俺の黒歴史がチート呪物で、恥ずか死ッ (ミント )
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俺は転生しました…異世界に

 

 

『あぅ……(もしかして、俺って……)うぅーッ(転生してるーッ)』

 

 

Hey、皆さんこんにちは。俺はロイド。齢18歳のピチピチな美青年だ。

 

どうやら、俺が転生した世界はThe異世界のようだで、魔法やら冒険者やらタレントやら、異世界の王道を行く世界だ。

 

そんな俺はリ・エスティーゼ王国で生きる伝説として冒険者をしている。

 

 

 

あ、待ってッ待って!

調子に乗ってるんじゃないですッ。

何か、勝手に皆が勘違いしちゃったんですッ

 

 

 

時は遡り、俺が8歳のある日……

 

 

 

俺は家の中でとある箱を見つけた。

厳重に保管されていて見るからにヤバい物だった。

 

しかし、俺は子供の好奇心を抑えきれず箱に貼られていた紙を剥がし、蓋を開けてしまった。

 

 

 

『(ん?ノート?いや…本?…何か見覚えあるけど……)』

 

中には1冊の本が入っていた。

少し拍子抜けしてしまった俺の後ろでガシャーン!と何かが割れた音がした。

 

俺が後ろを振り返ると、そこには皿を落とした母が立っていた。

 

 

「ロ、ロイド…何故ソレを持っているの?……

 

 

御先祖様が残した呪われし本をッ

 

『はぇ?(何て?)』

 

 

どうやら、これは俺の御先祖様が昔に戦っていた時に使われていた本らしい。そして、その御先祖様が言うには「自分以外が触れれば呪われる呪物」らしく、今まで封印されていた。という話だ。

 

 

 

けど………これって……

 

『(どっから、どう見ても、俺が生前(?)に書いた厨二ノートッ)』

 

 

 

 

 

 

 

『(何か…俺が厨二ノートを持てた事がかなり凄かったのか、めっちゃ家族が喜んでるんだけど……)』

 

俺はそろそろ恥ずかし死しそう。

そして、このノートはマジモンの呪物だったのか燃やしても細切れにしても、いつの間にか俺の手に戻ってくる。

 

 

「ロイド、その本に何が書かれてるのか教えてくれないか?」

 

そう聞いてきた父。声は冷静だが、目のキラキラが隠せていないのが残念だ。俺に味方はいないらしい。

 

 

『(何が書かれてるって言わなきゃダメ?黒歴史言わなきゃダメ?)』

 

しかし、俺は皆のキラキラ下目に勝てず……

 

 

『…`暗黒の炎(ダークフレイム)´』

 

言ってしまった。だァァッ!死にたいッ

 

 

すると、持っていた本が急に光り、目の前に黒い火の玉が現れた。

 

 

なに、コレ?

 

 

 

 

 

そこからは早かった……あの後、俺は一通りノートに書かれていた魔法を試した。

 

結論。チートだった。が、精神が死んだ。

 

 

説明。魔法は問題なく発動したし、使い方も分かった。……が、精神年齢おっさんが厨二魔法を使えば死ぬ。以上だ。

 

 

 

しかし、現実は無情。俺は家族の善意で冒険者になった。なってしまった。

 

どうやら、俺にもっと広い世界を見て欲しいとのこと。……うん。ありがた迷惑。

 

 

でも、なってしまったものは仕方ない。

俺は昼に冒険者として呪われた本(笑)を使い魔物を倒して、夜には恥ずかしさに悶えると言う謎の1日を繰り返した。

 

 

そして、いつの間にか

アダマンタイト冒険者の【呪王】となっていた。

 

あーッ、恥ずか死ッ

 

 

 

 

 

 

 






厨二ノート……ロイドが前世の厨二病時に書いた色々とヤバい黒歴史ノート。
多種の魔法や詠唱、魔法陣が書かれてある。
どんなに離れようと、燃やされようと必ずロイドの元に帰ってくる呪物。


呪王のロイド

アダマンタイト冒険者。黒いロープ着て、呪物である本を持っている。チームは組んでおらず、1人でアダマンタイトになった生きる伝説。





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村を救えッ

 

 

迷子の迷子の子猫さん〜。俺のお家は何処ですか〜。

 

どうも。迷子になった冒険者歴10年のロイドです。

 

まさかの遠征の帰り途中で迷うとは……恥ずかしい。が、ここ周辺に村があるのは調査済み。なら…

 

『`式神召喚(ダークバード)´…ここらにある村を探せ』

 

俺の影から作られた鳥たちが一斉に飛び立つ。こうすれば村も直ぐに見つかる。

 

 

『(お、帰って来た。……えーと、……え?村が襲われてる?)』

 

 

 

__

 

[モモンガサイド]

 

 

「ふむ…」

 

とある村が襲われているのを鏡を通して見ていたモモンガは目の前のソレを冷静に観察した。

 

 

「アインズ様、如何なさいますか?」

 

後ろに立っていたセバスが問いた。

 

モモンガも本来ならこの村を救おうとしていた。……が、途中から乱入してきた者によってそれは中断された。

 

 

「(プレイヤーか?なら、接触してみるのも手だけど相手が好意的に接してくれるか分からない)…一旦、様子を見るとしよう」

 

 

__

 

 

 

俺は急いで村に向かった。

 

成り行きで冒険者になったとは言え、殺されかけてる人達を見捨てる訳にはいかない。

 

 

「いやァァッ」

 

1人の女性に鎧の奴が剣を振り下げようとした。

 

俺はその間に入り込み、刀で攻撃を防いだ。

 

 

 

『`式神召喚(ダークウルフ)´…村人達を守れ。(あっぶねッー!間に合った、とりまこの兵士達は倒されてもらいましょ!)』

 

俺はウルフ達を行かせ、目の前の奴と向き合った。

 

 

「な、何者だッ、いや…その服、本……貴様、呪王ロイドかッ」

『お前程度に答える義理はない。`式神召喚(ダークドール)´(つか、その呼び名どこまで広まってんの!?)』

 

俺は影から大量の人影を作り出して、鎧を着た奴らを捕縛するように命令した。

 

「何ッ、クソっ」

 

 

目の前の男は直ぐに捕まり、他の人影も別の奴を捕まえたようだ。

 

案外、早く済みそうだ。

 

 

__

 

[モモンガサイド]

 

 

「……セバス、あの者の魔法に心当たりはあるか?」

「申し訳ございません。あのような魔法、記憶にございません」

 

「そうか…(だよなー。ダークウルフにダークドール……シャドウデーモンとは違うしな…)」

 

勿論、俺達の知らない魔法がある事は分かっているが……

 

 

「(あの本を使って魔法を発動させてるようだが…本を奪うか?いや、それだとあの者との敵対を意味する。もしもプレイヤーならそれは避けたい…)セバス、私は村に行く。アルベドに完全武装で村に向かうように伝えろ」

「なッ、危険です!お待ちください!」

 

 

「安心しろ。戦闘する気はない。」

 

 

そう言うと、モモンガはゲートを開いて村に向かった。

 

 

 

 

 



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不死王と呪王


展開の速さ……。因みに作者はアニメ勢です。

使ってほしい厨二魔法があればコメントで教えてくれると嬉しいです。




 

 

 

村を襲っていた騎士達を全員捕まえた俺は村人達を1箇所に集めた。

 

『怪我人が多いな…』

「いえいえ…貴方様が守って下さったおかげで、この程度の怪我で済みました。何とお礼を言ったらいいか…」

 

村長の言葉をスルーして俺は本をペラペラと捲った

 

『(えーと、回復魔法のページは……よし、あった。)`悪魔の善意(デビルキス)´』

「…おぉッ傷が治っていく!」

 

傷だらけだった村人達はまるで神を前にする様に俺に拝んだ。……やめて欲しい

 

 

『(何か来るな……)』

 

すると、俺の死なない為に極めた第六感が何かに気づいた。

 

 

突如、空間に黒い穴が空いた。

 

「`転移門(ゲート)´」

 

その声が聞こえたと思えば、おかしな仮面を被った恐らく男が穴から出てきた。

 

俺は直ぐに本を構えた。

 

 

