誘惑禁止条例 ※性犯罪被害は条例違反にあたらない (大中小太郎)
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義兄妹編 親の再婚でできた義妹が襲われたそうに甘えてくる
プロローグ


 

 

 

人間界と妖魔界の渡航が容易になって久しい昨今。

須東隆史の父親が、妖魔界出身の女性と再婚した。

その日、新しい母の連れ子であるリディアが、隆史の義妹になった。

 

そしていま――義理の妹となったリディアは、

 

「兄様……♡」

 

キャミソールとショートパンツという薄手の部屋着で、枕を手に抱いて、隆史の部屋に来ている。

長い黒髪を揺らし、可憐な顔立ちに艶然とした笑みを浮かべ、豊満な胸に枕を抱き寄せて。

小電灯だけが灯る薄暗い部屋に、リディアの真っ白な肌が浮かんでいた。

 

「今日も、兄様と一緒に寝て、いいですか?」

 

あたかも、兄離れできない甘えた妹のような言葉と、明らかに他意のある口調で、そう言った。

○学生にもなって言うことではない。

ましてやその相手が、つい最近、親の再婚によって出来たばかりの、血の繋がらない兄になら。

 

「仕方ないな……ほら、おいで」

 

それを承知で、隆史はリディアを迎え入れる。

あたかも、兄離れできない甘えん坊な妹に優しくしてやるかのように。

 

「はい♡」

 

リディアは嬉しそうにベッドへ駆け寄る。

そして、どこか自分の肢体を強調するように、ベッドに手と膝をついた。

シーツと毛布が擦れる音を立てて、リディアの細い体が、隆史の隣に横たわる。

 

「ふふ……兄様、いい匂いです……」

「リディアもな」

 

あたかも、幼い兄妹が他意もなくじゃれ合うかのように、隆史とリディアが身を寄せ合う。

やがて隆史の顔と手が、リディアの体に密着していった。

 

「んっ……あっ……あぁ……♡」

 

ベッドの中で、義妹を抱きしめながらキスをして、その体を撫で回す隆史。

リディアは隆史の胸に手を置くが、それは押し返そうとするというより、やんわり沿えただけ。

 

「兄様ぁ……だめ、ですよ? エッチなこと、は……あっ♡」

 

隆史が覆い被さり、首筋にキスしながら胸を揉むと、リディアは熱い呼吸と共に兄を制止する。

形だけの抵抗、言葉だけの制止だった。

ちゃんと拒んだけど襲われている――という体裁を整えるための行動だった。

 

「リディアはいい子だな」

「んっ♡ ああ……っ♡」

 

キャミソールの上から、親指で乳首あたりをくすぐると、リディアの背筋が反り返る。

 

「いい子だから……兄様の言うこと、聞けるよね?」

「やっ♡ 兄様ぁ……」

「せっかくお母さんが再婚したのに、それを壊したくないだろう?」

 

心にもない脅しの言葉を囁くと、リディアの動悸が急速に激しくなる。

 

「リディアはいい子だから、我慢できるだろう? 兄様のこと、慰めてくれるだろう?」

「ひぅぅぅっ♡」

 

キャミソール越しに、ノーブラの乳首を軽く抓ると、リディアはぴくぴくっと体を震わせた。

薄暗い部屋の中、その表情はよく見えないが、リディアの手が隆史の背中に回って抱き寄せる。

 

「はい♡ 兄様の言うこと、聞きます♡ いい子にしますから……♡」

 

お返しをするように、リディアは隆史の耳元で、甘く囁く。

 

「誰にも、言わないで?」

 

それは、これから何をされても内緒にするという、リディアの許しだった。

 

だから今夜も、隆史はリディアを襲う。

痛くない程度には優しく、レイプであると言える程度には激しく。

義理の兄妹の秘め事が、リディアの甘い嬌声で幕を上げる。

 

「ひあっ♡ 兄、様ぁ♡ 音、たてて、吸わないでぇ……っ♡」

 

ちゅるるっ――と音を立てて、隆史がリディアの乳首に吸い付く。

片手でキャミソールの裾をまくり上げ、細い腰を、真っ白な肌を、豊かな双丘を露にする。

そうして現れた桜色の突起を、待ちきれないとばかりに口に含む。

リディアは隆史の頭に手を置くが、その手は押し返すというより、愛おしそうに髪を撫でている。

 

「また大きくなったな。いま、いくつだ?」

「やだ、言えません……っ」

「ん? 俺に隠し事か? 噛むぞ?」

 

軽く前歯で引っ掻くと、リディアの体がビクッと震え、美しい顔に朱が濃くなる。

 

「H、に……89の、Hカップに、最近……」

「Hかぁ、最高だな」

 

隆史は勢いを増して、リディアの双丘を弄ぶ。

両手で包み込むように揉み、指先で弾力を楽しむ。その度に形を変える柔肉は、まさに極上の感触だった。

月明かりの差し込む薄暗い部屋のベッドに、義兄が義妹の乳房を貪る背徳の光景が描かれる。

 

「ふぁっ♡ はぁっ♡ 兄様……もう、お止めください……」

「ああ、胸ばかりしてごめんよ。つい魅力的で」

「そんなこと、言っても……だめなんですからぁ……♡」

 

リディアは片手の甲を額に当てて、目を逸らしながら息を荒げる。

その目が急に見開かれたのは、隆史の手がショーツの中に滑り込んできたからだ。

 

「ひぁぁぁっ♡」

 

隆史はリディアの谷間や脇にキスをしながら、ショーツの中の右手で手淫を開始する。

リディアの秘裂はすでに湿っており、軽く触れるだけで、くちゅりと音がした。

 

「んっ♡ あぁっ♡ やぁ……♡」

「こんなになってるじゃないか。胸で何回かイってくれてたんだな?」

「そ、そんなこと、ありません……っ♡」

「そうか、ならこっちでたっぷりイかせてあげないとな」

 

隆史は左手を動かし、リディアの両手首を同時に掴むと、枕の上に押し込んで固定する。

両手を上げる形で拘束されたリディアは、明らかな興奮を顔に出していた。

そうして隆史は、リディアの胸回りに吸い付きながら、右手で秘所を激しく刺激し始める。

 

「ひぅぅぅっ♡ にい、さ、まぁっ♡ んあっ♡ しょんなっ、キス、マークっ♡ あっ♡ 作りながらっ♡ はふっ♡ だめっ♡ くちゅくちゅっ♡ 音っ、させちゃっ♡ あっあっあっ♡」

 

リディアの体が、覆い被さる隆史の下で、跳ねるように震える。

義兄の手と口から与えられる快感の電流に、声を堪えられなくなっていた。

 

「可愛いぞ、リディア。俺の手で感じてくれてるの、凄く嬉しい。もっと可愛い声を聞かせて?」

 

耳元で囁いて、耳たぶを甘噛みする。

魔人種の、エルフのように長い耳は、敏感な場所でもあった。

 

「あっ♡ にぃしゃまっ♡ ダメですっ♡ そこっ♡ 噛んじゃっ♡」

「リディア、好き。大好きだよ。お前が欲しくて襲ってしまう俺を許してくれ」

 

手淫する動きも止まらない。

時間が経つほど、指は膣内へと入り込み、陰核と陰唇を同時に擦り上げていく。

 

「んっ♡ そんなことぉっ♡ 言われてもっ、私にはぁっ♡」

 

そう、リディアは『はい』とは言えない。

部屋に来て一緒に寝ようと言い出したのはリディアなのだから、彼女が誘ったに等しい。

だとしても、リディアはセックスに『合意』してはならないのだ。

 

 

「んっ♡ ちゅ、ちゅぷっ♡」

 

だからリディアは――イエスともノーとも言わない代わりに、自ら隆史にキスをする。

誘惑も合意も禁じられているから、キスすることによって、その意思を示した。

 

()()()、リディア。これからお前を襲う」

 

言葉に反して優しい手付きで、隆史はリディアのショーツを足から抜いていく。

 

「……()()()()、兄様。()()()()()()()()()()()()()()……っ♡」

 

言葉とは裏腹に、リディアは兄の手に導かれるまま足を開いた。

隆史は逸物を取り出し、大きく反り返ったそれを、リディアの濡れそぼった膣口にあてがう。

 

「ひあっ♡ あっ♡ 兄様ぁ♡ だめ、それ、入ってきたら、私……」

 

陰唇と陰核を擦られ、リディアは腰が浮くほど感じていた。

口から零れる吐息は湯気が出るほど熱く、眼は陶然として隆史を見上げている。

 

「私……すごく、エッチになっちゃう♡ また、兄様のものになっちゃいますからぁ♡」

 

だから止めてほしい――文面だけ見れば、そういう主旨にも取れなくはない。

しかし声音が、伸ばされた腕が、『そうしてほしい』と明らかに告げていた。

 

「ああ、そうだ。安心しろリディア、お前は悪くない。お前は義理の兄に襲われて、誰にも相談できないだけだ」

 

言葉と共に、隆史は亀頭を侵入させていく。

 

「はひぃぃっ♡」

 

リディアの膣内は狭く、しかし内側へ吸い込もうとするように締め付ける。

リディアの体はといえば、亀頭が入っただけで大きく震え上がり、乳房をぷるんと揺らしていた。

 

()()()()()()()()()、リディア――」

「あっ、ひぁっ♡」

 

隆史が耳元で囁くと、まるで魔法の呪文でも唱えられたかのように、リディアの瞳が色欲に染まっていく。

陰茎は膣肉を押し広げながら、奥へ進んでいた。

 

「だから気持ちよくなってもいいんだ。喘いでいいんだぞ。全部、()()()()()()()()()――な!」

 

そして最後の一押し。

隆史は腰を突き入れて、リディアの子宮口をペニスの先端部でぐいっと押し込んだ。

 

「あああぁぁぁっっっ♡」

 

ガクガクガクッと、リディアの体が弓反りになり、頬を紅潮させて嬌声を上げる。

かなり深いオーガズムに襲われているのは、明らかだった。

 

「はひっ♡ あっ♡ 兄、さ、まっ♡ ひうっ♡」

 

涙目になって、半開きになった口で隆史を呼ぶリディア。

柳腰をくねらせ、細い手足を縮こまらせ、新雪のような肌に朱を差しながら、達する義妹。

こんなに綺麗で、可憐で、兄に全幅の信頼を置く義妹を、欲望のまま犯している。

隆史の背筋を背徳感が駆け上がり、自然と腰を動かさせた。

 

「あぅんっ♡ 兄様、待ってっ♡ あああっ♡ いまわたひっ、もうっ、イって……あふぁっ♡」

 

リディアの膣壁がうねる。

肉棒を引き抜こうとすると絡みつき、突き入れるとぎゅっと抱きしめるように包み込む。

愛液は量を増し、シーツに染みを作っていた。

 

「だめぇっ♡ 兄様っ、私またっ……♡ ひぁっ♡ イクっ♡ あっ、あっ、あ~~~~~っ♡」

 

リディアが背中を大きく仰け反らせたかと思うと、膣内がきゅんきゅんと収縮する。

 

「リディアの中、イクたびに締め付けてくれるな……可愛いぞっ、もっとイけっ!」

「あひぁ♡ にいさまっ♡ お願い待って♡ イキしゅぎ、るからぁ♡ せめて、ゆっくりぃ♡」

 

イキ顔が恥ずかしいのか、手で顔を隠すようにしながら、リディアが懇願する。

 

「仕方ないな。代わりにこっちを楽しませてもらうぞっ」

 

腰のペースを落とす代わりに、リディアの双丘を両手で包み、その感触を堪能する。

 

「やあっ♡ いま、おっぱい、されたらっ♡ だめっ、だめだめぇっ♡ 中と、胸が、気持ちいいのっ、合わさって♡ あっ、あああぁぁぁっ♡」

 

リディアは首を左右に振りながらも、隆史の腰の動きに合わせて、自らも腰をくねらせた。

 

「そんなに淫らな顔で『だめ』なんて言っても逆効果だぞ? ()()()()()()()()()()

 

強調するように言うと、リディアの表情が変化する。

興奮に爛々と輝く瞳と、艶然とした笑みに。

 

「にい、しゃまぁ♡ だめです♡ 私、もう何回も、イってりゅの♡

 お願い、もう、犯さないで♡ リディアの体、兄様のものになっちゃいますからぁ♡」

 

鎖骨部に両手を沿えて、物欲しそうに膣圧を高めながら、リディアは懇願した。

逆効果だと明言した隆史に対し、そう言うことの意味――隆史はそれを聞き違えなかった。

 

「ああ、いいぞっ! 俺のものにしてやる!!」

 

隆史はリディアの両脚を掴み上げると、自分の両肩に掛けて、覆い被さる。

真上から突き落とすような、激しい抽送が始まった。

 

「ああぁぁっ♡ これ、深いのぉっ♡ 子宮までっ、入ってくりゅっ♡」

 

結合部からは、泡立った愛液が飛び散り、シーツに大きな染みを作っている。

 

「にいしゃま♡ にいしゃまぁ♡ もうだめでしゅっ♡ 突かれるたびっ、イっちゃって♡ 意識っ、どっかいっちゃいそう♡ らめっ、らめなのぉ♡ 堕ちちゃうのっ♡ 私の体っ、兄様のセックスで、快楽に落とされちゃぅ♡ 兄様に逆らえなくなっちゃうますぅ♡」

 

煽るように、ギリギリ『拒んでいる』と言い張れる言葉を、リディアは叫んだ。

 

「なれ! 兄様とのセックス、体で覚えろ! ずっとずっと俺だけのエッチな義妹でいるんだ!」

 

じゅぱん! じゅぱん! と、水音混じりの抽送音が、部屋に響く。

体重を乗せた激しいピストンに、リディアの目の色が変わり始めた。

 

「ほひっ♡ ふおっ♡ んおっ♡ あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙っっっ♡♡♡」

 

リディアは獣めいた声を上げながら、隆史の首後ろで腕を交差させ、連続絶頂に髪を振り乱す。

 

「おいっ、大丈夫か!?」

 

隆史は慌てて動きを止めようとするが、リディアの腕の力が強まり、足が腰に絡み付く。

 

「あぁっ♡ にいさまぁ♡ 止めないでぇ♡ リディアのことめちゃくちゃにしてくだしゃい♡ もっと、もっと♡」

 

とうとうリディアは、『誘惑』の言葉を口にしてしまった。

 

「こらっ、おねだりしちゃだめだろう!」

「はひゃぁ♡ ごめんなさい♡ でも無理っ♡ こんなの無理っ♡ 我慢できないっ♡ 兄様っ、ゆるしてっ♡ エッチになるの許してっ♡ 好きなだけ突いていいですからぁ♡ 淫らなリディアをいっぱい気持ちよくしてぇ♡」

 

もはやリディアは、母親に抱き付く小猿のように、隆史に抱き付いて腰を浮かす。

獣めいてきたのは隆史も同じで、狼のような呼気を零しながら、一心不乱に肉棒を突き入れた。

 

「にいしゃまぁ♡ 好きぃ♡ 大好きです♡ にいしゃまのっ、愛情たっぷりなレイプっ♡ 大好きですぅ♡」

 

リディアは隆史の背中に爪を立てて引っ掻き、隆史はベッドが半ばから折れるのではというほど腰を突き落とす。

兄も妹も、もはや猛獣のように、快楽を貪り合っていた。

リディアの絶頂はとっくに十回を超え、隆史の限界も近付いている。

 

「リディアっ、出すぞ! 全部受け止めろよっ!」

 

隆史は宣言すると同時、リディアの尻を持ち上げて、膣奥へ突き込む。

子宮口をこじ開ける勢いで、亀頭が押し込まれた。

 

「はひっ♡ はいっ♡ 出してっ♡ 兄様のせーえきっ、私の中に注いでくださいっ♡」

「ああ、孕めっ!! 妊娠しろっ!!」

「はいっ♡ しますっ♡ にいさまの子種で受精しましゅっ♡ ああっ♡ くるっ♡ きちゃうっ♡ 子宮口ノックされてイっちゃいますっ♡ イぐイぐうイぎゅイギましゅうっっ♡」

 

隆史の射精と同時に、リディアの全身が激しく痙攣した。

そして――リディアの股間からは、ぷしゅっと潮が噴き出る。

リディアは恥じる余裕もないらしく、放心状態で天井を見上げている。

 

「あはぁ♡ はひぃ♡」

 

焦点の合わない瞳と、口から垂れる涎、脚の間から零れる白濁液。

ここだけ切り取れば、完膚なきまでに犯されてしまった、清楚可憐だった美少女の姿だ。

それを自分の手でしてしまったということに、隆史が罪悪感を覚えたとき……

 

「兄、様ぁ……」

 

いくらか正気を取り戻したリディアが、隆史の手を握る。

 

「ごめんなさい、私……また、兄様を誘惑しちゃいました♡」

 

リディアは薄く微笑む。

 

「内緒に、してください♡ 私、なんでもしますから……♡」

 

自ら脅迫されに行くような言葉に、隆史の罪悪感が甘い背徳感に変わる。

 

「ああ……バラされたくなかったら、分かってるね?」

「はい♡ 兄様……んっ♡」

 

脅迫する兄と、従順にさせられる妹。

事実だけを抜き取るなら、ただの兄による性的虐待。

しかし実態は――義兄に自分を脅させて犯させる魔女と、その虜になった青年という絵だった。

 

 

 

 

――誘惑禁止条例。

 

人間界が出会った異界人は、見目麗しく、そして淫らな――魔人種だった。

見た目は人間と変わらないのに、性欲が強く、豊満な体つきで、男が滅多に産まれない種族。

まるでサキュバスのような彼女たちが、人間界に浸透した結果――性の乱れが横行した。

 

家庭で、学校で、職場で、電車で公園で図書館で、この地上のありとあらゆるところでと言わんばかりに、人間男性と魔人女性のカップルがお盛んになった。

既婚者の不倫、教師と生徒、セックスには早い年齢との関係など、倫理に背いた事案も数え切れなかった。

後に『ピンクハザード』と揶揄される、風紀の乱れた時代である。

 

これに歯止めを掛けるため、ある自治体が、誘惑禁止条例を議決した。

 

女性は男性を誘惑してはならない。

夫以外の男性とセックスしてはならない。

性交渉を求められても合意してはならない。

 

その条例は『現代の姦淫罪』と批判されたが、議会はそれを押し通した。

魔人種に対しては国外退去もありうるという、脅し混じりの条約制定だった。

 

だから――魔人種の女性たちは、条例の抜け穴に食いついた。

つまり――性犯罪による被害は、条例違反と見なされない。

 

いつしか魔人種の女性たちは、好きな男に過ちを犯させるよう仕向けるようになった。

襲わせて、脅させて、犯させる。

男に罪を犯させることで、恋を成就させる――条例を破らない『優等生』の魔女たち。

 

これは、そんな異界の魔女と人間の男たちを描く、様々な『被害者と加害者(カップル)』の物語である。

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

したいけど誘惑禁止だから襲わせるヒロインと、犯す背徳感に堕とされる男たち。
このコンセプトで、色んな関係や状況を描いていきたいと思います。

最初は基本(?)ということで、義理の兄妹から。
他は義理の親子とか、用務員と女子生徒とか、色々な関係性を予定していますが、
とりあえず義兄妹編を最後まで、続きは評判を見て書くつもりです。

更新は不定期気味ですが、よろしくお願いいたします。


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やくそく ~義妹はこちらの様子をうかがっている~

 

 

 

父の再婚によってできた義妹のリディア。

隆史が彼女を最初に見たときは、よく出来たお人形さんのようだと思った。

濡れ羽色の髪を伸ばした、長耳系魔人種の、小柄で華奢な美少女。

そのくせ胸や尻の発育は著しく、これでまだ○学生だと聞いたときは驚いた。

 

「今日からよろしくね、リディアちゃん」

「はい、隆史お兄様。本日より義妹として、兄様に誠心誠意尽くしてまいります。

 どうかリディアとお呼び捨てくださいませ」

 

同居することになったリディアは、随分と自然な笑顔でそう言い切った。

 

「そんな、お兄様なんて柄じゃないよ。それに尽くすなんて……」

「ふふっ、驚かれますよね。ですが、妖魔界だと目上の男性家族にはこのくらいが普通なのです」

 

リディアたち魔人種の故郷である妖魔界は、男性が100人に1人もいないらしい。

男が生まれれば領主に婿入りするか、生まれた家が領主の座を引き継ぐことになるという。

男性とはその地域の子孫繁栄、延いては人口維持のために必要な人的資源。

その貴重さを考えれば、軽んじて扱うことは許されないのだそうだ。

 

「いいんです、兄様。リディアは兄様の妹になれたことを天恵のように思っています。

 兄や弟と一緒に暮らせるなんて、まるで貴族になったかのようです。

 決して無理してこのようなことを言ってるわけではないんですよ?」

「まあ、リディアちゃ――リディアが辛くないなら、それが一番だけど」

 

結局『兄様』という呼び方は修正されなかった。

後でネットを使って調べたところ、魔人種は本当にそういう生活文化らしい。

男性=貴族なので、貴族に対する平民の姿勢が基本となりがちなのだそうだ。

あちらにとっての当たり前がそうなら、譲れないもの以外は合わせてやるべきだろう。

 

「――――」

 

などと考えていた隆史は、リディアがどこか薄い笑みで見ていることに気付いた。

目が合うと元通りだったけど……なんだかぞっとするほど、艶然とした笑みだったような……

 

「優しいお兄様でホッとしました。妖魔界の男性ときたら、女に奉仕されて当然と思っている節がありますので」

「はは、生活文化の違いには深く突っ込めないけど、まあ人間最後は誠意だよね」

 

男がどうたら女がうんたらというものは大抵、最初からそういう答えが出ているものだ。

だから自分も、リディアのため立派なお兄さんになるとしよう。

 

「それでは早速、夕飯の支度をいたしますね。

 妖魔界から取り寄せた精力――精進料理をたっぷり披露いたしますので」

 

まだ日本語が不慣れなんだろうか?

いや、翻訳魔法が掛かっているはずだから、その不具合かな?

 

「手伝うよ。これでも料理はちょっと出来るんだ」

「では、お願いいたします」

 

リディアは魅力的な笑みでエプロンを装着するのだった。

気立てがよくて器量よしの、長い黒髪の巨乳な義妹――

これが天使でなくてなんなのかという気分だが、このとき隆史は甘く見ていた。

蔑称なのであまり使われないのだが、魔人種の女性とはいわゆる『サキュバス』なのだと。

 

 

 

 

そもそも隆史の父は、妖魔界へ出張している間に、リディアの母と出会った。

籍を入れてもその仕事は変わらないようで、変わらず出張中である。

もはや出張というより、夫婦水入らずでの新婚生活と言うべきか。

 

(遠からず弟か妹ができるからそのつもりでって……息子に言うか普通?)

 

まあ新婚だし、相手の女性も魔人種なら……その、色々お盛んだと聞く。

そんな父と継母が同居していたら、こっちとしても困ることがあるだろう。

 

(だからって……人間界に留学してたリディアをこっちに寄越すか?)

 

リディアが須東家で暮らし始めたのはそういう経緯だ。

妖魔界にとっても、人間界という異世界との出会いは歴史的な出来事らしい。

今後の社会は異界との交易を前提にする。学ぶのは早い方がいいということで、人間界に留学していたそうだ。

そこに親の再婚が起きて、住居をこの家に移した運びである。

 

「お兄様っ、お風呂掃除くらい私がしますのにっ」

「いやいや、リディアには台所を任せきりだし、このくらい……」

「駄目ですっ、殿方にそんなことさせては女の面目が立ちませんっ」

「そんな、むしろ人間界的には女にばかり家事をさせると非難囂々で……」

 

改めて、リディアは家事万能だった。

子供の頃は貴族家にメイドとして奉公してたそうで、下手な専業主婦より効率的に仕事を回す。

正直、隆史が気を遣って手伝おうとしても、リディアほどいい仕上がりにならず、もはや足手纏いになる。

家事分担交渉で勝ち取れたのは、せいぜいトイレ掃除くらいだった。

 

そんな大和撫子のリディアだけど、服は意外と薄着だ。

 

「私の故郷は妖魔界でも寒い地域でしたから、日本はちょっと暑いくらいです」

 

というリディアは、学校から帰ると、袖無しのシャツや膝丈までのスカートに着替える。

 

(大きい、よなぁ……)

 

シャツは体の線が浮くもので、リディアのスタイルが如実に見て取れる。

そりゃ急速に胸が膨らむ年頃だけど、既に成人女性も顔負けの、たわわな半球だ。

日常生活の些細な仕草でも、隆史の視線に強い吸引力を発揮する。

 

(脚も綺麗だし、肌も真っ白で……)

 

スカートも左右非対称で、片足は太股までちらちらと見えてしまう。

ソックスを吊るガーターが見えたときなどは、目を剥くような色香だ。

リディアがそんな不躾な視線に気付いてないはずないのだが、気付かないふりをしてくれている。

 

(いい子だ……)

 

もはや感涙であった。

 

……最初は、そういうまともな同居生活だった。

年頃の美少女が義妹になってしまって、たまにドギマギしてしまうとか――そういう範疇だ。

意識してしまうことはあっても、不埒な真似をしようなんて気は、さらさらなかった。

でも、いまなら分かる。

リディアは楚々とした義妹として振る舞いつつ、入念に義兄を観察していたのだ。

甲斐甲斐しく家事をしつつ、服装や髪型、仕草や露出度などを通じて、反応を確かめていたのだ。

義兄の視線を感じるたび、静かに興奮して生唾を飲んでいる彼女に、隆史は気付いていなかった。

 

 

 

 

学校に登校するとき、リディアは必ず隆史と一緒だった。

 

「本当は、兄様の学校まで送り届けたいのですけど……」

「そこまでする必要ないって」

 

リディアが通うのは○学校、隆史が通う学校とは途中で登校路が別れる。

 

「いいえ、兄様は……というより人間界の男性は不用心すぎます!

 妖魔界では男性がお供も連れずに街を歩くなんてありえませんっ」

「え? なんで?」

「それは……その、邪なことを考える女性はたくさんいますから……」

 

男が希少な妖魔界では、いわゆる『貞操逆転』みたいなカルチャーギャップがあるという。

滅多に会えない男に対して、逆レイプしてでも子種を獲得しようと考える『不埒者』もいるとか。

 

「なんでも妖魔界では、男を争奪して紛争が起きることもあるとか……」

「こともあるどころか、数ある紛争の八割がそれですよ?」

 

なにそれ怖い。

まあでも、男性が領内にいるかいないかは、一族が途絶えるか否からしい。

魔人種の女性たちにとってそれは、剣と魔法で合戦してでも避けたいことなのだそうだ。

 

「ですから兄様、サキュバスにはくれぐれも用心してください」

「せっかく蔑称として禁じられてるのに、自分から言っちゃうのはどうかと思うんだ」

「蔑称を受けて仕方の無い同性もいるということです。

 いいですか、兄様のように無防備な男性は、誘惑(チャーム)されてしまうかもしれませんからね?」

 

チャーム――魔人種の女性が用いるという魔法だ。

生まれつき備わった能力であるそうで、言葉通り男性を魅了してしまい、盛らせるのだとか。

 

「たしか、目を合わせて相手の瞳が赤く光ったら誘惑(チャーム)されてるんだっけ?」

「はい、もし魔人種の女性が五秒以上も目を合わせてきたら、捻りを加えた右ストレートで撃退してください」

「人間界ではやり難い対処法だなぁ」

「もう、そんなことだからお一人で外を歩かせるのが不安なんです……

 日本はいまだに『誘惑』への法整備が進んでいませんし、心配です」

 

唇を尖らせるリディアだった。

魔人種の女性による『誘惑』の危険については知っている。

 

「たしか、自治体の条例では禁じられてるって聞いたことがあるな。

 誘惑禁止条例だっけ?」

 

魔人種の『誘惑』が認知されていなかった頃、それを乱用した女性と男性により『ピンクハザード』が起きたという。

そこで国の法律よりは柔軟性がある自治体の条例により、『誘惑』の使用が禁じられた。

 

「……そんな条例があるのですか?」

「ああ、ちょっと前に話題になってね。条文で『誘惑』の定義が曖昧なせいで、女性は夫以外と肉体関係になってはならないみたいな条例になって、各方面から抗議があったらしい」

 

誘惑(チャーム)による男性への不当な要求を禁じる条文が、企図せぬ拡大解釈をされてしまったそうだ。

リディアを見ると、スマホでその条文を確認している。

 

「女性は『誘惑』を用いて男性の性的興奮を喚起させ肉体関係を結んではならない。

 女性は『誘惑』によって性的興奮を喚起された男性の要求を断らなければならない。

 相手が婚姻関係にあれば合意の上で、誘惑に起因しない性犯罪の被害には適用されない……」

 

リディアは条文を熟読している。

リディアのような清楚可憐な見た目の美少女が、こんな性的な話題に熱心なことに、隆史は少し驚いていた。

 

(そういうのに、興味あったりするのか? いやいや、うっかり性犯罪者(サキュバス)扱いされないよう、ルールをしっかり確認してるんだろう)

 

なぜか自分にそう言い聞かせる。

どこか、自分の中に構築されている、清くて繊細な義妹像を保とうとするように。

 

「人種で区別しないため人間女性も『女性』に含まれる。

 また誘惑の定義も曖昧であるため、魔力によらない誘惑行為にも適用されうる。

 結果、女性の服装や性の自由を過度に制限するため、現代の姦淫罪と批判されている……」

 

姦淫罪とは、明治から昭和中頃まであった、女性の浮気に対する刑罰だ。

男性の不倫には適用されなかったので、男女平等の観点から廃止された。まるでその復活だと。

 

「違反者が刑事罰を受ければ、在留資格剥奪の事由に足るため、妖魔界への国外退去もありうる。

 ……なるほどたしかに、『女性は男性を誘惑してはならない』という条例ですね」

「だろ? 問題のある条例だけど、まあ誘惑の被害はすっかり減ったらしいよ」

 

最近は『女性が児童にわいせつな行為をして逮捕』なんていう『おねショタ逮捕』もよく聞く。

法がしっかり機能しているなら、後はそれを信頼して生きればいい。

 

「ですが兄様? この条例、とんだ抜け道がありますよ?」

「抜け道?」

「はい、目敏いサキュバスならすぐに気付きます」

 

気付かない隆史に、リディアはどこか妖しげな目で、くすりと笑う。

 

「だってこれ――男性に自分を襲わせれば、いくらでも『できる』じゃないですか」

「あー、うん。たしかにそうだな」

 

――性犯罪による被害は条例違反にあたらない。

だから、男性側から襲うように仕向ければ、誘惑も合意も不倫もしていないことになる。

 

「でもまあ、男が襲わなければ済む話だろ? それ」

「ふふ、そうですね。兄様を口説く女性は、きっと大変ですね」

 

妙に魅力的な笑みを浮かべたリディアとは、そこで道を別れた。

その後、学校に行く間、先ほどの話を思い出した隆史は、ふと気付く。

目敏いサキュバスならすぐ気付くという、誘惑禁止条例の抜け道――

 

一目見ただけで見抜いたリディアも、実は結構『目敏い』部類なのだろうか?

 

 

 

 

深夜――隆史がトイレに起きたときのことだった。

リディアの部屋に明かりがついていることに気がついた。

 

(まだ起きてるのか?)

 

珍しいことだ。

リディアは就寝時間が早いし、朝も早く起きる方だ。

今日もいつも通り、10時にはベッドに入っていたはずだった。

 

「んっ♡ ぁ……♡」

 

漏れ聞こえる声は、間違いなくリディアのもの。

しかし普段の彼女からは想像できないほど、甘く艶めかしいその声は、明らかに性的興奮を覚えているものだった。

そんなリディアの吐息に重なって、何か機械のバイブレーションが動くような音がする。

いわゆる電動マッサージ機の駆動音だった。

 

「…………」

 

思わず立ち止まってしまった隆史は、すぐに察した。

リディアはきっと、自慰をしているのだと。

何かの聞き違いならそれでいいし、聞き違いでなかったとしても――別に悪いことではない。

自分だってリディアの目を盗んで致しているのだし、こちらもまた、気付いても気付かないふりをするべきだ。

 

(扉が……)

 

問題は、部屋の扉が半開きになって、部屋の明かりが暗い廊下に零れ出ていることだった。

ゴクリ――と、知らぬ間に生唾を飲む。

リディアの部屋は、隆史の部屋の隣にある。

隆史から見て手前が自分の部屋だ。このまま自室に戻ってベッドに入ればいい。

なのに……気がつけば隆史は足音を忍ばせて、自分の部屋を通り過ぎ、リディアの部屋に耳を近付けていた。

 

「んぁっ♡ はぁ、はぁ……っ♡ んんんっ♡」

 

ウィィィと、電動マッサージ機の音が聞こえる。

リディアの声も、よりはっきりと聞こえるようになった。

 

「…………」

 

耳をそばだてるだけで満足するべきだった。

なのに、見たい――と、隆史の本能が体を動かす。

思い留まるべきだったことに気付くのは、それをしてしまった後――本能や反射による行動とはそういうものだった。

 

「ふあっ♡ いい……んっ♡ くぁっ♡ んっ♡ はぁぁぁ♡」

 

扉の隙間から、リディアの部屋が見える。

カーテンはレース付きのピンク色、家具も小物も、どれもこれも女の子らしい可愛いもので統一されている。

妹のいない兄が妄想する『妹の部屋』としては、100点満点だろう。

そんな内装に唯一不釣り合いなのは――ベッドの上で自慰をするリディアの淫らさだった。

 

「あぅ♡ んっんっんっ♡ ん~~~っ♡」

 

シーツの上に寝そべったリディアは、股間部に手を伸ばし、その小さな指で割れ目を刺激する。

すでにそこは濡れており、くちゃくちゃといやらしく水っぽい音を立てながら、彼女の細い指を迎え入れていく。

もう片方の手にはマッサージ機があり、いまは乳房に当てられていた。

 

「っ」

 

初めて見るリディアの裸に、隆史は硬直した。

陶磁器のように白い肌、濡れ羽色の髪、豊かな半球を描く乳房に、桜色の突起。

一糸も纏わぬその姿で、リディアはベッドで仰向けになって膝を曲げ、脚の間で手を必死に動かしている。

白い肌を紅潮させたリディアの顔は、快感により苦悶めいた表情になっていた。

 

(すご、い……)

 

隆史の呼吸が荒くなり、心臓が早鐘を打つ。

女のオナニーを覗きたがる趣味はないし、見たいと思うこともなかった。

でもリディアのそれは……

肢体はまるで芸術品のようなのに、心は淫らになっていて……

相反するものが同居しているかのような、そういう奇妙な興奮を覚えた。

 

「兄、様ぁ……っ♡」

 

呼ばれて、思わず跳び上がりそうになった。

覗いていることに気付かれたかと思ったが、そうではなかった。

リディアは胸に当てていたマッサージ機を、なにやら口元に寄せて舐め始める。

まるで、その棒状の物体を何かに見立てているかのように。

 

「ん……ちゅっ♡ れろ、はぁ、はむ、れる……」

 

懸命に、リディアは舌を這わせた。

それを見るほど、隆史の股間で勃起していたものが、ぴくぴくと脈動する。

リディアは義兄が見ていることにも気付かず、自慰の手を加速させていった。

 

「はぁ、兄様、素敵♡ んんっ♡ もっと、私に……っ♡ んっ♡ あっ♡ ぁぁぁ~~~っ♡」

 

腰が浮いて、体が痙攣する。

絶頂したのだ――と、隆史は察して息を呑んだ。

 

(リディアが……俺で……オナニー、してる……?)

 

衝撃的だった。

内心、リディアが自分に性的な興味を抱いていることは察していた。

でもそれは少し年上の男が近くにいるがゆえの、深い意味はない興味だと思っていた。

しかし、自慰のネタにするほどとなると、話は変わってくる。

 

「ふあっ♡ あっあっ♡ 兄様ぁ♡ 私、もうイって……はぁっ♡」

 

リディアがオナニーを継続する。

既に果てたというのに、今度は指では無くマッサージ機を陰核に押し付けて、自分で自分を苛めている。

彼女が妄想している隆史は、達したリディアを更に連続でイかせようとしているらしい。

 

(そんな、風に……されたい、のか?)

 

隆史が驚く間にも、リディアの声は昂ぶっていった。

 

「あっあっいいっ♡ にぃさまっ♡ くぁっ♡ イクっ♡ イキますっ♡ んっはぁぁっ♡」

 

やがてリディアの体が大きく跳ねたかと思うと、次の瞬間には脱力し、ベッドの上でぐったりとした様子になった。

 

(また、イったのか……こんなに、短い間隔で……)

 

耳にはしていた。

サキュバスと異名される魔人種女性は、性欲は強く、性感は過敏で、夜はとても乱れるのだと。

エロ動画で見たこともある。たしかに、人間の女優より大きな喘ぎ声と絶頂を披露していた。

でもそれは、あくまで誇張されたものだと思っていた。

現実のサキュバスは――動画よりもずっと淫らだった。

 

「っ!」

 

最後の理性が、隆史の身を引かせた。

静かに自室へ戻り、音で気付かれないよう慎重に扉を開閉して、ベッドに入る。

 

「――っ♡ ――っ♡」

 

壁の向こうからは、いまだ微かに、リディアの喘ぐ声が聞こえていた。

それが止むまで……隆史は張り詰めた逸物を持てあましながら、劣情を押さえ込むのだった。

 

 

 

 

翌朝――リディアは風邪を引いていた。

 

「まったく……日本の春は温かくなったと思ったら急に冷え込むって言っただろ?」

「あぅ……申し訳ありません、兄様……」

 

ベッドの中で、リディアが顔を隠すように掛け布団を持ち上げる。

恥じらう表情が可愛らしい。

兄としてちゃんと叱るところは叱ったし、これ以上責めるのは隆史自身の気が乗らない。

 

「まあ、人間界に来たばかりで環境の変化もあったし、家事なんか任せきりだったもんな」

「いえ、そんなことは。その……ちょっと薄着で眠ってしまっただけで……」

 

リディアは気まずそうに目を逸らした。

 

(薄着って……()()()()で寝たのか……)

 

昨夜のことを思い出した隆史も、急に気まずくなる。

つい数時間前、いま自分がいるこの部屋、目の前にあるベッドで、リディアが……

 

「と、とにかく! 学校への連絡とか家のことは俺がやるから、今日はちゃんと休んでいること。いいね?」

 

隆史は頭に浮かんだ光景を追い払うように、リディアに言いつける。

 

「そんな、風邪くらいなんてことありません。兄様の手を患わせるだなんて……」

 

リディアはそう言ってベッドに上半身を起こす。

パジャマを着たリディアの額や首筋は少し汗ばんでいて、こんなときでも色香を感じてしまう。

 

「駄目だ」

「大丈夫です。魔人種の体って、人間の女性と比べて頑丈なんですよ?」

「リディア」

「はぅ……ごめんなさい……」

 

しゅんとして再び横になるリディアだった。

隆史が強い口調で物を言うのは初めてのことだ。そのことへの驚きもあるらしい。

 

「普段から頼り切りな俺が言えた義理じゃないけど……もうちょっと甘えてくれよ」

「甘え、る?」

 

男性にそのようなことをするという発想そのものがなかった、という顔だった。

隆史はそのことに、少し義憤めいた感情を抱いた。

生活文化どころか、地球人とは生態レベルで違った社会を築いているので、妖魔界の男女間がそうなっているのも仕方ないことだ。

でも、こんな可憐な義妹が、年上の男に甘えることも知らないというのは、不幸なことに感じた。

だから決めた――お兄ちゃんである自分は、この子に甘えることを覚えさせよう。

 

「そうだ。お兄さんっていうのは、妹にちょっと甘えられてるくらいが嬉しいもんなんだ」

「そんな……妹である私は、兄様に尽くしているのが嬉しいのに……」

 

妖魔界の女性はみんなこうなのだろうか?

 

「……よし、じゃあこうしよう。一日一回だ」

 

人差し指を立てると、リディアが小首を傾げる。

 

「一日、一回?」

「ああ、普段から頑張ってもらってる代わりに、一日一回だけ、リディアは俺に甘えること」

 

切り口を変えた。

リディアの中ではどうしても、兄とは献身的に尽くすべき目上の存在らしい。

だったらそれを逆手にとって、目上の存在として、こちらを頼るように命じればいい。

 

「でも、甘えるなんて、どうしたらいいか……」

「リディアがしたいと思ったり、されたいと思ってることを、おねだりすればいいんだよ」

「そんな……だ、駄目ですっ! そんなことしたら、大変なことになりますっ!」

 

リディアはいったいどんな『おねだり』を想像したのかと思っていると……昨夜のことがフラッシュバックした。

 

「じょ、常識の範囲内で、だぞ? 妹が兄にして不思議じゃない範疇のおねだりだからな?」

「は、はい……おねだり……兄様に……おねだり……えへへ♡」

 

なにやらだらしない顔で笑うリディアだけど、その顔はいままでで一番、年相応に見えた。

 

「暇ならそれを考えておくといいよ。じゃあ、俺はちょっと買い出しに行くから」

「はい……あのっ、兄様っ」

 

ん? と振り返ると、リディアは控えめな笑みで、

 

「約束、ですよ?」

「ああ、約束だよ」

 

喜んでくれたのが嬉しくて、隆史はそう確約するのだった。

その『約束』が、自分とリディアの関係を大きく動かすことになるとは、このときは思ってもいなかった。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございます。

本番までの前置きが長くなったので、二話に分けて同時更新です。

タグに貞操逆転と付けるべきか迷う……


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ゆうわく ~義妹はおねだりにかこつける~

 

 

 

リディアが風邪から復帰して、しばらくが経った頃。

 

「兄様? このアニメ、一緒に見てくれませんか?」

 

夕食後、リビングのテレビを前に、リディアがそんなことを頼んできた。

 

「ん? あー、懐かしいなーこれ」

 

日本人なら最低でも制作スタジオくらいは耳にしたことがあるだろうという、アニメ映画だ。

 

「妖魔界でも近日上映らしいですよ? 私はすれ違いになっちゃったので」

 

妖魔界から魔人種が来ているように、人間界からも様々なものが輸出されている。

日本からは、やはりというかアニメ系が結構人気だそうだ。

 

「大昔の日本を舞台にしているんですよね? ちょっと分からない部分がありそうで……」

「ああ、そりゃ分からないところも多いよな」

 

ある程度でも地球を舞台にしている作品だと、時代背景などが魔人種には伝わりにくい。

それに関する注釈が欲しいということなのだろう。

 

「いいよ。俺も久々に見たいし。飲み物とお菓子を準備しよう」

「それなら私が……それと、その……」

 

リディアがもじもじとしながら、ソファーからこちらを見る。

 

「きょ、今日の……おねだり、なんですけど……」

 

今日のおねだり――先日の約束から始まった、隆史とリディアの暗黙のルール。

リディアが家事の大半を担ってくれる代わりに、隆史は日に一度、大抵のおねだりを聞いてやる。

 

「ああ、なにしてほしい?」

 

甘えてくれるのは大歓迎なので促すと、リディアは気恥ずかしそうにこう言った。

 

「兄様の……お……お膝にっ……座っても、いいですか?」

 

上目遣いのおねだりは、思わずくらっとするほど可愛らしかった。

 

 

 

 

いざ座らせてみると、可愛いだけでは済まされなかった。

 

「えへへ……兄様のお膝、乗せてもらっちゃいました……♡」

 

隆史がソファーに腰掛けると、その膝の上にリディアが座る。

隆史の脚の付け根に、肉付きのいいヒップが乗り、太股が重なる。

女の柔らかさが脚全体を包むかのようで、隆史の鼓動が高鳴る。

 

「兄様? 寄りかかっても、いいですか?」

「ああ……いいよ……」

 

リディアはそのまま腰を沈めて、背中を隆史の胸板に預けた。

 

(細い、なぁ)

 

胸に寄りかかったリディアの背中は狭く、小さい。

自分の半分くらいの肩幅しかないんじゃないかというほど、腕の中に簡単に収まる。

 

「重く、ないですか?」

「軽い軽い、ちゃんとご飯食べてるか心配になるくらいだ」

「もう、いつも兄様と同じのをいただいてますのに」

 

くすくすと笑うリディアが、隆史の顎の下あたりに、黒髪を伸ばす頭部を置いた。

シャンプーだろうか、とてもいい香りがして、思考が麻痺しかける。

 

「兄様、ぎゅーってしてください♡」

「ぎゅーって?」

「はい♡ ……駄目ですか?」

 

そんな声で聞かれたら、駄目と言えるはずがなかった。

 

「…………こうか?」

 

隆史は生唾を飲んだ後、両腕でリディアを挟むようにして、お腹の前に手を交差させる。

 

「あっ♡ ふぅ……」

 

リディアはひどく色っぽい吐息を口にして、軽く身を震わせると、より体重を預けてきた。

 

「はぁ……兄様の腕、長くて大っきいです♡」

 

リディアは隆史の両腕に、細腕を絡めるように重ねた。

 

「胸板も、広くて、分厚くて……あぁ♡ すごい♡ 私、王侯貴族にでもなったみたいです♡」

「王侯貴族って……」

「だってこんな、男性を椅子にするようなこと、妖魔界なら時の女帝でもできませんよ?」

 

男性が希少な妖魔界では、たしかに体験しにくいことだろう。

 

「逞しい腕に抱かれて寛がせていただくなんて……あぁ、もう死んでもいいです……♡」

「こらこら、大げさな」

 

なにやら感極まっているリディアだが、隆史としても至福の心地だ。

膝の上と胸板に、リディアの細く柔らかな体を感じる。

温かく鼓動する細身を抱きしめていると、得も言われぬ幸福感があった。

 

(っ、やばい……)

 

気がつけば、ズボンの中で股間が隆起してしまっていた。

あまりにも『女体』を感じさせられ、体が反応してしまったのだ。

今日までの生活で兄妹らしくなれたつもりでも、脳はまだリディアを異性として見ていた。

おまけに、リディアのヒップが乗っているため、隆史の逸物は服越しに尻肉に挟まれている。

 

「兄様……」

 

リディアは気付いているのか、いないのか、どこか蟲惑的な声と共にしなだれかかる。

鎖骨に頭を乗せてきたリディアを見下ろすと――春物のシャツの胸元が見下ろせた。

 

「っっっ!」

 

この視点から見ると、彼女の胸がどれだけ大きいかが、前方へ突き出した質量から分かる。

少し開いた襟元からは谷間を覗き込むことができたし、白いブラまで垣間見えた。

 

「兄様? 私の抱き心地、いかがですか?」

 

おまけにそんなことまで聞いてくるものだから、隆史の理性は破れる寸前だった。

 

「ああ、まあ……悪くないけど」

「ふふ、よかったです♡ どうぞ、お好きなように抱きしめてくださいね……」

 

リディアは力を抜いて、隆史の腕に重ねた腕に少しだけ力を加える。

上方向に――自分の胸へと導くように。

隆史の腕を動かすには弱く、しかし方向性を示すには充分な強さで。

胸に、触ってもいい――そういうメッセージであるかのようだった。

 

「…………」

 

隆史はそれに……半分だけ従った。

 

「あっ♡」

 

リディアが悩ましい声を上げる。

隆史の腕が拘束するようにリディアを締め付け、腕が腹と両肩に回る。

左右の下腕が、リディアの胸部の上下を回っていた。

 

「あ、ふぅ……♡ 兄様が、抱きしめて、くれてます♡ んんっ♡」

「痛いか?」

「平気、です……力強くて、素敵です♡」

 

義兄の逞しさを総身に感じているせいか、リディアはいつもより従順で、色っぽく見えた。

彼女が身じろぎすると、座られている股間部に尻が擦られ、ズボンの上から逸物が愛撫される。

 

「あぁっ♡ はぅ♡ 兄様の体温、気持ちいぃ……♡」

 

リディアの声音に甘えが増し、隆史の耳を溶かすように響いた。

既にテレビで始まっているアニメ映画なんて、どちらも見ていない。

兄妹が仲良くアニメを見ている――という構図さえできれば、それでよかったのだ。

 

(誘ってる……この子、絶対に、誘っている……)

 

いまさら言うまでもないことだった。

今日までの生活の節々に、その兆候はいくらでもあった。

親の再婚でできた義理の兄妹――隆史がリディアをときおり性的な目で見てしまう以上に、リディアもまた魔人種女性(サキュバス)として、隆史を男として見ていたのだ。

 

「兄様? なんだか、私に遠慮してませんか?」

「っ、遠慮って?」

「なんだか、お辛そうです……紳士的な場所だけに触れるようにしようって、無理してます……」

 

リディアの、白魚のような指先が、隆史の手を優しく撫でた。

 

「私、嫌じゃないですから……兄様のお好きなように、抱きしめてくださいね♡」

 

リディアは少し首を振り返らせて、耳元というより首筋に囁くように、息を吹きかける。

尻が少し左右に動かされ、ズボンの中の陰茎をからかうように刺激する。

淫魔だ――

清楚可憐だと思っていたリディアも、その正体は立派な魔人種の女性――サキュバスだった。

 

「……っ!」

 

兄としては、もうリディアを突き放すべきだった。

そうすべきだという理性の声は、たしかに聞こえていた。

でも、それをしてしたら――二度とリディアを抱きしめられないのではないかと思った。

そうなるくらいなら、いっそ……っ!

 

「じゃあ……少しだけ……な?」

 

隆史の手が、リディアの肩と腹を滑るように、その間にある膨らみへ近付いていく。

ゆっくりと、リディアに拒む機会を充分に与えられるように、忍び寄るように手の平が動く。

リディアがその手を押しとどめることは、ついぞなかった。

そして、とうとう――隆史の両手がリディアの胸に触れた。

 

「ふぁ……っ♡」

 

ぴくんっ――と、リディアの体が、小さく跳ねるように震える。

服の上からなのに、柔らかさと温かさがはっきりとわかる。

掌に収まりきらない大きさの乳房は、張りがありながらもしっとりとした感触で、指先を動かすたびにふわっと押し返してくる。

 

「あっ♡ 兄様ぁ……んんっ♡ そ、そこは……胸……あんっ♡」

 

隆史の指が沈み込む度に、リディアの口から甘い声が零れた。

あたかも制止するようなことを言っているが、その手は隆史の手を振り払おうとしない。

むしろ興奮を示すように、尻を少しだけ前後に動かして、隆史の下腹部を愛撫した。

 

「に、兄様ぁ♡ お手々が……触って……ふぁっ♡ 胸に、触って、ますぅ♡」

「触っていいって、言っただろ?」

「い、言ってません……あんっ♡ 抱きしめてもいいって、んあっ♡ 言った、だけで……ぁっ♡ そんな、意味じゃ……あっ♡ やっ、だめです♡ おっぱい、そんな風に、触ったらぁ♡ ひゃうっ♡ エッチな、エッチなことに、なっちゃいますよ?」

 

いけないことだと、指摘している。

でもその口調は、こちらを挑発しているようにしか聞こえない。

その証拠に、リディアは隆史の膝から退こうとせず、体重を預けてきている。

 

(こいつ……清楚なふりして、ずっとそうやって誘惑して……っ!)

 

隆史の性欲に怒りが加わると、それは指が触れる力の強さに表われた。

リディアの服に深いシワが刻まれるほど、指が食い込む。

 

「ひゃうんっ♡ に、兄様っ♡ ちょっと、痛い、です♡ あふっ♡ お、怒らないでぇ♡」

「怒るに決まってるだろっ」

 

隆史はリディアの服越しに、乳首の位置を探り当てて、軽く抓る。

 

「ひぁうぅぅっ♡」

 

大きく震えたリディアは、嬌声を上げながら隆史の袖を指で掴んだ。

 

「何度も何度も、俺を誘惑してっ! あんな自慰まで見せつけてっ!」

「そ、そんなこと……きゃうっ♡ はぁ……はぁ……♡ 兄様、待ってください♡ んああっ♡」

 

抓られた乳首が敏感になり、揉み回す動きによりブラの中で擦られ、リディアの声が甲高くなる。

 

「俺は、お前のことを、可愛い妹だと思って……いい兄さんになろうって、思ってたのに!」

 

隆史はリディアの服の裾を掴むと、一気に持ち上げた。

白いレースのブラと、それに包まれた豊乳が、リビングの照明に晒される。

 

「あぁ♡ 兄様、ごめんなさい♡ だって、兄様がぁ♡ 素敵だから、格好よかったからぁ♡」

 

ブラの上から胸を掴まれ、前よりも快感が増したのか、リディアが体を反らす。

 

「本能、なんです♡ いいなって、思っちゃったら、止まらなくてっ♡」

 

だとすれば、物欲しそうに腰を動かし、隆史の陰部へ擦り付けるのも、本能だろうか。

 

「それで、こんな風に誘惑したのか……ずっと俺を、そんな目で見てたのかっ!」

 

リディアの長耳に口を寄せ、裏側から叱りつける。

 

「ひゃうっ♡ 声っ、おっきい声ぇ♡ だめ、変になります♡ 兄様に、叱られてるぅ♡」

 

まるでマゾのような反応を示すリディアに、隆史は歯噛みする。

 

「くそっ、こんな悪い子だなんて、知らなかったぞ!」

 

隆史はリディアのブラを掴んで捲り上げる。

すると――ぷるんっ、と音が聞こえそうなほど大きな乳房が、こぼれ落ちた。

 

「あっ♡ 兄様ぁ♡ 恥ずかしいっ♡ 私の、おっぱい♡ み、見ないで、くださぃ♡」

 

隆史が見ると、リディアの乳首はピンと尖っていた。

 

「いまさら、なに言ってるんだ!」

 

隆史がリディアの乳首を摘まむと、その瞬間にリディアが目を見開いた。

 

「ひぁぁぁっ♡ らめっ♡ 兄様っ♡ そこ触っちゃ♡ 直接っ、したらぁ♡」

 

がくがくっと、顕著な反応を示して震えるリディア。

乳首だけでは我慢せず、隆史は両手の五指を食い込ませて、リディアの乳房を堪能する。

 

「誘惑したのは、お前だぞ?」

「ちが、違いましゅ♡ あああっ♡ 甘えた、だけっ♡ はひっ♡ 妹が、兄様にぃ、甘えただけですっ♡」

「こいつっ、それで押し通す気か! まるで、俺だけが悪いみたいに!」

 

リディアの乳房を蹂躙しながらも、首筋に吸い付く。

 

「ひゃふっ♡ だって、だってぇ♡ 条例、だから♡ 私が、誘惑したことに、なったら、駄目だからぁ♡」

 

誘惑禁止条例――女性は男性を誘惑してはならないし、求められても合意してはならない。

だから――襲わせる。

リディアはある意味、条例を守ろうとしているのだ。

 

「でないと……兄様と、一緒に居られなくなっちゃう……から……」

 

万が一にも国外退去させられないために。

涙目でこちらを振り返ったリディアの本心は、そこにあった。

それは、ただの劣情というだけではなく、どこか健気で、縋るような。

性欲抜きでも、抱きしめてやりたくなる姿だった。

 

「…………」

 

隆史は手を止めて、そんなリディアを見詰めることしばし――唇を奪う。

 

「んむ……ちゅっ♡……はぁ……♡」

 

舌と唾液を交換しながら、隆史はリディアを強く抱き寄せた。

 

「ぷぁ……兄様♡」

 

リディアが嬉しげに目を細める。

その瞳は、キスを通じて隆史の気持ちを感じ取ったように見えた。

 

「なら、襲ってあげるよ」

「っ♡」

 

まるで愛の告白でも受けたように、リディアの目が潤み、頬が紅潮する。

文言こそ犯罪の宣言だったが、そこに込められた気持ちは、文面通りではなかったからだ。

 

「誰にも言わないって、約束できるな?」

「はい♡ 兄様のお立場を、悪くしたりしません……っ♡」

 

隆史の手が、リディアの服を優しく脱がせていく。

 

「ちゃんと……いい子に我慢できるな?」

「はい……♡ できます♡ いい子にします♡ 兄様の言うことに、逆らったりしません♡」

 

リビングの床にリディアの上着が落ちて、続いてブラが堕ちる。

 

「俺なんかで、いいんだな?」

「……兄様以外なんて、嫌です」

 

リディアを膝から下ろして、ソファーで仰向けに寝かせる。

その上に隆史が覆い被さり、再びキスを交わす。

不義を犯す義理の兄妹のように、あるいは想いを通じ合わせた恋人のように。

 

しかしこの場合、そのどちらも正解ではない。

 

これは『性犯罪』――加害者は隆史で、被害者はリディア。

 

誘惑を禁じられたサキュバスのために演じられる、柔らかなレイプだった。

 

 

 

 

隆史はリディアをソファーに押し倒して、体にキスの雨を降らせた。

 

「あぁっ♡ はぁぁっ♡ んっ♡ 兄様っ♡ 兄様ぁっ♡」

 

びくっ、びくんっと、リディアの体が痙攣する。

そのたびに、彼女の体からは甘い香りが立ち上る。

魔人種の女性は興奮するとフェロモンを出すというが、それに間違いはなかったようだ。

隆史の理性は失われ、夢中でリディアの首筋や鎖骨に吸い付き、左手は逃すまいとするようにリディアの背を抱き上げ、右手は乱雑に乳房を揉み回す。

ブラを失ったリディアの巨乳は液体のように柔らかく、指の隙間からはみ出そうだった。

 

「あんっ♡ あっ♡ ふぅっ♡ ふぁああぁ~っ♡」

 

リディアの体は敏感だった。

隆史の唇に、手に、押し潰してくる体そのものに、様々な種類の快感を覚えている。

 

「あぁ、リディア……すごい、エロいな」

「ひゃうっ♡ ごめんなさい、ごめんなさい兄様♡ 私の体が、エッチだからぁ♡ 兄様に、悪いことをさせて、ごめんなさい♡」

 

襲われているというのに、リディアは謝りながら隆史の頭を抱いた。

 

「いいんだよ。リディアを抱けるなら、刑務所に入ってもいいや」

「っっっ♡」

 

言葉と共にリディアの乳首を口に含むと、細い体が大きく反り返る。

 

「はぁんっ♡ だめぇっ♡ そんな、胸、吸っちゃ――」

「感じてる? もっと感じてほしい」

「はいっ♡ 兄様ぁ♡ 兄様ぁっ♡」

 

リディアは隆史の舌先に操られるかのように、身をよじり、首を左右に振った。

 

「言いませんっ♡ 兄様っ♡ 私、このこと、誰にも言いませんからぁ♡ 兄様を、悪い人になんか、させませんからぁ♡」

「そうか、リディアは『いい子』だな。ほら、ご褒美だ」

 

隆史は反対側の乳首をちろちろと舌先でくすぐりながら、もう片方の乳首を親指で転がす。

リディアはもう声も出ない様子で、ひたすら体を震わせていた。

 

「はぁーっ♡ はぁーっ♡ はぁーっ♡」

「大人しくするんだよ?」

 

隆史はリディアのスカートを脱がせて、ショーツ一枚の姿にさせる。

涙ぐんだ瞳、乱れた黒髪、紅潮した白磁の肌に、折れそうな腰、たった一枚の白いショーツ。

こんな美しい義妹を、これから自分のものにできるのだと思うと、隆史の中に嗜虐心が生まれる。

 

「兄様っ!? そ、そこは……」

「ああ、俺のことを呼びながら、たくさんオナニーしてたここ。今度は本物の兄様がしてやるよ」

 

隆史はリディアのショーツ内に指を滑り込ませると、濡れそぼった感触を掴みながら、ゆっくり愛撫し始めた。

 

「あっ♡ あぁっ、あぁあぁっ♡」

「どうした? さっきよりずっと気持ち良さそうだぞ」

「はいぃっ♡ だって、兄様の手、優しくてっ♡ あぁっ♡ だめっ♡ そこっ♡ 敏感でっ、ひぁうっ♡」

 

隆史はクリトリスを指先で擦りながら、リディアの胸にキスをして、たまに乳首を吸い上げる。

 

「ほら、教えるんだ。オナニーしてるとき、リディアはどんな風にしてほしかったんだ?」

「やぁ♡ そんなの、言えない――」

「言わないと……乳首を噛むよ?」

 

軽く前歯で引っ掻くと、リディアの体が震える。

 

「ひっ♡ いやぁっ♡ そんなの、ひどいですぅ♡」

「じゃあ教えてくれ。リディアは、どうしてほしかったのかな」

 

脅すように乳首を甘噛みしながら、手淫の動きを早めていくと、リディアの喘ぎ声が甲高くなっていく。

 

「ああぁぁっ♡ 言いますっ♡ 兄様にっ、兄様に襲われるのを想像しながらっ、オナニーしてましたぁ♡」

「へぇ、妄想の中の俺は、どんな風に襲ってたんだ?」

「それは――ひゃうっ♡」

「ちゃんと言えたら、もっと気持ち良くさせてあげるよ」

 

隆史がリディアの耳元で囁きながら、さらに手を加速させると、リディアは観念したかのように言った。

 

「兄様は……私を、ベッドに押し倒して……いまみたいに、胸を貪りながら、あそこを責めるんです……はぅぅぅっ♡」

 

その妄想を再現するように、両胸と秘所で三点責めにしてやると、リディアの声が高まる。

 

「その後は? 正直に言うんだ」

 

言葉こそ脅しだが、違う意味も含んでいた。

リディアがしてほしかったことを、全てしてあげる――という意味でもあった。

このセックスは、隆史による強姦でなければならない。だから抵抗を許さない。

その一方で、リディアに『妄想の告白』という体裁を取らせることで、事の内容を決めさせる。

怖いのならソフトなことを言えばいいという、いまの隆史にできる最大限の優しさであることを、リディアは理解していた。

だから……ごくりと唾を飲んで、リディアは言う。

 

「犯され、ました……♡」

 

目を瞬いた隆史に、リディアは頬を染めた笑みで、荒い呼吸と共に告白する。

 

「兄様は、ケダモノみたいに、殿方の象徴を私に叩き込んで、無理矢理に喘がせるんです♡

 お止めくださいという私を押さえ込んで……『愛してる』って、『俺のものになれ』って、私を屈服させるんです♡」

 

リディアは自分の脚を隆史の脚に絡めながら、手を胸元に沿えて、過激な妄想を白状していく。

 

「大好きな兄様に、そんなことをされて……私は、気持ちよくて、イっちゃって♡

 体がどんどん兄様に服従していくんです♡ そのうち、兄様をお慰みすることが自分の使命だと思うようになって……♡」

 

これから、その妄想通りにされることを承知で、リディアは続けた。

表向きは『義兄の命令で羞恥的な吐露をさせられている』という形で、しかし実際は――

 

「とうとう私は、兄様に犯され続けて、兄様の虜にされてしまうんです♡」

 

――レイプ願望の告白だった。

 

「だから、だめ♡ だめですよ? 兄様♡ 私の体、すっごくエッチで、快楽に弱いんです♡

 兄様に犯されたら、きっとすごく乱れて、淫らにされて、兄様のものになっちゃうんです♡

 この先ずっと、兄様に体を捧げ続ける義妹(いもうと)になっちゃうんですよ?」

 

リディアの手が伸びて、隆史の首後ろで交差した。

 

「だから、兄様♡ どうかお願いです……」

 

目を丸くしている隆史を愛でるように、邪心を吹き込むように、桜色の唇が、呪文のように言葉を紡ぐ。

 

「私のこと――()()()()()♡」

 

そのとき、リディアの両眼が――赤く輝いた。

 

チャーム――魔人種の女性が持つ、男性を欲情させる魔法。

性欲を掻き立ててケダモノに変え、夢中で自分とセックスさせて、子種を獲得するための手段。

 

それを掛けられた隆史は――理性を奪われた。

襲うという体裁を取りながら優しくしようとしていた心が、一匹のオスとして塗り替えられた。

 

「リディア!!」

 

隆史はリディアへの責めを再開した。

乳首を引き抜こうとするほど強く吸い上げ、もぎ取ろうとするように掴み、手淫は激しい水音が響くほどに。

 

「あぁんっ♡ あっ♡ あああんっ♡」

 

リディアは快感に身悶えし、艶めかしい声を響かせる。

苦痛を伴うほどの責めであるはずなのに、魔人種(サキュバス)の体は、性的興奮で痛みを麻痺させる。

激しくされればされるほど、リディアの体に走る快感の電流は増すばかりだった。

 

「はぎゅうっ♡ にいさまっ♡ 待って♡ しょんなっ、激しっ♡ あああぁぁぁイっちゃう♡ イっちゃうぅぅぅっ♡」

 

リディアは腰を浮かせて痙攣させ、膣内を締め付けることで、絶頂を迎えたことを隆史に伝える。

 

(くそっ! 止まらない!)

 

だが、隆史は止まることができない。

まだ満足していない。もっとリディアを犯したい。リディアを味わい尽くしたい。

気がつけば服を脱いで露にしていた、この肉棒で。

これまでの人生で見たことがないほど大きく張り詰めている、この陰茎で。

 

「リディア、『誘惑』したな!? 許さない、もう許さないぞ!!」

「ひぃいっ♡」

 

怒号と共にペニスを膣口に押し付けられ、リディアは怯えと笑みが混じった奇妙な顔をする。

 

「ごめんなさい♡ ごめんなさひっ♡ 兄様の好きにしていいですからぁ♡ 許してぇ♡」

「駄目だ! お前みたいな淫らな女っ、俺が兄として躾けてやるからな!」

 

隆史の肉棒が、亀頭が沈む程度まで挿入される。

 

「ふぁああ♡ 兄様の、熱い♡ おっきいです♡ これ、こんなの、どうなっちゃうか……」

 

リディアはそれだけで、子宮が蕩けそうなほどの快感を覚える。

魔人種の膣内に処女膜はない。成長と共に薄れて、自然と血も流さずに消えていく。

だからといって、こんなものを入れられたら、膣道が拡張されてしまうのは明白だ。

自分の身体が、とうとう義兄のものにされるのだと――リディアは感極まっていた。

 

「俺の、女に、なれ!!」

 

そしてついに、隆史が腰を打ち付ける。

巨根は一気にリディアの最奥部まで突き進み、ゴールの子宮口に激突した。

 

「おほぉおおおっ♡」

 

リディアは下品なほどの声を上げながら、体を仰け反らせる。

その表情には、深いオーガズムによる悦楽と、被虐的な快楽に溺れるメスの顔があった。

 

「なんだ、そのエロい顔はっ! そんなに気持ちいいのか!?」

「はい♡ きもちいいれすぅ♡ 兄様にレイプされて♡ わたし、しあわせれしゅ♡」

 

リディアは涙を零しながら、舌足らずになった口調で言う。

隆史と同様に、彼女の瞳からも、理性の色が失われていた。

今の彼女は、ただひたすらに男を求めるだけの牝と化している。

サキュバスの業とでも言うのか、普段の清楚可憐な義妹の姿は見る影もない。

 

「なら、犯してやる! 俺が、力尽くで、お前を奪ってやるからな!」

 

隆史は夢中で腰を振り始めた。

 

「あひゃうっ♡ しゅご、しゅごい♡ 私の中っ、全部にっ、擦れてるぅ♡

 奪われちゃう♡ 私の体、兄様のものにされちゃうっ♡」

 

激しい抽送でソファーが揺れて、脚が軋む。

それをリディアの嬌声がかき消して、隆史の手が乳房を掴むと、より獣めいた声が上がった。

 

「んっ、ちゅぷっ♡ にいさま、すき♡ だいしゅきぃ♡」

 

隆史がキスすると、リディアの方から積極的に舌を伸ばしてくる。

 

「俺も好きだ、リディアッ! お前はっ、誰にも渡さないっ!!」

 

愛情のあまり襲い掛かる――リディアが胸をときめかせていた展開そのものだった。

実際に味わうそれは、オナニーとは比べものにならない快感で、リディアを間断なく絶頂させる。

 

「あっ、イく、またイクッ!! すごいぃ、兄様がぁ、私の中で、暴れてましゅっ♡

 犯されてるのにぃ♡ 愛情、感じすぎてっ♡ あああまたイクいきますぅっ♡」

 

リディアは半狂乱になって隆史に抱き縋り、脚を腰に絡めて喉を反らす。

 

「ぐ、もう出るぞ、リディア、中に出すからな!!」

「はい、出して、くださいぃい♡ 私の子宮の中までっ、兄様のものにしてくださいっ♡」

 

隆史の射精と同時に、リディアの膣内が激しく痙攣する。

 

「おほっ、おっほぉおお♡ 熱いの、いっぱい出てっ、イッてるぅ♡」

 

膣内射精を受けたリディアは、気絶寸前の大絶頂を迎えながら、義兄の背中に爪を立てた。

隆史は長い射精に腰を震わせ、荒々しい吐息と共に脱力する。

 

「リディア……」

「はひ♡ はひぃ♡」

 

リディアは意識をもうろうとさせながら、大きな絶頂の『揺り戻し』に震えていた。

 

「……やっぱりお前は、『悪い子』だ」

 

誘惑したことにしないためのレイプだったのに、結局リディアは隆史を『誘惑』した。

合意してはいけないのに、途中から快楽のあまりおねだりしていた。

隆史は加害者となり、リディアは条例の『違反者』になったのだ。

 

「部屋に連れて行くぞ、リディア」

「あっ♡ にいさまぁ……♡」

 

お姫様抱っこで持ち上げると、我に返ったリディアが首に腕を絡める。

 

「部屋で続きだ。動けなくなるまで、たっぷりお仕置きしてやるからな」

 

隆史は微笑みながら宣言して、リディアはどこかキュンとしたように驚く。

 

「はい……兄様♡」

 

 

 

こうして、二人の義兄弟はこの日、加害者と被害者になった。

 

どちらがどちらであるのかは、もはやどうでもよいことだった。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

思ったより文章が伸びて日が開いてしまいました。

エロシーンと日常シーンのバランスが難しい……
日常シーンを雑にするとエロが低減してしまうし。
何気なく読んできたエロ漫画も、限られたページ数でそのへん上手にしてたんだなと、改めて感じた次第です。


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おどされ ~義妹の犯されたがりが止まらない~

 

 

 

須東リディアは、ここ最近、母が人間界の男性と結婚したことで、いままで無かった家名を得た。

そのことからも推測できるが、妖魔界におけるリディアの人生は質素な平民だった。

ここで言う平民を、現代日本の一般的な国民と一緒にしてはいけない。

井戸から水を汲むとは言わないが、冷暖房完備なんて貴族みたいと思うくらいではある。

だから、リディアにとって人間界での暮らしは、それだけで夢見心地だったのだ。

ましてやそこに、魅力的な義兄がいるのなら。

 

「んふぅう♡ ちゅぷっ、れろっ♡ じゅぽっ♡」

 

朝――リディアは大きく口を開き、巨根を呑み込んでいた。

義兄の部屋、そのベッドの横に、制服姿で膝を付いている。

ベッドの縁に腰掛けているのは、つい先ほどリディアが起こしてあげた義兄の隆史だ。

 

「ほら、頑張れリディア。早く兄様を射精させないと遅刻するぞ?」

 

隆史はそう言って、妹の頭を撫でてやる。

 

「あふっ♡ 兄様ぁ♡ 朝から、こんな……」

 

リディアは嬉しそうな声を上げ、亀頭の裏筋に舌を這わせる。

赤黒い肉棒に、白魚のような指が絡み付く様が、どこかアンバランスだった。

 

「まだ○学生の義妹に、朝勃ち処理しろだなんて、外道です♡ 鬼畜です……♡」

「へぇ、物欲しそうな顔で起こしに来たから、てっきりそのつもりだと思ったのになぁ」

 

その通りだった。

いわゆる殿方の朝勃ちというものを見てみたくて、早起きして義兄を起こしに来たのだ。

パジャマの下を膨らませるそれは、寝ぼけているのに雄々しくて、そのギャップに生唾を飲む。

そんなリディアの情欲を察して、隆史は「抜いてくれよ」と高圧的に命じてきたのだった。

 

「俺を誘惑(チャーム)したこと、バラされたいの?」

「そ、それはだめっ、絶対だめです!」

 

リディアは先日、人間界では禁忌である『誘惑』を、この義兄にかけた。

それにより強制的に自分を襲わせて、義兄の精気を貪ったのだ。

これが発覚した場合、罪に問われるのはリディアである。

たとえ義兄も性犯罪で裁かれたとしても、共倒れ。

そしてリディアの場合、妖魔界への強制送還がありうる。

失うものが多いのはリディアであるため、リディアはその脅しに屈さざるをえない。

 

「じゃあ、兄様のご機嫌を取らないと駄目だろう?」

 

優しげなのにサディスティックな笑みに、背筋がぞくぞくする。

その脅しは、あくまでリディアを『被害者』にするためのものだからだ。

 

誘惑禁止条例――

魔人種女性(サキュバス)は、婚姻関係にない男性を誘惑してはならない。

男性にセックスを求めてはならない、求められても合意してはならない。

 

この条件下で、セックスをしたい未婚の女性はどうすればいいのか?

犯されるしかない。

 

その制約でレイプ願望を育んでしまった一部の女にとって『脅迫』は、『熱い口説き文句』だ。

 

「はい♡ がんばります♡ 私のお口で、兄様のこと、いっぱい気持ちよくいたしますから♡」

 

リディアはうっとりした表情で言いながら、口を大きく開く。

両手は床について、膝を曲げて座り、顔と口を義兄に差し出すように。

 

「だから言わないで♡ 私の生活、終わらせないで♡ 私のお口、好きにしていいですからぁ♡」

 

リディアが何をして欲しいのか理解した隆史は、義妹の頭を両手で掴む。

そしてそのまま、張り詰めた怒張を、丸く開かれた彼女の口腔へと突き込んだ。

 

「おぶっ♡ んぶぅっ♡ むぉおっ♡」

 

いきなりの乱暴な挿入に、リディアは目を見開いて驚く。

しかし、すぐにその目はトロンと蕩けた。

義兄が自分の頭を鷲づかみにしている。

その事実だけで、彼女は絶頂してしまいそうになるほど興奮していた。

 

「やっぱりリディアはいけない子だな。兄様のちんぽで口を犯されてるのに、なんだその顔は!」

 

隆史は嗜虐的な笑みを浮かべ、ベッドの縁から立ち上がる。

リディアはペニスで上顎を引っ掛けられるように追従して、膝を伸ばす。

リディアの両腕が義兄の腰を抱き寄せ、肉棒を咥えて放さない。

それを確認した隆史は、義妹の口に挿入したまま腰を軽く振る。

 

「んふぅうっ♡ んむっ♡ んんっ♡」

「ほら、もっと舌を絡めるんだ。言うことを聞かないと、この画像、ネットにばらまくよ?」

 

隆史がスマホに表示したのは、以前リディアとハメ撮りしたときのものだ。

全裸で仰向けに横たわり、両脚を広げて秘所を見せつけている姿。

 

「ぷは――やっ、それはだめっ♡ 兄様ぁ、許してくださいぃ♡」

「なら、ちゃんと奉仕するんだよ。わかったね?」

 

隆史はリディアの頭を撫でると、今度はリディアからしゃぶるように促す。

 

リディアも隆史の真意は分かっていた。

頭を撫でる手は優しいし、脅しの画像も顔が分からないものだ。

それに、さっきは喉奥を突いていたのに、いまはリディアの好きにさせようとしている。

脅されているから仕方ない――という体裁を、リディアに与えるためのものだった。

 

「にい、さまぁ……んんんっ♡」

 

今度はリディアの方から、隆史の逸物を喉奥まで呑み込む。

じゅぷ、じゅぽ――と、端正な人形めいたリディアの口から響いているとは思えない、淫猥な音。

今度はそれが、リディア自身の動きによって鳴り止まない。

 

「くっ、そう、上手だよリディア……もっと強く、奥まで呑み込んでっ」

「んぶっ♡ おぶっ、じゅぶるるるっ♡」

 

隆史の指示に従い、喉の奥へ亀頭が当たるようにしながら、頭を上下させる。

義兄が、感じてくれている。

いつも、一度のセックスで十数回もイかせてくれる義兄を、いまは自分が快楽に染めている。

それが嬉しくて、息継ぎなんて考えもせず、自らの動きで喉奥まで犯させる。

 

「ああ、すごい、こんな美少女の義妹に、朝からイラマチオさせてる。俺、幸せ者だなぁ」

 

隆史の声には、隠しきれない悦びがあった。

その声を聞くだけで、リディアの身体の中心に熱が集まり、目が♡になっていく。

 

「ぷはっ♡ 兄様ぁ♡ ……私、首が、疲れちゃって♡ もう、自分で動けないです♡」

「おいおい、いいところで……」

「はい♡ 兄様をイかせないと、学校に行けません。だから……」

 

リディアは制服のブラウスをたくし上げると、豊満な胸を土台にして鎖骨に掛ける。

そしてシャツのボタンを開いて、青色の上品なブラを露出させた。

 

「もう一度、兄様が動いてください♡ 飽きさせないように、私、おっぱいお見せしますから♡」

「…………」

 

リディアは隆史に再び口を開きながら、ブラのホックを外して乳首を晒す。

そして両手で愛撫し始めて、肉棒を招くように舌先で舐めた。

 

「兄様ぁ♡ はやく♡ リディアのおっぱい見て、もっと大きくしてください♡

 もっと興奮して、ムラムラして、それを義妹のお口で解消してくださいませ♡」

 

亀頭を鼻に乗せながら懇願するリディアに、隆史の口が獰猛な笑みを刻む。

 

「いいんだな? オナホみたいにしちゃうぞ?」

「ひあっ♡ か、髪ぃ♡ やっ、引っ張っちゃ、だめ……っ♡」

 

隆史はリディアの長い黒髪を、軽く掻き上げる程度に掴むと、顔を上に向かせる。

 

()()()()()()()()()()()()? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「あっ、ああぁぁ♡」

 

免罪符を与えるような義兄の言葉に、リディアの体が震える。

被害者という立場を与えられるほど、理性の鎖が外れていき、淫魔めいた本能が目覚めていく。

 

「やぁ♡ いやです♡ 兄様、お願い♡ ひどいこと、ひどいことしないでぇ♡」

 

そう懇願するリディアの口元からは……飢えた犬のように、涎が垂れていた。

 

「だったら、何て言えばいいか分かるな?」

「はい♡ 兄様専用のお口まんこ♡ 兄様のおちんぽケースです♡ お好きに使ってください♡」

 

リディアは義兄に髪を掴まれたまま、最大限に口を開くと、指を引っ掛けて頬を左右に引っ張る。

自分の口腔を、膣の代わりに差し出すという、雄弁な姿勢だった。

 

「ああ、リディアは『いい子』だな」

 

そして隆史は、今度こそ容赦なく、リディアの口内を膣代わりに使い始めた。

 

「おぶっ♡ ぶふぅっ♡ んぎゅっ、おっごぉおお♡」

 

喉奥まで一気に突き入れられ、亀頭が口蓋垂を擦りあげる。

呼吸が出来ず、涙を浮かべるリディアだったが、それも一瞬のことだった。

 

「魔人種の体は頑丈だっていうのは本当なんだな。息継ぎもあまり必要ないんだっけ?

