テイルズ オブ ザ ワールド レディアント……グランブルーファンタジー……? (時長凜祢@二次創作主力垢)
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プロローグ
ルミナシアの救世主の日常


 星晶(ホスチア)を巡った争い。二つの世界の生存競争。それらの事件が発生した世界、ルミナシア。

 それらの争いを抑えるため。世界の危機を救うため。世界樹から遣わされた世界樹の守り手、ディセンダーは、御伽噺と称された予言の通り、小さなお手伝いをこなしながら、あらゆる問題を解決していった。

 ディセンダーたるその者の名はライラ。菫色の髪と、コバルトブルーの瞳を持つかなりおとなしい女性。

 時には僧侶となり人々を癒し、時には剣士として前衛に立ち、時には回復と攻撃を両立できるビショップや魔法剣士となって依頼に身を投じ、時にはガンマンとなり後方と前方を両立する者となる。

 

 そんな彼女が生活しているのは、アドリビトムと呼ばれる空飛ぶ船のギルドの中。

 最初に出会したカノンノや、カノンノの親代わりたるロックス。アドリビトムのリーダーたるアンジュなど、多くの仲間と共に過ごし、時には女好きなメンバーから口説かれたり、時には仲間と手合わせをしたりしながら、なんの変哲もない日常生活を送っている。

 ちなみに、彼女にはやたら粘着質な因縁をつけて来る者もいたりする。ギルドのメンバーには存在していないが、ギルドの外には二人ほど。

 片方はウリズン帝国の騎士。片方は途方もないバトル狂。しかし、彼女は様々な職業へと姿を変えることができるその立場を利用して、二人をコテンパンに倒していたり……。

 

「やぁ、ライラ。こんにちは。」

 

「うっわ、また出やがった。」

 

「……騎士様はかなり忙しいお仕事だと記憶しています。なのに何度も来て大丈夫なのですか……?サレ。」

 

「こいつしょっちゅうライラちゃんとこ来てね?一応ここ、こいつにとっての敵地っしょ?」

 

「そのはずなのですが……。」

 

 この日もまた、彼女の元に姿を現す因縁持ちが一人いた。ウリズン帝国に所属している騎士の一人であるサレだ。

 彼は、これまで何度も彼女の仲間であるヴェイグに因縁をつけて、勝負を吹っかけてはやられている。

 つい最近も、シノフ湧泉洞にて争い、何度目かわからない勝負に蹴りをつけた。

 しかし、彼女は目の前で人が死にゆくのを見ることを嫌っていたため、どうこう言われようと関係ないとばかりに、手元にあったライフボトルを数本一気に飲ませた上、当時ビショップだったこともあり、レイズデッドも使用して、強制的に生き長らえさせたのである。

 結果、これまでヴェイグに対して向いていた執着は、彼女の方へと向けられてしまい、今もなおしつこく絡んできているのだ。

 

 いつも通りのお客様に、ライラは困惑し、彼女と一緒に行動を取っていたアドリビトムメンバーの一人、ゼロス・ワイルダーはその姿にドン引きしてしまう。

 

「うっわ!!また来てるヨ!!」

 

「相変わらず執着されているようだな、ライラ……。」

 

 そんな中、二人のギルドメンバーが姿を現す。ユージーン・ガラルドとマオだ。

 ヴェイグと同じ村からやってきたため、サレが行ってきたことや、ヴェイグとの確執も良く知っている。

 そのため二人は警戒と嫌悪を抱きながら、目の前にいる因縁の相手を見つめた。

 

「……まぁ、私が絶望した姿見たいのなら、それが見れるまで生きたらどうですか……と言ってしまいましたから。正直に言いますと、絶望とか憎しみとか?そのような感情、未だによくわからないのですが……。」

 

「……ある意味で便利だよねぇ?本当に何も知らないのだから。こっちに来てだいぶ君だって時間が経っているはずだろ?なのにまだ理解できないって?お気楽と言うか何と言うか、本当にうざったらしいくらいに純粋無垢だよね。」

 

「ええと……ごめんなさい……?」

 

「いやいやライラちゃん……そこ謝んなくていいから。」

 

「ところで、キミ、しょっちゅうそこの赤い髪の彼といるみたいだけど?」

 

「赤い髪の彼……?ゼロスのことですか?でしたら、彼とはよく一緒にパーティを組んで依頼を受けているので、共にいる時が多くなりがちですね。回復と攻撃を両立できますから、私が間に合わない時とかに回復の援助をしてもらって、彼が攻撃に集中している時は、私が支援する形でバランスが取れるますから。

 その影響か、日常生活でもよく一緒にいることがあるんです。ビジネスパートナー……と言うものに近いのでしょうか……。」

 

「……俺の目には口説かれてるようにしか見えなかったが?」

 

「ボクもユージーンと同じ意見だネ。でも、ライラってば気づいてないんだヨ……。」

 

「………純粋どころか鈍感ってことかな?」

 

「?」

 

「ライラちゃんは、俺さまと行動取るのを好んでるんだよ。つまり、俺さまとライラちゃんは仲良しってわけ。余計なこと教えないでくんね?」

 

「???」

 

 しかし、大概は彼女の無意識によるスルーにより、その絡みがどんなものか理解されることはなく、毎度脱力してしまう。

 ある意味で、ピリピリとした嫌悪な空気を無意識のうちに霧散させてしまうため、激しい争いには発展しないことがほとんどだ。

 

「そう言えば、ここの人に教えてもらって、ブルーベリーを含むいろんなフルーツのジャムを作ってみたのですが、よかったら食べてみませんか……?

