幻想地憶譚 《とある少年の幻想入り》 (フォーウルム)
しおりを挟む

メモリ図鑑1

こんにちは、フォーウルムです
これは小説「悪魔とメモリと幻想と」に登場するメモリの図鑑になります
もし増えたら二つに分ける予定ですし、組織ごとに分けるので今後も増やします



2022-11-11
凱のメモリ紹介のところに適合率を追加

2022-11-15
他のメモリにも適合率を追加

2022-11-24
メモリの適合率を変更



始めに

まずはこの世界のメモリの分け方についてざっくり

メモリのランクは全部で四階級

・ローランク(ブロンズ)

・ミドルランク(シルバー)

・ハイランク(ゴールド)

・エクストラ

になります

 

シルバーは基本的に霊夢達が使うメモリ

ゴールドは幹部が使います

中でも特殊なものはそれぞれで区別され、神話関係の『サーガクラス』や悪魔関係の『デビルクラス』があります

エクストラは非常に希少且つ協力なメモリで天体や災害に関係するものがここに分類されます

この後の紹介の()は細かい分類が存在する場合に付きます

 

 

 

《ヘファイストス》

ランク ハイランク(サーガ)

使用者 五十嵐凱

適合率 100%

メモリの概要

赤い本体に白のディスプレイがついており剣と槍と楯でイニシャルが描かれている

凱が作ったメモリの一本でかなりの高性能

強力すぎる故に他のメモリと違ってマキシマムが使えない

バトルスタイルは近接攻撃型

剣や槍などを使って戦うが、凱は三日月斧を好んで使用する

適合率が上昇したことでドライバーやメモリ、さらには簡素であるが小規模な空間まで作れるようになった

 

 

 

《アラストル》

ランク ミドルランク

使用者 五十嵐凱→十六夜咲夜

適合率 69%

メモリの概要

紫の本体に黒っぽいディスプレイで稲妻が三本合わさってイニシャルを描いている

凱の作ったメモリで、他とは違い変身中に使用することで『魔剣アラストル』を呼び出すことが出来る

マキシマムドライブは存在しない代わりに『バーストアクション』が存在する

決戦編にて凱が咲夜に渡し、所有者が変わっている

 

《エクリプス》

ランク エクストラ(プラネット)

使用者 五十嵐凱

適合率 95%

メモリの概要

凱が作ったメモリ

当初は黒の本体に黒のディスプレイで白くEと書かれただけのメモリで起動しなかった

しかし作中でグリフォンドーパントが家族を殺したと知って暴走した凱に応えるように起動、その場に居たドーパントを皆殺しにしている

その後、凱がトラウマを乗りきるとメモリが変化

変化後は紺と白が混ざりあったような本体に白のディスプレイ、黒い文字でEが刻まれている

変身に使えるメモリで、戦闘スタイルは妨害、支援型

相手の動きを妨害する、味方を守る防壁を作るなどの戦いが可能

 

《ルシフェル》

ランク ミドルランク

使用者 五十嵐凱

適合率 98%

メモリの概要

凱が作ったメモリ

ミドルランクであるが実際はハイランクと同等の性能

黒い本体に紺色のディスプレイ。白色の剣の持ち手から羽がついており『L』のイニシャルが描かれている

ガイアナイトの容姿は黒騎士の姿で背中から羽が生えており、適合率に応じて枚数が増える。最大8枚

戦闘スタイルは単騎殲滅に特化している

紫色の電撃と大剣を使用して戦う

適合率が上昇することでさまざまな恩恵が得られる

 

《プロミネンス》

ランク エクストラ(プラネット)

使用者 五十嵐凱

適合率 64%

メモリの概要

凱が妹紅から受け取ったメモリ

半透明な赤の本体に深紅のディスプレイ、イニシャルは炎で『P』

太陽の記憶が刻まれたメモリであり、凱との接触でこの姿になった

ガイアナイト変身時には炎をまとった騎士のような容姿になる

 

《リベリオン》

ランク ミドルランク

使用者 五十嵐凱

適合率 90%

メモリの概要

五十嵐凱の母の形見

銀の本体に白のディスプレイで『L』のイニシャルが描かれている

DMC4のリベリオンと同じ外見の剣

普段はメモリになっているが、凱の意思によって具現化する

デビルトリガーは使えないが、本家のスティンガーやラウンドフリップは使える

アラストル同様、マキシマムの代わりに『バーストアクション』が使える

 

《タブー》

ランク ミドルランク

使用者 フランドール・スカーレット

適合率 72%

メモリの概要

本体は赤でディスプレイも赤、持ち手のない両刃の剣がイニシャルとして描かれている

フランが最初に使ったメモリ

戦闘スタイルは高機動火力型

エネルギーの弾を飛ばしながら戦う、剣での近接戦も可能

 

 

《エンジェル》

ランク ハイランク

使用者 フランドール・スカーレット

適合率 81%

メモリの概要

金色のメモリに天使が羽を広げている様子でAのイニシャルが描かれている

凱がフランの為に作ったメモリで、かなりの高性能

変身時の姿では顔に宝石がついておりその色で戦い方が変化するテクニック型

光を使って光線や剣を作ることも可能

さらに治癒の光を出すことが出来、味方を回復させることも出来るという優秀なメモリ

(メモリの案は「メモ男」さんの提供)

 

 

 

《セイクリッド》

ランク ミドルランク

使用者 博麗霊夢

適合率 93%

メモリの概要

白の本体に赤いディスプレイ、お払い棒とお札でイニシャルが描かれている

霊夢が最初から持っていたメモリ

ランクはミドルでありながら使用者にあわせて性能が上昇する為にハイランクとも渡り合える性能を発揮

戦闘スタイルは単騎バランス型

基本的に個人戦が得意なガイアナイトでお払い棒やお札型の光弾を発射して戦う

 

 

 

《スパークリング》

ランク ミドルランク

使用者 博麗霊夢

適合率 89%

メモリの概要

青色のメモリに泡でSの文字が描かれている

ガイアナイトの容姿は青いヒーローの姿である

テクニカル系の戦闘スタイルで泡で衝撃を消したり、泡の中に氷結系のガスなどを入れて攻撃できる。

ガイアナイト本体の攻撃力というよりかは速度が上がっており速度で撹乱しつつ手数で圧倒する。

(メモ男さんのアイディア)

 

 

《シューティングスター》

ランク ミドルランク

使用者 霧雨魔理沙

適合率 78%

メモリの概要

黒い本体に白のディスプレイ、黄色で描かれた流れ星が尾を引きそれがイニシャルを型どる

魔理沙のメモリ

ミドルランクの中でも高火力が出せるが、それ相応の技術が必要

戦闘は高火力遠距離型

星形の弾幕やレーザーを使って戦う

 

 

 

《クロック》

ランク ミドルランク

使用者 十六夜咲夜

適合率 72%

メモリの概要

青の本体に銀のディスプレイ、紺色で懐中時計が描かれCのイニシャルを型どる

咲夜のメモリ

時間を操る咲夜の能力に完全対応できる唯一のメモリ

戦闘スタイルは連撃近接型

背中には長針の形の剣が一本、右左の手にはそれぞれ秒針と短針の形の剣が握られている

 

 

 

 

 

 




以上が、現在の凱達が正式に使えるメモリです
今後、事件が解決するにつれて増えていきます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メモリ図鑑2

今回はメモリ図鑑の二作目になります
紹介するのは2章の『敵でも…』~『治安維持隊』のとこまでのメモリとそれ以前のマジェストの紹介になります


《ティターニア》

ランク ブロンズランク

使用者 大妖精

メモリの概要

緑色の本体とディスプレイに羽を広げた妖精がイニシャルを象る

ドーパントのメモリであるため、ランクはブロンズである

容姿は植物を纏ったような羽が二枚に木の幹の形に似た装甲を持つ女剣士のような見た目

戦闘スタイルは二刀流の連撃型

植物の力を扱える分、火属性に弱い

 

 

《フロスト》

ランク ミドルランク(変化)

使用者 チルノ

メモリの概要

青の本体と水色のディスプレイ、氷の結晶で『F』のイニシャルを象る

DMCのフロストがモデル

容姿は氷の騎士、背中に氷のマントを羽織っている

右腕には氷の塊がついており、攻撃防御に使える

戦闘時の環境に応じて出力が変わり、好調なときはハイランクと同等だが不調な時はローランク程度になる

 

 

 

こっからさきはマジェストの紹介

 

 

 

 

《ナイトメア》

ランク 不明

所持者 凱

メモリの概要

白の本体に灰色のディスプレイ。ドロドロとしたなにかが『N』のイニシャルを象っているように見える

マジェストとして冥界の白玉楼にて凱達に立ちふさがった

ドーパントのメモリではなくガイアナイトのメモリであるが、ランクは不明である

見た目と設定はDMC1のナイトメアと同様である

凱達に倒された後、凱によって新しく生まれ変わった

現在は凱のペットのような立ち位置にいる

好物は咲夜の手作りの菓子と凱の手料理

 

 

《グリモワール》

ランク ミドルランク

所持者 パチュリー

メモリの概要

紫色の本体に白いディスプレイ。七枚の魔導書が『G』を象る

マジェストとして紅魔館、大図書館にて魔理沙、フランと戦闘した

容姿は羊の頭に竜の体で、背面には七つの石板が浮いている

石板はそれぞれ火、水、木、金、土、日、月の属性に対応しているが、それはパチュリーの魔力を媒体にしていたためである

その後は凱に調整され、パチュリーがメモリを所持している

 

 

 

 

《デスティニー》

ランク 不明

所持者 凱

メモリの概要

本体は赤であるが、ディスプレイは損傷しているため不明

さらにランクまで不明であるがミドルランク以上と推測される

マジェストの容姿は巨大な女性の石像を六本の腕が円形状に囲んでおり、内2本の腕には竜の装飾が施されている

体の周りには光の球が浮かんでおりそれを飛ばして攻撃したり、それからレーザーを発射して戦う

メモリは撃破時に破損したため、現在は凱が修理中である

 

 

 

《スケアクロウ》

ランク 無し

所有者 無し

概要

メモリではなく作られた存在

見た目や性能はDMC4と同一である

下級悪魔でマジェストの中でも低レベルに分類される

一体一体は雑魚だが、一度に30体以上同時に出現するため面倒

なお、本編では蹂躙されて終わった模様

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

intelligence file

報告書
これは組織《Olympus》の幹部メンバー全員の情報をまとめたものである
調査の結果、何人かは死亡しており一部情報に誤りがあるものと推測される
表記する順番は組織内に存在した格付けの順位順になっている
ガイアナイトの情報に関しては使用武器と戦闘スタイルのみ記載するものとする
なお、この報告書は新規情報が得られ次第、随時更新する


追記
本来、メンバーではないが重要であると判断したため『五十嵐凱』の素性と家族、彼の『元いた世界』についての情報も掲載する





File1 《ゼウス》について

本名 鳴神恭介(なるかみきょうすけ)

年齢 20

階級 幹部一位

概要

喧嘩っ早く好戦的。荒っぽい性格ではあるが義理堅い

元々は学生であったが15の時にゼウスメモリと出会い、戦いに身を投じる事となる。幼馴染みである闇川莉菜(File4に記載)と付き合っていた

ガイアナイトについて

使用武器は雷の槍。振るう、投げる、突き刺すなどの動作で纏っている電気を放射する。槍がなくとも格闘で戦うことができ、その際は拳や足に雷を纏う。戦闘スタイルは完全に近接特化。

 

 

File2《ポセイドン》について

本名 不明

年齢 不明

階級 幹部二位(空席)

概要

調査の時点で既に死亡していたため情報が不足。現在、メモリは亡元蔭久が所有している模様

ガイアナイトについて

調査の時点で既に死亡していたため情報が不足

 

 

 

File3 《ハーデス》について

本名 亡元蔭久(なきもとかげひさ)

年齢 36

階級 幹部三位

概要

落ち着いていて優しく、時に厳しい

元々は銀行員だったが20の時にハーデスに出会い、自ら戦いに参戦する。組織のなかでは最古参になる

既婚者であり、その女性も組織メンバーであるが、詳細は不明

ガイアナイトについて

二又の槍を扱う。しかし実際に近接で使わず、戦闘スタイルも中・遠距離型

槍の柄で地面を叩き、音を発生させる。これを聞いた対象は深い眠りに誘われる

槍からはレーザーが放てる。威力はかなり高く、射程も長い

 

 

File4《ヘラ》について

本名 闇川莉菜(やみかわりな)

年齢 19

階級 幹部四位

概要

明るい性格で、はっちゃけている。

元学生であり、14の時にヘラメモリを手に入れ組織に参加。同時期に付き合っていた鳴神恭介も加入している。敵組織の幹部《ゴリアテ》に敗北、その後死亡した

ガイアナイトについて

闇の波動と魔弾を駆使して戦う中距離型のガイアナイト

基本的に他のガイアナイトと協力することが多いが、理由は本気で戦うと制御が効かないかららしい。

 

 

 

File5《アテナ》

本名 伊都都花(いとみやか)

年齢 22

階級 幹部五位

概要

礼儀正しく、優しい。芯の通っている女性

お嬢様学校を卒業しているため、作法が美しい

卒業と同時にアテナのメモリを手に入れる。入手場所は不明だが、現実世界とは異なる次元に迷い込み、そこで入手したと思われる

ガイアナイトについて

光の槍と大楯を扱う。盾はガイアナイトの思いどおりに扱うことができ周りから光の防壁を展開し、広範囲を守ることができる。槍も火力が高く、突きで放たれる光線は岩盤をも貫く。戦闘スタイルは防御&超火力のタンク型

 

 

File6《ヘルメス》について

本名 風宮涼(かぜみやりょう)

年齢 23

階級 幹部六位

概要

飄々として掴み所がないが常識はある

元々は外交官を志望する青年だったが、ヘルメスメモリを手に入れ組織に加入

敵組織の幹部《エキドナ》に敗北し死亡した

ガイアナイトについて

脚部についているブースターで高速移動し、蹴りを主体とした近接攻撃を得意とするアタッカー型

そのスピードはトライアルを凌駕するほどで幹部一の速さを誇っていた

 

 

File7《アレス》について

本名 殺雨無縫(やさめむほう)

年齢 23

階級 幹部七位

概要

非常に喧嘩っ早い。17歳の時に親しかった友人をいじめていた生徒三人を殺害している

本当は優しい性格であるが感情が高まりすぎると暴走する。敵幹部の《ニーズヘッグ》と戦闘し相討ちになる。その際にニーズヘッグのガイアメモリを破壊している模様。

ガイアナイトについて

巨大なメイスを用いた近接戦が主体。メイスを地面に叩きつけ、衝撃波を放つこともできる

 

 

 

 

File8《アフロディーテ》について

本名 Mila・Grace・Smith(ミラ・グレース・スミス)

年齢 22

階級 幹部八位

優しく、愛情に満ち溢れた人物。何をするに関しても『愛』が最優先である。経歴は不明であるが早くとも19の時にメモリを手にしている

敵幹部の《グリフォン》に殺害された

ガイアナイトについて

光の杖を使った補助効果と遠距離を使う遠距離型

ヘラ同様他のガイアナイトと共闘することが多かった

 

 

File9《アポロン》について

本名 射山時雨(いやま しぐれ)

年齢 17

階級 幹部九位

概要

面倒見が良く、大人びている

15の時にメモリを手に入れそのまま組織へ。五月雨の双子の兄であり妹を非常に大切に思っている

敵幹部の《ファントム》と交戦し、死亡した

ガイアナイトについて

竪琴を使い戦う。弦を鳴らすことで竪琴が赤く輝き上空より炎の矢を降らせる

射程範囲と威力が非常に高いため、単独で戦うことが多い

 

 

File10《アルテミス》について

本名 射山五月雨(いやまさみだれ)

年齢 17

階級 幹部十位

概要

元気がよく明るい性格

15の時に兄と共に組織へ加入。その際に《アルテミス》メモリを入手した

身体能力が高く、スポーツはあらかたなんでも出来た模様

ガイアナイトについて

左手に弓を持ち背中にある矢筒から矢を取り出し構え、放つ。戦闘スタイルは中距離であるが持ち前の身体能力を駆使した近接戦闘もこなす

 

 

File11《ヘスティア》について

本名 尾釜祭(おがままつり)

年齢 22

階級 幹部十一位

概要

気が弱くおどおどしていることが多い。しかし、本気になると誰よりも意思が固くなる

20歳で目盛りに出会い組織に加入。階級を決める際に「戦いたくない」という理由で欠場したため最下位である

ガイアナイトについて

熱反射を応用する戦法が主軸の中遠両用型。空中にブロックを出現させ、担いでいる銃から発せられる超高熱熱線を反射させ戦う

熱戦の射程、及びブロックには限界が存在しないため、本気で戦闘したさいの実力は未知数

 

 

 

 

 

 

 

 

File12 五十嵐凱の家族について

 

 

五十嵐宏也(いがらしこうや)

年齢 40

種族 人間

概要

凱の義父であり明那の父親

会社に勤めていたエリートサラリーマンであったが、グリフォンドーパントによって惨殺される

 

五十嵐明那(いがらしあきな)

年齢 21

種族 人間

概要

凱の義姉で宏也の娘。大学生で家の近くの医療系の大学に通っていたがファントムドーパントが引き起こした火災で命を落とす

 

五十嵐奈々美

年齢 不明

種族 魔族

概要

本名 フィオナ・フェルグバルト

当時の魔界の統率者ゼルビス・フェルグバルトの次女

父親の政治に嫌気がさし現実世界(人間界)へ。そこで五十嵐宏也と結婚し凱を授かる

夫の宏也と夫の連れ子の明那を立て続けに亡くし、凱を出産してから15年後にゼルビスに殺害される。

フィオナにはもう一人子供がいるようだが消息は不明

追加事項であるが既にゼルビスは無くなっており、現在はゼルビスの長女の息子が魔界を統治している模様

 

File13現実世界について

凱が元いた世界には空想の世界の話ではあるものの『ガイアメモリ』と『魔界の悪魔』についてゲームやテレビ番組などが存在している

詳細は未だ不明だが、人間の想いがこちらの世界へ影響しているものと思われる

 

 

 

 

 

 

File0 五十嵐凱について

 

年齢 18

種族 人間と魔族のハーフ

概要

人間の宏也と魔族の奈々美の間に生まれた

外見は人間と変わりないが、身体能力が異常に高い

元々は明るく優しい性格で多くの人に慕われていた

しかし、紅魔館奪還戦にてグリフォンドーパントと接触、侵蝕を司る《エクリプス》に呑まれる

その後、安定はしたものの、性格は暗くなってしまったが、最近になって以前の明るさを取り戻しつつある

デビルブリンガーに適合したことから、魔族の血の方が濃いと思われる

 

《ルシフェル》

凱が使っているメモリの一本で、適合率に応じて容姿と性能が変化する

20% メモリが使用可能になる。羽は2枚

40% 身体能力の向上。羽は4枚

60% 自身以外を対象に自白効果を与えることが可能になる。羽が6枚

80% 精神干渉や汚染などに対しての完全耐性が付与される。羽は8枚

 

 

 

 

 

 

 

 






目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メモリ図鑑3

今回は3ということで、盤城とその部下たちと幼馴染
幹部メンバーの紹介をします
おまけで幹部の前にメガ・スケアクロウとクラーケンも入れておきます


 

 

 

下っ端紹介

 

《メガ・スケアクロウ》

ランク ミドルランク

使用者 栗虫 剛毅(クリムシ ゴウキ)

メモリの概要

鎌と布袋で『M』のイニシャル

モデルはDMC4のメガ・スケアクロウで戦い方も一緒

そこまで強く無い上に、時間停止が使える咲夜と戦ったためにあっけなく敗北した

 

 

《クラーケン》

ランク ミドルランク

使用者 蛸積 克 (タコツミ マサル)

メモリの概要

タコのあしで『K』のイニシャル

神話に出てくる蛸の怪物、クラーケンの記憶のメモリ

触手叩きつけや、墨攻撃などがあったが、適合率が上がった凱にこてんぱんにされた

 

 

 

敵幹部

 

《ネクロス》 

ランク ゴールドランク

使用者 影霊衣 絛(ヨタマイ ジョウ)

メモリの概要

骨、亡霊、棺桶で『N』のイニシャル

対象者の記憶に存在する死者に変身できる

変装能力は高く、変装元の動作や口調になるため、潜入任務などで使えれば優秀

本作では下種の手に渡ってしまったためそんな活躍はなく、相手の隙をつくために用いられた

最終的にメモリは《アポロン》のマキシマムを受けて消滅した

 

 

 

《エギドナ》

ランク ゴールドランク(デビル)

使用者 蛇見 梨々香(ジャミ リリカ)

メモリの概要

蛇が巻き付いているような絵で『E』のイニシャル

特殊メモリであるため、ドーパントではなくマジェストのような怪物に変身する

モデルはDMC4のエキドナ

しかし、キメラシードは産めず、攻撃も物理だけという幹部の中でも最弱メモリ

霊夢と文にあっけなく倒された

 

《グリフォン》

ランク ゴールドランク(デビル)

使用者 烏間 孝治郎(カラスマ コウジロウ)

メモリの概要

鋭い鉤爪で『G』のイニシャル

特殊メモリ

見た目はDMC1のグリフォン

爪と嘴、雷撃で戦う

テクニカルの部類に入るメモリで凱も面倒がる性能をしていた

 

 

《ファントム》

ランク ゴールドランク(デビル)

使用者 蜘手 影二(クモデ エイジ)

メモリの概要

溶岩と蜘蛛の足で『F』のイニシャル

特殊メモリ

容姿はDMC1のファントム

硬い殻に覆われており防御力は高いが、移動速度は遅い

弱点が存在し、そこを突かれると一撃で死ぬ

本編では盤城に弱点を看破され撃退された

 

 

《ゴリアテ》 

ランク ゴールドランク(デビル)

使用者 四月一日 展巨(ワタヌキ ノブナオ)

メモリの概要

牙をもつ悪魔の横顔で『G』のイニシャル

特殊メモリ

容姿はDMC5のゴリアテ

巨大な腕を振り回す攻撃が主体で脳筋

腹部についている口で周りのものを吸い込み、火球にして吐き出す

 

 

盤城と部下と幼馴染み

 

 

《チェス》

ランク ゴールドランク

使用者 盤城 飛鳥(バンジョウ アスカ)

 

このメモリはメモ男さんのアイディアのため、その情報をここに書く

ただし、ナイトのみ変更点があるため、修正されている

 

 

メモリの見た目:銀色のメモリにキングの駒でCの文字

ガイアナイトの容姿:王冠を被った王のような姿

概要・能力

配下を呼び出す。(配下については下に書く)配下の能力を得る。ゾーンドーパントのように9×9の升目をワープさせられる。基本配下任せなガイアナイトだが意外にも近接戦闘能力が高い。

備考

相性が良い使用者は天才、場面を見通す事ができる人。

キングのコマがないがキングのコマはガイアナイト自身の事を指している

 

 

 

配下について

 

コマの名前:ポーン

容姿:コマンダードーパントの仮面兵士+マスカレイドドーパント

呼び出せる数:無限

概要・能力

能力は特になし。だがウルミー、刺股やマスケット銃等多彩な武器を使う。

マスカレイドドーパントと同じくらいの戦闘力

備考

味方の損害を恐れずに来るため下手な人間の兵士よりも怖い

 

コマの名前:ナイト

容姿:黒色の鎧を持つ騎士

呼び出せる数:6体

概要・能力

能力は骨の馬を呼び出すことと斬撃を出すこと。

戦闘力はかなり高く、基本的に陣形を組んで戦う

指示はチェスが出すこともできるが、基本的に自分達で考えて臨機応変に闘う

 

コマの名前:ルーク

容姿:要塞化された塔

呼び出せる数:1体

概要・能力

ポーンを大量に召喚できる。砲撃や火炎放射攻撃が基本の攻撃。緊急時には変身して戦闘できる。(イメージ

ONE PIECEのピーカのような感じ)

備考

巨大決戦兵器ってロマンあるよね

 

コマの名前:ビショップ

容姿:赤い十字架を持ち黒い鋼に覆われた法王

呼び出せる数:1体

概要・能力

味方を癒す。過剰回復による細胞破壊。レーザー攻撃。バリアも張れる。

備考

ヒーラー枠だけど戦闘できるタイプだね

 

コマの名前:クイーン

容姿:灰色の錫杖を持つ大鎧

呼び出せる数:1体

概要・能力

ポーンを大量に召喚。灰色の消えない炎を出す。赤黒い氷を操る。雷雲を操る。闇のフィールドを作り継続ダメージを与える。

備考

魔法使い系みたいな感じの所がある。回復できればヤバイほどの強さになる…

 

 

 

 

 

《リーパー》

ランク ミドルランク

使用者 ジン

メモリの概要

大きな鎌を逆さにした形で『L』のイニシャル

巨大なサイスを持つガイアナイトに変身する

これと言って特殊能力はないが、身体能力の向上度が異常

背中には腕が四本格納されており、二本で一本のサイスを扱い乱撃が可能

小型の斬撃も打てるがショボい

 

 

 

《レクイエム》

ランク ミドルランク

使用者 ファス

メモリの概要

手を取り合う男女の絵で『R』のイニシャル

右腕に男の彫像、左腕に女の彫像、本体は中性的な見た目のガイアナイトに変身する

重低音、高音を使い分けて戦う

音を使うため室内では自分の音が反響して自滅するが、水中戦でも戦える

 

 

 

《テンペスト》

ランク ミドルランク

使用者 モナ

メモリの概要

竜巻と稲妻の絵で『T』のイニシャル

背中に龍のような翼があり、全身は鱗におおわれたような姿のガイアナイトに変身する

風と雷を扱う戦い方が得意で、アクロバティックな動きも可能

モナはブレイクダンスのような動きで戦っている

格闘も出来るが、リーパーほどではない

 

 

《パラディン》

ランク ミドルランク

使用者 レクス

メモリの概要

剣と盾で『P』のイニシャル

変身すると騎士になる

大剣を使った近接戦が得意

かなり大きめの剣を振るえるため、筋力は高い

光属性の攻撃や防御も可能

空は飛べない

 

 

 

《クイーンビー》

ランク ミドルランク

使用者 ジーザ

メモリの概要

蜂の巣で『Q』のイニシャル

女王蜂のメモリ

変身すると背中に蜂の羽が生える

武器は両手に持つ二本のレイピア

鋭い突きの連撃で相手を圧倒する

機動性も高いが風の影響を受けやすい



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

メモリ図鑑4

今回は護と姫乃のメモリの紹介です
護のメモリはルオンさんに頂いたのをすこし書き換えて載せています


《閻魔刀》

ランク ミドルランク

使用者 総塚 護

メモリの概要

護が蔵で見つけた刀、閻魔刀がメモリになった物。

ダークブルーのメモリで、刀でイニシャルのE描いている。

普段から腰にルツしているのでメモリの状態ではなかなか見れない。

次元や空間、物体の繋がりなどを『切断』できる

マキシマムは使えないがバーストアクションが存在する

 

《パーティクル》

ランク ハイランク

使用者 総塚 護

メモリの概要

護が蔵で見つけたメモリの1つ。

青いメモリで、粒子の粒でイニシャルのPが描かれている。

粒子についてデータが入っている。

変身すると、青と白の騎士のような姿になり、粒子を生み出し増築する事が可能で、自身の体や触れた物を粒子化させる事ができる。

また、粒子で物質などを形成したり、ビームにしての攻撃や、粒子の壁を形成しての防御が可能。

戦闘スタイルは、近距離・中距離・遠距離できるオールマイティ。

武器は剣と銃になるガンソードを2本使用する。

(イメージトレーニングはダブルオークアンタのGNソードV)

 

《ベオウルフ》

ランク ミドルランク

使用者 総塚 護

メモリの概要

蔵で見つけたメモリの1つ。

金色と茶色のメモリで、イニシャルが黒と銀で描かれているB。

魔界の獣『ベオウルフ』のデータが入っている。

変身に使用するメモリで、金と茶色、黒と銀の、胸部に狼の顔を模した鎧を纏う。

戦闘スタイルは主に拳と蹴りで戦う近距離感を得意としており、エネルギー弾やエネルギー砲を放つ事もできる。

また、腕からクローを展開して攻撃したり、高速で移動できる。

 

《サジタリウス》

ランク:ハイランク

使用者 総塚 護

メモリの概要

蔵で見つけたメモリの1つ。

金と赤のメモリで、イニシャルが白で描かれたS。

射手座のデータが入っている。

変身に使用するメモリで、金と赤、白の鎧を纏い金色の翼を装着される。

戦闘スタイルは弓矢での攻撃と、翼から分離した羽を剣として扱う戦闘スタイル。

翼がある為、飛行が可能。

 

《ドラゴン》

ランク エクストラランク

使用者 総塚 護

メモリの概要

紅魔館で封印状態で発見された。

金色のメモリで、虹色のディスプレイにイニシャルのDがドラゴンの顔で描かれている。

ドラゴンのデータが入っている。

変身に使用するメモリで、両肩にドラゴンの顔を模した白と黒の鎧を纏い、虹色のドラゴンの翼がつく。

戦闘スタイルは、【ドラゴンソード】と呼ばれる大剣と、炎・水・風・土・雷・氷の6つと、癒しや光線を放つ光、あらゆる物を飲み込み吸収する闇、あらゆる物を無にしたり無効化する無の、9つのエレメントを使った戦闘をする。

翼がある為、飛行が可能で、尻尾もある為、相手を尻尾で叩きつける事ができる。

 

 

《パンドラ》

ランク ミドルランク

使用者 姫乃 禍月

メモリの概要

黒のメモリに大量の悪霊で『P』の文字

魔界兵器パンドラの情報が込められたメモリ。

DMC同様、さまざまな武器形態に変形させて戦う。

姫乃の自宅の物置にあったのを17歳の彼女が発見。

遠距離から近距離まで幅広く使える

姫乃はミサイルランチャーモードを愛用している

 

 

《バトルスーツ》

ランク ミドルランク

使用者 姫乃 禍月

メモリの概要

姫乃が戦闘で使うメモリ

身体保護と筋力強化が主な役割

ぴっちりとしたスーツなのであまり姫乃は気に入ってはいない

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

ドライバー・補助スロット図鑑

どうも、フォーウルムです
今回はドライバーとスロットの紹介になります


 

ドライバー紹介

 

 

・ガイアナイトドライバー

概要

初期から登場したドライバー

変身用のスロットとマキシマムスロットがあるのみで、レイズはできない

凱や霊夢、《Olympus》幹部などが使っていた

 

・ガイアナイトドライバーX2(エクスツー)

概要

ガイアナイトドライバーを凱がアレンジ、改造したドライバー

スロットが追加されたためレイズが可能になった

当初は凱とフランの二名だけが所持していたが《へファイストス》メモリの適合率上昇によって量産が可能になった

現在ではほとんどの主要キャラが所持している

 

・ガイアナイトドライバーX3(エクススリー)

概要

風見幽香専用のドライバー

彼女の膨大な力に耐えるために凱が作った特別品

X2よりも出力が格段に上がっている

普通の人間や妖怪では使用できない

 

 

・プロトガイアナイトドライバー

概要

射命丸文が所持していたドライバー

試作型であるために出力が他より高い分、反動も大きい

ストマック・ドーパントとの戦いで《オーバーヒート》メモリの反動に耐えられず破壊された

 

・ガイアナイトドライバーS

概要

正式名 ガイアナイトドライバースラスター

五十嵐凱が射命丸文のために作ったドライバー

《オーバーヒート》メモリにも対応しており、以前よりも長時間《オーバーヒート》を使用できるようになった

 

・GNDG

概要

正式名はガイアナイトドライバー・ガントレット

右腕、または左腕に装着する新しいドライバーで紫が幻想郷に来る前の姫乃に渡したドライバー

性能はX2とさほど変わらないが、マキシマムの際にメモリを挿し直す手間がなく、発動させやすいというメリットがある

現在の所持者は姫乃のみ

 

 

・スタイリッシュドライバー

概要

正式名 ガイアナイトドライバースタイル

元になったのはDMC4のダンテのスタイルチェンジから

変身用のスロット、レイズスロット、マキシマムスロットの他に円形のパーツが装着されたドライバー

円形パーツには『S』『G』『R』『T』の文字が描かれており、変身時にそのパーツを回転させることで戦い方を切り替える事ができる

 ・『S(ソードマスター)』

 近接特化のスタイル

 切り替え時に赤いオーラを纏う

 筋力や動体視力が上昇する

 ・『G(ガンスリンガー)』

 遠距離特化のスタイル

 切り替え時に青いオーラを纏う

 銃や光線などの威力が上昇する

 ・『R(ロイヤルガード)』

 防御特化のスタイル

 切り替え時に緑色のオーラを纏う

 防御力が上昇し、相手からの攻撃を反射できるようになる

 『T(トリックスター)』

 機動性特化のスタイル

 ジャンプ力や移動速度が上昇する

 相手の背後をとったり素早い動きで翻弄する戦い方を得意とする

 

・ガイアドライバー

概要

敵組織の《Devil Castle》の幹部が使っていたドライバー

レイズスロットはなく、ドーパントのメモリを使用し変身する

 

 

 

補助メモリスロット

 

 

・レイズスロット

概要

X2以降の世代のドライバーに装着されているスロット

他のメモリを挿すことでそのメモリの能力を上乗せできる

 

・マキシマムスロット

概要

ガイアドライバー以外のドライバーに装着されているスロット

メモリを挿すことでそのメモリの必殺技である『マキシマムドライブ』または『バーストアクション』が使用できる

一部のメモリには安全装置(セーフティ)が存在する

 

・カスタムスロット

概要

凱や幽香などが所持しているメモリスロットで、武器になるメモリを挿す事が可能なスロット

腕に装着して使用する

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

組織紹介


今回は組織まとめです

主人公陣営の組織なのでぜひ見てください


 

 

 

 

組織紹介

 

《Follener Dont Laugh》

 

凱がリーダーの組織である。名前は彼の経営する店から取られたものである。

メンバーは以下の通り

 

五十嵐凱・姫乃禍月・博麗霊夢・霧雨魔理沙

十六夜咲夜・フランドールスカーレット

魂魄妖夢・鈴仙 優曇華院 イナバ

音川ナル・三首猟介

 

総塚護・東風谷早苗・風見幽香

アリス マーガトロイド

パチュリー ノーレッジ

 

三首猟介と総塚護の間が空いているのは理由があり、それは『制服の有無』である

五十嵐凱~三首猟介までは組織としての活動の際に自身の制服を着用するのだが、総塚護以降のメンバーは制服を着ていない。ただし、護本人の制服は存在する。

 

制服は黒を基調とし、各々のイメージカラーでアレンジが施されている。

例外として、五十嵐凱の制服は黒統一、総塚護は紺と青をメインにしている

 

 

 

 

《Olympus》

 

鳴神恭介を筆頭にした10人の幹部とそれ以外の構成員で成る組織である。

幹部はそれぞれ『オリンポス神話』に登場するオリンポス12神のメモリを所持している。2人欠けているのは五十嵐凱が《ヘファイストスメモリ》を所持している為と《ポセイドンメモリ》の所持者がいないためである。

幹部は制服を着ており、それぞれのメモリのカラーに合わせて作られている。

現在の幹部は5人で後に補充予定である。

 

 

 

 

 

《幻想郷治安維持隊》

 

幻想郷で発生するメモリ事件の対策と里の安全を守るために結成された組織であるが、大半の隊員は妖怪の山の天狗や河童である。

主なメンバーは射命丸文、飯綱丸龍、犬走椛、姫海堂はたてである。

はたて以外のメンバーには専用メモリが存在する。はたてに無い理由は彼女の主な役割はオペレーターである為である。

 

隊員は正式装備として専用の『ガイアナイトツール』と《ジェットメモリ》が支給される。『ガイアナイトツール』は腰に巻いて使用するもので、簡単に扱えるというメリットがあるものの、レイズ出来ない、出力が低い、マキシマムが使えない等のデメリットも存在する。

メモリが使えない、または使いたくない者には『ADW(後述)』が支給される。

地底支部も存在するが、そちらの方の指揮は地霊殿の主である古明地さとりが執っており、支給されるメモリも《ジェットメモリ》から《ウォーリアーメモリ》に変更されている。

 

 

 

 

 

《Devil castle》

 

ギルバ フェルグバルトを最高司令官とする魔界の自治組織。主なメンバーはギルバ、リーナ、盤城飛鳥、業蓮寺刹攞、ジン、モナ、ファス、ルクス、ジーナである。制服は存在するが、日常的な着用は義務付けられてはいない。しかし組織のほぼ全員が「着心地がいい」と言って着用している。

組織の構成員にはメモリは支給され無いが、代わりに『ADA』を支給される。このADAに関しては、別の資料に詳細を記載する。

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

武装紹介

今回は武器の紹介です

今までのメモリ図鑑に載せてない魔装や、組織の使う武器を少々

そしてひとつ前の紹介に出てた《ADA》についても紹介します




2023-1-22
《ADA 92HC》を追加


 

 

魔剣《スパーダ》

 

リーナ・フェルグバルトの剣。本作ではフォースエッジからの変化ではなくデフォルトの状態で存在しており、武器形態は『大剣』『槍』『サイス』の他に魔力を矢の形に加工し射出する『弓』形態も存在する。

特殊効果として『完全防御に対する貫通効果』を持つ。盾や結界を貫通する効果ではあるが、一定の条件下で無効化されるものを貫通はできない。

 

 

魔装《キングケルベロス》

 

三首猟介の武器。通常形態では腕の太さ程の鉄のリングにキーホルダーのように鉄の棒が3本ぶら下がっている。使用中に三叉棍とロングポールに変形させることができる。追加効果で火、氷、雷の属性攻撃を行うことができる。

 

 

魔装《ネヴァン》

 

音川ナルの武器。紫色のギターの姿をしている。演奏をするかのようにかき鳴らすことで雷を飛ばすことが可能。

変形させることでサイスになり、相手を薙ぎ倒す近接戦も可能になる。

 

 

 

 

 

《ADA》について

正式名は対ドーパント用装備(Anti-Dopant-Arms)

メモリが使えなくてもドーパントと戦えるように作られた武器。基本的に使用するのは治安維持隊とDevilCastleの隊員である。なお、変身用ではなく武器の強化用としてメモリを使うものもある。

 

 

名称:《ADA 10AK》

使用メモリ:無し

概要

隊員に一人一本渡されておりマルチツールとして利用できるナイフ。刃渡り5cmでドライバー、鋸、鋏、鑢、缶切り、ペンチ、ピンセット、フォーク、スプーン、が付いている。材質は錆びにくいステンレス鋼製。

 

 

名称:《ADA 16SMG》

使用メモリ:無し

概要

Devil Castleの一般兵に支給される武器。マガジンは30発装填の小型マガジン。

使用弾薬はドーパント用の9mm×20弾。取り回しが良く反動が少ない分、火力はそこそこ。

 

 

名称:《ADA 760SMG》

使用メモリ:無し

概要

他のハンドガンと同じ対ドーパント10mm弾を使用する短機関銃。装弾数は50発。その特徴的な見た目から『パイプのおもちゃ』や『配管工の武器』と呼ばれている。製作が容易で大量に安価で製作ができるとして経理部では好まれている。軽量で取り回しやすい一方弾詰まりを起こしやすいという問題も持っている。

 

 

名称:《ADA 30AR》

使用メモリ:無し

概要

平均的に使える汎用武器。11.63×42.5mmの専用弾薬を使用する。カスタムパーツが多く、隊員の中でも人気の武器。

威力もそこそこ高く、射程も長い。本体が少し大きい為扱いが取り回しが少し悪い。

 

名称:《ADA 37SG》

使用メモリ:無し

概要

Devil Castleの一般兵に支給される武器。装弾数は、4+1(チューブ型弾倉だと7+1)のショットガン。

使用弾薬は、12ゲージ、16ゲージ、20ゲージ、28ゲージである。弾詰まりが少なく、取り回しがよく、反動もほぼなく近接戦や狭いところでの戦闘に向いているが、射程距離が短い事が弱点である。

 

 

名称:《ADA 11HG》

使用メモリ:無し

概要

扱いやすい拳銃。使用弾薬は対ドーパント用の10mm弾で装弾数は9発。隊員のほぼ全員が所持を義務付けられている。

火力が低い、射程が短いなどの点があるが使いやすい。

 

 

名称:《ADA 22HG》

使用メモリ:無し

概要

ドーパント用10mm弾を使用する拳銃。装弾数は12発だが三点バーストである。

武器の反動を抑える為にトリガーの他に追加のグリップが存在する。

 

 

名称:《ADA 92HC》

使用メモリ:無し

概要

特殊弾頭を使用するハンドキャノン。威力は非常に高く、拳銃系では一二を争う火力を誇る。その代わりに装弾数は9発と少なめ。他の武器と違い非正規品であるため入手は困難。

 

名称:《ADA 96HG》

使用メモリ:無し

概要

ドーパント用10mm弾を使用する拳銃。装弾数は14発だが専用マガジンを使用することで20発にすることができる。

重心が前にあるため正確な射撃をしやすく狙撃兵に好まれて使用されている。分解清掃がしやすい。オプションとしてストックが付いている。欠点としては加熱しやすいことである。

 

 

名称:《ADA 71GR》

使用メモリ:無し

概要

1分隊に必ず二個以上の所持が義務付けられている擲弾筒(グレネードランチャー)

使用弾薬は、50mmの専用砲弾や手榴弾を使用する。

壁を利用して真横に撃つという運用方法がある。

 

 

名称:《ADA 052RR》

使用メモリ:無し

概要

特別部隊所属、なおかつ専用の資格を持った隊員にのみ扱いを許された兵器。使用するのは対魔製生物榴弾と特殊加工型榴弾の2つ。外の世界のRPGをベースにしているため反動が凄まじい。

 

 

名称:《ADA 20SR》

使用メモリ:無し

概要

使用弾薬は20×105mm弾を使用する。一人の歩兵が運用し硬い敵に対し有効打を与えることを目標として開発された。

装弾数は、10発。最大射程は、約1.8kmで垂直の鋼板を500Mで35mm、1km地点で垂直の鋼板17mmの貫徹が可能になっている。発火弾、ワイヤー弾、煙幕弾が使用可能になっている。

 

 

名称:《ADA 91R》

使用メモリ:無し

概要

11.63×42.5mm弾を使用する歩兵銃、反動が少なく射程距離も約2km弱あるためスコープを取り付けて狙撃銃として運用されることがある。ボルトアクションライフルであるため速射性能に欠けるとして後継の半自動小銃が研究されている。オプションとして銃剣がある。

 

 

名称:《ADA 57MG》

使用メモリ:無し

概要

使用弾薬は元々13×64mmだったが統合整備計画により《ADA 30AR》と同じ11.63×42.5mm弾薬に変わっている。

毎分925発である。射程距離は約1000Mで使いやすく車載機関銃に使われたりしている。

 

 

名称:《ADA 155H》

使用メモリ:無し

使用弾薬は155mm榴弾。軟目標や敵の殲滅に使用される榴弾砲。最低装填手、砲手、観測手の三人で運用できる。牽引は《ADA LAV4》で行ったりする。基本的な運用方法は多数の砲で弾幕を張るやり方。

 

 

名称:《ADA 238AAA》

使用メモリ:無し

概要

飛行するドーパントに対抗するべく開発中だった2cm機関砲の設計を一部変更して製造された対空機関砲。二人の人員で運ぶことができ即展開することができる。最大射程は2km。仰角は-10°から+90°まで、使用弾薬は、20×138mm弾。装弾数は、50発。俯仰手・測距手・装填手・弾薬運搬手の計四人で運用できる。これを四連装にしたタイプが基地に置かれたりしている。

 

 

名称:《ADA 20SR》

使用メモリ:無し

概要

使用弾薬は20×105mm弾を使用する。一人の歩兵が運用し硬い敵に対し有効打を与えることを目標として開発された。

装弾数は、10発。最大射程は、約1.8kmで垂直の鋼板を500Mで35mm、1km地点で垂直の鋼板17mmの貫徹が可能になっている。発火弾、ワイヤー弾、煙幕弾が使用可能になっている。

 

 

 

名称:《ADA LAV4》

使用メモリ:無し

概要

全長4.4M、全幅2.04M、全高1.85M、重量4.5tの乗員数四名(車体上部ハッチを開け、後部座席の間に機銃手を座らせると五名)

速度は最高約100kmの行動距離700km

武装は《ADA 57MG》のターレット式が一機上部に搭載されているのみである。

 

 

名称:《ADA 33T》

使用メモリ:無し

概要

全長3.17m、全幅1.42m、全高1.5m、重量3.34tの二人で運用する豆戦車。時速38kmの行動距離380km。

ひっくり返っても二人でもとに戻せるくらい軽い。武装は《ADA 57MG》二挺か《ADA 20SR》一挺だが《ADA 238AAA》や《ADA 47C》の搭載計画があるがまだ軽い《ADA 238AAA》は可能だが《ADA 47C》は新規設計した車体じゃないと不可能なため後継機の開発が進んでいる。

 

 

 

名称:《ADA 75C》

使用メモリ:《マグマ》《アイスエイジ》《サイクロン》《エクスプロージョン》《インビジブル》等

概要

75×350mmの通常弾と特殊弾を使用弾薬とするコネクタの付いた加農砲。砲手・観測手・装填手の三人で運用できる。

特殊弾を使用するときはコネクタにメモリを挿すことでそのメモリの能力を得る。(インビジブルだと砲弾の透明化、マグマだと弾着地点にマグマを撒き散らす等)飛距離は約8570M。俯仰角は-11°から+18°で発射速度は15発/分(最大)である。

ちなみに運ぶのに《ADA LAV4》で行うのがほとんどである。

 

 

名称:《ADA-P 84ER》

使用メモリ:《エナジー》

概要

メモリの能力を使用した武器の先駆けとして製造された狙撃銃。

最大射程距離約5.2kmとしているがこれはメモリの出力が通常である場合であり出力を最大にすると6.1kmとなっている。使用弾は20×102mm弾で装弾数は5発。

50発撃つと冷却(3分)が必要となる。10発ごとにコイルの入れ替えが必要であり、

反動が強くしっかり固定して撃たないと肩が外れたりする。

 

 

名称:《ADA 721NR》

使用メモリ:《ボム》

概要

パイルバンカーを射出するニードルランチャー。通常時の威力はコンクリートを砕く程度。メモリを挿すことで火力が上がる。この型は《ボム》に対応しており、火力と射程距離上昇が主な効果である。

装弾数は一発で使用すると再装填に時間がかかるため必殺の一撃として用いられる。扱いが非常に厳しい為、特殊部隊にのみ許可されている。

 

 

名称:《ADA 564SR》

使用メモリ:《サイレント》

概要

組織内では別名『サイレントナイト』と呼ばれる、音を立てずに狙撃をすることに特化させた狙撃銃。専用メモリである《サイレント》を使用することにより、銃の半径2メートル以内の音は完全に消え、発砲音もしない消音機能を備えている。使用弾薬は338ラプアマグナム弾で圧倒的な火力を誇る。

スコープは通常版とナイトビジョンの2種類装備されており使い分けが可能である。

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

エクストラメモリ図鑑





どうも、フォーウルムです。
大変遅くなりました!
今回はエクストラメモリの図鑑になります。
今後も追加予定ですので、お楽しみに!










 

 

 

 

 

メモリ名:ヴォイドメモリ

所有者:五十嵐凱

概要

五十嵐凱が記憶の遺跡で手に入れたメモリ。『虚空』の記憶をもっている。

性格は好戦的で自分よりも強そうなものに興味を示す。

凱との戦闘で敗れ彼の実力を認めた。虚空を自在に作り出すことができ、他の次元と繋げたり合わせたりすることができる。非戦闘時には光の珠のような姿になる。

凱に憑依して動くことも可能で生身の状態でも自身の能力を使用して大きな鎌を出現させる。憑依中は目が深緑色になり、緑色の光が体の付近の漂っている。

 

虚空神ヴォイド・マジェステルダム

領域区別:『神域』

概要

ヴォイドメモリが解放変異によって変身した姿。巨大な光の珠に鉤爪のついた腕が4本備わっている。腕の長さは各50メートルほど。鉤爪で空間を引っ掻くと亀裂が走り裂け目になったり斬撃波となる。

鉤爪からは光線を放つことができ、触れた物体は消滅し神域の一部となる。

域の特徴は『無限に広がる空間』である。どこまで行っても終わりがなく、どこが上でどこが下かも判別できない。付与効果は存在しない。

 

 

 

メモリ名:エクリプスメモリ

所有者:五十嵐凱

概要

五十嵐凱が創ったメモリ。当初はただの外見だけのメモリで中に記憶は入っていなかった。が、凱の殺意と破壊衝動に感応し、使用可能になった。

エクリプスにも自我はあるが言葉は喋れない。凱に非常によく懐いているが、他に対しては滅多に懐かない。非戦闘時は黒いスライムのような姿になる。ぷるぷるしていてさわり心地が良いが、下手にさわると戦闘体勢にはいる。

 

殲命滅エクリプス・マジェステルダム

領域区別:『滅域』

概要

エクリプスメモリが解放変異によって変身する。黒いドロドロした塊で宙に浮いていることが多い。域の外でもこの姿を保つことができる。敵対象に容赦なく攻撃を行う為、被害が拡大しやすい。

エクリプスは他と違い滅域を展開する。滅域は他の次元に引き込むのではなく、その世界に域を発生させるため、離れたところから見ると黒いドームのように見える。

滅域に入った場合、大抵の生物はそれだけで体が崩壊する、人格に異常をきたす、発狂する等の症状が起こる。尚、この域のみ例外で別次元ではなく現世にドームのように展開され、エクリプス本体が纏うことができ移動が可能である。

 

 

 

メモリ名:プロミネンスメモリ

所有者:五十嵐凱

概要

迷いの竹林の道に落ちていたのを藤原妹紅が拾い、五十嵐凱に渡したことによって目覚めたメモリ。灼熱の炎の記憶が内包されておりメモリ本体もガラスのような透き通る素材で作られている。自我が存在し、凱に憑依したり遺跡では人の姿になって行動することもできる。憑依状態では目の色と髪の色が紅に変化し変身しなくてもプロミネンスメモリの力を行使することが可能。人型の状態の容姿は焦茶色に紅い髪と瞳をもつ青年である。

 

炎陽神プロミネンス・マジェステルダム

領域区別:『神域』

概要

プロミネンスメモリの解放変異状態の姿。全身から炎を噴き出す紅の騎士の姿である。基本的に自分か他の域の内部でしかこの姿にはなれない。

攻撃方法は灼熱の武器を使った近接戦と火属性の遠距離攻撃である。遠距離よりも近距離を好む。

域の特徴は炎の闘技場のような場所で付与効果は『火、熱の強化』『水、氷の弱体化』である。

 

 

 

メモリ名:ドラゴンメモリ

所有者:総塚護

概要

紅魔館の図書室に突如として出現し、その後護の元に渡る。龍の記憶が内包されておりさまざまな属性の攻撃を行うことができる。

自我はあるが喋ることは出来ない。

 

真龍聖ドラゴン・マジェステルダム

領域区別:『聖域』

ドラゴンメモリの変異後の姿。四枚の羽に鋭い爪、長い尾をもつ龍。ブレス攻撃も可能で中距離戦もこなせる。

域の特徴は風の吹き荒れる山の頂上で付与効果は『各属性の攻撃強化』であるが、他にもまだ未確認の効果が存在する。

 

 

 

メモリ名:ファラオメモリ

所有者:総塚護

概要

護が記憶の遺跡の試練で手に入れたメモリ。古の王の記憶が内包されている。自我が存在するメモリで人間の姿で自由に動くことも可能。姿は女でスタイルがいい。テンションの落差が激しく、性別のことを言うとめちゃくちゃに落ち込む。

 

黄金神ファラオ・マジェステルダム 

領域区別:『神域』

ファラオメモリの変異後の姿。普段の姿のファラオに金の装飾がなされ、手や足に包帯のようなものが巻かれる。自身で戦うことは少なく、召喚したミイラの大群(ミイラ・マジェスト)やスフィンクス像(スフィンクス・マジェスト)を従えて戦う。スフィンクスの中に入って操作することも可能。たまに巨大な砂の竜巻を発生させる。

域の特徴は砂漠で付与効果は『砂による移動速度低下』『温度の急変化』である。

 

 

 

メモリ名:ウォーズメモリ

所有者:姫乃禍月

概要

姫乃が記憶の遺跡の試練で手に入れたメモリ。戦争の記憶が内包されている。自我が存在し外見は黒目黒髪の青年。この姿でも戦闘が行なえる。戦闘狂で自分が楽しめる戦いであれば嬉々として向かう。そのため後先考えずに戦闘をしてしまう。それゆえに他のエクストラ達からは『馬鹿の子』としてみられている。

 

破戦神ウォーズ・マジェステルダム

領域区別:『神域』

ウォーズメモリの変異後(本気)の姿。全長300Mを超える巨大な空中戦艦。ミサイル、バルカン砲、波動砲などさまざまな武装が搭載されている。

 

 

 

メモリ名:エレメントメモリ

所有者:博麗霊夢

概要

霊夢が遺跡で手に入れたメモリ。要素の記憶を内包する。自我が存在しており、当初は暗く不気味な雰囲気の女性であったが霊夢の所有となってからは物静かな少女になっている。容姿は12〜3歳の見た目で霊夢と同じような紅白の服を着ている。現在は博麗神社に住んでおり、気ままに生活している。

 

要総神エレメント・マジェステルダム

領域区別:『神域』

エレメントメモリの変異後の姿。成人女性の見た目。または少女の見た目をしている。首には触手のようなスカーフを巻いている。先端には鋭い刃が備わっており、これを駆使して戦う。エレメント本人も短剣を2本装備している。空中に足場を作る、小型の隕石を降らせるなどもできるがエネルギーの消費が激しいため、あまり使わない。

域については不明。

 

 

 

メモリ名:カラミティメモリ

所有者:風見幽香

概要

魔界に出現し、その後幽香のものになった。厄災の記憶を内包しているが、《厄災》の範囲が広く、災害の記憶も含む。自我が存在する。外見は存在せず幽香とはテレパシーで会話することもあればマジェステルダムの姿でコミュニケーションをとることもある。魔界に現れた当初は不完全であり、戦いの最中に完全体に成長した。内面は幼く、しゃべる際には子供のような口調になる。幽香に懐いており、何があっても幽香の指示を優先する。

 

厄災神カラミティ・マジェステルダム 

領域区別:『神域』

カラミティメモリの変異後の姿。人の両手足を地につけ、さらに背中部分から腕が2本生えている。顔の部分には巨大な眼がついている。背中の腕は伸縮自在で腕から追加で複数の腕を伸ばして戦うことも可能。突進や凪払い、ハイジャンプからの叩きつけ等、アグレッシブな戦いを主にする。尚、この状態で言葉を発すると複数の声が重なったように聞こえる。

域は海岸、火山、平原、住宅街など様々であるが付与効果は無し。カラミティのみ域の地形に合わせた自然災害を攻撃手段として用いることが出来る。

 

 

 

メモリ名:パストメモリ

所有者:稗田阿求

概要

阿求が所持しているメモリ。稗田邸の近くに落ちていたところを拾われた。過去の記憶を内包している。エクストラランクには珍しい自我が存在しないメモリ。機械的な対応しかせず、普段は稗田邸に結界を張っておりドーパントやマジェスト等の襲撃から守っている。

 

過去聖パスト・マジェステルダム

領域区別:『聖域』

パストメモリの変異後の姿。砂時計に天使、悪魔、昆虫、機械の羽が二枚ずつ対になるように生えている。一度見た、あるいは経験した出来事や能力を再現することが可能で見たものよりも経験したことの方が再現度が高い。

域の付与効果は無し。

 

メモリ名:ファッソルメモリ

所有者:十六夜咲夜

概要

記憶の遺跡で咲夜が手に入れたメモリ。化石の記憶を内包する。プテラノドンやティラノサウルス等、絶滅した生物の能力や特性を使用することが出来る。自我が存在する。声は老女のような声で雰囲気はやはり長い年月を過ごした人間の喋り方をする。骨と言われるとキレる。

 

畜年聖ファッソル・マジェステルダム

領域区別:『聖域』

ファッソルメモリの変異後の姿。さまざまな骨が合体したような見た目をしている。恐竜のような姿と騎士の姿を使い分けることが出来る。性能が形態毎で若干異なるが、どちらも防御力が高い。

域は洞窟のような場所で付与効果は『時間経過による行動制限』で特性は『迷宮化』である。

 

メモリ名:ワードメモリ

所有者:パチュリー・ノーレッジ

概要

パチュリーが記憶の遺跡で手に入れたメモリ。言語の記憶が内包されている。自我を持ち、自立して生活することも可能。初老のの男性の姿である。パチュリーとの仲は良好で、現在は紅魔館の大図書館で本を読みふけっている。

 

言霊聖ワード・マジェステルダム

領域区別:『聖域』

ワードの変異後の姿。いくつもの本棚が合体し空中要塞のような姿になる。あらゆる属性での攻撃が可能。さらにワードが能力発動中に発するとその言葉通りのことが発生する。

域は巨大な図書館で付与効果は『属性遠距離攻撃の強化』である。

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五十嵐凱について

今回は五十嵐凱についての紹介です。

内容は一緒で場所を移動させただけです。


五十嵐凱

 

性別 男

年齢 18

種族 人間/魔族(3:7)

初登場 本編第1話

本作の主人公。

 

・容姿

灰色の髪と瞳を持った青年。

 

・現実世界では

性格は明るく、相手をからかったりする事が多い

成績優秀で学年順位は常にトップだった。両親は居なかったが生活費は親の遺産でやりくりし、学費は奨学金が出たので困ることはなかった。魔族との混血であるため非常に身体能力が高い。

家族を立て続けに失っており、他人には見せないような負の側面を持っている。その経験から自身の身を守るために武術を学んだ。

自分が気になったことは徹底的に極める主義であるため、家事や勉学の知識は勿論、武器や科学技術などに関しても詳しい。

何でもかんでも自分でやらないと気が済まない質で、日常的にマルチタスクをしている。

高校時代に親友である総塚護と殴り合いの喧嘩をしたことがある。

 

 

・幻想入り後について

幻想郷では『Fallener Don't Laugh』(以降FDL)という何でも屋をやっている。外装は酒屋のようで仕事としてはメモリの事件や他の仕事、飯綱丸やさとりといった人物からの依頼をこなす。

その建物の地下にはアンダー・パレスというダンジョンが存在しており、そこで獲れる鉱石や素材を売ったりもしている。

 

・メモリについて

使用しているメモリはどれも強力である。《ルシフェル》《ヘファイストス》を普段使いしており、エクストラメモリも《ヴォイド》《エクリプス》《プロミネンス》の3本を所持している。

《エクリプス》、《ルシフェル》、《ヘファイストス》は凱が創ったメモリである。

 

・ドライバーについて

使用していたドライバーは『ガイアナイトドライバー』『ガイアナイトドライバーX2』を使っていた。現在は『スタイリッシュドライバー』という自作のドライバーを使っている。スタイリッシュドライバーは『ソードマスター』『ガンスリンガー』『トリックスター』『ロイヤルガード』の四つの戦闘スタイルを切り替えて戦う。

凱は普段はソードマスターを使用している。

 

・人間関係について

姫乃、護は親友で音川と三首は先輩と後輩でこの四人とは幼馴染みである(全員が凱の『負の側面』を知っている。)。

幻想郷での関係は広く、既に凱のことはほぼ全ての有名妖怪や実力者達に知られている。姫乃や霊夢、咲夜達から好意を寄せられ、《共有物》のような扱いを受けている(凱は最初は納得していなかったが、皆が仲良くするならと了承というか諦めに近い形で許可している。)。幻想郷で負の側面を知っているのはフランドール、八雲紫、稗田阿求で、うっすらと感じ取っているのはレミリア、霊夢、上白沢慧音である。

以前は幻想郷治安維持隊(以降『維持隊』)との仲は良くなかったが、ストマック・ドーパント(本編第9~12話)以降は改善している。

他の組織だと《Olympus》、魔界の《Devil castle》とも交流がある。

 

《Devil castle》との交流について

魔界の自治組織《Devil castle》(以降DC)の最高指揮者のギルバ・フェルグバルトとは従兄弟である。最初は殺し合いをした二人だが、現在は非常に良好な関係である。よくフォルトゥナ城に招かれて酒を飲み交わしたりしている。

 

・能力について

《色を見る程度の能力》

凱が視認した相手のメモリの適正を『色』として識別できる。元から凱が持っていた能力ではあるが、発現したのはヘファイストスメモリ獲得以降である。

《メモリを創る程度の能力》

上記の能力で識別した適正のメモリを創る能力。八雲紫によって与えられた能力である。初期では創りたいメモリに応じてランクの低いメモリを消費しなければなかったが、現在は必要としてはいない。凱の精神状況にリンクしており、荒れていた時には凱の負の側面である『殺戮衝動の塊』を具現化させたエクリプスメモリを創りだした。

 

・関係が深い人物

《総塚護》

凱の幼馴染にして親友。学生時代から競い合うことが多く、周りからも仲が良いと思われていた。故に高校時代の殴り合いの喧嘩をしたことは当時、学校で持ち切りの話題となった。

 

《姫乃禍月》

凱の幼馴染み。小学校から付き合いがある。容姿の事を周りから否定されていた時期に、初めて家族以外の存在である凱に「きれい」と言われて以来彼に好意を寄せている。

 

《霜月雪華》

別世界の幻想郷を生きる青年。とある理由からこちらの世界に来て以降、凱とは親友でありライバルのような関係である。凱とは違い真面目であるために事あるごとに凱にいじられているが互いに実力は認め合っている。

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

0章
第0話 プロローグ/神の意を威を借る少年


「先生!助けて!先生!」
「黙れガキ!大人しくしやがれ!」
私の目の前には異様な見た目の化け物がいる
この幻想郷ではさまざまな種族がいるが、こんな奴は最近までいなかった
「く、その子を離せ!」
「黙れ!こいつを殺すぞ!」
なんとかしてあの子を助けなきゃいけないが
私にはどうしようもない

誰か…


助けてくれ…!


 

 

 

 

 

「ふんふふーん」

俺の名前は五十嵐 凱(いがらし がい)

現在18歳の神話とデビルメイクライと仮面ライダーWが好きな厨二病男だ!

今日は探しに探していたスペシャルエディションとWの漫画の最新刊を手に入れて機嫌がいい

「さて、帰ろうかなー」

そう言って住み慣れた街を歩いていた

 

が、

 

気がついたら見知らぬ路地にいた

 

しかも買ったものが無い

 

 

「あ?!一体どうなってやがる?!」

 

その時だった

『幻想郷を、救ってくれないかしら?』

「え?誰?」

目の前に金髪の女性がいた

『私は八雲紫』

「八雲…紫?」

ぱっと見普通じゃなさそうだ

それに

「幻想郷って?」

『私たちが住んでいる所です。今あの世界は危機に瀕しています』

「それを、救ってほしい、と?」

『ええ、お願いしたいの』

「わかった」

『そう、詳細は歩きながら話すわ』

 

紫という女性の話は俄には信じられなかった

さまざまな思いや妖怪たちが住む世界

それが幻想郷

 

なにそれ楽しそう!

『あの世界は変わってしまった』

「というと?」

『他の世界から入ってきたものに侵食されてるの。彼らは自分達をドーパントと呼んでいたわ』

「ドーパント?!」

『知っているのね?』

「まあ、少しくらいは」

『じゃあ、これを渡すわ』

彼女の手にはベルトが

見た事ないけど、もしかして

『これは『ガイアナイトドライバー』よ』

「ガ、ガイアナイト?」

うん、聞いた事ないね

『これを使って変身しなさい。ドーパントになられたら困るから』

「は、はぁ。って待ってくれ」

『何?』

「俺、メモリないんだけど…」

『そうだったわね、それは能力で作りなさい』

「能力?」

『ええ、あなたにあげるわ。活用してちょうだいね?』

「あ、はい」

『場所はこの先よ。お願いね』

「ああ、まかせろ!」

最初に作ったメモリは神話の神にした

武器欲しいしね

 

 

 

 

 

「ここか?」

よくわからない道を歩いて出た先には『寺子屋』という場所だった

にしても、何をすれば…

「く、その子を離せ!」

「黙れ!こいつを殺すぞ!」

 

まじか

場所は寺子屋の中か!

俺は急いで中に入る

 

 

そこにいたのは

数人の子供を庇う女性と

子供を人質にとる『ドーパント』

「あ?なんだテメェ!」

「ヴァイオレンス、暴力を子供に振るうのか」

暴力のメモリ、ヴァイオレンスメモリの怪物がいた

いきなりにしては面倒だった

「テメェ!俺のメモリを知ってやがるな!」

「うるせえ!」

そう言ってドーパントをぶん殴り子供を助ける

「うがぁ!」

「な、何を…?それに君は?」

怒るドーパントを尻目に俺はベルトを装着する

「俺か?俺は五十嵐凱」

手のメモリを起動させる

 

「ただの人間さ!」

 

《ヘファイストス》

ガチャンガチャン

キイイィィィン

 

「テメエ!ガイアナイトか!」

「らしいな、まあこれでぶっ倒してやるよ!」

 

 

 

「くそ!くそぉ!!」

「あきらめな!」

寺子屋の外に吹き飛ばし叩きのめす

「とどめだ!」

手に三日月斧を出現させて横に一閃する

「ぎゃあああああああああ!!!!!」

ヴァイオレンスドーパントは消えてその場には気絶した男とヴァイオレンスのドーパントメモリが

『ふう、ひとまず終わりかな?」

変身を解きながら一息つく

メモリは回収したし、あとは…

「止まりなさい」

「?!」

後ろから声をかけられる

そこにいたのは

俺と同じベルトを持つ

1人の少女だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
この作品は私が描いているもう一つの作品とは異なります
これを描いたきっかけは他の方のを読んで影響されたからです
極力パクリにならないように頑張りますので温かい目でみてください
次回以降からDMC要素も入れます
ダンテやネロは出ません
基本魔装と悪魔だけの予定です

それではまた次回!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1話 抗う者達/敵の首を力に

前回のあらすじ
八雲紫の手引きで幻想入りした凱
もらったガイアナイツドライバーと能力で作ったへファイストメモリを駆使して
寺子屋にいたヴァイオレンスドーパントを撃破!
一息つく凱の前に、1人の少女が舞い降りる


『止まりなさい』

「?!」

急な声に振り返ると1人の少女がいた

俺と同じベルトを使用している

「そのメモリはあんたの?」

「いや、俺のじゃこいつは使えんよ」

そう言ってベルトを見せる

「ガイアナイトドライバー!あんたこっち側だったの?!」

「多分な」

「そう、疑って悪かったわ」

変身を解きながら話す少女

その姿は大和撫子のような巫女だった

腋が異様に空いているのはさておいて

「初めまして、私は博麗霊夢よ」

「俺は五十嵐凱だ。よろしく」

「早速で悪いんだけど、ついてきてくれるかしら?」

「どこに?」

「私たちの拠点」

「他にもいるのか」

「ええ。それで、いいかしら?」

「ああ、構わないぞ」

 

 

少年少女移動中…

 

「ここよ」

「神社か?」

「ええ、ここは博麗神社よ」

少し大きめの神社

なるほど、普通の神j…

おい待て

なんで境内にアラストルがブッ刺さってんだ

「霊夢、あの剣は?」

「やめときなさい、抜こうとしても抜けないから」

「あ、抜けた」

「でしょ?なかなかに深く刺さってて……抜けたぁ?!」

その瞬間、アラストルが眩い光に包まれてメモリになった

「ガイア…メモリよね?」

「らしい…な」

 

閑話休題

 

「帰ったわよー」

霊夢の声に反応したのは

「おかえりなんだぜー」

「お疲れ!霊夢!」

「お疲れ様、紅茶でも飲む?」

上から順に魔法使い、少女、メイドの順だ

「霊夢、誰なんだぜ?そいつ」

「彼は凱、私たちの味方よ」

「「「!!」」」

三人がびっくりした様子でこちらを見る

「初めまして、五十嵐凱だ。」

「私は霧雨魔理沙だ。よろしくな!」

「私はフランドール・スカーレットよ。気軽にフランって呼んでね!」

「十六夜咲夜です。以後お見知りおきを」

自己紹介すんだし聞きたいこと聞くか

「味方はこれだけ?」

「ええ、残念ながらね」

「どんな状況だよ」

「えーっとね」

フランから聞いた話で状況をまとめる

・数ヶ月前からメモリが出回る

・強力な者たちにメモリが取り憑き暴走する

・村の人間や妖怪にメモリが渡ってしまい手が回らない

・他にも仲間になりそうなのはいるが連絡が取れていない

 

 

 

うん

地獄かな?

「って事なの」

「よく4人だけでやってこれたな」

「まあね、でもあんたも協力してくれるんでしょ?」

「もちろん。そのために来たんだからな」

「助かるんだぜ」

「そういえば、貴方の能力って?」

「俺か?俺の能力は『メモリを生み出す程度の能力』だ」

「「「「え?」」」」

「そうだよ」

「すごい!」

「条件とかあるの?」

「ああ、ドーパントのメモリ一本使って新しいメモリを作るんだ」

「なるほど、なかなかに便利ね」

「今はなんのメモリがあるの?」

「ヘファイストスとアラストルだな

ヴァイオレンスはアラストル作った時に無くなりました」

「じゃあ、これも使えるのかしら?」

そう言って咲夜が取り出したのは一本のメモリ

それは量産しまくれることで原作にも出てきたコックローチのメモリだった

「やって見るか」

しかし、何のメモリを作ろうか

あ、あれ作るか

パキ パキ

パキパキパキパキ

メモリが割れるような音と共に変わっていく

そして、コックローチがあったところには一本の別のメモリがあった

「これが、新しいメモリ?」

「何のメモリなの?」

「イニシャルは……E?」

「ああ、俺の新しいメモリ、その名も『エクリプス』だ」

「エクリプス…確か天体の『蝕』に関係してるんだっけ?」

「よく知ってるな。まあ、真価は実戦でな」

「よし、仲間も増えたし。前に進むわよ」

霊夢が意気込む

「目標は紅魔館よ。レミリア達を助けるわ」

「「「おー!」」」

「おー!(誰?レミリアって?)」

とりあえず付いていこう

 

 

 

そんなこんなで始まった幻想郷を救う戦い

最初に向かうは紅魔館

そこに待ち受ける試練とは?

 

 

 

続く!

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
連続投稿になりました
次回から戦闘が始まります!
アンケートもあるので是非!

それではまた次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一章 紅魔館編
第2話 霧の湖/氷を纏う優しき魔物


前回のあらすじ
霊夢に連れてこられた場所は愽麗神社
そこで魔理沙、フラン、咲夜と合流し、境内に刺さっていたDMCのアラストルを入手!
現在の幻想郷の状況を知った凱は、霊夢達と共に紅魔館へ向かう!


「なあ、霊夢」

「何よ」

「ここどこ?」

凱達は霧の湖に来ていた

「ここを突っ切るほうが早いのよ」

「霧でなんも見えねえ。ってかメモリで飛べば?」

「あまり目立たないほうがいいんだぜ」

「それもそうか」

そう言いながら前に進みかけた時

「あ?……おい?!」

「え…」

 

《へファイストス》

ガキンッ

 

目の前から巨大な氷柱が飛んできた

もう少し反応が遅れていたら霊夢達に当たっていただろう

「一体なんなのよ!」

「わからん、敵か?!」

その答えは

 

俺たちの目の前に降り立った

 

 

 

「ドーパント?!」

「……アラストルの次はお前か!『フロスト』!」

 

そこにいたのは『フロスト』

DMCにいた氷の魔物だ

「くそ、やるか?」

「できれば戦いたくは…」

その時だった

 

 

「こらー!なにしてんだ!」

「へ?」

目の前に現れたのはちっこい女の子

背中には六個の氷柱が浮いている

「チ、チルノ?!」

「ん?あ!霊夢だ!」

 

少女等+少年+魔物移動中

 

 

「そっか、チルノは無事だったのね」

「そうだぞ!アタイはサイキョーだからな!」

「んでこいつ(フロスト)はなんでいるんだ?」

「こいつは私の仲間だ!」

「フルルルル」

こちらの言葉がわかるのか、チルノの言葉に喉を鳴らしている

猫か?

「ねえ、チルノ。私達と一緒に来ない?」

「いや、アタイはここに残るよ」

霊夢の誘いを断るチルノ

「アタイは湖を守らなきゃだからな!」

「そう、何かあったら教えなさいよ」

そう言って霊夢は先に進む

「お、おい!いいのかよ霊夢?」

「放っておいても大丈夫よ。きっと」

「なら、いいんだぜ…」

 

 

 

「フルル?」

「ん?一緒じゃなくていいのか、だって?」

「フルルル」

「ダイジョーブだぞ!それにアタイはお前と居たいからな!」

「フルル」

「えへへ、アタイも嬉しいぞ!」

霊夢たちを見送ったチルノたち

しかし、そこに…

「あー?なんだこいつら?」

「?!」

「めんどくせえ、焼いちまうかぁ!」

「フルルッ!」ドンッ

「え?!」

 

 

 

 

 

クンクン「ん?おかしいな?」

「どうかしましたか?凱?」

湖を抜けた凱達

しかし、おかしい

「焦げくせえ、なんか燃えてる」

「え?」「まじか?!」

それにいち早く反応したのは咲夜と魔理沙だった

「……まさか!」

凱は来た道を戻る

予想があってれば

 

 

チルノ達が危ない!

 

 

 

 

「チルノ!」

「凱?!」

そこにいたのは

地面に倒れているフロストとそれに駆け寄るチルノ

そして…

「なんだぁ?おめぇ?」

焦げ臭い匂いの原因

体から高熱を出すドーパント『マグマドーパント』がいた

「!……テェンメエェェ!!!」

《ヘファイストス》

怒りに任せてメモリを発動させて三日月斧を持つ

時間をかけてはフロストがこれ以上は持たない

故に、一撃で屠る

「ぶっ飛べぇぇ!!」

「あ?グアアアぁぁぁ」

マグマドーパントを吹き飛ばす

中にいた男は気絶しメモリが排出される

 

 

「おい…おい!」

チルノがフロストに寄り添って声をかけている

すでに霊夢や魔理沙たちも戻ってきている

「…私のせいね、しっかり連れて行こうとすれば…!」

「あなたのせいじゃ無いわ、霊夢」

後悔する霊夢を咲夜が慰めている

「やだよぉ…死んじゃやだよぉ!」

「チルノちゃん…」

「どうしようもできないんだぜ…」

フランと魔理沙はチルノを宥めようとするがどうすることもできていない

それをよそに

 

俺は草むらで探し物をしていた

 

 

 

 

「…何してんのよ、凱」

「何がって?」

「あんた、さっきから草むらでゴソゴソ何やってんのよ!」

「まさか、砂遊び?」

「最低なんだぜ」

「見損なったわ、お兄様」

「待てやコラ」

評価酷くね?

俺だって遊んでるわけじゃねーし

ってかフラン?お兄様って何?

「遊んでるわけじゃねえよ」

「じゃあ、何を!」

「お?あったあった」

俺は探していたものを見つける

それを手にチルノの元に

いや、フロストの元に歩み寄る

「…聞こえているな?フロスト」

俺の言葉に、フロストがこちらを見る

その目には、さっき俺らを襲った時の警戒した色は浮かんでいなかった

「お前に選択肢をやろう」

「凱!あなたいい加減に…!」

咲夜の言葉に耳を貸さず、俺はフロストに聞いた

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

「「「「「え?」」」」」

 

 

 

俺はヒーローじゃない

だけど

助けられる命を見捨てるほど

腐ってもいない

 

 

 

 

 

続く…

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
紅魔館といえばその前の湖
湖といえばチルノ。氷だから出すか!ということでフロスト登場です
DMCの敵の中でもお気に入りのキャラです
次回からはしっかりと紅魔館編になりますのでお楽しみに!

それではまた次回!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話 姿を変えて寄り添う者/紅魔館攻略戦

前回のあらすじ
霧の湖に来た凱一行
そこには氷の妖精チルノと氷の魔物のフロストが
しかし、マグマドーパントの襲撃があってフロストは身を挺してチルノを守るが、致命傷をおう
そこへ、凱がフロストにある選択を迫る


()()()()()()()()()()()()()()()()

「「「「「え?」」」」」

凱の言葉に全員が驚く

すでにフロストは虫の息、いつ死んでしまうかもわからない

「お前、何を言っているんだ?!」

「俺の能力は『ドーパントのメモリを消費して、新しいメモリを作ることができる』能力だ」

「知ってるけど……まさか!」

どうやら霊夢は思い出したらしい

そう

アラストルをメモリにする際に、直前に手に入れたヴァイオレンスドーパントのメモリを消費している

「ここに、さっき倒したマグマドーパントのメモリがある。」

凱の言わんとしていること、それは

「フロスト、()()()()()()()()はあるか?」

フロストをメモリにする

それ以外に助ける方法はないのだろう

「メモリになれば助ける事ができる。お前はチルノと居れるし、チルノはお前と一緒だ。ただし、しばらくはメモリのまんまだ」

ドライバーないしな、と付け加える

「できるのかしら?そんなことが」

「できるさ、やってみせる」

それを聞いた咲夜はチルノに尋ねる

「あなたはそれでいいの?」

「アタイはそれでいい、こいつが助かるなら、やってくれ!凱!」

チルノの言葉を受けた凱はフロストを見る

フロストは小さく頷いた

「わかった、少し離れろ」

そう言ってチルノを離れさせた凱はフロストに手をかざす

するとフロストの体が宙に浮き粒子のようになっていく

そこにマグマのメモリを放り込む

メモリは分解されフロストだった粒子と混ざり合う

そして、

 

「…うまくいったな」

粒子が収束しメモリが完成した

「ほらよ」

「!!」

メモリには『F』のイニシャルが

「フロストガイアメモリ、もう離すなよ」

「うん…うん!」

 

 

「すぅ…すぅ…」

「寝ちまったよ」

フロストが助かって気が緩んだのか、チルノは寝てしまった

「どうするんだぜ?置いていくわけにもいかないだろ?」

「じゃあ、こっちで預かるわね」

「「「「「「!?」」」」」」

不意な声

振り向くとそちらには、見た事ない人物が

しかし、腰にはベルトが巻いてある

「誰?」

「あら、ごめんなさい?」

そう言いながら変身を解くと

中からは俺を幻想郷に連れてきた女性が

「紫?!」

「こんにちは、凱。能力にも慣れてきたようね」

そう、彼女は八雲紫だった

「その子は神社に送っておくわ」

「安全なのかよそれ」

「舐めないでね?」

そう言って彼女がこちらに見せてきたのは

『D』のガイアメモリ

「私も変身できるのよ」

「なら任せる」

「紫、頼んでいたのは?」

咲夜が紫に聞く

何か頼んでいたのか?

「ええ、これよ」

そう言って取り出したのは三本のガイアナイトドライバーだった

「私たちのドライバーだ!」

「お待たせしてごめんなさいね?」

なるほど、フラン達のドライバーか…

 

 

 

え、じゃあ今まで戦ってたの霊夢1人?

 

「大変だったんだな、霊夢」

「…察してくれてどうも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チルノを紫に預け、歩くこと数分

着いたのは紅魔館

元がどんなかは知らないが

少なくとも荒れきっている

クリフォトの根っこみたいなのがまとわりついている

「ここが、紅魔館なのか?咲夜」

「ええ、今は荒れきってしまって……?!」

咲夜が急に走り出した

「お、おい!」

俺が走り出すのに霊夢たちが続く

「美鈴、そんな…」

そこには繭のようなもの包まれた1人の赤髪の女性が

「こいつは?」

「美鈴、紅魔館の門番よ」

俺の問いに答えたのは霊夢だった

 

「困りますねー」

「?! 誰!」

そこにはひょろっとした男が立っていた

「困るんですよー。それは大切な物なんです」

「こいつ、ドーパントか!」

「凱、塀を破れますか?」

「…出来なくはないが」

「こいつの相手は私が」

「わかった。無理すんなよ」

「もちろん、お土産期待しててくださいね?」

「ああ」

咲夜と小声で打ち合わせる

「霊夢、魔理沙、フラン!ついてこい!」

《ヘファイストス》

ガイアナイトドライバーにメモリを差して変身し、愛用の三日月斧を使って塀をぶっ壊す

「いくぜぇ!」

ノリノリで乗り込む俺を三人が追いかける

「?! させませんよぉ!」

「行かせませんわ」

男の前に立ちはだかるのは咲夜

「あなたに私が倒せますかねぇ!」

《メガ・スケアクロウ》

男は自分のメモリを額に突き刺す

その変身後の見た目は

足は小さく、両腕には三枚ずつの鎌の刃、背中にも一枚大きな刃がついている

「醜いですわね」

咲夜はその見た目に溜息をつく

先ほどのフロストと同類かと思ったがどうやら違うらしい

「切り刻んで差し上げましょう!!」

メガ・スケアクロウドーパントは勢いよく刃を振り抜く

しかし、それは空を切る

「醜い、その上に弱いだなんて。調子に乗りすぎでは?」

「何ぃ!」

咲夜はすでにドーパントの後ろに回っている

その手にはメモリが握られており、腰にはベルトが

「あなたのその醜い性根、私が止めて差し上げます」

そう言い終わるや否や、咲夜はメモリを起動させる

 

 

 

 

 

 

続く!

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
今回は、凱の能力と、新しい《メガ・スケアクロウ》メモリに登場していただきました!
見た目はまんまDMC4のメガ・スケアクロウです
次回は咲夜の戦闘シーンだったり、紅魔館内部のシーンを描く予定です
一応活動報告にも書いたのですが、凱達のメモリとオリキャラのメモリ等のアイディアを募集しています!
感想でも構いませんのでどうぞよりしくお願いします。
それでは、また次回!


あ、あと次回の冒頭から少しはじまり方を変えます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話 時を刻む者/魔導書の魔物

前回のあらすじ
フロストをメモリにすることで救った(?)凱は霊夢達と紅魔館へ
その紅魔館にはDMCのクリフォトの根のようなものがびっしり
さらに門には紅魔館の門番である紅美鈴が捕らわれていた
助けようとする凱達の前に、新たなるドーパント『メガ・スケアクロウ』が立ちふさがる
咲夜は凱達を先に進ませ、ドーパントに立ち向かう!
(前置き長いな)


現在判明している凱達のメモリはこちら

五十嵐凱 へファイストス(H) アラストル(A) エクリプス(E)







 

「ほう、貴女もガイアナイトなのですか」

目の前の異形が咲夜に話しかける

「ええ、しかも貴方よりかは強いかと」

そう言って咲夜はメモリを起動させる

《クロック》

 

咲夜が変身したのは『クロックガイアナイト』

時計の記憶を持つメモリを使っている

背中には長い剣が一本の

そして両手には短めの剣を二本持っている

「貧相ですねぇ?ブッタ斬って差し上げましょう!」

そう言ってメガ・スケアクロウは刃を振るうが再び空を切る

「遅いと言っているでしょう」

声がするほうを振り返ると

大量の剣がメガ・スケアクロウに突き刺さった

「ギャアアアア!」

「この世の全ての時間は私の時間」

咲夜はメモリを一度抜き、右腰についているホルダーに差し込む

 

「貴方の時間は、私の物」

《クロック、マキシマムドライブ!》

 

その瞬間、メガ・スケアクロウに突き刺さった剣が炸裂した

「グギャアアアアアア!」

爆発したドーパントの体からメモリが飛び出す

飛んできたそれを咲夜はキャッチした

「弱いわね、二時間前に出直しなさい?」

 

 

「これでよしっと」

咲夜は男を紐で縛っていた

情報を吐かせなきゃいけないからだ

「とりあえず、これでいいわね。さて」

咲夜は紅魔館を見上げる

「しっかりしてくださいね、凱」

 

 

 

 

 

 

一方その頃

「があああああ!広すぎんだろ!」

凱は絶叫していた

紅魔館は想像以上に広かったのである

「これじゃあ、どこ行けばいいかわかんねえな」

「じゃあ、二手にわかれようよ!」

提案したのはフランだった

「私と魔理沙で右側、霊夢とお兄様は左側をお願い!」

「わかったわ」「了解だぜ」「了解」

霊夢、魔理沙、凱の順で答えて二手に別れた

 

 

 

 

 

「ここはどこら辺なんだぜ?フラン」

「うーん多分図書室の近く」

フランと魔理沙が進んでいたのは紅魔館の右側のルートだった

記憶が正しければ、この先に…

「あった!」

フランが見つけたのは巨大な扉

それは大図書室の入り口であった

「この先に多分…」

「パチュリー達が、居る」

「準備いい?魔理沙」

「もちろんだぜ!」

「じゃあ、行くよ!」

そう言ってフランは扉を開ける

 

 

 

 

紅魔館 大図書室内部

 

 

「何よ、これ」

何時もなら綺麗に整えられた本棚が立ち並ぶ図書室

今は凄惨な状況だった

本棚は倒れ、本は散らばっている

そして図書室の奥には

美鈴が捕らわれていたのと同じような繭が

「! パチュリー!」

「こあも!」

繭のなかには意識を失っているであろうパチュリーと小悪魔が

「待ってて、今助ける!」

繭に向かって走り出すフラン

「!?…下がれフラン!」

「え?……な?!」

急な魔理沙の声に反応する間もなく、フランの足元に火柱が

「危なかった…」

「大丈夫か!フラン!」

「うん!…でもどこから?」

そう言ったときだった

 

 

『ギュアアアアアア』

「な?!」

「おっきい…」

そこにいたのは巨大な魔物だった

羊の頭に竜の体をした、魔物

周りには七つの板のようなものが浮いている

「あれ、パチュリーを媒体にしてるのか?」

「わかんないけど、多分そうだよ」

「なら、助けなきゃだよな!」

「もちろん!」

そう言って二人はメモリを取り出す

フランのは『T』、魔理沙のは『S』のメモリだ

「行くぜフラン!」

「うん、行くよ!」

「「変身!」」

《タブー》《シューティングスター》

フランは『タブーガイアナイト』、魔理沙は『シューティングスターガイアナイト』に変身した

「さあ!」

「遊びましょうか!」

二人と魔物の戦闘が始まる

 

 

 

 

 

 

 

「きっついなぁ!」

戦い初めてから10分ほど経過した

戦いを通して魔物の正体がわかってきた

恐らくメモリは『グリモワール』だ

魔導書のガイアメモリならば攻撃や見た目に筋が通る

板だと思っていたのは本だったし、現に本に応じて属性や攻撃方法が異なっている

厄介なのはその応用性だ

火、水、木、金、土、そして日と月

パチュリーが使っていた魔法とほぼ同じ攻撃が連続して繰り出される

しかも互いの弱点を補いあっている

攻めようにも弾幕が濃くて近付けない

どうするか…

「フラン!」

そこへ魔理沙が声をかける

「何!」

「一瞬でいい、弾幕を蹴散らせてくれ!その間に私が突っ込む!」

「行けるの?!」

「わからん!けど、やってみるんだぜ!」

「わかった!」

魔理沙の作戦を信じよう

フランはメモリを抜いて腰のホルダーに差し込む

《タブー、マキシマムドライブ!》

「消し飛べぇ!」

フランの周りに赤い球が大量に出現し、魔物の弾幕に向かって飛んでいく

すると球は強力な爆弾のように爆発し、魔物の弾幕を蹴散らした

「今だぜ!」

一瞬の隙を魔理沙は逃さなかった

フランのようにメモリをホルダーに差し込む

《シューティングスター、マキシマムドライブ!》

魔理沙の手に光が収束する

「貫けぇ!!」

そしてその光は勢い良く放たれて魔物を貫いた

「ギュアアアアアアアアアアア!!」

けたたましい声をあげた魔物は、みるみるうちに消えて居なくなった

カシャン ドサドサッ

そしてしたにメモリが落ち、小悪魔とパチュリーもそこへ倒れた

「パチェ!こあ!」

「大丈夫、眠ってるだけだぜ」

「そっかぁ、よかったぁ…」

魔理沙が二人の安否を確認し伝えると、フランはその場にへたりこんだ

「これが、さっきのやつのメモリか」

魔理沙は床におっていたグリモワールメモリを拾い上げる

(後で凱にでも渡すかな)

「あとは二人次第だな」

「そうだね」

(お姉さまを助けて、霊夢、お兄様!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




ここまで読んでいただきありがとうございました!
次回が紅魔館編最終回になりそうです
急にメモリ増えすぎかな?
あと、グリモワールってフランス語なんすね、書いている最中に知りました
あと次回から物語に新キャラが増えます
今はまだ、読んでくれる方があまり多くありませんが、これからもっと多くの人に見てもらえるようにがんばります!
アンケートとかアイディアとか感想もお待ちしておりますので是非!

ではまた次回お会いしましょう、それでは!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話 動き出す者達/殺意の侵蝕

前回のあらすじ
立ち塞がるメガ・スケアクロウを咲夜は自身の『クロックメモリ』を使い見事突破!
男を捕縛し、美鈴を助けた彼女も紅魔館に入る
一方その頃、紅魔館内部では
広すぎる紅魔館をフランの提案で二手に分かれて捜索することに
そしてフランと魔理沙は大図書室に辿り着き、そこで魔導書のドーパント『グリモワールドーパント』を撃破
囚われていたパチュリーと小悪魔を救出したのだった


現在判明している凱達のメモリはこちら

五十嵐凱 H A E
十六夜咲夜 クロック(C)
フラン タブー(T)
魔理沙 シューティングスター(S)




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今回、少し長いです




霊夢と凱が捜索をする一方で二つの出来事が異なる場所で起こった

一つ目は、紅魔館の門の近くで

そこには男がいた、メガ・スケアクロウのメモリを使っていた男だ

美鈴はさっき紫によって運ばれていたため彼一人であった

「くそ、なんで私が」

「負け犬のくせによく吠える」

「! あ、あなたは!」

そこには1人の男が立っていた

強面の顔をしていてかなり筋肉質の体をしている

その腰にはベルトが巻かれていた

「メモリは?」

「…とられました」

「…そうか」

その男は懐に手を伸ばす

「!! 頼む、やめてくれ!」

「雑魚に用はない」

男の手には赤いメモリが握られていおり

それを右腕に突き刺す

《ベリアル》

すると、右腕だけがドーパントになった

その腕は悪魔のような腕になった

手には炎をまとった巨大な剣が握られている

「死ね」

ズバッ

振り下ろされた剣は捕縛された男を叩き切る

その体には炎が燃え移り、あっという間に燃え尽きてしまった

「我ら《Devil Castle》に塵はいらん」

 

 

 

二つ目は、博麗神社で起こった

「これでいいかしらね」

八雲紫は美鈴とパチュリー、小悪魔を運んでいた

「おかえり!紫!」

「ただいま、少しは良くなったかしら?」

出迎えたのはチルノだった

「おう、もちろん!アタイはサイキョーだからな!」

フンッ、と胸を張るチルノ

あとは霊夢たちが戻るのを待つだけだった

そこへ

「ふむ、順調なようだな」

「誰だ!」

不意な声に警戒するチルノ

しかし紫は

「あらハーデスさん、こんな所までご苦労様です」

そう言って会釈をした

その先には黒い鎧に白いマントを羽織ったガイアナイトがいた

その手には二又の槍が握られている

「この姿のまま失礼するよ、紫殿」

そう言って男、ハーデスガイアナイトは近くの柱に背を預ける

「それで、いかがなされました?」

「凱の様子はどうだ?」

「彼は大丈夫ですよ」

「そうか、それなら構わん」

男は視線を変える

その先には紅魔館がある

「奴は我ら《Olympus》に必要な同志、もっと強くなってもらわねばな」

ククク、と低く笑う

と、スタスタと歩き始めた

「どちらへ?」

「あの館にな、様子を見に行く」

「わかりました、お気をつけて」

「ドライバーが足りなかったら言え、用意する」

そう言ってハーデスガイアナイトは姿を消した

 

 

紅魔館内部 廊下

 

 

「ねえ、凱」

「ん?どうした?」

霊夢と凱は廊下を進んでいた

霊夢はふと思った疑問を投げかける

「他のメモリは使わないの?」

「いや、使いたいんだがな」

と言って彼は二本のメモリを取り出す

アラストルとエクリプスだ

「アラストルはベルトに刺さらんし、エクリプスは動かないんだ」

凱はエクリプスのメモリのボタンを押すが、なんともいわない

「不良品かしら?」

「うーんどうだろうな。っとここか」

話しているうちに目的の部屋である「主人の間」にたどり着いた

「この先にレミリアが?」

「多分、フランの話ではそうよ」

「じゃあ行くぞ」

「ええ」

そう言って凱は扉を開ける

 

 

紅魔館内部 主人の間

 

 

「暗いわね」

「窓塞いでんだろ、それよりも」

部屋の中央のところには繭

中にはレミリアが囚われていた

「助けるか」

「ええ、でもその前に」

『バサァ』

二人の前に謎の異形が立ち塞がる

女性の彫像の周りを六本の腕が囲み円をかたどり、光の球が無数に浮いている

六本のうち2本の手には竜の装飾がされている

背中には天使のような羽が六枚

だがその羽は赤い光に覆われている

その光に包まれ照らされる輪はまるで血まみれの運命を暗示するかのようだった

「運命の輪。なるほど、メモリは『デスティニー』か」

「やりましょう、凱」

「ああ、行くぞ!」

二人はベルトを巻き、メモリを使って変身する

「「変身!」」

《へファイストス》

《セイクリッド》

 

 

 

 

「なんだぁ?案外呆気ねえぞ!」

戦闘は思いのほか順調であった

凱が敵の光弾を撃ち落とし、霊夢がダメージを与える

基本的な攻撃はレーザーだけのようで、そこまでキツくはなかった

最もレーザーはガード不可で掠ったら灰も残らないが

「霊夢、一気に行け!」

「わかった!」

凱は両手に三日月斧を持ち、デスティニードーパントに突撃する

「ウオラァ!」

力を込めて叩きつけられたことによってドーパントの体勢が崩れる

「逃さないわ!

瞬間、霊夢はマキシマムを発動させる

《セイクリッド、マキシマムドライブ!》

光が溢れ、何本もの帯となりドーパントを拘束する

そこへ霊夢から光の波動が放たれる

「くらいなさいっ!」

波動がドーパントに直撃し、その体を抉る

 

 

「お、終わった〜」

「お疲れ様、霊夢」

ドーパントを倒し、メモリも回収した

囚われていたレミリアは近くで眠っている

そこに

「霊夢ー!凱ー!」

「お、そっちも終わったみたいだな」

フランと魔理沙が合流してきた

さらに

「あら、遅かったかしら?」

咲夜もやってきた

「お姉さまは?!」

「そこにいるぞ」

「ほんとだ、よかったー」

フランとレミリア、感動の再会だった

 

 

 

「呑気だねぇ、君たちは!」

「?! 誰だ!」

空中には背中に鳥の羽が生えたドーパントがいた

しかも、いつの間にか周りにはかなりの数のドーパントが

「いつの間に!」

「ふん、所詮ガキだね。捕らえろお前たち!」

周りにいたドーパントたちに拘束される

「くそ、離しなさい!」

霊夢たちが捕らえられる

「てめえ!何しやがる!」

「煩いなぁ、家族でもなんでも無いんだし、怒るなよ」

「…なんだと」

「んー?聞こえなかったのか?」

宙に浮くドーパントはめんどくさそうにしている

「まあ、いいさ。僕のこの爪で切り裂いてあげよう」

 

爪…?切り裂く…?

 

凱の脳裏に悪夢(トラウマ)が鮮明に思い浮かぶ

10年前の父の惨殺

7年前の姉の焼死

3年前の母の変死

 

まさか

 

 

 

「なあ、お前ってさ1()0()()()()()()()()()()()()()()()()()

「10年前……ああ、殺したね。五十嵐…なんだったかな?それがどうしたのさ」

 

決まりだ

こいつは恐らく時空を移動する手段を持っていて

それで俺の親父を殺したんだ

 

 

その事実を確認した凱はメモリを握る

体の芯から指、足先、脳の先まで殺意に侵食されていく

(こいつさえ、こいつさえいなければ)

凱の手には『エクリプス』のメモリが

「……凱?」

「お前、いや、もういいか」

「ん?なんだ?」

「死ね」

 

 

《エクリプス》

 

 

 

 

 

 

 

 

何がどうなっている!

男、グリフォンドーパントは焦っていた

先ほどまで優勢だったのに、勝ちが確定していたのに!

「やめてくれぇ!」「いやだ、いやだぁぁぁぁ」

「た、た、助け……ゴボァァ」

あの男がメモリを刺した瞬間、辺りが真っ暗になった

その時にこの場は阿鼻叫喚の地獄と化した

自分の下では部下達が叫びや悲鳴をあげている

ある者は首を斬られ、ある者は引き裂かれ

ある者は体をねじ斬られ、またある者は内側から弾けとんだ

「ヒィィィ、ヒィィィィィィィ!!!」

グリフォンドーパントは逃げ出した

ここにいたら、殺される!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前で、殺戮が繰り広げられる

凱が、エクリプスを使った瞬間だった

辺りは闇に飲まれて、悲鳴が聞こえ始める

すでに相手のドーパントは飛び去っていたが

それでも蹂躙は終わらない

私を拘束していたドーパントも既に死んでいる

凱は

体を闇に飲まれ、目があった場所には赤い光が灯っている

「やめて、もう…やめて」

私は必死に声を出すが、彼には届かない

そこへ、1人の男が現れる

『もしやと思ったが、呑まれたか』

それは黒い鎧に白いマントを羽織った人物

声から男とわかる

『少し、寝ていたまえ』

男は持っていた槍で床をついた

その瞬間、凱は倒れこみ、私の意識も落ちていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、逃げ帰って来たと」

ここは『《Devil Castle》』のなかの広間だった

暗い部屋、グリフォンドーパントの男はひざまずいていた

「頼む、許してくれ」

「お前にしちゃあ珍しいな、烏間」

烏間と呼ばれた男はビクリと肩を震わせる

「トラブルがあったんだ、俺のせいじゃない!」

「どうだかな、どうします?ボス」

ボスと呼ばれた女は烏間に訊ねる

「何があったのかしら?」

「メモリだ、メモリにやられた!」

「メモリ~?んな馬鹿な」

男、蜘手が答える

「んなメモリ有るかっての。笑わせんなよ」

「メモリは『エクリプス』だった」

「「?!」」

二人が息を飲む

「そう、仕方ないわね」

「いいのかよ、ボス?」

「エクリプスじゃ無理よ。相手にしたら面倒だわ」

「まあ、そうか」

「次は失敗しないでね?烏間?」

「は、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凱は目を覚ました

目に写るのは木の天井

「あ、起きた!」

フランの声、そして

「凱?! 大丈夫?」

霊夢の声

「霊夢、あれから何日経った?」

「1日よ」

「そっか、どうやってここに?」

「それは、私が説明しよう」

聞きなれない声

見ると髭をを生やした男性がそこにいた

「あんたは?」

「亡元蔭久(なきもとかげひさ)だ、よろしくな」

「一体何者なんだ」

「『ハーデスガイアナイト』」

「…続けてくれ」

「どこまで覚えている?」

「あの野郎に『死ね』って言ったとこまでだ」

「なるほど、じゃあその先を話そう」

そこで蔭久は一呼吸おいて

「お前さんはあのあと、その場にいたドーパントを推定27人殺した」

「…」

「メモリの数でカウントしたから、正確にはわからんがな」

「…で?」

「驚かんのか」

「今更、なんだよ」

「結構、それで君にたのみがある」

「あ?」

()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

続く…

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
凱君暴走した上にいっぱいキャラに組織の《olympus》や《devil castle》が登場してなかなかに大変な話になっちゃいました
今回で紅魔館編は終わりで次回から白玉楼編です
あとアンケートなんですが、よくよく考えたら要らなかったのでカットします
紅魔館+1ヶ所であとは他のOLYMPUSメンバーが出る予定だったのでダイジェストで書きます


それではまた次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二章 白玉楼編
第6話 神々の進撃/復讐心(トラウマ)を乗り越えろ


前回のあらすじ
紅魔館の最奥、主人の間にてデスティニードーパントを撃破しレミリアの救出に成功した凱達
しかし、敵の幹部のグリフォンドーパントとその部下に強襲される
その最中にグリフォンドーパントこと烏間が凱の家族を殺害した1人と知る
復讐の殺意に蝕まれた凱は《エクリプス》を使用
その場にいたドーパントを皆殺しにし、暴走した
そこへハーデスガイアナイトが現れ凱を止める
そしてハーデスガイアナイトである亡元に「同志にならないか?」と持ちかけられる




現在の凱達のメモリはこちら
五十嵐凱 H A E
咲夜 C
フラン T
魔理沙 S
霊夢 セイクリッド(S)






 

 

「同志、だと」

「ああ、君と同じように神々のメモリを持つ者達で構成された組織、《Olympus》。そこに君に加わってもらいたい」

「…目的は」

「他の世界の安全確保が主な目的だ。今は互いの利点の一致により紫殿と協力関係にある」

「……1つ聞かせろ」

「なにかね?」

「あんたは俺の家族を殺した奴らを知っているのか?」

「知っている」

「……そうかよ」

そう言って凱は布団から出る

「フラン、紅魔館に空いてる部屋はあるか?」

「あるけど…」

「しばらくそこに居させてくれ、1人になりたい」

「…わかった。紫、お願い」

「わかったわ」

紫はメモリを使用する

《ディメンション》

すると目の前に穴が出現する

「返事はあとでする」

「わかった、ゆっくりとしたまえ」

そう言って凱は穴の中に入った

 

 

 

 

 

「よかったの?亡元さん?」

「仕方あるまい、あんなトラウマを思い出したのだ。多感な少年にはきついのだろう」

そう言うと、亡元はお茶を啜った

「それよりもどうするの?他の場所にも」

「それは心配ないぞ」

「え?」

亡元の目には余裕の光が映っている

「私の同志たちがやってくれているよ」

 

 

 

 

 

 

地底 旧灼熱地獄跡

 

 

『くはは、温いなぁ』

『そう言うなよゼウス』

『あ、あはは』

ニュークリアドーパントになっていた霊烏路空を倒したのは

『ゼウスガイアナイト』『ヘルメスガイアナイト』『ヘスティアガイアナイト』の三人だった

「お三方、ありがとうございます」

三人にたいして古明地さとりは頭を下げた

『気にすんな!それなりに楽しめたからよ』

『全く、さっさとメモリもって行きますよ』

『『はーい』』

 

 

 

守谷神社 境内

 

 

『おしまいですね』

『キャハハ、呆気なーい』

『もう少し静かになさい、ヘラ』

ヒュドラドーパントの諏訪子、ピラードーパントの加奈子を制圧したのは

『アポロンガイアナイト』『ヘラガイアナイト』『アテナガイアナイト』の三人

『大丈夫?貴女?』

「え、あはい」

東風谷早苗は圧倒的な力を持つ三人に呆然としていた

『あれれー?大丈夫?ぎゅーってしてあげる!』

「わわわ、痛い!痛い!痛い!」

『ヘラ、貴女の力想像以上に強いんだからやめなさい。死んじゃうわよ』

『あ、ごめーん!』

『…メモリ持って帰りましょうか』

 

 

 

永遠亭

 

 

『はい、おっしまい!』

『愛よ!愛は正義なのよ!』

『なんで俺がこいつらと…』

八意永琳のムーンドーパント、蓬莱山輝夜のクイーンドーパントを倒したのは

『アルテミスガイアナイト』『アフロディーテガイアナイト』『アレスガイアナイト』の三人

「お師匠様に姫様まで助けていただき、ありがとうございます!」

三人に向かって鈴仙は頭を下げる

『師匠にお姫様のことまで!なんて素晴らしい愛なの!』

『うるせえ!』

『メモリ回収しますよー』

 

 

 

 

 

 

 

数日後 紅魔館にて

 

 

 

「お兄様いた?」

「いいえ、いらっしゃらないようです」

紅魔館の中をフランと咲夜は探し回っていた

凱の姿が見えないのだ

レミリアやパチュリー等は現在部屋で休んでいる

最近になって目覚めたが皆、囚われていた間の疲れでまともに動けないでいるのだ

「あとは、どこに…」

「とりあえず探してみよ?」

「わかりました」

二人は捜索を再開する

 

 

 

 

 

 

「あれ?」

フランは主人の間の扉が少し開いているのに気付く

「もしかして…」

 

 

主人の間

 

 

 

「あ、お兄様…」

「……」

そこに凱はいた

まだ主人の間の片付けが終わっておらず、荒れ果てたままであった

「…ああ、フランか」

凱の目に光は灯っていなかった。その目に映っているのはそこが知れない闇だった

「大丈夫…?」

「……」

凱は黙ったままだ

「なあ、フラン」

「…何?」

「俺は、生きててもいいのかな?」

「…!」

「俺は、メモリの力に溺れて、暴走して…」

凱の言葉には後悔とやるせなさが滲んでいた

「おまけに大量に殺した。助けられたはずの人たちを。そんな俺に、生きている価値は……」

 

 

「ふざけないで!」

 

「!」

「お兄様は、凱は間違ってないよ!」

「…フラン」

「凱は、生きてていいんだよ!価値がないなんて言わないで!」

フランは否定した

凱の命に価値がない?メモリで暴走?

関係ない

凱は姉のレミリアを助けてくれたし、幻想郷のために戦ってくれている

それが、フランにとっては何よりも嬉しかったし心のなかでは好意を寄せていた

そんな想い人が絶望の縁にたっているのなら

助けずにはいられない

フランは凱に詰め寄る

「凱は、私たちを守ろうとしてくれたんでしょ、あのときだって」

《エクリプス》が暴走したあの時

普通なら私たちも巻き込まれていたはずだった

でも私たちは無事だった

復讐に呑まれながらも、助けてくれたのだ

「でも、俺は…」

「私も、霊夢達も。貴方のことを嫌いになんてなってない、なるはずがない!」

「…」

凱はその場に座り込み膝をつける

「生きてていいのかな…?」

「うん、……うん」

「こんな俺でも…生きてていいのかな」

凱の目から涙が溢れる

「ねえ、お兄様」

「どうした、フr」

凱の口をフランがふさぐ

「! ……」

急なことに凱は驚くが、そのまま身を委ねる

10秒くらいたってフランは口を離す

「大丈夫…貴方の苦しいことも、貴方が抱える罪も私が一緒に背負うから」

「…………ありがとうな」

凱の目に光が戻っていた

「二つほどいいか?」

「何?」

「まず1つ、初めてのキスだったんだが…」

「……ご馳走さま」//////

フランは顔を真っ赤にして笑顔を浮かべる

「……お粗末様でした」

「それで、もう1つって?」

「ああ、ついてきてほしいんだ」

凱の手にメモリが

 

 

《エクリプス》

 

 

「え?」

 

気がついたら、漆黒の世界にいた

「気付いたか」

「うん、ここは」

「精神世界かな? ちょっとしたケジメだよ」

その視線の先には、三人の人影が

「親父、お袋、それに姉さん」

それは、きっと心のなかにいた、三人の死を認めないという拒絶から生まれた影だった

「縛っててごめんな、もう大丈夫だ」

三人の人影が笑った気がした

 

 

次の瞬間、漆黒の世界はなくなっていた

「これでいいんだ、俺はもう振り返らない」

「お兄様!それ」

凱の手のメモリのエクリプスメモリが変わっていた

以前は全部黒のメモリだった

今は白と紺が混ざりあった色のとても綺麗なメモリだった

「……綺麗」

「ああ、本当にな」

凱はエクリプスメモリを握りしめる

「行こう、フラン」

「うん、どこまでも一緒だよ」

 

 

絶望を、トラウマを克服した凱は

 

 

新たな戦場に身を投じる

 

 

 

 

 

 

 

続く!

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
今回で《Olympus》陣営は全員になります
今度まとめのやつ作ります
それと凱とフランがくっつきました
次回から凱とフランのペアが物語の主役になります


それではまた次回お会いしましょう!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話 敵でも味方でもなく/いざ、冥界へ

前回のあらすじ
《Olympus》のメンバーに入るよって次々とドーパントが倒される中、《エクリプス》の暴走に凱は疲弊し、絶望しきっていた
そこへフランが現れ、凱を励まし共に歩むと誓う
フランが心の支えとなった凱は過去と決別するために、エクリプスを使用する
そして、トラウマを乗り越えたことで、エクリプスメモリは真の姿を取り戻し、
凱達は新たなステージへと進む





今回の主要キャラのメモリはこちら
凱 H A E
フラン T ?