 なら、本気でオナホ扱いして大丈夫だよなっ!」

「おごっ!? んぐっ♡ んっごっ、んぉっ♡」

 

隆史はリディアの頭を掴むと、まるで道具を扱うように乱暴に動かし始める。

 

「んぉぉっ♡ おぶっ♡ じゅるるるっ♡ おぉぉぉぉっ♡」

「イったな? 喉に性感帯があるって噂も本当かよ。やっぱりお前は、エッチなサキュバスだ!」

 

喉奥を何度も突かれながら、リディアは体を痙攣させ、絶頂する。

 

「そら、おっぱい持ち上げろ! 兄様を誘惑してばっかりの悪いおっぱい、自分の指で揉みくちゃにするんだ! 兄様を興奮させないと、ずっと終わらないぞ!?」

「んんんっ♡ んをっ♡ おおおっ♡」

 

イラマチオされながら、リディアは言われた通り両手で乳房を掴む。

隆史にされるときを再現するように、リディアの細い指が柔肉に食い込み、胸を変形させる。

 

「さあ、そろそろイクぞ。ラストスパートだっ! リディアの口をぶち犯してやる!」

 

隆史は自分の射精に向けて、リディアの頭を前後に動かす。

 

「じゅぼっ♡ おぉふっ♡ んぐぅっ♡ をっをっをっ♡」

 

リディアは白目を剥きかけながらも、決して義兄のペニスから逃げようとしなかった。

むしろ自分からも進んで舌を伸ばし、唇をすぼめて吸い付いてくる。

 

「ほら、出るぞ! リディアの喉マンコにザーメン出してやるっ!!」

「~~~~~っ♡」

 

びゅるるるっ! という音が聞こえそうなくらいの、生々しい射精。

口内に大量の精液を注ぎ込まれ、リディアは背中を大きく仰け反らせた。

 

「んっ♡ んぐっ♡ んっんっ♡」

 

リディアは喉を鳴らして、注がれたものを嚥下していくのだった。

義兄との同居が始まって一ヶ月。

リディアが、義兄からの苛烈な性的虐待を訴えたことは、一度もない。

 

 

 

 

妖魔界には男性が少ない。

元は色んな種族がおり、エルフや獣人、角付きの悪魔種などがいた。

それらはちゃんと男女等分に生まれていたが、サキュバスという種族は違った。

 

男性が滅多に生まれないのは、サキュバスという種の特徴だ。

彼女らは他の種族と比べて弱かったが、ひとつ強みがあった。

 

――サキュバスは、全ての種族と生殖可能だったのだ。

 

彼女らはそれにより、全ての種に自分たちの血を織り交ぜた。

結果として純血のサキュバスはいなくなった。

しかし同時に、妖魔界でサキュバスの血を引かない種族もいなくなった。

 

結果として、エルフは長耳系サキュバスとなり、獣人は獣耳系サキュバスとなり、それらはいま、魔人種と総称されている。

最後に生き残るのは、子孫を残したもの。

サキュバスという種はその魅力と淫らさによって、遺伝子における勝者となったのだ。

 

そんなサキュバスはいま、魔人種という名で、人間界に枝を広げている。

リディアの学校の教室もまた、妖魔界からの留学生や、魔人種との混血児が半数を占めていた。

 

「で、リディア?」

「はい、なんですか?」

 

級友の女子生徒・西条ルナが、不意に聞いていた。

 

「ぶっちゃけ、いつ妊娠できそう?」

「っっっ!? げふっ、えふっ!」

 

お弁当を喉に詰まらせかけた。

ルナは魔人種と人間種のハーフだ。

サキュバスの血の方が濃く出ているようで、日本人的な黒髪と、魔人的な豊満さを併せ持つ。

 

「る、ルナちゃんっ!? 急になにを……」

 

リディアは周囲の耳目を気にしたが、元より小声だったので、誰も注目はしていない。

聴覚のいい獣耳系魔人種には聞こえただろうが、慣れたことという様子だ。

 

「いやぁ、分かるよ。私だって半分はサキュってるんだよ?」

「変な俗語使わないでくださいっ……露骨ですか?」

「色っぽくなったなーと思うくらいには」

「あぅ」

 

リディアは顔を赤くする。

つまり、リディアが男性経験を積んでいることが、ルナにバレているということだ。

 

「相手は、ご執心だったお兄様?」

「い、言えません……」

「言えない相手っていうのが答えだね」

 

夢見る男子には聞かせにくい女子トークである。

リディアのような美少女なら惚れている男子も多いのではないか? それは旧時代の感覚だ。

この時代の男子なら、年頃になれば魔人種の恋人なり愛人なりがいる。

早ければ『おねショタ』に始まり、性に目覚める歳になれば同年代、ご近所に住む魔人種など。

要するに相手に困らないので、結果的にガツガツしていないのだ。

 

「よかったねー、リディアちゃん留学してきた初日からお兄様を話題にしない日なかったし」

「しーっ、しーっです!」

 

家ではあれほど淫らなリディアだが、家の外では清楚な優等生だ。

成績は優秀、雰囲気は清純、性格は控え目で、日本人ではないのに大和撫子、そんな印象である。

 

「もー、慌てなくても、そのくらいの『被害』、この町の魔人種(サキュ)なら皆されてるって」

「……ルナちゃんも?」

「ないしょ♪」

 

つまりルナも、内緒にしなければならない相手と、そういうことをしているらしい。

同志であると発覚、リディアとルナは机の下でこっそり握手を交わした。

 

 

 

「そもそもさー、我慢しろっていうのが無理なのよ。

 あの条約、魔人種の性欲や性犯罪ラインを人間と同じ前提で定めてんのよね」

 

放課後、ルナと少し寄り道をしながら、世への不満を語り合う。

 

「サキュにとって子供が得られるかどうかは命がけ。もし妖魔界から人間界に来てるサキュが妊娠して帰郷したら、故郷じゃ英雄扱いよ? 人間界からすると変らしいけど、生き物としては至極真っ当なことだと思うなー」

「まあ、人間界はその手のことにちょっと過敏な気はしますね」

 

そう、リディアたち魔人種からすると、人間界が異文化すぎるのだ。

男性が女性と同じくらいいると聞いていたから、そこかしこで盛っていて、親が子供を十人くらい連れ歩いているものだと思っていた。ジョークではなく、妖魔界の人間が聞いたらそう思う。

しかし実態はむしろ逆。

妖魔界の人間に『日本のイメージは?』と聞いたら「禁欲的」という答えが返される。

 

「人間界に生まれた私でも思うわけよ……『え? こいつら選り好みしすぎじゃない?』って」

 

町を歩くルナが一瞥したのは、人間のOLだ。

男性なら顔立ちで見分けるが、魔人種なら雰囲気や匂いで分かる。

 

「異性の選り好みをするのは当たり前だよ? 私たちだって誰でもいいってわけじゃないし」

 

誤解されがちだが、魔人種は『男なら誰でもいい系ビッチ』ではない。

きちんと、体がその人を欲しいと思うかどうかで選んでいる。

ただ、その選別基準に、容姿や年齢を重視していないのだ。

結果、年配の男性や不細工やデブと腕を組んでいたりするので、そちらを重視する女性からは驚かれている。

 

「なんていうか、後天的に養われた恋愛観に囚われすぎっていうか……()()()()()

 

見かけたOLが、男性と魔人種のカップルとすれ違う。

年配の男性と獣人系の少女で、親子ほど離れているようにも見える。

OLはそれを不愉快そうに見た後、駅に向かっていった。

 

「むしろ本能を毛嫌いしているまである。誘惑禁止条例なんてのがまかり通るくらいには」

 

他方、魔人種の女子高生に逆ナンされて、困り果てている会社員らしき男性もいた。

視線はときおり胸に奪われて、体はOKを出しているが、倫理的な問題を理由に断っている。

腕を抱かれて胸を当てられた男性は、その腕を振り払うと、鞄を抱いて逃げてしまった。乙女か。

 

「愛は尊いけど性愛はNG。愛されたいのにあれはだめこれもだめ」

 

ルナとリディアが辿り着いたのは、街の一角にある――女性向けのアダルトショップだった。

放課後に制服で入れる店ではないが、同じことをしている女性客が多すぎて、黙過されている。

 

「そりゃあ、愛の足りない人生にもなるよねぇ」

 

だからリディアも、店に入る。

愛しい人の興趣を掻き立てる手段に、選り好みなどする気はなかった。

 

 

 

 

「兄様……その、今日の分、なんですけど……♡」

 

夕食後、リディアは風呂上がりの隆史に声を掛けた。

リディアの服装はルームウェアだ。

黒いキャミソールと、裾にプリーツの聞いた柔らかいショートパンツ、肩に同じ素材の上着。

明らかに普段使いではなく、異性の目に自分を焼き付けるためのルームウェアだった。

 

「ん? ああ、一日一回ね。今日はなにしてほしい?」

 

一日一回、甘えてもいい――その約束はいまでも有効だ。

リディアはその権利を、もっぱら隆史を誘惑するために行使する。

表向きには妹が兄に甘えていると言い張れそうな『おねだり』で、手出ししてもらえるような状況を作るのだ。

 

「えっと、じゃあ……」

 

リディアは薄着のルームウェアのまま、隆史の服の裾を指先で抓んで、上目遣いに見上げると、

 

「お部屋で、『よしよし』してください♡」

 

リディアは思う。

自分も大概だけど、隆史も大概シスコンだと。

 

「よしよし、今日も一日がんばったね、リディア」

「あう、あうぅぅ♡」

 

自室のベッドに腰掛けたリディアは、後ろから隆史に抱き寄せられ、頭を撫でられていた。

特に卑猥なことはされていない。純粋に可愛がられている。

 

「に、兄様……その……」

「いつもありがとう。今日のご飯も美味しかったよ。俺も美味しいもの作れるようになるからね」

「は、はい……」

「学校はどうだった? なにか困ってることないか?」

 

べったべたに甘やかす隆史である。

もっと別のことを期待していたのだけど、これはこれで嬉しくて、つい寄りかかってしまう。

 

「なにか欲しいものないか? 今度お買い物に行こうか?」

「はい、日曜日にでも……あの、でも……」

「ん? なに? なでなでされるの飽きちゃった? 膝枕にする?」

「あぅ……♡」

 

隆史は頻繁に、こうやってリディアを甘やかそうとする。

その手付きに性的な意図はなく、肉体関係がなくともリディアを可愛がりたいのだということが伝わってきた。

 

「に、兄様……意地悪です♡」

 

こんなことをされたら拒めるはずがない。

でも、これではセックスに繋がらない。

リディアがそういう意図で部屋に招いたと知りながらこれでは、焦らされているようなものだ。

 

「なんだい? してほしいことがあるなら言ってごらん?」

「うぅ……」

 

言えない。条例があるから言えない。

女性は男性を誘惑できない、セックスを求められないし、求められても応じられない。

だから犯されるしかなくて、襲いやすい環境を整えることで言外の誘いとしている。

なのに手出しせず、できない『おねだり』をさせようとする――これはそういう焦らしだ。

 

「兄様ぁ……♡」

 

そういう抗議と、精一杯のおねだりを込めて、リディアは背後の隆史を濡れた瞳で見上げた。

 

「ごめんごめん、ほら、キスしてあげるから」

「んっ、ちゅ♡」

 

唇を重ねられる。

優しいキスだ。体を包む腕も乱暴さがない。まるで赤ん坊を扱うかのよう。

 

(優しいの、ズルい……♡)

 

普段は犯しておいて、たまに優しくする。まるでDVのような手口だ。

いや……逆だ。

本来の彼はそういう性格で、たまに自分が犯させているだけだ。

優しい彼に似合わないことをさせて、悪者にしてしまっているのは、自分の方なのだ。

 

「ちゅぷっ♡ ぷっぁ……はふぅ……んっ♡ ぢゅる♡」

 

リディアは振り返り気味にキスをしながら、舌を伸ばして義兄を誘う。

隆史の口が応える――舌を入れられ、口内を蹂躙し始めてくれた。

 

「れろぉ……ちゅぱ♡ はむ、んっ、んん~♡」

 

舌と唾液を交換し合う。

その度に体が熱くなり、下腹部が疼いた。

 

「ぷはっ……兄様ぁ? また義妹にこんなキスして……駄目なんですよ♡」

(兄様、もっと……もっとして♡ もっと苛めてください♡)

 

言葉では隆史を咎めながら、瞳は雄弁に本音を語っていた。

 

「リディアが可愛くて、ついね……どうしよう、またムラムラしてきちゃったよ」

「あっ♡ いけません、兄様ぁ♡ 落ち着いてください♡ やんっ♡」

 

隆史の手がリディアの肢体をなで回す。

服越しに乳房を揉み、太股をさすり、臀部を撫で回し、ショーツの中に指を差し入れてくる。

 

「あっあっあっ♡ 兄様っ♡ お止めください♡ エッチなことしちゃ、だめぇ♡」

(気持ちいい♡ 日に日に、上手になってるっ♡ 私のイかせかた、見抜かれてる♡)

 

自分の身体の機微が、彼に知り尽くされていくのを、リディアは感じていた。

敗北感と不安感を持ちながらも、補ってあまる嬉しさがあった。

 

()()()()、こんなに体が夜泣きして。朝は口だけだったから、飢えてたんだね」

 

義兄の手が加速する。

発情した義妹を慰めるのも『よしよし』のうちだと言うように。

乳房をこねる動きが速くなり、膝に乗せたリディアの足に自分の足を絡め、開かせていく。

ショートパンツの中に入り込んだ右手が、激しい水音を立てて掻き回した。

 

「あっあっあぁん♡ 兄様ぁ♡ らめっ♡ らめですっ♡ イかせちゃらめっ♡

 エッチになっちゃう♡ 私それされたらエッチになっちゃいます♡」

 

リディアは身をくねらせて悶えた。

抵抗の意思はなく、むしろ受け入れているように見える。

 

「こんなに淫らなのに、おねだりを禁じられて、可哀想に。ほら、思いっきりイってごらん?」

 

声は優しく、手は激しく――そのギャップに胸が甘辛く締め付けられる。

 

「やぁっ♡ おねがいします♡ にぃさまぁ♡ おねがいですからぁっ♡」

 

リディアは身も世もなく懇願した。

その言葉は、止めてほしいとも、イかせてほしいとも解釈できるものだった。

 

「もっと声を出していいんだよ? 可愛いイキ声、兄様に聞かせてごらん?」

 

耳元で囁かれ、首筋を舐められ、乳房を愛撫され、秘所をかき混ぜられる。

リディアの理性は既に崩壊寸前であり、体の方が先に限界を迎えた。

 

「あああぁぁぁっっっ♡」

 

ガクガクガクッ! とリディアの全身が痙攣して反り返り、服の中で潮を吹く。

 

「あひっ♡ はひぃ♡」

「よしよし、いっぱいイけたね。いい子だよ、リディア」

 

意識をもうろうとさせるリディアを優しく撫でて、隆史は汚れた服を脱がしてやるのだった。

 

 

 

 

「に、兄様っ!? こ、これぇ♡ 外してぇ♡」

 

我に返ったリディアは、両手を手錠で拘束されていた。

手首にはベルトのようなものが巻かれていて、ベッドの支柱に固定されている。

足首と太股もベルトを巻かれ、鎖で結ばれている。

そのため膝が強制的に曲がり、自然とM字に開かれていた。

花のかんばせには、白い肌を塗りつぶすように、無骨なアイマスクが装着されている。

服はとっくに脱がされており、仰向けでも張りのある巨乳と、濡れた秘所が丸出しだ。

 

「部屋に帰ったら、()()()こんなものが置いてあってね」

 

隆史の声は優しかったが、からかうような嗜虐心も込められていた。

 

「きっと、これでリディアを魅力的にしてほしいって、誰かが置いていってくれたんだろうね」

「……っ♡」

 

言うまでもなく、それを置いたのはリディアだった。

今日の放課後にアダルトショップで購入して、こっそり隆史の部屋に置いたのだ。

それが置かれていることの意味を、分からない隆史ではなかった。

 

「さあ笑って。写真に撮ってあげるからね」

 

隆史の指が、スマホのシャッターを切る。

カシャリという音が、リディアの羞恥心を煽る。

 

「い、嫌ですっ♡ そんなのぉ♡」

 

恥ずかしくて顔が真っ赤になりながら、リディアは必死に身をよじらせた。

 

「リディアのスマホの暗証番号、俺の誕生日なんだね。この写真、登録されてるアドレスに送っちゃおうか? この『ルナちゃん』なんてどうかな?」

 

予想外のことだった。

隆史はリディアのスマホで撮影しているらしく、その写真を同級生に送ろうとしている。

 

「だ、ダメですっ♡ それだけは許してくださいっ♡」

「ならおねだりするんだ」

 

リディアは耳元で囁かれ、ビクッと震える。

 

()()()()()()()? 兄様を興奮させるようなおねだりをするんだ。

 リディアが思いつく中で、一番卑猥な言葉を使って、俺を興奮させてごらん?」

「あ、あぁ……っ♡」

 

脅されている。

転じてそれは、リディアの好きなようにしてあげるというラブコールだ。

だが、この胸の興奮は、どちらに対してだろうか?

拘束され、脅迫され、犯される――条例を守るための体裁であるはずのそれに、体裁以上の興奮を覚える自分がいた。

 

それを、もっと深く知りたくて……

 

「嫌、です♡」

 

リディアが言うと、隆史から意外そうな気配がした。

目隠しで顔が見られないことを悔やみつつ、リディアは挑発的に言葉を続ける。

 

「そんなこと、できません♡ 兄様、優しいから、きっとそんなことしません♡

 ()()()()()()()()……して、あげません♡」

「へぇ……そういうこと言うんだ?」

 

隆史の声に凄みが生じて、リディアの背筋を甘い寒気が駆け上がる。

SMプレイ用の拘束具を自分から使わせた上で、『その程度では屈しない』と言う。

それはつまり――もっと過激なことをしてみて欲しいという意味でしかない。

こうでもしないと、この優しい義兄は、そういうプレイをしてくれないから。

 

別にリディアがMというわけではない。

ただ……優しい義兄が、『悪い人』になる瞬間に、興奮してしまうだけだった。

 

()()()。強がったこと、後悔させてやるからな?」

「あぁ……兄様ぁ……♡」

 

日に日に堕ちていく義兄妹の夜は、まだまだこれからだった。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございます。

また長くなったので、前後に分けて二話投稿です。
このまま義妹編の完結までお読みください。


追記
誤字報告をくださった方、まことにありがとうございます。


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おとされ ~義妹は悦楽に堕ち、義兄を溺れさせる~

 

 

数分後――リディアは凄惨な姿で乱れていた。

手足を拘束された上に目隠しをされているのは、リディア自身が仕向けたことだが……

 

「ひぎゅうぅぅぅっ♡ 兄様ぁっ♡ あああぁぁぁっ♡ 許してぇぇぇっ♡」

 

乳首と陰核には専用ローターをとり付けられていた。

洗濯ばさみのように乳首を挟み、そのまま震動するという、あまり見かけないタイプの品だ。

クリトリスにはよくある卵型のローターがテープで貼り付けられ、それら三点が震動している。

 

「ふあぁぁっ♡ だめっ♡ これ駄目ですぅぅっ♡ 私っ、こんなのっ、買ってない――ひゃあぁぁぁっ♡」

「オモチャを買ったのが自分だけだと思ったのか?」

 

リディアにとって予想外なのはそれだった。

隆史もまたリディアとのセックスに工夫を凝らしてきたのだ。

 

「この洗濯ばさみローター、気に入ったみたいだな。乳首イキしてるのが見てて分かるぞ?」

 

乳首を挟んで震動する特殊な形状は、リディアの予想を超える快感をもたらした。

ただ挟まれているだけでも気が狂いそうなのに、隆史の手が乳房をゆっくり揉み上げる。

 

「ひぅぅぅっ♡ らめっ、らめらめ兄様っ♡ いまおっぱい動かしちゃらめでしゅっ♡

 ああああ揺らしちゃ、揺らしちゃぁぁぁ♡ ちくびっ、ちくび取れちゃいましゅっ♡」

 

リディアの豊乳が揺らされると、先端の洗濯ばさみローターも振り子のように揺れる。

それはリディアの乳首を抓ったまま左右に捻り、リディアに未知の快感をもたらした。

 

「ほら、クリトリスも忘れずにな」

 

そちらはローターの震動を最大にされる。

 

「あひぁぁぁっ♡」

 

リディアは身体を仰け反らせ、絶頂した。

秘所からは愛液が吹き出し、ベッドの上で腰が踊るのも、これで何度目だろうか。

 

「見付けたぞ? やっぱり部屋にバイブを隠し持ってたんだな? それもこんなに太いのを」

 

隆史はリディアの部屋を物色して、興味本位で買っていたディルドローターを見付け出す。

 

「あ、やっ、待って♡ いま、いまそれは……っ♡」

「ん? 拒否権なんてあるわけないだろ?」

 

そう言って、リディアの膣内に挿入する。

 

「あひっ♡ あっ、ふぁぁぁっ♡」

 

リディアは目隠しした顔を左右に振って嬌声を上げた。

一度は使ったことのあるものなのに、他のローターで刺激されながら挿入されると、途端に別物に感じられた。

 

「あーあ、ひどい格好。拘束されてローター着けて、ディルドを奥まで呑み込んで」

 

隆史はそう言いながら、スマホのシャッターを切る。

目隠して聴覚と触覚が過敏になったリディアは、性感帯を余さず刺激し続けるオモチャと、耳に響くシャッター音に、正気を保てなかった。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ♡ イクっ、イクイクにいさまイキましゅまたイっちゃいましゅぅぅぅ♡」

 

拷問のように絶頂させられ続けたリディアは、体をブリッジさせるように腰を浮かせていた。

 

「懲りたか? おねだりする気になったか?」

「はいぃ♡ ごめんなさい、兄様ぁ♡」

 

ようやく解放してくれるのかと、リディアが安堵したのも束の間――新しい振動音が耳に届いた。

 

「え?」

 

それが、自分が自慰に使う電マの音だと気付いたリディアは、耳元で義兄が囁く声を聞く。

 

「――いまさら遅い」

 

あろうことか隆史は、リディアを責めるオモチャに電動マッサージ機を追加した。

しかし、乳首も陰核も膣内も、ローターかディルドで埋まっている。

では、どこに電マを押し付けるというのか?

 

――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あ――や――ひ――ぁ――っ♡」

 

震動中のディルドの底部に、電動マッサージ機が押し当てられる。

震動する二つの器具が接触したことで、ガガガガガとぶつかり合う音が響く。

その二重のヴァイブレーションは、リディアの子宮にディルドの先端が当たることで伝わった。

 

「ひぎゅうぅぅぅっっっ♡ あぎっ♡ いああぁぁぅぅぅっ♡」

 

リディアは喉を仰け反らせて絶叫し、潮を吹き出した。

 

「はは、すごいイキ声だなっ」

「やぁぁもう許してぇ♡ あひゃっ♡ 壊れちゃう♡ はひっ♡ にいさ、まぁ♡ 兄様ぁ♡」

「ダメだ、お仕置きだからな。兄様を誘惑するどころか挑発までした悪い子にな!」

「あああああぁぁぁぁぁ~~~~~っ♡」

 

再び絶頂したリディアの秘所から、愛液が飛び散った。

 

「どうだ? 観念したか? 兄様の言うことを聞く、素直なリディアに戻ってきたか?」

「はいぃっ♡ ごめんなさい兄様っ♡ もう逆らいませんっ♡ 兄様の言うこと聞きますっ、なんでも聞きましゅからぁ♡」

「信用できないなぁ」

 

隆史は乳首やクリトリスのローターも強弱を変えて、徹底的にリディアを翻弄する。

 

「んあぁっ♡ あぁぁっ♡ あへあぁっ♡」

 

リディアは連続絶頂で白目を剥いて失神寸前だった。

ようやく電マが外され、他のオモチャの震動も止まる。

リディアは荒い呼吸を繰り返しながら、戻ってきた意識で言葉を紡いだ。

 

「しましゅ♡ わたし、兄様に♡ 服従しましゅ♡

 兄様の命令に従い、ご奉仕させていただきますから♡

 兄様を欲情させちゃう淫らな体、兄様のために捧げますっ♡」

 

誓いの言葉を口にすると、リディアの体に再び情欲が燃え上がる。

オモチャで何度イかせれようと、彼の精を放たれなければ、この渇望は収まらない。

 

「やっと素直になったな。従順で、エロくて、お前は最高の義妹だよ」

 

隆史は優しく言いながら、リディアの拘束を解き、ローターやディルドも取り除いていく。

 

()()()()、苛めてごめんな。泣かないでくれ。愛してるよ、リディア」

「兄様ぁ♡」

 

折檻された後に、たっぷり甘やかされる。

悪い男に定番の手口だと分かっていても、いざされると頭が蕩けるかのようだ。

 

「最初の命令、覚えてるね?」

「は、い……♡」

 

リディアは頷くと、隆史の前で四つん這いになり、ヒップを彼の方に向ける。

自分の知る最も卑猥な言葉で、おねだりしろ――最初は拒んだその命令を実行する。

 

「兄様っ♡ お願いします♡ 兄様の極太おちん○んで、リディアの変態おまんこ犯してくださいっ♡ 二度と逆らえないくらいぶち犯してっ、アヘ顔イキさせて支配してくださいっ♡」

「いいぞ、その調子だ。お尻を振って、いやらしく誘ってみろ。()()()()()()()

 

普段は条例があるから誘惑できない。

でも、そうしろと脅されたのなら、普段はできない誘惑とおねだりはし放題。

強要されているはずなのに、むしろ束縛されていたサキュバスの本能が解き放たれる。

 

「はいっ♡ 兄様ぁ♡ はやく、はやくぅ♡」

 

リディアは隆史に言われた通り、媚びるような腰使いで臀部を左右に振る。

そのたびに、まだ挿入されていない膣口から、大量の愛液が溢れ出す。

 

「可愛いなぁ。あんなにオモチャでイかされたのに、やっぱり本物が欲しいのか?」

「はいぃっ♡ 兄様のおっきなおちんぽぉっ♡ ほしいですっ♡ 兄様に直接っ、滅茶苦茶にしてもらわないとっ♡ この体っ、もう駄目なのぉっ♡」

 

隆史は焦らすように、リディアの尻を撫でて、陰茎の先端で秘所を擦り上げる。

 

「さて、どうしようかなぁ。こんな可憐な義妹を犯すなんて、罪悪感が湧いてきちゃうなぁ」

「あぁ、そんな♡ 酷いですっ♡ 好きっ、好きなんですっ♡ 私、兄様に後ろから犯されるのが一番好きなのぉ♡」

 

リディアは後ろ手に隆史の腕を掴み、自ら尻を上下させて、義兄のペニスを誘う。

 

「優しい兄様をケダモノに変えて、自分をレイプさせちゃうことに悦びを感じちゃう、どうしようもない女なんです♡ 兄様に優しくしてもらう資格なんてないんですっ♡ だからどうか、私にしかできないことさせてくださいっ♡ 他の女には絶対できないような、欲望のままのセックス♡ 私に受け止めさせてくださいっ♡」

 

必死に懇願するリディア。

全て本心からの言葉だった。

条約さえ無ければ最初からこう言っていたかもしれない、誘惑の言葉だ。

それを、『おねだりを強いられるまで』我慢していたリディアに、隆史は微笑みかける。

 

「――よくできました」

 

隆史はリディアの中に亀頭を侵入させる、陰茎から手を離して尻を両手で掴む。

 

「あ、ああ、きちゃう♡ くるっ♡ 兄様がくるっ♡ 私の中で、暴れにきちゃう♡」

 

一気に突き込まれる前振りだと理解したリディアは、シーツを握り込みながら興奮に震えていた。

そして――

 

「ひぎゅ――――っ」

 

どちゅん!と、隆史の肉棒がリディアの最奥を貫く。

子宮口をこじ開けられた瞬間、リディアは全身を痙攣させた。

 

「はひっ♡ んおぉぉっ♡ おっ♡ おほおぉぉぉっっっ♡」

 

リディアの体内を最大級のオーガズムが駆け抜けて、遠吠えのような声を上げさせた。

 

「おおぉっ……すごい締め付けだ。食いちぎられそうだぞ」

 

隆史はそう言うと、手加減抜きのピストンを繰り出した。

 

「あへぇえっ♡ あぐっ♡ はひぃううう♡ イグッ♡ イっでりゅ♡ ずっとぉ♡ 何度もぉ♡ あっあっあっあ゙あ゙あ゙っ♡♡♡」

 

リディアは目の焦点を失い、もはや自分でも分からない言葉を勝手に口走る。

隆史はそれでも抽送を止めない。むしろ加速させる。

ぱんぱんぱんぱんっ!! と、部屋中に反響するほど、リディアの尻に腰を打ち付ける。

 

「あはぁぁっ♡ いいっ♡ 気持ちいいよぉっ♡ ケダモノ兄様かっこいいのぉ♡ もっとぉ♡ もっといいのしてぇ♡ イかしぇつづけるのやめないでぇっ♡」

 

快楽に身を任せ、ただひたすらに喘ぎ続ける。

 

(あ、だめ……このままじゃ、本当に堕とされる)

 

リディアは頭の片隅で、欠片ほど残っていた冷静な部分が、危機を訴えた。

もはや条例違反を避けるための体裁では済まされない。

堕ちる、体裁だったものが本物になる。義兄の本気レイプでイキ狂う女になってしまう!

そうと分かっていながら――リディアは媚びるように腰を振り、喘ぎながら義兄を誘惑する。

 

「お願いしますっ♡ 兄様っ♡ 兄様専用の奴隷にしてくださいっ♡ 兄様に愛されるためだけに生きる雌豚になりたいんですっ♡」

「こらこら、落ち着いて。そこまでしなくても――」

「いいのっ♡ もう条例なんて知らないのぉ♡ 誘惑しゅるのっ♡ これからずっと、兄様を誘惑してっ♡ ずっとずっと犯してもらうんですからぁ♡」

 

隆史に両手を引かれ、膝を支えに上半身を持ち上げられながら、リディアは体を踊らせる。

振り乱された髪がベッドに流れ落ち、口からは涎が垂れ下がり、嬌声は甲高くなっていく。

 

「んほぉおぉっ♡ イクッ♡ またイッちゃうぅ♡ 兄様の極太おちんぽに屈服アクメさせられちゃうのぉ♡ いひぃいっ♡ 好きっ♡ 大好きです兄様っ♡ くだしゃいっ♡ 兄様のおちんぽもっと私の中にくだしゃいっ♡ 兄様の素敵な体っ、これからずっと、私を愛情レイプするために使ってくだしゃいっ♡」

 

誘惑というには苛烈で、おねだりというには猛烈だった。

しかしそれは、自分だけの男になって欲しいという、愛の訴えでもあった。

 

「そんなこと――」

 

隆史はリディアの向きを変えて、正常位で抱きしめながら、種付けプレスを叩き落とす。

 

「こっちは――お前を一目見たときから、そうしたかったんだよ!!」

 

どちゅんどちゅんと子宮を突きまくり、射精直前のラストスパートで膣を掻き回す。

 

「んおおほぉっ♡ おほっ♡ おぉぉぉっ♡」

 

リディアの体に、マシンガンのような絶頂が繰り広げられる。

子宮口を突かれ、カリに膣内を掻かれ、尻に腰が当たる、それらひとつひとつに達している。

 

「エロい! エロすぎるんだよお前は! こんなに乱暴に突いてるのにイキまくりやがって!

 こんなの本当のレイプと変わらないんだぞっ! 人間の女だったら泣き喚くんだぞっ!?

 いいのか!? 気持ちいいのか!?」

「あひっ♡ あああっああっあっ♡ ひもひぃえふぅっ♡」

 

そもそも魔人種の性感帯は、人間よりも『広くて深い』。

単純に快感を覚える面積が大きく、肉に食い込むような強い刺激を好む。

面積✕深さで生じる快感は、人間の女とは絶対値が桁違いだ。

人間女性なら乱暴すぎるくらいでなければ、彼女らにとってはセックスにならない。

 

「ああ、もう駄目だ、我慢しないぞ! 優しい兄さんでなんかいられるか! 犯すっ! そんなに犯されるの好きなら犯してやるっ!」

 

隆史は、鏡を見ずとも、自分が邪悪な顔をしているのが分かった。

脳内に渦巻く歓喜と興奮を、どのような言葉で表現すればいいのかも分からない。

ただ、犯されるほどイっている淫らな義妹を見ていたくて、一心不乱に腰を振った。

 

「おっほぉぉっ♡ うれしいっ♡ しあわせれふっ♡ しゅきっ♡ しゅきぃ♡ 兄様しゅきぃ♡ 私っ、ずっとっ、ずっとずっとぉ♡ 兄様のものでいたいっ♡ 兄様ぁ♡ 兄様ぁっ♡」

 

リディアは両脚を隆史の腰に絡め、腕も背中へと回し、全身を使って隆史にしがみつく。

 

「リディア! 愛してるんだ! お願いだっ、伝わってくれ!! イキまくって応えてくれ!!」

「あへぇえぇぇっ♡ イグゥウウッ♡ イギましゅううぅっ♡ 兄様ぁああっ♡ 愛してますっ♡ んぉおおっ♡ あひっ♡ いくいくっいっぐううぅっ♡ いぎっぱなしっ♡ 兄様のセックス気持ちよすぎてぇっ♡ もう何も考えられないいいぃっ♡ あぉぉっ♡ またイグっ♡ まだイグっ♡ 何回でもイケるぅのおおおっ♡」

 

何度も何度も、リディアは果てた。

これで二十回目か、三十回目か、数え切れないほどの回数で絶頂を迎えた。

 

「っぐ!」

 

そしてとうとう、隆史が精を解放したとき、リディアのオーガズムは最高潮に達した。

 

「――――ッッッ♡」

 

とうとう声も出なくなったのか、リディアは息を呑みながら全身を反り返らせた。

荒々しい呼吸を繰り返しながら、時折、思い出したように体が跳ねる。

 

「リディア? ……気絶しちゃったのか」

「あっ……あふっ♡ ぁ……ひぃ♡」

 

リディアは気絶していた。

あまりの連続絶頂に、意識が保てなくなったのだ。

 

「ふぁぁぁ♡ にぃさまぁ♡」

 

それでも余韻が続いているらしく、またびくんっと体が震えて、心地よさそうな声が出る。

 

「まったく……『ふり』だけならまだしも……」

 

条例違反にならないための、演技上のレイプであるはずだった。

でも、今日のそれは……下手をすれば本物よりも激しかった。

 

「こんなのが癖になったら、お互い大変だぞ? こいつめ」

 

隆史は気絶したリディアの身なりを整えてやってから、毛布を掛ける。

そうして自分も隣で横になり、二人でぐっすりと眠りに就くのだった。

 

 

 

 

翌日――再婚した両親から電話が掛かってきた。

 

「ああ、父さん? ……ああ、リディアとは仲良くやってるよ。うん――そっか、まあこっちは構わないけど。

 え? このまま新婚旅行? ああ、うん。こっちはなんとでもなるから、楽しんできてくれ」

 

電話を切る。

そして、もう片方の手に持っていた紐を引いて、紐に繋がったリディアの『首輪』を引く。

 

「ぢゅぷっ♡ んんっ♡ ぷはっ♡ 兄様?」

 

首輪を付けられ、乳首と秘所の部分が開かれた黒いランジェリー姿で、リディアは隆史の肉棒をしゃぶっていた。

 

「父さんと義母さん、まだ当分はこっちに来られないみたいだ」

「まぁ……♡」

 

リディアは、どこか艶然とした微笑を浮かべて、義兄のペニスに頬ずりする。

 

「でしたら……私はこの後も当分、兄様に調教されてしまうんですね♡」

「もう調教済みだろ? ほら、そろそろ入れてやるから、こっちに来い」

「あんっ♡」

 

首輪で引かれたリディアは、ソファーに腰掛けた隆史の膝に跨がり、首に腕を絡める。

 

「今日もたっぷり、可愛がってやるからな?」

 

リディアの腰を抱き寄せ、頬を撫でながら宣言すると、リディアは頬を染めながら、こう応えるのだった。

 

 

 

「――()()()()♡」

 

 

 

 

 

――日本のとある自治体に、誘惑禁止条例というものがある。

 

魔人種の誘惑による性犯罪を禁じるために作られたそれは、表向き街に秩序をもたらした。

 

それでも、夜の街から悩ましい声が途絶えることはない。

 

今宵も、どこかで誰かが、罪を犯し、罪を()()()()()()()

 

女性の自由を侵害する条例には、いまだ撤廃を求める声もある。

 

しかし、当該地域で誘惑禁止条例が見直されるという話は――いまのところ、ない。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

これにて義妹編、完結となります。
また別の義兄妹を描くことはありえますが、この兄妹はハッピーエンドです。

思いの外ご好評いただけました。
評価してくださった方々、まことにありがとうございます。

しばらく日をおいて、他の組み合わせの男女を描いてみたいと思います。
もし興味がありましたら、お気に入り登録などしてお待ちください。


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おまけ

 

 

 

人間界と妖魔界の行き来が容易になり、麗しい妖女が溢れたこの時代。

その変化に応じて、急速に勢いを増した業界がある。

 

ラブホテル業界だ。

 

理由は言うまでもない、急激な需要の増加である。

人間男性とサキュバスの恋人はごろごろいる。

とめどない男女の情熱に対して、その解放が許される場はあまりに少ない。

 

自宅ですれば近所迷惑だったり、同居家族の目が気になったり。

職場や学校や電車はもちろん、人気のない路上や公園も厳密には違法だ。

そういう場の不足が、『ピンクハザード』と呼ばれる風紀の乱れの一因である。

 

おまけに誘惑禁止条例が施行され、未婚の男女は性犯罪でしかセックスができない。

建前とはいえ犯罪は犯罪なので、雑音を嫌った誰かが通報すれば面倒になる。

 

故にホテルだ。

 

需要の低下した風俗店が看板を変える形で、様々な休憩所が増加した。

近頃は妖魔界との技術交換による魔法技術があるので、それも活用されている。

 

代表例は――幻術などを駆使した、特殊な環境の再現である。

 

例えばそれは『電車内』だったり、『学校』だったり。

いわゆるイメクラのように、いつもと違う環境を提供するホテルが多い。

 

そして、昔のお風呂屋が『部屋でたまたま男女が会っただけ』という言い分で通っていたように。

このサービスも『店は部屋を提供しただけ』で、利用者が何をしているかは関与しない。

 

若い男女が気軽に来られる価格と娯楽性――

誰にも邪魔されない二人きりの、あるいは二人以上の空間――

遠慮せずに声を上げたい、ちょっと世間体の悪い関係、そんな皆様に――

 

歓楽街に連なるホテルは、今日も満員御礼である。

 

 

 

 

須東隆史は、どこかの学校の体育倉庫にいた。

 

正確には、それっぽい小道具が置かれた部屋に、細かい幻術をかけたものだ。

ボールが満載になった籠に、古びた跳び箱、窓型照明による薄明かり。

そんな部屋の中央には白いマットがあり、そこには――

 

「リディア、その格好……」

「ふふ♡ ブルマっていうそうです」

 

体操着姿のリディアがいた。

旧時代の、白い半袖と非常に短いパンツという、古の体操着だ。

 

「……人がそれ着てるところ、初めて見た」

 

ゴクリと唾を飲む。

なにせ、細身なのにHカップの豊乳を持つリディアだ。

体操着の胸元は乳袋ができそうで、黒いブルマから伸びる細い脚線が眩しい。

そんな義妹が、マットの上で体育座りをする姿に、邪な念が掻き立てられる。

 

「もう、兄様? そんな、欲情した目で見たら、ダメです♡」

 

リディアはそう言いながら、体育座りを女の子座りに変える。

膝に隠されていた胸元が開かされ、足とブルマがよく見えた。

体操服越しに胸元へ手を添えながら、悩ましげな吐息すらついている。

隆史はその艶めかしさに思わず生唾を飲み込んだ。

 

「仕方ないだろう? リディア、お前いま、すっごいエロいぞ……」

 

隆史がリディアの前に膝をつくと、リディアが少し身を引いた。

 

「いけません……ここには、遊びに来ただけなんですよ?

 ただ、学校の体育倉庫っぽい内装のお部屋で、ちょっとコスプレするだけの場所なんですよ?

 利用時間が終わるまで……誰も、来ないんですよ?」

 

距離を詰める隆史に、リディアは胸の動悸を高めながら、制止のような言葉を並べる。

 

「ここで、なにかされたら……困ります♡ 誰にも、気付かれないんですよ?

 大きな声で、叫んでも……誰も、来ないんですよ? だから、ね♡ 兄様……」

 

潤んだ瞳を向けてくる義理の妹が、ゆっくりと顔を近づけてきた。

 

「どうか……()()()()()()()()?」

 

耳元で囁かれる言葉に、隆史は背筋がぞくりと震えた。

同時に、理性を焼き切るような劣情が沸き上がり、リディアを押し倒した。

 

「きゃっ!」

「リディアッ!!」

 

マットに押し倒され、覆い被さられたリディアは、怯えるような声を上げる。

しかし抵抗はせず、むしろ受け入れるように腕を広げてみせた。

 

「あん♡ 兄様ったら……また、義妹に欲情して……いけない人です♡」

「黙れっ! お前はいつもいつも、そうやって俺を誘惑してっ!」

 

隆史は敢えて乱暴に、リディアの乳房を体操着の上から掴む。

 

「ひゃあん♡」

「事あるごとに、俺に自分を犯させようとしてっ!

 こんな風に、学校でも襲われたかったのか!?」

 

隆史はリディアを激しく責め立てていく。

 

「ちが、違いますぅ♡」

「嘘をつけッ!! 本当はこうされたかったくせにっ!!」

「あああっ♡ だめっ、気持ちいいっ♡ 兄様ぁ♡ 乱暴な手付き気持ちいいのっ♡

 無理矢理に感じさせられちゃうとっ♡ 逆らえないですっ♡」

 

リディアの目は、義兄に犯される興奮に染まっていた。

その首筋を噛むようにキスしながら、隆史は言葉を連ねる。

 

「ああもう、もっと歳が近ければよかったのにっ。

 そうすればリディアと同じ学校に通って、可愛い義妹を自慢できたのにっ」

「ひゃうっ♡ 私も、そうしたかった、です。

 兄様と同じ学校で、たまに廊下でお話して……

 お友だちに、格好いいお兄様のこと、自慢したかったです……っ♡」

 

キスされる度に感じながら、リディアは義兄の背中に腕を回す。

そして薄い唇を耳元に寄せて、魔女が呪文を唱えるように言葉を続けた。

 

「表向きには、仲のいい兄妹として振る舞うんです……

 でも、たまに兄様にスマホで呼び出されて、二人きりになって……あっ♡」

 

体操着の上から指で乳首を転がされ、リディアは声を零す。

隆史は焦らず、リディアの服装を堪能するように、脱がさず愛撫を重ねた。

 

「空き教室とか、トイレとか、体育倉庫で、兄様に奉仕させられるんです♡

 周りには隠して、いけない兄様の要求に従って、体を、弄ばれて……っ♡」

 

リディアが卑猥な妄想を吐露していく。

もしかすると、普段の学校生活でも、そんな想像をしているのだろうか。

 

「ダメなのに、気持ちよくされてしまって♡ ずるずると溺れさせられて♡

 いつの間にか、お呼ばれしないと体が寂しくなってしまって……♡

 意地悪な兄様は、そんな私を、焦らして、焦らして……♡

 やがて、自分からおねだりするように仕向けるんです♡」

 

リディアの両腕が背中を撫で、足が腰に絡んでくる。

耳を舐めるように淫靡な声は、隆史の情欲に油を注ぐかのようだった。

 

「へぇ、どんなおねだりするんだ? 言ってみろよ」

「ひあっ♡ ダメぇ♡ おっぱい♡ 握り潰したらっ♡」

 

体操服に隆史の五指が食い込み、内部の乳房を圧迫した。

人間より丈夫な妖女の体には、このくらいなら苦痛より快感が勝る。

リディアもまた、愛しい義兄が自分の身体を激しく求めていることを感じて、被捕食者の興奮に駆られるだけだった。

 

「ほら、言うんだ。リディアのいけない妄想、聞かせてごらん?」

「ひぃうぅ♡」

 

耳を甘噛みしながら問い詰めると、リディアの体が震える。

義兄の嗜虐的な声音にぞくぞくしているのが、触れる体から伝わってきた。

 

「兄様はぁ……言わせるんです……わたしに……っ♡」

 

リディアは隆史にキスをすると、間近で顔を見つめ合わせる。

そして――その両眼を魔力で光らせ、『誘惑(チャーム)』の力を解き放った。

 

「犯して――って♡」

 

魔力を伴ったその言葉は、まるで催眠術のように隆史を支配した。

禁じられた誘惑の力で、リディアは義兄をケダモノに変えたのだ。

 

いつも以上に――無我夢中で犯してほしい、と。

 

「ああ――徹底的に犯してやるよ!」

 

構わず体操着をまくり上げると、細身に対してアンバランスな豊乳がぷるんと踊り出る。

 

「ああっ♡ だめっ♡ だめです兄様っ♡ 兄様に犯されたらっ♡ 私またっ♡」

 

リディアは言葉でこそ制止しているが、その目は情欲に輝いていた。

抵抗とは言えない身じろぎを繰り返し、マットと体操服の間に衣擦れの音を立てるのみ。

学校の体育倉庫で、義兄に自分を襲わせる、淫らな少女でしかなかった。

そんなリディアの肩を押さえ込みながら、その果実の先端部に、強く吸い付く。

 

「ああぁっ♡ 乳首ぃっ♡ 吸っちゃらめっ♡ 兄様がぁ♡ 私のおっぱい♡ お手々とお口で、貪ってるっ♡」

「まったく、すっかり敏感おっぱいになったな。こんな乱暴にしてるのに、感じてばっかりじゃないかっ」

「だって♡ 兄様が、いっぱいいじめるから♡ こんなに、イキやすくっ♡ あひゅっ♡ ひぁぁっ♡」

 

揉みくちゃにされるほど感じてしまうリディア。

隆史は言葉を口にする間も惜しんで、左右の乳首へ交互に吸い付き、反対側を手指で責め立てる。

 

「やぁぁぁっ♡ 兄様ぁ♡ そんな、ちゅぱちゅぱしちゃらめっ♡ 甘えながらっ、苛めたらぁ♡ イクっ♡ イッちゃうっ♡ あっあっあっ♡ あああぁぁぁっ♡」

 

リディアは兄の頭を掻き抱きながら、背筋を反らして絶頂した。

 

普段よりも声は高い。

出張していた両親が家に帰ってきて以来、家でする機会は減っていた。

だからこそのホテルであり、抑圧から解放された二人の興奮も一入である。

 

「ほら、次はお尻だ。後ろ向いてこっちに向けるんだっ」

「はひっ♡ 兄様ぁ♡ だめ、です、からぁ♡」

 

絶頂後の恍惚に浸っているリディアは、あえて隆史の命令に従わない。

表情は『抵抗』というより『期待』だ。

彼女がどうして欲しいのか、隆史はよく分かっていた。

 

「なんだリディア? 逆らうのか?」

 

リディアの乳首を両手で抓り上げる。

 

「ひぎっ♡ 痛いっ♡ 兄様、そんなに強くしたらっ♡ だめぇ♡」

「お前が言うことを聞かないからだろ?」

 

口から舌を出すような顔で、リディアは乳首の負荷に喘いでいる。

 

「リディア、お前は俺のなんだ? 妹だろう? 妹は兄の言うことに従うものだろ?」

「ごめんなさいっ♡ 謝るからっ♡ 兄様の言うことに、従いますからぁ♡」

 

逆らうようなことを言ったのは、こうして脅しつけられることを期待していたからだ。

 

「この体も、俺のものだろ?

 綺麗な黒髪も、大きな胸も、細い手足も、可愛い声も……全部俺のだっ」

「あぁ♡ 兄様ぁ……ダメです♡ そんな、所有欲♡ はぅ♡ 嬉しく、なっちゃう♡」

 

義兄の、強引に奪って支配するような熱情に、リディアは恍惚とするばかりだ。

『誘惑』によって昂ぶらされた義妹への劣情、それに支配された義兄の姿に、愛されることの悦楽を感じてしまっている。

 

「なら、お尻をこっちに向けろ。お仕置きに叩いてやる」

「はい、兄様ぁ♡ お願いします♡」

 

リディアはマットの上で四つん這いになり、隆史に向かって突き出すように腰を上げた。

 

「答えろリディア、お前は誰の女だ?」

 

ブルマの上から軽く叩いて問いかける。

 

「はひっ♡ 私は、兄様のモノです♡」

 

リディアは嬉々として答え、叩かれた尻を左右に揺らす。

ブルマに包まれた秘所は、すでにぐしょ濡れになっているのか、湿りが見えていた。

 

「このエッチな体は、誰のためのものなんだ?」

 

先ほどより強く叩いて問い詰める。

 

「ひぅぅっ♡ ああっ♡ 兄様だけの、ため、ですっ♡」

「そうだ。その大きな胸も、淫らな尻も、俺のものだろうっ?」

 

パン! パン! と、両手を使って左右からヒップを叩く。

 

「は、はぃぃっ♡ リディアの身体、全部っ♡ 兄様のモノですっ♡」

「なら俺の好きにしていいよな? エッチが大好きな淫乱ボディ、面倒見てやらないとな!?」

「ひあっ♡ あひぃ♡」

 

言葉が重なるほど、尻を叩く音も甲高くなる。

 

「反省したか!? したならおねだりしてみろっ! 犯してくださいって!」

 

パァンッ!! と一際強く叩きつけると、リディアは悦んで声を上げる。

 

「ひああああああんっ♡」

 

とうとうリディアはスパンキングで絶頂してしまった。

叩かれることで尻の性感帯を刺激され、体に走る震動に子宮を揺らされて、達してしまったのだ。

 

「ほら、ブルマを下ろして、おねだりするんだ。言うことを聞くまで何度でも叩いてやるぞ?」

「ひぅ♡ 脅迫♡ 兄様が♡ 私のこと♡ 脅して、りゅ♡」

 

リディアは犬のように息を荒げながら、突き上げた尻に手を伸ばす。

そして、自らの手でブルマと下着に指を入れて、ゆっくりと下ろしていく。

やがて、白い肌と桃色の粘膜、それに黒々とした茂みまでもが露わになった。

 

「いい子だ。可愛いおねだり、聞かせてごらん?」

 

たっぷり脅しつけた後に優しい声を掛けてやると、リディアの興奮が一段と高まる。

 

「あぁ♡ 兄様ぁ♡ ごめんなさい♡ こんなエッチな義妹で、ごめんなさい♡」

 

リディアは自分の指先で、秘裂を押し開いた。

 

「私の体、いつもいつも、兄様に欲情してばかりなんです♡

 子宮が、兄様の子種を、欲しがって止まらないですぅ♡」

 

くぱっと口を開いた膣穴からは、愛液が溢れ出して止まらない。

 

「いけないって、分かってるのに♡ 兄様に抱かれたくて♡ 犯されたくて♡

 だから、兄様が欲情してくれるの、嬉しいの♡ 求めてくれるの、嬉しいの♡」

 

リディアは甘えた声で言い訳しながら、自分の秘所を慰めている。

 

「兄様を悪者にしてばかりで、ごめんなさい♡

 どうか、こんな罪深い義妹でよければ、慰みものにしてください♡

 兄様のお気持ちを解消するために、はしたない私を使ってくださいっ♡」

 

リディアは腰を高く上げ、後ろを振り向いたまま懇願している。

隆史はそんな彼女の背後に立ち、ズボンのベルトを外す。

 

「本当に、リディアはどうしようもない変態だな」

 

隆史の声は、ひどく冷たかった。

リディアはぞくりと身を震わせながら、兄が逸物を取り出す気配に興奮を隠せない。

 

「犯すぞ? いいのか? こんな兄様でいいのか?」

「いいのっ♡ 兄様がいいのっ♡ 私の代わりに悪者になってくれる兄様が、大好きなのっ♡

 だからせめてっ、犯してぇ♡ 兄様の思うがままにさせてあげたいんですっ♡

 お優しい兄様の、ケダモノな部分を、解き放ってあげたいんですっ♡」

 

リディアは淫らに尻を左右に振って、義兄を危険な言葉で誘惑する。

 

「いつもみたいに……ううん、いつもより本気で、私のおまんこぶち犯してくださいっ♡」

「……言ったな? 途中で泣いても止めないからな!」

 

リディアの言葉に応えて、隆史はその欲望を解き放った。

硬く勃起したペニスが、リディアの秘所に突き入れられる。

 

「あひぃいっ♡ きたぁぁっ♡」

 

リディアはマットに顔を伏せながら、膣内を突き進む義兄の怒張に震え上がる。

 

「あっ♡ あああっ♡ あああぁぁぁっ♡」

 

あえてゆっくりと、三歩進んで二歩下がるように前後しながら、奥へと突き込んでいく。

その前後が起きるたび、リディアは膣内の性感帯を刺激され、獣めいた嬌声を上げた。

 

「っ!」

 

ようやく子宮口に到達しようかというとき、隆史は大きく腰を引いて――勢いよく最奥部に叩き付ける!

 

「んひぃぃぃっ♡」

 

子宮口に叩きつけられた衝撃が脳天まで届いたように、リディアが背筋を反らして痙攣絶頂する。

 

「ひぁっ♡ あぁっ♡ あひぁっ♡」

 

リディアは舌を出して喘ぎながら、痙攣によって腰を動かす。

動いた結果、押し当てられたポルチオに亀頭が擦り付けられ、また悦楽の稲妻に打たれる。

 

「あうぅぅっ♡ 兄様ぁっ♡ らめぇぇ♡ 止めてぇ♡ 腰、動いちゃうっ♡ 動いてイっちゃうとまた動いちゃうのぉっ♡」

 

セルフバイブレーションとでも言おうか、自分の痙攣で自分を責め立て続ける状態に陥っている。

 

「ダメだ、このままイキ続けろ。自分がどれだけ淫乱か思い知れ。

 ほら、俺は動いてないぞ? ポルチオに当ててるだけだぞ?

 リディアの体が、兄様のおちんぽに大喜びで腰を振りながらイキまくってるんだぞ?」

「あぁぁ♡ そんなぁぁ♡ ひどいですぅぅ♡」

 

リディアは甘い声で泣き叫びながら、自ら腰を動かして、ヒップを隆史に打ち付ける。

 

「だめぇぇ♡ イクの止まらないのぉ♡ 兄様、なにもしてないのにぃ♡ 自分で勝手にイッちゃうのぉ♡」

 

リディアの腰は、別の生き物のように義兄の肉棒を貪り続け、リディア自身を大きな絶頂へ上り詰めさせる。

 

「あああぁぁぁっ♡ くるっ♡ 来ちゃうっ♡ 大きいの来ちゃうぅぅぅっっっ♡」

 

一際強烈な絶頂に、リディアは甲高い嬌声を上げた。

股間からは大量の愛液が噴き出し、マットの上に水溜りを作る。

 

「ひぁ……あぁ♡ はぁ、はぁぁ……♡」

 

連続アクメに、リディアはすっかり蕩けきった表情を浮かべている。

隆史はそんな彼女の背後から、そっと囁いた。

 

「じゃあ、次は俺の番だな?」

 

そう言ってリディアの腰を掴むと、大絶頂を迎えたばかりの子宮に向けて、腰を振り始める。

 

「え? まっ、まだ、待っ、ひぐぅっ!?」

 

リディアは膣内を往復する剛直の感覚に目を剥いた。

 

「ひぁあぅっ♡ 兄、様ぁっ♡ あひぁっ♡ らめっ♡ んおっ♡ いまっ♡ 突いちゃ♡ おおおおっ♡」

 

パンパンパン! と、先ほどのスパンキングにも劣らない音が、室内に木霊する。

マットに伏せたリディアの背後から、半ば覆い被さるように突き込みまくると、最奥部に届く度に膣内が痙攣した。

 

「はははっ、さっきあんなにイったのに、もう突かれる度にイってるな!

 リディアの体、犯されるの好きすぎだろっ!」

 

どちゅっ、と子宮口を叩かれ、リディアは目を見開いて悶絶する。

 

「おほっ♡ おぉっ♡ おひぃぃっ♡」

 

膣内の性感帯を的確に攻めてやりながら、ピストン運動を続ける。

 

「ほらっ、分かるか? 本当に犯されてるぞっ? お前の負担なんか考えずに突きまくってるぞ?

 これでも気持ちいいのかっ? もっとされたいのかっ? 返事をしろリディア!」

 

隆史は息を荒げながら詰問する。

男の自分勝手なセックス――ですらない。

自分が望むよりも激しく、意図的に女へ負担を掛けるような激しさだった。

だというのに――

 

「はいぃっ♡ 兄様のっ♡ 本気のレイプっ♡ ああぁっ♡ 素敵ぃっ♡

 雄々しくてっ♡ 男らしくてぇっ♡ イカされまくるの幸せになっちゃうのぉっ♡」

 

リディアの声は、痛苦が全て快感に変換されているかのように、甘く蕩けていた。

体が頑強で、性感帯が広く深いサキュバスは、人間よりも荒々しいセックスを好むというが……

リディアの性癖は、そんなサキュバスの中でも、マゾに傾いていると見て間違いない。

 

「兄様っ♡ おねだりっ♡ もっとさせてくださいっ♡

 もっと♡ もっとぉっ♡ 私のことっ、強くっ、征服してくだしゃいっ♡

 犯されたがりのっ、ダメな私をっ♡ いっぱい、叱ってぇ♡ 躾け直してくらさいっ♡」

「このっ」

 

誰も聞いていないからと誘惑の言葉を並べるリディアに、歯噛みする。

条例対策でレイプを装うためではなく、本当に犯されるのが好きになってしまっていた。

 

「こうかっ!? こんな風に、兄様のオモチャにされてっ、いいのかっ!?」

 

ときおり尻を叩きながら、角度と緩急を変えてやると、リディアの乱れようが増していく。

 

「はぎゅぅぅぅっ♡ 兄様すごいっ♡ すごい気持ちいいのイっちゃってりゅのぉぉぉ♡

 これなのっ♡ 兄様を気持ちよくするためのオモチャになるのぉ♡ 好きっ♡ 好きなのっ♡

 私が一番気持ちよくなれるセックスこれなんでしゅっ♡ ごめんなさいっ♡

 こんなっ♡ こんな義妹でっ、ごめんなしゃいっ♡ おかひてっ♡ もっと犯してぇぇぇっ♡」

 

連続絶頂に陥っているのか、リディアは半狂乱になって叫び続けた。

 

「あぁぁぁぁっっっ♡ イクっ♡ イクイクすごいのイクイクぅぅぅぅっっっっ♡」

 

膣内が激しく収縮し、亀頭を締め付ける。

その刺激で、隆史も限界を迎えた。

 

「出すぞ、リディア! 全部受け止めろ!」

「はいぃっ♡ くださいぃっ♡ 熱い精液たくさん注いでっ♡ 兄様のモノにしてっ♡ 孕ませてぇぇっ♡」

「くぅっ」

 

どくんっ! という音とも感触ともつかぬものが、隆史の下腹部からリディアの子宮へ響いた。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙っ♡♡♡」

 

子宮内に義兄の精液がほとばしるのを感じた途端、リディアが目を見開いて嬌声を上げる。

 

「ぉぉぉぉぉっ♡ 出てりゅ♡ 兄様の精子ぃ♡ 子宮♡ 中出しイキ♡ してりゅう♡」

 

生殖本能がMAXになっているサキュバスにとって、この瞬間こそ悦楽の最高潮。

避妊魔法を使っていても、子宮の内側から起きる絶頂は、他に類を見ないらしい。

 

「おふっ♡ ほぉぉ♡ おっ♡ はふっ♡」

 

リディアはマットの上にばたりと倒れ伏し、長い絶頂を味わっていた。

 

「リディア、大丈夫か?」

 

あまりの姿に心配になって尋ねると、目の光を取り戻したリディアが口を開く。

 

「兄様ぁ♡ ……ありがとう、ございます♡

 こんな、変態な私に、付き合ってくださって……♡

 すごく、すごく気持ちよくて……私、どうやって、お返ししたらいいか……♡」

 

驚いたことに、リディアは感謝を口にしていた。

 

「……お前、最高だな」

 

隆史は無意識に呟くと、リディアの体を反して正常位に変える。

 

「に、兄様?」

「いいよ、犯してやるよ。お前の気が済むまで、この体が満足するまでっ!

 お前のためなら、義妹をレイプする鬼畜野郎にだってなってやるっ!」

 

リディアの足からブルマと下着を引き抜き、両脚を開かせる。

 

「ひゃっ♡ 兄様、待って♡ お休みにならないと……っ♡」

「俺の心配、してる場合か?」

 

あれだけ絶頂していながら余裕のあるリディアに、隆史は悔しさすら覚えた。

だからいま一度、兄の威厳を体に叩き込むために、リディアの体に覆い被さるのだった。

 

 

 

およそ一時間後――

 

『またのご利用をお待ちしております』

 

受付機械の自動音声に見送られ、隆史とリディアはホテルを後にする。

 

「大丈夫か? リディア」

「ちょっと、足腰が……もう、兄様のせいです♡」

 

リディアは隆史の片腕を抱き、半ば縋るようにして体を支えていた。

傍目には平凡なビジネスホテルに見える建物から、二人は夜の街に歩み出る。

 

「こういう場所、初めてだったけど、結構いいな」

「はい♡ 私も新鮮でした……」

 

先ほどまでの時間を思い出したように、リディアは頬を染める。

 

「学校以外にも色んな『部屋』があるみたいだし、次は違う場所でしてみような?」

「違う場所……というと……」

 

囁きかけると、リディアは不安と興味が混ざったような上目遣いでこちらを見る。

 

「電車の中とか、路上とか公園とかも再現できるらしいぞ?」

「あぅ……♡」

 

その場面でのセックスを想像したのか、リディアは颯真の腕を握り込む。

腕を挟むように当たった巨乳からは、胸の高鳴りが伝わってきた。

 

「兄様が、お望みなら……お供いたします♡」

 

リディアらしい楚々とした言葉だ。

しかし、その濡れた瞳は、とても艶然としたものだった。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

挿入投稿を試したかったので、おまけを一本でした。


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家出娘編 初恋の人の娘が、なにか期待した顔で家出宿泊しにくる
プロローグ


 

 

 

昔、速水祐介は、従姉(いとこ)に当たる魔人種のお姉さんに恋をした。

当時にはもう魔人種はありふれた存在で、『ピンクハザード』も落ち着いていた。

家の近所に魔人種が住んでいた男の子は、大抵『おねショタ被害』に遭うというが、祐介の場合そうはならなかった。

 

「え? お姉ちゃん、結婚するの?」

「そうなのー。運命の王子様と出会っちゃった♪」

 

彼女は美人で魔人種だったので、順調に男性と出会い、結ばれた。

祐介ともよく遊んでくれていただけで、特にそういった手ほどきを受けたりはしていない。

やがて彼女は、母親となった。

 

「祐介くん久しぶりー♪ 大きくなったねぇ。あ、この子うちの子♪」

 

生まれた娘さんの名前は、ルナといった。

 

「お兄さーん、ゲームしようよー」

「ルナちゃんまた来たのか?」

「うん♪ 今日もパパとママが『仲良し』だから♡」

「あ、そう……」

 

ルナはよく速水家に遊びに来た。

従姉は同じ町で夫婦生活を送っており、祐介には泣けることだが夫婦仲は『盛ん』らしい。

家で二人きりになるために、子供をそれとなく余所へ遊びに行かせるのは、よくある話だ。

遠縁ながら親族である祐介の家は、そのあたり打って付けだったのだろう。

 

「おじさーん、ゲームするねー♪」

「誰がおじさんか。お兄さんと呼べ」

「だって続柄上は『いとこ叔父』だし」

 

祐介が大学生となり、ルナが○学生となってからも、その関係は変わっていない。

そんなある日、両親が妖魔界へ長期出張することになった。

母の実家は妖魔界にあり、同業者で職場結婚した二人は、大きなプロジェクトを担って夫婦出張となったらしい。

祐介は家に残り、束の間の一人暮らしとなる。

 

「家出してきちゃった♪」

 

そんな速水家に、なにがあったのか、ルナが転がり込んできた。

何があったか聞いても言葉を濁すばかりで、彼女の母に電話で聞いても「祐介くんなら安心よ」としか言わない。

まあ、ルナが家に上がり込むのはいつものことだし、一日くらい泊めてもいいだろう――と思っていた。

 

「うわ、おじさん流し台に洗い物溜めすぎっ。あーもー、こんなんじゃないかと思ったよ」

「え? ルナちゃんって家事できるの? 無理しなくていいよ?」

「失礼だなー。お家賃代わりにこれくらいしますー」

 

祐介一人で家事が行き届かなくなっていた速水家を、ルナがケアしてくれた。

 

「うわ、おじさん枕カバーだけ洗って枕自体を洗ってないでしょ!? 揚げ物みたいに皮脂が沁みるよ!? んもー、洗濯物も柄物といっぺんに洗ってぇ! 冷蔵庫もっ、冷食って色んな栄養が凍死してるんだよ!?」

 

ノリの軽い彼女だが、意外と家庭的で、目端が利く子だった。

 

「成長した……うちを無料のゲーセン喫茶だと思ってたようなルナちゃんが、成長したなぁ」

「泣かないでくれます?」

 

『いとこ姪』に当たるルナが、心身ともに大人となっていることを感じる祐介だった。

 

そんな、いたって微笑ましい、一時的な同居生活のはずだった。

いずれ従姉がルナを迎えに来るか、ルナが家出に飽きるまでの、短い二人暮らし。

生意気なルナの相手を四六時中するのは少し面倒だが、この子がどこか見知らぬ男の部屋に転がり込むよりは、ずっとマシだろう。

 

そう、思っていた。

思っていた、のに――

 

 

 

 

「きゃっ!? やっ、おじさん……っ♡」

 

気がつけば――祐介は部屋に連れ込んだルナの体を、背後からまさぐっていた。

 

「可愛いなぁ、ルナ。あの人の小さい頃にそっくりだ」

「ひゃっ!? やっ、やだよぉ♡ おっぱい、触んないでぇ♡」

 

祐介の腕に背後から拘束され、手で胸を揉まれたルナは、細い体で抵抗する。

その抵抗はあまりに非力で、身をよじる程度のことしかできていない。

 

ルナはセミショートの黒髪を伸ばす、モデル体型の美少女だ。

美少女とは言ったが魔人種では普通の範疇で、しかし人間なら雑誌の表紙を飾れる。

魔人種としては平均よりやや小ぶりな胸も、人間で言えば立派に巨乳と分類できる。

肌は血色がよく、健康的な魅力に溢れていた。

これで○学生――黒歴史を作る年頃だというのだから、魔人種の遺伝子は驚きだ。

そんなルナの、メリハリの利いた体を、祐介は自室に連れ込むと、ベッドに突き飛ばす。

 

「きゃっ!」

 

短い悲鳴を上げてベッドに転がったルナが、怯えた目で祐介を見る。

春物のシャツとデニムスカートというカジュアルな服装だ。

起伏ある身体の線がくっきり出ていて、劣情をそそる。

 

「や、やだ……おじさん、こわいよ……」

 

涙目で縮こまっているが、その頬は紅潮していた。

 

「嘘つけ、お前だって期待して来たんだろ?」

 

祐介は荒々しい顔付きで、ルナの手首を掴んで押さえ込む。

普段とは違うケダモノめいた形相に、ルナは背筋を震わせる。

 

「ち、違うもんっ……ただ、おじさんの家に、泊めてもらうだけ……んあっ♡」

 

首に吸い付くと、甘い悲鳴が上がった。

 

「ほぉら、ルナちゃんの体もしたがってるぞ」

 

魔人種の血か、ルナの体は襲われているというのに、敏感に火照っていた。

 

「やぁっ♡ これはっ、違うからぁ♡」

 

自分の悩ましい声を自覚して、ルナは顔を赤くした。

その表情に、嗜虐心がくすぐられる。

 

「かわいいなぁ、ルナ」

「や、やめて……おじさん、脱がせちゃやだぁ♡」

 

涙目で懇願するルナのシャツをまくり上げる。

細い腰付き、真っ白な肌、うっすら浮いた肋骨が、順番に露になる。

最後は、少し洒落ている程度の白いブラ――年相応の下着が、妙に背徳感を煽った。

 

「やだぁ、やめてよっ」

「っ!」

 

祐介はむしり取るようにホックを外して、ぷるりと震える巨乳を露出させる。

 

「大きなおっぱいじゃないか。ああ、たまんねぇ!」

 

そしてルナの背中を抱き上げるようにして、谷間に顔を埋め込み、左右に擦り付ける。

 

「ひゃうぅっ♡ おじさ……あんっ♡ やめぇ、こんなの、しちゃだめだからぁ♡」

 

夢中で胸に頬ずりする祐介を、ルナは細い手で押し返そうとする。

祐介は構わず乳首に吸い付き、口内で吸い上げた先端に舌先を踊らせた。

 

「ふあぁ♡ やだっ♡ それ、やだよぉ♡ おっぱいで感じたくないぃ♡ 吸わないでよぉ♡」

 

ルナは弱々しく抵抗するが、祐介はその細腕を振りほどき、反対側の突起にも同じことをする。

 

「あっあっあっ♡ おじ、さっ♡ やっ♡ びくって♡ 体びくってするうっ♡」

 

体に走る性感への恐怖を訴えるルナ。

そんな彼女を宥めるように、抱き寄せてキスをする。

 

「ちゅっ♡ んむっ♡ ん~っ♡」

 

ルナは驚いた顔をして、祐介を押し返そうとするが、その手は弱々しい。

一方で唇は抵抗をせず、小さな唇をゆっくり開いて、裕司の舌を受け入れていた。

歯茎を舐められ、唇を甘噛みされるたび、ルナはぴくんと体を震わせる。

 

「んむっ、ちゅっ、ぷはぁ……はぁ、はぁ……」

 

ルナは口を離すと、蕩けた瞳で呼吸を整える。

唾液が糸を引き、互いの間に橋を作った。

 

「可愛いよ、ルナちゃん。キス上手だねぇ」

 

裕司はそう言って、デニムスカートから伸びた足を撫でつつ、服の中に手を侵入させていく。

指先が、柔らかな太ももの肉を揉み込んだ。

 

「やっ、だめっ♡ そっちやだっ♡ おじさんっ、もうやめてよぉ♡」

 

足をばたつかせて抵抗してみせるルナ。

 

「こーら、暴れない」

 

裕司は片手でルナの太股を持ち上げて、もう片方の足を膝で押さえ込む。

片足を開脚させられてショーツが丸見えになり、そこに祐介の手がねちっこい愛撫を始める。

 

「んっ♡ そこ、触っちゃ……はぁっ♡ やだっ、感じちゃうのやだぁ♡ あっあっあっ♡」

 

ルナは腰を引いて逃げようとするが、無駄な努力だ。

祐介は器用に指先で、彼女の割れ目をなぞりあげて、クリトリスの上で指先を円運動させる。

 

「ひゃんっ♡ おじさんっ♡ んぅっ♡ こんなのっ、あっ♡ わいせつ、わいせつだからぁ♡」

「うるさいなぁ」

 

脅かすように言って耳を甘噛みすると、ルナの前進がびくんっと大きく震え上がった。

 

「家出して男の部屋に泊まり込んだなら、こうなるって知ってただろ? 大人しくしろよ」

「だって、こんなの♡ おじさんが、こんなことするなんて、思わなかったんだもんっ♡」

 

ルナの訴えには、二つの顔が見て取れた。

襲われている女の涙声と、悦んでいる女の喘ぎ声が同居していた。

どちらに対しても、嗜虐心が燃え上がる。

 

「へぇ、俺はそんなに甘く見られてたのか」

 

祐介はルナのショーツに指を侵入させ、直接の手淫を始めた。

ルナのそこは充分に濡れており、陰唇が中指を甘噛みするように挟む。

 

「ふあぁ♡ だめっ♡ やっ♡ はぁんっ♡」

 

ルナは快楽を堪えようと、背中を反らせて悶える。

 

「そんなんじゃ、ないぃ♡ おじさんのことっ、信じて、信じてたのぉ♡ あっあっあっ♡」

 

祐介はルナの声を聞きながら、手淫と共に乳首を口に含んで、舌を乳輪沿いに回す。

 

「しんじて、たのにぃ♡ おじさん、こんなことしないって、ああっ♡ 信じてたのにぃ♡」

 

秘所と胸から駆け上がる快感に、ルナは弓反りになって喘ぎながら、祐介を責めた。

言葉では責めているのに、手足の抵抗はなくなり、両手が祐介の頭を掻き抱いている。

 

「レイプ、レイプだよぉ♡ こんなの、ひどい♡ おじさん、酷いよぉ♡」

 

もうルナの声は、相手を非難しているように聞こえない。

その理由を分かっている祐介は、陰核を手の平で包むように愛撫しながら語り掛ける。

 

「そうだ、レイプだぞ。()()()()()()()

 

普通なら意味が通らないことを言うと、ルナはどこか安心したように、手の抵抗を緩めた。

 

「分かるだろ? 男に押し倒されて、もう逃げられないんだ。抵抗すると乱暴にされるぞ?」

「やっ♡ だめっ♡ 乱暴なのだめぇ♡ あっ♡ ひあっ♡ ああぁぁぅぅっ♡」

 

中指の腹で膣口あたりを上下に擦り、人差し指と薬指で花びらを挟むように揉みほぐす。

 

「なら、()()()()()()? せめて怪我しないように、従順になって、感じてる()()をして、男のご機嫌を取らないとな」

「あっあっあっ♡ やっ♡ やだぁ♡ そんなのっ♡」

「恥ずかしいことじゃないぞ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ルナの背中に片腕を回して持ち上げ、口を丸く開いたまま吸い込む。

 

「ふぁぁぁっ♡ あふっ♡ 分かったから♡ 分かったからぁ♡」

 

ルナの体から、完全に抵抗が失せた。

より酷い目に遭うくらいなら、大人しく受け入れて終わるのを待った方が結果的に安全だ――

そういう、実際の性被害でも女性が選択しうる、保身のための無抵抗。

一度それをし始めると、ルナの喘ぎ声は、どんどん甲高く、可愛らしくなっていく。

 

「あんっ♡ あふぅ♡ くぅんっ♡ うぅ~♡」

 

その声を聞くたびに、祐介は満たされるものを感じていた。

彼女の母、初恋の女性とも、こんなことをしたかった。でもそれは叶わなかった。

でも、若い頃の彼女にそっくりな娘が、いま自分の腕の中で甘い声を上げている。

彼女と結ばれることで、自分は叶わなかった初恋を成就するのだ。

 

「ルナちゃん、可愛いよ、好きだ。一度だけでいいから、受け入れてくれっ」

「あっ♡ やっ♡ んんんっ♡ あああぁぁぁっ♡」

 

ルナは答えず、しかし祐介の体にしがみつき――達する。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……っ♡」

 

これが最初ではない。夢中で数えてはいなかったが、もう数度目の絶頂だった。

祐介は改めて、ルナを見下ろす。

仰向けに倒れ、涙目で顔を横に向け、荒い息をつく美少女。

シャツを胸元まで捲られ、豊かな乳房を唾液で濡らし、半脱ぎになったスカートと下着の奥は愛液に濡れている。

いかにも、『犯された女』といった姿だった。

 

「ルナ……」

 

祐介はルナのショーツを引き抜くと、自分の逸物を取り出した。

過去にないほど張り詰め、脈動のたび痛みを覚えるほどだ。

そして、その先端でルナの入り口に触れる。

 

「あっ……」

 

さすがに、ルナは戸惑うような顔を見せた。

だが祐介は構わず腰を進め、一気に挿入する。

 

「いっ、あああぁぁぁっっっ♡」

 

ルナの体が跳ねる。

魔人種の処女膜は成長と共に自然消滅する。ルナもそうだったのか、既に男を知っていたのか。

どちらにせよ、挿入と同時にイっているその姿は、処女のように扱う必要を感じない。

 

「いいぞルナ。キツくて、内側に吸い込もうとしてっ、男をイかせるエッチなおまんこだっ」

「やめっ♡ ルナの中に入っちゃだめぇっ♡ おねがいぃ♡」

 

ルナは祐介の手首を掴んで懇願する。

膣内はキュッと締まり、射精を促すように締め付けてきた。

上の口と下の口で、言っていることがまるで逆だ。

そして、下の口はたいてい、嘘がつけない。

 

「動くぞ。いっぱい感じさせて、イかせてやるっ!」

「いやぁ♡ そんなっ、あっ♡ 無理矢理っ、あぁっ♡ イかせる、なんてっ♡ ああぃぃっ♡

 ずるいっ♡ 男の人っ♡ ずるいよぉっ♡ おじさんがっ、ルナにっ、男の人してるうっ♡」

 

ピストンを始めると、ルナはすぐに大きな声で喘ぎ始めた。

彼女の体は、すっかり出来上がっている。

乳首はピンと立ち、腰が自らくねり出し、顔が快感に歪んでいる。

 

「ほら、奥に当たってるの分かるか? 子宮口だ。ポルチオ感じるか?」

「あひゅっ♡ きてるっ♡ 奥にっ、奥に当たるとっ♡ 全身っ、感じちゃうっ♡

 やだっ♡ やだやだっ♡ おじさんにっ♡ 身体が負けちゃうっ♡ イクのやなのぉ♡」

 

