波動にヤられたんだな。それか僕よりもコミュ力が低いか、トラウマか・・・。

 

「緊張してる?」

 

「が、が、学校、来たの、初めて、だから・・・」

 

「初めて?」

 

 あまりのパワーワードにニカさんが聞き返した。そうか。学校初心者か。やるじゃないか(謎の対抗心)。

 

 関心していると、

 

「ねぇ。水星から来た人がいるって本当?」

 

 また陽キャが来た。今回は3人。明るい口調で、向こう側からしたら挨拶のようなものなのだろうが陰キャには攻撃にも等しいので止めてもらいたい。

 

「水星?」

 

 僕は火星から。瀬名さんは多分『歳星』から。残るのは・・・。

 

「私、です」

 

 スレッタさんだった。

 

「へー。水星って人住んでたんだー」

 

「専科は?」

 

「パイロット科・・・です」

 

「エリートじゃ~ん。ソッチは?」

 

 うわ、コッチ向いてきた。僕、じゃないな。こういうのは僕の後ろの・・・。

 

「三日月ちゃん。アナタだよ」

 

 瀬名さんが言ってきた。ちなみに、僕の背後には誰もいなかった。

 

「あ、えっと、パイロット、科・・・です」

 

「へ~」

 

「パイロット科に2人かー」

 

 マズい。会話のテンポが・・・。

 

「あ、私は『経営戦略科』です。よろしくね」

 

 すかさずとばかりに、瀬名さんがテンポを戻してくれた。流石はテイワズの人・・・。これからも助けてください・・・。

 

「へー。なんで編入してきたの?」

 

 陽キャトリオの真ん中にいる黒髪の女の子が、スレッタさんに聞いた。するとスレッタさんはボソボソっと話し出した。

 

「お母さんが・・・行きなさいって・・・言うから・・・」

 

「お母さん?」

 

 一瞬で陽キャ3人の顔が険しくなった。すぐに嘲笑うような顔をすると、言った。

 

「じゃあ、その古そうなヘアバンドもお母さんが言うから付けてるの?」

 

「ははは。止めなよー」

 

「ははははは」

 

 トリオの真ん中がイジメへの分水嶺を作り、しかし止めない2人。恐るべき陽キャのテクニック。口を挟もうかなと思っていると、スレッタさんは元気に言い返した。

 

「もちろんです!」

 

「・・・マジ?」

 

 陽キャさん、これにはドン引きです。お前・・・・・・やるじゃないか(二回目)。

 

「・・・で、ソッチは?」

 

 さっきの通り、話が僕に飛んできた。

 

「僕・・・?」

 

 ・・・・・・・・・言えない!ボンボンから金を巻き上げようとしてるなんて絶対言えない!

 

「えっと・・・・・・」

 

 僕が陰キャとかでなく言い淀んでいると、僕を置いて全員がある一点を見た。僕も吊られてその方向を見ると、そこには白髪の美少女が歩いていた。

 

 雰囲気がツンツンしていて、白髪と謎のタイツが特徴的な女の子だった。

 

「ぁぁ!?」

 

 スレッタさんが驚愕の表情を浮かべた。

 

「『ミオリネ・レンブラン』。事情は聞いている。すぐに授業に参加するように」

 

 咎めるような、しかしルールか何かを守っているのか連絡事項のようなテンションで教師らしき人が言った。それに対して『ミオリネ』と呼ばれた少女は「はい」と端的に返した。

 

「・・・責任・・・」

 

 この場にいる全員がミオリネさんに注目する中で、スレッタさんがタブレットで顔を隠しながら話しかけに行った。・・・あれだね。陰キャだが学生生活には前向きなタイプのようだ。・・・漫画とかで夢想してて、痛い目を見る人に多いパターン。協力的と積極的は違うっていうアレだ。

 

「責任、とりますぅ!」

 

 話しかけられ、歩み寄るミオリネさん。タブレットで顔を隠して後ずさりするスレッタさん。ガールミーツガールの一場面みたいだなと少し思った。

 

「わたっしゅ!私、手伝います!ととどとどうすれば良いですか!?」

 

「あー、あの時の邪魔女!」

 

 責任、というフレーズに場がざわめき、ミオリネさんは目を三角にしてスレッタさんを注意した。

 

「バ カ なの?こんな所で・・・」

 

「せきにーん、とってもらったら良いじゃないですかー。逃げたいんですよね~。地球(ちきゅ)~に」

 

 嫌な奴のテンプレみたいな人がヤジを飛ばした。・・・『決闘』がまかり通る学校なら、こういう怨恨も色々多そうだ。

 

「授業中だぞ。私語は慎め」

 

 先生が注意を挟んだため嫌な空気は少し和らいだが、多分どこかでバトルするんだろうなと僕は思った。

 

「地球・・・」

 

 スレッタさんがタブレットの後ろからチラッと盗み見た時、ここにあるスピーカーのほとんどがアラート音をかき鳴らした。同時に天井が宇宙の映像を映し、砂地の奥にあるゲートからモビルスーツが2機飛び出してきた。

 

「なっ!?」

 

 1機が銃を撃って牽制するが、もう一機のピンク色の機体は余裕をもって銃撃を回避する、という激しい高速戦闘を行っていた。

 

「赤い『ディランザ』・・・。『グエル・ジェターク』か・・・」

 

 双眼鏡で見ていた教師が憎々しげに呟くと、イケメンな声が至る所の拡声器から響き渡った。

 

「実習中失礼する。これは『決闘委員会』が承認した、正式な『決闘』である。立会人は、この『シャディク・ゼネリ』が務める。各自手出し無用に願いたい」

 

 イケメンな声の主は、『シャディク・ゼネリ』というらしい。・・・決闘委員会。お世話になりそうだ。

 

 イケメンの声に僕達が気をとられていると、ピンク色の機体は持っていた槍で相手を吹き飛ばした。・・・決闘、だよな?機体性能違くないか?、と思ったけど僕も『バルバトス』使う予定だったわ(笑)。

 

「グエルせんぱ~い」

 

「やっちゃえ~」

 

 取り巻きらしき人が黄色い声を上げる。ふむ。どうやらグエルなんたらは相当な人気らしい。

 

 そんなグエルなんたらは槍を相手のモビルスーツの顔面に突き刺すと、そのまま刺したモビルスーツごと前進し始めた。

 

「!?」

 

 進路の先には、僕や瀬名さんや、スレッタさんやミオリネさん。他にも生徒が複数。全員を巻き込む勢いでコッチに迫って来ていた。おいおいおい!

 

「スレッタさん!」

 

 一番最初に巻き込まれる位置にはスレッタさんがいた。ニカさんが名前を叫ぶが、スレッタさんは驚きすぎて動けないようだった。

 

 

 

「バカ!巻き込まれたいの!」

 

 

 

 僕が助けに行こうか逡巡している内に、ミオリネさんがスレッタさんの手を引いて走り出した。

 

「走って!」

 

 これ見よがしに槍を抜いたピンク色の機体は、さっきまでスレッタさんが立っていた位置に相手のモビルスーツを倒した。破片が走るスレッタさんの後ろに落下し、強烈な音がした。

 

 そしてピンク色の機体が動かなくなった相手モビルスーツを見下ろすと、

 

「見たかミオリネ」

 

 という男の声が場に響き渡った。

 

「この『グエル・ジェターク』の決闘を!」

 

 ピンク色の機体のコクピットが開き、中からチャラ男みたいな奴が出てきた。

 

「俺はお前も会社も、全部手に入れてみせるぞ」

 

 ・・・とりあえず、色んな理由で僕はアイツを一発殴ると決めた。

 

「コイツは俺を笑ったんだ。花嫁に逃げられた男だってな」

 

 今度は独り言を始めた。

 

「花嫁?」

 

「最っ低・・・」

 

 ミオリネさんがきびすを返して去ろうとすると、グエルなんたらが後ろから言葉を浴びせた。

 

「待てよミオリネ。負けたら虫の言葉で謝るルールだ。コイツの謝罪を見ていけよー。ヒャハハハハ」

 

 ・・・子供、なのかな?お山の大将というか、何と言うか。・・・すごいね(小並感)。

 

 

 

☆☆

 

☆☆☆☆

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「あ、あの!」

 

 自然公園のような緑溢れる場所。その一角に白い宇宙用コンテナみたいなのがあり、ミオリネさんはその中に入って行った。しかし入り口付近で止まると、ここまで付いてきたミオリネさんと僕と瀬名さんに向かって声をかけた。

 

「まだ何か用?」

 

 スレッタさんはオドオドしながら、しっかりと伝えた。

 

「さ、さささっきは、助けて、くれて、あありがとうございまました」

 

「は?」

 

「そ、その、ミオリネ、さんの、婚約者・・・」

 

「止めて。私は認めてないから」

 

 スッゴい嫌な顔をするミオリネさん。

 

「うぇ?じゃああの人、勝手に自分を、こ、婚約者って~!?」

 

 スレッタさんがベタな驚きをすると、ミオリネさんが語気を強めて説明した。

 

「『決闘』よ。この学園ではね、生徒どうしが大切なものを賭けて『決闘』するの。お金、権利、謝罪、結婚相手」

 

 改めて考えても、凄い制度だよね・・・。子供の喧嘩にそこまでの権利を与えて、学校側は何がしたいんだろ。

 

「・・・だから、結婚、するんですか?どうして・・・」

 

「ウチのクソ親父が決めたから」

 

 ミオリネさんは足元にある機械のスイッチを押すと、プシューっという音とともにケースが開き、中にあったトマトを取り出した。スレッタさんが吊られて中に入ろうとすると、ミオリネさんが言葉で制した。

 

「入らないで」

 

「ご、ごごごめんなさい!」

 

 速攻で謝るスレッタさん。

 

「さっきから何なのよ・・・」

 

 不機嫌そうなミオリネさん。そろそろヤバそう。

 

「・・・それ。何ですか?」

 

 しかし謎の精神で付きまとうミオリネさん。なんだか古○任三郎みたいだ・・・。

 

「何って。トマトに決まってるでしょ」

 

「それが、トマト・・・」

 

「水星人って普段何を食べてるワケ・・・」

 

「トマト味・・・なら」

 

 ここでスレッタさんのお腹が鳴った。ミオリネさんは呆れた顔をしながら、スッとトマトを差し出した。

 