紅魔館 門前

 

「じゃあ、行ってくるよ」

「お気をつけて、凱、妹様」

「行ってくるわ、お姉さま!咲夜!」

「ええ、気をつけなさいよ」

凱達は紅魔館の門の前にいた

これから冥界へ行くのだ

「咲夜、メモリを新調したとはいえ、油断するな」

「もちろん、心得ているわ」

「レミリアも、復活したからってあまり変身はするなよ」

「わかってるわ。フランをお願いね、凱。」

「任せろ」

そう言って凱とフランは歩き出した

 

「よろしいのですか?お嬢様」

「止められるなら止めてるわよ」

凱達を見送ったレミリアと咲夜

「まあ、あの子が決めたんだもの。きっと大丈夫よ」

「そうですね」

「ねえ咲夜。新しいメモリの試運転かねて組み手しない?」

レミリアの手には『O』のメモリが握られている

「はぁ、手加減してくださいね?」

そう言う咲夜の手には『V』のメモリがあった

 

 

 

 

しばらく自身の能力の実験でわかったことがある

一つ目は『メモリを作る時の消費』についてだ

てっきりメモリ一本につきドーパントのメモリ一本だと思っていた

しかし、実際は『同ランク、及び自身の適性メモリを作る際の消費が一本』だった

例をあげるなら市販メモリでゴールドランク作ろうとすると追加で何本か用意する必要があるようだった

二つ目は『適性』についてだ

右手でメモリを生成するのだが、その際に左手で誰かの肩に触れていると、その触れている人物の適性にあったメモリができるようだった

最後にわかったものは『創れるものに関して』だった

まさか()()()()()が創れるとは思わなかった

 

 

「よかったの?お兄様?」

「何が?」

「お誘い断ったこと」

「お誘い?ああ、あれか」

それは三日ほど前

 

「久しぶりだね?凱君」

「お久しぶりです、亡元さん」

「ふむ、トラウマは克服したか」

「ええ、お陰さまで」

紅魔館のバルコニーにて凱と亡元はお茶を飲んでいた

「結論は出たかね?」

「ああ、()()()()()()()()()()()()()

「…理由を聞いても?」

「あんた等はこういったな『次元の安全の管理をしている』と」

「まあ、言ったな」

「生憎、この世界で護りたいものが出来たんでな。ここを離れたくはないんだ」

「……ふふ」

「どうした?」

「いや、なんでも」

「で?どうする?始末するか?」

「いやいや、想定の内さ」

「そうかよ」

「だが、できれば今は協力していただきたい」

「もちろん、幻想郷のためなら力を尽くすさ」

「よろしい、よろしく頼むよ凱君」

「ああ、よろしくな、亡元さん」

 

 

 

「別に入りたいとか思ってた訳じゃないし、それに」

「それに?」

「フランを置いては行けないよ」

「…そっか。えへへ」

凱の言葉にフランは顔を綻ばせる

「っと、ついたな」

「ここね」

今の冥界はドーパントの影響でいつもの場所からは行けないので別口から入らなければならない

二人はその門を通る

その先には

手や足に鎌の刃を持った案山子のような魔物

「…スケアクロウか」

「強いの?」

「まさか、とるに足らない雑魚だよ」

「じゃあ、試しに使ってみよっか」

「だな」

二人はベルトを装着する

しかし、それは今までのベルトとは違う形だった

変身用のホルダーの隣にもう一個スロットがついている

「使い方はわかるな?」

「もちろん!新しいメモリのお披露目だもん、頑張らなきゃ!」

「じゃあ行くぜ!」

 

「「変身!」」

《ヘファイストス》

《エンジェル》

 

 

 

 

 

同時刻 霧の湖

 

 

 

「うーん、いないなー」

チルノは霧の湖を散策していた

ドーパントの驚異がなくなり、異変の際に行方不明になった大妖精を探しているのだ

『お待ちなさい、氷精よ』

「誰だ!」

振り向くとそこには1人のガイアナイトが

『私はアテナ、貴女が探しているのは貴女のご友人ですね?』

「大ちゃんの事知ってるのか?!」

『はい、あのものは今、冥界にいます』

「め、冥界?」

『そうです』

「わかった、ありがとう!」

そう言って飛ぶチルノ

『待ちなさい』

「なんだよ!」

『これを』

それはガイアナイトドライバーだった

「それは」

『貴女が正しき道を歩むために使うのなら、差し上げましょう』

「わかった、ありがとう!」

チルノはドライバーを受け取り、冥界へ向かった

 

 

『あ、場所言うの忘れましたわ』

 

 

 

 

 

『そらそらそらそらぁ!』

迫り来るスケアクロウを三日月斧で蹴散らし、上空に打ち上げる

『てやぁぁ!』

それをフランがレーザーや剣で撃破していく

今回フランが使っているのは『エンジェルガイアメモリ』

背中にある羽での高速移動、顔の宝石の色で変化する属性に応じた多彩な攻撃、聖なる光による回復等々、1人でなんでもこなせるというテクニカル寄りなメモリだった

初めてにしては上手く扱えている

『よし、一気に決めるぞ』

そう言って凱はもう一個のスロットにメモリを差し込む

《アラストル》

すると凱の右手に雷を纏う剣が現れる

『吹き飛べ!』

アラストルを地面に突き立てる

すると辺りに大量の雷が落ち、スケアクロウを残らず焼き払った

『うし、これで終わりかな』

『お疲れ様!』

スケアクロウを蹴散らした二人

 

そこへ

 

 

 

 

 

「五十嵐凱さん、ですね?」

『誰だ?』

『大ちゃん!』

『いや、だから誰?』

『チルノちゃんのお友達』

『ほーん』

そこに居たのは大妖精だった

「ようやく来たんですね」

『なんのようだ?』

「特に貴方に恨みはありませんが」

大妖精の手にはメモリが

『! まさか!』

「私達のために死んでください」

《ティターニア》

大妖精は左の掌にメモリを差す

『ドーパント?!』

『やるしかねえ!行くぞフラン!』

『う、うん!』

『さあ、覚悟してください!』

凱とフラン、二人を亡き者にすべく

大妖精が襲いかかる

 

 

 

 

 

 

 

続く!

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
今回はメモリに憑かれた男様の『エンジェルメモリ』と 、イニシャルだけですが『ヴァルキリーメモリ』が登場しました!
アイディア提供ありがとうございます!
まだまだ募集してますので、登場させたいドーパントやガイアナイトのメモリがある方はぜひ活動報告にコメントしてください!

それではまた次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8話 舞い降りる氷の騎士/悪夢の兵器/戦い終われど異変終わらず

前回のあらすじ
冥界に入った凱とフラン
二人の前に立ちはだかったのはスケアクロウの大群だったが、二人はこれを新しいメモリの力でなんなく突破
しかし、二人の前に新たな敵が現れる
それは大妖精だった
彼女は凱達の話を聞こうとせず《ティターニア》で変身し襲いかかってきた



今回の主要キャラのメモリはこちら
凱 H A E
フラン T E(エンジェル)



 

 

 

『うぐっ!』

『その程度ですか?フランちゃん!』

《ティターニアドーパント》は空中を駆け回りその両手に持つ剣で切り裂こうとしてくる

(速い、それに重い!)

見た目は細身の剣だが振り下ろされるスピードが上乗せされ、かなりの威力になっている

『あはは……うぐっ!』

不意に大妖精が苦しむ

『?! 何?』

『まさか、適性じゃないのか!』

『どういうこと?』

『メモリにはその性質上「適性」が存在する。体に合うメモリなら問題はないが、このままだとあいつ死ぬぞ!』

『そんな?!』

狂ったように剣を振り回す大妖精

このままではメモリに精神が破壊されてしまう

『ぐううぅ、ああああぁぁぁ?!』

大妖精はフランに向かって体当たりしてきた

『くそ、このままじゃ!』

大妖精を止める術は無い

 

かに思われた

 

ガキィン

 

 

大妖精の剣を受け止める、一つの影

それは凱でも、フランでもない

その姿は手足に氷の鎧を纏い、背中には6個の氷塊の羽

『何やってるんだよ!大ちゃん!』

『チ、チルノちゃん?!』

それはチルノだった

使っているのはフロストガイアメモリ

『チルノ!そのまま抑えろ!』

『わかった!』

凱は一度へファイストスを抜き取りエクリプスを差し込む

《エクリプス》

すると体に黒い液体のようなものが付き始める

それはドロドロとしていてまるでスライムのようだった

凱はその黒い物体で大妖精を包む

しばらく経つと、中から大妖精とティターニアメモリが出てきた

『ふう、間に合ったな」

『大ちゃん!」

倒れる大妖精に駆け寄るチルノ

凱もフランも変身を解いている

「……ぅぅ…」

「大ちゃん!」

「あれ?…チルノ…ちゃん?」

「よ、よかった〜」

大妖精の安否を確認し、安堵するチルノ

「ごめんね、チルノちゃん」

「ううん、いいよ」

感動的だが、ここは危険だ

「感動のところ悪いがチルノ、大妖精を連れて戻ってくれ」

「凱たちは?」

「まだやる事がある」

「うん、わかった」

そう言ってチルノは大妖精と共に戻っていった

「さて、進むか」

「うん!」

 

 

 

少年少女移動中…

 

 

 

「ここが、白玉楼」

目の前にあるのは古風の屋敷だった

もっとも、今はクリフォトの根で荒れ放題だが

中に入ると、最初に目に入ったのは

血まみれの少女だった

「! 妖夢!」

「ひどい怪我だ、直せるか?」

「やってみる」

そう言うとフランはエンジェルメモリを使って変身し、治療の光を放って妖夢を治療し始めた

しばらくすると

「ぐ、うぅ.…」

「お、気づいたか」

「…あ、あなたは?」

「初めまして、俺は五十嵐凱だ」

「魂魄、妖夢です。…っ! あれからどれくらい経ちましたか?!」

「さあな、だがどうした?」

「早く、行かないと!幽々子様が!」

「だから、一体何が…」

『お兄様!こっち!』

フランの声がしたので、そちらに移動する

「フランさん?その姿は?」

『話は後、それよりあれ!』

フランが指し示す先には巨大な桜の木が

その幹には繭があり、中にはピンクの髪の女性が入っている

「幽々子様!」

駆け寄ろうとする妖夢

しかし、それを遮るように地中から何かが滲み出てくる

『何よ!あいつ!』

「まだ、残っていたんですか…」

「もう何が来ても驚かねえよ」

滲み出してきたもの、それは白い殻に覆われた海牛のような見た目をしていた

それはDMCの作中に出てきた悪魔の兵器、ナイトメアだった

「妖夢はそのまま隠れてろ」

「しかし!」

「あれを相手にするのは骨が折れる、それにメモリが使えないなら邪魔になる」

「!」

『お兄様!そんな言い方は…』

「倒せたとしても、俺らがボロボロだったら幽々子とかいうやつ運ぶのも大変だからな。怪我しないように隠れてろ」

「…わかりました」

これは凱のせめてもの配慮だった

「さて、終わらせようか」

『うん、勝つよ!』

 

 

ナイトメアは正攻法では倒せない

原作ではギミックを使わなければ倒すことがほぼ不可能なボスであったために、攻略は困難かに思えた

だが、しばらく戦ってみて原作とほぼ変わりなく戦えることが判明した

(確か、動きを止めればコアが露出するんだったよな)

『フラン!エクリプスで動きを止める!コアを狙ってくれ!』

『コアね?わかった!』

凱はエクリプスを使用してナイトメアの動きを止める

すると案の定コアが出現した

『あれね!逃さない!』

フランのエンジェルガイアナイトの顔の宝石が赤く輝く

赤い宝石、司るは燃え盛るような情熱

その色に負けないくらいの赤い炎がフランの剣を包み込む

『いっけええぇぇぇ!!!』

コアに向かって剣を突き刺しそのまま貫く

コアは粉々に砕け散り、ナイトメアの残骸は粒子となって消えていき、メモリだけが残った

ナイトメアの消滅と共に繭も消え、幽々子が解放される

「よっと、ほら助けたぞ」

「幽々子様!」

妖夢が走り寄ってくる

「よかった、無事なんですね」

「まあな、さて。一旦現世に戻るぞ」

「はい!」「うん!」

こうして幻想郷を覆っていたクリフォトの根は取り除かれたのであった

 

 

 

 

 

 

「…以上が白玉楼での戦闘内容だ」

「はい!了解です!」

数日後、凱はとある人物に報告をしていた

場所は紅魔館のバルコニー

相手は

「にしても、お前が《Olympus》とはな」

「私もびっくりです。まさか最後の1人が()()()だなんて

こいつの名前は射山 五月雨(いやま さみだれ)。元の世界の幼馴染で俺の後輩にあたる

スポーツ女子で大会に出れば表彰台に必ず立つくらいのスポーツ女子だった

住んでいるところも近かったのだが、数年前に射山が引っ越して以来連絡は取っていなかったが、まさかこんな形で再会するとは

「でもいいのか?こんなとこでゆっくりしてて」

「はい!私、今度からここの担当になったので!」

「担当って…幻想郷のか?」

「はい!本当は2人で一箇所なんですが…そのぉ…」

「俺がいるから1人、ってか?」

「…はい」

「まあ、頼られる分には文句はねえよ」

「! ありがとうございます!先輩!」

 

そんなこんなで、幻想郷はひとまずの平和を手に入れた

 

 

はずだった

 

 

戦いは終わったが、異変は終わらない

 

彼らの戦いはまだ、始まったばかりである

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます
今回はチルノの『フロストガイアナイト』、敵の魔物『ナイトメア』、オリキャラの『射山五月雨』が登場いたしました。
案外白玉楼編は早かったですね、紅魔館編が長かっただけなような気がしますが
次回からは人里や地底が舞台になります
活動報告に新しい募集があるので見ていただけると幸いです

それと、エンジェルやヴァルキリー、三章のメモリの案をくださった「メモリに憑かれた男」ことメモ男さんありがとうございました!
次回は少し早めに投稿できるかと思います

それではまた次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三章 人里編
第9話 治安維持隊


前回のあらすじ
ティターニアドーパントに苦戦するフランと凱
そこへフロストメモリを使ったチルノが参戦、協力しティターニアドーパントを撃破し大妖精を正気に戻す
大妖精をチルノに任せ、2人は白玉楼へ
そこには血まみれで倒れている妖夢
彼女を治療した後、さらに奥へ進むと繭に囚われている幽々子がおり、行手を阻むようにDMCのナイトメアが立ちはだかる
かなりの強敵だったが凱とフランの連携で突破、幽々子を救出する
そして帰還した凱はこの一連の流れを前の世界での幼馴染で後輩で現在《Olympos》所属の射山五月雨に伝えたのであった

凱たちのメモリはこちら
凱 H A E ?
フラン T E
レミリア ?
パチュリー ?


「すごく暗くなっちゃいました」

深夜の夜道、足早に歩く少女が1人

白い髪に白い尻尾、頭には狼のような耳を持っている

彼女の名は「犬走椛」

普段は妖怪の山でパトロールなどを主な仕事にしている

だが今日の彼女は休暇をもらい人里まで来ていた

「こんな遅くなるはずじゃ…早く帰ろ」

一応2日の休暇なので明日も休みだが、早く帰って布団に入りたかった

そんな彼女の前に

『うぅぅ、うううぅぅぅ』

何かが現れた

「? なんでしょう?あれ」

暗くて色まではわからないが、何かが浮いていた

手や足もなく、袋のようなものが浮いている

「妖怪?…にしては不気味すぎですね」

首を傾げた直後だった

『お前は食えるのか?』

「? 急に何を?」

『まあ、いいか。この際なんでも』

明らかにおかしい

逃げなきゃ、と椛は思ったが

『お前を、食ってやる!!』

 

遅かった

 

 

ーー治安維持隊ーー

 

紅魔館 主人の間

 

凱が幻想入りしてから2ヶ月ほど経った

以前の戦闘で荒れていたのを片づけ元の見た目に戻った主人の間にみんなが集まっていた

メンバーはレミリアにフランにパチュリー、小悪魔に咲夜と美鈴

そして凱の七人だった

「それで?何かわかったかしら?」

レミリアがパチュリーに聞く

「まあね、とりあえずわかったことだけ」

そういうと小悪魔が何か紙を渡してきた

「これは?」

「資料よ、わからない?レミィ」

「も、もちろん!」

「…はぁ、続けるわよ。その紙にはドーパントと、繭を守っていた魔物について書いてあるわ」

「魔物?あれってドーパントじゃないんですか?」

咲夜の問いは尤もだった

メモリを使っていたのだからドーパントかと思っていた

「正確には違うわ、ドーパントは人間や妖怪を媒体にするのに対して、魔物の方は魔力や妖力が媒体になっているの」

「なるほど、だからあんな馬鹿でかいのが出てきたわけか」

「私はそれを魔製生物(マジェスト)と呼んでいるわ」

魔製生物、か。ナイトメアとかのやつもそれに分類されるのか

「だとすると、今後はそっちの対策も必須になってくるわね」

「そうなるわ。これで私は終わりよ」

「んじゃあ俺か。ドライバーとメモリについて話させてもらう」

「お願いするわ」

レミリアは凱に先を促す

「まずメモリだが美鈴と小悪魔のはまだ未完成だ。完成次第ドライバーと一緒に渡すが、いいか?」

「問題ありません!」「わかりました!」

凱の問いに美鈴と小悪魔が答える

「後は、パチュリーとレミリアのメモリだが。どうだ?使い心地は?」

「悪くない、それに《オーディン》だろう?私にピッタリだ!」

「私の《グリモワール》も良好よ。調整し直してくれてありがとうね」

「ならいいんだ、なんかあったら教えてくれ」

レミリアのメモリは新規で作ったが、パチュリーのは調整をし直したやつだ

元はマジェストのメモリだったがそれを改良した

「じゃあ、これでお開きにしようか」

レミリアがそう言った時だった

コンコンコン、と扉をノックする音が聞こえる

「入れ」

「し、失礼します」

入ってきたのは妖精メイドのリンだった

彼女は妖精メイドの中でも長く紅魔館に勤めており、咲夜の次に仕事ができるとレミリアが誉めていた

「あら、どうしたのかしら?」

「えっと、凱様にお客さまです」

「俺にか?相手の名前は?」

「す、すいません。教えていただけませんでした」

「怪しいわね」

「まあ、なるようにするさ」

そう言って凱は部屋の外へ出ながらリンに指示を出す

「そいつをいつもの…いや日陰のテーブルに案内してくれ」

「わかりました!」

 

 

紅魔館 庭園

 

 

「お待たせして申し訳ないな」

「いえいえ、急に来たのは私だから」

日傘を持ってフランと庭の方のテーブルに来た

そこには真新しい制服を着たツインテールの少女がいた。

「初めまして、五十嵐凱だ」

「はじめまして、姫海棠はたてといいます」

「立ちながらもなんだし、座ってくれ」

「はい」

はたてに座るように促す

しばらくしてリンがお茶と菓子を持ってきてくれた

「さて、俺に何の用かな?」

リンが入れてくれたお茶を飲みつつ尋ねる

すると、はたてはこちらを正面に見て話し始めた

「あなたにお願いがあって来ました」

「へぇ、()()()()()の方が俺にか?」

意地悪く言うとはたては困ったような表情をした

治安維持隊

その名の通り幻想郷の治安維持が目的で、主にガイアメモリの取り締まりをしている組織だ

実は組織ができた当初に凱たちに悪絡みしてきた構成員とトラブルがあったのだ

それ以来、凱だけでなくこの出来事を知ってる連中からはよく思われていない

「…あれは完全にこちらが悪かったです、申し訳ありませんでした」

「あー、もう気にすんな。悪かったな掘り起こして」

「いえ、大丈夫です」

「それで?お願いってのは?」

「ガイアナイトのドライバーが欲しいんです」

なんとなく察してはいた

今の維持隊にはメモリを使う手段がない

「戦力不足か」

「はい、今人里で起きている事件を解決するためにどうしても必要なんです」

「事件? なんかあったっけ?」

「ご存じなかったんですか?」

「…最近地下室に篭ってたからな」

「そうだったんですか」

「んで、その事件って?」

「『失踪事件』です。もっとも今は殺人事件ですが」

「詳しく教えてくれ」

「はい、最初に事件は二週間くらい前でした。人間の女性が1人行方不明になったんです。

そこから1人、また1人と行方不明者は増えていったんです」

「それで?」

「その後も事件は続いて昨日の夜、また被害が出たんです」

「死体か?」

「いえ、正確には腕です」

そう言ってはたてがとり出したのは写真だった

そこには焼け爛れた人間の腕と思われるものが写っている

「これか?」

「はい、それと生存者が1人」

はたてはそこで言葉を止める

見るとその目には涙が溜まっていた

「その生存者は、犬走椛っといって、私の…友人です」

はたての声に嗚咽が混じる

「昨日の夜、襲われて、なんとか無事だったようなんですけど、怪我がひどくて」

「…」

「せっかく、休みがもらえて、とっても喜んでいたのに、こんなのって…こんなのって!」

「落ち着け」

「あなたは!」

「今喚いてなんになる?」

「それは…」

「あんたの話はこうか」

凱はカップを置いて話し始める

「人里で起きている事件に友人が巻き込まれた。一刻も早く解決して被害を抑えたいが戦力不足が否めない。だから追い返される覚悟で俺に頼みに来た。そういうことか?」

「…はい。お願いできませんか?」

「だとさ、()()()()()()()()()()()

「?!」

そう言うと後ろから人影が現れる

「気づいてたのね」

「途中からだがな、でどうする?」

「私は賛成よ、これ以上好き勝手されるのも嫌だしね」

「じゃあ決まりだな」

凱ははたてに手を差し出す

「協力してやるよ」

「ほ、本当ですか?」

「嘘は言わねえよ、その代わりドライバーはしばらく先になるぞ」

「はい!ありがとうございます!」

 

人里で起こった連続失踪殺人事件

凱たちを待ち受けるのは果たして?

 

 

 

 

 

 

続く!

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
次回から事件の調査がスタートになります
本当は2個書く予定だったのですが、長くなったので1個にしました
まだ戦闘はしていませんがレミリアの《オーディン》が出ました
今後の活躍をお楽しみに


それではまた次回お会いしましょう!



追記
今回の冒頭に登場したのはメモ男さんのアイディアの敵です


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10話 悪魔の始末書(デスクワーク)/加速の名を携えて

前回のあらすじ
紅魔館で開かれた会議
そこで明らかになったのはドーパント以外の敵『マジェスト』
それの対策も、と考えていた凱の元に治安維持隊のはたてが訪ねてくる
現在人里で起こっている連続失踪殺人事件の調査の協力を依頼され、それに手を貸すことを約束した

今回の凱たちのメモリはこちら

凱 H A E ?
文 ? ? ?


ーー悪魔の始末書(デスクワーク)ーー

 

 

?????

 

部屋の中央にあるデスクに俺は座っていた

同僚のグリフォンドーパント、もとい烏間の始末書を書いていた。あの男は今尻拭いに奔走している

あのお方からは同じ任務だったからと言われて書いているが、正直気に食わん

『コーヒーです、業蓮寺様』

「ん?ああ、ありがとう」

俺にコーヒーを渡してきたのはドーパントの秘書の盤城 飛鳥(ばんじょう あすか)。13年前俺が拾ったやつだ

正確には勝手に付いて来ただけだったので殺そうかと思ったがあのお方に勿体無いと言われてしまったので、今はこうして秘書をさせている

ただ育てるのもつまらなかったので俺が持つ知識と技術を叩き込んでみた

結果は素晴らしかった。今では幹部直属の部隊の司令塔を担い、ゴールドランクのメモリも与えられた。周りからは天才とまで呼ばれている

「嬉しいのはわかるが、できれば戻せ。流石にビビる」

『ああ、申し訳ありません」

そう言ってメモリを取り出す。現れたのは整えられた顔だった

「業蓮寺様の《ベリアル》と同じランクのメモリがいただけたのが嬉しくて」

「…全く」

天才でイケメンで礼儀正しいので組織の中でも人気は上位だ

「で?あっちはどうだ?」

「問題なく、どうやら《ストマック》が動き出したようです」

「…そうか」

「いかがされました?」

「いや、関係ないやつが死ぬのが嫌なだけさ」

「お優しいですね、さすがです」

「褒めるな、あと《チェス》の試運転もほどほどにな」

「はい、わかっております」

 

 

 

 

 

ーー加速の名を携えてーー

 

 

 

 

はたてについてきてほしいと言われたのでついてきたが

後悔している

連れてこられたのは治安維持隊の本部だった

「凱さんを連れてきました」

「そうか、ご苦労だったな」

部屋の奥にいるのは大柄の天狗だった

「お前が、五十嵐凱か」

「そうだが」

「なんでそんなに不機嫌なんだ」

「以前トラブった連中の巣にきて警戒しない方が難しいぞ」

「ははは!それもそうか!」

「笑うな」

この大天狗はあまり得意じゃない

ずかずかと人の心の中に入ろうとしてくる

多少なりと常識があるが

「んで?俺になんのようだ?」

「いやなに、こちらから出す隊員に合わせようと思ってな、文!こっちに来てくれ!」

「はいはい、どうなさいました?」

そう言って出てきたのは黒髪のショートヘアの少女

「文、こいつが協力者の凱だ」

「初めまして、射命丸文と言います」

「おう、よろしくな」

挨拶しながら握手をする

すると

「お前、文さんについていけんのかよ!」

「本当は弱いんじゃねえのか!」

近くで見ていた天狗どもが煽ってきた

「めんどくさ、さっさと行こうぜ」

「まあ、待て」

「あ?」

「互いの実力を確かめる良い機会だ、手合わせしてみろ」

「はあぁ?!なんでそんな…。おい、あんたからもなんか」

「そうですね、やってみましょうか」

「クソガァ!」

と、いうことで俺と文の実践訓練が始まる

 

 

「準備はいいですか?」

「いいけどよ、こんな中でやるのか?」

かなり広い闘技場みたいなとこに案内された

しかも客席満員って、みせもんじゃねえよ

「ルールは?」

「そうですねぇ、じゃあ互いが降参するまでで」

「はぁ、わかったよ」

どうせ相手は生身、そこまで気張る必要は……

ガスッ

ん?なんの音だ?

文の方を見ると地面に一本の剣が刺さっている

しかも、DMCのレッドクイーンが

 

へ?

 

「言っておきますが」

文が腰に何かを巻き付ける

形は違うが()()()()()()()()のように見える

「本気できてくださいね?」

《アクセル》

そして、変身した文がレッドクイーンを持って突っ込んできた

「いや!待て待て待て!』

急いでヘファイストスに変身し攻撃を受ける

『この程度じゃ終わりませんよ!』

そういうや空高く飛び上がり急降下してくる

『あーもう!』

半ばやけくそになった俺は文の一撃を迎え撃つ

その一撃はとてつもなく重かった

だが、どこか、違和感のある一撃だった

『この程度ですか?がっかりです』

 

 

『なんだと?』

『もう少し強いかと思ったんですがね』

 

 

流石に

 

 

ブチ切れる

 

ガキン

『え?』

 

次の瞬間文が地面に叩きつけられる

その手にあったレッドクイーンはいつの間にか遠くへ投げられている

『ま、まだ!』

起き上がり拳を繰り出そうとする文の腕を掴み、勢いを封じさせ再び叩きつける

『がはっ!』

『おい、まだ殺るか?』

「そこまで!」

大天狗が終わりを宣言したので文から離れ、メモリを抜く

「強さは十分わかった。凱、文、互いに協力するように」

「言われなくても、そのつもりだ」

大天狗の方に歩きながらそう言葉を返す

すれ違いざまに

「文を任せる」

「ああ、任せろ」

小声で話したが、闘技場に巻き起こる歓声の中では2人以外の耳には入ることはなかった

 

 

「…強い」

文は自室で凱の強さを改めて感じていた

最初は自分の方が押していたはずだった

なのに、実際は手を抜かれていたのだ

手を抜いていてあの強さ

おそらく今の自分では()()2()()()使()()()()勝てないだろう

「…休みましょうか」

とりあえず今日は疲れたので休むことにする

調査は明日からだ

これ以上犠牲を出さないために

椛のためにも私は強くならねばならない

 

 

 

 

 

 

続く…

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
今回は敵幹部の業蓮寺と盤城、新しい味方の射命丸文が登場しました!
尚、チェスメモリと文のメモリで座員などはメモ男さんに手伝っていただきました
マジ感謝です!
次回は人里へ赴き聞き込みです!


それではまた次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第11話 聞き込み開始/過去を司る少女

前回のあらすじ
はたてに治安維持隊の本部へつれていかれた凱
そこで「実力の確認」という名目で射命丸文と戦闘に
激戦の末、見事に文に勝利する凱
そんな凱の強さを、文は羨ましく思うのであった

現在の凱達のメモリはこちら
凱 H A E ? ?
文 A(アクセル) ? ?
阿求 ?


ーー聞き込み開始ーー

 

 

人里にて

 

「じゃあ、始めるか」

凱と文は聞き込みのために人里へ来ていた

「聞き込みって、意味あるんですか?」

「まあ、なるようになるさ。にしても、思ったより少ないな」

休日の朝だというのに人の数は思ったよりも少ない

「例の事件で出入りが減っているんでしょう」

「そうか、さっさと片付けないとな」

「ですね。二手に分かれましょう」

「わかった、終わったら俺のとこ来てくれ」

「わかりました」

そう言うと文は羽を広げて飛んでいった

「さて、聞き込むか」

片っ端から聞き込むとしよう

ついでに現場も見ておくか

 

 

「んーわかんないねえ」

「そうか」

色々と聞き込んでいたら腹が減ったので団子屋で団子を食いながら店の女将さんに聞いていた

「あたしたちは普段夜は出歩かないからねぇ」

「そうか、情報提供感謝する」

「ごめんよ、力になれなくて」

「いいさ、必ず解決するから、それまでは気をつけてくれ」

「ああ、あんたらも気をつけるんだよ」

「もちろん。あ、これお代」

「あいよ!毎度あり!」

さて、念には念を押しておこう

 

 

 

夕刻

 

「お疲れ、射命丸」

「お疲れ様でした」

日が暮れた頃、凱と文は合流した

「どうでしたか?」

「いや、目ぼしい情報はなかったよ。そっちは?」

「ドーパントに対しては何も、ただ気になることが」

「なんだ?」

「最初の被害者である三人はどれも共通して賭博好きだったそうです」

「ふむ」

「関係ありますかね?」

「知ってて損はないさ。それよりこの後どうする?」

「そうですね、一箇所行きたいところが」

「構わないが、どこに行くんだ?」

「人里で一番物知りな方のところです」

 

 

 

 

ーー過去を司る少女ーー

 

 

「ここです」

「ここは?」

連れてこられたのは一軒の館だった

和風の屋敷でどことなく白玉楼に似ている

門の所には『稗田』と刻まれている

「さ、行きますよ」

「へいへい」

 

「こんばんわ、阿求さん」

「こんばんわ文さん、今日はどうしました?」

館の部屋の一室に1人の少女が座っていた

黒っぽい髪に和服がよく似合う少女だった

「そちらの方は?」

「こちら、五十嵐凱さんです」

「初めまして、凱だ」

「はじめまして、稗田阿求です」

そう言って彼女はこちらの顔を見つめる

「なんだ?そんなに変か?」

「いえ、まさか()()()()()()()()()()()()

彼女はいつの間にか彼女の腰に巻かれていたベルトにメモリをさす

《パスト》

 

「は?」「なるほど、同類か」

『驚かないんんですか?凱さん』

急な変身に文は驚いていたが、凱は平然としていた

「まあ、雰囲気から気づいたからな」

『そうですか、ちょっと残念です」

阿求はそう言いながら変身を解除する

「《パスト》か、大方過去の出来事の再現か?」

「鋭いですね、さすがエクストラランクを持ってるだけはあるようですね」

「あのー、そろそろ」

「ああ、すいません『検索』でしたね」

「すいませんお願いします」

阿求は頷くと立ち上がり手を広げるような格好になる

「なんだあれ」

「なんでも、『星の記憶』とやらが使えるそうで」

「まじか」

原作の『地球の本棚』、あれがここで出るのか

 

 

「それで?何を調べればいいのですか?」

「調べたいのは『メモリ』単語は『失踪』『捕食』で」

「…もう少し絞れませんか?」

「えーと、『ドーパント』で」

「…127件該当します」

「多いですね、うーん」

頭を悩ませる文

 

試してみるか

凱は頭の中で写真や現場の雰囲気を思い出す

「阿求、いいか?」

「どうぞ」

「対象は『メモリ』、単語は『捕食』『浮遊』『酸』で」

「…! ヒットしました」

「名前は?」

「《ストマック》、ランクはミドル」

「なるほど、胃袋か」

「なんでわかったんです?」

「それはな…」

凱が何かを言おうとした時だった

 

 

ビーッ!ビーッ!

「?! なんの音ですか!」

「かかったか、行くぞ射命丸!」

「え、は、はい!」

「お二人とも、お気をつけて!」

急な警報音に文は驚くが、凱が急かすのでついていった

 

 

 

「今のは!」

「これだよ!」

凱の腕にはメモリスロットが取り付けられていた

「急拵えの補助スロット、そこに《トラップ》さして人里に張ってたんだ!」

「じゃあ!」

「ああ!この先に…あれか!」

凱と文の目の前に現れたのは宙に浮かぶ袋のようなドーパントだった

「行きましょう!凱さん!」

「ああ、やるぞ!」

『ああ?なんだおめえら?』

こちらにストマックが気がついたようだった

逃げられる前に倒す!

「変身!」

《へファイストス》

「変、身!」

《アクセル》

『めんどくせぇ、食っちまうか!』

 

 

2人のガイアナイトと事件の犯人が激突する

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
今回新規登場したのは阿求の《パスト》、凱のトラップでした
次回、ストマックドーパントとの決着です!お楽しみに


ストマックのアイディアを下さったメモ男さん、ありがとうございました!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第12話 限界のその先へ/裏切り

前回のあらすじ
人里へ聞き込みに行く凱と文
しかし目ぼしい情報は得られなかった
そこで2人は人里一の知識人である稗田阿求の元を訪れる
そこで知った事実、なんと彼女はエクストラランクの《パスト》メモリに地球の本棚が使えると言うとが判明
そんな彼女の助力があって犯人を特定
そして凱が予め設置していた《トラップ》メモリの罠に反応があった
現地に向かった2人は今回の犯人のストマックドーパントと接敵する


現在の凱達のメモリはこちら
凱 H A E T(トラップ) ?
文 A ? ?
阿求 ?


 

 

ーー限界のその先へーー

 

 

 

 

数分前…

 

文と移動している際の時

「なあ、射命丸」

「どうしましたか?」

「何本使えそうなメモリがある?」

「全力で使えるのは2本、少しだけ使えるのが1本です」

「何を持ってるんだ?」

「《アクセル》と《トライアル》が全力、《オーバーヒート》は制限付きで使えます」

「なるほどな、オーバーヒートって?」

「高火力なんですが、長時間使っちゃうと暴走して炎が出るんですよ」

「まじか、まあ使えなくはなさそうだな」

 

 

 

現在

 

 

 

『射命丸!援護してやるから行け!』

『はい!』

ストマックに向かって接近する文

『邪魔をするなぁ!』

ドーパントがこちらに向かって液体を飛ばすが、間一髪で回避する

地面に落ちたそれはシュウシュウと音を立てて土を溶かしていく

『てやぁ!』

文がレッドクイーンで斬り付けるが無傷だった

『な?!』

何度も何度も斬り付けるが一向にダメージは入らない

『よけろ!射命丸!』

その声に横によける

するとドーパントに向かって地面から何かが突き出ていく

それは剣や槍や斧など、さまざまな武器だった

へファイストスを使った凱の新技だった

しかし

『刺すのもダメか!』

ドーパントにダメージはない

『射命丸!手数で押せるか?!』

『やってみます!』

文はドーパントから距離をとるとメモリを入れ替える

《トライアル》

文の体が青く染まる

『てやあぁぁぁぁ!!』

目にも止まらない連撃が繰り出される

しかし

『効かねえなぁ!!』

効果はなかった

『そんな?!』

『連撃もダメか!』

あらゆる手を尽くしたが決定打になるものはなかった

一体、どうすれば…

 

その時、一つの考えが文の頭の中で閃いた

 

 

体には攻撃が効かない

ならば()()()()()()()

いけるかもしれない

 

『凱さん!足場を!』

『はぁ?!一体何を……!』

凱は疑問を持つが、文がやろうとしていることを察する

『仕方ねえな!』

凱はストマックの後ろに回り込み巨大な坂を作り上げる

それはまるで鉄棒の逆上がりに使う上り坂のようだった

『流石です!』

文はドライバーに最後の一本を差し込む

《オーバーヒート》

文の体が再び赤く染まる

しかし、アクセルとは違い、背中についていたウイングなどが変形し、タイヤになる

背中には巨大なスラスターが装着される

 

そして

『いっっけえええぇぇぇぇぇ!!』

思いっきりストマックに体当たりし、そのまま坂を駆け上がり

一瞬にして天高くまで昇る

 

 

それを見ていた凱は

『戻る時どうするきだ?しゃーねーな』

そう言ってメモリを差し直すのであった

 

 

 

 

幻想郷上空

 

 

一瞬にして駆け上がった文はストマックの口に右手を突っ込んだ

『な、何を!』

『あなたの体は強固です。しかし、中から焼かれては耐えられないでしょう!』

『や、やめろ!やめろおおぉぉぉ!!』

オーバーヒートは、メモリの出力の限界に到達し

 

巨大な火柱をほとばらせる

『燃えろおおおぉぉぉ!!』

 

 

「あ?ここは?」

いつの間にか夜は明けている

変身は解けてしまっている

見ればドライバーはほとんど壊れてしまっていた

中のメモリはかろうじて無事だった

ストマックの姿は見えない

しかし、問題は

現在、落下中という事である

「ああ、死にますかね。私」

羽を広げる力も残ってない

ただ下に、下に落ちていく

 

 

『あぶねえな、天狗が落下死は洒落にならんだろう?』

文を支える者がいた

その背中には黒い羽が四枚備わっている

「が、凱さん?」

『おう、お疲れ様だったな』

「はい、疲れました」

 

下に降りた後、既に回収されたストマックの資料を眺めながら、凱と文は並んで歩いていた

ちなみに、ストマックはあまりの怪我だったので永遠亭に運ばれた

「飯塚、平五郎(いいずか へいごろう)ですか?」

「ああ、賭博好きで健食家。金儲けに行った賭博でイカサマをされて破産、そんな中ストマックメモリに出会って、復讐を果たす。

しかし、なんらかの不調でメモリが取り出せず、メモリの毒に侵されて犯行を行なった。以上」

「恐ろしいですね」

「まあな」

なるほど、事情はわかった

しかし、気になることがひとつ

「そういえば一ついいですか?」

「なんだ?」

「なんであの時、すぐに特定できたんですか?」

「ああ、検索の時か」

あんなに的確に候補を絞った理由がわからなかった

「写真と現場を見て、だな。

まず、『捕食』あれは腕の骨の断面から。

切り裂いたにしては荒いし、へし折ったにしては真っ直ぐだった。死体も見つかってないから食ったんじゃ無いかと思った。

次に『浮遊』あれは現場の写真から。

もし相手が地に足をつけるタイプならもっと地面はぐちゃぐちゃのはず、それに足跡も複数あるはず、と思った。」

「なるほど、『酸』に関しては?」

「地面の砂利と腕。変に形が崩れた小石が現場にあったし、腕についてた肉が溶けてたからな」

「…よく見てますね」

「まあな。っと、ここで別れるか」

「今回はありがとうございました」

「おう。気をつけてな」

そこで俺たちは別れた

その後、紅魔館に戻った俺を迎えたのは

ボロボロになった亡元や、泣き腫らした五月雨たちだった

「おい、何があった」

「凱君、落ち着いて聞いてくれ」

亡元から出た言葉は

「《Olympus》は壊滅状態だ」

 

 

 

 

ーー裏切りーー

 

 

「これはどういう事ですか?!」

「わからん」

業連日のオフィスで盤城は声を荒げた

手には報告書があった

内容は

こちらの幹部がOlympusの幹部六人を殺害したと書かれていた

「どうして、何故?!和平を結ぶのではなかったのですか?!」

そう、元々彼らの目的は平和な世界だったはずだ

「なんでこんなことを…!」

「ば、盤城様」

彼の背後には三人の男女が

彼らは盤城の部下だ

「…」

何を思ったか業蓮寺が立ち上がり部屋を出ていく

「ご、業蓮寺様?」

彼に続くように4人も続く

ついたのは拠点の出口、世界移動用のゲートだった

「な、何を」

「俺は組織を裏切る」

「?!」

衝撃の一言だった

「今の組織は崇高な目的を忘れ、地に堕ちた。これ以上はついていけん」

「…」

「お前たちは戻れ」

「嫌です」

「?! 何を!」

「あなたが裏切るのなら我らも行きます!私のこの命はあなたのために捧げると誓ったのです!」

「盤城」

業蓮寺は迷った

そして

「後悔はないな?」

「はい、微塵も」

盤城も彼の部下も覚悟を決めたようだった

『見過ごせねーよなぁ、おい』

「「「「「!!」」」」」

その声は後ろから

白い殻に赤い関節を持つ蜘蛛のような見た目の男がいた

彼の背後にはマスカレイドたちも

「《ファントム》!なぜあんなことを!」

『ああ?あーそっか、てめえらは知らなかたのか』

ククク、と嗤いながらドーパントは告げる

『俺らの目的は殺戮だ、平穏なんざ望んじゃいない。お前らは利用されたんだよ』

「ば…馬鹿な!」

『いい子ちゃんで気に食わなかったが、ちょうどいい、まとめて焼き殺してやるぜ!』

「させるか!』

ベリアルをつかい、ファントムの攻撃を受け切る

『その先は幻想郷に繋がっている!行け!』

「しかし!」

『行けぇ!!』

業蓮寺に怒鳴られ、少しの間固まってしまったが、我に帰る

「…わかりました、いくぞ!」

「「「はい!」」」

盤城と部下は、ゲートをくぐり幻想郷を目指す

 

 

 

 

続く…

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
察してる方もいるかと思われますが、《Olympus 》の幹部が何人か死亡しました
原因と誰が亡くなったかは次回の最初に
今回登場したファントムはDMCの一作目のやつです
次回から組織の実動部隊や刺客との戦いが始まります
しばらくは三章の物語です

あと、凱が最後に使ったメモリは次回しっかりと登場します


それではまた次回、お会いしましょう…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第13話 現状確認/姫をつれて

前回のあらすじ
凱サイド
文の作戦により、見事にストマックドーパントを撃破した凱
しかし、紅魔館に戻った彼を待っていたのは、衝撃の事実だった

盤城サイド
戦闘報告書、それに書かれていたのは敵組織の幹部抹殺の報告だった
平穏を目指していたと思っていたのは自分達だけだと知った盤城達は、幻想郷を目指す
その際、幹部の《ファントムドーパント》に見つかるが、上司であり恩人の業蓮寺の援護があり、なんとか幻想郷に続くゲートをくぐることが出来たのであった


今回の凱のメモリはこちら
凱 H A E T ?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今回は作者がDMC 要素で一番気に入っているものが登場します




 

 

ーー現状確認ーー

 

 

 

 

 

紅魔館

 

「それで、何人残っているんだ?」

凱は亡元に問う

「残っているのは私と五月雨、ゼウス、ヘスティア、アテナの五人だ」

死亡者は5人、全員がサーガクラスのメモリだったのに、何故?

「何故そんなに殺された?」

「我々が色な次元の管理をしていることは知っているかね?」

「ああ、前に言ってたな」

「今回、死亡したのはそこで停戦協定を結んでいたはずの場所を担当していた者達だった」

「なるほど、油断して変身する間もなく、か」

「恥ずかしい話ではあるがね」

「相手は?」

「確認したのは《ファントム》《グリフォン》《ニーズヘッグ》《エキドナ》《ゴリアテ》だ」

「……そうか」

「何かあるかね?」

「ねーよ」

「そうか、我々は今後も戦う。君にも協力を願いたいのだが」

「当たり前だ。こんだけ殺られて終われるか」

「……すまない。それで五月雨君のことだが」

「大丈夫なのか?あいつ」

「今は立ち直れないようだが、きっと大丈夫と信じるしかあるまい」

「そうだな、後もう一つ。死んだ奴らのメモリは?」

「ここに、我々のメモリは所有者が死ぬとこうやって転送されるのだよ」

「そうか、じゃあ何かあったら連絡くれ」

「わかった」

「ついでに言っておく」

「何かね?」

「もし、連中をこっちが見つけたら、処理は俺がやる。文句は受けん」

「いいだろう、ではまた」

そう言って亡元は転移した

 

 

 

 

「……」

「…お兄様」

紅魔館のホールにて、凱達はいた

「かなりショックなんでしょうか?」

「まあ、急に死亡者が出たからね」

「きっと、心に傷が出来たのよ」

などと言っていると

ビーッ!ビーッ!

凱の持つデバイスが警報を発する

「……魔法の森か」

そう言って凱はホールを後にする

「お兄様!」

「フラン達は待機」

「でも!」

「何があるかわからない、待ってるんだ」

「…わかった」

 

 

 

 

「さて、飛ぶか」

紅魔館を出た凱はメモリを差し込む

それは、彼の新しい力であるメモリにして

戒めであった

 

 

 

 

 

 

ーー姫をつれてーー

 

 

 

 

魔法の森にて

 

 

 

 

盤城達は追われていた

相手は組織の下っぱのマスカレイドドーパントだ

本来なら造作もなく排除できるのだが

「くそ、なんでベルト使えないんすか?!」

「おそらく制限されているんだ」

「私達が裏切った時用ですか?」

「おそらくね」

そう、彼らのベルトは使えなかった

「すいません、私がいなければ…」

そう言うのは盤城の部下ではない、一人の少女だった

彼女は《Devil Castle》のボスの妹であった

元から穏健派の彼女は一刻も早く逃げたがったが警備がきつく、盤城達の起こした騒ぎで脱走し、合流したのであった

「大丈夫です、姫様」

「しかし…」

「! 止まれ!」

彼らの前に一人の男が立ちふさがる

その周りをマスカレイド達が包囲する

「やっと追い付いたぜ」

「その腕、《デビルブリンガー》か!」

「ほう、知ってんのかよ」

男はそう言うとその異形の腕を見せびらかす

「俺は適合できてよ、お前ら殺せば幹部にしてもらえるんだと」

「この方も殺すのか」

目の前の男は姫を一瞥し鼻を鳴らす

「ああ、処分の許可はおりてる。お前らの後に楽しませてもらうさ」

下衆な笑みを浮かべる男

なす術はなかった

「さて、まずは誰かr」

バチュン

「は」

男のデビルブリンガーが切り飛ばされる

落ちた先には

『まさか、こんなものまで在るとはな』

それは背中に四枚の羽を持ち、大剣を携えた何者かであった

「何しやがる!返せ!」

『邪魔』

凱は男を剣で一薙ぎする

それだけで男の体は肉片になり飛び散る

その瞬間、デビルブリンガーは四枚羽の男の右腕に吸収される

マスカレイド達は凱に視線を向けた

盤城達はその男を見ているしかなかった

(デビルブリンガーに適応した?!こいつは一体?)

『お前らに忠告してやる』

男からひどく冷たい声が放たれる

『俺は今、機嫌が悪いんだ』

 

 

『死にたいやつだけかかってこい』

 

 

 

 

反応があった場所に来てみれば、なんだこれ

デビルブリンガーを持つ不細工にマスカレイドの群れ

群れの中央には男が二人と女が三人

敵対してるみたいだが、まあ終わったら聞こう

なぜか俺の手にデビルブリンガーが吸収されたのも今はどうでもいい

マスカレイドどもじゃあ収まらないかもだが、構うものか

 

 

皆殺しだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます
今回は急な幹部死亡とお姫様に登場していただきました
あっさりですが今回はここまで

それではまた次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第14話 疑惑の亡命者

前回のあらすじ
亡元から今回の被害を聞いた凱
そんな中、凱の仕掛けたトラップに反応が
現地に向かうとそこにはデビルブリンガーを持った男とマスカレイドの群れ
それに囲まれる五人の男女が
新メモリを使いデビルブリンガーを持つ男を強襲
デビルブリンガーを奪った凱は
自分の中に眠る殺戮衝動を発散するために蹂躙を開始する

今回の凱のメモリはこちら
凱 H E A T ?


『どうした?その程度か!』

大量にいたマスカレイド共を切り伏せ、叩き潰し、ねじ伏せていく

先ほどわかったが、こいつらは中身が存在しない人形のようだ

心置きなくブチコワセル

新メモリ《ルシフェル》の試運転にはもってこいだ

大剣を振り回し、雷撃を落とし、暴れ回る

 

 

『さて、これで終わったかな』

あたりにマスカレイドが見えなくなり、静かになった

『ふう、さっぱりした。さて」

変身を解いた凱は中心にいた男女に近づく

先ほどまでの怒りやら何やらは全て吹っ飛んで清々しいくらいである

「あんた、ガイアナイトか?」

「ほう?その名前を知ってるってことは、お前らはドーパントか」

「…殺すか?」

「なんで?」

「え」

「あんたらは訳ありでこっちに逃げてきたんだろ?だったらさっきの連中の敵、少なくともそれは確定してる。襲いかかってきた訳でもねえから殺しゃしねえよ」

「本当か?」

「ああ。もっとも、お前らが殺りたいっていうなら相手になるが?」

凱の言葉を聞いた盤城はそれを信じることにした

「まあ、ここじゃ話もなんだな。ついてこい」

「何処へ行く気だ?」

「俺の仲間のとこだ」

「…わかった」

 

 

ーー疑惑の亡命者ーー

 

紅魔館 ホール

 

凱に連れてこられた盤城たちはホールに案内された

そこで待っていたのは霊夢や魔理沙たちであった

凱に促され、自分達が持つ情報を洗いざらい話した

自分達は魔界の政府の組織、《Devil Castle》の幹部で後ろの三人は自分の部下であること

隣の少女は組織のトップの妹であること

組織の思想が変えられ、自分達の望む未来とは別物だったこと

そして、組織から命を狙われていること

残さず全て話した

「…以上僕たちが持っている情報です」

「信じてもらえるとでも?」

最初に言葉を発したのは霊夢であった

「そんな作り話みたいなこと信用できるわけない」

「でも!」

「私も同感だ」

「?!」

霊夢の方を持つのはレミリアだった

否、レミリアだけではない

その場にいるほぼ全員が疑わずにはいられなかった

「それでも…」

「ドーパントのことは信用ならないわ、この場で仕留める!」

霊夢がメモリを取り出す、それにあわせ他の面々もメモリを構える

(仕方がないとはいえ、せめて姫様だけでも…)

「待てよ」

それに待ったをかけたのは凱であった

凱は4人が持っていたドーパント用のベルトを弄っていた

「?! なんで止めるのよ」

「確かにこいつらは組織の人間だ。だが、俺はこいつらを敵だとは思わない」

「…なんで?」

「お前らは見ていないだろうが、こいつらは完全に組織から敵視される存在になった。それに、これを聞かされちゃあな」

そう言って凱が取り出したのはボイスレコーダーだった

ボタンを押すとと先ほどの凱たちのやり取りの音声が再生される

「現にこいつらを殺して幹部になる、ってやつまで出てきてるしな」

「だからって完全に信用しようっていうの?」

「普通なら信用しないが……どうだ?《さとり》?」

凱の声で現れたのは地霊殿の主人、古明地さとりであった

「紫に言って連れてきてもらったんだ、んで?」

「さっきから見ていましたが嘘は言っていないようです」

「隠し事もなしか?」

「そのようです」

「…だから信用するの?」

「ああ、それに魔界と幻想郷で和平を結べるんならそれに越したことはない」

「何を勝手に!」

「紫はそれでいいってさ」

「な?! でもそれをOlympusが許すとは…」

「文句は言わないって約束だからな、いざとなったらその時のことさ」

あくまでも楽観的のような話し方の凱

「…私も、信じたいな」

「フラン?!貴女まで?!」

「もう、これ以上争いたく無いもん!みんなが平和になるんならその方がいいにきまってるよ!」

そこへ

再び警報が鳴る

「?! どこなの?!」

「ああ、ここだよ」

その時大量のマスカレイドが入ってくる

一気に来た大群の中から、1人の女性が

「見つけたわよ〜?」

「な、何よこいつら」

「敵さんだろうよ、こいつらのベルトの中に発信機があったからな」

「気づいていたの〜?」

「ああ、まあな」

「ま、いいわ。そいつら渡して」

「断ったら?」

「あんたは…私が可愛あってあげる。他の下等種は殺すわ〜」

そう言って女はメモリを首にさす

《ネット》

女は網を纏うような姿になる

『さっさとしましょうか』

「だ、そうだが。これでも信じないか?」

「…わかったわ。信じる。その代わり、協力しなさい」

「それでいいか?盤城飛鳥?」

「飛鳥でいい。それで信じてもらえるなら喜んで協力しよう」

『さっきから、無視すんじゃ無いわよぉ!』

ネットドーパントが痺れを切らす

「ほら、これ」

「これは、メモリにドライバー?」

「お前専用のドライバーだ。メモリはガイアナイトに改良したがな」

「いいのか?」

「やられたままは嫌だろう?」

「…恩に切る」

『だ〜か〜ら〜!無視すんじゃ無いわよ!』

「お前の相手はこの僕だ!」

盤城はそういうとベルトを装着し、メモリを起動させる

「変身!」

《チェス》

『これが、僕の新しい姿、新しい力だ!』

チェスガイアナイトはその手に持つ剣でネットドーパントを切り裂く

『そ、そんなぁ〜」

女を倒し、メモリを回収した

「十分使えるな」

「ああ、ありがとう」

「どういたしまして、そしてこれからもよろしくな?」

「ああ、よろしく頼む」

 

 

新たに仲間に加わった盤城と部下と姫

彼らと共に組織を倒し、平穏を手に入れることはできるのか?

 

 

 

 

続く!




ここまで読んでいただきありがとうございました!
今回は新メモリの《ルシフェル》の初戦闘でした!
次回以降も人里編は続きます
出してないドーパントやメモリがあるので、それを出そうかと
あ、盤城の部下や姫の名前も次回以降明らかにして行く予定です

それではまた次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第15話 平和な日常

こんにちは、フォーウルムです
今回の話は凱以外のキャラたちのお話です
凱は出てきますが戦いません
どうやら私の描く小説の主人公は女誑しになる傾向があるようです…


巫女の恋心

 

『あはははは!ついてこれまい!』

霊夢は人里で戦っていた

急に出現したドーパント(変身時にパウダーと名乗った)は非常にすばしっこかった

蛾のような見た目をしており粉を撒き散らしながら飛行する

その粉は厄介で、吸い込んだ者の動きを制限するようだった

しかも

『ははは!吹っ飛べ!』

『くうっ!』

粉を使った爆発攻撃までしてくる

『面倒ね。……使ってみましょうか』

そういうと霊夢は一本のメモリを取り出す

《スパークリング》

霊夢の体が青く変わり、体からシャボン玉のようなものが複数出現し、弾ける

『な?! 爆発しねえ!』

辺りはじっとりと湿って、粉は爆発できなくなっていた

『馬鹿ね、止まるなんて』

『あ?! ぐはぁ!」

男が焦った隙をついて仕留める

メモリが排出された男はうなだれて懺悔をしていた

その男はどうやら妖怪のようだった

「仕事が見つからなくって、やけになったんだ。何もうまくいかなくって…」

「だったら治安維持隊の偵察隊は?あんた空飛ぶの上手いから雇ってもらえるかもよ?」

「ほ、本当か?!」

「ちゃんと罪を償いなさいよ」

「ああ、わかった」

そう言った男は維持隊に連行されていった

「はぁ、全く。……あれは?」

霊夢が見つけたもの

それは《パウダー 》のガイアメモリだった

(持っていったらあいつ()が喜ぶかしら?)

ふとそんなことを考えて、ハッとする

(な?! なんであいつのこと考えてるのよ?!)

最近こういったことが増えた

特になんでも無いのに急に頭に凱のことが思い浮かぶ

(別にあいつのことが好きだなんて?!…好きだ…なんて…)

凱のことは前から気にかけていた

彼が幻想入りした時と今とではかなり変わってしまった

明るかった印象は次第に暗く、どこか近寄りがたくなるくらいに落ち込んでいた時もあった

今は頼れる仲間として見ているが、どうしても異性としても見てしまう

「はあ、帰りましょうか」

仕事は片付けたので帰宅しようとする

「…その前にあいつのとこ行こうかしら」

心に芽生えた不思議な感覚を胸に、霊夢は紅魔館へ歩みを進める

 

 

 

 

天狗少女の憧れ

 

 

「ふっ、ふっ」

治安維持隊の本部の一室

トレーニングルームに文はいた

ストマックの件でそれなりに怪我を負った文だったが、最近になってリハビリがてら筋トレをしていた

いや、リハビリというのは単なる口実だった

本当は…

(うう、恥ずかしいいぃぃ!)

単なる照れ隠しであった

ストマックを空中で倒し、疲れ切った文はただただ落下するしか無かったのだが

それを空中で助けてくれたのが凱だった

その時にお姫様抱っこをされたのだが

それ以来、凱のことを考えるたびに鼓動が速くなるのがわかるくらいになってしまった

「はあ、一体どうしちゃったんでしょう、私」

「あ!いたいた!」「文さーん!」

そんな文に声をかけたのは

「おや?はたてに椛じゃ無いですか」

彼女の同僚の姫海棠はたてと犬走椛であった

 

「…なるほどねぇ?」「そうだったんですか」

「私って変なんでしょうか?」

文は2人に先ほどのことを話していた

凱のことを考えると鼓動が早まり、心が苦しいと正直に話したのだ

「文、それはあれよ」

「なんです?はたて?」

「何って、恋よ」

「こ、恋?!」

「そうですよ!恋ですって!」

「椛までぇ?!」

急な2人のカ発言に目を白黒させる

「そっかー、文にもついに恋の季節が来たか〜w」

「笑わないでくださいはたて!」

「あ、そうそう。文さんに伝言が」

思い出したように椛が文に伝える

「なんです?」

「凱さんが『ドライバー出来たから取りに来い』と」

「…はーい」

成り行きで紅魔館に行くことになった文

(いっそのこと言ってしまいましょうか、ああでも、凱さんにはフランさんがいるんでしたっけ)

 

 

 

心配する2人

 

「出てこないね」

フランはとある地下室の前の椅子に腰掛けていた

その中には()()()()()作業している人物がいる

「ほんとですね、無事なんでしょうか?」

フランの隣にいるのは『リーナ・フェルグバルト』

盤城達と共に逃げてきたお姫様である

最初は皆からは良く思われてはいなかったが今ではすっかり仲良くなっている

「ところでフランさん」

「なあに?」

「凱様と付き合ってらっしゃるんですか?」

「……ううん、まだだよ」

「え?! でもキス…」

「したよ! したけど」

そう、フランと凱はまだ付き合っていないのだ

「あのときは、何とかお兄様を落ち着かせようと思って…その」

「…勢いで?」

「…うん」

「……まあ、何とかなりますよ」

「……………そうだよね、そうだといいな…」

「…それにしても、お二人とも出てきませんね」

「覗いてみる?」

「そうしましょうか」

そう言って二人は地下室の扉をあける

 

 

 

 

徹夜明けの癒し

 

 

 

 

「あ~、終わった終わった~」

「お疲れさまでした~」

「おー、あーやべぇ。疲労感パネエ」

紅魔館の地下の研究室

そこに凱と盤城はいた

二人とも、かなりの徹夜だった

「何日こもってたんだ俺ら?」

「咲夜さんの料理を食べた回数が6回だから、2日か3日ですね」

「良く頑張ったな、俺ら」

否、実際は5日間である

食べるタイミングを逃しただけで、実際には5日も籠っていたのだ

「3日籠ってたにしては、きれいだな」

「まあ、シャワーありましたしね」

「だな、それよりもそれ持ってけ」

凱が指差す先には、三本のベルトが

「わざわざありがとうございます」

「いいんだよ、これからもよろしくな」

そう言いながら二人は部屋を出ようとする

すると

 

ガチャッ

 

勝手にドアが開いた

「え?! って姫様?!」

「飛鳥?あなたどれだけ籠ってたかわかりますか?」

「3日ですね」

「5日よ」

「うそ?!」

「ほんとよ、全く。こっちに来なさい!」

「あ、ちょ。まってください」

「待ちません!」

そんなやり取りをしながら飛鳥はリーナに連れていかれてしまった

「お兄様?」

「…わかった、徹夜しすぎたのあやまるから」

「しっかり休んで!」

「わかった!わかったから引っ張らないでくれ」

フランに引っ張られる形で部屋に連れていかれた

 

 

凱の自室

 

 

「ほら、横になって!」

「…ああ」

凱をベットに寝かせるフラン

「しっかり寝なきゃだよ」

「…わかった、よっと!」

「え? きゃあ?!」

油断していたフランは凱に布団に引きずり込まれ、抱き枕のような扱いをされる

「あー、あったけぇ」

「ちょっお兄様?! さすがに恥ずかし……」

「………」

「…寝ちゃった」

フランに抱きついたまま凱は寝てしまった

起こさないようにフランは体の向きを変える

目の前には、気持ちよさげに眠る凱が

「……ふふっ。お疲れさま」

 

リーナの自室前

 

 

 

「どうなってやがる?」

「わからないわ」

「…」コクコク

リーナの部屋の前に三つの人影が

それは盤城の部下達であった

名前は上から『ジン』『モナ』『ファス』である

彼らが覗く部屋のなかには……

リーナに膝枕をされる盤城の姿が

「きっと疲れてらっしゃるんでしょう」

「だからって、膝枕か?」

「……いいの」

「はあ、ったく。じゃあ俺らで見張りするか」

「うん」「………」コク

 

 

 

数分前

 

 

 

「……あの」

「どうしました?」

「いや、何故に膝枕なのですか?」

盤城はリーナに膝枕されていた

「このほうが良く眠れるんでしょう?」

「……恥ずかしいです」

「……飛鳥」

「はい?」

「ありがとう、私のために、頑張ってくれて」

「…いえ、当然の事です」

「だからといって無理はいけませんよ?」

「……はい」

「今はしっかり休みなさい」

「…は…ぃ」

そんな話をしていたら、盤城は眠ってしまった

「……ありがとう飛鳥。大好きです」

そう言ってリーナは盤城の頬にキスをした

自分の想いを、刻むかのように

 

 

 

 

 

 

続く……

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます
はい、凱くんはこれからも他の女の子を惹き付けてハーレムになっていきます
そんなことは置いておいて
今回は霊夢の新メモリ《スパークリング》と敵の《パウダー》が登場しました!
アイディアをくださったメモ男さん、ありがとうございます!
それと、今回出てきた姫様と盤城の部下達はオリキャラです
次回以降も出す予定なのでお楽しみに

それではまた次回お会いしましょう!





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第16話 新たなる仲間/爆発事件

こんにちは、フォーウルムです
今回は凱についての言及、新ドライバーの登場、新しい敵についてです
気がつきませんでしたが、これを書いてる間にUAが1000回を突破しました!ありがとうございます!






 

 

 

 

 

ーー新たなる仲間ーー

 

 

 

 

紅魔館 バルコニー

 

「ふう、相変わらず旨いな、咲夜の紅茶は」

「お誉めいただき光栄です」

凱は紅魔館で陽当たりがもっともいいバルコニーで紅茶を飲んでいた

地下室で作業をしていたら咲夜に「お客様が来ております、時間もいいのでお茶にしませんか?」と誘われたのである

なお、スカーレット姉妹は就寝中である

「私までいいんですかねぇ、こんなに美味しいのもらっちゃって」

「構いませんわ、お客様ですもの」

凱と咲夜と共にお茶を飲んでいるのは射命丸文だ

「それで、用事って何ですか?凱さん」

「これこれ、射命丸のが完成したからさ」

「! これって!」

それは、新しいドライバーだった

「ガイアナイトドライバーS(スラスター)。オーバーヒートメモリを長時間使えるようにカスタムした射命丸専用のだ。今まで通りにアクセルやトライアルも使えるぞ」

「わぁ、ありがとうございます!」

文はそれを大事そうに受け取った

「……私たちには無いの?」

「まだ調整中だ、X2は地味に時間かかるんだよ」

咲夜の問いに答える凱

そこへ

 

「ガイ!クッキー!」

 

聞き慣れない声が聞こえてきた

「え、今のは?」

「私にも聞こえましたよ」

困惑する咲夜と文

だが

「おおすまんすまん、ほらお前のだ」

そう言って凱はテーブルの上のクッキーを一枚取って下のほうに持っていく

「凱さん?なにして……って何ですかそれ?!」

「え?! 一体どこから?!」

二人の視線の先には

白い殻に覆われた海牛のような生物がいた

大きさは犬と同じくらいだろうか

今は凱に渡されたクッキーをサクサクと食べている

「凱さん、これは?」

「こいつか?こいつは『ナイトメア』だよ」

「ナイトメアって冥界にいたマジェストの?」

「そうそう、いろいろ試してたらこうなったんだよ」

「「えぇ…」」

凱の反応に困惑する二人

そこにさらにお客が

「ん?凱くんじゃないか」

それは盤城飛鳥であった

「お?飛鳥か。お前も飲んでいくか?」

「いいのか?」

「どう?二人は」

「私は構わないわ」

「私もです」

「だとよ」

「では、お言葉に甘えまして」

「はい、どうぞ」

「ありがとうございます、咲夜さん。ところで何の話を?」

「こいつの話をな」

「こいつって…ああ、ナイトメアですか」

「知ってたの?」

「ええ、彼がこの前作ったんですよ。徹夜の時に」

「へえ、そうだったんですね」

「ああそうだ、2ついいかい?」

「なんだ?」

「この前デビルブリンガー吸収してたけど、今はどんな感じだい?」

「何ですか?デビルブリンガーって?」

「これか?」

そう言って凱は立ち上がり右腕を正面に突きだす

すると手から悪魔の腕のようなものが伸びてまた凱の手に戻った

「今のって」

「あれがデビルブリンガーだよ」

「まだ完全には使いこなせないけどな」

そう言いながら椅子に座り直した凱は紅茶を啜る

「それでもスナッチは使えるのかい?」

「まあな。それで、もう一つは?」

「君が使ってる《トラップ》について知りたいんだが」

「それ私も知りたいわね」

「私も知りたいです!」

盤城に便乗して咲夜と文ものってくる

「いいぞ」

凱が取り出したのは一つのデバイス

メモリホルダーには『T』のメモリがささっている

「これは?」

「トラップ専用のデバイスだ」

凱はデバイスのボタンの一つを押す

すると青い光が現れ、一枚の図を描く

「これって、幻想郷の地図?」

「ああ、それで光点がトラップのビーコンの位置だ」

「なるほど、これで異常があれば反応するって訳か」

「にしても、多くありませんか?」

パッと見ただけでも100以上の光点がある

「一応幻想郷全土にある」

「一応っていうのは?」

「冥界は例外なんだよ、あそこは地続きじゃねえからな」

「つまり地続きならどこでも設置できると」

「まあな。もっとも、戦闘能力皆無だから戦いには向いてないけどな」

(((こんなのが戦えたら困る…)))

三人は心のなかでそう思ったが口には出さない

いや、出せなかった

なぜなら

ビーッ!ビーッ!

そのトラップの警報が作動したからである

「いきなり?!」

「凱くん、場所は?」

「人里の東エリア。確か、役所がある場所だ」

「急ぎましょう!」

「射命丸は治安維持隊に救助要請、飛鳥は念のために姫の護衛」

「わかりました!」「わかった」

「咲夜は俺と一緒に現地に!」

「ええ」

「ガイ!オレハ?」

「お留守番だ、帰ってきたら飯作ってやる」

「ワカッタ!」

全員(+一匹)に指示を出す

「行くぞ咲夜」

「ええ、でもどうやって?」

「飛ぶ」

凱はベルトをつけメモリを差し込む

《ルシフェル》

凱は四枚の羽を持つルシフェルガイアナイトになる

『ちょっと失礼』

「え? あちょっと!」

凱は咲夜を抱える

急にお姫様抱っこをされて顔を真っ赤にする咲夜

「ねえ!待って!」

『急ぐぞ』

「聞きなさいよ?!」

 

 

ーー爆発事件ーー

 

 

 

 

 

 

人里 東エリア

 

 

『ここか』

「……下ろして」

『ん?ああ、そうだな』

紅魔館からここまでずっとお姫様抱っこだったので非常に恥ずかしい

『これは、酷いな』

「火事、にしては損傷が激しいわね」

二人がいるのは里の役所

すでに維持隊によって救助活動が行われている

「それで、犯人はどこ?」

『見当たらんな、一体どこにいるってんだ?』

周りを見渡すが不自然な人物は発見できない

「逃げられたようね」

『だとしたら、飛行型のドーパント……いやでもそんなのいなかったぞ?』

「そうね、あと変身解きなさい」

『おう、そうだったな」

凱は変身を解く

「どうするよ?」

「どうしようも無いわ」

「そうか、まあ帰るか」

「そうね」

何も情報が得られなかったのは残念だが、おそらく犯人はまだ犯行をする気だろう

そのときに今度こそ捕まえてやる

 

 

 

裏路地

 

 

 

「ククク、うまく行ったぞ!」

裏路地に一人の男がいた

名前は久坂 総司(くさか そうじ)

最近幻想入りした外来人だった

彼は現実世界では「神童」と持て囃され、調子にのっていた

しかし、その後の大学受験で不合格になり、就職活動もうまく行かず荒れに荒れていた

そんな中、彼は幻想入りをしてその後にメモリを手に入れた

最初は半信半疑だったが、これは本物だ

遊びとか特撮じゃない。本物のメモリだ

「これがあれば敗けやしねえ!ハハハ!アハハハハ!」

ああ、次はどこをやってやろうか

 

 

 

紅魔館 廊下

 

ほとんどの生物が寝静まる真夜中

廊下に一人の男が立っている

いや、正確には壁に寄りかかっているのが正しいだろうか

男の名はジン

盤城の部下の一人だ

今は交代制でリーナの護衛に当たっている

彼はモナやファスたちと同じ時期に組織に入った

彼らは元は奴隷市で商品として売られていた

それを盤城が買ってその後に組織に加入した

組織からは「役立たず」「使い物にならん」などと言われていたが、一年もしないうちに組織の上層部魔まで上り詰めるほどの成長を遂げた

(……引っ掛かる)

今のジンの頭の中にあること

それは

(もし本当に姫様が狙いなら、直接殺れるはずだ。姫様が狙いじゃないならなんだってんだぁ?)

今日の事件についての考察であった

「夜遅くまでご苦労だな」

「あ? ああどうも」

声をかけてきたのは凱だった

地下室にこもって作業してたり自分で料理作ったりと自由に過ごしている男だ

上司(盤城)から聞いた話では、自分達のベルトをつくってくれた人物らしい

「考え事か」

「ええまあ。姫様が目的なのかなって」

「ほう、それで?君はどう思う?」

「根拠はあまりありませんが、無関係かと」

「何故?」

「もし本当に姫様が狙いなら、直接来るはず。俺たちの居場所は割れてるはずだから」

「なるほどな。確かにそうだな」

「あんたはどう考えてるんすか?」

「俺も無関係に近いと思う」

「近い? どういう事で?」

「事件に深く関わってないが、何かしらで噛んでると思う。メモリの提供とかな」

「なるほど」

「まあ、細かいことは明日やろう。お休み」

「あい、お疲れ様っす」

凱はそう言うと去っていった

 

 

 

「メモリの提供者が奴らだとして、持ち主がわからなきゃ意味はない、か」

凱は考えを巡らせる

「さて、どうしたもんかな」

とりあえず、今日は寝よう

と思い自室に入ろうと扉のドアノブに手を掛け開けて、室内に入る

 

 

新たな事件は、始まったばかりだ

 

 

 

 

 

 

 

 

続く…

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます
今回は凱のトラップメモリとデビルブリンガー、文の新ドライバーとナイトメアについてでした
ナイトメアは今後もちょくちょく登場させる予定です
それにプラスしてジンやモナ達の出番も増やすのでお楽しみに



それではまた次回お会いしましょう!






目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第17話 怪しい人影/灼熱のメモリ/隠された力

こんにちは、フォーウルムです
今回は事件の犯人と新メモリ、凱の変化についてです

現在の凱のメモリはこちら

H A E T L ?



 

ーー怪しい人影ーー

 

 

 

 

 

人里 西エリア

 

 

ジンは人里に来ていた

特にこれといった理由はなかったが、休憩だからといって部屋に篭ることはしない

盤城の話ではかなり広い里らしいので見て回ることにしたのだ

だが、聞くと見るとでは大違いだった

広い

里というからそんなに広くはなくともそれなりに賑わっているだろうとは思ったが

まさかエリアが東西南北で別れてるとは思わなかった

「里じゃなくて街だよなぁ、こりゃあ」

そんなことをぼやいていると

裏路地に入っていく1人の男が

「あ?何してんだ」

とても怪しいので後を追う

すると

「クヒヒ、やるかぁ」

男はメモリを腕に挿す

《カメラ》

「?! ドーパント!」

『! チィ、見られたか』

そのドーパントは奇妙な見た目をしていた

足は異常に太く体と腕は針金のように……いや、針金で

頭にはカメラが乗っている

『逃げるか』

「待て!逃すか!」

ジンはベルトを巻きメモリを取り出すが、すでに男はいなかった

「逃げたか…ん?」

先ほどまで男が立っていた所に何かが落ちていた

それは一枚の風景の写真であった

 

 

 

 

ーー灼熱のメモリーー

 

 

人里 北エリア

 

 

「…どうするかな」

凱は悩んでいた

相手の動きが読めない以上対策は打てない

あの爆破事件はまだ2回目が発生していないのはいい事なのだが対応することが出来ないのも事実

なんとかして手を打たなければ…

「ん?あれは…」

「案が思いつかんな…」

「おい、何をしてるんだ?」

「あ? あんたは確か…ああ、寺子屋の」

「覚えてくれていてくれたのか」

「まあな。名前は知らんけど」

「そういえばそうだったな。何か悩みか?」

「そんな感じだな」

「なら、お茶でもどうだ?」

「気分転換にもいいな。そうさせてもらうよ」

「じゃあ、ちょっと来てくれるか」

「ああ、わかった」

 

 

寺子屋

 

 

 

「すまないな、そんなにもてなせなくて」

「気を使わなくていい」

「そうか、まあ自己紹介と行こうか。私は上白沢慧音だ」

「俺は五十嵐凱だ」

「あの時は助けてくれて助かったよ、ありがとう」

「礼はいい、ほっとけなかっただけだ」

凱はその時のことを思い出す

幻想入りし、寺子屋で暴れていたヴァイオレンスを倒し

その後に霊夢に出会ったのだ

「少し変わったようだな」

「まあ、な。色々あったんだ」

「……」

「ん?どうしt」

ギュッ

慧音は凱を抱きしめた

フランのや霊夢から感じる『優しさ』と違い、その抱擁には『慈しみ』が溢れていた

「…おい」

「すまない。君を見ていたらつい、な。いやならやめるが?」

「…いやこのままでいい」

凱の頬を一筋の涙が伝う

「?! どうした」

「…聞かないでくれ、昔を思い出しただけだ」

ずっと前

まだ家族と共に暮らしていた時の頃

夜中に怖い夢を見ては母にこうやって抱きしめられた

今はもういない

あんな慈しみの心にはもう触れることはないと思っていた

まさか、こんな形で触れられるとは思いもしなかった

 

 

数分後

 

 

「もう大丈夫だ」

「そうか、少しは良くなったか?」

「お陰様でな」

「そうか。そういえば何に悩んでいたんだ?」

「あ、忘れてた」

 

少年説明中

 

「なるほど、この前の爆破事件を追っているのか」

「ああ。もっとも解決の糸口は見つからないがな」

「ふむ、妹紅のあれと関係あるのか?」

「妹紅って?」

「私の友人なんだが…」

「おーい、慧音ー。いるかー?」

「噂をすればだな」

「お、いたいた。ってこいつは?」

「以前話した彼だよ」

「おお、例の。はじめまして、私は藤原妹紅だ」

「はじめまして、五十嵐凱と言います」

「なあ、妹紅。この前言ってたやつ持ってるか?」

「ん?ああ、持ってるぞ」

そう言って取り出したのは一本のメモリ

だが色は黒で、ディスプレイも真っ暗だ

「それは?」

「いや、私にもわからないんだ。道に落ちてたのを拾ったんだが」

「へぇ、見せてもらっても?」

「ああ、いいぞ」

凱がそのメモリに触れた瞬間

 

辺り一面が火の海になった

「?! なんだ?!」

「くっそ、どうなってる!」

「どうやらあれが原因らしいな」

凱が指を指す先には、炎の珠が

「あれか…っておい!どうする気だ!」

凱はその珠に向かって近づく

妹紅や慧音も近づこうとするが、炎に阻まれる

「それが、お前の記憶か」

珠にに近づいた凱はそれに触れる

瞬間、珠は弾けて、メモリに姿を変える

それと同時にあたりの火の海も消滅し、元の寺子屋に戻る

「夢、だったのか?」

「いや、違うらしい」

慧音の問いに答えながら凱はメモリを見せる

それは、半透明な赤い水晶のような本体に真紅のディスプレイのメモリがあった

イニシャルは《P》

「妹紅、このメモリなんだが…」

「いいぜ、やるよ」

「いいのか?」

「ああ、お前の方が使いこなせるだろ?」

「感謝するよ」

そういった時だった

『申し訳ないが、それは無理だ』

「「?!」」「いつの間に」

 

 

ーー隠された力ーー

 

 

 

 

声のする方を見ると、そこには何かがいた

全身が滑っとしており、足からは烏賊のような触手が生えている

『私は《クラーケン》。そのメモリを回収しにきました』

「素直に渡すとでも?」

『力ずくでも回収しますので』

「いいぜ、相手になってやる」

凱はメモリをベルトに挿す

《ルシフェル》

『ん?おかしいな』

凱は変身し、自分の姿に疑問を持った

いつも四枚の羽が、今回は六枚になっている

『さあ、行きますよ!』

『来い!』

相手はメモリの回収に来るような手練れ

少しは強い

 

 

 

はずだったのだが

なぜかあっけなく倒せてしまった

相手は確かに強かったのだが、それ以上に自分の内から力が湧いてきていた

『さて、色々質問に答えてえてもらおうか』

「答えるつもりはありませんよ」

『お前は組織の人間か?』

()()()()()()()

男は素直に答える

まさか

『今回の爆破事件はお前らに関係するのか?』

()()()()()()()

また、男は答える

決まりだ

おそらくルシフェルメモリの効果だろう

何かが引き金となって新たな能力が使えるようになったのだ

凱はそれを使って男から引き出せるだけ爆破事件の情報を引き出した

『最後だ、何か企みはあるか?』

「ええ、我々はカメラの男が破れ次第特別部隊をこの幻想郷に投入します」

『目的は?』

「あなた方の抹殺です」

『そうか、もういい』

凱は剣の腹で男を殴り気絶させる

「終わったか?」

『ああ、迷惑かけたな」

「私たちは大丈夫だ」

「そうか。悪いがもう行かないと」

「気をつけろよ」「またお茶でもしよう」

「ああ」

2人に見送られ、凱は紅魔館へ向かう

一刻も早く皆にこのことを伝え、対策案を考えなくては

そして、このメモリのことも

そう言って凱は自分の手にある《プロミネンス》を確かめたのであった

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
新しいエクストラメモリの《プロミネンス》が登場しました
今後のストーリーにも登場させますので

今回登場した《カメラ》と《クラーケン》は毎度のことですがメモ男さんが考案してくださいました!ありがとうございます!

次回で事件は解決し、その次で四章突入なのでお楽しみに!
それではまた次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第18話 形見/『切り裂く者』/受け入れ

こんにちは、フォーウルムです
今回は事件解決と四章の導入になります
凱に新しく武器のメモリを持たせます



凱が使用できるメモリはこちら

H A T E L P



 

 

ーー形見ーー

 

 

 

 

「ここか」

紅魔館へ帰る前に、凱はとある場所に訪れていた

「お邪魔するぞ」

「お待ちしてました」

ここは稗田邸、阿求に頼みごとをしていたのだ

「で、どうだった?」

「まずはこれを」

手渡されたのは三枚の紙

そこには凱の家族について書かれていた

「………そうか」

「予想どおりですか?」

「まあ、な。信じたくはなかったが」

そこに書かれていた事実

それは凱の母親は魔界を統治しているフェルグバルトの血をひく者であったことが書かれていた

つまり、凱はリーナの従兄弟にあたる

「さして興味はない」

「なら、こちらはどうですか?」

阿求が差し出したのは一本の大剣

「それを調べているときに見つけました」

「この剣をか?」

「はい。おそらく貴方用かと」

「ちなみに場所は?」

「現実世界の貴方の家の地下室に」

「なるほどな、形見として使わせてもらうか」

それは長さ1.6メートルの大剣であり、凱が憧れていた剣である

「今の俺にはぴったりだな」

剣の銘は《リベリオン》。叛逆の名を冠する剣だ

凱はそれを背中に背負う

「お似合いですよ、凱さん」

「ありがとうな。お代はどうすればいい?」

「要りませんよ」

「そうか、感謝する」

そう言って凱は稗田邸を後にする

 

 

 

紅魔館

 

 

「ただいまー、いや、ただいまでいいのか?」

紅魔館に戻った凱、そこへ

「ああ、丁度よかったよ、凱君」

盤城が声をかけてきた

「どうした、なんかあったのか?」

「いや、ジンが犯人らしき奴を見たっていうんだ」

「そうか、ちょうど俺もその話をしたかったんだ」

「本当かい?」

「ああ、皆を集めよう」

 

そうして凱は紅魔館にいた面々を主人の間に集めた

「ジン、犯人を見たっていうのは?」

「ああ、太い脚に針金の体と腕、カメラを頭に乗っけたやつだった」

「おそらく《カメラ》だな、そいつが犯人で間違いないだろう」

「断定できるの?」

フランの問いに答える

「おう、証言もある」

「証言って、そもそもなんでわかるのよ。その剣も気になるし」

「じゃあ、まとめて話すぞ」

凱は片っ端から話した

リベリオンについて、ルシフェルについて、プロミネンスについて

魔界の軍隊が攻めてくることも。勿論、自分の出自についても

あたりに沈黙が満ちる

「本当なのかい?君が…」

「ああ、どうやら俺はフェルグバルトの血を引いているらしい」

「そんな…まさか、凱様が私の、従兄弟?」

「だが、これで合点もいく。人間ではデビルブリンガーは使えないはずだからね」

「このバカみてえな身体能力もな。あと、このリベリオンはメモリにもなるんだ」

そう言ってリベリオンを持つと光に包まれ、メモリになった

「アラストルと同類っぽいね」

「そうだな、それで今後なんだが」

凱が話を切り替える

「カメラに関してはジンたちに任せようと思うが、やれるか」

「わかった。ジン、頼りにしてるよ」

「了解!」

「俺は少し行くべきところがあるから、そこに行ってくる」

「気をつけなさいよ、何があるかわからないんだから」

指示を出す凱に咲夜が声をかける

「問題ねえよ、心配すんな」

「それもそうね」

凱が部屋を出ると同時に他の面々も動き出す

 

 

 

 

ーー『切り裂く者』ーー

 

 

 

魔法の森

 

 

『くそ!クソクソクソクソォ!!』

なんでうまくいかない!

このメモリで何もかもうまくいくんじゃなかったのか?!

さっきの男に見られてからまとわりつくように誰かが付き纏ってくる

どうする、どうする?

 

久坂は焦っていた

それが命取りの行動であるとも知らずに

『見つけたぜ』

『?!』

目の前に現れたのは1人の男

全身黒の鎧に覆われていて、肩にサイスを担いでいる

『どうしてここが!』

『そんだけ喚けば嫌でも聞こえるっての』

『くそぉ!』

久坂は持っている写真の中に逃げ込もうとした

カメラメモリの能力は『写真への干渉』

撮った背景の場所へ転移することもできる

写真を燃やせば写っている建物は燃える

今回の事件の手口だ

だが

それができるのはカメラドーパントだけである

裏を返せば

 

スパン

 

カメラドーパント以外が写真を弄っても

()()()()()

『な?!』

『逃げられると思うなよ?』

 

 

話に聞いていた通りだ

カメラドーパントは体が脆く、近接戦には向かない。それゆえに能力に頼り切りになる

その能力だって先に潰せば、封じれる

俺の《リーパー》の敵じゃない

 

ジンのリーパーは他の2人(モナやファス)のメモリと大きく異なる性質があった

それは『特殊能力がない』こと

よく言えば扱いやすく、悪く言えば脳筋である

敵に近づき、斬撃を叩き込む

一応小型の斬撃を飛ばせるが、威力は低い

それでも、写真を切るのには十分すぎる

ドーパントが出す写真をことごとく切り捨てる

 

『僕は天才なんだぞ?!なんでこんなぁ!』

 

天才?天才だと?

 

『笑わせるなぁ!』

ジンの声に怒りが混じる

『お前ごときが天才を名乗るな!』

ジンがサイスを振りかぶる

『お前のような驕るものに、天才を名乗る資格はない!』

そのまま振り抜く

ただサイスを振っただけなのに

あたりの木々は薙ぎ倒され粉々に砕け散る

『あー、やりすぎたか?』

惨状とかした木屑の山を見ると、男はかろうじて生きているようだった

『危なかった、そのまま肉片にする所だったぜ」

変身を解きならジンは男の方を見る

こいつを縛り上げて、維持隊の連中に引き渡すとしよう

 

 

ーー受け入れーー

 

 

 

地霊殿 執務室

 

「頼まれていたやつだ」

「ありがとうございます」

凱は地霊殿に来ていた

さとりに頼まれていたものを渡しに

それは

「ガイアドライバーX2、もっと遅くなる予定だったのでは?」

「まあな、へファイストスの適合率上がったから早く作れたんだよ」

机の上に上がっているのは『ガイアナイトドライバーX2』

凱とフランが使っているものと同タイプのものが4つあがっている

「それよりもいいのか?」

さとりに()()()口から尋ねる

「ええ、貴方達が戦っているのです。私たちも戦いますよ」

「そうか、多分さとりたちには防衛に当たってもらうことになる」

「わかりました。何かあったら連絡を」

「ああ。なあ、さとり」

「はい?」

「…いや、なんでもない」

凱はそう言って部屋を後にする

「全く、聞けばいいのに」

さとりは凱が何を聞こうとしたのかを彼の心を読んで知っていた

(俺が魔族のハーフって言ったらどうする?)

聞こうとして聞けなかった凱からの問いに、さとりは心の中で答える

(受け入れますよ、貴方がそうしてくれたように)

 

 

 

 

事件を解決し、いよいよ始まる魔界の組織《Devil Castle》との戦い

凱たちは無事に勝利し、平和を手に入れられるのか?

 

続く!




ここまで読んでいただきありがとうございました
今回で三章は終わりになります
次回からは四章の決戦編となります
お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四章 決戦編
第19話 戦闘開始


こんばんわ、フォーウルムです
今回からいよいよ四章です
おそらく幹部戦が立て続けになると思います
ちなみに凱のタッグは咲夜になりました
キャラによっての変化するのはエンディング後の会話くらいなので、特に問題はありません

凱のメモリはこちら

ヘファイストス ルシフェル リベリオン 
アラストル エクリプス プロミネンス トラップ


 

 

ーー戦闘開始ーー

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷攻略作戦

これは我々《Devil Castle》が行う作戦である

部隊をアルファ、ベータ、ガンマにわけそれぞれを敵の拠点となる紅魔館、地霊殿、白玉楼に向かわせ制圧するというものである

三ヶ所同時に叩き反逆者含め全員を抹殺するのも目的の一つであり、圧倒的な戦力で捩じ伏せる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はずだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベータ 

攻略先 地霊殿

 

『くっそ、何がどうなっている!』

戦力はここにはいないはずじゃ無いのか!

『ヤッホー、レクス』

声の方を向くと、そこにいたのは

『貴様、モナか!』

『あー、覚えててくれたんだ』

反逆者の1人、モナがそこにいた

『ふふふ、こう思ってるでしょ?「なんでこんなに戦力差が」って』

ガイアナイトになっているので顔は見えないはずなのに

笑っているような気がした

そもそもで、情報では

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

『あはは!鵜呑みにしたの?』

目の前の女は嘲笑う

『教えてあげる、私たちの作戦を』

 

 

 

 

ガンマ

攻略先 白玉楼

 

『少数精鋭で魔界に、ですって?!』

『おうよ、それがうちの参謀の作戦だ』

ガンマ隊を率いていたジーナはジンと接敵し、同じように膠着状態になっていた

『うちのとこの最高戦力を選抜したのと《Olympus》のメンツで攻略に向かわせる。

んで、あんたらに偽の情報を流して城の防衛力をこっちの侵攻側に回させる。

あとはこっちに残ってるメンバーを防衛に配置しておわり。ってことであんたらはまんまとハマったってわけ』

『なるほど、それで勝ったつもりで?』

ジーナはクスリと笑う

『こっちにはまだ何百という戦力があります!それにあなた方の本拠点の紅魔館には何千と…』

『まじか』

 

 

 

 

 

『もったいね〜wwww』

『は?』

ジンの予想外の言葉に思わず腑抜けた声が出る

『いいこと教えてやるよ』

『な、何よ』

『紅魔館にはほとんどの実力者が揃ってんぞ』

 

 

 

 

アルファ

攻略先 紅魔館

 

『ははははは!その程度か!』

紅魔館には何千という敵が押し寄せていた

だが、

『この程度の雑兵、敵ではない!』

レミリアはその圧倒的な力で蹂躙していた

彼女が使うのは《オーディン》

北欧の最高神のメモリで凄まじい性能を誇る

それの隣で応戦しているのは…

『あまりはしゃぎすぎないようにね、レミィ』

《グリモワール》を使うパチュリーの姿が

遠距離属性攻撃においてトップクラスの性能のグリモワールを完璧に使いこなしている

『それにしても、多くないかしら?』

『これでも半分だ、奴がもう半分やっていると思うと恐ろしいな』

レミリア達の反対側で戦っているのは

 

ファスだった

 

 

オオオォォォォォォ

アアアァァァァァァ

 

 

彼女が使う《レクイエム》は特殊な性能であった

右腕には男の彫刻が、左腕には女の彫刻がついており、

それぞれから破壊の重低音と精神干渉の高音を出すことが可能で

音が届く限り攻撃が可能であった

 

『あれに巻き込まれたらひとたまりもないな』

『そうね…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地底

 

 

 

『そういうわけで、君たちの作戦は破綻してたってわけ』

『信じられん。まさか、そんな』

レクスはいまだに信じられないでいた

『だが、俺の部隊の別働隊が…』

『ちなみに地霊殿にはさとりさん達いるからここより地獄だよ?』

『馬鹿な!』

『で?どうする?』

『こんなところで逃げるわけにはいかん』

『そっか、真面目だね。あの時みたい』

『…もうあの時とは違う』

『今からでもこっち側に来なよ、レクス』

『馬鹿言え、俺は信念を曲げるつもりはない』

『…わかった。じゃあやろうか』

『俺の《パラディン》の力、見せてやろう!』

『ふふふ、聖騎士程度が私の《テンペスト》には勝てないよ!』

幼い頃から互いを知る2人が、激突する

 

 

 

 

 

 

魔界 フォルトゥナ城

 

 

 

「ここか」

凱たちがいるのは敵の本拠地『フォルトゥナ城』である

「ここからは別れるぞ」

そう言ってあらかじめ決めていたグループに分かれる

《Ojympus》の五人のグループ

凱、盤城、リーナ、咲夜のグループ

霊夢、魔理沙、フラン、文のグループの3つだ

「とりあえず、俺たちは最奥に向かう霊夢たちと亡元さんたちは他の幹部のところに」

「わかったわ」

「任せたまえ。それよりも」

「ん?なんだ?」

「おそらく君の家族を殺した奴らがいる、気をつけるんだぞ」

「…当たり前だ、絶対に負けるかよ」

「そうか。問題はなさそうだな」

そう言ってそれぞれ散開する

 

 

 

 

「この先に幹部が?」

先に着いたのは亡元たちだった

「全員変身しておけ」

その言葉を合図に変身する

《ハーデス》《ゼウス》《アテナ》《ヘスティア》《アルテミス》

『よし行くぞ!』

そう言って部屋に入った

 

 

『あれ?みなさん?』

部屋に入った直後に全く先が見えなくなる暗闇だった

『もう敵に見つかってるはず、気を…つ……けて』

五月雨の目に映ったもの

それは

「久しぶりだな、五月雨」

『な、なん…で?』

そこにいたのは…

 

 

『死んだんじゃなかったの?……お兄ちゃん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




ここまで読んでいただきありがとうございました
書いてる途中から、どっちが敵かわからなくなりながら書いてました
次回は《Olympus》vs幹部になりますので、お楽しみに

それではまた次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第20話 冒涜者/禁断の力

こんにちは、フォーウルムです
今回は亡元達の戦いを描きます
最近は眠い目を擦りながら描いてるので文が雑かったり、誤字があったりと見にくいかもですが暖かい目で見てくださると幸いです



凱のメモリはこちら

ヘファイストス ルシフェル リベリオン 
アラストル エクリプス プロミネンス トラップ


 

 

ーー冒涜者ーー

 

 

 

 

『ったく、どうなってやがる』

辺り一面が暗闇に覆われている

『亡元、尾釜、伊都、射山、無事か?』

『問題ない』『大丈夫です』『無事よ』

三人の応答があるが射山の声だけが聞こえない

『あたり一面真っ暗ですね』

『気をつけましょう』

尾釜と伊都がそう言った途端、闇が晴れる

最初に目に飛び込んできたのは

 

 

血まみれの射山だった

 

 

『射山ちゃん!?』

尾釜が走り寄る

『一体何が?』

『待て、誰か来るぞ』

前の通路から歩いてきたのは

 

闇川莉菜だ

 

『嘘、なんで』

『夢?いや、だが確かに』

『怪しいですね。って恭介さん?』

目の前の莉菜に恭介が近づいていく

 

『お前、莉菜か?』

「うん、久しぶりだね、恭ちゃん」

懐かしい声で、懐かしい呼び名で呼ばれる

まるで夢のようだ

彼女に近づく途中で、不意に足を止める

「? どうしたの?」

俺は彼女の目を見る

清らかで深みのある紫の双眸が俺を見ている

『無事、だったのか?』

「うん。ねえ、こっにきて」

彼女に誘われまた歩き始める

そして、彼女に抱きつか……

 

『消し飛べやクソ野郎!』

「え?」

抱きしめられる直前、俺は拳を握りしめ、雷を帯びさせて莉菜の顔面に叩き込む

もろに拳を喰らった莉菜は向こうの壁まで吹き飛ばされる

 

『な、鳴神君?!』

『一体何を…!』

『騙されんじゃねえ、こいつは偽物だ』

鳴神は吹き飛んで行った先を睨みつける

「いてて、全く躊躇ないじゃん』

そこから出てきたのはドーパントであった

骨格標本のような見た目の体に黒いローブを羽織っている。

顔となっている頭蓋骨には青白い光が灯っている

『お前、幹部か』

『いかにも、俺は《ネクロス》。幹部だよ』

男だとわかるが、聞いているだけで不快になる声をしている

『お前が射山を?』

『そうそう!面白かったよ!』

男はまるで楽しそうに嗤う

『だってさ、死んだ兄の姿で出てきたらめっちゃ泣いてさ!しかも「お兄ちゃん、会いたかった」ってさ!

死んだ人間が蘇るわけないだろっての。本っ当にバカだよねええぇぇ!あはははは!』

 

こいつの言葉を聞いていると、以前凱が言っていたことがわかる

それは、紅魔館の攻略が終わった後の話だった

「殺意に呑まれる?」

「ああ、カーッとなって周りが見えなくなるんだ」

「まさに狂戦士だな」

「鳴神さんはなったことないのか?」

「ねえな、あと鳴神で構わん」

「じゃあ、もしそうなったら、鳴神はどうする?」

「さあな、何するかわかんねえや」

「こえー」

「エクリプス使ったお前が言うか?」

そう言って2人で笑い合った

 

今なら、自分が何をしでかすかわかる

『亡元、尾釜、射山を頼む』

『う、うん』『どうする気かね、鳴神君』

『伊都、防御壁で三人を守れ』

『恭介さんはどうするんです?』

『あぁ?決まってんだろ』

既に結論は出ている

相手も覚悟くらいは出来てるはずだ

他人の思いを踏み躙ることが、どうゆうことかを

あの塵(ネクロス)を叩き潰す』

 

 

 

 

ーー禁断の力ーー

 

 

 

『う、ううん?』

『あ!目が覚めた?』

遠くで響く轟音で目が覚めると、私を見下ろすように祭さんが見ている

近くには亡元さんや、伊都さんもいる

『一体、どうなったんですか?』

『相手の幹部と鳴神君が戦っている』

『そっか、お兄ちゃんは?』

『相手のまやかしだ』

『…やっぱり…もう…お兄ちゃんは』

会ったときに罠だと思った

絶対にいるはずがない

絶対に嘘だと

でも、それでも信じたかった

兄が、時雨が生きてるんじゃないか、と

『亡元さん』

『何かね?』

『お願いがあります』

 

 

『あははははは!その程度かぁ!』

ネクロスははっきり言ってうざかった

性格、喋り方、戦い方。何をとっても屑みたいなやつだった

自分では戦おうとせず、召喚したアンデットどもに戦わせ、自分は見ているだけ

『ほぉらほぉら、こっちだぜー?』

『くだらんな』

ゼウスの力を解放し薙ぎ払っていく

一撃決めれば倒せるだろうが

ちょこまか動く上に妨害も多い

あと一歩が攻めきれない

『あれあれあれー?この程度かなー?』

『ほざいていろ』

何とかして、倒せないのか?

何か、手段は…

 

 

 

 

『……だめだ』

『お願いします、それ以外ではあいつは倒せない』

亡元と射山は言い争っていた

『そうかも知れないが…』

『マキシマムが使えれば、倒せるんです!』

マキシマムドライブ

それは本来のメモリのリミッターを外し、一撃必殺の技を放つもの

しかし、彼らのメモリでは出来ない

何故ならば…

『それでは君の体が耐えられん!死ぬぞ!』

体にかかる負担が尋常では無いのだ

使えば命があるかどうかもわからない

『それでも、勝つためにはそれしか無いんです!』

現にネクロスは彼らよりも強い

『死ぬ気か、射山君』

『…覚悟の上です』

『…そうか』

亡元は一本のメモリを取り出す

赤いメモリに『A』のイニシャル

《アポロン》のメモリを五月雨に手渡す

 

(ごめんね、お兄ちゃん)

アルテミスを使いながらアポロンのマキシマムを打てば、確実に死んでしまうだろう

それでも構わない

メモリをホルダーに差し込む

<warning warning warning>

<System Alert>

警報が頭に響く

<Limite Over>

構うもんか

<Your life is in danger>

わかってる、それでもいい

< Final warning>

これで、いいんだ

 

 

ありがとう、お兄ちゃん

 

<auxiliary equipment:Unlocked>

 

さようなら、凱先輩

 

 

<Apollon Maximum drive>

 

 

 

 

『射山!…あの馬鹿!』

マキシマムを使ったのか、あいつから凄まじい力の流れを感じる

『なんだぁ?おわりか?』

『ああ、そのままくたばりな!』

『は? な?! ぎゃああああああぁぁぁぁ!!!』

射山から放たれた赤と白の力の濁流がネクロスを飲み込む

その威力はあまりにも強く、城の壁を粉々に打ち砕いた

 

 

「射山!おい、しっかりしろ!」

射山を囲むように4人は座っている

「…あい…つ……は?」

「倒したぞ、メモリブレイクも確認した」

亡元が答える

「そ…か……よか…た」

既に射山は虫の息だった

「な…元…さん」

「どうしたのかね?」

何かを言おうとする射山の口に耳を近づける

「………」

「…わかった、伝えておこう」

亡元がそういうと射山は満足したように仄かな笑みを浮かべ、瞼を閉じた

「…紫」

「任せてちょうだい」

呼ばれて出てきた紫が射山の遺体を運ぶ

「さて、我々は凱君達に合流しようか」

「そいつは無理そうだ」

砕けた壁から外を眺めていた鳴神がつぶやく

「あれを見ろ」

彼が指差す先にあったのは

巨大な門

それに次々と入っていく魔物達

「なるほど、大方『地獄門』とでも言うつもりか」

「ど、どうしますか?」

「決まってんだろ」

鳴神がこちらを向く

その顔には獰猛な笑みが浮かんでいる

「あれが何処に繋がってるかは関係ねえ。ただ潰すのみよ」

「そうですね、やりましょうか」

「了解です!」

「なら、先に行きたまえ。私は連絡を入れてからにするよ」

「おう、さっさと来いよ」

あの門を潰したからどうこうなる訳じゃないだろう

だが、それでいい

この戦いを

あいつら(Olympus)に捧げようじゃねえか

「さあ、いくぜ。第二ラウンドだ!」

そう言って俺たちは新たな遊び相手(魔物共)に向かう

 

 

 

 

 

続く

 

____________________________________________

 

 

「く、ひひ。まだ終わってないよぉ」

ネクロスを使っていたこの男はかろうじて生きていた

「メモリが、なくっても   僕はねぇ」

『ほう?メモリがなくとも、なんだ?』

「あ?! なんで こk」

言い終わる前に焼き払われてしまった

『さて、俺の一番弟子にでも会いに行こうかね』

男は歩き出す

その手に紅蓮の剣を携えて

 

 

 

____________________________________________

 

 

ちょっと紹介

 

地獄門

魔界に現れた門

幻想郷と繋がっており、魔物たちを無限に送り込んでいる

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
自分で描いててオリキャラ死亡するのめっちゃキツいです
まあ、仕方ないね。ストーリーのためだからね
最後に登場した男は以前の話にも登場しています
わかったらぜひ観想のとこにお願いします(切実)

それではまた次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第21話 共同戦線/蛇の悪魔と暴食の悪魔

こんにちは、フォーウルムです
今回は霊夢達の戦い…だけの予定だったのですが
思ったより内容が薄っぺらになってしまったのでその前に地底と冥界の状況を書きました
おそらくあと2〜3話で完結します


凱のメモリはこちら

ヘファイストス ルシフェル リベリオン 
アラストル エクリプス プロミネンス トラップ


 

 

 

ーー共同戦線ーー

 

 

 

 

地獄門は幻想郷に大量の魔物たちを送り込んでいた

 

 

地底 旧地獄

 

『これってレクス達の作戦?』

旧地獄に溢れる魔物を蹴散らしながら、先ほどまで争っていたレクス(幼馴染)に聞く

『そんなわけあるか!こんなこと聞いていないぞ!』

レクスはその手に持っている大剣を振るいながら答える

『じゃあ、見限られたとか?』

『かもな、くそ!』

悪態をつくレクス

『ねえ?レクス』

『なんだよ』

『こいつらってレクスの味方じゃないんだよね?』

『? そうだが?』

急な問いに首を傾げる

『じゃあ、私の敵でもあってレクスの敵ならさ、協力してやっつけない?』

『休戦して協力しろ、と』

確かにそれはいい提案ではある

『そう。1人より2人がいいでしょ?』

『それは、そうだが…』

『なぁに?ビビってるの?』

『そんなことはない!』

『じゃあ決まりね!後ろは任せたわよ、騎士さん?』

モナの雰囲気には昔から勝てない

だが、今は悪くはない

『騎士ではない、聖騎士だ!間違えるなよ!』

こいつ(モナ)になら、安心して背中を任せられる

 

 

 

 

冥界 白玉楼

 

 

『急になんだよこいつら!』

『魔界の下級悪魔ですわね』

地獄門の魔物は冥界にも出現していた

この二人は変身こそしていたもののまだ戦っていなかったのですぐに共同戦線を張っていた

『にしても、どうなんだ。これって』

『わかりませんわ、最近のギルバ様は何かおかしい感じですの』

『おかしい?まあ、詳しいことはあとでな!』

ジンはサイスを振るい魔物を一掃する

『死ぬなよ、ジーザ!』

『勿論ですわ、この《クイーンビー》はそう簡単にはやられません!』

 

 

 

 

 

ーー蛇の悪魔と暴食の悪魔ーー

 

 

フォルトゥナ城

 

 

 

 

 

 

 

「ここに幹部がいるのかしら?」

霊夢達の目の前には巨大な扉があった

「準備はいい?」

「勿論だぜ!」「行けますよ!」「ばっちり!」

魔理沙、文、フランがそれぞれ声をあげる

「さあ、行くわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

部屋に入ると、そこには2人の男女がいた

「こんなところに来たのね」

「はええなぁ、飯まだなんだけどよぉ」

男の方は小太り、女の方は背が高いが痩せていた

「あんたらが幹部であってるわよね」

「ええ、そうよ」

「なら話が早いわ、ここであんたらを倒す!」

霊夢がベルトを着け、メモリを構えると同時に他の3人もメモリを構える

「貴方、どれがいい?」

「金髪2人、旨そうだからなぁ」

「いいわ、譲ってあげる」

幹部の2人もメモリを構える

が、それは異様な形のメモリをしていた

「?! そのメモリは…」

「私たちの新メモリよ、ベルトは使えないけど性能は貴女達には負けないわ」

そのメモリを首に挿す

《エキドナ》《ゴリアテ》

男の方が変身したのは巨大な牛のような悪魔、腹部には大きな口がついている

女の方は蛇のような姿をしている

「魔理沙とフランは牛みたいなやつを、私と文で蛇の方をやるわよ!」

「「「了解!」」」

それを合図に戦闘が始まる

 

 

 

 

 

『グオオォォォォ!』

『魔理沙!』

『任せろ!』

ゴリアテと戦っているのはフランと魔理沙だ

ゴリアテの戦い方は大振りな強攻撃のみだった

ただ腕を振り回す戦い方

当たれば一溜まりもない

シューティングスターとエンジェルは機動力こそあるもののパワー型ではない

そのため攻めるに攻められなかった

『どうするの?魔理沙!』

『仕方ない、あれを使う!フラン!時間稼いでくれ!』

『わかった!』

フランに一度戦いを任せ、魔理沙は後方に下がる

そしてシューティングスターを別のメモリに差し換える

《スチームロコモティブ》

それは魔理沙の新メモリ、蒸気機関車のガイアメモリだった

『行っくぜええぇぇ!』

変身し、そのまま突撃する

ただの体当たりのように見えるが、それでも体長18メートルを超えるゴリアテが怯んだ

『ゴアアアァァァァ!』

すると、ゴリアテの腹部の口に炎が収束し始める

『今がチャンス!』

フランはエンジェルをマキシマムにセットする

現在、エンジェルガイアナイトの顔の宝石は紫色である

それの状態で使えるのは『毒属性』である

《エンジェル マキシマムドライブ!》

フランの右手に毒を含んだ炎が生成される

そしてそれをゴリアテに向かって投げつけた

『グガァ?!』

そのまま毒を吸い込んだゴリアテは体勢を崩す

『決めるぜぇ!』

そのチャンスを逃さず、魔理沙もスチームロコモティブでマキシマムを発動させる

《スチームロコモティブ マキシマムドライブ!》

魔理沙の体が赤く輝き、足元から線路のレーンが伸びる

そのレーンはゴリアテに向かって伸びゴリアテを拘束する

『私の道は!誰にも邪魔させないぜ!』

魔理沙はゴリアテに向かって凄まじい速さでぶつかり、ゴリアテを吹き飛ばした

『グ、グゴオオォォォ!!』

ゴリアテは苦しげな声をあげ、爆発四散した

 

 

 

 

『あははは!その程度かしら?』

エキドナはその長い体を器用に扱い、こちらを翻弄してくる

『霊夢さん、どうしますか?』

『どうもしないわ、ただ倒すのみよ!』

霊夢はセイクリッドの機動性を活用しエキドナの攻撃を下げ、的確にダメージを与えていく

『私だって!』

文が今使っているのはトライアルメモリ

一撃一撃は低いが、素早い連撃によって火力を補う

『文!オーバーヒート使える?』

『使えます!』

『じゃあ、私の後に続いて!』

『了解です!』

霊夢が補助スロットにスパークリングを差し込む

『食らいなさい!』

霊夢の腕から大量の泡が発生し、エキドナに向かって飛んでいった

近づいた物から破裂しエキドナにまとわりついていきみるみると動きを遅くする

『な?!私の動きが?!』

『今よ!』

『はい!行きます!』

文はマキシマムスロットにオーバーヒートを差し込む

《オーバーヒート マキシマムドライブ!》

文の拳に紅い炎が宿る

『ぜああああぁぁぁぁぁ!!!』

文の渾身の一撃がエキドナに突き刺さる

そして拳を中心にエキドナの体が炎に包まれる

『ぎやあああぁぁぁぁ!』

エキドナの体は炭のようになり粉々になった

 

 

「死んだのかしら?」

霊夢たちは辺りを見るが、変身した幹部の2人の姿は見えない

しかし、メモリだけは地面に落ちている

「とりあえず、いきましょ」

「そうですね」

「メモリはどうするの」

「もらっておこうぜ、凱ならなんとかできるかも」

「そうね」

 

戦いを終えた少女たちは、その場を後にし凱達の元へ向かうのであった

 

 

 

 

続く

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
次回、ついに凱たちのお話です
ラスボス戦はしっかり書きますがその前の幹部戦は今回みたいになると思いますがお許しください

それではまた次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第22話 溶岩蜘蛛と雷鳴の巨鳥

どうも!フォーウルムです!
今回は幹部戦最後の戦いになります!
思いついた文をそのまま書いたので、若干おかしいかもしれません
そこは暖かい目で見てくださると幸いです



凱のメモリはこちら

ヘファイストス ルシフェル リベリオン 
アラストル エクリプス プロミネンス トラップ


 

 

ーー溶岩蜘蛛と雷鳴の巨鳥ーー

 

 

フォルトゥナ城

 

 

「着いたな」

城の最新部と思われる場所に凱たちはいた

「この先か?」

部屋に入る前にリーナに尋ねる

「はい、多分そのはずです」

リーナ曰く、「ある日を境に兄の態度が変わった」らしい

変わった、というのがいまいちピンとこない

「まあ、会えばわかるだろ。あと咲夜」

「はい?どうしました?」

「これ渡しとく」

「そう言って咲夜に手渡したのは《アラストル》のメモリだった

「これは…いいんですか?」

「おう、俺にはこれがあるからな」

言いながら凱は背中に背負っているリベリオンを見せる

「…わかりました。大事に使わせていただきます」

「よし、行くぞ!」

 

 

謁見の間

 

『ついに来たか、お前ら』

『僕たちを待たせるなんて、いい度胸だね?』

入って最初に目にしたのは

溶岩の蜘蛛とデカい鳥だった

「……」

『おい、なんか言ったらどうだ?』

「盤城、俺らで殺るぞ」

「え?あ、うん」

「咲夜、リーナ姫は任せる」

「わかったわ。さあこちらへ」

「は、はい」

リーナと咲夜が安全な所まで下がったのを確認し、前の化け物どもを見る

「どうする?」

「任せるよ」

「じゃあ、俺が鳥やるから」

「僕がファントムか」

「任せたぞ」

「うん、そっちもね」

さて、役割決めたし

 

 

 

 

 

 

潰すか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まさか生きてたとはなぁ』

「残念ながら、僕は悪運が強いようだ」

盤城は苦笑いしながらメモリを構える

『勝てるのか、お前に?』

「もちろん」

盤城の目は以前と全く違っていた

あの時、逃げ出した彼はもういない

「僕は勝つよ、この世界のために! 変身!」

《チェス》

 

 

 

盤城のチェスは特殊能力として駒の名をもつ手下を出す事ができる

大量に出せる『ポーン』 馬に乗り陣形攻撃を繰り出す『ナイト』

防衛特化の『ルーク』 サポートができる『ビショップ』

妨害性能と火力が高い『クイーン』

これらの駒をいかに駆使できるかが、鍵になるメモリだった

誰も適合者がいなかった理由でもある

少しでも意識が削げれば駒は機能せず、かといってそちらに気を取られれば命取りになる

ゆえに、盤城にとって最高の相棒となる

『ちぃ!数の多さで勝ったつもりか!』

今回、盤城がとった作戦は『ポーンによる行動制限』であった

『それだけいればまともには動けないはずです』

『汚ねえ手を使いやがって!』

『貴方よりは綺麗かと』

本当はこいつなんて一撃で仕留められる

そうしないのは聞きたいことがあったからだ

『一つ聞きます。業蓮寺様はどうなったんですか?』

『ああ?あいつか?』

蜘蛛の顔が醜く歪む

『死んだよ、俺の炎で骨も残らずな!』

『…!』

業蓮寺様が死んだ

聞きたくなかった言葉が頭の中を巡る

もう、いい

『そうですか、ところでなぜそんな姿に?』

以前脱走した際のファントムは比較的人間のような見た目だったはずだ

『この姿か?新しいメモリのおかげさ!負担がでけえ代わりにこうやって強力な力が手に入る!