 まぁ、サレには、お気に入りのジャムがあると聞いてますから、お口に合うかまではわかりませんが……。」

 

「へぇ?君がジャムを?」

 

「ええ。初めて食べた時に作ることもできると聞いて、私も作ってみたいってなったんです。そしたら料理が得意な人が教えてくれました。

 それで、ブルーベリーのジャムを作ってみた時、ここで過ごしてる子が、風の噂でサレもいつもブルーベリージャムを持ち歩いていると聞いたもので……。」

 

「………なんでそんな情報が漏洩しているのかな?」

 

「多分、ライラが言ってるのって、食いしん坊なメンバーのことだからネ。」

 

「あれは食に関してかなり敏感なところがあるからな。どこで聞いてきたのかはわからんが。」

 

「あ〜……もしかしなくても、それってイリアちゃんのペットの?」

 

「はい。コーダから聞いた、お話です。」

 

「誰がそんな話をキミにしたかなんてどうでもいいんだけど?いったい誰が僕のプライベートを……。」

 

 ブツブツと文句を言い出すサレの姿にライラは首を傾げる。

 彼が何にイラついているのか、少しばかり理解ができないようだ。

 そんな彼女の姿を見て、サレは一度溜息を吐く。しかし、すぐに彼女が作ってみたジャムの話を脳裏に浮かべては、もし、作ったそれに対して酷評したら、感情が乏しい彼女はどんな反応をするのだろうかと言う感情を芽生えさせる。

 口に合わないかも……と言っていたことから、大したダメージにはならないかもしれないが、多少は落ち込むのではないか……?普段は笑顔を見せて、穏やかな雰囲気を持つ彼女を悲しませることができるのではないか?

 そこまで考えて、サレは口元に笑みを浮かべる。ゼロスやマオ、ユージーンからあまりいいような表情をされていないとしても、自分には関係ないと言わんばかりに。

 

「そうだねぇ……。世界を救うために遣わされたディセンダーがどれほどのものを作るのか興味が湧いたよ。試食してあげようか?」

 

「本当ですか?ありがとうございます、サレ。普段から食べ慣れてる人からしたらどんな味に感じるのか、ちょうど知りたかったところなんです。」

 

 ─────……“まぁ、それを今から酷評するつもりなんだけどね?”と考えながら、無垢な笑顔を見せるライラの落ち込む姿や悲しむ姿を脳裏に浮かべる。

 きっともてはやされて過ごしてきたこの子のことだから、いい表情を見せてくれるだろうと。

 そんな悪巧みに気づかないまま、ライラは、ここのリーダーにちょっと事情を話して来ると言って立ち去っていく。

 

「絶対悪いこと考えてるヨ……」

 

「間違いないな。」

 

「まぁ、ライラちゃんが仮にいじめられそうになっても俺さまが助けるんけどな。そんでライラちゃんの好感度を一気にもらって、そのままハートも鷲掴み……でひゃひゃひゃひゃ!!俺さま、もっとモテモテになっちまうなぁ……!!」

 

「……何なんだい彼?」

 

「……説明できんな。」

 

「女好きとしか言えないよネ。」

 

「それは見ていたらわかるよ。ていうか、ライラは人間じゃないのに彼にとっては範囲内なのかい?」

 

「みたいだヨ。ボク、詳しくは知らないけど。」

 

「知らなくていい。」

 

「本当、ここって個性的な人間ばかり集まるねぇ。」

 

「「「お前が言うな。」」」

 

 その姿を見送りながら、残された四人は言葉を交わす。互いに相容れない存在であっても、彼女の前では関係がないのだ。

 “コイツらと話すつもりはなかったんだけどな……。”と少しだけ考えながら、サレは甲板とホールを繋ぐ扉の方へと目を向ける。

 そこには複数のアドリビトムのメンバーがおり、その中には因縁の相手であるヴェイグの姿もあった。

 僕は珍獣じゃないんだけど、と少しの苛立ちを彼は抱くが、今はそれを発散する前に、ルミナシアの救世主が作ったと言うジャムをどのように酷評してやろうかと言うことのみを考える。

 率直に不味いと言ってやるか、食べれたもんじゃないと放り投げてやるか、あるいはどちらも行った上、行儀は悪いが吐き出すような素振りを見せてやるか……どの行動を取っても、間違いなくあのディセンダーはショックを受けるだろう。

 その時の表情さえ見ることができれば、ここに長居する必要はない。帰って早々に彼女に対する新たな嫌がらせを考えてやろう。

 そんなことを思いながら、サレは小さくほくそ笑む。もちろん、彼の様子を見ていたギルドメンバーは、すかさず彼に対する警戒と嫌悪を向けて来るが、今の彼にはどうでもよかった。