「あげる」

 

 ・・・流石に優しすぎないか?と思ったけど、周囲の目を見るかぎりミオリネさんもボッチっぽいよね。だから同情?してるのかな?水星育ちのボッチ候補に。

 

「アンタのは無いわよ」

 

「?」

 

 僕の方を見て言うミオリネさん。

 

「ていうか、アンタはなんでいるのよ」

 

 なんでいるの、か。ぶっちゃけて言えば面白そ・・・ゲフンゲフン。決闘が起こって稼げ・・・ゲフンゲフン。心配だから、かな。

 

「え、えっと、えっと、・・・」

 

 まぁ言い訳を考えても言えないんだけどね。

 

 どもる僕からは一生何も出ないと悟ったミオリネさんは、今度は瀬名さんに話を振った。

 

「ソッチは?」

 

「私は三日月ちゃんの監視役みたいなものなので」

 

 ミオリネさんは眉をひそめた。監視役、というフレーズに何かを思ったらしい。少し離れた所にいる自分の監視役2人を見て、ミオリネさんは僕と瀬名さんにもトマトを1つずつくれた。え、優しい・・・。

 

「・・・はぁ。今日は変な奴ばっかりに付き纏われるわね・・・」

 

 頭を抱えるミオリネさん。日頃から心労が溜まっているのだろう(すっとぼけ)。

 

「あ、あ、あ、ありがとう、ございます!・・・えっと」

 

 トマトのお礼を言うスレッタさん。しかし全く口を付けず、トマトを眺めて考え始めた。

 

「そのままかぶりつく」

 

 察したミオリネさんが食べ方を教えた。

 

「あむ。・・・んん!おいしい」

 

 目を輝かせるスレッタさん。トマト苦手なんだよね・・・と思いながらかじってみると、確かに美味しかった。

 

「トマトならどれでも美味しいワケじゃないわ。そのトマトは特別」

 

「?」

 

「お母さんが作ったの」

 

「トマトを?」

 

「品種に決まってるでしょ」

 

「お母さんが・・・」

 

 今度は『お母さん』というフレーズにスレッタさんが反応した。

 

「・・・私も、同じ、です。お母さんが、水星を、豊かな、星に、するため・・・勉強してきなさいって・・・だから・・・」

 

 ・・・やるじゃないか(三度目)。いやさ、陰キャは自分による相手の時間ロスを気遣って早口になるものだから、こうやって節で区切ってしっかり喋る陰キャは結構凄い。ついでに言えば、僕でもまだマスターしていない技術だ。多分、同士諸君なら分かると思う。

 

「・・・そう。アナタのお母さんは生きてるのね」

 

「あ。ご、ご、ご、ご、ごこごごめんな、「生徒手帳、貸して」、?」

 

 言われるまま生徒手帳(タブレット)を差し出すスレッタさん。ミオリネさんは人のタブレットをガンガンに操作しながら話を続けた。

 

「帰り道分かんないんでしょ。学園マップ、入れてあげるからサッサと出てって」

 

 まぁ初対面の人と長々とは話したくないよね・・・。しかも陰キャだし。

 

「あ・・・」

 

 今生の別れみたいな顔をするスレッタさん。古畑魂が騒いでいるみたいだ。

 

「また土いじりか?」

 

 帰るか?みたいな空気が流れた時、その空気を突き破って例のグエルとかいうイケメン(ではある)が取り巻きを連れて、あろうことかミオリネさんの部屋にズカズカと入り込んできた。

 

「地球の真似事をして・・・何が楽しいんだか」

 

 嫌みったらしく喋るグエル、グエル、マジ何だっけ。

 

「グエル・・・。勝手に入らないで」

 

「良いアイデアを考えた」

 

 マジで話聞かないなこの人・・・。

 

「お前はこれから俺達のジェターク寮で暮らすんだ。脱出騒ぎは、もうごめんだからな」

 

「私は認めてないから」

 

「お前の父親が決めたルールだぞ?」

 

「親が決めたら絶対?アンタはパパの言いなりだものね!」

 

 鉄華団を見たら、この人倒れるんじゃないかな。どこの蛮族ですか?って。

 

 挑発されて、近くにあった植物にアタり始めるグエル。土をひっくり返し、植木鉢を落とし、やりたい放題だった。

 

 マジで子供だなコイツ・・・。

 

「!?何すんのよ!止めろ!」

 

 ミオリネさんが掴みかかって止めるが、グエルは振り払うようにしてミオリネさんを突き飛ばした。

 

「・・・」

 

 ・・・・・よし。殴って良いか悪いか冷静にジャッジしてみよう。まずミオリネさんの心情。話を聞く限りだと・・・

 

 親の決めた結婚。自分がトロフィー扱い。相手はこういう性格で、自分の領域に立ち入って物を壊している。あと機体がシノと同じピンク色。

 

 ・・・なんだろうか。無性に殺意が湧いてきた。

 

 クーデリアは『火星改革の旗頭』っていう立場があったけど、周囲の扱いからしてミオリネさんはそういうの全く無いみたいだし、多分苦悩がこれからも続くんだろう。

 

 あ、僕さっきトマトもらわなかった?もらったよね?で、ミオリネさん困ってるよね?

 

「ブヘッ」

 

「あ、」

 

「「「なっ!!??」」

 

 気が付いた時には殴っていた。

 

 ・・・まぁ良いか。気に入らなかったら殴る。CGS時代からの教えだ。最近のオルガは丸くなったけど僕は違う。迷ったらグー。それが答えだ。ワッカもそう言ってる。

 

 気を抜いていたのか腹を押さえてうずくまるコーラサワー君(空耳)。僕がついでとばかりに足蹴にしていると、瀬名さんが羽交い締めにして止めに入ってきた。

 

「ちょちょちょちょ!何してるの!?」

 

「何って・・・パンチ」

 

「キックもでしょ!じゃなくて!本当に何してるの!?」

 

 女の子をトロフィーと語った男が、少女然とした一回り背の低い子(僕の転生した時の外見)にボコされる。なんとも痛快ではないか。

 

「どうして得意げな顔してるの!?普通にヤバいよ!?」

 

 僕が親指を立てると、瀬名さんは信じられないような顔をした。

 

「君!そういうのは決闘で・・・」

 

 取り巻きの1人。スカしたイケメンが話に入ってきた。お?『決闘』っすか?『決闘』、やります?やっちゃいます?

 

 

 

「決闘、します!」

 

 

 

 ワクワクしていると、今まで黙っていたスレッタさんがあろうことか果たし状を叩きつけた。

 

「誰だよテメェ、ゲホッゲホッ!」

 

 腹パンが効いているのか咳き込むグエル。関わってくんじゃねぇ、と言いたかったみたいだが古畑魂を燃やしたスレッタさんは止まらなかった。

 

「私が勝てば、み、み、ミオリネさんから離れるんですか!?」

 

 勝つ前提の言葉。うずくまっていたグエルが凄い顔をした。

 

「わ、私が勝てば・・・」

 

 ここで陰キャ特有の、聞こえてるのに2回目を言う習性が発動した。

 

「どいつもコイツも・・・」

 

「ちょっと、大丈夫なの!?」

 

 瀬名さんが僕を押さえたまま聞く。するとスレッタさんは大声で宣言した。

 

「大丈夫です!私とエアリアルなら、負けません!」

 

 思わずニヤっと笑ってしまった。これでは火に油どころか、火薬をぶち込んだものだ。『\絶☆対☆誘☆爆/』。

 

「上等じゃねぇか!!!!」

 

 こうして、グエル君は決闘の誘いに乗った。

 

 

 

☆☆

 

☆☆☆☆

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 『決闘』の会場が分からず、近くにいた教師らしき人に参加したいとタブレットを見せるスレッタさん。勝手が分からないため案内されるまま付いて行くと、到着したのは観客席だった。そして映像には、さっきのピンク色の機体(グエル機)が青と白の機体と対峙していた。

 

「え、どうして『エアリアル』が・・・」

 

 すると画面に、宇宙服を着込んでコクピットに乗るミオリネさんが映し出された。

 

「どうして・・・あ、」

 

「?」

 

 僕が首を傾げて聞くと、スレッタさんは慌てながら答えた。

 

「あ、あ、あの、さっき、生徒手帳、」

 

 あーね。生徒手帳(タブレット式)を、イジってたねミオリネさん。てことは、勝手に人のモビルスーツで決闘に出たのか。・・・それは最低だな。

 

「・・・あれ?スレッタさん?」

 

 聞き覚えのある声。振り返ると、さっき話したコミュ力の怪物『ニカ・ナナウラ』さんが声をかけていた。

 

 

 

☆☆

 

☆☆☆☆

 

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「侵入者!?」

 

 足を止めるグエル機。スクーターで近づいたスレッタさんはエアリアル?に登ってコクピットまで到着すると、コクピットを開けて中に入った。

 

 ゴンッ、という鉄の塊がぶつかる音がゴングとなり、口喧嘩が始まった。それはもうヤカマシイものだったが、ここは学校であって戦場ではないため観衆は見守った。

 

 そして「私とエアリアルならあんな奴には負けません!」と陰キャ設定どうしたと言いたくなるようなハッキリした言葉で宣言したため、グエルがキレて対戦相手を再変更。

 

 なんだかグエル君に不穏な空気がした瞬間、グエル君の機体がバラバラになった。



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3話

三日月の入り込む隙間が少ないんだが・・・。


 頭の足りないスペーシアンが、それこそアリのようにウジャウジャといる学校で、アイツだけは真っ向から反抗していた。

 今もそう。

「なぁお前。『ヒューマンデブリ』って知ってるか?」

「止めてあげましょうよ。学が無いんすから」

「あっ、そうか。字も読めない猿だったなそう言えば!」

「そうっすよ」

 背中に大きなエンブレムの付いたダサい緑色の上着を制服の上から羽織り(校則違反)、1人で黙々と食べていたアイツにまたバカが絡み出した。

「かー、もったいないよな。その『顔』で学が無いなんてさ」

「俺が『色々と』教えてやるしかないのかもなぁ?」

 アイツは男だ。にも関わらず容姿が女の子っぽいからという理由だけで、連れて行こうとしている。今ですら人間扱いをしていない奴らに付いて行く奴なんて誰もいないだろうに。