お前らなんかよりも今の俺は強い!』

意気揚々と語る目の前の蜘蛛はそう言って火球を放ってきたが、これを手に持つ剣で弾く

『この程度ですか、ならもう終わりにしましょう』

盤城はそう言い放ってマキシマムを使う

《チェス マキシマムドライブ!》

盤城が剣を構えると剣にし白と黒の光が宿る

そのまま居合切りのようにファントムに向かって一閃する

『な、馬鹿なぁ!』

『チェックメイトです』

その言葉とともにファントムの体は弾け飛ぶ

 

 

 

 

 

『あっはっは!なかなかやるじゃないか!』

鳥野郎(チキン)に褒められても嬉しくねえよ』

盤城が地上で戦ってる間、凱はグリフォンと空中戦を繰り広げていた

リベリオンやルシフェルの雷撃を駆使しながら戦っているが、グリフォンもなかなかにできる相手であった

距離を詰めれば嘴や爪による攻撃

距離を取れば雷の放射

正直言って面倒な相手だ

『お前、ただ飛んでるだけの能無しじゃなかったのか』

『心外だねぇ、僕は最初っから頭脳派さ!』

放たれた雷撃を回避しながらため息をつく

能無しじゃない=頭脳派

の方程式が成り立つなどと考えている時点で馬鹿なのでは?

もっとも、本来の馬鹿は実力もないのでこいつは若干できるやつだとは思う

『結局、鳥は所詮鳥か』

『んー?何が言いたいんだい?』

『いや、お前は焼き鳥にしても不味そうだなって話』

『そうかい。ならその減らず口が叩けないように殺してやるよ!』

そう言って真正面から突っ込んでくる

その速度はかなり速く、もしかしたらスポーツカーくらいの速さじゃ無いかと思うくらいだった

だが

『そいつはいい、串刺しにしてやるよ』

俺はリベリオンを持つ手を後ろに引き、切っ先をグリフォンに向ける

そのまま空いている手でリベリオンのメモリをマキシマムスロットに差し込む

《リベリオン バーストアクション!》

リベリオンを覆うように紫の光が収束していく

そして、引き絞った腕をグリフォンめがけて勢いよく突き出す

その格好は原作程かっこよくは無いが、ダンテの《スティンガー》のようであった

『押し潰してやる!』

『貫け!リベリオン!』

正面からグリフォンに跳びそのままリベリオンで貫く

互いにぶつかるように交差した後、振り返ると

そこには体にでかい風穴を開けているグリフォンが

『ここまでとはね、まさか、この僕が…』

『お前のことは嫌いだが、全力でぶつかれるいい機会だった』

『くはは…冥土の土産に…もらっ…て…おこ…う』

崩れ落ちながらグリフォンはそう言葉を続け、塵となって消えていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

「どうしたんだい?」

「…いや」

先ほどまでグリフォンの塵があったところを眺めていた

こいつらが命を擲つほどのカリスマ性を持っている魔王に興味が湧いてきた

「行くぞ」

そう言って歩き始めた時だった

 『凱君、聞こえるか』

持っていた通信機が音を発した

相手はどうやら亡元のようだった

「そっちは終わったみてえだな」

 『…まあな』

「? どうした?」

明らかに様子がおかしい

 『二つ報告がある』

「なんだ?できれば早めに…」

 『五月雨君が死亡した』

「!」

射山が、死んだ?

「嘘じゃ、無いんだな?」

 『ああ、彼女の決死の攻撃で幹部は倒せたが、彼女は』

「…そうか」

結局、何もしてやれなかった

先輩として、何も

 『…彼女から伝言がある』

「…なんだ?」

伝言。なんだろうか

 『私たちの分まで生きてほしい。…だそうだ』

「!…ああ、わかった」

〈私たち〉というのは、おそらく他のOlympusのメンバーのことでもあるのだろう

なら、せめてそいつらの分まで生きていこう

「それで?もう一つはなんだ?」

 『城の外に地獄門が出現し、そこから大量の低級悪魔が溢れている』

「対処できそうか?」

 『やれるだけやってみる。そちらでも止めれないか手段を探してみてくれ』

「わかった。気をつけろよ」

 『お互い様さ』

その言葉を最後に通信が切れる

「何かあったの?凱」

咲夜の問いに軽く息をつきながら答える

「城の外にゲートができて、そっから雑魚が湧いてるんだと」

「! じゃあ、急ぎましょう!」

「ああ、いくぞ」

そう言って俺は扉に手をかける

この先にいる魔王を倒すために

 

 

 

 

 

続く

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回はついに魔界の王であるギルバとの戦いになります!
この作品のギルバは小説版DMCのキャラと同じ名前ですが、キャラ設定は異なります
早くとも明日には投稿かな、と思います

それではまた次回お会いしましょう!



もしよかったら感想とかお願いします
作者のテンションとモチベが爆上がりします


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第23話 完全適合/王の懺悔/エンドロール

こんにちは、フォーウルムです
今回はついに最終決戦です!



凱のメモリはこちら

ヘファイストス ルシフェル リベリオン 
エクリプス プロミネンス トラップ


 

 

 

ーー完全適合ーー

 

 

 

王の間

 

 

「…来たか」

目の前の玉座に座っている男がいる

その目はこちらを睨み付け、冷酷な表情をしている

「待たせてたみたいだな」

「まあな。だが、感謝しているよ」

「何がだ?」

「妹を連れてきたことに、だ」

そう言って男はリーナを見る

彼女はそれに怯えるかのように一歩後ずさる

「何をするきだ?」

「外の地獄門、あれの真の力を解放させる」

「何でそんなことを!」

男の声に咲夜が反発する

「すべての世界を統治するためだ。そうすることで世界に真の平和をもたらす」

「そのような政治で、本当に平和になるとお思いですか!ギルバ様!」

盤城も反発する

「お前達には関係ない、この場で殺してやろう」

そう言って立ち上がったギルバの手にはメモリが

「仕方ない、行くぞ二人とも!」

「ええ!」「わかった!」

ギルバに対抗するため、メモリを使う

《ルシフェル》《クロック》《チェス》

「ふん、雑魚がいくら集ろうと、俺には勝てん」

そう言ってギルバはメモリをドライバーに挿す

《ユリゼン》

 

 

ユリゼンの性能は文字通り『最恐』であった

攻撃方の多彩さ、使用者の身体能力、そして天性の戦闘センス

それらが完璧に合わさり、本当の魔王と化していた

『咲夜、あれ使え!』

『わかったわ!』

打開の一手を打つために指示を出す

クロックを抜き、咲夜は新しいメモリを挿す

《ヴァルキリー》

背中から翼を生やし、空中近接特化の《ヴァルキリーガイアナイト》になる

『一気に決めるぞ!』

ユリゼンに対し、連携攻撃を叩き込む三人

しかし

『小賢しいな』

ユリゼンはただ腕を軽く振るっただけで吹き飛ばされる

『ガフッ!?』『きゃあ!』『ぐあっ?!』

たったその一撃で、盤城と咲夜の変身が解除される

『ほう、お前は耐えるか』

『くそ…強すぎんだろ』

ギルバはそこに立っているだけで、すぐに凱を殺そうとはしない

『いい機会だ、見せてやろう』

ギルバが手をかざすと、魔方陣が生成される

『なんだよ、それ』

『真の地獄門さ。これを使うのにリーナが必要なのだ』

『てめぇ、本気で言ってんのか!』

『ああ、全ては魔界のためだ』

あくまで冷徹に告げるギルバ

『さて、いい加減疲れたな』

そう言ってギルバは凱の首をつかみあげ、持ち上げる

『く、何のつもりだ!』

『なに、役目を与えてやろうと思ってな』

するとギルバの目が赤く光る

『な、…て…めぇ』

凱の抵抗が、緩み、大人しくなる

ギルバが手を離すと、凱が地面に落ち、変身が解除される

「凱くん!」

立ち上がった凱の目はハイライトが消え、虚ろであった

『さぁ、そいつらを殺せ。そしてリーナを連れてくるんだ』

「……」

まるで操り人形のようになった凱がリーナに近づく

「が、凱…くん」

盤城が止めようとするが力が入らない

「……」

「凱様!正気に戻ってください!」

リーナの声も、凱には届かなかった

そこへ

「…させません!」

咲夜が立ち塞がる

『面倒だ、メモリを使って殺せ』

ギルバの指示に、凱はメモリを挿す

《ルシフェル》

堕天使となった凱が咲夜の首に手をかける

75%…

凱の手は咲夜の首を折らんと力が入る

「が、凱…さん…」

…76%…77%

「やめるんだ…目を醒ますんだ!」

盤城の言葉も届かず、ギリギリと力が籠る

…78%……79%

『さあ、殺るんだ!』

「やめてください!凱様ぁ!」

ギルバとリーナの声が重なる

そのときだった

 

…80%

 

《precision complete》

《New skill Unlock》

 

 

凱の背中に()()()()()()()が現れる

それと同時に咲夜の首を閉めていた手が離される

「げほっ、はぁ…はぁ」

『……咲夜』

咲夜を気遣うような声が聞こえる

「正気に…戻ったんですか?」

『……ああ。すまない、俺は』

目をそらす凱を咲夜は優しく抱き締める

「よかった…元に、戻って…」

咲夜の目には涙が浮かんでいる

『…悪かった』

「もう…いいです。信じてましたから」

咲夜の言葉が心に刺さる

『…謝罪は後でしっかりする、今は…』

「わかってるわ、行ってきなさい」

『…ああ、行ってくる』

そう言って凱はユリゼンに向き直る

 

 

 

 

ーーラストバトルーー

 

 

 

 

『待たせたな、この野郎』

『俺の洗脳を破るとはな』

『俺だけの力じゃないさ、メモリと、あいつらのお陰だ』

『だが、俺が強いことには変わりない』

『おいおい、まさか知らねえのか?俺のこと』

『…なに?』

『俺さ、これが使えるんだよ!』

そう言って凱は右腕を突き出す

その手は青く輝く、悪魔の腕であった

『それは…まさか!』

そのままギルバを掴み、空中に持ち上げ、地面に叩きつける

『ぐはぁ!』

右腕の調子を確かめるように回した凱が、悪魔のような顔で告げる

『行くぜ?ショウタイムだ!』

 

 

デビルブリンガー

それは魔界に存在する最上級の魔族の血をひく者にのみ、完全に扱うことができる代物である

他の魔族ではまともに扱うことができないが

凱は別だった

 

『どうした!さっきまでの勢いは!』

『くそ!なぜお前がそれを使える?!』

『俺の母親はフィオナ・フェルグバルトって言うんだ。知らんとは云わないよな?』

『フィオナ…まさか!』

『俺とお前は従兄弟らしいな、皮肉なもんだろ?』

『……』

凱の言葉に、ギルバの攻撃が止まった

『おい、どうした』

『なぜ、お前に扱えるのかはわかった』

そう言ってギルバはメモリを取り出す

『あ?なんのつもりだ』

「お前の勝ちだ、凱」

『どういう意味だ』

「俺の計画では、デビルブリンガーがある時点で破綻するのさ」

『敗けを、認めるのか』

「そうだな、それにいい頃合いかもしれん」

『何?』

「薄々気付いていた。俺の政治が、民を苦しめていることに。だが、力に溺れ、俺は私利私欲のためにこんな事を続け、さらには、妹まで利用しようとしたのだ」

凱は、ギルバの懺悔を聞いていた

先ほどまでの彼とは違い、何処か憑き物が落ちたようだった

『…お前はどうしたいんだ?』

「これ以上生き恥を晒すわけにはいかん、終わらせてくれ」

ギルバの言葉を凱は理解する

『わかった』

ルシフェルを解き、リベリオンを構える

そして…

 

「やめて!」

 

振り下ろす直前で、剣を止めた

声の主はリーナであった

「リーナ?」

「お願いです、やめてください!」

「リーナ、俺は」

「お兄さまは黙ってて!」

リーナの声に、驚く

「もう、これ以上、戦わないでください…兄が償うなら、私も償いますので…どうか!」

リーナの必死の訴えに、凱はしばし考える

 

 

「そうか、ならこうしよう」

凱の提案、それは

「ギルバ、魔界を今後も統治しろ」

「…だがそれは!」

「まあ、最後まで聞け。リーナも一緒にするんだ」

「私も、ですか?」

「ああ、一人じゃ暴走するかもだが、二人ならいいだろ?あんたもそれでどうだ?」

急な凱の問いかけに、全員が驚く

「気付いていたのか」

壁の影から出てきたのは

業蓮寺だった

「業蓮寺…様?」

「元気…ではなさそうだが、成長したな」

業蓮寺の登場に盤城は涙する

「感動の再開はあとにしてくれ」

「ああ、そうだな」

そう言うと業蓮寺はギルバの前に歩みより、跪く

「ギルバ様、今一度、この魔界を統治なさってください!」

「俺は、欲に惑わされたんだぞ。それでもいいのか?」

「構いません、我々はあなたについて行きます」

いつの間にか部屋の外には城の兵士達が集まっていた

「…お前達」

「どうするよ?ギルバ」

「…わかった、俺でいいなら、この身を、魔界の為に捧げよう」

その声を皮切りに万歳の声が部屋を満たす

 

 

そのときだった

 

 

 

バチバチバチ

 

「な、なんだ!?」

「外からよ!」

凱達は急いで外に出る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何ですか、あれ!!」

咲夜の指差す先には

地獄門が

明らかに様子がおかしい

「亡元!どうなってやがる!」

『凱君!我々にもわからん。だが急に…』

「いったいどうなって…ん?」

凱の視線の先には一本の剣が

「ギルバ、あれは?」

「わ、わからん」

「お前も知らないのか?」

「ああ、あれが原因か?」

そう言って凱はその剣を抜く

すると剣の形が変わり、地獄門大人しくなる

それと同時に剣が見覚えのある形になった

「……それは?」

「…《スパーダ》、か」

それは魔剣スパーダであった

「これが原因か?」

「らしいわね」

「あの…」

「どうした?リーナ」

「それ、私のです」

「「「……はぁ?!」」」

盤城と凱と咲夜の声が重なる

周りもその事実に驚いている

「じゃあ、これは返すよ」

「ありがとうございます!」

「これで、終わりね」

「そうだな、終わったんだ」

 

 

こうして、俺たちの戦いは幕を閉じた

 

 

 

 

ーーエンドロールーー

 

 

 

 

あれから数日たった

 

 

現在、魔界はギルバとリーナの二人が統治している

幻想郷と協定を結び、今では両方の世界を自由に行き来できる

…地獄門使ってるのが気になるが

盤城はあいつの部下達と一緒に幹部に昇格した

その幹部を纏めているのが、業蓮寺だった

彼はファントムに焼かれる寸前に紫に助けられたと言っていた

たまに幹部連中が紅魔館に来るようになり、そのときは決まって宴会であった

今はジンとジーザ、モナとレクスの四人が主に遊びに来ている

 

Olympusは新しくメンバーを迎え、今後も安全のために戦っていくようだ

亡元はできるだけ殺し合いのない世界を目指したい、と言っていた

五月雨と時雨の墓参りにも行った

彼女の遺体を見たときは信じられなかったが、受け入れている

来世があるのなら、幸せになってほしいと感じた

 

そして…

 

「何でお前がいるんだ?咲夜?」

「いいじゃない、たまには」

俺と咲夜は夜の人里を歩いていた

「にしても、こんなになるとはな」

「そうね、終わったんじゃなかったのかしら?」

なぜ外にいるのか、それは

「何でこんなとこにスケアクロウがいるんだよ」

魔界と繋がりが強まったせいで、幻想郷に低級悪魔が出没するようになった

「まあいいじゃない、退屈だったでしょ?」

「まあな。さて準備はいいか?」

「もちろん、いつでもどうぞ?」

「掛け声は?」

「問題ないわ」

「よし、やるか」

二人はメモリを差し込む

《ヘファイストス》《ヴァルキリー》

『さぁ、行くぜ?』

『激しく行きますわよ?』

 

 

『『Its Show Time!』』

 

今宵も俺達は、悪魔を狩る

 

 

 

 

_________________________________

 

 

 

 

 

「ふんふんふーん」

早苗は神社の境内を掃除していた

彼女は今回の異変には深く関わっていなかったが、何があったかはある程度把握していた

「五十嵐凱さん、ですか」

初めて会った時に感じた印象はあまりよくはなかった

なにかこう、底知れない闇の様なものを感じたのだ

それでも霊夢や咲夜が羨ましかった

同年代の異性など、近くにいるわけではない

「はぁ、私にも来ないかな~、なんて」

溜め息混じりにそんなことを呟いた

そんな時だった

 

ヴォン

 

「へ?」

彼女の正面に謎の切れ込みが現れる

地面とかではなく()()にだ

そしてそれが開き、中から現れたのは

ローブをまとった1人の青年であった

 

 

「ここが、幻想郷か。んー!いい空気だな」

その人は、すごいかっこよかった

髪は黒髪に白のメッシュが入っていて

目はマゼンタとシアンのオッドアイ

腰に吊るしている刀がさらに彼のかっこよさを引き立てる

顔つきは優しそうで、どこか頼りがいのある雰囲気を持っていた

そんな彼を早苗はまじまじと見つめてしまっている

「なあ、ちょっといいか?」

「ひゃい!な、なんでしょう?」

急に話しかけられ驚いたが、次の一言はさらに早苗を驚かせた

「この世界に『五十嵐凱』ってやつがいると思うんだけど、どこいるかわかるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
今回でついに四章は完結になります!
長いような短いようなペースでの投稿でしたがいかがだったでしょうか?
今後も投稿は続けますので、お楽しみに!


感想や、コメントお待ちしてます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第24話 親友との再会

どうも!フォーウルムです!
今回から、5章に入っていきます
以前からいただいていたオリキャラを登場させる予定です
もし他にも『このキャラ登場させたい!』
という方がいましたら、気軽にDMください

凱のメモリはこちら

ヘファイストス ルシフェル リベリオン 
エクリプス プロミネンス トラップ



ーー親友との再会ーー

 

 

今日は休日

とは言っても、これという仕事はしていないのだが

今日は天気がいいということで咲夜に外に連れ出された

そこまではわかる

だけど

『さあ!行きますよ、凱さん!』

『今日こそ勝ってみせるんだから!』

『手加減はしないわよ?』

「…どうしてこうなった」

今、俺は変身した霊夢と文と咲夜に囲まれていた

外の空気を吸いに咲夜と広い野原に来たのだが、そこで文と霊夢に遭遇

なぜか組み手をすることになった

俺はとりあえず生身でリベリオンを構える

『行くわよ!』

最初に仕掛けてきたのは霊夢だ

彼女は相変わらず《セイクリッド》を使っている

お祓い棒を振りかぶり、勢いよく振り下ろしてくる

「よっと」

俺はそれをリベリオンで受け流し、デビルブリンガーのスナッチを使って霊夢のバランスを崩させる

『うわっ?!』

「そらよっと」

そのまま霊夢を掴み地面に叩きつける寸前で離す

すると霊夢は体を捻ってうまく着地する

『この!』

また霊夢がこちらへ攻撃しようとしてきたのを確認し、リベリオンの腹で叩く

当たりどころが良かったらしく、思ったより遠くへ吹っ飛ぶ

『今度は私です!』

次の相手は文

使っているのは《アクセル》

レッドクイーンを振り抜こうと構えて突撃してくる

「単調だぞ、射命丸!」

それに対し俺はリベリオンでスティンガーをレッドクイーンめがけて繰り出す

リベリオンはレッドクイーンの芯を捉え、その威力を相殺させる

『ッ!やりますね!』

レッドクイーンを弾かれた文は突撃の推進力をそのままにレッドクイーンを弾かれた方向に引き遠心力を上乗せもう一度振り下ろす

「甘いな!」

その動きを読んでいた俺はリベリオンを引き戻し、再びスティンガーを放つ

『あ?!やばっ?!』

流石に文には予想できなかったらしくスティンガーをもろに受けて吹っ飛ばされる

威力は抑えてるとはいえ、大丈夫か?

などという俺の心配はすぐにかき消される

なぜなら目の前に大量の剣が出現したからだ

一瞬にしてこんな芸当ができるのは一人しかいない

「《クロック》のマキシマムか!」

俺は急いでリベリオンを回転させ全ての剣を叩き落とす

『惜しかったですね』

「そうだな、もう少しはやけりゃあたったかも…な!」

デビルブリンガーのスナッチを使って咲夜を引き寄せリベリオンを首にあてがう

『参ったわ、降参よ」

そう言いながらヴァルキリーのメモリを抜く咲夜

それにあわせ霊夢と文も変身を解く

「悔しいですね、今日こそ勝てると思ったのに!」

「それでも着実に動きは良くなってる。いつかはタイマンでもできるさ」

「…三人がかりで勝てないのが悔しい」

事実、彼女たちの実力が上がっているのは本当だ

もっとも、こちらは生身の上に3vs1で対等だが

 

そんな話をしながら紅魔館への道を歩いていると

「あ!いたいた!霊夢さーん!」

目の前から歩いてくる緑髪の少女が霊夢を呼んだ

「あら、早苗じゃない。どうしたのよ」

彼女の名前は東風谷早苗。守谷神社の巫女だ

「そちらに凱さんっていらっしゃいますか?」

「ん?いるが、なんかようか?」

「この方が、凱さんに会いたいって…」

見れば早苗の後ろに一人の男が立っている

ローブを纏ってフードをかぶっているから顔はわからない

背格好は俺と同じくらいか

などと見ていると、男はその腰に吊るしていた刀に手をかけた

「ッ!?」

俺は咄嗟に文と咲夜を突き飛ばし、霊夢の肩を持ちながら横に転がる

その瞬間に

 

ギュアァッ

 

何もないはずの空間を刃の軌跡が舞う

今のは、いや、そんなはずはない

その技を放つのは不可能なはずだ

心ではそう思いつつ、俺はリベリオンを構え、スティンガーを叩き込む

フードの男は抜刀し、その刀身で防ぐ

その衝撃波で風が起こり、フードが脱げてその素顔が露わになる

「な?!お前は!」

黒い髪に白のメッシュ

左右で色の違う瞳

片時も忘れたことのない親友(相棒)の顔が、そこにあった

「久しぶりだな、凱!…まさか、忘れちまったか?」

刀を戻し手を差し出す

その姿は、あった時のことを思い出させる

「…忘れるかよ。変わんねえな、お前は」

差し出された手を掴み、その名を口にする

「また会えるとは思わなかったぞ、護!」

彼の名は総塚護(そうづかまもる)

俺の幼馴染であり、最高の親友だ

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
今回登場したオリキャラはルオンさんからいただいたキャラクターです!
このほかにも登場予定ですのでお楽しみに


それではまた次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五章 幻想郷編 前編
第25話 護のメモリ/妖怪の山へ


どうも、フォーウルムです
今回は前回のお話の夜の場面から始まります!
護のメモリと幻想入りした理由についても触れます!

凱のメモリはこちら

ヘファイストス ルシフェル リベリオン 
エクリプス プロミネンス トラップ


ーー護のメモリーー

 

 

護が幻想入りし、俺らと出会ったその日

ちょうど紅魔館でパーティーの日であった

皆、酒を飲んだり料理を食べたりとしていた

もちろん俺も楽し…

 

 

 

…んではいなかった

 

 

 

「こんなもんが美味いのか?」

俺が持つ瓶には酒が入っていたのだが、匂いを嗅ぐだけで気分が悪くなってくる

瓶を床に置き、気分転換のためにバルコニーに出る

そこには先客がいた

「お、凱じゃん」

「なんだ、ここにいたのか」

そこには護がいた

「いいのか?こんなとこにいて」

「霊夢も咲夜も酔って寝ちまった。俺らと同い年くらいじゃねえのか?」

「ここじゃ当たり前なんだよ」

「詳しいな、まあそんなことはいい」

「どした?聞きたいことでもあるのか?」

「色々ある」

「じゃあ折角だし、色々話してやるよ」

そう言って護は幻想郷に来た理由を話し始めた

 

 

 

俺がいなくなってから数日、護は特に変わりない生活を送っていた

だがある休日に彼が祖父の蔵を整理していた時だった

整理していた箱の中でも一際でかい箱の中には一本の刀が入っていた

それは子供の頃、一緒にやっていたゲームに出てきた《閻魔刀》であった

驚きながらそれを手に取り、恐る恐る刀を抜くとそれは眩い光に包まれ、メモリになったという

さらにその箱には他にもメモリが三本入っており、それをどうしようかと悩んでいるときに

幼い頃にあった八雲紫に助けを求められ、幻想郷にやってきた、ということだった

 

 

「それで、ここ(幻想郷)にきた、と」

「まあな。でもまさか、お前がなぁ?」

ニヤニヤと笑う護

「? なんだよ」

「お前に()がいるとはなぁ。家作るぞ?」

「…………はぁ??!!

急な護の言葉に普段じゃでないような声が出る

「そんな驚くか?」

「……あんなかの誰とも付き合ってすらねえよ」

「おいおい、んな冗談が…」

「…」

「……マジ?」

「…マジ」

「えー」

「ってか誰だよ、そんなん言ったの?」

「紫さん」

「あんにゃろう…!」

俺はつい右手で握り拳を作る

すると、デビルブリンガーが発動する

「凱、それって」

「ああ、これか。敵から奪った」

「お前も魔族だったんだな」

「ハーフだけどな……待て、お前『も』?」

「おう。一応俺も魔族だ。もっとも、お前と違って俺はクォーターだがな」

「なるほど、俺らの馬鹿げた身体能力はそれが原因か」

「だな、悪いが今日は寝させてもらうぞ」

そう言いながら護は欠伸をする

「そうしろ、明日は地下室に案内してやる」

「地下室?拷問は嫌だぞ?」

「するか馬鹿。とりあえずおやすみ」

「ああ、おやすみ」

 

 

次の日

 

 

「おはよう、凱」

「ん?ああ、起きたのか」

時刻は午前6時

比較的早起きの俺はいつものように作業の準備をしていた

「どこか行くのか?」

「自室で研究、つか趣味」

「お前の部屋か!どこにあるんだ?」

「地下」

「…なるほど。昨日言ってたのはそういうことか」

「来るか?」

「行かないわけがないだろう?」

 

地下室 凱の部屋

 

「ここが、部屋?」

「そうだが?」

「研究所の間違いだろ?」

護は驚いているが、そこまでだろうか?

まあ、ベットに机、シャワールーム

おまけにメモリのファイルが入った本棚が乱立してりゃあそうか

「そこらへんに座れ」

「おう」

「それで?メモリは何持ってるんだ?」

「これなんだが」

そう言って護が見せてきたのは三本のメモリだった

「これが閻魔刀と一緒に入ってたんだ」

「《ベオウルフ》、《パーティクル》、それに《サジタリアス》か」

「どうだ?」

「どうだ、って言われてもなぁ」

ベオウルフは知ってる

確かDMCに出てきた格闘武器の一つだ。もう驚かん

サジタリアスは射手座のやつか

イニシャルにも弓矢が描かれている

パーティクルに関してはノーコメント

そもそもでパーティクルって『塵、ホコリ』じゃなかったか?

イニシャルは何かのかけらのようなもので描かれているが、詳細は不明だ

「見た感じわかるのは、どれもハイランクってことだな」

「ハイランク…強いのか?」

「まあ、普通のやつで見ればな」

「なるほど」

一通り見たのでメモリを護に返す

「ドライバー作るか?」

「そうだなー、これ(閻魔刀)あればいい気もするけど、一応欲しい」

「わかった。じゃあ俺はここで作業してっから」

「あいよー。またな」

「おう」

そう挨拶を交わし、護は部屋を出て行った

 

 

 

 

 

 

 

ーー妖怪の山へーー

 

 

 

「さて、どっか行くか」

凱がドライバーを作ってくれてる間にせっかくなので幻想郷を見れる範囲で見に行くことにした

俺はもとより旅好きなので少々楽しみにしている

「にしても、『新組織』か」

俺がこの幻想郷に来た理由

それは新たなる組織との戦いが始まるからだ

組織のことはあまり詳しくはわかっていない

「ま、すぐにわかるでしょ。それよりも」

考えながら歩いていたら、俺は林並木の道を歩いていた

目の前には大きな山(凱曰く『妖怪の山』)がある

そして、俺をさっきから尾行してる奴がいる

「出てこいよ、そんなとこじゃ碌に話せないだろ?」

木の影から出てきたのは一人の少女だった

明らかに人間ではない

白い髪に犬のような耳、青っぽい制服、腰からは狼のような尻尾が生えている

「女の子?犬…いや、狼か?」

「白狼天狗です。ここから先は妖怪の山です」

「知ってる」

「じゃあ何をするおつもりなんですか?」

「せっかく幻想入りしたんだし、観光がてら登ろうかと」

「んな?!だめです!」

そう言って俺の腕を掴んできた少女を、俺は抱き寄せて地面を転がる

「?!!/////  何を?!」

「あぶねえな。俺はまだしも、こんな娘も巻き込むつもりかよ」

俺たちに急に襲い掛かってきたのは、手に剣を持ち、全身が青い皮膚に覆われた人型のドーパントだった

『失敬、刀を使う猛者を見つけてしまってつい、な』

声からして男だ

その男は俺の腰に吊るされてる閻魔刀をその手に持つ剣で指し示してきた

「それは『殺し合おうぜ』ってことでいいのか?」

『話が早くて助かるよ』

完全に敵意を剥き出しにする男

「あ、あの!」

「下がってな、こいつは俺がやる」

「でも!」

「安心しろって、俺は負けないからよ」

少女を下がらせて前に進む

「お前、名前は?」

『羽河透(はねかわとおる)だ。そしてこのメモリの名は《ナスカ》だ』

「ナスカ、ね。俺は総塚護。この刀は閻魔刀だ」

互いに簡単な自己紹介を済ませ、戦闘体勢をとる

『いざ…』

「尋常に…」

『「勝負!」』

その言葉を合図に戦いが始まった

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回はいよいよ護の初戦闘になります!
それと護のメモリを凱と同じように前書きに載せるかどうか迷っているのですが、載せた方がいいですかね?
是非感想とかで教えてください

それではまた次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第26話 見切り/化学結社

どうも、フォーウルムです
今回は、護の戦闘と新組織についてです
護の能力についても触れます
敵の組織の名前が宗教っぽいのは気にしないでください



 

 

 

それは異様とも言えるような光景だった

目の前で繰り広げられているのは生身の人間と怪物(ドーパント)の戦いであった

以前、文さんから聞いた話では

『ドーパントは非常に強く、メモリの力がなければ対抗できないんですよ。

椛にはわからないし、知らない世界かもですがねー』

と聞かされた

その後、胃袋の怪物に襲われてその恐ろしさを知った

それなのに

目の前の男はドライバーも着けずに生身で怪物と戦っている

怪物の振るう剣は音速とまではいかないだろうがかなり速い速度で振るわれている

それを紙一重で回避し、切り付ける男の技術もなかなかに高い

(これが、私の知らない世界…)

心に生まれたある種の憧れを胸に、私はその戦いを眺めていることしかできなかった

 

 

 

 

 

ーー見切りーー

 

『なかなかにやるな、少年』

「そいつはどうも…!」

剣を交えてわかったが、こいつはなかなかにできるやつだった

飛行しながら切り付けてくるのもそうだが、振るう剣の速さもなかなかだ

ちょっと油断したらそれだけで致命傷になりかねない

普通ならば

俺は自身の能力である「あらゆるものを目に捉える程度の能力」で剣の動きを見切る事ができる

多対一ならまだしも、タイマンなら負けない

『生身でここまで戦える人間がいるとは思わなかった』

「そうか?俺はもう一人心当たりがあるがな」

『まあいい、これで終わりにさせてもらおう!』

「それはこっちの台詞だ!」

ナスカドーパントは距離をとり、剣を構えこちらに向かってくる

俺は閻魔刀を納刀し、腰を低くして待つ

「待て、まだ早い」

限界まで奴を引きつける

そして…

「今だ!」

俺はすれ違いざまに抜刀し、刀を振るった

『見事だ…少…年』

男は崩れ落ち、変身が解除される

俺はそいつの近くに落ちていたメモリを回収する

「本当に勝ってしまったんですか…?」

声のする方を見れば、先ほどの少女が立っていた

「その、怪物相手に、生身で?」

「まあ、大したことじゃない。俺も純粋な人間じゃないからな」

「それはどうゆう…」

椛の問いが最後まで出ることはなかった

なぜなら

「椛様!お急ぎください!」

「! どうしたんですか?」

やってきたのは少女と同じ制服を着ている若い少年だった

「飯綱丸様がお呼びです!至急会議に参加せよよのことです!」

「わかりました、すぐに行きます!」

そう言って2人は走っていってしまった

「はぁ、俺も行くか」

先ほどの少年がドーパントの男を連れて行ってしまったので1人になった

ここにいるのも退屈なので、妖怪の山を登ることにした

 

 

 

 

 

 

 

「新組織、ですか?」

治安維持隊本部の会議室にて、会議が行われていた

奥の席には飯綱丸龍が座りその横の席を他の者が埋めている

「ついさっきこんなものが送られてきた」

飯綱丸が見せたのは一枚の紙

そこに書かれていた内容は

「『貴様らが違法に保持している神のメモリを速やかに引き渡せ、さもなくば武力行使に出る』だそうだ。随分と沸点の低そうな連中だな」

飯綱丸はそう言って紙を机に放る

「はたて、神のメモリってなんだ?」

「おそらく『エクストラ』のメモリのことかと」

飯綱丸の問いかけにはたてが答える

「エクストラねぇ、持ってるやついるか?」

誰も手を挙げない

そこへ

バンッ「遅くなりました!」

椛が入ってきた

「遅かったな、椛」

「申し訳ありません、飯綱丸様。侵入者の対処をしておりまして…」

「後ろの彼か?」

「え?!」

飯綱丸が指差す先には、護がいた

「いつの間に?!」

「お邪魔させてもらうぜ?」

「護さん!どうしてこちらに?」

「お、文さん。ども」

「あ、どーも。じゃなくて!」

「知り合いか?」

「はい、最近幻想入りされた方で、凱さんのご友人です」

「ほう、そうか。護といったか?」

「そうだが、なんかようか?」

「お前にはこいつがわかるか?」

飯綱丸はそう言って机の上の紙を見せる

「それは『文字読めるか?』か、それとも『意味がわかるか?』のどっちだ?」

「後者だ」

「なら『YES』だ。内容は理解できるし、俺が幻想入りしてきた理由でもある組織の連中だろう」

「その『神のメモリ』ってものはわかるか」

「ああ、おそらく凱の持ってるやつだろうな」

「渡すように説得は…」

「無理無理、ってか渡したら殺されるぞ」

護は冗談を言うように笑い返す

「エクストラを神なんぞという連中だ。それにこいつらがやろうとしてるのは独裁政治だ」

「…その根拠は?」

「ほら、最後に書いてあるだろ?」

そこに書いてあったのは『glorious chemical society』の文字

「これは?」

「『栄光の化学結社』。そいつらは自分の利益のためなら手段を問わない屑連中さ」

護はそう言って会議室を出る

「そいつらに従うか争うかは、任せるぜ」

 

 

ーー化学結社ーー

 

 

 

 

「栄光の化学結社?」

「ああそうだ」

妖怪の山を登っている最中のことだった

紫さんの式神である八雲藍と出会い共に登っている時の話だ

「その連中が、例の新組織か?」

「間違いない。連中はどうやらエクストラメモリを使って自分達の世界を創るつもりらしい」

「それを防ぎたい、と」

「そういうことだ。相変わらず話が早くて助かるよ」

藍とは幼い頃からの知り合いだ

保育園児くらいの頃から俺を知っている

「敵の詳細は?」

「そこはまだだ。だが、幹部はそれぞれ強力なメモリを持っているとしか」

「それで十分だ」

「そうか。気を付けろよ」

「りょーかい。凱には俺から伝えておく」

「助かるよ」

 

 

 

「まさかこんなにも早いとはな」

先ほどの回想を頭の中で繰り返しながら、護は下山していた

早めに戻って凱に伝えよう

そう思っていた時だった

「待ってください!」

後ろから呼び止められ、振り返る

そこには先ほどの狼の少女がいた

「あれ?確か…椛だっけ?」

「は、はい!その、感謝を伝えたくて」

「感謝?ああ、さっきの」

「はい、助けてくださってありがとうございます!」

「いいのいいの。それでどうすんの?」

「私たちは、戦います」

「そうか。じゃあ、これからもよろしくな」

「は、はい!」

護が差し出した手を、椛がとる

 

 

 

この時、椛の顔は真っ赤になっていたが、夕日に照らされたお陰で護に悟られることはなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
次回は凱の方のことを書く予定です

それではまた次回お会いしましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第27話 蘇る悪夢(過去)/灯台もと暗し

どうも、フォーウルムです!
今回は凱のちょっとした回想的なやつ、凱の苦労と妖夢の登場
エクストラランクについてと新メモリの登場です!



凱のメモリはこちら

ヘファイストス ルシフェル リベリオン 
エクリプス プロミネンス トラップ


 

 

目を開けた俺の前に二つの影が見える

片方は幼い子供の影

もう片方は人間だった肉塊の影

「……おとう…さん…?」

幼い少年はただ立ち尽くしてその塊を見下ろしている

一度も忘れたことが無い光景を前に、俺は目を閉じる

 

 

目を開けると今度は火事の現場だった

轟々と燃える建物を、先ほどよりも成長した少年が眺めている

「どこ…?お姉ちゃん……どこ?」

姉を探す少年の声が聞こえる

体の隅々から汗をかくのを感じながら、再び目を閉じる

 

 

 

目を開ける、流石に目覚めただろうか

否、目の前に映し出されるのはまたしても二つの影

膝をつき、崩れ落ちる少年と

体が変な方向に折れ曲がった女性

「……はは、あはは!ははははははは!」

少年は狂ったように笑う

そうだ、この時からだ

俺が性格を無理やり明るく保とうとし始めたのは

 

 

 

 

 

ーー蘇る悪夢(過去)ーー

 

 

 

「……クソッタレ」

開口一番がこれなのは少々いただけないが、仕方がない

時刻は午前4時。全身汗だくで気持ちが悪い

「シャワーでも浴びるか」

俺が使っている地下室にはシャワールームが存在する

そこまで広くはないが、汗を流すのは十分だった

汗を流し終え、髪を拭きながら着替える

あの悪夢を見たのは久しぶりだった

最近はめっきり見なくなっていたので以前よりも耐性がなくなっている

「ナイトメアがいないからか?」

彼のペットとなっているマジェストのナイトメア

今は地霊殿のさとりのところにいる

なんでも、魔製生物(マジェスト)という生物自体が珍しいのでしばらく借りさせて欲しいという話だった

まあいいかと思い貸したことを後悔している

「そんなことよりも…」

凱は2枚の紙を見る

1枚は護が、2枚目は届いた紙

内容は両方とも同じであった

「エクストラを寄越せったってな」

断れば実力行使という話だが、どうしたものか

その時

コンコン

「ん?」

部屋の扉を叩く音が聞こえる

こんな朝早くから誰だろうか?

「起きてますか?凱さん」

「起きてるぞ、入ってくれ」

入ってきたのはピンクの髪に黒の服を着た、見慣れた人物だった

「おはよう小悪魔。珍しいな」

「おはようございます。ここで会うのは珍しいかもですね」

普段から小悪魔とはそれなりに交流はあるが、基本図書室でだ

「朝早くにすいません」

「気にすんなよ。で?どうしたんだ」

使い魔であるからか、元から教養があるからか、早朝の訪問を謝罪される

「このメモリなのですが」

小悪魔の手には一本の黒いメモリが

「どこにあったんだ?」

「いつもパチュリー様が座ってらっしゃる机の上に。私のじゃ無いですし、パチュリー様のでもないみたいなんです」

おまけに使えないし、と付け加えられる

「おそらくエクストラランクのメモリだな」

「私じゃ扱えないので」

「おう」

そう言って小悪魔が渡してきたので受け取る

が、プロミネンスのような現象は発生しなかった

「とりあえず、外で探すか」

適合しそうな人物を求めて、俺は外に出た

 

 

 

 

ーー灯台もと暗しーー

 

 

 

 

 

いない

 

三日間探しまわってもう四日目の午後だ

 

1日目は魔界のギルバ達の元へ向かったが、誰一人として適合はしなかった

日暮れまで探したのにいなかった

ギルバに勧められてその日はフォルトゥナ城に泊めてもらった

 

2日目は地霊殿に行った

その日も結局適合者に会えず、疲れ果てた

さとりにせっかくなら泊まっていってと言われたので好意に甘えて泊まらせてもらった

なぜかその日は古明地姉妹にせがまれて三人で添い寝をした

ついでにナイトメアも連れ帰った

 

3日目は一度紅魔館に帰って、ナイトメアを置いて、永遠亭に行った

歩いて行った上に竹林で迷ってしまったのでついたのは夕方だった

永琳先生に疲労困憊でぶっ倒れかねないから泊まって行きなさいと言われて断れず泊まらせてもらった

……やけに永琳の弟子の鈴仙という子が話しかけてきてついつい夜更かししてしまった

どうやらその時に「ドライバーとメモリが欲しい」というお願いを承諾したらしく、仕事を増やしてしまった

 

そして4日目

向かった先は白玉楼

事情を説明し、妖夢と幽々子に試してもらったがダメ

午後になったから移動しようと思ったら妖夢が「私も手伝います!」と言ってくれたので、手伝ってもらうことになった

そして今に至る

 

「見つかりませんね」

「どうなってやがる」

妖夢とベンチに座りながら考えを巡らす

「すまねえな、巻き込んじまって」

「いえ、私は大丈夫です!これのお礼もしたかったので」

そう言う彼女の手には一本のメモリが

「それでよかったのか?」

「はい!私にぴったりだと思いませんか?」

彼女はメモリを顔に近づけて笑顔をこちらに向ける

銀の本体に白のディスプレイのメモリ《エッジ》と元から白髪の彼女は、とてもお似合いだった

「ああ、似合ってる」

「そ、そうですか!///」

急に赤面する妖夢

そこへ

「明るいうちから惚気話か?凱?」

声の主の方を見ればそこに立っていたのは護だった

その隣には椛がいる

「……」

「おい、大丈夫か?」

「…ああ、まあな」

「何があったんですか?」

「えーとですね」

 

妖夢説明中

 

「なるほどな」「なるほどです」

妖夢が2人に何があったかを説明してくれていた

「そもそもで『エクストラランク』の分け方ってどんな感じなんですか?」

椛の問いに俺が答える

「…『天体・概念・伝承・災害』の記憶

『封印されてるか否か』

『ドライバーを通しても1人しか使えない』

以上の3つの条件を満たせばいい」

「へー。その封印ってどうすれば解除できるんですか?」

「そりゃあ、こうやって触れれば…」

そう言って護が俺の持っているメモリに触れた時だった

辺りが切り立った崖に変わる

「?!」「なんですかこれ?!」

急な変化に驚く妖夢と椛

「あー、どうなってるんだ?」

若干状況が飲み込めない護

「お前が鍵だっただけだろ」

俺は比較的平常心だった

なんてふうにしていると

目の前に巨大な龍が現れる

「「でっか!」」「でけえな」「竜…いや龍か」

目の前の龍が顔を護に近づける

その顔に護が触れると

周りの景色は元に戻った

「戻ってきた、んですかね?」

「そう見たいです…」

椛と妖夢は相変わらず驚いている

「…みろよこれ」

そんな中、護が俺たちにメモリを見せる

そのメモリは…

 

金の本体に、赤のイニシャルで『D』が描かれたメモリ《ドラゴン》であった

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
今回登場したドラゴンはルオンさんのアイディアになります
次回は、護が凱にとある疑問を投げかけます
おそらく次回も戦闘はありません。楽しみにしてくださってる方がいたらすいません


それでは、また次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第28話 誰かを守るために

どうも、フォーウルムです
今回は護が凱の心の壁をぶち壊します
今後の人間関係のために凱を勇気づける回となります
一応最後に女性陣も登場します



教えていただいたのですが、既存のメモリに『ドラゴン』があるらしいですね
今作のドラゴンと原作のドラゴンは別ですのでよろしくお願いします


 

 

「いい星空だ…」

適合者探しで疲れた俺は、バルコニーにの椅子に座っていた

最近は夜でも室内にこもっていたためか、その星空はとても美しく見えた

このまま、何もせずに座っていようか

そう思った矢先

「ここにいたのか」

護がやってきた

「少し休ませてくれよ」

「それはすまないが、ちょっと気になったことがあってな」

「なんだ?」

一呼吸置いて、護の口から出た言葉は

俺を動揺させるには十分であった

 

「お前、()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

 

 

数分前

 

 

 

 

「あんたが頼みなんて、珍しいな」

「しょうがないじゃない、貴方くらいにしか頼めないんだから」

凱に会う少し前、俺は博麗霊夢に相談を受けていた

「にしても、あいつがあんたらをどう思ってるか聞いて、なんになるってんだ?」

「それは…その」

霊夢が赤面するのをみて、そういうこと(恋愛について)だと納得する

「わかった。聞くだけ聞いてやるよ」

「…!ありがとう、助か…」

「ただし」

「?…何?」

「聞き方は俺なりにする。あと、おそらく期待してる言葉は出ないぞ?」

 

 

 

現在

 

 

 

「どうって。それはしっかりとしてて…」

「そうじゃねえよ」

護は核心をつく

おそらく凱が一番聴かれたくないことを訊ねる

 

「お前、あいつらのこと心の中では避けてんだろ?」

「……」

凱は押黙る

いつもなら優しい光を宿す眼は、彼本来の、闇に染まった瞳に戻る

「いつから気づいていた?」

いつもよりも一層冷たい声に、緊張しながらも護は答える

「なんとなくだ。明らかに対応がおかしいからな」

「そうか。隠しているつもりだったのだがな」

凱が心の中で壁を作り、ほんの一握りの人間にしか心を許さないのを、俺は知っている

人前では比較的明るく振る舞っているが、本来は違う

深く、暗い闇。まるで深淵を覗き込んでいるような、そんな威圧感を漂わせているのが本来の凱だ

それを知っているのは俺を含めても十人に満たないはずだ

「あいつらに話したのか?」

「いや。だが、勘づいてる奴はいるだろうな」

以前、フランドールには本性を見せたらしいが、それ以降はないらしい

なら、なおさらだ

「じゃあ、なんでそれをあいつらに話さないんだ?」

たちが悪い質問だと、心の中で思う

俺はその理由を知っているのに

「あいつらを、巻き込みたくはない」

「死んでしまうからか?」

「…ああ」

 

巻き込みたくない

それは立て続けに家族を失ったあいつが出した結論

子供の頃、昔からの親友だった俺ともう数人にのみ、あいつが話したこと

『自分と関わった人達は必ず死んでしまう』

小学校に通ってる時期の時点で既に身内や家族を何人も失ったあいつは次第におかしくなっていった

なんとか食い止めようとした俺たちは、どうにかあいつを説得した

今考えれば、呪いだったのかもしれない

『俺たちは何があっても、凱の親友だよ!』

俺たちがそう言って無理矢理にあいつを宥めた

それが正しいとは今も思ってはいない

でも、あれ以外に選択肢はなかった

 

「今も引きずってるのか?」

「当たり前だろう…怖いんだよ、あいつらが大切に思ってる奴らが死ぬのが!」

凱は声を荒げる

「何度も何度も何度も!あいつらが、霊夢やフラン、咲夜や文たちが死ぬのを見た!ガキの頃の、家族の死を目の当たりにする瞬間だって!護、お前やあいつらが死ぬ所だって!」

凱の口から溢れ出る、今までの苦悩と絶望

いつものこいつが絶対にしないであろう泣き言を、俺はただ聞いていた

「今じゃ、ろくに寝ることもできない。寝れば、あいつらが、お前らがまた俺の知らないところで…!」

「馬鹿野郎っ!」

「!!」

俺は凱の胸ぐらを掴み、怒鳴りつける

急なことに凱は驚いている

「お前がそんなんでどうする!お前が、そんなにくよくよしていれば、守りたいものも守れないぞ!」

凱に言葉を叩きつける

「いいか、よく聞け!俺たちは人間だ。あいつらは妖怪や魔物かもしれないがな、()()()()()()()!生きてれば必ず死は訪れる!」

「…だが」

「ああ、死の瞬間は誰にもわからん。寿命、病、事故。何で死ぬかは俺たちにはわからない、分かりようも無いんだ!

でもな、強くなきゃ何も守れないんだよ!どれだけ力が強くても、どれだけ賢かろうと、心が弱けりゃ何も守れやしないんだよ!」

「…それは」

「お前は、それでいいのか?」

「…」

凱は項垂れてしまった

「確かにお前は強い、おそらくメモリの扱いも含めて最強だろう」

「…」

「でもな、それだけじゃ守れねえんだよ」

「…」

「どうすればいいか、わかるか?」

「…わからない。教えてくれ。俺は。俺はどうすればいい?」

顔を上げた凱の眼には、覚悟の光が灯っている

「簡単だ、『頼れ』」

「頼る…?」

「そうだ、思いっきり頼れ。周りがお前を信頼して頼るように、お前も周りを信頼して頼れ」

「いいのか?」

「ん?」

「頼っても、いいのか?」

「もちろんだ、お前は、一人じゃないんだからな」

「ああ、そんな、そんなことだったのか。俺が、長い間、求めていたものは…」

「気づくのが、遅えんだよ」

笑いながらそういう俺を見て、凱もつられて笑う

 

凱は気づかなかったが、俺たちの会話は、盗み聞きしている他の連中に筒抜けだった

 

 

 

 

「いやー、久々に語ったな」

「はは、そうかもしれんな」

疲れた俺たちは椅子にもたれ、星空を眺めていた

さて、俺が聞きたいことは終わったし、あいつの壁も壊れたところで

 

本題に入ろうか

 

「さて、凱君」

「あ?なんだよ?」

訝しむ凱に俺は最大限の笑顔で訊ねる

「あいつらの中で誰が好きなんだ?」

霊夢に頼まれたのでしっかり聞く

別に俺が知りたい訳ではなくもない

俺の質問を凱は笑いながら答える

その目にはあの頃の、幼い頃の優しい光が灯っていた

 

が、奴の口から放たれたのは核爆弾にも等しかった

 

「全員好きだ」

「……?」

「聞こえなかったのか?」

「いや、え?…E?」

「だから、全員好きだと…」

「はあぁぁ?!!」

「そんなに驚くか?」

「当たり前だバカやろう!お前はどこぞの一夫多妻制度の貴族か?!」

「ダメか?」

「いや、ダメってことは…無いのか?」

そもそも日本かどうかも怪しいこの世界で、一夫多妻制度が存在するかはわからないが、ハーレムでもいいのかもしれない

「ったく、この女誑しめ」

「お前に言えたことでは無いだろう?」

「ちげえねえな」

俺たちは腹の底から笑った

こんなのは、いつぶりだろうか?

こいつと、こんなふうに笑い合うのは…

 

 

 

 

 

バルコニーから出て、館内に戻る

出入り口の近くには、霊夢や咲夜、フランといった凱に好意を寄せる少女たちがいた

ちなみに凱はバルコニーの椅子にまだ座っており、膝の上にペット(ナイトメア)を乗せて星を眺めている

「どうだ?あいつの言葉を聞いて」

「…素直に嬉しいわよ」

「あいつがお前らをどう思ってるかはわかったんだ。あとはお前ら次第だ」

「そうね、ありがと」

俺は手を振りながら、その場を後にする

 

凱が今後どうなるか、とても楽しみだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
次回から、女性陣が凱に猛アタックするストーリーが…描けたらいいな
本編と混ぜながら出す予定ですのでお楽しみに

それではまた次回、お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第29話 堕落者は笑わない/メモリ売り(実働部隊)厄災の箱(幼馴染)

どうも、フォーウルムです!
今回のお話は凱の引っ越し?と敵組織と幼馴染の登場についてです!
引越しのやつは前々から考えてました。DMCやってるうちに「これやりたいなぁ」と思ったので実行
名前が痛いのは気にしないでください
敵組織、と言っても下っ端というかなんというか。まあタイトルの通りです
幼馴染はアンケートのやつですね


現在の凱の使えるメモリはこちら!

ヘファイストス ルシフェル リベリオン 
エクリプス プロミネンス トラップ


 

 

「「「………」」」

(き、気まずい…)

妖夢は困惑していた

凱に用事があって紅魔館を訪れたのだが

咲夜、霊夢、フランの三人の機嫌が悪そうだった

「こんにち…あやや?どうかされましたか?」

入ってきたのは射命丸文だ

「なんか、みんなが不機嫌なんです」

「はて?なんでしょうね?」

射命丸も首を傾げるが理由はわからない

そんな2人に霊夢が声をかける

「凱が、どっかいったの」

「「えー!?」」

 

 

ーー堕落者は笑わないーー

 

 

 

「こんなでいいかな」

凱が今いるのは人里の外れ、魔法の森の近くの家だ

元々はただの空き地だったのだが紫に許可をとり、護に頼んで作ってもらった

同い年でありながら建築士の資格を持っていたことに驚きだ

内装は家と言うよりも、バーに近い

バーの奥には自分の居住スペースを確保してある

もちろん、隠し扉だってある

決して紅魔館が嫌になった訳ではない

前々から決めていたことなのだ

ある程度日が経ったら移動して家を作る

護がいたおかげで家を作るのには手間取らずに済んだ

あとはここで悠々自適に暮らすのも悪くはないが

真意は別にあった

「完成したようね」

現れたのは紫

「なんとかな。これで始められる」

「まさか()()()()()()()()()()()()()()()をやるなんてね」

「今後必要になるだろ。良くも悪くも」

そう、この店の本来の目的はメモリ

新組織の『栄光の科学結社』に対抗するためだ

ここでやってればおそらく敵の動きや情報が掴めると思い、こうするに至っている

「霊夢達はどうしてる?」

「紅魔館で拗ねてるわ」

「そいつは可哀想なことしたな。呼んでもらえるか?」

「ええ、お安いご用よ」

そう言うと紫はスキマに消えた

 

数分後

 

「何これ…?」

「わぁ、お洒落!」

「綺麗なお店ですね!」

内装が完成したので霊夢達を招き入れる

全員が目を丸くして辺りを見回す

「これ、全部お兄様が?」

「いや、建物自体は護に作ってもらった」

「すごい!ビリヤード台まである!」

「かなり広いみたいだけど、なんの為なの?」

「ここは、便利屋だよ」

「便利屋?」

霊夢の問いを返すと皆が首を傾げる

「ああ、基本的に何でも。人探しから用心棒、相談その他諸々」

「なるほどね。でお店の名前は?」

咲夜に聞かれ、俺は最大限の笑みをしながら答える

「『Fallener don't laugh(堕落者は笑わない)』。《ルシフェル》を使う俺にはぴったりだろ?」

 

その後、霊夢たちとしばらく駄弁っていた

一応表向きはバーのような見た目であるので酒はあった

その酒を飲んだり、ビリヤードを楽しんだりしているうちに、いつの間にか夜遅い時間になった上に、皆が酔い潰れてしまったので紫に頼んで送ってもらった

俺も生まれて初めて酒を飲んだが、案外行けた

そんな小規模な宴会をの後片付けをしている時だった

 

 

カランカラン

「まだやってるか?」

「ちょうど片付け中だ。今ならまだ間に合うぞ」

やってきたのは護だった

こいつは最近とあるやつの家に居候しているらしい

「そいつはよかった。彼女のメモリとドライバーを頼みたい」

「彼女?」

「ど、どうも」

「ああ、あんたか」

護の後ろにいた少女は以前にも会ったことのある人物だった

緑のロングヘアーにカエルと蛇の髪飾りの少女、東風谷早苗だった

「メモリねぇ。護、そういうのは早めにだな…」

「あの!私がお願いしたことなんです!」

ことの発端は早苗の言葉だった

護が居候しているのは守谷神社で今は早苗と共に生活しているらしい

早苗はメモリについては深く知らなかったために、護に色々聞いたらしく、その最中に俺のことを聞いた

さらに護は「凱ならメモリだけじゃなくてドライバーも任せられる」などと漏らしてしまい、だったら今からでもお願いに行こうということになった

「なるほどな」

「そういうことで、なんとかお願いできねえか?」

「お前は少し反省しろ。ただでさえ仕事が溜まってるんだ」

「…反省するよ」

「まあ、護の頼みだ。引き受けてやる」

「ほ、本当ですか!」

「ああ、その代わり他言無用で頼むぞ?」

「はい!」

 

少年質問中…

 

 

「この辺りだな」

凱の持つトレーの中には何本かのメモリがあった

それは早苗にした質問と彼女の体質に合いそうなのを凱が選んだ「商品」であった

「能力や性格、あとは色からしてこの辺りだと思うんだが」

「色、ですか?」

「ああ。生物の魂には色があってな?それで適合するメモリに差が出るんだよ」

「へー」

「なんだそれ。ってか凱、お前そんなの見えたのか?」

()()()()()()()()()だな。なぜかは知らん」

それはへファイストスの適合率が関係しているのだが、彼らは知らない

「あの、何本まで選んでいいんですか?」

「変身用とレイズ用で2本持っとけ。必要になったら追加で売ってやるよ」

「そうですか…。じゃあ、これとこれにします!」

そう言って早苗が選んだのは2本のメモリだった

「《サイクロン》と《ラック》か」

「早苗に合いそうじゃん」

「そうですかね?(えへへ…)」

護にそう言われ、頬を綻ばせる早苗

…甘ったるいな

「そういえば、代金って」

「そいつはサービスだ。次からはそれなりのものをとる」

「わかりました!ありがとうございます!」

そして、ウキウキな早苗にベルトを渡した

ついでに護のも渡したが、必要あるのか?あいつに?

そんなことを思いながら、今日の1日を終えた

 

 

 

 

 

ーーメモリ売り(実働部隊)厄災の箱(幼馴染)ーー

 

 

 

裏路地にはひと組のの男女がいた

一見すればカップルのように見えるが、彼らはそんな関係ではない

「どうだったかしら?羅生」

女は男に問う

羅生と呼ばれた男はため息をつきながら答える

「やめた方がいいっすぜ、あれは」

あれ、というのは凱の店のことだ

「店主の五十嵐凱ってやつは手練れだし、出入りが多い連中の中には賢者(八雲紫)大天狗(飯綱丸龍)がいる。下手すりゃあこっちにまで被害が出ちまう」

「そうね、組織のためにそれはまずいわね」

女は顎に手を置き考える

「姉御、一旦戻りやせんか?」

姉御と呼ばれた女は未だ思案に耽っている

「姉御?一(にのまえ)の姉御?」

「え?ああ、ごめんなさい羅生。なんだったかしら?」

「一度拠点に戻りやしょうって話っす。ここじゃあれだし、しばらくはこっちの()()にゃ影響はないっすよ」

「…そうね。戻りましょうか」

彼女らは栄光の化学化学結社(glorious chemical society)の実動部隊のメンバーだった

彼女らの役割は『メモリの売買』

メモリを取引し、組織に有用な人物を集めるのが主な役割だった

「とりあえず、帰ったら夕食にしましょ。貴方が作りなさい」

女の名前は一 凛(ニノマエ リン)

「へいへい、わかりやしたよ」

彼女に付き従うこの男は猿樂 羅生(サルガク ラショウ)

この二人が凱たちと本格的に対立するのは、まだ先になりそうだ…

 

 

 

護は一人で路地裏にいた

その手には特殊な通信機があった

プルルルル プルルルル

ガチャ

「もしもし。ああ、俺だ。遅くなって悪かったな」

「なんだよ?あー、それはすまん。やっと凱が立ち直ったらしくてな」

「そうだ、そうそう。名前?確か『墜落者は笑わない』だっけか?ちげえわ、堕落者だ」

「問題ねえよ。あいつなら今周りの女の子に囲まれてハーレ…ああうっせえうっせえ!大声出すな!」

「そんなんじゃせっかくのお嬢様が台無しだぜ?わかってるよ。こっちはまだ動いてないらしい」

「わかった、わかったよ。そっちはどうだ?そうか、そいつはよかった」

「こっちに来たら連絡くれ。ああ会わせてやる」

「ああ、またな、姫乃」

彼は通話を切る

凱の幼馴染であり、問題児の幻想入りは

果たしてどうなることやら

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
次回は、幼馴染か早苗の話になるかなーって思ってます
気が変われば別の話を書くでしょう!(他人事)

今回登場した《ラック》メモリと敵組織の凛と羅生はメモ男さんのアイディアです
いつもいつも感謝しております!
他の方のアイディアもお待ちしておりますのでぜひお気軽に連絡ください!


それではまた次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第30話 幼馴染とヒロイン/予定変更

どうも!フォーウルムです!
今回はオリキャラの登場と早苗と護の戦闘のお話になります
凱のお店ですが、名前が長いので今回から『FDL』と略します


現在の凱の使えるメモリはこちら!

ヘファイストス ルシフェル リベリオン 
エクリプス プロミネンス トラップ


 

 

夜の街

誰もいない道で1人の少女が連絡をとっている

 

プルルルル プルルルル

カチャ

「こちら姫乃。あら、護さんですか。やっと準備できたのですね?」

「それにしても、随分時間がかかったんじゃありません?……!そうだったんですか!」

「それで、お店の名は?なるほど…いや、そこ間違えないでください」

「彼は元気ですか?……なんですってぇ?!

「それもそうですね、気を付けます。組織の動きはありませんか?…そうですか」

「ついたら凱くんに会わせてくださいね?絶対ですよ!私ですか?相変わらずです」

「なるほど、わかりました。それで会えるんですね?」

「それでは、また」

 

 

彼女の名前は姫乃 禍月(ヒメノ マガツ)

凱達の幼馴染みだ

黒く長い髪を持っており、比較的普通に見えるが唯一他と違うところがあった

それは紫の瞳だった

周りからは避けられ、孤独な人生を歩み、世界に絶望する…はずだった

「うわぁ、すごいきれいなめだね!」

小学生の頃に、初めてそう言われた

それは1人の男の子の言葉だった

その子供の名は五十嵐凱

これが、彼女と彼の出会いだった

その後、護や他の面々とも出会い、少しずつ変わっていった

そんな彼女にとある変化が訪れる

物置で一つの鞄を見つけたのだ

それは悪魔狩りの兵器『パンドラ』であった

17歳でこれを見つけ、そのまますぐに使えるようになった

そして今、八雲紫と言う人物から「凱を手伝ってくれ」と頼まれたのだ

彼を想う彼女はもちろん即決

すぐに向かおうとした

その前に護から連絡が来た

そして衝撃だった

彼が…ハーレム?

彼女の心は不安で埋め尽くされた

「今からでも、間に合うかな?」

彼女は凱の良さを知っており、凱が女だらけの幻想郷に行くと聞いた時、その事を危惧した

まさか既に現実になっていたのは想定外だったが

 

そんなこんなで、彼女は幻想郷に向かう

もうしばらくで紫が迎えに来るはずだ

 

 

 

 

 

 

「早苗!そっち行ったぞ!」

「はい!了解です!」

ところ変わって幻想郷

護と早苗はとある任務にあたっていた

それは凱の店に来ていた案件で、魔物退治だった

そこまで難しくは無いし、ちょうどいいだろうと言うことで早苗と護のドライバーの試運転にちょうどいいということで受けたのだった

「一気に行くぜ!」

護が使っているのは《パーティクル》

それは粒子のメモリであった

粒子を自在に操り防御や攻撃、さらに武器を生成し銃としても使える万能型のメモリであった

彼は両手に剣を生成し、周りの魔物を切り伏せる

「逃がしませんよ!」

早苗が使っているのは《サイクロン》だ

風のメモリであり、言わずと知れた有名なメモリだ

それを早苗が扱うにあたって多少なりと改良が加えられている

見た目はサイクロンドーパントなのだが首にはマフラーが巻かれ、左腕はライフルのような銃となっている

早苗は狙いを定め、確実に魔物たちを撃っていく

そして、最後の一体を倒し終えた

「お疲れ、早苗」

「お疲れ様です!護さん!」

2人は手をあげてハイタッチをした

「案外使いこなせてるみたいだな」

「そうですね、すごいしっくりきます!」

「よし、戻るか」

「わかりました!」

2人は仲良く凱の店に向かって歩き出した

 

 

 

ーー幼馴染とヒロインーー

 

 

 

 

FDL店内

 

 

 

 

凱の店にはいつも誰かしらがいる

ほとんどは彼を好きな少女の誰かしらではあるが、たまに依頼をしに来た飯綱丸や紫もいたりする

今日いるのは霊夢、妖夢、そして鈴仙だ

鈴仙はメモリを受け取りに、妖夢と霊夢は遊びに来ていた

「凱さんは作業中ですかね?」

「多分ね、なんか新作の武器を作るとかなんとか」

「時間かかりそうですね」

妖夢がそういった時だった

 

 

カランカラン

店の入り口の扉が開く音と

ガチャッ

奥の扉が開く音が同時に鳴った

「お邪魔しま…す…」

「お待たせ、少し時間…が?」

店の奥から出てきた凱は目の前の少女を見て絶句する

そこには、懐かしい顔の少女がいた

「姫乃?なんでここに?」

「が…凱君!!」

困惑する凱に飛びつく姫乃

「会えて嬉しいです!」

「待て、まずは事情を説明してくれ」

 

少女説明中…

 

「…というわけなんです」

「お前まで、いいのか?」

「はい!私が来たくてきたんですもん」

「そうか…よろしくな」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「俺は作業あるから、霊夢たちと仲良くしててくれ」

「わかりました」

そう言って凱は奥に戻っていく

「さて、自己紹介もすみましたし。一ついいでしょうか?」

「「「は、はひ!」」」

姫乃が放った言葉に慄く三人

霊夢までびびるのは珍しい

「三人は、彼のことが好きなんですか?」

案の定の質問だった

なんと答えればいいか迷っていると

「私も、好きなんです」

姫乃がポツリと言った

「彼が、初めてだったんです。私の目を綺麗だって言ってくれたのは」

彼女の目にはどこか、過去を懐かしむような雰囲気が漂っている

「なるほどね、一目惚れと」

「は、はい」

「私も似たようなもんね」

「そうなんですか?」

姫乃に聞き返され、霊夢も話し始める

「あいつと戦ってるうちに、惚れちゃったのよね。動きとか言葉に」

「私もかな。どこか冷たいけど、しっかりと私たちの身を案じてくれてるところとか」

「うんうん」

妖夢と鈴仙も頷く

「じゃあ、皆さんお仲間ですね!」

「な、仲間?」

「はい。みんなで取り合うよりもその方がいいかと思ったのですが…」

思いがけない姫乃の言葉に驚く

確かに凱は色恋沙汰に疎く、しかも気づかない

一人一人よりもみんなでアタックした方が良さそうだ

「でも、いいの?」

「何がです?」

「正直な話、あんたの方が付き合い長いんだし、私たちより有利でしょ?」

「そうかもですけど、1人よりはみんなで幸せになる方がいいじゃ無いですか?」

鈴仙が聞き返す

姫乃が言わんとしてること

それは『凱が好きな娘全員と付き合う』ということだろう

「私らとしては、それはいいんだけど…」

霊夢も鈴仙たちも断りはしなかった

「それじゃあ、今後ともよろしくね、姫乃」

「はい、お願いします、霊夢さん!」

そう言って握手を交わそうとした時だった

 

ズズウウゥゥン

 

 

「な、何?!」

「里の方からです!」

急な地鳴りに驚き、急いで店の外に出る

彼女らが目にしたのは

全身が銀色に鈍く光る、巨人だった

「あれ、人里に向かってるんじゃないの?!」

「だとしたら、急ぎましょう!」

霊夢と妖夢が駆け出す

「何事だ?」

凱も外に出てくる

「凱君、私たちもあれを止めに行ってくる」

「…わかった。気をつけろよ」

「凱さんは、来られないんですか?」

「作業終わらせたらすぐに向かう」

「わかりました」

会話を済ませた2人も霊夢たちの跡を追う

 

 

その途中

「止まりな!」

「「?!」」

ドーパントが目の前に現れる

「どいてもらえませんか?」

「断るぜぇ?なんたって獲物、しかも女だしなぁ!」

テンガロハットをかぶったドーパントからキモい笑い(鈴仙視点)が漏れる

「ここは私が」

「いいのですか?鈴仙さん」

「任せてください」

「わかりました」

「てめえら、なんの話を…?!」

次の瞬間、素早く前に走り出した姫乃がドーパントを飛び越え、先に進む」

「あ?!待ちやがれ!」

ガウンッ

「な?!」

急な発砲音に驚くドーパント。その視線の先には

「あなたの相手は、私です」

拳銃を向けて立つ鈴仙が

「いいぜぇ、相手してやる!」

「負けませんよ!」

鈴仙はそう言って《アームズ》のメモリを差し込む

 

 

 

 

ーー予定変更ーー

 

 

 

 

地鳴りが発生する少し前

とある一室に六人の男女が集められていた

彼女らは組織の売買の任を背負う者達だった

「どうしたんだい、リーダー?」

初老の男が女、凛に話しかける

「上からの指示、撤退よ」

「えー!なんでぇ?!」

凛の言葉にチルノのような羽を持つ少女が反発する

「命令よ、グラニカ」

「ちぇ。せっかく昇格できると思ってたのにぃ」

「そ、じゃあ残って巻き込まれるのと、撤退してチャンスを待つの、どっちがいい?」

「戻る!戻りますぅ!」

「ほら、よしよし。…巻き込まれるって、どういうことですか?」

グラニカと呼ばれた少女を宥めながら、もう一人の少女が訪ねる

「文字通りよ、アザリア。私たち以外の部署が一旦動くそうなの」

「そうなんですね、わかりました」

「先に戻っててくれる?」

「はーい!」

そう言ってアザリアはメモリを取り出し、右肩に挿す

《ゾーン》

「リーダーさんたちも行きます?」

「私たちは様子見で残るわ」

「わかりました。お気をつけて」

そういうとゾーンドーパントは初老の男とグラニカを連れ、どこかに消えた

「貴女も行ってよかったのよ?澪ちゃん」

「嫌です!」

凛が声をかけたのは(ミオ)と呼ばれた一人の少女

彼女の頭には狼のような耳がついている

「姉御様と離れるなんて考えられません!」

「全く……いい子ね!」

凛はそういうと澪の頭をわしゃわしゃした

まるで飼い主とペットのようだ

「……見張り行ってきやす」

その光景をしばらく見ていた羅生は外に出る

「ええ、お願いね」

「ベーっだ!」

凛からは応援の言葉が、澪からは舌を出して追い払われた

「……はぁ」

ため息をしながら羅生は見張を始めるのであった

 

 

 

続く

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
次回から本格的に主人公陣営VS組織になります!
組織のメモリや構成員のアイディアの原案はメモ男さんにお世話になっております
アイディアやリクエストは受け付けているのでジャンジャン送ってきてください!
感想もお待ちしております!


それではまた次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第31話 組織のために/姫乃、参戦/叩いて叩いてぶっ放せ

どうも、フォーウルムです
最近になって名前変えようか迷ってます
それはさておき
今回は中ボス戦になります!
前回出たオリキャラの姫乃や霊夢達の戦いになります
そして、凱に新たな武器が!


現在の凱の使えるメモリはこちら!

ヘファイストス ルシフェル リベリオン 
エクリプス プロミネンス トラップ ?????


 

 

ーー組織のためにーー

 

 

「いい、いいぞ!素晴らしい!」

男は興奮していた

「流石だ!流石私の《フィギュアスロット》だ!」

男が使ったのは自身が作ったものだ

騎士や竜、巨人のレリーフが掘られた台座にスロットがついており、メモリを挿すとそのレリーフに対応した召喚獣が現れ、挿したメモリの能力が付与できるという物だった

このスロットは適合に関わらず誰でも使える物である

だからこそ、彼は完成させたかったのだ

「さあ!破壊し尽くせ!《リキッドメタル・ゴーレム》!」

「やってるねぇ?」

急な声に振り向くと、そこには見慣れた少年が

「?!! な、なぜあなた様が!」

「畏まらなくていいよー。見に来ただけだし」

少年は笑いながら男の隣に来る

「それにしてもすごいねー。何ヶ月だっけ?」

「37ヶ月と少しです」

「すごい執念だねー、ジルヴィス。()()のやつ、まだ気にしてるの?」

「そう、ですね」

その男、ジルヴィスは苦虫を噛み潰したような顔をする

「あ、ごめんごめん。君には禁句だったね」

「いえ、大丈夫です」

ジルヴィスは昔から病弱であった

だがその研究の成果やその信仰心から組織にスカウトされたのだ

「私が、戦えない分、このようにして組織に貢献せねばいかんのです」

「いいねぇ!僕そういう君のところ大好き!…だから」

少年は急にその笑みを消して、つぶやく

ボクニコロサセナイデネ?

「わかっています」

「ならいいんだ!がんばってね!」

そう言って少年は消えていった

 

 

 

ーー姫乃、参戦ーー

 

 

 

 

「くっ!手強いですね!」

急に現れた巨人を治安維持隊の航空部隊と共に迎撃する文

部隊が使っているのは《ジェット》

戦闘機のメモリで高速で飛行しながら機銃で戦うメモリである

こちらは文を含めて13人

数では勝っているのだが

「ダメです!機銃が効きません!」

この巨人には銃が効かない

体に纏う液体があらゆる衝撃を吸収するのだ

おまけに

「…レッドクイーンのイクシードもだめですか」

その特殊な体は熱も無効にするようだった

「どうしたもんですかねぇ…」

「文!どんな状況?」

「霊夢さん!よかった、手伝ってください!」

そこに現れたのは霊夢

そして

「セアアァァ!!」

エッジを使っている妖夢も加わった

「切れない?いや、これは…」

「そいつの表皮は、なぜか攻撃が通らないんです!」

「「はぁ?!」」

さすがに驚きの声をあげる2人

「通らないって、熱とかも?」

「はい。全く」

「き、斬れば!」

「それもダメですって!」

「じゃあ、どうすれば!」

その時だった

ドドドドドォン

「な、なんですか?!」

急な轟音に、驚く三人

音の発生源にいたのは

姫乃だった

「全く、面倒ですね」

姫乃は肩に担いでいたランチャーをおろす

するとそれは変形し、アタッシュケースのようになる

「行きましょう、《パンドラ》。せめて時間くらい稼いで見せましょう?」

そう言ってアタッシュケースのような魔具『パンドラ』を上に投げ上げた

落ちてくる前に姫乃はメモリをもつ

いつの間にか、彼女の腕にはガントレットのようなドライバーが

装着(イクイップ)!」

《バトルスーツ》

そして、メモリをスロットに差し込む

すると彼女の体に黒い装甲が装着され、顔にはフェイスシールドとバイザーが現れる

「さあ、行きますよ!」

装着終了と同時に落下してきたパンドラを掴み、ガトリングに変形させる

「あれが…」

「姫乃さんの、武器…!」

霊夢たちには、彼女のその姿が

とても新鮮に見えた

 

 

「これでいいかな?」

鈴仙は、男を拘束していた

先程のドーパントだ

鈴仙に挑み、瞬殺されたのだ

使っていたのは《バルサム》は鳳仙花という花のメモリらしく、巨大な種子を飛ばしてくるだけの攻撃だった

鈴仙の使っていた《アームズ》は、彼女との適合率91%を誇り、最大限の力を発揮できていた

ゆえに、バルサムはあっけなく倒されたのだ

「さっさと向かわないと!」

そう言って走り出そうとする鈴仙の頭上を

何かが物凄い勢いで飛んだ

「な、何?!」

 

 

 

「ああもう!きりがないですね!」

姫乃は先ほどからミサイルや、レーザー砲で攻撃していたが、目立ったダメージは与えられなかった

しかし、進展はあった

この巨人の胸の部分に核が存在し、そこが弱点であるということ

だが、この巨人の体は液体のような金属で守られている上に、ちょっとやそっとの攻撃では金属は剥がせない

「何か、何か手は…」

その瞬間だった

ドウンッ!

何かが巨人にぶつかった

その衝撃で巨人は膝をつく

そこにいたのは

「随分手間取ってるな?姫乃」

「凱君!」

赤い装甲を手足につけ、フェイスマスクをつけた五十嵐凱だった

 

 

 

ーー叩いて叩いてぶっ放せーー

 

 

「なるほどなぁ」

凱は霊夢と姫乃から状況を聞いていた

「つまり、核を露出させれば倒せる、と」

「ええ、でもできるの?」

「ああ、ちょうどいいのがあるからな」

そう言って凱は視線を自分の体に落とす

「霊夢、これ終わったら宴会でもやろうぜ?」

「!…言ったわね?」

「ああ、楽しみにしてろ」

「わかったわ、気をつけなさい」

霊夢たちに距離を取らせ、姫乃にはパンドラを用意させる

「さあ、ショータイムと行こうか、《ギルガメス》!」

言うや凱は高く跳躍し拳を巨人に叩き込む

目にも止まらぬ速さで叩き込まれる拳は衝撃波を巨人の体に溜め込んでいく

すると、だんだん巨人の体はオレンジ色に染まっていった

「これで決める!」

凱はギルガメスのメモリをマキシマムスロットに差し込む

《ギルガメス バーストアクション!》

凱の拳が紅く染まり、唸りを上げる

「解放しろ、その衝撃を!」

その拳が叩き込まれると同時に、巨人に蓄積した衝撃波が一気に解放され、液体金属の装甲が剥がれる

「今です!」

その瞬間を逃さず姫乃はパンドラで核を撃ち抜いた

核を撃ち抜かれた巨人は、そのまま崩れ去り、後には何も残らなかった

 

「終わったな」

「そのようですね」

「お疲れ様、二人とも」

声をかけてきたのは霊夢だった

「おう、お疲れ」

「さて、あれも倒せたことだし、やりましょうか!」

「気が早えな」

「いいじゃない!さぁ、宴会よ!」

こうして、姫乃の初戦闘は終わったのだった

 

 

 

 

 

「やられたか」

ジルヴィスは巨人がいた方向を見つめる

その手には、割れたスロットとメモリが

「まあ、データは手に入ったし、一時撤退としましょう」

そう言って彼は現れたゲートを潜った

 

 

 

 

 

 

続く




ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
今回登場したギルガメスは、今後も登場させます

次回は宴会になります
あと、キャラが想像以上に出るため、台本形式となりますので、苦手な方は飛ばしていただいても構いません

それではまた次回、お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第32話 歓迎会(台本形式)

どうも、フォーウルムです!
今回は宴会となります!
タイトルや前回の後書きにも書きましたが、今回は台本形式とさせていただきます
苦手な方はこの話を飛ばして読んでください
あと、何人かキャラが崩壊してます


 

巨人を倒した凱たちは姫乃の歓迎の宴会を博麗神社で開いていた

せっかくだからということで魔界のギルバ達や、守谷の二柱も来ている

すでにみんなは酒が入り、それなりに盛り上がっていた

 

 

 

 

凱「ほら、追加で……ぬあっ!」

鈴仙「えへへ〜。捕まえました~」

霊夢「でかした〜!」

凱「お前ら酔ってるだろ?!」

咲夜「逃しませんよ〜?」

文「ぎゅ~ってしてあげます〜」

凱「妖夢!助けt」

妖夢「Zzz」

凱「起きろやぁ!?」

 

追加の肴を持ってきた凱は霊夢たちに捕縛される

そんな凱たちを護たちは眺めていた

 

護「凱はモテモテだなぁ…おちょくってやろうかな?」

早苗「護さん…少し酔ったみたいで…」

護「んぁ?そうか膝枕でもしてやろうか?」

早苗「ふぇ?いいですよ恥ずかしいですし…」

諏訪子「神奈子~早苗がぁ~早苗が汚されちゃうよぉ…」

神奈子「諏訪子…せっかく早苗が恋人っぽいことしてるんだ邪魔はさせないよ」

諏訪子「俵みたいに担ぐなぁ!!早苗~…」

 

 

 

フラン「あの、姫乃さん?」

姫乃「どうしたの、フランちゃん?」

フラン「そのお酒、鬼殺しだよね?」

姫乃「そうなの?美味しいからどんどんいけちゃう」

フラン「流石に12本は飲み過ぎ!」

 

 

 

 

ファス「…ギルバ様もう一杯どうぞ』

ギルバ「自分は酒に強くないのだが…』

盤城「…(わざと酔わせようとしているんですかね)」

  「ファス流石にそれ以じょ…いやナンデモナイデス」

ファス「……どうしましたか?(言ったら殺る…いや玉切り落として食わせてやる…)」

ギルバ「流石にこれ以上は…(盤城!!何とか止めてくれ!!)」

盤城「………(無理ですよぉ…)」

業蓮寺「…(賑やかだな)」

ジン「おーい、ファスー!こっちで飲もうぜー!」

ジーザ「枝豆もあるんですわよー」

モナ「ねぇレクス、いいの?止めなくて」

レクス「……」

モナ「レクス?」

レクス「モナ〜。愛してるー。ムニャムニャ」

一同「?!!」

 

酔い潰れてしまったレクスの一言に、その場にいた全員が反応する

 

モナ「」

ジーザ「モナ、大丈夫ですの?…モナ?」

モナ「」

ジーザ「気絶してますわ…」

レクス「モニャ~世界一愛してるよ~」

モナ「カヒュ…」

ジーザ「モナさんが吐血いたしましたわ!?」

 

 

部下たちの騒ぎを見ながら業蓮寺は盤城に問う

業蓮寺「いいのか、止めなくて」

盤城「たまにはいいではありませんか」

ギルバ「あ、危なかった」

盤城「お疲れ様です、水いります?」

ギルバ「ああ、いただこう」

業蓮寺「ギルバ様はお酒は飲めないか?」

ギルバ「あまり得意ではない。せいぜい瓶一本が限界だ」

盤城「意外ですね」

ギルバ「何がだ?」

盤城「いえ、凱君は酔わないみたいなので」

ギルバ「…母親の差だ」

ギルバの一言に盤城は目を細める

盤城「……(母親か…私の母親はどんな人だったんだろうか?)」

業蓮寺「どうした?盤城?」

盤城「いえ…何でも」

ギルバ「少しは相談に乗れる。話してみよ」

盤城「いえ…私の母親はどんな人だったんだろうかと考えただけです」

ギルバ「確か盤城は孤児だったか?」

盤城「えぇ…物心ついた時には身一つで生きてました」

ギルバ「お前がまだ幼かったのをよく覚えているよ」

業蓮寺「人間とはいえ、幼い子どもを戦地に残しておくのは忍びなかったので」

盤城「確か、面白そうだから、という理由で育てていただいたんですよね?」

ギルバ「まあ、な。こんないいやつになるとは思わなかったがな」

 

そんな三人をリーナとファスは見ていた

リーナ「盤城…」

ファス「チッ…逃げられましたか(ギルバ様…お持ち帰りしたかった…)」

リーナ「ファス」

ファス「…何ですか?」

リーナ「お兄様だけど持ち帰っても良いわy「本当ですか!!」ウッミミガ…」

ファス「ギルバ様…観念なさってくださいよぉ…?」

リーナ「言わない方が良かったかしら?」

 

 

 

 

凱「なんとか抜け出せたな」

なんとか凱は霊夢たちの捕縛から抜け出せたようだ

護「お前のとこも大変だな」

凱「ん?ああ、護か。ってそいつ寝てんのか?」

護「酔っ払ったらしい」

早苗「…Zzz…」

凱「はー、なるほど。お前らって付き合ってんの?」

護「いや?」

凱「じゃあ、椛とも?」

護「付き合ってないな」

凱「このたらしめ」

護「お前にだけは言われたくねぇ!」

凱の言葉に反発する護

凱「人にたらしって…お前もたらしじゃねえかよバカ…」

護「おいあれ…」

二人が見たものは

必死に何かから逃げるギルバと

なんか様子のおかしいファスだった

 

ギルバ「ハァハァ…ここまで来れば…『フヘ…』」(;゚Д゚)

ファス「ミィツケタァ」(^▽^)ニタァ

ギルバ「ヨセ!!近づくな!!」

ファス『アハァ…これで漸く手に入れらr《リベリオンクラッシュ!!》フゲ!!』

 

説明しよう!!リベリオンクラッシュとは!!

リベリオンの柄の部分で思いっきりぶん殴る脳筋の技である!!

 

凱「なんとか間に合ったな。無事か…?」

ギルバ「あぁ…なんとかな、助かったぞ…」

護「凱!!後ろ!!」

 

スパッ

 

凱(…反応できなかった!?)

ファス「いくら何でも~オイタが過ぎてしまうと~嫌われちゃいますよ~?」

ギィン!!

凱『…(ウーム…思ったより速くて対応が難しいな…)」

ギルバ「(どうすれば…動きを止められる?)」

   「(……………………………やるしかない)」

ギルバ「ファス」

ファス「んぁ~どうしたんですか~」

ズキュゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!

ファス「ア~ギルバ様とキシュ…キシュしたぁ…」

バタン

ギルバ「こんな恥ずかしい事をする事になるとは…」

凱「うわ、すげえなあいつ」

護「ほんとだな、ってかお前まずいんじゃね?」

凱「あ?なんでだよ?」

護「だって他の連中も酔ってるだろ?」

凱「………あ!」

 

そんな話をしていると

 

霊夢「凱~どこにいるの~」

咲夜「こっちから匂いがします~

文「凱さんの凱さんを撮らなければ~」

フラン「血を吸うの~」

凱「こういうときは…」

護「こういうときは?」

凱「ニゲンルンダヨォォォォ!!」ε=ε=┏(・_・)┛

 

姫乃「フランちゃんどっか行っちゃった。私も少し歩こうかな…」

  「ん?あれは?」

凱「東京バナナ!!東京バナナ!!」三 (lll´Д`)

霊夢「バナナ!!バナナはどこ!!」

姫乃「バナナってなに?!」

 

 

 

”博霊神社”

 

魔理沙「誰だ!!バナナって言ったのは!!」

 

 

護「賑やかだな」

早苗「…うにゅ」

護「お?起きたか?」

早苗「………スヤァ」

護「まだ寝るのか」

 

 

戻って凱達は…

 

 

凱「逃○中かよ!!あんなもんハンターだろ!!』

霊夢「バァナナァ!!』

フラン「血ィィィィィ』

凱「フランと霊夢は乙女がしちゃいけない顔をしているし…」

咲夜「凱さ~ん!!~~~~や~~~な事しましょう!!」

鈴仙「フフフ…ウサギはしつこいんですよぉ…」

凱「鈴仙と咲夜は捕まったらヤバイし…」

 「逃げ続けなければ…」

 

 

 

姫乃「…はぁ、全く」

紫「あなたはいいの?」

姫乃「私はいいです。お酒の力なんか借りなくてもきっと出来ますので」

紫「そう…がんば…マズ!」

姫乃「え?…?!」

凱「姫乃ちょっと来い!」

そういうと凱は姫乃をお姫様抱っこする

姫乃「え!ちょ、何を!」

凱「喋ると舌噛むぜ!」

ドンッ!

姫乃「きゃあぁぁ?!」

そして凱は加速をつけ、姫乃を連れて飛ぶように移動した

 

 

 

飛行中

 

凱「二人で話すのなんて久しぶりだな』

姫野「えぇそうね(が、ががが凱君に!おお、お姫様抱っこされてる?!)」

凱「そういえば、何でお前はこっちに来たんだ?」

姫乃「言ったでしょ?『あなたの手伝い』だって」

凱「それだけか?」

姫乃「そ、そうよ!」

凱「そっか」

しばらく飛んだのちに着いたのは小高い丘の上だった

地面に下ろされた姫乃が凱の顔を見ると

彼は、少し悲しげな顔をしていた

姫乃「な、何よ」

凱「俺はさ、嬉しかったよ。お前に会えて」

姫乃「!」

凱「寂しかったんだ、護や霊夢たちが居たけど、それでも寂しかった」

姫乃「凱君…」

凱「こんな風に、寂しがって、いろんな奴に縋り付くから、女誑しなんて言われるのかもな」

自虐気味に凱は笑う

姫乃「ねぇ、凱君」

凱「どうした?」

姫乃「好きです、私と、お付き合いしていただけませんか?」

凱「…?!」

唐突な告白に凱は一瞬驚くが、すぐにいつもの調子に戻る

凱「俺でよければ、喜んで」

姫乃「…!いいの?」

凱「ああ、構わないよ」

姫乃「そっか…そっかぁ」

姫乃の顔はこの上なくだらけきっている」

姫乃「これからも、よろしくね?」

凱「ああ、よろしく」

 

こうして、長い夜の宴会は幕を閉じるのであった

 

 

 

 

 

 

ちなみにこの後、神社に戻り事情を説明した凱は、酔いの覚めた霊夢達に告白され、本格的なハーレムになった

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




ここまで読んでいただきありがとうございました!
次回はしっかり物語を進めていく予定です!
組織の売人たちも出しつつ、いただいたアイディアを消化していく予定です

それではまた次回、お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五章 中編
第33話 幽霊少女と風祝/新たな影


どうも!フォーウルムです
今回は早苗と護中心の物語です
今回登場するメモリはメモ尾男さんのアイディアです!
ありがとうございます!

現在の凱の使えるメモリはこちら!

ヘファイストス ルシフェル リベリオン 
エクリプス プロミネンス トラップ ギルガメス


怖い、怖いよ…

私はただ、お店で頑張ってただけなのに…

なんで…?

なんでこんな目に遭わなきゃいけないの…?

夜になったら、()()()()()()()()()()()()

 

誰か…

 

 

 

助けて…!

 

 

_____________________________________

 

 

 

風祝と幽霊少女

 

 

宴会が終わって、しばらく経った日のことだった

 

「「幽霊騒動?」」

「ああ、そうだ」

FDL店内のカウンターに座っている早苗と護は不思議そうに声を上げる

この幻想郷には人間はもちろん、妖怪や鬼、最近だと魔界の方から移住してきた亜人なども住んでいるので、幽霊程度であれば珍しくはない

「外見はどうやら木の化け物らしいから幽霊かどうか怪しいけどな」

「なんだそれ、いつから起こってるんだ?」

「この前の事件あったろ?」

「この前ですか?」

「あれか、三日前の強盗事件」

「そうだ」

凱はそう言いながら何枚か写真を見せてきた

それは強盗にあったであろう店の写真と二人の老人の写真だった

「三日前、西エリアの飲食店でドーパントによる強盗があった。被害に遭ったのは老夫婦が運営している喫茶店だ。

犯人のドーパントは情報からして『ビースト』であるということが確認されている」

「それなら知ってる。確か経営していた夫婦2人が全身に損傷を受けて遺体で発見されたんだったな」

「そんな、被害者が2人も…」

「いや、()()()

「え?」「どういうことだ?」

凱の訂正に2人が首を傾げる

「これを見てほしい」

その写真には、先ほどの老夫婦が笑顔で写っている

その中心に、1人の少女も写っていた

四柳 幽(ヨツヤナギ ユウ)。その夫婦の孫娘で、喫茶の看板娘だ」

「この方が、どうしたんです?」

「事件当日、彼女も店にいたらしいんだが、行方が分からなくなっている」

「おい、まさかとは思うが、その少女が幽霊だとでもいうのか?」

「確証があるわけじゃない。現に死者に使えるメモリなんざ聞いたことねえからな」

そう言って凱は立ちあがる

「2人には、この幽霊騒動の元凶と四柳幽について調べてほしい。本当は、俺が行かなきゃいけない案件なんだが…」

「『ビースト』ですか…」

「ああ、維持隊から協力要請があってな、俺はそっちに行く」

「了解です!任せてください!」「任せとけ!」

「頼む、終わったら酒奢ってやるよ」

「忘れないでくださいね!行きましょう、護さん!」

「あ、おい!」

早苗は勢いよく外に出て走っていく

それを護が追いかけていく

「全く、俺たちも行くぞ、『ナイトメア』」

いつの間にか凱の後ろには

鎧を着た『何か』が立っていた

 

 

 

 

 

人里 西エリア

 

 

 

「一応来てみたが、全然情報ねえな」

「聞き込みも新しい収穫なしです」

人里で聞き込みをしたが、何もいい情報は得られなかった

「わかったのは、人当たりの良い少女だってことか」

「あと、ご両親もすでに他界なさってたみたいですね」

四柳幽のことは多くの人が知っていたが、行方を知っているものはいなかった

そこへ

「あ、あの」

「ん?ってあんたは?!」

2人に話しかけてきたのは

四柳幽だった

 

 

 

「それで、貴女は亡くなってしまった、と」

「はい…」

夜更けに四柳を守谷神社に連れて行き、事情を聞く早苗

「お店で準備をしていたら、青い妖怪みたいなのが、襲ってきて、おじいちゃんも、おばあちゃんも…ぅぅ」

「…大丈夫です、怖かったですね」

どうやら事件の当日、四柳はやはり店にいたらしく、開店の準備をしていたようだ

そこへビーストドーパントがやってきて、老夫婦は殺害、四柳も命を落としてしまったらしい

しかし、四柳はその時にメモリを拾っており、死亡と同時にメモリが体内に入り、幽霊のような姿になってしまったらしい

「それで、どうするんだ?」

2人を見ていた護が声をかける

「どうって、それは」

「話を聞く限り、そいつがこの世界にいられるのはメモリのお陰だ。メモリを取り出しちまえば、おそらく…」

そこで護は言葉を切った

「いいです」

「え?」

「これ以上、()()()()()()()()()()

「それって…」「どういうことだよ?」

二人が疑問に思った、その時だった

「うぐっ?!あああぁぁぁ!」

急に四柳が苦しみ出した

「幽さん?!」「離れろ!早苗!」

四柳に駆け寄ろうとする早苗を護が止める

四柳の体に紫色の靄が集まり、あっという間にその姿をかえた

『オオオォォォォォォ』

「そんな、彼女が?!」「「やるしかねえ、いくぞ!」

ドーパントに変貌した四柳を止めるため、2人は変身する

 

 

 

 

 

 

人里 西エリア

 

 

「頼む、命だけは、命だけはぁ!」

1人の男の声がこだまする

男はビーストのメモリを使って強盗を行った犯人だった

それが治安維持隊にバレ、メモリを使ってなんとかまこうとした

しかし、それは叶わない

音よりも早く接近した銀色の何かに強襲され、それどころではなかったのだ

 

 

「あれ、やりすぎでは?」

「そうか?」

文と凱はその光景を眺めていた

「というか、あれって…」

「ナイトメア」

「変わりすぎじゃありませんか?」

ドーパント相手に戦っているのはナイトメアだった

元は犬くらいの大きさだったはずなのだが、あれはどう見ても人型である

「あいつも戦いたいって言ったからな。今回はデータ収集のためだ」

「それでも、あの動きはどうなってるんです?」

ナイトメアはまるで鷹のように飛び回り、ドーパントを翻弄する

「あれは空中戦闘用装備の『α』だ」

「もしかして、他にもあったり?」

「まあな。っと、終わったらしい」

先ほどまで騒がしかったのが、静かになる

「ほら、回収行くぞ」

「は、はーい!」

 

 

守谷神社

 

 

「ウオオォォォ!」

「幽さん、落ち着いてください!」

ドーパントとなった四柳を止めようにも、暴れているために手がつけられない

「早苗、早くメモリを破壊しろ!」

「でも、でもそれじゃあ!」

メモリを壊せば止められる。しかし、そうすれば四柳は消滅してしまう

「覚悟を決めろ!」

護はドーパントの攻撃を食い止めながら叫ぶ

「……わかり、ました」

早苗はサイクロンメモリをマキシマムスロットに差し込む

《サイクロン マキシマムドライブ!》

右腕の銃口にエネルギーが収束し、放たれる

エネルギー弾はそのままドーパントを貫く

『オオオォォォォォ…』

ドーパントは粒子となって消えていく

それを眺める早苗の耳に四柳の声が届いた

 

「ありがとう、早苗さん」

 

その言葉を聞いて、泣き崩れる早苗のすぐ目の前には

《ウィロー》のメモリが落ちていた

 

次の日

 

FDL店内

 

「なるほど、それであんなに気落ちしてたのか」

護の報告を受けていた凱は納得したように早苗を見る

彼女はすっかり疲れ切ってしまったようでカウンターに突っ伏して眠っている

「それで、メモリの解析は終わったのか、凱?」

「ああ、メモリはウィロー。柳のメモリだ」

「木の記憶か?」

「それもあるが、あんな性能だったのはおそらく怪談もあったんだろうな」

「確かに、柳の木って不気味だよな」

「まだわからないこともある。何か判明したら連絡するよ」

「おうよ」

凱と挨拶を交わした護は起こさないように早苗を抱え、神社へと連れて行った

 

 

 

 

 

 

 

ーー新たなる影ーー

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、彼女はこっちで預かるわ」

幻想郷でも冥界でも、はたまた現代でもない世界に立つ家に、八雲紫はいた

「ええ、お願いします」

彼女と話しているのは、1人の男だった

「でも、あなたのやり方では、おそらく彼らと対立するわ」

「それでも構わない」

紫の忠告を、男は聞きながらも首を横に振る

「一刻も早く、彼女を救わなきゃいけないんだ」

視線の先には横たわる、一人の少女が

「わかったわ、あなたが約束を守るなら、私たちも彼女の安全を守る」

「『栄光の化学結社』の排除だったな。任せろ」

「お願いするわね、()()()

 

 

幻想郷にまた1人、新たな戦士が加わった

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
今回登場したキャラは、次回以降も登場します!
気長にお待ちください!


それではまた次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第34話 絶対者と血の香り/厄災襲来

どうも、フォーウルムです!
今回は護のヒロインとか組織のキャラとかが登場します!



現在の凱の使えるメモリはこちら!

ヘファイストス ルシフェル リベリオン 
エクリプス プロミネンス トラップ ギルガメス


 

 

 

ーー絶対者と血の香りーー

 

 

 

「ぐああぁぁ!」

ここは凱の作った別空間

ヘファイストスの力で作られたこの空間では基本何をやっても他の世界に影響は無い

そんな空間で2人の人物が戦っている

1人は護だ

今は対戦相手にぶっ飛ばされ、悶えている

その相手とは……

「ちょっとやりすぎたかしらね」

赤いチェックのスカートとベストに緑の髪の女性、風見幽香だった

「身体能力強化とはいえ、ほぼ生身なんだろ、それ」

「まあ、一応強化装甲は着てるけどね」

彼女の体は緑色の装甲に覆われている

「《アブソリューター》、私には過ぎたものかもね」

「チート過ぎんだろ」

 

数分前

 

 

「戦闘テスト?」

「ああ」

凱に呼び出された護は首を傾げる

「なんで俺が…」

「徹夜で眠い」

「なるほど」

「要点だけ伝える。今回のテストはドライバー、補助スロット、メモリのテストだ」

「ほーん」

「ドライバーも補助スロットもソイツ専用にチューンしなおしたやつだ。油断すれば死ぬ。それにメモリは次世代型のハイランクメモリだ」

「次世代型?」

「ああ、名前は《アブソリューター》」

「アブソリューター?どんな性能なんだ?」

「ルシフェルと似た干渉耐性に身体強化だな」

「チートじゃん」

「まあ、副作用で《任意で変身解除出来ない》ってのがあるがな」

「どうやって解除するん?」

「お前の閻魔刀で切れ」

「ああ、《切断》か」

「そういうこと。補助メモリもなかなかだから頑張れよ」

「へーい」

 

 

 

そんなわけで護は幽香の実戦練習に付き合っているのだが

「どうなんだ、そのメモリ」

「不便といえば不便ね、自力で変身解けないのはキツいわ」

護にアブソリューターを取り出して貰い、休憩を取る幽香

「その補助メモリも幽香にあってるんじゃねえの?」

「不本意ではあるけどね」

そういう彼女の手の中には《ブラッド》のメモリが

リベリオンやトラップと同じようなメモリであり、武器用のメモリだ

幽香の右腕についている補助スロットに挿すことで使用でき、幽香の武器になる

形は剣、盾、チェーンブレードなどその場に応じて変形させることができる

「とりあえず、データとったし、戻るか」

「そうね、お疲れさま」

そう言って2人は幻想郷に戻った

 

 

 

向日葵畑

 

 

 

 

「ふう、疲れたわね」

いつもの向日葵畑に戻った幽香

彼女の頭の中には総塚護のことが浮かんでいた

「護、ねぇ。面白そうじゃない」

そう呟いた時だった

「うわー、すごい綺麗!」

幽香は1人の妖精を見つけた

どうやらチルノと同じ氷精のようだ

「ちょっといいかしら?」

「!……何?」

「ここで何をしているの?」

「お散歩よ。そういう貴女は?」

「私は……そうね、ここに住んでるの」

「ここ…向日葵畑に?」

「そうよ。貴女の名前は?」

「グラニカ……あたしの名前はグラニカ・ヘイルストームよ」

「グラニカね、私は風見幽香よ」

「風見……幽香」

「そうよ、よろしくね」

「あ…うん、よろしく」

「?…顔赤いわよ?」

「!/// なんでもない!またね!」

顔を赤らめたグラニカはどこかへ行ってしまった

「グラニカ…とりあえず護に連絡しようかしらね」

そう言って幽香は通信機を手に取る

 

 

人里 とある旅館の一室

 

 

「お帰りグラニカちゃん!」

「た、ただいま」

その部屋には同僚のアザリア・シロッコがいた

「お散歩どうだった?」

「うん、良かったよ!」

アザリアに聞かれ、笑顔で返すグラニカ

しかし、いつもとどこか違う

「どうしたの?グラニカちゃん?」

「……アザリア…どうしよう…」

心配するアザリアに顔を真っ赤にしたグラニカは悩みを打ち明けた

「あたし、好きな人が出来ちゃった…!」

 

 

 

紅魔館

 

 

 

「どうかしら?この紅茶は」

「悪くねえ、茶菓子にもぴったりだ」

夜、凱は紅魔館に来ていた

夜のお茶会は普段参加しなかったが、今日は珍しく顔をだしていた

「それは良かったわ、ねえ咲夜」

「はい、そうですね」

レミリアに呼ばれて咲夜は微笑む

「あれからどうだ?メモリの調子は」

「問題ないわ」

「そいつは良かった、んでいつまで乗ってるんだ?フラン」

凱の膝の上にはフランが乗っている

「もうちょっとこのままで」

「はいはい」

フランに上目遣いでせがまれて仕方なくなすがままに

「今度遊びに来いよ、歓迎してやる」

「ほんと?」

「ああ、いいぞ」

「やったー!」

「良かったわね、フラン」

「うん!」

喜ぶフランを見ていた凱は心の中で思うのだった

(このまま、平和に過ごせればいいな)

 

 

ーー厄災襲来ーー

 

 

 

 

魔界 フォルトゥナ城

 

 

 

 

「くそ、どうなっている!」

城の内部は荒れていた

外部からの敵の攻撃があった

「どうだ、止められるか?」

「難しいかと、我々が押さえていますが」

ギルバの問いに盤城が答える

「仕方ない、凱に連絡を取れ!」

「承知しました」

盤城は急いで部屋に向かう

今でも外では多くの兵士達が戦っている

「なんなのだ、あの化物は!」

 

「ルクス、変わって!」

「了解!」

城の外でモナ達は戦っていた

急に現れた謎の巨人を相手に戦っている

ジンやファス達もいたが、今は負傷し撤退している

「こんのぉ!!」

必死に攻撃も、巨人には届かない

「ダメか、一体どうしたら…」

「避けろ!モナぁ!!」

「え?」

一瞬の隙だった

その隙の間に

巨人の拳が振り下ろされる

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました

次回は魔界での物語になります
そして、凱の新しいドライバーが……?
お楽しみに!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第35話 絶対者君臨/エクストラメモリの正体

どうも、フォーウルムです!
今回のお話は巨人との決着、そして神のメモリの由来についてです
1日に二本目となりますが、想定外です
思ったより描けたので、投稿します



現在の凱の使えるメモリはこちら!

ヘファイストス ルシフェル リベリオン 
エクリプス プロミネンス トラップ ギルガメス




 

 

 

モナSide

 

一瞬、ほんの一瞬目を離しただけだった

ルクスに下がるように、言おうとしただけだった

その隙すら、敵は見逃さなかった

「……ル…ク…ス…?」

直前に見えたのは私と巨人の間に割って入ったルクスが盾で拳を防いで、私と一緒に吹き飛ばされる所だった

「こた…えて……よ…」

ルクスに声をかけるが、返事はない

それなのに

もう、ボロボロで、動けないはずなのに

ルクスは立ち上がる

私も彼も満身創痍

頭のバイザーは割れて素顔が見える

彼の顔は

 

 

笑っていた

 

 

 

ルクスSide

 

頭が痛い

腕も足も

全身が悲鳴を上げているのがわかる

それでも、俺は立ち上がり、彼女に歩み寄る

視界がおかしい

頭のバイザーが割れているのだ

普段バイザー越しに見ているので違和感がある

片目はバイザー越しに、もう片目は何も介さず前を見る

彼女の方も傷はあったが、俺よりも少ない

これなら、大丈夫だ

 

 

 

 

 

 

「泣き顔を見るのは初めてだな」

ルクスは声を振り絞る

「な、なん…で…?」

モナの声が聞こえる

「女性を守るのが、騎士の務めだ」

「でも……それ…じゃルクスが…」

「大丈夫だ、まだ、やれる」

嘘だ

おそらくあと一、二回耐えるのすら不可能だろう

それでも

「なんで、なんでよ!」

モナの気力が戻ってきたらしい

このまま、逃げられ_____

 

『グオオオオォォォォ!!』

 

巨人の雄叫び

それだけで俺たちは吹き飛ばされた

俺とモナは同じようなところまで飛ばされる

「モナ、逃げろ」

「…いや」

「俺がなんとかする、逃げろ」

「…いや、私も残る!」

「お前を死なせたくない!」

「それは私も一緒だよ!」

「っ?!」

モナの瞳を正面から見る

ああ、これはだめだ

彼女のこの目は、もう揺るがないという証だ

「……後悔するなよ」

「…大丈夫もう、決めてるから」

俺もモナも立つ気力はない

悔しい

もっと俺に力があれば

 

様々な記憶が蘇る

これが走馬灯だろうか…

巨人の足が振り上げられ

 

 

踏み潰さ______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死を覚悟する(ゲームオーバー)には早すぎるわよ、お二人さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー絶対者君臨ーー

 

 

 

 

 

幽香Side

 

 

「な?!」「え?!」

目の前の男女が驚いた様子で私を見る

まあ、剣だけで巨人の足を抑えているのだ、無理もない

「あ、貴女は?」

「私は風見幽香。貴女たちの味方よ」

ボロボロになっている少女の問いに答える

「ここからは私が引き受けるわ。紫、お願いしていいかしら?」

「任せなさい」

紫がスキマを使って2人を移動させるのを見届けて、私は巨人の足を退ける

巨人も驚いたのか二、三歩下がる

「さて、覚悟はいいかしら?」

私はその手にもつブラッドの形状を変化させ巨大な戦斧にする

「本気で殺すわよ」

 

 

 

巨人と殺し合いを始めて数分

護が合流してきた

「遅かったわね」

「幽香が早いだけだ」

護はパーティクルを使って飛びながら斬りつける

「凱たちはどうなの?」

「今は城で怪我人の治療してる。紅魔組もいるし問題はないはずだ」

二人がここにいる理由は凱の元に盤城から救援要請が入ったからだ

すぐに行ける幽香と護だけが先に魔界に転送され、他は後々から城に転送される

「それで、あいつはなんなの?」

幽香が率直な疑問を投げかける

「さあ?殺せばわかるだろ」

「それもそうね」

2人の乱撃は絶え間なく繰り出され、巨人に確実にダメージを与えていく

すると、巨人の体が変形し両手を地面につけ、さらに背中から2本の腕が形成された

「第二形態ってか?」

「全く、飽きないわね」

俺たちの猛攻はそんなものなど気にも止めず続けられる

 

 

そして、幽香の最後の一撃が繰り出され

『グギャアアアアァァァ……』

巨人は、沈黙し崩れ落ちた

巨人の残骸からメモリが飛び出し、幽香の元へ

「それは?」

「《カラミティ》。どうやら厄災のメモリのようね」

「まじか、エクストラランクかな」

護がそう言った時だった

 

「その通りよ」

 

聞きなれない声

その方を見るとそこには

六人のドーパントがいた

 

 

 

 

ーーエクストラメモリの正体ーー

 

 

 

 

「お前ら、化学結社の連中か」

「あら、わかってるじゃないの」

俺の問いかけにリーダーであろうドーパントが応える

「そのメモリは神のメモリ。こちらに渡してもらうわ」

「断ったら、どうするのかしら?」

幽香が問う

「いくら貴方達であっても、六人同時に相手には出来ないでしょう?」

事実、ドーパントは6人、こちらは2人

数で負けている上にこちらは疲労している

確実に勝ち目はないが、それで渡す理由にもならない

「素直に渡すわけねえだろ」

「そう、残念ね」

「さっさとやろうではないか、リーダー」

「そうね。さっさと片付けましょうか」

老人のような見た目のドーパントの言葉にリーダーのドーパントは頷き指示を出す

その指示を遂行するために他の五人のドーパントが動き出す

(さて、どうしたものか)

そう心の中で呟いた時だった

「なかなかに面白そうじゃねえか」

『?!』

全く別方向から掛けられた言葉にその場にいた全員が顔を向ける

その先にいたのは

「五十嵐…凱」

俺の親友だった

 

 

「俺のこと知ってんのか?いや知らねえわけねえか」

 

「カッコよく登場したのはいいけど、私らに敵うのかしら?」

凱が加わっただけで戦況は変わらない

「そうだな。一応お前らの使うメモリは割れてるからいいんだがな」

「ハッタリかしら?」

「なんなら言い当ててやるよ。

《エナジー》《アイスエイジ》《オールド》《エイプ》《ゾーン》《サブマリン》なんか違ってるか?」

凱の言葉にドーパントたちはぐうの音も出ない

 

「あんたがすごいのはわかったけど、それでも戦況は変わらないわ!」

ゾーン・ドーパントがそう叫ぶ

「まあ、そうだな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「避難だと?一体どういうことかね?」

そう言ってオールド・ドーパントが一歩前に踏み出した時だった

 

グチャぁ

 

地面からそんな音が鳴り、オールド・ドーパントは地面を見る

それに釣られて俺たちも足元を見て驚愕する

先ほどまで固い岩肌の地面だった足元が泥沼のようになっている

「こ、これは一体?!」

「まさか、()()が見えねえわけねえよな?」

凱が上に指を刺す

その先にいたのは

巨大な黒い何かだった

完全に漆黒の物体が浮いて蠢いている

それは獣にも竜にも、はたまた人のようにも見える

「な?!なんだあれは?!」

「あれは《エクリプス》さ」

オールド・ドーパントの問いに凱が答える

「エクストラの正体は『記憶という名の神』だ。条件を満たせばこうやって呼び出せる。これで合点がいったよ。なんでお前らがこれを『神のメモリ』なんて呼んでいたのか」

歌うように話す凱をドーパントたちは見ていることしかできない

「さて、質問だ。エクリプスが顕現しているこの状態で、俺たちと殺り合うか?逃げるんなら今のうちだぜ?」

「逃すのか?!」

「護、確かに仕留めるのはありだが、今は怪我人もいる。お前らだって怪我してんだから」

「だからってなぁ…」

「んで、どーすんの?」

巫山戯た口調で挑発する凱に対し、エナジー・ドーパントは冷静に判断する

「ゾーン、撤退しましょう」

「…了解です」

エナジーの指示でゾーンは他の面々を転移させていく

そして

エナジーだけになった時、彼女は凱に向かって言い放つ

「次は、確実に殺すわ」

それを聞いた凱は笑顔で返す

「待ってるぜ?覚悟ができたら殺しに来い」

それを聞いたエナジーは転移した

 

 

「ほら、帰るぜ二人とも」

凱と変身を解除した護と幽香は城に向かって歩き出した

「なあ、エクリプスは…」

「これか?」

凱の手には確かにエクリプスのメモリが

「本当にそれ大丈夫かよ」

「ああ、問題ねえよ。プロミネンスも順調に適合してる」

「やっぱ、適合率か」

「そうだな、それでなんだが風見」

「何かしら?」

「お前にカラミティは任せる」

凱の言葉に幽香は目を丸くする

「いいの?」

「いいも何も、それが適合したのは風見なんだ。お前以外には扱えん」

「そう、わかったわ」

幽香はカラミティメモリを大事そうにもつ

「さて、帰ったらドライバー作るか」

凱の言葉に思わず聞き返す

「な、おま。また作るのか?!」

「おう。聞いて驚け!今回のはなぁ…」

 

 

こうして、魔界に突如として現れた巨人は2人の戦士によって倒された

しかし、それを狙って現れた化学結社のドーパントたち

果たして彼女らとの決着は着くのだろうか?