 あの生意気な赤子同然の娘を悲しませること……それが、今の彼の目的なのだから。

 

「持ってきました。本来ならパンやクラッカーにつけるって聞きましたが、サレは確か、そのまま食べることがあるんですよね?」

 

「何でそんなことまで知ってるのかなライラ?」

 

「食いしん坊のコーダくんが、噂で聞いたって言ってました。その反応ってことは、噂は事実なんですね。」

 

「本気で誰だよそんな情報漏洩してる奴。戻ったら即行で探し出して絞めあげないとなぁ……。」

 

「やだ物騒……」

 

「そんな言葉どこで覚えたんだい?」

 

「ゼロスくんから教えてもらいました。」

 

「ゼロス……そんなことライラに教えたの?」

 

「ライラちゃんは本当に何も知らないから、優しい俺さまが色々教えてあげてんのよ。最近は、いろんな遊びも教えてあげてるんだぜ?」

 

「……ライラ!!ゼロスに影響されちゃったらダメだヨ!!」

 

「え?」

 

「おい!!どう言う意味だよそれぇ!!」

 

「無垢なのも困り物だな……。」

 

 そんなことなど露知らず、ライラたちは、いつも通りの調子で言葉を交わす。

 賑やかだなここ……と少しだけサレは困惑しながら、目の前で繰り広げられる会話を聞き流し、早く彼女を苦しめたいと内心ソワソワしながらも、会話が終わるタイミングを待つのだった。

 

 

 この時の彼らはまだ知らない。今日、この日自分たちがまとめて別の世界に飛ばされて、この世界(ルミナシア)ではない別の空にて、相容れない者同士であるにも関わらず、共に過ごすことになることを。

 そして、その空で起こる数多の試練、数多の事件に巻き込まれてしまうことを。




 スキット『本当、ムカつくなぁ……』【ライラ、サレ】

「私が作ったジャム、どうですか?」

「…………。」

「サレ?」

「酷評してキミを泣かせてやろうと思ったのに、何で普通に美味しいのかな?わざと酷評することも忘れてしまったよ。」

「へ……?わざと酷評しようとしていんですか……?」

「当たり前じゃないか。じゃなきゃキミが作ったものなんて食べるわけないだろう。だと言うのにしっかりと甘さと酸味のバランスが取れていて、程よくブルーベリーの果実も残してて、無駄に美味しいって何なわけ?」

「料理上手の人に教えてもらったおかげです。ふふ……どうやら、私の方が勝てたみたいですね。」

「次は絶対泣かせてあげるよ。」

「すみません……私は泣くということも、少しわからないんです。」

「…………本当、ディセンダーって奴はムカつくなぁ……。」




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空の世界で日常を
突然の異世界


 スキット……新しいページに移動させる方が良さげだなぁ……。


 サレの訪問にも慣れ、ロックスたちに教えてもらいながら作ったジャムの及第点をサレ本人からもらい、満足しながら過ごしていると、アドリビトムの拠点であるバンエルティア号が空を駆ける。

 どうやら、移動が始まったらしい。ついでにサレを、ウリズン帝国の近くまで送るとアンジュは言っていた。

 

 そう言えば、初めまして……ですね。私の名前はライラ。この世界……私が守るべき世界樹と、その世界樹から生まれた子のような世界、ルミナシアを守ると言う使命を与えられていたディセンダー。

 使命を与えられていた……と言った理由は、今はただ、この世界の行く末を見守るために、再びこの地に降り立ったからで、本当は二度と戻れないはずだった者です。

 ですが、世界樹……人間で言うところの私のお母様……?は、私が、アドリビトムを気にかけていることを知っていたみたいで、アドリビトムの行く末も見守ってあげなさいって、また、同じ姿で世界に送り出してくれました。

 まぁ、ちょっと送り出し方が過激でしたが、アドリビトムにいた時の日常生活をまた送ることができたのはとても嬉しいです。

 

 そうそう、私のお母様は、もっとこの世界のことを知りなさいって言ってくれたんですよ。

 私は、まだこの世界に生まれ落ちて数ヶ月か半年くらいしか経っていないから、知らないことがいっぱいあるので。

 人間の感情だったり、人間が生きるために必要な知識だったり、この世界のこと全てだったり……たくさん、学ばないといけないことがあります。

 だから、お母様は学んできなさいって言ってくれました。悪いことは学んだらダメよとも言われましたが。

 

 にしても、悪いことってなんなのでしょう?サレとかがやってたことでしょうか?ヴェイグたちは、サレは悪い人だから、絶対に心を許したらダメってよく口にしてますが……。

 まぁ、確かに村の人を苦しめたり、痛めつけたりしたらダメなのは知ってます。

 そうされることで、人間がどんな気持ちになるのか教えてもらったことがありますから。

 “暁の従者”って言う、ディセンダーを待ち望んでいた人たちからも、一度話を聞いたこともありますから、大まかなことはわかっいます。

 だけど、悪いことって言われることは、他にもいっぱいあるってことですよね?