「おいおい何だよその顔は!このお方はスリアの御曹司様なのだぞ!むしろ誘われたことに喜ぶべきじゃないのか!?」

 スリア?聞いたこともない企業だ。

「おい聞いているのか!?」

「そっか」

 アイツが一言言って、席から立ち上がった。

「・・・・・・じゃあ、死ぬ?」

 その殺気は遠くで見ていた私でも分かる程に強く、そして不気味だった。

「は、は?殺人が良いワケないだろバカか!」

 殺人が悪くて連れ込むのは良いとか頭沸いてるんじゃないだろうか。

「えい」

 アイツは絡んできた男の1人を掴むと、綺麗な背負い投げをキメた。ガシャンッ、と大きな音が鳴り誰かが叫ぶが、アイツは止まらなかった。

 そのまま馬乗りになるとひたすら顔面を殴り続けた。

 取り巻き連中は状況が飲み込めず固まり、殴られた男の顔はどんどんと変形していく。

 あのままじゃ『死ぬ』と、私の本能が叫んでいた。

「いい加減にしろよ!」

 私も席から立ち上がり、アイツ、『三日月・オーガス』を頭の無いスペーシアンから引き剥がした。

「?」

 コッチにも殺意を向けてきたが、もう止まれない。

「スペーシアンがスペーシアンと喧嘩するのは構わないけどさ!流石に殺すのはダメだろ!!!」

「コイツは、・・・それだけのことを、言った」

「それとコレとは話が別だろうが!殺人は飛躍しすぎだバカ!」

「君も、そう言うの・・・?」

 三日月が脱力したので私は離れると、タブレットを取り出して字を打ち込み、私に見せてきた。

『ここの連中は覚悟が足りない。『死』の無いお遊びの決闘で人生が左右すると本気で思っている。その結果がコイツらだ』

「言いたいことは分かるけどさ・・・」

『あと『ヒューマンデブリ』と一括りにして差別するのも気に入らない。二束三文で売られる孤児を差別するなんてマトモじゃないよ。その2つ含めて親や周りに対して素直な子供なんだろうけどさ、『痛み』を知らない子供はただの子供だよ』

「だからアンタが痛みを与えるって?アンタこそ大層なご身分じゃねぇかよ」

 三日月は静かに私を睨んだ。

 今度はタブレットを見せてこなかったが、その目は有無を言わせぬ凄みがあった。

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

 僕の陰キャライバルことスレッタさんが帰ってきた。エアリアルはガンダムだ、とか勝ったら退学無しとスレッタさんには色々あったが、ミオリネさんの尽力で全てが丸く収まった。

 だがしかし。

 スレッタさんは今日も新たな問題に直面していた。

「えええええん!!!」

 大泣きするスレッタさん。

 パイロット科の実習で『モビルスーツを歩かせて地雷を避ける訓練』が始まったのだが、誰かに細工されて前が見えないらしい。そのためリトライ可能な試験で何度も失敗し、しかしミオリネさんに諦めないことを強制されて、長い長い失敗の連続で遂にスレッタさんが泣き出した。

「水星に学校を造るんでしょ!!!」

 ミオリネさんが発破をかけるが、スレッタさんは泣き止まない。延々とスレッタさんが泣く時間が続くが、教師は止めない。

 この教師、決闘でのモビルスーツの性能差を加味して『バックに誰がいるなどの全てが本人の戦力』というスタンスらしい。だからスレッタさんは一回目の実習で、サポーターみたいな人がいなくて不合格となっていた。ふーん。

「えええええん!!!」

 いい加減、僕もイライラしてきた。

 スレッタさんが泣くのは百歩譲って許すが、遠くでゲラゲラ笑っているあの女子達は何なのだろうか。

 イライラしていると、実習中のモビルスーツから1人の少女が降りてきて、彼女達に殴りかかった。

 ・・・・・・祭りの予感がした。

 僕はすぐさまモビルスーツから降りると、ウッキウキな気持ちで現場に向かった。

「テメェ!」

 現場では朝のピンク髪の子が少女逹をボコしていた。

「ちょっとお前!!!僕の婚約者に何してるんだよ!!」

 するといきなりモブ顔の奴が現れ、ピンク髪に殴りかかろうとした。これはいけない。

「ほい」

「ブヘッ!!!」

 乱入した僕がその乱入男を殴ると、その男は案外軽くて吹っ飛んでいった。

「・・・?」

 ピンク髪が僕を見上げて疑問の表情を浮かべていたので、僕はカッコ良く言ってみた。

「喧嘩・・・加勢、するよ?」

 僕がピンク髪に殴られていた女子2人を見下ろすと、僕のパンチの威力が分かったのか2人とも顔を真っ青にした。

「実行犯・・・「ちょっと待て!!!」・・・ん?」

 さっきのモブ男が立ち上がり、僕を睨んでいた。

「そういうのは決闘で決めるんじゃないかな!?」

「・・・」

 は?これはただの喧嘩だけど?

「俺は彼女逹を守る!!!だがお前に殴り勝つ自信は無い!!!だから『お前に決闘を申し込む』!!!」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・とりあえず、コイツが素直なのは分かった。

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

「モビルスーツの性能で決まら・・・お前!ちゃんと言えよ!」

「・・・フィックスリリース」

「そこだけかよ!!」

 決闘前の口上、あれ何なのだろうか。つまりバックでは決まらないから頑張れってこと?草。

「・・・・・・・・・ここまで俺をコケにした奴は初めてだ」

 コイツの顔。変形してたから分かりにくかったけど、多分朝僕がボコした奴だ。はー、やっぱり恨みをかっていたらしい。

「おらぁ!!!」

 ディランザ、だっけ?ザク(前世のアニメに出てきたモビルスーツ)扱いのやつ。それが正面から突っ込んできた。

 戦場ではバルバトスに突っ込んでくる奴なんていないから、自分から追いかけて狩るのがデフォルトになってたんだよね。だから、なんだか新鮮だ。

 左右に横移動を繰り返しながら接近して来たのだが、お粗末な動きなので何だかカッコつけているだけに見えてしまったのは内緒だ。

「ほい」

 バルバトスが握っていたトンファー(持ち手が長いタイプ)を片手で振ると、リーチ差でトンファーが先に当たり、相手が吹き飛んだ。えぇ・・・避けろよ・・・。

 バカな!?みたいなこと言ってるが大丈夫かコイツ。

「俺はパイロット科の上位なんだぞ!!ヒューマンデブリごときに!」

 あー、だから決闘とか言い出したのか。なら宇宙ネズミの戦い方を見せてあげようかな。

 俺は思いっきりトンファーを投げた。

 トンファーはバルバトスのエイハブリアクターの出力によって高速で飛んでいき、相手の足の1本を抉り取った。

「なっ!?」

 下を向き、悠長に倒れる準備をする相手。バルバトスは倒れる前に接近して相手を右手で持ち上げ、左手で相手の右手を千切った。

「おいお前!!!何してるんだよ」

 持ち上げていた手を持ち替えて、今度は右手で相手の左腕をもぎ取った。このまま頭部の角を折れば勝ちなんだけど、コイツは恐怖を知らないとね。あと、これから先で絡んでくる奴に対する見せしめも兼ねよう。

 拳を握り締め、コクピットの部分を軽く殴りつけて震動させ、持ち上げていた手を離して落下する敵を蹴り上げる。蹴りの勢いで相手が地面をバウンドしたので、落ちていたトンファーを拾い、寝転がっている敵に軽く叩きつけた。

 凄い音がしたが気にしない。鍬を振り下ろすかんじで何度も何度も軽く叩くと、周囲のブザーが鳴り『終了が宣言された』。・・・こういう所も、お遊びみたいで気に入らないんだよなぁ・・・。

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

 3日間の停学をくらった。

 

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「オタクの団員がウチの息子に手をあげたのです!」

「そうですか」

「何を当たり前のように言ってるのです!」

 オルガは机を挟んで反対側に座っている男を見ながら、淡々と告げた

「三日月は誰よりも強い。そして力の行使を躊躇わない。だが・・・理由も無く殴る奴じゃないんすよ」

「ウチの息子に非があったとでも言うのですか!?」

 激昂する男。それを制すように、オルガは数枚の紙を机の上に放り投げた。

 パサッ。

「これが、ウチの親会社が集めた『お宅の息子さんがやった悪行の数々』です。いや~、これは将来有望な小悪党になりそうだなと思わず感心しちまいましたよ」

 ザッと見た男は、顔を青ざめた。

「こ・・・これは・・・何だコレは・・・。こんなこと聞いてないぞ・・・」

 予想通りの返答に半ば呆れながら、オルガは締めくくった。

「その資料は差し上げますんで、じっくりと親子で話し合ってください」

 ボソボソっと何かを言った男が退出すると、オルガは窓から外に見える空を見上げ、呟いた。

「・・・ミカ。頑張れよ・・・」

 



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4話

感想ありがとうございます。感想をくれた人のために書きました。


 

「・・・・ヒューマンデブリって何?」

「・・・・『ヒューマンデブリ』。安値で人身売買される孤児たちの総称ね。登録書がある限り個人や企業・団体の所有物としてあつかわれる、人権の無い子供のことよ。(wiki参照)

・・・・あの子のことが気になるのね?」

「・・・・他人の気がしないんだ。・・・・何故だかは分からないけど」

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

 スレッタさんがデート。

 乗るしかない!このビックウェーブに!!!

 時刻は正午。今日もチュチュとかいうピンク頭と一緒にスペーシアンをボコして『2人は最強!』をやっていた僕こと三日月・オーガス16歳は、(寝泊まりしていた寮から追い出されたため)最近入り浸るようになった地球寮で衝撃の事実を伝えられた。

 あの、あの隠キャ(ブーメラン)が異性とデートをするらしいのだ。

 最近は『第2の決闘(リアルファイト)委員会』の会長と呼ばれ始めた僕がスペーシアン相手と喧嘩していた隙に、だ。これは由々しき事態である。何が悲しくて野郎との喧嘩ごっこに青春を費やさなければいけないのか。

 僕はスレッタさんの力量を見誤っていたらしい。

 確かに、あのオドオドした様子は可愛い。餌付けしたくなるのも分かる。口数が少なく、いつグーが飛んでくるか分からない僕とは大違いだろう。

 くっ・・・。流石隠キャライバルと言ったところか。

 いや、まだ焦る時間じゃない。落ち着け。全裸さんも『次に活かそう』みたいなことを言っていたハズだ。そうだ。バナージだって『それでも』を連呼し続けていた。

「・・・・アンタ。まさか妬いてんの?」

 ピンク頭が何か言ってきたが、とりあえず無視。というか対面では上手く喋れないのでユルシテクダサイ。オネガイシマスゥ。

「・・・・ん?」

 地球寮の回りをウロウロしていると、グエルくんが前傾姿勢でバイクを吹かしながら疾走していた。あの先にいるのは、確かスレッタさん・・・・。ふ~ん?へ~ぇ?