ルナが泣きそうな声を上げる。

だがその表情には快楽の色が浮かんでいて、本気で嫌がってはいないのが丸分かりだ。

 

「なら言うんだっ、どこが気持ちいいのか、全部おじさんに明かすんだ!」

「そんなのっ、分かんないっ♡ 擦れてるとこっ、全部っ、あああっ♡」

「ははっ、そうかっ、おまんこ全部が性感帯かっ! ハーフでも立派なサキュバスだなっ!」

 

祐介は腰の動きを変化させ、角度と緩急を付けてルナを責め立てた。

すると彼女は、胸を揺らしながら乱れ始める。

 

「あっあっあっ♡ はげしいよぉ♡ あっあっあっあっ♡」

「どうしたっ、またイクのか!? いいぞっ、何度でもイケっ、イきまくれっ!!」

「やっ♡ ああぁぁっっ♡ イクっ♡ イクからぁ♡ イってりゅから許してぇっ♡」

 

祐介の腰使いに合わせるように、ルナの口からはひっきりなしに甘い声が上がる。

やがてルナの絶頂とともに膣内が激しく収縮し――祐介も限界を迎えた。

 

「くっ、出るっ……!」

「んんっ♡ ああぁぁぁぁっっ♡」

 

祐介がルナの中に精を放つと同時に、彼女もまた絶頂を迎える。

二人は同時に果てた。

 

 

 

 

その後、週末なのをいいことに、夜遅くまで何度もルナを抱いた。

抵抗を諦めたルナは、祐介の求めるまま体を許し、様々な体位で幾度もオーガズムを味わった。

 

「これっきり、だから……もう、二度としないんだからぁ……」

 

翌朝、ルナは恨めしそうに言い捨てると、家に帰っていった。

彼女が警察に駆け込んだら、祐介の人生は終わるかもしれない。

でも、ルナはそれをしないだろうと、半ば確信していた。

不安よりも、初恋の人の娘を抱いてやったという充実感の方が大きかった。

 

その日の夜――

 

「…………」

「えっと、おじさん……」

 

呼び鈴に応じて玄関を開くと、大きな鞄を持ったルナが、頬を染めて目を泳がせながら立っている。

 

「その……また、家出しちゃって」

 

先日のことなど、まるで無かったかのように、ルナは笑う。

しかし、笑顔に埋め込まれたその瞳は――どこか、淫魔の昏い喜悦を宿しているように見える。

 

「今日も……お泊まり、していい?」

 

頬を染めて小首を傾げるルナに、祐介は軽い寒気を覚えながらも、生唾を呑み込むのだった。

 

 




ご一読いただきありがとうございます。

義妹編に続き、家出娘編スタートです。
ヒロインは義妹編で予告登場してましたが、ストーリーの連続性はありません。



――追記――

誤字報告をくださった方々、いつもありがとうございます。
見落としが多くて申し訳ないです。


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果てる ~小悪魔気取りがガチイキを知るまで~

 

 

 

現代日本には、男性と、女性と、妖女がいる。

妖魔界出身の女性、略して妖女だ。

更に言うと、その妖女と男性の間に生まれたハーフがいる。

西条ルナは、ハーフだ。

 

人間との混血だから、サキュバスと異名される生粋の妖女ほどで魅力的ではないかというと、そんなことはない。

元より他種族に血を織り交ぜて、全種族に遺伝子的な勝利を収めたのが、サキュバスという種だ。

人間と血が混ざったところで、その生来の色香はまるで劣化しない。

 

朝――隣で寝ていたルナに寝バックで挿入しても、拒まれない程度には。

 

「あんっ♡ そんなっ、朝からっ♡ やっ、やだぁ♡」

 

ルナが甘い声で鳴いた。

その声は相変わらず嫌がってみせるが、身体は拒もうとしない。

うつ伏せで寝ているルナの華奢な背中に覆い被さり、丸いヒップに腰を打ち付ける。

 

「登校までは時間があるだろ? いま抜いとかないと、昼間にムラムラしちゃうからな」

「あん♡ だめ、こんなのぉ♡ おじさんっ、鬼畜ぅ♡ 女の子を、オナホみたいに使ってぇ♡」

 

口では抗議しているが、ルナは枕に顔を埋めながら、一突きされるたび身体を震わせている。

小刻みに達していることが、肉壁の締まり方で陰茎に伝わってきた。

 

「身体は正直とはこのことだなぁ。ルナちゃんだって、俺が帰るまで我慢できないだろ?」

「そんなんじゃ、ないっ♡ おじさんがっ、無理矢理するからっ、ああっ♡ 仕方なくっ♡ させてっ、あげてるっ♡ あふっ♡ だけぇ♡」

「へー、そういうこと言うんだ」

「ひぅぅぅぅっ♡」

 

腕を回して胸を掴み、乳首を指先でくすぐってやると、ルナが声を噛み殺しながら尻を上げる。

 

「いいんだぞ? そんなに嫌なら、追い出してやっても」

 

心にもない脅しを口にすると、ルナはびくっと震えて祐介の手を掴む。

 

「やだっ♡ 追い出さないでぇ♡ 私、ここしか行く場所がないのぉ♡」

 

こちらに振り返った横顔は、涙目で懇願しているが、どこか余裕も感じる笑みがあった。

家出してきたのは確かだが、特に深刻な家庭事情があるわけでもない。

これは口実――彼女がわざと祐介に握らせた『弱み』だった。

 

「なら、おじさんの言うこと聞けるよなっ? 俺とのセックス、()()()()()()()()()()()()()?」

 

耳元に囁きかけると、ルナはこくこくと頷いた。

 

「するっ♡ ()()()()()♡ ちょっとHするくらいっ、ぜんぜん平気だもんっ♡」

 

祐介はほくそ笑む。

 

「いい子だ……それじゃあご褒美をあげないとな?」

 

そう言って、祐介はルナの膣奥めがけて激しくピストンした。

 

「ああっ♡ すごいぃ♡ おじさんっ、もっと――ああっ♡ いまの嘘っ♡ ()()()♡ 激しいの()()()♡」

 

改めて言うまでもないが、ルナの言う『嫌だ』は、逆の意味だ。

SMプレイで言うところのNGワードみたいなものだ。

決めた単語以外の拒否は、口にしても拒否じゃない。

相手の嗜虐心を満たすための、本気ではない拒否だ。

 

「ははっ、昨夜も言っただろ? 嫌だって言われると、かえって興奮するんだよ!」

「あひゅ♡ やぁ♡ おっきな音ぉ♡ お尻にぃ、ぱんぱんってぇ♡ ぶつかっちゃ、()()()♡」

 

祐介のルナの間には、特に約束したわけではないが、そんな関係が暗黙のうちに作られていた。

別に祐介とルナが特殊なのではない。

誘惑禁止条例があるこの町で、男女が肉体関係を結ぶときは、自然とこうするのだ。

 

「そうだなぁ。おっきな音と喘ぎ声、ルナちゃんはずっとご近所に聞かせてたんだぞ?」

 

ルナは枕に顔を押し付けたまま、必死に首を横に振る。

 

「ふぅぅぅっ♡ おじさんっ、ひどいっ♡ おじさんがっ、何度もっ♡ 鳴かせたくせにぃ♡」

「ははっ、まあご近所も似たようなものだし、防音もしっかりしてるから遠慮するなよ。

 ほら、また聞かせてくれよ。昨夜みたいに。一晩で二十回はイっちゃった昨夜みたいにっ!」

「い、言わないでぇ♡ あんなのっ、演技だからっ♡ イったふり、だからぁ♡」

 

ルナが枕に顔を埋めながら、身体を震わせる。

それでも目はこちらを振り返り、どこか挑発的に笑っていた。

 

「そうか。じゃあ聞かせてみろよ、ルナちゃんの名演技をさぁ!」

 

祐介はルナの細い腰を持ち上げて、尻だけ捧げるような姿勢にさせる。

自分も膝立ちになると、やや下から上へ突き上げるように、ハイスピードな抽送を開始した。

 

「ひぁぁぁうぅぅぅっ♡」

 

ルナは嬌声を上げて、祐介の動きに合わせて腰を振る。

 

「どうした? 『演技』してみろよ。ルナちゃんは男を虜にする魔性の女だろう?」

 

祐介の強調する『演技』は、ルナに与えられた免罪符だった。

誘惑を禁じられ、セックスに合意できなくても、『レイプされて仕方なく演技している』なら……

そんな言い訳を与えることで、ルナは条例から解放される。

 

「あああぁぁぁ♡ 気持ちいいっ♡ おじさん気持ちいいよぉ♡ もっと♡ もっともっと犯してっ♡ ルナのことっ、いっぱいおじさんのものにしてぇっ♡」

「ははっ、いいぞエロいぞっ。流石はルナちゃんだな!」

 

パン! パン! と、朝から盛大なセックス音を響かせて、祐介はルナに『演技』を続けさせる。

その音に煽られるかのように、ルナの喘ぎ声も次第に大きくなっていった。

 

「ああぁぁぁん♡ すごいぃぃ♡ おじさんっ、男らしくてっ、素敵っ♡ ああイッちゃうぅぅ♡ おっきなおちんぽで、ルナのことイかせちゃうのすごいのっ♡ おじさんにっ、勝てないってっ♡ 思い知らされちゃうっ♡ 征服されちゃうよぉ♡」

「そうだ、それでいいんだよっ! ルナちゃんは男を手玉に取るのが上手だな!」

 

祐介は笑いながら、さらに激しくルナを攻め立てる。

 

「はぎゅうっ♡ イってりゅ♡ イってりゅのにぃ♡ 止まんないっ♡ おじさん止まってくれないっ♡ イキっぱなしにされちゃってりゅっ♡ ああ来るっ♡ なんかすっごく大きいの来ちゃうっ♡ 頭まっしろになっちゃうの来るのぉぉぉっ♡」

 

ルナはベッドの上で仰け反ると、そのまま失神してしまった。

祐介の射精が終わってからも痙攣し続け、やがて全身を脱力させてぐったりとする。

しかし、膣内だけは未だに収縮を続けていた。

まるで意識はなくても身体がセックスを求めているかのようだ。

 

「ルナちゃん? ……ヤバいな、気絶させたら、本当に遅刻するじゃないか」

 

ルナが家出をして、祐介の家に転がり込んでから、三日目の朝だった。

 

 

 

 

学校の教室で、ルナはご機嫌だった。

 

「ルナさん? なんだか嬉しそうですね?」

「え? 別にー♪」

 

級友の須東リディアに問われても、その理由は明かさない。

流石に『家出して親戚のおじさんと二人で暮らしている』と、教室で暴露する気はない。

もっとも、魔人女性(サキュバス)がありふれたこの時代で、その程度は性の乱れにも含まれない――とも言い張れるが。

それも場所次第だ。ルナのクラスの担任は、そのあたりに口うるさい年配の女教師なので、無駄な火種は避けたい。

 

――教室の生徒は、男子・女子・妖女・ハーフに四等分できる。

ハーフは大抵女性だ。つまり男子は教室に四分の一しかいない。

男性が少なくて女性が多い……妖魔界ほど極端ではないが、人間界もそうなりつつある。

 

そんな教室だと、男子と女子が休み時間ごと乳繰り合ってるのかというと、そんなことはない。

性欲に目覚めて間もない年頃の男子たちは、近くに豊満な妖女子がいても、見入ったり手出ししたりはしていない。

ごく普通の学生らしく、勉強やスポーツやゲームやニュースの話をしているか、

 

「で、指をこういう形にしてさ、穴と豆を同時にこうやって……」

「俺も試したけど、指が吊りかけたよ」

 

それらと同じ比重で、セックスの話をしている。

 

この時代、○学生にもなると、大抵の男子は経験済みだ。

早ければ入学以前から『おねショタ』で、性に目覚めてくると身近な魔人女性が放っておかない。

その相手が誰だったのかは、修学旅行の密談などで共有される。

 

するとどうなるかと言うと、がっつかない。

放課後になれば相手がいるのだから、特にその気もない女子にムラムラする必要はないわけだ。

聞こえてくるセックストークが赤裸々なこと以外は、男子の性欲に困らされない環境だ。

 

では女子――例えば妖女子はどうかというと、

 

「こないだお姉ちゃんの彼氏としたんだけど、やっぱいいわー。最近体調がすこぶるよくて」

「分かるっ。私もママ彼とした翌朝とか、お化粧のノリが違うもん」

 

などと『条例違反』を隠さない、やや不良っぽいグループもいれば、リディアのような『優等生』もいる。

そしてその優等生なリディアにしても、最近はお肌をつやつやにして登校している。

 

このあたりが、人間女子と違うところだろう。

この年頃になると、男子は性欲に目覚めてスケベになり、女子はそれを嫌悪するのが普通だ。

しかし魔人種は逆、彼女らも男子と同様に性欲に目覚め、見定めた男性とセックスしたくなる。

男性が少数派であっても、文化的に一夫多妻である彼女らは、二番目や三番目でも構わず行く。

倫理観で断られることも多いが、断られないことも同じくらい多いようだ。

なお、ルナのようなハーフは、だいたいこちら側である。

 

「彼女の足を舐めたら反応すごかったんだけど、女子的にどうなの? 足」

「んー、興奮はするね。感じるかどうかはその子次第だけど。逆に舐めるのは男子的にどう?」

「太股や脹脛なら……足の指とかはちょっとためらうな」

 

そんな男子と妖女子の間で、セックスに関して真顔で相談していたりもする。

男子はセクハラをしている感じではなく、妖女子にしてもされている感じではない。

猥談をしているというより、お互いの相手をより悦ばせるためという真剣さすらあった。

 

「…………」

 

では、人間女子は?

性の観念は旧時代のままだ。基本的にえっちな男子がお嫌いである。

男子と妖女子の猥談に不愉快そうな顔をする子や、一部で興味深そうに耳をそばだてる子もいる。

気にせず雑談するのではなく、気にして言葉を切っている子が多いのは、流石に年頃だからだ。

 

ここに、教室内における見えない溝がある。

 

セックスに関して肯定的か、否かという差異だ。

男子と妖女子とハーフは肯定派、人間女子がだいたい否定派。

多数決では人間女子が四分の一なので、否定が少数派ということになる。

結果として、男性と妖女が仲睦まじく、人間の女性がどこか蚊帳の外――

 

「ルナさん? どうしたんですか? 神妙な顔をして」

「いやぁ……学校って、社会の縮図なんだなぁってね」

 

以前、察するに人間女子からの苦情で、担任教師が「教室内でのセクハラ」をHRで注意した。

男子と妖女子を対象とした訓戒であることは明白だった。

男子は「女子も同じ話題で盛り上がっているのに?」と、妖女子は「セクハラっていうほど?」と首を傾げていた。

とはいえ、不愉快に思う人間がいるならと、幾分か控えることにしたらしい。

猥談は気持ち声を潜めたものになり、人間女子もある程度は聞き流している。

 

誘惑禁止条例も……きっと同じような経緯で成立したのだろう。

 

「そういうことを言うと、賢者タイムがバレますよ?」

「うにゃ!?」

 

大人ぶっていたルナは、リディアからくすくす笑いを送られるのだった。

 

 

 

 

祐介が大学から帰ってくると、ルナがソファーで寝転がってゲームをしていた。

 

「ただいまー」

「あ、おかえりー」

 

持ち運び可能な据え置きゲーム機を手に、ルナはうつ伏せになっている。

 

「ルナも買ったのか?」

 

覗き込むと、最近発売された有名タイトルの第三弾だった。

 

「うん、おじさん後で協力プレイしよ? キャリーしてよキャリー」

「堂々と寄生を宣言しやがって。ちょっと待っててくれ」

 

荷物を部屋に置いてリビングに戻ると、ルナは同じ姿勢で足をぶらぶらさせていた。

 

「っ」

 

ルナは露出の多い格好をしていた。

薄手のトップスは肩が広く開いていて、胸元も背中も見えている。

スカートも短くて、足を虚空にぶらぶらさせているせいで、下着が見えている。

 

「おじさん? ……早くしよ♡」

 

蠱惑的な笑みで振り返られれば、ルナの意図は明白だった。

 

「いいぞ。その前に、ルナの腕前を見せてもらおうか」

「むぅ、甘く見てるなー? じゃあ適当に一戦するから……」

 

ルナはオンライン対戦を始める。

画面では色塗りによる陣取り合戦が始まり、ルナはゲームから手を離せなくなる。

それを後ろから覗き込む振りをして――祐介はルナのヒップを鷲掴みにした。

 

「あんっ♡ ちょ、ちょっと、おじさん……あっ♡ いまは、ダメだからっ♡」

「忘れたの? ルナちゃんに拒否権なんてないんだよ。ほら、ゲームに集中しないと」

 

祐介は逃げようとしたルナの足を押さえ込み、スカートを捲って、両手で下着越しに尻肉を掴む。

 

「変態♡ おじさんの、変態っ♡ あっ♡」

 

ルナはぴくぴくと震えながらも、試合が始まってしまったため、キャラ操作を始める。

 

「よく考えたら、お尻を集中的に責めてあげたことはなかったなぁ」

 

祐介はルナが抵抗できないのをいいことに、尻肉に腰を食い込ませた。

乳房に劣らない柔らかさ、しかしより弾力があり、多少強くしても痛がらない。

 

「んっ♡ やだぁ♡ はぁ、あふっ♡ 指っ、食い込ませちゃっ♡」

 

祐介は両手を動かし、もぎ取ろうとするように尻肉を掴む。

胸に劣らず肉付きのいいヒップを、親指で指圧するように押し込むと、ルナの嬌声が高くなる。

 

「ひぁっ♡ そんなに、ぐにゅぐにゅしないれぇ……っ♡」

「こーら、暴れない。大人しくしないと、こうだぞ?」

 

祐介はルナの尻に口を近付けて、大きく開いた口で尻肉を軽く噛む。

 

「きゃうっ!? やめ……あっ♡ あひっ♡」

「ほらほら、ちゃんと操作しないと。マッチングした仲間に怒られるぞ?」

「だって、こんなのぉ♡」

 

ルナは顔を真っ赤にしながらも、ゲーム自体はそれなりに操作していた。

だからその間、祐介はルナの尻を存分に味わう。

下着をズラして白い桃尻を露にすると、唇を吸い付けてキスマークを付けていく。

そして舌で舐めて唾液の跡を残し、歯を立てて尻肉を吸い上げる。

 

「おじ、さん♡ それだめ……♡ お尻、そんな♡ 色んな事しちゃ、やだなのぉ♡」

 

普段は乳房に対してそうするように、指と口を巧みに尽くしていくと、ルナの声が蕩け始める。

尻の谷間、その奥に見える陰唇は、既に愛液に湿ってヒクついていた。

 

「おお、すごいぞ。お尻を弄られて濡らしてるのに、ちゃんとゲームできてるじゃないか」

「だ、だって……こんなんで負けたら、戦犯だから……あんっ♡」

 

脚の間に手を入れて、秘所を愛撫し始める。

 

「そうだな。仲間の人たちも、まさかこんな美少女とゲームしてるなんて思わないだろうし……

 おじさんに尻とおまんこ苛められてるなんて思わないだろうなぁ」

 

祐介は指先でクリトリスを押し潰すようにしながら、中指を膣内に挿入する。

 

「あぁ♡ おじさん、いじわるぅ♡ あっ♡」

「ほら、頑張って。ルナちゃんが負けると、みんなの楽しみが減っちゃうぞ? それに――」

 

祐介はルナに覆い被さるように体を傾け、耳元で囁く。

 

「負けたらお仕置きだぞ?」

「――――ッ!」

 

ルナはその言葉だけで体を震わせ、股間から大量の蜜を溢れさせた。

 

「あっ♡ そ、そんなこと言っちゃ、やだよぅ♡」

「ならゲームに集中しないとな? おじさんの卑劣な妨害に負けずにさ」

 

うつ伏せになるルナの臀部で、祐介の手が素早く動く。

くちゅくちゅくちゅ! と激しい手淫の音が、ゲーム音に混じって部屋に響いた。

 

「ひゃうっ♡ ふぎゅっ♡ んんんっ♡」

 

突然の強い刺激に、ルナは身体を震わせながらも、ゲーム機は手放さない。

ゲーマーのプライドか、ミスを増やしながらも、対戦相手に食らいついていた。

 

「いあっ♡ あっ♡ やぁぁぁっ♡ おじさぁん♡ イ、くぅ♡ あっ、あああぁぁぁ♡」

 

ルナは軽く尻を上げて絶頂する。

ゲーム画面ではルナの操作キャラが敵にキルされていた。自陣で復活して、前線復帰していく。

 

「こら、手を止めない。おじさんも止めないからな」

「やっ♡ イったばっか……待って♡ おじさんってばぁ♡」

 

さながら、祐介もゲームをするかのように。

試合時間のうちに、ルナを何回イかせて敗北させられるかというミッションに挑むように、手技を尽くす。

 

「やっ♡ あっ♡ あっ♡ あ~っ♡」

「ほら、負けちゃうぞ? そんなにお仕置きされたいの?」

 

祐介は尻にキスをして、尻肉を甘噛みしながら、膣内を指で掻き回す。

ルナは歯を食いしばって声を殺しながら、必死に手を動かして、味方を援護していた。

 

「きゅぅぅぅっ♡ ひうぅぅぅっ♡」

 

何かの小動物めいた声を零しながら、ルナはまた達する。

驚いたことにキャラ操作は保っており、ゲーム内の戦況は巻き返しつつあった。

 

「ひぎゅっ♡ んんんんんん♡ あふっ♡ あっあっあっあっ♡」

 

しかし、快楽で震える指先では、やはり厳しかったようだ。

 

「あーあ、負けちゃったね」

 

結果はルナのチームの敗北だった。

僅差なのは驚きだが、負けは負けだ。

 

「おじ、さぁん……こんなの、ズルい♡ こんなので、お仕置きなんて――」

 

理不尽だと、ルナは抗議する。

数回連続でイかされたせいで頬は紅潮しており、呼吸は湯気が立ちそうなほど熱い。

両眼は絶頂後の悦楽に蕩けており、しかしはっきりと祐介を見返して――

 

()()()♡」

 

その言葉以外は、使わなかった。

 

 

 

数分後、ルナは祐介の部屋に連れ込まれ、首輪手枷を装着させられていた。

 

「お、おじさん……こ、こんなの、こわい……♡ なんでこんな、エッチなの持ってるのぉ♡」

 

内側に保護材のついた首輪、それと短い鎖で結ばれた手枷だ。

首の左右に手首を拘束されたルナは、両手を持ち上げた姿勢で裸身を晒している。

まるで犬や猫が仰向けになって、前脚を持ち上げるような姿だった。

 

「こんなこともあろうかと、だよ。それにしても、ルナちゃん、いますごくエロい格好だぞ?」

 

ルナは両手首を首の横につけるような姿勢で、自然と腕が巨乳を挟むように強調してしまう。

そんなルナは祐介の腰に跨がらせられており、祐介は下からその巨峰を見上げていた。

 

「み、見ないで……っあ♡」

 

腕を閉じようとしたルナは、両肘を祐介に持ち上げられる。

 

「そう、肘を上げて。両手を首の後ろに。ほら、綺麗なおっぱいが丸見えだ」

「やぁぁっ♡ こんなポーズ、恥ずかしい……っ」

「だろうねぇ。ストリッパーみたいだぞ」

 

祐介は片手を伸ばして、人差し指と親指を使って、ルナの両胸を摘まむ。

 

「ひゃんっ♡ いま、触っちゃ……」

「肘を下げるな」

 

肘を下ろして胸を庇おうとしたルナに、乳首を抓って命令する。

 

「ひぅっ♡」

「言うことを聞けないなら、こっちを苛めてやろうか? ん?」

 

今度は腕を下げて陰核に触れる。

指で挟む程度に触れると、抓られると思ったのか、ルナの身体がびくんっと震えた。

 

「ああっ♡ だめっ♡ 聞くからっ、おじさんの言うこと聞くからぁ……♡」

 

ルナは言われた通りにして、首輪手枷の鎖を鳴らしながら、胸を反らして乳房を差し出した。

 

「いい子だね。さあ、今日はこのまま騎乗位でイってみようか。腰を上げろ」

 

祐介はルナの秘所に擦り付けていた陰茎に手をやり、腰を浮かせたルナの真下に立てる。

 

「ひゃうっ♡ やだ、なんか怖い♡ こんな、おっきいので♡ 串刺しにされちゃう♡」

「いつも奥まで入ってるから大丈夫だよ。ほら、先っぽが入ったぞ?」

 

亀頭が割れ目をなぞるようにして、ルナの膣内に侵入する。

 

「ふぅぅぅっ♡」

 

いつもと異なる体位と小道具によってか、ルナは亀頭を受け入れただけでイキかけていた。

 

「腰を降ろすんだ」

「ひぐっ!?」

 

祐介がルナの腰を掴み、ゆっくり引き落とす。

 

「あ、ああああっ♡ やっぱりおっきいっ♡ 奥っ♡ 一番奥ぅ♡ 膣内(なか)で、持ち上がって……ひぁぁっ♡ 潰れちゃうっ♡ しきゅうつぶれちゃうっ♡ あっあっあああぁぁぁ♡」

 

肉棒を根元まで受け入れる過程で、怒張の先端が子宮口を押し上げ、ルナを絶頂させた。

よほど激しい絶頂だったのか、手を振り乱そうとしたルナは、首輪手枷によりそれを止められ、鎖がガチャガチャと音を立てる。

そんなルナの姿は、本当に拘束した女を犯しているかのようで、祐介の獣欲を掻き立てた。

 

「いいぞルナちゃん、イキやすくなったな。俺好みのエッチな子になってきたなっ」

「はぁーっ♡ はぁ、はぁ……♡」

 

ルナは呼吸を整えようとするも、祐介が軽く腰を動かすと、怒張に子宮口を擦られて目を剥いた。

 

「んぎぃっ♡ 待ってぇ! いまイッてるのぉ♡」

「ははっ、拘束された途端に敏感だな。なんだかんだ言って、犯されると燃えるみたいだな」

 

祐介はルナの乳房を両手で掴むと、腰を小刻みに上下させる。

 

「ちがっ♡ これ違うっ♡ 私そんな変態じゃないもんっ♡」

「何が違うんだよ? 俺に犯されるって分かっていながら、毎日家出してくるくせにっ!」

「ああんっ♡ やめっ♡ んんんんっ♡ あああぁぁぁっ♡」

 

乳首を摘ままれたルナは、また達してしまう。

だが、それで責めが止まることはなく、むしろ激しさを増していった。

 

「ひゃうっ♡ もうだめっ♡ 許してっ♡ なかったのっ、おじさんにここまでされちゃうなんて思わなかったのぉ♡」

 

これは誘いではなく、本心だろう。

好きな男に自分を襲わせるのが、誘惑禁止条例の穴とはいえ、相手がどこまで本気で犯しに来るかは分からない。

 

「なんだ、童貞みたいに腰振るだけだと思ってたのか? そんなんで済むわけないだろうっ」

「んおぉっ♡」

 

大きく突き上げると、ルナが喉を反らして嬌声を上げる。

 

「ルナみたいな可愛くてエロい子っ、一度でも抱いたら、自分の色に染めて逃がさないに決まってるだろ!」

「あひっ♡ ああぁぁっ♡ おじ、しゃ――いま、呼び捨て――あひぅっ♡」

 

腰の突き上げを徐々に大きくしていき、ルナのポルチオを様々な角度で擦り上げる。

 

「はぁぁっ♡ ああっ♡ そこらめっ♡ イクッ♡ またイクゥッ♡」

 

ルナが絶頂すると同時に、祐介はルナの腰を鷲掴みにして、激しく上下に揺さぶった。

 

「あああだめだめだめっ♡ イってりゅ間にイかせちゃあ♡ おかひくっ、おかしゃれて、おかひくなりゅぅぅぅ♡ あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ ぁ ぁ っ♡」

 

ルナは初めて体験する絶頂に、目を見開いて吼えるように喘ぐ。

絶頂なら何度も味わっていた。性感帯でイくのも、膣内でも子宮口でも。

しかし、それらの昂ぶりが、とうとうルナの中に何かの天井を破ってしまった。

 

「おー、ケダモノ声になってきたなぁ。その大絶頂、サキュバスしか味わえないらしいぞ」

 

都市伝説めいているが、魔人種の女だけに味わえる、極大のオーガズムがあるという。

自慰では辿り着けない、男に抱かれることでしか到達できない、輪唱のような絶頂があるそうだ。

つまり、一度の絶頂が終わる前に次の絶頂が追ってきて、ずっと鳴り止まなくなる。

 

「いひぃっ♡ んぎっ♡ あへぇっ♡ イグぅっ♡ まだイグっ♡ ずっとイッてるのぉ♡ おほおおおっ♡」

 

絶頂から降りられないまま、子宮を突き上げられ続ける。

子宮が潰されては持ち上がり、ルナは白目を剥きそうな顔で悶絶した。

 

「おじ、しゃぁん♡ もっ♡ らめっ♡ あぁあぁっ♡ これっ♡ 本当にっ♡ んおっ♡ お願いっ、止まってぇ♡ あふっ♡ イクの止めてぇ♡ あ゙あ゙ッ♡ 壊れ、ちゃう♡ 私っ、どっか、おかしくなっちゃうからぁ♡ あっあっあっあっあっイクイクイクぅぅぅ♡」

「いいぞ、何もかも忘れてイっちまえ! お前の中、俺のセックスでいっぱいにしてやる!」

 

祐介が下から突き上げながら、乳首を捻り上げると、ルナの身体が弓なりに仰け反った。

 

「んおぉっ♡ おじ、さぁんっ♡ ほんとに、だめなのぉ♡ これっ、レイプ、だからぁ♡ 本当にっ、犯しちゃってるからぁ♡」

 

名目上のレイプではなく、本当に怖いのだと、ルナは言っている。

 

「いまさら、なに言ってるんだ……」

 

それでも、祐介は止まらない。

 

「元はと言えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

誘惑(チャーム)――

男性が極端に少ない妖女たちが、数少ない機会で子種を獲得するために持つ魔法。

男性を無条件で発情させ、操り、人間の尊厳を侵害する『洗脳』の一種。

故に使用を固く禁じられている、サキュバスの最たる罪。

 

ルナは、最初の日――祐介が初めてルナを襲った日、それをした。

襲わせるつもりで祐介の家を訪れ、隙の多い格好で誘っても、祐介は手出ししなかった。

そして、業を煮やしたルナは、軽はずみに誘惑(チャーム)を使い、祐介の正気を奪ったのだ。

 

「は――ひ――あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙っ♡」

 

糾弾されると同時に、またも大絶頂を迎えたルナは、後ろに倒れていく。

祐介は騎乗位から起き上がると、ルナをベッドに寝かせて、両脚を持ち上げて肩に掛けた。

 

「お前がっ、自分でっ、俺をっ、ケダモノにしたんだっ! 責任、とれっ!」

 

そのまま覆い被さり、種付けプレスで腰を突き落とす。

 

「ひぎぃっ♡ んっぐっ♡ ごめんなさっ♡ あぁっ♡ もうしないっ♡ 許してっ♡」

「許すもんかっ! 俺が、満足するまでっ! お仕置きしてやる!!」

 

じゅぱん! じゅぱん! と、暴力的なまでの抽送音が響く。

首輪手枷で両手を動かせないルナは、無抵抗にそれを浴びせられた。

 

「ふおぉぉぉっ♡ おおおぉぉぉっ♡ これぇ、終わっちゃう♡ あああぁぁぁっ♡ 昨日までの私、終わっちゃうっ♡ んぁぁぁっ♡ 変わっちゃうっ♡ わたひのからだかわっちゃうぅ♡」

 

身体が砕け散ることを錯覚するほどのオーガズムに、ルナは涙を流していた。

たとえ性感の上では天国でも、泣きじゃくる少女に怒張を突き続ける行為は、レイプ以外の何者でもない。

それでも――ルナの両脚は、いつの間にか祐介の腰に絡みつき、がっちりと拘束している。

ルナの意思とは思えない、妖女の本能が身体を勝手に動かしたのだろう。

 

「変われ! 変わっちまえ! この身体、俺のものになっちまえ!」

「んぉっ♡ おっ♡ なりゅっ♡ はひっ♡ イクっ♡ なり、ましゅ♡ イグぅっ♡ おじしゃん♡ おちんぽ♡ なりゅ♡ 生まれ、変わりゅのっ♡ 気持ちいいっ♡ あああぁぁぁっ♡」

 

ルナの口は、もはや前後の繋がりも危ういことを言い出す。

目は焦点を失い、目の前にいる祐介の姿が見えているかも定かではない。

しかし、祐介にはそんなことは関係なかった。

 

「俺のものになるなら、一生愛してやる! 毎日可愛がってやる! 死ぬまで、ずっとだ!」

「なるっ♡ わたし、おじしゃんの、お嫁さんになりゅっ♡ んおぉっ♡ ペットでもっ、奴隷でもいいっ♡ ずっと、ずっとぉ♡ イキたいっ♡ おじさんのおちんぽでイキたいのぉ♡」

 

ルナの膣内が痙攣し、子宮が亀頭に吸い付いてきた。

 

「よし、出すぞ! 俺の精液、子宮で覚えて、俺の女になれっ!!」

「はい♡ なりまず♡ おじしゃんの、女に♡ あ――――」

 

とうとう、祐介のペニスが精液を解放する。

それが子宮内に注がれると、言語を絶した悦楽が、ルナを支配した。

 

「あっ――かっ――はっ――ひっ――」

 

ルナは白目を剥いて気絶した。

声すら出ないほどの、傍から見れば絶命したのではと思うほどの絶頂。

射精を終えた祐介は、ゆっくりと肉棒を引き抜いても、それはまだ続いているらしい。

危険な麻薬で発作を起こしたのではというくらい、ルナは大絶頂の余韻に震え続けていた。

 

「あー、やっちまった……」

 

我に返った祐介は、額を押さえた。

 

(サキュバスをガチイキさせ続けるとこうなるって知ってたけど、ルナみたいな歳で知っていいやつじゃなかったか)

 

この正気を失うほどの大絶頂は、魔人種だと何度も体を重ねた夫婦で起きるようなものらしい。

交わって期間が短いうちに起きるのは、相当に身体の相性がいい場合だそうだ。

 

「はひ……おじ、さん♡ はひゅう♡ ほし……おじさん、の……赤ちゃん♡ ほしぃ♡」

 

ルナはうわごとで凄いことを言っている。

 

(……明日起きたら、いつものルナでありますように)

 

そんなことを祈りながら、祐介はルナの介抱を始めるのだった。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

ルナ編の前編です。

サキュバスの和名が安定しなくてすみません……



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変わる ~彼女が家出を止めるまで~

 

 

 

先日のセックス以来、ルナは豹変した。

 

「もうっ、もうっ、おじさんのバカっ! 無しだから! 昨日のは全部無しだからっ!」

 

朝は、そんな風に怒っていた。

真っ赤な顔でぽかすかと叩いてくる姿が可愛かったが、魔人種は割と腕力があるので結構痛い。

それはさておき、昨夜の乱れっぷりを、朝になって恥じているようだ。

 

「ごめんごめん、次は優しくするから。な?」

「……当分しないもん。今日は家出しないから」

 

口を尖らせてそう言うと、ルナは祐介の家から学校に登校するのだった。

ルナが言葉通りにするなら、今夜はお預けになりそうだ。自分も、妊活中の彼女の両親も。

などと思っている祐介は――妖女の性欲を、まだ舐めていた。

 

 

 

 

「ルナちゃん?」

 

大学から帰宅すると、玄関前でルナが待っていた。

家に帰ってから着替えてきたのだろう、私服姿だ。

両肩や鎖骨が広く開いた白いシャツと、短めの青いフレアスカート。

確実に『その気』と分かる露出度で、うつむき加減に立っている。

 

「来るなら連絡しろよ。寒かっただろ――」

 

近付くと、ルナの両手ががしっと祐介の服を掴む。

 

「はぁ……♡ はぁ……っ♡ はぁ……っっっ♡」

 

ルナの顔は、熱病に浮かされたように発情していた。

息遣いは荒く、瞳孔は開きっぱなし。半開きの口からは涎が零れそうだ。

 

「おじ、さん……ううん……おじさま♡」

 

呼び方を変えて、従順な女であることを訴えるように、ルナは祐介を見上げる。

 

「早く……家に入れて♡ ねぇ……入れてよぉ♡」

 

別のモノをおねだりするような物言いは、会話が成立するかどうかも疑わしい。

それどころか――瞳が赤く染まっている。

 

誘惑(チャーム)だ。

 

それを目にした途端、祐介の思考が眩暈に襲われたように揺らぎ、言われるまま玄関の扉を開く。

 

「ごめんね♡ ごめんなさいおじさま♡ 私もう我慢できそうにない♡」

 

半ば朦朧とする思考で、祐介は理解した。

ルナは禁欲できなかったのだ。

昨夜の、魔人種の女性でなければ味わえないという極度のオーガズムを。

今朝別れた後、それを思い出して、また欲しくなって、自覚したら理性が利かなくなったのだ。

 

「あは♡ また、おじさまを誘惑しちゃったぁ♡ えへへ、ルナ悪い子だよ? だから、ね?」

 

ルナはシャツの襟を両手で開いて、上品なブラに包まれた巨乳を露にする。

 

「また、脅迫して♡ 逆らえなくして♡ また、昨日みたいなの、いっぱいしてぇ♡」

 

背伸びしてきたルナが、祐介の唇を貪る。

 

「んっ、ちゅぱっ、ぢゅぷぅっ♡ んっ、ふっ、むっ、んーっ♡」

 

舌を絡めながら唾液を交換し合うディープキス。

祐介が応えて抱き寄せると、ルナは嬉しそうに胸を押し付け、立ったまま片足を絡める。

恥も外聞も無く欲情しきって、誘惑禁止条例など頭から抜け落ちた、本気のサキュバスだった。

 

「この……っ、開き直ったな!」

 

祐介はルナを落ち着かせるため、尻肉を鷲掴みにする。

 

「ひぎゅぅぅぅっ♡ お手々、乱暴っ♡ やだ、犯されちゃう♡ おじさまにまた犯されちゃうよぉ♡」

 

ルナは唾液の糸を引きながら口を離し、恍惚とした顔を見せつける。

もうダメだ。こうなった妖女は、満足するまで正気に戻らない。

そして誘惑状態になった祐介も、こうして意識はあれど、彼女の要求に逆らえない。

 

「っ、来い!」

 

祐介はルナの体を抱いたまま、部屋に連れ込む。

力任せに体を運ぼうとする動きは、女を連れ去ろうとする悪漢そのものだ。

だがルナは抵抗しない。

むしろ自分から祐介にしがみついて、もっと強く抱いてとアピールする。

 

「あんっ♡ すごい腕力♡ 連れ去り♡ おじさまに、連れ去られて――あんっ♡」

 

ベッドに投げ出された瞬間、ルナは幸せそうな声を上げた。

 

「脱げ。脱ぐんだよ」

「やぁ、おじさま怖い♡」

 

ルナはゾクゾクしたような笑みを浮かべつつ、シャツを一息に体から引き抜く。

ベッドの上で膝立ちになり、焦らすかのようにゆっくりと、スカートを下ろす。

 

「下着もだ。早くするんだ」

「はひぅ♡ 脱ぐ、脱ぐからぁ♡」

 

ルナの頭に手を置いて、半ば髪を掴むように命じると、妙な声を出しながらブラを外してショーツを脱ぐ。

滑らかな太股を降りていく布は、秘口から垂れた愛液の糸を引いていた。

 

「ほら、悦に浸ってないで、ちんぽしゃぶってご奉仕するんだよ」

「あぁ♡ ごめんね♡ ううん、ごめんなさい♡ おじさま♡ 私、気が利かなくて♡」

 

命令されるがまま、ルナは祐介のベルトを外して、ズボンのチャックを下ろす。

ベッドの横に立った祐介は、ルナの眼前に、痛みを覚えるほど勃起したペニスを解放した。

 

「す、すご……おっきい……♡」

「お前のせいだぞ。誘惑(チャーム)されたらこうなるんだ。痛いんだぞ? どうしてくれるんだ? え?」

 

脅し掛けながら、ルナの頭を股間に引き寄せる。

 

「ひゃぅ♡ ご、ごめんなさぃ♡ でも、見たかったの♡ 本気でケダモノになったおじさまを、また見たいのぉ♡」

 

謝罪の言葉を口にしながらも、その瞳には期待の色がある。

 

「口開けろ。喉まで使って、たっぷり気持ちよくしろ」

「はい♡ んむぅっ♡ ぢゅぷっ、じゅぽっ♡ れりょっ、ちゅぱっ♡」

 

命令通り、ルナは祐介の腰に手を回して抱き着き、フェラチオを始めた。

気持ちよくするというより、味と感触と口内の快感を求めているような、貪るようなフェラだ。

 

「……五分だ。五分でイかせられたら、なんでもおねだり聞いてやるよ」

 

祐介が壁の時計を一瞥して命じると、ルナは陰茎を口に含んだまま、目に更なる恍惚感を灯した。

漫画ならハートマークになっていそうな眼で、ルナはこくこくと頷いて、根元まで呑み込む。

 

「うぐっ♡ んっ、くぅっ♡ ずぶっ、ぬるっ♡ ふっ、ふぅっ♡ ぢゅぷっ♡」

 

祐介の太腿に指を立て、唇の端からは泡立った唾液を零しながら、懸命に吸い付く。

舌先でカリ首を舐め回し、裏筋に擦りつけ、尿道に突き入れようとする。

懸命なまでの口淫に、ルナの本気が見て取れた。

 

「いいぞ。そのまま続けて」

 

祐介は優しく語りかけながら、ルナの髪を撫でる。

すると彼女は嬉しそうに目を細めて、さらに激しく責め立てた。

息継ぎも考えない、一心不乱の、自発的なイラマチオだ。

 

「ぷはっ♡ おじ、さまぁ♡ 動いて、いいよ? ルナのお口、前みたいに、突いていいのぉ♡」

「横着するな。お前が頑張って俺をイかせるんだよ」

「あぅ♡ ごめんなしゃい♡ がんばる♡ がんばるから怒らないでぇ♡」

 

辛うじて脅されているような体裁を保ちつつ、ルナは両手でペニスを愛撫すると、再び頬張る。

三分も経つと、祐介もそろそろ抜き取られそうになってきた。

そこで、ふと思いついたことを口にする。

 

「言い忘れてたけど、五分でイかせられなかったら、お仕置きするからな?」

「……ッ!?」

 

びくんっとルナの肩が跳ね上がり、口内の動きが止まる。

 

「犯してやるよ、昨夜みたいに思いっきりな。

 頭おかしくなるほどイキまくって、気絶するほど出しまくってやる」

「んっ♡ んんっ♡」

 

ルナは首を横に振るが、陰茎には舌が少し絡まるだけだ。

明らかに、祐介の絶頂を遠ざけようとしている。

 

「ほら、どうした? 口が急に大人しくなったぞ? おじさまをイかせなくていいのか?」

「ふぅっ♡ んっ♡ ちゅ♡」

 

ルナは剛直を口に含んだまま、艶然とした笑みを浮かべ、ほとんど口を止める。

時間が過ぎて、残り一分を切っても、勃起状態を維持する程度にしか刺激しない。

 

「おい、さっきのエロさはどうした? あと三十秒だぞ!?」

 

逃げ道を与えていた。

誘惑(チャーム)は射精するほど効力が薄れていく。

ルナが自分の身を可愛がるなら、ここで口で一発抜いた方がいい。

 

「いいのか? おじさまに滅茶苦茶にされちゃうぞ?

 誘惑されたせいで、手加減なんかできないんだぞ?」

 

時間は二十秒を切った。

まだ祐介の理性は残っている。しかし、すぐにでも手放せる理性だ。

 

「よく考えろっ、なにされるか分からないんだぞ!?

 トラウマになるかもしれないぞっ!? 体に痣が残るかもしれないんだぞ!?」

「んぐっ、うっ♡ ぢゅぷっ♡ じゅるっ♡」

 

ルナは答えず、祐介の太腿にしがみつき、ただ口内にペニスを含め続ける。

残り十秒でも、五秒でも――ついにルナは、祐介をイかせようとしなかった。

 

「時間切れだ――」

 

祐介はルナの頭部を両手で掴み、喉奥に向けて腰を突き入れた。

 

「んぶぅっ!♡」

 

亀頭が柔らかい肉に包まれ、その熱さが心地よい。

時間切れになったことを確認するなり、ルナは口をすぼめて怒張を吸い込み始める。

それと息を合わせるように、祐介はピストン運動を開始した。

 

「んっ♡ おぶっ♡ うぐぅっ♡」

 

ルナは苦しげに眉根を寄せたが、それでも歯を立てないように顎を開き、飲み干すように亀頭を受け入れる。

祐介は快感に耐えながら、乱暴にルナの頭を揺すり続けた。

 

「出すぞ――全部飲めっ!」

 

宣言してから数秒後、祐介はルナの口内で果てた。

 

「んん~っ♡」

 

ルナは鼻息荒く精液を飲み干しながら、祐介の陰嚢に手を添えると、揉むようにして残りの精子まで搾り取る。

その顔には、どこか満ち足りたものすら感じられた。

 

「ぷぁっ♡ あは♡ おじさまぁ♡ ご馳走様です♡」

 

呑み込んだことを証明するように、ルナは口を開いて見せた。

 

「時間切れ、だよね♡ ルナ、犯されちゃうんだぁ♡ おじさまを、怒らせたから♡ また、あんな風に♡ あふっ♡ 体、震えてる♡ 思い出して、軽イキしちゃってるよぉ♡」

 

体を抱いたルナを見て、祐介の理性が消え失せた。

 

「ルナ!!」

「ひゃうんっ♡」

 

ベッドに押し倒して、ルナの胸元に顔を突っ込む。

 

「エロい! エロすぎだ! 犯されたがるなんて、そんな女いるわけないのに!!」

 

片手で豊かな胸を鷲掴みにして、ひたすら自分の快感のため柔肉を揉み回す。

もう片方の乳房には口を噛ませ、乳首を引き抜こうとするように口内へ吸い込んだ。

 

「あああっ♡ それっ♡ おじさまっ♡ おっぱい食べてるっ♡ ルナのおっぱい貪ってるっ♡ 可愛い♡ 怖いよぉ♡」

 

ルナは甘い声を上げ、抵抗せずにされるがままになっている。

 

「演技なんだろっ? 本当は嫌なんだろ? 痛くないのか? 優しくしてって言ったらどうなんだ!?」

「あひゅっ♡ 耳ぃ♡ やぁ♡ もっと、敏感に、なっちゃうからぁ♡」

 

ルナの体が跳ね上がるが、気にせず唾液を塗りたくるように、耳の穴を舐める。

右手は脚の間に侵入して、意識して乱雑になるように、秘所を掻き回した。

 

「はひゅうっ♡ あっあっあっあああぁぁぁっ♡」

「なんだ、もうイってるのか? 止めてやらないぞ?

 お前がどれだけイくのかも、いつ休ませてもらえるのかも、俺が決めるんだよ!」

「んんぅうっ♡ ひっどいっ♡ おじさまぁ♡ ルナのこと♡ オモチャにしてるぅ♡」

 

ルナはベッドの上で弓反りに体を曲げながら、膣内をぐちゃぐちゃに掻き回される。

 

「そうだぞ。お前が誘惑するから、もう自分の快感しか考えられないんだっ!

 ほら、嫌がれよ。まだ間に合うぞ!?」

「あ゙あ゙あ゙っ♡ やぁっ♡ やだっ♡ やだぁ♡」

 

愛液を噴いて痙攣しながら、ようやくルナはその言葉を口にする。

しかし、祐介が手を止めると、ルナはその手を祐介の逸物に伸ばして、手招きするように撫でる。

 

「――()()()()()()()♡」

 

その顔は、正しく魔界からやってきた淫魔のような、妖艶かつ怪奇的なまでの――笑顔だった。

 

「……っっっ、このビッチが!」

 

祐介はルナの足を掴んで開かせると、びしょ濡れになった恥部を曝け出させる。

 

「お望み通りに、してやるよ!」

 

そして、ルナの陰唇に逸物の先端を噛ませると、焦らしもせず一気に奥まで突き入れる。

――ずぶちゅんっ!!

 

「ひぎゅっ♡」

 

子宮口にぶつかった瞬間、ルナは舌を突き出して仰け反った。

すっかり蜜壺となっていたルナの膣道は、あまりに滑りがよく、子宮口まで祐介を受け入れる。

 

「あーあ、入れただけでイっちゃったな?」

「あへぁ♡ はひ♡」

 

絶頂に震える膣内が、祐介の分身を奥へ導くように波打つ。

ルナの可憐な顔立ちは、危険な媚薬でも打たれたように、淫らに蕩けていた。

祐介は歯噛みすると、ルナの細い腰を両手で掴むと、軽く浮かせて腰を前後させる。

 

「あ、あ、あ、あ、あ、あっ♡」

「こら、喘いでばっかりいないで何か言ってみろ! 拒否しなくていいのか!?」

 

祐介の言葉に、ルナは無我夢中で口を動かす。

 

「きもちっ♡ 気持ちいいよおっ♡ あひぃっ♡ おじさまの♡ おちんぽっ♡ あああっ♡ ルナの中っ、奥っ♡ ふおっ♡ ごりごり擦ってっ♡ んぉっ♡ どすどすって突いてるっ♡ あああぁぁぁ♡ 全部っ、それ全部ぅっ♡ イっちゃうっ♡ 気持ちいいのぉっ♡ イクのどんどん増えるのぉっ♡ おっきく、深くなるのぉ♡ んぉっ♡ もっとぉ♡ もっともっと来てぇっ♡」

 

箍が外れたように、ルナは叫び始める。

自分から祐介の手を掴んで胸に導き、脚を腰に絡めてきた。

 

「このっ、誰が誘惑しろって言った!」

「やだっ♡ するのっ♡ おじしゃまを誘惑するのっ♡ ルナのことっ、見てもらうのぉ♡」

 

ルナはもう、犯されているという体裁を整える気さえないようだ。

いや……少し違う。

体裁を本物にした。犯されることをセックスの一環として許容したのだ。

好きな男に自分を犯させたいという危険な性癖を、隠さなくなったのだ。

 

「んっ♡ あっ♡ すごっ♡ すごいっ♡ おじ様っ♡ 好きっ♡ 大好きぃっ♡」

「このっ、今日だけだぞ!」

 

祐介はルナを抱き上げて、体面座位の姿勢に移行する。

 

「あああいいっ♡ これしゅきっ♡ おじさまにっ♡ 抱っこされてっ、突き上げっ♡ しゅごいきもちいいっ♡」

「いいぞ、誘惑してみろ。して欲しいこと言ってみろ!」

「キス♡ キスしたいですぅ♡ ちゅー♡ ちゅーしてくださいっ♡」

 

祐介は言われた通り、唇を重ねてやる。

 

「んっ♡ ふあっ♡ しゅごっ♡ また、気持ちいいのっ、増えてっ♡ ああイクっ♡ イキやしゅくなっちゃったぁ♡」

 

激しいセックスに愛情表現が加わったことで、ルナの体はより盛ってきたようだ。

 

「おじさまもっとぉ♡ お尻、ぺちんって叩いてっ♡ おっぱい触ってぇ♡ 耳とか、首とか、噛んでぇ♡ ルナのことっ♡ いじめて、可愛がって、犯して、抱いてっ♡ おじさまのしたいこと全部してほしぃ♡」

 

そこからは――無我夢中だった。

ルナを四つん這いにさせて、バックからハイペースで腰を打ち付けた。

ルナの尻肉は張りがあって柔らかく、叩くと掌によく馴染んだ。

乳首をつねるとルナは悦び、膣内が激しく収縮する。

 

「あああっ♡ イクッ♡ イクイクイクぅっ♡ イッちゃうの止まらないのぉっ♡

 来るっ、くるくる来ちゃうっ♡ イキすぎきちゃうっ♡ 気持ちいいの『壁』、越えちゃうっ♡

 あああぁぁぁまたあれが来ちゃうぅぅぅっ♡ イキしゅぎ天国にいっちゃうのぉぉぉ♡」

 

魔人種だけが知る、絶頂の天井を越えた悦楽の極地。

ルナは再びそこに辿り着こうとしており、祐介はそこへ追い立てるように抽送の激しさを上げる。

 

「んおっ♡ おおおっ♡ おふっ♡ へぁぁぁ♡ あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙♡♡♡」

 

ルナはもはや獣のような喘ぎ声を出すだけの女になった。

狼が月に吼えるように、春先の猫が盛るように。

一匹の雌性、一人のメスとして解放されていた。

その声は、ほぼ一晩中、速水家のあちこちで響き続けるのだった。

 

 

 

 

翌日、祐介は大学のラウンジで、そのことを友人の宮地恭平に相談していた。

 

「それは速水が悪いね」

 

宮地はきっぱりと笑顔で言い切った。

 

「やっぱりそうだよなぁ」

 

自販機で買ったコーヒーを手に、祐介は肩を落とす。

 

「まったく、そんな年頃の子に色を教え込んだら、のめり込むのは当然じゃないか。

 同じ年頃の男に女体を教えてオモチャにするビッチくらいには酷いね」

「うぐ……っ」

 

気の置けない友人は、それゆえに祐介の悪行をはっきりと言葉にした。

 

「祐介、いまは魔人女性(サキュバス)がごろごろいる時代なんだよ?

 男が体で女を誘惑できる世界なんだよ? 旧時代の悪女がしてたことは、男もしちゃいけないんだよ」

 

祐介たちのように、幼少期から妖魔界出身の女性と密接だった世代は、性に爛れた世代とされる。

しかし、別に誰彼構わずギシギシアンアンばかりの生活ではない。

男と女の間においてこれは感心されないということが、この世代にもあるのだ。

 

「速水、前の彼女以降、ずっとフリーだっけ?」

「ああ、まあな」

「なら、ギリセーフかな? 相手の子、誰かの許嫁だったりしないよね?

 妖魔界だと結構あるよ? そういう約束」

「それはない。こっち育ちのハーフだから」

 

一夫多妻が原則の妖魔界にも、浮気は存在する。

 

既にいる妻に断りもなく妻を増やすことはできないし、関係を持てばもちろん不倫だ。

未婚の男女によるカジュアルな関係でも、どちらかが本気になれば、恋は火傷の元。

妖魔界の文化が絡んでくるだけで、これは旧時代から変わらないことだ。

 

「なら、せいぜい相手の子や、その一族に不義理がないようにした方がいいよ。

 速水もハーフだったよね? 家系図を調べておいた方がいい。

 もしロミジュリ的な関係だったら、妖魔界の方でそれぞれの本家が戦争しかねないからね」

 

真顔で助言する宮地は、冗談を言っていない。

実際にそういう経緯で始まる紛争が、妖魔界ではざらにあるからだ。

 

「あー、まあ、とりあえずロミジュリの心配はないと思う」

 

なにせ同じ一族だし、とまでは言えなかった。

 

「避妊魔法はちゃんと使ってる?

 本気になった妖女さんは妊娠したがりだから、ちゃんと気を付けなきゃだめだよ?

 あと同じ妖魔界でも婚姻形態は色々だから、血筋を辿って調べておかないと後で揉めるよ?」

「流石は学生既婚者、実感がこもってるな……」

「はは……今度飲みに行こうよ。聞かせてあげたい話がたくさんあるんだ……」

「今日でもいいぞ」

 

少しやつれたように見える宮地も、色恋関係で苦労があるようだ。

自分の相談を聞いてもらった分、今度は祐介が聞く番だった。

 

エロい美少女が豊富な時代だからこそ、男だけの気楽な時間は欠かせないものである。

 

 

 

 

『今日は友達と飲みに行くから、帰りは遅くなる』

 

西条ルナは、スマホに届いたメッセージを見て、複雑そうに口を尖らせた。

 

(準備してたのに……)

 

今日も家に上がり込んで抱いてもらうつもりだった。

それが流れてしまうとなると不満だが、こうして連絡してくれるということは嬉しいし、そろそろ腰を休ませたかった頃でもある。

 

「あら、今日は『家出』しないの?」

「ちょ、見ないでよママっ!」

 

後ろから覗き込んでいた母に、スマホを隠しつつ抗議する。

冷蔵庫で飲み物を取った後にスマホを開いていたので、家事をしていた母の目に留まったようだ。

魔人種である母は、ルナくらいの歳の子が居ても若々しく美しい。

魔人種同士なら相応の年齢だと分かるのだが、人間の基準で言えば三十代にも見えない。

 

「じゃあ、ママとパパも今日は妊活お休みにするわね」

「いちいちそういう報告しないでいいから……」

 

ルナが『家出』をしたのは、これを機に祐介を誘惑するのも目的だが、一番の理由はそちらだ。

妖魔界の出身ならともかく、人間界で育ったルナとしては、父母の悩ましい声は聞きたくない。

 

「それにしても……はぁ、祐介くんもお酒を飲む歳なのねぇ」

「会わせないから」

「やだもー♪ そんなつもりないのに。ヤキモチ焼いちゃって可愛いんだからもーっ♪」

 

両頬を押さえて身もだえる母に、ルナは牙を剥く。

この母が、祐介にとって初恋の人だったことは知っている。

もし、万が一、それが再燃するようなことは、天が許してもルナが許さない。

 

「あの頃から私はパパ一筋でねー。当時のパパってば祐介くんのことを知って軽くヤキモチ焼いちゃって、その日のパパと来たら――」

「ママ? それ以上聞かせたらタバスコの瓶にフェラさせんぞコラ」

 

性に開放的な妖女たちは、同性への物言いも色々と過激だ。

 

「でも心配ねー、祐介くん。お酒を飲むって、女と一緒じゃないといいんだけど」

「っ」

 

部屋に戻ろうとしていたルナは、ぴくっと耳を動かして立ち止まる。

 

「最近の大学って怖いのよ? 一昔前の少子高齢化で経営難だったところが、妖魔界からの留学生を緩い条件でどっさり受け入れてるの。妖魔界でも人間界への留学って大きなステータスだし、なんといっても『男がごろごろいる世界』だもの。いわゆる『ヤリ(もく)留学』してるサキュバスが、それはもうぞろぞろと……」

 

この場合のサキュバスとは『ビッチ』のニュアンスだ。

大学生の実態をよく知らないルナだが、妖魔界の女たちの九割が男に飢えていることは知っている。

男を酒に酔わせて『誘惑』して、中出しさせて妊娠ガチャ、当たって故郷に持ち帰れば英雄扱い――『ピンクハザード』の時期にはそんな性犯罪が多発したらしい。

 

「そ、そのための誘惑禁止条例だし……」

「やーねー、そういうルナちゃん自身が破ってるくせに♪」

 

返す言葉もない。

過剰反応にも見える誘惑禁止条例だが、そういう『男性保護』のために成立したものでもある。

 

「人間の女子大生も甘く見ちゃだめよー? 恋人が欲しくなった頃にはもう大抵の男は魔人種のお手付き。このままじゃ私、恋人もできないまま学生生活が終わっちゃう! って焦る時期なのよ? 結構いるのよねー、異文化な魔人種より、人間同士で恋愛してた方が色々と気楽だっていう男の子も……」

 

ルナの脳内によからぬ妄想が爆発する。

酒の席、酔った祐介、その前後左右から密着する露出多めなJDたち。

いぇーいっ、彼女ちゃん見てるー? これから彼氏くんの子種、私たちがもらっちゃいまーす♪

 

「っっっ、ちょっと電話してくる!!」

 

ルナはスマホを手に部屋へ駆け込んでいった。

祐介に電話を掛けて、誰と飲みに行くのかを根掘り葉掘り問い詰める声が聞こえてくる。

 

「よし――『旦那様へ。今日もルナちゃんはお泊まりみたいです♡』っと」

 

ルナの母はメッセージを入力、セクシーな自撮り写真も沿えて、夫に送信するのだった。

 

 

 

 

ルナからの強い訴えもあり、祐介は宮地との酒を早めに切り上げて帰宅した。

 

「えーっと、ルナちゃん?」

 

預けた合い鍵を使って家の中にいたルナは、帰宅するなり祐介をベッドに連れ込み、押し倒した。

 

「なんで俺は、手錠を付けられてるんでしょうか?」

「むーっ」

 

両手を手錠で拘束された祐介は、顔の前に鎖を鳴らす。

ルナはそんな祐介の腹に馬乗りとなって、頬を膨らませていた。

 

「お仕置きです。私を放ってお酒を飲みに行ったおじさんには、お仕置きなんだからっ」

「束縛しすぎだろ」

 

むしろルナの方が酔っているかのように頬を紅潮させていた。

男を拘束して押し倒している状況に、ルナの方が赤面している。

まあ手錠については、自分も前に同じようなことをした手前、断らなかったが。

 

「なるもん……」

 

ルナは急に呟いて、勢いよくブラウスを脱ぎ捨てると、ブルーの下着を晒した。

それについての感想も聞かず、ホックを外して床に放り捨てると、その胸に祐介の顔を掻き抱く。

 

「私だって、すぐ女子大生になるもんっ!」

「むぐっ!?」

 

ルナの巨乳に顔を挟まれて、祐介は目を丸くする。

何度も味わったはずの乳房なのに、こういう立場で触れると別物のようにさえ感じられた。

 

「おっぱいだって、お尻だって、もっと大きくなるもんっ!」

 

ルナは片手で祐介の頭を抱きながら、もう片方の手でスカートを脱いでいく。

 

「セックスだって、もっと上手になるもん」

 

シャツのボタンを外され、上半身にキスを繰り返されながら、ズボンのベルトを外される。

 

「おじさんのこと、いっぱい気持ちよくできるんだからっ」

 

そうして取り出された陰茎を、強引にフェラされた。

 

「んぶっ、ちゅぷ♡ ふぅ♡」

 

ルナの口の中で、肉棒はみるみると硬さを増していく。

喉の奥まで呑み込まれ、舌の上で転がされて、先端を強く吸われる。

 

「おい、ルナ。そんなにしなくても逃げないから……」

 

ルナは祐介の声も聞かず、怒張を呑み込んだまま顔を上下させた。

 

「ぢゅるるるる♡ じゅぼっ、ずぞぉおお♡」

 

激しいバキューム音とともに、亀頭が吸引されていく。

唇がカリ首に触れ、裏筋をなぞるように舐められて、鈴口をチロチロとくすぐられる。

言うだけあって、色々な工夫を聞きかじってきたようだ。

 

「ぷはっ♡ おじさんの、変態。このおちんぽで、色んな女の人、虜にしてきたんでしょ。

 同級生とか、先輩とか後輩とか教師とか、よりどり見取りだったんでしょっ。あむっ♡」

「いや、そんな百戦錬磨ってわけじゃ……」

 

ルナは祐介の言い分も聞かず、貪るようなフェラを再開する。

唾液とカウパー液が混ざり合って泡立ち、ジュボッ♡ ズゾォオオッ♡ と卑猥な音が響く。

 

「うあっ……、ヤバイ、マジで」

 

祐介の口から思わず喘ぎ声が漏れる。

 

「あはぁ、ひほひいい?」

「しゃべらないでくれ……」

「ふーっ、ふぅーっ♡ んぶ、ぢゅぽ、れろっ♡」

 

ルナは嬉しそうな表情を浮かべて、さらに激しく吸い上げる。

普段は主導権を取られてばかりだから、こういう状況は新鮮なのだろう。

 

「ぷあっ♡ どう? 上手になったでしょ?」

 

ルナは口から陰茎を抜くと、両手で愛撫しながら言葉を続ける。

 

「おじさんのこれに、私の体、覚えさせちゃうんだから♡」

 

そう言って、ルナはショーツを脱ぎ捨て、祐介の腰の上に跨がった。

そして、自分の割れ目にモノをあてがい、ゆっくりと沈めていく。

 

「あ、ああ……♡ おっきい、けど……♡ 前より、入りやすい……っ♡」

 

熱っぽい吐息を漏らし、少しずつ膣内へと受け入れていった。

祐介は拘束されたまま、自ら肉棒を呑み込んでいく淫らな少女に見惚れていた。

どうやら大人の女性に対抗意識を抱いているようだが、そのいじらしさ以上に、いまのルナは妖艶だった。

 

「あんっ、奥まで届いてるよぉ♡ おじさん♡ 私の中、気持ちいい? 気持ちよくなってぇ♡」

 

根元まで収めると、ルナは背中を反らせて感じ入った。

結合部から溢れた蜜が、互いの太股を濡らしている。

ルナが締め方を工夫しているのか、膣圧は根元から先端にかけて引き上げるように高まり、射精を促してくる。

 

「ルナ……ほら、こっちにおいで」

「んっ♡」

 

祐介はルナを招くと、覆い被さってきたルナの体を、手錠を潜らせるように抱き寄せる。

 

「よしよし、気の済むまで好きにさせてやるから」

「おじ、さん……」

「年の差があると、色々と不安になるよな」

 

ルナの気持ちは、彼女の母に初恋をしていた祐介にも察しが付く。

大人に恋をしてしまうと、自分が子供であることが途端に恨めしくなるのだ。

 

「ルナ以外の女なんて考えてないから。安心して気持ちよくなっていいぞ」

「ひぁんっ♡」

 

祐介が腰を動かすと、奥を擦られたルナが嬌声を上げる。

 

「やっ♡ おじさんっ♡ 今日は、私が責めるのにぃ♡」

「なら、腰を動かさなきゃ駄目だろ?」

「う~っ♡」

 

ルナは頬を膨らませながらも、祐介の胸板に顔を埋めたまま、尻を上下させる。

自分の匂いをつけるように上半身を擦り合わせ、彼女の豊満な胸が祐介の胸板に揉み込まれる。

 

「んっ、あ、はっ♡ これ、むず、かしい……♡ おじ、さぁん……なんか、もどかしい♡」

 

ルナは快感の息を零しながらも、いい角度が見つからないらしく、あと一歩というところで達せずにいる。

 

「ほら、いいんだぞ。好きに動いても」

「だって、おじさんの腕がぁ♡ 背中、押さえるから……」

 

正常位を逆にしたような体位だが、手錠を掛けられた祐介の腕がルナの背中を押さえており、自由に動けないのだ。

 

「おかしいよぉ♡ おじさんのこと、拘束したはずなのにぃ♡ これじゃ、私が……あうっ♡」

ルナはどうにか下半身の動きだけで角度を探るも、いつものような悦楽に辿り着けずにいた。

「おじさぁん♡ 腰、動かして……」

「おいおい、いいのか? せっかく手錠まで使ったのに、主導権を返しちゃっても」

「いいっ♡ いいからぁ♡ 手錠、外してあげるから……っ♡」

 

ルナが言うと、祐介は彼女を腕の中から解放した。

 

「ごめんね、おじさん♡ 私、勝手に思い込んで、変なテンションになってた」

 

ルナは繋がったまま上半身を起こして、祐介が出した腕の手錠を取り外す。

 

「やっぱり、いつも通りがいい♡」

 

外した手錠を、ルナは自らの両手に装着する。

チャリ――と、ルナの手首の間で鎖の音がすると、彼女の顔は明らかに前より興奮し始めた。

 

「逆レイプしようとして、ごめんなさい♡ いつもみたいに……お仕置き、してぇ♡」

 

祐介は自由になった両手でルナの腰を掴むと、挿入されたままの肉棒を子宮口へと突き上げる。

 

「くぁぁぁうぅぅぅっ♡ これっ♡ これぇっ♡」

 

ルナは待ち望んでいた刺激に悶えながら、自らも腰を揺らし始める。

 

「あんっ♡ すごっ♡ 全然、ちがう♡ あふっ♡ これなのっ♡ やっぱりこっちがいいっ♡」

 

祐介が腰を突き上げる度に、ルナも腰を降ろし、太股とヒップが衝突する。

パンッパンッと音が響くと同時に、祐介の先端部とルナの最奥部が激突して、そのたびルナは嬌声を上げた。

 

「可愛いぞ、ルナっ。ヤキモチ焼いて、おじさんを襲って、でも結局いじめられたいところ、最高だっ!」

「あひゅうっ♡ ごめんなしゃいっ♡ おじさんのことっ、襲おうとしてっ♡ ごめんなしゃいっ♡」

 

攻守が逆転するなり、ルナの膣内は激しく収縮して、短い間隔での絶頂を物語る。

 

「いいぞ、お望み通りお仕置きだ。後ろを向け」

 

体位を変える。ルナの体を騎乗位から下ろして、四つん這いにさせた。

 

「はふっ♡ されちゃう♡ おじさんに、お仕置きレイプ、されちゃう♡」

 

手錠で拘束されたルナは、犬のような姿勢になると、明らかに期待した顔で振り返る。

 

「して欲しいんだろ? 俺がどれだけお前に夢中か、体に叩き込んでやるよ」

「うん♡ お願い、早くぅ♡」

 

ルナのお尻が左右に揺れると、秘所からは愛液が滴り落ちる。

どうやらルナは、今日まで体験してきた建前のレイプを、体で覚えてしまったようだ。

そのプレイで絶頂を知り、大絶頂まで味わって落とされた体は、条件反射でそれが一番感じるようになっている。

であれば、そんな体にしてしまった責任を、取らなければならない。

 

「おじさんの言うこと聞けるか?」

 

ルナの尻を片手で撫でつつ、肉棒を秘裂に擦り付けると、ヒップがぴくんっと跳ね上がる。

 

「聞くっ♡ ちゃんと言う通りにしますっ♡」

 

ルナは手と顔をベッドに埋めたまま、腰を前後に動かした。

 

「わがまま言って困らせないか?」

 

軽く尻を叩くと、ルナの背筋が震え上がる。

 

「ごめんなさいっ♡ もうおじさまを困らせないからっ♡ だからぁ♡」

 

祐介に対する呼び方が、また『おじさま』に変わる。

 

「今日も、私のこと……襲ってください♡」

 

従順に服従することに悦びを感じる――ルナの中で、それは明確な性癖になってしまったようだ。

 

「よし、いい子だ」

 

そうして祐介は、亀頭をルナの膣口に挿入すると、両手で腰を掴んで――一気に突き入れた。

 

「ひゃぁあああっ♡ きたっ♡ きたのぉおおおっ♡」

 

挿入した瞬間、ルナは背中を大きく仰け反らせて、甲高い悲鳴を上げる。

 

「くっ。やっぱり締め付け方が違うなっ」

 

祐介も思わず歯を食いしばった。

ルナの膣内は熱く蕩けていながら、ねっとりとした感触と柔らかさを持っている。

まるで無数の舌で舐め回されているような感覚に、早くも達してしまいそうだ。

祐介はそれを堪えながら、ルナの腰を掴んで前後させつつ、腰のピストン運動を加速させる。

 

「すごいぃいいっ♡ これぇえっ♡ 好きっ♡ 大好きっ♡」

「はは、すっかりMになっちゃって」

「違う、もんっ♡ これっ♡ 愛されてるっ♡ 愛されてるのぉ♡ 分かっちゃうのぉっ♡」

「ああ、よかった。伝わってるんだな……」

 

祐介は腕を伸ばして、ルナの乳房を掴みながら抱き寄せる。

膝立ちになったルナは、手錠をされた両腕を祐介の首後ろに掛けて、喉を反らす。

 

「あああぁぁぁっっっ♡ おくぅぅぅ♡ 伝わるのぉ♡ おじさまの気持ちっ♡ 気持ちいいっ♡

 もっとっ♡ もっとしていいのぉ♡ ルナ頑張るからっ♡ おじさまのためのエッチな女の子になりましゅからっ♡

 飽きないでっ♡ 捨てないでぇ♡ もうおじさまじゃなきゃ駄目なのぉっ♡」

 

祐介が胸を揉み始めると、ルナは嬉々として叫ぶ。

ルナはもはや、祐介の気を惹くことに、自分の全てを賭けようとしていた。

 

「飽きないし、捨てるわけないだろっ! こんな健気で可愛くてっ、エロくてドMな女っ、手放すもんかよ!」

 

祐介が子宮口を連打すると、ルナは体を痙攣させて喘ぐ。

 

「そこだめぇえっ♡ イクッ♡ 一度に何度もイッちゃぅううっ♡」

 

そして一際大きく震えながら、絶頂した。

 

「どうする? このままイキまくりたいか? スローで優しくしてやってもいいんだぞ?」

「いいっ♡ これ好き♡ もう子供じゃないもんっ♡ おじさんの本気、いっぱいぶつけてぇ♡」

 

言質を取った祐介は、胸を掴む指に力を込め、腰を加速すると同時に緩急と角度を付けた。

 

「はぎゅうぁっ♡ あはぁあっ♡ すごいぃいっ♡ おじさんのっ♡ 踊ってるっ♡ 私の中で踊ってっ、イかせてりゅぅっ♡ これこれこれなのぉもっとしていいのぉ♡」

「ほら、頑張れ。もっとたくさんイって喘げっ、おじさんを独り占めしたいんだろっ?」

「うんっ♡ したいっ♡ もう他の人に渡さないっ♡ 私のっ♡ 私のだからぁっ♡ おじさまのモノだからぁっ♡ おじさまだけのものになるからぁっ♡ もうどこへも行かないでっ♡」

「ああ、約束だ。俺も、ルナを誰にも渡したくないし、離したりしない」

「あきゅうぅぅっ♡ 嬉しいっ♡ うれしいのぉっ♡ 幸せすぎて死んじゃうっ♡ しあわせイキしゅぎて溶けちゃうぅぅぅっ♡」

 

ルナは涙と愛液を零しながら、連続絶頂に喘ぎ続けた。

 

「くっ……、そろそろ限界だ。出すぞ」

「きてっ♡ 来てくだしゃい♡ 全部くださいっ♡ ぜんぶっ♡ ルナのっ♡ おまんこっ♡ 受け止めさせてぇっ♡」

 

祐介は腰を強く打ち付けると、その最奥に射精した。

 

「ひゃうぅっ♡ 出てるっ♡ 熱いのでてるっ♡ ルナの膣内っ♡ 妊娠しちゃいますっ♡ 赤ちゃんできますっ♡ あはっ♡ イクゥウウッ♡」

 

ルナは白目を剥き、舌を突き出して絶叫して、そのまま気絶した。

 

今夜は――気絶したくらいでは止めなかった。

 

 

 

 

「父さんと母さん、来週には出張から戻ってくるらしいんだ」

「あっ♡ うんっ♡ そう、なんだ……」

 

寝バックでゆっくり繋がりながら、祐介とルナが言葉を交わす。

 

「だから、次からはホテルとかでしような?」

「うんっ♡ あ、でも……人に見られたら……」

 

ルナは懸念を覚えたようだ。

自宅という、他の干渉を避けられる場所ならともかく、ホテルの類は誰かに目撃されかねない。

誘惑禁止条例も形骸ではない。この不適切な関係がバレたら、どちらかが性犯罪者となるかもしれない。

 

「ああ、だから……部屋を探してるんだ」

「部屋?」

「大学に近くて、あと……ルナちゃんの志望校に近いところ」

 

聞いてもすぐに意味を理解できなかったのか、ルナはきょとんとした後……

 

「っっっ♡ おじさん、それって……」

「合い鍵、ちゃんと渡すから。なんなら、一緒に暮らすとかでも……」

 

祐介は妙な照れくささを覚えながら、ルナと目を合わせずに言う。

これだけ過激なセックスを繰り返してきたというのに、だ。

 

「――っ♡♡♡」

 

それはルナも同じだったのか、枕に顔を埋めて、軽く脚をばたばたとさせる。

 

「おじ、さん……それ、命令? 言うこと聞かないと、だめ?」

 

ルナは顔だけ振り返らせて、蠱惑的な笑みで問う。

祐介はそれを見て、口角を引いた。

 

「ああ、命令だ。言うこと聞かないと、分かるよな?」

「んっ♡ ひうぅぅっ♡」

 

腰の突き入れを加速させると、ルナは何度か達した後に、祐介の手を握る。

そして、離すまいとするように膣圧を高めながら、返事をするのだった。

 

 

 

()()()♡」

 

 

 

それからしばらく後、ルナは『家出』をしなくなった。

 

保護者同意の上で恋人と同棲することを――家出とは言わないからだ。

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

ひとまず後編完結です。

まだ改善すべきところが沢山ありそうですが、
とりあえず次話はハーレム系に挑戦してみようと思います。

また日を置いて投稿しますので、忘れた頃にでもお楽しみください。


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義姉弟編 どんなに犯しても許してくれる僕に甘い姉
夜這い ~姉の部屋の扉はいつも開いている~ (挿絵追加)


 

 

妖魔界において、男性とはとても希少な存在である。

 

数を維持する上で不可欠な『生殖資源』であるという生物学的な理由を下地に、メスが狩猟採集をしてオスと子供を守るという原始社会に始まり、それに基づいて様々な国と文化が生まれた。

妖魔界で男児として生まれようものなら、男と分かった時点で政略結婚の争奪が始まるという。

なんなら生まれてすぐ嫁ぎ先に預けられ、未来の妻となる女たちと姉妹同然に暮らす、なんてこともあるらしい。

人間界の場合は、嫁ぎ先の養子となり、その先で大きくなったら義理の姉妹と結婚する――ということだ。

 

北森蓮は、そういう経緯で、この家の養子となった。

 

「蓮く~ん♡ ただいま~♡」

「お、お姉ちゃん、いまゲームしてるから……っ」

 

帰宅するなり抱き付いてきたのは、エルフ系の女子○生だ。

北森エマネイア――親しい者はエマと呼ぶ。

長身でスタイルのいい、ファンタジー映画に出てきそうな、金髪のエルフ美少女だ。

豊満な胸を後頭部に押し付けるようなハグは、○学生に進学したばかりの蓮には刺激が強い。

 

「あん、ごめんね♡ 邪魔しないから、蓮くんの匂い吸わせてぇ♡」

 

床に座ってゲームをしていた蓮を、エマは背後から首を抱いて、髪に鼻を埋める。

シャツのボタンに負荷を掛けている巨乳が、後頭部を挟む。

頭皮にキスを繰り返され、白魚のような手が鎖骨や胸板を撫でてきた。

 

「っ」

 

条件反射的に、股間が熱を帯びる。

いつの頃から始まった――思春期。

性欲というものを初めて自覚して以来、見慣れた姉が急に別物に見えてきた。

 