『(変な格好だな。…)`解析(アナラシス)´……(アンデッド?何故、こんな所に…しかも、こいつめっちゃ強い…)』

「突然すまない。この村が襲われてると知り、助けに来た。私はアインズ・ウール・ゴウンと言うものです。」

 

『(…何か厨二くさい喋り方だな。敵対は避けるべき。)…この村に手を出さないのなら俺から言うことはない。』

「そうか…」

 

気を緩めようとした瞬間、何かが飛び出してきた。

 

 

「貴様ァッアインズ様から離れろ!」

『ッ(あっぶなッ。当たってたら死んでたぞ!?)`式神召(ダークドー)「止めよ!アルベドッ」…』

 

俺は咄嗟に避け、直ぐに攻撃をしようとしたがアインズさんの声に止めた。……どうやら、仲間らしい。

 

 

「ッしかし!アインズ様ッ」

「2度も言わすな…下がってろ」

 

アインズさんに言われ、渋々後ろに下がった甲冑の人。

 

「うちの部下がすまない。どうか、許してやって欲しい」

「アインズ様ッ!」

『(部下の失態に苦労する上司みたいだな、この人。)分かった。謝罪を受け入れよう』

 

俺、死にかけたけど…という言葉は胸にしまっておこう。

 

俺達がお互いを観察していると、遠くから先程とは違った鎧の騎士がやって来た。

 

 

「私はリ・エスティーゼ王国の王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフ。この辺りの村々を荒らして回っている帝国騎士討伐の為、王の命により派遣された者だ。」

『(あ、ガゼフさんだ。相変わらず、カッコイイな……俺もそう成りたかった…)久しいな。ガゼフ』

 

だが、残念。俺は今も黒歴史を晒して、作っている。……俺は神にでも嫌われてるのか?

 

 

「おぉ!ロイド殿、お久しぶりです。しかし、貴方がここにいると言うのは……」

『依頼の帰り途中(迷子)に襲われてた村を見つけてな…帝国の騎士ならそこだ。』

 

「そうですか…ありがとうございます。……して、その者は…」

「初めまして。私はアインズ・ウール・ゴウン。ただの魔術師です」

 

 

『……それでガゼフ、帝国の騎士が村を襲っていた理由は?』

「実は___(説明)

 

 

訳。ガゼフを殺す為に、村人達を殺して誘い出す作戦を法国がしているらしい。

 

『(えぇ…クソじゃん。クズじゃん。ガゼフさん可哀想…)なら、アイツらはお前の客か?(今の言い方、厨二ぽかったな…恥ずい)』

 

俺は先程来て、陣形をとった法国の騎士軍を指した

 

 

「…ロイド殿、一緒に戦ってくれませんか。勿論、報酬は出させてもらいます」

『構わない…が、ガゼフは下がってろ。邪魔だ(俺の厨二魔法だと、巻き込んじゃうかもしれないし)』

「了解した」

 

俺は外に出て、騎士達の周りにいる天使に目を向けた。

 

 

『(まずは、周りの天使からだな)…`破壊(デストロイ)´(俺は冒険者、俺は冒険者…。)』

 

いつもは1人で魔法を使うに対して、今回は周りの人が見ている。俺の厨二魔法を…正直、恥ずか死ぬ。

 

俺の魔法により天使は弾け飛んだ事により、騎士達が狼狽える

 

 

「奴は、呪王ロイドッ…チッ、彼奴はここでガゼフ諸共殺す!切り札を使うッ……`威光の主天使´!」

 

指揮官が何やらアイテムを取り出し、めちゃくちゃデカい天使を呼び出した。……どれだけ恨まれてるんだよ…俺。

 

 

『(主天使、コイツらの切り札…。正直、倒せなくもないけど……被害は最小限に抑えたい……クソっ!背に腹はかえられないか!)

あまり舐めるなよ…<飯の時間だ。すべてを食いつくせッ>`悪魔の大口(グラトニー)´…食べていいぞ。(あ"ぁッ、恥ッ!死にたいッ)』

 

仕方ない。こんな厨二魔法で周りが守れるのなら……俺は顔が赤くなるのを抑えて、詠唱を唱え魔法を使った。

 

騎士達は切り札が呆気なく、俺の魔法に喰われた事に絶望したらしく膝を着いた。

 

 

「ッて、天使が……」

「(やはり、知らない魔法…この世界の魔法かと思ったけど、向こうも驚いてる……真逆、彼のオリジナル?)」

 

 

『…降伏せよ。死にたくなければな…(因みに、俺の心は瀕死状態です)』

「クソォッ!」

「(あれが本当の強者……カッコイイ…俺も頑張らなくちゃ)」

 

 

帝国の騎士を全員捕まえたガゼフ達はこちらにお礼を言って、王国に帰って行った

 

ガゼフが帰り、俺はアインズさんと向かい合った。

 

 

 

「貴方はプレイヤー…なのか?」

『プレイヤー…それは神人のことか?…何にせよ、俺は(ちょっと、前世の記憶があるだけの)普通の冒険者だ。』

 

と言うか、さっきと言葉使いが違うな……キャラでも作ってんのか?(正解)

 

「……そうか。なら、この後少し話をしないか?色々聞きたい事があるんだ」

『悪いが断る。俺は依頼の途中でな、ギルドに戻らなくてはならない。』

「ッアインズ様の誘いを断るなんて!」

 

「よせ、アルベド。……分かった。また、縁があれば会いましょう。」

『あぁ(あの女はヒステリックかな?)』

 

 

__

 

 

「…いまいち、この世界のレベルが分からんな…(冒険者のロイドはユグドラシルでも強者に分類される方だ。謎の魔法を使うなら尚更……なのに、騎士達は弱かった。…何故ここまで、レベルに差がある?)調べる必要があるな」

 

アインズはふぅ、と息を吐いて上を見た

 

 

「何か、カッコよかったな…あの人。」

 

 

___

 

 

『おい、依頼を達成して来たぞ。』

「あ、ロイド様。確認致しますので、お掛けになってお待ちください」

 

「…あれ、呪王ロイドだ」

「あれがアダマンタイト?細い身体だな。」

「馬鹿ッ、呪王だぞ!生きる伝説だぞ…サインくれないかな?」

 

『(止めて…そんな目で俺を見ないで…)』

 

 

 

俺は数日間、宿に閉じこもった。

 

 

 



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とある日常

 

 

 

とある宿の一室……

 

 

『あ"ぁぁッ……やったな…やったよ……あんなに人がいる中で…やってしまった…』

 

俺はベットの中で悶えていた。

いつもは人が居る時は刀で戦うようにしてるのにッ!

焦ってやってしまった……

 

 

『何が`式神召喚(ダークドール)´だよ!何が`悪魔の大口(グラトニー)´だよッ!誰だよ考えた奴ッ……俺だよ!』

 

ぽすぽすと枕を殴る。

クソォ、コレを書いた頃の俺に出会えるなら殴りたい。

 

 

『法国の奴らも天使召喚するし!?村人には拝まれるし!?恥ずか死にたいッ』

 

そんな声が俺の部屋に響いた。

俺は深呼吸をして荒ぶった心を落ち着かせる。

 

 

『……てか、あのアインズ?さん、アンデッドなのに礼儀正しかったなー。…ちょっと厨二臭かったけど……』

 

まぁ、俺の方が厨二臭いけど。……クッ何故自分でトドメを刺したッ

 

 

 

___

 

 

 

しかし、俺が(恥ずかしくて)死にかけでも依頼はやって来る。

 

何故なら俺はアダマンタイト冒険者の中で格安に依頼を受けるからだ。

 

元は平成生まれ日本育ちの社畜。

頼まれた依頼を断れず受けていたら、いつの間にか格安の男()になっていた。

 

 

『ふぅ…これで依頼は達成だ』

「あ、ありがとうございます!よくゴブリンに畑を荒らされてて困ってたんです!」

 

 

…ありがとう……この言葉だけを頼りに俺は生きてる。俺は向けられる笑顔が眩しくて目を抑える。

 

元の世界では仕事してもお礼を言ってくれる人はいなかったからな…あのクソ上司……

 

 

「あ、あの?…」

『いや、何でもない。また何かあれば依頼しろ』

 

俺はそう言って、ギルドへ戻る。

 

 

 

「目を抑えて……きっと、呪いの力を使ってお疲れなのね…それでも、私達を助けてくれるなんてッ……お優しい方」

 

 

____

 

 

 

こんな黒いローブを着て、明らかに不審者な俺は意外と街の人達から人気がある。

 

 

「あ、ロイド様!丁度焼けたんです。1本どうですか?」

「ロイド様ー!珍しい果物があるんです!食べてみませんか?」

「ロイド様!この間呪物を仕入れたんです!いりませんか?」

 

 

…いや、カモられてるのか?