 ハジケリスト(とても重い名前)見習いである僕の出番な気がしたため、僕は疾走するグエルくんに飛びかかると、バイクの後ろに乗り込んだ。

「はぁ!?ちょ、お前!!!」

「グエルくん!」

「あぁ!?」

 隠キャである前に芸人であれ。

 誰かの言葉(すっとぼけ)だ。

「・・・・ふっ(アーニャ顔)」

 笑ってやると、グエルくんはバイクを操縦しながら器用に俺を押してきた。

「はぁ!?何の笑いだよ!てかテメェ何乗り込んでんだよ!さっさと降りろ!」

「・・・・!!!」

 大声とかは出せないので、リアクションで攻める僕。僕の外見は転生特典で結構な美形なので、端から見たらグエルくんが悪者だ。やはり美形は正義ぃ!それを察したグエルくんは、しかし停車することはできないのか僕をまるでいないかのように振る舞いだした。

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

「・・・・君。ウザイよ」

 現場にデバガメどころかダイナミックにエントリーしたグエルくん。するとスレッタさんとエランナニガシの空気は微妙なものとなっていて、悲しそうな顔をするスレッタさんを見たグエル・ジェターク(名前はカッコイい)はエラン、エランさん?くん?・・・、とりあえずエラン。エランがグエルくんと口論を始めたので、僕は落ち込むスレッタさんの肩に手を置いた。

 前世でも今世でも恋愛をしたことがない僕だがスレッタさんの今の気持ちは分かる。例えるならツンデレヒロインと初見で衝突した後のようなものなのだろう。ふっ。まだこれからだよスレッタさん(なお、主人公は童貞である)。

 グエルくんの方を見ると、どうやら決闘するらしい。

 決闘ねぇ・・・・。なら、一枚噛ませてもらおうかな?

 口論の後の捨て台詞を吐こうとするグエルくんの前に割り込み、僕はあらかじめタブレットに打ち込んでいた文字をエランに見せた。

「・・・・ならばこのデュエル。スレッタさんの前にこの僕を倒してからにすると良い?・・・・さっきそこのグエル・ジェタークとそういう話をしたばっかりなんだけど?」

 復唱あざます。そういうことだ。

 このタイミングで決闘に水をさす。最高じゃないか!

「おい!勝手に割り込んできて何言ってんだよ!」

 グエルくんの目が怖い。まぁ、初手パンチ。次に会った時はさっきの無銭乗車だから無理もないか。とりあえず親指を立てておく。

「そのドヤ顔は何だよ!?お前、いい加減ちゃんと喋れよ!」

 ムチャ言うな。こちとら鉄華団でも隠キャが治らなかったコミュ症ぞ?アトラのレッスンすら灰燼に帰した実力者ぞ?なんならクーデリア相手でも上手く喋れないからね?

「・・・・分かった。どうせ同じことだ」

「おい!」

 了承するエラン。どうやら場を白けさせる愚は犯さないタイプらしい。

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆

 

 

「双方、魂の代償をリーブラに」

「1億円、「ぶふっ」ください・・・・」

 吹き出す金髪。は?一億円だよ?

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

 『第11戦術試験区域』。略してイチイチ(今考えた)。

 月面を模したようなフィールドに、3機のモビルスーツが直立していた。

 ルールは単純。グエルくんVSエラン。それが終わったら待機していた僕VSエランだ(グエルくんとの熱い?協議の末にこうなった)。

「「フィックスリリース!」」

 長ったらしい口上(未だに覚えられていない)の末に、決闘が始まった。

 グエルくんが勇猛果敢に攻めるが、エランはヒラヒラと避けながら距離を離し、持っていた巨大なライフルを放つ。それをグエルくんがなかなかの操縦でかわす。ジレたエランはファンネルを展開。ん?どこかで見たぞ?と思った時にはグエルくんの機体はファンネルによって動けなくされた。

「やめろぉ~!!!」

 グエルくん絶叫。あの人、スレッタさんが来てから人生メチャクチャだね・・・・。

 グエルくんの叫びも虚しく、エランはグエルくんの機体の角を手で折り、決闘を終わらせた。

 エランはそのまま後方腕組み師匠面でグエルくんを頑張れ頑張れしていた僕を見ると、「じゃあ、やろうか」と言った。

 宣誓の合図は無く、エランはすぐに銃を構え、打ってきた。それを避けると連射が続き、ファンネルも飛ばしてきた。ぴょんぴょん飛んでくるファンネルが執拗に追い回してきて、面倒になったので奇策を飛ばしてみた。

 今、僕はトンファーでファンネルに対処している。これでは小さいファンネルを壊すには不利だ。ならばラケットの方を大きくすれば良い。

 エランの視界から外れる位置に隠れた僕は、腕を月面ステージに突き刺し、地面を畳返しのようにして割り砕いた。辺り一帯の地面ごと抱え上げた僕は、その大岩でエランを殴りつけた。

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

 右腕が動かなくなった(笑)

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

 厄災戦のガンダムも問題視された(笑)

 

 

 



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5話

自分の中のハジケと対話したら、その根底(大部分?)にあるのが『かまってちゃん』だということが判明しました。
※「これもう隠キャじゃなくね?」と思う人がいるかもしれません。→お近くに無口で動き出しは無駄に早いクセに友達0人で「日本語喋れないのか?」という言葉がグサリと響く奴がいるかもしれません。まぁ僕のことなんですけど、そんな僕は肉体労働のバイトで初めて『連絡事項を喋っていい環境』に接することで、カタコトながらある程度喋れるようになりました。今作の三日月は、鉄華団でその『連絡事項を喋っていい環境』に出会いました。なので時折思い出すトラウマ(前世のこと)や過去の自分の醜悪さを再認識する度に口を閉ざす三日月ですが、無言でも自分から構ってもらおうとする努力はできている設定です。長文失礼しました。


 寮から追い出された(避けられたので自分から出て行った)僕はキャンプしながら、たまに地球寮へ遊びに行っては構ってもらう生活を続けていたんだけど、ある時キャンプ仲間が増えることとなった。

 グエルくんである。

 四苦八苦しながらテントを張っているグエルくんと鉢合わせた時は(度重なるグエ虐によって僕の印象はマイナスだったため)変な顔をされたが、何故か柔らかさを手に入れていたグエルくんは普通にテント張りの手伝いを頼んできた。

 それから僕もテントを隣に立てて、毎朝一緒に食堂へ行ったりしてグエルくんと仲良くなっていき、今ではグエルくんのタブレットでアニメを視ることが最近の日課となっている(他人のタブレットで視るアニメは最高)。・・・そのせいでグエルくんのタブレットの検索履歴が美少女美少女(マクロスとかワルキューレとかを検索した)になって、グエルくんが取り巻きの女の子に詰め寄られる事件が起きたりしたのだがそれはまた別の機会に。

「・・・・お前。厄災戦以前のアニメとか面白いのか?」

 グエルくんがコーヒー片手に聞いてきたので、頷いておく。マクロスを舐めてはいけない。

「・・・・アクエリオンも、良い・・・・」

 R18なアニメをグエルくんに見せたら一時的にタブレットを没収されたり、タブレットの壁紙を筋肉ムキムキマッチョマンにしたらまた没収されたり、フィッシング詐欺にワザと引っかかってみたらガチ説教されたりと色々あったが、こうして今もタブレットを貸してくれる辺り本当にグエルくんは丸くなったと思う(童貞、捨てた?と聞いたら頭をグリグリされた)。

 今日はどんな『グエ虐』をしようかなと考えていると、キャンプ椅子に座ってくつろいでいた僕らの元に瀬名さん(オリキャラ)がやって来た。

「三日月ちゃん。元気だった?」

 とりあえず頷く僕。

「・・・・グエルさんも、おはようございます」

 グエルくんにも律義が頭を下げる瀬名さん。瀬名さんとしてはあのヤンチャグエルくんと告白グエルくんしか知らないハズなので印象は酷いものだろうに。

 視線を僕に戻した瀬名さんは、微笑みながら話を始めた。

「それで三日月ちゃん。ようやく落ち着いたから、色々と説明するね」

 やっとか。

「どうなったんだ?」

 口を挟むグエルくん。恐らくキャンプ仲間として心配してくれているのだろう。

「はい。まず動かなくなった三日月ちゃんの腕だけど、治る見込みはないみたい」

 視線を自分の腕に落とす。どうやらバルバトス無しでの懸垂はもうできないらしい。

「それと化石ガンダムの処遇なんだけどね?まず大前提として、三日月ちゃんはテイワズの推薦で入学した立場なの。だからベネリットグループで行われた裁決によって、グループの外にいるテイワズの人間から強制的にガンダムを押収することはできないんだよね(・・・まぁ、やり方はいくらでもあるんだけど)」

 なるほど。僕にはよく分からない世界だ。

「それとギャラルホルンの圧力もあったみたいで・・・・あ、ギャラルホルンは1人の英雄によって作られたんだけどね?その人はガンダムに乗って世界を救ったっていう触れ込みだから、ガンダムを否定されると威信に傷が付くと考えたみたい。

 あとさ・・・三日月ちゃん、アラヤシキを3本入れてるでしょ?その上で、エイハブリアクターを2つ積んだ高出力の機体であったとしてもあんな使い方をしたら、そりゃあバグくらい起きるよねって話になって・・・」

