アニライブ! (名前はまだ無い♪)
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オープニング

初めまして名前はまだ無い♪です。拙い文ですが楽しめて頂けたら幸いです。


2/22
加筆修正

8/30
内容変更


 この春高校ニ年生になった高坂若葉(こうさかわかば)は、理事長室の前に立っていた。

 

「失礼します」

「おぉ、若葉君よく来てくれたね」

「さすがに校内放送で呼ばれたら来ないわけにはいきませんって」

 

 両手を広げて歓迎する理事長に若葉は苦笑いで返す。

 

「それでお話とは一体……?」

「……まぁ座って」

「それじゃあお言葉に甘えて」

 

 若葉は一言断り、勧められたソファに腰を落とす。そして正面に座った理事長を真っ直ぐ見る。

 

「繰り返し聞きますが、話ってなんですか?」

「……君はもしこの学校が廃校になると言われたら、どうする?」

「万が一にもない話をされても困りますが、そうですね……出来るだけ復興に力を添えたいですね。場合にもよりますが」

「場合にもよる、と言うと?」

「きっかけが生徒減少なら集まるように何かしらの策を考えますけど、理事長や先生方の不祥事だったら何も言えないですね」

「普通逆じゃないかな!」

 

 理事長のツッコミに若葉はいやいや、と首を横に振る。

 

「不祥事は生徒達である自分達は何も出来ないじゃないですか」

「あ、そゆことね」

「それで? 今の問いとここに呼ばれた理由ってどう結び付くんですか?」

 

 若葉が首を傾げながら理事長に聞くと、理事長は何やら言い辛そうに唸る。

 

「若葉君は音ノ木坂学院を知ってるよね」

「まぁ妹の通ってる学校ですし、母と祖母の母校でもありますし」

「実は音ノ木坂は今、廃校の危機に陥ってるんだよ」

 

 理事長の言葉に若葉はでしょうね、と頷く。妹やその友人から聞いた所によると、新一年生のクラス数は一クラス。その事情を知っているからこその頷きである。

 

「それで、自分にどうしろと?」

「ちょうど若葉君を呼び出すちょっと前にね、向こうの理事長から電話があって」

 

 そこで言葉を区切り、チラリと若葉を見る。

 

「若葉君に共学の際の試験生として来ないかってお誘いが来たんだよ。しかも名指しで」

「…………はい?」

 

 若葉は一瞬頭の中が真っ白になった。

 

 確かに音ノ木坂の理事長とは知り合いである。しかしなぜ自分が?

 

 そんな疑問が頭の中をグルグルと渦巻く。

 

「まぁ理由としては昔からの知り合いって事と、いきなり女子高に通い始めても問題ないでしょ。って事だよ」

「……ちょっと、考える時間を下さい」

「うん。返事は今週末までって事だからゆっくり考えて良いよ」

 

 突然の事に頭を抱える若葉に優しく微笑む理事長。

 

「え〜と、取り敢えず話はこれだけですか?」

「そうだよ。それにこれ以上何かあっても今は無理そうでしょ?」

「えぇまぁ、聞かされた事が事だけに」

 

 そして若葉は失礼します、と理事長室を出て荷物を取りに教室に戻る。

 

「おっす若葉。お話はもう終わったのか?」

「うん…まぁ…終わったと言えば終わったよ」

「なんじゃそりゃ?」

 

 言葉を濁して答える若葉に、教室で待っていた中学からの友達である中田翔平が首を傾げる。

 若葉は家路に着きながら、理事長室で言われた事を掻い摘んで翔平に話す。

 

「へぇ〜俺からしてみりゃ結構羨ましい話ではありそうなんだけどな」

「そりゃあ、まぁ、ね」

「なんだよ。乗り気じゃないのか?」

「う〜ん。まぁ乗り気じゃない事もないんだけどね……」

 

 ハッキリとした答えを出さない若葉を横目に、翔平は何も言わず若葉の少し後ろを歩く。

 

「じゃあ俺こっちだから」

「……ん? あぁまた明日」

「若葉、そう難しく考える必要がないんじゃねぇの?いつもみたくさ」

「それじゃあいつも深く考えないで行動してるみたいじゃん!」

「アッハッハーじゃあなー!」

 

 高らかに笑いながら、翔平は分かれ道を走って帰る。若葉はそんな翔平に溜め息を漏らしつつ、実家である老舗和菓子屋「穂むら」の暖簾を潜る。

 

「ただいまー」

「お兄ちゃん、ちょうど良い所に! あのね! 雪穂音ノ木坂受けないんだって!」

「……だって音ノ木坂って廃校になりそうなんでしょ?」

 

 潜ってすぐに高坂家の長女で、若葉の妹の穂乃果が詰め寄り、次女の雪穂が音ノ木坂学院を受けない事を言うと若葉の言葉に頭を垂れた。

 

「もうお兄ちゃんも知ってたんだ」

「まぁ今日学校でその話になったしね。それに今二年生って二クラスでしょ?今年は何クラスなのさ」

「ひ、一クラス……」

 

 若葉が聞くと穂乃果は気まずそうに目を逸らして呟く様に言う。その落ち込んだ様子の穂乃果の頭を優しく撫でる。

 

「穂乃果は音ノ木坂好き?」

「……うん」

「そっか」

 

 頷いた穂乃果を見て若葉はそれだけ言い、自分の部屋に入り携帯を取り出す。

 

「あ、もしもし。高坂です。……はい、あの件ですが受ける事にしました……はい、はい……分かりました」

 

 それだけの短い会話を終わらせ、電話を切る。そのタイミングで階下から雪穂の呼ぶ声がし、部屋から出て行った。

 

 ☆☆☆

 

 翌朝から。若葉は再び理事長室を訪れていた。

 

「失礼します」

 

 コンコン、とノックをし中に入る。

 

「昨日に続きごめんね。早速だけどこちらが君に行ってもらう学校の」

「こうやって話すのは久しぶりね」

「そうですね彩さん。大体一ヶ月振りくらいじゃないですか?最後に会ったの春休み中にことり達と遊んだ時ですし」

 

 理事長の隣に若葉が座ると、お互いの自己紹介をしようとするも、お互い既知の間柄。今更自己紹介は不要なのだ。

 それから少し世間話などをした後、最後にいつから音ノ木坂に行くのかの話になった。

 

「じゃあ明日から来て貰ってもいいかしら?」

「良いけですど…男の制服はあるんですか?」

「いえ、ここの制服でも私服でも大丈夫よ。生徒達には今日伝えておくわ。あ、そうそう職員室への挨拶は明日中だったら何時でも大丈夫よ」

「あ、そうなんですか?」

「ま、朝に私の所には来て貰うけどね」

 

 にっこりと笑い理事長に一礼すると理事長室を出て行く。

 

「明日からか。随分急な話になったね」

「そうですね。でも急に物事を決める人なら他にもいるので大分慣れてますよ」

「はっはっは、それはお疲れ様。じゃあ明日から頑張って来てね」

「もちろんですよ。それじゃあ失礼します」

 

 若葉を笑顔で送りだす理事長と、そんな理事長に笑顔を返す若葉。

 

 若葉が教室に戻るとちょうど朝のホームルームの途中のようで担任の教師が連絡事項を話していた。若葉がタイミングを計り中に入ると担任も若葉が理事長室に呼ばれていたのを知っていたので、特に何も言わずに着席するように言う。

 

「それで? やっぱり昨日の件での呼び出しか?」

 

 若葉が席に着くや否や隣の席の翔平が小声で囁く。

 

「そうだよ。詳しくはこの後話すから今は大人しく先生の話聞いてなよ」

「はいはいっと」

 

 若葉が囁き返すと翔平も納得したのか担任の話を聞く体制に戻る。

 そしてホームルームが終わるとクラスの全員がワッと若葉の周りに集まった。

 

「おい若葉! お前が二日続けて理事長室に呼び出されるとか何やらかしたんだよ!」

「問題起こして停学? まさか退学しちゃうの!?」

「一体何したんだよ!」

「ちょ、皆落ち着いて! 別に何もやらかしてないから!」

 

 若葉の制止の声も虚しく、集まったクラスメイト達は次々に疑問を投げつける。

 

「あーはいはいお前らそろそろ落ち着け。ちゃんと若葉が説明するらしいから!」

 

 若葉が困ってる様子を見て翔平が一同を鎮め、若葉を教壇に立たせる。

 

「えっと、俺が理事長室に呼び出されたのは、理事長から頼まれ事をされて」

 

 先程とは打って変わって静かになったクラスメイト達に、若葉は理事長室でのやり取りを掻い摘んで説明した。

 一通り話終わり、若葉が音ノ木坂に行く事を伝えると静かだった教室が再び騒がしくなる。

 

「えぇー! 若葉君、音ノ木坂に行くの!?」

「あそこって確か女子校だよね!?」

「てことはハーレム状態って事か!?」

「羨ましい! 代われ!」

「ええい煩い! それにもう向こうの理事長との顔合わせまで済んでるから今更交代は出来ないよ!」

 

 騒がしいクラスメイト達にそう叫び返し、そもそも、と続ける。

 

「ハーレム羨ましいとか言ってる男子達はいきなり女子高行ってメンタル持つの?」

「う…確かに」

「テンパるのがオチか……?」

「だがそれなら若葉だって同じじゃね?」

「いや妹いるし、他にも幼馴染みが2人いるからその点は心配ないよ」

「クソッ爆発しちまえ!」

「何様だぁ!」

 

 若葉は自身に向けられた罵倒を無視する。罵倒して来てるクラスメイト達が全員笑顔で言っており、心の底から若葉をわるく思ってない事を理解しての無視。

 

「女子の皆も元気でね」

「え、私達にはそれだけ!?」

「何か他にはないの?」

「若葉君が遠くに行っちゃう!」

「女子もか!」

 

 続く女子達の言葉にも若葉は声を大きくしてツッコミを入れる。

 

「まぁとにかく、そういう訳だから俺は明日から音ノ木坂に行くから!以上解散!」

 

 担任の先生が入って来たのを見て若葉は手を叩いて解散宣言すると、集まっていた皆はサッサと自分の席に着く。

 その際翔平を中心に若葉以外の全員がアイコンタクトを取った事に、一人で先に席に着いた若葉は知る由もなかった。

 

 ☆☆☆

 

「はぁ…掃除もこれで終わりか」

「ウチの学校も変わってるよね。新学期二日目に掃除するなんて」

「なんでもこれから一年お世話になる校舎だからってんで行われるらしいぞ」

「それにしても半日掛けるとか大掛かり過ぎでしょ」

 

 若葉は屈んで痛めた腰をトントンと叩きながら綺麗になった廊下を見渡す。掃除する場所はクラスごとに振り分けられており、クラスによっては体育館などを担当している。

 

「そういや若葉今日の放課後空いてるか?」

「ん?空いてるけど、どうして?」

「いや、どうせ暫く会えないんだし、遊んで帰ろうぜ」

「あ〜そういう事ね。良いよ」

 

 翔平の提案に頷くと、母親の裕美香に昼食はいらない旨を連絡する。

 

「さてと、じゃあ教室に戻りますか」

「だね。早かったらもう帰れるし」

 

 2人は掃除用具を片付け教室に戻る。この日は掃除が終わったクラスから帰宅が許されている為、他のクラスメイト達が掃除を終わらせているのを願い教室に入る。

 

「おいすー。廊下は終わったぞ〜。帰って来てないのはいるかー?」

「渡り廊下組がまだ帰って来てないよー」

「あ、じゃあ俺行ってくるよ」

 

 教室の中から帰って来た声に若葉が手を振って教室から駆け出す。それを黙って見送った翔平は教室に振り向き、ニヤリと笑うと教壇に立つ。

 

「さて皆、少しばかり話がある」

 

 その言葉にクラスメイト達は真剣に頷く。

 

 一方、渡り廊下に向かった若葉はと言うと

 

「ゴメンね若葉君。わざわざ手伝って貰っちゃって」

「いやいや別に良いよ。俺こ所も終わって暇だったし」

 

 ゴミ袋を手に飯島早希と並んでゴミ焼却場にゴミを運んでいた。若葉はゴミを焼却炉に入れ、早希から受け取ったゴミも入れ蓋を閉める。

 

「さて、教室に戻ろうか」

「そうだね。私達が最後なんでしょ?なら待たせちゃ悪いもんね」

「そうだね」

 

 二人は急ぎ足で教室に戻る。

 

「お疲れさん。ところで若葉、この後どこに遊びに行くよ」

「そうだなぁ……」

 

 教室に戻った若葉は翔平にこの後の事を聞かれ暫し悩む。

 

「取り敢えず昼食食べながら考えようか」

「ん。じゃあそうするか」

 

 一先ずの行き先が決まり2人は荷物を手に教室を出る。

 

「それじゃあ皆元気でね!」

 

 教室を出る際、若葉は未だに残っている全クラスメイトに笑顔で手を振る。若葉に手を振られたクラスメイト達もまた笑顔で手を振り返す。

 

 学校を出た二人は駅の近くのトンタッキーに入り、それぞれの注文を終え席に着く。

 

「さてと、どこ行くよ」

「早速その話?」

 

 ポテトを咥えながら笑う翔平に若葉は溜め息混じりに返すと、窓の外を見渡す。

 

「……あそこ行ってみたいな」

「ん?どこだ? ……てあそこか。若葉にしては珍しいな」

 

 翔平が指先の方を仰ぎ見るとそこにはUTX高校が建っていた。

 

「そんなに珍しいかな」

「そりゃあ今まで一欠片も興味を示さなかった物事に対して、急に興味を示し出したら珍しがるだろ」

「あー確かに。ま、最終目標をUTXにして、それまでの道を楽しんで歩く感じで良いかな?」

「おー良いぞ」

 

 若葉の提案に翔平は頷き、中身がなくなったハンバーガーの包装紙を綺麗に畳む。

 それから二人はトンタッキーから出て秋葉原の街をあっちへふらふら、こっちへふらふらと歩き始める。

 

「お、若葉見ろよ!ハイクエのクレーンゲーム出てんぞ!」

「あ、本当だ。翔平やってく? ハイクエ好きでしょ?」

 

 街を歩いているととあるゲームセンターの前で2人は足を止める。理由としては店頭に出ているクレーンゲームに翔平の好きなハイクエ、ハイラルクエストのフィギュアがあったから。

 翔平は早速500円玉を入れ、アームを動かす。

 

「おっ行け行け!」

「へぇ。翔平上手くなったんじゃない」

「へへっ。偶に一人の時にやってたからな」

 

 翔平は得意げに笑い手元のボタンを押す。アームは見事にフィギュアに当たり、位置をずらす。

 そのずらし作業をする事数回。先程入れたコインでのラストプレイになる。フィギュアは既に取り易い位置にあった。

 

「よし! これは貰った!」

 

 翔平の宣言通りアームはフィギュアの箱に引っ掛かり、下に落とす。翔平は取り出し口から取り出すと若葉に笑いながらブイサインをし、若葉はそれに拍手して応えた。

 それから再び2人は歩き出す。

 

「にしても音ノ木坂か〜。穂乃果ちゃんと同じ学校になるから小中高って揃ったな」

「そうだね。その分色々と苦労したりするけどね」

「大学はどうするつもりなんだ?」

「さぁ?どうするんだろね」

「これまた投げやりな」

 

 若葉の回答にやれやれ、といった様子で首を振る翔平。そんな事を話してる間に2人はUTX高校の麓まで来ていた。

 

「デカイね」

「そりゃ、秋葉原にある1番人気の女子高、しかもエスカレーター式と来たらな。それにこの人達もいるし」

 

 翔平が入り口の上に設けられてる大型ディスプレイを指すとそこには「A-RISE」という文字と三人の女子生徒が映っていた。

 

「凄い人気なんだね」

 

 若葉がディスプレイの前にいる群衆を見て呟くと、翔平は首に腕を回しUTXから離れ始める。

 

「ほらほら、そろそろ時間だから行くぞ」

「時間ってなんの時間さ」

「時間は時間なんだ。ほら行くぞ」

 

 そのまま若葉を引き摺るようにUTXから離れる2人。

 

「ねぇ翔平。一体どこまで引っ張るの? そろそろ離してくれないかな」

「ん? あぁそうだな」

 

 次に角を曲がれば「穂むら」に着くという所で若葉を解放する翔平。若葉は首を摩りながら、翔平をチラリと振り返る。

 

「今日はウチに寄ってくの?」

「あーそうだな。うん、寄って行くか」

 

 何やら少し考えた後に頷いて若葉の隣に並んで歩き出し、角を曲がると

 

『若葉くーん!』

『若葉ー!』

 

 つい数時間前に別れたはずのクラスメイトが勢揃いしていた。若葉は訳が分からず、隣に立っている翔平を見る。翔平は笑うと若葉の隣からクラスメイト達の前まで行くとクルリと振り返る。

 

「どうだ? これから音ノ木坂に行くお前に向けてのサプライズは」

「翔平……」

「ま、向こうに行っても頑張れな」

 

 翔平の言葉に頷きながらも、若葉はこれだけはどうしても言っておきたかったらしく、再び翔平の名前を呼ぶ。

 

「翔平……少しはご近所への迷惑とか考えよう?」

「サプライズの感想の前にそれかよ!」

 

 若葉の苦笑いでの発言に思わずツッコンでしまう翔平。そんな翔平を見て若葉はハハッと、声を上げて笑う。

 

「ありがとうね。翔平。それに皆も」

「おうよ!」

「また遊びに来いよー」

「元気でねー」

 

 若葉のお礼に皆思い思いの言葉を投げかける。若葉はそれを全て聴き終え、最後に手を上げて別れの挨拶をする。

 

「じゃあね!」

 

 若葉はそれだけ言うと振り返る事なく「穂むら」の暖簾を潜ったのだった。




8/30に文章をリメイクしました。
リメイクの内容は以下の通りです。

・始まりが「穂むら」から高蓑原高校理事長室前
・帰宅順が若葉→穂乃果から穂乃果→若葉
・翔平の出番が2日目から初日へ
・南家でのやり取りの廃止
・彩さんとの挨拶とクラスメイトへの報告のタイミング
・高蓑原高校2日目の日程
・飯島早希登場
・街をぶらつくのではなく、UTXに行った
・最後のクラスメイト達とのやりとりを分かれ道ではなく、「穂むら」前で行った

ではでは誤字脱字、感想、批判、アドバイス等をお待ちしております。


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まさか…いやいや、そんな事無いよね?by穂乃果

まだだ…まだ本編に入らんよ!
さっさと入れって話ですけどね(苦笑)

既に感想、ご指摘を貰い嬉しい名無しです。
そしてUAがなんと2.000を越しました!これからもこんな名無しを宜しくです!


1/2
4話と5話を統合しました。
2/22
加筆修正


 次の日、若葉は何時もより早く目が覚めて居た。理由は簡単で

 

「んー私服で行くか、制服で行くか」

 

 そう、前日に彩から服装は自由にして良いと言われたので迷っているのだ。

 

「音ノ木坂の制服は穂乃果のを見ればいいとして、いや、変な意味じゃないよ?」

 

 と誰に対してでもない弁明をする。因みに穂乃果に聞いたところ、今日共学化する為の試験生が来る事は知っているが誰が来るかまでは知らされてない様だ。

 

「じゃあサプライズで行くかな」

 

 そう言って母の元へ向かう若葉だった。

 

 ☆☆☆

 

「ねぇねぇことりちゃん。結局誰が来るかとか教えて貰えなかったの?」

「うん。お母さんも見れば驚くわよーとしか教えてくれないの」

「ことりが驚く、と言うことはことりの知り合いなのでは?」

 

 音ノ木坂学院の2-1では理事長の娘の南ことりと、その親友の高坂穂乃果と園田海未が話していた。

 

「ん〜どうなんだろう。あ、でもお母さんが転校生はウチのクラスなんだって言ってたよ」

『本当!?』

 

 三人の会話に耳を澄ませていたクラスメイト達が一斉に声を上げる。

 

「はーい皆座ってー」

 

 クラスが騒然とし始めた時、担任の二島姫子が入って来た。皆朝のHRで転校生が紹介されると思い、皆そそくさと席に座る。

 

「えーと先ず、昨日発表のあった転校生なんだが」

 

 姫子はそこで一度言葉を切ると、ややめんどくさそうに頭を掻く。

 

「……実はまだ来てないみたいなんだよね〜」

 

 少し溜めた後に出た言葉にクラスメイト達は、がくっとかたを 落とす。

 

「いや~理事長曰く、少し話したら連れて来るって言ってたから、もしかしたらHRの途中に来るかも……」

 

 姫子がそこまで言うと、不意に教室の扉がノックされる。姫子は首を捻ると手に持っていた出席簿を教卓に置き、

 

「は〜い。今開けま〜す」

 

 先生がドアを開け対応する。ノックした人物はドアから離れているのか、教室内から見ることが出来ない。最初先生の驚きの声がして、教室内を慌てて見る。そしてとある人物が居るのを確認するとまた教室を出る。

 

「まさか…いやいや、そんな事無いよね?」

 

 先生に見られた人物、高坂穂乃果は見られた事が分かったので少しばかり焦る。

 

「どうしたの? 穂乃果ちゃん」

「いや、もし私の思った通りなら確かに驚くなぁ、ってね」

 

 穂乃果は何処か遠い目をして窓の外を見ながら応える。

 

「は〜い。今ちょうど転校生が来たから紹介するよ〜」

 

 先生が少し悪戯な笑みを浮かべて教室に入って来る。

 

「それじゃあ入って来て〜」

 

 教室中の視線が開かれたドアに集まる。そしてそこから出て来たのは

 

「皆さんこんにちはー高坂穂乃果でーす」

 

 少し声は低いのだが、オレンジの髪を右側でサイドポニーにした紛れもない高坂穂乃果だった。

 教室にいた穂乃果はやっぱりか〜、と言いながら机に突っ伏した。

 クラスメイト達は席に座って突っ伏してる穂乃果とドアから入って来た穂乃果を見比べる。

 

「ほ、穂乃果が二人ぃぃ!?」

「どどど、どうゆうこと!? あれかな?ゲシュタルト崩壊ってヤツかな!?」

「それを言うならドッペルゲンガーです」

 

 少しパニクってるクラスメイト達に冷静にツッコミを入れる海未。そして

 

「お兄ちゃん!!」

 

 立ち上がった穂乃果の叫びと共に

 

『えええぇぇぇぇ!! お兄ちゃん!?』

 

 クラスが騒然となるのは当たり前だろう。どう見ても穂乃果本人にしか見えない転校生が穂乃果の兄なのだから。

 事の発端はHRが始まる前に遡る。

 

 

 数十分前。若葉は彩に言われた通り理事長室に来て居た。

 

「えーと貴方本当に若葉君?」

「失礼ですね彩さん。俺は正真正銘穂乃果と雪穂の兄、高坂若葉ですよー」

「いえ、しかしね? 若葉、君」

「何で詰まったのかは聞きませんよ」

 

 彩は悪く無いだろう。目の前に居るのが若葉ではなく高坂穂乃果にそっくりなのだから。違う箇所と言えば瞳の色と声だけだった。制服も何故か音ノ木坂のを着ている。

 

「で、なんでその格好なのかしら?」

「多分彩さんの事だから俺のクラスは穂乃果と同じだろうな〜と思ったので、サプライズです。それと制服は母のを借りました。いや〜デザインが変わってなくて安心しましたよ」

「サプライズって…それに貴方もしかして女装趣味……?」

「そんな趣味は無いです!」

 

 彩の言葉を間髪入れずに否定する若葉。

 

「でも流石に今日一日その格好じゃマズイんじゃない?」

「大丈夫です。着替えは持って来ているので、HRが終わったら着替えますよ」

「そう……」

 

 若葉の言葉に彩は少し呆れながら溜息をつく。それから立ち上がる。

 

「じゃあ教室まで送ってくわ」

「ありがとうございます」

 

 そして二人は理事長室を出て、若葉の教室である二年一組に向かう。そしてプレートに二年一組の書かれた教室に着くと彩がノックする。ドアが開き担任の先生と思われる人が出て来る。

 

「此方が今日転校して来た高坂」

 

 彩の話の途中で若葉を見た先生は慌てた様に教室に戻りまた帰って来る。

 

「えーと初めまして高坂穂乃果の"兄"の高坂若葉です」

 

 現在若葉は音ノ木坂の制服を着て穂乃果と同じ格好をしている為、若葉は兄の部分を強調して自己紹介する。それを聞いた姫子は頷くと教室に戻り、話を進める。

 

「は〜い。今転校生が来たから紹介するよ〜」

 

 教室に入る時、姫子が悪戯な笑みを浮かべているのを見逃さなかった。

 

「それじゃあ入って来て〜」

 

 若葉は呼ばれたので既に開いているドアから教室に入り

 

「皆さんこんにちはー高坂穂乃果でーす」

 

 教室に入るとクラスの皆が若葉と穂乃果を見比べる。後は知っての通り穂乃果によるネタバレで若葉の悪戯は幕を閉じた。

 

 

 




それでは誤字脱字、感想、アドバイス等をお待ちしております。



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意味が分からないんですけどby真姫

さぁ進みが遅いですけど、やっとアニメ第一話の最後の方までやって来ました。
今回はあの子らが出て来ますよー


2/22
加筆修正


「えーと改めまして、高坂穂乃果の兄の高坂若葉です。よろしくね」

 

 HRの時間を使って自己紹介を行い、穂乃果の斜め後ろの席に座ってHRを受ける。

 

「じゃあ先生、俺は着替えて来ます」

 

 HR終了後、先生に一言断りを入れてから教室を出て行く。

 

「それにしても驚いたね。まさか若葉君が来るなんて」

「本当です。穂乃果は…その様子だと知らなかったみたいですね」

 

 海未は机にぶーたれている穂乃果を見て苦笑いする。

 

「お兄ちゃんも私にくらい言ってくれれば良かったのにー」

「それじゃあサプライズじゃなくなるじゃん?」

「そうですね。サプライズとは何も知らされない方がネタバレされずに済みますもんね」

「まぁまぁ穂乃果ちゃん。今回は若葉君の言う通りだよ。……って」

「若葉!?」

「若葉君!?」

「お兄ちゃん!?」

 

 3人で話していた筈が気付けば若葉が戻って来ていた。

 先程はサイドポニーにしていた髪を下ろし、服も音ノ木坂の制服でなく紺色のブレザーを着ている。

 

「や、先程ぶり」

「むー急に現れないでよ。びっくりするじゃん!」

「ハハハ悪い悪い」

 

 穂乃果が机をガタンと鳴らし立ち上がるも、今は休み時間なので対して周りの注意を引くことは無かった。

 

「ん? 何か落ちたよ?」

 

 穂乃果が机を鳴らした時に落ちた出あろう紙の束を拾うと

 

「スクールアイドル?」

「あ、それは!」

「へぇー三人でスクールアイドルやるの?」

「いえ、まだやるとは決まった訳では」

「海未ちゃんが渋ってるだけじゃん」

 

 海未の否定の言葉に穂乃果がボソッと言い返す。

 

「な! それは違います! 先程も言った通りこの人達は沢山の努力をしてここまで出来る様になったのです。穂乃果みたいに遊び半分でやっても途中で諦めるのがオチです」

 

 どうやら昨日渡したUTXのパンフに載っていたA-RISEの記事を読んだ様だ。

 

「まぁまぁ、やってみたらいいんじゃない?」

「若葉まで! 軽率過ぎます! ハッキリ言ってアイドルは無しです」

 

 海未の一言と同時に授業開始の鐘がなる。

 

「はーい授業始めるぞー」

 

 先生が入って来た為取り敢えず話し合いは終わった。

 それから放課後までの休み時間中、穂乃果は海未の説得をしていた。

 若葉も二人の会話に入ろうとするも、やはり転校生は色々と質問攻めに会うのだろう。クラスメイト達に囲まれて放課後になった。

 

 

 ☆放課後

 若葉は1人校舎内を歩いていた。周りからの視線を無視して、挨拶されれば返す。そんな感じに自由気ままに歩いていた。因みに職員室への挨拶はもう済ましている。

 

「〜♪〜〜♪」

 

 静かな校舎内にピアノの音が響く。それに合わせて歌声も聞こえて来た。

 

「へぇ〜綺麗な声だな」

 

 若葉はフラッと音のする方へ歩を進める。

 

「音楽室?」

 

 足を止めた場所は音楽室の前だった。若葉はノックをせずにドアを開ける。

 

「失礼しまーす」

「ゔぇえ!」

 

 若葉が中に入るとピアノの前に女子が座っていた。その子が若葉に気が付くと

 

「何入って来ているのよ!」

 

 いきなり文句を言って来た。誰だって自分の時間を邪魔されたら文句は言うだろう。

 

「いやー綺麗な旋律と歌声が聞こえてね。そしたら君がいたって感じかな?」

「意味が分からないんですけど」

「あれ、お兄ちゃん?」

 

 若葉が少女と話していると穂乃果が音楽室に入って来た。

 

「穂乃果? 何で此処に?」

「いやー何か綺麗な歌声が聞こえたから」

「あーそれはこの子だよ。名前はえーと……」

 

 そこまでいってやっと二人は彼女の名前を知らない事を思い出す。

 

「自己紹介がまだだったね。俺は高坂若葉。で、こっちが妹の高坂穂乃果」

「よろしく!」

「……西木野真姫よ」

「へぇー西木野さんって言うんだ〜」

 

 若葉と穂乃果は何処か嬉しそうに笑う。

 

「ちょっと待って。俺って事は貴方もしかして」

「ん?そうだよ。今日から転校して来た試験生だよ」

「へぇ〜貴方が、ねぇ……」

 

 観察する様にジーッと若葉を見る真姫。

 

「何かな? ……ハッ! まさかお昼の米粒が顔に!?」

「無いですよ。それじゃあ私はもう帰りますね」

「あ、ちょっと待ってよー!」

 

 帰り支度はしてあったのか鞄を持ち上げ音楽室を出て行く真姫。それを追い掛ける穂乃果。若葉は少し考え事をしてから音楽室を出て行く。行き先は弓道場だ。

 若葉は海未が弓道部に入っている事を穂乃果から聞いていたので見学する予定なのだ。しかしその予定は達成されなかった。何故なら

 

「アルパカ……だと……」

 

 弓道場に行く途中に白と茶色、2匹のアルパカを発見したからだ。

 

「へぇ〜アルパカを飼ってんだ。音ノ木坂って凄いな…」

 

 近付いて触って良いのか迷っていると

 

「あ、あの〜」

 

 恐る恐るといった感じに声を掛けられた若葉は声のした方に振り返る。そこには眼鏡をかけた女生徒がいた。

 

「え〜と、触ります?」

 

 女生徒の言葉にイマイチピンと来なかった若葉だが、それがアルパカの事だと気付き頷く。

 

「この首の辺りが凄く気持ち良いんですよ」

 

 そう言いながら白のアルパカに歩み寄り首元を触る。

 

「へぇ〜随分懐かれてるね。もしかして飼育委員なのかな?」

「へ? あ、はい。そうです。飼育委員1年の小泉花陽と申します」

 

「俺は2年の高坂若葉。気軽に若葉さんと呼んでね」

 

 お互いが自己紹介をしていると

 

「あー! 若葉君見つけたー」

「かよちん見つけたにゃ〜!」

 

 校舎からことりの、グラウンドからは別の女生徒の声がする。

 

「お互いにお迎えが来たみたいだね。じゃあまたいつか、えーと小泉さん」

「そうですね。またいつか、若葉先輩」

 

 そう言って二人は各々の待ち人の方へ歩き出す。

 若葉はことり達と合流し、帰宅。

 

 

 

 とは行かずに何故か向かうは生徒会室。

 

「あの、穂乃果さんや?何故に生徒会室に行くのか説明願っていいかな?」

 

 1人話について行けてない若葉が妹の穂乃果に尋ねると

 

「え?だって今からアイドル研究部の申請に行くんだよ?」

「行くんだよ?って海未は良かったの?」

 

 若葉は今朝まで渋っていた海未に確認を取る

 

「ええ。もう決めたことですし」

 

 と肯定される。

 

「で! 今から生徒会長さんにこれを出しに行くの!」

 

 穂乃果の見せた一枚の紙を見てみると、そこには『部活動設立申請書』と書かれていた。

 

「なぁなぁ穂乃果さんや、俺は幻覚でも見ているのかい?」

 

 若葉はその紙の下に書かれているモノを見て穂乃果に抗議し始める。

 

「なんで俺の名前まで入ってるんだよ!!」

 




次でアニメ第1話は終わる……ハズです!
今回は真姫ちゃん、花陽ちゃんに会いましたね〜

それでは誤字脱字、感想、アドバイス等をお待ちしております!


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アイドル部設立申請書ですby穂乃果

やっとアニメ1話分が終わり掛けた!(あれ?)
て、事は?そうです。あの2人が登場します!

そしてあと少しでUAが6.000に到達します。
思いもよらない数に戦々恐々しています。
目指すは失踪しないで最後まで行く!です。


2/22
加筆修正


「なんで俺の名前まで入ってるんだよ!!」

「え? なんでってお兄ちゃんも入るんでしょ? アイドル研究部」

「いや、俺は遠慮しときます…」

 

 穂乃果が首を傾げて言うと、若葉は目を逸らしながら敬語で答える。

 

「ねぇ……お願い」

「うっ! ……し、仕方ないな。入るよ。但し! 俺がやるのはあくまでサポートだからね?」

「ありがとう、お兄ちゃん!」

 

(何処の世界に涙目&上目遣いで頼み込む妹を無下にする兄がいるかよー!」

 

 と内心叫んでいた若葉であったが

 

「お兄ちゃん声に出てる」

「なん…だと……。一体何処から?」

「『無下にする兄がいるかよー!』だけです」

「マジか…」

 

 口から出ていた事を知らされた若葉は廊下に膝と手をついて落ち込む。

 

「ホラ若葉もそんな所で項垂れて無いで行きますよ」

「でもさ、部活って四人で申請出来るの?」

「さあ? ことりちゃん分かる?」

 

 校則など知らない穂乃果はことりに聞くが

 

「ん〜ことりも分からない」

 

 ことりも知らないようで苦笑いしている。

 

「四人の部活動もありますし、多分大丈夫でしょう」

 

 海未の言葉に頷く2人。

 

 

 

 そして気付けば生徒会室前。

 

「うぅ〜穂乃果、緊張して来た…」

「大丈夫だよ。きっと」

 

 生徒会室前まで来て穂乃果が言うと、隣に立ってることりが励ます。

 

「ん〜そこまで緊張はしないんだけどな〜」

 

 と何処か気まずそうな顔の若葉。

 

「早く入りますよ」

 

 と海未がノックをすると

 

「どうぞ」

 

 中から生徒会長であろう女生徒の声がする。

 

「し、失礼します」

 

 緊張しつつ穂乃果は生徒会室の扉を開ける。

 

「あら、貴方達。どうしたの?」

 

 どうやら若葉以外は面識がある様だ。廃校になるかもと知らせがあった日に少し話した、と若葉も穂乃果から聞いていた。

 

「これをお願いします!」

「これは?」

「アイドル部設立申請書です!」

「それは分かるわ」

「なら!」

「でもこれは受け取れないわ」

 

 穂乃果に申請書を返す生徒会長。

 

「どうしてですか!?」

「まぁまぁ。穂乃果落ち着いて」

 

 思わず声が大きくなった穂乃果を若葉は宥める。そして生徒会長の方を向き

 

「何故受理されないのか理由を聞いても良いですか?」

「貴方は?」

「えーと『試験生』と言えば分かりますか?」

 

 若葉は自分の身分を軽く話す。

 

「ええ。理事長から話は聞いているわ」

「では自己紹介させて頂きます。試験生の高坂若葉です」

「私は絢瀬絵里、この学校の生徒会長よ」

「ウチは東條希、副会長をやってるんよ。よろしくね」

 

 金髪をポニーテールにした絵里が名乗り、その後に長髪を後ろで2つに結んだ希が名乗る。

 

「それで、受け取らない理由だけど。部活設立には最低でも5人必要なの」

「でも校内には五人以下の部活動が多数あると聞いています」

 

「それでも設立時には五人居たハズよ」

 

 海未の言葉をバッサリと言い切る絵里。

 

「あと一人やね」

 

 希の台詞に穂乃果は何か心当たりを付けたのか

 

「……分かりました。行こう」

 

 と返事をして生徒会室から出て行こうとする

 

「ちょっと待って」

 

 のを絵里が呼び止める。

 

「どうしてこの時期にアイドル部を始めるの?貴方達二年生でしょ」

「廃校を何とか阻止したくて。スクールアイドルって今凄い人気があるんですよ?だから」

「だったら、例え五人集めて来ても認める訳にはいかないわね」

 

 穂乃果の台詞を最後まで聞かずに反対する絵里。

 

「「「え!?」」」

「どうしてか聞いてもいいですか?絢瀬先輩」

 

 驚く3人に構わず若葉は反対の理由を絵里に聞く。

 

「部活は生徒を集める為にするものでは無いからよ。それに思い付きで行動した所で状況は変えられないわ」

 

 絵里の最もな意見に何も言い返さない四人。

 

「馬鹿な事を考えてないで残り2年自分の為に何をするべきか、よく考えるべきよ」

 

 そう言って絵里は部活申請書を穂乃果に返す。穂乃果達は一先ず生徒会室を出ようとすると

 

「あ、高坂君は少し話があるから残ってて」

 

 若葉だけが絵里に呼び止められる。

 




絵里と希登場!
そして絵里に呼び止められた若葉はどうなるのか!

感想にて試験生が1人は不自然では?と言われましたので今後もしかしたら増えるかも!(正直名前や設定を考えるのがめんどゲフンゲフン)
まあ頑張ります!

補足ですが、アニメではこの後穂乃果達の会話&ミュージカルがありましたがそこは丸々カットします。
いやー歌詞を載せちゃいけないとなるとライブシーンをどうするか…悩みどころです

それでは(後書きが)長くなりましたが、誤字訂正、感想、アドバイス等お待ちしております!


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イヤな予感がしますね…by海未

今回は2話の冒頭の部分に当たるのかな?

それにしてももう8月ですね。全く月日が経つのは早い!
そして今日もパンが美味いっ!

本編どうぞ


2/22
加筆修正


次の日の朝。兄妹揃って家を出る。

 

「ねぇお兄ちゃん。さっきから何読んでるの?」

「んー?あぁコレだよ」

 

と若葉は家を出てから読んでいる冊子を穂乃果に見せる。それは音ノ木坂の歴史や校則などが載っている物だった。穂乃果達も入学した時に貰ったのだが、今は押し入れで埃を被っているだろう。

 

「これどうしたの?」

「昨日生徒会室から出る時、俺だけ残されたでしょ?その時に渡された」

 

本当なら理事長から渡される物なのだが何故か絵里から渡されたのだった。

 

「ふーん」

 

穂乃果は冊子を受け取りページをパラパラ捲っていくが、規則のページで手が止まる。

 

「ん?……これだぁ!」

「どうした?穂乃果」

「これだよお兄ちゃん!」

「だから何g」

「穂乃果先に学校に行ってるね!海未ちゃんとことりちゃんに会ったら教室の前で待ってて!」

 

それだけ言って穂乃果は学校に向かって走り出す。若葉はと言うと何事も無かったかの様に冊子を読みながら歩き出す。

冊子は若葉の手に戻されたので穂乃果の見ていたページを読む。そこには講堂についての項目だった。

 

「講堂なんてのもあるんだ…」

「講堂がどうかしたのですか?」

 

若葉が声のした方を向くと海未が首を傾げて立っていた。

 

「あぁ海未。おはよう」

「おはようございます若葉」

 

若葉は海未に先程あった事を話すと彼女から一言

 

「イヤな予感がしますね…」

「ま、変な事はやらないと思うよ?」

「そうだと良いんですが」

 

それから学校に着くまでは他愛ない話をして時間を潰した。

 

教室に着くと既にことりは席に着いて何かを書いていた。

 

「ことりーおはよう」

「あ、若葉君、海未ちゃん。おはよ〜」

 

若葉が挨拶するとことりは書いていた物を机の中に仕舞う。若葉がチラッと見た限りでは何か服みたいな絵だった。

 

「あ、そう言えば穂乃果が廊下で待ってて〜って」

「あ、皆揃ってたんだ!」

 

本日二度目の声の割り込み。若葉の台詞を途切れさせる穂乃果だった。

 

「穂乃果ちゃんおはよ〜」

「おっはよー!ってそうじゃなくて、今から生徒会室に行こう!」

 

「「「えっ?」」」

 

急過ぎる話に着いていけない3人。頭上には?マークが幾つか浮かんでいる。

 

「だから生徒会室にコレを出しに行くの!」

 

バンッ!と机の上に置いた一枚の紙を見る。

 

「講堂の使用届、ですか?何でまた」

「ライブをやるためだよ?」

「これどうしたの?」

 

ことりの質問に穂乃果は胸を張って

 

「さっき職員室で貰って来たんだよ!」

 

使用日時は1ヶ月後に控えてる新入生歓迎会の日の放課後だった。既に用紙には4人の名前が記入されていた。妹の仕事の早さに肩を落とす若葉。

 

「さ!朝のHRの前に出しに行こう!」

「行くのは良いけど…」

「ライブの事は控えた方が宜しいですね」

「分かってるって。じゃあ行こー!」

 

穂乃果に続く形で生徒会室に向かう。向かいながら若葉と海未は後ろの方で何か話し合っている。

 

「てゆうか、こんな時間から開いてるの?生徒会室って」

「多分開いてるとは思いますが…開いてない可能性の方が高いです」

 

ピンポンパンポーン

 

その時校内放送を知らせる音がスピーカーきら流れる。話を中断させて足を止め、スピーカーに耳を澄ませる。前では穂乃果とことりも足を止めている。

 

『2年1組の高坂若葉君、至急理事長室まで来て下さい。繰り返します。2年1組の高坂若葉君、至急理事長室まで来て下さい』

 

放送はそれだけ言って終わった。

穂乃果と海未、ことりは目の前で固まっている若葉を見つめている。一方、呼び出された張本人は何か呼び出される様な事をしたのか真剣に、全力で音ノ木坂に来てからの記憶を思い出す。

 

「お、お兄…ちゃん?」

「悪い!急用が出来たみたいだから生徒会室には3人で行って来て!!」

 

穂乃果に呼ばれて考えるのをやめ理事長室に向かって全力で、だが走らずに出来るだけ急いで向かう。

 




若葉は一体何をやらかしたんでしょうかね

UAが7.000を越えて嬉しい限りです。

誤字訂正、感想、アドバイス等お待ちしております!


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カードがウチにそう告げるんや!by希

何故だろう、他の投稿者さんの作品を読む度に自分の作品に自信が持てなくなる…
ま、それは置いといて←おい
今回は有名な(?)希のあの台詞が!

そして理事長室に呼び出された若葉を待っていた運命とは!?

それにしても最近は暑くなってすっかり夏!って感じですね


2/22
加筆修正


理事長室に着いた若葉はノックをして入室する。

 

「えーと、俺何かやらかしました?」

 

入室して直ぐに彩にその確認を取る。

 

「いえ、別にそうじゃないけど。何かやったの?」

「いや、そうじゃないなら大丈夫です」

 

彩の問いに否定で返すと少し微笑んでから

 

「貴方を呼んだのは紹介したい人がいたからよ」

「紹介した人、ですか?」

「ええ。入って来てくれるかしら?」

 

彩の台詞で理事長室の隣の応接室に続く扉が開き

 

「なっ、お前は!?」

 

そこから入って来た人物に驚く若葉。それを見て驚いた顔をして、楽しそうに笑う人物。そして驚いた表情の彩。

 

 

 

一方、穂乃果達はというと。

若葉が理事長室で楽しい、基誰かに驚く前、若葉と別れた時間まで戻る。

 

「若葉君行っちゃったね」

 

ことりは若葉が急ぎ足で向かった方向を見ながら呟く。

 

「一体何をやったのでしょう」

「んーお兄ちゃんの事だから問題起こしても気づかなさそうだからなー」

 

と海未と穂乃果に至っては心配どころか、本人が聞けば即否定する様な事を口走っている。

若葉君はそんな人じゃないと思うけどなー。と言うことりの言葉は2人の耳に入って来ない。

 

「取り敢えず生徒会室に行きましょう」

 

海未の一言で再び生徒会室を目指し歩き始める。

 

 

 

「失礼しまーす」

 

前回と同じ様にノックをし、中に入る。生徒会室には前日同様、絵里と希の2人だけがいた。

 

「朝早くから何?」

 

朝早くだからかなのか少し苛ついてる感じの絵里。

 

「講堂の使用許可を頂きたいと思いまして」

「部活動に関係無く生徒は自由に講堂を使用できると生徒手帳にも書いてありましたので」

 

「新入生歓迎会の日の放課後やなぁ」

 

用紙を穂乃果きら受け取りながら日付を見て希が言う。

 

「何をするつもり?」

 

生徒会としては何をするか把握する為なのか内容を3人に聞く。

 

「それは…」

「ライブです!」

 

絵里の質問に言い淀んだ海未の言葉を続ける形で穂乃果が宣言する。その言葉に絵里の顔が少し険しくなる。

 

「3人でスクールアイドルを結成したので、その初ライブを講堂でやる事にしたんです」

「ちょ、穂乃果!」

 

「まだ出来るかどうかはわからないよ?」

 

穂乃果の宣言に少しばかり難色を見せる二人。

 

「えー!やるよー!」

「待って下さい。まだステージに立つとは」

 

まだ少し躊躇いがあるのか海未が穂乃果に言い返そうとすると

 

「出来るの?そんな状態で。新入生歓迎会は遊びではないのよ」

 

そう言って用紙を穂乃果に返そうとした絵里の手を

 

「ええんとちゃう?」

 

横にいた希が止める。

 

「希!」

 

絵里は申請を断ろうとした時、自分の腕を掴んだ希を驚いた顔で見る。希はそんな絵里を無視して続ける。

 

「3人は講堂の使用許可を取りに来たんやろ?部活でもないのに、生徒会が内容までとやかく言う権利は無いはずや」

「それは…」

 

今度は絵里が言い返せなくなる。それを確認した希は講堂使用許可証を受理する。

 

「「「失礼しましたー!」」」

 

3人、特に穂乃果は受理して貰ったのが嬉しい様で、元気に生徒会室を出て行く。

 

そして三人が居なくなった生徒会室では絵里と希が話していた。

 

「何故あの子達の見方をするの?」

 

絵里は開口一番に1番気になっていた事を希に聞く。

 

「何度やってもそうしろって言うんや」

 

希は机の引き出しからタロットカードを取り出しながら言い、窓際に移動する。

 

「?」

 

その行動の意図が読み取れず不思議な顔をする絵里。

 

「カードが」

 

窓を勢い良く開け放つ。勢い良く開けたからなのか和風が巻き起こり、カードを幾枚も巻き上げられる。

 

「うわっ!?」

 

突然の風に短い悲鳴を上げる絵里とは反対に、両手を広げて風を一身に受ける希。そして

 

「カードがウチにそう告げるんや!」

 

 

 




と、云う訳で今回は区切り良く第2話のアバンで終わります。

え?全然本編進んでないじゃんって?それに関しましては誠に申し訳ないです。本編が碌に進んでないのに短編を並列で書くとか、自分の愚行に呆れています。





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ちょ!穂乃果!その隣の人誰よ!?by?

んー話が進まない…

今回は穂乃果達と別れた若葉の話がメインです。

それではどうぞ!


2/22
加筆修正


一方理事長室にて

若葉は彩とその隣に座っている少年と向かい合っていた。

 

「えと確認するけどお互い初対面…よね?」

「ええ完全なる初対面です」

「取り敢えず自己紹介でもしようか」

 

若葉より少し背の高い少年はの外見は水色の髪に青の瞳と、とても特徴的だった。

 

「俺の名前は佐渡夏希。気軽に夏希って呼んでくれや。学年は2年ね」

「あ、俺とタメなんだね。俺は高坂若葉。夏希と同じ2年だよ。あ、間違っても俺のクラスで高坂って呼ばないでね。ややこしいから」

 

夏希はよく分からない顔をしたが頷く。

 

「じゃあ若葉君に夏希君の案内は任せたわよ。夏希君は貴方と同じクラスだから」

「はーい。じゃあ行こうか、夏希」

「あいよ」

「「失礼しましたー」」

 

そして2人揃って理事長室を出て教室に向かう。

 

「いやーさっきは驚いたよ。会っていきなりお前は!とか言われたし」

「それに乗れる夏希も夏希だと思うけどね」

「ま、お互い様って感じか」

 

2人して思わず笑い出してしまう。

さて、ここで状況を思い出してみよう。幾ら朝早いと言っても時間としては普通に生徒が登校し始めている時間。廊下には既に何人かの生徒がチラホラ見える。

そして2人は(主に若葉だが)忘れていた。周りから見た2人の様子はさながら、髪を下ろした男の制服を着た穂乃果と、見知らぬ男子生徒が並んで楽しそうに歩いている様に見えるのだ。

若葉のクラスメイト達(他数名)は若葉を知っているが、全校集会等の場で挨拶していないので若葉を知らない人達は夏希が試験生1号に見える。

そして場所は女子校。これに先程の条件を合わせると夏希=穂乃果の彼氏。といった方程式が出来てもおかしくない。よって。

 

「ちょ!穂乃果!その隣の人誰よ?」

 

となる訳である。しかも騒ぎは大きくなる一方。

 

「これはマズイな」

「夏希、教室まで走るよ」

「え?ちょ、若葉!?」

 

若葉は夏希に小さな声で伝えてから走り出す。辛うじて反応出来た夏希も走る。そして大分遠回りしてから無事に教室に辿り着く。

 

「つか…あの理事長ぜってー……お前の紹介忘れてんだろ」

「そう言われてみればやってない…。本来なら…否定したいが……あの人ならワザとやりかねないよ」

 

2人は教室に着くなり、若葉は自分の、夏希は穂乃果の席に座る。そして息を整えながら現場の話し合いを行う。

 

「つか俺自身、夏希が来るの知らなかったし」

「マジか」

 

とまた少し笑みが零れる。と、そこまで行ってから突然2人が机に突っ伏す。

それを見ていたクラスメイト達曰く「糸の切れた人形みたい」だったそうだ。

 

「あれ?お兄ちゃん戻ってたんだ」

 

机に突っ伏す事十数分、若葉のよく知る声がした。

 

「おー妹よ。兄は今色々あって疲れたんだ…お前も早く席に着かないと姫に怒られるよ?」

 

姫というのは担任の二島姫子のあだ名である。姫と言っても清楚な姫では無く、お転婆姫の方と皆は感じているが、本人にそれを言うと怒られるので誰も言わない。

 

「うん。穂乃果もね、早く席に着きたいんだけど」

 

穂乃果がなにか言い難そうな口調になる。

不思議に思い若葉も隣の穂乃果の席を見ると

 

「zzzzzz」

 

夏希が爆睡していた。どうするか迷った挙句

 

「てい!」

 

取り敢えず軽く蹴った。夏希は蹴られて椅子から落ち起きた。

 

「……んー。おはよう」

 

思い切り伸び挨拶をする。そして周りを見回し

 

「ここ、どこ?」

 

完全に寝ぼけている。取り敢えず若葉は空席になっている自分の後ろの席に座らせる。

 

「起きた?」

「あ"ーゴメン寝ぼけてた」

「ねぇねぇお兄ちゃん。その人誰?」

「わ!若葉が2人!?」

 

夏希は若葉の後ろから顔を出した穂乃果を見て驚く。

 

「どうやらまだ寝てるようだ。おやすみ」

「大丈夫だ。この俺そっくりさんは妹の穂乃果だから」

「どうも、高坂穂乃果です!」

「えと……佐渡夏希、です」

 

まだ頭がはっきりしてない夏希は少しゆっくりと答える。

 

「はーいまたこのクラスに転入生が〜ってそこにおるんかい!」

 

HRの時間になり、姫が入って来る。そして夏希を確認してツッコミを入れる。

 

「ども先に教室に入ってました~」

「ま、別に良いんだけどね~」

 

相変わらずどこかノンビリというか、マイペースな姫にクラスの何人かが笑う。

 

「じゃあ挨拶よろしく~」

「は~い」

 

姫に呼ばれ、前に出る。

 

「えーと試験生第二号の佐渡夏希です。よろしくお願いします」

 

 

 




2人目のオリジナルキャラ佐渡夏希君が登場しましたね~
髪の色は真姫ちゃんやことりちゃんみたいな色が大丈夫なら、有りだろうと思い水色にしました。

誤字脱字・感想・アドバイス、お願いします。


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グループの名前って何て言うの?by夏希

1日に2投稿…初めての所業に疲れました…

遂にUAが10.000を突破しました!よっ、めでたい!

それでは今回も皆様を楽しませると信じてどうぞ!



2/22
加筆修正


時間は流れ昼休み。場所は学内の広場。そこには穂乃果、海未、若葉がいた。

 

「えっ!ライブの事言ったの!?」

「ええ、それはもうハッキリと」

 

現在若葉は朝の生徒会での事を2人から聞いていた。

 

「妹よ。海未が言ってた気がするが?ライブの事は控えておこうと」

ほうはっへ(そうだっけ)?」

 

穂乃果がパンを食べながら2人を見返す。

 

「またパンですか?」

「うち和菓子屋だからパンが珍しいの知ってるでしょ?」

「確かにそうですが…」

「おいおい海未。俺はキチンと弁当持参してるよ」

「お兄ちゃんのお弁当野菜が多いんだもん!」

 

流されそうな海未に若葉がツッコミを入れるが穂乃果に文句を言われる。

 

「健康的でいいじゃん?」

 

胸を張って答えると

 

「へぇ~若葉って料理できるんだ?」

「家が家だからね。って夏希!?どっから現れたの?」

「普通に来たんだけど…?」

 

穂乃果の後ろの木から夏希が現れる。

 

「おーい穂乃果~海未~」

 

さらに校舎の方からクラスメイトのヒデコとフミコ、ミカの3人が近付いて来る。

 

「掲示板見たよん?」

「スクールアイドルやるんだって?」

「海未ちゃんがやるなんて思わなかった~」

 

と口々に言う。疑問に思った海未は元凶であろう穂乃果に説明を求めると

 

「ライブのお知らせのポスターを貼ったんだよ?」

「あぁこれか」

 

穂乃果の言葉で何か心当たりがあるのか、夏希が携帯の画面を見せる。

そこには『初ライブのお知らせ!』と3人の絵が書かれたポスターが写っていた。

 

「そうそうこれこれ」

 

穂乃果はそれを見て頷く。

 

「それじゃあ頑張ってね~」

 

ヒデコ達はそう言ってその場を離れる。

 

「それじゃあ俺達も教室に戻るかね」

「そうだね」

「つか穂乃果達はスクールアイドルなんだな」

「そこら辺の事は教室に向いながら説明するよ」

 

広場から教室に帰る途中若葉は夏希にザックリと説明する。

 

「ふ~ん。じゃあ若葉はお手伝いさんってことか」

「そうなるね」

「1人だと大変じゃないのか?」

「たぶん」

「じゃあ俺も手伝うよ」

「ほんと!?」

 

夏希の申し出に反応したのは海未と一緒に前を歩いていた穂乃果だった。

教室に戻るとことりが何かノートに書いていた。

 

「ことりちゃんは何書いてるの?」

 

夏希がことりに聞くと

 

「あ、夏希君。穂乃果ちゃんと海未ちゃん、若葉君まで。ねえ見て、ステージ衣装考えてみたんだけど」

 

ことりが今まで書いていたものを見せる。そこには穂乃果をモデルにした衣装の絵が描いてあった。

 

「お、可愛いじゃん」

「ね、可愛いね!」

 

高坂兄妹が賛同するとことりは嬉しそうな顔をする。

 

「海未ちゃんと夏希君はどう思う?」

 

ことりは2人にも意見を聞く。

 

「こ、ここのスーッと伸びているものは?」

 

海未が足に当たる部分を指差しことりに聞くと

 

「足よ?」

 

笑顔で答えることり。それを聞いて何やら考えながら自分の足を見る。

 

「大丈夫だよ!海未ちゃんそんなに足太くないよ?」

「「穂乃果!?」」

 

穂乃果の一言に海未だけでなく若葉も反応する。

 

「穂乃果、今この場には俺と夏希がいることを忘れないでよ?」

「そうです!それに穂乃果の方こそどうなんですか?」

 

若葉に注意され、海未に自分はどうなんだ言われ、自分の確認をする。

 

「ふんふん…よしダイエットだ!」

 

何故かそういうことになった。

 

「つーかさ」

 

今まで黙っていた夏希が口を開く。

 

「どうしたの?」

「グループの名前って何て言うの?」

『……あ』

「おいおい…」

 

夏希に指摘され今更ながら気付く4人。そんな4人の様子に呆れながら溜め息を吐く夏希。

 

「と、取り敢えず放課後に考えよ?もう授業始まるし」

 

ことりの一言で時間を見ると確かに昼休みはもう終わる時間だった。

 

「そ、そうだね。取り敢えず放課後に決めよ!」

 

そして授業の準備を始める。5人であった

 

 

☆放課後

 

「う~んなんかピッタリな名前は無いよ~!」

 

穂乃果の言う通り、幾つかの候補が上がっているがどれもパッとしない。例に出して言うなら穂乃果考案の「陸海空」、夏希考案の「OZH3」等である。

 

「もういっそ皆に決めて貰えば?」

 

少しヤケ気味に若葉が言うと

 

「「それだ!!」」

 

穂乃果と夏希が若葉をビシッと指差す。

 

「丸投げですか…」

 

海未が少し呆れながら言い、ことりは困った様な笑顔をする。

そして名前募集の紙と共に箱をポスターの下に設置する。

 

「よーし次は歌と踊りの練習だー!」

 

穂乃果が元気に歩き出す…前に

 

「穂乃果、少し待ってください」

 

海未が腕を掴んで引き留める。

 

「どうしたの?まさか良いグループ名が!?」

「いえ、そうゆう訳ではないですが。5人もいるのですから二手に別れて探した方が、効率が良いと思います」

「確かにそうだね」

 

海未の意見にことりも賛成する。

 

「じゃあこれで決めようぜ」

 

夏希がどこからともなく3膳の割り箸を取り出す。

 

「どっから出したんだよ」

「で、これを…割る!そして~」

 

若葉を無視して割り箸を割り、2つだけ先っぽを赤く塗る。

 

「そのペンもどっから…?」

「これで引いた組で別れようぜ?」

「無視かよ…」

「それは良いですね」

 

そして夏希が色の部分を隠す様に握り、前に出す。

 

「さ、好きな棒をどうぞ!」

 

そして引いた結果見事に男女に別れた。

 

 




自分でハードルを上げといてオリジナル要素が少な過ぎました。

男女に別けた事に関しましては特に他意はございません。えぇきっと…多分…

それでは誤字脱字・感想・アドバイスをお願いします。


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☆……何これ?ふにゃふにゃしてて…あ、甘い…?by真姫

最初に言っておきます。この話には3年生'sは出て来ません!
理由は時系列が4話の後、1年生'sが入った後となるからです。
さらに今回は地の文一切無し&台本形式となります。読まなくても本編には支障は出ませんので、それを踏まえてどうぞ


そして今日は穂乃果と若葉の誕生日!おめでとう!


〜西木野邸 客室〜

 

海未(以下海)「なんでこんな時期(8月)に闇鍋なんてやるんですか?」

 

穂乃果(以下穂)「だってぇ、一度やってみたいじゃん?」

 

夏希(以下夏)「良いけど時系列とか色々と大丈夫なのか?」

 

花陽(以下花)「海未先輩も夏希先輩もメタ発言…」

 

凛(以下凛)「そう言うかよちんもだにゃ〜」

 

雪穂(以下雪)「うぅ〜何で私まで…」

 

若葉(以下若)「それは居ない三人の代わり」

 

海「若葉もメタ発言です」

 

真姫(以下真)「で、いつ始めるのよ」

 

ことり(以下こ)「もうお鍋の準備は出来てるよ〜」

 

夏「じゃあ電気消して来るわ」

 

真「それならリモコンで消せるわよ」ピッ

 

雪「わっ、本当に消えた」

 

こ「それじゃあことりから入れるね」

 

若「よし、それじゃあ皆が具材を入れてる間にルールを簡単におさらいするよ。夏希」

 

夏「おうよ!一つ、各自食材を持ち寄る事」

 

若「二つ、液体は禁止」

 

夏「三つ、他人の食材を見てはいけない」

 

若「四つ、鍋に入れるのは食べられるもの」

 

夏「五つ、生で食べてはいけない物は入れてはいけない」

 

若「六つ、よそった食材は必ず完食しなければならない」

 

夏「七つ、闇鍋を終了させたら速やかに片付け&換気をする」

 

若夏「「そして八つ!以上を以って楽しく闇鍋しましょう!」」

 

穂「お兄ちゃんと夏希君はどうしたのかな?」

 

海「気にしてはいけませんよ」

 

雪「きっと変な電波でも拾ったんだよ」

 

若夏「「そんなわけあるか!!」」

 

花「それより後は若葉先輩と夏希先輩だけですよ」

 

夏「それじゃあお先に失礼!」

 

若「最後に俺か…よし、入れたぞー」

 

真「それじゃあ蓋をするわよ」

 

凛「臭い物には蓋をしろ、だね!」

 

花「凛ちゃん。それだと私達が入れた食材が臭いみたいじゃあ…」

 

雪「実際闇鍋ってそんな感じですよね…」

 

穂「そんな事ないんじゃないかな」

 

海「いえ、計画性も無く様々な食材を入れて煮込んでいるのです。臭くなる可能性は高いですよ」

 

夏「そろそろ良いんじゃないか?」

 

こ「誰から行くの?」

 

真「言い出しっぺの若葉先輩からでしょ」

 

凛「じゃあ若葉先輩行ってみるにゃー!」

 

若「り、了解。蓋を開けるよ?」

 

カパッ

 

雪「うっ…」

 

花「凄い…匂い…」

 

若「よそうよ?」

 

夏「よそうのはオタマでな?箸だと崩れる場合があるかもだから」

 

穂「崩れるって…」

 

海「皆さんちゃんとした食材を入れたのですか?」

 

真「最後に自分の入れた食材を発表しません?」

 

若「だね。それでは頂きます」パク

 

花「あ、味はどうですか?」

 

若「うーん…何か、少し甘酸っぱい?けど甘い感じ?」

 

穂「何その味」

 

こ「甘酸っぱくて甘いってどうゆうこと?」

 

若「さあ?俺にもサッパリ」

 

夏「ポルナレフ状態乙」

 

若「うるせー。で、次はどうする?」

 

海「じゃあ時計回りにしましせん?」

 

花「それじゃあ私だ」

 

凛「おー。かよちん頑張るにゃー!」

 

花「うぅ…変なの引きたくないよ〜」パク

 

海「花陽、どうですか?」

 

花「ん〜…甘くて……しっとり柔らかい?」

 

真「何で花陽まで疑問形なのよ」

 

若「食べてみたら分かると思う」

 

花「うん。若葉先輩の言う通りだよ」

 

真「そ、そんなに言うなら次は私が食べるわよ」パク

 

穂「ど、どう?」

 

真「……何これ?ふにゃふにゃしてて…あ、甘い…?」

 

海「また甘い、ですか」

 

凛「だ、誰かが甘い系の物でも入れたんじゃないかにゃー?」

 

こ「あ、あははは」

 

若「ね?疑問形になるでしょ?」

 

真「そうね…」

 

穂「よし!次は私の番だ」パク

 

こ「どう?穂乃果ちゃん」

 

穂「……」

 

海「穂乃果?」

 

穂「……」

 

若「おーい妹よ、大丈夫かー?」

 

雪「お姉ちゃん?」

 

穂「ねぇ。これ入れたの、どっち?」

 

若雪「「はい?」」

 

穂「どっちがほむまん入れたの!?」

 

若「あ、やっぱ分かった?」

 

穂「お兄ちゃんだったの!?」

 

雪「お兄ちゃん、ほむまん入れたんだ…」

 

海「若葉、それは作った人に失礼ですよ?」

 

若「いや、さすがに自分で作ったヤツだよ」

 

凛「なら大丈夫にゃー!」

 

真「闇鍋してる時点でどうかと思うけど…」

 

穂「うーこのチョコみたいなのが付いてるけど、やっぱこの味飽きたー!」

 

花「そこまで分かるんですね…」

 

夏「で、次は俺か」

 

海「夏希は急に戻しますね」

 

夏「ん?ダメか?」パク

 

海「いえ、いけなくはありませんが」

 

若「どう?」

 

夏「こ、これは……チョコ…と、生クリーム?」

 

雪「もう何か入ってる具材に悪意を感じます」

 

夏「あ、あとこれは……あ、お粥だ」

 

「「「「お粥!?」」」」

 

若「全員ホントに何入れたんだよ」

 

穂「自分が入れた物でさえ安全とは限らなくなって来たね」

 

夏「次はっと、海未ちゃんだな」

 

海「うっ……。か、覚悟は決めました!」パク

 

夏「どんな感じ?海未ちゃん」

 

海「…どこかで食べた事がある気がするのですが…」

 

凛「闇鍋って怖いにゃ〜」

 

花「でも楽しいね」

 

真「さ、次は誰かしら?」

 

雪「つ、遂に私の番か」パク

 

こ「…どう?」

 

雪「何か色々な物が混ざってます…」

 

穂「色々な物って?」

 

雪「うーん。この甘いのは……チョコ?アンコ?でもなんかクリームっぽい?」

 

真「誰かチョコ系の物入れたのかしら」

 

海「ここまでのチョコ率を考えると、その可能性はあり得ますね」

 

雪「後は」

 

花「まだあるの!?」

 

雪「野菜?」

 

若「ここで突然の良心来たぁ!」

 

穂「はいはいお兄ちゃん落ち着いて。残るは凛ちゃんとことりちゃんだね」

 

凛「ことり先輩は先と後どっちが良いですか?」

 

こ「凛ちゃんが先で良いよ」

 

凛「それじゃあ…い、頂きます!」パク

 

真「どう?凛」

 

凛「うぅ〜…何かヌチャってしてるにゃー」

 

花「ど、どうゆうこと!?」

 

凛「凛に聞かれても困るよ〜」

 

海「後になればなる程に食材が酷くなって行きますね…」

 

雪「ことりさん大丈夫ですか?」

 

こ「……多分…」

 

穂「ことりちゃん頑張れ!」

 

こ「うぅ…頂きます」パク

 

凛「ことり先輩どうですか?」

 

こ「なんか甘酸っぱい野菜だよ〜!」

 

若「甘酸っぱい…野菜?」

 

真「と、とにかく。これでもう終わり、ですよね?」

 

夏「だな。全員よそったの食べたし、一巡したし」

 

穂「真姫ちゃん。電気おねが〜い」

 

真「分かりました」ピッ

 

海「鍋の汁の色が……」

 

花「見事なまでに茶色いですね…」

 

若「何入れたらこうなるんだ…?」

 

夏「取り敢えず換気だ換気。海未ちゃん、穂乃果ちゃん窓開けて」

 

穂「うん!」

 

海「分かりました」

 

カラカラカラ

 

若「俺は鍋の中身捨てて来る」

 

真「キッチンまで案内するわ」

 

数分後

 

夏「ハァー。だいぶ匂いも無くなったな」

 

海「そうですね。蓋を開けた時はものすごい匂いでした…」

 

穂「海未ちゃん。それ以上は言っちゃダメだよ!色々と思い出すから!」

 

若「さて、それじゃあ各々手元にある紙に持って来た食材を書こうか」

 

カキカキカキカキ

 

夏「皆書けたか?」

 

こ「書けたみたいだね」

 

凛「皆一斉に見せ合うにゃー!」

 

「「「「いっせーの!」」」」

 

若『ほむまん』

花『米』

真『苺』

穂『食パン』

夏『カステラ』

海『人参』

雪『せんべい』

凛『チョコ』

こ『ショートケーキ』

 

こ「………な、何とも言えないね」

 

真「チョコ入れたの凛だったの!?」

 

夏「そういう真姫ちゃんは苺じゃん!」

 

穂「夏希君こそカステラ入れてんじゃん!」

 

雪「でも食パンもどうかと思うよ?」

 

花「おせんべい…」

 

若「まぁまぁ落ち着いて。俺のがベストだったって事で、ね?」

 

「「「「ほむまん入れた奴が何を言う!!」」」」

 

ギャーギャーギャーギャー

 

 

 

こうして第一回μ's親睦会は幕を閉じた。

 

はてさて第二回はあるのか、ないのか…

 

 

穂「ていうか、ことりちゃんのショートケーキには誰も触れないんだね」

 

「「「「あ…………」」」」




えー補足をさせて下さい。
各々が食べた食材ですが以下の通りです。

若葉『苺』
穂乃果『ほむまん』
海未『食パン』
ことり『人参、苺』
夏希『米、ショートケーキ』
真姫『せんべい』
花陽『カステラ』
凛『米、せんべい』

※全員に『(溶けた)チョコ』が追加されます。

食材は完璧な思い付きです。

では誤字訂正、感想、アドバイス等お待ちしております!
なお、アンケートの方もまだまだ募集しておりますので、そちらもよろしくお願いします


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貴方の居場所はどこですか♪by若葉

さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい。

楽しい(かどうかはわからない)話しの始まりでい!

UAが先日12.000を超えましたー!(ワーパチパチ)


2/22
加筆修正


二手に別れた2人と3人。落ち合う時間を決め、練習できそうな場所を探しに行く。

 

☆男子組

 

若葉と夏希は校内を彷徨い歩き

 

「中々良い場所見つかんないね」

「つか、ここどこだよ?」

「さぁ?」

 

現在絶賛迷子中だった。

 

「ま、適当に歩いてたら知ってる場所に出るでしょ。校内はそんなに広くないし」

「取り敢えず来た道を戻るか」

 

そう言って元来た道を戻る。戻る筈だったが、なんせ道に迷っているので元来た道すらうろ覚え。さらに迷った結果

 

「職員室に着いたね」

「そうだな。しかし職員室で練習は無理だろ」

 

何故か職員室に着いていた。

 

「迷子の迷子の夏希君~貴方の居場所はどこですか♪」

「変な替え歌歌ってんじゃねえよ!」

 

夏希がツッコミを入れると同時に若葉が足を止める。

 

「どうした?」

「いや、ここって・・・」

 

急に止まった若葉を不思議に思い夏希が聞くと、彼は目の前の扉を指さす。

 

「その部屋がどうかしたのか?」

「アイドル研究部って書いてある」

「あん?そんなバカなことが・・・」

 

若葉の発言に夏希が扉の上のプレートを見る。

 

「あ、ホントだ」

「誰かいるのかな?」

 

若葉は扉を叩く。しかし返って来たのは無音だった。

 

「鍵は・・・開いてないな」

 

ガチャガチャとドアノブを捻る夏希。鍵が開いていたらどうするつもりだったのか・・・

 

「開いてないなら仕方ないね。夏希行こ~」

「そうだな。場所探さないとだしな」

 

それだけ言って再び歩き出す2人。

 

「お、屋上に着いたぞ?」

 

適当に歩いた結果、屋上に辿り着いた2人。

 

「鍵は・・・開いてるね」

「少し不用心過ぎね?まぁ都合は良いけどさ」

「日当たり良好だけど日影があまりない」

「しかも雨の日は練習できそうにないし」

 

屋上を見渡し誰もいないことを確認すると、候補として考える。そして何とかポスターの場所まで戻ることが出来た。がそこにいたのは

 

「あれ?あそこにいるのは・・・小泉さん?」

「若葉の知り合い?」

「茶髪の子の方はそうだけど、もう1人のツインテールの先輩は知らない」

「知らないのに先輩だって分かるんだよ・・・」

「リボンの色で分かるんだけど、その説明受けてないの?」

「・・・あ、ああ!説明ね!うん、受けたな!うん」

 

夏希は彩から説明を受けていたが見事に忘れていたのか、慌てた様に言う。

 

「あ、2人が行っちゃったぞ?」

「ポスター見てたからライブに招待してみようか」

「だな」

 

ポスターの元へ行き穂乃果達女子組を待つ。

 

 

 

時は少し戻る。

 

☆女子組

 

穂乃果、海未、ことりの3人は体育館に来ていた。そこではバレー部とバスケ部それにバドミントン部が活動していた。

 

「むーここも使えそうにないね」

 

入口から中を覗いた穂乃果が不満そうに呟く。"ここも"と言ってる様に穂乃果達は既にグラウンドや広場を見て回ったのだが、どこも既に他の部活動や委員会が使っていたのだ。

 

「職員室に行けば空き教室の鍵貸して貰えると思うよ?」

 

主な場所は使えないため空き教室を使おうと空き教室の戸を開けようとするも、そのすべてに鍵が掛かっていた。それを見たことりの言葉で職員室に向かう一向。

 

「空き教室を開けて欲しい?こりゃまた何で」

「スクールアイドルの練習をするため・・・です」

「お前らが?スクールアイドル?・・・フッ」

「あぁ!今鼻で笑われた!?」

 

職員室にて鍵の管理をしている先生に交渉するも一笑に付された。職員室から出て廊下にて3人で話し合うも

 

「そろそろ時間です。集合場所に向かいましょう」

 

結局何の収穫もなく時間が来てしまった。ポスターの場所の戻ると若葉と夏希は既に戻っていた。

 

「ごめーん!待たせた?」

「いや、そんなに待ってないよ」

「で、どうだった?」

「申し訳ありませんが、こちらはこれといった収穫はありませんでした」

「若葉君達はどうだった?」

「まぁ見つかったっちゃー見つかったかな?」

 

そして5人で屋上に向かう。屋上を見た3人は先程の2人と同じ感想を言う。

 

「よし!場所も決まったし、歌の練習をしよう!」

「うん!」

「はい!」

 

穂乃果を真ん中に3人が横に並ぶ。若葉と夏希は入り口の近くでその様子を見る。

 

「………」

 

しかし幾ら待っても歌声は聞こえない。それから5人は歌詞が出来てない事を思い出した。

 

「歌詞は海未ちゃんが書くとして、作曲は誰に頼む?」

「う〜ん…夏希君は出来る?」

「生憎と俺は楽器系は絶望的でね」

「若葉君は……無理だね」

「ねえことり?答え聞く前に諦めるの辞めない?」

「お兄ちゃん出来るの?」

「出来ないけど?」

 

と雑談、もとい緊急会議をその場で開く。

 

「前の学校の奴に頼めそうなのいないのか?」

「それを聞くって事は夏希もか」

 

最終手段として若葉と夏希の学校の知り合いに頼もうとするも、該当する者はいない。

 

「つか、あの子。え〜と…そう。西木野さんは?」

「あ!あの歌の上手い!」

 

若葉の言葉に思わず大きな声を出す穂乃果。他の3人は何の事か分からず首を傾げる。

 

「作曲の方は一応当てはあるから、ちょっと今から行ってくるよ」

 

そう言って若葉は屋上を後にした。

 

「じゃあ俺らは帰ろっか」

「そうだね」

 

という訳で若葉を置いて帰宅した。

 

一方若葉は音楽室に向かっていた。一年の教室に行ったらクラスの子から、真姫は音楽室にいるかもしれないと聞いたので向かったのである。

 

「西木野さんい---ないな」

 

音楽室の扉を開けようとするも、鍵が掛かっているので開かなかった。真姫はどうやら帰ったみたいだ。

 

「仕方ない。出直すか」

 

そう言って若葉も帰宅したのだった。

 

 




今回は場所探しでしたね。

それにしてももう8月。暑いですね

ではまた次回もよろしくお願いします!


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今ダイエット中なの知ってますよね?by海未

今回はあの人が出て来ます!

そして遅々と本編が進行してる中、中々オリジナル要素が入れられない…

ま、それは置いといて←おい

今回もどうぞ!


若葉が帰宅すると母・裕美香が店番をしていた。試作品であろう団子を食べながら。

 

「ただいま。つか母さんも良く食うね」

「だってお父さんの作る和菓子美味しいんだもん」

「せめて客に見えない所で食べようよ・・・」

「それじゃあ若葉が店番よろしくね」

 

それだけ言うと裕美香は団子の乗った皿を手に奥に引っ込む。

 

「俺が着替えるまで待ってくれてもいいんじゃね?」

 

などと1人カウンターで愚痴ってると店の戸が開く音がする。若葉は営業スマイルを浮かべ

 

「いらっしゃいませー。って海未か」

「私じゃ何か不都合でも?それより若葉は店番ですか?」

「まぁね。良く言えば家の手伝いかな?」

 

店に入って来たのは若葉よりも先に帰ったであろう海未だった。彼女は部活帰りなのか背中に矢筒を背負っている。

 

「穂乃果なら多分部屋に居るよ」

「そうですか。ありがとうございます」

「どういたしまして。それより何か持って行く?」

 

と若葉はショーウィンドウの中を手で指すが

 

「今ダイエット中なの知ってますよね?」

 

と断られる。海未が上に行くと同時にまた店の戸が開く。

 

「いらっしゃ…夏希かよ」

「よっ!」

 

扉を開けたのは夏希だった。

 

「今日集まろうって話をしてたから来ちゃったぜ」

「俺聞いてないんだけど?」

「だって決めたのお前がいなかった時だからな」

 

何言ってんだこいつ。といった顔をしている夏希に若葉が一言言おうとした時、3度店の戸が開く。

 

「いらっしゃいませー」

「よっ、元気にやってるか?」

 

入って来たのは前の学校のクラスメイトであり、中学からの親友田中翔平だ。

 

「どちら様ですかー?」

「おいおいおいおい、中学からの親友である俺を忘れたとは言わせ」

「忘れた」

「台詞の途中で言うなよ!てか、え?ホントに忘れたの!?」

「んな訳ないでしょ。そっち離れてからまだ1週間も経ってないし。つかなんか鬱陶しくなってね?」

 

若葉が久しぶりに会った翔平に思わず本音を漏らすと、翔平はその場で膝を着く。

 

「で、どうしたの?」

「おいおい、俺がここに来るのに理由は1つ」

 

ビシッと若葉を指さす。若葉は自分の体を抱いて

 

「お前まさか・・・そっちの道に走ったの?」

「違ぇよ!なんでそっちにいくんだよ!そうじゃなくて」

「はいよ。いつものヤツでしょ」

 

と翔平を弄りながらも翔平がいつも買っている商品を包む。

 

「ほい、丁度ね」

 

若葉が翔平から代金丁度の金額をもらうと、店の中に笑い声が響く。

 

「夏希?」

「んーっと若葉の知り合い?」

 

翔平がカウンター内の夏希を見てから若葉に耳打ちすると

 

「あー。あいつは音ノ木坂の試験生で佐渡夏希。おーい夏希ー紹介すっからこっち来てー」

 

若葉に呼ばれ、カウンターから出てくる。若葉は椅子を3つ用意し、自分がその内の1つに座り、2人にも座るように仕草する。

 

「では改めて。こいつは田中翔平。音ノ木坂に来る前のクラスメイトにて親友」

 

若葉の紹介に合わせて頭を下げる翔平。

 

「で、こっちは音ノ木坂に通ってから知り合った佐渡夏希」

 

夏希も頭を下げる。これで若葉からの紹介は終わりである。

 

「よろしくお願いします。夏希……さん?」

「ハハハなんで敬語なんだよ。学年が一緒なんだからフランクにタメ口で良いよ」

「いや、良くは無いだろ。初対面の人相手にタメ口とか無いだろ!?」

 

夏希のあまりのフランクさに若葉がツッコミを入れる。それから少しの間3人で話が盛り上がる。

そして翔平が帰って数分後

 

「お兄ちゃん、お兄ちゃん!ちょっと来てぇ!」

 

2人で椅子に座って休んでいると階段の上から穂乃果に呼ばれた。レジを裕美香と代わり、夏希と共に2階に上がる。

 

「穂乃果、入るぞ?」

 

「う〜ん、いいよ〜」

 

穂乃果の部屋の前に行き、戸をノックする。穂乃果から入室の許可を得て戸を開けると、何故か穂乃果が床に俯せで転がっていた。机の傍にはことりと海未がパソコンを前に座っていた。

 

「……え〜と、何してんの?」

「ちょっとね……ねぇお兄ちゃんと佐渡君って腕立て出来る?」

 

穂乃果の突然の問いに2人は顔を見合わせる。

 

「いや、まぁ俺は出来るけど」

「俺も出来るよ?けどなんで?」

「ちょっとやってみてよ」

 

と穂乃果に勧められてその場で腕立て伏せをやる事になった。

 

「1、2、3、4」

 

「5、6、7、8」

 

取り敢えずといった感じで2人は10回程やって腕立てを止める。

 

「やっぱり男の子だね」

 

ことりの台詞に揃って首を傾げると

 

「じゃあ笑いながら出来る?」

「笑いながら?」

「そう笑いながら!」

 

2人はまた顔を見合わせ笑顔を浮かべながら腕立てをする。その光景は面白いものである。

 

「やはり体力作りが必要なんですよ」

「あースクールアイドルの話ね」

「朝練でもするの?」

「うっ、お兄ちゃんまで海未ちゃんと同じ事言う」

「お兄ちゃんまでって?」

 

若葉と夏希が穂乃果に訳を聞くと、A-RISEみたいに歌って踊るには体力が必要なので朝練をしようってことらしい。

 

「この辺だと神田神社がいいんじゃないか?」

 

夏希が提案し、その場で可決される。練習メニューはその場で若葉と夏希、海未が考えて翌朝から練習開始と決めた。時間は6時30分、集合場所は神社の境内とした。

 

「じゃあまた明日ー」

「それではまた明日」

 

一先ず決めることだけを決め、その日は解散となった。

皆が帰ってから若葉は気になった事を穂乃果に聞く。

 

「そう言えば歌詞を海未に決めた理由ってやっぱり?」

「うん!中学の頃のね」

「やっぱりか…」

 

若葉は心の中で合掌した。




えー懐かしの、と言っても2話ぶりですが、翔平が出てきました!

少し、いやかなり若葉のキャラがぶれていると思いますが、まぁそこはホラ…ね?察してくださるとありがたい限りです。

活動報告のアンケートも締め切りまであと僅か!
貴方の一票がことり母の名前を決める!

それでは誤字訂正、感想、アドバイス等お待ちしております!


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勝ったぁー!by若葉

ことりの母の名前が決まりました!
詳しくはWebで!……は無く、活動報告にて載せております。

それにしても高坂夫妻の名前は完璧なオリジナルです。多分パクリにはなってないハズです…多分。

ではどうぞ!


次の日の朝。若葉は5時に起きていた。

いつもより早い時間に起きた為か少し眠そうな目を擦りながら洗面所へ向かう。

顔を洗い、目を覚まさせると早めの朝食(飲料ゼリー)を摂る。その後、学校の支度をしジャージに着替える。

そして時計を見ると5時45分を示していた。

 

「穂乃果ー初日から遅刻かー?」

 

若葉は穂乃果の部屋の前で呼びかけること数分、なにやら部屋の中を忙しなく動き回る音がする。

 

「寝過ごしたぁ!」

 

穂乃果が勢い良く部屋から飛び出す。

 

「遅い」

「あうっ」

 

危うくぶつかりそうになった所で若葉が穂乃果の頭に軽くチョップをする。

 

「準備は?」

「バッチリ!」

「時間は?」

「……!早く行こ!お兄ちゃん!」

 

穂乃果は時間を確認すると若葉の腕を掴み玄関へ急ぐ。

 

「それじゃあ、行って来まーす!」

「行って来ます」

 

片や叫ぶ様に、片やいつも通りに挨拶をし、家を出る。既に起きていて厨房で下準備をしていた父、誠は1人微笑んでいた。

 

☆☆☆

 

「それにしても2人とも遅いですね」

 

海未は絶賛イライラ中だった。理由は簡単、朝練開始時間まであと少し。なのにだ、だというのにだ

 

「な・ん・で!あの2人は来てないんでしょうね」

 

そう笑顔でことりと夏希に聞く。

 

「さ、さぁ?」

「あ、来たみたいだよ!」

 

ことりが階段を指差すと丁度話題になっていた兄妹が階段を駆け上っていた。

 

「遅かったですね。また寝坊ですか?」

「う、海未ちゃん!」

「笑顔が怖いよ!」

 

その後海未からお叱りを受け、準備体操をしてから階段ダッシュを始める。

 

「ねぇ1ついいかな」

「奇遇だな俺も一1聞きたいことがあるんだ」

 

今若葉と夏希は3人の階段ダッシュの時間を計っている。

 

「「なんでジャージ(制服)なんだよ」」

 

そう2人の服装はジャージと制服である。

 

「なんでも何も俺らはサポートなんだから制服でもいいじゃん?」

「むしろサポートなんだからジャージでしょ」

 

と話す2人の頭上に「?」が浮かぶ。どうやら2人の思っているサポートの服装が違う様だ。

 

「どっちかに統一したいね」

「じゃあこれで決めるか」

 

と階段を指す。夏希は階段ダッシュで先に5往復した方の服装にしよう。と提案しているのだ。

 

「その勝負乗った」

「そんじゃ穂乃果ちゃん達のダッシュが終わったら勝負だ」

 

と話し合い穂乃果達が終わるのを待つ。

そして海未が終わり、ことりが穂乃果より少し遅めに走り終わる。それを迎えると同時にサポート2人は階段の上に立ち、走り始める体勢をとる。スタートの合図は海未に頼んでいる。

 

「それではいいですね?…よーい、スタート!」

 

海未の合図で同時にスタートを切る2人。階段を駆け下り、また駆け上る。1往復目は夏希の方が1.2段早かった。しかし2往復、3往復と走ってる内にその差は縮まり4往復目にして同時に上に着いていた。そしてラスト1往復…結果は……

 

「若葉の勝ちです!」

 

僅差で若葉が先に階段を登り切っていた。

 

「勝ったぁー!」

 

これにて第1回サポート班徒競走は幕を閉じた。第2回があるかは神のみぞ知る…

その後はクールダウンをし、制服に着替えて境内にて少しばかりの休憩をとっていると、希に会い神社にライブ成功を祈願してから5人で学校に向かった。

 




穂乃果と雪穂、その名前に関連性のない裕美子と真。何故「穂」の字が無いのかって?単純に思い付かなかっただけです。

そういえば若葉も関連性無いな……

それではいつもながらですが、誤字訂正、感想、アドバイス等お待ちしております!


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俺は昨日もこんな事を経験したよby若葉

UAがにゃ、にゃんと!1.6000人を越えたにゃー!!(何故か凛風)

ヤバイヤバイ!話出す順番間違えたー!ので、『オリキャラ紹介と呼び方』をこの話の後に移動させます!あ、結局プロローグの次に置きました。
\(・_\)それは(/_・)/おいときます

それでは〜本編へどうぞ!


無事遅刻すること無く5人揃って学校に着く。教室に鞄を置いてから若葉は1年生の教室に向かう。一応グループの代表として穂乃果も一緒である。

 

「う〜お腹空いたよ〜」

 

その穂乃果は現在空腹でフラついていた。

 

「朝ご飯食べないからだよ。教室に戻ったら10秒飯上げっから、今は我慢して」

「わーい!お兄ちゃん大好きぃー!」

「はいはい」

 

若葉は抱きついて来る穂乃果を剥がしながら、内心喜ぶ。やはり兄としては妹に嫌われたく無いのだろう。シスコン?多分違うと思います。

 

「失礼しまーす!」

 

穂乃果が教室のドアを開けて入る。若葉もそれに続いて入る。

 

「えーと、私はスクールアイドルをやってる高坂穂乃果です!」

 

と教壇に立って言うが、1年生達の反応はあまり無かった。

 

「あれ?」

「まだ浸透してないみたいだね」

「そんなぁー」

 

がっかりする穂乃果を横目に若葉は教室を見渡す。

 

「どうやら居ないみたいだね」

 

お目当ての西木野真姫は居ないようだ。

 

「また後で来よっか」

「うん」

 

そして1年生達と少し話してから教室を出る。が、穂乃果がドアを開けようとした時、廊下側からドアが開く。

 

「あ、西木野さん!」

「な、何ですか!?」

「ちょっと話いいかな!?」

 

穂乃果は驚いて動けない真姫を引っ張って何処かへと行ってしまった。若葉がどうしようか迷っていると

 

「あ、若葉先輩。おはようございます」

「ん?あぁ小泉さん。おはよう」

「にゃん?かよちん、その人は誰かにゃー?」

「あ、凛ちゃん。この人は2年生の高坂若葉先輩だよ」

「初めまして。高坂若葉です。気軽に若葉さんって呼んでね」

 

花陽に紹介してもらい、改めて自己紹介をする。花陽と同じ言い方なのは気のせいだろう。

 

「え〜と、星空凛です。よろしくにゃー!」

「よろしくね、星空さん」

「ん〜出来ればでいいんですけど、凛、って呼んでくれると凛的に嬉しいかにゃ〜なんて…」

「分かった。じゃあ凛ちゃん、花陽ちゃんこれからもよろしくね」

 

少し遠慮した様な様子で頼んで、それが受諾され喜ぶ凛。いきなり名前で呼ばれて驚く花陽。それし何処か照れてる様な若葉。

 

『2年1組の高坂若葉さん、佐渡夏希さん。至急理事長室まで来て下さい。繰り返します。2年1組の…』

 

その空間を壊すかの様な呼び出し。

 

「なんだろう。最近物凄く似た経験をした様な…とにかく俺は理事長室に行くね」

 

と若葉は別れ際に連絡先を凛と花陽に渡す。

 

「何かあったら連絡してね〜」

 

手を振り走り去る。イマイチ状況把握が出来てない2人は廊下でポカーンとしていた。

 

☆☆☆

 

若葉が理事長室に向かっている途中で夏希と会った。

 

「よ。転校した翌日に呼び出し喰らうとは思わなかったぜ」

「俺は昨日こんな事を経験したよ」

「あーあん時か」

 

夏希は自身が音ノ木坂に転校して来た時を思い出して少し笑う。

 

「そういえば昨日は初めて会ったのにお前に無茶ぶりされたなぁ」

「そうだね」

 

理事長室に着き、服装を確認する。お互いにおかしい所は無いのを確認し合いノックする。

 

「入っていいわよ」

 

彩の返答を聞いてドアを開け、理事長室に入る。

 

「彩さ〜ん。何か問題でも起こしました?」

 

若葉は前回と同じ事を聞く。

 

「何かやったの?」

 

これまた前回と同じ事を答える彩。

 

「いや、起こしてないと思いますけど…」

「理事長先生一ついいですか?」

「何かしら?夏希君」

「どうして集会を行って俺らの紹介をしないんですか?」

「それはね試験生がまだ揃ってなかったからよ」

「揃ってないって、つまり俺らの他に試験生が居るって事ですか?」

 

若葉の問いに頷く彩。

 

「貴方達を含めて3人の試験生を我が校は迎え入れるの。で、彼が3人目の試験生よ」

 

彩が応接室のドアを開けるとドアを潜って1人の男子生徒が現れる。

 

「初めまして。片丘愛生人です。宜しくお願いします」

 

赤髪赤目の少年が頭を下げた。




さて、これでオリ主全員出した訳ですけども、愛生人の読みは次回に持ち越させて頂きます。

書いてて思うのがオリ主の髪の色が派手だな〜とね

そしてお気に入りが100を越えました!まさか100まで行くとは思わなかったのでとても嬉しいです。

今回はアニメで言う所の2話の中盤に当たります。しかし何故か、もう筆者の頭の中では2期最終回前後の話を考えております。(←まだそこまでの流れが出来てないのに)
書き溜めもしたい!けど時間が……て感じです。

ではでは!誤字訂正、感想(←これ重要!)、アドバイス等お待ちしております!


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一応居ますけどby若葉

さぁ!前回最後に出て来た愛生人君の紹介回ですよ!

どうぞ!


「改めまして片丘愛生人です。人を愛して生きるで『あきと』って読みます」

「高坂若葉です。よろしくね」

「佐渡夏希だ。よろしく」

 

あれからソファに座り自己紹介をする。

 

「所で貴方達2人のどちらでもいいのだけれど、1年生に知り合い居るかしら」

 

彩の言葉に2人は顔を見合わせる。

 

「一応居ますけど」

 

若葉は凛と花陽を思い浮かべながら答える。夏希は特に居ない為首を横に振る。

 

「よかった。それじゃあ愛生人君を1年生の教室までの案内を頼めるかしら?」

「え、彼は1年生なんですか?」

 

夏希が驚いた顔で彩に聞き返す。

 

「そうよ。流石に3年生は居ないけど、1年生にも必要と思ってね。そうそうさっきの夏希君の件だけど」

「と、言うと挨拶の話ですか?」

 

若葉の言葉に頷く彩。

 

「今日の6時間目に全校集会を開く事になってるのは知ってるわよね?」

 

夏希と若葉は朝のHRで姫から聞いていたので頷く。

 

「その時に若葉君に挨拶して貰うからよろしくね」

「何で俺なんですか?」

「だって貴方が1番音ノ木坂歴が長いじゃない」

「音ノ木坂歴って…そんなことより、だったら夏希もそう変わらないじゃないですか」

 

若葉の言う通り夏希が転校して来たのは1日違いなのだ。

 

「だって愛生人君は今日来たばかりだし、夏希君は、ね。それに若葉君は昨年の文化祭にも来てくれてたみたいだし?」

 

彩の言う通り若葉は昨年の文化祭に来ていた。理由は穂乃果にせがまれたからであり、不純な動機はない。

 

「じゃ、頼んだわよ」

「はーい」

 

若葉は渋々返事をし、3人は理事長室を出る。

 

「それじゃあ行こうか愛生人君」

「はい佐渡先輩。高坂先輩もよろしくお願いします」

「あーその愛生人君。『高坂』先輩じゃなくて『若葉』先輩の方が俺的には良いかなーってね」

「なんでですか?」

 

愛生人は若葉が苗字ではなく、名前で呼んで欲しいと言った訳を聞く。

 

「俺って双子でね、妹もここの生徒なんだよ。で紛らわしいから若葉って呼んで欲しいだけだよ」

「そうゆうことですか。分かりました若葉先輩」

「ならなら!俺の事も夏希先輩って呼んでー!」

 

と男子3人ワイワイと騒ぎながら教室へ向かう。

 

「さ、着いたよ。ここが1年生の教室。俺らのクラスはこの上の階だから何かあったらおいで」

 

若葉がドアを開けた時に夏希が愛生人に言う。若葉は凛と目が合ったので手招きをする。

 

「にゃん?若葉先輩どうしたんですか?」

「ちょっと凛ちゃんに頼み事があって」

 

と若葉は後ろの愛生人を指差す。

 

「こいつなんだけど、新しい試験生として1年生に」

「もしかして凛ちゃん?」

「にゃ?アキ君?」

 

凛と愛生人は顔を合わせるとお互いの確認をした。

 

「2人とも知り合い?」

 

夏希の言葉に頷く2人。

 

「小学校の同級生です」

「かよちんも呼ぶね!かーよちーn」

「ちょちょちょ、凛ちゃん!?」

 

若葉が慌てて止める。

 

「と、兎に角。愛生人君のことよろしくねってだけだから」

「まっかせるにゃー!」

 

若葉達は愛生人を凛に任せて自分達の教室に向かう。

 

「にしても愛生人と凛ちゃんが知り合いだったとはね」

「世間は狭いって言うかなんと言うか」

「若葉は海未ちゃん、ことりちゃんと幼馴染みなんだろ?」

「小中一緒だったよ。まさか高校まで一緒になるとは思わなかったけどね。夏希は居ないの?」

「んー居るっちゃー居るんだけどねー」

 

と曖昧な返事をする夏希。若葉はそれに疑問を感じ聞こうとするも、教室に着いてしまい聞けなかった。

席に着くと隣で穂乃果が悩んでいた。訳を海未に聞くとどうやら屋上で絵里と何かあった様だ。

 




凛ちゃんにゃーにゃー言わせ過ぎ…かな?

数えてみたんですが、若葉が音ノ木坂に来て次の日に夏希、その次の日に愛生人が来てるんですよね。つまり若葉は2日連続で理事長室に呼ばれてる事になるんですよ(笑)

会って間も無い先輩にこいつ呼ばわりされる愛生人君って……

そして夏希には何かありそうですね!

でーは!誤字訂正、感想、アドバイス等お待ちしております!


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ミュー…ズ?by穂乃果

おーまーけーもーあーるーよー?


「それで若葉と夏希はどうして呼び出されたのですか?」

「あーそれはね」

 

と若葉は理事長室での事を海未とことりに話す。夏希は机に伏している所を見るに、寝ている様だ。

 

「3人目の試験生、ですか」

「あ!」

「ど、どうしたの?」

 

いきなり大声を出した若葉に驚きつつ聞くことり。

 

「愛生人君に連絡先教えてない…ちょっと行って、ん?」

 

と、席を立ちかける若葉。

 

「メールだ」

「誰からですか?」

「1年生の凛ちゃんって子から」

「成る程。つまり若葉は転校3日目にして既に後輩に手を出した、と?」

「いやいやいやいや!出してないからね!?」

「で、何てメールだったの?」

 

若葉による弁解を無視してメールの内容を聞くことり。

 

「なんでも愛生人君に連絡先教えおきましたって」

「手間が省けて良かったじゃないですか」

「まぁね」

 

と話していると姫が入って来て朝のHRが始まった。幾つかの連絡事項を伝えた後

 

「最後に今日の6時間目は体育館で全校集会だからねー。時間までに整列して体育館に来る様に。あと高坂兄と佐渡、2人はHRが終わったらちょっと来て」

「「はーい」」

「よし、これでHRは終わり!1時間目に遅れないでねー」

 

HRが終わり2人が姫の元に向かうと、5時間目が終わったらスグに職員室に来る様に言われた。

 

☆☆☆

 

時間は流れ昼休み。若葉は屋上で寝転がっていた。

 

「んー……何を言おうかな……」

 

彼は今6時間目の集会でする挨拶を考えていた。

 

「なんだ、まだ迷ってるのか?」

 

若葉の隣で同じく寝転がっている夏希。その向こうでは弁当箱を広げて昼食を取っている愛生人。

 

「そもそも何を言えばいいのか分かんないんだよ」

「僕らが転校して来た理由で良いんじゃないですか?」

「あと俺ら3人の名前な」

 

人前に立つの苦手なのに彩さんももうちょい考えてくれても…と呟いてる若葉に夏希と愛生人が案を出す。

 

「それと自分達のクラスも言わないとですよ」

 

とそこに3人以外の声がする。

 

「海未良くここが分かったね」

 

若葉は上体を起こしながら梯子から顔を覗かせている海未に言う。

 

「貴方は昔から何か考える時は高い所に登る癖がありますから」

「ま、それは置いといて。彼が片丘愛生人君ね。愛生人君、彼女は園田海未。俺の幼馴染みで俺と夏希のクラスメイトだよ」

「片丘愛生人です。よろしくお願いします」

「あぁ貴方が。園田海未と申します。こちらこそよろしくお願いしますね」

 

若葉がお互いを紹介する。若葉は狙い通り話が逸れて安心している。

 

「で、海未ちゃんはどうしてここに?

「それなんですがグループの名前が決まったのでその事を伝えに」

「グループ?」

 

夏希の問いに答えた海未の言葉に首を傾げる愛生人。

 

「詳しくは新歓の日の放課後に講堂に来れば分かるよ」

 

とさり気なく愛生人を観客として招待する若葉。

 

「で、何て名前になったの?」

「実は5人で見ようって穂乃果がまだ見ないんですよ」

「成る程。だったらメールでも良かった気がするけど、あえてそこには触れないよ」

「じゃあそう言う訳だから。じゃあまたね愛生人君」

 

夏希と若葉は昼食を食べ終えた愛生人と別れ、海未と一緒に教室に向かう。

 

「にしても昨日の今日で良く入ってたね」

「何でも穂乃果が先程中を見たら入ってたみたいで」

「穂乃果って言えば絵里先輩に何か言われてたんでしょ?大丈夫だったの?」

「えぇ。もう立ち直ってますよ」

 

と雑談をしながら教室に入ると

 

「もう!お兄ちゃんに夏希君遅いよぉー」

「おかえりなさい」

 

穂乃果が元気良く、ことりが普段通りに言いながら近付いて来る。それから場所を移して中庭へ。

 

「それじゃあグループの名前を見るよ」

 

穂乃果の言葉に一斉に頷く4人。パラリと紙を捲りそこに書かれていた文字を見る。

 

「ミュー…ズ?」

「石鹸?」

「イギリスのバンド?」

「山下さんの楽曲?」

「どれも違うと思います。多分ギリシャの9人の女神の事だと思います」

 

上から穂乃果、ことり、若葉、夏希、海未の感想である。

 

「何にせよ私達は今日から『μ's』だぁ!」

 

と穂乃果が叫ぶと同時に5時間目開始を教える鐘が鳴り、慌てて教室に戻る5人。

 

 

 

 

因みに6時間目の集会での若葉の挨拶だが、全校生徒の前に立った途端に頭が真っ白になったらしく、記憶が無いようだ。

 

 




若「で、何で俺がここに呼ばれたの?」
やだなぁ。若葉さんが主人公だからに決まってるじゃないですかー
若「本当は?」
最初のオマケなので出来れば主人公らしい若葉さんに来て貰いました!
若「ハァ…で、ここは何するの?」
その回での感想とか、次回予告とか、あと来てれば質問とかに答える、とか?
若「感想ねぇ…」
因みにこのコーナーを定期的にやるかは未定です!
若「言い切るねぇ」
まーね。で、何かある?
若「そう言えば姫が「私の出番がぁぁ!」って叫んでたんだけど、何があったの?」
あぁそれはね。若葉が凛からメール貰ったじゃん?
若「ああ、愛生人君に連絡先教えてない!って言った時かな」
そうそう。実は原案だと凛からメールが無くてドアの所で姫と鉢合わせするんだよ
若「へ、へぇ〜」
で、軽くやりとりしてから出席簿の背表紙で若葉が叩かれる。ってのがあってね
若「その案なくなって良かったよ」
ま、その内NG集的なのでやるかもね
若「その内って事はやらない可能性も」
さあ若葉。時間だから次回予告しようか!」
若「無視しやがって」
ハイハイ、時間がきてるから早くね
若「次回はなんとまさかの1万字越え!全米を抱腹絶倒させる程の面白さ!そしてなんとあの人が登場!?次回、バッチリだよ!」
嘘の予告すな!しかも次回のタイトルしか合ってないじゃん!!
若「じゃあねー」
次回もよろしくお願いします!


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バッチリだよ!by穂乃果

話が一向に進まない!何が原因なんだろうか…

今月中には第3話の中盤〜初ライブまで行きたいなぁ〜行けるかなぁ〜?


「さて、グループの名前も決まったし」

「後は作曲だね」

「作詞はもう出来たの?」

 

夏希の言葉をことりが引き継ぎ、若葉は海未に聞く。

 

「バッチリだよ!」

 

と穂乃果が答え紙を取り出す。

 

「ちょ、ダメです!見ないで下さい!」

 

とそんな穂乃果から紙を取り返そうとする海未。しかしその努力は功を奏さずに若葉の手に渡る。

 

「私とことりちゃんはもう見たから、あとは2人が見て大丈夫だったらそれで決定だよ」

 

穂乃果の言葉を聞きながら歌詞が書いてある紙を読む。海未は穂乃果の後ろで崩れ落ちている。

 

「流石海未、って感じかな」

 

若葉は夏希に歌詞を渡しながら言う。

 

「俺も特に無い、つか俺は口出し出来る程作詞出来ないし」

「じゃあ歌詞はこれで決定だね!」

 

夏希は歌詞を穂乃果に返すと穂乃果は紙を鞄にしまう。

 

「じゃあ私西木野さんの所に行ってくるよ」

「俺も行くよ」

 

そのまま教室を出て行く穂乃果とそれを追いかける若葉。

 

「にしてもあの2人ってホントに仲良いよね」

「昔から仲は良いよね」

「まさか……シスコン?」

 

夏希が言った台詞に海未とことりは笑い

 

「それは無いですよ」

「うんうん。仲が良いって言っても他の兄妹と比べてって意味だしね」

 

と否定する。

 

☆☆☆

 

一方真姫の元に向かった高坂兄妹はと言うと

 

「んーやっぱり居ないね」

 

1年生の教室に来ていた。放課後とあって今は数人しか教室に居なかった。しかしそこには真姫の姿が無かった。

 

「あ、若葉せんぱーい!」

 

これからどうしようか2人で悩んでいると、背後から元気な声がした。名前を呼ばれた若葉が振り返ると凛と花陽、愛生人が居た。

 

「や、3人とも今朝振りだね」

「お兄ちゃんこの人達は?」

「ああそっか、紹介しないとか」

 

と若葉は穂乃果と凛、花陽、愛生人を順番に紹介していった。

 

「それで若葉先輩と穂乃果先輩はどうしてここに?」

 

愛生人が教室を指しながら先輩2人に聞く。

 

「西木野さんに用があったんだけど」

「もう帰っちゃったのかな」

「あの、西木野さんなら多分音楽室に居ると思います」

 

訳を話し少し残念そうな感じの2人に、花陽が真姫が普段居る場所を教える。

 

「そう言えば西木野さんよく音楽室にいるよね」

「花陽ちゃん、凛ちゃんありがとう!」

「あ、そうだ。3人とももし良かったら新歓の日に講堂でライブする予定だから来てね~!」

 

お礼と宣伝をしてから2人は音楽室に向かった。音楽室に近付くに連れピアノの音が聞こえてきた。どうやら花陽の言った通りだったみたいだ。

 

「やっぱり何回聞いても綺麗な音だね」

「そうだね。弾き終わるまで聞いてようか」

 

2人は壁に寄り掛かり真姫の演奏を聴く。

 

「♪〜………」

 

どうやら演奏が終わったようで若葉が立ち上がる。よりも早く穂乃果が素早く立ち上がり、拍手をする。

 

「ゔぇえ!」

 

中から真姫の驚いた声がした。

 

「ちょ穂乃果」

 

若葉も穂乃果に続いて音楽室に入る。

 

「何の用ですか?」

 

若葉と穂乃果がピアノの傍に行くと真姫が足を組み替えながら聞く。

 

「やっぱりもう1回お願いしようと思ってね~」

「しつこいですね」

「だよね~我が妹ながらそう思うよ」

 

穂乃果が頼み込むも少しウンザリした様子の真姫。それに苦笑いしながらも賛同する若葉。

 

「そもそも私はそう言った曲は聴かないんです。何か軽く感じて」

「西木野さんって普段どんなの聴いてるの?」

「普段はクラシックとかジャズを聴いてますけど」

「でもこの前歌も歌ってなかった?」

「聴いたことない曲だったし、西木野さんが作詞したの?」

「……そうですけど」

 

若葉と真姫が話してる間穂乃果は何か考えていた。そして口を開き

 

「ねぇ腕立て伏せ、出来る?」

「はぁ?」

「出来ないんだぁ」

 

とバカにした口調で言う。

 

「な、出来ますよそのくらい!」

 

と真姫はブレザーを脱いで腕立て伏せを4.5回行う。

 

「凄い、穂乃果より出来てる!」

「ちょ、お兄ちゃん!」

「当たり前でしょ。私はこう見えて」

「じゃあ次は笑ってやってみて」

 

と穂乃果は昨日海未に言われた事を真姫にやらせる。

 

「え、何で?」

「いいから」

 

と穂乃果に押し切られる形で真姫は笑顔で腕立て伏せを始める。先程とは違って少し遅めに腕立てが行われた。

 

「ね?アイドルって大変でしょ?」

「何のことよ!全く」

 

と言いながら立つ。

 

「穂乃果、それじゃあ何のことか分からないよ?」

「そう?」

「「うん」」

 

若葉と真姫の言葉が被る。

 

「西木野さん、穂乃果が言いたいのは今のと同じくらい歌って踊るのは大変だ、て事を言いたいんだよ」

「へ、へぇー」

 

若葉の説明を受けてもどこか腑に落ちない顔をする真姫。

 

「はい!」

 

穂乃果が真姫に紙を差し出す。

 

「だから私は」

 

そんな穂乃果にまた断りを言おうとすると

 

「読むだけなら、ね?いいでしよ?」

「西木野さんがやりたくなかったらそれでいいから」

「答えが変わることはないと思いますよ?」

「だったらそれでもいい、そしたらまた歌を聴かせてよ」

「俺達は西木野さんの歌声が大好きなんだ」

「うんあの歌声とピアノを聴いて感動したから、西木野さんに作曲をお願いしようって思ったんだ」

「毎日神田明神の階段で練習してるから、興味があったらおいでね!」

 

そう言って若葉と穂乃果は音楽室を出て神田明神に向かった。

 

 

 

 

 




さて今回も始まった後書きコーナー。第2回のゲストはこちら!佐渡君です!
夏「どうも」
あれ?何故にクールキャラなのかな?かな?
夏「いや特に意味は無いけど、あえて言うならなんで俺なのかな〜と」
だって夏希って試験生第2号でしょ?
夏「そうだな」
だからだよ
夏「だからなのか…」
そんな落ち込まないで、ね?
夏「ま、理由はどうでもいいんだけど、前回若葉が「今回は1万字行くってさ!」て言ってたのはどうなったんだ?」
いやあれ嘘だからね?
夏「嘘かよ」
嘘だよ!?
夏「まぁ嘘なら嘘でいいんだけど、若葉から一つ質問を預かっててだな」
あー前回言えなかったヤツか
夏「「俺のヒロインは決まってるの?」だってさ。実際のところ決まってるの?」
一応決まってはいるよ?勿論夏希や愛生人のもね
夏「あれま。俺の相手も決まってるのかよ。誰なんだ?」
ネタバレになるから詳しくは言えないけど。若葉と愛生人の相手は既に登場していて、夏希のはまだ未登場って所かな
夏「え、俺の相手はまだ邂逅してないの?」
そんなことより
夏「そんなことじゃねえだろ!」
キャラ紹介にもあった夏希の秘密って何さ?
夏「あと1.2話辺りで出てくるんじゃねぇの?そこはお前の匙加減だろ」
アッハッハ。俺がそんな事考えながら書いてるとでも思うてか!
夏「ちゃんと考えながら書いてないから遅更新なんたろうが」
何も言えねぇ
夏「今後ともこんな名無しを皆さんお願いしますね」
じゃあ次回予告!
夏「つってもこれ書いてる時ってまだ次回書き始めてな」
さぁ!夏希、言っちゃいなよ!
夏「えーと次回、『μ's、ミュージック…スタート』」
じゃあねぇー!
夏「またな〜」


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μ's、ミュージック…スタートby5人

………_(:3ゝ∠)_?


翌日、翌々日は休みだったため練習は階段ダッシュとステップ確認を行った。

 

そして休日明けの朝

 

「おはよー…」

「おはよう」

 

欠伸をしながらリビングに入って来た穂乃果に、朝から店の仕込みを手伝っていた若葉が朝食の準備をしながら返す。

 

「ハイ、これ穂乃果の弁当ね」

「あれ?朝ご飯の準備をしてたんじゃないの?」

「だから今日の朝食は弁当のオカズの余りだよ」

「えー!」

「あ、それとこれね」

 

ぶーたれている穂乃果を無視して若葉はポストに入っていたCDを穂乃果に渡す。CDの表面には「μ's」と書かれている。

 

「お兄ちゃんこれって」

「多分ね。朝練の時か昼休みにでも皆で聞こっか」

 

それから穂乃果は朝食を摂り、若葉は食器を洗い、自室で着替える。

 

「「いってきまーす」」

「いってらっしゃーい」

 

2人は店の前で掃き掃除をしている裕美香に挨拶をし、神田明神へと向かう。

 

「穂乃果、今日は筋肉痛大丈夫?」

「うん!まだ始めて5日目だけど大分マシになってきたよ」

 

と朝の兄妹での雑談をすること暫し、神田明神に到着する。

 

「今日は遅刻じゃないよね?」

「大丈夫、時間までまだあるから」

 

心配そうな穂乃果に腕時計を見ながら答える若葉。

 

「もしかして1番乗りだったりして!」

 

と穂乃果が元気良く階段を駆け上ると

 

「おはようございます。穂乃果、若葉」

「おっはー穂乃果ちゃん、若葉」

 

既に海未と夏希が境内にいた。

 

「おはよ。2人とも早いね」

 

若葉は挨拶を返しながら何時にここに来たのかを聞くと

 

「私は若葉達が来る少し前ですよ」

「俺は海未ちゃんよりも数分前に」

 

どうやらそんなに間は空いてないらしい。

 

「あ、ことりちゃんだ。おっはよー!」

「おはよう〜」

 

ことりが到着した所で

 

「じゃあストレッチからの階段ダッシュ5往復始めよっか」

 

と若葉の指揮で朝練が始まる。ストレッチは2人1組で行うため海未はことりと、穂乃果は夏希と行っている。4人がストレッチをしている間に若葉はタイマーや記録ノートの準備をする。

 

そして階段ダッシュが終わり、境内で休んでいると穂乃果が集合をかけた。

 

「ジャジャーン!これが今朝、ウチのポストに入ってましたー!」

 

穂乃果がCDを上に翳しながら大きな声で話す。その行動にか、CDが出来た事に対してか、若葉以外の3人から歓声が上がる。

 

「じゃあ今から聞きたいと思います!」

 

と穂乃果はことりが持って来たCDラジカセにCDを入れ、他の4人に目配せをする。4人は頷き返し

 

「「「「「μ's、ミュージック…スタート!」」」」」

 

5人の元気な声が境内に響く。

 




若「さぁ後書きのコーナー始めるよー。今日のゲストはこの人!」
穂「私、高坂穂乃果高校2年!」
若「我が妹である穂乃果だよ」
穂「何で今回はお兄ちゃんと穂乃果なの?」
若「そう、正にその事でちょっと連絡があってね。ちゃんと伝言預かってるから大丈夫だよ」
穂「あ、その手に持ってる紙がそうなの?」
若「じゃあ読むぞ。『スクフェスの超難関マジで無理…』」
穂「………ん?」
若「あ、読むの違った。こっちだったかな?『20話目にしてようやくオリキャラが…』これも違うね」
穂「何でそんなメモ書きがあるの?
若「さぁ?俺に聞かれても、っとこれだこれ。『急用が入ったから今回から若葉よろしく!』………ん?今回"から"?」
穂「よ、良かったね!お兄ちゃん!」
若「良かった…のか?」
穂「うん!流石穂乃果のお兄ちゃんだよ!」
若「そうか。よし!穂乃果、今回何か聞きたいことってある?感想でもいいけど」
穂「前回で『今月中には初ライブ前まで行きたい』って言ってたけど間に合うの?」
若「このペースだと間に合わないだろうね。1日に2更新とかしないと」チラ
画面の向こう(ビクッΣ(゚д゚lll))
穂「穂乃果達の練習は順調だよ」
若「後は踊りの振り付けと歌のパート分けかな?」
穂「そうゆうのは次にやるんじゃない?」
若「じゃあ穂乃果。次回のタイトル言っちゃえー!」
穂「次回『パート分け?』…てやっぱり次やるみたいだね」
若「だね。それではまた次回」
穂「感想とか感想とか、後は感想とか待ってま〜す!」


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パート分け?by穂乃果

いやー遂にラブライブ!のゲームが発売されましたね〜。え?自分ですか?勿論買いましたよ昨日の夜に遅くまでやってるゲームショップで。お陰で少し寝不足です。

今回は少し長くしてみました。ではどうぞ!


『〜♪……』

 

ラジカセからの音楽が止み、少しの沈黙の後海未が口を開く。

 

「素敵な曲でしたね」

「うん」

 

海未の感想に頷くことり。他の3人も同じ様に頷く。

 

「それじゃあ今日の放課後から歌と振り付けの練習をしてかないとね」

「本番まであと3週間しかないしな」

 

若葉と夏希は2人でこの後の練習メニューの話しをしていると

 

「そろそろ学校に向かわないと、遅刻しちゃわない?」

 

ことりの一言で4人は慌てて支度を終わらせる。ことりは既に終わらせている様だ。

 

☆☆☆

 

そして昼休み。5人は屋上でお昼を食べていた。

 

「今日は穂乃果もお弁当なんですね」

 

海未は穂乃果が弁当を持って来ているのが珍しかったらしく、驚いた顔で言った。

 

「うん。なんでもお兄ちゃんが『1人分より2人分の方が楽』って」

「つーか若葉は本当に料理出来たんだな」

「出来るって前に言ったよね?」

「若葉君の料理って美味しいんだよね〜。あ、穂乃果ちゃん、私のミートボールと卵焼き交換しよー」

「いいよー」

「あ!ズルイですことり!穂乃果、私とも交換しましょう!」

 

ほのぼのとした空間が屋上に広がる。

 

「そうそう歌についてなんだけどさ」

 

そんな中、若葉が唐突に言った。

 

「歌について?」

「曲は問題無いって話さなかったっけ?」

 

若葉はことりと夏希の言葉に頷きながら答える。

 

「曲は問題無いけど、パート分けしないの?」

「パート分け?」

 

若葉の言葉に穂乃果が聞き返す。

 

「成る程。確かに最初から最後まで3人一緒に歌う必要は無いですもんね」

「じゃあ今決めるか」

 

海未は納得した顔で頷き、夏希はポケットから歌詞のコピーを取り出した。歌詞のコピーは、休日に若葉がパソコンで打ち込んで印刷したもので、朝練習の時に配ったのだ。紙の1番上には曲名である『START:DASH!!』と書かれていた。

 

「それでパート分けに関して海未から何かあるかな?」

 

若葉は作詞をした海未に意見を求める。

 

「そうですね…この『産毛の小鳥たちも〜翼で飛ぶ』はことりに歌って欲しいですね」

「分かった♪」

「じゃあ穂乃果は『感じて〜鼓動』までを歌うから間の『諦めちゃ〜絶対来る』を海未ちゃんが歌って?」

「分かりました」

 

と5人で昼休みをまるまる使いパート分けをする。

その日の放課後から屋上で3人の歌と振り付けの練習が本格的に始まった。

 

☆☆☆

 

そして3週間後……

 

「とうとう本番だね」

「うん。今日まで一生懸命やってきたからね、絶対成功させるよ!」

 

今高坂兄妹がいるのは自宅のリビング。いつもなら朝練をしている時間帯である。

 

「ん〜いつもなら階段を走ってるから何かウズウズするぅー!」

「穂乃果、机の下で足をバタつかせないで」

 

う〜、と唸りながら足をバタつかせる。若葉はそんな穂乃果を微笑みながら朝食の準備をする。

 

「ちゃんと朝食食べてエネルギー付けなきゃね」

「いっただきまーす!」

「ハイ、いただきます」

 

2人で一緒に朝食を摂り、制服に着替え学校に向かう。

 

「フ〜ン♪フフ〜ン♪」

 

歩きながら穂乃果が曲を口ずさむ。曲らもちろん『START:DASH‼︎』である。

 

「ライブたくさん来てくれるといいね!」

「昨日一昨日ってビラ配ってたんだから来るって」

 

若葉の言う通り、ここ2.3日は海未の恥ずかしがり屋をどうにかする為に校門付近でライブについてのビラ配りをしていた。おかげで海未の恥ずかしがり屋はどうにかなったのだ。

 

「おっはよー!」

「おはよー」

 

挨拶をしながら自分の席に着く。暫くしてから夏希や海未、ことりが教室に来てHRまで雑談をする。

 

「で、ビラ配りは昼休みもやるのか?」

「いえ、新入生歓迎会は5.6時間目を使って行いますので、部活説明会が終わってからでいいでしょう」

「あ、俺と夏希は6時間目の時間使ってフミコ達と音響とかのセッティングがあるから途中で抜けるね」

「うん、分かった」

「ハーイHR始めるよ〜」

 

と放課後についての打ち合わせをしてると姫が入って来た。若葉達は打ち合わせを終わらせて席に着く。

 

「最後に、今日の5時間目と6時間目は新入生歓迎会で潰れるよ〜。やったね皆!でも体育館で部活説明会があるから遅れない様に、それと寝ない様に!」

 

姫からの注意でHRが終わり皆は1時間目の準備を始める。

 

☆☆☆

 

授業が終わり昼休み。穂乃果、海未、ことりは屋上でお昼を広げていた。

 

「このあとかー緊張してきたね」

「うん。でもあれだけ練習したんだから大丈夫だよ」

「では昼食のあとにもう一度合わせてみましょう」

 

と少しでも時間があればステップの確認などを行っていた。

一方若葉達はというと

 

「なぁ若葉ぁ」

「なに?夏希」

「俺達、なんでこんな事してんの…かな!」

「なんでって少しでも男手が必要だって言われたからじゃない…の!」

「そうですよ、夏希先輩。人は人同士での助け合いが大切なんです…よ!」

 

現在若葉、夏希、愛生人の試験生3人は体育館で新入生歓迎会の準備を手伝っていた。なんでも人手が足りないとか…

不平不満を言いつつ3人は5.6個のパイプ椅子を持ち上げる。そして等間隔で並べている教師の所へ運ぶ。

 

「俺は肉体労働派じゃないのに…」

「サポート班の俺らが何を言うか」

「今日ライブですよね?観に行きますよ」

「お、観客1人ゲット」

「花陽ちゃんと凛ちゃんも誘ってみてね」

「分かりました」

 

それから少しして3人は解放された。愛生人はそのまま教室に戻り、夏希と若葉は自分達の教室に戻らずに体育館を出て少しした所で話していた。戻らない理由は単純で、どうせまた来るならここで待っていよう、といった感じである。

話しているとぞろぞろと生徒達が集まり始めた。

 

「穂乃果達は今頃仕上げしてるのかな?」

「じゃね?微かに音聞こえるし」

「え、ホント?」

 

夏希の言葉に耳を澄ませるが生徒達の声や足音以外特に何も聞こえなかった。

 

「何も聞こえないけど…?」

「昔から耳は良くてね」

「ふ〜ん」

 

ひとつ欠伸をし、辺りを見回す。遠くの方に絵里と希が見えた。絵里も若葉に気付き目が合い、少し見つめ合った後に若葉が頭を下げわ挨拶をする。若葉が顔を上げると絵里は少し微笑み、希は手を振っていた。

 

「若葉の知り合い?」

「ここの生徒会長の絢瀬先輩だよ」

「生徒会長かぁ〜」

 

夏希はなんとも言えない表情で絵里と希の方を見る。

 

「お兄ちゃ〜ん」

「2人とも探したよ〜」

「若葉と夏希はここにいたんですね」

 

そこに穂乃果達が来て5人は後ろの席に座る。

 

「ただ今から新入生歓迎会を始めます」

 

絵里が壇上に立ちマイクを使って新入生歓迎会の開始を宣言する。

 

「始まったね」

「うん」

「ええ」

「そうだね」

「だな」

 

穂乃果の言葉に4人がそれぞれ答える。

そして壇上から絵里が居なくなり最初の部活紹介が始まった。

それから様々な部活の紹介が行われること暫く、紹介が終わりに近付いて来た。

 

「にしても音ノ木坂って色んな部活があるんだね、夏希。……夏希?」

 

若葉は隣に座っている夏希に話しかけるが、返事がないので不思議に思い覗き込むと

 

「zzzzzzz………」

 

見事に寝ていた。しかも静かに動くことなく。つまり機から見ても寝てる様には見えないので先生からの注意もされない。

 

「これで新入生歓迎会を終わりにします。各部活とも体験入部を行っているので、興味があったらどんどん覗いて見て下さい」

 

夏希に感心しながらも呆れていると最後の部活紹介が終わり、絵里が閉めの言葉を言っていた。

 

「よし、じゃあビラ配りでもしますか」

 

若葉の隣ではつい先程まで寝ていたはずの夏希が立ち上がり、皆に合わせて外に出た。

 

「お兄ちゃん。私達も行こ」

「あ、あぁ。うん」

 

若葉も穂乃果に連れられて外にビラを配りに行く。

体育館の外に出ると各部活とも新入生獲得の為頑張って勧誘していた。

 

「μ's、この後講堂でライブをやりまーす!よろしくお願いしまーす!」

「お願いしまーす!」

 

体育館の外では穂乃果、ことり、若葉が入り口付近では海未と夏希がビラを配っている。

 

「それじゃあ穂乃果、ことり、海未。俺と夏希はセッティングに行くけど3人とも遅れない様にね」

「じゃ、また後で」

 

そして少ししてから夏希と若葉はフミコ達と合流し、ライト等のセッティングを始めた。

 

「音、聞こえるー?」

「大丈夫だよー!」

 

最後にマイクのテストをして若葉と夏希は控え室に向かう。フミコ達にはビラ配りを頼んである。

 

「穂乃果ー入るぞー?」

「ち、ちょっと待」

「いいよ〜」

 

着替えている途中の事を考え、ノックしてから部屋に入る。途中海未の言葉が穂乃果によって遮られたが2人には聞こえなかった様だ。

部屋に入ると着替えは既に済んでおり、最後に合わせをしたのか少し息が乱れている。

 

「3人とも似合ってるな」

「だね。ことりにデザイン考えてもらって正解だったよ」

「うぅ……変じゃないですか?」

 

海未がスカートの裾を抑えながら2人に聞くも、特におかしい所は無いため頷く。

 

「大丈夫だって!ほらこうして3人で並んでいれば平気でしょ?」

 

穂乃果はことりと海未と一緒に鏡の前に立ちながら海未に言う。

 

「確かにこうしていれば…」

「後は時間が来るのを待つだけだね!」

「うん!」

 

穂乃果とことりの元気な声に海未も笑顔になっていく。

 

「よし、掛け声でもするか」

「アイドルって掛け声どんなのだっけ?」

 

夏希と若葉の唐突な提案に不思議に思う3人。

 

「いや、さっきね?フミコ達に言われたんだけど」

「緊張してる時には掛け声が1番なんだってさ」

「掛け声かぁ…」

「μ's、ファイッオー!」

「それでは運動部ですよ」

「思い出した!番号を言うんだ」

 

若葉の言葉に4人は顔を見合わせ頷く。

 

「1!」

 

穂乃果がピースをしながら手を前に出す。

 

「2!」

 

ことりが穂乃果の手の横に来る様に同じ形をして出す。

 

「3!」

 

海未も2人に習い同じ様にする。

 

「ほらお兄ちゃんと夏希君も!」

 

穂乃果に言われ顔を見合わせる2人。そして笑いながら

 

「4!」

 

若葉が海未の横に手を置く。

 

「5!」

 

夏希が若葉と穂乃果の間に手を置く。これで5人の中心には5つの手で出来た星が出来上がる。

 

「μ's最初のライブ。最高のライブにしよう!」

「うん!」

「勿論です!」

「ああ!」

「だね!」

 

そしてライブ開始を告げる放送が鳴り穂乃果と海未、ことりはステージへ、若葉と夏希は客席の方へ向かった。

 

そしてμ'sのファーストライブの幕が上がった。




若「と、言う訳で本編はガッツリライブ前な訳だけど始めますよ。今回はこの人です」
こ「南ことりでーす♪」
若「や、こんにちはことり」
こ「こんにちは」
若「さて、早速だけど何かあるかな?」
こ「え?んーとね…」
若「んーと?」
こ「特に無いかな」
若「そうなんだ。でもそれだとこのコーナー終わっちゃうんだよね」
こ「μ'sよろしくね〜」
若「ことりは相変わらず自由だね!」
こ「でもここを長くしても本編が短いとつまらないと思わない?」
若「さ、さ〜て!次回予告しよっか!」
こ「次回『あれ?西木野さん?』次回も」
若こ「「μ's、ミュージック……スタート!」」


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あれ?西木野さん?by若葉

やっと初ライブが始まった〜

さ、続き頑張ろー!( ´ ▽ ` )ノ


穂乃果、ことり、海未は講堂のステージに立って呆然としていた。なぜなら

 

「ゴメン…頑張ったんだけど…」

 

ミカが謝りながらステージに近付く。

 

「ううん、大丈夫。それよりお兄ちゃんと夏希君は?」

 

穂乃果は震える声を我慢しつつ、先程まで一緒にいてライブも応援してくれていた2人について聞くと

 

「……こっちには来てないよ」

「てっきり穂乃果達と一緒にいるのかと思ってたから…」

 

ミカに続いてフミコが言う。

 

「そんな……」

「まさか夏希と若葉まで……」

 

そんなフミコの言葉にことりと海未は落ち込む。

しかし次の瞬間講堂の扉が開く。そこから現れたのは

 

「いやーゴメンね、3人とも。西木野さんが渋ってて遅れちゃった」

「な!元はと言えば若葉先輩が『講堂の道案内はお任せ!』って言って迷ったのが原因じゃない!」

「そうだっけ?それよりも夏希の勘は凄いね。ちゃんと着いたよ」

「寧ろこんな狭い建物で迷うお前のが凄いよ」

「本当ですよ。でもお陰でお2人に会えたんですから、不幸中の幸いって所ですね」

「まさか講堂の入り口で会うとは思いませんでしたよ」

「そ、それより…ライブは…?」

「そうだった。それでは皆々様。どうぞお好きな席へ。今回は初ライブ故に全席自由席にてお楽しみ出来ます」

 

開かれた扉から現れたのは若葉を先頭に夏希、真姫、花陽、凛、愛生人の6人だった。

その6人は入り口で少し話しをし、花陽の一言をきっかけに夏希が仰々しくお辞儀をしながら席を手で指す。

 

「や、遅れてゴメンね」

 

そんな中若葉は3人の下へ謝りながら歩いて行く。

 

「え、と。何があったの?」

 

先程の会話の意味が分からず張本人である若葉に聞く穂乃果。

 

「お、よくぞ聞いてくれた!実は」

 

と語り出す若葉

 

☆☆☆

 

時は戻り若葉達が控え室を出た後…

 

「え〜とステージがあるのは…こっちだ!」

 

と若葉が歩き出す。夏希も黙ってそれに着いて行く。

 

「あれ?こっちじゃない」

「なぁ若葉。もしかしなくても」

「いや違うよ!別に俺は方向音痴じゃないよ!」

 

そのまま歩くこと数分見事に迷っていた。

 

「……ここ、どこ?」

「なんでこんな所で迷子になんだよ…」

 

2人は違う意味で項垂れていた。若葉は自分が方向音痴だと自覚させられ、夏希はなんで若葉に前を歩かせてしまったのか、と。

 

「お、人発見!」

「マジで!?」

 

若葉は前の方に人影を見つけたのだった。

 

「ホラ、やっぱり合ってたんじゃん」

 

若葉が意気揚々と駆け寄ると

 

「あれ?西木野さん?」

「貴方は…若葉先輩」

 

いたのは真姫だった。

 

「や、こんな所でどうしたの?」

「べ、別にどうでもいいでしょ」

「なんだったらこの後μ'sのライブ見て行く?」

「何でそうなるんですか?」

「さ、行こ行こー!大丈夫、道は分かるから!」

 

真姫の手を引いて歩き出す若葉。その光景を何も言わずに、いや言えずにいる夏希。

 

そして

 

「ここ、どこ?」

 

やはり迷子になるのであった。

 

「またか…」

「またって……」

 

今度は先程と違って項垂れるのが1人増えていた。

 

「もう、信じられない!なんで迷うのよー!」

 

真姫が叫ぶが叫びたいのは若葉や夏希も同じである。

 

「取り敢えずこっちに行くぞ」

 

若葉の首根っこを掴みながら夏希が歩き出す。

 

「そっちに何があるの?」

「多分入り口に着く!」

 

体の前で拳を握って自信満々に言う夏希。それを見てため息をつく真姫。そして結果は…

 

「おぉ見事にスタートに戻ったね」

「凄いわね…」

 

キチンと入り口に戻って来れていた。

 

「あ、若葉先輩と佐渡先輩だ」

「本当だにゃ。西木野さんも一緒なんだね」

「こんな所で何してるんですか?」

 

そこに現れたのは花陽と凛、愛生人だった。

 

「何ってこれから会場に向かうんだよ」

「さっきまで中にいたけどね」

「とにかく急ごうか」

 

そう言って今度は夏希の勘を頼りに会場に向かうのだった。そんな無計画な行動に呆れているのは真姫だけなのかもしれない……

 

 

 

 

「……てな事があって遅れたんだよ」

 

若葉は長々と会場に辿り着くまでの道のりを話した。

 

「殆どお兄ちゃんのせいじゃん!」

「アッハッハー。ま、ライブ頑張ってね」

 

穂乃果のツッコミはごもっともである。しかしそんな事をいに介さず観客席の1番後ろに座る。隣の席には夏希がいて、真姫と凛、花陽、愛生人は真ん中ら辺に横一列になって座っている。

 

「よし、やろう!」

『♪〜〜♪♪〜〜』

 

穂乃果の声を合図に曲が流れ始める。若葉はカメラを回してライブを撮影する。

 

撮影しながら若葉は1年生達がライブに見入ってる事、この前見かけた名前の知らないツインテールの3年生が入って来たのを確認していた。

 

☆☆☆

 

ライブが終わり拍手が講堂に響く。

しかし絵里が講堂に入って来た時は思わず絵里の下へと行く。

 

「それで、貴方達はどうするの?」

 

人が少ない講堂に絵里の声が響く。そんな絵里の問いに穂乃果少し考え

 

「続けます」

「なぜ?これ以上続けても意味があるとは思えないのだけれど」

 

穂乃果の答えが意外だったらしく、さらに聞き返す。

 

「やりたいからです!私今もっともっと歌いたい、踊りたいって思ってるんです。それはきっと海未ちゃんやことりちゃんも…。こんな気持ち始めてなんです。やって良かったって本気で思ったんです」

 

絵里は穂乃果の答えに少したじろぐ。穂乃果は穂乃果で今の自分の気持ちを素直に言葉にしていく。

 

「今は誰も見向きもしてくれない、応援なんて誰もしてくれないかもしれない。でも私達が頑張って、一生懸命頑張って届けたい、今の私達のこの思いを!」

 

穂乃果はそう言って絵里に頭を下げる。絵里は絵里で思う所があったらしく何も言わずに講堂から出て行く。

 

若葉は1年生4人に挨拶をし、穂乃果達を追って控え室に向かう。

 

「若葉君、ちょっといい?」

 

講堂から出てすぐに希に呼び止められる。

 

「どうしたんですか?東條先輩」

「ついて来て欲しいんや」

 

それだけ言って歩き出す希を不思議に思い、若葉は追う。

 

「ここや」

 

少し歩いた曲がり角で希は足を止める。

 

「ここに何があるんですか?」

「しっ!今分かるから」

 

真剣な表情で話す希に黙る若葉。すると

 

「久し振り、でいいのよね」

「そうですね。まさか貴方に会うとは思いませんでしたけど」

 

曲がり角の向こうから夏希の声とつい最近聞いたことのある女性の声がした。

 

「なんで敬語を使うのよ」

「一応先輩ですから」

「でも同い年…いいえ、幼馴染みだったじゃない。私は一目見た時からもしかしたらって思ってたの」

「奇遇だな。俺も始めて見た時、つってもごく最近なんだけど、もしかしたらーーなんじゃないかって思ってたんだ」

 

希の顔を見ると希も驚いた顔をした後どこか納得のいった顔をしていた。そして若葉と目を合わせると手を引いてその場から離れた。

 

「…東條先輩はあれを俺に聞かせてどうしたかったんですか?」

 

大人しく手を引かれ歩きながら若葉は希に聞く。

 

「ウチも直接は聞いてないから何とも言えんのやけど、話を聞いてる内にもしかしたらって思ってたんよ」

「その言い方だと東條先輩も知らなかったって事ですよね。じゃあなんで先輩は俺に聞かせたんですか?」

「……カードがそう言った、て言いたいんやけどね。正直なんでか分からんのよ」

「そう……ですか」

 

今回希の行動はカードによるものではなく、自分の判断で動いた。と言う希に若葉は顔を俯かせて返す。

 

「怒っ……てるよね」

 

そんな若葉を見て怒ってると思った希は謝ろうとした。

 

「別に怒ってはいませんよ。ただひとつお願いがあるんです」

「お願い?」

 

顔を上げ真剣な顔でそう言う若葉に聞き返す。

 

「えぇこの事は本人の気持ちの整理がつくまでは他言無用でお願いします」

「もちろんや。事が事だけにこれは本人の口から言った方がええ」

「それでは俺は穂乃果達の所へ行きます」

「ほ〜な〜」

 

希と別れた若葉は少し早歩きに控え室に向かったのだった。

 

 

 

 

 

 




若「さて今回は海未に来てもらってまーす」
海「どうも園田海未です」
若「最後は意味深な終わりを迎えたね」
海「えぇ。夏希と話していた空いては誰なのか気になりますね」
若「それはそうと初ライブ。お疲れ様でした」
海「緊張してちゃんと踊れたのか不安ですよ」
若「大丈夫。ちゃんと踊れてたから」
海「そう、ですか」
若「そうそうバッチリ録画してあるし、あとでネットにあげるよ」
海「それは助かります。それより副会長のキャラが少しおかしいと思いませんか?」
若「んーそうかな?」
海「ま、それはいいでしょう。そろそろお時間です」
若「それじゃあ海未、次回予告お願い」
海未「分かりました。次回『西木野さんが良いと思います』。二話続けて『西木野さん』がタイトルなんですね」
若「深い意味は無いでしょ。じゃあ」
若海「「μ's、ミュージック……スタート!」」


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西木野さんがいいと思いますby花陽

(>人<;)


「おはよ〜」

「おはよう」

 

初ライブから1週間。この日もいつもと同じ様に朝早くから仕込みをしている若葉と早起きして朝練の準備をする穂乃果。

 

「そう言えば昨日夏希からメールが来て、今週は前の学校に戻るんだってさ」

「え、そうなの!?」

 

若葉の突然の知らせに危うくコップを落としそうになる穂乃果。

 

「来週には戻って来るってさ」

「じゃあ今週は4人だね」

 

食器を片してからいつもの練習着に着替え、穂乃果は制服で家を出る。目指すのはいつもの神田明神である。

 

「おはよう」

 

若葉と穂乃果が着くと既に海未とことりはストレッチを始めていた。

 

「おはよ〜」

「おはようございます」

 

2人も若葉に挨拶を返す。因みに穂乃果は着替えに行っていてここには居ない。

 

「じゃあ始めるよ。まずはいつも通り階段ダッシュ5往復!よーい、スタート!」

 

穂乃果が戻って来てから軽く体操をし、若葉の合図で3人は一斉に駆け出す。3人のタイムは練習を始めた頃より良くなっている。

 

「今日も練習頑張ってるんやね」

「あ、希先輩。おはようございます」

 

若葉がタイムを測っていると巫女姿の希がやって来た。

 

「あの事まだ夏希君には聞いてないん?」

「ええ、まだ。その内聞いてみますよ」

 

若葉は少し笑いながら答える。

 

「そっか。信用してるんやね」

「信用とは少し違うと思いますけど、音ノ木坂では数少ない男子ですから」

 

話しながらもキチンとタイムをノートに記す若葉とそれを面白そうに見る希。

 

「だぁー!疲れたぁー」

「お疲れ様」

 

暫くして階段ダッシュが終わり、クールダウンを始める。朝なのでそこまで凝った練習はしないのである。

 

「さっき若葉は副会長と何を話していたんですか?」

「アハハハ。いつも練習お疲れ様って感じかな」

 

海未は若葉と希が何かを話していた所を見てたらしく若葉に聞くも、若葉は笑ってはぐらかした。

 

「さ、早く着替えて学校に行こ」

 

若葉は話を逸らすようにそう言った。

 

☆☆☆

 

昼休み。1年生の教室では凛と花陽、それに愛生人が一緒に弁当を食べていた。

 

「そう言えば2人とも部活決めた?あれって今週中じゃなかったっけ?」

「凛は陸上部かな~」

「私は……」

 

花陽は愛生人の質問に少し考える。

 

「スクールアイドルに入ってみたいと思ったり?」

 

そんな花陽の台詞を続けるかの様に凛が言う。

 

「え!そんな事は…ない…よ」

 

花陽は指をもじもじさせながら答える。

 

「やっぱりそうなんだね~」

「かよちゃんは昔から嘘言う時に指をもじもじさせる癖は直ってないんだね」

「うっ…」

 

凛と愛生人の指摘が当たっているらしく、少し下を向く花陽。

 

「一緒に行ってあげるから先輩達の所に行こ~」

 

凛は席を立ち花陽の腕をひっぱり穂乃果達の下へと連れて行こうとする。

 

「まぁまぁ凛ちゃん落ち着いて。まだ昼休みだよ?」

 

そんな凛を止めたのは愛生人だった。確かに愛生人の言う通り机の上を見ると食べ掛けの弁当があった。

 

「若葉先輩から放課後に屋上で練習してるって聞いてるし、連れて行くならその時でいいんじゃないかな?」

「あ、あの…そうじゃ、なくて」

「やっぱり今から行くの?」

「違くて!あ、あのね。我が儘言ってもいい?」

「しょうがないな~なに?」

 

花陽の言葉に腕を離す凛。

 

「もし私がアイドルやるって言ったら、一緒にやってくれる?」

 

花陽の言葉に少し考える凛。

 

「それいいんじゃないかな。凛ちゃんも一緒に」

「無~理無理無理無理。凛アイドルなんて似合わないよ。ほら女の子っぽくないし、髪だってこ~んなに短いし」

 

愛生人の台詞を途中で遮り、否定する凛。

 

「それにホラ、昔も」

 

と凛は小学生時代にスカートを履いて登校した時、クラスメイト数人にからかわれた事を話す。

 

「あーそれであいつら少し得意気だったんだ」

 

話しを聞き終った愛生人が納得の行った表情で頷く。

「アキ君どうゆう事?」

「いやね?多分同じ日にクラスの誰かが「今日星空の珍しい恰好見たぜ!」って自慢気に言ってたから」

「あーあの教室がざわついてた時の?」

「そうそう。俺も見てみたかったな~て」

「もう!アキ君もそうやって凛の事からかって!」

 

2人の会話にずっと黙ったままの凛がいきなり立ち上がり教室から走って出て行く。

 

「なになに?痴話喧嘩?」

 

凛のいきなりの行動に動けないでいた2人に近くにいたクラスメイトが聞く。

 

「いやいや痴話喧嘩って恋人とか夫婦間で行われるものでしょ」

 

と愛生人は笑顔で否定する。花陽はその愛生人の笑顔が無理して作っている事が分かった。

 

それから昼休みが終わるまで凛は教室に戻って来なかった。

 

☆☆☆

 

放課後。若葉はチラシの補充の為ポスターを貼った場所に来ていた。穂乃果達にはあらかじめ言ってあり、3人は今頃屋上で練習をしているハズである。

 

「取り敢えず10枚程刷ったけど足りない、なんて事はない……よね?」

 

少しの不安を抱きつつ角を曲がる。

 

「あれ?西木野さん?」

 

若葉が角を曲がるのと同じタイミングで、真姫がポスターの前から若葉の居ない方へと歩き出す。

 

「今、ポスターを取って……行った?」

「わ…若葉先輩…」

 

首を傾げながらチラシの場所に向かうと正面、つまり真姫の去って行った方から花陽がやって来た。

 

「や、花陽ちゃん先週ぶりかな?」

「そう…ですね。あれ?」

 

花陽はチラシの置いてある机の下に落ちている物を拾う。

 

「これ…」

「生徒手帳…だね」

 

花陽が手帳を捲ると持ち主欄には『西木野真姫』と書かれていた。

 

「あ、ここなら分かる」

 

若葉は住所欄を見て呟く。

 

「そ、それじゃあ」

「じゃ、一緒に届けに行こうか」

「……え?」

 

花陽としては若葉に任せるつもりだったので一瞬頭が追い付かなかった。

 

「だって拾ったのは花陽ちゃんじゃない?なら花陽ちゃんも、ね?」

「は、はい…」

 

若葉は穂乃果に先に帰るとメールをして、花陽と2人で昇降口に向かう。

 

☆☆☆

 

「そういえば花陽ちゃんはスクールアイドルやらないの?」

「私…ですか?」

 

真姫の家に向かっている途中若葉がいきなり花陽に聞いた。

 

「だってライブの時に観に来てくれてたし、声も綺麗だし」

「私より、西木野さんがいいと思います」

「西木野さんも誘ってはいるんだけどねー」

 

あははーと笑いながら答える。

 

「あ、あの…ごめんなさい…」

「いやいや花陽ちゃんが悪い訳じゃないから大丈夫だよ」

「はい…」

「ほらほら元気出して行こう!おー!」

「お、おー」

 

2人は拳を空に突き出し元気に歩き出す。

 

そして案の定少し迷った後で無事に西木野邸に到着した。

 

 

 

 




若「さて今回は絶賛凛ちゃんと仲違い中の愛生人君でーす」
愛「どうも片丘愛生人です。どうしたんですか?変な顔して」
若「いや、愛生人君の名字片丘だったなーて思って」
愛「酷い!この人何気に酷いよ!」
若「それは良いとして」
愛「良くないです!」
若「凛ちゃんと喧嘩、したの?」
愛「喧嘩と言うかなんと言うか…」
若「ま、ちゃんと仲直りしなね?3人とも」
愛「3人とも?」
若「3人とも……そう、3人とも大事な後輩なんだし!」
愛「今危ない発言しかけませんでした?」
若「な、何の事かな?」
愛「ハァでは次回予告いきますよ」
若「溜息吐かれた!?」
愛「若葉先輩家でも偶に溜息吐かれません?」
若「さ、予告いこう!」
愛「吐かれてるんですね…」
若「次回『花陽ちゃん意外と大胆だな〜』それじゃあねー」
愛「ちょ、そのタイトル何ですか!?」


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花陽ちゃん意外と大胆だな〜by若葉

ちょっと急ぎ足で進みます。

今回はあとがきのやり取りはないです。(いるか分からないけど)楽しみにしてくれていた方々、申し訳ない!(>人<)
では本編をどうぞ!


「やっと着いたね花陽ちゃん」

「は、はい…」

 

時間が掛かったのは若葉が迷うからだ、などと言えなく只頷くしかない花陽。

 

「それにしても大きいね」

「凄いなぁ…」

「取り敢えず押そうか」

 

若葉と花陽の視線の先にはインターホン

 

ピンポーン

 

を押したのは花陽だった。

 

「花陽ちゃん意外と大胆だな〜」

「そんな事ないですよ」

 

今度は2人があははーと笑い合う。

 

『はい、どちら様でしょうか?』

 

とインターホンから女性の声がする。笑うのを辞め2人は自己紹介をする。

 

「えーと、西木野さんと同じ学校の高坂若葉と」

「クラスメイトのこ、小泉花陽です」

『今開けるわね』

 

返ってきた女性の声は少し嬉しそうだった。

少しして玄関の扉が開いて出て来たのは真姫そっくりの女性だった。

 

「初めまして。私、真姫の母の西木野詩音です。ささ入って入って」

 

笑顔で2人を迎え入れる詩音にお辞儀をしてから入る。

 

「真姫は今病院に顔出してると思うから」

「病院…ですか…?」

「そう。あの子ウチの病院を継ぐのよ」

「病院を、ですか」

「ええそうよ。それより…」

「はい?」

 

詩音が若葉をジーッと見ながら続ける。

 

「あなた達、お付き合いしてるのかしら?」

「………え?」

「………はい?」

 

詩音の突然の質問に2人とも間の抜けた声を出す。

 

「だから、2人はその…恋人同士なんじゃ……?」

「え、あぁ。違いますよ。花陽ちゃんとは高校の先輩後輩な関係でして」

「そ、そうです!恋人なんかじゃ、ないです」

 

若葉は笑って否定し、花陽は語尾を強めて否定した。余談だが花陽の台詞で若葉が精神的ダメージを負ったのはここだけの話。

 

「じゃあ真姫と?」

「いえいえ残念ながら自分年齢イコールな人なんで」

 

少し自虐っぽく笑って言う若葉。

 

「な〜んだツマラナイな〜」

「ツマラナイって……」

「あはははは…」

「ただいま〜」

 

そんな事を話している間に玄関の扉が開く音と真姫の声が聞こえた。

 

「それにしても安心したわ。高校に入ってから友達1人遊びに来ないから。あ、この話は真姫には内緒ね?」

 

と小声でそれだけ言って部屋から出て行く。部屋の外から真姫と詩音の会話が聞こえる。どうやら詩音はお茶を淹れに行ったようだ。

 

「あら、あなたは…」

「こ、こんにちは」

「や!西木野さん」

 

真姫が扉を開け部屋に入って来たので2人は挨拶をする。

 

「ごめんね。急に来て」

「何の用ですか?」

「これ、落ちてたから…西木野さんの、だよね?」

 

若葉の謝罪を流して用件を聞く真姫に花陽は生徒手帳を渡す。真姫は手帳を確認し、自身のである事を確認する。

 

「何であなたが?」

「ごめんなさい…」

「なんで謝るのよ…」

 

謝る花陽に突っ込む真姫。そして何か思い当たったのか

 

「あ、ありがとう」

 

と礼を言った。

 

「それ、μ'sのポスターの所に落ちてたんだよ?ポスターを見てた、とか?」

 

2人が黙ってしまった為若葉が言うと

 

「私が?知らないです。人違いじゃないですか?」

 

顔を逸らせながら答える真姫。

 

「でもチラシも取って行ってたし…」

 

花陽の一言で椅子の横の鞄を見る真姫。そこにはμ'sのチラシが2つ折りにされて入っていたが、机の影になって居て若葉と花陽からは見えなかった。

 

「ち、違うの!ちg…いった、あ、ゔぇああ!」

 

立ち上がって否定しようとして右膝を机にぶつけ、そのまま椅子ごと後ろに倒れる。

 

「「大丈夫!?」」

 

若葉と花陽の声が重なる。若葉は真姫に歩み寄りながら手を貸す。

 

「全く変に慌てるから」

「あなた達が変な事を言うからじゃないですか!」

「クスクス」

「もう笑わない!」

 

花陽に注意しながら若葉の手を取り起き上がる。真姫を起こした後に椅子も起こす。そのタイミングで扉がノックされる。

 

「あらあら楽しそうね」

 

入って来たのは紅茶のカップを持って来た詩音だった。

 

「そんな事ないわよ。ママ」

「ハイハイ後は若い者同士に任せますよ」

 

終始笑って部屋から出て行く。

 

「面白いお母さんだね」

「そんな事…」

「ないの?」

「あるかもですけど…」

 

だよね〜と笑いながら答える若葉。

 

「西木野さんは…その、スクールアイドルとかやらないの?」

「私がスクールアイドル?」

 

花陽の突然の質問に疑問で返す真姫。

 

「うん、私放課後いつも音楽室の近くに行ってたの。西木野さんの歌、聞きたくて」

「私の?」

 

花陽の答えにキョトンとする真姫。若葉は黙って紅茶を啜る。

 

「うん。ずっと聞いていたいくらい好きで、だから」

「確かに西木野さんのピアノは良いよね」

 

花陽の言葉に頷きながら賛同する若葉。真姫はソーサーにカップを置き

 

「私ね。大学は医学部って決まってるの。だから私の音楽はもう終わってるって訳」

 

そう言いながらどこか寂しそうな顔で今まで取った賞を見る。

 

「それよりあなた、アイドルやりたいんでしょ?」

「え?」

 

いきなり話を振られた花陽は変な声を出す。

 

「だってこの前のライブの時、夢中で見てたじゃない」

「その割りには西木野さんも夢中そうだったけど?」

 

若葉が少し意地の悪い笑みを浮かべながら真姫に言う。

 

「私の話は良いのよ。それよりやりたいならやれば良いじゃない。そしたら少しは応援、してあげるから」

「ありがとう」

 

真姫の言葉に満面の笑みで答える花陽。それから少し雑談し、日が傾いて来た頃。

 

「それじゃあそろそろお暇しますかね?」

「そうですね」

 

若葉と花陽は鞄を持って立ち上がる。

 

「それじゃあ西木野さん。また明日、学校でね」

 

花陽が部屋を出て行く。

 

「西木野さん。西木野さんもやりたい事やっても良いと思うよ?」

「?それは一体…?」

「じゃあね!明日も放課後に屋上で練習してるから!」

 

真姫の質問には答えず、それだけ言って若葉も部屋を出る。

 

「もう帰るの?」

 

玄関で靴を履いていると詩音がやって来た。

 

「ハイ、こんな時間までお邪魔しました」

「お邪魔しました」

 

2人はキチンとお辞儀をしてから西木野家を出る。

 

「さて、時間も遅くなりそうだし、送ってくよ。家はどっち?」

 

若葉が花陽に聞くと、こっちです。と指を指す。

 

「お、実はウチもそっちなんだ〜」

 

と並んで歩き出す。

それから穂むらまでは雑談、主にアルパカについて話していた。若葉はこの一ヶ月ことりと一緒にアルパカにご執心なのだ。

 

「あ、ここなんだけど、寄ってく?家族へのお土産とかでも喜んで貰えると思うよ?」

「それじゃあお母さんにお土産を買って行こうかな」

 

と花陽もノリ気なので店の扉を開ける。

 

「ただいまー!」

「お兄ちゃんおかえり〜」

「お、穂乃果が店番してる。偉いね」

 

若葉を出迎えたのは店番をしている穂乃果だった。

 

「あ、あなたは」

「先輩」

 

どうやらこの2人は話した事があるらしく知り合いらしい。

 

「お兄ちゃんお兄ちゃん。店番代わって!今海未ちゃんが来てるの!」

「せめて着替えさせてくれない?」

 

両手を合わせて頼んでくる穂乃果の頼み事を受け花陽と一緒に2階に上がる。

 

「んーと悪いんだけど、穂乃果の部屋に海未がいると思うからそこでちょっと待っててね」

「わ、分かりました」

 

花陽が廊下の奥に進んだのを見ると若葉は自分の部屋に入って着替える。そして部屋から出ると廊下の奥でタオル一枚の雪穂と、制服の海未に挟まれている花陽が見えた。

 

「見ましたか?」

「見ましたね?」

「お前らは何しとんねん!」

 

取り敢えず雪穂に軽くチョップをし、部屋に戻す。

 

「海未、何があったか知らないけど、この後穂乃果と交代するから大人しく部屋で待っててね?」

 

と海未も部屋に返す。花陽は1人アタフタしている。

 

「あぁ穂乃果の部屋はさっき海未が入って行った部屋だよ」

 

と穂乃果の部屋の場所を教えてから下におり、穂乃果と店番を変わる。

 

「海未は一体何を見られたんだろうか…」

 

と考えてるとことりがやって来た。

 

「あれ?ことりちゃん?」

「あ、若葉君。こんにちわ〜」

「こんにちわ。そう言えばことりはどこ行ってたの?」

 

穂乃果達と一緒に帰ったのなら直接穂むらに来れば良いだけなのだ。だから気になった若葉はことりに聞くと

 

「お家にパソコンを取りに行ってたんだよ」

「パソコンなら穂乃果持ってなかったっけ?」

「調子が悪いんだって~」

「それなら俺のパソコンあるのに」

「あ……」

 

どうやら忘れていたようだ。

 

「穂乃果は上に居るよ」

「ありがとう~じゃあね~」

 

とことりは階段を登り2階に行く。ことりが2階に上がって暫くすると店の扉が開く。

 

「いらっしゃいませ~」

「よっ皆久しぶり」

「皆って今俺しか居ないんだけど」

 

やって来たのは翔平だった。

 

「で、どうしたの?」

「暇潰s」

「お帰りは、後ろで、ござい、ますっ!」

「分かった謝るから蹴らないで!」

 

何気に1番酷い扱いを受けている翔平であった。

 

「全く、俺だけ扱い酷くね?」

「大丈夫、気のせいだから」

「いや気のせいじゃないでしょ」

 

そんな事より聞いてくれよー!と言う翔平をスルーしつつ商品を包む若葉。

 

「あ、今日はほむまんもお願い」

「珍しいね。いつもは買わないのに」

「なんとなくそんな気分なんだよね~」

 

と翔平の追加注文を受けほむまんも一緒に包む。

 

「あ、そうだ。今翔平暇…だよね?」

「勝手に決め付けるなよ」

「忙しいの?」

「忙しくないけど…」

「ならちょっと待ってて」

 

そう言って奥に引っ込む若葉。翔平は近場の席に座り若葉を待つ。

 

「はいお待たせー」

 

少ししておぼんを手に若葉がやって来る。翔平は携帯から顔をあげ

 

「なぁ若葉?そのおぼんに乗ってるやつ…何?」

「何って…新商品?」

「なんで疑問形なんだよ!」

 

若葉の発言にツッコむも、ここに来ると偶にこうゆう試作品の試食をお願いされる事を翔平は知っているし、許容もしている。

 

「んで、最近はどうよ。廃校は阻止出来そう?」

「ん~まだ何とも言えないかな」

 

翔平が廃校の話を知っているのは雪穂辺りが話したのだろう、と結論付け返す。

 

「それにしても穂乃果ちゃん達がスクールアイドルとはね」

 

ケラケラ笑いながら試食をする。

 

「その情報はどこから?」

「え?この動画流したのお前じゃないの?」

そう言えば動画あげたなーと思いつつ翔平の見せてくる動画を見る。

 

「あれ?」

「どうしたんだ?」

「いやこれ、俺が撮ったやつじゃないよ」

「そうなのか?」

「俺が撮ったのは……これだよ」

 

と携帯の動画を見せる。

 

「確かに違うな」

 

2つの動画を見比べると確かに細部が異なっていた。

 

「誰がやっただろう」

「心当たりないのか?」

 

若葉はあの時その場にいたメンバーを思い浮かべる。動画を撮っていた若葉と、その隣でライブを見ていた夏希。夢中で見ていた愛生人、凛、花陽、真姫。謎のツインテール3年生。

 

「う~ん特に無いかな?」

「そっか、これ美味しかったよ。じゃあな~」

「ん、感想ありがとう。じゃあね」

 

店先まで翔平を送り、店に戻る。

 

「おーいもう外暗いから早く帰りなね~」

 

階段の下から若葉が呼び掛けるも反応が無い。不思議に思い階段を登ろうとすると、4人が降りてきた。どうやら丁度帰る所の様だ。

 

「送って行こうか?」

 

と3人に聞くもそこまでしてもらわなくても大丈夫と言われたので穂乃果と一緒に店先まで送る。

 

「それではお邪魔しました」

「また明日〜」

「お、お邪魔しました」

 

3者3様の挨拶をして帰路に着く。

 

 




そういえばことり母(彩)以降親の名前を勝手に決めていました。不愉快になられた方には申し訳ないです。

因みに今後出るであろう親の名前も此方の方で適当に決めます。
まぁあれです。彩さんはストーリーに一番絡んで来るのでゴニョゴニョ……

それでは誤字訂正・感想・意見・感想(大事なことなのでry)お待ちしております。


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ホンット、ギリギリですね♪by若葉

お待たせしました!
今回はあの先輩が出て来ます!

それでは楽しんで行って下さいにこ!


次の日の昼休み。若葉は1人で気になっていた事を調べに来ていた。

 

「今回は迷わずに来れた~」

 

若葉はとある部屋の前に来ていた。部屋のプレートには『アイドル研究部』。若葉は扉をノックするも中から返事が返って来る気配はない。

 

「また出直そう」

「あら、若葉君みっけ。こんな所でどうしたん?」

「あ、希先輩。どうもこんにちは」

 

後ろから声をかけられたので振り返ると、そこには希か居た。

 

「そこの部屋に何か用でもあるん?」

 

希がアイドル研究部の部室を見ながら若葉に聞く。

 

「用って言うかその…誰が部員なのかなー、と」

「突き止めて夜這いをかけようと?」

 

「違います!何でそうなるんですか」

「違うん?」

 

少し笑いながら言う希に若葉はからかわれていた事に気付く。なので

 

「実は違わなくて…分かり次第その日にでも…」

 

と冗談に乗ってみた。

 

「そっか…なら」

「なら?」

「今すぐ110番やね」

「すみません冗談でした!」

 

希が笑顔で携帯を出したので若葉はすぐに頭を下げて謝る。

 

「ま、ウチも本気にはしてないんやけどね」

 

ならその『1』に伸びてる指はなんだ!とツッコミたい衝動に駆られる若葉だが、余計な事は言わないでおこうと思い留まる。

 

「希先輩はアイドル研究部に誰が所属してるか知ってます?」

「なんでそう思うん?」

「希先輩は生徒会副会長だから知ってるかなーと」

 

若葉の答えに少し目を細め、ふーんと言った後

 

「知っとるけど……教えて欲しい?」

「まぁ無理にとは言いませんけど」

「だってさにこっち」

 

希が若葉の後ろを見ながら言う。それに釣られて若葉が後ろを振り返ると、あの名前の知らないツインテール3年生がいた。

 

「なんで私に振るのよ」

 

不機嫌そうに希に聞くにこ。

 

「だってにこっちが部長さんやし」

「そうなんですか?にこっち先輩」

 

若葉は本名が分からない為、希と同じ呼び方で尋ねる。

 

「え〜とアンタは……」

「若葉です。よろしくお願いします」

 

若葉が簡単な自己紹介をするとにこは腕を組み

 

「なら若葉。その『にこっち』て呼び方辞めて貰える?」

「にこっち。若葉君はにこっちの名前知らないんよ?」

 

希の言葉に頷く若葉。

 

「……矢澤にこよ!別に『にこにー先輩』て呼んでもいいのよ?」

 

少し考えたあとに少し高めの声で自己紹介するにこ。しかも呼び方の要求付き。

 

「では改めて。はじめまして矢澤先輩」

 

しかしそんなにこの要求を無視して普通に名字で呼ぶ若葉。

 

「2人とも自己紹介が済んだみたいやし、次の授業に遅刻せえへんようにね〜」

 

手を振りながら歩き去る希の言葉に、2人は同時に時計を確認する。

 

「ね、ねぇ若葉?」

「はいなんでしょう。矢澤先輩」

 

少し震えた声で聞いてくるにこに、これまた少し震えた声で返す若葉。

 

「次って何時からだっけ?」

「あと5分無いですね」

 

若葉の言う通り時計は昼休み終了5分前を指していた。

 

「ギリギリじゃない♪」

「ホンット、ギリギリですね♪」

 

お互いが笑顔で言う。次の瞬間2人は真顔になり

 

「それじゃあ矢澤先輩。また!」

「断るー!」

 

とだけ言って2人はすれ違う様に走って授業に向かう。

 

5時間目にギリギリ間に合った2人は安堵の溜息を吐いたとか、吐かなかったとか。

 

☆☆☆

 

放課後。若葉は1人で2階の渡り廊下を歩いていた。職員室に用事があり、今はその帰りなのだ。

 

「あれ?あそこにいるのは花陽ちゃんと西木野さん?」

 

何気無く窓の外を見ると花陽と真姫が広場の木の側で何か話していた。

 

「若葉先輩、ちょっといいですか?」

 

窓から広場を覗いていると、後ろから突然名前を呼ばれた。若葉が振り返ると凛がいた。

 

「や、凛ちゃん。こんな所でデートのお誘いかな?」

「え〜違いますよ〜」

 

と若葉の冗談を笑顔で即答する凛。そして若葉は既視感を覚えつつ少し凹む。なら言うなよ、とは誰もが思うだろう。

 

「こんな所に1人でどうしたの?愛生人君は一緒じゃないんだね」

「アキ君とはちょっと……そんなことよりかよちん知りませんか?」

「花陽ちゃん?花陽ちゃんならあそこにいるよ」

 

と広場を指しながら凛に言う。

 

「あ、ホントだ!若葉先輩ありがとうございました!」

 

と凛は窓に駆け寄り、花陽の姿を確認するや否や若葉に礼を言ってから広場に向かった。

 

『あーあーあーあーあー』

 

凛が走り去ってすぐに発声練習でよく聞くリズムの声が聞こえた。どうやら花陽と真姫が2人で発声練習をしている様だ。と、そこに先程別れた凛が現れる。

 

「ん〜イマイチ聞き取れないなぁ〜」

 

若葉はそう呟き、近くの階段を降りて広場に近付く。物陰に隠れて3人の会話を聞く。どうやらμ'sの練習の事は忘れている様だ。

 

「なんで西木野さんが凛とかよちんの話に入って来るの!?」

 

少し語尾を強めた口調で凛が真姫に言う。

 

「別に!歌うならそっちの方が良いって言っただけ!」

 

真姫は最初は驚いた感じで言葉に詰まっていたが、凛と同じように語尾を強めて言い返す。

 

「かよちんはいっつも迷ってばっかりだから、パッと決めてあげた方が良いの!」

「そう?昨日話した感じじゃそうは見えなかったけど」

「あの、喧嘩は…」

 

無言で睨み合っている2人を花陽は宥めようとするが特に意味もなく

 

「かよちん行こ。先輩達帰っちゃうよ」

「待って!」

 

凛に引っ張られて行かれそうになった時、真姫が花陽の空いてる手を取って引き止める。

 

「どうしてもって言うなら私が連れて行くわ。音楽についてなら私の方がアドバイス出来るし、μ'sの曲は私が作ったんだから!」

「え、そうなの!?」

「いや。えぇっと…」

 

真姫は花陽と凛の反応を見てから自分の言った事に気付く。その会話を物陰から聞いていた若葉は、やっぱりかぁ~。と天を仰ぎ見ていた。

 

「とにかく行くわよ」

「待って、連れてくなら凛が!」

「私が!」

「凛が!」

 

と同じ事を言い合いながら花陽の腕を片方ずつ掴み、花陽の抵抗虚しく引き摺られて行く。

 

「誰か、誰か助けてぇぇぇ……」

 

若葉の横を通り過ぎるも3人は気付かない。少し離れた所から花陽のSOSが聞こえるが、若葉は先程の2人を止める術を知らない。なので

 

「尊い犠牲になった花陽ちゃんに、合掌…」

 

体の前で手を合わせ、花陽達の去った方へ合掌をする。

 

「……若葉先輩、何してるんですか?」

 

声のした方を見ると、少し引いた感じの愛生人がいた。誰だって廊下の真ん中で合掌している人がいたら少し引くだろう…。

 

「お、いい所に!よし、愛生人君も行こう!」

 

ちょ!どこにですか!?と言う愛生人をを無視して先程の凛と真姫同様、愛生人の腕を引っ張る。愛生人も半ば諦めた様で、なるようになれと軽く悟っていた。

 

「到着!」

 

暫く引き摺られた愛生人は、若葉の目的地に着いたらしく、腕を解放される。

 

「ここって屋上の入り口ですよね?」

「ササッ、ここから覗いてみなよ」

 

若葉が扉を少し開け扉の前から退く。屋上では今シートに穂乃果達が座ってる正面に花陽達が立っていた。

 

「なんか花陽ちゃんの持たれ方グレイみたいだよね」

「…プッ」

 

若葉の空気の読めてない――敢えて読んでない可能性大な――発言に思わず吹き出しそうになるアキト。

 

「つまりメンバーになりたいって事?」

「はい。かよちんはずっとずっと前から、アイドルやってみたいと思ってたんです」

 

凛と真姫から説明を受け、ことりが3人に聞く。それに対して凛が答える。

 

「そう言えば凛ちゃんと何かあったの?」

 

屋上では花陽のPRが行われてる中、若葉は先程の凛とのやりとりを思い出して愛生人に聞く。

 

「え、なんでですか?」

「いや、何となく」

「……詳しい事は省きますが……」

 

と少し考えた後話し出す愛生人。

 

「ふ〜ん成る程ね」

 

愛生人から話を聞き屋上の会話に耳を澄ますとどうやら穂乃果達は凛と真姫も誘ったようだ。2人が誘いを受けた事を確認すると

 

「なら愛生人君。やる事は一つだよ」

「え?」

「ちゃんと謝って来ーい!」

 

若葉はそう言って愛生人を蹴る。イキナリ蹴られた愛生人は何の抵抗もなく屋上に出る。

 

「アキ君!?」

「若葉!?」

 

屋上にいた6人はイキナリ現れた愛生人と若葉に驚く。

 

「お兄ちゃん来るの遅いよ!」

「あははは。ごめん完全に忘れてた」

 

穂乃果の文句を笑って流す若葉。

 

「それで、愛生人君はどうするの?」

 

若葉は笑顔から一転少し真面目な表情になり愛生人に聞く。

 

「……凛ちゃん。昨日の昼休みはごめん!僕…」

「大丈夫、分かってるよ。だから謝らなくてもいいにゃ」

 

愛生人の謝罪を凛が途中で遮る。大丈夫、言いたいことはわかってるから、と。

 

「その代わり!今度アキ君には買い物に着いて来て貰うにゃ!」

 

凛が笑顔でそう言い、愛生人は了承した。

 

「それでそれで?愛生人君もμ's入るの?」

「僕ですか?」

 

穂乃果の質問に驚き、少し考える。

 

「……分かりました。僕もμ'sに入ります!」

「やったにゃー!」

 

凛が花陽に抱きつきながら喜ぶ。花陽も嬉しそうに凛に抱きつく。

 

「じゃあ明日から凛ちゃん、花陽ちゃん、西木野さん、愛生人君も朝練参加ね」

 

凛達の騒ぎが落ち着いた頃合いを見計らって、若葉が朝練の連絡をする。

その日は時間も時間だった為解散となった。

 

次の日の朝。若葉と穂乃果が神田明神の階段を登っていると

 

「真姫ちゃ〜ん。真姫ちゃん。真姫ちゃん。真姫ちゃん真姫ちゃ〜ん」

 

と境内から凛の元気な声が聞こえた。若葉と穂乃果は顔を見合わせて笑い、境内に向かう。そこには真姫に抱きつく凛と

 

「あれ?花陽ちゃんコンタクトにしたんだ」

 

眼鏡からコンタクトにした花陽がいた。

 

「はい。おかしくありませんか?」

「うん大丈夫だよ。凛ちゃんと西木野さんも仲良さそうで」

 

花陽の質問に答えながら荷物を降ろす若葉。そんな若葉に真姫は近付き

 

「あ、あの。これからは下の名前で呼んでくれませんか?私だけ名字って嫌だし……」

 

と少し顔を赤くしながら若葉に言う。若葉は少し驚いたあとに

 

「分かったよ真姫ちゃん」

 

と笑顔で返した。暫くして海未とことりもやって来たので

 

「よーし、新しいメンバーが入っての始めての朝練始めるよー!」

 

穂乃果の元気な声で朝練が始まった。

 

 

 

 




若「さぁ慣れてきたこのコーナー。今日のゲストはこちら!」
星「にゃーん。にゃーん。にゃーん♪」
若「星空凛ちゃんでーす」
星「よろしくにゃん♪」
若「そういえば愛生人君と仲直り出来て良かったね」
星「うん!それに今度一緒に買い物に行くよ!」
若「ほぉほぉつまりデート、と?」
星「そ、そんな事より!凛達の知らない所で若葉先輩が知らない人と会ってたにゃ!」
若「あ、話逸らした」
星「一体どうゆう関係なんですかー?」
若「……凛ちゃんさっきから動揺してる?言葉遣いがごっちゃだけど」
星「次回のアニライブ!」
若「タイトル変えるな!」
星「次回『あれはもしや(仮)』!」
若「あ、まだ決まってなかったんだ…」
星「それじゃあ感想待ってるにゃん♪」
若「誤字訂正とアドバイスもね!」



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それってつまり…by穂乃果

他の作品読んでて偶に思う。

皆さん服に関して詳しくね!?