まぁ、金は有り余る程あるから良いけどさ。

と言うか、様は止めて……恥ずかしい

 

 

そんな訳で俺は焼き串と果物を買った。

呪物は丁重にお断りした。これ以上面倒事増えてたまるかッ

 

 

………多いな。

 

焼き串も果物もそれぞれ2銅貨ずつの量を買ったのに、両手でギリギリ持てるくらい量を渡された。

 

いつの間に街の物価が下がったのだろう。

 

 

しかし、こんなに渡されても俺は食えない。

困った俺の目に入ったのはやせ細った子供達だった。

 

 

『やる』

「…ぇ」

 

俺はその子供達に焼き串と果物を渡した。

 

『買いすぎた。仲間達と食え。』

 

 

ハッ!こんな見た目が怪しすぎる奴の物なんて食えるハズがないだろッ

取り敢えず、俺は焼き串を1本食べて毒が無いことを見せた。

 

しかし、子供達はポカーンとした顔をしていて俺は気まづくなりその場を早歩きで離れた。

 

 

 

 

「はぁ…かっけぇな……」

「ん?あぁ…それ1つ銅貨2枚だよ。……あれはロイド様割りだから。」

「……ロイド様…」

 

 

 

___

 

 

ギルドに到着した俺は早速、依頼達成の報告をする。

 

『依頼を達成した。次の依頼を貰おう』

「は、はいっ」

 

 

何度も言うが俺は人気者()なので、俺宛の依頼は大量にある。

因みに休みはない。元社畜の俺もびっくりのブラックさだ。

 

 

 

「ぇッ」

 

何か驚かれた声がした。

俺は声のした方を見ると全身甲冑の人と1つ結びの女の人がいた。

 

『…何だ』

「あ、いや…」

 

見たところこの男は依頼を受ける所らしい。

カッパー冒険者でその身なりだと、何処かの貴族か何かだろ…

 

 

「ロイド様、こちらが依頼になります。」

『あぁ。』

 

チラリと甲冑の方を見たが、何故か女の人に睨まれてしまった。

 

怖っ……俺何かした?…泣きたい。逃げよ。

 

 

 

_____

 

 

 

「モモン様。アレが例の男ですか?」

「あぁ。真逆、こんな早くに見つかるとは…運がいいな」

 

 

「アレにそこまで警戒する必要があるのですか?他の下等生物と変わりないように思いますが…」

「何事にも警戒は必要だ。ソレが自分の未知に対するものなら尚更な。…あと、様は止めろ」

 

「分かりました。モモンさーーん…」

 

 

 

 








ロイド

レベル:30前後
70〜80(呪物の使用中)

種族:人間

カルマ値:100【善】
0【中立】(呪物の使用中)

装備:呪いの本…適応者のみ本に書かれている魔法使用可。必ず持ち主の元に戻ってくる。

:呪いのローブ…適応者のみ防御力大幅アップ。1度着れば脱げない。

:呪いの刀…適応者のみ身体能力大幅アップ。適応者でなければ発狂する。

:呪いの指輪…適応者のみ即死魔法の完全無効。1度つければ取れない。


概要:元平成生まれの社畜。死因は不明。
良い意味でも悪い意味でも日本人。
敵対されなければ敵対しない。事勿れ主義。
呪物の使用で純人間とは言えなくなっている。

アニメ、漫画の知識で基本的に刀で戦う。
(呪いの本を使いたくないから)




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墓地での戦い

 

 

 

俺はある日、見てしまった。

 

 

『は?(えぇ!ハムスター!?…ナンデ!?……??)』

 

めちゃデカいハムスターを……

 

 

ダメだ。少し考えたけど訳が分からん。

つか、デカ。手のひらサイズの可愛いフォルムはどこへ……

 

 

あの背中に乗ってる甲冑男は前に見た奴だな。

 

 

……もふもふしてそう…

 

 

 

 

カタっ

 

俺は少し奥の屋根から音がしたのに気づいた。

 

?あの家は確かポーションの……

 

 

よく見るとマント姿の奴が誰かを担いでいた。

 

ぇ?人攫い……うわぁ…この世界って本っ当に物騒…

 

 

 

『はぁ…`式神召喚(ダークバード)´あの人物を追え。』

 

まぁ?人攫いと決まった訳じゃないし?

……てか、あの店ってお婆さんと少年の2人の店だったよね?…

 

 

俺は走って店に向かった。

 

 

 

バンッ

 

扉を開けて俺は中に入った。不法侵入だけど今は許して欲しい。

 

 

俺は周りを警戒しながら奥の部屋に入った

 

『ッ…』

 

 

そこには、冒険者と思われる男たちが倒れていた。

 

俺は状態を確かめるために男たちに近づこうとした……が、急に男たちが起き上がってきた。

 

 

「グ、グォォォ」

 

 

どうやら、ゾンビになってしまったらしい…。

 

悲しいことだ。この世界ではあまり珍しくないが、急に来るのはやめて欲しい。驚くし怖いし……

 

 

『`呪縛解放(コントラクトキャンセル)´』

 

魔法を喰らったゾンビ達は倒れて動かなくなった。ゾンビから死体に戻ったのだ。

 

俺が使った魔法は簡単に言うと状態異常の無効魔法だ。

 

この世界ではこの魔法は大活躍だ。それが例え`呪縛´と言う文字を使いたいが為に作った魔法だとしても……ウッ、頭が痛い…。

 

 

 

さて、人攫い兼人殺しの犯罪者さんは何処かなぁ?

 

 

 

 

 

 

そして俺は人攫いの拠点である王都の墓地に(勝手に)侵入した。

 

だって、たとえアダマンタイト冒険者でも人攫い兼人殺しの拠点が墓地にあるって言ってもすぐに信じてくれないだろうし……ね?

 

 

そんな理由……だからさ………アンデッドの大軍が居るなんて知らなかったんですッ

 

 

「ロイド様!アンデッドの大軍から王都を守った英雄!!」

「流石です!万歳!ロイド様万歳!!」

 

もう止めてっ、俺を称えないでッ

 

 

 

 

 

____

 

 

 

『ッチ!…何でこんなにアンデッドがッ』

 

何故俺は人攫いを捕まえに行ってアンデッドの大軍と戦って居るのだろう……

 

 

骸骨は切っても切っても湧いてくる。

こっそり入ってこっそり捕まえようと思ってたのに……これじゃ勝手に侵入したのバレちゃうじゃん!

 

 

骸骨が一気に俺に襲いかかってきた。

 

『ッ`烈火の炎で焼き尽くせ(バーニングフレイム)´』

 

あ、やっべ。

 

 

「おい、向こうに炎が見えるぞ!あれは……ロイド様だ!アダマンタイト冒険者のロイド様が戦ってる!」

 

バレたッー!逃げる?あ、逃げれないわ。

どうしよ。どうしよ……

 

 

「恐らく、この大軍の事を予知されていたのだろ……そして、我々に気づかれないように倒すつもりでッ…なんてお人だッ」

 

うん?………うん?

 

 

「全員、剣を抜けッ我々も戦うぞ!」

「「おぉー!」」

 

え?……何か勘違いされてない?…あと戦わなくていいから。逃げて。魔法使ってるとこ見られたくないから……逃げて。

 

 

俺は今絶望したような目をしているだろう。

死ぬよ?また大人数に見られるとか…恥ずか死ぬよ?いいの?

 

 

その時、門超えて墓地に入り込んできた影が見えた。

 

あの甲冑の人だ。1つ結びの人もいた。あとハムスター。

 

 

「すまないが、兵士諸君は街の避難に行ってくれ。ここは君達の手には余る」

 

か、甲冑の人ッーー!!