 となると、教えられた場合、ちゃんとNOを言わないといけません!私は、NOと言えるディセンダーになるのです!えへん!

 

「キミっていつも移動中はここにいるのかい?」

 

「はい。空を移動している間は、甲板に出るわけにもいかないので、甲板以外で外が綺麗に見えるここにいつもいます。

 ここのお掃除をする代わりに、自由に使っていいとも言われているので、ある種のもう一つの私のお部屋なんですよ。」

 

「ふぅん……。」

 

 そんなことを考えていると、バンエルティア号をうろついていたサレが私の元へとやってきました。

 普段は敵対している……と言うか、何かしらのちょっかいをかけて来る彼が、バンエルティア号をうろつく姿は、少々変な気もしなくもないですがね。

 

「この船のコンシェルジュとか言ってる奴から、展望室へ行くならこれを持って行けって言われたよ。どうやらキミ用の飲み物みたいだね。ついでに僕も渡されたんだけど、アレ、僕が敵だってこと忘れてないかい?」

 

「アレじゃなくてロックスです。まぁ、彼のことだから、今のところサレが周りに危害を加えていないから渡したのでしょうね。

 あとは、この空の上を移動する船の中には、多くの実力者が集まっていますから、いくら実力が高いサレでも手を出すようなことはしないだろうと判断したのではないかと思います。

 この空を飛ぶ大きなお船の中では、明らかに不利なのはサレの方だと思いますから。」

 

「……まぁ、確かにここでは僕は完全にアウェイだからね。キミらを全員相手にするような真似はしないよ。間違いなく、僕の方がやられてしまうだろうし。でも、キミ一人だけを相手にするだけなら、いくらでも行動は移せるけど?」

 

「それをしたところで、皆さんが駆けつけてお終いなのでは……?」

 

「何も手を出す、相手にする、と言うのは戦闘だけじゃない。いくらでもやりようはあるのだから。」

 

「……よくわかりませんが、あまりよろしくないことなのはわかりました。

 まぁ、何かしようものならピコハンで思い切り殴るだけけですので、ある程度は問題ないと思いますが……。」

 

「……なんでよりによってピコハンをチョイスするのかな。あれ、当たり方によったら本当に痛いからね?」

 

「ピヨピヨしてますからね。」

 

「気絶ね気絶。なんだいピヨピヨって。」

 

「え?ピヨピヨ〜ってヒヨコさんがクルクル回ってるような雰囲気がありますよ?」

 

「キミの目には何が映ってるのかな?」

 

 ?皆さんには見えないのでしょうか?私にはヒヨコさんがクルクル回ってるように見えるのですが……。

 そんなことを思いながら、サレが持ってきたマグカップを受け取る。中にはココアが入っており、甘い香りを広げていました。

 ココア入りのマグカップ、よく二つも持って来れましたね、サレ。熱くなかったのでしょうか……。

 まぁ、せっかく頂きましたから、ほかほかなココアを……………ん?

 

「………お母様……?」

 

「?どうかしたのかな?」

 

「サレは何も感じないのですか?明らかに空気が変わっているのに。」

 

「は?」

 

 マグカップに口をつけようとした瞬間、不意に感じた違和感。空気の変化、入れ替わりの気配。

 明らかにおかしな気配があると言うのに、彼は気づいていません。

 よくわからないと言わんばかりに首を傾げて困惑していました、ら

 

「世界樹の……お母様の声が聞こえないんです……。」

 

「世界樹の声?」

 

「何かあったに違いありませんらきっと。急がないと……!」

 

 ではらこれは、ディセンダーである私だけが感じているもなのでしょうか?それとも、マナに敏感な子たちや、世界樹の神子であるコレットちゃんとゼロスくんも感じているものなのでしょうか?

 ……わかりません……全くと言っていいほどにわかりませんが、私たちに何かが起こっていることだけは嫌でも理解できました。

 妙な胸騒ぎを感じる中、私は急いで展望室から下へと降り、ホールの方へと走り抜ける。

 階段を使わず飛び降りたせいで、カノンノには驚かれたし、チャットちゃんからは怒るような声が飛んできましたが、今はそれどころじゃないのです。

 

「うわぁ!?ちょ、ライラ!?船内を走ったらダメって言ってるじゃない!!」

 

「ごめんなさいアンジュちゃん!!でも、今はそれどころじゃないんです!!

 

「ええ!?それどころじゃないって……って、今空を飛んでるのだから甲板に出るのは危ないわよ!?」

 

「それでも出なきゃいけないんです!!明らかに空気が変わってるんですよ!!」

 

「ええ………?空気が変わってるって……ちょっと!!」

 

 アンジュちゃんから怒鳴るような声が聞こえてきたけど、私はその声を無視して、甲板の方へと飛び出す。

 その瞬間私の目に映ったのは一面の蒼い空。バンエルティア号が飛ぶ空の下から、海も、地面も、世界樹すらも消えてしまっていた。

 

「………ウソでしょ……?」

 

 空気中に漂うのはマナとは似て非なる物質で、辺りからマナすらも消えている。

 私の力に衰えはないけど、それでも、あまり居心地がいいとは言いにくいものでした。

 

「ライラちゃん!!」

 