1年生が入った週の休日。そろそろ梅雨入りするのか灰色の雲が空を埋めている昼時。とある兄妹は仲良く出かけていた。

 

「それにしても、お兄ちゃんが穂乃果の買い物に着いて来るなんて珍しいね」

「そうかな?丁度欲しいものあったし、μ's始めてからこういった事する時間あまり無かったもんね」

「そうだよね〜。いつもは休みの日にも練習入ってるし」

 

と2人でのんびり歩いていると

 

「ねぇお兄ちゃん。あれって」

 

穂乃果が隣を歩く若葉の服を引っ張る。若葉も止まり穂乃果の指す方を見ると、丁度洋服店から赤い髪を背中で縛った男子と橙色を短く揃えた女子の2人が出て来る所だった。

 

「穂乃果、こっちだ!」

「うん!」

 

2人は咄嗟に近くの電柱へ隠れる。

 

「んー。次はどこの店に行く?」

「あ、あそこなんてどうかにゃ!」

 

洋服店から出て来たのは凛と愛生人だった。凛達は若葉達に気付かなかった様で次の洋服店に向かう。

 

「何してたのかな?」

「この前の屋上で約束してた買い物じゃない?」

「それってつまり…」

「「デート!」」

「お兄ちゃん」

「穂乃果」

「「後を追いかけよう!」」

 

兄妹の井戸端会議は意見が一致して終わった。

 

「どうする?海未ちゃんとかも呼ぶ?」

「いや、海未を呼ぶと止められかねない。このまま2人で続行しよう」

 

と言って愛生人と凛の後を追い始める兄妹。

 

「にしても2人は何話してんだろうね」

「う〜ん。もう少し近付いてみる?」

「お前ら何してんだよ」

「「!?」」

 

隠れながら愛生人達をつけていると、不意に後ろから声をかけられる。恐る恐る振り返るとそこにいたのは夏希だった。

 

「なんだ夏希かぁ〜」

「もぉーびっくりさせないでよ」

「いや、驚いてるのはこっちなんだが」

「取り敢えずお前も隠れて」

 

と夏希を引き摺り物陰に隠れる。

 

☆☆☆

 

一方愛生人達は次の洋服店に足を踏み入れていた。

 

「ねぇアキ君。この服、どうかな?」

「ん〜こっちの服と合いそうだね」

 

凛の持って来た服に愛生人も服を合わせて見る。

 

「じゃあ試着して来るにゃ」

 

愛生人の持っていた服も手に凛は試着室へと向かう。手持ち無沙汰になった愛生人は他の洋服を選ぶ為に、店内を歩いて回る。

 

「ん?……気の所為……だよね?」

 

愛生人は視界の端に水色の髪と洋紅色(カーマイン)の髪が見えた気がしたのだ。愛生人は暫くその方を見ていたが、気の所為と判断し、凛のいる試着室に向かった。

 

「危なかった〜」

 

若葉は愛生人が立ち去ったのを確認し、息を吐く。先程見えた水色の髪は夏希で、洋紅色(カーマイン)の髪は途中で遭遇、巻き込まれた真姫である。

 

「な、なんで私まで……」

「いいじゃんいいじゃん」

 

項垂れる真姫を対して気にも留めない若葉。真姫を巻き込んだ若葉が何を言うか、と穂乃果と夏希が見る。

 

「あ!凛ちゃんが出て来たよ!」

 

穂乃果の一言で3人は一斉に試着室に目を向ける。試着室かれ出て来たのはワンピースの上にカーディガンを着た凛だった。

 

「おお…似合ってるね」

「ええ」

「愛生人も顔を赤くしてるぞ」

「あ、ホントだ!」

 

4人の感想は残念ながら愛生人と凛には届いてない。そんな2人は少し話した後再び凛は試着室へと戻って行った。

 

「買わないみたいだね」

「結構似合ってたのにな」

 

少し残念そうな穂乃果と夏希。

 

「ま、いいんじゃない?」

「あ、2人が出て来た」

 

真姫の台詞とともに洋服店から2人が出て来る。若葉達は尾行を再開させようとするも

 

「お兄ちゃ〜ん、お腹すいた〜」

 

穂乃果の一言で近場のファミレスに行く事になった。

 

「これで愛生人達を追えなくなったな」

 

夏希がどこかつまらなさそうに言う。

 

「元々俺と穂乃果は買い物の予定だったんだけどね」

 

若葉が苦笑いで返す。しかしそれでも納得のいかない顔をする夏希。

 

「あの。大変申し訳ないんですけど」

 

とファミレスの店員が話しかけてくる。

 

「どうしたんですか?」

「店内が大変混み合っていまして、相席をお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

若葉達が座っているのは6人掛けのテーブルだった。今穂乃果と真姫はドリンクバーを取りに行っていていないが、席は2人分空いている。

 

「因みに何名ですか?」

「2名様です」

 

店員の言葉に若葉は夏希を見る。夏希が何も言わずに頷いたのを見ると

 

「ええ、いいですよ」

 

と相席を了承した。

 

「ありがとうございます!」

 

店員はそう言って入口の方へと歩いて行く。

 

「ただいま〜。今の店員さんだよね?なにかあったの?」

 

丁度店員とすれ違う形で穂乃果と真姫が帰って来た。若葉は2人に事の顛末を話した。

 

「相席かぁ〜どんな人が来るんだろうね!」

「私は静かに出来れば誰でも良いです」

 

と2者2答を返す。とそのタイミングで店員がやって来る。その後ろにはこれから相席をするであろう男女2人組がいる。

 

「すいません。イキナリ相席なんて…」

 

男性の方が申し訳なさそうに謝る。

 

「いえいえ困った時はお互い様ですから」

 

と若葉も笑顔で答える。

 

「ほら凛ちゃんも」

「いきなりすいま……にゃん?」

 

凛と呼ばれた女性も謝るが、途中で言葉を止める。

 

「凛?……にゃん?……」

 

夏希の不思議そうな声に6人がお互いの顔を認識する。

 

「え!凛ちゃんに愛生人君!?」

「穂乃果先輩に若葉先輩!」

「それに夏希先輩に真姫ちゃん!?」

 

穂乃果と愛生人、凛が声をあげる。他の3人も信じられないといった顔をする。

 

「「2人(4人)ともどうしてここに?」」

 

真姫と凛の声が重なる。取り敢えず、と若葉が2人に座るよう手振りする。

 

「え、と俺たちは丁度出くわして、一緒にご飯を食べてただけなんだけど…そっちは?」

 

若葉が代表で愛生人達に答える。

 

「僕達は先週の約束の買い物を…」

「それにしてもμ'sのメンバーがこんなに集まるなんて、まるで奇跡だにゃー」

 

両手を上げて喜ぶ凛に若葉達4人は少し引き攣ったような笑顔を返す。タイミング良く頼んでいた品が来たのでお互いにそれ以上は詮索しなかった

 

それからは雑談しつつ昼を過ごす。食事の最中穂乃果が危うく尾行している事を言いかけるも、若葉によってなんとか誤魔化せたり、夏希が凛と愛生人についてからかったりと色々と楽しい食事となった。

 

「それじゃあそろそろ行こうか」

 

注文した品を食べ終え、ドリンクバーで一息吐いてから店を出る。そして愛生人と凛と別れる。

 

「この後どうする?」

「う~んこのまま追うってのもあるけど…」

 

夏希は若葉に聞く。若葉は追うかどうか迷っていると

 

「あの、私買い物に来たんですけど…」

 

真姫が自身の目的を言う。

 

「そう言えば穂乃果達も…」

「そうだったね」

 

真姫の一言で穂乃果と若葉も目的を思い出す。

 

「それじゃあ解散だな」

「そうね」

「それじゃあまた学校で」

「じゃーねー!」

 

その後それぞれがそれぞれの用事を済ませて帰宅した。

 

 

 

 




今回はルビ振りに挑戦してみました〜。これからもちょくちょくやるかもしれません。

にしても真姫ちゃんの髪の色が合ってるか分からない!

それでは感想、誤字脱字、アドバイスお待ちしております!


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あ…by穂乃果

今日はことりちゃんの誕生日ですね!

Happy Birthday (・8・)ちゅん!

まぁ内容はがっつり本編だけど…


2年生が入部してから2週間が経ち梅雨に入り、珍しく晴れたある日。1人早く神社に着いて体を解していたことりは

 

「んん~?」

 

背後から誰かの視線を感じた。後ろを振り返るも誰もいない

 

「ごめんごめん。遅れちゃた」

 

と、そのタイミングで穂乃果が階段を駆け上がって来る。

 

「ううん、私もさっき来たところだから」

 

謝る穂乃果に笑って返すことり。

 

「海未ちゃんは弓道の朝練があるんだって」

「そっか~お兄ちゃんもお店の準備で休むって」

 

と2人が情報の交換をしていると

 

「!?」

 

突然ことりが振り返る。

 

「どうしたの?」

 

ことりの行動に疑問を感じ聞いてみると、どうやら神社の建物の角から誰かが見ている気がする、とことりが言う

 

「大丈夫!任せて!」

 

何がどう任せてなのか分からないが胸を叩く穂乃果。

 

「ちょっと穂乃果ちゃん?」

 

ことりの声を無視して建物の角に移動する穂乃果。この時無意識に口でササッと言っている。そして角で一度止まり、意を決して角を曲がる。

 

「あれ?」

 

そこで穂乃果が見たのは誰もいない光景だった。不思議に思いもう一つの角まで走り寄るとイキナリ何者かに左足を掴まれる。

 

「うわっ!うわわわあああぁぁぁぁ!」

 

突然の事で腕をバタつかせて態勢を整えようとするも、功を奏せず体は地面に向かって倒れていく。

 

「んぐっ!ぐぬぬぬぬ…いったーい!」

 

運良く前に向かって倒れたので、腕立ての要領で何とか持ち応えた穂乃果。しかし地面に手をついた衝撃で手が痺れたのか、その場に座り込み手をバタつかせる。その時、左側から迫る何かを見て思わず両目を瞑り、衝撃に耐える。が

 

「ぅん?」

 

いつまでも衝撃が来ない為、顔を上げそちらを見ると

 

「あぐぁ!」

 

デコピンが額にクリーンヒットする。思いもよらない攻撃に後ろに倒れる穂乃果。

 

「穂乃果ちゃん!?」

 

ことりが心配して穂乃果に駆け寄ると、目の前にサングラスにマスクを着け、コートを着たツインテールの女性がいた。

 

「アンタ達」

「ぁあ」

 

女性がマスクを外しことりを見下ろしながら言う。その動作と言葉にことりは怖がり声らしい声が出ない。そんなことりに向かって女性は人差し指を突き出し

 

「とっとと解散しなさい!」

 

と言い、走り去る。

 

「…え?今の…誰?」

 

ことりの呟きに答える人はいなかった。

 

☆☆☆

 

「て事があったんだよ!お兄ちゃん!」

 

若葉が学校に着いて教科書を机に入れていると、穂乃果が今朝起きた事の顛末を若葉に話した。

 

「それでそのガーゼ?」

 

途中から話を聞いていた夏希が穂乃果の額を指しながら聞くと、穂乃果は頷く。若葉は妹の口から伝えられた特徴と一致している人物に心当たりがあるのか、話半分に聞いていたようで特にこれといったコメントはしなかった。

 

「ま、髪で隠せば隠れ……てないね」

 

実際に穂乃果の前髪でガーゼで隠そうとするも、うまく隠れないので取り敢えずとポケットからヘアピンを取り出し、前髪をこめかみの辺りで固定する。

 

「今日はこれで過ごした方が良いかもね。ああそれと穂乃果、傘家に忘れてったよ?」

 

と鞄から折り畳み傘を取り出し穂乃果に渡す。

 

「あ、ありがとう」

「今日雨降るのか?」

 

傘を見て不安に思ったのか、夏希が若葉に聞く。

 

「天気予報では60%だって言ってたよ」

「なんだ。なら大丈夫だな」

「その自信はどこから来るのですか?」

 

夏希が自身満々に言い切ると海未とことりが来た。海未は弓道の朝練が少し延びこの時間まで練習していたらしい。ことりは委員会の仕事で席を外していた。

 

「だって昨日も一昨日も60%で晴れてたから」

 

と自身の根拠を説明し、若葉と海未が溜め息を吐いた所で担任の姫が教室に入って来た。それから朝のHRが始まった。

 

☆☆☆

 

放課後、若葉、夏希、愛生人は雑談していた。因みに今女性陣は着替え中で男子陣は廊下で待っている。

 

「お待たせしました」

 

暫くして女性陣は着替えを終えて更衣室から出て来る。

最後に穂乃果が出て来たのを確認すると若葉が鍵を取り出し、盗難防止の為鍵を掛ける。

 

「それでは、メンバーを新たに加えた新生スクールアイドル『μ's』の練習を始めたいと思います」

 

穂乃果が整列しているメンバーの前で練習開始の言を述べる。

 

「いつまで言ってるんですか?それはもう2週間も前の話ですよ?」

 

そんな穂乃果に少し呆れた声で言い返す海未。

 

「だって嬉しいんだもん!」

 

その一言でその場にいた全員が少し笑う。

 

「なのでいつも恒例の、1!」

「2!」

「3!」

「4!」

「5!」

「6!」

 

穂乃果に続くようにことり、海未、真姫、凛、花陽が続く。若葉達はメンバーと言ってもサポートをメインとしいるので番号は遠慮している。

 

「くぅ~!6人だよ6人!まるでアイドルグループみたいだよね!いつかこの6人が『神シックス』だとか『仏シックス』とか言われるのかなぁ」

「あ、あははは」

「毎日同じ事で感動できるなんて羨ましいにゃ~」

 

とテンションが上がった穂乃果の台詞に苦笑いする花陽と少し毒舌を言う凛。若葉の隣にいる愛生人に至っては

 

「仏だと死んでるみたいですね」

 

とツッコんでいた。穂乃果はそんな声を無視したのか、聞こえなかったのか話しを続ける。

 

「私、賑やかなの大好きでしょ。それに沢山いれば歌が下手でもバレないし、あとダンスを失敗しても」

「いい加減にしなさい」

 

穂乃果の話を遮るように若葉が穂乃果にツッコむ。

 

「じ、冗談だって」

「でもちゃんとやらないと今朝みたいな事言われちゃうよ?」

 

笑って誤魔化す穂乃果にのことりが注意する。

 

今朝の神社での事は皆が知っている為、あー、となる。

 

「でもそれくらい有名になったってことだよね」

 

凛が頭の後ろで両手を組んで笑う。

 

「そんな事より練習、どんどん時間なくなるわよ?」

「確かに真姫ちゃんの言う通りだよ。それにしても真姫ちゃんやる気満々だね」

「べ、別に私はとっととやって早く帰りたいの」

 

真姫の言葉に賛同する若葉。若葉に続くようににやけ顏になりながら夏希が真姫に言う。

 

「そんな事言っちゃってー。今日の昼休みにステップの練習してるの見たよ?」

「あ、あれはただこの前やったステップが酷かったから、変えようとしただけで!」

「あ、真姫ちゃん!」

 

夏希の言葉に対しての真姫の答えを、若葉が慌てた様に声を出し、とある人を見る。真姫も釣られてそちらを見ると

 

「そうですか……あのステップ考えたの、私なんですが…」

 

髪を弄りながら落ち込む海未の姿があった。それを見て真姫が声を上げる。

 

「気にする事ないにゃー。真姫ちゃんは照れ臭いだけだよね〜」

 

凛が階段を登りながらフォローをする。

 

「あ…」

 

踊り場でターンした凛を見上げた穂乃果の声に釣られて皆が穂乃果の視線を追うと

 

「雨だ…」

 

 

 

 




特に何も無かったけれどオリ主3:愛生人君の誕生日が先週でした。

自分で設定考えときながらその事を覚えてなかったてゆーね!


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う〜。テンション上がるにゃー!by凛

お待たせしました!

前回中途半端な所できってしまい、冒頭をどう始めようか悩んだり、リアル(スクフェス)が忙しかったりで少し遅れました!

ではどうぞ


「あーあ、やっぱりダメだ」

 

雨が降っているのを確認しすぐに屋上に行き小窓から覗くと、雨足が強く屋上は水浸しになっていた。

 

「降水確率60%って言ってたのに!」

「どしゃ降りだね〜」

「今日は降るって言ってたもんね」

 

穂乃果が憤慨してる横で若葉とことりはどこか他人事の様に話していた。

 

「それにしても降り過ぎだにゃー!」

 

そんな2人にか天気にか、凛が文句を言う。

 

「凛ちゃん、先輩達に言っても意味ないよ」

 

そんな凛を花陽が諭す様に言う。

 

「あ、少し弱くなって来たよ!」

 

雨が弱まったタイミングで穂乃果が叫ぶ。そして屋上に続く扉を開け、飛び出す。

 

「やっぱり確率だよ確率!」

 

凛もそれに続く様に飛び出す。

 

「穂乃果!?凛!?」

 

そんな2人の行動に海未が驚いた声を出す。

 

「大丈夫大丈夫!ちょっと濡れてるけど練習出来るよー!」

 

海未はそういった意味で名前を呼んだ訳ではないのだが、穂乃果は手を振りながら室内にいるメンバーに話す。その横では凛が

 

「う〜。テンション上がるにゃー!」

 

と両手を上げて叫ぶや否や前転(バク転の反対)からの前宙をし、着地後にくるっとターンで決めポーズをする。そんな行動に穂乃果は賞賛の声を上げるが他のメンバーは半ば呆れていた。

 

「そろそろ中に入らないと風邪引くぞー?」

 

夏希が呼びかけるも2人には届いていないのか無反応である。

 

「大丈夫じゃないですか?よく言うじゃないですか。馬鹿は風邪引かないって」

 

愛生人の言葉は2人に聞こえていたようで、外から抗議の声がする。そんな事をしていると雨足が一気に強くなる。

 

「これじゃあ練習は無理そうね」

「そうだね」

「うん」

 

真姫の言葉に若葉と花陽が頷く。

 

「ちょっとー、それじゃあ凛達が馬鹿みたいじゃん!」

「馬鹿なんです」

 

凛と穂乃果がドアに駆け寄り文句を言うも、海未に即答される。

 

「ですが、これからずっと雨が降るとなると練習場所をどうにかしないといけませんね」

 

空を見ながら海未が言う。

 

「取り敢えずここでうだうだしてても何も始まらないし、どっかに行かない?」

 

と若葉が提案したので一行は学校の近くのトンタッキーに向かう。

 

☆☆☆

 

「それにしても凄い雨ですよね」

 

トンタッキーの2階の席を9人分確保し、座りながら愛生人が言う。

 

「そうだな……」

 

それを肯定したのは服のあちこちが濡れている夏希だった。愛生人は今朝の事を若葉から聞いていたので特に気にしていない。

 

「何で夏希先輩は傘無かったんですか?」

 

席に座った凛がきく。今2階で席を確保しているのは夏希、愛生人、凛そしてことりの4人で、他の5人は注文に行っていてここにはいない。

 

「だって昨日一昨日って今日と同じ60%じゃん?だから今日も降らないっしょ!て思った結果のこれ」

「でも降水確率ってその地域で雨の降る割合を示してるから、一概に降る降らないって分からないんだよ?」

「まぁその割合も過去のデータを元にしてるからその予報が当たるって訳でもないんだけどね」

 

夏希の言い訳染みた言葉にことりが豆知識を披露する。それに続く様に夏希の後ろからトレイを2つ持った若葉が補足する。

 

「降水確率ってそうゆう意味なんだ〜」

 

2人の説明に穂乃果は目を丸くする。

 

「それで練習場所はどうするのですか?」

 

皆が席に着いたのを確認し、海未が切り出す。

 

「さすがに梅雨の間中練習出来ないのは痛いわよ?」

「体育館や講堂はダメなんですか?」

「体育館も講堂も他の部活が使ってるって希先輩が言ってたよ」

 

真姫の言葉を聞き花陽が質問するが、いつの間にか希と連絡していた若葉の言葉に3.4人が肩を落とす。

 

「つーか若葉はいつの間に副会長さんと連絡先交換したんだ?」

 

夏希は先程の若葉の言葉に疑問を抱いたのか、若葉に聞く。

 

「朝練の時にね、色々あったりして情報交換の為に連絡先を交換したんだよ」

 

と何のことでもないようにあっさり白状する。

 

「そんなことより、何で雨止まないの!!」

 

穂乃果が2人の会話を遮るように大きな声で言い、ポテトを食べる。

 

「穂乃果、もう少し超えのボリューム下げてね」

「それにストレスを食事にぶつけると大変な事になりますよ」

 

そんな穂乃果に若葉と海未が注意するも聞く耳を持たずに、窓の向こうを睨みながらポテトを食べ続け

 

「あれ?」

 

ようとして間の抜けた声を上げる。

 

「ポテトがなくなってる…まさか」

 

そういって正面に座る海未を見る。そんな穂乃果の行動に海未は自分が疑われている事をさとり

 

「私じゃないですよ。自分の食べた分も忘れたのですか?」

 

と身を少し乗り出すようにして言い返す。まったく、と言いながら海未は自分のポテトに手を伸ばすもその手は空を切る。不思議に思った海未は自分の手元を見るとそこには空になったポテトの入れ物があった。

 

「穂乃果こそ、私のポテト取らないで下さい!」

「私は食べてないよ!」

 

と2人のポテトが消えた事により喧嘩ぎ始まりそうになる。

 

「はいはい。2人とも俺と夏希のポテトを上げるから大人しくして、ね?」

「俺のも!?」

「何の為に1人でポテト2個買ったのさ」

「自分で食う為だよ!!」

 

と溜息を吐きながら若葉はなおも文句を言っている夏希を無視して自分の分と夏希のポテトを一つ取り、穂乃果と海未に渡す。

 

「良いのですか?そうすると若葉の分のポテトがなくなってしまいますが」

「大丈夫大丈夫。夏希から貰うし、足りなかったらまた買いなおすから」

 

と渋る海未を納得させる。そんな若葉の後ろではにこあったポテトの片方を取り上げられた挙句、残ったポテトも半分ずつにする事を知った夏希が項垂れていた。

 

「じ、じゃあこうしましょう!」

 

そんな夏希を見兼ねたのか愛生人が布巾を広げそこにポテトを全部出す。

 

「ほら夏希先輩も」

 

と愛生人に促されるように夏希もポテトを広げる。

 

「あ!アキ君達だけズルイにゃー。こうなったら凛も出すー!」

「全く子供みたいにはしゃいで…」

「真姫ちゃんのも一緒にするにゃー!」

「え?…ちょ、凛!?」

 

真姫の制止の言葉を聞かずに凛は真姫のポテトも一緒にする。4人分のポテトでトレイを埋めてから若葉が本題を切り出す。

 

「で、明日から本当にどうする?」

「空いてる教室は使えないんですか?」

 

諦めたのか真姫はトレイからポテトを摘まみながら穂乃果達に聞く。

 

「前に聞いたら、ちゃんとした部活動じゃないとダメなんだって」

「部活申請も5人以上じゃないとダメって言われたし」

 

ことりと穂乃果ぎ順番に答える。

 

『5人?』

 

穂乃果の一言に1年生4人の頭にハテナが浮かび、若葉と夏希は苦笑いしていた。

 

「5人以上なら……」

「もういるにゃ……」

 

花陽と凛が言い難そうに言う。穂乃果とことりはその言葉で顔を見合わせ、海未は溜息を吐く。

 

「若葉先輩と夏希先輩は気付いてたみたいですね。何で言わなかったんですか?

「お、愛生人は良く見てるな」

「まぁ俺らが言わなかったのにはいろいろあるんだよね」

 

と若葉と夏希は上手く愛生人の質問から逃れる。

 

「それで、何で申請しなかったんですか?」

「あーそれはね…」

 

と穂乃果が頭を掻きながら笑い、一言。

 

「忘れてたんだよね」

「忘れてたんかーい!」

 

その場にいた誰よりも早く、仕切りの向こうの女性客がツッコミをしていた。

女性客は慌てたように自分の席に慌ただしく座る。穂乃果達は不思議そうにそれを見ていた。若葉と夏希は誰にも聞こえないように溜息を吐く。

 

「忘れてた、とはどうゆうことですか?」

「いやーメンバーが増えたら安心しちゃって」

 

笑って誤魔化そうとする穂乃果に真姫と若葉は溜息を吐き

 

「この人達ダメかも…」

「と言うより穂乃果が少し抜けてるだけなんだよね…」

 

と、どこか呆れたように話してまた溜息を吐く。

 

「よし!明日もう一度部活申請しよう。そしたら部室も貰えるよ。はぁーホッとしたらお腹減って来ちゃった〜」

 

そんな2人に気付かずに穂乃果は自分のハンバーガーに手を伸ばす。が穂乃果が見たのは仕切りの下のスペースから伸ばされた手が自分のハンバーガーを掴んでいる所だった。

 

『……………』

 

他のメンバーも見たようでその場に少しの沈黙が流れる。そしてハンバーガーを掴んでいる手はそっとトレイに置き、仕切りの向こうに消えていった。

 

「ちょっと待って!」

 

ガタッと席から勢い良く立ち上がり、仕切りの向こうの女性客を追い掛ける。幸い距離が近かったお陰ですぐに追いつき、腕を掴み止める。

 

「解散しろって言ったでしょ!」

 

女性客は振り向きながら、かけているサングラスを抑えて言い放つ。

 

「解散!?」

「そんな事より、食べた分のポテト返して!」

「そっち!?」

 

花陽が2人のやり取りに驚きの声を上げる。若葉や他のメンバーも立ち上がりその経過を見守っていると、穂乃果が口を開けた女性客の頬を横に引っ張り

 

「買って返してよ!」

「あんた達歌もダンスも全然なってない。プロ意識が足りないわ!」

 

と今だポテトを引っ張る穂乃果の手を払いのけ

 

「いい?あんた達がやってるのはアイドルへの冒涜、恥よ!とっとと辞める事ね」

「あぁ…!」

 

言うだけ言って女性客は店から走り去って行く。窓から外を見ていると、雨が降っているのにも関わらず傘を刺さないで走って行った。

若葉は先程の人物に心当たりがあり、そっと誰にも気付かれずに溜息を吐いた。

 

 

 




そう言えば「オリキャラ・呼び方」を全然更新してないや……

ま、その内一気に変えるのでそれまで放置かな?←おい!

それでは感想、誤字脱字、アドバイスお待ちしております!


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で、あんたはなにが言いたい訳?byにこ

今回は若葉君はちょっといつもと違う事をしてる気がします。

この小説『アニライブ』を書き始め早くも2ヶ月ちょい。始めた頃はこんなに多くの人が読んでくれるとは思いもしませんでした。
これからもこんな名無し♪を宜しくお願いします。

それではどうぞ


トンタでの騒動の翌日の昼休み。若葉は1人でとある場所に向かう。

 

「もっしもーし、矢澤センパーイ。いるのは分かってますので開けて下さーい」

 

プレートにアイドル研究部と書かれた教室の扉をノックする。少しして中から鍵が開く音が聞こえ、扉が僅かに開く。

 

「……何よ」

「取り敢えず中に入れて貰っていいですか?お昼まだなので」

「………」

 

弁当箱を持ち上げた若葉のお願いを渋々といった感じで受け、扉を開け奥の席に座る。

 

「おじゃましまーす」

「邪魔って自覚あるなら出てってくれる?」

「おじゃましますって本来そうゆう意味じゃないと思いますよ?多分」

 

にこの言葉に笑顔で返す辺り若葉も少し余裕があるようだ。何のかは分からないが。

 

「それで?何で来たの?」

「随分とあっさり本題に入りますね」

 

と若葉は弁当を広げながら、壁際の棚にぎっしり入ってるアイドルグッズを見る。

 

「こっちも暇じゃないのよ」

 

にこも同じように弁当を広げる。

 

「成る程?μ'sのライブ映像を見てダメ出しするのに忙しい、と」

「…そんな事言ってないでしょ」

 

若葉の言葉に少し詰まりながらも返答する。

 

「またまた〜。ダメ出し出来るって事はその分μ'sのライブを見てるんじゃないんですか?そして色々なスクールアイドルを見てる貴方のアドバイスはきっとμ'sの為になる。俺はそう思いますよ?」

 

若葉の言う通り、にこはμ'sのライブ映像を何回も見直してはダメな部分を見つけ出している。にこはそれがバレた事に驚き、声が出なかった。

 

「いや〜ここ最近になって急に再生数が伸びてたから、気になってカマをかけてみたらいやはや、案外当たるものですね」

 

若葉はにこの沈黙を是と受け取り続ける。

 

「で、あんたはなにが言いたい訳?」

 

目に見えて不機嫌になっていくにこに若葉は両手を上げ

 

「別にだからどうしろって訳じゃないんですよ。でもそんな矢澤先輩がμ'sに入ってくれたらなーって思っただけです」

「それってつまり、μ'sに入らなかったらバラすって事?」

「まさか!まぁ贅沢言っていいならお願いしますけど…」

「お断りよ」

「ですよねー」

 

と言って空になった弁当を仕舞い、席を立つ。

 

「あ、この後μ'sが来ると思いますよ」

「何でよ」

「何でも今日部活申請するらしいので」

 

それだけ言って扉を閉める。それから屋上に行き、梯子を登ると寝転がる。

 

「な〜んかさっきのは俺らしくなかった…かな?」

「何がらしくないんだ?」

「さっきのって何の事ですか?」

「夏希に愛生人君か……」

 

若葉は声のした方を向くと、夏希と愛生人が梯子のある場所から顔を覗かせていた。取り敢えず起き上がり、2人に先程のにことのやりとりを聞かせると

 

「んー俺らは若葉とは長い付き合いって訳じゃないから何とも言えないけど、確かにいつもの若葉らしくないっちゃーないかな」

「最後の方なんて脅迫してるみたいでしたもんね」

「言ってくれるなー。別にそんなつもりは毛頭無いんだけど…」

 

2人の素直な返答に少し笑いながら言い返し、さてどうするかと再び寝転がる。

 

「んーどうしようかなー」

「どうでも良いけどあと5分で授業始まるぞ?」

「え!……次の時間体育なので先に失礼します!」

 

夏希が腕時計を見ながら言うと愛生人は梯子を慌てて降り、授業に向かった。

 

「じゃあ俺らも行こっか」

 

若葉は立ち上がり梯子を降りる。それを見て夏希は肩をすくめてから梯子を降りる。

 

☆☆☆

 

放課後、若葉は用事があり部活申請に同行しなかった。

 

「それじゃあ行くよ」

 

生徒会室を前に穂乃果は意気込み扉をノックしようとすると

 

「あら、貴方達」

 

よこから声をかけられた。穂乃果は扉から飛び退き、声のした方を見ると

 

「の、希先輩!?」

「や、元気にやっとった?」

 

と笑いながら片手を上げ挨拶をする希がいた。

 

「今日はそんな人数連れてどうしたん?」

 

希が穂乃果の後ろ、若葉を除いた7人を見て言う。

 

「その、実は」

「ま、用件は中で聞くから入り〜」

 

と扉を開けて穂乃果達を中に招く。

 

「失礼します」

 

希の後に続くように穂乃果、海未、ことり、夏希の4人だけが生徒会室に入る。

 

「貴方達、今度は何?」

「部員が揃ったので改めて部活申請に来ました!」

「アイドル部?」

「はい!」

 

穂乃果の元気な返事に絵里はチラリと希と視線を合わせると

 

「本校には既にアイドルに関する部活動が存在しています。なのでこの申請は受け取れないわ」

「それってアイドル研究部ですか?」

「そうよ。よく知ってるわね」

 

夏希の言葉に驚きつつもそうだ、と返す絵里。

 

「それに生徒数が少ない今、無駄に部活動を増やすわけにはいかないの。だからこの話はお終い」

「にしたくなかったら、アイドル研究部の部長さんとちゃんと話しをつけてくることやな」

 

絵里の言葉に続けるように希が提案する。その希の提案に驚きの表情で希!と叫ぶ絵里。どうやら希の独断のようだ。

 

「一度部室に行ってみたらええんやない?」

 

穂乃果は一礼してから生徒会室を出ようとすると

 

「あ、佐渡君はちょっといいかしら?」

 

どこか既視感(デジャヴ)を感じる台詞を聞き、夏希もそれに応え、それを見た穂乃果達は夏希を置いて生徒会室を出る。

 

「じゃあウチが案内してくるわ」

 

と言い、希も生徒会室を出て行く。そして2人きりの生徒会室で夏希と絵里は何かを話し始める。

 

 




夏「さて今回は男3人で色々と話すか」
愛「色々と言っても、そんなに話す事あります?」
若「無いと思うよ?」
夏「いやいや、世間では既に始まってる新学期」
愛「大学生はやっと終わった夏休みって感じですけどね」
夏「しかし、俺たちはまだ中間考査すら終わっていない!」
若「中々にメタいね」
夏「そんな中突如現れた謎の女性」
若「多分矢澤先輩かな?」
夏「らしくない行動と発言をする若葉、彼に迫り来る謎の影!」
愛「それは次回明かされると思います」
夏「希先輩の良く当たる占い!」
若「そんなシーン今回無かったでしょ」
夏「アイドル部申請を一向に受理しない生徒会長!」
愛「何か夏希先輩との秘密がありそうでしたね」
夏「次回!『にっこにっこにー♪』」
若愛「「次回予告終わらせたっ!?」」
夏「それじゃあ次回会おう!」
若「バイバーイ」
愛「感想、誤字脱字、アドバイスお待ちしております!」














夏「これで良かったか?」

若「うん。バッチリ!」

愛「夏希先輩がグッタリしてますよ」


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にっこにっこにーbyにこ

次で終わるかなー?にこにー編
どうにこ今月中には次に行きたい!行けるかな〜?行きたいなぁ(遠い目)……多分行ける……ハズ。きっと、うん。

ではどうぞ!



穂乃果達は希の案内でアイドル研究部の部室の前に来ていた。

 

「ほな、ウチは生徒会室に戻るから。またね〜」

 

それだけ言うと希は穂乃果達と別れる。それと入れ替わりで夏希が一向に合流する。

メンバーも揃い、改めて部室の扉をノックしようとした時、正面からどこかで見たことのある人物がやって来る。

 

「あー!貴方は昨日の!」

 

そう。正面から来たのは部室の鍵を開けに来たにこだった。

 

「てことは貴方がアイドル研究部の部長!?」

 

穂乃果が驚いて叫ぶ。と同時ににこも行動を興す。

 

「うにゃにゃにゃにゃにゃー!」

 

とまるで猫のように扉の前にいる穂乃果を威嚇し、穂乃果が怯んだ隙ににこは部室に逃げ込む。

 

「部長さん。開けて下さい!」

 

穂乃果が扉を叩きながら頼むも、にこは無視して扉の前に荷物を置き扉を塞ぐ。

 

「うぎぎぎ、開かない〜」

 

穂乃果は扉を開けようとするも向こうの荷物が邪魔で開かない。

 

「外から回り込むにゃー!」

「ちょ、凛ちゃん!?」

 

凛が走って外に行くのを、同じく走って追いかける愛生人。

にこはそれを聞いていたのかいないのか、窓を開け外に逃げる。

 

「待つにゃー!」

 

校舎の角から凛が走って来る。その後ろからヘトヘトになっている愛生人が凛を追っている。

にこはそれを見て全力で反対方向に向かって逃げるが、体力がないのか凛があり過ぎるのか、にこのスピードが落ち、凛に追いつかれる。

 

「捕まえた〜」

 

両手を脇の下から通すようにしてにこを捕まえた凛。しかしにこは上手い具合に抜け出し、また走る。

 

「あ〜ちょっとー」

 

凛は手を伸ばし捕まえようとするも届かない。

 

「ふっふ〜ん。捕まるもんですか」

 

まるで悪役みたいな台詞を吐きながら前を向くと

 

「みぇ〜?」

 

そこにあったのはアルパカの小屋だった。直後ににこと2匹のアルパカの声がアルパカ小屋の周りにこだまする。

 

「あれ〜?いな〜い…」

 

凛と愛生人がアルパカ小屋に到着するも、にこの姿を見失ってしまった。

 

「ハァハァ……凛ちゃん……あれ…」

「あ!見付けたにゃー!」

 

愛生人は息を整えながら小屋の中を指差すと額を赤くしたにこが倒れていた。

 

「取り敢えず皆の所へ戻ろっか」

 

愛生人がにこを背負って歩きながら凛に提案する。凛は一瞬だけなんとも複雑そうな表情をした後に愛生人の後を追う。

 

「でもどうやって中に入るの?」

「……夏希先輩ってピッキング出来るかな……」

 

凛の問いに愛生人は遠くを見ながら呟く。

 

「さすがに出来ない……と思うよ?」

 

疑問形で返すあたり凛も、もしかしたら出来るんじゃ?と思っているのだろう。

それから靴を履き替え、にこの上履きを拭いてから皆の元へと戻り、ピッキングの件を夏希に聞くと

 

「さすがの俺でも(学校の施設は)出来ない」

 

と()の中を小さく早く言う。何のかは言わないが小さく早くがポイント。

 

「どうやって中に入るの?」

「最悪p」

「最悪ピッキングで開けるのはダメですよ?」

「ヤ、ヤダナーピッキングナンテシナイッテバー」

 

どうやら先程の呟きが聞こえてたらしく、海未に先手を打たれ、目を逸らしながら返事をする夏希。

 

「じゃあ窓から入ればいいんじゃない?」

『それだ!』

「それじゃあ行ってくる。行くぞ愛生人」

「えっ!?僕もですか!?」

 

真姫の提案に一同は賛同の声を上げ、夏希は愛生人の抗議を無視して引き摺って行く。

 

「誰か助けて〜」

『ちょっと待っててー』

「そ、それ私の台詞…」

 

いつからか暗黙の了解となった返事(1人ツッコミ)をし流す一同。

そして扉の前で待つこと数分、扉の向こうでガサゴソと物を動かす音が聞こえたと思ったら、スグに鍵の開く音がする。

 

「お待たせー」

 

扉が開き、中から靴を持った夏希と愛生人が出てくる。

 

「ことり先輩はまだ戻って来てないんですね」

「みんな〜待って〜」

 

と愛生人がことりの確認をしていると廊下の向こうからにこを背負ったことりがやって来る。

ことりは保健委員なので、にこの手当てをしに保健室に行っていたのだ。

ことりを加えた一行はアイドル研究部の部室に入り、1番奥の席ににこを座らせ、メンバーも席に座る。

席順としてはにこを起点にし、時計回りで花陽、凛、愛生人、真姫、一つ空いて夏希、ことり、海未、穂乃果である。

 

「あ、A-RISEのポスター」

「こっちは福岡のスクールアイドルね」

「校内にこんな所があったなんて…」

 

凛と真姫と海未が部室に飾られているポスターを見て話していると

 

「勝手に見ないでくれる?」

 

いつの間に起きたのか不機嫌そうに注意するにこ。

 

「こ、こここ、これは。伝説のアイドル伝説DVD全巻BOX!持ってる人に初めて会いました!」

「そ、そう?」

「凄いです!」

「まぁね」

 

花陽の驚き様ににこが少し引いている

 

「へぇ〜そんなに凄いんだ」

「そうだね」

「知らないんですか!?伝説のアイドル伝説とは、各プロダクションや事務所、学校等がが限定生産を条件に歩み寄り、古今東西の素晴らしいと思われるアイドルを集めたDVD-BOXで、その希少性から伝説の伝説の伝説、略してでんでんでんと呼ばれる、アイドル好きなら誰もが知ってるDVD-BOXです!」

 

そんな夏希と穂乃果に対し花陽が言い返すと、穂乃果と揃って苦笑いをした。思わぬ所で花陽のアイドル好きを知った2人だった。

 

「花陽ちゃんのキャラが180°変わったね」

「人はこれを二重人格と言うのかね」

 

と花陽に聞こえないようにコソコソと話し合う。

 

「通販、店頭共に瞬殺だったそれを2つも持ってるなんて。尊・敬」

「家にもうワンセットあるけど」

「はうぅぅぅ!」

 

尊敬の眼差しで見ていた花陽がにこの台詞に悶える。

 

「じゃあそれ見ようよ」

「ダメよそれは保存用」

 

穂乃果の提案を却下したにこの台詞に、涙を流しながら崩れる花陽。

 

「ん?これって」

「あ、気付いた?」

 

愛生人は棚の上にあるサイン色紙を見付ける。それは秋葉原でカリスマメイド、ミナリンスキーのサインだった。

 

「皆凛好きー?」

「凛ちゃん。漢字に変換しちゃダメだよ」

 

凛の分かり辛いボケに突っ込む愛生人。

なおサインは通販で入手した物だから本人は知らない、とのこと

 

「それで?何しに来たの?」

「アイドル研究部の部室見学に」

「違います」

 

にこの問いに夏希が答えるも、海未に即否定される。

 

「アイドル研究部さん」

「………にこよ」

 

にこは『アイドル研究部さん』と呼ばれるのが嫌らしく、自己紹介をする。

 

「にこ先輩。実は私達スクールアイドルをしていまして」

「知ってる。どうせ希に、部にしたいなら話つけて来いって言われたんでしょ」

「おぉ!なら話が早い」

「ま、いずれそうなるんじゃないかと思ってたしね。それにあいつも言ってたし」

「あいつ?」

「若葉って奴よ。あんたとそっくりな顔の」

 

真姫の疑問に、にこは先程まで話していた穂乃果を指す。

 

「え!お兄ちゃんを知ってるんですか!?」

「ま、ちょっとね」

 

にこは昼休みの事に余り触れたくないのか、曖昧な返事をする。

 

「で、若葉にも言ったけどお断りよ」

「え?」

 

続いたにこの台詞に思わず聞き返す穂乃果。

 

「だからお断りって言ってるの」

「私達はµ’sとして活動できる場が必要なだけです。なので、ここを廃部にしようとかそうゆうわけではなく…」

「お断りって言ってるの。言ったでしょ、あんた達はアイドルを汚してるの」

 

海未の言葉に3度目になる拒否をするにこ。

 

「でもずっと練習して来たから歌もダンスも!」

「そうゆうことじゃない」

 

穂乃果の台詞を遮るように否定するにこに、皆は顔を見合わせる。

 

「あんた達、ちゃんとキャラ作りしてるの?」

「キャラ?」

「そうお客さんがアイドルに求めるのは夢のような楽しい時間でしょ?だったらそれに相応しいキャラってモノがあるの」

「例えばネズミーランドのネズミとか?」

 

にこの話に夏希が例えを出す。

 

「ま、そんな所よ。しょうがないわね。私が手本を見せてあげるわ」

 

そう言ってにこは後ろを向く。そして振り返ると

 

「にっこにっこにー!貴方のハートににこにこにー。笑顔を届ける矢澤にこにこー。にこにーって覚えてラブにこ!」

 

と今までの不機嫌そうな顔とは180°逆の、満面の笑みで自己紹介をするにこの行動に部室の空気が少し凍る。

 

「どう?」

 

そしてまた不機嫌そうな顔で感想を聞く。

 

 




夏「さて、今回は若葉がいない回だったな」
愛「珍しいんじゃないですか?若葉先輩が出て来てないって」
夏「ふむ、どれどれ……大変だ愛生人!」
愛「どうしたんですか?」
夏「今回が若葉が出なかった初めての回だ!」
愛「ナンダッテー」
夏「あれ?そんなに驚いてない?」
愛「さっき僕が言ったじゃないですかー」
夏「ま、それは置いといて。ゲストの登場です」
愛「このタイミングで!?」
穂「やっはろー」
愛「穂乃果先輩それ違うアニメ」
夏「でさ穂乃果ちゃん聞きたいんだけど、若葉の私用ってなんだか分かる?」
愛「プライベートもへったくれも無いですね」
穂「お兄ちゃんなら多分アルバイトだよ」
夏「へぇ〜何のバイトしてるの」
穂「さぁ?」
愛「何のバイトしてるのか知らないんですか?」
穂「ん〜とね、前は新聞の配達をしていて、その前は近くのファミレスでキッチンをしてるって聞いて、その前はトンタでもしてた、かな?あれ?トンタは今もしてるのかな?」
愛「色々なバイトしてるんですね」
夏「でも音ノ木ってバイト大丈夫なのか?」
『……………』
愛「次回!『μ'sの7人目として』」
夏「さっきの沈黙はなんだ!」
穂「それじゃあまたね〜」
愛「バイバーイ」


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出てってbyにこ

本編の前に少しお知らせを。

気付いていると思いますが小説名を変更した事

10月いっぱいは私事で忙しく、投稿が遅れる事は確実、下手したら投稿出来ないと思います。申し訳ない!

では本編どうぞ。


にこの自己紹介から数秒、部室の時が止まったかのような感じがした。

 

「え〜っと」

「これは…」

「キャラと言うか」

「凄いと言うか」

「なんと言いますか」

「私無理…」

「ちょっと寒くないかにゃー?」

「ふむふむ…」

 

と1名を除いて微妙な感じになっていた。唯一真面目に聞いていた花陽はにこの言葉をメモっていた。因みに言った順番はにこから反時計回りである。

 

「そこのあんた、今寒いって…」

「あ、いや……」

 

にこは『寒い』と言った凛を軽く睨む。

 

「すっごい可愛かったです。最高です」

「あ、でもこうゆうのいいかも」

「そうですね。お客様を楽しませる為の努力は大事です」

「素晴らしい。流石にこ先輩!」

 

凛、ことり、海未、花陽がフォローする。

 

「よーし、そのくらい私d」

 

穂乃果が立ち上がり実践しようとする。

 

「出てって」

 

しかしにこの一言で動きを止める。

 

「え?」

「とにかく話は終わりよ。とっとと出てって!」

 

と、にこは穂乃果を押して部室から追い出し、夏希達の方を振り返り、同じように追い出す。最後にことりが出て扉を閉めると鍵をかける音がした。

 

☆☆☆

 

「その様子やとダメやったみたいやね」

 

それから8人で昇降口に行くと希がいた。

 

「やっぱりってどうゆうことですか?」

「にこっちが1年生だった頃、同じ学年の子とスクールアイドルをやってたんよ。今はもう、やってないんやけどね」

「辞めちゃったんですか?」

 

ことりの質問に頷いて話を進める。

 

「にこっち以外の子がね」

「どうしてですか?」

 

真姫が聞く。希はアイドル研究部の部室の窓を見て答える。

 

「アイドルとしての目標が高すぎたんやろうね。ついて行けないって、1人辞め、2人辞めて」

 

希の話を聞いて穂乃果達は表情を少し暗くする。

 

「だから、あなた達が羨ましかったんじゃないかな?歌にダメだししたり、ダンスにケチつける事が出来るって事は、それだけあなた達に興味があって見てるって事やろ?」

 

希は、昼休みに若葉が言った事と同じような事を言う。それから希は生徒会の仕事に戻って行った。

その日は穂乃果達も解散とし、各々帰路に付く。

 

☆☆☆

 

「中々難しそうだね。にこ先輩」

 

穂乃果、海未、ことり、夏希の4人が帰る時ことりが切り出す。

 

「そうですね、先輩の理想は高いですから、今の私達のパフォーマンスでは納得してくれそうもありませんし」

「説得に耳を貸してくれる感じもないし」

「そうかな~?」

 

ことり、海未、夏希が話し合っていると穂乃果がのんびりと言う。

 

「にこ先輩はアイドルが好きなんでしょ?それでアイドルに憧れてて、私達にもちょっと興味があるんだよね?」

「それって何か切っ掛けがあれば上手く行きそうって事か?」

「うん」

 

夏希の言葉に頷く穂乃果。海未は具体性に乏しいと呟くも、穂乃果の言ってる事が(あなが)ち間違ってないと思っている。

 

「あれって…」

「うん?」

 

ことりが校門前の階段を指差す。階段は下に向けて伸びているので、校門からだと階段の様子が見えないのだ。しかしことりの指した先を見ると、そこにはピンクの傘を差したにこが慌てて隠れる姿があった。

 

「今の…」

「多分…」

「にこ先輩…?」

「どうします?」

 

4人は顔を見合わせて話し合う。

 

「でも追いかけたらまた逃げそうじゃね?」

 

夏希の出した結論に他の3人が頷く。

 

「あ!」

 

と、突然穂乃果が大声を出す。

 

「どうかしましたか?」

「これって海未ちゃんと一緒じゃない?」

 

穂乃果の言葉に顔を見合わせる。

 

「ほら、海未ちゃんと知り合った時」

 

と穂乃果が話す。

 

「そんな事ありましたっけ?」

「海未ちゃんすっごい恥ずかしがり屋だったから~」

「それは今も変わってなさそうだけどね」

 

穂乃果の言葉に夏希は新歓ライブの時の事を思い出しながら言う。

 

「それが今の状況と何か関係があるんですか!」

 

恥ずかしいのか少し顔を赤くしながら語尾を強めて聞く。

 

「うん!ねっ?」

「あー!あの時の!」

 

穂乃果は頷きことりに聞くと、ことりも心当たりがあったのか頷く。何の事か分からない海未と夏希は唯々顔を見合わせ不思議そうな顔をする。

そんな様子をにこは隠れながら見ていた。

 

「フン、何仲良さそうに話してるのよ」

「何がですか?」

「あいつらよ。あいつら…ん?」

 

にこは自身の独り言に返事があった事を不思議に思い振り返る。

 

「ども矢澤先輩」

 

そこにいたのは紺色の傘を差した若葉がいた。

 

「何であんたがここにいるのよ」

「何だかんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情け!」

「世界の破壊を防ぐため、って違うわ!」

 

どうやら2人ともポケ○ンの初期世代のようだ。

 

「ちょうどバイトの帰りなんですよ。で、妹達がどうかしました?」

「あんたの言った通りになったってだけよ」

「で、やっぱり矢澤先輩は拒否したと?」

「当たり前じゃない。それじゃ、私は帰るから」

 

そう言ってにこは帰って行った。若葉も家に帰る。

帰宅すると穂乃果は既に帰っており、にこをメンバーに加入させるとっておきの作戦を妹から聞かされ、昔を懐かしみながら楽しそうに頷いた。

 

☆☆☆

 

次の日の放課後。にこはいつも通り1人で部室を訪れる。鍵を開け電気の点いてない部室へ入り、扉を閉める。

 

『お疲れ様でーす』

 

にこが扉を閉めると同時に電気が点き、部室が明るくなる。そこにいたのは、前日と同じ様に座っているμ'sのメンバーと、スイッチの側に立っている若葉だった。

驚いているにこを笑顔で迎える9人。

 

「な…」

「お茶です部長!」

「部長!?」

 

穂乃果が湯呑にお茶を淹れ渡す。

 

「今年の予算表になります。部長」

「部長。ここに置いてあったグッズ、邪魔だったんで棚に移動しておきました~」

 

間髪入れずにことりと凛が畳み掛ける。

 

「こら!勝手に」

「さ、参考にちょっと貸して。部長のお勧めの曲」

「な、なら迷わずこれを」

 

真姫と花陽も加わる。因みに花陽が取り出したのはあの『でんでんでん』だった。

 

「あー!だからそれは!」

「所で次の曲の相談をしたいのですけど部長!」

 

文句を言うにこの後ろから愛生人が肩に手を置き話を持ちかける。

 

「やはり次はもっとアイドルを意識した方が良いかと思いまして」

「それと振り付けで何か良いのがあれば、それもお願いしていいですか?」

 

海未と夏希も話に加わる。

 

「2人ともそれより先にする事あるでしょ。矢澤先輩いや、部長さん」

「なによ」

 

名前を言い直した若葉に少し警戒を見せるにこ。

 

「どうぞお座りください」

 

と言って目の前の椅子を引き、拍子抜けしているにこを座らせる。

 

「こんな事で押し切れると思っているの?」

 

席に座って幾分か落ち着いたにこは部室にいる9人を一瞥して言う。それに穂乃果は笑って答える。

 

「押し切る?私達は唯相談しているだけです」

「音ノ木坂アイドル研究部所属のμ'sの7人が歌う次の曲を」

 

穂乃果の言葉に若葉が続けて言う。

 

「7人?」

 

2人の言葉を受けて聞き返し、部室にいるメンバーを見渡すにこ。

そして一度目を瞑り

 

「厳しいわよ?」

「分かってます!アイドルへの道が厳しいことくらい!」

 

にこの言葉に穂乃果は元気良く返事をする。

 

「分かってない!あんたは甘々」

 

と立ち上がり、穂乃果を指して指摘する。

 

「あんたも、あんたも。あんた達も!」

 

と他の8人を指差して言う。

 

「いい?アイドルってのは笑顔を見せる仕事じゃない、笑顔にさせる仕事なの!それをよ~く自覚しなさい」

 

そして若葉達は入部届を書き、生徒会に提出する。音ノ木は何故か入部届を生徒会に提出するのだ。

それから屋上でにこを入れた7人での初練習が行われた。

 

 

 




若「1話振りに帰って来た俺でありますが、ゲストは」
矢「にっこにっこにー!あなたのハートににこにこにー!笑顔を届ける」
若「矢澤にこ先輩で〜す」
矢「邪魔しないでよー!」
若「だって俺聞いたことないんですよ?」
矢「なら最後まで聞きなさいよ!」
若「えー…実際問題一度あとがき書いてたのにそれ消えてやる気が…」
矢「関係ない話を持ち出すわね」
若「そうそう感想にあったんですけど、にこ先輩穂乃果と海未のポテト食べたじゃないですか?」
矢「あーそんな事があったかもしれないわね」
若「知ってます?窃盗罪を犯した者は、刑法235条により、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられるんですよ?」
矢「……ごめんなさい」
若「はい、よく出来ました」
矢「私を馬鹿にするなぁー!」
若「それじゃあ次回予告どうぞ」
矢「次ってアニメで言う所のあそこよね?」
若「んー多分?」
矢「次回『よく撮れてるでしょ?』」
若「それじゃあ」
矢「誤字脱字、感想、アドバイス等をお待ちしております!」


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よく撮れてるでしょ?by若葉

最初に一言。

投稿遅くなって申し訳ありませんでしたぁぁぁ!!

いやだって言ったじゃないですか?遅れるかもしれないともう学園祭実行委員に所属していまして学園祭が近い中こうして1話書く時間が中々取れずにいたんですいやホント申し訳ないです。(言い訳)

それはそうと、今日はエリチの誕生日!おめでとうエリチ!




にこが新たに加わってから数日。そろそろ夏服に衣替えをする季節になりつつある。そんなある日

 

「笑って笑って〜」

「えっと……こう?」

 

若葉は現在昼休みの中庭で妹の穂乃果を撮影していた。別にシスコンに目覚めた訳ではない。

 

「じゃあ決めポーズ!」

 

若葉の隣で凛が元気よく声を出す。そんな凛の要望に様々なポーズを取る穂乃果。

 

《これが音ノ木坂学院に誕生したμ'sのリーダー高坂穂乃果、その人である》

 

「あの〜これは?」

 

希のナレーションに花陽が恐る恐るツッコミを入れる。

 

「じゃあ〜次は海未先輩ね」

「え?な、何なんですか?ちょっと待ってください!失礼ですよ、いきなり!」

 

しかし凛と若葉はそんな花陽を無視して獲物(ビデオカメラ)を次の標的(被写体)に移す。海未は海未で顔を赤くして文句を言うが、案の定無視される。

 

「恥じらう姿良いね〜…あてっ!」

 

とそんな海未を見て若葉が一言。そんな彼にツッコミを入れたのは穂乃果、ではなくなんと真姫だった。

 

「若葉先輩。今の発言下手したらセクハラになりますよ?」

「あ〜このビデオの提供者なら生徒会だから、ある意味学校公認だよ?」

「いやそうゆう問題じゃないだろ」

「まぁまぁ」

 

と若葉の言い訳にツッコム夏希を希が宥める。

 

「実は生徒会で部活動を紹介する事になって、今取材をしてる所なんよ。で、若葉君にはその補佐をお願いしてるって訳や」

「取材…?」

「ね、面白そうでしょ?」

 

若葉はカメラで海未を取りつつ穂乃果達に言う。

 

「それに今スクールアイドルが流行ってるのは知ってるでしょ?μ'sにとっても悪くない話だし、受けちゃった」

「私は嫌です。そんなカメラに映るなんて」

 

と散々取られてる貴女は何を言うか、と心の中で皆ツッコミをし、流す。哀れ海未ちゃん。

因みに海未以外は意外とノリ気でアッサリ取材の許可は取れた。

 

「まぁまぁいいじゃん海未。これ撮り終わったらカメラ借りれるんだし」

 

若葉は海未を慰める。そこに愛生人もやって来て

 

「でも若葉先輩ってカメラ持ってませんでした?」

「あー新歓の時のヤツね。あれ古くてついこの間バッテリー様が召された」

「それは御愁傷様です」

 

どうやらカメラは生徒会から借りるしかないようで、海未も渋々了承した。

 

「じゃあ皆に言って来るー!」

 

穂乃果が校舎の中に走って消えて行く。

 

☆☆☆

 

《スクールアイドルとは言え、学生である。プロの様に時間外で授業を受けたり、早退が許される事は無い。よってこうなってしまう事もある》

 

と希がナレーションしている動画では授業中らしく、机にノートを広げている穂乃果が映っている。穂乃果はコクッコクッと船を漕いで、終いには机に突っ伏して寝てしまった。

 

《昼食を摂ってからまた熟睡》

 

場面は昼休み、午後の授業へと変わっていく。

 

《そして先生に発見されるという1日であった》

 

机に伏せて寝ていた穂乃果の肩を先生が叩き、起こす。穂乃果は驚いて椅子から落ちる。

 

《これがスクールアイドルとは言え、まだ弱冠16歳のありのままの姿だった》

 

それで動画は終わった。因みに今は部室で動画を見ているのだが、いるのは若葉、穂乃果、ことり、海未、凛の5人だけ。

 

「ありのまま過ぎるよ!てゆうかいつの間に撮ったの!?」

「上手く撮れてましたよ~若葉先輩」

 

穂乃果の文句を流しながら凛が若葉に言う。

 

「よく撮れてるでしょ?やっぱりカメラの差かなー。前の古かったし、でも先生が来た時は軽く焦ったよね」

「ええ!お兄ちゃんが…酷いよ~」

「普段だらけてるからこうゆう事になるんです」

 

腕をバタつかせて文句を言うほのかを海未が窘める。

 

「流石海未ちゃん!」

 

今度は場面が弓道場に移り、そこでは弓道着の海未が練習をしていた。

 

「真面目に弓道の練習を」

 

しかし弓を撃ったあと、後ろにある鏡で笑顔の練習をしていた。笑顔の練習?

 

「これは可愛く見える笑顔の練習?」

 

そこまで見た所で海未がビデオを止める。

 

「プライバシーの侵害です!」

「よし!こうなったら…」

 

穂乃果は立ち上がり、机の端に置いてある鞄の所へ行くとうち一つの鞄に手をかけ

 

「ことりちゃんのプライバシーも…あれ?なんだろう、これ」

 

穂乃果は鞄の中にある物をよく見ようとするも

 

「ふっ!」

「あぁ…」

 

ことりが今までに見たこと無い程の速さで鞄のチャックを閉め、鞄を後ろに抱き壁際に移動する。

 

「ことりどうしたの?」

 

そんなことりの行動に若葉が聞くも

 

「何でも無いのよ」

「いや、でも明らかに動きが」

「何でも無いのよ何でも!」

 

頑なに否定することりを見て顔を見合わせる3人。

 

「完成したら各部でチェックしてもらうから、問題があったらその時に」

「でも生徒会長が見たら」

 

と穂乃果が心配する。

 

「確かに絢瀬先輩だと『困ります。あなたの所為で音ノ木坂が怠け者の集団に見られてるのよ』とか言いそうだよね」

「まぁ…そこは頑張ってもらうとして」

 

若葉の真似が似ていたのか、少し笑いながら応援する希。助けてはくれなさそうだ。

 

「う~頼みの綱の希先輩が~」

 

と勝手に期待していた穂乃果が泣きながら机に崩れる。

 

「まぁそんな事言われてもウチに出来るのは誰かを支えることだけ」

「支える?」

「ま、ウチの話はええやん。じゃあ次は…」

 

と希が次の標的(被写体)を決めようとしていると、急に部室の扉が開いた。

 

「ハァハァ…ちょっと、取材が来るってホント?」

「にこ先輩!」

「それなら丁度来てますよ。ホラ」

 

ことりが希を手で指す。希を見たにこはと言うと

 

「にっこにっこにー。皆の元気ににこにこにーの矢澤にこでーす。えーとぉ好きな食べ物はぁ」

「ごめんそうゆうのはいらないから」

 

と台詞の途中で希にバッサリと切られる。

 

「にこ先輩にこ先輩」

「何よ若葉」

 

若葉の呼びかけにいつものにこが答える。

 

「この動画は部活動の生徒の素顔に迫るってコンセプトだから」

「あ、あぁ〜OKOK。そっちのパターンね。ちょっくら待ってね〜」

 

そう言い後ろを向くにこ。そしてシュルリとツインテールにしているリボンを解く。

 

「いつも。いつもこんな感じにしているんです。アイドルの時の私はもう一人の私…髪をキュッと止めた時にスイッチが入る感じで」

 

壁のポスターに手を付き、1人で進めていく。

 

「え?あぁそうです。普段は自分の事をにこなんて呼ばないんです」

 

そう言って目を若葉達の方へ向けると

 

「て、いないしー!」

 

そこに居たはずの6人は跡形もなく消えていた。

 

 




若「ハァ、このコーナーも約1ヶ月振りだね…」
夏「もうエタったのかと思ったぜ?」
愛「流石にエタりはしないんじゃないですか?最終話までの流れも大体出来ているって噂も聞きくらいですし」
穂「投稿遅れた理由って流れを考えてたからだったりして…」
『……………』
若「そ、そんなまさかね」
夏「完全否定出来ないのがなんとも…」
愛「じゃ、じゃあ作者を召喚(サモン)!」
呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン
若「年代バレるよ?」
夏「ツッコむとこそこじゃねぇだろ!?」
穂「でも最近だと再放送とかしてるから分かりにくいんだよね」
夏「そうじゃなくてね?」
愛「なんでこんなに遅れたんですかー?」
だから冒頭、つか前書きで言ったじゃん!
若「あれが遅れた全てとは思えないんだけど?」
………じ
『じ?』
次回予告!
『逃げた!?』
若葉よろしく!
若「仕方ないね。予告してからたっぷりと聞くとするよ。次回『頑張っているかね』」
夏「さて」
愛「じゃあ」
『O☆HA☆NA☆SHI☆だよ』
ギャー!
穂「えーと、誤字脱字、感想、アドバイス等をお待ちしております!」


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頑張っているかねbyことり

お久し振りです。今日からまた投稿再開しますよ〜

若「早くしてね〜」

そう慌てなさんなって、再開を記念してなんと今回は!

若「おぉ!?」

比較的文章が短いです。

若「ちょっと裏行こうか?」

え?何で笑顔で肩が捩れるように痛いぃぃぃぃ!

若「では本編をどうぞ」


「た、助けて……」

 

あれから場所は中庭に変わり、今度は花陽、凛、真姫の番になった。

そして1年生組の最初の被写体は花陽だった。そしてインタビュー開口1番が先程の台詞である。

 

「緊張しなくて大丈夫だよ。ただ聞かれた事に答えてくれれば良いだけだから」

 

そんな花陽に助け舟を出したのはカメラを構えている若葉。

 

「編集するからどんなに時間掛かっても大丈夫やし」

 

さらに希も助け舟を出す。

 

「で、でも~」

「凛もいるから、頑張ろ」

 

凛はそう言って花陽の隣に立ちカメラに映り込む。

 

「ほら真姫ちゃんもおいでー」

 

若葉は渡り廊下に肘を付いている真姫にカメラごと向く。自然と真姫がカメラに映る。

 

「私は大丈夫です」

「んもー」

 

髪を弄りながら断ると、凛が不満そうな声を出す。

 

「大丈夫大丈夫」

「そうやな。どうしても嫌なら無理にインタビューしなくても」

 

若葉と希が頷き合う。そして

 

「真姫だけはインタビューに応じてくれなかった。スクールアイドルから離れれば、唯の多感な15歳。これもまた自然な」

「って何ナレーション被せてるのよ!」

 

若葉がカメラのズームで撮りながら希がナレーションを入れていると、真姫が気付き撮影を止める。

 

「じゃあ真姫ちゃんも来た所で改めて撮り直そうか」

 

若葉の一言で真姫が諦めたように溜め息を吐き、花陽の隣に立つ。

 

「先ずアイドルの魅力についてから聞いていきたいと思います」

 

こうしてやっとインタビューらしいインタビューが始まった。

 

「では花陽さんから」

「えーと、その…」

 

希が花陽に質問し、花陽が答えようとした時

 

「かよちんは昔からアイドル好きだったんだよね〜」

「は、はい!」

 

何故か代わりに凛が答えていた。花陽も凛の乱入に驚いたのか少し詰まりながら肯定する。

 

「なるほど、それでスクールアイドルに?」

「は、はい…えっと…」

 

続く希の質問に声を小さくしながら返事をする。そして言葉を続けようとカメラを見ると

 

「ぷっ、くくく」

 

いきなり笑い始めた。花陽と同じ様にカメラの方を向いていた凛と真姫は花陽が笑い出した原因が分かったようで、凛は花陽と同じ様に笑っていた。

 

「ちょっと止めて!」

 

逆に真姫は少し怒った表情でカメラに近付き、レンズを手で隠す。

 

「どうしたの?」

 

レンズを手で隠されたので、若葉がカメラから顔を離して真姫に聞くと真姫は若葉の後ろを指差す。若葉が振り返ると、そこには人形を手にした穂乃果ぎいた。

 

「いや〜緊張してるみたいだから解そうかな〜って思って」

「ことり先輩と夏希先輩も!」

 

真姫の言葉に2人の方を見ると

 

「頑張っているかね」

「カンカンカン♪」

 

ことりがひょっとこのお面を、夏希が獅子舞を被って立っていた。

 

「何故獅子舞…」

 

若葉の呟きに答えれる人はこの場にはいなかった。

 

「全く、これじゃあμ'sがどんどん誤解されてくわ!」

「おぉー真姫ちゃんがμ'sの心配を」

「それがツンデレってやつなのかな?」

「な!?違いm」

『あ』

 

真姫が穂乃果と若葉の言葉を否定しようとした所に、夏希が被っている獅子舞が真姫の頭にかぶり付く。真姫は突然襲った暗闇にパニックに陥っているのか、獅子舞の頭をバシバシと叩いている。

 

「夏希、そろそろ放してあげなよ。抵抗してる手が弱ってるから」

 

そんな光景を数分見てから若葉が止めに入る。若葉の言う通り最初バシバシと叩いていた真姫の手が、時間が経つ毎に弱まっており、今はたん、たん、となっている。

 

「仕方ないな」

 

獅子舞の中から少しくぐもった声がしたと同時に真姫が解放される。解放された真姫は少しボーッとした後、皆の視線を感じて立ち上がり

 

「べ、別にそんな訳じゃないんだからね!」

『おぉー』

 

真姫のそんな台詞に一同は見事なツンデレ具合に感嘆の声を出す。そんな中、真姫は若葉が自身をアップで映しているのを見付ける。

 

「撮らないで!」




夏「さて、若葉が前書きに出張に行ってる為、今回は俺と愛生人の2人で進行して行くぞ」
片「分かりました」
夏「それにしても、この作品の平均文字数が約2.200文字。で、今回は何文字だっけ?」
片「えと、約1.500文字ですね」
夏「ま、俺らが愚痴っても仕方がないからな。読者の皆様も文句があったら是非、是非感想まで!」
片「今回メタ発言多目ですね」
夏「そもそもこのコーナー自体がそういったモノでしょ?」
片「結構これやってますが今初めて知りましたよ!」
夏「それは良かったな。じゃあ次回予告よろしくっ!」
片「えー…次回『だと良いんだけど』」
夏「ビデオ撮影は終わりだっけ?」
片「まだあるんじゃないですか?」
夏「後残ってるのしたら…練習とプライベートくらい?」
片「練習はまだしもプライベートはちょっと遠慮したいですね」
夏「それしゃあ、誤字脱字、感想、アドバイス等を待ってるぜ!」
片「それしゃあって何ですか」
夏「噛んだんだよ」


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だと良いんだけどby真姫

ポッキーの日なのに食べてないよぉ!((((;゚Д゚)))))))


『撮らないで!』

 

今は部室に戻り撮影したビデオを皆で見返している。

 

「でも確かにここまで撮ったのを見ると確かにね〜」

「ダラけてるって言うより…」

「寧ろ遊んでる?」

 

凛が机に頭を置いて歯切れ悪く言うも、希と夏希によってバッサリと切られる。

そんな2人の声に驚いた声を出す花陽。

 

「ま、でもスクールアイドルの活動の本番は練習だからね」

「そうですよね」

 

若葉と愛生人がフォローを入れる。

 

「よし!皆気合い入れて行こう!」

 

穂乃果の号令でメンバーが練習着に着替え始める。男子組は先に屋上に行き練習の準備をしている。

 

「それにしてもビデオはあれを使うのか?」

「流石にマズイんじゃないですか?」

「ビデオは希先輩も言ってた通り、編集するから多分大丈夫だよ」

「だと良いんだけど」

「俺も編集を手伝うからそんなに変なのは出来ないから、安心してよ」

「若葉先輩がそこまで言うなら…」

 

といつも通り雑談しながら準備を進める。

そして階段の方が騒がしくなる。少しして穂乃果を先頭に海未、ことり凛、花陽、真姫が屋上に出て来る。

 

「さ、練習を始めるぞ」

「先ずはストレッチから〜」

 

皆が2人1組になり広がる。現在のμ'sは7人と奇数なので、愛生人が補う形でストレッチの手伝いをする。

そして各自でストレッチが終わったら次はステップの練習。

 

「いくよー!1.2.3.4」

 

若葉の号令でステップを踏んでいく。

 

「花陽ちゃんは少し遅い」

「は、はい」

「凛ちゃんは少し早いよ」

「はい!」

 

とステップのズレを指摘していた。

 

「ちゃんとやりなさいよー?」

「にこ先輩、昨日言ったステップが間違ってますよ」

「わ、分かってるわよ」

 

若葉の指摘に少し気まずそうに答えるにこ。

 

「真姫ちゃんもっと大きく動いて」

「はい!」

「穂乃果ちゃん疲れてきた?」

「まだまたぁ」

「海未、もう半歩右に」

「はい!」

「ことり、今の動き忘れずに」

「うん!」

「ラストー」

 

若葉の掛け声でラストのポーズを取り、一旦休憩となった。

 

『かれこれ一時間、ぶっ通しでダンスを続けてやっと休憩。全員息は上がっているものの、文句を言う者はいない』

 

「どうですか?」

 

ナレーションをしている希のもとへ若葉が近付きつつ聞く。

 

「やっぱ練習だと迫力が違うね。やることやってるって感じやね」

「そりゃあカメラが手に入り次第、PV撮りたいですからね」

「ねぇ若葉君。一つ聞いてもいい?」

「何ですか?」

「練習って普通リーダーが指揮するものじゃない?」

「それは……」

 

希の問いに気まずそうに穂乃果を見る若葉。希もつられて穂乃果を見ると、丁度夏希から受け取った水を飲んでいるところだった。

 

「あれ、だから…ねぇ…」

「なるほどね〜。若葉君も苦労してるってことやね」

「まぁ、そう言う事です」

 

何気に酷い2人であった…。

そしてその後にパートごとのステップの確認をして練習を終わりにした。

 

「お疲れさん」

「あ、希先輩。どうしたんですか?」

 

練習着から制服に着替え、昇降口に向かうと希がいた。

 

「穂乃果ちゃん達を待っとったんや」

「どうしてですか?」

「ちょっとお宅拝見をしようかと」

 

カメラを片手にイタズラな笑みを浮かべる希。

穂乃果は後ろにいた若葉と、その日穂乃果の家に遊びに行く予定の凛を見る。

 

「別に良いんじゃない?元から友達が行くって言ってあるし」

「そうだね」

 

と言う事で希も穂乃果の家に行く事になった。

 

☆☆☆

 

〜穂むら〜

 

「「ただいま〜」」

「「お邪魔しまーす」」

「あら〜いらっしゃ……」

 

裕美香の言葉が途中で止まる。不思議に思った4人は裕美香の視線の先、希の持ってるカメラを見た。そして若葉が何か言う前に

 

「ちょっとそういうのが来るなら先に言ってよ!ちょっと待っててね」

 

と奥に行ってしまう。若葉は一つため息を吐き

 

「母さ〜ん。生徒会の人だよ〜。家族の話をちょっと話を聞きたいってだけだからそんなに気合入れなくても…」

「そういうわけにはいかないの!」

 

若葉の言葉も意に介さず、奥でドタバタと騒がしい音が響く。

 

「てゆうか化粧してもしなくても同jフクァ!」

 

穂乃果が言ってはいけない発言をしようとした所にボックスティッシュが飛んできた。それは見事に穂乃果の顔に当たり若葉の手に収まる。

 

「化粧の前に物を投げる癖をどうにょ!」

 

今度は若葉目掛けてテレビのリモコンが飛んできた。それも見事に若葉の顔に命中。リモコンはそのまま床に落ちる。

 

「2人とも大丈夫なん?」

 

揃って顔を押さえる兄妹を見て希が心配そうに聞く。

 

「な、何とか」

「私も」

 

それから若葉は店の厨房へ、穂乃果達は妹の雪穂の部屋へ向かう。

 

「雪穂ー入るよー?」

 

穂乃果がドアを開けるとそこには

 

「もう少し〜〜あと、一穴ぁ〜!」

 

とベルトと奮闘する雪穂のすがたがあった。

穂乃果は何も見なかったかの様にドアを閉める。

 

「すいません…2人ともあんな感じなんで…」

 

穂乃果は凛と希を自室へ招いて座る。

 

「お父さんは?」

 

希がまだ見てない父親について質問する。

 

「それなら厨房に」

「入るよ〜」

 

穂乃果の台詞を遮って若葉が入って来た。

 

「あ、お兄ちゃん。お父さん何だって?」

「いやそれがね?」

 

厨房へ行った若葉が父親に生徒会の話をすると、無言で背中越しに手を振られたらしい。

 

「つまり『ま、頑張れよ』的なメッセージだと思うんだよね」

「無言でも分かるんやね」

「まぁ大体なら」

 

希が若葉に感心する凛と希。

 

「ここは皆集まったりするん?」

 

穂乃果の部屋を見回しながら聞く希。

壁際にある本棚にギッシリと入っている漫画。意外に綺麗に使われてる様子の机。そして本棚の前に置かれている『歌詞ノート』と書かれたノート。

 

「うんことり先輩と海未先輩はいつも来てるみたいだよ〜。おやつも出るし!」

「おやつって言っても俺が作ったりしてるやつだけどね〜」

 

凛の言葉に少し笑いながら続ける若葉。

実際に海未達が来てる時に出す和菓子の殆どは若葉が試作品として出している物である。

 

「ふ〜ん」

 

希は生返事をしながら歌詞ノートを手に取る。

 

「これで歌詞を考えてるんやね」

「うん。海未ちゃんが」

「え?」

 

希が穂乃果の返事に驚いた声を出す。

 

「歌詞は大体海未先輩が考えるんだ〜」

 

続く凛の台詞に、希は若葉に確認する為目を向ける。若葉は希の言いたい事を摘んで頷く。

 

「それじゃあ振り付けを考えたりするのが」

「それはことりちゃんとお兄ちゃんが」

 

再び若葉を見る希に再び頷く若葉。

 

「じゃあ貴方は何をしているの?」

「ごはん食べてー、テレビ見てー、他のアイドルを見て凄いなぁ〜って思ったり。あ、3人の応援もしているよ!」

 

三度目の確認の為に若葉を見ると彼は遠い目をしてどこかを見ていた。これも事実他のだろう。

 

「ウチ前から思ってたんやけど、穂乃果ちゃんてどうしてμ'sのリーダーなん?」

 

希の質問に暫し沈黙が続く。そしてその話は翌日アイドル研究部で話し合うことになり、その日は希と凛は帰って行った。

 




若「ふむ」
愛「どうしたんですか?」
若「いやね。この話なんだけど」
夏「なんで穂乃果ちゃんがリーダーなのか、てとこ?」
若「μ'sの創始者だからって理由にならないのかな?」
愛「それとリーダーは別じゃないですか?」
夏「次回アニライブ!」
愛「いきなり過ぎですよ!?」
若「次回『何か出来ちゃった〜』」
愛「付いていけてる!?」
夏「ではさよなら〜」
若「なら〜」
愛「ご、誤字脱字、感想、アドバイス等をお待ちしております!それとTwitter始めたのでそちらも!」


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なんか出来ちゃった〜by凛

次の日、アイドル研究部の部室ではμ'sのメンバー10人で会議が開かれた。議題はもちろん

 

「リーダーには誰が相応しいか。大体私が部長になった時点で一度考えるべきだったのよ」

 

そうリーダーは誰なのか。前日に希に聞かれた質問を話したところ緊急会議が開かれたのだ。

 

「リーダー、ね」

「私は穂乃果ちゃんで良いと思うけど…」

 

夏希の呟きにことりが返す。

 

「ダメよ。今回の取材でハッキリしたでしょ。この子にリーダーにまるで向いてないの」

「それはそうね」

 

しかしにこはことりの言葉に反対し、真姫も賛同する。

 

「そうとなったら早く決めた方が良いですね。PVもありますし」

「PV?」

「リーダーが変われば必然的にセンターが変わるって事ですね!」

 

愛生人の台詞に穂乃果が疑問で返す。それに花陽が喰い気味に言う

 

「次のPVは新リーダーがセンターよ」

「そうね」

「でも誰が…?」

「リーダーとは!」

 

ことりの言葉ににこは若葉に目配せをしながら立ち上がる。若葉もにこの横にあるホワイトボードの側に立つ。

 

「先ず第1に誰よりも熱い情熱を持って皆を引っ張っていける事!」

 

にこの言葉をそのままホワイトボードに書いていく若葉。

 

「次に精神的支柱になれるだけの懐の大きさを持った人間である事!」

 

その場にはにこの声と若葉がホワイトボードに書いていく音しかしない、皆を真面目に聞いているのだろう。

 

「そしてなによりメンバーに尊敬される存在である事!この条件を全て備えたメンバーとなると!」

 

にこがメンバー全員に問いかける。最初に口を開いたのは若葉で

 

「あ、『この条件を〜』からも書いちゃった」

「今その話要らないわよね!?」

 

にこのツッコミが飛んだ。若葉はクリーナーで不必要な部分を消し、話を戻す。

 

「え〜と?にこ先輩の提示した条件に見合った人は誰かって話でしたっけ?」

「凛は海未先輩が良いと思いまーす!」

「私が!?」

 

凛が手を上げながら元気に答える。凛に指名された海未は驚いた声を出す。

 

「そうだよ。海未ちゃん向いてるかも、リーダー」

「穂乃果はそれで良いんですか?」

「え?何で?」

 

穂乃果が賛成の意を決して唱えると、海未が穂乃果に聞く。しかし穂乃果は質問の意味が分からず、疑問に疑問で返す。

 

「リーダーの座を奪われようとしているのですよ?」

「ふぇ?それが?」

 

海未が説明するもイマイチピンとこない様子の穂乃果。そんな穂乃果を見てにこは小声で若葉に耳打つ。

 

「あんた達も大変ね」

「慣れればどうって事ないですよ」

 

そんな2人の会話が聞こえてない海未と穂乃果はまだ話していた。

 

「何も感じないのですか?」

「だって皆出μ'sやっていくのは一緒でしょ?」

「でも!センターじゃなくなっちゃうかもですよ!」

 

お気楽な穂乃果の答えに花陽が声を大きくして言う。花陽に言われて納得の行った表情の穂乃果は、ひとつ手を打ち暫し悩んだ後

 

「ま〜いっか」

 

と何事も無かったかの様に答える。

 

『えぇー!!!』

 

それには若葉以外が予想外だったらしく、その若葉も溜息を吐く。

 

「じゃあリーダーは海未ちゃんと言うことにして」

「ま、待って下さい!」

 

穂乃果が会議を終わりにしようとすると海未から待ったが掛かった。

 

「いきなりリーダーと言われても無理です……」

 

声が段々と小さくなる海未の抗議。真姫が面倒な人、と小さく呟く。

 

「じゃあことり先輩?」

「ん?私?」

 

花陽の発言に首を傾げることり。

 

「ことりはどっちかと言うと副リーダーって感じだよね」

 

若葉の言葉にことり以外の全員が頷く。

 

「それなら若葉先輩がやればいいにゃ!」

「それは一理あるわね」

 

凛の提案に真姫も賛成する。

 

「いやいや流石に男がリーダーはマズイでしょ」

 

しかし若葉の最もな言葉に渋々と納得する2人。その後も誰がリーダーに向いてるか話し合うも、結局決まらなかった。その間にこが仕方ないわね、と何回も言っていたが(つい)ぞ反応されなかったのはここだけの話。

 

「分かったわよ。じゃあ歌と踊りで決めようじゃない!」

 

とにこの提案が出た所で全員がそれで決まるなら、と頷き、カラオケに向かう。

 

「これで決着をつけようじゃない!」

「決着?」

「皆で得点を競い合うつもり?」

「そうよ!そして一番得点が高かった人がリーダー!」

 

凛と夏希の問いにマイクを持って答えるにこ。真姫と海未はあまりのり気では無さそうだが、やる事に。

 

「くっくっく。こんな事もあろうかと高得点の出やすい曲のピックアップは既に完了している。これでリーダーの座は確実に」

「にこ先輩。黒いのがダダ漏れですよ」

 

メモ帳を手に笑っていると、隣に座っていた若葉に注意される。

 

「う、うるさいわね!それじゃあ始めるわよ!」

 

マイクを持って立ち上がり部屋を見回すと、全員が遊び気分で話していた。そこに緊張感と言うものは無かった。

 

「あんたら緊張感無さ過ぎー!」

 

にこの叫びがただ響くだけだった。

そして全員が一通り歌い得点が揃う。得点は

 

にこ 94点、穂乃果 92点、海未 93点、ことり 90点、真姫 98点、花陽96点、凛 91点

 

と全員が90点を越えていた。因みに男子3人はと言うと

 

若葉 99点、夏希 90点、愛生人 95点

 

だった。

 

「毎日のレッスンの効果が出てるね」

「真姫ちゃんが苦手な所ちゃんとアドバイスしてくれるし」

「気付いてなかったけど、皆上手くなってるんだね〜」

「つーか若葉と真姫ちゃんが凄いと思うんだが…」

「こいつら化け物か…」

 

若葉、花陽、凛の感想に混じって夏希とにこが呟くも誰にも聞こえていなかった。

 

「次はダンスよ!」

 

カラオケ店を出て次に向かったのはゲームセンター。にこがダンスマシーンの前で説明を始める。

 

「今度は歌の時みたいに甘くないわよ。使用するのはこのマシーン。アポカリプスモードケキストラ!」

「ことりちゃん。もう少し右!」

「おぉー!」

『取れたー』

 

とにこを無視して穂乃果、ことり、凛はクレーンゲームをしていた。

 

「だから緊張感無さ過ぎよ!」

 

にこが突っ込む。しかし、そんなにこの肩を夏希が叩く。

 

「何よ!」

「あっちは緊張感MAXだぞ?」

 

夏希が指差した方では若葉と愛生人がシューティングゲームをしていた。難易度は一番高いルナティックモード。心無しか愛生人の目が普段より細くなっている。

 

「若葉先輩手榴弾を!」

「了解!」

 

と愛生人の言葉とほぼ同時に画面の中の若葉のキャラがゾンビ集団に手榴弾を投げ、殲滅する。いつもと違う愛生人に暫し呆気に取られるも、にこは一つ咳払いをし

 

「あ、あれは放っておきましょう」

 

と見なかった事にした。

 

「気を取り直してやりましょ」

「凛は運動は得意だけどダンスは苦手だからな〜

「こ、これ、どうやるんだろう…」

 

と、どこか不安が残る中プレイをする。

 

「プレイ未経験ゼロの素人が挑んでまともな点数が取れるわけないわ。くっくっく、カラオケの時は焦ったけどこれなら」

 

とまたも黒い笑いをするにこだが

 

「なんか出来ちゃった〜」

 

凛がAAのスコアを叩き出し唖然とする。

その後シューティングゲームを終わらせた愛生人と若葉を最後にダンスゲームは終わりを告げた。スコアは

 

にこ A、穂乃果 A、海未 A、ことり B、真姫 B、花陽 C、凛 AA、若葉 S、夏希 AA、愛生人 SS

 

となった。アポカリプスモードケキストラの最高スコアはSSS。つまり愛生人はもう少しで最高スコアを出していたのだ。

 

「愛生人…凄…」

 

それなりに自信のあった若葉でさえ呆気に取られていた。

 

「昔からゲームと名の付くものは得意でしたから」

 

と当の愛生人は笑いながら答える。

 

「面白かったね」

「でも中々差がつかないね」

 

凛の言葉に全員が唸る。

 

「それなら

「それなら最後の種目はあれしかないでしょ」

 

それを見てにこが何か言うも若葉に先を越される。

 

『あれ?』

「そう。あれとはズバリ、学力!」

「て事はテストでもするのかしら?」

 

若葉の答えに真姫が聞く。

 

「そ、最近のアイドルには学力も必要だって事。と、言うわけで学校に戻ってテストやるよー!」

『えー!』

 

ほとんどのメンバーが叫んだが、若葉は聞こえないフリをする。

 

「大丈夫大丈夫。テストは4年前の音ノ木坂の入試の過去問だから学年によるハンデは無いよ」

『そうゆう問題じゃない!』

 

一斉に若葉に突っ込むも若葉は笑って流す。

そしてアイドル研究部の部室に戻り、テストを始めた。過去問は図書室を漁ったら見つかったのでそれをコピーして使った。テストは基本的な5教科500点満点。そして結果は

 

にこ 276、穂乃果 270、海未 422、ことり 457、真姫 468、花陽374 、凛 278、若葉 498、夏希 365、愛生人 479

 

となった。

若葉の点数に皆が驚いたのは言うまでもない。

 

「結局皆の総合は並ぶんだね」

「そうですね。なんやかんやで並びますね」

 

結果を見て若葉と愛生人は唸る。他のメンバーは疲れたのか、少しダラけている。

 

「もー!どうするのよー!」

 

にこがイラついて叫ぶ。

 

「じゃあ良いんじゃないかな。無くて」

「穂乃果。それはリーダー無しでも良いんじゃって事?」

「うん」

 

穂乃果の発言に若葉が聞くと穂乃果は頷く。

 

「リーダー無しでも全然平気だと思うよ?皆それで練習してきて、歌も歌ってきたんだし」

「な…リーダー無しのグループなんて聞いたことないわよ!」

 

にこが反論し、真姫もセンターをどうするのか聞くと

 

「それなんだけど、皆で歌うってどうかな?」

『?』

 

穂乃果の言葉に全員の頭の上に?が浮かぶ。

 

「え〜と穂乃果。説明頼んでいい?」

「あのね。他のアイドルの動画とか見て思ったんだ。なんかね、皆で順番に歌えたら素敵だなーって。そんな曲作れないかなーって」

「順番に?」

「そう。無理、かな?」

 

若葉に答えるように穂乃果の説明し、花陽の問いを海未と真姫に聞く形で答える。

 

「まぁ歌は作れなくは無いけど…」

「そうゆう曲、無くはないわね」

 

海未は少々戸惑っているが、真姫はのり気である。

 

「ダンスの方はどうかな?」

 

2人の答えを聞き今度は若葉がことりに聞く。

 

「今の7人なら出来ると思うよ」

 

どうやらことりものり気なようだ。それを見て穂乃果が嬉しそうに笑い

 

「それならそれがいいよ。皆が歌って皆がセンター!」

 

と両手を上げて宣言する。それから皆が賛成していって後はにこの意見を聞くだけになり

 

「仕方ないわね。ただし私のパートはカッコよくしなさいよ」

 

どこか嬉しそうに言うにこ。

 

「了解しました」

 

それに笑って返すことり。

 

「よし、そうと決まったら早速練習しよう!」

 

と部室を飛び出す穂乃果。部室に残っている他のメンバーは顔を見合わせ、笑顔で穂乃果の後に続いた。

 

「でも本当にリーダー無しで良いのか?」

 

屋上に続く階段を上りながら夏希が言う。

 

「それなら、ね」

「えぇ。もう決まってますよ」

 

若葉と海未の言葉に首を捻る夏希。

 

「不本意だけど」

「なんにも囚われないで一番やりたい事、一番面白そうな事に怯まず真っ直ぐに向かっていく」

「それは穂乃果にしか無いものかもしれないね」

 

真姫、海未、若葉は走って階段を上る穂乃果を見ながら言う。その3人の言葉に全員が納得の行った表情で頷く。

 

「じゃあ始めよう!」

 

 




愛「今回は随分長かったですね」
夏「良いんじゃない?」
若「そう言えばカラオケの時に流れてたBGMってラブノベルスなんだよね」
愛「一体何の話ですか」
夏「そんなんアニメに決まってんじゃん」
愛「では次回アニライブ『た、助けて〜』」
夏「次回も楽しみに待っててくれよ!」
愛「誤字脱字、感想、アドバイス等をどしどしお待ちしております!」


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た、助けて〜by花陽

ちょっと待ってて〜

スクフェスのクリスマス特典に真姫ちゃんがなりましたね!


「いや〜そろそろ夏服に衣替えして眼福だな〜」

「そんな事を言う為にわざわざウチまで来たの?」

 

若葉はカウンターから呆れたように翔平を見る。今は休日でμ'sの練習もオフの日で、μ'sの新曲『これからのSomeday』をアップしたのがつい先日のことである。

 

「ハッハッハ!そんな訳ないじゃん」

「おかえりはあちらになります」

「ちょ、マジで帰そうとしないで!」

 

と翔平の対応がめんどうになったのか、これが正しい扱い方なのか、若葉が翔平を帰そうとする。

 

「それで?何の用なのさ?」

「あぁ、これこれ。μ'sはこれどうするのかな〜って思ってさ」

 

若葉が翔平の差し出したケータイの画面を見る。

 

「何々ーー?」

 

☆☆☆

 

次の日

 

「た、助けて〜」

 

アイドル研究部の部室に花陽が駆け込んで来る。部室にいた若葉と穂乃果、海未にことりは花陽のイキナリの救援要請に首を捻り

 

『ちょっと待ってて?』

 

と疑問系で返す。

 

「じゃなくて!大変です!ラブライブです!ラブライブが開催される事が決定しました!」

「な…ラブライブ!?」

 

花陽の知らせに穂乃果は驚き

 

「て、何それ?」

 

花陽に聞いた。先程の驚きは何だったのか…

 

「あーラブライブね」

 

と穂乃果とは対照的に落ち着いて花陽の言葉を聞く若葉。

 

「お兄ちゃん知ってるの?」

「まあ少しは」

「スクールアイドルの甲子園、それがラブライブです。エントリーしたグループの中から、このスクールアイドルランキング上位20位までがライブに出場、No. 1を決める大会です。噂には聞いていたけどついに始まるなんて〜」

「へぇ〜」

 

花陽の説明に納得する穂乃果。

 

「スクールアイドルは全国的にも有名ですし」

「盛り上がること間違いなしにゃ〜」

 

海未といつの間にか来た凛を無視して、部室のパソコンで上位20位やチケット発売日などを調べテンションを上げる花陽。

 

「て、花陽ちゃん観に行くつもり?」

 

そんな花陽の様子を見て穂乃果が聞く。その穂乃果の言葉に花陽は立ち上がり

 

「当たり前です!これはアイドル史に残る一大イベントですよ!見逃せません」

 

と穂乃果に詰め寄る。

 

「花陽ってアイドルの事になるとキャラ変わるよね」

 

若葉の言葉に真姫と愛生人が頷く。

 

「いや、アッキーは人の事言えないでしょ」

 

ゲームの事になるとキャラが変わる愛生人に夏希が突っ込む。因みにアッキーとは夏希が考えた愛生人のアダ名である。

 

「凛はこっちのかよちんも好きだよー」

 

と何時もの事で慣れている凛は呑気(のんき)に言う。

 

「そっか〜私てっきり、出場目指して頑張ろう!って言うのかと思ったよ」

「うぇぇぇ!?」

 

穂乃果の言葉に先程とは真逆のキャラになって壁際まで下がる花陽。

 

「そ、そそ、そんな。私達が出場なんて恐れ多い…」

「キャラ変わり過ぎよ」

「凛はこっちのかよちんも好きにゃー!」

 

真姫の言葉に頷く若葉と夏希。先程指摘された愛生人はなんとも言えない表情をしている。

 

「でもスクールアイドルやってるんだもん。目指してみるのも悪くないかも」

「てゆうか目指さなくちゃダメでしょ!」

 

ことりの台詞に穂乃果が突っ込む。

 

「そうは言っても現実的に出れるの?先週見た時そこまでの順位は無かったはずだけ…どぉ?」

 

と夏希がパソコンでμ'sのページを開きながら話していると、最後に変な声が出た。

 

「あれ?順位が上がってます」

「嘘ぉ!」

 

夏希と一緒に画面を見ていた海未が夏希の変な語尾の理由を説明する。真姫を皮切りにメンバーが画面を見ると、確かに順位は上がっていた。

 

「急上昇のピックアップスクールアイドルにも選ばれてるよ!」

 

ことりが画面の端を指すとそこにはμ'sの文字があった。

他にも新曲についての感想などが多数書き込まれていた。

 

「あれ?なんで若は驚かないんだ?」

「いや俺らサポート班だよ?そういった定期チェックとかも仕事の範疇じゃない?」

「「いや違うだろ(と思います)」」

 

若葉の言葉に夏希と愛生人の2人が否定する。

 

「あとラブライブ開催については昨日友達から聞いたから、かな?」

「友達って翔平君?」

「そうだよ。昨日店に来た時に聞いたんだ〜」

 

とお茶をすすりながら穂乃果の問いにノンビリ答える若葉。

 

「もしかして凛達人気者〜?」

 

感想を読んでいた凛が嬉しそうに言うと、真姫は何か心当たりがあるようで

 

「もしかしてそのせい?」

「え?」

「最近他の学校の子から写真良いですか?て言われたのよ」

「あぁ最初は断ってたのに結局写真を一緒に撮ってたあれか」

 

その時の事を真姫と夏希は屋上に着くまでに話していた。夏希がなぜ知っているのかと言うと、偶然その場を見ていたからである。

 

「それって出待ちってやつですよね」

「嘘。私そんなの全然ない…」

 

と凹んだ穂乃果を若葉が慰めてると

 

「でもそうゆう事もあります。アイドルというのは残酷な格差社会でもありますから」

 

と花陽が止めを指す。

 

「でも写真とかマッキーもだいぶ変わったな」

「わ、私は別に!」

「あ、赤くなったにゃ〜」

 

夏希の言葉に真姫は顔を背けるが、凛に顔を覗き込まれ赤くしてるがバレる。そんな凛に真姫が仕返しするかの様に頭にチョップする。

 

「う〜痛いよ〜」

 

イキナリの事で凛は頭を抑えながらその場にしゃがむ。

 

「あんたがいけないのよ」

 

頭を抑えてうーうー言ってる凛に真姫が言う。

 

「どっちもどっちじゃね?」

 

夏希の呟きに被せるように屋上のとびらが開く。

 

「皆、聞きなさい!重大ニュースよ」

「あ、にこ先輩」

「重大ニュースって言われても新しい試験生が来たって位じゃないともう驚きませんよ?」

「それよりももっと凄い事よ。この夏遂に開かれるのよ!スクールアイドルの祭典」

「ラブライブですか?」

「……知ってたの?」

 

ことりに遮られ、全員が知っているのかと確認すると全員が頷き、にこ先輩が膝を着いた。




若「さて今回は夏希と愛生人じゃなくてこの子に来てもらってます!」

花「ど、どうも小泉花陽です」
若「そんなに緊張しないで、ノンビリ楽しくやっていこ?」
花「は、はい!」
若「それにしても花陽はアイドルの事になるとキャラがガラッと変わるね」
花「そうですか?」
若「うん。見てて面白いから良いんじゃない?」
花「は、はぁ」
若「さて、俺ばっかり話すのは申し訳ないから花陽、語っていいよ」
花「えと、じゃあ説明を。夏希先輩と若葉先輩の呼び方が変わったのは気付いたと思いますが、各々の呼び方は『オリキャラ紹介と呼び方』を参照にしてください」
若「こら作者?何サラッと言わせてるの?」
だって物語中に説明入れるの面倒なんだもん
花「そこを面倒って言ったらダメだと思いますけど…」
なん……だと……
若「分かったら今後こういった事は控えるように、良いね?」
……はい
若「よし、それじゃあ花陽、次回予告よろしくね!」
花「はい。次回『貴方に言われたくないわ!』ご、誤字脱字、感想、アドバイス等をお待ちしております」


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貴方に言われたくないわ!by絵里

今回少しだけあの時のフラグを回収しているかもしれなくもないかもです!


落ち込んだにこを若葉が落ち着かせ、一同は生徒会室前に来ていた。

 

「どう考えても答えは見えているわよ」

 

生徒会室の扉を睨む穂乃果に真姫が声をかける。

 

「学校の許可ぁ?認められないわ。って言われそうだけどね」

「だよねー」

 

若葉の似ているようで少し惜しいモノマネに穂乃果が頷く。

 

「でも、今度は間違いなく生徒を集められると思うんだけど…」

 

それでもまだ諦めきれない穂乃果。

 

「そんなのあの生徒会長には関係ないでしょ。私らの事、目の敵にしてるんだから」

「どうして私達ばかりなのかな…」

 

にこの言葉を受け、ことりが呟く。するとにこが何かに気付いたような反応をする。

 

「まさか学園の人気がわたしに取られるのを危惧してるとか!?」

「「それは無いわ(よ)」」

「ツッコミ早!」

 

若葉と真姫によるツッコミに、にこがツッコミ返す。

 

「本当にそうかな?」

「どういうことですか?」

 

壁に背を預けていた夏希の呟きが聞こえたのか、愛生人が聞き返す。

 

「いや、絢瀬先輩も色々と背負うものがあるんじゃね?て話」

 

と話を誤魔化した。愛生人は夏希の言った事がよく分からずに首を捻る。

 

「もう許可なんて取らずに勝手にエントリーしてしまえば良いんじゃない?」

「ダメだよ。エントリーの条件に学校側の許可をキチンと取ることって書いてあるもん」

 

真姫の提案に花陽が否定する。すると何か思い付いたのか、若葉が一つ手を打ち

 

「じゃあ彩さんに直談判しに行こうか」

 

と理事長の名前を出した。

 

「そんな事出来るの?」

「出来なくはないんじゃないかな?一応俺らの扱い試験生だし、ダメ押しでことりもいるしね」

 

穂乃果の問いに試験生3人とことりを指して答える若葉。

 

「確かに部の要望は原則生徒会を通じて、とありますが理事長の所に直接行く事が禁じられてるわけではありませんし」

 

海未の台詞に若葉が頷き、理事長室に向かって歩き出す。

 

「若ちょっと待て!」

 

歩き出した若葉は夏希の静止の言葉に振り向く。そこには苦笑いを浮かべたメンバーがいた。

 

「どうしたの?」

「理事長室はこっちだ…」

 

と若葉が歩き出した方とは反対を指して言う。

 

「あはは。そうだっけ?」

「お兄ちゃんは先頭歩かないでね?絶対迷子になるから」

「絶対とは何だよ。この間だって運良く行けた時があった気がするからね?」

「だいぶあやふやじゃん!」

 

と、久々に方向音痴属性を発揮させた若葉であった。

それから海未を先頭に理事長室に辿り着くと

 

「更に入りにくい緊張感が…」

 

と怖気付く穂乃果だった。

 

「こうゆうのは慣れが大事かもね」

 

と若葉が理事長室の豪華な扉をノックしようとするのと同時に扉が開く。

 

「おお。お揃いでどうしたん?」

「希先輩と絵里先輩?」

 

出て来たのは希と絵里だった。

 

「何の用ですか?

「彩さんに少しお話があって来たんですよ」

 

絵里の問いに若葉が答え、理事長室に入ろうとする。

 

「各部の理事長への申請は生徒会を通す決まりよ」

 

そんな若葉の前に立ち塞がり、入室させない絵里。

 

「別に申請とは言ってないだろ?」

 

若葉の隣で壁に背を着けていた夏希が言う。

 

「じゃあ何しに来たのよ」

 

そんな夏希に苛立ち混じりの声を出す絵里。

 

「まぁまぁ2人とも落ち着いて、ね?それと夏希。絵里先輩は上級生なんだから敬語を話そうか?」

 

と若葉が2人のあいだに入りつつ、夏希の頬を引っ張り注意していると

 

コンコン

 

とノックの音がした。全員が音の方を見ると彩がいた。

 

「理事長室の前であんまり騒がないのよ?私に用があるみたいだし、取り敢えず中に入る?」

 

穂乃果達は顔を見合わせると頷き、2年生5人だけが中に入る。その後に絵里と希も理事長室に入り、扉を閉める。凛、花陽、真姫、にこ、愛生人の5人は閉まった扉をすこし開け、廊下から中の状況を見守る。

 

「ーーと言うわけです」

 

理事長室に入り、一通りの説明を穂乃果が彩にする。

 

「へぇ〜ラブライブねぇ」

「はい。ネットで全国的に中継される事になっています」

「出場出来れば、学校の名前を皆に知ってもらえる事になると思うの」

 

あやの言葉に海未とことりが答える。しかし

 

「私は反対です」

 

と壁際に立っていた絵里が反対する。

 

「理事長は学校の為に学校生活を犠牲にするべきではないとおっしゃいました。であれば」

「そうねぇ。でも良いんじゃないかしら、エントリーするくらいなら」

 

絵里の言葉を遮り、彩がエントリーくらいなら良いんじゃない?と言う。

彩のそんな台詞に穂乃果達は喜び、逆に絵里は戸惑い

 

「ちょっと待って下さい。どうして彼女達の肩を持つんです」

「別にそんなつもりはないけど」

「だったら、生徒会も学校を存続させる為に活動させて下さい」

「それはダメ」

「意味がわかりません」

「そう?簡単な事だと思うわよ?」

 

彩のその言葉を最後に絵里は理事長室を出て行こうとして

 

「本当絵里は昔から変わってないよな」

 

夏希のその一言で足を止める。そして絵里は夏希を少し睨むように見て

 

「貴方に言われたくないわ!」

 

と夏希の頬を一度叩くと理事長室を出て行った。希も絵里の後に続いて理事長室を出て行く。

 

「え〜と夏希君。さっきのは一体?」

「俺の問題だから気にしないで良いよ。あと理事長さっきのは」

「ええ分かってるわ」

 

穂乃果の質問には答えずにそのまま理事長室を出て行った。

 

「で、話しは戻るけどラブライブよね?」

「はい!」

「エントリーするのは構いません。しかし条件があります。勉強が疎かになってはいけません。今度の期末試験で1人でも赤点を取るようなことがあったら、ラブライブへのエントリーは認めませんよ?良いですね?」

「ま、まぁ流石に赤点派無いから大丈夫…かと……あれぇ?」

 

ことりが若葉に肩を叩かれ後ろを見ると、床に膝をついて崩れ落ちる穂乃果がいた。廊下では穂乃果同様に崩れ落ちてる凛と、壁に片手を付いて反省のポーズを取っているにこがいた。

 

 




若「夏希、昔何やらかしたの?」
夏「それについては追い追い話されると思うぞ」
愛「それにしてもいい音出てましたよね。パシィン!て廊下にまで響いてましたよ」
夏「え?マジで?あいつも手加減を知らないやっちゃなー」
若「お?お?それはつまりどうゆうことなんだい?」
愛「つまりそうゆうことなんですね?」
夏「そんなことより!期末試験大丈夫なのかよ」
若「俺らは大丈夫だとして、問題は穂乃果、にこ先輩、凛の3人だね」
愛「そこは次回に回しましょう!では次回のアニライブ、誰行きます?」
若「じゃあ夏希行っちゃおう!」
夏「次回のアニライブ『申し訳ありません』」
愛「それではさようなら〜」
夏「にしてもタイトル回収とは言え俺のあのタイミングでの発言無理あったんじゃね?」
若「それは言っちゃダメだよ」


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申し訳ありませんby穂乃果

ダメだ最近凄く眠い


「大変申し訳ありません」

「ません」

「……でした」

 

あれから場所を部室に移して成績の話になった。

そして穂乃果、凛、にこの3人が机の上に手を揃えて頭を下げていた。その正面には3人を除いたμ'sの面々が立っていた。

 

「小学校の頃から知ってはいましたが…穂乃果…」

「数学だけだよ!ホラ、小学校の頃から算数は苦手だったでしょう?」

 

穂乃果の言葉に若葉が頷く。どうやら何かあったようだ。

 

「7×4は?」

「……にじゅう……ろく?」

 

どのくらい苦手なのかを測る為に、夏希が試しに出した九九でさえ間違え、立っている人達は一斉に苦笑いを浮かべる。

 

「で、凛ちゃんは何がダメなの?」

「凛は英語。あれだけはどうしても肌に合わなくて…」

 

愛生人の質問に凛が立ち上がりながら答える。

 

「確かに。英語は難しいよね」

 

と凛の言葉を受けて花陽も頷く。すると我が意を得たりとばかりに凛が続ける。

 

「そうだよ。大体凛達は日本人なのに、どうして外国の言葉を勉強しなくちゃいけないのー!」

「屁理屈はいいの!」

「にゃ〜真姫ちゃん怖いにゃ〜」

「これでテストの点数が悪くてエントリー出来ませんでした。じゃ恥ずかし過ぎるでしょ!」

 

凛の屁理屈に腹を立てた真姫が凛を注意する。

 

「それで、にこ先輩も数学ですか…」

 

先日リーダーを決める際に行った回答用紙を見ながら若葉が言う。

 

「に、にににっこにっこにーが弱点をそのままにしとくわけないでしょー」

「じゃあ中間考査の結果を見せて下さい」

 

にこにーのポーズをしながら言うにこに、若葉が手を差し出す。

 

「う…」

 

結果を若葉に差し出し、項垂れるにこ。若葉は渡された結果用紙を見ると

 

「にこ先輩…数学が悪過ぎません?穂乃果といい勝負ですよ」

 

と止めを刺しに掛かる。

 

「煩いわね!そうゆうあんたらはどうなのよ!」

 

にこが若葉、夏希、愛生人に向かって言うも3人は特に恥ずかし気なく中間考査の結果を差し出す。

 

高坂若葉 487点 佐渡夏希 395点 片丘愛生人 415点

 

「「「…………」」」

 

結果を覗き込んだ穂乃果達3人は驚き

 

「お兄ちゃんって頭良かったんだね…」

「アキ君…酷いにゃー」

「何でこんな点取れるのよ…」

 

と3者3様の言葉を漏らす。実を言うと中間考査の前に夏希考案の緊急勉強会が開かれた事を、穂乃果達は知らないのだった。

 

「若葉は教えるの上手だよな」

 

「分かりやすくて助かりましたよ」

 

夏希と愛生人はその時の事を思い出しながらしみじみと首を縦に振る。

 

「とにかく、試験までは私とことり、夏希と若葉で穂乃果を、花陽と真姫、愛生人で凛の勉強を見て苦手科目の底上げをしていきます」

 

海未の言葉に不満そうな声を上げる穂乃果と凛。しかし赤点間近の人はもう一人いる。

 

「それは良いけど、にこ先輩は?」

「だから言ってるでしょ。にこは」

「それはウチが担当するよ」

 

真姫の言葉に言い返そうとしたにこの台詞を遮る形で、部室の扉が開き部室に入って来る。

 

「希?」

 

入って来たのは生徒会副会長の東條希だった。

 

「だ、だからにこは必y」

「言う事聞かないと胸をワシワシするで?」

 

未だ渋るにこの胸を掴んで言い聞かせる希。するとにこは観念したのか、希に臨時家庭教師を頼んだ。

 

「希先輩。ちょっと教科書見せて貰って良いですか?」

 

にこの家庭教師が決まり、さぁ勉強会を始めよう!といった所で若葉が希に言う。

 

「別にええけど、分かるの?」

「どうでしょう?」

 

と希に返事しながら教科書をパラパラと捲る。そして時折「あ、ここ分かる」だの「ここは知らないや」と呟きながらページを捲っていく。

 

「え〜と若葉君?」

「あ、失礼しました。教科書ありがとうございました」

 

希に名前を呼ばれ教科書から顔を上げる若葉。それから教科書を希に返すと

 

「希先輩。にこ先輩に教えるの手伝いますよ」

 

衝撃的な言葉を放つ。その言葉に驚きつつも希は聞く。

 

「い、いやいや。手伝うって若葉君2年生やん?さすがに3年の数学は分からないんじゃない?」

「いや〜前の学校……というより担任がちょっと特殊でしてね?高1の最後の方に、無理矢理3年の数学の問題をやらされたんですよ」

「いや、特殊って。つか1年なのに3年の問題やってたのかよ。2年の問題はどうしたんだよ」

 

若葉の言葉に夏希が聞くと

 

「いや俺数学専攻コースってヤツだったから1年の範囲は2学期中盤までに終わらせて、残りの3学期終わりまでは2年の範囲終わらせてるんだよね。でも他の科目は普通の高校より少し速いくらいのペースだって聞いてたよ?」

「え、ちょっと待って下さい。若葉先輩ってどこの高校行ってたんですか?」

 

高蓑原(たかみのはら)高等学校ってとこだよ」

 

『た、高蓑原!?』

 

若葉の出した高校の名前に穂乃果以外の全員が驚きの声を上げる。

高蓑原高校とは、国数英理社の5つの専攻コースが設けられている高校でら入試に受かるのが難しいと言われている高校である。若葉はその難関校を受け、5つのコースの最難関と言われる数学専攻コースに受かったのだ。それは驚くだろう。

 

「う〜ん。にこっちを教えるのは間に合ってるから、若葉君には夏希君と愛生人君をお願いしようかな」

 

「分かりましたー。ほら2人ともやるよ」

 

若葉は夏希と愛生人を机の端に呼び、勉強を教える。

 

「よし、これで準備は出来たね。それじゃあ明日から頑張ろー」

「おー!」

「今日からです」

 

穂乃果と凛が手を上げるが海未に一蹴される。それからμ'sの勉強会が始まった。




夏「若葉って頭良かったんだな」
若「え、俺ってそんな馬鹿に見えたの?」
愛「寧ろ若葉さんの弱点て何ですか?」
若 「弱点?」
夏「だって色んなバイトしてるだろ?運動も出来て、歌も上手い。料理も出来て、勉強も出来る。完璧超人かよ!」
愛「と、言うわけで今回はこの人に来て貰いましたー」
翔「ども中田翔平でーす」
夏「まだ小説内では愛生人と会ってないんだよな」
若「まさかこっちで先に会うなんてね」
愛「ま、それは良いとして。翔平さん翔平さん。若葉先輩の弱点とか知りませんか?」
翔「弱点?なんでまた」
夏「運動、歌、料理、勉強全てが良の若葉になんか弱点無いかなーて」
翔「敢えて言うなら妹に甘い。かな」
夏愛「「あーーー」」
若「そのあーーー、はなんなの?」
夏「いや納得出来るなぁって」
愛「確かにその毛はありますね」
翔「あとは方向音痴ってくらいか?」
『あー』
続きは次回!


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何とも不幸だねby若葉

今回はあの時のフラグとも言えぬフラグを回収したいと思います。回収、出来てるかなぁ……




勉強会を始めて1時間。外はもう夕暮れ時。

 

「う〜これが毎日つづくのかにゃ〜」

「当たり前でしょ」

 

小休憩を取っていると凛がボヤき始めた。真姫がそれを嗜めると

 

「あー!白いご飯にゃー!」

「えぇ!?」

 

凛が窓の外を指差しながら大きな声を上げる。それに吊られて窓の外を見る花陽。真姫は凛の額に手刀を入れ

 

「引っかかると思ってる?」

 

凛をジト目で見ながら聞く。吊られた花陽はと言うと「炊きたてなのかー?」と言いながら窓の外をキョロキョロしている。

 

「ことりちゃん」

「なに?あと1枚よ。頑張って」

「おやすみー」

「えぇ!?穂乃果ちゃん!穂乃果ちゃ〜ん!」

 

穂乃果は穂乃果で寝始めていた。ことりがそれを起こそうとするも、まったく起きる気配のない穂乃果。

 

「全く。ことり、あとは頼みます。私は弓道部の方に行かなければならないので」

「わかった!起きて〜」

 

海未に穂乃果を任されたことりは、相変わらず寝ている穂乃果を起こそうと頑張る。

 

「分かった。分かったってばー」

「じゃあ次の問題の答えは?」

 

一方にこはと言えば希と若葉の2人体制に変わっていた。

若葉に教えて貰っていた夏希と愛生人は、今は宿題に取り掛かっている為若葉は不必要になったのだ。

 

「に、にっこにっこにー」

 

若葉の質問に誤魔化して答えるにこ。その答えを聞いた若葉は指をパチン、と鳴らす。するとにこの後ろに構えていた希がワシワシを開始する。

 

「ぎゃー止めてー」

巫山戯(ふざけ)たからワシワシMAXやで」

 

海未は部室から出る時にそんなカオス空間を見て溜息を一つ

 

「これで身についているのでしょうか…」

 

と呟く。しかし騒がしい部室でその呟きを拾う人は居なかった。

 

海未が出て行ってから少し、若葉が穂乃果を起こし、凛も愛生人にはげまされ、にこもお仕置き(ワシワシ)を喰らわないようにと勉強をしていた。

そんな中若葉が一つノビをし

 

「今日はそろそろ解散しようか」

「そうね」

「これ以上やっても逆効果みたいだし」

 

ことりと真姫の視線の先には机に突っ伏している穂乃果と凛がいた。

 

「仕方ない。穂乃果は俺がおぶって帰るとしようかな」

「じゃあ凛ちゃんは僕が」

「じゃあ私が荷物持つよ」

 

愛生人が凛を背負い、花陽が凛と愛生人の荷物を持つ。

 

「あー若、ちょっといいか?お前に少し話がある」

 

穂乃果を背負った若葉に夏希が言う。若葉は夏希の真面目な表情を見ると穂乃果をことりに渡し、先に帰らせる。

 

「それで話って何?」

 

2人きりの部室で若葉が口を開く。

 

「いや、若なら良いかなって。新歓の時のも聞かれてたみたいだし」

「新歓の時?」

 

夏希の言葉に若葉はその時の事を思い出した。あの時、夏希はライブの後とある人物と話していた事を。

 

「あの話は本当なの?」

「ああ本当だ。俺はあいつ……絢瀬絵里と幼馴染みだ」

 

夏希の言葉に若葉は驚く

 

「ふーん。そうなんだ」

 

事もなく何の事でもないかのように返す。その返事が想定外だったらしく、夏希は「えぇー…」といった表情で若葉を見ている。

 

「や、別に無関心だとかそういった事じゃないよ?ただね、新歓の日に聞いてるからその事実だけのインパクトが余りないんだよね。それに夏希が1個上だろうが、タメだろうが、俺はそんなに気にしないし」

 

苦笑いしながら弁明する若葉と、それを見て思わず笑う夏希。

 

「うん。やっぱ最初にお前に言って正解だったよ。因みに俺はお前の1個上な?」

「ほうほう成る程成る程。じゃ、これからもよろしくお願いします夏希先輩」

「敬語と先輩付けは止めろ」

 

2人は笑いながら今まで通りの会話を繰り返す。

 

「話は戻して、これからは少し細かい話をしようと思う」

「と、言うと?」

「絵里について、かな」

 

夏希がここからが本題だと言わんばかりに話を戻す。

 

「絵里は昔、本格的なバレエの世界で活躍していてな。その時の経験からスクールアイドル全体を否定的に捉えてるんじゃないかと思うんだ」

「成る程。それで穂乃果達と対立してるんだ?ま、こう言っちゃ何だけど、絵里先輩の件は夏希が介入した方が早いんじゃない?」

「いや、お前も手伝うなりしろよ」

 

少し投げやりに答えた若葉に夏希が突っ込む。

 

「いや、多分絵里先輩をどうにかするんだったら、良く知ってる夏希や希先輩に任せた方が良い気がするんだよね」

「そうゆうもんか?」

「そうゆうもんだと、俺は思ってるよ」

「そうか、じゃあ任された」

 

そう言って夏希は荷物を持って部室の扉を開ける。若葉も荷物を持ち、夏希のすぐ後に続いて部室を出る。

 

「そう言えばさ、なんで夏希は学年が1個下がったの?留年?浪人?」

「お前、そうゆうのサラッと聞くのかよ」

「良いじゃん良いじゃん」

 

職員室に部室の鍵を返し昇降口で靴に履き替える時に若葉が聞いた。

 

「ま、アレだよ。ちょうど今頃に事故って半年近く入院、出席日数足らずで留年」

 

門から出ながら夏希が言う。

 

「何とも不幸だね」

「まぁな、でもお陰で免許取れたし」

「どうして!?」

「ほら俺って4月生まれだから」

「そこを聞きたいんじゃないよ!」

 

若葉が思わず突っ込む。夏希はそれを面白そうに笑い

 

「だって退院した時には既に留年確定なんだぜ?だったら学校行かなくて良いかな?って。親も無理して行かなくて良いっつーし」

「だから暇な時に免許取ったって?」

「ご名答」

 

その時の夏希のドヤ顔に若葉は思わず手に持っていた鞄を夏希に叩きつけたとかつけたとか…




夏「で、若本人の妹に弱いっての以外何かある?」
翔「う〜ん若葉のマイナス要素はそれくらいか?探せばありそうだけど」
愛「んー…そう言えば話変わりますけど、夏希先輩に彼女がいるって本当ですか?」
夏「貴様!その情報をどこから」
愛「若葉先輩から」
若「ドヤァ」
夏「若、その情報はどこから?」
若「近所のお母さん方の証言」
翔「で?本当にいるのか?」
夏「まぁいるっちゃーいるけど」
愛「けど?」
夏「あんまり名前を公表するのはあいつにも迷惑だろうから、公開は本編でやるさ」
若「まぁここの(あとがき)のやり取りは本編には無関係だから、別にすぐ出てくるって事はないよ」
翔「お、そろそろ終わりにしろってさ」
夏「じゃあさよなら」
愛「バイバーイ」
若「今回本編に全く触れなかったね。結構重要な筈なのに」
翔「まぁまぁ兎に角終わりにしよう」
若「それでは次回もまた見てくれるかなー?」
翔「では誤字脱字、感想、アドバイス等をお待ちしております!」


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黙れシスコン野郎by夏希

遅くなりました。前回やっと夏希の秘密が分かりましたね〜

今回は少々短いですが、どうぞ。


若葉が夏希を殴った後、2人は夏希の要望でとある公園に向かった。

 

「で、夏希は何しに俺と公園に行くの?」

「ん?別に変な事はしないって」

 

夏希が前を歩いているため、若葉は夏希の表情が見えなかったが、若葉は黙って夏希の後に続く。

 

「お、グッドタイミーング。おーい亜里沙ちゃーん」

 

ふと夏希が手を振りながら名前を呼んだ。

若葉が夏希の背中越しにそちらを見ると、自販機の前に亜麻色(あまいろ)の髪を伸ばした女子中学生がいた。なぜ若葉が一目で女子中学生と分かったかというと、少女の着ている制服が妹の雪穂と同じ制服だからだ。

 

「あ、夏希さん!こんにちは」

 

名前を呼ばれた事で亜里沙が振り向き、夏希に向かって手を振る。その手にはおでん缶が2つあった。

 

「紹介するな。こっちは絢瀬亜里沙。絵里の妹だ。で、亜里沙、こっちは」

「高坂穂乃果さんですよね!?μ'sの!」

 

亜里沙は夏希の紹介を途中で切り、若葉に詰め寄る。

 

「私、μ'sのファンなんです!あれ?でも今日は髪を縛ってないんですね」

「あーうん。俺は穂乃果の双子の兄の若葉って言うんだよ。よろしくね」

「ハラショー……夏希さん、日本の双子って凄く似てますね」

 

亜里沙の勘違いを解いた若葉は、続いた亜里沙の言葉に苦笑いする。

 

「別に日本に限った話じゃないけどね。それより、そのおでん缶は一体…?」

「あぁ、これは向こうでお姉ちゃんと海未さんが話してるので、持って行こうと思って」

 

その言葉には若葉だけでなく、夏希まで苦笑いする。

 

「えーと、亜里沙ちゃん?おでん缶は確かに自販機で売ってるけど、飲み物じゃないんだ」

「ハラショー」

 

夏希の言葉を受けて、亜里沙は手に持っているおでん缶を見つめる。

 

「だからこっちを買って絵里達の所に行こ?」

 

と夏希は缶の紅茶を5本買い、海未と絵里のいる公園に向かって歩き出す。亜里沙と若葉は顔を見合わせると、くすりと笑い合い、夏樹の後について行く。公園に入るとベンチの側で話している海未と絵里が見えた。

 

「私にとってはスクールアイドル全部が素人しか見えないの。1番実力があると言うA-RISEでさえ、素人にしか見えない」

 

絵里はそれだけ言って若葉達の方へ歩き出す。

 

「お姉ちゃんとゴメンね」

 

そんな絵里に亜里沙だけが走り寄る。

 

「もう話は終わったから良いわ」

 

絵里が顔を上げ亜里沙の頭を撫でながら言う。

 

「貴女に、貴女に私達の事そんな風に言われたくありません!」

 

海未の言葉を背中で受け、絵里は亜里沙の手を引いて公園から出る。

 

「よ、話は済んだか?絵里」

「貴方達、どうしてここに」

 

公園を出てすぐの曲がり角に夏希と若葉の姿を見つけ、絵里の表情が険しくなる。

 

「別に。敢えて言うならそろそろ絵里もやりたい事をやったら?って感じかな」

「私は今、やりたい事をやっているわ。そんな事貴方に言われたくないわよ!」

 

キッ!と夏希を睨むと絵里は1人で道を歩いて行く。

 

「あ、あの。これ良かったら」

 

亜里沙はそんな姉を見て急いで追いかけようとして、手に持ってたおでん缶を夏希と若葉に渡す。その際小さい声で

 

「あの、亜里沙、μ'sのこと大好きです!」

 

と若葉に言った。若葉は亜里沙の頭を撫でながら「ありがとう」と返し、絵里の元に走り寄る亜里沙を夏希と見送る。

 

「ねぇ夏希?」

「なんだ、若葉」

 

亜里沙を見送った体勢のまま2人は話す。

 

「やっぱり妹って良いね」

「黙れシスコン野郎」

「うるさいロリコン野郎」

「誰がロリコンだと?」

「俺はシスコンじゃない」

「2人は何をしてるんですか?」

 

若葉と夏希がシスコンだのロリコンだの言い合ってると、後ろから声を掛けられる。

 

「やぁ海未。こんな所で会うなんて奇遇だね」

「先程から見てましたが…」

「ならうーみんからも言ってやれよ。若はシスコンだって」

「だから違うって」

「いえ、若葉はシスコンです」

「まさかの肯定されたぁ!」

 

とわいわい騒ぎながら、若葉と夏希は誤魔化せた事に安堵の溜息を吐く。

そして2人と別れた若葉は家に帰るなり、裕美子から一通の手紙を渡される。

 

「母さん。これ誰から?」

「翔平君よ?なんか大事な物だからちゃんと中見ろよ、て言ってたわ」

「ふ〜ん」

 

若葉は自分の部屋に入ると翔平かららしい手紙の封を切り、手紙を読む。

 

「あーやっぱりか…」

 

手紙の内容は若葉の予想内の事だったらしく、余り驚いてはいなかった。




夏「シスコン野郎」
若「ロリコン野郎」
夏「シスコン野郎」
若「ロリコン野郎」
夏「シスコン野郎」
若「ロリコン野郎」
愛「2人とも煩いですよ?」
若「自覚はあるよ」
夏「タチ悪いな」
愛「全く。折角挿絵描いてもらったのにそんな事を言ってちゃダメですよ」
若夏「「マジで!?」」
愛「はい。マジです」
夏「で、で?誰が描いてもらったの?」
愛「それは勿論。この物語の主人公の若葉さんです!」
若「しゃー!」
挿絵を描いてくださったこいしさん、本当にありがとうございます。
愛「挿絵の方は運営の許可が出次第、載せたいと思います」
夏「て事は次の話には載せれるのかな?」
若「だね」
愛「それではまた次回!」
バイバーイ


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前の学校に戻るのねby彩

話が一気に飛びます。どのくらいかと言うとアニメ半パートがほぼ全カットです。
それと最近gdgdしてる感が書いてて凄いあります。そんな私ですが、どうぞ完結までお付き合い頂けると嬉しいです。


 穂乃果と若葉を除いたアイドル研究部の部員8人が部室の椅子に座って穂乃果を待っていた。その日は期末試験の最後の教科であり、問題だった数学の試験が返って来たのだ。

 凛とにこは試験返却の初日と翌々日に返されており、二人ともなんとか赤点を取らないで済んでいた。

 

「穂乃果先輩遅いわね」

「まさか点数が悪くてここ(部室)に来にくい、とか?」

 

 真姫の呟きに、にこが最悪の可能性を考える。

 

「しかしテストが返って来た時は、そんな感じてはありませんでしたが……」

「なんか驚いてたしな」

「あ、そういえば」

 

 同じクラスの海未と夏希が穂乃果の点数について話していると、心当たりがあるのか、ことりが声を上げる。

 

「どうしたんですか?」

「今日穂乃果ちゃん日直だったような……」

「「あ……」」

「穂乃果先輩は分かったけど、若葉先輩はどうしたんですか〜?」

 

 凛の質問に答えたことりの言葉に夏希と海未はそういやそうだった、といった顔をする。どうやら忘れていたようだ。凛は凛で若葉の所在を確認した。

 

「ゴメーン。日直の仕事で遅れちゃったー」

 

 そのタイミングで穂乃果が部室のドアを開ける。部室に入ってきた穂乃果は夏希達を見て首を傾げて状況を聞こうとするも、真姫に試験の結果を聞かれ

 

「うん。穂乃果自身もビックリしたんだけどね」

 

 と鞄をゴソゴソと漁りながら試験用紙を取り出す。

 

「まさか80点を越えるとは思わなかった…」

 

 震える手で試験用紙を見せると、確かに穂乃果の持ってる用紙の左上には「86」と書いてある。

 

『はぁぁぁぁあ!?』

 

 その場にいた全員が一斉に大声を出し、騒がしくなる。

 

「と、とにかく!理事長の所に行かね?」

 

 最初に元に戻った夏希がまだ騒いでいる部員を静かにさせる為、少し声を大きくして言う。そして一瞬沈黙があった後に

 

「そうだね。これでラブライブに出れる!」

「よーし、今日から練習だぁ!」

「ラ、ラブライブ」

「まだ出れるって決まっただけでしょ」

「そうだけど」

 

 廊下に飛び出しながら各々言いたい事を言いながら理事長室へ向かう。

 

「ま、良いか」

 

 夏希は若葉の所在を言いかけた事を放って置いて穂乃果達を追い掛けた。

 

 ☆☆☆

 

 理事長室には今、理事長の彩と若葉の2人だけだった。先程までは絵里も居て、次のオープンキャンパスで行うアンケートの結果が悪かったら廃校にする、といった話をしていたのだが、絵里は生徒会独自で生徒を募集する為の行動をする、と言って理事長室を出ていったのだ。

 

「この手紙に書いてある事は本当なの?」

 

 彩の問いに若葉は頷きながら答える。

 

「今年の初めに話があったので本当だと思います」

「そう。それじゃあ若葉君は前の学校に戻るのね」

 

 彩の言葉に返事をしようとした時

 

「えぇー!お兄ちゃん音ノ木から高蓑原に戻っちゃうの!?」

 

 穂乃果を先頭にアイドル研究部の九人が理事長室に雪崩れ込む。

 

「ありゃ、穂乃果達聞いてたんだ。一体いつから?」

「それは…」

 

 若葉が何の事でも無いかの様に穂乃果に聞くと、穂乃果は少し口籠る。そんな穂乃果の代わりに夏希が一歩前に出る。

 

「若が高蓑原に戻るって所からだぞ」

「あ、そうなんだ。そうそう実は来週からあっち(高蓑原)に戻るんだよ。いや~楽しみだよ」

 

 若葉が笑いながら言うと

 

「そんな!μ'sはどうするつもりなんですか!」

「そうよ!そんなイキナリ前の学校に戻るなんて!」

 

 海未と真姫が大きな声で異論を唱える。そんな2人の様子が不思議で首を捻る若葉と夏希。

 

「なんでそんな『もう会えない!』みたいな流れなの?」

「だよな。どうせ長くても一、二週間だろ?」

 

 若葉と夏希の言葉に今度は八人が首を捻る。そこまで行って若葉と夏希は話が噛み合ってない事を理解した。

 

「あー成程ね」

「納得したわ。寧ろ俺の時よりか凄いんじゃねえの?」

「まぁ夏希は突然だったし、俺にメールで連絡来てたしね」

 

 と二人で何やら話が進んでいく。そんな2人のやり取りに思わず真姫がストップを掛ける。

 

「ちょ、ちょっと待って。え?若葉は前の学校に戻るのよね?」

「そうだよ?まぁニ週間でまた戻って来るけど」

 

 再び穂乃果達が首を傾げる。それを見て彩を含めた3人は、顔を見合わせるとクスリと笑う。

 

「そろそろ高蓑原は修学旅行なんだよ。高蓑原って一年の三学期の時に修学旅行費を集めて予約したりするから、キャンセルが難しいんだって。で、前準備と当日、事後レポートの為に来週から2週間あっち(高蓑原)に戻るの」

「な、なんだ~。良かった~」

 

 若葉の説明を聞いて安堵の息を漏らす穂乃果。

 

「夏希君は知ってたの?」

「ん~まぁなんとなく。雰囲気で分かったってとこかな」

 

 ことりの問いに頭を掻きながら答える夏希。

 

「どこで気付いたの?」

「最初は『高蓑原に戻る』ってとこでおかしいなって思って、決め手はそのすぐ後の若の態度かな」

「そんなので気付けるなんて流石夏希だね」

 

 笑いながら夏希を褒める若葉。そして穂乃果達の方を向く。

 

「ま、皆が大変な思いをすると思うけど、遠くから応援してるよ。何かあったら連絡頂戴ね」

「大変な思いって?」

 

 若葉の言葉に疑問を感じた花陽が聞くと若葉は彩の方を見る。彩は黙って頷くだけだったが若葉は頷き返し、先程の絵里と彩のやり取りを説明する。

 

「てことは次のオープンキャンパスが次の舞台って事ですね」

「えぇ。そこでは各部活動に発表の機会があるからそこでライブを行っても大丈夫よ」

 

 愛生人の言葉を受けて彩が頷くと、穂乃果達が両手を挙げて喜ぶ。

 

「じゃあ早速練習しなきゃ!」

「そうね」

「練習するにゃー!」

 

 と穂乃果、にこ、凛といった勉強漬けの最近で体を動かせなかった三人を筆頭に屋上に駆け上がっていく。若葉と夏希もそれに続こうと理事長室を出ると

 

「2人ともちょっと良いですか?」

 

 階段の手前で海未に呼び止められた。

 

「どうしたの?」

「絵里先輩の事で少しお話が…」

 

 海未は少し言い辛いそうに話し始める。

 話は簡単で、絵里にμ'sのコーチをして貰ったら、今のμ'sから数段レべルアップできるのではないか、といった内容だった。

 

「確かに絵里先輩にダンスコーチして貰ったら助かるんだけど…」

 

 若葉も夏希から話を聞いた日に動画を見て、その事を考えたのだが絵里本人がμ'sに対して反対的な態度だと知っていたので、実際に頼みに行くまでの事が出来ないでいたのだ。

 

「俺もそれは思ってたんだけどねぇ。ま、絵里先輩の事は夏希に任せるって言ったし、夏希に任せるよ」

「なぜそこで夏希が出てくるのです?」

 

 若葉の言葉に海未が不思議そうに夏希を見る。

 

「あぁ俺って実は絵里の幼馴染なんだよ」

 

 夏希は何の事でも無いかの様に話す。

 夏希としては若葉に話したし、もうアイドル研究部の人達には話しても良いかな? と思っての発言である。案の定海未は暫く意味が分からなかったのか夏希の顔を見つめ続けた後、どこか納得のいった顔で頷いた。

 

「確かにそう言われてみれば、以前の理事長室での事にも説明がつきますね」

「納得して貰えた様で何よりだ」

 

 夏希は頷き屋上に上がって行く。

 

「ま、絵里先輩の事は一先ず置いといて、練習に行こっか」

「そうですね」

 

 そういって若葉と海未も屋上に上がって行った。

 

 

 

 




今回は若葉の挿絵をこいしさんに描いてもらいましたので、載せたいと思います。
こいしさん、お忙しい中ありがとうございました!


【挿絵表示】


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真姫ちゃんはどこで若葉先輩と会ったの?by凛

そろそろ若葉の相手を公表した方が良いかな?
流石にヒロイン不明で40話過ぎは拙いんでね?

ま、今回のである程度は分かると思います。


翌週。久し振りに若葉が高蓑原の制服に袖を通して学校に向かう。向かいながら若葉はクラスの皆に送り出された日の事を思い出す。

 

「結局夏休み前に会う事になったなぁ」

 

若葉は『これからのSomeday』を口遊(くちずさ)みながら学校の門を潜る。

 

「おーっす!若葉ー」

「おー……久し振り?」

「今の間は何だよ!」

「どうやって弄ろうかなー。て考えててね」

「偶には普通に返してくれよ〜」

 

若葉の制服を掴みながら抗議するのはこの作品の弄られ役の

 

「誰が弄られ役だ!」

「イキナリどうしたの?」

 

突然叫んだ翔平に若葉が心配そうに見る。翔平はそれになんでもない、と答えると教室に向かう。

 

「おはよーっす」

「皆久しぶり~」

 

翔平に続いて若葉が教室に入る。クラスにいた生徒達は若葉を確認した途端、ワッと若葉のもとへ駆け寄る。

 

「なんだ若葉。追い出されたか?」

「やっと帰ってきやがったな」

「おかえり若葉君」

「音ノ木坂どうだった?」

「妹さんスクールアイドルやってんだって!?」

「あ、私動画見た!」

「あーもう!ワチャワチャし過ぎー!」

 

そのあまりの騒がしさに若葉が叫ぶ。そして担任が教室に来るまでその騒がしい時間が続いた。

 

☆☆☆

 

若葉が高蓑原でクラスメイト達に質問攻めにされている頃。音ノ木坂では穂乃果は教室の机に突っ伏していた。

 

「ほのっち大丈夫?」

「う~ん。今年入ってからお兄ちゃんが隣の席にいたから、なんか落ち着かなくてね~」

 

穂乃果の台詞に穂乃果と夏希は若葉の席を見る。

 

「高蓑原の修学旅行が終わったら戻って来るのですから、それまでの辛抱ですよ?」

「そうだよ~我慢我慢」

 

そんな二人の席に海未とことりが近付きながら言うも、2人も若葉の席を見ている。

 

「ま、若葉の分までオープンキャンパスを頑張るか」

「だね~」

 

夏希の台詞に穂乃果が体を起こしながら言う。

 

「は~い席に着いて~」

 

姫が教室に入って来て朝のHRが始まる。

 

「え〜と、最後に高坂兄の事なんだけど、学校の都合で1.2週間前の学校に戻る事になった。その内帰って来ると思うから気にしないよーに。以上」

 

それだけ言うと姫は欠伸をしながら教室から出て行く。その様はまるで教師と感じさせない雰囲気だった。

 

「取り敢えず授業受けようぜ」

 

夏希が教科書を持ち移動教室先の教室に向かう。

 

☆☆☆

 

「ハァ~今日からか~」

 

1年生の教室では真姫が片肘ついて溜息を吐いていた。

 

「どうしたの?真姫ちゃん」

「いやね、今日から暫くいないんだな~って思っちゃって」

 

真姫の言葉に聞いてきたクラスメイトは首を傾げる。そんなクラスメイトに真姫は何でもない、と言って窓の外を見る。

 

「ねえ真姫ちゃんの様子変、じゃないかな?」

「なんか愛しい人を待ってる子みたいだね」

 

そんな真姫を見てコソコソと話し合っている花陽と愛生人と凛。

 

「本人に聞いてみるにゃー!」

 

分からない事は聞く!そんな感じで凛が真姫の机に向かって走り寄る。愛生人と花陽は顔を見合わせると凛に続いて真姫の机に近寄る。

 

「ねぇねぇ真姫ちゃん」

「なによ」

 

凛が机の前から顔だけ覗かせて真姫に聞く。真姫は鞄から水筒を出し、飲みながら凛の相手をする。

 

「真姫ちゃんと若葉先輩ってどこで出会ったの?」

「ブフゥッ!」

 

凛のあまりにストレートな問いに、思わず真姫は飲んでいたお茶を吹き出す。

 

「う~真姫ちゃん酷いにゃ~」

「はい凛ちゃん。制服は濡れてない?」

「なんとか大丈夫みたい」

 

真姫の吹き出したお茶は見事に正面にいた凛に掛った。慌てて愛生人と花陽が凛を拭き、制服に掛ってないかのチェックをする。2人が凛を拭いている間、真姫は1人であうあう言って混乱している.

 

「な、なんでイキナリ若葉先輩が出て来るのよ」

「え~だって真姫ちゃんって若葉先輩の事ぐわぁ!」

 

凛が何か言おうとするも、額に真姫の手刀が決まり仰け反る。

 

「凛ちゃん大丈夫?」

 

花陽の手を借りて立ち上がる凛。

 

「凛はただ、若葉先輩とどこで会ったか聞いただけなのに~」

「う…その…ごめんなさい」

 

涙目で訴える凛に少し顔を逸らしながら謝る真姫。

 

「で、真姫ちゃんはどこで若葉先輩と会ったの?」

「その話に戻るのね…」

 

愛生人の台詞にガックリ肩を落とす真姫。

 

「出会ったのは確か去年の今頃だったかしら」

「そんな前から?」

「?そうよ、まぁ若葉先輩の方は覚えてなかったみたいだけど」

「だからこの学校に来たの?」

「どうしてそうなるのよ。結局どこの学校か分からなかったから第1志望の音ノ木坂(ここ)に来たのよ」

 

真姫の言葉に首を捻る3人と、3人を見て同じく首を傾げる真姫。

 

「もしかして」

「話噛み合ってない?」

 

真姫と愛生人が呟く。お互い確認をすると、凛は学校のどこで若葉と会ったのかを聞いていて、真姫は若葉と初めて会った日の事を話していた。

 

「私、真姫ちゃんの話の続き聞きたいな」

「あ、凛も聞きたい!」

 

花陽の言葉に便乗するように凛も賛成する。愛生人も愛生人でどうせ1時間目は自習だから、と聞く体勢を取る。

そんな3人の様子に真姫は観念した様に溜息を一つ吐くと

 

「仕方ないわね」

 

と髪を弄りながら話し始める。

 

「さっきも言った通り、時期は去年の今頃よ」

 

 

 

 

 




若「さぁやって来ましたあとがきのコーナー!」
愛「何か今日の若葉先輩元気ですね」
若「え、そうかな?」
愛「はい。ね、夏季先輩。…夏季先輩?」
夏「ん?おぉ悪い悪い。で、何の話だっけ?」
愛「今日の若葉先輩は元気って話です」
若「だから愛生人k…は気にし過ぎだって。いつもこんな感じでしょ?」
愛「そう…ですか」
夏「いやいや。若じゃないからね?」
若?「ギクッ」
愛「……夏希先輩との最初のやり取りはなんですか?」
若?「え~っと。『よく来たな魔王よ!』」
愛「どんな状況ですか!で、正解はなんですか?」
夏「確か『なっ、お前は!?』だぜ」
愛「正解も正解で状況が分からない…」
夏「と、ゆう訳だほのっち」
穂「あちゃーバレてたか~」
夏「だって目の色が違うじゃん?」
愛「普通気付きませんて」
穂「まえがきで言われてたヒロインって?」
夏「物語のヒロイン、つまりは若の彼女だろ?」
愛「そういえば夏希さんの彼女って誰なんですか?」
穂「え!夏希君彼女さんいるの!?」
夏「いるけど教えねぇよ!?」
愛「おっとそろそろお時間ですね」
穂「じゃあ久し振りの次回予告やろう!」
夏愛「「お、おー」」
穂「次回アニライブ!『もし、そうですよって言ったら?』」
夏「口調的に若かな?」
愛「次回、もしかしたらヒロイン公表!」
穂「じゃあね!」

誤字脱字、感想、批判、アドバイス等をどしどしお待ちしております




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もしそう言ったら?by若葉

今回はオリジナルストーリーです。主な時期としては1年前、つまり若葉がまだ高蓑原の生徒で、真姫が音ノ木坂に入学する前の話です。

唯でさえ本編が迷走しているのに、この暴挙。申し訳ありません。が、しかし、この話はいつかやろうと思ってたお話です。当初の予定では合宿の時だったんですけど……

ま、取り敢えずお楽しみください


今日は何か良い事がありそうな気がする。

それが朝、目覚めた時に真姫が真っ先に思った事だった。それ程までに清々しい朝だった。

 

「真姫〜。朝ごはん出来てるわよ~」

「今行くわママー」

 

真姫はベッドの横に揃えて置いてあるスリッパに足を通しながら、階下にいる母・詩音に言い返す。

 

「フンフンフ~ン♪」

 

真姫が思い付いたメロディーを口遊みながら一階のリビングに入る。

 

「おはよう」

「はい、おはよう」

 

真姫が挨拶すると詩音が笑いながら返す。そんないつも通りの日常が繰り広げられる。

 

「行って来まーす」

 

朝食を食べ終えて制服に着替え、玄関からリビングに向かって言う。

 

「最近物騒だから気を付けてね」

「は~い」

 

真姫は玄関の扉を開け、最寄りの駅に向かう。真姫の通っている私立中学は最寄りの駅から数駅離れた所にあり、いつも電車で通っていた。

電車での移動中特にやる事も無く、車内で揺られる広告を眺めていた。そして降車駅に着き、電車を降りた時真姫の携帯がポケットの中で鳴る。

 

「わわっと。はい真姫です」

『真姫?今日お弁当忘れたでしょ?』

「お弁当ならちゃんと鞄に…入れてないわよ」

 

電話の相手は詩音だった。詩音の言葉で鞄の中を確認すると、確かに弁当が入ってなかった。詩音は真姫の言葉に笑いながら聞く。

 

『どうする?届けに行った方が良いかしら?』

「だ、大丈夫よママ。今日は購買でお昼を済ませるから。それよりそろそろ医院の方に行かなきゃ間に合わないんじゃないの?」

 

真姫が時計をチラリと見ながら言うと電話口の向こうでドタバタと騒がしい音がした。

 

「それじゃあ気を付けてねママ」

『真姫もしっかり勉強するのよ~』

「うん」

 

電話を切った真姫は駅の改札を通り、駅から学校まで直通で行くスクールバスに乗り込む。どうやら時間ギリギリだった様で、真姫が乗車してスグに扉が閉まった。

 

「真姫ちゃ~ん」

「あ、楓」

 

真姫がどこに座ろうか迷っていると、後ろの席からクラスメイトで友達の立華楓が真姫に向かって手を振っていた。

 

「おはよっ真姫ちゃん」

「おはよう楓。それと席取っておいてくれてありがとね」

 

それから真姫は楓と学校に着くまで話して盛り上がった。真姫が弁当を忘れた事を話すと楓は大笑いしていた。

 

キーンコーンカーンコーン

 

「やっとお昼休みだ~」

「じゃあ購買に行って来るわね」

 

授業終了の鐘が鳴り、真姫は教師達に叱られないギリギリの速さで歩き購買に急ぐ。無事にお昼ご飯を調達した真姫は鼻歌交じりに教室に戻る。

 

☆☆☆

 

「ちょ、ちょっと待って真姫ちゃん」

 

そこまで話して愛生人から待ったが入る。真姫は話が中断され、少し不機嫌そうに愛生人を見る。

 

「え~と、これって真姫ちゃんと若葉先輩の出会いの話だよね?」

「そうね」

 

愛生人の問いに頷いて返す真姫。

 

「少し長いにゃ~」

「り、凛ちゃん!?」

 

真姫の前の席の子に椅子を借りて座っていた凛が不満声をあげる。

今4人の席順は真姫の正面に凛、斜め前に花陽、隣の席に愛生人といった感じだ。

 

「じゃあ少し飛ばすわね」

「わくわく」

 

花陽の反応に苦笑いしながら真姫が話を再開する。

 

☆☆☆

 

午後の授業が終わり、吹奏楽部の練習を終えた真姫は1人でスクールバスに座っていた。

楓は陸上部なので帰りは基本バラバラなのだ。

 

「今日の晩御飯なんだろう」

 

窓の外の夕焼け空を見ながらボーっとしているとバスは駅に到着する。

真姫は全員が降りるのを待ってからゆっくりと歩き、車掌に一礼してからバスを降りる。

 

「お腹空いたなー」

 

またも真姫は独り言を呟きながら改札を通り、電車の出発時間を確認するために電光掲示板を見る。

 

「ゔぇ、電車遅れているの!?そんな~」

 

電光掲示板を見る限り、何か事件があって電車の時間が少し遅れている。とゆう事が辛うじて分かった。事件に関しては漢字が読めなかった為、分からなかった。

 

「そうだ。ママに連絡しておこ」

 

真姫は詩音にメールで電車が遅れてる旨を伝え、携帯をしまう。そしてホームに降りて備え付けのベンチに座り、電車が来るのを待つ。

 

「電車早く来ないかな~」

 

足をブラブラしながら電車を待つ。空は暗くなり始めていた。

真姫が本を読もうと鞄から取り出すと、電車が来る事がアナウンスされる。

 

「んもう。せっかく読もうと思って思ったのに」

 

ブツブツ文句を言いながら本を鞄にしまい、ベンチから立ち上がり、乗車の列に並ぶ。暫くして電車が駅に着き、客が出入りする。真姫も電車に乗り込み、席に座らず立つ。電車が動き出して駅から遠ざかる。真姫は鞄から本を取り出すか迷い、車内の広告を読む事にした。行きと同じ数の駅を過ぎて真姫の降りる駅に着く。その頃には空は真っ暗になっていた。

 

「こんなに暗いの久し振りじゃないかしら」

 

改札から外を見ながら呟き、家路に着く。

 

「そこのお嬢ちゃんちょっと良いかな?」

 

駅から少し歩いた所で真姫は青年に呼び止められる。道でも聞かれるのかな?と思った真姫は立ち止まり、青年の方を向く。

 

「なんですか?」

「いや~最近越して来たばかりでちょっと道に迷っちゃって。ここに行きたいんだけど、分かるかな?」

 

真姫の予想通り青年は道に迷っていた様で紙を真姫に見せる。真姫は紙を覗き込むも電灯から少し離れている場所だった為か、文字が少し見えにくい。なので真姫は自身の携帯で紙を照らす。

 

「あぁこの住所だったら私の家ですよ」

 

紙に書いてあった住所は真姫の家の住所だった。

 

「へぇ。実は君のお父さんにお世話になってね。ぜひお礼をしたくて」

 

真姫の両親は医者をしているので最近診て貰った患者なのだろう、と当たりを付けて真姫は青年と家まで歩く。そこから少し歩いて西木野家が見えた時、事は起こった。

 

「お兄さん、あそこがそうよ」

 

真姫が自分の家を指しながら青年の方を振り向くと

 

「お兄…さん…?」

 

青年は俯いたまま動かないでいた。不思議に思った真姫が近付いて下から顔を覗き込むと、青年は不気味な笑顔を浮かべていた。

 

「ひっ!」

 

裏返った声を出して後退り、その場から逃げようとした真姫の腕を青年が掴んだ。

 

「いた…い」

 

どうにか青年の手を振り解こうと抵抗するも、真姫は中学生、相手は大人で男性だ。力では到底敵わない。更に真姫が抵抗すればするほど青年の力が強くなり、青年の手に握られた注射器が真姫の腕に刺される。

真姫はその時初めて焦燥感に駆られた。

 

「お嬢ちゃんは残念だけど、もうお家に帰れないよ。あぁこの中に入っているのは手術とかでよく使われる類の麻酔だから安心して」

 

青年のその声はどこまでも冷たく、感情が無いように思えた。

真姫は叫んで近隣の人達に助けを求めようとするも、息を吸い込んだ所で口を青年のもう片方の手が塞ぐ。

2人の周りに電灯は無く、家の明かりも入り難い暗い場所なので、遠目で見たら人がいるのかどうかが分からない。その為偶然人が通り、気付く可能性は低い。

 

「大丈夫。大人しくしてたらスグに楽になるから」

 

耳元で聞こえる青年の声も今だと恐怖でしか無かった。青年は真姫をどんどん人気の無い方へ運んでいく。真姫は恐怖で体を震わせるが、体が思うように動かない。

 

「取り敢えず身代金でも要求するかな」

 

真姫を肩に担ぎながら青年が呟くように言う。

そんな時、真姫の耳に聞こえるはずのない第三者の声が聞こえた。

 

「気のせいですかね?今身代金って単語が聞こえたんですが」

「ッ…!?」

 

青年も驚いたのか言葉に詰まり声の主に返せない。しかしスグに気を取り直して青年は笑顔で答える。

 

「き、気のせいだよ」

「そうですか。あの一つ良いですか?」

「なんだい?」

 

真姫からは青年と話している相手の姿は見えないが、声からして真姫とそう年齢の差を感じない。

 

「肩に担いでいる子、どうしたんですか?」

 

どう見ても誘拐の最中にしか見えない状況で少年(?)は青年に問う。

 

「…君には関係ないだろ?」

 

青年はもういいだろとでも言いたげに少年(?)の横を通り過ぎる。

しかし少年(?)が青年の足を引っかけた事で青年は無様に転んでしまう。その際真姫が宙に舞うも見事に少年(?)が真姫を受け止める。その時ようやく真姫は自分を助けてくれた人物を見ることができた。

服装は黒いジャージに下に緑のシャツを着ており、オレンジの髪を後ろで縛っていた。年齢はやはり真姫とあまり変わらない少年(若葉)だった。

 

「君は僕の邪魔をするのかい?僕の復讐の!」

「貴方の目的が誘拐なら俺は邪魔をしますよ?もしそう言ったら?貴方はどうしますか」

「君には用が無いからね。悪いけど死んでもらうよ」

 

青年はナイフを取り出し、順手で構える。

 

☆☆☆

 

キーンコーンカーンコーン

真姫がそこまで話したタイミングで鐘が鳴り、授業が終わる。

 

「あら、もう時間ね。じゃあこの話はもうおしまい」

「えー!良い所で話を終わらせるのはズルいにゃ-!」

 

話を終わらせた真姫に凛が文句を言うも、真姫はそれに聞く耳持たずで次の授業の準備をする。

 

「じゃ、じゃあまた今度続き聞かせてね!約束だよ」

 

凛も今聞く事が出来ないと知ると続きを聞かせる約束を取り付ける。真姫も凛の言葉に頷く。

 

「約束だよ、か…」

 

凛の台詞の一部を呟きながら窓の外を眺める真姫だった。

 




夏「大分中途半端な終わりだな」
愛「タイミング悪く授業が終わったんですよね」
とゆうのは建前で実は文字数が四千超えそうだったんだよね。
夏「お、今回は名無しもいるのか」
若葉の代わりにね。
愛「勝手に自分で[平均2.000字を目標]って設定するからですよ」
夏「全くだ。他の作者の作品を見てみろ。1話10.000文字以上とかあるぞ」
面目ない…
愛「で、前回話に上がってたヒロイン(彼女)はどうなったんですか?」
夏「あ、それは俺も気になってた」
あーヒロイン(彼女)ね…
愛「なんでそんなに言い難そうなんですか?」
今回の話を見れば分かるでしょ!?
夏「てことは若とマッキー?」
……うん
愛「確かになんかそれっぽいのがあった様な、無かった様な」
あとは夏希の相手をどのタイミングでバラすか、なんだけど
夏「今の所予定は無いのかよ」
愛「あ、夏希先輩にもちゃんと居たんですね」
もしかして愛生人は夏希の妄想だと思ってた?
愛「え、違うんですか?」
夏「アッキー、俺にもちゃんと居るからね?」
まぁ以外な人物だよね。アニメでは1話Aパートに出て
夏「わぁー!それ以上はネタバレになんだろ!?」
愛「1話のAパートって結構限られますよ?」
夏「もうその話はおしまい!」
ぶーぶー
愛「でもヒロイン(彼女)が確定したらタグに追加した方が良いんじゃないですか?」
タグ変更はこの話を投稿するタイミングでしておきます!
夏「そろそろ時間だな」
愛「それじゃあ次回予告お願いします」
はいはい。次回は若葉側のお話になります。
夏「早く本編に戻れよ」
愛「全くです」
……話の続き、知りたくないの?
愛夏「「それは知りたい!!」」
と、言う訳で次回『過去~若葉Side~』お楽しみに


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もしそう言ったら?〜若葉side〜

ラブライブってこんな話だったっけ…

次回からキチンと本編に戻ります!

それと今回は会話文の間の行間を無くしてみました。


~高蓑原~

 

「若葉~久し振りに屋上で昼飯食おうぜ~」

 

午前の授業が終わるなり若葉に絡む翔平。若葉も弁当箱を持つと頷きながら屋上へ向かう。

 

「そういえばさ、去年の今頃だったよな」

「何が?」

「お前が誘拐未遂事件と痴漢を撃退したの」

 

翔平の言葉に確かに去年の今頃だったな~、とぼんやり思い出す。数日入院した為学校では話が結構広まったのだ。

 

「あん時詳しく教えて貰えなかったんだけど、今なら話せる?」

「確かに1年経ってるんだからそろそろ規制は外されるかもね」

 

屋上で弁当を広げながら若葉はのんびりと答える。続く翔平の台詞は長い付き合いなので、ある程度予想できる

 

「「ならあの日の事聞かせろよ」」

 

若葉と翔平の声が重なる。それは若葉の予想が当たっている事を意味していた。2人は顔を見合わせ笑う。

 

「まぁ良いけど。1年前だから大分あやふやだよ?」

「それでも良いからさ。教えてくれよ」

 

両手を合わせて頼む翔平に苦笑いしながら、若葉は1年前の事件を思い出す。音ノ木では真姫が3人に話した内容の若葉側と、語られなかった誘拐未遂の終わりを…

 

☆☆☆

 

「にしても、さっきのは酷かったな。あの子大丈夫かな」

 

若葉は改札を通りながら呟く。さっき、というのは若葉が高蓑原から帰る電車の中で痴漢騒ぎがあったのだ。被害者の子の双子の兄が痴漢に気付き、若葉の方に逃げた所を押さえた。といった事が先程駅で繰り広げられた逮捕劇だったりする。

双子の苗字は笠垣。名前は兄が颯人で、妹が弓子と言うらしい。

若葉が痴漢を駅員に渡そうとすると兄の颯人がそれを止めた。理由を聞くと警察の方に知り合いがいるらしく、今駅に向かっているそうだ。それからその警察の人が来るまで、若葉は颯人と弓子と話していた。

話していくうちにお互いが同学年で、さらに双子の兄妹と共通点があり、話はかなり盛り上がった。最後にお互いに連絡先を交換して別れた。のだが、若葉の怒りは少々残っていた。

そのイライラをゲームセンターで発散させようか迷っていると、ポケットに入ってる携帯が鳴った。

 

「もしもし?」

『あ、若葉君?奈津橋だけど』

 

奈津橋、本名奈津橋薫。若葉の数ある内のバイト先の店長である。

 

「どうも。今日はどうしたんですか?」

『いや~それが今日バイトの子がイキナリ風邪で寝込んじゃって。この時間は他の人が居なくて、頼める相手が居ないのよ』

 

若葉は奈津橋の言葉を聞き頭の中でその日の予定を確認する。丁度試験の採点の為、その日は午前授業だったので午後の予定は特に入っていなかった。

 

「大丈夫ですよ。何時くらいにそっちに行けば良いですか?」

『そうね…今が13時だから…14時までに来てくれれば大丈夫』

「分かりました。では14時までに向かいます」

『いつもありがとうね』

 

奈津橋はお礼の言葉を言って電話を切る。若葉は携帯をしまうと家に帰り、制服から着替えバイト先に向かう。

 

「若葉。お昼くらい食べてから行きなさい」

「あ、忘れてた」

「まったく……」

 

裕美香に止められ、若葉は昼ご飯を食べる為にリビングに行く。

 

「今日もバイト?」

「うん。奈津橋さんの所」

 

裕美香の言葉から分かる通り、若葉は夏前辺りから近所の店でその日限りのバイトをし始めたのだ。理由は誰にも話してないらしく、裕美香がそれとなく翔平に聞いても翔平も知らなかった。

この頃はまだそれ程バイトを受け持っていなかった為、裕美香はまた奈津橋さんの所か、と溜息を吐く。

 

「それじゃあ行って来まーす」

「最近物騒なんだから気を付けなさいね」

「大丈夫。これでもりっちゃんに鍛えられてるんだから」

「だと良いけど」

 

裕美香の言葉を後ろに若葉はバイト先へと向かう。

 

☆☆☆

 

「あ"ー奈津橋さん相変わらず人使い荒すぎ…」

 

バイトの帰り道、若葉はグッタリしながら暗い夜道を歩いていた。格好は緑のシャツに動きやすいジャージで、男子にしては長い髪を後ろで軽く縛っている。

 

「明日って確か、りっちゃんの所で手伝いだったっけ。そこでストレス発散しようかな」

 

なにやら物騒な事を呟く。そんな時遠くの方から少女の声が聞こえた気がした。

 

「ん?気のせい……じゃないよね」

 

若葉は気になり声の聞こえた方に向かった。少し道の入り組んだ場所で少女が青年に担がれていた。若葉は状況が分からない為、少し様子を見る事にした。

 

「取り敢えず身代金でも要求するかな」

 

青年のその言葉に若葉は確信する。確信すると同時に足を踏み出す。

 

「気のせいですかね?今身代金って単語が聞こえたんですが」

 

青年に近寄りながら若葉は青年に聞く。若葉の登場に驚いた青年は息を飲むも、笑顔を浮かべながら

 

「き、気のせいだよ」

 

と誤魔化す。若葉もすんなりと白状して貰えると思ってなかった様で1番重要な事を聞きにかかる。

 

「そうですか。あの一つ良いですか?」

「なんだい?」

 

若葉は青年の肩を指差すと青年に問いただす。

 

「肩に担いでいる子、どうしたんですか?」

「…君には関係ないだろ?」

 

青年はそう言うと少女を担いだまま若葉の横を通り過ぎる。若葉はそんな青年の足に自分の足を引っ掛ける。すると青年は見事にひっくり返る。その事に若葉は少し驚きながらも、青年が手を離した事により空中を舞っている少女を抱き止める。

 

「君は僕の邪魔をするのかい?僕の復讐の!」

 

青年が立ち上がりながら声を張り上げる。

 

「貴方の目的が誘拐なら俺は邪魔をしますよ?もしそう言ったら貴方はどうしますか」

「君には用が無いからね。悪いけど死んでもらうよ」

 

若葉の言葉に青年はナイフを取り出し、順手で構える。

 

「それって銃刀法に違反してない?」

 

若葉は冷や汗を搔きながら言う。そして道路の端の塀にもたれ掛ける様に少女を降ろす。

 

「動ける様になったらスグにここから逃げるんだよ?そして誰か人を呼んできて。約束だよ」

 

若葉は少女にそう言い聞かせると、ジャージを脱ぎながら青年の前に立つ。若葉は少女が恐怖で動けないと思っての発言だったのだが、局部麻酔を打たれた事を知らないから当然ではある。

 

「お別れはもう良いのかい?」

「お別れにするつもりはないから大丈夫ですよ」

「そうかい。じゃあ……死ね!」

 

青年が若葉に向かって駆ける。若葉は脱いだジャージを青年に向かって投げる。目的は相手の目眩まし。

目的は成功した様で、青年の動きが一瞬止まる。その隙を突いて相手の鳩尾に掌底(しょうてい)を当てる。

 

「ぐっ……!」

 

青年は数歩下がり鳩尾を押さえる。若葉は掌底を当てた体勢から動かない。

 

「だからナイフ相手は嫌なんだよね」

 

若葉はボソリと呟き右の(てのひら)を見る。そこには僅かながらも刃物で切られた傷があった。どうやら青年が掌底に合わせてナイフで切った様だ。

 

「お兄さんを甘く見ちゃダメなんだぜ?」

「どうやらそうみたいだね」

 

汗を拭いながら笑う青年の言葉に、若葉は何やら覚悟した表情で右手を握りながら答える。

 

「全く早く帰りたいのに。だから」

「こっちもあまり余裕が無いんでね。だから」

「「これで決める!」」

 

お互いがお互いにそう宣言すると同時に駆け出す。青年はナイフを手に、若葉は己の拳を握り、相手に肉薄する。

そして

 

☆☆☆

 

「脇腹を刺されながらも相手を投げた。と」

「そうだよ」

 

ほら、と若葉は右掌と脇腹を見せる。確かにそこには刀傷があった。傷と言っても右掌の方はそこが傷だと言われなければ気付かないレベルだ。

翔平は苦笑いして傷から目を逸らす。

 

「で、その時助けた子の名前とかは未だに思い出せないのか?」

「そうなんだよね〜。抱き止めた時は周りもそれなりに暗かったし、誘拐犯を投げた後確認する間も無く意識失ったし」

 

若葉は屋上に寝転がり、溜息を吐く。

 

「でもお見舞いとかに来てくれたんじゃねぇの?」

「来てくれたらしいんだよね」

「らしいって、お前は会ってないのかよ」

 

若葉の言葉に呆れた顔で聞く翔平。

 

「だってその時まだ気を失ってたんだからしょうがないじゃん?」

「お前が目覚めた後とかに来なかったのか?」

「来なかったよ」

「なんつーか薄情な奴だな」

 

若葉の隣に寝転がりながら翔平がぼやく。そんな翔平がおかしいのか若葉は笑う。

 

「別にお礼が欲しくてした訳じゃないしね〜」

 

ノンビリとしながら若葉は空を見ながら呟く。

翔平もなんだそりゃ、と言いながらボンヤリと空を見る。

 

「そういや犯行の動機は何だったんだ?」

「良くあるタイプだよ」

「良くある?」

 

若葉の言葉に首を捻る翔平。若葉は肩を竦めて続けた。

 

「犯人の子供が病院から帰る時に事故ってね」

「それって…」

「そうだよ。逆恨みにもなりゃしない、ただの八つ当たりみたいなものだよ」

 

若葉はそう言うと、屋上に寝転がり、深く息を吐いた。




若「メリークリスマース」
夏「作者はボッチだけどな」
愛「まぁこの日のこの時間に投稿した時点で、読者の皆さんも気付いてると思いますよ」
夏「今回は前回の話の若葉sideだな」
愛「最初の方に出てきた笠垣兄妹って誰なんですか?」
若「作者のもう一つの作品の主人公だよ」
夏「さり気ない宣伝乙」
愛「そんな事より、若葉先輩って柔道とかもやってるんですね」
若「空手をやってる知り合いが居てね。その人の練習に週一、二で付き合ってるよ」
夏「それでも刃物相手にすんのは危な過ぎだろ」
若「うん。りっちゃんにその事言ったら殴られたよ」
愛「ですよねー」
夏「つか、そのりっちゃんって誰?」
若「あー……その内出てくるよ!きっと」
夏「きっとかよ…」
愛「おっとそろそろお時間ですね」
若「次回のアニライブ!をお楽しみに!」
夏「誤字脱字、感想、批判、アドバイス等を待ってるぜ!」


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それは…by海未

え〜と現在時刻はっと、1月1日の32時ちょっと過ぎ。うん、まだ大丈夫みたい。

と言うわけで明けましておめでとうございます!
今年もアニライブ!共々よろしくお願いします。


放課後、屋上ではアイドル研究部『μ's』がオープンキャンパスに向けて練習をしていた。

 

「ワン、ツー、スリー、フォー」

 

普段、手を叩いてリズムを取るのは若葉の役なのだが、若葉が高蓑原に戻った為代わりに愛生人がリズムを取っていた。

 

「よし。おおー皆完璧ー!」

 

最後のポーズを取ってから穂乃果がガッツポーズをしながら言う。その言葉を受けてメンバーも喜びの表情を浮かべる。そして一度小休憩をする。話は自然にオープンキャンパスについての話し合いになる。

 

「でも本当にライブ出来るの?生徒会長に止められるんじゃない?」

「それは大丈夫。部活紹介の時間は必ずある筈だから、そこで歌を披露すれば」

 

真姫の疑問にことりが答えていると、今まで黙っていた夏希が、まだだ、と呟く。全員が不思議に思い夏希を見ると夏希は視線を感じたのか、全員を見渡しハッキリと言う。

 

「まだタイミングがズレている。アッキーからは何か無いか?」

 

夏希は正面から見ていた愛生人に話を振る。話を振られた愛生人は少し考える素振りをした後、メンバー1人1人に指摘していく。

 

「よし、今言われた所に注意してもう1回やろう」

 

穂乃果が立ち上がりながら言うと、他のメンバーもやる気に満ちた表情で立ち上がる。

 

「ワン、ツー、スリー、フォー」

 

穂乃果達が踊り出したのを眺めながら、少し前の海未とのやりとりを思い出す夏希。

 

☆☆☆

 

「夏希に頼みたい事があります」

「何?藪から棒に」

 

帰りのHR後夏希のもとに、さあ練習だー!と穂乃果がことりを連れて部室に行ったのを確認した海未がやって来た。

 

「夏希が生徒会長さんの幼馴染みというのは本当なんですか?」

「……誰から聞いた」

 

海未の一言で今まで無関心な表情から一変、真面目な表情に変わる夏希。

 

「それは…」

「あーまあ良いや。どうせ若葉辺りからだろ。その事知ってるの多分若葉と絵里くらいだし」

「……」

 

海未の沈黙を是と受け取った夏希は、海未に話を続ける様に促す。

 

「それで俺に頼みたい事って絵里関係の事、だよな」

「まあ半分はそうなります。夏希は昔の生徒会長さんの踊りを見た事がありますか?」

 

若葉の席に座りながら海未が聞く。夏希は昔絵里の家によく行っていたのでもちろん見た事がある。そう伝えると

 

「なら、μ'sをそのレベルまで引き上げる事は」

「ハッキリ言うと今のままだと難しい」

「そんな…」

 

海未の言葉をバッサリと切ると、夏希は背凭(せもた)れに倚り懸かり続ける。

 

「引き上げる事は無理でも近付ける事は出来るかもしれない」

「なら…!」

「けど」

 

夏希は再び海未の言葉を遮る。そんな態度に海未は眉間に皺を寄せる。

 

「近付ける代わりに練習は厳しくなるぞ?」

「それは…分かってはいます。しかしあの様な人を魅了させる程の踊りをするにはそれくらいしないと」

 

海未は俯きながらそう口にする。夏希はそれを見て溜息を吐くと

 

「分かったよ。その代わり今まで以上に厳しくなるからな」

 

と海未の頼みを聞き入れたのだった。

 

☆☆☆

 

「よく考えると2人で勝手に決めてたんだよな〜」

 

ダンスも終盤に入り、最後のポーズを決める。

 

「うん完璧〜!」

「そうね」

「やっとにこのレベルに皆追い付いたわね〜」

 

穂乃果達は今のダンスに納得のいった感想を言い合う。ただ海未だけは夏希の方を見ていた。

 

「夏希先輩今のは中々良いんじゃ」

「まだダメだ」

『ええ!』

 

愛生人が夏希に近付きながら確認を取るも、夏希はまだダメだと言う。そんな夏希の言葉に海未以外の9人が驚きの声を上げる。

 

「うぅ〜もうこれ以上上手くなりようがないにゃ〜」

「何が気に入らないのよ。ハッキリ言って!」

 

凛がその場に座り込み、真姫は夏希に詰め寄る。夏希はそんな2人を無視して愛生人に聞く。

 

「アッキー。さっきのを見てどう思った?」

「え…と中々踊れてたと思いますけど…?」

 

愛生人は首を傾げながら答える。夏希はその答えに頷いて真姫を、その後ろにいるメンバーを見て言う。

 

「さっきのだと感動出来ないんだ。アッキーも言ってたでしょ『中々踊れてた』って。それじゃあ人を惹きつけられない……だから」

『だから?』

「生徒会長に、絵里に教わりに行こう」

 

夏希の言葉の後に少しの沈黙が訪れ、次の瞬間穂乃果達は一斉に大声を上げる。

 

「何だよ煩いな」

「煩い以前の問題よ!」

「そうにゃそうにゃ」

「そ、そもそも何で生徒会長さんなんですか?」

 

夏希が文句を言うと倍以上になって文句が帰って来る。

 

「何でってかよちん。絵里は昔バレエをやってたからな。多分踊りならこの中の誰よりも上手いぞ」

 

夏希は携帯を操作しながらハッキリと宣言する。

 

「でも生徒会長さん、私達の事…」

「嫌ってるよねー絶対」

「つーか嫉妬してるのよ。嫉妬」

 

夏希に向かって言う花陽、凛、にこの3人に夏希はとある動画を見せる。

 

「これって」

 

3人の後ろから穂乃果が覗き込む様にして動画を見る。

 

「ああ。絵里の昔の踊りの映像だ」

 

そこには白いクラシックチュチュを着た幼い頃の絵里の踊りが流れていた。それから映像が終わるまでの数分、誰も何も言葉を発しなかった。

 

「昔これだけ踊れた絵里が今のμ'sを見て、素人同然だって言う気持ちなんとなく分かるんじゃない?」

 

夏希が全員を見ながら言うも

 

「私は反対。潰されかねないわよ」

「うん」

「そうね。3年生はにこがいれば充分だし」

「生徒会長…ちょっと怖い」

「凛も楽しいのがいいな〜」

「そう、だよな」

 

やはり中々賛成を得られない様だ。メンバーのそんな声を聞いて夏希も少し暗い顔をする。しかし

 

「私は良いと思うけどな〜」

 

穂乃果の一言で夏希は顔を上げ、反対していたメンバーはまたもや驚きの声を上げた。にこが穂乃果に問い詰めると

 

「だってダンスが上手い人が近くにいて、もっと上手くなりたいから教わりたいって話でしょ?」

「まあ、そうだけど」

 

穂乃果の言葉に夏希は少し遠慮気味に答える。そんな夏希を見て穂乃果は続ける。

 

「だったら私は賛成っ!頼むだけ頼んでみようよ。こっちには夏希君もいるんだし、上手くいく可能性はあるよ」

 

穂乃果の言葉ににこがストップを掛けるも、ことりも絵里のダンスを見てみたい、と賛成する。ことりの言葉を受けて花陽も見てみたい、と言う。

 

「よーしじゃあ今から頼みに行ってみよう!」

 

穂乃果が屋上から生徒会室に向かおうとすると、夏希が止める。

 

「どうしたの?夏希君」

「あー絵里なんだけど」

「うん」

 

夏希は凄く言い辛そうに苦笑いする。

 

「もう帰ったみたい」

「……え?」

 

夏希が携帯の画面を穂乃果に見せる




夏「なあアッキー」
愛「はいなんでしょう。夏希先輩」
夏「1月1日の32時ちょい過ぎって無理があると思わないか?」
愛「まあ名無しですし」
なんか呼んだ?
夏「いやークリスマスからはや約1週間。お前はその間何してた?」
えーと読書に昼夜逆転生活、それと
愛「それと?」
ゲームだよ?
夏「よし、後で覚えとけよ」
え、ヤダよ。だって乱暴する気なんでしょ?エr
愛「はいそこまでです」
夏「名無しが危ない事を言い掛けたので今回はここまで」
若「adiós amigo!」


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全く呆れたby絵里

遅くなってすいません!中々書き上げられなくて…

ま、それは置いといて。今日は成人の日!新成人の方々おめでとうございます。


翌日、穂乃果と海未、夏希の3人が生徒会室を訪れる。部屋の外には他のメンバーが聞き耳を立てていた。

 

「や、絵里」

「夏希…何しに来たの」

 

片手をあげて挨拶した夏希を絵里はチラリと見ると睨む様に聞く。

 

「あの!実は生徒会長に折り入ってお話が!」

 

夏希の代わりに穂乃果が話を切り出す。そしてオープンキャンパスに行うライブのダンスコーチの話をする。

 

「私にダンスを?」

「はい。教えて頂きたいんです。上手くなりたいんです」

 

穂乃果の言葉に、絵里は海未と夏希を見る。絵里に見られた2人は目を逸らさずに絵里と目を合わせる。そんな3人の言動に絵里は一度目を瞑り、一瞬考えた後にコーチを引き受けた。

 

「その代り、やるからには私が許せる水準まで頑張って貰うわよ。いい?」

 

絵里の言葉に穂乃果は再度お礼を言い、絵里を連れて屋上へ向かう。生徒会室に残ったのは希と夏希の2人だけ。

 

「星が動き出したみたいや」

「星?」

「そうや」

 

2人きりになった生徒会室で夏希は希の言った台詞を聞き返すも、希は微笑んで答えるだけだった。

 

「ま、俺には星とか分からないけど、希先輩も練習見に来ますか?」

 

夏希の誘いに希は首を横に振る。流石に生徒会副会長まで留守にするのは拙いらしい。

 

「そうですか。ではまた」

 

夏希はそれだけ言って屋上へ走って向かったのだった。

 

☆☆☆

 

屋上に着いた穂乃果達は絵里にオープンキャンパスのライブで行う踊りを披露した。しかし踊りの途中で凛が足を縺れさせ、転んでしまう。

 

「全然だめじゃない。よくこれでここまで来られたわね」

「昨日はバッチリだったのに~」

 

絵里の一括に凛が泣きそうになりながらも抗議する。絵里は凛の後ろにしゃがむと

 

「基礎が出来てないからムラが出るのよ。ちょっと足を開いて」

「こう?」

 

凛に足を開かせると一気に背中を押した

 

「うぎっ」

 

背中を押された凛は、とても女子が出すべきでは無い声を出してしまう。

 

「痛いにゃー!」

 

目に涙を浮かべて言う凛に、絵里は最低でも床にお腹が付くようにならないと、と言う。そして凛の背中から手を放し、穂乃果達に告げる。

 

「柔軟性を上げる事は全てに繋がるわ。先ずは全員これが出来る様にして。このままだと本番は一か八かの勝負になるわよ」

 

それから全員が足を開いた状態で体を前に倒すも、絵里の言った条件に達したのはことりだけだった。

そしてその日は絵里監修の元、片足バランスを10分、腕立て、腹筋、背筋を10回と練習が続いていく。片足バランスの途中、花陽がバランスを崩して倒れかけたが、それは夏希が支える事で事無きを得た。他にも危ない場面があったが、夏希と愛生人が補助する事で大事には至らなかった。

 

「もういいわ。今日はここまで。自分達の実力が少しは分かったでしょ」

 

絵里の言葉ににこと真姫が反発するも、絵里はそれを無視して穂乃果を見る。

 

「今度のオープンキャンパスには学校の存続が係っているの。もし出来ないって言うなら早めに言って。時間が勿体無いから」

 

絵里はそれだけ言って屋上を後にしようとする。しかしそんな絵里を穂乃果が呼び止める。絵里が不思議そうに振り向くと、そこには穂乃果を中心に7人が横一列に並んでいた。

 

「ありがとうございました!」

 

穂乃果の言葉に驚いている絵里に穂乃果は続けて言う。

 

「明日もよろしくお願いします!」

『お願いします!』

 

穂乃果に倣う様に横にいる六人も声を揃えて言う。絵里はまさかそんな事を言われるとは思ってもみなかったのか、何も言わずに屋上を後にした。

 

その後、家に帰って来た若葉は穂乃果からその日1日にあった事を聞かされた。若葉は晩御飯の準備を手伝いながらその話を聞いていた。

 

「それで気になったんだけど、なんで夏希君は生徒会長さんの事を『絵里』って呼び捨てにしてるのかな?先輩、だよね」

「だって夏希って幼馴染でしょ?だったら別に良いんじゃない?」

「幼馴染?生徒会長さんと夏希君が?」

「そうだよ」

「……」

 

若葉は急に黙った穂乃果を不思議に思い、そちらを見ると同時に、しまった、と顔を顰める。穂乃果は若葉に詰め寄る。

 

「お兄ちゃん。その話、本当?」

「あ、ああ」

 

夏希がまだ話して無い事を悟ったが、いずれバレる事でしょ。と考えを割り切る。

 

「ま、その話は置いといて、ご飯の準備手伝って」

「う、うん」

 

若葉は穂乃果に手伝いをさせる事で話を切る。その後穂乃果に何度も詰め寄られるも、若葉は何とか回避し続けた。

 

☆☆☆

 

次の日の放課後、穂乃果が練習着に着替えて屋上に行くと、まだ全員揃っておらず、夏希と海未、ことりの3人しかいなかった。

 

「よし、頑張ろう!」

 

挨拶もそこそこに3人は軽く体を解し始める。そのタイミングで絵里が凛に背中を押されて屋上に入って来る。

 

「おはようございます!」

「まずは柔軟ですよね」

 

穂乃果の挨拶の後にことりが畳み掛けるように確認を取る。そんな2人と2人の隣に立っている海未、更に後ろにいるにこと1年生3人を見て絵里は聞く。

 

「辛くないの?」

『え?』

「昨日あんなにやって、今日また同じ事をするのよ?第一、上手くなるかどうかも分からないのに」

 

絵里の台詞にその場にいたメンバーは顔を見合わせると、代表して穂乃果が答える。

 

「やりたいからです」

 

穂乃果の答えに絵里は驚き、言葉に詰まる。そんな絵里に穂乃果は続ける。

 

「確かに練習はキツイです。身体中痛いです。でも、廃校を阻止したい気持ちは生徒会長にも負けません!だから今日もよろしくお願いします!」

『お願いします!』

 

穂乃果に続く様に挨拶をするメンバー。その後ろで静かに頭を下げる夏希と愛生人。その光景に絵里は何も言わずに屋上を後にする。背後から穂乃果の呼び止める声が聞こえるも、それも無視して階段を降りていく。

 

☆☆☆

 

絵里は廊下を歩きながら昨夜妹の亜里沙の言葉が脳裏に浮かぶ。

 

それがお姉ちゃんのやりたい事?

