ローズ・ポッターはライオン系 ( チョビ)
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01薔薇の妖精から獅子の精霊へ

夏の暑さもすっかり鳴りを潜め、秋の涼しさが舞い降りてきた、10月中旬。

 

ホグワーツ魔法魔術学校の校長室で、3人の大人は真剣な面持ちで話し合っていた。

 

 

「___つまり、その予言の子が、ハリーとローズであると?」

 

 

クシャクシャ髪に榛色の瞳の男__ジェームズ・ポッターが、半ば責めるような口調で言った。彼の目の前には、たっぷりとした銀の髭を蓄えた老人がいる。名を、アルバス・ダンブルドア。

 

 

「そうじゃジェームズ。……儂が言いたい事がわかるかね?」

「……私たちは、隠れ家にいればいいの?」

 

 

赤毛にエメラルドの瞳の女性、リリー・エヴァンズ__否、リリー・ポッターが、夫であるジェームズの腕を握りながら、不安そうに口を開いた。その口元や腕は、微かに震えている。

 

 

「いや__そうではない。……ローズだけを、他の者に預けるのじゃ」

 

 

ダンブルドアが重苦しくそう言った瞬間、ジェームズは机をバンッ、と叩きながら立ち上がり、叫んだ。

 

 

「そんなことしない!ローズは大事な娘なんだぞ!?」

「私もいや!ハリーもローズも、一緒に隠ればいいじゃない!」

 

 

リリーも立ち上がり、怒った様に、悲しむ様に叫んだ。

ダンブルドアはそれを聞き、わかっていたという様に溜息を吐き、しっかりと向き合った。

 

 

「2人がそう思うのも、重々承知の上で話したのじゃ。__予言は、「七つ目の月が死ぬときに産まれる双子」、と言っておる。つまりローズを他の家の子にする事で、君たちもローズも安全に潜むことができるのじゃ」

 

 

たしかにそれは、納得できる。

ポッター夫妻は、ある程度落ち着き、席に着いた。

 

 

「でも__なんでローズなの?勿論、ハリーも大事な息子だわ。だけど、ローズである理由が知りたいの。だって、だってずっと待っていた娘だもの」

「おぉ、分かっておるぞリリー。ハリーは、あまりにジェームズに似ているじゃろう?じゃから、例え縁を切っても直ぐにバレてしまう可能性があるのじゃ。しかしローズの方は__あまり、君たちに似ていない。そういう理由じゃ」

 

 

これを聞いた夫婦は、何分か黙ったあと、「考える時間が欲しい」と、帰宅して行った。

 

 

「勿論最終決定権はお主らにある。じゃが、その決定が果たして将来、ハリーとローズにどんな影響を与えるのかを、しっかりと考えてほしい」

 

 

ダンブルドアは、正義の顔をして最後にそう言った。

 

 

 

 

 

 

ゴドリックの谷にあるポッター家に、夫婦が帰って来た。

 

庭にはリリーが植えた花が綺麗に咲き並んでいるが、それには目もくれず、素早い動作で夫婦は家に入った。

このご時世、何処にどんな輩がいるかわかったもんじゃないからだ。

 

 

「ただいま」

 

 

ジェームズがそう言うと、奥の今から2人の男が顔を出した。

 

 

「おかえりジェームズ。それにリリー」

「あ、ローズはソファでフィルがミルクをあげてるよ。ハリーはシリウスが寝かしつけてる」

「あぁ…ありがとう」

 

 

ジェームズとリリーの暗い雰囲気に、2人の男__リーマス・ルーピンとピーター・ペテグリューは顔を見合わせ、「ダンブルドアから何を言われたんだろう」と疑問に思った。

 

ジェームズは重い足取りで居間へ向かい、そこにいた女性と赤ん坊を見、少しだけ和らぐ表情。

 

 

「あ、兄さん!もう帰ったの?意外と早かったわね」

「あぁ、手短に済んだんだよ」

「そう。あ、ローズはすっかり機嫌がよくなったわ。私、リリーの代わりになれたみたい!」

 

 

ジェームズの暗い雰囲気を感じたのか、フィル__フィリパ・ポッターは明るくそう言った。

妹の言葉に、少し気分が良くなったジェームズがにこりと笑い、座る。「僕はまだ敵認識されるんだ。困ったもんだよ、うちのプリンセスは」。

 

 

「あぁフィル。面倒を見てくれてありがとう」

 

 

リリーがフィリパに近寄りギュッと抱きしめた。フィルは笑いながら「いいよ、全然。なんだかママになったみたいで楽しかったし!」と言い、抱えていた赤ん坊__ローズを手渡す。

穏やかにミルクを飲んでいたローズは、本当のママに会えた事に気付いた様で、視力の低い目を開き愛らしい口で「あうあう」と声を発した。

 

リリーも元気が出た様で、「ふふ。貴方はとっても可愛いわね〜ママですよ〜」と言いながら、キッチンへ向かう。即座にコーヒー作ると、人数分運び、ソファに座る。早速ストレス解消の為に愛する娘で遊ぶつもりらしい。

 

 

「___ローズを、シリウスの子にして欲しい」

 

 

シリウスは、飲んでいたコーヒーを吹き出した。

 

 

「うわっシリウス汚い!」

「ゴホッうえッ__は、はい?ジェームズ、お前自分が何言ってんのか」

「分かってるさ」

「じぇ、ジェームズ。君、疲れてるんだよ」

「ピーターの言う通りだ、急にどうしたんだよ」

 

 

シリウスが吹き出したコーヒーを、フィリパが嫌そうな顔で拭き、ピーターとリーマスはありえない、と言うような顔をしながらジェームズに詰め寄る。

 

この空間で、ジェームズだけが落ち着いていた。フィリパでさえも、震える手で拭いているのだ。

 

 

「いいかい、僕は凄くマトモだよ。これはダンブルドアの指示だ」

「ダンブルドアだろうがマーリンだろが、どうでもいいよ。なんでローズなの?なんでシリウスなの?」

「ちゃんと答えていくから、一つ一つ言ってくれよ」

 

 

ジェームズは、ダンブルドアに説明されたことを一つ一つ教えていった。

 

 

「予言の双子」であるハリーとローズは、ジェームズ達と共に隠れる予定だったこと。

片方の子を別の家の子にすることで、その双子・・からは除外され、より安全になるということ。

あまり顔立ちの似ていないローズは、信用のおけるシリウスの子にしたいということ。

 

ついでに、母親役はフィリパにやって欲しいこと。

 

 

「……わかった。ローズをシリウスに預けなきゃいけないこと、そして誰かをこの家の「秘密の守り人」にしないといけないこともね。だけど、」

 

 

フィリパはそこで言葉をきって、隣のシリウスを見た。

シリウスは気まずそうにする。

 

その様子を見たジェームズは大きな溜息を吐いた。

 

 

「君たち、まだあの事を引き摺ってるのかい?」

「だって……、」

 

 

実は、学生時代のに2人の間で起こったある事のせいで、未だに気まずくなる時があるのだ。

 

 

「ま、それは後々考えるとして」

 

 

ジェームズは立ち上がりながら言った。

気まずい雰囲気を消そうと、フィリパはいそいそとローズとハリー、そしてリリーのところへ向かう。

 

 

「有言実行。早くローズを君の娘にしないと。役所に手続きに行くから、着いてきてくれパッドフット。ムーニーはここで隠れ家の準備をしてくれるかい?ワーミーは__」

「あ、ご、ごめんジェームズ。僕はこの後予定があって…」

 

 

仲間たちに指示していく彼の言葉を遮ったのは、もじもじと指を遊ばせながら目線を決して合わせようとしないピーターだ。心なしか、顔色が悪いし、額に汗も出ている。

今日は調子が悪いのかと、ジェームズは思い、頷きながら言った。

 

 

「別に大丈夫さ。後で手紙を送るから、ちゃんと返事くれよ?」

 

 

コクリと頷きそそくさと部屋を出ようとするピーターに、シリウスが純粋に疑問に思ったことを口にした。

 

 

「騎士団の仕事か?」

「、あ、いや、僕、今日ちょっと調子悪くて……」

「顔色が悪いだろシリウス。察してやりなよ」

 

 

リーマスがいたわる様に声をかえた。

申し訳ない様な、何かに怯えているような表情で、ピーターが出て行った。

 

ジェームズはリリーを呼びに行き、シリウスは書類を準備しようと動き出す。リーマスは早速保護呪文を大量にかけにいく。

 

ピーターの、普段とは違う雰囲気になど、誰も気付かなかった。

 

 

 

そしてそれを、丁度1年後。後悔することになる。

 

 

 

 

 

 

1年後の、ハロウィン。

 

 

ポッター家で、悲劇が起こった。

 

 

 

「リリー!兄さん!」

 

 

 

響き渡るフィリパの声。

 

 

 

「フィル!?」

 

 

 

驚愕する夫婦。

 

 

 

「クッ……邪魔をするな小娘ッ!!」

 

 

 

怒りの声を上げる__ヴォルデモート。

 

 

 

 

周りの変化に気が付いたのか、泣き叫ぶ赤ん坊のハリー。

 

 

 

 

 

飛び交う呪文。

そこで、フィルの転送魔法がポッター一家に当たる。

 

声をかけ、目を合わせる間も無いまま、気付いたらそこには、ヴォルデモートとフィルしかいなかった。

 

 

 

 

「アバダ ケダブラ」

 

 

 

 

躊躇なく、フィルが言った。

つぶやく様なそれに、思わずヴォルデモートは一拍遅れて死の呪文を唱えた。

 

 

魔力は、ヴォルデモートの方が上。

 

速さは、フィルの方が上。

 

 

結果は___

 

 

 

 

両者、敗退だった。

 

 

 

 

 

 

 

数分後。

 

 

ジェームズとシリウスが見たのは、目を閉じ眠る様に倒れているフィルと、黒く大きなローブ。

 

それだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

時は過ぎ、1991年、夏。

 

 

グリモールドプレイス12番地にある、隠されたブラック家。

 

そこの大きな1室で、少女は目覚めた。

 

 

流れるクラシックにより再び訪れる睡魔。普段なら即KOなそれに、今日は負けじと起き上がる少女。空中に、美しい金褐色が広がった。元は赤毛だったのだが、成長するにつれどんどんと変わっていったのだ。

 

そのクラシックの発端であるオルゴールの蓋を押し、メロディを止める。少女はベッドから降り、適当に選んだ服で部屋を出た。服はいつも適当に選んでいるくせして、何故かオシャレな組合になるのは、少女の運が良過ぎるからだ。

 

 

目の前にあった階段の、手すりに腰掛け滑るように降りていく。前に1度、途中で落ちて頭に大きなたんこぶをこさえた事がある。その時から、幼馴染の母親に禁止されているのだが、幸いにもこの場に彼女はいない。気にせず降りていく。

 

長い階段を滑り終え、厨房のドアを勢いよく開け放ち__丁度目の前にいた、イケメンな男性にジャンプしながら抱きついた。

 

 

「おはようパパ!」

「うわっ、なんだレオーネか。ははっ、おはよう私の可愛いライオンちゃん」

 

 

少女__レオーネ・ブラックは、父親__シリウス・ブラックの頬にキスすると、とろけるバターを乗せた、美味しそうなホットケーキに齧り付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ローズ・ポッター改めレオーネ・ブラック

美しい金褐色の髪に嵐の様な灰色の瞳の美少女。本人は自覚済み。

「予言の双子」から除外されるべく、ジェームズとリリー・ポッター夫婦の娘からシリウスの養女となったが、本人は知らない。

顔立ちや瞳の色も、ブラック家のような美しさの為、周りも養女だと気付いていない。

悪戯好きで、自信家で、目立ちたがりという性格。ほぼジェームズ。

 

 

 

シリウス・ブラック

サラサラの黒髪にグレーの瞳のイケメン。何年か前レオーネが「チクチクいや!」と言ってからは髭をやめているので10歳若く見える。映画のイケオジは存在しない。

ライオンのように美しく凛々しく、そしてグリフィンドールに入って欲しい、と言う理由から、養女の名前はレオーネ(メスライオン)にした。

レオーネ絶対守るマン。

 