アンタッ……いい人なんだなッ

 

 

「な、何をッ我々も戦える!」

 

このチャンス逃すかッ

 

俺は急いで彼らの所に向かった。勿論、アンデッドを倒しながら。

 

 

『いや、彼の言う通りだ。ここは任せろ。(逃げて。ね?ね?死亡フラグっぽかったけど、大丈夫だから)』

 

 

そして、何とか兵士達には納得してもらった。

勝った……別に何も終わってないけど…勝った。

 

 

「初めまして。私はモモンです。こっちはナーベ、そしてハムスケです。」

『あぁ、ロイドだ。』

 

ハムスケってまんまだな。

あとこの人強いな。前にカルネ村で会ったアインズさんと同じくらい?

 

まぁ、冒険者に`解析(アナラシス)´は礼儀としてしないけど。

 

 

「私達はこの奥にいる者達に用があるのですが、ここを任せても?」

『…その用とは、バレアレ店の件か?』

 

「ッ!えぇ。そうですが…」

『俺の目的もそれだ。…アンデッドを引き受けよう。先に進め』

 

なーんだ。この人の目的もそれなら、俺が先に進む必要は無いな。

 

元々何度かあった程度の縁だし、冒険者に関しては完全に初対面だし…

 

 

「分かりました。任せます。行くぞナーベ」

「はッ」

 

 

そう言ってアンデッドを倒しながら先に進んで行った2人と1匹。

………何であの強さでカッパーやってんの?

詐欺じゃね?まぁいいか。

 

 

『さて、ここを通りたいなら俺を倒して行くんだな…』

 

待って、めっちゃ厨二セリフ言っちゃった!!

 

 

 



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それぞれの戦い

 

 

 

俺は闇の剣を残ったアンデッド共にぶつけた。

 

『`闇の大剣(ダークネスカリバー)´!』

 

アンデッドは吹き飛び、闇の剣は消えた。

 

あれから数十分経ち、俺はアンデッドの大軍を大方倒せていた。

 

もし、ここに兵士達がいれば無理矢理にでも刀で戦ってたからモモンさんには感謝しなきゃな。

 

 

うーん…こっちは終わったけど、モモンさん達の方に……どうしようか…

 

『……`式神召喚(ダークバード)´…様子を見てこい』

 

よし。これなら向こうの邪魔になることは無いな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

は?`式神召喚(ダークバード)´が倒された?

 

 

 

_____

 

ナーベラルサイド

 

 

 

ナーベラルはイラついていた。

 

 

ここに来る前、あの男がアンデッド相手に戦っているのを見た。

刀で的確にアンデッドを倒すあの男。

 

 

そして気づいた。下等種族に対して少し認めてしまった自分がいると…

 

アレは警戒するべき対象。私はそう、認識を改めた。

 

 

 

「あれは…」

 

カジット(ゴミ)の相手をしていると、少し離れた所から1羽の鳥が飛んでいるのが見えた。

 

普通の鳥に見えるが、あの男の力が感じられる。

 

大方、こちらの様子を確認しに来たんでしょう。

 

この姿(ナーベラル)を見られる訳にはいかない…

 

雷撃(ライトニング)

 

攻撃を受けて呆気なく消滅した鳥。

あの男ももうすぐ来る。

 

早めに終わらせないとね。

 

 

_____

 

 

 

 

俺の`式神召喚(ダークバード)´はそこまで弱くはない。

単体でもゴブリンくらいは倒せるくらいの強さはある。自分より強い相手ならすぐに逃げるくらいの判断力もある。

 

そんな`式神召喚(ダークバード)´が倒された。しかも、恐らく瞬殺。

 

 

モモンさんやナーベさんは無事だろうか……

 

俺が先に進めた以上、死んでたら普通に申し訳ないんだが…

…え?大丈夫だよね?

 

 

 

 

ドゴーッン!

 

 

少し遠くで雷が落ちた様な音がした。

きっと戦闘音。魔法だろうか…

 

俺、この世界の魔法って詳しくないけど威力ヤバない?

え?マジで生きてるよね?

 

………急ご。

 

_____

 

モモンガサイド

 

 

 

女の戦士を倒し、ンフィーレアを回収しに神殿に向かう途中で彼は現れた。

 

『…そっちは終わったようだな』

「えぇ。そっちも終わったようで何よりです。」

 

ほぼ…いや、完全に無傷の彼を見るとやはり疑問が浮かぶ。

 

 

「(あの数のアンデッドを相手にして傷1つない…やはり彼はこの世界でも異質な存在。)」

 

実力を図れなかった事を少し残念に思うと、彼もこっちの様子を見ているのに気づいた。

 

「こちらに何か用ですか?我々はこの後少し用があるのでまだ戻れないのですが…」

『…いや、俺の式神が倒されたから来たのだが……』

 

式神?そう呟くとナーベラルが目を逸らした。

 

…お前が倒したのか……。

 

_____

 

 

 

モモンさんもナーベさんも無傷だった。因みにハムスケは木に置いていかれてた。

 

いや、強すぎない?モモンさんは何となく分かってたけど、ナーベさん…アンタも強かったのか……

 

 

2人に俺の`式神召喚(ダークバード)´の事を聞いてみたが、知らないそうだ。

もしかすると、戦闘に巻き込まれて倒されちゃったのかもしれないな。

 

…ナーベさんが目を逸らしたのは気になるけど。

 

 

 

 

2人は用があるとかで俺は先に戻った。

 

 

そして忘れてた……

 

 

「あ!ロイド様のお戻りだ!」

「この街を守ってくれてありがとう!」

 

『(…そう言えば俺が戦っているところ、兵士に見られてたんだった……俺、アンデッド倒しただけなのに…)』

 

 

街に戻れば、そこには街の人達が興奮気味に称えて来た。

 

過剰評価もいい所だ。俺は雑魚を倒しただけで、首謀者を倒したのはあの2人なのに…

 

 

 

「ロイド様!アンデッドの大軍から王都を守った英雄!!」

「流石です!万歳!ロイド様万歳!!」

 

もう止めてっ、俺を称えないでッ

 

 






どもどもさんから厨二技「ダークネスカリバー」の意見を頂きました。
詳細がなかったので、こちらで決めさせてもらいました。

ダークネスカリバー……闇を纏った大剣が出現し、周りを吹き飛ばす威力を出せる。


他にも使ってほしい厨二魔法があれば、コメントで教えてください!




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呪王と執事

 

 

 

エ・ランテルで受ける依頼も減ってきたことにより、俺は1度王都に戻ってきた。

 

王都には俺宛の依頼が大量にあるから、平民を中心にどんどん依頼を片付けていく。貴族?そんな奴らは後回しだ。

 

 

だが、その間にモモンさん達はアダマンタイト冒険者になったらしい。

凄いよな。天才ってあの人達の事を言うんだよ。俺じゃない。

 

俺はそんなことを思ってしみじみ歩いていたら、誰かにぶつかってしまった。

 

 

『すまん。』

 

ぶつかった人を見れば老いてはいるが、筋肉が目立つ執事さんだった。

うわっ。ロマンスグレーだ。カッコよ。執事服ってこの世界にもあったんだ…ちょっと、感動。

 

 

「いえ、こちらも失礼しました。」

 

執事の人は服を正し、軽くお辞儀して行ってしまった。俺もあんな大人になりたいものだ。その為にもこの呪い(?)を早く解かなくてはッ

 

__

 

 

「セバス様、如何なさいましたか」

「…例の人間が王都にいました…貴方も気を付けてください。彼、私を観察する様に見ていたので」

「かしこまりました」

 

__

 

 

 

「ロイド様。どうか、どうかッ私の娘をお助け下さい」

『了解した。』

 

そんなこんなで今日の依頼は行方不明になった娘さんの捜索だ。俺は早速聞き込みを行うことにした。

 

 

しかし、情報は少なく俺は完全に足が止まっていた。

 

うーん。目撃情報はここで途切れてる。小さい名探偵ならこれで分かるのかな。すげぇや。

 

 

「……あの、ロイド様。アンタにこう言うのは何だが…今回の件は手を引いた方が良いんじゃないか……」

 

情報を聞いた男が変なことを言い出した。

 

 

『何故だ』

「いや、それは…」

 

 

目に見えてたどたどしくなる男。これは…

 

 

『何か知っているな』

「あ…えっと…」

 

 

俺は男に詰めよった。少し涙目になっているが気にしない。

 

 

『言え』

「ハイッ!」

 

 

新しい情報ゲットだぜ!