私ね、μ'sのライブを見てると胸がカーって熱くなるの。一生懸命で、めいいっぱい楽しそうで。

 

そしてつい先日、夏希に言われた事も浮かんで来る。

 

そろそろ絵里もやりたい事やったら?

 

言葉の意味を考える様に歩いていると、ふと聞き覚えのある声が聞こえた。音ノ木坂に入ってからほぼ毎日の様に会っている希だ。

 

「ウチな、えりちと友達になって生徒会やってきて、ずっと思ってた事があるんや。えりちは本当は一体なにがしたいんやろうって」

 

希は絵里のもとへ歩み寄りながら自分の想いを絵里に語る。

 

「一緒にいると分かるんよ?今年で3年の付き合いになるウチでも分かるんやから、幼馴染みの夏希君にはとっくに」

 

希は絵里の背後を見て驚いた表情をする。絵里が振り返ると、そこに居たのは軽く息が上がっている夏希だった。夏希の息が上がっている理由は簡単で、絵里が屋上から居なくなってから不満を漏らすメンバーを宥め、慌てて絵里を追い掛けたからだ。

 

「そうだよ絵里。お前が頑張るのはいつも誰かの為ばっかり、だから偶には自分の心に素直になって我儘を言っても良いんだぜ?」

 

夏希は両手を広げ、微笑みながら絵里に言う。そんな2人の言葉に絵里は我慢し切れずに、夏希の横を駆け抜ける。

 

「学校を存続させようってのも、生徒会長としての義務感やろ!だから理事長はえりちの事を認めなかったんと違う?」

 

そんな絵里を止めたのは夏希ではなく、希の言葉だった。

 

「えりち」

「絵里」

「「えりち(お前)の本当にやりたい事は?」」

 

夏希と希、2人の言葉が重なって絵里に問い掛ける。屋上からは穂乃果の元気な声と愛生人のリズムを刻む声が静かな校舎に響き渡る。

 

「何よ……なんとかしなくちゃいけないんだからしょうがないじゃない!」

 

そう叫び、振り返った絵里の頰には涙が伝っていた。そして堰を切った様に絵里も想いを吐き出す。

 

「私だって、好きな事して、それだけで何とかなるんだったらそうしたいわよ!……自分が不器用なのは分かってる。でも、今更アイドルを始めようなんて、私が言えると思う?」

 

それだけ言って絵里はその場から走って離れる。希は止め様と動くもあと僅かで間に合わず、夏希は動かなかった。

 

「えりち……」

「ハァ……仕方ないか」

 

希の呟きを聞いた夏希は、自分の頭をガシガシと掻いて屋上に向かった。

 

「……夏希君。どうするん?」

「迷惑かけたくは無かったんだが、仕方ない。ほのっち達にも協力して貰う」

 

皆が聞いたら否定しそうな言葉を夏希は言う。そして屋上に歩き出す。

 

☆☆☆

 

2人のもとから走って離れた絵里は、自分の席に座って遠くを見ていた。時間も放課後になって暫く経っていたので、教室は無人だった。

何も考えず、ただボーッと遠くを見ていた絵里の視界に誰かの手が映る。不思議に思い手の主を見てみると、そこに居たのは穂乃果だった。穂乃果の後ろを見るとアイドル研究部十人と、希が立っていた。

 

「貴方達…」

「生徒会長、いえ絵里先輩。お願いがあります」

 

穂乃果の言葉に絵里は窓の外に視線を戻し、ハッキリ言う。

 

「練習?ならまず昨日言った課題を全部こなして」

「絵里先輩。μ'sに入って下さい」

「えっ…?」

 

穂乃果の予想外の言葉に、絵里は見開いて穂乃果を見る。

 

「一緒にμ'sで歌って欲しいです!スクールアイドルとして!」

「……何言ってるの。私がそんな事する訳無いでしょ」

「さっき夏希と希先輩から聞きました」

 

絵里の言葉を遮る様に海未が言う。

 

「やりたいなら素直に言いなさいよ」

「にこ先輩には言われたくないけど」

 

にこが言うも真姫に突っ込まれる。

 

「ちょっと待って。別にやりたいなんて…大体私がアイドルとかおかしいでしょ」

「そんなのやってみなくちゃ分かんないだろ?」

 

それまで黙って壁に寄りかかっていた夏希が、絵里を真正面から見て言う。

 

「そうそうやってみればええやん。特に理由もない。やりたいからやる。本当にやりたい事ってそんな感じで始まるんやない?」

「でも!」

 

と希の言葉を受けても尚言葉を続ける絵里を、夏希は「あーもう!」と大声で遮る。

 

「絵里はやりたいのかやりたくないのか、どっちなんだよ!」

「やりたいわよ!……でも」

「だったら!」

 

夏希が再び遮る様に大声を出す。絵里は顔を上げ、夏希を見ると、夏希は微笑みながら絵里に言った。

 

「だったらやれば良いじゃんよ」

 

それから絵里は手を伸ばした穂乃果を見る。穂乃果は黙って頷くと、絵里に笑いかける。絵里はもう一度夏希と希の方を見るも、2人は微笑むだけで何も言わない。絵里は僅かに溜まった涙を拭い、穂乃果の手をゆっくりとだが、確かに握る。

 

「これで8人」

「いや、ウチを入れて9人や」

 

ことりの言葉を否定して言った希に疑問の視線を投げかけると

 

「占いで出てたんや。このグループは九人になった時に未来が開けるって。だから付けたん。9人の歌の女神『μ's』って」

「じゃああの紙は希先輩が?」

 

希の告白にメンバーが驚いたりしている中、穂乃果は希に聞く。希はふふっと笑う。

 

「希…全く呆れた…」

 

絵里はそう呟き立ち上がると、扉に向かって歩き出す。

 

「どこへ」

 

海未が絵里に聞くと、絵里は決まってるでしょ、と言って振り返る。

 

「練習よ」

『やったぁ!』

 

放課後の校舎に八人の声が木霊した。




夏「さて、今話で絵里と希先輩がμ'sに加わった訳だが」
愛「その前に良いですか?」
夏「どうした?アッキー」
愛「所々で僕達が空気になってる気がするんですけど」
夏「ああその事か。じゃあ簡単に説明するぞ?まず希先輩の『九人で完成〜』的な下りはμ'sメンバーが九人って意味で、俺達サポート班はカウントされてない」
愛「じゃあ最後の『八人の声が〜』の下りはどの八人なんですか?」
夏「それは俺と希先輩、絵里を除いたその場にいた八人だ」
愛「ややこしいですね」
夏「でもこれから動かすキャラが12人になるから、もっとややこしくなると思うぞ」
愛「ですよねー。名無しも書き始めて暫くしてから、最終的に12人も動かす事に気付いたらしいですし」
夏「ま、何とかしてくれるだろ」
愛「ですね。では」
『次回もよろしくお願いします!』


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ヨキニハカラエ。ミナノシュウbyことり

最近少し急ぎ足で展開しておりますが、多分最後までこの調子で行くと思います。


オープンキャンパスが無事終わった翌日、校内はオープンキャンパスの話で盛り上がっていた。そんな中、穂乃果は放課後に海未とことり、夏希を捕まえて、アイドル研究部の部室に来ていた。部室に入ると既に花陽、凛、愛生人がおり、談笑していた。

 

「オープンキャンパスのアンケートの結果、廃校の決定はもう少し様子を見てからになったそうです」

 

花陽の言葉に海未、ことり、夏希の3人は笑顔を見せる。穂乃果は既に知っていたのか、終始笑顔だった。

 

「で・も、それだけじゃないんだよ!」

 

穂乃果は部室に設置されていた扉を勢いよく開ける。

 

「じゃじゃーん!なんと、部室の広くなりましたー!」

「「おおー……?」」

「や、遅かったね」

 

扉を開けると壁際に置かれたベンチで、若葉がお茶(ペットボトル)を飲んでいた。

 

「お兄ちゃんここにいたの!?」

 

放課後になってすぐに若葉の姿を見失った穂乃果が、若葉に駆け寄りながら声を張る。

 

「いや、俺もアイドル研究部の部員なんだからここには来るって」

 

若葉は引き攣り笑いを浮かべ、穂乃果を見やる。

 

「でもアンケートの結果が良くて良かったね」

「安心してる場合じゃないわよ」

「や、絵里」

「お久し振り、ですかね。絵里先輩」

 

そうこうしていると生徒会の仕事が終わらせた絵里と希が部室に入って来る。

 

「生徒がたくさん入って来ない限り、廃校の可能性はまだあるんだから、頑張らないと」

「嬉しいです。まともな事を言ってくれる人がやっと入ってくれました」

 

目に涙を浮かべながら海未が言うと、今度は絵里が少し引き攣った笑顔を浮かべた。

 

「うーみんの奴、俺らの事をまとも扱いしてないのな」

「ですね。少し心外です」

 

気付けば若葉の傍に来ていた夏希と愛生人が話す。そんな2人の会話を聞いて笑ってだねー、と呟いていた。

部室の方でも凛が同じ事を呟いていた。

 

「あ、ごめんなさい。私ちょっと…今日はこれで」

 

希が練習を始めようとするとことりが申し訳ない様に謝りながら、部室を出て行く。

 

「どうしたんだろう?ことりちゃん、最近早く帰るよね」

「ん、メール?」

 

ことりが出て行ってから少しして、若葉の携帯が鳴った。発信者は『翔平』とディスプレイに表示されていた。

 

「ふむ。何々?ハァ…悪いけど俺も呼び出し貰ったから先に帰るね~」

 

若葉はメールを見ると立ち上がり、携帯を振りながらことりと同じく部室を出て行く。

 

「呼び出しって誰からだろう?」

「理事長から、とか?」

「もしそうなら携帯じゃなくて校内放送で呼ばれるんじゃないかしら」

 

夏希と穂乃果の疑問に絵里が否定の意見を言う。

 

「と、とにかく練習始めません?」

「せやね」

 

花陽の言葉に賛成する希。着替えを終わらせ屋上に上がり、練習を始めた。

練習の休憩時間にスクールアイドルランキングを見てみると、『μ's』のランキングは50位となっていた。

 

「うわぁ。なにこれ。50位!?すごぉい!」

「夢みたいです」

「20位にだいぶ近付きましたね」

 

上から穂乃果、花陽、愛生人の感想である。3人の言葉に絵里もへぇ、と呟く。

 

「それは凄いわね」

「絵里先輩も加わった事で女性ファンも増えたみたいです」

「確かに絵里はスタイル良いし、しかも大人っぽいもんな」

 

海未の言葉に夏希が続けると絵里は顔を赤らめて逸らす。

 

「でもおっちょこちょいな所もあるんよ?この前なんて玩具のチョコを、本物と勘違いして食べそうになったり」

「希!」

 

思いもよらない希による暴露話が始まり、絵里が慌てて止める。

 

「でもほんとに綺麗!よし、ダイエットだ」

「聞き飽きたにゃー…」

 

そんな2人を見て穂乃果が言うも、凛は眉を寄せて言う。

 

「でもここからが大変よ」

 

真姫が言うと、全員の視線がそちらに向く。

 

「上に行けば行くほどファンもたくさんいる」

「そうだよね。20位かぁ」

「今から短期間で順位を上げようとするには、何か思い切った手が必要ね」

 

絵里の言葉に一斉に考え込む。

 

「その前にしなきゃいけない事があるんじゃない?」

『?』

 

にこの言葉に全員が首を傾げる。

 

☆☆☆

 

一同は場所を移し、秋葉に繰り出していた。

 

「あの~凄く暑いんですが…」

 

穂乃果が遠慮気味に言うも、それは皆が思っていた事。なぜなら

 

「この時期にコートにマフラー、グラサンにマスクって」

「時期外れにも程がありますよね」

 

夏希と愛生人の言う通り、明らかに夏にする格好ではない。

 

「我慢しなさい。これがアイドルに生きる者の道よ。有名人なら有名人らしく、街に紛れる格好ってものがあるの」

「でもこれは…」

「逆に目立ってるかと…」

「ばかばかしい!」

 

にこの演説に絵里と海未が小声で抗議するも、道行く人の声に掻き消される。真姫は我慢できずにマスクとマフラーを取る。

 

「例えプライベートであっても常に人に見られてる事を意識する。トップアイドルを目指すななら当然でしょ」

 

穂乃果がにこ相手に戸惑っていると、奥の方から凛と花陽の声がする。

穂乃花達が2人のもとへ行くと制服姿に戻った2人がA-RISEのコーナーにいた。そこにはA-RISEの3人の写真や、マグカップ、ボールペンにキーホルダーと様々な物が置かれていた。

 

「何ここ?」

 

穂乃果が2人の間から覗き込みながら聞く。

 

「あんた知らないの?最近開店したスクールアイドルの専門ショップよ」

 

穂乃果の質問に未だコートにマフラーを着用しているにこが答える。

 

「へぇ~こんな店があったのね」

「ま、ラブライブが開催されるくらいやしね」

「とは言えまだアキバに数件あるくらいだけどね」

 

店の外で話してる絵里と希の会話を聞いたにこが補足する。

 

「ねぇ見て見て~この缶バッジの子可愛いーまるでかよちんみた~い」

 

穂乃果とにこのもとに凛が缶バッジを見せる。そのバッジを見て2人は驚く。なぜなら

 

「それ、みたいじゃなくて」

「花陽ちゃんだよ」

「えぇー!」

 

2人の言葉にバッジを持っていた本人も驚く。凛にバッジのあった場所に案内して貰うと、そこにはμ'sのグッズが並べられてた。μ'sのコーナーには『人気爆発中』『大量追加、入荷しました』といったテロップが貼られていた。

 

「うううう海未ちゃんこれ私達だよ!」

「おおお落ち着きなさい」

「みみみみ、μ'sって書いてあるよ。石鹸売ってるのかな?」

「ななななんでアイドルショップでせせせ、石鹸を売っているんですか」

 

穂乃果と海未は目の前の状況が信じられずに混乱している。にこは自分のグッズを集め並べ、写真を撮っていた。

そんなにこを余所目に穂乃果は棚に貼られた写真を見つけた。その写真にはメイドの格好をしたことりが映っていた。

 

「こうやって注目されているのが分かると、勇気付けられますね」

「ええ」

「うぅ、嬉しいねぇ」

「かよちん泣いてる~」

 

穂乃果以外は気付いて無いのか、普通に会話をしている。

 

「すみません!」

『ん?』

「あの、ここに写真が、私の生写真があるって聞いて。あれはダメなんです。今すぐ無くして下さい」

 

穂乃果達は聞き覚えのある声が聞こえたので、揃って店の外に顔を出す。

 

「ことりちゃん?」

 

穂乃果の呼び掛けにことりは声にならない声を出す。そして暫しの沈黙。

 

「ことり、何をしているんですか?」

 

海未の呼び掛けにことりは足元に置いてあったガチャガチャの開封済みのカプセルを両目に当て、振り返る。

 

「コトリ?ホワッツ?ドーナタディースカ?」

「うわ、外国人!」

 

凛はことりの片言の誤魔化しに驚くも、穂乃果はことりと見破っており、絵里も少しジト目で見つめていた。

 

「ことりちゃん、だよね?」

「チガイマース!ソレディーハゴキゲンヨウ」

 

穂乃果の言葉を否定し、ヨキニハカラエ。ミナノシュウ。と言いながらその場を離れる。そして少し離れた所でいきなり走り出した。

そのいきなりの行動に、穂乃果と海未は声を上げて驚いたのだが、すぐにことりを追いかけたのだった。

 




夏「さて、今回は46話だった訳だけども。若にアッキー何か感想とかある?」
愛「感想ですか?そうですね。敢えて上げるとしたら、若葉先輩の行動の速さですかね」
若「愛生人、それは褒めてるの?馬鹿にしてるの?」
愛「勿論褒めてるんですよ。部室の隣の部屋だって、穂乃果先輩が開ける前に既に座って寛いでいましたし」
夏「確かに。あれは速かったな」
若「ドッキリってやってみると面白いよ?」
夏「まあそれは置いといて。若は何かあるか?」
若「何かあるかって聞かれても…序盤でいなくなったし?」
夏「だよな~」
若「あ、あったよ」
愛「ほうほう」
若「話にも出てたけど、海未が俺らの事をまとも扱いしなかった事かな」
夏「確かに」
愛「夏希先輩は自分がまともだと思ってたんですか?」
夏「なんだとー!」
若「そうゆう愛生人もゲームとなると人が変わるけどね」
愛「うっ!」
夏「ま、若も方向音痴で過度な妹スキーだけどな」
若「……結論!やっぱり俺らもまともじゃなかった!」
夏「その結論には至りたくなかった!」
愛「では次回予告をして終わりにしましょうか」
若「だね」
夏「え~と今回はことりんが逃げて終わったな」
愛「Run for money?」
若「お金のためじゃないよね」
夏「とにかく次回!『あれ?穂乃果達じゃん』だぜ!」
若「えーなお、タイトルは変更の可能性があります」
愛「それではさようなら~」


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凛もさんせー!by凛

最近携帯で執筆する時より、PCで執筆してる時間が長いです。


穂乃果と海未は逃げたことりを追いかけていた。2人の前を行くことりは右に左にと街角を曲がり2人を上手く撒いた所で希に捕まってしまう。

希と一緒に皆の所に戻ったことりは事情を説明すると、全員をとある場所に連れて行く。

 

「あれ、穂乃果達じゃん」

「や、お久し振り」

「お先に~」

「どうも」

 

ことりに連れて来られた場所は、ことりがバイトをしているメイド喫茶だった。そこには先に帰った筈の若葉と、先程まで一緒だった夏希と愛生人、翔平の4人が話していた。

 

「お兄ちゃん、どうしてここに?」

「呼び出し貰ったって言ったでしょ。それで翔平に付き合わされてここに」

 

穂乃果の問いに隣に座っている翔平を指しながら答える。

 

「それで、全員揃ってどうした?」

「ことりがここでバイトしてるって聞いたのよ」

「てことはことりんがミナリンスキーだってバレたんだ」

 

夏希の言葉に穂乃果達は驚きの声を上げる。

 

「ことり先輩がこの秋葉で伝説のメイド、ミナリンスキーだったんですか!?」

 

花陽の言葉にことりは俯きながらも肯定する。そんなことりに穂乃果は駆け寄ると

 

「酷いよことりちゃん!そういう事なら教えてよ。言ってくれてたらジュースとかご馳走になったのに」

「そっち!?」

「ことり、穂乃果は本当にご馳走にされに来るからね」

 

穂乃果の言葉に花陽は驚き、若葉は実体験からくる注意をことりにする。実際、何度か若葉がバイトしている途中に穂乃果はご馳走に来た事がある。

 

「じゃあこの写真は?」

 

絵里が壁に貼られた写真を見ながら聞く。その写真は先程例のアイドルショップから回収した生写真である。

 

「この前お店でイベントで歌わされて…撮影、禁止だったのに」

「なんだじゃあアイドルって訳じゃないんだね」

 

穂乃果は落ち込んでいることりの隣に座る。海未はことりにバイトを始めた理由を聞くと、μ'sを始めた頃にスカウトされ、衣装が可愛くて始めたらしい。

 

「自分を変えたくて、私穂乃果ちゃんや海未ちゃん、若葉君と違って何もないから」

「何もない?」

「穂乃果ちゃんみたいに皆を引っ張って行く事も出来ないし、海未ちゃんみたいにしっかりしてない。若葉君みたいに色々な事も出来ない」

 

穂乃果の疑問にことりが俯きながら、3人を見ながら答える。

 

「そんな事ないよ。ことりちゃん歌もダンスも上手だよ」

「そうです。衣装だってことりが作ってくれてるじゃないですか」

「しかも衣装代もそんなにかけてないし」

「少なくとも二年の中では一番まともね」

 

名前を呼ばれた3人に続き、真姫もフォローする。4人の言葉にことりは首を横に振る。

 

「私はただ3人について行ってるだけだけ」

 

ことりが呟く様に、だがハッキリと言う。そのやり取りを最後に穂乃果達は店を出る。その際にことりは彩にはバイトの件を黙ってて欲しいと口止めをする。

 

「でも以外だな~。ことりちゃんがそんな事悩んでたなんて」

「意外と皆そうなものかもしれないわね」

 

絵里の言葉に穂乃果は不思議そうな表情をする。

 

「自分の事を優れてるって思ってる人はそうはいないよ。だから皆頑張るんだよ」

 

若葉の言葉に穂乃果はそっか~と返す。海未もそうかもしれない、と言う。

 

「そうやって少しずつ成長して、成長した周りの人を見てまた頑張って。ライバルみたいな関係なのかもね。友達って」

 

絵里の言葉に穂乃果と海未は顔を見合わせて、笑顔を浮かべると、絵里にμ's加入のお礼を改めて言う。そして絵里と別れてから穂乃果は不思議に思ってた事を聞いてみた。

 

「お兄ちゃんと海未ちゃんも私を見て頑張らなくちゃ~って思った事ある?」

「それはもう」

「数えきれないほどに」

 

穂乃果の言葉に若葉と海未が答えると穂乃果が驚く。

 

「2人とも何をやっても私よりも上手じゃない。私のどこでそう思うの?」

 

2人は顔を見合わせると笑みを浮かべると声を揃えて言う。

 

「「悔しいから秘密(です)」」

「ええー!」

「ことりと穂乃果は私の永遠のライバルですから」

「海未ちゃん…そうだね!」

 

穂乃果は笑って答えると丁度分かれ道に着いたので、若葉と穂乃果は海未と別れる。

 

「そういえば、お兄ちゃんはどうして秘密なの?」

 

海未と別れてから少しして、穂乃果が若葉に聞く。若葉はそんな穂乃果から顔を逸らすとボソッと呟く。

 

「…~~~」

「え?なんて?」

「なんでもな~い!」

 

若葉は走って『穂むら』の暖簾を潜る。そんな若葉を見て穂乃果はフフッと微笑むと誰にともなく呟く。

 

「兄としての意地、か」

 

☆☆☆

 

ことりのバイト騒動の日から2日後の放課後。ことりは教室でノートを開いて難しい表情を浮かべていた。そんなことりを穂乃果、海未は教室の扉から見ていた。

 

「チョコレートパフェ、美味しい。生地がパリパリのクレープ、食べたい。はちわれの猫、可愛い。5本指ソックス、気持ちいい…うぅ…思いつかないよぉ…」

 

そこまで言ってことりは机に伏せる。ことりがこうなったのには話が1日戻る。

 

☆☆☆

 

それは絵里の一言から始まった。

 

「秋葉でライブよ」

「それって」

「路上ライブって事ですか?」

 

部室の隣の部屋で絵里が宣言する。その言葉に反応したのは穂乃果とことりだった。

 

「秋葉って言ったらA-RISEのお膝元じゃない」

「それだけに面白い」

 

にこと希の言葉を聞いて夏希は大胆だなぁ、と呟く。

 

「秋葉はアイドルファンの聖地。だからこそ、あそこで認められるパフォーマンスが出来れば、大きなアピールになる」

「いいんじゃない?」

「楽しそう!」

 

絵里の説明に賛成の意を述べた若葉とことりは顔を見合わせ、笑い合う。

 

「しかし、すごい人では…」

「人がいなかったらやる意味ないでしょ」

「オープンキャンパスの時も人が凄いいただろ」

 

未だに人前に出る事に若干の抵抗のある海未の言葉を、にこと夏希がバッサリと切り捨てる。

 

「凛もさんせー!」

「じゃ、じゃあ私も」

 

凛が賛成した事により花陽も賛成する。愛生人は凛の隣で頷いている所からすると愛生人も賛成の様だ。

 

「じゃあ早速日程を」

「と、言いたい所だけど。その前に」

 

穂乃果の言葉を遮った絵里の言葉に何人かが首を傾げる。

 

「今回の作詞はいつもと違って、秋葉の事を良く知っている人に書いて貰うべきだと思うの」

 

絵里はことりを見ながら続け、本人にも出来るか確認を取る。ことりが返事に迷っていると

 

「それ良い!凄く良いよ!」

「やった方が良いです。ことりなら秋葉に相応しい良い歌詞が出来ますよ」

「凛もことり先輩の甘々な歌詞で歌いたいにゃ~」

 

と穂乃果、海未、凛からも賛成される。しかしことりはでも、と渋る様子を見せる。

 

「秋葉の事なら私よりも若葉君の方が詳しいと思うんだ…」

 

ことりに話を振られた若葉は皆の視線が集まる中、肩を竦めると

 

「確かに色んな所でバイトしてるけど、俺がバイトしてる所って結局は近所さん達が多いからね、どちらかと言うと秋葉には疎いんだよ」

 

だからことりの方が詳しいよ。とことりの言葉を否定する。

 

「そ、そう?」

「ちゃーんと良い歌詞作りなさいよ」

「期待してるわよ」

「頑張ってね」

 

にこと真姫、希の応援にことりは少し困った様な顔で頷く。

 

☆☆☆

 

そして時間は今に戻る。

 

「ふ~わふ~わした物可愛いな、はい!あとはマカロンたくさん並べたら~カラフル~で~幸せ~」

 

1人でノートに書いた歌詞を口遊むも、机に突っ伏す。それを見ていた穂乃果と海未は廊下で顔を見合わせる。

 

「中々難しそうですね」

「うん」

 

それから数日間ことりは歌詞作りをしていたが中々進まず、揚句の果てには職員室に呼び出されて注意を受ける始末。

 

「ことりちゃん!」

「穂乃果ちゃん」

 

とある日の放課後。いつも通り歌詞を考えていたことりだったがそっとノートを閉じる。それを見た穂乃果が扉を勢いよく開ける。

 

「こうなったら皆で考えよう!取って置きの方法で」

「え?」

 

そして穂乃果はことりと海未をとある場所に連れて行く。

 

 




若「さぁ今日はいつもの二人ではなく、μ'sのしっかり者、絢瀬絵里先輩に来て貰ってま~す」
絵「しっかり者だなんて」
若「だって海未が、ねぇ?」
絵「あぁ部室でのやり取りね。私としては夏希を始め、高坂くんや片丘君もしっかりしてると思うのだけれど」
若「えーここで忘れてるかもしれない人へのメッセージです。片丘君とは愛生人の事ですよ」
絵「いきなりどうしたの?」
若「いえ、偶に作者ですら忘れそうになっているので…」
絵「それは…御愁傷様ね」
若「さて、それは置いといて。今回のこのあとがきのコーナーって主旨分かります?」
絵「それは馬鹿にしてるのかしら?」
若「いやいや、実は俺達3人でやるとどうしても迷走しちゃうんですよ」
絵「それって大丈夫なの?」
若「ぶっちゃけると拙いです。ので!今回はキチンと行きたいと思うんですよ!」
絵「でももう尺が」
若「何ですとぉー!?」
絵「えーそれでは。これからもこんな私達をよろしくお願いします」
若「サラッと言いますね」
絵「あと南さんは作詞頑張ってね!」
若「はい、それでは誤字脱字、感想、批判、アドバイス等をお待ちしております!」
絵「さようなら〜」


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例のアレをby若葉

この作品を書き始めた頃に作った大まかな流れが書かれたメモを見つけて読んだのですが、今の流れと所々違いました……
もうアレっすよね!なるようになるんじゃないですかね!!(←ヤケ気味)


「で、ここに来たのね」

 

穂乃果がことりと海未を連れて来たのはことりのバイト先だった。そこにはなぜか若葉がいた。

 

「なんでお兄ちゃんがここで働いてるの?」

「この前来た時誘われてね。ヘルプで入ってるんだよ。はいことり」

 

若葉が穂乃果に答えると、料理を皿に盛り付けてことりに渡す。

 

「ほら穂乃果も着替えたんだからしっかり働きな」

「はーい!」

 

若葉はメイド服に着替えた穂乃果にも料理を渡すと、次の料理を作り始める。

 

「おかえりなさいませ。ご主人様」

「おかえりなさいませ!ご主人様!」

「おかえりなさいませ、ご主人様…」

 

客が来たのか、ことり、穂乃果、海未が順番にあいさつする。若葉はその光景を見ながら料理を作っていると

 

「にゃー遊びに来たよ」

「えへへ」

「秋葉で歌う曲なら秋葉で考えるって事ね」

 

凛達が店に訪れる。

 

「ではでは~さっそく取材を…」

「やめて下さい!何故皆が」

 

希がビデオカメラ構えるも、レンズの部分を抑えるとやって来た部員達に来た理由を尋ねる。

 

「それは私が呼んだの」

「それより早く接客して頂戴」

 

にこの催促に穂乃果が向かい、ことりは他の部員達の案内をする。

 

「流石伝説のメイド」

「ミナリンスキー…」

 

ことりの所作に愛生人と凛が感心した様に呟く。ことりは若葉が作ったオムライスに、にこの似顔絵をケチャップで書いていた。

一方穂乃果達はと言うと

 

「海未ちゃん」

「な、何ですか」

「海未ちゃんさっきから洗い物ばっかり。お客さんと会話しなよ」

 

穂乃果は厨房で洗い物をしている海未に詰め寄っていた。

 

「仕事はしています。本来、メイドの仕事とはこういったものがメインの筈です」

 

海未は皿を洗いながら穂乃果に言い返す。穂乃果はそんな海未に不満そうな視線を送る。

 

「海未。皿洗いだったら夏希と愛生人にやって貰っても良いんだよ?」

「「ファッ!?」」

 

若葉にいきなり名前を呼ばれた2人は驚いて、手に持っていたスプーンを落とす。

 

「だったらお手伝いお願いしてもいいかな?」

「んーまぁ放課後部活終わったら暇だし」

「ことり先輩のお願いなら」

 

ことりが頼むと夏希と愛生人が手伝う事を承諾する。それから2人はことりから簡単な説明を受け、店長に挨拶しに行った。

 

「それと海未ちゃん。ここにいる時は笑顔を忘れちゃダメ」

「しかしここは」

「お客さんの前じゃなくてもそういった心構えが大事なの」

 

ことりが海未に笑って注意した後、ことりは海未と穂乃果を連れてホールに向かう。

 

☆☆☆

 

「ことりちゃんやっぱりここにいるとちょっと違うね」

 

バイトの休憩時間に穂乃果がことりに言う。

 

「え?そう?」

「うんまるで別人みたい。いつも以上に活き活きしてるよ」

「なんかね、この服着てると出来るって言うか、この町に来ると、不思議と勇気が貰えるの。もし思い切って自分を変えようとしても、この町ならきっと受け入れてくれる気がする。そんな気持ちにさせてくれるんだ」

 

だから好き。とことりが答えると穂乃果は笑い、あ!と声を上げる。

 

「ことりちゃん今のだよ!今ことりちゃんが言葉にした事を、そのまま歌詞にすれば良いんだよ」

 

穂乃果の言葉にことりが笑顔で頷く。

 

「あー2人とも。盛り上がってる所悪いんだけど」

 

そんな2人に若葉が気まずそうに声をかける。

 

「厨房は休憩所じゃないからね?」

「「お邪魔しました~」」

 

2人は若葉に笑いかけると厨房を出て行く。

 

☆☆☆

 

そして次の日からの歌詞作りは今までのが嘘のように進んでいった。

それと同時進行で若葉達は町でビラを配ったり、若葉のバイト先にポスターを貼ったりと広報活動に勤しんでいた。

 

「ええ!この衣装で歌うの!?」

「にっこにっこにー!どう似合ってる?」

 

ライブを行う日時を決めた日の放課後に衣装合わせをしたのだが、衣装はことりの推薦でことりのバイト先のメイド服となったのだ。

バイト先の店長に、若葉が本当に借りて良いのかと確認すると

 

「ああ、良いわよ~。それでウチにもお客さんが来てくれるんだから。万々歳な訳よ」

 

と一つ返事で衣装を人数分サイズを合わせて貸して貰ったのだ。屋上で衣装の見せ合いをしていると男性陣が屋上の扉を開けて入って来る。

 

「おお~絶景だな」

「って言うより絵里先輩が違和感が無さ過ぎる」

「スタイル良いですからね。似合うんですよ」

 

言いたい放題に事を言う3人。そんな3人にジト目を向ける他のメンバー。主に凛から愛生人、真姫から若葉への視線が特に酷かったが、その視線に気付いたのは夏希だけで若葉は穂乃果を笑っておちょくっていた。

それから場所を部室の隣の部屋に移して話し合った結果、メンバーで3人1組に分かれ、日替わりでことりのバイト先の手伝いをする事になった。

手伝う事になったのは絵里と若葉が「衣装を借りてるんだから、何か恩返ししよう」と言ったのがきっかけである。

 

「どうやってその組み合わせを決めるん?」

「んーどうやって決めようか」

 

希の質問に、発案者の若葉が腕を組んで考えると手をポンッと鳴らすと

 

「夏希、例のアレを」

「ん?アレ?……あぁこれか」

 

夏希は最初何の事か分からなかった様だが、どこからともなく既に割れている割り箸を取り出す。

 

「どこから取り出したんですか?それ」

 

愛生人の突っ込みを無視して夏希はペンを取り出し、割り箸の先を三色に塗り分ける。愛生人はまたもや突っ込むも、先程同様無視される。

その一連の流れにどこか既視感を覚える穂乃果、海未、ことりの3人。

 

「さ、お好きな棒をどうぞ!」

 

夏希が九本の箸を手に、前に差し出す。9人が一斉に箸を引く。結果は

 

・穂乃果 ことり 花陽

・絵里 にこ 真姫

・希 海未 凛

 

となった。

 

「あれ?うーみんの負担がヤバい事に?」

「そう思うなら再編成をして下さいよ」

 

夏希の疑問に海未が言うも夏希は再編成する気は無く、結局組み合わせはこれに決まった。男子陣は若葉がライブまで毎日、夏希と愛生人は交互に行く事に決まった。

 

それからライブ日までメイド喫茶にはμ'sの姿があった。

 

☆☆☆

 

秋葉でライブの後、神田明神前で穂乃果、海未、ことりの3人は制服に着替えて3人で並んで夕日を眺めていた。

 

「上手くいって良かったね。ことりちゃんのお蔭だよ」

「ううん、私じゃないよ。皆がいてくれたから、みんなで作った曲だから」

「そんな事…ま、でもそうゆう事にしとこうかな」

 

ことりの言葉に胸を張る穂乃果。海未がそれを窘めるも、ことりがその方が嬉しいと言い3人は笑い合う。

 

「ねえこうやって並ぶと、あのファーストライブを思い出さない?」

「うん」

「あの時はまだ、私達と若葉、夏希だけでしたね」

 

海未も数か月前の事を思い出しながら、穂乃果とことりの言葉に賛同する。

 

「あのさ、私達っていつまで一緒にいられるのかな」

「どうしたの?急に」

 

ことりのいきなりの発言に穂乃果が聞く。

 

「だってあと二年で高校も終わっちゃうでしょ」

「……それはしょうがない事です」

 

2人の言葉に穂乃果は何か思う所があるのか、少し考えてから両隣にいる2人の肩を抱き

 

「大丈夫だよ。ず~っと一緒だよ。だって私、これからずっとずっとことりちゃんと海未ちゃんと一緒にいたいって思ってるもん。大好きだもん!」

「穂乃果ちゃん」

「穂乃果」

「これからずーっと一緒だよ!」

「うん!」

「はい!」

 

夕暮れの神社に3人の声だけが響いた。




若「さぁ始まりましたこのコーナー。今回はゲストにμ'sのスピリチュアル担当こと、東條希先輩に来て貰ってまーす!」
希「スピリチュアルやで!」
若「はい、よく分からない登場文句でしたけど」
希「若葉君ちょっと酷くない?」
若「これが通常運転です」
希「あ」
若「どうしたんですか?」
希「いやね?今試しに若葉君の運勢を見たんよ」
若「本人の知らない所で勝手に占わないで下さい」
希「結果なんやけど」
若「嫌な予感しかしないです」
希「見事!死神のカードが出ました!パチパチ〜」
若「口でパチパチ言っても仕方ないですよ。てゆうより!死神とか不吉じゃないですか!」
希「まぁまぁ落ち着いて」
若「誰のせいだと思ってるんですか」
希「んーと……夏希君?」
若「俺の知らない所で犠牲になったんですかね」
希「それはそうと」
若「話がコロコロ変わりますね」
希「これは作者からウチに直接連絡が来たんやけど」
若「なぜ俺に言わなかったのかは、この際無視するとしまして。何て連絡なんですか?」
希「若葉君の昔話の回があったやん?」
若「あぁ俺が翔平相手に聞かせた」
希「そ。その回に少し訂正と言うか、加筆したんやって」
若「へぇ。何でまた?」
希「知り合いに見せたら言われたらしいで?」
若「と、言う訳なので。良ければその加筆部分もよろしくお願いします」
希「ほな〜」


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暑いよ〜by穂乃果

今回から2.3話程オリジナルストーリーが始まりますよー


秋葉でのライブから1ヶ月が経ち、音ノ木坂は夏休みに入っていた。

 

「暑いよ〜」

「だからこれから皆とプール行くんでしょ」

 

若葉は暑さでだれてる穂乃果に言う。

これからμ'sのメンバーとプールに行く為に、2人は駅前で他のメンバーを待っている最中である。

 

「にしても少し早かったかな?」

「少しどころじゃないよ。何で集合時間の15分前から待ってなくちゃいけないの〜」

「15分前くらい普通じゃない?」

「普通じゃないよ!?」

 

穂乃果の言葉を他所に若葉は駅の壁に寄りかかる。

 

「そんなに暑いならトンタでシェイクでも買って来たら?」

「そうする!」

 

それだけ言って穂乃果は近くのトンタへ向かう。そんな穂乃果と入れ違いで2人組みの女子が若葉のもとへやって来る。

 

「あら若葉。もう来てたのね」

「や、おはようさん」

 

絵里と希だった。

 

「おはようございます。2人も早いですね」

「流石に私達が遅れるわけにはいかないもの」

 

今回のプール企画は絵里と希、そして若葉が発案したのだ。

 

「で、穂乃果ちゃんは?一緒じゃないん?」

「穂乃果ならあそこのトンタでシェイク買ってますよ」

 

希の問いに苦笑いで返す若葉。

 

「ほなウチも買いに」

「行かせないわよ」

「そんなぁ!」

「もう時間だし、穂乃果も戻って来てるわよ」

 

希もシェイクを買いに行こうとすると絵里に止められる。実際絵里の言う通りμ'sのメンバーがチラホラと遠目に見えており、穂乃果もシェイクを手に幸せそうな顔をしながら戻って来ている。

 

「う〜そんなぁ〜」

 

近くの壁に手を付きながら項垂れる希と、そんな希を不思議そうに見ている穂乃果。

それから数分もしない内ににこ以外のメンバーが揃った。

 

「さて全員揃った事だし行きましょうか」

「全員ってまだにこ先輩が来てないですよ?」

「にこなら今日は用事があって来れないって」

 

絵里がLIMEを開いて若葉に見せる。そこには確かに用事があって来れなくなった旨が書かれていた。

 

「用事があるなら仕方ないですね。じゃあ行きましょう!」

 

若葉はにこが来れない事を確認すると改札へ向かう。それにノリノリで付いて行く凛と穂乃果。残りのメンバーも3人に続き改札へ向かう。

そして電車に乗り二つ隣の駅で降りると、駅前のバス停から市民プール行きのバスに乗る。

車内はお客さんが居らず11人の貸切状態だった。

 

「それにしても空いてるな」

「お盆だからじゃない?」

「それにしてもだろ」

 

若葉は前の席の夏希と話して時間を潰している。

因みに席順は

 

穂こ 海

 

希絵 夏花

 

凛愛 若真

 

である。

 

「なんか席順に意図的な何かを感じるんだけど…」

「奇遇ですね。僕もです」

「何言ってるのよ。適当に座ったらこうなったんじゃない」

「そうにゃそうにゃ」

 

通路を挟んで隣同士の若葉と愛生人が文句を言う。その2人とは逆に少し顔を赤くしながらも、どこか嬉しそうに言う真姫と凛。前の席に座ってる夏希は楽しそうに声を出さずに笑っている。

 

「若いってええな〜」

「そんな年寄り臭いこと言わないの。私達だって若いんだし」

「せやね」

 

と明らかに後ろの席を楽しんでる希と絵里。その前では穂乃果、海未、ことりの3人がアプリの通信で遊んでいた。

そんな時間が暫し

 

『次は白浜。白浜でございます』

 

とアナウンスが聞こえ、絵里が降車ボタンを押す。バスが白浜に着き、若葉達が降りる。

 

『暑い!』

 

バスから降りた途端に夏の熱気に襲われ、夏希、穂乃果、凛が叫ぶ。

 

「ほら、プールまで少し歩くんだから行くよ」

 

と若葉が夏に敗北した3人に言い聞かせる。しかし動く気配がない為、若葉は少し強引な手に出ることにした。

 

「海未、真姫」

 

若葉に呼ばれた2人は溜息を吐きながら穂乃果と凛の、若葉は夏希の首根っこを掴み引き摺るようにプールへ向かって歩き出す。

 

「ちょ、歩く!自分で歩くから手を離せぇ!」

 

夏希が引き摺られながら抗議するも、若葉は聞く耳を持たず引き摺る。他のメンバーに助けを求めるが、全員に苦笑いで返されて諦める夏希だった。

 

「やっと着いたぁ!」

「にゃー!」

 

歩き始めて少ししてから手を離してもらった穂乃果と凛が両手を上げて喜ぶ。

 

「それじゃあ着替えた後に更衣室のそとで待ち合わせしましょ」

「分かりました」

 

若葉が人数分の入場券を買いに行ってる間に絵里と愛生人が簡単な打ち合わせをする。

そして若葉から入場券を受け取り更衣室に入る。

 

「それにしても酷い目にあった……」

「あれはダレた夏希さんが悪いですよ」

「そげなバカな!」

「古くないですか?」

 

と夏希と愛生人のやり取りをBGMに若葉は淡々と水着へ着替える。

 

「……あの〜若?もしかして、怒ってる?」

 

そんな若葉が気になったのか夏希が恐る恐る聞いてみると

 

「いや、別に怒ってはいないよ?でも」

「「でも?」」

「……実は泳げないんだよね」

「「……え?」」

「て、言ったらどうする?」

 

若葉はしてやったり顏で2人を見ると、荷物をロッカーの中に入れていく。

 

「何だ冗談かよ」

「ビックリしました」

 

夏希と愛生人もロッカーに荷物を入れ最小限の荷物を持ち、外に出る。

 

「やっぱ女子は遅いな」

「逆に女子待たせたらダメでしょ」

「で、若葉先輩は何で着替え中あんなに静かだったんですか?」

「あぁそれは」

「おっ待たせー!」

 

愛生人が先程の光景を思い出し若葉に聞く。しかし若葉が答えようとした所に穂乃果が元気良く若葉に抱き着いた。

 

「おっと。穂乃果、プールサイドは走ったらダメだよ?」

「はーい」

 

若葉はそれを受け止めながら注意する。しかし

 

「穂乃果、周りの目とか考えて下さい!」

「穂乃果ちゃん、状況考えて〜」

 

とスグに海未とことりによって引き剥がされる。

 

「ごめんなさいね待たせたかしら?」

「えりち、男子は女子を待ってナンボやで?」

 

穂乃果達の後ろから絵里と希がやって来る。

 

因みに凛は先程の穂乃果同様、愛生人に抱き着いては真姫と花陽に引き剥がされていた。

その際、愛生人の顔が少し赤くなっていたのを夏希は見て面白そうに笑っていた。

 

「さ、荷物を置く所を探しに行こ」

 

希に従い場所を移す一行。

結局穂乃果の乱入により若葉の沈黙の理由が聞けなかった夏希と愛生人であった。




若「今回はプールだねぇ」
夏「プールだな」
愛「プールでしたね」
若「さて、確かあとがきではその回の裏話的な事を話すんだったっけ?」
夏「まぁ間違ってはないな」
愛「正しくは感想、次回予告がメインの筈です」
若「ま、それは放っておいて。今回は完全裏話にしよう!」
夏「と、思ったんだが」
愛「尺の都合で次回に持ち越しですか」
若「まだ尺あるのに不思議だね!」
夏「寧ろこのやり取りの代わりに裏話入れろよ、と」
愛「アハハハ」
若「ま、いいや。では誤字脱字、感想、批判、アドバイス等をお待ちしております」


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Watersliderby愛生人

時期外れも良い小説な気がする


希の後に着いて行きながら一行は空いた場所が無いか探し、ちょうど良い場所を見つけたのでそこに荷物を置く事にした。海未が持ってきたブルーシートを敷き、その上に荷物を置く。

 

「さて、ここで問題です!」

「どうした?」

 

荷物を置いた途端に若葉がいきなり言う。突然の事に夏希が聞き返す。プールに向かっていた面々も足を止め、若葉を見る。

 

「俺たちはプールサイドに荷物を置きました。では次にする事と言えば?」

「はい!」

「はい凛」

 

若葉は元気良く手を上げた凛を指名する。指名された凛は自信満々に答えを言う。

 

「プールで泳ぐ!」

「残念!」

 

が、どうやら不正解のようである。次に穂乃果が手を上げ、若葉が指す。

 

「ウォータースライダーに乗る!」

「違うよ」

「はい!」

「はい、愛生人」

「Waterslider」

「発音良く言っても違うからね?」

 

無駄に発音良く言った愛生人はその場に膝を付く。

 

「はい!」

「次は希!」

「胸をワシワシs」

「言わせないよ!?」

 

若葉がツッコミをし、希が手を下ろす。

 

「それじゃあ分かってそうな海未」

「えと…準備体操、ですか?」

「正解!」

 

少し自信なさ気に答えた海未に拍手しながら告げる若葉。

 

「準備体操ってつまりは……胸をワシw」

「だから言わせないよ!」

「はいはい。早いとこ準備体操してプールに入りましょ」

 

希と若葉のやり取りを流し、絵里の指示で軽く広がる。

 

「やる事は体育の授業と同じ?」

 

花陽の質問に若葉が頷き、体操を始める。

 

「それにしてもここのプール広いね」

 

体操しながらことりが隣で体操している若葉に言う。

 

「なんでも東京ドーム1個分あるとか、ないとか」

「あやふや過ぎる情報ありがとう」

 

若葉の隣で夏希が笑いながら言う。

 

「よし、体操も終わったし…遊ぶぞー!」

「にゃー!」

「え?ちょ、ちょっと!?」

 

体操を終え走り出す穂乃果と凛。そして凛に引っ張られる愛生人。

 

「り、凛ちゃん腕離して!危ないから!」

 

と愛生人の抗議も無視し、凛は走る。そして

 

「うわっ!」

 

案の定変な体勢で走っていた愛生人は足を滑らせる。愛生人を掴んでいた凛も巻き添えになる形で。

 

「にゃ!?」

 

突然の事に凛も驚きの声を上げる。

そして愛生人は足を滑らせ、凛の方へ倒れる。

 

「あ、あれは!」

 

その光景を見て夏希が大きな声を上げる。

 

「知っているのか雷○!」

「あれはあらゆる確率を無視して天文学的数値を超える奇跡の連続で起こると言われる伝説のラッキースケベ」

 

若葉の問いに夏希がそこまで言った所で、凛の膝が愛生人の鳩尾に当たる。

 

「返し」

「返し!?」

 

最後の言葉に驚きを隠せない若葉。

 

「そ、そんな事より…僕の心配を……して…」

 

それだけ言って愛生人は力尽きたように動かなくなる。

 

「う〜んどうしたものか…」

「そうや!」

 

伸びた愛生人を見て夏希がどうするか悩んでいると、希は凛をブルーシートの上に正座させ、愛生人の頭を膝に乗せる。所謂膝枕である。

 

「にゃ!?にゃにゃにゃ!?」

 

凛は混乱している。

夏希と希はそれを面白そうに見て写真で撮影していた。

 

「では撮影している夏希と希は放っておいて、私達は泳ぎに行きましょうか」

 

海未の提案に当事者の四人以外が頷き、プールに向かって歩き出す。

 

「愛生人も早く起きないとプールで泳げないよー」

 

若葉は皆の後に着いて行きながら、顔を赤くしている愛生人に言う。

それから暫くして、撮影に飽きた様子の夏希と希も合流し遊び尽くす。波のプールで真姫が溺れかけたり、それを若葉が助けたり、2年女子の3人でウォータースライダーに乗ったり、愛生人が凛に膝枕されたままだったりと色々あり、少し遅めのお昼休憩となった。

 

「さて、少し遅いけどお昼にしよ」

「あっちにフードコートがありましたよ」

「じゃあ皆で行きましょう」

 

希と花陽の言葉に絵里が頷き、フードコートがまで引率する。

 

「にしても水温少し低くない?」

 

プールに入って少し冷えたのか、若葉はパーカーを着ている。

 

「私は外が暑いからちょうどいいくらいだよ?」

 

券売機に並びながら穂乃果が言う。

 

「わ、私もちょっと寒い、かな?」

 

その後ろでは若葉同様パーカーを着ている花陽がいる。

 

「あ、お財布忘れて来ちゃった…」

「あ、私も…」

 

ことりと真姫が券売機の前に立ち、財布を忘れた事に気付く。

 

「ちょっと取って来るね」

「先に食べてて良いわよ」

 

他のメンバーが止める間もなく2人はブルーシートの敷いた方へ走って行く。

 

「2人だけで大丈夫ですかね?」

「2人ともスタイルええから心配やね」

 

愛生人と希の心配が見事に的中したのか、あれから十数分待っても2人が帰ってくる気配がない。

 

「ねぇ絵里先輩。ここからブルーシートの場所までそんなに遠くないですよね?」

「そうね。どんなに遅くてもそろそろ帰って来ても良いと思うわよ」

 

若葉と絵里が心配そうにブルーシートの方を見ながら話し合う。

 

「ちょっと心配だから見に行って来るよ」

「ちょ、お兄ちゃん!?待ってよ穂乃果も行く!」

 

と若葉と穂乃果がブルーシートの方へ走って暫く、視界に洋紅色(カーマイン)の髪とベージュの髪の女子を捉える。

 

「おーい真姫ちゃーん。ことりちゃーん」

 

穂乃果が名前を呼びながら2人に近付く。若葉も穂乃果に続いえ2人に近付くと、ソフトモヒカンと坊主の男性二人も目に入る。

チャラ男2人は真姫とことりと話しているが、(はた)から見ればナンパをしているように見える。

 

「だからぁ少し向こうで泳ごうぜって言ってんじゃん?」

「そうそう。どうせ女子だけで来たりとかしてんでしょ?」

 

どうやらしているよう、ではなく絶賛ナンパの真っ最中らしい。

 

「いやーウチのツレがどうかしましたか?」

 

穂乃果が加わりソフトモヒカンと坊主の2人の目が明らかに変わるのを見て、若葉が慌てて横入りする。

 

「んだ?このヒョロ男君は?」

「もしかして彼女守る俺カッケー的な感じかな?」

「もしそうだとしたらどうします?」

 

若葉は二人の台詞に笑って聞き返す。そんな若葉の態度にイラついたのか、坊主が舌打ちをし

 

「だったらその彼女達の前で無様にボコられろ!」

 

と若葉を睨みながら拳を振り抜くも

 

「あ、ことりと真姫は財布見つかった?」

 

若葉は坊主に興味がないのか、半歩横に移動して躱すと、真姫とことりに聞く。2人が頷くのを確認すると穂乃果と一緒に絵里達の下へ戻らせる。

 




愛「えーと、今回はことり先輩と真姫ちゃんがナンパされましたね」
夏「そこに若とほのっち登場!次回はバトるのかな?」
若「まぁ大丈夫だと思うよ?……知り合いもいるし…」
夏「え?今なんて?」
若「何でもないよ。それより裏話に行かなくていいの?」
愛「そうでしたね。実はこの話は夏頃に既に書き終わっていたらしいですよ」
夏「へぇ」
愛「だから投稿する際に細かい点を直したらしいんですけど、多分直し漏れあると思います」
若「修正箇所って、会話文の改行を消したりとかでしょ?」
愛「後は僕達の呼び方とかもですね。直す前では敬語じゃなかったりとかしてたみたいなので」
夏「そこで作者の後の展開を考えて無いのがもろバレだな」
若「ことりと真姫をナンパした人達は今後出番は?」
愛「さあ?あるかどうかは人気次第じゃないですか?」
夏「りっちゃんとアッキーの今後の展開は?」
若「そんなの聞かなくても分かるでしょ」
愛「まさかラッキースケベを返されるとは思いませんでしたよ」
若「誰もそんな事思わないって」
夏「今回はそろそろ終わりだな」
愛「ですね。それでは」
若「また次回。お楽しみに〜」


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理不尽だなオイ!by利幸

今回でプールの話はおしまいです。


「えーと何の話だっけ?ソフトモヒカンさんと坊主さん」

 

若葉は振り返りながら青筋を立てている二人を見ると、取り敢えず疑問をぶつけてみる。

 

「俺らはンな名前じゃねえ!」

「テメェ!調子に乗ってんじゃねーぞ!」

 

ソフトモヒカンが怒鳴り返し、坊主が拳を振り上げ殴りかかる。

 

「いきなり戦闘パートとか…RPGのラスボスでさえ会話シーンあるのに」

 

と坊主の拳を躱しながら愚痴る。因みに若葉の言ってる会話シーンは、若葉自ら気付かずにスルーしていたのは本人の知る由も無いこと。

 

「チョロチョロと避けやがって!」

「だって殴られたら痛いじゃないですか!」

「ったりめーだろーが!」

 

坊主の台詞に若葉がボケ気味に言い返すと、ソフトモヒカンまで乱入してきた。

 

「取り敢えず、監視員さんがこっち見てるので…さっさとプールに入っとけよ?」

 

若葉はそう言ってソフトモヒカンの腕を掴み、軽く足を払うと近くのプールに投げ込む。その際着地地点に人がいないのは確認済み。

 

「常村!」

 

チ坊主が投げ込まれたソフトモヒカン(常村)の方に気を取られた隙に、若葉は坊主もソフトモヒカンから少し離れた場所に投げ込む。

 

『プールに人を投げ込まないで下さ〜い』

 

その行為を監視員に注意されるも

 

「ゴメンね〜りっちゃん」

 

と軽く返す若葉。どうやら知り合いのようだ。本当に若葉の顔の広さには驚かされる。

 

「全く。で?あの2人は何やったのさ。若葉がそこまで怒るのなんてそう無いし」

「いや〜妹とその友達2人をナンパしてたからさ」

「理不尽だなオイ!」

 

若葉に近付いてきたりっちゃんは若葉の暴行原因に理不尽さを感じ突っ込む。

 

「いやいや、さすがの俺でも本人達が嫌がってなかったら介入はしないよ?ただ明らかに迷惑そうな顔してたから介入したんだよ」

「まぁそうゆう事ならいんだけど。若葉がそう簡単に手を出さないの知ってるし。あと、俺の名前は最中利幸(さなかとしゆき)でりっちゃんじゃない」

「はいはい分かったよ。りっちゃん」

「だーかーらー」

 

と漫才を繰り広げてる2人に

 

「オイ」

「お前ら俺らの事無視してんじゃねぇぞ?」

 

先程投げ込まれた2人が肩を叩く。

 

「あのね?モブキャラはモブだから愛されるの。しつこいと嫌われるし呆れられるよ?」

 

利幸が溜め息を吐きながら言い返すと、イラつきが頂点に達したのか、坊主が利幸に殴りかかる。

 

「あ、ちょ!」

 

若葉が慌てて止めようとするも、その様子を見てソフトモヒカンは笑顔を作り、固まる。なぜなら先程利幸に殴りかかった坊主が一瞬で地面に組み伏せられたのだ。組み伏せられた本人である坊主も何をされたのか、理解できずに驚いている。

 

「りっちゃんはああ見えて空手と柔道の有段者なんだよ。それに殴りかかるとか、自殺行為甚だしいね」

「取り敢えず暴行未遂と公務執行妨害?」

「今回は公務じゃないから営業妨害かな?でも公務ってどこまでが公務何だろう?」

「ま、どっちでもいいや。で、2人とも事務室来ようか?」

 

唖然としている2人の首を掴み、事務室に連行していく利幸。

 

「本当にあの細身のどこに、あんな筋力があるんだろ?」

 

利幸の体型は武道を嗜むには細い体型だ。なので利幸は力で制すのではなく、技で相手を制している。それなのに自分と同じ体格の男2人を軽々と引き摺っている。

 

「若葉さーん。トラブったって聞いて来ましたー」

「喧嘩か?」

 

チャラ男2人を見送っていると、愛生人と夏希がちょうど若葉の下へ着く。大方先に戻した3人が応援として寄越したのだろう。と若葉が考えると

 

「大丈夫。思わぬ所での助っ人がいたから」

 

と事務室の方を見ながら言う。夏希と愛生人は何の事か分からずに首を捻る。

 

「ま、邪魔者は消えたから遊…」

 

両手を上げて元気に言おうとした時、若葉のお腹が鳴る。

 

「ぶ前に飯が先だね」

 

と夏希と愛生人を先導してフードコートに戻ろうとして夏希に止められる。

 

「若、フードコートはそっちじゃなくてこっちだぞ」

 

と約90度右を指してそっちに歩き出す。若葉は頭を掻きながら2人に着いて行く。

 

「たっだいま~」

「帰ったぞ~」

「若葉さんは無事でしたよ~」

 

3者3様の挨拶をして席に着く。穂乃果とことりと真姫は若葉が戻って来た事を確認すると、それまでの少し暗かった表情から一変明るい笑顔を浮かべ

 

「お兄ちゃ~ん!」

「若葉く~ん!」

「わばかー!」

 

一斉に抱きつきにかかる。若葉は1人ずつ引き剥がしつつも

 

「ちょっと待て真姫!俺の名前は若葉だよ!」

 

と真姫の言葉にツッコミを入れる。そのツッコミで絵里達も安心した様な表情を浮かべる。

 

「でも無事で良かったわ」

「昔何か嗜んでたん?」

「昔というか、なんというか。現在進行形、かな?」

『現在進行形?』

「バイトの一環であいつ(利幸)の道場で鍛えられてるんだよね」

 

お昼を済ませながら簡単に事情を説明すると、全員が納得する。またバイトか、と。

 

「ねぇねぇ、ほのっち。ほのっちも若がどんなバイトしてるか知ってる?」

「ううん。全部は未だに分からないんだよね」

「一体いつそんな事する時間があるんでしょうかね?」

 

愛生人の言葉に穂乃果と夏希が首を捻る。確かに若葉は店の手伝いから学業にμ'sの活動と、いつバイトをする時間があるのか。永遠の謎である。

 

「ねぇ若葉くんて色んなバイトしてるみたいやけど、一体いつバイトしてるん?」

 

夏希達の会話が聞こえたのか、希が3人の方を笑いながら見ながら若葉に聞く。

 

「あ~それはですね。俺は時間を超越して、て嘘だからね!?そんなイタイ子を見るような目で見ないで!」

 

その後も少し騒いで若葉はバイトの件を誤魔化し、その日はプールを堪能した。




夏「若って容赦無いのな」
若「そう?プールに落としたんだから、まだ良心的でしょ」
愛「容赦無くした場合はどうしてたんですか?」
若「え、聞きたい?」
夏「遠慮しとく」
愛「今回は最中利幸さんが初登場でしたね!」
若「りっちゃんは名前だけなら前にも出てたけどね〜」
夏「あぁ若の回想回でな」
愛「そう言えば、何で若葉先輩って着替えの時ずっと黙ってたんですか?」
若「だって刺された傷が見えるじゃん」
夏「ああ刺されたんだっけ?」
愛「真姫ちゃんに聞きましたよ。その後気絶したって」
若「なんでそこで真姫が出てくるの?」
夏(なぁアッキー。こいつまだ)
愛(えぇ気付いて無いみたいですね)
若「ねぇなんで〜?」
夏「それよりも、若って本当にいつバイトしてんだよ」
愛「そうですよ!凄い気になります!」
若「いつって、高蓑原じゃ部活とか入って無かったから、放課後と休日にちょいちょいと。音ノ木に来てからはμ'sが休みの日とか、偶に早く帰ったりしてる時にしてるんだよ」
夏「確かにそう言えれてみれば」
愛「若葉先輩って偶に早く帰りますね」
若「と、言う事で。次は合宿だー!」
夏「各自、親の許可とか大丈夫なのかね?」
愛「え、何でですか?」
若「愛生人、少しは考えよ?」
夏「ではまた次回!」
若「さよ〜なら〜」


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海だよ海!by穂乃果

やっと書きたかった合宿回!
まぁ楽しいかどうかは分かりませんけどね…


ミーンミーンミーンと蝉が元気に鳴いている時、夏休みにも関わらず学校の屋上で練習をするμ'sを夏の熱気が襲う。

 

「あづい〜」

「だね〜」

 

練習の休憩時間に余りの暑さに室内で休憩していると、夏希と穂乃果が手摺に顔を乗せて垂れていた。

 

「てゆうか馬鹿じゃないの!こんな暑いのに練習とか!」

 

そんな2人を見てなのか、本音なのか、にこが叫ぶも絵里によって宥められる。

 

「まぁ倒れると大変だから小まめに休憩と水分補給は取らないとだよね〜」

 

団扇で穂乃果を仰ぎながら若葉が言う。夏希には若葉がもう一つの団扇を渡し、夏希は自分で仰いでいる。

 

「とにかく、馬鹿な事言ってないでレッスン始めるわよ」

「あ、は、はい……」

 

絵里は若干どもりながら返事を返す花陽を見て苦笑いする。

 

「花陽、これからは先輩も後輩も無いんだから、ね?」

「そんな事を言ったって絵里の話し方は慣れてないと怖く感じるからな〜」

 

夏希が団扇で仰ぎながら笑って言う。絵里はそんな夏希の元へ行きデコピンを一発お見舞いすると、良い音が鳴ったので皆が感心した。

 

「そうだ!合宿行こうよ!」

 

穂乃果の突然過ぎる程の提案に一同の頭の上にクエスチョンマークが浮かぶ。にこが説明を求めるも、穂乃果は聞こえないのか、自画自賛し始める。

 

「あ〜何でこんな良い事早く思い付かなかったんだろ〜」

「合宿か〜面白そうにゃ!」

「そうやね。こう連日炎天下での練習だと体もキツイし」

 

穂乃果の案に賛成の意を示したのは凛と希の2人。だが、他のメンバーも良いかも、と思い始めていた。

 

「で、場所はどこにするの?」

「お兄ちゃん、そんなの決まってんじゃん。海だよ海!夏だもの!」

 

若葉の質問に両手を広げて言う穂乃果。そんな穂乃果に夏希が費用は?と現実的な質問をすると、穂乃果はことりを隅に連れて行き小声で話す。

 

「ことりちゃん。バイト代いつ入るの?」

「えぇ〜!」

 

どうやらことりのバイト代頼りだったらしく、急に言われたことりは驚きの声を出す。

 

「こら穂乃果。ことりにせがまないの」

「むむむ。こうなったら最終手段を」

「貸さないからね。てゆうか、この人数分を賄えるだけ無いし」

「そ、そんなぁ〜!」

 

最終手段(若葉)にバッサリと断られ、その場に崩れ落ちる穂乃果。しかし次の瞬間、何を思い付いたのか真姫に詰め寄ると、彼女の両手を握る

 

「そうだ!真姫ちゃんの家だったら別荘とかあるんじゃない?」

「あるけど……」

「本当!?真姫ちゃんおねが〜い」

 

真姫の言葉に猫撫で声でお願いする穂乃果。真姫は助けを求めて海未と若葉(ストッパー)を見るも、海未は少し悲しげな表情を、若葉に至っては両手を合わせてお願いしている。真姫は少し考えると溜息を吐いて

 

「仕方ないわねー聞いてみるわ」

 

と渋々了承する。その一言に穂乃果と凛は大喜びし、その場で踊り出す。若葉は真姫に近付くとそっと耳打ちする。

 

「ごめんね。費用半分出すよ」

「別に良いわよ。元々余り使われて無い別荘だし」

 

申し訳無さそうに謝る若葉に、真姫は手を振りながら言う。それでも引かない若葉に真姫は、なら食費だけ出して、と妥協する。

 

「そうだ。これを機にやってみた方が良いかもしれないわね」

「やるって何を?」

「ふふ、秘密よ」

 

絵里の呟きに夏希が聞き返すも笑って誤魔化された。そんな絵里を見て、夏希と希は揃って首を傾げた。

 

☆☆☆

 

そんなやり取りがあった次の週。穂乃果達『μ's』の9人は駅構内で待ち合わせていた。

 

「あれ?穂乃果ちゃん荷物少なくない?」

「お兄ちゃんが持って行ってくれるって言ったから預けたんだ〜」

 

ことりが必要最低限の所持品しか持って無い穂乃果に驚く。因みに男性陣は先に真姫の別荘に向かっている様で姿は見られなかった。

 

「行くなら一緒の電車で行けばいいのに」

「あら、夏希達なら車で行ってるのよ」

『車!?』

 

にこがブスッとした表情で言うと、絵里が衝撃の一言を告げる。 絵里の一言に反応しなかったのは、夏希が留年している事を知っている海未と希だけだった。

 

「何でも食材の買い出しとかしたいみたいで、昨日の夜に別荘の地図のデータを頂戴!って来たけど」

「まぁ夏希の事は置いといて。私から一つの提案があるの」

 

真姫がそう言えば、と言い、絵里の言葉に希以外が首を傾げる。

 

「ズバリ、『先輩禁止』よ」

『えー!!』

 

再び穂乃果達の叫び声が構内に響いた。

 

「前からちょっと気になっていたの。先輩後輩は勿論大事だけど、踊っている時、そういうの気にしちゃダメだと思うの」

「そうですね。私も3年生に合わせてしまう所がありますし」

 

絵里の説明に海未も心当たりがあったのか、賛成するも、にこはそんな気遣い感じられなかった、と言うと

 

「それはにこ先輩が上級生って感じじゃないからにゃ〜」

「上級生じゃなかったら何なのよ!」

「う〜ん。後輩?」

「てゆうか子供?」

「マスコットかと思ってたけど」

 

にこの言葉に凛、穂乃果、希が次々にボケる。そのボケに更ににこが突っ込む。

そんなにこに苦笑いをし、絵里がじゃあ早速、と始める。

 

「今から始めるわよ。穂乃果」

「え!い、良いと思います。え……絵里、ちゃん?」

 

恐る恐ると行った感じに絵里の名前を呼ぶ穂乃果に、絵里は柔らかい笑みで返事をする。それを見た凛もことりの名前を呼び、ことりが笑顔で返事をし、真姫に話を振るも、真姫は上手く返せずに誤魔化す。

 

「じゃあ若葉達にも伝えるわね」

 

そう言うと絵里は若葉にLIMEを飛ばす。そして若葉に連絡すると

 

「では改めて、これより合宿に出発します。部長の矢澤さんから一言」

 

と、にこに無茶振りをする。勿論そんな事を考えていた訳も無く

 

「し……しゅっぱ~つ」

 

と気の抜ける様な号令を言うと、穂乃果にそれだけ?と突っ込まれる。

 

「考えてなかったのよ!」

 

☆☆☆

 

一方車で別荘に向かっている男性陣はと言うと。3人は9人よりも早い時間に待ち合わせして出発していた。

 

「まさか夏希先輩が免許持っていたなんて、驚きです」

「そうか?ま、皆には言って無かったからな〜」

 

車内に流れている音楽は、若葉がCDにした今までの『μ's』の曲だった。テストで録ったソロverも収録されているので、飽きる事は多分ないとの事。

 

「で、若葉は何で寝てんだ?」

「さぁ?徹夜でもしたんじゃないですかね?」

 

夏希はバックミラーで、愛生人は直接後部座席で寝ている若葉を見やる。車を走らせて既に1時間。若葉は車内に乗り込みCDを夏希に渡すなり、すぐに寝てしまったのだ。

 

「あ、起きましたよ」

 

曲が丁度穂乃果のソロverに変わった所で起きた若葉のシスコンっぷりは相当の物だろう。

 

「ふぁ〜……おは、よう?」

「おはようございます」

「良く寝てたな」

 

寝ぼけ眼で挨拶する若葉に愛生人と夏希も返す。すると若葉の携帯が鳴る。若葉が携帯を開くと、絵里からLIMEが来ていた。その内容を見た途端若葉の目が一気に覚める。

 

「へぇ〜」

「どうしたんだ?」

「いやね。向こう(女性陣)は随分と面白い事してるなぁ〜ってね」

 

若葉がさも可笑しそうに笑い、助手席に座っている愛生人に携帯を渡す。

 

「え〜と?『先輩禁止』?」

 

そこに書かれていたのは、先程絵里が説明した事を簡略化したものだった。

 

「へぇ、面白いじゃん。俺らもやろうぜ」

「ま、変えるのは愛生人くらいだから、大して問題は無いけどね」

「失礼な!僕だってやろうと思えば」

「「思えば?」」

 

愛生人の言葉を2人が復唱する。

 

「出来ると思……うよ?」

「「おぉ~」」

 

少し怪しかったもキチンと敬語が取れている愛生人に感心した様な声を出す若葉と夏希だった。その愛生人は助手席でうがー!と頭を抱えていた。

 

「今回の合宿は楽しい事になりそうだな」

 

夏希はアクセルを踏みながら楽しそうに言った。

 




若「ヤッホー。皆元気してるー?」
夏「どうしたんだよ。いきなり」
愛「後書き書くの久し振りだから仕方ないんですよ」
夏「アッキーまた敬語に戻ってるぞ?」
愛「僕は先輩とか関係なしに、基本歳上相手には敬語なんです」
若「まぁ『先輩禁止』のも多分後輩だからって先輩に遠慮しなくて良いよ。って感じだからね〜」
愛「そうなんですか?」
夏「作者の自己解釈だから違う可能性があるけどな」
若「気にしない気にしない」
愛「さて、次回のアニライブ!ですが」
夏「まだ書き上がって無いんだろ?」
若「まぁ大体の流れは出来てるらしいけど、なんかもう一つの方が捗ってるとか」
愛「僕の裏設定とかいつ公開されるのやら…」
夏「下手したら当分先だったりして」
若「そんなこんなで次回もよろしくね!」


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これが練習メニューになりますby海未

遅くなってすいませんでした!


真姫の案内で電車と新幹線を乗り継ぎ、迷う事無く西木野家の別荘に着いた一行。

 

『おぉ~』

 

別荘を見た第一声がこれだった。

 

「凄いよ真姫ちゃん!」

「さすがお金持ちだにゃ~」

 

穂乃果と凛の台詞にそう?となんでもないかの様に返す真姫。

 

「やっほ~長旅?お疲れ様~」

 

上から声が聞こえたので穂乃果たちが2階部分にあるベランダを見ると、そこには布団を干している若葉と愛生人がいた。

 

「お兄ちゃ~ん。やっほ~」

「若葉、夏希はどうしたの?」

 

兄の姿を見て手を振る穂乃果と、姿が見えない夏希の所在を聞く絵里。

 

「夏希さんならキッチンで食器を洗ってるよ」

 

絵里の質問に愛生人が答える。九人は何とも言えない表情で家の中に入り、荷物をリビングに置くと家の中の確認(探検)に出かける穂乃果と凛。その2人だけだと色々心配なのか、布団を干し終わった若葉と海未も着いて行く事に。ことり、にこ、真姫の3人はキッチンへ、絵里、希は広い場所を探しに各々自由に行動をし始める。

 

「なんでかよちゃんはそんな端にいるの?」

「広いと落ち着かなくて……」

 

愛生人は植木の影に携帯を手に隠れている花陽に聞くと、花陽は落ち着かないと返した。

 

☆☆☆

 

探検に出掛けた4人は2階にある一つの部屋に入る。

 

『おぉ~』

 

その部屋にはベッドとクローゼットしか無かった。しかしそのベッドが思いの外デカく、一般のベッドの約2倍所謂ダブルベッドなる物だった。

 

「こことーった」

 

穂乃果はそう言いながらベッドにダイブする。それからベッドの上を転がりながら広~い、ふかふか~とベッドの感想を口にする。それに釣られて凛もベッドに飛び乗る。

 

「海未先輩と若葉先輩も早く取った方が……あ」

 

凛が普段通りに先輩を付けて2人を呼ぶも、言ってる最中に先輩禁止を思い出す凛。そんな凛を見て苦笑いする若葉と海未。

 

「やり直しですね」

「うん。海未ちゃん、若葉君、穂乃果ちゃん」

 

凛が名前を呼びながら穂乃果を見ると、余りの寝心地の良さからか穂乃果は寝ていた。そんな穂乃果のマイペースっぷりに若葉と海未が突っ込んだのは言うまでもない。

 

☆☆☆

 

一方キッチンに向かったことり、にこ、真姫は食器を洗う夏希の手伝いをしていた。

食器を洗う係りに夏希とにこ、食器を拭く係りにことりと真姫といった風に担当分けしている。

 

「それにしてもここのキッチン凄い設備だな。真姫はあれとか使って料理とかすんのか?」

 

夏希は流しの横に設置されてるオーブンを見ながら真姫に聞く。

 

「いいえ、いつもここに来た時とかは料理人の人に作って貰ってるわよ」

「り、料理人!?」

 

真姫の口から出た普通なら聞かない単語ににこが反応する。

 

「そんなに驚く事?」

「驚くよ~。そんな人がいるなんて。ね?」

 

真姫の言葉に、ことりはそう言いにこに聞く。すると、にこも家に料理人がいると言いことりを驚かせた。夏希はその話を聞きながら食器を棚に仕舞っていた。

 

☆☆☆

 

それから少しして、12人は海に面した庭兼練習場所に集まっていた。

 

「これが練習メニューになります」

 

海未は窓に貼った練習メニューを指しながら言う。そこに書いてあるメニューにはランニング10km、腕立て腹筋20セット、精神統一等だった。

 

「な、中々ハードじゃないですか?」

「確かに」

「しかも誰かさん達は遊ぶ気満々だしな」

 

愛生人と若葉がメニューを見て話すと、夏希は水着に着替え終わっているにこ、穂乃果、凛を見る。2人がその3人を見ると、不満そうば表情をしていた。

 

「ってウミは!」

「私ですが?」

 

穂乃果の言葉に海未がキョトンとした顔で返す。穂乃果は違う!と声を少し大きくして返す。

 

「海だよ!海水浴だよ!」

 

穂乃果は庭の先に広がる海を指さしながら抗議する。その穂乃果の行動に納得がいったのか、手を叩くとメニューのとある場所を指す。

 

「それならここに」

 

海未が指した場所には遠泳10kmと書かれていた。それを見た穂乃果とにこは10kmという数字と、その後に書いてあるランニング10kmに顔を引き攣らせていた。そんな二人を無視して海未は話す。

 

「最近、基礎体力をつける練習が減っています。折角の合宿なんですし、ここでみっちりやっといた方が良いかと」

 

海未の言葉に絵里は苦笑いしつつも、皆の体力が持つかの心配をする。そんな絵里に海未が一言。

 

「大丈夫です。熱いハートがあれば!」

「海未はどこのテニスプレイヤーなんだよ」

 

すぐに若葉のツッコミが入る。そして若葉がツッコミを入れた隙に水着に着替えていた3人が海に向かって走り出す。凛はプールの時同様、愛生人を引っ張って行く。

 

「ちょ、4人とも!」

「まー仕方ないわね」

「えぇ。良いんですか?絵里先輩…あ」

 

絵里の言葉に海未が不安そうに言うも、先輩を付けた事に気付き声を出す。そんな海未に軽く注意し、絵里は続ける。

 

「μ'sはこれまで部活の側面も強かったから、こうして遊んで先輩と後輩の垣根を取る事も重要な事よ」

「ま、そんな訳で。俺らも行こうぜ。若葉」

 

絵里の言葉に海未がイマイチ納得の行ってない様な表情をし、夏希は隣に立っていた若葉に肩に回し、海に連れて行く。若葉も満更でもない様な顔で海に向かって歩き始める。

 

「ていうより、夏希」

「どうした?」

「暑いから…さっさと離れろ!」

 

海に近付いて来た時、若葉が突然そう言って夏希の腕を掴み海に向かって放り投げる.若葉のどこからそんな力が出るのか不思議なくらい遠くまで飛んだ夏希は、岸に帰って来るなり若葉の腕を掴んで巴投げの要領で若葉を海に投げ込む。

 

「やったな夏希!」

「お前が最初にやったんだろうが!」

 

夏希と若葉が海の上で組手の様な事をしている横では、女子陣プラス愛生人が水鉄砲などを使い水の掛け合いをしていた。それから浜辺に移り、スイカ割りや砂の城の建造、砂風呂擬きなどをした。

そんな中、海にも入らずにビーチパラソルの下でビーチチェアに座り本を読んでいる人物が1人。真姫だった。

 

「よ、真姫。隣良いかな?」

「ええ」

 

若葉が濡れた髪を掻き上げながら真姫に聞くと、真姫は本を読んだまま答える。

 

「真姫は海に入らないの?」

「そうね。特には」

 

真姫の答えに若干苦笑いになる若葉。浜辺を見ると丁度ビーチバレーの最中でにこがスマッシュを空ぶっていた。その光景に皆が笑い、若葉もクスッと笑う。

 

「パーカー」

「ん?」

「パーカー、今日も着てるのね。この間のプールの時もずっと着てたじゃない」

「あぁこれね」

 

真姫の言葉に若葉はパーカーに触りながら答える。そのパーカーは、以前μ'sのメンバーとプールで遊んだ物と同じパーカーだった。

 

「昔ちょっとヤンチャしちゃってね。その時の傷がまだ消えてないんだ。で、その傷を隠す為に着てるのさ」

「……ねぇ。その時の相手や関係した人達の事、恨んでる?」

 

(おど)ける様に答える若葉に真姫が聞く。その質問に驚いた若葉が真姫を見るも、真姫の表情は髪に隠れていてよく見えない。真姫がどうして若葉にそれを聞くのか、若葉は分からないでいた。しかし若葉はハッキリと空を見上げながら答える。

 

「別に恨んじゃいないよ」

 

若葉の答えに真姫が息を呑む。

 

「あの事件に俺が遭ったのは偶然だったし、事件に関与したのも俺が勝手にやった事。まぁ刺されるとは思わなかったけどね。でも結果俺は死んでないし、こうしてピンピンしている。だから誰も恨んじゃいないさ」

「…そう」

「ま、情けないとは思った、かな?」

「どうして?」

 

真姫の質問に若葉は握り拳を振り上げて答える。

 

「だって無傷で助けようと思ったのに、最後は意識まで失ったしね」

 

そんな若葉を見て真姫が可笑しそうに笑う。若葉も一瞬キョトンとした後一緒になって笑う。

 

「ま、女の子を助ける為に危険を顧みずに動けた事は凄いと思うわ」

「え?それってどういう…?」

「きっと助けた女の子は若葉に感謝してるわ」

 

若葉の質問には答えず、それだけ言って真姫は家の中に戻って行った。

 

「あれ…?俺が助けたの女の子って、言ったっけ?」

 

若葉の呟きに答える人はいなかった




若「なんで遅くなったのさ」
夏「何でも他の小説に付きっ切りだったりしたらしいな」
いやー思いの外捗っちゃって
愛「作者自身が来るなんて珍しいですね」
ちょっと話がね。多分皆愛生人の話し方に疑問に思ってると思うんだけど
若「そう言えば愛生人だけ敬語が取れてなかったね」
愛「だ、だって!年上にはですます調じゃないと落ち着かないんですもん!」
だ、そうです
愛「呼び方から"先輩"が取れたんだから良いじゃないですか」
夏「ま、そうだな」
若「そこまで気にする必要ないんじゃない?」
夏「と、言うわけでまた次回とか!」
愛「なんですか?その挨拶」
若「何でも作者が気に入ったらしいよ」
愛「そうなんですか?」
夏「ほら2人もやるぞ。また次回とか!」
愛若「「じ、次回…とか?」」


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あーそれ良いかもby愛生人

先日ふと思い、「アニライブ! ハラショー」で検索した所、一番上に「アニライブ!-黙れシスコン野郎-ハーメルン」と出てうわぁー……となった名無しです


「え?買い物?」

 

若葉達が海で遊んでリビングでノンビリしていると、厨房にいたことりがリビングに来て言う。

 

「買い物ならここに来る時に済ませたけど」

「うん。なんでも買い忘れたものがあるみたいで、それでスーパーが結構遠いみたいなの」

「そう言えば遠かったですね」

 

愛生人が買い物をした時を思い出しながら言う。

 

「あ、じゃあ行く行く」

「別に私1人で行くからいいわよ」

 

穂乃果が手を挙げながら元気良く言うも、2階から真姫が言う。

 

「え?真姫ちゃんが?」

「だったら誰かと一緒に行った方が良いんじゃないかしら」

「いいわよ。そんなに買う物無いみたいだし」

 

絵里の提案を断る真姫。

 

「じゃあウチがお供する」

「え?」

「偶には良いやろ?この組み合わせも」

 

そんな真姫に希が買い物の立候補をする。真姫は少し不思議そうな顔をするもハッキリとは反対しなかった。

 

「じゃあこれ買い忘れた物のメモ。日が落ちて来てるから気を付けてな」

 

結局買い物に行くのは真姫と希の2人となり、夏希が買い物リストを希に渡す。

 

「ほな行って来るね〜」

「いってらっしゃ~い」

 

若葉は2人を見送った後、一緒にいた夏希に聞く

 

「そう言えばどうして夏希が車出さなかったの?」

「んー?のぞみんにちょっと頼まれてな。マッキーと2人切りで話がしたいってさ」

 

その答えに若葉はふーん、と言いリビングに戻る。

夏希と若葉がリビングに戻ると何やら話し合いが行われていた。2人が状況を見ると、どうやら話し合いは海未、愛生人VSその他で行われていた。

 

「あー……どうしたの?」

「お兄ちゃん!お兄ちゃんは皆で寝るのと、個室でバラバラに寝るの、どっちが皆仲良くなれると思う?」

「え?んー。その2択だと皆で寝る方、かな」

「だよね!」

 

若葉の答えに穂乃果は勢いよく愛生人と海未の方を見る。そんな穂乃果の行動で若葉と夏希は話し合いの議題を理解する。

 

「なぁこれって」

「うんもしかして」

「「寝る場所の話し合いしてるの(か)?」」

『そうよ!』

「「そ、そうですか」」

 

2人の言葉に女性陣が声を揃えて返す。そのあまりの迫力に、若葉と夏希の2人は気圧されながら何とか返す。

 

「2人とも助けて下さいよ……」

「うん。無理」

「まさかの即答!?」

 

愛生人は助けを求めるも夏希に一蹴される。

 

「俺は別にどっちでも良いから決まった方に従うよ」

 

夏希は欠伸をしてから、「じゃ、決まったら教えてな~」と言って階段に座り手摺(てすり)に寄り掛かると、すぐに寝息が聞こえた。

 

「この状況で寝れるのは凄いよね」

 

若葉の呟きに、その場にいる全員が頷く。それから再び話し合いが再開する。

 

「なんの騒ぎ?」

「なんか面白い雰囲気やな」

 

話し合いが再開されてから数十分。買い出しに出ていた真姫と希が帰って来た。2人はリビングに入るなり、それぞれ別のリアクションを取った。真姫は少しあきれた様な表情で、希は面白い物事を見つけた様な表情だった。

 

「あ、お帰り2人とも」

「それよりなんなの?この騒ぎ」

 

話し合いに参加してなかった若葉が声を掛けると、真姫が不思議そうに聞く。希は既に絵里の近くへ行っていた。

 

「愛生人と海未の2人は、別に全員で寝なくてもいいじゃん。って主張してて、穂乃果達は合宿なんだから皆で寝ないと。って主張してるの。で、夏希は寝てる」

 

若葉の説明を聞き終えた真姫は溜め息を吐いて、若葉の隣に座り携帯を弄りながら一言。

 

「話し合っても決まらないんだったら、くじで決めればいいじゃない」

『……』

 

突然訪れる静寂。真姫が不思議に思い顔を上げると、話し合いをしていた全員の頬に一筋の汗が流れている。

それから両者納得の上であみだくじで決める事になり、結果全員で寝る事になった。

 

「じゃあ決まったみたいだし、飯にしようぜ」

 

いつの間にか起きた夏希と料理当番のことり、若葉、にこの4人がキッチンに行く。

 

「さてと、じゃあカレーとサラダでも作るか」

「そうだね。じゃあカレーは俺とことりが作るから、夏希とにこはサラダをお願い」

「はーい」

「仕方ないわね」

 

と4人はそれぞれ作業を始めるも、少ししてにことことりの場所が入れ替わった。

 

「ごめんね。私がもたもたしてたから」

 

サラダを盛り付けながら謝ることり。と若葉の分まで横から奪う様にとり、料理を進める。

そしてカレーが出来上がる頃にちょうど白米が炊ける。

 

「皆~そろそろ出来上がるから運ぶの手伝ってー」

 

若葉がキッチンからリビングに呼び掛けると穂乃果達が入口に並ぶ。若葉とことりは1人ずつに食器などを渡し、テーブルに並べて貰う。最後に皆にカレーを装って若葉とにこが座る。テーブルの上にはカレーとサラダしかないが、全員から感嘆の声が上がる。

そんな中、絵里が隣に座っている花陽の前を見ながら疑問に思った事を聞く。

 

「な、なんで花陽だけお茶碗にご飯なの?」

「気にしないで下さい」

 

そんな絵里に花陽は目の前のご飯から目を逸らさずに即答する。

 

「にこって料理上手なんだね」

「ふっふ~ん」

 

若葉がそんな2人を横目ににこに言うと、にこは胸を張った。

 

「でも昼間に料理は料理人がしてくれてるって言ってなかったっけ?」

「確かに言ってたわね」

 

しかし夏希と真姫の言葉ににこはスプーンを両手で持つと

 

「いや~。にこ、こんな重いの持てな~い」

 

にこの言葉に愛生人とことりは苦笑いする。

 

「い、いくらなんでもそれは無理があり過ぎる気が……」

 

穂乃果も苦笑いしながら突っ込む。するとにこは立ち上がり

 

「これからのアイドルは料理の一つや二つないと、生き残れないのよ!」

 

と開き直った。

 

「にこっち。分かったから落ち着いて」

 

夏希がにこを座らせて、全員揃って手を合わせてから食事を始めた。

 

「あ~食べた食べた~」

「あ~美味しかった~」

 

晩御飯を食べ終え夏希はその場に、穂乃果はソファに横になる。

 

「2人とも、食後にいきなり横になると牛になりますよ?」

「もぅお母さんみたいな事言わないでよ~」

「そうだそうだ~」

 

海未の言葉に横になったまま反抗する2人。

 

「海未。こういう時はこう言うんだよ」

 

キッチンでお茶を淹れていた若葉は、戻って来るなり困り顔の海未の隣に座ると、横になったままの2人に笑顔で告げる。

 

「2人とも、食べてすぐ横になると逆流した胃液が食道を炎症させて癌になったりするよ?」

「「……」」

 

若葉の言葉が終わらない内に2人は目にも留まらない速さで姿勢を正す。他のメンバーも若葉の言葉に少し引き攣った笑みを浮かべる。

 

「それでこの後どうします?」

 

そんな沈黙を破ったのは若葉と一緒にお茶を淹れていた愛生人だった。

 

「よーし皆で花火をするにゃー!」

「その前にご飯の後片付けしなきゃダメだよ」

 

凛が元気に手を挙げて言うも、花陽に指摘される。

 

「あ、それなら私がやっとくから行って来て良いよ」

「え、でも……」

「そうよ。そういう不公平は良くないわ。皆も自分の食器は自分で片付けて」

 

花陽の指摘にことりが言うと、絵里が皆に呼びかける。

 

「それに花火よりも練習です」

 

海未の言葉ににこが、これから?と聞く。

 

「当たり前です。昼間あんなに遊んでしまったのですから」

「でも食後に運動は控えた方がいいんじゃない?体にも悪いだろうし」

 

すまし顔でそう言う海未の隣で若葉は頬を掻きながら否定の言葉を述べる。

 

「じゃあこれ片付けたら私は寝るわね」

 

真姫が食器を持って立ち上がり言う。そんな真姫を見て凛は真姫も花火に誘う。しかし海未も練習があると言って引かない。

 

「かよちんとアキ君はどう思う?」

 

このままでは埒が明かないと思った凛が花陽と愛生人に意見を求める。

 

「どう思うって聞かれても」

「わ、私は…お風呂に」

「あーそれ良いかも」

「第三の意見出してどうするのよ」

 

と選択肢を増やした2人ににこがツッコミを入れる。そんなイマイチ纏まらないメンバーを見て、真姫は困った表情をする。

 

「じゃあもう今日は皆寝ようか」

 

そんな中希が提案する。

 

「皆疲れてるでしょ。練習は明日の早朝、花火は明日の夜する事にして。ね?」

 

希の意見に凛も海未も納得し、頷く。そして皆で食器を片付けてから入浴となった。

 




夏「なんか久し振りだな」
愛「前回の投稿から二週間経ちましたからねー」
若「最初の頃の更新速度はどこへ行ったのやら」
『ハァ……』
夏「ま、気を取り直して始めようぜ」
若「そう言えば、感想の追記機能が無くなったね」
愛「確かに無くなりましたね。そのせいで作者も少し困ったとか」
夏「……なぁ今更だけど一つ良いか?」
愛「どうしたんですか?」
夏「このあとがきのコーナーでさ、そう言った【後々読んでも分からないネタ】を使うのやめね?」
若「と、言うと?」
夏「だってこれ上げてる時は確かにタイムリーだけど、それも少ししたらもう昔の事じゃん?」
愛「まぁそうですね」
若「じゃあ今後、ここで何話すのさ」
夏「別にネタなら他にもあんだろ。その時の本編の感想とか、ぶっちゃけた裏話とか。他にも色々と」
愛「じゃあ作者が今更8年前のアニメを見ていた事とか」
若「スクフェスでSRの絵里とURのにこを続けて当てた事とか」
若愛「「そういうのをネタにしちゃいけないって事!?」」
夏「ダメだって言ったそばからやってんじゃねぇ!」
若「はーい。じゃあもう時間なのでここら辺で」
愛「次の話は来週中には投稿出来る様頑張らせますので」
夏「無視するなー!」
若愛「「また次回とか!」」


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見事に寝てるなby夏希

あいつらが、暴れ出す!


「いや~良い湯だったね~」

「そうですね~」

 

皆より早く風呂から上がった若葉と愛生人はリビングの家具を退かし、布団を運んでいた。布団の場所は前もって真姫から聞いていたので、2人で協力して人数分の布団を持って来ているのだ。

 

「あ、お兄ちゃん達もう上がってたんだ」

「2人とも早いにゃ~」

 

2人が布団をリビングに運んでいると、穂乃果と凛に廊下で会った。

 

「あれ?他の皆は?」

「そろそろ来ると思うよ?……あ、海未ちゃーん」

 

愛生人と凛がリビングに入り若葉と穂乃果が廊下で話していると、ちょうど海未が角を曲がって見えた。穂乃果に名前を呼ばれて2人に気付いた海未は、タオルを肩に掛けて2人の元へやって来る。海未の後ろにはことりと花陽もいた。

 

「待たせちゃった?」

「いや、そんなに待ってないよ」

 

ことりと話しながらリビングに入ると、愛生人と凛が布団を並べていた。若葉は海未達と一緒に布団が置いてあった場所に戻り、毛布と人数分の枕を手に、リビングに戻る。

リビングに戻った4人が戻ると穂乃果と凛、にこ、夏希の四人が敷かれた布団12枚の上をゴロゴロと転がっていた。

 

「4人とも何してるの?」

「1回でいいからやってみたかったんだよ!」

「ロマンだろ!」

 

若葉がジト目で聞くと、穂乃果と夏希が勢いよく上体を起こし言う。

 

「4人とも敷くの邪魔だから退いて下さい」

 

海未に注意され、4人は渋々布団の上から退く。

 

「にしてもこうやって寝るとなると合宿みたいで楽しいな」

「合宿だからね?」

 

夏希は壁際にいる絵里と希の傍に立ち言うと、横の絵里に突っ込まれる。そして布団を敷き終わると次に始まったのは寝る場所決め。様々なやり取りが行われた結果

 

にこ ことり

凛 穂乃果

花陽 海未

希 絵里

真姫 夏希

若葉 愛生人

 

となった。

各々が決まった布団に入る。

 

「明日早いんだから大人しく寝るんだよー」

 

若葉の言葉に皆が返事をして電気を消して寝る。しかし

 

「ねぇ。ねぇことりちゃん」

「?どうしたの、穂乃果ちゃん」

 

静かな暗闇の中、中々寝付けない穂乃果は隣で寝ていることりに話しかける。

 

「そうやって話してたらもっと寝れないわよ。海未と若葉を見てみなさい。もう寝てるわ」

 

そんな穂乃果に絵里が注意する。そして絵里が名前を呼んだ2人を見ると既に寝息を立てていた。

 

「見事に寝てるな」

「夏希さんと穂乃果さんも割とよく寝れる方じゃないですか?」

 

さっきも寝ていたし、と愛生人が穂乃果と夏希に聞く。

 

「うん。でもなんか勿体無いって言うか」

「変にテンション上がって寝れないって感じかな」

「何度も言うけど、遊びに来てる訳じゃ無いのよ?明日はしっかり練習するんだから、早く寝なさい」

 

絵里に注意され、2人は大人しく毛布を掛けなおす。そんな絵里の近くでは希が真姫に話しかけていた。

そして再び訪れる沈黙……の筈が

 

突然バリッバリッ、と何かを齧るような音がリビングに響く。

 

「ちょ、何の音?」

「私じゃないよ」

「凛でもないよ」

「僕でもないですよ」

 

絵里の質問にことり、凛、愛生人が答える。そしてにこが電気を点けると穂乃果が毛布を頭から被り、煎餅を齧っていた。

 

「何やってるの?穂乃果ちゃん」

「いや~何か食べたら寝られるかな~って」

 

ゲホッゲホッと咳き込む穂乃果にことりが聞く。ことりの質問に穂乃果は苦笑いしながら答える。

 

「んもーいい加減にしてよね」

 

2人のやり取りに今まで横になっていたにこが体を起こし、文句を言う。しかしにこの文句は皆に届かなかった。なぜなら

 

「……にこっち。それ、何?」

「何って、美容法に決まってるじゃない」

 

夏希が言い辛そうににこに聞く。にこの顔は緑のパックと輪切りの胡瓜が張り付けられていた。そんな夏希ににこは何を当たり前な、と言い返す。

 

「ハラショー……」

「こ、怖い」

「うん」

 

絵里が顔を引き攣らせながら言い。花陽と凛が涙目で抱き合う。

 

「誰が怖いのよ!いいから寝るわよ"っ!」

 

そんな2人ににこが言い返しながら電気を消そうとすると、どこからか枕が飛んできてにこに直撃する。

 

「真姫ちゃん何するのー?」

「えっ?何言ってるの?」

 

希が枕を投げたのは真姫だと言うと、真姫は布団に寝た状態で眉をひそめて希を見る。

 

「あんたねー」

 

希の言葉を聞いてにこは真姫を睨む様に見る。そんなにこを無視して希は真姫の枕を手に取る。

 

「いくら煩いからって、そんな事しちゃダメよ!」

 

希は枕を凛に投げながら言う。その枕を両腕で受け止めると、希の意図を把握してなのかその枕を穂乃果に向かって投げる。その枕に防御出来ずに、顔で受け止める穂乃果。穂乃果はその枕を今度は真希に投げる。穂乃果が投げた枕を片手で防ぐ真姫。

 

「投げ返さないの」

 

そんな真姫の隣で希がニヤリと笑いながら言う。真姫が希に文句を言おうとすると、真姫のやや前から別の枕が飛んで来て台詞が中断される。真姫がそちらを見ると、絵里が口に手を当て笑っていた。それを見た真姫は絵里の枕を手にすると

 

「んもー!良いわよ。やってやろうじゃない!」

 

と枕投げの参戦を決め、枕をにこに投げる。それはにこの顔に直撃しにこが仰け反る。そして凛がことりに枕を投げる。ことりはその枕を自身の枕で凛の方へ軌道をずらす。突然の軌道変更に凛は対応出来ずに当たる。一方、愛生人は希と連携して夏希の両側から枕を一斉に投げるも、夏希はそれをしゃがんで躱す。それからが大変な事になった。

各々が近くの枕を持っては投げ、防いではそれを別の人へと投げる。そんなバトルロイヤルが行われていたのだが、夏希と穂乃果が投げた枕が海未と若葉に当たる。

 

『あ……』

 

部屋中に流れるやっちまった感。皆が静かに2人を見つめる。皆に見られている中、2人は当たった枕を力強く握る。

 

「わ、若葉?」

「あ、あの~……大丈夫?」

 

若葉と海未の近くにいる夏希と穂乃果が恐る恐る話し掛ける。話し掛けられた2人はゆらぁりと立ち上がる。その表情は前髪で隠れて見えない。

 

「これは…一体…」

「え、えっと~」

 

普段とは違い、低い声で起きてたメンバーに聞く若葉にことりが苦笑いで誤魔化そうとする。

 

「どういう事ですか?」

「ち、違っ、狙って当てたわけじゃ」

「そうだよ。そんなつもりは全然」

 

続く海未の質問に真姫と穂乃果が言い訳をし始める。しかし

 

「明日、早朝から練習するって言いましたよね?」

「大人しく寝るんだよって、言ったよね?」

 

海未と若葉の一言に黙ってしまう。その代わりにことりが頷いて返事する。

 

「それをこんな夜中に」

「覚悟は出来てるよね?」

 

絵里と愛生人の静止の声も聞こえてないのか止まる気配のない2人。

 

「海未ちゃんって寝てる時起こされると物凄く機嫌が」

「そう言えばお兄ちゃんも」

 

とことりと穂乃果が2人の機嫌の悪さを説明しようとすると、穂乃果と花陽の間を何かが飛ぶ。

 

「ぐあっ!」

「にこちゃん。ダメにゃ、もう手遅れにゃ」

 

2人が振り返ると、凛がにこを抱きかかえていた。その傍にはにこを沈めたであろうと思われる枕が一つ。

 

「超音速枕……」

「ハラショー…」

 

花陽と絵里が恐ろしいモノを見る目で海未を見る。

 

「がはっ」

 

しかし海未に何かをする前に、別の方向からまた声が上がった。

 

「夏希さん!?」

 

愛生人が声のした方を見ると若葉の投げた枕により、夏希が沈んでいた。

 

「枕の軌道が見えんかった……」

 

希の言葉で皆は理解した。若葉も海未同様枕を超音速で投げて夏希を沈めた、と。

 

「穂乃果ちゃん。どうしよう」

 

ことりはその状況を見て穂乃果に相談する。すると穂乃果は枕を持ち、2人を見て構える。

 

「やられるまえにやるしかぬぁ!」

 

枕を構えた事を感じたのか、若葉が穂乃果に枕を投げ、沈める。そして穂乃果の仇と言わんばかりにことりが若葉に枕を投げようとすると、それよりも先に若葉の枕がことりを襲う。

 

「ごめんうみ"っ!」

 

ことりがやられると同時に、絵里も海未に枕を投げようとするも、振りかぶった所で逆に枕を投げられて沈んでしまう。次に2人が花陽と凛に狙いを付け、そちらを向く。狙われた2人は互いに抱き合い、涙目になる。

そして若葉と海未が2人に向かって枕を投げようとしたその時

 

「ぬぅ」

「ぐぅ」

 

海未に一つ、若葉に二つの枕が後ろから飛んで2人に当たり、2人が床に倒れる。花陽と凛が倒れた2人の向こうに見たのは、枕を投げた体勢で動きを止めた希、真姫、愛生人だった。

それから5人は特に騒ぐ事もなく、静かに空いている布団に入り寝た。

 

☆☆☆

 

それから数時間後、最初に目を覚ました若葉が見たのは辺りに散らばる枕と、雑魚寝状態になっていたリビングだった。




若「成る程。あの状況はこうやって出来てたんだ」
愛「加害者が何か言ってますよ(ボソッ)」
若「愛生人何か言った?」
愛「いえ!何も言ってません!」
若「そう?言いたい事あったらちゃんと言うんだよ?」
愛「はい!」
夏「言葉だけ見てると若が脅してるみたいだよな」
若「?」
夏「いや、何でもない」
愛「それにしても若葉さんが最初に起きるなんて、凄いですね」
夏「だよなー。なんやかんやで起きてたのにな」
若「別に起きてなかったと思うけど」
愛夏「「あれ無意識だったの!?」」
若「だって覚えてないし?」
夏「まぁ、あれだな。今回の合宿で分かった事は、寝てる若葉と海未はそっとしとくのが一番。だな」
愛「ですね。じゃないと色々と大変ですから」
若「そうかな?」
夏「自覚が無いのが恐ろしい」
愛「さて、では今回の話の振り返りでもしてみましょうか」
若「それってもう殆ど終わってない?」
夏「ぶっちゃけ話としては、枕投げだけで今話の半分を占めてる事くらいだし」
愛「そんなに書いてたんですね」
若「作者曰く、「気付いたらこんな事に……」だってさ」
夏「それは字数の事なのか、若の暴走なのか」
愛「世の中には知らない方が幸せな事があるんです」
若「でも、聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥って言うよ?」
夏「一生の恥でいた方が良い事もあるさ。きっと」
愛「それって、作者がいつかあとがきを限界字数まで書く事を夢見てる。とかですか?」
若「え?そんな事夢見てるの?」
夏「あれ、あとがきの限界字数って何文字だっけ?」
愛「えーっと確か……20.000字ですね」
若「その場合ってやっぱり話すの俺らなのかな?」
夏「つか、20.000字って……本編でも最高四千字弱なのにその5倍の量とか無理だろ。絶対話すネタが無くなるって」
愛「まぁ読者の皆さんも読むの疲れるでしょうし、流石にやる事は無いと思いますが……」
若「読者の希望があればやりかねないよね」
夏「その場合はμ'sの皆も呼ぶか。後は関係者とか」
愛「関係者?それって南理事長とかですか?」
夏「若葉を刺した犯人とか」
若「マジで!?」
愛「流石にそれは無いんじゃ」
夏「やるかもしれないのが作者なんだよ」
若「他には未だに発表されてない夏希の彼女とか?」
夏「あ、それなら次かその次の話で明らかになるらしいぞ?」
愛「おぉ!それは必見ですね!」
若「じゃあその次かその次の話がいつになるか分からないけど、今回はここで終わりにしようか」
夏「だな」
愛「あ。あとがき20.000字は希望があればやりますよ?」
若「じゃあまた次回とか!」
愛夏「「次回とか!」」


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わーってるよby夏希

いやー予定では昨日投稿する予定だったんですけどねぇ。

ま、予定は予定ですから。

さて合宿編中編の始まり〜


「おはようさん」

「あ、希おはよう。起こしちゃった?」

 

若葉が布団を畳んでいると希が目を擦りながら挨拶し、若葉の言葉に首を振る。

 

「ウチいつも大体この時間に起きるから。そう言う若葉君も早起きなんやね」

「俺は中学入ってから家の仕込みの手伝いとかしてたからね。まぁ最近は手伝えなくて父さんが少し寂しそうだったけど」

「ふ〜ん。親孝行しっかりしてるんや」

 

苦笑いで言う若葉に微笑みながら希が言うと、若葉は少し照れた風に頭を掻く。

 

「そ、それより朝ご飯何が良い?今ならリクエスト出来るよ?」

 

若葉はそんな様子を誤魔化す様に聞く。希はうーん、と少し考えるとチラリと寝ている皆を見る。

 

「ここは無難にトーストとベーコンエッグとかで良いんとちゃう?」

「ん、分かったよ」

 

若葉は頷き、それで?と続ける。

 

「真姫の心配事は解決した?」

「心配事?」

「あれ?昨日買い物に2人で行ったのってそれが理由じゃないの?」

 

若葉の言葉に希は少し驚いた後、ふふっと笑う。

 

「若葉君って鈍いくせに鋭いんやね」

「鈍いのに鋭い?」

「こっちの話や。真姫ちゃんについてだったらもう解決したよ。ほな」

 

そう言って希は立ち上がる。現在、2人は皆の睡眠の邪魔をしないようにと壁際に並んで座っていた。

 

「どこに行くの?」

「昨日皆で遊んだ浜辺」

「そか。行ってらっしゃい」

 

若葉も立ち上がり希を見送ると、寝巻きから着替える為にリビングから離れ

 

「若、随分早いんだな」

 

ようとして夏希に声を掛けられる。

 

「おはよう夏希」

「おはようさん」

 

若葉が夏希の方を見ると、ちょうど起きた所なのかノビをしている夏希がいた。

 

「俺は今から着替えに行くけど、夏希はどうする?」

「あー…もう一眠り、と行きたい所だけど完全に目が覚めたからなぁ………………俺も着替えるか」

 

若葉の問いに長考した結果、立ち上がり若葉の後をついてリビングから離れる。

 

「そう言えば気になってたんだけどさ」

「うん?」

 

若葉は着替えながら、先程から気になっていた事を聞く。

 

「夏希ってメガネなんだね」

「ん?あぁ言って無かったっけ。つか昨日の夜も掛けてたぞ?」

「そうだったっけ?」

 

などと他愛もない話をしながら着替え終わり、リビングに戻る。

 

「見事にアッキーしかいないな」

「だね。さっき希が浜辺に行くって言ってたからそこじゃない?」

 

若葉は寝ている愛生人を素通りしてキッチンに向かい、夏希はリビングに残り布団を畳むついでに愛生人を起こす。

 

「アッキー起きろー」

「うぅん……あと……5、いや10分…」

「はいはい」

 

寝返りを打って言う愛生人に夏希は適当に返事をすると、毛布を剥がす。

 

「んぅ?夏希さん?」

「おはよう。アッキー以外は皆起きてるぞ」

「そげな馬鹿な!」

 

夏希の言葉に愛生人は叫びながら勢いよく飛び起きる。

 

「何があり得ないの?」

 

愛生人の叫びが聞こえたのか、若葉がキッチンから顔を出して尋ねる。愛生人はそんな若葉に苦笑いで何でもない、と返すと自分の布団を畳み始める。

若葉が全員分の朝食を作り終わった頃、μ'sの皆が帰って来る。

 

「あら、いい匂いね」

「おかえり〜ちょうど準備出来たから座ってて」

「「はーい!」」

 

若葉の言葉に元気よく手を挙げ答える穂乃果と凛。逆に運ぶのを手伝う絵里と海未、花陽。

 

「若葉君って良いお父さんになりそうやね」

「そ、そうね」

 

希は真姫に囁くように言い、真姫はそれに顔をほんのり赤くして頷く。そんな真姫を見て首を傾げる若葉。

 

「ほら、今日は1日練習なんだからさっさと食べて、練習するわよ」

「そうだね。じゃあ」

 

と、ことりの合図で手を合わせ、朝食を食べ始める。

 

☆☆☆

 

「現在の時間は午後五時。練習はダンスのステップの確認です」

「あー……愛生人?何してんの?」

 

夏希はカメラを構えて練習風景を撮っている愛生人をジト目で見る。

 

「何ってμ'sの練習風景を撮ってるんですよ。若葉さんに頼まれまして」

「若に?」

 

夏希はステップのリズムを取っている若葉を見る。若葉は中庭で手を叩いてリズムを取りながら、気になった箇所を指摘している。夏希と愛生人は2階のベランダからその風景を見下ろしている。

 

「それより夏希さんも早く布団を取り込まないと日が暮れちゃいますよ」

「わーってるよっと」

 

夏希は布団を中に仕舞いながら、時折練習をチラ見する。

 

「あ、練習終わったみたいですよ」

 

愛生人の言葉に夏希が下を見ると愛生人の言った通り、穂乃果達が家の中に入ってきていた。愛生人はカメラを仕舞い、夏希は最後の布団を手に中へ戻る。

 

「あ、夏希。ちょっと」

 

階段を降りて1階に向かうと夏希は若葉に呼ばれた。

 

「どうした?買い物か?」

「そうだよ。今日の晩御飯で使う材料+αを買いにね」

 

αの部分に首を捻りながらも、夏希は若葉と共に車でスーパーへ向かう。

 

一方、家に残った10人はと言うと

 

「はいスリーカード」

「凛はストレートにゃ!」

「ふっふっふ。ウチはハイカードや!」

「希さん、ハイカードってカッコよく言ってますが、つまりは役なしですからね」

「わ、私はフォーカード、です」

 

ことり、凛、希、愛生人、花陽の5人は花陽が持ってきたトランプでポーカーをやっていた。他の5人は何をするまでもなく、テレビを見たり、ソファに寝転んだりと自由に過ごしていた。

 

「お兄ちゃん、買い物に行くなら一緒に連れて行ってくれればいいのに~」

「穂乃果は昨日も買い物について行こうとしてましたね」

「だって知らない場所だよ?行ってみたいじゃん」

 

海未の呆れた様な視線を気にも留めず、穂乃果はウキウキと返す。

 

「夏希達が帰って来るまで暇ね」

「全くよ。一体何を買いに行ったのかしらね」

「大方今日の晩御飯じゃない?お昼の時材料が無いって言ってたから」

 

絵里、にこ、真姫の3人は買い物に行った2人について話していた。にこの疑問に、真姫は昼間聞いた若葉の夏希の会話をもって答える。

 

「ねぇ真姫ちゃん達も一緒にやらない?」

 

そんな自由に過ごす5人を凛が遊びに誘う。

 

「でもトランプを10人でやるのは無理じゃない?」

「だーいじょうぶ!そんな事もあろうとこれ、持って来たから」

 

真姫の言葉に凛はUNOを取り出し、人数分配り始めると穂乃果と絵里がカードゲーム組の傍に座る。残った3人も仕方ないといった様子だが、楽しそうに一緒にテーブルに着き、配られたカードを 手に取り参加する。

 

☆☆☆

 

「ただいまー」

「今帰ったぞー」

「おっさんか!」

 

ゲームが始まり暫くすると、買い物に行っていた若葉が夏希にツッコミを入れながらリビングに入って来る。

 

「総員直ちに中庭に集合せよ!」

 

入って来るなり夏希がビニールを持ったまま中庭に駆け出すも、そのいきなりの行動について行けてない他のメンバー。

 

「えーと……どうすれば良いの?」

 

結果、穂乃果が若葉に指示を仰ぐ事に。若葉は若葉で2つ持っていたビニールの片方を壁に立てかけている。

 

「えと、夏希の言う通り中庭に行ってて。あ、愛生人はこれもよろしくね」

 

若葉は残ったビニールを愛生人に渡すとどこかへと行ってしまう。困った穂乃果達は取り敢えず、と若葉の言った通りに中庭に出る。すると中庭に出てすぐの所で夏希が壁に手を付けて項垂れていた。

 

「夏希、反省のポーズなんてとってどうしたの?」

「あー……いやね。勢いよく駆け出したは良いものの、下準備が全くしてなかった事を忘れててな」

 

ハハハ、とビニールを地面に置き、若葉同様どこかへと行く。そんな2人の行動に首を捻る9人と、ビニールの中身を見て納得する愛生人。

 

「さぁお待たせしました!」

「これより昨夜提案されたバーベキュー、通称BBQの始まりだぁ!」

 

バンッ!という効果音と共に、バーベキューセットを持った若葉と夏希が中庭に現れる。そのいきなりの宣言に凛と穂乃果、ことり、花陽はノリノリで手を挙げる。

 

「「「「イェーイ!」」」」

 

それからの行動は迅速で、気付いた時には既に組み立てられたセットに若葉がチャッカマンで炭に火を付けていた。

それから手分けして野菜を切る係、串に野菜と肉を刺す係、火の管理をする人の3つに分かれた。野菜を切る係には希、ことり、にこ、夏希、絵里の5人。串に刺す係には花陽、穂乃果、凛、愛生人、海未の5人。残った若葉と真姫が火の管理係である。

 

「それにしても、まさかバーベキューをするなんてね」

「中々出来る機会無いもんね」

 

真姫と若葉は団扇で空気を送りながらノンビリと話している。中から凛が肉だけの串を作ったりして、海未に叱られている声が中庭の2人の元まで届く。

 

「フフ。凛らしいわね」

「そうだね」

 

それから2人は串と野菜が来るまで、静かに火を見続けていた。

 

「若お待たせ〜」

「お、やっとだね。鉄板と金網、両方温まっていていつでも準備OKだよ」

 

OKだよ。と言いつつ既に鉄板で野菜や肉を焼き始めている若葉。

 

「ほら焼けたよー」

 

と焼けた物から各自の皿に盛り付けていく。皆も若葉によそわれた皿や、串を手に歓談している。そんな若葉に真姫がなにやら思案顔で近付く。

 

「若葉食べてる?」

「うん。ちょくちょくつまんだりしてるよ」

 

真姫の言葉に若葉はほら、といくつかの野菜や肉が乗った皿をトングで示す。真姫はその皿を見て、肉を一つを箸でつまむ。

 

「…………あ、あーん」

「ほぇ?」

 

真姫の予想外の言動に思わず変な声が出てしまう若葉。真姫は頬を赤くしながらも肉をつまんだ箸を動かさないで、若葉に催促する

 

「は、早く口開けなさいよね」

「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」

 

口を開けて真姫に食べさせて貰う若葉の頬も赤かった。他の皆はそんな2人の様子を見て微笑んでいた。

それから見事にバーベキューの具材を完食した12人は、買い物の時に買ってきていた花火を楽しんでいた。

 

「アキ君見て見て~」

「お兄ちゃん凄いでしょー」

「フン、あんたら甘いわね。見よにこにーの華麗な花火捌きを!」

 

凛と穂乃果が花火を両手に持ちはしゃいでいると、にこも対抗して両手に花火を持って円を描いたりしている。

そんな3人に海未や愛生人が注意するも、夏希も3人にノって両手の指の間に花火を挟み騒いでいる。

 

「皆楽しそうね」

「皆でやるからテンション上がってるんやね」

「そうだね」

 

絵里、希、花陽は縁側に座って花火を楽しんでいた。穂乃果達4人は更にテンションが上がり打ち上げ花火や、パラシュート花火で盛り上がっている。

 

「綺麗だな~」

「なに年寄りみたいな事してるのよ」

 

若葉がそんな光景を見ながらお茶を啜っていると、真姫が線香花火を手に隣に座る。

 

「ねぇ若葉ってさ。お祭りとか、好き?」

「うん?まぁ人並みには好きかな。どうして?」

「今度神田明神の近くでお祭りあるじゃない。だから、その」

「あー、その。言いにくいんだけど、その日ちょっと用事が入っちゃってて」

 

若葉はとても言いづらそうにだが、真姫の誘いを断る。断られた真姫は残念そうに俯き、そう、と呟いて二つ持っていた線香花火を一つ若葉に渡し、火を点ける。

 

「で、でも来てくれると、嬉しいかな」

「そう」

 

それから2人は線香花火が落ちるまで静かに見ていた。




夏「皆久しぶり!」
若「1週間以上も開いたもんね」
愛「前書きでは昨日って言ってますけど、その前書きを書いたのって投稿する2日程前でしたよね?」
夏「因みにこの話を書き始めたのが前書きを書く4日前、つまり約1週間前だな」
若「書き方としては、書き始める少し前にどんな内容にするかを決めて、書きながら細部を書いてくって感じ?」
愛「それか書き始める1ヶ月以上前から考えてる事とかもあるらしいですよ?今だって文化祭の時に○○○さんの代わりに○○さんを倒すか、○○ちゃんを怪我させるかとか考えてるらしいですし」
夏「伏字の意味、あるのか?」
愛「ホラネタバレになっちゃいますから」
若「そんな事より、気になるのが前書きにあった『中編』ってなに?」
夏「なにって、そりゃ上中下編の中編だろ」
愛「いやいや、世の中には中の下編とかもありましてですね」
夏「そんなのあってたまるかぁ!」
若「まぁなんにせよ次回で合宿編も終わりなんだね」
愛「ですね」
夏「因みにどんな話にするかは決まってるから早くて来週中、どんなに遅くても今月中には投稿出来るぜ?」
若「で、その後に夏希の彼女公開、と?」
愛「とうとう次々回公開ですか!?」
夏「それじゃあまた次回とか!」
若「話逸らしたね。まぁ近い内に分かるからいっかな。また次回とか」
愛「それにしても今回はメタかったですね。また次回とか!」


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あーじゃあ次はby夏希

合宿の最後を飾るもの、それは夏の夜の風物詩です。

それでは合宿下編、どうぞ!


花火を堪能した一行は前日と同じ様に風呂に入り、同じ並びで寝転がる。

 

「さて、お風呂も出た事やし。夏の夜、やる事と言ったら」

「言ったら?」

「怪談だよ!」

 

希の言葉に若葉が聞き返すと、対角線上にいる穂乃果が元気に挙手しながら言う。その時絵里が少し引き攣ったのを夏希は見逃さなかった。

 

「そ、それよりも早く寝た方が良いんじゃない?ほら昨日の事があるし」

「昨日?」

「なんかあったっけ?」

 

絵里が若葉と海未をチラリと見ながら言うも、当の本人達は絵里の視線に首を傾げる。その様子に絵里は溜め息を吐く。

 

「で、誰から行く?」

「それは言い始めた希か穂乃果ではありませんか?」

 

寧ろノリノリな若葉と海未の意見に穂乃果がじゃあ、と話し始める。

 

「これはお母さんから聞いたんだけど。実はお母さん、音ノ木坂の卒業生で、学生の頃に広まった噂があったんだ」

 

穂乃果はそう前置きし、話し始める。過去音ノ木坂に広まった噂話を。

 

「放課後、女子が特別教室が並ぶ4階に行った。もう18時になる所だった。各教室の鍵の返却が18時だから、校内には人の姿がほとんど無かったんだって」

 

穂乃果の言う通り、音ノ木坂では今も昔も18時に各教室の鍵を返却しなければいけなく、延長する場合は前もって理事長に申請するか、顧問の先生に報告する事が義務付けられている。

 

「それで、3階から階段を登って行く途中で、ピアノの旋律が流れて来る事に気が付いたの。幸か不幸かその子は音楽鑑賞の趣味があったから、その音色がとても素晴らしく、運指の技術、豊かな表現力、共に圧倒的である事に気付いた。曲そのものも耳に馴染みのあるものでピアノソナタ『月光』。その子は忘れ物を取りに戻った所だったのに、暫く、その旋律に浸って茫然と佇んでいた」

 

穂乃果が一度話を区切るも、誰も何も言わなかった。そして穂乃果は続ける。

 

「女子はそのピアニストに一言賛辞を伝えたくて、音楽室の扉に手を掛けた。確かに音楽はそこから聞こえていたし、音ノ木坂にはピアノはそこしかなかったし、それに、その近くで音楽室以外のどこにピアノがあるのだろうか。

だけど、扉を開けようとした瞬間に、音色はふと途切れてしまう。……どうしたのだろう?そう思いながら、ゆっくりと扉を開ける」

 

そこからが佳境なのか、穂乃果の声が心なしか低くなる。

 

「すると、音楽室の中は異様な雰囲気に満ちていた。

全てのカーテンは閉め切られ、酷く薄暗かった。女子は咄嗟に、ピアノに目をやった。しかしそこには誰もいなかった。ピアノの蓋は上がっているのに、ピアニストはいなかった。どうして、とその女子はたじろいだ。目だけを左右に巡らせて、そして彼女は見た。……長い乱れ髪を頭に垂らし、ブレザーを纏った全身は見るからにぐったりとして力なく、そして目は爛々と血走った女生徒が、音楽室の隅からじっと見つめていたのを!」

 

いきなり声を大きくした穂乃果にヒッ!と少し引き攣った声を出す絵里。そんな絵里に構わず穂乃果は話のオチを続ける。

 

「その女子は総毛立つ恐怖に衝き動かされ、一目散に逃げた。振り返る事も無かった。彼女は後に知る事になる。その日は音楽部が音楽室を占有する日だった事。音楽部の部員はただ1人の3年生がいるだけだという事。そしてその3年生がは不幸な事故で怪我をして、ピアノを弾く事など出来はしないのだという事を……」

 

穂乃果の話が終わると共に、部屋中に何人かの短い悲鳴が響く。その悲鳴を聞いて、怪談を語った当の本人はしてやったりと悪い笑みを浮かべていた。

 

「あーじゃあ次は俺が話すよ」

 

そんな空気の中、夏希が手を挙げる。皆が夏希を見ている事を確認すると、夏希は声を低くして話し始める。

 

「さて、俺がこれから話すのは、穂乃果の話と違ってゾッとする様な話だ」

 

そのいかにもな夏希の雰囲気に絵里や穂乃果が唾を飲み込む。しかし次の瞬間

 

「いきなり話は変わるが、皆は仮設揚重機って知ってるか?」

 

普段通りのトーンで話す夏希にズッコケる。夏希の質問に答えたのは若葉だけだった。

 

「あれでしょ。良く高層ビルとかの建築で使われる鉄骨とかを上に運ぶクレーン」

「そう。その仮設揚重機。アレって実はものすごく怖いんだぜ?」

 

若葉の答えに頷きながら話を続ける夏希。しかし周りの反応はイマイチで首を傾げている者が多数。

 

「鉄骨を運んでる時に、ふとこう思うんだ」

 

この鉄骨を落としたらどうなるんだろう、と

 

夏希の話はそれで終わりだった。聞いていたメンバーはその光景を思い浮かべ、ゾッとしていた。

 

「な?ゾッとする話だったろ?」

「怖いの意味が全然違うにゃ!」

 

夏希の質問に凛がしゃー!としながら反抗する。

 

「なんか夏希の話を聞いてたら俺も一つ思い出したよ」

「それでさっきから何か書いてたの?」

 

若葉が夏希の次に、と手を挙げると夏希の話の最中に若葉が書いていた紙を真姫が覗き込むと

 

「あ、見ちゃダメだよ」

 

内容を見る前に若葉に隠される。そして若葉は皆を見回す。

 

「じゃあこれから俺がする質問に心の中でいいから答えてね」

 

若葉が人差し指を立てながら言う。その言葉に皆が頷く。

 

「では問1。次の8つの中からピンと来たのを選んでね」

 

と言って若葉が皆に見せた紙には以下の事が書かれていた。

①お土産 ②冬 ③コーヒー ④ゴミ箱 ⑤温泉 ⑥コップ ⑦鼻水 ⑧スキー

 

若葉は皆が頷いたのを見ると二枚目の紙を見せる。

 

「続いて問2。問1で選んだ物と関係あると思うものを選んでね」

 

①電卓 ②雪 ③針 ④ティッシュ ⑤米 ⑥饅頭 ⑦牛乳 ⑧電話

 

「ではでは問3。問2で選んだものを強くイメージして、その特徴を選んで」

 

①大きい ②白い ③狭い ④甘い ⑤青い ⑥鋭い ⑦遅い ⑧暗い

 

若葉は先程と同じ様に三枚目の紙を見せる。

 

「これで最後だよ、問4。問3で選んだ特徴に当てはまるものを選んで、それを強く思ってて」

 

①ナイフ ②犬小屋 ③ピラミッド ④宇宙 ⑤砂糖 ⑥血 ⑦亀 ⑧深海

 

それから少しして若葉はうん?と言って再び見回すと、いつもより少し低い声でねぇ、と言う。

 

「なんで、砂糖を選んだの?」

 

若葉の言葉にゾッとした絵里と花陽は思わず腕をさすり、他のメンバーも抱き合ったりとする中、2人程平然としていた。愛生人と海未だった。

 

「あれ?2人共どうしたの?」

「いや、この状況で言いにくいんですけど」

「これって誘導心理テスト、と言うものですよね」

「あ、2人共知ってたんだ」

「ど、どういう事なの?」

 

2人の言葉にあっけらかんとした様子で若葉は2人に返し、絵里達が若葉達に説明を求める。

 

「まぁタネは簡単だよ。自身で選んだと思わせて、その実はその選択は選ばされていたって感じかな」

「てことは……」

「怖い話でもなんでもないって事です」

 

海未が答えると他の怖がっていたメンバーもホッと息を吐く。

 

「じゃあ最後に僕が」

 

次で最後に、となった所で愛生人が手を上げる。若葉の誘導心理テストの後の何とも言えない空気の中、愛生人が手を挙げると正座し、どこからか扇子を取り出す。

 

「暇をもてあました街の者が数名集まり、それぞれ嫌いなもの、怖いものを言いあっていく。「クモ」「ヘビ」「アリ」などと言い合う中に1人、「いい若い者がくだらないものを怖がるとは情けない。世の中に怖いものなどあるものか」とうそぶく男がいる」

 

愛生人がそこで一度話を切る。

 

「他の男が「本当に怖いものはないのか」と聞くと、うそぶいていた男は渋々「本当はある」と白状する。「では、何が嫌いなのか」と念を押され、男は小声で「まんじゅう」と呟く。男はその後、「まんじゅうの話をしているだけで気分が悪くなった」と言い出し、隣の部屋で寝てしまう。

残った男たちは「あいつは気に食わないから、まんじゅう攻めにして脅してやろう」と、金を出し合い、まんじゅうをたくさん買いこんで男の寝ている部屋へどんどん投げ込む」

 

そのタイミングで穂乃果がうわぁ、と声を出す。不思議に思った愛生人がそちらを見る。

 

「穂乃果さんどうかしました?」

「いや~寝ているだけでお饅頭が投げ込まれるなんて、穂乃果からしてみたらちょっと嫌だなーって」

「あー確かにウチは和菓子屋だもんね~」

 

と若葉が納得のいった声を出し、愛生人が話を続ける。

 

「目覚めた男は声を上げ、ひどく狼狽してみせながらも、「こんな怖いものは食べてしまって、なくしてしまおう」「美味過ぎて、怖い」などと言ってまんじゅうを全部食べてしまう。一部始終を覗いて見ていた男たちは、男に騙されていたことに気付く。怒った男たちが男をなじり、「お前が本当に怖いものは何だ!」と聞くと

 

「このへんで、濃いお茶が1杯怖い」

 

と。おあとがよろしいようで」

 

締めの挨拶と共に愛生人がお辞儀する。と同時に何人かからツッコミが入る。

 

「愛生人君、おあとがよろしいようでって次の人の準備が出来ました。って意味だから使い方違うよ?」

「それに怪談で落語やるってどうなんだ?」

「そうだよ。今は怪談を話すんだよ」

「その文句、夏希と若葉は言えませんからね?」

「て言うか、穂乃果ちゃんって落語見るんやね」

「お兄ちゃんがよく見てるから」

「おっさんか!」

 

にこが若葉にツッコんだ所で愛生人の落語に対する感想が終わる。

 

「ほなそろそろ寝よか」

「そうですね」

 

にこのおっさん発言に少ししょんぼりしている若葉を放置して各々布団に入り、寝始める。皆が寝た頃に若葉も立ち直ったのか、自分の布団に入り目を閉じる。

 




若「それにしても今回の怪談話は酷かったね」
夏「まぁ怪談、ゾッとするかは人次第、心理テスト、落語だからな」
愛「そう言われると主題の怪談は穂乃果さんしかしてませんね」
夏「つか、怪談の場で落語やるってどゆこと?」
愛「怪談をしてるのに落語を始めるとか怖くないですか?」
若夏「「確かに!」」
愛「因みに、夏希さんの話以外は元があるので調べると出てきますよ!」
若「いっそここで元を言ってみる?」
夏「長くなりそうだから止めとこうぜ」
愛「ですね。一度書こうとして諦めてるくらいですから」
若「それじゃあ久々の次回予告いく?」
夏「いくか。じゃあアッキー、よろしく」
愛「分かりました!次回、遂に57話にしてやっと夏希さんの彼女が判明します!」
若「やっとだね」
結構以外っちゃー以外な人だよ
夏「お、作者だ」
ヤッホー
若「そう言えば作者に聞きたい事あるんだけど」
何々?
若「俺の心理テストの時、愛生人と海未はなんの答えに行き着いたの?」
それは本人に聞いてみましょう!
愛「えと、僕はスキー→雪→(かまくらの中は)暗い→深海で深海です」
海「私はゴミ箱→針→鋭い→ピラミッドでピラミッドです」
夏「ちょっと待て!うーみんの家にはゴミ箱に針が捨てられてるのか!?」
海「私の家が家ですから。使えなくなった針などを捨てる箱があるのです」
若「成る程ねー。因みに作者は初見でどれになったの?」
砂糖だけど?
愛「まぁ初見ではそうなる人が多数ですもんね」
夏「おっとそろそろ時間だな。因みに次の話は今どのくらい出来てんだ?」
うーんとこれを書いてる時は700字後半かな。
若「て事は話の大体2〜3割くらい?」
愛「ですね。いつもの字数を見る限りだと」
夏「じゃあ最後の一言はうーみんに任せた!」
海「え!?なんですか、最後の一言って?え、えと」
若「海未、また次回とか!だよ」(ボソボソ)
海「わ、若葉、ありがとうございます。ではまた次回とか!」


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やたー!by雪穂

若「今回は珍しく前書きのコーナー!」
夏「本当に珍しいな」
愛「何でも後書きにはボツになった話が載せられるとか」
若「因みにこの場合の"ボツになった"ていうのは"最初はこっちで行こうと思ってたけど、やっぱり辞めた"って事だよ」
夏「いやなんでだよ」
愛「でも大元は変わって無いんですよね?」
若「そうだね〜細部が違うだけで大体は同じかな」
夏「尚更書き直さなくてよかったんじゃねぇの?」
若「あ、でも大きく変えた点があるとか」
愛「因みにボツは文字数7.000字越えで書き途中だったとか」
夏「書いてる途中のやつを載せんなよ……せめて書き上げようぜ?」
若「まぁ最初はプール同様3話で構成するつもりだったらしいよ」
愛「あと翔平さんも出して「2.3ヶ月振りだな!」てメタいのをやりたかったらしいですけど、作品内でもその位経っていたから使えなかったとか」
夏「あー最後に出て来たのってWonder Zoneの時だもんな。あれってリアルで3ヶ月前だっけか?」
若「作品内の月日を考えると夏休み前だから六月か七月だもんね。ちょうど1.2ヶ月って所じゃん」
愛「て事は頑張れば出来たって事ですね」
夏「まぁ今回はいつもよりも頑張って書いてたからな。そのくらい我慢してやれや」
若「今回そんなに頑張っていたの?」
愛「確か700字で2.3割って言ってましたから、大体2.100~3.500字くらいですかね」
夏「いやいや、そんな文字数じゃいつも通り。“いつもより頑張った”にはならない」
若「じゃあ」
夏「そう!今回は過去最多文字数の10.000字超え!」
愛若「「ナンダッテー」」
夏「まぁその8割が若とマッキーが占めてるんだけどな」
若「なんだって!?」
愛「まぁ僕らの出番はそんなにありませんでしたからね。むしろ内容的にはボツの方が出番があったとか」
夏「っと。最後の愚痴は放っておいて前書きなのに長くなっちまったな。それじゃあ」
愛若「「また次回とか!」」
夏「いやいやいやいや!前書きなのに終わらしてどうするよ!」
若「じゃあどうするの?」
愛「あ、そう言えば昔使ってた挨拶がありましたね」
夏「よし、それいくぞ。μ's!」
『ミュージック……スタート!』


「若葉。少しお願いしたい事があるんですが……」

 

練習が終わって、男子3人が後片付けをしていると、海未が若葉の元へやって来る。

 

「お願い?」

「はい。実は明日来る予定だった着付けの先生が急病で来れなくなってしまったので、出来れば若葉にお願いしたいのです」

「あーそういう事ね」

 

海未のお願いの内容に腕を組んで考える若葉。そんな時、突然若葉の背中に衝撃が来る。勢いが良かったのか、若葉が少し顔を顰める。

 

「良いじゃん。どうせ穂乃果と雪穂のもやってくれるんでしょ?」

「なんでその事知ってるの!?それ母さんに頼まれたの昨夜なのに」

「ふっふーん。今朝お母さんから聞いたんだー」

 

若葉の問いに穂乃果は若葉の背中にくっ付いたままドヤ顔で答える。そのドヤ顔を見た若葉は、首に回されている穂乃果の腕を掴むとその場で回り始める。突然の回転に穂乃果は叫び声を上げるも、それを無視して若葉は回る。

それから数分して、その場にはグッタリした様子で屋上のフェンスに寄り掛かる兄妹がいた。

 

「あの、若葉?」

「あぁ海未。そのお願いなんだけど、その先生程立派に出来ないなら請け負うよ」

「本当ですか!ありがとうございます!では詳細は後で連絡します」

 

若葉の返事に海未は笑顔で屋上から校舎内に入って行く。

 

「ねぇ若葉君」

「ことり。お疲れ」

 

若葉が片付けに戻ろうと腰を上げると、今度はことりに話し掛けられる。

 

「えーと、どうしたの?」

「フッフッフ。話は聞かせてもらいました。その話にことりを混ぜないとおやつにしちゃいます!」

「えと……うん?」

 

ことりのいきなりの宣告に首を傾げる若葉。キッとしていた眉を普段通りに戻し、にっこりと笑ってことりが用件を言う。

 

「だから、ことりも若葉君に着付けをして欲しいなぁって」

「あー。海未にも言ったけど、そんなに上手くないよ?」

「大丈夫大丈夫♪」

 

若葉の言葉に頷くと、じゃねー、と手を振って校舎の中に消えていくことり。

 

「モテモテじゃねーの。若」

「いや、モテモテって言うか、ただ着物の着付けを頼まれただけだから」

 

その様子を一部始終見ていた夏希が若葉を揶揄うも、若葉は何言ってんの?といった顔で言い返す。

 

「でも若葉さん着付け出来るんですね」

「あー、何回か親に着付け手伝わされたし、バイトでもやった事あるから」

 

夏希の反対側から愛生人が聞くと、若葉はそう返す。

 

「よし、これで片付けは終わりだね。じゃあお疲れ様ー」

「おうお疲れー」

「お疲れ様でした」

 

若葉は2人に挨拶した後、家には帰らず、とある所に向かった。

 

次の日。

 

「お兄ちゃん早くー」

「早く早くー」

「2人共、どんなに急かしても祭の時間までまだあるんだから」

 

若葉は居間で穂乃果と雪穂の2人に迫られていた。2人の手には白い浴衣と紺色の浴衣があった。

 

「でもあと少ししたら海未ちゃんとことりちゃんが来ちゃうよ?」

「あ、そっか。2人の着付けもするんだった。じゃあまずは雪穂からね」

「やたー!」

 

えーなんでー!と文句を言う穂乃果を無視して、若葉は雪穂の着付けに入る。

 

「う〜んと、最後にここをこうでっと。こんな感じでどう?動きにくいとか、苦しいとかある?」

 

若葉は数十分で雪穂の着付けを終わらせる。それから雪穂に大丈夫か質問し、雪穂は笑顔で頷いた。

 

「う〜ん。雪穂は髪が短いから結べないね~」

「い、いいよ。このままで」

 

浴衣の着付けが終わったので、若葉が雪穂の髪を梳きながら言うと雪穂は恥ずかしかったのか、顔を赤くして若葉から離れ

 

「じゃあ私はお店の手伝いしてくるから!」

 

そう言い残して店に出て行く。そんな様子を見て若葉と穂乃果は顔を見合わせて笑う。

 

「こんにちは〜」

「お邪魔します」

 

笑いが収まり、穂乃果の着付けをし始めると、そのタイミングで海未とことりの2人が居間に入って来る。

 

「あー今穂乃果ちゃんの着付けしてるんだー」

「そうだよ。穂乃果が終わったら始めるから、準備しておいて」

「分かりました」

 

若葉が2人に言うと、2人は居間から出て行き、着付けの準備を始める。

 

「よし、これで終わり。苦しい所とかある?」

「ううん。大丈夫だよ!」

「そうかそうか。じゃあ次は髪型だな」

 

穂乃果のサイドポニーを下ろし、櫛で梳いていく。髪型は穂乃果の希望でお団子に決まった。

 

「お団子かぁ……よっと。確かここをこうしてっと。出来たよ」

 

若葉は鏡を穂乃果に渡し、別の鏡も使って穂乃果に後頭部を見せる。

 

「……お兄ちゃんって出来ない事あるの?」

「え?なんで?」

「浴衣の着付けから髪のセットまで出来るんですね」

「普通はそこまで出来ないんじゃないかな?」

 

穂乃果の疑問に若葉が聞き返すと、後ろから海未とことりも穂乃果に賛同する。

 

「俺にだって出来ない事くらいあるよ」

「え!嘘!?」

「若葉でも出来ない事があるんですか!?」

「何が出来ないの!?」

「ちょっと待って!なんでそんな意外そうに驚くの!?傷付くよ!」

 

若葉の衝撃的な発言に3人は身を乗り出して若葉に問い詰める。そんな3人の反応に若葉の心が軽く傷付く。

 

「俺に出来ない事はね」

「「「うんうん」」」

「…………作詞作曲、とか?」

 

若葉の呟く様な言葉に3人はあー、と声を合わせて納得する。その反応に恥ずかしさが込み上げたのか、若葉は誤魔化す様に立ち上がると

 

「ほ、ほら次は海未とことりどっちが着付けするの?」

 

と話を逸らす。若葉の言葉に用件を思い出した海未とことりは、目を合わせ頷くと海未が手を挙げた。

 

「では私から」

「じゃあこっちに来て」

 

海未に渡された浴衣は穂乃果と同じ白の浴衣。しかし金魚に水玉柄の穂乃果の浴衣と違って、海未の浴衣はアサガオ柄だった。

 

「じゃあ始めるよ」

「よ、よろしくお願いします」

 

少し緊張した風に答える海未に、若葉は思わず微笑みを浮かべてしまう。

それから数十分後。そこには浴衣を着て若葉に髪を梳かれている海未がいた。

 

「海未は髪型、このままで良いの?」

「はい。私はあまり髪型を弄らない方なので、このままで良いかと」

「了解。じゃあこれで終わりっと」

 

若葉は頷いて答えると、櫛を台に置く。海未は立ち上がると全身鏡の前に立ち、くるりとその場で回る。

 

「予想通りと言いますか、分かってはいましたが、若葉の着付けは凄いですね」

「いやいやそこまでじゃないって。普通に専門店とかの方が上手いよ」

 

海未に褒められ、照れ笑いしながら否定する若葉。そしてことりの持って来たピンク地に白の縦ストライプの入った浴衣を受け取り、ことりを手招きする。

 

「ほらことり。着付け始めるよ」

「はーい」

 

手招きされたことりは笑顔で若葉の前に立つ。

 

「それじゃあよろしくね!」

「よろしくされました」

 

暫くすると、髪型をいつものことりヘアから三つ編みハーフアップに変えたことりがいた。

 

「さすがに四人の着付けは疲れるね」

 

ハァ、と息を吐いて言う若葉。そんな若葉に2人はお礼を言い、穂乃果は裕美香と雪穂を呼ぶ。

 

「どうしたの?お姉ちゃ…うわぁ!」

「何よいきなり呼んで…あらぁ」

 

呼ばれた2人は居間に入るなり、感嘆の声を上げる。

 

「ちょっと待っててね。今カメラ持って来るから。あ、若葉はその間に着替えてきなさい」

「はーい」

 

裕美香がカメラを用意している間に、若葉は言われた通り自室で浴衣に着替える。若葉が着替え居間に戻ると、浴衣4人娘による撮影会が行われていた。カメラマンは勿論裕美香である。

 

「着替えて来たわね。じゃあまずは穂乃果と雪穂の三人で撮りましょ」

 

裕美香に誘導され、3人は各々ポーズを取る。穂乃果と雪穂は浴衣の両袖を持って少し手を挙げる。若葉は両袖を合わせ、その中で腕を組む。並び順は若葉を真ん中に右に穂乃果、左に雪穂がいる。

 

「若葉ったら、両手に花ね」

「いやいや。2人共妹だから違うんじゃないかな…」

 

裕美香の言葉に若葉が呟くと、その呟きを聞いていた妹2人は

 

「そんな事ないよ」

「そうだよ。お兄ちゃん」

 

そう言って穂乃果は若葉の右腕に、雪穂は左腕に自分の腕を絡める。

 

「ちょ、2人共何してんの!?」

 

2人のイキナリの行動に混乱する若葉とそれを他所にポーズをとる穂乃果と雪穂。裕美香はシャッターを切ると、穂乃果の隣に海未を、雪穂の隣にことりを立たせ、5人の写真を撮る。更に悪ノリした裕美香は海未とことり、若葉のスリーショットを撮ろうとする。若葉はそれに反対するも、2人がノリノリだった為渋々折れる。その後、ことりが若葉から離れ、海未と若葉のツーショットを撮るのだが

 

「ほらもっと寄って寄って」

「こ、こうですか?」

「もう一声!」

 

裕美香の指示で若葉との距離を縮めていく海未。その距離は初めは近過ぎず遠過ぎずのだったのだが、裕美香の指示通り詰めた結果、互いの腕が軽く当たるまで近付いていた。2人の顔は赤く、それを見ていた雪穂は目をキラキラと光らせていた。

 

「う〜ん。本当は腕を組んで欲しかったんだけど……無理そうね」

「「いいから早く撮って(下さい)!」」

 

裕美香の追加注文に声を揃えて催促する2人。裕美香ははいはい、とシャッターを切る。裕美香が撮った写真を確認して頷く。

 

「しゃあ最後にことりちゃんね」

「は〜い」

 

先程の撮影風景を見ていたからなのか、仄かに頬を染めながら若葉の隣に立つことり。その距離は海未と撮影した時より近く、普通に腕が当たっており,やろうと思えば腕を組めるほど。

 

「ねぇことり。なんか近くない?」

「そんな事ないよー。海未ちゃんと同じくらいだよ」

 

若葉の言葉に笑って答えることり。そして突然若葉の腕に抱きつく。

 

「ちょ、ことり!?」

「ふふふ。これはお礼なのです」

「お礼って一体いつの、なんのなのさ!」

 

若葉は心当たりの無いお礼の理由を聞くと、ことりは

うーんとね、とお礼の内容を話す。

 

「この間、プールでナンパの人達から助けてくれた時の、だよ♪」

「た、確かにそんな事あったけど、それとこれとは」

 

別だよ、と言おうとする若葉をことりは遮る。

 

「ことりと腕組むの、そんなにイヤなの?」

「うっ……」

 

涙目と上目づかいのダブルコンボで聞かれた若葉は、思わず言葉に詰まる。言葉が詰まった若葉を見て、ことりは笑顔になりピースサインをする。若葉も腕を解くのを諦め、ことり同様ピースをする。

 

「若いって良いわね〜」

 

裕美香はそんな事を言いながらシャッターを切る。雪穂はこの時点で既にキャパをオーバーしており、穂乃果によって自室に運ばれて行った。裕美香が写真を確認してる時にことりは若葉から腕を放す。

 

「はぁ。緊張した〜」

「俺もだよ」

 

深呼吸して気持ちを落ち着かせていることりに、若葉も賛同する。

 

「あっともうこんな時間か。じゃあ母さん、俺行って来るね」

「気を付けてね〜」

「お兄ちゃんもう行くの?」

「祭りが始まるまでまだ数時間ありますよ?」

 

若葉の言葉に雪穂が驚き、海未も確認する様に聞く。それに対し、若葉は頷き返す。

 

「寧ろ今から行かないと遅れちゃうんだよ」

 

と言って浴衣を着ているにも関わらず、器用に走り出す。

 

「穂乃果ちゃん。若葉君は誰かと待ち合わせでもしてるの?」

 

ようやく落ち着いたことりが穂乃果に聞く。

 

「うーん、待ち合わせと言うより……」

 

☆☆☆

 

「真姫ちゃーん。早くお祭り行こー」

「分かってるわよ。今行くから少し待ってて」

 

花陽に呼ばれた真姫が外に出ると、浴衣姿の花陽が待っていた。

 

「あら、花陽も浴衣なのね」

「そう言う真姫ちゃんも浴衣なんだね」

「せっかくのお祭りだものね」

 

真姫は紺地に赤やオレンジの花柄、花陽は赤紫地にピンクの花柄の浴衣を着ていた。

 

「あれ?愛生人と凛は?」

「2人で楽しみたいんだって」

「そう」

 

真姫はいつも一緒にいる2人が見当たらいので聞いてみると、どうやら2人で祭りを楽しんでいるらしい。真姫は薄々そんな気がしていたのか、やっぱりか、と思うのと同時に少し表情が暗くなる。

 

「じゃあ私達も行こっか」

「そうね。向こうで誰かに会えるかもしれないしね」

 

花陽の言葉に少し寂しそうに笑って同意する真姫。そして2人は日が沈む中、並んでお祭り会場に向かう。

会場に近付くにつれ、段々と人が増えていく。

 

「さすがに人が凄いわね」

「そうだね。迷子になっちゃいそう」

 

あまりの人混みに花陽は思わず苦笑い。そんな中、とある射的屋の前に人集りが出来ていた。

 

「どうしたのかな?」

「さぁ?取り敢えず行ってみる?」

「う、うん」

 

2人が人集りの中心に向かうと、そこには良く知る人物が2人いた。

 

「アキ君、次はアレが欲しいにゃ!」

「OK任せてよ」

 

そこにいたのは青い浴衣を着た愛生人と、黄色の浴衣着た凛だった。凛の手には2人が来る前に取ったと思われる小さめのぬいぐるみが2つあり、愛生人は射的銃で凛の指した大きめのぬいぐるみを一発で撃ち落として射的屋のおっちゃんを泣かせていた。

 

「……行きましょう」

「そ、そうだね」

 

真姫と花陽はその風景を見て、人集りを作っていたのが愛生人と凛だった事に驚き半分呆れ半分でその場を去る。

それから少し歩き花陽は綿飴、真姫はりんご飴を買い食べ歩いていた。

 

「あ、真姫ちゃーん」

「あら、穂乃果に海未、それにことりじゃない」

 

真姫が名前を呼ばれたので振り返ると、そこにはヨーヨーを持った穂乃果と海未、アルパカのお面を被ったことりがいた。

 

「あれ?若葉君は?」

 

花陽はいつも大体一緒にいる若葉がいない事に気付き、尋ねる。その際真姫の表情が少し暗くなったのをことりは見逃さなかった。

 

「お兄ちゃん?それならこれから会いに行くけど、一緒に行く?」

「え?」

 

穂乃果の意外な言葉に真姫は思わず穂乃果を見る。真姫に見られた穂乃果は、ん?と首を捻る。

 

「若葉君は何してるの?」

「なんかね。屋台のお手伝いをしてるんだって」

「せ、せっかくだし、行ってみようかしら」

 

ことりの言葉に真姫はそわそわしながら穂乃果達の向かおうとしていた方をチラチラと見る。

 

「ふふ。真姫ちゃんは本当に若葉君が好きなんだね」

「ゔぇえ!?べ、別にそんな事ないわよ!ほら、早く行きましょ!」

 

ことりの言葉に否定して真姫はさっさと先に行ってしまう。

 

「ねぇことりちゃん。さっきのって」

「穂乃果ちゃんもその内分かるよ」

 

穂乃果の問いにそう返し、ことりは真姫の後を追う様に歩き出す。真姫に追いついた四人が暫く歩くと、一店舗だけ行列が出来ていた。その行列の先を見てみると案の定若葉がいた。穂乃果達も早速列に並び、順番を待つ。待ってる間に真姫が屋台の名前を見ると、どうやら水飴の屋台のようで、どうして行列が出来るのかイマイチ納得がいかなかった。

 

「ねぇなんで水飴店なのに、こんなに行列が出来るの?」

「さぁ?でもお兄ちゃんが参加してるし、何かあるんじゃない?」

 

真姫の疑問に穂乃果も把握していないのか、曖昧な答えが返って来る。順番が来るまで5人で予想し合うも、結果としては「若葉がやってる時点で普通の水飴屋ではないのでは?という結論に至った。

そして次が穂乃果達の番になる。若葉は五人を見るとよっ、と手を挙げて挨拶する。

 

「いらっしゃいませ。楽しんでる?」

「楽しんでるよ。それよりなんでこんな行列が出来てるの?」

「なんか個数限定のイベント扱いされてて」

 

穂乃果の問いに答える様に若葉は店の横の看板を指差す。そのにはデカデカと「先着百名様限定!水飴で何でも作ります!」と書かれていた。

 

「で、穂乃果は何作って欲しい?」

「う〜ん。じゃあ、イチゴ作って!」

 

穂乃果の注文に若葉は頷いて作り、渡す。

 

「それにしても若葉がつくって大丈夫何ですか?」

「さすがにこの祭りの時間ずっと作らせるわけにはいかないらしいけど、こうやって個数限定ならやらせてもいっかって、親方が」

 

海未の質問に後ろを指して答えると、若葉の後ろにいた髭面のおっちゃんこと陸山浩二(くがやまこうじ)、通称親方がニカッと笑いかける。

 

「はい。蓮の花だよ」

「ありがとうございます」

 

海未に蓮の花の形をした水飴を渡す。

 

「じゃあ私はことりさんを」

「わ、私は大盛りのご飯を」

「はいは~い」

 

ことりと花陽の注文聞き作業に取り掛かり、数分で完成させ渡す。

 

「若葉君ってこの後暇?」

「う~んどうだろう?」

 

ことりの質問に親方の方をチラリと確認する様に見ると、若葉に見られたのが分かったのか、親方が若葉の隣に立つ。

 

「どうした?若葉」

「親方。このイベントが終わったらちょっと抜けて大丈夫ですか?」

 

若葉の言葉に親方はふむ、と腕を組むと穂乃果達を見て笑うと

 

「時間にはまだ早いが、こんな可愛い彼女さん達を悲しませちゃいないな」

 

と親方は若葉の背中を叩きながら奥に引っ込む。若葉は叩かれた背中をさすってだってさ、と答える。

 

「この百人もそろそろ終わるから、ちょっと待っててよ」

「分かったわ」

 

真姫にピアノの水飴を渡し、店の横のスペースを指して言う。それから少しして百人目に到達して若葉は解放される。

 

「お待たせ。ってあれ?真姫だけ?」

「ええ。穂乃果はたこ焼きを花陽はライス焼きを買いに行って、海未とことりはその付添い」

「そ、それは……思いの外楽しんでるね」

 

引き攣り笑いでそう返す若葉。ふと人混みの方に目を向けると、遠くの方に見覚えのある水色の髪が見える。

 

「ねぇ若葉。あれって夏希、よね?」

「多分」

 

どうやら真姫も見た様で、若葉に耳打ちする。

 

「取り敢えず行ってみる?」

「そうね。行ってみましょ」

 

2人は頷き合うと揃って夏希の元へ向かう。

 

「お~い夏希~」

「ゲッ!若、それにマッキー」

 

若葉に声を掛けられ振り返った夏希は、若葉を見て驚愕する。

 

「あ、今日はメガネなんだね」

「ま、まぁな」

「何よ。何か見られたら拙い事でもあるの?」

「いや、そういう訳じゃ…」

 

真姫の問いに目を逸らしながら答えをぼかす夏希。

 

「夏希?どうしたの?」

「ツ、ツバサ!?」

 

夏希は後ろを振り向き、若葉達からその人物を隠そうとする。しかしその人物はそんな夏希を無視して、夏希の後ろから顔をひょこり出す。その顔には人気アニメのキャラクターのお面が被られていた。

 

「えーっとそちらは?」

「あー…部活仲間?」

「なんで疑問形なのよ」

 

仮面の少女に聞かれた夏希が答えると真姫がツッコミを入れる。

 

「えと、じゃあ自己紹介を。俺は高坂若葉。よろしくね」

「私は西木野真姫よ」

「西木野真姫ってあのμ'sの?」

「あ、μ's知ってるんだ」

 

若葉と真姫が自己紹介すると、相手はμ'sの事を知っているらしく、話が盛り上がる。

 

「っと自己紹介がまだだったわね。私は綺羅ツバサ。これからもよろしく」

 

話が一段落すると、仮面をずらして自己紹介する。瞬間、若葉と真姫の時が止まる。

 

「え~と、アレ?」

 

固まった2人を見て首を傾げるツバサ。夏希はそれを見てハァ、と溜め息を吐く。

 

「ツバサ、もうちょい自分が有名人って自覚持てって」

「んー。まさかここまでとは思わなかったのよね」

 

ツバサはお面を被り直すと、2人の前で手を振る。それから再起動した2人は夏希を連れその場から少し離れる。

 

「ちょちょ、夏希。どういう事なのさ」

「なんであなたがA-RISEのツバサと一緒にいるのよ」

「て言うより2人は何してたの?」

 

2人は夏希にツバサといる理由を聞くと、夏希はそんなにか?と不思議そうな顔をする。

 

「まぁ俺がツバサといるのは、2人と似た様なもんだぜ?」

「それってつまり…」

 

顔を赤くした真姫に夏希は笑うとじゃあなー、と手を振ってツバサの所へ戻って行った。

 

「あの2人付き合ってるのかな?」

「さ、さぁ?」

 

若葉の質問に顔を背けながら答える真姫。そして先程の場所に戻り穂乃果達の帰りを待つも、いつまで経っても4人は帰って来ない。4人が帰ってくるまでの間、真姫は先程見た射的屋での光景を話す。

 

「愛生人はゲームとかになると人が変わるからねー」

 

話を聞いた若葉は笑いながら愛生人と凛を探すように射的屋の方を見るも、既に2人の影すらも見付からず、目に入ったのは愛生人効果で盛り上がっている射的屋と、その近くに立てられている時計だけだった。

 

「あ」

「どうしたの、若葉」

「いや、本当は穂乃果達が戻ってからにしようと思ってたんだけど、ちょっと時間大丈夫?」

「え?大丈夫だけど」

 

真姫は時計を見て時間を確認すると頷く。

 

「じゃあちょっと場所、移そうか」

「え、ちょ、若葉!」

 

若葉は真姫の返事を聞くと真姫の手を引っ張る。真姫は驚きつつも、引っ張られるまま若葉について行く。

 

「ん~と確かここだね」

「ここって神田明神?」

 

若葉が立ち止った場所は、アイドル研究部が良く利用している神田明神の境内だった。若葉は境内に備えられているベンチに座り、真姫も続いて隣に座る。

 

「そろそろだよ」

「一体何が…?」

 

若葉が腕時計を見て夜空を見上げる。それに釣られて真姫も空を見上げる。

 

ドォーン。ドォーン。ドドドォーン!

 

夜空に咲く花火。その綺麗な光景に真姫はわぁ、と感嘆の声を漏らす。

それから花火が終わるまで2人の間に言葉は無く、しかし二人にとって心地良い空間が訪れていた。

 

「綺麗だったね」

「そうね。それにしてもあの場所、どうやって知ったの?それに花火の時間も分かってたみたいだし」

 

神田明神の境内は祭り会場から少し離れており、祭りを楽しむとしたらまず来ない場所なのだ。

 

「んーとね。時間は親方から聞いてたんだ。そのくらいの時間になったら友達達と花火見て来いって」

 

ほら親方って役員だから、とベンチに座ったまま指を立てて説明する若葉。先程親方が言っていた「時間にはまだ早い」とは花火の事だったのだ。

 

「場所の方はさっき店から出てくる時に教えて貰ってさ、結構綺麗に見えるから行って来いよって」

「親方さんって凄いのね……ぁ」

 

若葉の説明に納得のいった真姫は、自分の手が若葉の手と繋がっているのを知り、小さく微笑む。若葉は気付いてないようで、花火を見上げている。

そして花火が全弾打ち終わってから少しの間、2人は花火の余韻に浸っていた。

 

「さて、そろそろ祭りに戻ろうか。なんか長い事ここにいたみたいだし」

「そうね。穂乃果達も心配してるだろうし…っ!」

 

若葉に手を引かれ立ち上がると、真姫は足に痛みを感じ顔を少し顰めるも、若葉に心配掛けまいとすぐに表情を戻す。しかし若葉はその一瞬の顰め顔を見逃さなかった。

 

「どうしたの?」

「いえ、なんでもないわ。早く行きましょ」

 

若葉の質問に首を振って答えると、境内の階段に向かって走る。しかし足を痛めている為なのか少しぎこちない。

 

「真姫ちょっと待って」

 

若葉の制止の声に真姫は立ち止まり、俯いてしまう。

 

「足、ケガでもしてるの?」

「……えぇ……多分履きなれない草履を履いたからだと思う」

 

若葉は真姫に近寄り足元にしゃがむと、真姫の草履を脱がし傷を見る。若葉が見ると、ちょうど足の親指と人差し指の間、草履の鼻緒が当たる場所の皮膚が剥けて軽く血が滲んでいた。

 

「あー見事に鼻緒ずれだね」

「鼻緒ずれ?」

「まぁあれだよ。下駄とか草履を履いてると偶に皮が剥けるっていう」

 

若葉は真姫に説明しながら先程まで座っていたベンチに座らせ、絆創膏を取り出すと真姫の足の親指の付け根に貼り、具合を尋ねる。

 

「どう?」

「さっきよりはマシになったわ。ありがと」

 

真姫は草履を履き直し、具合を確かめると若葉に礼を言うもまだ少し痛むのか、顔を少し顰める。

 

「これじゃ人混みを歩くのは無理そうだね」

「そ、そんな事ないわよ」

「はいはい無茶はしないの」

「ちょ、ちょっと若葉!?」

 

真姫が若葉の言う事に反対すると、若葉は勝手に真姫をおぶる。そんな若葉に驚きつつも、落ちない様に若葉の肩を掴む。

 

「それじゃあ西木野家に向けて出発進行!」

 

若葉はしっかりと真姫を背負うと真姫の家を目指し歩き始める。

 

「さて、真姫の家ってどっちだっけ?」

「……あっちよ」

 

相変わらずの方向音痴を披露した若葉にジト目を向け、指をさす。

 

「じゃあ改めて帰りますか」

「はいはい」

 

真姫は呆れた声を出しつつも、肩から手を離し勇気を振り絞って腕を若葉の首に回す。若葉はその事について何も言わずに歩き続ける。この時真姫の顔は真っ赤だったのは、真姫を背負っている若葉が知る由もない事だった。

暗い夜道、祭りの会場から遠ざかるにつれ祭りの賑わいは無くなり、若葉の足音だけが静かに響く。

 

「ねぇ若葉」

「どうしたの?真姫」

 

そんな中、突然真姫が若葉の名前を呼ぶ。若葉は急に名前を呼ばれた理由が分からなく、道を間違えたのかと不安になる。しかし次に真姫が発した言葉は若葉の想像とは違うものだった。

 

「私達って音ノ木坂の音楽室の前に一度会った事があるの。覚えてる?」

「えっと、それは廊下ですれ違ったとか、そういうんじゃ…」

「ないわよ」

 

若葉の台詞を途中で遮り真姫ははっきりと答える。真姫の答えに若葉はう~ん、と考える。

 

「覚えてないなら、別に良いわよ。あの時は私が一方的に見掛けただけだし」

「そ、そう?」

「えぇ」

 

若葉はいまいち納得のいってない表情だったが、ちょうど西木野家の前に着いた為、それ以上の詮索は出来なかった。

 

「それじゃあまた明日」

「そうだね。明日の部活で」

 

真姫を下ろし玄関の扉が閉まるまで見送り、若葉も帰路に着いた。

 

 




夏休み。合宿から帰って来て暫くしたとある日の事。

「にしても暑いね」
「身体動かしてる穂乃果さん達の方が暑いと思いますよ?」
「だな。日陰で突っ立ってる俺らよりかは暑いだろーな」

若葉、愛生人、夏希が屋上でビニールシートで作った日陰にて話している。穂乃果達は夏祭りで行うライブの練習をしていた。
何故夏祭りでライブをする事になったのかと言うと

「いやーまさか店長に頼まれるとは思わなかったね」
「本当だよ」

と、いうことである。
若葉のバイト先の店長が夏祭り実行委員長らしく、空いた時間をどうにか出来ないかと悩んでいた所、若葉経由でμ'sに出演依頼が来たのが、この練習日の前日。そして練習前に話をした所、満場一致で出る事になった。

「だぁー!疲れたー」
「暑いにゃ〜」

夏祭りについて話していると、練習に一区切りついたのか、穂乃果達がブルーシートの影に入って来る。

「お疲れ様」

「ハイ、どうぞ」

日陰に入って来たメンバーからドリンクを渡して行く夏希と愛生人。

「絵里、仕上がりはどんな感じ?」
「夏祭りには間に合いそうよ」

絵里も若葉と話しながら下に敷いているブルーシートに座る。

「ね、ねぇ若葉」
「どうしたの、真姫?」

そんな二人の隣に真姫が座る。

「もし良かったらなんだけど、夏祭り一緒に回らない?」
「どうしたの?急に」
「べ、別に……ただステージまでの時間暇だから誰かと回ろうかと思ってただけよ!」

真姫が顔を赤くしながら逸らす。若葉は少し考えて

「だってさ絵里……あれ?」

隣にいる絵里に話を振る。しかしそこには絵里は居らず、離れた所で希と話していた。

「それで、どうなの?若葉」
「大丈夫だよ。ただ穂乃果の着付けとかあるから少し遅くなるかもよ?」
「それでも良いわよ」
「それじゃ、行こっか」
「ええ」

それだけ言って真姫は嬉しそうに笑い、その場を離れる。

「若葉君何の話ししてたの?」

真姫を不思議そうに見ていた若葉に、今度はことりが声をかける。

「真姫が夏祭りの時、ステージまでの時間一緒に回らないかって話」
「へぇ〜そうなんだ〜。じゃあ穂乃果ちゃんは私と海未ちゃんに任せて」

トン、と胸を叩いて言うことり。

「じゃあお言葉に甘えさせていただきます」

若葉の言葉に頷き返すことり。

「ふふっアツアツやねぇ」
「そうね」

希と絵里の小声での呟きは誰にも届かない。



1週間後…夏祭り当日

「いや〜晴れたね」
「晴れたな」
「晴れましたね」

若葉たちサポート班3人は、今日もビニールシートで作られた日陰にてμ'sの練習を見ていた。

「今日本番だな」
「成功しますかね?」
「俺らの仕事の出来次第じゃない?」

若葉はそう言いながら衣装の仕上げを終わらせる。

「やっぱり若葉さんって手先が器用ですよね」
「んー?実家が実家だからね。手伝っていると多少はね。……っと、出来た〜」

若葉は衣装を掲げ、満足そうに頷いてから寝転がる。

「お疲れさん」
「じゃあ皆を呼んで来ますね」

夏希が労いの言葉を言い、愛生人が衣装合わせの為に踊りの仕上げをしている9人のもとへ向かう。

「衣装の色は白か…ステージは夜だし良く目立つな」
「その代わりに汚れも目立つけどね」

カラカラと笑いながら身体を起こす。

「お兄ちゃーん!衣装出来たってホントー?」

そんな若葉に穂乃果が走り寄りながら聞く。その後ろから海未やことり、絵里達が歩いて戻って来る。

「じゃあ着替えに部室に行くわよ」
『おー!』

にこの言葉に八人が手を上げ、部室へ向かう。若葉達は部室前で暫し待機。
そして最初に出て来たのは希だった。

「どんな感じ?」

くるりとその場で回りながら希が3人に聞く。
今回の衣装は白と青を基調とした物で、細かい違いは上を前で止めるタイプか止まってるタイプか、ネクタイか蝶ネクタイかくらいである。服のモデルはCAだとか。

「うん似合ってるよ」

希は手に持ってる帽子を被り、嬉しそうに笑うと屋上に向かった。

「ほらほらぁ、真姫ちゃんもおいでよ〜」
「ちょっと凛!引っ張らないでよ!」
「待って〜」

次に出て来たのは凛、真姫、花陽である。凛は衣装である指ぬき手袋も着けている。そんな凛に引っ張られる様に真姫が続いて、花陽も出て来る。

「あ、アキくーん!」
「ゔぇぇえ!」

凛が若葉達に気付いた様で急に止まる。 凛が急に止まったことによって引っ張られてバランスを崩していた真姫が転んだ。

「大丈夫?」

若葉が真姫に手を貸して起き上がらせる。

「どうしたんですか?」
「着替え終わったよ〜」

そのタイミングで海未とことりが部室から出て来る。

「2人は帽子まで被ってんだな」

そんな2人に夏希が近付きながら話しかける。

「にっこにっにー!どう?似合ってるでしょー!」

にこが元気良く部室から出て来る。しかし愛生人は凛と花陽と、夏希は海未とことりと、若葉は真姫と話していて誰もにこの方を見ていなかった。にこ先輩、哀れ!