 

ジェームズとリリー・ポッター

産まれた瞬間から薔薇の様な輝きを見せた美しい女児だった為、ローズ(薔薇)と名付けた。がしかし、レオーネも可愛いなぁと思っている。

リリーは母親のいないレオーネ(だと本人は思っている)の母親代わりとして、日々叱ってばかりいる。

 

 

 

ハリー・ポッター

幼馴染のレオーネの事が好きだが、守ってお世話していくうちに母親認定されてしまった。

ほぼ原作通りだが、原作より大人っぽさとママっぽさと悪ノリしちゃうのが増している。完全にレオーネの影響。

「(あれ?僕とレオーネ、誕生日は1日違いだしよく考えてる事が被るし、何だか双子みたいだよなぁ……?)」

そして鋭さも増している。

 

 

 

フィリパ・ポッター

登場して一瞬で亡くなってしまったキャラ。ごめんね。

ジェームズの1歳年下の妹だが、似ていない。

黒髪に嵐の様な灰色の瞳の規格外の美少女。性格はまんまジェームズ。

あぁ成る程。レオーネはフィルに似たのか。




誤字が大量にありましたので、直しました!所々変更ありますが、話の大まかな流れは変わりません。


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チビライオンの1年目
02チビライオンと黒い家


「お嬢様。食べカスが落ちていますよ」

「ごめんごめん」

「『ごめん』は一回でいいです」

「はいはーい。あ、パパお水取って」

「『はい』もですッ!」

 

屋敷しもべ妖精のクリーチャーが、レオーネの食べカスを片付けながらブツブツと文句を言う。がしかし、当の本人は気にする事なく大好物のホットケーキを頬張っている。

 

これがブラック家の娘など、誰も信じないだろう。世間には「ブラック家には一人娘がいる」としか伝えていない為、恐らく誰もが「お淑やかで上品で、スリザリンらしい女児」を想像している。1ヶ月後のホグワーツで衝撃の事実が明らかになるのだが。

 

「ねぇパパ!早く行こうよ!」

 

いつの間にか朝ご飯を食べ終えた彼女は、早速父親であるシリウスの腕を引っ張る。シリウスはあぁ可愛いな、と思いつつ、「はいはい、今行くよ」と返事をした。その顔はデレッデレに緩み切っている。

 

クリーチャーは、元々彼が苦手であった。と言うか、嫌い。もっと言うと細胞の一つ一つがシリウスに反応し威嚇をしてしまうくらい、嫌いだった。

 

しかし思いの外改心していたのと、あまりにも育児に慣れていないので仕方なく、あくまでも仕方なく手伝ってやる事にしたのだ。結局は、クリーチャーだってレオーネの事が大好きな親バカなのだが。

 

クリーチャーが見守る中、美親子は仲良く姿くらましした。

 

 

 

 

 

 

 

一方、ゴドリックの谷ポッター家では。

 

 

「ふわぁ〜〜」

 

眠そうな声と共に、とある少年がベッドから起き上がった。彼はクシャクシャの髪をなんとか手櫛で整えようと試みるが、毎度の如く失敗した。諦めて適当な服に着替えて下に降りる。

 

キッチンからは既にチーズトーストのいい匂いが漂っていて、加えて……少年の大好物、キドニーパイの匂いもする。少年はウキウキとした気分でテーブルに座り、キッチンにいる母親に挨拶した。

 

「おはよう母さん」

「おはようバースデーボーイ!」

 

母親、リリー・ポッターからの挨拶を期待していたのに、出てきたのは父親ジェームズ・ポッターの声だった。無駄にデカイ。テーブルにいないと思ったら、どうやらキドニーパイを作っていたのはジェームズだったようだ。

 

「あぁ…父さんもおはよう」

「なんかオマケ感が否めないけどまぁいいや!ついに我が息子ハリーも11歳!1ヶ月後にはホグワーツ!ホグワーツはいいぞぅハリー!そこで母さんと父さんは運命的な出会いを__」

「してないわ。ハリー、お皿を運んで頂戴」

「はーい」

「ヒドイ!!」

 

泣き真似をするジェームズを放って、少年_ハリー・ポッターは準備を手伝った。

そう、今日は7月31日。つまりハリーの誕生日なのだ。ちなみに、昨日の7月30日は彼の幼馴染の誕生日だった。

 

そこで、ピンポーン、とチャイム音が響いた。

 

「……来た」

 

ハリーはそう呟き、玄関に駆け寄る。

ドアを開けた瞬間飛び込み、ハリーに抱き着いたのは___

 

「ハッピーバースデーハリー!」

 

彼の幼馴染、レオーネ・ブラックだ。

 

「うわっ」

「ハリー!これプレゼント!あ、この匂いはキドニーパイ!?私も食べていいリリー?」

「オーケーオーケー。レオーネ、ちょっと落ち着いてくれよ」

 

ハリーはなんとかレオーネを抱き止めて、ぴょんぴょんと跳ねながら興奮を抑えようともしていない幼馴染の姿に、苦笑しながら手をしっかりと繋いだ。というか、手首を掴んだ。

 

「落ち着いてなんかいられないよ!だって、大事な幼馴染で親友の誕生日だもん!」

 

元気にそう言ったレオーネは、本人曰く『大事な幼馴染で親友』であるハリーの手を振り払ってテーブルに着いた。リリーは女の子らしくないその所作に怒ったが、ちゃんとパイを出してやった。

 

「レオーネ!先に行ったらダメだろう!」

「あ、パパ」

 

遅れてやってきたシリウスは、ハリーにプレゼントを渡しながらレオーネに向き合い怒った。

 

「そうだぞレオーネ。ちゃんとシリウスと一緒に来ないと」

「ジェームズまで!」

 

「私はもう子供じゃないんだから!」と頬を膨らませるレオーネに、内心悶えながらも尚も怒ろうと思ったシリウスだが、折角の誕生日なのだからと結局許してしまった。ハリーは相変わらずな幼馴染の彼女の、頬に付いている食べカスを優しく取ってやった。

 

「「「……」」」

 

それを、複雑な表情で見守る3人の大人。

今は隠しているが、いつかはバレてしまう2人の本当の関係。

 

ハリーは明らかにレオーネに惚れ込んでいる。しかし、実は血の繋がった兄弟なのだ。近親婚の多い魔法界の純血家でも、流石に兄妹での婚姻なんて、聞いたことも見たこともない。割とガバガバな法律でもアウトレベルだ。

 

もうヴォルデモートはいないが、未だにダンブルドアは警戒しているし今更言えない……もしこれでレオーネもハリーが好きになったらと思うと、保護者たちの心は落ち着かない。常に板挟み状態なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇレオーネ、このプレゼント開けていい?」

 

本日2度目となる朝ご飯を食べているレオーネに、ハリーがそわそわしながら話しかけた。

彼が指差す物は、何枚もの紙に包まれた細長いナニカ。

 

もしかして、もしかすると………

 

ハリーは期待の篭った眼差しでレオーネを見つめた。レオーネはニヤリと悪戯気な笑みを浮かべた。頬や口元に食べカスが沢山付いているというのに、その姿は何とも言えない美しく可憐な微笑みだ。

 

「もぐもぐ…ふぉふぃふぉん、ふぃーお!」

「ありがと__うわぁっ!これって、」

 

レオーネの聞き取れない言語をしっかりと理解したハリー(幼馴染を侮ってはいけない)は、ガサガサと紙を取り除き____

 

「ニンバス2000じゃないか!」

 

今年発売されたばかりの新商品、ニンバス2000を持ち上げた。

 

学生時代優秀なシーカーであったジェームズの息子なのだから、勿論ハリーも箒が大好きだし乗るのが上手だ。しかし残念な事に「1年生は箒を持ち込んではいけない」と言うホグワーツの校則により、誕生日でも新しい箒を買ってくれない事になっていた。家にあるのはコメットだけだ。

 

しかし、同じくクディッチが好きなレオーネはそんな幼馴染を放っておけなかった。お小遣いを貯めて、予めニンバスを予約しておいたのだ。

 

加えて言っておくと、実はレオーネは箒が苦手だ。今は亡き母親フィリパが箒が苦手だったと聞いているから、血には勝てないと諦めてクディッチを観戦するだけで我慢している。本当は実の母親リリーが苦手なのだが。フィリパはジェームズと同じ様に優秀なクディッチ選手で有名なのだ。

 

「そうだよハリー!凄いでしょ!」

 

レオーネが笑顔で言うと、ハリーはその手を掴んでブンブンと振りながら満面の笑みで答えた。

 

「勿論だよ!君ってサイコウ!ねぇ母さん、これ乗ってきていい?」

「ダメよ。今日は新学期の準備をしに行くんだから」

 

ピシャリと言い放ったリリーが、ハリーに1枚の手紙を差し出した。

 

『ゴドリックの谷ポッター家、2階真ん中の部屋、ハリー・ポッター殿』

 

 

 

 

そうだ。

箒の事でテンションが上がって忘れかけていたが、もうすぐホグワーツなのだ。

 

ハリーは笑顔でレオーネと買い物へ向かった。




申し訳ありません。この度かなり大きく変更しました、ストーリー自体はあまり変わっていませんが、『02獅子の様に気高く美しくあれ』を『02チビライオンと黒い家』と『03獅子の様に気高く美しくあれ』に分けたり等があります。


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03獅子の様に気高く美しくあれ

 

 

そして1ヶ月後。

 

先に着いているであろうポッター家たちに会うため、ブラック家の美親子は揃ってプラットホームに現れた。

勿論、キングスクロス駅の九と四分の三番線だ。

 

大勢の人でごった返しているそこに、シリウスとレオーネが現れた瞬間。

息子や娘、荷物やペットと言う大荷物を抱えた親は、すぐさま傍に逸れた。

 

程よいサイズの道が出来上がり、2人は穏やかな所作でそこを歩いて行った。

 

「ねぇ、あれブラック家の御当主じゃない?」

「じゃぁあの子供はレオーネ・ブラック?」

「『例のあの人』を倒したフィリパ・ブラックの娘の!?」

 

異様に静かなこの空間では、呟く様な噂声すらも2人の耳に届く。シリウスは勿論、レオーネも最近になってやっと『気品ある振る舞い方』を使いこなせる様になったので、それをフル活用しポーカーフェイスを保つ。あと少しでニヤケ面が飛び出そうだ。

 

コツコツと靴音を響かせながら歩いていく2人の先には、ポッター家が待ち構えていた。

この空間に慣れている家族は普通の声量で、いつも通り話しかけた。

 

「やあシリウス。遅いじゃないか」

「すまないなジェームズ。チビライオンが手間取ってしまってね」

 

レオーネはにこりと可愛らしい笑みを浮かべながら、口を開いた。

 

「だって、大勢の人に見られるって分かってたでしょ?どうせなら可愛く写りたいじゃん『あの可愛い美少女が有名なフィリパ・ブラックの娘か!?予想以上に美しい!』ってね」

 

そう言った後、「ま、私ほど可愛い子なんてこの世にいないと思うけどね」と付け足した彼女を、ハリーはよくよく見てみる。

 

成る程確かに、いつもより可愛く見える。

でも規格外に可愛い彼女なんて見慣れているので、そこまで驚きやしなかった。なんなら、5歳時のお披露目パーティの時の方が可愛かった。

 

ハリーは「早く行こうよ」とレオーネを引っ張り、汽車に乗るのを手伝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シリウスの少々過保護な見送りを済ませ、レオーネとハリーはコンパートメントで向き合いお菓子を食べていた。主に食べているのはレオーネで、ハリーは窓から外を見ながら時折「スコージファイ清めよ」でレオーネ服を綺麗にしてやっていたのだが。

 

「もぐもぐ……やっぱりリリーのパイは絶品だなぁ」

「それは同感だけど、食べ過ぎないでよねレオーネ」

「えー!なんでぇ?」

「ホグワーツの絶品ディナーが食べられなくなるよ」

「あ、そっか」

 