「ライラ!!」

 

 混乱して佇む私の元に、ゼロスくんとコレットちゃんがやって来る。

 二人の顔にも焦りが見えており、世界樹の神子とされているこの二人も、私と同じ違和感を感じていたのだと理解できました。

 

「ライラ。何があった?」

 

 二人に続いてやってきたのは、アンジュちゃんが雇っていた傭兵の一人、クラトスさんでした。

 彼は、ゼロスくんとコレットちゃんの焦りを見てやってきたのでしょうか?なんにせよ、状況を説明しないと……。

 

「お母様が……世界樹の気配が消えたんです……。私たちが今いるのは、ルミナシアとは違う、全く知らない世界です……!!」

 

 混乱を押し込め、なんとか口にした言葉に、ゼロスくんたちが目を見開く。

 クラトスさんも、これには驚いたのか、珍しく表情が変わっていた。

 

 

 

 




 スキット 『ディセンダーって……』
【サレ、ライラ、ゼロス】
「ディセンダーって、本当に何も知らないんだね。」

「はい。名前という個体を示す言葉以外は、全くと言っていいほどわかりませんでした。星晶(ホスチア)のことすらも知りませんでしたね。」

「ふぅん?いわばキミは赤ちゃんってこと?」

「赤ちゃ……?」

「生まれたばかりの人間を示す言葉だよ。こんなこともわからないのかい?」

「はい……まだ人間のこともわかりません。」

「へぇ……。じゃあ僕が教えてあげようか?キミが知らないこと全部。」

「え?」

「はいはーい!!そこまでだそこまで!!サレに任せたらライラちゃんが間違いなく悪いことから変なことまで覚えちゃうだろ!ここは世界樹の神子である俺さまが教えるからお前が出る幕なんかねーっての。」

「……チッ」

「「!?」

 ・*:..。o○☆*゚¨゚゚・*:..。o○☆*゚¨゚゚・*:..。o○☆*゚¨゚

 スキット2 『俺さまたち仲良し♥︎』
【ライラ、ゼロス、サレ】
「ライラちゃ〜ん。アンジュちゃんから、ある商人の道中の安全確保の依頼が来てるぜ〜?」

「本当ですか?ちょうど熟練度を上げたい職業があったので、すぐに行きます。ゼロスくんも来てくれますか?」

「もっちろんよ〜。俺さまと二人っきりで依頼に行こうぜ、ライラちゃ〜ん♥︎」

「……キミら、いっつもそんな調子なのかい?」

「んあ?なんだサレかよ。」

「最初からいたんだけど?」

「俺さまとライラちゃんは超〜仲良しなんだぜ〜?いっつも一緒にクエストに行ってるもんなぁ。」

「そうですね……。ゼロスくんがいると、クエストの難易度が安定してくれます。剣も強いし、回復のタイミングも完璧ですし、いざと言う時は魔術を使って牽制もしてくれますから。
 本当に、いつもゼロスくんには助けられてばかりです。」

「可愛い可愛いハニーのためなら、例え火の中水の中、暑っ苦しい火山や寒〜い霊峰まで、どんなところでも行ってやるぜ〜?でひゃひゃひゃひゃ!!」

「………よく疲れないね?こんな奴と一緒にいつも行動を取ってさ。」

「おい!!どう言う意味だよ!!」

「????」



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転移の先で合流したのは……

 バンエルティア号の甲板から見えるのは一面の空。上下左右全て空。

 遠くの方に、島のようなものが見えなくもないけど、それでも結局空ばかり。

 普段は見えるはずのお母さん……世界樹の姿はどこにもなく、嫌でも別の世界であると理解してしまう。

 

「お母様の声が聞こえません?世界樹そのものも見えません。マナも感じ取れませんから、どう考えても、この世界はルミナシアじゃありません。」

 

「なんかおかしいとは思ったけど……やっぱりか。」

 

「うん。マナに近い力はあるみたいだけど、やっぱりマナじゃないもん。」

 

「……異世界か。なんの前兆もなかったはずだが。」

 

 集まってきたゼロスたちと確認するように言葉を交わす。世界樹にゆかりある人たちは、やっぱり気づいていたみたいですね。

 じゃあ、セルシウスも……?

 

「セルシウス……何か、感じ取れますか?」

 

「ディセンダー……。ごめんなさい。私も、あなたたちと同じで、全く知らない世界に来てしまったことくらいしかわからないの。世界樹の化身であるあなたがいるから、私も一緒にいれるみたいなのだけど。」

 

「そうですか……。」

 

「セルシウス。お前も前兆は何も感じなかったか?」

 

「ええ。ずっと甲板にいたけれど、全然気づかなかったわ。急に空気が変わって、甲板の外を見てみたら、こんなことになっていたから。何が原因で起こったのかもわからないわね。」

 

「ふむ……これに関しては、全員に通達するべきだろう。たまたま乗っていたサレにもな。」

 

「そうですね……。」

 

 クラトスさんの言葉に素直に頷く。まさか、サレを巻き込んでしまうとは思いませんでした。

 伝えたらどんな言葉が返ってくるのでしょうかか……。嫌味か、苛立ちが、別の何かか。

 なんにせよ、あまりいい反応が返って来ないのは確実でしょう。

 