「ちょっと無視しないでよー!」
「ハイハイ。着替えたら早く屋上に行くわよ」

その場で抗議を始めようとしたにこを絵里が屋上に連れて行く。

「またにこにーで滑りそうだったの?」

2人が階段を登ってから穂乃果が出て来ながらその場にいた人に問いかける。問いかけられた面々は苦笑いするしかなく、穂乃果も何となく察したのだった。

「じゃあ、俺らも屋上に行こうか」
「だね〜」

再び屋上に上がり、青空をバックに先ずはμ'sの九人で写真撮影。その後、3人も入りアイドル研究部として撮影。

「それじゃあステージの時間は19時からだから遅れないようにね」
「最悪ステージの時間までに間に合えば大丈夫だと思うのだけれど…」
「ギリギリで動くのは危ないからな」

と一度各々の家に帰宅、その後また集合となった。

お昼頃に一度解散し、各々帰路につく。

「お兄ちゃんって着付けできたっけ?」

どうやら真姫との話を聞いてたらしい穂乃果が若葉に聞く。

「何回か着物の店でバイトしてた事あってね。その時に覚えたんだよ」
「へぇ〜。お兄ちゃんの着付け、楽しみにしてるね!」

穂むらが見えてきた所でタタターッと穂乃果が走る。若葉に着付けてもらえる事が嬉しいようだ。

「ただいま!」
「ただいま〜」
「お帰りなさ〜い」

2人が店とは反対の玄関から帰宅すると、2階から肌襦袢姿の雪穂が降りてくる。

「雪穂。その格好は何?」
「いや〜お兄ちゃんが着付けをしてくれるって聞いたから楽しみで」

若葉の質問に穂乃果()と同じ事を言う雪穂()

「お兄ちゃん早くー」

と奥の(ふすま)から、いつの間にか居間に移動した穂乃果が若葉を呼ぶ。

「はいはい。荷物置いて着替えたら行くから浴衣の準備しててね」
「「はーい」」

綺麗にハモった2人の返事を聞き、若葉は2階の自分の部屋に荷物を置いてから薄めの浴衣に着替えて居間に入る。

「お兄ちゃん早く早くー」
「遅いよー」

居間に戻ると肌襦袢姿の穂乃果と雪穂が楽しみなのが分かるくらいウキウキしていた。若葉がどちらの着付けから始めるか悩んでいると

「あら、もう浴衣に着替えるの?」

店番をしてしている筈の裕美香が顔だけを覗かせて聞いてきた。

「やっぱりまだ早いかな?」
「良いんじゃない?着付けって慣れてないと時間かかるし……それに時間限定で看板娘としも使えるし」

裕美香の最後の言葉が聞き取れなかったのか、3人は同時に首を傾げる。

「ま、着替えないなら店手伝ってね」

と言い残し店番に戻っていった。

「さて、じゃあジャンケンで勝った方から始めようか」

若葉の提案に、コクコク!と勢い良く首を縦に振る妹2人。どんだけ店の手伝いをしたくないのか、若葉の着付けが楽しみなのか…多分後者だろう。

「それじゃあいくよ。ジャーンケーンポン!」

若葉の合図で二人が拳を前に出す。結果は穂乃果が「パー」雪穂が「チョキ」で雪穂の勝ちだった。

「やたー!」
「うぅ〜」

両手を挙げて喜ぶ雪穂(勝者)と泣き崩れる穂乃果(敗者)。雪穂は小豆色の浴衣を持ってピョコピョコ跳ねながら若葉の元へ行く。

「お兄ちゃん早く早く〜」

雪穂が浴衣を若葉に渡しながらはしゃぐ。若葉はそんな雪穂の頭を撫でて落ち着かせてから着付けに入る。

☆☆☆

それから1時間と少しが経ち、居間には紺の浴衣を着た雪穂と白の浴衣を着た穂乃果、青い着物を着ている若葉の3人がいた。

「はい二人とも並んで〜」

若葉が着物の袖から携帯を取り出し、カメラを起動させながら言う。
2人は腕を組んでポーズをとる。

「はいチーズ」

カメラのシャッターを切る音がする。

「あら、何だか楽しそうじゃない」
「母さん。丁度良いところに」

若葉が写真を撮った時タイミング良く裕美香が居間にやってくる。
居間に入ってきた裕美香は穂乃果と雪穂を一目見てから2人の後ろに回り、隅々まで眺める。そして若葉の頭をグシグシとかき乱す。

「良く出来てるじゃない」
「ちょ、止めてよ。それより写真お願いしていい?」

若葉は裕美香の手を軽く払って携帯を渡す。裕美香はそんな若葉の行動に「息子が冷たくなった…」と泣き真似するも、子供達3人はそれを無視し、各々ポーズをとる。
穂乃果と雪穂は浴衣の両袖を持って少し手を挙げる。若葉は両袖を合わせ、その中で腕を組む。並び順は若葉を真ん中に右に穂乃果、左に雪穂がいる。

「若葉ったら、両手に花ね」
「いやいや。2人共妹だから違うんじゃないかな…」

裕美香の言葉に若葉が呟くと、その呟きを聞いていた妹2人は

「そんな事ないよ」
「そうだよ。お兄ちゃん」

そう言って穂乃果は若葉の右腕に、雪穂は左腕に自分の腕を絡める。

「ちょ、2人共何してんの!?」

2人のイキナリの行動に混乱する若葉とそれを他所にポーズをとる穂乃果と雪穂。裕美香のシャッターを切る音が高坂家に流れる。

「じゃあ私は店に戻るわね」

写真を撮り飽きたのか、裕美香は携帯を若葉に返すと店に戻って行った。居間に残った3人は先程撮影した写真を見る。

「それにしても母さん撮影上手いよね」
「なんでも商品棚に置かれてる写真、お母さんが撮ったらしいよ」

雪穂の言葉に若葉と穂乃果はへぇ~、と感心する。

「確かに良く撮れてるもんね~」
「なんかの賞とか取ってたりして」
「まっさかー……ない、よね?」

若葉の言葉に3人揃って乾いた笑いをする。

「それにしても、着替えるのちょっと早かったかな?」

雪穂の言葉で2人が時計を見ると時間は15時半ちょっと過ぎ。祭りは17時開始なので2時間程暇になってしまう。3人がどうやって時間を潰すか悩んでいると、何やら店の方から裕美香の賑やかな声が聞こえた。

「どうしたんだろ?」
「取り敢えず行ってみよ」

3人が店に出ると藍色の浴衣を着た真姫が裕美香と話していた。

「まさか若葉の相手が貴女なんてね~。運命みたいじゃない?」
「そんな偶然ですよ」

2人は1年前に若葉が入院している時に顔を合わせていたのだが、若葉達3人はその事を知らない為揃って首を傾げていた。

あの子(若葉)も中々気付かないし」
「別に大丈夫ですよ。少し残念ですけど」

裕美香の言葉に苦笑いして返す真姫。でも良いんです。と続ける。そして柔らかい笑みを浮かべる。

「だって、今が一緒なので」
「じゃあこれからもあの子の事よろしくね」

ニッコリ笑って言う裕美香に元気良く返事する真姫。
そこで話が終ったらしく、若葉達が店に出て行くと真姫が変な声を声を出して驚く。

「い、一体いつから!?」

真姫が顔を赤くしながら3人に聞く。3人が顔を見合わせると代表して若葉が答える。

「え~と『まさか若葉の相手が~』辺りから」

若葉の言葉に更に赤くする真姫。

「それで若葉は気付いたの?」
「何が?」

裕美香の質問の意味が良く分からず、素で返す若葉。その後ろでは穂乃果と雪穂が小声で

「お姉ちゃん何の事か分かる?」
「全然。雪穂は?」
「私も分からない」

と再び首を傾げる2人。そんな頭の上にクエスチョンマークを浮かべてる3人を余所に、真姫は若葉の手を取る。

「ちょ、ちょっと真姫?」
「いいから若葉、早く行きましょ」
「行くってどこに?」
「どこってお祭りに決まってるじゃない」

そう言うと真姫は若葉を引っ張って外に出る。真姫に手を引っ張られ、夏祭りの会場である神田明神に向かう2人。

「あのー真姫さん?そろそろ手を放してくれやしませんか?」
「う~ん……イヤ」

真姫は若葉のお願いに少し考える素振りを見せるも、拒否する。拒否された若葉もなんとなく分かっていた様で、溜め息を吐くと体勢を整え、真姫の隣を歩く。
神田明神が近付くにつれて、段々と賑やかな声が聞こえてくる。

「もう始まってるのかしら?」
「多分前準備で盛り上がってるんだよ」

真姫が時計を見ながら言うと、若葉は首を横に振り答える。若葉の答えに首を傾げる真姫に若葉はすぐに分かるって、と真姫の頭を撫でながら言う。
真姫は顔を赤くしながら逸らすも、その手を払う事はしなかった。
2人が会談を登り境内に着くと、既に幾つかの出店が試作品を作り始めたりしていた。中には若葉のバイト先の出店もあった。

「おう若葉~。俺らの誘いを断ってかわい子ちゃんとデートかよ」

そんな中若葉に声を掛けたのは、若葉がよく土木工事を手伝っている会社の親方こと陸山浩二(くがやまこうじ)

「親方こそ、後ろに多くの愛人がいるじゃないですか」
『誰が愛人だ誰が!』

若葉の愛人発言に息の合った突っ込みをしたのは、今もなお出店の屋台を組み立てをしている社員達だ。

「えーと…若葉、この人達は?」
「あぁ紹介してなかったね。こちら、俺のバイト先の一つのクガヤマ工務店の社長の陸山浩二さん。通称親方。で、親方。こちらは西木野真姫。部活の後輩です」

若葉の紹介でお互いにお辞儀をし、挨拶する。

「所で親方の店は何を出品するんですか?」
「逆に聞くが、若葉は何やると思う?」

親方の質問に少し悩む若葉と、それを面白そうに眺める親方。

「ここはオーソドックスに」
「うんうん」
「ネジ販売」
「そうそう。今日は祭りだから特別にこの皿小ネジを50本入りでなんと!5.000円!って、んな訳あるか!」

若葉の答えに親方がノリツッコミをするも、若葉と真姫の2人から長い、とダメ出しをくらう。ダメ出しされて落ち込んでる親方を放置して。若葉は屋台に置かれた機材を眺める。

「んー使ってる備品からして…人形焼ですかね?」
「お、正解。さすが和菓子屋の息子だな。祭りが始まったらウチに来な、特別にサービスしてやるよ」

2人は親方の気前の良い言葉にお礼を言い、作業の邪魔にならない様にその場を離れる。それから祭りが始まるまでの間、2人で会場のあちこちを見て周ったが、頻繁に若葉のバイト先の知り合いに会い、その度に試作品を貰ったり、親方同様の約束をして貰っていた。
真姫はその日改めて若葉の交友範囲の広さを思い知ったのだった。

「さて、これらを一体どうするか」

一通り知り合い(バイト先)を周った若葉と真姫の腕にはワタアメ、焼きそば、たこ焼き、人形焼etc…が抱えられていた。

「どうするも何も食べるしかないでしょ」
「いや、それはそうなんだけど。両が、ね」

ワタアメを食べながら言う真姫に若葉が困った風に笑うと、ふと妙案を思い付いたらしく、顔になる。

「じゃあμ'sに差し入れよう!」
「それは良いかもね。碌に買えなさそうな人が多いし。色んな意味で」

真姫の言う”色んな意味”とは言葉通りで、人気のある絵里や海未。テンションのメーターが振り切れるであろう凛と、十中八九引っ張られているであろう愛生人と花陽。そう考えると、確かにまともに買い物が出来そうなメンバーは少ない。

「じゃあLIMEで言っとくね」

若葉は言うや否や、LIMEのグループに書き込み、μ'sの控室に荷物を置きに行こうとして

「ねえ若葉」
「どうしたの真姫?」

真姫に浴衣の袖を掴まれて止まる。真姫は祭りが始まり、混雑した人混みのとある場所を指す。若葉も気になって真姫の指差した方を見ると、そこにはどこかで見た事のある女性と手を繋いだ夏希がいた。

「あれって夏希よね?」
「そうだね。一緒にいるのは彼女かな?」

真姫の言葉に頷きながら言う若葉。2人は若葉が彼女と言った女性を見てみる。女性は黒の浴衣を着ていて頭にはとあるさアニメのお面を付けいて、明るい髪を額が見える程に短くした髪型だった。

「もしかして綺羅ツバサ?」
「綺羅ツバサってA-RISEの?」

若葉の呟きに真姫は信じられない様に返す。しかし口では否定した真姫も、女性がツバサ本人である可能性を捨て切れないのか、 ウンウン唸っている。その隣では同じく若葉も迷っていた。

「う〜ん。仕方ない。こうなったら」
「なったら?」
「本人達に聞きに行こう!」
「えぇ〜…」

若葉の言葉に真姫は呆れながらも、若葉に手を引かれるままに歩いて行く。

「やぁやぁご両人!」

若葉は2人の後ろから声をかけながら、真姫の手を握っているのとは反対の手を上げる。
夏希は振り返り、若葉と真姫を見た瞬間に顔を顰め、女性の方はキョトンとした後夏希に笑いかける。

「ねぇ夏希?」
「ハイ、なんでしょう?」

夏希は冷や汗を流しながら女性に返す。女性はニッコリとしたままさらに質問をする。

「随分とμ'sの西木野さんと高坂さん似の人と仲が良いみたいね」
「いだだだだ!ツ、ツバサ!腕!腕キメに掛からないで!」

ツバサと呼ばれた女性は手を繋いだ状態から器用に腕を絡ませ、夏希の腕をキメに掛かる。

「え〜と。初めまして、高坂若葉です」
「西木野真姫です」

若葉と真姫は腕をキメられてる夏希を放ってツバサに自己紹介をする。それを聞いたツバサもニッコリと笑うと自己紹介をした。

「初めまして、私は綺羅ツバサよ。よろしくね」
「あの〜ツバサさん?そろそろ腕を放して頂けると嬉しいんですが…」

夏希の主張にツバサは腕を放す。夏希は解放された腕を摩りながら若葉と真姫に向き直る。すると今度は若葉の腕が夏希の首に回される。

「ツバサさん。こいつ(夏希)を少し借りますね」
「?ええ良いわよ」

若葉は笑顔で言うと、ツバサは首を傾げながらも頷いた。そして若葉はそのままツバサから少し離れた所まで夏希を連れて行く。その後ろからは真姫もついて来ていた。

「なんだよ若」
「なんだよ、じゃないよ。なんでA-RISEの綺羅ツバサと夏希が一緒にいるのさ」
「そうよ。一体何してたの?」

若葉と真姫は夏希に説明を求める為に疑問をぶつける。夏希は溜め息を吐き、若葉の腕を外しながら言う。

「何ってお前ら2人と似た様なもんだぜ?」
「て事は……」
「デ、デート?」

真姫の答えに夏希はニヤリと笑うとじゃあなー、と手を振ってツバサの所へ戻って行った。
若葉と真姫は少し呆然とした後、どちらともなく顔を見合わせると首を傾げてから、μ'sの控え室へと向かう。




こちら(あとがき)はボツネタです。本編とは一切関係ありません。


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いただきまーすby皆

さてさて、本当は前話で夏休みは終わりの予定だったのですが、ぶっちゃけますとまだ11〜13話までの流れが出来ていません。今話は時間稼ぎとでも思って下さい。(じっさいそうです)

ではそんな時間稼ぎ回をどうぞ

あと真姫ちゃん(今話台詞ないけど)誕生日おめでとう!


「なぁ若葉。夏休みも終わりが近づいてきてんだけど」

「近づいても何も来週で終わりだよ」

 

机に肘をついている翔平に、若葉は本を読みながら淡々と言う。

 

「そう!来週で夏休みは終わっちまう。なのに俺は海はともかく、プールや部での合宿、花火すら見てない!これをどう思う?」

「取り敢えず部活に入らないと部での合宿は行けないよ。それに花火なら夏祭りに来てたんだから見てるでしょ」

 

翔平は机を叩いたり、拳を握ったりして体全体、と言っても座っているので上半身だけ、を動かして若葉に訴えかけるも、若葉は先程と同じ様に淡々と返す。その声に少しの苛立ちを込めて。

 

「なぁだったら今から穂乃果ちゃん達誘ってプール行こうぜ〜」

「穂乃果は今日は学校に行ってるし、翔平はなんでウチに来たのか、まさか忘れてないよね?」

遂には床を転がり始めた翔平に、本を閉じて冷たい視線を投げかける若葉。

 

「忘れる訳ないだろ?親友!いや、心の友と書いて心友よ!」

「そんなジャイアニズムはいいから早く宿題終わらせなよ」

「最近お前が冷たい気がするのは気のせいか?」

 

若葉は溜め息を吐いて翔平の言葉を流す。翔平も翔平で若葉の態度に憤りを感じておらず、手元にある課題を進めていく。

暫くの間、部屋には若葉が本を捲る音と翔平が課題に筆を走らせる音が流れる。そんな中突然の電子音が響く。

 

「ゴメンLIMEが来たみたい」

「いや、大丈夫だ」

 

若葉が一言謝り、画面を見ると『絢瀬絵里』と表示されていた。

 

「ん?……あ、やっぱりいたんだ……」

「携帯を見て独り言は見てる側が寂しくなるからやめた方が良いぞ」

 

LIMEを見て何かを納得した若葉に翔平は忠告するも、若葉は少し悩んだ表情をすると、LIMEを打ち始めた。するとすぐに返事が返って来たのか、若葉は大きく頷くと翔平を見る。

 

「どうした?」

「翔平。良い知らせと悪い知らせ、どっちを聞きたい?」

「え……じゃあ悪い知らせからで」

 

若葉の問いに少し悩み、翔平は悪い方を選ぶ。若葉に視線で確認を取られるも、翔平は頷いて返す。

 

「じゃあお望み通り悪い知らせ。俺は今から音ノ木坂に行かなくてはならなくなりました」

「えー!課題手伝ってくれるって約束じゃんかよー」

 

文句を言う翔平を宥めてから若葉が続ける。

 

「じゃあ残っている良い知らせね」

「あ、そう言えばあったな」

「良い知らせは、翔平も一緒に行っていい事でーす」

 

若葉の発表に翔平は動きと思考を止める。完全に停止した翔平が復旧するのを黙ったまま見つめる若葉。

 

「……は?」

「いや反応遅いでしょ。ほら、早く準備して。格好は私服でも良いらしいから」

「ちょっと待てちょっと待てお兄さん!」

「お前にお兄さんと呼ばたくは無い!」

 

翔平にツッコミながらテキパキと筆記具等を鞄に入れる若葉。それを見て翔平も慌てて課題や筆記具を鞄にしまう。

 

「じゃあ先に外行ってて。俺は母さん達に言ってくるから」

「あ、あいよ」

 

未だに状況が飲み込めてないのか、いつもより少しゆっくりと動く翔平。若葉はそれを無視して1階に降り、厨房にいる誠とカウンターにいる裕美子に学校に行く旨を伝え、翔平と合流する。

 

「えと、若葉。つまりはどういう事だ?」

「つまり音ノ木坂へGOって事」

 

若葉は翔平にそう答え、学校に向けて歩き出す。

 

「つまりだ。俺はこれから女の花園へと向かうって事でOK?」

「あーうんそれでOKOK」

 

何度も確認してくる翔平に面倒になったのか適当に返事をする若葉。そのやりとりは学校が見える場所まで続いた。

何事もなく音ノ木坂に着くと門の近くにいた女性の警備員が2人に近付く。

 

「ヤッホー若葉君。今日は私服でどうしたんだい?おや、後ろの彼は初めて見るね」

「ども蒼井さん。今日はまぁ日付で察して下さい。あと一応確認なんですけど、理事長から話って通ってます?」

「通ってるよ〜。じゃあ夏休みの課題の追い込み、頑張ってね。妹さんなら多分アイ研の部室だと思うから。じゃねー」

 

手を振ってその場から離れる蒼井。翔平は終始ポカーンと呆けていた。

 

「だ、そうだから翔平部室に行くよ。翔平?」

「…ハッ。わ、わわわ若葉!今の誰!?」

「誰って音ノ木坂の警備員の一人の蒼井結花(あおいゆか)さん。ほら早く行かないと時間が勿体無いよ」

 

若葉はそれだけ言うとサッサと昇降口に向かうと、上履きに履き替えアイドル研究部の部室に向かう。翔平は翔平で若葉を見失って迷子になるのを回避する為、小走りで若葉の後を追う。

 

「ちょっと待てって!若葉ぁ!」

「あ、着いたよ。ここが部室」

「無視すなぁぁ!」

「煩いわよ!」

 

翔平が若葉にツッコむと、部室のドアを開けてにこが翔平にツッコミ返した。若葉はそんなにこと横を通り、部室の中に入る。

 

「おっはよう」

「若葉悪いわね。態々来て貰って」

「いや、それより練習してたんじゃないの?」

 

若葉が中に入ると若葉以外の部員が全員揃っていた。実はこの日は元々練習をするつもりだったのだが、穂乃果のふとした一言で夏休みの宿題が終わってない事が問題になり、同じく終わってなかった凛、にこ、夏希の手伝いをしているのだった。

 

「あははは…宿題終わってないのがここまで大事になるとは思わなかったよ」

「そうにゃそうにゃ」

「凛ちゃん。ここ間違ってるよ」

「にゃ!?」

 

穂乃果の言葉に同意した凛は愛生人に間違いを指摘され、問題集を睨み付けていた。若葉が部室を見渡すと凛には愛生人、花陽、真姫の3人が、穂乃果にはことりと海未の2人が、にこには希、夏希には絵里が付いていた。

 

「ねぇ俺が来る意味あったのかな?」

「若葉には悪いけど、夏希の手伝いを頼むわ。あと、中田君?は穂乃果の手伝いを頼んでも良いかしら」

「は、はい!喜んで!」

「いやいや!翔平も終わってないから!教える側じゃなくて教えられる側だから!」

 

絵里の頼みを元気に受ける翔平に若葉が手を振って止める。若葉の台詞に絵里が困った表情をして手伝いの采配を考え直す。

 

「どうしてもバランスが悪いわね…」

「じゃあ若が俺と翔平に教えればいんじゃね?」

「えー2人ともやってる内容違うから面倒なんだけど」

 

夏希の提案に若葉が不満を漏らすも、結局それしか方法はなく、絵里が希と一緒ににこを教え、若葉が夏希と翔平2人を見る事になった。

 

「さて、始めるか。て言っても見る限りだと夏希の方はそんなに残ってなさそうで安心したよ」

「まぁな。昨日の夜からずっとやってた甲斐があったってもんだぜ」

 

夏希の言葉は本当なのか、手が少しフラついている。

 

「はいはい。ここはこの公式使うからね。で、翔平。この化学式はそうじゃなくてこうだから」

「「はーい」」

 

こうして5人は8人に教えられながら課題を進めていった。

それから数時間経つと、希が唐突に呟いた。

 

「そろそろお昼やね」

 

希の呟きに全員が時計を見ると、時間は既に12時を回っていた。

 

「あ、それならお母さんが家庭科室を使って良いって言ってたよ

「じゃあ俺が昼ご飯作ってくるよ。何が出来るかは材料次第だけど」

「じゃあ休憩がてらお昼ご飯の買い出しに行きましょ」

「それなら外で食っても同じじゃね?」

 

夏希の言葉にことり、若葉、絵里が唸る。

 

「そう言えば今日家庭科部が何か作るって言ってましたよ。材料ならそこに行けば余りが貰えるかも」

『それだ!』

 

愛生人の言葉に全員が声を揃えて叫ぶ。そして話し合いの結果、家庭科部を訪れるのは生徒会長の絵里と、家庭科部に知り合いのいる愛生人、そして料理する若葉の3人に

決まった。

 

「それじゃあ行ってくるわね」

「凛ちゃんの事よろしくね」

「夏希は分からない所があったら翔平に教えて貰ってね。理数系なら俺よりも成績良いから」

 

3人はそう言い残し、家庭科部の元へ向かう。家庭科部が活動しているのは家庭科室なので、材料を借りるついでに場所も借りて、料理をするのだ。

 

☆☆☆

 

「皆お待たせ〜!炒飯持って来たよ〜」

「なんであの材料から炒飯が出来るんですか。家庭科部の人達も驚いてましたよ」

「ハラショー」

 

戻って来た3人の手には5つのお盆と、人数分の炒飯の盛られた皿が載っていた。

 

「おかえり〜」

「相変わらず若葉君はお父さんしてるんやね」

 

ことりと希が若葉と愛生人の2つ持っているお盆の片方を受け取る。

 

「はいはい。よく分からない事言ってないで希は皆に配って」

「はいはーい」

 

5人で炒飯を配り、手を合わせて挨拶をする。

 

『いただきまーす』




若「これまた作者は前書きでぶっちゃけたね」
夏「まぁ合宿の時期が分からないが、帰って来て次の話しでもう新学期ってのは味気なさ過ぎるしな」
愛「そう言えば作者からメールがありましたよ。どうも前話ではあとがきがまえがきになったので、前話の話もして欲しいとか」
若「前話って……あー」
夏「そう言えば若はマッキーと2人で祭りに来てたんだな」
若「本当は穂乃果達もいたんだけど、途中でバラけてね。真姫からは愛生人と凛が射的屋で無双してたって聞いたけど?」
愛「あー。景品が気付けば結構減ってましたね」
夏「まさか全弾命中とかさせてないよな?」
愛「え?射的ってそういうゲームじゃないんですか?」
若「射的の間違った解釈!」
夏「確かに射的はそういう感じのゲームだが、よく外さなかったな」
愛「だってゲームで鍛えてますから」
若「さて、前話の振り返りはこんなもんで良いかな?」
夏「いやいや、まだ重要な部分が残っているでしょうに」
愛「結局真姫ちゃんと良い雰囲気になったんでしょう?」
若「う〜ん。一緒に花火見たくらいかな。あとは暗いから家に送っていったとか」(おんぶしたのは黙っておこう)
夏「なんだ、つまらん」
愛「そうですね」
若「逆に2人は何かあったの?夏希はツバサさんと、愛生人は凛と一緒にいたんでしょ?」
夏「別にこれと言っては」(あの事は言わないでおこう)
愛「僕もですかね」(そうこれは嘘を言ってるのではなく、本当の事を言ってないだけ)
この時、3人の心が揃ったのだった。
『いきなりの謎ナレーション!?』
夏「ま、まぁ今のは置いといて、家庭科室で一体何があったんだ?」
愛「あーやっぱり気になりますよね。ではカットされた家庭科室での出来事を載せましょう。因みにこれを挟むのは最初の☆☆☆(切り替え)シーンの前です」
若「一応NGシーン扱いなんだけどね。ではどうぞ」


〜NGシーン・家庭科室での出来事〜

「どうもー賀田山いるー?」
「あ、片丘君に生徒会長さん。それと高坂先輩…でしたよね。どうかしました?」

愛生人が家庭科室のドアを開けると、賀田山と呼ばれたショートカットの女子が愛生人達に駆け寄りながら聞く。

「えと、もし良かったら材料を少し分けて貰えないかな〜って思って」
「ん〜ちょっと待ってて。今部長に聞いてくるから」

そう言って賀田山は部長の元へ早歩きで向かい、一言二言言葉を交わすと愛生人達の元へ戻って来る。

「部長は良いって言ってたけど……」
「あぁ材料ならそんなに残ってなくても大丈夫だよ」

賀田山が口籠った理由を察した若葉がすぐにフォローを入れ、材料を受け取りると、家庭科室の一角を借り料理を始める。

「和菓子屋の息子の腕を見せよう!」
「和菓子屋ってあまり関係無いですよね」
「……様々な飲食店でバイトした腕を見せよう!」

愛生人にツッコまれ言い直した若葉であった。


夏「成る程。調理シーンや具材説明は丸々カットなんだな」
愛「そのせいでNGになったんですよ」
若「さて、そろそろ終わりだけど何か言いたい事ある?」
夏「強いて言うなら誕生日だからって数時間で書き上げたのに、その主役である真姫が一言も台詞がない件について」
愛「だ、大丈夫ですよ。前話なんて3年生陣が台詞はおろか、名前すら出て来てませんから!」
若「愛生人のはフォローになってない!」
夏「まぁ次回も時間稼ぎ回になるけど、良かったら読んで貰えると嬉しいぜ!」
愛「ではまた次回会いましょう」
『バイバーイ』


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つまり嫉妬、と?by翔平

今回若葉が少し崩壊してるかもしれないね!




『いただきまーす』

 

全員が手を合わせてから炒飯を食べ始める。皆食事をしながら歓談するも、何人かの視線がチラチラととある人物に向かっていた。

 

「なぁ若葉。なんかスッゲェ居心地悪いんだけど」

「まぁ翔平だけが部外者だしねー」

 

チラチラと見られている翔平が、隣で炒飯を食べている若葉に耳打ちする。若葉は特に気にする様子を見せずに答える。

 

「取り敢えず自己紹介でもしたら?まだしてないだろうし」

「そうだな。そういやまだしてなかったわ」

 

溜め息混じりに提案した若葉に頷き、空になったお椀にスプーンを置き立ち上がる。

 

「え〜と、自己紹介が遅れました。若葉(こいつ)の前通ってた高蓑原高校2年の中田翔平です。皆さんとは初見ではないですが初めまして。そしてこれからもよろしくお願いします」

 

最後に頭を下げて自己紹介を終わらせる。それを聞いてた若葉と穂乃果を除いた10人は疑問符を浮かべて見ていた。

 

「えと……わ、若葉。俺なんか変な事言った?」

「いや多分、どこで会ったっけなぁ〜って感じだと思う」

「そこ!?皆さん覚えてませんか?メイド喫茶で若葉といたんですけど!?つか夏希と愛生人君に至っては一緒に茶を飲んだよね!」

 

夏希と愛生人以外のメンバーは、その前後のことりの事の方が印象強かったらしく、少し微妙な表情を浮かべていた。一方名指しで指摘された夏希と愛生人は、そうだっけ?といった顔を見合わせていた。

 

「ほら夏希と愛生人は覚えてるでしょ」

「まぁな」

「若葉さんから弄られると輝くと聞いたので、つい……」

「お前が原因かよ!」

 

夏希と愛生人の言葉に若葉を勢いよく見る翔平。そんな時、あのーと遠慮気味に海未が手を挙げる。

 

「どうしたの、海未?」

「質問良いですか?」

「あぁどうぞ」

 

海未は翔平に質問があるらしく、本人が頷くのを見ると一つ咳払いをして質問をする。

 

「あの、私とことりは幼い頃から若葉と一緒でしたが、貴方の事をこの間初めて知ったのですが…」

「つまり嫉妬、と?」

「なんでそうなるんですか!違います!」

 

申し訳なさそうに聞いた途端に茶化された海未は、立ち上がりながら否定する。海未の否定を聞いた翔平はだってよー、と若葉に笑い掛けている。

 

「まぁ嫉妬云々は冗談として、多分知らなかった理由として、あ〜っと」

 

そこまで言って若葉を見る翔平。若葉はその視線の意味を察して海未の名前と学年を教える。

 

「サンクス若葉。海未さんは中学どこだった?」

「海未で良いですよ。中学は珱稜(えいりょう)中でした」

「俺は高蓑原高校附属中だから多分知らないのはそのせい」

 

翔平の答えに納得がいったのか、頷く海未。今度は絵里が不思議そうに手を挙げる。

 

「じゃあ若葉とはどこ知り合ったの?」

「えーと…何でだっけ?」

「翔平がウチ(穂むら)の常連だったんでしょ」

 

翔平が首を傾げて思い出そうとしていると、若葉が隣から手助けする。

 

「そう言えば、よく来てたよね」

「穂乃果が目当てだったりして」

「アハハーソンナコトアルワケナイジャネーカー」

 

真姫の言葉に目を逸らしながら答える翔平。彼を見る皆の目は冷たかった。

 

「え、ちょ。なんで皆さんそんなに冷たい視線を?」

「所で若葉君とはどんな関係にゃ?」

「心の友と書いて心友さ!」

「普通の友達だよ」

 

凛の問いに胸を張って答えるも、すぐ様若葉に頭を叩かれ訂正される。

 

「翔平君は彼女さんとかいるの?」

「恥ずかしながら年齢イコール派だぜ!」

 

ことりの質問に言葉とは裏腹に恥ずかし気ない様子で答える。若葉も確かに、と頷く。

 

「中学の時から結構告白されてるのに、その全員を振ってたもんね」

「因みに何人の女の子に告白されたん?」

「あー何人だっけな……若葉知ってるか?」

「10人を超えたところで数えるのを辞めたよ。ていうより、なんで本人が覚えてなくて他校だった俺がその数を知ってるのかな…」.

「何でってそりゃあれだろ。若葉が何人か紹介して来たんだろ」

 

翔平の言葉に今度は若葉が白い目で見られる。しかしそれを聞いて穂乃果は1人納得のいった顔で頷いていた。

 

「あーだからお兄ちゃん何回も違う女の子と一緒に帰ってたんだ」

「まぁね。翔平宛ての手紙とかも何通か預かった事もあるし」

「それを態々学校まで届けに来るんだから律儀だよな」

「だから高校になって行った時そんなにアウェー感が無かったんだね」

 

皆が白い目を止めたので安心しながら残りの炒飯を搔き込む様にして食べる衝撃。他の皆も止まっていた手を動かし、各々皿を空にする。

 

『ご馳走様でした~』

「お粗末さまでした」

 

そして食器を家庭科室へ返し、宿題を再開する。

 

「そう言えば若葉はこっち(音ノ木坂)に来て彼女とか出来たのか?」

「いや、出来ないし。そもそも今関係無いでしょ。ほらそこ間違ってるし」

「いやいや。流石に4ヵ月も経ってんだから誰かいるだろ。気になる奴とか」

「あーはいはいいるいる」

 

若葉は翔平の言葉を流しながら夏希の進み具合を見る。翔平は流された事に気付き少し不貞腐れながら課題を進める。

 

「そう言えば若葉と翔平君は高蓑原高校だとどこの専攻なの?」

 

そんな様子を見ていた絵里が二人に聞く。若葉はそういえば、と絵里だけが知らないのを思い出し、自身の通っていた専攻コースを伝える。

 

「数学って確か一番難しいって聞いたんだけど」

「いや~試験ギリギリでの入学だったね~」

 

頭を掻きながら照れる若葉を見て皆は真偽を確かめる為に翔平を見る。見られた翔平はと言うと遠い目をしていた。

 

「……先生曰く1番教え甲斐のある生徒だったそうだ」

「へ、へぇ。因みに翔平君はどこだったの?」

「俺も数学コースだぜ」

 

翔平が学生証を取り出して見せ、隣の穂乃果に渡す。穂乃果は若葉ので見慣れているのか、そんなにまじまじと見ずに隣の愛生人に渡す。

 

「ってそんな事より早く宿題終わらせないと、今日の練習時間なくなりますよ」

 

愛生人は学生証を花陽に渡しながらこの集まりの意味を思い出す。その言葉に皆はハッとなり、宿題を始める。

 

☆☆☆

 

「いや~終わった終わった」

「他の皆はもう屋上で練習してるけどね」

 

外では既に日が傾いており、部室にはオレンジ色の日が射していた。μ'sの面々と夏希、愛生人は宿題を途中で切り上げ、屋上で練習をしていた。

 

「にしても大分時間掛かったね」

「山岸の野郎ぜってー嫌がらせだろ。これ」

「でも最後の方はともかく、途中までは俺普通に習ったよ?」

「それはお前だけだー」

 

翔平が机に突っ伏しながらツッコむも、やはり少し元気がない。少しの間2人しかいない空間に沈黙が流れる。

 

「んでさ。結局若葉はどういうのが好みな訳?」

「またその話?」

「良いじゃねえか。今は2人しかいないんだし」

 

体を起こして聞く翔平に、若葉は溜め息を吐きながらう~んと考える。

 

「じゃあまずは身長。どのくらいが良いんだ?」

「身長……同じくらいが良さそうだよね」

「お前っていくつだっけ?」

こっち(音ノ木坂)に来てから測ってないけど、そっち(高蓑原)にいた時は160じゃなかったっけ?」

 

成る程、と手元のルーズリーフにメモをして、次々と質問をしていく。

 

「性格は?」

「んー。なんかこう、可愛い感じ?」

「顔は?」

「顔で決めるとか最低だと思うね」

「髪の長さは?」

「肩に掛かるくらいが丁度良さそうだよね」

「…年齢は?」

「プラマイ1年かな」

 

若葉の答えを一瞥し、翔平は若葉をジト目で見る。

 

「……お前真剣に答える気あるのか?総合したら穂乃果ちゃんに行き付きそうなんだが」

「結構真面目に答えてるつもりなんだけどね」

「じゃあぶっちゃけてμ'sの中だと誰が好みだよ。穂乃果ちゃん以外で」

 

翔平の踏み込んだ質問に若葉は顎に手を当て考える。翔平は若葉の答えを黙って待つ。

 

「う~ん……絵里か真姫、かな?」

「ふ~ん。っともうこんな時間か。俺はもう帰るとしますか」

「送って行く?」

「大丈夫だって。若葉はこのまま練習に合流してきなって」

 

じゃあなー、と部室の扉を開けて出て行く。

 

「合流しなって言われても、そろそろ終わってるでしょ」

 

鞄に荷物を入れて部室を出ると、扉の横の壁に真姫が寄り掛かっていた。

 

「あ、もう練習終わっちゃった?」

「え?あ、いや」

 

若葉に声を掛けられた途端に真姫は壁から素早く離れ、慌て始める。

 

「えと、今出来る所まで通すらしいから来て欲しいって。絵里が」

「あぁうん。分かったよ……で、さ。真姫はさっきの聞いてた?」

「……さっきって、何の話?」

「いや、聞いてないなら大丈夫。さ、早く行こう」

 

真姫がすれ違い様に見た若葉の顔は夕陽のせいなのか、赤く見えた。




夏「若葉が照れてるね~」
愛「だからあの時顔赤かったんですね」
若「帰って良いかな?」
夏「良いじゃねえか。もう少し弄らs…話してようぜ」
若「今完全に弄らせろって言い掛けたでしょ」
愛「そんな事より、若葉さんの好みについて結構聞かれてましたね」
夏「だな。ほぼほぼほのっちに当て嵌まってたけどな」
若「妹が一番可愛く見えるって言わない?」
愛「若葉さん。そんな事言ってるからシスコン言われるんですよ」
夏「実際シスコンだけどな」
若「いや、実際妹は可愛いよ。作者はいないから分からないらしいけど」
夏「あー妹がいないから小説(2次元)で妹を可愛がってんだな」
愛「うわー…今読者の何人、いや何十人かが引きましたよ?」
若「作者に止めを刺さないで上げて!」
夏「大丈夫だろ。このあとがきを読んでる読者が一体何人いるのやら」
若「そこは心配しちゃダメだよ!皆読んでくれてるから!」
愛「でも実際の所男3人、偶にμ'sの誰か、が話してるだけの数百字の文、一体誰が読むんですかね」
夏「このやり取りも、どのくらい需要があるのか…」
若「……まぁ作者もこのあとがきが1番色々話させやすいって思ってるしね」
愛「……」
夏「……」
若「……」
夏「今回はもう終わりにするか」
愛「ですね」
若「じゃあまた次回会いましょう」


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サイン、ですか?by海未

ようやっと再開する本編。夏休みの話だけで12話…長かったなぁ

ではどうぞ


「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん!」

「朝から穂乃果は元気だね。はい朝食。今日は朝練が無いからゆっくりできるよ」

 

夏休みが明け、新学期初日の朝。いつもより大分テンション高めの穂乃果を宥めながら若葉は椅子に座り、自分の分の朝食を食べ始める。

 

「だってだって!今朝ランキング見たら19位になってたんだよ?」

「まぁこの前からちょくちょく上がってたからね。別に不思議じゃないけど」

 

穂乃果が椅子に座りながら若葉に言うと、若葉は何の事でもないかの様に言うも、どこかそわそわした様子が見られる。その様子は朝食にも見られた。

 

「な、なんか今日の朝食豪華じゃない?」

「つい張り切っちゃった」

 

穂乃果が朝食の豪華さにツッコむと、若葉は笑いながら答える。

 

「やっぱりお兄ちゃんも嬉しいんだ」

「何か言った?」

「ううん。なんでも」

 

穂乃果の呟きに若葉が聞き返すと穂乃果は首を振って答える。

 

「さ、早く行こ」

 

穂乃果は食器を片付け、鞄を持つと玄関ではなく店の方から出て行く。

 

「全く、落ち着きがないと言うか、元気が有り余っていると言うか」

 

そんな穂乃果を見て溜め息を吐きつつ、自分の食器を片付け、穂乃果同様店の出入り口から出て行く。

 

「行ってきまーす」

 

店の準備をしている誠と裕美香に言うと、若葉は店から出て穂乃果の後を追う。

 

☆☆☆

 

「おっはよー!」

「おはようございます」

「おはよう穂乃果ちゃん」

 

穂乃果は既に待ち合わせ場所に来ていた海未とことりに挨拶する。2人は穂乃果に挨拶すると、3人の話は自然とスクールアイドルランキングの話になる。

 

「19位だよ19位!ラブライブに出場出来るかもしれないんだよ!ラブライブに出場出来ればきっと学校もなくならない」

「穂乃果ちゃん」

「穂乃果」

 

穂乃果の言葉に2人の感動した様に穂乃果の名前を呼ぶ。穂乃果はその場でターンをし、息を大きく吸う。

 

「ラブライブだー!」

「近所迷惑を考えなって」

 

叫んだ穂乃果に追いついた若葉が冷静にツッコむ。

 

「い、いいじゃん。嬉しいんだから」

「嬉しいのは分かったからこんな住宅街で叫ぶのは止めてね?」

「はーい」

 

若葉の注意を聞いた穂乃果は、頬を膨らませて答える。

 

「若葉も来たようですし、学校に向かいましょう」

 

海未に従い4人は学校に向かう。学校に近づくに連れて周囲が少し騒々しくなっていく。

 

「よっす。校内の至る所がμ'sの話題で持ち切りだぜ」

「あ、夏希君おはよう」

「おはようございます。夏希」

「課題はしっかり持って来た?」

 

教室に着き席に座るや否や夏希が若葉達の傍に寄って来て言う。穂乃果はヒデコらに廊下に連れて行かれていない。

 

「園田さん、ちょっといいかな?」

 

若葉と夏希が文化祭の事で相談しているとミカが戻って来て、海未に色紙を差し出していた。

 

「サインお願いしても大丈夫?」

「サイン、ですか…」

 

海未は戸惑いつつも色紙とペンを受け取り、色紙にペンを走らせる。その後、戻って来た穂乃果にも同じくサインを頼むミカ。

 

「ほんとあんた達極端よね」

 

穂乃果のサインを見たフミコのコメントに、どんなサインを書いたのか気になった若葉と夏希は色紙を見せて貰う。そこには大きな字で「高坂穂乃」と最後に小さく「果」と書かれており、左端には申し訳程度に「園田海未」と書かれていた。

 

「本当に極端だな。若ならまともなサイン書けるんじゃね?」

「いや書けないから。それにそういうのなら、にこの得意分野でしょ」

「それがね。さっき頼みに行ったら、今はプライベートなんでって断られちゃって」

「私達、芸能人って訳じゃないし」

 

にこの断り方に思わず苦笑いになる5人。それからチャイムが鳴り、担任の姫子が入ってくる。

 

☆☆☆

 

時は流れ放課後。穂乃果と凛は部室の隣の部屋で寝転がりながらラブライブのステージを見てうっとりしていた。

 

「出場したらここでライブ出来るんだ~」

「すごいにゃ~」

 

にこもにこで窓の方を向いて感慨に浸り、表情を戻して振り返る。

 

「まだ決まった訳じゃないんだし、気合入れていくわよ」

「にこっちの言う通りだぞ。これを見てくれ」

 

にこの言葉に賛同しつつ、夏希がパソコンを操作する。そこにはA-RISEの7日間連続ライブのお知らせが記載されていた。

 

「7日間もやるんだ。凄いね~」

「ラブライブ出場チームは2週間後の時点で20位以内に入ったグループやからね。どのグループも最後の追い込みに必死なん」

「20位以下に落ちた所だってまだ諦めてないだろうし、今から追い上げてなんとか出場枠を勝ち取ろうとしているスクールアイドルだってたくさんいる」

「つまりこれからが本番って訳ね」

 

真姫の言葉に若葉、希、絵里の3人は頷いて答える。

 

「でも焦りは禁物って言いますし、取り敢えずは目の前にある学園祭で精一杯良いステージを見せましょう」

 

続く愛生人の言葉ににこはよし、と体の前で拳を握る。

 

「そうとなったら、この部長に仕事を頂戴!」

「じゃあにこ。うってつけの仕事があるわよ」

 

そう言って絵里は11人を連れて部室を出る。着いた場所は生徒会室の少し奥に設けられている、この時期にしか使われない教室だった。

 

「学園祭実行委員会室?」

「なんか長いな」

「せやろ?だからウチらは学祭室って呼んどるんよ」

「ほら廊下で話してないで早く中に入るわよ」

 

プレートを見て若葉が感想を言うと夏希、希が続けて言い、絵里に注意を受ける。3人が中に入ると、2人の生徒が抱き合って喜んでいた。

 

「絵里、なんで講堂がくじ引きな訳?」

「昔から伝統らしくて」

 

にこの最もな疑問に絵里は苦笑いで返すしかなかった。そして実行委員から名前を呼ばれ、にこが鬼気に迫る表情でくじ引きの元へ歩く。にこの顔を見て一瞬引き攣った声を上げるも、委員はにこにくじを促す。

にこがくじの取っ手を掴み回す。学祭室の中には緊迫した空気が流れる。そして出て来た球の色は…

 

「残念。アイドル研究部、学園祭で講堂を使用できません」

 

白、つまりははずれ。その事実を知った部員達はその場に項垂れたり、壁や床に手を付いて落ち込んでいた。

 

「……取り敢えず屋上に戻ろうか」

 

なおも落ち込んでいるメンバーに若葉が言う。皆は項垂れたまま屋上に場所を移す。

 

「どーしよー!」

「だ、だってしょうがないじゃない。くじ引きで決まるなんて知らなかったんだから」

「あー開き直ったにゃ!」

「うぅ…なんで外れちゃったの」

「ま、予想されたオチね」

「にこっち。ウチ、信じてたんよ」

「うるさいうるさいうるさーい。悪かったわよ」

 

穂乃果の叫びを皮切りににこ、凛、花陽、真姫、希が立て続けに言い、最後ににこが一言謝る。

 

「気持ちを切り替えましょう」

「そうだな。講堂が使えないんじゃ他の場所でやるしかない」

「でも体育館とグラウンドは運動部が使ってますよね?」

「ではどこで」

 

早くも気持ちを切り替え始めている絵里、夏希、愛生人に海未が聞く。3人の代わりににこが部室を、穂乃果が廊下を提案するも、前者は狭い、後者はアホっぽいとの事で却下される。

 

「あとは若葉何か案ある?」

「う~ん…ここ、とか?」

『ここ?』

 

若葉が屋上を見渡しながら言う。

 

「そう屋上。簡易ステージなら親方から教えて貰ってるから何とか作れない事もないし」

「屋外ステージ?」

「確かにお客さんはたくさん入るけど…」

「それ良いね!それにここは私達にとって凄く大事な場所。ライブをやるには相応しいと思うんだ」

 

希とことりが首を傾げるていると、穂乃果が若葉に賛同する。穂乃果に続いて凛も賛成する。

 

「でも、それならどうやって屋上までお客さんを誘導するの?」

「確かにここだと偶然通り掛かるという事もないですし」

「下手すると1人も来なかったりして」

「えぇ!それはちょっと…」

 

真姫の言葉に花陽が不安そうな声を出す。すると穂乃果がじゃあ、とさらに提案する。

 

「じゃあおっきな声で歌おうよ」

「そんな簡単な事で解決する訳」

「校舎の中や外を歩いているお客さんにも聞こえる様な声で歌おう。そしたらきっと興味を持って、来てくれるよ」

 

にこが反論しようとするも、穂乃果は言葉を続ける。そんな穂乃果の案を絵里が笑い、穂乃果らしと言う。

 

「ダメ、かな?」

「いつもそうやってここまで来たんだもんね。μ'sってグループは」

「じゃあ決まりかな?」

 

若葉の言葉にメンバーの全員が頷く。こうしてμ'sの学園祭ライブは屋上に簡易ステージを作って行う事が決まった。

 




若「あ~やる気が…」
夏「いきなりどうしたんだよ」
愛「なんでも一回間違って投稿してあとがきが消えたらしいですよ」
若「はぁー…」
夏「でも落ち込んでるのは作者であって、若葉が落ち込む事はないんじゃね?」
愛「それはそうなんですけど」
若「……よし、気持ちを切り替えてあとがきやろうか」
夏「大丈夫か?」
愛「大丈夫なんですかね?」
若「さて、と。何の話をする?」
夏「う~ん。そうだなぁ、つか時系列で凄い悩んでたみたいだけど、大丈夫なのか?」
愛「実際アニメ11話で学園祭の準備から当日まで行ってますしね」
若「そうなんだよね~。だから次回次々回は多分そのあたりの話でもするんじゃない?」
夏「あ、そういえば近い内になんか起きるらしいぞ」
愛「なんかってなんですか?」
若「その内分かるでしょ」
夏「じゃあ今回はこれで終わりにするか」
若「じゃねー」


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あ、これは…拙いやby若葉

なんか今話は急展開な気がします。しますが、まぁ特に気にしたりなんかはしてない筈です!

因みに今話はあとがきの駄弁りコーナーはありません!なぜなら本編の内容が内容だからです!

ではどうぞ!


学園祭まであと一週間となったとある曇天の日の放課後。音ノ木坂学院の屋上からカンカンと、日曜大工を思わせる音が聞こえていた。

 

「これ完成したら簡易ステージ所じゃないんじゃね?」

「ですよね。資材がしっかりしてますし」

「ちゃんとしたステージだと鉄骨とか使うらしいけど、さすがに綾さんの許可が下りなかったよ」

 

そんな話をしながら若葉は手にしたトンカチを振り下ろす。愛生人と夏希は2人で木材を切っている。

 

「資材搬入は日曜の間に運べたて良かったね」

「だな。木材とか持って校内歩くの大変だったしな」

 

夏希は日曜日の事を思い出しながら言う。愛生人もそれには同意なのか、大きく頷いている。

3人が作業をしていると、突然屋上の扉が開き陸山が現れる。

 

「おーい若葉。やってるか?」

「親方、お疲れ様です。機材搬入って今日でしたっけ?」

「いや、今日は担当する奴らの紹介だな」

「やっはろー若葉クン!」

「僕たちが今回担当になったからよろしくね!」

 

陸山の後ろから2人の男性がひょっこりと顔を出し、挨拶する。

 

「若。こちらの人達は?」

「あ、そう言えば初めてだったね。こちらはバイト先の1つ陸山工務店の社長さんの陸山浩二さん。で、後ろにいる眼鏡の方が杉本さん。ヒョロい方が山田さん」

 

夏希と愛生人に3人を紹介していく若葉。その紹介文句に杉本と山田が抗議の声を上げるも、若葉はそれを無視して陸山に夏希と愛生人を紹介する。紹介された2人は抗議している2人を横目に陸山に挨拶する。

 

「若葉にも話した通り、今回のステージ設営には基本あいつら(杉本と山田)が担当する事になった。よろしく頼む」

「こちらこそ」

「よろしくお願いします」

 

背後で屋上に手をついて項垂れてる2人を差しながら陸山が言うと、夏希と愛生人は軽く頭を下げて返す。

 

「ほら杉本さん、山田さん。そろそろ話し合い始めましょう」

「うん。そうだね!」

「じゃあ始めていきましょう!」

 

若葉が2人を励ます様に肩に手を置くと、2人はすぐにテンション高く話し始める。

 

「さぁさぁやってきましたKショッピング!本日紹介するのはこちらの商品!」

「ステージ用スポットライト普通の所8点78,000円の所、今ならなんと!10点で78,000円、78,000円になります!」

「いや普通の所も何も、いつも10点で78,000円じゃないですか」

 

突然通販番組を始めた2人に若葉が冷静なツッコミをいれる。それを傍観していた夏希と愛生人の2人は陸山の方を見る。2人に見られた陸山は首を横に振り、それが日常茶飯事である事を伝える。

その時、夏希の頬に水滴が当たる。

 

「あ、雨」

 

夏希が空を見上げ、呟くと同時に雨が降り始める。

急な雨に慌てる学生3人に対し、大人3人は冷静だった。

 

「ほらお前ら。慌てふためいてないで、さっさと資材にブルーシート被せろ」

「は、はい!」

「夏希、せーので行くよ」

「愛生人クンだったっけ?僕と一緒にやるよ」

「はい!」

 

陸山の指示のもと、夏希と若葉、山田と愛生人が協力して資材にシートを被せる。

それから少し、全ての資材にシートを被せ終えた4人は、心配した穂乃果達が持って来たタオルで体を拭き、陸山達は会社へ、若葉達は部室へと戻った。

 

「にしても急に降ったね〜」

「だな。一応傘持って来て正解だったぜ」

「あ、前回と違って今日は持って来てたんですね」

 

3人は部室の隣の部屋で、濡れた制服からジャージに着替えながら話していた。愛生人が言っている前回とは凛がハイテンションでアクロバットした日の事である。

 

「また随分前の事を言うね」

「そうか。あれから早4ヶ月」

「そんなに昔の事じゃないです気がしますね」

「まるで昨日の様だってか?」

 

夏希が笑みを浮かながら部室への扉を開ける。

部室には絵里と希以外のμ'sの7人が座っており、学園祭で行うライブの曲順を話し合っていた。

 

「最初に新曲の『No brand girls』をやるとして、次何やる?」

 

にこがホワイトボードに『No brand girls』と書いて座っている部員を見る。

 

「9人で『START:DASH‼︎』やりたいにゃ!」

「一曲目結構動くから、動きの少ない『Wonder zone』とかも良いんじゃないかしら」

「えー!だったら9人で始めてやった『僕らのLIVE 君とのLIFE』が良いよー」

 

凛、絵里、穂乃果が2曲目の曲の候補を上げていく間に男子3人は席に着き、話し合いに混ざる。

 

「いっその事MCに入るとか」

「あーメンバー紹介的な?」

 

若葉と夏希の言葉に全員があー、となり『No brand girls』の次はメンバー紹介を含めたMCになった。

 

「さて、雨も弱くなって来たし、今の内に帰ろっか」

「そうね。ライブの事もある程度決まった事だし」

「そんじゃ、解散としますか」

 

話し合いが終わり、雨が弱まったタイミングで若葉が切り出すと、絵里は希と一緒に生徒会室へ、他のメンバーは帰宅の準備を始める。

 

「んー明日までに晴れると良いんだが」

「最悪雨が止んでくれればステージの準備出来るからね~」

 

夏希が傘越しに雨空を見上げ、若葉もそれに賛同する。

 

「もし明日も雨だったらどうします?」

「う~ん。練習は室内用にするとして、問題はステージなんだよね~」

「陸山さんから何か教わってないのか?」

 

夏希が若葉に聞くも、そういった事は教わってない若葉は首を横に振ると、でも、と続ける。

 

「細かい箇所は出来るから、そこを進めて行くしかないかな」

「そうだね~。あーあ、早く雨止まないかなー」

 

若葉の隣を歩く穂乃果が空を見上げて呟いた。

 

☆☆☆

 

次の日の朝。

 

「んー雨は止んだけど太陽は顔を出さずって所かな」

「うん。なんでも早朝まで降ってたらしいから」

 

若葉が店の外に出て曇り空を見上げ呟くと、寝巻き姿の雪穂も若葉の隣に立って空を見上げていた。

 

「あれ、雪穂今日は早いんだね」

「うん。なんか目が覚めちゃってね」

 

普段ならまだ寝ている時間であろう雪穂を若葉が意外そうに見る。それから2人は中に入り、若葉は朝食を作りにキッチンへと向かい、雪穂は誠の手伝いをしに厨房へと行く。

 

「さてと、穂乃果ーそろそろ時間だよ。起きないとまた海未ちゃんに怒られるよ?」

「どぅえええ」

 

朝食を作り、未だ起きない穂乃果を起こすと中から慌てた様な声の後、部屋の中からドタバタと騒がしい音が聞こえた。

 

「あれ?なんか既視感(デジャヴ)?」

 

若葉はどこか既視感を覚えながらも食卓に着き、穂乃果を待つ。穂乃果が来る前に誠の手伝いを終えた雪穂が食卓に着く。

 

「はぁ〜お兄ちゃん毎日こんな事やってたの?」

 

こんな事とは誠の手伝いの事だろう。手伝いの内容が思いの外厳しかったらしく、机に突っ伏して言う。それを見て若葉は微笑んで雪穂の頭を撫でる。

 

「まぁ俺は昔からやってたし、楽しくやってたからそんなに厳しいとは思わなかったかな〜」

「やー!」

 

若葉が撫でていると、雪穂は若葉の手を払い机に肘をつく。若葉は手を払われたのにも関わらず、微笑んで続ける。

 

「それにこうやって親孝行出来るのも学生の内だしね」

「そっかー……て、うん?お兄ちゃんって『穂むら』継がないの?」

「う〜ん。今の所は継ぐ気は無いかな」

 

雪穂の言葉に頷きながら返す若葉。そんな若葉の言葉に驚きの表情をする雪穂。

 

「まぁ今色んなバイトしてるのは、大学とか行って一人暮らしした時の為だからね」

「ふ〜ん。じゃあお兄ちゃんは将来何やりたいの?」

「う〜ん教師、とか?」

 

若葉がカラになった食器を片付けながらなんとなしに言う。その時、リビングの扉を開けて制服姿の穂乃果が飛び込んでくる。

 

「おっはよう!」

「おはようお姉ちゃん」

「穂乃果。ちゃんと朝ごはん食べないと昼までもたないよ」

 

食パンにマーガリンを塗り穂乃果に差し出すと、穂乃果は勢いよく噛り付き、そのまま外に出て行く。

 

「ちょ、穂乃果!?ったく。じゃあ雪穂、悪いんだけど」

「うん。食器を洗っておくよ」

「いつもゴメンね」

「大丈夫大丈夫。それより部活頑張ってね」

 

雪穂に背中越しに手を振り、店から出て穂乃果を追い掛けるように走り出す。

 

「皆おはよ~」

「お、やっと来たか。若が最後だぞ」

「まぁ遅刻って訳でもないですし」

 

若葉が神田明神の境内に着くと、既に若葉以外の部員が揃っており、各々柔軟体操を行っていた。

 

「じゃあ最初はいつも通り階段ダッシュからいくか」

「だね。でも階段は滑り易くなってたから気を付けてね」

『はーい』

 

夏希の言葉に若葉が頷きながら注意事項を伝え、皆が階段の前に並ぶ。

 

「それじゃあ始めますよ。よ~い、スタート!」

 

愛生人がストップウォッチ片手に叫ぶ。それと同時にメンバーは駆け出す。

 

「それにしてもダッシュを始めた頃と比べると、皆体力ついたよなー」

「まぁつくようなメニューにしてるからね。主に愛生人考案で」

「そんな事ないですよ。若葉さん達に比べたら僕なんてまだまだですって」

 

愛生人が考えたメニューとは、月初に持久階段ダッシュを行い、その時の往復数に応じて日頃の階段ダッシュの往復数を個人個人分けて行うメニューである。

この練習方法でトップの成績を収めているのが凛、それに次いで海未、穂乃果となっており、ワースト3人は花陽、ことりと意外にも希だった。ワースト、と言ってもこの9人の中での話であり、授業などでの持久走で中の上から中の中までには入っている。

実は愛生人考案のメニューにしてから一番成果があったのがにこだった。昔は凛にあっという間に捕まったにこだが、今では捕まるまでの時間が延びている。

記録用紙を片手に談笑していると、最初に凛がダッシュを終わらせる。

 

「凛ちゃんお疲れ様」

 

境内に座り込んだ凛に愛生人が労いつつ、ドリンクを渡す。それから少しして海未と穂乃果がほぼ同時にダッシュを終わらせる。2人には若葉がドリンクを渡す。

 

「2人ともお疲れ様。今日も僅差で海未の方が速かったね」

「う〜、海未ちゃんにまた勝てなかったー!」

「いえ、私もそろそろ穂乃果に抜かされかねませんよ」

 

と話している間に絵里も境内に姿を見せる。そしてその後ろから少しフラついている真姫も境内にいるメンバーの視界に入る。すると真姫は足を滑らせたのか、バランスを崩して重心が後ろに掛かり、仰け反る体勢になる。あまりの出来事に、それを見ていた全員は身動きが取れず、それを見ているしか出来なかった。

しかしそんな中、1人だけ反射の如く反応した者がいた。

 

「お兄ちゃん!?」

 

穂乃果は若葉の咄嗟の行動に驚き声を上げる。若葉は絵里の横を駆け抜け、左手で手摺を、右手で真姫の右腕を掴む。

 

「あ、これは…拙いや」

 

若葉が駆け抜けた事で、前にいた絵里も事態に気付き振り返り、若葉を手伝おうと駆け寄るも、若葉のそんな呟きと共に手摺を握っていた左手が滑り手摺を離してしまった。絵里は若葉の左手を掴もうと手を伸ばすも、その努力虚しくただ空を掴むばかり。

若葉は踏ん張りが利かないと理解するや否や、右手ごと真姫を思いっ切り引っ張り抱き抱える。そのまま2人は階段の中程まで転がり落ちる。

 

「若!マッキー!」

「ちょ、ちょっと2人とも大丈夫!?」

 

夏希と絵里が2人に駆け寄ると、若葉に抱かれていた真姫がゴソゴソと若葉の腕から抜け出す。その無事そうな真姫の様子に全員がホッと息を吐く。しかし真姫は1人、若葉の体を揺する。

 

「ちょっと…若葉?若葉ってば!」

「…ま、真姫ちゃん。どうしたの?」

 

真姫の切羽詰まった声に、穂乃果が声を震わせて聞く。しかし真姫は穂乃果の問いに答えずに若葉の名前を呼び続ける。その様子を見ていた夏希は何かに気付いたらしく、若葉の傍に駆け寄る。

 

「おい若葉!大丈夫…っ!」

「夏希?」

 

普段、若葉の事を『若』と呼んでいる夏希が『若葉』と呼んだ事に違和感を感じた絵里が夏希の名前を呼ぶ。

 

「愛生人、……を…べ」

「え?」

「今すぐ救急車を呼べ!頭から血が流れてる!」」

「は、はい!」

 

夏希が大きな声で愛生人に指示を出すと、愛生人は境内まで駆け上り、救急車を呼ぶ。その間に夏希は残ったメンバーに指示を出す。

 

「真姫、出来るだけ体を揺するな。そして少し落ち着け。誰かタオルでもハンカチでもいい、何か押さえる物貸してくれ!」

「わ、私が」

 

花陽が境内に取りに行くのを見た夏希は、未だに動揺している真姫を絵里に任せると花陽から受け取ったタオルで若葉の頭を抑える。

 

救急車が来たのはそれから数分後の事で、同伴者として妹の穂乃果、応急処置をした夏希、それから一緒に転がり落ちた真姫の3人を乗せ、救急車は西木野総合病院に向かった。




誤字脱字、感想、批判、アドバイス等をお待ちしております!


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母親は偉大なりby若葉&夏希

今更ながらダンガンロンパにハマりました。

え?関係無い?デスヨネー


若葉が救急車で西木野総合病院に運ばれた日の放課後、アイドル研究部の面々は『穂むら』に来ていた。裕美香はその光景を見てキョトンとしていた。

 

「あの、今朝の若葉の件、すいませんでした!」

『すいませんでした!』

 

夏希が頭を下げると、後ろに並んでいた全員も頭を下げる。頭を下げられた裕美香は驚き、少しの沈黙の後に慌てて顔を上げる様に促し、中の居間に皆を連れて行く。

 

「えっと、若葉のって事は今朝の怪我の事、よね」

 

全員が居間に入り、座るのを確認した裕美香が全員に確認を取る様に聞き、夏希がそれに頷く。

 

あの子(若葉)からは自分が勝手に転んだって聞いたんだけど」

「それは、本当ですか?」

「えぇ。お昼頃に着替えとかを置きに行ったら目が覚めててね。その時に聞いたのよ」

 

若葉が目覚めた事に安心感した様に息を吐く。しかし絵里と夏希はすぐに表情を戻し裕美香に言いづらそうに言う。

 

「あの、実は若葉が勝手にって言うのは」

「分かってるわよ。あの子の嘘でしょ。ま、転んだって所は本当みたいだったから、大方誰かを庇って転んだって感じかしらね」

 

裕美香の言葉に驚きを隠せない面々。裕美香はそれを見てふふっ、と笑うと続ける。

 

「何年あの子の母親やってると思っているのよ。あの子は嘘をつく時、必ず声が少し高くなるのよ」

 

裕美香がウィンクしながら言うと、ことりと海未が感心した様な声を漏らす。

 

「それで?あの子は誰を庇ったのかしら?」

「……私、です」

 

裕美香の質問に、真姫が今にも泣きそうな表情で答える。

真姫からしてみれば、大事な息子を2度も命の危険に合わせたのだから何を言われても仕方ないと思っているのだ。しかし裕美香の反応は真姫の、そしてその場の皆の予想を遥かに超える反応が返って来た。

 

「そう…全く、人を助ける時はなるべく無茶をしない様にって言ってあるのに」

 

と、なぜかこの場にいない若葉が呆れられていた。

 

「えと、お母さん?」

「どうしたの、穂乃果?……あぁ!どうせならウチのバカ息子のお見舞いにでも行ってあげて。多分暇して今までに食べた食パンの数を数えてるだろうから」

「はぁ」

 

裕美香がお見舞いの品として店の品を幾つか包み、近くにいた希に渡す。その間、夏希達はただ呆然と事の成り行きに流されていた。そして気付いた時には既に店の前で、裕美香と穂乃果に見送られていた。

 

「ウチの子達がまた迷惑掛けるかもしれないけど、これからもお願いされてくれるかしら?」

「はい!むしろこちらの方がお世話になっていますので」

 

少し困った表情で首を傾げる裕美香に絵里がはっきりと答える。

 

「あぁそれと真姫ちゃん。ちょっと」

「は、はい」

 

裕美香に手招きされた真姫は、緊張した面持ちで裕美香に近付く。真姫が近くに来ると、裕美香はそっと真姫に耳打ちし、それを聞いて不思議そうな顔をした真姫の背中を軽く叩き、皆の元へ戻す。

 

「それじゃあ今度はお客様としてのご来店をお待ちしてるわね〜」

 

裕美香はそう言って手を振り、店の中に戻って行った。それから夏希達は西木野総合病院に行く為に歩き出す。

 

「なんか凄いお母さんやったな」

「あ、若からLIMEが…『腹、減った…( i _ i )』だってさ。思ったより元気なのかもな」

「そう言えば真姫ちゃん。最後に何か言われてたけど、何言われたの?」

「……ひ、秘密よ秘密!」

 

と賑やかに話す前列。それとは打って変わって後列では何やら少し落ち込んだ様子のことりと海未。

 

☆☆☆

 

あれから10人でお見舞いに行くのはさすがに迷惑なんじゃ?と愛生人が言った事により、ステージ等の引き継ぎとして夏希、病院への案内等の為に真姫、そして幼馴染みとして海未の3人が行く事となり、他のメンバーは後日改めてとなった。

 

「それで?マッキーはさっき何言われてたんかな」

「まぁ穂乃果と若葉の母ですから、何を言っても不思議ではありませんが」

 

現在夏希と海未は病院のエントランスホールにあるベンチに座り話していた。真姫はエントランスに入るなり受け付けに行き、若葉の病室を訪ねていた。

 

「若葉の病室分かったわよ」

 

と真姫が若葉の病室まで案内する。

 

「ここよ」

 

着いた部屋は3階に登ってすぐの部屋だった。

 

「若、入るぞ?」

「どうぞ〜」

 

夏希が控えめに扉をノックすると、中からノンビリとした返事が返って来た。

 

「おーっす。お見舞いに来たぞ〜」

「失礼します」

「入るわね?」

 

三者三様な挨拶をして若葉の病室に入る。3人を迎え入れた若葉はベットに横になっており、頭に包帯を巻き、左足を吊っていた。

 

「いや〜皆が来てくれて良かったよ。起きたら病室だったから暇で暇で」

「何してたんですか?」

「今まで食べた食パンの枚数を出来る範囲で数えてたよ」

『……』

 

海未の質問に若葉が答えると、途端に3人共静かになる。急に静かになった3人に首を捻りながらも、若葉は海未が希から預かった和菓子を食べている。

 

「えーと、体の調子はどうだ?」

「左足は骨折して全治1ヶ月。頭の方は軽く切った程度だから今週中には包帯は取れるってさ。あ、あと夏希が応急処置してくれたんだってね。ありがとね」

「おう。どういたしまして」

 

若葉にお礼を言われ、少し照れた様に返す。そして話を戻す様に再び質問する。

 

「つか、頭の傷は本当に軽く切っただけなのか?それなりの量の血が出てたと思うんだが」

「まぁ切ったのが頭部だからね。軽く切っただけでも派手に流血するもんだよ」

「ですが、元気そうで何よりです」

 

普段通りの若葉の様子に安心する海未。

 

「だよね〜。自分でも思った以上に元気だよ。にしてもまだ夏が明けたばかりなのかな、少し暑いね」

「?確かに今日は暑かったですが」

「はいはい。お茶で良いよな」

 

若葉の言葉に海未は少し首を傾げるも、若葉に目配せされた夏希は意味を正しく理解し、海未を連れて病室から出て行こうとする。

 

「って、ちょっと夏希。なぜ私まで」

「うーみんは昔来た事あるっしょ。自販機まで案内頼むぜ?」

「自販機までならあなた1人でも行けるでしょう!」

「最近迷子になりやすいんだよ。若葉の方向音痴でも移ったのかね」

「方向音痴は移りません!」

「いいから行くぞ」

 

と最終的には夏希に引っ張られる形で病室を出て行く海未。病室に残ったのは入室してから一言も声を発してない真姫と、そんな真姫を困った様に見る若葉の2人だった。

 

「……真姫?」

 

沈黙に耐えられなくなった若葉が真姫の名前を呼ぶと、真姫は(はた)から見ても分かるくらい体を震わせ、徐々に目に涙が溜まっていく。

 

「ちょ、真姫どうしたの?まさかどっか痛めてたりする?ならすぐ誰か呼ばないと!」

「ち、違うの!そうじゃ、なくて」

 

若葉はナースコールに伸ばした手を止め真姫を見る。真姫は椅子から立ち上がってまっすぐ若葉を見ていた。

 

「そうじゃなくて、私のせいで若葉がまた危ない目にあっちゃって…だから」

「ま、待って!またって言った?」

「そっか。若葉は覚えてないんだ……」

 

若葉の制止の言葉に、真姫の頰に一筋の涙が流れる。真姫はそれを拭う事もせずポツポツと語り始める。

 

「去年の夏休みに入る…」

「あー!あの時の誘拐未遂事件!」

 

真姫の言葉を遮って体を起こし叫ぶ若葉と、突然叫んだ若葉に驚く真姫。

 

「お、覚えてたの?」

「いや、覚えてたって言うか、その……命の危機を感じたのが今回以外だとその時しか無くて…ね。そっか、あの時の子は真姫だったのか」

 

若葉は思い出せた事に安堵の息を吐き、体をベッドに預ける。

 

「まぁあの時もだけど無事で良かったよ」

「……も、……わよ」

「え?今なんて」

 

俯いた真姫の言葉を聞き取れなかった若葉は真姫に聞く。

 

「ちっとも、良くないわよ!あの時、刺されて血がたくさん流れて、私のせいで見知らぬ人が死んじゃったと思った!」

「真姫……」

「今日の朝も!私を庇って階段から落ちるし、そのせいでまた命が危なくなって!」

 

真姫は堰を切った様に今日一日思ってた事を若葉に叫び続ける。若葉はそれを止めることなく、顔を逸らすこともせず、真姫を正面から見ていた。

 

「でも、さっき若葉のお母さんから『今まで色んな人を助けてきたけど、ここまでして(危ない目にあってまで)守った事があるのは貴女だけよ』って言われてちょっと嬉しくなったり。そんな不謹慎な自分が嫌になって、もう何が何だか分からなくなって……病室(ここ)に来て若葉に会えば分かるかなって思ったのに全然分からなくて…だから…」

 

と涙を流しながら若葉に自分の心境を素直にぶつける。そんな真姫を静かに見つめていた若葉はえ〜と、と頭を掻きながら、自分の気持ちを整理する。

 

「母さんは何を言ってんだ。とか、他にも色々とツッコミたい所はあるんだけど」

 

とそこで一度言葉を切り、取り敢えず、と続ける。

 

「真姫、こっちおいで」

 

と手招きする。しかし真姫はその提案に俯いたまま首を振って拒否する。

 

「良いからおいでって」

 

それでも尚首を振る真姫。

 

「もう一度言うよ。良いからおいでって。でないと…ッつぅ!」

「若葉!?大丈夫?今先生を…!」

 

足を抑えて痛がりだした若葉に真姫は慌てて駆け寄ると、ナースコールを押そう手を伸ばす。しかしその手は若葉によって止められる。

 

「え?」

「やっと来てくれた」

「若葉、足は…?」

「だってこうでもしないと真姫は近付いてくれないからね」

 

つまりは痛がるフリだったのだ。真姫は見事に騙され、若葉の思惑通り若葉のすぐ近くに来ていた。

 

「大丈夫。俺はそう簡単に死なないよ。それに1年前も、今朝の事も、両方俺が真姫を助けたくて、必死で頑張ったんだ。だから真姫がそう責任を背負う必要は無いんだよ」

「でも、結局は私のせいで」

「じゃあこうしよう。これからは無茶な事はしないし、また危ない目にあったら俺が必ず助ける。それじゃあダメ、かな?」

 

若葉の言葉に首を振って答える真姫。若葉はそれを見て頷くと、上体を起こし真姫の頭を優しく撫でる。真姫は心地良さそうに目を瞑ると、黙って椅子に座る。

 

「その…取り乱してごめんなさい」

「大丈夫大丈夫。俺でも偶に取り乱しちゃう時あるしね」

 

真姫の謝罪に若葉は笑って答える。それから夏希と海未が戻って来るまで、2人は静かに過ごした。

 

「ではそろそろ時間も時間なので私はお(いとま)させて頂きます。2人はどうしますか?」

 

それから1時間程話した所で、海未が鞄を手に真姫と夏希に聞く。

 

「私も帰るわ」

「俺はまだちょっと話したい事があるから残るわ」

 

真姫も鞄を持って立ち上がり、夏希は椅子に座ったまま答える。

 

「分かりました。それでは私達はこれで失礼します。若葉、キチンと安静にしてるんですよ?」

「分かってるって。流石にそんなに無茶はしないって」

「それじゃあ、また明日」

「また明日」

 

若葉は病室から出て行く海未と真姫に手を振って見送る。そして唯一病室に残った夏希を見る。

 

「で、夏希はどうして残ったの?」

「どうしてって、そりゃ仕事の引き継ぎしなきゃだろ」

「あーそっか。文化祭には間に合わないもんね」

 

夏希の言葉に若葉は自身の足を見て納得する。そして面会時間ギリギリまで夏希と、若葉が居なくても平気な様に、今後の予定を組んだ。

 

「まぁこんな感じかな。更に細かい部分は親方と話して決めるって感じだね」

「そうか、こんな時間まで悪かったな。色々とあったのに」

「まぁね。でも意識が戻る早さが予想外だったって先生に言われたよ」

 

若葉は笑ってお見舞い品の和菓子を食べる。

 

「それにしてもほのっちと若の母親は凄いよな」

「ん?どうして?」

 

夏希の言葉に疑問を持ち若葉が聞くと、夏希は病院に来る前の事を話す。話を聞いた若葉は裕美香に色々と見抜かれていた事に驚く。

 

「なぁ若、俺は今日の数時間で実感したよ」

「奇遇だね。俺も多分同じ事を思ってるよ」

 

同じ結論に至った2人は顔を見合わせ、同時に言う。

 

「「母親は偉大なり」」




夏「いや〜若が生きてて良かったな」
穂「本当だよ」
こ「うんうん」
海「ですが、文化祭には間に合いそうにないですね…」
穂「お兄ちゃんの分まで頑張らないとね!」
夏「と言ってアニメみたいに当日風邪引く様なオーバーワークはやんなよ?」
こ「無茶しちゃダメだよ?」
穂「さ、流石にやらないよ」
海「そうですよ夏希。いくら穂乃果でもそんな事、ねぇ穂乃果。私の目をしっかり見て否定して下さい」
こ「そうだよ。穂乃果ちゃん!」
穂「う、海未ちゃんやことりちゃんまで…穂乃果はオーバーワークはしないよ!しーまーせーん!」
海こ「「ね?」」
夏「いやそんな満面の笑みで言われても…」
穂「うぅ…流石の穂乃果も真姫ちゃんの事があるからやらないよ〜」
海「しかし、足を骨折して全治1ヶ月、ですか」
こ「骨折したにしては治るの早いよね」
若『先生曰く、綺麗に折れたからくっ付き易いんだってさ』
穂「へぇ〜……てお兄ちゃん!?」
こ「若葉君!?」
海「若葉!?」
夏「お、やっと繋がったか」
若『どもー病室からお送りしてまーす』
穂「ちょ、そんな事して大丈夫なの?」
こ「たしか、病院って医療機器のせいで電波使ったら拙いんじゃ…」
若『あ、そこは大丈夫。今屋上にいるから』
海「出歩いて大丈夫なんですか?」
若『……』
こ「ダメ、なんだ」
夏「そんな事して大丈夫なのか?」
若『いや、多分……拙い』
穂「じゃあすぐ戻ろうよ!」
海「夏希も夏希です!怪我人に何させてるんですか!」
夏「いや、俺は出来たらって条件で若葉に頼んだんだ」
海「そんなの関係ありません。若葉の性格上参加するに決まってます!」
若『落ち着け穂乃果。俺は別に無理してないからね?屋上(ここ)までもちゃんとエレベーターで上がって来たし』
穂「そういう問題じゃないの!皆に心配かけたんだから、少しは自覚持とうよー」
若『かく言う穂乃果だってアニメで散々心配掛けさせたくせに…」
穂「何か言った?」
若『あっとそろそろ診察の時間だから戻るね!』
穂「あ、ちょっとお兄ちゃん!?まだ話は終わってないんだからー!」
こ「海未ちゃんは向こうで夏希君とO☆HA☆NA☆SHI中、穂乃果ちゃんは若葉君の所へ行ったちゅん……だから今回はここまででーす。感想とかーよろしくね!はいちゅんちゅん」



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ハラショーby亜里沙

書いてる最中思った事。

1.ライブシーンが……
2.ラブライブサンシャインってなんぞ?
3.映画まであと1ヶ月!
4.ことりの留学話どうしよ…

以上!なんか他にもあった気がするけど、忘れたよね!


そして時は流れ文化祭当日。天候は雨。

 

「やっぱり降ったな」

 

朝から部室に集まった11人のアイドル研究部。夏希が11人全員が思っている事を口にする。

 

「まぁ昨日から降ってましたもんね」

「でも雨対策はしてあるんでしょ?」

 

絵里の質問にステージ設営に携わっていた2人は頷く。

 

「問題はその屋根でどこまで浸水を防げるか、だな」

 

夏希は不安そうにステージのある屋上を見上げる。それに釣られて他のメンバーも上を見る。

そんな時、コンコンと控えめなノックが扉から聞こえた。メンバーはそれぞれ顔を見合わせながら、心当たりを思い出す。しかし誰も心当たりが無く、戸惑っていると、もう一度ノックがされる。

 

「ど、どうぞ」

 

扉の一番近くに居た事もあり、夏希が緊張しながら入室を促す。

 

「し、失礼します。アイドル研究部の部室で合ってますか?」

 

扉を開け入って来たのは赤みがかった茶髪の中学生と、亜麻色の髪の中学生が入って来る。

 

「雪穂?」

「亜里沙じゃない」

 

入って来たのは穂乃果と絵里の妹の雪穂と亜里沙だった。2人は中学の制服を着ており、雪穂は落ち着いている反面亜里沙は生μ'sに興奮していた。

 

「お姉ちゃん。これ、お兄ちゃんがお姉ちゃんに渡してって」

「…DVD?」

 

雪穂が穂乃果に差し出したのは『皆へ』書かれた1枚のDVDだった。それを受け取った穂乃果は早速部室にあるパソコンにDVDを入れる。

 

『あー、撮れてる……よね?』

 

DVDに保存されていた映像は病室にいる若葉だった。画面の中の若葉はカメラに向かって笑って手を振っていた。

 

『撮れてる事を願って話をするね。えーと、まず、今日は雨降ってるけど、天気予報だと雨になってるからステージで滑らない様に気を付けてね。あと穂乃果。オーバーワークしてないよね?学校の今後が掛かってるんだから皆頑張ってステージ盛り上げてね!』

 

若葉が手を振り上げ、暫くしてからベットから立ち上がり、松葉杖をつきながらカメラに近付く。

 

『にしてもこれ撮れてなかったり、ピント合ってなかったら結構恥ずかしいよね』

 

と独り言を呟き、カメラのスイッチを押したのか、画面が暗くなり、部室に沈黙が訪れる。

 

「あ、まだ続きがあるみたいですよ?」

 

海未が画面を指して言うと、先程まで暗かった画面が明るくなる。

 

『さっきので終わりだと思った?残念まだ続くよ!って言ってもそんなに時間無いから簡潔に済ませるけどね』

「時間無いならさっきの暗転が無駄だよな」

 

夏希のツッコミにその場にいた全員が頷く。

 

『さて何を言おうかな。そうだな残りもあと少しだしなぁ、うん。もし雨が降っていても、きっと皆の力ならお客さんは屋上に足を運んでくれるから、心配しなくて大丈夫だよ。俺は止められてそっちに行けないけど、ここから応援してるから、頑張ってね』

「なんてね!」

 

DVDの映像が終わると同時に、部室の扉が勢い良く開かれる。皆は突然の来訪者に驚き振り向く。そこには先程までパソコンの画面に映っていた若葉が立っていた。

 

「…若、葉?」

「や、真姫。それに皆も」

 

若葉を呼んだ真姫に手を上げて返す。そして部室にいるメンバーにも同じ様に挨拶する。

 

「どうしたの?なんかポカーンとしてるけど」

 

突然の若葉の登場に皆が固まってる中、若葉は松葉杖をついて壁に寄り掛かる。

 

「て、いやいやいや!そうじゃなくて!」

「なんでお兄ちゃんがここにいるの!?」

 

そこまでいってようやく夏希と穂乃果にツッコまれる。2人のツッコミにより、他のメンバーも徐々に元に戻っていく。

 

「なんでってさっき言ったじゃん」

 

そんな一同を無視して穂乃果の質問に平然と返す若葉。

 

「さっきっていつですか!」

「ここに来てから若葉君『なんてね!』と挨拶しか言ってないにゃ!」

「そうですよ!」

 

若葉の答えに愛生人、凛、花陽がツッコむ。

 

「て言うかいつからいたのよ」

「というよりここにいて良いん?」

「そうよ。まだ入院してないと拙いんじゃないの?」

 

にこ、希、絵里はツッコミつつも若葉の事を気遣っている。

 

「雪穂知ってた?」

「ううん。だって私と亜里沙が入って来る時も外に誰もいなかったし」

「ハラショー」

 

穂乃果、雪穂、亜里沙に至っては若葉そっちのけで話していた。

 

「いや〜今日学園祭当日じゃん?だったら来ない訳にはいかないでしょ」

 

たとえ少し無理してでもね、と心の中で呟く。

そんな若葉を見て真姫は黙って近付く。そんな真姫を不思議に思い、若葉が名前を呼ぶも、真姫は返事をしない。そして若葉の目の前に立つ。その表情は俯いていてよく分からない。

 

「真姫…?」

 

若葉が再度名前を呼ぶと、真姫は顔を上げるも、その目には涙を浮かべており、口をキツく結んでいた。

次の瞬間、真姫が平手を右から左へ思いっ切り振り抜いた。

静かな部室にパシン、と乾いた音が響く。それは真姫が若葉に平手打ちをした音であり、真姫を除いたその部屋にいた全員、叩かれた若葉も含めて何があったのか分かっていなかった。暫くして自身の左頬に痛みを感じた若葉は真姫に何をされたのか理解し、真姫を見る。

 

「何か、何が『来ない訳にはいかないでしょ』よ。そんな無理して、病院まで抜け出して」

「…心配かけてゴメンね。でもさ、このメンバーで出来る学園祭はこれっきりだからさ。皆で参加したいんだ。それにホラ、俺はもう大丈夫だから」

 

若葉は笑顔で真姫の頭をくしゃくしゃする。そして部屋をぐるりと見回すと

 

「て言うか時間大丈夫なの?ライブまでそんなに時間無いけど」

 

時計を指して指摘する。若葉の言葉で時計を見ると確かにライブまでそんなに時間は無い。

 

「ホラ、皆早く着替えましょう」

 

絵里に促され、μ'sのメンバーは隣の部屋へ着替えに向かう。その際穂乃果が

 

「お兄ちゃん、後でお話ね」

 

と若葉に言い、若葉は顔を少し引き攣らせた。それから雪穂と亜里沙を先に屋上に行かせ、部室には若葉、夏希、愛生人の3人が残った。

 

「ハァ……夏希」

「ど、どうした?」

 

3人になった事を確認した若葉は目を潤ませて夏希を見る。夏希は少し驚きつつ、用件を聞くと

 

「なんでも良いから冷やす物ない?」

 

若葉は真姫に叩かれた左頬を抑えて、冷やす物を求めた。夏希はそんな若葉に溜め息を吐き、氷の入った袋を渡す。袋を受け取った若葉は、椅子に座り頬を冷やす。

 

「痛かった〜」

「なんで我慢してたんですか」

「いや、さすがに妹達の前だったからね」

 

愛生人のツッコミに苦笑いで返す若葉。そんな若葉の言葉に呆れる様に笑う夏希と愛生人。

 

「さて、若は戦力外として計算するぞ?」

「うん。折角来たのに申し訳ない」

「若葉さんは怪我してるんで、これ以上無理しない下さいね。次はビンタじゃ済まされないかもですから」

 

愛生人は左頬を見ながら釘をさす。若葉もさすがにこれ以上はするつもりもないので黙って頷く。

 

「よしアッキー。俺らもそろそろ屋上に行くぞ」

「わっかりました〜」

 

そう言って2人は部室を出て行く。1人になった若葉は特に何をする訳でもなく、ただボーッとしながら頬を冷やしていた。

少ししてステージ衣装に着替えたメンバーが隣の部屋から続々と出て来る。

 

「あら、若葉だけ?」

「そうだよ。2人なら先に行って機材チェックしてると思うよ」

「若葉君1人で屋上まで来れる?」

「この後翔平と一緒に行くからそこは心配しなくて大丈夫だよ。それじゃあまた屋上で」

 

絵里と希の質問に答えると若葉は立ち上がり、部室を出て行く。

 

「さてどこに行こうかな」

「若葉!」

 

部室を出てどこに行くか迷っている若葉を後ろから、真姫が呼びかける。立ち止まり、振り返ると真姫は急ぎ足で若葉に近付くと

 

「その、さっきはごめんなさい」

「…いやいや、心配かけたのも悪いのもこっちだから。真姫は謝らないで大丈夫だよ」

「で、でも。叩いたのはさすがにやり過ぎたかなって思って…」

 

それでもなお引こうとしない真姫に、若葉は頭を掻きながらどうするか考え、そして一つの考えに至った。

若葉は松葉杖をついていない右腕で真姫を抱き締め、そっと囁く。

 

「じゃあ、今日俺に最高のライブを見せてよ。それでチャラ」

「……うん」

 

真姫は若葉の胸に顔を埋めて頷く。

 

「よし、じゃあライブ楽しみにしてるね」

「任せなさい。今までにない最高のライブを見せてあげるわ」

 

若葉は真姫を離して、真姫も若葉から離れ笑って言う。そして真姫は屋上に、若葉は翔平との待ち合わせ場所へそれぞれの行き先に向かって歩き出す。

 

☆☆☆

 

「意外に人いるな」

「そうだね。雨って事を考えても結構人いるね」

 

若葉は現在、翔平と共に雨の降りしきる屋上に並んで立っていた。屋上は色取り取りの傘で埋め尽くされており、その先に少し高くなっているステージが見える。

若葉と翔平はその光景を梯子を登った小さなスペースから眺めていた。

 

「あ、やっぱり若葉さんここでしたか」

「愛生人じゃん。お久ー」

「翔平さん。お久し振りです」

 

そこへカメラと三脚を持った愛生人が登ってくる。愛生人は翔平に挨拶を済ませると、慣れた手つきで三脚を にカメラを設置し、電源を入れる。

 

「愛生人、俺が撮ってるよ?」

「いえ、今日の若葉さんはμ'sのサポート班ではなく、一お客様なので大丈夫です」

「そっか。分かったよ」

 

愛生人の言葉に若葉が頷いた時、ステージに照明が付き、音楽が流れ始める。曲は『Wonder zone』

ことりの歌い出しと共に、ステージ袖からメンバーがステージに現れる。

 

それから時の流れは早く、『Wonder zone』の次に『No brand girls』、その後は休憩を兼ねたメンバー紹介、そして『START:DASH‼︎』と『僕らのLIVE 君とのLIFE』のメドレーを行い、屋上どころか、屋上の一個下の階からも拍手が送られ、μ'sの学園祭でのライブは幕を閉じた。

 

☆☆☆

 

ライブ後、若葉は翔平と別れ部室に向かっていた。部室に近付くにつれ、学園祭の喧騒から離れ、部室の賑やかな声が聞こえ始める。

 

「入るよ〜」

 

若葉は一言断り、部室の扉を開ける。

そこには既にステージ衣装から音ノ木坂の制服に戻ったμ'sと、夏希、愛生人がいた。

 

「あ、お兄ちゃん。ステージどうだった?」

「凄く良かったよ。まさか最後メドレーで来るとは思わなかったし」

 

穂乃果の問い掛けに真姫の隣に座りながら答える若葉。若葉の賞賛の言葉にメンバーはそれぞれ喜び、ハイタッチを交わした。

 




愛「『人生初の箱買いは黒雷でした』」
真「あとがき冒頭から何言ってるのよ」
愛「あ、真姫ちゃん。これね、作者の日記的な物なんだけど」
花「勝手に読んだら拙いんじゃない?」
凛「愛生人君、他のページにはなんて書いてあるの?」
愛「えと…『ことりの留学話しなくても良いよね!』って」
真「良くない気がするけど、しないでくれた方が私達的には嬉しいわね」
凛「あ、こっちには『その代わりに何かやらなきゃ』って書いてあるにゃ!」
花「ことりちゃんの留学話の代わりって、もしかして他のメンバーが!?」
真「いやいや、今までそんな話出て来てないじゃない」
愛「いや、作者ならやりかねないよ。だって穂乃果さんの風邪の代わりに、若葉さんを入院させたんだから!」
真「それを言われると確かにありそうね」
凛「分かった!凛が英語の勉強の為にアメーリカに行くんだにゃ!」
愛花「「なんで伸ばしたの!?」」
真「まぁそれは無いって作者が言ってたけどね」
凛「えー。じゃあじゃあ、若葉君が武者修行の旅に出るとか!」
愛「もしそうなったら」
花「なったら?」
愛「真姫ちゃんも付いて行くしぎゃ!」
真「な・ん・でそうなるのかしら?」
凛「あぁ!真姫ちゃん落ち着いて!」
花「愛生人君の首締めちゃダメだよ!」
愛「……凛ちゃん…後は……たの…ん、だ……」(バタッ
凛「あ、愛生人くぅぅぅん!」
真「さ、向こうでラブコメやってる2人は放っておいて、今回の話でもしましょ」
花「なんか文化祭のライブ、あっという間に終わっちゃったね」
真「まぁ歌詞載せられないとか、色々あるみたいだけど。1番の理由は作者の文章力の無さね」
花「うん。一周回ってこれからのライブシーン全部カットしてもいんじゃね?って思ってるみたいだし」
真「ラブ"ライブ"なのにね」
花「アハハハ」
真「っと、そろそろ時間ね。ほら2人とも、もう終わりよ」
愛「それは違うよ!」
花「違わないよ?もう終わりってカンペに」
凛「うぅ〜全然話せなかったにゃ〜」
愛「まぁ話したい事はその内やる『あとがき2万字の時に話せば良いじゃん。じゃあまた次回!」
『バイバーイ』


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なんて反応すれば良いの?by若葉

ことりの留学話の代わりのオリジナル話。

矛盾が無いかと心配です。つか、一期の最終話辺りの感動が無くなりそうです。

そしてここに来て新キャラ登場!さらにお気に入り500件突破!ありがとうございます!


文化祭から一週間後。若葉は退院し、久し振りに音ノ木坂に登校していた。

 

「久し振りの音ノ木だね〜」

「お、お兄ちゃんの荷物、重過ぎる…」

 

校門の前でノンビリと校舎を見る若葉と、怪我をしてるんだから、と若葉の分の荷物を持ってその重さに疲れ果ててる穂乃果。

 

「そんなに重いかな」

「こんなに何が入ってるの?」

 

穂乃果が荷物の中身を聞くと、若葉はえーと、と顎に手を当てて中身を羅列していく。

 

「取り敢えず今日使う教科書でしょ。あとは部活で使うビデオと、ノーパソと、ファイルと、今日の分の弁当と」

「もういいよ!て言うか、なんで穂乃果と同じ大きさの鞄なのにそんなに入るの!?」

 

若葉の言葉を遮って鞄に入っている物の量にツッコむ穂乃果。

 

「寧ろ穂乃果こそ何を入れてるのさ」

「え、え〜と…練習着でしょ。あとは海未ちゃんから渡されたステップの書かれた紙に、歌詞の書かれた紙。それからお財布と」

 

と穂乃果は若葉に聞かれ、自身の鞄の中の物を挙げていく。その中身を聞いて不思議に思ったり若葉にはそれについて穂乃果に聞く。

 

「穂乃果。お昼は購買で買うから良いとして、教科書はどうしたの?」

「あ〜…あははは」

 

若葉の質問に穂乃果は目を逸らしながら乾いた笑い声を出す。そんな穂乃果に若葉は追撃をする。

 

「まさか教科書置きっ放しにしてるとか、無いよね?」

「……そ、そんな事よりお兄ちゃん!もう教室着いたよ!ホラ、荷物置いたから職員室行かないと!」

 

若葉の追撃を話を逸らして躱す穂乃果。そんな穂乃果を若葉はジト目で見て、溜め息を吐く。

 

「穂乃果。確かにまいにち持ち帰るのは大変だと思うけど、ちゃんと持ち帰らないとだよ」

「うぅ…はい」

「うん。素直でよろしいです」

 

若葉の言葉に渋々ながらも頷いた穂乃果に、若葉は笑顔で頭を撫で、退院報告をしに職員室に向かう。

 

☆☆☆

 

時は流れ放課後。若葉は夏希といつも通りにアイドル研究部の部室に向かう。穂乃果と海未、ことりは先に部室に向かったので2人と一緒にではない。

 

「それにしてもあっという間に放課後になったね」

「久し振りの授業だったから1日が早く感じたんだろ」

 

部室に向かいながら呟いた若葉に、夏希がどうでもよさ気に答える。その夏希の表情はどこか強張っている様に見えた。

 

「ねぇ夏希」

「あ?なんだ?」

「何か隠し事でもある?」

「……なんでそう思うんだ?」

 

若葉は今日1日思っていた事を夏希に聞く。夏希は少しの間の後、若葉にその理由を聞く。

 

「いや、何となくだけど」

「そうか。まぁ、その、なんだ。その内分かるさ」

 

と言い夏希はその話題を打ち切る。それから部室に着くまで若葉がなにを聞いても夏希はダンマリを通した。

部室に着くと夏希は重い溜め息を一つ吐くと、部室のドアを3回ノックし、少しで間を置いてドアを開ける。

 

「ヤッホー皆お見舞いありがとねー!」

 

夏希の後から入った若葉は元気に片手を上げてお見舞いのお礼を言う。しかし部室の空気は軽くなく、寧ろ重かった。

 

「え〜と……夏希説明して」

 

若葉はその空気の重さに少々気不味さを感じ、部室に入ると同時に椅子に座った夏希の隣に座り、小声で説明を求めた。

 

「じゃあ若も来た事だし、あの話をするぞ」

 

若葉の言葉を受けてなのか夏希がそう言うと、部室に緊張が走る。若葉以外は"あの話"の内容を知っている様で、若葉だけが首を傾げていた。

そんな若葉を無視して、夏希は絵里と軽いアイコンタクトを交わし、どちらが切り出すかを話していた。結果、夏希が口を開く。

 

「若、凄く言いにくい事が2つ、良い事が1つある。どちらから聞きたい?」

「その"良い事"が"凄く言いにくい事"が無い、またはその逆じゃなかったら、そうだね……良い事からで」

「分かった」

 

若葉の答えに夏希は立ち上がり、部室の棚から一枚の紙を取り出し、若葉の前に置く。

 

「本発表は明日の全校集会になるんだが」

 

と夏希の言葉を聞きながら、若葉は置かれた紙を見る。紙の一番上には大きく『来年度入学者受付のお知らせ』と書かれていた。

 

「おぉ凄いじゃん。これってもしかして?」

「はい。理事長から『もしかしたらアイドル研究部(あなた達)のお陰かもね』と言われました」

 

若葉が紙を読みながら言うと、海未が答える。若葉はお知らせの紙を読み終え、机に置くと、夏希に先を促す。

 

「それで?凄く言いにくい事、2つだっけ?」

「あぁ。まず一つ目。俺達は……ラブライブ出場を辞退した」

 

夏希が若葉から目を逸らして言う。その発言に部員の皆は顔を伏せる。夏希は暫くしても何も言わない若葉を不審に思い、恐る恐る若葉の方を見る。すると若葉は

 

「えと…なんて反応すれば良いの?」

「はい?」

 

凄く軽い感じに返した。思わず夏希は聞き返してしまったが、双方とも状況がよく分かってない為、夏希は咳払いをして聞き直す。

 

「若、その、どう言う事?」

「いや、実を言うと、入院して暫くしてからラブライブ出場辞退の件は知ってたんだけど…」

 

なぜか若葉が言いづらそうに答える。夏希は慌てて毎日お見舞いに行っていた穂乃果と真姫を見るも、揃って首を横に振るばかり。

 

「2人は何も言ってないし、俺も聞いてないよ」

「じゃあなんで…」

「あのさ。そういう(順位の)定期チェックも仕事の内って言わなかったっけ?」

 

若葉の言葉に3年生陣以外があー、と思い出していた。

 

「入院中もちょくちょく見る様にしてたんだけど、『μ's』の名前が消えた事に気付いて、その前後日に穂乃果や真姫達が何も言わなかった事を考えると、退院後に何かしらの説明するがあるかなー、と思ってたんだよ」

 

若葉の考察に夏希は顔を引き攣らせ、頷く。

 

「若に黙って決めた事は謝る。でもこれはここにいる皆で話し合って決めた事なんだ」

「そっか。皆が話し合って決まったんなら今さら俺がどうこう言う事じゃないでしょ」

 

若葉はさも気にしてないように肩を竦め、夏希にもう一つの案件を聞く。夏希は先程よりも言いづらそうな様子で、しかしハッキリともう一つの案件を伝える。

 

「二つ目なんだけど………これはその紙を理事長に渡された時に言われた事なんだ」

 

と夏希はお知らせの紙を指しながら続ける。

 

「俺らの、俺とアッキー、若の3人の試験生の処遇について来週末に職員会議が開かれるらしい」

「…………は?」

「…私達は反対したわ。でも、校長が『統廃合を逃れたのなら試験生はもう必要無い』って言って」

 

夏希の発言によく分からないといった反応を返す若葉に、絵里が補足説明する。それに対し、若葉はいやいや、と首を振って否定する。

 

「いくら校長がゴネようと彩さん…理事長は黙ってないでしょ。理事長の方が地位が上なんだし」

「それが…お母さんも校長先生の話を断ってはいるんだけど、何人かの保護者からクレームが来てるみたいで」

 

若葉の否定の言葉にことりが答える。実際、若葉達が音ノ木坂に来てから少ないながらも、それに対するクレームが来てるのは確かだった。校長はそれを盾に綾に職員会議を開く事を決めさせたのだ。

 

「で、それまで俺らは謹慎だそうだ」

「その職員会議には僕らも呼ばれているので、その日の放課後には登校するように言われてますけどね」

 

夏希の言葉に愛生人が続けて言う。若葉はそれを受けて何か打開策は無いかと頭をフル回転させるも、妙案は出て来ず、それから少ししてその日は解散となった。

 

「はぁまさかこんな事になるとはね…」

「ゴメンね。黙ってて」

 

帰路に着いた若葉が空を見上げながら呟くと、隣を歩いている穂乃果が謝る。若葉は穂乃果の頭を撫でながら穂乃果のせいじゃ無い、と言って励ます。

 

「それより、これから俺達が出来る事を考えないと」

 

何かが頭に引っかかりを覚えて、それを思い出そうとしていると

 

「あの、すいません」

 

2人の背後からいきなり声を掛けられる。声を掛けられた2人が振り返るとそこには肩掛けバックを背負った黒髪の少年と、黒髪を後頭部で纏めた、こちらは若葉より年上と思われる青年が並んで立っていた。

 

「どうしたんですか?」

「まさか、誘拐とかじゃ…なさそうですね」

 

若葉は過去の経験から誘拐じゃないかと疑うも、相手2人の距離が近かったり、少年の方も何かしらの危機感を抱いてない為、否定する。

 

「いえ自分達は兄弟ですよ。ちょっと人を探して歩き回っているんですが」

「人探し、ですか?」

 

穂乃果が言葉を繰り返す。若葉は2人に少し疑いの目を向ける。若葉の視線に気付いたのか、青年が笑って自己紹介を提案する。

 

「自分の名前は前原達也と言います。大学一年生です」

「俺は前原恭弥。よろしくね、お兄ちゃん、お姉ちゃん」

「私は高坂穂乃果です!」

「俺は高坂若葉です。こちらこそよろしくお願いします」

 

互いが自己紹介をし、若葉は達也にタメ口で良いと断り、話を続ける。

 

「人を探していると言ってましたけど、俺らも高校生なので、そこまて顔広くないですよ?」

「そうか。所で若葉君と穂乃果ちゃんだっけ?2人はよくゲームセンターとかに行くかい?」

 

達也の急な話題転換に若葉は首を捻って答える。穂乃果はあまり行った事がないので首を振る。

 

「その"よく"の頻度が分かりませんが、(バイトで)月に3.4回は行ってますね」

「じゃあアイトってプレイヤー知らない?」

「う〜ん。プレイヤーって事はアイトってのがプレイヤーネームだよね……ゴメン俺は知らないや。店長に聞いてみます?」

 

恭弥の質問に首を横に振る若葉。一応店長に聞いてみるか、と聞くも、達也がさすがにそこまでしなくても、と断り

 

「何か分かったらこれに連絡を頂戴な」

 

と達也の連絡先が載っている紙を若葉に渡す。

 

「って、こんな初対面の見知らぬ人に簡単に連絡先を教えて大丈夫なんですか!?」

「大丈夫!これでも見知らぬ人と何十人と会っているんだ。だからある程度見ればその人が良い人がどうかくらい分かるって」

「そう、なんですか?」

「うむ」

 

若葉の言葉に強く頷く達也。若葉は恭弥に助けを求めるも、恭弥は笑って答えるばかりで助けてはくれそうもない。

 

「分かりました。何か分かったら連絡します」

「ありがとう!助かるよ」

 

若葉が了承すると、達也は若葉の手を握ってその場を去って行った。恭弥も達也について行きながら、若葉と穂乃果に手を振っていた。

 

「なんか、凄い人達だったね」

「さっきのアイトって人とどんな関係なのかな」

 

前原兄弟と別れてから穂むらに着くまで、2人は前原兄弟とアイトという人物の繋がりを話し合っていた。穂むらに着く頃には若葉の頭の隅の引っかかりは忘れられていた。

 




若「ん〜何か忘れてる気がするんだよね〜」
夏「何忘れてんだ?」
愛「それが分かれば苦労はしませんよ」
若「なんか、どっかで目にしたんだけど、それが思い出せない…」
夏「まぁそこまでして思い出せないって事は、そこまで重要じゃなかったって事だろ」
愛「ど忘れって大変ですよね」
若「まぁいいや。じゃあ今回振り返り行こっか」
夏「つか、なんで3年生陣が例外っつーか省かれてんだ?」
愛「あー若葉さんの定期チェックの話ですか?」
若「だってあの時はまだ絵里と希は加入してなかったし、にこはどっか行ってたし。詳しくは『た、助けて〜』の回を読んでね」
愛「説明丸投げですか」
若「丸投げとは失礼な!ここで話すより本編読んで貰った方が分かりやすいでしょ」
夏「その本編すら分かりにくかったら終わりだけどな」
若「うぐ。でも、前原氏兄弟はともかく、アイトはキーパーソンらしいよ。いつのかは言わないけど!」
夏「いやしらねぇよ」
愛「そ、そろそろ終わりにしましょう?」
夏「ん?あぁだな」
若「それじゃあ」
『バイバーイ』


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じゃあ行こうかby若葉

職員会議ってどんな感じなんだろう?と思いながら書いた話です。


若葉達が自宅謹慎を告げられてから早くも2週間が経ち、若葉達の今後を決める職員会議の日になった。

本当なら放課後の職員会議前に登校する様言われている若葉だが、その日は昼休みからアイドル研究部の部室に居座っていた。

 

「ほらなアッキー。やっぱり若は来てただろ?」

「これでいなかったら笑いもんでしたけどね」

 

午後の授業が始まって少し、夏希と愛生人も部室を訪れた。

 

「2週間振り、かな?」

「あぁ。LIMEで話してたとは言え、こうして会うのは2週間振りだな」

「若葉さん。何か落ちましたよ?」

 

立ち上がった若葉と夏希が手を合わせると、ポケットから一枚の紙が落ちる。それは2週間前に貰った達也の連絡先が書かれた紙だった。愛生人はそれを拾い、紙を見ると一瞬固まり、すぐに若葉に返した。

 

「取ってくれてありがとう」

「いえ、それより若葉さんはその人と何を話したんですか?」

「え?あぁこの人はとある人を探してるってくらいかな」

 

若葉は椅子に座りながら愛生人に答えつつ、2人にも聞いてみる事にした。

 

「2人とも『アイト』ってゲームプレイヤー知らない?この人が探してるみたいなんだけど」

「アイト?どういう字だ?」

「さぁ?でもプレイヤーネームらしいからカタカナじゃない?」

 

夏希の問いに肩を竦めて答える若葉。夏希の様子からアイトの事を何も知らないと分かるやいなや、今度は愛生人を見る。愛生人は心ここに在らずといった様子で立っていた。

 

「愛生人?」

「……え?あ、はい。なんでしたっけ?」

「アイトってゲームプレイヤー知らないかって話だ」

 

愛生人の質問に若葉ではなく夏希が答える。

 

「申し訳ないですが、僕もちょっと知りませんね」

「そっか〜夏希はともかく、愛生人はゲームセンターに行くから知ってるかも、って思ったんだけど。世の中そんなに甘くないね」

「そ、そうですね」

 

若葉はそれだけ言って話を打ち切る。愛生人は2人に気付かれない様に額の汗を拭う。

それから放課後までは部室の隣の部屋で夏希と愛生人がμ'sの曲の振り付けを真似し、若葉に間違いを指摘されたり、他のスクールアイドルの動画を見たりして時間を潰していた。

 

「貴方達、ここで何してるの?」

「いや、思いの外早く着いちゃって」

「それで時間を潰そうと思い」

「絵里さん達に見つかり今に至ります」

 

放課後になる少し前、早めに帰りのHRが終わった絵里と希が部室を訪れると、そこにいたのは椅子に座り、思い思いの行動を取っている若葉、夏希、愛生人だった。

大事な会議前だというのに普段通りの3人に希は笑い、絵里は怒り、3人を正座させたのだった。

 

「全く。夏希はともかく、若葉と愛生人まで。緊張感が無さ過ぎよ」

「緊張し過ぎるよりかはマシやん?」

「それはそうだけど…」

 

呆れた様に言う絵里と、そんな絵里を微笑みながら見る希。

 

「それより絢瀬さん」

「なによいきなり(かしこ)まって」

 

正座したまま夏希が絵里に視線を向け、時計を見ながら言った。

 

「そろそろ時間だから解放してくれるとありがたいな〜なんて、思ってたり思ってなかったり」

「…そうね。じゃあ職員室に行くわよ。ホラ」

 

と絵里の許可が降りた為、正座を止め立ち上がる3人。しかし愛生人と夏希は立ち上がってすぐ、椅子なり机なりを掴む。

 

「2人ともどうしたの?」

「いや、寧ろなんで若は平気なんだと尋ねたい」

 

そんな2人に若葉が不思議そうに聞くと、夏希に質問で返された。夏希と愛生人の様子を見て、理由が分かったのか、希がポンと手を打つ。

 

「もしかして2人とも足が痺れたん?」

 

希の言葉に2人は黙って頷く。絵里と若葉は呆れた様に溜め息を吐き、希は2人の足を突っつき始めた。希の攻撃に抗おうとするも、足が痺れて上手く避けれない2人。

そんな事が数分続き、ようやっと2人は痺れから解放され、職員室に向かったのだった。部室から出る際、希に頑張ってね、と言われ3人が笑顔で頷いた。

 

「全く、酷い目にあったぜ」

「本当ですよ。なんで若葉さんは無事だったんですか?」

「なんでも何も無事だったんだから仕方なくない?」

 

絵里に先導されながら職員室に向かうも、道中の会話はこれっぽっちも緊張感が無かった。

 

「貴方達ね。さっきも言ったけど少しは緊張感を持ちなさいよ」

 

絵里が呆れた様に振り向かずに言うも、後ろの3人から反論が返ってくる。

 

「いえ、僕達からしてみればいきなり女子校に来る方が緊張したので」

「今更先生達に囲まれるなんて、なぁ?」

「それに向こう(高蓑原)では良く職員室には行ってたしね」

 

その返事に絵里は何を思ったのか、溜め息を一つに吐くとそれ以降何も言わなくなった。

4人が職員室前に着くと、そこには絵里と希を抜いたμ'sのメンバー7人が立っていた。その光景を見て若葉は隣に立っている夏希に話し掛ける。

 

「ねぇ夏希。これってあれみたいじゃない?ここから先に行きたければ、私達を倒していきなさい。的な」

「確かにそうだな」

「そんな訳ないでしょ!」

 

若葉の言葉に夏希は頷くと、にこが真っ先にツッコミを入れる。

 

「全く、これから大事な会議だからってんで応援に来てあげたのよ。感謝しなさい」

「おぉスゲェ上から目線だな」

「何よ。このにこにーに応援して貰えるんだから喜びなさいね」

 

腰に手を当ててそれだけ言うと、にこは黙って後ろに下がる。そして次に出て来たのは海未とことりだった。

 

「3人なら大丈夫です。いつも通りに自分の言いたい事を言って来てください」

「3人とも絶対勝ってきてね。じゃないとことりのおやつにしちゃうからね」

「大丈夫。何がなんでも音ノ木坂に残らせてもらうよ。ちゃんと最後までμ'sを見守って行かないとだしね」

 

2人の言葉に若葉が頷きながら答える。そして今度は花陽と凛が前に出て来る。

 

「今のμ'sは愛生人君達がいないとμ'sじゃないんだからね」

「凛達も出来る事はし切ったにゃ。だから今度は愛生人君達が頑張る番だよ!」

「もちろん!μ'sの為にも絶対に残ってみせるよ」

 

2人の頭を撫でながら愛生人が笑顔で答える。

 

「ほら穂乃果と真姫も。何か応援しなくていいの?」

 

絵里が後ろでずっと黙ったままの2人に話を振る。絵里に振られ、まずは穂乃果が前に進み出る。

 

「えっとね。ホントは色々と言いたい事があるんだけど、穂乃果の頭じゃまだ言いたい事が成立出来てないんだ。でもね、これだけは言わせて」

 

穂乃果は顔を上げ、手を開いて上にあげる。

 

「お兄ちゃん達にはこの学校に残って欲しいんだ。だから頑張って!」

 

穂乃果の言葉に、若葉達は黙って穂乃果の手に自身の手を当てる。その意味を穂乃果は理解し、手を胸の前で握り締めた。

 

「最後は真姫だね」

 

若葉達は未だに顔を伏せている真姫の正面に立ち、言う。若葉に言われ、ゆっくりと顔を上げる真姫。

 

「なんか、私も穂乃果と同じ様にまた整理が出来てないけど、若葉達に残って欲しいって気持ちは一緒よ。それに」

 

とそこで一度言葉を切り、若葉の目を真っ直ぐ見ると笑って続ける。

 

「それに、まだ言わなくちゃいけない事も、言えてないし……だから!ぜーったい勝ってくるのよ」

「大丈夫。任せておいて」

 

若葉の言葉に夏希と愛生人も頷く。それを見た真姫は3人に背を向けると、天井を見上げる様に顔を上げる。

 

「は、早く行きなさいよ」

 

若葉は催促する真姫の頭を一撫でし、そうだね、と返す。

 

「じゃあ行こうか」

「ああ。ここまでされたら負ける訳にはいかなくなったしな」

「元より負けるつもりはありませんでしたけどね!」

 

3人はそう意気込み、職員室に入って行った。

職員室に入ると、隣の会議室へと続く扉の前に警備員の蒼井が立っていた。蒼井は黙って会議室の方を指さすと、若葉達は頷いて会議室の扉の前に立つ。

 

「まぁ、あれだ。私は君達がいる事には反対はしないよ。それに職員全員が君達の敵って訳じゃないから安心して。それじゃあ頑張ってね」

 

扉の前に立った3人に、いつもより真面目なトーンで蒼井は言い、扉を開ける。

 

「3人が到着しました」

「ありがとう蒼井さん。それじゃあ3人は中に入って」

 

彩に促され、若葉達は会議室へ入って行く。会議室には既に全職員が集まっており、上座の位置に彩が座っていた。3人が空いてる席に座ると同時に、校長が職員会議の開催を宣言する。

 

「それではこれより職員会議を始めます。議題は『廃校阻止の為に呼んだ試験生3名の処遇について』です」

「えーと校長。良いですか?」

「二島先生どうぞ」

 

校長の宣言に続いて発言したのは若葉と夏希の担任の姫子だった。校長は 姫子に発言を促すと、姫子は立ち上がり自身の意見を述べる。

 

「そもそもこちらから呼んでおきながら、用済みになったらすぐ返すんですか?」

「用済みとは酷い言い方ですね。私は何もそこまで言ってはないでしょう」

「でも同じ事ですよね」

 

校長の反論に少し目を細めて言い返す姫子。そんな姫子の様子に、若葉達3人は蒼井の言っていた事が本当なのだと実感する。

 

「し、しかし保護者の方から『女子校に男子を入れるなんてどうかしている』『せっかく女子校に入れたのにどうして男子を入れるのか』といった声が届いています」

「そんな声を今までは『廃校阻止の為』と言ってきましたが、現在は入学希望者が定員を超えています。なのでこれからはその言い訳は使えませんよ」

 

校長の隣と正面に座っていた教師が反対意見を述べていく。そんな中、下座から一つの手が上がる。その手の主は

 

「佐渡君どうぞ」

 

夏希だった。彩に指名された夏希は手を下ろすと、教師陣に怯える様子もなく言い放つ。

 

「その『女子校に男子を生徒として入れるのは間違っている』といった意見は保護者以外からも来ているんですか?」

 

夏希の質問に校長含め、何人かが顔を伏せる。彩は夏希の質問に首を振って答える。

 

「保護者以外から特にこれといった文句、もとい、反対する声は来てないんですよね?」

 

夏希が確認する様に再度聞く。その答えは沈黙。

 

「沈黙は是なり。生徒からは反対する声がないのなら、別に俺達…自分達は残っても良いと思うんですが、どうです?」

「しかしいくら生徒達が良くても、その親御さん達は心配するのは当たり前だろう?」

 

夏希の問い掛けに答えたのは、愛生人の担任の先生だった。愛生人は担任の反対意見に驚くも、それを表情に出さなかった。

 

「しかし、学校に通っているのはその保護者達ではなく、その子供なんだから、保護者の声より生徒達の声を取るべきではないんすか?」

 

夏希はイラついているのか、口調が普段の口調に戻りつつある。その様子に若葉は静かに溜め息を吐いて、口を開く。

 

「では先生方は実際に学校に通っている生徒達の声より、学校に通っておらず、自分達の事を全く知らない人の意見を優先する。と言う事でよろしいですね?」

 

若葉の少し威圧する様な笑顔に思わず閉口する教師陣。そんな中、再び愛生人の担任が口を開く。

 

「高坂君の言っている事は確かだが、生徒達の声を聞いてない以上、その意見はなんの価値もないよ」

 

若葉はその言い方に少し違和感を覚えつつも、これで流れが変わるとは思ってなかったのか、黙ってしまう。

 

「では生徒達の声があったらその意見は価値があるんですね?」

 

静かになった会議室に突然響く女性の声。会議室にいた全員が声の主の方を見る。

 

「絵里さん?」

 

愛生人が会議室の扉の傍に立っている人物の名を呼ぶ。

 

「どうして絵里がここに?」

「ついさっき必要な物が揃ったからよ」

 

若葉が会議室に来た理由を聞くと、絵里は若葉の隣に立ってそう言う。

 

「必要な物とは?」

 

絵里の言葉に疑問を持った校長が聞くと、絵里は持っていた大量の紙を机に置く。

 

「それは?」

「音ノ木坂学院全校生徒の、若葉達試験生の転校を取り下げる嘆願書です」

 

絵里の言葉に会議室全体に動揺が走る。若葉が気になって嘆願書を何枚か読むと、そこには『いつも賑やかな彼らがいなくなるのは嫌だ』『音ノ木坂には彼らが必要』といった若葉達を留まらせる内容が書いてあった。

 

「……!校長先生。嘆願書の中にはこんなのもありましたよ」

 

嘆願書を何枚か捲って目に付いた物を校長に回す。校長は回された紙を読み、目を見開いて驚く。若葉が校長に回した紙には『高坂君達が音ノ木坂に来て親は凄く反対しているが、私は彼らが来てくれてとても嬉しかったし、廃校を免れたのも彼らがいたからだと思う思います。そんな彼らを前の学校に戻して欲しくありません』と書かれていた。

 

「ここまでされたら何も言えないですね。校長」

「じゃあ!」

 

愛生人の担任の言葉に校長はええ、と頷き3人を真っ直ぐ見る。

 

「保護者の方達には私の方から説明しておきます。来週の月曜日から貴方達は試験生としてではなく、音ノ木坂の一生徒として勝手な事とは思いますが、これからの音ノ木坂の発展に協力して貰えますか?」

 

校長のその言葉に若葉達は元気に頷いた。こうして若葉達は試験生としてではなく、正式に音ノ木坂の生徒になったのだった。

 

 

 





真姫から若葉へ伝えられた一言の伝言

穂「お兄ちゃーん!」
海「どうして相談してくれなかったんですか!」
に「うわぁー!」
こ「ア、アハハ」
希「覚悟は出来た?」
真「……えぇ」
花「誰か助けてぇ!」
絵「ちょっと待ってて〜」
凛「応援してるにゃ!」

真姫が伝えた伝言とは─?

穂「ミューズ!」
『ミュージック〜スタート!』

一体若葉に何が起こったのか!

次回、『ウチは応援してるからね』5/18公開








以上劇場版(30秒ver)風の次回予告でした。

※なお内容は執筆途中の戯れとして書いた為、実際の内容とは異なる場合がございます。


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ウチは応援してるからねby希

これは2話連続投稿です!
餅ついて、じゃない落ち着いて1話戻って下さいね!


「高坂君、佐渡君、片丘君、少し良いかしら?」

 

職員会議が終わり、3人が廊下に出ると彩に呼び止められ、理事長室に連れて行かれる。

 

「まずは無事残れておめでとう。と言っておくわね」

 

彩は理事長室の扉を閉めるなり、若葉達に笑い掛ける。

 

「いえ、俺達はなにもしてないんで」

「そこは素直にお礼を言おうよ」

「そうですよ。夏希さん」

 

首を振りながら夏希が答えると、なぜか若葉と愛生人に窘められる。彩はそのやり取りを見て可笑しそうに笑うと、真剣な表情に戻る。

 

「でもね、さすがに今日の会議は冷やっとしたわ」

「なんでですか?」

 

愛生人が彩に聞くと、彩は夏希と若葉を見てニッコリと笑う。それは先程のと違って怒気を含んだ笑顔だった。

 

「2人とも、特に夏希君?貴方途中から口調が綻んでいたわよ?相手は教師なんだからキチンとそれ相応の口調で話しなさい?」

「「はい!」」

 

彩の言葉に名前を呼ばれた2人は、背筋を伸ばして返事をする。そんな2人を無視して愛生人は気になった事を彩に聞くと 。

 

「ところで理事長」

「彩で良いわよ」

「それじゃあ彩さん。もし絵里さんが嘆願書を用意していなかったらどうしてたんですか?」

 

愛生人の質問に彩はああ、と予防策を話す。

 

「そんなの簡単よ。『勝手に音ノ木坂に呼んで、用済みになったら戻すなんて事をしたら音ノ木坂(ウチ)の評判はどうなるのかしらね?その責任は貴女に持てるの?』と尋ねたら多分終わってたわよ」

 

彩がうふふ、と笑って言った内容に愛生人は冷や汗を流し、この人には逆らわない様にしよう、と心の中で決意した。

 

「あ、彩さん。俺ちょっと用事あるのでもう良いですか?」

「そうね。ごめんなさいね。残ってもらっちゃって」

「いえいえ。それじゃあ失礼しました」

 

若葉はそう言って夏希と愛生人を置いて理事長室を出て行った。

理事長室を出た若葉が向かう先は職員室前で真姫にすれ違い様に言われた中庭だった。

 

☆☆☆

 

時は少し戻り若葉達が職員室に入って行った後。穂乃果達7人は黙って祈る様に職員室を見ていた。しかし真姫だけはその様な事をせず、部室に足を運んでいた。理由は特に無いが、なんとなくあの場(職員室前)にいても落ち着かないのでどこか場所を移しただけなのだ。

 

「あ、真姫ちゃん」

「希…」

 

部室に入ると希が椅子に座っていた。真姫がいつもの席に座ると、希が微笑みながら真姫に尋ねる。

 

「真姫ちゃんは職員室前で待ってなくて良いの?」

「えぇ。なんか落ち着かなくて。そう言う希は?」

「ウチはここからスピリチュアルを送ってるから大丈夫なんよ」

 

希がてやー、と職員室の方に念を送る仕草をする。そんな希を見て思わず笑う真姫。

 

「そうそう。真姫ちゃんは可愛んやから、そうやって笑ってるのが一番よ?」

「もうそうやって揶揄わないでよ。でも……ありがとう」

「どういたしまして」

 

真姫がお礼を言うと、希はなんでもないといった様子で返す。それから真姫を真っ直ぐ見ると

 

「真姫ちゃん」

「?なによ」

「気持ちの整理は出来た?」

「…!」

 

希の言葉に目を見開いて驚く真姫。希はタロットを1枚手に取るとウィンクして言う。

 

「カードが教えてくれたんよ」

「……そうね。今ので尚更気持ちか固まったってところかしら」

「そう。ウチは応援してるからね」

 

希の応援を受け、真姫は部室から出て行く。その際、小さな声で再び希にお礼を言うも、希は何も言わずに椅子に座っていた。

 

☆☆☆

 

若葉が中庭に着くと既に真姫は待っていて、若葉に気付いたのか、そっと振り返る。

 

「ごめん待ったかな?」

「ううん、大丈夫よ。その間に色々と整理してたから」

 

若葉の謝罪に真姫は首を振って答え、若葉に背を向け空を見上げる。

 

「私ね、夏休み前に若葉が一度高蓑原に戻った時、心の中に何かもやもやしたものがあったの」

 

若葉は真姫の言葉を何も言わずに聞いている。

 

「それでね。そのもやもやしたものが何なのか、皆でプールに行って、若葉に助けられた時にそれが分かったの」

 

真姫は若葉に背を向けたまま、顔を下げ地面を見つめる。

 

「私ね、きっと若葉の事が……」

 

そこまで言って始めて真姫は言葉を詰まらせる。若葉はそんな真姫を後ろから抱き締める様に首に腕を回し、話し始める。

 

「俺もね。音ノ木坂に来て音楽室で初めて会った時に、ちょっと心に引っ掛かりを覚えたんだ」

 

若葉の言葉に今度は真姫が黙って頷く。

 

「その後真姫から事件の話を聞いて、 俺はその時の引っ掛かりを事件関係者だったからだと思ったんだよね」

 

若葉の言葉に真姫は黙って頷く。若葉はけど、と話を続ける。

 

「この半年間、真姫と過ごした時間を振り返ってみたらね、最初の頃の引っ掛かりとは別の気持ちが俺の中で生まれてたんだ。それの正体に気付いたのが、夏休みにやった勉強会の日なんだ」

 

真姫はつい最近じゃない、と呟きつつも若葉の腕を握る。心なしか、その手は震えていた。それがどういった感情から来ているものなのか、若葉には分からなかったが、若葉は構わず話を続ける。

 

「それから入院してる最中、その気持ちは本当なのか自問自答を繰り返してみても答えは変わらなかったんだ」

 

若葉はそう言うと真姫から腕を離し、真姫の正面に立つと真っ直ぐ目を見て、ハッキリと伝える。

 

「俺は、真姫の事が好きなんだって。だから…」

 

若葉はそこまで言って驚きで言葉を切る。なぜなら真姫の頬を涙が伝っていたからだ。

 

「真姫…?」

「え?あれ?」

 

真姫は頬を伝う涙に困惑するも、それを手で拭い、笑顔で先程詰まって言えなかった言葉を、若葉への返事を口にする。

 

「私も…私も若葉の事が好きです」

 




翔「あれ?これって俺のおかげで若葉が気持ちに気付いたパターン?」

何気に今話MVPな翔平でした〜


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色々と話し合おう?by若葉

今回は覚醒回!誰のとは言いませんがね!


お互いの気持ちを伝え合った2人は、中庭のベンチに並んで座っていた。

 

「夢みたいだね」

「ふふ。そうね」

 

若葉と真姫は繋がれた手を見て笑い合う。そんな時、夏希と希が2人の元へ走り寄る。

 

「あ、真姫ちゃん。おめでとう」

「ありがとう」

「て、そうじゃなくて!」

「?2人ともどうしたの?」

 

2人の前で止まり、繋がれた手を見て希が祝うも、夏希がツッコミをいれる。

 

「あ、そうだった。2人とも、これから重要な事をやるから今すぐ部室に集合ね」

 

希はそれだけ言うと来た道を走って戻り、夏希も希の後を追って走り出した。

 

「重要な事?真姫は何か聞いてる?」

「そう言えば、にこちゃんや穂乃果が学校存続パーティをやる、みたいな事を言ってたわね」

「そっか。じゃあ行かなくちゃだね」

 

そう言って若葉は手を繋いだまま、器用に松葉杖をついて立ち上がる。真姫も手を引かれる様に立ち上がると、そのまま若葉の右腕に抱きつく。急な事で若葉は少しバランスを崩すも、しっかりと受け止め、そのまま歩き出す。

 

☆☆☆

 

2人が仲良く部室に着くなり、いくつものクラッカーが鳴らされる。突然の事に驚いて固まる若葉と真姫。

 

「お兄ちゃん。パーティだよ。パーティ!」

「ちゃんとご飯も炊いてあります!」

「唐揚げもありますよ!」

 

穂乃果が若葉に詰め寄ると、花陽と愛生人が炊飯器と唐揚げが載せられた皿を見せる。そしてそのまま隣の部屋に移動すると、そこには既に夏希や絵里、海未などの他のメンバーが椅子やシートを敷いて床に座っていた。

 

「あ、やっと来たわね」

「遅かったですね」

 

若葉達が来たのを見て絵里と海未が声を掛ける。

 

「良いじゃん良いじゃん。早くパーティ始めよ!」

「そうにゃそうにゃ!早く始めるにゃ!」

 

そう言って穂乃果と凜はさっさとシートに座る。それに倣って若葉と真姫は壁際に置かれている椅子に座る。

 

「皆、グラスは持ったかな?それでは音ノ木坂学院存続決定と若葉、夏希、愛生人の音ノ木坂本入学を祝って、かんぱーい」

『かんぱーい』

 

にこの音頭で皆が飲み物が入ったコップで乾杯する。それからお祝いパーティは様子を見に来た彩と蒼井に注意されるまで続いた。

 

「いや~楽しかったね」

「そうですね。まさか彩さん達に叱られるとは思いませんでしたが」

「まぁ流石にこの時間まで残ってたら怒られるわな」

 

夏希の言う通り、空は既に暗く、3人の前では9人があパーティの余韻が冷めていないのか、ワイワイと盛り上がっている。

 

「つ、遂に見つけましたよ!」

「もう逃がしませんからね!」

 

そんな3人の後ろから唐突に掛けられ、振り返る。3人が振り返った先にいたのは、つい先日若葉と穂乃果に声をかけた前原兄弟と、その後ろに十数人の集団がいた。

 

「え〜と、恭弥さんどうしたんですか?」

「どうしたんですか?じゃないよ若葉君。自分達との約束、忘れたわけじゃないよね?」

「約束?」

 

恭弥の言葉に若葉は先日の出来事を思い出す。

 

「でもまだアイトの情報なんて集まってませんよ?」

「違う。違うんだよ若葉君。まさか君がアイトさんと一緒に過ごしているだなんて、酷い裏切りを受けたよ」

 

若葉は首を捻る。恭弥の言う通りならアイトは若葉のすごく身近な場所にいると受け取れる。若葉は騒ぎを聞きつけ近付いてきた穂乃果達を見るも、全員疑問の表情を浮かべていた。次に夏希と愛生人を見るも、夏希は首を捻っていた。

 

「まさか…」

「そう。そのまさかだよ」

 

若葉の呟きに恭弥は肯定しながら、若葉の隣を、愛生人を手で指し示す。

 

「そこにいるお方がアイトさんなんだ」

 

恭弥の言葉に若葉は驚いて愛生人を見る。愛生人は俯いており、恭弥の言葉を肯定も否定もしなかった。

 

「さて、情報を回してくれなかった若葉君には残念だけど、お仕置きを受けて貰うよ」

「な…理不尽過ぎるだろ!」

 

夏希が恭弥に突っかかるも、恭弥の後ろに立っていた大学生と思われる青年が夏希の前に立つ。

 

「大丈夫です。大人しくついて行きましょう」

 

青年に対して拳を構えた夏希に、愛生人は静かにそう言い、申し訳なさそうに凛の方を振り返る。

 

「アキ君…?」

「……ゴメンね」

 

愛生人は凛にそれだけ言うと、体を正面に戻し、黙って恭弥の方へと歩き出す。若葉と夏希も愛生人の言葉を信じ、ついて行く。

そして若葉達が連れて行かれた先は、人通りの少ない廃工場……などではなく、数ヶ月前に部長を決める際に訪れたゲームセンターだった。

 

「はぁ…やっぱりか」

「若葉さんは分かってたんですか?」

「まぁ半信半疑だったけどね」

 

若葉はゲームセンターに着くなり、先程まで張っていた緊張の糸を緩ませる。愛生人は元より緊張しておらず、その為夏希1人だけが未だ理解が追いついていなかった。

 

「さて、若葉君。お好きなゲームを一つ選んで」

「それはなんでも良いんですか?」

「もちろん。その方がそっちも納得するでしょ?」

 

恭弥は自信満々に頷く。それを聞いた若葉はサッサとゲームセンターの奥に行き、そこに置かれている対戦型のクイズゲームの台に手を乗せ、宣言する。

 

「それじゃあこれでお願いします。まさか、文句は言いませんよね?」

「へぇクイズゲームか…もちろん文句は言わないさ。もっともそれはこっちにも言えた台詞だけどね」

 

恭弥は余裕のある笑みを浮かべて集団を振り返り、先程夏希を威嚇した青年が前に躍り出る。その時、愛生人が苦い顔をするも、それに気付いたのは若葉だけで、その若葉は愛生人を安心させる様に笑う。

 

「頼んだよ。桑田君」

「分かってますよ恭さん」

 

桑田と呼ばれた青年は一つ頷き、若葉の対面に座る。そしてコインを入れ、クイズのジャンルを選択する。若葉は雑学、桑田は数学。

 

「若葉君って言ったっけ?」

 

画面にスタートまでのカウントダウンが映された時、桑田が若葉に話し掛ける。

 

「俺はこう見えても数学オリンピックで良い所まて行った事があるんだ。高校生に遅れを取るわけには」

 

ピンポーン

 

話しながらも問題を解いていた桑田に正解のブザーが鳴る。

 

「いかないんだよ」

 

桑田は笑って若葉を見る。若葉はそんな桑田の挑発には目もくれず、恭弥に聞く。

 

「そう言えば聞いてなかったんですけど、このゲームに俺が負けた場合ってどうなるんですか?」

「なに、簡単な事さ。これからアイトさんに近付かない。それだけだよ」

 

恭弥の返しに愛生人は顔を伏せ、夏希は思わず一歩踏み出す。しかし二歩目は若葉によって止められる。なぜなら若葉が見た事も無い程激怒していたからだ。

 

「夏希、今揉め事起こしたら許さないよ。それに」

 

そう言って若葉は画面の問題を見ずに(・・・・・・・・・)答えを入力し、正解する。

 

「こんな勝ちゲー、見逃せないでしょ」

「な…!」

 

若葉の異業に対戦相手である桑田は驚く。それはそうだろう。ボタンを見ずに答えるのは慣れれば誰でも出来る。しかし問題を見ずに解答する事は出来るはずが無い。

 

「話は変わるけど、ここって俺のバイト先なんですよ」

 

若葉はそう言いながら、更に正解数を一つ伸ばす。

 

「それでこのゲームって実はこの店舗発祥でですね。店長に問題作り丸投げされたんですよ」

 

ついでに出題パターンとかも、と続けながら恭弥に、桑田に、恭弥の後ろの集団に言い放つ。

 

「だからさっき聞いたじゃないですか。『このゲームの問題を作ったのが俺ですけど(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)、文句は言いませんよね?』って。それに」

 

問題が数学に戻り、桑田が正解数を稼ごうとするも

 

「数学オリンピックの問題なら前の学校(高蓑原)で散々解かされましたので、解くまでも無いですよ」

 

そしてゲームが終わる頃には若葉が大差を付けて勝っていた。

 

「しっかし恭弥さんも人が悪い。俺がゲーセンでバイトしてるの知ってて尚、ここ選んだんですよね?」

「は!?バイト!?だってこの前聞いた時月に3.4回行ってるとしか」

「あれ?そうでしたっけ?」

 

クイズゲームに座りながら恭弥に言うと、恭弥は頭を抱えながら返す。

 

「みと、めない」

「ん?」

「俺は負けを認めねない!そもそも出題者が問題を解くってなんだよ!そんなんズルとか、卑怯とかの問題じゃないだろ!」

 

桑田は台を叩いて抗議する。若葉は肩を竦めると

 

「卑怯汚いは敗者の戯言って言葉があるけど、確かに俺もこれは卑怯だと思います。なので次はそちらがゲーム内容を選んで構いませんよ」

 

若葉が桑田に言うと、桑田は周りを見回す。そして指定したゲームは

 

「アポカリプスモードエキストラ?」

 

そうこれまた部長決定戦で使われたダンスゲームだった。今度の対戦相手は桑田ではなく、高校生くらいの少年だった。

 

「で、僕の対戦相手は誰?」

「若葉さんは怪我してるので休んで下さい。僕が行きます」

 

愛生人がブレザーを脱ぎながら言うも、若葉が肩に手を置いて止める。

 

「若葉さん?」

「愛生人が出るのはダメ、なんですよね?」

 

若葉が恭弥に確認を取るように聞くと、恭弥は頷く。

 

「じゃあ夏希さん。お願いします」

「でも俺のスコアで勝てる相手なのかね」

 

夏希の前回のスコアはAAと低く無いものの、先程の一戦で相手はゲームをやり慣れているのが分かり、一抹の不安を抱える夏希。

 

「じゃあ夏希の代わりを出せば良いじゃん」

 

若葉はそう言って手招きをする。愛生人と夏希が若葉の視線の先を見ると、そこには先程別れた筈の穂乃果達がこちらを覗き見ていた。

 

「バレてたのか…」

「だから覗くのはやめましょうと」

「海未だってノリノリだったでしょ!」

 

と賑やかに若葉達に合流する9人。その中から若葉は凛の肩に手を置くと、ダンスゲームの方へと押す。

 

「にゃ!?何するにゃ!」

「ちょ、若葉さん!?」

「愛生人のピンチなんだ。頑張れ凛!」

 

若葉は凛と愛生人の抗議を無視して凛の応援をする。凛も先程のを見ていたのでなんとなく状況は分かっているものの、一応と愛生人に確認を取る。愛生人は苦悶の表情を浮かべると、納得したのか、頷き

 

「凛ちゃん。お願い!」

「まっかせるにゃー!」

 

元気良く凛は答え、ゲームを始める。音楽が流れ始め、凛と少年がリズム良くステップを踏む。暫くして音楽が終わり結果発表。

最初に少年のスコアが表示される。少年のスコアは「S」。それは若葉と同じスコアだった。続いて凛のスコアが表示される。結果は「SS」。

 

「ま、負けた…だと…」

「ええい!まだだ。まだ終わらんよ!」

 

と尚も足掻き続けようとする集団に遂にキレる。

 

「おい、お前ら。一度ならず二度までも、まさか掟を忘れた訳じゃねぇよな?」

 

キレたのはμ'sの誰かではなく、夏希ではなく、ましてや若葉でもなかった。

 

「ア、アイトさん!」

「愛生人!?」

 

そうキレたのは愛生人だった。若葉達は愛生人の急な口調の変化に驚き、恭弥達は敬愛する人が戻って来たと言わんばかりに顔を綻ばせる。

愛生人は周りの声を無視して髪を纏めていたゴムを取ると、髪を後頭部で纏める。心なしか、愛生人の声がすこし低く聞こえる。

 

「おい海斗!何がまだ終わらないだ。たとえ僅差だろうが負けは負け。昔のお前だったら素直に認めてただろうが」

「す、すんません!」

 

先程凛と勝負した海斗と呼ばれた少年が愛生人に頭を下げる。

 

「次に桑田!お前も卑怯たとか言ってんじゃねぇぞ。お前だってクイズゲームの出題パターンを割り出してたじゃねぇか。そのお前が文句言ってんじゃねぇ!」

「はい!」

 

桑田は背筋を伸ばし返事をする。そして愛生人は恭弥の方を向くと、目を細める。

 

「恭弥。俺の次を任せるって言ったよな?なのになんで俺を探したりなんかしたんだ?挙げ句の果てに若葉さんに迷惑掛けるとはな。『祈る者達』はそこまで成り下がったのか?」

「い、いえ!アイトさんを取り戻す事にばかり考えがいってました!すいません!」

「謝る相手は俺じゃないだろ」

「はい!若葉君、夏希君すいませんでした!」

 

恭弥は腰を直角に折り、若葉と夏希に謝る。2人はは未だ愛生人ショゥクから抜け出せずにいるのか、気の抜けた返事を返す。

 

「全く、皆さんすいません。僕の昔の知り合い…仲間がとんだご迷惑を」

「まぁ、謝罪はして貰ったし」

「今日は一旦解散して、明日もう一度集まって色々と話し合おう?」

 

若葉の言葉でその日は一度解散し、翌日夏希の家に若葉達12人と、リーダーの恭弥、副リーダーの桑田と海斗が来る事が決まった。




夏「にしても驚いたな」
若「ね。まさか愛生人の口調ガラッと変わったもんね」
愛「恥ずかしいです」
若「まぁその件も含めて色々と聞きたい事あるけど、それは次回に回すんでしょ?」
夏「みたいだな」
愛「て言うか、若葉さんおかしくありません?」
若「なにが?」
夏「クイズゲームの問題考えるとか、一介のバイト店員に任される仕事じゃないだろ!」
若「……まぁ?その分お金出たし…」
愛「因みにどのくらい…?」
若「えっとね……くらい」
夏「そんなに出んのかよ」
愛「でも出題パターンとかも考えたとなると普通じゃないですか?」
若「それじゃあ今回はこの辺で!」
夏「これまた急な」
愛「作者も色々と並列でやってるから大変なんですよ」
若「そゆこと。じゃねー」
『バイバーイ』


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…汚いねby若葉

今回はいつもと違う感じの書き方をしました。

お題はズバリ愛生人の過去回です。

それとこの早更新は多分今回で終わります。次話は一体いつになるやら…

ではどうぞ!


恭弥達とのゲーム対決の翌日。若葉と穂乃果は夏希に渡された地図を手に、夏希の家へと向かっていた。

 

「地図通りならここら辺なんだけど…」

「あそこじゃない?」

 

若葉がとあるマンションを指す。

 

「デカイね…」

「家族で住んでるんじゃない?取り敢えず入ってみようよ」

 

若葉が入り口のボタンで夏希の部屋の番号を押して、呼び出す。

 

『ほーい』

「ヤッホー。双子の兄妹が着いたよ〜」

『よく迷わずに来れたな』

「穂乃果に地図渡したからね」

『そうか。ま、お前らが最初だ。入っくれや』

 

夏希の言葉と共に、横の自動ドアが開く。

 

「夏希君の家の部屋って何階だっけ?」

「確か7階だよ」

 

若葉が7のボタンを押し、エレベーターが上がっていく。チン、と高い音と共にエレベーターは止まり、扉が開く。

 

「良い眺めだね」

「そうだね……あ、音ノ木だ」

「あ、本当だ!」

 

若葉が指差した方を見ると、確かに音ノ木坂学院が見えた。穂乃果は更に穂むらを探そうとするも、見つける前に若葉に引っ張られ、夏希の家の前に着くと、インターホンを鳴らす。

 

「はいはーい」

 

インターホンを押して少し、夏希が元気良く扉を開く。

 

「いらっしゃい。まぁ上がって上がって」

「「お邪魔しま〜す」」

 

夏希に従い室内に入る2人。2人はそのまま夏希の後を歩き、リビングと思われる部屋に足を踏み入れる。

 

「うわっ」

「…汚いね」

 

リビングに入った2人は思わず、といった風に声を出す。2人の言う通り、リビングのあちこちにゴミや洗濯物が散乱していた。

 

「ちょ、夏希。これは酷いって」

「そうか?男の一人暮らしなんざこんなもんだろ」

「そうかもしれないけど……ちょっとビニール貸して!」

 

若葉が夏希からビニールを受け取ると、若葉は部屋中に散乱したゴミをビニールに、洗濯物は洗濯機にそれぞれ入れていく。そして次々やって来たメンバーも協力して、全員が揃う頃には最初のの汚さはどこへやら、という程キレイになった部屋になっていた。

 

「ねぇ夏希。まさかとは思うけど、あっちの部屋も…?」

「あっちは寝室としてしか使ってないから、そんなに汚れてねぇぞ?」

「そんなに……」

 

夏希の「そんなに」を想像して少しゲンナリする若葉。そんな若葉を宥めながら、ちゃっかり隣に座る真姫。

 

「さて、全員揃った訳だから、アッキー。説明よろしく」

「うぅ…あまり気が進まないですが、分かりました」

 

愛生人は渋々といった感じで話し始める。

 

「あれは僕が中学に上がって少し遠くに引っ越したのが原因でした」

 

☆☆☆

 

引っ越したばかりの僕は周りに余り馴染めずに、部活にも入らないで、学校が終わるとすぐに帰宅していました。

そんな生活が1年近く続くと、流石の両親も不思議に思ったんでしょうね。凛ちゃんと花陽ちゃんは知ってると思うけど、僕って昔は外で遊ぶ子だったんですよ。それなのに中学に上がってからは一向に外に遊びに行かなくなりました。

 

そんな僕を気遣ってでしょうか、ある日両親は僕を近くのゲームセンターに連れて行きました。元々両親はゲームが好きで家にも今昔様々なゲームが揃っているんです。僕も偶に両親にコツを教わりながら楽しくプレイしてました。なのでその頃から同世代の中では上手い方だったと思います。

 

話を戻して、両親に連れて行って貰ってから、僕はそのゲームセンターによく行くようになりました。そして初めて行った日から大体3ヶ月くらいが経った頃ですかね、1人の男の人に絡まれたんです。その日はちょうど僕1人で遊びに行ってたんです。その男の人の話を聞くに、毎日のようにゲームセンターに来てる僕をカツアゲしようとしたらしいんです。なので僕は「ゲームで勝てたら有り金を上げますよ」と提案したんです。

 

相手もゲームセンター通いが長く自身もあったのか、昔からあるとある格闘ゲームを選びました。その男の人は「癖は強いが使えるようになると強い」と噂のキャラを使い、僕は「ゲームで1番の最弱キャラ」と言われているキャラを使いました。結果は僕の圧勝。そのゲームは父が昔からプレイしていて、同じゲームが家にあったんです。つまり勝てたのは偶々、偶然でした。

 

でもその男の人はかなりの自信があったらしく、負けた後僕に弟子入りを頼んで来たんです。見た目年上の人に弟子入りを頼まれて当時の僕は当然断りました。勝てたのは僕の力でなく、父のおかげでしたので。そしてしつこく頼んで来るその人をなんとか撒いてその日は帰ったんです。

次の日、少し遠いゲームセンターに行ったんです。さすがに昨日の今日でその人がまたいるかもと思い、場所を変えたんですよ。でもその変えた先にその人はいました。相手も僕と同じ気持ちで場所を変えてたみたいで、全くの偶然でした。

 

その人はその日もしつこく弟子入りを頼んで来ました。なので、今度は違うゲームで勝負して僕が勝ったら友達に、相手が勝ったら大人しく弟子入りさせる。といった条件で対戦しました。それを決めるゲームは実力がものを言うレーシングゲーム。お互いに愛機を選び、スタートしました。結果、また僕が勝ち、その日から僕達はゲーム友達になりました。

 

それからがあっという間で、僕のゲーマーとしての腕に惚れてその輪に入って来たり、その男の人と同じ様にゲームを通じて仲良くなったり、ケンカの代わりにゲームで戦ったりと、気付けばそれなりの大所帯になっていたんです。でも無秩序にメンバーを増やしてもイケない事は分かっていたので、ある程度のルールを集団内で決めたんです。主なものをあげると「他人に迷惑を掛けない」「困った時はお互い様」といったものです。

 

そんな時、最初に友達になった男の人が言ったんです。「リーダーっぽく振舞ってみてはどうだ?」と。その時僕は中学2年でした。なので、ちょっとカッコつけ程度に一人称を「俺」、語尾のですます調を辞めたんです。ちょうど話し方は夏希さんみたいな感じですね。次のオフ会にそれで参加したら思いの外ウケが良くて、それ以来その集団で過ごしている内はそのキャラでいく事にしたんです。

 

そんなある日、別の同年代くらいの少年、桑田さんに言われたんですよ。「このグループの名前は無いのか」って。その時、桑田さんは入って来たばかりで、いきなり僕に言ったので、他の古参メンバーからお仕置きをくらってましたよ。あ、もちろんゲームで、ですよ?内容は確か格闘ゲームで15人抜きだったと思います。

 

そこで確かに名前は無いな、と思い何人か集めて考えたんです。会議が始まって暫くすると「僕達はゲーマーの集団だからそのまま『ゲーマー』で良いんじゃない?」という意見が出たんです。でもそのままじゃつまらないと、少し捻りを加えて『遊ぶ者(プレイヤー)』というのが次案でした。そのタイミングで桑田さんが戻って来て「だったらPlayerを捩ってPrayer、祈る者達ってのどう?」と提案したんです。その日から僕達の集団は『祈る者達(プレイヤー)』と呼ぶ様になりました。

 

そして僕が高校に上がる際に、僕はまたこっちに引っ越して来るのが決まっていたので、周りの反対を押し切って、最初に知り合った男の人に僕の後、祈る者達の2代目を任せて僕はこっちに来ました。

 

☆☆☆

 

「これが僕の中学時代、しいては祈る者達時代の出来事です」

 

愛生人はそう言って締め括ると、傍に置いてあった麦茶を一口飲む。

 

「そんな事があったんだ…凛、全然知らなかった…」

「まぁ中学時代の事は余り言い触らさないって決めてたからね。秘密にしててゴメン」

 

落ち込む様に言った凛に愛生人は座ったまま頭を下げる。

 

「少し質問良いか?」

「どうぞ」

 

夏希が手を上げると、愛生人は頷いて答える。

 

「その最初のゲーム友達って」

「自分です」

「デスヨネー」

 

夏希は答えが分かっていたのか、大して驚きもせず、恭弥に返す。

 

「まぁそんな感じで、こっちに来た事により、皆さんに迷惑掛けて本当すいませんでした」

「んー愛生人に謝られても」

「そうね。今回のこれは、特に誰が悪いとかそういう類のものじゃないし」

 

再び謝る愛生人に若葉と真姫がそう言って、困った顔をする。それはなにも2人に言えた事ではなく、愛生人と恭弥以外の全員が同じ表状だった。

 

「それで、恭弥さんはこれからどうするの?愛生人も見つかった事だし、地元に帰るの?」

「はい。昨日あの後話し合った結果、全員で決めましたので。では自分はこれにて失礼します

 

絵里の質問に恭弥は頷いて答え、愛生人に一度頭を下げて、部屋から出て行く。

恭弥が帰ってから部屋に沈黙が訪れる。

 

「それじゃ、今度は私達から貴方達3人に話があるわ」

 

そんな沈黙を破ったのはにこの一言だった。にこの言葉に顔を見合わせ首を傾げる3人。

 

「実はね、若葉君達がいない間に話し合って決めたんだけど」

「来週の金曜日の放課後に若葉達の残留祝いと」

「ラブライブ出場辞退のお詫びとしてライブしたいなって」

 

ことり、海未、花陽が説明する。それを聞いた3人は特に反対する事なく、話し合いはそのままセットリストを組んでいく。

 

「じゃあステージ袖の幕の開閉は若葉がやるとして」

「じゃあ照明は俺がやるよ」

「となると僕が音響ですね」

「ヒデコちゃん達も手伝って貰えないか、聞いてみるね」

「う〜今から楽しみになってきたにゃ!」

「わ、私は緊張してきた、かな?」

「明日からまた練習やね」

「別にこの後にやっても良いのですよ?」

「海未、それ本気で言ってるの?」

「もう暗くなって来てるから今日は大人しく帰ろうね」

「じゃあ明日から早速ライブに向けて練習再開しよう!」

「そうね。やるからには本気でやるわよ」

 

こうして音ノ木坂学院所属アイドル研究部の12人は、終始笑顔でライブの話し合いを行った。




【音ノ木チャンネル〜】
若「え、上の何!?」
夏「どうやらこのコーナーの名前らしいな」
愛「発音としては「おーとのき、チャンネル〜」らしいですよ」
若「何その分かりやすいような、分かりにくいような説明は」
夏「まぁ良いじゃねぇか。今回は話す事たくさんあんだから」
愛「そうですね。重要な事と、馬鹿みたいな事、嬉しい事の3つですかね」
若「じゃあ順番通りに重要な事!」
夏「70話にして漸くアニメ1期最終回!」
愛「最初の予定じゃ少なくても50話にはやる予定だったそうですよ」
若「50話ってプール回だね」
夏「変にオリジナル回入れるからこうなんだよ」
愛「でも夏祭りはだいぶ人気あったみたいですよ」
若「じゃあ次、馬鹿みたいな事!」
夏「お前ら、作者の夢って覚えてるか?」
愛「なんでしたっけ?」
若「まさか《あとがき20.000字》の事?」
夏「どうやら書いてるらしい」
若愛「「え"」」
愛「じゃあ前回言ってた並列でどうのって」
夏「あぁその事だ。いつ載せるかは分からないが、そう遠くはないはず」
若「読者の皆さん覚悟はしといてね……」
愛「あぁ!若葉さんが頭を抱えてる!」
夏「つっても今5.000字で止まってるみたいなんだよな。ま、何とかすんだろ」
若「だと良いけど……じゃあ最後、嬉しい事!」
夏「日韓ランキング、ランクイン!」
若愛「「……は?」」
夏「あ、間違えた日刊ランキングだった」
『………は?』
愛「いやいやいやいや!なんで夏希さんまで驚いてんだよ!」
若「愛生人が驚きのあまりアイトになってるけど、確かになんで夏希まで驚いてるの!?」
夏「うるせー!俺だって今知ったんだよ!なんかUA数が伸びたり、お気に入り数が増えたりと嬉しい事があってもしかしたら、と思って見たら39位とか37位とか、本当皆さんありがとうございました!」
愛「逆ギレ風にお礼言いましたよ!でもありがとうございます!」
若「取り敢えず落ち着こう!でも本当にありがとうございます!」
夏「ふぅ……ま、色んな事がありましたが、次回もよろしくお願いします」
愛「今回も誤字脱字があると思いますので、感想欄にて『ここ間違ってんぞ!あぁん!?』て感じでも良いので、ご指摘お願いします」
若「今時そんな感じの人いないでしょ」
夏「そろそろ締めるぞ〜」
若「締めの挨拶とかも決まったの?」
夏「…………」
愛「決まって無いんですね」
若「なんか良さそうなのがあったら是非ご提案お願いします。では」
『バイバーイ』


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今日皆を、1番の笑顔にするわよ!byにこ

ダメ……疲れた……
本編は紙以上に薄いですが…まぁ、はい、反省しています。いや本当に申し訳無いんですが、その分違う所に力を入れたんで許して下さい。どれ程かと言うと、今話の執筆時間の9割を占めました。

ではどうぞ!


1週間は早いもので、金曜日の放課後。

 

「若葉達そろそろ行った方が良いんじゃない?」

 

ヒデコ、フミコ、ミカと一緒に入場者にサイリウムを配っていると、ヒデコが近寄ってきて3人に言う。

 

「もうそんな時間!?」

「じゃあ悪いけど。行ってくる」

「あの、よろしくお願いします!」

 

3人はヒデコに持っていたサイリウムを渡すとステージ袖に向かって走り出す。

 

「うぅ…緊張するよ〜」

「そりより凛ちゃん達制服のままだけど、良いの?」

 

若葉達がステージ袖に着くと、花陽が緊張した様子でいた。他のメンバーも少し緊張しているのか、表情がぎこちない。

 

「それより皆さん制服姿のままですけど、良いんですか?」

「スクールアイドルらしくて良いんじゃない?」

「それとも愛生人はにこ達の制服姿じゃ不満なわけ?」

「きゃーアッキーのエッチ〜」

 

にこと夏希の揶揄いに愛生人は全力で否定する。

 

「て言ってる間にそろそろ時間だよ」

「お客さんを待たせる訳にはいかないわ」

 

若葉と絵里の言葉にアイドル研究部10人が頷く。

 

「じゃ、全員の気持ちが揃った所で部長、一言」

 

希の突然の振りににこはえぇー!と驚くも

 

「なーんてね。ここは考えてあるわ」

 

にこはそう言うと人差し指と中指を立て前に出す。

 

「今日皆を、1番の笑顔にするわよ!」

 

それに合わせて皆も手を前に出す。

 

「1!」

「2!」

「3!」

「4!」

「5!」

「6!」

「7!」

「8!」

「9!」

 

穂乃果、ことり、海未、真姫、凛、花陽、にこ、希、絵里が番号を数え、若葉達3人を見る。

 

「お兄ちゃん!」

「若葉!」

「夏希!」

「アキ君!」

 

穂乃果と真姫が若葉に、絵里が夏希に、凛が愛生人にそれぞれ空いている手を差し伸べる。3人は顔を見合わせた後、少し照れた様に笑い合い円陣に入ると、自分の番号を言う。

 

「10!」

「11!」

「12!」

 

若葉、夏希、愛生人が円陣に加わり、μ'sの皆が笑顔になる。

 

「よーし、行こう!」

『おー!』

 

穂乃果の合図で皆が一斉に手を上に上げる。そして9人は幕の閉じてるステージへ、3人はそれぞれステージ袖、音響室、照明に分かれ、仕事を始める。撮影は音響室に行った愛生人が並行で行う手筈になっている。

 

『Dan-danココロ Dan-danアツク』

 

一曲目は新曲で、若葉達が謹慎を受けている間に嘆願書のお願いを全校生徒にしている合間に練習したもので、曲名は『Wonderful Rush』。その歌い始めに合わせて若葉はステージの幕を開ける。幕が開き、9人が光景は講堂中に光る色取り取りのサイリウムだった。

若葉はステージ袖から客席の後ろに回ると、裕美香と誠がおり、その向こうでは彩と詩音が並んで見ていた。

曲が終わり、客席から割れんばかりの拍手が送られる。穂乃果はその拍手を聞きながら、声を大きくして話す。

 

「皆さん、今日はありがとうございます。私達のファーストライブはこの講堂でした」

 

と海未とことりを見ながら話す穂乃果。

 

「その時、私は思ったんです。いつかここを満員にしてみせるって。一生懸命頑張って私達は今、ここにいるこの思いをいつか皆に届けるって。その夢が今日、叶いました!だから私達は今、駆け出します。新しい未来に向かって!」

 

穂乃果の言葉と共に『START:DASH!!』が流れ始める。

 

『I say…』

 

それから曲が終わるまでの数分間は、客席と穂乃果達9人が一体となってライブは今までのどのライブより盛り上がった。

曲が終わり、講堂の中は再び拍手で埋め尽くされ、メンバーはステージ上で抱き合ったりして喜んでいた。そして拍手が鳴り止むのを確認すると、9人は横一列に並び、穂乃果がマイクを持つ。

 

「皆さん、今日は本当にありがとうございました」

 

とお礼を言った後、何か思い出した様にあ、と声を上げる。

 

「大事な事を言い忘れていました」

 

続いた穂乃果の言葉に客だけでなく、穂乃果の後ろの海未達や若葉、夏希、愛生人と穂乃果以外の全員が首を傾げる。

穂乃果はそんな周りを無視して手を高らかに上げると、11人は意図が分かり思わず笑みを浮かべる。穂乃果は笑顔でマイクを客席に向ける。

 

「さぁ皆さんご一緒に!μ's!ミュージック〜」

『スタート!!!』

 




【音ノ木チャンネル】
若「ふぅ〜やっとアニメ第1期の分が終わったね」
夏「長かったな」
愛「書き始めて1年近く経ちますからね〜」
若「待って。て事は2期の分が終わるまで、また1年掛かるって事?」
夏「ま、まぁそれは置いといてゲストの登場だ」
若「今回は人数が多いので一旦愛生人と夏希は退場しまーす」
愛「え、それ初耳なんですけど」
夏「サイドバーで察しろ。ほら、良いからブースから出るぞ」
若「さて、愛生人が夏希にドナられたので、ゲスト1組目の登場です。では簡単に一言と名前をお願いね〜」
穂「ひ、一言!?えっと…フ、ファイトだよ!高坂穂乃果です」
こ「ヨキニハカラエミナノシュウ。南ことりです」
海「あの、これ本当に言うんですか?…分かりました。あなたのハート、撃ち抜くぞー、バーン。園田海未です……うぅ…」
若「と言う訳でμ'sの2年生陣に来て貰いました〜。因みに海未だけ一言はこちらで指定させて貰ったよ」
海「なぜ私だけ…」
穂「だ、大丈夫だよ海未ちゃん。可愛かったから、ね?ことりちゃん」
こ「そうだよ。可愛かったよ、海未ちゃん」
海「そ、そうですか?」
若「じゃあ海未も納得したから話をしていこうよ」
こ「良いけど、何を話すの?」
穂「確か気になった事とか話していくんだよね?」
若「そうだよ。3人ともこれまでの話で気になった事とか無い?」
海「では私から一つ。これはなくても良いと言われてた事なんですが、なぜことりの留学話が無くなったのですか?」
若「それ聞いちゃう?」
穂「でも確かになんでか気になるよね」
こ「その代わりに職員会議までやったんだもんね」
若「実はね。作者も書こうとは思ってたみたいで、今手元に没ネタとしてその一部があるんだよね。見る?」
穂「見たい!」
海「どの様なものか気になりますね」
こ「私も見てみたいなぁ?」
若「ではご要望にお応えして。こちらになります」

☆☆☆

「若葉君、その、ちょっと…」
「若葉。少しお時間よろしいですか?」

乾いた制服に着替えた若葉が部室の鍵を閉め、職員室に向かって歩いていると、後ろからことりと海未に呼び止められる。

「?別に大丈夫だけど、その前に鍵返していいかな?」
「うん…じゃあ教室で待ってるね」

若葉が鍵を見せて聞くと、ことりは頷き、海未と一緒に自身の教室へ歩いて行く。
若葉は職員室に鍵を返すと2人が待ってる教室へと足を向ける。教室へ向かう途中、裕美香に帰りが少し遅れる事を連絡し、教室の中に入る。

「待ったかな?」
「いえ。こっちが呼び出したのですから」
「…ゴメンね。急に」

若葉が中に入ると、海未とことりが神妙な表情で話していた。若葉を見た2人は申し訳無さそうに若葉に言う。

「いや、別に謝らなくても大丈夫だよ。それで、話って?」
「…ことり」
「うん、私が話すよ。あのね、この前家にこれが届いて」

そう言ってことりが一通の手紙を取り出し、若葉に渡す。

「これってエアメール、だよね。これがことりに?」
「そうなの。服飾の勉強に来ないかって」

☆☆☆

海「時期と最初の「乾いた制服」という文から見るに、62話の最初の切り替えシーンの少し前辺りでしょうか」
若「お、海未は鋭いね。まさにその通りの場所だよ」
こ「このまま続けるとしたらどうなってたの?」
若「えーっと、俺が怪我をするのは確定してたから、ここで留学の話を知って、病室で2人切りで話し合いって展開だったらしいよ」
穂「じゃあなんで無しになったの?」
若「なんでも高坂兄妹の間にヒビが入る上に、そこに職員会議が混ざるのは内容がこんがらがるからなんだって」
こ「その時にはもう職員会議は決まってたんだ」
穂「作者さんってそういう部分的なのは大分早めの段階から決めてるよね。例えば、夏希君の彼女がツバサさんなのだって最初から決まってたんでしょ?」
海「ええ。その後話を書きながら絵里の幼馴染みにしたそうですよ」
若「ミナリンスキーの時も翔平に呼び出されたんじゃなくて、愛生人、夏希、翔平とアキバに行ってミナリンスキーを見かける→μ'sと一緒にことりに会うって流れだったらしいし」
こ「上げていったらキリがないね」
穂「でも最初から代わってない事はカップリングくらい?」
若「そうなんだよねー。あ、ブースの外にいる夏希からカンペが」
海「えーと?名前の由来を話せ、ですか?」
こ「それって若葉君達のって事だよね?」
若「あれ?名前の由来って話さなかったっけ?」
穂「話してないと思うよ?」
海「ではこの作者から受け取った紙を読んでいきましょう」
若「そんな紙いつの間に!」
こ「え〜と。「若葉」にしたのは穂乃果ちゃんや雪穂ちゃんの名前に「穂」の字があって、その言葉から自然を連想したんだって」
穂「そこから自然でありそうな名前として「若葉」が候補に上がってそのまま採用」
海「そして今に至る訳ですね」
若「なんかアッサリしてたね」
穂「それで、なんで穂乃果の双子の兄にしたのかなんだけど」
若「え、そこまで掘り下げるの!?」
海「なんでも双子の兄妹は動かしやすいそうで」
こ「それで物語に絡めやすい主人公、穂乃果ちゃんのお兄ちゃんにしたんだって」
若「嘘じゃない分反論出来ないよね」
こ「因みに真姫ちゃんが彼女なのは、作者が真姫ちゃん推しなのが理由なんだって」
穂「じゃあなんで凛ちゃんとツバサさんもヒロインに選ばれたの?」
海「穂乃果、それは後々説明されます。それまでの我慢ですよ」
若「俺の話はそこら辺までにしといて、話を戻すよ?」
穂「話って、なんだっけ?」
こ「今までで何か気になる事はある?って話だよ」
海「私は先程言いましたので次は穂乃果かことりが聞く番ですね」
こ「あ、じゃあ私が。夏休みに皆でプールに行ったよね?」
若「あぁりっちゃんの初登場した時で、真姫とことりがナンパされた時の」
こ「そうそう。その時、にこちゃんがいなかったのはなんでなの?」
穂「あ、それ穂乃果も気になってた。なんでにこちゃんだけいなかったの?」
若「あーそれはその話を書く少し前に、作者がSIDの夏休み編を読んでね、その中でにこがプールでバイトしている話があったんだよ」
海「なんとなく分かってきました」
若「あはは。本当はナンパは無くてSID通りに皆でにこのバイトを手伝うはずだったんだよね」
こ「じゃあなんで私と真姫ちゃんはナンパされたの?」
穂「ことりちゃん。そんな事聞いちゃダメだよ。そんなの作者が真姫ちゃんのデレを書きたいからなんだよ!」
『ナンダッテー』
海「でも確かに、最近の真姫は大分若葉に甘えていますね」
こ「甘えてると言うよりか、若葉君が真姫ちゃんに気に入られているって感じかな?」
穂「2人とも付き合ってるんだし、別に良いんじゃないかな?」
若「ちょっと待って3人とも!このやり取りはブースの外にも聞こえてるからね!?既に真姫の顔が物凄く赤くなってるから!」
穂「でも夏希君がもっとやれって」
若「夏希、後で覚えててね?」
海「若葉。なぜそこで枕を取り出すのですか?」
こ「あぁー!それことりの枕…」
海「なぜことりは枕を持っていたのですか!」
穂「まぁ話を戻して。穂乃果の気になる事かぁ…う〜ん。あ、そう言えば、最近になってお兄ちゃんの方向音痴が機能してない気がする」
こ「確かに最近若葉君は道に迷ったりしないね」
若「いやいや。描写されてないだけで迷ったりしてるからね?」
海「因みに最近ではどの様な迷子に?」
若「迷子言わないで。そうだね……最近だと、最寄り駅からこのブースまでかな?まさか30分も掛かるとは思わなかったよ」
こ「ねぇ海未ちゃん。駅からここまでってそんなに遠くないよね?」
海「ええ。普通に歩いても10〜15分で着きます」
穂「お兄ちゃん…良かったよ」
若「そう?」
こ「私からもう一つ良いかな?」
海「ことりは先程の以外にもあるのですか?」
こ「うん。若葉君達は彼女さんがいるのは分かったけど、逆に私達には彼氏さんとかいないのかな〜って」
穂「え、でも男の子はお兄ちゃん達を除いたら、翔平君と恭弥君、達也君しかいないよ?」
若「作者に言えば増やす事出来るけど?」
海「いえ、無理に増やすと、作者自身が捌き切れなくなるので止めた方がいいのでは?」
こ「じゃあ私達はいないの?」
若「ことりは欲しいの?」
こ「ちゅん!」
若「ソウデスカ」
穂「通じた!?」
海「そんなバカな!」
若「まぁ分からないよね」
穂海「「ですよねー!」」
こ「むー、では次の質問です。夏祭りの時に撮った写真はいつ貰えるの?」
若「え、あの写真ならもう現像して穂乃果に渡したけど…」
穂「……あ」
海「忘れていたんですね」
穂「アハハハ。ゴメンネ、今持ってくるよ」
若「ちょ、穂乃果まだ俺たちの番だ…よ……」
こ「行っちゃったね」
海「行ってしまいましたね」
若「じゃあ穂乃果が戻ってくるまで3人でやって行こうか」
こ「だね」
海「ところで、この質疑応答はいつまで続くんですか?」
若「ん~作者のネタの続く限り?」
こ「そこは疑問系なんだね」
海「そう言えば2期の分もやるんですか?」
若「あ、やっぱり気になる?」
こ「やるんじゃないかな?この間も2期の11話と13話を見て泣いていたし」
海「泣いていたんですね」
若「でも泣きながらも、俺達をどう組み込むか考えていたらしいよ」
海「ちゃっかりしていますね」
穂「おまたせ!持ってきたよ!」
若「あ、戻ってきた」
海「どこまで行ってたんですか?」
穂「いや~楽屋に置いた鞄の中に入ってたんだけど、見つけるのに時間掛かっちゃって。ハイこれ」
こ「ありがと~」
若「…ねぇ。なんか真姫から怒気を感じるんだけど」
穂「あ、真姫ちゃんも欲しいって言ったからあげちゃった」
海「それが原因ですね」
こ「うふふふ」
若「どうしよ…」
穂「まぁそれは置いといて」
海「私達からの質問はこれくらいですか?」
こ「うん。私ももう大丈夫だよ」
若「それじゃあ次はあの4人に交代だよ!一旦じゃあね!」

夏「さて交代した為に行間が空いてるが、気にしないで始めるか。じゃあ2年生陣と同じように一言からの自己紹介を頼むぞ」
希「カードがウチにそう告げるんや!東條希やで!」
に「にっこにっこにー!あなたの背後に忍び寄る宇宙ナンバーワンアイドル、矢澤にこで~す」
絵「かしこい!かわいい!……絢瀬絵里よ」
夏「今の謎の間はなんなんだよ!」
絵「ノリの良い人達なら、今の間にお決まりの言葉を入れてくれるはずよ」
夏「お前は読者に何を求めてんだよ!」
絵「「エリーチカ」一言、たったそれだけよ」
に「む、絵里だけズルいわね。なら私だって。にっこにっこ」
希「言わせへんで!にこっち!」
絵「さ、もう一度。かしこい、かわいい?」
夏「お前ら自由過ぎんだろぉぉ!!」
に「夏希煩いわよ!こっちはヘッドホンしてるんだから、そんなに叫ばなくても聞こえるわよ」
希「じゃあさっきの穂乃果ちゃん達みたいに、私達も夏希君に質問してってええの?」
夏「ん~3年陣に関わる事だぞ?」
希「分かってるって」
に「でもその前に」
絵「そうね。若葉からの指示が出ているわ」
夏「指示?若から?」
に「名前の由来と、ツバサとの出会いを!って書いてあるけど」
希「じゃあ張り切ってどうぞ!」
夏「いやどうぞじゃなくて……ハァまぁいっか」
に「あ、諦めた」
夏「えーと、まずは苗字の佐渡か」
絵「そうね。て言うより、読者の殆どが夏希の苗字が佐渡っていうの忘れてるんじゃない?」
夏「それはそれで問題だけど、今は置いとくぞ。これはアレだ。確か、極道が先生をやるドラマの教頭の苗字を字だけ変えて持ってきてたんだっけか?」
希「えらく曖昧やな」
夏「まぁ俺の名前を考え付いたのか1年近く前だからな」
に「そう言えば作者が、実は若葉や愛生人より先に夏希が生まれたって言ってたわね」
絵「と言うより、一番最初に考えたキャラ設定が夏希みたいよ」
夏「その割にあんまり優遇されてる気がしないんだが」
『だって夏希(君)だし』
夏「声を揃えて言うな!悲しくなんだろ!?」
絵「でも実際に夏希の優れてる所って聴力だけよね」
に「それすらも最近じゃ活躍してないし」
希「夏希君……頑張るんやで」
夏「ええい!話を変えるぞ !名前の夏希は作者のイニシャルがNでそこから名前を考えた結果夏希になった、らしい!」
絵「なんか益々夏希が残念な人に」
に「優遇のゆの字も無いわね」
希「ほな次の話題行こ」
夏「のぞみんは遂に励ます事を放棄した!?」
絵「それで?ツバサさんとはいつ出会ったの?」
に「て言うか、良く付き合えたわね」
夏「にこっち酷いぞ」
希「でも確かに。よく付き合えたね」
夏「あのなー俺はこれでも中学の時、生徒会長だったんだぞ」
に「嘘!」
希「今の夏希君からは考えられへんな」
絵「ハラショー」
夏「それでその時にツバサと知り合って、色々あって付き合い始めたんだ。以上」
に「色々って何よ」
夏「それは作者が考えてる最中だから言えない」
希「成る程な。そして良い感じの辻褄合わせがその内本編で出て来る、と」
絵「なんか今日のあとがき、メタ発言と言うか、ぶっちゃけ話と言うかが酷いわね」
夏「そうだな。実際問題このやり取りって需要あるんかね」
に「需要なんか気にしてたらこんなのやらないわよ」
希「需要の有る無しに関わらず、ちゃんと読んでくれてる人達いるんやから、やるだけの価値はあるんとちゃう?」
夏「取り敢えず、俺の紹介は終わったんだが、質問ある?」
絵「じゃあ私から。どうして夏希の相手がツバサだったの?」
希「あ、確かに。えりちと幼馴染み設定ならえりちでも良かったやん」
夏「それじゃつまんないでしょ、って作者が言ってたぜ」
に「いや、つまるつまらないでヒロイン決めるのもどうかと思うんだけど」
夏「でも意外性はあったろ?」
希「それはそうかもやけど」
絵「それで、本題なんだけど」
夏「あぁ、質問ね」
希「これはウチら3年生3人からの質問やで」
に「そう。あれは忘れもしない若葉と真姫のイチャつき回」
『なんで夏祭りの回私達(ウチら)の出番が無かったの(んや)!』
夏「いや、俺に言われても知らねぇよ。作者に聞け作者に」
希「作者さん、なんでなん?ウチ、信じてたんよ?」
絵「ま、まぁ誕生日に上げたのに、その張本人が一言も話さなかったりした回があるから、仕方ないって言ったらそれまでよね」
に「あ、作者から手紙が…「裏話として絵里は希と一緒に亜里沙と雪穂を連れて祭りに行き、にこは弟達を一緒に回っていたって感じでどう?」だってさ」
希「なんやウチの扱い酷くない?」
絵「て言うか、感じでどう?って的当過ぎる気がするけど」
夏「俺らからして見れば今更な事なんだがな」
に「あんたらの扱いどんだけ酷いのよ」
夏「皆忘れてるかもだけど、俺の髪の色が水色なのは、えりちみたいな金髪や、りっちゃんみたいなオレンジがありならって理由なんだぜ?」
希「まぁこれはアニメの、もっと言えば二次小説の世界やからなぁ。男の娘やら、男装趣味の女子とか、明らかに小学生にしか見えない先生とかがいてもええんとちゃう?」
に「まぁどこぞの魔法少女の世界には金髪や水色、赤にピンクまでいるから問題ないっちゃ問題ないわね」
夏「まぁのぞみんやうーみんの髪の色が、明らかに紫や青なのに、公式だと2人とも黒髪って言われてるのも不思議だけどな」
に「まぁ髪の色でキャラを書き分けてる感じだし、別に良いんじゃない?」
希「あ、疑問と言えば疑問なんやけど、結局音ノ木坂ってアルバイト禁止なん?」
絵「いいえ、別に禁止じゃないわよ」
夏「どうもことりが彩さんに内緒で、って言った事から作者が誤解したみたいだな」
に「え、じゃあ本編の私の発言直さないといけないじゃない」
夏「作者曰く、「別に良くね?」との事」
希「めんどくさいだけやん!」
絵「でも70話と1期分終了って事で纏めて見直しするみたいよ」
に「そう言えば若真姫回見て1人で悶えてたわね」
夏「あぁどうも書いてる時も悶えてたらしいぞ」
希「自分で書いているのに、不思議やね」
絵「でもまだ愛生人と凛の告白シーンが残ってるのよね」
に「そうね。まぁこれから先のどこかでやるんでしょうけど」
夏「ちゃんとやる予定はあるみたいだぞ」
絵「ただしやるとは言ってないってオチは無しよ?」
に「それじゃあにこからも一つ。何話か忘れたけど、あとがきで伏字使った回あったじゃない?」
希「56話やね」
絵「希、覚えてたの?」
希「いんや、作者さんが見直して来たらしいで」
に「そこで「○○ちゃんに怪我させる」ってあったけど、そこは文字を当て嵌めたらどうなるの?」
夏「えーと、「文化祭の時に○○○さんの代わりに○○さんを倒すか、○○ちゃんを怪我させるか」ってやり取りだな」
絵「今だから分かるけど、伏字を外すと「文化祭の時に穂乃果さんの代わりに若葉さんを倒すか、真姫ちゃんを怪我させるか」ってなるのね」
希「因みに、ことりちゃんの留学話があった時の簡単な流れが書かれたものがあるんよ。それがこちら」

学園祭数日前、神田明神の階段ダッシュ中に真姫が足を滑らせて危ない!
若葉が庇うぜ!
ゆーえーに⤴︎意識不明になる〜
学園祭前日、意識復活
学園祭当日、車椅子でステージ見学
入院中、ことり留学相談
ことりのしたい様にすれば良い。ただことりの今一番したい事は何か?
退院後μ's参加辞退を聞くも、既に知っている。
穂乃果達は次頑張ろう精神
存続パーティ!あれ?存続って三人どうするん?
1週間後穴埋めライブ前に三人交え会議。穂乃果達乱入!全校生徒の三人居残らせる嘆願書。
まあ元々戻す気無かったし?再来年以降の為に念の為(・・・)残らせよう☆-(ゝω・)v←彩さん
最初に賛成の拍手←姫子
ライブゥ!