 確かに、バグくらい起きてもおかしくないかも。

「しかも事例が三日月ちゃんだけだし、それに『今の所』化石ガンダムは高性能なワンオフの機体ってだけのモビルスーツだから、大々的に禁止することはできなかったみたい」

「つまり、コイツはスレッタみたいな退学騒ぎにはならないワケか」

 グエルくんが要約した。それに瀬名さんが頷く。

「そ。だから三日月ちゃんは拘留もされないしバルバトスも廃棄されない。どう?私、結構頑張ったでしょ♪」

 ウィンクしてくる瀬名さん。正直ギャラルホルンの辺りから良く分からなかったが落着したみたいだった。

「あ、そう言えば聞いた?ミオリネちゃんとスレッタさん、パーティーに出るみたいですよ?」

「ぱっ・・・・あの隠キャが?」

「どの口が言ってんだよ・・・・」

 パーティー→人が集まる。→輝くチャンス→僕はハジケリスト見習い。

 僕の中で何かが繋がった。

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

 転生特典で僕は美形となった。そして今日はぱーちーである。ふっ。勝ったな。

 と思っていたら、パーティーには招待状が必要という衝撃の事実を伝えられた。

 そして勘当されたグエルくんには頼れないため、僕はミオリネさんに頭を下げた。

「・・・・嫌よ」

 なしてさ。

「アンタ、絶対問題起こすじゃない」

 むしろ問題を起こすためにぱーちーへ行くつもりでーす(笑)と言ったらチュチュぐらいのパンチか蹴りが飛んできそうだったので止めた。

「で、でぇ、でもミオリネさん!こ、この人は自分から首を突っ込む人ですけど!でも、悪いことはしない、ですし!」

「悪いことと問題行動は同じものよ。アンタ、コイツがチュチュより武闘派なの知らないの?」

「で、でも!」

「・・・・・・・・はぁ。アンタ、この借りは千倍にして返しなさいよ?」

 最近、ミオリネさんがスレッタさんの我が儘に弱すぎると地球寮の人から聞いたけど本当だったらしい。というか、ぱーちーへ行くのもスレッタさんが言い出したことらしい。ほぇ~。

 百合カプというか、初めてできた親友のためにミオリネさん側が全力で尽くしているだけのような気がするんだけど気のせいだろうか(分からなくはない。ボッチだって『繋がり』が欲しくなる時はある)。

「・・・・あり、がと。スレッタ、さん」

「あ、そそそそそんな!た、たいしたことは・・・・」

「ちょっと。連れて行くのは私よ。私」

 ちゃんと主張するミオリネさん。なんだか・・・・本当にカップルみたいだなぁ・・・・。

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

 さて、ぱーちーでは何をするべきか。

 どうせならミオリネさんに迷惑がかからないムーヴが望ましい。・・・・いっそデコトラで突っ込むか?いや、流石に犯罪か・・・・。ネタが・・・・無い!

「グエルくん。100秒チャレンジ。スタート」

 オルガほどではないがグエルくんに対しては上手く喋れる僕は、こうしてカタコトで話を振ったりする。

「はぁ?」

 向かい合って座り昼食を食べていたグエルくんは顔を上げ、そして言われた内容と僕の表情からある程度を察した。

「・・・・あー、悩み事か?流石に100秒でボケろとかじゃねぇよな?」

 両方で頷く僕。

「・・・・そうだな。とりあえずお前の大好きな鉄華団とやらを参考にしたらどうだ?」

 鉄華団を参考に・・・・?・・・・ヒューマンデブリ。ガキ。ガキども。アホ。猿。クーデリア。教育。支援。農場。採掘。むぅ・・・・。アトラ・・・・。ミサンガ。あとは・・・・・・・・クーデリア、こういうパーティーには慣れてるんだろうなぁ・・・。クーデリア。クーデリア!!!

「コスプレ!!!」

「・・・・またバカなこと考えてるぞコイツ」

 天才かもしれない。

 レッスン①クーデリア(もしくは瀬名さん)に女性としてのマナーを聞く。レッスン②美少女のコスプレをする。レッスン③別人としてあの百合カップルに訳知り顔で割り込む。レッスン④ぱーちーで人気者になる

 ふっ。これだな。

 まずレッスン①②。これによって僕はある程度の認識阻害を発生させる。これによって赤の他人に扮する。そして③④で楽しむ。④は転生特典があるので多分楽勝。喋らないクールキャラで通したらチヤホヤされたりして・・・・えへ、えへへへへ(ぼっちちゃん風)。そうじゃん!ぱーちーなら僕を知らない人が集まってくるじゃん!美少女来るじゃん!大人な世界で・・・・ゲフンゲフン。

「・・・・おい。お前、自分が隠キャだとちゃんと自覚しているか?お前がコスプレしても芋臭いだけだぞ?」

 グエルくんが突然、凶刃を僕の腹に刺してきた。

「うぐ・・・・」

 え、それを隠キャに言うの?隠キャは何もできなくなっちゃうよ?

 ・・・・とりあえず瀬名さ~ん(泣)

 ワンコールで瀬名さんは電話に出てくれた。

『もしもし~?三日月ちゃん?何かな?』

「ぱーちー。チヤホヤ、されたい」

『あー、、、、ごめん。私、君の保護者みたいな立場だからさ、冗談抜きでお持ち帰りされそうだしパーティーに行くなら傍にいるね?』

 は?

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

 その後。企業騒動やらがパーティーで行われる傍らで、美少女と美少女の外見をした少年による『ハジケリスト見習いVSアンチ・ハジケリスト』の戦いが起こったとか起こらなかったとか。

 



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6話

学内の掲示板にて。

 

 

『最カワな三日月ちゃんをスコれ。』

 

 

 

「長髪ピンク髪眼帯低身長隠キャとかどれだけ属性を積むんだよ・・・・」

「今日の三日月ちゃん、先生に当てられ『しどろもどろ』に」

「拡散した。震えながらカミカミで目線を下にして目をグルグルさせながらアタフタして、全然読み進めなくて授業が止まる→先生も苦笑い」

「トラウマがぁ・・・・だってさ。小さく言ってた」

「三日月ちゃん、頑張ってる姿は見られるから先生のウケは良いよな」

「→なら当てるな(迫真)隠キャを知れ」

「良いなぁ。俺も三日月ちゃんと一緒に授業受けてぇよ」

「同じ班になったら最高だぞ?凄い立ててくれるし、ジェスチャーで応援してくれるし、何言ったって可愛いし。

ふざけんなよアレが男かよ!!」

「だけど宇宙ネズミなんだよなー。そこがムリ」

「は?」

「は?」

「は?」

「お前三日月ちゃんにナマこいてボコされた1人だろ?」

「差別は無くそうの時代にそれは・・・・」

「考えが古い」

「ヒューマンデブリは容認していい文化じゃない」

「むしろ三日月ちゃんを産んでくれたお母さんに感謝すべきだからな?」

「もう1回ボコされとけ」

「ヒューマンデブリであの顔だから、無理矢理されたことはあるのかな?」

三日月ちゃんガチ勢「それはない。CGS時代は坊主にしていたみたいだし、鉄華団が独立してからはガチ恋勢?(上手い言い方が見つからない)に守られて温室育ち」

「ファッ!?」

「どうして知ってるんだよ・・・・」

「ほ~ん。やっぱりファンクラブとかあるかんじ?」

三日月ちゃんガチ勢「ファンクラブというか、まぁ親衛隊?鉄華団の全員が三日月ちゃんをちゃん付けして全員で大切にしてる。特にNo.2パイロットなんかは凄い。ストーカー一歩手前。気にしてもらいたいのか常に張り合うし。あとは幼なじみの少女。あの子はもう怖いの域。ヤバい」

「具体的には?」

「三日月ちゃんの洗い物は全部その子が管理してた。三日月ちゃんが引くぐらいの圧で迫ったり、本当に色々」

「・・・・まぁ、その気持ちは分かる」

「可愛いし、ちょっと抜けてる所あるからな」

「ヤリチンにホイホイ付いて行きそう」

「そんなことは俺がさせない」

「・・・・三日月ちゃん、一応男だからな?」

「お前は三日月ちゃんの魅力を知らないのか?」

「鎖骨が見えただけで俺は興奮したぞ」

「俺は首筋。日焼けをしていない肌の威力はヤバい」

「あの仕草で萌袖は反則なんよ・・・・」

「なお武力・・・・」

「パイロット科の成績上位者を一方的にボコって泣かす→からの停学は笑った」

「ワイらの希望」

「教師側が最大限の減刑をして3日間」

「(賭けの倍率とか)どれくらい?」

「ほぼ皆三日月ちゃんベッド。エラン・ケレスの時はちょっと分かれたな」

「あーあれ」

「三日月ちゃんの腕が動かなくなった試合」

「そこかよ」

「そこしかないだろ」

「あれから三日月ちゃんの周りが急に過保護になったよな。アイツらSPかよ」

「特に前ホルダーとピンク髪」

「保護されているのを分かっていない三日月ちゃんが可愛い」

→画像

dmwtjgpjad.jp

 

 

「可愛い(確信」

「首をコテン。威力120」

「タイプ一致だから×1.5か」

「ポ○モン面白れぇなぁ・・・・」

「隠キャと言えばあのタヌキだよな」

「あー、アイツって隠キャなのか?」

「どゆこと?」

「いや、単に口下手なだけなんじゃないかなと思ってさ。アイツ、話を聞いたかんじ学校自体が初めてらしくて、全然内向的じゃないしトラウマも無いみたいで。隠キャの要素が口下手しかないんだよなぁ・・・・」

「口下手ならそれはもう隠キャでは?」

「内向的と外交的は決定的に違うぞ」

「???」

 



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7話

 地球寮の共同スペース。

 個性豊かな地球人が各々で集まって時間を潰す中、僕はそのグループをハシゴしていた。何故なら僕は隠キャじゃないから!ギャハハハハ!!!