そんな会話を続ける2人の声を遮る様に、コンパートメントのドアが開いた。

開いたそこに立っていたのは、赤毛のノッポ__

 

「「ロン!/フレッド、ジョージ!」」

 

2人の幼馴染兼親友の、ロナルド・ウィーズリーだ。彼の背後にはロンの双子の兄、フレッドとジョージもいる。

 

「やぁ2人とm」

「「調子はどうだ?レオーネにハリー!」」

「駅で見かけたんだけd」

「駅で見たけどあまりにも静かで」

「気難しい雰囲気だったもんだから、」

「おふくろがおっかなびっくりしちゃってさ」

「なんで僕を遮るの!?」

 

ロンを喋らせない双子に、レオーネとハリーは声を上げて笑った。フレッドはレオーネの頭をぐしゃぐしゃと撫でて、ジョージはハリーの背中をバシッと叩き、それぞれ嵐の様に去って行く。

残されたロンは「兄貴らがごめんよ」とレオーネの頭を直してやると、どかっと席に着いた。

 

「それにしても久しぶりだよね」

「ハリーの誕生日会ぶり?」

「1ヶ月前かぁ。ロンこのパイ食べる?」

「あ、もちのロン」

 

レオーネがさも自分の物の様にハリーが持ってきたリリーの特製レモンパイを渡すと、ロンはそれを受け取る。

しかし、そこはガサツコンビ。適当に渡して、落としてしまった。

 

「あ、」と声をそろえて顔を見合わす2人に、ハリーはまたもや呪文をかけようと杖を取り出した。そこで__

 

「ねぇ。ネビルのヒキガエルを見なかった?逃げ出したみたいなの。…あら、呪文をかけるの?私は全部試して、全て成功したわ。まぁ兎に角、やってみて」

 

これまたやっかいそうな少女が、コンパートメントのドアを開いた。

 

「えーっと、」

「君だぁれ?」

 

ハリーとロンが突然のことで驚いていると、レオーネが不思議そうに聞いた。レオーネは元から「空気感」とかに興味がない。どんなに気まずかろうが、それを察していようが、自分がしたい事をする。気まずい時は大体「あれ、なんか気まずいなー。あ、あのチョコ美味しそうハリー取ってくれないかなぁ」と思い、実際口に出す。

 

この状況でも、それは変わらなかった。

 

「あら失礼。私はハーマイオニー・グレンジャーよ。たまに上手く言えない人がいるんだけど、そう言う人にはハーミーって呼んでもらってるわ。貴方は?」

「そっか。私はレオーネだよ!こっちはハリーでこっちがロニー」

「ロンだよ」

「本人はそう言ってるけど、ロニーだよ。本当は」

「だから違うって!」

 

言い返すロンを見て、レオーネはケラケラと笑った。

 

「そ、そう。……で、ハリー。貴方魔法をかけないの?」

「…いや、かけるよ。今から」

 

ハリーが「スコージファイ、清めよ」と唱えると、当たり前だがそこは綺麗になった。ハーマイオニーという少女がそれを見てキラキラと瞳を輝かせたのを見て、レオーネは意外と素直なんだなぁと思った。

 

「凄いわ!私以外にも予習とかしてる子がいるなんて!」

「え?あ、いや、これは元々知ってて、」

「あ、私ネビルのカエルを探してたんだった!もう行かないと!じゃぁねハリー、レオーネ。あ、もうすぐ着くらしいからローブに着替えたほうがいいわよ

 

 

「真面目で規則に厳しそうな子だけど、案外可愛いところもあるじゃん」

「おいおいレオーネ。アイツ、僕にだけ挨拶しなかったんだぞ?」

 

ロンがそう返した瞬間、先程閉まったばかりのドアが開き、ハーマイオニーが顔を出した。

 

「それと貴方。鼻の頭に泥がついてるわよ」

 

 

「………ほらな?レオーネ」

 

ゴシゴシと鼻をこするロンは、不機嫌そうにレオーネを睨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

一難去ってまた一難とは、まさにこの事かとハリーは心の中で思った。

先程ハーマイオニーという少女が去って、幼馴染組3人は急いでローブに着替えた。

あと5分で到着する、という内容のアナウンスが流れてからは静かにお行儀よく座って待っていたのに、今度は金髪をオールバックにしている少年がやってきたのだ。

 

「ここにレオーネ・ブラックが居ると聞いて来たんだが…やはりお前の事か」

 

いかにも高慢ちきで人を小馬鹿にした様な言い草に、レオーネもロンもカチンと来た。ハリーは怒る前に、ロンとレオーネが問題ごとを起こさない様に抑えるので精一杯だ。

 

「私の事だけど、なんか用?」

 

こっちも十分カチンとくる。

 

「あぁ…前パーティで見た時と変わらないな」

「フン。そっちこそ」

「「((お菓子食べていいかな……))」」

 

バチバチと無言の睨み合いを続ける2人(+ロン)。少年の後ろに立っているガタイのいい2人はボンヤリとお菓子を眺めていた。

 

実は彼等、1度会ったことがあるのだ。

 

魔法界の純血は皆5歳の誕生日は純血系を招き盛大にパーティを開く。一応純血であるレオーネ、ロン、2人の付き添いである彼等の両親は、目の前にいる少年、ドラコ・マルフォイ__マルフォイ家の親子共々犬猿の中なのだ。控えめに言っても、だが。

 

 

グリフィンドールでマグル寄りvsスリザリーンな純血主義。

世界が終わりを迎えるその時まで、反発し合う中は変わらないだろう。

 

「ブラック。前も言ったが、魔法界には家柄がいいのと悪いのがいる。仮にもブラック家ならば、そんなウィーズルや半分野郎なんかと居ずに、僕とスリザリンに入っては、」

 

マルフォイがそう言いながら右手を差し出した。握手を要求しているのだ。

ロンは怒りで顔を真っ赤にしているし、ハリーも頬が痙攣している。

レオーネはゆっくりと手を前に出し、彼の握手に応じた___

 

「い、あ、いででででで!?」

 

ようにみえたが、違った。

 

力一杯、両手で握り潰そうとしている。

 

マルフォイは顔を真っ赤にしながら後ろの取り巻きに助けを求めた。2人は一瞬遅れて反応し、レオーネを引き離す。レオーネは軽い身のこなしでヒョイを避け、ケラケラと笑っていた2人に笑い返した。

 

「_ッこのゴリラ女!」

「ははっ!自分はヒョロヒョロもやしのくせに〜…ぷぷっ」

「クッ…お、覚えてろよーッ!!」

 

なんともありきたりな言葉を言い残し、マルフォイ少年は去っていった。

 

「あ、お菓子いる?どーぞどーぞ」

 

機嫌の良いレオーネは、気前よくお菓子を取り巻き2人に渡し、コンパートメントのドアを閉めた。

 

「ぷっ…くくっ…ヒョロヒョロもやしってウケる」

「さ、流石レオーネ」

「いやいや、いくら11歳とは言え同い年の女子に腕力で負けるあいつもヤバいよ」

 

3人で笑い合っているうちに、ホグワーツ特急は目的地に到着した。



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04大学校とユニーク校長

汽車から降りると、一度見たら忘れないような、とても大きな髭もじゃの人がいた。

 

「うわー……めっちゃデカい…」

「巨人…?ほどでもないよね?」

「フレッドとジョージが言ってた!確か…ハグリットとかいう森番だった気がする」

 

小さい声で会話を続けながら、そのハグリットに着いていく。

 

「イッチ年生はこっち!イッチ年生はこっちッ!」

 

ハグリッド率いるボートの船団が城の前まで自動で動くと、次はぴしゃりと背筋が伸びた老婆が待ち構えていた。

名を、ミネルバ・マクゴナガル。

何処となくリリーに似たその雰囲気を瞬時に感じ取ったレオーネは、無意識に背筋を伸ばした。

 

「ようこそ、ホグワーツへ。さて、今からこの扉をくぐり、上級生と合流します。その前にまず、皆さんがどの寮に入るか組み分けをします。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、そしてスリザリン。学校にいる間は寮があなた方の家です。良い行いをすれば寮の得点となり、規則を破ったりすれば、減点されます。学年末には最高得点の寮に優勝カップが渡されます」

 

何故かレオーネとハリーを見ながら言ってきた。

「間も無く組分けの儀式が始まります。ここでお待ちなさい」

 

マクゴナガルはそう言うと、「くれぐれも、騒ぎを起こさないように」と言い残し何処かに去って行く。

レオーネは聞いてなかったフリをしてキョロキョロと周りを見渡しながら周りに話しかけた。

 

「ねぇねぇ皆んな。組分けってどうするか知ってる?」

 

「トロールと戦うって兄貴が言ってた!」

「生徒同士で決闘させるんじゃないの?」

「先輩がジャンケンして欲しい生徒を選んでいくんだよ!」

「そんな訳ないわよ!きっと、簡単なテストかなんかをするのよ」

 

皆が口々に意見を言って行くが、その殆どが両親の両方、又はどちらかが魔法族の子ばかりで、マグル生まれの生徒は青白い顔で黙り込んでいる。

 

話題を吹っ掛けた本人であるレオーネはもう興味を無くした様で、そこら辺を漂っているゴーストに夢中だ。具体的に言うと、そのゴーストの身体に手を突っ込んでどうなるかの反応を見るのに夢中と言えるだろう。

 

ハリーはそんなレオーネを見て溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブラック・レオーネ!」

 

大広間に、声が響き渡る。

ブラック家の娘と言えば、なにかと謎が多い令嬢で有名だ。

しかしきっと、大人しくて恥ずかしがり屋で表に出てこれないか、それとも物凄くブスで恥ずかしくて出てこれないか。

どちらかだろうと皆は予想して、果たして結果は……!?と思いつつ、新入生の塊を見つめ続ける。

 

しかし、いつまで経ってもそこから少女が出てくることはない。

 

「ブラック・レオーネ!」

 

もう一度、名前が響く。

 

「ブラックッ!」

 

マクゴナガルの額に青筋が浮き上がる。

 

「レオーネッ!ブラックッ!出てきなさいッッ!!」

 

「れ、レオーネ。レオーネ起きてッ」

「や、ヤバイよレオーネ!」

 

小さい声でロンとハリーが話しかけ、肩を叩き続けると、やっとレオーネは起きた。

そして周りを見渡し、自分が呼ばれていることにやっと気付いたのだ。

 

欠伸をしながら前に出てきた彼女を見て、色んな意味で生徒達は息を呑んだ。

 

ゆっくりと歩いていて、風も吹いていないにも関わらず美しく靡く金褐色の髪。

眠そうに垂れている、キラキラと輝く灰色の瞳。

細い手足に華奢な身体。

手が少しだけ出ている。所謂「萌え袖」の制服。

 

欠伸をかいて大口を開けているその姿ですら、神々しい女神か天使にすら見えるのは何故だろうかと、生徒達は目を擦り少なくとも2回以上、彼女を見つめた。(どこかの赤毛の双子だけはニヤニヤ笑っていたが)。

 

そんな視線には当に慣れているレオーネは、ゆっくりと椅子の上に座り帽子を被った。大きすぎるその帽子は、レオーネの小さい顔をすっぽりと覆ってしまう。

 

『おや。君は…ブラックの娘かい?』

「わっ!喋ったの!?」

 

頭に響いてくるしわがれた老人の声に、レオーネの目はすっかり冴えた。

 

『ほっほっほ。いい反応じゃ。して、君は本当に、ブラックの娘かい?』

「?うんそうだけど…どうして?」

『いや…そうなら問題はない。さて組分けに移ろうかの』

『ふむ……よし決まった』

「早くない!?」

『グリフィンッドォォォル!!!』

 

拍手喝采が起こる。

あまりにも早く終わった為、レオーネは若干困惑しつつも「ブラックをとった!」「美少女をとった!」と騒ぐ赤毛の双子の元にかけて行く。

 

たくさんの生徒に「ブラックだ!」「美少女だ!」「ラッキーだ!」と騒がれるもんだから、レオーネはすっかり嬉しくなり、

 