「あー♡ 蓮くん、エッチな気分になってる?」

 

エマはそれを感知すると、嬉しそうにからかってくる。

 

「ご、ごめんなさい……」

「やん♡ 謝らないで? お姉ちゃんこそごめんね♡

 女の身体に触れられたら、そうなっちゃうよね♡」

 

女性に性的な感情を向けるのはいけないことだと、漠然と教え込まれていた。

サキュバスと異名される魔人種が多くいる時代だからこそ、社会は()()()性の乱れに厳しい。

 

「いいの♡ 男の子だもん、自分の意思に関わらずそうなっちゃうの……

 蓮くんは、悪くないんだよ? むしろ被害者なの。他の女がしたらセクハラなんだから」

 

旧時代から変わったとすれば、女性から男性へのセクハラにも手厳しくなったことだ。

むしろこちらの方が、ひとつの社会現象として声高に訴えられている。

中年男性による女性への迷惑行為として『セクハラ』という言葉が生まれたのが平成初頭、いまは逆が流行語となる時代だった。

 

「……お姉ちゃんは?」

「もう♡ お姉ちゃんはいいの♡ だってお姉ちゃんだもん。

 それに……将来は、蓮くんのお嫁さんになるんだもん♡ 忘れたの?」

「忘れてない、けど……」

 

エマという姉は、血の繋がらない姉であると同時に、いわゆる許嫁だ。

 

蓮が引き取られた先の北森家は、人間界に移住してきたエルフ系魔人種の家だった。

元は王族だったそうなのだが、先祖が政争に敗れて地方領主に落ち、色々あって人間界に移住したそうだ。

 

蓮の生みの親は、そんな旧王族の傍流に当たる忠臣だった。

出会いあって人間男性との間に男児を儲けた母は、主筋である王家にその男児を捧げた。

どうかこの子に、王家存続の大役を果たさせて欲しいと。

 

無いも同然に薄れてはいるが、蓮もまた王族の血を継いでいる。

よって、蓮が旧王族のエマネイアと結ばれることは、王家の血が復活することを意味する。

 

既に王家の血筋に執着のなかった北森家は、思い留まるよう説得したが、母の決意は固い。

最終的には成長した子が人生を選ぶ――という約束で、蓮は森家の養子になったのだった。

 

「ふふ♡ ごめんね、ゲームしてるのに将来の話なんて。

 蓮くんは蓮くんの好きに生きていいからね♡

 王族だろうとなんだろうと、お姉ちゃんは蓮くんの味方だから♡」

「うん……」

 

幼い頃からの癖みたいなもので、蓮は背後の姉に寄りかかる。

豊満な胸を枕にする形になると、全身が姉の優しさに包まれるかのようだ。

 

子供の頃から、姉は弟である蓮を可愛がってくれている。

その甘さは病的なほどで、『許嫁であり義姉弟』という関係も運命と捉えているらしい。

 

「あん♡ 可愛い♡ 可愛い蓮くん♡ いいんだよ? いくらでも甘えて♡

 蓮くんなら、お姉ちゃんをエッチな目で見ちゃうのも、許してあげる♡」

「っ」

 

姉の口から出た熱い吐息が、甘い毒のような言葉と共に、耳に掛かる。

胸を使って肩でも揉むように、姉の巨乳が背中から後頭部をなで上げていた。

 

「でも……『する』のは、大人になってから、ね♡」

 

そう、妖魔界ならまだしも、人間界の基準で言えば……まだ早い。

義姉弟の結婚が法的には可能でも、○校生と○学生では、世間の出す答えはNOだろう。

 

誘惑禁止条例もある。

未婚の女性は男性を誘惑してはならない、求められても応じてはならない。

実質、婚前交渉を禁じているようなものだ。

 

『好き合うのは構わないけど、深い関係になるのは大人になってから』と、両親にも言い含められている。

両親は特にエマの方を警戒しており、かなり強く肉体関係を禁じているようだ。

忠臣が捧げてくれた大事な息子に『不作法』などしては、合わせる顔がないと。

 

「待ってるからね♡ お姉ちゃん、蓮くんが大人になるの、楽しみに待ってるからね♡」

 

だから、エマも蓮に対して、スキンシップ以上のことはしない。

蓮とエマは、現段階では『健全な姉弟』でなければならない。

 

「もし、蓮くんが我慢できなくなっても……」

 

その一線を越える術が、歳を重ねること以外にあるとすれば……

 

「ちゃんとごめんなさいできたら――許してあげる♡」

 

蓮の方が、誘惑を禁じられた義理の姉(サキュバス)を、手籠めにすることだけだった。

 

 

 

 

だから今夜も――蓮は、姉を夜這いする。

 

蓮とエマが別々の部屋で寝るようになったのは、エマが年頃になってからだ。

エマの方が、弟を『つまみ食い』することを避けるための、両親による措置だった。

 

泣いて嫌がったのは蓮だった。

姉にしがみついて、お姉ちゃんと一緒がいいと聞かなかった。

姉は鼻血を堪えるように顔を押さえていたものだ。

そして、蓮にこう耳打ちしたのである。

 

「お部屋の扉が開いてたら、内緒で来てもいいよ?」

 

部屋の扉が、少しだけ開いていること。

それが、蓮とエマの間におけるサイン。

今夜は夜這いしてもいい――という意味だ。

夜、姉の部屋の扉が完全に閉じている日は、滅多にない。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ん……」

 

部屋に入ると、エマは身体にシーツを掛けるでもなく眠っていた。

上品なネグリジェ姿が、小夜灯に照らされている。

薄い生地に目を凝らすと、豊満な胸の先端部やショーツが透けて見える。

 

「っ」

 

蓮は生唾を飲んで、そっと近づく。

すぅ……すぅ……と静かな寝息が聞こえてくる。

まるで誘っているかのような、無防備な姿勢だ。

 

「お姉ちゃん……?」

 

返事はない。

タヌキ寝入りであることは分かっている。

それでも、眠っているという体裁で事を進めるのが、暗黙の約束だった。

 

「…………」

 

改めて見ても、思う。

姉は、なんて綺麗な人なんだろうと。

 

長い金糸の髪、絵画に描かれる美女のように芸術的な身体の線、可憐な声音。

思春期に入って以来、異性に目を奪われることは数あれど、姉ほどではない。

言い方は悪いが、この姉に比べれば、教室の女子なんて魔人種を含めてイモに見える。

 

(世が世なら、本当に、お姫様なんだよな……)

 

妖魔界の旧王族という血筋。

人間界で言うと先祖が戦国武将くらいのレアリティだが、いざ前にすると胸が高鳴る。

年頃の男児が持つ率直な性欲に、そんなおとぎ話のような要素が混ざってしまえば……その感情は、単なる性欲以上の何かに昇華してしまう。

言葉にするなら『運命の相手』――エマが蓮を溺愛するのも、きっと同じ理由だろう。

 

「……っ」

 

蓮は姉の足元から、その柔らかそうな太腿に手を伸ばす。

スカートの裾を摘まむようにして持ち上げると、白い下着が露わになった。

蓮はごくりと喉を鳴らした。

 

「ん……蓮……くん……♡」

 

姉は頬を染めて微笑んでいるように見える。

寝たふりなのは分かっている。弟が卑猥な真似をしていることにも気付いている。

それでも彼女は、寝たふりを続けて、寝言で弟を呼んでいた。

何一つ明言していなくても、彼女が何を望んでいるかは、雄弁に語られていた。

 

蓮は、そんな彼女の胸に手を添える。

 

「はぅ……っ♡」

 

少し驚いたような、しかし心地よさそうな声が聞こえた。

姉はされるがままだ。抵抗する素振りもない。

Fカップあるという乳房を弟に触れられても、()()()()()()()()()()()()

 

「お姉ちゃん……」

 

蓮は姉の胸を揉みながら、ショーツ越しに割れ目に指を押し当てる。

 

「ぁ、は……っ♡ あんっ♡」

 

姉は切なげに眉根を寄せ、悩ましい吐息を漏らした。

弟の手つきに翻弄されながらも、()()()()()()()

 

「お姉ちゃん、ごめんね。今日も、我慢できないよ」

「っっっ♡」

 

エルフ系の長耳に囁くと、薄く目を開いた姉は頬を上気させた。

 

「起きないでね? ぐっすり、眠っていてね?」

 

それは、抵抗せずに寝たふりを続けろという意味に他ならなかった。

呼吸を荒くしながらも、何も言わない――それが、姉の答えだった。

蓮は姉の胸元に顔を近づけ、唇で触れる。

 

「はふっ♡」

 

姉が吐息を零し、ぴくりと震える。

蓮はそのまま、姉の胸の谷間へと顔を埋めた。

そして両手で乳房を掴んで、自分の顔を挟むように押し付ける。

 

「あんっ♡ はぁっ♡ あっ♡ 蓮、くぅん……っ♡」

 

姉は、弟からの執拗な責めに悶えている。

蓮の頭に腕を回し、抱きしめるようにしながら、()()で蓮の名前を呼ぶ。

 

「お姉ちゃんのおっぱい、食べさせて?」

 

ネグリジェの肩紐をズラして、乳房を露出させる。

薄いオレンジ色の小夜灯に照らされた桜色の乳首は、自ら震えるように勃っていた。

蓮がそれを口に含むと――

 

「あはぁっ♡」

 

エマは思わず声を上げて、蓮の頭を掻き抱きながら、身体を反らした。

蓮はそのまま、姉の両乳首を手と口で責めていく。

 

「ひゃうっ♡ 蓮、くんっ♡ ふあっ♡ んっ♡ はぁぁぁっ♡」

 

舌先で転がすように舐め上げ、吸い上げるたびに、エマはビクビクと身体を震わせる。

 

「お姉ちゃんの()()、可愛い」

 

全ては寝言なのだと、蓮はエマに『発言の許可』を与えた。

 

「あぁぁ♡ 蓮くん、ダメだよぉ♡ まだ、こういうのっ♡ 蓮くんには早いのぉ♡」

「じゃあやめる?」

 

蓮は口を離すと――その先端を、指の腹で擦り始めた。

 

「やめ、ないでっ♡ もう、おっぱい、疼いて、止まんないよぉ♡」

 

普段からスキンシップが激しく、弟への劣情を隠さない姉だが、襲ってくることはない。

日に日に男らしく成長していく蓮への欲情を、いつも我慢している。

それだけに――こう言われると、拒めない。

 

()()()、お姉ちゃん。これはただの夢だから、ね?」

「ゆ……夢……♡」

「そう。夢なんだよ? 朝になったら、全部、なかったことになるからね?」

 

蓮の言葉に、エマは蕩けた笑みを浮かべた。

 

「あぁ♡ 蓮くぅん♡」

 

エマは開き直ったように蓮を抱き寄せ、胸を口内に押し込むように押し付ける。

 

「ごめんね♡ お姉ちゃんのせいだよね♡ 蓮くんお年頃なのに、お姉ちゃんがこんなエッチな身体を見せつけたからだよね♡ いいよっ♡ お姉ちゃんで、女の子の身体、いっぱい勉強して♡ お姉ちゃんにしたかったこと、我慢しなくていいからね♡」

「お姉ちゃん……」

「ほら♡ 触って♡ もっと強く握っても大丈夫だよ♡ 男の子なんだもん♡ 強引になって、いいんだよ♡」

 

蓮はエマの乳房を揉みながら、先端にしゃぶりつく。

前より一段と五指に力を込めて、軽く歯を立てるほどに。

 

「ふあん♡ 蓮くん、食べてるっ♡ ケダモノみたいにっ♡ お姉ちゃんのおっぱい貪って♡」

 

姉の身体は、非常に敏感になっていた。

蓮の匂いは、エマにとって相性がよかった。

そういう男に対して、サキュバスは本能を抑えきれない。

広く深く分布する性感帯が騒ぎ出し、粗野で大きな男の手でなければ味わえない快感を生み出す。

 

「蓮くんっ♡ 蓮くぅんっ♡ お姉ちゃんっ♡ イっちゃう♡ イかせてっ♡ 蓮くんの手でっ、おっぱいイキしたいっ♡」

 

エマは蓮の腰に足を絡めながら懇願した。

蓮は音を立てながら姉の乳首を吸い、乳首を抓る。

 

「あぁぁっ♡ はひっ♡ おっぱいきもちいぃ♡ 蓮くぅん♡ お姉ちゃんのおっぱい食べてぇ♡ 蓮くんに食べられるためにあるようなおっぱい♡ 食べちゃってっ♡ お姉ちゃんのおっぱい♡ 蓮くんのためにおっきくなってるのっ♡ お姉ちゃんの胸っ、大好きになってぇ♡」

 

味を覚えさせようとするように、乳房をしゃぶらせる。

弟に対してそうする恍惚と背徳に、エマの快感は増していき、とうとう絶頂へ上り詰めた。

 

「あぁっ♡ イクッ♡ くうぅぅぅっ♡」

 

ぴくぴくっと、姉が身体を震わせる。

蓮は口を離して、快感に顔を歪める姉をじっくり観察した。

こんなに綺麗な姉が、弟である自分の手で、快感の境地に達している。

それを目にするだけで、自分は男として偉業を成したような達成感が湧き上がる。

 

「まだだよ」

 

そして、妖女(サキュバス)が味わう快感はこの程度ではないことも、既に知っていた。

 

果てたばかりの彼女の乳首を、不意打ちで抓り上げる。

 

「きゃひぃぃぃん♡」

 

思わぬ刺激に驚いた姉が、寝たふりの演技も忘れて嬌声を上げた。

 

「知ってるよ? イってるところに、追撃されると、もっとイっちゃうんだよね?」

 

大人向けの雑誌で得た知識を試すと、エマは目を見開いた。

彼女を夜這いするのも、胸でイかせるのも初めてではないが、ここから更に責めるのは初挑戦だ。

つまりエマにとっても、弟から与えられる初の快感である。

 

「ひゃぁぁぁっ♡ 蓮くんっ♡ それっ♡ それだめっ♡ もうだめ待ってっ♡ イってりゅ♡ イってりゅのっ♡ イってりゅお姉ちゃんのおっぱい苛めちゃだめなのぉ♡」

 

抵抗する姉に構わず、蓮は目の前の巨乳を弄ぶ。

強く掴んだかと思えば小刻みに揺らし、吸ったかと思えば舌で転がす。

短い間隔で刺激を変化させると、その度にエマの身体が跳ね上がり、胸によるものとは思えないオーガズムを物語る。

 

「ひあぁぁっ♡ 蓮くんっ♡ お姉ちゃんイきまくってるっ♡ 知らないっ♡ こんなのはじめてなのぉ♡」

「降参する? お姉ちゃん。僕に降参してくれる?」

「するっ♡ してますっ♡ 蓮くんの勝ちだからっ♡ お姉ちゃんっ♡ 気持ちよすぎて負けちゃってるからぁ♡」

 

敗北を宣言させてから、蓮は姉の乳房から手を放した。

 

「はひっ♡ はひっ♡」

 

仰向けに倒れたエマは、横向きになった顔の口から涎を零していた。

普段の、年上の余裕がある姉の顔ではない。

男の手で蹂躙された、屈したメスの顔だ。

 

「お姉ちゃん、いいよね? 僕の勝ちだから――」

 

蓮はパジャマのズボンを下ろして、勃起した逸物を取り出した。

蓮は魔人種とのハーフ、妖魔界の血を受け継ぐインキュバスだ。

その生殖能力を物語るかのように、○学生とは思えないほどの剛直を持っている。

 

「『れいぷ』――しても、いいんだよね?」

 

可愛い弟の顔に獣めいた笑みが刻まれるのを、エマは見た。

 

「あ♡ だめ♡ だめだよ♡ エッチは、大人に、なってから……あんっ♡」

「なに言ってるの。お姉ちゃんが僕に教えたんだよ?」

 

蓮は強引にエマのショーツを引き抜いた。

 

「お姉ちゃんは、誘惑しちゃいけないけど……僕が『れいぷ』するのは、いいんだよね?」

 

誘惑禁止条例――その言葉の正確な意味を、蓮はまだ知らない。

だが、それに縛られる姉が、どういうことをして欲しがっているかは、よく知っている。

 

「僕に『れいぷ』して欲しいから、抱き付いて、おっぱい当てて、ムラムラさせてるんだよね?」

「やぁ♡ 違うの――ひゃああっ♡」

 

蓮はエマの足を開かせる。

エマは片手で恥部を隠そうとしながらも、足はさほど抵抗しなかった。

 

「女の子を気持ちよくして、負けさせて、濡れ濡れのおまたにこれを突き刺すんでしょ?

 お姉ちゃんが教えてくれたんだよ? レイプってなに? って聞いた僕に教えたんだよ?」

「それはっ、しちゃいけないことって――」

「してほしいって……言えないんだよね?」

 

蓮は怒張の先端を、エマの陰唇に押し当てた。

 

「ふああぁっ♡」

 

挿入を期待しているのか、エマの声には艶が増していた。

 

「許して――くれるよね?」

 

そう言って、蓮は腰を前に突き出した。

ちゅぷん――と、ほとんど抵抗なく、怒張は膣内に滑り込んでいった。

 

「ひぃゃうぅぅぅっっっ♡」

 

蓮のモノを受け入れながら、エマは甲高い悲鳴を上げた。

きゅんきゅんきゅんっ♡ という絶頂の収縮が、蓮の分身を絞るように包み込む。

 

「イってる。これ、イってる感触だ。お姉ちゃん、『れいぷ』されるとイっちゃうんだね」

「ひゃふっ♡ され、ちゃったぁ♡ わたし、また♡ 弟に、レイプされちゃってるぅ♡」

 

両手で頬を押さえるエマの顔は、エルフの長耳まで赤くなり、目は恍惚感に染まっていた。

そんな姉の反応を見て、蓮はより興奮を増していく。

 

「お姉ちゃんの中、気持ちいいよ。もっと、お姉ちゃんの中で、動きたいっ」

 

蓮はさらに腰を突き出し、最奥へと押し込んだ。

子宮口が亀頭にキスすると、エマが背中を反らして絶頂する。

 

「はぎゅぅぅっ♡」

 

びくっ、びくんっと、全身を痙攣させ、エマは仰け反りアクメした。

その締め付けは凄まじいもので、蓮も思わず射精してしまうところだった。

だが歯を食いしばって耐える。女の子をたくさんイかせるのが男なのだと、雑誌で読んだ。

 

「蓮くんっ♡ 蓮くぅんっ♡ だめぇっ♡ お姉ちゃんイっちゃうっ♡ すぐイっちゃうっ♡

 蓮くんにずぽずぽされたら身体が勝手にイっちゃうのぉ♡ これっ、逆らえないのぉっ♡」

「逆らうなっ! お姉ちゃんはっ、僕の女なんだからっ!」

 

蓮は思うがままに腰の角度を変えて、子供めいた気まぐれさで緩急を付けた。

 

「あああぁぁぁっ♡ らめらめそれらめぇっ♡ そんなの言っちゃらめなのっ♡

 上手になった腰使いでそんなこと言わないでっ♡ しちゃうから♡ 屈服しちゃうからぁ♡」

 

腰の動きを維持したまま、更に乳房を掴んで吸い付くと、エマの身体はがくんっと跳ね上がる。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ふおっ♡ おっぱいだめっ♡ いまだめっ♡ おっぱいイキしちゃうからぁ♡ もうイけないのにっ♡ イかせられてるのにぃ♡ おっぱいイクの足されちゃうっ♡ 乳首もおまんこも何度もイっちゃうのっ♡ おとうとレイプでイかされまくってるのおぉぉ♡♡♡」

 

半狂乱になって髪を振り乱しながら、姉は足を絡めて放さない。

 

「ごめん、お姉ちゃんっ! 許してっ、れいぷするの許してっ!」

「あああぁぁぁっ♡ ずるいっ♡ しょんなっ♡ 謝りながら夢中でっ♡ 許しちゃうっ♡ 許してあげたくなっちゃうからぁっ♡」

 

たとえ許嫁同然の義姉弟でも、未婚の男女は誘惑禁止条例の対象だ。

だから、エマには他に方法がなかった。

性に目覚めた弟に、『こういう方法』を教え込むしか、なかった。

 

「名前っ♡ 蓮くんっ♡ なまえぇ♡」

「エマっ! エマネイア! 僕のものだっ! 僕の女になれっ! 僕の言うことを聞けっ!」

 

促された蓮は、姉を名前で呼び捨てて、不慣れそうな口調で高圧的に命じる。

それを聞いたエマは、見るからにぞくぞくとしながら、悦楽に震え上がった。

 

「はいっ♡ ()()()♡ 聞きますっ♡ 言うこと聞くからっ、怒らないでぇっ♡」

 

姉を名前で呼び捨てにして従わせる、すると姉もそれに応える。

力尽くで犯されている――当初はその体裁を整えるための儀式だった。

それが体裁ではなくなるまで、さほど時間は掛からなかった。

 

「しゅごいっ♡ 男の子しゅごいのっ♡ どんどん立派になってっ♡ 勝てなくなっちゃうっ♡

 お姉ちゃんの身体っ、あっという間に♡ 支配されちゃったのぉ♡」

 

体位をバックに変えて、姉弟がラストスパートに入る。

 

「王子様なのっ♡ 蓮くんは私の王子様なのぉっ♡

 私がっ、育ててっ、私の王様になるのぉ♡」

 

姉の部屋に響く、腰と尻の衝突音、弟に泣かされる女の嬌声――それらが最高潮まで加速する。

 

「エマ……出る、もう出るよっ」

「あああきてぇ♡ 征服してっ♡ 私の子宮っ♡ 蓮さんのせーえきで侵略してぇっ♡」

 

弟への執着と、マゾヒズムの悦楽が凝縮されたような言葉だった。

 

エマは、王家の復興などという大それたことは考えていない。

ただ、自分の夫となる弟を、自分にとって最高の男に育て上げて――支配されたい。

そんな姉の歪んだ劣情に呑み込まれるように、蓮は堪えていた射精を解き放つ。

 

「あぁあぁあぁあぁ出てりゅぅぅぅっ♡ イッちゃうぅっ♡ 中出しイキしてりゅぅぅぅっ♡」

 

両手でシーツを握り込みながら、姉は尻を震わせて絶頂を迎える。

その絶頂は長く、そして深く、意識が落ちるまで続いた。

 

 

 

「お姉ちゃん……」

 

しばらく経って、蓮とエマは、弟と姉に戻る。

着衣を正して、同じベッドで眠る、姉離れと弟離れができない姉弟に。

 

「ふふ♡ なぁに?」

 

エマは蓮の顔を胸に抱き寄せ、べったりと密着していた。

先ほどまで自分を天国に導いていた男に対して媚びる、女の態度だった。

 

「その、さっきは……ごめんなさい。また、お姉ちゃんを『れいぷ』して……」

「もう……本当に、悪い子だよ? 女の子に、あんなことしちゃ、ダメなんだよ?」

 

たしなめているとは言えない口調で、エマは蓮の額にキスをしていた。

 

「うん。明日から、いい子になるから……」

「あっ♡」

 

蓮は目の前にある谷間に顔を埋めて、片手で揉み始める。

 

「お姉ちゃんのおっぱい、ちょうだい?」

 

甘えるようでいて、オスの顔をしている弟に、エマはごくりと唾を飲む。

 

「もう…………しょうがないなぁ♡」

 

エマはネグリジェの胸元を開くと、布団の中でこっそりと、胸を露出させる。

弟は姉の乳首に吸い付き、姉は弟の舌に甘い声を零す。

どちらからともなく眠りに就くまで、ずっとそうしていた。

 

 

 

 

翌朝、姉弟は何事も無かったかのように朝を迎えた。

なんとなく察している両親は何も言わず、蓮もエマも素知らぬ顔で朝食を取る。

 

両親が仕事に出て、蓮とエマも登校する準備が整う。

まだ制服に着られている感がある蓮と、少女として最も花盛りな制服姿のエマ。

背は、まだ蓮の方が少し低い。

このまま家を出ても、仲のいい姉弟と見られるだけだが、一緒には登校しない。

世間一般の、この年頃の姉弟は、仲良く並んで登校したりしないからだ。

 

だから――

 

「んっ♡ ちゅ♡ 蓮、くぅん♡」

「お姉ちゃん……朝練、遅れるから……」

 

両親も世間の目も無い、玄関口での僅かな時間に、蓮とエマは舌を絡め合わせた。

 

「蓮くん、気を付けてね♡ こんな可愛い蓮くん、誰が狙ってるか分からないんだから♡」

 

姉がそういう心配をするのも、いつものことだ。

蓮が○学校に進級してからは、『○学生の妖女子なんて痴女ばかり!』と暴言を憚らない。

いつもなら、『もういいだろ』と素気なく振り払うのだが……

 

「お姉ちゃんこそ」

「きゃっ♡」

 

反撃で姉の尻に手を回して、スカートの上から強く掴む。

 

「れ、蓮、くん?」

「……ナンパされても、ついていっちゃダメだよ?」

「っっっ♡」

 

姉は軽イキしたように震え上がり、艶然とした笑みで蓮を見下ろす。

 

「……まっすぐ、帰ってくるから♡ ね?」

 

そう約束して、それぞれ学校に行った。

帰宅して、昨日と同じような一日が終わって――

 

「じゃあ、お姉ちゃん……もう寝るね?」

「うん、おやすみ」

 

寝る前に歯を磨こうと足を運んだ洗面台、その出入り口で、蓮はエマとすれ違う。

どちらからともなく――下ろした片手の指を、一瞬だけ絡め合わせて。

 

「…………」

 

歯を磨いて部屋に戻る途中、蓮は姉の部屋を流し見る。

 

 

 

今夜も――部屋の扉は、閉じていなかった。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

活動報告にも出しましたが、以前まであった三姉妹編を取り下げて、
義姉編を登校しています。
とりあえず、あと何話かは義姉編が続きます。

取り下げた話も加筆修正して再投稿しますので、どうぞよろしくお願いいたします。


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お触り ~姉は家庭内痴漢されても誰にも言わない~ (挿絵追加)

 

 

 

蓮が姉のエマを夜這いするようになってから、一年ほど経った。

両親が寝静まった頃――または両親がお盛んなとき、蓮とエマは情交を重ねた。

蓮は何度も姉に中出ししたし、そこに至るまで姉が絶頂する回数も日に日に増えていった。

避妊魔法や防音魔法がなければ大変だった。

いつしか、誘惑禁止条例を気にしてレイプを装うこともなくなっていった。

ただ純粋に、同じ家に住む男女が自然とまぐわう。

もはや姉弟というより、若い夫婦のよう。

 

それはつまり――マンネリ気味である、という意味だった。

 

不満があるわけじゃない。

だが、最初に蓮が姉を襲った時のような興奮を、久しく感じてない。

その感覚を適当に流すことを、姉はよしとしなかった。

 

いつしか姉の部屋は、夜になると扉をきっちり閉じられるようになった。

 

 

 

 

さて――人間界と妖魔界の開通は、なにも性の乱れだけを起こしたわけではない。

 

妖魔界の技術である魔法と、人間界の技術である科学、その協力で生まれた魔法技術。

地球上で閉じていた貿易に、突如として異世界が加わったことによる、桁外れな市場の拡大。

 

目に見えて起きた変化と言えば、幻影魔法によるARが市街を彩り、魔法製品が流通している。

街を見れば、長耳のエルフ、小柄なドワーフ、尾を揺らす獣人が、スーツや制服姿で道を歩く。

年齢層は、全体的に若い。

一昔前は少子高齢化が深刻だったそうだが、いまや空前のベビーブーム。

人間界と妖魔界の開通により、男性と妖女が出会い、第二世代や第三世代も急増している。

 

であれば『学校』もまた増加する。

姉こと、北森エマネイアが通うのは、妖魔界出身の生徒を中心とする女子校だった。

 

「エマさんっ、おはようございますっ」

「あら、おはようアリサ」

 

エマは猫を被ったように清楚な笑顔で、エルフの女子生徒に挨拶する。

家では弟を溺愛、しかも自分を夜這いさせる淫乱だが、そんな本性はおくびにも出さない。

 

「聞いてくださいよ先輩ぃー」

「あ、エマ姉様だっ」

「お姉様ぁー♪」

 

次々と複数の女子たちが集まり、校門を潜ったエマを中心に一団となる。

 

エマの血筋は、妖魔界においては貴族である。

別にお嬢様校というわけではないのだが、妖魔界の子女が集まれば、結構な割合で貴族がいる。

妖魔界で希少な男を確保して、安定して子供を作れるのが、貴族だからだ。

 

そうした『血筋』は、妖女子の間においてカースト要素のひとつだった。

人間女子のカーストなら、容姿や彼氏持ちか否かで高くなるというのが典型だが、妖女には妖女の典型があるものだった。

そんな妖女子の中で、エマが持っているもうひとつの強みが――

 

「あの、エマさん……また、弟さんの話、聞かせてくださいっ」

 

()()()()()()()()()、である。

 

妖魔界において、男児は天からの授かり物だ。

男児が生まれた家には幸運の星が降りており、縁が深ければあやかれると本気で信じられている。

もはやそういう精神文化、信仰の類と言ってよい。

 

アリサのような、妖魔界において平凡普通な平民エルフにとっては特に。

 

「そうねぇ、最近はやっぱり年頃のせいか、あまり構ってくれないのよねぇ」

 

エマが残念そうに語る些細なエピソードだけで、もうアリサにはフィクションの世界だ。

父親と一緒に暮らせる妖女ですらSR、兄や弟と一つ屋根の下で暮らせるなんてSSR。

反抗期の弟に邪険にされるなんて日常風景すら、あな尊しや。

 

「部活はサッカーでしたよね? いまのポジションはっ?」

「背は伸びましたかっ? いま何センチですかっ?」

「一人称は『俺』ですかっ? それとも『僕』ですかっ?」

 

アリサ以外の妖女子たちも、講義室でエマを囲みながら根掘り葉掘りだ。

 

少しでも多く知りたいのだ。

弟がいるとはどんな気持ちで、どんな日々なのか。

エマが語る『蓮くん』を、アリサたちは物語の主人公の如く注視している。

 

そして、思わず想像するのだ――

 

「はぁ、蓮くんが私の弟だったらなぁ……」

 

――と。

もし、自分にそんな弟がいたらと。

話に聞く『蓮くん』に、『お姉ちゃん』と呼ばれる自分を。

 

「いまなんて?」

「言葉の綾でございます!」

 

この通りエマのガードが鉄壁なので、直接お目にかかれた子はいない。

エマは決して、同年代の女友達を自宅に招くことはないのだ。

その理由も『年頃の弟がいるから』で通る。

妖魔界において、男児はそれほどに保護されるべき存在なのである。

 

(いいなぁ、エマ先輩……)

 

アリサは蓮の話を聞きながら、エマの香りに思考を蕩けさせる。

ほんの僅かに、一緒に暮らしている弟さんの香りが、エマに運ばれているような気がする。

朝一で声を掛けるのも、その『弟の残り香』が薄れる前に嗅ぎたいからだ。

惨めな変態だと笑うがよい、妖魔界において男児とはそれほど希少なのである。

 

(いい、香り……)

 

うっすらと感じる男の匂いを、アリサは砂漠で水滴を舐めるように吸い込む。

 

妖女は嗅覚で相性のいい男をかぎ分ける。

自分がエマの香りに夢中なのは、つまりそういうことなのだと……

 

(蓮くん……かぁ……♡)

 

気付いていても口には出せず、アリサは手の届かぬところにいる『弟さん』に、思いを募らせるのだった。

 

 

 

 

蓮が学校から帰宅すると、エマは家事をしていることが多い。

両親は共働き、蓮は部活をしており、エマの帰宅が一番早い。

当人の趣味が料理ということもあり、夕飯の下ごしらえをしながら出迎えられるのが、いつもの光景だ。

 

「あ、蓮くんおかえりー」

「ん、ただいま」

 

姉は制服の上からエプロンを着けていた。

長い金髪を結ってポニーテールにしている。

短いスカートから伸びる腿や膝の裏側が、真っ白で目に眩しい。

 

(短い……)

 

油断すれば下着の見えそうなスカート。

記憶にある限り、朝の登校時よりも明らかに短い。

蓮は知っている。姉がスカートの丈を詰めるのは、家の中だけなのだ。

 

「蓮くん♡ 見過ぎだよ?」

「ああ、ごめん」

 

言葉では謝っているが、蓮は口の端を釣り上げていた。

ここしばらく、姉が夜這いをさせてくれないせいで、蓮の劣情は蓄積している。

その上で、誘惑するようなミニのスカート……姉の意図は明白だった。

 

「お姉ちゃん、何か手伝う?」

「んー、ちょっと待っててね」

 

鼻歌を歌いながら料理の下ごしらえを続ける姉。

身体を屈めると、スカートの裾が持ち上がり、驚いたことに黒い下着が見える。

『待ってて』という指示もおかしい。

手伝うことがあるなら言えばいいし、無いならそう言えばいい。

それを待たせたのは……見える位置に留まらせるためだ。

 

(やっぱり、誘ってる……っ)

 

姉がよくやる手口だ。

わざと露出の多い服装になったり、私生活の隙を装って下着や胸元を見せたりする。

襲ってもいいよ♡ という、姉からのサインだった。

しかも夜這いを拒否することで、蓮を欲求不満にさせてから。

どうやら姉は、マンネリ気味になってきた夜這いプレイから、新たな刺激を求めているようだ。

 

「…………」

 

だから蓮は、無言で姉の背中に近付いていく。

 

「……っ♡」

 

姉はそれに気付きながら、特に必要のない作業を続けている。

 

「お姉ちゃん?」

 

やがて蓮は背後から姉に密着して、その身体に手を這わせるのだった。

 

「ぁ……っ♡」

 

背後から抱き寄せると、姉はぴくっと震えて声を零した。

 

「な、なぁに? 蓮くん♡ 甘えたいの?」

「うん」

 

姉に甘える弟を装って、蓮は背後から姉のうなじにキスをする。

そして両手を前に回し、制服越しでもわかる豊かな膨らみに触れた。

 

「んぁっ♡」

 

もどかしくなるような愛撫をすると、姉はぶるりと身を震わせ、艶っぽい吐息を漏らす。

 

「こ、こら♡ 悪戯しちゃ、だめ、でしょ♡」

 

あたかも、単なる姉弟のスキンシップであるかのように、姉は蓮をたしなめた。

 

「だって、お姉ちゃんのスカート、凄く短い」

「ひぁんっ♡」

 

蓮は姉のヒップに片手を伸ばして、尻肉を掴む。

そのまま揉むように動かしながら言うと、姉は甘い声で鳴いた。

 

「そ、それは……蓮くんが、見たがってるみたいだから……♡」

「それだけ? 普段からこんなに短くしてるんじゃない?」

「あっ♡ やん……っ」

 

蓮は姉のエルフ耳を甘噛みしながら、家以外でのことを追及する。

 

「僕以外に、こんな短いところ、見せてるんでしょ?」

「ち、違うもん……蓮くんにしか、見せたことない」

「ほんとに?」

「本当だよぉ♡ あんっ♡」

 

蓮は姉の尻を掴んでいた手で、今度は太股に触れる。

その柔らかさを堪能するように撫で回した。

 

「蓮くぅん♡ だめだってば、こんなの……痴漢、痴漢だよ?」

「痴漢じゃないよ。お姉ちゃんに甘えてるだけ」

「あ……んっ♡ こんな、エッチな甘え方、よくないよぉ♡」

 

姉はそう言いながらも、蓮の指先が触れるたびにビクビクと震えていた。

 

「ふぁっ♡ そこっ」

 

スカートの中に手を入れると、下着は湿り気を帯びている。

姉が感じていることを確認してから、蓮はその湿ったクロッチをずらすのだった。

 

「だ、めぇ……♡」

 

姉は拒絶するが、本気で嫌がっているわけではない。

むしろ蓮の愛撫を歓迎している。

 

「お姉ちゃん、濡れてるよ」

「だって♡ 蓮くんが触れるから♡ エッチな視線を突き刺して、触るからぁ♡」

 

姉は上半身を逃がそうとして前屈みになるが、その動きで尻が後ろに出て、蓮の股間を擦る。

 

「されたかったんだろ? わざとスカート短くして、誘惑したでしょ?」

「ひゃうっ♡ してない、もん♡ 蓮くんが、エッチだから、そう見えただけで……あんっ♡」

「へぇ、僕のせいにするんだ?」

 

蓮はこちらから姉の尻に下腹部を擦りつける。

 

「ふあっ♡ やっ♡ そんなとこ、擦り付けちゃ……♡」

 

ズボンの上からでも分かる勃起状態の逸物を、スカートを捲られた尻の割れ目に。

 

「やあっ♡ おっぱい、掴んじゃだめぇ♡」

 

両手はエプロンの下に入り込み、シャツの上から姉の巨乳を鷲掴みにした。

 

「こんなにエロい下着でっ、襲われたがってるの見え見えじゃないかっ!」

「やぁんっ♡ 違うもん♡ お洒落だもん♡ そういう解釈、よくないんだよ?」

 

姉は言葉では否定しながら、腰を浮かせて、尻を前後に揺すり始めた。

 

「なら、なんでこんなに感じてるの?」

「だってぇ♡ 蓮くんだから♡ 蓮くんがエッチな気持ちになると、私もなっちゃうからぁ♡

 蓮くんのお手々に触られると、感じちゃうの♡ 乱暴でも、優しくても、気持ちいいのぉ♡」

 

エプロンの肩紐を下ろされ、シャツの前を開かれた姉は、黒下着に包まれた巨乳を露出させる。

 

「自分の意思じゃ、どうしようもないの♡

 だから、お願い♡ エッチなことしないで♡」

 

言葉では、拒否をしている。

あくまで、拒否をしたという事実を得るための拒否だった。

 

「そうやって、自分は悪くないみたいに!」

 

蓮は姉のショーツの中に右手を滑り込ませ、秘裂を指先で掴み取る。

 

「あっ♡ やっ♡ あひっ♡ 蓮くんっ♡ やっ♡ 怒らないでっ♡」

 

姉の性器はもうびしょ濡れになっていた。

中指があっさりと膣内に受け入れられ、手の平に陰核の尖りを感じる。

それらを丸ごと愛撫するように手を動かすと、くちゅくちゅという水音がキッチンに響く。

 

「お姉ちゃんはズルいよっ、そうやって、僕を悪者にしてっ」

「んふぅっ♡ はぁ……んっ♡ んっ、んんぅっ♡」

 

姉は声を抑えようと唇を噛むが、その程度で抑えられるはずがない。

 

「エッチなのは、お姉ちゃんの方じゃないかっ! 思春期の男子よりずっとエッチじゃないか!」

「あっ♡ あああっ♡ だって♡ あひっ♡ 蓮くんっ♡ あぁぁぁっ♡ 可愛い、からぁ♡」

 

姉の膣内が絶頂の収縮を示す。

折れかけた足が内股に曲がり、流し台の縁に手を付いて体を支えていた。

 

「なにが可愛いだっ! 僕だってすぐ大きくなるっ! 背だって、もうすぐお姉ちゃんより大きくなるっ!」

「はひゅっ♡ 蓮くんっ♡ 待って♡ イって、イったのにぃ♡ あああぁぁぁっ♡」

 

姉が達しても、蓮は責める手を止めない。

イかせた後、その絶頂でイキやすくなった身体を、もう一度イかせる。

それによって得られる快感は、女を狂わせるのだと、蓮はよく知っていた。

 

「はぁぁっ♡ また、くるっ♡ 蓮くんっ♡ だめっ♡ おかしくなるっ♡ 許してぇっ♡」

 

姉の懇願を無視して、蓮は姉の耳元に囁いた。

 

「エマ?」

「ひうっ!?」

 

名前で呼ぶと、姉は条件反射的に抵抗を止めた。

 

「僕の言うこと聞けるよね?」

「あっ……あ、あぁ……♡」

 

普段、セックスで最高潮になるとき、姉は蓮に自分を呼び捨てにさせる。

弟が『男』になる気分を味わうための工夫だが、それがこういう条件付けを起こしていた。

名前を呼び捨てにして、男らしく命じると、彼女はとても従順になる。

 

「返事」

「ひゃいっ♡ あ……♡ 蓮さんの、いうとおりにしますっ♡」

「なら、おねだりするんだ。でないと止めちゃうよ?」

 

従順になった姉の背後から、蓮は命令する。

姉は一瞬だけためらう仕草を見せたが、蓮が離れようとすると、慌てて手を掴んで引き留めた。

 

「はい♡ 蓮さんのおちんちん、私のおまんこに入れてください♡

 エッチな下着で弟を誘惑した悪いお姉ちゃんに、お仕置きしてください♡」

 

姉は恍惚とした笑みを浮かべながら、自ら腰を突きだして、下着を下ろす。

蓮の手淫ですっかり解された膣口が、物欲しそうに開いていた。

 

「よくできました。それじゃ、ご褒美をあげようかな」

 

蓮はズボンを脱ぎ、肉棒を取り出す。

先端を膣口に触れさせ、割れ目沿いに擦りながら位置取りすると、姉が嬌声と共にヒップを跳ねさせた。

 

「あっ♡ ああっ♡ 蓮くんっ♡ 早くぅ♡」

 

待ちきれないとばかりに、姉は蓮を急かす。

 

「わかった、いくよ」

「あ―――っ♡」

 

亀頭が膣口に埋まる。

それだけで姉は軽い絶頂を迎えたのか、背中を大きく仰け反らせた。

 

「ほら、やっぱりエッチだ。先っぽ入れられただけでこんなにイってる」

「やっ♡ 言わない、れぇっ♡ んぅ~~っ♡」

 

姉は羞恥心に悶えながらも、快楽には抗えない。

ゆっくり押し込んでいくと、姉の秘裂が限界まで広がり、その奥へ蓮を飲み込んだ。

 

「はぁぁぁぁっ♡ 蓮くんのが、入って♡ あふっ♡ はっ、ぁぁぁ♡」

 

姉は絶頂の声を漏らしながら、下腹部に手を当てる。

蓮のペニスの形を確かめるように、優しく撫で回していた。

 

「動くよ? たくさんイかせてやるからなっ!」

「ひゃい♡ 蓮くっ♡ あぁぁっ♡」

 

蓮が動き出す。

姉のどこを突けば一番感じるかは熟知している、そこを狙ってピストン運動を繰り返す。

 

「おぉっ♡ すごっ♡ いぃっ♡ 蓮くんのっ♡ 日に日にっ、おっきくなってりゅぅ♡」

 

姉とセックスするようになって以来、蓮の逸物は少しずつ大きさと硬さを増している。

敏感になった膣内には、そういう些細な変化も分かるらしい。

 

「お姉ちゃんが育てたんだよ? 弟にオスの悦びを教えたからこうなったんだ! 責任取れ!」

 

尻を叩き、腰を掴んで、より激しく打ち付ける。

まだ日も沈みきっていない時間、平凡な家庭のキッチンに、男女の腰が衝突する音を響かせる。

 

「ひぁぁぁっ♡ ごめんなさっ♡ おおっ♡ 気持ちいっ♡ 子宮っ、どすって♡ 突かれっ♡ イグッ♡ イかされちゃうっ♡」

 

姉は蓮に媚びるように腰を振った。

蓮は姉の片足を持ち上げて、角度を変えながら突き上げる。

片足立ち状態での松葉崩しだ。

 

「あっ、ああぁっ♡ 深いぃぃッ♡ これっ、だめぇ♡ お姉ちゃん、我慢できなくなるっ♡ 大人になるまでっ、待たなきゃいけないのにぃ♡」

「もう大人だっ! その証拠にっ、お姉ちゃんをこんなにイかせてやれるんだっ!」

「あっ、蓮くんっ♡ 蓮くぅん♡」

 

姉に見合う男になろうと強がる蓮の熱情に、エマは気付いた。

それを伝えようと強引になる弟が、あまりにいじらしくて、もはや制止することなどできない。

 

「んむっ♡ ちゅっ♡ れりゅう♡」

 

身体を向かい合わせ、立ちセックスで舌を絡めながら、互いの身体に手足を絡ませる。

やがて蓮が姉を持ち上げ、いわゆる駅弁の体位で突き上げ始めた。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ♡ 蓮くぅん♡ しゅごいっ♡ 逞しいよぉ♡」

 

弟に持ち上げられ、男の力強さを総身に感じた姉は、しがみつきながら絶頂を繰り返す。

 

「あぁぁイぐっ♡ イッてるのにまたイクのっ♡ あぁぁぁぁぁぁっ♡ 蓮くぅぅぅうん♡♡♡」

 

絶頂しながら絶頂を迎える。

膣内は痙攣して収縮を繰り返し、精液を搾り取ろうとしてくる。

 

「うっ……」

 

蓮は短くうめき声を上げると、姉の中に大量の子種を吐き出した。

 

「ああぁっ♡ 熱いぃっ♡ 蓮くんのっ、いっぱい出てるぅ♡」

「はぁっ、はぁ……お姉ちゃん?」

 

蓮は肩で息をしながら、姉を見下ろした。

すると――

 

「ふふっ♡」

 

姉は妖艶に微笑み、唇を重ねてきた。

 

「んっ!?」

「ちゅっ♡ ちゅぷ♡」

 

先ほどまで犯されていたとは思えない、貪るようなディープキスが、しばらく続いた。

酸欠気味になった蓮が、ぼんやりした顔で姉を見詰めると、

 

「ごめんなさい、は?」

 

やんわり叱りつけるように、姉は問いかける。

 

「……ごめん、なさい」

「よろしい♡ お風呂、入ってくるね」

 

素直に謝った弟の頭を撫でると、姉は何事もなかったかのようにキッチンを去った。

 

「…………」

 

呆然と見送った蓮は、溜息と共に肩を落とす。

姉を乱れさせたときは、姉の予想を超えられたと思った。

しかし、乱れさせられることまで込みで誘惑していたなら、全ては彼女の思惑通りだ。

 

「……掃除しよ」

 

とりあえず蓮は、姉の愛液で汚れた床を掃除し始めるのだった。

 

 

 

 

そんなことがあっても、姉はいつも通りに接してくる。

エマの『いつも通り』とは、大した理由がなくてもべったり密着してくるということだ。

小学生の頃からこうだったが、いまはその意味も変わってくる。

 

「テレビ、使っていい?」

「いいぞ。何か見るのか?」

「試合」

 

リビングで、晩酌をしていた父母に声を掛けてから、蓮はテレビをつけた。

最近はPCで動画視聴が主流だが、北森家にはそこそこ大画面のテレビがあるので、これぞという映像はこちらで見る。

サッカー部所属の蓮が見たいのは、欧州リーグの試合だ。

 

「はい、蓮くん。飲み物とお菓子」

「ああ、ありがとう」

 

すると当然のように、姉が蓮の隣に腰を降ろした。

気が利くことにジュースとスナック菓子を出してくれるのはいいが、胸元の開いた部屋着が少し目に毒だ。

おまけに肩がぴったりくっつくほど近くに座るので、どうしても意識させられる。

とはいえ、それもいつものこと。

ソファーで肩を並べる二人ついて、ダイニングで晩酌をしている父母も、特に何も言わない。

 

「蓮くん、どっちを応援してるの?」

「特にどっちも。単純にプレーが見たい」

 

試合が始まり、ボールを巡る攻防がしばらく続く。

 

「…………」

 

蓮は食い入るように見ているが、エマは少し退屈そうだった。

競技にあまり興味がないと、ゴール際など大きな動きがない時間は退屈になる。

普段は自分の体を見てくれている弟が、いまはボールと選手に夢中というのも、エマに小さな妬心を生んだ。

 

「ん……」

 

エマは悪戯心に駆られたように、蓮の肩に頭を乗せて、体の向きを少し変える。

すると、豊満な胸が蓮の上腕にぴたりと当てられた。

そのまま、ぐいぐいと押し付けていく。

 

「お姉ちゃん?」

「ん? なぁに?」

 

蓮は視聴の妨害について抗議的な目を向けるが、姉は蠱惑的な笑みで惚けてみせた。

背後の両親からは、ソファーの背もたれに隠れて、姉の行為は見えていない。

告げ口するわけにもいかず、蓮は無視して試合に集中した。

 

「むぅ……」

 

姉はプライドが傷ついたのか、更に誘惑を仕掛けてくる。

蓮の太腿に手を置くと、指先で優しくなぞり始めた。

 

「っ」

「ふふ♡」

 

蓮の反応を見て、姉は不敵に笑う。

ちらりと姉の方を見ると、ルームウェアの胸元を引っ張って、乳首ギリギリのところまで見せつけていた。

慌てて目を逸らすと、今度は足を伸ばして絡めてくる。

 

(ああ、もう……)

 

邪魔されるくらいならと、蓮は姉の相手をしてやることにした。

ソファーの背もたれに隠す形で右腕を動かし、姉の腰を抱き寄せる。

 

「ぁん♡」

 

嬉しそうな声を零した姉は、蓮の肩にもたれかかり、続きを催促するように太股を撫でてくる。

 

「……声、我慢してね」

 

両親に聞こえないように小さく耳打ちすると、蓮は右手を姉の尻へと運ぶ。

 

「は、ぁ……♡」

 

服の上から、尻の上半分を優しく撫でてやると、姉は幸せそうな吐息を口にした。

蓮は目線をテレビに固定したまま、さわさわと姉の尻をなで続ける。

 

「ん、ふぅ……あッ、は……ン……♡」

 

次第にエスカレートしていく愛撫。

ズボン越しに感じる弟の手の感触に、エマは甘い声で応える。

 

「れ、れんく……あんまり動くと、お父さんたちに気づかれるよぉ」

「お姉ちゃんこそ」

 

背後の両親は、お酒と仕事の話に夢中で、こちらに気付いていない。

それをいいことに、蓮は右手を動かし、姉の脇腹を抱くようにして胸を掴んだ。

 

「ひゃう♡」

 

びくんっと、エマの体が跳ねる。

顔がエルフの耳まで赤くなっている。

こんなに両親が近いところで、バレるかもしれないという状況が、姉を興奮させていた。

蓮はそんな姉を横目に見て、嗜虐心に駆られる。

 

「ひうっ♡ んっ♡ んんっ♡」

 

服の上から乳首を抓んで、指先で捏ねてやると、姉は快感の声を必死に押し殺した。

蓮は試合に目を向けながら、右手で姉の乳房を楽しみ、気まぐれに弄んでいく。

 

「んっ、あっ♡ はぁっ、はぁ……あぅ♡」

 

姉は蓮の腕の中で悶え、快楽に身を震わせる。

やがて蓮の手がルームウェアの中に潜り込み、直接姉の肌に触れた。

下着の隙間から指を滑り込ませ、中指で乳首を擦りつつ、乳房の感触を堪能する。

 

「ぁっ♡ んっ♡ んんんっ♡ はぁ、はぁ……っ♡」

 

声を出せない状況のせいか、姉は普段より敏感だ。

喘ぐことこそ堪えているが、体の震えと表情から、体に走る快感の強さが分かる。

 

「んっ、んんぅ……っっっ♡」

 

姉は蓮の服の裾を指で抓みながら、声を噛み殺して小さく絶頂した。

手を離して小休止を入れてやると、試合ではちょうど得点が入るところだった。

 

「おお……っ」

 

ほとんど見逃していたが、蓮の関心がサッカーに戻る。

姉が不満そうに抓ってくるが、たまには姉の誘惑に抗いたい日もある。

 

「ふぁ……」

「あら、旦那様。もうお休みになる?」

 

後ろから父母の声が聞こえた。

 

「ああ、飲み過ぎたかな?」

「ふふ、お疲れですものね。そろそろ休みましょう」

 

そう言って、父母が席を立ち、母が姉弟に声を掛ける。

 

「じゃあ、お母さんたち先に寝るから、夜更かししちゃダメよ?」

「うん」

「お休みー」

 

二人が返事をすると、母は寝室へと消えていった。

それからしばらく試合を見ていたが、二人の耳は父母の気配を入念に追っていた。

やがて、父母の寝室の扉が閉じる音を聞き取ると――

 

「んんっ♡」

 

蓮が強引に姉の唇を奪った。

舌を差し入れ、唾液を交換するように絡め合う。

 

「はむ……ちゅ……♡」

 

エマの瞳にハートマークが見える気がした。

彼女の体はすっかり発情しているようで、蓮にキスをされ、体を撫で回されても、抵抗らしい抵抗はしない。

 

「ぷあっ♡ ふふ、サッカーはもういいの?」

「お姉ちゃんが、邪魔したんだろ……っ」

 

蓮は姉をソファーの上に押し倒した。

それと同時にシャツをまくり上げて、ノーブラの巨乳を暴く。

先ほどの愛撫で過敏になっていたその乳房に、今度は口でむしゃぶりついた。

 

「ひゃうっ♡ 蓮くんっ♡ ここじゃ、バレちゃう……ああぁぁっ♡」

 

姉は甘い声で鳴き、弟の頭を抱きしめる。

蓮はその豊満な胸の柔らかさを楽しみながら、先端を口に含んで甘噛む。

 

「待って♡ 胸、さっきのでぇ♡ 敏感、に……っ♡ あっあっあっ♡」

 

姉は身を捩るが、弟の体を押さえつける力は緩めない。

それどころかもっと強く抱き締めて、蓮の頭を強く自分の胸に押し付ける。

蓮が姉の乳首に吸い付き、舌で転がすと、姉はいっそう激しく身悶えた。

 

「襲って欲しかったんだろ? 僕がサッカーばかり見てるから」

「だ、だってぇ♡」

 

隣の自分より球技に夢中な蓮に、ヤキモチのような感情を湧かせたのだろう。

それは可愛いと思うが、好きなスポーツくらい見せてほしかった。

ふと、蓮は妙案を思いつく。

 

「お姉ちゃん、フェラしてよ」

「え? お、お口で……?」

「いいから、早く。でないと乳首を――」

 

姉の両乳首を抓り上げて、『脅迫』という免罪符を与える。

誘惑禁止条例のことは忘れていない。

脅迫されているという名目を与えて、誘惑を禁じられた女に能動的な動きをさせるのだ。

 

「あぅ……♡ わ、分かった……するからぁ……」

 

姉はソファーから降りて、蓮の前で膝をつく。

蓮が正面を向けば、テレビと姉の頭を同時に見ることができた。

 

「じゃあ、イかせてみせてよ。僕はサッカーを見てるからさ」

「むぅ、蓮くん……ひどい……」

 

もののついでのような扱いに、姉は頬を膨らませていた。

蓮はそんな彼女の金髪を優しく撫でてやりながら、こう付け足す。

 

「ちゃんとしてくれたら、好きな体位でさせてあげるからさ」

「ほんとう?」

「本当だよ」

 

そう言うと、姉はすぐに笑顔を取り戻し、嬉々として弟のモノを取り出した。

そして、躊躇なくそれを口に含む。

温かくぬめった口腔内の感触に、蓮は一瞬息を呑んだ。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「んちゅ……♡ はむっ……♡」

 

エマは弟のペニスを、アイスキャンディのように舐める。

竿の裏筋を舌先でなぞるように刺激し、亀頭の部分を飴玉でもしゃぶるかのように口に含み、舌で転がした。

 

「はぁ、気持ちいいよ、お姉ちゃん」

 

贅沢な時間だった。

ソファーにゆったり腰掛けて、好きなスポーツを観戦しながら、美しい姉に奉仕させる。

年上の女性を、完全にペットとして従えているような、偉い男にでもなったような優越があった。

 

「はむ……れろ……♡ じゅる……♡」

 

エマもいつも以上に興奮しているようで、積極的に舌を動かしてくる。

魔人種の女性は口内にも性感帯があるという。

そのためフェラをさせると、自然と上顎や喉奥へモノを擦り付けようと、濃密な口淫をし始める。

 

「じゅぷっ♡ ぐぽっ♡ ずぷっ♡」

 

唾液まみれになった肉棒に、エマは何度も唇を押し付けた。

その度に卑猥な水音が響く。

 

「そう、その調子だよ?」

 

蓮は姉の頭を掴んで、乱暴に前後させた。

 

「ごぶっ♡ げぼっ♡ ん ゚っ♡」

 

エマは苦しそうな声を上げるが、決して逃げ出そうとはしない。

むしろ自ら頭を前後に動かして、弟が射精しやすいように、献身的に尽くそうとする。

その健気な姿に、蓮はますます昂っていく。

サッカーの試合なんてもう見ていない。そんなことより姉の口を犯したかった。

そういう意味では、姉の思惑は成功していたのかもしれない。

 

「っぐ、お姉ちゃん……っ」

 

ついに蓮が果てるかという、そのとき――

 

「あ」

 

姉のスマホが着信音を鳴らした。

無粋なことだが、誰が悪いわけでもないので、姉に止めてもらえばいい。

 

「ぷはっ……ふふ♡」

 

姉は蓮の逸物を口から抜くと、スマホを手に取り……意味深な笑みを浮かべた。

弟としての経験で悟る。

あれは、悪い女の顔だ。ああいう艶笑を浮かべた姉にはいつも、手玉に取られてしまう。

 

「はい。ああ、アリサ、どうしたの?」

 

なんと姉は、そのまま電話に出てしまった。

態度からして学校の友人だろうが、蓮のペニスはほったらかしだ。

 

「いま? ええ、大丈夫よ?」

「っ!?」

 

呆れたことに、姉は蓮の前から離れて、友人とのお喋りを始めようとしている。

 

「ちょ、お姉ちゃん……」

 

流石にそれはないだろうと抗議するも、姉はなにやら人差し指を唇に当てて片目を閉じた。

その手でシャツの裾を引き上げて、豊満な胸を見せびらかしながら。

 

「ああ、ごめんね。弟が構って欲しいみたいで♡ ふふ、可愛いでしょ?」

 

姉は通話相手にそう言いながら、リビングを出て行こうとする。

 

(っ、そういうことかよ……)

 

姉の意図が読めてきた。

つまり――襲ってみろと。

姉の友人にバレるかもしれない状況で、悪戯できるならしてみるがいい――と。

そんな挑発的な笑みを残して、姉は自室に向かっていく。

 

「っ!」

 

蓮はテレビを消した。

リビングの明かりも消して、姉の後を追った。

サッカーなんて、もうどうてもよかった。

 

 

 

 

姉を追って、姉の部屋に入る。

 

「なぁに? また蓮くんの話?」

 

ベッドの縁に腰掛けた姉は、学園の同級生か後輩と思しき相手と話しているようだ。

話題はどうやら自分のことらしい。

蓮はそれを耳にしつつ、姉の背後に座る。

 

「そうねぇ、昔は甘えん坊で、いっつもお姉ちゃんの後ろをついてきてくれたの♡」

 

その弟が、いま背後から自分に手を伸ばしていることを知りながら、姉は通話を続けた。

 

「無防備に抱き付いてくれたときのこと、いまでも覚えてるわ――んっ♡」

 

姉を抱き寄せると、姉は引き寄せられるまま、蓮の膝に座った。

 

「最近はすっかり男の子らしくなって……ぁ♡」

 

姉を抱き寄せた左右の腕を、乳房と下腹部に移動させる。

手は服の下に入り込み、胸と秘所を同時に愛撫し始めた。

 

「ええ、結婚を前提にした養子縁組よ。弟であると同時に、将来の旦那様なの♡

 んっ♡ だから、男らしくなっていくのが……はぁ♡ 嬉しくて……っ♡」

 

通話相手に応える姉の言葉は、遠回しなおねだりであるように聞こえた。

例えば『男らしくなっていくのが嬉しい』というその発言は、

 

「ひうっ♡ はぁ♡ っっっ♡」

 

『もっと強くしてほしい』――という意味だった。

蓮は通話中の姉を感じさせ、姉は快感の声を押し殺しながら通話を続ける。

 

「エッチなこと? っ♡ なぁに? そんなことが聞きたいの? っっっ♡」

 

蓮の手の動きが激しくなるにつれ、姉の吐息は熱く荒くなる。

通話の相手も相手で、なにやら姉と蓮の関係に興味津々なようだ。

男が希少な妖魔界の感覚だと、兄や弟がいるというのは、生まれながらの勝ち組なのだという。

 

「もぅ……エッチなことなんて、してるわけないじゃない♡」

 

いま正に、弟に乳首と陰核を弄られていながら、姉はどこか妖艶に嘘を吐く。

友人に対しても、蓮との関係は秘密にしているようだ。

だから――こんなことをしているなんて、バレるわけにはいかない。

そう思うと、もっとこの姉を感じさせて、通話相手に気付かれないよう困らせてやりたい。

蓮はそんな欲情に駆られながら、姉への愛撫を強めていく。

 

「っっっ♡ 誘惑禁止条例、知ってるでしょ? 婚前交渉なんてしたら、いけないのよ?」

 

姉は抵抗らしい抵抗をしていない。

蓮の手が服を脱がせていっても、姉は自ら腰を浮かせて従った。

袖を抜く途中でスマホを持ち替えもして、最後のショーツが床に落ちる。

一糸まとわぬ姿となった姉に、蓮は再び手淫を再開させた。

 

「ひぁっ♡ うっ♡ ううん、なんでも、ない♡ もっと、聞きたい? んんっ♡」

 

くちゅくちゅくちゅっ――と、蓮の手が姉の膣口から水音を鳴らす。

 

「はぁ♡ 私もね、最近、我慢できないの♡ 弟が、日に日にオスになっていって♡ ぁんっ♡」

 

姉はベッドの縁に腰掛けていた姿勢から、蓮に背を向ける形で膝の上に座り直していた。

 

「私の、あっ♡ 胸とか、お尻を……ふぅぅっ♡ 獣、みたいな目で、見てくれるの♡ んっ♡」

 

姉に密着し、右手でクリトリスと割れ目を擦りつつ、左手は豊満な乳房を下から揉み上げる。

 

「っっ♡ はぁ♡ 私のこと、襲いたそうにしてる顔……はふっ♡ すごく、ドキドキするの♡

 逞しくなった体で組み伏せられてっ♡ あっ♡ 無理矢理、感じさせられてっ♡ ぁぁぁ♡

 イかされ、ちゃうっ♡ のぉ♡ 太くて、長い、指でっ♡ なにより、男性の、あれでっ♡」

 

蓮は気付いていた。

姉はここに蓮がいない『てい』で電話をしている。

その前提で、自分には直接聞かせられないことを、口にしようとしているのだ。

あくまで、電話で友人に吐露するだけなら、誘惑禁止条例には抵触しないから。

 

「そんな、想像して、オナニーしてるとっ♡ 言いそうになるの――」

 

姉は濡れた瞳でこちらを振り返り、震える唇で、魔法の呪文のように言う。

 

「好きなだけ、犯して――って♡」

 

その言葉が、蓮の理性を蹴散らした。

誘惑(チャーム)を受けたわけでもないのに、頭の中が燃え上がった。

姉の通話相手に聞かれるかもとか、そんなことを考える余地はなかった。

 

「んむぅ♡」

 

姉の唇を奪って、押し倒す。

姉はそれを拒まず、スマホを耳に当てたまま、仰向けに倒れた。

 

「ぢゅっ♡ むちゅっ♡ れろっ♡ ちゅぷっ♡」

 

舌を絡め合いながら、両手で姉の乳房を掴み、ぐにぃっと歪ませる。

 

「いいよ、犯してあげる」

 

思わず口をついた言葉は、通話相手に聞こえていたかもしれない。

構うものか、と思った。

 

「っっっ♡」

 

嬉しそうに、背徳感の笑みで震え上がっている姉のことで、頭がいっぱいだ。

 

「ぷあっ♡ 待って、通話――」

 

姉は事が始まる前に、スマホの画面に指をスライドさせた。

流石に通話を切ったということだろう。

それが済んだなら、もう遠慮はいらなかった。

 

「ひあっ♡ 蓮くんっ♡ 落ち着いて、ゆっくり――」

 

蓮は息を荒げながら、姉の膣口に逸物を差し込む。

姉も蓮の気迫を感じたのだろう、どんな風にされるのかと背筋を震わせていた。

 

「あああぁぁぁっっっ♡♡♡」

 

一息に最奥部まで突き立てると、姉が弓反りになって嬌声を上げた。

 

「また、入れられただけでイっちゃったね? でも、手加減しないよっ!」

 

パンッ! パァンッ!!

肉を打つ音と共に、蓮のペニスが姉の膣奥を突きまくる。

 

「あぁぁぁぁぁっ♡ すごっ♡ 蓮くんっ♡ 獰猛にっ♡ なってりゅっ♡

 お姉ちゃんのことぉっ♡ 犯してるよぉっ♡」

 

姉の膣内は既に愛液で満たされており、ピストン運動が潤滑だった。

 

「されたかったんだろ? こういう風にっ! だからあんなに、僕を挑発して!」

「だってぇ♡ そうしないとっ♡ できないからぁっ♡ 誘惑、できないからぁ♡」

 

互いの背中を抱き合いながら、姉弟はベッドを軋ませた。

 

「ああ、そうだよね。かわいそうにっ、こんなにドスケベな体で、エッチに誘えないなんてっ。

 僕が、してあげるからねっ! 優しく、愛情たっぷりに、レイプしてあげるからっ!」

 

蓮は姉の手首を頭上で交差させ、片手でそれを押さえ込み、覗き込むような姿勢で腰を打つ。

 

「ああぁぁっ♡ 蓮くんっ♡ こわい♡ 嬉しいっ♡ 頭、くらくらしちゃうっ♡

 押さえ込まれてっ、逃げられないっ♡ 蓮くんの気持ちっ、強くてっ、雄々しいよぉ♡」

「好きなんだろっ? こうやって犯されるみたいにされるのが、一番イっちゃうんだろ?」

「うんっ♡ 好きぃっ♡ 蓮くんがっ♡ 男らしくなってるのっ♡ 大好きなのぉっ♡

 何度もっ、蓮くんにっ、犯させてるうちにっ♡ 私っ♡ 犯されたがりになっちゃったのぉ♡」

 

蓮は両手で姉の腰を掴み、軽く浮かせるようにして、怒張を前後させた。

擦り上げながら子宮口を突くと、姉の下腹部が薄く盛り上がり、抽送の激しさを物語る。

 

「いいぞ、エマ! もっとおねだりするんだっ! 僕の言うことに従うんだっ!」

「はいっ♡ 蓮さんっ♡ 言うことっ、聞きますっ♡ 従わせてくださいっ♡」

 

蓮が乳房を掴みながら命じると、姉は姉であることを辞めた。

目の前にいる強い男に服従する、弱い女であることを愉しみ始めた。

 

「後ろ♡ 後ろから、お願いします♡」

 

おねだりを命じられた通り、姉は自分のされたいセックスを口にし始める。

蓮の手から解放されると、自ら四つん這いになり、真っ白な尻に手を沿えた。

 

「バックからぁ♡ 突いてくださいっ♡ 獣みたいにっ、征服してくださいっ♡

 おっぱい揉み揉みしたり、お尻ぺんぺんしたりしてぇ♡ 私のこと服従させてくださいっ♡

 でないとだめなのっ♡ 蓮さんにそうされないとっ♡ 一番気持ちいいイキ方できないのぉ♡」

 

姉の卑猥なおねだりを聞いていると、蓮のペニスが硬さを増していく。

姉の秘裂に挿入すると、既に愛液が溢れ出しており、スムーズに奥まで入った。

 

「あぁぁっ♡ きたっ♡ 大きいよっ♡ おちんぽ、かっこよくなってるぅ♡」

「お前の望み通りに、乱暴にしてやる!」

 

蓮は姉の背中に覆い被さり、背後から乳首を摘まむ。

 

「あぁっ♡ おっぱいきもちいいですっ♡ もっとっ♡ 鷲掴みにしてぇ♡」

 

姉は上体を捻って、自分の胸を蓮に差し出した。

蓮はその柔らかな膨らみを鷲掴む。

 

「あんっ♡ 蓮さんの指っ♡ 力強いっ♡

 これっ♡ これなのっ♡ おっきな手が、深く食い込むとぉ♡

 体がっ♡ 悦んじゃうっ♡ 深いところからイっちゃうよぉ♡」

 

人間より頑丈な妖女の体が、広く深い性感帯で、乱暴な手付きを受け入れる。

脳内にぶちまけられた興奮物質が痛みを忘れさせ、そんな状態で快感を求めれば、自然と犯されるようなセックスが欲しくなる。

そんな業の深いサキュバスの体に、蓮は口角を引いた。

 

「ほら、お尻もだろ?」

 

パン! と音を立てて、姉の尻を叩く。

 

「きゃぁぁっ♡ 痛いっ♡ 気持ちいいよぉ♡」

 

姉は悲鳴を上げるが、すぐに甘い声に変わる。

そのまま腰を打ち付ければ、手の時とは別の形で、姉の尻から音が鳴る。

 

「あひゃっ♡ 奥に♡ ぶつかってるっ♡ 一番イっちゃうとこっ♡ 衝突っ、されてるぅ♡」

 

スパンキングとピストン、その合わせ技を繰り広げる。

尻を叩けば膣肉が締まり、姉は何度も甘イキした。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ひぁぁぁっ♡ 止まらないっ♡ イっちゃうの止まんないぃぃぃっ♡

 叩かれてもっ、突かれてもっ♡ イってるっ♡ 違うイキかたっ、合唱してるよぉっ♡」

 

刺激されれば大小の絶頂を迎えるほどに、姉の全身はイキやすくなっていた。

 

「いいぞっ、このままっ、狂うくらいイかせてやる!」

「はいっ♡ 壊れるまでっ♡ してほしいんですっ♡ もうっ、おかしくなってるのっ♡

 なにされてもイっちゃいそうっ♡ してっ♡ 女にしたいことっ、私にしてぇっ♡」

 

姉のおねだりに応えて、ひたすらに彼女を犯す。

まずはバックから、一心不乱に腰を振って、肉打つ音を連発させた。

 

「んぁぁっ♡ しゅごいよぉっ♡ んおっ♡ こんなっ、されたらぁっ♡

 ぉぉぉっ♡ 堕ちちゃうっ♡ 屈服しちゃうっ♡ パワフルなのっ、好きになるぅっ♡」

 

弟に欲望のまま突かれ続け、姉は絶頂を繰り返した。

胸を掴んでも、尻肉を掴んでも、イっている状態に別の軽イキが加わるだけで、淫らさは増すばかりだ。

 

「んおぉぉぉっ♡ またっ♡ おっ♡ すごいのくるっ♡ いつもよりおっきいのくるっ♡ きてるっ♡ あっあっあっあっあっあああああぁぁぁぁぁっっっっっ♡♡♡」

 

雄叫びめいた嬌声を上げながら、姉は意識が散るほどの大絶頂に到達した。

昇天する意識の道連れとするように、膣圧が蓮の根元から先端までを締め上げた。

危うく果ててしまいそうだったが、蓮は更に姉を責めることにした。

 

「ほらっ、勝手に気絶するんじゃない!」

 

姉の首筋を――甘噛みする。

 

「はひぃぁぁぁあああっっっ♡」

 

姉は首を反らしながら、捕食される快感に打ち震えていた。

 

「こっちを向け、おっぱいも食べてやるよ!」

「はいぃぃっ♡ 蓮さんに食べられたいっ♡ 私の体っ、好きなように味わってくださいっ♡

 キスマークでもっ♡ 歯形でもっ♡ 痣でもっ♡ いっぱい刻みつけてくださいっ♡」

 

蓮は姉を押し倒し、正常位で突き上げつつ、彼女の胸を口に含んだ。

 

「あぁんっ♡ いいのっ♡ 私が、嫌がるとか、思わないでいいからっ♡ あひぁっ♡」

 

歯を立てて乳首を吸い上げると、姉は喉を反らして喘ぐ。

きゅんきゅんとした膣圧からして、痛みを伴う快感にも達していた。

 

「してっ♡ もっとしてぇ♡ 弟のっ♡ いけない欲求っ♡ 受け止めさせてぇっ♡」

 

蓮は姉の要望に応え、強めに乳輪ごと口に含む。

もう片方の乳房を握り込む。指先を食い込ませ、果物なら潰れるほどに強く。

 

「あひぁぁっ♡ すごっ♡ 本当にっ♡ 犯されてりゅっ♡

 弟にっ♡ 欲望のままにっ♡ れいぷされちゃってりゅっ♡」

 

姉の反応は、今までで一番大きかった。

 

「もう、止まらないぞっ! 僕が射精するまで、お姉ちゃんがどうなっても止めないからな!」

 

姉の体を抱き寄せ、引き絞るように抱きしめながら、体面座位に移行する。

 

「はいぃっ♡ 出してっ♡ 私の中にっ、いっぱいっ♡ 雌奴隷みたいに、してくだしゃい♡

 蓮さんのっ♡ エッチな気持ちっ♡ 全部っ♡ 優しいのも怖いのもぜんぶぜんぶぅっ♡

 叩き付けてっ♡ 私のことっ、変えちゃってくだしゃいっ♡」

 

姉も蓮の背中を掻き抱き、愛の誓いであるかのように訴えた。

 

「言われなくてもそうしてやる!」

「んおぉぉっ♡ きたぁっ♡ 本気ピストンっ、突き上げぇっ♡ オスの動きっ♡ しゅごいっ♡ イカされるのしゅごいぃぃ♡ ずっとずっとイってりゅのぉぉぉ♡」

 

姉は、自分が何を言っているのかも分からない状態で快楽に溺れていた。

 

「うぁぁっ……出すぞっ、中にぶちまけるっ」

「はいぃっ♡ 中出しっ♡ 子宮に注ぎ込んでっ♡ 蓮さんの赤ちゃんっ♡ 孕ませてくださぁい♡」

 

姉の体が弓なりに反る。

その動きに合わせて蓮も腰を突き上げた瞬間、姉は絶叫した。

 

「イクッ♡ イグゥゥッ♡ お゙お゙お゙ぉぉぉっ♡♡♡」

「っぐ!」

 

絶頂による膣内の痙攣が、蓮の肉棒に限界を迎えさせた。

 

「あぁぁぁぁぁぁっっっっっ♡ 出てるっ♡ 熱いのっ♡ 奥まで届いてりゅっ♡ 弟ザーメンっ♡ 種付けられてりゅうっ♡ ひああぁっ♡ まだっ、出てっ♡ あへぁぁっ♡ んお゛っ♡ おおおっ♡」

 

姉は、蓮が射精してもなお、痙攣し続けていた。

蓮の動きが止まっても喘ぎ続ける様は、もはや発狂と言ってもいい。

 

「はひぃ……♡ はぁっ、はぁ……♡」

 

蓮はゆっくりと陰茎を引き抜くと、姉の体をベッドに横たえた。

 

「ふぅ、まったく……レイプ願望もここまで来ると、こっちが困るな……」

 

蓮は、汗ばんだ前髪をかき上げながら呟いた。

姉は気絶している。経験上、これはしばらく目を覚まさないやつだ。

とりあえず体を拭いてやるかと、蓮はティッシュを探して――

 

「え?」

 

ベッドに転がっていた、姉のスマホが目に入る。

スマホの画面には――――『通話中』という文字が表示されていた。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございます。

気がつけば随分とご無沙汰しておりました。
続きを待っていてくださった方々、申し訳ありませんでした。
年末の忙しさを呪いつつ書き溜めた義姉編、どうにか年内完結できそうです。

年内にあと二話ほど更新しますので、お暇なときにでもお読みください。


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姉とも ~姉は友達すら弟に差し出す~

 

 

姉との関係がバレた。

先日の電話プレイで、姉が通話を切り損ねた相手に。

姉は「心配ない」と言っていたが、蓮の頭はここ数日、その件でいっぱいだ。

 

「えっと、北森くん……」

「ん? ああごめん、どうしたの?」

 

教室で頭を悩ませていると、クラスメイトの女子が声を掛けてきていた。

妖女ではなく人間の女子だ。

○学校の教室では、男子と妖女が色んな意味で親しくしていて、女子がそれを微妙に忌避しているというのが典型だった。

そういう見えない壁を越えて声を掛けてくる女子は珍しい。

 

「えっと、大したことじゃないんだけど……連休、何か予定ある?」

 

連休……そういえば、もうすぐゴールデンウィークだ。

教室内でもその話題が多い。

蓮が耳にした限りだと、妖女には『帰省』を口にする子が大半だ。

男子の場合は、彼女とセックスしまくるとか、妊活するとまで言い切る者もいる。

そんな教室内で、蓮の予定が話題になると、一部の女子が耳をそばだてた。

 

「ああ、初日から家族の帰省に付き合って妖魔界に行くんだ」

 

蓮は帰省組だった。

母方の実家、つまり妖魔界にあるエルフの国に足を運ぶ予定である。

 

「そ、そうなんだ……」

「あ、もしかして遊びに誘ってくれてた? だったらごめんね」

「ううん、いいのっ」

 

女子生徒は残念そうな顔をすると、幾つか世間話をして、席に戻っていった。

 

「あーあ、気の毒に」

 

移動教室のため廊下を歩いていると、級友の男子が先ほどの一件をそう評する。

 

「気の毒?」

「鈍感かよ。さっきの子、お前をデートに誘ってたんだぞ?」

 

連休の予定を尋ねてきたということは、そうとも取れる。

 

「まさか、皆で遊びに行く予定があったみたいだし、義理で誘っただけだろ」

「はい、モテる男の無自覚発言いただきましたー」

 

級友はそう言うが、言葉ほど嫉妬の念はない。

この級友にも妖女の恋人がいて、連休はたっぷり愛し合う予定だからだろう。

 

「モテるも何も……」

 

蓮が微苦笑していると、察しのいい級友はその先を口にする。

 

「まー、お前ハーフで顔いいし、家も羽振りがいいからな。それ目当ての女が寄ってくるのも、いまに始まったことでもねえか」

 

長い付き合いの友人は、蓮のそうした苦労も知っていた。

 

「なんでだろうね? 特に人間女子にだけど、顔と家柄に目の色を変える子が多いのは」

「そういうもんだろ。俺たち男が巨乳美人を好きみたいに」

「でも、妖女だとそういう感じはしないんだよね」

「あー、妖女と女子じゃ、男に惹かれるポイントが違うって言うからな」

 

蓮は首を傾げる。

妖女の母から産まれ、妖女の姉と育った蓮の基準は、妖魔界よりだ。

妖女は男を顔で選ばず、遺伝子の好相性を嗅ぎ取り、目ではなく鼻で選ぶ。

相手の経済力については、基本的に『一夫多妻で協力する』なので重点的ではない。

 

「妖女は性欲、女は物欲らしいぞ?」

 

地球人と魔人種の相違が、そのまま表れた格言だ。

 

「まあどっちにしろ、蓮には愛しのお姉ちゃんがいるから脈無しだったけどな」

「シスコンみたいな言い方、やめてくれる?」

「許嫁だってんだから、むしろシスコン以上の何かだろ」

 

蓮と姉が、将来の結婚を見越した義姉弟であることは、級友も知っている。

妖魔界ではしばしばある関係だからだ。最近は驚かれることも少ない。

 

「で? ぶっちゃけ、そのお姉ちゃんとはどんな関係?」

 

級友が肩を組んで、小声で聞いてくる。

 

「清く正しい姉弟関係だよ。結婚についても、将来どうするかなんて考えてないさ」

 

大嘘である。

級友はどこまで察しているのか、悪戯を思いついたように、

 

「へー、じゃあ今度、俺に紹介して」

「――――」

「冗談だよ。生まれて初めて殺気を感じさせんなよ」

 

冷や汗を掻いてたじろぐ級友だった。

教室に着いたので、姉についての話は切り上げる。

結局……昨夜の電話プレイに関しての妙案は浮かばなかった。

 

(お姉ちゃんは心配ないって言ってたけど……どう「心配ない」んだ?)