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
マジすんません、凱の新ドライバーは次回しっかり出します
話書いてるうちに「あれ、ドライバー出せなくね?」ってなって出せませんでした

次回は凱のドライバーと護のお話になります

それではまた次回お会いしましょう!





目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第36話 格好良く(スタイリッシュに)戦え/魔法の森の人形使い

どうも、フォーウルムです!
今回は凱の新ドライバーと護のお話になります


新しいおもちゃ貰った時ってテンション上がりません?




現在の凱の使えるメモリはこちら!

ヘファイストス ルシフェル リベリオン 
エクリプス プロミネンス トラップ ギルガメス




 

 

ーー格好良く(スタイリッシュに)戦えーー

 

 

 

普段は天気のいい幻想郷

しかし今日は豪雨だった

そんな日に、FDNの店に数人の人影があった

集まっていたのは霊夢、咲夜、文、妖夢、そして姫乃だ

彼女たちはそれぞれコーヒーを口にしているが、味は感じられない

彼女たちは震えていた。普段は誰が相手でも臆さない霊夢ですら震えている

その原因は…

「♪〜」

普段では絶対しない鼻歌を凱がしていることだった

(な、なんで?!)

(わた、私にもわかりませんよ?!)

霊夢と文はアイコンタクトで会話する

他の少女たちも何も知らないようだった

そんな風にビクビクしていると

「完成した!」

急に凱が大きな声を上げた

「ははは!見てくれよ!」

こっちに来いと言っている凱の顔は子供のように無邪気だった

内心ほっとして向かうと、机の上には一個のドライバーが

そのドライバーには『S』『G』『T』『R』の文字盤のついたルーレットのようなものがある

「これは?」

「新しい俺のドライバー、その名も《スタイリッシュドライバー》だ!」

『スタイリッシュドライバー?』

その場の全員が首を傾げる

「ああ、このドライバーは挿したメモリに応じて戦闘スタイルを切り替えられるんだ」

「…どういうこと?」

いまいち理解できていない

「例えば、だ。射命丸が使ってる《アクセル》、あれは近接攻撃型のメモリだろ?それを遠距離型や防御型に変化させながら戦えるんだ」

「それ、なかなかに強いのでは?」

「まあな!」

胸を張り、自慢する凱

普段見れないその様子に少女たちは微笑む

「それで?今日はこの後どうするの?」

「特には決めてねえよ」

「だったらゆっくりしましょ」

「それもたまにはいいな」

そう言って俺たちは午後の一時を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

「ハックション!…寒いな」

護は魔法の森にいた

彼の気まぐれで「今日は森行ってみるか!」などと言って出てきたはいいが、雨に降られたのだった

しかし、彼がいるのは屋外ではない

彼のいる場所、それは

「全く、私の家が近くてよかったわね」

「ほんとだよ、助かったぜ。えーと」

「自己紹介がまだだったわね、私はアリス・マーガトロイドよ」

 

 

 

 

ーー魔法の森の人形使いーー

 

 

魔法の森で雨に降られた護はそこに偶然居合わせたアリスに連れられて彼女の家に来ていた

最初は雨が上がるまで、と思ったのだが一時間経っても止む様子はない

仕方がないので雨宿りをしていたのだが、不意に護がアリスの魔導書に興味を持った

本来ならば見せたりはしないのだが、アリスは特別に、と見せた

すると護はすぐに魔法を理解し、こうしたらいいんじゃないか?などと言ってきた

現に彼には魔法を扱う素質もなければ魔法を学んだ経験もない

しかし、いやだからこそ魔法を客観的に見た感想をそのままアドバイスとして言えたのだ

「すげぇ、こんなにも種類あるのか」

「メモリに比べれば少ないかもだけどね」

魔法の種類に驚く護にアリスはそう言った

気がつけば辺りは真っ暗になっていた

「今日は泊まっていきなさいよ」

「いや、いいのか?」

「特別によ?」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

その日の夜

 

 

 

アリスはベットで、護は椅子に腰掛けて眠っていた

アリスは心の中で困惑していた

護に対して感じるこの感情はなんだろうか?

霊夢やパチュリー、魔理沙にだって感じたことは無いのに

彼のことを考えるだけで胸が締め付けられる

ふと、近くにあった鏡を覗く

そこには、暗いのにも関わらず赤くなっているのがわかる自身の顔が映っていた

 

 

「泊めてくれてありがとうな」

「いいのよ、気にしないで」

次の日の朝、アリスは護の見送りに出ていた

「じゃあな」

その言葉に、アリスは胸の痛みを覚える

 

「ねぇ」

「ん?どうした?」

「また、遊びに来てもいいわよ。まだ魔導書はあるし」

せめて、せめて思い出に残って欲しかった

嫌だと断られてもいい、せめて___

「そうだな、そんときは茶菓子でも持ってくるぜ」

「…!……楽しみにしてるわ」

思いがけない言葉に驚くが、冷静を保つ

彼の後ろ姿を見ていると、心がとても落ち着くようだった

 

 

 

 

 

___________________________________

 

 

 

「アァ、愉しいじゃないか…なあ!」

地底にて暴れるドーパントがいた

頭は液体の入った袋に覆われ、体や右腕もその液体でブヨブヨしている

「さぁ、宴の始まりだよぉ!」

 

 

新たな事件がFDLに舞い降りる

 

 

 

続く

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
凱のドライバーやアリスのメモリの活躍は次回以降に予定しています
さて、次回ですが遂に地底でのお話になります!
あんまり出てなかった地霊殿組も出しますのでお楽しみに!

それではまた次回、お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五章 後編
第37話 地底での事件/中毒と火事にご用心


どうも、フォーウルムです!
今回は地底でのお話です
ちょこっと人里も出てきます
残念ながら地霊殿組は出せませんでした
思ったより出番が決まらない…なんとかせな



現在の凱の使えるメモリはこちら!

ヘファイストス ルシフェル リベリオン 
エクリプス プロミネンス トラップ ギルガメス


 

ーー地底での事件ーー

 

 

 

 

凱と護は地霊殿に来ていた

応接室に通された2人はさとりと話していた

「酔っ払い殺人?」

「ええ、そうなんです」

「依頼と聞いてきてみればなんとも変な事件だな」

「そう言わないでくださいよ、凱さん」

「あー、すまん」

「全く。まあ珍妙な事件といえばそうなんですが」

「それで、どんな事件なんだ?」

「これを」

さとりが差し出してきたのは数枚の書類

「これは…被害者のリストか」

「今日までに4人の被害者が出てます。外傷は無いのに全員亡くなっています」

「周りには争った形跡、被害者は酔っ払った表情で亡くなっている、か」

「他になんか無いのかさとりさんよ、例えば…なんだろうな?」

「そうですね、強いて言えば最近『違和感がある』とでも言いましょうか」

「違和感?」

「はい、なんとゆうか最近はなかった頭痛が頻繁に起こるとか」

「仕事のしすぎじゃね?」

「俺もそう思うぞ、さとり。しっかり休め」

「…善処します」

 

 

旧地獄

 

 

 

「そんで?どーするよ」

凱と護は街を歩いていた

「どうするも何も、見つけ出すだけだ」

「あてはあるのか?」

「無いことも無い。が」

「が?」

「…いや、なんでもない」

「なんだよー。教えてくれよー!」

「あのなぁ」

そんな会話をしていると

「あんたら、ちょっといいかい?」

1人の女性に声をかけられた

「ん?誰だ?」

「アタシは星熊勇儀、あんたらと戦いたいんだが」

「戦うったってな。どうする気だ?」

凱が尋ねる

「そりゃあもちろん、()()()()()

「な?!」「マジかよ?!」

勇儀の手にはメモリが握られていた

 

 

 

人里

 

 

 

とある喫茶店の一席に1人の女性が座っている

彼女の名は『一 凛』

化学結社の下部組織の一つ売買組織『メモリアル』のリーダーである

そんな彼女は優雅にコーヒーを飲んでいた

普段はメモリ販売が仕事の彼女だが、休みの時はしっかりと休む

「ふう、相変わらず美味しいわね」

行きつけの店のコーヒーを楽しんでいた

のだが…

「すいません、お隣よろしいですか?」

声の方を向くと1人の女性が

凛よりも若い、なんなら少女と見間違えるような人物だった

「いいわよ。久しぶりね舞鶴(マイヅル)

「こちらこそ。お久しぶりです凛さん」

彼女の名前は舞鶴(マイヅル) 恵美子(エミコ)。凛と同じ組織の人間だ

「珍しいわね、あなたみたいなのがここに居るなんて」

「これでも仕事中なんです。それより聞きましたよ」

「何を?」

「五十嵐凱と接触したそうですね?」

思いがけない言葉に凛はコーヒーを吹き出しそうになるが、冷静に受け応える

「さすが、『トゥルーエンド』ね。情報がお早いことで」

「うちの専門ですから!」

そう、彼女の部署は情報収集が主な任務なのだ

「それで、どうでした?」

「どうって?」

「五十嵐凱ですよ!会ったんでしょう?」

「いけすかない野郎だったわ」

「あはは、男性相手だと同じ反応ですね、毎回」

「男なんて、嫌いよ」

凛の苦虫を噛み潰したような顔を見て、舞鶴は思い出す

彼女がなぜ男を忌み嫌っているのかを

「ま、接触は構いませんが気をつけてくださいね?」

「なぁに?忠告?」

「ええそうです。それともう一つ」

そう言って舞鶴は凛に耳打ちする

「『ヴォルカニック』の解析が完了しました」

「!!…遂に?」

「ええ、私たちの『希望』になり得ます」

その言葉に凛は笑みを浮かべる

「じゃ!私はこれで!」

彼女は手を振りながら去っていく

残った凛は冷めたコーヒーを口に含み、飲み込む

「これで、また『計画』を進められるわね」

 

 

 

 

 

 

 

ーー中毒と火事にご用心ーー

 

 

 

 

「あはは!いつまで逃げるんだい?」

「くっそ!」

護はベオウルフを使い、勇儀と戦っていた

彼女が使った《アルコール》に苦戦している

「おい!見てないで助けてくれ!」

視線の先には屋根に乗った凱が

「もう少し頑張れ、打開策を考える」

「早くしてくれ!…うおっと!」

すんでのところでアルコール・ドーパントの叩きつけ攻撃を回避する

「くっそ!まじなんとかしろぉ!」

 

「さて、どうするかな」

アルコール

酒やビールに含まれている成分で、過剰摂取で酔っ払い、中毒を起こし死に至る

おそらく今回の事件の殺害事件の成り行きはこうだ

まず、誰かがメモリを手に入れ使用する

アルコールがまわって気分が良くなり暴れる

しかし、中毒を引き起こして使用者が死亡する

多分、メモリの毒素が強いのだ

そして、死亡者を見つけたやつが現場からメモリを持ち去り、また使用する

それが四件発生し、今五件目になろうというのだろう

今回の使用者の勇儀というやつはぱっと見鬼だった

以前霊夢から聞いたが『幻想郷の鬼はよく酒を飲んでいるのよ』と言っていたからアルコールの毒素も耐えられる、といったところか

「どうにかなるのか?あれ」

見た感じドーパントに打撃は通用しない

体がブヨブヨとした液胞に覆われ、衝撃が受け流されているのだ

そんな俺は一つの結論に到達する

 

「護!閻魔刀だ!」

「はぁ!?」

何言ってやがる

殴っても効かねえやつにどうしろと?

「そいつの足元はアルコールばっかだ!わかるだろ!」

「それがどうし……なるほど!」

一瞬で凱の言いたいことを理解する

周りが空き家であることも確認済みだ

遠慮はしねえ!

「オラァ!」

俺は腰の閻魔刀の柄を勢いよく鞘に打ち付ける

実はこの閻魔刀は少し俺好みのカスタムがついている

それは「火打ち石」だ

キャンプとか焼き芋で使おうと思ったんだ

放火のために使うためじゃないが

……本当だぞ?

狙いは上手くいき、火花がアルコールに引火

そのままドーパントごと焼き払う

「く?!やるねぇ!」

火が消えるとそこには燃えて痩せほそったドーパントが

どうやら液胞のアルコールが抜けたようだ

「決めるぜ!」

《ベオウルフ マキシマムドライブ!》

拳に雷が宿り紫電を発する

「喰らえぇぇぇぇ!」

「グゥ!グアアァァァ!!」

俺の一撃はドーパントに直撃し吹き飛ばす

吹き飛んだドーパントは変身が解けてメモリが排出される

「お疲れ」

「ん?」

上からの声にそちらを向くと親指を立てる凱が

「どうだ!俺の実力は!」

「ああ、最高だ!」

俺たちは2人で笑い合った

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
今回はアルコール、そして敵組織の新キャラの登場回でした!

次回は……まだ未定です

物語を進める、というよりは日常系に近いものを出そうと思います


それではまた次回、お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第38話 魔王と鎮魂歌と食べ放題

どうも、フォーウルムです!
今回から日常と言うか幕間のお話です
魔界組の事を書きたかったので書きます


 

 

 

 

 

ーー魔王と鎮魂歌と食べ放題ーー

 

 

 

 

 

 

「……終わった」

フォルトゥナ城の執務室にて、ギルバは椅子にもたれ掛かっていた

彼の机の上には大量の書類が

内容は外交、地域調査、予算案など仕事関係のものばかりだった

今までは外交なんてしてこなかったので非常につらく感じている

「…もっと早く気づければな」

外交相手には幻想郷はもちろん、他の国や次元のところとも交易も結んでいた

お陰で今の魔界は以前よりも活気に溢れている

「これも何とかしないとな」

手にとったのは戦闘報告書

内容は先日の『カラミティ討伐』に関するものだった

死者はでなかったものの重軽傷者は非常に多かった

特にモナとルクスの怪我は酷かった

「頭痛が酷いな。休むか」

そう言って彼はソファに横になって眠りにつこうとした

そこへ

ガチャッ

ノックも無しに扉が開けられた

「ん?ああ、ファスか」

「…起きてた?ギルバ様」

入ってきたのはファス

新生幹部のメンバーの1人で、唯一自由に執務室に出入り出来る

他のメンバーはノックするし許可をとる

そう言った意味で自由に出入りするのはファスだけであった

彼女はソファに寝転ぶ俺の隣に来て膝立ちになる

「どうした、なんか用か?」

「……ん」ペラッ

「これは…ケーキ食べ放題?」

「…うん。嫌?」

ファスが持っていたのは人里の店で開かれるケーキ食べ放題のチラシだった

「嫌じゃ無いが…ジーナやモナと行けばいいだろう?」

「…ジーナにはジンがいるし、モナは今はダメ」

「ダメって……ああ、そうだったな」

モナは先日の討伐戦で傷を負い、さらに精神的にも参ってしまったのだ

今はデスクワークを淡々とこなしている

非常に心配だ(保護者目線)

「わかったよ、それでいつ行くんだ?」

「…今がいい」

「はぁ、わかった。すぐに行くから待っててくれ」

「!……うん」

俺がそう伝えるとファスは嬉しそうに部屋から出ていった

 

 

 

人里 南エリア

 

 

 

 

「このお店か?」

「…そう」

2人が来ていたのはチラシのお店

時間も三時とお茶の時間なだけあって混んでいた

ファスは店に入り、店員に注文する

「…すいません」

「いらっしゃいませ!ご注文は?」

「…この食べ放題ってまだやってますか?」

「はい、大丈夫ですよ!」

「…じゃあそれで」

「わかりました!こちらへどうぞ!」

そのまま席に通され、すぐにケーキが運ばれて来る

「……すごい」

「これは、なんともな」

そのケーキはどれも美しく、美味しそうだった

「…!このショートケーキ美味しい…」

「このモンブランも旨いな」

「……」ジー

「ん?どうした?」

「…私もそれ食べたい」

「そうか、ほれ」

ギルバはモンブランを切り、フォークで刺して差し出した

「!?…えっと、その」

「なんだ?食わんのか?」

「…食べます」

そう言ってファスはギルバが差し出したケーキを食べる

その姿はまるで

「……恋人みたい」

「ん?……!」

赤くなるファスの言葉でやっと自分がしたことにことに気づくギルバ

「嫌だったか?」

「……ううん、良かった」

そんなふうにしながらケーキを堪能した

 

 

 

 

 

「いや、思ったより多かったな」

「…でも美味しかった。満足」

「俺も気分転換になって良かったぞ」

フォルトゥナ城に帰る途中、2人は並んで歩いていた

「……ねえ、ギルバ様」

「どうした?」

「……なんでもない」

ファスは言えないでいた

自分がギルバの事を愛していることを

相手は自分よりも上の立場でしかも自分は元奴隷

叶わぬ恋だった

今まで気軽に話せていたのはギルバの優しさがあってこそだった

だからこそ、ファスはギルバの事を慕い、愛してしまった

「……」

「なんだ、急に黙って」

「……なんでもない」

「そうか、なら俺から一ついいか」

その言葉に、ファスは一瞬震える

何を言われるのだろうか、嫌われたのだろうかという考えが頭のなかをぐるぐるとめぐる

「今日は楽しかった」

「…え?」

「お前と共にこうやって出掛けられて、ケーキも食えて俺は嬉しかった」

その言葉は想像とは真逆の暖かい言葉だった

「これからも、お前とこういう風に色々出掛けたりしたい」

「…それって」

「ファス、俺と付き合ってくれ」

「!」

それは、ファスが言えずにいたことであり、もっとも待ち望んだ言葉だった

「……いいの?」

「何がだ?」

「……私なんかで、いいの?」

「馬鹿なやつだな、お前だからこそいいんじゃないか」

そう言ってギルバに抱き締められる

彼の体はとても暖かかった

「お前がいいんだ。俺と一緒に居てくれ」

「…うん。……うん!」

ファスは強くギルバを抱き返した

 

 

 

次の日

 

 

 

「そう言うわけだから、俺、ファスと付き合う」

「……ええー?!」

ギルバはリーナにその事を伝えていた

「いや、昨日のうちにいえば良かったんだがな、すまん」

「…そっか。お兄ちゃん、ファスさんと付き合うんだぁ…」

リーナを見ればこの上ないくらい嬉しそうである

「嬉しそうだな」

「だって!あのお兄ちゃんがだよ?前までなら『戦いだー!』なんて言ってたのにさ」

「本人の前で言うか普通?!」

焦るギルバに対しリーナは腹を抱えて笑う

「でも、良かった。お兄ちゃん楽しそう」

「ああ、楽しいさ。前よりはな」

そう言ってギルバは窓の外を眺める

その景色は晴れ渡り、雲一つ無い快晴であった

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
今回はギルバ×ファスでした
次回も魔界組を書こうと思います

それではまた次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第39話 執事と姫の甘い関係

どうも、フォーウルムです!
今回は魔界組第二弾です!
少しアレな表現もあります
多分R17.9くらいです


 

 

 

 

 

 

「チェックメイトです」

「あー!また負けたー!」

ここは盤城の部屋

机の上にはチェス台があり、彼はリーナとやっていた

リーナが着ているのはオシャレなワンピース

それに対し盤城は相変わらずスーツだった

「これで20敗目ですね」

「飛鳥強すぎだよ〜」

「リーナ様も、以前よりお強く…」

「リーナ!あと敬語禁止!」

「そう言われましても…」

「もう()()()()()()()()()()()()

この二人は既に付き合っている

ギルバ達よりも早く付き合い始めており、それはすでにフォルトゥナ城では周知の事実である

「慣れないんですよ、今だに」

「もー」

「というかリーナ様が変わりすぎなんですよ」

まだ和平を結ぶ前のリーナはもっとお淑やかだった

凱を呼ぶ時だって『凱様』などと読んでいたのに今では呼び捨て

しかも最近ではジーナやファスたちとの関わりも増えておてんば姫様になってしまった

もっとも、盤城は今の方が好みのタイプなので内心ガッツポーズをしてたりする

「むー、チェスじゃ勝てないし、別のゲームやりましょ!」

「何をするんです?」

「『愛してるゲーム』よ!」

「なんですそれ」

聞いたこともない名前に首を傾げる

「互いに『愛してる』って交互に言って先に照れた方の負けってゲーム」

「…誰から教わったんですか?」

「ファスよ」

「…そうですか」

まあ、面白そうだしやってみようという気に盤城はなった

「じゃあ、私が最初ね!」

リーナはそう言って盤城に正面から抱きつき、彼の顔を瞳を動かして見上げる

いわゆる上目遣いというものだ

「飛鳥、愛してる!」

「………」

盤城は顔色を変えずに微笑む

「ありがとうございます、リーナ様」

「…悔しい!少しは恥ずかしがりなさいよ!」

頬を膨らませるリーナ

「…あはは(危なかった、もう少しで心臓止まる所だった)」

盤城は顔には出さなかったが心臓はバクバクだった

「じゃあ、次は飛鳥の番ね」

「ふむ…」

盤城は少し顎に手をあて考えた

そして彼が出したやり方

「失礼しますよ」

「え?いやちょっと!?」

盤城はリーナを壁際に連れていき、そのまま彼女の顔のすぐ横に手を付き、反対側の手で彼女の顎に触れた

「愛しています、リーナ様」

「……」カァーッ

その一言だけでリーナは顔を真っ赤にし恥ずかしがる

「ふふっ、私の勝ちですね」

「ず、ずるい!ぜっっったい勝てないって!」

「リーナ様にはまだ早かったんじゃ無いですか?」

「うっうるさい!」

猛抗議するリーナを笑いながら見ていた盤城は不意にその笑みを消し、どこか懐かしむような表情でリーナの頭を撫でた

「いえ、こうして見るとリーナ様はしっかりと成長なさったんですね」

「もう、保護者みたいなセリフじゃん」

「面倒を見ていたのは私でしたけどね」

「そうね。私が生まれてから、ずっと一緒だったものね」

リーナは盤城の左手を両手で優しく包む

「飛鳥がいなかったら、私は今頃ここにはいなかったわね」

「そんなことありませんよ」

「いいえ、きっといなかったわ。飛鳥が脱走後の私の護衛をしてくれたから生きながらえたの」

盤城の左手を自分の頬にあてる

「この手が、この温もりが私を救ってくれた。ありがとう、飛鳥」

「リーナ様…」

「飛鳥。お願い、聞いてくれる?」

リーナは盤城のベットの上に腰掛け、彼に手招きする

盤城も彼女に合わせベットに移動する

「どうかされました?」

そう聞いた瞬間、彼の口をリーナが塞いだ

「…………ぷはぁ」

「はぁ……急ですね。これがお願いですか?」

「違うわよ」

そう言ってリーナはベットに横になる

「…私を愛して。1人の女の子として」

あまりにも煽情的な台詞に盤城は息を呑む

「…よろしいのですか?」

「…うん。飛鳥ならいいよ?」

ふぅ、と、ため息をついた盤城は扉に向かう

(…引かれちゃったかな?)

リーナがそう心配した時

 

ガチャン!

 

その音は盤城が扉に鍵をかけた音だった

「…この部屋は完全防音なんですよ」

「…え?」

「もともと、拷問もできるように、と」

そう言いながら振り向いた盤城の目には

普段見ることのできない色が浮かんでいた

「だから、どれだけ声を出してもらっても大丈夫」

「あ…飛鳥?」

「貴女がいけないんだ、()()()

「……!」

「覚悟してくださいね?やるなら徹底的にやりますから…」

「お、お手柔らかに…?」

 

 

その日の夜、2人は部屋から出てこなかった

次の日、城の中でリーナ姫を担いで部屋まで連れて行く盤城が目撃され、皆の話題になったのは、また別のお話…

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
……うん、昨日深夜テンションで考えて途中変えたんですが

やっちゃったなぁ…

まあ、そのシーン自体出て無いからセーフってことで(?)
次回はジン&ジーナです!

それでは、また次のお話でお会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第40話 過去の想いは、ここに

どうも、フォーウルムです!
今回はジン×ジーナの回になります


 

 

 

 

フォルトゥナ城のとある一室

 

「ほら、出来たぞ」

「あ、ありがとうg…ゲホッゲホッ」

「あー喋んな、そして寝てろ」

ベットに横たわっているのはジーナ

彼女は数日前風邪にかかり、自室で安静にしていた

「でも、こうしている場合では…」

「あのなぁ、病人は休むのが仕事だ」

看病しているのはジン

ジーナが風邪になってから、つきっきりで看病している

「でも…!」

「でもじゃねえ。悪化したらどうすんだよ」

「ジンのくせに生意気ですわね…」

「テメェ、人がせっかく看病してんのに、そういうこと言うかよ」

「お願いしたつもりはありませんわ!……ゴホゴホ」

「ったく、ほら寝とけ」

そう言ってジンはジーナの肩を押さえてベットに寝かせる

寝かせた時に二人の顔はくっつきそうな程近づいた

「な、ななな?!」

「おいおい、さらに赤くなってんじゃねえか」

ため息をつくジン

「一旦席外すから、なんかあったらこれで連絡しろ」

ジンは小型の通信機をジーナの枕の横に置く

「じゃあ、しっかり寝てろよ?」

そう言い彼は部屋を後にした

 

 

「全く、誰のせいだと…」

ジーナはベットの中で昔を思い出していた

最初会った時は8歳くらいの頃だった

モナやファスと共に転入してきた彼のことを最初はあまり良くは思っていなかった

12になる頃に初めての実技テストで敗北し、非常に悔しかった

それ以来、あいつをライバル視していた

彼もそのことは自覚していたようで、毎回テストの時は

「今回も俺の勝ちだな」

などと煽られてはやっきになって喧嘩していた

そして、この前の幻想郷への侵攻の時

彼と冥界で対峙した際に衝撃を受けたのを今でも覚えている

あと少しで追い越せると思っていた彼の背中は、はるか遠くへといってしまったような気がした

その後に彼と共闘し、互いに背中を任せて戦った時は非常に嬉しかった

「………これが、恋、なんでしょうか?」

彼女の言葉は誰もいない部屋に消えていく

 

 

戻ったぞー

ジンは比較的小さな声を出す

「よし、しっかり寝てんな」

ジーナはどうやら眠っているようだ

彼は近くにあった椅子に腰掛ける

彼女に対する第一印象は「面倒なやつ」であった

「わたくしの方がうまいですわ!」

「全然美しく無いですわね、もっとこう、思いっきりやりなさい!」

「次は!次こそは私が勝ちますわ!!」

面倒だったが、嫌いではなかった

どちらかといえば、楽しかった

盤城に奴隷市で買われ、死ぬ覚悟を決めた

が、俺たちはどうやらまともな奴に買われたようで死ななくて済んだ

その後は学校やら行事やらでとても楽しい日常だった

学校で最初にジーナに絡まれた時は面倒だと感じたが、今ではこいつのおかげでとても楽しい

 

 

「ありがとな、ジーナ」

つい声に出したジンは、ベットの少女がこちらを真っ赤な顔で見ているのを見てしまった

「………」

「………」

「…聞いてた?」

「…バッチリと」

「………………」

「一つ、よろしいですか?」

「…なんだよ」

「なぜ、わたくしの看病を?」

ジーナはジンに疑問をぶつけた

普段の彼なら誰かに頼まれても看病なんてことはめんどくさがってしないはずだ

しかし、今回に限っては彼は率先して看病してくれている

「別に」

「別にって……」

「まあ、強いていうならば」

「?」

「『お前の近くに居れる口実作り』…ってやつだな」

「………?!?!?!?」

脳内で聞いたことを処理したジーナは顔を今まで以上に真っ赤にする

「そ、それって…」

「……あー。うん。待ってくれ」

ジンもどうやら誤爆したようで、顔を赤くしている

「…雰囲気ぶち壊しですわね」

「悪かったな」

「あの、ジン?」

「なんだ?」

「その、もう一回、しっかりとした言葉が欲しいのだけれど」

「…ったく、しゃあねえな」

そう言ってジンはジーナに近寄る

「ジーナ、お前のことが好きだ。俺と、付き合ってほしい」

「はい、喜んで」

ジンの率直な言葉に、ジーナも素直に返す

そして、2人は夜が更けるまで話を続けた

彼らの間に強く、決して切れることのない繋がりが生まれたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

え?告白が強引?
さーせんした、後悔はしてません
いや、本当に許してください。恋愛がどういったものか理解せずに書いてますので

そんなことはさておき、次回はついに魔界組最後となります!
お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第41話 互いを想う気持ち

どうも、フォーウルムです!
今回は魔界組のラストになります
慣れない恋愛系を書いたので精神的に疲れました…
まあ、楽しくもあったので問題なしです!






 

 

 

 

「完治したはいいけど無理は禁物だからね?あと、しばらく左腕は使えないから」

「わかりました、ありがとうございます」

「お大事にね」

ルクスが居るのは永遠亭

カラミティとの戦いのあと、彼はここに入院していた

3日ほどであの怪我が治ったのは八意というあの医者の実力なのだろう

そう思いながら永遠亭から出る

そこに居たのは

「よぉ、退院おめでとう」

「五十嵐、凱さん」

 

 

 

 

 

 

ルクスSide

 

 

「そうか、なかなかにすごい怪我だったんだな」

「ええ、自分でも驚いてます」

凱とルクスはFDLでコーヒーを飲んでいた

「でもいいのか?こんなところに居て」

「……はい」

「なんか、あったみたいだな。話してみろよ」

「…怖いんです」

「怖い?戦いがか?」

「それもありますが、彼女が、モナが傷ついてしまうのが怖いんです」

「何故?」

「今回の戦いで、俺は彼女を守りきれませんでした。ボロボロで、無茶しても歯が立たないような相手に、ただやられてしまう。そんな事に二度としたくないんです」

「ふむ…続けろ」

「はい。俺はもっと強くなりたい。強くなって、彼女を守りたい」

「あー、ちょっといいか?」

ルクスの話を凱は止める

「どうしました?」

「さっきから守るだのなんだの言ってるが、それじゃあ強くはなれんよ」

「でも」

「お前なぁ、いくら強くたって組織で戦う以上お前だけ強くても意味ねえんだよ」

「じゃあ、どうしろと!」

「例えば、だ。お前、モナの事好きか?」

「!?…今それ関係あります?」

「いいから」

「…好きですよ」

「そうか。じゃあ、今、ここでモナと一緒に戦えって言われたら、お前は戦えるか?」

「…それは」

「迷ってんならお前には覚悟と、もう一つ足りないものがある」

「覚悟と、もう一つ?」

「信頼だ。いかに相手を頼ろうとも、協力しようとも、相手を信頼してなければいけない」

「それが、足りないと」

「まあ、俺はそう思うが。詳しくは()()に聞いたらどうだ?」

「え?」

そう言われたルクスが振り向くと、店の扉が勢いよく開かれた瞬間だった

そこに居たのは、モナだった

 

 

 

モナSide

 

 

 

「今日はこれくらいにしなさい」

盤城様から言われた一言は私をひどく動揺させた

あの事件以来、ろくに寝ることもできなかった

寝てしまえば頭に浮かんでしまう

口ではああ言っていたが、心の中では「捨てられてしまうんじゃないか」という考えが離れない

次会った時になんて言われるのだろうか?

罵詈雑言、罵り、いや、それもなくただ無視されるのだろうか?

まるで、最初から居なかったかのように、私は(ルクス)の世界から排除されるのではないか?

それは、それだけは嫌だ!

気がついた時には、私は城内のお手洗いの洗面台の前にいた

鏡に映る私の顔はあまりに酷いものだった

 

顔を洗い、さっぱりしたところで盤城様に声をかけられた

「探したよ、モナ」

「どうか、されたんですか?」

「今日、ルクスが退院なんだ。迎えに行ってあげてもらえないかな?」

「私が、ですか?」

「うん。今は凱くんと一緒にいるみたいだから、多分FDLにいると思うんだ」

「…でも」

「『嫌われた』。そう思っているのかい?」

「?!……わかるんですか?」

「見てればわかるよ」

盤城は右手でモナの髪を撫でる

「彼、言ってたんだ。『モナのことを守れなかった』って。もしモナのことを嫌いになってたら、そんなことは言わないと思うんだ」

「………」

「だから、行ってあげなよ。モナのこと待ってると思うよ」

「…はい!」

盤城の言葉に勇気づけられ、モナは立ち上がる

「すぐ近くのゲートがFDLの前に繋がってる」

「ありがとうございます!」

そう言って彼女はゲートに向かっていく

そしてゲートをくぐった先には『Fallener Don‘t Laugh』の看板が

彼女は勢いよく扉を開ける

彼女の目に入ったのは、驚きの表情でこちらを見るルクスの姿だった

 

 

 

魔界に戻った二人はルクスの部屋にきた

ここにくるまでにかなりの時間があったが、互いに何も話せずにいた

「「あ、あの」」

2人の声が重なる

「モナから言ってくれ」

「う、うん。怪我は、大丈夫なの?」

「まあな、しばらく前線には出れそうに無いけど」

「そ、そっか」

モナは彼の右腕に触れる

自分を庇ってくれた際に負傷した腕はすっかり治っていた

「なあ、モナ」

「…何?」

「…ごめん」

「なんで、謝るの?」

「俺がもっと強ければ、モナを守れたのに、もっとしっかりしてれば、君を危険に晒すことはなかったのに」

「そんな、そんなことないよ」

泣きそうなルクスの顔をモナは見つめる

彼のことを好きになったのは、彼のその表情だった

怒ってる時も、嬉しい時も、悲しい時も

何があっても彼の表情には彼の心が映る

自分の気持ちを隠せない彼に、心の底から惹かれていた

「私は、ルクスが生きてる。それだけで十分だよ」

「モナ…」

ルクスは震える手でモナの頬に触れる

「ねえ、ルクス」

「なんだ?」

「もし、一緒にいたい、って言ったら。私と一緒にいてくれる?」

彼女のその表情は、今まで見てきた中で一番綺麗だった

「もちろん。次こそは俺が守ってみせるよ」

「うん、期待してるよ?」

そして、どちらともなく互いの唇を合わせる

その味は、今まで味わったものの何よりも

甘く、そして刺激的だった

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
今回で魔界組は終了、そして5章中編も終了となります
次回からまた本編になりますのでお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第42話 組織幹部、招集

どうも、フォーウルムです!
今回は前からやりたかった会議の会です!
一応本編に関係するお話になります




余談ですがコラボのお誘いとかお待ちしてます
もししたい方がいれば感想とかメールのところにコメントお願いします


 

人里 北エリア

 

この日は雨が降っていた

そのため、里の人間はそとに出てはいなかった

だが

「クッソ、テメエ何しやがる!」

二つの影が争っている

1人は氷のメモリを使ったアイスドーパント

もう1人は狼の騎士のような()()()()()()だった

「これで終わりだ」

ガイアナイトはドーパントの胸に右腕を突き刺す

「グアァ!」

するとドーパントの変身が解け、男は胸から血を流してぐったりとしている

「見つけたぞ、()()()

メモリは男の腕に吸収され、スロットに収まる

彼の体にはドライバー以外に両腕と両足にメモリスロットが3個ずつ、計12ものスロットがあった

「《タンク》に《マジック》そして《アイス》やっと三本目だ」

男は変身を解く

彼の名は加賀 龍

幻想郷に最近来た男である

「あと九本、待っていてくれ夏凛」

彼が幻想郷に来た理由を知るものは、まだ誰もいなかった

 

 

 

 

 

 

ーー組織幹部、招集ーー

 

 

 

 

とある施設の中

そこは工場のようにも見えれば会社のオフィスにも似ており、教会のようでもあった

そんな不思議な建物の一室に六人の男女がいた

彼らは組織『栄光の化学結社』のメンバーの中でもそれぞれの部署を管理する幹部たちであった

彼らのことを構成員たちは尊敬と畏怖を込めて『幹部六候』と呼んだ

円形のテーブルの席に腰掛けている彼らの背後にはステンドグラスの窓が存在し、それらは彼らを象徴する物であった

「急な呼びたてに応じてくれて感謝する」

最初に言葉を発したのは部屋の扉から最も離れた席の男だった

彼の背には『十字架に巻き付く蛇』のグラスがある

「珍しいね、僕たちを呼ぶなんて」

反応したのは少年だった

以前、リキッドメタルの際にもいた少年で背後には『大鎌を構える死神』のグラス

「それほどに重要なんだよ、《グレイブ》君」

「ならさっさと始めちゃいましょう?」

そう返すのは黒髪の女性

背後のグラスは『物を交換する2人の男』

「《トレード》君もこう言ってることだし始めよう。

今回の内容は、

・五十嵐凱について、・フィギュアスロットについて、・ドーパント狩りについて。

この3つだ」

男は会議を仕切っていく

「まず五十嵐凱についてだけど、トレードのとこの売買グループの1つが接触したそうだね?」

「ええ、凛ちゃんから聞いたわ。あまり良い印象じゃなかったって」

()()()()のは無理そうかい?」

「難しいと思うわ」

「そうか。他に何かなかったかな?」

「何も。ただ、エクリプスの顕現に成功したらしいわ」

「へぇ。それはそれは」

トレードと呼ばれた女性の話を聞きながら男は目を細める

「じゃあ、この案件は僕が処理するよ。次にフィギュアスロットだね」

「提案。あれの性能は想定以上の記録を出した、実用化すべきだ」

少し変わった話し方をしたのはメガネをかけた顔立ちの整った青年だった

背後には『互いに噛み合う歯車』のグラスがある

「なるほど《ファクトリー》君は賛成か。皆もそれでいいかな?」

全員が首を縦に振る

「よし。じゃあ採用でいいね。最後はドーパント狩りについてだ」

「それってなんだっけ?」

グレイブが尋ねる

「最近多発している謎の事件さ。ドーパントを狙ってるのは明らかなんだけどね」

「そ、それの対処、ですか?」

少しおどおどしながら質問するのは丸メガネをかけた少女

背後のグラスは『本と杖を持つ女性』

「ゆくゆくは、ね。これの対処は、グレイブ君に任せていいかな?」

「アハっ!最高!任せてよ!《エンチャント》のお姉ちゃんはゆっくりしてなよ」

グレイブは丸メガネの少女に笑いかける

その笑顔はやらんとすることとは大きくかけ離れた無邪気そのものであった

「あ、あはは」

「じゃあ、そういうことで」

男が会議を終えようとした時だった

「ちょっと待ってくれぇ」

今までダランと上を眺めていた男が声を上げる

『星空に浮かぶ衛星』のグラスを背後に持つ彼は気だるそうに言う

「ただやるんじゃぁ勝ち目はない。作戦はあるのかぁ《アルケミスト》?」

その言葉はグレイブ、そして司会の男に対しても向けられていた

「愚問だよ。あの方から許可は得ている」

「問題ないよ、容赦なんてしないから

「…そうかい」

「じゃあ、今日はこれで解散だ。また何かあれば連絡する」

 

こうして幹部たちの会議は幕を閉じた

 

 

 

 

 

 

続く

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
今回は加賀君と、組織の幹部達に登場してもらいました
幹部たちの背後にあるグラスはそれぞれが使うメモリに関係する物です!
次回は凱たちの物語になる予定です


それではまた次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第43話 狼と悪魔の接触/強襲の狂気と覚醒の炎

どうも、フォーウルムです!
今回は久々に凱くんが主役のお話です!
それと古明地姉妹も登場します


現在の凱の使えるメモリはこちら!

ヘファイストス ルシフェル リベリオン 
エクリプス プロミネンス トラップ ギルガメス





 

 

 

 

 

地底に少し変わったものがあった

それは広い闘技場である

何も無い空き地を最大限に使って凱が作った物である

最近では組み手や新装備の実験、ナイトメアの試験運転などに使っている

闘技場なだけあって中央の広いフィールドを囲むように少し高い位置に観客席が設けられており、凱はそこに座って戦いを眺めていた

今戦っているのは四人

それぞれ1VS1で戦っている

 

片方で戦っているのは博麗霊夢と古明地さとりだ

霊夢が使っているのはテクニカル系の《スパークリング》

さとりが使っているのは特殊な性能を持つ《ブレイン》メモリだった

変身すると『味覚』『嗅覚』が遮断される代わりに『視覚』『聴覚』『触覚』が異常強化される

探知範囲は現在だと半径100メートル程だ

ガイアナイトの見た目はアイアンメイデンのような見た目で胸の辺りに巨大な瞳がついており、背中から四本の腕が生えている

見た目の通り動きは遅い

他者への支援だけでなく、自身も戦えるというそこそこ優秀なメモリである

 

反対側で戦っているのは霧雨魔理沙と古明地こいしだった

魔理沙が使っているのはパワー重視の《スチームロコモティブ》

こいしのは姉と同じような特殊型の《センス》だ

外見はコンバットスーツのような見た目でさとりのとは違い軽やかな動きのできる軽装だ

このメモリは自身の五感のうちどれか一つを突出させて強化するというものだ

一度強化した感覚はしばらくの間再強化できず、一定のクールダウンを必要とする

単独での戦闘に重石を置いたメモリであることは間違いない

 

久しぶりの戦闘とは思えない動きをする霊夢と魔理沙を眺めつつ、メモリに適応しつつある古明地姉妹に感心しているとポケットに入れていた通信機が鳴り出す

取り出して耳に当てると聞こえてきたのは聞き慣れた声だった

「もしもし」

『凱、今どこにいるんだ?』

「護か。今は地底にいるが、なんか用か?」

『依頼人が来てる』

「へぇ、俺に回すような案件か?」

『相手が相手だからな』

「誰なんだ、その依頼主は?」

『飯綱丸って名乗ってる』

「…わかったよ」

どうやら今日も退屈せずに済みそうだ

 

 

 

 

ーー狼と悪魔の接触ーー

 

 

 

 

 

FDL店内

 

霊夢たちに声をかけたらこいしはついて行くと言ったが他の三人はどうやらもう少し鍛錬をするようなので置いてきた

カウンターのすぐ近くに腰掛けるこいしに麦茶を出しつつ依頼人に声を掛ける

「あんたが依頼するなんて珍しいな」

「そうでも無いだろう?」

「それで、内容はなんだ?」

「これを見てほしい」

差し出されたのは一枚の写真

それは胸の辺りを赤黒い血で染めた男の写真だった

「先日、人里の北エリアで発見された。死因は胸部損傷による失血死のようだ」

「胸部の失血?即死じゃ無いのか?」

「ああ。傷は肋骨あたりで止まっていて内臓にはさほど損傷はなかったらしい」

「ふーん」

写真を眺めながら凱は尋ねる

「依頼ってのはこいつの犯人探しか?」

「そんな所だ。頼めるか?」

「わかった。引き受けてやるよ」

「感謝するよ」

 

 

店を出た飯綱丸の後片付けをしながらこいしに聞く

「どうする?来るか?」

「うん!なんだか面白そうだし」

「面白そうって…。まあ、退屈はしねえわな」

そう言って片付けを終えた俺はこいしと共に外に出る

 

 

 

数時間後

 

 

人里に聞き込みをしていた二人は暗くなった道を歩いている

「収穫は無し、か」

「そうだね〜」

「被害者に関してもだが、犯人の手掛かりも無しか」

「うーん、明日また探す?」

「それもそうだな」

そういった時だった

「ちょっといいかな?」

「「?!」」

後ろから声をかけられた

振り向くとそこには狼の騎士のような人型の怪物がいた

その腰にはガイアナイトドライバーが巻かれている

「ガイアナイト…なんかようか?」

怪しがりながらも男に質問を投げる

「いや、君たちからメモリの匂いがしたのでね。もしかしたら持ってるんじゃないかと思ったんだが」

「持ってたらどうする?」

「それを渡してもらえないだろうか?」

「…断ったら?」

その問いの答えは聞けなかった

なぜなら、目の前の男がこちらに刃を振るう瞬間だったからだ

 

 

 

 

 

「中々やるじゃないか」

「そっちこそ、まるで人間じゃないみたいだね」

「半分正解だよ」

謎の男の不意打ちをリベリオンで受け止め、《へファイストス》で対抗する

狼騎士の右手には刀のような剣が握られている

「生身で戦うとは、どうかしているんじゃないのかい?」

「急に切り掛かってくる奴には言われたく無いんだがな!」

こちらもそれなりに全力を出して入るのだが一向に勝敗はつきそうにない

「お兄さん、援護するよ!」

そこへ、こいしが加勢しようとする

「流石に2人相手はきつい。ここは引かせてもらおう」

「な?!逃すかよ!」

「また会おう」

そう言い残し狼騎士はどこかへ飛び退ってしまった

「なんつう身体能力だよ」

「大丈夫だった?」

相手の動きに少々驚く凱に声をかけるこいし

「ああ、まあなんとかな」

「それはよかった。夜遅いし、帰……?!お兄さん後ろ!!」

「は?」

こいしが警告を発するのと、俺の右腕が消し飛んだのはほぼ同時であった

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー強襲の狂気と覚醒の炎ーー

 

 

 

____________________________________

 

 

意識が朦朧とする

何が起こった?

____よう。派手にやられてんじゃねえか?

 

誰だ

 

____俺はあんたの味方さ

 

味方?

 

____そうさ。《プロミネンス》って言えばわかるか?

 

エクストラメモリの中身か

 

____そうそう。ところでどうする?

 

何がだ

 

____今、あんたと一緒にいた…こいしだっけか。あの子が誰かと戦ってるぜ?

 

?! なら行かねえと!

 

____無理だ。あんたは今気絶してるし、あんたじゃまともに相手が出来ねえよ

 

……何が言いたい?

 

____俺に体の今だけ使わせてくれや。そうすりゃあ腕も治すし、襲撃者もぶっ倒してやるよ

 

それに応じたとして、体は返してくれるのか?

 

____勿論。俺はあんたの従者…いや契約者の方がいいかもな

 

…何を言っている?

 

____今は関係ねえよ。んで、どうする?

 

いいだろう。ただし条件がある

 

____何をご所望だい?

 

攻撃していいのは襲撃者だけだ、他のやつには手を出すな

 

____それだけかい?

 

あと、倒した後、俺が「返せ」と言ったら体を返してくれ

 

____お安い御用さ。じゃあ、やるぜ?

 

ああ、任せたぞ

 

 

 

______________________________________

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…!」

「あれれー?おっわりっかなー?」

急に私達を襲ってきた襲撃者は、どこか不気味だった

全身は筋肉で覆われ、血管がこれでもかと浮き出ている

顔は化け物のようで目は充血している

「見た目通りの脳筋なんだね…!」

「キャハハ!いいっしょ?この《インサニティ》メモリは!これを使えばどんな奴にも負けないわ!」

「ぐうぅぅ!」

繰り出される拳や蹴りは一発だけにも関わらず体全身に衝撃が伝わる

「ほらほらほらぁ!守ってるだけじゃ勝てないわよぉ!キャハハハハ!」

凄まじい連撃が私に向かって放たれる

「隙ありぃ!」

「しまっ…?!」

ほんの一瞬の隙をついた一撃が繰り出され、私を貫く

 

 

はずだった

 

 

 

急にあたり一面を灼熱の炎が覆う

「な?!」

目の前のドーパントにもわからないようだった

「ったく、派手にやるじゃねえか、クソガキ」

現れたのは、いや

そこに立っていたのはお兄さんだった

しかし、おかしい

彼の髪の毛は全体的に灰色だったはずだ

その髪が、今は真っ赤に染まっている

炎よりも紅い

「アレェ?まだ遊んでくれるのぉ!」

ドーパントが飛びかかる

しかし、彼は焦る様子もなく

「邪魔クセェな、消し飛べや」

そう言って手を水平に薙いだ

それだけで炎の渦が巻き起こりドーパントを吹き飛ばした

炎が消えると、そこには誰もいない

「逃したか?まあ、どうでもいいか」

お兄さんの髪は見間違えなどではなく紅い

喋り方まで変わっていた

しかも、吹き飛ばされたはずの腕まで治っている

「あ、あなたは?」

「んー、俺はプロミネンス。この体の持ち主の従者さ」

そう言って体を自身の親指で指し示す

「プロミネンス?…でもそれは」

「おっと、悪いが時間切れだ。またなお嬢ちゃん」

そう言うと紅かった髪は灰色に戻る

「ふぅ、なんとかなったな」

「あ、お兄さん」

「無事か?こいし」

「…うん」

「さっきのは気にするな。俺もよくわからん」

「えぇ……」

凱の一言に困惑するこいし

「まあ、何はともあれ無事でよかったよ」

「そうだね。なんか疲れちゃった」

「じゃあ帰って寝て、明日何か食いに行くか?」

「いいの?やったぁ!」

そうして、彼らの1日は終わりを告げたのだった

 

 

 

 

「全く…油断も隙もないとはこのことだな」

気絶しているインサニティドーパントを抱えているのは体から緑色のモヤを出す別のドーパントだった

「ごめんねー?言う事聞いてくれなくってさ」

謝っているのはグレイブと呼ばれていた少年だった

「…五十嵐凱に下手に接触はいけないでしょう」

「ほんとごめんって」

「それにしても、あれは」

「うん、プロミネンスだね」

「報告書が面倒ですね」

「お願いできるかな?」

ハァ「わかりましたよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




ここまで読んでいただきありがとうございました!
今回は加賀と凱の接触と組織キャラの登場でした
名前は今後明かします
インサニティともう一人のドーパントはメモ男さんのアイディアです。ありがとうございました!

次回は…特にきまってません
何を描くか決まり次第書いて投稿しますのでお楽しみに

それではまた次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第44話 エクストラメモリ

どうもフォーウルムです
今回はエクストラランクの顕現についてです

今後のストーリーにも関わる予定でもあるので少しでも覚えていただけると嬉しいです


 

 

 

 

紅魔館 ホール

 

「それで、あなたは何者なんですか?」

紅魔館のホールにかなりの人数が集まっている

「俺か?俺はプロミネンスだ」

全員から見えるところにいるのは凱だが、今はプロミネンスが体の主導権を握っているため髪と瞳がが紅い

「メモリ、なんだよな?」

「そうとも。俺たち《エクストラランク》に分類される奴らは自我があるんだよ」

護の問いにそう答えるプロミネンス

凱とは違う喋りなので違和感がすごい

「じゃあ、貴方達が封印状態で私たちの前に現れるのって」

顎に手を当てながら幽香が聞いてくる

「そういうことだ。俺たちの自我に感応できるやつじゃなきゃ封印は解けないんだ」

「なるほど」

「以前エクリプスが顕現していたが、あれもできるのか?」

「できるやつと出来ねえ奴がいる。俺みたいな憑依はほぼ全員ができるがな」

「ほぼ?」

「ああ。俺とかそこの緑髪の姉ちゃんの持ってる《カラミティ》。お前が持ってる《ドラゴン》は憑依ができる。が、《エクリプス》は出来ない」

「なんでだ?あいつもエクストラだろ?」

「あいつは俺らと違って凱に創られたからな。憑依できないんだよ」

「そういう問題か」

「他に何か聞きたいことあるやついるか?」

プロミネンスが周りを見渡す

「じゃあ、私から」

前に出てきたのは博麗霊夢だ

「あの化け物みたいなやつもあんたらなのよね?あれってなんなの?」

「あれか、あれは《解放変異》だな」

「解放…変異?」

「ああ。俺たちの記憶を解放してその力を行使するんだ。わかりやすく言えばお前らがメモリ使って変身するのと一緒だよ」

「そうなのね。ってかあんたらのメモリのランクは最上位なのよね?」

「それは少し違うな。俺たちの区分は『天体・災害・概念・伝承の記憶を内包するメモリ』であって『一番強いメモリ』じゃない。だから内容によってはハイランクをゆうに超えるものもあればローランクみたいな性能のやつもいる」

「いろいろなのね」

「そういうことだ……っと、そろそろ変わるか」

そう言うとプロミネンスは目を閉じる

すると髪の色がみるみるうちに灰色に戻っていき、再び目を開けると彼の瞳も灰色になっていた

「聞きたいことは終わったか」

「ええ、まあ」

「そうか。護、ついてきてくれ」

「ん?どこか行くのか?」

「ああ、記憶の遺跡に行く」

「どこだそれ?」

「メモリの記憶の原点にして、エクストラの巣窟」

『な?!』

凱の発言にその場にいた全員が驚きの声をあげる

「なんでそんなところに?」

「組織の連中がそこに刺客を放っているらしい。普通のドーパントではないから対処ができないらしい。プロミネンスから聞いた話だがな」

「そうか。すぐに向かうか」

「ああ」

そう言って二人がホールを出ようとした時だった

「ねえ、一ついいかな?」

「なんだ、姫乃」

姫乃が凱に声をかける

「私たちも言っちゃダメかな?」

「駄目だ。どんな危険があるかわからない」

「でも…」

「まさかとは思うが、そこで()()()()()()()()()()()()()()()()なんていうんじゃ無いだろうな?」

「…それは」

姫乃の本心を見抜いた凱の言葉はその場にいる全員に向けられた言葉だった

「……はぁ」

凱はため息をつき、再び外へ出ようとする

しかしそこで足を止め、全員に聞こえる声で言い放つ

「遺跡では何が起こるかわからん。組織の刺客と戦闘になるかもしれないし、エクストラとの戦闘になるかもしれん。命を落とす危険だってある。それにエクストラに適応できるかもわからない。そんな状態のところに生半可な覚悟じゃつれてはいけない。本当に命を投げ出せる覚悟がある上でエクストラメモリが欲しいやつだけ来い」

その言葉は凱の覚悟でもあり、全員に対する忠告であった

「出発は明日の朝だ。ついて来たいやつは準備しておけ」

その言葉を最後に凱はホールを後にするのであった

 

 

 

続く

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
次回は記憶の遺跡編となります
連れて行くキャラは決まってないのでもう一個アンケート作ります
凱と護以外にあと4人くらい連れて行こうかなと思っています


それではまた次回、お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六章 記憶の遺跡編
第45話 記憶の遺跡


どうも、フォーウルムです!

今回から六章に入ります!




 

 

 

 

 

 

出発当日

 

FDLの店に凱と護はいた

二人は支度を済ませて出るとそこには

 

4人の少女たちがいた

「……覚悟はできたのか」

「ええ。覚悟がなかったらここにはいないわ」

そこにいたのは姫乃、咲夜、霊夢。そしてパチュリーだった

「遺跡はおそらくここ以上に危険だ。それでもいいんだな?」

「もちろん」

「心得ております」

「問題ないわ」

凱の最終警告を笑いながら返す姫乃達

「本当にいいのか、パチュリー」

「大丈夫よ。私だって戦えるわ」

「そうかよ」

護はパチュリーを気遣って声をかけるが、心配無用だと返される

「ここで変身してから向かうぞ」

『了解』

凱の指示に全員が従う

《ルシフェル》

《パーティクル》

《バトルスーツ》

《ヴァルキリー》

《セイクリッド》

《グリモワール》

 

全員の変身が終わったのを確認した凱は遺跡に続く門を開放させる

「どんな原理なのよ」

「プロミネンスの力だ。行くぞ」

凱を先頭に全員が門を通った

 

 

 

 

 

門をくぐった先は想像とはかけ離れた世界だった

てっきり遺跡というからもっと古代みたいなものを想像していたのだが

そこは()()()()()()()()のような変な場所だった

「なんか違和感がすごいんだけど」

「そりゃあそうだろうな」

凱の懐から声が聞こえたかと思うと一本のメモリが飛び出してきた

そのメモリは赤い光を纏い、次の瞬間には人の形になっていた

「お前、プロミネンスか?」

「正解!ようこそ、『記憶の遺跡』へ」

焦茶色の肌に赤い瞳と髪の青年はそう言った

「それで?敵はどこにいるの?」

「そいつは__」

「私から話そう」

『!』

声がした方を見れば、1人の男性が立っていた

顎に髭を蓄えた初老の男だった

「あんたは?」

「私は、いや、私たちはこの遺跡の者だ。待っていたぞお前たちを」

「……どういうことかしら?」

「遺跡に組織の連中が来たって話だったろ?」

霊夢と護が各々の疑問を投げかける

「そうだ。話せば長くなる」

その男が言うことをまとめるとこうなる

数日前、組織の刺客たちが遺跡に侵入し、エクストラメモリが何本か奪われた

取り返しに行こうにも契約をしていない彼らは外に出ることができない

それだったら外の世界のエクストラに契約者になりそうな人間を連れてきて協力者になってもらおう、ということだった

「なるほどな。つまり『ここにいる全員に試練を受けて適合者を探そう』ってことか?」

「正確には、『お前たちの実力を試す』だがな」

「適合者ってのは見ただけでわかるもんなのか?」

「そうとも。()()()のようにな」

「……そうかい」

凱がそう言った瞬間、彼の腕に光の縄が絡みつく

「?!」

「なんだこれ?」

「ソレハ『アンカー』だ」

いつの間にか現れていたのは宙に浮く光の球だ

「貴様ノ相手ハ我ガスル」

「へぇ?楽しめそうだな」

「他の者たちは自身の戦場で待っている。送ってやろう」

そう男が言うと霊夢、咲夜、護、姫乃はどこかへ消えてしまった

「オ前ハ我ガ連レテ行ク」

「わかったよ」

そう言って光の球と凱も消えていった

残ったのはパチュリーだった

「さて、お嬢さんの相手は私がしよう」

「そう、早く済ませましょうか」

そう言ってパチュリーは魔導書を広げる

「ククク、何年ぶりだろうな。こうやって戦うのは」

次の瞬間、違和感のある場所から一転、巨大な図書館に周り切り替わる

「! ここは」

周りを見渡すと不意に一つの本棚が浮き上がる

それが合図だったかのように周りの本棚も浮き上がり、それぞれが連結し、組み合わさり、一つになっていき、最終的には空中に浮く要塞のようになった

「それが貴方の本来の姿なのね」

その姿を見て武者震いをするパチュリーを眺めつつ言語の神(ワード・マジェステルダム)は言い放つ

 

 

 

「いかにも。私の名は《ワード》。楽しませてくれたまえ、『七曜の魔法使い』」

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________________________________

 

 

用語解説

 

 

マジェステルダム

作者が作った造語

エクストラメモリの記憶達が『解放変異』した時の姿をこのように呼称する

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

次回はパチュリーvsワード戦になります!

他のキャラの順番は決めかねてるのでアンケートで募集したいと思います!



それではまた次回お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第46話 『七曜』対『言語』

どうも、フォーウルムです
今回は前回の最後に書いたようにパチュリー編です


 

 

 

 

 

 

「どうした、七曜?」

「まだ、これからよ!」

戦い始めてからどれくらい経っただろうか

パチュリーの攻撃は一向にワードには効いていなかった

その理由は

 

「『ひれ伏せ』」

「くっ!」

ワードのこの謎の攻撃によるものだった

「七曜、この程度なのか?お前の覚悟は」

「まだだって、言ってるでしょ!」

パチュリーは火の魔導書を使い火球を飛ばす

しかし

「『消えよ』」

たったその一言で攻撃は無かったものにされる

「ワンパターンだな」

「このぉ!」

火の魔導書を戻し、今度は金の魔導書を使う

地面から鉄の杭を生成し、ワードに向かって撃ち込む

「愚かな、『砕けよ』」

やはり、その一言で攻撃は無力化される

「そ、そんな……」

「終わりか?ならば『吹き飛べ』」

「!?」

その言葉でパチュリーは何かにぶつかられたように吹き飛ばされる

「ぐ、うぅ……」

「もう止めにしないか、お前では無理だ」

ワードは冷酷に告げる

「仮にお前に力があったとしても、私には勝てん」

「まだ、諦めるわけには…」

パチュリーはまた立ち上がろうとする

「愚か者!自身の力も弁えずに無謀にも向かってくると言うのか!」

「……でも、それでも」

パチュリーには負けられない理由があった

 

 

数日前

 

「ここのとこやっぱ違うんじゃないのか?」

「いいえ、ここは火の術式の要だから」

「ふーん、じゃあここにこれ組み込んだらどうよ」

「…! いいじゃない」

「だろ?」

パチュリーと護は図書館で話し合いをしていた

それはパチュリーの魔導書の魔法を改良しようと言うものだった

それはパチュリーが「護がアリスに魔法のアドバイスをした」ということを聞いて興味が湧いたからだった

実際、彼のアドバイスは中々のもので、パチュリーですら気づかなかったようなところまで的確に指摘してくる

「これで魔法が使えないなんて信じられないわね」

「俺はほぼ人間だからな。その分これで補うさ」

そう言った彼は《ドラゴン》のメモリを取り出す

「エクストラメモリ…羨ましいわ」

「あはは、いつか手に入るだろ」

「ムキュー、いい気になっちゃって」

「じゃあ、こうしようぜ。もしパチュリーがエクストラを入手出来たら何でもお願い事を聞いてやるよ」

「…ほんと?」

「ああ、もちろん」

「……わかった」

 

 

 

 

 

 

これが彼女の負けられない、負けたくない理由だった

「負けられないのよ、私は!」

「『燃え潰れろ』」

「ぐぅっ!あああぁぁぁ!」

パチュリーの体が炎によって押し潰される

全身からおかしな音が聞こえる

それが彼女の骨が悲鳴を上げる音であることに彼女は気づかない

そして……

 

バキッ

 

「あ………」

 

 

 

彼女の体が限界を迎えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……終わったか」

音からして背骨か何処かが砕けたらしい

試練とはいえ、やりすぎてしまっただろうか

「…せめて葬ってやろう」

ここに彼女の遺体を置いておくのも忍びない。弔ってやろうと思ったときだった

「……『我は七曜を司る魔女なり』」

「…!? 馬鹿な!」

死んだと思っていた彼女から声が聞こえた

「『汝の司るものが魔導なのであるならば』」

「ありえん、確実に彼女の生命活動は終わったはず」

目の前の事柄に驚きを隠せない

「『我が力の元に、その真髄を開花させよ!』」

瞬間、パチュリーの体が輝く

光が消えると、そこに立っていたのは

魔導書ではなく、魔導の結晶を周りに漂わせるパチュリーだった

「これが私の、()()()魔法よ!」

彼女が腕を伸ばし、七色の結晶から光線を迸らせる

「『止まれ』!」

ワードは言葉を発するが、光線は止まらない

「馬鹿な、この私よりも上位だと言うのか!」

そう、彼の言葉は()()()()()()()()()()には効かない

彼女はこの一瞬でワードを越えたのだ

そして、光線はワードに直撃する

「ぬああぁぁ!」

しかし、それは一瞬の事であった

 

ドサッ

 

パチュリーの方が先に倒れてしまったのだ

その瞬間に光線は消え、彼女のメモリも排出された

「…まさか、ここまでとはな」

ワードは解放変異を解除し、人間の姿に戻る

「どうやら、甘く見ていたのは私の方だったようだ」

 

 

 

 

 

 

 

「……う、うーん?」

体が重い

普段こんなに動かないからだ。全身筋肉痛でまともに動けない

あれからどうなったのだろう

最後の死力を尽くして護と作った最終手段を使ったところまでは覚えている

「目覚めたか」

「……!」

隣にはワードが座っていた

「結果だけ言おう」

「……」

「お前は私の想像よりも遥かに素晴らしい成長を遂げ、私に可能性を見せてくれた」

「……じゃあ」

「合格だ。認めよう」

「…!」

パチュリーの目から涙が溢れる

「泣くな」

「…泣いて…無いもん」

「全く……。これからよろしく頼むぞ、パチュリー・ノーレッジ」

「ええ、よろしくね」

こうしてパチュリーはワードと契約を結んだのであった

 

 

 

 

 

 

「はは、やってんなぁ」

凱がいるのは何もない空間

いや、正確に言うなら()()()()()()()()であった

しかし周りは緑色の光に照らされ、辺りには光の粒が漂っている

「ココガ我ガ聖域」

声の主は巨大な怪物

鋭い鉤爪に50メートルはあるであろう巨大な腕を4本持つその怪物は宙を漂っていた

4本の腕の交わるところには本体であろう巨大な光がその輝きを放っている

「ボス…にしてはえげつねぇ見た目だな」

「フン、今サラ怖ジ気ツイタカ?」

怪物の挑発を凱は笑い飛ばす

「ははは!舐めんなよ?」

凱はリベリオンを構える

「ぶった斬ってやるよ。精々死なないように気を付けるんだな」

「イイダロウ、サァ、来イッッ!!」

 

 

 

 

 

続く!

 

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
次回は凱の戦闘になります!

今後は、凱→咲夜→護→霊夢→姫乃の順で進めて行きます!
アンケートにご協力してくださった方々、ありがとうございました!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第47話 化物(『堕天使』)怪物(『虚空』)

どうも、フォーウルムです!

今回は凱の戦闘シーンになります!


 

 

 

 

 

「くははは!最っ高じゃねえか!」

8枚の羽で飛び回りリベリオンを振り回す

剣からは紫の光が迸り、試練の相手である《ヴォイド・マジェステルダム》から繰り出される弾幕を切り裂いていく

「中々二ヤルデハナイカ!」

ヴォイドはその四本の腕を振るい、鉤爪で薙ぎ払ってくる

腕が通った後にはまるで空間に傷がついたかのように跡が残り、それが弾幕となって凱に向かう

「温いんだよ!」

凱はドライバーのルーレットを『R』にあわせて防御型に切り替える

飛んでくる弾幕の威力を相殺し、受け流し、弾く

「ナラバ、コレハドウダ?」

四本の腕の先の爪に光が灯り、そこから何百本もの光線が放たれ、凱のいたところを貫く

「おいおいおい!遅すぎるぜ!」

「何ィ!?」

凱はすでにヴォイドの背後にまわっている

ドライバーのルーレットが示すは『T』

奇襲型だ

「喰らいやがれぇ!」

そのままルーレットを『S』に合わせ、連続でスティンガーを叩き込む

しかしそれらは四本の腕に阻まれる

「だったらこうだ!」

凱はルーレットを『G』に合わせ、リベリオンのメモリをマキシマムスロットに差しこむ

《リベリオン ガンスリングアクション!》

リベリオンの刀身に青い光が収束していく

「タダデハヤラセンッ!」

対するヴォイドも爪に先ほどのように光をためる

 

そして

 

 

両者が溜めた光を互いに向かって打ち出す

「ゼアアァァァァァ!!!」

「ヌオオオぉォォォ!!!」

互いの光はぶつかり合い、凄まじい衝撃波を撒き散らす

次の瞬間、拮抗していた光が弾け飛んだ

『?!』

両者を爆発が飲み込み、力の奔流が襲った

 

 

 

 

 

 

「凄マジイ力ダ」

あの男の力は想像を超えるものであった

本来なら我が戦場である『虚空の聖域』でまともに戦えないような状況になると踏んでいた

しかし、奴はその環境に瞬時に適応してみせた

そして、奴との闘いは我に昔の記憶を思い出させるほどに激しかった

「アノ男ナラバ、我二相応シイカモナ」

先ほどの爆発で力を消耗しすぎたせいで、腕は形を保てずに消えてしまった

我がこうである以上、あの男も同じであろう

さっさと回収し、現世に戻ろう

そう思っていたのだが………

 

ガシィ

 

「ハ?」

何かがヴォイドの体を掴んだ

それは、巨大なエネルギーで構成された悪魔の右腕だった

その持ち主はもちろん

「どうやら、俺の勝ちのようだな」

「……貴様、本物ノ化物カ?」

凱だった

その姿はルシフェルガイアナイトのままで右腕をこちらに伸ばしている

「なかなかにヤバかったぜ?死んだと思ったわ」

「ソレハ我モ同ジダ」

「勝負は俺の勝ちでいいな?」

「無論ダ、コノヨウナ状況デハ文句モ出ヌ」

「試練はどうなる?」

「………ア」

「忘れてやがったな?」

「マァ、アノ中デダッタラ貴様以外二我ヲ扱ウ事ハ出来マイ」

「じゃあ、合格ってことか?」

「アア、認メテヤロウ。受ケ取ルガイイ」

ヴォイドはメモリになり凱の手の中に収まる

「これで、三本目か。喧嘩すんなよ?」

ヴォイドが消滅したために周りの空間も元に戻り、最初の場所に戻された

「さて、少し待つか」

そう言って凱は地面に寝転び、うたた寝を始めたのであった

 

 

 

 

 

 

「ここは何処かしら?」

咲夜が立っているのは、洞窟のような見た目の場所だった

辺りは仄暗く、見渡しても暗い岩肌が見えるだけだ

「薄気味悪いわね」

そう言いながら一歩前に踏み出した時だった

ボッ、と1つの松明に火が灯った

「え?」

その火は隣に燃え移っていき、最終的にあたりを明るく照らし出した

その炎に照らし出されたのは

「ほっほっほ、よくぞ来なすったな」

 

 

巨大な骨が集まってできた怪物だった

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

今回は前回より短めになりました。理由は回想シーンがなかったのもありますが、単純に凱自身が強すぎたというのもあります
それゆえに覚醒シーンもへったくれもない感じになりました……

次回は咲夜の戦闘になります
お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第48話 時代が刻まれた証

どうも、フォーウルムです
今回は咲夜のお話です!


 

 

 

 

「よくぞ、来なすったな」

「………」

目の前の骨の怪物を咲夜はまじまじと眺める

以前パチュリーの図鑑で見たことのある『恐竜』と呼ばれた生物の骨ばかりが使われていた

巨大な足の骨や、固そうな顎を持つ顔

背中には何枚もの羽のような骨がついている

鋭い歯がついた口からキリッとした女性の声が聞こえる

「私こそがこの空間を支配……」

「その喋り方なんとかならないのかしら?無理矢理やる必要はないわよ」

「おやおや、若いものは手厳しいのぉ」

先ほどの声から一転、しわがれた老婆の声が響く

「この方が受けがいいかと思ったんだがねぇ」

「受け狙うくらいならもう少し柔らかい喋りにすることね。堅苦しすぎるわ」

「それはいいことを聞いたわい」

「それで?貴方が私のお相手?」

「いかにも、我が名は『ファッソル』」

「ファッソル…確か化石とかだったかしら?」

「ほぉ!その違いがわかるか!」

骨の怪物《ファッソル・マジェステルダム》は嬉しそうな声を上げた

「他の者どもは骨と変わらんなどと申す者ばかり。誰も其方のように分かってはくれんくてのぉ」

「骨って、確かに骨の化石とかもあるけれど、全部が全部そうってわけでも無いでしょうに」

「そうなのじゃ」

戦わずにこの2人は話し込んでいる

 

 

数分後…

 

 

「いかんいかん、話しすぎてしまったわい」

「そうね、すっかり試練のことを忘れてたわ」

「それでは、試練を与えよう」

ファッソルは立ち上がり、背中の羽を広げる

「わしに其方の力を示してみよ」

「それだけでいいの?」

「うむ。其方には理解がある。あとは実力があれば十分じゃ」

「わかったわ」

咲夜はそう言って立ち上がり…

 

「一気に行くわ」

クロックメモリをマキシマムスロットに差し込む

《クロック マキシマムドライブ!》

「ほ?」

半秒後、辺り一面に大量の剣が展開され、ファッソルに向かってとぶ

しかし

「効かんのぉ」

放った剣は一本たりともファッソルに傷をつけることはなかった

「わしの体は長い年月をかけ、その硬さを増しておる。剣程度では傷付かんよ」

「でしょうね」

それを見越してか、咲夜はすでに次の手段に移っていた

 

ヴァルキリーメモリを使って変身している彼女はその手に新しい武器を創り出す

彼女のメモリの能力は武器を創り出す『創造系統』の能力だ

しかし、それは凱の持つ《へファイストス》も同様であるが、いくつか違いがある

まず創れる物だ

へファイストスは基本なんでも創り出せるが、ヴァルキリーは武器しか創ることはできない

次に創れる物の総量

へファイストスが無制限に創り出せるのに対し、ヴァルキリーは一つ創ったら新しいのを出すためにその前に創った物を壊さなければならないという縛りがある

だが唯一、ヴァルキリーが優っているものがある

それは…

 

「行きなさい、ミストルティン!」

瞬時に創り出せるものの質だ

へファイストスは高位のものを創ろうとすればそれなりに時間がかかる

しかし彼女のヴァルキリーは『一つしか創れない』『武器しか創れない』というデメリットの代わりに『創れるものは神器級の物』というメリットを抱えている

咲夜は瞬時に創ったミストルティンをファッソルに向けて飛ばす

「効かぬなぁ」

だがそれも弾かれる

「これもダメね」

「どうした、まさかなす術なしかのぉ?」

ファッソルは体を震わせて笑う

(何か、何かないの?)

咲夜は考えを巡らせる

その時に出てきたのは

凱との会話だった

 

 

 

 

 

 

「力の伝わり方?」

「ああ」

それは凱と特訓をしている時だった

「例えば相手がこういう盾を持ってた場合」

そう言って凱はへファイストスの能力で丸く湾曲した面を持つ盾を作り出した

「こういうのが相手の場合、槍みたいな武器では上手く力が伝わらない」

「周りの曲がったところに槍の先がブレるから?」

「そうだ。そんときはハンマーみたいに面で叩く武器がいい」

そう言いながら盾を崩し、今度は一辺が一mほどの石のブロックを作り出す

「逆にこういう平らな面の装甲や盾を持つ相手の場合は一点を貫くようにするんだ」

「それならクロックとかでも…」

「いや。あれは投げる速度に依存する。自分がしっかり持ちながら突かないと威力は出ない」

「なるほどね。要は相手に合わせて武器を変えて戦いなさい、と」

「そういうことだ。余裕だろ?」

「ええ、もちろんよ」

 

 

 

 

 

「まさか、こんなところで思い出すなんてね」

咲夜は不敵に笑う

「まだ、策を弄するのかい?」

「もちろん。私は諦めが悪いのよ」

そう言いながら咲夜は、()()()()()()()をマキシマムスロットに挿し込む

《アラストル バーストアクション!》

咲夜の手に雷の魔剣アラストルが出現する

それを右手に持ち、腕を引き絞り腰を低くする

その姿は凱のスティンガーの構えにそっくりだった

「喰らいなさい!」

雷を纏いつつ、右手を突き出し猛スピードで突進する

「その程度では………?!」

ファッソルは体を覆う外骨格で受け止め弾こうとするが、すでにアラストルは外骨格に突き刺さっていた

「な?!」

「はあぁぁぁ!!」

そのまま、咲夜は突進の力を込め続ける

そして…

ついにその骨格を粉々に粉砕し、ファッソルを貫いた

 

 

 

「見事じゃ、若きものよ」

形を崩し始めたファッソルは咲夜に語りかける

「お主ならわしを存分に扱えるはずじゃ。持っていけ」

「ええ、使わせてもらうわ」

出現した《ファッソルメモリ》を咲夜は手に取る

すると、あたりの背景が眩しい光に呑まれていく

光の中で彼女は

(戻ったらお礼を言わなきゃね)

心の中でそう誓ったのだった

 

 

 

 

 

続く

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
次回は護と霊夢のお話です!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第49話 覚悟と挑発

どうも、フォーウルムです
今回は護と霊夢のタッグ戦になります
初めてタッグ戦書くのであまりうまく出来ないかもですが、頑張ります!


 

 

 

 

「護、援護お願い!」

「任せろ!」

霊夢に集まってくるミイラ共を護が薙ぎ払う

「逃がさないわ!」

「ひひひ、やれるものならやってみなよ」

霊夢は宙に浮くマジェステルダムに向かって急接近する

「行けぇ!霊夢!」

「余所見するなよ!」

護にもう一体のマジェステルダムが攻撃を仕掛ける

「見え見えだぜ!」

スフィンクスのような見た目のマジェステルダムから放たれるひっかき攻撃を閻魔刀で受け止める

 

このように彼らが入り乱れて戦っているのには訳がある

霊夢が戦っている女性型の《エレメント・マジェステルダム》と護が戦っている獣型の《ファラオ・マジェステルダム》の出してきた試練は『お前たちの連携を見せてみろ』というものだった

最初、霊夢は何故かと反論したが彼女らのコンビネーションによって納得せざるを得なかった

ファラオが出すミイラやゾンビ達のの大群。それに気を取られればエレメントからの攻撃を捌ききれない

しかも、エレメントは本体は短剣2本持ちでさらに首に巻くスカーフのような物が触手のように蠢き、それらも刃と化しているため対処が困難だ

ファラオの攻撃は突進やひっかき、砂嵐と単調なものが多いが範囲が広い

一筋縄ではいかない相手だった

 

「そうやってても勝てないよ?」

「うるさい!」

刃の触手からの攻撃を捌きながら接近しようとするがエレメントには届かない

「セイクリッドじゃ力不足だっていうの?!」

霊夢は歯噛みする

「遅いよ」

「しまった!」

触手に気を取られているうちにエレメンタルが接近し短剣で斬りかかる

間一髪で霊夢はそれを防ぐ

「わかるでしょ?私に勝つためには覚悟が必要なの」

「覚悟……」

霊夢はエレメントの言葉を頭の中で考える

「いいわ、やってやるわよ」

 

「なかなかやるな、少年!」

「一々暑苦しいな!」

閻魔刀で攻撃を捌きながら護は怒鳴る

「だいたい、ファラオって男じゃねえのか!」

「………」

護の言葉でファラオは沈黙する

見た目がスフィンクスのこのマジェステルダム、先ほどから発する声は女の声だった

「………わるいかよ

「あ?」

「みんなそう言うんだ、ファラオは歴史上男なのになんでお前女なん?なんて言われてさ。こっちだって女の見てくれで生まれたかったわけでは無いのにさ…」ブツブツ

「えぇ……」

急なテンションの落差に護は唖然とする

そこへ

「護!」

「霊夢か、どうした?」

「ファラオの方、なんとかなりそう?」

「ん、まあ」

「じゃあ、任せたわ」

「任せたってお前、どうする気なんだ?」

「まあ、『覚悟』を決めるだけよ」

「???」

「よろしくね」

「あ、ちょ。おい!」

そう言い残して霊夢はエレメントに向かっていく

「はぁ。おいファラオ」

「……なんだよ」

呆れつつファラオに声をかける

「さっきのは謝る。だから機嫌を戻してくれ」

「……だって」

「ほーん。ウジウジしてるんだぁ?」

「な?!」

「こんなんじゃ周りのが煽ってくるのも納得だな。見た目がでかいだけで中身はちっぽけってかぁ?」

「な、な?!!!」

「やーい、悔しかったらやってみなー!ww」

「怒った!もう怒ったぞ!」

あまりの怒りにファラオは突進を繰り出す

「そうこなきゃ、面白くないぜ」

護は腰を落とし、閻魔刀に手をかけ……

「ッ!」

息を鋭く吐きながら抜刀

ファラオを一閃する

「……やるね」

「…そりゃどうも」

一言残し、ファラオはメモリになった

 

 

「どうしたのさ。このままじゃ負けちゃうよ!」

霊夢は先ほどからエレメントの猛攻を防いでいるだけだ

「焦ったいな、終わらせてやる!」

触手をセイクリッドに突き刺し、本体だけで霊夢に肉薄する

 

 

 

 

「かかったわね」

「え?!」

セイクリッドの体は貫かれて身動きは取れなかった

だから反撃されることを想定していなかった

「この距離なら外さないわ」

故に、ゼロ距離に近い距離まで肉薄したエレメントは霊夢の隠し球に気づけなかった

「喰らいなさい!」

「うぐっ!」

霊夢の手から放たれた光線がエレメントに突き刺さる

「…どう?これが私なりの『覚悟』よ」

「…『肉を切らせて骨を断つ』…さすがだね。いいよ、認めてあげる」

満足そうに微笑みながら、エレメンタルはその体をメモリに変えた

 

 

「お疲れだったな、霊夢」

「…まだお腹が痛いわ」

ファラオを拾って戻ってきた護が霊夢に話しかける

「あれはやりすぎだ。もう少し自分のことを考えろ」

「少なくとも、あれが私の覚悟よ」

「『自己犠牲』か?ったく、誰に似たんだか」

護はため息を吐きながらやれやれと首を振った

その直後に転送が始まる

戻ってきたのは、最初の空間だった

そこにいたのは

「案外遅かったな、お前ら」

「お疲れ様、護」

「凱?!それにパチュリーも?!」

「俺らが三番目か」

「そうだな…っと噂をすれば」

凱たちや護たちとは別のところに光が生まれ、そこから咲夜が現れる

「お疲れ様、咲夜」

「凱!ええ、疲れたわ」

そう言いながら咲夜は4人に歩み寄る

「そういえば姫乃は?」

「まだだが…」

「きっとまだ試練中」

霊夢の疑問に凱とパチュリーが答える

そこへ…

 

ブオン「凱!いる?!」

「紫?どうした慌てて」

「急いで戻って!幻想郷と魔界が大変なの!」

『?!』

紫の言葉に全員が唖然とする

「急いで戻らないと…!」

「だが、姫乃がまだ!」

急がないといけないが姫乃がまだ戻ってきていない

「……行くぞ」

「?! 置いていくのか?」

「あいつなら、大丈夫だ」

凱はそう言った

「あいつは、俺らが思ってるよりも強い。きっと大丈夫だ」

「……そうか」

「紫、すぐに幻想郷へ」

「わかったわ!」

紫が開いたスキマを五人は通った

 

 

 

幻想郷の地底に()()は現れた

本来は温泉街でとても暖かい地底は、それの影響によって凍てつく世界へと変貌した

「………………」

冷気を発する中心には、怪物がいる繭があることを、まだ誰も知らない

 

 

魔界の地獄門

魔界と他の世界を繋ぐその門を遮るように、()()は現れた

「腹が、空いたなぁ」

自身の欲を満たすための贄を求め、それは動き出す

 

幻想郷上空

人里や紅魔館、妖怪の山を見下ろせるような上空に()()は現れた

体から奇妙な音を出す結晶のようなそれは只々浮遊を続けるだけだ

「hfweoqffywofmsbxiakdo」

理解できない言語を放ちながら、それは世界(幻想郷)を見下ろす

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
次回はついに幻想郷と地底、魔界で起こる大規模戦闘です!
果たして、その戦いの先にある結末とは?




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第50話 三界戦争

どうも、フォーウルムです!
今回はついに本編50話目!めでたい!
しかし特には何もしません。年末にやりたいからね

今回は新しい戦いの幕開けとなります!


 

 

栄光の化学結社本部 展望台

 

 

街を見下ろせる展望台

そこに1人の男が立っている

男の名前は里崎(サトザキ)(レン)

幹部六侯の1人で、以前の会議で《アルケミスト》と呼ばれていた男だ

彼は手すりに寄りかかりその手にもつコーヒーを飲みながら街を眺めている

そこに

「質問。なぜこんなところに居るのか」

「ん?ああ、ファクトリー君か」

現れたのは眼鏡を掛けた無表情な男、《ファクトリー》だった

「僕に何か用かな?」

「疑問。これはお前がやったのか?」

手渡されたのは3枚の報告書だった

「現状。幻想郷に2体、魔界に1体出現している」

「うん、そうだね。僕らが使えなかったのを試しに暴走させてみたんだ」

里崎は街を見下ろす

「あんなものをこの街では試せないしね」

「納得。だが、目的はなんだ?」

「特に無いよ。相手の戦力が削げればそれに越したことはない。機山(キヤマ)君もそう思うだろ?」

「………」

不敵に笑う里崎を見て機山は思う

自分も大概だが、この男もだいぶイカれている

まあ、イカれてでもなければ()()()()()しないだろう

 

 

 

 

ーー三界戦争ーー

 

 

紅魔館の大広間

現在そこには多くの妖怪達がいた

通信用の機材や書類なども並べられたそれはまさに司令室のようだった

「ここ、通信機置いといて。そっちの方連絡ついた?!」

彼らをまとめているのは幻想郷治安維持隊の開発部門の長にして機械のスペシャリスト、河城にとりだった

妖精メイドや天狗たちが忙しなく動く中、離れた一室に数人の影が

そこにいたのはレミリアをはじめ紫、永琳、幽々子、飯綱丸などの有力者達だった

さらにそこに混じるように凱も話を聞いていた

「現状は?」

「幻想郷の上空と地底、魔界の地獄門の付近に各一体。見たかんじ、以前魔界に現れたカラミティと同じね」

紫が状況を報告する

「あれが三体ともなると骨が折れそうね」

「そうね〜」

永琳と幽々子も話に加わる

「現在、上空のやつは文たちに任せているが、討伐は難しいだろうな」

『……』

全員が沈黙する

その場にいる全員がカラミティのことを知っていた。それ故に対処に困っていた

「俺らが出れば解決すんだろ?」

凱が声を上げる

「…だが」

「確かに相手は強敵かもしれないな」

飯綱丸が喋ろうとするのを抑え、凱は言葉を紡ぐ

「だが、その程度の理由で俺らが出ない理由にはならない」

「……そうね。任せられる?」

「紫!?」

「彼ら以外に、対処は不可能よ」

「……」

「心配すんな。必ず全員で戻ってくるからよ」

心配する飯綱丸に声をかける

「……必ずだぞ」

「ああ」

 

 

 

部屋を出ると、そこには見慣れた面子がいた

「どうなんだ、凱」

「………あんま良くねえ」

「どういう状況なの?」

霊夢が聞いてくるので答える

「魔界に出たカラミティと同格、あるいはそれ以上のやつが三体出現してる」

『?!』

その場にいた全員が息を呑む

「場所は…?」

「上空、地底、そして魔界側の地獄門」

「なるほどね」

 

少しの沈黙

 

そして

 

 

 

「それで、どう戦うの?」

「霊夢…」

「あんた、まさかここにいる全員が逃げ出すとでも思ってるの?」

「私らが逃げ出すなんてありえないんだぜ!」

霊夢と魔理沙が言う

「そうですよ!私たちだって戦います!」

「お師匠様たちが頑張っているのに見てるだけなんて嫌です!」

妖夢と鈴仙の言葉

「お姉さまが頑張ってるんだもん。私だってやるよ」

「お嬢様や妹様にだけ任せてはいられませんわ」

フランに咲夜も

彼女の後ろにはパチュリーや美鈴、小悪魔もいる

「アタイだっているぞ!」「が、頑張ります!」

チルノに大妖精

「私たちはメモリはないが、サポートはできるぞ」

慧音の言葉に妹紅も頷く

「そういうことだ。んで、お前はどうするんだ?」

「私たちはいつでもOKよ」

護と幽香

早苗やアリス、その他の面々も俺の方を見ている

「……わかったよ」

俺は前を向く

「いいか、今回の相手は俺たちの実力よりも遥かに上の力を持ってる!

だが、それが俺たちの『戦わなくていい理由』にはならない!

最後まで諦めずに、全力を尽くせ!

仲間を頼り、確実に全員が生存する方法を探せ!

『死んでもいい』なんて考えは捨てろ!いいな!」

凱の言葉が全員の気を引き締める

「行くぞ!お前ら!」

『おおー!』

 

のちにこの幻想郷で語られる大戦の内の一つ、『三界戦争』の幕開けである

 

 

 

 

続く

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
次回からついに戦闘が始まります!
今後、どのような戦いになるのか
気長に待っていてもらえたら幸いです

それではまた次回お会いしましょう!




コメントや感想待ってます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第51話 戦いの幕開け/月と戦と…

どうも、フォーウルムです!
今回は……とある方に言われてたので作者がちょこっと出るのと
幻想郷に現れた2体の魔物、そして姫乃と新しいメモリ






そして、迷い込んだ少女のお話です




 

 

「支援、感謝する」

「んーいいよー」

Olympusの亡元は目の前の男と会談していた

しかし男の顔を見ることはできない

「………」

「どしたの?」

「いや、素顔が見えないというのはこうも違和感があるものなのか、と思ってな」

男の頭にはフルフェイスのヘルメットが被せられている

「これね。君たちに素顔がバレるとまずいんだ」

「まあ、いいが。それでこれが例の」

「うん、彼らなら適正あると思うんだよね」

「感謝するよ」

そこにあるのは六枚の書類

内容はOlympusの新幹部のデータだった

「じゃあ、私はこれで」

「その前にもう一個だけ」

「?」

そう言って見せられたのは2人の男女の写真

「これは?」

「新しい凱のお仲間。今頃魔界の方にでもいるんじゃないかな?」

「なるほど」

「彼らは味方だから、間違えないでね」

「了解した」

 

 

亡元がいなくなった後、男はヘルメットを外す

「関すぎると、世界に影響が出てしまうからね」

彼はこの世界の住人ではない

この世界を創り続ける(描き続ける)。それが彼の役目

「見せてくれ。この世界(小説)で広がる、君たちの世界を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー戦いの幕開けーー

 

 

 

 

 

「よし、確認するぞ」

凱は霊夢達を集めていた

「俺、霊夢、魔理沙、咲夜、フラン、レミリア、妖夢、鈴仙、チルノ、大妖精で上空の奴を、護、早苗、幽香、パチュリー、美鈴、椛華は地底に行ってさとり達と合流、地底の奴を倒してくれ」

「任せろ!紫、頼む」

「了解よ」

紫が開けたスキマを護達は通っていく

 

彼らが通り終わったのを確認して、凱は霊夢達とにとりのもとに行く

 

 

紅魔館 ホール(緊急本部)

 

 

「にとり!」

「ん?ああよく来たね盟友」

凱を見たにとりは手招きをする

「状況は?」

「それが…連絡が取れないんだ」

「何?」

「通信機は壊れてないから出来るはずなんだけど」

そう言ってにとりは首を傾げる

「現地で確認だな。霊夢、レミリア!」

凱は二人に声をかける

「二人は文のところへ。何か異常があるかもしれないから気をつけて」

「わかったわ」「任せろ」

そう言って二人は外へ行く

「ナイトメア!」

凱に呼ばれて現れたのは鎧を身に纏った騎士だった

「お前も行け。容赦はしなくていいが、巻き込むなよ?」

凱の言葉に頷き、ナイトメアも出撃する

(一体……何が相手なんだ?)

 

 

 

 

幻想郷 上空

 

 

「各機、対象の行動に気を付けて攻撃!」

『了解!』

空中に出現した敵に攻撃を仕掛けているのは治安維持隊の航空部隊だ

指揮を執っているのは射命丸文だ

(相手の動きが読めない以上、牽制しつつ戦う方が懸命)

文の指示で目の前の敵に仕掛ける航空部隊

彼らは全員で六名おり、全員が優れた飛行技術と射撃技術を兼ね備えている

使っているのは《ジェット》メモリだ

「駄目です!損傷なし!」

結晶のような形をした敵には傷一つ付かない

すると

「Himwndwncowmugwxsunckwnwxbjo」

「!?」

敵が謎の音を発し、()()()()()

その破片はそれぞれでくっつき合い、小型の結晶がいくつかと本体と思われる中くらいの結晶が出現した

「何?敵の攻撃?」

「文さん!あれ!」

「え?」

部隊の1人が指し示したのは

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「!? 何なの?」

「わかりません、しかし奴の攻撃であることは変わりないかもしれません」

「通信機も使えない…一体何が?」

キン…………キン

「ん?」

「どうしました?文さん」

「いえ何か音が」

「音?」

キン……キン……キン

「ほら、また」

「本当だ……一体何処から」

キン……キン……キン……キン…

「この音……まさか…」

文は耳を澄ます

音の発生源は……

 

 

敵の結晶からだった

 

 

 

 

「!! 全員散開!可能な限り距離を取りなさい!」

『!?』

文の警告を聞いた全員が全速力で距離をとる

その時

 

ギィンッッッッ

 

 

辺りの空気を震わせる程の音が響き渡る

「ぅ……あ………?」

全員が吹き飛ばされる

それぞれが各自で体勢を立て直す

「全員無事ですか?」

文の呼び掛けに全員が応答し安否を確認した

そこへ

「文!」

「鈴夢さん!それにレミリアさんまで!」

「どうやら手こずってるようだな」

「ええ、あれなんですが」

そう言って文は敵を指し示す

「なるほど、とりあえず凱に連絡を……ん?」

そこで霊夢は違和感に気づく

先ほどまで使えた通信機がうんともすんとも言わない

「……おかしいわね」

そう言いながら数メートル距離をとる

「れ………霊……聞こえる?霊夢!」

「聞こえるようになったわ、どうしたのにとり?」

慌てるにとりの声に耳を傾ける

「さっきまで霊夢達の反応があったのに()()()()()()()()びっくりしたんだ。そっちは大丈夫なのかい?」

「え?」

霊夢は首をかしげる

そしてとある事に気がついた

「まさか」

霊夢は少し前に出る

その瞬間に通信機からは雑音しか聞こえなくなる

そして離れると

「霊夢!また反応が消えた!どうなってるの?」

「……なるほどね」

霊夢は1人で納得していた

(電波に干渉するメモリか。厄介ね)

 

 

 

 

地底 地霊殿

 

 

 

 

 

 

「現状は?」

「あれが厄介すぎます」

地霊殿で護とさとりは会話していた

「近付くだけで凍りつくって中々だな」

「ええ、どうしようもなくて困っています」

護は首を傾げる

そこへやってきたのは

「どうしたの、護」

「パチュリーか。いや外にいる奴の正体がわからなくってな」

「ふーん、じゃあ聞いてみましょ」

「誰に?」

「ワード」

パチュリーに呼ばれて浮かび上がったのは彼女が手に持つ一冊の本だった

「ワード?メモリじゃ無いのか?」

「ここでは本になってもらってるの」

「呼んだか、パチュリー」

「これわかる?」

そう言って見せたのは二枚の写真

一枚は幻想郷の上空の、もう一枚は地底に現れた怪物のものだった

「……知っている。コイツらは数日前に奪われたやつらだ」

「! なんて名前だ?」

護の問いに一拍置いてワードは告げる

「《ウェーブ》と《コキュートス》だ」

 

 

 

 

 

ーー月と戦と…ーー

 

 

 

「これで満足かしら?」

「おうよ!やっぱいいな、本気で殺り合えるって!」

姫乃がいるのは荒野

彼女は試練という名のお遊びに付き合わされていた

「試練は合格でいいのよね?」

姫乃は上を見上げる

そこにいるのは試練の相手である巨大な漆黒の戦闘空母だった

全長300Mを越えるであろう空母からはハイテンションな男の声が響く

「もちろんだ!お前とならまだまだ楽しめそうだ!」

そう言うと空母は光に包まれ、地面に向かって降下する

着地すると光は消え、そこには男性が立っていた

「メモリじゃないのね」

「まあな、俺は《ウォーズ》! お前は?」

「私は姫乃禍月よ。よろしくね」

「姫乃な。……随分と物騒な姫様だ事」

「何ですって?!」

ウォーズの言葉に激昂する姫乃

そんな中、二人は元の場所に戻される

「それで、どうやって戻るの?」

「俺に聞くなよ。………?」

不意に首を傾げ、なにかを見つめる

「あれ?どうしたの?」

「いや、あんな奴居たっけな、と思ってな」

彼女が見ている先を姫乃も見る

「え……?誰…?」

そこに居たのは

いや、倒れていたのは

 

 

 

桜色の髪を持つ、1人の少女だった

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
次回は謎の少女のお話と、名前が発覚した《ウェーブ》と《コキュートス》との戦いです!

お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第52話 桜との邂逅

どうも、フォーウルムです!
今回からコラボ回です!


 

 

 

 

 

霊夢達が上空で戦ってる頃

地上では……

 

 

 

「凱さん、これは?」

妖夢が指を指しているのはトラップメモリのマップだった

所々に赤く点滅する地点がある

「おそらく魔製生物(マジェスト)だな」

そう言って凱は地図を指し示す

「咲夜、フラン、妖夢に鈴仙はコイツらの討伐に向かってくれ。人里に被害を出すわけにはいかない」

『了解!』

凱からの指示を受けた四人はそれぞれ人里に向かう

「凱!アタイ達は?」

「私たちに出来ることはありませんか?」

そう言ってきたのはチルノと大妖精だった

「そうだな、二人も向かってくれ。多い方が戦いやすいだろう」

「わかった!」「わかりました!」

二人は一緒になって人里に向かって飛んでいく

(早く戻ってきてくれ、姫乃)

そんな彼女らを見ながら、凱はそう思うのであった

 

 

 

 

ーー桜との邂逅ーー

 

 

 

「う……ここは?」

桜色の髪をした少女は目覚める

そこは真っ白い空間で、近くには二人の男女がいる

「あ、起きた」

「ほんとだ」

「…!」

見たこともない人間を前に、少女は後ずさる

「あ、ごめんなさい。驚かせるつもりはなかったの」

そう言って姫乃は落ち着いた声で話す

「…あなた達は」

警戒する彼女は拳銃を構える

「お?殺るのか?」

桜の拳銃を見たウォーズは笑顔を浮かべる

すると、背後に何本もの砲台が出現する

「…雪華様、ごめんなさい」

そう呟き、敢えてウォーズに掠るように発砲した

「!」

「つまんねえな」

掠る距離の銃弾を体をずらし、敢えて受ける

「見た目通り、堅いのね…」

彼女はウォーズを倒す気などさらさら無い。敵の全貌を知り、彼へと伝えるため、情報収集に勤める

「おいおい、狙うんならもっと心臓狙えよ。じゃねえと、死ぬぜ?」

「ウォーズ!」

流石に度が過ぎると感じた姫乃が忠告する

「でもよぉ」

「そんなことするなら、戦闘では一回も使わないから」

「な?! わかった、やめるからそれは勘弁してくれ!」

姫乃の言葉にウォーズは狼狽え、謝罪する

「悪かったな、嬢ちゃん」

「…いいえ」

拳銃をしまったものの、まだ警戒は解かない

「それにしても、こんなところに私たちに以外の人間って居るものなの?」

「んな訳あるか。どうせメモリが目当てなんだろ」

姫乃の言葉にウォーズも考える

彼女達は全く警戒していない

「メモリ?何のこと?」

彼女は本当に知らないようだ

「え、メモリのこと知らないの?」

「おい、おいおいおい!」

その子の言葉にウォーズは明らかに慌てた声を出す

「メモリ持ってないのか!?」

「そんなもの、持ってないわ」

肩を竦める。しかし、指先は震えていた。

「彼女、怖がってるわよ」

「あ、わりぃ」

姫乃はそう言ってウォーズを彼女から遠ざける

「それより、何か問題でもあるの?」

「何かなんてレベルじゃねえよ!急いでここから……間に合わなかったか」

「え?」

姫乃が首を傾げた瞬間

 

白かった部屋が赤く染まる

桜「きゃ…!」

耳を塞ぎ、来るであろう何かに備える。

姫乃「何なの!」

《メモリ未所持者を確認 排除プロセスを開始》

「これは…!」

「ワードの野郎が入れたセキュリティだよ。この前の組織連中が来て以来、未所持のやつを発見次第ぶち殺しに来ることになってる」

「でも彼女は!」

姫乃は少女を見る

彼女は確実に組織の人間ではない

「仕方ねえ、なんとかするぞ」

「そうね……貴女、名前は?」

「私は、霜月 桜」

「桜ちゃんね。私は姫乃禍月、こっちはウォーズよ」

「よろしくな、桜嬢ちゃん」

姫乃は桜を抱き寄せ、アタッシュケースの形態のパンドラを方に担ぐ。

するとそれは巨大なランチャーに変形する

「俺は一旦メモリになるぞ」

「ええ」

そう言ってウォーズはメモリになり、姫乃のポケットに入る

「姫乃さんにウォーズさん…、ご迷惑をお掛けします……」

「気にしないの」

辺りの空間が歪み、白い色をした騎士たちが現れる

「そこっ!」

そう言って身軽に横へと回り込み、脆いであろう駆動系を寸分の狂いなく発砲する。

駆動系が破壊された騎士は膝をつくが、すぐに再生し、立ち上がる

「嘘…!」

再生したことに驚き、一瞬足が止まる。

「なるほど、ちょこっとした攻撃じゃ駄目ね。桜ちゃん、私にしっかりと掴まっててね」

そう言うと姫乃はランチャー形態のパンドラをアタッシュケースに戻し、空中に放り投げる

「は、はい!」

騎士達の駆動系を撃ち抜き、時間を稼ぎつつ姫乃のもとへ向かう。

「離しちゃ駄目だからね?」

宙に浮くアタッシュケースは形を変え、巨大な刃を持った手裏剣のような形になる

「はぇ…!?」

その物理法則を無視したような光景に、彼女の端正な顔が驚きに染まる。

「さあ、行くわよパンドラ。魔物じゃないけど充分よね?」

姫乃はパンドラを投げる

投げ出されたパンドラは目にも止まらぬ速さで回転し、辺りの騎士たちを刻んでいく

刻まれた騎士たちは自己回復し、また立ち上がろうとする

 

彼女による殲滅はまだ終わらない

 

 

 

 

続く

 

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
前回から登場してたのはくらんもちさんの所のメインヒロインの桜でした
次回以降も続きます!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第53話 波と堕天使

どうも、フォーウルムです!
今回はウェーブ戦決着になります!


 

 

 

 

「相手は光や音、電波に干渉できるわ」

「ならば、直接叩けばいいんだな?」

霊夢はレミリアと文に説明をしている

「そういうことよ。準備はいい?」

「ええ!」「ああ、まかせろ!」

霊夢の指示でレミリアと文が戦闘を開始する

相変わらずウェーブは周りに結晶を浮遊させている

「一気に決めるわ!」

霊夢がセイクリッドをマキシマムに挿し込む

《セイクリッド マキシマムドライブ!》

霊夢の両手から光の波動が発せられウェーブの周りの結晶を弾く

「fgruyghfjkmnvjfbwrgyouqliahjfgybowelquahbj」

その瞬間にウェーブから高周波の音波砲が放たれる

「その程度、私が貫く!」

レミリアがオーディンをマキシマムに挿す

《オーディン マキシマムドライブ!》

グングニルが赤い光に包まれる

レミリアはそれを音波砲に向かって飛ばす

グングニルと音波砲の威力は互いを相殺し合う

その隙をついて文が前に出る

「これで決めます!」

文はオーバーヒートでマキシマムを決める

《オーバーヒート マキシマムドライブ!》

体から炎が噴き出しそれは剣に収束していく

「はああぁぁぁぁぁ!!!」

文はそれを構え、ウェーブに突撃する

 

 

そして

 

 

剣を振り切った

 

 

「fhhfhaews!UYgiuhgbvuyghU!GVYUGughuyigG!YUFgu」

しかし、ウェーブは未だに残っている

「そんな?!」

「まだ足りないの?!」

 

そこへ

 

「よくやった、あとは任せろ」

漆黒の天使が舞い降りる

 

 

 

 

「ウェーブ。波、音や光を操るメモリか」

ウェーブは先ほどよりも大量の音波砲をばら撒く

それを凱は全て紙一重で避けていく

「初見でも避け切れる。単調だな」

回避し切り、メモリをマキシマムに挿し込む

スロットは『S』に合わせているため近接特化になったルシフェルの本気の一撃がウェーブに向かう

《ルシフェル ソードアクション!》

「切り刻んでやる!」

紫電を纏った剣が何本も出現しウェーブを切り裂く

「______________!!!」

無音の悲鳴が響き渡る

「これで終わりだ」

最後の一撃が決まり、ウェーブの体が崩れていき、メモリだけが残る

「回収完了っと」

凱はメモリを手に取る

「お疲れ様」

「相変わらず異常な戦闘センスだな」

「さすがですね!」

霊夢、レミリア、文から声をかけられる

「お疲れ、三人とも。紅魔館に戻って休んでいてくれ」

「あんたはどうすんのよ?」

「俺は、ちょっと店の方に戻るよ」

「そう、気をつけなさいね」

「ああ」

霊夢たちに別れを告げ、店に向かって飛ぶ

 

 

 

 

少し飛ぶとすぐに店が見えてくる

近くに降りると、そこにはうずくまる姫乃と桜色の髪の少女

そして2人を囲う二体の魔物がいた

「……魔物に、組織のやつか?」

凱はリベリオンを取り出し、彼女らに近づく

「ったく、なにかと思えば」

 

さあ、延長戦の始まりだ

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
少し短いですが今回はここまで。
次回以降もコラボは続きますのでお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第54話 帰還/早とちり

今回は前回のラストからの繋ぎになります


 

 

ーー帰還ーー

 

 

 

 

「数が減ってきたわね」

パンドラで粗方騎士達を蹴散らし、再び変形させる

今度はガトリングの形になる

そのまま弾をばらまき一掃する

「す、すごい…、貴女達は、一体…」

「大したことじゃ無いわ。上には上がいるのよ?」

弾を撃ち尽くした姫乃はパンドラをアタッシュケースに戻す

「で、でも、雪華様なら…!」

「さっきも言ってたけれど、お知り合い?」

姫乃は首を傾げる

「え、えっと、私の、旦那さん、かな…」

赤くなりながら小さく言う。

「……そうなのね。羨ましいわ」

「え?」

何か分からず、首を傾げる。

「私にもいるのよ、好きな人が」

そう言いながら姫乃は歩き出す

「…ふふっ、頑張って」

穏やかに微笑んで付いていく

「…すごい大変だけどね」

姫乃は少し、俯き気味になりながら歩き続ける

すると、姫乃達が遺跡に来るときと同じゲートが現れる

「行きましょ。彼の所に」

 

 

 

 

 

ゲートの先はFDLの前だった

「これは…、お店?」

「そうよ、彼のお店。……名前は『Fallener don't laugh』」

「…『堕落者は笑わない』、かぁ」

なんともな名前だと苦笑する

「会えばわかるわよ」

そう言いながらドアノブに手を掛け回すが、扉は開かない

「あれ?おかしいわね」

何度やっても開かない

「…壊してもいいなら入れるよ?」

「そうね…それも………危ない!」

姫乃は桜の肩を掴み飛びずさる

彼女達が立っていたところには、火を纏った車輪を持つ人形が現れた

背丈は優に2メートルを越えている

「きゃあ!な、なに!?」

人形に驚き、目を見開く。

魔製生物(マジェスト)、なぜこんなところに?」

「な、何なの、それ…」

聞きつつも、桜は既に発砲している。

炎の人形は軽々とよける

「人間と妖怪そのどちらでもない、言うなれば魔物よ」

姫乃はそう言ってパンドラを展開させようとする

しかし

『ギシャアアアァァ!!』

「何、この音…!」

「な!?しまった!」

後ろからもう一体の魔物が現れ体には雷を纏っている

「体が……痺れて…」

姫乃は雷の魔物に触れられたせいでパンドラを持つことが出来ない

それをみた2体の魔物は徐々に距離を詰めてくる

「これ、もしかしなくてもマズイよね…。姫乃ちゃん!どうすれば…」

今、姫乃はパンドラが使えない。だが、私では奴らを倒せない。

その時だった

「ったく、なにかと思えば」

その声に振り向くと、1人の男が立っていた

「誰…!?」

彼女は、姫乃を守るように立ち塞がる。

「ん?誰だお前、姫乃の知り合いか?」

首を傾げる凱に2体の魔物が飛び掛かる

「危ない!」

あの人は強い。だが、少しでも援護をしなければ。そう思い、拳銃を構えた。が。

すでにそこに男は居なかった

「え…?」

「フェティッシュにブリッツ。懐かしいのがいるな」

男は桜と姫乃の後ろに移動していた

「…!」

姫乃を知っているから、敵ではないだろう。だが、文字通り目にも止まらない速さで移動している。

「凱……君」

姫乃は掠れた声を出す

「姫乃、試練を終えたか。頑張ったな」

そう言って凱は姫乃の頭を撫でる

姫乃は目に涙をためながら凱を見つめている

「……」

桜は穏やかに2人を見る。

「…お願いできますか」

名も知らぬ彼に、頼む。

「ああ、任せろ。少し下がってるんだな」

そう言って凱は立ち上がり何もないところから剣を取り出す。それは骸骨のエンブレムが彫られた、かなりの大きさの剣だった

「……ククク、楽しみだなぁ」

凱の口から笑みが溢れる

しかし、それには殺意が籠っており、彼の全身からも殺意が滲み出ている

「リベリオン、だったかな…」

友人が好きなゲームにそんな剣が出てきたはずだ。彼が持っている剣はそれに酷似していた。

それにしても…

(何、この殺気…!)