 

 

 

 

まぁ、その誘拐先が娼館とは思わなかった。本当にこの世界は怖いな。毎日殺人事件が起きる街といい勝負だ。

 

何でも情報では八本指が経営している娼館らしい。成程。……で、八本指って何?

 

 

 

 

 

俺はなるべく目立たないように娼館にやって来た。

 

さてと……

 

『やるか。』

 

 

俺は周りに人がいないことを3回くらい確認して魔法を使った。

 

『`誰も俺を捉えられない´…`誰も俺に触れられない´』

 

相手に見えないの魔法と物体をすり抜ける魔法だ。

 

地面はすり抜けずに壁や物だけすり抜ける様に設定して魔法を作ったガキの頃の俺に一言。………名前もうちょい、どうにかならなかったか?

 

うん。俺もガキだったからさ、難しい言葉も英語も分からいから名前が安直(?)厨二全開になったのは仕方ないんだけどさ……。

 

正直、めっちゃ恥ずいよ。これを言うの。日本語でルビもなくてさ、恥ずかしさが倍増してね……人前じゃ言えないの。もし聞かれたら死にたくなるの。

 

 

 

 

……ハッ…恥ずか死にたくなってる場合じゃない。急がないと。

 

 

俺は扉をすり抜けて店の中に入った。

案の定、見張り役がいたのでバレないように次の部屋に向かった。

 

見張りは倒しても良かったが、侵入がバレて娘さんを人質に取られても困る。

 

そして、数十分……

 

 

 

 

 

ここどこ?

 

 

 

ヤバい、ヤバい。扉が多すぎて俺が何処から来たのか分からない……。

 

俺は近くの部屋に入ったが、ここにも男がいるだけ。……もういっそ、コイツらボコって娘さんの場所と出口聞いた方が早いかな。

 

 

 

 

 

 

うん。それが1番だな!

 

そう決まった瞬間、俺は魔法を解いて男をぶっ飛ばした。

 

 

「ッグハァ!」

『気絶はするなよ。お前には聞くことがある』

 

「ッ…クソっ…誰だテメ_呪王…ロイドッ!?」

『黙れ。お前が生き残る選択肢は俺の問いに答える…ただそれだけだ。分かったな』

 

「ヒャィ…」

 

まぁ、脅しだけど。これくらい言わないと俺の経験上、犯罪者は大人しくならないからな。

 

 

 

 

『…ここだな。』

 

俺は娘さんがいると聞いた部屋の扉を開けた。

部屋の中には娘さんの他にも何人かの女性がいた。怪我をしてる人もいて、全員怯えるようにこちらを見てきた。

 

 

 

ふぅ……

 

 

マズイな。ここの犯罪者共に殺意が湧いてきた。殺しはしないけど、何発か殴りたい。顔面潰れるくらい殴りたい。

 

 

って、そんな事考えてる場合じゃないな。俺は直ぐに回復魔法を使った。

 

 

『`悪魔の善意デビルキス´……安心しろ。俺はお前達を助けに来た。』

「私達を、助け…に?」

「貴方は……呪王…ロイ、ド様?」

「ロイド、様…ありがとう…ありがとうござ、います。…ロイド様…」

 

涙を流して俺に礼を言う女性達。

 

 

やべぇ。これ、殺意抑えられないな…。犯罪者共め…。

 

 

その時、ガチャと扉の開く音がした。恐らく犯罪者の1人だろ。女性達の顔が歪んだのが嫌でも分かった。

 

 

 

『`天の雷ヘブンストライク´』

 

先手必勝。俺は厨二魔法の中でトップレベルに速い雷魔法を使った。周りへの被害も少ないこの魔法。砂埃で女性達は咳込んでるけど。

 

 

 

………でも、

 

 

砂埃が晴れ見えるのは、倒れた敵の姿…ではなく、穴の空いた扉と奥の壁だった。

 

 

ッチ!やはり避けられたかッ

 

 

 

『…何者だ』

 

俺は女性達を守るようにして構えた。

 

 

「すみません。驚かせる気は無かったのですが……あなたと敵対する意思はありません」

 

そう言って姿を見せたのは、執事服を着た老人。

 

『信用ならん。そして、犯罪者は全員潰す。』

「いえ、私はここに所属してはいません。貴方と同じここを潰しに来た1人です。」

 

 

この人、何処かで見たと思えば街で会った……あの時は気づかなかったけど、この人…強い。

 

 

『信用するつもりは無い。だが……おい』

 

流石にこんな人とここで戦闘なんて出来ないので、会話をする。

 

俺は確認のために女性達に声をかけた。

 

「な、何でしょう…」

『この者に見覚えはあるか?』

 

俺の質問に女性達は少し考えたが首を振った。

 

「ありません」

「私もです」

 

『…そうか……分かった。敵対はしない。だが、信用する気は無い』

「そうですか。……なら、彼女達をお願いしても?私は先に進みますので」

 

当然俺は分かった、と言うつもりだった……

 

 

 

 

 

あ、待って……俺、出口分からない。

 

 

……。

 

 

『…いや、俺も行こう。犯罪者共を潰す為に』

 

 

半分は本音、半分は……まぁいい。

 

 

「では彼女達はどうするつもりで?」

 

まぁ、そうだよな…連れては来れないし……ここに置いていくのも……

 

 

「わ、私達…ここで待ちます!」

 

え。

 

「はい、私、達なら大丈夫です!」

「お気にせず、男共を…ぶっ飛ばして来て下さい!」

 

え。あ、はい。

 

 

 

 

 

 

犯罪者を全員ぶっ飛ばして来たぜ!

 

 

セバスさんが居て、魔法は使いたくないから刀で戦ったけど何一つ問題なかったな。

 

 

 

「娘を助けて下さり…ありがとうございます…」

「俺の娘も…本当にありがとう!」

「私の妻も…」

「私の子も…」

 

やっぱり、感謝されるのって気持ちが良いな。

 

 

 

だからさ……

 

 

拝むの止めてもらっても?

 

 

 

__

 

[セバスサイド]

 

 

「……」

 

 

正面から娼館に乗り込んだセバスは虫のように湧く敵を倒していた。

 

数ある扉を開けるもいるのは敵のみ。

そして、セバスは次の扉を開けようとした。

 

 

っ____

 

 

「ッ!」

『`天の雷ヘブンストライク´』

 

 

セバスは鋭い殺気が向けられたことにより、直ぐに扉から離れようとした__

 

__瞬間

 

 

ドゴォン

 

 

 

魔法が扉を突いてきた。

 

間一髪で避けることに成功したセバスは息を呑む。

 

 

 

もし、殺気に気づくのがあと少し遅ければ無傷ではいられなかった……と

 

 

 

恐ろしい程速く、威力のある…しかし覚えのない魔法。セバスの記憶の中で1人の人間が思い浮かんだ。

 

『…何者だ』

 

 

 

奥にいる女性達を守るようにして構える男。

 

 

 

…あの男はナザリックの障害に成りえる…

 

 

セバスは男への警戒を高めた。

 

 

 

 

 



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襲撃の前準備

 

 

セバスに裏切りの容疑を確かめるべくセバスの屋敷にやって来たアインズ、デミウルゴス、コキュートス。

 

ツアレの処遇についてセバスとデミウルゴスで口論になりはしたが、セバスの直轄で働かせる事を決定したアインズ達。

 

 

「アインズ様、ご報告したい事がございます」

「何だ。セバス」

 

ツアレを一旦部屋から出し、アインズの前に出るセバス。

 

 

 

「例の謎の魔法を使う男と接触しました。」

「ほぅ…何かあったのか?」

 

「はい。男は第七位階魔法`連鎖する龍雷(チェイニング・ドラゴン・ライトニング)´以上の速さ、そして同等の威力をもつ魔法が使えることが分かりました」

「ふむ…第七位階魔法…この世界だと英雄を超えて人間では使えないと言われている魔法だな。」

 

伝説と呼ばれる存在で第五位階魔法。

第七位階魔法は大儀式などでなくては発動不可。

これがこの世界での基本だ。

 

「(なのに、それと同等の魔法を使えるあの男は一体……体に秘密があるのか…もしくはあの本……本を奪って解析したいが、呪いの効果であの男が死んでも困る…)」

 