「三日月ちゃん、次」

「あ、は、はい・・・・!」

「そんなに焦らなくて良いからな」

「ゆっくり、やればいい」

「は、はい!」

 嘘です。周りが天使すぎて(あとは転生フェイスもあるかな?)、僕が馴染めるように色んなグループの輪に入れてもらってるだけです大変失礼しました。ナマ言ってごめんなさい反省しております。

 僕が必死にトランプを選んでいると、ペイントだらけのミオリネさんとスレッタさんが突入してきた。そしてミオリネさんはココにいる全員が注目する中、堂々と言い放った。

「アンタ達。今日からココ、会社にするから」

「え?」

「株式会社ガンダムは、私と皆さんで経営します。以上、よろしく」

「「は?」」「はぁああ!?」

 動揺する地球組。ドヤ顔のミオリネさん。

「会社を興した以上やることは山積みよ」

「ちょちょ何話進めてんだよってか何で俺達を・・・・」

 友達いないんだね・・・・分かるよ。

「給料はちゃんと出す。他に質問は?無いよねぇ?」

「ごめんなさいごめんなさい!ウチのミオリネさんがごめんなさい!」

「そもそも、ガンダムで何をする会社なんだい?」

「それは・・・・これから考える」

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

「まずは『定款』(ていかん)でしょうか」

「定款?」

「この会社がどういうものかってことを書いた、規約だね。会社名、設立者の氏名、発行可能な株式の総数とか」

「具体的なことは事業計画書に書くことになるんですけど・・・・」

「この会社が何すんのかって話だろ」

 鉄華団にもあるのかな?テイカン?とやらが。まぁビスケットが書いただろうから、『安心安全な警備がウンタラ・・・・』みたいなかんじかな?ん?ということはヤから始まってザで終わるかんじの『テイワズ』とかにもあるのかな?そういうの。

「やるなら、儲かるのが良いよな?」

「スレッタのお母さんの話だと、GUNDフォーマットの安全性を立証しないとガンダムは造れないんだよね?」

「ペイル社のガンダムは・・・・名前・・・・」

「ファラクト」

「アッチはエアリアルとは違う技術なの?」

「調べてみないことには何ともね・・・・」

「ペイル社から預かった資料によると・・・・」

 と。なんだか話が長かったので、僕は机に突っ伏してそのまま寝ることにした。多分話が終わったら誰かが起こしてくれるだろう。

「おい。三日月ちゃん寝始めたぞ・・・・」

「アイツは放っておきなさい。一応余所の社員なワケだし」

「あー、そうでしたねー」

 何か聞こえたが、僕は寝る。アディオス!

 すやすや。あぁ。惰眠は良いなぁ・・・・。

「・・・・った。マルタン!」

「ひゃい!!!」

 名前を呼ばれた気がしたので飛び上がったら、地球組全員とミオリネさんスレッタさんが僕を見て口を閉ざしていた。

 キョロキョロと見回して自分のヤラカシに気づいた僕は、無言で縮こまり、貝となって羞恥に耐えた。

「・・・・ドンマイ」

 頭に変なのを巻いている男子生徒が背中をさすってくれた。あ・・・・優しい。名前知らないけど。

「・・・・マルタン。投機書類の細かい部分はアンタに任せる!リリッケは法人口座の開設の手続き。それとマルタンのフォロー」

「はい!」「分かったー」

「この中で、絵心のある人間は?・・・・会社のロゴ作って。イカしたやつ。それからスレッタぁ、他。「まとめんな」ガンダムの悪いイメージを払拭できるPV作って。期日は2週間だから」

「二週間!?」

「クソ親父の気が変わる前に全部固めるの。サボらずやりなさいよね」

 唖然とする一同。話は終わったとばかりにミオリネさんは立ち去り、残された僕らを代表してピンク髪が叫んだ。

「あんのクソスペ我が儘女ぁ!!」

 ピンク頭うるさい・・・・。

「・・・・ってことは、俺達はPV作りか。どうすんだ?」

 褐色の男子生徒が全員に聞く。

「PVって言われてもなぁ・・・・」

「だ、ダンス動画とかですか!?」

 スレッタさんが発言した。

「ダンスねぇ・・・・え?ダンス?」

 聞き返す褐色の男子生徒。

「はい!ダンスです!」

「・・・・ガンダムの悪いイメージを払拭するPVなんだろ?なんでダンス?」

「・・・・悪くないかも」

「いやいやダンスだぞ!?」

「なー今日はもう良いんじゃねぇの?明後日ぐらいに、各自が案を持ち寄って決めるかんじで。今無理に決めるもんでもないだろ」

「でも期限は2週間って言ってたよ?」

「このまま煮詰める方が色々と危険だろ」

 ふ~ん。どうやら皆はPVを作るらしい。ふ~ん。ふ~ん。ふ~ん?

 どうやら、僕の出番らしい。

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

「そんじゃまぁ、各自作った動画のサンプルを見せていくか」

 まずは僕からだ。

 堂々とUSBを刺した僕は、沢山の著作権が切れたアニメを切り貼りした動画を流した。

《パターン1》

エウレカで酔わせ、アクエリオンの脱衣で正常な判断能力を奪う。最後はマクロスの歌でいい感じの何かを見た気分にさせてシメる。『株式会社ガンダムは、こんなかんじのガンダムを作ります』というナレーションが最後に流れ、動画は終了した。

 ・・・・どう?

「えぇ・・・・」

 呆然とするニカさん。

「いやほとんどファンタジーじゃねぇか」

 ちゃんとツッコんでくれるピンク髪。

「なんつーか、アイツの頭の中が分かるPVだったな・・・」

 何故か感心している男子生徒(名前は知らん)。

 様々な反応(中には全く反応が見えない人もいた)が返ってきた。ただまぁコレはまだ《パターン1》だ。本命はコッチ。

《パターン2》

迫り来る巨大コロニー(動画はファーストガンダムから引用)。膝をつく人々(プリキュアから引用)。市民の1人が顔を上げる(OOから引用)と、始まるマフティー構文。「やってみせろよマフティー!」「なんとでもなるハズだ!」「ガンダムだと!?」クダラナイコトバヲモウイチドサケンデー。踊り狂うカボチャ頭。台パンとチンパンジーの鳴き声が木霊する。そしてなんか上手くいくコロニー落下阻止。からの爆発END。

 これこそガンダムの集大成、と言えるような素晴らしい作品だった。UCを乗っけれたら完璧だったんだけどね。

「おいおい・・・・」

「もっと酷いのが出てきたね・・・」

「もはや産業廃棄物の域だろコレ・・・・」

「・・・・禁書」

 マジレスの応酬。ニカさんからは心配された。

「・・・・大丈夫?体調悪いとかない?」

 いや、そんな反応は求めてないんだけど?あの・・・・。

「三日月。辛いことあったら言えよな?」

 ピンク髪がマジ顔で気遣ってきた。

「え、いや、その・・・・」

 ・・・・取り敢えず、この時代の人にネットミームのテンションは受け入れられないことはよく分かった。

 地球組以外を見ると、ミオリネさんは、誰だコイツを呼んだの、みたいな顔をしていた。スレッタさんに関しては「い、良いと思います!」と本気なのか気遣いなのか分からない言葉を投げてきた。

 ・・・・うん。・・・・スベった?

「はい。じゃあ問題児のは置いといて、次行くぞ次」

 

 

 結局、無難なダンス動画に決まった。



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8話

 鎮守府とモンドへ行って遊んでましたが、感想が来て凄く申し訳なかったので書きました。
 無双回です。ダインスレイブじゃないと倒せない2期の三日月をご笑覧あれ。
 追記1→最終回でチラ見せされなかったということは重要度は低いということで、ガンドの真実って人を素材にすることじゃね?と思う今日この頃。
 追記2→瀬名さん便利すぎ。


 

 鉄華団の本部、社長室。

 オルガの仕事部屋となっているその部屋には今、数多くの団員がいた。

 彼らの目的は、本部に2台しかない大型テレビだ。

 もう1台は食堂にあるのだが、そっちは新入りどもが占領していたため使えず、年長組の大体がココに集まっていた。

 サッカー観戦のような様相で、各々が菓子やジュースや椅子を持参してテレビに張り付く様はここが社長室とは到底思えない有り様だったが、こういう所が鉄華団らしいなと社長のオルガ・イツカは内心で笑っていた。

 彼は最近できた地球支部や上下から降ってくる要望に頭を抱え、買い取ったプラントの警備などで頭を悩ませる日々が続いていた。全てが『アガリ』のために必要なことと分かっているし、ビスケットのこともあるので頑張っていたのだが、適度な息抜きは下手だったため今日は精一杯休むつもりでいた。

「つまり、7対7のチーム戦。先にアタマの頭がヤられたら負けってことか」

 オルガが簡潔にルールを纏めると、ソファで偉そうにふんぞり返っている(椅子取りゲーム勝者の特権)『ライド』が懸念を口にした。

「ってか、三日月ちゃんだけで終わるんじゃねぇの?」

 ライドの言葉に、壁に寄りかかっていた参謀『ユージン』が口を挟んだ。

「やっこさんも三日月ちゃんの実力は把握した上で『決闘』とやらを仕掛けたんだろ?なら対策ぐらいはあるだろ」

「対策っつっても、なぁ?」

 ライドが、後方腕組みしながら直立不動でいる『昭弘』に言った。

 CGS時代からいた人間は、全員が三日月・オーガスと組み手をしてKO(組み手なのに)されている。それはライドもそうで、クーデリア事変の時の無双も実際に目にし、ギャラルホルンの狡猾な策を容易く踏み潰していく様を見ているため、たかが学生の猿知恵ごときで三日月・オーガスという男が止まるとは思えないでいた。

「三日月にも弱点はある」

 昭弘は重たい口調で言った。

「自分から指示を出すのができないことだ」

「「「あ~・・・・」」」

 この場にいる全員が納得した。

 戦闘の際、三日月はオルガの命令しか聞かない。そしてオルガの命令は『好きに暴れろ』しかないため半ば放し飼いの状態だが、それが一番三日月を動かせるため現状はソレがベストとなっている。その状態が結構続き、またバルバトスのスピードに誰も付いて行けないため更に孤立。三日月は協調性皆無な隠キャパイロットとして完成しつつあった。

「ってか、三日月ちゃんが相手とか、対戦相手が可哀想になってくるよな」

 同じくソファにふんぞり返って足を組んでいるシノが口を開いた。

「シャディクなんたらとかいう御曹司が小便チビらなきゃいいけどな」

 配信映像では、女子に囲まれた金髪ロン毛な男が何かを言っていた。

「・・・・俺、コイツ嫌いだわ」

 決闘前に女子とイチャイチャしている姿にライドが毒を吐く。すると配信映像が切り替わり、ピンク頭の女子に手を引かれている三日月の姿が映った。

 バキッ。

 木製の何かが粉砕される音がしたが、全員が無視。

 映像内の三日月は、少しして鉄華団もよく知っている瀬名・アルモンドの耳元でゴニョゴニョと何かを言っていた。

 バキッ。メキメキメキッ。

 瀬名・アルモンドが銀髪の女子に

「作戦は?だって」

 と聞くと、銀髪の女子は堂々と言ってのけた。

「作戦?無いわよそんなの!取り敢えず勝ってきなさい!」

 その言葉にオルガは苦笑し、鉄華団のメンバーも苦笑いした。引きつった笑いではない。断じて。

 