「ギシャアァァ!」

ブリッツが飛び掛かる

「遅せぇよ、雑魚が」

一秒も無い一瞬

ブリッツは両断され、消滅する

「グゴォ!」

フェティッシュは狙いを変え、桜に襲い掛かる

「このっ!」

肉薄してゼロ距離で撃つ!

しかし、弾丸はフェティッシュに当たる前に溶ける

「熱っ…、まさか、効かないなんて…!」

「おい、何してやがる」

凱が右腕を伸ばす

そこから現れたのは巨大な悪魔のような腕だった

「…!?」

その腕に驚きつつも後退する。

腕はフェティッシュを掴む

「テメェの相手は……俺だ」

フェティッシュを引き寄せ地面に叩きつける

叩き付けられたフェティッシュは起き上がろうとする

しかし

「消し飛べ」

スティンガーを放った凱によって跡形もなく、文字通り消し飛んだ

「凄い…!」

『彼』にも劣らぬ、強大な力。

「これでいいか。さて」

凱は剣を

 

桜に向けた

 

 

 

 

ーー早とちりーー

 

 

 

 

「…!」

身構える。到底敵わない。そして、飛び退く。ここでは姫乃に被害が起きる。それは何としても避けたい。

「馬鹿な奴だ」

凱はデビルブリンガーを伸ばし、桜の首を掴み、引き寄せる

その力は強く、桜の首を締め上げる

「ぐ…!」

息が詰まる。無意識にその手を外そうともがく。

「人間程度じゃ振りほどくことは出来ない。答えろ」

凱はリベリオンを持つ手に力を込める

「お前は、組織の人間か?」

「何、を…」

答える気はあるようだ。

「時間がないんだ……いや、こっちが早いか」

桜を掴んでいた手を離し、ドライバーを取り出す

「変身」

メモリを挿す

《ルシフェル》

変身し、背中に八枚の羽を持つ堕天使のような騎士の姿になる

「げほっ、げほっ…!」

「もう一度聞く。お前は、組織の人間か?」

「そ、しき、なんて、しら、ない…」

「知らない…だと?」

「知らない…、私は、いつの間にか遺跡みたいな所にいて、そこで姫乃ちゃんに会った」

「いつの間にか?なら、メモリを知っているか?」

ルシフェルの自白効果を桜に使用する

「知らない」

「そうか。お前はこの幻想郷の住人か?」

「分からない。だけど、『ここでは無い幻想郷』に住んでいる」

「…そうか」

凱は変身を解く

「はぁ、はぁ…」

桜は首を押さえている。

「……やっちまったなぁ」

凱は頭を抱える

「初対面の相手の女の子をバリバリに脅した挙げ句に首を締め上げるとか、やりすぎにも程があるだろ!あああーもう!」

「……?」

(もしかして、この人、そんなに悪い人じゃない…?)

「……あー、ちょっといいか?」

「何、でしょうか…?」

「いや、ここじゃ話もあれだから、移動しないか?みんなもそこにいるし」

「はい、分かり、ました…」

そう言って凱は姫乃を抱え、桜と共に紅魔館に向かうのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

次回は地底編になります!
お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第55話 氷獄の獣/もう一人の乱入者

どうも、フォーウルムです
思ったより長くなっている六章
もうしばらく続きます


 

ーー氷獄の獣ーー

 

 

 

 

「準備はいいな?」

「ええ」「いけるわ」

護、幽香、そしてパチュリーはそれぞれ変身し冷気の中心部に向かっていた

敵の正体が《コキュートス》であると判明し、俺たちは作戦を考えた

敵は冷気で体を守っている

ならそれを破って一気に倒してしまおうというものだった

エクストラの《ワード》や《カラミティ》を同時に使うと何が起きるかわからなかったので、今回は二人に《アブソリューター》と《グリモワール》を使ってもらっている

椛達には町の方の対処を任せてある

 

 

 

「着いた」

「さすが、中心部なだけあって寒いわね」

冷気の中心部には繭のようなものが

「あれが、コキュートス」

「早く倒しましょう」

パチュリーがそう言いながら魔導書を使用した瞬間だった

ピキ、ピキピキピキピキ

「あ?」「え?」「嘘!?」

繭にヒビが入り、中から氷を纏った獣が現れた

「グゴォォォ!」

獣の咆哮には今まで以上の冷気が備わっていた

護は壁際まで吹き飛ばされ凍りつき、パチュリーたちは凍りはしなかったものの寒さで体が動かなくなってしまった

 

 

「幽香!パチュリー!」

「く…体が…」「寒……い」

辺りを凍てつかせる冷気が三人を襲う

「くそ、くそぉ!」

手を伸ばそうとしても、どんなに足掻いても、氷は砕けない

「動け、動けぇぇぇぇ!」

コキュートスが鋭い爪を持つ腕を幽香に向かって振り下ろす

「やめろ、やめろおぉぉ!!」

その時だった

桜色の閃光が走り、コキュートスが仰け反る。

そして、その先には1人の少年。

「霜月 雪華、参上した!お待たせ、母さん…じゃなかった。僕は、この幻想郷の危機に、異世界より馳せ参じた。手伝うよ」

「い……せか…い?」

幽香は困惑していた

「おいアンタ!」

護は少年に呼び掛ける

「俺の氷砕いてくれるか?」

「ああ、いいぜ」

そう言うと、炎魔法を放ち、氷を一瞬で融かす。

「サンキュー、こっからは俺のターンだ!」

そう言って護はメモリをドライバーに挿す

《ドラゴン》

「う……ウオオオォォォォォ!!」

護はドラゴンメモリを使い、変身し辺りに炎を撒き散らす

「援護するぞ!」

彼はなんとスキマを作りだし、そこへ炎魔法を撃ち込む。それはコキュートスのもとへと転送され、奴にダメージを与える

「いいじゃねえか、俺もぶちこむぜ!」

護は周囲に九つの色の違う光の珠を作り出しコキュートスにぶつけた

その衝撃で辺りの凍てつくフィールドは消え去った

「グガア!」

コキュートスの体勢が崩れる

「アンタ!少し下がってろ!」

護は変身を解き、体勢を低く構える

「そこまでやわじゃねーよ!

恋符……!」

「いや違ぇ!生身じゃ帰ってこれねえぞ!」

護は閻魔刀に力を込める

それだけで辺りの雰囲気がガラリと変わる

「そういうことかよ。なら退かせてもらうよ!」

そして彼は飛び退く。

彼が飛び退き、パチュリー達を巻き込まない範囲を確認し、放つ

「刻んでやる!『絶・次元斬』!」

辺りを斬激がまう

その軌跡は時空の裂け目となり、辺りを巻き込み、刻む

「グガアアァ!」

コキュートスは全身を刻まれ消滅し、その場にメモリが残った

 

 

 

 

ーーもう一人の乱入者ーー

 

 

 

 

「出鱈目な威力だな…」

「ん?生きてたか」

「生きてるよ」

雪華はジト目になる。

「何はともあれ、助かったぜ。サンキューな」

「おう。ところで、桜色の髪の女性、見てないか?」

「桜色?さとりか?」

「いや、違う。ここじゃないのか…」

「他に居るか? っと失礼」

護の持つ通信機が鳴る

「おう、こっちは終わったぜ」

相手は五十嵐凱だ

『こっちもだ、ところでそっちに雪華って名前の奴は居るか?』

「雪華ぁ?いや、知らねえが」

「いや僕だよ」

思わず半眼になる

「あ、まじ?」

護は少々申し訳なさそうにする

「代わってくれ」

通信機を貸してくれ、と手を出す。

「いや、こうした方が早い」

そう言って通信機をスピーカーモードにする

「霜月 雪華だ。僕に何か?」

『雪華、君を探している少女がこちらにいるんだが、心当たりは?』

「何?もしかして、桜色の髪をした女性じゃないか?」

『ビンゴ、だな。直ぐに来てくれ。』

「よし、俺も戻r」

『お前は魔界に行け』

「えー」

『幽香達は向かったぞ』

「まじか!」

あたりを見回すと既に彼女たちはいなくなっていた

「何処だ?場所が分からないことには…」

雪華は場所を聞こうとする

『大丈夫、直ぐに分かる』

その瞬間、二人の背後になにかが着陸する

「何だ?」

そこにいたのは、背中に羽を生やし、鎧を纏った騎士の姿の何かだった

「ああ、うん。そう言うことか」

護はどこか納得する

「おいアンタ」

「何だよ?」と言いつつ雪銀(ゆきがね)を召喚する。

「音速の圧に耐えられたりする?」

「多分いける」

雪銀を構える。

「そうか、まあなんだ」

護は雪華から離れる

「生きてたら、また会おうな」

「は?何するつもり?」

その瞬間、騎士が雪華を捕らえ、音速を優に越える速度で飛び去った

「うおおおぉぉぉ?!」

「……頑張れよ」

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
次回は雪華と凱の初遭遇の回になります
お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第56話 雪と嵐/彼らのメモリ

どうも、フォーウルムです

今回は異様に長いです


 

 

 

 

ーー雪と嵐ーー

 

 

 

 

謎の鎧に音速で連れて行かれた先は紅魔館だった

「死ぬかと思った…」

「やあ、お前が雪華か?」

「ああ、そうだが」

館から男が現れる

「はじめまして、五十嵐凱だ。どうだった?音速の旅は」

「殺す気なんじゃないかと思ったよ」

ジト目で彼を見つめる。

「その程度では死なないだろう?半人半妖」

「…うるさい」

なぜ知っていると疑問に思うが、瑣末な問題だ。

「随分とまともそうじゃないか。彼女が惚れ込むのも納得だ」

「これでも悪酔いする霊夢達の相手をしてるんだ。自然とそうなる」

額を押さえてそう言った。

「君の世界でもそうなのか」

凱は溜め息を吐く

「ということはそっちでもか…」

こちらもため息を吐きながら彼についていく

「まあね、今じゃすっかり仲はいい。っと、ついたな」

凱は紅魔館の一室の前で立ち止まる

「失礼する」

入るとそこには、姫乃と桜がいた

 

 

「桜!」

にわかに顔が明るくなる。

「雪華様!」

私は、雪華様に抱きついた。雪華様も、優しい顔で私を抱き締め返す。

「無事で良かった…」

「無事…、ですかね?」

「どういうこと?」

「いや、えっと、その…」

凱を見る

「ああ、早とちりした俺が脅した挙げ句首を締め上げたな」

「凱君!」

姫乃ちゃんが怒鳴る

「…君、遭遇したばかりの女の人の首締め上げるとかどんな了見?」

まずい。雪華様は本気で怒ってる。

「悪いがこちらは戦争中でね。形振り構ってはいられないのさ」

「本当に、勘違いみたいなものですから!落ち着いてください!」

「…君がそう言うなら」

なんとか収めてくれたみたい。

「反省してる?」

「してる。だから怒んないでくれ」

姫乃に怒られ肩を竦める凱

「まあ、それは水に流そう。戦争中と言ったね?何が起こってるんだ?」

「その前に、色々話すことがある」

そう言って凱は二人にメモリやこの幻想郷のことを話した

「ふむ…、まさか、そんなことになってるとはね」

軽い口調だが、顔は真剣そのものだ。

「ああ、一応2体は倒したんだが、3体目がな」

「聞こう。どんな奴だ?」

「申し訳ないが、こちらでも把握できていない」

「そうなのか…、遭遇はしたのか?」

「そもそもで出現場所が幻想郷じゃねえんだ」

凱は腕を組んで考える

「情報が無い以上、こちらは下手に動けん。護達の情報待ちになる」

「なるほど。護とやらはさっきのあいつだな。あいつは大丈夫か?母…、幽香さんとパチュリーは安心できるが」

「アイツは大丈夫だ。なんなら俺は他のやつが心配だな」

「そうか。あいつはそんなに強かったのか。お前が言うなら安心できる」

「とりあえず、今は休むしかねえな。ん?すまんが席を外すぞ」

そう言って凱は部屋の外に出た

「ああ。了解した」

後に残されたのは雪華に桜、そして姫乃であった

 

 

「姫乃さん、だね?」

「ええ、はじめまして」

姫乃は微笑む

「貴方が雪華さんね。桜ちゃんから聞いてるわ」

「紫さんから聞いてる。桜を…、妻を、守ってくれてありがとう。感謝するよ」

そう言って、頭を下げた。

「いいのよ、気にしないで」

姫乃はそう言って顔を上げさせた

「貴方達は、別世界の幻想郷出身なの?」

「そうなるね」

「そう、羨ましいわ」

彼女はそう言いながら紫の瞳で二人を見つめる

「羨ましい、のかい?」

「私は、いや私たちはこの世界の外から来たの」

そう言いながら傍らにあるパンドラを見つめる

「パンドラと一緒に、この世界に来た。彼を追ってね」

「なるほどねぇ」

「今でも考えるの。彼がこの世界の生まれなら、私たちが最初から彼と幻想郷に居られたら、ってね」

「そうすれば、彼を救えたかもしれないのに」

 

 

 

 

「私だって、同じだよ」

「え?」

「私だって、雪華様を追って幻想郷に来て、その時には雪華様は記憶を無くしてた」

「違う、違うの」

姫乃は横に顔を振る

その目からは涙が溢れる

「彼が傷を負ったのじは、あっちの、私達が生まれた世界なの。気づけなかった。彼の優しさに甘えて、彼の心の傷に気が付かなかったの」

「姫乃ちゃん…」

「僕も、同じようなものさ」

「……そう、なの?」

「ああ、僕だって、父さんを、戦争で亡くしてる」

「そう…だったの。お母さんは?」

「母さんは、今護と居るかな」

「え?お母さんと?」

姫乃は疑問符を頭に浮かべる

「まあ、いいわ。戦争が終わったら、凱君と話してあげて。貴方達なら、きっと」

姫乃はそこで言葉を一度きり、そして

「家族を失った辛さを知る貴方なら彼を助けられるはず」

「わかった。話してみるよ」

「お話中失礼」

入ってきたのは凱だった

「凱。どうした?」

「ちょっとな。姫乃、復帰して早々で悪いが人里のマジェスト狩りに行ってくれ」

「わかったわ」

「気を付けろよ」

「ええ」

そう言って姫乃は部屋の外へ行ってしまった

「どうだ?護からの情報は来た?」

「ああ、大まかな正体も判明した」

「教えてくれるか?」

彼は首を傾げた。白銀の髪が揺れる。

「……駄目だ」

凱は首を横に振る

「なぜだ?僕だって戦える」

「そういう問題じゃない。相手はそんじょそこらの妖怪とは訳が違う」

「…とりあえず聞くだけ聞かせてくれ。ヤバそうなら手を引く」

「相手の名前は『サクリファイス』。攻撃手段が今でも判明していないが、少なくとも生身でやり合える奴ではない」

「それでも、ただ見ているだけなんてできない!」

「………」

凱はあの日を思い出してしまっていた

 

家族を失った、あの恐怖を

 

そのせいか、彼の顔は青ざめかけている

「大体のことは、姫乃さんから聞いている。だからこそ言おう。思い上がるな。1人にできることなんて限られている。全てを背負おうとするな」

「…お前に何がわかる?」

凱は声を振り絞る

「俺は、家族を失った。力が無かったゆえに守れず、誰一人救えなかった俺の気持ちの、何がわかる!!」

「僕だって、父親を喪ってるんだよ!!ああわかるとも!同じだったからな!だからこそ強くなって、『手の届く』全てを守ると誓った!!」

「いや、何もわかっちゃいない!」

凱はさらに怒鳴る

「家族は全員、味方であるはずの身内によって殺された!自分は弱く、誰かに助けを求めることも出来ない!」

凱は涙を流し、雪華の胸ぐらを掴む

「わかってくれ、君達を……君達に傷付いてほしくないんだ…!」

「だから、自分が傷つくってのか?とんだ美談だな」

嘲笑うかのように微笑む

「なんだと……!」

「言ったろ、誰だって限界がある。お前はそのラインが人よりほんの少しだけ高いだけ。もう一度言おう。思い上がるなよ」

鋭い眼差しで彼は言い放つ。

「………そうかよ」

凱は手を離す

「……相手は妖怪や化物を優に超える『神』に等しいやつだ」

部屋の出口に向かいつつ言い放つ

「俺が危険だと思ったら退いてもらう。構わないな?」

「ああそれでいい。もっとも、危険にはさせない。僕と君が居るんだ。出来ないとは言わせないぜ?」

「俺に付いてこれるか、楽しみにしてるぜ?」

凱は不敵に笑う

「そいつはこっちのセリフだな!」

雪華ニヤリと、だが信頼できる笑顔を作って言った。

 

 

 

 

ーー彼らのメモリーー

 

 

 

 

 

その日の夜

夜風を浴びに外に出ていた雪華は考え事をしていた

「どうした、悩み事か?」

そこへ凱がやってくる

「いや、生身で行くのが危険ならなんとかしなきゃだろ、と思ってな」

「なんだ、案外ちっぽけな悩みだな」

凱は鼻で笑う

「なら、君には考えがあるとでも?」

「まあ、考えがないこともない」

「教えてくれるか?」

「簡単な話さ」

凱は立ち上がる

「お前らもメモリを使えばいい」

「そういうのは、大抵適合が必要だろう?」

「ほう?知ってんのか。って、今日話したな」

凱はそう言いながら懐を探る

「お、あったあった」

彼が取り出したのは『C』のイニシャルのメモリだった

「『サイクロン』…、か?」

「そんな綺麗なもんじゃねえよ、これは『コックローチだ』」

「げ、ゴキブリかよ」

「コイツはドーパントどものメモリのなかでも流通が多いから簡単に手に入るんだよ」

「1匹見たら30匹ってか。本物と変わらないな…」

「まあな、本題はこっからよ」

凱は雪華の肩を掴む

「ふむ、水色か。案外珍しいな」

「…?」

何のことか分からず、首を傾げている。

「水色……あれ行けるか」

すると凱の手の中のメモリが粒子のように分解される

「へぇ…」

感心しきった様子でそれを見ている。

「よし。ほれ出来たぞ」

そう言って凱は手を開く

そこには水色のメモリが

イニシャルは『S』

「不思議と分かる。『スノー』だな?」

「御名答。さて、彼女のも作るか」

そう言って辺りを見回す

が、そこに桜は居なかった

「居ねえな。部屋か?」

「ああ、疲れたって言ってな。誰かさんが締め上げたせいで」

そう言って笑うが、目が笑っていない。

「……あれはすまなかったな」

凱はそう言う

なんとも思ってないような素振りだが、声のトーン落ちる

「いや、まあ…、事情聞けば疑っても仕方ない。だがやりすぎたな?」

「そうだな、まあ以前似たようなときは20人くらい殺したから、その時よりはましかもな」

「さすがにやりすぎだろう…、まあ、元兵士の僕が言えたことじゃないが」

思わず半眼になり苦笑する

「……あん時は制御が効かなかった」

凱は自身の右手を見る

「親父の仇を逃した上に、思い出したくもねえ事があったからな」

「まあ、それは置いといてだ。ドライバーが必要なんじゃないか?」

雪華は話を切り替える

「あー、直挿しは無理か」

「さすがに躊躇するな」

「安心しろ、駄目だったから」

そう言いながら凱は自身のベルトをつけ、メモリを挿す

《ヘファイストス》

「仮面ライダー….ではないのか」

「ああ、こっちでは《ガイアナイト》と呼ばれるんだ」

凱はそう言いつつ左腕から光を放つ

数秒後、その手には2本のドライバーが

「…凄いな」

雪華興味深そうに見ている。

「《ヘファイストス》は何でも作れっからな、ほれ」

そう言ってドライバーを渡す

すると

「凱君、何してるの?」

姫乃がやってきた

後ろには桜もいる

「姫乃さん、桜。丁度いいところに」

「何ですか?」

「……………はぁ?」

凱は桜を見ながら疑問の声をあげる

「どうした?」

「……いや、俺の眼にはソイツに適合するメモリの色が見えるんだが…」

「ピンクって何だよ」

「ふむふむ」

「わ、私が、何か?」

1人だけ話に付いて行けない桜だ。

「そんなに珍しいの?」

姫乃の言葉に凱は頷く

「みたことねえわ。まあ、物は試しだ」

凱は桜の肩を掴む

「ふぇ?」

いきなり掴まれたので驚く。

凱の手に光が集まるが、しばらくしてもメモリは出来上がらない

「……出来るかなぁ?」

「まあ、珍しいらしいしな。桜、もう少し待ってて」

「え?は、はい…?」

「待ってろ、直ぐに……お?」

光がやっと1つになりメモリが出来上がる

その色は赤が強めのピンクだった

「完成した。さてさて……あぁ?」

凱はメモリを見て再び疑問の声をあげる

イニシャルは『L』だ

「…なんだそりゃ?」

「…『リコリス』」

そう呟く。

「彼岸花か。あ、なるほどな」

凱はそこにはメモリを見て納得する

「確かに彼岸から連れ戻したからな」

「…あんなこと、二度としないでください」

「無茶しやがる。ほら、アンタのメモリだ」

そう言って凱は桜にリコリスを渡す

その時だった

偶然、雪華の指がスノーメモリのスイッチを押した

《スノー》

瞬間地面が凍りつく

「…これ、こんなに強いメモリなのか?」

地面を見て驚きながら呟く。

「いや、本来は押した程度じゃ何にもなんねえよ」

凱は周りを見る

「おそらく《過剰適合》だな」

「…マジか……」

心底驚愕したようだ。声が少し震えている。

「直で挿さなきゃ問題ねえよ」

凱は笑う

「明日の朝に魔界に行く。しっかり休んどけ」

「了解した。さて、行こうか」

「はいっ!」

2人は笑い合いながら自分達の部屋へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

今回は凱の葛藤などもあって長くなりました
次回はもう少し短い……予定です

それではまた次回、お会いしましょう


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第57話 いざ、魔界へ/サクリファイス

どうも、フォーウルムです

今回ついに魔界へ!
そしてこの章の最後の敵との戦いです


 

 

 

「全く、面倒この上ないな」

ヘルメットをかぶった男が溜め息を吐く

「凱君だけには任せてられないね。俺も行くかー」

彼はゲートを開く

()()()()()と約束したしね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーいざ、魔界へーー

 

 

 

 

 

 

魔界に行く当日

 

「どうだ、ぐっすり眠れたか?」

凱は2人に問う

「ああ、ぐっすりな」

「私も大丈夫です!」

「………ふーん」

凱は何か言いたそうに二人を見ている

「どうかしたか?」

「いや、なんでもない」

凱はそう言いながらメモリを取り出す

『V』のイニシャルが描かれているそれをベルトの補助スロットに差し込む

「じゃあ、行くか?」

彼らは準備万端のようだ。

「そうだな」

凱が指をならすと、辺りが一変し黒っぽい無重力の世界になる

「ここは?」

「ヴォイドの虚空世界だ。下手したら一生漂うことになるぜ」

凱はこの上ない笑顔で言い放つ

「まあ、半人半妖の二人なら行けるだろ」

「は?桜は純粋な人間だぞ?」

「え?いや、え?あんなに戦えるのに?フェティッシュの炎間近で受けてて無傷だったのに?」

「あー、それは…」

「単純に、服のおかげですね」

「便利だな。まあいいか」

そう言って凱だけはまるで重力があるかのように空中を歩き出す

「ほら、こっちだ」

「わっとと!」

「桜、掴まって」

彼は飛行能力を有しているらしく、何ともせずに飛ぶ。

「あ、待て。飛ぶのは少し危険だ」

そう言いながら凱は足場を作り出し二人を下ろす

「ああ、わかった。よっと」

「とと…」

「何で危ないかは今度教えてやる。えーと、たしか」

凱はそう言いながら辺りを見回す

「お、あったあった」

凱は宙に浮く石板を手に取る

「それは何ですか?」

「これか?これは」

そう言いながら凱はそれを砕く

「座標の道標さ」

瞬間辺りが再び変わり、今度は赤い土の地面の広い荒野になる

そして彼らからかなり離れたところに巨大な門があった

 

 

 

 

 

ーーサクリファイスーー

 

 

 

 

 

 

「着いたぞ」

「な、何これ…」

「すごいな。僕も初めて見る」

「ここが魔界だ。んで、あれが地獄門ってやつ」

そう言って凱は門を指さす

「俺らの目標はあそこにいる」

凱はそう言いながら歩き出した

「なるほどな。あれ、使った方がいいか?」

「いや、今使うな」

「分かった。『雪銀』」名を喚ぶと、手の内に白銀の剣が出現する。

「持つのはいいが抜刀はするなよ?っと、少し待ってろ」

凱は近くにいた二人の男女に向かって走りよる

片方は高身長の白と黒のツートンカラーの髪の男性

もう一人は金髪で可憐な美少女だが、背中にはおぞましい見た目の魔剣を背負っている

「へぇ…、あいつら、強いな。いつか手合わせ願いたいけど、そうも言ってられないね」

しばらくして凱が戻ってきた

「待たせたな」

彼の顔は困惑の表情を浮かべている

(この門越しでも分かるほどの、大きな闘気…、一筋縄じゃいかないな)

「面倒癖え」

凱は言う

「奴の半径200メートルに鉄壁の結界が張られてる。破るのは不可能に近い」

「任せてくれよ。こっちには神剣がある。闇を断ち、全てを斬る、最強の剣さ」

「阿呆」

凱は溜め息を吐く

「既に護の《ドラゴン》や幽香の《カラミティ》でやったが破れていない。それにリーナのスパーダで破れなかったから無理だ」

「へぇ…、そいつは、ますます試したくなってきた」

「すみません…」

「別に構わんが、死ぬぞ」

結界の正面まで歩く

「ほら、こうやって手で触れると……」

しかし、手は結界を貫通した

「あ?」

「ん?」

彼も透過した。

「どうやら、攻撃を遮断するためのものらしいな…」

彼は呟いた。

「いや、違うな」

凱は呟く

「あれ、違ったのか。じゃあ何なんだ?」

「おそらく…」

そう言って凱は桜に手招きをする

「何でしょう?」

「結界を越えられるか試してみろ」

「え?は、はい…、あ、あれ?入れないです」

「女性を通さない結界?…まあ、霊夢やら魔理沙は女性だから、自然か」

「それも違うな」

凱は桜に歩み寄る

「もしそうなら、護達が越えられないのはおかしいだろう?」

「…導かれてるってことか」

「………お前、察しが悪いって言われないか?」

凱は溜め息を吐く

「いや?あんまり」

その後ろで桜が頷いている。

「はぁ……思い出してみろ。今回の相手の名前を」

「サクリファイス…、『生贄』として選ばれたってことか?」

「おそらくな。力が強いやつを取り込もうって算段なんだろ」

凱はさらに言葉を紡ぐ

「今なら彼女は結界外にいるから安全だ。連れていこうとすれば、危険にさらすかもしれない。どうする?」

「桜。待っててくれ」

それを聞くや否や、そう言い放った。

「な、何故ですか!?」

「当然だ。僕は君に傷ついて欲しくない」

「…確かに、私は雪華様は勿論、凱さんや姫乃ちゃんにも敵いません。だけど、これでも少しくらいは…!」

「それで身代わりになって1度死んだのを忘れたのか?」

「ぐっ…」

「なら、待っていることだ。僕達が、終わらせてくる」

桜の目には、涙が溜まっていた。雪華は、敢えてそれを無視する。

「行くぞ、凱」

「……あー、言い忘れていたが」

「何だよ?」

怪訝そうに聞く。

「安全なのは『サクリファイス』の攻撃から守れるってだけな」

「桜が遭遇した魔製生物が来る可能性もあるってことか…」

雪華は考え込む。

「そういうこと。彼女を守りながら戦うか、置いて行って襲われるリスクをとるか、聞かなくてもお前ならわかるはずだ」

「…くそ。桜、前言撤回だ」

桜が顔をあげる。

「良かったな、桜ちゃん」

「はい!ありがとうございます!」

「…ただし、前衛に出るのはダメだ。それこそ本当に死ぬことになる。」

「…わかりました」

「なら良い」

「それで、結界はどうする?」

結界を越えられなければ彼女を連れてはいけない

「桜、変身してみてくれ」

「え?」

「ほら、この前ドライバー渡したろ?」

「は、はい!変身!」

《リコリス》

そして、リコリスガイアナイトへと変身した。

「これでどうだ?」

「あっ、通れます!」

「うっし。じゃあ行くか」

「ああ、行こう!」

数分後、地獄門にたどり着いた三人

そこにいたのは

あまりにもおぞましい見た目の怪物だった

怪物の見た目は羊や豚、牛が混ぜ合わさったかのような見た目で、体のあちこちには人の顔がいくつもついた柱が突き刺さっている

「な、なにこれ…」

「おぞましいな」

「ボスキャラだったらヴォイドの方がよかったな」

凱は首をならしながら剣を持つ

その時だった

 

「……ほしぃ………」

「欲しい…?」

雪華は、雪銀を構えながら聞き取った。

「…足りない……欲しい……」

凱達の目の前に黒い泥のようなものが飛び散る

「なんだこれ…?」

飛び退いて躱しながら、考える。

もしやこれは、今まで生贄となった者達の、怨嗟の声なのではないか。

「………寄越せ、寄越せぇぇ!!!」

サクリファイス・マジェステルダムから咆哮が迸り、泥がまるで触手のように襲いかかる

「くそっ!来るぞ、二人とも!」

凱は2人に警告を発する

「なら!」

スノーメモリを起動すると、泥が一瞬で凍りつく。だが、長くはもたないようだ。

「小癪なぁ!」

泥は氷を飲み込みさらに増大する

「くそっ、変身!」

《スノー》

雪華がスノーガイアナイトにが顕現する。彼の周りの全てが、永久凍土のごとく何重にも凍りつく。

「……まさか、いや、下がれ2人とも!」

凱が叫ぶ

「これはブラフだ!やつがやってたのは様子見。さらに広範囲から呑まれるぞ!」

「ちっ!」

「にしても、厄介すぎる」

「同意だ!なんなんだ、これ!」

「あー、クッソ!」

凱はリベリオンで凪払う

「このっ!」

雪華も、自身と桜に及ぶ泥を片っ端から凍らせていく。

しかし、一塊の泥が桜に直撃する

そして、彼女の頭に声が響く

『ははは、あはははは!』

「な、なに、これ……!!」

頭を抱えても、声は止まない。

その声は、幼さが残るものの、確かに凱の声であった

「これ、凱、さん…?」

「どうした、桜ちゃん?」

「今、凱さんの、声が」

「何故だ…?」

「……俺の、声?」

凱はサクリファイスに向き合う

「…贄、欲………悲しみ」

しばらく考えていると凱の周りを泥が囲う

「危ない!」

桜華を振るい、泥を払う。

だが、払った泥は即座に凱にまとわりつく。

凱はそれを払おうとわしない

「凱!」

「そうか。そういうことか」

凱は笑みを浮かべる

そしてその場から紅い光が迸る

「な…!?」

「きゃっ…!?」

思わず目を覆う。

「くく、あはははは!」

凱はリベリオンを振るう

それだけで周辺の泥は消し飛び、地面に亀裂が走る

「な、なんだ…!?」

「凱さん、どうしたんですか!?」

「こいつの性質がわかった」

凱はスタイルを切り替え、二人のところに飛ぶ

「こいつは人間が『糧』にしたものや『犠牲』にしたものをあの泥として顕現させている。そして、こいつは今のままじゃ倒せない」

「何?」

「じゃあ、どうすれば…!」

「まあ、まずは」

そう言って凱は二人を掴んで遠くへ投げる

「な!?」

「な、何するんですか!?」

「邪魔なんだよ」

凱はメモリをベルトに挿し込み殺気を放つ

「お前らはそこで見てろよ」

《ルシフェル》

「It's Show Time!」

 

 

ここからは俺の時間だ

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!

次回でついに決着です!


それとアンケートの投票お願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第58話 三人揃って/もとの世界へ

どうも、フォーウルムです

今回はコラボ最終回になりますl


 

 

 

 

 

 

ーー三人揃ってーー

 

 

 

「ははは!最高だなぁ、おい!」

凱は縦横無尽に暴れまわる

泥を断ち切り、叩き落とし、飛び回る

斬激の余波は雪華達のいるギリギリまでその圧を伝えてくる

「これだけ離れているのに、なんて衝撃だ」

「雪華様、今の凱さん、怖いです…」

そんな中、凱を囲むように泥の槍が殺到する

「凱!」

「ぬるいんだよ」

凱はソードマスターからロイヤルガードにスタイルチェンジしすべて受けきる

「そら、返すぜ!」

槍の衝撃をそのまま跳ね返す

「グヌゥ!」

サクリファイスに少なからずダメージが入る

「マダダァ!」

サクリファイスは泥をマシンガンのように飛ばすが、そこには凱の姿は無い

「凄い。やつの攻撃を、軽々躱してる」

「私、要らなかったんじゃ…」

「それを言うなら僕もだよ」

「おいおい、つれないこと言うなよ。観客は必要だろ?」

凱は後ろに立っていた

「んな軽い感じでもないだろ…」

「全く。さて、ケリつけるが一緒にどうだ?」

「なら遠慮なく。桜、行ける?」

「勿論です!ちょっと、怖いですけど」

「そう来なきゃな、合わせろよ?」

凱はリベリオンを構える

「合言葉があるんだ、やるときにこう言うんだ」

そう言って凱は2人に教える

「おっけー!」

「わかりました!」

「よし、行くぜ!」

《スノー マキシマムドライブ!》

《リコリス マキシマムドライブ!》

《ルシフェル ソードマスターアクション!》

三人は息を合わせる

「喰らいな!」

『Jack pot!』

「ク、ヌアアアァァァ!」

三人の攻撃でサクリファイスは消滅した

 

 

 

 

 

ーーもとの世界へーー

 

 

 

 

 

彼らは幻想郷に戻ってきた

既に夕方になりつつある

 

「一件落着、かな?」

「そうみたいですね」

「お疲れ。さてお前らをどうするかなー」

凱は考え込む

「紫さんに頼むか?」

「残念ながらそれはダメだよ」

現れたのはヘルメットの男だった

「……お前は」

「お疲れだったね。彼らは僕がやるよ」

「わかった。じゃあな、二人とも。今度は安全なときに遊びに来い」

「ああ。サンキューな」

凱は笑顔で二人を見送った

「じゃあ、行こっかー」

「頼む」

「お願いします!」

二人を男はゲートに連れていく

そこは真っ暗でありながら遠くに光が見える不思議な空間だった

「二人とも離れたらダメだからねー?」

「了解した。聞いてたよね、桜」

「勿論です!」

「さて、君らにいくつか話さなきゃいけないね」

「何を?」

「色々と。ってか俺みたいなのによく着いてきたね」

男はヘルメットを指さす

「君らのとこの紫さんには気味悪がられたよ」

「攻撃の意思はないことがわかるからな。まあ、ヘルメットってのも、センスを問うけど」

「仕方ないじゃん。顔無いんだから。それはさておき桜ちゃん、だったかな?」

「は、はい!」

「まずは君に謝らなきゃだね」

「な、なんで?」

「君がこっちに来たのは僕のミスなんだよ」

「そ、そうなんですか?」

「そいつは聞き捨てならないぞ」

「あははは、悪気はなかったんだけどねー」

男はヘルメットを掻く

「ホントにごめんね」

「わ、私は全然」

「桜が気にしてないならいい」

「あ、ちょっと静かに」

男は人差し指をたてる

「…?」

言われた通り静かにする。

「音立てちゃ駄目だからね?」

「…分かった」

「きゃあっ!?」

桜が派手な音を立てて転ぶ。

「桜!?」

桜が転んだ音に反応して、何かが近付いてくる

「な、なんだ…!?」

「あらら、気付かれたかな」

それはあまりにも巨大な魚のような化物だった

「まるで、インド神話のバハムートだ…」

「そんなにいいものじゃないさ」

男は手を伸ばし、拳を握る

その動作だけで化物は潰れ、消え去った

「…やっぱり、さすがは作者()だな」

「ん?気付いてたんだ」

「まあ、な」

「僕の正体に気付けたのは君で三人目だ」

「あとの2人は?」

首を傾げる。

「さっき君といた凱と、もう一人は……いつか会えるよ」

男は立ち止まる

「まだ話したいことはあるが、ここまでだ」

「もとの世界に帰りたまえ」

「もう1つは警告だよ」

「何がだ?」

「僕の正体を知る最後の一人は、簡単に次元を越えられる。おそらく、君の事に興味をもつはずだ」

「分かった。覚えておく」

「結構。それじゃあ、気をつけてね」

「ありがとう。またいつか」

「そうだね、そのときは呼んでくれればいつでも行くよ」

「じゃあな!」

「さようなら!」

そうして、彼らは戻って行った

 

 

 

 

 

 

 

「さて、帰ろうかな」

男が帰ろうとした時だった

「彼らを戻していただいて、ありがとうございます。フォーウルムさん」

いつの間にか、そこには和服姿の少年が立っていた。歳の頃は15か16。

しかし、顔には狐のお面を着けている。

「あれ、来たのか?」

ヘルメットの男は振り返る

「わざわざお出迎えとは、中々に礼儀がなってらっしゃるようで」

「まあ、『狭間』のなかでも、ここは私の世界に近いので。恩人に礼のひとつも言わぬほど不躾ではありませんよ」

そう言って『彼』はクスクスと笑う。

「ソイツはどうも」

ヘルメットの男はそう言って顔からメットを外す

そこにあったのはまるで宇宙のような珠だった

「これもなんかの縁だ。またいつか会おう」

「ええ。またいつか」

彼も狐面を外す。しかし、彼には顔があった。極々普通の少年だ。

「覚えたぜ、あんたの顔」

「あなたには、覚える顔もないようですが」

少し目を細めて言う。

「まあな。だが、わかりやすいだろ?」

「まあ、これに勝るインパクトもないのは確かですね」

そう言って苦笑する。

「じゃあな、少年。お互いの世界のために頑張ろう」

そう言って彼は消えた

「そうですね。私も、尽力するとしましょうか。まだ一仕事残ってますし」

そして、雪華達が行った方向へ歩き出した。

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
今回でくらんもちさんとのコラボは終了になります!
コラボしてくださり、ありがとうございました!


次回からは通常に戻ります、お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第59話




「今度の訓練に参加してほしい?」
「ああ」
FDLの店内には三人の男女が
1人は五十嵐凱
全身を黒一色の制服で包んでいる。その制服はどこの組織のものでもない。凱が独自に考案し、作ったものだ
「地底の闘技場で行われる治安維持隊という組織の訓練に出てもらいたい」
「そこで僕たちはどうすればいいんですか?」
2人目はそこそこ背の高い少年だ
その身には凱と同じデザインの制服を纏っている
カラーリングは黒に赤や青、黄色だ
「そこでコイツと戦って、データを取ってきてほしい」
凱が差し出すのは一枚の写真
「コイツは?」
「臨時で参加することになったやつだ。名前は『ルクス』だ」
「わかったわ。任せなさい」
そう言って写真を受け取ったのは、凱と同じくらいの背の女性だ
2人と同じような制服だが、デザインは女性用に変えられており、黒と青紫色のカラーリングだ
「来たばかりの2人に任せてしまって申し訳ない」
「いいんですよ!()()()!」
「私らも、この世界に慣れなければいけないからな」






 

 

 

 

ーー拭えぬ違和感ーー

 

 

 

 

地底 闘技場

 

「そこまで!勝者、ルクス!」

『おおー!』

 

ここは地底にある闘技場

今日、そこでは治安維持隊地底支部の訓練が行われていた

訓練といっても内容は組み手で勝ったほうが残り、そのまま負けるまで戦い続けるというものだった

そんな維持隊の訓練になぜルクスが参加しているのかというと、それは数日前に遡る

 

 

 

 

数日前

フォルトゥナ城 軍部執務室

 

「なんで呼ばれたのか、わかるかな?」

「はい」

ルクスは机の前に立っている

机には盤城が座っており、ルクスを見ながら微笑んでいる

結果表(スコア)、見させてもらったよ」

スコア、正式名称は《戦闘適性試験結果表》という

魔界の自治組織となったDevil Castleの幹部であるジンやモナ、ファス等が受ける試験のようなもだ

検査方法は検査装置をつけた状態で変身し、3回試験官と戦い、その得点の平均値が結果となる

100点満点のこのテスト。いつもルクスは90点台を叩き出しているのだが……

「今回の君のスコアは平均50程度。何があったんだ?」

「………」

そう、彼の今回の結果は散々だったのである

ただ、直前の検査やその後の経過観察でも異常は見られなかった

「……すいません」

「謝ることはないよ」

頭を下げるルクスに盤城は声をかける

「最近、色々あったからね」

カラミティの討伐や魔界に現れた大量の魔製生物の対処

忙しかったのも事実なのだ

「そこで、ちょっと提案なんだが」

盤城は声を抑えつつ話す

「今度、地底の闘技場で維持隊の訓練があるらしいんだが、そこに行ってみてはどうだろうか?」

「訓練に、ですか?」

「ああ、たまには息抜きも重要だろう?」

「……わかりました」

「よし、時間は後々伝えるよ」

「それでは、失礼します」

そういってルクスは部屋を後にした

 

 

 

 

現在

 

 

「これで、12連勝目か」

ルクスは訓練に参加し、今まで危なげなく勝ち抜いてきた

相手は地底の住人で鬼や妖怪などが多いが、メモリを使った戦いならば彼の方に分がある

しかし

(なんだ、この違和感は?)

ルクスは自身の違和感に気がついていた

体が動かしにくい。今までよりも能力が発揮できていない、そんな気がしている

「まだ戦えるかい?少年」

話しかけてきたのは彼ら維持隊をまとめている赤髪の女性だ

「いけます、燐さん」

「あたいのことは燐でいいよ、っていってるのに」

そう言いながら彼女は伸びをする

「さて、次は……」

「ちょっといいですか?」

「おや?」

二人に近づいてくるのは背の高い少年だった

黒に赤と青、黄色で彩られた制服に身を包んでいる

「何方ですか?」

「はじめまして、三首(みくび) 猟介(りょうすけ)って言います」

「ああ、そうでしたか。待ってましたよ」

燐は彼と握手をかわす

「あの、この人は?」

「君と一緒で外部の人間さ」

「はじめまして。よかったら一戦どうかな?」

猟介はルクスを誘う

「わかった」

 

 

 

「これより、ルクスさん対猟介さんの訓練を始めます!」

二人はメモリを取り出し、ベルトに挿し込む

「「変身!」」

《パラディン》《トライセラトプス》

ルクスはパラディン・ガイアナイトに、猟介はトライセラトプス・ガイアナイトに変身する

「はじめ!」

その言葉を合図に二人は戦いを開始する

 

 

 

「なかなかにやるな」

「そちらこそ」

2人の使うメモリはどちらも近接型戦のメモリだった

《パラディン》は剣と盾による攻防一体の戦い方、《トライセラトプス》は棍棒(メイス)を用いた一撃必殺の戦い方

違いはあれど、近接戦では五分五分だった

決着が着かず、十数分ほど打ち合っていた2人だったが

「今だ!」

ルクスは一瞬の隙を付き、メイスを弾き飛ばす

「!!」

トライセラトプスは武器を失った

そこへルクスは一撃を叩き込み、勝てる

 

 

 

はずだったのだが

ゴスッ

「が?!」

彼の胸に衝撃が加わり弾き飛ばされる

空中へ打ち上げられた彼は体勢を立て直し、彼のほうを見る

「……なんだ、その武器は…?」

彼の手にあったのは、見たこともない武器だった

腕の太さくらいの穴が開いたリングにまるでキーホルダーのように40センチほどの棒が3本ぶら下がっている

「これの一撃受けてまだ動けるなんて、上手いですね」

「…どうも(どういうことだ?)」

彼の頭には一つの疑問が残っている

それは

 

(先程の一撃は()()()()ような一撃だった。だがあれはどう見ても『突き』ではなく『打つ』武器だ)

彼は武器を注視する

「これで戦うのはあまり慣れてませんが、なんとかなるでしょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼らが戦っている所から隠れた場所に四人の男女がいた

「最終確認をするぞ」

眼鏡を掛けた男が他の3人に言う

「今回の目的は『他部署との戦闘時の連携の実戦演習』だ」

「殲滅が目的ではない、と」

「ああ」

眼鏡の男は話を続ける

「よって、万が一演習が不可能だと判断した場合、即座に撤退する」

「了解です、武田(たけだ)さん」

帽子をかぶった青年が頷く

野芝(のしば)、貴方はバックアップにまわってくれ」

「あいよ。元からそのつもりさ」

野芝と呼ばれた男は腕を組んで壁にもたれ掛かっている

逢坂(おうさか)さん、相手の情報は?」

「維持隊の雑兵が十数人、それと部外者がいます。数はおそらく2です」

逢坂は武田の問いにてきぱきと答える

「ふむ、部外者が気になるが、問題は無いだろう」

武田はメモリを取り出す

それに合わせ他の3人もメモリを持つ

「よし、始めるぞ」

 

男達は動き出す

「手始めに、我らの力を見せつけようじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
どうも、フォーウルムです!
今回から形式を変えて、前書きにはプロローグみたいなのを入れることにし、話数の所から題名を無くしました

次回はついに組織《栄光の科学結社》のメンバーが登場します!
お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第60話





「うっし、出来た」
「何それ?」
凱は地下の工房で武器を作っていた。姫乃はそれを見ている
「新武器。俺じゃなくて桜のだけどな」
以前、彼女達はドーパントどころか、マジェストにすら歯が立たなかった
今度彼らが来たとき用に作っているのだ

「さて、使えるか試さねえとな」
凱は次元の穴を作りそこへ走って行く
「あ、待ってよ凱君!」
姫乃も後を追う

地底であんなことが起きているとも知らずに……





 

 

 

 

 

ーー乱入者ーー

 

 

「くそ、どうなっている?!」

「僕が知るとでも?!」

ルクスと猟介は背中合わせで戦っていた

急に現れた大量の兵士を相手にして

彼らが戦っている間に燐は戦えなくなっていた維持隊の隊員達を避難させていた

「数が多い。そっちは無事かい?」

「なんとか。だがこのままじゃ!」

そこへ

 

ジャァーーン

 

ギターの音が鳴り響く

「?! 今度はなんだ!」

「やあ、大変そうだね」

やってきたのは背の高い女性

その手には紫色のギターが握られている

「私は音川(オトカワ) ナル。そこの三首の仲間さ」

そう言ってウインクをする

「詳しい説明は後。今はコイツらを倒すとしようか」

「了解です、ナルさん!」「ああ、任せろ!」

ナルの呼び掛けに二人が応じる

「さあ、ショウタイムだ!!」

ナルがギターをかき鳴らすと、辺りを紫電が駆け回った

 

 

「見つけたぞ」

コマンダー・ドーパント(武田)が声をあげる

「あの三人を相手にするぞ」

「ういっす」「おうよ」「了解です」

リーダー格のコマンダーは自身が生み出した兵隊達に指示を出しながら三人の仲間に声をかける

「竹岡は騎士を、逢坂さんはギターの女を、私と野芝で恐竜をやる」

『了解!』

 

 

「新手か?!」

ルクスは盾を構え、斬りかかってきたドーパントの攻撃を防ぐ

その見た目は竹の怪人ような姿だった

「竹のドーパントか!」

「へぇ、わかるんだ」

「見ればわかる」

ルクスは盾で弾き飛ばす

バンブー・ドーパントは両手から竹のような剣を作り出す

視線を外すとナルはバッタのようなドーパントと戦っており、猟介は将校のようなドーパントと銀色のドーパントと戦っている

「よそ見していいのか?」

「チィッ!」

バンブーは両手の竹で斬りかかってくるのに対し、ルクスは剣と盾を駆使し

て応戦する

「ぐうっ!?」

しかし、ルクスは連撃の前に呆気なく動きを封じられ、追い込まれていく

「そらそらそら!」

「ぐあぁっ!」

遂に、ルクスに致命的な一撃がヒットし、変身が解除されてしまった

「案外弱っちいな、こいつ」

「ぐ……」

ルクスは必死に《パラディンメモリ》にてを伸ばす

 

 

 

 

パキン

メモリは、割れてしまった

 

 

「そ……んな」

まだ彼は目の前の事態を飲み込めてはいない

「かわいそうに、このままぶっ殺してやるよ」

バンブーは近づき、両手の竹剣をルクスに突き立てようとした

その時だった

 

ヒヒィーン

「あ?……あぶねぇ!」

二人の前に、突如として現れたのは、銀色の馬だった

 

 

 

 

 

ーールクス、覚醒ーー

 

 

 

「……お前は?」

ルクスは目の前の馬に問いかける

馬はパカパカと足音を立ててルクスに近づき、フンフンと匂いを嗅いでいたが、急に彼を口でつかんでたちあがらせた

「僕の…味方なのか?」

馬は低く唸りながら首を縦に振る

そして背中にあるメモリを見せつけたきた

「これを、僕に?」

馬はそれを肯定するかのように彼を背中にのせる

「…《キャバリエ》……いいだろう」

彼はメモリをベルトに挿す

「見せてみろ、その力を!」

《キャバリエ》メモリを使い、彼は本物の騎士に成る

体は白銀の鎧に覆われ、その手には巨大な槍が握られている

「すごい……力が溢れてくる」

これなら、勝てる!

「走れ!」

馬に指示を出すと、それに従い猛スピードで駆ける

「くそ?!なんだアイツは!」

バンブーは距離をとる

ルクスの急な覚醒に他のドーパントにも焦りが見える

「うおおおぉぉ!!!」

彼は思いっきり槍を振り抜く

「ゴブアァ?!」

「な?! 全員、バンブーを援護しろ!」

三体のドーパントが一斉にルクスをターゲットする

「なめるなぁ!」

ルクスはそれを立った1人で相手にする

 

 

 

「く……何故だ!」

コマンダーは悪態をつく

計画は狂ってしまった

このままでは被害が出る、それは阻止せねばと考えを巡らせるが、打開策は思い付かない

「このままじゃ…」

そこへ、急な変化が訪れる

辺りが濃い靄に覆われたのだ

「! 全員撤退!!」

コマンダーはサーマルゴーグルを装着する

彼の言葉に従い、他三人が撤退を始める

「………次は負けん」

 

 

 

 

「……逃がしたか」

馬から降り、変身を解いたルクスは辺りを見回す

急な靄も晴れ、視界は良くなったが辺りに先ほどのドーパント達は居なかった

「お疲れ、ルクス君」

声を掛けてきたのはナルだ

「お陰さまで助かりました」

「こっちの台詞さ。君がいなかったらどうなっていたことか」

ナルは顔を綻ばせる

「さて、私らは行くよ」

「はい、ありがとうございました」

ルクスは二人を見送る

「さて、お前をどうするかなぁ」

馬のたてがみを撫でながら、考える

「まあ、許してくださるだろう」

報告を兼ねて盤城様に相談しよう

そう思い、歩き出したのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ご苦労様」

武田、逢坂、竹岡、野芝の4人は壁に寄りかかっている

彼らが今居るのは科学結社の移動用車両の中だ

全員が変身を解いている

「正直助かりました。ありがとうございます」

お礼をいわれているのはガスマスクをした男だった

「私としても、君らの離脱は看過できんからな」

そう、今回の演習の立案は彼なのだ

「とりあえずデータはとれた。次の作戦が終わるまでに体調を整えておけ」

「次の作戦って?」

その場のメンバーでもっとも若い男、竹岡が聞く

「ああ、正直乗り気ではないんだが」

ガスマスクの男はため息混じりに言う

 

 

「次の作戦は、戦艦での駆逐だそうだ」

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございました
どうも、フォーウルムです
年末で色々やりながらでペースが遅くなりました
次は早く出せるといいな

さて、今回はオリキャラの三首と音川
それと敵組織のメンバー4人
さらにルクスの覚醒、となかなかに多い回でした
オリキャラや組織メンバーは今後も登場させる予定です

それではまた次回、お会いしましょう!




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七章
第61話





人里 北エリア

この区域は他の三区画よりも少し大きく作られている。冬の大雪に備えてだ。西、東、南とは水路や建物の造りも異なる。そんな里を歩く二人の女性がいた。
「相変わらず、冬は冷えるわね。」
暗い色のコートに身を包み歩くのは(ニノマエ) (リン)だ。その手には黒いアタッシュケースが握られている。
「ほんとですね。指冷えちゃいます。」
隣を歩くのは薄い緑色のコートを羽織っているアザリア・シロッコだ。
「今日は何本売れたんです?」
「13ね。思ったよりも売れたみたいでよかったわ。」
二人はメモリを取引した帰り道だった。
「あら?ちょっと待ってね」
凛は震える端末を開き、確認をとる。
「……!」
「ど、どうしたんですか?」
アザリアは凛に尋ねる
「……貴女にお話があるようよ」
そう言って見せてきた内容は

『本日22:00に指定された座標にアザリア・シロッコと共に来るように』というものだった





 

 

ーー星の狼ーー

 

 

 

 

「…………ハズレか」

「た、頼む!命だけは!」

「もういい。さっさと失せろ」

「はっはひいいいぃぃぃ!」

里の路地裏で1人の青年が中年男からメモリを奪っていた。だがそれは彼の求めていたメモリとは違ったようで溜め息を吐く。

「ゴキブリは見飽きたんですが」

「仕方がないだろう、此が一番簡単に手に入るのだ」

青年の足元にいるのは一匹の狼だ。漆黒の毛並みに白い毛が斑になっている。

「《ゾディアック》、悠長にしてる暇は無いんだ」

《ゾディアック》と呼ばれた狼は鼻を鳴らす

「あの少女にかけられた呪いは今の私には解けん。それに、()の見立てではまだ呪いの発現まで時間がかかる。呪いの正体がわからない以上、下手に手出しは出来ん」

「……そうですね。すいません」

「気にすることはない。彼女が心配なのはよくわかる。」

ゾディアックは欠伸をしながら加賀龍に近づく。

「そろそろここから離れよう。余り人の目に付くのはよろしくない」

「ええ、そうしましょう」

そう言って1人と1匹はその場を離れていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー見下ろす管理者は何を思うかーー

 

 

 

とある建物

 

栄光の化学結社 工場

 

 

 

 

白い電灯がいくつも並び、内部を照らす。そこでは何人もの人間が機械を確認し、調整し、時に自身の手を以て作業を進める。彼等は《部門構成員》という立場だ。

この組織には六人の幹部、《幹部六候》が存在する。その六人はそれぞれの部門を持っている。戦闘、支援、売買、情報、執行、そして製造。幹部達は部門内では《部門指揮官》という立場になり、指揮官直属の部下を《部門幹部》という。《部門構成員》はそれの下だ。本来、構成員は幹部に会う事はあっても指揮官に会う事どころか、声を聞く機会など無いに等しい。……この部門(製造部門)を除いて。

『通告。構成員諸君。よく働いてくれた。本日の業務は終了である。速やかに次の担当グループと交代し、しっかりと休み、後日の業務に支障がでないように。』

天井に備え付けられたスピーカーから声が響き渡り、構成員達は業務から解放され、それぞれの部屋に戻り、次のグループの構成員達が入れ替わりで作業を再開する。

 

先程の放送の声の主は、作業していた彼等よりも高い位置から見下ろしている男だった。彼はこの工場の管理をする《部門指揮官》であり、幹部六候の1人である機山(キヤマ)正蔵(ショウゾウ)であった。

彼は基本的にこの部屋からは出ない。食事をする、書類を確認する等の最低限の生活以外は基本的に仕事の監視だ。

コンコン「失礼しま……また監視ですか?」

「心外。またとはなんだ。『監視』が私の業務だ」

「……はぁ。」

部屋に入ってきた女性、柊木(ヒイラギ)(レイ)は溜め息を吐く。

彼女は書類を机の上に置きながら続ける。

「第一、彼等は只の構成員。替えが利くじゃありませんか?」

「否定。確かに彼等は我々からすれば切り捨てても構わない部品だろう」

機山は机の横の冷蔵庫から烏龍茶を取り出し、飲む。

「当然。我らが目的に向かい歩みを止めないのと同様に、彼等もまた足掻き続けている。私は、そんな彼等を部品等といって切り捨てることは出来ん。」

「……しかし」

「美学ですねぇ」

二人の会話に割って入ったのは緑髪の青年だ

「意外。君がここに来るのは珍しいな、八木(ヤギ)君」

「そうっすねぇ。俺は基本外回りだからなぁ」

八木は体を伸ばす

「それで、製造はどんな感じっすかぁ?」

「当然。予定通り、いやそれ以上の速さで進んでいる。」

「さすがっすねぇ」

「何か、用事があるんじゃないの?」

柊木が八木に問う

「そーだった。機山さんに連絡っす」

「?」

 

 

 

 

()()()()()()()()()()。だそうです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー狂った詩を花束にーー

 

 

 

 

 

夜22時

凛とアザリアは人里から離れた空き地に来ていた。

「……ここで合ってるんですか、凛さん?」

「そうね、ここのはず…」

そんな2人の前に、()()1人の女性が現れた。

身長は170程で体はモデルのようにスラッとしている。

「「?!」」

急な出来事に2人は警戒するが、次の瞬間に女性は花束を抱えていた。

「先ずは、おめでとう…かしらね」

女性にしては低い声が響く。

「……」

「…あの、おめでとうって?」

アザリアが聞く。

「アザリア・シロッコ。貴女を次の大規模作戦の指揮官に命じます。」

「「!」」

女性の言葉に2人は驚く。

「作戦は後日、詳細を送る。」

「そうですか……よかったわね、アザリア。」

凛はアザリアの肩を優しく抱く。

「これはそのお祝いだ。」

女性は花束をアザリアに手渡す。

「あ、ありがとうございます」

「その花も、()()()()、しっかり管理するように。」

「え?中の物って…?」

アザリアが聞き返したとき、既に女性は消えていた。

「あの方は……一体」

「……? アザリア、そのメモリは?」

「え?」

凛が花束の中を指差す。アザリアがそれを恐る恐る取り出すと……

 

 

 

それは《ラプソディ》と刻まれたメモリだった

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
なんだか久しぶりな気がするフォーウルムです!
今回は加賀龍のメモリの正体、新たな戦いの準備をする組織のお話を書かせて頂きました。
徐々に組織のメンバーが出揃ってきました。あと半分くらいかな?

次回は護関連のストーリーとなります!
お楽しみに!





感想も待ってます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第62話



「グルァァ!!」


「くっ?!」
一体の白色のドーパントの雄叫びが辺りを震わせる。
「真護!華扇!藍!手伝って!」
「応!」「わかっています!」「お任せください!」
幻想の賢者の呼び掛けに老剣士と仙人、式神が応じる。


四人は死力を尽くしたが、ドーパントを討伐するまでには至らなかった。賢者はドーパントをメモリごと少年に封印した。彼が成長した未来で、助けることを誓って。





 

 

 

FDL店内

 

 

「……どうなってる」

凱は疑問を口にする。店内に居るのは凱に姫乃、猟介とナルだ。凱の手には数枚の紙が握られている。そこに書かれていることはにわかには信じがたい事だった。

「そこに書かれてる通りよ。私たちの世界には()()()()()()魔族は存在していて、人間との交流があった。貴方みたいにハーフもいれば、護君のようにクォーターもいる。」

「なるほどな。メモリに関しては?」

「こっちは相変わらず空想、特撮の産物みたいな扱いですね。」

猟介が資料を指し示しながら答える。

「そう言えば、護は何処だ?」

凱は店内を見渡すが、当然そこには護はいない。

「護先輩なら今日は紅魔館らしいですよ。」

「……そうか、俺も行くかな。」

そう言って凱は席を立った。

 

 

 

 

 

 

ーー平穏は脆く儚く終わりを迎えるーー

 

 

 

 

紅魔館

 

 

 

 

「せやっ!」「オラァ!」

紅魔館の中庭で2人のガイアナイトが戦っている。1人は黒い狼のような外装で爪や蹴りで戦うベオウルフを使っている護。もう1人は……。

「そんなんじゃまだまだですよ!護さん!」

紅美鈴だった。

彼女が使っているのは北欧神話に登場する雷の神、トールのメモリだ。

《トール・ガイアナイト》の戦い方は雷を纏ったハンマーを用いるか、拳で殴り合うかの近接の二択であった。故に、護とはいい勝負となっている。

「くっそ、降参だ降参。」

護はそう言いながら変身を解く。それを見ていた美鈴も変身を解きながら護に近づく。

「中々に格闘術も上達してますね。元から筋が良いんでしょう。」

「ああ。以前、似たようなのを習ってたからな。」

護がそう言うと

「お邪魔するわ」

「華扇さん!いらっしゃい!」

やって来たのは仙人の茨城華扇だ。

「か、華扇姉?!」

「フフッ、久しぶりですね、護くん」

華扇を見た護は嬉しそうな声をあげ、華扇もまた懐かしそうにしている。

「あの〜、2人はどういった御関係で?」

「お、そういえば言ってなかったな。」

 

 

〜〜護、説明中〜〜

 

 

「へー。護さんのお師匠さんみたいな感じなんですね。」

「そうなんだ。昔俺が幻想郷に遊びに来た時にいろいろ教えてもらったんだ。」

「懐かしいですね。あれから大体10年くらいでしょうか?」

「そんなだな。あの時は爺ちゃんもいたっけな。」

護は少し目を伏せる。

「俺、汗かいちまったから着替えてくる。」

「更衣室の場所わかります?」

「大丈夫!」

 

彼が館内に戻った後……

 

「そういえば、今日はどういったご用件で?」

美鈴は華扇に尋ねる。

「ちょっと、様子を見に。」

「護さんのことですか?」

「……そうですね。まあ、問題はなさそうですが。」

「?」

華扇は真剣な表情で紅魔館を見据えるのであった。

 

 

 

「いやー、さっぱりした」

着替えた護は紅魔館の館内を歩いていた。

「華扇姉に会えるとは思ってなかったけど、久しぶりに会えてよかっ……?!」

急な頭痛が護に襲い掛かる

 

「なんだろう、このメモリ?」

ズキンッ

 

頭に何かのイメージが流れる

 

「離れて……護…くん!」

「華扇お姉ちゃん、しっかり!」

「おい、さっさとそいつを寄越しな。」

ズキンッ

 

体が燃えるように熱い

 

《「くっそ、ここは退くか!」

「ぐっ……ガアアアアァァ!」

「護!?…そんな」

ズキンッ

「……ごめんなさい、護」

 

そこで彼の意識は闇に飲まれた

 

 

 

 

美鈴と華扇は庭で護を待っていた。

「…遅いですね」

「ここから更衣室までそんなに離れてるんですか?」

「いえ、すぐ近くのはずですが…」

美鈴は館内に入る。華扇もそれに続く。

「もしかして何処かで迷ってるとか?」

「まさか。護さんだって最近よくここに来てるので迷うことは……危ない!?」

美鈴は急な殺気に体を捩る。その瞬間に紅魔館の壁に巨大な亀裂が走る。

「!? 一体何ですか!」

「か……華扇さん…あれ。」

「え?」

震える指で指し示された先に居たのは……

「そんな……()()()()()

 

白い体を持つ、狼のような怪物であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます!
どうも!フォーウルムです!

今回のお話は護についてのストーリーとなります。
少し長めになるかもですが、お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第63話



「見つけたぜ…」
戦闘音が鳴り響く紅魔館を眺めている1人の影があった。男の顎のは髭が生えており、目つきは悪い。
「長かった…本当に長かった。」
その手には『D』のメモリが握られている。

「今度は、逃さねえぞ。」





 

 

 

 

 

 

「はぁっ……はぁっ……」

「な…何ですか……あれ!」

華扇と美鈴は肩で呼吸をしている。目の前には白い色をしたドーパントがいる。

そこへ

 

「穿て!グングニル!」

ドーパントの横から深紅の槍が突き刺さり吹き飛ばす。

「お嬢様?!」

「賑やかにやっているじゃないか、美鈴。私達も混ぜてもらおうか。」

レミリアの変身した《オーディン・ガイアナイト》の後ろかさらに2人のガイアナイトが現れる。

武装錬成(ジェネレート)!」「フレイムシュート!」

手から生成された光の槍を投げつけるのは《ヴァルキリー・ガイアナイト》の十六夜咲夜、火炎弾を放っているのは《エンジェル・ガイアナイト》のフランドール・スカーレットだ。

「グルルルル……」

3人からの攻撃を受けたのにドーパントは物ともせずに立ち上がる。

「……獣人型のドーパントか。情報はないのか?」

「……あるわ」

華扇が口を開く。

「…あのドーパントは《ファング・ドーパント》。変身者は……()()()()。」

『!?』

華扇の言葉に全員が絶句する。目の前にいるドーパントは総塚護だというのか?

「……倒し方は?」

「私達には無いわ。」

華扇は悔しそうに唇を噛む。

「クヒヒ、良い具合じゃねえか。」

5人の前に突如として新たなドーパントが現れる。

色は白だが腕が4本生えており、目は1つ。人の形をしてはいるが奇妙だった。

「《デュープ》!」

「んん?おいおい、役立たずの仙人様じゃねえか。」

「貴方は!」

「そこで見てろよ!どうせお前じゃ何もできやしねえからなぁ!」

デュープと呼ばれたドーパントは腕から細い紐のようなものを伸ばす。するとその先端が見る蜜と姿を変えていく。

「な?!《マグマ・ドーパント》!」

紐から出来上がったのはマグマ・ドーパントだった。体の色は薄くなっているものの見た目はほとんど変わらない。

マグマは両手から溶岩を飛ばしつつファングに接近する。

「グルアアァァ!」

しかし、マグマはファングの腕から生えている刀のような牙に一閃され、あっけなく散ってしまう。

「まだまだだぜぇ?」

デュープはさらに腕から紐を伸ばす。造られたのは《ライアー》、《アームズ》、《コックローチ》のドーパントだ。

「シャアァァ!」

流石に数的不利を感じたのか、ファングは霞むほどの速さで移動しその場から居なくなる。

「おいおい、逃げんのかよ。」

造り出したドーパントを紐に戻し回収したデュープは悪態をつく。

「まぁ、見つければいいか。あばよ。」

そう言ってデュープも居なくなる。

残されたのはレミリアにフラン、咲夜、美鈴、そして華扇であった。

「………何があった。」

ボロボロに荒れた紅魔館にやって来たのは五十嵐凱だ。

「ドーパントよ。」

「何?逃がしたのか?」

「……ええ」

「そうか…ところで護はどこにいる?」

そう言いながら凱は左手に持っている閻魔刀を見せる。

「コイツをあいつが手放すのは相当だ。すぐに合流して…」

「居ないわ…」

「…どういう意味だ」

凱が問う。それに応じたのは…

「私から話すわ、凱」

スキマから現れた八雲紫だった。

 

 

 

 

ーー十年前の悲劇  行動開始ーー

 

 

 

 

 

「さて、話してもらおうか。洗いざらい全部。」

動ける者全員で紅魔館の修理を終え、皆はホールに集まっていた。

メンバーは凱や姫乃は勿論。霊夢、魔理沙や妖夢といった面々。

早苗や幽香、アリス達もいる。

「わかっているわ」

八雲紫はそう言って話し始めた。

 

 

 

 

 

今から十年前、私は外の世界に住んでいた旧知の友人とその孫、藍、華扇と一緒に幻想郷を巡っていた。その子はまだ幼くて色々なものに興味を示した。

ある時、そう、地底の世界を見ていた時だった。ふとした瞬間に目を離してしまって子供がどこかへ行ってしまった。何とか探して見つけたのはよかったんだけど、その時、その子は偶然見つけたメモリを持っていて、それを狙うドーパントに襲われていたの。

何とかドーパントを追い払おうとしたのだけれど、私達にはどうすることも出来なかった。

その時だった。その子は、彼は持っていたメモリを自分に挿してドーパントになった。私達が追い払おうとしてたドーパントは退けられたのだけれど、その子は暴れ始めてしまった。メモリを切り離そうにも、まだ幼い彼から無理に引き剥がせば何が起こるかわからない。だから私は彼の中に封印したの。彼が成長し、引き剥がすことができる、その時まで。

 

 

 

紫はそう言って言葉を切った。

「その孫ってのが護なんだな?」

「ええ」

「なんで…何で言ってくれなかったんですか!?」

今まで黙っていた早苗が紫に掴みかかる。

「早く、もっと早く言ってくれていれば!」

「落ち着け、早苗。」

「凱さん!あなただって!」

「黙ってろ。お前以外にも頭に来てる連中は少なからずいるんだ。」

声を荒げる早苗に凱は冷静に、しかし怒りがこもった声で言う。その雰囲気に早苗は思わず黙ってしまった。

「助ける方法はあるんだな?」

「あるわ」

紫ははっきりと告げる。それを聞いた凱は全員に聞こえるように言う。

「二手に別れるぞ。俺と姫乃、あと他に来たい奴がいればそいつ含めて護を救う方法を用意、それ以外は……」

「凱君?」

言葉が途切れた凱を姫乃が気遣う。しばらく躊躇っていた凱は意を決して口を開く。

「他は俺らが戻るまでデュープ・ドーパント、及び護の捜索。最悪の場合は()()()()。」

凱が放った言葉に真っ先に反応したのは華扇だ。

「始末って、助けないのですか?!」

「里に被害が出ないことが最優先だ。いくら親しい仲間だといっても、敵は敵だからな。」

「……」

「倒せなくてもいい。時間を稼げ。その間に俺らが方法を見つける。」

「………ですが」

「殺す気で来るやつを助けようなんて気持ちで相手したらすぐに死ぬ。全力で当たるのが一番だ。」

「……分かりました。」

華扇はそう言うとホールを後にする。それに続いて早苗や霊夢達も各々動き出す。

残ったのは凱と姫乃、妖夢、そして幽香だった。

「私も護捜索に行くわ」

幽香はそう言った。

「メモリの調子は?」

「大丈夫、安定してる。」

「ならいい。任せたぞ。」

「ええ、そっちも早くしなさいね?」

「わかっている」

 

 

幽香が去った後、三人は考えていた。事前に紫から方法は聞いている

「さて、どうするかなぁ」

「『真護』さんを探せって言われても、どこにいるのかしら?」

そう、方法は『先代の閻魔刀の使い手である総塚真護(ソウヅカシンゴ)を見つける』と言うものである。

「あの人は俺らが幻想入りした時はまだ生きてたろ?」

「私がこっちに来るひと月前に亡くなったけどね。」

「まじ?じゃあ詰みじゃねえか」

頭を抱える凱。

「あの〜」

「ん?」「どうしたの、妖夢ちゃん?」

悩む2人に妖夢が声をかける。

「私、多分真護さんの居場所わかりますよ?」

 

妖夢の言葉に凱は目を輝かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 





ここまで読んでいただきありがとうございます。
どうも、フォーウルムです。
今回は前回のドーパント、ファングと新たな敵のデュープが登場しました。今回登場のファングは擬似メモリではなく普通のメモリとしての登場です。
ファング・ドーパントについての設定とデュープ・ドーパントはルオンさんからいただきました。ありがとうございます。
次回は凱、姫乃、妖夢のお話となります。お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第64話


「本当にいるのか?」
「はい。確か幽々子様はそう言ってましたので。」
「信じましょ?」
三人が向かっているのは白玉楼。妖夢曰く「最近新しいお客様が居候している」らしい。妖夢はその人物の名前を知らないらしいが、もしかしたらと言うことで確認に来たのだ。
「着きましたね。」
「いるといいんだがなぁ。」
そう言いながら門を開け、縁側へ歩いて行くと、そこにいたのは。
「このお団子美味しいわね!」
「こっちの饅頭も最高じゃ!」
団子を頬張る幽々子とアロハシャツを着た老人の姿だった。



 

 

 

ーー新たなる力ーー

 

 

「「……………」」

「幽々子様、少しよろしいですか?」

妖夢は美味しそうに菓子を食べる幽々子に尋ねる。

「あら妖夢。どうしたの?」

「そちらにいる方は真護さんですよね?」

「いかにも。わしは総塚真護じゃ。」

妖夢の質問に老人_真護は頷いた。

「挨拶はしておらんかったからのぉ。よろしく頼むぞい。」

「ア、ハイ。いやそうじゃなくってですね。」

「ん?何か用かの?」

「お久ぶりです、真護さん。」

「禍月嬢じゃないか!ということは…お前さんは」

「五十嵐凱だ。相変わらずだな、あんた。」

「やはりか!大きくなったのぉ!」

真護は目を見開いて笑う。凱が真護と最後に会ったのは3年も前の話だ。

「思い出話をしたいが、今はそんな余裕はない。」

「何かあったのかね?」

「護が暴れt「なああぁんじゃとおおぉぉ!!?」うるっせえな!」

凱は真護の絶叫に耳を塞ぐ。

「心当たりねえのか?」

「うーむ、反抗期かのぉ?」

「よし、歯ぁ食い縛れ」「凱君ステイ!?」

殴りかかろうとした凱を姫乃が押さえる

「どういう事なんじゃ?」

 

 

ーー少年説明中ーー

 

 

「なるほど。ファングがのぉ。」

「あのメモリで護が暴走してる。止める方法が有ると紫に聞いてきた。」

「……無いことはない。」

「なら、さっさと…」

「じゃが、その前に。」

真護は立ち上がり、凱の背中に吊るされている閻魔刀とリベリオンを指差す。

「助けに向かうその前に、少々やることがあるぞい。」

 

準備中

 

 

 

 

「よし、覚悟は良いかの?」

「待て。説明しろ、なぜこんな状況になってる?」

真護は閻魔刀を構え、介錯をするかのように立ち、姫乃は凱の右腕を水平になるように押さえている。

「今から腕を落とす。その後くっつけるんじゃ。」

「説明をしっかりしろと言っているんだ!!」

「お主の体に宿っている『デビルブリンガー』。これをお主の魂と融合させる。」

「するとどうなる?」

「今まで以上の強さを手に入れられるはずじゃ。」

「……なるほどな。」

「始めるぞ。」

そう言うと真護は閻魔刀を高々と掲げ、勢いよく振り下ろした。

閻魔刀に切られた右腕は無事であったが、一体化していたデビルブリンガーがドサッと地面に落ちた。

「こいつをリベリオンで取り込めば良いんだな?」

「ああ、じゃがそれにはかなりの覚悟が必要じゃ。」

「あ?ああ、すまん。」

「……凱君?」

「もしや、お主。」

「もう取り込んじまった。」

真護の話を聞きながら凱は無意識にリベリオンを用いてデビルブリンガーを取り込んでいた。すると……

「ぐうっ……ウオオオオォォォ!!」

「な、何?!」「すごい……!」

凱の背中に2本の半透明の腕が生えている。先端には4本の爪が生えており拳のように握ったり開いたりしている。その拳から腕の付け根にかけて鱗のようなものが合わさった羽が広がっている。長さは1.5メートルほどのそれを広げる彼の姿は、DMC5のキャラクターを彷彿とさせている。

(ほぼ5のネロの羽だな。あれはこんなに黒っぽくないが)

凱のそれはオリジナルの青ではなく、黒だった。凱はそれの感覚を確かめるように羽を動かす。バスターの動きや飛び方の感覚をそれなりに掴んでいく。

 

「流石じゃな。」

「これが、俺の新しい力になるのか。」

「今の状態ならお主の力を最大限に引き出す《デビルトリガー》も使えるじゃろう。」

「デビル……トリガー…!」

ゲームの中だけだと思い、半ば諦めていたそれを使えると知り、凱は期待感で一杯になる。

「それだけの力があれば、護を救える筈じゃ。アイツを助けてやって欲しい。」

「わかった。任せろ。」

「これを持っていけ。護からメモリを引き剥がすのに使うんじゃ。」

真護は閻魔刀を凱に渡す。

「……ああ。行ってくる。」

「気を付けるんじゃ。」

凱は真護に背を向け歩き出す。その後ろを姫乃と妖夢が追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人里

 

「本当にそれで行けるのね?」

「ええ、行ける筈よ。」

護を探すために幽香とアリスは作戦会議をしていた。

「一応皆に知らせるけど、貴方の負担が…」

「問題ないわ。私なら、いいえ、()()()()勝てずとも抑え込めるわ。」

幽香は決意を固める。

「そう。でも無理は禁物だからね?幽香」

「わかっているわ、アリス」

幽香はそう言って全員の通信機に連絡を入れる為にマイクのスイッチに手を掛ける。

 

 

「……さぁ、私達の戦いを始めましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます!
どうも、フォーウルムです。
今回は護の祖父の真護、及び凱のデビルトリガーについてでした。アンケートに答えてくださった方、ありがとうございました!

次回は護と幽香達のお話になります。お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第65話



ザザッ

彼女達の無線にノイズがはしる。
『聞こえるわね?さっき人里の西エリアで護君の確認報告があったわ。』
幽香は落ち着いた声で話す。
『作戦はさっきの通り。誘導班は護君を指定の座標まで、戦闘班はデュープの足止めが目的よ。無理に倒そうとしないように。』
彼女は告げる。戦いの幕開けを
『さぁ、取り戻すわよ。』





 

 

ーー分断作戦ーー

 

 

人里 西エリア

 

 

「見つけた!」

セイクリッド・ガイアナイトに変身していた霊夢が指をさす。その先にいるのはファング・ドーパントだ。

「グルアァ!」

ファングは霊夢を見つけると両腕から牙の形の刃を生やし、襲い掛かる。

「こっちに来なさい!」

霊夢はそのまま指示されていた場所まで引きつけていく。

「どこへ行くってんだぁ?」

「っ!デュープ!」

霊夢の目の前にデュープが躍り出る。

「ソイツは俺の獲物だ。逃すわけにはいかねえな。」

ディープは腕を伸ばし霊夢に掴みかかるが……。

ガキンッ「貴方の相手は私達です!」

「なぁ?!」

ディープの腕を弾いたのは咲夜だった。

その後ろからフランやアリス達もやって来る。

「霊夢、個々は私達が!」

「わかったわ。お願いね!」

霊夢はそのままファングを引き付けて飛ぶ。

 

 

 

「霊夢さん!こっちです!」

「早苗!準備は良いの?」

「はい、もちろん!」

早苗は幽香に言われたポイントで待機していた。

「グルアアァ!」

「き、来たぁ!」

「こっからどうするの?!」

霊夢は早苗に聞く。

「え、霊夢さんご存知じゃないんですか?」

「私聞いてないわよ。」

「私もなんですが……。」

そんな事を話していた2人とファングを

 

 

 

 

ガバァッ

 

 

 

「!?」

「何?!」

「きゃあぁ!!?」

 

地面から出現した何本もの腕が引きずり込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

数分前

 

 

「貴方にお願いがあるの。」

作戦開始前、幽香は落ち着いた声で何も見えない闇に話しかけた。

「私の大切な人を助けるために、協力してもらえないかしら。」

「……なにをすればいい…?」

暗闇から声が帰ってくる。男でも女でも無い、どこか幼い声だ。

「ファング・ドーパントを捕まえて時間稼ぎをして欲しいの。」

「あそんでいいの?」

声のトーンが若干上がる。

「ええ、でも壊しちゃダメよ。」

「こわしちゃだめなの?なんで?」

「…その人が私の大切な人だから。」

「………」

数秒の沈黙。すると闇から何本かの腕が幽香の頬に触れる。

「それはゆうかのほんとうにしてほしいことなの?」

「……本当は、ほかの方法を探したかったわ。」

幽香は頬に伸ばされた手に触れる。

「心配してくれてありがとうね。」

「ゆうかをたすける。ゆうかがしあわせなら、それでいい。」

「……任せてもいいかしら?」

「わかった。まかせて。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは一体……。」

早苗達がいるのは現代のビルが立ち並ぶ市街地。

「幻想郷…ではないわよね。」

霊夢は辺りを見渡すが、見たことがないような建物で埋め尽くされている。

「もしかして、ここって……霊夢さん!」

「! マズイッ!?」

辺りに気をとられていた2人にファングが襲いかかる。

が、ファングは2人に攻撃する前に()()()()()()()()()()()()()()()吹き飛ばされた。

「今度は何よ!?」

霊夢の問いに答えるように現れたのは

 

黒い体に4本の足、背中から2本の腕を生やした怪物、カラミティだった。

 

 

 

 

 

ーー奥の手ーー

 

 

 

 

 

幻想郷

人里

「なるほどな、考えたじゃねえか。」

デュープは腕を組んで素直に感心する。

「俺とファングを隔離して個々に潰そうってか?中々に頭回ってんじゃねえか。」

「そりゃどうも。」

咲夜は手にする剣を構えたままデュープを睨み付ける。ほかの面々もそれぞれの攻撃体勢を取る。

「だが、誤算があったな。」

デュープは手を伸ばし、そこからマグマ・ドーパントを作り出す。

咲夜達はそれがこちらに襲いかかるものだろうと思っていた。

「甘いんだよ。お前らは。」

デュープはそのままマグマを腕に吸収する。するとその腕は赤く輝く炎が宿った。

「な?!」

「俺はどうやら複製したやつの能力も使えるらしい。さて、お前さん達が何処まで戦えるか、見せてもらうぞ?」

そう言ってデュープはさらにドーパントを複製しては吸収していく。

「ここで負けるわけには行かない。絶対に守り抜くわよ!」

『おおー!』

咲夜の声を聞いた少女達は戦闘を始める。

(早く戻ってきなさい、凱!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
どうも、フォーウルムです。
次回でこの回は完結予定になります。体感、かなり長く感じています。
完結次第、ほかのも進めていく予定ですのでお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第66話





「凱君、この後どうするの?」
「幽香と合流する。」
凱は背中に背負った閻魔刀を腰に吊るしながら話す。
「作戦通りなら今頃カラミティと護が戦ってるはず。そこに乱入する。」
「わかったわ。妖夢さん、私達は咲夜さんと合流しましょ。」
「了解です!」
「気を付けろよ、2人とも。」
「ええ、そっちもね。」





 

 

 

ーー牙の獣と黒の厄災ーー

 

「あは「はははは「はは」は」ハハハハ!」

何重にも重なった笑い声が響く。声と共に響くのはビルが崩れ、瓦礫になっていく轟音だ。

「たのし「い!「たの」しいぃぃ!!」

幽香からは()()()()()()()()本気を出していいと言われている。端から見ればやりすぎに見えるこの攻撃も、彼にとってはまだ()()()なのだ。

「グルル……ガラァ!」

ファングは飛んでくる瓦礫や腕を掻い潜りながらカラミティに攻撃を加えていく。

早苗と霊夢はただただその光景を見ているだけだ。

「カラミティってエクストラよね?」

「そのはずですが…なんで護さんは渡り合えているんですか?」

「カラミティが手加減してるからよ。」

「幽香さん!」

2人の後ろから現れたのは風見幽香だった。

「なるほどね。凱が来るまでの時間稼ぎ、ってとこか。」

「ええ、私の言いつけ守ってるみたいだし。」

「とても手加減してるようには見えませんけどね……」

今も轟音は鳴り続けている。正直なところ、早苗は護がほんとうに無事なのか心配なのだ。

「……!どうやら終わったみたいね。」

「何がですか?」

早苗が聞き返すと同時に、空間が引き伸ばされるような感覚がやって来る。

そして

 

護の前に、1人の男が降り立つ。

 

 

 

 

 

 

 

「随分暴れ回ったみてぇだな。」

凱は瓦礫の上に立ち、ファング・ドーパントになった護を見据える。

「終わりにしようぜ、いい加減にな。」

「グゥオォォォ!」

ファングは雄叫びを上げながら凱に襲いかかる。

「………」

それを凱は手にした新たな剣である《魔剣ドラグニス》で受け止める。

「まだそんな元気があんのかよ!」

凱は剣で護を突飛ばし、距離を取る。

「なら、これでも問題ねぇな!」

凱を黒いオーラが包み込む。背中から半透明の羽を出現させ、拳を握る。

「オラァ!!」

そこから繰り出された拳は護の顔面に突き刺さる。

「そらよっと!」

怯んだ護に向かって剣を投げつける。

「グラァ!」

護はそれを弾き、丸腰になった凱に飛びかかる。

「……掛かったな?」

しかし、それはブラフであった。

凱は不適な笑みを浮かべ、本命の閻魔刀を居合の要領で振り抜き護とメモリの繋がりを断ち切った。

 

 

 

 

 

 

「……っつう、なんだ…ここは。」

護は瓦礫の上で目を覚ます。既に変身は解除されている。彼の周りには早苗、霊夢、幽香。そして凱の姿があった。

「護さん!よかった…よかったぁ……。」

早苗は安堵のあまり涙を流す。

「さ……なえ?」

「心配したんですから…」

「ごめんな、心配掛けた。」

護は体を起こす。

「全く、心配掛けんなこの野郎。」

「悪かったな。凱。」

「ほれ、受けとれ。」

凱は護に閻魔刀を渡す。

「まだ俺たちにはやることが残ってる。出来ないなんて言わないよな?」

「……ああ、もちろん!」

 

 

 

 

 

 

 

ーー決着ーー

 

 

 

 

 

 

「おいおい。この程度かよ。」

デュープとの戦いは熾烈だった。複製されるドーパントを処理しつつデュープ本体とも戦わなければならない。人里に影響を出さないためにも、火力の出しすぎは禁物。だがその結果、彼に決定打を与えられずにいた。

「はぁ……はぁ…。」

「限界か?」

「まだ、負けません!」

咲夜は剣を構えるが……

「弱いんだよ!」

「うぐっ!?」

ディープはそれを簡単に弾いてしまう、

「これで、お前も終わりだ!」

「待てよ。」

咲夜に止めを刺そうとするデュープを止める影があった。

「貴様…!」

「よぉ、久しぶりだな、デュープ。」

それはパーティクル・ガイアナイトに変身した護だった。

 

「咲夜!下がれ!」

「!!」

とっさの声に咲夜は反応し瞬時に退く。咲夜の後ろから放たれた稲妻はデュープを直撃する。

「ぐぅっ!?」

「俺も忘れんなよ?」

凱はそう言ってルシフェル・ガイアナイトの羽を広げる。

「こんなところで、こんなところでぇ!!」

ディープは最後の足掻きと言わんばかりに向かってくる。

「決めるぜ、凱。」

「ああ、合わせろよ?」

2人はメモリをマキシマムスロットに挿す。

《ファング マキシマムドライブ!》

《ドラグニス ソードアクション!》

 

2人のマキシマムがデュープを穿つ。

 

『Jack Pot!』

 

「ぐあああああぁぁ!」

 

 

デュープは2人の攻撃を食らい、吹き飛ばされる。

そして、気絶した男からメモリが排出されパキンッという音と共に砕け散った。

 

 

 

 

 

 

ーー再会ーー

 

 

 

凱達は白玉楼に来ていた。霊夢や咲夜達は人里での被害の後始末のために不在だ。凱は護を真護と再会させとりあえずの休息をとっていた。

隣では護に真護。早苗や幽香、そして駆けつけた華扇等が会話に花を咲かせている。

 

「それにしてもよかったわい。護が無事で。」

「俺も。爺ちゃんに会えて嬉しいよ。」

「そういえば、真護はなんでここに?」

華扇が疑問をぶつける。

「いやー、わしは死んだ後、護のことが心配でのぉ。気になって気になって成仏出来んかったのじゃ。」

「なるほどね。」

「んじゃあ、これで心置きなく成仏できるな。俺には頼れる仲間がついてる。」

護は何処か悲しげな表情をする。

「いんや。」

 

「……へ?」

真護の出した答えに護が変な声を出す。

「折角じゃ、曾孫を見るまでは成仏せん!」

「……はぁあ?!!」

真護のその一言に護は驚きの声をあげる。

「なに言ってやがるんだ、爺ちゃん!!」

「だってのぉ、こんなに可愛い嫁さん達がいるんじゃ。曾孫もすぐじゃろ?」

その言葉で早苗は慌てふためき、幽香は顔を逸らし、華扇は噎せて咳き込んだ。

「な?!こんのぉ……。凱からもなんか言ってやってくれよ!」

話を振られた凱は溜め息を吐く。

「悪いが、俺は戻るぞ。」

「おい逃げんなぁ!」

騒ぐ護を置いて、凱は帰路に着く。

(…いい加減本腰いれなきゃな。)

彼が考えているのは、FDLの地下に広がるダンジョン(マジェストの溜まり場)についてだった。

(あそこが溢れないように、管理しなきゃだからなぁ。)

彼は向かう。魔製生物(マジェスト)達の巣くう地下世界の宮殿(アンダー・パレス)に向かって……

 

 

 

 

 

続く

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
どうも、フォーウルムです。
ここから先はちょっとした駄弁りになりますので、読み飛ばしていただいても構いませんが、67話以降の設定も少し登場するので出来れば見てほしいです。


ストーリーについて
61~66話の話は実は護のアイディアをくださったルオンさんの提案でした。護の過去を明かすのと、強化をいれたいという話があって、その時に頂いたものを今回の話にさせていただきました。ちなみにそのときは凱のデビルトリガーの話はなかったです。勝手に増やしました。デュープのアイディアもルオンさんから頂きました。
ほかにも「こんなストーリー書いてほしい!」ってのがあったら気軽にコメントください。

次回以降について
67話以降は地下世界《アンダー・パレス》の攻略と化学結社との戦いになっていく予定です。アンダー・パレスの元ネタはDMCシリーズの連戦モードである『ブラッティパレス』がモデルになっています。詳しい説明は省きますがここでは大量のマジェストや新しい武器の素材などを出したり、キャラ達の修行の場になればなぁ、と思います。イメージだと某有名作品の天空城みたいな感じですね。あれをひっくり返して地中に埋めたみたいな感じです。


長くなりましたが今後とも、この作品をよろしくお願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第67話

どうも、フォーウルムです。
今回は新キャラと地下の宮殿についてと、今後の展開についてのものが少し出ます!


 

 

 

ーー発明家ーー

 

妖怪の山。その山には天狗や河童などが住んでいる。あまりにも広く、さらには危険な妖怪が沢山いるということで人が寄りつかないのが普通であった。現在は幻想郷の安全を守る『幻想郷治安維持隊』の本部が設立され、前よりも賑やかになっている。

 

 

そんな本部に凱は来ていた。正確には本部の近くにある工房に、だ。工房には選ばれた者しか立ち入ることを許されていない。そんな機密区画にはもう1人の影があった。

「どうかな?少しパーツを弄ってみたんだけど。」

その人物は黒い髪のショートヘアで身長は160センチほど、他の河童達と違い黒っぽい服を着ている。

川内(かわうち)、この改造だと若干ブレが出るんじゃないか?」

 

川内、幻想郷維持隊の武器工房の管理官だ。彼女自身もメモリを用いて様々なものを作る。その品質はピカイチだ。

凱は先程渡されたアサルトライフルを見ながらそう返す。ストックが元のものよりも若干伸ばされている。

「やっぱりか。使いやすい銃って案外難しいんだね。」

「使いにくくてもしっかりと運用できるものが良いやつだからな。」

「む〜。」

「そう悩むなよ。使えないものばかりじゃないみたいだしな。」

彼が眺めているモニターには1人の少女が映っている。その少女は伏せている状態で狙撃銃を構え、射撃訓練をしている。目標までの距離は700メートルだ。

「あれは彼女のお願いだからね。()()()()()()でも運用できる狙撃銃が欲しい、って言われた時は驚いたけどね。」

訓練をしているのは犬走椛だ。彼女は能力を用いてスコープ無しの裸眼での射撃を行なっている。弾は的の中心を貫通している。

「あれは彼女専用の武器になりそう。」

「スコープつければいいんじゃないのか?」

「あれにはスコープつける部品が無いからね。」

「……そうか。」

「そんなことよりもさ!」

川内は話を切り替える。

「地下の洞窟のボスが武器の素材を落としそうってほんと?!」

「ん?ああ、そうだな。」

「出来たらなんだけどさ、それ持ってきてくれないかな?」

地下の洞窟とはアンダー・パレスのことである。

「しょうがないな。確実に落とすとは限らんから時間かかるぞ?」

「いいよ!ありがとう!」

こうして凱はまた面倒ごとを引き受けたのだった。

 

 

 

 

ーー地下の宮殿ーー

 

 

 

「なるほど、そんでこんなとこに来てるんすね。」

「悪いな猟介。面倒に付き合わせちまって。」

「全然!先輩の役に立てるんなら本望っすよ!」

彼らが来ているのはアンダー・パレスの39層だ。

「ここ厳重に隠されてるから中々来れなくって。」

「だろうなぁ。」

彼らのいるアンダー・パレスに入るにはFDLの地下エレベーターの中に隠されている仕掛けを作動させないと入ることは出来ない。その仕掛けが使えるのは凱と護、そして姫乃の三人だけだ。

「地下五階の秘密の迷宮………。俺らの部屋の下にこんなのがあるとは思わなかったっす。彼らが住んでいるのは地下一階と二階。三階と四階は保管庫や貯蔵庫だ。

「まあ、地下四階までのボタンしかなかったからな。」

「初めてここに来たんで、もう一回説明いいですか?」

「ああ。ここ『アンダー・パレス』は地下深くまで続くダンジョンだ。層毎に出てくる敵の種族が別けられていて、20層毎にボスとなる上位個体が存在する。」

「フムフム。」

「んで、今回の目的はそのボスが落とす素材を求めて来ている。」

「なるほど。で、ボスの強さは?」

「以前俺が倒したのはそんなに強くなかった。まだドーパントの方が強かったな。」

「なら余裕そうっすね。」

「そうだな。よし、着いたぞ!」

目の前には巨大な扉がある。

「ここがボスフロアっすか。」

「ああ、準備はいいか?」

「もちろんっす!」

2人は扉を開け、中にはいる。

 

 

中に居たのは巨大な人形の怪物だった。その姿は下級のマジェストのマリオネットに酷似している。

「あれは?」

「《リーパー・オブ・ルーンドール》。様々な属性攻撃をしてくるが、そこまで強くはない。今回は鎌だから雷だな。」

「ふーん。殺っちゃっていいっすか?」

「構わん。」

「っしゃあ!殺るぞっ!」

 

数分後

 

「呆気ないっすね。」

全く苦戦することなく三首はボスを討伐した。

「だろうな。そいつはハズレ枠の雑魚だからな。」

そう言いつつ凱はボスが使っていた鎌を拾い上げる。

「それがお目当ての?」

「ああ。帰るぞ。」

「はーい。」

2人は帰るために歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

化学結社 本部

 

 

幹部の里崎はモニターを見ていた。そこに写し出されているのは別室で戦っていた一人の少女。

元々は人員調達の部門に所属していた彼女の実力を見ていたのだ。

『テストは終わりだよ。今日はゆっくり休むといい。』

マイクをオンにしてそう喋りかける。それを聞いた彼女は変身を解き、部屋を後にする。

「ああ……待ち遠しいなぁ。」

 

里崎の表情は、恍惚としていた。

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。
今回は特に本編については言いません

その代わり!これと同時刻に投稿されているであろうものについてご案内です。
ついに本作の裏話のアフタートークが完成しました!
そちらでは、本作のキャラの素の一面や、こちらで出なかった話までする予定なので、是非ともご覧ください!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第68話



「少しいいかな?」
「はい?どうかされたんですか?」
私が部屋で準備していると、里崎さんが声をかけてきた。
「今日は君を他の部門のメンバーに紹介しようと思ってね。」
里崎さんは笑顔で言うけれど、その目には別の何かが映っている。
「……いや、話しておこう。」
「?」
「僕の部下達は気が短いのが多いんだ。恐らく難癖言われるだろうけどなんとかやり過ごして欲しい。」
「は、はぁ……」
「じゃあ、行こうか。」






 

 

 

ーー新たなる仲間ーー

 

 

化学結社 戦闘部門管理棟

 

「今日からうちの戦闘部門に配属されることになったアザリア君だ。」

「はじめまして、よろしくお願いします。」

アザリアはそう言って礼をする。彼女の前にはもとから戦闘部門に配属されていた部門内幹部達が立っている。彼等は横一列に並んでおり特徴は左端から『厳つい軍人のような男』『チャラチャラした男』『銀髪でアクセサリーを身につけた女性』『真っ赤な髪の女の子』『黒髪長身の女性』の五人だ。

「彼女は今度の『幻想郷制圧戦』にも参加する。皆仲良くする事。僕はこの後用事があるから、武田君よろしくね。」

「はっ!」

武田と呼ばれた軍人のような男はビシリと敬礼をする。それを見て里崎は施設を後にした。

 

 

里崎が居なくなり、戦闘部門内で自己紹介が始まった。

「俺は武田(タケダ)海治(カイジ)だ。基本的に現場での指示出す。よろしく。」

竹岡(タケオカ)光成(ミツナリ)。ま、よろしくな。」

チャラチャラした男はどうやら喋り方もチャラチャラしているようだ。

Elizabeth Paula Clover(エリザベート ポーラ クローバー)デス。ヨロシク。」

銀髪の女性は片言混じりに喋る。

「私は櫛木(クシギ)王林(オウリン)だよ!よろしくね!」

真っ赤な髪の女の子は元気ハツラツだ。

「……」

最後の一人はアザリアを睨み付け、何も話さない。

折村(オリムラ)、自己紹介をしろ。」

武田に言われるが、折村は睨み付けたままだ。

「……認めないわ。」

「え?」

アザリアは首を傾げる。

「あんたみたいなぽっと出が今度の制圧戦に参加?あり得ないわ。」

「折村、何を言っている。」

「だってそうでしょ?こんな()()()()の方が私たちより優遇されるなんてあり得ないわ!」

折村はアザリアの耳を指差す。その耳は普通の人間より尖っている。それは彼女のの種族であるシルフの特徴だ。

「納得しろ。上からの指示だ。」

「ふーん。ねぇ、それってこいつが私たちより優秀だからってこと?」

「……何が言いたい?」

「こいつをここで負かせば、私の方が優秀ってことになるわよね?」

折村はアザリアに一歩、歩み寄る。

「あんたに決闘を申し込むわ。受けるわよね?」

「折村さん、それは不味いですって。」

竹岡が諌めようとするが、睨まれてたじろく。

「で、どうなのよ?受けるの?」

「アザリア、受ける必要はないぞ。」

武田はそう言った。

 

「わかりました、受けて立ちます!」

アザリアのその一言に、武田は深いため息を吐いた。

 

 

「いいんすか?武田さん。」

「サスガニシンパイデス。」

「…………仕方あるまい。」

訓練施設の真ん中で戦闘態勢に入るアザリア達を武田達は離れて見ている。

「こうなることは解っていたはずだ。里崎さんは何を考えているんだ……?」

 

 

 

 

 

ーーその炎は紅く、鋭くーー

 

 

「ルールは単純。どんな手段でも構わないから相手を再起不能にする。いいわね?」

「わかりました。」

折村とアザリアは互いに距離をとり、メモリを構える。

《ラプソディ》

アザリアは新しくもらっていたラプソディメモリを使いドーパントに変身する。

ラプソディ・ドーパントは薄赤色の体に赤のマフラーをつけている人型のドーパントだ。

「叩き潰してあげるわ。」

《バット》

折村が使ったのは蝙蝠の記憶を内包するメモリ、バットメモリだった。

蝙蝠のような姿をしたバット・ドーパントはラプソディに襲い掛かる。

「はあぁ!」

ラプソディは正拳突きをバットに繰り出す。

「甘いわね。」

バットは体を小型の蝙蝠に分解させ攻撃を回避し、ラプソディを回転しながら包み込む。

「しまった!」

蝙蝠達はラプソディに攻撃を繰り出す。その攻撃は本来、生身の人間に対して使い切り刻むための攻撃だがドーパント相手でも効果は絶大だ。

「くうぅぅ……」

蝙蝠達の拘束から解放されたラプソディは荒い息をしながら膝をつく。

「なんだ、この程度なのね。」

バットは人型に戻りため息をつく。

「こんなんじゃ、前居たとこも雑魚しかいなかったようね。」

「な……!」

「こんなに弱いくせに、調子乗ってんじゃないわよ!」

バットは思いっきりラプソディを蹴り飛ばす。

「うぐっ?!」

「ほら、さっさと死になさいよ。」

バットは地面に伏しているラプソディを執拗に踏みつけ、蹴る。

「はぁ……はぁ…」

「シルフってのも中々に頑丈ね。ほらっ!」

最後に思いっきり力を入れた蹴りがラプソディに突き刺さる。それを受けたラプソディは力無く項垂れる。

「こんなものね。」

バットはそう言ってラプソディに背を向け、武田達に向かって歩き出す。

「解ったでしょ?あんなやつは要らないのよ。」

「だからと言って、殺すことはないだろう!?」

「あーあ、どうするんすか?」

「………アブナイ!」

「は……?」

エリザベートが警告を発するが、それがバットに届く前に、彼女の腕は空高く弾き飛んでいた。

 

 

 

ーー覚醒ーー

 

 

 

「倒したはずよ、どういうこと?!」

バットはなんとか腕を再生しようとするが、うまく回復できない。

「一体なんなのよ、あんたは?!」

ラプソディは先ほどと姿が異なっていた。

体は黒く変色し、首のスカーフも赤黒くなっている。さらに腰には一本づつレイピアが装備されており、顔には仮面がつけられその目は紅く光っている。

「あんたなんかに!あんt

バットの言葉は最後まで続かなかった。何故ならばありえない速さで動いたラプソディによって切り裂かれ、細切れにされたからである。

「これが、ラプソディ………。」

「く………うぁ……。」

力を使い切ったのか、ラプソディの変身は解除されアザリアに戻る。

「エリザ、王林はアザリアの介抱を。

「ハ、ハイ!」「わかった。」

武田は指示を出し、アザリアを施設から移動させる。

「さて、死体をどうするか。」

「ですね、どうしましょうか。」

「美味しかったですよー。」

「「?!」」

折村だったものの処理を考えていた武田達の前には変な魚のような形をした怪物がいた。その魚の口には折村の腕が加えられている。

声の主は後ろからやってきていた。

「……死体処理ありがとうございます。(アズマ)さん。」

「いーのいーの。私もこれ使いたかったからさー」

東が手を伸ばすと魚は光に包まれ、手に収まる。その手には魚の形をしたフィギュアスロットとDのメモリがあった。

「それは?」

「ジルヴィスからもらったんだー。お魚さんのメモリもねー。」

「魚………魚か?」

竹岡は首を傾げる。

「じゃ、私は帰るねー。あとはよろしくー。」

「あと……報告書………うぐぁ………。」

「俺も手伝いますんで、頑張りましょっか。」

武田は、今後の自分の処遇を考えつつ、絶望するのであった。

 

 

 

 

 

 

数日後

「今回の制圧戦に志願した同志諸君、決戦の日だ。」

里崎の声が放送で鳴り渡る。構成員達や幹部は静かに聞いている。

「我々の望む世界を邪魔する反逆者どもを倒す日だ。各々、一層努力せよ!」

それと同時に大量の光が発生し、聞いていた構成員がドーパントに変身する。

「さあ、戦いの始まりだ!」

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました!
なんだか久々ですね、どうもフォーウルムです。
金曜日に捻挫して病院行ったり松葉杖生活になったりと色々あって遅れました。小説は書けるんで、今後も活動は続けます。

次回からは最後の演説の《数日後》の部分で何があったかを描きます。
同時にコラボ回でもあるので長くなる……かも?
お楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八章 幻想郷防衛戦
第69話



「さて、行こうかな。」
「ん?どっか行くのか?」
何かの準備をする姫乃に護が声をかける。
「うん、桜ちゃん達のところに行ってくる。」
「桜?……ああ、あいつらか。」
「そうそう、彼女達にも協力して欲しいんだって。」
「なるほどな、気をつけろよ」
「わかってるわよ。行ってきます!」






 

 

ーー雪の剣士と花の銃士ーー

 

 

 

とある日

 

 

ここはもう一つの幻想郷。凱達とは違う世界だ。

この世界を生きる彼らは、自分たちの店で一息ついていた。

「お疲れ様、桜」

「雪華様も、お疲れ様でした」

疲れを労う2人の店に1人の来客がやってくる。

 

「こんにちはー!」

「姫乃ちゃん!」

「いらっしゃい」

2人は笑って出迎える。

「お邪魔しまーす、って言ってもすぐに移動しなきゃだけどね」

「あっちで何かあったの?」

「…あれ、凱が居ないな」

「…凱くんはいつもの。それより2人に付いてきてほしいの」

「僕達で良いのなら」

「姫乃ちゃんの頼みなら!」

これまた笑って答える。

2人の仲もさらに深まっているようだ。

「ふふふ。じゃあ行きましょ。」

そう言って彼女は外に出ようとしてピタリと動きを止める。

「どうしたの?」

桜は疑問に思う。

「……つい癖で普通に外に出ようとしちゃったわ」

彼女は懐からメモリを取り出した。

「お願いね《ウォーズ》」

「おうよ」

メモリは光輝き、人の形になった。

「ウォーズさん!」

「へえ、君が」

「よお、ん?こいつは?」

「彼は雪華君よ」

姫乃は紹介する

「とりあえず、お願いしていいかしら?」

「任せな」

ウォーズを中心に魔方陣が展開され、四人は光に包まれた

 

 

移動中

 

 

「着いたぞ」

「ありがと。お疲れ様」

「今度は戦いで使ってくれよ?」そう言ってウォーズはメモリに戻った

「ありがとう」

「戦いで大活躍しそうですもんね」

桜は笑って言う。

「……実戦はまだなんだけどね」

姫乃は苦笑いをする。

彼女らが居るのは凱の店なのだが、彼の姿は見えない。

「あれ、凱さんは?」

「こっちよ。」

姫乃が手招きする。そこにあるのはエレベーターだ。

「え、エレベーター?」

「すごいな、こんなものが」

2人は驚きつつも姫乃と一緒に乗る

「これの地下五階よ。」

しかしボタンは地下四階までしか設置されていないように見える。

「…ボタンが無いな?」

「どうやって行くんでしょうか……」

「こうするのよ。」

姫乃はボタンの横に端末を近付ける。するとエレベーターがゴウンという音と共に動き出した。

「なっ!?」

「凄い仕掛けです…!」

突然の出来事に驚くも、エレベーターの震動になんとか耐える。

「ここから先は幻想郷であっても普通とは大きく異なるわ。」

姫乃がそう言うと同時にエレベーターは停止し、扉が開く。

彼らの目の前に広がるのは、薄暗く僅かな明かりが灯る宮殿だった。

「ようこそ、アンダー・パレスへ。」

 

 

ーー悪魔と悪夢ーー

 

 

「アンダー・パレス…」

「名前通り地下の宮殿ってことか……。異なる次元に存在する一種の異空間か?」

「そうね、正確には、湧き潰し。人里に出るはずだったマジェスト達をこっちに飛ばしていたら、増えすぎて今はダンジョンみたいになってるの。」

姫乃はそう言いながら壁の近くのロッカーを漁っている。

「凱君が言うには、この前100層をクリアしたらしいわ。」

姫乃はそう言って肩から物騒な銃を一丁吊るし、拳銃の動作を慣れた手付きで確認する。

「…十分多いだろ」

「ひゃ、100層も…」

ここに来てから驚きっぱなしの2人だ。

「……よし。はい、桜ちゃん。」

姫乃は先ほどから弄っていた銃を桜に手渡す。

「あ、ありがとう」

「これは?」

「《ADA 92DE》よ。」

「性能はどうなの?」

軍人の性と言うべきか、即座に聞く。

「使用弾頭は特殊弾頭。装弾数は9発。拳銃のなかでは一番使いやすい高火力なものよ。」

姫乃は追加のマガジンを3本、ポーチに入れて渡す。

「なるほど…」

「拳銃にしては装弾数が少ないな。僕達の昔使っていたものは16発だったが」

「火力は装甲車くらいなら反対側まで弾が届くくらいのものよ。それにこれは非正規品だし。」

姫乃は事も無げにそう言うと手元の端末を操作し始めた。

「徹甲弾かよ…」

「それで9発なら多いほうですね」

「さて……。あ、いたいた。場所は…なるほどね。」

姫乃は端末の情報を確認し、部屋の反対側の装置に入力を始めた。

「どうしたの?」

不思議に思って聞いてみる。

「凱君の今の居場所を確認したの。そこに行こうと思って。」

「ああ、そういうことね」

「案内してくれるか?」

「案内も何も、すぐよ。」

姫乃が装置のボタンを押すとゲートが開かれる。

「そうなの?」

「そこの奥か?」

「ええ、そうよ。」

そう言って姫乃はゲートをくぐる。姫乃に続いて雪華達もくぐる。

 

 

 

 

その先にあったのは巨大な扉だった。

「デカイな…」

「どうやってこんなの作ったんでしょうか」

「作ったっていうか生成されたっていうか。とりあえず入るわよ。………もう終わってるだろうけど。」

「凱〜?」

「いらっしゃいますか?」

扉を開けた瞬間だった。

 

ゴズンッ

 

3人の目の前に巨大な腕が落ちてきたのは。

「きゃああああっ!?」

「何だ!?」

条件反射で桜を庇うように位置取る。

「……はぁ。」

姫乃は呆れた様子で奥に進む。

「相変わらずね。」

「ん?ああ、姫乃か。どうしたんだ?」

そこにいたのは地面に倒れている巨大な蜥蜴の魔物を倒したと思われる凱の姿だった。背中からは半透明の羽が生えている。

「驚かせるな、凱…」

「び、びっくりしました…!」

涙目の桜を雪華が庇っている。

「………あ、今日だっけ?」

「…その様子じゃ忘れてたみたいね。」

凱がポリポリと頭を掻く。

すると

 

『ゴグアァア!!』

 

地面に倒れていた怪物が急に起き上がり、凱に向かって切られた腕とは反対側の腕を振り下ろしてきた。

 

「………喰っていいぞ。」

その一言で出現した黒い何かが怪物を頭から喰い千切った。

「うわあ、グロテスク」

「グルルルルル……」

「どうだ?旨いか?」

巨大な怪物は先程食べた物を飲み込む。

「なんだよ、それ…」

「ん?こいつか?」

「その怪物?だよ。」

「こ、怖いです……」

「雪華は一度あったことあるだろ。」

凱の一言と共に怪物は姿を変え、銀色の騎士の姿になる。

「お前か!」

忘れもしない。僕を抱えて音速で紅魔館へと運んでくださった、あのクソ騎士人形だ。

「こいつは『ナイトメア』だ。人間じゃないのは見ればわかるだろ?」

「そりゃなんとなく分かるが…」

「こ、怖いです…!」

「俺のペットだ!」

凱は自慢げに胸を張る。

「そういえば、なんでこんなところに来てるの?」

「おお、そうだった!」

姫乃の問いで凱は何かを思い出したらしく、付近を見回す。

「ぺ、ペット…」

「…意外と趣味悪いな」

桜と雪華は衝撃を隠せず、ナイトメアを眺めている。

「趣味が悪いとは失礼な。っと、見つけた。」

凱は壁に埋まっている水晶の前に移動する。その色は綺麗な桃色だ。

「…それは?」

「わあ…、綺麗……」

桜は見惚れたように見詰める。

「だろ?さて、やりますか。」

凱がそう言うと彼の体を黒ずんだオーラが包み込む。

「少し離れてろ。」

「分かった、桜、離れよう」

「あ、は、はい!」

桜は残念そうに水晶から離れる。

深く深呼吸をした凱の背中に2本の悪魔の腕が生える。

「…すごいもの生やすな、お前」

「禍々しいです…」

「オラアアァァ!!」

凱の気合いの入った叫びと共に背中の拳が高速で壁に向かって繰り出される。

「!」

「嘘…!?」

「ゼアアァァァァ!」

目にも止まらぬ速さで拳は壁に埋まっている水晶を殴り続ける。

「水晶が割れるぞ!?」

「な、何でいきなり…!」

「セアァッ!」

息を詰めた呼吸を吐くと同時に最後の一撃が繰り出される。

すると……

ピキッピキピキピキピキ

ガシャン

水晶の周りの岩が砕け、水晶が転がり出てきた。直径は車のタイヤ程もある。

「お、大きい…!」

「こんなに大きな水晶があるなんて…」

「よし!当たりだ!」

凱はそれを片手で持ち上げる。

「それをどうするの?」

「それは戻ってからのお楽しみだ。」

凱は腰にぶら下がっている端末を操作する。

「一旦戻るぞ。」

「はーい。2人も戻ろっか。」

「わ、分かった」

 

 

ーー取引ーー

 

 

 

FDL  地下4階 エントランス

 

「ついたな。」

「こっちよ。」

姫乃は雪華達に手招きをしながら部屋にはいる。電気がついていないので真っ暗だ。

「……っ」

しかし桜は、頑なにエレベーターから出ようとしない。

「ん?どうした?」

「…ああ、そういえばそうだったね」

雪華が彼女の手を取ると、ようやく歩きだした。

「……なるほど。なら、これならまだましか?」

凱がそう言って壁のスイッチを押す。

瞬間、部屋は明るくなり内装が見える。

そこは、カフェの地下とは思えないものがならべてあった。

壁には様々な銃が立て掛けてあったり、吊るされ、ガラスケースに入っているものも何丁か見受けられる。

「これまた凄いな」

「わぁ……」

「ADA武器だ。少し待っててくれ。」

凱はそう言うと部屋の奥に入っていく。

「どう?何か気になるのある?」

「…これですかね」

そういって指したのは、一丁のスナイパーライフル。

「なるほど、桜らしい」

「《ADA 20SR》ね。装弾数は10発で射程は1.8キロ。火力の高い弾薬や発火弾が撃てるのよ。」

姫乃は銃のスペックをスラスラと口にする。

「スナイパーだから、セミオートか?それともボルトアクション?」

「ボルトアクションよ。私からすると少し弱く感じるんだけどね。」

「…姫乃さん達が異常なんだ」

「十分すぎるほどに強いよ…」

「そうかしら?」

そう言って姫乃は首から掛けていた銃を持ち上げる。

「これみたいに改造してれば案外使えるんだけどね。」

「全く、その技術力が羨ましいよ」

 

 

「待たせたな。」

凱が顔を出す。

「こっちに来てくれるか?」

「ああ、分かった」

「何でしょう?」

「こいつさ。」

凱が招いた部屋のなかには先程の水晶が置かれている。

「さっきのじゃないか」

「何度見ても大きいですね…、それにとても綺麗です……」

「桜にそっくりだな」

「そ、そんな……」

桜は赤くなって恥ずかしがる。それを雪華は優しく見詰める。

「さっそくだが砕くぞ。」

「はあ!?」

「これを、ですか…!?」

「当たり前だろ?なに言ってやがる。」

「凱君、普通じゃ砕かないわ。」

「そう言うもんか。」

「少なくとも当たり前では無いな」

「で、ですよね?」

「まあ、いっか。」

凱はヘファイストスメモリをドライバーの補助スロットに挿す。すると彼の手に小型のハンマーが出現する。

「そうだ、後でその破片、直径1〜2ミリ程度のものを、出来るだけ沢山貰えないか?」

「……申し訳ないが、破片も残らんぞ?」

「何?まじかぁ……」

「何でですか?」

「…秘密だ」

「何で破片が残らないかは見てればわかる。」

凱はハンマーで水晶を思いっきり叩く。それだけで水晶は粉々になった。

「凄いな、一撃で」

「よっと。」

凱が手を振ると砕けた破片が一つになっていく。

「あとはこれをくっつけて…」

手に持っていたハンマーを置き、あらかじめ置いてあった剣の柄を近付ける。するとその柄に破片が集まり両刃の大剣になった。

「見事だな…」

「綺麗な剣です…」

「綺麗ね。」

「ああ。ほら。」

凱はその剣を雪華に差し出す。

「いいのか、こんな綺麗なものを」

「ああ、前金として受け取っておけ。」

「でも前金ってことは、何か面倒事でもあったんですか?」

桜が不思議そうに尋ねる。

「あったんじゃない、これからあるんだよ。」

そう言った凱の顔には、不敵な笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございます
どうも、お久しぶりのフォーウルムです
現実(リアル)での用事が一段落ついたので投稿しました。
今後も少しづつ投稿していくつもりです
遅くても失踪はしないので、ご心配なく


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第70話




栄光の化学結社 本部

「♪~」
幹部の1人である谷嶋(タニシマ)美桜(ミオ)は好物のクレープ片手に自室に向かって歩いていた。
「やっぱクレープはチョコバナナね。値段の割に美味しいから得した気分になるわ~♪」
クレープがその値段で買える理由が幹部割なのを彼女は知らない。
そんなとき、ふと見覚えのある顔を見つけた。
「あれ?アザリアちゃんじゃない!」
それは元々は妹分であり、部下である凛のところにいたアザリア・シロッコだった。可愛いもの好きの谷嶋からすれば、人形のような容姿であるアザリアは是非とも自分のとこで可愛がりたい、と思っていた。
「これから任務?頑張ってね!」
谷嶋は笑顔でそう言った。
が………
「……………。」
アザリアは何も言わずに立ち去ってしまった。
「あら?あらあらぁ?」
以前の彼女はもっと明るく、優しげな雰囲気の少女だったはずだ。あんなにも殺気だっているのはおかしい。
「……今度、()()してみようかしら?」





 

 

ーー戦いへの備えーー

 

 

「これからだと?」

「どういうことですか?」

「実は、最近紫から情報があってな。」

「私たちの敵対組織が攻め込んでくるっていう話があったの。」

「そこに予想外の戦力である僕達を加え、敵を撹乱する、ってところか?」

「そう単純に済めばいいけどな。」

「どういうこと?」

「以前巨大な奴が出てきた時も、カラミティが現れたときも、恐らく裏でアイツらは別の行動を起こしていたはずなんだ。予想外のさらに上を行くことが起こるかもしれない。」

凱は真剣な表情で話す。

「正直2人が手伝ってくれると助かるんだが。」

「当然!」

「断る理由なんてありませんから!」

「ありがとな。んじゃあさっそく特訓と行くか!」

「おおっといきなりか…」

「だ、大丈夫なんでしょうか……」

「大丈夫だろ、深層に潜るだけだし。」

「十分ヤバそうなんだが」

「生きて帰れるかな……」

「問題ない…はず。とりあえず武器選ぶか。」

凱はそう言って武器が置いてある方に歩いていく。

「問題無いとは思うぞ。能力で武器なら何でも作れる。」

「そうか?桜はどうする?」

「私は、さっきのライフルと…、接近戦ようにガイアナイトドライバーを持って行こうと思います」

桜の応えを聞いた凱は少し考える。

「銃は、あんま意味ねえかもな…。」

「え?」

「そうなのか?」

「……まさか、凱君…最下層行くの?」

「おう!じゃあ行くぞー!」

 

ーーLetsボス戦!ーー

 

アンダー・パレス 第81層

 

「よし!準備はいいな?」

姫乃は「疲れてるから寝る」と言って部屋に戻ったので、三人で来ている。

「ここだと近接戦闘が主になるかな?」

「近接戦闘は、あまり得意じゃないですけど、頑張ります!」

「大丈夫だ、いざという時は僕と凱がいる」

「今回は俺付き添いだから。ほらさっそくだぞ。」

凱が指で指す場所には騎士の姿をしたマジェストが3体いた。

「行くぞ!」

「は、はい!」

雪華は二刀流、桜はダガーを用いて立ち向かう。

1体目の騎士が桜に向かって槍を突き出す。

「こんなもの!」

持ち前の身軽さとしなやかな動きで躱し、一撃を膝関節へ叩き込み、ぐらついた隙をついて雪華が一刀のもとに斬り捨てる。

それを見た2体目と3体目が2人に襲いかかる。

「当たるかっ!」

今度は雪華が両方を受け止め、桜が炉心へダガーを突き立てる。

2体目が崩れ落ちたのを見て、3体目は盾を構えて突撃する。

「「はああっ!」」

雪華が受け流し、背中へ向け同時に突き立てる。2人の刃は寸分の狂いなく炉心へ刺さる。

急所を突かれた騎士は音をたてて崩れる。

「やったな」

「私にも出来て、良かったです!」

2人は笑顔でハイタッチなどをしている。

「いやー、流石だな。」

凱は感心したように拍手をする。しかし、彼はまるで戦うつもりは更々無いと言わんばかりに丸腰だ。

「昔から一緒に行動していたからな。当たり前さ」

「階梯は違えど、相棒みたいな感じでした」

「いいねぇ。これなら俺がいなくても行けそうではあるな。」

凱は満足そうに頷く。

「さて、どんどん行こうか。」

 

そうして三人はさらに進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

アンダー・パレス 第99層

 

「そろそろだな。」

凱達の目の前には巨大な扉がある。

「…いかにもボス部屋って感じだな」

「2人に倒してもらうのが目的なんだが、ボスによっては俺も加勢する。」

凱は伸びをして続ける。

「まあ、よっぽどじゃなければ勝てるから。準備はいいか?」

「了解」

「が、頑張ります!」

「じゃあ、行ってこい!」

凱が思いっきり扉をあける。

そして部屋の中に雪華と桜は踏み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?あ!あそこにあるのは………!」

 

 

 

 

第100層 剣聖の闘技場

 

 

 

 

 

部屋はとても広いが、若干薄暗い。

「ボスなんて居ないぞ…?」

「でも、何かおかしいです」

辺りを見回し、警戒する2人。

そのときだった。雪華の首を狙って何か銀色のものが高速で近付いてきた。

「…っ!?」

間一髪で、雪華はバク転で攻撃を回避する。

「雪華様!」

「問題ない!何だ!?」

2人の前に現れたのは体が黒い靄に覆われた騎士だった。

それは音もなく姿を消す。

「…まるで、影の騎士(シャドウ・ナイト)じゃないか」

雪華がそう言ったとたん、再び騎士が実体化し、剣を構えて接近する。

「そこだっ!」

雪華は剣を構え、何とか攻撃を受け流す。

騎士はさらに連続で剣を叩き込む。

「くそ…」

何とかダメージは無いが、防御で手一杯だ。桜も介入出来ず、苦い顔をしている

そんな時だった。ベチャリ、と何かが桜の後ろに落ちてきた。

「な、何…?」

その何かは姿を変えて騎士のような見た目になる。

しかし、先ほどと違い武装は刀2本に鎌だ。

「こんなのを、1人で…?」

巨大な騎士は手に持った鎌を横凪ぎ振るう。

「きゃあっ!」

なんとか回避するも、これではジリ貧だ。

「うあっ!?」

「桜!!くそっ!」

掠っただけで数メートルも吹き飛ばされ、雪華から声が上がる。

騎士は2本の刀を交差させる。するとその剣を赤い光が包み込む。

「な、何…!?」

「まずいっ…!!」

なんとか黒い騎士を弾き飛ばし、桜のもとへと向かう。

そんな雪華の動きを邪魔するかのように黒騎士が体を霧状にさせて立ちふさがる。

「くそ…、桜!こっちに来い!」

「は、はい!」

転びそうになりながらも雪華の方へ走りだす。

その時だった。今まで刀に力を収束させていた騎士がその刃を振るった。放たれた光は桜目掛けて飛翔する。

「きゃああああっ!!」

「桜!!」

桜に直撃し、雪華は悲鳴をあげる。

辺りを砂煙が覆う。砂煙が晴れると、そこにたっていたのは……

「間一髪って所か?」

凱が立っていた。

 

 

 

ーーイレギュラーと魔人の乱入ーー

 

 

「が、凱、さん……」

「ほぅ……。全く、来るのが遅いぞ!」

雪華は安堵の溜め息をつく。

「すまんすまん。そこの小道に珍しいものがあってな?ついそっちの方に行ってたら遅れちまった。」

「サンキュー、凱。さぁて、さっさとこっちを終わらせてやるか!」

そう言って、雪華は1振りの剣を造る。それを出した途端、周囲が日が出たかのように明るくなった。

黒騎士は分が悪いと見て標的を桜に変えて突っ込んできた。

「馬鹿なやつだ!」

凱は黒騎士の前に高速で移動し右手で黒騎士を掴んで雪華に投げ飛ばす。

「喰らえ、聖剣ガラティーン!!」

剣─、ガラティーンから焔が斬撃となって黒騎士へと向かう。

ガラティーンはそのまま黒騎士を一刀両断する。

「ナイスー。さて、こっちをどうするかだな。」

凱は巨大な騎士に向き直り、右手を顎に当てて考える。

そんな凱に向かって騎士は鎌を振り下ろす。

「凱さん!」

「大丈夫だ、あいつなら」

「そうそう、一々心配してたら胃に穴が空くぞ?」

凱は既に騎士の目の前から2人の背後に移動していた。

「決めた。試運転がてらこれ使うか。凱はそう言って新たな魔剣《ドラゴニス》を出現させる。

「2人とも下がっててな。」

「こりゃまた凄そうな剣だな」

「そ、それは…?」

「1分で決めてやるよ。」

そう言って凱はドラグニスを自分の体に突き刺す。

「え!?」

「何やってんだあいつ!?」

「くうっ………グオオオォォォ!!