 少しだけ溜息を吐いてしまう。ここで過ごすようになってから、たまに漏らすことがある大きな吐息。

 この溜息と言うものは、複数の感情により発生することがあるようですが、何を思って出たのか少しだけわかりません。

 申し訳なさ……からなのでしょうか。サレに謝らなくてはと思っている私がいますから。

 

「随分と変なことに巻き込まれているね。」

 

「………え?」

 

 ちょっと伝えづらいですね……なんて考えていると、聞き覚えのある声が辺りに響き渡る。

 驚いて声の方へと目を向けてみれば、そこには良く知る存在が立っており、私のことを見つめていた。

 

「ラ……ラザリス……!?」

 

 ラザリス……一時期ルミナシアと生存競争を行っていたもう一つの世界、ジルディアの可能性の化身である世界の水子。

 今は共存の道を歩むため、ルミナシアの世界樹の中でもう一度眠ってもらっていたその子が、呆れたような表情をして私の元に寄ってきた。

 

「どうしてここに……?」

 

「どうして?君がいなくなる気配を感じたから追ってきたんだよ。共に生きる道を一緒に探そうとか言っていたくせに。ボクを置いて消えていくとか何を考えているのかな?」

 

「そ……それは……」

 

「まぁ……今回はなんらかの不可抗力みたいだし、あまり言うつもりはないけど、それはそれとしてボクの前から無断で消えるのはやめてもらえない?」

 

「……ごめんなさい。」

 

「……まぁ、いいよ。今回は許してあげる。」

 

 トコトコと歩み寄ってきたラザリスは、私にピタリと寄り添うようにくっついてくる。

 クラトスさんたちはそんなラザリスに無言で目を向けた。

 

「……ラザリス。私たちがいなくなる前、あなたは何か見ましたか?」

 

「ボク?そうだね……君らが乗っているこの船が、大きな雲に隠れそうになっていたことくらいかな。ただ、その雲はただの雲とはまったくちがう感じがあったよ。その雲に触れた瞬間、この船が半透明になるのを一瞬だけ見たからね。」

 

「……つまり、その雲が今回の?」

 

「おそらくね。ただ、あの雲が何かまではボクにもわからなかったかな。」

 

 ラザリスから教えてもらった少しの情報。でも、原因が一つわかれば調べるための道標ができる。

 

「ありがとうございます、ラザリス。あなたがそれを教えてくれたおかげで、どうするべきかの道が一つできました。」

 

「別に。ボクはさっさとジルディアに戻りたいだけさ。君たちのためなんかじゃない。ほら、さっさと情報をみんなに伝えてきたら?」

 

「そうですね。ラザリスも一緒に行きますか?」

 

「…………まぁ、別にいいけど?」

 

 とりあえずの方針を決めた私は、急いでアンジュちゃんの元へと向かう。

 サレにも説明しないといけませんし、みんなにもどうするべきかを伝えなくてはいけませんから。

 私が歩み始めれば、ラザリスも私にピッタリとくっついたままついてくる。

 ……なんで私にくっつくのかは少しだけわかりませんが、特に悪さをするつもりはないみたいだし、このままでいい気もします。

 

 

「………ライラとラザリス……行っちゃったね。」

 

「まぁ、サレなんかがライラちゃんに付き纏うよかマシだけどな。」

 

「……ルミナシアの世界樹が、ジルディアの世界樹を受け入れたからだろうな。おそらくだが、ラザリスにも多少その影響が出ており、ルミナシアの世界樹の化身であるライラの側にいる方が安定するのだろう。」

 

「ラザリスが悪さをしないのであれば、このままでも問題はなさそうね。」

 

 私たちが立ち去ったあと、クラトスさんたちがそんなことを話しているなんて知らずにホールにいるアンジュちゃんの元へと向かう。

 アンジュちゃんに話せば、放送室を使わせてくれませんかね……?

 

 

 




 スキット 『サレとカノンノ』 【サレ、カノンノ】
「全く……急に走り出したかと思えば、こんなところから飛び降りるとはね。」

「ねぇ、サレ。ライラ……どうしちゃったの?もしかしてサレが何かしたの?」

「そんなわけないだろう。確かにしようとは思ったけどね。彼女は勝手に飛び出していったんだよ。」

「ちょっと……ライラに何かしたら許さないからね?」

「……しないってば。僕が不利なだけだしね。」


 スキット2 『サレとアンジュ』 【サレ、アンジュ】
「あ、サレ。ちょうどいいところに!ライラのことなんだけど……」

「先に言っておくけど、僕は何もしてないからね?」

「そうなの……?じゃあ、ライラ……どうしちゃったのかしら?」

「て言うか、彼女の様子がおかしい、イコール僕のせいにしないでもらえないかな?」

「しょうがないじゃない。だって、ライラに何かしそうなのって、今のところあなたくらいしかいないんだもの。」

「…………。」




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サレとラザリスの邂逅

 そろそろグラブルの内容に触れたいけど、なかなか進まないものですね……。


「つまり?僕は知らず知らずのうちに君らのもとに舞い込んできた面倒ごとに巻き込まれて?しばらくの間、君達アドリビトムと行動を取らなければいけないってことかな?」

 