熟考するアインズ。

 

 

「えぇ。あと少し避けるのが遅れていたら危なかったでしょう」

「そうか(あぇぇ!何でセバスとあの男が戦ってんの!?)」

 

しかしセバスが爆弾発言を落とした事に考えるのを止めた。

 

 

「どうやら彼は誘拐された女性を助けに来ていた様で、私を敵の1人と思い攻撃を仕掛けてきました。

その後は誤解を解き、最低限の信用をしてもらい、敵を倒しました」

「おや、油断した所を捕えなかったのかい?ナザリックの発展にあの人間の体も魔法も必要だと思うが…」

 

「デミウルゴス様はお忘れかましれませんが、アインズ様はあの者との敵対はできる限り避けるように言われました。ならば、あの対応が最善だと思いますが…」

「君は相変わらず頭が固いな。…まぁいい。それで情報はそれだけかい?」

 

 

「えぇ。あの者は私が居るからか、あれ以降魔法を使わず刀で戦っていました。」

 

セバスの話を聞いたデミウルゴスは考えるように顎に手を当てる。

 

 

「ふむ…やはり警戒はするか…馬鹿正直に魔法を使えば楽なものを……」

 

 

デミウルゴスの言葉にアインズはまた熟考する。

 

 

「(んー…確かに初対面の相手に魔法を見せ過ぎるのは悪手だ。だが、本当にそれだけか?…噂では例の魔法を使うにはデメリット…MPに似た物が必要で多様する事が出来ないらしい………んー。全力を図る為に一時的に)敵対するのもアリ…か。」

「「「!!」」」

 

アインズの発言に場が静まる。

 

 

「ん?」

「成程……分かりました、アインズ様。ではその様に作戦を一部変更しましょう!」

 

「ん?」

「そうと決まれば、早速取り掛からなくては…失礼致しますアインズ様…」

 

「お、おう…」

 

アインズは自身の発言ミスを気づくことなく、許可を出してしまった。

 

 

____

 

 

『くしゅッ…』

「あら、風邪ですか?」

 

俺の前にいる少女が優しく心配してくる。

 

立派に装飾されている部屋にいるのは俺と少女の2人だけ。

 

『平気だ。気にするな。』

 

俺、無礼だとかで殺されたりしないかな……

 

 

内心ガクブルな俺は冷静を装う。

こんな時にだけこの表情筋が有難く思う。

 

この謎に鍛えられた表情筋の固さに俺がどれだけ迷惑をかけられたか……。正直、周りに変な勘違いされている原因の1つだと思う。

 

 

あれ?俺何の話してんだ?

 

 

「それで、アダマンタイト冒険者であるロイド様には八本指が所有する拠点の内の1箇所を襲撃してほしいのです」

 

あぁ、そうだった。犯罪組織の討伐を王族から依頼されたんだった。

 

目の前に座る少女はお姫様で正しく美少女と呼べる程に綺麗だった。

 

まぁ、俺はロリコンじゃないから思う事はそれだけだがな。

しかし、殺伐とした世界に…ここまで完璧なお姫様がいるとなんと言うか……

 

 

そう__

 

 

 

「あの、何か?」

『…まるで演じてるようだな』

 

うっかり声に出してしまったのに気づいた。

 

「……それはどういう…」

 

少し声が低くなったお姫様にビビる俺。

ヤバい。この世界は普通に不敬罪とか成立する世界……え?俺死ぬの?

 

 

『すまない。変なことを言ったな。…作戦の件、了解した。』

「………」

 

取り敢えず謝罪し、早々に立ち去ることにした。お姫様が無言なのが怖い。

さっきの笑顔が嘘みたいなんだが?

 

 

『では、失礼する』

 

やっべぇ…王族怖ぇ……何か疲れた。…宿戻

ろ。

 

 

 

 

 

 






厨二本…奪われてもロイドは死なない。強いて言うなら、黒歴史の本を奪われた事により(ロイドの精神が)死ぬかもしれない。
簡単な公式()
本が奪われる=黒歴史を見られるかもしれない=恥ずか死。

ロイドのイメ画。
自分のイメージを壊しくない人は注意。あと字が汚い。

【挿絵表示】


ロイド
〈通常〉(人目が多い時はフードを被ってる)
・目が死んでる
・基本無表情

〈魔法使用時・後〉
・さらに目が死ぬ
・恥ずか死にたくなる

〈厨二本が見つかる前〉
・目が生きてる




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悪夢という名の××

 

 

 

とある岩と砂しか無い荒地で戦闘音がずっと鳴り響いている。

 

そこでは1人の男が人間ではない多くの異型と闘っていた。男の手には一冊の本。それが禍々しい気配を放っている。

男は異型を慣れた手つきで薙ぎ払う。自身の五倍はある巨体すらも男の前ではいとも容易く散っていく__

 

 

「ハッハッハ!我が歩み…止められるものなら止めてみろッ」

 

男が放った魔法が魔法が異型達を焼き払う。

それでもまだ残る異型達を目に男は狂ったように笑う。まるでおもちゃに夢中になった子供のように、男は楽しそうに戦場を駆ける

 

 

 

「魔物ごとき、我が魔法で屠ってやろう!」

 

 

 

男に襲いかかった数体の異型が雷魔法によって射抜かれ散った。

 

数体の異型が式神によって食われ散った。

 

 

 

 

 

突如男に向かって魔法が放たれた。

地面を抉り、異型を巻き込みながら近づいてくる魔法。

それに気づいた男は危なげなく魔法を避け、放たれた方角を見た。

 

 

「ほう...魔の王だな。ようやく出てきたか。見かけによらずビビりだな」

 

山のようにデカいその体躯。明らかに先程の異型(ザコ)とは違った気配で存在するソレに男は笑う。不気味にニヤリと__

 

 

『久しぶりに楽しめそうだ......まぁ、お前にはここでは消えてもらうがな』

 

 

男が魔の王に向かって突き進む。先程まで戦っていた異型達には見向きもせず、既に男には敵しか映っていなかった

 

 

 

 

 

 

魔の王と呼ばれた巨大な異型と男が戦って数十分か数時間かはたまた数日か......男はそんな事を気にせず戦い続けた。

近くにいた異型(ザコ)達は戦闘に巻き込まれ既に消滅していた。

 

 

荒地では動くのは一人と一体のみ。

 

 

魔の王は身体中に傷ができており、血と思われるものを流していた

対して男は傷は無いものの肩から息をしており、汗を流していた

 

 

 

お互いの目が合った。

 

 

 

魔の王は動く。自分の体と同じくらい巨大な魔法陣を展開した。

 

男は何を思ったのか、フッと小さく笑い服を正した。

服についた砂を落とし、汗を拭った。

 

 

「成程強い。…良いだろう我を楽しませた褒美に我が封じられし力を見せてやろう!神すらも焼き尽くす我が魔法を拝めるのだ光栄に思え」

 

 

男は詠唱する。それと同時に妖しく光り出す本。

 

 

『〈我に眠る力の根源よ。今こそ力を解放し敵を滅ぼせ〉__』

 

 

『この世の別れは済ませたか?消えろ__』

 

 

 

『`蝣慕・樒オらч轣ォ(×××××××)´ 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ハッ……地獄のような夢を見た気がする…』

 

ベットから飛び起きた俺はそんな事を呟く。

 

「我」だの「魔の王」だの「封じられし力」だのかなりイタい事を言っていた気がする。

まぁ、今の俺にはクリティカルヒットだから痛いじゃ済まないけど。

何が嬉しくて夢も厨二に侵食されなきゃならんのだ。自分じゃないと分かっていてもキツいんだぞ。

 

 

俺は落ち着く為に外を見た。太陽は上に昇っていて、部屋を明るく照らしてくれる。青い空が俺を冷静にさせてくれ__

 

『あ……やっべ』

 

 

そう言えば八本指の拠点襲撃の全体作戦会議って今日だったな...

 

 

何時からだっけ……

 

 

確か集合が昼前で…会議がその30分後...

 

 

 

い、今の時間は………12時45分……

 

 

 

 

ち、遅刻だァァ!!