に「この「ゆーえーに⤴︎」って何よ!」
夏「あれだ。よく語尾になるにつれて声のトーンが上がるやつ」
絵「て言うか、意識不明って重体じゃない!」
希「でも前日には意識戻ってるんやな」
夏「そう!そこなんだよ!調べたらそんなに早く意識が戻らない事が分かってさ。結局軽い気絶程度で済ませたんだ」
に「理事長の顔文字もなんかイラっとするし」
絵「絵的にはウィンクかしら」
夏「まぁ作者の携帯のメモ帳からそのままコピペして来た物だし、多少……いや、かなりふざけた内容になってんだろ」
希「さすがの夏希君でもかなりなんや」
に「でも大体の流れは同じなのね」
絵「そうね。嘆願書を持って乱入するのが私になったりとかの細かい変更はあるけど、大まかな所はそのままね」
希「そうそう。皆合宿の時ってなんて言って参加したん?さすがに男の子同伴だと親とか反対しそうやけど」
夏「あーそれね。それは」

ほのうみこと→若葉がいるし、良いよ!
希→そもそも一人暮らしだから大丈夫
凛花→愛生人がいるなら良いよ
真姫→あの時の彼(若葉)がいるなら
にこ→今までそんな事を言わなかったから特別、ね?
絵里→良いよ〜

夏「こんな感じ」
に「なんか絵里だけてきとう!」
絵「そして真姫の両親の若葉への信頼感が異様に高い!」
希「他はまぁ妥当やな」
夏「因みに初期設定で若に免許を持たせてたのは、そん時はまだ試験生が1人で、10人なら車1台で足りるからとか、じゃないとか」
に「でも結局おかしいって指摘が来てその設定無くなったのよね」
絵「他にも幾つか没になった設定あるんでしょ?」
夏「んーあとは俺の髪の色が白だったり、翔平はごく稀に出てくる程度だったりが変わった事くらいじゃね?」
希「え、夏希君って最初は白髪設定やったの?」
夏「まぁラブライブ用に作った訳じゃないからな。本来は別作品のバトル物で使う予定だったらしいし」
に「へぇ〜以外ね。あんなに戦闘描写が下手なのにバトル物とか」
絵「なんか質問する度に夏希とかのキャラ創造や設定の話になるわね」
希「そういうのって、作者を呼んでやるものやないの?」
夏「あーその事なんだけど、作者はこの後の1年陣の後に来るらしい」
に「別にメールとかして来るなら最初から来ればいいのに」
夏「ま、文句とか言いたいならそん時にしな。じゃあそろそろ時間らしいから、1年陣の4人に交代するぜ!じゃな!」

愛「はい。じゃあ2.3年生に習って、自己紹介と一言。どうぞ」
凛「ちょっと寒くないかにゃー。星空凛でーす!」
真「ナニヨソレイミワカンナイ!西木野真姫よ」
花「誰か助けてー!」
『ちょっと待っててー』
花「あ、ブースの外の皆まで……あ、小泉花陽です」
愛「始める前に一つだけ。真姫ちゃん落ち着いた?」
真「えぇ。来年2人だけで行く事を約束したわ」
凛「さっきの真姫ちゃん怖かったにゃー」
花「写真も気になるね」
真「ほ、ほら早く始めましょ」
凛「あ、赤くなったにゃ〜うがっ!」
愛「全く。アニメと同じ様に弄るからだよ?凛ちゃん」
花「えっとまずは愛生人君の由来からだね」
愛「実は僕も夏希さんと同じ様にラブライブ用に作られたキャラじゃなくてね」
真「へぇ〜じゃあ夏希みたいにバトル物のキャラだったの?」
愛「というか、一度は作品として出したんだよね。作者が」
花「なんのお話?」
愛「ソードアートオンラインって作品の二次小説。そのオリ主を務めていました」
凛「あ、凛それ知ってるよ。作品名忘れたけど確か4話くらい投稿して消したんだよね!」
真「なんで凛はそんなに詳しいのよ」
愛「で、その作品でプレイヤーネーム「アキ」で出してて、ちょうど良さげな名前が「あきと」だったんだ。それで面白そうな漢字を宛てて愛生人になったらしいよ」
花「やっぱりてきとうなんだね」
凛「でもそのせいでキーボード登録してないパソコンで打つ時、あい、せい、ひと、で一々変換してるんだよねー」
愛「凛ちゃん本当に詳しいね」
凛「うん。だってこの前作者さんに聞いたんだもん!」
真「作者となんの話をしてるのよ…」
花「他には何か言ってた?」
凛「えっとね、2期の話のどこかでアキ君と若葉君が女装するかも、って事とか」
愛「ちょ、それ初耳なんだけど!?」
花「あぁブースの外で若葉君も狼狽えてる」
真「若葉が女装……穂乃果になりそうね」
花「そして真姫ちゃんは受け入れてる!?」
凛「あ、あと「祈る者達」に関する事とか、とにかく色々と聞いてきたよ!」
愛「あれ?これ僕いらなくない?」
真「別に愛生人は作者の代行人って訳じゃないんだから良いじゃない」
花「そうだよ。愛生人君も揃って初めてアイドル研究部1年組なんだから」
凛「そうにゃ!アキ君がいなかったらつまらないにゃ!」
愛「そ、そう?」
真「ええ」
花「うんうん」
凛「もちろんにゃ!」
愛「じゃあ続けるよ。って言っても僕の名前の由来はさっきので終わりなんだけどね。しゃあ続いては質問コーナー」
花「とうとうコーナー化しちゃった!?」
愛「なにか聞きたい事ある?」
真「あ、聞きたい事じゃないんだけど、ちょっと愛生人に提案があるのよ」
愛「真姫ちゃんが提案するなんて珍しいね」
真「べ、別に!ただ若葉にお願いされたのよ」
凛「真姫ちゃん本当に若葉君の事好きなんだね」
真「な、なによ。別に良いじゃない……好きなんだから」
花「真姫ちゃんがデレた!」
愛「で、提案って何?」
真「この1年陣の時だけで良いからアイトで話してみない?」
愛「……だ」
『だ?』
愛「だが断る!」
凛「えー!凛はアキ君のアイト君みたいにゃー(泣)」
花「地の文入れられないからとうとう括弧を使い始めたね」
真「ほら、凛もこう言ってるんだし、この時だけで良いから、ね?」
愛「……し、仕方ねぇな」
凛「わぁー!アキ君カッコイー!」
花「なんか新鮮ですね」
真「今度若葉にもこの口調お願いしてみようかしら…」
愛「さて、他には何かあるか?」
花「「祈る者達」の他の名前の候補って何があったの?」
愛「確か、恭弥が考えたので「地清風守(地域の清掃と風紀を守る)」とか、達也が考えたので「ゲーマーズ」とかがあったな」
凛「ネーミングセンスが壊滅的にゃー」
真「「祈る者達」の序列ってどうなってるの?」
愛「1番上に俺、その次に恭弥と桑田、その下に海斗達って感じだな」
花「えと、どんな事してるの?」
愛「普段はゲームしたりとか、駄弁ったりとかだな。偶に地域の人達との交流を兼ねてのボランティア活動とか。って3人とも「祈る者達」についてしか聞きたい事ないの!?」
真「あ、愛生人に戻った」
花「因みに分かりやすく言うと?」
愛「「ある程度ルールのあるダラーズ」だよ!」
凛「デュラララの?」
真「完全に他の作品じゃない!」
凛「でも作者さんの頭じゃこれが限界みたいだよ?」
花「もしかして52話で言ってた裏設定って「祈る者達」の事なの?」
愛「そうだよ。夏希さんが当分先って言ってたからいつになるのかと思ったら、以外と早くて助かったよね」
凛「他に聞きたい事はねー。なんでアキ君って髪の毛切らないの?」
花「そう言えば長髪の設定だったね」
真「今までその描写すらあまり無かったけど、そう言えば長髪だったわね」
愛「各学年に1人は扱いが酷いメンバーを作らなきゃ気が済まないのか!この作者は!」
凛「で、切らない理由は?」
愛「凄い純粋な瞳でこっちを見ている。仲間にしますか?
はい
いいえ
→ギュッと抱く」
凛「にゃ!?」
真「な、何してるのよ!」
花「真姫ちゃん。注意してる所悪いけど、真姫ちゃんと若葉君も結構抱き合ってるからね!」
真「ゔぅえ!な、何言ってるのよ花陽!」
花「しかも若葉君は頻度高めで真姫ちゃんの頭を撫でてるし」
真「若葉の撫でる手って気持ち良いのよね。って違う!確かに気持ち良いけど、今は関係ないでしょ!」
凛「でも真姫ちゃんと若葉君のシーンは結構評判だよ?」
愛「リア充が…」
花「愛生人君、それブーメランだよ」
真「うぅ……若葉ぁ……」
花「真姫ちゃん。少し落ち着こう」
真「うん」
凛「あ、若葉君がカンペを。えっと?「真姫を泣かせるんじゃない」だってさアキ君」
愛「僕は何もしてないけどね!?初撃花陽ちゃん、追撃凛ちゃんだからね!?」
凛「そうだっけ?取り敢えず真姫ちゃんは若葉君に預けて来るにゃ!」
花「真姫ちゃんがログアウトしました」
愛「まぁその内戻ってくる事を願って、こっちは進めてようか」
凛「だね〜」
花「そう言えば、なんで愛生人君は私と凛ちゃんと小学校が一緒だった設定なの?」
愛「設定って……まぁ今更か。えっとね、音ノ木坂に来て、知り合い0は大変だからって理由だよ。他にも理由はあるけど、それは秘密」
凛「ぐぬ〜秘密はダメにゃ!」
花「そう言えば、合宿の時落語話してたけど、愛生人君って落語見に行ったりするの?」
愛「いや?特に行ったりはしないけど、饅頭怖いは有名だからさ」
真「うぅ…さっきは酷い目にあったわ」
凛「あ、真姫ちゃんが戻って来たにゃ」
真「誰のせいで一時退出したと……はぁ、もういいわ」
花「真姫ちゃん、諦めちゃダメだよ」
愛「バスケがしたいです」
凛「あ、じゃあ収録終わったらコートに行く?」
真「凛、そういう事じゃないと思うわよ。て言うか、その簡略化されたネタが分かる人何人いるのかしら」
愛「いやでもね。既に1万字を超してるんだよ。本編で言えば既に夏祭りの文字数を超えてるんだよ?ぶっちゃけもうネタ切れだよね!」
花「まぁまぁそう言わずにあと半分切ったんだから、頑張ろ?」
愛「流石絶賛イベント中の花陽ちゃんは言う事言うね」
真「前にそういった「その時しか使えないネタ」を使うのやめない?って話してなかったかしら?」
凛「それはバイト終わりにこれを書いてる事とか」
愛「スクフェスのランクが140に上がった事とか」
花「特別勧誘チケットで絵里ちゃんを引いた事とか」
『そう言う事!?』
真「そういう事よ!て言うか、凛に至ってはその文を打ち込んでいる時の状況じゃない!」
凛「o(*^▽^*)o~♪あはっ」
真「あはっじゃなーい!」
愛「さてそろそろ話を質問コーナーに戻すよ」
花「う〜ん。そう言えば、凛ちゃんと愛生人君のデート話は見たけど、真姫ちゃんと若葉君、夏希君とツバサさんのは書かないの?」
真「デ、デートって言っても付き合ってまだ間もないし……まだ行ってないわよ」
凛「花陽ちん、別にあの時のお出掛けはデートじゃなくて!唯買い物に付き合って貰っただけだよ!」
愛「そ、そうだよ!それより夏希さん達の方が僕は気になるなぁ!」
若『て言うか、夏祭りのがデートに当たるんじゃないんですかねぇ!(カンペ)』
夏『お前ら動揺し過ぎな(カンペ)』
愛「なんか、夏希さんが落ち着いてるのが癪なんですが」
凛「まさかもう何回もデートしてたり!?」
花「ぐぬぬ。これはその内作者さんに番外編として書いてもらうしか手はないですね」
真「花陽はなんでそんなにデート回が見たいのよ」
花「それは秘密です」
愛「こうなった花陽ちゃんは手をつけられないから、次の行こうか」
真「じゃあ若葉がさっき言ってた、凛が愛生人の彼女になった理由について」
凛「作者さんが真姫ちゃんの次に凛が好きだから?」
愛「凛ちゃんにお願いがあります」
凛「にゃん?」
愛「僕の出番取らないで!」
花「当たりだったんだ」
真「じゃあこれの次は凛がヒロインの話とか書いたら良いんじゃない?」
愛「次回作ねー。どうするんだろ」
花「いっその事ラブライブサンシャインの書けば!」
愛「それは「主人公達と舞台以外分からな過ぎてワロエナイ」って言ってたからないと思うよ」
真「ワロエナイって…」
凛「でも凛達に憧れてアイドル活動を始めてくれたんだよね!それってとっても嬉しいにゃ!」
花「って事は私達の出番はもう無いのかな…」
愛「まぁもしサンシャインのを書くとしても、作者は僕達を出すつもりでいるらしいけどね」
真「なんやかんやで若葉、夏希、愛生人の3人組気に入ってるものね」
凛「そうした場合ってタグとかどうなるのかな?」
花「多分原作ラブライブサンシャイン、タグにクロスオーバー、アニライブ!ってなるんじゃない?」
愛「さて、話も段々メタくなって来た所で僕達1年陣も終わりにしたいんだけど」
『けど?』
愛「若葉さんからもう少し頑張って伸ばしてってカンペが来てるんだよね」
凛「えー!でももう裏話とかは作者さんがいないと出来ないものが殆どな気がするにゃ〜」
花「う〜んと、え〜と」
真「話を蒸し返すようであれだけど、愛生人のプレイヤーネームってどうしてアイトだったの?」
愛「愛生人の愛と人を取ってアイトにしたんだけど、よくよく考えると愛生人の生のKの発音が無くなっただけなんだよね」
花「感想欄でもアッサリ見抜かれてたもんね」
凛「「アイトって多分あいつだろうな」とか「にゃーにゃー言ってるショートカットの女の子が傍にいたりするんでしょうねー」と言われたもんね」
愛「感想をそのまま持って来ちゃダメじゃん!」
真「後者に至っては凛の事を言ってるし、作者も双子の兄妹が〜とか返してるしね」
花「なんかもう、自由だね」
凛「花陽ちん、そんなの今更にゃ」
花「そうなんだ」
愛「うん。大分前から今更感があるよね」
真「具体的にはこの音ノ木チャンネルが始まった頃からの話よね」
凛「そうにゃそうにゃ。これまでの1万2千字近くのやり取りでも大分酷い内容だよね!」
愛「もう色々と酷いね!」
花「あ、あははは。あ、若葉君がそろそろ締めてって」
愛「長かった……」
凛「あれ?でもブースの外が何か騒がしいよ?」
真「取り敢えず一回終わりましょ」
愛「そうだね。じゃあ」
『バイバーイ』

穂「さてさて!今度は入れ替わって私と」
絵「私がやるわよ」
穂「なんで私達2人なのかな」
絵「あるとすれば現生徒会長と、次期生徒会長だから、とか?」
穂「あー、そう言えば。って凄いネタバレ!」
絵「いや、多分皆アニメ見てるはずだからネタバレも何もないと思うんだけれど」
穂「そうそう作者さんの周りだとスクフェスやってる人は多いんだけど、アニメ見てる人って少ないんだってさ」
絵「だから映画も1人で行こうとしてたらしいわよ」
穂「行こうとしてたって事は一緒に行く人見つかったの?」
亜「つまんねーこと聞くなよ!」
絵「亜里沙!?」
雪「ちょ、亜里沙。待ってってば、もー」
穂「雪穂まで!」
雪「あ、お姉ちゃんに絵里さん。どうも」
絵「所で亜里沙。さっきのは何かしら?」
亜「あれは夏希さんにそう言って入ってって言われたの」
絵「夏希、後で覚えときなさい」
穂「まぁまぁ絵里ちゃん落ち着いて」
雪「なんで私達がここに呼ばれたの?」
亜「雪穂。それはきっと作者がkhoroshoな事をする為に決まってるじゃない」
穂「……ふと思ったんだけど、絵里ちゃん達ってロシア語どの程度まで話せるの?」
絵「いきなりね。私は向こうにいたのが長かったから少し複雑な会話でも平気よ」
亜「私はそんなには出来ません。日常会話が精一杯ですね」
雪「でも亜里沙のロシア語凄いんだよ」
亜「そ、そんな。全然凄くないよ。雪穂」
絵「外国語と言えば、私達の中にもジョーカーがいたわね」
穂「それってお兄ちゃんの事?」
雪「確かに。お兄ちゃんってどのくらい外国語話せるのかな」
亜「私、気になります!」
若「て事で呼ばれたのか」
穂「て事でブースに入って来てもらいましたー」
亜「それにしても本当に似てますね」
若「俺も髪型をサイドポニーにしたら大抵の人は騙せる自信があるよ」
雪「それでも海未さんやことりさんとかにはバレるけどね」
絵「見分け方は確か、目の色だったかしら?」
穂「それは今はどうでも良くて!お兄ちゃんって何ヶ国語話せるの?」
若「いや、普通に英語と日本語だけだけど?」
雪「嘘!?」
絵「中国語とか、韓国語とか、ロシア語とか、話せないの?」
若「まぁ今まで必要なかったし」
亜「て事は、必要になったら覚えるんですか?」
若「まぁ多分」
雪「でも外国語ってそんな簡単に覚えられるの?」
絵「よく聞くのは、その国の恋人を持つと覚えるのが早いって言うわね」
穂「て事は今から外国の人とお兄ちゃんが付き合えば…」
若「いや付き合わないし、俺には真姫がいるからね?」
絵「お、堂々と真姫は俺のものだ宣言きたわね」
亜「khorosho!」
雪「ちょっと作者さん!亜里沙にハラショー言わせたいだけでしょ!」
若「まぁ実際に亜里沙はハラショー言ってるイメージが強いしね」
穂「確かアニメで最初にハラショーって言ったのは、絵里ちゃんじゃなくて亜里沙ちゃんなんだっけ?」
絵「そうね。まぁアニライブの方でも確かそうだったし」
亜「お姉ちゃん。ゴメンね」
絵「良いのよ亜里沙。これは私がデレーチカになるのが遅かったのが原因だし」
若「て言ってる絵里は1期では、そこまでハラショーを言ってないけどね」
穂「確かに合宿の時に2回とか?」
雪「お兄ちゃんにお姉ちゃん。2人とも碌に決め台詞的なものがないんだから、あまり人の事は言えないよ」
穂「あるもん!私にもお決まりの台詞くらい!」
雪「なんかあったっけ?」
穂「ファイトだよ!」
若「でもそれって今までの70話で使ったっけ?」
絵「一回も使ってないんじゃないかしら」
亜「穂乃果さん!元気出して下さい!」
穂「で、でもこれ一応公式だし…お兄ちゃんはなにかないの?」
若「え…と、俺の決め台詞的なもの、かぁ」
絵「何かしらあるんじゃない?」
雪「例えば、先に行きたければ俺を倒してからにしろ!みたいな」
亜「オージャパニーズサムライ!」
若「雪穂、そういうの無いから。亜里沙に至っては良く見かける日本を誤解した外国人になっちゃってるから!」
穂「じゃあさ、皆で考えようよ」
若「つまりボケラッシュが始まるんだね!」
絵「う〜ん。この娘は絶対守ってみせる!この命に代えても!」
雪「俺を倒しても第2.第3の俺が必ずお前を倒しに来る!」
穂「やってやれない事はない!」
亜「Чтобы выйти за пределы моего трупа!(俺の屍を越えて行け!)」
若「絵里のはそんな命を懸けた場面2回しか無いし、その時使ってないから!雪穂のは普通に俺が無限増殖してるみたいで気持ち悪い!穂乃果のはなんか俺に妙に合ってる気がするけど、なんか違う!そして亜里沙はなんて言った!?」
夏「ツッコミ忙しい所悪いんだが、そろそろ全員で。との事だ」
若「全員って今何人だっけ?」
愛「えっと、μ'sの9人に、僕達3人、亜里沙ちゃんと雪穂ちゃん、あとツバサさんの計15人ですね」
夏「てこらちょっと待て!なんでツバサがいんだよ!」
ツ「呼ばれてないのに来るのが私の使命なのよ」
夏「訳わからんし!」
穂「あ、ツバサさん。ラブライブ優勝おめでとうございます」
に「それをここで言うの!?」
希「確かに、この作品だとラブライブ優勝グループの発表してなかったね」
海「他にもカットされたシーンがあるのですか?」
こ「合宿の朝、海辺でのシーンがカットされてるね」
絵「あとはライブシーンが大幅カットされてるわね」
花「今回は少しライブシーンの書き方が違うね」
雪「規制に引っ掛からないか心配ですよ」
真「て言うか人多過ぎよ!」
若「だから最初に「今回は人数が多い」って言ったじゃん」
凛「それにしても多過ぎにゃー!」
愛「でも一応ここにいる人達がレギュラー陣なんだよ」
ツ「まぁA-RISEの私がレギュラーになって良いのか、って問題があるんだけどね」
海「夏希の彼女の時点で今更感が強いですけどね」
若「ついでに聞くけど、夏希って俺らの事渾名で呼んでるよね。ツバサさんの事なんて呼んでるの?むしろツバサさんはなんて呼ばれてるの?」
夏「おま、今それ聞くのかよ」
ツ「別に良いじゃない。夏希は皆の前だと「ツバサ」だけど、2人だけになると「ツーちゃん」って呼んでくれてるわよ」
夏「ツバサも律儀に答えなくて良いから!」
愛「因みに、ツバサさんは夏希さんの事なんて呼んでるんですか?」
ツ「……答えても大丈夫?」
夏「……もう今更だからな」
ツ「普段は「夏希」で夏希がツーちゃんて呼んでくれる時は「なっ君」て呼んでるわ」
真「ツーちゃんになっ君……私と若葉だったらまーちゃんと…何が良いかしらね」
若「なんで今それを聞くの!?」
雪「お兄ちゃん、とかどうです?」
真「お、お義兄ちゃん!?」
雪「いえ、お義兄ちゃんではなく、お兄ちゃんです」
亜「雪穂、その2つはどう違うの?」
雪「えっとね、最初のお義兄ちゃんは…」
若「はいはい。雪穂、その話はそこまで。ね?」
絵「亜里沙もよ。あまりめいわくかけないの」
凛「凛達は呼び方変わらないのかにゃ?」
愛「そうだね。既に「アキ君」「凛ちゃん」て呼び合ってるし」
希「呼び方と言えば、夏希君は皆を面白い呼び方するよね」
に「そうね。私や絵里、花陽の場合は自分で言ってたり、他人から言われてるのを使っているけど、他のメンバーはオリジナルでしょ?」
夏「ただなぁ、それ一つだけ問題があんだよね」
こ「それって凛ちゃんの事?」
凛「にゃん?」
海「そう言えば、プールで会った最中さんも若葉から「りっちゃん」と呼ばれてましたね」
穂「じゃあさ、いっその事凛ちゃんの呼び方を変えてみるとか!」
花「え!変えちゃうの!?」
絵「でも作者が「それは少しめんどいくない?」って」
に「1番の面倒はこのあとがきな気がしないでもないけど、ツッコむのは野暮なのかしら」
夏「別に変えるのは構わないが、どんな渾名にすんだよ」
希「凛ちゃんやから、りっぴーとかとう?」
夏「それは中の人!さすがにそれは拙いからな!?」
に「じゃあそらまるとか!」
夏「それはにこっちの中の人のだから!」
若「もういっそほっしーとか、りんがべーで良いんじゃない?」
凛「えー!凛は結構りっちゃん気に入ってるのにー!」
愛「凛ちゃんもこう言ってますし、りっちゃんで良いんじゃないですか?」
夏「んーまぁ本人が良いって言うなら別に良いが」
穂「そう言えば、1年生陣が終わる頃に来るはずになってる作者さんはどうしたの?」
花「少し遅れるってメールが来てたよ」
ツ「なんかだらしないわね」
だらしなくて面目無いです
若「あ、来た」
愛「寧ろ湧いた?」
夏「エンカウントしちまったか…」
3人からの扱いが酷い!
絵「まぁそれは置いといて」
希「作者さんには聞きたい事があんねん」
…なんですか?
に「どうして夏祭りの時ににこ達が出てなかったのかなーって」
凛「凛とアキ君も台詞が少ししか無かったにゃ!」
愛「むしろ没の方が台詞が多かった件について」
……あ、あれだよ。夏祭りは若葉と真姫の話をしたかったってのが大半を占めてるんだよ。
雪「そうなんだ」
あとは気付いたら出番が皆無になっていたってのがあるけど
『そっちが本音かぁぁ!!』
海「まぁ私とことりは出番があったのでそこまで文句は言いませんが」
こ「うん!」
真「それについて私から文句があるわ」
若「ま、真姫さんや?一体何を…」
真「穂乃果と雪穂ちゃんは良いとして、まぁギリギリ海未も良いとして、いや良くはないけど。どうして若葉とことりが腕を組んでるのよ!私だってまだ手を繋いだ事しかないのに!」
若「ちょ、真姫!?」
希「お、さり気なく惚気るなぁ」
絵「あーあ、私も惚気てみたいなぁ」
に「ま、にこに釣り合う相手が出て来るかは分からないけどね」
若「おいコラ年長者組!黄昏てないで助けてよ!」
夏「なぁツバサ。今度の日曜どこ行くよ」
ツ「う〜ん、そうね……ちょうど欲しい本出たからショッピングとかどうかしら」
凛「あ、アキ君!凛達もどこかに出掛けよう!」
愛「急にどうしたの?まぁ良いけど」
花「う〜ん私は何しようかな…」
穂「じゃあ4人で遊びに行こうよ!」
海「ちょっと待って下さい。その4人というのは」
穂「もちろん私と海未ちゃん、ことりちゃんに花陽ちゃんの4人だよ!」
こ「どこに行くの?」
穂「え……と、どこ行こう」
アイドルショップ回ったりとかすれば良いんじゃない?
若「皆自由過ぎだろうがぁ!つか、作者すらそっちに回るってどういう事!?」
真「そうよ!ちゃんと説明してよね!」
えー…
真「良いからし・な・さ・い」
あいさー!ことりと若葉が腕を組んでた件ですよね!これはあれですよ。幼馴染みだから恋愛感情を抱かないとかいうやつです!
真「……ホントは?」
いや初期設定からじゃないけど、これを書いてる時はそのつもりだったよ?
に「て言うか、なんで今更出て来たのよ」
穂「そうだよ。もうちょっと早くても良かったのに」
いやそれがですね。1.2.3年生だけ1万6千字行くかな〜って思ってたんだけど、行かなくてね
雪「それで私達が呼ばれたんですね」
亜「でも雪穂。そのおかげでこうして海未さんに会えたんだよ!μ'sだよ、μ's!」
雪「はいはい。分かったから落ち着こうね〜」
海「ですが、作者が出て来たという事は1万6千字超えたのですか?」
それは秘密
ツ「でも作者込みで16人もこのブース内にいるのは流石に暑いわね」
愛「まぁ機械類も置いてありますしね」
凛「あ、ゲームがあったよ!」
愛「なんだとっ!凛ちゃん今すぐ行くよ!」
花「あ、アイト君になった」
ってまだ収録中だよ!
こ「て言ってる間に凜ちゃんを連れて行っちゃったよ」
絵「愛生人が凛を引っ張って行くのは珍しいわね」
希「普段は逆やもんね」
夏「そう言えば、俺達3人とも口調が違うんだが理由はあるのか?」
それは気付いている人多数だと思うけど、キャラの区別をする為だよ。若葉は「俺」にどこか柔らかい感じの語尾、夏希は男っぽい語尾、愛生人は「僕」に若葉と同じ柔らかい感じにしてみたんだけど
に「口調分けした理由は?」
分けないと前話の最後みたいな連続した会話文の時誰が誰だか分からないでしょ
若「文章力とか、表現力が上がればそんな事しなくても良いのにね」
希「1年近く書き続けた結果、あまり変わってないと思うんやけど」
花「で、でも若葉君の告白シーンは良かったって言ってくれる人もいるから、変わってないとは思わないけど…」
花陽ちゃんありがとうね!さすがことりちゃんと揃っての癒し担当だよ!
夏「でも告白シーン"は"ってだけで、他は特に褒められて」
絵「ハラーショー!」
穂「うわ!ビックリした〜」
絵「夏希、それでも最近は地の文が多くなって、「地の文少なめ」のタグを外したのよ。それでもあなたは作者に進歩が無かったと言えるのかしら?」
でもそのせいで毎回文字数が安定してないけどね!
夏「なんだろう。俺が悪いのか、作者が悪いのか分からなくなってきた」
雪「取り敢えずどっちも悪いという事で。次に行きましょう。次」
ツ「そう言えば、メモ帳に「コチニール色素は虫」って単語があったんだけど、何に使う予定なの?」
若「コチニール色素って確かあれだよね。清涼飲料水とか、菓子類、口紅に使われてる色素だよね?」
ああそれは夏合宿の時に怖いものネタとしてメモってたやつだね
絵「て、事は…」
夏「俺達は気付かないでむ」
『きゃー!』
ツ「な、なっ君。それ以上言ったら許さないわよ!」
夏「痛い痛い!ちょ、ツバサ、腕キマってるから離して!あと呼び方!」
真「なんで若葉もそんないらない雑学知ってるのよ!」
若「なんでも何も、クイズゲーム作る時に色々と調べたからだよ」
穂「雪穂、どうしよう!明日からお饅頭食べれないよ!」
雪「おおおお、落ち着いてお姉ちゃん。こういう時は素数を数えるんだよ」
穂「そ、そっか……素数ってなんだっけ?」
雪「お姉ちゃーん!」
絵「良い亜里沙。カレー缶は飲みものじゃないのよ」
亜「ハラショー」
に「ちょ、絵里に亜里沙ちゃん、2人とも正気に戻るのよ!」
海「良いですか、海未。私は何も聞いてない。良いですね!」
こ「海未ちゃ〜ん。自己暗示してないでどうにかしてよ〜」
希「あかん。ショックで殆どのメンバーが混乱しとる」
愛「どうしたんですか?」
凛「なんか、皆おかしいにゃ」
あ、ゲームから帰ってきたんだ
愛「あの、作者さん。これ、どうなってるんですか?」
凛「カオスだにゃー」
凛ちゃんの言う通り、気付けばカオスな空間が出来上がってたんだよ
若「明らかに作者のせいじゃん!あんな事をメモってるから!」
そもそも若葉がどういったものか言わなきゃ問題無かったはずだよ!
夏「根本的な問題としてメモってた作者が悪い!だからどうにかしろ!」
仕方ないな。じゃあ作者だけが使える魔法のカットを見せてあげよう!
愛「もうカットって言っちゃってますね」

☆☆☆

若「皆落ち着いた?」
海「ええ。先程はお見苦しい所を、失礼しました」
絵「だからおでんはこうして鍋で煮込んで食べるのが一般的なのよ」
亜「khorosho。これがホントのオデン」
希「ダメや!まだ2人がもとに戻ってへんで!」
じゃあ戻るまでお知らせでもしてよっか
に「お知らせっ何かあるの?」
実は若葉達の設定のくだりはネタで
穂「そうなの!?」
いや嘘だけど?
愛「あ、恭弥?ちょっとバットと人数揃えてこっちに来れるが?」
ちょ、アイトさん?『祈る者達』って温厚な集団じゃないの!?
愛「時と場合、相手による。今回は作者だから良いかなって」
良くないよね!それだと次回作書けなくなるから止めて!
絵「次回作?本当に書くの?」
希「あ、えりちが戻った」
候補としては2つあるんだよね。1つ目は「アニライブ!」と「アイマス」のクロスオーバーする話
に「ラブライブとのクロスだと分からないでもないけど、アニライブとクロスって時間軸どうするのよ」
ネタバレになるから詳しくは言えないけど、2期最終回のあれが劇場版に続くんじゃなくて765へのお誘い的な感じで。2つ目は「アイマス」の天海春香が音ノ木坂に転入してくる話
若「どっちみちアイマスとのクロスはするんだね」
まあそのクロス作品ってあんまり見ないからね。読みたい見たいなら自分でやれるのが一番二次小説の醍醐味でもあるし
こ「でも色々と大変じゃない?」
まぁ両作品ともメリットデメリットあるからね
希「メリットは?」
1つ目はアニライブの関係がそのまま使える事。つまり新しいオリ主の設定を考えなくても済む。2つ目も似た様なものかな
亜「デメリットはなんですか?」
1つ目はアニライブを読んでないと若葉達誰それ状態になる事と、2作品の合計キャラ数が20人を超える事かな。2つ目は春香を主人公ポジに置く予定だから、"春香らしさ"を上手く表現出来るかな〜って
真「それが不安でこの作品でもオリキャラで書いてるものね」
そうなんだよね〜。ホント、どうしよう
花「読者さんに聞いてみるのはどう?」
あー、それ良いかもね
ツ「因みに補足説明すると、作者はプロデューサーよりもラブライバー寄りよ」
夏「つか、アイマスはアニメでしか知らないんだよな」
『なんだにわかか』
にわかで何が悪い!
凛「開き直ったにゃー!」
と!言う訳で長かったあとがきもこれにて終了!
海「大分急ですね」
そろそろ字数がね。じゃあ皆から最後に一言ずつどうぞ!
穂「えと、これからも私達μ'sをよろしくお願いします!」
海「これからも精進して行きますので、最後まで見守って下さい」
こ「これからも頑張りま〜す」
凛「凛達の事、これからも応援よろしくにゃ!」
花「え、えっと。これからも頑張りますので、その、応援よろしくお願いします」
真「作者へ。若葉とデート行きたいなぁ」
絵「音ノ木坂共々よろしくね」
希「ふふっ、読者の皆に幸あれ。て感じで大丈夫?」
に「これからもにこの事、応援よろしく!」
亜「私達もμ's応援しますから!」
雪「穂むらの饅頭もよろしくお願いしまーす」
ツ「A-RISEもよろしくね。あと、私達の出番も」
愛「まぁ多分次回のあとがきも僕達3人だと思いますが、頑張ります」
夏「そうだな。次回も頑張るか」
若「2期は一体どのくらい掛かるのか…て言うか、女装ってやらないからね?」
海「音ノ木坂登校初日に女装したのは誰ですか」
若「誰だろうね!」
『若葉(君)(さん)でしょ!』
まぁそれは置いといて。じゃあまた次回
『バイバーイ』


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今日か明日には言うつもりよby絵里

祝☆UA90.000人突破!


講堂でライブをした翌週の月曜日。若葉と夏希は絵里に呼び出され生徒会室を訪れていた。

 

「なぁ若、えりちは一体何の用なんだろうな」

「さぁ?でも面倒な事になりそうだよね。頼まれた時の感じだと」

 

若葉は朝、絵里に言われた時の事を思い出しながら欠伸を漏らす。夏希はそんな若葉を見て微笑を浮かべる。

 

「にしても久々の松葉杖無しの生活はどうよ」

「う~んやっぱり体力が落ちてる気がするよね」

「あ~だから今朝、皆と一緒に走ってたんだ」

 

2人が世間話をしていると、生徒会室の扉とその正面の壁にに寄り掛かっている絵里と希が軽く手を上げる。

 

「おっす。待たせたか?」

「いんや。そんなに待ってへんよ」

「さ、時間も無いし入って入って」

 

希がカードを口元にあて笑って返す。絵里は生徒会室の扉を開け、2人を中に入れる。

 

「それにしても歓迎される感じで入るの、初めてじゃね?」

「俺は偶に手伝いに来てたからそうでもないよ」

「若葉君にはいつも助けてもらってるで」

 

3人が席に座るのを確認した絵里は会話に入ることなく若葉をジッと見ていた。そして会話が一段落するのを見計らって話を切り出す。

 

「若葉、あなたに頼みたい事があるのよ。夏希にもお願いしたいんだけど」

「頼み事?まぁ俺に出来る事なら出来るだけ聞くけど…」

「俺も面倒事じゃなければ」

 

絵里の言葉に2人は顔を見合わせ頷き、絵里に続きを促す。

 

「実はそろそろ今の生徒会役員の任期が終わるの。それで仕事を次の生徒会に引き継がなきゃいけなくてね」

「あーもうそんな時期か」

「そう言えば夏希は昔生徒会長やってたんだっけ?」

「ああ、中学の頃な」

 

若葉が聞くと夏希は頷いて肯定する。

 

「お願いってのはその事なんだけど、若葉、生徒会長をやってみる気は」

「絵里には悪いけど、さすがにそのお願いは”出来ない事”に分類されるかな」

「そう…」

 

絵里の台詞を遮る形で若葉が断る。絵里は若葉が断るのが分かってたのか、あっさりとそう返すと、今度は夏希に目をやる。夏希は何も言わずに黙って首を横に振る。

 

「な。やっぱウチの言った通りやろ?」

「…ええ。そうね」

 

希が笑うと、絵里もどこか諦めた様に笑みを浮かべると2人を見て一言謝る。

 

「2人ともごめんなさいね。変な事聞いちゃって」

「別に良いけど、いきなりどうしたんだ?」

「そう言えば、母さんが新しい生徒会長を選ぶのに苦労したって言ってたけど、それと関係あるの?」

「ええ。昔からの決まりでね。次の生徒会長は前の代の生徒会長の推薦で決まるのよ」

 

絵里の説明に納得の表情をする夏希と、裕美香の愚痴が事実だと知って絵里に労りの視線を投げ掛ける。

 

「若葉、その視線は何かイラッとするから辞めて」

「は~い。それで?俺達以外に候補はいるの?」

 

椅子に凭れ掛かりながら若葉が聞くと、絵里は困った様に眉を八の字にする。

 

「んー。いるにはいるんだけど、念の為って感じで若葉達に聞いてみたのよ」

「へぇー。因みにその候補って誰?」

「それは……よ」

 

絵里の答えに夏希は笑い、若葉は遠い目をして窓の外の風景を眺める。

 

「あー笑った。まぁあれだ。近い内に本人に言うんだろ?」

「えぇ。今日か明日には言うつもりよ」

「なら今日言えば良いんとちゃう?カードもそう言ってるし」

 

希が3枚のタロットを捲りながら言う。捲られたカードは左から月、運命の輪、太陽。

 

「それってスリーカードリーディングってやつだよね?」

「そうやよ。音ノ木坂生徒会を占ってみたんや」

「結果はどうだった?」

「ん〜、前と変わり無しってところやね」

 

絵里の質問に希はカードをしまいながら答える。絵里はその答えを聞いて、そう、と呟くと携帯を取り出しLIMEにメッセージを打ち込んでいく。

絵里がメッセージを打ち込んで数分、生徒会室の扉が叩かれる。

 

「どうぞ」

「し、失礼します」

 

少し緊張しながら生徒会室に入って来たのは、オレンジの髪を右頭部でサイドポニーにしている女生徒、穂乃果だった。

 

「まぁそんなに緊張しないで。そこにどうぞ」

「う、うん」

 

絵里はそんな穂乃果を見てクスリと笑うと、着席を促す。

 

「それでね穂乃果。急に呼び出しておいてなんだけど」

 

と一度言葉を切る絵里。穂乃果は穂乃果で続きの言葉を緊張した面持ちで待っている。若葉と夏希は暇を持て余していたのか、壁際に置かれている棚の中の資料を読んでおり、時折希に質問したりしている。

 

「あなたに次の生徒会長を任せたいと思っているの」

「…………えぇー!!」

 

絵里の言葉に穂乃果は、少し遅れて大声で叫ぶ。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ絵里ちゃん!穂乃果が生徒会長!?」

「えぇ。色々と考えて、希とも話し合った結果、穂乃果が良いんじゃないかってなってね」

「で、でも穂乃果よりも生徒会長に向いてる人なんて他にもいるって。ほら、お兄ちゃんとか!」

 

と穂乃果はファイルを捲っている若葉を指差す。

 

「若葉にはさっき断られたわ」

「なんで!?」

「なんでも何も、いくら音ノ木坂の正式な生徒になったからって男が女子校の生徒会長をやる訳にはいかないでしょ」

 

若葉の尤もな意見に穂乃果は他の道を探す様に、目を泳がせる。そんな穂乃果の様子を見て、絵里が口を開く。

 

「穂乃果ちゃんは生徒会長やるの、そんなに嫌なん?」

「別に嫌だなんて思ってないよ!…ただ、なんで私なのかなって」

 

希の言葉に俯きながらも言う穂乃果。

 

「それはね、穂乃果。あなたが音ノ木坂の事が好きのを知っているからよ。もちろん、理由はそれだけじゃないわ。一緒にμ'sをやっていて、穂乃果は皆を引っ張っていける不思議な力を持っていると思ったの」

「不思議な…力…?」

 

穂乃果は不思議そうな表情で絵里を見ると、絵里は静かに頷く。続いて希、夏希、若葉を見るも、3人とも絵里同様頷く。それを見て穂乃果は決心が付いたようで、絵里を真っ直ぐ見る。

 

「分かった。私、生徒会長やるよ!」

 

穂乃果の返事に4人は嬉しそうに笑うと、そのまま副会長などの他の役員について話し合った。

他の役員については意外にアッサリと決まり、副会長に海未、書記にことり、会計に夏希、庶務に若葉となった。

 

「て、なんで俺が会計で若が庶務なんだよ!普通逆だろ!」

 

ホワイトボードに書かれた役職を見て思わずツッコむ夏希。

 

「確かに一理あるけど、庶務って様々雑多な事務だよ?夏希出来るの?」

「あ、やっぱ会計でいいわ」

 

若葉の質問にアッサリと意見を引っ込める夏希。絵里と希は、顔を見合わせて笑うと、新生徒会の役員記入用紙に5人の名前を書く。

 

「それじゃあ新生徒会長、頑張ってね」

「はい!」

 

絵里の激励に穂乃果は元気に返事をする。そんな穂乃果に若葉がバンフレットを見せながら言う。

 

「じゃあ来週にある生徒会長挨拶の内容考えないとね」

「…………え"」




【音ノ木チャンネル】
若「前回から話が急に飛んだね」
夏「でもアニメ通りにやると今話の冒頭で新生徒会長の挨拶だろ?それよりかはマシじゃね?」
愛「て言うか、会長は拙いのに役員は拙くないんですか?」
夏若「「知らん」」
愛「知らんて…」
夏「んな事より、作者はタロットとかに詳しいのか?」
若「詳しい詳しくないで言えば、無知も同然」
愛「なのにスリーカードリーディングとかやったんですか?」
若「世の中便利になってね。ネットで検索しながら書いたらしいよ」
夏愛「「便利な世の中バンザイ!」」
若「因みに意味は左から過去、現在、未来で、カードは過去が月の正位置で不安定、猶予ない選択。現在が運命の輪の正位置で転換点、チャンス。未来が太陽の正位置で成功、祝福だってさ」
愛「若葉さん詳しいですね」
若「なお、検索して都合の良い意味を引っ張って来たので正しいとは限りません」
夏「なんか今いらん一文が入ったぞ!」
若「ま、それは良いんだよ」
愛「いや、良くはないですよね?」
若「良いの。作者が良いって言ってるんだから」
夏「んな身も蓋もない」
若「実はアンケートを取ろうと思ってね」
愛「あ、それ僕も聞きました。と言うよりそのお知らせの紙が今手元にありますね」
夏「えーと?アンケートの内容はと言うと、番外編について?」
若「そ。そろそろ番外編の一つや二つあっても良い頃かなって」
愛「前に闇鍋しませんでしたっけ?」
若「……まぁ番外編第二弾的な?」
夏「ハァ…で、内容は以下の通りだ!」
・夏希とツバサの夏祭り編
・愛生人と凛の夏祭り編
・若葉と真姫のデート編
・夏希とツバサのデート編
・他にやって欲しい話
若「「〜編」ってあるけど、1話だけだよ」
愛「このアンケートは活動報告にて行います。期限はどうするんです?」
夏「詳しくは活動報告にて!でいんじゃね?」
若「だね。じゃあまた次回!」
愛「活動報告を読む方は活動報告で会いましょう!」
『バイバーイ』


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分かってくれた?by絵里

若葉って凄いんだなぁ。と思いました。


「穂乃果、居間で寝転がるのは良いけど、明日の放課後の挨拶文できたの?」

「う〜ん。まぁ大体はできた…かな?」

 

若葉は居間で寝転がっている穂乃果をにお茶を出しながら聞くと、穂乃果は首を傾げて答える。

 

「大体はって…まぁできてるなら良いけど」

 

若葉は穂乃果の隣に座ると自分のお茶を一口啜り、テレビのクイズ番組を見る。

そんなノンビリとした時間を過ごしていると、雪穂が困った表情で居間に入ってくる。

 

「お兄ちゃんちょっと良い?数学教えて欲しいんだけど」

「良いよ」

 

そう言って若葉は立ち上がると、雪穂と一緒に2階へ上がって行く。居間に1人残った穂乃果は特に何をするでもなく、ただテレビの映像を黙って眺めていた。

 

☆☆☆

 

翌日の6限目。講堂に全生徒が集まり、彩の挨拶を聞いていた。

 

「音ノ木坂学院は入学希望者が予想を上回る結果となったため、来年度も生徒を募集する事になりました。3年生は残りの学院生活を、悔いの無い様に過ごし実りのある毎日を送って頂けたらと思います。そして1年生、2年生はこれから入学してくる後輩のお手本となる様、気持ちを新たに前進していって下さい」

「理事長ありがとうございました」

 

舞台ではヒデコ、フミコ、ミカの3人が司会席に座って集会を進めて行く。

 

「続きまして生徒会長挨拶。生徒会長お願いします」

 

そしてヒデコが生徒会長を呼び込むと、生徒席の中から絵里だけが立ち上がり、拍手する。突然の絵里の行動に周りの生徒は不思議に思うも、すぐに舞台に視線を戻す。皆に注目されながら、穂乃果が舞台袖から歩き出し、マイクの前に立つ。それを海未達新生徒会の4人は舞台袖で見守る。

 

「皆さんこんにちは!」

 

マイクを前に穂乃果は深呼吸をして挨拶する。途端に生徒席から歓声が飛んで来る。穂乃果は歓声に応える様にマイク台に手をつくと

 

「この度、新生徒会長になりましたスクールアイドルでお馴染みの私、はっ!」

 

穂乃果はそこで言葉を途切ると、マイクを外し上に投げる。そしてその場でクルリと回るとマイクを捕り

 

「高坂穂乃果と申します!」

 

と元気良く名乗る。そのパフォーマンスに生徒席から拍手が送られる。

そしてもう一度キチンと名乗ると、穂乃果の動きが固まり、あーえー、と言葉に詰まっていた。

 

「ほのっちどうしたんだ?」

「あ、これは…」

「まさか…」

「あ、あははは」

 

そんな穂乃果を見て夏希は首を傾げ、若葉と海未はまさかの事態に行き着き、ことりは苦笑いしながらも心配そうに穂乃果を見ていた。

 

「穂乃果、挨拶文忘れたんだね……」

 

若葉の呟きに海未は溜め息を、夏希は声を出さない様に笑い、ことりは頑張れー!とジェスチャーを送っていた。

 

☆☆☆

 

なんとか生徒会長挨拶を終わらせた穂乃果達は、揃って生徒会室に集まっていた。

 

「はぁ〜疲れた〜」

 

穂乃果が生徒会室の机に突っ伏すと、ことりと夏希はそれを笑ってで見ていた。

 

「まさか挨拶文を忘れるなんてな」

「でも穂乃果達ちゃんらしくて良かったと思うよ」

 

2人の言葉に海未が机で書類を整えながら反抗する。

 

「どこが良かったんですか!折角昨日3人で挨拶文を考えたのに」

「ゴメ〜ン」

 

海未の言葉に穂乃果は苦笑いで謝罪する。そして挨拶の時の事を思い出して

 

「結局、あれから頭の中は真っ白……あー折角練習したのに」

 

1人後悔する穂乃果の前に海未はドン!と大量の書類を置く。そのあまりの量に穂乃果はうげ、と声を漏らす。もちろんそんな穂乃果の声を無視する海未。

 

「とにかく、今日はこれを全て処理してから帰って下さい」

「こんなに!?」

「それにこれも!」

 

穂乃果の反論に海未は1枚のプリントを見せる。穂乃果はそのプリントを受け取り、目を通す。

 

「え〜と、学食のカレーが不味い。アルパカが私に懐かない。文化祭に有名人を。って何これ?」

「一般生徒からの要望です」

「こういうのって、庶務のお兄ちゃんの仕事じゃないの!?」

 

穂乃果は先程から一言も話していない若葉に仕事を振ろうとするも

 

「若葉なら既に他の仕事で手一杯です」

 

海未の言う通り、若葉の左右には穂乃果の前に置かれた書類の山よりも高い山が形成されていた。

 

「あれ?気のせいかな。若の手元がブレて見えるぞ?」

「だったら海未ちゃんが手伝ってよ!副会長なんだし!」

「もちろん、私だって目を通してます」

 

夏希が目を擦りながら言うも、穂乃果はそれを無視して海未に手伝う様に促す。しかし海未は海未で既に自身の仕事を終わらせていた。

 

「じゃー海未ちゃんがやってよー!」

 

穂乃果が腕をバタつかせながら抗議するも、忘れ傘の放置、各クラブの活動記録、引き継ぎのファイル、と海未に次々と挙げられる仕事に穂乃果はでゅふ、と言ってファイルに頭を乗せる。

 

「でも5人もいるんだし、手分けしてやれば」

「ことりは穂乃果に甘過ぎます!本来なら若葉がやっている業務の半分を穂乃果に回してもおかしくないのですよ」

 

海未が若葉がの左右の山を指して言うと、ことりも思わず苦笑いになる。

 

「生徒会長って大変なんだねー」

「分かってくれた?」

 

ファイルに頭を乗せたまま穂乃果が言うと、タイミングを見計らった様に絵里が中に入ってくる。

 

「絵里ちゃん」

「ふふふ。頑張ってるね〜君達」

「希ちゃんも」

 

絵里の後ろからタロットを手に希も入ってくる。

 

「大丈夫?挨拶だいぶ拙い感じだったけど」

 

絵里の言葉に穂乃果は苦笑いし、生徒会室に来た用件を聞く。

 

「特に用事はないけど、どうしてるかなって。自分が推薦した手前もあるし心配で」

「明日からまたみっちりダンスレッスンもあるしね。カードによれば穂乃果ちゃん生徒会長として相当苦労するみたいよ」

 

希が「吊るされた男」を指で挟み穂乃果に見せる。穂乃果はえー!と叫ぶと希は4人に向かってフォローを頼む。

 

「気にかけてくれてありがとう」

「いえいえ。何か困った事があったら言って。なんでも手伝うから」

 

ことりが笑ってお礼を言うと、絵里も笑って返す。

 

「はぁ〜終わったぁ〜」

 

若葉の声にそちらを見ると、先程まであ右側にあった山が全て左側に山になっていた。

 

「終わったってあの量全部終わったのか!?」

「一応、俺の方で対処できるやつは終わったよ。あとは穂乃果の印が必要なものとか、念の為海未に見てもらってお終いかな」

「速過ぎだろ!」

 

夏希のツッコミは皆に流されて放課後の学校に響いたのだった。

 




【音ノ木チャンネル】
愛「出番が皆無だった片丘でーす」
夏「アッキーがいじけてるな」
若「うーん。どうしたものか…」
愛「あーあ。出番つーか台詞すらねぇとか」
夏「あ、アイトになった」
若「ゲームで餌付けでもする?」
愛「怠過ぎてゲームどころじゃねぇし」
夏「まさかのゲームにすら反応を示さないだと!?」
若「鼻の頭も乾いてる…り、凛ちょっと来てー!」
凛「呼ばれて飛び出てにゃーん!」
夏「りっちゃん!アッキーが大変な事に!」
凛「まっかせるにゃ!アキ君こっちに来てー」
若「凛の手つきが犬とか動物相手にしてる感じなんだけど」
凛「よ〜しよしよし。いい子だよ〜」
愛「りんちゃ〜ん」
若「愛生人に戻ったね」
夏「一々キャラ変換させんのめんどいな。ま、それはともかく、若葉の仕事量が庶務のレベルを超えてると思うんだが」
若「でもやってる内容は絵里達の時と変わらないし」
夏「変わらないんだ…」
若「じゃあそろそろ」
『バイバーイ』





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☆駆け落ち、とかby希

ここが私たちの Never ending stage!


石でできた廊下をライトに照らされた真姫は走っていた。そして暫く走ったところで開けた場所に出る。そこで真姫は立ち止まり、後ろを振り返る。そして追手が来てない事が分かると真姫は安堵の溜め息を吐く。

 

「はぁ、はぁ……もう!何なのよ!」

 

真姫が誰にでもなく叫ぶ様に文句を言う。すると次の瞬間天井から檻が降ってきて真姫の四方を囲み、逃げ場を無くす。真姫が慌てて檻に掴み掛るもビクともしない。それでも真姫が揺すり続けていると、真姫の背後から全身を黒いローブで覆った影が11つ、音も無く檻に近付いて行く。真姫は檻から手を離し、狭い檻の真ん中に移動する。

檻の中心で四方から近付いてくる影達に、真姫の目に涙が浮かぶ。

 

「だ、誰か…若葉、助けてー!」

 

☆☆☆

 

「って夢を見たのよ」

「なんか…すごい夢を見たね」

 

真姫の話に若葉は苦笑いで答える。今若葉は、真姫に誘われて2人で音楽室を訪れている。

 

「もし、もし夢みたいな事になったら、若葉ならどうする?」

「どうするも何も、真姫を助けに行くよ」

 

若葉の答えに真姫はそういう事じゃないんだけどな、と呟きつつも頬を染めてお礼を言う。そしてそれを誤魔化す様にピアノ椅子に座ると鍵盤に指を走らせる。

 

「ん?」

「あれ?」

 

ピアノを弾き始めて最初の音で若葉と真姫は首を捻る。なぜなら真姫は確かに盤を叩いているのに音が鳴らないからだ。

 

「んー?ぅんー?」

「どう?なにかおかしい所でもあった?」

 

響板を覗き込んでいる真姫に若葉が聞くも、頭を引っ込めると首を振る。次の瞬間、真姫は何かを見て驚いた様に後ろに倒れる。

 

「真姫!?」

「な、何!?」

 

真姫が驚いた原因の方を見る。真姫に駆け寄った若葉も真姫の視線の先を見る。そこには小学生くらいの子供が2人手を繋いで立っていた。

 

「もう、勝手に入ってきちゃダメでしょ」

「小学生、かな。迷子だったら蒼井さん…に…」

 

若葉の言葉が段々と小さくなっていく。

 

「あ、あなた達は」

「もしかして」

 

2人がそう言った途端窓の外が急に暗くなり、雷が落ちる。

 

☆☆☆

 

「え?今日来てないの?」

「うん昨日は元気そうだったんだけど」

「そう言えば、お兄ちゃんも昨日珍しく帰って来てないんだよね…」

「あの若葉がですか?」

 

翌日の放課後のμ'sの練習時間。花陽からその日真姫が学校を休んだ事を聞いた穂乃果は、昨晩の様子を思い出して呟く。穂乃果の言葉に海未が驚きの声を上げる。

 

「うん。お兄ちゃん無断外泊は1回もした事ないからお母さんが慌ててたんだ」

「それでどうしたの?」

「うん。お父さんがね「若葉ももう高校生なんだ。むしろ今まで無かったのが珍しい。明日には帰ってくるさ」って言ってお母さんを宥めて、なんとかなったよ」

 

ことりの質問に答えつつも、穂乃果は不安そうに顔を伏せる。

 

「もしかして」

『もしかして?』

「駆け落ち、とか」

『か、駆け落ちー!?』

 

希の衝撃的な言葉に夏希、愛生人も含めた全員が叫ぶ。

 

「そんな…お兄ちゃん、一言ぐらい相談してくれても良かったのに…」

「い、いや、まだ駆け落ちって決まったわけじゃねえし」

「そ、そうだ!こんな時こそ全国に散らばっている「祈る者達(プレイヤー)」の情報網を使って2人の捜索を!」

「ストーップ!」

 

パニックに陥っているメンバーを絵里は一括して落ち着かせる。

 

「取り敢えず、まだ駆け落ちって決まった訳じゃないから、愛生人もまだ使わなくて大丈夫」

「とにかく、2人を見た人がいないか街に出て聞いてみましょう。若葉は顔広いんだし、誰か知り合いが見てるでしょ」

 

にこの言葉に全員が頷き、その日は練習をせずに2人の捜索をすることになった。

しかしこの時、ほぼ全員が混乱状態になっていた為か、屋上のフェンスに座るオレンジ髪の少年と紅洋色(カーマイン)の髪の少女に気付く者はいなかった。

 

それからメンバーは制服に着替え、校門に向かいながら捜索班の振り分けを行う。

 

「ん?」

「どうしたの?絵里ちゃん」

 

気付いた切っ掛けは些細な事だった。翌日使う教科書を教室に忘れた事に気付いた絵里が一瞬校舎をチラリと見た事だった。

 

「いえ、今校舎の窓に2人と思しき人影が…私ちょっと見てくる!」

「ちょ、えりち!?」

 

絵里は希の言葉を聞かずに校舎の中へと駆けて行く。夏希も絵里の後を追いかけ、走る。

 

「どうするの?希ちゃん」

「んー。入れ違いになってもあれやしここで待ってようか。それに何かあっても夏希君も一緒やろうし」

 

凛が不安そうに希に聞くと、希は全員正門前での待機を言い渡す。皆も希の案に賛成らしく、頷いて校舎を見る。

 

☆☆☆

 

一方、絵里を追って校舎に入った夏希は昇降口で絵里に追いつき、そのまま校舎内の探索に出かける。

 

「それで?絵里は何階に見たんだ?」

「…こっちよ」

 

と2人は絵里主導で音ノ木坂の校舎内を歩き始める。2階3階と階段を上り、廊下をザッと見回すと

 

「あっ、夏希!」

「あぁ!」

 

廊下の反対側の階段を降りる2つの影を2人は見る。顔を見合わせた2人は一斉に駆け出す。

 

「ちょっと!」

「待ったぁ!」

 

しかし影達は2人の声が聞こえてないかの様に廊下を曲がる。続いて夏希、少し遅れて絵里と廊下を曲がると、2人の足は走るのをやめ、止まってしまった。

 

「なん、だよ…これ」

「ハラショー…」

 

廊下を曲がった2人が見たのは、普段の音ノ木坂の廊下…ではなく、様々なライトで彩された通路だった。そしてその通路の先の階段を影達は降りていく。

夏希と絵里は再び顔を見合わせ、同時に決心し、不思議な通路を走り出す。

階段を降りた先は先程の通路の様に彩りがされておらず、それどころか電気すらついていない真っ暗な空間に、その先に出口と思われる光源があった。

 

「あそこに行くしかないみたいだな」

「そうね。急ぎましょう」

 

2人はスピードを緩める事なく、光源に向かって走り出す。そして光源を潜った先は

 

「あ、えりち!」

「夏希君!」

『……え?』

 

2人が辿り着いた先にいたのは、先程別れた筈のアイドル研究部のメンバーだった。夏希が影について聞こうとするとする前に、凛が大変なんだにゃ!叫ぶ。

 

「そうなんです、夏希さん。さっきまで夕方だったのに、急に夜になっちゃって」

「急に?そんな馬鹿な…」

 

夏希は2人の言う事を否定しようとするも、その後ろにいる穂乃果達を見て、それが本当なのだと理解する。

 

「私達も廊下が突然暗くなって」

 

絵里が希達に自身らが体験した事を話す。絵里の言葉を聞いて希は考えを口にする。

 

「…こんなの普通じゃない。私達、夢見てるんとちゃう?」

「や、やめてよ。こんな時まで」

 

絵里が希の言葉を冗談として流そうとする。そんな時、絵里の言葉を否定し、希の言葉を肯定する幼い子供の声が聞こえる。

 

「そうだよ」

『え…?』

 

その声は絵里の横から聞こえた。全員が驚いてそちらを見ると、そこには若葉に似た少年と真姫に似た少女が並んで立っていた。

 

「ふふ、はじめまして」

「はじめまして!」

 

少女達が絵里達に近付き挨拶すると穂乃果が挨拶を返す。

 

「お姉ちゃん達面白いね」

「いつも仲良さそう」

 

少女に続いて少年が言うと、海未が否定する。海未の否定をことりがすぐに否定する。少女達はそれを見て、やっぱり面白いと言う。

 

「こ、これって」

「時間が巻き戻っちゃったの!?」

 

凛と花陽が2人に似た少年少女を見て驚いた様に言う。にこは2人を見て自分より可愛いと悔しがっている。

 

「確かに昔の若葉に似ていますね」

「うん」

 

幼馴染の海未とことりが頷く。穂乃果は少女達に近寄り、しゃがんで目線を合わせる。

 

「あなた達はどこから来たの?本当にここは夢の中?」

「「うん。終わらないパーティのね!」」

 

穂乃果の質問に声を揃えて返す。その答えに全員が首を捻る。絵里が代表して聞き返すと突如校舎の後ろに花火が打ち上がる。

 

「綺麗でしょ?」

「う、うん」

 

突然の出来事に、少女に聞かれた穂乃果は頷く。

 

「あのね。僕達お姉ちゃん達の事をずっと前から知ってるよ」

『え?』

 

「12人になる前から。皆バラバラの時から」

「ど、どうして?」

 

愛生人の質問に2人は笑うと

 

「「だって、()達、ずっと……ずっと」」

 

2人の言葉の後に一際大きい花火が上がる。すると少年少女の周りに白い光が2人の周りに浮かび、一際大きく輝くと同時に少年少女がいた場所に若葉と真姫が並んで立っていた。

それを見ていた11人は、信じられない出来事に唯々目を見開くばかり。

 

「す、凄い」

 

いち早く戻った穂乃果は立ち上がり、真姫と若葉の周りを回りながら、凄い凄いと連呼する。

 

「マジックが出来るなんて、新しいアイドルの形だよ!」

 

そして真姫の肩に手を置くと、感動したように言う。真姫はそんな穂乃果を見て不思議そうな顔をする。

 

「でも良かった。皆駆け落ちじゃないかって心配してたのよ」

「「駆け落ち!?」」

 

絵里が安心したように笑って言うと、2人は驚いたように声を揃えて言う。

 

「か、駆け落ちなんてしないわよ!」

「そうそう」

 

真姫の否定の言葉に若葉も頷いて賛同する。

 

「それに真姫とは駆け落ちはしないよ」

「へぇ。その心は?」

「真姫とは駆け落ちじゃなくてちゃんと両親に挨拶して結婚するからね」

 

若葉の突然のプロポーズとも取れる言葉に真姫は顔を真っ赤にし、他のメンバーはにやついたり、真姫と同じ様に顔を赤くしたり、感動していたりと、様々な反応を取っていた。

 

「でもこれって全部、本当に誰かさんの夢の中なのかも知れないわね」

 

絵里が真姫と若葉の方を見ながら言うと、真姫は夢?と首を傾げる。

 

「ねぇねぇ。さっきなんて言いかけたの?」

「なにが?」

 

穂乃果が若葉と真姫の正面に回り聞くも、若葉はなんの事か聞き返す。

 

「ずっと何を思ってたの?」

「それはその」

「秘密、かな」

 

若葉の言葉に穂乃果が文句を言うも、2人は顔を見合わせて笑うばかりで答えない。

ふと2人が顔を正門に向けると、2人の少年少女が見えた。その2人は笑いながら振り返ると、口の横に手を当て、何かを言う。距離もあったので若葉と真姫は何を言っているのか聞こえなかったが、内容は伝わっていた。

 

 

ずっと好きだったの。皆の事がずーっと

 

 

 




【音ノ木チャンネル】
若「今回はなんか、いつもと毛色が違ったね」
愛「なんでもMUSIC S.T.A.R.Tに収録されているOVAを元にしたらしいですよ」
夏「まぁ時系列とか良く分からんが、作者の中では「とにかく66話以降のどこか!」らしいぜ」
愛「まぁ若葉さんと真姫ちゃんが付き合ってる描写があったので、必然的にそうなりますね」
若「にしてもあの日、真姫と音楽室で不思議体験した後、更に不思議な体験したんだけど」
夏「それにしても若とマッキーの小さい頃の姿は可愛かったな」
愛「そうですね。あのまだ純粋な眼差し、今じゃとても考えられませんもんね」
若「ほほぅ?だ・れ・が、汚れた眼差しをしてるって?」
愛「ヤダナーワカバサンノコトジャナイデスヨー?」
夏「因みに今回の作者はいつもと書き方を少し変えてみたらしいぜ?」
若「どんな感じからどんな感じに?」
夏「えーと、今まではPCの画面に動画サイトを2つ、ハーメルンのページを2つ、呟くアプリを1つ開いてるらしい」
愛「ちょ、待って下さい!なんでそんなカオスなんですか!?」
若「しかも動画サイト2つとか、絶対に作者は台詞を聞き取れてないでしょ!」
夏「いや、それがそうでも無くてだな。まぁその時の執筆風景は、作者の呟くアプリに画像付きで載ってるからそっちを見てくれ」
若「どれどれ…うわ、2つの内片方はラブライブ!だけど、もう一つは関係無いアニメだし!」
愛「しかも見るからに笑顔動画のサイトですし」
夏「因みにこの時書いてたのが60話の最後の方だぜ」
若「にこがハズレを引いた少し跡のシーンが書き途中だね」
愛「それで、今回はどんな感じで書いてたんですか?」
夏「あぁそれは実物があるから、それを見てくれ。それはこちらだ!」


【挿絵表示】


『字が汚い!』
夏「作者。いくら何でも汚過ぎだろ」
愛「でもなんか、台本みたいな書き方ですね」
若「と言っても作者は台本を見た事無いんだろうけどね」
夏「それがな、若。あるんだよ。読んだ事」
『ハァ!?』
若「どこで、いつ、何の作品のを読んだのさ!?」
愛「まさか、キャストの家から盗んだんじゃ…」
夏「いやいや。そんな犯罪行為しないから。なんでも、とある劇場版のDVD初回特典で貰ったものなんだとさ」
若「成る程」
夏「因みにもう1枚あるが、そっちにはネタバレが含まれているので、載せてません!」
愛「単純に許可を得るのがめんどいだけなんじゃ…」
若「まぁ、機会があれば見せてくれるでしょ」
夏「そろそろ終わりにするか」
愛「感想、誤字脱字、アドバイスお待ちしております!あとアンケートも実施しています!そちらもよろしくお願いしまーす!」
『バイバーイ』


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もう一度by海未

話しの区切り方が未だに下手な件について…


穂乃果達が生徒会室でわいわいやっている時、にこと1年生4人は練習着に着替え屋上にいた。

 

「良い。特訓の成果を見せてあげるわ」

 

凛と愛生人、花陽にそう言うと、にこは3人に背を向け、振り返る。

 

「にっこにっこにー、あなたのハートににこにこにー。笑顔を届ける矢澤にこにこ。あっ!ダメダメダメー!にこにーはみーんなのモ・ノ」

 

と進化したにこにこにーを見せるにこ。そんな進化にこにーを見て

 

「気持ち悪い」

 

と、バッサリと切り捨てる真姫。

 

「なによ!昨日一生懸命考えたんだから!」

「特訓って昨日1日なんだ…」

 

にこの言葉に愛生人は呆れた様に言う。

 

「ていうか5人でこんなことして意味があるの?」

「あんたたち何にもわかってないわね。これからは1年生が頑張らなきゃいけないのよ」

 

そう言うと、にこはカメラを取り出し、慣れた手つきでセッティングを終わらせる。

 

「良い?私はあんたたちだけじゃどう頑張ればいいのかわからないだろうと思って手助けにきたの。先輩として」

「いえ、確かに若葉さん達がいないとどう頑張れかいいか分かりませんけど」

「そのビデオは?」

 

愛生人がにこの言葉に苦笑いしていると、真姫が愛生人の言いたい事を言う。

 

「何言ってるの。ネットにアップするために決まってるでしょ。今やスクールアイドルもグローバル!全世界へとアピールしていく時代なのよ。ライブ中だけでなく日々レッスンしている様子もアピールに繋がるわ」

 

そう言うとにこは黒い笑みを浮かべる。

 

「ぐふふ。こうやって1年生を甲斐甲斐しくみているところをアピールすれば、それを見たファンの間に、にこにーこそセンターに相応しい、との声があがりはじめてやがて」

「全部聞こえてるにゃー」

 

にこの企みが全て声に出ている事を凛にツッコまれる

と、にこはにこっと笑って誤魔化す。そんなにこを呆れた様に見る1年生4人。

その時、花陽の携帯が鳴る。花陽は形体を取り出し、メールフォルダを開くと、目を見開いて驚きの声を上げる。

 

「かよちんどうかした?」

「嘘……」

 

花陽は凛の言葉が聞こえていないのか、返事をせずにあり得ないです、呟くと屋上から走ってる1階にある部室まで階段を駆け下りる。

 

「夢。夢なら夢って先に言って」

 

部室に入るや否や、部室のパソコンで何やら調べ物をする花陽。

 

「全く、なんなのよ。もう!」

「花陽ちゃんってアイドルの事になるといつもこうだよね」

「凛はこっちのかよちんも好きにゃー」

 

真姫が少し怒った様に叫ぶと、愛生人が慣れた事の様に笑い、凛は元気に叫ぶ。にこが気になり、花陽の肩越しにパソコンの画面を覗き込むと、あー!と叫ぶ。にこの叫びに気になった3人も続いて覗き込むと、信じられないものを見たとばかりに叫ぶ。そして5人は部室を飛び出し、生徒会室へ向かう。

 

「穂乃果!」

「あ、にこ。どうしたの?」

 

にこが勢い良く生徒会室の扉を開けるも、そこにいたのは若葉と夏希のみで、目当ての穂乃果はいなかった。

 

「穂乃果は!?」

「ほのっちなら教室の方が捗るからって」

「そんなに慌ててどうしたの?」

「良いから若葉さん達も来て下さい!」

 

夏希が穂乃果の向かった先を答えると、若葉と共に愛生人に引っ張られ、生徒会室を出て行く。

 

「ちょ、鍵!施錠しないと!」

「そんな事どうでも良いです!一大事です!」

 

若葉が生徒会室の扉に手を伸ばして抗議するも、愛生人にバッサリと切り捨てられ、渋々諦める。

その後、穂乃果を探して教室、屋上、アルパカ小屋へと走り回った一行は中庭へと辿り着く。道中走りっぱなしだった為、花陽とにこ、真姫の3人は呼吸が乱れ、膝に手をついていた。一方、凛、愛生人、夏希、若葉の4人は涼しい顔で穂乃果達3人を見ていた。

 

「穂乃果。ちょっと話があるから部室に来なさい」

「海未さんとことりさんも」

 

にこが穂乃果を、愛生人が海未とことりを部室に誘導する。未だに何が起こったのか知らされていない若葉と夏希は唯々首を捻るばかり。

 

「良い?落ち着いて聞きなさいよ?」

 

部室に着き、途中会った絵里と希と一緒に部室の椅子に座ると、にこが机に肘をつき、話し始める。

 

「もう一度、あるわよ」

「もう一度?」

「もう一度」

「もう、一度…?」

 

にこの発した単語を繰り返す穂乃果と海未、夏希。

 

「もう一度開催される事が決まったわ。あの、ラブライブが!」

「ラブライブ!?」

 

にこがババーンと言うと、絵里が驚いた様に繰り返す。

 

「そう!A-RISEの優勝と大会の成功をもって終わった第一回ラブライブ!それが何と何と。その第二回大会が行われることが早くも決定したのです」

 

絵里の言葉に花陽が勢い良く言う。若葉は立ち上がると、パソコンの前に座り、掲示板を開く。

 

「何々?今回は前回を上回る大会規模で、会場の広さも数倍。ネット配信の他ライブビューイングも計画されているし、大会規模の大きい今度のラブライブはランキング形式じゃなくて、各地で予選が行われ各地区の代表になったチームが本選に進む形式になった、ねぇ?」

「つまり、人気投票による今までのランキングは関係ないということですか?」

「どうやらそうみたいだね」

 

海未の質問に若葉は、サイトの説明欄を読みながら頷いて答える。

 

「その通り!これはまさにアイドル下克上!ランキング外の者でも予選のパフォーマンス次第で本大会に出場出来るんです!」

 

若葉の答えに補足する様に花陽が勢い良く話す。

 

「えーとつまり、俺達っつーか、μ'sも参加資格があるって事で良いんだな?」

「そういう事ですね」

「凄いにゃー」

 

夏希の言葉に愛生人と凛が答え、絵里もやる気を出す。

 

「やらない手は無いわね」

「そうこなくっちゃ!」

「ゔぇえ!?」

 

真姫のやる宣言に、にこが飛びつく。

 

「よーし、じゃあラブライブ出場目指して」

「待って」

 

頑張ろー!と続けようとしたことりに絵里が待ったをかける。首を傾げて絵里を見ることり。

 

「地区予選があるって事は、私達A-RISEとぶつかるんじゃ…」

「まぁぶつかるだろうね。学校同士が近いし」

 

若葉の一言で床に崩れ落ちる花陽。他のメンバーも諦めが強いのか、頭を抱えたりしている。挙げ句の果てには凛と愛生人が全員で転校しよう!などと言っている。

それから海未と絵里、希、若葉の4人が諦めるのはまだ早い、と諭しモチベーションを上げる。そしてラブライブ予選出場を決めた時、若葉と絵里は違和感を覚え、その正体へ目を向ける。

 

「はぁ…」

「穂乃果?」

 

穂乃果は今までの話し合いに一切参加せずに、椅子に座ったままノンビリとお茶を啜っていた。そんな穂乃果に絵里が問いかけると、穂乃果は笑顔で一言

 

「別に出なくてもいいんじゃないかな」

 

その一言に部室にいた11人は一斉に叫ぶと、にこが隣の部屋に穂乃果を連れて行き、椅子に座らせる。他の面々もにこの後に続いて移動し、穂乃果を取り囲む様に立つ。

 

「穂乃果さん。自分の顔が見えますか?」

「見え…ます」

「では鏡の中の自分は何と言ってますか?」

 

鏡を手に穂乃果に聞く愛生人と海未を見て、穂乃果は首を傾げる。

 

「だって穂乃果」

「ラブライブ出ないって」

 

穂乃果の疑問に答える様に絵里と希が言うと、再びにこが詰め寄る。

 

「ありえないんだけど!ラブライブよラブライブ!スクールアイドルの憧れよ!あんた真っ先に出ようって言いそうなもんじゃない!」

「そ、そう?」

 

苦笑いで答える穂乃果。若葉は黙って穂乃果に近付くと、自分の額と穂乃果の額を合わせる。

 

「う〜ん。熱は無いみたい」

「ちょっと若葉!?」

 

若葉は顔を赤くした絵里に襟を掴まれ、穂乃果から剥がされる。

 

「あなた一体何してるのよ!」

「いや、昔から熱計る時はこんな感じだよ?」

「そ、そう…なの?」

 

絵里が確認する様に海未とことりを見ると、2人は慣れた様子で頷く。その若葉の隣では真姫が羨ましそうに穂乃果を見ていた。

 

「話を戻しますよ。穂乃果、なぜ出なくて良いと思うんです?」

「私は歌って踊って皆が幸せならそれで」

「今までラブライブを目標にやってきたじゃない!違うの!?」

「い、いや~」

 

にこが穂乃果の肩を掴み聞くと、穂乃果は視線を逸らしながら答えをぼかす。

 

「ほのっちらしくないな」

「挑戦してみても良いんじゃないかな」

「あ、あははは」

 

夏希と花陽の言葉に穂乃果は苦笑いで返す。そして何か思い付いた様に立ち上がると皆を見回して言う。

 

「明日からまたレッスン大変になるし、今日は寄り道して帰らない?」

「そうだね。オフの日くらいは遊ばないとね」

 

穂乃果の言葉に賛成したのは若葉だった。2人の言葉ににこや絵里が何か言いかけるも、若葉にまぁまぁ、と宥められ、渋々頷く。

それから12人は秋葉原の街に繰り出し、屋台のクレープを食べたり、穂乃果、凛、絵里の3人でプリクラを撮ったり、トンタッキーで休憩がてら飲み物を飲んだりと楽しく過ごした。

 

「希ちゃん、どうしたの?」

「ううん。なんでも」

 

穂乃果は希の分の飲み物を持って、外で空を見上げている希の元へ行く。希は飲み物を受け取ると、店の中へ戻って行く。穂乃果も希の後を追おうとして、UTX高校の電光掲示板にA-RISEが映され、穂乃果はそれを見てその場に立ち尽くす。




【音ノ木チャンネル】
若「今話発表になった第2回ラブライブ。穂乃果はやる気無いみたいだね」
夏「つーか、なんだな」
愛「結構前からやってた、とかじゃないんですね」
若「それなのににこと花陽はラブライブ知ってたんだね」
夏「ラブライブって何なんだろうな」
愛「スクールアイドルの祭典、でしたっけ?」
若「でも第2回…」
夏「第2回、か…」
愛「第2回なんですね…」
若「さて、話しは変わるけど、見ての通り今回はネタがないんだよね」
夏「行ってる間にネタが出て来たみたいぞ」
愛「あぁそう言えば。若葉さんが穂乃果さんとおデコをくっ付けたシーンあったじゃないですか」
若「あーあったね。絵里とか顔真っ赤にしてたけど」
夏「まぁ兄妹間では昔からあるやってるイメージあるからな」
愛「その時、真姫ちゃんがボソッと良いなぁ、って言ってたんですよ」
真「ちょっと愛生人!私そんな事言って」
若「やって欲しいの?」
真「………………うん」
若「じゃあ後でね」
夏「あ、真姫がブースから走って逃げた」
愛「夏希さんはツバサさんとしたいしないんですか?」
夏「んーツバサの場合は寧ろやって来る感じだな」
若「積極的だね」
夏「お前らに言われたかねぇよ!」
愛「まぁまぁ落ち着いて」
若「でもあの後、遊んでる時に愛生人と凛もくっ付けて無かった?」
愛「だって凛ちゃんが」
絵「はいはい。もう締めるわよ」
『はーい』
絵「じゃあ」
『バイバーイ』


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雨、止めーーーー!by穂乃果

穂乃果は人間を超越した存在になったのだ…


結局、絵里達は穂乃果の真意を聞き出せないまま、その日は解散となった。

その日の夜、穂乃果を除いた11人でLIMEでの会議が行われた。

 

若「穂乃果も色々考えて出なくても良いって言ったんじゃない?」

園田海未「色々?」

ことり「どうしちゃったんだろう」

エリー「それは私も」

にこにー「らしくないわよね」

真姫「あんたもね」

にこにー「ちょっとマジメな話してんのよ」

ぱな「でもこのままじゃ本当にラブライブに出ないってことも」

りん「それは寂しいな~」

夏希「にこっちはどうしたいんだ?」

にこにー「私は、もちろんラブライブに出たい!」

アッキー「そうですよね」

園田海未「生徒会長として忙しくなってきたのが理由かもしれません」

ことり「でも忙しいからやらないって穂乃果ちゃんが思うはずないよ」

若「確かに穂乃果なら忙しくてもやりそうだよね」

希「今のμ’sはみんなで練習して歌を披露する場もある。それで十分ってことやろうか」

 

希の文を見て若葉は少し考え携帯をポケットに仕舞うと、水を飲む為に部屋から出る。すると、隣の穂乃果の部屋から雪穂が出て来た。

 

「ねぇ、お兄ちゃんはどう思ってるの?」

「どうって?」

「ラブライブ。またやるんでしょ?」

 

雪穂の言葉に若葉は頭を掻きながら、雪穂に部屋に入る様に仕草する。

 

「ラブライブ、ね。その質問は穂乃果にも?」

「うん」

 

若葉は椅子に座り雪穂をベッドに座らせると、雪穂に聞く。雪穂は真剣な表情表情で頷き返す。

 

「それで、穂乃果はなんて?」

「それが、はっきりと答えてくれなくて。それに今のメンバーで出れるのは今年しかない、じゃん?」

 

雪穂が伝えた穂乃果の様子に若葉はうーん、と考える。

 

「まぁ、俺や夏希、愛生人が幾ら出たいって言っても、俺らが出る訳じゃないんだよ」

「?」

「つまり、俺達サポート班が幾ら駄々捏ねても、結局は9人の意思で決まるって事」

 

意味が分かってない様子の雪穂に、若葉は頭に手を置いて答える。

 

「つまり、お兄ちゃん達は今回ノータッチで様子を見るって事?」

「まぁそんなとこ。完全なノータッチって訳じゃないけどね。」

「ふーん。まぁお兄ちゃんには私には分からない何かが分かるみたいだし、お兄ちゃん達に任せるね」

 

それだけ言うと、雪穂はベッドから立ち上がり、部屋を出て行く。雪穂が出て行って少し、若葉は喉が渇いていた事を思い出し、再び部屋を出て行った。

 

☆☆☆

 

次の日の放課後、神田明神の階段下にはジャージを着たにこと穂乃果がクラウチングスタートの構えを取っていた。

 

「それにしてもにこっちも思い切った事をするよな」

「階段ダッシュで勝ったらラブライブに出ようなんてね」

「それ程までにラブライブに出たいって事ですよ」

 

夏希、若葉、愛生人が階段の上からその光景を見下ろしながら言う。因みに他の部員はにこ達の後ろで見守っている。

 

「あ、始まりましたよ」

 

愛生人の言葉に若葉と夏希も黙って勝負の行方を見守る。

 

「あ、コケた」

 

スタートでフライング気味にスタートしたにこが階段の途中で階段に躓いたのか、転んだ。若葉達が慌ててにこと、その横でにこに手を差し伸べている穂乃果の元へ行くと2人の会話が聞こえる。

 

「煩いわね。ズルでも何でもいいのよ。ラブライブに出られれば」

「にこちゃん…」

 

にこの言葉に穂乃果は思案顔になる。

 

「取り敢えず、境内に上がろう?」

 

若葉の提案に皆が頷き、穂乃果とにこが着替え終わるのを待つ。その間に、若葉達はもう一度ラブライブについて話し合う。メンバーの暗い気持ちに呼応するかの様に、空は曇り、雨が降り始める。少しして制服に着替えた2人が戻ってきた。

 

「次がこのメンバーで出れる最後のチャンスだもんな」

 

誰も話し合いを始めようとしなかった沈黙を、夏希がその一言で破る。その言葉に絵里は頷き

 

「そうね。3月になったら私達3人は卒業。こうして皆と一緒にいられるのは後半年」

「それにスクールアイドルでいられるのは在学中だけ」

 

続く希の言葉に穂乃果はそんな、と呟く。

 

「確かに、その学校に通っているからこその"スクール"アイドルだもんね」

 

若葉の言葉に絵里がそうね、と頷く。

 

「すぐに卒業する訳じゃないけど、ラブライブに出られるのは今回がラストチャンス」

「この12人でラブライブに出られるのは、今回しかないって事ですね」

「やっぱり皆…」

 

絵里と愛生人の言葉を受けて、穂乃果は他の部員を見て思う。皆、ラブライブに出たいんだ、と。

 

「私達もそう。たとえ予選で落ちちゃったとしても12人で頑張った足跡を残したい」

「凛もそう思うにゃ」

「やってみても良いんじゃない?」

 

花陽、凛、真姫の言葉に穂乃果はことりの意見も聞こうと問い掛ける。

 

「私は穂乃果ちゃんが選ぶ道ならどこへでも」

 

ことりの答えに穂乃果は何かに気付いたのか、あっ、と声を漏らす。

 

「自分のせいで皆に迷惑を掛けてしまうのでは、と心配しているのでしょう」

「ラブライブに夢中になって、周りが見えなくなって」

「生徒会長として学校の皆に迷惑を掛けるような事があってはいけないって」

 

海未、夏希、若葉からの言葉に穂乃果は苦笑いを浮かべる。

 

「全部バレバレだね。始めたばかりの時は何も考えないで出来たのに、今は何をやるべきか分からなくなる時がある。でも一度夢見た舞台だもん。やっぱり私だって出たい。生徒会長をやりながらだから迷惑掛けるかもだけど、本当は物凄く出たいよ!」

 

穂乃果の言葉を受けて、聞いていた皆は笑顔になる。

 

「え?皆どうしたの?」

「穂乃果、忘れたんですか?」

 

穂乃果の質問に海未が答える。それと同時に希、絵里、にこ、海未が歌い出す。

 

「だって可能性感じたんだ」

 

それに続いてことり、花陽、真姫、凛が歌う。

 

「そうだ…ススメ」

 

最後に若葉が穂乃果に手を差し伸べて、夏希、愛生人と共に歌う。

 

「後悔したくない目の前に」

 

穂乃果は差し伸べられた若葉の手を握ると、満面の笑みを浮かべ、続ける。

 

「僕らの道がある」

 

そんな穂乃果を見て安心した全員は穂乃果に、やろう!と気持ちを伝える。

 

「よーし、やろう!ラブライブに出よう!」

 

穂乃果もそう返すと、若葉の手を離し、雨の降る境内へと走る。突然の行動に驚く海未と若葉。穂乃果はそんな2人を無視して、大きく息を吸うと

 

「雨、止めーーーー!」

 

と叫ぶ。すると、先程まで曇っていた空に晴れ間が差し、本当に雨が止んだ。

 

「嘘…」

 

にこが全員の気持ちを代弁するかの様に呟く。驚きで固まる若葉達に穂乃果は振り向いて言う。

 

「本当に止んだ。人間その気になれば何だって出来るよ!ラブライブに出るだけじゃもったいない!この12人で残せる最高の結果!優勝を目指そう!」

 

穂乃果の宣言に海未が驚きの声を上げる。他のメンバーも少なからず驚いているも、皆が皆、やる気に満ち溢れていた。

 

こうして音ノ木坂学院所属アイドル研究部「μ's」のラブライブ出場と目標が決まった。

 




【音ノ木チャンネル】
若「いや〜まさか本当に雨が止むとはね」
夏「だな。信じられないぜ」
愛「天候を操る程度の能力とかですかね」
若「愛生人、それは違う作品だよ」
夏「さぁほのっちの天候支配能力の事は置いといて、いよいよ今日だな」
愛「全ラブライバーが待ちに待った日」
若「ラブライブ!The School Idol Movie 公開!」(投稿日6/13)
夏「予告でのうーみんとほのっちのシリアスシーンはとても楽しみだと、作者が言ってたぜ?」
愛「まぁこの作品で書けるなら書くらしいですし」
若「ネタバレ?あぁ多分作者の投稿ペース的にDVD&BDが出る頃になっても、2期分が終わってない可能性大だから問題ないと思うよ」
夏「それはそれでどうかと思うんだが」
愛「まぁこの作者ですし。もしこの作品にねじ込むのが無理そうなら、別作品扱いで書く覚悟もある……んですかね?」
夏「いや、疑問系で聞かれても知らねぇよ」
若「と言う訳で、殆ど劇場版の話になっちゃったけど、活動報告でアンケートやってまーす」
夏「唐突な話題変換!」
愛「因みに途中結果ですが、若葉さんと真姫ちゃんのデート回がトップです」
若「期限は7月末まで!」
夏「他にも感想、誤字脱字、アドバイス、批判等待ってるぜ!んじゃあ」
『バイバーイ』


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合宿よ!by絵里

今回は短めです。


「ふぇ?」

「どうしたんですか?」

 

μ'sが第2回ラブライブ優勝を目指していつも通り屋上で練習をしていた時、不意にノートパソコンを見ていた若葉が間の抜けた声を出す。若葉は愛生人の問いに答えずに、リズムをとっている夏希の元に行き練習を中断させ、全員を集める。

 

「で、練習を中断させてまでどうしたんだ?」

 

夏希は全員が思っている事を若葉に聞く。若葉は手元のノートパソコンをチラリと見てから全員を見回すと口を開く。

 

「さっき更新された情報だけど、ラブライブの予選で発表する曲は未発表のものに限るって」

 

若葉の言葉に全員がえー!と叫ぶ。

 

「未発表って事は「START:DASH‼︎」「これからのSomeday」「僕らのLIVE 君とのLIFE」「Wonder zone」「No brand girls」「Wonderful Rush」の6曲は」

「使えないね。まぁ本選はその限りではないみたいだけど」

「それはさすがに目新しさに欠けるよな」

 

最初に戻った愛生人が真っ先にした事は既出の曲の確認。続いた若葉の言葉に夏希が顎に手を当て呟く。夏希の呟きとともににこが若葉に詰め寄る。

 

「なんで急に!?」

「え~っと、ちょっと待ってね」

 

若葉はそう言うとノートパソコンを操作する。

 

「何々?参加希望チームが予想以上に多くて、中にはオリジナルの曲を持たないプロのアイドルのコピーをしてるグループもあるみたいだよ」

「つまりこの段階でふるいにかけようって訳やね」

 

希の言葉に頷いた若葉に凛がそんなー、と困ったように言う。

 

「それで、新曲の方なんだけど」

 

若葉が話を新曲についてに切り替えつつ海未と真姫を見るも、2人は揃って首を横に振る。

 

「さすがに新曲が必要とは思わなかったので…いくつか出来てはいるのですが」

「そうね。それでラブライブの予選を突破出来るかって聞かれるとちょっと、ね」

 

2人の答えにう~んと全員が考えを巡らせる。

 

「一体どうすれば…」

「……作るしかないわね」

「どうやって?」

 

海未の質問に絵里は真姫の名前を呼び、そちらを見る。真姫も絵里に呼ばれた理由に思い当り、もしかして、と返す。

 

「えぇ……合宿よ!」

 

絵里が言い放つと若葉は生徒手帳を取り出す。

 

「合宿は良いけど、いつ行くの?さすがの彩さんでも公欠扱いはしてくれないと思うよ?」

「あ、この日って確か音ノ木坂は開校記念日でお休みですよ」

 

若葉の横から花陽が覗き込んで言う。その日月曜日で3連休となっていた。

 

「ってそれって来週じゃねえか!色々と間に合うのかよ」

「今日帰ったらパパに聞いてみるわ」

 

夏希のツッコみに真姫が答える。それでその日の話し合いは終わり、練習に戻った。

 

☆☆☆

 

「まさか色々間に合うとはな。8」

「急に決まったのにも関わらずOKしてくれた真姫の父さんに感謝だね。9」

「皆さん予定とかなかったんですかね。10」

「予定あってもμ'sの練習日くらいでしょ。11」

「花の女子高生がそんな予定しかないのはどうなんだ?12」

「夏希doubt」

「なん……だと……」

 

若葉達は現在、真姫の別荘がある場所まで電車で移動していた。席は4人1組で固まり、若葉、夏希、愛生人のサポート班に真姫が加わった4人で座っていた。そして駅につくまでの暇な時間に4人は愛生人が持って来ていたトランプで遊んでいた。

若葉は最初、夏の時同様3人だけ車で先に行き準備をするつもりだったのだが、穂乃果と真姫の涙目上目遣い(お願い)により若葉は一瞬で意見を翻した。更に愛生人にも凛が同じ様にした為、愛生人も電車組になり、1人でドライブしてもつまらないと夏希も電車組になったのだ。

 

「ちくしょう。なんか2人ともダウト強くねえか?」

「そうでもないよ」

「そうですよ。それにトランプとは言えゲームですからね。元「祈る者達(プレイヤー)」のトップとしてはそう簡単に負けられませんよ」

 

夏希の言葉に若葉は場に出ているトランプを纏めシャッフルし、配る。愛生人は愛生人で肩を竦めて配られたカードを手に持つ。真姫は真姫で配られたカードが微妙だったのか、眉を潜めている。

 

「う〜ん…」

「じゃあ俺からな。1」

「また夏希をハメようかな。2」

「協力しますよ。3」

「このゲームって協力プレーとか出来るの?4」

「お前ら…今回こそは勝ってやる!5!」

「「doubt」」

「んぎゃー!」

 

夏希がカードを出した途端、若葉と愛生人が揃って発音良くダウト宣言すると、夏希は頭を抱えて煩くない程度に叫ぶ。それを見て真姫はクスッと笑い眺めていた。

一方、穂乃果、海未、凛、にこは若葉の持って来ていたトランプで大富豪をしていた。

 

「ふっふっふ。これで革命よ!」

「甘いですよにこ。革命返し!」

「からの革命返し返しにゃ!」

「ぐぬぬ、出せない…」

 

と大いに盛り上がっていた。残った絵里、希、ことり、花陽は静かに写真を撮ったり、ウトウトしたりと、他の2組に比べると静かに過ごしていた。

 




【音ノ木チャンネル】
若「さて、始まりがどういったものか分からなくて、前話前々話を読み返した挙句、取り留めもない会話から始まった【音ノ木チャンネル】始まるよ〜」
夏「始め方少しは考えようぜ」
愛「でも無い方が作者っぽいですけどね」
俺っぽさって何!?
夏「あ、作者だ」
愛「公開日翌日に劇場版を見に行った作者ですね」
若「俺達をどこに入れるか考えながら見ていた作者だ」
愛生人と若葉の言葉は真実だから言っちゃいけないよ!
夏「もう遅いけどな」
若「でもまた見に行くんでしょ?」
当たり前っしょ。最低でもあと3回は見る予定。
愛「時間…はともかくお金は大丈夫なんですか?」
なんとかなるでしょ。ま、俺の経済面は置いといて
若「1番置いといちゃ拙いんじゃない?」
気にしないのが俺です。はい。
夏「んで?なにか発表でもあんのか?」
いや、ただ面白そうな企画が思い浮かんだからその話をしようかな〜って
愛「そんな事より劇場版での僕達の出番はあるんですか?」
予定ではあるよ!じゃなくて!企画の話なんだけど
若「まぁ、色々と組み込める箇所あったしね」
夏「だな。あそことかあそことか、あとあそことか」
愛「曖昧ですけど、まぁネタバレ回避にはなってますね」
まぁ今までの流れでなんとな〜くここに3人が入るんだな〜ってなるとは思いますが
夏「本当に思ってるのか?」
若「この低文才で?」
愛「未だに誤字脱字があるのに?」
誤字脱字は関係ないでしょ!そうじゃなくて!
若「まさかの設定も公開されたし」
夏「物販はほぼ売り切れてたし」
愛「映画館で先輩に会うし」
だ・か・ら!それは俺の実体験だから置いといて!企画の話だよ。企画の!
若「ハァ…もうスルーは飽きたから聞くだけなら聞いてあげるよ」
夏「え、話聞くの?」
愛「絶対面倒ですって」
お前らな…
若「まぁまぁつまらなかったらカットすれば良いだけだし」
夏愛「「なら聞こう」」
若「さ、どうぞ」
なんだろう…感謝したいけど感謝しにくいこの気持ち
若「話すの?話さないの?」
あーもー!話しますよ!企画としては2つあるんだけど、1つはアイドル研究部メンバーで「人狼ゲーム」をする話
夏「人狼ゲームってあの?」
多分聞いて最初に思い浮かべるゲームであってるよ。分からない人は「ダンガンロンパ」を思い浮かべて貰えば何となく似た様なものだと思って貰えれば
愛「まぁ似てると思ってるのは作者だけですけどね」
で、もう1つは同じくアイドル研究部メンバーとA-RISE辺りも加えた推理ものの話
若「シリアス成分多目になりそうだね」
夏「でも楽しそうだな」
愛「あ、これは別にアンケートとかじゃないですよ」
アンケート自体はやってますので、詳しくは活動報告まてお願いします
若「なお、さっきの企画は2つとも作者の頭が回ってたら番外編に出す予定です」
夏「では誤字脱字、感想、批判、アドバイス等待ってるぜ〜」
じゃあこれにて、せーの
『バイバーイ』


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サンタ、さん…by凛

今日からほのイベだー。これはシスコンの若葉君は走るに違いない!


3組がそれぞれ楽しく過ごしていると景色が変わり、辺り一面が草原の広がる場所に着く。

 

「そろそろよ。降りる準備しましょ」

 

真姫はそう言うと荷物を手に立ち上がる。真姫に続いて若葉と夏希も立ち上がり荷物を手に取り、他のメンバーも同様に荷物を手に電車が止まるのを待つ。

 

「うわぁ~きれ~い」

「ん~空気が澄んでるね~」

 

ことりと希が長時間の電車移動で固まった体を伸ばしながら言う。

 

「やっぱり真姫ちゃん凄いにゃー。こんな所にも別荘があるなんて」

「歌も上手いし、完璧だよね」

「べ、別に完璧なんかじゃないわよ」

 

凛と花陽が真姫にいうと、真姫は照れた表情で顔を逸らす。絵里は自然を背景に夏希と若葉を撮っていた。

 

「あの、早く移動しません?」

「そうね。時間も無いし」

 

愛生人の言葉に絵里がカメラをしまいながら頷くと、ドサッという音と共に

 

「その通りです」

 

と海未が言う。皆が海未の方を見るとそこには登山用のバッグをホームを降ろした海未がいた。

 

「海未ちゃん、その荷物は…」

「なにか?」

 

ことりが海未の荷物見て聞くと、海未は訳が分からない風に聞き返す。

 

「ちょっと多くない?」

「山ですから。寧ろ皆の方こそ軽装すぎませんか?」

 

絵里の言葉に当たり前の様に返すと、バッグを背負い、改札を通る。

 

「さ、早く行きましょう!山が呼んでいますよー!」

 

眼を輝かせて笑っている海未を見て絵里はまさか、と隣に立つ若葉に聞く。

 

「海未って登山マニア?」

「さ、さぁ?でもあの様子だとそうみたいだね」

「夏の時みたいに無茶言わなきゃいいけど」

 

にこの言葉にそれを聞いていた絵里と若葉は夏の合宿時の海未が考えたメニューを思い出し、苦笑いを浮かべる。

 

「ほら、もたもたしてるとバス行っちゃうわよ。残ってるのも若葉達だけだし」

 

真姫に言われ辺りを見回すと、真姫の言う通りホームには既に若葉、絵里、にこ、真姫の4人しかいなかった。絵里とにこは慌てた様に先に行ったメンバーに追い付き、希や夏希に文句を言う。若葉と真姫はそんな2人を見て顔を見合わせて笑い合う。

 

「さ、私達も行きましょ」

「だね」

 

そして2人揃って改札を通り、皆が待っているバス停に並ぶ。そしてバスに揺られる事数十分。

 

『おおぉ~』

 

夏の時とは別の別荘に到着し、夏の時同様感嘆の声を漏らす。

 

「早速探索だぁー!」

「にゃー!」

「落ち着きなって」

「凛ちゃんも」

 

荷物を置いた途端に走り出そうとした穂乃果を若葉がすぐに止める。その隣では凛が愛生人に同じ様に止められていた。

 

「取り敢えずリビング行かない?」

 

花陽の提案で一度リビングに集う一同。そしてリビングにあるピアノ、シーリングファン、暖炉を見て穂乃果と凛が暖炉に駆け寄る。

 

「凄いにゃー。初めて暖炉みたにゃ」

「凄いよね~ここに火を…」

「点けないわよ」

「「えー!」」

 

真姫の言葉に穂乃果と凛が不満そうに真姫を見る。真姫は2人の反応を気にしないでそれに、と続ける。

 

「まだそんな寒くないでしょ。しかも冬になる前に煙突を汚すと、サンタさんが入り難くなるってパパが言ってたの」

「パパ…」

「サンタ、さん…」

 

真姫の台詞に穂乃果と凛は顔を見合わせる。

 

「素敵!」

「良いお父さんですね」

 

ことりと海未も笑みを浮かべて真姫に言う。真姫はそれに笑顔で頷く。

 

「この煙突はいつも私がきれいにしていたの。去年までサンタさんが来てくれなかった事は無かったんだから」

 

その証拠に、と真姫は穂乃果と凛に暖炉の中を除く様に言う。そこには筆記体でThank you!という文とサンタと雪だるまの絵が描かれていた。そこににこと夏希の笑いを堪えるような声が聞こえる。

 

「あんた…真姫が…」

「…サンタ…」

「にこちゃん!夏希君!」

「2人とも、それ以上はダメよ!」

 

にこには絵里と花陽、夏希には若葉が詰め寄り止める。

 

「そうだよ!それを言うのは重罪だよ!」

「真姫ちゃんの人生を左右する一言になるにゃ!」

 

5人の様子を悟ったのか、穂乃果と凛も2人を止めに入る。

 

「だってあのマッキーぐほぁ」

「またつまらぬ者を殴ってしまった…しかしそれで1人の夢が守れたのなら安いものよ」

「いやいやいやいや!思いっきり鳩尾狙ってましたよね!?」

 

夏希の鳩尾を穿った若葉は芝居掛かった台詞を言うと、愛生人からツッコミが入る。一方にこはなんとか笑いを堪えて絵里と花陽に解放される。

 

「じゃあ寝てる夏希さんは放置して練習しましょう、練習」

 

夏希をソファに寝かした愛生人が話題を変える様に手を打つと、それぞれが練習着に着替える為に移動を始める。真姫、海未、ことりは作曲、作詞、衣装の為別行動となった。

 

「さ、まずは基礎練習から」

 

愛生人達は別荘から少し離れた場所に集まり、練習を始める。真姫達はそれぞれに分かれて各々の作業に取り掛かる。海未を作詞関係の本がある部屋に、ことりに服飾関係の本やミシンがある部屋に案内し、真姫と若葉はリビングに戻る。

 

「予選突破、か」

「どうしたの、急に?」

「ううん。なんでも」

 

真姫の呟きに若葉が聞き返すと真姫は首を振って答える。それから若葉はキッチンに紅茶を淹れに行く。

 

「プレッシャーか?」

「夏希。起きてたのね」

 

真姫がピアノの前で固まっていると不意にドアの方から声が掛かる。真姫は少し驚くも、夏希の方を向く。

 

「まぁな。にしても若は容赦がないな」

 

いつつ、と鳩尾の部分を摩ると外にいる絵里達の所へ向かう。その際部屋から出る時振り向かずに真姫に言う。

 

「ま、そんなに気負う事はないと思うぞ。じゃあまた後で」

 

夏希はそれだけ言うと部屋から出て行く。入れ替わりでお盆にティーカップとティーポットを乗せた若葉が入って来る。

 

「夏希起きたんだね」

「えぇ。さっき起きて穂乃果達の所へ行ったわ」

「ふ~ん」

 

若葉はそう言うと紅茶の入ったカップを真姫の邪魔にならない場所に置くと、2階で作業している海未とことりにも同じ様にカップを渡しに行く。カップを渡す時に若葉がそれとなく2人に進行具合を聞くと2人は苦笑いで答える。

海未、ことり、真姫の3人が作業している中、若葉は特にするもないので邪魔にならない様に静かにソファに座り、偶に立ち上がり紅茶を淹れに回っていた。

 

「若葉さん。なにか拭く物ありませんか!」

 

そんな時、リビングに愛生人が駆け込んで来た。その後ろからはにこと凛が歩いて来ていた。

 

「どうしたの?そんなに慌てて」

「実は凛ちゃんとにこさんが川に落ちゃいまして」

「はぁ!?」

 

愛生人の言葉に驚きの声を上げる若葉。そしてソファから立ち上がると洗面所に向かうとタオルを手に戻って来る。

 

「取り敢えず2人ともこれで体とか拭いて。それから風邪引くといけないからシャワーを浴びておいで」

 

若葉が浴場を指して言うと、2人はタオルを頭からかけて浴場へと歩いて行く。

 

「凛とにこは大丈夫?」

「見た感じ怪我は無さそうだったから体を温める為にシャワーを浴びてるよ」

 

2人が浴場に入って少し、絵里達が心配して帰って来る。若葉は絵里に浴場を指して答える。

 

「それより何があったの?」

「実はにこっちのリストバンドがリスに取られてな。リスは途中で落としたんだが、それを取ろうとして足を滑らせてって感じだな」

「な、なるほど」

 

夏希の答えに若葉は少し引き攣った笑いで返す。そして2人が上がり、リビングに戻ると花陽がお茶を皆に出す。それを見て若葉も真姫達に紅茶を淹れに行くと穂乃果も若葉の後ろをついて行った。

 

「真……姫?」

「いないね」

「さっきまで居たのに。どこ行ったんだろ」

 

取り敢えず真姫は最後にと先に2階の2人に淹れに行く事にした若葉と穂乃果。

 

「海未。入るよー」

「海未ちゃん調子ど……う?」

「海未も居ない…」

 

2人が海未の部屋に入ると真姫同様海未も居なかった。穂乃果が不思議に思い部屋を見回していると、机の上に1枚のメモ書きがあった。

 

「お兄ちゃん。これ」

「何々?「捜さないで下さい……海未」!?」

 

若葉が海未の書き置きを読み上げた途端、穂乃果はことりの名前を呼びながら隣の部屋に突撃する。

 

「ことりちゃん!海未ちゃんがたぁー!」

「穂乃果!?」

 

若葉は突然叫び声を上げた穂乃果に驚きつつ、隣の部屋に移動する。隣の部屋には穂乃果しかおらず、その穂乃果の視線は壁に掛かっている額縁に向けられていた。その額縁にはピンクの紐でただ「タスケテ」と書かれていた。

 

「ん?」

 

ふと風を感じた若葉が窓を見ると、そこには開け放たれた窓と毛布で出来たロープがあった。穂乃果と揃って窓から外を見ると、そこには居なくなった真姫、海未、ことりの3人が膝を抱えて座っていた。3人が見つかった事により、若葉は安堵の溜め息を吐き穂乃果とともに1階に戻る。

 

「若、さっきのほのっちの叫び声はなんだったんだ?」

「あーうん。もう大丈夫。じゃあちょっとお迎えに行ってくるね」

 

リビングに戻った若葉と穂乃果に夏希が聞くと、若葉はテーブルにお盆を置きながら答え、外の3人を迎えに行った。

 




【音ノ木チャンネル】
夏「本当に若は容赦なかったな」
若「あれも真姫の夢を守る為。そう考えれば痛くはないよ」
夏「だろうな!殴られたの俺だし!」
愛「まぁまぁ。落ち着いて下さいよ夏希さん。それより今回の振り返りしましょう」
若「ちょうど切れよくアニメAパートの所まで終わったね」
夏「ま、アニメと違って外での練習風景一切無かったけどな」
愛「て言うか、若葉さんのこれ、サボりじゃないですか?」
若「サボりじゃないよ。俺は真姫達のサポートをしてたんだから」
夏「まぁそういう事にしといてやるよ」
愛「因みに作者はことりさんの「タスケテ」を見た時20世紀の少年を思い出したそうですよ」
若「確か額縁の後ろの壁に書いてあったんだっけ?」
夏「あーあれはゾッとしたな」
愛「さて、なんか良い感じの長さなので今回はここまで。色々と話忘れている事多数だと思いますが、それはいつもの事」
若「以外と割り切ってるんだね」
愛「あ、皆さんスクフェスやってます?ランク122で劇場版のPVに使われてた曲がシャンシャン出来ますよ!」
夏「これまた唐突な宣伝だな」
愛「作者の活動報告では番外編に関するアンケートも実施中!」
若「皆さんの意見お待ちしてます!」
愛「そして!誤字脱字、感想、批判、アドバイス等をお待ちしております!それでは」
『バイバーイ』
夏「って、締めの言葉長過ぎるわ!」


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作詞に来たはずにゃ~!by凛

お風呂シーンで髪を解いている穂乃果は可愛かった。(しかし作者は真姫推し)


若葉が建物の外の芝生で落ち込んでいた海未、ことり、真姫の3人を連れて戻りソファに座らせると、落ち込んでいた理由を3人に尋ねる。

 

『スランプ!?』

「やっぱ今までよりも強いプレッシャーが掛かってるって事か」

 

3人の答えに夏希はソファに座りながらやっぱりか、と呟く。

 

「気にしない様にはしているのですが……」

「上手くいかなくて予選敗退しちゃったらどうしようって……」

 

海未とことりの2人が不安そうに目を伏せて言う。海未の隣に座っている真姫は真姫で

 

「ま、私はそんなの関係無く進んでたけどね」

 

と言うも、凛に真っ白な譜面を指摘され不貞腐れる様に頬を膨らませる。

 

「確かに3人にまかせっきりってのはよくないかも」

 

そんな3人の様子に花陽が心配そうに言う。

 

「そうね。責任も大きくなるから負担も掛かるだろうし」

「じゃあ皆で意見出し合って話しながら曲を作っていけば良いんじゃない?」

「そうね。せっかく全員揃っているんだし、それで良いんじゃない」

 

花陽の言葉に3年生3人が同意する様に頷く。

 

「でも12人で作業やっても意見がバラけて面倒な事になりますよ」

 

しかし若葉の隣に立っている愛生人が否定的な事を言う。現ににこが自身が作詞した歌詞に曲をつけさせてあげる、などと言い、話が纏まりそうになかった。どうしようか皆が悩んでいると、若葉がそうだ、と手を打つ。

 

「そうだ。じゃあアキバの時みたいに3グループに分かれて作業したら良いんじゃない?」

 

若葉の案に皆が賛成しもう一度、今度は全員で外の芝生に出る。

 

「ことりを中心に衣装を担当する班。海未を中心に作詞する班。そして真姫を中心に作曲をする班」

 

ことりの周りに穂乃果と花陽、夏希が、海未の周りには希と凛、愛生人が、真姫の周りには絵里とにこ、若葉がそれぞれ集まる。

 

「よーしじゃあユニット作戦で、曲作り頑張ろー!」

『おー!』

 

穂乃果の音頭で皆が元気に返事する。

 

~作曲班~

作曲班の4人は別荘から少し離れた場所にテントを張って作業していた。

 

「って、どうして別荘があるのに外でテントを張らなきゃいけないのよ!」

「少し離れないと残り2班の邪魔になりかねないでしょ」

「そうよ。それにそうしないと3班に分けた意味がないでしょ。それに都合良くテントもあったし」

 

にこが不満を言うと若葉と絵里が宥めるも、にこは本当にこれで作曲が出来るのか疑問をぶつける。

 

「私はどうせ、後でピアノの所に戻るから」

 

にこの疑問に真姫が譜面を書きながら答える。絵里はその答えを聞くと

 

「じゃあ私達は食事でも作りましょうか」

「そうだね。少しでも真姫が進めるように、ね」

 

絵里の提案に若葉も頷いて言うと、真姫は顔を赤くして譜面で顔を隠す。そんな真姫の反応に顔を見合わせて笑うと若葉はにこを連れて別荘のキッチンに向かった。

 

~衣装班~

衣装班は作曲班とは打って変わって河原にテントを張っていた。そのテントの中では穂乃果と夏希が並んで寝ていた。ことりが画用紙に衣装の案を書きながら偶に2人の名前を呼ぶも、2人は起きる気配がない。

 

「はぁ~……」

 

ことりは困った様に息を吐くとテントの外に出て息を大きく深呼吸する。

 

「すーはー。うん気持ちいい~」

「ことりちゃん。どう?進みそう?」

 

そんなことりに声を掛けたのは少し前にテントから出て行った花陽だった

 

「うん。一息ついたら少しイメージが湧いてきたよ…それは?」

「綺麗だな~って思って。同じ花なのにひとつひとつ色が違ったり、皆それぞれ個性があるの。今回の曲のヒントになると良いな」

「ありがとう花陽ちゃん」

 

花陽が摘んできた花を手に言うとことりが笑顔で返し、花陽も笑顔になる。

 

「それにしても穂乃果ちゃんと夏希君はよく寝てるね」

「そうだね」

 

花陽がテントの中を覗くと2人は先程の寝相から動く事無く眠っていた。ふとそんな2人を見ていたことりと花陽からも欠伸が漏れる。

 

「なんだか…」

「うん」

「眠くなっちゃうね~」

「…うん」

 

そしてことりと花陽はすでに寝ている2人の隣に横になり、少ししてから寝息をたて始めた。

 

~作詞班~

「にゃー!」

 

残った作詞班に凛はなぜか崖から落ちそうになっている所を上から海未と愛生人が引っ張り、下からは希が支えていた。

 

「凛!絶対に手を離してはいけませんよ!」

「凛ちゃん!しっかり掴まっててねー!」

「イーヤー!今日はこんなのばっかりにゃー!」

「ファイトが足りんよー!」

 

そしてなんとか凛を引き上げると凛は崖の上に座り込む。愛生人は凛の隣にしゃがみ込み頭を優しく撫でている。

 

「雲がかかってきた。山頂まで行くのは無理そうやね」

「そんな…せっかくここまで来たのに…」

 

希が雲の様子を見て状況を冷静に言うと、海未が心底残念そうに言う。

 

「酷いにゃ!凛はこんな所に全っ然来たくなかったのにー!」

 

目に涙を浮かべて抗議した凛に海未は仕方ありません、と凛の方を向く。海未のその様子に凛は少し期待した目を海未に向け

 

「今日はここで明け方まで天候を待って、翌日アタックをかけましょう……山頂アタックです!」

「まだ行くんですか!?」

 

その目にさらに涙を溜める事となった。海未の言葉に愛生人が驚き聞き返す。

 

「当たり前です。何しにここまで来たと思ってるんですか?」

「作詞に来たはずにゃ~!」

「ハッ!」

「まさか忘れてたんですか!?」

 

凛の涙ながらの抗議に海未は目を見開いて驚く。そのリアクションに愛生人は思わず立ち上がりツッコむ。

 

「そ、そんな事はありません。山を制覇しやり遂げたという充実感が、創作の源になると私は思うのです」

 

海未は少しつっかえながら目を逸らし答える。そんな

 

「まぁまぁ海未ちゃん。気持ちは分かるけど、ここまでにしといた方が良いよ」

「ですが…」

「山で一番大切なのは何か知ってる?」

 

希の問いに海未は首を傾げる。希はそんな海未に笑い掛けるとその答えを言う。

 

「それはっチャレンジする勇気やなく、諦める勇気。分かるやろ?」

「希…」

「凛ちゃん、愛生人君。下山の準備して晩ご飯はラーメンにしよ」

 

希の言葉、正確には晩ご飯のメニューを聞いて一瞬にして笑顔になる凛。

 

「下に食べられる草がたくさんあったよ。海未ちゃんも手伝って」

「は、はい」

 

~作曲班2~

 

空が暗くなり始めた時作曲班はテントの外で焚火を焚いていた。焚火のそばでは絵里が不安そうに空を見上げる。

 

「ねぇ」

「「ん?」」

「どうしたの?」

 

空から視線を戻して同じ様に焚火を囲んでる若葉、真姫、にこの方を向く。

 

「このままだと、火を消したら真っ暗、よね」

「そうね。何か拙いの?」

「まさか暗いのが苦手なの?」

 

真姫とにこの質問に絵里はまさか、と言ってテントに潜り込むと明かりを点ける。

 

「フフッ。絵里にこんな弱点があったなんてね」

「この年にもなって暗いのが苦手なんて」

 

とにこは慌てた様子で弱くなった焚火に息を吹き掛け火を大きくする。若葉と真姫はそんなのこを見て思わず笑みが零れる。

 

「全く、こんな3年生の為に曲を考える方の身にもなってよ」

「え、今なんて言った?」

「え…」

「今3年生の為って言ったわよね」

 

真姫は身を乗り出して聞いてくるにこにたじろぎながらも、だったらなんだ、と聞く。それを聞いたにこはそんな事だと思った、と言って身を引く。

 

「3年生の為に良い曲作って、3年生の為に勝とうって」

「そ、そんな事…」

 

にこの言葉に真姫は否定しようとするも、図星だったらしく途中で言葉を止めてしまう。

 

「曲はいつもどんな時も全員の為にあるのよ」

「な、何偉そうに言ってるのよ」

「部長だもん。当たり前でしょ」

 

にこと真姫のそんなやり取りを目の前で見ていた若葉は、焚火の中から銀紙に包まれた焼き芋を取り出すと、2人に渡す。

 

「はいこれ。2人で仲良く半分こね。熱いから気をつけて」

「あ、ありがとう」

「気が利くじゃない。焚火と言ったら焼き芋だものね」

 

にこが若葉に渡された芋を半分に割り、片方を真姫に渡す。にこから芋を受け取った真姫はチラリと若葉を見る。真姫に見られた事に気付いた若葉は自身の手に握られているもう一つの芋を見せて真姫に笑い返す。

 

「ほら絵里もテントに籠ってないで一緒に焼き芋食べようよ」

「焼き芋?いつの間にそんなものを」

 

若葉はテントに入ったきり出てこない絵里を呼び、にこ同様半分に割り片方を絵里に渡す。そして焚火を囲むように座り直すと4人は談笑しながら焼き芋を食べ始める。

 

〜衣装班〜

昼間寝ていた衣装班は露天風呂に入っていた。

 

「こんな所にお風呂があったなんて」

「はぁ~気持ち良い~」

「なんか眠くなっちゃうね~」

「だな~昼間あんなに寝たのにな~」

 

ことり、花陽、穂乃果ののんびりとした声に柵を挟んで一緒に入浴している夏希も3人に賛同する。

 

「夏希く~ん。そっちにも誰もいないの~?」

「ああ、”も”って事はそっちもか?」

「うん。私達しかいないよ」

 

穂乃果、夏希、ことりがのんびりとそんな会話をしていると、花陽がふと

 

「他の皆、今頃どうしてるかな」

「ん~どうだろう…私、まだできてない……」

 

花陽の疑問にことりが苦笑いで答える。夏希はその言葉を聞いて、まぁ寝てたしなー、と心の中でぼやいていた。

 

「できるよ。だって9人もいるんだよ」

 

穂乃果はそんなことりを励ます様に立ち上がって言う。花陽とことりはいきなり立ち上った穂乃果に驚きの声を上げ、夏希は女子側の流れが分からずに困惑していた。

 

「誰かが立ち止まれば誰かが引っ張る。誰かが疲れたら誰かが背中を押す。皆が少しずつ立ち止まったり、少しずつ迷ったりして、それでも進んでるんだよ」

 

穂乃果はそれだけ言うと湯船に浸かるとことりと花陽を見る。

 

「だからきっとできるよ。ラブライブの予選の日はきっと上手くいくよ」

「うん」

「そうだね」

 

3人はそれを最後に静かに星空を見上げた。因みに途中から喋ってない夏希は穂乃果達が出てから暫く、逆上せた状態で男子風呂から担ぎ出された。

 

~作詞班~

 

「綺麗だにゃ~」

 

作詞班はテントから上半身だけを出して寝袋を敷き、横になって満天の星空を眺めていた。

 

「星はいつも自分を見てくれている。星空凛って言うくらいやから、星を好きにならないとね」

 

希の言葉に元気に頷き返す凛。

 

「希さん星座に詳しいんですね」

「一番好きな星座とかあるの?」

 

愛生人と凛の質問に希はそうやね~、と目を瞑って瞼の裏に夜空を思い浮かべる。

 

「印象に残ってるのは南十字星かな」

「南、十字星…?」

「ペンギンと一緒に見たんやけどね」

『南極!?』

 

海未の不思議そうな台詞に希が笑顔で答えると、まさかの答えに3人は顔を見合わせて驚く。

 

「あ、流れ星」

 

希の突然の言葉に顔を見合わせていた3人は慌てて夜空に視線を戻す。

 

「南に向かう流れ星は物事が進む暗示。一番大切なのは本人の気持ちよ」

 

希は海未にウィンクをするとテントの中に入っていった。そして流れ星を見れなかった、とぼやく凛。

 

「いいえ。流れ星なんて最初からありませんでしたよ」

 

海未が凛に優しい笑みで言うと、愛生人と凛もテントの中に入り毛布を掛けて寝息を立て始める。海未がそんな3人を見ていると別荘の方からピアノの音色が聞こえてきた。海未がそちらを見ると別荘に明かりが点いているのが見えた。海未が別荘の前まで行くと、反対側からことりも歩いてくる。そして互いに笑い合うと揃って中に入る。

 

「2人ともこんばんわ」

「あ、若葉君」

「こんばんわ。今弾いているのは」

「みたいだね」

 

2人が中に入るとちょうど若葉と玄関で会う。そして3人でピアノを弾いている真姫の元へ行くと

 

「いつもどんな時も全員の為に、か」

 

真姫の呟きに3人が真姫に近付く。そして4人は笑顔で見合うと各々の作業に取り掛かった。

 

☆☆☆

 

次の日の朝。若葉は眠い目を擦りながら作業が終わった状態で寝ている3人に毛布をかけていると、突然夏希がリビングに飛び込んでくる。若葉は夏希に向かって静かにする様にジェスチャーを送ると、夏希も意味を理解したのか静かにするも、どこか慌てていた。

 

「どうしたの?」

「ほのっちが消えた」

「穂乃果ってそこまで寝相悪くないハズなんだけどな…」

 

夏希の言葉に若葉は欠伸をしつつ頭を掻く。それから立ち上がり、10分程で戻るとその傍らには寝ぼけ眼の穂乃果がいた。そしてその後ろには絵里達が揃っており、眠っている3人を見る。

 

「まったくしょうがないわね」

「ゆっくり寝かせておいてあげよっか」

 

希の提案に絵里も賛成しつつ楽譜を手に持つ。

 

「でも起きたらすぐ練習よ。ばっちりね」

 

絵里の言葉に衣装のデザイン画と歌詞カードを見た凛と穂乃果が笑って頷く。こうしてμ'sのラブライブ予選に向けた新曲が出来上がった。

 




【音ノ木チャンネル】
夏「さてと、今回は3つのユニットに分けて作業したな」
若「それより夏希。穂乃果と風呂入ったの?」
夏「いや、入ったっつってもちゃんと男女別だったからな?」
愛「そりゃ当たり前ですよ!むしろ混浴だったら今この場に夏希さん存在しませんよ?」
夏「え、そこまで!?」
若「オモニオレノシワザデナ」
愛「片言になってますよー」
夏「だ、大丈夫。俺にはツバサが居るかあだだだ!」
ツ「高坂さん達と混浴ってきこえたんだけど?」
夏「ご、誤解だって!若達からも言ってくれよ!」
若「まぁまぁツバサさん落ち着いて。取り敢えず首に回した腕は離しましょう?」
愛「ハッ、若葉さん、よく見て下さい。あれは首をキメてると思わせてその実、首に抱き付いて甘えてるだけです!」
若「な、なんだって!?」
ツ「片丘君惜しいわね」
夏「あぁまだまだだな。これはただ甘えてるんじゃなく」
ツ夏「「「当ててんのよ」をしてるんだ(のよ)」」
夏「因みに最初に俺が痛がるのからがセットだ」
愛「て事は実際にはキメてないんですか?」
夏「いや、偶に本当にキメる時がある」
若「ツバサさんって凄いんだね。スクールアイドルでキメれるなんて」
ツ「あら、高坂君程ではないわよ」
愛「確かに…でもどうして締め技とか使えるんですか?」
ツ「護身用に教えられたのよ」
夏「それが今や照れ隠しの為の手段だがな」
ツ「有効活用と言っても良いのよ?」
夏「明らかに使用用途間違ってるだろ!」
愛「まぁまぁ。そろそろ時間ですし」
若「だね。じゃあお決まりの文句をツバサさんにお願いします」
ツ「えっと、誤字脱字、感想、批判、アドバイス等を待ってるわよ。因みに7月末までのアンケートも実施してるわ。そっちもよろしくね。じゃあ」
『バイバーイ』


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既に退路は断ったよby花陽

風邪で2.3日ダウンして投稿遅れました。


地区予選で行う曲が完成した日の午後。穂乃果達はその日の練習を終わらせ、自由時間を過ごそうとしていた。

 

「せっかく川があるんだから水遊びしに行こうよ〜!」

「こんな寒い時期に水遊びをしたら風邪を引いてしまいますよ」

「バカは風邪引かないって言うし、大丈夫じゃね?」

「なんか既視感を感じるにゃ!それに凛達はバカじゃないもん!」

 

凛と穂乃果が夏希の言葉にシャー!と言って食い付く。そんな光景を見てまぁまぁと2人を宥める愛生人。

 

「いえ、今度こそ山頂アタックを決めます!」

「また山に登るの!?」

「またって、作詞班は昨日何してたんだよ」

 

凛が海未にツッコムのを聞いて呆れた様に夏希が呟き、前日一緒に登山した希達を見ると希は楽しそうに笑い、愛生人は少しげんなりしていた。

 

「じゃあ水遊びと登山で別れたら良いんじゃない?」

 

水遊びか登山かで言い合っている穂乃果と海未に花陽が提案すると、にこと若葉も賛成したのでその場で水遊びか登山どちらに行くかの挙手が行われた。

結果、登山に行くのは海未、希、絵里、にこ、夏希の5人となり、水遊びに行くのは穂乃果、凛、愛生人、花陽、ことりの5人となった。若葉と真姫は別荘でのんびり過ごすという3つ目の案になった。

 

「ってなんで若は第3の意見出してんだよ!」

「だって眠いんだもん」

 

夏希のツッコミに欠伸をして返す若葉。

 

「若葉さんって昨晩寝ました?」

 

愛生人の質問に若葉は黙って首を振りだから、と続ける。

 

「俺はここでゆっくり寝てるよ」

「じゃあ真姫ちゃん。お兄ちゃんの事よろしくね」

 

若葉がそう言うと、穂乃果が立ち上がり川に行く準備を始めた。それから他のメンバーも山と川、それぞれが行く準備をした後別荘から出て行く。

皆が出て行き、静かになったリビングでは若葉がソファに座り、うとうとしていた。

 

「若葉、ここで寝ると風邪引くわよ。2階にベットがあるから寝るならそこの方が良いわ」

「……うん、そうする」

 

真姫の提案に寝ぼけ半分で返事をし、フラフラと覚束ない足取りで歩き出す。

 

「ちょっと若葉!そっちは中庭よ」

「…あれ?」

「まったく。ほら連れて行ってあげるから」

「ありがと〜」

 

寝ぼけているからなのか普段より酷い方向音痴を見せた若葉に、真姫は慌てて近寄り2階の寝室に連れて行く。

 

「着いたわよ」

「ん〜ありがと」

 

若葉はそれだけ言うとベットに倒れ込み、そのまま寝息を立てた。そんな若葉に真姫は仕方ないといった風に首を振ると寝ている若葉を起こさないようにそっと毛布を掛け、傍の椅子に腰を掛けた。

 

☆☆☆

 

それから時間が過ぎ夕方になった頃、遊びに出掛けていたメンバーが別荘に戻ってくる。

 

「あれ?若葉さんと真姫ちゃん居ませんね」

「大方2階で寝てんだろ。ちょっと起こしてくるわ」

 

愛生人がリビングに2人がいない事を言うと、夏希が階段を上がって2階へと向かい、その間に水遊びで冷えた体や登山でかいた汗を流しに女子達はお風呂へと向かった。

 

「おーい若ー、マッキー、そろそろ起きろーっと?」

「あ、夏希。おはよう」

「おはようってもう夕方だぞ。んで?それどういう状況?」

 

夏希は若葉の挨拶に呆れつつも、椅子に座ったままベットに伏せている真姫を指して聞く。

 

「んー俺が起きた時にはこうなってたからよく分からないんだけど、多分寝てる俺を座って見てたら真姫も寝ちゃったって感じじゃない?」

 

若葉は真姫の頭に手を置いて夏希の方を見ると、羨ましいだろ、といった目で見る。

 

「いや別に羨ましくはないが。で、若はいつまでそうしてるつもりなんだ?そろそろ晩飯作らないとだろ?」

「まぁ、そうなんだけどね」

 

若葉の歯切れの悪い返事に夏希は首を傾げ、理由を問うように見返す。夏樹に見返された若葉は苦笑すると

 

「実は真姫が俺の膝を枕にして寝てるから動こうにも動けないんだよね」

「……普通に起こしゃ良いだろうが」

「えー、せっかく気持ち良さそうに寝てるのに邪魔しちゃ悪いじゃん?それにもう少し見てたいし」

「いいから早よ起こせよ…」

 

呆れた様に溜め息を吐きつつ言う夏希に仕方ないなー、と呟きつつ寝ている真姫の鼻を摘む若葉。

 

「ん、ぅんー……ん?」

 

鼻を摘まれて数秒、真姫は目を開け辺りを見回すと寝起きで意識がはっきりしてないのか、頭を少しで傾げていた。

 

「や、真姫。良く寝てたね」

「………!」

 

そんな真姫に若葉が笑顔で挨拶すると、真姫は自分の状況を理解し顔を赤くして上体を起こす。

 

「お、おはよう若葉」

 

そして若葉から赤くなった顔を隠す様に背けて挨拶を返す。そんな2人のやりとりを見て夏希が熱いね〜、と茶化すと無言でまくらが飛んで行き、夏希の顔に当たる。枕の勢いが良かったのか、当たった際に夏希が数歩後退る。

 

「さて、晩ご飯の時間だから下に行こうか」

「そうね。ところで今晩は何を作るの?」

「う〜ん。何にしよっかなー」

 

そんな夏希を無視して若葉と真姫は部屋を出て、晩ご飯の献立を話し合いながら階下へ降りる。若葉と真姫が1階に降りるとリビングにいたのは愛生人のみ。若葉が穂乃果達の所在を聞くと愛生人は無言で浴場を指す。

 

「ご飯の前に入浴か…ついでだから真姫も入ってくれば?」

「皆さん数分前に行ったばかりですから、今から行ってもゆっくり出来ると思いますよ」

 

という2人の勧めで真姫も浴場へと向かい部屋を出て行く。それと入れ替わりに夏希が首を抑えながらリビングに入って来る。

 

「なぁ少し茶化したくらいであの仕打ちはないんじゃねぇの?」

「なにがあったんですか?」

「そんな事より、晩ご飯何にする?」

 

夏希が若葉に抗議しようとするも、若葉が話を逸らす。何の事か分からない愛生人はただ首を傾げるばかりで、やる事もないのでキッチンに向かった若葉を追う。

 

「んーこの材料だと…牛丼、とか?」

「だったら普通に焼肉で良いんじゃないですか?」

「でも肉は牛しかないぞ?」

「凛辺りから苦情が来そうだね」

「夏の合宿の時は大変でしたよ…」

 

若葉の言葉に夏の合宿でのBBQの時の事を思い出した愛生人が遠い目をして呟く。

 

「じゃあすき焼きでいんじゃね?肉も足りそうだし」

「すき焼きか…問題は鍋が3つ、無くても2つあるのかな」

「あ、鍋なら3つありましたよ」

「じゃあすき焼きにするべ」

 

夏希の提案で晩ご飯のメニューも決まり、3人はそれぞれ動き始める。夏希は食器やすき焼きに必要な器具の準備、若葉と愛生人は具材を切って行く。そして女子陣が入浴から出て来る頃には粗方準備が終わっており、後は白米が炊き終わるのを待つのみ。

 

「それにしても私達そんなに入ってなかったのに、ずいぶん手際が良いのね」

「その分本格的なすき焼きじゃないけどな」

「本格的なすき焼き?」

 

感心した様に言う絵里に夏希が言うと、凛が首を傾げて聞く。

 

「ちゃんとやろうとしたら5.6時間前から下準備が必要なんだよ」

「そんなに前から!?」

 

若葉が凛に答えるとその必要な時間に驚きの声を上げる。そんな時、ピーッと電子音が鳴り響く。

 

「皆さーん。ご飯が炊けましたので、席についてくださーい」

 

愛生人が炊飯器の傍の椅子に座って思い思いの行動をしていたメンバーに呼び掛ける。愛生人に呼び掛けられ全員が椅子に座ったのを確認すると、愛生人は茶碗に白米をよそって回していく。その間に若葉と海未がそれぞれの鍋に具材を入れて行く。

 

「それじゃあ全員に行き渡ったので食べましょう」

『いただきまーす』

 

☆☆☆

 

『ごちそうさま〜』

 

全員が満足した顔で手を合わせると、夏の時同様穂乃果と夏希がダレ始める。

 

「お兄ちゃ〜ん」

「若〜」

「「お茶〜〜」」

 

そんな2人は食器を片付けにキッチンへと向かう若葉を目敏く見つけ、お茶を注文する。そんな2人に若葉は溜め息を吐きつつ頷いて答えると、1つの湯呑みを持って戻って来る。

 

「あれ?俺のは?」

「自分で淹れな」

「若のケーチー!」

 

湯呑みが穂乃果の前にだけ置かれたので夏希が聞くと、若葉はニッコリと笑ってそう告げる。夏希はそんな若葉に文句を言いつつ、キッチンへとお茶を淹れに行く。

夏希が戻り一息つくと男子陣は入浴の為に浴場へと行き、その間に女子陣は就寝場所について話し合っていた。

 

「さすがに1部屋に3人は窮屈やない?ベットも2つしか無いし」

「し、しかしリビング(ここ)で寝ようにもそんなにひろく無いですし」

「ソファどかせばなんとかなるんじゃないかしら」

 

希がどうするか切り出すと、海未が先回りで否定する。しかしその主張も絵里によって崩され海未はその場に膝をつく。

 

「な、なぜなのです。なぜ、皆は抵抗が無いのですか…」

 

海未はなぜ若葉達男子と同室で寝るのに抵抗が無いのか、不思議に思い全員に聞く。それに対する回答は細部は違えど統合すると、男子達はそう簡単に襲っては来ないだろう、となった。

 

「なんか賑やかだね」

「ガールズトーク中だったか?」

 

就寝場所が決まり、その後お決まりのように真姫が若葉とデートに行ったのか、など質問攻めにあっていると、後頭部で軽く髪を縛っている若葉と眼鏡をかけた夏希が戻って来る。

 

「あ、若葉君や。ちょうどええ所に」

「ふっふっふ。既に退路は断ったよ。若葉君」

「えーと、なんで希は俺ににじり寄ってくるの?そして花陽は扉の前から退いて!いざという時逃げられないから!」

 

若葉はよく分からない慌てながらも、なんとか逃げられないか道を探すも、夏希に肩を叩かれてそちらを見る。すると夏希は爽やかな笑顔で若葉を見ていた。

 

「若、よく分からないが諦めろ」

「後で覚えといてね」

 

若葉がそれだけ言うと左右から希と花陽に捕まり、真姫同様質問攻めにあい、その中に穂乃果も混ざっていて質問攻めが終わった後に若葉に両頬を摘まれたのだった。

 

 

 

 

 




【音ノ木チャンネル】
若「あー酷い目にあった…」
愛「僕が行くまでにこんな事があったんですね」
夏「ちょっと良いか?」
若「どうしたの?いつに増して真剣な表情だけど」
夏「いやな、この「男子達はそう簡単に襲っては来ないだろう」って結論に至った経緯を知りたくてな。多分読者の皆も思ってるはずだ」
愛「えー…それ答えなくちゃいけないんですか?」
若「まぁまぁ。良いネタが見つかったって思えば良いじゃん」
夏「たとえその通りだとしても、それを言ったらおしまいだぞ」
若「で、経緯を知りたいんだっけ?取り敢えず皆に答えてもらおっか。まず俺の場合ね」
穂「だってお兄ちゃんだし」
こ「だって若葉君だし」
希「だって若葉君には真姫ちゃんがおるやろ?」
絵「若葉はそこまで節操なしじゃないと思うわ」
花「真姫ちゃんがいるから若葉君は手を出して来ないと思うよ」
凛「凛もかよちんに同感にゃー!」
真「ま、まぁ若葉になら……」
に「まぁ寝る場所から言って私の所まで来ないでしょ」
夏「まぁマッキーを含めて予想通りだな。じゃあ次は俺の場合」
穂「夏希君はお兄ちゃんが見てると思うよ?」
こ「う〜ん。多分大丈夫だと思うよ」
希「夏希君にはそんな度胸ないんとちゃう?」
絵「昔から知ってる仲だから今更よね」
花「若葉君と愛生人君に挟まれてるから、さすがにどっちかが気付くかと」
凛「アキ君が守ってくれるはずにゃ!」
真「だって夏希には相手がいるじゃない」
に「若葉と同じね」
夏「俺の扱い酷くないか?主に希とことり!」
愛「気のせいですよ。じゃあ最後に僕の場合ですね」
凛「こ、これは凛以外は一緒の答えだったにゃ…」
愛「え。そうなの?」
凛「うん」
『だって凛ちゃんがいるじゃん』
若「本当に一緒なんだね」
夏「でも2人ってまだ付き合ってないんだろ?」
愛凛「「……」」
真「まさか…」
希「もう付き合ってるん?」
花「いつから!いつから付き合ってるの!?」
愛「ちょ、花陽ちゃん。まだ付き合ってないから!」
凛「そ、そうにゃ!それよりそろそろ尺だから凛が締めるね!じゃあ誤字脱字、感想、批判、アドバイスとかあったらどんどん言って欲しいにゃ!それじゃあ」
『バイバーイ』





若「愛生人逃げたね」
夏「逃げたな」


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……え?byツバサ

今回は少ないながらも夏希とツバサのやりとりがありまーす。


アイドル研究部の2泊3日の合宿から帰った翌週。部員は地区予選目指していつもの屋上で練習をしていた。

 

「へぇ~これがラブライブ専用のサイト…」

 

2組に別れて振り付けの練習をしており、今休憩時間に当たっている穂乃果、絵里、花陽の3人はラブライブのサイトを見ていた。そんな中、穂乃果がサイトのとある項目を見つけた。

 

「それは予選が行われる各地のステージですよ」

「今回の予選は参加チームが多いから会場以外の場所で歌う事も認められてるの」

 

穂乃果の疑問に一緒に休憩していた愛生人と、隣に座っていた花陽が答える。2人の答えに穂乃果は驚き聞き返す。

 

「それはルールブックにも載っている事よ。なんで穂乃果は知らないの?」

「いや~文字を読むのが苦手で」

 

絵里が穂乃果に聞くと穂乃果は苦笑いで答える。その答えに絵里は少し不満そうに眉を顰める。

 

「若葉さんからも聞いてないんですか?」

「うん。お兄ちゃんも特に何も言って来なかったよ」

 

愛生人の質問には穂乃果は頷く。穂乃果の答えを聞いた愛生人と絵里は手を叩いてリズムを取っている若葉にジト目を向ける。その後ろでは花陽が穂乃果に更に細かく説明していた。

 

「もし自分達で場所を決めた場合、ネット配信でライブを生中継、そこから全国の人にライブを見て貰うんです」

「全国…凄いや!」

 

花陽の説明を受けて、目を輝かせる穂乃果。すると絵里が屋上を見渡してふと呟く。

 

「そういえば、今日夏希はいないのね」

「あ、なんか用事があるとかで帰ったみたいですよ」

 

絵里の呟きを聞き取った愛生人がLIMEのグループトークを見せる。そこには確かに用事があって先に帰る旨が書き込まれていた。

 

☆☆☆

 

「で、急にどうしたんだ?平日のこんな時間から会いたいなんてお前にしては珍しいじゃん」

「そんな事はないわよ?私だって会いたくなる時だってあるんだから」

 

UTX学院前、夏希はツバサと会っていた。もちろんツバサは帽子を被ってバレにくくしている。

 

「そっか。でも今地区予選中だろ。練習良いのか?」

「今日は練習休みなのよ。そういうμ'sはどうなのよ」

「それは秘密だ。つか今日はそんな話をする為に呼んだ訳じゃないだろ?」

 

夏希が半身になり横目でツバサを見ると、ツバサは笑って夏希の腕に飛び付く。夏希はいきなり飛び付かれたのにも関わらず、大してバランスを崩す事無くそのままUTX学院から離れる様に歩き出す。

 

「あ、そうだ。なっ君に少し相談があるんだけど」

「スクールアイドル関連以外の事だったら聞いてやるよ」

「むー、イジワル」

 

ツバサは頬を膨らませていじける様に顔を俯かせる。そんなツバサに夏希はそっと息を漏らすと、帽子の上から頭をくしゃくしゃと掻くように撫でる。ツバサは少し照れたように夏希から離れ、少し先へと進む。

 

「まぁ今は聞かないってだけでまた今度聞いてやるって。ツーちゃんもせっかくのデートなのにあんまそういう話ばっかだとツマラナイだろ?」

「それもそうね。じゃあ早速洋服でも見に行きましょ!」

「へいへい。どうぞ姫のお好きな所へ」

 

夏希はそういうと離れた距離を縮めるべく少し早足でツバサを追いかけた。

 

☆☆☆

 

一方、μ'sはというと部室で改めて大会の詳細の話し合いが行われていた。

 

「各グループの持ち時間は5分。エントリーしたチームは出演時間が来たら自分達のパフォーマンスを披露する」

 

若葉がホワイトボードに書き込みながら説明する。

 

「そしてこの画面から全国に配信後、それをみた視聴者さん達による投票で順位が決定。上位4グループが最終予選に進出って感じだよ」

 

説明は終わりとばかりにマーカーのキャップを閉じる。

 

「4グループ、狭き門ね」

「特にこの東京地区は1番の激戦区」

「それになんと言っても…」

 

真姫、希、花陽は立ち上がっているパソコンの画面を見る。そこにはA-RISEの優木あんじゅ、統堂英玲奈そして綺羅ツバサの3人が映っていた。

 

「既に彼女達の人気は全国区。4組の内1つは決まったも同然」

「えー!て事は凛達は後3つの枠に入らないといけないの!?」

 

にこが腕を組んで悩む様に言うと凛がその隣の席で叫ぶ様に抗議の声を上げるも、それとは対照的に穂乃果は楽しそうに部室にいる全員に告げる。

 

「でも後3グループ進めるんだよ。今回の予選は会場以外の場所で歌う事も認められてるんだよね?」

 

最後の方は若葉に向かって言う。若葉は穂乃果の質問に黙って頷く。

 

「だったらこの学校をステージにしない?」

「確かにここなら緊張しなくて済む分、μ'sらしいライブが出来ますね」

「うん。それ良いかも」

 

穂乃果の提案に愛生人とことりが賛同するも、机を挟んだ反対側から別の声が上がる。

 

「甘いわよ」

「にこちゃんの言う通り。中継の配信は1回勝負。やり直しはきかないの。失敗すればそのまま全世界の目に晒されるんだよ」

 

それはにこと花陽だった。そして2人の提案からカメラ慣れする為にとカメラを持って中庭に出る。

 

「画面の中で目立たないといけないから目新しさも必要になるのよ」

「目新しさ…?」

「奇抜な歌とか?」

「衣装とか?」

「例えばセクシーな衣装、とか?」

 

穂乃果がにこの言葉に首を傾げるとそれに続く様に凛とことりも首を傾げる。希は面白いものを見たそうにメンバーを見回して言う。

 

「む、無理です…」

「海未ちゃ~ん」

「こうなるのも久し振りだね」

「なんか久し振りに見るね。この光景」

 

木の下のベンチに座り込む海未を見てなにか懐かしいものを見るような目で見る若葉、ことり、穂乃果。そんな4人を余所に希は真姫と絵里の背後に近付くとそっと囁く。

 

「えりちと真姫ちゃんのセクシードレス姿も見てみたいな~」

「えー…」

「や、やらないわよ!」

「何をやらないの?」

 

真姫の否定の言葉を聞いた若葉が聞くも、真姫はなんでもない、と答えて背を向ける。

 

「放して下さい!私は嫌です!」

「誰もやるとは言ってないよー」

 

穂乃果は逃げ出そうとしている海未を抑えていた。その反対側ではにこが凛の両頬をつねっていた。

 

「ていうかこんなカオスな事やってないでやる事やりましょうよ」

「そうね」

『やれる事?』

 

愛生人と真姫の言葉にその場の全員が首を傾げ、黙って愛生人について行く。着いた先は放送室。

 

「と、言う訳でやって来ました放送部」

「前に会った事があると思うけど、こちら賀田山さんよ」

 

真姫がある女子生徒、賀田山を紹介する。

 

「あれ?賀田山さんって確か家庭科部に所属してなかったっけ?」

「はい。掛け持ちをしているんですよ」

「それで小夜香。お願いがあるんだけど」

 

若葉と賀田山が話していると真姫が割り込み用件を伝えると、賀田山は笑顔で頷き用件を了承する。

 

「こうやって実際マイクに向かって校内の皆にアピールすれば応援して貰えるし、中継される時の練習になるでしょ」

「真姫ちゃんナイスアイディア!」

 

真姫の案に穂乃果が身を乗り出して喜ぶ。

 

「学校なら失敗しても迷惑は掛からないし、外に漏れる心配もない」

「まぁだからって失敗して良いって訳じゃないけどね」

 

絵里の言葉に若葉は笑いながら釘を指す。そんな中あ~、と少し呆けた様な声が3つ放送室に流れる。

 

「凛に花陽、愛生人。変な声出して」

「真姫ちゃんが同じクラスの子と仲良くなるなんて」

「びっくり~」

「しかも下の名前…」

 

3人が顔を見合わせると真姫は頬を赤らめて顔を逸らす。

 

「べ、別にただ日直で一緒になって少し話しただけよ!」

「あと偶に真姫ちゃんが料」

「さーやーかー!」

 

賀田山の言葉に真姫は慌てて口を塞ぐ。若葉はりょう?と首を傾げ、希は続きが分かったのかニヤりとしながら真姫を見ている。周りの穂乃果達も真姫を笑って眺めている。

 

「ほ、ほら。早くやるわよ!」

「じゃあ取り敢えず穂乃果。リーダーとして一言挨拶してみて」

「はーい!」

 

真姫と若葉に促され穂乃果がマイクの前に立ち、賀田山から簡単に使い方の説明を受け、息を吸う。そして

 

「あー。皆さんこんにちは!うがっ!…いったーい!」

 

挨拶と同時にお辞儀をしマイクに額をぶつける。そんな穂乃果に邪魔にならない様に放送室の入り口まで下がっていたにこが注意する。

 

「ええっと…皆さんこんにちは。私生徒会長の、じゃなかった。μ'sのリーダーをやっています高坂穂乃果です。ってそれはもう皆知ってますよね。実は私達またライブをやるんです。今度こそラブライブに出場して優勝を目指します。皆の力が私達には必要なんです。ライブ、皆さんぜひ見て下さい。一生懸命頑張りますので!応援よろしくお願いします!高坂穂乃果えした。そして他のメンバーを紹介…あれ?」

 

穂乃果が後ろで控えていた海未と花陽を見ると、2人ともガチガチに緊張していた。若葉はそんな2人に息を吐くと海未の背中を押す。

 

「じゃあ海未からいってみようか」

「は、はい!」

 

若葉に押され緊張した様子でマイクの前に立つと、海未は声を絞り出す様に話し始める。

 

「園田海未役をやっています。みも、園田海未と申します。応援、お願いします」

 

海未はそれだけ言うとマイクの前から退き、素早い動きで若葉の背後に隠れる。若葉と穂乃果は苦笑いで顔を見合わせる。

 

「じ、じゃあ次花陽ちゃんやってみようか」

「は、はい…」

 

穂乃果に促され花陽がマイクの前に立つ。その背中は実際よりも小さく見えた。

 

「なんでこの3人にしたの?」

「リーダーと1番緊張しそうで練習が必要な2人。あと補助として真姫と若葉よ」

 

にこの疑問に絵里が少し困った様に返す。

 

「でもこれ、練習になってるんですかね」

 

小さい声でマイクに自己紹介をしている花陽を見て愛生人が顔を引き攣らせる。真姫も同じ事を感じたのか賀田山にマイクのボリュームを上げてもらう。

 

「おーい。声、もっと出して。こーえー」

 

愛生人の言葉を受けて凛が花陽に声を出す様に小声で注意を促す。それに親指を立てて答える穂乃果。そして花陽の横からマイクの前に立つと両手をつき、息を吸い込む。

 

「ちょ、穂乃果!?」

「イェーイ!そんな訳で皆さんμ'sをよろしく…あれ?」

 

穂乃果が話すのを止め周りを見るとその場にいた全員が両手で耳を塞いでいた。両耳を塞いでいたのはなにも若葉達だけでなく、校舎内にいた全生徒と教師も同様のリアクションをとっていた。

 

「もう!何やってるのよ!」

「あはは。μ'sらしくていいんじゃない」

「それは褒められてるのかな…」

 

真姫が穂乃果に文句を言うと隣で座っていた賀田山が笑って言う。その言葉に若葉は頬書きながら苦笑いで呟く。それから賀田山にお礼を言って屋上に戻る。

 

「取り敢えず人前に出る練習はこれで終わりにするとして、後は場所だね」

「カメラで中継出来る所であれば、場所は自由だから」

「でも屋上は学園祭の時に使っちゃったし」

 

絵里の台詞に穂乃果がそっかぁ、と声を漏らす。

 

「講堂も、正門前も、グラウンドももう使っちゃったもんね。同じ場所だと目新しさがなくなっちゃうもんね」

 

ライブの場所を話し合うとことりが候補を消していく。

 

「でもだからと言って街中でも一度使ってますもんね」

 

愛生人の言葉に全員がうーん、と良い場所がないか考えるも、妙案が出てこなかった為その日は練習を終わらせて帰路につきながら場所探しをする。

 

「んーアキバはA-RISEのお膝元やからな~」

「下手に使うと喧嘩売ってる様に思われるわよ」

「そうだよね~」

「A-RISEと言えばUTXってこの近くだよね。ちょっと様子見に行く?」

 

若葉がUTX学院を指して振り返ると、若葉が振り返きる前にその脇をにこと花陽が駆け抜ける。

 

「何してるの!早く行くわよ!」

「そうですよ!時は金成、タイムイズマネーだよ!」

 

そしてさっさと先を行く2人を慌てた様に追いかける9人。そしてUTX学院の前に着くと電光掲示板でA-RISEの宣伝広告が流れていた。

 

「おーっす若」

「あー夏希じゃん……夏希!?」

 

画面を眺めていた若葉に声を掛けたのはその日練習を休んだ夏希だった。そしてもう1人若葉に話しかける。

 

「高坂さん」

「えーっとツバサさん。言い難いんですけど」

「シー。来て」

 

ツバサは突然若葉の腕を掴むとUTX学院の中に走って連れて行き、若葉もそれにつられて走る。ツバサに連れて行かれている様子を花陽とにこが目撃し、慌てて2人を追いかける。

 

「あれ?夏希君?」

「どうしてあんたがここにいるのよ」

 

ツバサと若葉を追いかけていると、同じ様に追っていた夏希と遭遇する。夏希はにこの質問に答えずに手を上げ軽く挨拶を済ませる。

 

「なんかツバサがほのっちと間違えて若を連れてったみたいなんだ」

「それどういう状況よ!」

 

夏希が走りながら状況を簡単に説明すると、にこが声を大きくして文句を言う。一方ツバサに連れて行かれた若葉は、学院内に入るとようやく掴まれた腕を離して貰い息を整える。そして若葉が顔を上げるとツバサと目が合う。

 

「初めまして」

「いや、お久しぶりですね」

「……え?」

 

若葉の言葉に不思議そうな顔をするツバサ。若葉はその反応を見て納得のいった表情で頷き、自己紹介をする。

 

「前にも自己紹介しましたけど改めて。どうも高坂穂乃果の”兄”の高坂若葉です」

「え……」

 

若葉の自己紹介に思わず固まるツバサ。そして2人を追って来た夏希が追いつき溜め息を吐いた。

 

 

 




【音ノ木チャンネル】
若「えーと、「A-RISEのツバサに拉致られたんだが、どうしよう」っと」
夏「何してんだよ」
若「え?某有名な掲示板にスレ立ててんだけど」
愛「凄い荒れそうなスレ名ですね」
夏「つかそんな事でスレ立てすんなよ」
若「あ、返事が来た。何々?「嘘乙」……」
愛「あ、無言でスレ消した」
若「さて、じゃあ始めようか」
夏「もうとっくに回ってるぞ」
愛「いつの間に!」
若「ま、良いじゃん。取り敢えず話そうよ」
夏「今回、うーみんが噛んだっつーか言い間違えたっつーか」
愛「中の人ネタて言うより、中の人の自己紹介をしかけましたよね」
若「あ、ついでに今回5.000字超えたらしいよ」
夏「最初の頃の「1話2.000字」はどこへ行ったんだろうな」
若「それを言うなら更新速度もね。未だに安定しないよね」
愛「良いじゃないですか。きっと読者の人達も嬉しいと思いますよ。更新速度の方は知りませんけど」
若「そんな無責任な」
夏「じゃあ無責任ついでに終わりにするか」
愛「脈絡もくそもない」
若「誤字脱字、感想、批判、アドバイス等をお待ちしております。あと活動報告でアンケートやってまーす。それじゃあ」
『バイバーイ』


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☆七夕パーティーやろうよ!by穂乃果

番外編3作目!
そして七夕に因んで本編の文字数が7.777字!……とはいかず、あとがき含めで7.777字になりました…あと少しだったのにな〜

とまあそんなこんなで七夕回です。例の如く、時系列なにそれ美味しいの?です


「お兄ちゃん。七夕だよ、七夕!」

「七夕なのは知ってるよ。だからウチも七夕フェアやってるんだし」

 

若葉は店の商品棚を指しながら、ドタドタと走って来る穂乃果を宥めにかかる。

 

「そうじゃなくて!私達も七夕やろうよー!」

「言ってる意味がよく分かったから、取り敢えず厨房から商品持ってきて」

「分かった!」

 

若葉に頼まれた穂乃果は一つ頷くと厨房目掛けて走っていき、少しして戻って来る。そして若葉の肩を掴み、勢い良く前後に揺らす。

 

「そ・う・じゃ・な・く・て!皆に声掛けて七夕パーティーやろうよ!」

「あーそういう事ね。て言っても集合かけて集まるのかな」

「皆は来れそうだよ。ていうかお兄ちゃんLIME見てないの?」

「今仕事中だから見たくても見れないの」

 

若葉の答えに穂乃果はしょうがないといった仕草で携帯を見せる。若葉は穂乃果から携帯を受け取るとLIMEを開き、μ'sのグループをスライドして見る。

 

ほのか「ねぇねぇ、今日の夜七夕パーティーやらない?」

園田海未「今夜ですか。随分急ですね」

ことり「私は大丈夫だよ(・8・)」

希「ウチも大丈夫やで」

エリー「私はちょっと分からないわね」

真姫「ちょっとママに聞いてくるわ」

夏希「あー別に参加するのは良いんだが、あと1人誘っても良いか?」

ほのか「私は別に良いよ」

希「誰誘うん?」

夏希「それは後でのお楽しみ」

エリー「それなら亜里沙も誘って良いかしら」

ほのか「亜里沙ちゃんなら雪穂と過ごすって、雪穂が言ってたよ」

エリー「あら、そうなの?」

アッキー「あ、僕と凛ちゃんも参加します」

希「今2人は一緒におるん?」

りん「そうだよ。アキ君とお出かけ中!」

アッキー「あとで穂むらにも行きますね」

ほのか「ホント!?今お兄ちゃんが店番してるから一緒に待ってるね!」

 

「で、今に至る訳なんだ」

 

若葉が携帯を返しながら穂乃果に言う。

 

「ね、だから今夜パーティーやろ!」

「やるのは良いけど、さっきの見た感じだと真姫と海未、花陽、絵里は来るか分からないよね」

「かよちんは来るって言ってたにゃ!」

「なぜか1年生のグループで言ってましたね」

 

身を乗り出す穂乃果に若葉が聞くと、カウンターの向こうから聞き慣れた声が2つ聞こえる。若葉と穂乃果がそちらを見ると、手を繋いだ愛生人と凛が並んで立っていた。

 

「いらっしゃい2人とも」

「何か買って行く?」

「あ、じゃあこの七夕フェアの個数限定の笹の葉饅頭を2つ下さい」

「はいよ。ちょっと待っててね」

 

愛生人から注文を聞き、若葉は品を包み始める。その間穂乃果が会計を済ませ2人と話している。

 

「この笹の葉饅頭はね、お兄ちゃんが作ったんだよ」

「あ、だから個数限定なんですね」

「やっぱり若葉君って手先が器用なんだね」

 

穂乃果の説明を受けて愛生人と凛がマジマジと笹の葉饅頭を見つめる。

 

「まぁお昼休みの時にまた作るから、ここに出てるので全部って訳じゃないよ。はいこれ」

 

若葉はそう言って包装が済んだ箱をビニールに入れて凛に渡す。そして奥の居間を指して2人に提案する。

 

「せっかく来たんだから何か食べてく?今なら奢るよ」

「え、さすがにそれは悪いですよ」

「いーのいーの。どうせ今翔平が来て雪穂と亜里沙ちゃんに勉強教えてるから。2人にも後で差し入れするし」

 

若葉の言葉に2人は顔を見合わせ、じゃあお言葉に甘えて、と居間に上がる。そして穂乃果が持ってきたほむまんとお茶を食べながら、時折雪穂と亜里沙の勉強を翔平と一緒に見ていた。

 

「そう言えば翔平さんは今日七夕ですけど、何か予定あるんですか?」

「おま、もうちょっとオブラートに包むかして聞けよ。つか予定があったらここにはいません」

「でも前にモテるって言ってなかったかにゃ?」

「お誘い全部断ってきたんだよね〜」

「え〜なんでですか?」

 

勉強の合間の小休憩時に愛生人と凛が翔平お話していると、床に仰向けに寝ていた雪穂がノンビリと言う。雪穂の言葉に驚いて亜里沙が翔平に詰め寄る。

 

「ちょっと雪穂ちゃん!それ言わない約束したじゃん!」

「あれ、そうでしたっけ?」

 

1人詰め寄らずに床に寝ている雪穂に翔平が文句を言うも、雪穂は先程と同じ様にノンビリと返す。

 

「なんか賑やかだね」

「あ、若葉。良い所に」

 

翔平が壁際に追い詰められた所で若葉が襖を開けて居間を覗き込み、笑っていた。

 

「何の話してるの?」

「翔平さんかお誘いを全て断ってここにいる理由です」

 

若葉が詰め寄ってる3人に状況を聞くと、愛生人が顔だけ若葉の方を向き答える。愛生人の答えに若葉があー、と何やら訳知り顔で頷く。

 

「あー!その反応、若葉君絶対何か知ってるにゃ!」

「さぁね。たとえ知ってても教えないよ~」

「若葉さんイジワルです!」

「あはは。じゃあ俺は店に戻るよ。じゃあね~」

 

若葉は凛と亜里沙を流して顔を引っ込める。そして若葉がいなくなり再び3人が翔平へと視線を戻す。

 

「で、結局の所はどうしてここにいるんですか?」

「お前らどんだけ俺に興味があるんだよ!」

「だってモテるのに未だに誰とも付き合わないなんておかしいじゃないですか」

「そんな事言ったら若葉だって似たり寄ったりだろ!」

「若葉さんはもう相手いますもん!」

「マジで!?あの野郎なんで俺には何も言わないんだ!ちょっと聞いてくる!」

「「「逃がしませんよ!!!」」」

 

翔平が若葉をネタに逃げようとするも、愛生人、凛、亜里沙が逃げ道を塞ぐ。

 

「あの翔平さん。そろそろあれなので観念して話して下さい!」

「そうですよ、そろそろ話進めないといけないのでお願いします!」

「こら亜里沙に愛生人、それこの作品初のメタ発言だが良いのか!?」

 

亜里沙と愛生人の発言に翔平がツッコミをいれると、今まで黙ってた雪穂が溜め息を吐いた後に状態を起こし、4人に言う。

 

「あの、言い出した私が言うのもあれですけど、そろそろ勉強再開しません?」

「…そうですね。そもそも勉強の小休憩でしたもんね」

「…うぅ、知りたかったにゃ」

「…残念です」

 

雪穂の言葉に亜里沙達は残念そうに翔平から離れ、元いた場所に座り教科書等を開き勉強を再開させる。

 

「さ、翔平さんも始めましょ」

「お、おう」

 

雪穂に促され翔平も座り勉強を再開する。

 

☆☆☆

 

愛生人と凛、翔平が帰り居間には雪穂と亜里沙だけが残り、短冊に願い事を楽しそうに書いているのを横目に若葉と穂乃果は出掛ける準備をする。

 

「それで、なんやかんやで皆集まれるんだ」

「うん。で場所なんだけど、海未ちゃんの家でやるんだって」

「あー海未の家は毎年でかい笹の木に短冊掛けてるもんね」

 

穂乃果の言葉に若葉も慣れた様に頷く。そして裕美香と誠に一言言ってから家を出て園田家へと向かって歩き出す。

 

「にしても家出るの少し遅かったかな」

「いやいやウチは近いんだから集合時間には間に合うって」

 

若葉が時間を気にしながら呟くと、穂乃果はノンビリと答える。それから少し歩くと2人にとって昔から馴染みのある園田家に着く。

 

「おーっす2人とも。こんばんわ」

「あ、夏希君こんばんわ」

「どうも穂乃果さん。若葉君」

「あ、ツバサさん。こんばんわ」

 

若葉が振り返るとそこには夏希とツバサが並んで立っていた。さらにその後ろからは希と絵里、にこが並んで歩いてきていた。

 

「3人ともこんばんわ」

「こんばんわ」

「それにしても穂乃果ちゃんの急な提案にはビックリしたで」

「ほんとよ。当日になっていきなりパーティーしようだなんて」

「まぁまぁ。ボチボチ揃ったし、一旦お邪魔しよ」

 

若葉がにこを宥めてからインターホンを押す。ピンポーンという音がして少し、海未の声がスピーカーから聞こえる。

 

『はい』

「こんばんわ~」

『若葉ですか。今、他には誰が来てますか?』

「え~っと」

 

海未の問いに若葉は後ろにいるメンバーを確認して、今いる人達の名前を挙げていく。若葉が名前を挙げ終わると、海未がおや?と不思議そうな声を出す。

 

『まだことりは来てないのですか?』

「まぁまだ時間まであるから少し遅れてるだけかも」

『そうですか…あ、鍵は開いていますので、どうぞ中へ』

「はーい」

 

若葉が返事をするとともにスピーカーの切れる音がし、若葉も振り返る。

 

「じゃあ行こうか」

 

そして玄関の扉を開けると海未が正座で一向に挨拶をした。

 

「ようこそ園田家へ」

「んー、なんか未だに慣れないんだよね」

「そうだよね」

 

そんな海未を見て苦笑しながら頬を掻いて言う穂乃果と若葉。他のメンバーは初めて見る海未の姿に驚きで目を見開いていた。海未はそんな反応にフフッ、と笑うと慣れた体捌きで立ち上がり、若葉達を中へと迎え入る。そして中庭が見える和室に通され、全員が揃うまでそこで待つ事になった。

 

「では今お茶を持ってきますね」

「あ、俺も手伝うよ」

「いえ、今日は若葉もお客様ですから座ってて下さい」

 

若葉が立ち上がりながら言うと海未に手で制され、渋々座る。そして海未がお茶を淹れ一息ついていると、残りの1年生4人が園田家に着く。

 

「これで全員揃いましたね」

「え、全員って。ことりさんは?」

「ことりならほら、そこに」

 

愛生人の言葉に海未が縁側の柱を背にして、真姫に寄っ掛かられている若葉の後ろを指す。海未の指先を目で追って全員がそちらを向くと

 

「ちゅんちゅん」

「ゔぇえ!ことり!?」

「いつの間に!」

 

若葉と真姫のすぐ後ろにいつかのひょっとこのお面を被ったことりが座っていた。2人は思わずその場から飛び退き、海未を見るとことりと一緒に悪戯が上手くいった子供の様に笑っていた。

 

「若葉が音ノ木坂に来た時のドッキリの仕返しです」

「上手くいって良かったね」

 

ことりが海未のもとへ行き、仲良くハイタッチをする。それを見て若葉はその時の事を思い出し、懐かしむ様に笑う。

 

「それでは揃った事ですし、パーティーを始めましょうか」

 

ことりも座り一段落した所で海未が人数分の短冊を取り出し、配り始める。短冊を受け取った人はそれぞれ自分の願い事を短冊に書いていく。

 

「んー。何を書こうかなー」

「穂乃果ちゃんは何かお願い事無いの?」

「あるにはあるんだけど…うーん」

 

穂乃果は何を書くか迷い腕を組んで考える。そんな穂乃果にことりは自身の短冊を手に持ち、一緒に考えようとする。

 

「ことりちゃんはなんて書いたの?」

「いくら穂乃果ちゃんでも教えられないよ〜」

 

穂乃果の質問を笑って流すことり。そして海未のもとへ行き笹の葉の場所を聞くと、慣れた足取りでその場へ行き、短冊を掛けて戻って来る。若葉がそんな様子を微笑ましく見ていると不意に左頬を軽く摘まれ、引っ張られる。

 

「んにゅ?」

 

引っ張られるままに左を向くと、頬杖をついて若葉の頬に手を伸ばしている真姫と目が合う。見つめ合う事少し、今度は若葉が真姫の右頬を摘む。

 

「えい」

「にゅ」

「お前ら何してんだよ…」

 

そんな謎の行動を起こしている2人に呆れた様に言う夏希。夏希に言われ恥ずかしくなったのか、真姫は慌てた様に手を離し赤くなった顔を逸らす。

 

「そう言う夏希は何してんの?」

「見て分からんのか」

「いや、見て分かるけど意味が分からないんだよ」

 

若葉は視線を真姫から夏希の方へ向けると、そこには胡座をかいた夏希の足の上に我が物顔で座ってるツバサがいた。

 

「なんか気に入ったらしく、さっきからどいてくれないんだ」

「まぁ、その、あれだね。お熱い事で」

「お前にだけは言われたくねぇ!」

 

若葉の言葉に思わずツッコむ夏希。しかしそんな夏希の首にツバサの腕が回り、夏希は黙る。

 

「ねぇ、なっ君」

「ちょっと待てツバサ」

「ツーちゃん」

「いや、だから」

「ツーちゃんじゃなきゃイヤ」

「……ツーちゃん」

 

夏希がツーちゃんと言うと嬉しそうに笑うツバサ。そしてツバサは腕だけでなく、体ごと振り返るとそのまま夏希に飛び付く。零距離からのダイブに耐えられるはずもなく、夏希が下になる形で2人は床に転がる。

 

「ちょっとツーちゃん!?いきなりどうした!」

「えーなんでもないよー。これが普通だよ〜」

「んな訳あるか!誰かツバサに酒飲ましたか?」

 

胸に頬擦りするツバサを見て夏希がその場にいた全員に確認するも、誰も飲ませていない為首を横に振る。

 

「ツーちゃん。さっきまで何を飲んでた?」

「えーとね、あれ」

 

夏希は埒があかないと見るやツバサが飲んだ物を聞くと、テーブルの上にあるグラスの内1つを指した。夏希がそれを持ち一口飲むと、納得のいった表情で頷く。

 

「ツバサがこうなった原因、これに間違いない」

「それってお酒?」

「そんなまさか!」

 

頷いた夏希に花陽が聞くと、海未がまさかと言って夏希からグラスを受け取り一口飲む。

 

「これは…グレープサイダーですね」

「そうなんだよ。ツバサって炭酸でも酔っぱらうんだよ」

「「まさか!」」

「いやでも現状を見る限りだと信じるしかないんやない?」

 

夏希の言葉に驚く絵里とにこ。しかし希は完全に酔っ払っているツバサを見て、夏希の言う事を信じている。

 

「まぁ短冊自体は書き終わってるみたいだから問題は無さそうだな」

 

夏希はテーブルに置かれたツバサの分の短冊を手に取り自分の分の短冊を持つと、ことめり同様海未に笹の葉の場所を確認し、短冊を掛けに行く。それに続くかの様に絵里、にこ、花陽も立ち上がり短冊を掛けに行く。

 

「さてと、凛ちゃんそろそろ書けた?」

「う〜んまだ決めかねてるにゃ〜」

 

愛生人が隣に座っている凛に聞くと、凛は頭を抱えて答える。一方愛生人は既に書き終わってるようで、短冊を裏返しにしてテーブルに置いている。

 

「ち、因みにアキ君はなんて書いたのかにゃ?」

「それを言ったらつまんないでしょ。秘密」

「えー!」

 

凛の質問に愛生人は笑って返す。凛はそんな愛生人に不満そうな顔で抗議するも、愛生人はただ笑って受け流すばかり。

 

「もういい!絶対アキ君のお願い事当てるんだから!」

 

ズビシッ!と愛生人に人差し指を突きつけると凛は高らかに宣言する。その宣言を聞いてその場にいた全員は凛の主旨が変わっている事に内心ツッコミを入れていた。

 

「はいはい僕の願い事は放って置いて凛ちゃんは自分の書こうね〜」

「うー…じゃ、じゃあ後で教えて!」

「仕方ないな〜凛ちゃんが書き終わったらね」

 

愛生人が凛の頭を撫でながら言うと凛は願い事を書く気になったらしく、再び頭を悩ませ始める。そんな2人を横目に若葉も自身の短冊にスラスラと筆を走らせる。

 

「よし書けた」

 

若葉はふぅ、と息を吐き筆を置くと隣の真姫も書き終わったのか、短冊を裏返す。

 

「真姫も書けた?」

「えぇ。それじゃあ海未に場所を聞いて短冊を掛けに行きましょ」

 

若葉は真姫の言葉に頷くと立ち上がり、海未に場所を聞くと、真姫が若葉の手を引き和室を出て行く。

 

「ねぇ真姫。なんで真姫が先に行くの?」

「だって若葉を先に行かせると迷うじゃない」

「さすがに来慣れた海未の家は迷わないって」

 

自信満々に言う若葉にじゃあ、と先を譲る真姫。そして少し歩いた所で台所に着いた。

 

「なんで台所に着くのよ!」

「まぁまぁ落ち着いて落ち着いて」

 

迷った原因である若葉に真姫が涙目になりながら抗議するも、若葉はまぁまぁ、と宥められる。

 

「あら、若葉君?大きくなったわね」

「あ、未帆さん。お久し振りです」

 

一先ず落ち着いた真姫がこれからどうやって戻ろうかと考え始めた頃、台所から青い着物を着た女性が顔を出す。若葉に未帆と呼ばれた女性は口に手を当てるとクスクスと笑い若葉に聞く。

 

「もしかしなくてもまた迷子?」

「まさかそんな。もう何回も来てる場所で迷子になるなんて事」

「ないの?」

「あります…」

 

未帆が首を傾げて聞くと若葉は項垂れる様に答える。それから未帆は真姫に現在地から笹の場所までの道を教えると、若葉に前を歩かないように言い付けてから再び台所に戻って行った。

 

「ねぇ若葉。今のって」

「あ、そう言えばお互いに自己紹介してなかったね。あの人は園田未帆さん。海未のお母さんだよ」

 

笹の場所までの道中真姫が気になった事を聞くと若葉はすんなりと教える。それからしばらく歩くと今度はちゃんと笹の葉のある場所に着く。そこには短冊を掛けていなかった3人、穂乃果、愛生人、凛がいた。

 

「あ、お兄ちゃん!どこに行ってたの?」

「帰って来るのが遅いから絵里さんが心配してましたよ?」

 

穂乃果と愛生人が若葉と真姫を見つけて声を掛ける。2人の台詞に若葉は苦笑で返し、代わりに真姫が事情を話す。話を聞いた凛は

 

「相変わらず若葉君の方向音痴は酷いにゃ〜」

 

と笑う。穂乃果は穂乃果で慣れているのか、若葉同様苦笑し、愛生人は呆れたように首を振る。若葉は3人の反応を見ずに笹の葉に近付き、短冊を掛け始める。

 

「よし、こんな所かな」

「……じゃあ私はここに飾ろうかしら」

 

若葉が短冊を掛け終わるのを見て、真姫は若葉から1番離れた場所に短冊を掛ける。その行動に疑問を持った若葉が和室への帰り道で聞くと、真姫は顔を赤らめながら答えた。

 

「だってあの方が織姫と彦星みたいじゃない」

 

真姫の答えに若葉は一瞬驚いた様に目を丸くすると、そうだね、と微笑んで返す。そして5人が和室へ戻ると、そこには料理の乗ったお盆を持った未帆と海未がおり、パーティーが始まろうとしていた。

 

「それじゃあパーティー始めよう!」

『おー!』

 

穂乃果の音頭でツバサとアイドル研究部の七夕パーティーが始まったのだった。

 




【音ノ木チャンネル】
若「七夕だね〜」
夏「七夕だな」
愛「七夕ですね〜」
夏「って和んでる場合じゃねえよ!なんなんだよツバサのキャラ崩壊っぷりは!」
若「いやいやそんな事言ったら殆どのキャラが崩壊してるからね」
夏「それにしてもだろ!なんだよ炭酸で酔うって!」
愛「ベッタベタに甘えてましたもんね」
若「そんな熱い2人は放って置いて」
夏「置くな!つか俺達で熱かったら基本くっ付いてる若葉と真姫(お前ら)はなんなんだよ!」
愛「仲良き事はいい事かな、ですよ」
若「そうだよ。だから愛生人も凛と仲良いのはいい事だよ」
夏「なんか俺の扱い酷くね?」
若「え、あ、うん。そうだね」
愛「取り敢えず今回の話について話しません?」
夏「だな。特にうーみんの母さんについて疑問に思ってる人達もいると思うし」
若「そう言えば初登場だったね未帆さん」
愛「出そうと思った切っ掛けはまぁ、映画に出て来たから、ですかね」
夏「て事はこのままだとえりちとのぞみん以外の母さんが出てくるのか」
若「因みに名前ももう考案済みだったりするよ?」
愛「出す気満々ですね」
夏「つっても若とほのっちの母さん、マッキーの母さん、ことりんの母さんはもう出てるしな」
若「ネタバレになるけど、にこのお母さんもアニメで出てたしね」
愛「て事は残るは凛ちゃん、花陽ちゃんそれに僕と夏希さんの母だけですね」
夏「え、俺らの親も出て来るの?」
若「まぁどっかしらの節目にポロっと出て来たりするんじゃない?」
愛「何かマズイんですか?」
夏「いやな?名前と性格、容姿とか考えるの面倒いな、と」
若愛「「まさかの作者目線!」」
夏「いやでも実際面倒なんだぜ?それっぽい名前考えたりするの」
愛「別作品で40人以上の名前を考えてる人の台詞とは思えませんね」
若「こっちでもモブキャラにも固有名付けないと気が済まない癖にね」
夏「まぁ色々と事情があんだろ」
愛「と、作者が大変な目に遭う事が確定した辺りで終わりにしましょう!毎度の事ながら誤字脱字、感想、批判、アドバイス等をお待ちしております!」
若「それじゃあ」
『バイバーイ』


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ちょ、ツバサ?by夏希

あとがきでのやり取り、出会い、自己紹介は本編には作用されません。
何が言いたいのか、それは…まぁ本編読めば分かります。


夏希が追いついた時に見た光景は驚いた表情で固まるツバサと、それを困った表情で見ている若葉だった。さらにツバサの後ろからは、A-RISEの残りの2人の優木あんじゅと統堂英玲奈が夏希に手を上げながら2人に近付く。

 

「ねぇ夏希。どうしてこうなったのかな?」

「あーその前にツバサを再起動させる」

 

夏希はそう言うとツバサの前に立ち両頬を軽く伸ばす。

 

「……なっ君!いつの間に目の前に!」

「取り合えず目的は若と言うよりμ'sっぽいから皆を連れてくるわ。ほら若、行くぞ」

「え、あ、うん」

 

元に戻ったツバサは顔を赤くし夏希に驚くも、夏希は若葉を連れてUTX学院から出て行く。外に出ると人混みは少なくなっており、愛生人を含めたμ'sの10人がUTX学院の入り口付近で待っていた。

 

「やーやー皆。ちょっと話があるから付いてきて」

「ちょ、夏希!?どうして貴方がここに居るのよ 。それに付いてきてって、どういう事よ!」

「あー…まぁ付いてくれば分かるって」

 

夏希は絵里の言葉に頭を掻きながら、UTX学院に入って行く。そんな夏希を不審に思いながらも、取り敢えず、と揃ってUTX学院内に入る。中に入ると夏希は入り口の自動改札の前で待っており、警備員の人と何やら話すと皆を手招きし、改札の奥へと進む。夏希に導かれエレベーターに乗り込む。

 

「あの、夏希さん。これってどういう?」

「そもそもなんで夏希がUTX学院に自由に出入り出来るのよ」

「……」

 

エレベーター内での愛生人とにこの質問にも夏希は何も答えず、ただ壁を見つめているだけだった。何を聞いても答えない夏希ににこは嘆息をもらす。それから少し、エレベーターが止まり、夏希は勝手知ったる様子でUTX学院の中を歩く。

 

「えーっと、ここだな」

「ちょっと夏希!いい加減説明…を……」

 

夏希がとある部屋の前で止まり、ノックもせずに中に入る。絵里は何も説明しない夏希に腹が立ち、声を荒げながら後を追う様に入室する。しかし中にいた以外な人物達に驚き、声の勢いは失速する。

 

「こんにちは」

「やっと来たのね」

「待っていたぞ」

 

部屋の中にいたのは、先程若葉を連れ去った綺羅ツバサらA-RISEだった。3人は若葉達全員に入室を促し、ソファに座らせる。

 

「え……と」

「まず私から言っておく事があるわ」

 

15人がソファに座り、短くない沈黙に穂乃果が耐え切れなくなった時、ツバサが唐突に口を開く。その言葉にA-RISEの2人と夏希以外が首を傾げる。そしてツバサは若葉を真っ直ぐ見ると

 

「高坂さんと間違えてごめんなさい」

「……い、いえ!大丈夫ですよ」

 

ツバサに謝罪された若葉は少しフリーズした後、慌てた様に手を振って答える。若葉の答えにツバサはお礼を言って、今度は穂乃果を見る。ツバサに見られた穂乃果は緊張した様に背筋を伸ばす。

 

「初めまして、かしらね」

「そ、そうですね。初めまして」

 

ツバサが笑顔で挨拶をするも穂乃果は変わらず緊張した様子で返す。

 

「ずっと会いたかったわ」

「え…でも、どうして?」

「ふふっ。すぐそこがカフェスペースになってるからゆっくりしていって大丈夫よ」

 

穂乃果の質問には答えずにツバサは若葉達に告げる。ツバサの言葉通り、既にあんじゅと英玲奈、夏希が人数分のカップにコーヒーを淹れて配っていた。

 

「って違う。違います!いや挨拶も大事ですけど、なんで夏希さんは自然に馴染んでるんですか!?」

「そうよ。それに最初若葉を連れ戻す時どうやって入ったのよ!」

 

夏希がカップを配っているのを見て思い出したかの様に愛生人と絵里がツッコむ。2人のツッコみで穂乃果達もハッとなり夏希を見る。9人に見られた夏希はツバサにアイコンタクトを飛ばすと、ツバサは静かに頷いて答える。夏希は溜め息を吐くと穂乃果達を見ると口を開く。

 

「あーそういや若とマッキー以外は知らないんだっけか。実は俺とツバサって付き合ってんだ」

『……えぇー!!!』

 

夏希があっさりと告げるとワンテンポ程遅れて全員が叫ぶ。夏希はあまりの声量に耳を塞ぎ、つか、ととある4人を見る。

 

「なんで当の本人のツバサと知ってるあんじゅ、英玲奈、若まで叫ぶ側(そっち)に回ってんだよ!」

「お兄ちゃん知ってたの!?」

「い、いや。そう言えば夏祭りの時一緒に周ってはいたけど、まさか付き合ってるなんて思わないって」

 

穂乃果に聞かれた若葉が思い出す様に言うと、夏希は付き合ってると明言してなかった事を思い出す。しかし特に若葉にフォローする事なく話を進めていく。

 

「で、えーっと。そうそう俺が入れた理由はこれのおかげ」

 

夏希はそう言うとポケットから「UTX」と書かれたカードを取り出す。

 

「それって」

「ああ、ここ(UTX)に入る為に必要なカードだ」

 

希の言葉に夏希は頷いて答える。その答えに若葉達は目を丸くして驚く。

 

「で、でもなんで夏希君がそれを持ってるの?」

「それは私が説明するわ」

 

花陽の質問に夏希ではなくツバサが答える。

 

「実はウチの理事長がなっ君…夏希のお母さんと知り合いみたいでね。どうせだからって渡したみたいなの。それになぜか他の皆からも特に反対意見が無かったのよね」

 

ツバサが1人悩む様な仕草をとるも、その両側に座っていたあんじゅと英玲奈はクスリと笑うも、特に何も言わなかった。

 

「あとなんで俺がここにいるか、だっけ?それは」

「ちょうど夏希に相談したいことがあったのよ。ちょうどあなた達に会いたいと思っていたのよ」

「ちょ、ツバサ?」

 

夏希の言葉を遮ってツバサが話しを進める。遮られた夏希は不思議そうな表情でツバサを見る。

 

「会いたかったって、どうしてですか?」

「あなた達スクールアイドルでしょ。しかも同じ地区。だから会いたかったのよね」

 

穂乃果の質問にあんじゅが笑って答え、ツバサもそれに頷く。

 

「しかし下で高坂穂乃果を見て連れてきたは良いが、双子の兄の方を間違って連れて来てしまった」

 

英玲奈が笑いながら言うと、間違ったツバサは顔を赤くする。

 

「と、とにかく。映像で見るより本物の方が遥かに魅力的ね」

「人を惹き付ける魅力、カリスマ性とでも言えばいいのだろうか。12人でいてもなお輝いている」

 

英玲奈の言葉に穂乃果ははぁ、と返すばかり。

 

「私達ね、あなた達の事をずっと注目していたのよ」

『え!?』

 

ツバサの思わぬ返事に夏希以外の11人は驚きの声を上げる。

 

「実は前回のラブライブで1番のライバルになるんじゃないかって思っていたのよ」

「そ、そんな」

 

絵里が照れた様にあんじゅの言葉を否定しようとするも、ツバサにあなたもよ、と言われ口を紡ぎ英玲奈が再び口を開く。

 

「絢瀬絵里。ロシアでは常にバレエコンクールの上位だったと聞いている」

「そして西木野真姫は作曲の才能が素晴らしく、園田海未の率直な詩ととてもマッチしている」

「星空凛のバネと運動神経はスクールアイドルとしても全国レベルだし、小泉花陽の歌声は個性が強いメンバーの歌に見事な調和を与えている」

「牽引する穂乃果の対となる存在として12人を包み込む包容力を持った東條希」

「地元に多くの知り合いを持ち、μ'sのサポート班のリーダー的存在の高坂若葉」

「そして伝説のゲーマー、アイトこと片丘愛生人」

「それにアキバのカリスマメイドさんまでいるしね」

 

A-RISEの3人から次々と発せられた情報に驚きで言葉が返せず、ポカーンと呆けている若葉達。

 

「そして矢澤にこ…」

 

ツバサに名前を呼ばれ、緊張した面持ちをするにこ。そしてツバサはニッコリと笑うと

 

「いつもお花ありがとう。昔から応援してくれてるよね。凄く嬉しいよ」

「どえ!」

 

続いたツバサの発言に先程とは違った驚きを見せていた。ツバサに思いもよらない事を暴露されたにこは動揺し、そんなにこを皆が半目で見つめる。

 

「にこ、そうだったの?」

「知らんかったんやけど」

「まぁ部室にポスターとか飾ってあったし…」

 

絵里、希、若葉の台詞ににこは笑って誤魔化す。

 

「い、いや~μ's始める前からファンだったから~って、そうじゃなくて!私の良い所は!?」

 

にこは笑顔でやり取りを見ていたA-RISEの3人の方を向いて勢いよく聞く。その質問にツバサがフフッと笑う。

 

「そうね。グループにはなくてはならない小悪魔って所かしら」

 

ツバサの言葉ににこははわ~と感激した様に両手を胸の前で合わせて悶えていた。そんなにこを余所に絵里は疑問を感じ、それをツバサにぶつける。ツバサはその問いに戸惑いを見せずに返す。

 

「これだけのメンバーが揃っているチームはそうはいない。だから注目もしていた。そして何より……負けたくないと思ってる!」

 

ツバサの言葉に一瞬にして先程までのふざけた空気が緊迫した空気に変わる。

 

「あの!A-RISEの皆さん。私達も負けません」

「ふふ。あなたって面白いわね」

 

穂乃果の突然の宣言にツバサは一瞬驚きで目を見開くも、すぐに笑みを浮かべて返す。

 

「なぁツバサ。”あれ”聞いてみたら良いんじゃないか?確かそろそろだよな」

「そうね」

 

今まで黙っていた夏希がツバサに声を掛ける。ツバサは夏希の言っている”あれ”が何なのか分かっているのか、両隣のあんじゅと英玲奈に確認を取るともう一度穂乃果達に向き合う。穂乃果達は何の事だか分からない為、首を傾げる。

 

「ねぇまだ歌う場所決まってないんでしょ。だったらウチの学校でやらない?」

 

ツバサのいきなりの提案に驚く若葉達。ツバサは返事を聞かずに話を続ける。

 

「屋上にライブステージを作る予定なの。もし良かったらぜひ。1日考えてみて」

 

ツバサの提案に穂乃果はその場の全員の顔を見回す。穂乃果と目が合ったメンバーはそれぞれ頷いて答えを出す。

 

「やります!」

「ふふ。2週間後楽しみにしてるわね」

 

それからA-RISEに挨拶をし、UTX学院から出て行った。

 

☆☆☆

 

2週間後。若葉達はUTX学園内にあるテラスに集まっていた。

 

「おー凄いたくさんの人が来てるね」

「本当だな。これがそのままμ’sとA-RISEの2グループの人気なんだな」

「う~なんか僕が出る訳じゃないのに胃が痛くなってきました…」

 

愛生人がお腹を摩っていると夏希が軟弱だなー、と苦笑する。

 

「そろそろ時間だから俺達も控室に行こうか」

 

若葉の言葉に2人が頷き、μ’sの控室となっている部屋に向かう。若葉がノックをすると中から穂乃果の元気な返事が返ってくる。

 

「皆、調子はどう?」

「うん全然問題ないよ!」

 

若葉が入室しながら聞くと皆を代表して穂乃果が答える。若葉が穂乃果と話している間、夏希と愛生人が控室内を見回すと化粧台の前でにこが髪型を整えたり、絵里が凛の衣装の襟を正したり各々最終チェックをしていた。

 

「こんにちは」

 

夏希が声のした方を見るとツバサ、あんじゅ、英玲奈の3人が衣装姿で立っていた。穂乃果達もツバサ達に気付き、挨拶を返す。

 

「いよいよ予選当日ね。今日は同じ場所でライブが出来て嬉しいわ。予選突破を目指してお互い頑張りましょう」

「はい!」

 

そしてライブが始まる。先にライブを行うのはA-RISE。曲名は「Shocking party!!!」

 

A-RISEのライブが終わると共に客席から歓声が上がる。

 

「直に見るライブ…」

「全然違う。やっぱりA-RISEのライブには…私達」

「敵わない」

「…認めざるを得ません」

 

凛、花陽、ことり、海未の4人はA-RISEのライブを見て俯いてしまう。それは4人だけに限らず、口には出さないまでも真姫、絵里、希の3人も俯いてしまう。

 

「そんな事ないよ!」

 

そんな中、皆を励ます様に重くなった空気を取り払うように声を出す。

 

「A-RISEのライブが凄いのは当たる前だよ。せっかくのチャンスを無駄にしないように私達も続こう!」

「そうだね。A-RISEはやっぱり凄い。こんな凄い人達とライブが出来るなんて滅多にないよ。だから皆も思いっきりやっておいで!」

 

穂乃果に続く様に照明の確認の為にステージ裏にいた若葉も賛同する。2人の言葉に俯いていた皆は顔を上げ、笑顔になる。

 

「よーし!それじゃあいくよ!μ’sミュージックー…」

「スタート!」

 

そしてライトアップとともにμ’sの曲「ユメノトビラ」が流れる。

 

「どうだ?μ’sのライブは」

 

夏希は客席の後ろから眺めていたツバサ達に声を掛ける。

 

「更に負けたくなくなったわね」

「そうか」

 

夏希はツバサの答えを聞いてニッと笑うとじゃあな、と言って若葉の元へ駈け出して行った。

 




【音ノ木チャンネル】
祝!アニライブ!一周年記念!
若「あ、今回は作者も来たんだね」
夏「にしてももう1年か…」
愛「まぁ僕達が出たのはもう少し後なんですけどね」
まぁその差も数日しか違わないんだし、別に気にする程でも無いとおもうよ?
若「まぁ俺はほぼ毎回出てるから良いけどね」
夏「いや、俺も似た様なもんじゃね?」
愛「くっ、僕だけですか?休みが続いているのは!」
若「でもなんやかんやで3話連続で出てこないって人は居ないよね」
夏「あー確かに」
愛「まぁ検証してないからいるかもですけど」
その分毎回キャラの台詞配役が大変です。はい
若「特に今回は俺ら12人にさらにA-RISEの3人も加わったからね〜」
夏「つか途中俺ら空気だった気がするんだが……」
愛「は、話を戻しまして。アニライブ一周年ってめでたいですね!」
若「初投稿日だけじゃなく、時間まで合わせたらしいよ?」
予約投稿で済ませました(o´・ω-)bそれまでに書き上げるの大変でしたよ…
愛「だったらなんで一周年記念の番外編出さなかったんですか?」
愛生人君愛生人君。冷静に考えようか。まずこの話の投稿日は?
愛「7月の8日ですね。因みに時間は23時22分」
じゃあその前日は何の日ですか?夏希君!
夏「えっと、七夕だな」
そう七夕。俺はその日何をしていましたか?若葉君!
若「あーそう言えば七夕パーティーを番外編に出してたね」
正解!と、言う訳で流石に2話分のネタが思い付かなかったのです!
愛「だったら七夕回を一周年記念にすれば良かったじゃないですか」
いやいや七夕は7月7日、一周年は7月8日じゃん
夏「こまかいな!」
若「まぁ別にいんじゃない?今となったらもう後の祭りだし」
それより次はちょっとオリジナルにはし(逃げ)るよー
夏「ちょっとまて、今なんつった?」
愛「まぁまぁ。で一体何の話するんですか?」
若「まさか愛生人の告白話?」
夏「マジでか!?」
いやそれはもうちょい先。次はちょいと皆で出掛けようかな、と
若「皆って誰?」
皆は皆だよ。それじゃあそろそろ締めようか
愛「なんか納得しませんけど、仕方ないですね」
夏「誤字脱字、感想、批判、アドバイス等を待ってるぜ!」
若「活動報告ではアンケートもやってるからそっちもよろしくね!じゃあ」
『バイバーイ』


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さ、着いたよby若葉

背中寝違えて痛いのに追い打ちをかけるかの様な両腕の筋肉痛…もう踏んだり蹴ったりだよ!