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 最近ハラガミが面白すぎる。なんだろうか。とにかく面白い。まぁギミックは面倒だけど。

 グエル君。君もやった方が良いよ。

「いやソレ俺のタブレットだからな?てか自分の使えよ」

 あ、タブレットは返すけど僕のアカウントは触らないでね。

 、とスマホに文字をタイプして見せると「だからソレは俺のタブレットだからな?」と言ってきた。

 やれやれ。と肩をすくめてやると、グエル君はタブレットの容量を見て絶句した。

「・・・・おい。このゲームってこんなに容量食うのか?何十ギガもあるじゃねぇかよ」

 許せサスケ。

 人差し指と中指の先でグエル君の額をトンと叩くと、伝わらなかったのか凄い顔をしてきた。

 仲良く並んで歩き、そのまま地球寮へやって来ると中からお出迎えがやって来た。

「あ、やっと来たわね!ちょっと来なさい!」

 ミオリネさんに地球寮へと引っ張り込まれ、無理矢理座らされ、スレッタさんにお茶を出され、何が何だか分からない状況に陥った。

「えっ・・・・と」

「あ、グエル・ジェターク!アンタも入りなさい!」

 ミオリネさんが、入口で立っていたグエル君を名指しした。

「いや、俺はほら三日月ちゃんの付き添いだし」

「いいから入れって言ってんの!」

 強引に連行されたグエル君は、僕の隣に座らされた。

「アンタ達!ウチのチームで出なさい!ここに出入りさせてやってるんだから、それぐらい働いても良いわよね!」

 怖・・・・・。何このヒステリーおばさん。

「三日月、アンタ後でシメるから」

 うっす。

「これでアンタ達とスレッタで3。あとチュチュで4人だから、残りは3ね」

 え、いや参加する前提なの?ちょ、ちょちょちょちょっと待って!

「?何よ」

 精一杯のジェスチャーをすると、ミオリネさんが反応して聞いてくれた。

 ヨシ!取り敢えず、言いたいことは1つ。

 僕は高いよ?

「は?」

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

 『1人しかいない遊撃隊』の隊長。『鉄華団の悪魔』という名前はダテじゃない。

 記録映像を見たシャディクは、冷や汗を垂らしながら映像を見終えた。

 ふう、と息を吐いて背もたれによりかかったシャディクは考える。

 まずバルバトスにアンチドートは効かない。効くとすれば閃光弾か。アラヤシキなら光のダメージも倍増するハズ。あとは拡散弾。あのスピードで動き回られては、流石のシャディクも通常火気では当てられない。近接戦闘ではトンファーを対処できないから近接装備は最低限で良い。とにかくバルバトスを押さえ込めるかが勝利の鍵となる。

 シャディクはとにかく、採れる対策の全てをするしかなかった。

 全てはあの日々の後悔を晴らすため。

 彼にとっては、一歩も退けない戦いなのだ。

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「・・・・これが、『鉄華団の悪魔』」

「学生のレベルじゃないだろコレ・・・」

 決闘当日。

 地球組が唖然としている中、三日月はマッキーがニッコリするような大活躍をしていた。

「マジでヤバいよアイツ!」

 シャディク隊のメスガキ担当が叫ぶが、直後メスガキの機体がシャディクの視界から消えた。すると悲鳴が聞こえ、やがて何も聞こえなくなった。

 シャディクも。スレッタも。チュチュも。流れで参加することになったグエル・ジェタークも。スレッタを囲んでアンチドートを使ったシャディク隊も。配信を見ている三日月の関係者以外の全員が言葉を失っていた。

 火器を握り潰すなんて朝飯前。崩れかけたビルごと敵を蹴り飛ばし、ビルの倒壊に巻き込む。敵のモビルスーツの足を掴んで振り回す。当然のようにビルを投げる。

 囲まれたなら敵を孤立させて各個撃破が普通だが、三日月はそんな常識を無視してスピードだけで2機3機を同時に破壊した。

 決闘が始まってすぐ。シャディク隊はいきなり仕掛け、シャディクが雑魚+グエル+チュチュ。三日月とスレッタに3と3で付く。スレッタについた3機がすぐさまアンチドートを使用。しかしエアリアルは謎の発光の後に制御を取り戻した。その現象にシャディクが気を取られた一瞬の隙に、三日月は覚醒した。

 瞬く間にシャディク隊が消えていく。

 近付かないというのが当初の目標だったが、三日月に追われたら離れられないのだからあって無いようなものだ。とにかくシャディクは茫然とするしかなかった。

 スレッタについていた機体も狩り終え、三日月はシャディクの目の前に降り立った。

「あと1人」

 弾かれたようにシャディク機が動き、バックステップで距離をとりながら散弾を打つが、バルバトスは散弾をバックステップで範囲から脱し、一瞬で距離を詰めてシャディク機の頭部を素手で抉り取った。

 

 

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

 後日。瀬名・アルモンドと2人で高級肉まんを頬張る三日月が目撃された。

 

 




 誤字脱字報告ありがとうございました。誤字脱字のジャングルすぎてヤバいですね。本当に申し訳ないです。


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9話

 三日月ちゃんが旅行には連れて行ってもらえなかったため、その分はカットです。
 マルコシアスが格好良すぎたので書きました。


「やっぱさ、『ヤり場の無い憤り』ってエッチな言葉だと思うんだよね」

 深夜。誰もいないグラスレー寮の大型モニターを(無許可で)貸し切り、僕は鉄華団の皆と談笑していた。

「お前さ・・・コッチがどれだけ心配したと思ってんだよ。それで?『ヤり場の無い憤り』?」

 最初は『オルガ』だけに相談しようと回線を繋いだのだが、『ユージン・セブンスターク』,『昭弘・アルトランド』などの古参組や『ハッシュ・ミディ』などの新参組など鉄華団の中の幅広いメンバーが割って入ってきて、あれよあれよという内に社長室は一杯となったためもう鉄華団の皆と喋っているかんじになっている。

「そうそう。いやさ、とある歌詞でそのフレーズがあってさ。いやエッチすぎだろ!ってツッコんだんだよね。分かる?」

「いやそうはならんやろ」

「いや成るだろ。ヤり場、の!無い憤りだぞ!?」

「だよねシノ!流石!機体をピンクに塗ってる人は違うね!」

「今ピンクの話は関係無いだろ!」

「そもそもヤり場って何なんすか?」

「そりゃあ、アレだよ。ピーしてピーするアレだ」

「ピー?」

「セッ○スする場所のことだよ」

「おい止めろ三日月!」

「別に良くない?今じゃ小学生にも最低限の教育はするみたいだよ。まぁ実技指導はまだらしいけど」

「実技指導があったら世界が終わるだろ・・・」

「実技指導・・・」

「ただのエロ漫画の世界じゃねぇか」

「僕はまだまだ性教育には不満があるけどね!だってゴムの実物を学校で見せないんだから!」

「お前の倫理観はどうなってんだよ」

「男子なんて年中エロいことを考えてるものだし、それくらいOKでも良くない?ねー、シノ」

「俺をエロ担当みたいな扱いにするなよ三日月!俺は、まぁ確かにそのテの店には、」

「マジかよシノ!?」「マジっすかシノさん!?」「お前童貞じゃねーのかよ!?」

「オルガ!シノが卒業しちゃったよ!?」

「いや俺に言われても・・・」

「エッチなのはいけないと思います!」

「「「どの口が言ってんだよ!」」」

 ちなみに僕は、昼間からAVを大音量で試聴するぐらいには紳士である。

「で?何の電話なんだ?」

 気を取り直して。オルガは本題に入ってくれた。

「アステなんたら、とにかくこの学校でオープンキャンパスがあるみたいなんだけどさ、鉄華団のブースも作ろうと思うんだよね。でもさ、やっぱり普通のブースじゃ鉄華団じゃないじゃん?だからAVを大音量で流そうとしたんだけど瀬名さんに止められて「当然だろ」手詰まりなんだよねー。目隠しさせて、おっ立てた既製品のディルドに輪投げさせる「「「絶対止めろ!」」」実質セックス体験・・・とかも考えたんだけど、ほんと全部却下されてさ。代案とか無いかな~って。あとは定期報告もかねてるかな」

「ブースか・・・」

「火星ヤシとかを売ってもなぁ」

「三日月ちゃんのブロマイドなら爆売れするんじゃね?てか俺が買う」

「嫌だよブロマイドとか」

「だそうだぞシノ」

「んだよつっかえry」

「ブースなぁ。アンパイで火星産の手芸品で良くねぇか?」

「おっぱい?はぁ、ライドさぁ・・・」

「誰もおっぱいなんて言ってねぇからな!?」

「気を付けろライド。それっぽく聞こえるヤツは全部拾ってくるぞ」

「マジかよ三日月ちゃん怖えぇ・・・」

「あ、哺乳瓶なんてどう?火星産ってシール貼って、中に牛乳入れただけのやつ」

「マニアしか買わないだろ」

「まぁ、最悪僕が飲ませるぐらいならしようかな・・・」

「三日月。俺絶対その日行くから俺の分は取って置いてくれ」

「親友の性癖がバブみだった件・・・」

「え、嫌だけど」

「うわ・・・」

「ヤるならオルガに頼んだら?」

「ムサい男同士・・・何も無いハズもなく」

「オイ今言ったヤツ誰だ出てこい!!!」

「鉄華団にゲイがいるのかよ!?」

「一応お前ら!ゲイは悪いことじゃねぇからな!」

「俺まで巻き込むなよ・・・」

 

 

 その後。議論百出の大会議になったが何も決まらず、グラスレー寮の警備員に見つかったことで会議はお開きとなった。

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 陰キャモードをすっかり忘れきった三日月を、物影でじーっと眺める影が1つ。

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 オープンキャンパスの前日。僕は瀬名さんと出店についての最終討議を公園のベンチに横並びに座って行っていた。