 

 

 

_____

 

 

「これで全員集まったかしら?」

「いやまだ同じアダマンタイトの呪王が来ていない」

 

 

「そう...前の依頼で押しているのかしら。」

「かもな。どうする?待つか?」

 

 

「...いえ、彼には後で私から伝えるわ。ここにいる冒険者には先に作戦を話しておきましょう」

 

 

呪王ロイド到着まであと数十分____

 

 

 



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黒歴史と知り合いと過去


この作品が恋愛系になることはありません。


 

 

 

俺は元の世界で俗に言う厨二病なる病にかかっていた。その病にかかった俺は"ぼくがかんがえたさいきょうのまほう"本をつくったのだった。

 

想像力豊かなお年頃の俺によって作れた魔法、数は百以上...。とんでもない数の厨二魔法を作ってしまったものだ。嫌な努力である。

 

 

そして俺は時に魔法を作り_

時に魔法を詠唱(笑)し_

時には役に成り_...。

 

 

 

まぁ、前の世界での黒歴史はもう取り返しはつかない。いくら過去の自分を殴りたいと思ってもその術はない。(現在の自分なら何度も殴った)

 

問題は、今も現在進行形で黒歴史を作り続けている事だ。何が悲しくて前の世界の黒歴史を今の世界で晒さなきゃならないのか。勿論、人の命と比べたら俺の恥など比べるにも値しないが。人を守る為、と思っていてもキツい部分がある。と言うかキツい所しかない。

 

 

しかし今、こんなにも自分の黒歴史に嫌気が指している俺だが、(この世界に来てからの)少年期はこんな感じではなかった。

勿論初めて黒歴史本を見つけた時は胃が痛くなったし、涙を流した。どうやって処分すればいいかも考えた。

 

そう、考えて考えて考えて......考えすぎてしまったのかもしれない。

 

俺はある日、ふと思ったのだ。

 

 

 

 

『あれ?俺ってつまりは選ばれし者なわけだし、魔法も使えるわけだし、厨二病じゃないんじゃ...』と。

 

 

 

 

 

あの頃の俺は頭のネジが3、4本取れてたのだろう。そうして誕生したのが....

 

"さいきょうの俺"だ。

 

アレはヤバかった。人前で簡単に厨二魔法を使い、厨二的な言葉を発し、今思い出しただけでも吐血しそうだ。

 

 

そんな厨二期は俺が正気と理性を取り戻したことにわり数ヶ月で終了した。取り戻した時は何度壁に頭を打ち付けたことか...。

 

さて

 

何故そんな事を思い出したのか、簡単だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだな。ロイド...いや、呪王ロイド」

 

その時の目撃者(ラキュース)がいるからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤバいヤバい現実逃避してる暇はないッ

向こう完全に俺のこと覚えてるぞ。

 

え、逃げ道なくね?

え、過去のこと話されたら俺死ぬくね?

 

え?ぇ......

 

 

 

 

助けて

 

 

 

 

 

 

_ラキュースサイド

 

 

ロイドは私の呼び掛けに応えることなく、黙って私を見つめた。忘れられたのだろうか、あの時はロイドも私も子供であれから長い間会ってなかったからな...少し寂しいが仕方ないことだ。

 

 

私は、ロイドに助けられた。

 

 

7歳の頃、私は領地の端にある小さな町を調査しに出かけた。後学のためにと父に連れてこられた私はうんざりで仕方なかったのをよく覚えている。

 

調査に行くのは、これから行く町がここ数ヶ月で暴行犯や盗賊の検挙率が目に余るほど向上しているからだ。大方、優秀な傭兵か冒険者が町にいるのだろう。そんな予想を立てて私達はその町に向かったのだ。

 

 

 

 

___子供ラキュースサイド

 

 

 

 

予想していた傭兵は想像よりも遥かに幼かった。私と同じくらいの年頃の少年が馬車を襲ってきた盗賊を倒している。

私達を襲おうとしていた荒々しい盗賊は、今では少年の近くで倒れて呻いている。

 

『貴様らまだここにいたのか...この間も馬車を襲っていたな』

「ま、またお前かよッ」

 

やはり町を守っていたのは彼のようだ。一冊の本を手に持つ彼は言葉で表せない禍々しいオーラを感じる。

 

 

『俺の町から出て行ったかと思えば、こんなところで馬車狩りとは...随分とあさましくなったな』

「くそっ、クソガキがぁ」

 

『今回の仕置きは前よりも辛いぞ。...`暗闇の雷(ブレインサンダー)´』

「ッグ...ハッ」

 

そうして見たことも無い魔法で最後に残ってた盗賊を倒した。顔が顔がよく見えないが、彼は呆れたようなため息を吐いた。

 

『何度も...学ばない奴らだ。』

「ま、待ちなさい。君は...」

 

 

盗賊が倒されたことを確認したお父様は物陰から出て彼に声をかけた。しかし、彼は私達を見ることなく背を向けた。

 

『......名乗る程のものじゃない。』

 

静かにそういう彼を私は不気味に思った。名前を知ることが出来ないのは残念だが、ここは彼の機嫌を損ねないように大人しく引くしかない。

 

しかし、お父様はそうはしなかった。

 

 

 

「そうか...私はここの貴族なんだ..どうだ?私と契約を結ばないか?君を雇いたい」

 

 

貴族、その身分を出せば平民は簡単に拒否する事はできない。ましては、自身の住んでいる領地の貴族の言葉に逆らえるはずもないのだ。

もし拒否することで貴族の気分を害そうものなら、良くて家族諸共領地から追放され、最悪殺される。

 

要するに、お父様は彼を脅しているのだ。家族を人質にとって.........なんて浅はかなのだろう、

 

 

 

 

途端に空気が重くなった。...苦しい。

 

 

 

 

 

少年は振り返り、お父様に近寄った。

 

 

 

その顔は無表情。だが、明らかに盗賊以上の敵意を示していた...お父様に。

 

 

『...分をわきまえろよ。貴様程度が俺を使役できるなど天変地異に等しい。俺の町の者に手を出してみろ?貴様を死より苦しい呪いにかけてやる』

 

 

 

そう言って彼は町がある方向に歩いていった。重かった空気が、息もできなかった空気が澄んでいく。彼が離れていったことを確認した私はドキドキと鳴り響く胸に手を当てた。

 

「(殺されるかと思った......)」

 

 

普通の子供なら泣いていたはずだ。実際、お父様は涙目になっている。泣いていなかったのは、子供に泣かされる訳にはいかないという貴族のプライドがあったからだろう。

 

 

 

 

「(私も...あんなふうに強くなれる...かな......)」

 

 

この国で面と向かって貴族を脅せる人はいったい何人いるのだろうか。

そして、彼なら実際お父様を呪い殺せると思う。それだけの力を彼は持っていた。私も彼みたいに権力なんかに関係なく真っ直ぐ立てる力が欲しい。

 

 

 

 

そうして町に着いてから私は彼に付きまとうようになった。私は彼と少しずつ仲良くなっていった。

 

 

 

 

彼の名前はロイド。

 

ロイドの持つ本は呪われた物らしい。

 

ロイドは本に書かれた魔法を使うことができる。

 

ロイドが魔物の倒し方を教えてくれた。

 

ロイドが魔法を見せてくれた、とってもかっこいい魔法だ。

 

 

ロイドが苦しんでいた...呪物の影響だろうか。

 

 

ロイドの口調がたまに変わる...呪物に負けないで。

 

 

 

 

 

 

 

ロイドが外に出なくなった。

一人、部屋に引きこもっているらしい。

 

ロイドの叫ぶ声が聞こえる。苦しんでいる声が聞こえる。物が荒らされる音が聞こえる。うっすら血の匂いがする。

 

 

私は何も出来なかった。

そして、私は町を出た。家に帰ってしまった...ロイドに会えないまま。

 

 

___

 

 

私とロイドの関係はこんなものだ。数日間一緒に過ごしたくらいの仲だ。

 

あれから、ロイドが冒険者になったと知った。呪物を使って敵と戦っているのは、あの本の呪いに勝ったということだ。私も精進しなくては、と心に刻んだ。

 

今、私はロイドと肩を並べるほど強くなった。もう何も出来ない私ではない。私の強さを見せ、ロイドに頼れる人間だと証明するのだ。そして私は力強く目を合わせた。

 

 

 

 

 






ラキュースは昔、厨二期ロイドに会っている。しかしただの厨二を呪い的なアレだと勘違いしてしまった。呪いと戦いながら敵と戦う、というロイドをかっこいいと思ってしまったのが始まり、その後魔剣を手に入れて厨二スタート。厨二期ロイドを参考にした部分も多々...。



厨二期ロイドの解説

・ロイドが苦しんでいたのはフリ。厨二病特有のアレ。胸とか抑えてる。呼吸が荒くなったりするやつ。

・ロイドの口調がたまに変わるのは正気を取り戻す少し前の話。正気が少しずつ近づいているから。

・ロイドが外に出なくなったのは正気を取り戻してしまったから。叫び声も苦しみ声も物音も全部ロイドが恥ずか死んでいる時。血の匂いは壁に頭を打ち付け過ぎて血が出た。

ロイドは呪いという名の黒歴史と戦っている。この戦いが終わることは無い。そして勝ち目もない。ギリ引き分けが狙える。




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作戦会議と厨二病...?