UTX学院でライブを行った翌々日。その日は休日なのだが、アイドル研究部の12人は再びUTX学院を訪れていた。

 

「ねぇ夏希の言う通りUTXに来たけど、何するの?」

「さぁ?俺もツバサから皆で来るようにしか言われてないし」

 

若葉はUTXに行こうと言い出した夏希に聞くも、当の本人も詳しい用件は知らないのか肩を竦めて答える。

 

「ま、まさか一昨日のライブで何か気に食わなかったとか」

「もしそうなら一大事よ。誠心誠意謝罪をするしかないわね」

 

花陽とにこは揃って悪い方へと思考を巡らせる。そんな2人を後ろから苦笑いで見ることりと、2人の言葉に海未は首を捻る。

 

「ですが謝罪をさせるなら、なぜ私服で来るよう言われるのでしょう」

「うーん。遊びのお誘い。とか?」

 

穂乃果の答えに夏希はありそうだ、と頷く。と同時に夏希の携帯が鳴る。

 

「ん?電話だ」

『もしもしなっ君?』

「……ツバサ。公共の場でその呼び方はやめようって話だったろ?」

『そんな事より、左見て』

「左?」

 

夏希がツバサの言葉を繰り返すとそれを聞いていた全員が一斉に左を向く。そこには当然何もなかった。不可解なツバサの指示に夏希達は首を傾げる。

 

『左見た?じゃあ次は右』

「今度は右…」

 

そのまま右、下、上、最後に前を向くと夏希は後ろから肩を叩かれる。夏希が振り返るとそこには悪戯が成功した様な笑みを浮かべた私服姿のツバサと、その後ろにツバサ同様私服姿の英玲奈とあんじゅの2人が立っていた。

 

「やーい引っ掛かった〜」

「……ツーちゃん、何してんの?」

「何ってこっちから招待したんだもん」

「お出迎えするのは当然じゃない」

「μ'sの皆、よく来てくれた」

 

夏希の言葉にツバサ、あんじゅ、英玲奈が順に答える。

 

「あの、招待して貰ったのは嬉しいんですけど、今日はどうして?」

「一昨日はライブお疲れ様でした。って事で、一緒にどこかに遊びに行きましょ」

「…え?」

 

絵里の問いにツバサが笑って答えると若葉が間の抜けた声を出す。

 

「だーかーらー今日1日休息がてら一緒に遊びましょ」

「そうやね。せっかくのご厚意やし、息抜きも大事やん」

 

あんじゅの言葉に希も頷いて賛成し、皆は取り敢えずとUTX目指して歩き出す。

 

「それでどこ行くんだ?」

「そうね…どこ行きましょうか」

「久し振りにカラオケに行きたいにゃー」

 

夏希とツバサがどこ行こうか悩んでいると、凛が提案する。その提案にA-RISEの3人含め全員が賛成した為、近場のカラオケ店で1部屋借り、全員が座る。

 

「さてと、最初は誰が歌う?」

「じゃあまずは私達から」

 

若葉からマイクを受け取りツバサ達が曲を選ぶツバサ達が選曲している間、にこと花陽はA-RISEの生歌が聞けると興奮していた。

 

「生歌が聞けるって一昨日も聞いたばかりじゃ」

「一昨日は私達もライブだったから緊張でそれどころじゃなかったのよ」

 

愛生人が呟くように言うも、にこが耳聡く聞きつけジト目で言い返す。ジト目で見られた愛生人は特に慌てた様子なくそれを受け流す。そして曲が始まり3人が歌い始める。

 

「やっぱり上手いな」

「そうね。これに勝てなきゃラブライブで優勝出来ないのよね」

 

A-RISEの歌声を聴いて思わず呟く若葉と真姫。そして曲が終わり3人がお辞儀をし、点数が表示される。その点数は…

 

「き、94点!?」

「俺も94点は取れるけど、3人で歌っては無理かな」

 

穂乃果が驚き、若葉も点数の高さに若干顔を引き攣らせる。それから次にことりと海未が頷き合い立ち上がると、ツバサと英玲奈からマイクを受け取ると、歌い始める。

 

「流石μ’sの最初期の内の2人ね。息ぴったり」

「どちらかと言うとあの2人だからってのがあるけどな」

 

あんじゅが感心した様に言うと、夏希が曲一覧をスクロールさせながら答える。そして2人が歌い終わり点数が表示される。

 

「90点か~」

「流石にA-RISEには敵いませんでしたか」

 

表示された点数は僅かながらもA-RISEを下回った。その声には少し落ち込むような感情が混じっていた。

 

「よし若。一緒に歌おうぜ!」

「あ、ごめん。先に真姫と歌うから、歌うとしたらその次ね」

「という訳だからごめんね夏希」

「くそーマッキーに若を取られたー」

 

悔しがる夏希を横目に2人からマイクを受け取り歌い始める。2人の息の合った歌声に穂乃果達だけでなくツバサ達も驚いていた。そして気になる2人の点数を固唾を飲んで見つめる13人。

 

「94点かぁ、う~ん思ったより伸びなかったね」

「そうね、もう少し頑張らないと」

『いやいやいやいや!』

 

若葉と真姫の言葉に全員が声を揃えて突っ込む。その突っ込みに首を傾げて顔を見合わせる2人。それからあんじゅと英玲奈、にこと凛、花陽の3人、若葉と夏希、愛生人と凛、あんじゅと希、穂乃果とことり、英玲奈の3人、凛と真姫、ツバサと夏希、若葉と穂乃果、希と絵里などA-RISEとμ’sの垣根を越えて歌う。一同が一番驚いたのは、ツバサが穂乃果を誘ってその日メンバー内で最高得点を取った事だった。

 

「いや~思いの外楽しかったね」

「偶にはこうして他のグループと交流するのも良いものですね」

「そうですね」

 

カラオケ店から出た若葉がノビをして言うと海未と愛生人も同意する様に頷く。それから再びどこに行くかで話し合いになり愛生人の提案でゲームセンターに行く事になった。

 

「せっかく来たんだから、あれやりましましょ」

 

にこが恒例のダンスマシーンを指して言う。

 

「じゃあ凛が出るにゃー!」

「こちらからは私が行こう」

 

そして凛と英玲奈がダンスマシーンで勝負をしている傍ら、穂乃果とあんじゅ、希、若葉の4人はクレーンゲームで遊んでいた。

 

「ふふ。片丘君には及ばないけど、私も結構やるんだから」

「確かに凄い…!」

 

あんじゅがタン、とボタンを押すとアームは下に置かれた商品を持ち上げ、危なげなく取り出し口に落としていく。それを穂乃果は目を輝かせて見ている。

 

「あんじゅ、交代だ」

「アキく〜んもうダメにゃ〜」

 

あんじゅが取り出し口から商品を出していると汗を浮かべた英玲奈があんじゅの元に、凛は愛生人の元に行き言う。不思議に思った若葉がダンスマシーンのスコアを見ると、上位が凛と英玲奈の名前で埋め尽くされており、若葉は冷や汗をかく。

 

「優木さんが相手だからって手加減しませんよ?」

「こっちだって。貴方がダンス経験無いからって手を抜いたりはしないんだからね」

 

愛生人とあんじゅの双方が笑みを浮かべながら言い合うと、ダン!と足を鳴らす。それと同時に音楽が流れ始め、リズムに合わせて2人が踊り出す。

 

「なかなか、やるじゃない」

「優木さんも、凄いじゃないですか」

 

3曲続けて踊り通し、判定は引き分け。息を切らしながら互いの健闘を讃え合い、汗を拭きつつダンスマシーンから退く。

 

「やー!」

「なんのー!」

「これしき!」

「甘い!」

 

愛生人とあんじゅが他のメンバーを探しているとエアホッケーの台から2人それぞれが良く知る声が聞こえる。2人がエアホッケー台の所へ着くと、そこでは絵里、希vsツバサ、英玲奈の2対2の対決が行われていた。4人による速いパックの応酬に自然とギャラリーが集まり、賑わって行く。

 

「これって決着つくのかしら」

「さぁ?この様子だと時間が切れても続けそうだけどね」

「ツバサも絵里も負けず嫌いだからなぁ」

 

気付けば愛生人の隣にいた真姫、若葉、夏希が立っており、2人の事を良く知る夏希は楽しそうに笑っていた。そしてエアホッケーの結果は絵里と希が僅差で勝ち、ツバサが再戦を申し込んだ所を夏希に止められた。

 

「ふぅ良い汗かいたわね」

「そうね」

「じゃあ銭湯にでも行こうよ!」

 

ツバサとあんじゅの言葉を聞いた穂乃果が元気よく言う。穂乃果に言われた2人が時計を見ると、時間はお昼少し過ぎ。

 

「こんな時間から開いてる銭湯なんてあるの?」

「ありますよ。しかも今なら貸切で」

 

あんじゅの質問に穂乃果の後ろに立っている若葉が笑って返すと、携帯を取り出しどこかへ電話を掛けると、二、三言葉を交わし電話を切る。

 

「さ、行こうか。今から行けば1番風呂は確約してくれるってさ」

 

そして若葉を先頭に目的地目指して歩き出そうとして夏希と海未がストップをかける。

 

「ってちょっと待て若!お前が先頭だと簡単に着かねぇだろ!」

「そうですよ若葉!せめて場所を言って真姫か私、それか絵里を先頭にした方が安全です!」

 

2人の抗議にA-RISEの3人は驚いて若葉を見るも、若葉はそんな5人を無視しつつ歩き出す。そんな若葉を見て慌てる様子もなく穂乃果と真姫がその後をついて行き、少しして穂乃果だけが振り返る。

 

「大丈夫。これから行く銭湯は私達が昔から行ってる所だから、迷子にはならないよ」

「さ、そうと分かったら早く行きましょ」

「まぁ大丈夫なら良いんですけど」

 

真姫が若葉の隣に立ち皆に言うと、愛生人達も恐る恐る後をついて行く。そして歩く事十数分。夏希達が迷った事を危惧し始めた頃、若葉が立ち止まる。

 

「さ、着いたよ」

「迷わずに無事に着いた、だと…!?」

「明日は雨ですかね…」

 

若葉が迷わずに辿り着けた事に驚愕する夏希と愛生人。若葉はそんな2人に無言で笑いかけると、そのまま中に入って行く。後を追って全員が入ると、そこはいかにも「銭湯」な内装だった。

 

「どうも。今日は急にすいませんね」

「良いの良いの。若葉君には去年から大分お世話になってるし、そうじゃなくても誠さんの代からの付き合いだもん」

 

全員が中に入り最初に見たのは、フロントでカウンター越しに話している若葉と女性従業員だった。

 

「えーと、取り敢えず15人で」

「はいはい。大人が15人ね」

 

女性従業員が慣れた手つきで若葉から代金を受け取り、じゃねー、と手を振って奥に引っ込む。そして若葉は振り返ると、さて、と手を鳴らす。

 

「じゃあゆっくりと体を休めようか。あ、長湯は逆上せる原因になるから要注意ね」

 

そう言って15人は3人の男子と12人の女子に分かれて脱衣所へと入って行く。

それから十数分後、若葉だけが男湯の暖簾を潜ってロビーに設けられているソファに座る。

 

「お疲れの様子…でもないか」

「あ、佳子さん。ホントに今日はありがとうございます」

 

若葉が1人ソファで寛いでいると、女性従業員こと鳥井佳子(とりいよしこ)が声を掛ける。佳子は若葉の謝礼に対し、首を振りつつ若葉の正面のソファに座る。

 

「さっきも言ったけど、誠さんが小さい時からの2世代に渡る常連さんだもん。それに若葉君がウチで働いてくれてるしね」

「働いてるって言っても偶にヘルプで入るくらいですけどね」

「何言ってんのよ。それで空いた穴以上の働きしてくれてるんだから、こっちとしては嬉しい限りよ」

 

若葉の言葉を笑って流した佳子は身を乗り出して、で?と声を小さくして聞く。若葉は質問の意味がよく分からずに首を傾げる。

 

「若葉君は彼女出来た?」

「え!?」

「あ、その反応は出来たんだ〜。へぇ〜そうかそうか。あの若葉君にも遂に春が来たのか〜」

「"あの"ってどう言う事ですか?」

 

佳子の言葉の一部が気になった若葉が佳子に聞くと、佳子はだって、と面白いものを見つけた様に笑って答える。

 

「ウチの若い娘達がアタックしても全然効かなかったじゃない。それで?さっき一緒にいた娘達の中にいるの?」

「別に佳子さんには関係ないじゃないですか」

 

佳子の質問に若葉は顔を逸らして答える。その反応と少し赤くなってる顔色で佳子は更に面白そうに笑う。

 

「そうか〜。若葉君は真面目だから二股とかしないだろうし…とすると一緒に入ってきたあの赤髪の娘かな?」

「……黙秘権を行使します」

「あ、正解なんだ」

「そう言う佳子さんは最近どうなんですか?もうそろそろ三十路なのにさすがに相手がいないのはマズいんじゃないですかね」

 

若葉が精一杯の仕返しとばかりに佳子に聞くと、今まで笑っていたのがウソの様に冷たい目を若葉に向けた。

 

「若葉君。女性に対して年齢についての話題は禁句だよ。じゃないと、今度から君の分の時給だけ半分に…」

「すいませんでした!」

 

時給を減らされるのは若葉にとって痛いらしく、また佳子の目が本気で怖かった為、すぐさま頭を下げる。

 

「全く。で?どこまで行ったの?」

「あの、佳子さん。その話題やめにしませんか?」

「え〜良いじゃん。皆が出て来るまでの間で良いからさー」

 

若葉が頭を下げたのを見て表情を戻し、悪戯に笑う様に聞く佳子。若葉はそんな佳子にお願いする様に言うも、一蹴されてあえなく撃沈。若葉がどうやって切り抜けようか思考を巡らせていると不意に若葉の後ろから声が掛かる。

 

「若葉君が押されてるなんて珍しね」

 

思わぬ救援に若葉が振り返ると、そこには眼鏡をかけた花陽が立っていた。

 

「花陽もう出て来たんだ」

「うん。あんまり長く入ってると逆上せちゃうし」

「と、言う訳で佳子さんもそろそろ業務に戻った方が良いと思いますよ」

 

若葉が視線を正面に戻して言うと、佳子はさも残念といった表情でちぇ〜、と言って立ち上がりまた奥に引っ込んでいった。

 

「若葉君て歳上の女の人が苦手なの?」

 

花陽が先程まで佳子が座ってたソファに座りながら、気になった事を聞く。若葉はその質問にう〜ん、と少し考えてから口を開く。

 

「別に苦手って訳じゃないけど、なんかこう、敵わないな〜とは思う時があるんだよね」

「それって絵里ちゃんや希ちゃん、にこちゃんにも?」

 

花陽がμ's内の最上級生の名前をあげると若葉は頷いて答える。若葉が頷くのを見て驚く花陽。

 

「意外そうだね」

「うん。だって普段からにこちゃんを弄ってるから」

「まぁね。でもアイドルの事を話している時のにこを見てると、やっぱりにこはアイドルが大好きなんだな、って実感するんだよ」

「あ、それは私も分かる」

 

若葉の言葉に花陽も同意すると、2人は何が面白かったのか揃って笑い出す。

 

「おーおー随分楽しそうじゃん。何の話?」

「ふふっ秘密です」

「そうだよ。秘密だよ」

 

2人が笑っていると夏希達が暖簾を潜ってロビーにやって来る。夏希が笑っている2人に話の内容を聞くと、2人は目を合わせた後悪戯っぽく笑って答えた。

 

「さて時間も時間だし、そろそろお開きですかね」

「そうね。μ'sの皆さん。今日は急なお誘いを受けてくれてありがとう」

 

愛生人が時計を見ながら言うと、ツバサが頷き穂乃果達を見てお礼を言う。それに対して穂乃果はこちらこそ、と返す。

 

「お陰で楽しい1日を送る事が出来ました。ありがとうございました」

 

穂乃果が頭を下げるのを見て、後ろにいた海未達も頭を下げる。

 

「それじゃあお互い地区予選決勝に残ったら悔いのない様に頑張りましょう」

「はい!」

 

最後に穂乃果とツバサが握手をしてその日は解散となった。




【音ノ木チャンネル】
若「早速だけど、1つ。またオリキャラ増えたよ…」
夏「別に良いじゃねぇか。オリキャラの1人や2人」
若「いや良くないよ!全然良くないよ!」
愛「どうしてですか?」
若「だってこのままだと、最悪その内出て来る女性アナウンサーにまで名前を付けそうなんだもん!」
愛「あ、それは一理ありますね」
夏「まぁ名前のストックがあんなら構わねぇだろ」
若「ストックなんてこの物語と一緒である訳ないでしょ」
夏「えー…」
愛「まぁ名前の件は放っておいて、問題があるんですよ」
夏「なんだよ、問題って」
愛「実はツバサさんはともかく、英玲奈さんとあんじゅさんの話し方がよく分かってないとか」
若「まぁ出番少なかったもんね…」
夏「でもスクフェスでも出たんだし、そっちで勉強は出来るよな?」
愛「もちろん出来ますよ。なので勉強中です」
若「まぁ反映されるかは分からないけどね」
夏「そこは反映しようぜ?」
愛「まぁその内されるでしょう!それでは誤字脱字、感想、批判、アドバイス等をお待ちしております!」
夏「締め切り方は急だな!」
若「活動報告でアンケートもやってまーす」
愛「今の所トップが若葉さんと真姫ちゃんのデート回。次点で夏希さんとツバサさんのデート回ですね」
夏「そうなのか。意外と人気あるんだな」
若「主にツバサを見たいってのが多いからね。それじゃあ」
『バイバーイ』


夏「なぁ、そろそろ締めの挨拶変えようぜ?」
愛「えーなんでですか。あれ楽で良いのに…」
若「じゃあ次回までに那月が考えといてよ」
夏「はぁ!?次までってそんなに時間ねぇじゃん!」
愛「でも少しやりたい事があるから投稿遅れるかもって言ってましたよ」
若「じゃあ決まりだね。夏希、次までに締めの挨拶考えて来る事。これ宿題ね」
夏「分かったよ。じゃあな!」


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とにかく頑張ろー!by穂乃果

5

先日他のラ!作家さんとお話しする機会がありまして、とても参考になりました。あととても楽しかったです。


A-RISEと遊びに出かけた翌々日。穂乃果達はアイドル研究部の部室にあるパソコンの前に並んで立っていた。若葉は急遽バイトのヘルブに向かっていて部室にはいない。

 

「いよいよ今日だね」

「緊張してきました」

「もう見ましたか?どうなんですか?」

「ままままったく、少しは余裕ってものを持ちにゃさいよね」

 

穂乃果と愛生人が唾を飲み込む中、海未は輪の横で耳と目を塞ぎ誰にともなく問いかけ、にこは1人机に座っていた。その手にはパックのイチゴ牛乳。

 

「そ、それでは見ますよ」

 

立っている皆に囲まれる形でパソコンの前に座っている花陽が結果発表のページをクリックする。そしてゆっくりと下にスクロールして行く。

 

「1位。A-RISE」

「まぁ前回の優勝校だしな」

 

夏希が頷いて言う。花陽はさらに下にスクロールする。

 

「2位、East Heart。3位、Midnight Cats」

 

続けて2位と3位を読み上げていく。上げられるグループ名に各々納得のいった顔で頷く。そして残り一枠、4位のグループを見る。

 

「4位は…」

『4位は?』

「Mu……tant Girls」

 

花陽が告げた名前にμ'sの名前は無かった。その事実を受け入れるには時間が掛かり、受け入れた部員から次々にその場に崩れ落ちていった。

 

「って夢を見たんだよ!」

「紛らわしい夢を見ないでよ!」

 

穂乃果が夢だった、と伝えるとにこがすぐ様ツッコミを入れた。

 

「それにしても生々しい夢だよね」

「ホントに…」

 

穂乃果の話を聞き終えた花陽とことりが不安そうに頷く。そんな2人の傍では穂乃果がそんな事より、と重そうに口を開く。

 

「今夢と同じ状況だしー!」

「ど、どこが同じ状況だって言うのよ」

 

穂乃果の言葉に動揺しながら答え、手元にあるパックのイチゴ牛乳を手に取るにこ。しかしその手は震えていた。海未も夢と同じ様に耳を塞いで延々と問い掛けている。若葉も昼休みにバイトのヘルプのメールが届き、渋々結果発表を諦めバイトに行っている。

穂乃果はこのまま正夢になる事を恐れ、にこにイチゴ牛乳を一気飲みを要求するも、にこに拒否される。そんな穂乃果達を無視して、花陽はラブライブの特設ページから結果が張り出されるページの更新を待つ。

 

「来ました!」

 

花陽の声に一斉に画面に注目する。そして花陽が1位から名前を読み上げていく。1位2位3位と穂乃果の夢と同じグループが上げられ、いよいよ残り一枠。

 

「ダメだ終わりだよ…」

 

3位のMidnight Catsが呼ばれた時点で諦めたかのような声を出す穂乃果。花陽は気にせず4位のチームを見る。

 

「4位はミュー………ズ」

『え?』

 

花陽の言葉に呆けた声を出す。花陽は画面をもう一度良く見てハッキリと告げる。

 

「音ノ木坂学院高校スクールアイドルµ'sです!」

「…µ'sって私達、だよね?」

「石鹸じゃ……ないみたいだな」

「当たり前でしょ!」

 

夏希の言葉に真姫が切り返す。そんな時、目の前のパソコンから電子音が響く。どうやらメールが届いた様で花陽がメールフォルダを開く。

 

「あ、若葉君からメールだ」

 

届いたメールは現在バイトで部室にいない若葉からだった。内容は予選突破に関してのお祝いだった。

その若葉のメールで穂乃果達はこれが夢ではないと感じ、徐々に顔を綻ばせる。そしてそれぞれが喜びを声に出しながら、部室を飛び出し校内の友達に報告に行く。

 

「うーみん。もう終わったぞ」

「ど、どうなったのですか!?」

 

唯一部室に残った夏希は未だに耳を塞いでいる海未の肩を叩きながら言うと、海未は勢い良く振り返り夏希に結果を聞く。夏希がそれに答えようとすると校内放送を知らせるチャイムが部室に響いた。

 

『お知らせします。たった今、我が校のスクールアイドル「µ’s」がラブライブの予選に合格したという連絡が入りました。繰り返します』

 

夏希は何も言わずにスピーカーを指し海未に笑い掛ける。海未も夏希の方を見て笑顔を浮かべる。

それから出て行ったメンバーは部室に戻りその日の練習をする為、着替えを済まし屋上へ。

 

「最終予選は12月。そこでラブライブに出られる1チームが決定する」

「次勝てば念願のラブライブです」

「でもその為にはA-RISEに勝たなくちゃいけないなんて」

 

夏希と愛生人の言葉に花陽が俯きがちに答える。そんな花陽に穂乃果は元気に励ます。

 

「とにかく頑張ろー!」

「その通りです。そこで来週からの朝練の時間を1時間早くします。更に週末には基礎のおさらいをします」

 

海未の提案に凛や穂乃果から不満気な声が漏れる。愛生人はその声に苦笑いして続ける。

 

「でもまぁ練習は嘘をつきませんし。ほら音ゲーでも練習すれば速さに慣れたり譜面覚えてやり易くなったりなったりするし、ガンゲーでも銃のリロードのタイミングが…」

「すまんアッキー。その話長くなるなら一旦止めてくれや」

 

花陽の様に熱く語り始めようとした愛生人を夏希が止めに入る。

 

「とにかく!練習を始めますよ」

「ちょっと待って。誰か足りなくない?」

 

海未が2人を見て呆れた様に溜め息を吐いて言うと、花陽が屋上のメンバーを見回す。花陽の言葉に首を傾げて希が名前を呼んで行く。

 

「穂乃果ちゃん、ことりちゃん、海未ちゃん、エリチ、花陽ちゃん、凛ちゃん、真姫ちゃん、ウチに愛生人君に夏希君。若葉君はバイトでおらへんし、全員おるやん」

「だよね!じゃあ改めて、行っくよー!」

 

希の言葉を受けて穂乃果が親指、人差し指、小指を立てた手を突き上げる。

それを見て全員は思い出す。

 

『あー!にこ(ちゃん、っち、さん)!!』

 

一斉に声を上げた全員は慌てた様にフェンスに走り寄り、帰宅していく生徒の中ににこがいないか目を凝らす。

 

「さっきまでいっしょだったとは言え流石にもういないか?」

「いえ、にこの事だから警戒して、少し残るハズよ」

「あ、いた!」

 

夏希と絵里が話していると、穂乃果がある一点を指差して叫ぶ。その指の先にはお馴染みのツインテールが見えた。

 

「にこっちを捕まえに行くぞー!」

 

夏希が拳を振り上げ言うと、それに吊られて全員がにこめがけて階段を駆け下りる。

 

「にこちゃーん!」

「ちょっと待つにゃー!」

 

穂乃果と凛がにこの背中に叫ぶと、にこは驚いた様に体をビクッと震わせ恐る恐るといった感じで振り返る。

 

「な、なによあんた達」

「なによも何も今日は練習休むのか?」

「ええ。ちょっとね。そんな事より!最終予選近いんだから、気合い入れて練習しなさいよね!」

「はい!」

 

にこに敬礼をしながら穂乃果が返すと、にこはそのまま振り返り走ってその場を去る。

 

「行っちゃったな…」

「行っちゃったね……」

「行きましたね……」

 

そんなにこを呆然と眺めるしかない夏希と穂乃果、愛生人だった。




【音ノ木チャンネル】
若「皆さんお久し振りでーす」
夏「イェーイ!」
愛「久しぶりのー」
東「音ノ木チャンネル〜!」
若「さて、今回俺はバイトでいなかったんだけど」
夏「ちょちょちょ。若ストップ、ストーップ」
東「どうかしましたか?」
若「何か変な事でもあった?」
愛「僕も聞きたい事が」
「「この人誰!?」」
東「あ、初めまして。高坂家の隣に住んでいる東野友実と申します」
若「もう一つのラブライブ!の作品の主人公だよ」
夏「なぁもしかして前回言ってた「やる事」って新作の執筆だったのか?」
若「いや違うよ?ただ新作始まったから宣伝の為に呼んだだけ」
東「宣伝の為に来ました。きっと感想欄で「宣伝乙」って言われますね」
愛「言われた事無いですけどね」
若「じゃあ言ってみようか。せーの!」
『宣伝乙!』
東「見事に揃いましたね」
若「さて、いい感じに揃った所で東野さん。そろそろキャラ戻しましょうか」
東「キャラ?何のことでしょうか?」
若「あ、そのままで行くんですね。だったら大丈夫です」
愛「取り敢えず今回は4人でお話しという事で良いんですか?」
夏「良いんじゃね?いっその事愛生人もアイトになっちまえよ」
東「人格が変わるんですか?」
愛「えっと……これで良いか?」
若「うわぁ口調が夏希と丸被り」
夏「仕方なくね?」
愛「そうだな」
若「じゃあ話を戻して。もう一つの作品の話する?」
東「宣伝して良いんですか?」
愛「あ、この人ダメって言ってもやるタイプの人だ」
東「ふっふっふっ。こうなった私はもう止まりませんよ!まず私の立ち位置なんだけど……」
夏「若、責任持って止めとけよ。じゃあな」
愛「若葉さん。後は任せたっ!」
若「あ、ちょっ!……2人とも逃げたか…じゃあそろそろ友実さんも止まって下さいよ。締めの時間なんで」
東「……そして今はもう、ってあら?もう終わりの時間ですか?それなら仕方ないですね。終わりにしましょう…」
若「えーと、明日にこの誕生日だけどもち誕編なんて書いてないので期待しないで下さい。アンケートの締め切りも残り僅か!選ばれるのはどの話なのか!?」
東「誤字脱字、感想、批判、アドバイス等をお待ちしております」



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小さいにゃー!by凛

4




「さて、にこは帰った訳だが……やる事は分かっているな?」

 

にこが走り去った後夏希が誰にともなく言うと、穂乃果と凛が揃って頷く。

 

「よし総員にこっちを尾行するぞ!」

『サー!イエッサー!』

 

夏希がにこの去った方を指して言うと、全員が揃って敬礼して答える。そしてにこに気付かれない様に後をつけ始める。そしてにこが向かった先は

 

「スーパー?」

「中に入っちゃったよ?」

「ノリで着いて来ちゃったけど、なんで後をつけるの?」

「だって気になるじゃん!……まさかここでバイトしてるとか?」

 

穂乃果の言葉で皆はにこがバイトをしている姿を想像する。そのあまりの違和感の無さに

 

「嵌り過ぎにゃ~」

 

凛のコメントに頷くしかなかった。しかしにこの行動を見ていた真姫は待って、と止める。真姫のストップでにこを見ると

 

「普通に買い物をしてるみたいですね」

「なんだ~ただの夕ご飯のお買いものか~」

 

海未の言葉に穂乃果は安心したように胸を撫で下ろす。安心した穂乃果と反対に少し困惑した様な顔をする海未。

 

「しかしそれだけで練習を休むでしょうか?」

「ラブライブ出場に向けて気合も入ってるはずなのに」

 

ことりもやや不安そうににこを見つめる。視線の先にはパックに詰められた肉を手に吟味しているにこ。

 

「よっぽど大事な人が来てる、とか」

「その人に手作りでもする、とか」

「ま、まさか……」

 

ことりが花陽と愛生人の言葉を否定しようとするも、言葉が見つからないのか言い切れないでいた。2人の言葉に凛が驚きの声を上げると

 

「ダメです!それはアイドルとして一番ダメなパターンです!」

 

花陽が立ち上がり声を張り上げて否定するも、穂乃果は訳が分かっていない様で首を傾げていた。

 

「μ'sメンバー矢澤にこ。練習を早退して足繁く通うマンションとは!?」

 

花陽に続き凛も口に手を当てまさかの事態を声に出す。

 

「て言うか皆練習はどうしたの?」

「若葉!?」

「なんでお兄ちゃんが!?」

 

そんな話をしていると若葉が凛達が隠れていた台車と段ボールを移動させると言う。

 

「あと少しで終わるけど今日はここでバイトだからだよ。それより皆は何を…」

 

若葉の台詞の途中で真姫が買い物をしているにこを指し示す。若葉はにこを見ると納得行った様に頷く。

 

「あーにこは偶に買い物来るよ」

「え!にこちゃん偶に来るの!?」

「うん。それでにこに気付かれてるけど大丈夫?」

『え?』

 

若葉がにこの方を見るとにこもこちらを見ており、穂乃果達がにこと目が合うとにこはそっと籠を置き、反転、逃走。その一連の行動を静かに見ていた。そして少し間を置いて皆が気付く。

 

『逃げたッ!?』

 

にこは逃げながら穂乃果達がついて来た理由を考えるも思い付かず、また穂乃果達が店内に入り追いかけて来てる事を確認したにこは「stuff only」と書かれている扉の中に入る。にこを追いかけた穂乃果達はにこを見失い、一度店の外に出る。

 

一方穂乃果達と違って店内に行かなかった絵里、希、夏希の3人は裏口に向かっていた。

 

「なぁ本当にこっちに来るのか?ほのっち達が捕まえたりとかは」

 

夏希の言葉を遮る様に裏口の扉が勢い良く開けられ、そこからにこが飛び出してくる。

 

「流石にこね。裏口に回るとはね~」

「ヒィィ!」

「さぁ大人しく訳を聞かせて~」

 

にこは待ち伏せしていた絵里に驚き後退するも、そこを希につかまってしまう。しかし希の捕まえ方が甘かったのか、にこは希の手から抜け出す。

 

「夏希!」

「俺かよ!」

 

絵里に名前を呼ばれ、夏希が渋々といった感じでにこを追いかけ始める。夏希はにこを追いかけながら後続組に携帯で現在地を伝える。そして裏道を2.3度曲がると走って逃げるにこの姿はなく、夏希は立ち止まって左右を見渡し、少し歩きアイドルのパネルを見付けて違和感を覚える。

 

「に、にっこにっこにー!」

「あー!待ちやがれー!」

 

再び逃げるにこ。夏希も後を追って走り始める。暫く走っているとにこはパーキングに止まっている2台の車の間を通り、反対側の道へと行く。夏希は車の前で立ち止まりにこ同様隙間を通ろうとするも、隙間が狭くて通れない。夏希に後ろから穂乃果達が走り寄る。

 

「愛生人!あれやるぞ!」

「あれってなんですか!」

 

夏希が何かを思い付いた様に愛生人に言うも、言われた愛生人は何の事か分からずに返す。夏希はいいから、と車の前に愛生人を立たせると体の前で手を合わせて腰を落とす。その体勢を取らされた所で愛生人は何をするのか理解し、諦めた。

愛生人の準備を終わらせた夏希は少し距離を取り、愛生人目がけて走り出す。

 

「タイミング合わせろよ!」

「そういう事は走り出す前に、言えよっ!」

 

愛生人は夏希が手を踏んだタイミングで思い切り両腕を振り上げる。夏希は腕を振り上げた勢いと自らの跳躍で車を飛び越す。無事着地し、左右を見回すも既ににこはその場にはいなかった。

にこを見失った事でこれまでの逃走劇に使った労力にグッタリしながら待っている皆の元へ戻ると静かに首を振る。夏希のその動作でにこを見失っったと分かった皆は疲れた様に肩を落として、近くの小さい広場に移動する。

 

「結局逃げられちゃいましたね」

「しかしあそこまで必死なのはなぜなのでしょう?」

「にこちゃん意地っ張りで相談とかほとんどしないから」

 

真姫がそう言うも凛が笑って真姫にそっくりと言われ、顔を赤くして顔を逸らす。

 

「いっそ家にでも行ってみるか?」

「押しかけるの?」

「私はそれも良いかなって思うよ」

 

夏希の提案に絵里が聞き返すと、穂乃果も同じ事を思っていたのか夏希の言葉に賛成すると俯き、だって、と続ける。

 

「そうしないと話してくれそうにないから」

「でも家の場所ウチらは知らないんよ?」

「そっか……そうだよね」

 

一番大事なにこの家の場所を誰も知らないという事で穂乃果達が諦めかけた時、突然花陽が叫び声をあげる。

 

「どうしたの!?」

 

隣に立っていた凛がすぐに花陽に聞くと、花陽はとある方を指す。皆が立ち上がり不思議そうに花陽の指した方を見ると、指された方からにこによく似た人物が歩いて穂乃果達の方へ向かってきていた。

 

「にこちゃん!?」

「でもちょっと小さくありませんか?」

「そうね」

 

 

穂乃果の言葉を海未と真姫は自信が無い様に否定するも、凛はそんな事ないよ~と目の前を歩くにこ(?)を見ながら言葉を続け

 

「にこちゃんは3年生の割に小さ……小さいにゃー!」

 

自分の言葉を否定した。凛の叫びに足を止め、首を傾げる小さいにこ。

 




【音ノ木チャンネル】
若「前回は宣伝で終わった【音ノ木チャンネル】。今回は何の話をするのやら」
夏「つってもなー。何かあるか?」
愛「何かも何もあのパーキングでのハイジャンプはなんだったんですか!」
夏「あれな。実は別のネタで使おうと思ったらしく、結局なくなったからここで陽の目を見たって事だ」
若「にしても良く出来たよね」
愛「描写外にですが夏希さんは車の屋根に片手を付いたりとか、にこさんが置いた籠を若葉さんが商品ごと戻したとかありましたね」
夏「つかちっちゃいにこっちは誰なんだよ」
若「それは次回分かんじゃない?」
愛「そうですね」
夏「そうなのか」
愛「そう言えば作者が今話書く時に若葉さんの設定の利便性に気付いたみたいですよ」
若「利便性?俺ってそんなに便利かな?」
夏「まぁあちこちでバイトしてるから、今回のように神出鬼没な登場できるしな」
若「え、俺の利便性ってそれ?」
愛「まぁ他には見当つきませんし」
夏「ま、諦めるんだな」
若「うぐっ!…じゃあもう終わりにする!」
愛「唐突な我儘!」
夏「じゃあ終わりにするか」
愛「あれ?そう言えば終わりの挨拶ってどうなってるんでしたっけ?」
夏「…………」
若「夏希は黙ってヘッドホンを取らない」
愛「あーそう言えば夏希さんが考える事になってましたね。で、何か考えました?」
夏「……次回へ続く。とかはどうよ」
若「なんか普通だね」
夏「別にいいだろ!あとがきのしかも締めの挨拶に面白さを追求するな!」
愛「じゃあそれで行きますか。せーの」
『次回へ続く!』


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……元からよbyにこ

3

穂乃果、若葉誕生日おめでとう!
穂乃果の誕生日回はこちらではなく、もう一つの方に上げていますのでそちらへ。

こちらでは相変わらず本編を上げます。



「小さいにゃー!」

 

凛の叫びに首を捻る小さいにこ。

 

「あの、何か…?」

 

突然知らない人に声を掛けられたも同然な為、少々警戒心を含めた様子で凛に聞き返す少女。凛の叫びに他のメンバーも集まり、少女が全員を見て一言

 

「あのもしかしてあなた方、μ'sの皆さんではありませんか?」

 

少女から発せられた意外な言葉に絵里が自分たちの事を知っているのかを聞くと、少女は元気に頷く。

 

「はい。お姉さまがいつもお世話になっております。妹の矢澤こころです」

 

こころの自己紹介に一同揃って驚愕の声を上げる。その大きさは近くに止まっていた鳩が逃げる程に大きかった。それからこころが慌てた様子で穂乃果の手を引いた為、全員が状況を理解しないままこころの後をついて行く。そして着いた先はとある建物の駐車場に駐車されている車の後ろ。

 

「にしてもにこっちに妹がいたなんてな」

「しかも礼儀正しい」

「まるで正反対にゃ~」

 

感心する夏希、真姫、凛を無視して穂乃果がどうしてこの場所に来たのかこころに聞く。しかし

 

「静かに!」

 

と窘められてしまう。それから海未に誰も後をついて来てないかを確認する。

 

「来てないようですが…」

「では皆さん。私が合図したら一斉にダッシュですよ?いいですか?」

 

皆の返事を聞く前に心は車の陰から走り出る。慌てた様子でこころに続く10人。そして案内された場所はマンションだった。こころはマンションの入り口を盗み見ると穂乃果達に向き直る。

 

「どうやら大丈夫だったみたいですね」

「いったいなんなんですか?」

「にこちゃん殺し屋に狙われてとか…」

 

海未と花陽の質問にこころは何言ってんだ?と言いたげな表情で何言ってるんです?と逆に聞き返す。

 

「だってさっき後をつけられてないか?って言ってたから」

「あーそれはマスコミですよ」

『え?』

「パパラッチですよ。特にバックダンサー・・・・・・・で顔がバレテいるので危険なんです!来られる時は先に連絡をください」

 

こころの”バックダンサー”発言に絵里、希、真姫の3人が反応する。

 

「スーパーアイドル矢澤にこ。そのバックダンサーのμ's!いつも聞いてます!今お姉さまから指導を受けてアイドルを目指しておられるんですよね?」

 

こころの言葉に全員が溜め息を吐くと同時に、絵里がこころに一言断って電話を掛ける。相手はもちろんにこだ。

絵里が通話ボタンを押して数コール。にこは出る気配が全くなく、そのまま留守電サービスに切り替わる。その時点で愛生人はこころの耳を両手で塞ぐ。こころは不思議そうに愛生人を見上げるも、愛生人は黙ってニッコリと笑うだけだった。

 

『にっこにっこにー!あなたのハートにラブにこ!矢澤にこでーす。今ぁ電話に出られませぇん。ご用の方は発信音の後ににっこにっこにー!』

 

にこの留守電メッセージに堪忍袋の尾が切れたのか、絵里は落ち着いた声色で話し始める。

 

「もしもし?私あなたのバックダンサー・・・・・・・を務めてさせていただいてる絢瀬絵里と申します。もし聞いていたら」

 

絵里はそこで区切り一呼吸入れると目を開いて電話に向かって大声を出す。

 

「すぐ出なさい!」

「出なさいよにこちゃん!」

「バックダンサーってどういう事ですか!」

「説明するにゃー!」

 

絵里、真姫、海未、凛が絵里の携帯に叫ぶもこころは愛生人が耳を塞いでいる為ただ不思議そうな顔をするばかり。愛生人は予想通りの展開に夏希と一緒に苦笑い。それからこころの案内で矢澤家に上がらせてもらう事に。

中に入ると25と書かれたシャツを着ている少年がテーブルでモグラ叩きをしていた。

 

「弟の虎太郎です」

 

こころが虎太郎の紹介をすると、虎太郎は穂乃果達を指して「ばっくだんさ~」と年相応の発音で言った。虎太郎の言葉にことりも思わず苦笑い。

 

「お姉さまは普段事務所が用意したウォーターフロントのマンションを使っているのですが、夜だけここに帰って来ます」

「ウォーターフロントってどこよ?」

「もちろん秘密です。マスコミに嗅ぎつけられたら大変ですから」

 

こころがお茶を淹れながら真姫を軽く流す。それを穂乃果は乾いた笑いを零す。さらに穂乃果の後ろでは夏希と愛生人が

 

「なぁウォーターフロントってなんだ?」

「さぁ?でもウォーターでフロントですからね。たぶんフロントに水が流れてるんだと思いますよ」

「そうなのか。それじゃあどこのマンションか分からないな」

 

と訳の分からない会話をしていた。そんな2人を無視して穂乃果達はどうしてそうなったのかと原因究明に走る。

 

「ねえ虎太郎君。お姉ちゃんが歌ってるとことか見た事ある?」

 

ことりが虎太郎に聞くと、虎太郎は手に持ったピコピコハンマーで壁を示す。そこにはμ'sのポスターが貼ってあった。最初に違和感に気付いたのは真姫だった。真姫がなにかおかしいと口にすると皆はジ~ッとポスターを見つめる。そしてセンターに立っている人物を見て一斉にあー!と声を上げる。

 

「合成ってレベルじゃねえぞ」

「ねえこころちゃん。お姉ちゃんの部屋見せて貰っても良いかな?」

 

夏希がポスターに近付きながら呟き、花陽はこころににこの部屋に案内して貰う。こころに通されたにこの部屋はピンクを基調とした女の子っぽい部屋だった。

絵里や凛、希が部屋の壁に貼られているポスター等を見ると、その大体がにこの手によって加工がなされていた。

 

「態々こんな事まで…」

「涙ぐましいと言うか…」

 

にこの徹底振りに絵里と穂乃果が呆然としていた。とそんな時玄関から扉を開ける音がした。

 

「あ、あんた達…」

 

玄関から入って来たのは買い物袋を手に下げたにこだった。にこの反応からして絵里達の留守電を聞いてないのは明白。にこの頬に一筋の汗が流れる。

 

「お姉さま!お帰りなさい!バックダンサーの方達がお姉さまにお話があると」

「そ、そう…」

 

にこ達の様子に気付かず心が得画をで伝えると、にこは目を逸らして返す。そんなにこに海未が笑顔ですいません、と謝罪する。

 

「すぐに済むのでよろしいでしょうか?」

 

笑顔で続ける海未を見て顔を引き攣らせたのはにこではなく、穂乃果とことりだった。次の瞬間一瞬にして真顔になりにこを睨む海未。そんな海未の鋭い眼光ににこはたじろぎながらも鞄と買い物袋を玄関に置く。

 

「こ、こころ~。悪いけどわ、私今日仕事で向こうのマンションに行かなきゃイケないから~。じゃあ!」

 

にこが玄関の扉を開けた瞬間に逃げられたと気付く海未達。

 

「待てー!」

「なんで何度も逃げなきゃイケないのよ!」

 

にこは逃げながらエレベーターが到着するのを聞き、逃げ切るチャンスだと内心でほくそ笑んだ。しかしエレベーターへの道を曲がった途端視界に入ったのは妹のここあと、この半年でよく見るようになり、後ろから追いかけて来てる2人が着ている服だった。

つまる所、曲がり角を曲がったらここあを連れた若葉だった。

 

「ちょ、なんであんたがいるのよー!」

「逆になんでにこは走ってるのさ!?」

 

にこは止まることが出来ずに若葉にぶつかってしまう。にこがぶつかった反動で後ろに倒れそうになった所を若葉がにこの腕を掴んで踏ん張る。今回は平地で予め踏ん張ることが出来た為、一緒に倒れることはなかった。

 

「っと。取り敢えずなんでにこは走って来たのさ」

「そうだった。とにかく私はもう行くから!」

「お姉ちゃん!捕まえたー!」

「ここあ!?」

 

若葉の手を振り切って再び逃げようとしたにこを今度はここあが抱き着いて止める。さすがのにこも妹相手に乱暴する気はなく、大人しく抱き着かれるままになる。そんな事をしていると当たり前の事だが絵里達に追い付かれる。

 

「もう一人妹がいたにゃ!」

「て言うかなんで若葉がいるのよ!」

「なんでってにこがスーパーに忘れ物したから届けようと思って、そしてらここあちゃんに会ったからこうして一緒にいただけだよ」

 

それから若葉は追って来た海未の顔が怖かった為、反射的に逃げていたにこを差し出す。海未は一言お礼を言ってから再び矢澤家に戻って行った。他のメンバーも戻る中若葉がどうしようか悩んでいると、ここあに手を引っ張られ、矢澤家に入る。

 

「大変申し訳ありませんでした。私矢澤にこ、嘘をついておりました」

「ちゃんと頭を上げて説明しなさい?」

 

若葉が矢澤家に入るとにこが穂乃果達に頭を下げていた。若葉は咄嗟にここあをこころろ虎太郎のいる場所まで連れて行くと、穂乃果達の元へと戻る。

 

「にこっち?ふざけててても、ええんかな?」

「う…」

 

若葉が戻るとにこがにこにーで誤魔化そうとしていた様で、希に窘められていた。それで諦めがついたのか、素直に今の自身の状況を話し始めた。

 

「実は2週間前から親が出張に行っててね。それでその間私が面倒見たりしてたの」

「あーだから最近こころちゃんとかをスーパーで見かける様になったんだね」

「そうよ。私が手を離せない時はこころに買い物を頼む時が多いからね」

 

若葉の言葉に頷いて返すにこ。絵里や希も練習を休んだ理由が分かって一安心していた。

 

「それよりも、どうして私達がバックダンサーという事になってるんですか?」

「だな。寧ろ問題はそっちだ」

 

海未がしかめっ面で問いかけると、夏希もそれに同乗してにこに聞く。

 

「そ、それは…」

『それは?』

 

若葉とにこ以外の10人がハモってにこに聞き返す。にこは思わずにこにーで誤魔化そうとするも、希にすぐに止められる。

 

「まぁまぁ皆も落ち着いて。ね?責めてもなにも始まらないし」

「な!若葉はにこの肩を持つのですか!?」

 

海未は若葉がにこの肩を持ったことに驚きの声を上げる。若葉としては特に特別な理由がない為、肩を竦める。

 

「って言ってもなんとなく理由には見当がつくし」

「そうなの!?」

 

今度は凛が声を上げる。

 

「だから俺は特ににこを責めるつもりはないよ。それにポスターの件だって特に実害ないし」

「実害はなくとも私達が困ります!」

 

海未が机を叩いて言うと若葉はまた肩を竦めて壁に背を預け、にこを見る。

 

「まぁにこが話したくないなら無理に話さなくても…」

「いいえ。この際だから話しておくわ」

 

にこはアイドルの話をする時と同じ真剣な表情で話始める。

 

「……元からよ」

「元から?」

「家では元からそう言う事になってるの。別に私の家で私がどう言おうが勝手でしょ」

 

にこの言葉に穂乃果が何か言おうとするも、振り返ってこころ達を見ているにこの表情は分からなかった。

 

「お願い。今日は帰って」

 

こころ達の方を向いたまま、にこはいつになく真剣に言う。若葉はそんなにこに気を使ってか、穂乃果の肩を叩くと全員を連れて外に出る。

 

「それじゃあ俺はちょっとやる事あるから」

 

そう言って真姫が止めるのを振り切ってもう一度にこの家に入る若葉。

 

「なによ、帰ってって言ったでしょ」

「確かに言われたよ。でもね、俺はこうとも言ったよね?忘れ物を届けに来たって」

「確かに言ってたわね。で?何か忘れたかしら?」

 

これですよ。と若葉はポケットからポイントカードを渡す。

 

「それと」

「?」

「姉だから、兄だからって意地貼るの疲れるよね」

「な!私は別にそれだけじゃ…」

「分かっるって。にこは…にこ先輩は“アイドル”だもんね」

 

若葉はこころ達を見て言うと、にこは何も言い返せないでただ立っていた。

 

「じゃ、俺の用件はそれだけ。じゃあね~」

「さ、さっさと帰りなさいよ!」

 

若葉が手をヒラヒラと振って出て行くのと同時に、閉まった扉にポイントカードが突き刺さった。

 

 

 

「で、絵里。この急な召集はなに?」

「なんで私に振るのよ」

「じゃあ海未?それとも希?」

「私ではありませんよ」

「もちろんウチでもないで?」

 

若葉がにこの家から穂むらに帰ると、そこには若葉とにこを除いたアイドル研究部10人全員が居間に座っていた。

 

「じゃあ穂乃果?」

「そうだよ!良いこと思い付いちゃったんだ~」

 

穂乃果はえへへ~と笑うも、若葉には嫌な予感しかしなかった。なにか自分が大変な目に合うんじゃないか、と。そして若葉の予感は当たってしまう。他でもない妹の穂乃果の手によって。

 

☆☆☆

 

翌日の放課後。若葉は眠い目を擦りながらとある場所に夏希と向かっていた。そこは

 

「お~いこころちゃ~ん、ここあちゃ~ん、虎太郎く~ん」

「あ、夏希さんに若葉さん!こんにちは」

「うんこんにちは。え~っともう出掛ける準備は出来てる?」

「うん!」

「だいじょ~ぶ~」

 

若葉がしゃがんで3人に聞くとここあと虎太郎が頷いて返す。

 

「それじゃあ行くか!」

「音ノ木向けてしゅっぱ~つ!」

「しんこ~」

 

夏希がこころとここあの手を引き、若葉が虎太郎を肩車して、母校である音ノ木坂に引き返す。

 

「若葉、ちょっと急がないとマズイかもだぞ」

「大丈夫!絵里や希が引き留めてくれるって言ってたし、俺はそれを信じる!」

 

夏希が時計をチラリと見て急ごうとするも、若葉はメンバーを信じると言って急ぐことはしなかった。

実は今はまだ帰りのHRの真っ最中なのだが、若葉と夏希は体調不良という事で保健室に行くと言って学校を抜け出しているのだ。しかしいくら抜け出しても帰りのHRは短い。その短時間で学校―矢澤家を往復しないといけないので2人は焦っていた。

そして音ノ木が見えて来た所で2人は安堵の域を吐く。

 

「な、何とか間に合いそうだな」

「そうだね。まだ3年生出てきてないっぽいし」

 

若葉は肩車を楽しんでいた虎太郎を地面に降ろしてにこが校門から出てくるのを待つ。にこを待つ間5人は暇でしりとりを始めていた。

 

「ってあんた達人の弟妹連れ出して何してんのよっ!」

 

しりとりに夢中になっていた若葉の後頭部を、にこが鞄で引っぱたく。威力があったのか少しつんのめる若葉。

 

「ちょっとにこ、いきなり叩かれると痛いんだけど」

「あらそう?じゃあ次からは言ってから叩くわね」

「お姉さま!」

 

こころが夏希の隣を離れにこに抱き着く。こころに抱き着かれて思い出したのか、若葉に詰め寄る。

 

「さっきも聞いたけど、なんで弟妹連れ出して何してんのよっ!」

「いや~前にね、こころちゃん達が見たいって言っててね。だから今日誘ってみたんだ」

「そしたら大丈夫だったから迎えに行ったって訳」

 

夏希と一緒にここあがブイッ!とにこにブイサインをする。

 

「さ、行こう。にこちゃんのステージに。にこちゃんのライブに!」

「ちょ、聞いてないんだけど…」

「大丈夫にゃ!」

 

にこが慌てて言うも、いつの間にか後ろにいた穂乃果と凛に両脇を捕まえられ、そのまま部室に連れて行かれる。

 

「さ、俺達は屋上に行こっか」

「おくじょ~」

「そ、屋上!」

 

虎太郎の言葉に夏希が屋上を指差して虎太郎を肩車し、こころとここあに両手を繋がれて先に行った若葉の後を追う。

5人が屋上に着くと若葉達が朝早くから突貫工事で作った簡易ステージが設置されていた。

 

「ここは?」

「にこの為のステージだよ」

 

こころが屋上を見回して若葉に聞くと、若葉はにっこり笑って返す。

 

屋上で若葉達が話している間、部室ではにこのゲリラライブの準備がされていた。

 

「ちょっと聞いてないんだけど!?」

「まぁまぁ。良いからこれに着替えて着替えて」

にこの抗議を穂乃果はピンクを基調とした衣装を押し付けて流す。にこは花陽とことりに隣の部屋に連行され着替えが行われる。

衣装を着替え終わるとにこは有無を言う暇を与えられずに花陽と真姫、愛生人に屋上の扉の前まで連れて行かれる。

扉の前では絵里と希の二人がにこを待っていた。

 

「にこにピッタリの衣装を私と希で考えたの」

「やっぱりにこっちには可愛い衣装が良く似合う。スーパーアイドルにこちゃん」

「今、扉の向こうにはあなた一人のライブを心待ちにしている最高のファンがいるわ」

 

にこは希と絵里を交互に見やる。絵里はにこにマイクを渡すと、屋上を示す。

 

「さぁ皆待ってるわよ」

 

絵里が言うとにこは笑顔で頷き、屋上への扉を開き屋上へと舞い出る。

にこがステージのセンターに立つのと同時にμ'sの他の8人がにこの後ろに並ぶ。全員が並び終わるにこがこころ達の名前を呼ぶ。

 

「歌う前に話があるの」

 

にこの言葉にこころ達は驚きの声を上げる。にこは3人に微笑みかけると続ける。

 

「実はね……スーパーアイドル矢澤にこは今日でお終いなの」

「えぇ!アイドル辞めちゃうの?」

 

こころの疑問に首を振る。

 

「ううん、辞めないよ。これからはここにいるμ'sのメンバーとアイドルをやって行くの」

「でも、皆さんアイドルを目指している」

「ばっくだんさ~」

 

虎太郎が穂乃果達を指しながら言うも

 

「そう思ってた、けど違ったの。これからは新しい自分に変わって行きたい。この9人でなら一番輝ける。1人でいる時よりずっとずっと……今の私の夢は宇宙ナンバー1アイドルにこちゃんとして、宇宙ナンバーワンユニットμ'sと一緒により輝いていく事。それが一番大切な夢、私のやりたい事なの!」

「お姉さま」

「だからこれはにこが一人で歌う最後の曲」

 

そのタイミングでにこ以外のμ'sがステージからはける。

 

「行くわよー!にっこにっこぉにー!!!」

 

☆☆☆

 

にこのライブから数時間後の屋上。若葉達はステージの解体を行っていた。

 

「にしてもほのっちの急な提案には困ったものだな」

「そう?俺はもう慣れたものだけど」

「慣れって恐ろしいものですね……」

 

夏希と愛生人が苦笑交じりに作業をするも、若葉は慣れた手付きで資材を纏めていく。

 

「おーっす、若葉解体作業は順調か?」

「親方、お疲れ様です」

 

若葉達が作業をしていると屋上の扉を開けて陸山が現れる。

 

「今日は突然の申し出にありがとうございました」

「な~に若葉とμ'sの皆の頼みだからな。ちょっとくらいの我儘は聞けるってもんよ」

「親方さんてばすっかりμ'sのファンなんだよ~」

「な、杉本お前!」

 

陸山の後ろから顔だけ出して杉本が若葉達に聞こえるようにボソッと伝える。陸山はバラされたくなかったのか、杉本に向かって拳を振り上げる。杉本はわーやられるー、と笑いながら頭を押さえる

 

「え~っと親方。取り敢えず今纏まっているのだけお願いします」

「あいよ。ほら杉本もいつまでも遊んでないで片づけるぞ」

 

それから少し、屋上にあった資材は全て駐車場に停めてあったトラックに運び込まれていた。

こうしてアイドル研究部の忙しい1日は幕を閉じた。

 




【音ノ木坂チャンネル】
夏「誕生日おめでとう若、ほのっち」
若「急にそうしたの?」
愛「今日は穂乃果さんと若葉さんの誕生日じゃないですか」
穂「そ、そうだけど…」
若「急になるんだもん。びっくりするって」
夏「さて、取り敢えずお祝いはここまでにして、本編の話でもするか」
愛「そうですね。あ、お2人はケーキ食べてていいですよ」
穂「はーい!」
若「2人で大丈夫?」
夏「大丈夫じゃないか?」
愛「今回はにこさんの個人回でしたね」
夏「因みに衣装は若とことりんが一晩で完成させてたな」
愛「そういえばまえがきのカウントダウンは何なんですか?」」
穂「あれのカウントが0になると何かが起きるって噂らしいよ」
若「さて、7月いっぱい行ったこの小説に関するアンケートの結果はどうなったの?」
愛「それはですね。一番多かったの若葉さんと真姫ちゃんのデート回です!」
夏「作者はデート経験皆無だから無茶苦茶な事になるかもだが、そこはご愛嬌で」
穂「デート回は早くて今月中!遅くても来月には投稿できるよ!」
愛「それでは誤字脱字・感想・アドバイス等お待ちして言います!それじゃあ」

『バイバーイ』


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止まない雨はない、明けない夜はないby愛生人

2!

寝不足で頭が痛いです。頭痛で頭が痛い、危険が危ない的な感じです。


「それじゃあ行ってきまーす!」

「海未やことりに迷惑掛けないように気を付けていってらっしゃい」

 

朝早く「穂むら」の前にはキャリーバッグを持った穂乃果とそれを見送る若葉の姿があった。

 

「それでは高坂穂乃果、修学旅行に行ってまいります」

「はいは~い。行ってらっしゃ~い」

 

敬礼をする穂乃果に対して若葉はヒラヒラと手を振って送り出す。穂乃果は大きく手を振って待ち合わせ場所に向かって歩き始め、少し離れた場所で石に躓いて転びそうになる。

その様子を一部始終見ていた若葉は溜め息を吐いて家の中に戻る。

 

「さて、と。雪穂が起きるまでまだ時間あるし、かと言って店の前の掃除をするほど汚くない……よし寝よう」

「今の時間に寝たら朝練に遅刻するんじゃないの?」

「あ、母さんおはよう」

 

若葉がどう時間を潰そうか考えていると裕美香が居間に入ってくる。

 

「おはよう。そう言えば部活の調子はどう?」

「え~っと確か…」

 

裕美香の問いに対して顎に手を当てて考える若葉。

 

「今週末にファッションショーのイベントでライブを頼まれたよ」

「あら、凄いじゃない」

「その間の生徒会は俺と夏希、絵里と希の4人でやるから良いとして、あとは向こうとの打ち合わせとかもしなくちゃ、か…」

「若葉も大変ね。ま、頑張り過ぎて倒れないように気を付けなさいよ」

「は~い」

 

若葉はやる事の大変さにテーブルに頭を乗せて答える。それから雪穂が起きるまで若葉はその体勢から動く事は無かった。

 

☆☆☆

 

その日の放課後。凛はいつまで経っても止まない雨に辟易していた。

 

「止まないね~」

「止まない雨はない、明けない夜はない。だよ凛ちゃん」

「な、なんか使い方違う気が…」

「そんな事よりそろそろ練習の時間よ。今日は中での練習なんだし、早く準備しちゃいましょ」

 

真姫が部室にいる4人に言うも、凛はやる気が起きないのか机に体を預けている。

 

「どーせまた5人で練習でしょ?もう飽きたにゃ」

「それはこっちのセリフ」

 

凛の言葉ににこが机に肘を付いて言い返す。そんな2人に花陽がまぁまぁと宥める。

 

「仕方ないよ、凛ちゃん。穂乃果ちゃん達は修学旅行で沖縄、若葉君と夏希君は生徒会。絵里ちゃん、希ちゃんはそのお手伝い」

「そうよ。気合いが入らないのは分かるけど、やる事はやっておかないと」

 

絵里が部室に入って来て5人に言う。その後ろからは若葉もついて来ていた。若葉の服装はなぜかスーツ。

 

「もうダメ…スーツ、嫌い…」

 

若葉は椅子の背もたれに上着を掛けるとそのまま座り、机に突っ伏す。そんな若葉に真姫が聞く。

 

「若葉はなんでスーツなのよ」

「あー…今週末にライブやるじゃん?それの打ち合わせで、ね……」

「いや、私達高校生なんだから制服で良いじゃない」

 

真姫が言うと若葉は遠い目をする。何があったのか真姫達が絵里に疑問の視線を送ると、絵里も分からないのか肩を竦める。

 

「どうも翔平君に騙されたみたいでね」

「翔平君って前に何度か会った事のある…?」

「ええ。今回のライブの紹介をしてくれた本人でもあるのよ」

 

絵里の説明にへぇーと驚きの声を出す4人。真姫だけは声を出さずに若葉を心配そうに見つめる。

 

「大丈夫?」

「んー……ダメかも。つか翔平の奴許さん」

「若葉君が珍しくダメージ負ってるにゃー」

「まぁスーツは着慣れてないと疲れますからね」

「でもファッション業界にコネを持ってるって、あいつどんな人脈持ってんのよ」

「流石は若葉の知り合いって所かしら」

 

真姫が若葉の頭を撫でる傍らで愛生人達は2人に聞こえない声量で会話する。結論としては翔平の謎が深まっただけだった。

 

「さて話は戻して。イベントは穂乃果達が修学旅行から帰って来た次の日よ」

「そうだよ~だからちゃんとフォーメーションの確認とかして、合流し次第ライブ出来る様にしないとだよ」

 

絵里に続き若葉が机に頭を置いたまま言う。

 

「でもファッションショーからライブ依頼が来るとは思いませんでしたけどね」

「きっとモデルさん達と同じ舞台で踊るんだよね気後れしちゃうね……」

 

花陽の言葉に隣で頷く凛。真姫もそうね、と2人に同意し、にこを見る。

 

「絵里や希はともかく」

「なに?」

 

真姫に見られたにこは真姫に迫るも、でも、と真姫の隣から若葉が声を上げる。

 

「ファッションショーって服を見せるのが主でしょ?俺らとは目的が違わない?」

「そうね。気にする事は無いわ。じゃあね」

「あ、生徒会室?だったら俺も行くよ。じゃあ穂乃果達が帰ってくる時にすぐ出来る様に練習頑張ってね」

 

絵里が部室から出て行こうとすると、若葉も立ち上がり絵里の後について部室から出て行く。

 

「あ~あ沖縄かぁ。穂乃果ちゃん達楽しんでるんだろうな~」

 

凛は雨粒が当たる窓を不満そうに眺める。

 

 

凛が不満そうに呟いている同時刻、沖縄では強風と大雨に見舞われ、2年生は全員室内待機を命じられていた。

 

 

穂乃果がヤケになって天に向かって晴れろー!とやっているとポケットに入れていた携帯が鳴る。

 

「あれ?絵里ちゃんからだ。もしもし?」

『あ、穂乃果どう?楽しんでる?』

「嫌味?」

『え、なん……あーごめんなさい』

「?」

 

申し訳なさそうに謝る絵里に穂乃果は首を傾げる。実は若葉がパソコンの天気図を見せ、沖縄の現在の天気を知ったのだ。

 

「別に良いよー。それよりどうしたの?」

『今週末のイベントなんだけどね、ちょっと相談があって』

「相談?」

 

絵里から相談の内容を伝えられた穂乃果は電話にも関わらず頷いて手を握る。そして誰がいいかの質問に対し、穂乃果は部屋の中をクルクルと考えながら歩く。穂乃果が迷っていると絵里が実は、と切り出す

 

『私と希、夏希の3人で話し合ったんだけど……』

 

絵里の上げた人物に穂乃果は特に反対する様子もなく賛成し、電話を切る。

 

「絵里からの電話ですか?」

「うん。なんか相談、と言うより提案かな」

「なんの提案だったの?」

「えっとね……」

 

電話を切ると穂乃果は海未とことりに電話の内容を話すと、2人は笑顔で頷く。

 

「それは確かに良い案ですね」

「うん!ピッタリだと思うよ」

 

そして翌日の放課後。1年生の教室にアイドル研究部全員が集まる。

 

「今日は若葉さん制服なんですね」

「今日は向こうとの打ち合わせは無いからね」

 

愛生人が制服姿の若葉に茶々を入れるも、そんな事より、と本題に入る。

 

「凛、ちょっとお願い……いえ提案があるの」

「凛に?」

 

絵里が凛を見ると、それにつられて皆も凛を見る。皆に見られた凛はギョッとして椅子ごと少し下がる。

 

「な、なにかにゃ?」

「凛ちゃんμ'sのリーダー、やてみいひん?」

 

希の突然の言葉に凛は動きを停止させる。笑顔で固まった凛に愛生人と花陽が心配そうに声を掛ける。

 

「凛ちゃん……?」

「大丈夫……?」

「……えぇー!凛がリーダー!?」

 

2人の声で元に戻ったのか、机を叩いて立ち上がる。夏希が反応おそっ!とツッコむも、誰にも返されることはなく、話が進む。

 

「そうよ、暫定でもリーダーを決めておいた方がある程度纏まるだろうし、練習にも力が入るだろうと思って」

「もちろんほのっち達が修学旅行から帰ってくるまでの期間だけどな」

「穂乃果ちゃん達にも連絡して相談した結果なんよ。ウチ達は凛ちゃんが良いって。3人はどう?」

 

希が最後は真姫と花陽、愛生人に向かって聞くと、3人とも賛成のようで頷き返す。しかし張本人である凛はみ皆を見渡しながら待ったをかける。

 

「ちょ、ちょっと待ってよー。なんで凛?絶対他の人の方が良いよ~絵里ちゃんとか!」

 

凛に指名された絵里は困り顔で生徒会の仕事で手伝えない事と、今後の事を考えて3年生が務めない方が良いと伝えると、凛は若葉に話を振る。

 

「凛ちゃんには悪いんだけど、イベント先との打ち合わせでこれから放課後はだいたい消えるから出来ないんだよね」

「じ、じゃあ夏希君は?」

 

若葉に断られ隣にいる夏希に目を向けると夏希は笑顔で凛の肩に手を置と、夏希の動作に凛は嬉しそうな笑顔を浮かべる。そして夏希は口を開き

 

「りっちゃん。俺は既に生徒会での若葉が抜けた分の穴をフォローしなきゃならないから、リーダーをやってる時間は無いんだよ。分かった?」

「は、はいぃ~」

 

笑顔で肩に力を入れる夏希に引きつり笑いで返す凛。そんな凛を見て真姫は溜め息を吐く。

 

「話聞いてなかった?皆凛が良いって言ってるのよ」

「でも凛は……」

 

と小さくなりながら椅子に座る凛。花陽が嫌なのかと聞くと自分には向いてないと返す。その発言ににこが意外ね、と本当に意外そうに言う

 

「凛なら調子良く引き受けるかと思ってたけど」

「凛ちゃん結構引っ込み思案なところありますから」

「特に凛ちゃん自身の事だとね」

 

愛生人と花陽がにこに答えるように話すと、絵里が机の上で握られている凛の手をそっと自身の手で覆う。

 

「凛、いきなり言われて戸惑うのは分かるけど、皆凛が適任だと考えてるのよ。その言葉ちょっとでも信じてみない?」

 

絵里が除き込むように諭すと凛は再び全員の顔を見る。若葉達は揃って微笑み返す。

 

「分かったよ。絵里ちゃんがそこまで言うなら……」

 

凛が俯きがちにそう答えると花陽と愛生人が嬉しそうに凛の名前を呼ぶ。

 

「さてと、そろそろ雨も止みそうだから練習始めちゃおう」

 

若葉が手をパンと叩いて絵里、希、夏希の3人以外は着替えて屋上に集合した。

 

「若葉さん。生徒会の方に行かなくて良いんですか?」

「俺も行こうとしたんだけど、夏希から「滅多に来れないんじゃこっちの頭数として計算に入れたくないから、練習の方に行ってくれ」って言われた」

「それはまぁ、お気の毒に」

 

曇り空から一転、晴れた屋上で若葉と愛生人がそんな会話をしている一方、凛指揮の元練習が行われていた。

 

「え、えっとそれでは練習を始めたいと思います。最初にストレッチから初めていきますわ。皆さんお広がりになって」

 

両手をバッと広げて言う凛と、それを半目で見る真姫とにこ。

 

「あれって海未の真似かな?」

「さ、さぁどうでしょう」

 

思わず苦笑いを浮かべる若葉と愛生人。我慢できなかったのか真姫が凛の口調に突っ込みを入れると、凛も自分がおかしな事を言っていた事に気付く。

 

「別にリーダーだからって畏まる必要ないのよ?普段の穂乃果を見てみなさい。普通にしてればいいのよ」

「そっか……えっと、ではストレッチをはっじめるにゃー!」

 

にこの助言に凛はいつも通りの口調、仕草でストレッチを始めるように言う。そんあ凛を若葉は楽しそうに、愛生人は内心焦りながら見ていた。

 

「いや~凛見事に緊張してるね」

「そうですね。って言うか若葉さん何か楽しんでません?」

「まぁ普段と違う練習風景は見てて楽しいからね」

「僕はもうドキドキですよ」

「好きな子の新しい一面が見れて?」

「ち、違います!それにあんな感じのしおらしい凛ちゃんは昔にも見たことありますので、そこまで新しい一面とは言いません」

「長々と言い訳する所がこれまた怪し……ちょ、無言でボードで叩くの辞めて!地味に痛いんだよ、それ!」

 

若葉が愛生人をからかって制裁を受けている頃、4人は凛がリズムを刻みながらステップ練習に励んでいた。しかし凛は慣れていないのか、徐々にリズムがズレ始める。

 

「凛?ちょっとズレてるわよ」

 

真姫にその事を指摘されると焦ったのか、さらにズレる。さすがに見てられなくなったのか、若葉が凛と交代し4人でのステップ練習に移行した。

それから一度通しで踊りきると、真姫がねぇ、と凛に立ち位置の相談をする。

 

「私はここから後ろに下がって行った方が良いと思うんだけど」

「何言ってんの逆よ逆。ステージの広さを考えたら前に出て目立った方が良いわ!」

「だからこそ引いて大きくステージを使った方が良いって言ってるんじゃない!」

 

真姫とにこが意見をぶつけ合うもどちらも引かず、にこは前に出るべきと言い、真姫は下がった方が良いと主張し合う。凛がどう止めようか困っていると花陽が仲裁に入る。しかし上手く仲裁できずに2人は凛に聞く。

 

「え、あぁ……穂乃果ちゃんに聞いたら良いんじゃないかな…」

「それじゃあ間に合わないでしょ」

「じゃあ絵里ちゃんか若葉君に…」

 

真姫に言われ絵里か若葉にと言おうとした所でにこに名前を呼ばれ遮られる。その遮ったにこの真剣な表情と声色に返事をする凛。

 

「リーダーはあなたよ。あなたが決めなさい!」

 

にこの言葉に凛はそっか、と少しの間考えると俯きがちに答える。

 

「あ、明日までに……考えてくるよ……」

「凛ちゃん……」

 

そんな凛を愛生人は心配そうに見つめる。それに気付いたのか、若葉が手を叩き、練習を終わらせる。

 




【音ノ木チャンネル】
若「沖縄楽しかったな~」
夏「ほのっち達は台風が直撃するかもだってよ」
愛「え、それって拙いんじゃないですか…?」
「「「…………」」」
若「まぁそれは置いといて」
愛「今の間はなんですか!?」
夏「まぁ落ち着けってアッキー。このままじゃS疑惑のある作者に何かしらの無茶ぶりをされ兼ねないぞ」
愛「誰から疑い掛けられたんですか!」
若「ほら、俺って過去と今で計2回入院してるでしょ?それをポロっと言った所そう言う疑惑が浮上したんだよ」
愛「自業自得じゃないですか」
夏「ま、そう言う訳で今回はここまで!」
若「異様に短いね」
愛「あれじゃあないですかね。前書きにも書いてあった通り寝不足で頭が回ってないとか」
夏「いや、寝不足の度合いで言えば前回のあとがきの時の方が重いぞ?」
若「確か、夕方4時頃から一晩中起きて最後の方を仕上げてから書いてたんだっけ?しかも書き上げた時間が投稿する直前」
夏「書き溜めしない弊害がここに現れるんだよな」
愛「新鮮さを大事にしてるんですよ。きっと」
若「そうそう前回のあとがきでも発表しましたが、番外編4話目は『若真姫デート』に決定しました。投票してくださった方々本当にありがとうございました」
夏「大体の流れも出来つつあるから楽しみに待っててくれ!」
愛「それと誤字脱字、感想、批判、アドバイス等をお待ちしております!」
若「さて、そろそろ本当に終わりにしよう」
夏「だな」

『次回もお楽しみに!』


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ハハ、ハハハハハ!by凛

どうもお久し振りです。

学校でクロックスをパクられてちょいとダウナーな中、投稿します。

どうぞ〜



「はぁ~疲れたにゃ~」

 

 夕暮れの帰り道。愛生人と花陽に挟まれて帰っている凛が溜め息と共に肩を落とす。

 

「やっぱり凛にリーダーは無理だよ~」

「そんな事は無いよ。きっと段々慣れていくよ」

「そうだよ。まだ始めたばかりじゃん」

「2人ともリーダーじゃないからそんな事言えるんでしょ。他の皆だってリーダーやりたくないから凛に押し付けたんじゃないの?」

 

 凛は不満そうな視線を2人に送り、この場にいない若葉達に対しても恨めしそうな気持ちを送る。

 

「何言ってるのさ。凛ちゃんが向いてると思ったから、皆も凛ちゃんが良いと思ったから推したんだよ」

「そうだよ。例え穂乃果ちゃんや若葉君が他の人を推薦したとしても、私は凛ちゃんを推薦したと思うよ」

「凛はリーダーに向いてないよ。だって凛って皆の中心にいるような人じゃないし……ほら、昔だって」

 

 2人の言葉に凛は嘘だー、と否定的な事を言って昔の事を思い出す。

 

それは以前話に出た小学生の時にスカートを履いて登校した時に同じクラスメイト達にからかわれた事。

 

「だから凛はアイドルっぽくないんだよ……」

「そんな事言ったら私の方がアイドルっぽくないよ!」

「そんな事ないよ。だってかよちん可愛いし、女の子っぽいし」

 

 凛の言葉に花陽は驚き、凛の方が可愛いと返す。その花陽の言葉に凛はそんな事ないと言い返す。そんな果てのない言い合いに一緒に歩いていた愛生人は溜め息を吐く。

 

「凛ちゃん。女子のそういったのはあまりよく分からないけど、余程の自惚れ屋でもない限り自分よりも他人を可愛いって思うんじゃないの? 「祈る者達(プレイヤーズ)」でも似た様な事あったし」

「違うのっ! ……凛は、違うの」

 

 愛生人の言葉を凛は叫ぶ様にして遮り、伏し目がちに続ける。

 

「引き受けてちゃったから穂乃果ちゃんが帰って来るまではリーダーはやるよ……でも、向いてるなんて事は絶対に、ない!」

「凛ちゃん!」

 

 振り返り、走り去った凛に花陽は名前を呼んで止めようとするも、声が聞こえてないかのように凛は走って行ってしまう。

 

「凛ちゃん……やっぱりあの時の事まだ引きずってるのかな……?」

「μ'sに入ってもう気にしなくなったと思ったんだけどね」

 

 先程の凛と同じ事を思い出す2人。

 

「でも思い返して見ると凛ちゃんってスカート履かないよね」

「うん……」

 

 2人は凛の走り去った方を心配そうに見つめる。

 一方若葉が部屋でファッションショーの打ち合わせを纏めていると、携帯が2度鳴る。一つははメール、もう一つは電話だ。

 

「もしもし穂乃果? どうしたの?」

『あ、お兄ちゃん! 大変なの!』

「大変?」

『あ、あのね!』

 

☆☆☆

 

「えぇー!? 帰って来れない!?」

 

 翌日の放課後。部室に全員を集めて、若葉が昨晩の穂乃果からの電話の内容を皆に伝える。

 

「なんでも台風が直撃らしくて、飛行機が欠航。ファッションショーには間に合わないみたい」

「じ、じゃあイベントは……」

「……6人でやるしかないわね」

「急な話ね」

「でもやるしかないでしょ。アイドルはどんな時も最高のパフォーマンスをするものよ」

 

 にこっと言うと希と夏希も頷く。

 

「あの、じゃあセンターは誰が……?」

「それなんだけど」

 

 愛生人が4人に聞くと絵里が凛の方を見る。見られた凛は嫌な予感がしたのか顔を引き攣らせる。

 

「で、皆の衣装なんだけど。向こうからちょっとお願いというか、指定が来てね。その衣装がちょうどあるんだけど」

 

 ちょっと来て、と隣の部屋に皆を先導する。そこには衣装台に設けられた衣装を持つ。それはウェディングドレスを基調とした衣装と8着のタキシード風の衣装だった。

 

「センターの子はこの衣装でって指定がね。で、他の子はこっちの衣装だってさ」

 

 若葉の持つ衣装を見て花陽はうっとりとした表情で見つめる。それは何も花陽だけではなく、真姫も興味なさそうな態度を取りつつも、チラチラと横目で見ており、にこも腕を組んで見ていた。しかし凛だけはさらに頬を引き攣らせる。

 

「女の子の憧れってやつやね」

「こ、これを着て……歌う……? 凛が?」

「ほのっちがいない今、りっちゃんがリーダーなんだしな~」

 

 夏希が言うとにこが凛の肩に手を置く。凛はそれを気にする余裕も見せずに若葉の持つ衣装を凝視する。

 

「凛が、これを……ハハ、ハハハハハ!」

「なに笑ってるのよ」

「シャー!!」

「凛が壊れた!?」

 

 突然笑い出したと思ったらにこを威嚇する凛と、それを見て驚いた真姫が立ち上がった。

 

「あー! 野生のちんすこうが!」

「どこ!?」

「そんな沖縄にしかいないUMAが音ノ木に!?」 

 

 凛の指した方を思わずその場の全員が見てしまう。その隙に部屋から出ようと扉に駆け寄るも、扉には普段はかかってない鍵がかけられていて開かない。

 

「鍵が…なんでにゃ?」

「なんでだと思う?」

「さ、さぁ」

「それはいつも、あなたに捕まえられてるからよ!」

 

 扉の前で困惑している内ににこが背後から忍び寄る。凛はテンパる中なんとか鍵を開け、廊下に逃げ出す。

 

「ちょ、凛ちゃん!」

 

 凛に続いて愛生人を追いかけ、部屋から出ていく。夏希や花陽も凛を追いかけようとするも、それは若葉によって止められる。

 

「若葉君?」

「若、なんで止めるんだ?」

「そんな大勢で追いかけても入れ違いになるだけだし、愛生人だったら凛が落ち着いたタイミングで連絡してくるでしょ」

 

 若葉の言う事に納得がいったのか、他の皆も顔を見合わせ、頷き合い愛生人からの連絡を待つ事にした。

 

☆☆☆

 

「凛ちゃん! ちょっと待ってって!」

「追いかけて来ないでぇ!」

 

 凛は愛生人を振り切るように階段を駆け上がったり廊下を曲がったりするも、それでもなお愛生人はしぶとく着いていく。そして気付いたら2人とも屋上に着いていた。

 

「ハァ…ハァ…凛ちゃん、速いって」

「そう言うアキ君だって、そんなに運動してないのに、ついて来れてるにゃ…」

 

 2人は呼吸を整えながら並んで柵に寄り掛かる。

 

「凛ちゃんはさ。あの衣装着たくないの?」

「……凛には無理だよ。どう考えても似合わないもん」

「そんな事ないと思うけどな」

「そんな事ある! ……だって凛、こんなに髪短いんだよ。それにあんな女の子っぽい服、凛は似合わないって話……」

 

 愛生人は声を小さくして言う凛になんと声をかけようか迷い、口を開く。

 

「でも前に服を見に出掛けた時に来たワンピース、すっごい似合ってたよ」

「嘘だよ。アキ君もそうやって凛をからかってるんだ!」

「からかってるつもりはないんだけどな……」

 

 凛の反論に愛生人は頬を掻きながら内心どうしたものか、と呟く。

 

「とにかく、μ'sの為にも凛じゃない方が良いの」

 

 愛生人は膝の上で手を握り締める凛を見て、何も言わずにそっと自分の手を重ねる。

 

 場所は変わって部室横の教室。

 

「連絡、遅いね」

「まだ追いかけてる最中か、話に夢中になってるのか……」

 

 愛生人からの連絡が未だに来ない為不安そうにしている花陽と真姫。そんな2人とは反対にのんびりとしている若葉。

 

「随分余裕があるな」

「そう? まぁ愛生人なら大丈夫って思ってるからね」

「だからその自信はどっからくんだよ……」

 

 手をひらひらと振ってパソコンを弄りながら答える若葉に呆れる夏希。

 

「衣装は穂乃果ちゃんに作ってあるんやろ? サイズとか大丈夫なん?」

「うん。その辺はこっちで変えていいって言われてるから大丈夫だよ」

 

 まぁ変えすぎちゃダメだけどね~。と笑って言う若葉の言葉に絵里と希が顔を見合わせる。

 

「でも凛ちゃんにするとなると手直しが必要になるんやない?」

「そうね。μ's内で穂乃果に近い人となると……花陽かしら?」

「私!?」

「……確かに、いきなりリーダーを任せた挙句のセンターは流石に無理があるか……?」

「花陽はできそう? センター」

 

 若葉にまっすぐ見られて聞かれる花陽。

 

「私、凛ちゃんがやりたくないって言うならやるよ……でももし! もし凛ちゃんがやるって言ったらセンターは……」

「分かってるって。大丈夫」

 

 花陽の言葉に若葉や絵里達も頷く。そして愛生人から屋上にいる事を報され、全員で屋上に向かう。

 若葉達が屋上に着くと、愛生人と凛が手を繋ぎフェンスに並んで座っていた。

 

「凛、どうするか決めた?」

 

 真姫が聞くも、凛は首を振って答える。

 

「やっぱり、凛にセンターは……」

「このままだと花陽がセンターになるけど、凛はそれで良いの?」

「かよちんが、センター…? うん、良いと思うよ…」

「……本当に良いの?」

 

 手を握って賛成する凛に花陽は不安そうに聞き返すも、凛は笑って頷き返す。

 

「決まりね」

「だね」

 

 絵里の言葉に若葉も頷く。

 

「じゃあ早速戻って衣装合わせしないとね」

 

 希に続いて皆も部室に戻り始める。

 

「ねぇ若葉」

「どうしたの?」

 

 若葉も皆に続いて中に入ろうとすると真姫に呼び止められる。

 

「若葉、どういうつもり?」

「何が」

「今回の若葉、なんかいつもと違うわよ?」

「そう、かな?」

 

 真姫の言葉に若葉は首を傾げる。若葉自身としては今まで通りに過ごしているのだ。しかしいくら普段通りに過ごしてると言っても、他人から見れば変わってる事があるかもしれない。その為若葉は真姫にその“違い”について逆に聞く。

 

「う~ん。なんて言うか、前は積極的にこういった問題とかに関わってたけど、今回は消極的と言うか」

「消極的か……まぁそうかもね」

「どうして?」

 

 真姫の質問に若葉は少し考える素振りを見せると、頷いて答える。

 

「前は皆の事知らなかったから何かと動いてたけど、今はそれなりに知ってるしね。あと……」

 

 そこで一度台詞を区切ると苦笑いを浮かべると、首を傾げている真姫に続ける。

 

「ぶっちゃけちゃえば向こうとの架け橋で手一杯でね。他にそんなに手が回らないって言うのもあるかな」

「……ふーん。まぁそう言うならそういう事にしておくわね」

「ん。そうしておいて」

 

 そして2人は笑顔になると花陽の衣装合わせを見に部室へと歩き出した。




【音ノ木チャンネル】
夏「久し振り、だな」
愛「ですねー」
若「久し振り過ぎてタイトルを「音ノ木坂チャンネル」って誤字したのは内緒な話だよね」
夏「ガッツリ言ってるけどな!」
愛「さてダウナーってる作者は放って置いて、なぜ3週間近くも開いたのかと言うと?」
若「あれでしょ。TwitterとかSkypeとかで盛り上がってるのが理由でしょ?」
夏「いや、どうやら違うらしいぞ」
若愛「「なん……だと……!?」」
夏「だってもう一つの作品の「巻き込まれた図書委員」を投稿してるしな。つか、あっちで何かしてるらしく、それで忙しいらしいぞ」
愛「まぁ各メンバーの誕生日話も向こうでするらしいですし」
若「それはこっちだと既に3人とも彼女いるからヤルにやれないだけでしょ」
夏「ま、その話は置いといて。このファッションショーの話は次回で終わりだぜ」
若「あぁ……次回は、うん。上げられたくないなぁ」
愛「若葉さんはまだ良いじゃないですか。僕なんて、僕なんて!」
夏「まぁまぁ落ち着けって、特にアッキー。嫌な事だらけって訳じゃないだろ?」
若「俺は良い事よりも悪い事の方がダメージ酷いんだけど!」
愛「ま、まぁ次回はちょっと違う意味での楽しみもありますけどね」
夏「そうだな。これで残るは俺だけか……」
若「無視されたよ……もう帰っていいかな?」
愛「夏希さんはタイミングないすからね〜。個人回的なものもこれからの予定にないんだよなぁ」
夏「こらこら。諦めるのは時期尚早なんだよなぁ」
若「その物真似は中途半端なんだよなぁ」
愛「楽しみの内容は次回をお楽しみに!」
夏「まぁ察しの良い人とかは気付きそうだけどな」
若「さて、話したい事はたくさんあるけど、そろそろ時間なのでここら辺で終わりとします!」
夏「えーっと、締めの挨拶なんだっけか?」
愛「なんでしたっけ?」
若「もう適当で良いよ! 毎回適当だしさ!」
夏「そっか。じゃあ適当に「にゃんぱすー」とか言っときゃ大丈夫か」
愛「それで良いんですかね?」
若「もう良いんじゃないの?」
夏「それじゃあ」

「にゃんぱすー」

夏「って俺しか言ってねぇじゃん!」
若「さ、終わったし帰ろう帰ろう」
愛「ですね。帰りましょう」
夏「ちょ、2人ともー!」


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ぜんぜん怒ってないわよby絵里

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愛生人誕生日おめでとう! そして今回あとがきにはプレゼントが用意されています!

愛「ちょっとそれ聞いてないんですけど!?」

前回のあとがきで言ってたでしょうに……あ、それと今回でカウントダウンの意味が分かります!

愛「そりゃ0ですからね! 分からないと逆にダメでしょ!」

では愛生人が煩いですが、本編どうぞ!



「おーし全員乗ったかー?」

「乗りました」

「夏希君の車に乗るの初めてにゃー!」

「はいはい。じゃあ行くぞ〜」

 

 助手席に座る絵里のナビに従い夏希は車を走らせる。

 

「にしても若は無事に会場に着けたんだろうかね」

 

 赤信号に捕まり車を止め呟く。若葉は皆より一足先にファッションショーの会場に向かって最終確認を行っている。

 

「タクシーで行ったんだから大丈夫でしょ」

「だと良いんだが」

 

 夏希は絵里の言葉に窓の外を見ながらそう返す。

 

「なんか、嫌な予感がするんだよなぁ」

 

 バックミラーでチラリと最後部座席に座る凛と愛生人、花陽の三人を見る。

 

「やっぱり心配?」

「いや、若が大丈夫だってんだから特にはな」

「そう」

 

 絵里は微笑んでそう言うと前を向いてナビを再開する。

 

「皆お疲れ様。衣装とかは控え室に用意してあるよ」

 

 それから何事もなく会場に着いた夏希達は、若葉の誘導のもと控え室に向かう。

 

「ちょっと大丈夫!?」

「誰か担架!」

 

 控え室に向かって歩いていると、ステージの方からそんな声が聞こえてきた。

 

「どうしたのかしら?」

「さぁ? ちょっと様子見てくるね」

 

 騒ぎのもとへ若葉が近寄り、係員に訳を聞くと

 

「あぁ、急にセットが倒れてきてね。出演予定のモデルが四人怪我をしてしまって……」

「四人も……」

 

 係員は不測の事態にどうするか頭を抱え、ハッと若葉を見る。

 

「そう言えば、君達って今日ライブをやる……」

「あ、はい。音ノ木坂学院所属の「μ's」です」

「厚かましいとは思うんだけど、ライブ前にお願い出来ないかな?」

「……ちょっと相談してきます」

 

 唐突なお願いにさすがの若葉もその場で答える事が出来ず、控え室に行き夏希と愛生人、絵里だけを呼び出す。

 

「さっきの騒ぎ、なんだったんですか?」

「あーそれがね」

 

 愛生人の質問に答えるように騒動の内容と頼まれ事を話す。話が終わると夏希が腕を組んで頷く。

 

「つまり若の相談は、そのお願い受けても良いだろうけど、問題は誰を出すか、だな?」

 

 夏希の言葉に若葉は黙って頷き返す。絵里と愛生人もそれを見て誰が良いかを考えるも、夏希が呆れたように首を振る。

 

「つーかさ。取り敢えず一人は決まってるだろ。な? えりち」

「ちょ、夏希!」

 

 夏希が絵里を見て言うと、絵里は顔を赤くして慌てふためき、愛生人は納得のいった顔をする。

 

「夏希。それどういう事?」

「あー実はな、さっき控え室に向かってる最中にモデルのスカウトを受けたんだよ」

「……絵里、俺からもお願いするからさ、出るの、考えてくれない?」

 

 若葉が両手を合わせて絵里に言うと、コホンと咳払いをして少し考えた後

 

「……仕方ないわ。困ってる時はお互い様だものね」

 

 と言って渋々頷く。それなら、と夏希は畳み掛けるようの続ける。

 

「もう一人はりっちゃんだな」

「ちょっと待って下さい!」

 

 夏希の提案に愛生人が待ったをかけた。若葉はまぁまぁと愛生人を宥めるよう目配せしながら、夏希に理由を聞く。

 

「夏希。夏希の事だから何かしらの理由があるんじゃない?」

「勘でっ!」

 

 堂々と胸を張って答えた夏希の頭にすかさず絵里のチョップが叩き込まれる。

 

「夏希、あなたそんな事で凛を推すの?」

「俺の勘はよく当たんだよ! 文句あっか!」

「あるからこうして今言ってんでしょうが!」

 

 若葉と愛生人はそんな2人を見て苦笑いを浮かべる。絵里は愛生人を見ると溜め息を吐く。

 

「愛生人、若葉。あなた達は良いの? 二人だって凛の嫌がる姿を見たでしょ」

「それは、まぁ、そうですけど」

 

 絵里は少し責めるような視線で愛生人と若葉を見る。

 

「まぁ凛に聞いてみないとね」

「そう、ですね」

 

 若葉はそう言うと控室の扉を叩いて凛を呼び出す。

 

「どうしたの?」

 

 廊下に出てきた凛は首を傾げて神妙な顔をしている四人を見る。若葉達は互いの顔を見合わせると頷き、若葉が口を開く。

 

「凛。単刀直入に言うけど、ファッションショーに出てくれないかな?」

「え……」

「凛ちゃん僕からもお願い」

 

 若葉に続いて愛生人も凛にお願いする。

 

「ちょ、ちょっと待ってよいきなり。どういう事?」

 

 突然の事に訳が分からず聞き返す凛。若葉は先程三人に話した事と、四人で話し合った事を簡潔に話す。

 

「と、いう事で凛ちゃんにお願いしたいんだけど……どう?」

「……凛には無理、だよ。無理!」

 

 凛はそう叫ぶとその場から逃げる様に走り去る。

 

「どうするんだ、若」

「あ、あの! 僕が行きます! 若葉さん達はあの準備をお願いします!」

 

 若葉が答える前に愛生人が凛を追いかけに走り出す。

 

「さて、凛は愛生人に任せるとして。こっちはあと二人を決めちゃおう」

「あら、それはもう決まってるんじゃない?」

 

 絵里の言葉に若葉と夏希は顔を見合わせると、嫌な予感がしたのか頬を引き攣らせる。

 

「私や凛に無茶言うんだから、ね?」

「いや、まだりっちゃんの方は確定じゃないし」

「そ、それにほら、さすがに男の俺らが女装するのは何かと問題が」

「登校日初日に穂乃果の格好で来たっ聞いたわよ?」

 

 絵里が笑顔で告げると若葉は頭を抱えてその場に崩れ落ちる。

 

「まさか、あの時のがここにきて響くなんて……」

「ま、まぁ若は放っておいて、俺は無理があるだろ。さすがに」

 

 夏希は自身の目つきの悪さを指して反対する。

 

「大丈夫。目つきくらいは化粧でどうとでもなるし」

 

 フフフと笑って若葉と夏希の肩をガッシリと捕まえ、逃げられないようにする。

 

「もしかしなくても絵里怒ってる?」

「ぜんぜん怒ってないわよ」

「絶対怒ってるな。だって肩が痛いし」

 

 笑顔でギリギリと二人の肩を掴む絵里。心なしか二人はその笑顔の裏に表情とは別の感情を感じた。

 

 一方凛を追いかけた愛生人は係員の人に聞きながら探していた。

 

「あの、オレンジの髪の毛の女の子見ませんでしたか?」

「あぁその子ならあっちに」

「ありがとうございます!」

 

 愛生人はお礼を言って言われた方へと駆け出す。そして着いた先は荷物搬入口だった。凛は壁にもたれるように蹲っていた。

 

「凛ちゃん……」

「アキ君……アキ君は凛の事どう思ってるの?」

「……凛ちゃん可愛いよ」

 

 上目遣いで聞いてくる凛に、照れたように顔を赤くして答える。しかし下から見上げるようにしていた凛はそれに気付かず、すぐに顔を膝に埋めてしまう。

 

「凛は……可愛くない、もん」

「そんな事ないよ!」

「そんな事ある!」

 

 凛は立ち上がり愛生人に掴みかからんばかりの勢いで迫る。愛生人はそんな凛の迫力に怖気づく事無く、ジッと目を見つめ返す。

 

「凛ちゃんは可愛いよ」

「……可愛くない!」

「可愛くなかったら僕だって好きになってなんかない!」

「……え?」

 

 凛は愛生人のいきなりの告白に顔を赤くし呆ける。愛生人も自分が何を言ったのかを理解し、凛以上に顔を赤くするも、覚悟を決めたのか凛から目を逸らさずに更に言葉を続ける。

 

「僕はいつも元気で僕や花陽ちゃんを引っ張って行く凛ちゃんが好きだよ! またこうして同じ学校に通うようになって知った女の子らしくて可愛い凛ちゃんも好きだよ!」

「う、嘘!」

「嘘じゃないよ!」

 

 愛生人は凛の否定に否定で返す。凛はその場から逃げだすように一歩踏み出すも、愛生人が腕を掴みで逃げられないようにする。逃げる選択肢をなくした凛はキッ! と愛生人を睨むように見る。

 

「嘘! アキ君凛に気を…んっ」

 

 そしてなおも愛生人に文句を言おうとするも、それより先に愛生人が先に口を塞ぐ。

 

「んはぁ、はぁ、これで嘘じゃないって信じてくれた?」

 

 愛生人が顔を離すと自身の口を押え、顔を真っ赤にする。凛も真っ赤になり固まっている。

 

「と、とにかく。凛ちゃんは可愛いから大丈夫、だよ」

「う、うん」

「とにかく、皆の所に戻ろう? 心配してるだろうし」

「そう、だね」

 

 それから愛生人は凛の手を引いて若葉達の元へ戻ると、衝撃的な事を伝えられる。

 

「えぇー! 僕もファッションショーに!?」

「えぇ」

「どういう事ですか!?」

 

 戻ってすぐ見たのは黒い笑みを浮かべている絵里と、その足元に崩れ落ちてる若葉、そして何やら笑うのを我慢している夏希だった。そしてその絵里にニッコリと告げられたのが、先程の事。

 

「あーつまりだアッキー。若とえりち、りっちゃんとファッションショーに出演してくれや」

 

 完全他人事として笑って楽しんでいる夏希。助けを求めるべく、同じ境遇になった若葉を見るも、どこか遠い目をしていてそれどころではない。

 

「私を巻き込んだんですもの。愛生人? 覚悟を決めなさい?」

「こんな覚悟決めたくないですよ!」

 

 愛生人はなんとか逃げ道を探そうとするも、結果絵里に押し切られる形で引き受けさせられた。

 

「そんじゃまぁ、女装するお二人さんは頑張ってな〜」

 

 くくく、と笑い夏希は控え室に入っていく。残された若葉と愛生人は折れかけた精神をなんとか持ち直し、絵里と凛と一緒に最高責任者の元へと向かった。

 

「と、言う事で自分達が出る事になったんですけど、大丈夫ですかね?」

「全然問題無いよ! むしろ君達の方が良いくらいさ!」

「な、何でですか?」

「いやー怪我した内の二人が中性的でね。うん。君達にぴったりで良かったよ!」

 

 笑ってバンバンと若葉と愛生人の背中を叩く最高責任者。若葉は背中を摩りながら

 

「それであの、少しお願いがあるんですけど」

「なんだい? 衣装だったら心配しなくても良いよ」

「いえ、この二人の出る順番を初めの方にして頂きたいんです。ショーの後ライブがありますし」

「ちょっと待ってね。カモちゃーん、ちょっとー」

「はいはい。なんですか?」

 

 カモちゃんと呼ばれた青年が最高責任者と一枚の用紙を見ながら話し合いを始める。時折聞こえてくる単語から、若葉は順番の入れ替えについて話しているのが分かった。

 

「何とかなりそうね」

「そうだね……凛?」

 

 若葉は合流してから一言も話してない凛を不思議に思い、声をかける。名前を呼ばれた凛は間の抜けた声を出してしまい、絵里と愛生人にも心配される。

 

「凛、あなた顔真っ赤だけど大丈夫? 熱とかあるんじゃない?」

「だ、大丈夫! 熱とかないよ!」

 

 凛はバッと両腕を広げて元気アピールをする。その動作に無理矢理動かしている様子は見られず、三人は安心したように息を吐く。

 

「えーっと若葉君、だっけ?」

「あ、はい!」

 

 最高責任者から名前を呼ばれ、慌てて振り返る。

 

「順番の交換出来たよ。けど、やっぱりちょっと無理があるみたいで、そちらのお二人だけになっちゃったけど、大丈夫?」

「いえ、むしろ二人が始めの方だったら自分達は最後の方でも大丈夫ですよ。ね、愛生人」

「は、はい! あの、ありがとうございます!」

 

 愛生人が最高責任者に頭を下げると、絵里と凛も頭を下げる。

 

「なぁに。翔平君の知り合いの頼み事だからね。出来る範囲で無理のない程度に協力させて貰うよ。それに今回は持ちつ持たれつだしね。っと、みぞれちゃーん。この子達化粧室に連れてった後衣装部屋まで案内してあげてー!」

「分かりました。では付いて来てください」

 

 みぞれと呼ばれた女性がこちらへ、と促す。

 

「あの、気になっていたんですが、先程呼ばれていたのって……」

「もちろん本名じゃないですよ。あの人、仲の良い人達にアダ名を付けるんですよ」

 

 若葉が気になった事を聞いてみると、みぞれは苦笑いして答える。

 

「もしかして、さっきのカモちゃんって人も……」

「そうよ。彼と私、それから化粧室の彼女はなぜか鍋料理のアダ名を付けられてね。他にもいつも一緒にいる3人組は油淋鶏、回鍋肉、棒棒鶏と呼ばれてたりするわね。まぁ私達も気に入ってて、お互いをそう呼んでるんだけどね」

「なぜ中華……」

 

 みぞれは若葉の呟きにクスリと笑うと化粧室に着いたのか、扉をノックする。

 

「もしもーし。あんこう入るわよー?」

『ほいほーい』

 

 中から女性にしては低い声が返ってくると、みぞれは扉を開ける。

 

「あんこうちょっと急なんだけど」

「大丈夫。監ちゃんから話は聞いてるから。この四人を可愛くすれば良いのよね?」

「お願いね」

 

 それだけ言うとみぞれは化粧室を出て行く。後に残されたのは覚悟を決めようとしてる二人、化粧で誤魔化せるのか不安がってる二人、そしてその四人をどう化粧するか考えている一人の五人だけになった。

 

 それから数十分後。気になった真姫と夏希が場所を聞いて化粧室に入ると、そこには軽く化粧をした絵里と凛の二人と、若葉と愛生人に似ている女の子二人がいた。

 

「えと、えりちにりっちゃん。この二人は……」

「若葉と愛生人よ」

 

 夏希が戸惑いながら絵里と凛に聞くと、絵里がおかしそうに笑いながら答える。絵里の答えを聞いて真姫は若葉に近付き、ジーっと見つめる。

 

「ま、真姫?」

「心なしか穂乃果に似てるわね」

「そりゃ双子だからねぇ!」

 

 真姫の言葉に笑いながらツッコム若葉。夏希はそんな二人とは別に凛と愛生人の様子をさり気なく見ていた。そんな夏希に絵里が話しかける。

 

「どうしたの?」

「いや。なんか上手くいったみたいな、そうじゃなさそうな感じだなーと」

「それって凛と愛生人の事?」

「まぁな」

「ふーん」

 

 夏希の言葉に絵里も二人を見ると確かに、偶に視線を合わせたと思ったら顔を赤くして逸らしたりしている。

 

「何があったのかしらね」

「さぁな。ま、何があったにしろりっちゃんの皮が剥けて始めてるのは確かじゃないか?」

「そうね。凛がモデルの代役をやるなんて考え付かなかったもの」

「ま、俺も若も賭けに近かったのは確かだと思うけどな」

 

 夏希が笑って言うと絵里は呆れたように溜め息を吐いて首を振る。

 

「皆さん準備は……出来てるみたいね。じゃあ衣装合わせするから来てちょうだい」

 

 それから少ししてみぞれが化粧室に来て若葉達を衣装部屋に連れて行かれ、衣装を纏った四人はファッションショーの舞台袖にて待機していた。

 

「今回モデルの人が結構いるみたいだから、絵里と凛が終わった後、少し控え室に戻って最終ミーティングする時間はあるみたい」

「そう。だったら若葉と愛生人は先に戻ってた方が良いんじゃない?」

「う〜ん。愛生人はどうする?」

「僕は……ここで凛ちゃんと絵里さんのステージを見ています」

「だ、そうだよ。絵里」

 

 愛生人が残るという事は必然的に若葉も残る事になる。さすがの絵里も方向音痴な若葉を一人で控え室まで返すような無謀な事はしない。

 

「それじゃあ二人とも頑張って下さいね」

「緊張しないようにね〜」

「わ、分かってるにゃ」

「大丈夫よ」

 

 凛は少し緊張した面持ちで、絵里は余裕のある笑みでステージに上がっていく。

 

「凛、笑顔が大事よ。あとは私と一緒に行けば良いだけだからね」

「うん。分かったよ絵里ちゃん」

 

 絵里が凛の肩を揉み解しながら言うと、凛は緊張がいくらか和らいだのか、笑顔で絵里にお礼を言う。

 

「さ、行くわよ」

「うん!」

 

 絵里と凛は手を繋いでステージに躍り出る。

 

「おかえり」

「特にミスする事無く終わったね」

「緊張したにゃ〜」

「凛、この後にまだライブがあるのよ」

 

 すっかり緊張が抜けた凛に絵里が優しく微笑む。それから急いで控え室に向かい、今度はライブの衣装に着替える。

 

「それじゃありっちゃんの衣装はそこな」

「分かったにゃ!」

 

 夏希に言われた着替え室に入ると、そこにあったのは試着で着たタキシードではなく、センターが着るウェディングドレス風の衣装だった。

 

「え、これ……かよちん間違ってる…」

 

 凛は自分の衣装が違うと皆の方を振り返ると、そこにいたのは既にタキシードの衣装に着替えた絵里達がいた。

 

「間違ってないよ」

「あなたがそれを着るのよ。凛」

「な、何言ってるの。センターはかよちんで決まったでしょ。それで練習もしてきたし……」

 

 凛が俯きがちに言う。

 

「なーに言ってんだよ。何の為にここ数日かよちんと一緒に練習させたと思ってんだよ」

「そうだよ。花陽の希望でね、もしも凛がセンターをやる事になった時の為にって」

 

 夏希と若葉もそう言い、凛を見る。

 

「そ、そんな。冗談はやめてよ」

「冗談で言ってると思う?」

 

 にこも真剣な表情でそう返し、希も笑顔で頷き返す。

 

「凛ちゃん。私ね、凛ちゃんの気持ちを考えてみたの。それで困ってるみたいだから私、センターを引き受けたの。でも思い出したの、私がμ'sに入った時の事。今度は私の番」

 

 そう言って花陽は凛の手を握る。

 

「凛ちゃん。凛ちゃんは可愛いよ。さっきのファッションショーの時も」

「皆言ってるよ。凛ちゃんがμ'sの中で一番女の子らしいって」

「あの衣装見てみなさい。凛が一番似合うわよ」

 

 真姫と花陽が立ち尽くしている凛の後ろに立つ。

 

「愛生人は行かなくて良いの?」

「……はい」

 

 若葉の質問に愛生人は頬を染めつつ、三人を見つめる。そして花陽と真姫はそっと、以前凛と真姫が花陽にやったように、今度は花陽と真姫が凛の背中を押す。衣装に一歩近付き手を伸ばし触る。

 

「それより若にアッキー。そろそろ行かないとマズいんじゃないか?」

「え? ……ヤバ。愛生人、急ぐよ!」

「へ、ちょ、若葉さんが先に行かないで下さい! 絶対迷いますから!」

 

 夏希が控え室に備え付けられたテレビを指すと、若葉達の出番が近付いていた。慌てた二人は控え室から飛び出して行く。

 

 二人が飛び出して行くのを溜め息交じりで見送ると、衣装を着替えたメンバーを振り返り手を鳴らす。

 

「それじゃあ出番まであと少しだからそろそろ移動するぞ」

「なんで夏希が仕切ってるのよ」

「おっとそうだった。それじゃありっちゃん、よろしく」

 

 真姫が笑いながら夏希に注意すると、夏希は頭を掻きつつ凛にバトンを渡す。凛は頷いて皆を見る。

 

「今日は楽しく頑張るにゃー!」

『おぉー!』

 

 凛に続き控え室からステージ袖に移動すると、ちょうどそのタイミングで若葉と愛生人がステージから降りてくる。

 

「凛ちゃん。凄い似合ってるよ」

「アキ君……頑張ってくるにゃ」

「行ってらっしゃい」

 

 センター衣装の凛を見た愛生人は凛に笑いかけ、凛もそれに笑顔で返す。そしてハイタッチすると凛を送り出す。

 

 暗転したステージに凛が立ち、スポットライトが当たる。

 

「皆さん初めまして。音ノ木坂学院スクールアイドル「μ's」です!」

 

 凛が挨拶すると、会場のあとこちから「可愛い」「綺麗」という声が発せられる。凛はその言葉に照れたように笑い、お礼を言う。

 

「えっと本来メンバーは九人なんですが、今日は都合により六人で歌わせて貰います。でも、残り三人の思いも込めて歌います。それでは! 一番可愛い私達を見て行って下さい! Love wing bell!」

 

 凛が曲名を言うと同時にイントロが流れ始める。

 

 

 

 

 曲が終わると会場一杯に拍手が響き渡り、凛達は手を振りながらステージ袖に引き上げる。

 

「凛ちゃん!」

「アキ君!」

 

 ステージ袖でずっと見ていた愛生人が凛の名前を呼ぶと、凛も愛生人の名前を呼び抱き合う。

 

「真姫もお疲れ様」

「若葉に比べれば楽な方よ。それにしても、その衣装似合ってるわよ」

 

 真姫は若葉の方に頭を預けながら言い、悪戯っぽく笑う。若葉はそんな真姫の頭をくしゃくしゃと掻く。

 

「四人ともいちゃつくのは良いけど場所考えようぜ?」

 

 そんな四人に夏希が呆れたように言う。若葉と真姫、愛生人と凛は周りを見渡し、そこがステージ袖だと思い出すと慌てて離れる。それを見ていた関係者や出演者は笑顔で拍手を送っていた。

 

「いやー盛り上がったね~。色々とありがとうね。若葉君」

「あ、いえ。こちらこそありがとうございました」

 

 拍手が止むと監ちゃんと呼ばれていた最高責任者が若葉達に近付きながら拍手をしていた。

 

「ところで少し時間あるかい? この後出演者達とステージ上で写真を撮る予定なんだけど」

「写真、ですか?」

 

 若葉は後ろにいる絵里達を振り返ると確認を取る。絵里達は顔を見合わせると、揃って頷く。

 

「ではよろしくお願いします」

「そうかそうか。じゃあ行こう!」

 

 監ちゃんに肩を押され若葉達は再度ステージに上がる。

 

「ってなんで俺まで!?」

「夏希だってアイドル研究部の一員でしょ」

「だったら一緒に撮らない理由はないでしょ」

 

 そうにこと絵里が答え夏希をステージに引っ張る。それから今回主役だった凛をセンターに、その横に愛生人と花陽を並べ、写真撮影が行われた。

 

 

 

 撮影後。衣装から着替え、化粧を落とした愛生人は再び荷物搬入口を訪れていた。そしてそこで待っていた人物に声を掛ける。

 

「凛ちゃん」

「アキ君」

 

 そこにいたのは同じく衣装から着替えた凛だった。凛は愛生人を見ると照れたようににっこり笑い、愛生人に駆け寄るとそっと耳打ちする。

 

「凛の初めてだったんだから責任取ってね?」

 

 凛の言葉に愛生人は無言で凛を抱きしめ、囁く。

 

「改めて言わせて貰うね。僕は凛ちゃんが好きだ。だから僕と付き合って下さい」

「そんなの、決まってるにゃ……」

 

 愛生人の背中にギュッと腕を回し、答える。その凛の頬には一筋の涙。

 

 

 

 こちらこそよろしくお願いします

 

 

 

 

 




【音ノ木チャンネル】
若「もうヤダ……」
愛(ぽけー)
夏「今回こんなのであとがき務まるのかよ…」
名「夏希中心で回して行くしかないね」
若「ちょっと作者来ようか」
名「え、なんで?」
夏「いや、なんでも何もあれどうにかしろよ」
名「あれ?」
愛(ぽけー)
名「愛生人。女装、告白、キスの3コンボお疲れ様でした」
若夏(いきなり核心抉りに行ったぁ!?)
愛「あ、はい」
名「ほらほら。そんなに呆けてないで、まえがきでも言った通りプレゼントがあるんだから」
若「そういえばなんか前回そんな事言ってたね」
夏「違う意味での楽しみだっけか?」
名「イエース! なんとこの度、挿絵第2弾として、そして愛生凛ちゃん回として、お2人の挿絵がこちらにございます!」
『…………ハァァァ!?』
名「書いて下さったのは『ラブライブ!‐彼はどう変わる?‐【リメイク】』を投稿しているレイヴェルさんです」
夏「最近作者は他の作家さん達と仲良いんだな」
愛「Twittreとかでも結構やり取りしてますしね」
若「2人とも突っ込む所そこじゃない! いやそこもあるんだけど!」
名「レイヴェルさん、本当にありがとうございました!」
『ありがとうございました!』
愛「驚きの連続ですが、取り敢えず次の話はいつ頃投稿出来そうなんですか?」
名「次の話の内容によるね」
若「と、言うと?」
名「凛ちゃんの新しい練習着を買いに行く話をするか、アニメの6話に入るかで変わると思う」
夏「その前に若とマッキーのデート回も書かないとだしな。因みに進捗具合はどうなんだ」
名「……聞きたい?」
愛「いえ、なんとなく今の間で理解したからいいです」
若「では今回はここら辺で畳みたいと思います。凛の告白回を楽しみにしていて下さった方に満足して頂けたら幸いな回でした。それではまた次回」
『さよならー』



名「ねえ最後の文章って本当は俺が言うはずだったんじゃ」
夏「いや、お前には任せられないと思ったから若が言ったんだろ」
愛「正当な判断ですよ」
名「あれれー?」



【挿絵表示】


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また学校でねby凛

今回だけ書き方が違いますよ!

それではどうぞ!


「なっ君お待たせ〜」

「おう、そんなに待ってないから大丈夫だぞー」

 

 場所は駅前。俺は道の向こうから渡って来るツーちゃんに手を振って答える。

 今日はμ'sとA-RISEの両方が休みでその事をどこから知ったのか、昨夜急にデートに行かないかと電話が来た時は驚いたな。まぁ予定空いてたし、俺もそうと知ってたら普通にデートに誘ってたしな。

 駆け寄って来たツーちゃんを見ると、緑のパンツに白いシャツ、黒のベスト頭には黒のハット。

 行き先を聞くと、少し悩んだ後笑って行き先を告げる。

 

「今日はどこに行くよ」

「この前言ってた本屋に行きたいな」

「了解。ほら」

 

 手を差し出すとツーちゃんは慣れた様子で手を握り、指を絡める。俗に言う恋人繋ぎだ。付き合って暫くは繋ぐたんびに照れて顔を赤くしていたが、さすがに四年目となると腕を組んでも照れなくなったな。

 

「何考えてるの?」

「あーいやな……去年の今頃は入院してたなーってな」

「……私を庇って入院した時ね」

 

 はぁ。こうやってあの時の話をすると、決まって顔を暗くするからあんましたくねーんだよなぁ。

 隣で俯いてるツーちゃんの頭をガシガシと掻く。

 

「ちょ、やめてよ〜」

「どうしよっかなー」

「なっ君。せっかくセットした髪が崩れちゃう!」

「わははーやめて欲しかったら痛いですすいませんでした離してくださいぃ!」

 

 頭を掻き撫でてたらいつもの如く腕をキメられた。まぁそんなに痛くはないけどね。本人曰くUTXで護身術を教えられてるらしい。まぁ人気スクールアイドルだから当たり前っちゃー当たり前か。

 

「あの……ツーちゃん? 周りの視線が集まってるんですけど……?」

「なっ君が叫ぶからでしょ。ほら行くわよ」

「へいへい」

 

 叫ばせた原因が何を言うか、と言おうとしたけど、よく考えたらその原因すら俺だった。

 前を行くツーちゃんを眺めながら財布の心配をする。まぁ今日駅前に行く前に下ろしたんだった。じゃあ大丈夫か。……ん? 俺はなぜ財布の心配をしてるんだ?

 

「なっ君ボーッとしてたら時間無くなるよ〜?」

「あ、あぁそうだな。せっかくのデートなんだし楽しむか」

「そうよ。だから私の後ろじゃなくて隣を歩いてよ、ね!」

「うおっと」

 

 手を離したと思ったら急に腕にしがみついて来た。ツーちゃんは偶に後先考えずにこういった事をするんだよなぁ。

 しかも気付けば腕を絡ませた後手を握ってまた恋人繋ぎをしているし……まぁそのおかげと言うか、せいと言うか何やら腕に柔らかい感触があるのは認めよう。因みにこれをツーちゃんに言うと照れからなのか、手加減なしのボディブローが鳩尾に繰り出されるので言わない。

 

 結局、その体勢のまま目的地の本屋まで来てしまった。や、別に不満はないけどね?

 

「それでなんの本買うんだ? まさかBL本とかじゃないだろうな?」

「なっ君てそういった本嫌い?」

「まぁ男で好きな奴は限られてるだろうな」

 

 俺はそういう類の本は読まないが、まぁ読んでる奴の事をそれだけで嫌いになったりしない。ただし女子に限る。

 

「じゃあもし私が買ってそれでなっ君と若葉君で想像してたらどうする?」

「そしたらこっちだってGLもの買ってツーちゃんと英玲奈かあんじゅとのカップリング考えるぞ?」

「……ごめんなさい」

「……いや、こっちこそ悪かった」

 

 ツーちゃんが言った事を想像し、その後自分で言った事を想像したらツーちゃんも同じ事をしていたのか、苦い顔で謝ってくる。いや、これは俺も悪かったから両成敗って事で手を打った。

 こんなやり取りが出来るのも多分付き合って長いからだろうなぁ。最近付き合い始めた若とマッキー、アッキーとりっちゃんじゃあこんな話は出来んだろ。つかしないか。

 

「それで、気を取り直して何の本を買うんだ?」

「うんとね、前に「瞳の中で」って本を出した鈴木忍さんの恋愛もので新作が届いたって聞いてね。それを買いに来たのよ」

「ふ〜ん……あれ? 鈴木忍って確かファンタジーものとか、バトルものも書いてなかったっけ?」

 

 その人の本ならバトルものは買ってるな。てかよく一人でいろんなジャンルの本を世に送り出せるな。普通に尊敬するわ。

 

「なっ君も何か買えば? これとか」

 

 そう言ってツーちゃんが渡して来たのは鈴木忍著の恋愛もの。う〜ん男でも恋愛ものは楽しめるのかね。

 

「て言うか、ツーちゃんの事だから「瞳の中で」を薦めて来ると思ったんだけど、違うんだな」

「……もしかしてなっ君知らないの?」

「何が?」

 

 ちょ、なんでそんな「こいつ本気で言ってるのか?」って目で見んだよ。

 

「「瞳の中で」って数量限定完全手渡し販売された幻の本なのよ? 今更手に入る訳ないじゃない」

「へぇ〜。因みにツーちゃんは持ってるのか?」

「当たり前でしょ。その日は学校を休んで買いに行ったわ」

「おいコラトップスクールアイドル」

「テヘッ」

 

 テヘペロしても可愛いだけだからやめなさい。ほら周りの客もこっちを見てるだろ?

 

「まぁせっかく来たんだし、俺もなんか見て行くか」

「BL本?」

「だから違ぇって!」

 

 まったく。さっきのやり取りの名残でふざけて言ってるのは分かってんだからな? 面白そうに笑いやがって、可愛いじゃねえかチクショウ!

 

「ま、冗談は置いといてなっ君の買う本気になるわね」

「そうか? 別に変なモンは買わねぇよ。つかお前は自分の買い物良いのかよ」

 

 あの鈴木忍の本なら早く行かないと売り切れんじゃね? と思って聞いたらなぜかツーちゃんはフッフッフと笑い財布から一枚の紙を取り出して見せてくる。

 

「私の買い物は取り寄せた本を受け取るだけなの。だからどんなにゆっくりしてても大丈夫よ」

「そ、そうか」

 

 まぁ別に買うとしてもツーちゃんがいても問題無いやつだから良いか。

 

「さてと、じゃあ見に行きますか」

「なっ君がどんな本を買うのか楽しみね」

「いやそんな楽しむ事じゃないからな?」

 

 目をキラキラ輝かせるツーちゃんに腕を出す。ツーちゃんも意味を理解して自身の腕を絡ませる。

 

「ふふっ」

「楽しそうだな」

 

 ラノベコーナーに向かっている最中、ツーちゃんが楽しそうに笑うのが聞こえたので、気になって聞いてみた。

 

「だってこうして休みの日に歩くのって久し振りじゃない?」

「まぁツーちゃんはA-RISEで忙しいし、俺もμ'sの方で忙しいからな〜」

「それに、ラブライブの真っ最中だから中々休みが取れなかったりするし」

 

 それでも偶に放課後、練習が終わった後とかUTXまで迎えに行って一緒に帰ったりとかしてるんだけどな。

 

「っと、あったあった」

「これってどんな内容なの?」

 

 手に取った本を覗き込んで聞いてくる。ふむ、布教も兼ねてちょいと紹介するか。

 

「これは科学と魔術が交差する物語なんだけど」

「あ、やっぱり良いや」

「おいコラ。内容聞いといてキャンセルするのはどうなんだよ」

「だって聞いた感じ長くなりそうだったから」

 

 まぁ語ろうと思えば長くはなるのか? 刊行数そろそろ四十に届くしそれを語ろうとすれば長くなるか。

 

「まぁ面白いから読んでみろよ。今度一巻貸してやっから」

「じゃあその時を楽しみにしてるわね」

 

 次会う時って機会がなきゃ地区予選の決勝じゃねえかよ。

 

「さ、本も買ったしお昼にしましょ」

「だな。時間もちょうど良いし」

「ねぇなっ君あそこ行きましょ!」

 

 ツーちゃんの指した方を見るとイタリアンレストランのチェーン店だった。うわぁ学生の良心だ。

 

「よし、昼代くらい出すよ」

「本当? いっぱい頼もうかしら」

「限度は考えろよ?」

「冗談よ冗談」

 

 ペロッと舌を出して笑い店に駆け出すツーちゃん。はぁ、こういう時は子供っぽく見えるから不思議なんだよなぁ。取り敢えずツーちゃんを追おう。

 

「ツーちゃん待てやコラー!」

「ほらほらなっ君早くしないと先に入っちゃうよー」

 

 俺の事を待たないで扉を開けててよく言うよ。まぁ飯に早く有り付けるなら良いか。

 それから大して待たずに席に着けたから、各々注文し、また談笑になる。

 

「お、来たみたいだな」

「そうね。それじゃあ」

「「頂きます」」

 

☆☆☆

 

「「ご馳走様」」

「いや〜思ったよりも量あったね」

「でもその分安いからお得だにゃ〜」

 

 僕達はお昼に寄ったラーメン屋で精算後、再びショッピングに出掛ける。

 "再び"と言ってる通り、今日は朝から凛ちゃんと二度目のショッピングをしています。目的は新しい練習着の調達。あのモデルショーでのイベントを経験して女の子らしい服を着たくなったらしい。

 

「アキくーん。早く早く〜」

「ちょっと待ってよ凛ちゃーん」

 

 相変わらず凛ちゃんは走るの速いなぁ。て言うか、凛ちゃん今日はワンピースなんだから走ると下着とか見えるんじゃ……よし、追い付いたら走るのは止めさせよう。でも今はそんな事より

 

「凛ちゃん、食後なのによく走れるね……」

 

 今日はいつもよりもテンションが高いのか、僕を置いて先に行ってしまう事が多々ある。その度に走って追い付くんだけど、さすがに食後すぐはキツイって。

 

「あ、ゴメンね。凛てばテンション上がっちゃって」

 

 えへへ、と笑いながら頭を掻く。うん、やっぱり

 

「可愛い……」

「……へにゃ?」

「ん?」

 

 あれ、もしかして声に出てた……? 出てたよね。だって凛ちゃんの顔赤いもん。でも可愛いのは事実だから否定はしないし、させないよ。

 

「えっと、凛ちゃん」

「は、はい!」

「その……手、繋ごう?」

「う、うん」

 

 え、恋愛初心者かよって? そうですよ。どうせ初恋の相手とやっと恋人同士になったばかりのトーシローですよ。

 

「アキ君。どうしたの?」

「ううん。何でもないよ」

「なら良いんだけど…」

 

 ヤバい。手を繋いだは良いけどこれからどうしよう……さすがに腕を組むには早いかな。いや、でも付き合ってるんだしそのくらいは……いやいや付き合い始めてまだ一週間も経ってないんだ、早いって……いやいやいやでも「祈る者達(プレイヤー)」でも大体の人はそうだったような……いやいやいやいや確かその人達は成人してたから……えーっと

 

「……ん。ア……くーん。アキ君!」

「うわぁ! 凛ちゃんどうしたの、そんな大声出して」

「さっきから呼び掛けてるのに、アキ君ブツブツ呟いてたんだよ? 何か凛に言えない事考えてたの?」

「別に変な事は考えてにゃいよ! 凛にゃん!」

 

 いや別にやましい事ではないんだ。ただどのタイミングでどうするかを考えてただけで

 

「思いっきり動揺してるにゃ……」

「うぅ……ごめん」

「……凛と手を繋ぐの、嫌だった……?」

「それは違うよ! さすがの僕も嫌いな人とこうして手を繋いだりはしない。それに……」

「それに?」

「凛ちゃんの事好きだから、その、嫌ったりとかはしない。絶対」

 

 これは偽ざる僕の本心だ。これはさすがの「祈る者達(プレイヤー)」の皆や若葉さん達に何か言われても変わる事は無い、と胸を張って言える事。だから

 

「僕は凛ちゃんと手を繋げて嬉しいよ」

「アキ君……凛もね、今日初めてのデートでちょっと緊張しちゃってて……」

「あ、それ僕も……」

 

 なんだ、凛ちゃんも同じだったんだ。良かった、緊張しておかしかったのは僕だけじゃなくて。

 

「それじゃあ僕達」

「お揃いって事にゃ」

「だね」

 

 それから僕達はお互いにクスリと笑い、歩き出す。

 

「そう言えば、凛ちゃんはどんな感じの練習着が良いの?」

「う〜ん。動きやすくて可愛い感じのが良いにゃ!」

 

 う〜ん分からないぞ? 動きやすいって事はサイズとしては少し大きめかな?

 

「こんな事ならことりさんにもっと聞いておくべきだった……」

「ことりちゃんがどうしたの?」

「あぁいや、僕って洋服とか詳しくないからさ、ことりさんに聞いておけば良かっな〜って」

「確かにことりちゃんって洋服とか詳しいし、可愛いよね〜。凛もあぁなりたいなぁ」

 

 凛ちゃんはそのままでも可愛いと思うんだけどなぁ。それ言うと否定が帰って来そうだから言わないけど。

 

「凛ちゃんならいつかきっとなれるよ」

「そうだよね! よーし凛もいつかことりちゃんみたいなスタイルになるにゃ!……あ」

「うん? どうしたの?」

 

 拳を振り上げた状態でとある一点を見て固まる凛ちゃん。視線の先を追うとそこにはオレンジと黄色、白の三色のミニスカニーソの服が飾られていた。あれって運動用なのかな……?

 

「ねぇアキ君。あの服似合う、かな?」

 

 上目遣いで聞かれてしまった。ここでキザな奴とか、恋愛ドラマだと「君は何を着ても可愛いよ」とか言うんだろうけど、僕はそんな気の利いた言葉を言える自信が無い。と言うより言ったら何か負けな気がするから言いたくない。

 だからここで僕が取る行動は一つ。

 

「気になるなら試着してみる?」

「え……でも似合わなかったらどうしよう?」

「似合わなかったら、また別なの探せば良いんだよ。凛ちゃんが満足するまで付き合うよ」

「アキ君……ありがとう。凛ちょっと着てみるね!」

 

 そう言うと凛ちゃんは店に入って言って店員の人に話しかけていた。

 良かった。前までは試着する事すら躊躇ったからこれは進歩だね。

 

「ど、どうかな?」

「ぁ……似合ってるよ」

 

 試着室のカーテンを開けた凛ちゃんは活発さと可愛さの両方を揃えていた。つまり、うん。可愛かった。思わず黙ってしまう程に。けど

 

「似合ってるけど、なんだろう。何かが足りない気がするんだよねぇ」

「……女子力、とか?」

「いや目に見えないものじゃなくて……」

 

 店内を見回しながら考える。う〜ん。うん? これかな?

 

「ねぇ凛ちゃん。ちょっと横向いて」

「こう?」

「そうそう」

 

 そして横を向いた凛ちゃんの髪をさっき持って来た、玉が二つ付いたヘアゴムで留める。これで左側の髪の毛がちょこんと跳ねてるようになる。

 

「うん。バッチリ」

「ほ、ほんと?」

「嘘言ってどうするのさ」

 

 それからその服と他にも二、三点ネックレスやブレスレットを買って店から出る。買い物途中に今度若葉さんからブレスレットの作り方とか教えて貰おうと決意したのは凛ちゃんには秘密。

 

「なんか今にも雨が降りそうな天気にゃ」

「うん。降り出さない内に早く帰ろっか」

 

 雨が降りそうな曇天の中、僕達は凛ちゃんの家へと歩き出す。と行っても僕の家も同じ方向だからやってる事はただの帰宅なんだけど。

 そして雑談をしていると早いもので、目の前に星空家があった。

 

「それじゃあアキ君。また学校で」

「うん。それと、また行こうね」

 

 凛ちゃんは名残惜しそうに繋いでいた手を離すと、じゃあねー、と手を振って家の中に入っていった。

 

「さてと、僕も帰りますか……ん?」

 

 なんだろう。今顔に当たった冷たいものに嫌な予感がヒシヒシとするんだけど……あ、本降りになってきた。

 

「これで風邪引いたらシャレになんねぇって!」

 

 こっちに来てからはそんなになってないアイトになって走り出す。アイトになると身体能力が上がった気になるんだよね。そう、なるだけで実際は上がってないんだけどね!

 

「た、ただいま!」

 

 結局家に着く頃にはずぶ濡れになったよちくしょう。

 

☆☆☆

 

 なんだろう、頭の下がやけに柔らかい。流石西木野家良いクッションを使ってるね。それに仄かに良い匂いがする。なんだろう、シャンプーみたいな感じ。

 気が付くと体が横になっていた事を考えると、たぶん寝てたんだろうね。さてどうして寝てたのかちょっと振り返ろう。

 

 今日は真姫とデートに行って洋服とかを見て回ってたら、雨が降ってきたんだっけ。それで慌てて真姫の家に来たんだった。それからずぶ濡れの俺達を見た詩音さんに真姫はお風呂場へ、俺はタオルを渡されて真姫の後に入るよう言われて、出てきたら(さとる)さんの服を渡された。勝手に着ていいのか聞くと、服が乾くまでの間なら問題ないとの事。

 それから二人で邦画を見て……そこからの記憶がないな……

 

 取り敢えず起きよう。

 

「ふぁぁぁ……あ?」

「ふふ、良く寝てたわね」

「あ~……はい」

 

 さて現状を説明させて下さいお願いします。目を開けると最初に目に入ったのはなぜか真姫の顔だった。いやそれは良いんだよ。ただその見える位置が問題なのであってですね。真姫の顔を下から眺めてる訳でですね? 頭の下にある感触はたぶん真姫の膝だと思うんだ。つまりは絶賛真姫の膝枕で寝ていると言う事であって……まぁそこまでは問題ないと思うんだよ。ただね、その光景を第三者に見られてた場合はどうなるのか、と。

 

 長々と話していたが端的に言うと、寝ている真姫の膝枕で寝ている所を詩音さんに微笑見ながら見られていた。

 

「どう? 真姫ちゃんの膝枕の感想は」

「……とても気持ちいいです。ってそうじゃなくて、いつから見てたんですか?」

「う~ん、どのくらいかしらね」

 

 そんなに見ていて飽きなかったのか、とかなんでそんなに暇なんだよ、といったツッコミはしないよ?

 

「若葉……?」

「あ、真姫おはよう」

 

 頭上から眠そうな真姫の声がする。どうやら詩音さんとの会話で起こしてしまったらしい。っとこんな冷静に分析してる暇じゃない、真姫の意識がハッキリしない内に体を起こさないと。

 

「あら、もういいの?」

「? ママ何言ってるの?」

「し、詩音さん。そろそろ晩ご飯の仕度しなくて大丈夫なんですか?」

「もうそんな時間? 楽しいと時間の進みが早く感じるのね」

 

 そう言って部屋から出て行く詩音さん。ふぅ、何とか誤魔化せた、のか? なんて思ってるとパタパタとこちらへ来る足音が

 

「ねぇねぇ若葉君。どうせだったら晩ご飯ウチで食べて行っちゃいなさいよ」

「いや、さすがにそこまでお世話になる訳には」

 

 ただでさえお風呂に着替えと貸して貰ってるのに、更に晩ご飯まで頂く訳にはいかないって

 

「でももうお父さんが一緒に食べる気満々よ?」

「と、言うと?」

「若葉君の分の食器まで用意してるのよ」

 

 智さんどんだけ楽しみなんだよ! いや歓迎されないよりかはマシだけどね!? それにしてもだよ!

 

「良いじゃない若葉。食べて行きなさいよ」

「じゃ、じゃあ母さんに確認取ってみます」

 

 この時間じゃまだ晩ご飯作り始めてないだろうし。でもなー母さんの夏祭りの時の態度を見るからに、OK出しそうなんだよなぁ。

 

「あ、母さん? まだ晩ご飯作り始めてないよね?」

『なんでそれが当たり前、みたいな聞き方なのかは聞かないであげるわ。で、まだ作ってないけどそれがどうかした?』

 

 なぜか怒っている感じがするのは気のせい。気のせいったら気のせい。取り敢えず母さんに詩音さんから晩ご飯を誘われている旨を伝えると

 

『あら、良いじゃない。せっかくなんだし食べて来たら? もちろん、変な事はしないようにね?』

「変な事ってなにさ」

『それはもちろん妊』

「あ、詩音さん大丈夫みたいです」

 

 電話を切って詩音さんに言う。え? 母さんが何か言いかけてた? 知らないなぁ。俺は失礼のないようにとしか言われてないよ?

 

「そう。じゃあ今日は張り切って作らなきゃね」

「いえ普通の、普段通りのメニューで結構ですからね!?」

「分かってるって」

 

 あ、これ絶対分かってないやつだ。仕方ない、なんか気を遣わせて豪華な食事が出ても迷惑だろうし、と言うよりさすが頂くだけは失礼だから手伝おう。

 

「詩音さん。晩ご飯作るの手伝いますよ」

「え、別に気を遣わなくても良いのよ?」

「いえさすがに何もしないのは気が引けるので」

「良いじゃないママ。若葉って料理上手いのよ」

 

 そんなに上手くはないけど!? レパートリーならあちこちでキッチンやってるから男子高校生の中では多い方だと思うけど、そこまて胸を張って言える程美味しいかどうかは……だったら手伝うなんて言うな? 手伝いくらいだったら出来るんだよ。

 

「それじゃあよろしく頼もうかしら。今日の晩ご飯はハンバーグよ」

「ハンバーグですか。それならまぁ慣れていますのでなんとか」

「じゃあ若葉の手作りハンバーグ楽しみにしてるわね」

「うん。待ってて!」

 

 あれ? なぜか俺が作る事になってない? まぁうん、頑張って美味しいの作ってみせようではないか。料理に大事なのは愛情と空腹って言うしね!

 

 と、言う訳で西木野家キッチン。やっぱりと言うかさすがと言うか、合宿の時に行った別荘と同じ設備が整っていた。いやいや、一般家庭の設備じゃないってこれ。

 

「さ、作り始めましょ♪」

「あ、はい」

 

 にっこり笑って手で隣に来るように言われる。えーっとメニューはハンバーグだっけ? じゃあ必要な食材を冷蔵庫から出さないとか。

 

「詩音さんってハンバーグに隠し味入れたりしますか?」

「ううん。普通のハンバーグよ」

 

 西木野家の普通がどのレベルの普通なのか分からないが、まぁ俺が出来る精一杯をしよう。

 そう決心し、ハンバーグを作り始める。

 

「出来た〜」

「ずいぶん手際が良いのね。さっきも慣れてるって言ってたし、お家でも作ってるの?」

「いえ、バイト先でよく作るので」

 

 店長は店長でなんで俺が入る時に限ってキッチンの人数が少なかったりするのかな。あ、人手が少ないから俺の所までヘルプが来るのか。

 

「じゃあ運びますね」

「それじゃあお願いするわね」

 

 ハンバーグの乗ったお盆を手にリビングに向かう……ん? リビングってどこ?

 

「あ、いたいた」

「真姫、良かった〜。ちょうどリビングの場所が分からなくて。助かったよ」

「……若葉。目の前は階段よ?」

「……うん。本当だね」

 

 ほ、ほら二階にリビングがある家とかあるじゃん? だから目の前に階段があってもおかしくはないんだよ。うん。

 

「ほら、リビングはこっちよ」

 

 真姫の案内の元、今度こそリビングに着く。椅子には凄く楽しみにしてるのが分かる智さんが座っていた。

 

「やぁ若葉君。久し振りだね」

「そう、ですね。最後に会ったのは退院した時ですものね」

「だね。あれから元気にしてた?」

「はい。おかげさまで」

 

 なんだろう。笑顔なんだけど、なんか怖いんですけど……でもなんか、どこかで感じた事があるような……

 

「真姫とも仲良くしてるみたいで」

「は、はい」

「?」

 

 笑顔と引き攣り笑い、そして疑問を浮かべてる3人。

 うん、やっぱりなんか怖い。

 

「まったく。お父さん何してるのよ」

「特に何もしてないって」

 

 そのタイミングで詩音さんが来てくれた。詩音さんの言葉にあっはっはと笑う智さん。助かった〜。

 

「ほら。早くご飯にしましょ」

「そうだね。さ、若葉君も座って座って」

「あ、はい。それではお言葉に甘えて」

 

 さっきまでの威圧感が嘘のように椅子を手で示す智さん。

 

 それから晩ご飯中は特におかしな事もなく、雑談をして終わった。そして真姫と詩音さんが食器を片付けにキッチンに行くと、智さんがこちらをじっと見る。負けじとこっちも見つめ返す。

 

「若葉君」

「はい」

「君は真姫の事をどう思ってるんだい?」

 

 この場合のどうってつまりそういう事だよね。なら答えは決まってるよ。

 

「大好きですよ」

「……そうか。あの子は偶に素直じゃない所があるけど、それでも?」

 

 智さん、それは愚問ですよ。

 

「そういう所も可愛くて良いじゃないですか」

「へぇ、分かってるじゃないか」

「他にも照れ隠しの為に、頬を染めて目を逸らす仕草も良いですよ」

「その時癖で髪の毛を弄るんだよね」

「そうですそうです」

「若葉君」

「智さん」

 

 気付けば智さんとがっしり握手していた。さすが智さん、分かってらっしゃる。それから真姫が顔を真っ赤にしながらリビングに来るまで智さんとの真姫談義は続いた。

 

「まったく、何話してるのかと思ったら」

「あはは。まさか真姫に聞かれるとは思わなかったよ」

「ホントよ。でも、パパと仲良くなれたみたいで良かったわ」

「まぁね、それは本当に良かったよ」

 

 うん、本当に。真姫のいろんな事知れたし、なんか途中から威圧感もなくなっていたしね。

 そして乾いた服に着替え、玄関にて真姫の見送り。

 

「それじゃあまた学校でね」

「うん。またね」

 

 真姫の頭を撫でて雨の止んだ夜空を見上げながら帰路に着く。見上げた空には数多の星が輝いていた。




【音ノ木チャンネル】
夏「なんというか、お前らは初々しいな」
愛「夏希さんが慣れ過ぎてるだけですよ!」
若「まぁ付き合いが長いからね。夏希は」
夏「まぁお前ら2人に比べるとな」
若「因みに聞くけど、夏希はあの後何をしたの?」
夏「ん? 普通に適当にブラブラして気になった店に入ったりとかしてただけだぜ?」
愛「デートと言うよりお買い物感覚ですね」
夏「さすがに何回も行ってると最終的にはそうなるって」
若「因みに今回の話の分け方としては」
夏「朝の待ち合わせから昼飯までを俺とツーちゃん」
愛「お昼ご飯から夕方までを僕と凛ちゃん」
若「夕方からさよならまでを俺と真姫だね」
夏「こういう思い付きのオリ展開話をするから話数が無駄に伸びるんだよ」
愛「その通りですけど、それを言ったらおしまいだと思いますよ」
若「そうそう、そう言えばね作者が初めて聖地巡礼して来たらしいんだけど、その話する?」
夏「別にしなくていいだろ」
愛「まぁいいんじゃないですかね」
若「じゃあしない方向で」
夏「因みに次話からまたアニメに戻るらしいぞ」
愛「えーっと次は……あぁ、あれですね」
若「一体どうなるのやら」
夏「ま、誤字脱字、感想、批判、アドバイス等を待ってるぜ。じゃあな!」
若「バイバーイ」
愛「さようなら〜」


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違う!!by若葉&夏希

 その日、若葉、夏希、愛生人の三人は揃って下校していた。夏希の提案で、これから若葉の部屋で遊ぶのだ。

「ん?」
「どうしたんですか? 若葉さん」
「いや、なんか綺麗な棒を拾ってさ……!」

 若葉が道端に転がっている棒を拾うと、夏希が手にしていた傘で斬り(殴り)かかる。若葉はすぐに身を翻し棒で夏希の胴体に一本入れる。

「バカな……」
「いきなり殴りかかって来たら危ないでしょうに」
「こうして勇者ワカバの最強への道が始まったのであった」
「始まらないしやらないからね」

 愛生人のナレーションじみた台詞に首を振って歩き出す。そんな若葉の制服を夏希が掴み、止める。若葉が振り返ると夏希は地に四つん這いになったまま若葉を見上げ、用件を告げる。

「武器は装備しないと意味がないぞ?」
「しつこい!」

 夏希の手を払い、今度こそ歩き出す。

「それにしてもいい棒だよね」
「ワカバは五のダメージを受けた」
「変に曲がってもないし、長さも程良いし」
「ワカバは五のダメージを受けた」
「太さも握りやすく手にスッポリと嵌る」
「ワカバは五のダメ」
「なんでさっきからちょいちょいダメージ受けてんの!? 毒か呪いでも受けてんのかな!?」

 愛生人のナレーションに若葉は思わず振り返りツッコむ。夏希はそんな若葉の肩に手を置くと、呆れた様に言う。

「武器をちゃんと装備してないんだ。ダメージ受けて当たり前だろ?」
「じゃああれかな? 俺はさっきから柄じゃなくて刃の方をもってたんだ!? 設定細か過ぎるって!!」

 若葉が夏希にツッコミを入れてると、ふと背後から声がかかる。

「おっと待つんだ、そこの少年。あんた西の街に行くのか? だったら俺を連れて行きな」

 若葉が声の主の方を見ると、そこには腕を組んで電柱にもたれかかっている愛生人がいた。

「……アイト?」
「いいや、俺の名はジャック。この世界の覇権を巡り争う二人の魔王に対抗すべく、三人目の魔王となれる素質をもつ人間を探している」
「無駄に壮大な話だなぁ。ねぇ、これって家に着くまでには終わる話だよね?」

 若葉が確認を取る様に二人に聞くも、愛生人は何も答えず、夏希はなにやらBGMを口ずさむ。そして

「ちゃーん……ジャックが仲間になった」
「長い! しかもなんの音だよ!」
「ほら、RPGとかで仲間になったら鳴るあの」
「だぁー、もう、説明しない!」

 愛生人の解説を途中で区切り疲れた様に肩を落とす若葉。夏希と愛生人はそんな若葉を置いて話を進める。

「では行くとするか、少年!」
「ジャックは五のダメージを受けた」
「ちゃんと装備しな。装備」

 夏希のナレーションに若葉は溜め息を吐きつつ愛生人に注意する。

「それで? どこに行くの?」

 若葉一人だけ今の状況を把握出来てないので、進行役の二人に聞く。

「こういう時は王様のところって相場が決まっているだろ」
「いや、まぁそうだけど……」

 愛生人のぶっちゃけた発言に言葉を濁す若葉。そして適当な角を曲がった時、いつの間にか先回りしていた夏希がいた。なぜかマミーのポーズで。

「敵が現れた」
「いや、敵自らそれ言っちゃダメじゃね?」

 夏希の台詞に若葉が当然の様にツッコむもスルーされる。

「で、どうするの?」
「ふむ……無視する」
「無視!?」

 愛生人の言葉に驚きの声を上げるも、夏希の横を黙って通り過ぎて行く愛生人を見て若葉もそれに倣い、夏希の横を無言で通り過ぎる。
 そして少し歩くと、突然愛生人が立ち止まる。

「着いたぞ少年。ここが城だ」

 愛生人の後ろから前を覗くと、そこにはまたもや同じポーズをした夏希がいた。

「よく来たな勇者よ」
「よく来たなって、そのポーズ、流行ってるの?」

 夏希のポーズにやはりツッコむ若葉。愛生人は重々しく口を開くと夏希に確認の為、質問を投げかける。

「お前が中ボスか」
「いやまさか」
「よく見破れたな。俺こそ中ボスだ」
「中ボスなのかよ! だったらもう少し正体隠すとかしよ? しかもさっき愛生人は王の所に行くって言ってなかったっけ? て言うか、家が近いからって展開無理やりすぎね」

 二人のやり取りにツッコミ所が満載だったのか、若葉が一気にツッコむ。若葉の言葉を聞いて夏希はいきなり殴りかかる。

「うるせー! この話は本編と全く関係ないし、どうせこれはまえがきでのお遊びなんだから細かい所にツッコむなよ!」
「メタいわ!」
「これはリアルに痛いやつ!」

 殴りかかられた若葉は避けるとともに、腕を掴んでそのまま背負い投げの要領で夏希を地面に投げる。コンクリートに投げられた夏希はグッタリとしながらも手を伸ばす。

「遺言?」
「せ、せめて……棒は、使おう、ぜ……」

 それだけ言うと夏希は力尽きた様に腕から力を抜く。

「若葉さん。手加減って知ってます?」
「知ってるけどこの場合は正当防衛だからしなくてもいいかな、と」
「じゃあその振り上げてる棒はなんですか!?」

 愛生人が高く上げられた右手と、その手に収まってる棒を指して言うと、若葉はキョトンとした顔で返す。

「何って夏希が棒を使えって言ったから」
「トドメですか! もう瀕死なのにオーバーキルもいい所ですよ!」

 愛生人の叫びに、路上に転がってる夏希の体が震えだす。うつ伏せ状態で転がっている為、目で見る事は出来ず、情報は全て耳でしか入って来ないのだ。

「ま、さすがにこれは冗談なんだけどさ。二人に一つ聞いても良い?」
「なんですか?」
「物語なら魔王倒すまで終わらないぞ?」
「……二人とも、鞄どうしたの?」
「「…………あ」」

 二人は若葉に指摘され気付き、どこで手放したのかを思い出す。

「やべー! この茶番始めた時だ!」
「急いで戻りましょう!」
「何やってんだか……」

 若葉はやれやれ、と首を振ると手に持っていた棒を捨て、走って戻る二人を追いかけた。



「おっす~。元気してるか~?」

 

 若葉と夏希が生徒会室で仕事をしていると、担任の姫子がやって来た。二人は目を合わせると若葉が作業の手を止めて相手をする。

 

「姫。どうしたの、生徒会室に来て」

「ほら、私ってアイドル研究部の顧問じゃない?」

「え、そうだったのか?」

 

 姫子の言葉に作業していた夏希が驚きで聞き返すと、その反応に不満そうな顔をする。

 

「まぁまぁ、それで姫。どうしたの? アイドル研究部の事なら部室に行った方が早いでしょ」

「ん~確かにそうなんだけど、誰もいなかったのよね~」

「そりゃあ今の時間練習してるからな。いるとしてもアッキーくらいだろ」

「そう言えば今日凛が新しい練習着を買ったって喜んでたね」

「成る程。だから誰もいなかった訳か」

 

 頷いて納得する姫子。そこでふと二人を見て首を傾げる。

 

「お前らはハブられてるのか?」

「「違う!!」」

 

 姫子の言い分に口を揃えて返す若葉と夏希。

 

「俺らは穂乃果達が練習してる間のフォローをしてるの。それに今やってた作業が終わったら練習に行くつもりだったんだよ」

「ま、姫が来てその手が止まってるけどなー」

「そんな、まるで私のせいで作業が遅れるみたいな言い方しなくても良いじゃないか」

「まるっきりそう言ってるんだよ!」

 

 夏希が手に持っていた書類を机に叩き付けて突っ込みを入れる。そんな夏希に同意する様に若葉も頷く。

 

「そっか。じゃあそん時にで良いからちょっと皆に言っといて貰いたいことがあるんだ」

 

 続いて姫子の口から出た報告に若葉と夏希は驚きと共に笑みを浮かべた。

 

 ☆☆☆

 

「お兄ちゃん達急に呼び出してどうしたんだろ?」

「さぁ? でも屋上に来ないで携帯で呼ぶあたり、相当慌ててたみたいだね」

 

 練習を中断させて穂乃果達は生徒会室に向かうと、若葉と夏希が書類を終わらせた所だった。

 

「若葉、どうしたの?」

「あ、皆お疲れ様」

「お疲れ様、じゃなくて電話で言ってた楽しい事って何?」

 

 若葉がのんびりと返すとにこが若葉に詰め寄る。

 

「あぁ、さっき姫が来てね。今年秋葉原をハロウィンストリートにするらしくてね」

「地元のスクールアイドルのμ'sとA-RISEにも出演依頼が来てるんだとさ」

「ほぇ~予選を突破してからと言うものの、なんだか凄いね」

 

 若葉と夏希の言葉に穂乃果が感心した様に言う。

 

「でもそれって新しい曲をやるって事よね」

「そうみたいやけど」

「ありがたい話ですけど、そんな事やってて大丈夫なんですかね」

「確かに、この前のファッションショーと言い、最終予選も近いのに」

「そうね。私達の目標は「ラブライブ!」優勝でしょ」

 

 真姫の言葉ににこも頷く。しかし絵里はこうした地道な事も重要だとやる事に賛成する。

 

「因みにイベントにはテレビ局も来るらしいよ」

「テレビ!?」

「態度変わり過ぎ……」

 

 若葉のテレビ局発言ににこが飛び付く。真姫はそんなにこに呆れた様に溜め息を吐く。

 

「A-RISEと一緒と言う事は皆注目するよね。緊張するなぁ」

「でもそれだけ名前覚えて貰えるチャンスだよ!」

「そうよ。A-RISEよりインパクトの強いパフォーマンスでお客さん達の脳裏に私達の存在を焼き付けるのよ!」

「じゃあにこ。ちょっと頼み事されて貰える?」

 

 若葉が笑顔でにこと穂乃果、そして凛にとある頼み事をする。この人選は姫子直々の指名で、理由はアイドル研究部の部長のにこ、リーダーの穂乃果、そして先日のファッションショーでセンターを務めた凛だからである。

 

「それで何するの?」

「明日の放課後に開会式があって、その時に挨拶があるから、三人とも遅れない様に行ってね」

「了解にゃ!」

「任せて!」

 

 若葉の言葉に凜と穂乃果は元気に頷く。

 

 ☆☆☆

 

 翌日の放課後。秋葉原の通りではハロウィンイベントの特設ステージが設置されていた。ステージ上にはμ's代表として穂乃果、凛、にこの三人。観客側には他のメンバーがステージを心配そうに見守っていた。

 

「と、いう訳で今日から始まりましたアキバハロウィンフェスタ! テレビの前の皆、ハッチャけてるかい!! 司会は私、ハッチャケてるで有名な大沢朱子(おおさわあかね)がお送りします!」

 

 開会式の朱子のハッチャけ具合に穂乃果は思わず苦笑い。

 

「あの人、私達よりインパクトあるんだけど」

「確かにハッチャけてるにゃ」

「ぐぬぬ」

 

 穂乃果達の反応に関わらず司会はステージ前にいる観客の所へ行く。

 

「ご覧の通りイベントは大盛り上がり。仮装を楽しんでる人がたくさん! 皆もまだ間に合うよ!」

 

 カメラにウィンクし、穂乃果達の元へ戻る。

 

「そーしてそして、最終日にはなんとスクールアイドルがライブを披露してくれるんだぁ。あははやっほーハッチャけてる? ライブにかけての意気込みをどうぞ」

「せ、精一杯頑張ります」

 

 穂乃果が困った様に笑って返すと朱子は隣の凛にも意気込みを聞く。

 

「ライブ頑張るにゃん」

「あ~ん可愛い~」

 

 凛に頬擦りする司会。それを見たにこがにこにーをしようとするも、朱子によって遮られてしまう。

 

「そしてなんとなんと! あのA-RISEも参戦だぁ!」

 

 朱子が近くに置かれたディスプレイを手で示すと、電源が入りA-RISEの3人が映される。

 

『私達は常日頃、新しいものを取り入れて進化して行きたいと考えています。このハロウィンイベントでも、自分達のイメージを良い意味で壊したいですね』

 

 ツバサはそう言うとふふっ、と笑うと、ディスプレイが一瞬輝き、ハロウィン衣装に着替えた三人がおり、ハッピーハロウィンに合わせて投げキスをする。それに合わせて会場のあちこちから紙吹雪が舞い上がる。A-RISEのパフォーマンスに盛り上がる会場。

 

「夏希さん。いいんですか?」

「何が?」

 

 そんな中先程の映像を見ていた愛生人が夏希にそっと耳打ちする。夏希は聞かれた質問の内容が分からないのか、首を捻って聞き返す。

 

「ツバサさんって夏希さんの彼女さんじゃないですか。だからさっきの」

「あぁ、映像のあれか。別にいいんじゃね? 基本俺らってスクールアイドル関連の事に関しては互いに干渉しないようにしてるし」

 

 夏希は慣れた様子でそう返す。そんな答えに思わず絵里と真姫が訝しげに夏希を見る。二人に見られている事を感じながらも、夏希は続ける。

 

「それにツバサはスクールアイドルのトップなんだ。あれくらいはやるだろ」

「えと、つまりどういう事ですか?」

「あれだよ。アイドルが結婚してもファンの人達とは結婚前と変わらない態度接してるだろ? そういう事だよ」

「な、なるほど」

 

 夏希の言葉にそれを聞いていたメンバー達は納得のいった顔で頷く。

 

「そんな事より、俺は皆、特にマッキーに聞きたい事があるんだが」

 

 夏希が顔だけを真姫に向けて言う。このタイミングで聞きたい事と言われ、真っ先に思い浮かぶのはハロウィンイベント最終日で披露する曲の事。真姫はそれについて思考を巡らせなんと答えるかを考えていると、夏希から思いもよらぬ質問が飛んできた。

 

「若、どこ行ったんだ?」

「……え?」

 

 夏希の言葉に真姫は、隣で心配そうにステージを見ている若葉を見るもそこには影も形もなかった。他の皆も慌てて若葉を探すも、開会式という事で人が多く見つからない。真姫が携帯で若葉にコールをするも電源が入っていないと告げられる。

 

「まさか……迷子?」

「いやいや、高校生になってまでまさか……」

 

 花陽の言葉に苦笑いで否定する絵里だが、そこに真姫が思い詰めた表情で忘れられていた事を思い出させる。

 

「……若葉って方向音痴だし」

『あ……』

 

 その時、七人の声が重なった。




【音ノ木チャンネル】
夏「あのまえがきなんだよ!」
若「普通に男子高校生の日常ネタでしょ」
愛「まさか夏希さんが知らなかったなんて」
夏「そうじゃねえよ! 俺が言いたいのはなんで投稿が遅くなった謝罪とかじゃなくてお遊びから入るんだって事!」
若「だって作者が投稿遅くなるのなんていつもの事だし、去年もこの時期忙しかったから察しのついてる読者が多いと思ってね」
愛「若葉さんの言葉から分かる通り、作者が今月リアルで忙しかったが為に投稿が遅れた事、ここで謝罪します。はい、これで良いんですよね? 夏希さん」
夏「最後の一文が余計だったけどな!」
若「そんな事より本編の話しようよ」
愛「そうですね。って言うか若葉さんどこに行ったんですか?」
夏「ハァ……この流れも久しいぜ」
若「どこにも何もここにいるじゃん」
夏「本編の話だろ? 若、最後いなくなってたじゃねえか」
若「それはまぁ、うん。ね?」
夏「それで誤魔化せると思ってんならお門違いもいいところだぞ?」
愛「まぁそういう事なら」
夏「納得してんじゃねえよ!?」
若「はいはい、煩い夏希は放っておいて取り敢えずお知らせね」
夏「やっぱり扱い酷くね?」
愛「まだ確定じゃないんですけど、その内【音ノ木チャンネル】を廃止して次回予告をするらしいですよ」
若「まぁその内だから、するかもしれないし、しないかもしれないから期待しないで待っててね」
夏「因みに聞くけど、次回予告ってどんな感じにするんだ?」
愛「確か次の話の台詞をいくつか抜粋するらしいですよ」
若「分かりやすくアニメで言うと「Angel Beats!」だったり「結城友奈は勇者である」だったり「fate」だったりかな?」
夏「なんだろう。この分かりやすいような、そうでないような補足説明」
愛「まぁその内なるかもなのでまだ心配する事じゃないですよ」
若「それじゃあ今回はここまで」

『バイバーイ』


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ミイラ取りがミイラになったby絵里

おまっせしゃっしたー!