凱が黒い光に包まれ、咆哮が部屋全体を揺らす。

「ぐっ…!」

「す、すごい圧です……!」

桜はおろか、雪華ですら二の足を踏むほどの気合い。

『グルオォォォ!!』

光が消え、凱の姿が露になる。そこにいたのは黒い羽が二枚生え、全身を黒い表皮で覆われた赤眼の悪魔だった。

紡ぎ手(フォーウルム)から半人半魔だと聞いていたが…」

「す、すごい姿です……」

悪魔になった凱は変形し、黒い粒子が溢れ出すドラグニスを騎士に向ける。そして、次の瞬間に凱の姿は掻き消える。半秒後……騎士の右半分が轟音と共に消し飛んだ。

「嘘…!」

「凄まじいな」

その威力に驚く。

『グガァ!』

凱は高速で接近し、目にも止まらぬ速さで騎士を切り刻む。気がついたときには既に騎士だったものは見るも無惨な姿になっていた。

「…もう全部あいつ1人で良いんじゃないかな」

「ど、同感です」

 

 

ーー虚無との邂逅ーー

 

 

 

「大丈夫か、凱?」

「………」

凱は何も言わない。

「…かなり消耗するみたいだな」

「………ガフッ」

凱は急に吐血した。

「凱!大丈夫か!?」

慌てて駆け寄り、問いかける

「馬鹿!来んじゃねゴフッ」

「撤退するぞ。桜、斥候を頼む」

「了解しました」

そう言って、桜は戻り始めた

「……馬鹿者め。」

凱の懐から声がしたと思うと凱が急に立ち上がる。

「凱?」

心配に思って近づくと。

「触れるな、雑魚が。」

凱から青白い光が吹き出す。

「なっ!?」

雪華は慌てて回避する。

雪華を睨み付ける凱のその目は普段の灰色の瞳ではなく、深緑色だ。

「なんだ、あの目…」

「……貴様、誰だ?」

凱から発せられる声は普段とは違い、鋭い殺気を帯びている。

「…凱の友人」

「何だと?」

凱は目を細め、2人を見る。

「……こいつにこんな友人は居なかった筈だが…。」

「…そうか。」

辺りを覆っていた光が消える。

「我が名は《ヴォイド》。『虚』を司り、次元を繋ぐ者なり。」

「そうか。ではヴォイド、僕達に敵対の意思はない。そこだけ分かってくれ」

両手をあげて敵意がないことを示す。

「……不愉快だ…。」

「何?」

細められていた(ヴォイド)の眼が急に見開かれる。

「消えろ塵共!」

凱の背中から4本の腕が伸びる。そこから放たれた斬激は雪華達の後ろに隠れていたマジェスト達を一瞬にして消し去る。

「…気を取られていたとはいえ気づかなかった。まだまだ未熟だな…」

「驚きました…」

「ふん、まあいい。」

凱は背を向け、手をかざす。

次の瞬間には三人ともFDLの店内に戻っていた。

「ここは、凱の店か」

「転移…?」

雪華と桜は辺りを見渡す。そこは既に見知った凱の店であった。

「おい、貴様。」

ヴォイドは雪華を睨み付ける?

「僕か?」

「そうだ。」

「何だよ?」

「名前は何と言うのだ?」

「霜月 雪華だが?」

「私は霜月 桜です」

「『霜月雪華』『霜月桜』…か。」

ヴォイドは2人の名を口の中で反芻する。

「いい名前だ。次会う時はお前達と戦いたいものだ。」

そう言うと目の色が灰色に戻る。

 

 

「大丈夫か、凱」

「……頭痛てぇ…ヴォイドの野郎『強制接続』使いやがったな。」

凱は頭を振って椅子に腰かける。

「俺は大丈夫だ。」

「なんなんだ、あいつは」

「ヴォイドメモリ。エクストラの1体で……話すのめんどいから省くが、敵じゃない。」

「なら安心した」

「本当ならエクストラと実践させるのが特訓に効果的だが、今日は疲れたろ?」

「さすがにな」

「怖かったです…」

「だろうな。……にしても、妙だな。」

凱は椅子に寄り掛かる。

「あのフロアのボスはミスト・アンジェロ(煙騎士)ガルバディウスアンジェロ(分裂クソ騎士)のどっちかなんだが、あのデカイのは一体……?」

 

「桜、怪我は?」

「防具のおかげで、目立ったものは。雪華様こそ」

「心配無用だ」

悩む凱を他所に、雪華達は互いの安否を確認する。

「……まさか……でもそんなことは…。」

凱がそう呟いた時だった。

「凱!居るか?!」

総塚護が慌てた様子で店にやって来た。

「お前、護だったか?」

「ん?………?」

雪華の事がわからず、護は首を傾げる。

「…そいつは雪華だ。」

「おお!あのときの!」

「母さんとはどうだ?」

揶揄うように笑って問いかける。

「……???」

護の頭は疑問符で埋め尽くされる。

「そんなことより、何かあったのか?」

「そうだった!これ見てくれ!」

護は凱に一枚の紙を手渡す。

「………これは。」

「どうした、凱?」

「何か重要なことが…?」

「…護、全員集めろ。」

「わかった。」

護は頷き、部屋を出る。

「面倒なことになった…!」

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
どうも、フォーウルムです。

後書き……何書けばええんやろ?
とりあえず今回はこのコラボ回について少し。
八章のコラボ回はお相手のくらんもちさんと一緒に書いている(2人で会話形式で文を書き、あとから自分が補正する)のですがたまに両者の都合が合わないことがあって進まないことがあるので、一気にがーっとやってしまいます。
コラボ回が4000字を越える理由の1つ『楽しくてついつい伸びる』ってやつです。
今回はあと3、4話ほど書き溜めてあるので、補正でき次第投稿します。
気長にお待ちください。m(_ _)m

それではまた次回、お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第71話



化学結社 情報管理棟

……カチッ…カタカタカタカタ……


明かりのついた部屋でパソコンを弄っているのは化学結社の情報収集のスペシャリストで結成された情報部門『トゥルーエンド』の司令官である香坂(コウサカ)アインだ。彼の部門は少々特殊で、彼とその直属の部下達は基本的に顔を合わせることはない。各地に潜入している部下達が情報を香坂に送り、香坂は新しい任務の詳細を送る。
「退屈だなぁ。」
そんな機械的な作業の繰り返しに香坂は飽きてきていた。
部屋を出ても何も面白いものは無い。メモリの能力のおかげで知りたいことは大体頭に入ってくる。もっとも、非活動状態である今はそこまでの情報はない。
「失礼します。」
ノックと共に入ってきたのは彼の部門の構成員だ。
「どうしたぁ、なんか用かぁ?」
()()()()()。」
「…寄越せ。」
香坂は構成員から資料を受け取り、対価として1つの封筒を手渡す。
「ご苦労だったなぁ、また頼むぞぉ…。」
「御意。」
構成員が部屋を出たのを確認して、資料に目を通す。
内容は『幻想郷制圧作戦』で使用されるメモリについてだった。
(メモリは例の《ラプソディ》に………ん?《ハンド》、《ミラー》。それに《マグネット》ぉ?)
ラプソディの性能については知っているが、あとの3本は全く知らない物だった。
「……おもしれぇじゃねえかぁ。」
新型のメモリに自分の知らないメモリ達。香坂にとってそれらは彼の興味をそそり、退屈を潰すのにもってこいだった。
「さぁて、調べっかなぁ。」
香坂は椅子にもたれ掛かり、懐からメモリを取り出すのだった。









 

 

ーー戦いに備えてーー

 

 

 

 

「………以上が、先程知らされた情報だ。」

凱が資料を置く。

部屋には護や姫乃、音川と三首達。そして雪華と桜の2人が居た。部屋の外には霊夢や魔理沙達も居る。

開示されたのは1つの声明。幻想郷の人里を襲撃するという化学結社の宣戦布告であった。

「何か質問があるやつはいるか?」

「じゃあ、俺から。」

三首が手を上げる。

「化学結社とは関係ないんすけど、その御二人は?」

そう言って三首は雪華達を見る。

「僕は霜月 雪華。こことは違う幻想郷…、言ってみれば異世界から来た。で、こっちが」

「妻の、霜月 桜です」

それぞれ自己紹介をする。よく遊びには来ているのだが、意外とこの世界での交友関係は狭い。………二人のことをよく知っているのは凱と姫乃。あとは紫やフォーウルムくらいなしか詳細を知らない。

「…敵ではないんすね?」

「ああ。これもあるしな」

そう言ってスノーメモリを取り出し、全員に見えるようにする。

「……!」

メモリを見た三首を含めた数人が戦闘態勢を取る。

「落ち着け。そいつに敵意はない。雪華、安易にメモリを見せるな。ここではそれだけで戦いが始まる。」

「ああ、すまない。敵ではないことが証明出来るかと思ったんだが、軽率だったな」

「ま、敵じゃないならいいっす。時間あるみたいなんで遊び行ってきますね。」

「羽目はずすなよ?」

「はーい。」

そう言って三首は部屋を出る。

「私もこれで失礼する。ギターのチューニングがまだなのでな。」

「ああ。」

音川も部屋を後にする。

「さて、さっそくで悪いが、明日から雪華達には特訓として実戦をやってもらう。」

「了解した。メモリは使うのか?」

「存分に使ってくれ。それで相手なんだが……」

「ちょっといいかしら?」

部屋に入ってきたのは風見幽香だ。

「どうした?」

「その相手、私がやっても?」

「……雪華、お前はどうだ?」

「構わないぜ。それに……」

ふっと笑って言い放つ。

「1度母さんとは戦り合ってみたかった!」

『……!?』

姫乃と護、その他事情を知らない面々が驚きの表情をする。

「……雪華、色々誤解を招くからそれでやめとけ。」

「護さん…よろしいですか?」

「さ、早苗?!やめろ、やめろぉ!!」

凱と幽香は平常だったが、護は殺気溢れる早苗によって部屋から連れ出されてしまった。

「…別世界の、なんだがな」

「…これは雪華様が悪いですよ」

「ああ、そうだな……」

「全く、今日は休め。部屋空いてるから貸してやる。」

「…その前に、ちょっと早苗に説明してくる。僕のせいだし、さすがに可哀想だしな」

「やめとけ。殺されっから」

「…分かった、早苗ってあんな顔できるんだな……」

「あ、あはは…」

 

 

 

ーー幽香との特訓ーー

 

 

 

 

次の日…

 

地底旧地獄 闘技場

 

「これから雪華、桜対風見幽香の実戦を始める。ルールは単純。最後まで立ってた奴の勝ちだ。準備はいいか?」

「ああ。行くぞ、かあ…んっん!幽香!」

準備の出来た2人を見たあと、凱は幽香に近付く。

 

「……風見。」

「何かしら?」

「雪華は9割、桜は5割までならいいと伝えておけ。」

「!……わかったわ。」

 

 

 

 

雪華は剣を、桜は銃を出し、戦闘に備える。もっとも、これは特訓だから、実弾ではなくゴム弾だ。それでもなおかなりの威力だが。

「行くわ……変身!」

《アブソリューター》

幽香はドライバーを使用し、《ガイアナイト・アブソリューター》になる。

さらに……

《ブラッド》

補助スロットにメモリを挿し込み、ブラッドを使用し剣を出現させる。

「いきなりか。なら、こちらも遠慮は無用だな。桜!」

「はい!」

《スノー》《リコリス》

「「変身!」」

スノーガイアナイト、リコリスガイアナイトが顕現し、辺りは深雪に包まれ、そこから薄氷の華が咲く。

「さあ、行くわ!」

幽香は剣を構え、かなりの速度で雪華の首を狙い、振り下ろす。

「この程度」

彼はそれを右手の氷剣で受け止め軽々と押し返す。そして、体勢が崩れるであろう瞬間を狙い、桜がダガーを投げつけた。

「甘いわね。」

幽香はそれを見ずに首を振るだけで回避する。さらにそのまま体を倒し、連撃に繋げる。

「へえ、やるね」

そんな事を呟きつつ、その連撃を片手でしのいでいる。

「中々やるじゃない。」

幽香はそう言って笑みを浮かべる。

「…楽しくなってきたな。」

不敵な笑みを浮かべると、剣の速度がさらに上がる。

「そうね。でも、ここまでよ。」

幽香はそう言って距離を取り、何かを宙に投げあげた。

「…何だ、あれ?」

本能が警鐘を鳴らす。あれはかなりまずい代物だ。

「桜、下がるぞ!」

「はい!」

桜も同じことを思っていたようだ。

すぐに後退した。

「遅いわ。」

《カラミティ》

メモリから黒い腕が溢れだし、瞬く間に雪華と桜を引きずり込む。

 

 

 

ーー厄災は見えず、唯荒らすのみーー

 

 

 

 

 

気がつくと、2人はビルの立ち並ぶ場所に居た。

「何処だ、ここ」

「幻想郷、なんでしょうか…」

辺りを見渡す2人。その時、僅かだが地面が規則的に揺れていることに気がついた。

「…これは」

「揺れている…?桜、飛ぶぞ!」

「は、はい!」

2人は慌てて飛びあがる。

その瞬間、二人の前に建っていたビルが轟音と共に砕け散り、瓦礫が砲弾のように飛んでくる。

「はぁっ!」

雪華は桜の前に立ち、剣を振り回して全ての瓦礫の軌道を逸らしていく。

弾かれた瓦礫はありえない軌道を描き、他のビルを貫いていく。

「…やっぱり、何らかの意思があるな。桜、兎に角上に飛ぶぞ。」

「分かりました!」

時折向かってくる瓦礫などを受け流しつつ、兎に角上へ上へと向かう。

二人がビルの高さを追い越した瞬間、辺りが再び変化する。

そこは、日差しが照りつける浜辺だった。そんな中、雪華は幽香が投げたメモリを思い出す。

「カラミティ、『災害』の記憶か。ということは………津波が来るぞ、備えろ!」

「はい!」

2人はそのままの高度を維持しつつ、陸の方へ向かう。

だが、それは間違いだった。二人の足元の水は、縦方向ではなく横方向に、まるで渦を巻くかのように動き始めていた。

「違う、これは、竜巻です!」

「前兆くらい起こせよ、そこ含めて災害だろうが」

そんなことをボヤきつつ、雪華は不可融かつ不可壊の氷のドームを作る。

「つかまえた」

竜巻が発生すると思いきや、渦から出てきたのは何十本もの腕だった。腕は海水を巻き込み、氷のドームを抑え込む。

その様子を見ながら呟く。

「…もう災害関係ないだろ」

「さいがい…ちがう」

声が二人の頭に響く。

「おれは「カラミ「ティ」やくさいをつかさ「どる。」

複数の声が頭に流れ込んでくる。

「厄災ねぇ…。マ〇ターソードでも出すかな」

「多方面から苦情来るのでやめてください」

「兎も角、こいつもエクストラかな」

「ゆうかいってた。「しな「ないていどに」たたかって」いい。「ころ」さなければ」じゆうにしていいって」

「成程な。ここはお前の世界か。なら、正々堂々やろうじゃないか。」

「ここ、つまらない」

辺りが再び変わり、今度は荒野になった。

その為か、水中に居たカラミティの姿が現れる。黒い体に、四本脚。背中からも巨大な腕が2本生え、目は単眼で紅く充血している。

「おぞましい、ですね……」

「…さっきの見る限り、変幻自在なんだろう。本質を見定めるぞ」

雪華は落ち着いた声で剣を構える。

「おまえ、やっちゃだめっていわれた。」

カラミティから黒い光が溢れ、桜の体にまとわりつく。しかし、痛みや苦しさは感じない。

「きゃあ!離れて…!」

腕などを振り回し、剥がそうとするが、一向に離れる気配はない。

「それはぼうぎょのそくばく。おれのこうげき、それでまもれる。」

カラミティの口に光が収束していく。

「桜、そのままじっとしていろ。こいつの目的は僕だ」

そう言って身構える。

「けしとべ。」

カラミティから光線が放射状に放たれる。

「……」

雪華は無言でそれを受ける。

「きゃああああ!!」

向かってきた光線を、避けることも出来ず受けるが、桜には傷1つない。だが、雪華は。あの方はどうなのか。無事であってほしい。

「………?おかしい?」

カラミティは首を傾げて雪華が居るであろう方向を見る。

「てごたえ、ない。」

そこには、巨大な氷盾があった。

「…フリージング・イージス。僕の持つ防御技。ほとんど全ての攻撃を防ぐことのできる、かなり凄技さ」

「雪華様…!」

「あれぐらいでタヒねるかっての」

「くひ」

「あはは「ははっは「は「HAH」A」はは」ははは!」

カラミティから狂ったような笑いが響く。

「おいおい、どうした」

「笑ってるんでしょうか…?」

「あははっは……いい!オマエイイ!!」

カラミティから何百本もの腕が伸ばされ、そこに光が集まっていく。

「なんかヤバそうだな…。」

「まずい…!」

しかし、間に合わないことを悟り、フリージング・イージスを起動、設置する。

「キャハアハハッッコワレロコワレロコワレロォ!!」

カラミティは光を解放する。

瞬間、桜と雪華の意識はブラックアウトした。

 

 

 

ーーエクストラ()すら恐れる(悪魔)ーー

 

 

 

 

数分後

 

「ん…」

先に目覚めたのは雪華だ。記憶はカラミティの攻撃が放たれた瞬間で途切れている

「…負けたんだっけか。我ながら情けない」

1人ごちる。とは言ったものの、雪華に関しては九割(死亡三歩手前)まで本気を出していたカラミティと渡り合っていたのだ。十分化物である。

それにしても、辺りの雰囲気がおかしい。ここは確かに現実世界のはずだが違和感が拭えきれない。

そう思った雪華は隣で昼寝をしているかと思うくらい心地よく寝ている桜を起こす。

「…桜、起きてくれ。」

「ふぇ……?」

「何かおかしいぞ。」

「え…?」

そして2人は同時に背後を見た。

2人の目に映ったのは……異形の集団だった。体の所々に銃や弾丸がへばりついたり、一体化している。

「…こいつはヤバいな。」

「こんなの、どうすれば……。」

「桜、上に飛べ。」

「は、はい!」

桜が上に飛び上がった頃を見計らい、雪華はメモリを刺し変える。

《スノー マキシマムドライブ》

「グラン・アイスエイジ!!」

次々と異形達が凍結し、剣の衝撃波によって破壊される。

「ぐぎゃああ?!」

そんな中、響いたのは聞き覚えのある声の絶叫だった。

「あ、あれ?なんか余計なもの攻撃したな?」

「その声…、ウォーズさん!?」

「痛ぇ…痛ぇよ…」

声のした方向にいたのは悶え苦しむ、人の姿になったウォーズだ。周りに居た異形達はウォーズを心配している。

「その…、すまなかった。」

「うわあ、痛そう……」

「ただでさえ、コイツらは俺と感覚共有してるってのに…容赦ねえな。」

ウォーズは体を擦りながら起き上がる。

「知らなかったからな…、誰がお前と感覚共有してるなんて思うんだよ」

心底申し訳なさそうだ。

「まあ、いいさ。それよりも、無事か?」

「なんとかな。」

「雪華様のおかげでしょうか…?それともウォーズさん?」

「いや、お前らが無事なのは……。」

ウォーズが何かを言いかけた瞬間轟音と激震が三人を揺らす。

「何…!?」

「この気配…、カラミティか!?」

確かにカラミティだった。もっとも、その姿はボロボロの雑巾のようになり、体は崩れかけている。

「何だ?まだ殺り足らんか?」

その先に居たのは凱……なのだが、体からは緑色の粒子が溢れ、手には巨大な鎌が握られている。

「待て、凱!」

「それ以上は…、死んじゃいます……!」

「む?起きたか、霜月夫妻!」

至極真面目な顔で冗談のような言葉を口にする。

「ああ、おはよう。………いやいや! そうじゃなくてだな!」

「カラミティさんが、死んじゃいます!」

「はっはっは!我らマジェステルダムに『死』という概念は存在せぬわぁ!」

凱はそう言って再び鎌を構える。

「落ち着け、ヴォイド。」

「む?ゲボフッ」

そんな彼に対し、ウォーズは膝蹴りを叩き込む。

「…何なんだ、これ。」

「さぁ…?」

微妙に付いていけない2人であった。

「グヌゥ。」

凱から光の球が出てくる。

「流石にやりすぎだ。」

「ダガ……」

「凱に言いつけっぞ」

「ソレハヤメロォ!」

「なるほど、ヴォイドは凱が弱点と。」

「メモしておきます。」

「いや、エクストラ全般アイツ苦手だぜ?」

「一体何やらかしたんだあいつ……」

首を傾げる雪華にウォーズは肩を竦める。

「俺らは『死』、つまりメモリブレイクという事が存在しない。」

「ふむ。」

「メモリブレイク…?」

「マキシマムドライブを受けると、メモリが破壊されることがあるんだ。」

「…だから、だからな?」

「「だから?」」

「アイツの攻撃を気が済むまで受け続けなきゃいけない羽目になる。」

ウォーズは死んだような目をしており、ヴォイドはさっきから「バスターハヤダ、バスターハヤダ。」と呟いている。

「うわ生き地獄」

「文字通りの、ですね……」

「そりゃこんなになるわな……」

「何の話だ?」

凱が意識を戻したらしく、話に参加してくる。

「なんでもねえよ。」

ウォーズは何事もなかったかのように振る舞っている。

「そうか?まあいっか。それより、雪華。異常はないか?」

「…少し力が重い。メモリの力だけじゃない、僕自身の力もだな。」

「私もです…」

「そうか。本当は桜にもう1個実戦させたかったが、無理か。」

「明日には治るか?」

「どうでしょうか……」

「様子見だな。最悪の場合はそのまま本番になるが、とりあえず休め。」

「分かった、じゃあ明日は少し慣れておくか。」

「そうですね。」

 

 

そうして、また1日が終わった。

 

 

 

 

続く

 

 

 

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
どうも、フォーウルムです。
最近は可もなく不可もない平和な日常を過ごしております。
捻挫の方もだんだん良くなってきて、今では普通に歩けるまでになりました。
さて、次回も特訓回です。
誰と誰が戦うのか、お楽しみに




あと、アフタートークの方もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第72話

カラミティと戦った次の日。

雪華と桜は凱達がいる地底の闘技場に来ていた。

 

「おはよう、二人共。調子はどうだ?」

「僕はまだ少し。」

「私はなんとか大丈夫ですけど……」

「そうか、じゃあ今日は桜の特訓だな。」

「お願いします!」

「さて、今回は実弾を使え」

「でも、それだと怪我が……」

「問題ないだろ。なんてったって、相手は……」

そう言って凱は視線を闘技場に向ける。

そこでストレッチをしているのは姫乃だった。

「姫乃ちゃん…!?」

「こいつは面白いものを見られそうだ。」

「雪華様!?」

「親友対決だからな。」

「まあ、本気で殺ってこい。」

「…わかりました。行くよ、姫乃ちゃん!」

 

ーー親友対決ーー

 

 

 

「あ、おはよ!桜ちゃん!」

桜を見つけた姫乃は笑顔で手を振る。

「よっと!」

桜は闘技場に飛び込み、姫乃のもとへ向かう。

「もう大丈夫なの?」

「私はね。でも雪華様はまだ本調子じゃないみたい。」

「大体、エクストラメモリのマキシマム受けきれることが凄いのよ?」

「それはまあ、雪華様だし…」

それに、本来、雪華様の力はあんなものではない。自らに枷をかけているのだ。

「ま、いいわ。今日は全力でやるからよろしくね?」

「うん、私も!」

2人は笑い合う。この後戦うと言っても、誰も信じないだろう。

「じゃあ………殺るよ。」

急に雰囲気が変わり、姫乃は音もなく桜の背後に周る。

「遅い。」

垂直に飛び、AMR、対物ライフルを姫乃に向け放つ。初速もかなり速いうえ、戦車の装甲すらもぶち抜く威力。必殺の一撃だと思ったのだが。

姫乃はそれを持っていたナイフで弾く。

「まさか対物ライフルをナイフで弾くなんて。」

とても長大で重い愛銃を、桜はバトンのようにクルクルと回す。

「………」

姫乃は音もなく接近しナイフを桜に向けて投擲する。

「よいしょっ。」

いつの間にか桜は闘技場の反対側におり、対物ライフルを発砲した後、それが着弾するより前にダガーで斬りかかる。

「え?きゃあっ!?」

姫乃はナイフを弾くことに成功するが、弾丸をいなせず、直撃する。

「ふふっ、どう?」

これが彼女の能力、『距離を操る程度の能力』。これにより、長距離からの狙撃が着弾する前に接近戦を仕掛け、確実に相手を屠る、文字通りの初見殺し。

「イタタ、油断しちゃった。」

しかし姫乃は服の埃を払いつつ立ち上がる。

「わ、生きてるの?凄いよ、姫乃ちゃん。」

少し驚いたように口に手を当てているが、何よりも楽しそうだった。

「まあね!これくらいじゃなんとも無いわ!」

「じゃあ…、本気でやっちゃう?」

そう言って取り出したのはメモリ。

「いいよ、出し惜しみはしないわ。」

姫乃はパンドラを取り出す。

「変身。」

《リコリス》

リコリスガイアナイトが顕現、闘技場は彼岸花に包まれた。

「綺麗ね、荒らすのが勿体ないくらい。」

姫乃はそう言ってパンドラをキャノン砲に変形させる。

「でしょ?」

桜は笑顔で言うがその言葉とは裏腹に、花弁の刃をガンガン飛ばしている。

「こっちも行くよ!」

こうして2人は激突する。

 

 

 

ーー超人と怪物の観戦ーー

 

 

2人が全力を出して戦っているのを、凱と雪華は観客席で眺めていた。

「…2人が楽しそうなのは良いんだが、年頃の女性として、戦いが楽しいってどうなんだろうな。」

「いいんじゃね?」

凱はコーラを飲みながら観戦している。

「…あまり彼女には戦ってほしくないんだがな。」

雪華が寂しそうに呟く。

「そう言うもんか?」

「本来、彼女の力はあんなものじゃない。今やってるのも、比べれば赤子が悪戯してるようなもんだ。」

「マジか、めっちゃ戦いてえ。」

「やめろ。桜もお前もただじゃすまない。それに決着付く前に幻想郷が崩壊する。」

雪華は苦い顔をした。

「それはねえな。」

凱がコーラを飲みながら答える。

「そうなる前に、恐らくこれがでしゃばるだろうな。」

取り出したのは《E》、エクリプスのメモリだ。

「本気で殺す気じゃないか…。」

「殺す……か。なあ、お前は人を殺したことがあるか?」

凱は思い付いたように聞く。

「…当然。これでも元軍人だからな。」

「どう感じた?」

「…途中から、何も感じなかったよ。今は、怖いけどな。」

「そうか。」

凱は持っていたコーラを置く。

「俺は、最初から何も感じなかった。」

「……。」

「最初に人を殺したときは、20人くらい同時に殺した。」

「…そうなのか。」

「ああ。その後も何人か殺した。何も思わなかったけどな。」

「さすがにどうかと思うぞ?」

「俺もそう思うよ。」

凱は自嘲気味に笑った。

「…さっき怖いとは言ったが、覚悟はできている。桜が笑って幸せに暮らせるのならば、僕はいくらでも手を汚す。」

「そうか。……俺は違うな。」

「聞かせてもらってもいいか?」

雪華は凱に尋ねる。

「俺は恐らく、覚悟はしない。何故なら、敵を人間としては見ていないから。」

凱は顔をうつむかせる。

「相手は人の道を踏み外した。だからこそ、容赦はしない。」

「…本当、羨ましいよ。」

ふっと笑って呟く。

「大体、相手がドーパントだからな。」

「僕は、あれでも人間なんだと考えてしまう。」

「お前は良い奴だな。」

彼はそう言ってポップコーンを差し出す。

「どうだか。」

ポップコーンを1つつまみ、口の中へ放り込む。

「うん、美味いな。さて、そろそろ戻さないと、後で怒られちゃうな。」

そう言って、雪華は闘技場へと視線を戻す。

「だな。」

その頃闘技場では、激しい銃撃戦が行われていた。

 

 

ーー決着ーー

 

 

「やるね、桜ちゃん。」

姫乃は肩にガトリングを担ぎ上げる。

「姫乃ちゃんこそ!」

花弁の刃と対物ライフルを構える。

「楽しくなってきた!」

姫乃はミサイルランチャーにパンドラを変形させ、ミサイルをばらまく。

「そうだね、私もだよ!」

刃でミサイルを撃ち落とし、ライフルを発射。

「でも、そろそろ終わらせるよ!」

パンドラが変形し、超電磁砲のような形になる。

「こっちの台詞だよ!」

桜はリコリスメモリをマキシマムスロットに挿し込む。

《リコリス マキシマムドライブ!》

桜の手の中に光が集まる。

「あたれええぇぇ!!」

姫乃の方からは、超電磁砲から圧縮された弾丸が射出される。

「いっけぇぇぇぇぇぇっ!」

桜の両手から放たれた全力の光線は姫乃目掛けて突き進む。

 

 

両者の放った一撃は互いの横を通り、軌道を変えて後方へ飛んでいく。桜の一撃は問題ない。しかし、姫乃が放った一撃は……

 

観客席の凱達の方へ飛んでいった。

 

 

「マジかっ!?」

「来るなら来い!」

凱は右腕を突き出す。

「フリージングイージス!」

雪華は巨大な氷盾を呼び出す。

 

 

弾はそのまま………凱の腕を吹き飛ばした。

「大丈夫か、凱!?」

「俺の右手が真っ赤に燃え………るどころかねえじゃねえか!」

凱の右腕は肘から先がなくなっている。漫画ならばモザイクがかかり、ニュースならば放送事故レベルの怪我だ。傷口は弾丸に焼かれたおかげで止血されている。

「吹き飛んでんぞ……さすが電磁砲…」

「ぐぅぅ………でもあれだな。」

「あれ、とは?」

「タンスの角に小指ぶつけたときの方が痛えな」

「確かに痛いけどな!?」

 

 

「凱君、ごめん!大丈……腕は?!」

観客席に来た姫乃が驚きの声をあげる。

「さっきのレールガンで吹き飛んだ…。しかもタンスの角に小指ぶつけた時のほうが痛いとか抜かしやがる……」

「えぇ……」

「雪華様、大丈夫ですか…ってえええ!?」

そこに桜もやってくる。

「おお、お疲れ様。2人ともいい戦いだったぞ。」

凱は肘から先がなくなった右腕をそのままにして2人を褒める。

「凱さん、う、腕…?」

「んー?」

「腕、大丈夫ですか…?」

「大丈夫だ。焼けたお陰で止血は出来てる。」

「そ、それでいいんでしょうか…?」

「良くないだろ……」

「まあ、なんとかなるっしょ。」

「なるのか?」

「知らん」

「おいおい…」

「何とかするさ」

「なるのかよそれ……」

雪華は頭を抱える。

どんなものであれ、腕は腕だ。切れたのをくっつけるならまだしも吹き飛んだものをどうするつもりなんだろうか、と雪華は考える。

「姫乃、あれやるわ。」

「…わかったわ。」

凱はドラグニスを手に持つ。

「な!?」

「何するつもりですか!?」

「離れて、2人とも。」

「よっと。」

凱は軽そうな感じでドラグニスを自分に突き刺し、魔人化する。

「えええええ!?」

「いきなりかよ!?」

「あとは……ほいっと。」

凱はそのまま突き刺した剣を抜く。変身が解けた凱の腕は元に戻っていた。

「なんで!?」

「どういう原理だよ……」

「元々、右腕にはデビルブリンガーが宿ってたからな。魔人化すれば右腕とか足ならまだなんとかなりそう。」

「人間やめてるわね。」

「お前半分は人間だろうが」

「頭が追い付きません……!」

姫乃は呆れ、雪華と桜は頭を悩ませている。

「ドントシンク!フィール!」

「発音なんとかなんないの?」

Don't think. Feel.(考えるな。感じろ。)

「そういうことじゃないの!」

悩む2人をよそに凱と姫乃は何かを言い合っている。その2人のやり取りはどこか楽しそうだ。

「さて、そろっと帰ろうぜ。」

凱はそう言って歩き出す。姫乃は後ろから走り寄って、凱の左腕に抱きつく。

「本当なんでこんなに楽しそうなんだよ…」

「私達も、こんな風で居たいですね」

苦笑する雪華と、2人にちょっぴり憧れる桜だ。

 

そんな会話をしつつ、四人は闘技場を後にするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第73話

 

 

 

 

桜と姫乃が戦った日の翌朝、雪華達は凱から借りた空き部屋で過ごしていた。雪華は普段から早起きらしく、隣で眠っていた桜を優しく撫でる。

「……可愛いな。」

「ん…、雪華様ぁ」

「はいはい」

「えへへ〜…♪」

寝惚けた桜が抱き着いてくる。彼らにとっては、最早モーニングルーティンとなっている光景だ。凱辺りが見たら絶好のイジりネタになりそうな光景である。そんな時、雪華はふと布団の上に何かが乗っていることに気が付いた。

「…ん?何か重い?」

「…あ。ご、ごめんなさいっ!」

「大丈夫大丈夫」

これも含めワンセットである。

 

さて、そんな雪華達の布団の上に乗っているもの。それは黒いスライムのようなものであった。

「なんだこれ?」

「な、なんでしょう…、ぷにぷに」

コンコン、ガチャッ「雪華君、桜ちゃん入るわよー、ってそれは。」

2人の部屋に姫乃がやってきた。

「何なんだ、これ?」

「すっごいぷるぷるしてるけど」

なんか気持ちよかった、と桜は笑った。

「それは……秘密。それより、凱君のとこに行ってきてくれるかしら?」

「わかった、行くよ、桜」

「はい!」

起き出して雪華はクローゼットに入った。

 

 

 

ーー可愛さと真実のギャップーー

 

 

 

準備を済ませた雪華達は姫乃に開いてもらったゲートでアンダー・パレスの59層に来ていた。彼らの足元には先ほどのスライムもいる。

「これはさっきの…」

「モンスターだったってこと?」

スライムはぴょんぴょん跳ねながら扉の前まで行く。どうやら自力では開けられないらしい。

「開けていいのか?」

「可愛いな……♪」

一見無害そうではあるが、どうなのかは分からない。

当のスライムは扉を開けてくださいと言わんばかりにこちらを見ている。

「開けてあげましょう?」

「でも、大挙して襲いかかってくるかもだしな」

しかし、何故か扉が勢いよく開け開かれた。原因は、部屋の中から投げつけられた蜥蜴人間であった。

「うお!?」

「きゃあ!?」

とっさに横に退く。

「危ないぞ、凱!」

思わず喚く雪華だ。

確かに、急に開いた扉から蜥蜴人間が出てくれば驚くだろう。

「Year!Foooooooooooo!」

そんな雪華を他所に凱は中で大量の蜥蜴人間を相手に暴れまわる。彼の装備は見たこと無い籠手と機械のブーツのようなものだ。

「お?来てたのか、お前ら。」

「来てたのかじゃない!桜が怪我したらどうする!!」

「びっくりしました…!」

ちなみに雪華が無意識に桜を庇う位置取りをしているのは秘密だ。

「ソイツがいれば大丈夫だろう?」

蜥蜴人間達を一掃した凱は2人に歩み寄る。スライムは凱に向かって飛び付く。

「おーよしよし、良い子にしてて偉いなぁ。」

「…ペットかよ」

雪華は思わずツッコミを入れる。

「紹介しよう。俺のメモリの1つでエクストラランクの《エクリプス》だ。」

「はあ!?そいつが!?」

「エクリプスって、凱さんのメモリの…?」

「そうだが?」

「なんでそんなスライムに……」

「こんなに可愛いのに……?」

それぞれ頭を抱える。

無理もない。凱の話では「サイキョウ」のエクストラメモリなのだ。こんな愛らしいスライムだとは思わない。

「以前、ウォーズやヴォイドに会ったろ?そん時は多分ウォーズは人間の姿、ヴォイドが光の珠だったと思うが、こいつも平常時の姿があるんだ。…………本来の姿が見たいって言うなら見せてやるが?」

悪そうな笑顔を浮かべて凱は言った。

「…遠慮しておく。」

「なんか、まずいことになりそうですし……」

「それもそうだな。それはさておき、そろそろ時間だな。」

凱はエクリプスを肩にのせて出口へ歩いていく。

「時間?」

「なんの時間です?」

気になるが、とりあえずついて行く

「聞いて驚け、今日はな?」

凱は一呼吸置いて言う。

「決戦前の、全体会議だ。」

 

 

ーー命の重さーー

 

 

紅魔館ホール

 

紅魔館には数多くの有名人がいた。八雲紫は勿論。維持隊の飯綱丸や文、椛。地霊殿のさとりやこいし。霊夢達も居るし、凱の幼馴染み達も勢揃いしている。

「自己紹介したほうがいいだろうか。」

凱に近づき、小さく問い掛ける。

「まあ待て。」

凱は彼を下がらせ、張りのある声で話し始めた。

「お集まりいただいた貴殿方に最大限の感謝を。さて、今日の会議は来る決戦についてだ。」

凱はそのまま話し続ける。

「作戦は単純。人里の各区画に戦力を分け、その中心に本部を設置し防衛する。敵は巨大な船も使うとの情報もあるが、そちらにはこちらで対処をする。詳細は後程資料で配る。何か質問がある人は?」

「ふむ…。」

「…1つだけ、よろしいでしょうか」

手をあげたのは桜だ。

「どうぞ。」

凱の言葉でその場にいる全員が桜を見る。凱や姫乃は別だが、ほぼ全員が彼女達のことを知らないので当然の反応ではある。

「敵戦力の全容は如何程でしょうか?詳細は資料と仰いましたが、どうしても我慢できず聞いてしまいした。」

「敵の戦力か……?」

「どうなのでしょうか」

「確かに重要ではあるが……。」

凱は少し考えて

「おそらくは国家クラスの軍隊程度だろうなぁ。」

「それならまだ何とかなるか…?」

名も知らぬ青年の、何気ない発言に彼らと凱達を除いた皆がざわつく。

何人かは落ち着いているが、それは幽香や霊夢等、彼等の実力を知っている者だけだ。

「まあ、正直敵がどうだろうと知ったこっちゃねえ。事前情報はほぼ信じてねえからな。」

「お前が居れば大抵のことは大丈夫だろ。」

「ありがとうございました」

ぺこりとお辞儀をして再び座る。

「さて、他に居ねえか?」

「少しいいか?」

そう言って手を挙げたのは飯綱丸だ。

「なんだ?」

「その二人、本当にいいのか?」

真剣な表情で問う。

「こればかりは信じてくれとしか言い様が無いんだが…。霜月 雪華。まあ凱の友人と思ってくれ」

「妻の、霜月 桜です」

「………そうじゃ無いのだが…。」

「心配すんな。いざとなったらなんとかする。」

「わかった。」

微妙な表情をする飯綱丸に凱は言う。それを聞いた飯綱丸は納得したのか席に着く。

「よし、じゃあこれで会議は終わりだ。詳細は後程。解散!」

凱の言葉で全員がそれぞれホールを出始める。

 

 

「なんか、すまなかったな。悪戯に騒がせた。」

謝ったのは雪華だ。

「問題ねえよ。俺らも戻るか。」

「分かった。行こう」

「は、はい」

凱と姫乃、雪華達はもホールを後にしたのだった。

 

 

FDL店内

 

「さーて、何すっかなぁ」

「何するって、撃沈するんじゃないのか?」

「来てもいねえ敵をどう落とせと?」

「来たらの話だったんだが…、まあいい。何する、とは?」

「いや、暇じゃん?」

「……寝るのは無しだからね?」

「地下は?」

「駄目。」

「えー」

「地下…、また凄いもん作ってんな?」

「いや、101層以降の攻略進めてえんだが……。」

「そう言って100層の時は3日間籠ってたじゃない!」

「……すまん。」

「そりゃ怒られるわ。」

「3日も…、凱さん」

責めるような目を向ける。

「やること……あ!」

凱は思い付いたように地下エレベーターに入り、下へ降りる。数分後何かの箱を3つ持って戻ってきた。

 

 

 

「その箱は?」

「何なんですそれ?」

揃って首を傾げた。

「んー、まあ。はいよ、姫乃。」

凱が箱を姫乃に手渡す。

「?」

「中のはプレゼントだ。」

「?……!」

首を傾げつつ中身を確認した姫乃は笑顔になる。

「桜、それに雪華、これはお前らのだ。」

「これは……」

「何だそれ?」

「困ったときに使え。何が起こるかはおたのしみだ。」

凱はそう言って雪華にも手渡す。

「アップグレードツールとも違うな?」

「お楽しみ…?」

「よし、渡すもん渡したしお前らに言っておくことがある。」

凱は改めて三人に向き直る。

「言っておくこと?」

「ああ。今回の戦闘では俺は別行動だ。」

「別行動?ということは姫乃さんも?」

「どういうことです?」

「いや、姫乃はお前らと一緒だ。今回俺は本部防衛だがお前らには別で敵を潰してもらう。」

「ふむ」

「その時に、これを使え、と……」

「ああ、そうだ。」

「私達で敵を倒すとして、勝算は?」

「有ると思うか?」

「……。」

凱の言葉に姫乃は絶句する。

「おい、負け戦かよ」

「そんなのって……」

「負け戦にするつもりはない。」

「でも勝算無いんでしょ?」

「……まあ、事前情報元にすると、な。」

「でも、勝算を0ではなくす方法、あるんじゃないのか?」

「……有るにはあるが、デメリットがでかい。」

「デメリット?」

「……こっちの保持戦力は恐らく敵の2~4倍くらいだろうな。」

「そんなに戦力差があるのに、ですか?」

桜が不思議そうに聞く。

「この2~4倍ってのは、限界まで出しきったときだ。例えば……エクストラメモリでマキシマムを乱用する、とかな。」

「…無理だろそんなの」

顔をしかめる。スノーでさえ意外と負荷がかかるのだ。エクストラを乱発などしたら死ぬ程度ではすまないだろう。

「まあそういうわけで戦力は相手と同等かそれ以下。正直言って楽じゃない。」

「…ひっくり返せるんだろ。早いとこ教えてくれよ。」

焦れったいのか、雪華が凱に先を促す。

「……俺が死ぬ気で殺し回る。」

 

 

ーーハイリスク、ハイリターンーー

 

 

 

「…ふざけないでください。」

「桜……。」

珍しいこともあるものだ。普段温厚で優しい桜が、本気で怒っている。

「ふざける?どこが?」

「あなたがそれをして、悲しむ人がいるんです。何ですか?死ぬ気で殺し回る?妄言も大概にしてください。あなたが傷ついて、姫乃ちゃん達はどうするんです?」

珍しく声を荒らげて捲し立てる。

「………。」

凱は静かに聞いている。

「桜ちゃん……。」

姫乃も、どこか心配そうだ。

「あなたも雪華様も、何で自分を蔑ろにするのかなぁ……!!?」

「………1ついいこと教えてやるよ、桜。」

「…お聞きしておきます。」

「殺し回るのは、俺…………と()()だ。」

凱の言葉の途中から喋り方が変わり、目が緑色になる。

「ヴォイドさん…。なら、凱さんを止めてください。」

「やめとけ。言うだけ無駄だよ。」

「でも…!」

「これが効率的なんだぜ?」

再び喋り方が変わり、彼の髪の色と目が紅くなる。

「私は、たとえ非効率でも、みんなに傷ついてほしくない!そのために、誰かを護るために、『熾天会』に入隊したんです!以前雪華様が私を護ってくれたように!」

熾天会というのは雪華達の世界の軍隊のようなものだったな、と姫乃は思い出す。

なんでも兵士の技量で階級がつけられているらしい。

「解ってねえなぁ……ただ悪戯に自傷するだけじゃねえんだよ、これは。」

「自傷するなら同じです!」

「桜、落ち着いて。」

「説明した方がいいわよ、プロミネンス。」

「………めんど。代わってくれヴォイド。」

凱の眼が緑になり、髪はいつものように色に戻る。

「……。」

「全く、ちゃんと話は聞こうか。」

文句ありげな桜を雪華が宥める。

「ふん。まず以前凱がデビルトリガーなるものを使っていたのは覚えているな?」

「あー、あったなそんなの。」

「……。」

桜は不服そうに聞いている。

「あれは凱が使うと1分で体が持たん。最悪死ぬ。」

「…ヤバいやつじゃねえか。」

「……やっぱり。」

「それをし続けては凱が死ぬ上にそれよりもヤバイやつが出てくるから、それは採用せん。そこで我々を使う。」

ヴォイドは自分の胸の辺りを指差す。

「エクストラなら大丈夫なのか?」

「…宿体は凱さんですよね。」

「まあな。だが我々のメモリを補助スロットに挿すことで擬似的にデビルトリガーを使えることは確認できておる。本人に負荷を掛けることなくな。」

「……。」

桜は露骨に不快な顔をする。

「なんだ、不満があるのか?」

「…いいえ。」

「不満を全面に出すなよ……」

「まあ、死ぬような事がないだけで別の意味で負荷は掛かるがな。」

「…やっぱり。」

「ヴォイド、その辺にしてくれ。桜が荒れる。」

「………どこまで話したんだ、アイツ。」

凱の眼がいつも通りに戻った。

「死なない程度の負荷が掛かるってとこまでよ。」

「ああ、船酔いの事か。」

「船酔い…?」

「船酔いってどういうことだ?」

「厳密には違うんだが。以前実験で人里をヴォイド使って飛び回ったことがあったんだ。そのときに勢い良すぎで内臓ガンガンに揺らして吐いたことがある。」

「そりゃ吐くわ。」

「……。」

ツッコミを入れる雪華に、冷たく見つめる桜。

「…心配して損した。」

「ははは。ま、気楽に行こうぜ?」

凱は立ち上がる。

「連中が来るなら明日だ。今日は早く寝とけ。」

凱はそのままエレベーターの方へ向かっていく。

「じゃあ、行こう、桜。」

「…はい。」

桜は雪華の腕に抱きついた。

「全く、お熱いのね。」

姫乃はそんな2人を見ながらあとに続く。

 

 

 

 

ーー開戦ーー

 

 

 

次の日

 

姫乃、雪華、そして桜は人里の西エリアに来ていた。辺りには武装した維持隊の隊員達がそれぞれの武器や動きの確認をしている。

「…いよいよか。」

雪華は雪銀(ゆきがね)を腰に携え、桜は対物ライフルのメンテをしていた。

「少しいい?」

雪華達に話しかけてきたのは十六夜咲夜だ。その服装はメイド服ではなく、黒に白と青の装飾をあしらった制服で、デザインは姫乃の物と一緒だった。

「咲夜か。どうしたんだ?」

「これから戦う御仲間の様子を見に、ね。その様子だと大丈夫みたいだけど。」

「背中は任せろ、と言えるほど信用されてはいないだろうが、安心してくれていい。」

「……信じるわ。貴方からは彼と同じ雰囲気を感じるから。」

そう言ったとき、辺りに警報が響き渡る。

「来たか。桜!」

「はい!」

「じゃあな、健闘を祈る!」

そう言い置いて、人間離れした速度で駆ける、

「あ、ちょっと!!……もう!」

雪華を見ながら姫乃はため息を吐く。

そして

「全員、戦闘態勢!一匹たりとも後ろに逃すな!」

姫乃の号令と共に戦闘が始まった。

 

 

 

 

 

 

雪華達とドーパント軍の戦いが始まった頃、同時に他でも戦の火蓋が切られた。

 

 

東エリア

 

「ッ!」

鋭く吐いた息がと共に辺りのドーパントが切り捨てられる。前線を1人で暴れ、駆けるのは総塚護だ。迷いの無い太刀筋はあらゆる障壁を切り裂く。

彼の背後、50メートル後方にはブラッドの弓を構える風見幽香とサイクロンガイアナイトに変身した東風谷早苗が援護射撃をしている。

「…………!」

護の死角からドーパントが抜け出し、進む。

がそのドーパントの頭に轟音と共に弾丸が炸裂する。

その射撃は護から80メートル離れた建物の屋根から狙撃銃を構える犬走椛が行ったものだ。自身の能力を最大限に活かした射撃はドーパントからすれば、致命的な一撃となる。

そこへ。

「随分とやってるじゃねえか?」

「……誰だ、お前。」

護の前に1人の男が現れる。

「俺の名は雨水(アマミ)雷砂(ライサ)。その刀、お前が総塚護だな。」

「俺の名をこれで見極めるってことは、敵か。」

「ああ。その首、貰い受ける!」

男は腕にブレスレットを嵌める。すると体が紫色に輝き、ドーパントになった。その体は銀色で腕や足にコイルのようなものが巻き付いている。

「メモリ使ってねぇのに変身できんのか!?」

「俺を()と一緒にすんじゃねえぞ!」

 

 

 

 

 

 

北エリア

 

 

「Show down!」

北エリアで戦っているのは三首猟介だ。キング・ケルベロスを巧みに操りドーパントを蹴散らしていく。

「なんか、手応え無いっすね。」

先程から感じていたが、コイツらは恐らく外身だけの偽物だ。複製されているからそこまで強くない分、数が多い。

「魔理沙さん、文さん、そっちはどうですか?」

「こっちは問題ないぜ!」「私の方も順調ですよ!」

三首の上空ではスターダスト・ガイアナイトに変身した魔理沙とアクセル・ガイアナイトに変身した文が支援している。

三首が討ち損じた敵を上空の2人が撃破するという効率重視の立ち回りだ。

(このまま数を確実に…………?!)

考え事をしていた三首を狙って、透明な破片が降り注ぐ。

「一体どこから?!」

「よく避けましたね。」

声のする方を見れば、そこに立っていたのは1体のドーパント。その見た目は教会の聖女のようだが、その身を包む衣と装飾は悪魔を彷彿とさせる。

「……ドーパント。なら、敵ってことでいいっすね?」

「どうぞご自由に。私はあなたの首さえあればそれでいいので。」

三首はドライバーを巻き、変身する。

「変身!」《トライセラトプス》

変身した三首は強化された剛腕を使い、キング・ケルベロスを振るう。

 

ガシャン

 

「?!」

さっきまでドーパントが立っていたところには透明な結晶のようなものがあり、それに攻撃が当たる。脆く砕けた破片が三首を襲う。

「くっそ?!」

なんとか破片を叩き落とす。その間にドーパントは背後に移動している。

「さあ、存分に足掻いてください。私が使う《ミラー》の前には、あなたは何も出来ないのですから。」

 

 

 

南エリア

 

 

「さあ、派手に行くよ!」

南エリアを守っているのは妖夢と鈴仙を前衛におき、後衛に音川を置いたどちらかと言えばバランスが取れた構成のチームだ。

「外さないよ!」「せやぁ!」

妖夢は《エッジ》を。鈴仙は《アームズ》を使ってドーパント達を切り裂く。彼女らが使う武器は紫色のオーラを纏っている。これは音川のネヴァンによる支援だ。

「このまま一気に行くよ!」

そう言って前線を押し上げようとしたときだった。

「はっはっは!そこまでだ!」

「!?」

いきなり大声をあげたのは筋肉質のドーパント。明らかに他のとは違い、強者の風格をしている。その見た目が筋肉ムキムキで、肩や膝、肘には人の手が覆い被さるようにくっついていて、顔は………四角く、黄色い眼が目立っていた。

「お前らはここで終わりだ。私が来たからなぁ!」

「何ですかアイツ?!」「わからないねぇ。」「へ、変態だみょん!?」

ドーパントに対して鈴仙、音川、妖夢がそれぞれの反応を示す。

「おまえ達はこの私、大元(オオモト)(ケン)と《ハンド》メモリが粛清する!」

 

 

 

中央エリア 防衛本部

 

 

「西、東、それに北と南からドーパント多数!」

「全部じゃねえか。」

報告を聞いた凱は顔をしかめる。

「どうするんだ、このまま見てるわけでもあるまい。」

凱のとなりに立つ飯綱丸が聞いてくる。

「さっき行った通りだ。俺がヴォイドとプロミネンスを使ってエリアのドーパントを一掃していく。」

「かなりキツいんじゃないの?」

そう言ってきたのは霊夢だ。

「他の連中が死ぬよりもマシだ。」

「それもそうだな。」

それを聞いた飯綱丸はメモリを起動させる。

《ドラグーン》

飯綱丸が使うのは竜騎兵(ドラグーン)のガイアメモリだ。長槍とマスケット銃が一体化したような武器に、楕円形の盾を武装しており、黒い鎧を纏っている。背中には鎧と同色の二枚の羽がついている。

「相変わらず、派手な姿ね。」

そう言う霊夢も《セイクリッド》で変身している。こちらは天使のような羽を持っている他、手には普段の彼女が持たないようなダブルライフルが装備されている。

「お前、それ使えるのか?」

「見くびらないでね飯綱丸。これでも練習したのよ?」

「喧嘩すんな。じゃあここは任せる。俺はそろっと…」

 

ドズン

 

作戦を始める、と言う寸前、何かが地面を揺らして着地した。

「何だ!何があった!」

砂煙が上がった場所を見る凱達。そこにいたのは、異常に発達した筋肉、浮き出る無数の血管、充血した眼を持つドーパント。

「何よアイツ!」「明らかに他とは違う!」

見たこと無いドーパントに警戒する霊夢と飯綱丸。

だが、凱はそいつを知っていた。

「見ぃつけたぁ、もう逃がさない!」

「てめぇ、今度こそ叩き潰す!」

そのドーパントは以前、凱の腕を消し飛ばし、倒し損なったインサニティ・ドーパントだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第74話



「また変更ですか?」
とある空間で、男が二人話している。
「ああ、戦艦はコストが高いからと却下された。」
溜め息を吐くのは里崎、もう1人は部下の武田だ。
「それで変更後はT3ドーパントとクローンですか。」
「問題はないだろう?」
面倒には変わり無い。そこへ……
「あ!いたいた。」
「おや?どうしたんですか?」
やってきたのは執行部隊のリーダーの北条だ。
「聞きたいことがあってさ、今回の作戦にうちの西條(サイジョウ)って参加してる?」
西條というのはインサニティメモリの使用者だ。
「いいえ?入ってませんが。」
武田は資料を確認しつつ答える。
「え?!でも彼女、『参加する』って行っちゃったけど……。」
「……はぁ!!?」



後に武田はこう語った。





まともなのは私だけか!?





 

 

 

ー-(ハンド)VS(サウンド)--

 

「フハハハハ!手も足も出ないか!」

南エリアではハンド・ドーパントと音川達の戦いが繰り広げられていた。

「あのドーパント、厄介すぎる!」

「逃がさん!」

ハンド・ドーパントは体の周りに浮遊する手を出現させ、勢いよく飛ばす。それらは不規則な軌道を描き攻撃を仕掛けていく。

「鈴仙さん!撃ち落とせないんですか!?」

「出来たらやってるわよ!」

あまりにも複雑に飛ぶそれを撃ち落とすのはさすがの鈴仙でも難しいようだ。

「ノってるかい?」

そこへ、ネヴァンの雷撃を使って攻撃してきたのは音川だ。

範囲攻撃である雷撃によって浮遊する手が撃ち落とされる。

「ほう?俺の『浮遊する拳(フライング・フィスト)』を撃ち落とすとは、なかなかにやるな!」

「変な名前じゃないか!」

音川はネヴァンを鎌に変形させ、切りかかる。

「甘い!」

ドーパントはそれを白刃取りの要領で受け止める。

「見た目のわりに防御もできるのかい?」

「何も殴るだけが戦いではない!」

ドーパントは刃をつかみ、音川ごと投げ上げる。

「厄介だね、本当にさ!」

音川は空中でネヴァンをギターに変形させ、掻き鳴らす。

あたりに雷撃が飛び、ドーパントにも直撃する。

「ぐぬぅ?!」

「隙あり!」

音川はあろうことか空中を生身であるにもかかわらず、まるで足場があるかのように駆けた。

「なにぃ?!」

「私の能力は『宙を駆ける程度の能力』!これなら決められる!」

《デーヴァ マキシマムドライブ!》

メモリをマキシマムスロットに挿し込む。変身していないため全力ではないが、それでも威力は絶大だ。

音川がネヴァンを掻き鳴らすと、その音色はドーパントを包み、痺れさせ、引き裂いた。

「ぐああぁぁぁ!!」

男の絶叫とともに、ドーパントは消滅した。

(倒した…いや、直前で気配が消えたから逃がしたみたいだね。)

砂煙が晴れ、見回すがドーパントはいなくなっていた。

「音川さん、大丈夫ですか!」「怪我とかは…?!」

妖夢と鈴仙が駆け寄ってきた。その時二人が見たのは、普段前髪で隠れて見えなかった、彼女の額の右側にあった小さな角だった。

「音川さん……それは?」

「ん?ああ、これかい?」

音川は右手で優しく角をなでる。

「私は鬼の子孫らしいんだ。その昔、幻想郷に住んでいた先祖が現実世界に移り住み、ひっそりと生き延びていた。あまり私のように角が生えることはないんだが、偶にあるらしいんだ。」

「そう、だったんですね。私の話はここまで。二人とも、怪我は無いかい?」

「は、はい!私たちは大丈夫です。」

音川はそれを聞きながら視線を動かす。その先にいたのはまるで糸が切れたかのように止まったほかのドーパント達だった。

「動かない…ですね。」

「恐らくさっきのが司令塔だったんだろう。放ってはおけないから片付けようか。」

三人は動かなくなったドーパント達を処理し始めた。

 

 

 

 

ー-喰ライツク番犬--

 

 

「それぐらいにしたらどうですか?」

「諦めるもんか!」

北エリアで激戦を繰り広げているのはミラー・ドーパントと三首猟介だ。

「はぁ!」

ドーパントめがけてキングケルベロスを振るう。しかし、そこにいたのは鏡に映った虚像で、透明な鏡は粉々に砕け散り、三首に襲い掛かる。

「ぐうぅ?!」

「無駄だと言っているではありませんか。」

彼の背後の建物の屋根に、ドーパントが現れる。

「いくらあなたが強かろうと、当てられなければ意味はありません。」

三首は肩で呼吸をする。

(どうする…普通にやっても勝てない。なら()()をやるか?)

三首は一瞬迷った。奥の手があるにはあるが、まだ完全には使いこなせない。使えば疲労でダウンしてしまうだろう。

「(それでも…)……賭けるしか、ないっすよね!」

「まだ足搔くのですか?」

「諦めるのは、つまらないっすからね!魔理沙さん、一回だけ援護お願いします!」

「わかったんだぜ!」

変身を解除しつつ、三首は魔理沙に指示を出す。魔理沙は上空からミラー・ドーパントに向かって光線を放つ。

その一撃はミラーを直撃するが…

「無駄だと言っているのがわかりませんか。」

ミラーはいつものように別の場所から現れる。

「これだから、物わかりの悪い人というのは…」

Gotcha(捕った)!」

「な?!」

ミラーの正面には直前まで地面の上に立っていた三首がキングケルベロスに紅い火を灯し、振りかぶっていた。

「そらよっと!」

「うぐっ!」

三首の一撃は、ミラーの胸元のクリスタルを砕いた。

「しまった!」

「やっぱ、それがキーだったんすね。」

三首はキングケルベロスを回しながら言う。

「毎回テレポートの時にそれが光ってたんでもしやと思ったんすけど、そこが弱点だったんすね。」

「気づいていたのですか…?」

明らかに動揺した女の声がドーパントから漏れる。

「さすがに何度も見せられりゃあね。」

ドーパントは歯ぎしりする。彼の言う通り、胸のクリスタルがテレポートや遠距離攻撃のための、いわば装置のようなものであった。しかし、今の彼女には『この状況の打開策』よりも気になることがあった。

「先程の挙動といい、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()をどうやって壊したのですか…?」

彼女は三首を睨みつける。彼の体は最初の時よりもプレッシャーを放っている。

「……教えるとでも?」

三首はケルベロスを構える。その先端からは灼熱の炎が噴き出す。

「…ここは退きましょう。しかし、次に会ったときは必ず倒します。」

ドーパントはワープゲートを開き、消えていった。

それと同時に魔理沙や文が相手をしていたドーパント達も動きを止める。

「…おわったぁ。」

三首はその場にへたり込む。

彼の能力は『肉体の限界を開放する程度の能力』である。

本来、人間は肉体の限界よりもセーブした力しか出すことができない。危機に陥れば普段以上の力を発揮する。いわゆる『火事場の馬鹿力』と呼ばれるものであり、それが人間が出せる力の限界ともいわれる。

三首の能力はこの『馬鹿力』での限界を無理やりに超えるというものである。

身体能力が格段に向上するが、その分負担も大きい。時間制限は無いものの長く使えばその分疲労も大きくなるのだ。

「おーい、大丈夫かー?」

そんな三首を気にかけながら魔理沙が降りてきた。文はそのあとに続く。

「大丈夫っす。状況は?」

「他のドーパントどもはみんな止まってるぜ。私たちの勝利だ!」

魔理沙はVサインを出す。

「よかったぁ~」

「あやや、ずいぶん消耗してますね。」

「能力使うとこうなるんすよ。」

「凱とかに鍛えてもらったらどうなんだぜ?」

「あっはっは、無理無理。先輩はけた違いの化け物っすから。」

三首は笑ってそういって、こう付け加えた。

「……マラソンを短距離みたいに走る、あの先輩は、参考にならないっす。」

 

 

ーー轟き、穿ち、噛み千切るーー

 

 

「「ッ!」」

東エリアでは、他の二つよりも激しい激突が繰り広げられていた。

「シャァッ!」

銀色のドーパントがその手に持つ黒い剣を振るう。

「危ねぇ!」

護はそれを間一髪で避ける。黒い剣はまるで蛇のようにうねる。

「さっきから避けてばっかじゃねえか?」

再び黒い剣が護を襲う。

「避ける以外出来ねえんだよ!」

護はそれを素早く避ける。

「にしても、自分の手の内を明かすとは嘗めてくれるじゃねぇか。」

「明かしたところで勝てやしないだろう!」

ドーパントの攻撃を避けつつ護は思考を巡らせる。

 

おそらく、奴のメモリは《マグネット》、磁力を操る能力だろう。あれは砂鉄で出来た剣。だから攻撃を閻魔刀じゃ防げない。辛うじて攻撃は避けれてる。だが、それが決定打にはなっていない。懐まで一気に駆けることも、次元斬・絶を放つ余裕もない。

 

「どうするかな。」

護は必死に考える。何をすれば奴に勝てるのか……?

そして、1つの結論に辿り着く。

「…試すか。」

護はドーパントから距離をとる。

「逃がすかぁ!!」

マグネット・ドーパントはすかさず砂鉄の剣で攻撃する。

「行くぜ!」

護はベルトに2本のメモリを挿す。

《ファング》《ベオウルフ》

メインにファング、補助スロットにベオウルフだ。

「それがどうした!」

ドーパントは勢いを緩めず、剣を振るう。

「喰らえ!」

護は肩から1本の牙、ショルダーファングを出し、投げつける。

「おっと。」

ドーパントはそれを軽く避ける。

「その程度かよ、これで終りだ!」

そう言って砂鉄剣を振るって護を切ろうと……

「あ?」

その時、剣が()()()

まるで何かに引き付けられるかのように。

「なに?!」

剣がぶれた先には、先ほどショルダーファングが刺さっている。

「案外上手く行くんだな。」

護はそう言って頷く。

「そいつにベオウルフの電流を流したままにして避雷針みたいにしたんだが……効果的だな。」

「それだけで、それだけでぇ!!」

男の悔しそうな声が響く。

それを見て、護は構える。

「おまえも、そのメモリも()()()()ってことさ!」

《ファング マキシマムドライブ!》

右腕のベオウルフの周りを帯電したファングの牙が取り囲み、舞い踊る。

「喰い千切れ、ベオウルフ!」

突き出された拳から金色の光と牙が放たれる。

「くそがぁ!」

ドーパントは叫びと共に爆発に飲まれる。

砂煙が晴れると、そこには誰もいなかった。

「……逃がしたか。」

護は変身を解く。気配を感じ振り向くと、早苗たちが走ってくるところだった。

「…こっちは終わったぜ、あとは任せるぞ。凱。」

 

 

ーー因縁のリベンジーー

 

「あっはっははは!!」

「この野郎!」

ルシフェル・ガイアナイトとインサニティ・ドーパントが激突する。

二人が居るのは荒野だ。ヴォイドが創った次元の1つだ。

本部に出現したドーパントを無理やり引きずり込み、霊夢と飯綱丸にあとを任せたのだ。幸いなことに取り巻きが居らず、タイマンとなっている。

「倒す、倒す倒す倒す倒す!倒スゥッ!」

インサニティの猛攻が地面を抉り、凱に迫る。

「当たるかよ!」

凱は大剣を振るい、それをすべて弾く。しかし、防ぎきれるわけでは無いので、凱自身も所々負傷している。怪我は軽い打撲もあれば、骨折しているところもあった。

(以前よりも重い。……それに…。)

「あっははは!いくよ!」

「チィッ!」

少しでも気を抜けばインサニティの攻撃が来る。一撃一撃が直撃=即死の威力であることが、肌に伝わる。

「今度こそ、殺す!今度こそぉおおお!!」

狂ったかのように荒れるインサニティを見た凱は覚悟を決める。

 

 

 

(ここで………仕留める!)

 

ルシフェルメモリをマキシマムに挿し、距離をとる。

《ルシフェル ソードアクション!》

紫色の光を纏った大剣を構え、突撃する。

「くっははは!行くよぉ!!」

対するインサニティも巨大な鈎爪のついた腕を霞むような勢いで振るう。

 

 

両者が交差する。数秒後、インサニティは音もなく倒れ、崩れ去った。決着と同時に変身者である西條の肉体が限界を超えたのだ。インサニティは塵となり、崩壊する。あとに残ったのはメモリだけだ。

「……ふぅ。」

それを見た凱が溜め息を吐き変身を解く。

「一発もらったのが…思ったよりキツかったな。」

彼は自身の脇腹を押さえる。すれ違いざまに一撃喰らっていたのだ。

脇腹であるはずなのに出血が酷い。

気がつくと、凱は本部に戻されていた。

「凱…!?その傷は!?」

近づいて来たのは霊夢だ。変身を解いているところを見ると、すでに終わっているようだ。

「一発もらった……。」

「そんな…!なら早く!」

「もう出来てるわよ。」

凱にそう声をかけつつ小さな瓶を渡してきたのは八意永琳だった。彼女は今回救護班として参加していた。

「それは貴方ように調整した薬よ。直ぐに怪我を治せるわ。」

「不死の薬じゃねぇだろうな?」

「違うわよ、安心なさい。」

「そうかよ…。」

凱はそれを飲む。すると体がじんわりと熱くなり、体の痛みが退いていくのがわかる。

「流石だな。」

「当然よ。でも安静になさい。」

永琳の言葉を聞き流しつつ、凱は立ち上がる。

「ちょっと!もう少しゆっくりと…」

「指示を出さねぇと、まだ終わっちゃいねぇからな。」

そう言って霊夢の制止を振り切り、凱は本部へ歩いていった。

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。
お久しぶりのフォーウルムです。
リアル事情が忙しく、投稿が遅れてしまい申し訳ないです。
今後は二週間に一回くらいの頻度になるかと思いますが、気長に待っていただけると幸いです。
コメントやメッセージもらえると、作者の励みになります。もしよかったら是非お願いします ⤵️


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第75話




「………退屈だ。」
男は椅子に寄りかかって溜め息をついた。
男の体は鍛え抜かれており、離れていてもその圧を放っている。
「……なんか面白いことねえかな。」
最近、()()()()()から1枚の報告書をもらっていた。
「…暇だしアイツのところに行くか。」
男は立ち上がり、部屋から出ていく。
数秒後、別の扉から1人の女性が入ってくる。
「鳴神さーん、この書類なんですけど……あれ?」
入ってきた女性、尾釜は辺りを見回す。
「…どこ行ったんだろ?」






 

 

 

 

雪華は雪銀で、桜は対物ライフルでどんどん倒してゆく。

「雪華君、気付いてる?」

姫乃はパンドラをガトリング状態のまま片腕で扱いながら聞く。

「弱すぎる。ドーパントなのに。」

「恐らく複製品ね。」

「なるほど。なら、一気にやっても問題ないな?」

雪華は姫乃に確認をとる。

「ええ、構わないわ!」

「離れていてくれ。死んでも責任は取らんぞ。」

雪華は雪銀を腰に構えた。

「あれをやるつもりですか?」

「桜も離れてて。」

「分かりました。姫乃ちゃん、後退の指示を。」

「わかったわ。前衛後退!指示を出すまで待機!」

姫乃の号令で全体が大きく後退する。

「行くぞ、神剣『桜華』。……『インフィニットストラッシュ』!」

次の瞬間、ドーパントの軍勢が、文字通り『弾け飛んだ』。

「やるじゃない!………?」

姫乃は首を傾げる。その視線の先にいるのは一人の少女だ。

「お前は、何だ?只者じゃないな?」

「貴方が霜月雪華ですか。私はアザリア・シロッコです。」

少女はそう言う。しかしその眼には底知れない殺意が籠っている。

ほとんど条件反射で桜華を構え、斬りかかる。狙うは首の急所、だったのだが。

その剣は見えない何かに弾かれる。

「結界…!?」

僕の剣を防ぐ結界など、半端ではない。認めよう。こいつは強い。

…力を封じたままで勝てるだろうか。

「結界……そんな物ではありません。」

彼女の後ろから現れたのはマスクを着け、2本のレイピアを持った幽霊のような何かだった。

「貴方も私と同じと聞いていたのですが、はっきり言って残念です。」

「僕と同じ?…まさか、異界から?」

「そう考える時点で、貴方の敗けです!」

アザリアは指を鳴らす。すると背後に居た何かがアザリアと1つになる。彼女の姿が変わり、ドーパントになる。腰にはレイピアが2本。そして顔には赤い仮面が装着されている。

「ドーパント……!なら、遠慮は無用か。」

ドライバーとメモリを取り出す。

《スノー》

「変身!」

周囲を凍てつかせ、スノーガイアナイトが降臨する。手には桜華と、身の丈程あろうかという氷の大剣。

「私の、この想いが………その程度で防げると思うな!!」

アザリアはレイピアを抜刀する。

「この力で、《ラプソディ》で、貴方を討つ!」

「『狂詩曲』……。その狂おしい想い、優しき桜の下に眠るがいい。」

右手の桜華の切っ先を彼女へ向ける。

「「…………。」」

両者はにらみ合い、互いの武器を構え、激突する。

 

 

 

ーー氷桜の騎士と狂愛の剣士ーー

 

 

 

しばらくの拮抗の後、ラプソディが距離をとり、抜刀したレイピアを音速を越える速さで突き出す。

「ちっ。」

軽く躱し、出来た隙に桜華を叩き込むも虚しく空を斬った。

「遅いですよ。」

ラプソディは既に雪華の後ろにまわっている。

「…負担が半端ないけど、あれやるか。」

彼女の視界から、雪華が消える。

「?」

「喰らえっ!」

ラプソディの背に衝撃が走る。

振り向くが、そこには何もない。

「……何が?」

体を襲った衝撃に警戒する。

「ぶっつけ本番だが、案外イけるな。」

後ろから聞こえてきたのは、雪華の声。

──居た。

「そこですね。」

ラプソディは再び抜刀する。

「遅い。」

再び消え、今度は腹に痛み。

「ぐぅ?!」

「『熾天使』を舐めるな。」

そう。彼が行なっていたのは、『熾天使』の力の解放。彼の世界に存在する皇帝直属軍である『熾天会』。

彼は、300年の史上唯一その頂点に到達した者なのだ。それに加え、ガイアナイトの身体強化。音速の10倍ほどであれば造作もない。

「………ふふふ。」

ラプソディは不敵に嗤う。まるで雪華を嘲笑うかのように。

「…何がおかしい。」

まさかと思って否定した予想が頭をよぎる。有り得ない。熾天使は僕1人のはず。

──もしや新しい『熾天使』?

だが、それにはすでに『熾天使』となっている者を倒さなければならない。

いや、いるではないか。

霜月 雪華…、いや、『朝霧 修羅』という熾天使(僕自身)が。

「貴方は愚かですね。」

ラプソディの体が崩れ始める。

「その程度だから、周りが倒されても気付けない。」

崩れるラプソディは右腕で彼の背後を指し示す。

「……?…なっ!?」

雪華が振り向くと、背後では咲夜と姫乃が血塗れで倒れていた。

「…ちっ。桜!手当てを!」

「わ、わかりました…!」

今は怒りを押しとどめ、奴を倒すことに集中する。

「させるとでも?」

いつの間にか桜の背後に移動していたラプソディが斬撃を飛ばし、桜の妨害をする。

「きゃあっ!」

紙一重で回避したが、髪が数本持っていかれた。しかし、一瞬で雪華が移動し、反撃をする。

「素晴らしいですね。」

ラプソディが2本目のレイピアを抜き放つ。

「でも、これで終わりです。」

《ラプソディ マキシマムドライブ!》

「そっくり返す。」

《スノー マキシマムドライブ》

桜華を雪銀に納刀し、それに氷を厚く堅く纏わせていく。

「無駄です。」

ラプソディのレイピアから斬撃が放たれる。それは雪華達を直撃するが、痛みはない。だが、体から力が抜け変身が解除されてしまった。

「ちっ……。」

何とか膝はついていないものの、先程までのような動きは不可能。といっても音速の3倍くらいまでなら出せるが、後を考えればやめておきたい。

「諦めてください。」

レイピアが雪華の首に向けられる。視線をずらせば、背後にも、そして桜のところにもラプソディがいる。

「…残念だがお断りさせてもらおうか。」

「そうですか、なら………死んでください。」

レイピアが首を貫く、その瞬間だった。

「面白いことをやっているな。俺も混ぜろ。」

「は?」

凱や護の声ではない、聞きなれない男の声にラプソディが振り向いた瞬間、霞むほどの速度でラプソディは右に殴り飛ばされた。それと同時に桜達を囲んでいた分身も消える。

「誰だ!」

「あれは…?」

突然のことに驚く。

その男の姿は、人間ではなくガイアナイトだ。

金色の鎧や白い装飾の目立つ姿は、今までのガイアナイトとは格が違う事の証明であった。

「随分とボロボロじゃねえか、小僧。」

「割と体張ってたんでね。さてと、治療をしよう。」

彼は熾天使にのみ許された魔法を使う。

瀕死だとしても連れ戻す、理外の力。

「『リバティウィング』。」

しかし、上手く発動しない。

「あれ。」

「発動しない…?」

「なるほどな。『ドーパントでありながらマキシマムを発動でき、異能を封じる能力』は報告書通りか。」

男は感心したように頷く。

「小僧、まだ歩けるな?」

「ああ。当然。…異能封じ……。さながら『E』だな。」

「ふん、あんな化物よりはましだろう。」

そんな時、ラプソディが男の背後に迫る。

が、男はそれを見ずに裏拳で殴り飛ばす。

「メモリは…、使えないか。」

起動してみようとしたが駄目だ。

「あれはどうやら特殊なもののようだな。」

男は腕組みをする。

「…原作でいうハイドープみたいなものだろうか?」

「どうだろうな。とにかく、メモリの使えんお前は足手まといだ。」

男はそう言って後方にいる姫乃達を指差す。

「あいつらを連れて拠点に退け。」

「了解。凱に見てもらわなくちゃな。死ぬなよ、おっさん。」

不敵に笑って巫山戯たように言った。

「ふん。」

男は鼻で笑い背を向ける。

 

 

ーー撤退ーー

 

 

 

彼を見送り、雪華は無線を起動した。

「すまん凱。将らしき奴を取り逃した。被害を報告する。」

沈鬱な表情と声で、彼は被害状況を報告した。

しかし、雑音が鳴るだけで何も返答はない。

「…ノイズか?さっきのあいつだろうか。仕方ない、能力も使えないし、1人ずつ運ぼう。姫乃さんは最優先だ、死なせるわけにはいかない。」

「…はい!」

涙を拭いながら桜は頷いた。

そこで雪華は目の前に落ちていた見慣れないものを見つけた。それは凱からもらったもので質素な包装がされた小箱であった。

「これは…、姫乃さんのものか?中身は……。」

不躾であるとは分かっているが、中身を見ると、そこには片耳のワイヤレスイヤホンのようなものがあった。

雪華は思い切って付けてみる。

すると、頭にノイズの様なものが少し走るが違和感はない。

「…これは、何だ?ただのイヤホンというわけでもあるまいし。」

少し触ってみるが、反応はない。

「………ぉぃ…おい…聞こえてんなら返事しろ!」

頭の中から凱の声が聞こえる。

「す、すまん……。」

「何の用だ?そっちが連絡寄越したってことは、終わったみたいだがこっちは処理が終わってない。ちょっかいかけるなら後にしてくれ。」

何時ものように冗談を言うが凱は普段より若干苦しそうだ。

「…将らしき奴を取り逃した。そしてそいつのせいで姫乃さんが重傷だ。……僕の責任だ、すまない。」

心底苦しげな声で告げる。

「………死者は?」

凱からの問いに雪華は、苦しくも淡々と被害状況を伝えた。

「………そうか。聞きたいことは山ほどあるが死者だけは出なかったみたいだな。」

「…それと、奴の力によって僕のメモリと能力が無効化された。熾天使の力もだ。凱さえ良ければ、後で点検を頼みたい。」

「ほう?なるほど、それが原因で姫乃もやられたんだな。」

「…いや、それは僕の過失だ。目の前の相手に捕らわれて、奴の策略に気付けなかった。……………本当に、すまない。」

「失敗は誰にでもある。さっさと戻ってこい。」

凱は雪華を責めることはせずに指示を出す。

「…了解。軍も一度退かせるか?」

「そうだな。あの男が居るなら尚更だ。指示はこっちで出す。」

「承知した。」

そう言って雪華は通信を切った。

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第76話







 

 

 

ーー悔しさを糧にーー

 

 

 

防衛戦本部

 

雪華達は本部に戻ってきた。

「「……。」」

2人とも、沈鬱な面持ちだった。

友人を護れず、相手をむざむざ取り逃した。自責の念が彼らの中で渦巻いているのは、誰の目にも明らかだった。

「何て顔してんのよ。」

そこにやってきたのは博麗霊夢だった。2人ほどではないが彼女も戦闘を行ったのが見てとれる。

「……僕の、せいだ。僕のせいで、姫乃さんが。」

血の付いた手で、前髪を掻き揚げる。その目は、とても剣呑で、触れれば切れそうなまるで抜き身の剣のようだ。

「そんな事?くだらないわね。」

霊夢は溜め息を吐く。

「そんな事?くだらない?ふざけているのならやめてくれ。…最も、君はこんな時にふざけるような奴じゃないが。」

そのまま霊夢を見る。自然と睨みつけるようになってしまった。

「大体、あんたらどんなに頑張ろうがきっとこうなってた。被害を最小限に抑えてる時点で上出来なのよ。」

気だるそうに霊夢は言った。

「……驚いた。霊夢に気を遣われるなんてな。」

一瞬目を見開いた後、その場を後にした。

 

「あんたの事は知らないけど、それでも…その強さには気づいてるつもりよ。」

霊夢が雪華にはなった独り言は誰にも聞かれずに空気にとけた。

 

 

 

「処理状況を報告しろ。救護班は怪我人の補助だ。」

雪華と桜が向かった先では凱が指示を飛ばしていた。

もっとも、その姿は開戦前とは大きく事なっている。手や脚には包帯が巻かれ、左腕には点滴という明らかに怪我人だった。

この時、雪華たちが知ることはなかったが、凱が永琳から投与された薬は傷や怪我を服用者の魔力や霊力を使って無理矢理回復させるというものだった。そのため、途中で魔力切れになった凱に点滴という形で魔力を注いでいたのだ。

「今帰投した。………酷いな、魔法が使うことが出来れば。」

そこの惨状を見て歯噛みする。

「お?戻ってきたか。」

背後の雪華に振り返りつつ凱は言う。

「ああ、ついさっきな。……リバティウィング。」

再び、回復魔法を試みる。

「……発動しねぇな。」

「ちょいと異能封じがな。…してやられた。」

そう言う彼はとても悔しげだった。

「…取り敢えず姫乃さん達には出来る最大限の応急処置を施した。今のとこ、命に別状はなさそうだ。」

「なるほどな。……さて。」

凱は手足の包帯を外し、歩き出す。

進む方角は人里の西エリアだ。

「大丈夫なのか…!?」

慌てて止めようとするものの、押し退けられた。

「まだ、戦いは終わっちゃいねぇ。」

凱はドラグニスを自分に突き刺し、デビルトリガーを発動させる。

ドラグニスの魔力で変身しているため効果時間は極端に短い。

「やめておけ!それは負担が大きい、下手したら死ぬぞ!!」

怒声とともに止めようとするも、力の差が圧倒的だった。

「待ってろ、直ぐに戻る。」

そう言って凱は飛び立ち雪華達が戦っていた西エリアに向かっていった。数秒後、巨大な爆発音と激しい炎が立ち上った。

 

 

 

「…!あれか!」

高速で翔ぶ凱が見つけたのはゼウス・ガイアナイトと戦っている1体のドーパントだった。

「仕留めるのは……無理そうだな。」

凱は自身の眼でドーパントを視認し、その強さから勝てないと判断する。

「ならば!」

ドライバーにプロミネンスを挿し込み、プロミネンスガイアナイトに変身する。

「喰らいやがれ!」

空を翔ぶそのままの勢いで炎で作った槍を投擲する。

それはまるでミサイルのように飛翔し、ドーパント目掛けて翔んでいく。

が、ドーパントの真横に着弾し、激しい炎と爆音を撒き散らした。

煙が消え、視界が良くなると既にドーパントの姿はなかった。

「随分遅かったな、五十嵐凱。」

凱が変身を解くと、背後からゼウス・ガイアナイト、もとい鳴神恭介が話しかけてきた。

「悪かったな、こっちも忙しかったんだよ。」

「そうか…そんなことより()()()?」

「わかんねえ。旧型でもT2ガイアメモリ(俺等が使っているやつ)でもない感じだったな。」

「なるほど。新型…あるいは次世代型か。」

「どっちにしろ厄介だ。ってか何でここにあんたがいんだよ?」

凱は鳴神に疑問をぶつける。記憶が正しければこの男は現在、組織の最高司令官兼新人隊員の教官をやっているはずだ。

こんなところで油を売っている余裕など無い筈だが。

「久々に貴様と喧嘩しようと思ってきたが、それどころではないようだ。日を改める。」

「本音は?」

「……缶詰に嫌気がさした。」

「…あー。」

凱は鳴神が言わんとしている事を察する。

「近々、また来るさ。」

鳴神はそう言って姿を消した。

「あんにゃろう。まあ、終わったことは放っておいて戻るか。」

 

 

ーー終戦後の休息ーー

 

 

 

紅魔館 廊下

戦いは終わった。死者は奇跡的に1人も出ず、完全勝利とまではいかなかったが勝利には違いない。酒好きの彼女達は祝勝会をやろうと動き始めていた。

宴会まで時間があるので、雪華達は紅魔館の中を歩いていた。

「姫乃さんは、大丈夫だろうか…。」

「私の、せいでっ……。」

暗い表情の雪華の隣を桜は泣きながら付いていく。

「桜のせいじゃないさ…。奴の策略に気付けなかった僕にこそ非がある。」

彼らは、祝勝会に参加する気にはなれず、時折準備こそ手伝っているものの、やはり心は沈んだままだった。

そんな中、二人の鼻にとても美味しそうな匂いが…

「ん、良い匂いだな。」

「……。」

なんとか桜を元気付けようとするものの、桜は沈黙した。

彼らが今居るのは、記憶が正しければ厨房のすぐ近くだ。おまけに料理している音が少し開いた扉から聞こえる。

「咲夜か妖夢が作ってんのかな。」

「…おいしそうですね。」

やはり姫乃が重傷を負ったことがかなり堪えているようだ。

彼だって、妻の親友を護りたかった。だがそれは果たせず、少なからず傷を負った。

そんな彼らの耳に届いたのは…

「凱君、切り終わったよー!」

「よし、こっち盛り付け終わったから持ってってくれ。」

例の2人の声だった。

「姫乃、ちゃん…?」

「…入ってみようか。」

そうして、2人は扉を開けた。

そこにはまるで包丁を自分の体の一部であるかのように扱う姫乃と、味付けと盛り付け、さらには調理を1人でこなす凱がいた。

「姫乃ちゃん……!!」

「待て桜、今は……。」

桜は思わず姫乃に抱きついた。

「きゃっ?!」

急なことに反応できなかった彼女は……とっさに包丁を桜から遠ざけた。

 

そこに凱が居るのを忘れて。

「イッッタイ?!!」

「凱!!大丈夫か!!?」

雪華は慌てて駆け寄る。

「姫乃、危ないじゃないか。」

凱は背中に包丁が刺さったまま姫乃に注意する。

「…大丈夫だな、お前だってことを忘れてた。」

桜は凱と雪華をそっちのけでわんわん泣いており、抱き着かれた姫乃は優しく桜を撫でる。

「時間が惜しい、このままやるぞ。」

「凱君、私が言うのもあれだけど衛生面駄目じゃない?」

「血はでてない、それにあと一品だ。」

「えぇ………」

確かに血は1滴も出てないとはいえ、流石にまずいので凱を厨房の外に出し、盛り付けを終わらせる。

「でーきた!桜ちゃん、もう大丈夫よ。」

「姫乃、ちゃん…、大丈夫、なの……?」

「あれほど血を流していたのに。」

桜の顔には涙の跡が残っており、雪華も少し青ざめていた。

「うん、致命傷を避けてたみたいだったし、それに輸血したから!」

姫乃はフフンと言わんばかりに胸を張る。

「…怪我のほうは?」

桜を抱き締め、雪華が姫乃に聞いた。

「…それが。」

「もう既に完治している。」

扉から顔を出したのは凱だ。

「どうやって?」

雪華が魔法を使ったわけではないし、並大抵の回復魔法ではあれ程の傷を治せるとは思わない。

「永琳の薬。魔力や霊力を………まぁ詳しくは省くが、要は即効性の回復薬だ。」

「永琳先生なら納得だ。あの人最強のヒーラーだし。」

どんな薬でも作ることが出来る彼女ならそれも可能だろう、と納得した。

「さて、後の事はメイド達に任せてこっち来い」

「ああ…、行くよ、桜。」

「……はい。」

ようやく雪華から離れ、歩きだした。

 

 

 

「どうしたもんかしらねぇ……」

霊夢は悩んでいた。というのも、先ほど凱に「宴会の乾杯任せるからよろしく」と急に言われたのだ。

「こういうの柄じゃないのだけれど…………ん?何これ?」

そんな彼女はふと机の上に小瓶が乗っているのに気がついた。中身はピンク色で匂いを少し嗅ぐと、とても艶めかしい香りがした。

「……まさかこれって…媚薬?」

馬鹿馬鹿しいと思ってそれを置きかけるが、ふと何を思ったかそれを持って歩き出した。

 

 

ーー祝勝会!ーー

 

 

凱達は宴会の会場である紅魔館のホールにやってきた。そこには大きなテーブルが並べられ、大量の料理が乗っている。

「これは凄いな。軍上層部でもこんなのは見た事ない。」

「いっぱい、です……。」

2人は呆気に取られた。

「すげぇな。…………俺等が作ったにしては。」

「…これ全部お前らが?」

「まあな。」

「……頼まれてた量よりも多くない?」

姫乃は少し考えながら凱に言う。

「途中で足りなくなるよりはマシだろう?」

「………そうね!」

姫乃は考えるのをやめた。美味しければいいよね!