「そうだよ!この私、レオーネ・ブラックが入ったからにはこの獅子寮は寮対抗戦で負けることは!絶対ない!ハーッハッハーッ!!」

 

スリザリン以外の生徒全員が、喝采をあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロンも無事グリフィンドールに決まり、今世紀最大の魔法使い(と、ハーマイオニーが言っていた)ダンブルドアが席を立つ。

 

静かな凪の様な青色の瞳だが、それを見た誰もが口を閉ざしてしまう程の優しく穏やかな圧が、彼にはあった。

 

「おめでとう、新入生諸君!そしてようこそ!ジジィの長話を聞く前に、諸君には大事なことがあろうじゃろうて!ではいきますぞ、そーれ、わっしょい、こらしょい、どっこらしょい!」

「えっ」

 

随分とお茶目な校長に、新入生全員が目を見開く。そんな後輩の姿を見た在校生はニヤニヤ笑いを抑えなかった。嘗ては自分らもおんなじ目に合ったものだ。

 

「面白い校長だね?」

 

豪華なディナーに舌鼓を打ちながらレオーネが言うと、周りの生徒が激しく同意した。

 

「ところで、私はレオーネ・ブラックだよ。君は?」

「あ…ぼ、僕はネビル…」

「ネビル?ひょっとしてネビル・ロングボトム?」

「う、うん…」

「へぇ!前に会ったことあるよね?ほら、お披露目パーティで__」

 

各々が会話を進めていると、ダンブルドアが今度はきりっとした立ち振る舞いで喋り出した。

 

四階の廊下には決して近づいてはならないこと(レオーネと赤毛の双子を見ながら言った)。禁じられた森への立ち入り禁止(またもやレオーネと赤毛の以下略)。廊下でむやみに魔法を使わぬようにとの管理人からのお願い。クィディッチ選手の選抜があるのでやりたい子はマダム・フーチに連絡を取る事。

と諸注意を述べた後に、校歌斉唱を行った。

 

「好きなリズムで!」

 

 

好きな……えっ?それでいいの?

 

 

ロンが困惑して辺りを見回すと、レオーネは元気いっぱい歌い(下手ではなかった。寧ろ上手い)、ダンブルドアは「音楽とは何にも勝る魔法じゃ…ふぉっふぉっふぉ…」と言いながら涙ぐむという茶番が繰り広げられているのを認識した。

双子は最後まで、人一倍大きな声で歌っていた。

 

寮に入り、レオーネは家のより硬いベッドでぐっすりと眠った。



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05蛇よ獅子よ。戦闘開始!

〈変身術〉

 

「急げ!急げ!」

「早くしてよレオーネ!」

「ん〜ん〜……もう食べられないよ…」

「何言ってんの!」

 

翌朝。

 

ちゃんと起きた筈なのに、大広間へ向かう途中で迷い、教室に行くのにも迷った3人はひたすら廊下を走っていた。

既に授業開始時刻は過ぎており、3人以外には人っ子一人いない。

 

ハリーとロンで、まだ半分夢の中にいる(寝坊して朝ご飯を食べ損ねたのだ)レオーネを引っ張りながら足を動かしている。しかし、性差があろうともまだ11歳。力の差だってそこまでないのだから早く走れていないのだ。

 

やっとのことで教室に着いた時、既に他の生徒達は机に向かってカリカリとなにかを書いていた。

 

バタバタと足音をたてながら入ってきた3人に、生徒達__特にハーマイオニーとマルフォイはその姿を見て呆れたり、せせら笑いを浮かべたりした。その頃にはレオーネも目が覚めていて、教師がいないか周りを見渡しながら席につこうとした。

 

「ふぅ、間に合った…」

 

ロンがどさりと席に座る。

 

「遅刻したらマクゴナガルがどんな顔するか…」

「母さんより怖くはないよ」

「あぁ…リリーって起こるとめちゃくちゃ怖いもんね…」

 

その時。

 

シュルリと音が聞こえたかと思うと、前の机に座っていた猫がマクゴナガルに変身した。否、マクゴナガルが猫に変身していたのだ。

そのままツカツカと3人に近付くマクゴナガル。ロンは慌てて立ち上がった。

 

「へ…変身、お見事でした」

「お褒めの言葉をありがとうウィーズリー。…貴方達を、目覚まし時計に変身させましょうか?そうすれば遅刻せずに済むでしょう」

「み、道に…迷っちゃって」

「あ、私は普通に寝坊しt」

「レオーネは黙っててっ」

 

剣幕に臆せずけろりと真実を告げようとするレオーネの口を、慌てて塞ぐロン。

 

「では地図にしましょうか?初日は時間を多めにとっている筈です。…次は減点ですからね」

「「「…はい。マクゴナガル先生」」」

 

「地図なしでも席はわかりますね?」

 

3人は反戦した様子で席に着いたが、レオーネは次の授業を完全にサボる事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

〈魔法薬学〉

 

バーンッと音を立ててドアが開き、ベットリとした黒髪に闇色の瞳の教師、セブルス・スネイプが入ってきた。

 

「このクラスでは杖を振り回すようなバカげたことはやらん。そこで、これでも魔法かと思う諸君が多いかもしれん。フツフツと湧く大釜、ゆらゆらと立ち昇る湯気、人の血管の中をはいめぐる液体の繊細な力…」

 

詩的な表現は、とても魅力的で興味深く、生徒達の心を刺激した。

しかし、次の瞬間彼が言った言葉で、グリフィンドール生はもれなく彼が嫌いになる。

 

「あぁ、グリフィンドールの諸君は授業が簡単過ぎてつまらないという。ならば質問をしてみよう」

 

ふぁ??

 

別に簡単すぎるわけでもないし、つまらないわけでもない。ただちょっと、思ったよりも詩的なその表現にぼーっとしてしまっただけだ。

 

しかし、スネイプが言っていたのはどうやらハリーとレオーネの事らしかった。明らかに2人を見つめて言ってくるからだ。

 

「(……なんか僕達のこと睨んでない?)」

「(え!?私まだ何もやってないのに!?)」

「(あ、いろいろする気なんだね)」

「(当たり前でしょ!?まずはアイツに悪戯を__)「ブラック!」はい!?」

 

突然の指名に変に返事をしてしまうレオーネ。慌てて取り繕う様に「あ、えーっと、はい。なんでしょうかスネイプ先生」と言い直すが、時既に遅し。

 

「グリフィンドールはロクに返事もできない様だな。5点減点」

「うぇ!?」

「更に4点減点」

「なんで__もがぁッ」

 

開始早々9点減点。かなり痛い。

これ以上減点されては困ると、左隣にいたハーマイオニーがレオーネの口を塞いだ。すると、スネイプは標的をハリーに変更した様だ。

 

「ではポッター。質問をしよう」

「は、はい」

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギの煎じたものを加えると何になる」

「眠り薬です。強力な」

 

母親であるリリーは魔法薬学が大の得意なので、ある程度の知識には自信があるハリーは作り笑いで即答した。そんなハリーに対し、明らかに憎しみの表情を浮かべるスネイプ。

 

「……では、ベゾアール石を見つけて来いと言われたらどこを探すかね?」

「ヤギの胃の中です。大抵の魔法薬の解毒剤となります」

「………チッではモンクスフードとウルススベーンとの違いは?」

「(え、舌打ちした???)同一の植物です。それは、つまりトリカブトのことです」

「…………思い上がるなよポッターッ」

「(なんで!?)」

 

レオーネもハリーも、どうやら相当嫌われているらしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

〈飛行術〉

 

魔法使い、もしくは魔女と聞いて思い浮かべるのはなんだろう。

 

杖?絨毯?呪文?

 

やはり一番は__「箒」だろう。

 

マグル生まれであるハーマイオニーは、本日行われる初めての飛行訓練を完璧にする為に、朝から「箒の全て」「飛行術とは」「バカでも出来る!飛行術!」「箒で怒る怪我100個」などなど、大量の本をひたすら読んでいた。誰もが憧れる箒。失敗するわけにはいかないのだ。

 

純血、半純血の生徒にとっては箒は割と身近なものなので、ワクワクしているだけだが、マグル出身の者はひたすらに恐怖と興奮の絶頂にいた。

 

__どうしよう、落ちるかも

__僕1人だけ出来なかったら…

__皆んなに笑われる…そんなの嫌だ

__あっ!グレンジャーが箒の本を読んでるぞ!あそこに集まろう

 

そんなわけで、ハーマイオニーが読み上げる言葉を、一言一句覚えようとする生徒がわらわらと集まった。

 

「ふわ〜ぁ」

 

そんな緊迫した雰囲気の場所に、欠伸をしながら現れたレオーネ。ハリーが呆れた目で彼女の寝癖を直してやると、間抜けた声で「ロン…ありがとう…むにゃ」と言うものだから、ロンがハリーの肩をポンポンと叩く。

 

「ハリー、君はもっとアプローチすべきだね」

「これでも頑張ってるんだけどなぁ」

 

豪華な朝ご飯を目の前にして、覚醒してきたレオーネは目をちゃんと開いてオートミールをかき込んだ。

その様子を見ながら、ハリーがハーマイオニーの声に気付く。

 

「アー…グレンジャーさんは何をやってるのかな」

「あれじゃない?今日の飛行術」

「飛行術なんて、本で読んだってわからないよ。実際にやってみないと」

 

どこか説教臭く言った自信満々なロンとは反対に、レオーネはなんだか元気がない。それもその筈、レオーネは箒は苦手なのだ。乗った瞬間、箒が飛ばなくなる。まるで元気を無くしたみたいに萎れて、ダメになってしまうのだ。

 

「大丈夫?レオーネ」

 

ハリーが優しく問いかけると、レオーネは控えめに頷きながらオートミールを口にした。いつもは嫌いなこの薄味が、今日は心に優しい。

幼馴染のロンもハリーも箒が得意なのに、レオーネは得意どころか乗ることすら危うい。こんなに悔しくて悲しい気持ちなんて、久しぶりかもしれない。

 

いつまでも悲しんでいてはダメだ。少しでもマシになるよう、ハーマイオニーが読み上げる言葉に耳を傾けようとした時。いやーな声が耳に飛び込んできた。

 

「おやおやブラック。そんなに悔しそうな顔をしてどうしたんだい?もしや…箒に乗れないわけじゃないだろうなぁ?」

「マルフォイ…!」

 

今日も今日とて、金髪を綺麗に固めた少年が嬉しそうな笑みを浮かべてやって来た。レオーネの嫌がる事なら何でもするマルフォイは、広い顔を使い様々な人から情報を仕入れ、レオーネは箒が苦手、という情報を掴んできたのだ。

 

レオーネは言い返さず、顔を俯かせる。その様子にマルフォイはまたもや嬉しそうになった。

 

「失せろよマルフォイ」

 

ハリーが睨みをきかせながら言うと、マルフォイも睨み返す。

 

「ハッ!金魚の糞め!いつも通りブラックに媚を売ったらどうだ?あぁレオーネ、大丈夫かい?靴でも舐めるよ

!ってね」

「五月蝿いぞマルフォイ!レオーネはちょこっと箒が苦手なだけだ!」

「う”っ”…!」

 

ロンがフォローの為に放った言葉が(精神的に)レオーネの胸に刺さる。それを聞いた周りの生徒の視線も(物理的に)レオーネに刺さった。

 

「そりゃ、浮いた瞬間スニッチみたいに暴れちゃって操作できないけど、それでも一応飛べるんだ!それにハリーはレオーネに媚を売ってるんじゃなくてレオーネのこt__」

「ま、マルフォイ!僕の事だけじゃなくてレオーネまで馬鹿にするなんて許さないぞ!それに、ここはグリフィンドールの席だ!スリザリンは蛇らしく端っこで座ってろよ!」

 

フォローになってないフォローだけでなく、ハリーの心の内まで曝け出されそうになったので、慌てて言い返す。

レオーネ・ブラックの意外な弱点に驚愕していた周りの生徒達が、慌ててマルフォイとの戦いに参戦した。

 

騒がしくなったことに気付いたレオーネが顔を上げる。

大きい瞳には薄く水の膜が出来ていて、大粒の雫が溜まっている。光に反射してグレーの瞳がキラキラと輝いているその姿を見たマルフォイは。

 