「ええ。こんなことになるとは思いませんでした……。」

 

「それ僕のセリフなんだけど?僕が仕えている帝国に戻るどころか、僕が仕えていた帝国すらない場所に飛ばされるとか……」

 

「不満?と言うものはあると思いますが、私たちも混乱してるわけで……。」

 

「それはわかってるんだけどねぇ……」

 

 あれから、バンエルティア号の船内へと戻った私は、アンジュを通して乗組員全員に今回のことを伝えてもらった。

 そのあと、いつも自室以外で過ごすことが多い展望室へと足を運べば、そこには腕を組んだ状態で、視線だけで説明してもらおうか?と訴えて来るサレの姿があった。

 とりあえず、現状を彼に伝えれば、彼は深く溜息を吐いたあと、やれやれと小さく呟いた。

 

「……ところで、君に引っ付いてるその子どもは誰だい?アドリビトムのメンバー……には見えないけど。」

 

「実際アドリビトムメンバーではありませんよ。そうですね……言い表すとしたら、家族……に近いのでしょうか……。」

 

「違うと思うけど、ボクとディセンダーにはそれなりに深い繋がりを持ち合わせているよ。正確には、ボクの世界であるジルディアとディセンダーの世界であるルミナシア……この二つの世界にね。ボクは別の世界の化身……ルミナシアに取り込まれた別の世界の存在だから。」

 

「………この子、頭がおかしいのかな?」

 

「なんだと……?」

 

「急におかしなことを言い出した君に対する正当な評価さ。別の世界?その化身?ここまでわかりやすい作り話を、誰が信じると言うのかな?」

 

「…………。」

 

 ラザリスから殺気が溢れ出る。自分の世界を否定されたから怒ってしまったのかもしれない。

 

「ディセンダー。一応こいつはキミの世界の住人だから聞くけど、消してしまって構わないよね?あの青い髪の神官……アンジュだっけ?彼女から話は聞いてるよ。こいつってディセンダーの敵対者だったんだろう?今でもそうなんだろう?ならここに置いておく必要はないんじゃないかな?消しても問題ないよね?外は一面中空だったから、ズタボロになっても外に捨てちゃえば問題ないんじゃない?」

 

「へぇ?君が僕を消すって?やめておいた方がいいよ、おチビちゃん。逆に返り討ちにあって君が壊れてしまうだけだからね。言っておくけど、僕は子ども相手であろうと敵対するなら容赦しない質だから、間違いなく死んじゃうけど、いいのかな?」

 

 辺りの空気がかなり重くなる。敵意と敵意。殺気と殺気のぶつかり合いが起こっているのか、とにかく居づらい。

 人は辺りの状況によって、その場にいるだけでも苦しいと感じてしまうことがあるとアンジュたちから教えてもらったけど、こう言うことを言うのでしょうか。

 どうしたらいいのでしょうか……私に出来ることってありますかね?

 ……ラザリスの世界……ジルディアが存在することはサレに話してもいいのでしょうか……?

 あ、ルミナシアの世界樹とジルディアの世界樹が混ざり合った世界樹があっちにはありますし、もしかしたらまだわかってくれるかもしれませんね。

 

「えっと……サレ。」

 

「なんだい?今、このおチビちゃんをどう嬲ってやろうか考えてるんだけど?」

 

「言葉が物騒です。いや、今はそうではなくてですね。ジルディアは確かに存在していますよ。私も、自分の目ではっきりと見ましたから。

 それに、今のお母様……ルミナシアの世界樹がその証拠になっています。」

 

「…………は?」

 

 私の言葉を聞き、サレの殺気が霧散する。それと同時に、ラザリスがそれ見たことか……と言いたげな表情を見せた。

 ……何とか、説明することができそうです…………。

 

 

 ・*:..。o○☆*゚¨゚゚・*:..。o○☆*゚¨゚゚・*:..。o○☆*゚¨゚

 

 

「……大体話はわかったけど、やっぱり信じられないなぁ。確かに、ルミナシアの世界樹は、いつの間にか二種類の木が合わさったような見た目になっていたけど、その原因が、別の世界を取り込んだからだって?まぁ、あれが夢だとは思えないし、間違いではないのだろうけど……。」

 

 何とかラザリスを落ち着かせ、サレにもジルディアは存在しているのだと教えれば、一旦の喧嘩は落ち着いた。

 でも、やっぱりサレはジルディアそのものを見たことがないから、信じることができないようだ。

 こんな時、私もカノンノのように絵が描けたら、ジルディアがどんな世界で、どれだけ綺麗な世界だったのかを教えることができたのだろうけど、残念ながら私は、絵を描くのは少し苦手のため、それをすることができない。

 カノンノに頼んだら描いてくれたりしませんかね……?ああ、でも、カノンノに迷惑はかけたくありませんし……。

 

「とりあえず、とても綺麗な世界だったとだけ言っておきます。本当に……すごく綺麗な世界でした。」

 