 あれから、夏希達はステージから降りた穂乃果達と合流し、三手に分かれて若葉を探しに行く。分かれ方は夏希を先頭に穂乃果、絵里、真姫の四人。希を先頭に凛、愛生人、ことりの四人。そして海未を先頭ににこと花陽の三人である。

 

「にしても若どこに行ったんだろうな」

「さぁ? でも若葉の事だからここからそう遠くには行ってないと思うんだけど……」

「だと良いんだけどな」

「二人ともその認識は甘いわよ」

「確かに。お兄ちゃんって酷い時は平気で知らない場所に行ってて、そこの人達と仲良くなってるんだよ?」

 

 真姫は冬に行った合宿の時を、穂乃果は若葉が過去に起こした出来事を上げて二人の楽観的な思考を否定する。否定された夏希と絵里は二人の話を聞いて、更に注意深く真剣に人ごみの中から若葉を見つけようと目を凝らす。

 

「希ちゃん達は高い所から探してるんだっけ?」

「ええ。最悪愛生人が「祈る者達(プレイヤー)」を使う事も視野に入れていたわよ」

「それはまた何とも……」

 

 穂乃果は過去最大の捜索隊が結成間近な事に思わず苦笑い。真姫も愛生人が本気で「祈る者達(プレイヤー)」を使うかもと考え、そうなる前に若葉が見つかる事を願った。

 

「おーい。二人とも逸れんなよ~」

「ミイラ取りがミイラになった、なんて展開笑えないからね?」

 

 談笑をして少しばかり四人の距離が開くと、夏希と絵里が立ち止まり穂乃果と真姫に呼びかける。二人は慌てた様に距離を詰めるべく走り出す。

 

「二人とも危ない!」

「え? ……わぷっ」

「……あふっ」

 

 夏希の制止の叫びも虚しく、二人は人ごみから突然出てきたカボチャ頭のぶつかってしまった。しかし二人は後ろに倒れる事はなかった。なぜならそのカボチャ頭に倒れそうになったところで腕を掴まれ、抱き寄せられる。

 

「あ、あの」

「もう大丈夫……です、よ……?」

 

 穂乃果の言葉にカボチャ頭は頷くと二人を放す。

 

「あの、すいませんでした」

 

 夏希と絵里が穂乃果達の元へ来るなり絵里がカボチャ頭に謝るも、カボチャ頭は慌てたように手を振って答える。

 

「べ、別に大丈夫カボ。それより二人に怪我がなくて良かったカボ」

「あ、そうだ。あの、この子にそっくりな男子知らないですか?」

「……そっくりな男子、カボ?」

 

 夏希が手を叩いて若葉の特徴を伝え、カボチャ頭に見覚えがないか質問するも、カボチャ頭は首を振って答える。

 

「そうですか、ありがとうございました。じゃあ俺らは引き続き若探しに行くか」

「そ、そうね」

「うん……」

「さ、行きましょう。それじゃあまたどこかで」

 

 絵里がカボチャ頭にお辞儀して三人の後を追う。

 

『おーいカボーく~ん。早くおいでー!』

 

 ステージ上の朱子に呼ばれたカボチャ頭、カボー君は両手を大きく振ってステージに駆け寄り、上に上る。

 

「カボー君ハッチャケてるかい!」

「ハッチャケてるカボー!!」

 

 朱子に振られテンション高く答えるカボー君。真姫と穂乃果はそんなカボー君に同情の視線を投げかける。

 

「それにしても見つからないな」

「そうね。ほんとにどこに行ったのかしら」

 

 そんな二人には気付かずに若葉を探す為に辺りを見渡している。

 

「ねぇ穂乃果、さっきのってやっぱり……?」

「うん。あの抱き方は間違いないよ」

「何が間違いないんだ?」

「若葉見つけたの?」

 

 夏希と絵里が振り返って穂乃果と真姫に聞くと、聞かれた二人は苦笑いを浮かべてとある場所を指す。二人の指した方を見ると、そこにいたのは先程からテンションの高い朱子と揃ってテンションを上げているカボー君がいた。

 

「……なぁえりち。俺また視力落ちたかもしんない」

「奇遇ね。私も最近視力が落ちたんじゃないかって心配してたのよ」

 

 疲れたように目を押さえる二人の反応に真姫はムッと口を尖らせつつも、ステージのカボー君をジッと見つめる。そんな真姫の視線に気付いたのか、ステージ上で跳ね回ってるカボー君の動きが一瞬止まる。

 

 実は穂乃果と真姫の予想は当たっており、カボー君の中身は若葉だった。

 

 ☆☆☆

 

 時は若葉がいなくなった時まで巻き戻る。

 

「あの、少しお話良いですか?」

「えーっと……?」

 

 愛生人が夏希に耳打ちした時に若葉は背後から声をかけられた。後ろを振り返るとそこにはスタッフジャンパーを着た男性が立っていた。

 

「高坂若葉君、だよね?」

「まぁそうですけど……」

「イッチーから話は聞いてるよ。そこでちょっと頼みたい事があるんだ」

「あの、イッチーって誰ですか?」

「あれ、知らない? 依知川監司(いちかわけんじ)。ファッションショーで一緒にやったって聞いたけど。あ、因みに僕の名前は戸張直生(とばりなお)。よろしく」

 

 戸張の言葉に若葉は思い出したように頷く。実は若葉、あのファッションショーのあと最高責任者の通称「監ちゃん」と連絡先を交換していたのだ。

 

「あの、それで頼み事とは」

「実は言いにくいんですけど……」

 

 直生が言うには、ハロウィンイベントのマスコットキャラ「カボー君」の中に入るバイトの人が渋滞に巻き込まれて遅れてくるとの事。しかしカボー君の出番まであと少し。

 

「成程。それで監司さんの知り合いの俺に頼んじゃおう、と」

「そうそう。で頼まれてくれるかい?」

「まぁ引き受ける気がないならここまでついて来ませんよ」

 

 若葉は「STAFF ONLY」と書かれている扉を潜る。若葉は直生の様子から急を要すると考え、話を聞きながら更衣室へと向かっていたのだ。

 

「さて、携帯は持ってるといけないんだよなぁ。着ぐるみのバイト中って」

「若葉君慣れてるね……」

「まぁ職業柄それなりに着た事ありますからね」

「職業柄って君の職業学生だよね?」

「そうですよ~」

 

 若葉はカボチャ頭を被りながらのんびりと直生に返すと、更衣室から出て行きステージを目指して歩き出す。

 

「二人とも危ない!」

 

 突然聞こえた絵里の声に若葉は何も反応する事ができず、急な衝撃が襲った。若葉が隙間から見ると穂乃果と真姫が後ろに倒れそうになっていた。思わずいつものように腕を掴み自身へと引き寄せてしまう若葉。

 

「あ、あの」

「もう大丈夫……です、よ……?」

 

 二人が無事なのを確認した若葉は腕を放し、その場から離れようとする。

 

「あの、すいませんでした」

「べ、別に大丈夫カボ。それより二人に怪我がなくて良かったカボ」

 

 若葉は中身が自分だとバレやしないかヒヤヒヤしながら絵里に返す。

 

「あ、そうだ。あの、この子にそっくりな男子知らないですか?」

「……そっくりな男子、カボ?」

 

 夏希が穂乃果を突き出しながら聞くも、まさか私が若葉です。などと答えるわけにもいかず、首を振ってしまう。

 

「そうですか、ありがとうございました。じゃあ俺らは引き続き若探しに行くか」

「そ、そうね」

「うん……」

「さ、行きましょう。それじゃあまたどこかで」

 

 夏希の一言で若葉はアイドル研究部の誰にも連絡を取ってない事に気付き、やや気を落とすもステージから朱子に呼ばれ聞かされた通りのカボー君のキャラでステージに上がる。

 

「カボー君ハッチャケてるかい!」

「ハッチャケてるカボー!!」

 

 朱子のテンションに合わせて自分のテンションも無理やり上げる。

 

「ねぇカボー君? ここらで自己紹介いっとく?」

「自己紹介カボね! 見た目はカボチャ。頭もカボチャ。その名はカボー君カボ!」

 

 朱子に話題を振られるも若葉は狼狽える事無くカボー君の自己紹介をこなす。それから数時間、長かった開会式がカボー君を演じ続けた若葉が更衣室にてカボー君を脱いでいると、携帯が鳴った。

 

「今出ますよ~っと……げ」

 

 携帯の画面には『西木野 真姫』と表示されており、他のメンバーからもメールや電話がかかってきていた。着信数は全員を合わせて百件近く。思わず電源ボタンを押してスリープにしてしまう若葉。

 

「なんか普通に申し訳ないと思うと同時に、寒気が止まらないんだが……」

 

 皆への対処をどうしようか悩んでる間に再び携帯が鳴る。発信者は先ほどと同じく真姫だった。

 

「も、もしもし」

『あ、やっと出たわね。今どこにいるのよ』

「今? ちょっと待ってね」

 

 若葉は保留ボタンを押してから荷物を持ち、更衣室から出る。

 

「え~っとね。今ステージ横の建物の前だよ」

『ステージ横ね。今から行くからぜっっっったいに、そこから動かないでね!』

 

 それだけ言うと真姫は通話を切り、若葉が言った場所まで急ぎ足で歩いて行く。その後ろから穂乃果達もついて行く。

 

「あ、いた。おーい若」

「わ~か~ば~」

 

 メンバーの中で一番高身長な夏希が若葉を見つけると同時に、真姫も見つけたのか顔を顰めたまま若葉に近付く。若葉は真姫の形相に一瞬驚くも、自分のした事を思い出しそこに留まる。

 

「や、やぁ真姫」

「今まで、どこ行ってたのかしら?」

「え、っと……どこ行ってたでしょうがっ!」

 

 若葉は質問に笑って誤魔化そうとすると、真姫に胸倉を掴まれ顔を引き寄せられる。視界いっぱいに真姫の顔が広がり苦笑いになる若葉。

 

「あ、あの西木野さん?」

「……」

「……すいませんでした」

 

 真姫の無言の威圧に謝る若葉。若葉の謝罪聞いて真姫は一つ頷くと手を放し、フン、と顔を背ける。

 

「それじゃあもう時間も遅いし帰りましょ」

「ですね」

「あははは。申し訳ない」

 

 帰りの電車の中、扉付近に立った状態で座ってる穂乃果達を見る若葉と夏希。

 

「それで? いなくなってた間、どこで何してたんだよ」

「別に。ちょっと頼まれ事をね」

「ふ~ん。頼まれてステージに上がってたんだ?」

「なんで知ってるの?」

 

 若葉は夏希の言葉に驚いて聞き返す。

 

「なんでって。気付いたのはマッキーとほのっちだぜ?」

「まさか……」

 

 若葉が気付いた二人の名前を聞いて一つの可能性に思い至る。

 

「そのまさかだよ。若が二人とぶつかった時に気付いたらしい」

「よくもまぁ、それだけで……」

 

 夏希は、若葉の言う通りと頷く。二人の会話は小声だったため、他の人達には聞こえていなかった。

 

 




【音ノ木チャンネル】
愛「それにしても若葉さんって、本当に色んな事やってますよね」
若「そう?」
夏「普通の高校生は俗に言う業者の人と連絡先の交換はめったにしないだろ」
若「え、そうなの!?」
愛「夏希さん。偶に思うんですけど、若葉さんって時々抜けてません?」
夏「まぁ翔平曰く高蓑原にいた頃もそうだったらしいから諦めるしかないみたいだ」
愛「あの、若葉さん。よろしかったら、他に電話帳にどんな人がいるか聞いてもいいですか?」
若「えっと、バイト先の連絡先でしょ。あとはアイドル研究部メンバーに家族、真姫とことり、海未の両親に友達、あとは最近だと朱子さんと戸張さんにファッションショーの時にお世話になった方々ect……」
夏「多いなおい!」
愛「あ、「祈る者達(プレイヤー)」のメンバーもちらほらいる」
夏「て言うかマッキーはともかく、なんでことりんとうーみんの両親の連絡先まで持ってんだよ」
若「だって昔からの付き合いだし」
夏「それが理由でいいのか……?」
若「良いんじゃない?」
愛「あ、この「アニライブ!」の派生作品「ラブラIb〜太陽の笑顔が織りなす物語〜」も連載しているのでそちらもよろしくです。詳しくはアニライブのタグをポチッとね!」
夏「急な宣伝だな」
若「でも作者真姫推しなのにラブラIbでは穂乃果が主人公なんだよね」
愛「まぁそこはいいじゃないですか」
夏「おっと宣伝したら良い感じの文字数に」
若「夏希、ワザとらしいよ」
愛「それではまた次回!」

『バイバーイ』


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『私達部活系アイドル、μ'sです!』byμ's

 開会式の翌日、若葉達は部室で話し合いを行っていた。

 

「それにしても昨日のA-RISEは凄いインパクトあったな」

「私としてはそのあとの若葉の行方不明もインパクトあったけどね」

「その話はもう終わったんじゃないの!?」

 

 真姫の言葉に若葉は驚きで声を上げる。実は真姫、前日のカボー君の事を未だに言ってこない若葉に少し怒ってたりしている。

 そんな中、絵里が手を叩いて仕切り直す。

 

「それで、実際のところどうするの?」

「インパクトにはインパクトをぶつけて対抗します?」

「でもインパクトって新しさって事でしょ?」

 

ことりの言葉に皆一斉に考え込む。それから少し、穂乃果が何か閃いたのか、目を輝かせて若葉を見る。若葉は嫌な予感を感じつつも、穂乃果に聞く。

 

「穂乃果。内容聞くだけ聞いてあげるから、言ってみ」

「お兄ちゃんってさ、音ノ木坂にも知り合いたくさんいるんでしょ?」

「そんなどうせ分かってるけど、みたいな言い方しなくても……まぁいるけどさ」

 

 若葉の溜め息混じりの答えに夏希がツッコミを入れようとするも、絵里に無言で止められる。絵里は今までのやり取りから、ここでツッコミを入れると長くなる事が目に見えていたからだ。

 

「それでお兄ちゃんにい願いがあるんだけど」

「……うん……うん。一応頼んでみるよ」

 

 穂乃果に耳打ちされ、少し躊躇いながらも頷いて携帯を取り出すとどこかに電話を掛ける。

 

「あ、もしもし? うん。ちょっと頼みたい事があって……ゴメンね、急に」

「あの穂乃果さん。若葉さんはどこに電話してるんですか?」

「えっとね、演劇部さんの所」

『演劇部?』

 

  穂乃果が笑顔で答えるのと同時に若葉が電話を切る。

 

「どうだった?」

「まぁ、一応借りれるように話は付けれたけど」

 

 若葉はそう言って立ち上がり部室を出て行くと穂乃果も楽しそうに笑いながら若葉の後を着いて出て行く。

 

「なんかほのっち嬉しそうだったな」

「何か妙案でも浮かんだのでしょうか?」

「いえ、もしそうなら若葉ももっと喜んでお願いを引き受けます」

「若葉君、どう見ても乗り気じゃなかったよね」

「つまりはそういう事じゃないかな。アハハ」

 

 ことりの苦笑いにつられて、皆が苦笑いを浮かべる。それから数分後、部室の扉がノックされ、向こうから若葉の声がした。

 

『誰か開けて~』

「今開けるわ」

 

 若葉の言葉に真姫が立ち上がり扉を開ける。扉が開くと段ボールを持った若葉と穂乃果が部室に入って来る。

 

「お、お待たせ~」

「……って、何よこの荷物は!」

 

 段ボールを机の上に置くと、茫然としていたにこが若葉と穂乃果に尋ねる。

 

「え~っと、演劇部からの借り物?」

「そんなのは分かってるわよ! 聞きたいのはこれが何かって事!」

「まぁまぁにこちゃん。取り敢えず着替えよっ」

「じゃあ俺らは先にグラウンドに行ってるから、着替え終わったら来てね」

 

 穂乃果は若葉に手を挙げて返事をすると段ボールの中を漁り始めた。

 

そして若葉達三人がグラウンドに出て暫く、着替えた穂乃果達が出て来る。その衣装は今までの衣装と違い皆バラバラなものだった。

 

「……これは?」

 

 愛生人の疑問の声から少し、穂乃果達が口を開く。それは愛生人の疑問に答えるものであり、穂乃果が先程若葉に提案した事だった。

 

「あなたの思いをリターンエース。高坂穂乃果です」

「誘惑リボンで狂わせるわ。西木野真姫」

「剥かないで。私はまだまだ青い果実。小泉花陽です」

「スピリチュアル東洋の魔女。東條希」

「恋愛未満の化学式。園田海未です」

「私のシュートでハートのマーク付けちゃうぞ♪ 南ことり」

「キュートスプラーッシュ! 星空凛」

「必殺のピンクポンポン! 絢瀬絵里よ」

「そして私、不動のセンター。矢澤にこにこ」

『私達部活系アイドル、μ'sです!』

 

 九人の決めポーズまで見た所で夏希がおもむろに口を開く。

 

「……で、それはなんだ?」

「えー! 夏希君見て分からないの!? 部活系アイドルだよ! 部活系!」

 

 夏希が額に手を当てながら聞くと、穂乃果が夏希に駆け寄り頬を膨らませて言う。そんな穂乃果の言葉に夏希は先の九人の台詞を思い出すと、ポン、と穂乃果の肩に笑顔で手を置く。

 

「それで? これは一体なんなんだ?」

「だ、だから……斬新でしょ?」

「確かに斬新だが……ちなみに各自の部活のコンセプトはなんなんだ?」

 

 夏希と穂乃果は後ろで思い思いの行動を取ってる十人を見て話を続ける。

 

「私はテニス部でしょ。真姫ちゃんは体操部、希ちゃんはバレーボール部で海未ちゃんは科学部、ことりちゃんがラクロス部、凛ちゃんは水泳部で絵里ちゃんはチアリーディング部、にこちゃんは剣道部だよ!」

「……かよちんのは?」

「……たぶん演劇部?」

 

 果物の衣装を着てる花陽を見て夏希が、それで良いのか、演劇部。と項垂れている中、真姫が意を唱える。その頬は少し赤く、隣の若葉を見ると少し口角が上がっていたので何かとからかわれたのだろう。

 

「て言うか、これでステージに上がるなんてどう考えても無理よ!」

「確かに。にこさんなんて顔が見えませんしね」

「まったくよ!」

 

 愛生人の言葉ににこは面を持ったまま怒り、それに、と続ける。

 

「これじゃあまるで子供のお遊戯会じゃない!」

「さすがにこ。年の離れた弟妹を持ってるからこその例えだね!」

「あんたは黙ってなさい」

 

 にこの例えに茶々を入れた若葉は睨まれ黙る。それから部室に戻り制服に着替えると再び話し合いを再開させる。

 

「一体あれのどこが新しさに繋がるんですかね」

「穂乃果から聞いた時点で否定しなかった俺も俺だったよね……」

「まったくよ! A-RISEはこうしている間にも進化を遂げているのよ!」

 

 若葉が過去の自分の行いに頭を抱えると、にこが机を叩いて言う。それに対し希や凛は楽しかったと返す。

 

「う~ん。何か良い案ないですかね」

「やっぱり見た目じゃないかな?」

「衣装を奇抜なものにするの?」

 

 ことりの提案に花陽が首を傾げて聞くと、海未もそれが手っ取り早いと同意するも続けて先程やったと首を横に振る。

 

「……だったらさ、ここは一端初心に戻るってのはどうよ」

 

静かになった部室に夏希の声が響く。その言葉の意味を知るために全員が夏希を見る。

 

「ほら、よく言うだろ? 初心忘れるべからずって」

「確かに探索ゲーとかで行き詰った時とかでも、初めて入った時と同じ気持ちで探せって言いますもんね」

「ごめん。アッキ―の例えがよく分からない。なんで若は頷いてんだよ」

「だって分かるんだもん」

 

 若葉の返しに思わず頭を押さえそうになるも、話の途中だったこと思いだし、続ける。

 

「あー。何が言いたいかと言うと、人間関係のリセットだ」

「つまり何が言いたいのよ」

「関係のリセット、つまりは俺らが出会ってからこれまでの間に出来た友情、恋愛、その他諸々を無かった事にしてみないかって事だ」

「虚構……」

 

 夏希の説明に愛生人がボソッと言ったが周りには聞こえなかったのか、誰も反応しなかった。

 

「それは面白そうね。やってみましょ」

「そうやね。何事もやってみないと分からんし」

 

 絵里と希の後押しもあり、人間関係のリセットを行うことになった。しかし始める前に若葉から制限時間を決めようと提案があり、五分ほどで終わる事になった。

 

「さてと、じゃあ始めるぞ。よーい始め!」

 

 どこか楽しそうに開始を宣言する夏希。そして訪れる沈黙。

 

「あー……それで? A-RISEに勝つにはどうしたら良いと思う?」

 

 皆が皆黙ってしまったので夏希が話題を上げる。そんな夏希の言葉に若葉が溜め息を吐いて返す。

 

「あのさ、こうして結論の出ない話し合い止めて、もう帰っていいかな」

「へぇ、先輩なのに碌なアイデアも出さずに帰るんですか。それって上の立場の人間としてどうなんですかね」

「片丘の方こそ相手が先輩だって分かってるならそれ相応の態度があるんじゃないかな?」

 

 愛生人の挑発気味の反論に笑顔で返す若葉。その笑顔を受けた愛生人も笑顔。

 

「それで? あなた達は何か無いの?」

「い、いきなり話を振られても困……ります。それに絵……絢瀬先輩も何か考えないんですか?」

「そ、そうです。先程片丘君も言っていた通り、何か案はあるのですか?」

「まさか何も考えついてないのに私達を責めてるんですか?」

 

 出会った頃のように尖った絵里に対して一瞬怯むも、穂乃果は何とか返す。その穂乃果に同調する形で海未とことりも畳み掛ける。その反対側ではにこと真姫が何やら言い合いを繰り広げていた。

 

「まったくギャーギャーと煩いわね。ちょっとは静かに出来ないの?」

「静かにするって事が出来ない人達なんでしょ。あなた含めて」

「はぁ!? にこを含めてってどういう事よ!」

「そのままの意味よ」

「結局は二人とも煩いってことやね」

 

 普段に近いやり取りをする二人に希が呆れたように入る。そのことによって二人は顔を背け、言い合いを終わらせる。

 

「まったく、ここには話が出来るやつはいないのかよ」

「佐渡は何かないの?」

「あぁ? なんで俺が会話も出来ない奴らの為に頭を動かさなきゃいけないんだよ」

「そう言って何も思いついてないだけなんでしょ」

「ハッ、何を言い出すかと思ったら。笑えない冗談はやめた方がいいぜ?」

 

 若葉と真姫の二人を相手して笑う夏希。その表情にはどこか余裕が見て取れる。

 

「そんな冗談言ってる暇あんなら、お前らで話し合ってろよ」

「……そ。何が何でも言うつもりはないのね。なら良いわ、さ、行きましょ。高坂兄」

「いやいや。誰に言ってるのさ。俺先輩だよ? 分かってる?」

 

 夏希が答える気がない事が分かるや否や、真姫が若葉を連れて離れようと腕を掴むも、若葉に放されてしまう。

 

「り、凛達どうしよ……」

「う、うん……」

 

 そんなギスギスし始めた部室の空気の中、幼い頃からずっと一緒だった花陽と凛はどうするか二人で困っていた。

その時、机の上に置いた若葉の携帯からアラーム音が鳴り響く。それはこのリセットの終了を告げる音だった。その音が流れた瞬間、穂乃果、愛生人の二人はその場で机に伏してしまい、真姫は若葉に抱きつき、若葉は真姫の頭を撫でていた。

 

「四人とも大丈夫か……?」

「大丈夫には見えないけれどね」

「えりち、もう終わっとるよ?」

 

 夏希が恐る恐る四人の様子を見ると、精神的ダメージが入ってるのが分かった。

 

「あー……やり過ぎた?」

『当たり前だぁ!』

 

 夏希が苦笑いで言うと四人から怒鳴られ、詰め寄られた。夏希は四人から感じる恐怖に弁明をする。

 

「い、いやでもだな。さすがの俺もあそこまでギスギスするなんて思わなかったわけで! それにほのっちは今年の初めの方はあんなやり取りしてただろ!? アッキーはアイト時代に経験してたろ!? あと若とマッキーが接触してあんなになるなんて誰が予想出来るよ!?」

「あそこまでじゃなかったよ! 今の方が緊張したし!」

「それに僕だってアイトの時はあんなの経験した事なかったですよ!」

「あそこは寧ろ空気読んで夏希がやられれば丸く収まったんじゃないのかな? かな?」

「結論言うと、夏希が悪いわね」

「はいはい。四人とも落ち着いて。始める前に約束したでしょ。終わったらやってる最中の事で誰かを責めるのは辞めようって」

 

 四人に囲まれピンチだった夏希を助けたのは絵里だった。絵里の言葉に四人は頷き、それぞれの席へと戻る。それからまた話し合いを始めようとした所で花陽があのー。と手を挙げる。

 

「花陽ちゃんどうしたの?」

「あ、いえ。皆疲れてるみたいなので一回休憩を挟みたいなぁ〜って」

「そうだね。少し疲れたし、休憩にしよっか」

 

 花陽の提案に全員が頷き、一度休憩を挟む事になった。




【音ノ木チャンネル】
若「はーい! 「アニライブ!」の入院回数が2回。本編内で一番ひどい扱いを受けている方、高坂若葉です」
愛「はーい! 「アニライブ!」の最近苗字を忘れられている方、片丘愛生人です」
夏「はーい。「アニライブ!」の1人だけ個人回もなく、挿絵もない方、佐渡夏希です……ってなんだよ! この唐突な自己紹介は!」
愛「夏希さん、自己紹介は大事ですよ」
夏「そう言う事じゃねえよ! なんで話す内容があるのに大事な尺を無駄な事に使ってんだ、って言いたいんだよ!」
若「まぁまぁ。とりあえず落ち着いて」
愛「でも作者って冒頭に使われた元ネタ、知ってるんですか?」
若「ネタは知ってる。けど内容は知らないって感じだね」
愛「成る程。つまりはかめはめ波は知ってるけど龍玉は見た事がない、みたいな感じですね」
夏「いやいや。ちゃんと内容も知っとけよ。つか喩が合ってるのか具体的過ぎるって」
愛「詳しく知りたかったら近くにいるアニメ好きの人に聞いてね!」
若「あ、そこは「作者にメッセージ送って聞いてね」じゃないんだ」
夏「んな事はどうでも良いんだよ。さっさと話す内容言うぞ」
若「はいよ~。じゃあ愛生人、頼んだよ」
愛「任せて下さい! 皆さんの中には知ってる人もいると思いますが」
夏「うん?」
愛「ダンガンロンパの新作が出ますね」
夏「その話はもういいだろ!」
若「しかもゲームとアニメ、両方」
夏「若も乗るな!」
愛「若葉さん買うんですか?」
若「う~ん周りの反応を見てって感じかな」
夏「なぁ知ってるか? この話、【音ノ木チャンネル】が始まる前から話してるんだぜ?」
若「と、いう訳でお知らせの詳しい事は作者の活動報告を見てね!」
愛「そこではちゃんと重要なお知らせの事を話してますから」
夏「なぁ、今回って向こうと同時投稿なんだろ? 絶対向こうの方がマシな宣伝してるって」
若「ん~どうだろう」
夏「いやいや。向こうってユッキーと亜里沙ちゃんがいるんだろ? こっちよりマシだって」
愛「でも友香ちゃんがいるんですよ?」
夏「……あっ」
若「はい、夏希が察した所で今回はここまで!」

『バイバーイ』



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☆巻き込まれたアニライブ!

今回は私の作品「アニライブ!」と「巻き込まれた図書委員」のコラボです。
両方読んでる方は大いに楽しみ、片方しか読んでない方は是非読んでない方もお読みください!
では、どうぞ!


「悪いな。アッキーにも手伝わせちゃって」

「いえ、穂乃果さん達が忙しいの知ってますから大丈夫ですよ」

 

 愛生人は手元の書類を片付けながら夏希に答える。

 現在生徒会室にいるのは夏希と愛生人のみ。若葉は親方から電話がかかってきた為席を外している。穂乃果達はライブ前という事で屋上で猛練習中である。

 

「若葉ーちゃんと仕事してる?……あ」

「あ、若葉さんおかえ……り?」

 

 生徒会室の扉を開けると共に労いの言葉を放って入室してくる声に、愛生人は若葉だと思い顔を上げながら挨拶すると、そこに映ったのは何やら焦った表情の女生徒だった。

 腰まで伸びた髪に、後頭部で結んだ赤いリボンが特徴の彼女。胸には三年生である事を示す緑のリボン。

 

「夏希さん。知り合いですか?」

「いや、この学院内で先輩の知り合いはえりち、のぞみん、にこっちの三人だけだ。そう聞いてくるって事はアッキーの知り合いでもないんだな」

「て事は十中八九若葉さんの知り合いですね」

「まぁ入って来る時若の名前呼んでたしな」

 

 二人は頷き合うと、頭を抱えている彼女の方に向き直る。

 

「あのー……若葉さん、今ちょっと席を外していまして、戻って来るまで待っていますか?」

「あー……それじゃあお言葉に甘えて」

 

 愛生人の提案に頷くと、彼女はいつもことりが座っている(書記の)席に慣れた様子で座る。

 そして当然のように訪れる沈黙。先程までは夏希と愛生人だけだった為雑談を交えながら作業をしていたが、さすがの二人も関係ない第三者がいる場所で談笑しながらの作業はできない。

 

「あ、あの」

 

 そんな沈黙を破ったのはこの中で最年少の愛生人だった。

 

「若葉さんが来るまでお互い黙ったままは居づらいと思うので、自己紹介とかしませんか?」

「お、アッキーナイスアイデア!」

 

 愛生人の提案に夏希が指をパチンと鳴らして賛成する。彼女の方も首を縦に振り賛成の意を示す。

 

「では提案者の僕から。一年生の片丘愛生人です。よろしくお願いします」

「次は俺だな。俺は佐渡夏希。二年で生徒会の会計をしてます。よろしく」

 

 最初に愛生人、次に夏希が自己紹介を終わらせ女生徒を見る。二人に見られた女生徒は少しの間何かを考えているのか、黙っていた。そして

 

「最後は私だね。私は東野」

「二人ともお待たせ〜。いや〜親方の電話が思ったよりも長くなっちゃったね。ゴメンゴメン」

 

 彼女が自己紹介をしようとしたタイミングで、生徒会室の扉が開かれる。入って来たのは電話で席を外していた若葉だった。

 若葉は愛生人と夏希に謝ると、自己紹介の途中で止まっている彼女を見て首を傾げる。

 

「あれ? 友実姉なんで生徒会室にいるの?」

「あはは。若葉君ちょっとこっち来ようか?」

「え、いや、なんで腕引っ張るの? ていうかそっち廊下だよ?」

「いいから行くよ?」

「……はい」

 

 女生徒に為すがままに連れて行かれた若葉に、その光景を見ていた夏希と愛生人は驚きで動きが止まってしまった。

 

「なぁアッキ―。見たか?」

「えぇ。ばっちり見ました」

 

 少ししてからお互いに顔を見合わせ頷きあう。

 

「なんか若がされるがままだったな」

「えぇ。しかも出ていく時、あの人満面の笑みでしたよ」

「あぁ。ちょっと、いや、かなり怖かったけどな」

 

 それから短い会議の末辿り着いた結論は「どこかで見た事がある若葉を連れ回せる笑顔が怖い先輩」としかならなかった。二人してどこで見たか忘れている為、そこまでしか至れなかったのである。

 

「それにしても少し遅いな」

「ですね。廊下に出て行ってからそれなりに経ちますもんね」

「ちょっと様子見てくる」

 

 二人の帰りが遅く、心配した夏希が生徒会室の扉に手をかけようとしたその時、急に扉が開いた。扉の前にいた夏希はそれを避けられるわけがなく、鼻を強打する。

 扉から入って来た女生徒と若葉は、蹲ってる夏希と扉が何かに当たった音を結び付ける。

 

「あ~……ゴメンね」

「テヘペロで許されると思ったら大間違いだかんな!!」

 

 ベロを出し、コツンと頭を叩いて謝る女生徒に夏希は鼻を押さえたままツッコみを入れる。

 

「まぁまぁ落ち着いて夏希」

「若。お前は被害者じゃないからそう言えるんだ……これ地味に痛いんだからな?」

「へ~若葉って若って呼ばれてるんだ~」

 

 夏希の抗議の台詞を聞いて楽しそうに笑う女生徒。若葉はその言葉を聞いて顔を顰めてしまう。

 

「あ、あの若葉さん。さっきから気になってたんですけど、その人どなたですか?」

「……友実姉、まだ自己紹介してなかったの?」

 

 愛生人の質問に若葉は友実姉と呼ぶ人物に視線を向けるも、目を逸らされてしまう。その行動に思わず溜め息を吐いてしまう若葉。そんな若葉の態度が癇に障ったのか、若葉に詰め寄る女生徒。

 

「そもそもの話、若葉が入って来なければ恙なく自己紹介を済ませられたんだからね! だからこれは私が悪いんじゃなくて、あのタイミングで入って来た若葉が悪いの!」

「わ、分かった。分かったから落ち着いてって」

 

 それから女生徒を何とか宥め、再度自己紹介に移る。

 

「え~と、さっき私の自己紹介を中断した若葉の姉、東野友実って言います。よろしくね」

「東野、友実……?」

「やっぱりどこかで聞いた事……あ」

 

 愛生人が何かに気付いたのか、言葉を途中で止める。その声に友実はビクリと体を震わせた。

 

「もしかして、音ノ木坂三大美女の東野友実先輩ですか?」

「ちょっと待てよアッキー。確かその人って話し方がうーみんに似て大和撫子だって聞いたぞ?」

 

 愛生人の言葉に夏希がすぐ様反対の意を唱える。確かに夏希の言う通り音ノ木坂三大美女、通称三女の内一人は黒い髪を伸ばし、赤いリボンをしており、その口調も相まって周りからは大和撫子と認識されている。

 

「でも同じ学園に同姓同名、しかも学年まで一緒って相当な確率ですよ?」

「あの、愛生人君の言ってる通り、私三女の一人。東野友実よ」

「だって口調が」

「ならこれでよろしいですか?」

 

 友実が認めてもなお夏希が反論しようとした途端、友実の口調が、姿勢が、雰囲気が変わった。その急な変化に夏希と愛生人は驚きで言葉が出せずにいた。友実の表情は一貫して笑顔。

 

「友実姉、容赦なさすぎ」

「あら、高坂君は不思議な事を言うんですね。私はただ、私である事の証明をしただけですよ?」

「あ、あの、東野先輩。俺が悪かったんで辞めて貰っていいですか?」

「仕方ないね。まぁ分かってくれた様で何よりだよ」

 

 夏希が謝ると友実はまるでさっきまでの事が嘘のようにケロッとしていた。

 

「あの、つかぬ事質問しますが、なぜそんな演技をしてるんですか?」

「愛生人君。女性には聞いて良い事と悪い事があるんだよ」

「あ、すいませんでした」

「別に今の質問は悪い事じゃないけどね」

「僕の謝罪を返して下さい!」

 

 友実の言葉に愛生人は思わずいつものノリで言ってしまう。言ってしまってから自分の失態に気付き顔を青くする。それほどまでに先程の友実の笑顔での威圧は愛生人に恐怖を与えていたのだ。

 

「あ、あの」

「あー別に謝らなくても良いよ。普段通りの態度の方が私も楽だし」

 

 友実が優しく微笑んで言うと、愛生人も安心したのか、椅子に座りこむ。

 

「ってそうだ生徒会の仕事しないと。そういえば友実姉はなんでここに?」

「私は絵里に若葉が生徒会の仕事してるから手伝ってって言われたの」

 

 ここに来てようやく若葉達は友実が生徒会室を訪れた理由が分かり、それなら、と仕事を友実にも回して作業を再開させた。

 

「あの、東野先輩」

「友実で良いよ夏希君。絵里から話はそれとなく聞いてる。私と同学年なんでしょ? だったら敬称はいらないよ」

「そ、そっか? ならこれからはタメ口で話させてもらうな。で、聞きたい事があるんだが、三女の残り二人って誰なんだ?」

 

 夏希の質問に友実は一瞬きょとんとし、おかしそうに笑う。夏希は変な質問をしたか不安になり若葉と愛生人を見るも、特に変な箇所は見られなかった為、二人は首を振った。

 

「あーいや。ゴメンね。で、残りの二人だっけ? それは君達のすぐ近くにいるよ」

「……海未さんですか?」

 

 愛生人が友実に聞き返すも、友実はそれを否定し、正解を告げる。

 

「残りの二人は絵里と希だよ」

「えりちとのぞみんだと!?」

「て言うかなんで二人とも知らないのさ」

「寧ろなんで若葉さんは知ってるんですか!?」

「そうだそうだ。なんで若は知ってんだよ」

 

 愛生人と夏希は若葉が知ってる事に疑問を抱き質問する。その質問に若葉は当たり前の事を答えるが如く答えを口にする。

 

「だって友実姉の家とウチってお隣さんだもん。俗に言う幼馴染み?」

「まぁ私からしてみれば義弟扱いだけどね」

「まぁ穂乃果も雪穂も姉みたいに慕っているし、俺もそれなりにお世話になってるしね~」

 

 あははは~と笑う若葉を見て夏希と愛生人は心の中で、それなんか違くね!? と声を揃えてツッコんでいた。

 

 

 

 それから談笑しながらも四人で協力して溜まっていた生徒会の仕事を終わらせた。

 

「友実姉今日はありがとうね」

「お礼なら絵里に言ってね。私は絵里に頼まれただけだから」

「その台詞ツンデレみたいだな」

「ですね」

 

 その後夏希と愛生人が友実に怒られたのは言うまでもない。

 

「まったく二人も成長しないよね。友実姉は怒らせたらダメだって、最初に分かってたでしょうに」

「まったくだよ。じゃあ私は帰って本読むから。じゃあね~」

 

 友実は手を振ってその場から離れた後、少しして肩を落とした。

 

「どうしたんですかね?」

「なんかショック受けてるっつーより落ち込んでるな」

「大方この後のんびりと読書するつもりが、急な予定が入って読めなくなったって所じゃない?」

「いや、だから。なんで分かるんだよ」

「勘……?」

 

 若葉が首を傾げながら答えると、夏希が無言で鞄で若葉の顔目掛けて振りかざす。

 

「それは俺の専売特許だぁ!」

「別に夏希のじゃないでしょ!」

「ちょっと二人とも場所考えて暴れてください!」

 

 三人の疲れを乗せた声が放課後の校舎に響き渡った。




【音ノ木ラジオ】
友「ハーイ! 【妹ラジオ】の癒し担当、ご存知東野友実の実妹の方、東野友香です!」
若「ハーイ! 【音ノ木チャンネル】では常に常識人。いつも2人に振り回されてる方、高坂若葉です!」
夏雪「「ちょっと待ったぁ!」」
愛「そうですよ! お二人に振り回されてるのは僕ですよ!」
夏「それも違ぇ!」
雪「お兄ちゃんもだよ! この前の宣伝するべき回の聞いたよ? 全然今回のコラボについて触れてなかったじゃん!」
亜「私達もしてなかったけどね……」
夏「ったく。取り敢えず話したい事あるから一つずつ上げてくぞ?」
友「どうぞどうぞ。ではまず一つ目!」
夏「……えーと、じゃあ一つ目。あのタイトルはなんぞ?」
愛「あ、そこからなんですね」
若「大分友香にペースを乱されてるね」
友「それが私のアイデンティティですから」
雪「それ、威張れる事じゃないからね?」
亜「タイトルについてですよね。【音ノ木チャンネル】と【妹ラジオ】を足して割ったらこうなったそうです」
愛「なるほど」
友「そんな意味だったんだね」
夏「なんで二人とも知らないんだよ……」
雪「こういう子なんです。ごめんなさい」
若「別に雪穂が謝る事はないよ」
友「若葉さんが言える立場じゃないと思いますけどね〜」
愛「話を戻して二つ目に行きましょう」
夏「話がズレたのって誰のせいだ?」
亜「さ、二つ目に行きましょう!」
友「二つ目はこの人数の多さですね!」
雪「なんで二人は焦ったように話を続けるのさ」
若「雪穂、そこに触れちゃいけないよ」
愛「人数の多い理由はですよね! それは二作品のあとがきのメンバーを合わせた結果ですよ!」
夏「なんかもう、ゴチャゴチャだな」
亜「六人もいますからね。賑やかなのは良い事ですよ!」
若「前は十五人であとがきの茶番した事あるけどね」
愛「最後の方はしっちゃかめっちゃかでしたけどね」
雪「あーあの時か」
友「その話に私は入れないー!」
夏「……さて、話を戻すぞー」
『はーい』
夏「三つ目はゆかりん、若、お前らの自己紹介だ。なんだよあれ!」
若「何って自己紹介だけど?」
友「正確には「アニライブ!」の方でどのタイミングで投稿したのかを分かりやすくする為に行った事です。……ゆかりん?」
愛「あれ?「巻き込まれた図書委員」の方でも本編と番外編分けてなかったっけ?」
亜「最近作者が並び替えたらしいですよ」
夏「こっちはまだ別だが、変える気はあるのか?」
雪「どうでしょう? ただこちらの方を変えてる時、大変だと言ってたので話数の多い「アニライブ!」は望み薄だと思いますよ」
若「えと、疑問点はこのくらい?」
夏「俺からは、な」
愛「て事は他の人からあるんですか? 僕はないですけど」
友「私も特にないかな? ……ゆかりん?」
亜「私もないです」
雪「同じく私も」
若「うわー。夏希恥ずかしい」
愛「顔真っ赤ですよ?」
夏「うっせー!」
友「これまた見事に真っ赤ですねー……ゆかりん?」
若「友香さすがにしつこいよ?」
友「はーい」
亜「ねぇ雪穂。ブースの外にいる友実さんが何か言ってるよ?」
雪「本当だ。ちょっと聞いてくるね」
愛「ちなみに今回は人が多いのでいつもと違う場所からお送りしています」
夏「十五人でやった時と同じ場所だな」
若「本来はここ、八人が限界らしいよ?」
友「という事は、あと二人入れるんですね」
亜「あ、雪穂おかえり」
雪「なんかね、本編に触れて! って言ってた」
『えー』
亜「なんでそんなに息が合ってるんですか! それに友香まで!」
友「だってあまり触れる所なくない?」
雪「いやいや、ない事はないでしょ。ね? お兄ちゃん」
若「なんかあったっけ?」
雪「お兄ちゃ〜ん!」
若「はいはい。そんな泣きそうな声を出さないの。じゃあそろそろ真面目にやろうか」
夏「遅ぇよ! 本来ならもう終わってる長さだよ!」
愛「はい、やる気になった若葉さんは放って置いてそろそろ締めま〜す」
友「あ! お姉ちゃんが突撃してくる!」
若「夏希、愛生人! 扉抑えるよ!」
夏「ああ!」
愛「これ終わった後が怖いんですけど……」
友「なんだかんだ言って愛生人さんも行くんですね」
亜「仲良しなんだね!」
雪「この後の事は知〜らないっと。じゃあこの辺で、ほらお兄ちゃん達も」
若「俺らはこのままで良いから」
夏「早く締めて!」
愛「では僭越ながら僕が。それじゃあ!」

『バイバーイ!』


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に、にっこにっこにーbyにこ?

お待たせ!


 あれから一度休憩を挟み、再度どうするか話し合いが始まった。

 

「さて、取り敢えず落ち着いたか」

「最初から落ち着いてはいたけどね」

 

 絵里のツッコミに夏希はコホンと咳払いをすると、全員に向き合う。

 

「それで、俺が言うのもアレだが何か休憩中に良いの思い付いたやついるか?」

 

 夏希の言葉に皆が黙り込む。そんな様子に夏希は溜め息を吐くと、最後の頼みの綱である希を見やる。希は瞳を閉じて目の前にタロットの山を取り出し、一枚捲る。出たカードは『Change』

 

「希、そのカードの意味する事は?」

 

 普通のタロットの意味を知っている若葉でもこの状況下での意味が分からず、希に聞く。希はカードをジッと見つめると不敵に笑うと、その意味をその場の全員に伝える。

 それから着替えを終わったメンバー達は屋上に上がっていく。

 

「おはようございまーす! ……あ、ごきげんよう」

 

 いつも通り元気に挨拶した穂乃果は、何かに気付いたかのようにハッとすると体の前で手を合わせ、まるで海未様に挨拶をし直す。

 

海未(・・)、ハラショー」

 

 そんな穂乃果に声をかけたのは腰に手を当て、髪をポニーテールにしていることりだった。心なしか、いつもより眉をキリッとさせている。そしてなぜか穂乃果を海未と呼んだ。

 

絵里(・・)早いですね」

「「そして凛も」」

 

 穂乃果がことりの事を絵里と呼び、二人は声を揃えて現在屋上にいる残りの一人、海未(・・)を見る。海未は凛の様に髪の一部をゴムで止め、新しくなったミニスカートタイプの練習着の裾で恥ずかしそうに足を隠そうとする。

 

「無理です!」

「ダメですよ海未。ちゃんと凛になり切って(・・・・・)下さい」

 

 実は穂乃果の言う通り、今現在µ'sのメンバーは全員口調と練習着を入れ替えて過ごしているのだ。その結果、穂乃果は海未に、ことりは絵里に、海未は凛になり切らなければならない。また穂乃果と海未を見れば分かる通り、穂乃果が海未になったからと言って海未が穂乃果になる訳ではない。誰が誰になるかは完全にランダムとなっている。その為

 

「そ、そうだよ海未ちゃん。海未ちゃんが空気を変えた方が良いって言いだしたんでしょ?」

「わ、若葉……」

 

 若葉(男子)花陽(女子)役になる事もある。若葉は笑顔で海未の肩に手を置くと、ね? と笑って首を傾げると、その有無を言わせない笑顔に海未も観念したのか

 

「にゃー! さぁ、今日も練習いっくにゃー!」

 

 両手を振り上げ、やや自棄気味に叫び出す。そして

 

「ほらかよちん! 柔軟やるにゃ!」

 

 と若葉と背中合わせになると腕を組んで背筋を伸ばし始める。

 

「何それ意味わかんない」

 

 

 そんな二人を見ながら、真姫役になった凛が髪の毛を弄りながら言う。そんな凛に穂乃果が注意をするも、面倒な人、とそっぽを向かれてしまう。

 

「ちょっと凛! それ私の真似でしょ。やめて」

「お断りします」

 

 凛の真似に耐えられなかったのか、扉を開けて希に扮した真姫が凛にやめる様言うも、凛はそれを断る。その光景を見て若葉は穂乃果から聞いた真姫の勧誘当時の事を思い浮かべながら、凛の物真似のクオリティの高さに感心していた。更にそんな真姫に追い打ちをかけるかの様に、穂乃果が真姫に希として真姫に挨拶する。

 

「ううぅ……」

 

 真姫は助けを求めるべく柔軟をしている若葉を見るも、今の若葉は花陽になり切っている為、助ける事が出来ない。

 

「ほら真姫。いつまでも駄々を捏ねてても仕方ない……でしょ」

 

 そんな真姫に声をかけたのは若葉役になった夏希だった。

 夏希は真姫の頭に手を置いて、いつも若葉がやってる様に撫でるも、やはり撫でられ心地が違うのか、真姫が落ちる事は無かった。

 

「ねぇ海未」

「なんでしょう若葉」

 

 そんな真姫と夏希の光景を見て、若葉は気付かれない様に海未に話しかける。幸いにも今、穂乃果達は真姫に集中している為気付かれてはいない。若葉は夏希を見るとぐと思った事を海未に聞く。

 

「普段の俺ってあんな感じなの?」

「そうですね。まぁ大体あの様な感じですね。今後改善でもするのですか?」

「いや、普段の俺達がどう見えるのかが気になっただけ」

 

 2人が話している間に真姫の説得に成功したのか、真姫も希の真似を始める。そして穂乃果が真姫を誉めた時、再度扉が開く。全員がそちらを見ると

 

「に、にっこにっこにー。あなたのハートに、にこにこにー。笑顔を届ける……矢澤にこ、にこぉ……青空もにこ」

「ど、どうしたんだにこっち。元気がないぞ」

 

 そこにいたのは羞恥で顔を真っ赤にしてにこの練習着を着た愛生人と、そんな愛生人に同情の視線を送りつつも、少し引いている夏希役のにこ。

 

「にこちゃん元気だして~」

「そうだよにこちゃん! 元気が一番だよ!」

 

 そんな愛生人の肩に手を置き励ますのは、ことり役の花陽と穂乃果役の希だった。穂乃果は希の演じる自分が普段はああなのかと隣にいることりに確認を取ると、ええ、と即答される。

 そしてまたもや扉が開けられ、愛生人になり切った絵里が屋上の状況を見て一言。

 

「皆さん何やってるんですか? やっぱり……変よ」

 

 最後の一言だけ素に戻り言うと、全員が思っていた事なのか皆が頷く。それからもう一度今度は自分の練習着に着替え、部室に集まる。

 

「なんか、無駄に心に傷を負って終わった気がします」

 

 次の案を考える中、愛生人は部室の隅で1人膝を抱えていた。

 

「そもそもなんで僕がまた女装する羽目に……しかも今度はミニスカート……」

 

 どうやら今回の一件で愛生人が受けたダメージは皆が思ってる以上に大きかったらしく、見かねた凛が愛生人の隣に一緒になって座り込む。

 

「まぁアッキーの介護はりっちゃんに任せて、何か考えないとな」

「そうですね。結局何も変えられないままですね」

 

 夏希と海未の言葉に重たい空気が部室に流れる。そんな中、絵里が手を挙げる。

 

「ねぇ、ちょっと思ったんだけど。いっその事、一度「アイドルらしい」って

 イメージから離れてみるのはどうかしら」

「アイドルらしくなくって事?」

「まぁそれはそれでありかもね。それで、例えばどんな?」

 

 高坂兄妹の言葉に絵里は頷くととある道を提示した。

 

「それで、カッコよさをイメージした感じで、ロックで荒々しい感じ、という事であの衣装になったんですか?」

「あぁ。俺もさすがにアレは止めたんだがな」

「まぁ下手しなくても理事長室行きは免れないよね……」

 

 取り敢えず出来た新衣装お披露目と言う事で、穂乃果達9人は校門前の生徒達に見せに行った。若葉と夏希は部室に残って愛生人の相手をする事になった。

 愛生人もぼんやりとだが、新衣装は視界に入っていたのか、若葉と夏希に困惑の視線を送るも、2人も一応止めはしたのだ。しかしその制止の声を振り切って穂乃果と絵里を主体に話は進んでいったのだ。

 少しして、白と黒のメイクで鎖やらが付いた衣装を着た穂乃果達が校門前に躍り出る。途端に響く女子生徒の悲鳴。そして理事長室に呼び出されるアイドル研究部。

 

「え~と……若葉君。説明お願いしてもいいかしら?」

 

 彩はアイドル研究部の部員12人を理事長室に呼ぶと、一番落ち着いている風に見える若葉に状況説明を求める。若葉は頬を掻きながら、訳を説明する。

 

「成る程ね。つまりはあなた達はその格好で次のライブに出る、という事でよろしいのですね?」

 

 彩の確認する様な視線に穂乃果達は言葉を詰まらせる。結果、アイドル研究部内でもなしの方向になった。

 それから部室に戻り、時間が遅かった為その日は解散となった。

 翌日。再び部室に集まった部員は今度こそ、と意気込む。しかしそんな中、衣装担当のことりが手を挙げる。

 

「あの……実は衣装の方が出来ちゃってて……」

「本当!? 見せて見せて!」

 

 穂乃果がことりにせがむと、苦笑いしながら鞄からスケッチブックを出すと皆にも見えるように広げる。それに続いて真姫と海未も楽譜と歌詞の書かれた紙を取り出す。

 

「実は昨日、あの後アイデアが出て来て」

「それを纏めてみました。確認して貰えますか?」

 

 真姫と海未がそれぞれのものを回し始める。皆はそれに目を通すと隣の人に渡す。そして一周し二人の元に戻ってくると不安そうに全員を見る。最初に口を開いたのは絵里だった。

 

「さて曲とかも決まった訳だし、早速練習しましょ!」

 

 絵里の言葉に反対の言葉はなく、そのまま練習が始まった。

 

 ☆☆☆

 

 そしてアキバハロウィンフェスタ最終日。そこには若葉を除いた十一人が控室に向かっていた。

 

「あの、若葉さんってもしかして」

「あぁ。今ならステージで楽しくしてんじゃねえか?」

 

 夏希の言葉は的を射ており、現在若葉は再びカボー君の中に入りステージで朱子とハッチャけていた。その様子はマイクを通して穂乃果達の所まで伝わってきていた。

 

 「ヤッホーカボー君、ハッチャけてるかーい!」

「もちろんカボー!」

「今日は、アキバハロウィンフェスタ最終日という事であれがあるんだよね。カボー君!」

 

 朱子の問い掛けに答える様にカボー君は頷き、その場でクルリと回る。

 

「今日はスクールアイドルの皆にライブをして貰うカボ! しかも出場チームは前回「ラブライブ!」優勝したA‐RISEと、最近の注目株でカボー君お気に入りのµ'sカボ! 皆最後まで楽しんでいってカボ!」

 

 そこで音声は切れ、ハロウィンらしいBGMが流れ始める。

 

「「カボー君のお気に入り」って言っちゃって良かったのかしら?」

「昨日聞いたら、あそこで言う台詞はイベントの会長とかに見せてOK貰ったらしいわよ」

「そこまでしたんだ……」

 

 真姫の説明に凛が皆の気持ちを代表して呟く。それから控室に着き、着替えを始める。

 その間、夏希と愛生人は外で若葉の帰りを待っていた。

 

「なっくん何してるの?」

「んぁ? 見ての通り若の帰りをって……ツバサ。なんでここにいるんだよ」

 

 夏希はいつの間にか隣に立っていたツバサに、大して驚く素振りを見せずに聞く。ツバサは舌をチロりと出すと笑って答える。

 

「自分の彼氏に会いに行くのに理由がいるのかしら?」

「あのなぁ、そんな嬉しい事言っても俺は騙されないからな?」

「やっぱりバレた? 実は高坂さん達に挨拶に来たの」

「そっか。ほのっち達は中にいるぞ」

 

 夏希はそれだけ言うとツバサを中に入れ、何か言いたそうにしている愛生人を見る。

 

「どうした?」

「あ……いえ。夏希さんは嘘を見破るのが得意だったかなぁ、と思いまして」

 

 愛生人は先程の二人のやり取りを見て、最初ツバサの嘘に騙されたのである。そして夏希が彼女のツバサの言葉を、さっきの台詞だけとは言い、全く信じていなかった事に驚いていたのだ。

 

「あぁそんな事か。んなの簡単な事だ」

 

 愛生人の疑問に夏希は種明かしする様に携帯を取り出し、愛生人に見せる。いきなり携帯を見せられた愛生人は首を傾げて夏希を見る。

 

「付き合ってからこっち、あいつが「会いたいから」って理由で俺に会いに来た事は一回もない」

「一回も、ですか?」

「あぁ。会いたい時は必ず連絡を入れてから来るんだよ」

 

 まぁ俺も似た様なもんだけどな。と夏希が少し照れた様に笑って言う。

 

「でも何か相談事とかあった時とかどうしてるんです?」

「その時は決まって俺から聞くな。意外と電話越しでも分かるもんだぜ?」

「そ、そうなんですか……」

 

 愛生人はどこか納得のいかない表情で夏希の言った事を考え始める。しかし夏希の言った方法で解決出来るのは夏希だけだった。なぜなら夏希は人並み以上に聴覚が優れており、付き合いの長い人となら電話越しでの会話で相手に何があったか分かるのだ。そこまでの聴覚を持っていないので、夏希の言っている事がいまいち分からない。

 

「二人ともお待たせ」

 

 そんな二人の元へ若葉が走って戻って来た。夏希が遅くなった理由を聞くと若葉は汗を拭きながら答える。

 

「カボー君の控室から出たのは良いんだけどさ、そこでちょうど音響さん達と会ってね。打ち合わせとかして来ちゃったんだ」

 

 カボー君の事は前日に予め部員に教えていた為、今度は変に誤魔化さずに言えるのである。

 

「て事は今回俺らの出番終わりか?」

「いや終わりじゃないでしょう。他にもあるんじゃないですか? 何か」

「何かってなにさ」

 

 夏希の返しに愛生人はう~ん、と唸り考える。結果答えが見付からず隣に立って祭りを眺めている若葉に聞く。

 

「何かないですかね?」

「う~ん。他の仕事って言えばあれじゃない? 祭りを精一杯楽しむ、とか」

「つまり何もない訳だ」

 

 夏希がジト目で若葉を見るも、若葉はそんなのどこ吹く風といった様子で受け流している。それからまもなく、ライブの時間になりµ'sはアキバの車道を大きく使いライブを成功させる。

 

 そしてµ'sのライブが成功した一方、「穂むら」では若葉と穂乃果の妹の雪穂が若葉の部屋を訪れていた。

 

「やっぱりお兄ちゃんの部屋は綺麗だな~」

 

 雪穂は若葉の部屋を見渡して兄の整理整頓の上手さに感嘆の声を上げる。

 

「えっと、借りてた本の続きはっと……あった、これだ」

 

 雪穂が若葉のいない時に部屋に来たのは、前から若葉に借りていた本の続編を借りに来たのだ。勝手に借りてる訳ではないからこうして本人のいない時に訪れなくてもいいのだが、雪穂はストーリーの続きが気になり、こうして若葉のいない部屋に来たのだ。

 

「……お兄ちゃんって普段どんな勉強してるんだろ?」

 

 そして本人がいない部屋という事もあり、中学三年生という年頃の雪穂の好奇心が擽られるのは当然の事。雪穂は若葉の机に近付くと一段目の引き出しを開ける。

 

「……あれ? これって」

 

 引き出しの中、雪穂の目を引いたのは一通の封筒だった。印鑑の部分には音ノ木坂学院の校章の形をしたものが押されていた。

 

「お、お母さぁん!」

「どうしたのよ雪穂」

「お兄ちゃんが。お兄ちゃんが!」

 

 雪穂は裕美香に先程見付けた封筒を渡す。

 

「若葉がどうしたのよまったく」

 

 裕美香は封筒から一枚の書類を取り出し、内容を見る。

 

「これって……」

 

 その時襖が開かれ、若葉と穂乃果が入って来た。

 

 




【音ノ木チャンネル】
夏「今回は二人とも災難だったな」
愛「いいですよね。夏希さんは目つきが鋭いからって理由で、今まで女装から逃れられてるんですから」
夏「俺ってそんな理由で女装させられなかったんだ!?」
若「本人も今知る事実ってどうなの?」
夏「うるせぇ。それよりも若はアッキーほどダメージ受けてないのな」
若「まぁ、ね。色々あったんだよ……」
愛「若葉さんが遠い目をしている。その先には……いつぞやのファッションショーでお世話になった通称監さん!?」
夏「何となく察しはついたが一応聞く。何があった」
若「番組の企画で事あるごとに女性物の服を、ね」
愛「……そ、そういえば今回久し振りに夏希さんの特技が発動しましたね」
夏「お、おう。まぁ普段描写が無いだけで使われてたりしてるけどな」
若「最初に出たのって新歓当日の回だから大分昔だよね」
愛「ですね。あの頃はこんなに話数が多くなるだなんて予想してませんでしたね」
夏「まぁなる様になるだろ。んじゃあ久し振りにあの台詞で締めるか。アッキーよろしく!」
愛「分かりました! それでは誤字・脱字、感想、アドバイス等等、お待ちしております」
若「なお現在投稿中の「アニライブ!」とフリーホラーゲーム「ib」とのクロスオーバー作品「ラブラib~太陽の笑顔が織りなす物語り~」もよろしくお願いします」
夏「んじゃあ」
『また次回会いましょう!』


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……アナタ?byツバサ

今話は閑話です。
まごう事なき閑話です。


 雪穂が若葉の部屋で封筒を見つけた時、若葉と穂乃果は皆と別れて並んで帰路ついていた。ふと穂乃果は気になった事を隣を歩く若葉を軽く見上げて聞く。

 

「お兄ちゃん身長伸びた?」

「あ~うん、伸びたよ」

 

 穂乃果の問いに若葉は首を縦に振って肯定し、感心した声を上げると聞き返す。

 

「それにしてもよく分かったね」

「そりゃあ分かるよ。だってお兄ちゃんが音ノ木坂に来た時は私になり切れるくらいだったのに、今はちょっと見上げないとダメになっちゃったからね」

 

 穂乃果はニコッと笑うと小走りで「穂むら」の暖簾を潜る。若葉もそれに続いて暖簾を潜り、居間の襖を開ける。

 

「ただいま~。って何見てるの?」

「若葉。また大きくなったのね」

「え? あ、うん。ていうかそれ、身体測定の結果?」

 

 若葉は裕美香の持ってる紙を見て眉を潜める。それは裕美香にまだ見せていない物で、なぜそれを持ってるのか若葉は不思議そうに首を捻る。

 

「そういえば最後に測ったのっていつだったかしら?」

「えっと、確か高蓑原で二年に上がる前だったっけ?」

 

 若葉は最後に身長を測った時の事を思い出すと、ふと笑みを零す。

 

「どうしたの? お兄ちゃん」

「いやね。ちょっと思い出し笑いってやつだよ」

 

 雪穂がいきなり笑った若葉を不思議そうに見ると、若葉は高蓑原にいた時のことを思い出し笑っていた。

 

「ねぇねぇ。晩御飯までに何か話してよ」

「あ、私も聞きたい!」

「えー……別に良いけど。何聞きたいの?」

 

 穂乃果と雪穂が若葉に言い寄ると、若葉は諦めた様に座ると何の話をしようかと考える。若葉は穂乃果と雪穂に何が聞きたいのか聞くと、聞かれた二人は何を聞くか悩む。

 

「じゃあお兄ちゃんが高蓑原に初めて登校した時の話してよ」

「あ、それは気になる!」

「分かった分かった。そっかぁ初登校からもう一年と半年か……」

 

 若葉は自信の思い出の蓋を開きながら、懐かしそうに思い出話をし始める。

 

 若葉が穂乃果と雪穂に高蓑原時代の話をしている時、愛生人と凛の二人は買い出しからの帰路に着いていた。

 

「まったく、なんで僕達が買い出しに……行くなら企画立案者の母さん達が行くものじゃ……」

「本当だよ~。今日はライブがあって疲れてるのに~」

 

 凛はユラユラと左右に揺らすと隣を歩いている愛生人の腕にしがみつく。愛生人はそれを拒まず、また凛も歩きにくかったのか、すぐに愛生人の腕から離れると顔を赤くしながら躊躇いがちに愛生人の手に自信の手を伸ばす。愛生人はそれに気付かず手をヒョイと躱してしまう。

 

「あっ……」

 

 思わず凛の口から寂しそうな声が零れ、俯いてしまう。一方愛生人は愛生人でこれからしようとしてる事に内心ドキドキしていて、凛の様子の変化に気付いていなかった。

 

「あ、あのさ凛ちゃん」

「……何?」

 

 凛は縋るような目で愛生人を見ると、先程の凛同様顔を赤くして腕を差し出す。その行動に凛は一瞬訳が分からずに腕と愛生人の顔を交互に見ると、その腕の意図に気付き再び愛生人の顔を見る。

 愛生人はそっぽを向き誤魔化そうとするも、耳まで赤くなっているので凛には愛生人が顔を真っ赤にしているのが分かる。そして少し遠慮する様に手を伸ばし、ゆっくりと腕の隙間に自分の腕を通す。愛生人は凛が腕を通すのを確認すると、腕の隙間を狭めていき腕を組む。

 

「……これで少しは疲れない、かな?」

「うん」

 

 愛生人が凛に聞くと凛は満面の笑みで頷き答える。

 それから二人はそのまま家に帰り、腕を組んでいる所を親四人に見つかり、散々酒の肴にされるのだった。

 

 愛生人と凛が親に揶揄われ、揃って顔を赤くして反論している時、夏希はツバサの家のソファに腰かけていた。その横にはツバサが座っており、夏希の肩にもたれ掛かり、レンタルしたDVDを見ていた。

 

「それにしても驚いた。急にツバサから家に呼ばれるなんてな」

「だって昨日から親が旅行に行ってたの忘れてたの。それにこのDVDも明日には返却しなきゃいけないのに、まだ見てなかったんだもん」

「いや、別に良いんだけどさ」

 

 夏希はそう返し、ツバサの頭に自分の頭を乗せる。そのまま二人は映画が終わるまで並んで座り、ゆっくり過ごしていた。

 

「さてツーちゃん。晩飯俺が作るよ。若程じゃないが最近料理のバリエーションは少しずつ増えてるんだぜ?」

「高坂君と比べるのが間違ってるわよ。なっ君に作ってもらった方が嬉しいもの」

「嬉しい事言ってくれるぜまったく。で、何が良い?」

「う~ん、そうねぇ……」

 

 そしてツバサは夏希にリクエストすると立ち上がり、キッチンに立つ夏希の隣に立つと一緒に料理を始める。

 

「……こうしていると夫婦みたいね」

「そうか? 俺はそんなイメージないが」

「そんな事はないんじゃないかしら……アナタ?」

「いって!」

 

 ツバサの突然の「アナタ」発言に動揺し、誤ってを指を切ってしまった夏希。言った本人であるツバサも、まさかそこまで動揺するとは思ってなかったのか、少し慌て気味に救急箱から絆創膏を取り出し傷口に貼ろうとするも、夏希に手で止められる。

 

「別にそこまでしなくても良いって。軽く切っただけだし、こんくらいなら舐めときゃ治るって」

「そ、そう?」

「あぁ、だから大丈夫だ」

「なら……あむっ」

「……ツーちゃん、何してんの?」

 

 夏希の言葉で絆創膏をしまったツバサはそのまま、夏希が水で洗っている切った指を口元に運び、咥える。夏希はツバサの突然の行動に目をパチクリさせながら、指を咥えて傷を舐めているツバサに聞く。

 

ふぇ? ひふふほはへへふほ(え? 傷口を舐めてるの)

「あーうん、分かった。だけど一つ言って良いか?」

「?」

 

 夏希の確認の言葉に指を咥えたまま器用に首を捻るツバサ。夏希は空いている手で頬を掻くと恥ずかしそうにツバサを見て言う。

 

「その、さっきからお前の舌が指に当たってて、もの凄くエロいっだぁ!」

「なっ君のバカ!」

 

 指を軽く噛むと、ツバサは夏希の指から口を離し、リビングのソファにダイブする。夏希は思った事を言っただけなのに噛まれた事に納得がいってない表情をし、傷口を舐めるもう一度水で流し、血が止まった事を確認すると料理を再開する。

 夕食が出来上がり向かい合って食べていると、ツバサがキッチンに立った時の事を思い出して夏希に聞く。

 

「そう言えばなっ君って身長伸びた?」

「ん? あぁ確かに伸びたな」

「くっ、またなっ君との身長差が……」

「んなの気にしなくて良いだろうに」

 

 少し悔しそうに言うツバサに夏希は手をひらひらと振って返す。そんな夏希(彼氏)の適当に見える返しに、ツバサは少し膨らますと夕食を再開。

 

 翌朝の神田明神。そこには疲れ切った顔の夏希と愛生人。若葉は隣に立つ二人を不思議そうに見る。

 

「二人とも疲れてるみたいだけど、何かあったの?」

「昨夜ちょっとありまして……」

「俺もな……」

 

 二人の返事からして深く聞いてはいけないと悟った若葉は、話の話題を変える。

 

「そう言えば二人とも身長どのくらい伸びた?」

 

 話を変えようと話題を探した結果、前日穂乃果に言われた事を思い出し、それを話題として提示する若葉。二人その話題を振られ、一度空を仰ぐその質問に答える。

 

「僕は5㎝伸びて163㎝になりました」

「俺は170になったぞ。そう言う若は?」

「俺は7㎝伸びたから167だよ」

「て事は僕だけが160㎝台前半ですか」

 

 夏希と若葉の身長を聞いて、愛生人は少し落ち込む様子を見せる。そんな愛生人に若葉はタイムを書きながら励ましの声をかける。

 

「まぁそう落ち込む事はないんじゃない? 俺らはまだ高校生、成長期の真っ只中。これから伸びるって」

「そう、ですね。そうですよね。まだ高一ですし、これからだー!」

 

 若葉の励ましの言葉に愛生人は顔を上げると、やや自棄気味に叫ぶ。突然叫ばれた若葉と夏希は、思わず手に持っていたボードで愛生人の頭を叩く。

 

「何するんですか!」

「それはこっちの台詞だ! いきなり叫びやがって」

「そうだよ。神主さんに借りてる上に、朝早いから近所迷惑甚だしいからね?」

「はーい」

 

 愛生人は叩かれた箇所を擦りながら二人に返事をし、階段走を終わらせた真姫のタイムを手元の用紙に、書き込んでいく。

 そして全員が走り終わり柔軟をしている時、若葉は思い出したように夏希に言う。

 

「そう言えば美術部だったかな? 部費申請用紙が「承認」の方に入ってたから「申請」の方に入れ直しておいたよ」

「お、そりゃ悪かった。助かった」

 

 夏希は若葉の言葉に心当たりがあった様で謝る。若葉も若葉で注意をするだけだった様で、それだけ言うと柔軟の手伝いに向かった。

 

 

 




【音ノ木チャンネル】
夏「今回は心なしか短いな」
愛「まぁ気のせいという事にしましょう」
若「そんな訳でやっていこっか」
夏「て言うか、今回の話なんだよ! 何がしたかったんだよ!」
愛「単にアニメ2期7話の話の大幅カットと、その穴埋めですよ」
若「それだったら、もうちょっと日常回とかあったと思うけどね」
夏「でも前回の終わり方からして、やる事は限られてるけどな」
愛「それでも関係の無い話を持ってくるあたり、無理やり感が否めないですけどね」
若「まぁ高蓑原時代の話もオールカットされたけどね」
夏「アッキー達はアッキー達でなんか楽しそうだったな」
愛「勘弁してください。あの後両親に凄く揶揄われたんですからね!」
夏「ハハハ。まだ腕組むのは慣れないか」
愛「そんなの若葉さんだってまだですよ!」
若「愛生人。うるさいよ? 俺らには俺らのペースってものがあってね?」
夏「つまりまだ、という事だな」
若「そんな事より、身長だよ身長」
愛「そうでしたそうでした。関係ない話をしててすっかり忘れてましたね」
夏「これが執筆中に本気で忘れてたから手に負えないんだよな」
若「因みに伸びた身長の数値は、あり得なくもない数字らしいよ」
愛「まぁ作者自身も三年間で10~15㎝伸びましたからね」
夏「凄い伸びたな」
若「ま、という訳で俺達の成長期はこれからだ!」
愛「打ち切り漫画じゃないですか!」
夏「名無し先生の次回話にご期待ください!」
愛「失踪フラグですね分かります」
若「え、失踪しないよ? 愛生人何言ってるの?」
夏「ちょっと何言ってるか分からないな」
愛「畜生! これだよ! この二人の熱い手の平返し、過去に何度経験したか!」
若「まぁ手の平返したり返されたりは、このあとがきでは常じゃない?」
夏「俺らも経験してるしな」
愛「あーもう! 分かりました、分かりましたよ! もう終わりにすれば良いんでしょ!」
若「はいはい。じゃあ終わりにしよっか。誤字、脱字、感想などおまちしてま~す」
夏「よろしくな~」
愛「もうちょっとやる気出せよぉ!」


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☆だーれだby真姫

かなり前に行ったアンケートのお話です。

若葉と真姫のデート。今回はそれに時期ネタバレンタインを合わせてお送りします。では


 若葉は駅前で1人、時折腕時計をチラチラと気にしながら立っていた。

 

「だーれだ」

「……誰?」

 

 突然目隠しされ聞かれた問いに若葉は惚けた様子で答える。すると目を覆っていた手が離れ、正面には頬を膨らませた真姫が上目遣いで少し睨むように若葉を見ていた。

 

「もう! 信じられない」

「冗談冗談」

 

 若葉は笑ながら真姫の頭を撫でる。

 真姫の服装は茶色のコートに花柄のスカート。ロングブーツに手にはピンクのミニバッグを持っていた。

 真姫は頭を撫でられるとバカ、と小さく呟き若葉から数歩離れる。

 

「ほら、早く行きましょ」

「分かりましたよ。お姫様?」

「おひ……!? ゔぇえ!」

 

 真姫は突然若葉から発せられた聞き慣れない単語に驚き、頬を軽く朱に染める。真姫はその照れを隠すように強引に若葉の腕を取ると、自分の腕を絡ませ、抱き着く。若葉も特に抵抗する素振りも見せずにそのまま歩き出す。

 

「さて、じゃあ早速」

「うん」

「電車に乗ろうか」

「……うん?」

 

 真姫はやや出鼻を挫かれた様な思いを抱きながら、若葉と一緒に電車に乗る。

 

「なんだか、こうして若葉と二人きりで電車に乗るの、新鮮ね」

「そうだね。今までは近くにお出掛けで済ませてたからね」

 

 若葉と真姫は流れる車窓から見える景色を眺めながら、互いにもたれ合う。それから電車を乗り継ぎ、目的地の遊園地に到着する。

 

「じゃあ早速入ろうか」

「ちょっと、チケットは?」

 

 チケットを買わずに入場ゲートに向かう若葉を真姫は止める。真姫に止められた若葉は鞄から財布を取り出すと、そこから二枚の入場チケットを取り出す。

 

「親方から貰ったんだ」

「親方さんって本当に一工務店の社長なの?」

「まぁ、あれだよ。俺と一緒で顔が広いんだよ」

 

 若葉がチケットを係員に渡しながら答えると、真姫もどこか納得した様に頷き再び若葉の腕に自身の腕を絡ませる。

 それから二人は気の向くままアトラクションに乗っていく。

 メリーゴーランド、ジェットコースター、コーヒーカップ、バイキング。絶叫系から緩やか系まで、お昼休憩や少し食べ歩きを挟んで二人は園内を楽しそうに巡り回る。

 

 しかし楽しい時間はあっという間に過ぎるもので、遠くの地平線に太陽が沈み、辺りを月が夜空に浮かび上がる。

 

「そろそろ帰らないと危ないね」

「そうね」

 

 二人は園内に設けられたベンチに並んで座りながら、いつかの夏祭りの時の様に手を繋いで夜空を見上げていた。

 

「ねぇ真姫」

「なに?」

「最後に一つだけ、乗っておきたいのがあるんだけど、良いかな?」

 

 若葉の言葉に真姫は躊躇う素振りを見せずに頷く。それを見て若葉は立ち上がると、真姫の手を引っ張り目的のアトラクション、観覧車へと向かい歩き出す。

 幸いにもお客は少なく、二人が観覧車に着いた時は待つ事なく乗る事ができた。

 観覧車に乗って少し。お互いが何も言い出せずに沈黙がゴンドラ内を漂う。

 そして

 

「若葉」

「真姫」

 

 二人が同時に相手の名前を呼ぶ。お互いがお互いに黙ってしまい、また少しの沈黙。

 

「真姫から、どうぞ」

「そ、それじゃあ」

 

 結果、若葉に促される様に真姫が先に用件を伝える。

 

「あの、今日バレンタインじゃない?」

「あー……うん、そうだね」

 

 真姫の言葉に苦虫を潰した様な顔になる若葉。真姫はそんな若葉に構う事なく続ける。

 

「そ、それでね。チョコを作ろうとしたんだけど、穂乃果から「せっかくだからチョコ以外のを作ってあげて」って言われて、その、これ!」

 

 真姫がミニバッグからクッキーの入った包みを取り出し、若葉に差し出す。若葉は予想と違う物が出て来た事と、穂乃果が助言していた事に目を開いて驚き、その後真姫からクッキーを受け取る。真姫は緊張の糸が途切れたかの様に安堵の息を漏らす。その表情は受け取って貰えた事に笑っていた。

 だからこそ、次の若葉の言動の意味に気付くのが少し遅れた。

 

「そう言えばさ、真姫はイタリアのバレンタインってどんなのか知ってる?」

「……え? イタリア?」

「そ。イタリアのバレンタインだとね、男性から女性にプレゼントを送るんだよ。と、いう事でこれは俺から真姫へのプレゼント」

 

 若葉はそう言うと、一つの小さな箱を取り出し真姫の前に差し出すと、それを開く。

 その中に入っていたのは一対のリング。特別な装飾などあしらわれていないリング。

 若葉はその片方を取ると、未だに唖然としている真姫の左手を掴み引き寄せ、そのまま薬指にリングを通す。

 

「なっ! 若、葉!? ゔぇえ!!」

 

 突然の出来事に真姫は狼狽える。若葉はそんな真姫を落ち着かせる為に、ギュッと正面から抱き締める。すると真姫は少しずつ落ち着いていき、やがて若葉の背中にそっと腕を回す。

 抱き合う事少し。観覧車を降りる場所が近付くと、二人はどちらともなく相手を離す。そして観覧車から降りて暫く、真姫が口を開く。

 

「あの、若葉。これって……」

「えーと……そう! それは魔除けと言うか、悪い虫が寄り付かない様になると言うか……その、予約と言うか」

 

 最後の方は呟く様に言う若葉だが、すぐ隣を歩いている真姫には全て聞こえており、最後の一言を聞くと真姫の目から一筋の涙が頬を伝る。

 

「あ、真姫ゴメン! 泣かせるつもりはなかったんだ! 嫌なら外しても」

 

 若葉の言葉を遮る様に首を横に振る真姫。そして涙を拭い若葉を正面から見て言う。

 

「違うの。凄く嬉しくて。……ねぇ若葉、ちょっとこっちに寄って」

 

 若葉は真姫に言われた通り顔を近付ける。

 

「これは私からのお礼」

 

 真姫はそう囁くと若葉の頬に短くキスをした。

 




【音ノ木チャンネル】
夏「なぁ若。聞きたい事があるんだが」
若「なに?」
愛「なんで真姫ちゃんがバレンタインの事を言った時、変な顔したんですか?」
若「変な顔って……変顔は海未の芸風じゃ……」
夏「いや、今そんな話してないし」
愛「まぁ若葉さんの口を割るのが面倒なので、今日はこの人に来て貰ってます」
翔「やっほー」
若「なんで翔平……」
翔「お前宛の贈り物。アメリカからわざわざ送って来てたぞ」
若「マジで……?」
翔「マジで」
夏「アメリカ? なんでまたそんなとこから?」
若「あーまぁ、色々あったんだよ」
翔「それがよ。高蓑原にいた時の話なんばべら!」
愛「あ、翔平さんが机に伏した」
若「翔平は少し寝てようね」
夏「あーなんかつ触れちゃいけないみたいだから、若がバレンタインが嫌いな理由はまたいつかどこかで!」
若「やらなくていいよ……て言うか、別に嫌いじゃないよ? ただその日がちょっと苦手なだけ」
翔「チョコだけに、な」
愛「……でも嫌いじゃないならなんで変顔したんですか?」
翔「あれ、無視?」
若「いや、毎年この日だけは大量のチョコに悩まされてね……」
夏「大変なんだな……」
翔「おーい、聞こえてんだろ〜?」
愛「と、いう訳で今回はここまで!」
夏「だな。これ以上やってもあれだし」
若「それじゃあ誤字脱字、感想、批判、アドバイス等をお待ちしております!」
愛「あとTwitterもやってます!」
夏「詳しくは活動報告を遡ってくれ!
『バイバーイ』


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あー忘れた忘れたby夏希

お久し振りです。

最近、やっとアニライブ!の執筆意欲が湧いたので書きました!

お待たせしました!ではどうぞ!


「まさかほのっちがあんな事言うなんてな」

「そう?」

「若葉さんは慣れてるから感覚がおかしいんですよ!」

 

 部室で若葉がのんびりと言うと愛生人と夏希に突っ込まれる。夏希と愛生人は昨日起こった出来事を頭を抱えて思い出す。

 

 

 

 二人が頭を抱える前日、ハロウィンイベントが行われた場所にμ'sやA-RISEなどのグループがステージに立っていた。

 

「それでは! 「ラブライブ!」最終予選に進んだ最後のグループを紹介しましょう! 音ノ木坂学院所属「μ's」です」

 

 そしてステージの上では朱子がテンション高く司会を務めていた。

 

「この四グループの中から「ラブライブ!」に出場できる一グループが決まります! それでは一グループずつお話を聞いていきましょう! まずは「μ's」から!」

 

 朱子の突然の振りに驚きの声を上げる穂乃果。しかし生徒会長としていくつか集会を潜り抜けて来た経験なのか、すぐに持ち直し朱子の質問に答える。

 

「私達は「ラブライブ!」での優勝を目指して皆で一緒に頑張ってきました! ですので、私達は絶対に優勝します!!」

 

 穂乃果の優勝宣言にどよめく群衆。カメラを構えていた人達が一斉にシャッターを焚く。その反応にキョトンとする穂乃果。

 

「あれ……?」

 

 呆けている穂乃果を無視して朱子の「出ました優勝宣言!」と言う言葉にようやく頭の処理が追い付いたのか、しまった! といった顔をする。

 その後ろでにこが小さく、バカ、と呟き、希も、ようやくここまで来たと呟く。

 

 

 

「やっぱりどう考えてもドエライ発言ですよ!」

「え~でも優勝目指してるんなら、それくらいの勢いがないとダメじゃん? それにA-RISEだって似たような事言ってたし」

「ツバサは勢いだけで言ったりしないからなぁ」

「まるで穂乃果がバカみたいじゃん!」

 

 三人が話していると、隣の部屋で着替えていた穂乃果が扉を開けて夏希に突っ込みを入れる。それから穂乃果の様子から全員が着替え終わってると判断し、三人が隣に移る。

 

「それで。次は何するか決まった?」

「まだ決まってないわね」

 

 若葉は壁際に座ってる真姫の横に座りながら聞くも真姫は首を横に振って答える。

 

「それじゃあ皆揃った事だし、最終予選で歌う曲を決めましょう」

「だな。歌える曲は一曲だけだから、勝つ為に慎重に決めないとな」

 

 絵里と夏希の言葉に皆が黙り込む。にこが口を開く。

 

「私は新曲が良いと思うわ」

 

 にこの新曲で挑もうという発言に穂乃果、凛、海未が賛同する。その理由の主だった理由が予選が新曲のみとされていた事だった。

 しかしその意見に真姫、ことり、花陽が反対する。こちらの主だった理由はハロウィンイベントの時のような事になりかねない事と、新曲が有利とは限らないという事。

 そんな六人が顔を見合わせて悩んでいると、それを眺めていた希がとある提案をする。

 

「例えばやけど、このメンバーでラブソングを歌ってみるのはどうやろか」

『ラブソング!?』

 

 その提案に皆が驚きの声を上げる中、花陽は立ち上がり火が付いた様に語りだす。

 

「なるほど! アイドルにとって愛の歌即ちラブソングは必要不可欠。定番曲の中にも必ず入ってくるはずなのに、それが今までμ'sには存在して無かった!」

「分かったからかよちんは一旦落ち着け」

 

 立ち上がった花陽の一番近くにいた夏希が座らせる。花陽の言葉を聞いて穂乃果達もラブソングについて話し始める。

 

「でもどうして今までラブソングってなかったんだろう?」

「どうしても何も、作詞担当の海未さんが書かなかったから。としかないですよね」

 

 愛生人の言葉に一斉に視線が海未に集まる。見られた海未は一瞬キョトンとし、視線の意味に気付き一歩下がる。

 

「だって海未ちゃん、恋愛経験ないんやろ?」

「なんで決めつけるんですか!」

 

 一歩下がった海未に希が聞くと、海未は希に言い返す。その海未の発言に穂乃果とことりが海未に迫る。

 

「それじゃあ海未ちゃんあるの!?」

「あるの!?」

 

 さらににこと花陽も迫り、海未はなぜそんな食い付くのか聞き返すも、四人にあるのかないのか聞かれ、窓際にて穂乃果達を見ている若葉を見る。若葉も見られている事に気付いたのか、海未を見て首を傾げる。

 そして壁際まで追い詰められた海未はその場に崩れ落ち、気落ちした様子でないと伝える。

 

「も~変に溜めないでよ~。ドキドキするじゃ~ん」

 

 海未の否定に安心した様に穂乃果が肩を叩く。そんな穂乃果の態度にうっみは前に少量の涙を浮かべると肩を叩いた穂乃果を振り返る。

 

「なんであなた達に言われなければいけないんですか! 穂乃果とことりもないでしょう!」

「私はあるよ?」

 

 海未の言葉に穂乃果は首を傾げて答える。その答えに先程とは違うざわめきを見せるメンバー。

 

「一体誰なの!?」

「誰なの穂乃果ちゃん!」

 

 三人に迫られる穂乃果だが、特に慌てる事なく窓際にいる若葉を指さす。見られた若葉は一歩後退る。

 

「お兄ちゃん」

『……へ?』

 

 続いた穂乃果の言葉に一斉に目が点になる。そんな穂乃果に花陽は苦笑いで返す。

 

「それって"初恋の相手はお父さん"ってやつと同じじゃない?」

「それか兄妹としての好意なんじゃないの? 小さい頃ってそう言う勘違いよくあるし」

 

 にこも小さい姉弟を持ってるからなのか、冷静に考える。そんな光景を微笑みながら眺める絵里と希。

 

「いやいや。微笑んで眺めてないで助けてやれよ」

「そうやね。さすがに海未ちゃんが可哀そうやもんね」

「こうなったのは希が原因だけどね」

 

 夏希が五人の様子を見守っていた希と絵里に言うと、希が窓際にいた四人を見てニヤリと笑う。いやな予感に襲われた若葉はそっと窓のカギを開ける。希の笑みの意図を汲んだ夏希は若葉が窓を開ける前に海未に迫っていた四人に告げる。

 

「そう言えば、アイドル研究部にもいたよな。付き合ってるの」

 

 夏希の言葉に四人の視線は窓際にいる若葉、真姫、愛生人、凛に注がれる。見られたと分かるや否や、若葉は窓を開き真姫の腕を取ると膝の裏に腕を回し、俗に言うお姫様抱っこをして窓から出る。愛生人も凛の手を取って若葉に続く。

 

「夏希! 後で覚えてるんだよ!」

「あー忘れた忘れた」

 

 若葉が逃げながらの叫びに夏希は手を振ってそう答える。穂乃果達四人は部室から出て逃げた四人を追いかけ始める。

 

「でも夏希もツバサさんと付き合ってるわよね」

「ははは。今のほのっちたちは若達を追い掛けるのに夢中で気付いてないからな」

「夏希君って案外酷いんやね」

「いや、のぞみんがそれを言うか?」

 

 夏希は海未の肩に手を置いて慰めていると、絵里と希が若葉達を売った事をジト目で責めるも、夏希はその視線をどこ吹く風と流す。

 

 

 

 それから暫くして穂乃果とことりを若葉が、にこと花陽を愛生人が引き摺って部室に戻って来た。二人の後ろからは頬を赤くした真姫と凛が並んで歩いていた。

 

「夏希。よくも裏切ってくれたね」

「まぁまぁ。その件は置いといて、予選決勝の話でも進めようぜ」

 

 若葉が恨みがましい視線を夏希に向けるも、夏希は手を振って話を逸らす。

 

「予選決勝でやりたい曲がラブソングって話でしたっけ?」

「まぁ反対意見がいくつかあったみたいだけど、俺はやってみるのも良いと思うぞ。若はどう思う?」

 

 夏希に話を振られた若葉は、穂乃果達を覚醒させつつ答える。

 

「俺は……海未はラブソング書けそう?」

「……はい。今までも経験したものだけを詩にしていた訳じゃないですし、イメージや想像力で補っている」

「でもイメージや想像力ってどうするつもりなんですか?」

 

 愛生人が希に聞くと少し考えた後、ポン、と手を打つ。それを見て男子三人は嫌な予感を感じ取り、部室から出て行こうとするも若葉は真姫に、愛生人は凛に、夏希は絵里に

 肩を掴まれ逃げられなくなる。

 

 

 

 部室の外の廊下。カメラを構える希の前に、ラッピングされた箱を持った花陽が現れる。そして花陽は箱を差し出す。

 

「これ、受け取って下さい!」

 

 花陽が差し出した箱を受け取る。とカメラを止める。

 

「いい感じやん」

「本当にこんなんでイメージが浮かぶのか?」

「浮かぶと思うで。こういいう時咄嗟に出て来る言葉って結構重要よ?」

 

 夏希が希に聞くと、希は笑って答える。穂乃果がカメラの理由を聞くと緊張感と記念にとっておく、との事。

 

「じゃあ次、真姫ちゃん行ってみよう!」

「じゃあカメラさんは若葉君だね!」

 

 希が次のターゲットを真姫に定めると、ことりは若葉にウィンクを飛すも、若葉は真姫に視線を送る。

 

「な、何よ」

「いや、真姫がやりたくないなら俺も断るけど……」

「うぅ……や、やるわよ!」

 

 若葉の質問に真姫は顔を赤くしながら答え、希に言われるがままに中庭に場所を移し、撮影が始まる。

 

「は、はいこれ! べ、別に若葉の為に作った訳じゃ……もう! 良いから食べて感想教えてよね!」

「あ、ありがとう」

 

 花陽とは大きさから違う箱を若葉は受け取る。真姫は箱とそれ受け取った若葉を顔を背けがらチラチラと交互に見る。それに若葉は気付くも、意味まで分からず首を傾げる。花陽はそれを見てぴんと来たのか、にっこりと笑う。

 

「そう言えば今日調理実習があったんだよ」

「なるほど。それじゃあありがたくいただくよ。ありがとうね」

「お、お礼なんて言われなくても、若葉の為だったら調理実習以外でも作るわよ!」

「誰かー! ブラックコーヒーをくれぇぇぇ!!」

 

 真姫は若葉のすぐ目の前まで来て若葉の顔を見上げると、人差し指を突き立て恥ずかしそうに言う。そんな光景を見て夏希が一人叫ぶもそれに反応する者は誰もいなかった。

 そんな二人を見て、凛が思い出した様にポケットから小さな包みを取り出すと、愛生人のもとに駆け寄ると俯き、上目遣いで愛生人を見る。

 

「あ、あの、アキ君。凛も作って来たんだけど……食べてくれる?」

「もちろん!」

 

 愛生人の返事に凛は満面の笑みで包みを渡す。袋を開けて中身を取り出すと、中身はクッキーだった。若葉と愛生人は二人が見守る中。クッキーを食べる。心配そうに見る二人に食べた二人は親指を立てて返す。それを見て喜ぶ。

 希は好機とばかりにそれを撮り続ける。

 

「それじゃあ次はにこっち行ってみよっか」

「任せなさ~い」

 

 希がにこに振り、にこもそれも了承する。そしてアルパカ小屋に移動する十二人。

 

「なぜアルパカ小屋……?」

「さぁ……?」

 

 夏希の疑問に答えれる者はいない。なぜならそれは誰もが思ってる事だったからだ。

 

「それじゃあにこっち。好きなタイミングで始めちゃって~」

 

 希がカメラを回し始めるとにこは髪をまとめているリボンと制服のリボンを解いて、髪を下しカメラに歩み寄る。

 

「どうしてかって分からないの? だめ、見ないでぇ」

 

 にこが顔を隠しながら言うも、ことりはアルパカを触っており、他のメンバーは呆れたような目でにこを見続ける。

 

「まったく、しょうがないわね~。ちょっとだけよ。前に髪結んでない方が好きって言ってたでしょ? にこにーからスペシャルハッピーなラブに」

 

 にこがそこまで言った時、希の持っているカメラから高い音が鳴り響く。その音の正体は

 

「あ、バッテリー切れた」

「なんでよー!」

 

 文句を言いながら希に詰め寄るにこ。結局、バッテリーが切れたという事でその日の撮影兼練習は終わりとなった。

 

 

 

 その日の帰り道、再びラブソングの話になった。

 皆がラブソングに反対的な態度を示してる中、絵里だけはまだ続けてみてもいいんじゃ、と反対する。

 

「絵里ちゃんは反対なの?」

「反対って訳じゃないけど、やっぱりラブソングは強いって思うのよ」

「確かにそっちの方がインパクトとかありそうだしな」

 

 絵里の言葉に夏希も同調するも、他のメンバーは難色を示し続ける。そしてそのまま校門で別れる。別れる前に今度の休みの日に各々資料に生り得るものを「穂むら」に持ち寄ることになった。

 

「若葉。ちょっと良い?」

「え? 良いけど。じゃあ穂乃果、海未、ことり。先に帰ってて~」

 

 校門で別れるとき、若葉は真姫に制服の袖を引っ張られ一緒に帰る事になった。その反対側では愛生人が凛に引っ張られて帰って行った。

 

「それにしてもどうしたの、真姫? 急に一緒に帰ろうだなんて」

「ちょっと相談事があって」

 

 若葉と真姫はとあるフード店に入ると、飲み物だけを注文しテーブルに座る。飲み物を一口飲むと真姫を見る。

 

「それで、相談事って?」

「絵里の事なんだけど、あそこまでラブソングに固執するなんておかしいと思わない?」

「それだけ「ラブライブ!」に出たい、とか?」

 

「それなら別にラブソングに拘らなくていいと思うんだけど。それに今までのをやった方が完成度が高いんだし」

「う~ん、そうだよねぇ……はっ、まさかA-RISEのスパイだったり!?」

 

 別所では愛生人が凛に同じ相談を受けていた。愛生人は凛のいった可能性にいやいや、と否定する。

 

「希さんの言葉を信じてる、とか?」

「それもあると思うけど、絵里ちゃんがあそこまで拘った所、凛は見た事ないにゃ」

 

「まぁなんにせよ、何かしらの理由があるんじゃない?」

「理由、ねぇ」

 

 若葉の言葉に何か考え込む様子の真姫。

 若葉達から離れ、とある橋の下。そこで絵里と希は話していた。

 

「えりち、いくらなんでも強引過ぎやない? 皆戸惑ってたみたいやし」

「いいの。私がそうしたいんだし、ずっとやりたかった事なんでしょ?」

 

 絵里はそう言うと、じゃあね、と希に飴を渡して走り去る。

 

「まったく、お節介やね。えりちは」

「ほんと、その通りだな」

 

 希の独り言に背後から言葉が返ってくる。希が驚いて振り返ると、そこには夏希が立って手を振っていた。

 

「夏希君。乙女の後を尾けるなんて悪趣味やと思わない?」

「別に尾けてた訳じゃねえよ。こっちに用事があって通り掛かったら聞こえただけだ」

 

 夏希は道路を横切りながら希のもとへ来ると、そう返す。

 

「それで? のぞみんはラブソング諦めたのか?」

「ウチ? ウチは……」

 

 続いた希の答えを聞いて夏希は頷き、じゃあな、と手を振って絵里同様走り去る。希は少し似ている絵里と夏希を思ってクスリと笑うと、帰路についた。

 




【音ノ木チャンネル】
若「なんか久し振りにやるね。このコーナー」
夏「だな。なんせ投稿自体が久し振りだしな」
愛「なんか別件で色々と忙しかったみたいですもんね」
若「別件ていうか、もう一つの作品だけどね」
愛「僕がボカして言ったんだから、そこ言ったらダメですよね?」
夏「そうだぞ若。でな訳で巻き込まれた図書委員もよろしくな!」
愛「サラッと宣伝しないで下さいよ!」
若「さてと、じゃあ今回を振り返ってみようか」
夏「今回はお前らがランナウェイした回だったな」
愛「誰のせいだと思ってるんですか!」
夏「……さぁ?」
若「はぁ……。まぁ夏希には後でお仕置きを受けて貰うとして、愛生人は何かあった?」
愛「うーん。僕としてはアニメで撮影時間が三分しか経ってないのにバッテリー切れを起こしたカメラが気になりましたね」
夏「それはあれだろ。アニメの演出だろ。若は何かないのか?」
若「俺? 俺は、て言うより作者かな? がポロリと零してたんだけど、夏希って不憫だよねって話をしたよ?」
愛「お二人の間で普段どんな会話してるんですか!」
若「いやだってさ? 夏希が一番最初に出来たオリキャラって話は前もしたじゃん?」
夏「あ、あぁ」
若「それなのに「アニライブ!」では夏希のメイン回と呼ばれる回が極端に少なくてね」
愛「あー確かに。若葉さんは入院やら音の木に来る前の話やら、番外編でバレンタインデートしてたりしますし、僕も「祈る者達(プレイヤー)」やファッションショーの回がありますもんね」
夏「あれ? こうして聞くと俺ってメイン張ってる回……ない?」
若「あるとすれば、オーキャンの回くらいじゃない?」
愛「あとは丸々一話じゃなくて、一話の中の部分的にスポットが当たってたりしてお終いですね」
夏「なん……だと……!? ちょっと作者に抗議しに行ってくる」
若「らしいので今回はここまで!」
愛「次話はもう出来てるから近い内に投稿されると思います!」
若「バイバーイ」
夏「じゃあな」
愛「さようなら〜」


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私……ウチ東條希!by希

え?タイトルが自己紹介?いい台詞が見つかんなかったんです!すいません!


 次の休日、絵里の提案通りに「穂むら」に集まるμ's。そしてラブソングの為になる事を言っていこうとなり、穂乃果が立ち上がる。

 

「好きだ。愛してる!」

「それはなんか違くない?」

 

 穂乃果が決め顔で言うも、若葉によってそれは否定される。絵里達も同感だったのか、苦笑いを浮かべる。穂乃果も同感だったのか、机に顔を乗せてダレる。

 

「ラブソングって難しいね~」

「ラブソングは詰まる所、好きって感情をどう伝えるかだからなぁ」

「穂乃果はストレートだからね」

 

 夏希と若葉が笑いながら返す。そんな二人を穂乃果は見上げ、愛生人を見て首を傾げる。穂乃果に見られた三人も揃って首を傾げる。

 

「そう言えばお兄ちゃん達ってどんな告h」

「さぁ次行ってみようか!」

「そうですね!」

「誰かなんかあるか!?」

 

 前日の事を思い出し慌てて穂乃果の台詞を遮る三人。今回は夏希にも被害が及ぶと判断した為、夏希も話を逸らす事に協力する。

 

「真姫ちゃんや凛ちゃんは何か書けてないの?」

「私、作詞は苦手だから」

「凛も文章に直すのはちょっと……」

 

 希に広げた真っ白なノートを見られた二人は、それぞれ返す。それを見兼ねたことりが鞄から恋愛物の無声映画を取り出し、視聴を提案する。

 無声映画が始まって数分。暗い室内で若葉は背中に重みを感じる。頭だけで後ろを確認すると、穂乃果が凭れ掛かっていた。机を挟んだ反対側では凛が愛生人に膝枕される形で寝ていた。

 

「わ、若葉」

「どうしたの?」

 

 机に肘を付き映画を見ていると、不意に服を引っ張られる。そちらを見ると真姫がすぐ横にいた。若葉は首を傾げて聞くと、真姫はもじもじとしながらもお願いをする。

 

「あの……私も」

 

 真姫の視線の先には凛を膝枕しながら、いつの間にか寝ている愛生人がいた。若葉はそれを見ると納得し、穂乃果を起こさない様に気を付けながら場所を開ける。

 

「さ、おいで」

 

 膝を叩きながら言うと、真姫はゆっくりと膝に頭を乗せて横になる。真姫の頭が膝に乗ったのを確認するとそっと頭を撫で始める。初め、ビクッとするも二回目以降は気持ち良さそうに目を細める。

 その一部始終を見ていた希は、それを見て微笑み部屋を見渡す。すると部屋の隅で丸まってクッションで耳を塞いでる海未を見つける。皆もそれが気になり海未を見る。

 

「どうしたの海未ちゃん」

「怖い映画じゃないよ?」

「それは分かっています!」

 

 絵里とことりの言葉に海未はクッションで抑えたまま振り返り叫ぶ。そしてそのまま視線はテレビ画面に釘付けになる。映画はちょうどキスシーンに差し掛かっていた。画面の中の二人の距離が近付くにつれ、海未の上げる声が大きくなる。そして唇が触れ合うまであと僅かという所で、海未はテレビのスイッチを消し、電気を点ける。

 

「恥ずかし過ぎます! 破廉恥です!」

「そうかな~」

「そうです! そもそもこういう事は人前でするものではありません!」

 

 海未が言い切ると、声が大きかったのか、明かりが点いたからなのか、穂乃果が目を覚した。

 

「ほぇ?」

「おはよう穂乃果」

 

 若葉は穂乃果に挨拶すると若葉から離れ、その膝で気持ち良さそうに寝ている真姫を見て若葉と笑顔を浮かべる。若葉は膝の上で寝ている真姫の肩を軽く揺すって起こす。希もいまだに寝ている愛生人と凛を起こす。

 

「穂乃果ちゃん達はともかく、真姫ちゃんが寝るなんて珍しいね」

「だ、だって、その、若葉の膝の上って気持ち良かったし……」

 

 恥ずかしがって言う真姫の頭を若葉が撫でる。

 

「まぁ何もしないでも開始三分で寝てた二人組がいたけどな」

「だってのんびりした映画だな~って思ったら、途端に眠くなっちゃって」

 

 夏希が穂乃果と凛を見ながら言うと、穂乃果が少し申し訳なさそうに言う。テレビ側に向けていた身体を直しながら、絵里が困ったように言う。

 

「中々映画のようにはいかないわね。じゃあもう一度皆で言葉を出し合って」

「待って!」

 

 絵里の言葉に真姫が待ったをかける。真姫のストップに皆が真姫を見る。

 

「もう諦めた方がいいんじゃない?」

「確かにこれから曲を作って、振り付けも歌の練習もこれからなんて完成度が低くなるだけですよ」

「実は私も思ってました。ラブソングに頼らなくても、私達には私たちの歌がある」

 

 真姫、愛生人、海未の言葉に穂乃果とにこも賛成する。相手はA-RISE。中途半端なライブじゃ負けてしまう。そう思っての賛成だった。

 

「確かに皆の言う通りや。今までの曲で全勅を注いで頑張ろう。今見たらカードもそう言ってるし」

「希……」

「のぞみんはそれでいいのか?」

 

 絵里と夏希が確認を取ると、希が一番大事なのはμ's、と言った為二人とも黙ってしまう。そんな様子に穂乃果が三人を見るも、希に何でもない、と誤魔化される。

 そしてその日は解散となった。

 穂乃果と若葉が窓から手を振って見送る。

 

「真姫ちゃん?」

「花陽、凛、愛生人。先に帰ってて」

 

 真姫が花陽と凛、愛生人と店先で別れて絵里と希の後を尾け始める。それを二階から見ていた若葉は疑問に思い、下にいた愛生人と目を合わせ首を傾げる。その為、二人は真姫の後を尾け始めるもう一つの影に気付かなった。

 

「本当に良いの?」

「良いって言ったやん」

「ちゃんと言うべきよ。希が言えば、皆協力してくれるわ」

「ウチにはこれがあるから十分なんよ」

 

 希はそう言ってポケットからタロットカード取り出す。真姫はそこまで聞いてどういう事かと疑問に思う。

 

「ほんっと、どういう事なんだろうな」

「!?」

 

 真姫の独り言に帰した人物がいる事に驚き振り返る。そこにいたのは

 

「なんだ夏希か……」

「よ、マッキー。人の後を尾けるなんて良い趣味してるな」

 

 二人が話していると、前を行く二人が信号で止まる。真姫は問い質すチャンスと思い、駆け出す。夏希も少し遅れてのんびりと真姫の後を歩いて続く。

 

「ちょっと待って」

「真姫。それに夏希まで」

 

 絵里に名前を呼ばれ片手を上げる夏希。真姫はそれを無視して希に話し掛ける。

 

「この前私に言ったわよね「めんどくさい人間」だって」

「そうやっけ?」

「自分の方がよっぽど面倒じゃない!」

 

 言い合う真姫と希をよそに夏希は絵里に近付き、疑問に思っている事を聞く。

 

「なぁそんな事いつ話してたんだ?」

「夏の合宿の時じゃないかしら? ほら、二人で買い物に行った時」

「あー」

 

 絵里の答えに納得のいった夏希。それから絵里も真姫に同意し、夏希も同意する。

 

「立ち話もなんだし、俺ん家にでも来るか?」

「ここからならウチの家の方が近いし、ウチにしない?」

 

 夏希の提案を希が上書きし、四人は希の家に行く事に。

 

「お邪魔しまーす」

「好きにしてって~」

 

 玄関で靴を脱ぎリビングに入るも、そこは一世帯が住んでいる様子はなかった。

 

「のぞみんも独り暮らしだったんだな」

「……うん」

 

 夏希の質問にお茶を淹れながら答える希。その表情は少し寂しげだった。

 

「子供の頃から、両親の仕事の都合で転校が多かったんよ」

「だから音ノ木坂に来てやっと居場所が出来たって」

 

 絵里の発言にこんな時に話す事じゃないよ、と絵里に制止をかける希。

 

「ちゃんと話してよ。もうここまで来たんだから」

「そうよ。隠しておいても仕方のない事でしょ」

「別に隠していた訳やないんよ? えりちが大事にしただけ」

 

 真姫と絵里に希は急須にお湯を入れながら返し、砂時計を引っ繰り返す。

 

「嘘。μ's結成当時から楽しみにしてたでしょ」

「そんな前から溜めてたなら、今吐き出した方が楽になるぞ」

 

 続いた絵里と夏希の言葉に希は少し目を瞑ると、口を開く。

 

「ウチがちょっとした希望を持っていただけよ」

「いい加減にして。いつまでたっても話が見えない。どういう事」

「そうだぞのぞみん。その希望って一体なんなんだ?」

 

 真姫と夏希の言葉に希は答えず、ただ黙って背中を向けているだけだった。それを見兼ねた絵里が簡単に言うとね、と話し始めると、すぐに希から制止の声が掛かる。しかしそれを無視して絵里は続ける。

 

「希の夢だったのよ」

「夢? ラブソングが?」

「いや、その言い方はどうなんだろうか」

 

 夏希の小さな突っ込みは流され、絵里は真姫の言葉に首を横に振る。

 

「大事なのはラブソングかどうかじゃない。アイドル研究部の皆で曲を作りたいって。一人一人の言葉を、想いを紡いで本当に皆で作った曲。そんな曲を作りたい、そんな曲でラブライブに出たい。それが希の夢だったの」

「なるほど。だからラブソングを提案したのか」

「うまくいかなかったけどね。皆でアイディアを出し合って、一つの曲を作りたいって」

 

 絵里がそこまで言うと、真姫と夏希は目を合わせる。そのタイミングで砂時計の砂が落ち切り、お盆に急須と人数分の湯呑を乗せ希が椅子に着く。

 

「言ったやろ。ウチが言ってたのは夢なんて大それたものじゃないって」

 

 希の言葉に真姫がじゃあ一体なんなのか、と問うも、希も分からないのか、なんやろね、と答える。

 

「ただ、曲じゃなくてもいい。皆が集まって、力を合わせて、何か生み出せればそれで良かったんよ。ウチにとってこの十二人は奇跡やから」

「奇跡……?」

「そう。ウチにとってμ'sは奇跡」

 

 そして希が何を思っているかを語りだす。

 

 転校ばかりで友達がいなかった。当然分かり合える相手も。

 初めて出会った。自分を大切にするあまり皆と距離を置いて、上手く周りに溶け込めない、ズルが出来ない、まるで自分と同じような人。思いは人一倍強く、不器用な分人とぶつかって……

 

「あの! 私……ウチ東條希」

 

 階段での自己紹介がウチとえりちの出会いやった。

 そのあとも、同じ思いを持つ人がいるのにどうしても手を取り合えなくて、真姫ちゃんを見た時も熱い思いは持っているけど、どうやって繋がればいいのか分からない。そんな子が三人も。

 

 そんな時、それを大きな力で繋いでくれる存在が現れた。想いを同じくする人がいて、繋いでくれる存在がいる。必ず形にしたかった。このメンバーで何かを残したかった!

 

「確かに、歌という形になれば良かったのかもしれない。けど、そうじゃなくてもμ'sはもう既に何か大きなものをとっくに生み出している。ウチはそれで十分。夢はとっくに……」

 

 そこで希は言葉を切ってしまう。手に持っている湯呑に過去の自分が映り込み、その像が笑い掛けてきたように見えたのだ。その時希の脳裏に浮かんだのはμ'sや若葉、夏希、愛生人達と過ごした記憶だった。

 

「一番の夢はとっくに……だから、この話はこれでおしまい。それでええやろ?」

 

 希は話はこれで終わり。とでも言うかのように湯呑をテーブルに置く。

 

「って希は言ってるけど。どう思う?」

 

 絵里は笑みを浮かべながら真姫と夏希に聞く。その意味を汲み取った二人は絵里同様笑みを浮かべて携帯を取り出す。三人の行動の意味に希も気付いたのか驚く。

 

「まさか皆をここに呼ぶつもり!?」

「良いでしょ、一度くらい招待しても。友達、なんだし」

「それに俺ん家にも集まったしな」

「それ関係ないでしょ」

 

 夏希の言葉に突っ込みを入れながらも電話をかけ始める絵里と夏希。真姫もすぐに電話をかける。

 全員が集まり落ち着いた頃、真姫からラブソングを作る事が聞かされる。それを聞いたメンバーは少々ざわつく。花陽が真姫に何かあったのか聞くも、真姫は何もなかった。と返す。

 

「そうだな、言うなれば少し早いクリスマスプレゼントってやつか」

「そうね。μ'sからμ'sを作ってくれた女神様に」

 

 その言葉に絵里、真姫、夏希の三人は笑顔で見合わせる。

 それから改めて言葉を出し合う事になり、皆が考え始める。

 

「皆で言葉を出し合う手か……」

 

 花陽は言葉が思い浮かばず、希の部屋の小物を見て回っていると、その内の一つに目が留まる。それは九人で初めてやった講堂ライブ後の写真だった。ステージで九人が好きな様にポーズを取り、若葉達三人も一緒に写っていた。

 

「これって」

「おー二カ月くらい前なのに、だいぶ懐かしく感じるな」

 

 夏希のいう事に写真を見ていた花陽、にこ、、凛は頷く。

 この頃、若葉は怪我が治っておらず松葉杖を付いていた。さらにまだ若葉と真姫は付き合って間もない頃の為、お互いの距離が少し開いていたり、愛生人と凛も付き合っていなかった為、距離感が友達のものだった。

 

「あー!」

 

 写真を見られている事に気付いた希が、花陽から写真縦ごと取って自分の胸に抱きかかえる。

 

「そういうの飾ってるなんて意外ね」

「別に良いやろ。ウチだってそのくらいするよ……友達、なんやし」

 

 にこが意外そうに希に言うと、希は顔を赤くしながら返す。そんな希に凛は思わず可愛いにゃー! と叫び飛び付く。凛の突然の飛び付きに、希はクッションを盾にして防ぐ。そのままベッドの上でクッションを押し合っていると、絵里が希を後ろから優しく抱きしめる。

 

「暴れないの。偶にはこういう事もないとね」

「もう……」

 

 そんな二人の光景を見ていた若葉はふと、窓の外に視線を移す。司会に映ったのは真っ暗な夜空と空から降ってくる白い結晶。

 

「あ!」

「見てー!」

 

 穂乃果も気付いたのか、兄妹揃って窓の外を見て叫ぶ。窓の外では雪が降り始めたところだった。

 雪にテンションが上がり、全員が一斉に希の家から飛び出し近くの公園に駆け出す。

 

「初雪、ですね」

「だね」

「綺麗だな」

 

 公園の広場で円形に広がる十二人。そして一人一人雪を手に取るように掬うと、ぞれぞれが胸に感じた想い、言葉を口にしていく。

 

「想い」

「メロディー」

「予感」

「不思議」

「未来」

「ときめき」

「空」

「気持ち」

「好き」

「運命」

「切なさ」

「純情」

 

 誰もいない夜の公園に十二人の声が響き渡った。




【音ノ木チャンネル】
若「ラブソング書けたね」
夏「だな」
愛「ですね」
夏「じゃなくて!」
若「どうしたの?」
夏「いやなんでお前らはイチャついてんの? なんで皆で無声映画見てアイディア出そうって時にイチャイチャしてんの?」
愛「別にイチャイチャはしてませんよ」
夏「若はほのっちとマッキーのサンドウィッチだし、アッキーはりっちゃんと寝るし。このどこがイチャついてないだ!」
若愛「「表現の仕方がおかしい!」」
夏「別にどこもおかしくないだろ?」
若「いや、確かに合ってるけど。合ってるけど違う!」
愛「正確に言うなら僕と凛ちゃんは揃って寝てて、若葉さんは寝た穂乃果さんに寄っ掛かられて、真姫ちゃんを膝枕しただけじゃないですか!」
夏「やっぱりイチャついてんじゃねぇか!」
若「まぁまぁ。たとえ俺達がイチャついてたとしても、それでイラッとするのは作者と数名の読者なだけであって、そんな事は今はいいの」
夏「ならいつならいいんだよ……」
若「そんな事より、書いてる時に作者が感じたんだけど、夏希と穂乃果って相性良いよねって」
愛「確かに若葉さんと真姫ちゃんがくっ付いてから、高坂兄妹の絡みはそんなに見られませんね」
夏「相性が良いって言ったって俺にはツバサがいるし、それに作者が「μ'sとA-RISEの二大スクールアイドルのリーダーを相手に、二股かけるのは流石に最低だな」って話があったらしくてな」
若「まぁ作者の性格上めんどいからってのもありえるけどね」
愛「あ、そうそう。僕達の一言の理由とかも話さないとじゃないですか?」
夏「アッキー。残念ながら時間だ」
愛「えー! じゃあいつやるんですか!」
若「あと少しで二期の分も終わるから、またあとがき約二万字やるんじゃない?」
夏「あぁ、あの時は地獄だったな」
愛「主に作者のネタ不足が」
若「じゃあそんな訳でまた次回とか!」
夏「また懐かしい挨拶で締めたな……」


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お姉ちゃん、緊張してる?by亜里沙

スノハレ回……アニメラブライブもあと少し……


 予選決勝当日。天気は生憎の雪。

 

「わぁー。真っ白!」

 

 雪穂が店先に出ると裕美香が雪掻きをしていた。裕美香は雪穂を見ると雪掻きを手伝わせようとするも、断られる。

 

「お兄ちゃんとお姉ちゃんは?」

「若葉なら起きて朝食食べてなかった? 穂乃果はまだ寝てるんじゃない? 昨夜も早かったわよ。しっかり休んで体力整えておくって言ってたから」

「おぉ。お姉ちゃんらしくない……あれ? でもお兄ちゃん一階にはいなかったよ?」

「じゃあ自分の部屋じゃない? 今日の学校説明会の準備とかしてるんじゃない?」

 

 裕美香と雪穂は揃って店の方を見る。二人が話してる時、若葉はちょうど穂乃果の部屋の前に来ていた。そして偶然にも外にいた雪穂と同じ事を言いながら扉を開ける。

 

「穂乃果! いい加減起きないと遅れるよ!」

「お姉ちゃん! もう朝だよ!」

 

 若葉が部屋に入ると、もう一度布団に潜り込もうとしている穂乃果と目が合った。穂乃果は若葉と目が合うと気まずそうに笑う。そんな穂乃果に若葉はふむ、と考えた後、笑顔で質問する。

 

「今起きるか、このまま二度寝して朝食が抜かれたうえ、海未からのお説教。どっちが良い?」

「今から起きて着替えます!」

 

 穂乃果の答えに若葉は頷くと、部屋から出て行く。

 若葉が部屋から出ると穂乃果はカーテンと窓を開け、外に身を乗り出す。

 

「いよいよ今日だね、最終予選。頑張ってね!」

 

 雪穂はそう穂乃果に伝えると、寒さに耐え切れなくなったのか、身体を抱いて店の中に入る。

 それから海未とことりを待ち、四人で雪道を歩きながら登校する。

 

 

 

「お姉ちゃん!」

「あ、亜里沙。おはよう」

 

 絵里がいつものよう髪を通していると、亜里沙が慌てた様子で扉を開ける。

 

「おはようじゃないよ! お姉ちゃん出なくって良いの!? 穂乃果さん達はもう出たって雪穂が」

 

 その亜里沙の言葉で慌てている理由が分かった絵里は、優しく微笑むと急いでいない訳を話す。

 

「穂乃果達は学校説明会で挨拶しなくちゃいけないから、一度学校に行ってそれから会場に来るのよ。だから大丈夫」

 

 絵里はそう言うと窓の外を見てノビをすると亜里沙に向き直る。

 

「それにしても、まさかこんなに積もるなんてね。困ったものね」

「……お姉ちゃん、緊張してる?」

「え……?」

 

 突然亜里沙から放たれた言葉に、絵里は驚きで小さく声を上げる。

 

「バレエのコンクールの時と同じ顔してる」

「そう、かしら……」

 

 亜里沙の言葉に少し俯く絵里。亜里沙はそんな絵里に近付くと、手をギュッと握る。

 

「大丈夫。皆お姉ちゃんの味方だよ」

「亜里沙……」

「応援、行くからね」

「ありがとう」

 

 絵里が亜里沙にお礼を言うと、家のインターホンが鳴る。絵里が扉を開けるとそこには希が立っていた。

 

「希」

「おはよう。まだ着替えてなかったん?」

 

 希の言葉に絵里は自身の格好を見る。そしてまだ寝巻のままだという事に気付き、少し扉を閉め体を隠す。

 

「す、すぐ着替えて来るわね」

「えりち」

 

 着替える為に扉を閉めようとすると希に呼び止められる。絵里は不思議に思い振り返る。

 

「もしかして……緊張してる?」

 

 亜里沙と同じ質問をしてきた希に、絵里は少し驚きながらも笑い返す。

 

「さっきまでね」

 

 そう言い絵里は着替える為に部屋に戻って行った。

 

 

 

 西木野家の前。凛と愛生人、花陽の三人は真姫を待っていた。

 

「寒いにゃー! これで本当にライブなんてするのー!?」

「公式サイトには中止って知らせがないから、普通にあるみたいだよ?」

 

 愛生人が携帯の画面を見ながら答える。

 

「えー!」

「昼から晴れる予報だし、大丈夫じゃないかって」

「寒いだけでも辛いにゃー!」

 

 花陽が天気予報の欄を見ながら言うも、凛はその場でピョンピョンと跳ねる。

 

「凛ちゃん。頑張ろうね!」

「もちろんだにゃ!」

 

 凛が花陽にガッツポーズで答えると、西木野家の門が開き、そこから真姫が出て来る。

 

「お待たせ」

「遅いよー」

「だから言ったでしょ。待っててくれてなくて良いって」

 

 出て来た真姫に凛が遅いと言うも、真姫は携帯で送ったメッセージの事を言う。

 

「そういう訳にはいかないって。若葉さんに真姫ちゃんの事頼まれたし、何より僕達友達だからね」

 

 愛生人がそう言うと真姫は少し嬉しそうに笑う。凛はそんな真姫に近付き、、手袋を嵌めた手を真姫の頬に当てる。冷たがる真姫に凛は、遅かった罰、と言ってその手を離さない。そんな光景を見て笑顔を交わす花陽と愛生人。

 

「しょうがないでしょ。お母さんがこれ、皆にって」

 

 凛を何とか剥がした真姫は、手に持っていたランチボックスを三人に差し出す。その中身が気になり愛生人が聞くと、真姫はそれを前に出しながら照れた様に言う。

 

「カツサンドよ!」

 

 そして四人は会場に向けて歩き出す。

 

 

 

 矢沢家では朝からこころ、ここあ、にこが元気に「にこにこにー」をやっていた。

 

「にっこにっこにー!」

「にっこにっこにー!」

「にっこにっこにー!」

 

 にこがにこにーをやると、こころ、ここあがさすが! と褒める。そんな二人ににこは抱き着き、お礼を言う。

 

「ありがと~! 絶対最終予選突破するからね~!」

「そうですよね。お姉様がいてのμ'sですもんね!」

「一緒になったとは言っても、お姉ちゃんがセンターなんでしょ?」

 

 なのでこころとここあの言葉ににこは、あー、えー、と少し困った様な声を出すもすぐさま立ち上がる。

 

「当然でしょ。私が居なくちゃμ'sは始まらないんだから」

 

 にこが腰に手を当て言うと、ベランダに続く窓が勢いよく開けられる。驚いたにこは思わず尻餅をつく。

 

「虎太郎!?」

 

 そう窓を開けたのは矢澤家最年少の虎太郎だった。虎太郎はここあに注意されるも、それを無視してベランダの手摺に作った物を指し示す。にこがベランダに行きそれを見る。そこにはμ's九人と若葉達三人を模した小さな雪だるまがあった。

 

「ありがとっ」

「がんばれ~」

 

 虎太郎の応援に頷き答えると、にこは両隣にいるこころと虎太郎の頭に手を置く。

 

「お母さんに会場に連れて来て貰いなさい。私がセンターで思いっきり歌うから!」

 

 ウィンクして言うと、こころとここあが目を輝かせる。

 

「本当!」

「えぇ! だってμ'sは全員がセンターだから!」

 

 にこが三人にそう言うのと同時に、家のインターホンが鳴る。にこが玄関の扉を開けると、そこには希と絵里がいた。

 

「にこっち、おはよう」

「なんであんた達が来るのよ」

 

 にこはジトっと見ると扉を閉めようとする。しかし希がすかさず靴を挟み扉が閉まるのを止める。希のそんな行動ににこは驚きの声を上げる。

 

「希がね、三人で行きたいって」

「本当は夏希君を入れた、アイドル研究部の三年生四人で行きたかったにゃけどね。夏希君は学校やから」

「なら別に一緒に行かなくてもいいじゃない」

 

 二人が家を訪れた理由を知りにこがそう返すも、希は笑顔続ける。

 

「いやね。ウチ達三人で行った事がないな~って思って。それにカードもね、一度くらい三人で行かないと後悔が残るかもしれないって」

「……仕方ないわね、ちょっと待ってて。すぐ準備するわ……寒いから、中、入ってなさいよ」

 

 最後の方を少し照れながら言うにこ。そんなにこの好意に微笑んで甘える絵里と希。

 

 

 

 一方、学校説明会の為に学校に登校した二年生五人は、生徒会室の窓から来校する人達を見ていた。

 

「うわぁ!」

「人がいっぱい……」

「これが半年前まで廃校になりかけてた学校だなんて、誰が信じるんだろうな」

「だね。それだけμ'sが影響を及ぼしてるのか、元々音ノ木にはそれだけの魅力があったのか」

「今は感傷に浸ってないで講堂に向かいますよ」

 

 外を見ていつまでも話している四人に対し、海未は資料を持って呼び掛ける。

 

「よし! 挨拶をビシッと決めて、ライブに弾みをつけるよ!」

「気合い入れ過ぎて新生徒会長の挨拶の時みたくトブなよ~」

「大丈夫! 一週間も前からお兄ちゃんに協力して貰って覚えたから!」

 

 穂乃果の気合いの入れ具合を見て夏希がからかい気味に言うも、穂乃果は自信満々に返す。そして講堂へと向かった。

 

 

 




【音ノ木チャンネル】
愛「今回は場面転換多かったですね」
夏「だな。まぁアニメ本編でも多かったイメージあるから、仕方ないっちゃ仕方ないんだよな」
若「それよりなんか中途半端な終わり方をしたと思った人がいるかと思うけど、これにはちゃんとした理由がありますゆえ」
夏「なるほと。ワザとこの形で今話を締めた、と」
愛「してその理由はなんですか?」
若「実は次の話の方の出だしを書いてたら、そのまま筆が乗って一話、二話、とかけちゃってね」
夏「あ、察した」
愛「まぁまぁ、最後まで聞いてみましょう?」
若「それでふと、書き上げたやつを見返したら一つだけヤケに短い回があってね」
夏「それが今話だったのか」
愛「最近は一回が長いですからね。偶に短いのもありだと思いますよ?」
若「あ、そうそう。詳しくは次回のあとがきで言うんだけど、予選決勝から年末年始の間の空白期に何か書こうと思ってるらしいんだけど」
夏「またアンケート取るのか?」
愛「でもあれって、作者が増やす為だけに作った選択肢が選ばれる事もあって、結果ってあまり反映されてませんよね?」
若「だね〜。前に行ったアンケートのやつだっていつだっけ? 募集したの?」
夏「えっと、15年の五月だな」
若「それでその結果が反映されたのは?」
夏「16年の二月だな」
愛「つまらそういう事です」
若「しかもそれだってアンケートを思い出して、まだやってないってなって八割方出来てたやつを消して書いたからね」
夏「つまりその空白期のアンケートは取らない、と?」
愛「まぁ、そうなりますね」
若「でもやる事は決まったらしいよ」
夏「へぇ〜いつ?」
若「今」
愛「は?」
若「だから、このあとがき(ほんぺん)を書いてる時」
夏「今おかしなルビがあったんだが……?」
愛「それは今は放置しましょう。それで何やるんですか?」
若「前々回夏希の個人回がないって話は覚えてる?」
夏「まぁ一応」
愛「あ、じゃあもしかして」
若「Yes! まだ書き始めてないけど夏希とツバサさんの話でも書こうかな〜とか思ってるよ! やったね!」
夏「そっか。やっと俺にも個人回が来たのか」
愛「では夏希さんが嬉し泣きしない内に終わりにしまーす」
若「それじゃあバイバーイ」


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お兄ちゃん、あれby穂乃果

次で祝100話!
なので今まで不憫だったあの人の話でも書こうかと思ってます。

そして!活動報告にちょっとした短編を上げていたり!


「えぇ! 一時間も開始遅れるんですか!?」

「仕方ないだろ。この調子じゃ」

 

 姫子も外を見ながら少し不満そうに言う。外は雪が降っており若葉が検索をかけると、電車は所々で遅延となっていた。

 

「取り敢えずえりちに電話するわ」

「うん、よろしく」

 

 夏希が若葉の携帯を覗き込みながら聞くと若葉は頷き、穂乃果達の元へと戻る。夏希は四人に背を向けると自身の携帯を取り出し、電話をかけ始める。

 

『もしもし?』

「えりちか?」

 

 

 

 控え室の用意されている場所まで七人で移動していると、突然絵里の携帯が鳴る。携帯の画面には《佐渡 夏希》と表示されていた。絵里は不思議に思い電話に出る。

 

「もしもし?」

『えりちか?』

「そうだけど、どうしたの? 今の時間だとそろそろ説明会が始まるんじゃないの?」

 

 絵里は腕時計を見て時間を確認する。現時刻は説明会の始まる時間の直前だった。

 

『そうなんだけど、実は雪のせいで電車が遅延しててな。開始が一時間遅れるってさ』

「そう、それは仕方ないわね……」

『……今ほのっち達が理事長から、説明会を休んでも良いって言われてる。あ、断った』

「そうよね、分かったわ。皆には私から事情を説明して、七人で話を進めておくわ」

『あぁ頼む』

 

 絵里は電話を切ると控室に向かうように先導しようとするも、遠くから聞こえたにこの声にそちらに向かう。

 

「どうしたの、にこ?」

「これ……」

 

 にこの視線の先には最終予選が行われるステージがあった。

 

 

 

「こんにちは~足元の悪い中ありがとうございます」

「すいません。一時間遅れての開始となります」

「会場はこちらとなっております」

 

 穂乃果、若葉、夏希が講堂の入り口で案内をし、中では海未とことりが席への案内をしている。不意に夏希の携帯が鳴る。相手は絵里だった。

 

「もしもし? 何?」

『ゴメンナサイ。今会場の前に着いたんだけど』

『凄い。ここが……』

『大きいにゃ~』

『あ、当たり前でしょ。「ラブライブ!」の予選決勝の舞台なのよ。何ビビってるのよ』

「えりち、にこっちに伝えてくれや。声が震えてるぞって」

 

 電話口から次々に聞こえて来る声に対して、夏希は冷静に突っ込みを入れる。

 

『とにかく、終わり次第こっちに向かって』

「あぁ、もちろんそのつもりだ」

 

 夏希は電話を切ると穂乃果と若葉の元へ戻る。

 

「悪い。もう終わったか?」

「今来た人の案内は終わって、あとは遅れて来る人だけ」

「じゃあさ!」

 

 若葉と夏希は穂乃果の案に顔を見合わせて楽しそうに溜め息を吐くと、頷く。それから中で案内している海未とことりと合流し、外に出る。

 

「おーい」

「ヒフミ-」

 

 五人が外に出て近くで雪掻きしているヒデコ、フミ、ミカの元に走り寄る。

 

「ちょっと、夏希君? 私達を纏めて呼ぶの辞めてもらえるかな?」

「ははは、悪い悪い」

「それで? 何しに来たのよ」

 

 ヒデコが夏希から目を離し、若葉を見て聞く。それには若葉がではなく、穂乃果がお耐える。

 

「ちょっと雪掻き手伝えないかなって」

「どこから手伝えばいい?」

 

 続いた若葉の言葉にヒデコがスコップを雪に差す。

 

「何言ってるの」

「そうよ。あなた達今日何の日だと思ってるのよ」

「最終予選よ、最終予選。忘れたの?」

 

 ヒデコ、フミ、ミカの言葉に言葉に詰まる海未とことり。

 

「だから、こんな所で体力を使わないの。ほら、戻った戻った」

「でも私達生徒会だし」

「だから余計ダメなの。しかもそんな恰好で雪掻き出来る訳ないでしょ。風邪引きたいわけ?」

 

 ヒデコの言葉に三人は自身の格好を見直す。ヒデコ達はスノーブーツやレインコートを着て防寒対策がされているのに対し、穂乃果達は制服のまま。

 

「だったら」

「ここは俺達の出番ってわけか」

 

 若葉と夏希がスコップを手に雪掻きを始めようとすると、後ろから羽交い絞めにされる。

 

「はいはい。二人もこの後生徒会の仕事があるでしょ」

「それに君達はお姫様方を会場まで無事に送る役目があるでしょうに」

 

 二人が驚いて首だけで後ろを振り返ると、若葉には結花、夏希には姫子がそれぞれ羽交い絞めにしていた。

 

「君達以外にも音ノ木には生徒がいるんだよ」

「偶には皆の事を信じてみなって」

 

 二人の言葉に五人は正門までの道を見る。そこには十数人の生徒達がヒデコ達同様雪掻きをしていた。

 

「ここは私達に任せて」

「穂乃果達は説明会の挨拶と、予選の事だけを考えて」

「皆……ありがとう!」

 

 穂乃果はその場にいる生徒全員に向けて大声でお礼を言って、中に戻って行く。それに続いて海未、ことり、羽交い絞めにされた若葉と夏希も頭を下げてお礼を言って穂乃果の後を追う。

 

 

 

 控え室が用意されているホテル。その控え室で凛と花陽が窓から見えるステージに見とれていた。

 

「本当にあそこが満員になるの? この天気だし」

「きっと大丈夫よ」

「満員になるのは間違いないわ」

 

 真姫と絵里が話していると開け放たれたままの扉からツバサが入室しながら言う。その後ろからはあんじゅと英玲奈。

 

「完全にフルハウス。最終予選に相応しいステージになりそうね」

「あ、A-RISE」

「ダメよ。もう対等、ライバルなんだから」

 

 A-RISEの登場ににこが動揺するも、真姫が宥める。

 

「どうやら、全員揃ってないようだが」

「そうね。なっくんや穂乃果さんが見当たらないわ」

「他にも高坂君や園田さん、南さんもいないわよ」

「えぇ。穂乃果達は学校の説明会で遅れて来るの。本番までにはなんとか」

 

 A-RISEの三人に絵里がそう返す。ツバサはそれで納得したのか、そう、と続け、部屋から出て行こうとし止まる。

 

「穂乃果さん達に伝えて。今日のライブで運命が決まる。互いのベストを尽くしましょ。でも」

 

 そこで言葉を切り、振り返る。

 

「私達は負けない」

 

 

 

『理事長、ありがとうございます。では続いて生徒を代表して生徒会長挨拶』

 

 ヒデコが穂乃果を呼び込むと、舞台袖から緊張した面持ちの穂乃果が出て来る。説明会に来た人達は穂乃果を見て少しざわつく。

 

「なんでざわついてんだかな」

「大方、穂乃果がμ'sのリーダーだからじゃない? いつも近くにいるから分からないけど、穂乃果って人気アイドルグループμ'sのリーダーと、生徒会長の両方をこなしてるからね~」

 

 講堂の壇上とは反対の壁際に凭れ掛かりながら、夏希と若葉は話す。それから二人は並んで穂乃果の挨拶を聞く。

 

「それにしても大丈夫かな」

「若が一週間付きっきりで覚えたんだろ? だったら心配する事ねえんじゃねえのか?」

 

 若葉のふと零した言葉に夏希が何言ってんだ? と言った様子で見返す。若葉はそんな夏希に持っていた資料で黙って叩く。夏希も叩かれた場所を抑えて、声を出さずにその場にしゃがみ込む。

 

「別に穂乃果の挨拶の心配はみじんもしてないよ。ただ……」

「ただ?」

「天気、今日は昼くらいまで雪って言ってたけど、本当に止むのか、止んだとしても電車間に合うかなって」

 

 ステージで挨拶している穂乃果を見ている若葉を、夏希はしゃがんだまま見上げると、軽く鼻で笑い立ち上がる。

 

「大丈夫だって。電車の遅延は確かに怖いが、復旧すんだろ。そんな事より、挨拶、終わったみたいだな」

「だね」

 

 二人は講堂内が明るくなるまでその場に立っており、説明会が終わると同時に穂乃果達と合流する。

 

「お疲れさん」

「さ、休みたいとは思うけど、急いで、会場に向かうよ」

 

 五人は急いで行動から出る。そして目の前に広がる光景に目を見張った。

 

 

 

「雪、止みませんね」

 

 日が暮れて、やや黒みが帯びて来た空を見ながら愛生人が呟く。愛生人の言う通り雪は止んでおらず、道も雪が積もっていた。

 

「晴れるって言ってたのに」

「で、穂乃果達は?」

「今えりちが電話しとるよ」

 

 希が控え室の隅で電話している絵里を見る。次の瞬間、絵里が驚きで大声を上げる。

 

「え~!? 動けない!?」

『あぁ。電車が止まったみたいでな。今若が父さんに車を出して貰えないか電話してるみたいだが……』

 

 夏希は一度そこで言葉を切り、電話口から耳を離す音が聞こえる。

 

『どうやら出せないみたいだ』

「そんな! どうするのよ!」

「絵里さん。少し電話良いですか?」

 

 絵里が何か策がないか考えていると、愛生人が絵里に近付いて手を出す。絵里は愛生人が真剣な表情をしているのを見て、何か案があると思い電話を渡す。

 

「もしもし夏希さんですか?」

『あぁ』

「今まだ学校にいますよね?」

 

 愛生人は余計な事を省いて単刀直入に聞く。愛生人の質問に対し、夏希は肯定で返す。

 

「分かりました。それでは絵里さんに戻します」

 

 愛生人はそれだけ聞くと、絵里に電話を押し返す。

 

「あ、アキ君……?」

「大丈夫。僕が何としても間に合わせて見せるから」

 

 不安そうに見て来る凛に愛生人は自分の携帯を取り出し、安心させる様に笑い掛ける。そして控え室から出ると、電話帳からとある人物の番号に電話を掛ける。

 

「もしもし。久し振り……て程でもないか。ちょっと頼みたい事があってな」

 

 

 

 愛生人が電話をしている時、絵里との電話を切った穂乃果達はどうやって会場に行くかを話し合っていた。

 

「穂乃果。最初に言っておくけど、走って行くにはこの雪の中じゃ危ないからね」

 

 話し合いが始まってすぐ、若葉は穂乃果が言いそうな案を取り下げる。穂乃果はそんな若葉の言葉に反対する。

 

「でもお兄ちゃん! 車も電車もダメだったらもう走って行くしかないじゃん!」

「だな。俺もほのっちの案に賛成だ」

 

 夏希も走って行くしか方法がないと思う為、穂乃果の案に賛成の意思を示す。しかし若葉は首を縦に振らない。

 

「わざわざ愛生人が今学校にいるのかって確認したんだよ。って事は愛生人には何か案があるって事。だから俺はそれを信じてここで待機が良いと思う」

「お兄ちゃんは最終予選に間に合わなくても良いの!?」

「……んな訳……い」

 

 学校待機を推す若葉に穂乃果は怒った様に声を大きくして言うも、若葉は俯き何かを言う。その様子に疑問を持った四人が顔を見合わせ若葉を見る。

 

「そんな訳、ないじゃん。でもここで無理してまた怪我したら、あの時と同じ事になるって、穂乃果は分かってるの……?」

 

 若葉の言葉を聞いて四人は目を見開く。若葉は以前階段から落ち「ラブライブ!」を辞退した時の事を言っていると分かったからだ。あの時は誰のせいでもないと結論に至ったが、若葉はどこかでそれを抱えていたのだった。それを今まで表に出なかっただけなのだ。

 そんな若葉の背中がバチィン! と叩かれる。あまりの勢いと、不意打ち気味だった事で若葉は思わず前につんのめる。

 

「い……たくはない。こんな事が出来るのはりっちゃんだね」

「正解!」

 

 若葉が振り返りながら言うと、そこには平手を振りぬいた体制の利幸が立っていた。若葉はなぜここにいるのか、という疑問を飲み込んでいきなり叩いた利幸を睨む。

 

「まぁまぁそう睨むなって。いつまでもしょぼくれてる友達に喝を入れてやったんだからよ」

「……それで、りっちゃんは何しに来たの」

「何ってそりゃあ……助っ人?」

「はぁ?」

 

 利幸の答えに若葉は意味が分からない、と言った返事をする。利幸はそれを無視して五人を追い出し校門に連れて行く。

 

「まったく、若葉はどこに行っても扱いは同じなんだな。それか別の人の影響なのか」

「だからりっちゃんは何を……」

 

 未だに利幸の言ってる事が分からずに聞こうとするも、それは隣にいる穂乃果に制服を引っ張られ中断させられる。

 

「お兄ちゃん、あれ」

 

 穂乃果の指さした方を見ると、そこには音ノ木生だけでなく、高蓑原時代の友達、他にも若葉のバイト先の人達が協力して道路の雪掻きをしていた。

 

「お、若葉やっと来たか」

「翔平!?」

 

 校門の影から出て来た翔平に若葉は驚く。翔平は五人を見ると片手を上げて挨拶をし、利幸の隣に並ぶ。

 

「実は少し前に若葉の親父さんから電話があってな。雪掻きの為に何人必要か分からなかったから、高蓑原の連中全員に声をかけたら皆来やがったよ」

「俺の所にも突然来てな、知ってるだけの若葉のバイト先さんに片っ端から連絡して、俺が知らない人達には別の人がって感じで集まった」

「で、でもじゃあ、音ノ木の皆は?」

「それは私達が連絡したからだよ」

 

 二人の説明に若葉が音ノ木生の事を聞くと、今度は後ろから声が掛かる。五人が振り返ると、説明会前に会ったヒデコ、フミ、ミカの三人が立っていた。

 

「いや~穂乃果達の為って言ったら皆が揃って来たんだよ」

「さ、スノーブーツ履いて! 会場までの道は私達で作るから!」

「……いや、その必要はなさそうだぞ」

 

 フミとミカが五足のスノーブーツを取り出し、穂乃果達はそれを履こうとするも、夏希の一言で動きを止める。

 

「どうも若葉君、久し振りだね」

「恭弥さん!? どうしてここに?」

「何我らがリーダーに頼まれたからね。それに友達が困ってるんだ、来ない訳にはいかないでしょ?」

 

 校門のすぐ傍には五台のバイクが止まっていた。そこには恭弥込みで五人のドライバー。

 

「愛生人の案はこれだったのですね」

「それで若。どうする?」

 

 海未が納得するように頷いている横で、夏希は隣に立っている若葉に改めて聞く。聞かれた若葉はどこか嬉しそうに笑うと顔を上げる。

 

「そりゃ決まってるでしょ。皆に協力して貰って、ここまでされたらいかない訳にはいかないでしょ」

「でも路面が凍ってるかもしれないよ?」

「そこは任せてくれ。凍ってない路面での最短距離を誘導するから」

 

 ことりの不安も翔平がニカッと笑って言う。それから若葉達はヘルメットを受け取ると各々バイクの後ろに跨る。

 

「それじゃあお願いします」

「任せておいて!」

 

 若葉にそう返し、恭弥はエンジンをかけ走り出す。

 

「あの、愛生人からはいつ……?」

「ついさっきだよ。電話を貰ってね、慌てて今集められる「祈る者達(プレイヤー)」を総動員したよ。あ、次右曲がるよ」

「それでよくこれだけ集まりましたね」

 

 若葉の言う"これだけ"と言うのは「これだけのメンバーの人数」ではなく、「これだけのドライブテクを持ったメンバー」の事である。恭弥も言った通り、急に呼び出されたにしては人が揃い過ぎてると若葉は重いその質問を恭弥に聞く。

 

「あぁそれは簡単な話だよ。僕達も今日のライブを見に来ていてね、会場のすぐ近くでアイトさんから電話が来たんだよ。それで急いで音ノ木坂学院に向かったのさ」

「な、なるほど」

 

 それからは特に話す事もせず、五人揃って無事会場に辿り着く。会場の前では絵里を先頭に七人が五人を出迎えていた。若葉達は送ってくれた人達に頭を下げてお礼を言った後、絵里達の元へ走って行く。

 

「皆ぁ!」

「穂乃果!」

 

 穂乃果は叫び、絵里に抱き着く。絵里もそれをしっかりと受け止める。そして涙を流す穂乃果を絵里は優しく抱きしめる。

 

「寒かったよぉ! 怖かったよぉ! これでおしまいなんて絶対に嫌だったんだよぉ! 皆で結果を残せるのはこれで最後だし、こんなに頑張って来たのに何も残らないなんて悲しいよぉ! お兄ちゃんもネガティブになっちゃうしぃ! だからぁ!」

「ありがとう」

 

 泣きながらも今まで溜め込んでいたものを吐き出すように言う穂乃果。絵里はそんな穂乃果に囁く様に返す。

 

「まったく、泣いてる場合?」

「目、ウルウルしてるよ?」

「私は泣いてない……希こそ」

 

 希はにこの言葉に目元に手をやると、涙が溜まっていた。

 

「愛生人、ありがとうね。お蔭で間に合ったよ」

「いえ、僕じゃなくて皆のお蔭ですよ。僕はそれに少し手を貸しただけです」

「謙遜してんじゃねえよ。こいつ」

 

 若葉が愛生人にお礼を言うと、愛生人は手を振って答える。そんな愛生人に夏希はこめかみをグリグリとする。

 そんな事をしていると、雪掻きをしていた人達が会場に集まりだす。

 

「穂乃果、皆にお礼しなきゃね」

「うん!」

 

 絵里の言葉に穂乃果は頷くと、集まって来た人達に向き直る。

 

「皆、本当にありがとう! 私達一生懸命歌います! 今の気持ちをありのままに! 大好きを大好きなまま、大好きって歌います! 絶対、ライブ成功させるね!」

 

 それから控え室に行き、衣装に着替える。その間、若葉達三人は外で待つことになった。まるでその時を見計らっていたかのように、すでに衣装を着たツバサが訪れる。

 

「間に合ったみたいね」

「よ、ツバサ。まぁ皆のお蔭で何とかな」

「ふ~ん。まぁ間に合って良かったわ。それじゃあね」

 

 ツバサはそれだけ言うとA-RISEの控え室に戻って行く。そしてじかんは流れ、最終予選μ'sのライブが始まろうとしていた。

 

 ステージ上で手を繋ぐμ's。その心中では各々が好きな事を考えていた。

 

「皆さんこんにちは。この曲はこの日に向けて、新しく作った曲です。たくさんのありがとうを歌にして作りました。応援してくれた人、助けてくれた人がいたおかげで私達は今、ここに立っています。だからこれは、皆で作った曲です!」

 

(学校が大好きで)

(音楽が大好きで)

(アイドルが大好きで)

(踊るのが大好きで)

(メンバーが大好きで)

(この毎日が大好きで)

(頑張るのが大好きで)

(歌う事が大好きで)

(μ'sが大好きだから)

 




【音ノ木チャンネル】
若「今回は豪華だったね〜」
夏「だな。まさか音ノ木生だけじゃなくて高蓑原生に、若の知り合い、さらに「祈る者達(プレイヤー)」まで出たもんな」
愛「アニメ最終回ばりのキャラ総出演でしたね」
若「まぁ言っても、最近のアニメは最終回に総出演ってあんまり見ないけどね」
夏「それ言ったらおしまいじゃね?」
愛「でも最近のアニメは本当にその展開見ませんよね」
翔「よ、やってるな」
若「あ、68話から本編に出てなかった翔平いらっしゃい」
夏「あ、本当だ。約十ヶ月近く出てなかった翔平じゃん」
愛「久し振りですね。最後に出たのが学園祭の時だった翔平さん」
翔「お前ら、俺への当たりおかしくないか!?」
若「え? なんかおかしいかな?」
夏「いや? まったく」
愛「違和感仕事しろレベルで何も」
翔「この小説で扱いが酷いのが夏希だって話だけど、俺じゃね?」
若「ま、それは置いといて。なにしにきたの?」
翔「何しにって、久し振りに出たし、特に話すネタがないから俺が来たんだよ」
愛「選ばれたのは翔平でした」
夏「それなんてお茶だ?」
若「て言うか、ネタがないなら【音ノ木チャンネル】終わりで良いじゃん」
夏「てか、そんだけ出てないって翔平作者に存在忘れられてたんじゃね?」
翔「ところがどっこい。作者のネタ帳に俺が最後に出た話数・時期が書き込まれてたから忘れられてたって事はない。そんな事より、前回のまえがきについて、説明してくれないか?」
愛「前回のまえがき?」
若「あーあれでしょ? 作者が煽った、あれ」
夏「なんでもファイナルライブに行って、テンション上がり過ぎた結果らしい」
翔「じゃあなんであとがきでなんも弁解がないんだよ」
若「それは簡単な話だよ。あのあとがきはファイナルライブ前に書き上げられてて、書き直すのが大変らしいからそのままで良いやってなったんだ」
翔「そんくらいなら直せよ!」
若「翌日には直したんだからいいじゃん」
愛「あ、作者から一言メッセージが」
名「ラブライブはいいぞ?」
夏「どこぞの戦車アニメみたいな事を言い出した所で今回は終了!」
若「それじゃあバイバーイ」


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お〜い、佐渡く〜んbyツバサ

お久し振りです!
今回は夏希の個人回です!