「、っ…!?」

 

心臓が何かに貫かれるような感覚を感じたが、結局分からずじまいだったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

ネビルが、グシャリと潰れた。

 

いや、ぐしゃりと潰れるように地面に落下して大怪我をした、と行った方が正しい。

 

飛行訓練の授業で、「失敗したら死ぬ」と言われたレオーネは柄にもなく箒に恐怖した。なので、体調不良を理由に箒に乗らずに様子を見守るだけだったのだが、ネビルが失敗して箒から落っこちた。

 

ガクンガクン揺れる箒に30秒しがみついただけでも褒めてやりたいところだし、高さ10メートルの所から落ちて怪我で済んだのは割と良い方だ。

 

ネビルが落ちた瞬間、女子も男子も関係なく皆顔を背けた。音が、音が酷かったのだ。

 

 

グシャリ、ブシャッ

 

そう。例えるならば、筋肉モリモリのマッチョがジュースを作るためにオレンジを絞った時みたいな。マグル生まれの女子生徒の何人かはマッチョバーが一瞬頭をよぎった。

 

そんな感じで、骨が折れて内臓がグチャグチャになり、恐らく血が噴き出したであろうことは容易く予想できた。レオーネはそれに気付かず目を閉じようとしなかった為、ハリーが手で隠したが。

 

多分レオーネなら「うえぇ…キモチワルッ」と悪意なく言ってしまうだろう。しかし、これ以上ネビルの精神を傷付けたくない。ハリーは色々察してやれる良い男だった。彼氏としては申し分ないヤツだ。父親がアレな為、色々成長した。

 

「わーお、ネビル大丈夫?」

 

「キモチワルッ」をハリーの手の中に沈めたレオーネは興味深げに近付き、ネビルの頭をツンツン突きながら聞いた。ネビルは「…う”っ”…」と呻き声を漏らす。どうやら、気絶して痛みを忘れていたのにレオーネの良く悪くも透き通って大きい声で目覚めてしまったようだ。しかも、耳元で。

 

でもネビルはいつもの声(のつもり。本人的には)で返す。

 

「う”…だ、だいじょうぶだよ、れおーね…う”っ…」

「ほんと?すごく痛そうだよ?」

 

そりゃ、痛いだろうさ。

生徒たちは思った。ハリーは出来るだけ目を閉じながらレオーネの腕を引っ張ってネビルから離させる。「ネビル、もうすぐ先生が来るからね」と言い残して。レオーネにこれ以上ネビルの身体を傷付かせたくない。これもネビルのためだ。

 

そして、ネビルは先生によって医務室へと連れて行かれた。

後に残るのは獅子寮と蛇寮の初々しい一年生たち。蛇寮はマルフォイを筆頭にレオーネをいじり倒し、

 

「やーいやーい弱虫めー!」

「箒に乗ることすらできないなんてー」

「本当に魔法使いかしらァ?」

「ブラック家の血が流れているのか怪しいぞ!」

 

獅子寮は女子たちと筆頭に言い返す。ハリーはレオーネの耳を塞いでやり、ロンはネビルの落とし物を拾ってやった。もしかしたらマルフォイに取られるかもしれないと、ハリーは危惧したのだ。

 

「女の子にそんな事いうなんてサイッテー!」

「レオーネは弱虫なんかじゃないわ!魔法薬学のカエルの死体だって平気で触れるのよ!」

「それに女の子は弱虫でも許されるの!」

「そっちの方が愛嬌があって可愛いしッ!!」

 

 

「阿保スリザリン!」

「馬鹿グリフィンドール!」

「クソッタレ蛇!」

「クソッタレ獅子!」

「男タラシ!!」

「クソビッチ!!」

 

取り敢えず男子生徒は恐怖で顔を青くした。

 

 

 

 

 

 

ネビルは首を折っていた。ポキっと。

 

そりゃ、あんな所から落ちて手足の骨折で済んだ方がおかしいけども。レオーネ曰く、「首が180度回転してたよ!」である。しかもそれをニッコリと笑いながら本人被害者ネビルに伝えるのだから、一年生全員顔面蒼白になった。ネビルの精神が危うい。

 

想像してしまった何人かは暫くお肉を控えたとか。

 

 

そして、時は流れハロウィン。

 

あまーいパンプキンの香りが漂う中、何故かズキズキと痛む頭を抑えながらレオーネは部屋から出た。いつもは寝坊寸前だが、頭痛が尋常じゃないくらいに痛い。そして甘い香りの誘惑が半端ない。

 

「成る程。これが飴と鞭」

「違うと思うよ」

 

同じく頭を摩りながら部屋から出てきたハリー。ロンは寝ぼけたまま制服を表裏間違えたまま着ている。面白いから黙っておこうとどこかの双子は思ったそうな。

 

「あ、おはよハリー。頭だいじょーぶ?」

「うん…レオーネは?」

「無理。めちゃめちゃ痛い。去年の100倍」

「僕も」

 

昔から、ハリーもレオーネもハロウィンになると頭痛がする。これも幼馴染の運命(⁇⁇)とかレオーネはほざきながら大広間に行こうとする。

 

 

彼女の後を追いかける。

 

「(…あれ、レオーネって、あんな所に傷あったっけ…?)」

 

手首にある、薄い傷跡に頭を傾げたハリー。普段なら血相変えて心配するのだが、ボンヤリとした頭では何も考えられなかった。今は兎に角、スープを飲みたい。

 

そしてレオーネも同時に思う。

 

「(あれ…ハリーイメチェンしたのかな?オデコに雷のタトゥーが…ま、そんな訳ないか)」

 

いつも通り、深く考えなかった。

 



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06思春期なのよ。許してよ!

 

 

突然だが、ハーマイオニーとロンは仲が悪い。

 

優等生で真面目で、規則命のハーマイオニーに比べて悪戯が好きでヤンチャ、お洒落(だと思っている)着崩した制服姿のロン。

 

そりゃ、仲が良いはずもない。

今でもちょっとしたことで簡単に喧嘩に勃発するのだから、いつか二人の間に大きな亀裂を生むかもしれない。

それを心配した女子の何人かは教師陣に相談した。こういう時は教師が1番だ。きっとカウンセリングとか、その他色々な方法を使って解決してくれるだろうと、誰もが期待した。

 

しかし。

 

待ち受けていたのはまさに『荒治療』。妖精の呪文学担当であるフリットウィックが行ったのは、わざと二人を相席させる事だった。

 

「さぁ皆さん!今日は浮遊呪文をやりましょう!」

 

ニッコリと笑顔でいう教師に、生徒の心は(一部を除いて)ハモった。

 

「(先生……)」

 

「「「(((逆効果ですゥゥゥ!!)))」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウィンガーディアム……なんだっけ」

「ウィンガーディアム・レビオーサ、よ!さっき習ったばかりなのに、もう忘れたの?」

「う、うるさいなぁ、関係ないんだから黙ってろよ!」

 

ギャーギャーと言い争いを続ける2人。その後ろを、ゲンナリした顔で着いていくのはハリーとレオーネ。

 

授業中は何とか他の生徒が間合いに入り、対応していたのだが授業後の今でもこうして言い争いを続ける2人に、生徒は皆ウンザリしてしまったのだ。2人がどうなろうが、もうどーでもいい。兎に角疲れた。まだ1限目なのにグッタリしている。

 

しかし幼馴染であるロンを置いていけないし、ハーマイオニーを1人にする事も出来ないレオーネ達だけは、こうやって痛む頭を気遣いながらも一緒にいるのだ。そろそろ、本当に酷くなってきた。頭も、目の前の2人の言い合いも。

 

「ねぇ、__」

 

ハリーが仲裁しようと声をあげた瞬間。

 

「あーもう!なんでそんなに五月蝿いんだ!どうせ友達なんか居ないんだし、1人ぼっちで行動しろよ!僕たちについて回らないで!」

 

そのロンの一言でレオーネの頭痛は一層悪化したし、ハーマイオニーは瞳に涙を溜めて走り去っていった。レオーネにはそれを追いかける気力も体力もない。虚しく後ろ姿を見つめるだけだ。

 

「あ……」

「ハァ…ロン、女の子は絶対泣かせちゃいけないんだ」

 

「シリウスも言ってただろ?」と言うハリーに、蒼白な顔で頷くロン。記憶が正しければ、シリウスはこうも言っていた。

 

『女は、何があっても泣かせちゃいけねぇ。男のプライドに関わる事だし、何より………女ってのは、時にあり得ないほどの団結力で復讐してくるんだ………』

 

 

顔面蒼白とは、まさにこの事だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何十年か前のこと。

 

ホグワーツで1番のモテ男、もといプレイボーイ、もといクソッタレ(一部の女子と男子より。愛をこめて )とはシリウス・ブラックの事である。

 

現5年生にして、7年生をも圧倒するほどの魔法力とその顔面。女子の殆どは彼の顔に惚れているし、男だってうっかりするとときめいてしまう。意外と中身もイケメンだったりするのが、コイツの嫌なところだ。女タラシに違いはないが。

 

そんな彼は、悪戯がバレ1人だけで罰則を受けている相棒を頭の片隅に考えながらホグワーツを散策していた。授業中なので、皆教室で勉強している。

自分は頭がいいからと、いつも余裕なのがシリウスだ。

 

「(もう「地図」も殆ど完成してるけど…ここら辺とかあやふやだからな)」

 

これもひとえに「悪戯仕掛け人」の為。あの地図は何としてでも完璧にして後世に伝えていけるほどの代物にするんだ。

そんな決意を胸に、廊下の角を曲がった先にいたのは……

 

「お、フィル」

「シリウス!」

 

相棒の妹こと、フィリパ・ポッター。シリウスの女版と言っても過言ではないほど美しい容姿。シリウスと違うのは今まで男とのそう言った噂がない事だが、それでも自分の顔に自信を持っている女子生徒であった。

 

いつもは普通に仲の良い2人だが、今日は何かが違う。いつも通り笑顔で挨拶してこないフィリパに顔を傾げたシリウス。よく見ると、彼女は顔を赤くさせ眉間に皺を寄せ、明らかに怒っていた。

 

「アー…俺なんかしたか?」

「シリウス!自覚ないの?サイテー!」

「え、?」

 

困惑しているうちに、「これでもくらいなさいッ!」と、レオーネに平手打ちされたシリウスは真っ赤なもみじを付けた頬で寮に帰ることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!シリウ…ってどうしたのそれ!?」

「うっわ…凄いもみじ…」

「僕を置いて行くからこうなるんだよ!」

 

談話室に戻った瞬間、そう言われるシリウス。明らかに不機嫌な顔でドサっとソファに座る。

向かい側のソファで友人と話していたフィリパはそれに気付くと鼻で笑いながら話しかけてきた。

 

「あら。お似合いよブラック」

「……一体なんなんだよ」

 

シリウス…つまり美男子の不機嫌顔というのは迫力があって、普通ならば逃げ出すだろう。現にフィリパの友人3人は引き気味の笑顔で部屋に引っ込んだ。

しかしフィリパは全く動じず、真っ直ぐとシリウスの顔を見返す。

 

「あら。どうやらMr.ブラックは昨日後輩の可愛い女の子を号泣させた挙句酷い方法でフったらしいわね?それを全く覚えてないと?」

「は?」

「ふざけるのも大概にしなさい」

 

側から見たらとんでもない美男子と美少女が睨み合っている状況だ。しかも、暖炉の炎が反射して髪が美しく光沢をもっているのだから、何処かの神様か?、と生徒は思った。お互い凄い形相なのを除けば。

 

「まぁまぁフィリパ」

「落ち着いて話そう?チョコいる?」

 

ジェームズがフィリパの肩をポンポンと叩きながら落ち着かせ、リーマスはチョコを差し出す。

 

「そんな風にしても、私はおさまらないわ!コイツは私の可愛い後輩を傷付けたんだから!………ま、チョコに罪はないけれど」

 