 

 

 

 

その頃、お姉ちゃんことエマは、同級生のアリサと密会していた。

 

「あ、あの、エマさんっ、わたし誰にも言いませんからっ」

「そんなに怯えられると、ちょっと傷ついちゃうなぁ」

 

休み時間に空き教室へ呼び出されたアリサは、校舎裏で不良に囲まれたような顔をしていた。

アリサは平凡な妖女子である。

エマと同じエルフ系であり、血筋的にも同じ妖魔界国の出身となる。

違うのは、エマが貴族の血筋であり、もっと言えば旧王族であること。

そのあたりもあって、アリサから見てエマは同級生だが、圧倒的に格上なのだった。

 

「昨日のあれ……どうだった?」

「っっっ」

 

エマが耳打ちするように問うと、アリサは顔を真っ赤にした。

昨日のあれ――エマに電話をしたら、弟さんに『悪戯』をされ、最後まで至るところを聞かされたことだ。

 

「な……なんで私に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

少し震えながら、アリサは追及した。

そう、電話をするように言ったのは、このエマだ。

時間を指定しただけで黒とは言えないが、エマの微笑を見ると確信できる。

彼女はきっと、アリサが電話してくる時間帯に合わせて、弟が自分を襲うように仕向けたのだ。

 

「ふふ♡ アリサこそ、どうして通話を切らなかったのかなぁ?」

「そっ、それは……」

 

そこを突かれると、アリサも返す言葉がない。

最初は、艶っぽい声を上げ始めたエマのことを、偶然だろうと思った。

次第に空気が怪しくなり、事態が本格化すると、エマと蓮の声が聞こえ始めた。

その時点で、アリサの方で通話を切ればよかったのだ。

でも、できなかった。

スマホを耳から離せなかった。

 

「蓮くんが私を苛める声、聞いちゃったのよね?」

「っっっ♡」

 

思い出したアリサは、少し内股になって体を縮こまらせる。

聞いた、確かに聞いた。

エマから聞いていた弟の蓮くん、会ったこともないのにアイドル化されている可愛い弟さん。

それが、予想していたよりもずっと雄々しく、エマを責めていた。

アリサから見れば格上なエマを、快感に喘がせて支配していた。

通話越しの声だけでも、そういう男らしさが伝わってきて……

 

「子宮、疼いちゃったでしょ?」

「ひうっ……」

 

壁際に追い込まれたアリサは、エマに耳元で囁かれて震え上がる。

顔は耳まで赤く、目は濡れていた。

 

「無理もないわ。私についた蓮くんの残り香だけで、アリサってば時々エッチな顔してたもの。怒らないから、正直に言ってごらんなさい? 私と同じこと、されたくなっちゃったんでしょ?」

「ち、違い、ます……っ」

 

アリサが自分の身を抱くと、豊満な胸が腕に持ち上げられる。

誰が見ても、エマの言葉が正鵠を射ていた。

 

「そう? なら、本題に入りましょうか。ねぇアリサ、本当に内緒にしてくれる?」

 

再確認するエマに、意図を掴みきれないアリサが、恐る恐る目を合わせる。

アリサの目に映ったのは、艶笑を浮かべるエマの美貌だ。

 

「もしアリサが黙っていてくれないと、色々と面倒なことになっちゃうの。

 蓮くんも困っちゃうし、私たち引き離されちゃうかも……だから、ね?」

 

内緒を意味するように、エマは人差し指を唇に当てて、片目を閉じる。

 

「黙っている交換条件に、なにかない?」

「なにか、って……」

 

アリサもようやく、エマの言いたいことを理解する。

つまり、金銭なり何なり「口止め」を要求しないのかと。

そういう形にした方が、エマとしても安心できると言いたいらしい。

加えて――煽っている。

アリサに、エマからの伝聞で聞いただけの『蓮くん』に恋慕すら抱いているアリサに、『千載一遇の好機』を与えている。

もしや、この状況に持っていくために、あんな声を聞かせたのではないか……?

そんな思考が、アリサの頭の片隅を掠めた。

片隅に過ぎなかったのは、別のことで頭がいっぱいだったからだ。

 

「じゃ、じゃあ……」

 

アリサは生唾を飲んで、エマと目を合わせる。

頬を染めて、情欲を堪えるような目をしながら――

 

「蓮くん……お、弟さんと……」

 

そう、アリサの頭をいっぱいにしているのは、彼だ。

エマから嗅ぎ取る残り香と思い出話で十分だと思っていた、伝聞上の王子様。

それがあの電話で、より生々しい『男』になってしまった。

不思議と嫌悪感はない。それどころか、アリサの『女』に火を点けた。

物語の登場人物に恋するような純情が、メスの劣情へと引火してしまった。

そうなることを分かっていたかのような、エマの『交換条件』に、純朴なアリサは抗えず――

 

「会いたい、です……二人で……っ♡」

 

縋りつくように、エマを『脅迫』するのだった。

弟との関係をバラされたくなければ、弟を『貸せ』と。

そんな、彼女らしからぬ外道な要求に……姉であるエマは、くすりと微笑むのだった。

 

 

 

 

「というわけで、蓮くんにアリサを『説得』してほしいの♡」

 

帰宅した姉から一部始終を聞いて、蓮は唖然としていた。

 

「な、なに言ってるんだよっ!?」

 

聞けば姉の友達であるというアリサは、この後やってくるらしい。

 

「もう、蓮くん落ち着いて? アリサが誰かにバラしたりしたら困るでしょう?」

「それは、困るけど……」

 

姉との関係が暴露されたらどうなるか。

暴露先にもよるが、両親が姉弟を引き離す可能性は十分にある。

悪くすれば蓮が強姦罪に問われるか、姉が誘惑禁止条例違反に問われるだろう。

 

「勝手に進めてごめんね? でもアリサ、前から蓮くんのこと好きだったみたいだから」

「いや、会ったこともないのに……」

「会わなくても好きになっちゃうものなのよ、妖女は特に」

 

嗅覚で惚れるという妖女なら、確かにあるかもしれないが……

 

「いや、そんなことより……お姉ちゃんは、いいのかよ。僕と、その、アリサさんが……」

「ちょっと妬いちゃうけど、アリサならいいかなって」

 

姉は蓮が他の女と関係することに、それほど抵抗感はないようだ。

人間界の女性なら激怒するだろうが、一夫多妻制に生きる妖女はそんなものらしい。

 

「大丈夫♪ アリサはいい子だから。ただ、蓮くんへの気持ちが抑えられないだけで」

 

姉弟の関係に口を噤む代わりに、蓮との時間を要求したというアリサ。

姉に写真を見せてもらったが、地味めのエルフ系で、悪人には見えなかった。

純粋に出会ってお近づきになるなら、決して悪くないと言い切れる。

 

「だからって、説得って、なんて言えば……」

「やーねー蓮くんってば」

 

姉は蓮に体を寄せて、喉にキスするように囁きかける。

 

「男の子には、女の子に『誰にも言えなくする方法』が、あるでしょ?」

「っ」

「大丈夫、あの子も()()()()()だから」

 

ぞくりと、蓮の背筋を悪寒が走る。

姉の提案はつまり、蓮にアリサを襲えと言っている。

自分の友達を、犯してもいいと言っているのだ。

人間界の感性で言えば、狂気と言っても差し支えない。

 

「蓮くん? 蓮くんもいずれは、一夫多妻の旦那様になるのよ?

 お姉ちゃん以外の女もモノにしなきゃいけないの……」

 

お説教のように語る姉の声には、説教とはかけ離れた、背徳的な興奮が滲んでいた。

 

「そういうときの練習だと思って、ね?

 蓮くんを思って枕を濡らしてる私の友達を助けると思って。

 上手く行かなかったときは、お姉ちゃんが何とかしてあげるから――」

 

姉の手は蓮の肩から腹をなで下ろして、気がつけば隆起していた股間を軽く撫でる。

妖しく輝く瞳は、誘惑(チャーム)するように蓮を見上げていた。

そんな姉は、呪文を唱える魔女のように、蓮にキスしながら言う。

 

「お姉ちゃんのお友だちに、男の子(レイプ)しちゃって♡」

 

そうして、姉は外出した。

入れ替わりでやってくる友人が、弟と二人きりになれるように。

 

 

 

 

「お、お邪魔、します……」

 

やがて家にやってきたのは、写真で見た姉の友人、アリサだった。

小柄で地味だが、それは妖女の水準で見た場合で、人間基準で言えば『普通に可愛い』。

自信なさげな顔立ち、着飾らない茶髪、化粧っ気のない可憐な顔立ち。

胸のラインが浮かぶ白いリブのカットソーに、淡い桜色のスカートと、手にした小さい鞄。

蓮から見れば年上のお姉さんだが、同時に保護欲のようなものを感じた。

田舎から出てきたような純情さというか、強引に迫れば抱かせてくれそうな押しの弱さを感じる。

 

「えっと、初めまして……蓮です」

「はぅ……あ、アリサです……♡」

 

玄関で出迎えた蓮に、アリサはまるで『本物だ』とでも言うような溜息を吐いた。

まるでファンが初めて実物のアイドルを前にしたような反応だ。

 

(こ、こんな、純真そうな人を……襲えっていうのか?)

 

蓮の心臓が高鳴る。

 

「ごめんなさい、急にお家に呼んでもらって……あの、お姉さんは?」

「え、ああ。なんか用事があるとか言って出ていきました」

「そう、ですか……」

 

意味のある会話ではなかった。

お互いに『本題』を分かっていて、しかしいざ当人を前にすると踏み切れなかったので、間を持たせるために言葉を交わしている。

逆に言えば、その微妙な空気こそが、お互いの本心を強く意識させた。

 

(その気、なんだ……アリサさん、本気で、僕に襲われるって、分かってて来たんだ……)

 

誘惑禁止条例は、アリサにも適用される。

家庭という世間の目が及びにくい場所で暮らす姉弟よりも、より厳しく。

ここでアリサが蓮を誘うようなことは、○校生の男子が○学生女子を襲うのと同義だ。

だから、アリサから切り出すことはできない。

事を動かすスイッチを持っているのは、蓮の方だった。

 

「その……姉から、話は聞いています。先日は、お聞き苦しいものを……」

「いえ、その……はい……♡」

 

あの件に言及すると、アリサは顔を赤くして俯いた。

その反応に嫌悪感は滲んでいない。蓮に対する性的な興奮だけが色濃く出ていた。

ゴクリ――と、蓮は唾液を飲み干す。

 

「……よければ、僕の部屋でお話しませんか?」

 

姉以外の女性にこんなことを言うのは初めてだった。

アリサは驚きの表情になると共に、エルフの長耳の先端まで赤くなると……

 

「…………」

 

コクリ――と、小さく頷いたのだった。

 

 

 

部屋に入ってすぐに、蓮はアリサを抱き寄せた。

 

「ひゃうっ!?」

「すみません、我慢できなくて――」

 

蓮はアリサの身体を扉に押し付けて、唇を奪う。

 

「んむっ♡……ふぁ……ちゅぱ♡」

 

アリサは臆病そうに震えながらも、されるがまま唇を貪られる。

キスに不慣れな、全て相手に任せてしまっているような反応だ。

 

「はふ♡ ああぁぁ♡ んっ♡」

 

唇を甘噛みされ、啄まれるほど、アリサは驚きと興奮を吐息に込める。

 

「アリサさん……」

「はぁ……っ♡ あ、あう♡」

 

熱い瞳で見詰められたアリサは、何か応えようとして、言葉が出ない様子だ。

男とこういうことをした経験はないのだろう。非常に初々しい。

そんなアリサに、蓮は嗜虐心と保護欲を同時に抱いた。

 

「襲っても、いいですか?」

「ひうっ♡」

 

耳元で囁きかけると、アリサの体がびくんっと震える。

そして戸惑うように目を泳がせる。

誘惑禁止条例があるので、イエスとは言えない。

かといってノーと答えたら、できなくなってしまう。

この場合、ノーと言わないことが、雄弁な答えだった。

 

「部屋の鍵、掛けちゃいますよ?」

 

蓮はアリサの背後にある扉、その鍵を意識させる。

ゆっくりと鍵へ伸びていく蓮の手を、アリサは熱い眼差しで見ていた。

 

「逃げるなら、いまですよ? アリサさん、すごくエッチだから……俺、途中で止められないと思うから」

「あうっ♡ そ、そんな……こと……」

 

アリサは蓮の台詞を、強い褒め言葉と受け取ったようだ。

いま男の部屋に連れ込まれ、鍵を閉じられようとしているのに。

 

「エッチですよ。年上に、失礼ですけど……すごく可愛くて、胸とか……大きくて」

 

アリサの胸は豊満だった。

服の上からでも、全体的に肉付きがよく、腕に感じ取る抱き心地が堪らない。

 

「抱きたいです。無理矢理にでも、襲っちゃいたいくらい……」

「あっ♡ 待っ♡ はぅっ♡」

 

背中と尻の上半分を撫でると、アリサはぴくぴくと小刻みに震えた。

 

「ほら、鍵、閉めちゃいますよ? 逃げられなくなっちゃいますよ?」

 

蓮の手は鍵の取っ手に触れているが、まだ回していない。

しっかり宣告して、逃げる猶予を与えることで、アリサに言外の合意をさせるために。

 

「犯されちゃうんですよ? 昨日の、お姉ちゃんみたいに。

 その体、男の手で、好き放題にされちゃうんですよ? いいんですか?」

「はぁ……はぁ……っ♡」

 

言葉で明言していくと、アリサは自分の置かれた状況を再確認して、息を荒げていく。

 

(すごい、表情……)

 

興奮だけだった。彼女が示す反応は、目の前に迫るセックスへの期待と欲情だけだった。

まるで性に目覚めたての男子のよう。本能に思考を奪われ、自分を制御できずにいる。

 

(ああ、お姉ちゃんから見た俺も、こう見えてたのかな……)

 

蓮はそんなアリサを見て、相手は年上なのに、むしろ年下を手の平で転がすような優越感を覚えた。

つまり、逃がす気は無くなった。

 

「はい、時間切れ」

 

カチャ――と、蓮の手で、扉の鍵が閉じられた。

 

 

 

アリサをベッドに押し倒す。

そして彼女の着衣に手をかける。

 

「あぁっ♡ れ、蓮くん、待って……わ、私……っ♡」

「ダメですよ、抵抗したら」

「んっ♡」

 

耳元で囁かれる声に、アリサはぞくりと背筋を震わせる。

 

「一応レイプですから、大人しくしてくださいね? じっとしてるだけでいいですから」

「あ、う♡」

 

アリサはこくこくと、言葉もなく首を縦に振る。

蓮が服を脱ぎ始めると、アリサはそれを食い入るように見詰めていた。

その視線には、明らかな興奮と期待がある。

蓮は下着姿になると、アリサの服に手を伸ばす。

 

「あっ♡ ま、まって、蓮くんっ。その、服……着たままじゃ、だめ?」

「ダメに決まってるでしょう」

 

体付きにコンプレックスでもあるのか、アリサは服を脱ぎたがらないが、蓮は構わず脱がせていく。

 

「ひゃ、あうぅ♡」

 

カットソーの裾を掴んで一気に引き上げると、ウエストから胸までが一気に露になった。

白い肌だ。きめ細やかに白く、滑らかで柔らかい。

 

「ごめん、なさい……こんな、だらしない体で……」

 

アリサはなぜか顔を両手で覆って恥じ入っていた。

確かに、スレンダーな姉とは対照的に、アリサはむっちり気味な体型だ。

ウエストはやや太めで、白いレースのブラに包まれた胸は……見る限りGかHは確実にあった。

JKであるはずなのに、まるで妙齢の女性のような、柔らかな肉付き。

 

「なに言ってるんですか。すごくエロい。我慢、できない……っ!」

「きゃうっ♡」

 

蓮は乱暴にカットソーを引き抜くと、そのまま強引にブラも剥ぎ取った。

ぶるんっ! っと勢いよく飛び出した乳房に、蓮は目を奪われる。

 

「すごい……綺麗だ……」

「やっ♡ 見ないで――あっ♡」

 

アリサは両手で隠そうとしたが、蓮はその両手首を左手一本で掴み、頭の上に運ぶ。

 

「あっ♡ うそ♡ 私、組み伏せられて……♡ 蓮くんに、襲われて……っ♡」

 

ベッドに両手を押さえ込まれたアリサは、現実であることを疑うような顔をしている。

蓮はそれに構わず、スカートのファスナーを下ろして、引き抜いていく。

 

「ふぁっ♡ や、蓮くんっ♡」

「大人しくしてください。ほら、腰を浮かせて」

 

命じると、アリサは濡れた瞳を横に反らしながら、腰を浮かせた。

 

「はふっ♡ 私、脱がされて……男の子に、強引にぃ♡ 脱がされてる♡」

 

スカートだけでなく、ショーツまでも引き抜かれ、ついに一糸まとわぬ姿が晒される。

改めて見ても、女肉を強く感じさせる身体だ。

 

「アリサさん、すごい身体ですね。むしゃぶりつきたくなる身体です」

「あぁっ♡ そ、そんなこと、言っちゃだめ♡ 私なんかに……っ♡」

 

アリサは頬を真っ赤にして、涙を浮かべながら身を捩る。

 

「自分の武器を欠点だと思ってるタイプなんですね。

 いいですよ、教えてあげます。俺がどれだけ、アリサさんに興奮してるかっ」

 

蓮はアリサの胸に顔を埋めた。

 

「あぁっ♡ やっ♡ んくぅ♡」

 

舌先で乳首を転がすと、アリサはビクビクッと痙攣した。

 

「ひゃうぅぅぅっ♡」

 

未知の体験を味わったように、アリサが嬌声を噛み殺す。

両手は蓮の頭を掻き抱き、両脚は内股を擦り合わせていた。

 

「男にされるの、初めてですか? 自分でするのと、大違いでしょ?」

 

敏感なサキュバスボディを持てあまし続けてきたのだろう、アリサの反応は過敏だ。

 

「ひゃうんっ♡」

 

喋りつつ乳首を軽く啄むと、その都度アリサは身体を跳ねさせた。

唾液まみれになった乳首は、いやらしく勃起している。

 

「ああ、このおっぱいすごいな。まずは、ここから苛めてあげますからね」

 

蓮はそう宣言すると、アリサの両胸を鷲掴みにした。

 

「あっ♡ あんっ♡ 胸ぇ♡ 私の胸、揉まれてるぅ♡」

「すごい、指が沈み込む……っ」

「んっ♡ あぁっ♡そんな、強く……♡」

 

蓮はアリサの乳房を揉む手に力を込める。

むにゅむにゅと形を変える柔らかな肉の塊は、手の中で震える。

 

「やっ♡ 私、胸弱いのっ♡ あっ♡ だめ……そこ、摘んじゃいやぁ……♡」

 

アリサは蓮の手から逃れようと身体を動かすが、蓮は逃さない。

 

「逃がしませんよ。喘ぎ声、もっと聞かせてください」

 

蓮はアリサの乳房を弄びながら、片手を彼女の秘所へ差し込んだ。

 

「ひあんっ♡ そこっ、やっ、んうっ♡」

「濡れてますね。これならすぐに入れられそうだ」

「んんっ♡ ひぅぅぅっ♡」

 

蓮が指先を割れ目に這わせると、アリサは甘い声で鳴いた。

 

「あぁっ♡ はいってきちゃう♡ 男の人の指が、はいって……くるぅっ♡」

「もう一本入りました。二本目もいけますか?」

「あっ♡ だめぇ♡ 蓮くんの指、逞しくて……二本なんて、あぁぁっ♡」

 

ちゅぷん――と音を立てるように、蓮の人差し指と中指が、膣内に吸い込まれる。

アリサは目を見開き、全身を震わせた。

 

「アリサさんのここ、すごく熱いですね。熱くてヌルヌルしてて、指が溶けてしまいそうだ」

「ひあっ♡ 蓮くんっ、やっぱりダメっ♡ こんなの、止めに――」

「止めるわけ、ないでしょうっ」

 

蓮は手指の動きを早め、アリサの膣口から水音を立てる。

 

「あああぁぁぁっ♡」

 

オナニーでは体験できない、男の手による激しい手淫に、アリサは嬌声を上げた。

 

「姉とのこと、バラされるわけには行かないんです。

 ここでアリサさんを犯して、口止めしてあげますからねっ」

「ひぃっ♡ 蓮く――んんっ♡」

 

アリサは悲鳴を上げかけた口を、蓮の唇によって塞がれる。

蓮の舌がアリサの口腔内に侵入すると、アリサの舌も恐る恐る応じて、絡まり合う。

 

「んぅ……んふぅっ♡」

 

キスをしながらの愛撫で、アリサは腰を浮かせ、くねるようにして悶えた。

 

「んっ♡ あぁっ♡ だめぇっ♡ もう、許し……っ♡ わたし、イ、イっちゃ……あっあっあっあぁぁぁっ♡」

 

アリサはビクビクと身体を痙攣させ、絶頂に達した。

蓮は彼女の膣から指を引き抜くと、その手でクリトリスを摘む。

 

「ひゃうんっ♡」

 

アリサは一際高い声を上げて、身体を仰け反らせた。

 

「俺の言うこと、聞く気になった?」

「き、聞きます……っ! だから、乱暴にしないで……っ♡」

 

本気の台詞なのか、犯されているという演技なのか。

どちらにせよ、蓮のすることは変わらない。

 

「内緒にできますね? 昨日のことも、このことも」

「言わない。言いませんから。誰にも、言いませんからぁ……♡」

 

陰核を指先で愛撫されながら、アリサは懇願する。

止めることを望んでいる顔には、到底見えなかった。

 

「そっか。なら、安心して最後までできるね」

 

蓮は堪えきれず、逸物を手に取る。

この可愛い年上のお姉さんを、自分の女にしたくなった。

自分より性体験の薄い年上女性を、自分好みに調教する――その優越感が堪らなかった。

 

「やぁ……っ♡ 蓮くん、そんな大きいの入らないよぉ……っ♡」

 

アリサは怯えた表情を見せるが、その声は期待するように甘く蕩ける。

 

「大丈夫ですよ。ちゃんとほぐれてるじゃないですか」

 

蓮はアリサの秘裂へ肉棒をあてがい、一気に突き入れた。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♡」

 

がくんっ! と、アリサの身体が弓反りになって跳ね上がる。

膣口から最奥部まで肉棒に埋め尽くされ、内部の性感帯が一斉に刺激されて、達したようだ。

 

「はひっ♡ はぁ♡ ああぁぁ♡ これ♡ うそ♡ なか、入って♡ ぁぁぁっ♡」

 

口をぱくぱくさせながら、アリサは現実であることを疑うように結合部を見る。

自分が男とセックスをしているという事実を、まだ信じられないようだ。

実感を与えるため軽く動かしてやると、アリサは電流を浴びたように痙攣する。

 

「あっ♡ ああっ♡ 動いて、るっ♡ 擦れてっ♡ あっ、ふぁぁぁっ♡」

 

アリサの両手首を掴んで引き寄せ、更に深く挿入すると、アリサは背筋を仰け反らせて叫んだ。

 

「あっ♡ ああっ♡ おく♡ あたってっ♡ すごっ♡ こんなの、はじめてぇっ♡」

 

アリサは、ごく平凡な妖女子なのだろう。

つまり、サキュバスの生態に沿った女の子だ。

豊満な身体、天然の名器、自然と消える処女膜、人間の女性より広く深い性感帯。

年頃の体は自然と昂ぶり、反して男性は希少で、自慰とディルドで自己開発を繰り返す日々。

そんな女体が本物のペニスを挿入された感動たるや、いかばかりか。

 

「気持ちいいですか?」

「いいっ♡ すごくっ♡ きもち、よくてっ♡ 夢みたい♡ ああぁぁっ♡」

 

アリサは顔を両手で包むようにして、驚きと悦楽に顔を歪めている。

誘惑禁止条例を意識する余裕もないのだろう、犯されているという体裁も保てていない。

 

「もっと、突いてっ♡ あっ♡ すごいぃっ♡ あっあっあっ♡」

 

蓮は少しずつペースを上げて、アリサの膣内を解すように前後する。

流石は妖女と言うべきか、アリサの収縮も激しいものになってきた。

抱かれている男に自然と順応していき、秒刻みで拾う快感を増していく。

 

「あんっ♡ あぁんっ♡ だめ♡ もう♡ イっちゃいそう♡ あぁぁ♡」

「いいですよ、お好きなだけイってください!」

 

蓮はアリサの背中に腕を回して、抱きしめながら腰に角度を付ける。

そのまま子宮口を突き上げるようにピストン運動を繰り返し、スパートをかける。

 

「ああぁぁ♡ 待ってっ♡ これっ♡ すごいっ♡ すごいの来るっ♡ いままでしたことないイキかたしちゃうっ♡」

 

アリサは蓮の首に手を回し、脚を絡めるようにして抱きついた。

自慰でディルドを使って膣イキを体験していても、男でしか得られない絶頂がある。

アリサはいま、人生初のそれに達しつつあるのだ。

 

「アリサさん、僕も出しますよ……ッ!!」

「うんっ♡ 出してっ♡ 中にちょうだいっ♡ いっぱい♡ わたしのなかにっ♡」

 

アリサが蓮にしがみつく力が強まり、秘裂の締め付けが強くなった。

 

「あっ♡ くる♡ きて♡ あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ♡♡♡」

 

蓮の射精と共に、アリサが嬌声を爆発させた。

目を見開き、全身を痙攣させ、顔どころか上半身を紅潮させる。

 

「はひっ♡ あっ♡ ぁぁぁぁぁっ♡ ひあっ♡ ふっ♡」

 

長い絶頂だ。

アリサがこれまでに経験したことがないほどの快楽が襲っているのが分かる。

 

「はぁっ……♡ はぁっ……♡」

 

アリサは荒い呼吸をしながら、脱力した。

意識が朦朧としているのか、目の焦点が合っていない。

それでもアリサの膣内は痙攣し続け、精液を搾り取ろうとしてくる。

 

「アリサさん、凄かったです……」

 

蓮はアリサの耳元で囁く。

 

「ふぁぁっ♡」

 

その言葉だけで感じてしまうらしい。

 

「うう、ぐすっ。私、男の人に……っ」

 

べそを掻き始めたアリサに驚く。

やりすぎたか――と思ったが、アリサの表情は、

 

「抱いて、もらっちゃったぁ……♡」

 

恍惚とした笑みだった。

 

「アリサさん?」

「あう、ごめんなさい。私、こんないいことがあるなんて、いままで知らなくて……♡

 気持ち、よかったぁ♡ 女の悦びって、こういうのだったんだ……えへへ♡」

 

おかしな反応だった。

 

「それ、レイプされた女の顔じゃないですよ?」

 

ほとんど合意だったとはいえ、アリサはレイプされたというのに。

まるで積年の恋を叶えたような、屈託無く喜ぶ少女の笑顔だった。

 

「あぅ、そうでした♡ でも、優しくて、嬉しくて、あんなイキかた初めてだったから……

 ありがとう、ございます♡」

 

お礼まで言うアリサに、可愛らしさと背徳感を覚えた。

平凡な妖女子というものは、ここまで男に飢えているのか。

こんなに可愛くて、純真ないい子なのに、妖魔界では見向きもされない。

胸も大きく、締まりもいい、セックスが大好きな体を、男に愛されることなく腐らせていたのだ。

なんてもったいない、なんという悲劇だろう。

 

「もう一回、しましょう」

「ひゃうっ♡」

 

蓮はアリサを抱き上げて、体面座位の姿勢になる。

 

「ま、待って、蓮くんが、疲れちゃう……っ♡」

「はは、ダメですよ。犯されてるのに、相手の心配なんかしちゃ」

 

脚の間に手を入れて逸物の根元をとり、アリサの膣口に下から触れさせる。

 

「さっきは優しくしましたけど、この様子なら、手加減しなくても大丈夫ですよね」

「んあっ♡」

 

亀頭がアリサの中に入ると、その時点でびくびくっと震え上がる。

 

「ひゃ、ま、待ってください♡ 私の体、まだ、さっきのが残っててっ♡

 いま、いましたらっ♡ ぜったい、おかしく――」

 

腰を引き落とそうとする蓮に対して、アリサは蓮の両肩に手を置いて抗う。

一度男を知ってしまったサキュバスの体が、回を重ねるごとに乱れるのは、蓮も知っている。

アリサも自分がそうなることを予感しているのだろう。

昨日までの、男を知らなかった頃の自分が本格的に居なくなることを、怖がっている。

 

「おかしくなってからが、本番ですよ?」

 

そんなアリサの背中側で腕を交差させ、蓮は彼女をがっちりと拘束して――引き落とす。

ずぷんっ! と、蓮の剛直が、アリサを下から子宮口まで一気に突き上げた。

 

「ひぁぁぁぁぁぁっ♡」

 

アリサは悲鳴じみた声を上げながら、激しく絶頂を迎える。

 

「ああっ♡ やっぱりだめぇっ♡ もうっ、イってりゅっ♡ イキっ、しゅぎっ♡ こわいっ♡」

「すぐ慣れるよ。安心して喘いでいいからね」

 

敬語を使うのをやめて、蓮はアリサの尻肉を掴みながら腰を踊らせる。

 

「ひあっ♡ あひゅっ♡ ひぅぅぅっ♡」

 

アリサは蓮にしがみつきながら、いままで体験したことのない強さの快感に悲鳴を上げる。

それでも秘部はすっかり濡れそぼっており、結合部からは絶えず愛液が漏れ出していた。

その水音に混じって、アリサの甘い声も甲高くなっていく。

 

「ひぁぁっ♡ またイクッ♡ こんなに、早く、何度もぉっ♡ あああぁぁぁしゅごいっ♡

 蓮くんとっ、触れてるとこっ、ぜんぶぅ♡ 気持ちいいっ♡ 頭、ふわふわしゅるうっ♡」

「俺も、気持ちいいよ!」

「うそっ♡ 私で、気持ちよく♡ あううっ♡ 嬉しい♡ もっと、いっぱい……っ♡」

 

アリサは嬉々として、蓮にキスをせがむ。

 

「ちゅぱ、れろっ、んぅ……っ♡ はむっ、れるっ♡」

 

舌と唾液を交換するような激しい接吻に、アリサはさらに興奮を高めていく。

 

「エロいなぁ。レイプされてるのにそんな顔しちゃって」

「やぁ♡ 違うます♡ こんなの、れいぷじゃないですっ♡

 蓮くん、気持ちよくしてくれてるっ♡ 私のこと、可愛がってくれてますっ♡」

 

既にアリサの方から腰を動かしていた。

足を絡め、豊満な乳房を胸板に擦り付け、乳首を擦って快感を得ようとしている。

 

「だめだよ。レイプじゃなきゃダメなんだよ」

「ああぅぅっ♡ ならっ、してぇ♡ こんなに気持ちいいならっ、もっとレイプしてくださいっ♡

 蓮くんになら♡ いくらでもっ♡ 犯されていいっ♡ もっと犯してイかせてくださいっ♡」

 

女が決して口にしてはならないような言葉を、アリサは嬉々として叫ぶ。

 

「言ったな! もう止まらないぞ!」

 

蓮はアリサをベッドに押し倒し、更に体を反して四つん這いにさせる。

 

「ひあっ♡ これ、後ろ……」

「ほら、お尻を上げろ。女が男に服従するときのポーズだ」

「はいぃっ♡ 私、蓮くんの……蓮さんの、ものになるっ♡ なりますからっ♡」

 

アリサは言われるまま、尻を高く掲げる。

 

「だからぁ♡ 教えて♡ セックスの気持ちよさ♡ イキすぎたときに見える天国♡

 男の人にいっぱい突かれないと味わえないやつっ♡ 私にも、くださいっ♡」

 

蓮は、アリサの扇情的な言葉に息を呑んだ。

男を知ったアリサは、急速にメスとして覚醒してしまったようだ。

男に服従したという意味ではない。

男の劣情を苦とせず、自らの快感として呑み込んでしまう、貪欲さが目覚めていた。

 

「いいぞ、アリサ」

 

呼び捨てにして、アリサの尻を掴み、剛直の先端をひくついた秘所にあてがう。

 

「あっ、あああぁぁぁっ♡」

 

ずぷんっと一気に奥まで突き入れると、アリサは目を見開いて絶頂を迎えた。

その絶頂を長引かせるように、蓮は彼女の弱いところを重点的に突いていく。

 

「ひあぁっ♡ あっあっあっだめぇっ♡ これぇっ♡ 違うっ♡ 気持ちいいの違うのぉ♡」

 

アリサはシーツを握りしめ、腰を跳ね上げる。

 

「どうだ? 征服されてるって感じがするだろっ? 気に入ったかっ?」

「はいぃ♡ 好きっ♡ これすきですぅっ♡」

 

アリサは快楽で顔を蕩けさせながら、必死に腰を振り続ける。

 

「いいぞ、エロいぞアリサ。ほら、聞こえるか? ぱんぱんってぶつかってる音っ」

 

蓮の下腹部とアリサのヒップが衝突して、空気の割れるような音が部屋に連発する。

 

「犯されてる音だぞっ。これでも気持ちいいのかっ!?」

「きもちいっ♡ 気持ちいいですっ♡ 蓮さんのレイプしゅごい気持ちいいのぉっ♡」

 

アリサはうっとりとした表情で、腰を打ち付けられるたびに身体を震わせる。

 

「すごいぞ、エッチの才能あるな。ほらっ、もっと強くなるぞっ!」

 

蓮はピストンを加速させ、音の間隔を短くしていく。

情熱的という域を超えて、暴力的と言っていいペースになっても、アリサの喘ぐ声は止まらない。

 

「だめっだめだめだめぇっ♡ だめなんですっ♡ 突かれるほどイっちゃうっ♡

 ダメになるっ♡ 奥にっ♡ 当たるだけでぇ♡ あたまっ♡ まっしろっ♡

 イってりゅっ♡ イってイってイってりゅのぉぉぉっ♡」

 

連続絶頂に陥ったアリサの尻を撫でながら、蓮は緩急と角度を付けていく。

 

「まだ終わらないぞっ、まだまだイけるよなっ!」

「はいぃっ♡ もっとしてくだしゃいっ♡ わたしのからだっ♡ 蓮さんにあげますっ♡

 蓮さんの女になってぇ♡ もっと、犯してもらうのっ♡ 女の悦びっ、味わうのぉっ♡」

 

アリサは絶え間ないオーガズムに打ち震えながら、後ろに手を伸ばして蓮の手首を掴んだ。

突かれ続けて半狂乱になっているのに、このまま続けて欲しいと訴えていた。

 

「いいぞっ、僕もイキそうだ。受け止めろっ、気絶したって止めないぞ!」

 

蓮はアリサの腰を鷲掴みにして、ラストスパートを掛けた。

正真正銘、自分の快楽のために女の膣を使うような、一心不乱の腰付きだ。

 

「あああぁぁぁイクぅぅぅっ♡ おまんこっ♡ 壊れるっ♡ 溶けちゃうっ♡ 全身とけちゃうぅぅぅっ♡」

 

アリサは悲鳴のような声で悶え、背中を仰け反らせた。

結合部からは愛液をまき散らし、膣内は絶頂の収縮が止まらない。

 

「はひっ♡ あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙っ♡ おっ♡ おおおぉぉぉっっっ♡」

 

気が狂うほどの絶頂が、ずっと続いている。

もう最初に会ったときの、純朴な少女などいない。

メスの恍惚に吼えるような声を上げる、一人のサキュバスがそこにいた。

 

「出すぞっ! アリサの中にっ!!」

 

限界を迎えた蓮は、アリサの最奥部に精を解き放つ。

その瞬間、アリサの全身が、雷に打たれたようにビクンッと跳ね上がった。

 

「あ――ひっ――ぁ――はっ――♡♡♡」

 

とうとう声すら出なくなったらしい。

最高潮を越える連続絶頂の最中に感じた中出しは、言語に絶した快楽をアリサに与えたようだ。

身体を痙攣させ、白目を剥いて意識を失っている。

 

「……やばい、やりすぎた」

 

我に返った蓮は、アリサの秘裂から肉棒を引き抜いた。

ごぽっ、と音を立てて精液が流れ出る。

 

「ほひっ♡ おっ♡ おぉぉ♡ ほひゅっ♡」

 

ぐったりと倒れ伏すアリサの目には、ハイトーンがない。

犯され、極限まで乱れさせられた末に、純情を殺された、女の顔だった。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

トゥルルルル――と、呼び出し音が鳴っている。

相手の応答を待つことしばし、音が変わり、声が聞こえた。

 

『あっ♡ エマさんっ♡』

 

聞こえたのはアリサの声だった。

 

『ひぁっ♡ 待って――このまま? はいっ♡

 あのっ♡ エマさんっ♡ ありがとう、ございますっ♡

 わたしっ♡ 女になりましたっ♡ いま生まれて初めて、女になったんですっ♡』

 

甘い喘ぎを伴うアリサの声が、スマホから聞こえてくる。

ベッドの軋む音と、肉を打つ音、男の荒い息づかいも混じっていた。

 

『蓮くんっ♡ すごいですっ♡ こんなっ、素敵なこと――ああんっ♡

 私っ♡ 蓮くんの女になりましたっ♡ エマさんと同じっ、彼の「お姉ちゃん」になりますっ♡

 この先の人生っ♡ あっ♡ 蓮くんのためにぃっ♡ ああぁぁっ♡ 捧げる、のぉっ♡』

 

淫らな声で、将来を誓う言葉が紡がれる。

 

『蓮くんの赤ちゃんっ、くださいっ♡ 産ませてくださいっ♡

 私っ、きっとっ♡ あああっ♡ そのためにっ♡ 女に生まれたのっ♡

 この人の血をっ、残すのがっ♡ 私の使命なんですっ♡ ひぁぁぁっ♡』

 

精神と肉体の双方で絶頂するような宣言だった。

エマは、純情可憐だった同級生の変わり果てた声を聞いて、生唾を飲みながら薄く微笑む。

 

『私っ、なにもない女だったのにぃっ♡ こんなに尊い役目っ、もらっちゃったのっ♡

 エマさんとっ♡ 一緒にぃ♡ 蓮くんの「お姉ちゃん」、させてくださいっ♡

 私もっ、蓮くんのことっ♡ 守って♡ 育てて♡ 癒やしてあげるのぉっ♡』

 

弟を寝取ったとか、寝取られたとか、そういう物言いではなかった。

むしろ、同じ男を愛する女として、先達への誠意すら感じる。

生態レベルで一夫多妻な妖女としては、むしろそれが正当なのだろう。

 

『あっあっあっあっ♡ ごめん、なさいっ♡ 蓮くんがっ、止まらなくてっ♡

 またっ♡ 私の中でっ♡ イキたがってくれてるのっ♡ あああぁぁぁっ♡

 続きはっ♡ またっ♡ あひっ♡ 三人でっ♡ あああイクぅぅぅっっっ♡』

 

アリサの甲高い嬌声を最後に、通話が切られる。

街の一角にあるカラオケボックス、その一室に、静寂が訪れた。

 

「…………」

 

椅子に座っていたエマは、弟と級友の赤裸々な情事を聞いた後、スマホから目を離す。

スマホの通話は、スピーカーモードだった。

つまり、エマ以外にも、先の淫靡な通話は聞こえていた。

対面席にいる、二人のエルフ系妖女に。

 

「……っ♡」

「ふぅ……♡」

 

どちらもエマと同じ学園の制服姿だった。

一人は黒髪の、もう一人は銀髪の、エルフ系魔人種の少女だ。

 

「さて……」

 

エマは二人に目を向ける。

妖しげな笑みと、どこか昏い悦びを宿した瞳で、二人に問いかける。

 

「あなたたち……私の弟に、会ってみたい?」

 

妖女は嗅覚で男を捜し当てる。

エマを通じて蓮という男に心奪われたのは――アリサだけではなかった。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございます。

姉の友達というワードにエロさを感じるこの頃、
この章ではハーレム路線に進んでまいります。


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姉まみれ ~姉は弟のためのハーレムを作ってくれる~

 

 

夏が近付いてきた今日この頃――

 

「れ、蓮くん……これ、解いてぇ♡」

 

蓮は姉を部屋に連れ込み、手首をハンカチで縛り上げて、優しくレイプしていた。

 

「ダメだよお姉ちゃん。これはお仕置きだからね」

 

ベッドの上で四つん這いになっているエマを突きながら、尻を軽く叩いてやる。

 

「あんっ♡ やっ♡ 蓮くぅん♡ なんで、こんなこと、するのぉ♡」

 

その度に彼女の豊満な尻が揺れ、膣内の締め付けが強くなった。

 

「言われた通り、アリサさんを犯したよ? 俺たちのこと、黙っててくれるって」

「あうっ♡ よか、った♡」

「でも、弟に友達を襲わせるようないけないお姉ちゃんには、罰が必要だよね?」

 

蓮はそう言ってローターを取り出すと、豆粒大のそれを姉の菊門に押し込んだ。

 

「んんんんんっ!?」

 

スイッチを入れると、振動音が響き渡る。

 

「あああぁぁぁっ♡ 蓮くんっ♡ こっ、こんなのっ♡ どこでっ♡」

「お姉ちゃんの部屋にあったものだよ? 俺に使ってほしかったんでしょ?」

 

アナルをローターで刺激された姉は、驚いたように膣を収縮させていた。

絶頂しているときの収縮に似たそれは、蓮の逸物に常ならぬ快感を与えてくれる。

 

「アリサさん、たくさんイってくれたよ? お姉ちゃんのときと同じようにしたら、何度も奥イキしちゃって、すごく乱れてた」

 

蓮は語りながらピストン運動を再開する。

 

「ああぁぁぁっ♡ だめっ♡ 蓮くんっ♡ 許してぇっ♡」

「嘘ばっかり。妖女は犯されたがりなんてデマだと思ってたけど、本当だったんだね」

 

誘惑禁止条例を回避するために、男に自分を襲わせる妖女たち。

セックスをするための活路がレイプしかないため、性欲=レイプ願望になっているという俗説。

ネット上の誇張だと思っていたそれは、姉にもアリサにも正解だった。

 

「感謝してるんだよ? お姉ちゃんが女のイかせ方を教えてくれたから。こんな風にっ」

 

蓮は姉の弱いところを突きながら、背後から胸を揉み上げる。

 

「ああっ♡ おっぱい気持ちいいっ♡ もっと♡ もっと乱暴にしてっ♡」

 

ローターのせいか、姉はいつもより火が点くのが早い。

 

「いいよ。その代わり……またアリサさんとしてもいい?」

 

姉の胸を揉みながら上半身を持ち上げて、エルフの長耳に問いかける。

 

「ひあっ♡ それ、は……ああぁっ♡」

「お姉ちゃんが浮気だって思うなら、諦めるよ? でも、そう思ってないよね?

 俺がアリサさんとどんなセックスしてるか気になって、ムラムラしてたんだよね?」

 

蓮は斜め上に腰を突き上げ、姉の子宮口をアッパー気味に連打する。

 

「ああっ♡ そんな、ことぉっ♡ あひぃぃぃぃっ♡」

「アリサさん、お姉ちゃんのことすごく尊敬してるみたいだし、仲間外れはかわいそうだよ。

 ねぇ、いいよね? アリサさんにも、男に抱かれる悦び、分けてあげようよ?

 俺、お姉ちゃんが欲求不満にならないように頑張るから。ね? いいだろ?」

 

焦らすように動きを止め、彼女の答えを待つ。

 

「そ、れは……あううぅぅっ♡」

 

答えられずにいると、蓮は姉の弱点であるGスポットを押し潰した。

 

「ひああぁぁっ♡ らめっ♡ そこぉっ♡」

「お願い、聞いてくれるよね? お姉ちゃん」

 

甘えるようでいて脅すように囁きかけると、姉は絶頂寸前のもどかしさに震えながら、

 

「わ、分かったからっ♡ アリサのことっ、好きにしていいからぁ♡

 してっ♡ お姉ちゃんにもしてぇっ♡ お姉ちゃんに飽きないでぇ♡」

 

涙目で振り返り、友人を弟に売り渡した。

 

「飽きるわけ、ないだろ!」

 

そうして蓮は、いつものように、ハイペースで姉を突きまくる。

 

「あんっ♡ ああぁっ♡ 蓮くぅんっ♡ はげしいっ♡ 激しすぎるよぉっ♡」

「ダメだよ、受け止めてっ! これは、お姉ちゃんが一番好きだっていう証だからっ!」

 

パンッ、パァンと肉と肉がぶつかり合う音が響く。

 

「んおっ♡ おおおおっ♡ 蓮くんの、すごすぎりゅうっ♡ ああぁぁっ♡ イクっ♡ イッちゃうっ♡」

 

夕暮れの住宅街に隠れて響く、姉弟の交わり。

姉の嬌声は、日が沈みきり、両親が帰宅してくるまで続いた。

 

 

 

「蓮くん、あのね……さっきの話なんだけど……」

 

事後、ベッドの上で弟に乳首を吸わせながら、姉は頭を撫でつつ話しかける。

 

「アリサ以外にも……蓮くんに興味ある子がいるの」

「え?」

 

蓮は姉の乳首から口を離して、意外な話に目を瞬く。

姉はそんな蓮を慈母のように撫でながら、しかし魔女のように妖しげな笑みを浮かべた。

 

「いままでは、蓮くんの貞操を守るために、お友だちを家に呼ばなかったけど……」

 

妖魔界では普通の配慮だそうで、現代日本でも『おねショタ防止』として広まっている。

しかし、蓮も体が大きくなり、少なくとも女性に押し倒される心配はなくなった。

だから、姉が家に友達を呼んでも、世間的には納得される。

 

「蓮くんに会わせても大丈夫そうで、蓮くんを可愛がってくれそうな子、何人かいるの。

 蓮くんもそろそろ、姉離れっていうか、お姉ちゃん以外の女の子に慣れるべきかなぁって」

 

言葉だけなら、弟を可愛がりつつ教育する姉の台詞だ。

だが、こうして乳房を差し出し、つい先日には友人を弟に犯させた姉が言うなら、意味が変わる。

 

「それ……どんな人たち?」

 

蓮はどこか、背徳感のある胸の動機を覚えながら、姉に確認する。

姉はそんな蓮に足を絡めながら、子守り話のような声で答えた。

 

「もちろん――蓮くんの大好きな、エッチなお姉さんよ♡」

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

後日、姉が家に招いたのは、二人のエルフ系魔人種のJKだった。

 

「きゃーっ♡ 可愛いっ♡ この子がエマの弟くんかぁ♡」

「えっと、あの……」

 

銀髪セミショートで快活な印象なのが、ソフィア。

姉とは同級生で、人間界に留学してきたエルフ国の貴族令嬢だという。

長身細身なのに胸は大きく、蓮の顔を谷間に埋めて頭をなで回している。

 

「はぅ♡ 素敵♡ 天使みたい♡ ふふ、初めまして、蓮さん♡」

「いや、そんな、抱き付かれると……」

 

黒髪ロングで上品な雰囲気なのがミルシェ。

やはり姉の同級生で妖魔界貴族、趣味は読書という文系だ。

眼鏡を掛けた大人っぽい美人で、体付きも母性を感じるほど豊満だった。

ソフィアが前から蓮を抱き寄せるのに対し、ミルシェは背後から蓮のお腹を抱いている。

二人の巨乳エルフに前後から頭部をサンドイッチされて、蓮は目を丸くしていた。

 

「もう、二人ともっ。蓮くんが困ってるでしょ!

 おいたをするなら二度と会わせてあげないからっ!」

 

見かねた姉が蓮を奪い返し、自分の胸に掻き抱いた。

 

「ああっ、ごめんね蓮くんっ。お姉ちゃんちょっと興奮しちゃって」

「申し訳ありません、エマさん、蓮さんも。噂の弟さんに会えた喜びのあまり……」

 

ソフィアとミルシェが反省を示したことで、二人は姉に追い出されずに済んだ。

 

(この人たち……絶対、俺をエロい目で見てる……)

 

うぬぼれも甚だしく聞こえる台詞だが、間違いなかった。

休日、友達の家に遊びに来て、たまたま家にいた『友達の弟』を可愛く思う。それはいい。

だが、ソフィアとミルシェは、なにかとつけて過剰なスキンシップを繰り広げてきた。

今もリビングでお茶をしているのだが、両隣に座っている二人が、べったりと密着している。

 

「ねぇ蓮くん、お姉さんにもゲーム見せて?」

「私にも是非、蓮さんの素敵なお姿を拝見させてください♡」

「いや、そんな大げさな……」

 

蓮は自由に過ごしていいとのことだったので、著名な携帯可能ハードを起動していた。

ソファーに座ったその左右から、ソフィアとミルシェが腕を組むように擦り寄ってくる。

肩から上腕に二人の豊乳が潰れ、その手は太股を愛撫していた。

 

(胸、わざとらしく当ててる……今日び、妖女がこんなことしたらセクハラなのに……っ)

 

蓮が一声でも不満を訴えれば、すぐさまこの二人は誘惑禁止条例でお縄に掛かる。

もちろん、蓮にそうする気はないが。

 

「ふふ、ごめんね蓮くん。この子たち一見して男慣れしてるけど、実は男日照りなの。

 男の子と仲良くできるのが嬉しくて仕方ないの。童貞みたいなものだと思って許してあげて?」

 

背後からは姉が蓮の首に腕を絡め、後頭部を胸で包んできた。

姉も友人に対抗しているのかもしれないが、ソフィアやミルシェの過剰接触を止めていない。

 

「もう、エマってば、妖魔界ではそれが普通なんだってば!」

「ごめんなさい、蓮さん。なにせ私たち、父親の顔すら滅多に見られない生活だったもので……」

 

男不足で一夫多妻の妖魔界だと、男一人に数十の妻や妾がいるので、そんなこともあるらしい。

 

(そうなんだ……完全に、思春期の男子が初めて同年代の女子と出会ったレベルなんだ……

 理性、ほとんど飛んでる。性欲、まるで隠せてない。俺とセックスしたがってるの、全身から伝わってくる)

 

ソフィアとミルシェの発情具合は凄まじかった。

蓮を性的な目で見ているのは明らかで、服越しに勃起したペニスへ視線が釘付けになっている。

 

「二人とも? 分かってると思うけど……」

「分かってるよぉ♡ 弟くんに悪戯しないからぁ♡ 仲良く、仲良くするだけだから♡」

「蓮さん、お許しください。私たちのことは侍女か犬猫とでも思ってくださって結構ですので」

 

姉の監視があるせいか、辛うじて二人は蓮に性的な行為をしなかった。

あくまで『友達の弟を可愛がる』という一線ギリギリを保って、蓮に近付き、世話を焼いてきた。

 

(こんなの、こっちだって生殺しだろ……っ)

 

姉の監視がなければ、ソフィアかミルシェを押し倒していた。

逆に二人の目が無ければ、姉を押し倒してこの劣情を晴らしていた。

三人が、三方向からべたべたしてくるため、どちらもできない。

どうにか普通の交流を取り繕ったが……蓮にとっては、長い焦らしの時間だった。

 

二人が名残惜しそうに帰宅した後――我慢を重ねた性欲を姉にぶつけたことは、言うまでもない。

 

 

 

 

「義姉妹?」

 

蓮は姉と一緒に湯船に漬かっていた。

 

「そう。妖魔界の制度なの。一夫多妻なのは知ってるでしょ?」

 

浴槽に浸かる蓮の上、脚の間に体を入れた姉が語る。

 

「妖魔界の女性は『多妻』の部分を先に作るの。

 女が義理の姉妹の契りを交わして、その人たちが同じ男性と結婚するの」

 

妖魔界は男性の希少さゆえ一夫多妻だが、その婚姻制度は様々だ。

その一つが、女性たちが『桃園の誓い』よろしく姉妹の契りを交わすというもの。

 

「男性と結婚せず一夜だけの関係になっても、もし誰かが子供を授かったらみんなで育てるの。

 同性婚とはちょっと違うけど、私たち運命共同体ですって約束するのが義姉妹なの」

 

姉は蓮の鎖骨に後頭部を乗せて、お湯を肩に掛ける。

 

「じゃあ、お姉ちゃんの義姉妹は、ソフィアさんやミルシェさん?」

「まだ決まりじゃないけど、あの子たちならいいかなーって思ってるよ?

 あ、それとアリサもね。蓮くんにとっても他人事じゃないよ?」

 

確かにその通りだ。

蓮と姉は義理の姉弟であると同時に許嫁、ゆくゆくは結婚する仲である。

 

「なら、ソフィアさんやミルシェさんが、やたら俺にくっついてたのは」

「私の義姉妹になれば、将来的には蓮くんと結婚するかもしれないもの。

 好きになってもらいたくて必死だったのよ」

 

アリサはそこまで考えてないみたいだけど――と、姉は付け足した。

自己肯定感の低いアリサは、自分など妾でもおこがましいと思っているらしい。

 

「蓮くんは、あの子たちのこと、気に入った?」

「まだ、分からないな。綺麗だとは思うけど」

 

この姉と将来結婚することにも実感が湧かないのに、会ったばかりの彼女たちともなれば、だ。

 

「もしあの子たちが嫌だったら言ってね?

 仮に私と蓮くんが結婚しなかったとしても、私の姉妹は蓮くんのお姉さんにもなるんだから。

 蓮くんに合わない子なんて選ばないから」

 

姉の言葉は、自分よりも蓮を基準にして義姉妹を選ぼうとしているように聞こえた。

 

「俺は、お姉ちゃん一人でも十分だよ?」

「あん♡ ちょっと、お風呂ではダメ……♡」

 

蓮は背後から姉の両肩を抱いた。

腕が胸に当たり、姉が艶っぽい声を零す。

風呂場では声が響きすぎるので、なるべくしないようにしているが、蓮の逸物は既に臨戦態勢だ。

 

「嬉しいけど、お姉ちゃん一人だと、蓮くんに苦労させちゃうかもしれないでしょ?

 いざというとき助け合える家族は多いに越したことはないと思うの……」

 

姉は尻に当たる蓮のペニスに頬を染めつつ、真面目な話を続ける。

 

「例えば、もし蓮くんとの間に子供ができても、みんなで協力すれば、育児のことも家計のことも分担できるでしょ? むしろ一夫一妻の核家族なんてハイリスクすぎるもの」

 

一夫多妻の妖魔界からすると、一夫一妻はそう見えるらしい。

構成する家族が増えることで安定するというのは、分かる話だ。

 

「だから、蓮くんもあの子たちのこと、『お姉ちゃん』だと思って接してあげてね?」

 

尻で弟の怒張を愛撫しながら、姉はそう言った。

そういう行為と共に『お姉ちゃんだと思って』と言うなら……つまりそういう意味も含む。

 

「いいの?」

 

ソフィアやミルシェの姿を思い出す。

銀髪エルフと黒髪エルフ、どちらもスタイルがよくて、蓮を甘やかしたがっていた。

もし、あの二人とも、ここにいる姉と同じようなことをしていいなら……

 

「ふふ♡ 興奮しちゃって……悪いこと考えてるでしょ? いけないんだぁ♡」

「でもあの二人も、その気なんだよね?」

 

蓮は姉の胸を掴み、湯船の中で秘所に逸物を擦りながら確認する。

 

「それはもちろん、蓮くんとエッチしたくて堪らないだろうけど……ダメなんだよ?

 妖魔界ではいいけど、人間界では誘惑禁止条例があるんだから。婚前交渉はダメなのよ?」

「そう、だったね……」

「んっ♡ あっ♡」

 

姉の乳首を指で転がすと、姉は必死に甘い声を堪えていた。

そう、()()()()()なのだ。

姉とこうしていることも、本来は()()()()()()であるように。

彼女たちに手出しするのも――()()()()なのだ。

 

「も、もう♡ 本当にダメだからね? あの子たち、処女膜はもう消えてるけど、男に抱かれたことないのよ? アリサみたいなことになったら、きっと蓮くんに堕ちちゃう♡」

 

蓮に首筋をキスされながら、姉は顔を上げて蓮の耳元に囁く。

 

「蓮くんはあまり自覚してないけど、蓮くんの血筋って偉いんだよ?

 あの子たちも貴族だけど、蓮くんの方がずっと格上なんだよ?

 もし、蓮くんが、襲ったりしたら……」

 

蓮の興奮を煽り、性欲の方向性を指示するように、姉は口元を妖しげに微笑ませた。

 

「――絶対、逆らえないんだよ?」

 

蓮の側に強権があると、姉は言う。

それこそ、蓮が強引に迫って事に及んでも、彼女たちは泣き寝入りするしかないのだと。

ここまで言われて、姉の意図が分からないはずもない。

つまり、彼女たちも、アリサのように……

 

「っ」

 

生唾を飲んだ蓮は、薄く微笑んで姉に問う。

 

「……次は、いつ家に来てくれるかな?」

 

 

 

 

夏休みに入った頃――

両親が妖魔界に出張することになった。

それが出張の名を借りた『妊活旅行』であることは、蓮も姉も承知だった。

 

『今日はミルシェの家に泊まるから』

 

その上で、姉からそんなメッセージが届いた。

両親の目がないいまこそ、姉とセックスし放題だと言うのに。

 

『蓮くん一人じゃ不安だから、ソフィアを送るね♪』

 

追加されたメッセージに、姉の意図が見える。

妖魔界では留守中の家に男を一人にしないという防犯意識があるらしく、やむを得ない事情でそうなったときは義姉妹の誰かを世話に寄越すというのは、よくあることらしい。

 

だが、今回それは建前だ。

姉は蓮のリクエストに応えて、蓮と友人を二人きりにしてくれたのだ。

まずはソフィアから――ということらしい。

そしてその意図は、ソフィアにも伝わっているのだろう。

 

「え、えっと、久しぶりー♪ 弟くん♡」

 

家に訪れたソフィアは、口調こそいつも通り快活そうだが、明らかに頬を染めていた。

服装にしても、白いトップスにデニム生地のショートパンツという、露出度が高い装いだ。

銀髪と白い肌に夏の装い、透明感を感じる出で立ちだが、いまはそういう清純さはない。

 

「きょ、今日は……エマが居ないって聞いたから、私が……」

 

ソフィアの頬は火照り、露出した手足や首筋から、欲情した妖女のフェロモンが出ていた。

 

「蓮くんの、お世話に……っ♡」

 

蓮もまた、ソフィアを出迎えた時点から、獣欲を隠さない目付きをしていた。

普通の女性なら、思わず身を引いて逃げたかもしれないほどに。

しかしソフィアは蓮の顔を見るなり、みるみる発情し始める。

目を合わせることで、改めて確信できた。

ソフィアは完全に――蓮に犯されるつもりで、この家に来ていた。

 

「あ……っ♡」

 

無言で手を伸ばした蓮が、ソフィアの細い手首を掴む。

ソフィアはほとんど逆らうことなく、蓮に手を引かれ、家の中に連れ込まれていった。

 

 

 

 

ほんの十数分後――

 

「あああぁぁぁっ♡ イクイクいぐぅぅぅっっっ♡」

 

蓮はソフィアを部屋に連れ込み、迷いなくレイプしていた。

ベッドの上で仰向けになり、股間から愛液を垂れ流すソフィア。

剥ぎ取られた服が床に散らばり、ベッドの縁にブラが引っ掛かっている。

蓮はソフィアのしなやかな両脚を抱えるように突き、ソフィアは銀髪を振り乱して絶頂する。

 

「らめらめっ♡ 蓮くん待ってっ♡ 私っ、イキしゅぎっ♡ イカせすぎっ、だからぁっ♡」

 

ソフィアは涙目になって、蓮に手加減を懇願する。

気が強そうで快活だったソフィアの面影は残っていない。

蓮の叩き付ける快感の強さに正気を失い、赤子のように鳴く、哀れで可愛い一匹のメスだった。

 

「まだだよ、ソフィアさん。もっと気持ちよくして、もっとイかせてあげるからね!」

 

ピストンの速度を上げ、より強く彼女を責め立てる。

手を伸ばして豊満な胸を掴み、指を深く食い込ませると、ソフィアが喉を反らして嬌声を上げた。

 

「ああっ♡ おっぱいまでっ♡ そんなにされたらっ♡ もうダメぇっ♡ またイグゥッ♡」

 

乳首をつねられ、膣内を擦り上げられ、彼女は何度目かの絶頂を迎えた。

 

「はひっ♡ おね、がい♡ もう、許して♡ これ、犯罪、だから♡ レイプ、だからぁ♡」

「いまさら? 犯されるつもりで来たくせに」

「だ、だってぇ♡ 蓮くんが、こんなに、すごいなんて……こんなに、力強いなんて、思わなくて……っ♡」

「へぇ……舐めてたんだ?」

「ひうっ」

 

蓮が薄く微笑むと、ソフィアは怯えたように身を竦ませる。

一見して場数を踏んでそうなソフィアだが、実態は乙女。

いざ男の手でサキュバスの快感を引き出されると、あまりの悦楽に恐怖心が湧いたらしい。

蓮は小休止を与えてやるために、ソフィアへ問いかける。

 

「でもいいの? 断っても……ソフィアさん、お姉ちゃんと『姉妹』になりたいんだよね?」

「あ……それ、は……そう、だけど……」

 

蓮はソフィアの乳房を揉み回しながら、『脅し』を掛ける。

 

「俺がお姉ちゃんに『嫌だ』って言ったら、ソフィアさん、振られちゃうんじゃない?」

「あ……っ♡」

 

大事なものを握っていると、蓮はソフィアに理解させる。

実際、姉は蓮がそう言えば、ソフィアを義姉妹にはしないだろう。

 

「いいの? お姉ちゃんと一緒になれなくて。そうなったらソフィアさん、一人ぼっちだよ?」

「や、やだ♡ 蓮くん……そんな、それ……脅迫♡ 脅迫、してるぅ♡」

 

ソフィアはぞくぞくとしたような表情で震える。

 

「俺とエッチするのも、これが最後だね。男の人と結ばれる機会、この先ないかもしれないよ?」

「いやぁ♡ そんな……っ♡」

 

先ほどまで蓮を拒むようだった膣圧が、今度は行かないでと懇願するように収縮する。

 

「俺の言うこと、聞けるよね? ソフィアさんも、俺の『お姉ちゃん』になってくれるよね?」

「ひぅぅ♡ 蓮くん、こわい♡ こわいのに、なんか、エッチだよぉ♡」

 

どこか異常者めいた文言で脅されているのに、ソフィアは恍惚としていた。

 

「ほら、怖いときはどうするの? 男に脅されて犯されるときはどうするの?」

 

蓮はソフィアの体を反してうつ伏せにさせると、腰を持ち上げて膝を立たせる。

 

「こうやって、メス犬のポーズで服従するんだよ? できるでしょ?」

「んぅぅ~っ♡」

 

尻を叩かれると、ソフィアはびくっと背中を震わせた。

 

「ほ、本当に……して、くれる? 言うこと、聞いたら……エマの、姉妹に、させてくれる?」

「もちろん。お姉ちゃんもソフィアさんのことは気に入ってるからね」

 

ソフィアはベッドの上に顔を伏せたまま、情欲の表情で確認する。

 

「蓮くんの……『お姉ちゃん』に、してくれる?」

「ああ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ヒップを優しく撫でながら、片手で根元を持った逸物を、ソフィアの陰唇にあてがう。

亀頭が入り口に触れた瞬間、ソフィアはぶるりと身震いした。

 

「な、なら……♡」

 

ソフィアは片手を自分の尻に沿えて、自らの意思で腰を上げた。

 

「好きに、して♡ 蓮くんの、好きにしていいからぁ♡」

 

さっきまで拒否していたはずの乙女は、僅かな時間で、犯されることを望む妖女の笑みを浮かべていた。

 

「っ、はは! やっぱりソフィアさんもサキュバスだなぁ!」

 

そのまま一気に奥まで貫くと、「ふぁぁぁっっ♡」と歓喜の喘ぎ声が上がる。

 

「はぁぁぁっっっ♡ きたぁぁっっっ♡蓮くんのおちんちんっ♡ 太くてたくましいおちんちんで、おまんこいっぱいにされちゃったぁっ♡」

 

ソフィアは両手を伸ばしてシーツを掴み、快楽に悶える。

蓮がピストンを開始すると、ソフィアは髪を振り乱して悦んだ。

 

「ほら、もうすっかりおまんこが慣れてる。俺が突くのに合わせてきゅんきゅんしてるよ!?」

「ああっ♡ 言わないれぇっ♡ だって、蓮くんのがっ♡ 気持ち良すぎる、からぁっ♡」

 

ソフィアの膣内は熱くて柔らかく、愛液で濡れていて、肉棒に吸い付いてくる。

心地よい感触は、子宮口を突くたびに起きる絶頂でバイブレーションが加わり、蓮を包み込む。

 

「もう手遅れだねぇ。ソフィアさんの体、犯される悦びを覚えちゃったみたいだよ?

 いいの? こんな体験、今日だけでいいの?」

「やだっ♡ やだやだやだやだぁっ♡ もっとする♡ 蓮くんとずっとえっちしてたいよぉっ♡」

 

駄々っ子のように叫ぶソフィア。

もう恥も外聞もない、目の前の快楽のためにプライドを捨てた、屈服した女の姿だ。

 

「なら、耐えられるよね? この体、これからずっと、俺の好きにさせてくれるよね!?」

「するっ♡ いくらでもっ♡ あああっ♡ させてっ、あげるぅ♡ あひっ♡

 なるっ♡ あぁんっ♡ なるのぉっ♡ 蓮くんのっ♡ んぁぁっ♡ お姉ちゃんにっ♡

 あひっ♡ いぐっ♡ イってりゅのにっ♡ 何度もっ♡ イグッ♡ いぐぅぅぅっ♡」

 

パンパンパン! と響く、激しい結合の音。

ソフィアの喘ぎ声は甲高さを増し、体に生じる絶頂の昂ぶりを物語る。

 

「いい子だね。さあ、おねだりして? 犯してほしかったらおねだりするんだっ!」

「しますっ♡ 犯してくだしゃい♡ ソフィアのおまんこに蓮くんの精子出してくらひゃい♡

 あああぁぁぁっ♡ 孕ませ、てぇっ♡ ひぁぁぁっ♡ 私のこと、蓮くんのものにしてぇっ♡」

 

連続絶頂に陥って涙しながら、ソフィアは懇願の声を叫ぶ。

 

「よく言えました」

 

そうして蓮は、自分も絶頂を迎えるために、腰の動きにラストスパートをかけた。

 

「んおっ♡ おふっ♡ おおおぉぉぉっっっ♡」

 

気を失いかけていたところに、最高潮の連続突きを見舞われ、ソフィアが獣めいた声を発する。

 

「っ、出すぞ!」

 

そうして蓮は、ソフィアの子宮内に、白濁液を放出した。

 

「あああああぁぁぁぁぁ―――っっっ♡♡♡」

 

同時にソフィアも、背中を反らして達した。

嬌声はやがて途切れ、しかし絶頂は途切れず、声が出なくなっても嗚咽めいた反応が続く。

やがて力尽きたように、ソフィアの体がベッドに倒れた。

 

(まずは、一人目……)

 

蓮は息を荒げながら、そう思う。

女を、セックスで虜にして、服従させたという、昏い優越感と達成感。

以前までは姉で味わっていたそれを、姉以外の女でも味わえるようになってきた。

それは、まるで自分が前より偉大な存在になったかのような悦びを与えてくれた。

 

(次は、ミルシェさんだ……)

 

 

 

 

ミルシェは眼鏡を掛けたエルフ系の妖女だ。

日本美人のような濡れ羽色の黒髪と、エルフの色白肌のコントラストが美しい。

スタイルもよくて、女子大生のような大人っぽさがある。

そんなミルシェは、姉に頼まれる形で、蓮の勉強を見ていた。

 

「ここがこうなるの。分かったかしら?」

 

蓮の部屋で、ミルシェは懇切丁寧に教えてくれる。

だが、蓮はそんな説明を、ほとんど上の空で聞いていた。

元々その問題は解けていたし、この勉強会の本当の目的は別にあると分かっているからだ。

 

「ねえ、ちゃんと聞いているの? 蓮くん」

「はい、もちろんです」

 

蓮は生返事をしながら、目の前の美女を見つめている。

ミルシェはノースリーブのシャツと黒いロングスカートという出で立ちだ。

豊満なスタイルがくっきりと分かる。年頃の男の子には刺激が強いと、彼女も分かっているはずだ。

蓮の視線を感じて、少し頬を染めて目を泳がせる姿も可愛らしい。

 

「……あの、あまり見られるのは恥ずかしいわ」

「あ、すみません。綺麗だなって思って」

「もう、口ばっかり上手なんだから」

 

年上ぶった言葉だが、ミルシェは明らかに嬉しそうだった。

あまり男慣れしていないことが見て取れる。

こんなに綺麗なお姉さんでも妖女だ。妖魔界では男性と無縁な日々だったのだろう。

端的に言って――『押し切ればヤれる』、そんな雰囲気があった。

 

「ところで、ミルシェさん」

「え? な、なに?」

 

蓮はミルシェに距離を詰めて、スマホを取り出す。

 

「この写真、ミルシェさんじゃないですか?」

 

画面を見せた瞬間、ミルシェの顔色が変わった。

そこには、下着姿で自撮りをする女の写真がある。

 

「っ」

 

動揺している。間違いない。

 

「やっぱり、ミルシェさんなんですね。目元は隠してるけど、口元のほくろで分かりましたよ」

「…………」

 

ミルシェは沈黙しているが、顔を真っ赤にして、自分のエロ自撮りを見ていた。

 

「どうして、こんなことしてるんですか?」

「そ、それは……その、気の迷い、みたいなもので……んっ♡」

 

蓮はミルシェの肩を抱き寄せながら、スマホの画面を近付ける。

 

「綺麗ですね。スタイルもすごくいい」

「や、やだ……♡」

 

写真とはいえ自分の下着姿を褒められて、ミルシェは体を縮こまらせた。

軽く手を置いただけの肩から、バクバクと脈打つ心音が伝わってくる。

蓮は彼女の耳元へ唇を寄せた。

 

「こんなにエッチな下着、つけてるんですね?」

「これは、その……勢いで買って……普段は、そんな……」

 

肩から腕を撫でながら問い詰める。

 

「意外だなぁ。ミルシェさん、知的で清楚で、ちょっと憧れてたのに」

「っ♡」

 

首筋を撫でると、ミルシェがぴくっと体を震わせた。

 

「こんな写真を人に見せつけちゃうような、エッチな人だったんですね」

「そ、それ、はっ♡」

「見てほしいんですよね? 男に自分の魅力を訴えて、褒めてほしいんですよね?」

「ちがっ♡」

「違わないですよ。ほら、前の投稿と比べて、どんどん大胆になってる。

 ミルシェさんの体を見る男が増えていくのが、快感だったんでしょう?」

 

蓮は画面をスクロールして、他の写真も映し出す。

露出度やポーズの大胆さが、日を追うごと増しているのが分かる。

 

「やっ、蓮くん……もう、消して……」

 

蓮の片腕に抱かれたミルシェは、身じろぎして逃れようとするが、本気で脱出しようとしていない。

年下の男に、裏アカのエロ自撮りがバレて、迫られている――その状況への興奮が隠せてない。

 

「俺も、見たいな?」

「っっっ♡」

 

エルフ系の長い耳に囁くと、ミルシェが震え上がった。

 

「れ、蓮、くん……?」

「こんな裏アカ、止めてください。ミルシェさんの裸、他の誰かに見られるの、嫌なんです」

 

蓮はミルシェの両肩を掴んでこちらを向かせる。

 

「それ、どういう……んんっ♡」

 

ミルシェの口を、蓮は己の唇で塞いだ。

 

「んっ♡ んむぅっ♡ ちゅぷ、じゅるるっ♡」

 

突然のキスに驚くミルシェだが、すぐに受け入れて舌を絡めてきた。

驚いていた瞳はとろんとしたものに変わり、抵抗していた手はその力を緩める。

 

(ちょろい)

 

蓮は内心そう思いながら、ミルシェの胸を揉み始めた。

ノースリーブのシャツ越しにも、その大きさや柔らかさがよく分かる。

 

「あふ、ああっ♡ 蓮くん……ちょっと、だめ、だから……っ♡」

「誘惑禁止条例、知ってますよね?」

 

唐突に条例を出されて、ミルシェは「え?」と当惑する。

 

「こういうエロ写真の投稿にも適用されうるって、知ってました?」

「っ!?」

 

嘘である。

自分たちの体が人間男性にとって魅力的であることを知った妖女たちによるSNSでのエロ自撮り投稿は、確かに問題視されている。しかし誘惑禁止条例への抵触とまでは言えない。

だが、妖女たちにとって条例違反は国外退去すらありうる恐怖の法だ。

適用されうると聞いただけで、ミルシェは明らかに不安そうな顔になる。

 

「バラしちゃってもいいんですよ? ミルシェさんの名前とか、学校とか、すぐにでも書き込めるんですよ?」

「や、やめて……っ。もう、しないから。アカウント、消すから……っ」

「色んな人が画像保存してるから、消しても無駄ですよ」

 

蓮はそう言いながら、ミルシェを部屋の床に押し倒した。

 

「いや……やだっ。お願い、許して……んんっ♡」

 

再びミルシェの唇を奪う。今度はディープキスだ。

彼女は拒もうとしているが、その力は弱々しい。

 

「んっ♡ んむっ♡ や、やめっ♡ ぢゅっ♡」

 

蓮はそのまま舌を絡め続けた。

彼女を酸欠に追い込むように。

やがて抵抗力を失ったミルシェの唇を解放して、耳元で囁く。

 

「内緒にして欲しかったら、分かりますよね?」

「っ♡ それ……蓮くん……それって……っ♡」

()()()()、言うこと聞かないと、大変ですよ?」

「っっ♡♡」

 

ミルシェの顔が真っ赤に染まった。

 

「言うこと、聞いたら……」

 

眼鏡の奥で視線を泳がせたミルシェは、軽く唾を飲んで、恐る恐る尋ねてくる。

 

「内緒に、してくれる?」

 

それが『OK』を意味することは、潤んだ瞳を見れば明らかだった。

 

「もちろん」

 

蓮は即答した。

ミルシェは頬を染めたまま、体から力を抜いていく。

床の上に両手を落とし、手で庇っていた胸元を蓮の眼前に晒すように。

 

「ミルシェさんっ」

 

蓮はミルシェの体に覆い被さり、彼女の服に手を掛けた。

 

「やっ♡ 待って、ゆっくり……ああっ♡」

 

シャツの裾を掴んでまくり上げると、黒いブラに押し込められた豊乳が露になる。

 

「すごい……おっぱい大きいですね……それに、写真のと同じ下着だ」

 

思わず感嘆の声が漏れた。

白い肌はきめ細かく、セクシーな下着に包まれた乳房は、姉やソフィアより大きい。

 

「ミルシェさん、大人っぽくて綺麗で……最初に会ったときから、こうしたかった!」

「あっ♡ やぁっ♡」

 

蓮は興奮のまま、その大きな胸を鷲掴みにした。

 

「ひゃうぅんっ♡」

 

その声は悲鳴ではなく、むしろ甘い響きがある。

 

「柔らかい……! 手、吸い込まれそう……っ」

 

蓮は夢中になって揉み続ける。

 

「んんっ♡ やっ♡ 指ぃ、ちから、強い……んんっ♡」

「ああ、男に触られるの初めてなんですね? オナニーとは違うでしょう?

 ああ、こんなに魅力的なのに、手つかずなんて……

 俺が、ミルシェさんに、男を教えられるなんてっ!」

 

蓮はブラのホックを外して、ミルシェの乳房を解放した。

 

「あっ♡」

 

ぷるんっと揺れてこぼれ出た胸は白くて美しい。

 

(これが、ミルシェさんの……)

 

ごくりと生唾を飲み込みながら、その胸の先端を口に含む。

 

「ふああっ♡」

 

ミルシェはびくんと体を震わせた。

 

「ああんっ♡ そんな、いきなり吸っちゃ……ああっ♡」

 

口の中で転がすと、先端はコリコリと硬さを増していく。

 

「そんなっ、強くっ♡ だめっ、蓮くんっ♡ 落ち着い、てぇ♡」

「落ち着けるわけないでしょう! こんなエロい体を前にして!

 レイプなんですから、大人しく犯されてくださいっ!」

 

蓮は言葉こそ乱暴に、手付きは余裕をもって徐々に強める程度に、ミルシェの体を弄ぶ。

 

「やっ、やだぁっ♡ そんな、逞しい手でっ、されたらっ♡ あっ♡ ひあっ♡

 体っ、変になるっ♡ 感じ、やすく――ふぁぁぁっ♡」

 

蓮の手がスカートの中に侵入して秘所に触れると、ミルシェがより強い嬌声を上げた。

 

「ここも濡れてるじゃないですか。期待してたんでしょ?」

「そ、それは……っ♡」

「最初に、お姉ちゃんに連れられてこの家に来たときから、ミルシェさん、俺のことエッチな目で見てましたよね? 誘惑したがってる女の顔、してましたよ?」

 

言葉と共に、蓮の手はミルシェの服を脱がしていく。

シャツが頭から引き抜かれ、長い黒髪を引っ掛けながら、床へ投げ捨てられる。

スカートのホックが外され、真っ白な両脚と黒いショーツが晒された。

 

「取り繕わなくていいんですよ?