 予選決勝の翌週。若葉と真姫は夏希の家を目指して歩いていた。

 

「それにしても夏希の家ってきれいになってるのかな?」

「さぁ? でも招待するって事はそれなりにきれいになってるって事でしょ?」

 

 若葉の隣を歩きながら真姫がそう返す。若葉は真姫の言葉にう~ん、と空を見上げる。

 

「ほら若葉、どこに行くのよ。夏希の家はこっちよ」

「あれ? そうだっけ?」

「そっち行ったら遠回りになるでしょ。時間がないんだから迷ってる暇なんてないわよ」

 

 間違った道に行こうとした若葉の服の袖を引っ張り、夏希の家の方に向き直る。

 そして二人が着く頃には既に、アイドル研究部のメンバーとA-RISEのメンバー、総勢十三人が揃っていた。

 

「ってA-RISE、さんまでなんで!?」

「別にA-RISEで良いわよ~」

「それにしても皆同じ反応するんだな」

 

 A-RISEを見て驚く若葉と真姫を見て、夏希達は楽しそうに笑う。あんじゅはその空気に構う事なく若葉に手を振って挨拶をする。

 

「ど、どうも」

「さ。メンバーも揃った事だし、さっさとパーティ始めるか!」

 

 夏希の音頭でクリスマスパーティが始まる。希とあんじゅが意気投合し、一緒になってツバサを揶揄ったり、英玲奈と絵里が夏希を揶揄ったりとしている。

 

「よし、俺も夏希を揶揄いに行こうかな」

「やめた方が良いと思いますよ」

「なんで?」

 

 若葉が立ち上がりながら言うと、隣に座ってジュースを飲んでいた愛生人が止める。若葉は止められた理由が分からないようで、愛生人に首を捻って聞く。

 

「僕達が行っても揶揄いののネタにされるだけですよ」

「……確かに」

 

 愛生人の言葉に若葉は頷き座り直す。それから暫くして解放された夏希が疲れた様子で若葉と愛生人の間に座る。

 

「お疲れさまでした」

「本当だよ。てかなんで助けてくれないんだよ」

「いやだって、別に俺達が助ける義理ないし?」

「冷たい奴らだな~」

 

 夏希は持っていたドリンクを一気に煽り、若葉と愛生人を見やるも、二人とも肩を竦めて答える。夏希はそんな反応に溜め息を吐き、その場に寝転ぶ。

 

「ところでさ夏希」

「んぁ? なんだよ」

「そろそろ僕達も気になってたんですけど」

「夏希とツバサさんってどういった出会いだったの?」

 

 二人は先程の希とあんじゅ達の会話を思い出して夏希に話を振る。夏希は天井を少し見ると上体を起こす。そんな夏希の隣にツバサが座る。

 

「良いじゃない。話しましょうよ」

「ツーちゃん……ハァ、分かったよ。話せばいいんだろ。え~っとあれはいつだったかね」

「中学二年生の中頃に設けられた生徒会長同士の会合でしょ?」

「あぁそうだったな」

 

 

 

 夏希は三滝原(みたきはら)中学の校門に立って腕時計を見ていた。

 

「なぁそろそろ時間だよな?」

「うん、あと十五分を「そろそろ」って考えるともうそろそろだね」

「夏希君が早いだけだって」

 

 夏希の言葉に両隣に立っていた一組の男女、氷山(ひやま)玲奈(れな)大岡(おおおか)綾奈(あやな)が揃って呆れた様に溜め息を吐く。

 

「お待たせしました」

 

 夏希がもう一度腕時計に目を落とすと、聞き覚えのない声に顔を上げる。そこにはセーラー服を着た女子中学生三人が立っていた。夏希が先頭に立っているおでこが特徴的な少女と目が合うと、少女はにっこりと笑い手を差し出してくる。

 

「初めまして。桜蘭(おうらん)女子中の生徒会長の綺羅ツバサです」

「こちらこそ初めまして。三滝原中学生徒会長の佐渡夏希だ。よろしく」

 

 夏希は差し出された手を握り返し、校舎内の生徒会室に案内する。六人は席に座ると改めて自己紹介をする。ツバサの右隣に座っている黒髪を腰まで伸ばした東原(ひがしはら)(みやこ)。左隣に座っている茶髪を肩で揃えた長塚(ながつか)柚月(ゆづき)

 

「それじゃあ早速だけど話し合いを始めるか」

「そうね。始めましょう」

 

 夏希とツバサは互いに二年生と分かると、途端に砕けた口調になり、それにつられて他の四人も砕けた口調になって行く。

 

「取り敢えず今年から始まった合同文化祭について、今日は終わりにでもするか」

「そうね。今日の目的は顔合わせだし」

 

 夏希の言葉にツバサも頷いて同意する。すると柚月が少し遠慮気味に手を上げる。

 

「あの綺羅会長」

「もう柚月。別にツバサで良いって言ってるじゃない。畏まった場とは言え、生徒しかいないんだし」

「ツ、ツバサ。折角だからこの後皆でどこかに行きませんか?」

 

 柚月の言葉にツバサは夏希に視線を送る。夏希はツバサの視線を受けた後、玲奈と綾奈を見ると二人は笑って頷き返す。ツバサも京を見ると頷く。

 それから数カ月間、合同文化祭に向けて二校の準備は順調に進んでいった。そして

 

「ついに明日だな」

「そうね。この数カ月、あっという間だったわね」

 

 夏希とツバサは、翌日の文化祭の準備で慌ただしく動き回っている生徒達を屋上から見下ろしていた。屋上には二人の他には誰もいない。二人は少しの間見つめ合うと口を開く。そのタイミングで二人の携帯が同時に鳴る。

 

「もしもし?」

「私よ」

 

 それから一言二言話すと電話を切り顔を見合わせる。

 

「綺羅、ちょっと呼ばれたから行ってくるわ」

「佐渡君、奇遇ね。私も呼ばれたから行かないといけないわ」

「そっか。それじゃあまた明日、だな」

「そうね。また明日」

 

 お互いにそう言って屋上を後にした。

 

 

 

 夏希はそこまで話すと空になったコップに飲み物を注ぎ、飲む。そして周りを見渡すと、いつの間にか全員が夏希の話に聞き入っていた。

 

「どうしてこうなった」

「なんか面白そうな話だからついね~」

「それより早く続きが聞きたいにゃ!」

「私も気になるな」

 

 夏希の疑問にあんじゅ、凛、英玲奈が続きを催促する。夏希はそんな三人と皆の無言で催促を受け、隣に座っているツバサの頭を優しく撫でてから話を再開する。

 

 

 

 文化祭が終わって一週間。三滝原中生徒会室で夏希はボーっと外を眺めていた。

 

「あの~夏希君? 大丈夫?」

「いやいや、どう見ても大丈夫じゃないよね?」

 

 綾奈が心配そうに声を掛けるも、玲奈が首を振って否定する。夏希はそんな二人に気付いてないのか、まったく反応を示さなかった。

 一方、桜蘭中生徒会室。こちらでも同じくツバサが机に伏せて心ここに非ずな状態だった。

 

「あの、ツバサさん?」

 

 京が不安そうに覗き込むも、ツバサは何も言わずに眺めていた。その様子に困り果てた京と柚月は互いを見合うと肩を竦めた。それから会長印が不必要なものの書類を片付け始める。

 

「……あ」

 

 二人が書類を片付けていると、突然ツバサが声を上げる。気になった二人が見ると、ツバサは携帯を取り出し画面をマジマジと睨み付けていた。

 

「……ツバサ?」

「ちょっと出てくるわね」

「あ、うん」

 

 柚月の返事が聞こえてないのか、廊下に出て電話に出る。画面にはここ一週間話す事がなかった人物の名前が表示されていた。

 

「も、もしもし」

『あー……もしもし』

 

 電話を掛けてきた夏希も何を話すのか決まってないらしく、二人の間に沈黙が流れる。

 

「『あの」』

 

 そして二人同時に話して再び黙り込む。少しして夏希が話し始める。

 

『あのさ、もし良かったら今度の日曜にその、ちょっと付き合ってくれないか?』

「え? 付き合うって……」

『いや、別にそういう意味じゃなくてだな。その母さんから映画の券貰ったんだが、それが二枚セットでな。玲奈と綾奈に断られちまってな。ほかのやつらにも断られたんだよ』

 

 夏希の誘いに最初喜んだツバサだが、選ばれた理由を聞いた途端少し浮かない顔になる。それでもツバサはその誘いを断る事はせず、すぐに受諾する。

 

『じゃあ今度の日曜、十時くらいに駅前に集合したいんだけど、大丈夫か?』

「日曜日の駅前に十時ね。大丈夫よ」

『それじゃあまた日曜』

 

 夏希はそう言って電話を切る。ツバサは切れた電話を名残惜しそうに見つめる。

 

「どうしたの? デートのお誘い?」

「なっ!? 柚月! いつの間に」

「ツバサが集合の日時を繰り返した時からだけど?」

 

 柚月が答えると、ツバサは顔を赤くして手を左右に勢いよく振る。声が大きかったのか、生徒会室にいた京も顔を出す。

 

「大きな声出してどうしたのさ」

「京~聞いてよ~。今度の日曜にツバサがデートに行くんだって!」

「え!? 相手は誰!?」

 

 ツバサの代わりに柚月が答えると、京は驚いて目を開き、相手について聞き返す。柚月は面白そうに笑うとそれはねー、と話す。

 

「えー! 相手って佐渡君なの!?」

「ち、違っ!」

「え? 違うの?」

「ち……がわないわよ」

 

 柚月が首を傾げて聞くと、ツバサは顔を逸らしながら肯定する。それを見て二人はニヤリと笑うと、ツバサを両脇から抑え生徒会室に連れて行く。その後、ツバサは夏希との関係を根掘り葉掘り聞かれるのだった。

 一方、ツバサとの電話を切った夏希はと言うと

 

「夏希君デートだね、デート!」

「ち、違う! これは券が余ったからで、別にデートとかそういうんじゃ決して!」

「でもその券の話、初耳なんだけど?」

 

 先程の電話を聞いていた玲奈が少し口角を上げて聞くと、夏希はだってよー、と返す。

 

「今度の日曜、玲奈は部活だろ。んで綾奈は家の手伝いで二人とも一日潰れんだろ? 他の奴らに聞いて断られたのは本当だしな」

「……夏希君って」

「もしかしなくても……」

 

 夏希が理由を説明すると、綾奈と玲奈は口をポカーンと開ける。そんな二人を見て夏希は首を傾げる。

 

「「頭良かったりする!?」」

「いや、頭良くなくても役員の大まかなスケジュールくらい把握できるだろ」

「え、それ普通なの?」

「多分私じゃ無理」

 

 この瞬間、二人の間で夏希の株が僅かながら上がった。

 

「それで? なんで少し早目に集合するの?」

「どれどれ? あ、本当だ。映画14時からじゃん」

 

 二人が映画券の時間を見て不思議に思い夏希に聞く。夏希は机に肘をつくと、当たり前のように言う。

 

「んなの、現地集合現地解散で喜ばれるのは嫌いな上司との旅行だけだろ。それにせっかくなんだから楽しんで貰いたいしな」

「夏希君、それ思考が完全にデートのそれだよ?」

「あ? デートってのは相手の事を考えて、あれこれ考えて色々やる事だろ? ……あれ?」

 

 夏希は自分の言った言葉に首を傾げる。玲奈と綾奈も苦笑いを浮かべる。結局その日はそれで解散となった。

 

 そして日曜日。待ち合わせの10分前に駅前に来ていた。

 

「おーい、佐渡く~ん」

 

 夏希が待ち合わせ場所に着くと、正面からツバサが手を振りながら駆け寄る。

 

「待たせちゃったか?」

「ううん。私も今来た所よ」

「そっか、じゃあ行くか」

 

 夏希はそう言うと身体を反転させて歩き出す。ツバサも夏希の隣に並び歩く。少し歩くとツバサと夏希の距離が僅かに開く。夏希はそれに気付いたのか、そっと歩きペースを落とし距離が開かないようにする。

 

「さてと綺羅。少し早いけど昼飯にでもするか?」

「そうね。お昼時に行っても混むだろうし」

「じゃあ綺羅の好きな店選んでいいぞ」

「えっと、じゃああのお店にしましょう」

 

 そういってツバサは一軒のファミレスに向かって夏希の手を引っ張る。そして店に入る時に手を繋いでいる事に気付き、顔を赤くしながら慌てて手を放す。

 

 

 

 そこまで話した所で夏希は一回伸びをする。

 

「なんかここまで結構かかっちまったな」

「そうね。意外と長くなったわね」

 

 夏希の言葉にツバサが頷く。

 

「それでどうなったんだ?」

「英玲奈が凄い目を輝かせてるんだけど」

 

 身を乗り出して言う英玲奈の様子に、あんじゅが珍しいものを見た目をする。その光景にツバサも苦笑いで頷く。

 

「それじゃあ続き行くか」

「そうね」

 

 

 

 一緒に映画に行ってから半年。それから何度か出かける事はあったものの、特に進展もなく一年が過ぎた。お互いが生徒会長職を後輩に受け継いだ年の文化祭。昨年に続き三滝原中と桜蘭中の合同文化祭が催された。

 そして二日目の夜。校庭でキャンプファイヤーの周りを踊っている生徒達。夏希とツバサの二人は屋上から眺めていた。

 そんな時、不意にツバサが口を開く。

 

「私、来年からスクールアイドルを始めるの。もう高校からもその話が来てる」

「……そうか。綺羅ならきっと凄いスクールアイドルになれるさ」

 

 夏希は驚いて目を見開くも、すぐに表情を戻しツバサを応援する言葉を述べる。そして何か決心した様子でツバサに話しかける。

 

「なぁ、綺羅。少し長話して良いか?ここぞというタイミングを逃した馬鹿な奴の話を」

 

 ツバサは無言で頷き、夏希もそれを見て話し出す。

 

 そいつはどこにでもいるような中学二年生だった。そんなある日友達からの勧めで生徒会長という地位を手に入れちまった。しかもその年から急に、文化祭は他校との合同でやる事になった。

 そいつはそいつは一人の女生徒と出会った。相手校の生徒会長だ。

 その年の初めに顔合わせをして以降、文化祭の事で連絡を取り合ったり、偶に一緒に買い出しに出掛けたりした。そいつはそんな些細な事とは言え、その女生徒とそういった事が出来るのが嬉しく思ってた。

 そのままその年の文化祭は終わり、連絡を取り合う事が少なくなり、一緒に出掛けたりする事がなくなった。けど、そうなって初めてそいつはその女生徒の事を単なる女友達として見ていた訳じゃない事に気付いたんだ。

 それから生徒会長の仕事の引き継ぎが終わった頃合いに連絡を取って、久し振りに二人で出掛けた。その時にそいつは確信した。

 あぁ俺はこいつの事好きなんだ、と。

 気付いてからそいつは何度も遊びに誘った。相手の女生徒も断る事はせずに誘いに乗ってくれた。

 そして次の年の文化祭。そいつはその女生徒に想いを伝えようとして屋上に連れて行くも、その女生徒のこれからの事を聞いてもっと早くに想いを伝えれば良かったと後悔したんだ。

 

「どうだ? 馬鹿げた話だろ?」

「そうね。とても馬鹿げた話だわ」

 

 

 話し終わった夏希は肩を竦めてツバサに聞く。ツバサもそれにうなずき、夏希は顔を曇らせる。そんな夏希を見てツバサは溜め息を吐くと続ける。

 

「だってそうでじゃない。その話の通りならその"そいつ"は、まだ"女生徒"に想いを伝えてないんでしょう? 相手の答えを聞く前に諦めるなんて、そんな馬鹿げた話はないわよ」

「綺羅……」

「今度は私の話を聞いてくれるかしら?」

 

 ツバサは夏希の答えを聞かず話し出す。

 

 ある所に、人よりも努力をしていた女生徒がいました。その女生徒は努力の甲斐あって勉学と部活、その両方をそつなくこなしてました。二年に上がるある時、先生から生徒会長をやらないか、と誘われ女生徒は一言返事で生徒会長になる事を決めました。

 そして女生徒が会長になった年、他校との合同文化祭が行われる事が決まりました。相手校の生徒会長と連絡先を交換し、それから何度も一緒に出掛け、その年の文化祭は無事に成功に終わりました。

 文化祭が終わり、相手校の生徒会長と繋がりが希薄になったある日、高校の校長先生から中学を卒業したらスクールアイドルをやってみないかと誘われたのです。女生徒は相手校の生徒会長の事を忘れる為に、その提案を受け練習に励み始めました。

 そして生徒会長の任を外れた時、相手校の生徒会長から久し振りに遊びに誘われました。女生徒はその誘いに一言で返事し、当日、久し振りに会った時、確信したのです。

 あぁ私はこの人の事が好きなんだ、スクールアイドルで必死に埋めようとした心の穴は彼に会えないから生まれたんだ、と。

 それから何度も彼に誘われた彼女は、その全てに乗り、翌年の文化祭の夜、思い切って彼に自分のこれからについて告白しました。

 

「綺羅……それって……」

「相手がどう思ってるのかなんて、言ってみないと分からないものよ?」

「綺羅にはお見通しって訳か」

「あら? 佐渡君もじゃない?」

「かもな」

 

 夏希は照れたように頭を掻き、ツバサもキャンプファイヤーを眺める。

 

「なぁ、綺羅」

「ツバサ……ツバサって呼んで。私も……私も夏希って呼ぶから」

「分かった……ツバサ」

「夏希……」

「俺はツバサの事が」

「私は夏希の事が」

 

「好きだ」

「好きです」

 

 

 

「俺とツバサの話は終わりだ」

「それにしても夏希がツバサさんの事を苗字で呼んでるのは新鮮ですね」

「まぁ知り合った頃はね。それにしても懐かしかったわね」

 

 ツバサは夏希の肩に頭を持たれかけさせながら懐かしむように言う。夏希も同じ事を思ったようで頷き返す。

 二人の思い出話が終わると、それぞれは頷くなり、目尻に溜まった涙を拭いたりと様々な反応を示していた。

 それからその空気に耐えられなくなった夏希の一言でクリスマスパーティーが再開されたのだった。




友「いや~青春だね~」
夏「なんでゆーみんがいるんだよ!」
若「ほんとだ。友実姉がいる」
愛「てことは若葉さんも知らなかったんですね」
友「当たり前じゃん。私が勝手に来たんだから」
夏「迷惑甚だしいなオイ!」
若「まぁ来ちゃったもんは仕方ないから、四人でほんぺん(あとがき)やっていこうか」
愛「もうルビには何も言いませんよ」
友「それにしても今回は念願叶って夏希の個人回だったね」
夏「あぁ。思わぬ形で叶ったが、作者がちゃんと考えてくれてたみたいで良かったぜ」
若「確かに。68話で言ってた「良い感じの辻褄合わせ」が回収出来たね」
愛「話数にすると32話とか、長過ぎて誰も覚えてないと思いますけどね」
夏「まぁそれでも書いてくれた事はありがたいけどな。でだ、本題に移りたいんだが」
友「OK任せて。なんで私がここにいるかだよね」
愛「なんかノリが軽いですね」
若「まぁ友実姉だから」
友「実は先日、目出度いことに私が出ている「巻き込まれた図書委員」が無事に完結しましたー」
夏「嘘だろ!? 俺たちより後に始めたのに……」
愛「まさか負けるだなんて……」
友「ふふふ。私が女オリ主だからね。話の展開がさせやすかったんだろうね、きっと」
若「いや、普通にアニメ二期の話を丸々カットしたからでしょ。あと劇場版のも」
夏「俺らも二期が無かったら10カ月で終わってるしな」
愛「でも二期でやりたい事がたくさんあったから、それを二期でやらないとなると、番外編が増えて結局一年とかかかりそうですけどね」
友「でしょ?」
若「でもそっちもなんやかんやで50話近く行ったよね」
友「まぁね」
夏「俺らの50話ってどこだっけか?」
愛「夏合宿が始まった回ですね」
友「私の方は34話で始まったよ」
若「これ以話しても脱線しまくるから今回はここまでにしない?」
夏「だな。じゃあ今回はここまで」
愛「友実さんもお疲れさまでした」
友「バイバーイ」


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ぴんく〜by雪穂

明けましておめでとう!←


 最終予選ライブから二週間。日付はその年最後の日、十二月三十一日。「穂むら」の居間では穂乃果がいつものように炬燵に入って寛いでいた。若葉は既に着替え、出かけていた。

 

「っは、見逃した! どっちが勝った? 紅? 白?」

「ぴんく~」

「ピンク……?」

 

 穂乃果はウトウトして見逃した紅と白に分かれる歌合戦の結果を雪穂に聞くも、そんな雪穂も若干寝ぼけているのか曖昧な答えを返す。雪穂の答えに頭を傾げていると、テレビの画面から除夜の鐘の音が響く。

 

「穂乃果。海未ちゃんとことりちゃんが来てるわよ」

「あ、うん。今行くね」

 

 居間から出て海未とことりに年明けの挨拶をする。

 

「明けましておめでとう!」

「……まだ年明けてないよ……?」

「え? じゃあよいお年を?」

「それは別れの挨拶です」

 

 穂乃果の流れるようなボケに対し、ことりは困った様に、海未は呆れた様に突っ込む。

 

「それより穂乃果ちゃん。その格好で初詣に行くの?」

 

 ことりの言葉に自身の格好を見直す。部屋着に半纏を着ただけの、どう見ても外出する為の物でない服。穂乃果は慌てて着替える為に部屋に駆け上がって行く。

 

「やっぱり、今年は最後の最後まで穂乃果は穂乃果でしたね」

「えっと、来年も穂乃果ちゃんは穂乃果ちゃんだと思うよ?」

 

 海未が呆れながら言うとことりも同じ事を思ったのか、特に否定する事もせずに言う。そして時間が気になったのか、携帯を取り出して時間を確認するとちょうど日付が変わった所だった。

 

「あ……年が明けちゃった……」

 

 

 

 一方、先に出掛けていた若葉はと言うと。

 

「う~。なんで若葉は普段着なのよ」

「だって浴衣は持ってても晴れ着は持ってないし」

 

 晴れ着を着た真姫と一緒に、集合場所である神田明神に向かって歩いていた。

 

「私は普通の格好で良いって言ったのに……」

「でも似合ってるよ? 俺も今度詩音さんに着付けの仕方教えて貰おうかな……」

 

 真姫と腕を組んで歩いている若葉。二人の格好は違っており、先に言った通り真姫は赤を基調とした晴れ着、若葉は普段着だった。

 

「それにしても穂乃果は大丈夫だろうか」

「まさか穂乃果寝てたの?」

 

 真姫が呆れたように聞くと、若葉は出掛ける直前の穂乃果の様子を思い出す。

 

「一言声かけたけど、なんか船を漕いでたな」

「起こしてあげなさいよ……」

 

 若葉の言った光景が容易に想像が出来るのか、苦笑いで答える真姫。

 

「ねえ若葉」

「うん?」

「来年も、こうしていられるかしら」

「もちろん」

 

 真姫が不安そうに見上げて聞くと、若葉は笑顔で即答する。その答えに真姫は嬉しそうに笑うと若葉の肩に頭を預ける。

 

 

 

 その頃愛生人と凛はと言うと。

 

「なんか、私邪魔じゃない?」

「邪魔じゃないよ!」

「そうだよ。それに僕達は昔も一緒だったし」

 

 二人と花陽を加えた三人で神田明神に向かっていた。並び順は愛生人を真ん中に、右に凛、左に花陽となっている。周りからは両手に花状態の愛生人へ、偶に嫉妬の視線が贈られるも三人は気付いた様子もなく歩き続ける。

 

「今年はどんな年になるのかな?」

「さぁ? でも去年よりも楽しい年になると良いね」

「うん」

 

 愛生人の言葉に花陽と凛が頷く。そんな三人は集合場所に着くもまだ誰もおらず、連絡も何もないので単に早く着いただけ、と結論付ける。

 

「それにしても皆遅いにゃ~」

「いや、僕たちが早いだけだよ」

 

 愛生人が腕時計を見せながら言うと、凛は愛生人にへばり付く様にして確認し、納得する。

 

「やっぱり私お邪魔じゃないかな……」

 

 そんな二人を見て呟いた花陽の声は誰にも届かなかった。

 

「お待たせ」

「やっぱり皆普段着なのね」

 

 愛生人達が着いてから少し、道の向こう側から若葉と真姫が渡ってくる。そしてお互いに新年の挨拶を交わす。

 

「若葉さんってさり気ない気遣いも出来るんですね」

「愛生人は偶にバカにする発言をサラッと言うよね」

 

 道路を渡って来る際、真姫の手を取っている所を見て言うと、若葉が少し怒ったような笑顔で返す。

 

「う~着替え中に年が明けちゃうなんて~」

「ちゃんと出掛ける準備をしないからです。若葉からも何か言われなかったんですか?」

「お兄ちゃんは何も言わないで出掛けちゃったんだよ~」

 

 新年早々若葉と愛生人が茶番を繰り広げていると、角を曲がって穂乃果、海未、ことりの三人が現れる。

 

「若葉さん、穂乃果さんを放置してきたんですか?」

「まさか。一応出掛ける時に声はかけたんだよ」

 

 穂乃果達の会話が聞こえた愛生人が若葉に聞くも、若葉は頬を掻きながら答える。

 

「花陽ちゃん、凛ちゃん、愛生人君に真姫ちゃん。明けましておめでとう!」

「おめでとうございます」

「おめでとうにゃ!」

「若葉もおめでとうございます」

「うん、海未とことりも今年もよろしくね」

 

 穂乃果に自然に無視された若葉には海未が挨拶し、今集まれるメンバーが集まった事を確認し、神田明神へと階段を上る。

 

「凛ちゃんのスカート可愛いね~」

「でしょ! クリスマスに買って貰ったんだ~」

 

 若葉は後ろから聞こえたことりと凛の会話を聞いて隣を歩く愛生人の脇を肘で突く。その意味合いが分かった愛生人は、そっちは何をプレゼントしたのか、と視線で問いかけるも、若葉は正面を向き視線を逸らす。

 

「あら、高坂君達じゃない」

「あ、ツバサさん。明けましておめでとうございます」

「明けましておめでとう」

 

 若葉が正面を見るとA-RISEの三人と目が合った。年越しの挨拶を交わしすれ違う。その際、英玲奈に呼び止められた為、若葉と愛生人は立ち止まる。

 

「そう言えば二人は佐渡を知らないか?」

「夏希ですか……いや、自分は知らないですね。愛生人は知ってる?」

「いや、僕も知らないですね。それよりそれが原因ですか? ツバサさんの機嫌が悪いのは」

「あぁ、神社で会えると思っていたのか、一時別行動をしていたのだがな。見付からなかったのか、戻って来てからはご機嫌斜めなんだ」

 

 愛生人はツバサの機嫌が悪い理由が分かり、一人頷く。

 

「それにしても一、二年生揃って初詣か」

「はい。英玲奈さん達もですか?」

「ええ。地元だしね」

「英玲奈。行くわよ」

 

 ツバサに呼ばれ、英玲奈は若葉と愛生人の元から離れる。

 

「そうだ。これからも大変だと思うが頑張れ」

「言われなくても」

「当たり前です」

 

 英玲奈が振り返りざまに言った言葉に、若葉と愛生人は胸を張って返す。英玲奈もそれを見てフッと笑うと穂乃果達と話していたツバサ、あんじゅと合流して帰る。

 

「お兄ちゃん達英玲奈さん達と何話してたの?」

「ん? あぁ応援された、かな?」

「ですね」

 

 後ろから追い付いた穂乃果が若葉と愛生人に話の内容を聞くと、二人は夏希の事を伏せて話す事にした。

 

「そう言えば夏希君来れないんだっけ」

「なんでも外せない用事があるとか」

「外せない用事ってなんだろう?」

 

 それから八人の話題は夏希がどこにいるのか、と言う話になった。

 

「独り暮らしだから実家に帰ってるとか?」

「あ~確かにそれはありそう」

「でも夏希さんの実家ってどこにあるんでしょうね。少し気になりません?」

 

 愛生人が振り返りながら聞くも、誰も気にならないのか頷く人はいなかった。そんなメンバーの対応に愛生人は凛の横にスッと移動する。凛はやや落ち込み気味の愛生人の腕に自分の腕を絡ませる。

 

「それにしても凄い人の数ね」

「だね。まぁ初詣だし、この近くにはここしかないからね」

 

 神社の人だかりを見て若葉は真姫の手を握って答える。真姫は握られた手を見て笑う。

 

「逸れたら大変だしね」

「な、そんな事しなくても逸れたりなんかしないわよ!」

「じゃあ手、離す?」

「……このままが良い」

 

 若葉の意地の悪い笑みの質問に、真姫は繋がれたままの手を見て答える。

 

「それじゃあ皆と合流するよ」

 

 若葉は少し前を行く穂乃果達を見ると、真姫の手を引いたまま人の合間を縫って進んで行く。真姫も引かれるままに若葉の後を着いて行く。

 

「あ、お兄ちゃんに真姫ちゃん! またお兄ちゃんが迷子になってないか心配したんだよ!」

「さすがの俺もここで迷子にはならないよ」

 

 合流するや否や穂乃果が怒った様に言うも、若葉はそれに苦笑いで返す。そして話す事少し、賽銭箱の前に辿り着く。お賽銭入れ、各々手を合わせる。

 

「かよちんは何お願いしたの?」

「秘密。ことりちゃんは?」

「もちろん「ラブライブ!」優勝だよ」

「さ、後ろもつっかえてるから早く退こうか」

 

 若葉の掛け声で賽銭箱の前から移動しようとすると、海未はまだ手を合わせている穂乃果を見た。

 

「穂乃果……?」

「穂乃果さん長かったですね」

「また欲張りなお願いしたんでしょ」

 

 真姫の言葉に穂乃果はそんな事ない、と返す。

 

「ただ、十二人で最後まで楽しく歌えますようにって」

「そうだね」

「でも長すぎにゃ」

「だって一番大切な事だもん。だから念入りに」

 

 ともう一度穂乃果が手を合わせたので、若葉が手を引いて賽銭箱の前から移動する。若葉に続き他のメンバーも移動をする。

 

「あれ? 花陽は?」

 

 移動した後、真姫は花陽がいない事に気付き辺りを見回す。それに倣って皆も見回し、海未が人ごみの向こうを差す。

 

「あ、あそこにいます」

 

 海未の差した方に人ごみの頭越しに花陽の手だけが見えた。

 

「ちょっと迎えに行ってくる」

「お兄ちゃんはここにいて!」

「若葉は行ったらいつ帰って来るか分からないから、行っちゃダメ!」

 

 若葉が花陽の元へ行こうとすると、穂乃果と真姫に止められる。理由が理由なだけに何か言い返そうとするも、他のメンバーも似た様な視線を送って来ているのに気付き、口を閉じる。

 

「それじゃあ僕が行ってきますね」

「アキ君気を付けてね」

 

 若葉の代わりに愛生人が屈伸をしてから人ごみに向かって行き、花陽を連れて帰って来る。そして八人は希に言われた神社裏に向かう。

 

「あ、希さんいましたよ」

「希ちゃ~ん」

 

 希と新年の挨拶を交わす。

 

「忙しそうだね」

「毎年こんな感じよ。でも今年はお手伝いさんがおるからね」

 

 若葉が横を見るとにこが段ボールを持ち上げていた。

 

「希~、これそっち~?」

「にこちゃん!?」

 

 凛がにこの名前を呼ぶと、にこは驚いて持っていた段ボールをから手を離す。

 

「っと、にこっち落とすなよ。危ないだろ」

 

 その落ちた段ボールが地面に落ちる前に夏希が段ボールを捕る。夏希の登場に驚いたのは若葉と愛生人だった。夏希の元に歩み寄ると肩に腕を回し、少し移動する。

 

「夏希。ツバサさんに会わなかった?」

「ん? 会ったぞ」

「じゃあなんでツバサさんの機嫌が悪かったんですか?」

「機嫌悪くなったんだ……」

 

 愛生人の言葉に夏希はあぁ、と納得し段ボールを持ち直す。

 

「ツバサと会って少し話したからな、それだけで終わっちゃった事に機嫌悪くしたんだろ。ちゃんと穴埋めするから大丈夫大丈夫」

 

 夏希はそれだけ言って希たちのもとへ戻る。三人が戻ると絵里も合流しており、アイドル研究部が勢揃いした。

 

「ねぇねぇ若葉君! 真姫ちゃんとにこちゃんでユニット作れそうじゃないかにゃ?」

「ユニット?」

 

 戻って早々凛が若葉に言うと、若葉はにこと真姫を見て少し考える。

 

「確かに和風ユニットとか出来そうだね」

「若葉も乗らないでよ!」

「私達は色物じゃないわよ!」

 

 若葉も頷いて賛成すると、真と姫にこは穂乃果へと同じ突っ込みをする。

 

「ほらほら、いつまでも話してないで早く戻るわよ」

「はいよっと」

「ほなまた」

 

 そう言って神社に向かって歩く四人を見送る八人。

 

「なんか姉弟みたいだね」

「て事は絵里さんか希さんが長女ですね」

「にこは末っ子っぽいよね」

「じゃあ夏希君は三つ目?」

 

 凛のふとした一言から三年生の姉弟構成の話になる。しかしそれは花陽の一言で終わった。

 

「でも、あと三カ月もないんだよね。三年生……」

「花陽、その話は「ラブライブ!」が終わるまでしないと、この前約束したはずですよ」

「分かってる……でも」

 

 海未の言葉に花陽は少し俯きながら頷く。後ろにいた他のメンバーも心なしか少し暗い顔をする。

 

「三年生の為にも「ラブライブ!」優勝しようってここまで来たんだもん! 頑張ろう最後まで!」

 

 穂乃果の言葉に皆も顔を上げて笑い、頷く。

 

 

 

「お姉ちゃ~ん!」

 

 穂乃果達と別れた絵里達の元に亜里沙が駆け寄って来る。絵里は抱き着いて来た亜里沙を抱き止めると何をお願いしたのか聞く。

 

「亜里沙。何お願いしてきたの?」

「あのね。音ノ木坂に入学して、μ'sに入れますようにって」

「……そう」

「? じゃあ雪穂が待ってるから行くね!」

 

 亜里沙はそう言うと絵里から離れ、来た道を戻って行く。そして亜里沙が見えなくなったタイミングで希が切り出す。

 

「やっぱり、一度皆と話し合った方がええんやない?」

「そうだな。これからの事は大事だしな」

「そうね」

 

 

 

 翌日。穂乃果と若葉は生徒会の仕事の為に登校していた。

 

「お兄ちゃ~ん。なんで冬休みなのに仕事があるの~」

「冬休みだから仕事があるの。普段だと出来ない事をやるんだよ」

「う~」

 

 若葉の言う事に納得はいってる穂乃果だが、寒い中朝から登校する事に対しての不満は少なからずあるようで、手袋を嵌めた手を若葉の顔に近付ける。

 

「そんなに寒いの?」

 

 穂乃果の手を避けながら聞くと、穂乃果は手に息を吐き当てながら頷く。そんな穂乃果を見て若葉は自身の手袋からホッカイロを取り出すと、穂乃果に渡す。

 

「あー! お兄ちゃんズルいー!」

「ズルくない。ちゃんと防寒対策しない穂乃果が悪い」

 

 穂乃果はホッカイロを受け取りながらも、若葉に非難の視線を向ける。

 

「ほら、早くいかないと海未にまた怒られるよ」

「え! もうそんな時間!?」

 

 若葉の言葉に穂乃果は慌てて時計を確認し、時間ギリギリと分かり駆け出す。若葉も穂乃果の後を追って駆け出す。

 そして生徒会室に駆け込むと、既に海未、ことり、夏希の三人が資料の整理を始めようとしていた所だった。

 

「ゴメン! 遅れちゃった!」

「お待たせ~」

「時間ギリギリじゃないですか! 若葉も着いていながら何をして」

「まぁまぁうーみん、そこで止めないと作業が進まないぞ~」

 

 海未の説教が始まりそうになった所で夏希がそれを止める。夏希の制止の言葉に海未も渋々頷き椅子に座り作業を始まる。若葉と穂乃果もそれぞれの席に座ると作業を始めていく。

 

 それから数時間。その日の生徒会の仕事を終えた穂乃果、海未、ことりはそのままアイドル研究部部室に、若葉と夏希は屋上へと向かった。

 

「よ、もう始まってるか?」

「まだ始まってませんよ」

「そりゃ良かった。二回も遅れたくないからね」

 

 愛生人が答えると若葉は安心した風に息を吐く。それをみた愛生人は夏希に事情を聞くと、夏希は朝あった事を愛生人に話す。

 

「若葉さんが遅れるなんて珍しいですね」

「まぁね。今冬休みだし」

 

 若葉が軽くストレッチしながら答え、屋上を眺める。そこはいつもμ'sが練習しているが、今は部室で着替えている為誰もいない。

 

「こうして見ると屋上って広いんだな」

「ですね。いつもは一部しか使わないし、皆がいるから狭く感じますもんね」

「まぁ、よく考えるとここにステージ作ってライブしたからね」

 

 三人が屋上を眺めながらしみじみと言葉を連ねる。

 

「高校生が揃って何言ってるのよ」

 

 三人が話していると、後ろの扉から着替えていたメンバーが出て来る。それから軽く身体を動かしてから柔軟を始める。

 

「そう言えば、決勝は選曲とか全部自由だけど、その辺どう考えてるの?」

「え、自由なの?」

「はい、曲だけではありません。衣装も踊りも曲の長さも基本的に自由です」

 

 真姫の背中を押している若葉の言葉に穂乃果が驚いた声を上げる。

 

「とにかく、全代表が一曲ずつ歌いきって」

「会場とネット投票で優勝を決める」

「完全投票制と言うシンプルなシステムだってよ」

「良いんじゃないの? 分かりやすくて」

「それで出場グループの間ではいかに大会までの間に印象付けておけるかが重要だと言われています」

 

 穂乃果以外のメンバーが「ラブライブ!」決勝の情報を話し出す。

 

「全部で五十近くのグループが出てるからね、印象付けは大切だよ」

「ネット投票の人達は目的のグループしか見なかったりするからね」

「確かに、全グループを一度に見るのは辛いかも」

「μ'sはA-RISEを破ったグループとして注目されていますが」

「うん。もう一声欲しいよね」

「でも、事前に印象付けておくなんて出来るの?」

 

 穂乃果は今までの話から印象が大事、という事が分かりその方法を聞く。それに答えたのは花陽だった。

 

「はい。それに必要なのはキャッチフレーズと言われています」

「取り敢えずその話は後にして、今は練習するよ。話はそれから」

 

 若葉は話が長くなると思い、花陽の説明を中断、練習に取り組み始める。

 そして練習後、部室で花陽がパソコンを起動して説明を始める。

 

「出場チームは、このチーム紹介ページにキャッチフレーズを付けられるんです」

 

 花陽はそう言うと、いくつかのグループを例として取り上げる。

 

「皆よく考えてるわね」

「そう言われてみればμ'sにはキャッチフレーズないですね」

 

 愛生人の言葉に全員が顔を見合わせる。確かに今まで誰も考えた事がなかったのだ。

 

「キャッチフレーズかぁ。それってμ'sを一言で表すんだよね」

 

 穂乃果の一言に皆うーん、と考えるも、良いキャッチフレーズが思い浮かばずその日は解散となった。

 




若「明けましておめでとうございます」
夏「いやいや! 新年の挨拶はこのタイミングじゃねえだろ!」
愛「でも本編の時系列では間違ってないですよ」
夏「リアルの時期を考えろよ」
若「そんなの読者の読んでる時期によるでしょ」
愛「そういえば、にこさんと真姫ちゃんの和風ユニット結成されましたね」
夏「ユニットは組んでないけど、Blu-rayの特典で「ずるいよMagnetic today」歌ってるしな」
愛「そうそう、作者が若葉さんと真姫ちゃんが腕組んでる場面で胸糞悪くなって書き換えてやろうか、って言ってましたよ」
若「いや、作者が何言ってんだよって話だよね? それ」
夏「まぁ書いてるの作者だしな」
若「さて、本編で話せる事はもうないかな?」
愛「じゃあ珍しくこの文字数で終わりですか?」
?「いやいや。まだ終わらないぜ!」
夏「お、お前は! ……誰?」
愛「そのリアクションしといて知らないんですか!」
若「と、言うわけで。今回特別ゲストとして「ラブライブ!~一人の男の歩む道~」から香川ナオキが来てくれました~」
ナ「どうも初めまして。香川ナオキだ、よろしく」
夏「いやいやいや! どうしているんだよ!」
愛「そうですよ! 完全に別作品じゃないですか! コラボしたわけでもあるまいし」
ナ「二人ともナイスツッコミ!」
夏「そういう事が聞きたいんじゃねぇ!」
若「実は今回、ナオキが主役の作品がお気に入り200件を突破したお祝いで記念回を書いたんだけど」
愛「まさか、一方的に僕達が出たとか、そういうのですか?」
ナ「いや、若葉だけ」
若「そういう事」
夏「どういう事!?」
愛「kwsk」
若「作家間で話し合いが行われた結果、真姫の旦那役としてウチの作者が軽いノリで「旦那の名前が無いなら、若葉で良いんじゃね?」て言ったら、ナオキの作者もノリノリで合意してくれたから友情出演枠で出てきたんだよ」
夏「旦那の名前が無いとか、作者かよ」
ナ「その流れ実際に笑い話であったんだからやめろよ」
愛「あったんだ……」
若「てなわけで、ナオキ主演の「ラブライブ!~一人の男の歩む道~」著シベリア香川もよろしくね! ナオキも今日はありがとう」
ナ「じゃ、俺帰るわ」
愛「アッサリ帰りましたね」
夏「つかナオキの口調はあれで合ってたのかよ」
若「そこは心配しないで。このほんぺん(あとがき)、実際に通話しながら書いてるから、口調は合ってるよ」
愛「今回と言い、前回と言い、なんかゲスト多いですね。これは次回も誰か来る流れなのか!?」
若「いや、それはない」
夏「あれま」
愛「そうなんですか。それじゃあ今回はここまでにしましょう」
『バイバーイ』


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いや、特にはby若葉

サンシャイン!!の方も始めたのでそちらもよろしくお願いします!(宣伝)


 穂乃果と若葉がキャッチフレーズを考えながら帰っていると、突然若葉の携帯が鳴る。画面を見ると夏希の名前が表示されていた。

 

「もしもし夏希? どうしたのさ」

『あぁいや、大した事じゃないんだが今ほのっちといるか?』

「穂乃果と? いるけど、どうして?」

『ちょっと来て欲しいんだが』

 

 若葉は電話をしながら穂乃果を見ると、穂乃果は首を傾げる。若葉の言葉から自分が話題に上がっている事は分かってはいるも、何の話をしているのかは分からない。

 若葉は電話を切ると穂乃果に訳を説明し、夏希に言われた場所まで向かう。

 

「おーい若。こっちこっち」

「まったく、急に呼び出して一体何の話?」

 

 ベンチに座っている夏希の元へ二人が駆け寄ると、隣にツバサがいるのを見て足を止める。

 

「悪いな、ツーちゃんがどうしてもほのっちと話したいって言ってな」

「わ、私と?」

 

 ツバサが穂乃果と話がしたいと聞くと、突然の事に穂乃果は驚く。そして夏希は立ち上がると座っていた場所に穂乃果を座らせ、若葉の首に腕を回すとそのまま立ち去る。

 

「ゴメンなさいね。どうしてもリーダー同士話しておきたくてね」

「いえ、お兄ちゃんも分かっていると思いますから」

「練習は頑張ってる?」

「はい! 本選ではA-RISEに恥かしくないライブをしようって、皆張り切ってます」

「そう」

 

 そう言ってツバサは一度言葉を切る。穂乃果は心配そうにツバサを見て気になっていた事を聞く。

 

「あのA-RISEは……」

「心配しないで、ちゃんと練習してるわ。「ラブライブ!」って目標がなくなってどうなるかって思ったけど、やっぱり私達は歌うのが好きなのよ」

 

 ツバサの言葉に穂乃果は良かった、と少し笑う。ツバサはそのまま正面を見ながらただ、と続ける。

 

「ただどうしても聞いておきたくて。私達は最終予選で全てをぶつけて歌った。そして潔く負けた。その事に何の蟠りもない……て、思っていたんだけどね。ちょっとだけ引っかかってるの。なんで負けたんだろうって」

「そう、なんですか」

「理由が分からないのよ。確かにあの時、μ'sは私達よりも多くのファンの心を掴んでいたし、パフォーマンスも素晴らしいライブだった。結果が出る前に私達は確信したわ」

 

ツバサはそう言うと少し間を空けて続ける。

 

「でもなぜそれが出来たの? 確かに努力はしたんだろうし、練習も積んできたのは分かる。チームワークも良い。けどそれは私達も一緒。むしろ私達はあなた達よりも強くあろうとしてきた。それがA-RISEの誇り、スタイル。だから負けるはずがない。そう思っていた。けど負けた。その理由が知りたいのよ」

 

 ツバサは穂乃果を見ると、μ'sを支えるもの、原動力がなんなのか、それを穂乃果に聞く。真剣な眼差しで聞いてくるツバサに穂乃果は少し困った表情を浮かべた後、ごめんなさい、と頭を下げる。

 

「私よく分からなくて……」

 

 

 

「で、なんで俺達はここにいるの?」

「何でもなにも何話してるか気になるだろ?」

「いや、特には」

 

 若葉はそう言いながらも遠くに見える二人を眺める。夏希は若葉の行動を見て呆れた様に息を吐くと、穂乃果とツバサに背を向ける様に手摺に寄り掛かる。

 

「どうやらツーちゃんはμ'sを動かしてるもの、支えてるものを聞いてるみたいだな」

「夏希聞こえるんだ」

「俺の聴力をなめるなよ?」

 

 夏希がドヤ顔を浮かべて言うと、若葉は両手を丸めて目に当てる。

 

「俺も双眼鏡でもあれば読唇術紛いの事やって、何となくは分かるんだけどな~」

「読唇術ってお前……」

 

 今度は呆れた視線を送る夏希。それから遠目で穂乃果とツバサが握手したのを見て若葉と夏希が二人に近付く。

 

「話は終わったみたいだな」

「ええ。なっ君もわざわざセッティングありがとね。それじゃあ高坂さんに高坂君も今日はありがとうね」

 

 ツバサは手を振り夏希を連れてその場から去って行く。

 

「お兄ちゃんはさ、μ'sを突き動かしてる原動力ってなんだと思う?」

「μ'sを動かしている原動力ねぇ……やる気、とか?」

「やる気かぁ……」

 

 帰路につきながら穂乃果は先程ツバサに聞かれた事を若葉に聞く。若葉は少し考えた後に疑問形で返す。穂乃果はその答えに納得がいかなかったのか、難しい顔をしたまま「穂むら」に入って行く。

 

「あ、お姉ちゃんにお兄ちゃんおかえり~」

 

 二人が中に入ると居間から雪穂が顔を出す。穂乃果はそれに軽く返して二階の自室に向かう。

 

「あれ、雪穂は勉強中?」

「うん。受験が近いからね」

 

 若葉は居間に入ると雪穂の隣に座る。

 

「今日はこっちで勉強してるんだ」

「うん。あ、そうだお兄ちゃん。ここ教えてよ」

 

 雪穂が解けない問題を若葉に聞く。若葉は問題を見て分かり易く教える。それから少しの間雪穂の勉強を見ていた若葉は、ふと気になり雪穂に質問をする。

 

「ねぇ雪穂。雪穂から見てμ'sってどう映ってる?」

「どうしたの? 急に」

「いいから答えて答えて」

 

 若葉が半ば急かす様に聞くと、雪穂はシャーペンを顎に当て少し考える。

 

「う~ん、心配。あとは危なっかしい。頼りない、ハラハラする」

「一応地区代表なんだけどね……」

「そうなんだけどね~。でもなんか心配になっちゃうんだよね~。けどな~んか応援したくなっちゃうんだよね」

「それは身内だからって訳じゃなく?」

「うん」

 

 若葉が聞くと雪穂は即答する。雪穂の答えに若葉はふ~んと返す。その時二階から穂乃果が階段を駆け下りて来る。

 

「お兄ちゃん! 雪穂! お母さん知らない!?」

「お母さんなら台所にいるけど……」

 

 雪穂が答えると穂乃果は駆け足で台所に向かう。居間にいる二人は穂乃果の行動に顔を見合わせる。

 

 翌日。店の前の通りに穂乃果の呼び掛けで「穂むら」に集められたアイドル研究部のメンバーと、臼と杵のセット。

 

「はい若葉、これね」

「ありがとっ!」

 

 若葉は裕美香からもち米が入った容器を受け取ると、臼の中に米を引っ繰り返し、そばでは穂乃果が赤い半被を着て杵を構える。若葉は穂乃果の準備が整ったのを確認すると、青い半被を着て臼の横に水の入った桶を置き、腕捲りをしてしゃがみ込む。

 

「それじゃあお兄ちゃん行くよ!」

「あいよ。俺は穂乃果に合わせるから、好きな様に突いてね」

「うん!」

 

 穂乃果は頷くと持っていた杵を振り下ろし、持ち上げる。若葉はその間にもち米をクルリと返す。双子なだけあってその息はピッタリ合っていた。

 

「あぶなーい!」

 

 それから暫く、二人が餅を突いていると、突然若葉は横から突き飛ばされる。若葉はうまく受け身を取ると、自分を突き飛ばしたまま抱き着いている人物を見る。

 

「って亜里沙ちゃん!?」

「ダメです! 兄妹で喧嘩はダメです!」

 

 亜里沙の言葉でどういう状況かを把握した全員は一斉に笑い出す。いきなり笑い出した皆に亜里沙は不思議そうな顔をする。若葉は立ち上がりながら、一緒に立ち上がった亜里沙に優しく微笑みかけながら説明する。

 

「亜里沙ちゃん。これは餅つきって言ってね、別に喧嘩をしていた訳じゃないんだよ」

「おもち? スライム?」

 

 若葉が突かれた小さく千切って餅を皿によそい、亜里沙に渡す。亜里沙は渡された餅を見て珍しい物を見る目を向ける。そして花陽に勧められるままに食べると、目を輝かせる。

 それから突き手を若葉に、返し手を夏希に交代して餅つきが再開される。

 

「それじゃあ夏希。早く行くよ」

「俺が素人だって事を考慮した速さで頼むな」

 

 二人の徐々にスピードが上がる餅つきを見て、真姫が発案者の穂乃果に聞く。

 

「それにしてもなんで餅つき?」

「在庫処分?」

 

 希の言葉に穂乃果は違うよー、と否定する。

 

「考えてみたら、学校の皆に何のお礼もしてないなぁって思って」

「お礼?」

「うん。最終予選突破できたのは皆のお蔭でしょ? でもそのまま冬休み入っちゃって、お正月になって」

「だからってお餅にする必要はないじゃない」

 

 にこが餅な事に疑問を持つも、穂乃果は他に何も思い付かなかった、と返し続ける。

 

「それに学校の皆に会えばキャッチフレーズが思い付くかもしれないし」

「思い付く……お餅だけに!」

 

 穂乃果の言葉でにこが思い付いた様に言うと、皆が一斉ににこから距離を取る。それはにこの隣で箸と皿を構えた花陽から、高速餅つきをしていた夏希と若葉まで揃っての行動。

 

「にこちゃん寒いにゃ」

「さすがに今のはないですね」

「何よ! ついよ、つい!」

 

 凛と愛生人が手を取り合い、先程のギャグに辛辣なコメントする。にこもつい魔が差したと叫ぶように言う。そして、再び高速餅つきに戻ろうと若葉が杵を持つと、夏希から待ったがかかる。

 

「なぁ若、今量産しても意味なくないか? まだ学校のやつ誰も来てないし」

「でもそろそろ来る頃だと思うよ? ほら」

 

 若葉が遠くの道を差すと、そこには翔平と利幸が並んで歩いて来ていた。その反対側からはヒデコ、フミ、ミカを先頭に穂乃果達の友達が歩いて来ていた。

 

「よっす若葉明けおめ」

「今年もよろしくな」

「もう盛り上がってるね~」

 

 全員が揃い突き手を利幸、返し手が若葉になり夏希と若葉以上の速さと正確さで餅を突いていく。集まった人達はそれを見て写真や動画を撮っていたり、餅を醤油やきな粉で食べたりとお餅パーティが始まった。

 

「皆来てくれてよかったですね」

「冬休みなのにずいぶん集まったわね」

「きっと皆一緒だからだよ。皆がいて、私達がいて、だからだと思う」

 

 夕方、片付けをしながら海未、絵里、穂乃果が話していた。若葉はそれを聞きながら臼と杵を家の中にしまう。

 

「それがキャッチフレーズか?」

「う~んもう少しで出て来そうなんだけどな~」

 

 夏希の言葉に穂乃果は喉元に手を置くも、言葉が上手く出て来ないのか、言葉に出来ないでいる。

 そして片付けが終わり練習をする為、既にお馴染みとなっている神田明神に来ていた。

 

「はぁ。さすがにお餅つきの後の階段ダッシュはキツイや」

「でも穂乃果は自己ベスト更新だよ」

「それに今日は階段ダッシュで終わりなんだから、身体を休める為に境内でも歩いて来な」

 

 夏希に言われた穂乃果は、ほぼ同時に階段ダッシュを終わらせた真姫、ことり、花陽の三人と一緒に境内を歩く。境内を歩いていた四人は、境内の一部に掛けられた多くの絵馬を見つける。

 

「見て見て! たくさんの絵馬!」

「本当だぁ!」

 

 四人は駆け寄り、絵馬を見ていく。そこに書かれている願い事は様々で

 

『お金が溜まりますように』

『とにかく頑張る!』

『彼女が出来ますように』

 

 などといったものが掛けられていた。

 

「ここにいたのね」

「あ、海未ちゃん」

 

 四人が絵馬を見ていると、他のメンバーも絵馬の元へとやって来る。

 

「あ、見てください。これ」

 

 皆が海未の見付けた絵馬を見るとそこには

 

『μ'sがラブライブのステージで最高のパフォーマンスが出来ますように!! がんばれー! μ'sだいすきっ!』

『μ'sをみて、音ノ木坂に入りたいと思いました。μ'sがラブライブで優勝できますように。そして音ノ木坂入学してμ'sに入れますように。μ's大好き! 希先輩大好き!』

『りんちゃん輝け!! 世界一だよ!! ニャー!!』

 

 とμ'sを応援する絵馬が多数掛けられていた。穂乃果はその中に雪穂と亜里沙の絵馬を見つけ、今までの事を思い出す。

 

「そうか。分かった、そうだこれだよ! μ'sの原動力。なんで私達が頑張れるのか、頑張ってこられたのか。μ'sってこれなんだよ!」

 

 穂乃果は絵馬を手で示すと振り返る。

 

「一生懸命頑張って、それを皆が応援してくれて、一緒に成長していける。それが全てなんだよ。皆が同じ気持ちで頑張って、前に進んで、少しずつ夢を叶えていく。それがスクールアイドル。それがμ'sなんだよ!」

「皆の力」

「それがμ's」

 

 穂乃果の言葉に絵里と海未が繰り返す。そして皆の中でμ'sのキャッチフレーズは決まり、紹介ページに書き込まれた。

 

 

 

 μ'sがキャッチフレーズが提出した翌日、UTX高校の大型ディスプレイに提出済みのグループのキャッチフレーズが流れていく。

 

『No.12 μ's みんなで叶える物語』

 




【音ノ木チャンネル】
夏「キャッチフレーズ決まったな」
若「そんな事より!」
夏「そんな事じゃねぇよ!」
友「まぁまぁ夏希さん落ち着いて下さい」
愛「あれ? なんで友香ちゃんがここに?」
若「前回、前々回ってゲストが来たからね。せっかくだから来て貰ったの」
友「はい。お姉ちゃんが静岡県に行っちゃって寂しいんですよ」
愛「て事は次回も?」
友「あ、いえ。今回だけです」
若「まぁ友香もいるけど、話す事はあるから話していくよ〜」
夏「話す事あるならゆかりん呼ばなくても良かったんじゃ……」
愛「一応本編に出てきた絵馬は、作者が中の人が考えたやつじゃ? って思ったやつです」
友「ここで重要なのが「あくまで作者がそうだと思ったやつ」なんですよね。ネットとかで調べれば正確な事が分かりそうな事なのに、それをしない作者マジ作者」
若「はいはいそんな事言わないの」
愛「そう言えば若葉さんって、読唇術使えるんですか?」
若「まぁ基本的なものなら」
友「これで真空状態の場所でも安心ですね!」
夏「普通そんな所行く事ないけどな」
愛「ちなみに最後の「No.12」は音ノ木坂学院のアイドル研究部の部員数を現してたりします」
夏「アニメだと何番なんだっけ?」
若友愛『さぁ?』
夏「おい!」
若「チャットマッテテね。今見返してくるから」
愛「あ、若葉さんがおもむろにノートパソコンを取り出した」
友「そしてアニメのBDをセット!」
若「イン!」
夏「この流れ何よ?」
(どんなときもずっと〜♪)
夏「おい、もうそのシーン終わっただろ?」
若「待って。もう少しだから!」
『次回のラブライブ! 私たちが決めたこと』
夏「もう次回予告なんだが……」
愛「夏希さん、静かに!」
『〜♪』
夏「なぁ、おい」
友「夏希さん今いい所なのでお静かに」
『112……113……』
夏「もう次の話始まってんじゃねぇか!」
若友愛『あ……』
若「なんで電源落とすのさ!」
愛「見たかったのに!」
友「夏希さんのケチ!」
夏「それで? 何番なんだったんだ?」
若「あぁ11番だったよ」
愛「さ、早く続き見ましょう」
友「そうしましょう」
夏「まったく、お前らな。見るならせめてこれが終わるまで待てよ……」
若「分かった」
愛「それでは終わりましょう」
友「それじゃあ皆バイバーイ」
若「さ、続きを見よう」
夏「適当だな……それじゃあ皆さんまた次回!」


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だから、その、色々教えてね。先輩by雪穂

タイトルが意味深?
気のせいですよ


 月日は流れ、音ノ木坂学院の受験の結果発表の日。掲示板の前で雪穂と亜里沙の二人は受験票を握りしめながら自分の番号を探していた。

 

「118、あった!」

「私もあった!」

 

 自分の番号が見付かった二人は嬉しさのあまりその場で抱き合う。

 

「やったよ! これで音ノ木坂だよ! 私達、音ノ木坂の生徒だよ! μ'sだよ!」

「うん!」

 

 遠くから眺めていた若葉と夏希、絵里はそんな光景を見ていた。

 

「どうやら受かったみたいだな」

「だね」

「お姉ちゃ~ん! μ'sだよ! 私μ'sに入るー!」

 

 亜里沙は絵里に駆け寄り目の前で止まる。

 

「雪穂もおめでとう」

「うん……」

 

 若葉が三人のもとから離れ、一人で立っている雪穂の隣に行く。雪穂は若葉の祝いの言葉に上の空で答える。若葉は心配そうに雪穂の顔を覗き込む。

 

「μ's、か」

「どうしたの?」

「ねぇお兄ちゃん。μ'sって三年生が卒業したらどうするの?」

 

 雪穂の唐突な質問に若葉は顎に手を当て考える。

 

「三年が卒業したら、か。どうするんだろ」

「お兄ちゃんはどうしたいの?」

「俺は……」

 

 若葉はそこで 言葉を切り空を見上げる。雪穂もつられて空を見上げる。空は青く広がっていた。

 

 

 

「ただいま」

「お帰り、どうだった!」

「うん受かったよ」

 

 雪穂は一人、玄関の扉を潜る。音ノ木坂で一緒だった若葉は夏希、愛生人とともに姫子に呼ばれ一緒には帰ってきていない。

 

「ねぇお姉ちゃん。μ'sって、三年生が卒業したらどうするの?」

 

 雪穂は祝う穂乃果に若葉と同じ質問をする。穂乃果も若葉同様、答えを返す事は出来なかった。

 

 

 

 一方、姫子に呼ばれた若葉、夏希、愛生人の三人は外に設営されたテントの下で合格者に入学案内や他数点の書類を渡していた。

 

「それにしても、雪穂ちゃんも亜里沙ちゃんも受かって良かったですね」

「あぁ、だな。これで若もエリチも一安心ってとこだな」

 

 愛生人と夏希が談笑している中、若葉だけは黙々と渡す作業をこなしていた。妹の受験合格の話に若葉が乗ってこない事に違和感を覚えた二人は、不思議そうに首を傾げ、理由を愛生人が聞く。

 

「若葉さん、どうしたんですか?」

「え? 何が?」

「何が? じゃねえよ。さっきから何か考え事してんだろ」

 

 若葉は夏希の言葉に少し躊躇いながら頷き、先程雪穂に聞かれた質問を二人に話す。二人は若葉から話を聞くと、途端に黙り込んでしまう。

 

「それでさ、二人はどう思う?」

「う~ん、僕はこのままμ'sの名前は残したままでも良いと思いますけど。それに既に「音ノ木坂のスクールアイドルμ's」って一種のセールスポイントになってますし」

「やっぱそうだよね~」

 

 愛生人の言葉に若葉は頷くも、どこか納得のいってない表情だった。夏希はそんな若葉の態度に頭を掻くと溜め息を吐く。

 

「その様子だと若は違うみたいだな」

「うん……確かに名前を残した方が良いのは分かってるけど、なんだろう、分かんないや」

 

 若葉は頭を掻きながら言うも、いまひとつ纏まらない自分の考えを話す。夏希と愛生人は要領を得ない若葉の言葉に再び首を傾げる。

 

「ほらお前ら。話してないで手を動かせ。さっきから殆ど私が対処してんだからな」

「いや、本来なら生徒に頼むのもどうかと」

「ほら夏希。良いから手を動かす」

 

 若葉は、姫子に文句を言い返す夏希に軽く蹴りを入れ、自分の仕事に戻る。夏希も自分に振り分けられた仕事に取り掛かる。

 そして夕方になる前に若葉達の仕事は終わり、若葉と夏希は屋上に上がって行った。

 

「そんで若、考えは纏まったか?」

「う~ん結局は俺らがどうしたいか、じゃなくて穂乃果達がどうしたいか、が重要だと思うんだ」

「随分と他人任せと言うかなんというかだな」

 

 夏希のばっさりとした物言いに、若葉も思わず苦笑いで返す。それから最終下校時刻のチャイムが鳴るまで二人は屋上から空を眺めていた。

 

 

 

 翌日の放課後。部室にはアイドル研究部員が揃って若葉から本大会までの練習の予定表を受け取っていた。

 

「あれ? 随分練習量減るんだね。どうして?」

「A-RISEにアドバイス貰ってね。休息も立派な練習ってね」

「それにあと一ヵ月もないのに体調を崩したら元も子もないからな」

「その為、一日オフの日なども設けました」

 

 花陽が予定表を見てそれを組んだ三人に聞くと、若葉、夏希、愛生人が答える。

 

「穂乃果、どうしましたか?」

「え? あははは、ごめんね。ちょっとボーっとしちゃってて」

 

 海未が隣でボーっとメニュー表を眺めていた穂乃果に声をかける。海未に声をかけられた穂乃果はハッとなると、笑って首を振る。

 

「そう言えば、雪穂ちゃんと亜里沙ちゃん音ノ木に受かったんでしょ?」

「そうだよ。春から音ノ木生」

「亜里沙ちゃんμ'sに入りたいって言ってたもんね」

 

 真姫の言葉に若葉は頷き、ことりも続ける。二人の言葉を受けて花陽が嬉しそうに言う。

 

「じゃあ新メンバー?」

「ついに十人目のメンバー!」

「ちょっと二人とも」

「卒業、しちゃうんですもんね」

 

 花陽と凛の言葉に真姫が止めに入る。真姫に止められた二人は愛生人の言葉に表情を曇らせる。それを見かねて希はにこを見ながら、どうやろなぁと返す。

 

「どっかの誰かさんは無事に卒業出来るかなぁ?」

「なんで私を見るのよ!」

「……ちなみにこの前の定期試験の結果は?」

「そ、それは……」

 

 若葉の質問ににこは目を逸らしながら答える。その結果は良くもなく、悪くもなく、といった成績だった。そんな茶番を交えても尚、部室の空気は暗いままだった。そんな空気を変えるように手をパン、と鳴らす。

 

「ラブライブが終わるまではその話をしない約束よ」

「だな。卒業を気にして、優勝出来ませんでした。とか笑い話にもならねぇし」

 

 夏希の言葉で全員は練習をする為に部室を出る。

 

「それで。二人はどう思ってるんだ?」

 

 練習後、夏希は両隣を歩いている。若葉と愛生人に質問を投げ掛ける。夏希がそんな質問をした理由、それは練習中に今後のμ'sの活動をどうするか、と話になったからだ。

 にこはμ'sの名前を繋いで言ってほしいと言うも、花陽、真姫は一人でも抜けたらμ'sじゃないと言い、絵里は穂乃果達が決める事と言う。その場では全員の意見は出なかった為、夏希は若葉と愛生人だけを呼んで三人で下校していた。

 二人の内、先に口を開いたのは愛生人だった。

 

「僕は……僕はにこさんに賛成ですね」

「へぇ~その心は?」

「僕は祈る者達(プレイヤー)の事もあるので、やっぱり名前が受け継がれるのは、先代には嬉しい事ですよ」

 

 愛生人は夕日で赤く染まった空を見上げながら、どこか嬉しそうに口角を上げて言う。それから夏希は若葉に話を振る。若葉はう~ん、と唸る。

 

「そう言う夏希はどうなの?」

「俺か? 俺はたとえメンバーが一人でも変わっちまうなら名前は変えた方が良いとは思う。しかも今回は九人中三人が抜ける訳だ。だったら、な」

 

 夏希はそう答えるとポケット突っ込んでいた手を抜くと、頭をガシガシと掻く。

 

「んで若だよ若。お前はどうなんだよ。昨日から考えは纏まったか?」

「う~ん。やっぱり俺は絵里と同じ考えかな」

 

 若葉の考えは前日から変わっていないのか、首を振る。

 それから三人は分かれ、若葉が「穂むら」に帰ると雪穂と亜里沙の二人が居間でμ'sのライブ映像を見ていた。

 

「あ、若葉さんおかえりなさい!」

「お兄ちゃんおかえり~」

「ただいま。亜里沙ちゃんも来てたんだね」

 

 若葉はそばに立った二人の頭を撫でると微笑む。それから亜里沙はライブ映像が流れたままのパソコンの前に移動し、雪穂は何かを考えるような表情を浮かべながら目の前の若葉を見上げる。若葉は雪穂の視線の意味が分からず、首を捻る。

 

「ねぇ、お兄ちゃんはさ。私達がスクールアイドルやるって言ったら、笑う?」

「それは穂乃果達とは別に? それとも一緒に?」

「えっとね、その、別に、かな」

 

 雪穂は少し恥ずかしそうに頬を掻きながら目を逸らして答える。若葉はそれに対して首を横に振って否定する。

 

「別に笑わないよ。それに雪穂達がスクールアイドルをやるとしたら、俺達は応援するよ」

「達?」

「うん、俺達」

「そっか……ありがとね」

 

 雪穂は若葉にお礼を言うと、パソコンでライブの映像を見ている亜里沙の隣に座る。

 それから少し。若葉は自室の窓から雪穂と亜里沙の二人が外に出ていくのを見て、心配をしつつも後を追うことはしなかった。

 

 

 

 翌朝。穂乃果と若葉が登校するために「穂むら」を出ると、道の先で雪穂と亜里沙に止められた。若葉と穂乃果を呼び止めた二人は、頷き合うと亜里沙が一歩前に出る。

 

「あの私……私μ'sに入らないことにしました」

 

 亜里沙の言葉に二人は声を揃えて驚く。それから亜里沙は言葉を続ける。

 

「昨日雪穂に言われて分かったの。私、μ'sが好き。九人が大好き。皆と一緒に一歩ずつ進んでいくその姿が好きなんだって」

 

 その亜里沙の言葉を聞いた若葉は、昨日二人が出掛けていた事を思い出し、雪穂を見る。雪穂は若葉と目が合い、頷く。

 

「でも、私の好きなスクールアイドルμ'sには、私はいない。だから、私は私のいるハラショーなスクールアイドルを目指します! 雪穂と一緒に!」

「だから、その、色々教えてね。先輩」

 

 雪穂は照れたように笑うと、穂乃果に言う。それから無言の穂乃果に雪穂が不安気にダメかな? と聞くと穂乃果は首を横に振り二人に抱き着く。若葉も二人に歩み寄ると、優しく頭を撫でる。そして二人に激励を飛ばして登校する為に四人は別れた。

 

「穂乃果。決まった?」

「うん。私決めたよ」

「そっか」

 

 穂乃果の答えに若葉はフッと笑うと、二人揃って雲一つない青空を見上げた。

 




【音ノ木チャンネル】
夏「祝! ユッキーとアリちゃん音ノ木合格!」
愛「いえーい!」
雪「あ、ありがとうございます」
亜「ねぇ、なんか若葉さんが頭抱えてるよ?」
若「なんで夏希と愛生人がいるのさ」
夏「なんでも何も、【音ノ木チャンネル】と言ったら俺らだろ」
愛「て言うか、今回僕達呼ばれてなかったのはどういうことですか!」
若「今回は雪穂と亜里沙ちゃんの二人を祝う回なんだから、二人は要らないでしょ?」
亜「お二人は要らない子なんですか?」
雪「亜里沙、それ言い過ぎ」
若「てなわけで二人は退場~」
夏「え、ちょ、この黒服誰よ!?」
愛「しかも思いの外力が強いんですけど!?」
若「さて、二人が消えたから話の続きしよっか」
雪「でも今回って私達がスクールアイドルをやるって決めたんだよね」
亜「あとμ'sをどうするのか、ですね!」
雪「お兄ちゃんもハッキリと答え出さなかったし」
若「だって俺が出したらなんか終わりそうじゃん?」
亜「そんな事はないと思いますけど……」
雪「まぁ、どうなるのかは決まってるから、何も言わないけどさ? 次の話ってお姉ちゃん達がお出掛けする話だけど、お兄ちゃん達はどうするの?」
若「う~んどうしようかね」
亜「あ、まだ決まってないんですね」
若「まぁ一緒に行ってもアニメ通りになっちゃうんだけどね~」
雪「て事は別行動?」
亜「男三人でお出掛けですね!」
若「その言い方だと誤解生みそうだけど、まぁその通りだよね」
雪「あ、そろそろ時間だってさ」
亜「本当だ。じゃあ宣伝して終わりにしよっか!」
若「宣伝することあったっけ?」
雪「今更ですが! 作者さんTwitterをやっています! 普段のどうでもいい事から作品に関するアンケートまでやっています! 詳しくは活動報告にてIDとか載ってます」
若「その活動報告ってだいぶ前のだよね?」
亜「そんなことは気にしちゃダメですよ! 他にもツイキャスをしたりしてるので、よかったら聞きに来て下さい! 作品に関する話とかをしてるので!」
若「むしろ最近だと他の作家さんとの雑談の場になってるけどね」
雪「お兄ちゃん煩い。それじゃあ今回はここまで」
亜「次もよろしくお願いします! それじゃあ」
雪亜「「バイバーイ」」


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ちょ、まだ話し合いの途中by若葉

アニメ換算であと二話……
あ、劇場版は忘れてませんよ?


「よーし、今日は遊び尽くすぞぉー!」

「おー!」

「遊び尽くすのは俺も賛成だけど、人の家の前で叫ばないでくれるかな?」

 

 10時を少し回った時間。若葉、夏希、愛生人の三人は「穂むら」の前に集まっていた。集合して開口一番、夏希と愛生人が叫ぶと若葉が溜め息を吐きながら注意する。しかし二人は若葉の注意を聞いてないのか、聞くつもりがないのかどこに行くか相談している。そんな様子の二人に若葉は再度溜め息を吐くと、その話し合いに加わった。

 実は溜め息を吐いたものの、若葉自身もこの日を楽しみにしていたのだ。

 

「それにしても、こうして俺らだけで遊ぶのって初めてじゃね?」

「ですね。部活動外でこうして遊ぶのは確かに初めてですね」

 

 夏希と愛生人の言葉の通り、今までこの三人は何かと行動を共にしていたが、その大半は部活動関係。関係がない時は必ず三人以外の人物がいた。それは穂乃果達μ'sの九人も一緒で、その九人も今はオフを堪能している。

 

「さてと取り敢えずどこに行くよ?」

「今日は夏希車じゃないんだよね? だったらそんなに遠くまでは行けないね」

「移動は電車とか歩きですね!」

 

 若葉が移動方法の確認をとると、なぜか愛生人は嬉しそうに握り拳を作る。その様子に若葉と夏希は顔を合わせて苦笑い。

 

「で? さっきも聞いたがどこに行く?」

「そう言えば、僕行きたい所って言うか、気になってる所があるんですよ」

「へぇ。どこ? ここから近いの?」

 

 特に行きたい場所がなかったのか、若葉と夏希が愛生人の気になる場所について聞くも、愛生人自身場所を把握してないのか首を傾げる。

 

「それが場所は分からないんですよ。ただ場所を知ってる人なら知ってます」

「なんかややこしいんだが……ちなみにその、場所を知ってる人物って誰なんだ?」

「若葉さんですよ」

 

 愛生人の言葉に首を傾げる若葉。そして愛生人の言っていた「気になる場所」を聞き頷く。それから三人はその場所へと移動を始める。愛生人の気になった場所は「穂むら」から近かったのか、然程時間はかからなかった。

 

「にしても意外だね。愛生人がここに来たいって言うなんて」

「そうですか? これを機に若葉さんの交友関係の広さを知りたいと思って」

「あ、それは俺も知りたいな」

「お前ら人ん家の前で何話してんだよ」

 

 三人が目的地前で話していると、後ろから声をかけられる。振り向くとそこには、ジャージ姿の最中利幸が息を整えながら立っていた。そう三人が今いるのは若葉が時折訪れる道場。愛生人が一度行ってみたいと思っていた場所だ。

 

「や、りっちゃんおはよう」

「あぁおはよう。ってちげぇよ! お前今日来るなんて聞いてねえし、まだ開いてないからな?」

「やだなーりっちゃん。開いてない(そんな)事なんて百も承知だよ。これでも一年以上も通ってるんだよ? 開始時間とか把握してるって。それにここに来るのは急遽決まった事だから知ってたら怖いよ。ストーカー?」

「ほほぉ、そんなに久し振りに組み手がしたいか。そーかそーか仕方ないなー。最近してなかったしな。そんなにやりたいなら相手になってやるよ」

 

 利幸はこめかみに青筋を立てると、有無を言わせない形相で若葉を道場に引っ張る。若葉は一瞬やらかした、と顔を顰めるも、すぐに諦めのいった表情になり道場内に引き摺られて行った。若葉が引き摺られて行くのを見ていた夏希と愛生人は、黙ったまま二人の後を追い中に入る。

 四人が中に入って暫く、広い道場の真ん中には道着に着替えた若葉と利幸が向かい合っていた。

 

「あのさりっちゃん。煽ったの謝るから止めない?」

「確かに煽った事に対して反省の意は伺える」

「なら」

「だが断る!」

 

 若葉はなんとか利幸を説得しようと試みるも、失敗。さらに次の手を考えようとする若葉に、利幸はその暇を与えない為に踏み込む。

 

「ちょ、まだ話し合いの途中!」

「問答無用!」

 

 若葉は放たれた回し蹴りを屈んで避けながら説得を続けようとするも、利幸は聞く耳を持たずに次々と攻撃を仕掛ける。若葉はそれらを避けたり捌いたりしながら時折反撃を繰り出すも、難なく防がれてしまう。若葉は防がれたと分かるや否や二、三歩下がり構える。利幸も若葉が構えるのを待つと、再び距離を縮める。

 

「あーもう!」

 

 若葉は諦めたように叫ぶと利幸に掌打を放つ。利幸は体を半身にしてそれを躱すと、その勢いのまま裏拳を繰り出す。若葉は裏拳を左手で受け止めると、そのまま背負い投げに移行させる。投げられた利幸は背が床に着く前に足を着き、体勢を立て直す。

 

「お前はよく背負い投げするからな。対策ぐらい考えてあるっての」

「だよねー」

 

 利幸の言葉に若葉は困ったように笑うと利幸に向かって駆け出す。利幸はニヤッと笑うとバックステップからの飛び蹴りを放つ。若葉はそれを腕で防御する。

 

「ちっ、思ったよりも粘るな」

「さすがにそう簡単にやられたくないって」

「こうなったらアレを使うしかない!」

 

 利幸は覚悟を決めると、右足と両腕を上げ、手は開いたまま手首を曲げる。

 

「くっ、まさかそれを使われるとは! なら、こっちもアレを使わないと!」

 

 若葉はそう言うと左の手足を上げ、右腕を利幸に向けて真っ直ぐ伸ばす。そしてその体勢で黙ったまま、互いに互いを見ていた。道場は一瞬にして沈黙が訪れる。その空気と二人の構えに耐え切れず、夏希が痺れを切らした様子で突っ込みを入れてしまう。

 

「お前ら遊んでんだろ!」

「「あ、バレた?」」

 

 夏希の突っ込みに構えを解き揃って答える。愛生人も溜め息を吐き体を伸ばす。それから若葉は着替え三人は道場を出る。

 

「ま、腕は鈍ってなかったみたいだが、また来いよ。皆も若葉が来んの楽しみにしてるし」

「うん分かった。その内また来るよ」

 

 若葉達は利幸に見送られて道場を後にする。

 

「どうだった?」

「若葉さんって本当になんでも出来るんだなぁと再確認しました」

「いやその認識はおかしいでしょ」

「それで次はどこに行くよ? 特にないならちょっと行きたいところがあるんだが」

 

 夏希の提案に二人は首を傾げ、行きたい場所を聞く。それは若葉のバイト先の一つの「奈津橋電気店」だった。

 

「なんでここ?」

「いや~実はウチのレコーダーがそろそろ逝きそうだからな。ちょっと下見しに行こうかなって思ってたんだ」

「成程、それじゃあ僕はゲームコーナーにでも行きますか」

 

 電気店に着くや否や夏希と愛生人は各々の目的を果たすべく、勝手に店内に広がる。若葉は特にやる事もないので店内を適当に散策し始める。

 

「や、若葉君」

「奈津橋さんこんにちは。俺用事があるのでこれで失礼します」

「ははっ。ぬかしおる」

 

 若葉が立ち去ろうとすると、奈津橋は肩を掴みニッコリ笑う。若葉は笑顔の奈津橋に逆らう事が出来ずに項垂れる。

 

「それで若は手伝いをしてんだな」

 

 それから少し。夏希と愛生人がレジの近くで店の制服に身を包んでいる若葉を見て溜め息を吐く。

 

「まぁこれを運び終わったら終わりだから、ちょっと待っててね」

「あいよ。アッキーと出口の近くで待ってるわ」

「ごめんね~」

 

 夏希に笑って言うと若葉は持っていた荷物をSTAFF ONLYと書かれた場所に入っていく。暫くして夏希と愛生人のもとに私服に戻った若葉がやってくる。

 

「ごめんね。まさか急に頼まれるとは思わなかったよ」

「大丈夫ですよ~。その分ゆっくり見る事が出来たので問題ないですよ」

「まぁ俺も急ぎの用があるわけでもないしな」

 

 若葉が謝罪の言葉を述べるも、愛生人と夏希は特に気にする素振りを見せずに手を振る。そして三人は再度街に繰り広げると、一軒の焼き肉店「万国」の前で立ち止まる。

 

「なぁ二人とも。金はどんくらいあるよ」

「今日いくら使うか分からなかったので、まぁそれなりには」

「俺もまぁそこそこ? 夏希は?」

「俺も似たようなもんだ」

 

 三人は互いの所持金を確かめ合うと、顔を見合わせて万国へと入っていく。時間がまだ昼前という事もあり、三人はすんなりとテーブルに着き、注文する。

 

「あれ、若葉君?」

「あ、斑鳩(いかるが)さん。こんにちは」

 

 注文を取りに来たきた店員、斑鳩に若葉は軽く挨拶を返す。若葉に続いて夏希と愛生人の二人も軽く頭を下げる。斑鳩はそれじゃあ、と笑顔で手を振って厨房に隣接しているカウンターに戻り、厨房の女性と何かを楽しそうに話す。

 

「にしてもここも若のバイト先なのか?」

「そうだよ~。まぁ偶にしか来れてないんだけどね~」

「いや、若葉さんって固定のバイトありませんよね?」

 

 愛生人は運ばれてきた料理を網に置きながら、呆れたように返す。若葉はそれ聞き流して二人に小皿とたれを渡す。夏希はそれらを受け取ると、愛生人同様始める。

 

「取り敢えずこの後どうするよ」

「う~んどうしましょう?」

「神田明神に行く、とか?」

 

 トングをカチカチ言わせながら若葉が次の目的地の提案をすると、二人はあからさまにいやそうな表情を浮かべる。

 

「二人とも失礼だよ? いつも使わせてもらってるのに」

「いや、その事に関しては感謝の気持ちはあるんだがな? 最中の道場、奈津橋電気店、ここって来たらさ、この後も若のバイト先に行ってみたいじゃん?」

「でもそれって楽しいの?」

「まぁ普段の若葉さんの行動範囲とかも気になりますし」

 

 二人の意見に若葉は少し考え、二人がいいなら、と頷く。そして昼食を済ませた三人は次なる若葉のバイト先に向かう為に万国を出る。ちょうどその時、若葉の携帯が鳴る。

 

「ちょっとごめん」

 

 若葉は二人に一言断りを入れてから電話に出る。少しして電話を切り、戻り少し困ったような笑顔で告げる。

 

「二人ともちょっと用事に付き合って貰える?」

 

 若葉が両手を合わせてお願いすると、二人は揃って首を傾げる。そして若葉に連れられ訪れたのは何の変哲もないマンション。

 

「えーっと、ここ?」

「うん、ここ」

 

 夏希の疑問に頷くと、若葉は何の迷いもなく自動ドアを通る。残された二人も訝しながらも結局いつ帰ってくるか分からない若葉を待つなら、と後に続いて中に入る。

 二人が中に入ると、管理人と思しき人と若葉が話していた。そして開かれる奥の自動ドア

 

「さ、待たせるとあとが怖いから早く行くよ」

 

 戸惑う二人に若葉は振り返り言うと、そそくさと自動ドアを潜る。

 

「なぁそろそろ誰に会うのか教えてくれよ」

「そうですよ。ここまで何も言わずに連れてきて。しかもここに入り慣れてるみたいですし」

「んーここなら大丈夫かな?」

 

 エレベーターに乗った所で夏希達に聞かれた若葉は、三人の他に誰もいない事を確認すると頷き、今向かっている部屋の主について話し始める。

 

「二人はさ「鈴木忍」って知ってる?」

 

 若葉の言った名前に愛生人は何かを思い出そうと首を捻る。一方夏希はすぐに気付いたのか、驚いた表情で若葉を見る。

 

「その様子だと夏希は知ってるみたいだね」

「まぁな。ツーちゃんがファンで、俺もいくつか読んでるからな」

「あの、それが今と何の関係が……?」

 

 愛生人はいまいちピンと来ないのか、まだ首を傾げている。

 

「これからその忍さんの所に行くんだよ」

「……!? えぇぇぇぇぇゲフッ!!」

 

 若葉の言葉に愛生人が叫ぶと、隣にいた夏希に叩かれる。若葉も耳に当てていた手を退けると丁度目的の階に着き、扉が開く。若葉はエレベーターを降りるとすぐ近くの部屋のインターホンを躊躇いなく押す。

 少ししてインターホンから女性の声が流れる。

 

『誰?』

「あ、高坂です」

『若葉君! 鍵は開いてるわ! だから助k』

 

 最初に出た女性とは別の女性の叫びが聞こえるも、途中でスピーカーを切ったのか、何も聞こえなくなった。

 

「あの、若葉さん?」

「ここって鈴木忍さんの家、だよな?」

 

 愛生人と夏希は、スピーカーから聞こえた叫び声を無視して中に入ろうとしている若葉に驚きながら聞く。

 

「大丈夫大丈夫。入れば分かるから」

 

 そう促され、若葉に続いて中に入る。

 リビングに当たる場所に入った三人が見たものは、床一面に散らばる紙やトーンの残骸だった。その惨状に夏希と愛生人の二人は一歩下がってしまう。しかし若葉が慣れた足取りで机に座ってる女性と、その後ろで腕を組んでいる女性の元へと進んでいく。

 

「こんにちは」

「若葉君! お願い助けて!」

「いや、前もってやってればもうちょっと楽だったんじゃないですか?」

「若葉君の言う通りね」

 

 椅子に座ってる女性、鈴木忍が若葉に泣き付こうとするも、その若葉も隣に立つ女性と同じように忍に冷たく言い放つ。忍はその態度にがっくりと項垂れる。

 

「あの、大丈夫ですか?」

「……君は?」

 

 床に崩れ落ちた忍に愛生人が心配そうに近付くと、忍は首を傾げて聞く。愛生人は困ったように笑いながらも手を差し出し、忍もそれに掴まって起き上がる。忍が起き上がるのを確認した愛生人は自己紹介をし、夏希もそれに続いて自己紹介をする。

 

「成程。愛生人君に夏希君ね。知ってると思うけど私は岸部(きしべ)涼乃(すずの)。まぁ鈴木忍って言ったほうが分かるかしら?」

「ほら忍先生。締め切りまで時間がないんだから早くしてください」

「涼乃さん俺も手伝いますから。見たところあと少しそうですし」

 

 女性と若葉の言葉に肩を落としながら机に戻る涼乃。若葉も近くの机に座ると作業を始める。女性はそれを見ると立ったままの夏希と愛生人に近付き、一礼する。

 

「せっかく来てもらったのにごめんなさいね。あ、私、こういう者です」

 

 女性はそう言うと二人に名刺を渡す。名刺には有名な出版社の名前と女性の名前が書かれていた。。

 

「……あんしんしん……?」

「アッキー。それ「あんしんいん」ちゃう。「あじむ」や」

「すいません」

「大丈夫ですよ。よく間違えられるので」

 

 愛生人が謝ると安心院(あじむ)(りん)は慣れた様子で笑い返す。それから安心院は台所へと行き紅茶を淹れる。

 

「あの、大丈夫なんですか?」

「あぁいつもの事なので」

「いつもの事、なんですね」

 

 夏希は紅茶を啜りながら部屋を見渡す。壁際には大きめの本棚が三つ。本棚にはギッシリと様々なジャンルの本が仕舞われていた。

 

「本当に鈴木忍……先生の部屋なんだな」

「そうですよ。もしかして夏希君は先生の?」

「はい。「勇者王」シリーズを読んでます。それに彼女もハマってますよ。「瞳の中で」を買ったって言ってましたし」

「あ、ありがと~」

「涼乃さんはいいから手を動かしてください」

 

 涼乃が夏希のもとに行こうとするのを若葉は目もくれずに作業をしながら注意する。

 

「あの若葉さんはいつから忍さんと?」

「えーっといつからでしたっけ、安心院さん」

「半年ほど前かしらね」

「結構長いんですね……て言うか何してるんですか?」 

 

 若葉が作業の手を止めず答えると愛生人が作業の内容を聞く若葉はう~ん、と首を左右に捻らせると納得したように頷き、作業を再開させる。そんな若葉の代わりに時計をチラッと見た安心院が答える。

 

「若葉君には忍先生の漫画のベタ塗とかを偶に頼んでるのよ」

「今度は漫画にも手を出し始めたんですね」

 

 夏希は苦笑いを浮かべて再び紅茶を啜る。

 三人が歓談していると、作業が終わったのか若葉がノビをする。

 

「安心院さん終わりました~」

 

 それに続いて涼乃も原稿を掲げて机に突っ伏して言う。安心院はカップを置き、その場で現行のチェックをする。

 

「はい。確かにいただきました……まったく。そんなに疲れるならもう少しやる事減らせばいいのに」

「良いの~。私は私がやりたい事をやるんだから」

「それで苦労する方の身にもなってよ、まったく。今回は若葉君が捕まったからいいものの。て言うかなんであなたはアシスタントを雇わないのよ。涼乃は昔からそうじゃない」

「それより時間大丈夫なんですか?」

 

 説教を始めようとした安心院に若葉が時計を指して聞く。若葉の言葉に時計を確認した安心院は慌てて原稿を鞄に仕舞うと残っている紅茶を飲み干し、それじゃあ、と部屋を出て行く。

 

「いや~やっと解放されたわ~。若葉く~ん、お腹空いた~。何か作って~」

「別に良いですけど。じゃあ台所借りますね」

 

 安心院が出て行ってすぐ、涼乃はダラリと椅子の背凭れに寄りかかり、若葉にご飯を要求する。若葉も慣れた様子で台所に向かい料理を始める。

 その風景を何も言えずに見ている夏希と愛生人。

 

「あ、そうだったそうだった!」

 

 背凭れに寄りかかっていた涼乃は突然立ち上がると二人の前に座り、どこからともなく二枚の色紙とペンを取り出す。

 

「今日はごめんなさい。三人で遊んでいたみたいなのに、急にこんな所に来させちゃって。これで許してって訳じゃないけど、出会いの記念に」

 

 涼乃はそう言うと、色紙にサラサラと鈴木忍のサインを書き、二人の名前を入れて渡す。

 

「あ、あの。もし良かったらもう一枚もらえますか? 出来れば名前を変えて」

「ん? あぁさっき言ってた彼女さんね。大丈夫よ。それで彼女の名前は?」

 

 夏希のお願いに嫌な顔一つせずにもう一枚色紙を取り出し、サインを書いていく。

 

「それで涼乃さん、今度はどのくらい抜かれたんですか?」

「んーとね、二……いや三だったかな?」

「三日ですか」

「「三日!?」」

 

 若葉が炒飯と焼きそばを涼乃の前に置きながら聞くと、涼乃は三日何も食べてないと答える。その日数に思わず驚いた声を上げる。

 

「作家さんてそんなに食べないんですか?」

「いや涼乃さんの場合は、締め切りに間に合わないからって、安心院さんに食事を摂る暇なく書かされてるだけ」

「ふふふ。もう慣れましたね」

「それは慣れていいのだろうか」

 

 口に手を当て笑っている涼乃を見て夏希がボソリと呟くも、それは涼乃の耳には届かなかった。

 

「さてと、俺達はもう行くので涼乃さんはしっかり休んでくださいね」

 

 若葉は立ち上がり言うと、涼乃は炒飯を食べながら手を上げて返事をする。

 

「それじゃあ次はどこに行こうか」

「う~んどこに行こうかね~」

「行く所決まってないのなら海に行ってみると良いわね。今から行けば丁度夕陽が綺麗に見えると思うわよ」

 

 三人が玄関先で次の目的地を決めていると、突然三人の後ろから涼乃に声をかけられる。三人が振り返ると、涼乃が手を上げて立っていた。

 

「涼乃さんどうしたんですか?」

「せっかくなので見送りに来たのよ。それじゃあ気を付けてね。あと、今日もありがと」

 

 涼乃はそれだけ言うと部屋の中に戻っていく。扉が閉まるのを確認した三人はマンションを出ると涼乃に教えてもらった通り、海に行く為電車に乗って移動を始める。

 

「にしても若の人脈には驚いたな」

「そう?」

「まぁ昼まではよかったんですが、忍さんが……」

 

 

 三人は人の少ない車内で涼乃について話し始める。

 

「忍さんっていつもあんな感じなんですか?」

「俺が最初に行った時は威厳を醸し出していたんだけど、安心院さんが来た途端それが破綻してね。それ以降あの調子だよ」

「そうそう、その安心院さん。あの人って忍さんとどういう関係なんだ?」

 

 夏希は涼乃と安心院のやり取りを見て、二人の関係がただの作家と担当だけの関係じゃないと思い、若葉に聞く。夏希の疑問に若葉は頷いて答える。

 

「なんでも二人って小学校からの付き合いらしくてさ、それで安心院さんが出版社に勤めたのと同時に涼乃さんが持ち込み。その時偶然担当になったのが安心院さんらしいよ」

「そんな偶然あるんですね」

 

 若葉の答えに愛生人が珍しそうに頷く。それから涼乃と若葉がプライベートで会ったりしている事を知って驚いたり、偶然乗って来た響也と達也と二駅ほど歓談したりしている内に、三人は涼乃の教えてもらった駅に着く。

 

「わー本当に丁度陽が暮れかけていますよ」

 

 愛生人が駅から出て地平線を見ると、確かに日は沈み始めていた。そして三人が海岸に近付くと、そこには見慣れた九人の少女達の姿があった。九人の内八人は波打ち際で遊んでいるも、一人だけ遊びには行かず砂浜でそれを眺めていた。

 若葉は一人砂浜に立つ少女、穂乃果の元に歩み寄る。

 

「穂乃果」

「! お兄ちゃん!? それに夏希君に愛生人君まで!」

 

 穂乃果は三人がいる事に驚くも、それはそれは三人も同じ。お互いになぜ海にいるのかを話していると、波打ち際で遊んでいた八人も四人の元へと集まる。そしてお互いが状況を把握すると、誰ともなく横一列になる。

 並び順は右から夏希、絵里、希、にこ、海未、ことり、穂乃果、若葉、真姫、花陽、愛生人、凛の順に並び、手を繋ぐ。

 

「合宿の時もこうして朝日見たわね」

「そうやね。まぁその時は夏希君達はおらんかったけどね」

 

 絵里の懐かしむ言葉に頷いた後、希は近くにいた夏希をからかうように見る。夏希が何かを言い返そうとするも、穂乃果が口を開いたのを見て口を紡ぐ。

 

「あのね、私達、話したの。あれから九人で集まって、これからどうしていくか。希ちゃんとにこちゃん、絵里ちゃんが卒業したら「μ's」をどうするか。一人一人答えを出した。そしたらね、全員一緒だった。皆同じ答えだった」

 

 穂乃果が話してる間、三年生三人を除いた穂乃果含め九人は、グッと何かを堪える様に海の向こう、地平線を見続ける。

 

「だから……だから決めたの。そうしようって」

 

 穂乃果は一旦そこで言葉を区切る。少し目を潤ませながらも、俯く事はせず、ただ前を見て言葉を続ける。

 

「言うよ。せ~……っ!」

 

 しかし言葉は上手く続かず、思わず詰まってしまう。穂乃果は気を取り直すかの様に頭を振る。そんな時、不意に左手で握っている兄の手がギュッと握るのを感じる。

 左隣に立っていた若葉は言葉に詰まってしまった穂乃果を見て、聞いて、落ち着かせる為に穂乃果と繋がっている右手で、そこに握られている妹の手を優しく、ギュッと握る。

 若葉から無言の応援を受け取った穂乃果はごめん、と一言。

 

「ごめん、言うよ。せーのっ!」

『大会が終わったら、「μ's」はお終いにします!!』

 

 穂乃果の音頭に合わせて、九人が声を揃えて叫ぶ。

 

「やっぱりこの九人なんだよ。この九人が「μ's」なんだよ」

 

 解散の宣言の後の僅かな沈黙。それを破ったのは穂乃果(リーダー)だった。穂乃果はことりと若葉から手を放し、一人前に進み出る。そして穂乃果に続く様に海未や真姫達も言葉を続ける。

 

「誰かが抜けて、誰かが入って。それが普通なのは分かっています」

「でも私たちはそうじゃない」

「「μ's」はこの九人。そこに若葉君や夏希君、愛生人君がいての「μ's」なの」

「誰かが抜けるなんて考えられない」

「一人でも欠けたら「μ's」じゃないの」

「たとえ誰が何と言おうと、これが俺達の出した答えだ」

 

 海未、真姫、花陽、ことり、凛、そして男子三人を代表しての夏希の言葉を黙って聞いていた希、にこ、絵里の三人の内、最初に口を開いたのは絵里だった。それは穂乃果達の出した答えに納得のいった言葉だった。続いて希も賛成する。

 

「当たり前やんそんなの。ウチがどんな思いで見守ってきたか。どんな想いで名前を付けたのか……ウチにとって「μ's」はこの九人だけ」

 

 俯いて言う希の頬を涙が伝う。そして最後に口を開いたのはにこだった。

 

「そんなの、そんなの分かってるわよ! 私だってそう思ってるわよ。でも、でもだって!」

 

 にこは数歩前に進む。その後ろ姿を真姫が心配そうに見つめる。

 

「私がどんな想いでスクールアイドルをしてきたか、分かるでしょ? 三年生になって諦めかけて、それがこんな奇跡に巡り合えたのよ! こんな素晴らしいアイドルに、仲間に出会えたのよ! なのに」

「だからアイドルは続けるわよ!」

 

 俯き、泣きそうになりながら言うにこの言葉を、真姫が駆け寄り遮る。

 

「絶対約束する。何があっても続けるわよ! けど「μ's」は私達だけのものにしたい! にこちゃん達のいない「μ's」は嫌なの。私が嫌なの!」

「真姫……」

 

 真姫の言葉に全員が俯きかけた時、突然穂乃果が叫び声をあげる。何事かと全員が穂乃果はその場で反転し、駆け出す。

 

「早くしないと帰りの電車がなくなっちゃう!」

 

 穂乃果の言葉に一斉に駅に向かって走り出す。そして駅に着いて電光掲示板を見る絵里。しかしそこには穂乃果の言葉とは裏腹にまだ電車の本数には余裕があった。絵里は安堵の息を吐くと同時に、穂乃果に理由を聞く。

 

「だって皆、泣いちゃいそうだったから。あのままあそこにいたら、涙が止まらなくなりそうだったから」

 

 穂乃果はそう言うと、舌をチラッと出して笑う。その答えに穂乃果に一杯食わされた皆は、文句を言いつつも笑顔を浮かべる。

 

「お兄ちゃん……?」

「よく頑張ったね」

「……うん!」

 

 そんな中若葉だけは穂乃果に近寄り、優しく頭を撫でると労いの言葉をかけた。そして穂乃果は入り口で話してるメンバーに向き直ると、一つのとある提案をする。

 

「ねぇ写真撮らない?」

「あ、いいね! カメラマンは任せて!」

 

 穂乃果の提案に真っ先に乗ったのは若葉だった。ポケットから携帯を取り出すと、カメラモードを起動させようとする。

 

「そうじゃなくて、あれで!」

 

 穂乃果の視線の先には自動証明写真撮影機があった。本来一人用の撮影機に十二人が撮ろうとする。やや無理やり気味に中に入り、何枚か写真を撮る。

 それから写真を取り出すと、それを見て笑いながら改札を潜って行く。

 

「あ、 見て。にこちゃんの髪が髭みたいになってる」

「これに至っては愛生人は髪しか映ってないし」

「真姫ちゃん変な顔にゃ~」

「凛だって顔真っ赤じゃない」

 

 十二人しかいないプラットホームにそれぞれの笑い声が響く。しかし最初に花陽が顔を手で覆い、笑っていた声が泣き声に変わっていく。それを心配して凛と愛生人が近寄る。

 

「かよちん泣いてるにゃ」

「だって、おかしくて、おかし過ぎて涙が……」

「凛ちゃん。花陽ちゃん……」

 

 愛生人は目に涙を浮かべた二人をギュッと抱く。愛生人に抱かれた二人は、愛生人の背に腕を回して体を震わせ始める。

 

「まったく、三人とも……」

「真姫も、我慢しなくて良いんだよ」

「……こっちを見るんじゃないわよ」

 

 真姫は若葉の背中に顔を埋め、若葉は真姫の言った通り前をジッと見る。

 

「なんで……泣いてるの? もう、変だよ。そんなの」

 

 穂乃果はプラットホームのベンチに座りながら、笑顔を絶やさないようにして言う。しかしその目からは大粒の涙が零れていた。そんな穂乃果に両隣からことりと海未が穂乃果に抱き着いている。その後ろでは希に抱き着かれたにこが声を上げ泣いていたり、夏希の胸に顔を埋めて絵里が泣いていた。

 

 翌日のアイドル研究部の部室のホワイトボードには「ラストライブまであと一週間! ファイトだよ!」の文字と一緒に、自動証明写真撮影機で撮った十二人がそこにいたという証明写真が貼られていた。

 

「よし、行こう!」

 

 穂乃果は振り向き、横一列に並んで笑っている十一人に、同じく笑顔で言った。




【音ノ木チャンネル】
若「……」
愛「……」
夏「……」
若「俺はここで占い師CO(カミングアウト)するよ!」
愛「まさか対抗が若葉さんだなんて。僕も占い師COです」
夏「人狼ゲームしてんじゃねぇよ!」
若「だね。一旦ここでやめようか」
愛「ですね。やってるの僕達しかいませんし」
夏「二人で人狼って出来ないだろ。マジで何してたんだよ」
若「何って今回の振り返りとかどぇしょ?」
愛「今回は若葉さんの交友関係に驚きましたね」
夏「あぁ、まさか鈴木忍さんと知り合いだったとはな」
若「一応外では涼乃さんって呼ぶように言われてるんだよね。ほら、涼乃さんって人気作家だし」
夏「他には焼き肉店「万国」だな」
愛「本当はこの後にゲーセン行って祈る者達(プレイヤー)を出す予定が、文字数の関係で無しになったとか」
若「涼乃さんの処で想像以上に文字数を使ったのが原因だね」
夏「つか最初のトシとの闘い、あれなんだよ」
愛「特に最後のポーズ。あれって「荒ぶる鷹のポーズ」と「夜叉の構え」ですよね?」
若「よく知ってるね。さすが愛生人」
夏「……なぁ、そんな事より今来たこれ、ほんとなのか?」
愛「一体何が来たんですか? って、えぇ!?」
若「この回してる俺達にすら教えられてないサプライズって一体……って、あぁ」
夏「分からない。分からないんだぜ。なんで若葉はこれを知って納得してるんだぜ?」
愛「夏希さん口調が崩れてますよ。それどこの白黒の魔法使いですか。ってそうじゃなくて、この紙に書いてある今回であとがき茶番が終わりって本当ですか!?」
若「本当みたいだよ。いつだったか言ってたじゃん」
夏「それにしても唐突に決まったな。次回からは何をやるんだ? まさか何もしない、なんて事はないだろ? 作者の事だし」
愛「確かに作者の事ですからね。どうせ何かやるんですよね?」
若「作者の信用度ェ……まぁやるんだけどさ?」
夏「やっぱりか」
愛「それで何をするんですか?」
若「なんでも次回予告をするってさ」
夏「なんか普通だな」
愛「ですね。長く続いたあとがきの茶番を終わらせてまでする事なんですかね」
若「それ言ったらお終いだよ」
夏「まぁつーわけで今回で【音ノ木チャンネル】はお終いか」
愛「ですね。それじゃあ最後の挨拶、行きましょうか」
若「だね。それじゃあ」
『バイバーイ』


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ウチにミカンは置いてないからな?by夏希

歩きスマフォは危険ですので止めてください。


 海辺での解散宣言から早くも一週間。ラブライブ決勝が翌日に迫った日。μ'sはいつものように屋上で練習していた。

 

「にしてもまさかあんな事になるなんてな」

「これがあの時にも欲しかったですね」

「まったくだね」

 

 三人はそう話しながら、いつものようにその風景を見ながら、三人は昨日の事を思い出す。

 

 ☆☆☆

 

『エントリーNo.12音ノ木坂スクールアイドル『μ's』』

 

 司会の女性に呼ばれ、九人が立つ。

 

「それにしても、さすがに全国となると多いですね」

「だな。μ's(ウチ)を入れて47グループだもんな」

「人数も二人から九人までバラバラだね」

 

 愛生人、夏希、若葉の三人が二階から一階の抽選場を見下ろしながら各々感想を述べる。

 階下のステージでは穂乃果とにこがくじ引きを引いていた。

 

 ☆☆☆

 

「まさかトリを引くだなんてな」

「まったくですよ。でもトリって事は一番印象を残しやすいですから」

「逆にミスしたら目立つって事だよね。投票の関係上、最後は多くの人が見てそうだし」

 

 三人が話していると、凛のリズムで練習をしていた穂乃果達は休憩に入っていた。これまたいつものようにドリンクやタオルを渡し始める。

 

「お疲れさま」

「あ、ありがとう! それにしても、最近なんだかあったかいよね~」

「穂乃果、いくらあったかいからと言って寝てはいけませんよ?」

「でも今年は桜も咲くのがいつもより早いって言ってたし」

 

 若葉と穂乃果が話していると、海未とことりが穂乃果の隣に座りながら話に加わる。

 また、屋上の他の場所ではステップを刻む凛を囲うように見ている真姫、花陽、愛生人の一年生や、にこにーを練習しているにこ、希、絵里とそれを苦笑いを浮かべ見ている夏希。正面には自分そっくりの顔の若葉、そして両隣には幼馴染の海未とことり。

 

「穂乃果ちゃん。寂しくなっちゃダメ。今はラブライブに集中」

「そうですよ」

「うん、そうだよね。ただ……」

「ただ……?」

 

 若葉が聞き返すと、穂乃果は首を横に振って隣の海未とことりを抱き寄せる。いきなり抱き寄せられた二人は一瞬驚くも、同時に若葉に手を伸ばしその輪に加える。突然の事でされるがままの若葉をことりが右から、海未が左から、そして穂乃果が正面から抱きしめる。

 

「ちょ、いきなりどうしたの?」

「べっつにー! 急に抱きしめたくなったの!」

「私も!」

「偶にはこういったのもいいじゃないですか」

 

 若葉の問いに三人が同じように答え、仕方ない、といった様子で諦める若葉。

 

 それから練習は夕方まで続き、皆帰路に着いた。

 

「もう練習終わりかぁ。ちょっともの足りないにゃ」

「そんな事言っても凛ちゃん、明日が本番なんだから無理して怪我したら元も子もないんだよ?」

「そうよ。それに本番に疲れを残すわけにもいかないし」

 

 愛生人と絵里の言葉に凛だけでなく、その場にいる全員が頷く。そして校門を通り過ぎ、信号が赤になったので立ち止まる。

 

「それじゃあ皆、明日時間間違えないようにね」

「寝坊とかしたら笑えんしなぁ」

「大丈夫です。穂乃果の家には私とことりが行きますので」

「お兄ちゃんがいるから大丈夫だよ~!」

「俺と愛生人は今日、夏希の家に泊まり込みだから帰らないし、その事も母さんに言ってあるからね?」

「えー!!」

 

 穂乃果は若葉に抱き着きながら言うも、若葉の返しに思わず驚いて離れる。そんな穂乃果のオーバーリアクションに皆が笑みを零す。

 そのタイミングで信号が青になり、また歩き出す。数日歩いたところでふと花陽が声を漏らした。それを聞き取った愛生人と凛が止まり、それを見た全員が再び止まる。

 

「もしかして、皆で練習するのって、これが最後なんじゃ……」

 

 花陽の台詞に皆、言葉を失う。

 

「って気付いてたのに言わなかったんだろ? えりち」

「そっか、ごめんなさい」

「ううん。私も少し考えちゃってたから」

 

 絵里が校舎を振り返ると、にこ以外の皆がそれに倣って振り返る。そんな中、にこがダメよ、と言い放つ。

 

「今はラブライブに集中。そうでしょ」

「だな。ほら、お前ら行くぞ」

 

 にこの言葉に賛同し、若葉と愛生人は夏希に肩を抱かれ、夏希宅へと連行されていった。

 

「さ、私達も行きましょ」

「ちょ、ちょっと待って。せっかくだから行きたい所があるんだ。この九人で」

 

 穂乃果は手をパン、と叩いて九人で行きたい場所の提案をする。それはつい先日まで早朝お世話になっていた神田明神。

 お賽銭箱の前で九人が横一列になり、二礼二拍手一礼を済ませる。

 

「これでやり残したことはないわね」

「うん」

「でもこんないっぺんにお願い事しちゃって大丈夫かにゃ?」

 

 凛が不安そうに言うも、穂乃果はそれを平気だよ、と肯定する。

 

「だって、お願いしたことは皆同じだもん。言葉は違ったかもしれないけど、皆のお願いって一つだった気がするよ!」

「そうね」

「じゃあもう一度」

 

 絵里と希の音頭で九人はよろしくお願いします、と頭を下げた。

 そして三年生と二年生が帰り、少ししてから一年生の三人も階段を下りる。

 

「……あ」

 

 階段を下りている途中、花陽は曲がり角から見えるツインテールを見つける。

 

「なんでまだいるのよ」

「それはこっちの台詞よ」

「あれ? 皆……」

 

 階段を下り切るなり、にこと真姫が言い合う。そこに横から穂乃果達がやってくる。凛が穂乃果達が戻ってきた理由を聞くと、まだ残ってる気がして、と頬を掻きながら答える。

 

「これじゃあいつまでも帰れないわよ?」

「そうだね」

「じゃあ朝までここにいる?」

 

 希がいたずら気な笑みを浮かべて言うと、穂乃果は何か閃いた様子で提案する。

 

「じゃあさ、こうしない?」

 

 

 一方、夏希の家に向かった三人はテーブルを囲んで座っていた。

 

「それにしても炬燵はいいですね」

「これにあと、ミカンがあれば言う事ないね」

「ですね」

 

 愛生人と若葉はミシンで作業しながら夏希を見る。見られた夏希はいやいや、と手を振って返す。

 

「いや、ウチにミカンは置いてないからな?」

「なんでないんですか~」

「炬燵にミカンはセットじゃない?」

「ですよね」

 

 若葉と愛生人は何もしないで二人を見ている夏希にジト目を向ける。夏希は首を傾げ見返す。そんな夏希の反応に二人は溜め息を吐いて作業に戻る。

 

「それより若葉さん。さすがにミシンでノールックはやめません?」

「大丈夫大丈夫。見てないって言っても少しの間だし、出来はほら、この通り」

 

 若葉はミシン掛けしていた物を広げ、二人に見せる。その出来はとてもノールックで行った箇所があるとは思えない出来栄えだった。

 

「若って無駄に器用っつーか、なんつーかだよな」

「ですよね。僕はまだ出来てませんし、夏希さんに至っては作業の放棄してますもんね」

「うっせー。お前らの家じゃ作業が出来ないからって事でウチに来たんだろうが」

 

 夏希は立ち上がりながらそう言い、晩飯の注文を取る。

 

「そろそろ晩飯の時間だな。何か作るけど、何が良い?」

「ぶっちゃけ夏希さんより若葉さんの方が料理上手ですよね?」

「俺はそんなに上手じゃないけどね~」

「じゃあそんな事を言うアッキーは飯抜きな」

「やだなぁ。冗談ですよ」

 

 歓談しつつ、結局なんでもいい、となり夏希は台所に消える。

 夏希がいなくなってから二人は黙々と作業に集中する。辺りにはミシンの機械音と衣擦れ音が、少し離れた所からは夏希が料理をしている音が響く。

 

「お前ら~晩飯できたって、なんで黙々とやってんだよ! 怖えよ!」

 

 リビングに戻ってきた夏希は、作業中の二人を見てたじろぐ。夏希が戻ってきたにも関わらず二人は何の反応もせずに作業を進める。

 

「お~い、無視か~? 若~お前の携帯鳴ってるぞ~」

「……え? あ、本当だ。ありがとう」

 

 夏希が若葉に携帯を差し出しながら言うと、若葉は作業を中断し携帯を開く。

 

「穂乃果達、今晩は学校に泊まり込むんだってさ」

「へぇ~……あれ? でも学校に泊まり込むのって、前もって申請が必要なんじゃなかったか?」

「……彩さんが許可出したらしい」

 

 若葉がどこか諦めたように言うと、夏希も納得のいった表情で頷く。

 

「でも晩飯はどうすんだろうな」

「ところで夏希は何を作ったの?」

「ん? あぁカレーだぞ。作り置きできる上に、特に量を考えなくていいからな」

「まぁ夏希さんのことですから適当な量を作ってるんでしょ? だったらおすそ分けに行きます?」

 

 若葉の提案に愛生人も作業を止め、話に入ってくる。それから少し話し合い、夏希と愛生人がカレーをタッパに詰めて音ノ木坂に向かい、若葉は残り作業を続けることになった。

 

「それじゃあ行ってらっしゃい」

「おう」

「……これ、本来は立場逆な気がするんですがそれは」

「「気にすることじゃない」」

「ア、ハイ」

 

 若葉と夏希が声を揃えて言うと、愛生人はどこか諦めたような眼をして遠くを見る。そんな愛生人を夏希は車に押し込み、自分は運転席に乗り込み車を出す。

 二人を見送った若葉は夏希の部屋に戻り、作業を再開する。

 

「それにしても若葉さんが残るなんて、意外ですね」

「だな。若の事だからマッキーやほのっちに会いたいって言うと思ったんだけどな」

 

 音ノ木坂に向かう車の中、夏希と愛生人は率直な感想を言い合っていたことは若葉は知らない。それから少し車を走らせ、二人は音ノ木坂に着く。そして車から降り、明かりの点いているスクールアイドル部の部室の窓を叩く。

 

「は~い」

「おっす、おすそ分けに来たぞ」

「わざわざありがとうございます」

 

 窓が開くと夏希は身を乗り出し、タッパの入った袋を海未に差し出す。また別の窓からは愛生人が乗り出し凛と花陽と話していた。

 

「ねえねえ夏希君。お兄ちゃんは?」

「若? 若ならウチで留守番してるけど」

「そっか」

 

 若葉の所在を聞くと、少し落ち込んだ様子で俯く。夏希は溜め息を吐くと携帯を取り出し電話をかけて穂乃果に渡す。

 

「ほれ、若にコール中だ」

「え、でも……」

「決勝前夜で緊張してんだろ。声聞くだけでも安心するんだろ?」

「う、うん。ありがとう」

 

 穂乃果はお礼を言うと夏希から電話を受け取り、耳にあてる。

 

『もしもし夏希? 今ちょっと手離せないんだけど』

「も、もしもし?」

『あれ穂乃果? 夏希の携帯からどうしたの?』

 

 若葉は夏希の携帯から穂乃果が掛けている事を不思議そうに聞く。穂乃果は夏希から携帯を渡された経緯を話し始める。それを見ていた夏希は穂乃果の緊張が徐々になくなっていくのが分かり、室内を見る。

 

「夏希君達はもう晩御飯済ませたん?」

「いや、俺達はまだだぞ。それ作り終わって泊まり込みの事を知ったからな。これから帰って食う予定だ」

 

 希が夏希に話し掛け、その後も少し歓談していると穂乃果に服を引っ張られる。夏希が振り返ると穂乃果が苦笑いしながら携帯を差し出していた。

 

「あの、お兄ちゃんが代われって」

「おう。もしもし若か?」

『もしもし夏希? なるべく早く帰って来てね。じゃないと、夕飯抜きになる、かもよ?』

 

 若葉はそう言って電話を切る。夏希の頬を一筋の汗が伝う。

 

「アッキー、早く帰るぞ。じゃないと俺らの飯がなくなる!」

「ちょ、それはマズくないですか!?」

「てなわけで俺らもう帰るから! また明日な!」

「じゃあね!」

 

 愛生人は夏希の短い説明で察したのか、二人は部室内の皆に別れの挨拶を済ませると駐車場に向かう。駐車場に着いた二人は、乗って来た車に誰かが寄りかかってるが分かった。

 

「お? 夏希君に愛生人君じゃないか。どうしたんだい? こんな時間にこんな場所で」

「あ、蒼井さん。こんばんは」

「ちょっと野暮用で来たんすよ」

 

 二人が近づくとその人物が蒼井である事が分かり、親し気に返事をする。蒼井は持っていた警棒で肩をポンポンと叩くと二人に笑いかける。同じように笑い返す夏希と愛生人。

 

「それで? その野暮用で来た二人がなんで駐車場(ここ)にいるのかな?」

「なんでも何も今、現在進行形で蒼井さんが寄っかかってるその車、俺のなんだけど」

「そうかそうか。この見かけない車は君のだったのか」

 

 蒼井はそう言うと、警棒で肩を叩くのを止め腰に下げると、ニヤリと笑い二人の肩を掴む。

 

「高校生が自分の学校に車で来るなんてこと、許されるとでも思ってるのかな?」

「いや、その……ごめんなさいでした!」

「殺す前にせめて言い訳を聞いて欲しい!」

「オッケー。愛生人君から聞くから夏希君は覚悟決めようか」

 

 蒼井に腕をキメられ悲鳴を上げる夏希と、それを無視して言い訳をする愛生人。蒼井は愛生人からの言い訳で納得したのか、夏希を放す。

 

「なるほどね。ま、初犯だし反省してるみたいだから今回は見逃すけど、次はないからね。じゃ、気を付けて帰るんだよ」

 

 蒼井はそう言って手を振りながら立ち去る。夏希と愛生人は蒼井が見えなくなるとすぐに車に乗り込み、夏希宅へと帰った。

 リビングに入り、二人が帰ってきたにも拘らず黙々と作業をする若葉に恐怖を覚え、機敏な動きで晩御飯の準備を済ませた。

 

 

 

 




歩きスマフォは本当に危険なので止めましょう。

それはそうと、ここで一つお知らせです。
8月5日から『ラブライブ!~一人の男の歩む道~』を投稿しているシベリア香川さんの企画に参加することになりました。ぜひ読んでみてください。

それでは次回予告!

「おーい、こっちこっち~」

「お~い、なっく~ん」

「ゲッ、母さん!?」

「みんなぁー! ハっチャけてるかーい!」

「まぁ「ラブライブ!」の決勝だしな」



次回『それじゃあ行ってくるね!』


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それじゃあ行ってくるね!by穂乃果

もうアレですよね。自分の投稿が遅いのは周知の事実なので、一々謝罪文やら、言い訳やら要らないですよね?(開き直り)

アニライブキャラの人気投票みたいなのをやろうか検討中だったりしてます


 次の日、夏希達は再び音ノ木坂に車を走らせていた。愛生人は助手席で携帯を弄り、若葉は後部座席で寝ていた。今三人が乗っている車はファッションショーの時に運転していた車と同じ車である。

 

「どうだアッキー。音ノ木坂から会場までの道分かったか?」

「はい。ただ、途中の道が混んでる可能性が」

「まぁ「ラブライブ!」の決勝だしな」

 

 夏希は納得のいったように頷き、車を校門から少し離れた場所に停める。

 

「それにしても若葉さん爆睡ですね」

「俺が起きたときに仕上げに取り掛かってたからな。下手すると「μ's」の出番まで寝てるかもな」

「うぅ……面目ないです」

 

 昨夜、作業の途中で意識が夢の世界へと発ってしまった愛生人は、申し訳なさそうな表情を浮かべる。

 

「……別に大丈夫だよ。残りの作業は一人でやった方が良い物の方がばっかりだったし」

 

 愛生人の謝罪の言葉に若葉が欠伸をしながら眠たげに答える。二人は若葉が起きてることに驚き、後部座席を振り返る。若葉はそんな二人に目を擦りながら手を上げて挨拶し、同時に窓を開け顔と手を出す。

 

「おーい、こっちこっち~」

 

 若葉の視線の先には衣装の入ったカバンを持った穂乃果達が、校門の前できょろきょろと辺りを見渡していた。若葉に声を掛けられ、九人は車に駆け寄る。

 

「車が見当たらないから寝坊したのかと思ったわよ」

「悪い悪い。昨夜蒼井さんに見つかってな。また見つかると面倒だから少し離れてたんだ」

 

 最初に車に乗り込んだ絵里が運転席の夏希と話している間に、ほかのメンバーも乗り込む。

 

「ちょっと夏希! 入れないんだけど!」

「あぁごめん。マッキーは特別席でな」

「特別席?」

 

 夏希の言葉に真姫は首を傾げる。夏希は親指で後ろを指して続ける。

 

「マッキーには若の膝の上という特別な席を用意しといたぜ」

「はぁ!?」

「真姫ちゃん。時間がもったいないから急いで」

「……もう! 分かったわよ!」

 

 愛生人に催促され真姫は頬を膨らませながら、若葉の傍の扉まで歩く。若葉は扉を開け、真姫は顔を赤くしながら若葉の膝に座る。真姫が膝に乗ると若葉は無意識に脇の下から腕を回し、真姫が動かないように固定すると、肩に頭を乗せウトウトし始める。

 

「よし、皆乗ったな。忘れモンとかないよな? じゃ、しゅっぱ~つ」

 

 そして一行は愛生人のナビと、夏希の運転で会場へと向かった。

 途中、渋滞に巻き込まれるなどのことはなく、無事会場の駐車場に着いた一行はそのまま会場に行き、ステージを見たり、グッズショップで花陽とにこが暴走しかけるも「μ's」のグッズを見つけ喜んだりとしたあと、「μ's」のために用意された控え室に向かう。

 

「そういえばさお兄ちゃん。ずっと気になってたんだけど、そのカバン何?」

「そうですね。確かに私も気になります。何が入ってるんですか?」

「夏希君と愛生人君も同じカバン持ってるよね」

 

 控え室に向かってる最中、穂乃果と海未、ことりの三人が若葉が会場に着いてからずっと持っているカバンについて質問する。若葉はそれにどう答えたものか、と考えながら首を捻る。

 

「う~ん、秘密兵器、でもないし、最終兵器、でもないし……愛生人、なんて表現が正解かな?」

「そこで僕に振りますか」

 

 うまく答えが出なかった若葉は、後ろを歩いていた愛生人に話を振る。いきなり話を振られた愛生人は少し考えたあと、ニッコリと笑いながら答える。

 

「後でのお楽しみ、ですかね」

「だってさ」

 

 愛生人の答えにそのまま左右にいる三人を見ると、ことりは少し困ったように笑い、海未はそうですか、と楽しそうに笑い、穂乃果は若葉の肩を掴んで揺らしながら中身を聞こうと粘る。

 

「穂乃果ちゃん。控え室についたよ~」

 

 そうこうしていると控え室に着いたようで、ことりに止められる。これから着替えると言う事で、若葉達三人が控え室から出ていこうとして扉の前で立ち止まり振り返る。

 そして三人を代表して若葉が一歩前に出る。

 

「これから俺達は観客席の方に行っちゃうから、言わせてもらうね」

 

 若葉はそこで言葉を切り、後ろの二人とアイコンタクトを交わす。

 

「今までのどのライブよりも」

「最高のライブを楽しみにしてるからね。だから」

「穂乃果達も楽しんでおいで!」

『うん!』

 

 夏希、愛生人、若葉。三人の言葉に九人は自信に満ちた笑顔で頷き返す。そして三人は控え室を出て観客席へと向かう。

 

「お~い、なっく~ん」

「お~ツーちゃん。それに英玲奈にあんじゅまで。どうしたんだ? こんなところで」

 

 観客席に着くと、三人のよく知ってる人物達、A-RISEの三人が手を振っていた。

 

「何もなにも、μ'sの応援よ~?」

「私達もμ'sの一ファンだ。応援に来るのは当然だろ?」

「応援ありがとうございます」

 

 あんじゅと英玲奈に愛生人がお礼を言うと、二人はいえいえ、と手を振る。それから少しばかり六人が話し込んでいると、突然若葉達の背後から声を掛けられる。

 

「あ、こんなところにいた」

「まったく探したわよ」

 

 三人が振り返るとそこには、水色の長髪の女性と朱色の長髪の女性が立っていた。

 

「ゲッ、母さん!?」

「あ、母さん。来てくれたんだ!」

 

 その二人の女性に反応したのは夏希と愛生人。夏希は顔を顰め、即座に手刀をもらい、愛生人は嬉しそうに笑顔になる。

 

「まったく。どうも初めまして。愚息がいつもお世話になってます。夏希の母の恭子(きょうこ)。よろしくね」

「私は愛生人君の母の陽美(はるみ)です。よろしくね」

 

 恭子と陽美はその場の自分の息子意外の人と握手をして回る。

 

「あら、あなた……」

「あ、あの……?」

 

 恭子はツバサと握手したとき、ジッと見つめる。見つめられたツバサは照れたように目をそらそうとする。

 

「うん。あなたなら大丈夫そうね。これからも夏希をよろしくね」

「は、はい!」

 

 ニッコリ笑って言う恭子にツバサは笑顔で元気よく返事をする。それを見ていた若葉は陽美に肩を叩かれる。

 

「そう言えば、若葉君のご両親を向こうで見たわよ」

「本当ですか。ありがとうございます」

 

 若葉は陽美にお礼を言うと、A-RISEの三人と佐渡母子、片丘母子に挨拶してから、陽美の指した方へと歩いていく。

 

「ってお母さん! 前にも言ったけど話したけど、若葉さんすっごい方向音痴なのになんで一人で行かせたの!?」

「大丈夫よ。そうだと思って反対の方向教えたから。ほら」

 

 愛生人が陽美の指した方を見ると、そこには見慣れた若葉の後ろ姿が人混みの中にあった。そのあまりの方向音痴具合に陽美や、慣れたはずの夏希と愛生人まで溜め息を吐く。

 

 

 

「父さんに母さんは聞いたけど、それに雪穂に亜里沙ちゃんまで来てるんだ」

 

 若葉が両親の元へ着くと、そこには裕美香と誠だけでなく、雪穂と亜里沙がサイリウムを手に放していた。

 

「もちろんだよお兄ちゃん!」

「来年は私達もここを目指して頑張るんですから!」

 

 二人は若葉に気付くと、興奮気味に言い寄る。その勢いに若葉も思わず苦笑いを返してしまう。

 何とか二人を宥め辺りを見渡すと、ヒデコ、フミ、ミカの三人や翔平などの高蓑原のクラスメイト達を見付け、目の合った人達は手を上げたり、振ったりして若葉に挨拶する。若葉もそれに合わせて手を上げ返す。

 そして会場が暗くなり、一つのスポットライトがステージに立つ司会を照らす。

 

「みんなぁー! ハっチャけてるかーい!」

 

 司会の女性、大沢朱子が拳を振り上げて叫ぶと、観客席の至る所から叫び声が上がる。

 

「いいねー! いい感じに盛り上がってるねー! それじゃあ第二回「ラブライブ!」決勝を始めるよー!」

 

 そのままテンションを落とすことなく投票方法を説明し、朱子が捌けると同時に暗転。次に照明が点くと一番最初に披露するスクールアイドルが曲とともに踊りだす。

 一組、二組、三組、次々とグループが披露し、徐々に会場もヒートアップしていく。中にはアンコールをもらったグループもあり、その都度会場は盛り上がる。そしてμ'sの順番が来る。

 

「お兄ちゃん」

「大丈夫。穂乃果達を信じよう」

「うん」

 

 雪穂が隣に立っている若菜を心配そうに見上げると、若葉は雪穂の頭を撫でながら答える。

 そしてμ'sの曲「KiRa-KiRa Sensation!」が流れ始め、それに合わせて各メンバーにスポットライトが当たる。

 

「すごい……」

「うん……」

 

 そのμ'sのパフォーマンスを見て雪穂と亜里沙が呟いて頷く。観客席も盛り上がり、会場中で九色のサイリウムが光り輝く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして「KiRa-KiRa Sensation!」が終わると同時に会場中に響き渡るアンコールの声。若葉は肩を突かれるのを感じ、そちらを見る。そこにはライブ前に別れた夏希と愛生人が立っていた。

 

「ほれ、行くぞ」

「分かってるよ。それじゃ、雪穂、亜里沙ちゃん。俺ちょっと行ってくるね」

 

 若葉は二人の返事を待たずに夏希と愛生人の後ろについて走り出す。三人は慣れてるかのように人混みの間を走り抜けていく。

 

「これ間に合うかね」

「その為にこうして急いでるんじゃないですか。って若葉さん(はぐ)れてませんよね?」

「逸れてないよ。さすがにそこまでじゃないって」

 

 若葉が苦笑い気味に返すも、夏希と愛生人は先程のこともあってか、あまり信用をしていない様子。それから人混みを抜けた三人はステージの裏に駆け込む。そこにはライブを終え、アンコールを聞いて目に涙を浮かべ抱き合っていた。

 穂乃果達は若葉達に気付くと、三人に笑いかけピースサインを送る。三人も親指を立てて返す。そして十二人が抱き合ったりしていると、若葉が我に返る。

 

「ちょ、そうだ。喜ぶのは一旦あとにして、皆アンコールの準備しなくちゃ!」

「で、でも曲はあるけど衣装が」

「ここで話してても埒が明かないし、ひとまず控室に行くぞ」

 

 穂乃果達の言葉を遮り、夏希を先頭に控え室に戻る。

 

「とりあえず、落ちたメイク直すから皆鏡の前に座って。んで、終わった人から夏希のところに行って着替えてね。愛生人は俺の手伝いをして」

「あいよ」

「分かりました」

 

 控室に入るやいなや、若葉がそれぞれに指示を飛ばす。

 アンコールによって次の曲を披露するまでの時間は限られている。その間にアンコール曲の準備を整えなければいけないのだ。

 夏希は若葉と愛生人に渡された鞄を持ち、着替えスペースで待機。若葉は座ったメンバーの横に立ち、愛生人はその後ろで若菜の手伝いを始める。

 そして全員がそれらを終えると、控え室には新しい衣装に身を包んだ九人の少女達がいた。

 

「さ、時間ないから急いで戻るよ」

 

 若葉が時計を見ながら扉を開ける。アンコール曲までの時間まで残り僅か。迷わないように再び夏希が先頭を走りステージ袖まで走る。

 

「それじゃあ行ってくるね!」

「行ってらっしゃい!」

 

 穂乃果達は袖で止まった若葉達とハイタッチを交わすとステージに躍り出る。途端にアンコールが歓声に変わる。九人が位置に着くと曲のイントロが流れ始める。

 

 曲は「僕らは今の中で」

 

 μ'sが決勝に向けて練習していたもう一つの曲。若葉達はそれをステージ袖で九人によるダンスと歌、そして観客席の九色に光るサイリウムを見る。

 

「すごいな」

「ですね。すごくきれいな景色です」

「こんな景色、また見たいね」

 

 若葉の言葉に二人は頷いて返す。

 

 それからステージ袖に捌けてきた九人と、再びそれぞれハイタッチを交わし控え室に戻る。少しして閉会式が行われることがアナウンスされる。控え室を出て観客席に向かう若葉、夏希、愛生人。それとは反対にステージに向かうμ's。

 

「さぁこれにて全スクールアイドルのお披露目が終わったよ! 皆盛り上がってたねー! それじゃあネットで投票してもらった結果がここに!」

 

 朱子は手に持っている封筒を掲げる。それに合わせて会場から歓声が沸き上がる。朱子は歓声が収まるのを待ち封筒を開封する。

 

「うんうん。皆気になるよね! それじゃあ発表するよー! 第二回「ラブライブ!」栄えある優勝グループは!」

 

 朱子が言葉を切るとドラムロールが流れる。ドラムロールが止まり、一瞬間を開け朱子が息を吸う。

 

 

 

「優勝は音ノ木坂学院スクールアイドル所属「μ's」です!」

 

 

 




さて、一先ず再び告知を。

明日9/12より『ことり、時々曇り。』を連載しているグリッチさんの企画に参加することになりました。どうぞ一読してみて下さい。メインはことり、テーマは「恋」です。
『アニライブ!』とは一味違った話が読める(かも)なのでお楽しみに!

それでは次回予告!

「できたよ!」

「うぅ……いくらお兄ちゃんでもこんなことされると緊張しちゃうよ」

「二人ともちょっと動かないでね〜」

「お兄ちゃん何してるの!」

次回「んな事言ってる場合か!」


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んな事言ってる場合か!by夏希

お待たせしました〜


「ラブライブ!」決勝から数日経った日の朝。この日は音ノ木坂学院の卒業式の日でもある。若葉が居間で朝食を済ませていると、音ノ木坂の制服に身を包んだ雪穂と亜里沙の二人が居間に入ってくる。

 

「お兄ちゃん見て見て~」

「ど、どうですか?」

「二人ともちょっと動かないでね~」

 

 若葉は扉から少し入った所に二人を立たせると二人のもとへ行き、亜里沙の後ろに回り襟を正し、次に雪穂の正面に回りリボンを結び直す。

 

「うん。これで完璧」

「あ、ありがとうございます」

「うぅ……いくらお兄ちゃんでもこんなことされると緊張しちゃうよ」

 

 少し離れて頷いた若葉に、二人は顔を少し赤らめながらお礼を言う。若葉はそんな二人に笑顔を浮かべ頭を撫でる。その時、二階から階段を駆け下りる音が聞こえ、居間の扉が勢いよく開け放たれる。

 

「できたよ!」

 

 そこには満面の笑みを浮かべ喜んでいる制服姿の穂乃果がいた。そんな穂乃果に苦笑いを返す若葉と、首を傾げる雪穂と亜里沙。

 三人の反応を無視して穂乃果はそのまま玄関から躍るように出て行く。

 

「お兄ちゃん。何がどうなってるの?」

「たぶん、あの調子からして送辞が完成したんだと思う」

「そっか。穂乃果さん生徒会長ですもんね」

 

 若葉の答えに亜里沙は納得したように頷くも、ふと疑問に思い若葉を見上げる。

 

「でも若葉さん。送辞って前もって先生に見せてチェックしてもらうんじゃないんですか? 去年お姉ちゃんがそうしてたと思うんですけど……」

「……亜里沙ちゃん。世の中にはね、知らないほうがいいこともあるんだよ」

「「幽霊の正体見たり科学なり」ですね!」

 

 目をそらした若葉とは反対に、目を輝かせる亜里沙。雪穂はそんな二人を見てどこからツッコムべきかを迷い、先ほどの穂乃果のことを思い出す。

 

「そう言えばお姉ちゃん。何にも言ってくれなかったね」

 

 雪穂は自分の恰好を見直しながら寂しそうに呟く。

 音ノ木坂の制服姿を同じ音ノ木坂の生徒である兄姉に見てもらい、感想を言ってほしかった。兄にはもう言ってもらったが、やはり姉にも言ってほしい。

 そんな思いが雪穂の心の中を渦巻く。その時再び居間の扉が開かれる。そこにいたのは先ほど家を出て行ったはずの穂乃果だった。

 

「お兄ちゃん何してるの! 早く行くよ!」

「はいはい。せめてこれくらいは食べなよ」

 

 若葉は入り口でせかす穂乃果の口にテーブルの上の食パンを咥えさせる。

 

「それじゃあ二人とも。行ってくるね」

「もぐもぐ……あ、お兄ちゃん待ってよ~っと、そうだったそうだった」

 

 荷物を持って先に行こうとする若葉を慌てて追いかけようとした穂乃果は、急に止まり居間に戻る。

 

「二人ともすっごく似合ってるよ! ファイトだよ!」

 

 穂乃果は居間にいる二人に笑顔でそう言うと、今度こそ若葉のあとを追って走り出す。

 若葉は「穂むら」から少し離れた所で立ち止まっており、穂乃果が追いつくと並んで歩きだす。

 

「二人の制服姿どうだった?」

「うん。とっても似合ってたよ」

「そっか。それにしても二人とも本当に音ノ木生になったんだね」

「もう、今更過ぎるって」

 

 二人が談笑しながら校門を抜けると、少し前に見慣れた四人組が歩いていた。

 

「四人ともおっはよー!」

 

 真姫、凛、花陽、愛生人の一年生四人組を見つけるや否や、穂乃果は走りだし凛と花陽に抱き着く。若葉もそれに追いつき、挨拶を済ませると同時に真姫の頭を撫でる。

 

「あの若葉さん。今日って生徒会役員は早めに登校して、生徒会室に集合でしたよね?」

「大丈夫大丈夫。早めって言っても今から行けば間に合うから。ほら穂乃果、行くよ」

 

 愛生人の言葉に頷き穂乃果のいる方を見ると、そこには穂乃果だけでなく一緒にいたはずの凛と花陽もいなくなっていた。

 

「迷子属性って若葉さんの特権でしたよね?」

「ちょっと愛生人。若葉のは迷子じゃなくて方向音痴よ」

「真姫。そういう問題じゃないから。て言うか否定する場所違くない?」

「「どこが?」」

 

 三人はいなくなった三人を探しながら軽口をたたき合う。そして若葉達は三人とにこに似た女性とこころ達を見つける。

 

「あれ? 充子さん?」

「あら、若葉君じゃない」

「こころちゃん達も久しぶりだね」

 

 若葉が矢澤充子(みつこ)に近づきながら挨拶すると、横からにこが充子に飛びつく。

 

「ママぁ~! 何してるのよ~。早く来てよぉ! 見せたいものがあるんだからぁ~」

「にこ……ちゃん……?」

 

 穂乃果を含めた全員が、普段のにこが見せない甘えてる場面を見て驚いたように口を開く。にこは若葉達がいることに気付くと充子から離れ、咳ばらいをして挨拶をする。

 それからにこ先導でアイドル研究部の部室に行こうとするも、若葉は穂乃果の襟を掴んで止め生徒会室へと向かう。

 

「穂乃果。まさかとは思うけど忘れてた?」

「ハハハ。まっさかー」

 

 生徒会室に向かう道中、若葉に聞かれた穂乃果は笑って返す。しかしその頬を汗が垂れるのを見て若葉はため息を漏らす。

 

「そ、そんなことよりさ。お兄ちゃんってにこちゃんのお母さんと知り合いだったの?」

「知り合いっていうか、たまにバイト先で話す程度だよ?」

「ふ~ん。そうなんだ」

 

 穂乃果は若葉に横の繋がりの広さに驚く素振りを見せずに廊下を歩く。少しすると前から夏希が走ってくるのが見えた。

 

「夏希君、おっはよー!」

「廊下走ったらダメなんだよ~」

「んなこと言ってる場合か! うーみんが怒ってるぞ。生徒会長なのに来んのが遅いって」

 

 夏希の言葉を聞いて穂乃果と若葉は顔を見合わせると、夏希を置いて生徒会室に向かって走り出す。

 

「ちょ、おい! 廊下走っていいのかよ!」

 

 夏希は先ほど言われたことを二人に言うも、それは華麗に無視される。夏希は頭をガシガシと掻くと、走り出した二人のあとを追い走り出す。

 

「ゴメン海未ちゃん!」

「時間には遅れてないはずだけど謝るから!」

 

 穂乃果と若葉は生徒会室に入るや否や初めに海未に謝罪する。二人から少し遅れて夏希も生徒会室に入ってくる。

 

「確かに若葉の言う通り遅刻ではありませんので、そこまで怒りはしません。ですが、不測の事態に備えてもう少し早く行動することを心掛けてください。特に穂乃果は」

「まあまあ海未ちゃん。そこまでにして早く体育館に行こ?」

 

 二人に説教を続けようとする海未をことりがなだめる。海未は時計を見ると、そうですね、と頷き机の上に置いてある資料を手に持つ。それを倣って穂乃果達もそれぞれ必要なものを持つと、生徒会室を出て卒業式が行われる体育館へと移動を始める。

 

「そういやほのっち、送辞はできたのか? 昨夜電話がかかってきた時はさすがに驚いたんだが……」

「あの、今のはいったい……?」

 

 夏希の言葉を不思議に思った海未は、隣を歩いている若葉に説明を求める。若葉は苦笑を浮かべながら事情を話す。

 

「実は穂乃果、昨日の夜の時点じゃまだ送辞できてなくってね。俺は読んだ経験ないからアドバイスできなくてね。夏希が読んだことあるって言ってたから、アドバイスのための電話をしたんだよ」

「……それで、送辞はできたんですか?」

「今朝できたみたいだよ」

 

 ほら、と若葉が顎で前を歩いていた三人を示す。海未が視線を前に戻すと、穂乃果がポケットから送辞の書かれた紙を取り出し、夏希とことりが覗き込んでいた。二人の反応は異なり、ことりは楽しそうに笑顔を、夏希は苦笑いを浮かべていた。

 二人の反応にそれを見ていた若葉と海未も内容が気になり、二人と同じように覗き込む。

 

「これはまたなんと言うか……」

「穂乃果らしいですね」

 

 そこに書かれたものを読み若葉と海未もことり同様楽しそうに笑っていた。

 

「そこでね、お兄ちゃんと夏希君にやって欲しい事があるんだけど」

「やって欲しい事? あ~真姫に頼む役?」

「それもあるんだけど」

 

 穂乃果は若葉に首を振って返し、若葉達にやって欲しい事を伝える。若葉は頼まれ事の内容を聞くと頷き、夏希も同様に頷き返す。それから体育館に着き荷物を降ろすと、若葉と夏希はすぐに体育館を出て行く。

 

「それじゃあ夏希、頑張ってね」

「あぁ、頑張ってみる」

 

 若葉は弱気になってる夏希の背中を叩いて目的地に向かう。夏希も若葉に叩かれた箇所を擦ってから同じように目的の場所に向かって走り出す。

 

「真姫、凛、花陽、愛生人いるー?」

 

 一年生の教室に着いた若葉は入り口から顔だけを入れ、用事のある四人を呼ぶ。若葉に呼ばれた四人は首を傾げながらも若葉の元へと集まる。

 

「どうしたんですか若葉さん。今の時間って体育館で卒業式の準備をしてるはずですよね?」

「そうなんだけどね。ちょっと四人に用事があって」

 

 若葉はそう言うと四人に要件を伝えると、そのまま愛生人を追加の手伝いとして体育館に連れて戻る。

 

「それにしても穂乃果ちゃんもすごい事思いつくよね」

「ま、だからここまでやって来れたのかもね」

「うん、だから凛達もしっかりやらないとね」

 

 二人が去った廊下で花陽、真姫、凛は改めて若葉から伝えられたことを確認し合い、教室に戻っていく。

 一方、若葉と別れて行動している夏希は職員室に行き、姫子と話していた。

 

「なぁ姫、頼むよ」

「そんな事言われてもなぁ。もう配布の準備始めちゃってるだろうし」

「だから印刷して一緒に配るだけでいいんだって。そんくらいだったら出来るだろ? 何だったら俺が配るし」

「そんなこと言ったって、お前は体育館の準備があるだろうに」

 

 夏希の言葉に姫子がどうしたものかと考えていると、不意に後ろから声がかけられる。

 

「二島先生、別にそれくらいだったら構いませんよ」

「り、理事長!?」

 

 姫子が振り返ると、そこには彩が立っていた。姫子は彩がいることに驚き、思わず立ち上がる。彩は手で姫子を座らせてから夏希を見る。

 

「あの、本当に良いんですか?」

「えぇ。それに配布も手伝ってくれるみたいですし、その提案をするってことはちゃんと代わりの人を見つけているか、心当たりがあるのでしょう」

「分かりました」

「理事長ありがとうございます!」

 

 姫子が夏希から原本を預かり印刷室に入っていくと、夏希は彩にお礼を言う。彩はそれに手を振って答えると、夏希に向き直る。

 

「それで、さっきはああ言ったけど、大丈夫なの?」

「もちろんですよ。多分今頃若がアッキーを連れてってますから」

「それもだけど、穂乃果ちゃんからの許可はもらってるの?」

「それこそ大丈夫ですよ。配布に携われってのは、ほのっちからの提案なんですから」

 

 夏希がそう答えると印刷室から印刷されたものを手に姫子が帰ってくる。夏希は姫子からそれを受け取ると彩と姫子に頭を下げた後、卒業式の案内が配布されている昇降口へと向かう。

 

 一方体育館で作業していた穂乃果は、ミカに昨年の卒業式の記録を求められ生徒会室に取りに向かった。それを見送った海未達は卒業式の作業に戻る。

 

「ところで若葉くんは何やってるの?」

「ん~? ちょっと穂乃果に頼まれ事?」

「頼まれ事?」

 

 皆が作業をしている中、一人邪魔にならない場所でパソコン相手に首を捻っている若葉を見つけ、ヒデコが話しかける。

 ヒデコは若葉が何を頼まれたのか気になり、背後から覗き込む。若葉もそれに対して嫌ながる素振りを見せずに画面を見せる。そこに映ってたのは三年生を主とした数多くの写真だった。

 

「これって」

「サプライズで使いたいから作っておいて! って言われてね」

 

 穂乃果の無茶ぶりに思わず顔を引き攣らせて笑うヒデコ。若葉はそんなヒデコを無視してスライドショーを作り上げていく。

 

「そういえば夏希くんどこに行ったの?」

「夏希も別の頼まれ事で席外してるよ。人手を心配してるなら大丈夫、そろそろ来ると思うから」

「来るって誰が?」

 

 若葉はその疑問に画面から目を離さずに入口を指す。ヒデコがそちらに目をやると、そこには愛生人が立っていた。

 

「いつの間に呼んだのよ……あ、この写真とかいいんじゃない?」

「お、サンキュー」

 

 暫くして穂乃果が体育館に戻り、卒業式の準備が終わり準備をしていた生徒達は教室に残り、若葉は夏希のもとへと向かった。

 

 

 

 

 




約二ヶ月、お待たせしました。諸事情と言う名のパソコンの故障等で執筆出来なかったり、やる気がなくなったりとで遅くなりました!
多分次話も遅くなります。

あ、宣伝しておきますね。
この作品である「アニライブ!」と有名フリーホラーゲーム「Ib」とのクロスオーバー作品「ラブラIb〜太陽の笑顔が織りなす物語〜」が現在連載中なので、興味のある人は読んでみて下さい。

では次回予告!

「花陽、頼んだわよ」

「最後はここね」

「ちょっと、そっちじゃないわよ!」

「さすがに比べるのは酷だろ」

次回『ありがとうございました!』


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☆ユウカイシチャッタノォ!?by花陽

暫く投稿できてなかった上に、次話も掛かりそうなので時間稼ぎがてらにでも昔書いた話を投稿します。

※本編とは一切関係ありません。


 とあるホテルのロビー。そこには二人の少女が立っていた。

 

「ほぇ~、ここが秋葉原かぁ~」

「千歌ちゃん、勝手に動くと迷子になるよ?」

 

 オレンジの髪の一部を黄色のリボンで結った少女、高海千歌に隣で立っている紫がかった長髪の少女、桜内梨子が宥めるように言う。しかし千歌は振り返ると梨子に向かって言う。

 

「でも梨子ちゃん。私たち以外の皆はどっかに行っちゃったよ?」

「え? ……え!?」

 

 千歌の言葉に慌てて辺りを見渡すも、そこには長期休暇を利用して静岡から一緒にやって来ていた七人の少女たちの姿はなかった。

 

「い、いつの間に……」

「えっと、着いた途端にルビィちゃんがアイドルショップに行くって言いだしたから、それにダイヤちゃんとマルちゃんが着いて行って、曜ちゃんがレンタルコスプレ店に水兵服見つけて行っちゃったのを見て楽しそうって鞠莉ちゃんが果南ちゃんを引っ張って行っちゃったよ?」

「善子ちゃんは……?」

「……さぁ?」

 

 唯一名前を呼ばれなかった善子こと津島善子について聞くと、千歌は首を傾げて答える。その様子に思わずため息の出る梨子。

 

「で、でも何かあれば皆携帯持ってるんだし、連絡来るって」

 

 梨子の様子に千歌は慌てたように手を振って言うも、梨子の不安は取り除かれない。千歌は苦笑いを浮かべながら、そんな梨子に声をかける。

 

「と、取り敢えず私たちもいつまでもここにいないで、どこかに行かない?」

「……そうね。それで千歌ちゃんはどこに行きたいの?」

「えっとね、「穂むら」って和菓子屋に行ってみたいなぁって。でも道分からないんだよね~」

 

 ホテルから出ながらどこに行くのか話し合う二人。そして二人が外に出ると、梨子は人混みの中に見覚えのある人物を見付ける。

 

「あれってもしかして……」

 

 

 

 千歌と梨子の二人がホテルを出る少し前。

 赤い長髪を背中でまとめている少年、片丘愛生人(あきと)は駅前の像に背を預け人を待っていた。

 携帯を開き時間を確認すると、遠くの方から見覚えのある水髪の少年、佐渡夏希(なつき)が走ってくるのが見えた。

 

「夏希さん遅いですよ~」

「スマン。少し野暮用で遅れた」

「まぁ別に良いですけど、若葉さんに怒られても知りませんよ?」

 

 夏希はその様子を想像するとやや苦笑いを浮かべて歩き出す。愛生人も置いて行かれないように隣を歩き出す。

 

「それにしてもアッキーよ。りっちゃんはどうしたよ? 今日は別行動なのか?」

「今日は花陽ちゃんと出掛けた後「穂むら」に来るって言ってましたよ。夏希さんこそツバサさんは良いんですか?」

「ツバサは今日はレッスンだって言ってたぜ?」

「あの!」

 

 二人がそんな事を話していると、突然後ろから声をかけられる。二人が振り向くとそこには二人の少女がいた。

 

「片丘君、だよね?」

「あれ? 桜内さん?」

 

 二人に声をかけた少女、梨子は相手が愛生人と分かるや否や、ホッと息を吐いて近寄る。

 

「アッキー知り合いか?」

「はい。桜内さんは去年のクラスメイトです。年度末に静岡に引っ越したんですよ」

 

 愛生人が夏希に説明すると梨子はペコリとお辞儀する。その後ろを慌てて着いて来ていた千歌も状況は分かってないものの、梨子につられてお辞儀をする。

 

「初めまして佐渡先輩。去年学校で何回か見かけましたけど、こうして話すのは初めてですね」

「ん? あぁそうだな。て言うか、俺の事知ってんのな」

「当たり前ですよ。音ノ木坂に来た男子生徒なんですから」

 

 愛生人と千歌は話で盛り上がってる二人を傍目に、お互い自己紹介し始める。

 

「えっと、初めまして音ノ木坂学院二年の片丘愛生人です」

「あ、私は高海千歌です。えと、浦の星女学院の二年生です」

「同級生なんだね。それじゃあ堅苦しいのは抜きにして」

「うん! よろしく!」

 

 千歌と愛生人は握手を交わすと「穂むら」に向かって歩き出した夏希達の後を追いかける。

 

 

 

 場所は変わって愛生人達が離れた数分後の秋葉原駅。長い黒髪の一部を後頭部でリボンで結った少女が、隣を歩く少女に疑いの視線を送る。

 

「ねぇ遥。本当に古書セールやってるのよね?」

「友実。それ何回目の質問よ? 私が今まで嘘ついたことある?」

「……列挙してみようか?」

「ごめんなさい」

 

 遥こと三条(はるか)は話が長くなると感じ、即座に謝る。謝罪をされた東野友実(ゆみ)も本気で列挙するつもりがなかったのか、ため息を一つ吐いてセールが行われていると聞かされた書店に足を向ける。

 二人がわざわざ電車を乗り継いで大学の寮から離れた地元の秋葉原に来たのは、遥が古書セールの話を友実にしたからなのだ。さすがの友実も本の為なら、と腰を上げ今に至る。

 

「ほら遥行くわよ」

「はいはい」

 

 二人は古書セールの行われる本屋を目指して歩きだす。

 

「そういえば夏休みに入ってからにこ達に会ってないね」

「そりゃあ、夏休みの間寮と買い物以外出掛けてなかったら会わないでしょ」

「せやね。ウチらも用もないのに大学行きたくないし」

「アルバイトとかのことも考えるとね」

 

 友実の呟きに三つの声が返ってくる。友実がそちらを向くとかつてのクラスメイトで同じ大学に通っている、にこ、絵里、希の三人が友実の休日の生活に呆れたように立っていた。

 

「あら、矢澤さんに絢瀬さん、東條さんこんにちは。それでは私と三条さんはこれから用事があるので失礼させて頂きますね。それではごきげぇ!」

 

 友実が早口でそう言い、遥の腕を引いて足早にその場を立ち去ろうとすると、にこが襟を掴んで止める。

 

「ちょっとにこ。いくら何でもこの止め方はないんじゃないかな!」

「いや、今のは普通に友実が悪いでしょ」

「そうよ。仮面を付けてまで私達と話したくないの?」

 

 にこの言葉に友実は喉を摩りながらそうじゃないけど、と返す。

 

「だったらほら、久しぶりに会ったんだから行くわよ」

「行くってどこに?」

「そんなのアイドルショップに決まっとるやん?」

「いーやーだー! 私はこれから本屋にいくのー!」

 

 友実は周りに迷惑が掛からない範囲で駄々を捏ねるも、見かねた遥と絵里に引っ張られてアイドルショップに行くことになった。

 

「遥、こうなる事知ってたでしょ」

「まぁね、三人を呼んだの私だし」

「呪ってやるぅ~」

「はいはい、人を呪わば穴二つ」

 

 友実が恨めし気に言うも遥は気にする様子もなくそれを流す。

 

「まったく。あんたも義姉ならちょっとは穂乃果達の事気にしなさいよね」

「えー、だって穂乃果達なら上手くやれてるでしょ」

 

 友実は引き摺られながらも抵抗しようとするも、あまり本気で抵抗していないのかされるがままにされてる。

 そして辿り着いたアイドルショップで友実は妹の友香(ゆか)のブロマイドを見付け、すぐに会計の列に並んでいた。

 

「あんた、なんで妹の買ってるのよ」

「え? 普通買うよね、絵里?」

「え、えぇそうじゃないかしら」

 

 友実は隣で亜里沙のブロマイドを手に持っている絵里に聞くと、絵里はサッとそれを背中に隠して適当に相槌を打つ。

 

「あんた達……」

「まぁ二人とも妹の事大事にしてるからね~」

「大事にされてるんやな~」

 

 そんな二人を見て遥と希はやれやれ、と首を振る。

 

「あ、見て見て。絵里達がμ'sの頃の写真があるで」

 

 友実が話を逸らそうと、隣に置いてある絵里のブロマイドに手を伸ばすと、他の人の伸ばされた手とぶつかった。

 

「あ、すいません」

「こ、こちらこそ!」

 

 友実が謝ると、相手もすごい勢いで頭を下げる。その様子を呆気に取られたように相手を見る。短い赤い髪をツインテールにした少女を見た友実は一言

 

「真姫……?」

「ふぇ?」

「あ、いや、その、知り合いに似ていたので。すいませんでした」

 

 友実はそう謝ると後ろにいるにこにそっと耳打ちする。

 

「ちょっとにこ。いつの間に真姫とのクローン作ったの? いくら好きだからってまずいんじゃない?」

「それどういう事よ」

「だってあの子、にこと真姫を足した容姿してるのよ?」

 

 友実とにこが先程の少女を見ると、ちょうど遥に絡まれていた。

 

「いや~それにしても君、本当ににこと真姫に似てるね~」

「え? ええ!?」

「ほら遥、困ってるから」

「あの、妹に何かご用ですか?」

「あ、お姉ちゃん」

 

 友実が遥を止めに入ると、少女の後ろから長い黒髪に口元の黒子(ほくろ)が特徴の少女が警戒気味に話に入って来る。

 

「いえ、ウチの連れがご迷惑おかけしました」

「ほら友実、遥。サッサと行くわよ」

「ダイヤさんにルビィちゃん。マルはそろそろ本屋に行きたいずら」

「「って、えぇ!?」」

 

 にこが友実と遥を、薄い茶髪の少女がダイヤとルビィと呼ばれた少女のもとへ歩み寄ると、ルビィが大きな声を上げる。突然の事にその場にいた全員がビクリと体を震わせる。

 

「る、ルビィちゃんにダイヤさん。いきなり声を上げてどうしたのずら?」

「あ、あの、取り敢えず場所を移動しませんか?」

 

 絵里が周りを見渡して提案する。その言葉に七人も見渡すと店内の何人かに見られていた。

 

「そうですわね」

「って言ってもどこに行く?」

「だったら久し振りに「穂むら」行かない? 友実も実家に顔出せるし」

「そうやね。カードもそう言っとるし」

 

 希がタロットを取り出し遥に賛成する。そして八人は自己紹介をしながら「穂むら」に向かって歩き出す。

 

「ねぇ国木田さん。今古書セールやってるらしいんだけど、行かない?」

「本当ですか! 行きたいずら!」

「てなわけで私と国木田さんはぬげっ!」

 

 シュタっと片手を上げて集団から抜けようとした友実を、にこが襟を掴んで無理やり止める。その隣では国木田さんこと国木田花丸がダイヤに叱られていた。

 

「だって! そもそも私がこっちに戻って来たのだって古書セールが目当てだし!」

「分かった分かった。分かったから取り敢えず仮面でも被って大人しくしてて」

「それじゃああなた達は静岡から来たのね」

「は、はい! 夏休みなので皆で旅行に行こうってなって、それならって事でμ'sやA-RISEの皆さんのいる秋葉原に行こうって」

「でもμ's本人に会えるなんて、ルビィちゃん達ラッキーだったね」

「はい! 嬉し過ぎです!」

 

 友実が流され、花丸が怒られてるのを無視して絵里、希、遥、ルビィの四人は世間話をしながら「穂むら」に向かう。

 現在合計十二人が目指している「穂むら」。その店内は何やら騒がしかった。

 

「海未ちゃんどうしよう! お兄ちゃんが帰って来ないよ!」

「落ち着くのです。若葉だって買い出し先からの道で迷うはずがないでしょう」

「でも現に買い出しに行ってからもう一時間近く経つわよ?」

 

 店内では一時間前に買い出しにいった穂乃果の双子の兄、高坂若葉(わかば)が帰って来ない事に穂乃果が騒ぎ、海未が宥め、真姫が心配そうに外を眺めていた。

 

「それにもう少ししたら絵里ちゃん達も来るんでしょ? 久し振りの集まりなのにお兄ちゃんがいなかったら全員集合にならないよ!」

「心配するポイントが少しズレてるわよ。でもどこまで行ったのかしら。携帯も家に置いて行ってるし」

「若葉の事です、きっとアルバイト先の知り合いと話し込んでるんじゃないですか?」

「だといいんだけど」

 

 海未の言葉に真姫がため息を吐いてもう一度窓の外を見る。

 その頃、件の若葉は穂乃果と真姫の心配した通り迷子になっていた。それも一人ではなく二人で。

 

「いや~それにしてもまさか地元で迷子になるなんてね。よし……ヨハネも旅行先で迷子になるなんて大変だね」

「その迷子の原因の殆どがあなたじゃない!」

「それは聞き捨てならないよ。よ……ハネ。会った時から既に君は迷子だったじゃん」

 

 若葉はそう言って隣を歩く青い髪を右側頭部でお団子にしている少女、津島善子を見る。

 実は若葉が買い出しに行った先で善子が迷子になっており、また買い出し先が若葉のバイト先だったことも相まって、目的地までの案内を任されたのだ。

 

「それで津島さんはどこに行きたいの?」

「ふふふ、ヨハネは自由な堕天使なの」

「ヨハネ……? 善子じゃなくて?」

「ヨハネ! 善子じゃなくて!」

 

 善子の必死に言い直させる様子に、若葉はやや引き攣った笑みを浮かべ頷く。それから助けを求めるべく店長に目線を送るも、その目が合う事はなかった。

 

「えーとそれじゃあ津島さん行こっか」

「い、一体どこに連れて行く気!?」

「いや、取り敢えずウチに連れて行くよ。家には穂乃果とか、あぁ妹ね、がいるし、もし友達とかと来てるなら愛生人が力になれると思うから」

 

 そう言って善子の手を握って店を出る。それから少しして手を握られたことに気付いた善子が顔を赤くして手を放し、走って離れた為若葉も慌てて追い掛け、迷子になったのである。

 

「え~と、こっちに行けば確か知ってる道に出れたはず」

「ちょ、ちょっとま、きゃあ!」

「津島さん!?」

 

 若葉は後ろから聞こえた善子の悲鳴に振り返る。振り帰った若葉は地面に尻餅をついている善子を見て首を捻る。

 

「大丈夫?」

「え、えぇ」

 

 伸ばされた手を掴んで起き上がる善子。それから服に着いた汚れを払い歩き出す。

 

「それにしても何もない所で転ぶなんてね」

「ヨハネは堕天使だから仕方ないの!」

「あ、はい」

 

 善子が胸を張って言うと、その後ろから猫が飛ぶのが若葉から見えた。若葉が何か言う前に猫が善子の背中にぶつかる。

 

「にぎゃ!」

「っと、大丈夫?」

 

 猫にぶつかられ自分の方に倒れてきた善子を受け止める。受け止められた善子は一瞬の間の後に顔を赤くすると、バッと離れると後ろに転がっていた缶を踏んで後ろに倒れ、そのまま気を失った。

 若葉は黙ってそれを見ている事しかできず、気を失った善子の元へ寄ると、安否を確認した後ゆっくりと背負う。

 

「え~っと、このままだと通報されかねないんだよね」

「あれ? 若葉君だにゃ」

「こんな所で何してって、背中の子は誰!? まさかユウカイシチャッタノォ!?」

 

 若葉が通りに出たタイミングで若葉は凛と花陽に声をかけられる。しかし若葉が善子の事を説明する前に、花陽が顔に手を当て顔色を悪くする。

 

「違う違う! ちょっと色々あってこの子を「穂むら」に連れて行こうかなって」

「それ、どう聞いても誘拐にゃ」

「取り敢えずここで騒いでたら迷惑だから、「穂むら」に行く?」

 

 花陽の提案に三人は「穂むら」を目指して歩き出す。

 

「て言うか、若葉君はあんな所で何してたの?」

「買い出しに行って色々あってね」

「「あっ……」」

 

 一方、レンタルコスプレ店お堪能した曜と果南、鞠莉の三人はショッピングと言って近くの洋服店に入って行った。そこで目にしたのはトサカがの髪をした少女、ことりだった。

 

「ねぇ、あの人、チカの言ってたμ'sのことりちゃんに似てない?」

「What? 何言ってるの曜。もし本人だとしたらとってもPopularなSchool Idolなんでしょ? 変装とかするんじゃない?」

「確かに言われてみれば」

「あのー」

 

 三人がことりから目を離し、洋服を見ながら話していると、不意に後ろから声をかけられる。振り返ると手に袋を持って困ったように笑うことりが立っていた。

 

「え~っと、初めまして、ですよね?」

「な、何でしょうか」

「その、名前を呼ばれた気がしたので……」

 

 頬を掻きながら言うと、曜、果南、鞠莉の三人は顔を見合わせた後再びことりを見て揃って口を開く。

 

『本物!?』

「あ、あははは。取り敢えずお店に迷惑が掛かりそうだから、いったんお店から出ませんか?」

 

 ことりが三人に提案した後、店を出てから改めてお互いに自己紹介をする。その後、少し話した後ことりが行く予定だった「穂むら」へと向かう四人。

 

 そして総勢二十名が「穂むら」を目指し始めて約一時間後。全員がほぼ同時に「穂むら」に着く。

 

「って、若。お前誘拐はどうかと思うぞ?」

「若葉。後でお仕置きね」

「なんでりっちゃんも一緒にやってるのさ」

「って善子ちゃん!? どうしたの!」

「ルビィ! 危険だから離れなさい」

「若葉、誘拐ってどういう事!」

「Wao! 善子誘拐されたの!?」

「誘拐されたのはYouかい? なんてね。あ、今のは誘拐とYouかいをかけた」

「千歌ちゃん説明しなくて良いから」

「あー! アキ君その子誰にゃ!」

「だぁー! 人の家の前で騒がない!!」

「んゅ?」

 

 若葉が叫ぶと一斉に静かになる。次の瞬間、「穂むら」の扉が開く。

 

「ちょっとさっきから煩い……若葉? 説明してもらえるかしら?」

「い、イエスマム」

 

「穂むら」から出てきた真姫が善子を背負っている若葉を見た途端、額に青筋を浮かべて笑いかける。その威圧感に若葉は頷くしかなかった。

 

「あのさ。説明もいいけど、この人数「穂むら」に入りきるの?」

「う~んこの人数はちょっと厳しい、かな?」

 

 冷や汗を流してる若葉をよそに、遥が一緒に出てきた穂乃果に聞くも、穂乃果は首を横に振る。

 

「あ、それなら学校とかどう? 屋上にシートとか敷けばこの人数でも座れるし」

「それいいな」

「良いですね!」

 

 その様子を見た花陽が手を合わせて提案をする。その提案に真っ先に乗ったのは夏希と梨子だった。

 

「え! 今から音ノ木坂に行けるの!?」

「Great! それは良いわね!」

「私、音ノ木坂に行ってみたかったんだよね」

「オラも東野さんが過ごした図書室に行ってみたいずら!」

 

 他のAqoursのメンバーも賛成するように頷く。それから音ノ木坂に着くまでの間、若葉は真姫に善子を背負う事になった経緯を話し、他のメンバーは親睦を深めていた。

 

「それにしても若葉君も罪作りな男だよね~」

「と、言うと?」

「だってさ、買い出しに行った先で迷子を拾って、その後一緒に迷子になって、その子が気絶してお持ち帰りでしょ?」

「言い方があれだけど、あながち間違ってないのが不思議だよな」

 

 若葉に聞こえない距離で遥と友実が話してると、夏希が話しに入って来る。

 

「夏希君は千歌ちゃんの相手良いの?」

「あー、千歌っちはほのっちと話してるから問題ない」

「あの、佐渡さん。少しよろしいでしょうか」

 

 夏希が二人と話していると、ダイヤが夏希に話しかける。夏希は振り返り、ダイヤと話し始める。

 

「それで、え~っと。ダーさんは俺に一体……?」

「それです! その「ダーさん」はやめて下さいと何度も」

「諦めた方が良いですよ。私もとうに諦めました」

「うーみんもさり気にヒデェのな」

 

 海未が諦めたように言うと、ダイヤも何かを察したのか、呼び方については何も言わなくなった。

 

「梨子ちゃん久し振りだね!」

「うん。相変わらず凛ちゃんは元気そうだね」

 

 一方、後ろの方では凛と梨子、愛生人の三人が思い出話に花を咲かせていた。お互い離れてまだ数カ月にも関わらず、話したい事がたくさんあるようだ。

 

「新しい学校はどう?」

「千歌ちゃん達のおかげで楽しいよ」

「そっか。それは良かったよ」

 

 梨子が楽しそうに笑って言うと、凛と愛生人も嬉しそうに笑って返す。それから二人は談笑を続けた。その後ろでは

 

「それでね! あそこの地方のスクールアイドルが!」

「あ、分かります分かります! あそこのグループって歌やダンスだけじゃなくてMCも面白いんですよね!」

「あはは。何を言ってるのか分からないずら」

 

 花陽とルビィの会話に着いて行けず、花丸は苦笑いでそれを見つめつつ、後ろで質問攻めをした後、若葉に頭を撫でられ懐柔されている真姫の様子に再び苦笑いを漏らした。

 

「そう言えば千歌ちゃんはどうしてスクールアイドルを始めようと思ったの?」

「そ、それはその……」

「それはね、穂乃果さん。千歌っちはμ'sにlongingして始めたのよ」

「ロ、ロン……?」

 

 恥ずかしがって答えられない千歌の代わりに鞠莉が答えると、大事な部分が流暢な英語だった為、上手く聞き取れず首を傾げる穂乃果。

 

「へぇ~千歌っちそうなんや~」

 

 一方、鞠莉の隣を歩いている希は意味が分かったらしく、嬉しそうに笑う。千歌は顔を赤くしてあわあわと手を振って、止めようとする。希はそれを見て楽しそうに笑う。

 

「ん?」

「どうしたの? 穂乃果ちゃん」

「ん、ううん。別になんでもないよ」

 

 一人の青年と二人の少女と擦れ違った時、穂乃果はその三人をじっと見つめていた。青年の手には青い薔薇、少女達の手にはそれぞれ赤と黄色の薔薇が握られていた。穂乃果は果南に声をかけられると、首を振って返し、歓談に戻った。

 

「さ、着いたよ。ここが音ノ木坂学院だよ!」

「お~久し振りに見たな~」

 

 音ノ木坂学院に着くと、遥は振り返り両手を広げてAqoursのメンバーに紹介する。

 

「へぇ~ここが穂乃果ちゃん達が通ってて梨子ちゃんが通ってた学校かぁ!」

「懐かしいなぁ」

「ん? 何か聞こえない?」

 

 曜が耳に手を当て言うと、他の皆も耳を澄ます。すると屋上からかすかに音楽が聞こえてくる。

 

「誰か練習してるの?」

「今だとゆかりん達かな」

 

 友実が屋上を見上げながら呟くと、隣に立っている夏希が答える。友実はそれを聞いて少し驚いたような、嬉しそうな表情を浮かべ、そそくさと校舎の中に入って行く。それに続いて音ノ木坂にテンションを上げた千歌と曜を先頭に梨子以外のAqoursのメンバーが中に入る。μ'sのメンバーや若葉達は、バラバラになったAqoursのメンバーに連れ添って案内を始める。

 

「さて、友実は放っておいてマルちゃん。私は図書室行くけど、どうする?」

「図書室!? 行くずら!」

 

 友実と穂乃果、千歌の三人が屋上に向かったのを見ると、遥が花丸を図書室へ誘うと目を輝かせて頷く。二人だけだと心配だから、と希も二人に着いて行く。

 にこと花陽、凛に愛生人、ルビィと曜の五人はアイドル研究部の部室へ。

 絵里、真姫、若葉、ダイヤ、鞠莉、梨子の六人は生徒会室。

 海未とことりは善子と果南の二人を校内の案内にと、ぞれぞれが行動を開始する。

 

 屋上に出た友実は、元気よくダンスの練習をしている友香、月穂、亜里沙の三人を見付けた。

 

「……! お姉ちゃん!?」

「え! 友実姉!?」

「友実さん!?」

 

 練習をしていた三人は友実の姿を見るや否や、三人は練習を中断させて駆け寄る。

 

「お姉ちゃん帰って来たの!?」

「友実姉久し振り!」

「友美さ~ん!」

「おっと。三人とも練習中にごめんね。ちょっとこっちに顔出す機会があったから覗いてみたんだけど。私に構わず続けて良いよ」

 

 友美はそう言いフェンス際まで下がると、少し遅れて屋上に現れた穂乃果と千歌を両隣に座らせ、練習を眺め始める。

 

「こ、ここがμ'sが練習した場所……」

「確か練習場所が無くてここにしたんだっけ?」

「うん。最初はメンバーが少なくてね。ちゃんとした場所で練習できなかったんだ~。でも私達はここで良かったって思ってるよ」

 

 穂乃果はそう言うと友実の肩に頭を乗っける。友実はそれに嫌な顔せずにさらに千歌も自身へと寄せる。いきなり寄せられた千歌は驚くも、嬉しそうに笑みを浮かべると友実の肩に頭を乗せる。

 

「あー! 二人ともずるいですよー! お姉ちゃ~ん!」

「おっと。よしよし」

 

 友実の肩に頭を乗せている二人を見ると、友香は叫びながら友実の胸に飛び込む。友実は呼び込んできた友香を抱きとめ、頭を撫でる。

 

 他のメンバーも各々親睦を深め、全員がグラウンドに集まる。若葉は集まったメンバーを見て首を傾げる。

 

「あれ? 夏希はどこに行ったの? 迷子?」

「いやいや迷子は若葉さんの特権じゃないですか」

「それを特権にされても困るんだけど……」

 

 愛生人が若葉に言うと、真姫が溜め息を吐きながら若葉の手を握る。それから夏希がいつからいなくなっていたのか話し合いになる。

 

「私達の方にはいなかったよ~」

「私達の方にもいませんでしたよ」

「もちろん私の方にもいなかったし、その様子だと誰とも行動共にしてなかったんだね。て言うかよく遥はちゃんと戻って来たね」

 

 友実は報告を聞きながら、よく消える遥がいる事に驚く。遥はいやいや、と手を振る。

 

「いくら私でも消える時と場合を選ぶって」

「そんなに三条さんってステルス高めなの?」

「う~ん気付けば消える事は茶飯事ね」

 

 友実は隣からの声に対し頷いて答えた。そして皆の視線が友実の隣に立っている二人の人物に集まる。友実も不思議に思いそちらを見て首を傾げる。

 

「夏希君に……誰?」

「あれ? 私知られてない? これでも結構有名だった自信あったのに」

「いや、帽子にサングラスで顔隠してりゃ分からんだろ」

 

 夏希の隣に立つ人物は手をポンと叩くと、その両方を外すとグラウンドに穂乃果達μ'sの驚きの声が響く。それはAqoursも同様でポカンと口を開けていた。

 

「あ、あのツバサさんなんでここに? 今日はレッスンって聞いたんですけど」

「えぇそうよ。レッスンが終わって、なっ君から誘われてね。久し振りに高坂さん達にも会いたかったし」

 

 帽子とサングラスを外したツバサは改めて自己紹介をする。そこで初対面の友実とAqoursの九人もツバサに自己紹介をする。

 そして互いに自己紹介を終わらせた後、講堂に移動し、急遽ミニライブを行う事に。

 

「ってなんでだよ! なんで急にライブ!? ツーちゃんだってμ'sの曲踊れないだろうし、A-RISEやろうにも英玲奈とあんじゅだっていないし」

「はいはい。二人の代わりは俺と愛生人で埋められるから」

「そうよ。それにμ'sの曲だったら全て頭に叩き込んであるわよ」

「なんでだよっ! 万が一にだ。お前らが良くてもAqoursの皆はどうすんだよ!」

 

 特に問題がないと返す若葉とツバサに、夏希はAqoursのメンバーを指す。突然指された千歌達はその言葉に少し困ったような笑みを浮かべる。

 

「ほらな?」

「あ、あの、私達も一通りなら……」

「Why!?」

 

 千歌が気まずそうに言うと夏希は叫びながら振り返る。

 

「だって私達がスクールアイドル始めたきっかけはμ'sだもん」

「そうですわ。私達はμ'sやA-RISEを見本にしてきましたわ」

「は、はい! なので踊れると言えば踊る事が出来なくもなくはない、です」

 

 曜、ダイヤ、ルビィが夏希の驚きの言葉に返すと、その言葉を裏付けるように頷く。それを見て夏希も堪忍したのか、がっくりと項垂れる。

 

「もちろん私達も参加するからね!」

「穂乃果さん達と踊れる……ハラショー!」

 

 そしてμ'sとAqoursにツバサ、若葉、夏希、愛生人、友香、友実、遥、雪穂、亜里沙の総勢二十七人のシャッフルユニットによる突発的ミニライブが行われた。

 

 ミニライブ後。音ノ木坂学院の校門前では疲れ切った友実を支える友香や、ハイタッチを交わしている凛と曜。若葉と善子(迷子同士)で何か話していたり、にこ、花陽、ルビィでアイドルについて語っていたり、希と花丸が何やらお寺について話していたりと各々好きなように話していた。

 

 そして次々と名残惜しそうに帰路に着く。

 この日の思い出を胸に刻みつけながら。




簡単な説明
時期としては物語の一年後、絵里達が卒業し、雪穂達が入学したとしかです。季節は未定。

登場人物はなんと豪華に三十名。誰もがどこかしらで繋がりのある人物達です。

それでは「アニライブ!」の話数も(予定では)残り五話となりましたが、これからもよろしくお願いします。


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それでいいんだよby穂乃果

前回の本編投稿から早くも半年、みなさんお待たせしました。遂にアニライブ!はここまで来ました。

まぁ、改めて畏るのもあれなので半年振りの本編どうぞ。
内容忘れた? 前々話を読み直しましょう(ニッコリ)

そして今日は私のもう一つの作品「巻き込まれた図書委員」が完結して一年ちょうどが経ちました。


 全ての準備を済ませた若葉は、受け付けで夏希を拾うとそのまま教室へと戻る。

 

「こっちは順調だったけど、そっちはどうよ」

「一応完成はしてるよ。あとは穂乃果のチェック待ち」

「てことは何事もなく進んでるわけだ。良きかな良きかな」

 

 二人が雑談しながら教室に入ると各々自分の席に着く。席に着くや否や穂乃果と海未、ことりの三人が席に近付いてくる。

 

「お兄ちゃん出来た?」

「ほい。取り敢えずチェックお願い」

 

 若葉はパソコンを取り出し、穂乃果に画面を向け動画を再生する。ことりと海未も穂乃果の横から画面を覗き込み、感嘆の声を上げる。

 

「あの、若葉。これらの写真はいったいどこから?」

「うん? 伝手だよ」

「あ、やっぱり?」

 

 画面から目を放した海未とことりはあはは、と慣れた笑い声を出す。そして動画を見終わった穂乃果は、パソコンを若葉に返しながら気になった事を聞いた。

 

「そういえばお兄ちゃん。どうしてその髪型なの?」

「髪型?」

 

 穂乃果に言われ差し出された鏡を覗き込んだ若葉が見た物は、妹の穂乃果の顔だった。きょとんとしていると、目の前の穂乃果もきょとんとする。

 若葉の様子に思わず吹き出す夏希。そんな夏希を勢いよく振り向き睨む若葉。夏希は慌てて手を横に振って弁解をする。

 

「言っとくが俺じゃねえからな? やるチャンスなかったし、仮にやろうとしてもお前なら絶対反応するだろ」

「……そりゃそうだけど、なら犯人は誰なのさ?」

「知らん。ただ俺と合流する前からそれだったぞ」

 

 若葉は夏希から鏡に映る、穂乃果と同じサイドポニーの髪型をした自分の姿を見る。そしていきなり右手をピースにすると右目へもっていき笑顔を浮かべる。その行動は見ていた者の不意を突き、声を上げて笑う。

 

「さて、おふざけもこれくらいにして。はいヒデコ、これ返すよ」

 

 若葉は髪を留めていたリボンを外すと、笑っている内の一人のヒデコに渡す。

 

「あ、分かった?」

「まぁね。大方体育館でやったんでしょ?」

「せいか~い」

 

 笑って答えるヒデコに若葉が何か言おうと口を開くと、そのタイミングで姫子が教室の扉を開け入って来た。

 

「お~い、そろそろ体育館に移動する時間だぞ~。すでに卒業生の保護者さん達がいるから、整列して静かに速やかに着席するように」

 

 姫子はそれだけ言うと再び廊下に出ていった。それを合図にクラスで談笑をしていた生徒は体育館への移動を始める。

 

 そして在校生が体育館に設けられた椅子に座ると、時間をおいて卒業生が入場する。館内が在校生と保護者からの拍手で鳴り響く。

 それから理事長挨拶や卒業証書授与が恙なく執り行われ、送辞の番となった。

 若葉達は既に各自の場所へと移動を済ませ、穂乃果は名前を呼ばれたタイミングで立ち上がり壇上に登るとマイクの前で一礼する。

 

『送辞。在校生代表、高坂穂乃果。

 

 先輩方、ご卒業おめでとうございます。実は昨日まで、ここで何を話そうかずっと悩んでいました。どうしても今思っている気持ちや、届けたい感謝の気持ちが言葉にならなくて、何度書き直してもうまく書けなくて……それで気付きました。私そういうのが苦手だったんだって。

 

 子供の頃から、言葉よりも先に行動しちゃう方で、時々周りに迷惑かけたりして、自分を上手く表現するのが本当に苦手で、不器用で。

 

 でもそんな時、私は歌と出会いました。歌は気持ちを素直に伝えられます。歌う事で皆と同じ気持ちになれます。歌う事で心が通じ合えます。私はそんな歌が大好きです。歌う事が大好きです!

 

 先輩、皆様方に感謝とご活躍を心からお祈りし、これを贈ります』

 

 穂乃果が言い終わると同時に壇上を照らしていたライトは絞られる。そして壇上に設けられたグランドピアノにもライトが当たる。そちらを見ると、真姫が一礼した後ピアノの前に座る。穂乃果は真姫と、その向こうにいる若葉に微笑みかける。二人はそれに答えるかのように同時に頷き返す。

 一瞬の静寂からの真姫の伴奏。それに合わせて歌い始める穂乃果。その後ろには卒業生の三年間の思い出の詰まったスライドショーが音楽に合わせ映し出される。

 穂乃果の歌っている曲『愛してるバンザイ!』。それは真姫が入学してから「µ’s」に入るまでの間、放課後によく一人で弾いて歌っていた曲。一度は聞いたことのある旋律に思わず涙を浮かべる卒業生。しかし穂乃果のサプライズはこれだけではなかった。

 穂乃果が「さぁっ!」と掛け声をかけると、二年生の席から海未とことり、二人の歌声が上がる。二人が歌いだすと同時に同じように二人にもライトが当たる。さらにパートの変わるタイミングで今度は一年生の席から凛と花陽が歌いだす。こちらも寸々違わないタイミングでライトが上がる。

 

『さぁ! 皆も一緒に!』

 

 それに続いた穂乃果の掛け声に在校生だけでなく、式に参加している教員、保護者の全員も歌いだす。そのサプライズに涙を流す卒業生、必死に我慢する卒業生、驚きで固まる卒業生。様々な反応を示す卒業生だが、歌が終わる頃には皆が自然と拍手をしていた。

 

 こうして卒業式は終わりを迎え、アイドル研究部の面々は部室に集まっていた。

 

「棚の荷物が殆どなくなってるってことは、ここにあったの殆どにこさんの物だったんですね」

「そうよ? 来年からは次の部長が資料として持ってくること。分かってる?」

 

 愛生人がほぼ空になった棚を見て呆れたようににこに言うと、にこは腰に手を当て返す。その一言にそう言えば、と愛生人は思った事を口にする。

 

「次の部長って誰なんですか?」

「何言ってるの。そんなの決まってるでしょ」

 

 愛生人の言葉ににこは呆れながら腰に手を当て、とある人物に向き直る。

 

「花陽、頼んだわよ」

「……えぇー!!?」

 

 にこに指名された花陽は驚きで叫ぶ。その声を聞いて、隣の部屋にいた二年生組が顔を出す。

 

「どうしたの?」

「何か出たか?」

「アレなら若葉と夏希が処理しますよ」

「任せて!」

「は〜い、花陽ちゃんはこっちの部屋ね〜」

 

 穂乃果、夏希、海未、若葉がボケるもスルーされ、花陽はことりに連れられ四人の横を通り、部室の隣の部屋へ移動する。

 花陽が止まった途端、頭と首元に違和感を覚え手を当てる。そこには王冠と赤いマントが着けられていた。そして黒板に『部長就任おめでとう!』と書かれているのを見てさらに驚く。

 

「今の二人の動き、さすが双子って感じだったな」

「一糸乱れぬ動きでしたね」

 

 驚いている花陽をよそに、夏希と海未は若葉と穂乃果の手際の良さと息の合いように感心していた。

 

「な、なんで私が?」

「さすがに生徒会の役員に兼任させるわけにはいかないでしょ」

「それに兼任はダメらしいしね」

「凛もリーダーやったんだから、一緒に頑張ろ!」

 

 花陽の疑問ににこ、若葉、凛の三人からそれぞれ回答をもらい、少しばかり唸ったあと頷く。

 

「それじゃあ真姫ちゃん。副部長よろしくね」

「なんで私が!? ……別になってもいいけど!」

「それじゃあ補佐も愛生人に引き継ぐか?」

「いやいや、それは手伝ってくださいよ」

 

 真姫が照れながら了承するのを見た夏希が冗談交じりで愛生人に言う。愛生人はその言葉に首を横に振って断る。

 それから全員が隣の教室に移り、新部長就任パーティーが開かれた。

 

「それにしても穂乃果の送辞には驚かせられたわ」

「やった! サプライズは成功だね!」

「それにしてもあのライト、上手くいって良かったですね」

「まったくだぜ。練習してる時間なかったから、失敗したらってヒヤッとしたな」

「あれを一回で成功させるあんた達はなんなのよ」

 

 部室内の椅子にいつも通りの席順で座り思い思いの話をする。そして話が一段落すると、絵里と希、にこが立ち上がる。

 

「さて、それじゃあ私達は学校を見て回ってくるわね」

「え、それなら一緒にいくよ。その……もうこれで最後なんだし」

 

 穂乃果が絵里を呼び止めてどこか恥ずかしそうに言うと、部室内が静かになる。突然静かになった事で不安になった穂乃果は真っ先に頼りになる若葉を見る。若葉は苦笑いを浮かべ、とある効果音を口にする。

 

「デデーン」

「ほのっち、アウト—」

 

 若葉と夏希の息の合った連携に穂乃果はがっくりと項垂れる。そんな穂乃果に優しく肩に手を置く愛生人。

 

「それじゃあ穂乃果さん。約束通り皆にジュース一本ずつ奢りですね」

「うぅ……分かってるよ~」

「自分で言った罰ゲームを受けるなんてね」

 

 真姫が呆れたように言うも、真姫の言う通り「卒業式の日に「最後」と言ったメンバーが他の部員にジュースを奢る」といった約束事を提案したのは穂乃果なのだ。

 

「これが言い出しっぺの法則だにゃ~!」

「ごちそうさま〜」

 

 凛が楽しそうに両手を上げ、絵里もノリノリで穂乃果の背中を押す。部室から出て行く三人の後を他のメンバーも追いかけて自動販売機に向かい、各々飲みたい物を買うと中庭のベンチに座り始める。

 そして小休憩を済ませると今度は講堂に場所を移す。

 

「久し振りの講堂だね。やっぱり広……くない?」

「それは私達が成長したということでしょう」

「ま、大舞台を経験したってのもあると思うけどな」

 

 穂乃果が講堂のステージに立ち、改めて講堂の大きさを確認するも、大きさに違和感を持ち首を傾げるも、海未の言葉に納得がいく。

 それからアルパカ小屋やグラウンドなど、校内の思い出深いところを次々と回っていく。そして

 

「ま、俺らって言ったらここだよな」

「ですね。教室の次に長くいた場所ですし」

「思えば、練習場所がなくて、ここで始めたんでしたね」

「毎日ここに集まって」

「毎日練習した」

「できないことを皆で克服して」

「ふざけたり笑ったり」

「そういうのは全部ここだったね」

 

 愛生人と夏希は屋上を見渡して思い出に浸る。それに続くように他の皆も思い出話を始める。その時、穂乃果が突然手を叩く。

 

「そうだ!ちょっと待ってて!」

 

 そう言うと穂乃果は屋上から出ていくと、しばらくして水の入ったバケツとモップを持って戻って来る。そしてモップを水に浸すと、屋上に「μ's」と書く。

 

「でも、この天気だとすぐ乾いちゃうわよ」

「それでいいんだよ」

「え?」

「それで……」

 

 真姫の指摘に穂乃果はしみじみと返す。屋上にいる全員は「μ's」の文字を囲うように立つと、一斉に頭を下げる。

 

『ありがとうございました!』

 

 打ち合わせをしていなくても皆の口から出た言葉は一緒だった。それから一人、また一人と頭を上げるとそのまま屋上を後にしていく。そして穂乃果以外の全員が屋上から去ったあと、穂乃果はもう一度屋上を振り返る。そこで思い出したのは最初に穂乃果、海未、ことり、若葉、夏希の五人で屋上を訪れた時のことだった。

 

『ここしかないようですね』

『日陰もないし、雨が降ったら使えないけど、贅沢は言ってられないよね』

『ま、雨の日は校内が使えるだろ』

『でもここなら音も気にしなくてすみそうだね』

『ねぇ、ことりちゃん、海未ちゃん、夏希君、お兄ちゃん。やり遂げようね、最後まで」

「……やり遂げたよ。最後まで」

 

 過去の自分達に答えるように穂乃果は力強く返事をする。そして階下から自分を呼んでいる皆の元へと駆け出す。

 

 こうしてのちに"伝説"とまで呼ばれるようになった九人の女神と三人の少年たちの物語は幕を閉じた。

 

 




全てはその一言から始まった。

「あなたが幽霊を見ることができるって聞いたけど、それは本当なの?」

いつも通りに過ごしていた俺の日常を壊した彼女。

「ア、アはハははハ!!」

夜中に道でバッタリと出くわしてしまった通り魔。

「ドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥエ」

奇声を上げながら学校の廊下を駆け回る半透明の存在。

「そんなに生き急ぐのならば、今ここでぬしの生命の灯し火を消してやろう」
「お姉ちゃんは誰?」
「私と結構してくれる?」
「助っ人に来たよ」
「ボクと一戦やるかい?」

個性豊かな仲間達!

今ついに、物語のフタが開かれる。
「助けて! 千景ぇぇぇぇ!!」


「俺たちの戦いはこれからだ!」
絶賛ハーメルンで公開中。

  来いよ。銃なんて捨ててかかって来やがれ


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