怒りつつもちゃっかりチョコを貰うフィリパに、苦笑するピーター。しかし、直ぐに怒りの形相へと戻ったフィリパを見ると、ピャッと鼠の様にソファの背もたれの隠れた。

 

「兎に角、シリウス。私はもう貴方に平手打ちをしたけれど、彼女はこんなんじゃ諦めないと思うわよ?」

「彼女…?」

 

意味ありげに眉を上げ、去っていったフィリパ。

シリウスの頭には1人の少女が思い浮かんでいた。

 

「あ、もしかして昨日君に告白してたあの子の事で怒ってるのかな?」

 

リーマスが言う。

 

「確か名前は……」

 

 

 

「アストリア・ゴーント」

 

ピーターが徐につぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

フィリパの言っていたことは本当だった。

シリウスは朝から女子生徒にヒソヒソ噂話をされるし、いつも通り話しかけてこない。黄色い声もとんでこないし、クディッチの練習に来た女子は5人だけだった。いつもはその何倍も来るのに。

 

挙句、教室のドアを開ければ呪いが飛んでくるし、階段では誰かに転ばされるし、自分の昼食だけパサついたパンだけだし。

 

兎に角徹底的に「アストリア・ゴーント」という少女に嫌がらせをされた。

 

リーマス経由の情報によると、彼女は3年生の中で1番美人で、可愛くて、とびきり優秀で、人望があるまさに優等生らしい。今はもう途絶えてしまった純血のゴーント家の分家出身の生き残りらしい。かと言ってそれを鼻にかけることはなく、純血主義でもない。

 

これだけの娘が、モテないはずがない。

入学してから彼女に告白して、もれなく玉砕した男は数知れず。それはシリウスに告白してきた女性生徒にも言えることだった。そんな彼女は、つい先日シリウスに告白して酷いフラれ方をした。らしい。

 

シリウス的にはいつもの様に呼び出されて、名も知らぬ少女に告白されて、断った。それだけなのだ。特に酷いことをした覚えもない。なのに何故。いま、この様な目に遭っているのか。

 

それは一重に、アストリアのプライドが天に届くほど高かったからだ。

彼女は今までチヤホヤされてきた。

自分の可愛さ、美しさ、優秀さ。客観的な事実全てを把握して、理解している。それなのに、己をフった男を許せるだろうか?

 

答えは簡単。

 

 

許せない。

 

 

徹底的に弄り、己をフったこと後悔させたやる…!!

 

 

こうしてアストリアは、彼が謝り自分の気が済むまで様々なコテと広い顔を使い、シリウス・ブラックを弄り倒した。

シリウスは、女の恐ろしさを実際に体験したことから、スマートな紳士へと変貌を遂げたらしい。更にモテる様になり、男からは恨まれる様になったが。



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07女は強く、激しく、恐怖なり

まァつまりは、「女を怒らせるな」という、シリウスの実体験を元にしたお話だ。

 

1日中青白い顔でいるレオーネ(頭痛)とハリー(頭痛)とロン(恐怖)は、何とか授業を受けて夕食を食べに大広間で集まっていた。

机の上には色とりどりの野菜や肉等の料理が並んでいて、中央には鮮やかな黄色のカボチャ料理が大量に置かれている。

 

いつもの様にダンブルドアのユニークな挨拶が終わった瞬間、皆こぞって料理を奪い合う光景を見ながら、レオーネはボンヤリと考える。

 

「(そういえば、ハーマイオニーは何処に言ったんだろう…)」

 

結局、一度も彼女を見かけていない。ホグワーツは広いから探すこともできない。そもそも今は体調が良くないので極力動きたくないのが本音だが。

 

「(こんなに美味しい料理を…食べられないのかな…)」

 

一人ぼっちで、何処か大きい空き教室やトイレにでも居るのだろうか。

このカラフルで美味しそうなカボチャ料理たちを、食べれないのだろうか。

一年に一度しかない、ハロウィンパーティに参加できないのだろうか。

 

そんなの、悲しすぎる。

 

感情移入して泣き出しそうになったレオーネ。手首がズキズキと痛むし、涙で視界が霞む。だけど、そんな事よりも。

 

「(一人ぼっちは……悲しいよね)」

 

グッと唇を噛み締め、乱暴に涙を拭ったレオーネはこっそりとパーティを抜け出した。

頭や手首の痛みなど、気にしていられない。

 

ハーマイオニーを、探すんだ。

見つけて、こう言うんだ。

 

「私と、友達になって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レオーネは、いつだって自分に自信を持っていた。

 

だって、こんなにも可愛くて、賢くて、ジョークも言えて、文句なしの性格(だと思っている)を持っているのだから。現に今まで、いろんな人にチヤホヤされてきた。

それが嬉しくて、大好きだった。

 

でも絶対に油断はしなかった。

 

「油断すると、母親みたいになるぞ」

 

純血族が必ず行う、5歳のお披露目パーティの時。

どこかの意地の悪い同年代の純血に言われた言葉だ。

 

いつも父親のシリウスからは「母さんのフィリパは、お前とハリーと、ジェームズとリリーを身を挺して守った、勇敢な人だ」と聞かされていて、それを疑いもしなかった。

なのに、その時。

 

見たこともない、記憶にもない母親への幻想が打ち砕かれた。

 

その顔すらも覚えてない見ず知らずの子供は、慌ててやって来たハリーによって退散したが、それでも尚、耳の奥にこびりついている。

 

「お前の母親は、自分の力に酔って、油断してた。だから、死んだ」

 

ママは、私の事なんかどうでも良かったんだ。

身を挺したとしても、結局死んだ。

側に、いてくれなかった。

 

 

哀しみ、怒り、絶望、苦しみ。

 

 

負の感情が体を支配した瞬間、レオーネは決意した。「絶対に、油断しない」と。

 

いつでも教科書や本を読み漁り、それでも友人の前では余裕ぶって。

さも「当然」を装いながらも、裏では必死に努力した。

 

油断なってもってのほか。

いつ、どんな事が起きても大丈夫ないように。

私は、皆んなを悲しませない。

 

 

なのに。

それなのに。

 

「グァぅぁァァッッッ!!!」

「キャァァァァァァッッ!?!?」

 

今、目の前で。

 

大事な友達(になる予定の少女)が悲鳴をあげて逃げ回っていると言うのに、何も出来ない。

ただ、がむしゃらに走って、代わりに自分が傷を負った。それしか、出来ない。

 

 

自分が酷く、情けなくなった。

 

 

 

「___レオーネッ!」

 

 

 

でも、いつだって助けてくれるのは幼馴染のハリーだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廊下に響く大きな足音と、腐敗臭を頼りにレオーネが行き着いたのは女子トイレだった。扉は辛うじて壁についていると言っても過言ではないほどに壊れていて、大きいナニカが無理矢理入ったことが見て取れた。

 

鳴り止まない足音と悲鳴。恐らくハーマイオニーが中にいるのだろう。

 

頭痛がする頭を抑えながら、恐る恐る中に入ると___

 

「れ、レオーネッッ!!」

 

ハーマイオニーが悲鳴に近い声でレオーネを呼んだ。壊れかけのトイレの奥に蹲っている彼女は、今まさにトロールのデカい棍棒により押し潰されそうになっている。

 

「ッハーマイオニー!!!」

 

こんな時、どんな呪文を唱えればいい?

 

ハーマイオニーを助け出すべき?

それとも、トロールを倒すべき?

倒す呪文は何がいい?

 

棍棒を取り上げる?呪文は、成功する?

 

不安が体を支配する。

 

結局、足に無理矢理力を入れてハーマイオニーの代わりに棍棒で殴られることしかできなかった。

 

 

 

 

 

「レオーネッ___レオーネッ!?!?ロン、先生呼んできてくれ!!」

 

 

 

 

 

幼馴染の声を最後に、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは唐突だった。

 

 

「体調を崩した」と言って寮に帰っていたらしいスリザリン生が、酷く取り乱した様に大広間へ戻ってきて大声で叫んだのだ。

 

「と、トロールが!!トロールが、校内にいた!!!」

 

生徒の殆どが悲鳴を上げた。

魔法界でトロールの危険性はよく知られている。暴力的で凶暴で攻撃的だと。

そのパニックさを見たマグル生まれにも興奮と焦りと恐怖が伝染して、今や全員が叫びながら走り回っているカオスな状況を見たダンブルドアが一言。

 

「静まれェェッ!!!」

 

ピタリと止まった生徒たちに微笑したダンブルドアは監督生と首席の生徒に指示を出し、安全に、かつ素早い避難をさせた。

誰も、気付かない。

グリフィンドールの女子生徒2人がこの場にいないことを。

 

ただ、ハリーとロンだけが顔を青褪めて、がむしゃらに校内を走り回った時。

 

「キャァァァァァッッ!?!?れお、レオーネッ!?レオーネ!!」

 

聞こえてきたのは、悲鳴と、名前。

後は、女子トイレ目指して走っただけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハリーがドアを開けた時は、既にレオーネが頭から血を出して倒れている姿だった。

震える脚を動かして駆け寄ると、気を失いながらも血は流れ続けている幼馴染。

 

「ロン!先生を呼んできてくれ!!」

 

ロンが走っていくのを横目に、いつも持ち歩いている大きめのハンカチ(レオーネが直ぐに口元を汚す為)を取り出し、頭に巻き付ける。高度な治療呪文はまだ使えない為、マグル式の方法でどうにかしようと策を考えるハリーだが、忘れていたのだ。

 

「グァァァァァァァ!!!」

 

トロールの存在を。

 

「ハリー!!!」

 

トロールの鳴き声と共に、ハーマイオニーの声。

慌てて上を見上げると、新たに獲物を発見して棍棒を振り下ろすトロールが。

 

考えろ考えろ考えろ考えろ!!!

そこで思い出す。今日習った呪文を。

 

「ウィンガーディアム・レビオーサ!浮遊せよ!!」

 

杖を振ると、棍棒が浮く。突然のことに、鈍いトロールは反応できずにアホみたいに首を動かす。

丁度いい場所……脳天に棍棒を下ろすと、トロールは簡単にノックアウトした。

 

「これは何事ですか!!」

 

息を切らしたロンがマクゴナガルを連れてやって来たとき。

 

バタリ……と、ハリーもハーマイオニーも倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次にレオーネが目を覚ましたのは、3日後だった。

 

「、ん…………」

 

「ふわ〜、よく寝たー」と呑気に言いながら起き上がったレオーネだが、違和感に気づく。

 

まず、頭が滅茶苦茶痛い。二日酔いみたいに痛い。二日酔いなんてした事ないが。きっとこんなもんだろう。

そして、寝る(正確に言うと気絶する)前にはあったカボチャの甘ーい香りが跡形もなく消えている。何故だ。

そして此処は何処だ。寮のベッドは赤と金色をしているから、こんなに真っ白じゃない。しかも消毒液の匂いがプンプンする。

 

最後に足が痛い。と言うか、足の上に何かを乗せられているみたいな気分だ。

 

チラリと自分の下半身を見ると、そこには幼馴染2人と父親がいて、目を瞑ってグースカと寝ていた。

 

「えーっと、……パパ?ハリー?ロンー??」

 

恐る恐る声をかけながらポンポンと叩くと次々に起きる彼等。

 

「ん……え、れ、レオーネ!?起きて大丈夫なの!?怪我は?」

「あぁレオーネ!生きてるんだな?無事なんだな?」

「レオーネェェェェェ!!頭大丈夫ゥゥゥ!?!?」

 

「いやあの、ウン。一旦落ち着こう??」

 

心配そうに顔をぺたぺたと触るハリーに、涙目で抱きついてくる父親、そして失礼なことを言いながら泣きじゃくるロン。ボケ側であるレオーネがツッコんでしまう程に、カオスな状況が繰り広げられている。

 

騒ぎを聞きつけたマダムがやってくるまで、彼等は幼い子供の様にレオーネに引っ付いていた。




視点がコロコロ変わっています。あまりにも読みにくい場合は是非お知らせください。ご迷惑おかけします(>人<;)


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08出会いではなく再会。そこに疑念を人匙

 

 

 

 

「レオーネ・ブラックが医務室から出られる様になった」

 