 男に抱かれたいなんて当たり前の気持ち、隠すことないんです。

 さあ、可愛い喘ぎ声、いっぱい聞かせてくださいねっ」

 

蓮はミルシェへの手淫を再開しつつ、上半身に吸い付いた。

 

「あっ♡ はぁぁっ♡ んっ♡ 蓮くんっ♡ 待ってっ♡ 喘ぐの、恥ずかしい……っ♡」

「ダメですよ。襲われてるときは、嘘でも感じてるふりして、男のご機嫌を取らないと」

 

蓮の手が下着の中で上下すると、濡れそぼった膣口から激しい水音が響き始めた。

 

「やっ♡ 音っ♡ やだっ♡ 蓮くぅんっ♡」

(もしかして、エッチな音に弱いタイプかな?)

 

ふと思いついて、蓮はミルシェの長耳を口に含む。

 

「やっ!?」

 

くちゅくちゅと舌先で舐め回すと、ミルシェは身を捩って悶えた。

 

「ひあぁぁっ♡ みみっ♡ やっ♡ おとっ♡ ひゃううっ♡」

 

ミルシェの反応が、より過敏なものになった。

蓮はエルフ耳をしゃぶるように舐めながら、更に手淫を加速させ、彼女を絶頂に導いていく。

 

「あっ♡ だめっ♡ 激しっ♡ んんんっ♡ やだぁっ♡ これっ♡ すごっ♡ ひぅぅぅっ♡」

 

ミルシェは蓮の腕を掴み、腰を突き出して痙攣した。

 

「イっちゃいましたね? お友だちの弟に襲われて。淫らな人だ」

「はぁ……はぁ……っ♡」

 

蓮がズボンのチャックを下ろし、ペニスを取り出す。

 

「はぅ……っ♡」

 

ミルシェは息を呑んだ。

表情には怯えが見えたが、瞳は妖艶に潤み、頬は紅潮している。

 

「足を上げて。そう、いい子ですね」

 

蓮はミルシェのショーツを脱がせていき、片足を引き抜いた彼女に微笑む。

 

「入れますよ。いまさら嫌がっても遅いですからね」

「……っ」

 

ミルシェは一瞬だけ躊躇したが、すぐに観念して目を閉じた。

蓮はミルシェの秘所に亀頭を押し付けると、ゆっくりと挿入する。

 

「あ……あ……っ♡」

 

ミルシェは眉根を寄せて、切なげな吐息を漏らす。

 

(すごい……中までヌルヌルで……っ)

 

熱くて柔らかい肉壁が、蓮のモノに絡み付いてくる。

 

「はーっ♡ はぁぁぁっ♡」

 

ミルシェは浅く呼吸しながら、体を震わせた。

 

「すんなり入りましたね。イクのも慣れてる。前に彼氏でも?」

「ち、違うの……その、自分で……はふっ♡」

 

察するにディルドか何かを使っていたのだろう。妖女なら普通だ。

 

「そういえば、妖女にとって乙女じゃなくなる瞬間って、挿入されるときじゃなくて膣内射精されるときらしいね」

 

処女膜が自然消滅する体質なので、自然とそうなったらしい。

 

「ふぁぁ♡ 蓮、くぅん♡ ま、まさか……」

「今日、ここで、俺がミルシェさんを『女』にしてあげるよっ!」

 

蓮はミルシェが慣れているのをいいことに、ハイペースで動き始めた。

 

「あああっ♡ やあっ♡ そんなぁっ♡ はげしいっ♡ だめぇぇぇぇっ♡」

 

ミルシェは蓮の背中にしがみつきながら、瞬く間に絶頂する。

 

「よく言うよっ、俺に犯されたがってたくせにっ!

 いつも会う度にっ、スタイルの分かる服で見せつけてっ、勉強教えるふりして胸を当ててきてっ!」

「ごめんなさっ♡ ごめっ♡ ああっ♡ 許してっ♡ わたしっ♡ ああっ♡」

 

蓮は抱き付いていたミルシェを引き剥がし、両胸を掴んでベッドに押さえ込む。

 

「俺にこうされると分かってて、今日ここに来たんだろっ!?

 アリサも、ソフィアもっ、ミルシェも! 友達の弟を誘惑する悪い女ばかりだ!」

「ああっ♡ やだっ♡ 乱暴っ♡ 怖いっ♡ こわいのにっ♡ またっ♡ ああぁぁっ♡」

 

ディルドで膣内開発はしていても、男の獰猛さを肌で感じるのは初めてなのだろう。

言葉責めにも弱いらしく、ミルシェの乱れようは増すばかりだ。

 

「どうしたの? 抵抗しないの? ほら、レイプされてるんだよっ!?」

「だめっ♡ こんなのっ♡ 気持ち良すぎるっ♡ んんっ♡ あぁぁっ♡」

 

蓮は彼女の両手首を掴んで拘束すると、上から覆い被さってピストンした。

 

「じゃあ、とりあえず限界を超えるくらいイってみようか?

 サキュバスの快感はそういう『天井』を破ってからが本番だからねっ!」

 

蓮はミルシェの弱点である耳を噛みながら、多彩な角度で膣内と子宮口を掻き回す。

 

「ひぅぅっ♡ 耳噛んじゃだめえっ♡ 奥っ♡ だめっ♡ そこだめなのぉっ♡」

 

ミルシェは背筋を仰け反らせ、髪を振り乱して悶えた。

 

「その調子だよ? もっと喘いで? イクときはイクって言うんだっ!」

「はううっ♡ もうっ♡ ダメっ♡ イクっ♡ イキますっ♡ イっちゃいますうっ♡」

 

ミルシェはビクンと跳ねて絶頂した。

蓮は腰の動きを止めず、絶頂直後の敏感な体に追撃を仕掛ける。

 

「はぎゅっぅぅぅっ♡ イってりゅ♡ のにぃっ♡ イカせっ♡ ないでぇっ♡

 これっ♡ だめっ♡ だめらめらめっ♡ おおっ♡ おおおぉぉぉっ♡」

 

絶頂を長引かせるどころか、もう一段上の絶頂へ昇華させるような、連続絶頂。

妖女の体だけが味わえる悦楽の極地に、ミルシェの知的だった顔立ちが無様に歪む。

 

「これが本物のセックスだよ? たっぷり教え込んであげるからね」

 

蓮は腰の動きを止めて、息も絶え絶えになったミルシェの体を反す。

 

「はひぃ♡ らめ♡ まって♡ 腰、動けなひ……♡」

 

うつ伏せになったミルシェの腰を引き上げると、ミルシェが焦点の合わない目で振り返る。

大人っぽいお姉さんだったミルシェはもう居ない。

男根に貫かれ、快感に敗北した、か弱いメスが居るだけだ。

 

「すぐに体が慣れますよ。お尻を上げて。上げるんだっ」

「ひぁうっ♡」

 

尻を軽く叩いて命じると、艶やかな悲鳴を上げたミルシェが命令に従う。

可愛い弟分だった蓮の雄々しい振る舞いに、彼女は従順になっていた。

蓮もまた、姉に続いてアリサやソフィアといった女を抱いてきたことで、妖女を堕とすことに躊躇いがなくなっている。

 

「入口から奥まで、一気に突いてあげるからね――せーのっ!」

「ふぁぁぁっ♡」

 

ズドンという衝撃に、ミルシェはベッドに突っ伏して悶絶する。

蓮はそんなミルシェの腰を掴んで、下腹部をヒップへ連打していく。

 

「よく聞いて? 聞こえる? パンパンってぶつかる音」

「あっ♡ ああっ♡ あぁぁっ♡ 音っ♡ やぁっ♡ この音っ、らめっ♡」

 

ミルシェはやはり耳で興奮する性癖があるらしい。

自分の尻に男が激突する音に、より犯されている感覚を味わい、淫らさを増していく。

 

「ダメなの? 正直にならないと、やめちゃうよ?」

「やっ♡ やめないれっ♡ もっとっ♡ もっとぉっ♡」

 

先ほどまで腰が抜けていたはずのミルシェは、いつの間にか自ら尻を動かし、結合部での衝突を愉しんでいた。

 

「もっと、なに? どうして欲しいの?」

「んんっ♡ んっ♡ 奥ぅ♡ 子宮口ごちゅごちゅしてくらさいぃっ♡」

 

蓮は激しくピストンしながら、背後から彼女の胸を掴んだ。

 

「ああっ♡ おっぱいもっ♡ いいのぉっ♡ 蓮くんにっ♡ 犯されるのっ♡ どんどんっ、気持ちよくなるっ♡ これっ♡ これ無理っ♡ もう無理ぃ♡ 我慢、できないっ♡ してっ♡ もっとしてしてぇっ♡ お姉さんのこといっぱい苛めてイカせてぇっ♡」

 

とうとうミルシェは欲望を隠さなくなった。

男に征服される悦び、種付けされる快楽、妖女の本能が燃え上がっている。

 

「俺もそろそろ限界だっ! 膣内に出すぞっ!」

「ああぁぁ出してっ♡ 中出ししてっ♡ 女になるっ♡ 蓮くんの精液もらって女になるのっ♡ 子宮いっぱいにされてイキたいのぉっ♡」

 

長年の夢が成就するかのような顔で、ミルシェは膣内射精を懇願する。

実際、そうだったのだろう。

生殖本能の尖った妖女たちが夢見るのは、求めた男を果てさせて種付けさせる、この瞬間なのだ。

 

「くぅぅっ!!」

「イクっ♡ イクイクイクイクイクぅぅぅぅぅぅッ♡」

 

そして二人は同時に絶頂した。

蓮のペニスから放たれた熱い液体が、ミルシェの子宮を満たしていく。

 

「あぁぁ出てるっ♡ 精子入ってるっ♡ 私、弟くんの赤ちゃんもらっちゃうっ♡」

 

ミルシェは蕩けた顔で、お腹の中に溜まっていく熱を感じていた。

 

「ふう……」

 

蓮は一仕事終えたように、息を吐いて肉棒を引き抜く。

 

「はううっ♡」

 

栓を失ったミルシェの秘部から、大量の白濁液が零れ落ちた。

 

「よしよし、頑張ったね。約束通り、裏アカのことは内緒にしてあげるから」

 

尻を撫でながら言うが、意識をもうろうとさせているミルシェには聞こえていない。

そもそも裏アカのことなど口実に過ぎないし、彼女もエロ自撮りで欲求を満たすことは今後ないだろう。

 

「はひっ♡ はひぃ♡」

 

吐息なのか返答なのか分からないが、ミルシェの答えは分かりきっていた。

誘惑禁止条例の中で結ばれた『脅迫関係』とは即ち、恋人になるよりもセックスが期待できる。

ミルシェもまた、レイプ願望を募らせて堕ちる、どこにでもいる妖女の一人になったのだ。

 

「これからもよろしくね、ミルシェお姉ちゃん」

 

新しい女を手に入れた達成感を胸に、蓮はミルシェの頬に軽くキスをするのだった。

 

 

 

 

蓮の姉、エマネイアは――幼い頃に夢を描いた。

 

自分が公爵家の血を継いでおり、血筋を遡れば古い王家に行き着くのだと知ったとき。

私と、可愛い弟で、女王様と王様になる――

妖魔界に失われた王家を再興しようなどと、大それた意味ではない。

畏敬を集め、人に仕えられる存在になること。

そうしたものの中心で、なに不自由なく暮らすこと。

まるで傲慢な悪役令嬢のようだが、エマの場合は少し方向性が違った。

 

自分がそうなるのではなく――弟の蓮を、そのような『王様』にすることだ。

 

「会長、本日もお疲れ様でした」

「はい、みんなもお疲れさまー」

 

妖女学校の生徒会室で、エマは生徒会役員の後輩に見送られる。

最近、学内で行われた選挙で、エマは会長となった。

対抗馬は妖魔界のエルフ国で隆盛を誇る貴族家の子女であり、エマのことを『没落王家の傍流』と見下しがちだったが、結果はエマの圧勝。

生徒会選挙が始まるなり、学内の有力な女子生徒たちが、こぞってエマの支持を表明したことが大きい。

有力な女子とは、銀髪系エルフの大御所であるソフィアだったり、黒髪系エルフの大物であるミルシェだったり、庶民派エルフを代表するようになったアリサだったりする。

彼女たちが、急にエマの下で強固な結束を見せた原因は、あまり知られていない。

 

「~♪」

 

鼻歌を奏でながら、エマは帰路につくのだった。

 

 

 

「ただいまー♪」

 

帰宅して、玄関を見ると、多数の靴があった。

エマの履いているものと同じ、学校指定の革靴だ。

もう、みんな来ている――それを確認すると、エマは生唾を飲む。

 

「……っ♡」

 

リビングから人の気配を感じた。

この人数なら、部屋よりもリビングの方が窮屈にならないと思ったのだろう。

 

「ん……っ♡」

 

エマの鼻が、弟の匂いを嗅ぎ取る。

普段の匂いではない。オスの匂い。

嗅ぎ取っただけで下着が湿りそうな、妖女を狂わせる男の香り。

 

「蓮くん、ただいま♡」

 

引き寄せられるように、エマはリビングに顔を出した。

そこでは――

 

「あっあっあっ♡ 蓮くんってばぁ♡ そんなに、乳首っ、強く吸っちゃだめぇ♡」

「あぁ♡ 蓮さん♡ こっちも♡ 私のおっぱいもお食べになって♡」

「ぢゅるるるっ♡ んんっ♡ ぢゅぷっ♡」

 

ソフィアと、ミルシェと、アリサが――蓮を囲んで奉仕していた。

三人とも制服姿だが、ほとんど全裸と言っていい。

シャツの袖に腕だけ通して他は脱いでいたり、捲られたスカートとショーツだけだったり。

そんな半裸の美少女に囲まれているのが、ソファーに腰掛ける蓮だった。

 

「んあっ♡ 蓮さんっ♡ おっぱい、吸ってくれてるぅ♡」

「やぁ♡ 蓮くんのお口、離れちゃうの、寂しい♡ お手々、お手々で触ってぇ♡」

 

まずソフィアとミルシェが、自慢の豊乳で蓮の顔を左右から挟んでいた。

蓮は眼前の乳房に夢中で、気まぐれに顔の向きを変えながら、二人の乳首を交互に吸っている。

蓮の口に乳首を捧げる二人は、恍惚とした瞳で蓮を見下ろしていた。

まるで『おっパブ』のような性接待、それもソフィアとミルシェというエルフ美少女によって。

蓮は二人の背中に腕を回し、両手に持ったごちそうを交互に食い漁るように、胸を貪っている。

 

「ぢゅぷっ♡ ぷぁっ♡ はふぅ♡ 蓮さぁん♡ もっと、喉奥まで、呑み込んでいいですか♡」

 

蓮の脚の間には、下着姿のアリサが膝をついていた。

蓮はミルシェの乳房を吸ったまま頷き、それを見たアリサは、蓮の肉棒を嬉々として根元まで呑み込む。

 

「れろっ♡ ちゅぱっ♡ じゅるるるるっ♡」

 

アリサはますます舌使いを巧みにしているらしく、蓮が心地よさそうに呻く。

そのときようやく、蓮の瞳が姉の姿を捉えた。

 

「ああ、お姉ちゃんお帰り」

 

いつも通りの笑みで、しかし三人の女を従えながら言う蓮に、エマの胸が高鳴る。

まるでマフィアのボスが娼婦を侍らせているかのような――『強い男』に見えて。

 

「あ、エマおかえりー。ごめんね、蓮くんが、またエッチになっちゃって♡」

「ふふっ♡ 蓮さんもお年頃ですものね。仕方ありません♡ 仕方ないんです♡」

 

ソフィアとミルシェが、蓮の手に尻を掴まれながら、彼の頭を左右から抱く。

豊満な乳房に両耳あたりから挟まれた蓮は、くすぐったそうにしていた。

 

「んぐっ♡ んんんっ♡ じゅぶっ♡ んおっ♡」

 

そしてアリサに至っては、エマの帰宅にも気付かず、無我夢中で頭を上下させていた。

 

「あ、あぁ……っ♡」

 

まるで――『王様』だった。

可愛い弟が、年々男らしくなっていく義弟が、自分の友人や後輩をメスに変えている。

 

「蓮くん……立派になったねぇ♡」

 

その感想と微笑みは、ともすれば、人間からすると狂気に見えたかもしれない。

しかし、妖女としては、別に間違っていないのだ。

一夫多妻の妖女にとって『よい夫』とはなにか――

若く体力があり、よく子を成すこと。

そして、妻たちをよく従えて操ることである。

セックスを通じて妻とその義姉妹の手綱を握る、いわゆるハーレム王こそ、家の(かなめ)なのだ。

 

「お姉ちゃんのおかげだよ。こんなにいい子たちを集めてくれて」

 

蓮はそう言って片手をソフィアから離し、アリサの頭に乗せる。

 

「んんんっ♡ んぐぅっ♡ んんんんんっっっ♡♡♡

 

アリサは嬉しそうに口淫を早め、喉奥の性感帯で絶頂しながら、蓮の射精を受け止めた。

 

「ぷあっ♡ はぁぁ♡ 蓮さぁん♡ えへへ♡ 気持ちよかった、ですか?」

「ああ、最高だったよ」

 

アリサは使命を果たしたような顔で、蓮の賞賛を受けていた。

 

「蓮くぅん♡」「蓮さぁん♡」

 

蓮の怒張が『空いた』のを見てソフィアとミルシェが媚びるが、蓮は二人の髪を撫でて宥める。

 

「もうちょっと、待っててね。一番は、やっぱりお姉ちゃんだから」

 

蓮の目が再びエマを捉える。

 

「っ♡」

 

エマは身を震わせた。

一番と言ってくれたこと、獣欲に染まった目に見据えられたこと、歓喜と不安が胸の中で化学反応を起こす。

それはいつものように、子宮の疼きと愛液の分泌へと繋がった。

 

「お姉ちゃん、こっちに来て――今日もお姉ちゃんのこと、犯したくなっちゃった」

 

蓮がこちらに手を伸ばす。

頭が何か考えるより前に、エマの足は蓮の方へ向けて歩き出していた。

 

「もぅ……♡」

 

畏敬を集め、人に仕えられる存在になること。

そうしたものの中心で、なに不自由なく暮らすこと。

自分と、姉妹たちに奉仕される蓮の姿は、正にエマの夢見た『王様』だった。

 

「――しょうがないなぁ♡」

 

我が家の可愛い王様の命令に従って、エマは制服のシャツを開き、ブラと胸を露にする。

そして、自分を従える王様の胸に、淫らにしなだれかかって行くのだった。

 

 

 




ご一読ありがとうございました。

思ったよりボリュームが増えて、時間ギリギリとなりましたが、
滑り込みで年内投稿です。
歌番組そっちのけで喘ぎ声の微調整を行うエロライターの鑑です。


年末年始の挨拶は改めて活動報告に出しますが、
ここまでお読みいただき、感想や誤字報告をくださった方々に、
深くお礼を申し上げます。

また日を置くことになりそうですが、誘惑禁止条例で描きたいことは
まだたくさんありますので、書き上がり次第投稿してまいります。


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幼馴染編 俺の言いなり幼馴染は食事に媚薬を盛ってくる
前編 ~おくすり~ (挿絵追加)


 

 

 

いまや人間界と妖魔界は、電車で隣町に行くような気安さで行き来できる。

妖魔界の魔人種たち――俗称サキュバスたちも、見かけない場所は多くない。

 

例えば南陵颯真は、魔人種とのクォーターだ。

隣にも、フィオレという幼馴染が住んでいる。

 

フィオレはドワーフ系の魔人種だ。

 

ドワーフというと、昔はサンタクロースのような髭の鍛冶屋を思い浮かべたらしい。

現代におけるドワーフとは妖女の一人種で、小柄で豊満な体型であることが特徴だ。

フィオレもその例にあぶれず、身長はなんと140センチにも足りない。

ランドセルを背負ったら小学生にしか見えないだろう。

それでいて胸や尻は大きく発育しており、小柄に対してアンバランスなロリ巨乳。

ボリュームのある茶髪のウェーブヘアは、どこか外国のお人形のよう。

性格は気弱で、いつも颯真の後ろに隠れがちな、主体性に欠ける子だった。

 

「颯真くん、今日のお夕飯、なにがいい?」

 

例えば学校からの下校中、そう聞いてきたときも――

 

「んー、なんでも」

「そう……」

 

颯真がそう答えると、まるで傷ついたようにしゅんとしてしまう。

 

「……カレーで」

「うんっ。じゃあカレーにするね。あ、辛さはどのくらい?」

「いつも中辛だろ?」

「あはは、そうだよね。ごめんね」

 

こうして颯真が注文を付けると、どこか安心したように笑い、癖のように謝るのだ。

傍から見ると、颯真がフィオレを高圧的に従えているようにも見える。

その原因は、颯真の風貌にもあった。

 

ドワーフ系は、女性は『小柄で豊満』となるが、男性は『大柄で毛深い』。

人間とのハーフだと毛深さが消えて、大柄だけが表れる傾向にある。

颯真がその例だ。

背丈は185超、肩幅もあり筋肉質で、堀深い顔立ちは目付き鋭く強面だ。

街ですれ違ったら息を殺して道を開けそうなくらいには、プレッシャーを与える容姿だった。

 

「フィオレちゃん、また南陵くんに精神DVされてる……」

「亭主関白っていうか、フィオレちゃんも不満があれば言えばいいのに……」

「あんた同じクラスでしょ? 言ってやりなよ」

「え、やだよ。南陵くん女でもグーで行きそうな顔してるもん……」

 

同級生からそんな声を聞くのも、耳慣れたものだ。

人付き合いが狭く無愛想な颯真に、その印象を解くことはできていない。

 

「えっと……颯真くん、ごめんね?」

「なんで謝るんだよ」

「うん……」

 

やがて同級生の目が無くなると、フィオレは遠慮がちに颯真の袖を抓むのだった。

 

大昔の日本は夫唱婦随――女は男の三歩後ろを歩くもの的な慣習があったという。

颯真とフィオレの関係は、どうにもそうした時代錯誤を感じさせる。

家は隣同士で実質同居。

颯真の両親が妖魔界に赴任している間は、フィオレが甲斐甲斐しく家事をしている。

朝から颯真より早起きして朝食を作り、お弁当を持たせ、シャツがほつれていれば学校内でもせっせと裁縫、そして口癖のように『ごめんね』を繰り返す。

これで颯真に愛嬌があれば印象も変わるが、無口な颯真は「されて当然」という態度に見える。

男女同権思想に熱心でなくても、「流石にそれはどうよ」と思われる構図だ。

 

もちろん、颯真にも言い分はある。

フィオレは端的に言うと『決められない子』だ。

指示待ち人間とか、そういう手合いなのだ。

自分の意思決定で事を進めて、自分の責任になるのを殊更に嫌う。

だから、『誰かがそう言ったから』『そう決まってるから』という理由を求める。

そういうフィオレが、自分の意思決定を求められると、大抵まごついて、隣にいる颯真に視線で助けを求める。

結果、颯真が「じゃあこれで」と決めることになり、所有物扱いしているように見えるわけだ。

 

「荷物置いたら、すぐに行くね」

「おう」

 

颯真とフィオレの家が見えてくると、フィオレが自宅に入っていく。

そして、制服から着替えたらすぐに、颯真の家にやってくるのだ。

家を空けがちな颯真の両親に『颯真の生活を見てやってほしい』と頼まれたから。

颯真の役に立つことで、愚鈍な自分でも颯真に見限られないのだと思えるからだ。

 

「お待たせ、颯真くん♡」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

そんなフィオレでも――年頃のサキュバスだ。

 

颯真の部屋に来たフィオレの服装は、そこはかとなく露出がある。

白いニットセーターは肩が少し開いており、ショートパンツから素足が伸びている。

 

彼女がこういう格好になるのは、颯真の家に来るときだけだ。

街へ出るときなどは、もっと地味にしている。

フィオレは自分が魅力的ではないと思っており、不特定多数の人間に評価される環境だと、服装によるセックスアピールなど怖くてできないのだ。

自分が『女』であることを、安心して訴えられるのは、幼馴染の颯真だけらしい。

 

「~~♪」

 

エプロンを着けてカレーを作り始めたフィオレの姿を、颯真は居間のソファーから観察する。

小学生めいた小柄なのに豊沃な体型、いまは結われている長く豊富なウェーブヘア。

容易に組み伏せられそうな弱々しさに、手触りの良さそうな肉付きの肢体。

颯真の目には、服装で主張などされなくても、『女』として十分に魅力的だ。

ドワーフのロリ巨乳体型は賛否あるが、颯真はいたって肯定派である。

 

「そ、颯真くん?」

「ん?」

「えっと、ちょっと、視線が……ううん、なんでもない♡」

 

フィオレは困ったように振り返ったが、途中で言葉を切って調理に戻る。

颯真の視線を背中や尻に感じて、体をもじもじさせながら……

 

――さも隠し味であるかのように、怪しい小瓶の液体を、颯真に出すカレーの皿に振りかけた。

 

(……バレバレなんだよなぁ)

 

見ていない振りをした颯真は、「できたよー」と微笑むフィオレに呼ばれて、食卓に向かう。

 

(さて……今日の『分量』はどのくらいだ?)

 

()()()()()()と分かった上で、颯真は目の前のカレーをスプーンで取る。

味の感想も言わない颯真だが、フィオレが作ってくれた料理を残したことは、一度もない。

 

 

 

 

食後、颯真の体に異変が起き始めた。

媚薬の効果が出始めたのだ。

全身が熱く火照り、下半身に血が集まっていく。

 

「……っ」

 

ジーパンの中で逸物が脈打つ。張り詰めたそれが、窮屈だと訴えている。

妖魔界の媚薬は強力だと聞く。

無味無臭の強烈な精力剤であり、嘘か真か健康にも効果覿面らしい。

 

「そ、颯真くん? その……大丈夫?」

「ああ……」

 

心配そうに覗き込んでくるフィオレに、颯真は何でもない風を装いつつ答えた。

盛ったフィオレが気付いていないはずがない。だが気付かないふりをしている。

嘘の下手なフィオレの態度はぎこちなく、期待と興奮に頬を染めている。

 

(どの口が言うんだか……)

 

と思うが、むしろ『口で言えない』から、媚薬を盛ったのだ。

 

 

 

誘惑禁止条例――

妖女による『誘惑(チャーム)』を禁じる条例だ。

誘惑の定義が曖昧であるため、実質的に女がセックスを求めることを禁じている。

 

小心者のフィオレは、これを遵守していた。

恋人のいる妖女なら、車の通らない道路で信号無視をする程度に破っているのに。

破ったら人間界から追放されるという誇張を真に受けて、そのリスクを冒せない。

 

それでも、フィオレは条例の抜け穴を知っていた。

即ち――性犯罪による被害は、条例違反には当たらない――と。

 

 

 

「ほ、本当に、大丈夫? 風邪かなぁ?」

 

白々しいことを言いながら、フィオレは颯真の額に手を当てる。

そのまま前髪を掻き上げ、自分の顔を近づけた。

 

「…………」

 

フィオレの顔が近付く。吐息がかかる距離。

キスをする直前のように、見つめ合う。

 

「はぁ……♡」

 

フィオレの瞳は、明らかな情欲に濡れていた。

普段は子供っぽいくせに、こういうときだけは、大人びた色香を感じさせる。

 

「フィオレ……お前、また媚薬を盛っただろ?」

「え? えぇ? な、なんの、こと……?」

 

颯真はフィオレの背中を抱き寄せて追及する。

フィオレは、颯真から目を離さず、抱かれるがまま颯真の膝に片足を乗せた。

もはや惚けているとすら言えない。

 

「悲しいなぁ。俺の可愛い幼馴染が、こんな悪いことするなんてな」

「あぅ……ごめんなさい……」

 

認めるの早すぎるだろ……と思いつつ、颯真はフィオレの背を撫でる。

怒っていないと伝わったのか、フィオレは安心したように、颯真の胸にしなだれかかる。

 

「まったく俺なんかより魅力的な男、いくらでもいるだろうに」

「そ、そんなことないもんっ! 颯真くんは、その……」

 

フィオレは媚薬混入がバレたときよりも声を高くする。

そして、もじもじとしながら、上目遣いにこう言った。

 

「か、かっこいいもん。背も、高いし。顔は、ちょっと目付き悪いけど、精悍だし。

 体付きも、逞しくて……すごく、男の子っぽいというか……あぅ♡」

 

言っている途中で颯真の体を意識したのか、フィオレは恥ずかしそうに言葉を切る。

 

「フィオレ」

 

颯真はフィオレの顎を掴み、上向かせる。

 

「ん……っ♡」

 

唇を重ね、舌を差し入れた。

フィオレの口腔を蹂躙するように、ねっとりとした動きで絡めていく。

 

「んんっ♡ ちゅっ♡ んむ……んふ……んむ……っ♡」

 

颯真とフィオレは、お互いの唾液を交換しながら、貪るようにディープキスを続ける。

フィオレは自ら積極的に舌を動かして、颯真の口付けに応えた。

媚薬を盛られたのは颯真だけのはずだが、フィオレも口にしたのではないかと思わされる。

 

「ぷはっ♡ そ、颯真くん……だ、だめ♡ キス……キスまで、だから♡

 それ以上は……エッチ、だからぁ♡ わいせつ、だからぁ♡」

 

フィオレはそう言いながら、颯真の膝を跨ぐように乗り、体面座位のような姿勢で尻を下ろす。

ノースリーブのトップスに押し込められた爆乳が、颯真の胸板に潰れていた。

 

「おいおい、媚薬を盛っておいて被害者面か?」

 

颯真の両手が、フィオレの尻肉をショートパンツ越しに掴む。

 

「ひゃう♡ そ、そこぉ♡ お、おしり、さわっちゃ♡ あっ♡ あんっ♡

 颯真くぅん♡ おしり、だよ? お尻、触ったら、痴漢、なんだよ? あっ♡」

 

言葉では警告しながら、颯真を見上げる顔は嬉しそうだ。

腕の中に収まる小さな体は、その小柄に反して女体の柔らかさに満ちている。

そんな抱き心地のフィオレが、小学生かと勘違いする容姿で、悦楽の顔でこちらを見上げる。

 

「っ」

 

その背徳感が、颯真の劣情に火を点けた。

媚薬を盛られた体で、よく我慢したというべきだろう。

 

「部屋に行くぞ」

「きゃっ」

 

颯真はフィオレをお姫様抱っこで持ち上げると、ダイニングを出て自室に向かう。

 

「そ、颯真くん……♡ はぅ♡ 抱っこ♡ 逞しい……♡

 あ、そうじゃなくて……ま、待って? へ、部屋で、何するの? ゲーム?」

 

フィオレは颯真の腕に抱かれて縮こまり、不安そうだが頬を染めた顔で聞いてくる。

 

「なにって、お前をレイプするんだよ」

「ひうっ♡」

 

はっきり断言すると、フィオレの体がびくんっと震える。

 

「そ、そんなのっ、言っちゃだめだよ♡ ぜ、絶対、ダメなんだよ?

 犯罪……犯罪、だからぁ♡ 颯真くん、警察に、掴まっちゃうよ?」

 

フィオレは熱い吐息と共に、心にもないような説得を始める。

 

「警察? なら俺は、媚薬を盛ったお前のことを通報しなきゃなあ?」

「やっ、ごめんねっ、謝るからっ。出来心なのっ。

 ほんのちょっと……い、悪戯くらいのこと、してもらえればって♡」

 

颯真の足は止まらない。

ダイニングを出た後は、廊下をゆっくりと歩く。フィオレの頭や足が壁にぶつからないように。

 

「ね、ねえ、落ち着こう? 颯真くんは、そんな、悪い人じゃないよぉ♡

 いつも、私のこと、庇ってくれる……優しい颯真くんに、戻ろう? ね?」

 

フィオレは颯真の服を指で抓みながら、期待に目を輝かせていた。

 

「ほら、私、こんなに小さいんだよ? 颯真くんみたいな、おっきな男子に襲われたら、勝てないよぉ♡

 どんなに、頑張っても♡ 颯真くんに、負けちゃうんだよ? 好き放題、されちゃうよぉ♡」

 

懇願……と言うべきなのだろう。

だが、果たしてこれは、何を懇願しているのだろうか。

 

「その後、フィオレはどうするんだ? 俺のこと、訴えるのか?」

「や、やだぁ♡ 颯真くんが、居なくなっちゃう……一緒に、居られなくなっちゃう」

 

これについては本気で涙目になっていた。

そう言う間にも、二人は廊下を渡りきり、颯真の部屋に到着する。

 

「なら、どうする?」

 

フィオレは、足を止めた颯真の腕から、扉のドアノブを見た。

颯真の両手はフィオレを抱くことで塞がっている、つまりドアを開けられない。

颯真は顎を動かして、フィオレにドアを開けるよう促した。

 

「ど、どうって……」

 

フィオレは颯真の顔とドアノブを交互に見て、まごついたようなことを言う。

幼馴染である颯真はよく知っていた。

フィオレは『決められない子』で『流される子』だ。

子供の頃から、颯真に手を引かれたり、颯真が無遠慮にああしろと命じるまで、動かない。

だから、このときも――

 

「そ……颯真くんが……決めて?」

 

自分が犯されるか否か、犯された後でどうするか――そんなことさえも、颯真に投げた。

颯真はフィオレの答えを聞くと、静かに生唾を飲んだ後、口角を引く。

 

「なら……()()()()()、してくれよ」

「はぅぅ♡」

 

耳元で囁くと、フィオレはまるで愛の言葉でも聞かされたかのように赤くなる。

 

誘惑禁止条例の抜け穴は、性犯罪被害。

結果として、誘惑を禁じられたサキュバスたちは、男性との密事をそういう方向性で妄想するようになった。

いわゆる、レイプ願望である。

すると、それに関連するワード――脅迫の文言や泣き寝入りといったものが、ある種の『殺し文句』になってしまった。

気弱で大人しいフィオレもまた、そんなサキュバスの一人だった。

 

「……うん♡」

 

フィオレの手が、ドアノブを動かして、扉を開く。

決められないフィオレだが、そのことだけは、フィオレの意思だった。

 

 

 

 

颯真とフィオレは、幼少期から兄妹も同然に育った。

だから颯真は、妖女(サキュバス)というものが、どんな風に成長するのかを知っている。

 

昔のフィオレは男の子みたいだった。

駆けっこは速いし、球技も上手かった。

サキュバスは人間女性よりフィジカルが強い。

それは幼少期から表れるもので、フィオレも人間の女の子より腕力と体力があった。

女性(ウーマン)妖女(サキュバス)の違いが表れるのは、こういうところからだ。

 

小学校高学年にもなると、胸が大きくなり始めた。

人間でも早熟な子は発育し始めるけど、妖女はこのあたりが顕著だ。

体だけではなく、性への目覚めも、人間より早い。

フィオレもまた、学生服を着るより前にはもう、異性の肌やセックスに関心を示していた。

 

「颯真くん、おっぱい見たい?」

「み、見たくねーよ!」

 

そんなやりとりをしていたことを覚えている。

 

このくらいなら、子供っぽくて微笑ましいとも言える。

しかし、サキュバスはそれに留まらないこともある。

 

「颯真くん、あれしてみようよ」

「あれって?」

「映画とかでしてるあれ。女と男が裸で抱き合うの」

「え、やだよ……」

「なんでー? 気持ちいいことだって本で読んだよ?」

 

あの頃はフィオレの方がマセていたというか、セックスに触れる機会が多い現代の弊害というか。

軽はずみな興味で、颯真とフィオレはベッドシーンの真似事に興じた。

一緒にお風呂に入るくらいの感覚で裸になり、ベッドの上で毛布を被って、抱き合ってみた。

 

「やんっ、くすぐったい」

「フィオレ、上に乗ると重いよ……」

「じゃあ、颯真くんが上から覆い被さって?」

「え? なんかやだ……」

 

意味も理解せずにしていた、セックスごっこである。

 

――親に見つかって、滅茶苦茶に怒られた。

 

特にフィオレの母親のお怒りはすごかった。

垣間見ただけだが、颯真の母に対する謝りっぷりも、かなり本気だったと記憶している。

 

妖魔界において男は希少、男を危害する罪も相応に重い。

自分の娘が希少な男を辱めようものなら、母は自らの手で娘を公開鞭打ちする、なんて時代もあったそうだ。

そんな妖魔界の精神文化に影響されてか、現代は『女性による男性への性加害』に厳しい。

女教師が男子児童にわいせつな行為をして猛バッシングというのも、見飽きたニュースだ。

旧時代で言うと、出来心で痴漢した男性の人生が終わるくらいのニュアンスである。

子供のお遊びでなければ、フィオレは本格的に責任を取らされたかもしれない。

 

「ごめんね、颯真くん……」

 

それ以来、フィオレは颯真に謝ることが多くなった。

問題の一件を謝っているのではなく、些細なことでも反射的に。

よほど折檻がひどかったのか、性的なことは口にしなくなったし、颯真の体に触れなくなった。

活発な性格はいつしか引っ込み思案になって、ドワーフ系であるため小柄が目立つようになり、言動も遠慮がちになった。

よく颯真の世話をするのも、妖魔界にある『加害者への罰として、被害者の奴隷になる』という風習によるものらしい。

 

気がつけば、颯真とフィオレの関係は、昔のように『対等』ではなくなった。

 

颯真が歩いて、フィオレがその半歩後ろをトコトコとついてくる。

夫唱婦随というよりも、気がつけば構築されていた主従めいた関係。

経緯を知らない周囲からは、颯真がフィオレを不当に従えているようにも見える。

 

颯真はそれが気に入らなかった。

周囲の噂なんかよりも、フィオレが自己主張を忘れて、自分に盲従することが。

世話をしてくれるのは助かるが、通じ合っている気がしない。

かといって突き放す気にもならず、惰性でそんな関係が続いていた。

 

だからだろうか――

 

おかしな話だが、ちょっと嬉しかったのだ。

フィオレが媚薬を盛った男が、自分であったことが。

 

 

 

 

「んんっ♡ ぢゅぷっ♡ ぢゅるるっ♡ ぷあっ♡ はぁっ♡」

 

フィオレはベッドに腰かけた颯真の前にしゃがみ込み、一心不乱にペニスを舐めていた。

 

「ほら、しっかり気持ちよくしてくれよ。お前の盛った媚薬でこの有様なんだぞ?」

 

ふんぞり返るような姿勢で、颯真は薄笑いしながらフィオレを見下ろす。

面相の悪さもあって、女を辱める鬼畜外道にしか見えない。

 

「ちゅっ♡ れろぉっ♡ じゅるるっ♡ ふあ♡ ごめんね? 颯真くん♡ ちゃんとするからぁ♡」

 

媚びるような甘い声音で謝ると、フィオレは小さな口を限界まで開き、喉奥まで飲み込むように肉棒を迎え入れていく。

 

「おごっ♡ ぐっ♡ おっ♡ ごっ♡」

 

亀頭を半ば呑み込むような口淫は、ほとんどイラマチオに近い。

人間より性感帯が多いサキュバスには、喉奥にもそれがあり、自分の快感を追及することで自然とイラマチオになってしまう。

 

「っぐ。こいつ、こういうことばっかり上手くなりやがって」

「あむ♡ れる♡ えへ♡ 本当? 私、上手にできてる?」

 

フィオレは颯真の太腿に手を置き、上目遣いで見上げながら言った。

 

「こら、嬉しそうにしたらレイプじゃないだろ?」

 

颯真はフィオレの頭を撫でる。

撫でる力は、僅かに頭部を肉棒へと導いていた。

 

「あう♡ ごめんね♡ 言うこと、聞くから♡ 乱暴しないでぇ♡ んんっ♡ じゅぶりゅっ♡」

 

フィオレはより勢いを付けて、怒張にしゃぶりつく。

傍から見れば颯真の手がフィオレに強要しているように見えた。

しかし実際は、『強要されている』という大義名分を得たフィオレの動きだ。

 

「フィオレ、もっとだ。喉奥でイクくらい続けろっ」

「んぼぉ♡ おぶっ♡ おぼぉ♡」

 

颯真がフィオレの頭を押さえつけると、彼女は苦しそうに身を捩らせた。

だが、フィオレの表情は明らかに喜んでいる。

妖女は喉にも性感帯がある。颯真が命じなくても、彼女は同じことをしただろう。

 

「おっぱいも自分で揉むんだ。おまんこも弄ってオナニーしろ。できるか?」

「ぷあっ♡ うん♡ 出来るよ♡ 颯真くんが、言うなら……んっ♡」

 

フィオレは颯真の言う通り、服越しに爆乳を掴み、もう片方の手をショートパンツの中へ。

彼氏に口でしながら自慰をする――サキュバスの間では人気のプレイであるという。

颯真は『要求』という形で、フィオレにそれをする『許可』を出したのだ。

 

「んっ♡ はぁっ♡ あんっ♡ ひぅっ♡」

「お口がお留守だぞ?」

「はぅ♡ ちゅるっ♡ ちゅぷっ♡ あむぅ♡ ちゅぷりゅっ♡」

 

フィオレは再び口で奉仕を始める。

乳房と秘所を弄る手も止めていない。

胸に食い込んだ五指が服に皺を刻み、半脱ぎになったショートパンツから白い下着が見えた。

 

「いいぞ、次はおっぱいで挟んでくれよ」

「ふぁい♡」

 

返事をすると、フィオレは上着をたくし上げて、胸元を露出させる。

白いブラに押し込められた爆乳の谷間が、颯真の意識を奪う。

フィオレが背中に腕を回すとホックが外れ、支えを失った肉房が解放された。

 

「んっ♡」

 

たぽん、と重たい音を幻聴させて、双丘が揺れる。

フィオレが少し身体を前に倒すだけで、柔らかな肉が肉棒に触れた。

聞くところによると92のKカップ――小柄には不釣り合いな質量だ。

 

 

 

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「思い切り挟み込んで、舐めるんだぞ? 痛くても我慢してくれるよな?」

「うんっ♡」

 

フィオレは颯真の腹に顔を埋めるように密着、その双丘で肉棒を包み込む。

 

「颯真くん♡ 気持ちいい? 私のおっぱい、嫌じゃない?」

「ああ、最高だよ」

「よかったぁ♡」

 

フィオレは心底嬉しそうに微笑み、両手で左右の肉を寄せてパイズリを始めた。

 

「あぁっ♡ すごい♡ 谷間から、颯真くんのおちんぽ出てる♡ 可愛い♡」

 

フィオレは愛おしそうに舌を伸ばし、亀頭に絡みつける。

そしてそのまま肉棒を口内に収め、唇をすぼめて頭を前後に動かし始めた。

 

「んっ♡ ぢゅぽっ♡ ぢゅっぽ♡ ぢゅぷっ♡ ぢゅっぷ♡」

「うおっ」

 

唾液を潤滑油にして行われるストロークに、思わず声を漏らしてしまう。

それを聞いたフィオレは得意げに目を細め、より激しく動き出した。

 

「んぶっ♡ ぐじゅっ♡ じゅぶぶっ♡ じゅるっ♡ じゅるるるるっ♡」

 

フィオレの頭が激しく前後し、颯真の腰が跳ねる。

 

「フィオレ、出すぞ」

「んんっ♡」

 

颯真の言葉に、フィオレは一層強く吸い付いた。

 

「くっ、出るっ!」

「んんっ♡ ん~っ♡」

 

どぴゅっ! と、颯真の白濁液が解き放たれる。

フィオレはそれを一滴残らず飲み干した。

 

「けほっ、こほ。颯真くんの、出たぁ……♡」

「よくできたな、偉いぞ」

 

颯真がフィオレの頭を撫でると、彼女は幸せそうな笑みを浮かべる。

 

「えへへ。颯真くん♡ ちゃんと、できたよ? これで……許して、くれる?」

 

口の端から精液を零しながら、小首を傾げる。

その顔は、これで終わりにして欲しいと懇願する女の顔では、断じてなかった。

 

「ああん? 口だけで我慢するわけないだろ?」

「きゃっ♡ 颯真くん♡ やだ♡ こわい♡」

 

颯真はフィオレをベッドに引っ張り上げると、押し倒して服を脱がせる。

ショーツも足から引き抜かれ、産まれたままの姿で仰向けに倒された。

 

 

 

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「フィオレだって口だけじゃ我慢できないだろ?」

「んっ♡ そんなこと……ひゃうんっ♡」

 

颯真はフィオレの両脚を大きく開かせ、その間に陣取る。

彼女の秘所は、すでに濡れそぼっていた。

 

「俺に媚薬まで盛って、こんなに濡らしておいて、白々しい淫乱だなぁ」

「ひゃんっ♡」

 

颯真はフィオレの陰核を摘まむと、指先で転がし始める。

 

「いいよ、悪者になってやるよ。俺が犯してやるから安心しろ」

 

フィオレに覆い被さりながら、逸物を彼女の陰唇にあてがった。

 

「あああっ♡ ごめん、ねぇ♡ 颯真くんっ♡ 私、ずるい子で……っ」

 

フィオレは謝りながら、颯真の背中に腕を回す。

誘惑が禁じられているから、襲わせる――それは相手を悪者にする行為でもある。

男女の間でセックスの導入といったら、多かれ少なかれあることだが、フィオレは罪悪感を強く抱いているようだ。

 

「誰にも、言わないから♡ 颯真くんの、好きにしていいから♡ 嫌わないでぇ」

「嫌うわけないだろ」

 

颯真は額にキスしてやりながら、片手で怒張の向きを整え、フィオレの入口に侵入させる。

 

「あぁぁぁぁっ♡」

 

フィオレは待ち望んでいた快感に、背筋を仰け反らせた。

まだ先っぽだけだというのに、妖女の鋭敏な性感はそれだけで達していた。

 

「こんなにエロくて、可愛くて、甲斐甲斐しく世話してくれて」

 

言葉と共に、ゆっくりと奥へ進んでいく。

 

「んぅっ♡ はぁっ♡ ふあぁっ♡」

「体は小さいのに、おっぱい滅茶苦茶でっかくて」

 

フィオレの膣内は、まるでそれ自体が意思を持っているかのように肉棒に絡みついてきた。

 

「フリでも何でもなく、本当に犯したいくらい、お前が好きなんだよ!」

 

言いつつ、腰を押し付ける。

するとフィオレの最深部に到達した。

 

「あああああああああああ♡」

 

子宮口へのキスと愛の告白、同時に受け取ったフィオレの心身が感極まる。

絶頂に達し、膣壁が肉棒を締め上げた。

見下ろすと、颯真の怒張がフィオレの膣内に根元まで突き刺さっている。

小さな体に男根が突き立てられた姿は、あまりに犯罪的で、颯真に昏い興奮を呼び起こした。

 

「颯真――くんっ♡ いま――好き――って♡ あひあっ♡」

 

照れ隠しも兼ねて、颯真は腰を振り始める。

ぱんっ、ぱちゅんっ! と、肌と肌がぶつかり合う音。

抽送のたびにフィオレの身体が跳ね、ベッドが軋んだ。

 

「んおっ♡ おっ♡ おぉっ♡ しゅごいぃっ♡ おくまできてりゅうっ♡」

 

フィオレは瞳を潤ませ、舌を突き出して喘ぐ。

その表情には苦痛の色はなく、ただ快楽に蕩けきっていた。

 

「気持ちいいか? 俺のレイプ、気持ちいいか?」

 

踊るKカップを掴み取りながら問うと、フィオレは颯真の手首を握り、より強く自分の乳房を押し込んだ。

 

「きもちいっ♡ 気持ちいいからぁ♡ 颯真くん、気に病まないでっ♡

 お薬だからっ♡ 颯真くんが興奮してるの、お薬のせいだからっ♡

 私をレイプしちゃってるのもっ、私のせいだからっ♡ だからぁっ♡」

 

いまさらだが……フィオレは淫乱だ。

地味で大人しい癖して性欲だけは強い、というタイプだ。

 

「よしよし、もっと犯してやるからなっ!」

「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡ あああぁぁぁっ♡」

 

颯真はフィオレの腰を軽く持ち上げて、幼女のような小柄をダッチワイフのように使う。

抽送でフィオレの身体が弾むたび、その巨乳もたぷんたぷんと揺れた。

 

「イってるな? おまんこ痙攣してるぞ? イってるときは言うって約束だろ!?」

 

片手でフィオレの腰を支えつつ、もう片方の手でクリトリスを擦って命令する。

 

「あひ♡ ひあぁっ♡ いくっ♡ イクのとまらないよぉっ♡」

 

フィオレは泣きながら、シーツを掴んで顔を左右に振っていた。

 

「そんな顔するなよ。罪悪感が出ちゃうだろ?」

「やだっ♡ だめだめっ♡ 止めちゃやだぁ♡ あっ♡ ちがっ♡ いまの無し――」

 

フィオレがハッとしたのは、『誘惑』と取れる発言をしたから、だけではない。

颯真に対して『このまま続けていい』という許可を出してしまったからだ。

 

「言ったな? 今日も手加減しないぞ!」

 

これでも遠慮していた颯真は、フィオレの両脚を左右に開いて、本格的に腰を突き落とす。

ばぢゅんっ!

 

「あひゃああんっ♡」

 

フィオレは目を見開きながら、再び達してしまった。

 

「またイってる。臆病なくせに、体は犯されるの大好きじゃないかっ!」

「らって♡ あひっ♡ そうま、くん、がぁ♡ あああぁぁぁ♡ なんど、もっ♡ はひゅっ♡ れいぷ♡ んあぁっ♡ して、きた、からぁ♡ あっあっあっあっあっ♡」

 

抗議しながらも嬌声を高めていくフィオレ。

可憐な顔立ちが快感に歪み、毎日聞いている声が艶やかに喘ぐのを聞いていると、颯真の心に得も言われぬ悦びが湧いてくる。

 

「お前が、誘惑するからだろ!」

 

颯真は腰のストロークを長く取り、より強く肉棒を子宮に衝突させる。

 

「あひぃっ♡ あぅんっ♡ して、なぃっ♡ 誘惑、なんて、してないもんっ♡」

 

フィオレは蜜壺を掻き回されながら、白々しい言い訳をする。

その顔には笑みが垣間見えており、どこか颯真の怒りを煽っているようにも見えた。

 

「嘘吐けっ、このドスケベ! 幼馴染にムラムラして、薬を盛ってまで、犯させようとして! こうして犯されたら、イキまくってるくせに!」

 

颯真はフィオレを抱き上げ、体面座位の姿勢で抱え上げる。

フィオレは抵抗せず、颯真の背中に手足を回してしがみついた。

豊乳が胸板に潰れる感触を味わいながら、颯真は腰を突き上げていく。

 

「あっあっあっあっあっあっ♡」

 

 

 

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フィオレは下からの突き上げに合わせて喘ぎ、自分からも腰を揺すっていた。

膣内は愛液で溢れかえり、抽送のたびに泡立って、肉棒と秘裂の間に糸を引いていた。

 

「まったく、みんなに教えてやりたいよ。フィオレがこんなに悪い子だって。

 幼馴染を薬物で発情させて自分を襲わせるマゾメスだってなっ!」

「ふぁぁっ♡ 言っちゃだめぇっ♡ お願いだからぁっ♡」

 

フィオレは瞳を潤ませながら、颯真の唇を奪う。

舌を差し入れ、颯真も答えて舌を絡める。

 

「んっ♡ ちゅっ♡ 内緒に、するからぁ♡ 颯真くんに、迷惑かけないからぁ♡

 エッチな気持ち、私で解消してっ♡ 颯真くんならっ、私の体、使っていいのぉ♡」

 

フィオレはそれこそ肉便器になろうとするようなことを言う。

都合のいい女であることで、颯真から見放されないようにしているのだ。

昔からそういうところはあったが、女の悦びを知ったことで、より颯真に依存し始めている。

 

「いいぞっ。犯してやるよ。被害者にならせてやるよっ」

 

颯真は突き飛ばすようにフィオレを倒し、体を反して四つん這いにさせる。

バックで突かれることを理解したフィオレは、少し怯えながらも、颯真の手に逆らわない。

 

「お前はずっと、俺の言いなりになってばかりだからな。

 こういう要求されても、逆らえないんだ。そうだろっ?」

「うんっ♡ ごめんねぇ♡ 颯真くんを、悪者にして……

 逆らわないから♡ 颯真くんの言うこと聞くからぁ♡」

 

フィオレは謝りながら、尻を高く上げて振りたくっていた。

早く挿入してほしい。後ろから乱暴にして欲しいというアピールだ。

 

「おねだりするのも、俺が命じたことだ。ほら、従えっ!」

 

命じたことはないが、そういうことにした。

 

「ひうっ♡ めいれい……命令、されて、りゅ……からっ♡」

 

尻を叩きつつ、肉棒の先端を割れ目にあてがうと、どちらのせいかフィオレの体が震え上がる。

 

「颯真くぅん♡ きてぇ♡ 颯真くんのおっきなので、私のこと……いじめて♡」

 

フィオレは甘い声で催促してくる。

 

「よく言えました、っと」

 

ずぶぅっ!

 

「あひぃっ♡」

 

颯真は一気に奥まで押し込み、フィオレの一番深いところを貫いた。

膣内に広く性感帯が分布したサキュバスの体は、体位が変わるだけで感じ方も別物になる。

気持ちよさの絶対値は同じでも、味が音色が違うように、性感の種類が変わるのだそうだ。

 

「ひぁぁうぅぅ♡ うしろ、からぁ♡ おかされ♡ 征服、されちゃうっ♡」

 

まだ颯真は動いていないというのに、フィオレは何度も小刻みに達していた。

膣壁はきゅうっと締まり、肉棒を圧迫する。

その快感が颯真にも伝わり、彼は顔をしかめた。

 

「っく、そんな物欲しそうに締めなくても、ちゃんと犯してやるよ!」

 

颯真が腰を動かし始めると、その動きに合わせてフィオレも腰を揺すり始める。

 

「あぁんっ♡ あひっ♡ はげしぃっ♡ んあぁっ♡ これっ、すぐイっちゃ、ああぁぁっ♡」

 

フィオレは枕にしがみつきながら、激しいピストンで絶頂し続ける。

彼女の秘所からは愛液が垂れ流しになっており、シーツに大きな染みを作っていた。

 

「くそっ、エロいなぁ。こんな小さい体なのに、胸とかおまんこは一人前でっ」

 

颯真はフィオレの腰を掴み、強く引き寄せて肉棒を叩きつける。

ぱんっぱん、ぱつっ、ぱちぃんっ! と、不規則な音が部屋に木霊する。

 

「あぐっ♡ ああっ♡ それだめっ♡ 奥でっ、暴れるのっ♡ もっとぉっ♡

 気持ちいいっ♡ 気持ちいいからぁ♡ 颯真くんのおちんぽすごいからぁ♡」

「ほら、普段は自己主張しないのに、エッチのときだけおねだり上手だなっ!」

 

フィオレの体は連続絶頂が始まっているらしく、膣内の脈動が激しい。

 

「ひゃうっ♡ だって、だってぇ♡ 颯真くんとのセックスきもちいんだもんっ♡

 なのにっ♡ 誘惑できないっ♡ しちゃいけないんだもんっ♡ だからぁ――」

「ああ、犯してやるよっ。俺もそろそろイくぞっ!」

 

颯真は背後からフィオレの爆乳を掴み上げ、腰の短い間隔で前後させる。

男が絶頂する前のラストスパートが、フィオレの尻と子宮を連打していた。

 

「んぉっ♡ おっぱい♡ ああんっ♡ 颯真くんっ♡ いいのっ♡ 私でっ♡ 気持ちよくなってぇ♡ わたしっ♡ だめな子だけどっ♡ 颯真くんのこと、イカせてあげるのぉっ♡」

 

フィオレは突かれる度に絶頂しながら、颯真への想いを口にした。

颯真は胸を掴んだまま硬く抱き寄せ、言葉より体で返答する。

 

「んおおおっ♡ おふっ♡ ふおっ♡ おっおっおっおっ♡」

 

フィオレもやがて言葉を失い、自分の中で颯真が達するその瞬間まで、間断なくイキ続けた。

 

「っく、出るっ!」

「あああぁぁぁっ♡ イクッ♡ 出てりゅっ♡ イグゥッ♡」

 

射精されたと同時に、フィオレはまた大きく仰け反ってアクメを迎える。

 

「はぁ……はぁ……っ」

 

長い射精を終えた颯真は、肉棒を引き抜く。

フィオレの膣口から、どろりと精液がこぼれ落ちた。

 

「んっ♡ あぁっ♡」

 

フィオレは余韻に浸るように体を震わせている。

その横顔には、満足感が浮かんでいた。

乱暴された女というには、あまりに幸福そうだった。

 

「……誰にも、言うなよ?」

「……うん♡」

 

終わった後は決まって、そう言い含める。

昔のように、大人たちにバレてしまわないように。

昔のように、二人で裸になって、シーツの中に隠れながら。

 

 

 

 

「フィオレ、置いてくぞ」

「ま、待って颯真くん……こ、腰が……」

 

翌朝、颯真はフィオレと一緒に登校していた。

朝の身支度に手間取るのはいつものことだが、今日は腰痛もあるようだった。

 

「お前、学校でそれ言うなよ?」

「え? どうして?」

「どうしてって……」

 

颯真とフィオレの関係は、一応は秘密にしているのだが、フィオレがこの様子だと同級生の女子に隠せているかは怪しい。

まあ、気付いても気付かないふりをするのが、現代における暗黙のマナーだが。

 

「今日、夕飯は作らないでいいからな」

 

颯真は気を遣ったつもりだった。

自分のせいで腰を痛めたフィオレに家事はさせたくないし、ましてやセックスをする気もない。

 

「あ……うん……」

 

しかしフィオレは、残念そうな顔をした。

どこか居場所を奪われたような、遠ざけられたような顔だった。

 

「……俺も手伝う」

「うんっ」

 

前言を撤回すると、途端に嬉しそうな顔になる。

下手に気遣うよりも、普段通りにさせて手助けする方がマシだと判断した。

フィオレのそういう面倒なところも、いまさら改めさせようとは思わない。

だからせめて、普段よりも歩幅を縮めて、なるべく車道側を歩くのだった。

 

「それで、颯真くん……」

 

横断歩道を待つ間、フィオレが制服の袖を軽く引く。

目を向けると、小柄な彼女が精一杯に首を上向きにして、颯真を見上げている。

こちらの袖を指先で抓んだまま、少し顔を赤らめながら、フィオレはこう尋ねてきた。

 

「今日は……なにが食べたい?」

 

腰痛になるのは、フィオレだけでは済まなさそうだった。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

お久しぶりでございます。
すっかり間が空いてしまいましたが、誘惑禁止条例はまだ続きます。

夫婦以上、恋人未満な感じの幼馴染でした。

後編も同時投稿しますので、よろしければそちらもどうぞ。


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後編 ~おかえし~(挿絵追加)

 

 

 

人間界と妖魔界の行き来が容易になって久しい昨今。

妖魔界の総人口は地球の十倍以上、その九割以上が女性である。

そんな異界から多くの移住者が訪れたことで、日本の男女比は大きく変化した。

 

若い世代は特に顕著で、学校の教室などは際立っている。

少子高齢化もいまや昔とばかりに年々増加する生徒たち、教室には許容量いっぱいの机と椅子が並んでおり、生徒たちが少し手狭に過ごしている。

 

この学校であれば、一教室の生徒数はおよそ40人。

うち男子は10人前後で、残りは女子だ。

30人ほどの女子は、半数が人間女子、あとは妖魔界系女子――通称・妖女である。

一言に妖女といっても、ハーフや留学生などあり、エルフ系や獣人系など容姿も様々だ。

 

重要なのは、とうとう妖女子が多数派になったということだろう。

 

人間のアイドルが『平凡』になるほど顔面偏差値が高くて、

水着で雑誌の表紙を飾れるようなスタイルが当たり前で、

男性が希少な世界で育ってきたから、男には献身的で、

相性のいい男をかぎ付ければ自ら距離を縮めてきて、

肉体関係になれば決して不満足などさせない――

そんな美女か美少女が、ごろごろいる。

 

近所にも、教室にも、職場にも、どこにでもいる。

 

それが何を意味するのかを――フィオレはよく知っていた。

 

例外なく綺麗か可愛くて、スケベボディでHなこと大好きな女の子。

()()()()()()()――どこにでもいるから、大した強みにはならないということを。

 

 

 

 

「フィオレ、あんたこのままだと寝取られるよ?」

 

学校の昼休み、食堂で昼食をとっていたフィオレは、級友のエルフ女子から唐突に警告された。

一昔前ならファンタジー系の作品でヒロインをしていそうな美少女だが、今日び珍しくもない。

 

「え? 寝取られって……私が?」

「バカね、女が間男に取られるとかいつの時代の話よ。あんたの彼氏が、よ」

 

喧噪の渦巻く学食に、衝撃的な話題が発生する。

といっても、現代の若い男女は色々と『赤裸々』なので、このくらい大した注目は集めないが。

 

「そ、颯真くんがっ!? 誰にっ!? ああいや、そもそも彼氏ってわけでも……」

「そーねー、彼氏とか通り越して実質夫婦だもんねー。でも本題はそっちじゃないの」

 

颯真とフィオレの関係は、よく知らない生徒からは、『強面な南條颯真が気弱な幼馴染のフィオレを奴隷のようにこき使っている』というものだ。

しかしこのエルフ女子のように、親しい者なら実態を知っている。

妖女が気になる男に自分を犯させて、それを内緒にする――誘惑禁止条例の対象区域でよくある、男女の仲であると。

 

「南陵くん、こないだ上級生たちに告白されたらしいよ?」

「っ!? 告白っ!? しかも『たち』って!?」

「義姉妹よ」

 

衝撃の報せに目を丸くするフィオレだった。

 

妖魔界は一夫多妻制だが、この構築過程には地域差がある。

中には『多妻』の方を女性たちで先に決めておき、数人で同時に一人の男を婿に取ったりする。

颯真に告白したという上級生は、そういう『群で狩りをするスタイル』だったのだろう。

 

「美人のエルフに、可愛い獣人に、人懐っこいドワーフの三人組だったなー。

 南陵くんからすれば突然のハーレムだよねー」

「あわわわわ……っ」

 

戦慄するフィオレ。

颯真とはああいう関係だが、明確に恋人というわけではない。

なんなら、本命ができるまでのセックスフレンドという形で終える余地もある。

 

そんな颯真に、三人の美少女が告白した。

平凡なドワーフ系女子であるフィオレは、その子らの『価値』が自分以上だとすぐに理解できる。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

サキュバスは誰もが美少女で、男好きする体をしている。

全員が同じなら『まとめ買い』できる方がお得なのは道理だ。

 

告白グループには、同じドワーフ系もいるらしい。

仮にそのドワーフとフィオレが互角だとしても、戦力差は三倍なのだ。

そして地味なフィオレは、大抵のドワーフよりも魅力で劣ると自己評価している。

 

なんてことだ、颯真に告白したグループに比べ、自分は三分の一以下ではないか。

 

「そ、颯真くん……なんて?」

「返事? さあ? そこまでは聞いてないけど」

 

意地悪く笑う級友を恨む余裕すら、フィオレにはなかった。

 

 

 

 

南陵颯真は、普段からフィオレに世話を焼いてもらっている。

なら、颯真は家事ができないのかというと――別にそんなことはない。

フィオレほど細やかではないが、自分の世話くらいは焼ける。

 

「あ、あれ? 颯真くん……洗濯物は?」

「もう取り込んである」

「お、お風呂の掃除は……」

「後は湧かすだけだ」

「じゃ、じゃあ、お夕飯の支度は私が――」

「いま下ごしらえしてる」

 

だからその日……颯真は全ての家事をこなした状態で、フィオレを家に迎えた。

颯真からすれば、たまには自分でやるかという程度の気持ちだった。

しかしフィオレは、まるで帰宅したら家が無かったかのような顔をしている。

 

「だから今日はゆっくり――」

 

キッチンから振り返った颯真が、フィオレに寛ぐよう言おうとすると、

 

「えぐ……っ」

 

フィオレが泣き出した。

 

「なんでっ!? なんでそんな意地悪するのっ!?

 謝るからっ! 悪いところちゃんと直すから捨てないでぇっ!」

「なんでそうなるんだよっ!?」

 

しがみついて懇願するフィオレを宥めるのに、数分を要した。

 

 

 

 

「ああ、あの人たちなら断ったよ」

 

颯真は、自分に告白してきた上級生たちについて、あっさりと口にした。

 

「断った、の?」

 

驚き半分、安堵が半分といった表情で、フィオレが確認する。

 

「あー、なんか感じ悪かったからな」

 

フィオレも噂だけは聞いたという、妖女子たちの義姉妹。

確かに容姿は魅力的だったし、妖女の嗅覚で颯真を見出したなら体の相性もいいのだろう。

ただ、どうにも『妖魔界>人間界』という言動が垣間見えた。

妖女の中にはしばしば、地球人より自分たちの方が優れていると考える者がいる。

 

「なんつうか、『いまよりいい暮らしをさせてやろう』みたいな気配がちらほらと」

 

美人に興味を抱かれたのは嬉しいことだ。

妖女は男性を口説く手段として、男性が女性にそうするように『いい暮らし』を保証する。

その自信があるのは、立派なことだと思う。

ただ――翻してみればそれは、まるで颯真が不自由な暮らしをしているかのようでもある。

 

「ご心配されずとも、いま十分に幸せだっての」

 

そういう無自覚の侮辱を感じたので、ハーレムはお断りさせていただいたのだった。

 

「そう、なんだ……えへへ」

 

嬉しそうな顔のフィオレは、今度は手元の料理に注目する。

 

「でも、それはそれとして、なんで今日は料理を?」

 

小首を傾げたフィオレの前には、颯真が作った料理がある。

早めの夕食として準備したのは、ご飯や味噌汁に焼き魚といった朝食風の和食だ。

 

「いや……改めて考えると、いつも世話になりっぱなしだと思ってさ」

 

颯真は照れ臭そうに目線を外す。

自分はいま十分に幸せだ――そう再認識したとき、その幸せを保証するのはなんなのかを考えた。

思い浮かんだのは、いま目をぱちくりさせている幼馴染だ。

美人な先輩方に誘惑されずとも、自分にはフィオレがいる。

それは、ただセックスの相手をしてくれるからというだけではないと、改めて気付いたのだ。

 

「だからまあ、たまにはお返ししないとな」

「颯真、くん……っ!!」

 

フィオレはまるで、幼い息子にプレゼントをもらったお母さんみたいに涙ぐんだ。

喜んでくれるのはいいが、なんだか不本意な喜び方だった。

 

「うぅ……美味しいっ、美味しいよぉ……ご飯の炊き方が雑だけど美味しいよぉ。お出汁も焼き加減もいまいちだけど美味しいよぉ」

 

泣くのか食うのか、褒めるのか駄目出しなのか、どれかにしてほしかった。

 

「残すなよ?」

「うんっ」

 

颯真も箸を進めつつ、終始楽しげにぱくぱくと食べるフィオレを見守るのだった。

 

「ふぅ、ごちそうさまでした♪」

 

完食したフィオレは、少し赤い顔で手を合わせた。

そしてパタパタと手で顔を扇ぐ。

 

「あはは、なんか汗かいちゃった。食べ過ぎちゃったかな?」

 

食後に体が暖まるのは普通だが、それにしても体が熱い。

そう小首を傾げるフィオレに、颯真はにやりと笑う。

 

「あー、隠し味が利いたのかもな」

 

颯真が机に置いたのは、小瓶だった。

小瓶のラベルを見たフィオレが、目を丸くする。

 

「え? そ、颯真くん、それ……っ!?」

「お前、これをキッチンに忘れていくとか、バカだろ?」

 

それは、フィオレが普段から颯真に盛っている、媚薬の瓶だった。

 

「…………っ」

 

フィオレは両眼を『○』にして硬直している。

何度も颯真に盛ってきたせいで、とうとう調味料のような感覚になってしまったのだろう。

料理の後、醤油ボトルの隣に置き忘れられていたそれを、颯真が発見したのだった。

 

「……ちがうよ?」

「なにがだよ?」

「わたしじゃないよ?」

「棒読みすぎだろ」

 

言い訳にもならないことを口にするフィオレのために、颯真は瓶のラベルを読み上げる。

 

「なになに? 『無味無臭で効果絶大! どんな聖者も一滴でケダモノに!』か……犯罪臭がするな」

「かえしてっ! かえしてーっ!」

 

フィオレはテーブルの対面席から手を伸ばしたが、届かなかった。

しかも返せと言ってしまっている。

 

「ほら、次は忘れるなよ?」

「うん……あれ?」

 

素直に返してやると、瓶を受け取ったフィオレが首を傾げた。

 

「颯真、くん? これ……空っぽ、なんだけど……」

「ああ、残り少なかったからな。全部使ってみた」

「使った? それにさっき……隠し味って……」

 

フィオレは恐る恐る、自分が先ほど空にした食器を見下ろす。

そして再び空の瓶を見て、先ほどから火照っている自分の身体を再認識した。

 

「っ!!」

 

ブラウスの下ではブラの中で乳首が尖り、スカートの中では秘所と子宮が騒がしい。

 

「言っただろ? たまには『お返し』だって」

 

にやりと笑った颯真は、席を立ってダイニングを移動すると、フィオレの背後に立つ。

 

「そ、そ、颯真くん……それ、だって……用量……一滴か二滴で……っ」

 

颯真がどうやって瓶を空にしたのか、フィオレは身をもって理解した。

過剰なくらいの媚薬が盛られた颯真の料理を、フィオレは先ほど綺麗に平らげてしまったのだ。

 

「さて、効果はどうかな?」

 

そう言って、颯真はフィオレの両肩に手を置いた。

軽く肩でも揉むように、愛撫の前段階という程度のつもりだった。

 

「っっっ、あっ♡ ふぁぁぁぁっ♡」

 

たったそれだけで――フィオレは身を縮こまらせ、絶頂したかのようにガクガクと震え出す。

 

「おい……マジかよ。エロいところなんて触ってないぞ?」

 

驚いて手を引いた颯真に、息を荒くしたフィオレが振り返る。

 

「ら、らって♡ 手がぁ♡ そうまくんの、手がぁ……♡」

 

目の色が変わっていた。

まるでセックスのことしか頭にないような態度に、颯真はごくりと生唾を飲む。

 

「そんなに効くのか……この媚薬。普段こんなの盛られてたのか」

 

ちょっと多めに盛ったとはいえ、寒気がするくらいの効き目だった。

 

「颯真くぅん♡ どうしよう、これぇ♡ わたひ、からだ、おかしい♡」

 

フィオレが自分の両腕を固く抱きしめると、腕に持ち上げられた爆乳が揺れる。

 

「……ほら、力抜けよ」

 

颯真は再びフィオレの肩に手を置いて、背もたれに寄りかからせる。

そしてフィオレの背後から、背もたれ越しに、彼女の小柄を見下ろした。

 

「ひぁうっ♡」

 

する――と、指先で軽く鎖骨の下をなぞるだけで、フィオレは甘い嬌声を発する。

 

「颯真くん♡ だめぇ♡ いま、触っちゃ、だめぇ♡」

 

あまりに敏感になった体を怖れるように、フィオレは椅子から立ち上がろうとする。

しかし颯真の手が両肩を押さえ込み、椅子に座らせ続けた。

 

「ダメだ。たまには盛られる側の気持ちを味わえよ」

「ひぅ♡ でも……」

 

頭上から囁きかけると、フィオレの動きが止まる。

いつも媚薬を盛っている手前、そう言われると逆らえないらしい。

そんなフィオレの豊満な膨らみに、颯真の手がゆっくりと降りていく。

 

「あ……あ……あ……っ」

 

フィオレは期待に満ちた表情で、颯真の手の行方をじっと見つめている。

颯真の手が胸に触れることなど、飽きるほどあったことなのに、いまは強い興奮と恐怖があった。

拒むか従うか、その逡巡に答えを出す間も与えず――颯真の手が、服の上から胸に被さる。

 

「はうっ♡」

 

フィオレは大きく仰け反り、喉元を晒すようにして痙攣した。

 

「はは……ほんっと、とんでもないな」

 

媚薬の効果に驚きつつ、颯真は少しずつ、フィオレの両胸を愛撫していく。

 

「ふぁぁっ♡ らめっ♡ そうまく……んっ♡ やぁっ♡」

「おいおい、こんなのまだ触ってるうちに入らないだろ?」

 

事実、颯真の手付きは、フィオレの胸というより服の生地だけ撫でているようなもの。

フィオレの胸に対する刺激など、衣擦れが強くなったくらいのものだ。

 

「らってぇ♡ こんな、敏感に……っ♡ だめ、だめだからぁ♡ いま、触っちゃ、だめ♡

 いつもの調子で触っちゃ、だめだからぁ♡ ぜったい、大変なことに、なりゅ――」

 

フィオレは懇願し、颯真の腕を掴む。

子供のような小柄に、不釣り合いな爆乳、涙ぐんで見上げる淫らな顔。

颯真の嗜虐心に火が点いた。

 

「いつもの調子って――こうか?」

 

颯真の五指が、フィオレのブラウスの上から胸を掴む。

 

「あああぁぁぁっっっ♡」

 

フィオレは顎を突き出し、身体を震わせて絶頂した。

 

「おいおい、まさかイっちまったのか? まだ服越しだぞ?」

「だって♡ だってぇ♡」

 

フィオレは息を荒げながら、必死になって首を横に振る。

 

「だってじゃないだろ? こんなの、ただのマッサージみたいなもんなんだぞ?」

 

そう言いながらも、颯真はフィオレの爆乳を揉む手を止めない。

媚薬によって鋭敏化したフィオレの体は、服越しの愛撫だけで、まるで挿入されたかのように乱れ始める。

 

「はぁっ♡ これ、すごいぃ♡ からだ、へんになってるぅ♡」

 

フィオレの過敏な反応を楽しむように、颯真は少しずつ手指に力を込めていく。

するとフィオレの反応もまた変化していった。

 

「あっあっあっあっあっあっあっあっあっ♡」

 

フィオレが喘ぐたびに、颯真の手の中で乳房が形を変える。

上から軽く持ち上げて揺らすようにしただけで、フィオレは椅子ごと全身を震撼させていた。

 

「これ、服越しじゃなく直接触ったら、どうなるんだ?」

 

そう言って、颯真はブラウスの中に手を滑り込ませる。

裾から侵入した手がブラウスに浮かび上がり、フィオレの豊乳を下から掴み上げた。

 

「んあぁぁっ♡」

 

フィオレの体が跳ねた。

そのまま手の平で胸を鷲掴みにしてやると、フィオレはガクンと腰を前後に揺すり出す。

 

「こら、まだブラ越しだぞ? なんだよこの乱れようはっ」

 

颯真の両手が、フィオレのブラウスの中を動き回る。

脇の下から寄せ上げるように胸を揉んでやるたび、フィオレは身を捩らせて悶えた。

 

「らめぇ♡ こんなの、はじめてぇ♡ 違うのぉ♡ おっぱいがいつもと違うのぉ♡」

「媚薬、効いてるなぁ」

 

颯真は感心しながら、ブラウスの下でフィオレのブラのホックを外す。

フィオレは癖のように体を動かし、ブラを脱がす颯真の手に応じた。

やがて服の下から、カップの深いブラだけが引き抜かれる。

そうして颯真がブラウスを引き上げると、フィオレの巨峰が露になった。

 

 

 

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「うわ、乳首がすごい勃ってるぞ?」

 

颯真の言う通り、フィオレの乳頭は痛々しいほどに充血していた。

フィオレは恥ずかしさに顔を赤らめながら、重大な事実に気付く。

 

「やっ♡ 待って颯真くんっ、いま、そこは――」

 

まだ――颯真は乳首に触れていない。

媚薬によって、感度が数段上がった状態になってからは、一度も。

しかしフィオレは、いま触れられたら確実に絶頂してしまうと確信していた。

 

「ダメっ♡ そこ触られたら、わたしっ♡ 絶対おかしくなるっ♡ だめぇ♡ お願いだからぁ♡」

 

颯真が脅すように乳輪の外側だけを指で撫でると、それだけで甘い声を上げてしまう。

かつてない快感に染まりながらも、かつてない不安に襲われていた。

 

「するからっ♡ 後でなんでもするからぁ♡ いまは許してっ♡

 いままで、お薬盛ったの謝るからぁ♡ こんな、こんなになるなんて、知らなくて……っ」

 

フィオレは涙を流しながら懇願するが、颯真はその願いを聞き入れない。

むしろフィオレの弱みに付け込むようにして、フィオレの胸の頂に指を這わせた。

 

「ひゃぁぁぁっ♡」

 

人差し指が当てられ、乳首が少し向きを変えただけだというのに、フィオレが震え上がる。

 

「はひゅっ♡ 指ぃ♡ 熱いっ♡」

 

過敏さがそう錯覚させるのか、フィオレは乳首に焼きごてでも当てられたような顔をしていた。

颯真は生唾を飲みながら、今度は親指を乳首に触れさせる。

フィオレの左右の乳首を、やんわりと抓むような形になった。

 

「あぁあぁあぁっ♡ だめだめっ♡ 抓っちゃだめっ♡ 颯真くんっ♡ いま抓っちゃ――」

 

フィオレは嫌々と首を横に振る。

 

「どうなるんだ? ん? こんな滅茶苦茶に敏感になった乳首を抓ったら、どうなっちゃうんだろうな?」

 

ふにふにと、フィオレの乳首を軽く指先で圧しながら問いかける。

 

「わかんない♡ 分かんないよぉ♡ いまでも、イってりゅのにぃ♡ 強く、されたらっ♡」

 

フィオレの声には怯えがあったが、期待も聞き取れた。

こういう場合、フィオレの本音はポジティブな側にあると、幼馴染の颯真はよく知っている。

 

「こう、か?」

 

だから、驚かせるようなタイミングで、乳首を抓り上げた。

 

「んあぁあぁあぁああぁぁぁっっっ♡♡♡」

 

フィオレは椅子の上で大きく体を反らし、甲高い絶頂の声を鳴り響かせる。

喉を反らしてしばらく痙攣した後、ようやく脱力した。

 

「はひゅっ♡ ひぅぅぅっ♡」

「おいおい、おっぱいでしていいイキかたじゃないだろ、いまの」

 

まるでポルチオで達したかのような反応だった。

媚薬で過敏になったフィオレの体は、胸だけでかなりの悦楽に襲われているらしい。

そうと理解した颯真は、口角を釣り上げる。

 

「ほら、こっち来いよ」

 

颯真はフィオレを椅子から抱き上げると、リビングのソファーに連れて行く。

 

「はふっ♡ 颯真、くぅん♡ 待って♡ おっぱいが♡ おっぱいがぁ♡」

 

お姫様抱っこされたフィオレは、颯真の首に腕を絡めながら、何か訴えている。

もう胸をいじめないで欲しいと懇願しているのか、その逆か――颯真は後者だと判断した。

 

「ああ、おっぱいだけであと何回イけるか、試してやるよっ」

 

颯真はソファーに座ると、フィオレを膝の上で後ろ向きに座らせる。

背面座位のような姿勢だが、まだ挿入はせず、改めてフィオレの乳房を鷲掴みにすると、

 

「やっ♡ またっ♡ さっきより、つよいぃっ♡」

 

そのまま揉み解し始めた。

小柄に不釣り合いな柔肉が、颯真の五指を食い込ませ、面白いほど形を変えていく。

 

「ひあぅぅっ♡ らめぇっ♡ おっぱいばっかり♡ あひっ♡ らめらからっ♡ ああぁぁっ♡ 敏感っ、どころじゃっ、ないのぉ♡ あっあっあっあああぁぁぁっ♡」

 

乳房が形を変えるたび、フィオレは凄まじい反応を見せた。

 

「いいぞ、イってみろ。おっぱいで限界までイってみろよ」

 

颯真は両手でフィオレの胸を掴みながら、指先に力を入れて乳首を捻る。

 

「ひぎゅうっ♡」

 

フィオレの体が強張り、腰が大きく跳ね上がった。

 

「おー、やっぱり一度抓っておくと敏感になるなぁ」

「はひゅっ♡ はふっ♡ だめっ♡ これだめっ♡ おっぱい壊れちゃうっ♡ これ以上されたらわたしっ♡ おかしくなるっ♡ おかしくなるぅっ♡」

 

フィオレが涙声で訴えるが、颯真は手を休めない。

それどころか、今日まで培ってきた手管の全てを尽くして、フィオレの胸を責める。

 

「おね、がいっ♡ ああっ♡ お手々、止まって♡ んあぁぁっ♡」

 

指先で乳首を転がすように愛撫し、乳輪をなぞるように焦らすと、フィオレは甘い声を上げて身を捩った。

 

「だめなのぉ♡ 私のおっぱい♡ オモチャにしちゃだめだよぉ♡」

 

ぎゅむっ、と音がしそうなほど強く握り込んだかと思えば、下から持ち上げてたぷたぷと揺らす。

乳房を弄ぶ合間、ときおり不意打ちで乳首に指を押し込んでやると、

 

「んあぁぁぁぁっ♡ 乳首だめぇえぇっ♡ またっ、イっちゃ――んぉおおぉ♡」

 

フィオレがまた乳イキを決めて、とうとう獣めいた声を上げ始める。

 

「ああ、我慢できねぇ。こっち向け!」

 

颯真はフィオレの体の向きを変えさせると、ソファー前にあるテーブルに寝かせた。

そして今度は正面から、フィオレの爆乳にむしゃぶりつく。

 

「ひあぁぁっ♡ おっぱい♡ おっぱい吸われてりゅ♡ ひあぁぁっ♡ 舌っ、くるくるしちゃらめっ♡ ひゃうっ♡ ちゅぱちゅぱってっ♡ あひゅううっ♡ そんなに強くしちゃっ♡ ひあぁぁっ♡ イくのっ♡ またイクのぉ♡」

 

片方を口で吸いながら、もう片方を手で揉み回し、絶え間なくフィオレの乳房を感じさせる。

 

「ああぁぁ、いいぃぃ♡ 颯真くぅんっ♡ わたしっ♡ こんなのっ、知らないっ♡ おっぱいだけでこんなになるなんて知らないのぉっ♡ しゅごいっ♡ おくすりしゅごいよぉ♡」

 

聞き取りようによっては危険なことを言いながら、フィオレは颯真の頭を掻き抱いた。

颯真は口も手も止めず、口内の乳首に舌先を押し込んで踊らせる。

 

「ふぁぁあぁぁっ♡ たべてりゅうっ♡ ひぁあぁっ♡ 颯真くんにおっぱい食べられてイっちゃうよぉ♡ あひっ♡ いいのっ♡ もういいのっ♡ あっあっあっ♡ いっぱい、食べてぇ♡ あああぁぁぁっ♡ お手々もぉっ♡ おっぱい楽しんでいいからぁ♡」

 

フィオレは颯真に乳房を捧げることに快感を訴え始めた。

自分の作ったご飯を食べる颯真を見ているような、慈母めいた感情も混ざっている。

 

「あああぁぁぁまたイグゥッ♡ ちくびでイカされすぎてバカになっちゃうっ♡

 お口でもっ♡ 指でもっ♡ なにされてもイっちゃうよぉ♡ しゅごいっ♡

 颯真くんしゅごいのっ♡ もっとぉ♡ もっと好きにしていいからぁっ♡」

 

小さな体には似合わない、貪欲な淫らさと、聖母のような包容力。

颯真はそれに溺れるようにして、ひたすら目の前の乳房を捕食していくのだった。

 

 

 

十数分後。

 

「はひっ♡ そうま、くんっ♡ もぉ無理ぃ♡ ひゃふっ♡ 胸、イキしゅぎて……ひゃあうっ♡ もぉ、許してぇ♡」

 

颯真は勃起するペニスをあえて我慢させて、ひたすらフィオレの爆乳を弄んでいた。

ソファーに腰掛け、それと対面する形で跨がってフィオレに、胸を捧げさせている。

 

「なんで、そんなっ♡ 今日、おっぱいばっかりぃ♡」

 

フィオレは颯真の腿を跨ぐ形で膝立ちになり、颯真の眼前に乳房を差し出していた。

上半身は裸だが、下はスカートも下着も残されている。

まるで『おっパブ』のような光景だった。

 

「いやぁ、やっぱりお薬で発情させて襲うなんてズルいだろ?」

 

颯真はフィオレの乳首から口を離して、悪戯っぽく微笑みながら、指先で先端をくすぐる。

 

「だから、今日はおっぱいだけで我慢してやるよ」

「やっ、うそっ。そんな……ああぁぁぁっ♡」

 

フィオレは絶望するような顔色になったが、颯真の両手に左右の乳首を弄られると、また嬌声を上げる。

なにかの楽器を奏でるように、左右異なるリズムで両乳首を刺激され、また絶頂しつつあった。

 

「やっぱデカいよなー、お前の胸。もうこれだけで満足だよ」

「ひゃうっ♡ 嘘、嘘だもんっ♡ いつも、おっぱい以外にも――あひゅっ♡」

 

颯真の頭を掻き抱きながら、フィオレは颯真の手指に乱れ続けた。

 

「安心しろよ。満足するまでおっぱい堪能したら、後は適当にオナニーして寝るから」

「やぁっ♡ 颯真くんっ、意地悪しちゃやだぁ♡」

「意地悪なんかじゃないって。ほら、そろそろイキそうだな? 何回目だ?」

「あっ、あっ、分かんない♡ 十回、は――あぁぁぁぁぁっ♡」

 

乳首を強く吸われながら、フィオレは颯真の顔面に爆乳を押し潰し、背を反らして震える。

 

「颯真くんっ、颯真くぅん♡」

 

フィオレは片手でスカートをたくし上げ、びしょ濡れになったショーツを見せた。

もう片方の手は、颯真の股間に伸びて、遠慮がちに撫でている。

なにをして欲しいのかは明白だ。

もう胸は十分だから、こっちに触れて欲しい、挿入して欲しいというのだろう。

 

「んー、どうした? パンツなんか見せて。今日はおっぱいだけでいいんだぞ?」

「あうぅぅ♡ 颯真くぅん♡ もうやなの♡ おっぱいだけは嫌なのぉ♡」

 

颯真は懇願に構わず、フィオレの乳房を左右から手で寄せ、重ねた両乳首を舌先でねぶる。

 

「お願い♡ お願いだからぁ♡ いつもみたいに、してぇ♡ ねぇ、他にも色々、気持ちいいことしていいからっ♡」

「さて、どうするかな。可愛いフィオレを泣かせたくないからなぁ」

 

フィオレは颯真が胸を触れないよう、密着して乳房を胸板に潰す。

そして颯真の股間をしきりに愛撫して、首筋を舐めるように訴えた。

 

「泣かない、泣かないからぁ♡ 颯真くんなら、許してあげるからぁ♡」

 

あえてフィオレに触れず両手を下ろすと、フィオレは涙目で見上げてくる。

 

「ねぇ♡ 誰にも言わないから♡ ちゃんと()()()()()するからぁ♡

 颯真くんに、怒られないように、言うこと聞くからぁ♡ 従順にするからぁ♡」

 

更なる行為をして欲しいと、フィオレは自分が『犯せる女』であることを強調した。

 

「いやぁ、いまさらだけど、乱暴なことばっかりするのも悪かったなぁって」

「そんなのっ、いいのっ♡ 颯真くんならいいのぉ♡ ちょっと乱暴でも、平気だもん♡

 私だって、サキュバスなんだよ? 人間さんより、丈夫なんだよ?