「姫乃さん、思考放棄するのはやめてくれ。」

「…まぁ私達も居ますし……。」

「多分それでも余るんだよなぁ…。」

雪華は遠い目をした。

「見てればわかる。ほらグラス。」

凱は雪華と桜にグラスを渡す。中には透き通った茶色の液体が入っている。

「桜は酒には弱いぞ?」

「あ、あれは霊夢さんに沢山飲まされたせいですから!」

「この匂い……麦茶?」

「正解!」

姫乃は匂いでグラスの中身を言い当てる。

「なら良かった。僕も酒類は控えるようにしているんだ。」

「そうなんですか?」

「まあな。」

「変なやつだ。お、始まるぞ。」

凱は少し先を指差す。そこにいたのは霊夢だ。

「みんなお疲れ様!完璧な勝利じゃなかったけど、今回の戦いは私たちの勝利よ!それを祝して、乾杯!」

『乾杯!』

霊夢の音頭に合わせてホールにいた全員が乾杯をする。

雪華達も、それに合わせてグラスを掲げる。

 

 

一通り料理を楽しんだあと、凱が話し始めた。

「ふぅ。さて、お前らに少し話がある。」

「僕達に?」

「何でしょうか…?」

揃って首を傾げた。

「まず、メモリについてだな。」

凱はグラスの中の麦茶を飲みつつ話し始める。

「単刀直入に言うと、お前らのは使えなくなってる。」

「ああ、いきなり変身が解かれた。十中八九、あいつのマキシマムドライブのせいだな。ラプソディ、だったか。」

「それについては少し調べた。結論を言えば、あれは一種の封印だ。」

「なるほど…。なら、奴を倒せばまた使えるだろうか。」

「そうだとしても、戦うためのメモリが無くちゃ……。」

「それについてだが。」

凱は事前に受け取っていた雪華のスノーメモリを取り出す。

「見てろ。」

そう言うと凱はメモリのスイッチを押す。

《スノー》

「起動した…?…つまり、僕達のメモリに対する適性を封じた、ということか?」

「正確には『対象者の能力、及びメモリの使用を制限する』だな。詳しいことはまだわからないが解除の仕方は判明してる。」

「本当か?」

「なら、すぐにやらないと!」

「だが、敢えてやらないというわけでもあるまいし、すぐには出来ない、ということか?」

雪華は慎重に尋ねる。

「いや、これは経過観察だ。」

「え?もう治せるの?」

凱の言葉に姫乃は声をあげる。

「治せるのか。」

「でも、経過観察ってどういう…?」

「……お前ら体に痛みは?」

「多少負傷したが、特には。」

「私も、怪我はしてません。…髪は、数本持っていかれちゃいましたが。」

「なるほど、息が苦しいとか腹が痛いみたいなことも無いな?」

「無いな。」

「私もです。…何か嫌な予感がするのは気の所為ですか?」

「最後の質問だ。相手のマキシマムは『赤い斬撃』だったか?」

「…その通りだ。」

「それが、重要なんですか?」

「そうか……」

「何が言いたいのよ、凱君。」

「…治せない、とかないよな?」

雪華が不安そうに聞く。

凱は目をそらしつつ言った。

「えっとだな。その斬撃は今もお前らに刺さってる。」

「…つまり、それを取り除かなければ永遠にこのままだと?」

「それって、マズイんじゃ……。」

「取り除けなくはない。」

「もしかして、さっき調理前に私にやったのって。」

姫乃は凱に尋ねる。

「ああ、刺さってたのを引っこ抜いた。」

そう、凱と姫乃は雪華たちが来る前に処置を終わらせていたのだ。

「…痛そうだな。」

「まさか、それをやるってことですか…?」

2人して渋面を作った。

「でも痛くはなかったわよ?」

姫乃はそう言う。

「まあ、刺さってたのが背中だったからな。」

「桜はまだしも、僕は真っ向から受けた。その場合はどうなる?」

「だからか。胸に1個、腹に2個刺さってるのは。」

凱は納得したかのような反応をする。

「えと、私はどうなんですか?」

桜も恐る恐るといった感じで問う。

「背中に1本刺さってるな。」

「それを抜く、ということか。出来ることならすぐにやってほしいが……。」

雪華は考え込む。

「構わんぞ。」

「頼めるか。」

「私も、お願いします。足でまといはもう二度と御免ですから。」

2人は頭を下げる。

「わかった。雪華は顔上げろ、桜はそのまま。」

「分かった。」

「は、はい……?」

言われた通り雪華は頭を上げ、桜はそのままだ。

「ふむ。」

凱は右手にデビルブリンガーを発現させる。

そして、優しく桜の背中に触れる。

「ひゃっ!?」

驚いた声とともに彼女の背が跳ねた。

「動くな。」

まるで戦闘中であるかのような冷たい声が凱から発せられる。

「は、はい……。」

そのまま桜はじっとしていた。

「…………。」

凱は見えない何かをゆっくりと掴み引き上げる。

「ふぅ。終わったぞ。」

「本当ですか?……魔力が動きます!」

桜は顔を上げ、能力を発動寸前まで使ってみると、魔力が回った。

「よかったわね!」

姫乃が嬉しそうにそう言うと、

「姫乃ー、あんたもこっち来て呑みなさいよー。」

遠くから霊夢が姫乃を呼んでいる。

「姫乃ちゃん、私も良い?」

「行くなら悪酔いするなよ。」

「は、はい!」

「よし!行くわよー!」

そう言って姫乃と桜は霊夢の方に向かっていった。

「よし、覚悟はいいか、雪華。」

凱は姫乃達を見送り、雪華に向き直る。

「ああ、頼む。」

「ほい。」

凱はパパっと雪華から斬撃を取りだす。

「ほれ、終わったぞ。」

「随分すんなりいったな。感謝する。」

「お前のは案外浅く刺さってたからな。」

凱はグラスにワインを注ぎながら言う。

「そうなのか。ま、とにかくこれでまた戦える。」

そう言ってグラスを飲み干した。

「戦うって言ったって、今回は俺らの勝ちだろう?」

「いや、まだあいつが残っている。名は確か……、アザリア・シロッコ。」

「あれか、俺もあいつを潰そうと思ったんだがな。」

「居なかっただろ?」

「いや、鳴神とやり合ってるのを見つけた。」

「あのおっさん、鳴神っていうのか。感謝しとかないとな。」

雪華は戦いに乱入してきた男を思い出す。

「おっさん?あいつまだ25だぞ?」

「マジかよ、えらくガタイ良かったからおっさんかと思った。…名前から察するに、トールかゼウスのメモリだな?」

「ほう?よくわかったな。確かにあいつのメモリはゼウスだ。」

トールは美鈴な、と言いながらワインを飲み干す。

「名は体を表すって言うだろ?しかしトールは美鈴か。眠気覚ましに使ってそうだな。」

笑ってふざける。

「いや、普通に寝てるところを咲夜にぶった斬られてるが?」

「…美鈴は美鈴ってことか。」

自分の世界と全く同じであったため、渇いた笑みを浮かべた。

「さて、話を戻すが。ラプソディを見つけた俺は逃さない様にと空中から攻撃しようとプロミネンスを使った。」

「…それで?」

「デビルトリガーが切れるとまずいから、空中からやろうと思ったんだ。」

「なるほど。」

「だが、気づいたんだ。」

「気づいた?話が読めない。」

「………プロミネンスって近接型だから遠距攻撃が武器を投げるしかなかったんだ。諦めて武器投げたら見事に外して大爆発したんだ。」

「…逃げられた、ということか?」

「おう!」

凱はこの上なく晴れやかにそう言った。

「…自信満々に言うことか?」

「仕方ねぇじゃん。」

凱は再びワインをあおりつつ言う。

「正直、あいつは他とは違う。万全じゃないあのときでは、仕留めることよりも逃げさせることが大事だと思ったんだ。」

「……なるほどな。」

「まぁ、そんなとこだな。………飲まないのか?」

「飲めないことはないが、酔って桜に手を出してしまいそうで怖いんだ。」

若干顔を顰めている。

「ふーん、お前って酔いやすいのか?」

周りでは酔い潰れた者達が居る中、凱はワイン瓶の2本目に手をつける。

「そこは人並み程度だな。だが桜は弱い。以前こっちの霊夢がめちゃくちゃに酔わせた。」

「へー、まあこっちは心配ないな。姫乃は鬼よりも酒の耐性が強いからな。」

「…それ、すごくないか?」

少し顔が引き攣っている。

「単に姫乃の能力がおかしいだけだがな。」

「…そういえば、姫乃さんの能力って何なんだ?」

「姫乃の能力は『外部からの影響を受けない程度の能力』だ。」

 

 

 

 

 

「…つまり催眠術とかをシャットアウト出来ると?」

「ああ、アルコールはもちろん、睡眠薬や麻痺毒、銃撃や車両の追突まで防げる。」

「分かりやすいぶっ壊れじゃないか……。」

雪華は額を押さえる。

「今回は例外だったみたいだがな。」

「…例外なんてあったことに驚いたんだが。」

「姫乃の完全耐性は『自分の身に害する影響を無力化する』ものだ。ここまではわかるだろ?」

ワインを飲み干した凱の顔はいつもどおりだ。

「その耐性を上から無効化されたんだろう。無効化自体は害じゃないからな。」

「なるほど、そういうことだったのか。…模倣できないか試してみるか。」

自身の力を増すことが出来る、ひいては、桜を守ることができると考えた雪華は能力を発動しようとしたが、凱に止められる。

「やめておけ、あれは『外部からもらった物』だ。解析なんてすれば発狂するぞ?」

「…もらった物?」

自分のように、紫から貰った、ということだろうか。

「理由は不明だが、阿求に解析してもらったら先天性ではなく後天性なものだというところまではわかった。」

「…僕と同じだな。」

「俺の『メモリを作る程度の能力』も後天性だな。で、阿求のメモリの能力で確認しようと思ったが、どういうわけか記録が残ってなかった。」

「残ってなかった?どういうことだ?僕は紫さんから貰ったが……。」

「てっきり外部の人間の記録は残らないのかと思って試しに俺の過去を全部調べ直したんだ。」

「…それで?」

「手つかずで全部残ってたよ。阿求に護達のも見てもらったが、変なところはなかったそうだ。」

「…そう、か。少し、羨ましいな。」

「………現世での反吐を吐くような俺の記録も残ってたことは嫌だったがな。最後に姫乃を確認させたが、能力関係だけ全部消されていた。」

「能力のことだけ?」

「ああ、いつから使えるのかに関しては姫乃も覚えてなかった。内容は知っていたみたいだがな。」

「そんなことがあるのか?いや、しかし……。」

「あり得るだろうな。まぁ暗い話はここまで!食うぞ!」

凱は気分を変え、料理に手をつける。

「それもそうだな。今日くらい弾けるか。」

彼は優しく笑った。

 

 

数十分後

 

「言っただろ?足りなくなるって。」

宴会はすでにお開きとなった。大量にあった料理は全部食べ尽くされている。

「…あれほどの料理が食いつくされるとは思わなかったよ。」

呆れる雪華であった。

「……そういえば姫乃達は?」

「あれ、そういえばどこに。」

雪華は辺りを見渡す。すると…

「ちょ、ちょっと姫乃ちゃん、大丈夫?」

姫乃と桜を見つけた。桜は姫乃に肩を貸していた。

「えへへ~さくらちゃ〜ん。」

姫乃は完全に酔っ払っている。

「…姫乃さん、思いっきり酔っ払ってるな。」

雪華は頭を抱えた。

「ふむ…………………あ。」

凱は姫乃をしばらく見つめていた。そして気がついた。

「…能力ちゃんと仕事してるのか?」

「………………。」

凱は右手で姫乃の髪を優しくとく。

「むふふ〜。」

姫乃は気持ちよさそうにしている。

それを見つつ凱は手を離す。

右手には薄っすらとデビルブリンガーが宿っているのを雪華は見逃さなかった。

「デビルブリンガー…?」

「………髪に小さい破片が刺さってた。原因はこれだろうな。」

「はぁ……。しっかりしてくれ。桜、姫乃さんを凱に。ここからは王子様の役目だ。」

「ふふっ、はい!」

そう言って、桜は姫乃に貸している肩を抜く。

「えへへ~、がいく〜ん。」

姫乃はピッタリと凱に密着する。

「全く、ここまで酔うとは思わなかったな。」

「こりゃ黒歴史確定かな。」

雪華は苦笑した。

「……。」

そんな彼をよそに、桜は何やら考えていた。

「がいくん、キスして〜」

「は?おい何を言ってるn……」

「だめ?」

姫乃は上目遣いで凱を見る。彼女の紫色の瞳は潤んでおり、とても綺麗だった。

「………あのなぁ…」

「さて、僕達は退散しようか。」

「そうですね。」

2人は笑って背を向けた。

「まってよさくらちゃ〜ん!」

姫乃は霞むほどの勢いで桜に飛びつき、床に押し倒す。

「きゃあっ!?」

「ど、どうしたんだ姫乃さん……。」

2人は目を見開き、ただただ驚いていた。

「う~ん、かわいいなぁ。」

酔っ払っていると言うには些かおかしい。

「……ん?…これは?」

凱はテーブルの上にあった小瓶に気が付く。そして思い返す。そこに立っていたのは誰であったか?

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢だ。

 

 

 

「……霊夢…あいつ……。」

「ひゃんっ…!?ちょっと、どこ触って…、やんっ!」

「これは……!…なあ凱。ちょっと用事できたわ。」

小瓶を見て驚愕し、その後黒い微笑みを浮かべた。

「何する気だ?………まさかとは思うが」

「ちょいと霊夢のとこに殴り込み行ってくる。」

晴れ晴れとした笑顔で恐ろしいことを言う。

「言っておくが、霊夢のとこにはエクストラの一体《エレメント》がいる。下手に刺激するなよ?」

「そうなったらまとめてぶちのめす。」

そして、彼は駆けていった。

「……まあいっか、ほい。」

凱は姫乃の首に懐から取り出した一本の小さい針を刺す。

「ふにゃぁ………。」

姫乃は瞬く間に眠ってしまった。

「はぁ…、はぁ……。」

桜はその場にへたりこんでしまった。

……その後、轟音とともにフルボッコにされた霊夢が発見された。

なおエレメントはすやすやと寝息をたてていた。

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第77話 (前書きの注意必読)

注意!

第77話には以下のタグが含まれます!

『仮面ライダー?居るよ!』
『他作品のキャラの特別出演』

それでは、どうぞ!






____________



「『姫乃禍月』『能力』『期間』」
遺跡のような世界に少女の声が響く。
辺りにはライオン、鷲、象などの顔を持つ人形の石像たちが銀に輝く砂時計を両腕で掲げている。
『……検索結果。該当情報:0件』
機械的に声を放つのはその空間で一際異質な砂時計だった。
背中には左右四対、八枚の羽を備える砂時計はエクストラメモリの中でも恐れられているものの1つだ。
「……そう。」
がっくりと肩を落とすのはメモリの持ち主…稗田阿求である。以前から凱に頼まれている仕事をこなしているのだ。
地球の本棚は以前からメモリを使わなくても使用できるのだが、このようにメモリを経由した方が負担は大幅に軽減される。
「…もう良いわ。休みなさい、パスト。」
パストと呼ばれた砂時計は、羽を折り畳み休息をとる。



……筈だった。

『警告 未確認の個体による侵入を確認』
「…?!」
侵入…それは俗に言う『幻想入り』である。
本来、幻想郷は博麗大結界と呼ばれる防壁で外界との接続を断ち、守られているのだが。今現在、()()()()()()()()()()()
そのため、阿求とパストがその代わりを担っている。
「……パスト、もし幻想郷に危害を加えるようなら排除してください。私は一度戻ります。」
『了解 警戒状態を維持します』
阿求はそれを聞くと、パストの領域から離脱する。
その後、パストの前に映し出されたのは、桜と飯綱丸であった。








 

 

 

ーーやりすぎ厳禁ーー

 

 

 

「………おい。」

凱は雪華に正座をさせ、ドラグニスを左肩に担ぎ右腕にはデビルブリンガーを惜しげもなく発現させている。

「………すまんかった。」

「あぁ?」

凱が軽くドラグニスを振るう。その瞬間、空間が呼吸できなくなるくらいに重くなる。

「…まあ我ながらやり過ぎたなと……。反省してる。」

「ほう?他に言い残すことはあるか?」

凱の圧に紅魔館の舗装を手伝ったエクストラメモリたちが震え上がる。

「……すまなかった。」

「弁明は無しか。」

「なあ、許してやったらどうだ?」

背後で見ていた護が声をかける。

「いや、やめてくれ。それに弁明したところでこいつが少しでも許すとは思えん。なら潔く罰されるのみ。」

ある種達観したような意見を述べる。

「………そうか。」

「安心しろ雪華、俺もそこまで怒ってはいないんだ。」

雪華は思った。

それはマジギレしてるやつなんだよなぁ、と。

護や他の面々は思った。

…ぶちギレてるやん。

「護、少し離れてろ。」

「ああ………おい待て何する気だ?!」

凱はドラグニスを頭上に構え____

 

 

 

 

 

 

その後何があったかはご想像にお任せしよう。

──結論を言うならば、雪華はほぼ無傷だった。しかし、それでも痛みは尋常ではなかったらしく、3時間ほど悶絶していた。

 

 

 

姫乃の部屋にて

 

「全く、雪華も馬鹿だよなぁ。」

部屋にはベットで眠る姫乃の他に護と桜、背中から閻魔刀がぶっ刺さっている凱がいた。

「す、すみません……。でも……。」

桜は護を一瞥して。

「あれはさすがにどうかと……。」

「だよなぁ。………そういえば派閥について話したっけか?」

護がそんなことを言い出した。

「派閥?いいえ、聞いていませんね。」

「派閥ってかグループっつうか、俺らの組織では凱の派閥と俺の派閥と2種類あるんだ。」

護は人差し指と中指を立てる。

「…凱さんのとこは姫乃さんに霊夢さんを初めとした人達、護さんのとこは幽香さんを初めとした方々、でしょうか?」

「ああ、だから自分の派閥のやつに手を出されて血が登ったんだよなぁ?凱。」

「……否定はしない。」

凱は目を背ける。

「あ、あはは……。」

部屋に戻ったら注意しておこう、と思った桜であった。

「さて、そろっと部屋に帰らんきゃじゃないのか?」

「…そうですね、そろそろ快復してる頃でしょうし……。」

「お前も苦労してるんだな。」

「全くだ。あいつの相手は大変じゃないのか?」

「いいえ。確かに面倒事は多いですけど、大変、というより、幸せが大きいです。」

頬を赤らめてそう言う。

「おうおう、お熱いねぇ。」

「多分、姫乃ちゃんも同じようなことを思ってますよ。」

「だってよ?良かったなぁ凱!…それはさておきアイツとはなn」

そう言った瞬間、護がふっと消える。

「馬鹿な奴め。」

「ま、護さんはどこに……?」

「早苗に頼まれててな、桜に変なこと言ったらヴォイドで早苗のとこに飛ばすことになっていた。」

凱は閻魔刀を抜きつつ言った。

「へ、変なこと、言われたっけ……?」

でも早苗さんのとこ、きっと深入りしてはいけないと桜は思った。

「半分は奴への仕返しだ。」

「半分の仕返しで地獄に送り込むんですね……。」

桜は遠い目をした。

「もう半分はあいつの管理不足だ。あの薬はあいつが持ってたはずのやつだからな。」

「…それなら納得です。」

凱は閻魔刀についた血を拭き取り、納刀する。

「そういえば、雪華とはどうなんだ?」

「ど、どうって、ナニが、ですか…?」

明らかに赤くなった。

「何って、君は雪華と一緒に喫茶店をやっているんだろう?」

コーヒーを飲みながら言う。

「そ、そうですね。」

紛れもない事実なので頷く。

「それで、どうなんだ?」

「…今度はどういう意味ですか!」

「だから喫茶店だよ。」

「その通りですよ!雪華様のおかげで繁盛してます!」

叫ぶように言い放つと、走ってドアを開けた。

「ん?桜嬢じゃねえか。」

ドアの前に立っていたのはウォーズだ。

「あ、ウォーズさん…、ちょっと、今はごめんなさい……!」

慌てて走っていった。

 

「……何したんだ?」

「………わからん。だが悪いのは俺だろうな。」

 

 

ーー異分子との邂逅ーー

 

 

 

桜は紅魔館の廊下の床に座っていた。

「もう……!凱さん……!!」

恥ずかしそうに顔を覆った。

「あれ?君は確か……桜さんだったかな?」

「あなたは……?」

声を聞き、顔をあげる。

そこに立っていたのは1人の烏天狗だった。

「失礼、私は飯綱丸龍だ。」

「ああ、あの会議の時の……。」

「覚えててくれたのか。」

飯綱丸は桜の横に座る。

「ええ。」

笑って頷く。

「それで、どうしたんだ?」

「まぁ…、凱さんが不躾な質問をするものですから。」

桜は唇を尖らせる。そんな彼女を慰めていると、

「本当にどこ行きやがった…?」

狐の面を被った少年が現れた。

「あ、紡ぎ手さんじゃないですか。どうしたんですか?」

「あ、桜。それに…、飯綱丸様ではございませんか。」

「おや?貴方は?」

「雪華と桜のセカイでいう、フォーウルムさんのようなものです。紡ぎ手、もしくはキツネと呼ばれています。」

まあこれのせいですけどね、と自身が着けている狐面を指す。

「ふぉ、ふぉぉうるむ?」

「…セカイを紡ぐ者。凱さんに聞けば分かるかと。」

狐面でよく見えないが、どうやら微笑んだようだった。

「………?」

「それはそうと、緑髪の女性に、黒髪の男性を見ませんでしたか?」

いささか焦った様子で彼女達に聞いた。

「いいえ、見てないですよ?」

「見てないな。」

「そうですか……。全くあいつら、一体どこに………!」

「何かあったんですか?」

「…いや、なんでもない。少なくとも、2人には関係がないと思う。」

「大変なのだな。」

「全くです。しかも雪華はトラブルメーカーだし。」

「凱に比べたらそうでもないだろう。」

「あの人は次元が違いますって。…まあ、とにかく探さなきゃ……。」

ため息とともに彼はスキマへ消えていった。

「君のところも大変なんだな。」

飯綱丸は優しく桜の頭を撫でる。

「そうみたいですね。…でも、雪華様と一緒に居られるだけで、とっても幸せなんです。」

柔らかに笑う。

「む。その通りです。」

彼を取り合った仲である友人達を思い浮かべる。

「ふふふ。………そこに居るのは誰だ?」

飯綱丸の雰囲気が急に変化する。それと同時に辺りに異様な圧がかけられる。

「あら、ごめんなさい!盗み聞きするつもりじゃなかったのよ。」

出てきたのは優しい緑色の髪を持った女性だった。

「(……まずいな)君は……誰かな?」

「私?私は祐綺(ゆうき)風夏(ふうか)よ。この紅魔館、私の知ってるものとは違ってて困ってたの。」

微苦笑を浮かべて事情を語る。

「そういえば、黒髪の、ちょっとキザな、18歳くらいの男の人、見なかったかしら?」

「見てはいない、だが出来れば一刻もはやくここを去った方がいい。」

「何故かしら?とっても興味深いのに。」

「……私も、この少女も巻き込まれたくはない。最後の警告だ。今すぐに去れ。」

飯綱丸の頬を汗が流れる。

「もう、分かったわ。うーん、翔ったらどこに行ったのかしら……。」

そんなことをぼやきながら、彼女はどこかに去っていった。

「………どうやら許してもらえたようだ。」

飯綱丸は深呼吸し座り込む。

「今のって、多分紡ぎ手さんが言ってた方ですよね……。」

桜も驚いていたようで、未だに目を見開いている。

「恐らくな、もう1人が私達のほうに来たら、覚悟を決めた方がいい。」

「た、多分来ないと思いますよ!こんな広い館のこんなピンポイントで…!」

──後に桜は語った。

どうして私はあんなにフラグめいた発言をしてしまったのだろう、と……。

「そうだな。これだけ広ければ……」

そう言って飯綱丸が振り返ったときだった。

「何だよ。どうしたんだよ、お姉さん。」

そこに居たのは、件の青年だった。

「きゃあぁぁぁ!!」

「うぉ、何だよ!?」

急に現れた彼に驚き、桜が悲鳴をあげた。

瞬間、辺りが暗くなる。

すると周りの景色が変わる。

彼らを取り囲むように何体もの銅像が並べられており、それらは巨大な砂時計を掲げている。

「いや待て待て待て!冗談キツイぜ…!」

彼は身構えた。

『警告』

無機質な声が響く。

声の主は祭壇の様なところに居る巨大すぎる砂時計。

背中からは天使、悪魔、虫、機械の羽が対になるように二枚づつ、計八枚の羽を持っている。その異形から滲み出る威圧感は計り知れない。

「しゃあねえ、相棒、行くぜ……!」

彼が取り出したのは、赤と銀の、ガイアナイトドライバーに酷似したもの。

「まずい…!桜さん、こっちへ!」

明らかに焦る飯綱丸が手を差し伸べる。

彼が取り出したのは。

──漆黒の、メモリだった。

『警告 対象者の敵対意思を確認。制圧を開始。』

「くそっ!変身!」

桜を抱き寄せた飯綱丸はメモリを取り出し起動させる。

「間に合え、間に合え!」

 

《ジョーカー》

「変身!!」

《サイクロン!ジョーカー!》

ハードボイルドな音とともに、そこに現れたのは、ガイアナイトとも違う、疾風の戦士。

《ドラグーン》

飯綱丸のほうも変身が完了し桜を守るためにシールドを展開する。

『全く、何で貴方はそんなに面倒事を引き寄せるのかしら。』

「知るかんなもん!とにかく行くぞ。」

『はいはい。』

『「さあ、お前の罪を数えろ。」』

『敵対対象者確認』

その一言が開戦となり、桜と飯綱丸を巻き込んだ異世界の戦士(仮面ライダー)過去を司る者(パスト・マジェステルダム)が激突する。

 

 

 

ーー異分子と防御機構ーー

 

 

「おらっ!」

サイクロンの風で近付いてからの蹴り。

1つの砂時計の羽を破壊する。

しかし、それは一瞬にして再生しその衝撃波は跳ね返る。

その衝撃は付近にいた飯綱丸達にも届く。

「げほっ……無事か?」

飯綱丸は桜に尋ねる。

「は、はい…。」

そんな彼女達を他所に…

「っと、めんどくせえことしやがる!」

『エクストリームちゃんは使えないのよねぇ、別世界だし。』

「なら、火力で一気にぶっ壊す!」

《ヒート!メタル!》

情熱的な音とともに、赫と銀の戦士へと生まれ変わる。

『排除』

無機質な声と共に大量の武器が降り注ぎ、戦士に叩き込まれる。

「行くぜー!」

《メタル!マキシマムドライブ!》

『「メタルブランディング!」』

火炎を吹き出す棒を構えて武器をかわし接近、砂時計を1つ破壊した。

『緊急性無し 排除を続行』

砂時計は全く気にせずに攻撃を再開する。

「まだまだぁ!」

『あーもう、分かったわよ。』

《ルナ!トリガー!》

幻想的な音とともに金と蒼の戦士へと生まれ変わる。

『制圧』

砂時計は無数のレーザーを放ってきた。

「早めに倒れてくれればいいんだが………」

飯綱丸はそう言いながら防御の姿勢を崩さない。謎の戦士は別として、パストは非常に危険だ。何せ()()()()()()()()()()()()存在だからだ。

「そーれもう1発!」

《トリガー!マキシマムドライブ!》

『「トリガーフルバースト!」』

彼女の心配を無視するかのようにマキシマムドライブを発動。先程の数倍はあろうかという弾丸は、やはり有り得ない軌道を描いて砂時計2つを破壊した。

『最終警告です』

「知ったこっちゃねえぜ、んなもん!」

『うるさいわよ、このハーフボイルド。』

「ハーフボイルド言うんじゃねぇ!ったく…」

《サイクロン!ジョーカー!》

最初の翠と黎の戦士となり、黎のメモリをマキシマムスロットに差し込む。

《ジョーカー!マキシマムドライブ!》

風で宙に浮く。

『警告無視を確認』

「何なんだあいつらは?!」

飯綱丸は絶叫する。五十嵐凱じゃあるまいし、命知らずにも程がある。

『これで決めるわよ!』

「当然だぜ、相棒!」

『「ジョーカーエクストリーム!」』

身体が分割され、それぞれが最後の砂時計へキックを決める。そして、再び1つになった後、風でふわりと着地した。

『損傷確認 巻き戻しを開始』

パストの周りのものが、まるでテレビを逆再生してるかのような挙動になり、すべてが元通りになっていく。

『巻き戻し終了 攻撃を再開』

破壊された砂時計はすべて修復され、攻撃が再開される。

「面倒くせえな、おい。」

『興味深いわね。』

「言ってる場合かよ。」

『Eでも使えればねぇ。』

「ありゃ俺達のもダメにするだろ。」

どうするかと思案していたその時。

「そこまでです。」

『あら?』

「なんだぁ?」

やって来たのは……和服を着た少女であった。

 

 

 

ーー調停者は巫女にあらずーー

 

 

『あなたは…?』

「何だ?あんた…、ただもんじゃねえな?」

彼…、いや、『彼ら』は身構えた。

「私は稗田阿求。以後お見知り置きください、『外界の人間(招かれざる異分子)』さん。」

阿求はまるで冷たい機械のように言い放つ。それに合わせ空間が動き出し、祭壇と砂時計の怪物の場所が阿求の背後に移動する。

『阿求ちゃんね。よろしく。』

「で、そんなLadyがどうしてこんなとこに?」

敢えて聞く。原因は明々白々だが。

「そいつはこっちの台詞だ。」

阿求の隣に現れたのは漆黒の天使の姿をした男だ。

「…あんた、人間じゃねえな?だがドーパントでもねえ。何なんだ、あんたは?」

『後で地球の本棚で調べてみるとしましょうか。』

「ま、とにかく俺達は自己防衛してただけだ。何処とも知れねぇ場所に来て彷徨ってたら、いきなり襲われたからな。」

「それはあなた方が敵対勢力だとこの子が判断したからでは?」

阿求は背後の砂時計を眺めつつ言う。

「いや、特に何かをした覚えは…、いや、そこのお嬢ちゃんが悲鳴あげたからか。」

『翔のせいじゃない。』

「いや違うだろ。俺はどちらかっつーと大人しく去ろうとしたんだぜ?」

『どこまで本当なんだか。』

 

 

「……凱。」

傷だらけになった飯綱丸が凱に近寄る。

「ん?おー飯綱丸じゃん。あと桜、何をしているんだ?」

漆黒の天使__凱に飯綱丸が話しかける。

『あの女の子達の知り合いだったのね。』

「めんどくせぇ……。しかもあいつはエクストリームでも倒せる気がしねえぞ。」

何やら話し込んでいる。あまりに異様なので、桜は硬直していた。

それを他所に…

「え?なんすか、どうしたんすかそれ~w」

「笑うな!」

「いやだってボロボロじゃないっすかぁw治安を守る維持隊の幹部さん弱すぎじゃないっすかねぇ?」

「貴様ぁ!」

煽る凱と煽られる飯綱丸である。

「どうした、凱。」

そんな彼らの近くでスキマが開き中から出てきたのは復活した雪華だ。

『あら、貴方雪華君ね?』

「あー、紡ぎ手が何か言ってたな。」

「おう。見ろよこいつ、《パスト》の巻き添え食らってメッチャクチャボロボロだぜ!」

「おいやめてやれ。…飯綱丸さん、ありがとうございます。」

雪華は頭を下げた。

 

「…これボイコされてね?」

『……まあ、いつか気づくでしょ。』

 

「んでよ、聞いてくれよ。」

「ああ、何だ?」

雪華は凱のほうを向いた。

「こいつがここまでボロボロになった理由が、元を辿るとどうやらそこの二人三脚人間にあるみてぇなんだ。」

凱は持っていた剣を肩に担ぐ。

「あっやっと気付いた。」

『地味に悲しいわね。ここにきてやっと気付いてもらえるって。』

 

「原因はお前らか。…なあ、僕は目がおかしくなっているらしい。」

「何だ、アレルギーか?」

冗談を凱は口にするが、声は笑っていない

「僕の目には、あれが仮面ライダーにしか見えないんだが。」

雪華の声は驚愕で震えていた。

「…………あ、そういやそんなのいたな。」

凱は指を鳴らす。どうやら完全に忘れていたようだ。

言われてみればその視線の先にいる者の容姿は凱がよく知る『仮面ライダーW』に酷似、というかそれそのものだ。

「仮面ライダー知ってんのか。」

『これは意外ね。後で調べなおそ。』

ライダーから感心したような声が零れる。

 

「…で、こいつらどうする?メモリブレイクされたら終わりだが。」

「は?こんな雑魚に負けるとでも?俺が?ありえねえな。」

凱はおどけて見せる。

「まあそうだけど。」

「おい待て待ってくれ!」

『私達に貴方達と戦う意思はないわ。』

臨戦態勢となった2人に慌てて否定する。

「おまえがやるなら俺も殺るが……どうする?」

「そのつもりだったが。桜を怖がらせるなら容赦はしない。」

「待てっつったろ。」

変身を解除すると、そこに居たのは、1人の男。黒いスーツに同色の中折帽を被っている。

「ほう?ならこっちも」

凱は変身を解く。

解除時の風で灰色の髪が揺れる。

「凱さん、あとはお任せします。」

「ああ、わかった。」

彼らが変身を解いたのを確認し、パストと共に阿求は消えた。同時に彼らがいた場所も紅魔館に引き戻される。

そして、すぐそこの角から緑の髪を持った女性が現れる。

「祐綺 風夏よ。よろしく。」

「佐野 翔だ。よろしく頼むぜ。」

「………ああ、よろしく。」

凱は何かを考えたあと、挨拶を返した。

彼らがここに来た理由、推測が正しければ………

「あ、お前ら!!」

「紡ぎ手じゃないか、どうしたんだ?」

スキマからくらんもちが現れる。

「お前が元凶かぁ!!」

凱は即座にメモリを構える。

「待って凱さん待ってお願いだから!!」

「よしやれ。」

雪華はくらんもちに拘束魔法をかける。

「ぶっっ潰す!」

凱が変身する………

 

スカンッ「馬鹿野郎!」

「イッテェ!?」

そこに現れたのは護だ。その手には閻魔刀が握られている。

「何しやがる護!」

「た、助かった……。」

護の乱入に安堵するくらんもち。

「全く…凱、おまえはいつもやりすぎなんだよ!」

「んだとこの野郎!」

「そうやって何時もおまえは周りをぶち壊そうとするんだ!」

「ああ?!テメェだって閻魔刀使って次元ごと滅茶苦茶にすんじゃねぇか!」

凱と護の口論が始まり、ヒートアップしていく。

 

「護さん、本当にありがとうございます!風夏、翔!勝手にこっち来てんじゃない!」

くらんもちは彼らを怒鳴りつける。大人しくなった風夏と翔を連れていこうとしたとき、嫌な言葉が聞こえた。

「いいか?やるんならドラグニスだ。あんなことでメモリを使うんじゃない。」

「ああ、気を付けるよ。」

それを聞いて背筋が冷たくなる。メモリとかならまだしも、物理は流石に困る。

「えっどちらにせよピチュるんですがそれは」

「お前がいくらピチュろうと一向に構わん。」

「んな殺生なっ!」

雪華はくらんもちを見捨てる。

「あとやるんなら土手っ腹ぶち抜け。」

「もしかしたらバスターの方がいいのか……?」

「それは駄目だ。紅魔館が壊れる。」

「あの僕だって生きてますよ?法に抵触しますよ?」

「誰がお前なんかの死に法を適用すると思ってるんだ。」

「うわあ辛辣。」

「じゃあどうすれば……」

「ヴォイドで引きずり込むとか?」

「それだぁ!」

 

メモリを使うな、と言ったはずだがやはりメモリを使う方向に2人の話が進む。

「あ、そこは紡ぎ手なので余裕で戻ってこれますよ?」

「反則だろそれ。」

「そうか……エクリプス使え。」

「だな。」

「えっちょっそれは。」

「よし、いくぞ!」

「アホンダラァ!」

スキマが開き、中からフォーウルムが出てきた。

 

キャラ出すぎじゃね?

 

「フォーウルムさん!ベストタイミング!」

「こっちの作者か。」

「あらあら。」

「ただでさえ、パストが起動してたのにカラミティまで出さないでよ?!」

フォーウルムが悲痛な叫びをあげる。

「既にグチャグチャになってるバランスをさらに壊そうとしないでよ!」

「うわあ想像もしたくないな。」

「地獄絵図、ですね…。」

「そうだよね、なら僕を消そうとするのやめようか。」

くらんもちは青ざめた顔で震えている。

「だがこいつは?!」

「凱、死なない体で溶岩遊泳と何度もループする紐無しバンジー、どっちがいい?」

「すまん許してくれ。」

フォーウルムの二択を聞いた凱は深々と頭を下げる。

「別に良いんですよ、別に。」

「手の平球体関節でも入ってんの?」

くらんもちの変わり身に呆れつつ、雪華は翔と風夏を指した。

「それで、彼等はどうするんだ?」

「君らか、勝手にはいってきたの。おかげでパストが暴走気味だったんだからね?」

フォーウルムは2人を見る。

「あー、それは済まなかった。風夏が紡ぎ手の入ってった穴に興味示してな。巻き添え喰らった。」

「だって、あんなに面白そうなものがあったのなら入らないと失礼でしょう!?」

「…結局お前が原因か。」

「ぐ…、肯定も否定も出来ない!」

結局くらんもちが原因のようだ。

「……桜ちゃんの時はこっちが調整中だったからまだしも、ホントに大変だったんだからね!」

普段はヘルメットのせいでわからないが今は珍しく怒っているのがよくわかる。

「…すまなかった。」

「ごめんなさい…。」

「マジですみませんでした!」

3人揃って頭を下げる。

「…桜ちゃん、どうしよっか?」

フォーウルムは桜に話を振る。

「…お2人はまだしも、紡ぎ手さんはエクリプスしちゃってください。」

「エクリプスが動詞になっとる…。……………え?今なんて?」

「うーん、僕はメモリ使えないけど…やろっか。」

そう言ったとたん辺りが歪み始める。

「えっちょっ待っ、( 'ω')ギャァァァァァァ!」

くらんもちの居たところが光の無い闇になったかと思うと、一瞬にして消えてしまった。

「…よし、終わったよ。………そこの2人。」

「…ん。」

「…はい。」

翔と風夏の2人が頷く

「今回は仕方ないけど、今度は俺に言ってから来てほしいなぁ。」

「すまなかった…。…風夏、これに懲りろ。」

「気を付けまーす……。」

猛省した2人にフォーウルムは続ける。

「もし破ったりでもしたらぁ……」

「そ、その先は言わないで!」

「お前怖いの苦手だもんなぁ。」

「い、良いじゃない、別に……。」

「よし!さて僕は戻るよー」

満足したフォーウルムはスキマに入る。

「ありがとうございました。」

「…待て、俺らどうやって帰る?」

「じゃあお詫びも兼ねて僕が送り返す。」

「紡ぎ手!?どうやって抜け出しやがった!?」

いつの間にかくらんもちがそこにいた。

「じゃあヨロシクー」

「はーい、ほらこっち。」

権限を用いて空けたワームホールに消えていった。

「…なんだったんだ、あいつら。」

「さぁ……?」

今頃になって呆気に取られた雪華達だった。

「しーらね。そういえば凱、姫乃が呼んでたぞ。」

「目を覚ましてたのか。わかった、戻る。」

凱と護は部屋に戻っていった。

移動ついでにぼろぼろになった飯綱丸を抱えていった。

「じゃあ僕達も戻るか。」

「そうしましょう。」

そう言うと、桜は雪華の腕に抱きついた。

「ちょっと、さすがに人目が……。」

「…別にいいじゃないですか。」

2人は、とても幸せそうだった。

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも、フォーウルムです
ここまで読んでいただきありがとうございました。
ゴールデンウィークはハーメルン書いたりレポート書いたり原神やったりと大忙しですね………。
とりあえず、原神は徹夜でやりまくってナヒーダお迎えしました。

さて、今回登場した風夏と翔は私ではなくくらんもちさんのところのオリキャラです。彼等を出したいというくらんもちさんのお願いで出させていただきました。
最初は迷ったのですが、パストの初陣の相手に良いかな、と思い今回の話を書き上げた次第です。
いつかパストVS凱も書けたらなー、などと思っております。
あと2
3~4話で完結予定です……完結するかな?
首を長くして待っていてもらえると嬉しいです。
それではこの辺で
また次回お会いしましょう。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第78話

どうも、フォーウルムです。

なんか前回の完結宣言を小説の完結と勘違いした方がいらっしゃいましたねぇ。
今更ながらそう受け取られても仕方なかったですね、あれは。
まあ、修正しませんが。
それでは、第78話、どうぞ!


_________________


「くそぅ……くそくそくそクッッソ!」
とある一室にて、1人の男が怒鳴り散らしていた。
「言葉が汚いですよ、大元さん。」
怒鳴っていた大元に金宮晶可(カナミヤショウカ)が怠そうに言う。
「何故、我々が勝てんのだ!メモリだって最新の物なんだろう!!」
「一々言っても無駄だろ、相手が悪かっただけだ。」
「死ぬところだったんだぞ!!文句を言わずにいられるか!」
雨水の言葉にも、大元は反発する。
「あのお嬢さん…アザリアだっけか?彼女も中々の手練れでありながらこの前ICU 出たばっかだろ。そうならなかっただけでも幸運だったんだよ。」
そう、ここにいない4人目、アザリア・シロッコは最近までICU におり、最近になってようやく普通の病棟に移されたのだ。
「これがあれば最強になれると言っていたのは嘘だったのか、このペテン師どもが!」
そういった時だった。
「あらあらあらぁ?ソイツは俺等に対する敵対宣言で良いのかなぁ?」
『?!』
急な声に3人が振り向く。
そこにいたのは、SFアニメに出てきそうに機械の体を持つ人型の男だった。その声は男にしては高い声……というかテンションの高そうな感じである。
「貴様、何者だ?」
「あー、名前は何でも良い。お前さんに名乗るつもりはない。」
男はそう言って大元を見る。
「お前さん、強くなりたいんだっけか?」
「……それがなんだ?」
「一回、実践してみないか?」
「それで強くなれるのか?!」
「それはお前さん次第だ。」
男は両手を広げて見せる。
「何事も実践が一番だからなぁ、どうだ?やるか?」
「くくく、良いだろう!」
そう言って大元は鼻息を荒くして部屋を出て、訓練場に向かった。

「……少し良いですか?」
「んん~?どったのお嬢さん?」
機械男に金宮が話しかける。
「何が目的なのですか?」
「いやいや、ちょっとお手伝いをね?」
機械男は嬉しそうに言う。
「手伝い?」
「そそ!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」
「……置いて…?」
「仲間に置いていかれた、ということか?」
雨水が話しに加わる。
「……残念だけど、俺たちには味方なんていないんだ。」
急に声のトーンが下がる。
「いない?」「どういう事です?」
雨水が聞き返し、金宮が首を傾げる。
「そう、居ないんだよ。味方も……敵も…ね。」
そう言って機械男は部屋を後にした。

数分後、訓練場に向かった二人が目にしたのは、重装備の機械男とグチャグチャになった赤黒い肉の塊だった。













 

 

 

 

 

ーー少女の悩みーー

 

 

 

今は夕方を少し過ぎたくらいだろうか。すでに月は昇っており、気温も下がりつつある。そんな中、俺は姫乃に呼ばれたので彼女の部屋に来たのだが………。

 

「凱君……。」

「ん?どした?」

俺は姫乃を抱き抱えている。

「その………えっと……」

姫乃にしては珍しく視線を泳がせている。普段の彼女ならば思ってることをはっきりと言ってくるはずだ。

「あのさ、この前の事なんだけど……。」

「この前?」

「ほら、祝勝会の時の。」

「ああ、姫乃がめちゃくちゃに酔ったあの日か。」

「そ、そうだけど。そんなこと言わないでよ?!」

「事実じゃん。」

あのときの姫乃は本当に泥酔していた。普段の彼女からは想像も出来ない。

「で、それがどうした?」

「その…嫌いになって無い?」

「はぁ?」

「凱君って、酔っ払った女性が嫌いとか、嫌だって思わないの?」

何を言っているんだろうか?

「んな訳あるか。それだったら霊夢とか咲夜とか…彼女らはどうなる?」

「えっと…それは…」

考えてないのか。

「全く。ほら。」

「え?…あ………」

心配そうにする姫乃の唇に優しくキスをする。最初は戸惑っていた姫乃だったが、直ぐに身を任せてくる。

「………。」

「安心しろ。あの程度で嫌いになったりしねぇから。」

そう言いながら姫乃の髪を優しく指ですく。

その時、ドアをノックする者がいた。

「どうぞー。」

「姫乃ちゃん、今、良い…?…あ。その、お楽しみ中だった?」

入ってきた桜は慌ててドアを閉めようとする。

「いいよー、どしたの?」

俺は溜め息を吐く。まあ、姫乃は軽いのでそこまで苦じゃないが、足が痺れないか心配ではある。

「まあ、その……、押しが、足りないかなと。」

「押し……?」

「雪華様って、かなり格好良いでしょ?だからその、まわりにいっぱい女の子が居るわけで……。だから、いつか取られちゃうんじゃないかって……。」

桜は不安そうに語る。

「……そうなの?」

それを聴きながら俺は頭の中で思い浮かべる。

なるほど、確かに雪華の周りには女性が多いと感じる。

こっちの世界では知っている限りだと女性達は凱か護に好意を向けるだろうが、あっちの世界では雪華1人に向けられるのだ。それこそ、目の前の桜がアイツを想っているように。

だが、いやだとするならば。

「桜、相談相手間違えてるぞ?」

「どういうことですか…?」

桜は首を傾げた。

「こいつら、誰かに取られる心配がないからな。」

姫乃や霊夢、その他にもいるだろうが俺に好意を寄せる連中は俺を『共有物』みたいにしている。だから仕事がなければデートのように人里に遊びに行っている。相手が毎回違うので、「幻想郷の有名人相手にそういった依頼も受けてるのか」と思われているらしい。(射命丸からの情報)

「…そうでしたね。」

瞬きした後、堪えきれなくなったかのように笑う。

「だが、わからんでもない。あの男は自分の容姿を忘れて誰にでも優しくするからなぁ。」

「本当にその通りなんです!早苗さんにレミリアさんに咲夜さんに椛さんに天狗の総領娘の方にフランさん、終いには紅魔館の一部メイドさん達にも想いを寄せられているんです!」

ばん、とその辺にあったテーブルを叩いた。

「……護君が居る分、凱君はそうでもないよね。」

「だな。」

「…あと言い忘れていましたが妖夢さんも追加です。」

「なんとなくわかるわ。アイツの太刀捌きすげぇもん。」

「そうね、凱君よりも上手いかもね。」

雪華の太刀の動きは洗練されている。事実、同じ動きを真似ろと言われても出きる気が起きない。

「…あれで本気じゃないって言ったらどうします?」

桜は真剣な面持ちで小さく言う。

「雪華様の本気は、二刀流なんです。一度だけ、皇帝からの命令でその力を振るったんですが…。あの方は3万の軍勢を、1人で全滅させました。」

皇帝というのは雪華や桜が以前に言っていた軍隊の司令官か何かだろう。

「…すまん、すごい話なんだろうが……なんと言うか。」

「なんというか?」

「……そこまで特別に感じねえ。」

「凱君はマジェスト相手に5万とかやってたもんね。」

「うわぁ……。でも何故でしょう、凱さんだからと納得している私がいます。」

おい、俺をなんだと思っているんだ?

「話を戻そう。アイツを取られないようにする方法だったか?」

「そうですそうです!咲夜さんや妖夢さんに料理が上手なわけじゃないし、早苗さんやフランさん、レミリアさんのような可愛さもなくて、椛さんのような強さもなくて…。本当に、いつか離れてしまうんじゃ、って……。」

桜は泣きそうになる。

料理の腕は知らないが容姿に関してはそこら辺にいる有象無象とは比べ物にならないし、戦闘力も他よりも高いはずだ。

もし足りないとしたら……それは恐らく()()だろう。

(荒療治だが、やってみるか。)

 

 

 

ーー荒療治ーー

 

 

 

………それに、多分正面から戦ったら私は上から七、八番目くらいの強さだよ。」

「強いね……。真っ正面からだったら勝てる気しないや。それに銃も無効化するんでしょ?」

まあ私は狙撃手だから真っ正面なんてやらないけど、と彼女は笑う。

よく言うぜ、自分だって短剣で近接をこなせるくせに。

いつか戦ってみたいものだ。

と言うかいつの間にか話が進んでいる。

「それに桜ちゃんは弱くなんて無いと思うよ?」

「私なんてまだまだだよ。私より強い人も何人かいるし。雪華様はその筆頭。」

アイツと比べちゃいかんだろ。だってアイツは凡人の皮被った超人やん。

「違いないな。」

俺はとりあえず笑う。

「……桜、何故おまえは周りよりも劣っていると思うんだ?」

桜に問う。

「…それは、ただ単に私単体での戦闘力が低いからです。私は元狙撃手なので、一発が必殺の攻撃でなくてはならない。それを外せば……。というわけですよ。なんとか、第三階梯までは上り詰めましたけど……。」

「なるほどな。………で?」

かいてい……?軍の階級だっけ?でも上から三番目ってことなら十分ではないだろうか?

「要するに、雪華様や凱さん達のような、圧倒的な戦力には無力、ということです。」

「つまり『無力だから自分は弱い』、と諦めるのか?」

凱は鋭く言い放つ。ってか俺と比べんなよ。俺もう七割位人間じゃないぜ?

「接近され、体勢を立て直すことも出来ず、相手の格の違いに怖じ気づく。狙撃手からしたらテンプレとも言える状況だな。」

キツい言葉を桜にぶつける。

「……分かってます、そんなこと。」

桜は泣きそうになった。だよな、急にそう言われたらそうなるよな。もう少し我慢してくれ。

「例えば……今俺がお前の敵だったとしよう。」

俺は姫乃をベットに降ろし立ち上がる。

「…はい。」

「お前の手には狙撃銃が握られている。が、狙撃直後で弾はリロードされてはいない。」

そう言って俺は懐から拳銃を取り出す。

「それなら…。」

桜は鞘ごとダガーを取り出した。

「相手はお前の情報を知り尽くし、能力の対策も万全だ。相手は半秒後に引き金を引き、お前を射殺する。」

俺は銃を桜に向ける。安全装置は既に解除されている。弾丸は入ってないがイメージには充分のはずだ。

「距離はちょうど今みたいに3メートル弱だ。どうする?」

「当然、こうです。」

腕を振り、ダガーを投擲する。

「なるほど。」

凱はそれを銃を持つ手とは逆の手で叩き落とす。

「……。」

桜は能力で俺の側面に移動、ダガーを回収して投擲し、さらに反対側に移動、投擲、別の場所に移動、投擲を繰り返した。普通に厄介な動きだ。

「甘い。」

俺は桜が移動する先を予測し、組伏せて無力化する。

「……着眼点はいいが、まだ足りないな。」

「いてて……。」

その時だった。突然窓ガラスがガタガタと揺れた。

「なんだろ?」

姫乃が首を傾げる。

「あ、多分これ……。」

そう言って桜は窓の外を覗いた。

「…やっぱり。」

桜が微笑む。

「……誰か居るのか?」

解りきってはいるが、一応聞く。

「雪華様ですよ。」

「………。」

俺はしばらく考えたあと、拳銃の弾を入れ換える。

準備は終わった。これからが本番だ。

「え、何するつもりですか?」

そんなことはつゆ知らず、雪華は庭で剣を振っていた。アイツが振った風圧で窓が揺れていたのだ。やはり超人だな、と思う。

「……。」

窓から顔を出し、雪華を狙う。

しかし、アイツは変わらず剣を振り、その度に強風が吹き荒れている。

「………!」

俺は間髪入れずに3回引き金を引き発砲した。

「……。」

雪華の手元がピクリと動く。その瞬間、3発の弾丸は全て真っ二つ。その断面は滑らかだ。

「そうこなくちゃな。」

俺は姫乃にあるものを投げ渡しつつ窓から飛び降りる。ちなみにここは4階だ。

さあ、最後の一仕事だ。

 

 

 

ーー悪趣味な悪戯ーー

 

 

 

「お前何しやがる?僕に銃パナしたのはまだいい。あの程度対処は簡単だからな。だが桜泣かせた上に組み伏せる?覚悟は出来てんだろうね?」

降りてきた凱に開口一番これである。

「だったら何だ病み上がり野郎。寸止め風圧で3時間ものた打ち回る様な弱り様で何ができるってんだぁ?」

凱は悪びれることもなく言い放つ。火に油を注ぐことも忘れない。

「あれ寸止めなのかよ……。ま、いいや。」

突如として凱の足元にスキマが発現。

「ん?」

凱はその上に何事もないように浮かんでいる。

「当然の帰結だわな。」

雪華が指を鳴らすと凱が居る場所だけ局地的に重力が数十倍に強くなる。

「遅ぇんだよ!」

凱は地面を蹴り飛ばし弾丸のように接近する。

「はい残念。」

凱の眼前数ミリの場所にスキマを生成。

「甘い!」

凱はドラグニスを地面に突き刺し、棒高跳びのように雪華を飛び越える。

「全く、他人のコピペじゃなくって雪銀使えよ。それとも、それができないほど弱ってるのか?」

「あれなぁ、ワンチャン紅魔館全壊させかねないんだよなぁ。レミィとフラン達の家壊すわけにもいかないし。」

雪華は考え込む素振りを見せた。

「ほーん、一応正気なのな。てかさぁ……」

凱はドラグニスをペン回しでもするかのようにクルクルともて遊ぶ。

「どこまで知ってんの?俺らの会話。」

「着眼点がどうとかのとこ。聞くともなしに聞こえるんだよなぁ。魔力に乗って。」

「んじゃ、その前の会話は?」

「姫乃さんの料理がどうとかの所だな。外に出たのがその時だし。」

凱は姫乃の料理の話は知らなかった。その時は考えに耽っていたので聞いてなかったのである。

「なるほどなるほど。じゃあ遠回りは無しだ。どう思ってんだ?アイツの事。」

「どうって……。自慢の妻だよ。桜は優しいし、細やかな気配りも出来る。僕みたいな殺戮人形なんかとは不釣り合いなほどにな。あんなに可愛いのに、どうして僕なんかのとこに来たんだか。」

しかし、その声には隠しきれない喜びと愛情があった。

聞いてるだけで口の中が甘くなりそうな状況をこらえつつ、凱は再び聞く。

「他には?」

「他?」

「ああ。そうだな…………他と比べてどうよ?」

「他って……、霊夢達と比べて、ということか?」

「そうそう、実際のとこどうなん?」

我ながら質の悪い質問だと思う。

「…文字通り最高の女性だよ。」

夜月をみて、仄かに笑う。

「なるほどねぇ〜。ところで雪華君。」

「はいはい何かね凱君。」

ここでネタバラシと行こうか。

「これ、なーんだ?」

凱は懐から小型の機械を取り出した。

「てめ、それ…、盗聴器じゃねえか!?………まさか!!」

「お察しの通り。さっき姫乃にスピーカー渡してるんだぁ。」

凱はこの上なくニヤニヤしている。

「…………そこに直れぇぇぇぇぇぇ!!!!」

みるみるうちに赤くなり、制裁を加えんと雪銀を抜刀。

「やーなこった!………聞いてるか、桜。」

凱は機械に優しく話しかける。

「こいつはお前が想っている以上にお前の事を愛してるんだ。だから他のやつに取られるんじゃないかなんて考えんなよ。」

「…はい!」

桜は元気に返事をした。

「桜!忘れろ!忘れてくれ!」

外で叫ぶ雪華に桜は窓を開け、

「嫌です!一生忘れません!!」

と言った。

尚、その後叫び散らかし雪華とその原因を作った凱はレミリア直々に呼びだされ、鬼説教をくらった。

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 




は~い、フォーウルムで~す。
珍しく後書きにも書かせていただきます。

今回は前置きに以前のT3使用者と組織の幹部出しました。
解る方は解るキャラですね。
彼については今後のストーリーで登場します。
今は最新話と凱達の紹介文書いてるのですが、紹介文で書いて欲しいこととかってありますかね?感想でもDMでも良いので案があるかたはお願いします。


それではまた次回、お会いしましょう!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第79話

 

ーー戦う理由ーー

 

レミリアに叱られた凱と雪華は紅魔館の厨房に来ていた。

「いやー楽しかったな。」

凱は体を伸ばしながら笑う。

「…どこが。」

対する雪華は苦い顔だ。

「たまにはいいじゃないか。さて、俺はこれから飯作るけどお前はどうする?」

「じゃあデザートでも作るかな。得意分野だし。」

「あー確かにシャーベットとか得意そうだもんな。」

厨房に着いた凱は調理を始める。

「まあ確かにそうだが、大体のスイーツは作れるぞ?」

「流石、喫茶店のオーナー様。」

肉に下味をつけながら言う。

「桜にも聞いたが、中々に良さげじゃないか。」

「いつでも来てくれ。割引しておくぞ?」

笑いながら見事な手付きで苺を刻む。

「ありがとな。そういやぁ、夜も忙しいのか?」

「…どういう意味だよ。」

ジト目で凱を見る

「だってそうだろ?二人だけで店を回すとしたらそれ相応の準備が必要なはずだ。前日の内に下味とか付けるもんじゃないのか?」

「…まあ、そうだな。スポンジとかは前日に焼いたりするかな。」

「こういう時、食品を扱う店は大変だよな。」

「まあな。ま、楽しいから良いんだけどな。」

雪華は微笑んだ。

「何事も楽しいのが一番だからな。よし、こんなもんかな。」

凱は調理の手を止める。彼の周りには様々な料理が並び始めている。

「おおー、さすがバーのマスター。」

そう言いつつも、彼の周りにも、それぞれが好むスイーツが並んでいた。

「今度、うちにも来るか?良い品が揃ってるぜ?」

「ああ、邪魔させてもらうよ。」

雪華は微笑んだ。

「……1つ聞いていいか?」

笑みを消した凱が尋ねる。

「なんだよ?」

雪華は可愛らしいトッピングをしながら応える。

「俺は、俺が正しいと信じていることの為に戦っている。もしも………その信じているものがお前等での《悪》だった場合、お前ならどうする?」

「…斬り捨てるさ。全力を以てな。例え友であろうと、容赦はしない。だが……。」

「だが?」

「僕は逆も望む。僕が間違ったことをしていたら、殺してくれ。桜は泣くだろうが、事情を話せば納得してくれる。彼女は聡いから。」

「……安心しろ、そうなったら全力で叩き潰してやるよ。」

「それでこそお前だ。さぁて、みんなが待ち侘びてるぜ?」

「だな。俺も腹減ったよ。」

凱達の料理をメイド達に運んでもらい、夕食を取った。皆が舌鼓を打ちながら食べる中、咲夜のみが険しい顔をしていた。

 

 

ーー新たなる力ーー

 

 

 

料理を食べ終えたあと、凱と雪華は後片付けをしていた。そこには咲夜もいたが、相変わらず表情は険しい。

「いやー、美味かったな。」

「ああ、さすがだな、凱。」

「お前のデザートも中々だったぞ?」

「なら良かった。……咲夜?どうしたんだ、そんな顔して。」

「…………何でもありません。」

咲夜は相変わらず険しい顔をして食器を片付けている。もちろん、凱と雪華も一緒だ。

「そうか?僕が信用できないのは分かるが、せめてレミィには言ってやれよ?あの子、君が凄く大切だからさ。」

それだけ言い置いて、自身の作業に戻る。

「もういいです。凱、私は他の片付けを。」

「ああ、わかった。」

咲夜は食器洗いを終え、別の作業をしに行った。

「…怒らせてしまったかな。」

気まずい雰囲気になり、余計な一言を後悔する。

「全く、前も思ったが察しが悪いんだな。」

「そうだろうか…?そういうのは分からないんだ。話したことのある女性なんて、桜と部下数人だけだったから……。」

「はぁ…普段は咲夜が紅魔館の食事を作っているが、今日は俺等が作った。恐らくレミリアやフランはいつも以上に喜んで食べてたんだろうな。だから…これは嫉妬ってやつかな。」

「ああ、そういうことか…。」

申し訳ないことをしたと思いつつ、ワインを使ったオリジナルスイーツのレシピでも置いて行こうと考えた雪華だった。……当然それで許してもらえるとは思っちゃいない。

「だったら俺がもらおう。お前のデザートを再現するのに良さそうだ。」

雪華が口にしてはいない部分を凱は先読みする。

「…詫びを横取りすんな非常識野郎。」

盛大に溜息をついた。

「あんまりな言い方だな、否定はしないが。」

「回りくどいよりはましだろう。」

全く……、と言いながら紙を取り出す。

きっちり2人分書いているのがせ雪華らしい。

「真面目だな。…………今日の夜、地下室に一人で来い。」

「…?分かった。」

書きながら頷いた。

「じゃあな。くれぐれも桜には言うなよ?」

そう言って凱は立ち去った。

「OK。」

雪華の方も書き終わったらしく、1枚を厨房へ、1枚を凱の部屋の前に置いていった。

 

 

その日の夜 FDL 地下フロア

 

「凱〜?」

そっと地下室のドアを開ける。

「来たか。」

凱は雪華に手招きする。

「ああ、そっちか。」

凱の方へ行くと、見えたのはメモリ。

「こいつはお前に。」

凱は1本のメモリを手渡す。青と金色の装飾が施されたそのメモリには『A』のイニシャルが描かれている。

「これは……、アクセルではなさそうだが?」

雪華はそれをまじまじと見つめる。

「アクセルじゃない。これは《アーサー》だ。」

「アーサー…。伝説の騎士王、か。」

少し驚嘆したように目を見開く。

「お前は刀使うから合わないかも知れないがな。」

凱は欠伸をしつつ言う。

「いや、これ以上ないほど。全てを守る騎士王。僕の理想のメモリだ。」

そしてふと気付く。先程から、メモリが淡い光を放っているのだ。邪悪なものではない、むしろ清冽で、温かな光。

「………好かれてるな。」

「好かれてるって、どういうことだ?」

「そのメモリは特殊でな。簡単にいえばエクストラみたいに自我がある。喋ったりは出来ないけどな。」

「…護りたいものがあるのは、彼も僕も同じだからな。」

愛する(ブリテン)と、愛する()。その二つを想っている雪華を見ていた凱が呟く。

「愛国者で愛妻家か。俺からしたら考えられないな。」

凱は苦笑いをする。

「…まあアーサー王はグィネヴィア妃との仲は悪かったらしいが。」

まあ、愛するものがあるのは同じ。そして、それを護りたいのも。だから気に入られた、ということだろうか。

「下らん、知らん、興味はない。改竄の出来る《歴史》よりも、変わらない《記憶》の方が信用できる。」

凱は棚をいじり始める。

「以前、俺が剣を創ったとき言ってたよな、『砕けた破片が欲しい』って。」

「ああ。…指輪を、作ってやりたいんだ。だから、桜の気に入ったあれを使いたかったんだが……。」

「……レシピの代価を払おう。」

凱は棚にあった小瓶を取り出す。中にはあの鉱石と同じ色の液体が入っている。

「これは…、あの石と同じ……?」

「ああ、以前に似たようなのを持ってたのを思い出してな。」

凱はそれを手の平に出す。光を反射するそれは瓶から出た部分のみ石のように硬くなる。

「さて、少し待ってろ。」

凱はヘファイストスメモリを使い、慣れた手付きで石を加工し始める。

「へぇ……。」

雪華は感嘆の声を上げ、それを見ている。

「………よし、ほらよ。」

完成した指輪を雪華に渡す。

「箱はあっちで選べ。俺のセンスは当てにならん。」

「…これなら彼女も気に入ってくれる。感謝する!」

そして、意気揚々と箱を選び始めた。

それを見てか、アーサーのメモリが微笑むように再び光を放つ。

「………これでよかったのかもな。」

凱はボソッと呟く。

「…よし、これだ。」

笑って1つを手に取った。

「どんなのにしたんだ?」

「これだよ。」

白銀の桜が舞う、変わったデザインのものだ。しかし、2人にとってはこれ以上無いほど相応しいだろう。

「なるほどな。まあ、好きにすればいいさ。」

「ありがとう。」

そう言って、優しく微笑んだ。

「さて………今更ながら悪いことをしたな。」

凱は少々申し訳なさそうにする。

「…なぜだ?」

「お前って、いつも桜と寝てるんだろ?」

「そうだが、それがどうかしたのか?」

「今は夜中だ。もし桜がお前がいないことに気がついても、探しには行けないだろうな。」

雪華はしばらく考えたあと、目を見開いた。

「…しまった、失念していた……!すぐ戻らないと!!」

慌てて彼は部屋に戻ろうとする。

「やめておけ、下手に動くと死ぬぞ。」

「…どういうことだ?」

「この地下室、すぐ近くにナイトメアの寝床がある。」

「…起こしたら機嫌を損ねて殺される、と?」

「いや、そもそもで道を間違えれば死ぬ。」

凱は椅子にもたれ掛かりながら言う。

「普段、この時間は誰もこの辺りを使わない。もし誰かいれば、不法侵入として処理されるぞ。」

「…案内してくれ。出来るだけ急いで。」

「面倒だから嫌だ。」

凱は立ち上がり、自身の懐を探る。

「あれ?詰んでないか?」

「……貴様は記憶力が乏しいようだな。」

凱が振り向く。その瞳は緑色だ。

 

 

 

 

ーー名を残す理由ーー

 

 

 

 

「あ、そうか、ヴォイド。あの道か。」

納得する。たしかにそれでもスキマのような使い方ができる。

「いや、こっちだ。」

ヴォイドは扉を開け、そとに出る。

「…普通に行くのかよ。まあいいか。」

少しズッコケつつ、素直に付いていく。

「そうではない。あの部屋ではそもそもで能力は使えん。」

ヴォイドは手を振る。瞬間、次元の裂け目が現れる。

「そういうことだったのか。…ありがとう。」

礼を言いながら、『道』を通る。

「おい、我がいないとその道からは出られんぞ。」

ヴォイドも雪華の後に入る。

「そうだったのか……。すまない。」

謝ってはいるが、歩みは止めない。

「………よほど好いておるのだな。」

「当然。…初恋の、人なんだ。」

「恋……我にはわからぬ。」

「自我があるとはいえ、メモリ……、記憶だもんな。凱や姫乃さん辺りにでも聞けば良いんじゃないか?」

ヴォイドを振り返り、笑った。

「いや、何故貴様ら人間がそのような関係を築くかがわからん。どうせ、無へと帰すのだろう?」

「言い方が悪いな……。

まあ、死んでしまえば、もう会うことも想いを伝えることも叶わない。だけど……、愛は、変わらずそこにあるものなんだよ。人間が他の動物と違う所。」

「貴様は、心得ているようだな。」

「何を?」

少し目を見開き、ヴォイドに問う。

「いや、我が見てきた人間は、不死を求めていた。自分が後世に名を残せないとしり無駄な足掻きをするのを何度も見た。それに比べ、貴様は自身の『終り』を覚悟している。」

「まあ…、人間って何か遺したがるからな。」

「…あの男は別だがな。」

あの男…おそらく凱のことだろう。

「まあ凱は…、欲が無さすぎるしな。いや、ある意味貪欲なんだろうが……、『自分』が消えることに頓着がないというか、忘れられたとしてもしょうがない、で済ませるだろうしな。」

「以前、あの男に『名前を残したいか』と聞いたことがある。」

「で、あいつは何と?…まあ分かりきってるけど。」

「名を残すつもりは無い、と言っていた。何故かわかるか?」

「…さて。僕はあいつじゃないし、あいつの全てを知っているわけでもない。僕に聞かれたならまだしも、な。」

「『名も知らぬ有象無象に名を知られたくはない』だそうだ。」

「…あははっ!実にあいつらしいじゃないか!」

雪華は思わず吹き出した。

「………貴様はどうなのだ、霜月雪華よ。」

「僕か?そうだな…、『ある意味』、遺したい。」

少し考え込んだ後、そう言った。

「別に資料に遺したい訳じゃない。…だが、僕が死んだ後、一部の人達……、具体的にはレミィやフラン、咲夜とかだな。の、記憶には、残りたい。」

「ある意味、それは叶っているかもしれんな。」

「今のとこな。ありがたいことだ。」

彼は笑った。

「…そろそろ、か?」

「ああ、この辺りだ。」

ヴォイドが再び手を振るう。すると、二人は部屋の前に立っていた。

「ありがとな。さてと、魘されてるだろうな……。」

彼はヴォイドに礼を言い、そっと部屋へ入っていった。

部屋の扉が閉まるのを確認したヴォイドは背後を振り向き、暗く先が見えない廊下にいたそこにいたらおかしい相手に言い放つ。

「……………貴様、いつから見ていた?」

ヴォイドの言葉を受けたそれは、なにも言葉を発しない。

「貴様が奴等を気に入っているのは分かる。」

ヴォイドはそのまま続ける。

「確かに、あの男は他とは違う。」

ヴォイドは歩き始め、それとすれ違う。

「何をしても構わんが、騒ぎは起こすなよ?一応、伝言は伝えておいてやろう。」

ヴォイドのその言葉のあと、しばらくしてからヴォイドと話していたそれは雪華達の部屋に入っていった。

 

 

 

 

 

 

続く

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第80話



栄光の科学結社、特別研究室

「これで、完璧ですよ。」
ゴーグルを外した男、ジルヴィスが別ベットに寝ているもう一人の男に言う。
男といっても、彼はほぼ機械人間なのだが。
「ありがとねジルちゃん。やっぱ優秀じゃねえの。」
機械男は体の調子を確認しながら起き上がる。
「いえいえ、これも兄弟(ブラザー)のおかげですよ。」
「何言ってんだ。俺はお前さんの論文を見て決めたんだよ。」
研究室の壁には本棚が埋め込まれており、中には様々な論文が入れられている。
「『ガイアメモリの応用兵器の可能性について』、『過剰適合者(ハイ・ドープ)の適合性について』、よくもまとめ上げたもんだよ。」
「それでも、私がここまでこれたのは兄弟の推薦があってこそです。」
「だってそうだろ?こんな有能なやつを放っておくのはもったいないからな。」
機械男はジルヴィスを見る。
「それに()()()()()()も興味深いからな。」
「………T3ですか。」
そう、最近のジルヴィスの研究は『T3メモリ』についてだった。
「既存のメモリの派生進化、突然変異…それを量産するんだっけか?」
「そうですね、現時点の目標はそこですね。」
「量産しようとしても、コピーした瞬間にメモリが使用不可になる。しかも使える人間が限られると来たもんだ。」
「……まだまだ課題は山積みです。」
「そうだな、期待してるぜ?ジルちゃん。」
「はい、お任せください。」

















 

 

 

 

 

 

 

「ん……。」

朝、雪華は目を覚ます。

彼が目を机の上のものにに動かすと、そこには昨日もらったメモリが置いてあった。

「せっか、さまぁ……。」

雪華が目を開けると、いつの間にか桜が抱きついてきていた。

相変わらず可愛らしいな、などと思いつつ彼は目を擦り、天井を見上げる。

普通の人間なら、ここで悲鳴をあげただろう。何故ならば天井に何かがへばりついていたからだ。

「…なんだあれ。」

そんなことを呟きつつ、条件反射でナイフを投げる。

ナイフは天井に刺さったかと思うとシュウシュウといって消えていった。

「…エクリプス、か?」

それを見ながら冷静に分析をする。

ドローっと天井から垂れてきたのはふわりと布団に着地し、以前見たスライムの姿になる。

「やっぱお前か。いきなりナイフ投げて、済まなかったな。」

エクリプスは雪華に近づきゆったりとしている。

「雪華、俺だ。」

その時、ノックと共にドアの奥から凱の声が聞こえた。

「どうぞ。」

桜を起こさないよう、彼女の腕をゆっくり解きつつ起き上がる。

「……桜はまだ寝てるのか。」

凱は音もなく部屋に入ってくる。

「ああ。」

微笑んで彼女の頭を撫でる。

にへらと笑うのが可愛らしい。

「…ヴォイドの話によると、エクリプスは昨日の夜、部屋の前にいたらしくてな。そのままにしたが、問題なかったか?」

「驚いてナイフ投げてしまったが、エクリプスなら桜も大丈夫だろ。桜を気に入ってんのかな。」

「どうだろうな。まあいい、朝飯食うだろ?」

「ああ。凱の腕前はどこで身につけたんだか、気になるな。」

雪華は笑いながら桜を起こす。

「ふぇ……。」

起きた彼女は雪華を認めると、すぐに抱きついた。

「せっかさまぁ〜♪」

「こらこら。」

上機嫌な桜を、苦笑しながら彼は諌めた。

「相変わらず愛されてんなぁ。」

凱がニヤニヤしている。

「凱くーん、準備できたけど、桜ちゃん達は?」

そこへ姫乃が入ってきた。

「おはよう、姫乃さん。」

「おはよ、桜ちゃんはまだ寝ぼけてるのね。」

「ああ。」

そこまで話したところで。

「……あ。…凱さん……?姫乃ちゃん……?」

みるみるうちに赤くなる。

「可愛いわね。」

「………。」パシャッ

姫乃は微笑み、凱は懐から取り出したカメラで撮影する。

「け、消してぇぇぇぇえぇぇぇぇ!!!今すぐ消してぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

「あははははっ!!」

桜は凱からカメラを奪取せんと動き、雪華はそれを見て大爆笑している。

「いい眠気覚ましじゃねえか。」

凱はひょいひょいと桜をかわす。

「凱、そろそろやめてやれ。」

目元に浮かんだ涙を拭いながらそう言う。

「ああ、わかっ……ヤベッ!」

凱の手からするりとカメラは落ち、エクリプスにのまれる。

あとは先ほどのナイフと同様だ。

「あちゃー」

「そういうのはやめてください本当に!」

「あー面白かった。」

「雪華様もあそこまで笑いますか!?」

平和な朝だった。

その後、凱達は朝食をとった。

しばらく後、凱は雪華呼ばれたため、彼の部屋に再び訪れていた。

 

 

 

ーー二人の雑談、その1ーー

 

 

 

 

「凱、アザリア・シロッコという者に心当たりは無いと言ってたな?」

「ああ、俺の知り合いにもいないし、依頼人にもいない。」

雪華のいる部屋で凱は考えを巡らせる。基本的に依頼人の顔は覚えている。

「では奴のメモリ、『ラプソディ』についてはどうだ?『狂奏詩』の記憶だとしたら、なぜあんなことができた?」

「………『狂った愛は灼熱より熱く、これを妨げるものは無し』。」

それは凱がよく読んでいる小説の一節だった。関係があるかどうかはわからないが、これぐらいしかヒントになるようなことはない。

「……だからこその『狂奏詩(ラプソディ)』か。狂った愛を、詩にして……」

「姫乃や鳴神からも聞いたが、あれは異常だ。普段ならば見ることはない現象である、ということは言っておこう。」

「……あいつは、『私は貴方と同じ』と言っていた。最初は熾天使や異界の住人ではないかと思ったが。今分かった。恐らく、あいつは過剰適合者だ。」

「そうか……んで、話ってこれだけか?この内容ならわざわざ桜を姫乃に連れ出させる必要はなかっただろう?」

凱は部屋を見渡す。いつも雪華と一緒の桜は今は姫乃とともに外へ出ている。

「まぁ、どちらかというと、桜に羽を伸ばして欲しいのがメインなんだよ。いつも僕の傍にいて、気も遣ってるだろうし。女性のストレス発散にはショッピングが有効だって聞いたから。それとだな……。」

雪華は、とある計画を凱に話す。

「………なるほどなぁ。」

凱はしばらく考えたあと、ニヤリと笑う。

「でまぁ、準備を手伝ってほしいなというわけだ。」

「……それを打ち明けて、手伝ってもらえるとでも?」

凱は雪華を見据える。

「お前はそういう奴だった畜生。」

雪華は肩を落とした。

凱はそんな雪華の反応を楽しむ。戦いの中では修羅のごとく戦う彼なのだが、こういった場面では、普通の人間なんだな、と感じる。

「まあ、今回はお前の尽力あってこその防衛成功だったわけだ。普段ならイジり倒してやるところだが、協力しよう。」

「本当か!感謝する!」

雪華は顔をあげた。先程言ったように戦っているところだけを切り取れば修羅のような男なのだが……今の彼はとてもそんな風には見えなかった。

「盛大にやるんだろ?話は通しておいてやるよ。」

「そこまでやってくれるとは、ありがたい。」

恥ずかしそうに笑う。

「頼んだのがお前でなく、相手が桜じゃなかったら断っているところだ。」

凱は端末を操作しつつぼやく。

「……イジった時の反応が面白いから、とか言わないよな?」

「……………いや?」

「何だよ今の間は!」

「さて、何のことやら。」

凱は何かメッセージを打ったあと、端末を電話のように耳に近づける。

「全く……。」

それきり雪華は黙った。

「………姫乃か?俺だが。」

「……。」

雪銀の手入れをしながら聞くともなしに聞く。

「そこに桜は居るか?あとできればスピーカーモードにしてくれ。」

「…?」

まあいいかと手入れに戻る。

「桜か、実はさっき雪華から話があってな?」

『はいはい?』

「…おい凱?」

「今日の夕食を作る際に、お前らの好物作ろうと思ったんだが何が好きなのか知らなくってな。今は雪華の近くじゃないからあいつにも聞けない。本当はサプライズにしようと思ったんだが……。」

『私は魚料理が好きですよ。雪華様は…。』

桜が僕の好みの味付け等を凱に伝えていく。……恐ろしく細かい。まあ10年以上一緒に過ごしてきたからな……。

「ふむ、わかった。ありがとう。」

『凱君、何か隠してない?』

「何も隠しているつもりはない。」

『本当に?』

「ああ。」

『そっか。私達は今日は外でお昼食べるから、また後でね。』

「わかった。楽しんでこい。」

それを最後に凱は通話を切った。

「ありがとな、凱。」

雪華は微笑んだ。

 

 

 

ーー二人の雑談、その2ーー

 

 

 

「ねえ、姫乃ちゃん。」

外出先で、桜は姫乃に話しかけた。

「どうしたの?」

「凱さんとの馴れ初めってどうだったの?」

笑って問う。

「凱君との?そうね………あれは、小学生くらいの頃だったわ。私が1人でいるところに彼が話しかけてきたの。当時の私は周りとは馴染めてなくて、いつも1人だった。」

「ふむふむ。」

「最初は怖かった。凱君が男の子だったってのもあるけど、その時は大体、私の眼の事を言われてたから。」

そう言って姫乃は自身の眼を指し示す。

「この眼は、周りからすれば異端、異常、それに不気味なものとして見えていたの。お父さんとお母さんはいつも『綺麗だ。』って言ってくれてたんだよ。」

「うーん、私も綺麗だと思うよ。まるでアメジストみたい。」

彼女の髪と同じ目が姫乃を覗き込んだ。

「ありがと。………それでね、凱君が近づいてあと、こう言ったんだ。『とってもきれいな色だね。』って。」

「うわあ…、とってもロマンチック。良い話ね。」

桜は笑った。

「…………でも、私は怖かった。」

「怖かった?何で?」

「彼に会ったとき、本能的にそう感じたの。『この人は、危険だ。』って。今ではその理由もはっきりしてるけどね。」

「あー、まぁ……。」

初めて凱と出会った時を思い出す。

本当に散々だった。

「怖かったけれど、今じゃすっかり虜ね。こう言うのを『一目惚れ』って言うのかな?」

姫乃は恥ずかしそうに笑う。

「本当に仲良いよね。…私達も、あんな風になりたいな。」

「今でも充分に仲いいじゃない。」

「えへへ、そうかな…?」

桜は恥ずかしそうに笑った。

「そう言う桜ちゃんはどうだったの?彼との馴れ初め。」

「わ、私?そうだなぁ……。忘れもしない、11年前。私が8歳の時。両親と一緒に夜にお散歩してたの。でもね、怪物に襲われて、両親が殺されちゃって。」

「……それで?」

「その時に、当時10歳だった雪華様が助けてくれたの。両親は手遅れだったけど、私は何とか無事だった。独りが怖くて、泣いていた時に言ってくださったの。

『安心しろ。僕が居てやるから。』って。

それでもう私、駄目になっちゃった。結局、泣き止むまで付き添ってくれたんだ。

どうにかして彼の隣に居たかった。だから、軍に入って、熾天会に入隊した。

……こんなとこかな。」

「へぇ~。」

姫乃は柔らかな笑みを浮かべている。

「本当に強くて、優しくて、カッコよかった。…何で私なんかを好きになってくれたんだろうね。」

「……さぁて、ね。それは彼しか知らないわよ?きっと。」

「それもそっか。雪華様が喜んでくれるもの、あるかな……?」

「彼なら何でも喜びそうだけどね。」

「そうかなぁ?アクセとかは似合わなさそう。真面目だし。」

「うーん、じゃあこれとかは?」

姫乃が指差したのはブレスレットだ。

淡いピンク色と透き通るような白色の物が対になるように置かれている。

「わぁ……。これなら、喜んでくれるかも!」

雪華様といつでも隣に居るみたい、と思ったことは恥ずかしいので黙っておく。

「これにしましょうか。店員さん、これください。」

「あいよ!」

姫乃はそれを店員のもとへ持っていき、購入する。

「姫乃ちゃん、ごめんね。えーっと、これでいいかな?」

桜は代金を取り出し、姫乃に差し出す。

「大丈夫よ、これぐらいなら。」

姫乃はそう言って代金を桜に返す。

「凱君にお願いして経費にでもしてもらうから。」

「でも、悪いよ……。」

「気にしなーい気にしない!折角なんだし、甘えなさい!」

「…うん、ありがと!」

そう言って笑った。

「さて……と。これからどうする?」

姫乃は買った物を袋に入れつつ尋ねる。

「うーん、折角だし、凱さんへの贈り物とか?雪華様へのは今買ってもらったし。」

「凱君にか………あんまり意味ないかも。」

「何で?」

首を傾げた。

「彼、自分で掘った鉱石で自分のアクセサリー作るから。」

「あの綺麗な石?あれ本当に綺麗だったなぁ……。」

「結局、あれは全部剣になっちゃったけど、でも彼は掘った鉱石を売ったりもしてるのよ。」

姫乃は道を歩きながら言う。

「それが財源だったりするの?」

「それもある。彼、私たちが知ってる依頼みたいなのから知らないものまで1人でやってるから。」

姫乃は苦笑いをする。

「…あの人、万能だなぁ。」

「そうね、戦いができて料理が出来て仕事も何でもこなす。本当に人間なのか怪しいわね。」

「うちの人だって似たようなものだもん。」

桜は笑って言い、その後で恥ずかしそうに俯いた。

「ふふっ。じゃあもう少し見て回りましょうか。」

2人はしばらく人里を歩いた後、紅魔館へ行った。

 

 

 

 

 

「凱君、ただいまー。」

「姫乃さん、桜、おかえり。」

笑って出迎えたのは雪華だ。

「あれ?凱君は?」

「凱ならキッチンだよ。僕はデザートの材料を買ってきたんだ。」

「なるほど。ねえ、雪華君。少しだけお話しない?」

「ん?良いけど、どうしたんだ?」

雪華は荷物を置いて姫乃の方へいく。

「桜ちゃんには内緒でね?」

「ああ、分かったけど……。」

そのまま2人は姫乃の部屋に行った。

「ねえ、何か隠してない?桜ちゃんに言えないことを。」

「あー……。桜には内緒にしてくれるかな?」

彼はそう前置きした。

「……桜ちゃんにサプライズでもするの?」

「…これをね。」

彼が取り出したのは、小さな箱だった。

白い桜が舞う、変わったデザインのものだが、彼にはとても似合っている。

「それって…ああ、なるほど。」

姫乃は微笑む。彼が何を渡そうとしたのか理解したのだ。

「まあ、その、式なんて挙げてないからな。だからせめて……、ってね。」

彼は恥ずかしそうに笑った。

「そっか…あなた達、本当にお似合いね。」

「お似合い?桜は僕に不釣り合いな程好い人だと思うんだけど……。」

「…そういうところも含めて、お似合いよ。」

姫乃がそう言うと同時に部屋のドアがノックされる。

「姫乃、居るか?」

声からして凱だ。

「そうかな。…開けるよ?」

雪華は姫乃の問いに答えながらドアを開ける。

「雪華?………何してんだ?」

ドアの前に立っていたのは凱だ。

「ああ、ちょっと話してた。変なことはしてないから安心してくれ。」

「そうか。」

「それで凱君、私に何か用?」

姫乃は凱に聞いた。

「ああ、雪華と一緒にいるって話を聞いてな。雪華、そろそろ準備できたぞ。」

「ありがとう。…緊張、するな。」

「大丈夫、上手く行くさ。」

「緊張しないで、頑張ってね。」

「…頑張ってみる。」

 

 

ーー宴会での交流ーー

 

 

 

 

凱達がホールに来ると、すでに他の面々が集まっていた。

「わぁ、今日って何かの記念日だったんですか?」

桜は驚いていた。こんなこと聞いていなかったから。

「ああ、今日は記念日だからな。まあその話は追々してやるとして、皆、グラスは持ったか?持ったな!乾杯!」

『乾杯!』

凱の勢い任せの合図と共に宴会が始まった。

開始と同時に雪華は女性陣に引きずられ、何やら話をしている。大方あちらの自分達のことでも聞いているんだろう。

今妖夢と握手をした。稽古の約束でもしたのかな。

そんなことを思いつつ、桜はやや嫉妬気味にそれを見ていた。

「ほら、これ食うか?」

手に魚料理を持ってやってきたのは凱だ。

「はい、ありがとうございます……。」

彼女の声には元気がない。

「……随分と元気無いな。飲むか?」

凱はそう言って注いだばかりの麦茶を手渡す。

「……はい。」

彼女の視線の先には、困ったような雪華が居た。

「妬いてるのか?」

「……そうかも、しれません。」

桜は寂しげに笑った。

「アイツはこっちだと珍しいからな。」

凱はワインを飲みつつ言う。

「珍しい、ですか?」

「ああ。この世界で戦うってなると大体がメモリだからな。メモリを使わなくてもドーパントと渡り合えるアイツは特別なんだよ。」

「あれくらいだったら、私でも倒せますっ。」

そう言って少し頬を膨らませた。

「だろうな…案外、他のやつらも倒せるとは思うが……にしても面白いな。」

少女達に囲まれ慌てる雪華を眺める。

「面白い…?…私からするとつまんないです。」

むー…、と唸る。

「呼んできてやろうか?」

「それは悪いです。…あんなに楽しそうなんだもの。」

桜は優しく微笑んだ。

「そうか。何かあったら言え、俺は少し用事がある。」

そう言って凱は離れていった。

 

 

ーー愛する人へのサプライズーー

 

 

 

 

一方の雪華は…

「僕の剣?雪銀のこと?」

「そうです!それって何でできてるんですか?」

刀オタクの妖夢からの質問責めにあっていた。

「実を言うと、よく分からない。」

雪華は苦笑した。

「本当に謎の金属なんだよ。僕の世界にあるどの金属とも違う、未知のものなんだ。ただ、この時点で凄まじい切れ味を誇る。」

「へぇ~。」

妖夢は興味深そうに雪銀を見る。

「あんたはそればっかりね。雪華も飽きるんじゃない?」

「そうだよ妖夢ちゃん。」

割って入ってきたのは霊夢と鈴仙だ。

「そうでもないさ。雪銀のことをこんなに聞いてくる人なんて居なかったからな。何だかんだで楽しい。実はな、妖夢。もっと強い剣があるんだよ。」

「本当ですか?!」

妖夢は目を輝かせ、霊夢と鈴仙は溜め息を吐く。

「少し離れてくれ。……雪銀。」

その手に雪銀が召喚される。

「おお……」

その登場に妖夢だけでなく、周りからも感嘆の声が漏れる。

「さあ、見せてくれ。神剣『桜華』。」

雪銀を腰に構え、柄を引き抜く。

そこから現れたのは、桜色の刀身を持ち、刃の根元に拳大の穴が空いた不思議な刀だった。

「……綺麗…。」

その刀はその場にいる全員を魅了するほどの美しさであった。

「何体ものドーパントを一気に薙払えたのはこれのお陰でね。僕の切り札だ。」

彼と桜華はとても絵になっていた。

「なるほど……。」

「随分と派手なことしてるじゃないか、雪華。」

やってきたのは凱だ。

「はは、そのようだな。」

桜華を雪銀へと収める。

「浮かれすぎなんじゃないのか?」

凱はわざとらしく視線を逸らす。その先には不満そうにする桜がいる。

「分かってるよ。桜。こっち来て。」

「……。」

大人しく雪華の近くに来た途端、急に抱きついた。

「雪華様は私のです……。」

拗ねているようだがとても可愛らしい。

「ごめんな。ちょっと楽しくなっちゃってな。」

桜の頭を撫でる。

「妬けるわね。」「そうですね、羨ましいです。」「仲良さそうですね。」

霊夢、妖夢、鈴仙がそう言いながら凱にくっつく。

 

「君達も大概じゃないか。」

「……そうですね。」

桜はちょっぴり機嫌を直してくれたようだ。

「凱君、私も!」

「うわっっと……危ないな、姫乃。」

飛び付いてきた姫乃をなれた手付きで受け止める。

「…こなれてるな。」

「雪華様は慣れないでくださいね?」

「はいはい。」

こちらはこちらで苦笑する。

そんなやり取りを見ていた凱は雪華に目配せをする。

 

「…そうだな。

桜、少し離れてくれるかな?」

「え……。」

「お願い。」

「わ、わかりました……。」

桜が離れる。すると雪華はいきなり跪き、小箱を取り出した。

「桜。改めてではあるけれど…………僕と、結婚してください。」

「ふぇ………?」

小箱の中の指輪を見て、桜が驚きに目を見開く。

周りは黙ってそのようすを見ている。

「……………はい、喜んで!!」

桜は目に涙を溜めて頷いた。

『おめでとー!』

周りは2人に向かって暖かい言葉や拍手を送っている。

「…やっぱり恥ずかしいもんだな。」

「そうですね。」

2人は幸せそうに笑う。

「よかったぞ、2人とも。」

凱が微笑みながら言う。

姫乃も彼と共にやってきて、言った。

「桜ちゃんも、渡したいものがあるんじゃない?」

「はい!雪華様、これ。」

桜が渡したのは、あのブレスレット。

「綺麗だな…。これを、僕に?」

「はい。」

「…あはは、桜を喜ばせようと思ったのに、僕の方が喜ばせてもらっちゃったな。」

雪華は左腕にブレスレットを嵌め、目に浮かんだ涙を拭った。

「さて、桜。さっき言ってたな。『今日は何かの記念日か。』」

「はい……。もしかして。」

「……今日はお前らにとっての記念日だ。」

「結婚記念日、だよ。」

雪華は優しく告げた。

「…ふふっ、そういうことだったんですね。」

桜も柔らかく微笑んだ。

「よし、やることやったし飲むわよ!」

霊夢の一言で、宴会が再開した。

「…ああ!」

柔らかく笑って、雪華はグラスを持った。

宴会はそのまま続き、夜中になった。

大半は酔い潰れるか自室に帰っており、あたりは静かになっていた。

「こんなに騒いだのは久々だね。」

「近頃はあまりありませんね。こっちの霊夢さんどうしたんだろ。」

桜は微笑んであたりを見回す。

「霊夢はいつもあんなだぞ?」

片付けを終えた凱がやってくる。

「少し前までうちの霊夢は店に突撃してきたりしてたけどな。」

「多分凱さんも同じですよ。」

「かもな。」

凱は笑う。

「さて、これからどうするんだ?俺が頼んだ事も、お前がやりたかった事も片が付いた。」

「そうだな……、手合わせがしたい。」

「誰とですか?」

「皆だよ。ただし、凱抜きのな。じゃないと比喩じゃなく死ぬ。」

「相変わらず戦闘狂だな。」

凱は苦笑いをする。

「違うよ。鍛錬さ。護りたいものを護るためには、強くなくちゃね。」

「なるほどな…………いいだろう。」

「有り難い。」

雪華は笑った。

 

このとき、雪華はまだ知らなかった。

 

凱の友人の中に、あんな怪物がいるとは。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第81話

どもども、フォーウルムです。
予定では前回で終わるつもりでしたが、「雪華と他の面々戦わせたら面白そうじゃね?」という思い付きのもと、地下闘技場を使った特訓編です。
……なんやかんやで長くなってるのは許してください。

それでは、どうぞ!


 

 

 

ーー実戦訓練ーー

 

 

次の日、雪華と桜は地底の闘技場にやって来ていた。

「桜、ちょっとこれ持ってて。」

そうして渡したのはブレスレット。

「わ、私もやります!」

「これは僕の我儘さ。僕が強くなりたいんだ。だから、待っててね。」

「…はい。」

そして雪華は闘技場へ降り立つ。

闘技場には霊夢や魔理沙、フラン、レミリア、咲夜、パチュリー、護がいた。彼女等は雪華と戦ってみたいということで集まったのだ。

「よろしく、皆。」

晴れ晴れとした笑顔を向ける。

「あんた、これから殺り合おうって相手によくそう言えるわね。」

そう言うのは霊夢だ。

「まあ、瀕死ぐらいまでなら全快させられるしね。死ぬ以外なら大丈夫。」

さらりとえげつないことを言う。

「………あんたと凱の仲が良い理由が解る気がするわ。」

「一緒にしないでくれ。少なくともあいつよりは常識的だろ?」

「…いや、どっちもどっちね。」

霊夢はそう言って視線をずらす。その先に居たのは凱と、彼よりも背の低い金髪の美少女だった。

「凱、そちらは?」

霊夢に困ったような顔を向け、その後に凱へ問う。

「ん?来てたのか雪華。彼女はリーナ・フェルグバルト。魔界を統治する組織のトップの妹君さ。」

「もう少し言い方あったんじゃないかな…初めまして、リーナです!よろしくね雪華君!」

よくよく見れば、その少女は以前魔界に連れて行かれたときに見た覚えがある気がした。

「ああ、あの門のとこに居た方か。霜月 雪華だ。よろしく。」

胸に手を当て、優雅に礼をした。

「おお…礼儀がしっかりしてる。………どっかの誰かさんとは大違いだね。」

「うるせー」

「はは、これでも元は上級の軍人だったからね。皇帝陛下と謁見する機会も多いから、自然と身に付くのさ。」

「そうなんだ。今度飛鳥にも会わせてみよっと。」

「飛鳥?」

「うん。私やお兄ちゃんの秘書なの。きっと気が合うよ。」

「それは楽しみ。でも、そろそろ席に戻ったほうが良いのでは?かなり激しくなるだろうから、危ないよ。」

「…何が?」

「これから、戦いが始まるから。君に何かあれば、兄君も悲しむだろう?」

「……ふふっ」

「……ククッ」

雪華の説明を聞いた二人は堪えられないようで吹き出した。

「……?」

雪華は首を傾げる。何処に笑う要素があっただろうか。

「雪華、こいつはお前の対戦相手だぞ?」

「…は?彼女が?しかし、どう見ても……、いや、メモリがあれば。」

「メモリ?ああ、これ?」

そういって取り出したのは赤黒い『S』のメモリだった。

「そういうことか……。なら、容赦はしないよ。」

それまでの柔らかなものから一転、不敵な笑みを浮かべる。

「こっちこそ。じゃ、またね~!」

そう言ってリーナは歩いて行った。

「さて、どうなることやら。」

「じゃあ、始めるかい?」

雪華の手に雪銀が現れる。

「ああ、始めよう。」

凱はそう言って不敵に笑う。

「始め。」

瞬間、その場にいた全員が変身する。

「さあ、先手は譲ろう。誰から来る?」

雪華は柔らかな、それでいて冷徹な笑みを浮かべた。

 

 

 

ーー訓練開始ーー

 

 

 

「だったら、最初は私が行くんだぜ!」

真っ先に来たのは魔理沙だった。使用しているのは《スターダスト》のメモリだ。

雪華は構えもしない。自然体のままだ。

「せやぁ!!」

かなりの加速をつけた魔理沙の蹴りが雪華を直撃する。

「…軽い蹴りだな。」

片手で受け止め、そのままぶん投げる。

「うわわ!?」

予想外の事で魔理沙は慌てる。

「私もやるわ!」

すかさず霊夢がその手に持ったダブルライフルで雪華を狙撃する。《セイクリッド》の力が込められており、弾丸には眩い光が点っている。

「この程度。」

雪銀で弾く。あえて魔理沙とは反対の方向へ弾いた。

「余裕って訳ね!」

霊夢はそのまま銃を乱射する。

だがそれは全て弾かれる。

しかも見当違いの方向へ。それが1発2発ならまぐれで済むだろう。しかし弾いた弾丸が綺麗に避けるようにして壁へ当たっているのだ。明らかに手加減されている。

「明らかな手加減とは、安く見られたものだ!」

「舐めないでよね!」

そこへ連携をかけるのはレミリアとフランだ。

レミリアは《オーディン》を、フランは《エンジェル》を使っている。

「征け、『フェンリル』、『ルシファー』。」

彼の使い魔が顕現する。

北欧神話にてオーディンを咬み殺したフェンリル、天使の反転した姿であるルシファー。どちらもそれぞれに覿面だと思われるもの。

「穿て!」「邪魔しないで!」

しかし、あっさりと打ち破られる。

「お、流石。じゃあ。」

その瞬間、2人は壁へ叩きつけられた。見ると、足を振り抜いた雪華。蹴りだけでここまで飛ばされたのだ。

「わわっ?!」

「やるな!」

フランとレミリアはそれぞれ受け身をとる。

二人を吹っ飛ばした雪華は再び構えをとろうとした。

が、急な殺気を感じすぐさま対応する。

「危な!」

呑気な声音と共に踵を振り上げ、己に迫った凶刃を破壊した。

「いい反応速度ね。」

今度は上空から大量の魔法が降り注ぐ。

「『アンチマジックシェル』展開。」

数多の魔法は、彼に届くことなく消滅した。そして、霧散した魔力は彼の資源(リソース)となる。

「便利な能力ね。」

呆れたように呟いたのはパチュリーだ。《グリモワール》を使った彼女の周りには数冊の魔導書が展開されている。

「熾天使を舐めるんじゃないぞ。」

その声が聞こえると同時に地面へ叩き落とされた。雪華が雪銀を振り抜いたのだ。

「厄介ね。」

パチュリーはそのまま魔法を展開させる。

「……ウォームアップはここら辺で良いかな。」

地面へ降り立った。彼から発される魔力が膨れ上がる。

「ここからが本番だ。かかってこい。」

「なら、遠慮なく。」

後ろから咲夜が斬撃を飛ばす。

「言ったろ?舐めるなって。」

後ろから聞こえた。

「…!速い!」

一瞬のあと、咲夜の体が消え、雪華から距離をとる。

「まあ、フェアじゃないから、僕の能力を教えてあげるよ。

1つ目、武器を使い熟す程度の能力。これはまあ読んで字の如く。

2つ目、武器を生み出す程度の能力。これも単純。

3つ目。──能力を模倣する程度の能力。

有り体に言えば、能力のコピーだ。そして、僕は僕の世界の君達に接触している。この意味が分かるよね?」

「だから何だと?」

咲夜は刃を振るう。

「貴方が会ったのは別世界の私達であり、この世界の私達ではありません。」

「つまるところ、僕は護以外の全員の能力を使える。それでも来るかい?」

「なるほど。ですが……その程度なら問題ありません!」

咲夜は巨大な大剣を振るう。

「無駄だよ。」

彼が手を翳すと、大剣が音もなく止まる。彼は一切触れていない。

「……流石ですね。」

「その場所数ミリだけ時間を止めたんだ。時間が止まった空間は最強の壁になる。」

まあ僕なら楽勝で破れるけどね、と付け足す。

「そうですか…では、こういうのはどうです?」

咲夜は大剣を消滅させ、銀色の長槍を生成する。

「へえ。武器を生み出せるのか。」

「せやっ!」

咲夜はその槍を雪華に投擲する。

「同じことだ。」

またしても同じ場所で停止した。

「本当に面倒ですね。」

咲夜は溜息を吐いた。

「それにだ。能力を模倣すると、連鎖的にとあるものが使えるようになるんだ。」

「……それは?」

「見せてあげるよ。」

そう言った雪華の手に虹色の光が集まり始める。真っ先に気がついたのは魔理沙だ。

「あ……あれは?!」

「知ってるの?魔理沙。」

「あれはヤバイ!避けろ咲夜!」

「─『恋符 マスタースパーク』。」

極光がビームとなって発射された。

「……なるほど、能力が模倣できればスペルもコピー出来るということですか。」

咲夜は直撃したにも関わらず、平然としている。

「スペルカード……懐かしいですね。」

「無事なのか。マスパのバ火力ならイけるかと思ったのに。…まあ、一部だけどね。能力を使うものなら、大抵はね。」

一瞬引き攣った笑みを浮かべたものの、冷静に答える。

「さすがに生身ではありませんがね。」

砂煙が晴れると、そこに立っていた咲夜は体に白い鎧を纏っていた。

「メモリを変えたのか。……何だか年季が入ってるような?」

「『ファッソル』です。私が持つエクストラメモリの1つですよ。」

「化石か。琥珀は僕も好きだよ。」

ふと柔らかい笑みを浮かべる。

「綺麗ですもんね、あれ。」

咲夜はその手に持った巨大すぎる剣を構える。

「エクストラ……。なら、僕も少しだけ本気を出そうかな。」

雪華の背後に、1対の光翼が現れた。

「……!」

咲夜が息を飲む。

「さあ、この時点で『大天使』相当だ。」

その言葉と同時に魔力が膨れあがり、物理的な圧を感じるまでになった。

「…面白くなってきましたね。」

咲夜は大剣を構える。

「だろ?」

雪華の手に、光が集まる。

「……参ります。」

咲夜は雪華に向かって剣を構え、突進する。

しかし、彼はそれを天へ向け放った。

「『セイクリッドレイン』。」

数々の暴威(ヒカリ)が、闘技場全てを灼き尽くしていく。

「やってくれますね……!」

咲夜はファッソルの羽を変形させ、盾のようにして防ぐ。

「……やっぱり『大天使』じゃダメか。20%も出てない。」

雪華は独白した。

「これで、20%ですか…恐ろしいですね。」

「本来は対軍魔法だからね。あとでフルパワーの映像見せてあげるよ。」

「貴方といい、凱といい、本当に恐ろしいですよ。」

咲夜は苦笑いをする。

「こんな力でもない限り、帝国を守ることなど出来なかったのさ。ま、『熾天使』へ至ったのは僕だけだけど。」

それに応えるように肩を竦めた。

「天使………なら、私は退きましょう。」

咲夜は体を反らせる。

「後はどうぞ。護さん。」

瞬間、雪華の周辺に斬激の跡が刻まれる。

「…楽しい勝負が出来そうだ。」

雪華は雪銀を腰に構えた。

 

 

 

ーー本番はここからーー

 

 

 

「……あまり乗り気じゃないんだがな。」

そう言いながらやってきたのは護だ。彼はどことなく気だるそうだ。

「なら降参するかい?」

雪華は警戒しながら冗談を言う。

「降参?そっちの方が面倒だ。」

「なら、もう少し、本気を出そうか。……桜華、抜刀!!」

雪銀から桜華を引き抜く。

その瞬間に満ちるは桜色の極光。

「以前も見たが、やはり美しいな。」

護は目を細める。

「そりゃそうだ。

これは、木花咲耶姫より生まれし神剣だしな。」

「木花……よくわからんな。」

「日ノ本の神だよ。

それはそれは綺麗でね。」

雪華は妻を見て微笑んだ。

「まあ、兎に角凄い剣なのさ。」

苦笑して肩を竦めた。

「まあ、凄そうなのは認めよう。」

「それにとある力を備えているのだけど……、それはお楽しみかな。」

「そうかい、そろそろかかってきたらどうだ?」

「そうさせてもらおう。」

先程までとは比較にならない速度で護へと接近する。

このままでは彼の首へ吸い込まれる。無抵抗な護へ不審を抱くなというのが無理な話だろう。

「……!」

護はすんでのところで桜華を防ぐ。

その手には納刀したままの刀があった。

「冥界の気配……!?」

すぐさま飛び退いた。

「どうした?そんな妖魔でも見たような顔をして。」

「……何だよその刀。なぜ冥界の霊力を纏っている。」

険しい顔をして呟く。

「さて、何の事やら…。」

護は笑いを堪えながら言う。

「別に、なにも変わらないだろう?お前のそれと似たようなもんなんだからな。」

「……もしや、ヤマ!?」

ふと思い至った冥界の神。

「いや誰?!」

護は思わず聞き返す。

「折角だ、教えてやろう。これは閻魔刀。凱の持ってるドラグニス…もといリベリオンと同系統の武器だ。」

「……成程。」

「だがまあ、お前の予想も間違ってはいない。」

「へぇ?」

雪華は警戒を崩さない。

「何でも、オリジナルのこれは現世と魔界を繋ぐ鍵だったらしいしな。」

護は閻魔刀を腰に吊るし直す。その瞬間、雪華は嫌な気配を感じた。

「っ!?」

雪華が身を低くした瞬間、頭上を形無き刃が通り抜ける。

「お、避けたか。初見でこれに気付いたのはお前が二人目だ。」

「……次元干渉によるものか。」

「まあな、『次元斬』ってやつだ。」

護は笑みを浮かべる。

「この技は遠距離で油断している奴の寝首を一撃で落とせる、いわば一撃必殺ってやつだな。」

「…えげつないことをする。」

しかし、桜華でもって全く同じ技を返した。

「…!ははっ!」

護はそれを回避する。

「噂には聞いていたが、バケモンだな。」

「……そうだな。」

雪華は苦い顔をした

「……さあ、行くぜ。」

護が再び構える。

「来い!」

光翼がもう一対出現した。

 

 

 

ーー(あいつ)の周りには化物が多いーー

 

 

「最っ高だな!」

護と雪華はかなりの時間斬り合っている。もっとも、護は未だに抜刀してはいない。

「そう思うなら、まずは刀を抜けよ!」

斬撃を繰り出しながら護へ向けて言い放つ。

「ん?なに言ってんだ?」

護は首を傾げる。

「なぜ、鞘のままで戦う。」

「…あー、そう言うこと。」

護は納得した。

「手加減をされていると見ていいのか?」

「まさか。」

「ではどういうことだ?」

「こういうことだ!」

護は再び雪華へ次元斬を放つ。

「二度目はない!」

しかし、雪華はそれを圧倒的な魔力量による力押しで無理矢理ねじ伏せることで無力化した。

「ほら、抜いてるだろ?」

護の手には抜刀された閻魔刀があった。

「…次元斬が抜刀トリガーなのか?」

「次元斬は、超高速で行われる抜刀術さ。」

護は再び納刀する。

「抜刀術だったのか。」

雪華の熾天使としての力の弱点。

見た武術をコピーできるが、それは無意識に行われるもの故に、完全に理解はできないというものであった。

「見よう見まねでやっても理解できないだろう?」

「無意識下でやるからな。似てるのは見た目(ガワ)だけさ。」

「だろうな。さて、お前に聞こう。」

「何だ?」

「戦いに置いて、一番大切なことはなんだ?」

「そうだな……、技術だろうか。どんなに強い武器や才能を持っていても、それを活かすことのできる技術がなければ、それらは無駄になる。ある程度の兵数や身体能力の差も、技量によっては渡り合える。」

「なるほど、良い着眼点だ。………まあ今回はそこじゃあないが。」

「では、正解は?」

雪華はおもむろに桜華を構える。

「『周りをよく見る事』だ。」

その瞬間、雪華の視界がぶれ、気が付いたときには闘技場の壁に叩き込まれていた。

「っとと……。」

瓦礫の中から何事もなかったかのように出てくる。しかし、何故ここまで飛ばされたのか。

「話が長いよ、二人とも!」

雪華がさっきまで立っていた場所には金髪の少女、先程雪華と会話をしたリーナが立っていた。その手には無骨な長剣が握られている。

「それはすまん。つい楽しんじまったんだ。」

「おっと、リーナ嬢。申し訳ない。」

雪華は苦笑した。

「へー、流石。今のあんまり効いてない感じ?」

「この程度でへばってちゃ、熾天使失格ですので。」

不敵に笑う。

「そっかそっか………じゃあ、本気でやるね?」

リーナはメモリを取り出した。

「そうでなくては面白くない。その言葉、そのままお返ししましょう。」

雪華が取り出したのは、金色に蒼の装飾が入ったメモリ。

「へぇ?見たこと無いメモリね。」

リーナの瞳に、暗く、赤い焔が宿る。

「さあ、行きましょうか。」

対する雪華には、碧く冷たい光が灯った。

《アーサー》

「変身!」

しかし、変身して現れたのはスノーガイアナイト。

「あれ?なんか違くない?」

リーナが首を傾げる。

「それはどうでしょう?」

天へと手を掲げる。

「???」

リーナは解らずさらに首を捻る。

その数秒後、彼女は目を見開いた。

雪華の手目掛け、光が落ちてきたのだ。

「それは……剣?」

「惜しい、これは、鞘だ。」

彼の手に落ちた光は、丸い形を取った。そしてその瞬間、彼の身体が同じ光に包まれる。

「……なるほど、あいつが渡したのか。」

その光景を護は離れて見ていた。

あのメモリは、凱が密かに造っていた筈のメモリだ。以前、雪華が来たあと、様々な文献を漁り、阿求にお願いして記録を調べ造った『伝説上の人物』のメモリ。

空想の方をチョイスしていたのは、恐らく雪華のためだろう。

彼を包んでいた光が彼の装備となって装着される。

腕に、足に、胸に、白亜の鎧。

そして、最後に蒼いマントが背へと装着された。

「…綺麗ね、本当に……飛鳥のチェスもあれぐらい綺麗だと良いのに。」

「あはは、チェスはモノクロだからこそ良いんですよ。」

雪華、もといアーサーガイアナイトは、鞘……、否、盾から剣を引き抜いた。

「…もったいないなぁ、ここでそれを壊すのって!」

リーナがメモリを起動させる。

《スパーダ》

メモリはリーナ………ではなく剣の方に吸い込まれる。

「へえ、剣に。」

構える。恐らくあれは相当に強い業物だ。

リーナの持っていた剣がビキビキと音を立てて変化する。

それは、雪華が以前見た禍々しい半月のような形の大剣だった。

「あれは……。なるほど。相手にとって不足はない。ゆくぞ!」

魔力を噴射してブースターとし、リーナへと突っ込む。

「えいっ!」

可愛らしい声と共にリーナが刃を振るった。

それだけなのに刃が通ったところに暴風と破壊の衝撃が広がる。

「ちっ。」

再び魔力を使って上へ。

「逃がさないよ!」

リーナは高く跳躍する。

変身していない筈なのに、すでに雪華の上を取っている。

「効かないよ!」

リーナはそれをもろともせずに再び剣を振り、暴風ごと雪華を叩き斬る。

「この程度!」

それを盾で受け切る。

…筈だったのだが、斬激は盾をもろともせずに雪華にダメージを与える。

「っとと!」

急いで受け身を取り、地面へ。

「へー、あの姿勢から受け身ってとれるのね。」

リーナは地上に降り立つ。

「仕方ない。」

雪華は、金色のメモリを取り出した。

「お?また新しいメモリ?」

「まあ、そんなとこ。」

《エクスカリバー》

「今ここに、聖剣の十三拘束を解放する。」

メモリを剣の柄の先端に差し込む。瞬間、光り輝く莫大な魔力が剣から噴出した。

「良いね良いね!盛り上がってきた!」

リーナが、その手に持つ剣を構える。その様はまるで凱のスティンガーの構えのようだった。

《エクスカリバー マキシマムドライブ》

「『束ねるは星の息吹。輝ける命の奔流。』」

剣を大上段に構える。

「アハッ!良いじゃん!!」

リーナの剣が音を立てて変形し、槍のようになる。

「受けるがいい。エクス……!!」

雪華の魔力が光へと変換、それが黄金の輝きを放つ剣となった。

「穿て、スパーダ!!」

リーナの剣に赤い光が込められ、彼女の動きに合わせて雪華目掛けて打ち出される。

「カリバーーー!!!」

雪華は剣を振り下ろし、極太のビームのようにして発射する。

放たれた二人の攻撃がぶつかり、あたりを衝撃波が埋め尽くした。

 

 

 

 

 

続く

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第82話

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー戦いの終わりーー

 

 