その噂は瞬く間にホグワーツ中に広がり、必然的にトロールの事件も__ホグワーツにしては珍しく__正しい真実が流れた。

 

 

「ねぇ聞いた?トロール事件の話」

「あぁ、ハリー・ポッターとウィーズリーの末息子が解決したんだろ?」

「レオーネ・ブラックはなんにも出来ないだけじゃなくて、怪我して足手纏いになったんですって」

 

 

クスクス笑いと共に、とあるカップルの彼女の方が言う。

 

 

「反対にハリーは呪文を完璧に使ってトロールの主導権を握ったんだって。それで、トイレの損傷も最小限に抑えたとか!」

 

 

瞳をキラキラさせつつうっとりという彼女に、彼氏の方は苦笑いで「へぇ」と返す。しかし、なんだか嫌な予感がするのは気のせいだろうか。

 

 

「ほんと……かっこいいわよね、彼」

 

 

嫌な予感は大当たりだった。彼女の言葉にショックを受ける彼氏。続けて言われたその言葉は。

 

 

「ねぇ。私たち…合わないと思わない?だから別れましょうよ」

「え、………」

 

 

レオーネ・ブラックは女子、ハリー・ポッターは男子の人気が下がる一方で異性の人気度はどんどん上がってゆくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「最っ悪!!!」

 

 

大きい声が大広間に響いた。その声の主は、レオーネ。頬を膨らませながら机をバンバン叩く。

レオーネが駄々をこねている時の特徴だ。

 

こりゃ長くなるな。とハリーはやや諦めた様子で紅茶を飲み込んだ。しかしすぐに顔をしかめる。どうやらこれはレオーネのものだった様で、物凄く甘いのだ。いつもなら自分のを飲まれたと言って怒るレオーネだが、今はそんな事には構っていられない。

 

とても重要な事があるのだ。

 

 

「クディッチの試合を見逃したなんて、あり得ない!!!」

 

 

そう、無類のクディッチ好きであるレオーネは、クディッチの最初に試合を逃してしまったのだ。

 

実は、医務室でレオーネが目覚めたあと、傷は順調に回復へ進んでいたにもかかわらず、いつものように赤毛双子と悪戯をして遊んでいたら傷口が開いて出血、かなりの大事となり入院期間が大幅に増えたのだ。しかも、この調子だと治ってもクディッチの試合をみて興奮したらまた悪化すると言われて、とうとう試合を見逃してしまっていたのだ。

 

しかし本人が知ると感情が昂り傷口が開いてしまう可能性があるため、レオーネ自身には「クディッチの日程は変更になって、2ヶ月後に変わった」と嘘を吐いた。そして今、真実を知ってしまったレオーネは朝ごはんに手をつけずにひたすら怒りを露わにしていた。

 

そもそも悪いのはレオーネだ。優秀な魔女であるにも関わらず、トロールの棍棒に自ら投げ飛ばされにいくなんてアホな行動、一体彼女以外にやる人間がいるだろうか。いやいない。

それに加えて入院中の過度な運動、もとい悪戯。

 

 

 

クディッチが見れなくなるのも納得だ。

 

 

「レオーネ。怒るのはわかるけど、朝ご飯を食べないと」

「やだ!朝ごはん食べずに倒れてパパのところに帰る!」

「そんな……」

 

 

レオーネのこねる駄々は止まらない。家に開けるだとか、朝ご飯なんていらないだとか、授業がつまらないだとか、その他諸々。ハリーはどうにかせめて朝ごはんでも食べさせようとする。レオーネは元々大食いだから、少し食べないだけで直ぐお腹が空く。朝ご飯を抜くなんてそれは彼女にとっての死に値する。

 

 

「パパならいいって言ってくれるもん。私、家に帰りたいの!」

「おいおいレオーネ」

「俺たちをおいてくってか?そりゃないぜ」

 

 

そこに登場したのはフレッドとジョージ。2人とも、悲しげに言いながらレオーネの頭に手を乗せ横に首を振った。

 

 

「たしかに、グリフィンドール戦で俺たちの勇姿を見せられなかったことは口惜しい」

「だがな、次の試合で勝てば、俺たちゃ優勝だぜ?見たいと思わないか?」

 

 

「スリザリン共が悔しがる姿」と口を揃えていった双子の言葉に、レオーネは簡単におちた。「見たい!」さっきとは一転、明るく言った彼女に対して双子がニヤリと笑顔で放った。

 

 

「じゃぁまずは腹ごしらえだ!」

 

 

突然、目の前の食べ物が超豪華なディナーに見えてきた。かぼちゃジュースはあったかい豆スープに、冷たくなったチキンはロースト・ビーフに。まるでフィルターにかかったかの様に煌めいて見えるそれらを、レオーネはものの5分で完食した。

 

それを見届けたハリーやロンは授業に行くために立ち上がるが、それを双子が阻む。

 

 

「ハリー、ここはレオーネにいっちょ悪戯させてあげたほうがいい」

「え?」

「今は機嫌がいいが、また悪くなるかもしれないだろ?だから、今日1日だけだ。多めに見てやってくれ」

 

 

俺たちに任せろ、とでも言いたげにウインクをかます2人にハリーは頷く。

 

 

「わかった。任せるよ」

「オーケー任された」

 

 

そうして、レオーネは双子と共に去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒャッホォォォォ!!!」

「どいたどいたァ!」

「チビライオン様のお通りだァ!!」

 

 

ホグワーツ内にある大きい廊下を、箒をかっ飛ばしながら進む3人。あろう事かその手にはカラフルなペンキがたっぷりと詰まったバケツが抱えられていて、定期的に下にバシャバシャと落としては意地の悪い笑みを浮かべながら過ぎ去って行く。

 

それでも殆どの生徒が『多少怒った後は許す』程度で抑えられている。彼等の人望のおかげだろう。

 

暫くペンキをかけて、休憩するために床に降り立つとレオーネは頬を膨らませながら2人に向き合った。

 

 

「わたし『チビライオン』じゃないもん!」

 

 

ぷくりと膨らませた頬や、フレッドやジョージの胸にも届かない体、少し箒に乗っただけでバテてしまう体力。どこをとってもチビで幼稚で、ぐしゃぐしゃになった金褐色の髪はさながらライオンの様になっている。どこからどう見ても『チビライオン』だ。

 

レオーネはよくシリウスやジェームズにもそう呼ばれている。彼等は大人で、圧倒的な差があるからまだ許せる。だが目の前にいる2人は、少ししか歳が変わらない。背は高いけど、中身はお子ちゃま(だとレオーネは思っている)。『チビライオン』なんて言われると、普通にムカつくのだ。

 

 

「そうか? 俺にはチビなライオンにしか見えないけど」

「奇遇だな兄弟、俺もだ。しかも俺にはムキになってぷんぷん怒ってるお子ちゃまに見えるぜ?」

「あっ! 待ってよ! 話はまだ終わってないもーん!!!!」

「「追いつけるかな〜?」」

 

 

ニヤニヤと笑いながら走り去って行く背中を追う様にレオーネも走り出すが、全く追いつけない。

 

ついに諦めて立ち止まってしまった。

 

 

「ハァ……ハァ……絶対に…許さないんだから………」

「随分とお疲れの様だな」

「まあね__ッ!?!? 誰!?」

 

 

丁度廊下の周り角から出てきたのは、同じくらいの歳の生徒だった。同じくらい、と言ってもレオーネより身長はずっと高いし、どこか大人びていた。

 

質問に答えない男子生徒を見かねたレオーネは、注意深く容姿を観察する。

さらり、と流れる様に真っ直ぐな黒髪に青灰色の切長の瞳、スラリと高い背。そして……首元にある、緑と銀色のネクタイ。

 

それが視界に入った瞬間、素早く杖を取り出して半歩下がった。

 

相手は嘲る様な笑みを浮かべ(イケメンなのが鼻につく)、半歩分レオーネに近付いた。

 

 

「僕が怖いのか? ブラック」

「怖くない」

 

 

食い気味に答える。

怖くなんかない。ただ、油断しないようにしてるだけだ。

油断してはいけない。油断したら、この前みたいに怪我をして役に立てなくなるだけだ。

 

面白いものでも見つけたように、冷たい双眼がレオーネを見つめる。

負けじと睨み返すと、相手はますます面白そうに嘲った。

 

 

「なにが面白いの」

「君にはわからないさ」

「………あなた誰」

 

 

右手で握りしめた杖を少し前に出す。相手は杖を閉まっているから、何かあっても少なくとも逃げ切ることは難しくなさそうだった。それに、レオーネは学年首席候補の1人だ(もう1人はハーマイオニー)。もし同学年だったら、ほぼ確実にレオーネの方が魔法使いとしての技量は勝る。

 

 

「僕を覚えていないのか?」

「? あなたと喋った事なんて__」

 

 

彼の瞳を見ると、唐突に思い出した。

 

 

『油断すると、母親みたいになるぞ』

 

 

小さい頃に聞いたことのある冷たい声色。

 

 

『お前の母親は、自分の力に酔って、油断してた。だから、死んだ』

 

 

あの声だ。人生で初めて、自分を絶望のドン底へと引き摺り下ろした少年の声。確か名前は、

 

 

「__セオドール・ノット……?」

「覚えてたか」

 

 

これが、レオーネとセオドールの出会いだった。




タグに「セオドール・ノット」を追加しておきます。


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09クリスマス休暇

 

 

 

 

「イケメンで成績も良くて純血主義じゃない、か………」

 

 

クリスマス休暇が始まったその日、ブラック家のリビングでレオーネが呟いた。

その言葉を聞いたハリー、ロンとのチェスを一旦中止して真剣な顔で振り返る。

 

 

「それって、レオーネのタイプの人だったりする?」

「え、レオーネ好きな人いんの?」

「いないよ」

 

 

ロンが面白いものでも見つけた顔で言う。レオーネは即座に否定したが、その表情はどこか満更でもなさそうだ。

 

 

「でもまぁ、好きになるならこーいう人がいいかもね」

「イケメンで頭が良くて、純血主義じゃない……」

 

 

復唱しつつハリーは考え込む。

 

純血主義じゃない…はクリア。成績ももっと頑張ればレオーネより上を目指せるだろうか?イケメン…この顔を変えることはできないけど、せめて髪の毛をどうにかしないとな……。

 

 

「ねぇ父さん、直毛薬ある?」

「いきなりどうしたハリー」

 

 

チキンを食べていたジェームズは驚きながらも答えた。

 

 

「あるにはあるけど、その癖毛は手強いぞ。強いメンタルがないと」

「なんで?」

「失敗した時の絶望感よ」

 

 

食後のデザートを運んできたリリーが言う。曰く、「イケメンになってリリーを惚れさせよう作戦を実行した時に直毛薬瓶10本を消費しても癖毛は変わらず、2ヶ月分のお小遣いを全て使い切り膝から崩れ落ちるジェームズを、嘲笑う癖毛のせい」らしい。

 

 

「いや癖毛は喋らないでしょ」

「察してあげようよレオーネ。多分あれだ。ショックすぎて幻覚見ちゃったんだ」

「え……ジェームズ大丈夫かなぁ」

 

 

子供達のなかでヒソヒソと話し合う中、ハリーはレオーネの肩を掴みながら言った。

 

 

「兎も角、レオーネ好きな人はいないんだよね?」

「? いるよ?」

「え?」

「え?」

「ハリーとか」

「ッ!?」

 

 

さも当たり前だとでも言いたげに告げたレオーネ。ハリーは一瞬で赤面して口をパクパクさせた。ロンはそんなハリーを心配しつつも成り行きを見守る。なんだか面白い事になってきた。

 

 

「え、それってつまり__」

「あとロンとか、ハーマイオニーとか、あとパパとママ。それにリリーやジェームズも”好き”だし、キャンディくれるからダンブルドア先生も”好き”だよ!」

 

 

レオーネはlikeの意味で言っていたが、ハリーの場合loveの方。それを即座に理解してしまったハリーは目に涙を浮かべながらも微笑むと言うなんとも複雑な芸当をこなす。