 颯真くんのおっきなのが、中で暴れても、ぎゅーって締めて受け止められるんだよ?

 おっぱいとか、お尻とか、ちょっと痛いくらい揉まれても、気持ちよくなれるもん♡」

 

颯真の趣向に応えているのか、純粋な本音か、フィオレは危険な言葉を並べ立てる。

 

「レイプ、しちゃお?

 私みたいな、背が小さいのにおっぱい大きな子♡ 無理矢理に、犯したくない?

 組み伏せて、押さえ込んで、おちんぽ入れちゃって、パンパンってしたくないの?」

 

フィオレは自分からスカートを下ろし、ショーツ一枚になっていく。

こちらを見上げる瞳は、誘惑(チャーム)こそしていないが、そういう魔性を宿していた。

よく知っているはずの幼馴染が、急に妖艶に見える。

 

「私、いっぱい感じちゃうよ? 颯真くんになら、力尽くで突かれても、気持ちよすぎてすぐイっちゃうの♡ 颯真くんにいけないことされ続けた身体、颯真くんに犯されるの大好きになっちゃってるんだよ? なにも考えずにおちんぽ出し入れするだけで、何度もイっちゃう女なんだよ?」

 

フィオレは颯真の股間部に腰を降ろして、騎乗位のように揺れる。

下着越しに、颯真のジーパンの生地に秘所を擦って、乳房を自ら持ち上げながら。

 

「女の子はぁ、好きな人なら、襲われてもいいの♡ 颯真くんのレイプは、レイプじゃないのぉ♡ 私のことを前よりいい女にしてくれる、いいレイプなのぉ♡」

 

犬のように下を出して、狂気の沙汰と言ってもいい理屈を並べるフィオレ。

 

「それとも――」

 

思わず生唾を飲んだ颯真を、フィオレは陶然とした笑みで見上げて、こう言った。

 

「今日が最後に、なってもいいの?」

「っっっ!!」

 

とうとう、颯真の理性が限界を迎えた。

今夜は媚薬を盛られてないはずの身体が、むしろいつもより燃えていた。

 

 

 

 

 

 

「ったく、なにが告白だよ……」

 

場所は変わり、颯真の部屋。

 

「こんなドスケベな幼馴染がいて、他の女の相手なんかしていられるか、よ!」

 

颯真は『駅弁』にしたフィオレを、言葉と共に突き上げる。

 

「おほおぉっ♡」

 

子宮口を突かれたフィオレは、快楽で表情を蕩けさせた。

 

「あへぁ♡ これすきぃ♡ 颯真くんのっ♡ おっきなからだ♡ 感じるぅ♡」

 

リビングで散々に乳イキさせられたフィオレは、いまは膣内の剛直に陶然としていた。

 

「んぉおぉっ♡ はげ、しっ♡ はぁんっ♡ ふおっ♡ ああぁぁぁっ♡」

 

部屋の中央で颯真が腰を踊らせると、コアラのように抱き付いたフィオレが獣めいた声で喘ぐ。

 

「ああっ、すごいっ♡ 奥まで届いちゃって♡ んあぁぁイっちゃうううっ♡ あぁあぁあっ♡ おっぱいも、擦れてっ♡ またっ、イっちゃうっ♡ 止まんないっ♡ 颯真くんっ♡ イクの止まんないよぉ♡ どうしようっ♡ こんなのっ♡ 溶けちゃうっ♡ とけちゃうぅぅぅっ♡」

 

媚薬の効果はまだ続いているのか、それが呼び水となっただけなのか。

いずれにせよ、フィオレの乱れ様は過去最大だった。

 

「ったく、お薬を盛ろうと盛られようと、結局はこうやって俺に腰を振らせやがって」

 

颯真はぼやきながら、フィオレをベッドに運んだ。

 

「あうっ♡ ごめんね颯真くんっ、私、迷惑ばっかり――んんっ♡」

 

ベッドに押し倒して、つまらないことを言おうとする口をキスで塞ぐ。

 

「んちゅっ♡ ちゅぷっ♡ んんんっ♡」

 

舌を差し入れて絡めると、フィオレはすぐに夢中になって吸い付いてきた。

 

「いいんだよ、迷惑くらい掛けても」

「ぷあっ♡ 颯真くん? あっ♡」

 

颯真は語り掛けながら、フィオレの両脚を掴んで開かせる。

小柄なだけに短い両脚が、大柄な颯真の腕に開かれる様は、幼女が犯されそうになっているかのような背徳感があった。

 

「いつもいつも、美味い飯を作ってくれて、世話してくれて――」

 

普段の恩を語りながら、怒張を入口に擦り付ける。

 

「ひうっ♡ ぅぅぅっ♡」

 

挿入を予感させながら焦らすような行為に、フィオレは声を噛み殺した。

 

「こんなにエロくて、イキやすくて、犯したって許してくれて――」

 

ずぷぷっと、颯真の分身がフィオレの膣内に沈んでいく。

 

「ふああぁぁっ♡」

 

膣壁を擦る肉棒の感触に、フィオレは歓喜の声を上げた。

 

「どんなに欠点があっても、お前は最高なんだよ!」

 

言葉と共に、一気に奥まで突き入れた。

 

 

 

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「ふあぁぁぁっ♡」

 

待ちかねていた衝撃に、フィオレが体を仰け反らせて叫ぶ。

そんなフィオレを覆い隠すように抱きしめて、颯真は腰を縦回転させるように掻き回す。

 

「だから、馬鹿なこと気にしてないで、彼女面していいんだよっ」

「ふあぁぁっ♡ かのじょぉっ♡ わたしが颯真くんのっ♡ かのじょっ♡ あぁぁあぁっ♡」

 

そう呼ばれたことが信じられないという顔で、フィオレは叩き付けられる快感に喘ぐ。

いつもより絶頂の感覚が短いのは、媚薬のせいだけではなかった。

 

「お前こそ、俺でいいのかっ!? 薬を飲ませて犯すような男が相手でいいのかっ!?」

「あぁぁぁぁっ♡ いいっ♡ いいのぉっ♡ 颯真くんが、いいっ♡」

 

プレスするような抽送でベッドが軋み、その音をフィオレの声が上書きする。

 

「颯真くんっ、ずっとっ、鈍くさい私を助けてくれてっ♡ 守ってくれたからぁ♡ お返し、するのぉ♡ 私のっ、エッチな体でっ、お返しするからぁ♡ 彼女っ、彼女にしてっ♡ いっぱい、いっぱい頑張るからぁ♡」

 

フィオレの表情は、快楽と愛情で思考回路がショートしているように見えた。

 

「お料理、もっと作るのっ♡ 颯真くんがっ、健康でっ、いっぱいエッチできるようにいっ♡ あひゅっ♡」

 

颯真の手で両脚を持ち上げられながら、フィオレは抵抗することなく、誓うように叫ぶ。

 

「家事とか、そんなのぉ♡ あふっ♡ 全部ぅ、私がするからぁっ♡ あっ♡ その分っ、いっぱい、可愛がってもらうのぉ♡」

 

フィオレは膝裏で手を組んで、自ら足を抱き、媚びるような顔で颯真のピストンを受ける。

 

「だからぁ♡ ちゃんと、襲ってよぉ♡ おくすり無くても、エッチになってよぉ♡」

 

引っ込み思案なフィオレらしからぬ要求に、颯真は戸惑いつつも興奮を抑えられない。

 

「ああもう、我慢しなくていいんだな!?」

「うんっ♡ してぇ♡ してしてしてしてっ♡」

 

颯真はフィオレの両足首を掴み、自分の両肩に掛けた。

そしてフィオレに覆い被さり、真上から膣奥へ杭を打ち込むような種付けプレスを開始する。

 

「なってやるよっ! お前みたいなドスケベにぴったりなっ、彼女の体をモノみたいに使うスケベ野郎にっ!」

「んひぃいいっ♡ あっあっあっあっあっあっ♡ すごいっ♡ これしゅごひっ♡ あぁあぁあっ♡」

 

抽送と共に胸を両手で押し潰すと、フィオレは左右の手でシーツを掴んで乱れ狂う。

小さくて、気弱で鈍くさいのに、いまのフィオレは獰猛な獣のようだった。

捕食するのではなく、激しい交尾を求めて吼える、メスとしての被虐的な凶暴さだ。

 

「後悔するなよ? お前みたいに犯しやすい女、一度モノにしたら絶対に手放さないからな!」

「ふああぁぁっ♡ うれしいっ♡ おかひてっ♡ おま○こ使ってっ♡ わたしがっ♡ 誰よりもぉ♡ 颯真くんのおちんぽ気持ちよくするのぉ♡」

 

フィオレは媚びきった声で応え、颯真に腕を伸ばす。

 

「約束だぞ? いつでも、どこでも、断るなよ?」

「するぅ♡ やくそくするぅ♡」

 

颯真はフィオレの足を解き、体位をバックに変えながら耳元で脅しつける。

 

「風呂でもするぞ、そのおっぱいで、俺の背中流せよ? 代わりに全身洗ってやるから」

「あふっ♡ あぁぁっ♡ するっ♡ しましゅっ♡」

 

後ろから激しく突かれながら、フィオレは快感に悶えつつ答える。

 

「ご飯を作ってるときも、後ろから急に襲っても怒るなよっ?」

「あぁっ♡ はいぃっ♡ いいれすっ♡ むりやり迫ってっ、おそってぇ♡」

 

既にその場面を思い浮かべているのか、フィオレは舌足らずな言葉で許す。

 

「今日からこの家に泊まれよ、寝てる間にも夜這いレイプしてやるよっ」

「ひゃううっ♡ それ、素敵ぃ♡」

 

嬉しそうに喘ぐフィオレの胸を、背後から掴み上げる。

 

「屋外でもだっ! 俺が揉みたくなったら、大人しくこのデカチチ触らせろよなっ!」

「あぁあぁぁっ♡ そんなぁ♡」

「学校でもムラムラしたらフェラさせるぞっ! 服も下着もっ、表歩けないくらいスケベなの着せてやるっ! オモチャを付けて散歩させたりっ、目隠しや手錠だって使うぞ!」

「あひぃいいっ♡ するっ♡ するもんっ♡ 颯真くんの彼女だからっ、颯真くんのしたいレイプっ、全部応えられるもんっ♡」

 

胸を揉みくちゃにされ、辱められる未来を予告されながら、フィオレは悦楽の表情で振り返る。

彼氏のしたいことを全て受け入れることこそ愛なのだと、確信しているようだ。

そんなフィオレが愛おしくて、振り返った顔を片手で掴み、唇を交わす。

 

「んちゅっ♡ んんっ♡ んぅ~♡」

 

フィオレは目を閉じ、颯真の口付けを受け入れる。

 

「最後に、一番大事なことだ」

「はひっ♡ なにぃ? なんでも、言ってぇ♡」

 

腰の動きを緩やかにした颯真は、フィオレの体を両腕ごと抱き抱え、膝立ちにさせる。

 

「これからは、お前がしたくなったときも、薬なんか盛らないで、ちゃんとおねだりしろ!」

 

背面座位の姿勢で、突き上げた。

 

「あひゅううっ♡ うんっ♡ お薬じゃなくてっ、自分から言うっ♡」

「なら言ってみろっ! ほらっ、いまどうして欲しいんだっ!? でないと止めちゃうぞ?」

 

颯真はフィオレの腰を持ち上げ、突き上げる怒張が最奥部に届く前に寸止めする。

 

「あうううっ♡ ひどいよぉっ♡ いじわるしないでっ♡」

 

フィオレは涙を浮かべ、快楽と苦痛の入り交じった顔で懇願する。

一番奥を突いてもらえず、自分から腰を落とそうとしても持ち上げられ、近付いていた大絶頂にあと一歩で届かないのだ。

 

「突いてぇ♡ 颯真くんのおちんぽでっ、わたしのこと犯してぇ♡」

 

言い終わると同時に、颯真は腰を突き上げ、一気にフィオレの最深部まで貫いた。

 

「おぉおおぉおぉぉっ♡ きたぁ♡ 気持ちいいっ♡ イクっ♡ お願いっ、そのままっ♡ もうすぐイクのっ♡ 一番おっきくてすごいイキかた来るのぉぉぉっ♡」

 

子宮口を押し上げられた瞬間、フィオレは背中を大きく仰け反らせ、後ろ手に颯真の首を抱く。

颯真はフィオレのリクエストに応えて、その小さな体をオナホのように使う。

下から激しく、何度も、力強く。

 

「あぁああぁぁぁぁっ♡ すごひぃいっ♡ おちんぽっ♡ しゅごいぃいっ♡ こんなっ♡ あっあぁああぁぁぁぁぁぁっ♡」

 

フィオレは快感に蕩けたアヘ顔で、自ら腰を振りたくって貪欲に快感を求めた。

颯真も息を絶え絶えにしながら、射精を堪え続ける。

 

「ああ、やっぱり――」

 

しかし、絶頂に痙攣するフィオレの膣内はあまりに気持ちよく、そろそろ限界だった。

 

「俺より、お前の方が絶対エロいじゃん」

 

そんな言葉と共に、颯真は白濁液を解き放った。

 

「あひぃいいぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃいぃっ♡」

 

フィオレは背中を弓なりにして絶叫し、颯真を抱き締めたまま失神してしまう。

その瞬間、フィオレの秘裂から大量の潮が吹き出した。

意識を失ってなお続く、長い、長く尾を引くアクメ。

その凄まじさたるや、フィオレの体が激しく跳ね上がり、全身が小刻みに震える。

フィオレの膣内は恐ろしいほど締まり、精液を一滴残らず搾り取ろうとしていた。

 

「うっ……くぅっ!」

 

颯真は歯を食い縛り、喉を鳴らす。

フィオレの中で果てるのは、これが初めてではない。

しかし、これほど強烈な快楽を覚えたのは初めてだ。

特に結合部から伝わる熱は尋常ではなく、肉棒が溶けてしまうのではないかと錯覚するほどだ。

媚薬を盛ったせいもあるだろうが、最高潮まで燃え上がったサキュバスの体は、こんなに凄まじいのか……

 

「あぁぁ♡ はふぅぅ♡ そうまくぅん♡ もう無理ぃ♡ もっとぉ♡」

 

虚ろな目で幸せそうな寝言を口にするフィオレ。

ひょっとすると次からは、毎回これと同等のことを求めてくるかもしれない。

 

「ったく」

 

颯真はそんなフィオレの横髪を撫でて、唾液で汚れた口をティッシュで拭いてやる。

 

「世話の焼ける幼馴染だな」

 

 

 

 

それから数日。

学校内における、颯真とフィオレの生活は――

 

「颯真くん、今日のお夕飯、なにがいいかな?」

「別になんでも」

「そう……」

 

あまり変化していなかった。

 

「フィオレちゃん、まだいいように使われてる……」

「嫌なら嫌って言えばいいのに……」

 

二人を見て交わされる会話も、同じようなものだ。

ただ――

 

「おい、車」

「あっ」

 

後方から車が来たことに気付いて、颯真がフィオレを歩道側に引き寄せる。

腕を伸ばして肩を抱き、自分の前に移動させていた。

 

「……えへへ」

「なに笑ってんだよ」

 

そうして、今度は颯真が車道側となり、フィオレの半歩前を歩く。

しかしよく見ると、その歩幅は小柄なフィオレに合わせられていた。

こうした光景を目にした生徒は――

 

「意外と、あり?」

「古き良きっていうか……」

 

ほんの少し、颯真とフィオレの関係に対する認識を改めるのだった。

 

そんな評を受けているとは露知らず、颯真とフィオレはそれぞれの家に近付く。

 

「あ、そうだ颯真くん」

 

もうすぐ道を別れるというところで、フィオレが切り出す。

思い出したかのように切り出したフィオレは、鞄から物品を取り出した。

 

「その……実は新しい『隠し味』を買ってみたんだけど……」

 

フィオレが顔を赤くしながらこっそり見せたのは、箱に入った小瓶だ。

颯真も目を丸くした後、軽く周囲を見回して、こっそり覗き込む。

 

「男性用? 女性用?」

「えっと、どっちにも、です」

 

颯真が周囲の耳目を気にして小声で問えば、フィオレはもじもじしながら小声で返す。

そして、両手で包むように箱を持つと、小首を傾げて問いかけた。

 

「……半分こ、する?」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

お薬が大好きな幼馴染カップルでした。
いかん、性犯罪よりも危険な犯罪臭がする……

次の男女をどうするかは、
まだ使ってない属性が色々あるので迷いますが、
そろそろ大人の女性を相手にした話が欲しいなと考えています。

また時間が掛かると思いますが、よろしくお願いします。


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兄嫁編 未亡人の兄嫁は死んでも夫を裏切らない
プロローグ(挿絵追加)


 

 

 

優しさが痛い――

人の心には、そんな瞬間もある。

 

あなたを大事に思っている、健やかに笑って生きてほしい、傷付けたくない。

傷心の人間には、時にそういう善良な声が痛みになるのだ

 

だから――火野修吾は『優しさ』を捨てた。

少なくとも彼女は、優しさだけでは救えなかった。

 

「遅かったね、ヘラさん」

「……ごめんなさい、修吾さん」

 

夜、人々が布団に入る頃。

火野家の一角にある修吾の部屋に、一人の妖女が訪れる。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

彼女の名はヘラ。

他界した兄の残した妻だ。

側頭部から湾曲した角を生やす、角系妖女である。

サキュバスと異名される妖女だが、最もサキュバスらしい外見の種族と言える。

と言っても、ヘラの雰囲気は、往年のエロ漫画に描かれたサキュバスとは大きく異なる。

 

ひどく、陰があった。

 

角と同色の長い黒髪は、どこか幽霊のよう。

伏し目がちの両眼は悲しげで、白すぎる肌には生気が欠ける。

薄いネグリジェに覆われた肢体も、その豊満さに反して儚げだ。

 

それだけに……普通の妖女とは異なる色香がある。

それはきっと、彼女が未亡人であることに起因するのだろう。

 

「…………」

 

修吾はそんなヘラの香気を吸い込むように、息を呑む。

亡き兄の妻を、夜になって部屋に呼び付ける――そんな状況に、背徳的な興奮が湧き上がってきた。

修吾は意識して、その興奮に身を委ねる。

 

「ほら、早く来いよ」

「……はい」

 

ヘラは言われるまま、修吾の座っていた布団に近付く。

楚々とした仕草で布団に膝をつくが、そこまでだ。

手を伸ばせば届く距離で、それ以上は近付かない。

 

「あ……っ♡」

 

だから修吾の方から手を伸ばし、ヘラの手首を強引に掴んで、引き寄せた。

ヘラは抗わない。

かといって、嬉々として応じてもいない。

どこか諦めたような顔で、義弟に導かれるまま、布団に引き込まれていった。

 

 

 

「ぢゅぷっ♡ んっ♡ ぢゅっ♡ んんっ♡ ちゅるっ♡」

 

胡坐をかいて座った修吾の股間に、ヘラは顔を押し付けている。

片手で黒髪を整えながら、もう片方の手で義弟の肉棒をとり、口での奉仕をしていた。

膝をついた姿勢は、目の前の男に平服するかのようで、その表情はどこか悲しげだ。

 

「んー、ヘラさん、もうちょっと情熱的にならない?」

 

どこか淡泊なヘラの口淫に、修吾は苦笑する。

 

「ぢゅるっ♡ れろぉっ♡ れるぅっ♡」

 

一応、ヘラは注文に応えてくれて、フェラチオのペースを上げた。

しかし、それでも情熱的に舐めしゃぶることはない。

 

「気持ちがこもってないなぁ。兄貴にもそんな下手なフェラしてたの?」

「っ! いや……っ」

 

溜息と共に言うと、ヘラは肉棒から口を離して、抗議の目で見上げてくる。

 

「あの人のことは、言わないで……」

 

亡夫のことを出されて涙目になっているヘラに、修吾は嗜虐的な笑みを浮かべる。

 

「ああ、そうだよね。ヘラさんが愛してるのは兄貴だけだもんね。ごめんごめん」

 

フェラに気持ちがこもっていないのは当たり前だった。

たとえ死に別れても、彼女は夫を愛しているのだから。

夫以外の男に、媚びるような舌使いをするなど、許されざる『裏切り』なのだ。

 

「でも、自分の立場分かってるよね?」

 

だから修吾は、自分から動くことにした。

脅すように言いながら膝立ちになり、角系妖女であるヘラの側頭部に手を伸ばす。

 

「あ……っ」

 

側頭部から伸びる角を、まるで自転車のハンドルでも握るように、両手で掴んだ。

そうして、膝立ちになった自分の股間部に、彼女の顔を上げさせる。

これから何をされるのかを予感してか、ヘラの体がびくっと震えた。

 

「ほら、口を開けろよ」

「や……待って、修吾さん……っ」

「二度も言わせるなよ」

 

ヘラは怯えた声を漏らすが、修吾が高圧的に繰り返すと、ゆっくりと口を開いていく。

そして――強引に、喉奥まで肉棒を押し込んだ。

 

「んぐっ!? おごっ!」

「歯を立てたり、噛んだりしたらどうなるか、分かるよね?」

「んんっ♡ んっ、んぐっ……♡」

 

掴んだ角を引きながら、修吾は腰を動かし始める。

逸物が兄嫁の口内に侵入して、上顎を擦って喉奥に入っていく感触。

先ほどの淡泊なフェラよりも、よほど気持ちがいい。

 

「ふっ♡ うぅっ♡ うぐっ♡ んおっ♡」

 

ヘラは苦しそうな顔をしながらも、健気に口を開き、受け入れていた。

しかしその顔は、自分からフェラをしていたときよりも、興奮の紅潮が見られる。

妖女は口や喉にも性感帯がある。そこを肉棒で擦られたことで、否応なく感じているのだ。

それがまた、征服欲を満たしてくれる。

 

「ははっ、口ではああ言って、体は妖女だなぁ。イラマチオで感じてるね」

「んむっ♡ ぢゅるっ♡ んんっ♡ ぢゅるるっ♡」

 

修吾の言葉を否定しようと首を振ろうとするが、角を掴まれているため叶わない。

両手で修吾の腰を押し返そうとするも、その抵抗は弱々しい。

 

「あー、こういうとき角って便利だなぁ。ほら、こうやって自転車のハンドルみたいに掴んでると、遊園地の乗り物みたいだ」

「んんっ♡ んっ♡ んんっ♡」

 

修吾はそうして、まるで物を扱うように、兄嫁の口を犯す。

 

「ははは、ヘラさん、顔真っ赤だよ。可愛いね」

「んん~っ♡ んんんんんっ♡」

 

修吾が笑うと、ヘラも何か抗議するように目で訴えかけてきた。

だがその目は潤んでおり、まったく迫力がない。むしろ煽情的ですらある。

 

「ほらほら、早くイかせないと終わらないよ?」

 

修吾が意地悪く言うと、ヘラは必死になって舌を動かす。

 

「んぢゅるるっ♡ ぢゅぷっ♡ ぢゅるるっ♡ れるぅっ♡」

「そうそう、その調子。素直になったお口まんこ気持ちいいよっ」

 

窓から月明かりだけが差し込む部屋の真ん中で、修吾は義姉の口に腰を振り続けた。

ヘラはフェラをしながら、時折ビクッと体を震わせて、軽く達しているようだ。

 

「ああ、そろそろイキそうだ。ほら、喉奥まで呑み込んで!」

「んぶっ♡ んおっ♡ おっおっおっ♡」

 

ヘラが一際強く吸い付いてくると同時に、彼女の頭を引き寄せる。

そしてそのまま、喉の奥に射精した。

 

「んぐぅっ♡ んんんっ♡ んっ……ごくっ♡」

「ふぅー、出た出たぁ。ちゃんと飲み干して偉いね」

「んっ……♡ はあっ……♡」

 

ようやく角から手を離すと、ヘラは肉棒から唇を離す。

その顔色は、当初よりも瑞々しかった。

口内を好き放題に蹂躙され、屈辱的な射精を受けたにも拘わらず、生命力を取り戻しているように見える。

まるでサキュバスの異名通り、男の精気を吸収したかのように。

 

「っ、修吾さん、もう十分でしょう? お休みに、なられた方が……」

 

しばらく放心していたヘラは、我に返ったように修吾を拒む。

 

「ん? なに言ってるのさ」

 

修吾はヘラのネグリジェに手を伸ばすと、胸元を勢いよく左右に開く。

すると、豊満すぎる乳房がぶるんっと揺れながら露わになる。

 

「きゃっ!?」

 

修吾はそのまま、大きな乳を鷲掴みにした。

 

「ひゃうっ♡ やっ♡ 修吾さんっ、止めて――」

「だからぁ、ヘラさんには拒否権なんか無いんだって」

 

兄嫁の乳房を好き放題に弄びながら、指先で乳首を抓んで軽く抓り上げる。

そのたびにヘラは身を捩って反応し、甘い声を上げる。

 

「兄貴が居ない以上、この家の主は俺だよ? 追い出されたくないでしょ?」

「ううっ♡ ふうっ♡ ……はい」

 

ヘラは悔しそうにしながらも、最後は敗北を認めるように頷く。

そして修吾に促されるまま、ネグリジェを脱いでいくのだった。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

パン! パンッ! パァン! と、男女の音が木霊する。

 

四つん這いにさせたヘラに向けて、修吾が腰を打ち付ける音だ。

 

「ふっ♡ ふうっ♡ ふぁっ♡ んんっ♡」

 

修吾のピストン運動に合わせて、ヘラは荒々しく息を吐き続ける。

感じている顔を見られまいとしているのか、枕に顔を埋めていた。

 

「こら、声を我慢していいなんて誰が言った?」

 

修吾はヘラの腰を掴んでいた手を片方離して、真っ白で大きなヒップに叩き落とした。

 

「ひあぁんっ♡」

 

ヘラは悲鳴のような声を上げて、背中を大きく仰け反らせる。

修吾は構わず、さらに何度も平手を叩きつけた。

 

「あひっ♡ 痛いっ♡ あっ♡ やめっ♡ んあぁっ♡」

 

ヘラは痛みを訴えながらも、その表情は明らかに快楽に染まっている。

 

「はは、スパンキングで悦んじゃうとか、やっぱりヘラさんも妖女なんだね。

 男に乱暴なくらい抱かれるのが一番気持ちいい、天性のドMだねぇ」

「そんなっ♡ 私はっ♡ ああんっ♡ らめっ♡ 奥っ♡ ぶつから、ないでぇ♡」

 

否定しようとするヘラだったが、修吾が突き込むとすぐに甘えた声で悶え始めた。

 

「いまさら何を貞淑ぶってるんだ? 兄貴が居なくなってから欲求不満なこの体っ、何度も可愛がってやったじゃないか! いつになったら素直に喘ぐようになるんだ!?」

「ひぅぅぅっ♡ いや、ですっ♡ あの人、以外に……聞かせたり、なんか……っ」

 

ヘラはそう言うと、歯を食いしばって嬌声を堪えた。

たとえ義弟に脅され、犯されようとも、心だけは亡き夫のものだと、そう訴えるように。

 

「そうそう、()()()()()()()()……っ!」

 

修吾は満足そうに微笑むと、腕を前に伸ばすと――ヘラの首に回す。

そのまま、肘の内側で顎の下を挟むようにして、ヘラの首を締め上げた。

 

「かっ……!?」

 

ヘラは目を見開いて、苦しげに身を捩る。

 

「いい加減に学ぼうよ。ヘラさんがどんなに嫌がっても、俺は犯すの止めないよ?

 本気で痛い目を見たくなければ、俺を愉しませないとね?」

 

彼女の意識が落ちる寸前まで絞め続けた後、ようやく手を離す。

 

「ごほっ、おぉっ……おほおおおっ♡」

 

ヘラは咳き込みながら、ビクンと体を震わせる。

首を絞められながらも子宮口を突かれ続け、解放された瞬間に気が緩み、達したようだ。

 

「あはは、ヘラさんて本当にマゾだよね。首絞められてイクなんてさ」

「んおっ♡ あっ♡ ああぁぁっ♡ らめらめぇっ♡ イってりゅ♡ イってますからぁっ♡」

 

修吾が嘲笑いながらも腰の動きを再開すると、ヘラは甘い声を上げながら身悶える。

絶頂を引き延ばすような追加の快感に、とうとう彼女も声を堪えきれなくなっていた。

 

「はは、また締まりが良くなった。ほら、大人しく負けを認めてイキまくっちゃおうね」

「あひっ♡ あっ♡ だめっ♡ ああっ♡ わらひぃっ♡ もうっ、許してくだしゃいっ♡」

 

ヘラは涙を浮かべながら、叩き付けられる快感の連打に悲鳴を上げる。

どれほど夫への愛を貫こうとも、体は妖女の本能に逆らえず、夫と同じ遺伝子を持つ義弟の肉棒を悦んでいた。

 

「んおっ♡ おっ♡ おおっ♡ またっ、いぐっ♡ あっあっあっあっあああぁぁぁっ♡」

 

ヘラは再びの絶頂宣言と共に果てると、膣内が激しく痙攣する。

その締め付けに誘われるようにして、修吾も射精に至った。

 

「っく、出るぞっ……」

 

ドクッ! と、下腹部から体内に音が響く。

本来なら兄だけのものであったヘラの子宮に、弟の精が注ぎ込まれていく音だ。

 

「んっ♡ ふあぁぁっ♡ 熱いの出てるっ♡ んんんん~っ♡」

 

ヘラは背筋を大きく仰け反らせ、悦楽の声を上げる。

夫への貞操を保とうと抵抗していたときの顔は、もう面影も無い。

夫との子を成せなかった体が、新しい男の子種に歓喜してしまっている。

ヘラの掲げていた妻の矜持は、その悦楽に、内側から塗りつぶされていた。

 

「ふぅ……」

 

兄嫁に欲望の限りを尽くした修吾は、息を吐く。

 

「はひっ♡ あぁ♡ ふぁぁ♡」

 

目の前では、足を揃えて横倒れになったヘラが、絶頂の余韻にぴくぴくと震えていた。

脚の間から零れる白濁液が、義弟に辱められたことを物語っている。

 

「陽司、さん……」

 

無意識のものなのか、ヘラは兄の名前を口にしていた。

詫びるように、或いは愛していると改めて誓うように。

 

「…………」

 

自分の名ではなかったことに、修吾は寂しげに笑う。

 

(死んだ後まで、愛されてるな……兄貴の幸せ者め)

 

心の内で、修吾は亡き兄に恨み言を向けた。

 

ヘラの体を何度抱いても、彼女の心はいまだ兄のもの。

 

それを変えてしまいたいのか、それとも守りたいのか――

 

最近は、修吾自身にも、分からなくなっていた。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございます。

久しぶりの新章です。
いままでよりしっとりした内容になるかも。


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第一話 やさしさ (挿絵追加)

 

火野修吾が生まれ育った町は、かつては人口減少に悩まされていた。

出て行くばかりの若者、シャッターが多くなる商店街、ありもしない観光資源――

 

そんな町を一変させたのが、全世界に轟く歴史的事変、妖魔界との交流だった。

 

どの国も、妖魔界との関係を深めることには積極的だった。

妖魔界の魔法という技術、地球の十倍以上という人口が作る市場、富と発展は約束されている。

 

妖魔界にとっても人間界は新天地だ。

特に『男性という生殖資源』がごろごろある。

晩婚化だの少子化だのと言って、その子種を空費している。

 

お互いの欲しいものは明確で、多少は融通しても問題ないものばかりだった。

両世界の関係はあっという間に緊密になり、日本の各地には妖魔界に繋がる転移港が築かれ、様々な人種の妖女たちが訪れ、移住していく。

 

修吾の故郷はその恩恵に浴した町だ。

老人の方が多くなっていた町に、途端にエルフや獣人系などの美女が住み着いた。

空の団地に空き部屋が無くなり、集合住宅が建ち、需要の増加が商店のシャッターを開かせた。

後に『ピンクハザード』と呼ばれる性の乱れはあったが、過疎高齢化の懸念は無くなっている。

 

「ありがとうございましたー」

 

店員の声を背に、店から商店街に出る。

夕方前、久しぶりに立ち寄った商店街で、パン屋に寄ったところだ。

手にした袋からはメロンパンなどの菓子パンが、香ばしい香りを立てている。

 

(アンブロシアパイのブームも落ち着いてきたなぁ。やっと気軽に食えるようになった)

 

近頃は妖魔界の食材も輸入されており、パン屋ひとつの品揃えだけでも幅広い。

特にアンブロシアという果物は、美容効果の高さでブームを巻き起こし、少し前まで品薄が当たり前だった。いまでも人気は衰えず、大抵は女性客の手に渡ってしまう。男の修吾が探すのに苦労しなくなったのも、つい最近のことである。

 

(男が少ないと、こういうの苦労するよなー)

 

修吾は商店街を歩きながら、左右に目を配る。

 

エコバックを持ったエルフ系妖女の主婦が、規模の大きい八百屋で品を見ている。

店員は犬耳の獣人系妖女で、気風のいい呼び込みでお買い得情報を伝えていた。

逆側を見ると書店があり、悪魔のように湾曲した角を持つ角系妖女の店員がレジに立っている。

小柄なドワーフ系の女学生が雑誌を選び、お会計に向かう。

通り過ぎた喫茶店では、狐っぽい獣人系妖女と樹状角を持つドライアド系妖女が談笑していた。

 

(見た目は日本の田舎なのに、住んでる人たちはファンタジックだよなぁ)

 

商店街を出て住宅地に入ると、ノスタルジックなくらいの田舎町になる。

家よりも田畑の数が多くて、大手のコンビニはなく、野菜の無人販売所や精米所がちらほらある。

錆び付いたバス停の看板、小川を泳ぐ鮒、夜になればカエルや鈴虫が大合唱――そんな片田舎だ。

 

修吾はすれ違ったご老人に挨拶をしつつ、我が家に辿り着く。

この町では立派な門構えの屋敷だ。

一瞬、寺か何かかと錯覚しそうな、高台に建つ武家屋敷である。

修吾の実家だ。

大学入学を機に一人暮らしをしていたが、故あってまた戻ってきた。

 

「ただいまー」

 

その『故』に向けて、修吾は玄関で声を掛ける。

靴を脱いで居間に顔を出すと、居間から見える厨房に、彼女の姿があった。

 

「ああ、おかえりなさい。修吾くん」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

彼女の名はヘラ。

湾曲した角を側頭部から生やす角系の妖女だ。

豊かな濡れ羽色の黒髪を下ろしており、長身細身だが起伏も豊かな美人。

地味な色合いのカーディガンにロングスカート、その上からエプロンを着けた姿は、いかにも下町風の若奥様といったところ。

 

ただ――どこか陰があった。

 

切れ長で垂れ気味の目付きと、色白すぎる肌つやが、どこか妖しげ。

まるで柳の下の幽霊と出くわしてしまったかのような、不吉さすら感じさせる気配だ。

 

もちろん、ヘラは幽霊ではないし、印象通りの性格はしていない。

 

「ただいま、ヘラさん」

 

彼女は、兄の妻。

他界した兄が残していった――未亡人だった。

 

 

 

 

祝福される結婚だった。

田舎町の好青年だった兄と、妖魔界から来た労働者だったヘラ。

順当に互いを好きになり、恋愛の末に結ばれて、もちろん修吾も幸福を祈っていた。

実は修吾が先にヘラを好きになっていただとか、そういう酸っぱい要素もない。

 

全てを変えたのは、兄の事故死。

実家に駆け付けた修吾が見たのは、目の光を失ったヘラだった。

 

不幸は不幸を呼びがちだ。

息子と死別した心労が皮切りになってか、片親だった母が病没。

 

嫁と姑の関係ながら、兄の死後、ヘラと母は互いを支え合って暮らしていた。

逆に言えば「病気がちな母を支える」という役割で、ヘラは火野家に残っていたのだ。

それを失ったいまとなっては、ヘラには「妖魔界に帰る」という選択肢もある。

夫を失い、面倒を見ていた義母も他界した、火野家との縁が切れても咎められはしないだろう。

だが――

 

「どうか、この家に置いてはいただけないでしょうか」

 

母の死後、今後について話し合ったとき、ヘラは修吾に深々と頭を下げた。

妙に追い詰められた様子だったので事情を聞くと、次のような話だった。

 

――妖魔界において、『未亡人』とは不吉な存在である。

 

元より男が希少な妖魔界、男性は貴重な生殖資源であり、一族の家宝である。

その尊重が災いしたと言うべきか、夫に先立たれた女性は『縁起が悪い』と見なされるそうだ。

一族に未亡人がいると男児が生まれ難い、未亡人のいる家では男が早死にする――

そんな迷信がまかり通っているのだという。

 

「まさか……そんな理由で、実家から縁を切られたとか?」

「いいえ、絶縁というほどではないんです。

 ただ、未亡人になった女性は一族を離れて別居するというのが慣習なので」

 

ヘラは実家との間にあった話を、修吾にも伝えた。

 

「特にいまは、一族の子女に縁談があり……不利になることは避けたいのです」

 

縁談とはつまり、ヘラの親戚筋の女性と、妖魔界の男性とのものだろう。

 

これも男性の希少さに由来するのだが、縁談は家同士における『入札』だ。

よりよい条件を出せた家が婿を迎えるか、一族の子女を嫁に出せる。

家柄がよければ夫婦となり、或いは側室や妾のような形になる。

 

どうあれ、その男性との間に子を儲けられれば、一族は存続する。

逆にこうした縁談戦略に遅れを取れば、一族は弱体化する。

だから妖魔界の住人にとって、縁談とは熾烈な男の争奪戦なのである。

 

そんな大事な縁談が控えた実家に、『未亡人』という不吉の象徴が居ては不利。

男性側の実家が「未亡人のいる家の女なんて」と拒否するかもしれないし、他家が「あの一族には未亡人がいるそうですぞ」と吹き込むかもしれない。

 

「そんなバカな……ああいや、すみません」

「いいえ、人間界からすればおかしな話に聞こえるのは当然です。

 ただ、妖魔界にとっては本当に、男性と結ばれて子を授かることは命懸けなのです」

 

修吾からすれば、ひどい話だ。

要は世間体が悪いから、夫を失ったヘラを実家から遠ざけようと言うのだ。

未亡人になったら実家から追放されました――なんて、三文小説にしても酷い。

 

「陽司さんとの間に子供ができていれば変わったでしょうが……」

 

陽司とは、修吾の兄の名だ。

 

「いずれにせよ、実家に迷惑は掛けたくはありません。

 せめて今後の身の振り方が定まるまで、この家に――」

「ここはヘラさんの家です」

 

修吾はきっぱり言い切った。

また頭を下げようとしていたヘラを見ていたら、自然と語気が強くなった。

ヘラ自身に苛立ったのではない、彼女を取り巻く環境に、憤りを覚える。

 

男性が希少だから、跡継ぎを得られるか否かが一大事なのは分かる。

だからといって、夫を喪って深い傷を負ったヘラが、なぜ家族から遠ざけられるのだ。

なぜ、一番不幸なはずの彼女が、ひっそりと姿を消そうとしているのだろうか。

 

「ヘラさんはもうこの家の住人で、俺の家族です。出ていくなんて考えないでください」

「……っ」

 

ヘラは短く息を呑んだ後、どこか眩しそうな目で微笑を浮かべた。

しかしそれはすぐに引き締まる。

 

「ありがとう、修吾くん。でも、嫁入りした私が家を乗っ取るようなことはできません。

 この家を法的に受け継いでいるのも修吾くんです。修吾くんの許しなくしては住めません」

 

毅然とした口調だった。

ヘラという女性には、こういう武家の妻を思わせるような芯の強さがある。

 

「なら、たったいま許しました。どうかこの家のこと、お願いします」

 

今度は修吾から頭を下げた。

どの道、通学の都合上、この田舎を離れての一人暮らしだ。

ヘラを追い出して家を無人にしても、建物が傷むばかりだろう。

だったら、ヘラに住み込みで管理してもらえばいい。

留守を預けていたら土地も家も売り払って姿を消す……なんて人じゃないことも、確信できる。

 

「修吾くんは、相変わらず優しいのね」

 

くすりと、ヘラは兄の死後しばらく見ていなかった笑みを浮かべる。

 

「でしたら、ご厚意に甘えさせていただきます。

 修吾くんと夫に代わって、この家の留守を預からせていただきます」

 

それが自分の使命だと言うように、ヘラは背筋を正す。

背負い込みすぎではないかとも思ったが、生き甲斐になるなら、それもいいだろう。

 

「修吾くんも、私に遠慮せず、好きなときに帰ってきてくださいね?

 ここは私の家である以上に、あなたの生まれ育った家なんですから」

 

話はそのようにまとまった。

 

ヘラはああ言ってくれたが、修吾は引き続き、実家を離れて暮らしていた。

未亡人の兄嫁と、若い男である自分が二人暮らしなどしては、邪推を招くかもしれないから。

なにより――

 

(あんないい人を残して逝くなんて……バカな兄貴だな)

 

修吾自身が、ヘラをそういう目で見ないとは、とても言い切れなかったからだ。

 

 

 

 

状況が変わったのは、半年ほど経ってからのことだった。

 

「ストーカー、ですか……っ!?」

 

法要のため実家に戻った後の夕食で、「なにか困っていることはないか」と尋ねたら、ヘラが遠慮がちに話し出したのだ。

 

「ええ……断言はできないのですが……」

 

修吾が箸を置くと、彼女はぽつぽつと語り始めた。

最近になって、何者かに付きまとわれている気がする、と。

最初は勘違いだと思ったらしいのだが、どうにも視線を感じる。

 

「最近は、窓から外を見たとき、敷地周辺をうろついている姿も……」

 

それは聞き捨てならない。

この家は外壁に囲まれており、出入口にも厳めしい門が造られている。

門を施錠すれば容易には侵入できないし、最近は防犯魔法も機能しているので、よほど気合いの入った泥棒でもなければ侵入はされないだろう。

しかし、屋敷に住んでるのが女一人だと知られれば、悪事を試みるかもしれない。

 

「相手が誰なのか、分かりますか?」

「ごめんなさい、外は暗かったので」

 

ヘラは申し訳なさそうに目を伏せた。

 

「謝らないでください。むしろ、もっと早くに相談してくれてよかったです」

「ありがとうございます。でも、こんなことで煩わせたくなくて」

「そんなバカなことを言うのは、今日を最後にしてください」

 

きっぱりと言い切って、色々なことを考える。

ストーカーというのは、妖女が溢れて男が恋人に困らない時代でも、たまに聞く話だ。

数字上は、女性が加害者になる件が上回っているが、女性をつきまとう男も絶滅はしていない。

 

「ヘラさんくらいの美人なら、十分にありうる」

「っ、その……恐れ入ります」

「ああ、ごめん。お世辞が言いたかったわけじゃなくてね」

 

照れた様子で目線を外しているヘラに謝りつつ、話を続ける。

 

「ストーカーはもちろん、強盗の下調べなんて線もあり得るし、用心するに越したことはない」

 

見た目だけは立派な屋敷だ、その標的にもなり得る。

最近は電子化やら何やらで、資産を自宅に置かない家も多いが、火野家くらい古い家だと金庫の存在も期待されてしまう。羽振りのいい高齢者の家が狙われる一因だ。

 

「一度、警察に相談しておこう。パトカーが巡回してくれるだけでも圧になる」

「そう、ですね。あまり噂になりたくはありませんが……」

 

田舎は噂になるのも早い。

昔より発展したとはいえ、警察ともなれば話題に上ってしまうだろう。

しかしこの場合、それが幸いする面もある。

 

「ご近所には『不審者』ということで説明しましょう」

 

ストーカーというと、ヘラの自意識過剰ではないかという心ない言葉が起きるかもしれない。

こういう、妖女の移住者が多い田舎だと、妖女を毛嫌いする人間マダムも多い。

そのあたりをケアするために、警戒しているのは強盗であるという方向性にする。

 

「ストーカーなら、家の近くをパトカーが走っているだけで、牽制になるでしょうから」

 

本命はそっちだ。

ストーカーという性質上、火野家の周辺には目を配るだろう。

やましいところがある犯人は、パトカーを見ただけで自分が通報された可能性を考えるはずだ。

それで頭が冷えてくれれば御の字である。

 

「後は防犯カメラも見直して……」

 

ネットで色々調べよう――と内心で決める修吾。

そんな義弟に、少し申し訳なさそうな微笑を浮かべて、ヘラが口を開く。

 

「ありがとう、修吾くん。ただ、もしよければ……」

 

ヘラは言いにくそうに言葉を切る。

何を頼みたいのかは、すぐに察しが付いた。

 

「ああ、しばらく俺もここで暮らすよ。大学も夏休みだしね」

 

何よりも、こんな状況で屋敷に一人だけというのは、ヘラも不安だろう。

間違いを起こさないために、なるべく同居は避けていたが、こうなっては仕方ない。

いくらなんでも、ヘラや家になにかあったら、あの世の両親や兄に顔向けできなくなる。

 

「ああ、安心したわ。申し訳ないけど、頼らせていただきます。もちろん、家事は全て任せてくださいね」

 

ヘラは嬉しそうに顔をほころばせて、夕食の食器を片付け始める。

自分の家事くらい自分ですると言おうとしたが、ヘラの性格を考えると……ここは甘えておく方が、彼女も気に病まずに済むだろう。

 

(さて、とりあえず色々と調べておかないと)

 

ストーカーの相談や対策などについて、スマホを使ってネット検索を始める。

視界の片隅、食器を洗い場に運んだヘラがこちらを振り返る。

その口元が、どこか妖しく微笑んでいるように見えたのは、気のせいだったのだろうか……

 

 

 

 

かくして始まった、未亡人の兄嫁との二人暮らし。

その内容は、当初の予想に反して、いたって平和なものだった。

ストーカーの件を警察に相談したところ、夜間パトロールの巡回ルートに家の周辺を加えてくれることになった。それが功を奏したのか、不審者はいまのところ現れていない。

 

では、修吾とヘラの関係はどうかというと――普通だ。

色気づいたことが起きるわけでもなく、揉めるようなこともない。

家事をどう分担するか、防犯対策をどうするか、そんなことを話し合ったくらいだ。

 

「それじゃあ、行ってきますね」

 

夏休み中の修吾と違って、ヘラは仕事に出る。

勤め先は、妖魔界との貿易に関係する会社らしい。

農産物を中心に、日本のものを妖魔界へ輸出、妖魔界のものを日本に輸入している。

この田舎で育った作物は、彼女の事務作業によって妖魔界へ届けられるわけだ。

最近は、妖魔界の果物をこちらで生産する計画が動いているという。

 

「ああ、行ってらっしゃい――送った方がいいかな?」

「もう、それは気にしすぎです。でも、ありがとう」

 

修吾がストーカーを警戒して言うと、ヘラはくすりと笑った。

ヘラの服装は夏物のワンピース、無地の濃紺色でクラシカルな印象だ。

妖魔界ではOLのスーツに当たる礼服らしく、どことなく喪服っぽく見える。

スレンダーなのにメリハリの利いたスタイルもあり、普通の妖女と違う、陰のある色香を感じた。

 

(……いけないな)

 

そんなヘラを見送った後、修吾は自分を省みる。

やはりというか、こうして二人で暮らしていると、ヘラに対して不意の色香を感じてしまう。

料理をするとき、髪を結い上げたときの、白くて細いうなじ。

廊下ですれ違ったときに鼻をくすぐる、例えがたい女性の香り。

風呂上がりの濡れた髪、上品な食事の仕草……ふと兄の遺影を見ているときの横顔。

儚げで、もの悲しげで、ふとした瞬間に虚空へ溶けて消えてしまいそうな雰囲気も。

思わず、現世に留めようと、その両肩を抱き寄せたい衝動に駆られる。

 

(ああもう止めだ止めっ! 兄貴になんて言い訳する気だ!)

 

死人に言い訳する必要はない――なんてドライになっていい問題ではなかった。

 

一介の男として、ヘラという美女に惹かれることは否定しない。

白状すると、先日に自慰をしたときなどは、ヘラの姿を思い浮かべてしまった。

その後の自己嫌悪たるや、想像以上だった。

性に関して奔放なこの時代でも、踏みにじってはならない倫理というものがある。

自分は兄を裏切ってはならないし、ヘラに兄を裏切らせてはならない。

未亡人の兄嫁と義弟が……なんて三流の昼ドラ展開を、現実のものにしてはならないのだ。

 

 

 

 

事件が起きたのは、その日の夜。

夕食を終えて、ヘラも修吾も風呂を済ませ、それぞれ寝室で休もうかという頃だった。

 

「ん?」

 

廊下を駆けてくる足音に、修吾は顔を向ける。

 

「修吾くんっ」

 

すると、ネグリジェ姿のヘラが、修吾の部屋に駆け込んできた。

 

「っ」

 

思わず息を呑む。

特に露出が多いわけでも、体型が強調されているわけでもない。

それでも、来ている服がほんの少し薄くなっただけで、見えない裸身から放たれる妖女のフェロモンが、急に濃くなったように見えた。

 

「ヘラさんっ? ど、どうしたの?」

 

駆け寄ってきたヘラに、こちらが慌てる。

胸に飛び込んでくる寸前で止まったヘラは、滅多に見ない慌てた様子でこう訴えた。

 

「その、突然ごめんなさい。いま、部屋の窓から外を見たら……」

「っ、誰かいたの?」

 

こくこくと頷くヘラ。

兄嫁に魅了されている場合ではないと気付いた。

どうやら我が家の近くに、また不審者の影が見えたらしい。

 

修吾は自室の窓に向かい、外を覗き見る。

住居も外灯も少ない田舎町なので、外は暗い。人影らしきものも視認できなかった。

 

「ちょっと待ってて」

 

スマホを取り出して、防犯カメラの映像を確認する。

ストーカーの相談を受けてから導入したハイテク設備だ。

録画映像を十分ほど巻き戻して確認するが……

 

「映ってないな」

 

少なくともカメラの捉える範疇に、人の姿は過ぎらなかった。

 

「見間違い、かしら……」

「いや、カメラは門のところしか映してないから、別の場所にいたのかも」

 

いいお値段だったので、一個しか設置していない。

不審者がカメラの存在に気付いて、その地点だけ避けたのかもしれない。

 

「ちょっと見てくる」

 

修吾は上着を羽織って、部屋を出ようとした。

許さない――

ヘラを怖がらせた不埒者を許しておけない。

自分でも驚くほどの激情が、修吾の胸の内にあった。

喧嘩が強いわけでも、武道の経験があるわけでもないのに、恐怖心がない。

たとえストーカーが刃物を持ちだしたとしても、臆せずぶん殴れそうだった。

 

「だめっ!」

 

すると、背後からヘラが抱き付いてきた。

背中に感じる柔らかい胸、胸に回ってきた細い両腕。

男の本能が急激に刺激される密着状態に、怒りが吹き飛んでしまった。

 

「危ないわ……修吾くんに、なにかあったら……お願い、行かないで……っ!」

 

ヘラは、普段からは想像もできないような強い力で、修吾を引き留める。

細い指が修吾の服を握り込み、腕が痛いほど体を締め付けていた。

必死だ。あまりにも必死だった。

 

「ヘラ、さん?」

「ごめんなさい。きっと、私の見間違いだから……でも……っ」

 

ヘラの顔は見えないが、声の震えから、どんな表情なのかは察せられた。

きっと、泣き出しそうな顔をしていることだろう。

 

「いまは、一人にしないで……っ」

 

たぶんヘラは、修吾に万が一のことが起きることを想像した。

それは即座に、兄の死を思い出させたのだろう。

一人にしないでという言葉も、きっとそういう意味だ。

ヘラが怖れているのは、居るか居ないかも分からない不審者より、胸の内に再来した死別の痛みだった。

 

「ヘラさん、落ち着いて」

 

修吾は振り返って、ヘラを抱き締める。

こんなことをしてはいけない――という理性の声が、頭の片隅で聞こえた。

それでも、いまはこうするべきだと、理性とは別の何かが言っていた。

 

「あ……」

 

ヘラの声は、虚を衝かれたようであり、自分の迂闊に気付いたようでもあった。

その声音で気付く。

ヘラもきっと、修吾との距離を慎重に保っていたのだ。

夫を喪った後、義弟に接近するような、恥知らずな女になるまいとしていたのだ。

自分たちはお互いに、必死に『節度』を守ろうとして、どこか窮屈な遠慮をしていた。

だけどいまは――節度なんてものは、震える彼女を遠ざける、冷たい選択でしかない。

 

「大丈夫だから。落ち着くまで、ちゃんとここに居るから」

 

細い肩を抱き、なだらかな背中を撫でる。

性的な感情は無い。まるで泣く子を宥める慈父のような心地だ。

それが伝わったのか、ヘラの一瞬だけ強張っていた体から、緊張が抜ける。

 

「ごめん、なさい……」

 

ヘラは、髪を撫でる修吾の手を受け入れるように、少しだけ体重を預けてきた。

 

 

 

 

どれほどの時間、そうしていただろうか。

暗い部屋、二人の間には沈黙が続いている。

修吾は強すぎない力でヘラを抱き、角系妖女の角を眺めながら、黒髪と背を撫でる。

そうしているうちに熱情も冷めていき、他のことに意識が回るようになってきた。

 

(柔ら、かい……)

 

ヘラを抱きしめる感触が、いまさらのように気になり始めた。

薄いネグリジェ一枚越しに、彼女の体の柔らかさが伝わってくる。

胸の膨らみはもちろん、尻の肉付きや腰回りのくびれ、太腿の張り具合まで。

 

「あ……」

 

ぴくっと、ヘラが動く。

何かに気付いたような顔は、修吾の下腹部を見ていた。

 

「っっっ!!」

 

修吾も気付く。

股間が隆起してしまっていた。

ヘラの体に興奮してしまった証拠である。

 

「あ、ごめんっ。その、こんなときに……」

 

凄まじい自己嫌悪に襲われる。

ヘラは怯えていたのに、兄の残した妻なのに。

流石のヘラも嫌悪するだろうと、抱いていた腕を解くと――

 

「いえ……いいんです。私が、こんなことをしたから……」

 

ヘラは遠慮がちに、修吾の服の襟を抓んでいた。

離れようとした修吾を、引き留めるかのようだ。

恐る恐る顔を見ると、気恥ずかしそうに頬を染めながらも、薄く微笑んでいる。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

(なんで、そんな顔……)

 

冷静に考えれば、都合のいい勘違いだが……

その表情は、どこか「嬉しそう」に見えた。

 

「怒ってませんから、そんな顔しないで?」

 

ヘラの目にはどう映っていたのか、不安を解きほぐすように微笑みかけてくる。

ドクン! と、胸が高鳴った。

笑った顔が魅力的だったからか、ヘラが自分の性欲を許容してくれたからか。

そのことが、かえって修吾の肉棒に熱を帯びさせた。

 

(止めろ、考えるな、俺……っ)

 

自分に向けて念じるが、気付いてしまった。

ヘラのネグリジェ姿は魅力的だった。淡い桃色の薄着で、胸元は少し開いている。

 

こんな洒落た寝間着を、常用するものだろうか?

 

これは、例えは夫や恋人に対してのみ見せる姿ではないだろうか。

髪も整えられているし、唇にはリップが塗られている。

目を配れば配るほど、ヘラは『お洒落』をしているように見えた。

 

なぜ、そんな格好で、義弟の部屋に来たのだろうか?

 

不審な人影を見付けたと言って駆け込んできたが……それは本当だったのだろうか?

全てはこの状況、修吾に自分を異性として意識させるためだったのではないか。

 

つまり――自分はいま彼女から、()()()()()()のではないだろうか?

 

「…………」

「…………」

 

沈黙。

気恥ずかしさを伴う、どこか甘酸っぱさすら伴う、二人の無言。

 

ヘラはまだ、修吾から離れようとしていない。

普通に考えて、「もう大丈夫だから、お休みなさい」とでも言って、部屋を出るべきだ。

仕方ないこととはいえ、勃起した義理の弟が目の前にいるのだから。

夫を喪った妻が、留まっていい状況ではないはずだ。

 

なのに……ヘラは動かない。

まるで、修吾が何か切り出すのを待っているかのように。

修吾のバカな勘違いでなければ、それは――『期待』の態度だった。

 

(言うな、言うなよ俺……っ)

 

修吾の中で、倫理観を司る部分が訴える。

 

「その、ヘラさん……」

 

それでも、熱を帯びた体から自然と生まれたかのように、言葉が口をつく。

 

「もし、まだ、不安なら……」

 

言うな、言うな、言うな。

この人を誰だと思っているんだ。

兄貴の妻だぞ、自分もその結婚を祝福していた義理の姉だぞ。

夫を喪って傷心していて、ストーカーの影に怯えている女性だぞ。

そんな人に、自分は――

 

「今夜は、一緒に居ましょう」

 

亡き兄を裏切る言葉を、口にした。

 

 

 

 

「……っ」

 

修吾の言葉を聞いたヘラは、どこか気まずそうに息を呑んだ。

驚いたというより、予想していたような反応だ。

頬を染めて、息を熱くしている。

少なくともその熱っぽい表情は、NOとは言っていなかった。

 

「だめ……」

 

それでも、ヘラの口から出たのはNOだった。

 

「ごめんなさい、私が不用意なことをしたから……でも、そんなつもりじゃないの」

 

当然と言えば当然の返答だ。

しかし修吾の目には、ヘラが嘘を吐いているように見えた。

曇った表情も、拒否感というより罪悪感が読み取れる。

 

「なにも、聞かなかったことにするから。今日はもう、お休み――」

「本当に?」

 

ヘラの台詞を遮る形で、再確認する。

直感があった。

兄ほど彼女をよく知っているわけではないが、いまヘラは嘘を吐いていると確信できる。

 

「あっ」

 

言葉と共に抱き寄せると、ヘラはほんの僅かな抵抗を示しただけで、修吾の胸に納まる。

 

「俺には、ヘラさんが、誘ってくれてるようにも見えたけど?」

「ち、違います……っ。修吾くんの、勘違い、です……は、離して……」

 

否定する言葉は尻すぼみだった。

修吾の抱擁に対する抵抗も、本気とは言えない、ただの身じろぎだ。

それを確かめるように背筋を撫でると、

 

「んぁっ♡」

 

たったそれだけで、ヘラの口から悩ましい声が生じた。

 

「こんなに、体が火照ってるのに?」

 

服越しに触れた体は熱を帯びており、修吾の愛撫にも敏感だ。

少なくとも彼女の体は、女として興奮状態にある。

 

「それはっ……それとこれとは、別です、から……やっ♡」

 

背中を撫でた手が腰に降りて、ヒップの直前あたりに届くと、またヘラの甘い声。

 

「別、か……それって、体はOKしてくれてるってことだよね?」

「そういう意味じゃ……い、いい加減に……はあっ♡」

 

強く抱き寄せると、ヘラの胸が修吾の胸板に押し潰され、艶やかな吐息を生じさせた。

それでも言葉だけは、必死の抵抗を試みている。

 

「……本当に嫌で、傷付けちゃうなら、止めるよ」

 

修吾はヘラを抱く腕を緩めて、努めて優しい声音で囁く。

するとヘラの抵抗も止まり、どこか戸惑ったような顔をする。

もっと言えば拍子抜けしたような、修吾が自制したことを残念がるようでもあった。

 

「その前に、ひとつ聞かせて?」

 

修吾は、ふと思い浮かんでいた疑問を、ヘラに投げかける。

 

「――()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

絶句するヘラ。

目を見開いた後、気まずそうに反らしたことが、雄弁な肯定だった。

 

「やっぱり。それらしい人影もないし、おかしいと思ったんだ」

 

疑いを覚えたのは、そもそもストーカーは誰なのかと考えたときだ。

そもそもこの田舎町には、妖女が多い。

つまり、女に困る若い男なんて、田舎を出ていた修吾くらいしかいない。

田舎なので、どこの家に誰が住んでいて何をしているかなんて、自然と耳に入る。

職場の同僚も、近所の住人も、男は皆揃って妖女の妻や恋人がいた。

ストーカー行為に走るまで思い詰めるような男が、見当たらなかったのだ。

 

「正直に答えて? どうして、そんな嘘を吐いたの?」

 

答えるまで離さないと、抱き寄せる腕で訴える。

 

「ごめん、なさい……ごめんなさい……っ」

 

すると、ヘラは修吾の腕の中で震え、涙を零し始めた。

 

「ヘラさん?」

 

泣かれるとは思わず慌てると、ヘラは床に崩れ落ちる。

修吾が倣うように座ると、彼女はゆっくりと、事の次第を語り始めるのだった。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

改めて――妖魔界の妖女たちにとって、子供を得ることは至上命題だ。

 

人間界に渡って夫を得たヘラは、当初はその命題を果たしていた。

しかし子を成す前に夫と死に別れると、一転して未亡人という不吉な存在になってしまった。

 

「妖魔界の家族も、決して私を疎んでいるわけではないんです」

 

未亡人は不吉であるという風潮が遠ざけさせているだけだと、ヘラは語る。

きっとヘラの親族も、傷心のヘラを迎え入れてやりたかったのだろう。

 

「母も、然るべき時期が来たら戻ってきていいと言ってくれています。

 でも、その前に――」

 

ヘラは涙ながら、どこか危うさすら感じる笑みを浮かべて、こう続けた。

 

「夫に弟がいるなら、彼にお情けを掛けてもらったらどう……って」

「…………」

 

修吾は目を瞬く。

ヘラが親族に何を言われたのか、すぐには理解できなかったからだ。

 

「え? それって……」

 

ヘラの母親が、ヘラに言ったのか?

夫の弟に抱かれてはどうかと。

もっと言うなら――義弟の子を孕んでから帰ってこいと。

夫を喪ったばかりの未亡人に、そう言ったのか?

 

「正気とは思えない、ですよね? でも、妖魔界では普通なんです。

 未亡人が夫の縁者に娶られるというのも、子を授かってから実家に戻るのも。

 私も人間界で暮らすまでは、そのことに何の疑問も抱いてませんでした」

 

人間界にも一夫多妻はあるし、昔の中東圏も似たようなものだったという。

ヘラの口振りからして、母親も悪気は一切なかったのだろう。

むしろその方がヘラにとって幸福だからと、真剣に思っていたのかもしれない。

それでも、現代日本の価値観からすると……それはちょっと、ひどい。

 

「それで、俺を……家に、呼び戻すために?」

 

ストーカー被害を偽って、大学が夏休みの間だけでも、この家に住まわせようとしたのか。

夫の弟である修吾と関係を持つために。

半ば責めるように確認すると、ヘラは無言で頷いた。

 

「浅ましい女だと、笑ってください……

 でも、この広い屋敷に、一人でいるのが、耐えられなくて……」

 

昏い瞳で告解するヘラを、修吾は無言で見守る。

 

「修吾くんを見る度に、あの人の面影が色濃く感じてしまって……

 はしたなくも、あなたを求めてしまう自分が大きくなっていって。

 いまだって、人影を見たなんて馬鹿な嘘を吐いて、修吾くんの部屋に……っ」

 

誘惑を、しようとしたのだろう。

虚偽のストーカー被害で修吾を呼び寄せ、なし崩し的に二人暮らしにして、手出しさせようと。

 

「なのに……っ、いざとなったら、あの人のことが頭を過ぎって……っ!」

 

それでも結局、ヘラは兄を裏切れなかった。

計画通り修吾に迫られたというのに、その段になって、夫が脳裏を過ぎったのだろう。

自分から誘ったというのに、直前になって怖じ気づいたらしい。

それは、ヘラの持つ夫への(みさお)が、妖女の本能を上回ったということでもあった。

 

「ごめんなさい……修吾くんの気持ちを、弄んで……っ」

 

確かに、修吾からすれば、ひどい話だ。

ストーカーは嘘で、誘惑されたかと思えば直前で拒まれる。

兄に代わりヘラを守ろうと勇気を出し、罪悪感を振り切って抱こうとした自分の気持ちはどうなる――と、怒ってもいいところだろう。

 

「……っ」

 

それ以上に――気に入らない。

ヘラが泣いているのが気に入らない。

昔のように笑った顔を見たいと思っていたけど、こんな自嘲の笑みは見たくなかった。

 

「こんな私が……修吾くんのような誠実な人に、優しくされる資格なんてありません……」

 

修吾が無意識に拳を握って沈黙していると、ヘラは何か諦めたような顔をする。

 

「明日にでも、この家を出て行きます」

 

その言葉が、修吾の中で何かを動かした。

ヘラに吐露された激情で乱れていた心に、奥底から何かが湧き上がってきた。

怒りに似ていたが、それはヘラに対するものではなかったと思う。

敢えて言うなら、彼女をここまで苦しめている、この『状況』に対してだろうか。

 

「ヘラさん」

 

立ち上がって部屋を去ろうとした彼女の肩に、両手を置く。

 

「修吾、くん……?」

 

自分は怖い顔でもしていたのか、ヘラが虚を衝かれたように固まる。

 

「ヘラさんが出て行く必要なんてありません」

 

先ず、一番大事なところを言い切って、言葉を繋げる。

 

「上手く言えないけど……俺も、ヘラさんに兄貴のこと、裏切って欲しくない。けど――」

 

修吾は別に、兄を嫌ってもいないし、強く嫉妬してもいない。

いたって純粋に、二人でつつがなく暮らして、甥っ子や姪っ子の顔でも見せてほしかった。

ヘラが、兄が死んだ後も愛し続けるというなら、その尊さを守ってやりたい。

しかし、その善心に従っているだけでは……ヘラの孤独な苦しみは癒やせないのだ。

 

「あなたのことを、放ってはおけないから。だから……っ!」

 

意を決して、修吾はヘラの両肩を握る手に力を込める。

 

「あ……っ」

 

背後に敷いてあった布団に、押し倒す。

無抵抗に倒され、仰向けになったヘラは、修吾が何を決断したのかを理解したようだ。

 

――他に思いつかなかった。

 

ヘラが修吾に抱かれれば、兄を裏切らせることになる。

修吾がヘラを抱かなければ、彼女を追い出すことになる。

 

どちらも嫌で、どちらもできない。

この二律背反めいた状況を解決する選択が――ひとつだけあった。

 

「――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「修吾くんっ!? 待ってっ! や……っ♡」

 

驚愕するヘラに構わず、ネグリジェの上から乳房を揉みしだく。

薄い生地越しに感じる柔らかな肉感と、掌に収まりきらない大きさ。

華奢な肩幅と比べてアンバランスなほど豊かな胸で、修吾の手が背徳感に痺れる。

 

「やだっ、修吾くん……んっ♡ 落ち着い、てぇ……っ♡」

 

ヘラもすぐに艶っぽい声を上げて身をよじり始める。

腕を振り払おうとするも、彼女の枯れ枝のような手は、あまりに無力だった。

体ごと逃げようとしても、修吾の左手が肩を押さえ込んで、布団に押し戻される。

 

「だめっ、こんなの……っ♡ 私っ、あの人の妻だから、お願い……ひぅ♡」

 

右手の指先で乳首を摘まむと、彼女はびくりと体を震わせた。

そのままクリクリと転がしてやるだけで、全身がびくっと震え、息遣いが激しくなる。

 

「すごい、敏感だね……」

 

囁きながら首筋にキスをすると、彼女の体がまた小さく跳ねる。

 

「俺でも分かるよ。この体、兄貴が死んで以来、ずっと夜泣きさせてたんだろ?」

「いやっ、言わないでっ! あっ♡ ダメだって、言ってるの――ふぁっ♡」

 

耳まで真っ赤にして抗議するが、その瞳は潤んで、快楽に蕩け始めていた。

それでも両手は抵抗を続けている。

片手は修吾の頭を引き剥がそうとし、もう片方の手は胸板を押し返そうとする。

しかしそれは、ほとんど抵抗になっていない。

かといって、抵抗と見せかけて受け入れてもいない。

拒むのは形だけ、かといって露骨に歓迎もできない、実質の無抵抗。

そのことが、彼女の本心を表わしているように思えた。

 

「なに言ってるんだよ、ヘラさんだってその気だったんだろ!?」

 

修吾は強い口調で言いながら、ネグリジェの胸元を乱暴に開く。

ぶるんっ――と踊り出る、兄嫁の乳房。

ブラは着けていなかった。

大きさのあまり少し横に流れた白い半球、その先端で薄桃色の突起が尖っている。

 

「いやっ、それは、できないって――」

 

胸を隠そうとしたヘラの手首を掴み、枕の上に揃えて片手で押さえ込む。

 

「ああ……()()()()()()()()()

 

修吾は右手を伸ばし、今度は生の乳房に指を沈める。

 

「んんっ♡」

 

素肌に直接触れられたヘラは喉を反らし、同時に修吾の意図を理解した。

 

「修吾、くん……っ」

 

ヘラは修吾に抱かれなければならない、体もそう言っている。

だが夫は裏切れない、だから家を出て行こうとしている。

 

しかし、襲われたというなら?