 

 

 

 

『(なんで、お前がここに...しかもガッツリ俺のこと覚えてるし...万が一、子供の頃を暴露されれば俺は恥ずか死ぬぞ?...)すまない。遅れた。(取り敢えず謝罪はしよう。)』

 

「別に謝る必要はないのよ?前の依頼が押してしまうことはよくあることなのだから」

『(ごめんなさい。寝坊です)』

 

 

俺は混乱と焦りと申し訳なさのトリプルパンチで瀕死になった。しかしそんな事は知りもしないこいつ...ラキュースはまた会えて嬉しい、などと言ってくる。俺は一生会いたくなかった...。

 

ラキュースとそんなやり取りをしていたら、立派な体格の女性が俺の事をジロジロ見てきた。ラキュースの仲間だろうか?

 

 

「へぇー。呪王なんざ、陰気クセェおっさんかと思ったが意外と若ぇんだな。どうだ、俺とヤッてみねぇか?」

『(何言ってんだこいつ)…しない』

 

何故かこの女性は初対面で下ネタを突っ込んできた。反応にも返事にも困るのでやめてほしい。

 

 

「惜しい、あと数年出会うのが早ければドンピシャだった…でも幸薄系はあり。ねぇ、私と寝るのは?」

『(やべぇ奴らの集まりか?)しない。』

 

ここは変態集団だった?

 

俺が混乱しているとラキュースが絡んできた二人を殴った。かなりエグい音がしたのは聞き間違いだと思いたい。

 

「ごめんなさい。私の仲間が…」

「痛てぇ」

「鬼ボス、痛い」

「貴方達は緊張感を持ちなさい。……全く…」

 

ラキュース...頼もしくなったと言うか、強かになったと言うか......あれ?確かこいつって貴族だよな?...大きくなったな。(精神年齢アラフィフ)

 

そんなことを思っていたら、ラキュースが俺をチラチラと見ていた事に気づいた。

 

 

『何だ』

「あ、いや…その呪いの本まだ持っているのね。......もし良かったら私にその本を見せてくれないかしら?」

 

 

は?

 

 

『は?』

「あ、べ、別にやましい事がある訳じゃないのよ!ただ、私もそっち系の理解を...そう!理解を深めるためにッ私は神官だし!」

 

 

.........ハッ

 

いけない。思考が停止して低い声が出てしまった。でも仕方ない。

 

この本を見るということは俺の黒歴史を晒すこと...土下座してでも避けたい。と言うか、見られたら精神的に死ぬ。

 

 

「確かに気になるな」

「私も見たい」

「俺もだな」

「私はそれよりもローブの中身が見たい」

 

ラキュースの言葉に興味を持ったのか、彼女の仲間(一名以外)も参戦してきた。

 

成程。俺に死ねと?

勘弁して下さい。遅刻してきたことは反省してます。

 

 

『(絶ッ対)無理だ。もし本の中を見れば、発狂して(俺が)死ぬことになるぞ』

 

少し威圧した声を発する。遅刻してきたくせにこんな態度とってごめんなさい。でも、これは...これだけは譲れない!

 

 

「そう……」

 

ラキュースは残念だとでも言うよな顔で他の人のところに行ってしまった。罪悪感半端ないなあの顔...。

 

あ、昔のことを口止めするの忘れてた......

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ。ラキュースがいない今、アンタに聞きたいんだが…アイテムとかで精神が乗っ取られる、なんて事は有り得るのか?」

 

先程下ネタを言ってきた人が真面目な顔で聞いてきた。質問内容は俺にでも答えられる簡単なものだった。

 

『有り得るな。呪物もそうだが、代償を払わなければ効果を発揮しないアイテムもある。……それが何だ』

 

こんな簡単なことは知ってるはずだけど...頭が良くないのかな?

 

 

すると、下ネタの人は急に顔をグッと近づけて来た。

 

「…ここだけの話、ラキュースが魔剣キリネウスに乗っ取られかけているんだ。ラキュースは俺達に隠してるんだが...」

 

えぇ...あいつ、そんな危険な魔剣で戦ってるの?危険すぎない?...あ、俺と同じで捨てても燃やしても自分の元に戻ってくる系?

 

成程な。だから呪いに詳しい(不本意)俺に確かめてもらおうと...俺も同じ状況だから、解呪は期待しないで。

 

 

 

『…`解析(アナリシス)´』

 

マナー違反ということは承知しているが、仕方ない。もし本当に乗っ取られかけているのなら大事件だ。

 

 

 

んーーー?あれ?

状態異常の反応はないな...?呪い特有のオーラも出てないし......??

 

『...(因みに)その話の根拠は?』

 

 

「夜、俺達が眠っている時にラキュースが偶に外に出ていく事があるんだよ。気になって着いて行ったら......魔剣キリネウスが蠢くと言っていたり、ラキュースの表に出てきた魔剣が肉体を支配するとか言っていたり、ラキュースが命を削ってでも好きにはさせないと言っていたりな。

......挙句の果てには声をかけたら、心配するなの一点張りでな。」

 

 

 

 

............。

 

oh......それは...もしかして......

 

 

チラリと俺はラキュースを見る。ラキュースは普通に冒険者と話している。

 

 

もし彼女がアレなる病に発症していたのなら、その原因は恐らく...俺。

 

やべぇどうしよ。

 

「おい、どうなんだ。アイツは...まさか、深刻な状況なのか?」

『(あーー、)いや。(バレてるけど、)まだ(人前で病が発症していないのなら)問題ない。』

 

そう、俺の時みたく人前で厨二病を発症していないなら彼女の病は初期段階。まだ取り返しがつく。

 

 

「本当か?」

『あぁ。まだ取り返しのつく状態だ。だが、これは本人を信頼して待つしかない。(きっと、この事が仲間に知られてると分かれば死にたくなるだろうし。)』

 

「そうなのか...」

「失礼。その判断は一体何を持ってだ?説明を求める」

 

次は仮面の少女が出てきた。この歳でアダマンタイト...天才だな。

 

『(説明と言われても...前世からの)経験だ。下手なことをすればアイツは(恥ずか)死ぬかもしれないぞ』

「なっ」

 

大丈夫。ラキュースならきっと正気に戻ってくれる...たぶん。と言うか、厨二病を他人から指摘するのは犯罪だと思う。厨二期は黙って見守るのが一番。

 

 

 

 

そんなこんなで、ついに作戦開始の夜になった。この作戦にはガゼフさんや剣士のブレインさんもいるみたいで頼もしい...。事実、俺いる?とか思ってたりする。

 

「班長たちは集合!作戦の確認をします!」

 

ラキュースの号令で俺を含めた何人かがラキュースの元に集まる。

 

「これより八本指が所有する拠点の8箇所を同時に襲撃し、制圧します。」

 

俺達はちょうど八グループあるから一つずつ襲撃する形となる。因みに、俺のグループは俺一人です。

 

俺の性質上()一人ではないと本気を出せない(出さない)ので、我儘を言って一人で行動することにしてもらった。アダマンタイト冒険者の肩書きをふんだんに使った俺の説得に、ラキュースもガゼフさんも反対せずにOKを出してくれた。

 

さてと無理言って単独行動を許されたんだから成果は出さないとな。

そして俺は一人、王都の端にある八本指の拠点に向かった。

 

 

 

 



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