 

 

「うん……だよね、知ってた」

「?」

「なんでもない」

 

 

様子のおかしいハリーに首を傾げつつも、レオーネはデザートを食べに行く。その場に残されたのは男子2人。

 

 

「アー……」

「何も言わないで」

「……」

 

 

ロンにはハリーの気持ちがわからない。でも、少しだけ、頭の隅にとある少女の顔が浮かんだ事には本人も気付けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クリスマス休暇も終わりに近づいてきたとある日、クリーチャーがレオーネ用のお菓子を用意しながら今朝の朝刊を読み上げていた。中々のニュースがあったようだ。

 

 

「『__グリンゴッツの713番金庫で起きたこの強盗事件。盗まれた物は、かの有名なニコラス・フラメルが創り上げた賢者の石であった。巧妙な手段で忍び込んだ犯人は未だ見つからず、闇払い局は多忙を極めている』…近頃ご主人様が忙しい原因はこれでしょう。どうか機嫌をなおしてくださいお嬢様」

「………」

「…はぁ……」

 

 

ソファにだらしなく寝転がるレオーネの顔は、不服そのものだった。クリスマス休暇中で、ずっとシリウスと一緒にいられると思ったのに、聖なる夜が過ぎた途端これだ。朝は早く、夜は遅い。下手したら帰ってこない日だってある。

 

寂しがり屋で甘えん坊のレオーネは、この頃ずっと機嫌を損ねていた。その事にすら気付かないシリウスに、更にムカついてくる。

 

 

「せっかく私が帰ってきたのに、パパ最低!」

「えぇ」

「髭面!」

「はい」

「親バカ!」

「ごもっとも」

「イケオジ!」

「お嬢様の仰る通りです」

 

「はは、酷いなレオーネ」

 

 

最早悪口じゃなくなってきた時、音もなくシリウスが真後ろに現れた。レオーネはパッと起き上がり、一瞬顔を明るくさせたが__直ぐに曇らせて不貞腐れた。

 

 

「やっと、娘孝行する気になったワケ?」

「すまない、レオーネ。ちょっと事件が起こって__」

「知ってるよ。賢者の石が盗まれたんでしょ?」

 

上から目線に言うと、シリウスは少し驚いた様な顔をした。レオーネはちょっと嬉しくなる。

 

「あぁ、よく知ってるな。その犯人を捕まえないといけなくて、」

「はいはい、忙しいのは知ってるから。理由もね。でも私は怒ってるんだよ」

 

ツンと顎を上に上げて言うレオーネに、シリウスは気分を害する事なく、クスリと笑って腕を広げた。

 

「寂しい思いをさせてすまない、愛する娘よ」

「………次やったら、許さないから」

 

その腕の中に入り、ギュッと抱きしめる。

 

シリウスが力いっぱい抱きしめると、レオーネは苦しそうに喚く。シリウスは益々笑い声を上げるのだった。

 

 

 

 

 

 

会えなかった分の寂しさの埋め合わせの為に、その日の夕食はいつもより豪華になった。大好きなキドニーパイも、特別に3回のおかわりを許されて、レオーネは満足そうに微笑む。

 

「パパ!ハリー呼んでもいーい?」

「今からか?うーん……」

「デザート一緒に食べたい!」

 

シリウスはコーヒーを口に含みながら時計を見た。既に7時を指しており、ポッター家でも既にデザートを食べている頃だろう。リリーが作るエヴァンズ家特製のパイは最高に美味しいのだ。

いくら幼馴染家族で親友だとしても、いきなり呼ぶのはダメだろう。それに、あちらのジェームズだってシリウスと同じように働き詰めで、きっと疲れている。

 

しかし、娘大好き星人なシリウスに、「おねがーい」と胸の前で手を組み瞳をうるうるとさせるレオーネに、それを伝えることが出来るはずない。

 

「……じゃぁ…少しだけだぞ」

「やったぁ!!」

 

パパ大好き!とシリウスの頬にキスをしたレオーネは、飲み掛けのカボチャジュースをそこに置いて、慌ただしく暖炉へ向かい、一掴みしたフルーパウダーをそこにふりかけた(勢いが良すぎて鼻に粉が入り、レオーネは咽せた)。

 

「ゴドリックの谷ポッター家!」

 

暖炉の前に跪き、頭だけを中に入れて唱えると、レオーネの司会はぐるぐると回って、気付いたらそこはポッター家の暖炉で、上から目線会話が聞こえる。

 

「__それでね、スネイプにかけた悪戯は失敗しちゃったんだ」

「アー…あれは惜しかったなぁ」

「うん、あと少しスネイプが遅く__え?」

「ハリー!こんばんは!」

「え、は、レオーネっ!?!?」

 

スネイプへの悪戯を鼻高々にジェームズに話していたハリーの耳に、聞こえるはずのない幼馴染の声が入ってきた。

驚いて斜め下を見ると、緑の炎の合間からレオーネの顔を形作った黒い木が盛り上がっていた。

 

「ハーイポッター家の皆さん!ねね、これから屋敷でデザート食べない?」

「いいね!クリーチャーのパイも久しぶりに食べたくなってきた」

「でも、突然行ってもいいのかしら」

「大丈夫だよ!パパが連れて来いって言ったんだから」

「レオーネ嘘をつくなよ!?」

 

サラリと嘘をついたレオーネの奥から、シリウスの焦った声が聞こえる。ポッター家は笑いながら暖炉へ入っていき、その日は皆で仲良くデザートを食べた。

 



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10幸せな世界_if

 

 

 

 

薄く開いた窓から、チュンチュンという雀の鳴き声が入ってくる。

それと同時に流れるクラシック。ベッドの中心で足と腕を目一杯広げて未だ目を瞑る少女の名は、レオーネ。

その名のように、まるで獅子の様に獰猛…というか明るくポジティブで何処までも獅子な少女だ。可愛らしい見た目に反して、まるで小悪魔のような性格なのは__きっと、少女の育ての母親に似たのだろう。

 

 

「グッドモーニング!起きて、私のチビライオンちゃん!」

 

ドアがバーンッ!と勢いよく開け放たれると同時に、長い黒髪を元気に揺らした女性が入ってきた。笑顔の彼女は、大声で挨拶したにもかかわらずいつまでも起きない愛娘に対し、頬を膨らませる。

 

しかしその表情も次の瞬間には学生時代の若々しい悪戯っ子のような笑みになっていた。

 

 

「こらこらぁ!!おっきなさーい!!!」

「うぎゃぁぁ!?!?」

 

思いっきりジャンプし、スヤスヤと眠るレオーネに飛びついた女性。

 

空中に、美しい金褐色と黒髪が広がった。

 

「ま、ママ!?もう!ビックリさせないでよー!」

「起きないあなたが悪いわ!今日が何の日か忘れたの?」

「勿論覚えてるよ!私の誕生日でしょ?ゆっくり寝させてよー」

 

目を擦りながら体を倒そうとしたレオーネを、慌てて揺さぶる女性。頑なに寝かせようとしない。

 

「ダメよ!誕生日とは言っても、11歳よ!特別なの!」

「トクベツぅ?」

「そう、特別!何と言ったって、ホグワーツからの手紙がくるんですから」

 

 

レオーネはがバリと起き上がった。その瞳は、女性と同じような灰色で満ちている。まさしく嵐のように荒々しく、まるで獅子のように爛々と輝いていた。

 

「そうだった!私、今日で11歳なんだ!」

 

慌ててベッドから降りて、寝巻きのままで部屋を出ようとするレオーネ。彼女は焦りながらも「起こしてくれてありがとうママ!今日も相変わらず世界一綺麗だよ!」と言う。毎朝恒例となっているこの挨拶。

 

 

「ふふ、貴方は宇宙一可愛いわ、レオーネ」

 

 

女性__フィリパ・ブラックは、美しく微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「誕生日おめでとう!レオーネにハリー!!!」」」

 

 

大きい声と共に、クラッカーがパンッと鳴った。

ハリー、と呼ばれた少年は、照れ臭そうに笑いながら隣の幼馴染に視線を移す。誕生日パーティが始まる以前から既に豪華なディナーを頬張っていたレオーネの事が、心配でたまらないのだ。

 

 

「レオーネ、気を付けてね。ポテトサラダはよく噛んで飲み込んで」

「うん、わかって__むごッ!?ウッ、く、苦しいぃぃぃ」

「れ、レオーネ!?」

「キャァ!?レオーネ!?み、水!水飲んで!早く!」

 

案の定、粘り気のあるポテトサラダを大きく口に含んで詰まらせる。

焦ったようなハリーに、顔を青くするリリー・ポッター。少年の母親である。

 

それを見て、フィリパはケラケラと笑いつつ「気を付けなさいねー」とのんびりと言った。その隣でシリウス・ブラックはリリーよりも顔を青くさせている。

2人が結婚した当初、友人の間では「シリウスが子育て出来るはずがない」と誰もが思っていた。しかし、実際はダメダメなのはフィリパの方だった。

 

彼女は彼女の兄同様、甘やかされて育った為(※シリウスも同じである)、普通の価値観と若干ズレている(※シリウスだって同じである)。その為「うちの子可愛い」「マジ天使」と褒めそやし、しかもお小遣いを好きなだけ与え、そのくせ危険な事をやろうとしても一切止めようとしなかった。危険極まりないダメ親堂々の第一位である。

 

今朝のジャンピングモーニング(?)だって、下手すれば頭を強打していたかもしれない(バカ母娘は気にしていない)。

その為、シリウスは学生時代の悪戯大好きスリル愛してる系青年とは程遠い、いつでも落ち着き妻と娘のストッパーとなれるように努力せざるを得なかった。

 

1日早いハリーと、本日バースデーガールなレオーネの誕生日会でも、常にハラハラドキドキしているのである。最近はハリーもその役割を担う羽目になっていた。

 

 

「あ!あのケーキ食べていい?」

「アレはバースデーケーキ!夕飯のあとよ」

「えー……今食べたいぃぃ!」

 

下唇を突き出し、瞳をウルウルさせ、地団駄を踏むレオーネ。もうすぐホグワーツに通う予定の11歳には、とてもじゃないが見えなかった。

 

「いいじゃないリリー。ケーキくらい」

「貴方はそうやってレオーネを甘やかす!」

「だって、11歳の特別な誕生日なのよ?」

「その言葉、今日何回聞いたと思ってるの?我儘も大概にしなさいよ」

「ほら、あのバースデーケーキ三段積みになってるのよ?苺と葡萄とチョコレート!中にはふわっふわのスポンジと生クリーム。そして甘ーい汁をギュッと濃縮させたマンゴーがたっぷりと詰まっていて、一切れ口に入れるだけでその中はフルーツとクリームのハーモニーに包まれ___」

「それもう貴方が食べたいだけよね!?」

「あはっバレちゃった?」

「もう!!」

 

 

リリーは諦めたように包丁を取り出して、杖で動かしながらケーキを切り分けていった。ブラック家が純血間で有名なケーキ専門のパティシエに依頼して、レオーネのご要望通りに作らせたものだ。

言うまでもないがこのパーティ、一応ハリーのものでもあるのだが、全て、レオーネの仰せのままのセッティングである。

 

しかしハリーの好みは大体レオーネと一致していて、文句なんて一言も言わなかった。よくできた子供である。ジェームズと血のつながりがあるとは思えない程に。

 

 

「うっわぁ、シリウス、これあの有名なパティシエのだろう?キラキラして見えるんだけど」

「多分、食用の金粉じゃないかなぁ……ゴクリ」

「リーマス、自分でオノマトペ付けちゃってるよ」

 

 

カットされたケーキに喜んで喰いつくレオーネを眺める大人が3人。

娘にここまですることにドン引きしているジェームズ、金粉に興味津々なリーマス。

 

そして、そんなリーマスをドウドウ、と抑えるピーター・ペテグリュー。

 

 

 

ピーターは、レオーネが大好きな人だった。

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!ピーター!ねぇねぇこれみて!キラッキラ!」

「うん、凄いねレオーネ。可愛いよ。だけどちょっとハリーの視線が痛いかな」



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