「でぃ、ディルド輪投げ・・・」

「ダメです」

「絶対もうかる」

「ダメです」

「でーるど輪投げ・・・」

「無視して良いですか?」

「あ、ごめんなさい・・・」

「というか、私見ちゃったんですけど。三日月ちゃんって鉄華団の人には普通に喋れるんですね」

「え、いや、それは・・・その、」

「私にも普通に喋ってくれませんか?」

「む、ムリ」

「どうしてですか?」

「どうしてって・・・・・・」

 そう言えば、どうして俺は陰キャだったのだろうか。いかんせん、前世の記憶なのど曖昧な部分が多くなってしまっている気がする。歳をとるって怖いね。

「ねぇ三日月ちゃん。陰キャに必要なのは自信と安心って知ってますか?」

「ふぇ?」

 瀬名さんが、僕の両の頬を両手でガッチリと押さえてきた。

「ねぇ三日月ちゃん。こっち向いて下さい」

「え、」

 顔を強引に引かれ、僕と瀬名さんの視線が交差した。そして、、そのまま。

 ちゅっ。

「へ?ひ、ひゃ、ひゃああ!?ちょ、なになになになに!?!?」

 僕は強引に瀬名さんから離れると、溢れ出るリビドー?のままに大騒ぎした。

「へぇ。そんな大きな声が出るんですね」

「え、いや、き、」

「安心して下さい。歳星ではキスなんて挨拶みたいなものなので(大嘘)」

「え、いや違くない?」

 ラフタさんを見るかぎりだと違う気が・・・。

「もう一回、しますか?」

「っ・・・いや、ダメでしょ。挨拶なんでしょ?ほら、挨拶とは言っても、」

「三日月ちゃんはさ、凄くヤバめな構ってちゃんですよね。だからグエル先輩に無理矢理関わったり、今日も地球寮に行くんですよね。・・・もう、そんなことはしなくて良いですよ。私が、一緒にいてあげますから」

 瀬名さんが抱き締めてきた。それだけで心臓がバクバクと高鳴り、意識が朦朧とする。あれ、えっと?

 

 

「ねぇねぇ。何してるの?」

 

 

 背後から声がかかった。その声とともに瀬名さんがピタリと動きを止めた。

「これ、注射器だよねぇ?もしかして、眠らせようとでもしてた?だったらゴメンねー、邪魔しちゃった☆」

 これは・・・メスガキの気配!?バカな!メスガキが実在しただと!?

 僕は瀬名さんから強制的に離れると、背後に立っていた人物を見た。よく見たら暫定メスガキが瀬名さんの腕を掴んでいて、その掴まれた瀬名さんの手には小型の注射器があった。

「軽率でしたね。ヒューマンデブリの三日月・オーガスさん」

「あ、三日月さん。瀬名さん。・・・お久しぶりです」

 メスガキの背後から、無口系美少女とスレッタさんが登場したことで更に僕は混乱した。

「え、つま、り?」

「なーに言ってんのよ。コイツが三日月ちゃんを眠らせようとしてた。以上!閉廷!議論の余地ナシでしょ?それで?処すの?できればヒューマンデブリのやり方ってやつを見せてもらいたいなー」

 つまり、瀬名さんは僕を注射器か何かで眠らせようとしていた、と。ふ~ん。へー、そうなんだ。

「どう、して?」

 (人前なのでいつもの陰キャ喋りになってしまったが)ちゃんと日本語で理由を聞くと、瀬名さんは思い詰めた様子で話し始めた。

「MA(モビルアーマー)は知ってますか?」

 知らないハズがない(食い気味)。前世の僕は熱狂的なガンダム信者だった。だからユニコーンにもZにも0083にも出てきたMAの存在は当然知っている。

「え、あるの?」

 しかし、この世界にもMAがあるのは初耳だった。モビルワーカーなら知っているが。

「あります。MA(モビルアーー)。天使の名を持つ人類の厄災。厄災戦時代に、当時の人口の約四分の一を殺戮した怪物で、効率的に人を殺すことだけに特化した怪物です」

 へぇ・・・。つまり鉄華団の敵か。

「それがこのアステカシア付近の宙域に運び込まれたという噂が私の元に入りました。そして、今度のオープンキャンパスでソレを暴れさせることも」

「強い、の?」

「強いです。多分、三日月ちゃんでも赤眼にならないとムリだと思います。そして三日月ちゃんがまた赤眼になったら、今度は半身不随じゃ足りない可能性が高いので、その、オープンキャンパスの間は眠ってもらおうと、思いまして」

 禁じ手を使わない僕より強いなら確かに厄介だが、しかし。多分それぐらいならいける。

「大丈夫」

「?」

「僕、最強だから(五条悟風)」

「最強でも代償が、

「へ~?じゃあお姉ちゃんにも勝てるの?」

 瀬名さんが何かを言ったが、割り込むようにしてメスガキちゃん(呼び名決定)が会話に入ってきた。

「私も気になります。ハッキリ言って、あのビットに勝てる未来が見えない」

 無口ちゃんも聞いてきたので、僕はとりあえずお姉ちゃんについて聞いた。

「お姉ちゃん?」

「スレッタお姉ちゃんのこと。三日月ちゃんも見たんでしょ?あのビットは」

 あー、あれ。

「スレッタさんなら、多分、大丈夫」

「何故?」

「ビット(ファンネル)は(恐らくユニコーン以外)、その、物理に、弱いのが、定石。だから、一つずつ握り潰す」

「だ、ダメです!」

 スレッタさんが抗議してくるが、あくまで戦ったらの話である。

「へぇ・・・、確かに飛道具を持たないバルバトスならそうなるかぁ・・・。ふぅん。へぇー?」

「・・・呆れました。ただのゴリ押しじゃないですか」

 メスガキちゃんと無口ちゃんがやんややんや言ってきたが、なんでさ。ファンネルの歴史を知らない人は黙っていて欲しい。エアリアルの疑似サイコフィールドを潰すなら一つずつ潰した方が絶対に良いと思うんだけど。

「まぁ確かに、アレを銃で狙うのは至難のワザですが」

「えーそうかなぁ~?」

 メスガキちゃんと無口ちゃんが楽しく会話し、スレッタさんはさっきからずっと僕をガン見していた。いやゴメンて。(鉄華団の敵にならない限り)しないから。絶対。

「そっか。じゃあ三日月ちゃん。オープンキャンパスでは楽しみにしてるね!」

 メスガキちゃんはそれだけ言うと、行くよお姉ちゃん!と言ってスレッタさんの手を引くとその場を後にした。

「では。これにて」

 無口ちゃんも去ろうとしたところで、瀬名さんが無口ちゃんに声をかけた。

「もし、戦うことがあったら容赦はしませんから」

 無口ちゃんは眼を細めると、「そうですか」とだけ言って去って行った。

 ・・・・・・え?

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 

 

「行くよ。『マルコシアス』」

 オープンキャンパス当日の交流戦。地球寮はスレッタさんチュチュ、そして僕と、それから瀬名さんがパイロットとして参加した。

 マルコシアス?なるガンダムフレームに乗って会場に入ってきた時はビックリして色々と瀬名さんに問い詰めたが、僕が陰キャすぎるあまり話が進まず、瀬名さんが話し始める前に開始のブザーが鳴った。

 そして。

 ガンダムが二機。地下から登場した。

「今日は私もガンビットを連れてきたんだぁ!」

 敵2匹を投げて遊んでいた僕に、紫色の閃光が降り注いだ。慌てて避けると、ガンダムXで登場したような人型の無人機が一斉に僕に照準を向けていた。ガロード、元気かなぁ・・・。

「三日月ちゃん!!!」

 瀬名さんが叫ぶが、流石にその程度で僕は死なないので安心してもらいたい。

 余裕で避けた僕にまた弾幕が張られるがソレも全て避けると、今度は会場の天井に大穴が空き、その穴から機械でできた怪物が姿を現した。

 竜に似たその姿と巨躯でソレがMAだと分かった僕は、瀬名さんの制止も聞かずにバルバトスのリミッターを外した。

 MAの喉元に一瞬で距離を詰めると、そのまま雑巾を絞るようにして首をグシャグシャにし、そのまま引きちぎる。頭部を失ったMAの身体は何もできないまま力を失い、会場に倒れ伏した。

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 ・・・ぶっちゃけ、サイコガンダムくらいのが来ると思っていたのだが、貧相な体つきをしていたので拍子抜けも良い所だ。

 バルバトスのコクピットから『自力で』降りると、隣に格納されたマルコシアスから瀬名さんが飛び出してきた。

「み、三日月ちゃん!!!大丈夫で、え、普通に立ってる。え?」

 よくぞ聞いてくれました。

 僕はドヤ顔で瀬名さんに駆け寄ると、今までじっと隠してきた左目の眼帯を取り去り、左目の眼球を瀬名さんに見せた。

 それから、早く説明できないためいつものようにタブレットに文字を打ち込み、瀬名さんに見せた。

『この左目はね。とある変な人(神様)が『原作のバルバトスは未完成だった。まだ出力は上がる』って言って渡してきたやつなんだよね。なんでも、スーパーコンピューターが内蔵されてるとかで、これを使ったら、多分半身不随みたいなことにはならないと思うから、大丈夫だよ』

 心配してくれて嬉しかったよ(本音)。陰キャながらにそれだけ言って笑うと、瀬名さんは言葉を失ったままひたすらに僕の目を凝視したまま固まっていた。

☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆

 その眼は血のように赤黒く、そして怪しく光り輝いていた。

(イメージは真っ赤に輝く『神々の義眼』。)

 





ハシュマル(MA)「あんさんら、この穴ちと狭すぎるんとちゃうか?」
プルーマ(子機)「大丈夫大丈夫。ワイらの計算に狂いなんてあらせんのやから、安心して入りーや」
ハシュマル(MA)「ホントかなぁ~?(黄色熊風)あ。いやハマっとるやないかい!エロ漫画みたいに壁穴にハマっとるやないかい!」
プルーマ(子機)「うせやん。あんさん太ったんとちゃうか?」
ハシュマル(MA)「太っとらんわ失礼な!は~あ、ホントあんさんらはさ、」
プルーマ(子機)「ちょ、敵来ましたぜ?」
ハシュマル(子機)「え、ちょ待てよ(アイドル風)。え、いやホント待って。今ちょっと諸事情で尻尾を前に出せないからさ。聞いてる?あ、速っ、え、首、え、そんな雑巾みたいに、止めて止めて止めて!あああ!逝く!逝くぅう!!!」



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