 ───……同時に、少しだけ寂しいような気もしましたが。

 一瞬だけ脳裏に過った言葉は、そんな言葉だった。ラザリスの世界、ジルディアは、ジルディアならではの生態系?とか言うものが存在していた。

 そこに生きる住人たちは、言葉を交わすためな機能がなくて、その世界には静寂と穏やかさが広がっていた。

 でも、お母様が作った世界……ルミナシアの賑やかさや明るさを知ってるからか、それとも、私がお母様の子どもだからなのか……よくわからないけど、あの世界は静寂と穏やかさが広がると同時に、ただひたすらに寂しくて………。

 

「……そう。まぁ、生まれて一年も経ってない君が嘘をつけるとは思えないし、そんな世界があるんだと認識しておいてあげるよ。信じるか信じないかは別にしてね。」

 

「……………。」

 

 ボクの世界はちゃんとあるんだと言いたげなラザリスを落ち着かせるように、頭を優しく撫でてみれば、彼女は不満そうな表情はすれど、サレに殺気を向けることはしなかった。

 

「大丈夫ですよ、ラザリス。私は……私たちは……ジルディアがあると言うことを知っていますから。

 サレは見てないからこんな風に言ってるだけです。自分の目でちゃんと見た私は……私たちは、あなたの世界を否定したりしません。」

 

「君がボクの世界はないのだと否定できるわけがないだろう、ディセンダー。だって君は、ボクの世界を受け入れたのだから。いつか、ボクの世界であるジルディアと、君を生み落とした世界であるルミナシアが、共に歩めるようにって、ボクを君の世界のゆりかごへと連れて行った。そんな君が、ボクの世界を否定できるはずがない。」

 

「そうですね。まぁ、元から否定するつもりはありませんでしたが……。

 長い時を巡り巡って、いつか必ず、私たちの二つの世界は、もっと素敵な世界になると信じていますから。」

 

「……そうだったね、ディセンダー。ボクの世界も、君の世界も、どちらも否定させたりしない。まぁ、ボク自身は、まだ君の世界に対して色々言いたいことがあって仕方ないけど、君と、君の世界樹が、どんな風にボクの世界を織り交ぜて、これからの世界を創造するのか見たあとに、気に入らなかったら伝えさせてもらうよ。その時は、君も、君の世界も、全てボクのものにするから、ちゃんと、ボクでも納得のいく世界を作ってよね。」

 

「………まぁ、その時は覚悟はしておきますね。ただ……キバでぐっさりはやらないでください。」

 

 私の体を強く抱きしめながら言葉を紡ぐラザリスに、苦笑いをこぼしながらも、ラザリスにとって納得いかない世界になってしまった時は、彼女の言い分を真正面から受け止めることを約束する。

 エラン・ヴィタールができる直前……私のお母様であるルミナシアの世界樹の核がある場所を乗っ取ろうとした際にやられた、三本の牙に貫かれる痛みを思い出してしまったため、それだけはしないでくださいねとお願いも織り交ぜて。

 あれ、本当に痛かったんですよ。あれだけはもうやられたくありません……絶対に。

 

「………僕を置いてけぼりにして話を進めるのはやめてくれないかな?蚊帳の外のせいで内容が頭に入ってこないのだけど?」

 

 未だに抱きついて来るラザリスの頭を撫で続けていると、サレから訴えるような声が聞こえてきた。

 視線を向けてみれば、今度は彼の不満そうな顔が映り込む。再び苦笑いをこぼした私は、ごめんなさいと一言彼に謝罪をしておくのだった。

 

 

 

 




 スキット:サレとラザリス 【サレ、ラザリス、ライラ】
「ところで君たち。いつまで僕の前で引っ付いてるんだい?」

「別に、ボクとディセンダーがくっついていようと君には関係ないじゃないか。」

「確かに関係はないかもしれないけどね。目の前でいつまでもくっつかれているのはかなり不快なんだけど?僕はいったい何を見せられているのかな?」

「羨ましいの?どうせ敵対者である君にはできないことだもんね?」

「誰が羨ましいって?」

「嫌なら出て行ったらいいじゃないか。ボクとディセンダーを視界に入れないようにね。」

「……ちょっと……また喧嘩腰になって……やめてください。私が怒られてしまうのですから。」

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 スキット②:世界樹の守人と世界の化身【ライラ、ラザリス】
「ディセンダー。」

「どうかしましたか、ラザリス?」

「……急にいなくなるのはやめてくれないかな?一緒に歩いて行こうって言ってきたのは君の方じゃないか。なのに、その君がいなくなるなんて、話が違う。」

「それは……ごめんなさい。」

「まぁ、今回は不可抗力みたいだから、そこまで文句はないけどさ。一緒に歩こうと言ってきた君がいなくなると意味がないんだから、ボクの前から消えないでよ……。隣に君がいないのは、どうも落ち着かないんだから。」

「……はい。わかりました、ラザリス。ちゃんと、あなたの目の届く場所にいると約束します。」

「……破ったら、問答無用でまた君を貫いてあげるよ。」

「それはかなり困るのでやめてくださいませんかね……?」



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