あれからどれくらいたっただろうか。雪華はふと目を開ける。いつの間にか気を失っていたようだ。

「く…。……ああ、くそ。」

辛うじて変身は解除されていない。

メモリに宿る騎士王が維持していてくれたのだろうか。

「…目が覚めた?」

雪華は声がした方に振り向く。

そこにいたのは……まるで鮮血を浴びたかのような姿の悪魔だった。

「おっと……。」

盾を前へ出し、戦闘態勢をとる。

「あ、驚かせちゃった?」

そこにいたのはリーナであった。

だが、先程と違い、完全に悪魔___凱のデビルトリガーの時のような姿だった。

「その声は、リーナ嬢か。本当の姿かい?」

警戒を解きつつ雪華は剣を鞘たる盾へと収める。

「うーん、困るわねその質問は。」

「困る?」

雪華は首を傾げた。

「ええ、私は魔族でこの姿は私が全力で戦う姿、でも普段からこの姿ってわけじゃないの。」

可愛くないしね、と彼女は付け足す。

「まあ、分からないでもない。で、僕は負けたみたいだな。」

「あら?まだ戦えるでしょ?」

「いやまあそうではあるんだが……。」

気絶してしまった以上、戦地においては死んだも同義だ。

「そう?じゃあ私の勝ちね!」

リーナはそう言ってきたメモリを剣から取り出す。

それと同時に彼女の姿も普段通りに戻る。

「ああ。まったく、とんでもないよ。君は。」

雪華も苦笑して変身を解いた。

「まあ、これでも凱くんには敵わないけどね。」

「マジか…。メモリ無しの勝負なら勝てるかもしれないけどなぁ。」

「どうだろうね、彼の素の身体能力もイカれてるけどね。」

「そうなのか?…今度メモリ無しの真剣勝負仕掛けてみるか。」

「あはは…」

リーナが苦笑いをした。

「ま、そろそろ戻るかな。桜にドヤされる。」

言葉とは裏腹に、彼は優しく微笑んだ。

「そうね。私もそろっと帰ろうかな。」

「いいよ!何から話そうかなー。」

リーナがそう言った時だった。

「それは今度のお楽しみにしておいたほうがよろしいかと。」

リーナが振り向くと、そこには見慣れない服を着込んだ青年が立っていた。

「おや。貴方は?」

「初めまして、盤城飛鳥と申します。以後お見知り置きを。」

「ああ、さっきリーナ嬢が言っていた。霜月 雪華。よしなに頼む。」

「何で飛鳥がいるの?お仕事は?」

「私の分は終わりました。あとは貴女の分だけですよ、お嬢様。」

「む~。」

「はは、頑張って。」

苦笑して肩を竦めた。

「魔界のことなら俺が話してやるよ。」

そう言って歩いて来たのは凱だ。

「五十嵐君、お嬢様は暇じゃないんだ。連れて帰らせてもらうよ。」

「態々時間をとってくれたのか。ありがとう、リーナ嬢。」

「やだー!帰りたくない!」

「駄目です、書類仕事が残ってます。」

「いーやー!」

飛鳥とリーナが言い合っていると、凱達の後ろから姫乃と桜がやって来た。

「お、姫乃さんに桜じゃないか。」

駄々をこねるリーナを尻目に、彼女達へ意識を向ける、

「随分と騒がしいと思ったら、飛鳥君いたのね。」

「諦めて頑張りなよ、リーナ嬢。」

再び彼女へ向き直った。

「いやだよ!書類の山三つもやるの!」

「それぐらい半日あれば終わるだろ。」

涙目のリーナに凱が言い放つ。

「少ないじゃないか。昔なら山10はザラだったけど。」

「雪華様のが多すぎるんですよ……。」

「私は現場主義なのよ、書類は嫌!」

「好き嫌いはいけませんよ、お嬢様。」

雪華は嘆く彼女の肩を優しく叩き。

「頑張れ。」

この上なく晴れやかな笑みを浮かべた。

「うう……やだよぉ……」

先程の戦いからは想像できないほど弱々しくなっている。

「やるしかないんだろ?なら、頑張ってな。」

「……はぁ、わかりましたよ。仕事が終わったらご褒美を差し上げます。」

飛鳥が溜め息を吐きつつ言った。

「本当…?」

「はい、嘘は言いません。」

「…そっか。わかった!」

しばらく何かを考えていたがリーナは頷いた。

「……大変なんだな、飛鳥君。」

「…まあ、それがあの方の良さでもあるのですがね。」

「飛鳥ー、帰ろー?」

「わかりました。雪華様、また何時か。」

「ああ、大切にしろよ?」

優しく微笑んだ。

今の一瞬で、2人の関係を見抜いたらしい。

「……そのつもりですよ。」

飛鳥はリーナを連れて帰っていった。

「さてと。僕もまだまだだな。アーサー王の力を借りてこんな体たらくだなんて。」

「全くだ……と言いたいが、リーナ相手にあそこまで戦えたのは流石だな。」

凱が雪華に言う。

「いや、リーナ嬢が来た瞬間形勢逆転だ。僕が未熟だと言う他ないだろう。」

「でも……。」

ガイアナイト、ひいてはエクストラを終始圧倒していた。桜には、夫が未熟などとは、とても思えない。

「いや、初動の不意打ちで生きてただけましよ。」

「あれはまあ、慣れれば誰でも。受け身取っただけだし。」

「本来、あれ食らった時点で瀕死になるんだけどな。」

「あの程度で?」

「……一応言っておくが、あれで内臓グチャグチャになるぞ?」

「うわあ……。」

半人半妖かつ熾天使で本当に良かった。心の底からそう思う。

「俺もあれ食らった時は流石に死んだかと思った。」

「確か、ギリギリで助かったのよね?」

「……ちなみにそれは、変身した状態で、ですか?」

恐る恐る聞いたのは桜。

「いや、生身。」

「……それでも雪華様は凄いってことに変わりはありませんね。」

雪華は思った。

幽香(母さん)、妖怪でいてくれてありがとう。

「一応受け流したが、受け流し失敗してたらと思うとゾッとする。」

「それを真正面から……、……雪華様。」

「分かってるからそんなに睨むなって。」

「だが、あの感じだと何かしらの防御はしたんだろう?受け身にしてはあまりにも動いてるようには見えなかったがな。」

「まあ、ごく簡単な対衝撃結界は張った。それだけだ。」

「なら、お前は本当に化物だな。」

「自分でもまさかここまでとは思わなかったよ。」

あっはっは、と雪華は笑うが割と笑い事ではない。

「ちなみに桜は真似するなよ?姫乃だってあれ食らったらひと溜まりもないんだ。」

「絶ッ対にしません!」

桜は必死に否定する。

「あの剣には特殊な能力があってな。雪華なら気付けただろうが。」

「ああ、何となくだけど。」

「あの剣は『貫通』の能力を持っている。盾や防壁は勿論、結界や防御術式も関係なく貫いてくる。」

「だから防御が無駄だったんですね。」

「アヴァロンでも防ぎきれないとかやばいよな。」

「まあ、やりようによっては()()()()()()()()()。」

「ほう?」

「そうなんですか?」

2人は揃って首を傾げる。

「リスクが大きいですね……。」

「…ちなみにその方法は?」

「簡単だよ、防御しなければ良いのさ。」

周りにいた姫乃や護、近くで座っていた霊夢やフラン達が揃って溜め息を吐いた。

「なるほど!とはならんぞ。」

「……そうだろうなと思ってましたがやっぱり狂ってる。」

「雪華なら出来るだろ、銃弾斬り落としたくらいだしな。」

「あれは単純な動体視力と剣技だよ。鍛えれば誰でも。」

それを聞いた妖夢や椛が目を輝かせる。

「椛、お前は必要ないだろ。弾丸の予測が出来るんだし。」

「そんなことないですよ護さん!」

「そうですよ!」

護の一言に妖夢と椛が反応する。

「霊夢のライフルを弾いたのと同じだな。ただ、斬り落とすには刃筋を完璧に立てないと無理だぞ。」

「いやいや、ただそれっぽく出来れば良いんだよ。」

「ま、今度時間がある時にでも実演しようか。」

雪華は微笑んで肩を竦めた。

「それもそうだな。それに銃弾斬りくらいなら俺等も出来るしな。」

その言葉に護も頷く。

「流石。」

「撃ち落とすくらいなら私も出来るんですけど……。剣はあまり慣れてなくって。」

化け物揃いである。

「ほんっと、あんたらって化物よね。」

霊夢がそう言うが

「何言ってんだ、雪華がリーナ達と戦ってる間、その余波を広げないように流れ弾全部撃ち落としてただろうが。」

「そうなのか?ありがとう。周りに目が行かなかった。」

「あんなに凄まじかったので、仕方ないとは思いますよ?」

「別に、習った事をやったまでよ。」

雪華の感謝を受けた霊夢は何でもなさそうに顔を背ける。

「……そういえば、エクスカリバーとスパーダがぶつかり合った時、皆はどうなったんだ?」

「流石にあれは私じゃ対処できないわよ。」

雪華の疑問を他所に凱は空を見上げる。

「……そろそろだな。」

凱がそう言った時、誰もいなかった闘技場の観客席に黒い影が音もなく降り立った。

「……?」

「何ですか、あれ?」

「…………。」

シュウシュウと音をたてるそれは雪華と桜を見つけると二人の近くに移動してきた。

「……エクリプスか。」

「ありがとねー。」

雪華は頷き、桜はエクリプスを優しく撫でる。

『?!』

桜の行動に凱と姫乃、雪華を除いた全員が驚愕する。

「どうしたんですか?」

桜はエクリプスを撫でており、当の本人(エクリプス)は嬉しそうに体を震わせる。

「本来、エクリプスに好かれる奴は珍しいんだよ。」

「へぇ……、そうなんですね。」

「まあ、桜は途轍もなく優しいからな。分からないでもない。」

「それなら雪華様だって。」

この夫婦、無意識に惚気けるのである。

「いや、優しいだけで懐いたりはしないさ。」

「何か、素質みたいなのが必要なのか?」

「どうなんだろうな。俺には普通に懐いてるんだが。」

「担い手………ってか産みの親か?」

「うん、だから正直不思議なんだよな。」

「『蝕』のメモリ……。呑まれるんじゃないぞ。」

「それは俺に言ってるのか?」

「当然。他に誰が居るか?」

彼は薄く微笑んだ。

「それもそうか………肝に命じておこう。」

凱は頷いた。

「姫乃さんを悲しませるのは本意ではないだろうしな。…桜。エクリプスと遊ぶのもそこまでにしといて。霊夢達のSAN値が終わる。」

「あ、はーい!」

「エクリプスも満足したみたいだな。」

桜から離れたエクリプスは凱の方へ移った。

「……?」

それを見た凱は首を傾げる。

「どうしたんだ?」

雪華もまた然り。

「いや、いつもならメモリに戻るんだが……。」

「何か言いたいことがあるの?」

「……なるほどな。」

不思議そうにする桜の隣で凱はドラグニスを取り出す。

「ドラグニス?」

「何をするんですか?」

「どうやら食後の運動が必要そうだからな。」

凱が構えるとエクリプスも戦闘態勢に入ったらしく、足元の影が広がり始める。

「……逃げるか。」

「そ、そうですね……。」

「たまには相手してやるよ。」

その言葉を合図に凱とエクリプスの戦闘が始まった。

 

 

 

 

ーー後片付けと急な来訪者達ーー

 

 

 

 

「……疲れた。」

闘技場の中央には疲れはてた凱とエクリプスメモリがあった。

ちなみに霊夢たちは安全のために戦闘前に避難させている。

「……お疲れ。よく死ななかったな。」

「あ、あはは……。」

2人揃って苦い顔である。

「これでまだお遊びの範囲なんだよなぁ。」

「……決めた。エクリプスは死んでも敵に回さない。」

「………同感です。」

雪華と桜は少々青ざめている。

「まあ、体が鈍らない程度に動かせるんだがな。」

「今回はあんまり被害でなかったわね。」

辺りを見回しつつ姫乃が言う。

「………これが…………?」

壁は一部崩れ、地面はボコボコ。

雪華は戦慄する。

「前の時はクレーター出来たからね。」

「あれは不可抗力だろ。」

「何がよ、プロミネンス使ってたくせに。」

「……僕が間違っていた。」

そんなことをぼやきつつ、魔法を用いて修復に取り掛かる。

「……悪いな、手伝わせて。」

そう言って凱も修繕に取りかかる。

「問題ない。」

雪華が指を鳴らすと、瓦礫が浮かび上がり、元の場所へ。それをさらに魔法で接着。それと同時に地面も元通りとなった。

「便利だな、魔法って。」

そんなことを言いつつ凱はデビルブリンガーで瓦礫を持ち上げる。

「これは僕のオリジナルでね。対象の時間を巻き戻すものさ。咲夜の能力より魔力消費は大きいが、こんな風に完全に巻き戻せる。」

「パスト見てえな事してんな。」

「パストって、あの砂時計みたいなやつか。まあ、出来そうではあるな、」

「アイツ、擬似的な不死だからな。」

凱は以前やり(殺し)あったことを思い出しながら言った。

「それもこの前聞いたな。紡ぎ手から聞いた話だが、仮面ライダーのマキシマムドライブを受け破壊されても元通りになったらしいじゃないか。」

「当たり前だ。マキシマムなんて使っても倒せねえよ。」

「……『永遠』なら、どうなる?」

「エターナルか?……無理だろうな。」

エターナルメモリ。本家のあれはぶっ壊れだったから以前調べたが、一応存在はしてるらしい。

「無効化能力を持つエターナルでも駄目なのか?」

「アイツは本体があのでかいやつだけじゃないからな。」

「……それら全てを無効化しないと駄目ってことか?」

「無効化はできないだろうな。」

「そもそも無理なやつか。」

「無効化したとしても、エクストラメモリはブレイクできない。かといって無効化を解除すればたちまちに再生する。無理ゲーだろ。」

「…確かに。でもまあお前がバスターすりゃいいだろ。」

そう言って雪華は朗らかに笑った。が、凱は真剣な顔で言った。

「問題はこっからだ。」

「ここから?」

「雪華、お前はゲームしたことあるか?」

「うーん、まあほんの少しだけ。」

桜と彼女の友人に誘われて一瞬だけやったことがある。意外と面白かった。

「やったゲームにもよるが、一番解りやすいのはRPGだな。」

「RPG?えーっと、何だっけ、一緒にやったの。」

「確かドラ○ンクエ○トですよ。」

「そうそれ。」

「桜の方が詳しそうだな。」

「私も対して知識があるわけじゃありませんよ。ノルンちゃんがよくわってましたけど……。」

「ああ、彼女はゲーム好きで有名だったな。」

「……続けよう。例えば、未知のダンジョン、初遭遇のボス、そういった奴等と戦うとき『セーブ』ってするよな?」

ノルンという人物については考えないことにして話を進めた。

「しますね。詰んだりしたらリセットとかもしてましたし。」

桜は少々考えながらそう言った。

「ボスと戦ってパターン見きってやり直す、ダンジョンのギミックを覚えて再走、それをアイツは()()()()やってくる。」

「……は?」

桜が驚愕の声をあげる。

「もっと解りやすく言えば、『セーブとロード』だな。自分が破壊される直前まで自身の時間を巻き戻して、対策を練りつつ戦う。自我が無い分徹底的に攻めてくるから厄介なんだ。」

「……分かりやすく壊れてるじゃないですか………。」

「ああ、だからまだ討伐回数はたったの2回だ。」

「……逆に2回も倒してるって凄いですね。」

「凱以外も十分化け物だということはよく分かった。」

「あれを討伐っていうか?」

「まあ、一応……?」

護と姫乃が困ったような顔をする。

「……その時の様子はさておき、終わったぞ。」

話している間も修復を続けていた雪華が終了を宣言した。

「おー、お疲れ。」

「魔法使ってただけだよ。大したことはしてない。」

笑って肩を竦める。

そんな時

「御兄様〜!」

どこからかフランの声がした。先程霊夢たちと一緒に紅魔館に帰ったはずなのだが、などと凱が首をかしげていると現れたフランは勢いそのままに抱きつく。

 

 

──凱ではなく雪華に。

「ぐはっ!?」

背を向けていた雪華は当然物理法則に従い、前へと倒れた。

「……君、さては雪月花(あっち)のフランか………!!」

「あったり〜♪」

そう、その場にいたのは雪華の世界(別世界)のフランだったのだ。

「おのれ紡ぎ手……!!」

「見た目変わんねえな。」

護のコメントに対し、

「本気で言ってるの?」

「一回眼科医って検査受けたらどうだ?」

中々に辛辣な姫乃と凱である。

「むふふ〜♪」

「……一度どいてくれないか。」

「はーい!」

ご満悦のフランだ。

「雪華様……?」

「待て桜、待ってくれ。」

「……まあフランちゃんなら良いです。いつものことですから。」

「「………。」」

「どうしたの二人とも?」

「いや。」「んー何でも?」

姫乃が凱と護に問いかける。

「……どうかしたか?」

「……なんでもねえよ。」

不思議がった雪華も聞くが、凱は苦笑いしただけだった。

「御兄様、最近全然構ってくれないもん!」

「いやついこの間紅魔館行ったろ。」

「もう1週間だよー!」

「…大変だな。」

「凱の場合向こうから来るからな。」

「こっちから行かないと、レミィと咲夜とフランが拗ねるんだよ。」

雪華は苦笑した。

「大変なんだな。俺の方は夜にフランが遊びに来るぞ。」

「夜?こっちのアイツと私は随分とだらしないのね。」

「この子達は生活習慣を変えてるんだよ……。」

「言っておくが、日中に出歩こうもんなら焼け死ぬぞ?」

「僕が境界を弄って無効にしてある。」

「ありがとね、御兄様!」

魔法とやらはずいぶん便利らしい。プロミネンス(太陽のメモリ)も防げるのか試してみたいものだ。

「便利だな、お前の結界。」

「能力の賜物だ。紫さんの能力を使わせてもらってる。」

「あー、しれっとヤバイの持ってたんだよなぁ、あの人。」

「話がずれてるな。」

「言うなよ、護。」

「……まあとにかく、うちのくらんもち(バカ)のせいでフランがこっち来たらしい。」

雪華が申し訳なさそうにしている。

こういうことは専門家(責任者)にも手伝ってもらおうか。

「………聞いてんだろ?ウルム。」

「なんだい?別にわるいk

凱は現れたフォーウルムの顔面をデビルブリンガーで思いっきりぶん殴った。

「ウルム〜!?大丈夫か!?」

「出やがったな紡ぎ手。」

雪華が裏拳。くらんもちは3回転半のきりもみ回転を披露した。

「ナイス、殴られ役ご苦労。」

「全く、このメットじゃなかったら死んでたよ?」

フォーウルムは何事も無さそうにしている。

「紡ぎ手さん、気絶しちゃいましたけど……。」

「桜、ほっとけ。」

気絶するくらんもちを桜が心配するが、雪華は切って捨てる。

それを横目に聞きたいことをフォーウルム(こいつ)に聞くとしようか。

「何でフランがいるんだ?」

「東方だから?」

「違う。あっちのフランがいる理由だ。」

「それは、ですねぇ…………。」

「ほら復活した。」

顔を押さえながらくらんもちが立ち上がる。

「私が頼んだの!御兄様に会いたかったから!」

「……まあ、一応確認は取りましたね。『こっちのキャラ出したいんだけどいい?』って。」

「……ウルム?」

凱がウルムに問う。

「うん、許可したね。」

「共犯、か……。よしやるぞ。」

《スノー》

雪華はメモリを起動させるが、俺は少々考えて結論を出す。

「……雪華、今回は俺はウルム側につく。」

「何!?」

予想外だったのか雪華が驚く。

「よく考えろ、別に問題は起きてねえだろ?」

「……まあ、それもそうか。」

「ねえ僕ってだけで消す対象なの?」

「何言ってんだ当たり前だろ。…まあ、今回は凱に一理あるから見逃す。」

「いや、最初は躊躇したよ?色々バランスの調整もあるし。」

フォーウルムが何かを操作しながら言う。

「でもパストも安定してるし、送る場所も安全圏だし良いかなって。」

「……あのー…………。」

くらんもちがおずおずと手を挙げる。

「どうした、くらんもち。」

「今気づいたんですけど。

──他にもいっぱい来てるんですよねぇ!」

遠い目から涙を流し、やけくそのように叫んだ。

「……場所は?」

凱が聞く。

「不幸中の幸いか此処なんですよね……。」

「凱、僕は紫さん家のとこ行ってくる。」

「ああ、後で奢れよ?」

「もちろん。」

そう言ってフォーウルムは消えた。

「あっはは、もうここまで来たら返せねぇや。」

相変わらず死んだ目である。

「別に呼んでも構わんぞ。」

「あぁ、助かります……。もう出るならはよ出ろ。僕は帰る。」

「まあ、その……、頑張れ。」

「まさかお前に慰められるとは思わなかったよ、雪華……。」

彼と入れ替わりのようにして出てきたのは、早苗、椛、レミリアに咲夜、妖夢、そして名も知らぬ天狗。

「見たことない天狗だな。……まあ女の時点であれだが。」

「凱、俺は帰るぞ。」

「わかった、お疲れ。」

そう言って護は帰っていった。

「待ってくれ6人は重い!」

「あ、私は鞍馬 颯香(さやか)です。以後、お見知り置きを。」

雪華は早苗を初めとする6人に押し潰され、颯香はその脇で自己紹介をした。

「鞍馬…ねぇ?」

「由緒正しき、って感じね。」

「皆さん、雪華様が潰れてますよ。」

苦笑したのは桜。

「それぐらい持ち上げられるだろ、雪華?」

「怪我でも、させたらどうする…!」

「なるほど、配慮してやらないだけか。」

「……さすがに、退きましょうか。」

苦笑しながらそう言ったのは早苗。彼女に続いて、1人ずつ退いていき、残ったのは疲れた顔をした雪華だ。

「お疲れ。大変だなぁ?」

「悪い気はしないけどな。」

そう言って苦笑する。

「にしても、賑やかだな。」

「いつもこんなものさ。…潰されたのは初めてだが。」

「その……、嬉しくなっちゃって。」

呟いたのは椛。その証拠に、尻尾がぶるんぶるんと揺れている。

「…愛されてるじゃないか?」

「全く、こんな奴の何処を好いたんだか。」

雪華は肩を竦める。

「教えてくれないんだよなぁ。」

「それはその……、恥ずかしいです。」

蚊の鳴くような声で答えたのは妖夢。彼女自身銀髪で、雪華と並ぶとさながら兄妹のようだと凱は思った。

「……まあ、細かいことはいい。とりあえず雪華はもう少し自分の事を理解すべきだな。」

「……難しいな。僕は、自分があまり好きじゃない。」

「そうかよ。……そいつらを大切にしろよ?」

「当然。何が何でも護る。」

雪華は即答する。

あちらの世界の全員が頬を赤らめる。

「そうそう、それでいい。」

「全く、賑やかね。」

そう言いながら現れたのは八雲紫だ。

「という訳だ。そろそろ戻る時間だぞ。」

不満の声が上がるも、渋々了承したようだった。

「折角だし、面白いのを見せてあげるわ。」

「面白いもの?」

揃って首を傾げる。

「おい、まさか?!」

「そのまさかよ。」

紫が手を上に伸ばすと、紫色の魔方陣が周囲に展開される。

「なっ!?皆、こっちに来い!」

雪華が結界を張ると、少女達が彼の周りへ集まる。

魔方陣からは光が漏れ、さらにその中を何かが潜って移動していた。

「何だ、これは……。」

魔方陣はそれぞれが別の魔方陣に繋がっているようでそれを縦横無尽に駆け回る。

「……。」

雪華は瞑目し、集中を高める。

「ほら、下手に警戒させちまったじゃねえか。」

「そうね、こっちへいらっしゃい。」

紫がそう言うと、駆け回っていた何かは紫の足元にやってきた。それは……狐だった。

「……藍か?」

「いや、こいつはもっとヤバイやつ。」

「私のメモリの《ディメンション》よ。」

「『次元』…!?……なるほど、紫さんにはぴったりですね。」

緊張と結界を解いた。

「……というわけらしい。」

「もう少し、雪華と居たかったわね……。」

「そうですね……。」

レミリアと咲夜。雪華は本当に愛されているらしい。

「イチャつくのはあっちでやってくれ。」

「?何のことだ?」

きょとん。どうやら本気で気付いていなかったらしい。

「相も変わらず鈍感ですね。まあ、そこが魅力でもありますが。」

苦笑したのは颯香。

「あんたはこいつを良く理解してるようだな。」

「そうですかね…?」

照れ笑い。桜以外の面々がつまらなそうにする。

「そういえば……まだあれは見せてねえのか。」

「あれ?」

「あー……。」

「何なんですか?」

「……これですよ。」

興味を示した妖夢に見せたのは、例の指輪。

「え、これって、指輪!?」

「ということは、式をしたんですか!?」

「ち、違う!そうじゃない。……渡しただけだよ。」

「呼びなさいよ?」

「なぜそうなる!」

赤くなって言い返す雪華だが、彼女達には堪えていない。

「当然の反応だな。」

凱が見ている横で紫はディメンションに油揚げをあげている。

ちなみに凱はこうなることを予想して()()()この場で言ったのだ。

まあそうしなくても戻った後に言われそうだが…………

 

 

 

せっかくなら目の前でイジるほうが面白い。

「……そもそも、するかは分からないぞ!絶対にしなきゃいけないってことh」

「しないんですか……?」

「ぐ……。」

上目遣いの桜にそう言われ、雪華が言葉を詰まらせる。

「あーあ、墓穴掘ってら。」

「でも、恥ずかしいんだよ……。」

「私は、挙げたいなぁ………。」

「ほら雪華さん。桜さんがこう言ってるんですから!」

「挙げたらどうだ。折角なんだから。」

「うぅ………。」

雪華は逡巡する。式なんて恥ずかしい。だが桜の願いは叶えてやりたい。かなりの葛藤だった。

「お前ってこういう時に恥ずかしがるよな。」

「大勢に見られるのが嫌なんだ……。」

「そうなのか?」

「普通に恥ずかしいんだよ……。」

「そう、なんですか……?」

潤んだ目。くそ、僕の良心が。

「……分かった!やるんだろ!」

半ばヤケになりつつ叫んだ。

「姫乃。」

「大丈夫、録音してるから。」

「証拠を残すなーっ!そんなの無くても約束は破らねえよ!!」

「念のためだよ。…さて、そろっと戻った方がいいんじゃないか?」

そろそろ戻ってもらおう。ここで雪華達(イジり甲斐のある奴ら)を帰すのは非常に惜しいが、そうしないと怒られそうだ。

「そうだ、早く戻れ。」

「分かりましたよぉー。雪華さんの可愛い一面も見れたことですし!」

イキイキとしているのは早苗。

「紫、頼む。」

「は~い。」

紫はディメンションのゲートを開く。

「じゃあねー!」

フランを先頭にして帰っていく。

「さて、お前らも行ったらどうだ?」

「……そうする。じゃあな。」

「では、また。」

雪華は疲れた顔で、桜は笑って手を振った。

「ああ、またな。」

「じゃあね!二人とも!」

 

 

「……行っちゃったね。」

FDLに帰るとき、姫乃がそう言った。どこか寂しそうだ。

「そうだな。まあアイツの事だ、心配はいらないだろ。」

「そうね。……一週間くらいだったのに、すごい短く感じちゃうね。」

「……俺は不思議と四か月くらいたった気分だ。」

「何それ、変なの~。」

「本当にな。」

「………ねえ」

「ん?」

姫乃が恥ずかしそうに言った。

「桜ちゃん、嬉しそうだったね。」

「……」

恐らく、宴会の時だろう。雪華が桜に渡したサプライズ(指輪)の事だ。

「……気長に待ってろ。」

「え?」

「いつになるかわからないが、きっとプレゼントする。姫乃に合う物を。」

「……うん!待ってる!」

そう言って振り返った彼女の顔は

 

 

 

 

今までの彼女の笑顔の中で、とても綺麗だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

後から聞いた話だが元の世界に帰った雪華は珍しく酒を飲んだらしい。

やはり帰すのは勿体なかったと後々に後悔した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




は~い、どうもどうもフォーウルムでーす。
2月から続いたコラボ回である第八章、ついに完結です!
いやー長かったですね、物理的にも期間的にも。
最後になった第82話なんて10000字超えましたもんね。
コラボしてくださったくらんもちさん、ありがとうございました。
是非コメントくださいね?


さて、次回からは9章ですね。
凱達の日常やちょっとしたトラブルを描いていくつもりです。
いや、その前にキャラ紹介かな?
次がキャラ紹介になるか本編になるかわかりませんが、お楽しみに!






目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第83話



本編数日前…


太陽が輝くある日、店の窓辺の椅子にもたれ掛かり、五十嵐凱は昼寝をしていた。
今日は仕事もやるべき事も無い完全な休日である。
そこへ…

「おっ届け物でーす!!」

突如としてスキマが現れ、そこからくらんもちが現れる。

「ん?くらんもちじゃねえか。どうした?」
「凱さん、これを。よーーうやく決まったので!!」

くらんもちがが出したのは1枚のカード。

「んー?……ああ、なるほどな。」

それを見て凱は微笑む。………端から見れば悪魔の笑みだが。

「当日は姫乃さんも呼んでいただければ。あいつらも喜びます。」

凱の表情に気付きながらもくらんもちは敢えて無視して話を進める。

「そうさせてもらおう。」
「あれ?何の話してるのー?」

そこへ丁度よく姫乃がやってきた。

「あ、姫乃さん。ようやく日取りが決まったので、招待状を。」
「招待状?」
「ほら、雪華と桜の式。」
「…ええー!?」

驚く姫乃。
無理もないだろう。俺が雪華から結婚式の言質を取ったのはほんの数日前。想像よりも早く日が決まったのだ。

「あいつ真面目ですからねぇ、あの時の約束を実行しようとしてるんですよ。」
「…こんなことしてる場合じゃないよ凱君!すぐ準備しないと!」
「あ、ちょ、おい!……行っちまった。」

張り切りすぎたのだろうか。姫乃は走って店の奥…居住区に行ってしまった。

「あー…、なるほど、そういう人だったか。変なことだけはさせないでくださいね、ホント。」

くらんもちは苦笑した。

「それはないな。俺じゃあるまいし。」
「なら良いんですけど。」

あの張り切り様、心配にもなる。

「まあ、大丈夫だろう。当日にはしっかり行く。」
「では、宜しくお願いします。」

それだけ言いおいてスキマへ戻っていった。







 

 

 

ーー雨に拾うは孤独な影ーー

 

 

「雨…か。」

 

里へ買い出しに行っていた男、総塚護は溜息を吐きつつ空を見上げた。

早苗に頼まれ夕食の買い物をしに来たところまではよかったのだが天気が急変し土砂降りになってしまった。

雨宿りしていても止みそうにはない。

一瞬、高速で走ればいけるか?等とという考えがよぎるが、あれはいろいろとリスクがある。特に今日の買い物の中には鶏の卵が入っているのでできるだけ慎重に帰りたいというのも事実だ。

 

「……あいつ、上手くやってんだろうなぁ?」

 

あいつ、というのは彼の親友兼ライバルである五十嵐凱だ。

なんでも以前こちらの世界に来ていた霜月雪華の結婚式に呼ばれた、といって数日留守にしている。

 

「下手におちょくったりはしてないといいが……。」

 

凱は明るく、頼りがいのある男であり競い合えるライバル(戦いでのみ)だが、性格があれなので雪華はかなり苦労しているだろうと苦笑する。

そんなことを考えていると、

 

「いた!護さーん!」

「ん?早苗!どうしたんだ?」

 

守谷神社にいるはずの東風谷早苗が傘をさしてこちらに向かってきた。

 

「どうしたじゃないですよ!いつになっても帰ってこないので心配して探しに来たんですよ!」

「そ、そうか。それはすまないことをしたな。」

「いいんです。帰りましょう?」

「ああ、助かる。」

 

早苗がさしてくれた傘の中に入り、寄り添って帰路につく。

 

「最近はどうです?地下の探索は?」

「順調だ。凱の奴は新しいのを見つけたらしい。」

 

新しいの、とは結晶で出来た華である。結晶華(凱命名)と呼ばれたそれは茎、葉、花が水晶のようなもので構成されている植物だった。最初に現物を見せてもらったときは心の底から驚いた。

その時に凱が見せてくれたのは紅葉の枝だったのだが、それに触れた際に誤って葉を一枚折ってしまった。

凱は笑って許してくれたが、とても申し訳ない気持ちになった。

 

「そんな花、よく見つけましたね。」

「なんでも110層の下の洞窟に咲いてたんだと。」

「へ~。」

 

早苗とそんな他愛無い話をしていると

 

「ミー、ミー」

「ん?あれは……?」

「猫ですね。どうしたんでしょうか?」

 

そこにいたのは一匹の黒猫だった。

毛はボロボロで、体も痩せ細っている。

 

「野良猫でしょうか?」

「恐らくな。どうする?」

「親猫と離れちゃってるみたいですし…引き取りましょうか。」

 

そう言って早苗は黒猫を持ち上げる。

 

「こうして見るととても可愛いですよ。」

「連れて帰るのはいいが、世話できるのか?」

「もちろんです!任せてください!」

 

そう意気込んだ早苗と俺は、談笑を続けながら神社に帰った。

諏訪子と神奈子からの許可も貰えたので正式に守谷神社で飼うこととなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第84話

凱と姫乃が友人の結婚式に出席してからしばらくたったある日、二人はそれぞれ考え事をしていた。

 

 

 

ーー想いを伝えるにはーー

 

 

 

アンダー・パレス 第100階層

 

 

「これで…終わりだぁっ!!」

 

巨大な鎧の怪物に、護が高速で近付き、閻魔刀を振り抜く。

怪物はしばらく体を振るわせたあと、ガラガラと音を立てて崩れ落ちた。

 

「流石だな、護。」

「この程度、造作もねえよ。」

 

遠巻きに戦いを見ていた凱が護とハイタッチをする。

凱は凱で取り巻きの小型騎士を相手にしており、辺りには大量の鎧であったであろう残骸が散らばっている。

 

「んで?ここまで来た目的は何だ?」

「さっき言っただろ。『探し物がある』って。」

「その探し物の中身を聞いてんだよ。」

 

護は溜め息を吐く。本当ならば以前拾ったクロ(雨の中拾った子猫。早苗命名。)の散歩に行く予定だったのだが、凱に誘われ深層に潜っている。

 

「鉱石だ。出来ればアメジストのような色の石がいい。」

「アメジスト……?何につかうんだ……?」

「言えるかよ。」

 

凱の素っ気ない様子から、護は一つの答えを導き出す。

 

「プロポーズか?」

「………。」

 

凱はうんともすんとも言わない。

 

「ははーん、なるほどな。アイツ(雪華)に渡したみたいに指輪作って姫乃にプレゼントってか?熱いね~。」

「……。」

 

護の揶揄いに対し、何も返さず凱は目的の鉱石を探す。

 

「……ついに決めたのか。」

「…ああ。」

 

揶揄うのをやめた護が凱に言う。

 

「なんとなく察してはいたが、姫乃を選んだか。」

「言い方をもう少し変えられないのか。それだと俺が霊夢達を捨てたみたいになるだろうが。」

「それもそうだな。すまん。」

 

凱は壁に触れつつ言う。

 

「正直、俺が姫乃に釣り合うかはわからん。あいつは、誰にでも優しいし、何より明るい性格の持ち主だ。」

「嫁自慢か?お前にもそんな日が来るとh」

 

うんうんと頷いていた護の顔面に凱の拳が炸裂する。

 

「痛ってぇ!何しやがる!?」

「うるせぇ!」

「別にいいだろ!?以前のお前から考えたらかなりの進歩だろう!」

 

以前というのは幻想入り前の事だ。

 

「……確かにな。あの頃からは考えられないな。」

「だろ?……結婚決めた理由は?」

「…姫乃に、笑ってほしい。」

「自己満足か?」

 

再び拳が炸裂しそうになるが、今度は回避する。

 

「照れるなよ。」

「…照れてなど…」

「顔赤いぞ。」

「ぅぐ……。」

 

護の指摘に言葉を詰まらせる。

 

「まあ、いいんじゃねえの?アイツだって、そう思ってるぞ。」

「そう…だといいがな…。」

「自信もてって。」

「…ああ。……!」

 

凱はやっと目的の物を見つけ、堀り始める。

 

「それか?」

「ああ。これなら、きっと上手く行く。」

 

凱が掘り出したのは野球ボールほどの石だ。その色は深く、透き通るような紫色だ。

 

「指輪には持ったいなさそうだな。」

「だからこそ、だろ?」

「そうだな。……そういやぁドレスとかってどうするんだ?」

「それはもう準備を始めている。」

「早えな。」

 

そんなやり取りをしていると、

 

「終わったよ、凱。」

 

急に壁に空いた穴からヘルメットが顔を覗かせる。

 

「うおぉ?!なんだ?!」

「出来たのか?」

「うん。頼まれたのはね。」

 

驚く護を放置し、凱はメット男(フォーウルム)と話す。

 

「ドレスは会場に送っておいたよ。」

「準備が早くて助かる。報酬はカウンターの引き出しに入ってる。」

「ん。じゃあまたね。」

「ああ。」

 

そう言うとメット男は穴に引っ込み、そのまま消えてしまった。

 

「誰だアイツ?」

「世界の管理者にして非常識人筆頭。」

「はぁ?」

「そんなことよりも、行くぞ。」

「あ、おい!しっかり説明しろよ!」

 

そんな会話をしつつ、凱と護は地上に戻った。

 

 

 

 

 

ーー少女達の応援、駆け行く月ーー

 

 

 

 

紅魔館の一室に、寝間着姿の少女達が集まっている。

そこに居るのは霊夢、鈴仙、咲夜にフラン。妖夢に文、そして姫乃と凱に想いを寄せる少女達である。

話の中心は姫乃であり、その内容は……

 

「それでね、桜ちゃんのウェディングドレスがとっても綺麗で__」

 

異世界の親友の結婚式のことだった。

 

「凄い嬉しそうに話すわね、あんた。」

「それはそうだよ霊夢ちゃん!だって大切な親友のことだもん!!」

「私達はどうなんですか?」

「もちろん!妖夢ちゃん達も大切な親友だよー!」

 

そう言って姫乃は妖夢に抱きつく。

最初の頃はさん付けだったが、親しくなった今ではちゃん付けである。

 

「羨ましくなったんじゃないの?」

「それはそうだけど……。」

 

咲夜の言葉に姫乃は少しうつむく。

姫乃はここにいる全員が、凱に好意を寄せていることを知っている。

 

「……したいんじゃないの?」

「え…?」

「彼との結婚式、したくないの?」

「それって……どういう………?」

 

咲夜の言葉に、姫乃は困惑する。

その様子を見ていた霊夢達は互いに頷き合い、そして姫乃に言う。

 

「姫乃さん、凱さんと結婚式挙げたくないですか?」

「それは…挙げたいけど…それは皆もそうじゃないの……?」

「この前、私達で話し合ったんですよ。」

 

妖夢が続ける。

 

「『もし、姫乃さんが戻ってきたら、凱さんと式を挙げさせよう』って。」

「そ、そうなの?」

「はい。貴女に想いの強さで負けるつもりはありませんが、それでも私達よりも彼と寄り添ってきたのは貴女です。それだったら彼と一緒になるのは姫乃さんがいいんじゃないか、ということになったんですよ。……ちなみに言い出したのは霊夢さんです。」

「ちょ!?バラすんじゃないわよ!」

「あ、やめてください!こめかみをグリグリしないで?!」

 

文のネタばらしに霊夢がお仕置きといわんばかりに文のこめかみを拳で押さえる。

 

「ま、そう言うことよ。あんたのことだしきっと幸せになれると思ったのよ。」

「霊夢ちゃん…みんなぁ…。」

「ちょっと、何泣いてんのよ。」

「泣いてないもん……グズッ」

「泣いてるじゃない。」

 

霊夢達の言葉で感極まった姫乃は泣きだしてしまった。

最初の頃は大人っぽいと思っていたが、こうして話してみると幼く感じてしまう。

そんな時、姫乃の端末が震える。

 

「ん?なんだろ………?!」

「どうしたのよ?」

「こ……これ…!」

「んー?」

 

端末に写し出されていたのは短い文章であった。

 

 

 

 

 

ーー想いの行く着く先は…ーー

 

 

 

 

「……………。」

 

月が輝く夜、誰もいない草原に凱はいた。

周りよりも少し高い、小さめな丘の上でたたずみ、ただただ夜風を浴びていた。

 

「…が、凱君!」

「………来たか、姫乃。」

 

そこに息を荒げてやって来たのは、姫乃だった。

 

「済まなかったな、泊まりに行ってたのに呼び出しちまって。」

「…こんなこと書かれたら行かずにはいられないよ。」

 

そう言って姫乃は端末を見せる。

そこにあったのは

 

「『今日の夜、11時に君が想いを告げてくれた場所で待つ。』…こんなの、行くに決まってるじゃない。」

「覚えてたか、ここを。」

 

そう、凱達がいるここは、姫乃の歓迎会をやった日の夜に姫乃が凱に告白をした場所である。

 

「それで、何かあったの?」

「……あのときは越されたからな。」

「え?」

 

凱は丘を降り、姫乃に歩み寄る。

 

「姫乃。俺は嬉しいんだ。お前に出会えて、ここまで来れた。」

「凱君…。」

「幻想郷に来る前も、その後も。姫乃と一緒に居れた日々は、俺にとってかけがえのない物だ。」

「…うん。」

 

凱は姫乃を真っ直ぐに見る。

 

「姫乃と居れたから、あの時も立ち直れた。姫乃がいたから、ここまで楽しく過ごせたんだ。だから、姫乃…いや、姫乃禍月さん。」

 

 

 

「俺と、結婚していただけませんか?」

 

凱は膝を折り地につけ、懐から取り出したケースに入った指輪を姫乃に差し出す。

 

 

 

「……凱君は卑怯だよ。」

「………。」

「私が、あの時どんな思いで君の言葉を受け取ったのか。どんな想いで君に寄り添ったのか。……それを理解して、そのプロポーズなんだよね…?」

「…ああ。これは、俺自身が君に出来る最大限のプロポーズだ。」

「そっか……そっかぁ。」

 

姫乃は、顔を上げる。

その表情は

 

笑っていた。

 

 

「私で良ければ、喜んで!」

 

凱は立ち上がり、姫乃の右手をとる。

そのまま指輪を彼女の薬指に嵌めた。

 

「ありがと、凱君!」

 

姫乃は凱を抱き寄せる。

 

「ありがとう、姫乃。」

 

凱も姫乃を抱き返し、そのまま熱い口付けを交わした。

 

 

 

 

 

ーーさぁ、祭りの始まりだ!ーー

 

 

 

 

「……そうか、お前も結婚か。」

 

プロポーズをした次の日。2人は魔界のフォルトゥナ城に来て、ギルバに報告をしに来ていた。姫乃はリーナ達と話しており、凱とギルバは城の最上階テラスで話していた。

 

「お前が結婚できないとは思っていなかったが、俺より早いとはな。」

「行き遅れになるなよ?」

「うるさいぞ!」

 

そんな冗談で、2人は笑い合う。

 

「だが、さすがに式を城で挙げるのは無理があるぞ?」

「…やっぱ駄目かぁ。」

 

そう、ここに来た本当の理由は、式場の確保である。

駄目元ではあったが、姫乃の

「どうせならおっきいお城で挙げたいなぁ…。」

というのは叶えられそうにない。

 

「俺は良いと思うんだが、リーナや飛鳥達が賛同してくれるとは…。」

「それもそうか。」

 

溜め息を吐きながらふと視線を移す。

 

そこに写ったのは…

 

 

「やっぱ結婚式といえば、料理よね!うちの料理人達を総動員させるわ!」

「装飾は花屋呼ぶ方がいいよな?」

「入場はオーケストラの演奏で足りるのか……?」

 

階下で結婚式の準備を()()()進めるリーナ達だった。

 

「は?」

「どうした?」

「ギルバ、アイツら何してんだ?」

「ん?……おい待てぃ!?」

 

リーナ達を見たギルバが焦る。

 

「何してんだリーナ!」

「何って、結婚式の準備よ!うちでやるんでしょ?」

「え、あ…いや……」

「違うの?」

「……ソウデス。」

 

予想とは180°違う結果に、ギルバは溜め息を吐く。

内心駄目にならないとは思っていたが、まさかすでに話が進んでいるとは思わなかった。

 

「……リーナは相変わらずだな。行動力の塊みたいだ。」

「…そうだな。」

 

凱とギルバは再び笑い合う。

 

「まあそう言うことだ。式は任せろ。さっさと姫乃の元に戻ってやれ。」

「ああ、ありがとな。」

 

凱は階段を降りようとする。

 

「っと、忘れるところだった。」

「何を?」

 

凱は足を止め、ギルバの方を向く。

 

「結婚おめでとう、凱。」

「…サンキューな、ギルバ。」

 

祝いの言葉に礼を返したあと、凱は階段を降り、姫乃の元に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く。

 

 

 




どうもどうもどうも、フォーウルムでございます!
今回は、前々からやろうと思っていた結婚についてです。
凱と姫乃をくっつけることは確定していたのですが、どこでやろうか迷ってたんですよ。
そしたら少し前にいい口実があってので、これを機にやろうかなと思ったわけです。
ということで次回は式本番でございます!お楽しみに!







俺はこれから配達にいってきます。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第85話 悪魔の騎士と月の花嫁

 

 

別次元 雪月花にて

 

 

凱達からの招待状が来た次の日、雪華達もいつも以上にお洒落をしていた。

 

「そろそろだな。」

「そうですね。ふふ、早いなぁ。」

「だな。あと桜、敬語はもういいって言ったろう?」

「……あ。そうで……、そうだったね。」

「ま、いいさ。」

 

異界の友人も、存外早かったようだ。少しくらいイジっても罰はあたらないだろう。

そんな中、店の扉を叩く者がいた。

 

「お、来たか。」

「はいはーい!」

 

桜がドアを開けると、全身に黒い鎧を着た人物が立っていた。

 

「ど、どなたですか……??」

 

思わず首を傾げてしまう。

 

「桜様、雪華様。お迎えに上がりました。」

 

その騎士は膝をつき、頭を垂れた。

 

「あ、はい……。」

「迎えか?ということは、凱の関係者だろうが………。名と、所属は?」

「自分は魔界統治組織、Devil Castle二番隊隊長、ルクス・ハーヴェルクであります。」

「……ふむ。紡ぎ手。」

「間違いないよ。ついていくといい。」

「疑ってしまいすまなかった。では、頼む。」

「どうぞこちらへ。」

 

青年に連れられて外へ出ると、かなり大きめの馬車と、それを護衛する複数の騎士達がいた。

 

「じゃあ、行こうか。」

「はい!」

 

雪華は桜の手を取り、馬車へ乗り込んだ。

 

「…よし。全体、進め!」

 

馬車に乗った青年の号令で、全員が進み始めた。

 

「しばらくはこのままとなります。どうぞ、リラックスなさってください。」

「楽しみだなぁ……。」

「こりゃ僕をダシにしてくれたな。ま、悪くないか。」

 

自分のプロポーズに感化されたか、元々計画していたのを丁度いい機会だと思ったのか……。まあ、どちらにせよめでたいことだ。存分に祝福してやろう。

 

「零殿は、おそらく雪華様に感化されたかと。」

「やはりか。ま、あいつも姫乃さんも幸せなら、それでもいいか。」

「でしょうね。」

 

兜を深く被っている青年も、雪華に同意した。

 

「あの!どんな風にプロポーズしたんですか!?」

 

やはり桜はそこが気になるようだ。女の子だし、当然か。

 

「それは……話さぬようにと言われてまして。」

 

ルクスは申し訳なさそうに頭をかく。

 

「そうですか……、むぅ。」

「あとで本人達に聞けばいいだろ、な?」

「………はい。」

 

頷いたが、渋々なのは一目瞭然だった。

 

「……可愛いだろ?うちの妻も。」

「はい、とても可愛らしい御方ですね。」

「も、もうっ!」

「はははっ!」

照れてそっぽ向く桜と、楽しげに笑う雪華。どこでもどこまでも、平和な夫婦だ。

 

「……?」

 

外を見た桜はふと疑問に思った。馬車の窓の外から見える騎士たちは、兜を被っているものの眼や鼻は見えている。

それに比べて目の前の彼は完全に兜で隠れているのだ。

 

「……そういえば、ルクスさんの兜って、変わってますね。」

「確かに、フルフェイスだな。」

「これですか?まあ、専用の特注品ですから。」

 

彼は兜を撫でる。

 

「以前、とある任務で怪我を負いまして。そのときの傷を隠すものです。私は構わないのですが、中には不

快に思われる方々もいらっしゃるようで。」

「そういうことか。」

「お顔を見てみたかったのですが、それなら仕方ありませんね。」

「治せないのか?」

「治せないのではなく、治さないのです。」

 

そう言って彼は兜を脱ぐ。

彼の顔は整っており、雰囲気から育ちの良さを感じることが出来るが、その顔には右目から唇の左端にかけ

て大きな傷がついていた。

 

「……理由を聞いてもいいですか?」

「…………それは…。」

「私を守ってくれたのよ。」

 

何処からか女性の声が聞こえる。見れば窓の外に一人のガイアナイトが並走するように飛んでいた。

 

「なるほど。大いに分かるぞ、その気持ち。」

「私からしてみれば、大好きな人が自分のために傷つくなんて気が気じゃ、……ないけれど。」

 

ジト目で雪華を見つめる。しかし雪華は涼やかにそれを受け流していた。

 

「も、モナ?!」

「やっほー、来ちゃった。」

 

モナと呼ばれたガイアナイトは馬車に負荷がかからないようゆっくりと近づき、器用にドアを開けて入ってきた。

 

「初めまして、3番隊隊長のモナです。」

「霜月 雪華、よろしく。」

「妻の桜です。」

 

正直不要だとは思うが一応自己紹介。

 

「御二人のことは先生からよく御伺いしてます。」

「先生?」

「リーナ嬢だろうか。」

「五十嵐先生ですよ。」

「凱が!?」

「あの人先生なんて出来たんだ……。」

 

本人が居たら俺のことを何だと思っているんだと呟く様子が目に浮かぶ。脳内再生余裕である。

 

「週に一回、訓練に参加してくださるんです。」

「時間が勿体ないからまとめてかかってこい、と言われたときは驚きましたがね。」

「そうだったよね。しかも私たち五人同時相手で得意不得意や改善点まで見極められるんだもん。」

 

二人から凱に対する事がどんどん出てくる。

 

「地味に凄いなおい。」

「雪華さ、………雪華なら、余裕なんじゃないの?」

「……出来なくはない。100人くらいまでならギリギリ捌けるだろうな。」

「……類は友を呼ぶとはこの事か。」

 

ルクスが溜め息を吐くと同時に、馬車が止まった。

 

「どうやら着いたようです。」

 

ルクスとモナが先に降り、雪華たちを降ろす。

二人の目の前にはあまりにも大きい城が建っていた。

 

「サラッと失礼なこと言わなかったか。……まあいいか。」

「妥当だと思いますよ。うわあ、おっきい!」

「私たちはこれで。」

 

そういった瞬間、辺りの空気を震わせる振動が起こる。

 

「きゃあ!?」

「何が起こった!?」

「……まだやってるのですか?」

「…あ、あはは。」

 

ルクスの溜息に、モナは苦笑いを返した。

 

「凱が手合わせでもしてんのか…。」

「確かにあの人ならこれくらいやりそうですけど!」

「……お察しの通りです。」

 

ルクスに連れられて二人が来たのは広い闘技場だった。

そこに見たことがある姿の悪魔_リーナがいた。

が、以前とは違い、どこか焦っているように見える。

 

「全てを察した。」

「同じくです……。」

 

雪華は思った。お前主役だろ、なんで戦ってんだよ。と。

砂煙の中から現れたのは凱…というかルシフェルガイアナイトだった。

雪華たちを見つけるとリーナに何かを伝えこちらにやってきた。

 

「凱、ひとつ言わせろ。」

 

と、いきなり全力で凱を殴りつけた。人間どころか、トップクラスのガイアナイト並の腕力で殴られ、当然吹き飛ばされた。

 

「……なんだよ?」

 

しかし凱は変身を解きつつ受け身をとったようで平然としている。

 

「何やってんだお前ぇぇぇぇぇえ!!結婚式の直前だろうが!!それなのに姫乃さんほっぽり出して手合わせ!?ふざけるのも大概にしろ!!!!」

「……何かおかしいか?」

 

凱の一言でルクスやモナ、その他大勢が溜め息を吐いた。

 

「おかしいところしかないだろうが!!さっさと泥落として戻りやがれ馬鹿野郎!!!」

「いや、ちょっと予定が変わってな。式が三時間遅れるんだよ。」

 

凱は肩を回しつつ言う。

 

「だったら久々に手合わせしようってリーナにせがまれてな。」

「リーナ嬢!!君のせいか!!」

 

物凄い剣幕で、2人を怒鳴りつける。いつもの飄々とした彼はどこへやら、今は1人の人間として、彼らに怒っている。

 

「リーナちゃん、さすがに、ね?」

 

桜もまたリーナの元へ歩み寄り、しゃがみこんで笑っていない微笑を浮かべた。

 

「……はい。」

 

流石のリーナもショボくれている。

 

「まあそれぐらいにしてやれよ。」

 

凱が雪華に声をかける。

 

「僕を怒らせた原因が何を言う?」

 

本気で冷たい目を凱へと向けた。

 

「悪い悪い。」

 

凱は笑っている。

 

「そんなことより姫乃に会いに行ってやってくれ。」

「お前もな。土下座してこい。行くよ、桜。」

「はい!」

 

がしっと凱の首根っこを引っ掴み、そのままズルズルと引き摺っていくのだった……。

 

 

城内に入りしばらく行くと

一人の男が壁を背に立っていた。

身長はかなり高く、体もかなり鍛えられているように見える。

何よりもその金髪がかなり目立っていた。

 

「こんにちは。」

 

にこやかに挨拶をするも、凱を掴む腕は変わらず力が篭っていた。

 

「ふん。小僧に引き摺られるとは、地に落ちたな。凱。」

「うっせーよ鳴神。」

「……鳴神ってあの時の?本当にありがとうございました。」

 

あの時、というのは人里防衛戦でのことだ。

 

「礼を言う必要はない。」

 

鳴神はそう言って雪華を見る。

 

「それにしても、なんで凱を引き摺っている?」

 

「ああ、この馬鹿が当日だってのにリーナ嬢と戦りあってたので無理やり連れてきました。」

 

顔は笑っているが、目はマジギレしていた。

 

「ん?それは姫乃がそう言ってなかったか?」

「………それはどういう?」

「ああ。少し前だったか。式が先延ばしになった時に姫乃が退屈そうにしてる凱に『久々に凱君が戦ってるところ見たいなぁ。』って言っててな。じゃあせっかくだしリーナと殺り合おうっていうことになったはずだが?」

「先に言えよ凱!!」

「全く………、じゃ、戻すぞ。」

 

 

雪華は凱を掴む腕に力を込める。

 

 

「サンキュー。だが俺は行かんぞ。」

 

 

凱はスルリと抜け出す。

 

「楽しみは最後までとっておくもんだ。」

「はぁ…………。聞いてたら少しは加減してやったのに。すまんな。」

「言わなかった俺も悪い。とりあえず姫乃に会いに行ってやってくれ。」

「ああ。」

「はい!」

 

異界の夫婦は姫乃の部屋へ向かうのだった。

 

 

姫乃の控え室前

 

 

 

3回、ノックをする。

 

「雪華だ。姫乃さん、今良いかい?」

「はーい。どうぞ~。」

「開けるよ。」

「姫乃ちゃん!」

 

雪華が扉を開けるや否や桜は部屋に飛び込んだ。

そこにいたのはお揃いの、しかし色違いのドレスを着ている霊夢達と、純白のドレスを身に纏う姫乃だった。

 

「わぁ………!!」

「綺麗だな。」

 

桜は美しさに嘆息し、雪華は率直な感想を述べる。雪華に関しては居心地悪いのを頑張って隠しているのだが。

 

「ふふっ。ありがと。」

 

姫乃は恥ずかしそうに頬を赤らめる。

 

「凄い綺麗…!霊夢さん達も!!」

 

桜は大興奮だった。親友と異界とはいえ友人の晴れ姿、するなというほうが無理である。

 

「雪華ー、お届けもので…………、失礼しました。」

 

そこに狐面の少年(紡ぎ手)がやってきた。

 

「あ、おい待て紡ぎ手。」

「待てねぇよこんな女性ばかりで気まずい空間におれるか。」

「そうね、あんたら少し出なさい」

 

部屋にいた霊夢に押される。

 

「少し待ってください。ほら紅葉。」

「うん!姫乃おねえさん!」

 

スキマから出てきたのは紅葉だ。

 

「紅葉ちゃ~~ん!!」

 

姫乃は紅葉を抱き上げる。

 

「えへへ!おねえさんすごくきれい!」

 

ドレス姿の姫乃に抱き上げられ、紅葉はご満悦だった。

 

「ありがとー!」

「ほら、あんたらはさっさと出る!」

 

霊夢は雪華と紡ぎ手を部屋から出そうとする。

 

「あっすまない。」

「とと!ちょ霊夢さん!転ぶ転ぶ!!」

 

部屋から押し出され、紡ぎ手は顔面からいった。

 

「痛い……。」

「……大丈夫かよ。」

「大丈夫じゃない……、けど仕方ない………。」

 

 

数分後

 

 

「いいわよ、入ってきなさい。」

「じゃあ失礼するよ。」

おじゃまひまふ(おじゃまします)。」

 

二人が入ると……

そこには淡い桜色のドレスに着替えた桜が立っていた。

 

うわふご(うわすご)。」

「……!」

 

紡ぎ手も雪華も見とれていた。それ程までに綺麗だったからだ。紡ぎ手は鼻を覆うティッシュを離すと、

 

「主役並みに目立ってどうするんですかこれ。普通にめっちゃ綺麗なんですけど。」

「凱君が作ったの。『色変えただけの手抜きだが貰ってくれると嬉しい。雪華なら気に入るだろうしな。』だってさ。」

 

そこへ

 

「皆様。お時間です。」

 

ノックの後、ルクスが皆を呼びに来た。

 

「分かった。じゃあお先に、姫乃さん。………行こうか。」

「………うん。」

うん、やっはりひひえふね(うん、やっぱりいいですね)。」

 

少し顔を赤くして雪華が手を差し出すと、微笑んで桜が取る。異界の紡ぎ手はそれを見て愉悦を感じていた。

 

 

その後

 

 

式本番。雪華と桜、紡ぎ手は席についた。そこでふと疑問にができた。

自分達の席がある場所のとなりにレッドカーペットで道があるのはわかる。だが新郎新婦が立つであろう場所が席からかなり離れているのだ。

 

「あれ、遠くね?」

「確かに……、私達のときでももっと近かったと思うのですが。」

「だな。あ、紡ぎ手鼻血大丈夫かよ。」

「ん、何とか止まった。」

 

しばらくした後、凱がカーペットを歩いてやって来た。真っ白なタキシードは……なんと言うかイメージとは少し違っていて新鮮だった。

 

「……意外だけど、しっくりくるな。」

「ですね。かっこいいです。」

 

そして、霊夢に手を引かれ、姫乃が入場してきた。

その姿を凱は優しい笑みを浮かべて見ている。

 

「分かるぞ、その気持ち。」

「雪華s……も、同じような顔してたしね。」

「桜、無理やり敬語直そうとしても不自然すぎるぞおい。」

「い、いいじゃないですか。」

「まあまあ。とにかく見てよう。」

 

そう言って、雪華はビデオカメラを取り出した。奇しくも、彼らの時に凱がやっていたように。

壇の上で、護が恒例の文章を読み上げる。

 

「新郎五十嵐凱、新婦姫乃禍月、二人は健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、互いを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

「何があっても守り抜く。」

「凱君を…支え続けます。」

 

二人はそれぞれの誓いを口にし、互いの唇を重ねた。

 

「良いもんだねぇ。」

「恥ずかしがってキスしてくれなかったから私がやりました。」

「驚いたんだからね?」

 

彼らの時を思い出して、微笑んだ。まだそれほど経っていないというのに、なんだかちょっぴり懐かしい。

そして式は終わる………はずだった。

 

「お集まりの皆様。本日はありがとうございます。このような日を迎えられたのは祝ってくださる方々のおかげです。」

 

凱がマイクをとって喋り始めた。

 

「あいつが、敬語……!?」

「お前失礼にも程がある。」

「でも、イメージはあまりない、かな………??」

 

突然の感謝、凱の敬語に雪月花トリオは困惑していた、

 

「しかし、皆さんはこう思っているでしょう。『この男にしては平和すぎる』、と。」

「それはそう。」

「おい紡ぎ手。」

「ブーメランですよ……。」

「私は、感謝しているのです。祝いに場にこの城を借りられて、さらに多くの方に祝っていただける。」

 

凱はマイクを持っていない手で壇の上にあった酒瓶を拾い上げる。

 

「何するつもりだあいつ。」

「野球のあれですかね……?」

「あのシャンパンのやつ?さすがにそれはないだろ。女性だって多いし。」

とかいいつつちょっと怖くなっているのは内緒。

「これだけ盛り上がるイベント。主役としてもっと盛り上げなければなりません。」

 

凱は瓶を高々と掲げる。

 

「これが、俺からのサプライズです。」

 

そう言って凱は瓶を地面に叩きつける。

酒瓶は粉々に割れ、中の液体が飛び……凱と姫乃を包むような火柱となった。

「何やってんだあいつ!!」

「凱さんったらもーっ!」

 

2人が協力して耐熱結界を構築した。

しかし、火は雪華達の方へは来ず、赤い火から徐々に青くなり、弾けとんだ。

そしてその中から現れたのは、まるで騎士の鎧のような装飾があしらわれたタキシードを着る凱と、深い紫色の美しいドレスを身に纏う姫乃だった。

 

 

宴会にて

 

 

凱と姫乃はそれぞれの席で、友人達と話ながら食事を楽しんでいた。もちろん、雪華達もだ。

 

「何やってんだお前。」

「びっくりしました!」

「すみません弾け飛んだ火の粉のせいで袖焼け落ちたんですけど。」

「サプライズだよ。」

「あれのためだけに席の位置や壇の距離変えるの大変だったんだからな?」

 

凱と護がそれぞれ酒を煽りながら言う。

 

「だからあんなに離れてたのか……。」

「というかあれのためだけだったんですね……。」

(あ、僕は無視ですかさいですか。)

 

呆れる2人と悲しくなった紡ぎ手であった。

 

「せっかく映像も撮って貰ってたみたいだし、丁度いいだろ?」

「確かに派手ではあったけどな。」

「青い炎って、炎色反応でも使ったんですか?」

「それか完全燃焼?でもいきなり完全燃焼って有り得るのか?」

「あの瓶は実は中身が特殊構造でな。第一層には可燃性の液が、第二層にはプロミネンスの火種が入ってたんだ。」

「あーなるほど?物理法則ガン無視できるからああなったっつーことですか。」

「まあな。あと壇周辺の床と壁、天井はヴォイドの時空操作で燃えないように細工してある。」

「わーお準備バッチシ。じゃあ僕の袖が火の粉で焼け落ちたことについて何か弁明等あります?」

「紡ぎ手さん!ステイ!ステイです!」

「それは単純にお前らが座ってる席には本来二人しか来ない想定だったからな。」

「くそ!認知されてなかった!」

「哀れ紡ぎ手……。」

「てか、あんたを数に入れ忘れてた。雪華に桜。紅葉は膝に乗るだろうとは思ってたが、追加が来るとは想定外だった。」

「そもお前が着物なんて着てるからだろ。」

「良いじゃないか!かっこいいだろ和服って!」

「わかる。めっちゃわかる。」

 

うんうんと頷いているのは護だ。

 

「ですよね。雪華も着てみたら?」

「遠慮しておく。ガラじゃない。」

「雪華君、似合うと思うけどな~。」

 

姫乃はそう言いながらグラスの液体を飲み干す。

中身は珍しく烏龍茶だ。

 

「そうなんだよ。雪華さ………、雪華の和服姿凄くかっこいいのに、あんまり着てくれなくて。」

「確か年始に1回だけだったはずよな?」

「折角だし着たら?」

「分かったよ、ちょっと待ってて。紡ぎ手、身長は?」

「175。」

「OK、ほぼ同じだな。お前の予備借りるぞ?」

「了解。ほらよ。」

 

取り出したのは、今紡ぎ手が着ているものと同じ、蒼い着物だった。

 

「着替えはあっちの部屋でやってくれ。」

 

凱は部屋の奥の扉を指差す。

 

「分かった。じゃあ着替えてくる。」

 

そして彼は指定の部屋へ入っていった。

 

「ふふっ、どんな風になるのかな〜♪」

「楽しみにしてるのな、桜。」

「当然じゃないですか!雪華様の着物ですから!」

「おとうさん、どうなるのかな?」

「かっこいいのは保証できるかな。お父さん顔が良いから。」

「おかおだけじゃないもん!」

「そうだったな、ごめんごめん。」

 

数分後

 

「まあ、こんなもんかな。」

「わあ!おとうさんかっこいい!」

「そうか?なら良いんだけど。」

「ね?言った通りでしょ?」

「確かに似合ってるな。」

「そうだよねー。」

 

雪華の和服姿に皆が賞賛を送る。

 

「何でも着こなすよな。すげえよ。」

「お前は無頓着すぎるんだよ、紡ぎ手。」

む、と紡ぎ手は押し黙る。

「さて…もっと盛り上げていくぞ!」

凱の一言で、さらに会場は大盛り上がりとなった。

 

 

宴会の後

 

「流石に飲みすぎたかな。」

 

自宅であるFDLに戻ってきた

 

「盛り上がったもんねー。」

 

すでに私服に着替えた姫乃が凱の隣に座る。

 

「ドレスも綺麗だったが、私服も可愛いぞ。」

「は、恥ずかしい……!」

 

姫乃が顔を赤くする。

 

「それで、部屋に戻るか?」

「んー、今日はせっかくだし一緒に居たいな。」

 

姫乃が凱に抱きつき、上目遣いで凱を見つめる。

 

「………わかったよ。」

 

 

この後、二人をおちょくろうとした護は部屋の前に陣取っているナイトメアに追い掛け回されることになり、二人がどうなったかは分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 





どうも、フォーウルムです
更新が滞っておりましたがついに出せました!
今回は長らくやろうと思っていた「結婚式」でした。
期間が長くなってしまった分、本編も7000字を越えるというね、うん
そしてそして、今回は凱達の親友である雪華君達もお招きしてという中々に登場人物が多い回となりました。


次回から新章突入となりますのでおたのしみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第86話

凱と姫乃の結婚。

それは幻想郷中の話題となった。

凱は異界の友人を招き盛大に式を執り行った。

 

当の本人たちは

「せっかくだし少し遊びに行ってくる」

と言って出かけて行った。

 

それだけならよかったのだが。

 

 

 

 

 

 

「一月だ。これが何かわかるか?」

「あんたが腹を下してからの経過時間。」

 

護の問いに霊夢は答える。

 

「そうなんだ最近は冷え込むしなとでもいうと思ったか。」

 

ノリ突っ込みをしつつ護は語気を強める。

 

「あいつと姫乃が失踪してからすでに一月だ。」

「もうそんなになるのね。」

 

二人が遊びに行ってくるといなくなって早一か月。

本来なら連絡が来てもいい頃合いなのだが一向に音沙汰は無い。

 

「一応、八雲さんや華扇姉。さとりさんたちにも手伝ってもらってるけど進展はない。」

「レミリアや文たちも捜索してるし、鳴神さんも探してるみたいだけど、一切の手掛かりはない。」

 

霊夢はもちろん、他の少女たちや護たちも全力を挙げているが、まったくと言っていいほど情報がなかった。

 

「とりあえず、俺は魔界に行ってくる。」

「わかったわ、気を付けて。」

 

護はそう言いながらFDLを後にした。

 

 

 

 

「さて、どうしたものかな。」

 

護は腕を組みながら歩く。

心当たりがある場所はすべて行ったつもりだ。

ほかに関係しそうな場所は……。

 

「護さん。」

「うおぉ?!…って阿求さんか。」

 

彼に声をかけたのは稗田阿求。現在機能していない博麗大結界の代わりに彼女の相棒であるパストと共に幻想入りや外界とのつながり、侵入者の対処を担っている少女だ。

 

「凱さんの行方は掴めそうですか?」

「掴めたら苦労はしない。完全にお手上げ状態だ。」

 

護は溜息を吐く。

 

「そういう阿求さんの方はどうなんだ?」

「まだ確信があるわけではありませんが、気になったことが一つ?」

「なんだ?」

「凱さんのここ最近の足取りを本棚で調べたのですが、数日前からどうやら記録がないようなんです。」

「記録がない?」

 

おかしい。本来ならば本棚に記録が残っているはずである。

残っていないなんてことはあり得ない。

 

「その本棚ってのはどこまでの範囲で記録できるんだ?」

「この幻想郷での出来事と、護さんたちの世界で起こったことは記録されます。」

「…っということは。あいつらは幻想郷の外に行ったってことか?」

「恐らくは。」

 

凱ならば幻想郷を離れるときに何かしらの連絡をするはずだ。

 

「俺はこれから八雲さんのところに行ってくる。引き続き情報を集めてくれ。」

「わかりました。お気をつけて。」

 

阿求に別れを告げ、護は八雲紫の元に向かったのであった。

 

 

 

 

続く

 

 




前回から約一か月経ったってまじ?

どうもフォーウルムです。
今回はコラボ回です。
お相手はなんとマイスイートザナディウムさんです!
有難い限りですね、本当に。
年末ラジオで言っていた通りこの方は私がこの小説を書く切っ掛けとなった方です。
ぜひ、あちらの世界へ行った凱達の応援をお願いいたします。

それでは今回はここまで。
また次回お会いしましょう!

本当はコラボ先のリンクを張りたかったのですが、上手く機能していません。
申し訳ないですm(__)m
https://syosetu.org/novel/298427/


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 ifストーリー
IF もしも、凱達が敵対組織のメンバーだったら


 

エントランス

 

「お疲れー」

「あら、お疲れ様です。護さん」

「今月どうだったよ姫乃?」

「私は1400くらいですよ」

「俺1700~♪」

「そんなに殺ったんですか?」

「まあねー。っておーい!」

「あ?」

「どうしたの凱君?すごい疲れてるみたいなんだけど…」

「いや、報告書の魔物討伐数18000って書いたら1800の間違いだろって言われて確認作業してた」

「おまえだけ多すぎだろ」

 

司令室

 

「彼らは本当によくやってくれるが…裏切られないように精神誘導などが必要だなぁ…そこは頼むよ、盤城君」

「あぁ…任せてくれ」(騙すのは忍び無いがお嬢様のため…)

 

エントランス

 

「そういえばさ」

「何?」「どったの?」

「ギルバさんと盤城さんって人間?」

「知らないわよ(人間)」

「どうだろうな(半人半魔)」

「だよなぁ(クォーター)」

「何をしている、お前達」

「「業蓮寺様!」」「ふああぁぁ」

「2人はまあいいか。おい五十嵐」

「なんすか?」

「依頼だ」

「えー、魔物殺しは飽きたんすけど」

「そう言うと思ってな、いいものを持ってきたぞ」ペラッ

「……」

「あ、ちょっと?!」

「業蓮寺様、何渡したんすか?」

「あいつのもう一つの才能の舞台だ」

 

 

『依頼内容

 組織《Olympus》の幹部ニ位を暗殺せよ。

 しかしポセイドンは基本表に出ず、ガイアナイトの形態、能力は不明。送った人員は全て死亡が確認されており、

 逆に見せつけるように掲げられていた。そのためこちらに対しての警告として処理されている。

                                           依頼統括者 盤城』

 

 

依頼先にて

 

 

プルルルル プルルルル

ガチャッ

「あーもしもーし」

「おや、どうしました?」

「糞みてえな仕事押し付けやがって」

「ああ、すいません。いやならすぐ他の…」

「終わったぞ」

「は?」

「ポセイドンの暗殺」

「……早いですね、それでどうでしたか」

「…1人多く殺しちまった」

「組織のメンバーですか?」

「まあ、な」

「誰を殺したんです?」

「……すぐにわかる」

「な、それはどういう…」

ガチャッ

 

「くそが」

『え、なんで、凱先輩が?』

 

「……なんでそんなとこに居やがったんだ。顔を、俺の顔さえ見なければ殺さずにすんだのによぉ。なんでだよ、五月雨!」

 

 

数日後

 

 

「久しいな、時雨」

「……本当なのか、凱」

「何が?」

「お前が、お前が五月雨を!」

「ンだよ、信じてねえのかよ?」

「なぜ、なぜ殺す必要があったんだ!」

「顔を見られた、それと、あいつ自身が向かってきた」

「そうか、だがなぜここにお前がいる?」

「せっかくだ、復讐の機会を、と思ってな」

「そうか」

「なんだ、嬉しそうじゃねえな」

「当たり前だ、敵討ちの相手がお前とはな」

「ハッ、かかってこいよ」

「いいだろう、ここで、お前を倒す!変身!」

《アポロン》

「さあ、かかってこいよ!時雨ぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

ザアアァァァァ

 

「……甘いんだよ、お前は」

「あそこで俺を殺す気でいれば、勝てたかも知れねえのによ」

「……せめてもの手向けだ、メモリ、ここに置いとくぜ」

「…じゃあな、時雨」

 

 

 

エントランスにて

 

 

「おい聞いたか?」「ああ、あれだろ?」

「凱が殺しを…」「最近、めっきり見なく…」

 

 

 

「噂になってるな」

「そうですね…」

「凱のやつがまさか幹部3人殺しとはな」

「凱君、無事なんでしょうか?」

「大丈夫だろ、あいつ。」

「心配じゃないんですか!」

「今月の討伐数3万越えたってよ」

「な?!」

(まさか、呑まれたんじゃねえだろうな、凱)

 

 

 

 

幻想郷治安維持隊本部

 

 

 

「依頼よ、霊夢」

「何これ?……討伐命令?!」

「OLYMPUSの幹部殺しの報復だそうよ」

「だからって、なんで?!」

「あまりにも強くて、上もどうやら単独は不可能ってなったようね」

「…誰が呼ばれてるの?」

「貴女と私、あと妖夢と鈴仙」

「勝てるの、咲夜?」

「さぁ?でも、勝たなきゃいけないのよ」

「そう、ね」

「出撃は明日の朝よ」

「わかったわ」

 

 

 

 

幻想郷にて

 

 

 

「終わりか?案外ぬるいな」

「はぁ…はぁ…(夢想封印も何も、効かないなんて!)」

「興醒めだな、殺すか」

ガシッミジミジミジッ

「がっ!?」

「抗うなよ、もう、楽になってくれ」

プルルルル

「あ?もしもし」

ポイッ ドサッ

「ゲホッ…ぐ…」

「…ああ…ああ……わかった」

「ちょっと……どこに行く気?」

「気が変わった、今回は見逃してやる」

「逃げ…るっての…」

「馬鹿言え、お前らを逃がしてやるって言ってるんだ」

「…生意気……ね」ドサッ

「くだらねえ」

(俺も、ヒトでは無くなってきてんな)

「にしても、盤城のやつ、用事ってなんだよ」

 

 

メモリ製作ライン

控え室

 

 

 

「『お前は…戦いというものを理解していない…戦いだから知り合いでも家族でも亡くなる…お前は人を殺してきた…そのツケを払う時が来たと言うことだ…こっからどうするか、気を狂わせるのもいいが…死に向き合うのが正しいと思うぞ』って言われたんだが、意味わかるか?」

「…俺にはわからんな」

「…そうか」

「だが、1つ教えといてやるよ」

「あ?」

「この世界は殺しで回ってる。昨日のやつは今日の敵かもしれんし、昨日いたやつは今日はくたばるかも知れねえ」

「…つまり?」

「…お前には難しすぎたか、いずれわかるだろ」

「はぁ?おい!どこ行くんだ!羅生!」

 

 

 

数年後

 

 

……来るのが遅れて悪かったな

案外長引いちまった

お前らを殺してから、本当に大切のものを見失っちまってな。探してたら時間がかかっちまった

大丈夫だ

戦いは終わった

俺たちの組織も、お前らの組織も、今は手を取り合って魔物殺しをやってる

俺がそっちに行くのはもうしばらく先になりそうだ

そっちに行ったら思いっきり俺のことぶん殴ってくれよ

それまで、待っててくれ

 

五月雨、時雨

 

 

 

「凱様、盤城様がお呼びです」

「次の任務は?」

「魔物狩りです。霊夢様や鳴神様もいらっしゃいます」

「そうか、楽しみだ」

 

 

 

 

Fin

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

特別編 聖なる夜に温もりを

どうも、フォーウルムです

今回はクリスマスの特別版
たまにはこっちでこういうのも、ね


 

 

 

 

 

今日、12月25日はクリスマスだ

人里や魔界の城下町では飾りつけがなされ、お祭りムードであった

 

 

そんな中、俺はというと

フォルトゥナ城に来ていた

 

 

 

 

そこはそれなりに広い部屋で、俺以外にはギルバや盤城といった魔界組や俺と何時も一緒にいる姫乃や霊夢、妖夢に鈴仙、紅魔組の面々など、かなり豪華な内容の集まりだった

護も呼ばれており、彼の周りには早苗に幽香、椛にアリス等がいる

 

 

近くのテーブルには様々な料理が置かれ、どれも食欲をそそるものばかりだ

「凱!君もこっちへ来て飲まないかい?」

「盤城、ずいぶんご機嫌だな?」

「せっかくのパーティーなんだ。楽しまなきゃ損だろう?」

「まあな、乾杯!」

「ああ!」

そう言って俺たちはグラスをぶつけ、中の酒を飲み干す

「中々に旨いな」

「だろう?かなり上質の物だからね。案外高かったんだ」

「しっかりと買うのな」

「当たり前さ。幹部だからといって民から奪うのはよくないからね」

盤城はにこりと笑いながらそう言う

「そういえば、リーナとは上手く行ってるのか?」

「…うん」

顔を少し赤くしながら顔の向きを変える

そこには楽しそうに話すリーナが居た

「しっかりと愛してやれよ?」

「言われなくても、そうするよ」

「楽しそうだな、お前ら」

そう言いながら近付くのはギルバだ

「よ!久しぶり」

「ふん、相変わらずだな」

「それはお前もだ」

ギルバのグラスに俺のをぶつける

「お前のとこは賑やかだな」

「そうだな、かなり楽しいよ」

「ふむ、変わったな」

「何が?」

「以前のお前は少し暗かったからな。今ぐらいがちょうどいい」

「そう言うことか」

「おーい!あんたもこっち来なさいよ」

「呼ばれてる、じゃあな」

「ああ」「いってらっしゃい」

霊夢に呼ばれた俺を、二人は優しく見送ってくれた

 

 

 

 

 

かなり飲んだので、気分転換に外に出た

すると

「ん?凱じゃん」

「護、こんなとこに居たのか」

「ああ、少し疲れた」

「はは、俺も」

俺たちは手すりに寄りかかる

ここから見える景色はかなり素晴らしく、イルミネーションでライトアップされた町が照らされている

「綺麗だな」

「ああ、綺麗だ」

「なあ、凱」

「なんだ?」

「好きなやつ、出来たか?」

護は俺の顔を見て問う

その表情は真剣で、優しさが滲んでいた

「………ああ、出来たよ」

「そうか、誰なんだ?」

「…姫乃、霊夢、フラン、文、咲夜、妖夢、鈴仙」

「多いな、この欲張りめ」

「なんも言えねー」

俺は苦笑いする

「俺もだ。好きなやつが出来た」

「早苗、椛、アリスに幽香、パチュリーか?」

ゴフッ「なんでわかるんだよ?!」

護はあからさまに動揺する

「見てればわかるさ。お前の顔すごい嬉しそうだったぜ」

「……そうか」

「なあ、護」

「どうした?」

「ありがとな、俺の事助けに来てくれて」

「!……当たり前だ」

護は俺の肩をたたく

「俺達、親友だろ!」

「…そうだったな」

護のその言葉は、非常に温かく、嬉しいものだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーそれぞれのプレゼントーー

 

 

 

 

ギルバの場合

 

 

 

「ふぅ」

ギルバはソファに座っていた

パーティーはあのあと何事もなく終わった

あまり慣れない酒を飲んだせいで、疲れがどっと出てしまっていた

そこへ

ガチャリ「……ギルバ様」

「ファスか」

いつものようにファスがやってきた

城内での役目の都合上、こういうときには何時もといっていいくらい彼の部屋に彼女は来ている

「……………」

「ん?」

しかし、今日の彼女はいつもと様子が違っていた

いつもならすぐに隣に座ってくるのに

「どうした?」

「……ギルバ様、何時もより疲れてそう」

「そう見えるか?」

「……うん」

どうやら彼女なりの気遣いのようだ

「ファス、こっちに来い」

「……はい」

ファスは彼のとなりに座る

「今日はクリスマスだ」

「……?」

「何か欲しいものがあるか?」

ギルバはファスを見る

彼女は顔を真っ赤にしている

「…………ギルバ様

「なんだ?もう少し大きく言ってくれないとわからないなぁ?」

意地悪くそう言う

たまにはいいだろう

「………ギルバ様が…欲しい…です」

「…ああ」

ギルバはファスの肩を優しく抱き寄せ、唇を重ねる

「んっ!?…………ん…」

最初は驚いた彼女も、力を抜き、身を委ねる

「ぷはぁ………ギルバ様ぁ」

顔を赤くする彼女は、とても可愛らしかった

「まだまだ、夜は長いぞ?」

「……うん!」

 

 

 

 

 

 

 

護の場合

 

 

 

「どう…ですか?」

「どうって、そりゃあ」

フォルトゥナ城の一室で護は早苗を見ていた

彼女が今着ているのはミニスカートのサンタの衣装だ

丈が短いスカートは太股を強調し、服の方も彼女の体のラインを強く見せている

「うーむ」

護はそんな彼女の姿をまじまじと見ている

「あ、あの!?」

早苗は恥ずかしさで顔を真っ赤にしている

「それは何のつもりなんだ?」

「ク、クリスマスだから、その、私をプレゼントにー、なんて」

プツッ

護の中で何かが切れた

「じゃあ、俺が自由にしていいわけだ?」

「え」

護は彼女を抱き抱え、ベットに連れていく

彼女を下ろしその姿を見ながら、彼女に触れる

「本当に、いいんだな?」

「……はい、護さんなら、私は構いません」

「……わかったよ」

早苗の口に自分のを重ねる

「…今日は、寝かせねえから」

「…!?…はい」

 

 

 

 

 

 

 

盤城の場合

 

 

 

「あーすか!」

顔を仄かに赤くしたリーナは両手を広げ、彼を待つ

「フフッ、わかりました」

微笑みながら盤城は彼女を抱き締める

二人がいるのはベットの上だった

「むふふ、あすかの匂い~」

「よっぽど酔ってらっしゃいますね」

リーナの顔はあかく染まっている

ギルバの妹である彼女は、彼に似てお酒に弱い

しかしながら周りに合わせて飲んでしまう癖があり、よくこのように酔っ払ってしまうのだ

「エヘヘ~」

「ほら、横になりましょ?」

盤城はリーナを横にし、ベットから降りる

そして寝巻きに着替えるために上に着ていたものを脱ぐ

「………しないの?」

「……え?」

「あすか、してくれないの?」

彼女は目を潤わせて彼を見る

「……」

盤城は持っていた寝巻きを投げ捨て、ベットに上がり彼女に覆い被さる

「…いいんですね?」

「……うん、いいよ」

「……わかりましたよ」

盤城は優しく彼女の唇をふさいだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凱の場合

 

 

 

「………姫乃?」

「……何?」

凱は目の前の少女を見て困惑していた

姫乃は彼が借りていた部屋に先に来てサプライズを仕掛けようとしていたのだろう

彼女はミニスカートを履いて、()()()()()サンタの上着を持っている

しかし、タイミングが悪かったのか彼女は着替え中で、彼女は上半身に黒の下着のみを着けただけの状態だ

「…なんか、すまん」

「謝らないでよぉ!恥ずかしいからぁ!!」

急なことだったので二人は脳内フリーズ状態で、しばらく見つめ合っていた

「あー、そのなんだ」

「……何よ?」

上着を着終えた姫乃に凱は言う

「……いいもん見れた」

「……!?!?」

今まで以上に顔を赤くする姫乃

「うぅ、凱君のばかぁ…」

姫乃は泣きながら顔を覆った

「ああすまん!いや、その」

なんとか落ち着かせようとする凱

「じゃあ、代わりといってはあれだが、何でも言うこと聞くよ」

「………何でも?」

「うん」

「……じゃあ」

姫乃は凱に抱きつき、その唇にキスをする

そしてそのまま舌を入れ、ベットに倒れこむ

顔を離した姫乃はいつもよりも艶やかの声で凱に言う

「今だけ、私の事だけを愛して」

「姫乃だけを?」

「うん、貴方の、凱君の愛を、私だけにちょうだい」

姫乃の顔は紅潮しており、息は荒い

「どんな方法でもいいから、お願い」

「……いいんだな?」

「うん!」

凱は姫乃の口を塞ぐ

そのまま彼女を抱き締める

10秒……20秒……いや、もっと長くキスをしていた

「ぷはぁ……ねえ、凱く…んんッ!」

息継ぎをして、何かを言おうとする彼女の唇を凱はもう一度塞ぐ

キスをしたまま、姫乃は凱を見る

彼の顔も紅潮しており、姫乃と同じようになっていた

そして、また互いの唇が離される

「悪いが…手加減は出来ないぞ」

「……わかった」

そのまま二人は互いを欲に抗わずにひたすら貪った

 

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました
次回の投稿は新年ラジオか本編になります


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

新年ラジオ!

…………ブツッ

「あーあー。マイク入ってる?」
「入ってるぞ」
「よし、じゃあやろうか」
「ああ」
「どうも皆さんこんばんわ、そして明けましておめでとうございます!フォーウルムです!」
「こんばんわ、五十嵐凱だ」
「今回は初の年越しということで、新年ラジオをお届けします!」
「色々な話をやっていく予定だから、是非見ていって欲しい」


「それでは」
「「スタート!」」


 

 

 

「ということで、始まりました新年ラジオ!司会のフォーウルムです!」

「同じく司会の五十嵐凱だ」

「今回は去年から書き始めた小説『幻想郷と別世界からの来訪者』、及び『東方地憶譚《とある少年の幻想入り》』について色々話していきます!」

「同時にそれ関係の質問や、作者についての質問もやっていくぞ」

「ではまず、『来訪者』についてです!」

 

 

 

 

 

来訪者について

 

 

 

「これは俺とは別の話か」

「そうだね、凱君とは違う主人公『零』の物語だね」

「これを書き始めたきっかけは?」

「ただ単に『書きたかったから』だね。ハーメルンに投稿するはじめての小説だったら東方がいいなぁって思ったんだ」

「なるほどな。なんか大変な事とかはあったのか?」

「うーん、キャラの特徴だすのが大変だったかな。式神の個性とか」

「あー。お前そういうとこテキトーだからな。気を付けろよ?」

「わかってるよ」

「こっちでもコラボしてんのな」

「うん。俺が最初に読んだ小説の作者さんの『サイコパスのらいらいさん』って方とね」

「お前が作品を書くきっかけになったのか?」

「いや。でもこの方のはハーメルン始めてしばらくした後に見始めて、全部読み終わったかな?あとキャラの書き方とかは参考にしたかも。」

「なるほどな。そろっと本題の作品行こうぜ」

「はいはい」

 

 

 

 

 

 

地憶譚について

 

 

 

 

 

 

 

「次は今のメインになってる『地憶譚』についてです!」

「俺が主役の作品だな」

「これは他の方の影響があって書き始めたんだ」

「ふーん。誰なんだ?」

「『マイスイートザナディウム』さんだね。あの方の『東方魔箱録』読ませていただいて『自分も書きたいな』ってなって書き始めたんだ」

「その方のも東方×Wなのか?」

「うん。俺は被らないようにって思ってDMCも混ぜたりしたんだけどね。そしたらドーパントの出番減っちゃったんだ」

「なるほどな。ドーパントといえば、俺らのメモリやオリジナルキャラクターってお前だけが作ってるのか?」

「いや、俺だけじゃないよ。その方の話もしようかな」

 

 

 

 

アイディアをくださった方々

 

 

 

 

ルオンさん

 

 

「1人目は『ルオン』さんだね」

「この方がくれたアイディアって?」

「オリジナルキャラクターの『総塚護』だね」

「アイツか。この方だったのか、アイディアくださったのわ」

「うん。当時閻魔刀の所持者悩んでるときに頂いてすぐに使わせてもらったんだ。」

「なるほどな。今じゃキーメンバーの1人だもんな」

「すごい感謝してます。アイディアありがとうございました!ルオンさん!」

 

 

 

SOURさん

 

 

「二人目は『SOUR』さんだね」

「この方がくださったのもキャラか?」

「そうそう。君が戦った狼のガイアナイト。あれのアイディアをくださった方だよ」

「へぇ、そうだったのか」

「彼とはまだまだ戦うことになるから、頑張ってね?」

「ああ、もちろんだ」

 

 

 

メモリに憑かれた男さん

 

 

「3人目はこの作品のアイディアの半数近くを考えてくださった『メモリに憑かれた男』さんだね」

「半数!?マジで言ってんの!?」

「組織の名前とかメモリとか色々」

「………他力本願だな。お前」

「なんも言えない」

「にしても、すごい方だな」

「ほんとだよ。この方がいなかったらこの作品成り立たんもん」

「マジか」

「だからホントに感謝してる。メモリに憑かれた男さん!何時もアイディアありがとうございます!」

「その方から質問が来てる」

「じゃあ、答えていこうか」

 

 

 

なぜ頑なに作品に出ないのか

 

 

「よく言われるね、この方に」

「何でなんだ?」

「単純に『自分自身のことが書けない』からかな」

「ん―?どうゆうこと?」

「自分以外のキャラは書けるけど、自分をキャラとして書けないってこと」

「なるほどな」

「まあ、今度からちょくちょく出るよ」

 

 

東方の中で一番思い入れがあるキャラは誰ですか?

 

 

「咲夜さんだね」

「ほう、何でなんだ?」

「俺が東方に触れるきっかけになったのは『ナイトオブナイツ』って曲がきっかけなんだ」

「フムフム」

「それを動画サイトで調べてるうちに好きになった」

「そうなのか」

「ちなみにこの作品で一番最初にマキシマムを決めた東方キャラだったり最初に登場した4人の中で1番早く2本目のメモリがあることを書いてあったりと地味に優遇されてたりする。まあ、先に2本目を使ったのはフランなんだけどね」

「なるほどな」

 

 

 

 

地理について

 

 

「ここからは幻想郷や魔界等について説明していくぞ」

「その前に!」

「なんだよ?」

「ここでスペシャルゲストを呼ばせてもらうよ」

「ほう?」

「と、言うことで今回のゲストは《東方雪月花》の主人公とヒロインのこの2人だぁ!」

「というわけで、《東方雪月花》より霜月 雪華、参上だ」

「霜月 桜です、お久しぶり!」

「いらっしゃい二人共」

「久々だな」

「だな」

「少し寂しかったですね」

「まあ、挨拶もなくだったからな」

「今日はよろしくね」

「ああ、よろしく。言い忘れていたが、あけましておめでとう。今年もよろしくな」

「よろしくお願いします!」

「ああ、よろしくね!」

「さてまずは人里について……」

 

「あれからどうだったんだ?」

「戦いが終わってすぐに帰りましたからね…」

「おかげで店回すの大変だったけどな……」

「2人も店を持ってるのか?」

「僕の喫茶店をね。好評なんだぞ?」

「雪華様の女性人気はものすごいですからね」

「そういう桜だって、モテモテじゃないか」

「へー」

「凱君」

「あ、すまん」

「話進めても良いかい、二人とも?」

「あ、ごめんな」

「ど、どうぞ!」

 

「さて、こっちも世界の人里なんだが」

「規模がでかすぎて四区画に分かれているんだ」

「そ、そんなに?」

「僕達の世界だと、村みたいな感じだよな」

「人口は1区画で2~4万人程なんだけど」

「……里じゃなくて都市だな」

「多すぎるだろ…」

「都市国家ですよ、それ」

「まあ、賑やかではあるんだけどねー」

「賑やかなのはいいが、その分犯罪も多い。特にメモリを使った犯罪がな」

「その為の《君達》だろ?」

「そうですよ、凱さん」

「あれ、くらんもちじゃん」

「はい、《東方雪月花》の紡ぎ手のくらんもちです。ちなみに紡ぎ手とは作者のことですよ」

「くらんもちも参加するか?」

「おい待てや、人数多すぎじゃねえか?」

「あー、じゃあ僕帰りますか。紡ぎ手って基本干渉しちゃいけないし」

「即帰宅かよ!?」

「またねー」

「話戻せ」

「せやせや」

「俺らの話だったろうが」

「…で、話の腰をあいつに叩き折られたが結局のところ人里はどうなんだ?」

 

 

人里について

 

「人里には役所や、商店が立ち並んでいてとても賑やかなんだ。でもその反面、メモリの犯罪も多い。そこで活躍するのが彼等なんだ」

「なるほど。さながら2人で1人の探偵だな」

「どういうことです?」

「あー、まあ桜には分からないか」

「勘違いしてるかもだが、俺一人じゃないし姫乃以外にもメンバーはいる」

「彼は対メモリ組織のリーダーになったんだ」

「へえ、そうなのか」

「なんというか、すごいですね…」

「専用の制服もある。ほら」

「かっこいいですね…」

「…だな」

「他の娘達も着てるよねー」

「ああ、黒をベースにソイツらのイメージカラーで作ったからか、皆毎日のように着てくれてるよ」

「さてさて、そんな凱君の拠点があるのは人里の外れみたいな所なんだ」

「ふむ」

「人が来ることは滅多に無いんだよ」

「それがどうかしたんです?」

「確かに、問題は思いつかないが」

「……何で里の外れにあるか、わかってるか?」

「機密保持じゃないのか?」

「私もそう思いますけど…」

「…はぁ、平和でいいな」

「彼のお店にはメモリ犯罪に使われたメモリや押収したメモリの他に、彼が作ったメモリや武器、ドライバーなんかも保管されてるんだ」

「扱うのは基本的にハードな任務だからな。人里のど真ん中でやるには危険すぎるのさ」

「そういうこと」

「ああ、そういうこと」

「私達が扱っていたのは現代兵器ばかりで、そんな超常的なものは知りませんからね……」

「さて、それじゃあ次にいこうか」

 

 

魔界について

 

 

「魔界についてだよ」

「ここはお前らの世界にもあるのか?」

「な訳ないだろ」

「私達の世界は、至って普通です。…戦争が絶えないという点を除けば」

「この世界には広大な荒野と中心にそびえるフォルトゥナ城と城下町。そびえ立つ山々で構成された世界だよ」

「地獄門もここにある。覚えてるよな?」

「ああ、サクリファイスと戦う時に通ったよな」

「そうそう」

「以前は危なっかしい門だったんだよ」

「以前は?」

「ああ」

「あの門は以前はマジェスト大量生成装置みたいな感じだったんだよねー」

「マジかよ…」

「すさまじい、ですね…」

「あの程度、しっかりとした武装なら余裕だろ」

「そのしっかりがえげつない気がするんだが」

「銃が効かない相手なんて初めてでした」

「銃が効かないのは案外普通」

「まあ、通常弾薬じゃあ無理だ」

「なら今度改造するか。あれくらいならギリギリいけるだろ」

「姫乃ちゃんのパンドラとかなら余裕だしね」

「あとは《Devil castle》のメンバーとかだな」

「なんだそれ?」

「魔界の自治組織だな」

「そいつらなら、マジェストを倒せるのか。手合わせしたいものだな」

「マジェスト所かマジェステルダムにも勝てるんじゃねえかな?」

「そんなのも居るのか…。桜華なら斬れるかな?」

「雪華様、戦うことばっかりです」

「ごめんごめん」

「君も戦ったろうに」

「え、あれなんですか!?」

「そうだが?」

「桜ちゃんが迷い混んだあの世界にもいたんだよ?」

「あの遺跡みたいなとこにも?あ!もしかしてあの騎士!?」

「騎士?」

「遺跡で姫乃ちゃんが薙ぎ倒してたあれじゃないの?」

「あれは防衛システムだよ」

「あ、あれ?じゃあ何だったの?」

「じゃあ、それについても詳しくやろうか」

 

 

記憶の遺跡について

 

 

「記憶の遺跡には色々なメモリの記憶が保管されていて、それを管理しているものがマジェステルダムなんだ」

「だからメモリを取っていった姫乃さんを襲った、ってことか?」

「あの騎士達はそれがトリガーで出現しないんだ」

「ん?どういうことだよ?作者」

「僕も分からないな…」

「あれは、メモリを持ってない人間が遺跡に入ると作動する防衛システムなんだ」

「つまり、私のせいってことですね…」

「あれはしょうがないだろ。あっちの作者の不手際だったらしいし」

「あれは僕のミスだからね。ごめんね、姫乃ちゃん…」

「それはさておき、マジェステルダムの詳しい説明に入ろうか」

「頼むな」

 

 

マジェステルダムについて

 

 

「ここからは地理ではなくマジェステルダムについて解説していくよ!」

「二人はわからないことがあったら聞いてくれ」

「はい!」

「分かった」

「マジェステルダム。漢字でかくと魔製神格生物になる」

「全部のメモリがそうなるわけじゃないんだよな?」

「うん。メモリのランクの中で《エクストラ》に分類されるものだけが成れるんだ」

「エクストラって、何なんですか?」

「僕も気になる」

「《エクストラ》は他の《ミドル》や《ハイランク》よりも特殊な能力を持ってたり、幅広い範囲に影響を及ぼすものが分類される。だからといって最強である訳じゃ無いんだけどね」

「へえ〜、そうなんですね」

「文字通り『EX』ってわけか」

「実は、彼等がマジェステルダムの時は名前にそのメモリの称号が与えられてたりするんだ」

「そうなのか?初耳なんだが」

「それを所有者ごとにまとめてきたけど、二人は見たいかな?」

「是非」

「見たいです!」

「一覧はこちら」

 

虚空神ヴォイド・マジェステルダム 凱

真竜聖ドラゴン・マジェステルダム 護

厄災神カラミティ・マジェステルダム 幽香

過去聖パスト・マジェステルダム 阿求

畜年聖ファッソル・マジェステルダム 咲夜

要総神エレメント・マジェステルダム 霊夢

言霊聖ワード・マジェステルダム パチュリー

破戦神ウォーズ・マジェステルダム 姫乃

黄金神ファラオ・マジェステルダム 護

炎陽神プロミネンス・マジェステルダム 凱

 

「こんな感じかな?」

「…明らかにやばいのが交じってんな」

「ドラゴンとかプロミネンスとか、絶対強いです…………。でも、この『聖』だとか『神』ってついてますけど、これは?」

「そういえば、この前のサクリファイスも居ないな」

「『ウェーブ』や報告にあった『コキュートス』もいねえな」

「いい質問だね。ここにウェーブとサクリファイス、コキュートスがいないのは『暴走状態だった』からなんだ」

「なるほど、『自発的に変化する』場合のみ称号が付くのな」

「なるほど、つまり凱達のように自分で変身した場合のみってことなんだな」

「それは違うぜ、雪華」

「そうなのか?」

「ど、どういうことです?」

「俺達はメモリを使うことでガイアナイトに変身する。その際、エクストラメモリを使って変身した場合の名前は《マジェステルダム》ではなく《ガイアナイト》になる。ここまではわかるか?」

「ああ、知っている」

「雪華様はスノー、私はリコリスですよね」

「そうだ。そしてこのエクストラは自身の記憶を解放して本来の姿になる。その解放を《解放変異》と言い、変異後の姿を総称して《マジェステルダム》と言うんだ」

「補足すると、《マジェスト》と《マジェステルダム》の違いは『エクストラメモリが元か否か』ってところだね」

「つまり、姫乃ちゃんと一緒に居たウォーズさんがマジェステルダムってことですね?」

「そういうこと。まあ、あれはちょっと特殊なんだけどね」

「特殊?」

「うん。彼らの変異の真価は彼らの持つ領域内でのみ発揮されるんだ。だから領域外では人間の姿になったり、他の見た目になるんだ」

「そういうことか」

「そしてこの『領域』が桜ちゃんの質問に繋がるんだ」

「『聖』やら『神』の?」

「そう。『神』または『聖』は彼らの領域の区別の仕方で変わってるんだ」

「へえ?」

「どういうことです?」

「彼らの領域は『聖域』か『神域』の二択なんだ」

「違いは?」

「影響する対象だね」

「対象?」

「自分だけに影響するのが『神域』、他の人間や物体にも影響するのが『聖域』なんだ」

「ふーん。ん?なぁ、ちょっといいか?」

「どうしたんだい?」

「《エクリプス》は?」

「エクリプス?」

「ああ、俺が持ってるメモリでこいつもエクストラのはずだ」

「それは君のだからでしょ?」

「あ?どういう………あー」

「…?」

「どういうことですか?」

「……エクリプスは俺が『創った』んだよ」

「メモリを、創る!?」

「以前やって見せたろ?スノーとリコリスの時」

「…そういうことか。自分の『色』に合わせたのか?」

「違う、エクリプスは創ったあと、俺の殺意で変わったんだよ。今はエクストラメモリとして使ってるが……。こいつには称号は無いのか?」

「さ、殺意…」

「どれだけ強かったんだよ」

「称号見ればわかるよ。ほら」

 

殲命滅エクリプス・マジェステルダム

 

「………滅?」

「また違った称号だな?」

「エクリプスのは『滅域』っていって敵味方無差別に影響をおよぼすんだ」

「マジ?」

「マジ」

「チートだろそんなもん…」

「今は安定してるけどね」

「なるほどな。」

「あ、そういえば」

「そういえば、何だ?」

「二人をもとの世界に戻すときの道あったじゃん?」

「あったな」

「あの大きな魚が居たところですね」

「桜が転んだとこだな」

「それは言わないでくださいっ」

「あそこ整備して二人はいつでも通れるようにしたから!来たいときはいつでも使っていいからね?」8

「ああ、ありがとう」

「桜ちゃんも姫乃ちゃんに会いたいでしょ?今日はちょっとこれなかったけど……。ねえ、凱君?」

「あ、ああ、そうだな」

「何があったんだよ…」

「姫乃ちゃん、大丈夫かな……」

「姫乃ちゃんは疲れて寝てるんだ」

「何で?」

「まさか凱さん、姫乃ちゃんに…!」

「……な、なんだよ?」

「桜曰く、そういう意味で手を出したんじゃないか、だってさ」

「…………」

「あーあ、だから合意でも止めとけって言ったのに」

「マジでやったんかい!!」

「いや……だって」

「姫乃ちゃんのサプライズが効果的だったらしい」

「……」

「だからってそんなになるまでやるか普通…」

「う、うるせぇ!」

「あ!ちょっ……どっか行っちゃったよ」

 

「…ちょっと言いすぎたか?」

「いや、たまにはいいさ…ってどうした桜ちゃん?」

「あ、いえ…。まあ、雪華様にそういう意味でされたことって無いなと思いまして」

「…は!?」

「ほーん」

「こっちの魔理沙にも言ったが、桜に手を出すのは僕のプライドが許さないんだよ。嫌われたら嫌だしな」

「嫌ったりしませんよ…?」

「それでもだ!」

 

「ちなみになんだが、姫乃は心のそこから凱の事愛してる感じだったし、凱も姫乃の事大切にしてるみたいだったぞ」

「と、とにかくこういう話はやめてくれ。

…これでもいつも抑えてるんだよ」

ボソッ「……ヘタレ」

「今なんつった!?」

「雪華様、ステイです!」

「何でもねーよ。ただ君の紡ぎ手が以前凱君のことを言ってたのを借りただけさ」

 

 

「あの野郎、あとでシバく」

「うわぁ、大丈夫かな、あの人」

「さて、頃合いもいいし、終わりにしようか。ああそうそう、雪華君」

「…何だ?」

「君に伝言がある」

「誰からだ?」

「聞けばわかると思う。『そっちの私をお願いね』だそうだ」

「何?…そういうことかよ。じゃあこっちからも頼む。『任せとけ』ってな」

「わかった。じゃあ、終わりにしようか」

「ああ。楽しかった。凱と姫乃さんにもよろしく」

 

「あいよ。それじゃあ今日はここまで。ありがとうございました!」

「じゃあ、また」

「また来ます!」

 

 

 





ここまで読んでいただきありがとうございます
ここから先は短いですが、今回のラジオで名前を出させていただいた方々にたいして書かせていただきます

サイコパスのらいらい様
私が一番最初に読んだハーメルンの東方カテゴリの小説はこの方の作品でした。もともと東方好きなのも相まって1日でその当時あげられていた作品を読むほどはまり、自分がハーメルンにはまるきっかけになった方です。コラボの話を受けていただいた際にはとても嬉しかったのを覚えています。

ルオン様
地憶譚にてキャラクター『総塚護』のアイデアを頂いた時にちょうど閻魔刀の所有者を考えている最中で即採用させていただきました。私よりも多くの作品を投稿なさっており、尊敬しています。

SOUR様
地憶譚の最強格になり得るキャラクター『加賀龍』のアイディアをくださいました。主人公陣営でないため登場シーンはまだ少なく、謎の多いキャラのままになってしまい申し訳なく思っております。2023の物語では多く登場させる予定です。

くらんもち様
このラジオの記事を編集する最中にもコラボのお話をしていたり、お互いのキャラを戦わせたりとキャラとして多く関わらせていただきました。この方の作品は自分の好みにぴったりなので毎日楽しみにさせていただいております。

マイスイートザナディウム様
私が地憶譚を書くきっかけになった方です。地憶譚を書くに当たり『この方とは別の方向性の作品を』という考えのもと、思い付いたのが『DMCとのクロスオーバー&ガイアナイト』でした。この方の作品も私の好みに合う作品でとても楽しみにさせていただいております。

メモリに憑かれた男様
この作品のスポンサーであり、もう1人の作者であると勝手に思わせていただいております。いつも自分では思い付かないアイディアを出してくださったり、スランプ状態の私の駄弁りに付き合ってくださったりと非常に心強く、感謝の気持ちを伝えたい方でございます。


最後に

私はこのハーメルンで小説を書き始め、約100話書かせていただきました。ここまで活動を続けられたのは先ほど紹介させていただいた方もそうですが、何より読んでくれる皆様がいらっしゃってこその活動だったと思います。
まだ駄文だったり、見にくいところがあると思いますが、暖かい目で見ていただけるとありがたいです。

ありがとうございました


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

特別編 少女達の奮闘

2月14日

知っている人は多い今日はバレンタイン。
女性が男性に日頃の感謝を込めてチョコを送る日………らしい。詳しいことは知らない。
それは私達の世界だけでなく、彼らの世界でも共通らしい。





 

 

「………なんでこうなってるんだ?」

魔界のフォルトゥナ城の謁見の間に凱達は居た。他にはギルバやジン、盤城はもちろんのこと、護や猟介達も居た。

「なぜお前らがここにいるんだ?」

部屋の主であるギルバが凱達に聞く。

「追い出された。なんでも夕方まで帰ってこないでくれってよ。」

「俺もっす。」

「早苗に追い出された。………なんでなんだ?」

「お前ら馬鹿だろ。」

『あ?』

ギルバの突っ込みに全員が聞き返す。

「今日、2月14日はバレンタインだろうが。」

 

『…………あ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー皆で一緒にーー

 

 

 

 

 

 

「それと取ってー!」「上手く溶けないわね?」「ちょっと!つまみ食い禁止!」

紅魔館のキッチンは非常に賑わっていた。普段は咲夜ぐらいしか使わないキッチンにかなりの人数の少女達が集まっていた。

各々の考えるチョコを作るために、互いに助け合ったりしている。

料理に慣れている咲夜や自炊をする早苗やアリスなどは既に自分のを作り終えており、他の娘達の手伝いにまわっている。

 

 

 

「……………」

そんな中、姫乃は黙々とチョコを作っていた。

「やっほー、姫乃ちゃん。」

「あら、リーナちゃんじゃない。」

そんな姫乃に近付いて来たのはリーナだった。彼女を含め、《Devil castle》所属のファスやモナも他のところでチョコを作っていた。

「それは凱にあげるチョコ?」

「ええ、彼は甘いのよりも苦いのが好きみたいだからカカオ多めに使ってるの。」

姫乃は溶かしたチョコを型に流し込む。

「出来た!あとは固まるのを待つだけね。リーナちゃんは?」

「私のは飛鳥にあげるんだ。いっつも頑張ってるから甘いのをね!」

そう言う彼女の手には可愛らしくラッピングされたチョコがあった。

「すごい可愛いじゃない。」

「でしょー?頑張ったんだぁ。」

エヘヘ、と笑う彼女はとても幸せそうだ。

そこへ

「すまん、少しいいかな?」

「あ、音川先輩。どうされたんですか?」

姫乃や凱の1つ上の先輩である音川ナルが話しかけてきたのは。その手には…………

「………なんです?それ。」

「炭………みたい?」

真っ黒になった塊だった。

「失敗してしまったんだ。どうも上手くいかないようでね。」

「湯煎しました?」

「湯煎?炙っちゃ駄目なのか?」

「駄目に決まってるでしょう?!」

音川は音楽に関してはスペシャリストで、姫乃の憧れであった。

が、料理の知識は無かったようだ。

「私が手伝いますから、頑張りましょう?」

「私も!2人より3人の方が効率いいでしょ?」

「2人とも………ありがとう!」

 

 

 

 

数時間後…………

 

 

 

 

 

「呼ばれてきてみりゃ、なんだこれ?」

凱達は紅魔館のホールに来ていた。そこには大量の料理が並べられている。

「来たわね!」

声の方を見れば、そこには霊夢が居た。他にもいつもの面々がお酒やワインの入ったグラスを持っている。

「おい、まさかとは思うが…………」

「今日は宴よ!」

「……だろうと思った。」

凱は溜め息を吐くが、その場に居た凱を除く全員が、彼の表情が喜びで綻んでいるのを見逃さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「はい!私の分だよ御兄様!」「わ、私からの分です!」「あやや、人気者ですねぇ。はい、これは日頃の感謝の分ですよ。」「これをどうぞ!今度永遠亭にもいらしてください!」

「ありがとう、後で大事に食べるよ。」

フラン、妖夢、文に鈴仙からチョコを受けとる。その前には咲夜や霊夢達からもチョコを貰っていた。正直甘いチョコよりも苦い方が好みなのだが、せっかく人から貰ったものを無下にするわけにはいかない。後でゆっくり味わおう。

「凱君。」

「ん?姫乃か。」

周りに誰も居なくなったと思ったら声をかけられる。そこに居たのは姫乃だった。手には赤と黒のリボンで飾られたチョコレートがある。

「はい、感謝の気持ち。受け取ってくれる?」

「もちろん。ありがとうな。」

俺はそう言って受けとる。

「隙あり!」

「うおっ?!」

急に姫乃に抱きつかれ、一瞬バランスを崩しかける。

「危ないぞ?」

「大丈夫。信じてたから」

「…そうかよ。」

ふと視線をずらすと護や猟介、ギルバ達の姿が見える。

飛鳥とリーナの姿が見えないが、どうせ部屋にでも戻っているんだろう。

ちなみに護は早苗達に囲まれ、猟介は音川先輩と一緒に窓辺で幸せそうにしている。ギルバとジンは………お相手の2人に振り回されている。

「………ねえ、凱君。」

「ん?なんだ?」

柱の影になり、誰も見えない場所で姫乃が聞いてきた。

「もし、もしもだよ?私が傷だらけになって、もう生きてることも辛くなっちゃうようなことになったら、凱君はどうする?」

「……………。」

急な質問だった。姫乃が傷だらけになるという状況がいまいち考えられない。

 

 

逆はまだしも。

 

 

「そうだな。もし、そうなったら俺はお前に寄り添うことしか出来ないかもな。」

姫乃の事は大切だ。だが、彼女が傷ついてしまったときに、どうすればいいかなんてわからない。

「姫乃が苦しいとき、辛いときは俺が傍に居る。1人にはさせない。」

姫乃が抱き締める力を強くする。

「……凱君らしいね。」

「そうか?」

「うん。」

「……そうか。」

「約束だよ?」

「ん?」

「傍に、居てね?」

「……………ああ。」

姫乃を抱く力を強める。

腕から彼女の暖かい体温が伝わってくる。この日の温もりを、俺は忘れたりはしないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜中

姫乃からもらったチョコをあける。途端に深く品のある香りが鼻をくすぐる。

中に入っていたのは4個のチョコレート。どれも暗い茶色をしており、俺好みの苦味のあるチョコであるのが見て取れる。

そのうちの1つを手に取り、口に放り込む。入れた瞬間に苦味が広がる。このチョコ特有の苦味が俺は非常に好きだ。

「やっぱこれだよなぁ………?」

チョコの箱の内側に何かが入っていた。取り出してみると、それは花が描かれた本の栞のようだった。

「………なるほど。」

俺はそれを手にとって眺めた。花の知識はさほど無いが、花言葉は知っていたし()()が何を意味するかもわかった。

「俺も、姫乃の気持ちに応えなきゃな。」

 

姫乃が忍ばせていた栞。

 

 

そこに描かれていたのは紫色のチューリップだった。

 

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます
どうも、フォーウルムです。
相変わらず足が痛くて悶絶しています

それはさておきバレンタイン回です。
書きたくて書いた。後悔はしていません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。