 

夫を裏切ることなく、修吾に抱かれることができる。

そんな都合のいい『被害者』の立場が目の前にあるのだと、ヘラも気付いてしまった。

 

「乱暴されたくなかったら、大人しくしててね?」

 

と、脅迫する。

彼女がちゃんと『被害者』になれるように。

修吾の兄を、彼女の夫を、裏切らずに済むように。

そんな願いを込めながら、修吾はヘラの乳首に吸い付いていった。

 

「やだっ、修吾くん……っ♡ やめ、ひぅうっ♡」

 

ちゅぱ、れろ、ぴちゃ――舌で舐めるたびに甘い味が広がる。

これが、兄の妻である女の味かと、背徳感に脳が痺れた。

 

「だめっ、こんなの……っ♡ 修吾くんはっ、こんなこと、する人じゃ……ああぁっ♡」

 

音を立てて吸い上げると、修吾の下でヘラの肢体が跳ねる。

 

「んくっ、ふ……っ♡ やだ……っ♡ おっぱいっ、吸わないでぇ……っ♡」

 

嫌がりながらも感じているのが、声と表情から伝わってくる。

口では嫌だと言いつつも、夫を喪ったサキュバスの体は、否応なく新しいオスを求めていた。

それが、夫と同じ血を流している義弟であれば、ヘラの体が修吾を拒む理由も無い。

 

「ああ、胸だ。ヘラさんの胸っ、乳首っ!

 ずっとこうしたかったって言ったら、驚く?」

 

興奮を笑みにして、修吾は嗜虐的な声音で問いかける。

それに背徳感を煽られてか、ヘラの声が官能を増していく。

 

「だめっ♡ こんなの、おかしいよぉ……っ♡ あぁっ♡」

 

乳首をしゃぶりながら、もう片方の乳房を揉む。

張りのある柔肉に指先が沈み、掌の中で乳首がコリコリと硬さを増す。

 

「あっ♡ あっ♡ ああぁぁっ♡ ひうっ♡ んんんっ♡」

 

ヘラは激しく身をよじり続けていた。

義弟に襲われて必死に抵抗している。

それ以上に、修吾の手と口が与える悦楽に、よがっている。

こうなると、抵抗しているのも、無理矢理されているという言い訳のためであるように見えた。

 

「いいんだよ? ヘラさんは悪くない。俺が、俺が悪いんだからっ」

 

修吾はヘラの両手首を離さず、拘束し続ける。

きっと解放しても、ヘラは修吾を押しのけられないだろうが、いまは『抵抗を奪われている』という事実が必要だった。

 

「だめ……そんな、そんなの、卑怯よ……っ」

 

ヘラが涙目で口にした卑怯とは、誰に対してか。

ひどい理屈で自分を犯そうとする修吾にか、それに甘えて抱かれてしまう自分にか。

どちらでも構わない。いま修吾の頭にあるのは、もっとヘラの口から女の声を上げさせることだけだった。

 

「ひあっ♡」

 

修吾の右手が乳房を離れ、ヘラの脚の間に入っていく。

閉じていた足を開き、ネグリジェのスカートをまくり上げ、更に奥へ。

太股を割り開くように進んだ手が、ショーツを探り当て、その先の秘所へと潜り込む。

 

「っっっ♡」

「ああ……すごい濡れてる……」

 

そこはもうぐしょぐしょだった。

修吾が胸への刺激を強めた瞬間から、すでにヘラの股間は熱く潤んでいたのだ。

 

「ほら、足を開いて。でないと乳首を噛むよ?」

「ひゃあうぅっ♡」

 

脅し文句を口にしながら、軽く前歯で乳首を引っ掻くと、ヘラはびくびくっと長い痙攣を起こす。

乳首に歯を立てられる恐怖に負けて、両脚がゆっくりと開かれていった。

 

「いい子だね」

 

修吾の右手が、ヘラのショーツの中で暴れ始めた。

くちゅくちゅくちゅ! ――湿った水音が、寝室の中に響き渡る。

 

「いやっ♡ いやぁっ♡ 音、たてないでぇ……っ♡」

 

ヘラが顔を真っ赤にして、いやいやと首を振る。

反して陰唇は修吾の指をまるで拒まず、指は容易に膣内へと滑り込んだ。

体は正直とはこのことか。修吾は嬉々として、ヘラの膣内を掻き回していく。

 

「いいんだよ? 辛かったら、兄貴の代わりだと思ってくれていいから……っ!」

 

言葉と共に、中指でざらついた部分を擦る。

 

「あぁあぁぁっ♡」

 

ヘラの腰が大きく跳ねた。

どうやらGスポットと呼ばれる場所らしい――ここが弱点なら、夫にも開発されていたはずだ。

ならば遠慮はいらないとばかり、修吾は執拗にそこを攻め続けた。

 

「だめっ♡ そこはっ♡ あの人だけっ♡ あの人しかっ♡ 触っちゃだめだからぁ♡

 あっ♡ あああぁぁぁっ♡ あっあっあっ♡」

「その調子だよ。もっといい声を聞かせるんだ。兄貴としてたときみたいに!」

 

修吾は執拗に兄のことを口にして、ヘラに夫とのセックスを思い出させようとする。

ヘラの中で、自分を兄に重ねさせ、抵抗感を奪い、快感を受け入れさせるために。

 

「はぁっ♡ はっ♡ あああぁぁっ♡ んんっ♡ ふあああぁぁぁっ♡」

 

ヘラの声がどんどん甘くなっていき、遂には甲高い嬌声に変わった。

指で感じる膣内が収縮する――達したのだ。

 

「はぁ……っ♡ ふぁ……っ♡ ああぁ……っ♡」

 

絶頂の余韻に震えるヘラ。

頬は紅潮して、黒髪は乱れて角に絡み、目尻からは涙が零れていた。

久方ぶりの、男の手による絶頂。

その恍惚感には、夫以外の男の手で達してしまったという罪悪感も混ざっていた。

 

「お願い……ここまで……ここまでに、して……これ以上は、もう……あの人に、顔向け、できないから……っ」

 

ヘラは修吾に向けて懇願する。

このまま挿入までされては、夫のための体が完全に奪われてしまう。

死に別れた夫にできる、最後の抵抗だとばかりに、ヘラは義弟に慈悲を請う。

 

「…………」

 

修吾は、そんなヘラの怯えた顔を見て、寂しげに笑うと――左手を離し、彼女の両手を解放した。

 

「ぁ……」

 

拘束を解かれたヘラは、安心したような、少し残念そうな、寂しげな顔になる。

そんな兄嫁に、修吾は――

 

()()()()()()()()()()

 

スウェットの下を降ろし、限界までいきり立った肉棒を取り出した。

飛び出してきたそれは、ヘソにまで届きかねないほどの長さを持っていた。

先端はエラが張って膨らみ、カリ首は段差が深く、裏筋は血管が浮いて脈打っている。

まさに凶器と呼ぶに相応しい剛直だった。

 

「う、嘘……」

「たぶん、兄貴より大きいよ?」

 

唖然とするヘラに言いながら、彼女のショーツを掴んで、千切るように足から引き抜いた。

 

「やめ、やめてっ! だめよ! それだけは、本当にダメッ!」

 

ヘラは慌てて脚を閉じようとするが、修吾の手が膝を掴んで左右に広げた。

 

「お願い、お願いっ。あなただって、お兄さんのこと、裏切ることに――」

 

彼女の秘所に己のペニスをあてがい、そして――

 

「あ――っ」

 

ずぶぶっ!! と、一気に根元まで押し込んだ。

 

「く――あ――あああああぁぁぁぁぁっっっっっ♡」

 

瞬間、ヘラが背筋を大きく仰け反らせ、両脚がびくんっと痙攣した。

乳房が跳ね上がるように揺れて、肉棒に巻き付く膣壁が、何かの機械のようにぎゅんぎゅんと締め付けてくる。

 

「うわ……」

 

修吾は感嘆の声を零した。

 

「はひっ♡ あっ♡ はひぁぁぁっ♡」

 

ヘラは、挿入されただけで、意識を失いかけるほどに絶頂していた。

その顔はだらしなく蕩けて、口の端から唾液が垂れている。

 

「はは……入れただけなのにイっちゃったの?

 それも、普通のイキかたじゃないよね? それ」

 

なんという淫らさ。

言葉ではあれほど修吾を拒み、心はいまでも夫のものなのに。

体はまるでその逆。

修吾と同居してからの数日で、ヘラの体は女を思い出し、肉棒の到来を待ちわびていたのだ。

 

「ちがっ♡ 違うのっ♡ これ、これはぁ――」

「ああ、いいよ。なにも考えなくてっ!」

 

修吾は腰を沈め、より深く怒張を押し込みながら、ヘラの顔を見下ろす。

 

「ひぅぅぅぅっ♡ 違うっ♡ 私っ、そんなんじゃっ♡ んぁぁぁっ♡ 違うのにぃっ♡」

 

ヘラは必死になって首を振って何かを否定するが、膣内は嬉々として男を受け入れていた。

 

「いいんだ、感じていいんだ! サキュバスのエロい体、ずっと夜泣きさせてきたんだろ!?

 犯されても、夫以外のものでも、感じて当たり前だっ! ヘラさんは、悪くないんだっ!!」

 

呪文のように言い聞かせながら、修吾はより激しいピストンを叩き込む。

 

「ああぁっ♡ あっああぁ~~っ♡ ふぁああぁぁぁっ♡」

 

子宮口をノックされるたび絶頂しているのか、ヘラの背中が布団から何度も浮き上がった。

結合部から愛液が溢れ出し、両手は修吾の上を掴んで爪を食い込ませる。

修吾が突く度に、体が痙攣する度に、豊かな乳房が踊り狂う。

 

「ああ、エロいっ! ヘラさん、すごくエッチだよっ!

 ほら、()()()()。犯されてるんだよ? 犯されてるだけだから、イってもいいんだ!」

「やぁっ♡ だめぇっ♡ だめなのぉっ♡ こんなっ♡ こんなぁっ♡」

 

ヘラは涙を流して訴えるが、その声は甘く切なげだ。

夫以外の肉棒を受け入れたばかりか、その快感に酔いしれてしまっている。

その大事な罪悪感ですら、『レイプされているから仕方ない』という免罪符に覆い隠される。

 

「いいから、感じるんだっ! 痛い思いしたくなかったら、俺のセックスでイキまくれっ!」

 

修吾は欲望のままにヘラの胸を掴み、握り潰すように力を込めた。

 

「ひぎゅぅぅぅっ♡ いたっ♡ 痛いのぉ♡ やめてぇ♡」

 

その痛みが、彼女に新たな免罪符を与える。

 

「大人しく、しゅるからぁ♡ あなたの、ことっ♡ 受け入れます、からぁ♡」

 

とうとう、兄嫁は降参を宣言した。

義弟に犯されることを、諦めて受け入れてしまった。

 

「だからっ、もう許し――んんんっ!?」

 

ヘラの唇を塞ぐ。

舌を絡めると、彼女もそれに応えてくれた。

 

「んむっ♡ んぢゅっ♡ んっちゅっ♡」

 

お互い夢中になって貪り合う。

キスをしながら腰を振ると、彼女の膣内が絡みついてきて気持ちいい。

 

「んんっ♡ んんんんっ♡」

 

腰を密着させたままぐりぐりと動かすと、彼女は体を震わせて反応してくれる。

 

「ぷあっ♡ あっ♡ あっあっあっあっあっ♡」

 

キスを止めれば、解放された口からは、もう甘えたような喘ぎ声しか出なかった。

 

「すごい……ヘラさんの膣内、トロトロなのにぎゅうぎゅう締め付けてくる……」

 

思わず感想を口にすると、ヘラが顔を真っ赤にして恥ずかしがった。

 

「言わないで、お願い♡ せめて……優しく……っ♡」

「ダメだよ、これはレイプなんだから。ヘラさんは、()()()()()()()()()()()()()()

「っ!」

 

修吾が言葉に込めた想いを、ヘラは感じ取ったのだろうか。

 

「兄貴を愛してるならっ、受け入れちゃ、ダメなんだよ!

 レイプじゃないと、ダメなんだよっ!」

 

修吾は半ば支離滅裂なことを言いながら、ヘラの体を反して後ろを向かせる。

 

「修吾、くん……っ」

 

あくまでもレイプだと強調する修吾に、ヘラは目を震わせた。

犯される屈辱からではなく、修吾の行為に秘められた悲痛さに気付いたからだ。

自分が悪者になることで、ヘラに夫を裏切らせない。

加害者でありながら矛盾するようだが、ヘラの中にある兄への愛を、守ろうとするかのように。

 

「だから、優しくなんか……してやるもんか!!」

 

修吾はヘラの腰を抱き上げて膝を立たせると、再び怒張を突き入れた。

 

 

 

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「んぁっ♡ あっ♡ あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ♡」

 

バックから挿入されたヘラの反応は、正常位のときよりも激しい。

背後からされることで、より『犯されている』という感覚が強くなるのだろう。

ヘラの背中は弓なりになり、結合部からは潮を噴き出して絶頂していた。

 

「ほら、またイってる。こんなスケベな体、逃がしたりなんかするもんかっ!

 家を出て行くなんて許さないからなっ! どこまでだって追いかけて、連れ戻してやる!」

 

そう言って、ピストンを開始する。

パンッ! パァン! 肌を打ち付ける音が響き渡るほどピストンしてやると、ヘラは髪を揺らしてよがり狂う。

 

「おぉぉぉっ♡ おおぉぉぉぉ♡♡♡」

 

ヘラにはもう、修吾の言葉に答える余裕も無いらしい。

枕に顔を埋めて、獣めいた喘ぎ声を、部屋に木霊させるばかりだった。

 

「俺の女にしてやるっ! 兄貴の奥さんをっ、俺のものにっ!」

 

歯を食いしばりながら、ヘラの腰を両手で掴み、緩急を付けて腰を叩き付ける。

 

「んぉっ♡ おほぉ♡ ああぁっ♡ ああああああぁぁぁぁっ♡♡」

「そうだ喘げっ! 何も考えずに喘いでいいからっ、ずっと、この家に居るんだ!」

 

尻を叩いて命じながら、一心不乱に腰を振る。

 

犯して、脅して、命じて、従わせる――男として鬼畜の所業だ。

しかし、そうでもしないと、この兄嫁を繋ぎ止められない。

 

優しく尊重するだけでは、彼女は亡き夫のことだけを思い、世間から姿を消す。

 

誠実さでは、正しさでは、優しさでは――彼女を救えない。

 

「出すぞっ! 中に出すっ!俺の子を孕めっ!」

 

ヘラの中に射精する。

その瞬間、彼女がビクンと跳ね上がった。

 

「お――――っ♡」

 

子宮口を押し上げられ、奥まで突き刺されて、ヘラは声にならない叫びを上げる。

 

「ん――あ――あ、あ、あ、あ、あ、あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♡♡♡」

 

修吾の白濁液に子宮を満たされながら、ヘラは目の焦点を失うほど絶頂する。

膣内は、精液を一滴残らず搾り取ろうとしているように収縮していた。

 

「はぁ♡ はぁ……っ♡ あっ♡ あぁぁ♡」

 

気がつけば、ヘラは布団に突っ伏して、ほとんど意識を失っていた。

 

「あ……」

 

修吾はいまになって、罪の意識に囚われる。

 

犯した。犯してしまった。

 

ヘラの、陰のある美貌が、涙と涎に汚れている。

兄のものだったはずの白磁の肌に、自分の手垢がついた。

夫の子を授かるはずだった膣からは、自分の醜い精液が溢れている。

汚してはならなかったものを、汚してしまった……そんな呵責が巻き起こる。

 

ヘラに兄を裏切らせないためのレイプだった。

しかし、彼女を救う方法は、他になかったのだろうか?

本当は、自分が彼女を犯したいだけだったのではないか。

 

「ごめんなさい……」

 

詫びの言葉を口にしたのは、修吾ではなくヘラだった。

意識が戻ってきたらしいヘラは、修吾を目線で振り返ると、枕で涙を拭う。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……っ」

 

謝っている相手は、兄か、それとも修吾に対してか。

――どちらでもいい。

どちらであっても、もはや後戻りはできないのだから。

 

「ヘラさん……」

 

修吾はうつ伏せになったヘラに折り重なるようにして、背後から覆い被さる。

まだ硬い肉棒を尻の割れ目にあてがい、手を滑り込ませて胸に触れながら、

 

「もう、出て行くなんて、言わないよね?」

「……っ」

 

耳元で囁くと、ヘラの体が小さく震えた。

肉体的に征服された女が、いまも覆い被さる男に、逆らえるはずもない。

犯して、無理矢理に言うことを聞かせることしか、彼女を留める方法はないのだ。

 

「返事は?」

 

胸を強く掴みながら催促すると、ヘラは小さく頷いた。

その瞬間、修吾の中に、また情欲の熱が立ち上る。

 

「ちゃんと、言葉にするんだ」

「あっ♡」

 

軽く耳を噛んで命じると、ヘラは官能の声を上げて、首を振り返らせる。

潤んだ瞳、紅潮した頬、表情に見えるのは怯えだけでは決してない。

 

「はい……修吾()()

 

頷いた、頷いてくれた。

ヘラさんが、兄の嫁が、自分の女になった。

『修吾くん』が『修吾さん』になったのも、彼女が自分を『格上』と認めたかのようだ。

そこになぜか、男として偉業を成し遂げたかのような感覚を抱く。

 

「あ……っ♡ ま、まだ……?」

 

寝バックの姿勢で挿入しようとすると、ヘラが戸惑ったように振り返る。

抵抗らしい抵抗は、もうされなかった。

 

「まだ終わらないよ。一晩掛けて、俺の形に、作り直してやるからね」

「そん、な……ふあっ♡ 修吾さんっ♡ あっ♡ んんんっ♡」

 

田舎の屋敷、暗い部屋で、再び兄嫁と義弟が絡み合う。

未亡人の鳴かされる声が、夏の夜に溶けていく。

修吾の夏休みは、まだたっぷり残っていた。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございます。

前置きが長くなってしまいました。
反動で以降はドスケベになります。


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幕間(ヒロイン視点)

 

 

誘惑禁止条例。

人間界に続々と渡ってきた妖女(サキュバス)による誘惑(チャーム)を禁じるもの。

多くの妖女は、これを恨んでいる。

目の前に男という宝物が、ご自由にお取りくださいとばかりの無防備さで溢れているのに、誘うこともできないなんてと。

 

私……ヘラという名の妖女は、それに含まれなかった。

 

故郷では就労や留学で人間界に渡ることが支援されており、人間界もそれを歓迎している。

生国と日本の双方から各種支援を受ける形で、この町にやってきた。

人間界には妖魔界の魔法技術が続々と輸出されているが、それを使える人材はまだ不足している。

その好待遇に期待して、私は『渡界』してきた。

誘惑禁止条例を恨まないとはそういうこと――男目的ではなく仕事目的だったからだ。

 

彼――火野陽司さんと出会ったのは、就労先の田舎町。

出会った瞬間、仕事一筋だった私は崩壊した。

心と体が一目惚れしたとでも言おうか、対面した瞬間に、心身が魅了されてしまった。

 

妖女は自分と好相性の男を嗅ぎ分けるという。

妖魔界では男性それ自体が希少なので、その嗅覚が役立つ場面はあまり無いのだけど、男性がごろごろ居る人間界では、それが劇的に機能する。

 

『人間界に行けば、必ず運命の人と出会える』

 

人間界を知る妖女たちは口を揃えてそう語るが、てっきり誇張だと思っていた。

出会った瞬間……『彼の子が欲しい』と、心も体もそれ一色になるなんて……

 

『実は、僕も一目惚れでした』

 

彼が照れ臭そうに笑ってくれたときは、気絶するほど嬉しかった。

 

 

 

ここに来て、誘惑禁止条例が私たちを阻んだ。

実質的に男女の婚前交渉を禁じた、時代に逆行するかのようなルール。

私も彼も真面目だったから、それを守って節度ある交際をしようとした。

若い男女だ。当然のように限界を迎える。

 

だから――結婚した。

 

夫婦になれば、条例の対象外だ。

誘惑(チャーム)を含め、妻が夫を求めることは禁じられていない。

これも若さ故の勢いというか、挙式などいつでもできるとばかりに籍を入れた。

結婚するまでは清い体で、現代でそんなことをしたのは、私たちくらいだろう。

もちろんその後の結婚生活は……これまでの反動で、恥ずかしいくらい燃え上がった。

 

これが、私と夫の話。

夫と共にこの世を去った、私の青春時代。

恋して、交際して、結婚して、愛し合う――ごく普通の男女の人生だ。

 

それを、他の誰かともう一度なんて、思ってはいない。

 

再婚なんてしない、絶対にしない。

恋も交際も結婚も愛も、全ては夫とだけ。

私のそれらは、体だけを残して、夫と共に旅立った。

だから、命がそれを追いかけるまで、それはしない。

夫を忘れて誰かに恋したりしない、ごく普通の男女の関係になんて誰ともならない。

 

これだけが、夫を守れなかった私に許された、愛の証明だから。

 

なのに、多くの『優しい人』は言う――そこまでする必要はないんだよ、と。

いつか心が伴う日が来たら、新しい人生を送ってもいいんだよ、と。

病死した夫の母ですら、死期を悟ったように言い残していった。

夫ですら、自分が死ぬと知っていれば、そう遺書に書いただろう。

 

あくまでこれは、私の意地。

妻は夫の死後も貞淑に徹すべしなんていう、誰かの要求に従ったわけじゃない。

ただ、私がそうしたいから。

夫を愛し続けたいから、夫だけの女でいたいから。

そうすることで、私の心にまだ残っている彼を、薄れさせずに守れる気がしたから。

 

だからどうか、私の幸せを願う方々……

夫の死で生まれた私の傷を、埋めようとしないでください。

どんなに痛々しく見えても、抜け殻のようになったいまの姿でいさせてほしいのです。

 

この体はどうなってもいい、この先の人生が不幸でもいい。

せめて夫への愛だけは、欠落という形で、ずっと守り続けていたいから。

 

そんな負の祈りを捧げていた私は、いま――

 

「あああぁぁぁっっっ♡ イクっ♡ ごめんなさいっ、またっ、イキますぅっ♡」

 

夫の居ないこの家で、義弟の慰み者になっていた。

 

 

 

 

パンパンパンッ――と、男と女の肉がぶつかる音がする。

私の家の、義弟の部屋の、布団の上で。

私のヒップと彼の下腹部の間から、何度も鳴り響いている。

 

「あっ、ああんっ、ひぃんっ♡ 修吾さんっ、もう終わりに――ひああぁぁっ♡」

 

私は背後からのピストンに喘ぎながら、必死に言葉を紡ごうとする。

彼――夫の弟である修吾くんは、私が拒否の言葉を口にすると、抽送を強める。

 

「まだだよ。ヘラさんが完全に屈服するまで、続けるからね!」

 

彼はそう言って、さらに激しく腰を打ち付けてくる。

パンパンと響く音に、グチュッグチャと粘っこい水音が混ざる。

両手首は掴み取られ、背後に引き寄せられており、私の上半身は布団から浮いていた。

 

「んあっ♡ だめぇ……こんな、乱暴なの、おおっ♡ 無理矢理、イかせて、ばっかり♡ あっあっあっあっあっ♡」

 

両手を後ろに引かれて、バックから突かれる。

まるで手綱で操られる馬のように、私の体が踊らされる。

髪を振り乱し、乳房を淫らに揺らし、背中と喉が逸れて、喘ぎ声が口をつく。

 

「なに? 愛情たっぷりなのがいいの?」

 

修吾くんは急に力を抜くと、私の体を優しく抱き寄せる。

しかしその声音は、手付きとは裏腹に怒ったような声音で、怖かった。

 

()()()()()()()()()()()()()?」

「っっっ!」

 

彼の言及が、夫を思い出させた。

女の悦楽に染まって忘れかけていた自分に、気付かされた。

 

「あ、ああぁぁ……っ」

 

なんて――卑しい女なんだろう。

 

夫を喪って以来、男を絶っていたこの体は、義弟の肉棒に容易く陥落した。

妖女の体が、亡き夫と同じ血を流すオスを、どうしても欲している。

意思とは無関係に走る性感、絡み付いてしまう膣、喉をつく女の声。

どんなに高尚を気取っても、所詮は人も動物の一種。

夫をどれだけ愛していても、私の体はオスを求めるメスだった。

 

「ごめんなさい……ごめん、なさい……っ」

 

でも、それ以上に許されざることは、夫への愛を忘れること。

体が修吾くんを求めることも、犯されて感じることも、肉体の本能的な働きに過ぎない。

 

けど、『忘れること』は別だ。

それだけは、体ではなく、心の裏切りだから。

それだけは、あってはならないのだと――彼が思い出させて()()()

 

「ヘラさん、泣かないで。辛いなら、()()()()()()、優しくしてあげるよ?」

 

修吾くんの声は、無理して嗜虐的にされていた。

止める気なんかないと見せかけて、本当は優しくしたいのだと、感じ取れる。

 

知っていた。

修吾くんが、女性に乱暴できるような男ではないと、知っていた。

それでも、私をレイプしているのは――

 

「……で」

 

――私の体が、男に飢え乾いていたから。

――私の心が、夫以外を拒んでいたから。

妖女としての私は男が欲しいと体で言って、妻の私は夫だけだと心で言う。

その矛盾を解決するために、彼は……似合いもしない悪人になろうとしている。

 

「優しく、なんて……しないで……っ」

 

首だけ振り返って、横目に彼と目を合わせる。

私はどんな顔をしていたのか、彼は驚いた顔をした後、生唾を飲んでいた。

ああ、きっと……さぞや淫らで、嗜虐嗜好を煽るような顔をしていたのだろう。

 

「そうだよね」

 

修吾くんは薄く笑うと、結合を維持したまま、私を膝に座らせる。

 

「んあっ♡」

 

後背座位の姿勢で足を広げさせられた私は、角度の変わった彼の剛直に声を零した。

背中が厚い胸板に寄りかからせられる。

夫と結婚したとき、まだ十代だった義弟は、いまや立派な男の体付きだった。

 

「ヘラさんは、兄貴を愛してるから。裏切るくらいなら、犯された方がマシだよなっ!」

 

彼は私の胸を掴みながら、子宮口を突き上げた。

 

「ひあぁぁぁっ♡」

 

下腹部から脳天へ、稲妻が登るように走る快感。

たった一突きで、声を堪えきれないほどに達せられていた。

 

「ははっ! いい声だよ。もっと喘いでっ。喘げっ!」

 

無理して絞り出したような高圧的な命令が、私の胸を甘辛く締め付ける。

従わなきゃいけない、従ってあげたい――似て非なる感情が同時に巻き起こった。

 

「ああぁぁぁっ♡ 奥っ、だめっ♡ あっあっあっあっ♡ 子宮っ、んおっ♡ おっおっおっ♡」

「ほら、体はこんなに悦んでる。いいんだよ、心は兄貴のものでもっ。

 その代わり、体は好きにさせてもらうからなっ!」

 

修吾くんは、動機が肉欲だけであることを強調する。

心には触れず、体は犯す。これはそういうセックスなのだと。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ♡♡♡ だめだめイっちゃうっ♡ またすごいの来ちゃうぅぅっ♡」

 

男が女に接する方法としては最低なはずのそれが――最高だった。

 

「ははっ、すごいイキっぷり。おまんこ大喜びしてるじゃないか。

 心は兄貴のものでも、体は俺が欲しくて堪らないんだなっ」

 

夫を愛する私の心を尊重しながら、浅ましい体を満たしてくれる。

 

「いいんだよ。イっていいんだよ。ヘラさんだって妖女なんだから、仕方ないんだっ!」

 

犯されてるから仕方ないんだと、感じさせてくれる。

 

「こんなにイキまくってたら、兄貴より俺を好きになっちゃうんじゃない?」

「ひぁぁぁっ♡ なり、ませんっ♡ あああっ♡ なら、ないっ♡

 あの人っ、だけっ♡ 愛してるのはぁ、あの人だけっ、だからっ♡」

 

どんなに犯されても心は明け渡さない――という姿勢で、夫への愛を証明させてくれる。

 

「偉いね、ヘラさんは妻の鑑だよ。

 そういう、貞淑な未亡人を快楽に乱れさせるのが、堪らないんだよっ!」

 

悪いのは自分なのだと、自分が兄嫁に劣情を抱いただけなのだと、罪を背負ってくれる。

 

「出すぞ、兄貴と同じ血を引いた男の子種だっ、ちゃんと受け取れ!」

「あ゙あ゙あ゙っ、出てるっ♡ またっ、中にぃ♡」

 

嫌がっているように叫びながら、心も体も拒んでいなかった。

夫の遺伝子を引き継いだ子供を作るために、夫の弟の精子を受け入れる。

そんな罪深い自分の目的が、いま果たされていた。

 

「はひっ♡ あぁぁぁ♡ ゆる、して……」

 

謝る。

夫に、そして修吾くんに。

こんなに卑怯で、浅ましく淫らな自分を、どうか許して。

女の劣情と妻の意地、それを同時に満たすため、自分以外を悪人にする私を。

 

「ヘラさん……」

 

膣内射精と同時に大きく絶頂した私を、修吾くんは布団に寝かせた。

意識がほとんど落ちている私に、何かを言う余力はない。

 

「ごめんよ……」

 

イキ狂った末に気絶する私の顔を見て、彼が謝っている。

 

(ああ、やっぱり……優しい……)

 

暴力の後に優しくされたからとか、そういう心理じゃない。

未亡人になった私に優しくしてくれた人は、たくさん居た。

再婚してもいい、辛かったら無理しなくていい、実家に帰ってもいい。

私の夫への愛を蔑ろにする『優しさ』が、この町には溢れていた。

 

彼だけが――自分を汚してまで、夫を尊重して、体を慰めてくれた。

 

脅して、犯して、屈服させて、身勝手に体を貪る。

行為の卑劣さとは裏腹に、その選択は、他の誰よりも優しかった。

 

だから、目が覚めたら……全部忘れてあげよう。

何事も無かったかのようにしてあげよう。

朝ご飯を作って、笑顔で挨拶して。

彼が、罪悪感で困らないように。

一夜の過ちくらい気にしない、寛容な女になってあげよう。

 

もし、それで彼が図に乗って、また私を求めてきたら?

 

そのときはまた、夫への愛を貫けるように……

嫌がる私を、怖れることなく、屈服させてくれますように。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございます。

兄嫁視点でした。
堕ちる未亡人のエロさは内面描写あってこそですので。


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第二話 いやしさ(前編) (挿絵追加)

 

 

 

「おはよう、修吾くん」

「……おは、よう」

 

翌朝――ヘラは、驚くほどいつも通りだった。

昨夜は夜遅くまで修吾に犯され、そのまま修吾の布団で眠りに就いたはずだ。

朝、修吾が目を覚ましたら姿がなく、土下座する覚悟で顔を出したら、

 

「朝ご飯、もうできてるから。座って待っててね」

「あ、はい……」

 

いつものヘラだった。

夏だというのに露出を嫌うような長袖とロングスカート、艶やかな角と髪に、物静かな笑み。

料理はいつも通り美味しいし、仕事に行く支度も整っている。

 

「じゃあ、行ってくるわね」

「あの、ヘラさん……」

 

出勤しようとしたヘラを、玄関口で呼び止める。

靴を履いていたヘラは、声音から用件を察したのか、ヘラは少し肩を震わせたが――

 

「……あのことは、気にしないで?」

 

驚くほど優しい表情で、振り返られる。

 

「私も、悪かったから……全部、無かったことにするから」

 

無かったことにする。

わいせつ行為を受けた女性が、しばしば選択させられることではある。

だが、ヘラの言葉には泣き寝入りとは違うニュアンスを感じた。

修吾を責めないということ、揉め事にしないということ、そして――

二度としないでとは、言っていないということ。

 

「っ!」

「きゃっ」

 

 

 

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直感的に、修吾はヘラを背後から抱き寄せた。

玄関の戸を開けようとしていたヘラは、小さく悲鳴を上げて体を強張らせる。

 

「しゅ、修吾くん……っ!?」

「早く……」

 

修吾は、この場で襲う気はないと伝えるように、抱いた肩を軽く叩いた。

 

「早く、帰ってきてくださいね? 待ってますから」

 

まるで専業主婦が夫を送り出すような台詞になってしまった。

ただ、言葉に込めた情欲は、ヘラにも伝わったようだ。

つまり――帰ってきたら、またするぞ――と。

 

「……っ」

 

ヘラは何か言おうとして、ためらうように口を閉じる。

背後から抱きしめる修吾にその顔は見えないが、耳がほんのり赤くなっているように見えた。

 

「い……いつも通りの時間に、帰ってきますから……」

 

あえて言葉を額面通りに受け取り、修吾の腕に手を沿えた。

そのまま、顔を隠すように振り返らず、家を出て行く。

自然と手を離した修吾も、呼び止めずに見送る。

 

(帰ってくる、か……)

 

その言葉を聞いて安心したのは、なぜだろうか。

ヘラが、ふとしたきっかけで姿を消してしまいそうに感じたからか。

だから、帰ってくると言ってくれて、安心した。

安心したら、下腹部に熱が湧き上がってきた。

ヘラは帰ってくると言った。

帰れば修吾が何をするか察した上で、『いつも通り帰ってくる』と、そう言ったのだ。

 

 

 

 

ヘラが仕事に行っている間、夏休み中の修吾は家事を済ませた。

昨夜のことがある以前からしていたが、より熱心に。

ヘラは自分がすると言っていたが、仕事で疲れているヘラの体力を更に使わせたくない。

彼女の体力は、別のことのために、温存してもらわねばならないからだ。

 

(洗剤はこれ、だったよな? 柔軟剤って洗剤とどう違うんだ?)

 

買い物も家事のうち。

ヘラにもらったメモと睨めっこしながら、慣れない手付きで品を籠に入れていく。

兄の遺品である車を運転して帰宅する途中……町を流れる川を見かけた。

 

『水難事故に注意』

 

そんな看板が目に留まる。

 

「…………」

 

自然と思い出すのは、兄のことだった。

 

――水難事故だった。

溺れていた子供を助けようとして、子供は助けたが自分は助からなかった。

昔から人のいい兄だったが、死に際まで善人だったのだ。

人が事故死する経緯は様々だが、きっと……胸を張れる部類の死に様だったのだろう。

だからこそ、胸に罪悪感の針が刺さる。

 

(そんな兄貴の奥さんを、俺は……)

 

そうせざるを得ない事情が、あったと言えば、あった。

 

夫と子を成さぬまま未亡人になったヘラに対する、妖女社会の無言の圧力。

もし修吾がヘラを抱かなかった場合に予想される、彼女の人生に落ちる影。

 

逆にヘラが修吾の子を宿したらどうなるか。

 

ヘラの親族は彼女を称える。妖魔界において妊婦とは英雄の如しだからだ。

ヘラはそれを複雑に思いながらも、親族の手厚い助けを受け、我が子を育める。

彼女だって一度は修吾を呼び寄せて誘惑を試みたのだ、修吾の子が嫌というわけではないだろう。

比較すれば、ヘラは修吾の子を孕んだ方が、人生を好転させられるのだ。

 

しかし、彼女の誇りが、修吾にそれを頼めない。

だから、抱いてと言えない彼女を、修吾の方から犯すのだ。

 

(それが、ヘラさんを救うことになるなら……)

 

不思議な話だ。未亡人の兄嫁と義弟が密通するという不義が、彼女を助ける大義となるのだ。

人間界ではともかく、妖魔界では、修吾とヘラの関係は肯定される。

妖女が大量にいる現代日本では、『国際結婚に伴う複雑な家庭の事情』として看過されるだろう。

 

(でも……ヘラさんは、兄貴を()()()()()()んだ……)

 

死に別れたなら、後を追うその日まで、想い続ける。

とても美しい話だ。そんな人が兄の妻であることを、誇らしくすら思う。

だから、修吾はそれを止めさせられない。

体は自由にできても、心までは奪ってはならない。

なぜならそれは、兄への裏切りだから。

ヘラにとってそうであるように、修吾にとっても、それは越えられない一線だ。

 

(俺が愛しちゃ、いけないんだ)

 

ヘラを抱いても、愛してはならない。

兄を想い続ける彼女の心だけは、踏み込んではならない『聖域』だ。

自分が亡き兄から奪っていいのは、あくまで兄嫁の『体だけ』なのだ。

 

(それならそれで、いいさ)

 

外道になろう。

死んだ兄の妻に劣情を抱き、脅して犯して孕ませる、鬼畜野郎になろう。

心なんていらない、その淫らな体さえ好きにできれば満足だという男に。

最後までそうであれば、ヘラは身ごもった後、その子を連れて妖魔界へ帰れる。

赤子という妖女にとって最大の『成果』を持ち帰った彼女は、親族に大歓迎されるだろう。

後はそのまま、修吾とは疎遠になればいい。

修吾はとんだ無責任男となるが、妖女には『子種さえもらえればいい』というスタンスも多いので、割と周囲の理解を得られる決着だ。

逆に彼女が妖魔界に帰らなければ、彼女はこの田舎町で、()()()()()()()()()()()()()()()()()になってしまう。

どちらが彼女の幸福かなんて、考えるまでもない。

だから自分はこれからも、『兄嫁を襲って無責任中出しで孕ませる男』であろう。

自分が彼女を幸せにしてやれる方法なんて、それくらいしかないのだから。

 

(呪うなら、俺だけを呪えよな。兄貴……)

 

今度、墓前に行って詫びよう――

そう心に決めながら、修吾は自宅の駐車場に車を入れる。

 

「ん?」

 

ふと……人影を見た気がした。

車庫に入る直前、屋敷の外壁沿いに、誰か居たように見えた。

車庫に入ったことで視界が切れてしまったため、確証はない。

車から出て、見かけた場所に顔を出したとき――それらしい人影はなかった。

 

(気のせい、か?)

 

ストーカーの件は、ヘラが自分を実家に呼び付けるための嘘だったはず。

きっと近所の子供が、セミ取りでもしていたのだろう。

 

 

 

 

夕方頃、ヘラが帰宅した。

職場にはストーカーのことを相談していたらしく、暗くなる前に帰らせてもらえているらしい。

 

「た、ただいま……」

 

どことなく、そわそわとした様子で、ヘラは玄関に立っていた。

朝の『約束』を思い出しているのだろう、玄関で修吾と向き合うと、流石に落ち着かない様子だ。

 

「お帰り、ヘラさん。ご飯にする? お風呂にする?」

 

茶目っ気を持たせて聞くと、ヘラはくすりと笑った。

 

「もう、なぁにそれ?」

 

つまらない冗談に笑うその顔は、ずいぶん久しぶりに見た気がする。

 

「本当に、どっちも準備できてるから」

「修吾くん、お料理できるのね。助かるわ」

 

ヘラは意外そうだが、修吾は一人暮らしだったので自炊はしていたし、レシピを再現するくらいの器用さはある。

 

「お風呂も沸かしたばかりだから」

「そう? なら、お風呂から――」

 

会話の間に、ヘラも安心したようだ。

帰宅していきなり押し倒されるわけではないのだと。

そこはかとなく……拍子抜けしたようにも見えたが、

 

「じゃあ、一緒に入ろうか」

「っ」

 

拍子抜けはさせなかった。

靴を脱いで上がったヘラの肩を馴れ馴れしく抱いて、逃げないように肩を掴む。

 

「い、一緒にって……」

「嫌だとは言わせないよ?」

 

耳元で囁くと、ヘラはびくっと震えて、大人しくなる。

昨夜のセックスで仕込まれた上下関係を、体が思い出したかのように。

 

「それ、は……」

 

ヘラは目を泳がせると、やがて頬を染めて、抗議的な目でこちらを見上げた。

 

「……家主としての、命令、ですか?」

 

そうであるなら――という、消極的なYESだった。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

火野家の浴室は広い。

その浴室に、通販で買っておいたマットを敷いて、ヘラを座らせる。

 

「ほら、洗ってあげるから、胸を隠さない」

「……っ」

 

修吾はヘラの背後に座って、ボディソープを手に広げると、迷わず両手で胸を掴んだ。

 

「あっ♡ やめ……っ♡」

 

浴室の声は反響する。

ヘラの声に込められた官能の色も、よく聞き取ることができた。

 

「ああもう、柔らかいし大きいなぁ」

 

ぐにゅぅ――と音を立てるように、修吾の五指がヘラの豊乳を掴む。

ボディソープでつるつると滑る指が、通常とは異なる感触をもたらした。

 

「あっ♡ んんっ♡ ふぅぅっ♡」

 

それはヘラに対しても同じことで、摩擦のない愛撫に声を噛み殺している。

 

「ヘラさんのおっぱい、細身なのにすごいよね。何カップ?」

「っ♡ そんな、こと……言う必要、ありません……ひあっ♡」

 

質問が拒まれるのは予想していた。

言葉の途中で指先を乳首に運ぶと、抓るように指を動かす。

指は泡によって乳輪から先端に掛けてを滑り、それを何度も繰り返した。

 

「ひうっ♡ 修吾くんっ、やめてっ♡ そこ、ばかり……っ♡」

 

泡で滑ることにより、痛みはさほどでもないだろう。

その分、甘く抓るような刺激が高速で繰り返されて、常ならぬ快感を生じさせていた。

 

「修吾()()、だろ?」

「ふあぁぁぁ……っ♡」

 

言い直させるついでに、ぎゅむっと乳房を握る。

するとヘラは、甘えたような声で鳴いた。

 

「ごめんなさいっ、修吾、さ、んんんんっ♡」

「はい、よろしい。質問の答えは? このおっぱいは何カップ? 義理の弟に弄ばれてるこのデカチチは、どのくらい大きいの? ねえ、ほらっ!」

「きゃうんっ! あぁ、あぁぁ……っ♡」

 

苛めるように乳房を強く揉み込むと、ヘラは背筋を伸ばして喘いだ。

そして彼女は、修吾の手を掴んで、自分の胸に押し付けてくる。

 

「I……です……っ♡」

 

ヘラは耳まで赤くなりながら、蚊の泣くような声で、ブラのカップ数を明かした。

 

「Iかぁ、最高だな。ああ、ヤバい、すごく興奮してきた」

 

わざと獰猛な言い方をして、修吾は更に兄嫁の乳房を責めていく。

 

「やあっ♡ 修吾さんっ♡ それっ♡ なにっ♡ あぅぅぅっ♡」

 

修吾は両手を『パー』の形にし、指の腹が乳首を擦るようにして、手を上下させる。

 

「あっ♡ んんっ♡ んっ♡ んんんっ♡」

 

ヘラの乳房を圧しながら、指とその空白が、乳首の上を何度も駆け巡る。

乳首を連打されるような刺激に、ヘラは歯を食いしばって声を殺した。

 

「こういう愛撫は初めて? おっぱいを感じさせる触り方も色々なんだよ?」

「くぅぅ……っ♡ こんな、の……しなく、ても……っ♡ ひぅぅっ♡」

 

ヘラの声が甘い色を帯びている。

感じているのは明らかだが、媚びるような態度は取るまいと、必死に堪えていた。

容易く感じて喘ぐことは、夫への裏切りだと思っているのだろう。

 

「んっ♡ んっ♡ んっ♡ んんんっ♡」

「もしかして、もうイキそう? イクときはイクって言うって約束だよ?」

 

手の動きを早めていくと、乳首連打を受けたヘラが体を反り返らせ、修吾の腕を掴んだ。

 

「イ……キ……ます……っ♡ っく、ぁぁぁっ♡」

 

可能な限り噛み殺した声で申告しながら、小さく体を震わせた。

 

「はぁ……はぁ……っ♡」

 

がくりと脱力したヘラの背中が、胸板に寄りかかってくる。

自分の手で女を達させる瞬間は、やっぱり堪らない。

それが兄の妻であるという罪悪感も、背徳感というスパイスに変化していた。

きっとヘラも同じだろう。昨夜と比べても、果てるまでが早い。

 

「ヘラさんの体、綺麗だよね。手足は長いし、折れそうなくらい華奢で……」

 

修吾は乳房以外にも愛撫を広げていく。

脇の下から腰へ――そこから尻へと。

 

「お尻は小ぶりだけど、形が良くって……。足の肉付きもいい感じだし」

 

尻や太股を撫でつつ、両脚を開かせていく。

ヘラはしぶしぶといった風情で従い、秘所を露わにした。

 

「そして何より、感じやすいおまんこ」

「っ♡」

 

修吾は陰唇に手を添えて左右に開くと、その内側にある花弁を背中越しに見下ろした。

そこは既に熱を持っていて、湯気が立ち上るほどに潤っている。

 

「分かるよ。妖女の体は子作り大好きだもんね。それが夫に先立たれたら、辛いだろうさ」

 

修吾の指が割れ目に添えられると、いとも容易く内部に滑り込んだ。

 

「んんんっ♡」

 

ヘラは修吾の腕を掴んだまま、唇を噛んで身を震わせた。

指先は膣内の天井を押し上げて、Gスポットを探っていく。

 

「体が新しいオスを欲しがってるんだ。動物的な本能なんだ。敏感なのは仕方ないんだよ」

「あっ、あぁぁぁっ♡」

 

ヘラの弱点は簡単に見つけることができた。

単純に、弱点の範囲が人間より広いからだ。探し当てるのも早い。

 

「兄貴のことを想い続けたいのに、妖女の本能に邪魔されて、自分が憎かっただろう?

 もういいんだよ? 楽になれよ。全部俺のせいにして、思い切りイっちまえっ!」

 

親指でクリトリスを潰すと同時、人差し指と中指で膣内を掻き回す。

くちゅくちゅくちゅくちゅ! という水音が、浴室に木霊した。

 

「あっ♡ やっ♡ またっ♡ んんんっ♡ い、く――あああぁぁぁっっっ♡」

 

やがてヘラは絶頂した。

自分の声の高さに気付いて、慌てて口元を押さえる。

 

「さあ、ここからが本番だよ?」

 

修吾は休ませず、ヘラの体を前に押して、マットに手を付かせる。

 

「あっ♡ 待って――」

 

真っ白な尻と太股、その中心でヒクつく秘所の花びら。

その向こう側に続く背中の先には、赤い顔で振り返る、髪を濡らした兄嫁の顔。

 

「ここじゃ、ダメ……っ。せめて、布団で……っ」

 

ヘラの目は修吾の勃起した逸物を捉えると、息を呑んで懇願する。

 

「ああ、お風呂だと声が響いちゃうもんね。昨夜みたいな喘ぎ方したら、町中に聞こえるかも」

 

田舎町なので建物は少なく、その手の喘ぎ声はどの家からなのか特定されやすい。

火野家だと分かれば、そこに住んでいる修吾とヘラの関係も発覚するだろう。

 

「だ、だからなのっ。お願い、修吾さん……やあっ♡」

 

勝手に立ち上がろうとしたヘラを組み伏せて、マットに顔を落とさせる。

 

「そんなに恥ずかしいなら、声を我慢すればいいじゃないか」

「だって、修吾さん絶対に、声を上げさせようとし――ひうっ♡」

 

ぴたりと、肉棒の先端を割れ目にあてがうと、ヘラが体を震わせて口を閉じた。

 

「人のせいにするの? 声が出ちゃうのは、ヘラさんがエロいからだよ」

 

ヘラの耳元に囁きながら、亀頭を押し付けていく。

既に愛液で濡れているそこは、すんなりと先端を飲み込んでいった。

 

 

 

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「ふぅぅぅっ♡」

 

亀頭が入り込んだだけで、ヘラは歯を食いしばって震える。

背中や尻の水滴が流れ落ちていく様さえ、艶美だった。

 

「認められないなら試してみよっか。俺は適当に突くだけ。

 それで声が出ちゃったら、ヘラさんがエッチなだけだよね」

 

入口で止まっていた肉棒を、ゆっくりと奥へ侵入させていく。

 

「っく♡ ぅぅぅっ♡」

 

ヘラは声を噛み殺しているが、まだ修吾のモノは根元まで入っていない。

半分ほど埋まったところで、修吾は腰を止めた。

 

「やっぱり。まだ半分くらいなのに、ヘラさんの膣内(なか)、内側に引き込もうとしてくるよ?」

 

あえて根元までは挿入せず、カリ首を利用してGスポットを引っ掻く。

 

「んんっ♡ んっ♡ んっ♡ んんんっ♡」

 

その度に、ヘラは膣を締め付けて反応を返した。

マットに食い込ませようとした指が泡で滑り、もがくように手の平でマットを撫でている。

 

「頑張って我慢してるねぇ。えらいえらい――とっ!」

 

腰を止めて尻を撫でてやり、ヘラがほんの少し落ち着かせた直後、不意打ちで一気に奥を突いた。

 

「あああぁぁぁっ♡」

 

どちゅ! という音の直後、ヘラは背筋を仰け反らせて甘い悲鳴を上げた。

 

「あーあ、声出ちゃった。これでもう言い訳できないね?」

「っ♡ ぁっ♡ んんん……っ♡」

 

ヘラは再び声を殺し始めるが、その声は明らかに大きくなっている。

ぱんっ、じゅぱっ、じゅぱん! と腰を打ち付けられる音も、浴室に大きく反響しており、ヘラの『犯されてる感』に一役買っているようだ。

 

「さっきより締まりが良くなってない? 声出すと興奮するタイプなんだ? 意外だなあ」

「ちがうっ♡ こんなっ♡ 雑な、セックスで……っ♡ っくぁぁぁ♡」

「感じないんだ? じゃあもっと雑にして大丈夫だね」

 

修吾は宣言した通り、ヘラの機微を考えない手前勝手なピストンを始める。

パンッ! パァン! と、より強い音が浴室に響き渡った。

 

「んあっ♡ あひっ♡ ああぁぁっ♡ だめっ♡ あん♡ ごめんなさいっ♡ ひぁうぅぅぅっ♡ ゆっく、りぃ♡ ゆっくりぃ♡」

 

テクニックや緩急の工夫が無くとも、妖女の体は多大な快感を拾ってしまうようだ。

性感帯が深く広い妖女の体は、どうしようもなく、粗忽なくらいの強い刺激に悦んでしまう。

 

「しょうがないなぁ」

 

修吾は片手を前に伸ばして、ヘラの口元を覆う。

 

「んむぅっ♡」

 

口を塞がれたヘラが驚いたような声を上げると同時、膣内の締め付けがきゅんと反応した。

 

「これなら声も隠せるだろ。ん? いま軽くイっちゃった? 口を塞がれて興奮しちゃったの?」

「んっ♡ んむっ♡ んっ♡ んっ♡ んっ♡」

 

膣内を穿つリズムに合わせて、ヘラが苦しそうに鼻息を漏らす。

 

「分かる? 口を塞がれて、好き放題に腰を打ち付けられてっ。これもう本当にレイプだよ?

 ヘラさんはいま、夫の弟に犯されちゃってるんだよ!?」

「んっ♡ んふぅぅぅぅっ♡」

 

修吾の言葉攻めに、ヘラはいっそう強く締め付けた。

 

「ははは、またイッた。もう立派な変態さんだね」

「っ♡ んんっ♡ っっっ♡」

 

手の中で、ヘラが首を横に振っていた。

 

「認めないの? じゃあこのまま、俺がイクまで続けてやるよっ!」

 

修吾は本格的に、ヘラの膣内を蹂躙し始める。

 

「んおっ♡ んふぅぅっ♡ おっ♡ んぉぉぉっ♡」

 

修吾が口を押さえているのをいいことに、ヘラの声が獣めいてきた。

顔は見えないが、かなり興奮しきっていることは、絶え間なく痙攣する膣内で分かる。

 

「認めろよっ! ヘラさんも妖女なんだよっ、こうやって膣内を深く掻き回されると堪らなくなる天然マゾなんだっ! 気持ちいいだろっ? すぐイっちゃうだろっ? 素直に犯してって言えば、これをいくらでも味わえるんだよっ!?」

「んぐぅっ♡ おおっ♡ ふぅぉっ♡ おっおっおっ♡」

 

ヘラは首を縦にも横にも振ることはなく、ただ快楽に震えている。

 

「服従しろよ。演技でいいからさっ。媚びた演技で俺を興奮させて射精させる、魔性の女になってみろよっ!」

 

修吾が腰の動きを止めて手を離すと、

 

「お゙お゙お゙お お お ぉ ぉ ぉ っ っ っ ♡」

 

まだ手があるものだと思っていたヘラが、ひどく淫らな喘ぎ声を、浴室に轟かせてしまった。

 

「ひうっ」

 

慌てて自分で口元を押さえるが、時既に遅しだ。

 

「聞こえた? いまのがヘラさんの本音の声だよ。もう自分の身体に嘘吐くの止めようよ」

「ふぅーっ♡ ふぅぅぅっ♡」

 

ヘラは猫が威嚇するような声を指の隙間から零している。

その顔を覗き見ると、自分でも信じられないという様子で、目を見開いていた。

 

「あっ♡」

 

その頭に手を伸ばし、角系妖女の角を掴んで、上体を起こさせる。

感覚的には、髪を掴まれているくらいには乱暴で、屈辱的な扱いだ。

 

「あんたの体は、俺に犯されたがってるんだよ」

「ひ、あ……や……ぁ♡」

 

角を掴まれ、囁かれながら耳を噛まれたヘラは、艶めかしく体をくねらせた。

 

「このまま妊娠できずに、俺の夏休みが終わっちゃったら、襲われ損だよ?」

「……っ」

 

ヘラの目的は妊娠だ。それを拒んでいるのは心だけ。

男に脅され、逆らえないんだという『言い訳』を与えてやれば、あとは妖女の本能に従うのみだ。

 

「で……」

 

ようやくヘラがこちらと目を合わせる。

 

「お部屋で、待っていて、ください……」

 

その顔は、涙目だったが、それと同じくらい、情欲の朱を差していた。

 

「そこで……」

 

ゆっくりとヘラの腕が上がり、背後にいる修吾の首に絡んで、艶めかしく体を撫でた。

表情からは悔しさが消えていき、男をたぶらかす魔女のような淫らさが形作られていく。

きっと彼女は、先ほど修吾が与えた『魔性の女を演じる』という言い訳を、手に取ったのだ。

 

「思う存分に……私を、犯してください♡」

 

演技であるようには、とても思えなかった。

 

 

 

 

結局、ヘラは妖女の本能に抗えなかったようだ。

心は夫を愛しているという一点を除いて、他の全てを明け渡した。

義弟に体を許し、子宮を明け渡し、とうとう言葉や態度にさえ女の媚びを隠さなくなった。

全ては、夫と同じ血を引く子種を得るために。

男に中出しさせるためなら犯されても構わないという、天性の淫魔。

ヘラが見せたその本性は、修吾の予想よりもずっと艶めかしかった。

 

 

 

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「んあぁっ♡ はあぁっ♡ 修吾さんっ♡ そこぉっ♡ もっとぉ♡ 気持ちいいのおっ♡ 気持ちいいのしてぇっ♡」

 

先に風呂から上がった修吾の前に、ヘラはバスタオル一枚でやってきた。

いまはそれも剥ぎ取られ、布団の上で種付けプレスを受けている。

 

「いいねぇ、素直になったヘラさん可愛いよ」

「ふあぁっ♡ ごめんなさいっ♡ いままでっ、拒んだりしてっ♡ もういいのぉ♡ 修吾さんのセックスっ♡ ずっとずっと♡ 気持ちよかったのっ♡ 体が、ずっと、待ちわびてたのぉ♡」

 

もはやヘラは、自分の身体を偽らなかった。

 

「嬉しいよっ。これからは、俺の好きにしていいよねっ!」

「してっ♡ してくださいっ♡ もう体はっ、好きにしていいからぁ♡ あの人が置き去りにしたこの体っ、修吾さんが、引き継いでっ、孕ませてくださいっ♡」

 

覆い被さる修吾の体に、ヘラの細い手足が絡む。

足で腰をホールドされた修吾は、そうされるまでもなく、兄嫁の子宮を目掛けて怒張を突き落とし続けた。

 

「あ゙あ゙あ゙あ あ あ ぁ ぁ ぁ♡♡♡ イクっ♡ いぎゅぅっ♡」

「はは、立て続けにイってくれてるね……兄貴のと比べて、どっちがいい?」

 

悪戯心から聞いてみる。

怒られるかと思ったが、返事はすぐに来た。

 

「修吾さんですっ♡ 修吾さんのおちんぽ、あの人よりおっきい♡ お腹の奥で、ゴリってして、すぐイカされちゃうっ♡」

 

蕩けきった笑顔で、ヘラはあっさり認める。

 

「体付きも、逞しくてぇ♡ 手付きも、腰付きもっ♡ 男らしすぎてっ♡ こんなのっ、ずるいですっ♡ 逆らえないままっ、何度もイカされちゃうっ♡」

 

新しい男を確かめるように、ヘラの両手が修吾の背を愛撫して、膣内が根元から締め上げてくる。

腰は修吾の抽送に合わせて動いており、完全に義弟とのセックスを受け入れていた。

 

「あの人がっ♡ 優しくてっ♡ してくれなかった激しいことっ♡ いっぱいするからぁ♡ 堕ちちゃったのっ♡ ごめんなさいっ♡ 体が、堕ちちゃったのぉっ♡」

 

半狂乱といった様子で首を左右に振るヘラ。

連続絶頂に陥っているらしく、全身を痙攣させている。

 

「んあっ♡ またイクっ♡ イクの止まらないっ♡ 修吾さんっ♡ 止めないでっ♡ あの人がっ、許してくれるようにっ♡ 無理矢理っ♡ いっぱい♡ 思いっきり♡ 犯してぇっ♡」

 

ヘラはあくまでも、このセックスをレイプだと言い張りたいようだ。

修吾から言い出したことでもあるが、犯されているから裏切りではないというロジックで、全ての迷いを投げ捨てた。

いまや彼女は、義弟に犯される悦びに溺れている。

 

「ああ、もちろんだ……っ!」

 

修吾の眼光にも情欲が燃え上がり、ヘラの両手首を掴んで布団に押さえつけ、唇を奪う。

そのまま舌を差し入れ、口腔を犯しながらピストンを続けた。

 

「んんっ♡ んんんっっっ♡」

 

口の中まで性感帯なのか、キスしながら突くたびに、ヘラはビクビクと震える。

 

「俺のものだっ! この体っ、ヘラの体はもう、俺のものだからなっ!」

「ぷあっ♡ ふぁぁぁ♡ 呼び捨て……ひぁんっ♡」

 

今度は両手で乳房を掴み、もぎ取ろうとするくらい指を食い込ませ、痛みと快感を同時に与える。

 

「このおっぱいも、俺が触りたいときに触るからな! お尻も、足もっ、体中どこでもだ!」

「はいぃっ♡ してくださいっ♡ 私のおまんこっ♡ 好きなだけ使ってくださいっ♡」

 

ヘラの両足を持ち上げて、肩に担ぐ。

結合部が上向きになり、より深く突き刺さるようになった。

 

「ムラムラしたらその瞬間に犯してやる! 逆らったら兄貴の遺影の前で辱めてやるからな!」

「いやぁっ♡ お願いっ♡ あの人は、侮辱しないでっ♡ 従いますからっ♡ 修吾さんのものになりますからぁ♡」

 

亡き夫を脅迫材料にされることすら、もはやヘラの悦楽を加熱させるだけだった。

 

「色んなセックスするからな! 野外でやったり! エッチな服着せたり! 兄貴とできなかったこと、全部させてやるっ!」

「ひうぅぅ♡ ひどいっ♡ ひどいのにぃ♡ 気持ちいいっ♡ 修吾くんすごいのぉっ♡」

 

脅せば脅すほど、暴力的であればあるほど、彼女は罪悪感から解放される。

 

「今日も中に出すぞ! 俺の子種で、ヘラの子宮を上書きしてやるっ! 文句は無いよな!?」

「あひぃっ♡ ないでしゅっ♡ らしてっ♡ らしてぇっ♡」

 

乱暴狼藉であることが、彼女を自由にするための、唯一の鍵だった。

 

「あああぁぁぁイクいくいくまたイクのぉぉぉっ♡♡♡」

「俺も、出るよ!」

 

修吾とヘラは、ほぼ同時に、これまでで一番激しく絶頂した。

 

「あはあぁぁっ♡ 熱いの……出て、るぅ♡ おっ♡ ぉぉぉぉぉっっっ♡♡♡」

 

ヘラの子宮口に密着させた亀頭から、大量の精液を流し込む。

子宮口をこじ開けて直接注ぎ込まれる感覚にさえ、ヘラはとてつもない悦楽を覚えているようだ。

 

「はぁっ……はぁっ……どうだい? 満足できたかな?」

「はい♡ 最高です♡ 修吾さぁん♡」

 

はーっと甘い吐息を漏らし、ヘラは幸せそうに微笑んだ。

瞳にはハートマークが浮かんでいるようにさえ見える。

 

少し前までの、陰のある未亡人なんてもう居ない。

子種を授けてくれるオスに服従する、一人のサキュバスが居るだけだった。

 

 

 

 

その後、ヘラの変化は顕著だった。

例えば、血色はみるみる良くなった。

肌艶が良くなり、どこか陰のあった目元は明るくなり、表情にも笑顔が増えた。

 

服装の露出度も、明らかに増した。

胸元が開いたブラウスやミニスカート、ガーターベルト付きのストッキング。

男心を煽るような格好をするようになったのだ。

それも外出するときではなく、修吾と二人きりになる家の中だけで。

 

体が、服が、態度が――修吾に対して『女』を主張していた。

 

おかげで、修吾もためらう必要がない。

許されるなら、食事や風呂の時間も惜しんで、ヘラと交わり合いたい。

 

「疲れてるみたいだし、有給を取ってみたら?」

 

一日中、自分と一緒に居ろ――そんな真意を隠さない提案だった。

その日のまぐわいが終わり、ヘラが自室に戻る前のことだ。

 

「……っ」

 

ヘラは修吾の意図を悟り、ぴくっと体を震わせると、頬を染める。

 

「……修吾さんが、そう仰るなら」

 

まるで、夫に対して従順な妻のように、頷くのだった。

 

 

 




ご一読ありがとうございました。

二万字を越えたので、前後に分けて同時投稿です。


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第二話 いやしさ(後編) (挿絵追加)

 

 

かくして――朝から晩まで、ヘラを貪りまくる準備が整った。

 

「おはよう、ヘラ。早速だけど、朝勃ちフェラしてくれよ」

 

先ずは朝、わざと寝坊した修吾は、起こしに来てくれたヘラにフェラチオを強要していた。

 

「っ、はい……♡」

 

ヘラは逆らうことなく、ふてぶてしく仰向けになった修吾の股間に手を伸ばす。

 

「んふっ♡ んちゅっ♡ んふぅっ♡」

 

ヘラは嬉しそうな顔でしゃぶりつき、舌先で裏筋を刺激する。

 

「そうそう、その調子。気持ちいいよ。流石は人妻だね」

「んふっ♡ ふぅっ♡ じゅぷっ♡ れろっ♡ ぢゅるるっ♡」

 

褒められたことで気を良くしたのか、ヘラは口いっぱいに頬張り、頭を前後に動かし始めた。

唾液とカウパー液の混ざった水音がしばらく響くと、ヘラの表情が変化する。

修吾の逸物を口に含んだまま、どこか物欲しそうに、修吾の顔を見上げている。

 

「なに? 物足りなさそうな顔して」

 

ヘラの髪を撫でていた修吾は、嗜虐的な笑みを浮かべて、彼女の角をゆっくりと掴む。

 

「ふぅっ♡」

「いつもはこうやって、角を掴んでイラマチオばかりだもんね……もう、そっちが好きになっちゃった?」

「んんっ! んっ♡」

 

違う、と否定するように首を横に振るが、ヘラは口から肉棒を離そうとしない。

 

「――嘘つけよ、ドスケベ」

「っっっ♡♡♡」

 

修吾は両手でヘラの角を掴むと、自分の股間へ引き落とす。

 

「むぐぅぅっ♡」

 

喉奥を突かれ、苦しげな声を上げるヘラだが、彼女は嫌がる素振りを見せなかった。

むしろ、悦んでいるようにすら見える。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ふー、これこれ。ヘラの口まんこ気持ちいいー」

「んぶっ♡ んっ♡ んんんっ♡」

「好きだよね? おちんぽで気持ちよくなれるエロ喉に、旦那以外のモノを突っ込まれるの」

「んんんんんんっ♡♡♡」

 

ヘラは首を横に振りたいようだが、角を掴まれているため振れない。

許される動きは縦方向、頷くように肉棒をしゃぶることしか許されなかった。

 

「んー? そんなに股を擦り合わせてどうしたのかな? 喉まんこ突かれてイキそうなのかな?」

「んっ♡ んぐっ♡ ぐっぷ♡ ぐぽぉっ♡」

「はは、お口を膣みたいにきゅんきゅん絞って、ほんとド変態だねぇ」

「んぉぉぉぉっ♡」

 

修吾が腰を突き上げると、ヘラはびくんと震えた。

 

「ほら、もっと頑張らないと終わらないよ」

「んぶぅっ♡ んっ♡ んっ♡ んん~っ♡」

 

ヘラは健気に、一生懸命に奉仕を続ける。

 

「あぁ……良い子だねヘラ。ご褒美に精液食べさせてやるから、全部飲めよ」

「んっ!? んっ♡ んぐっ♡ んっ♡ んっ♡」

 

どくんどくんと、大量の精子が流し込まれていく。

それをヘラは全て飲み干す。

 

「どう? 妖女さんにとって、口内射精は『贅沢』だって言うけど、ヘラも好き?」

「ぷはあっ……♡」

 

逸物から顔を上げたヘラの顔は……まるで大好きなお酒を飲み干したかのようだった。

 

「はい……ありがとうございます……修吾さんのおせぇし美味しかったです♡」

 

蕩けた顔で、修吾の肉棒を指と舌で撫で上げる。

淫靡な顔に、ぞくりとしたものが背筋を駆けた。

 

「朝飯食ったら、続きをするからな」

「はい……♡」

 

 

 

 

居間の窓からは、町の景色が見える。

真っ白な積乱雲を抱く、真っ青な空。

深い緑に染まった山の稜線に、夏を彩る蝉の声。

そんな田舎の景色を背景に――スレンダー巨乳の未亡人が、騎乗位で踊っていた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「んっ♡ くぅっ♡ はぁっ♡ あんっ♡」

「こら、声を殺せよ。町中に響いちゃうぞ?」

「すみ、ませんっ♡ 修吾さんの、立派なのがぁ♡ 私の中でっ♡ 暴れる、からぁ♡」

 

修吾は居間の畳で仰向けになり、座布団を枕にして、ヘラの痴態を眺める。

夏の日差しで逆光気味になったヘラの裸身に、珠の汗が輝いていた。

細い両手が修吾の腹筋に触れて体を支え、腕の間で質量のある乳房が上下に跳ねている。

 

「ほら、もっとエロい姿見せろよ。自分で乳首とクリちゃん弄ってみろ」

「は、いっ……♡」

 

ヘラは言われるまま、両手を胸と股間に伸ばす。

そして、左手で左の乳房を揉みながら、右手で股間を慰め始めた。

 

「はぁっ♡ んっ♡ んっ♡ ふぅっ♡」

「手加減するなよ? もっと強く!」

「ひゃっ、はいぃっ♡」

 

ヘラの手の動きが激しくなるにつれ、彼女の息遣いも荒くなる。

口を引き結んで声を殺しながら、修吾の命令に従って自分を責め立てる。

 

「あぁっ♡ んっ♡ ふぅっ♡ んんっ♡」

「いいねぇ。いま自分がどんだけエロい姿してるか分かる? 庭に誰かいたら丸見えだぞ?」

「やっ、言わないでくださいっ♡ んあっ♡ あっあっあっあっ♡」

「おぉ……締まる……」

「んんっ♡ んっ♡ んっ♡ んんんんんっ♡」

 

ヘラの膣内がきゅっと収縮し、修吾は自然と腰を突き上げる。

ヘラはぶるぶると震え、絶頂寸前まで高ぶっているようだ。

 

「もうイクのか? まだ我慢しろよ。先にダウンされたら俺が愉しめないだろ?」

「ふぅぅぅっ♡ んんっ♡ んぐぅぅぅっ♡」

 

ヘラは首を横に振るが、腰は止まらない。

修吾はそんなヘラを見上げつつ、彼女の太股を掴んで、腰を縦回転するように膣内を掻き回した。

 

「んぉぉぉぉぉぉっ♡♡♡」

 

子宮口をごりごりと擦るような突き上げに、ヘラは獣めいた声を響かせる。

 

「ったく、しょうがないな。ほら、俺の服を噛んでいいから、声を我慢しろ」

 

胸板に倒れ込んできたヘラを受け止め、シャツの襟元を噛ませる。

 

「ふぐぅぅぅっ♡ んぐっ♡ ひぅぅぅぅぅっ♡」

 

びくんっ、びくびくっ! と全身を痙攣させながら、ヘラは修吾の服を噛んで嬌声を堪えた。

修吾の手はヘラの尻を掴み、自慢の巨根を豪快に突き上げ続けた。

 

「んんんっ♡ ん゙ん゙ん゙ん゙ん゙ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ っ♡♡♡」

「うわ、すごいイキっぷり。おまんこの痙攣エグいぞ」

 

ヘラは修吾の服を食い破ろうとするように、襟首を噛んだまま首を左右に振っていた。

 

「ほらっ、自分のエロさ自覚しろっ! こんな真っ昼間から仕事休んで義弟のおちんぽでよがり狂いやがって!」

 

両手の五指を尻肉に食い込ませ、乱暴に揉み回しながら、とにかくハイペースで子宮を連打する。

 

「ふぎゅぅっ♡ イグッ♡ ひぐぅ♡ イってりゅ♡ イってりゅのにイグイグゥゥゥっっっ♡」

 

シャツの襟を噛んだまま、ヘラは連続絶頂に陥った。

修吾のモノが引き千切られそうなほど、膣圧が増して絡みつく。

 

「俺もイキそうだ。ほら、締めろっ!」

 

両手でヘラの尻を引っぱたいて命じる。

 

「ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ♡♡♡」

 

ヘラは修吾の両肩を握り込みながら、足に力を入れて膣を絞り上げた。

 

「出すぞっ」

 

どぴゅっ! という射精の音が、ヘラの子宮内に轟いた。

 

「ん゙お゙お゙お゙お゙お゙ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ っ♡♡♡」

 

絶頂を極めたヘラは、噛んでいた襟を放してしまい、ケダモノ声を響かせた。

 

「まったく、声を我慢しろって言ったのに」

「はひぃ♡ はぁぁ♡ あふっ♡ ごめん、なしゃい……っ♡」

 

びくびくと痙攣しながら、ヘラは詫びの言葉を口にする。

ヘラが謝る声は何度も聞いた。

亡き夫に詫びるとき、修吾に謝るとき。どちらも自分の卑しさを恥じていた。

しかし、いまの大絶頂の余韻に蕩けた顔と声音は、それとはまるで別物だった。

 

 

 

 

修吾とヘラのセックスは、家の中だけに留まらなかった。

 

「修吾さん……その、どこに向かってるの?」

「ちょっとした穴場だよ。家の中ばかりだとマンネリになるからね」

 

修吾が運転する車は、田舎町を出て山奥の方に向かっている。

ヘラは助手席で落ち着かない様子で、きょろきょろと周囲を見回していた。

その服装は、普段の彼女と比べて格段に露出度が高い。

両肩と胸元を露出した黒いトップスに、お尻の下までスリットが入ったタイトスカート。

都心で夜の街を歩いているのが似合いそうな、大人っぽくて色気のある服装だった。

 

「あ、ここ展望台よね。昼間になら来たことがあるわ」

 

ヘラが気付いたように、この近辺ではデートスポットとして知られた展望台だ。

ドライブデートに向いたロケーションで、家族連れで来る者も多い。

 

「夜に来るのは初めて? 兄貴とも?」

「ええ……だって、夜だと風景も何もないでしょ? 夜景が綺麗なわけでもないし」

 

探りを入れた結果、どうやらヘラは、夫の存命中にデートで来たことはあるようだ。

しかし、この展望台が持つ別の顔は、知らなかったらしい。

 

「そうだね。だからこそ、穴場なんだよ」

 

やがて修吾はライトを極力落として、展望台の駐車場へ入っていく。

駐車場には、見るべきもののない夜にも拘わらず、まばらに車が停まっていた。

 

「…………」

 

ヘラはいまだに、なぜここに連れて来られたのか分からないようだ。

ホテルか、下手をすると野外プレイでもさせられるのかとは予想していたようだが。

 

「周りの声、聞いてごらん?」

 

駐車場の一角に停車する。

他の車とは等間隔な距離を置いて、車内灯を切った。

他の車も同様にしており、窓から車内を見ることはできない。

 

「っ!」

 

代わりに、全ての車内からは、男女の悩ましい声が響いていた。

 

「ここはね、カーセックスの穴場なんだよ。家だと家族の目があって出来なかったり、ホテルとは気分を変えたかったりする人たちが使うんだ」

 

男性と妖女がそこかしこで交わるこの時代、セックスの場所は不足している。

家族がいると家には連れ込み難い。田舎だとホテルも少なくて、満室ということも多々ある。

公園や路地裏といったところで、スリリングな行為を愉しむこともできるが、『ピンクハザード』以降その手の風紀にはうるさい社会だ。

するとカーセックスという選択肢が生まれ、それに都合のいい駐車場が、密かな盛り場となる。

 

「こ……こんなこと……み、みんな……してるの?」

 

ヘラは息を呑みながら、恐る恐る周囲を覗き見る。

最も近い車は、どこにでもありそうな軽自動車。

しかし不自然に揺れており、女の甘い声が微かに漏れ出ている。

音楽を掛けて誤魔化してはいるが、注意すれば聞き取れてしまう。

他の車も全て同じような状態か、より揺れと声が激しかった。

 

「兄貴とは、こういう場所ではしなかったの?」

「す、するわけ、ないでしょう? こんな……公序良俗に反したこと……っ」

 

兄もヘラも、結婚するまで清い体でいた優等生夫婦だ。

夫婦となって存分にセックスができるようになっても、家でひっそりと済ませていたのだろう。

そんな真面目なヘラだからこそ、無縁だった環境に興奮し始めている。

 

「ほら、あっちを見てご覧よ」

 

修吾はヘラに別の車を注目させる。

 

「っっっ♡♡♡」

 

ヘラは声にならない悲鳴を上げた。

そこには、一組の男女がいた。

男がシートの上で仰向けになり、女が騎乗位で体を上下させている。

女性の上半身は着衣状態で、結合部も外側からは見えないが、まぐわっているのは明らかだ。

 

「わざと車内灯をつけて、見られる興奮を味わってるみたいだね」

 

ヘラの目は、そのカップルに釘付けだった。

あの車の揺れが最も激しく、女の嬌声も大きい。

 

「あ、あの子……ほ、本気で……っ♡」

 

大音量の音楽でも誤魔化しきれない、燃え上がっている妖女の喘ぎ声。

誰かに見られるとか聞かれるとか、そんなことを考える余地を失った、イキ狂い状態だ。

同じ妖女として、彼女がいま味わっている悦楽を想像できるのだろう。

ヘラはまるで、自分が当事者になったかのように顔を赤くしていた。

 

「ヘラのエッチな姿も、周りに見せちゃおうか?」

「そ、そんなこと……できるわけ……やっ♡」

 

修吾は運転席から手を伸ばして、助手席のヘラの太股を撫でた。

些細な愛撫だというのに、早くも甘美な声が返ってくる。

非日常的な環境で、すっかり興奮しているようだ。

 

「なら、明かりは点けないであげる。ほら、こっちにおいで」

「あ……」

 

修吾に手を引かれたヘラは、助手席から修吾の膝上に移動させられる。

これでは、フロントガラス越しに丸見えになってしまう。

分かっていても、いまさら修吾に逆らえず、ヘラはせめて顔を逸らす。

そんなヘラの体に、修吾の手が張っていく。

 

 

――ほんの十分後。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ひぎゅぅぅぅっ♡♡♡ 修吾さんだめっ♡ イッてるのぉっ♡ こんなっ、ところで♡ イクの止まらないぃっ♡ しゅごっ、すごいっ♡ すごくしちゃだめっ♡ ひぁあああまたイクぅっ♡ イクからぁぁっ♡♡♡」

 

ヘラは駐車場内でも一際の嬌声を上げていた。

トップスの胸元は開かれ、紫色の下着と共に降ろされている。

タイトスカートはまくり上げられ、腰で雑巾のように絞られていた。

そんな彼女を、修吾は背面座位で突き上げる。

 

「ダメじゃないでしょ? 子宮が俺の先っぽにちゅーちゅー吸い付いてるよ?」

 

特殊な環境でのセックスに対するヘラの反応は、予想以上だった。

夫の残した家を守っていた未亡人はいま、その家から離れた車内で、別の女になっている。

心理的な抑圧から解放されたかのように、妖女の本性をフルスロットルにしていた。

 

「だってぇ♡ これっ、気持ち良すぎるのっ♡ お外でこんなことっ、いけないのにっ♡ わたしのっ、からだぁ♡ おかしいのぉ♡ いつもと違うのっ♡ イキかた違うのぉっ♡」

 

修吾のピストンが車体を激しく揺らし、薄暗い車内でヘラをよがらせる。

触発されたように、周囲の車内からも、女の嬌声が高くなっていた。

他の人もしているから、自分もしていいのだという心理が働いているのだろう。

それが相互に作用して、全員が燃え上がり、夜の駐車場をちょっとした乱交会場に変えている。

 

「ほらっ、もっと乱れていいんだよ? 聞かれても、誰にも素性は分からないからっ」

「あっ♡ そこっ♡ いいっ♡ 修吾さんのっ、硬いのがっ♡ ごりごりするの素敵なのぉっ♡♡♡ こんなっ♡ こんな気持ちよさがあるなんてぇ♡ 知らなかったのぉっ♡」

 

夫とはできなかった新しいセックスに、ヘラの理性は焼き切れていた。

それを与えてくれる修吾を称えるように、首筋を舐めながら、服の背中に指を食い込ませる。

 

「エロい……ヘラ、すっごくエロい顔してるよ? もっとするぞっ! 兄貴とじゃできなかったセックス、いっぱいしてやるからな!」

「はいっ♡ 教えて、くだしゃいっ♡ 修吾さんにぃ♡ いっぱいっ♡ 新しい悦びっ♡ 教えてもらうのぉっ♡」

 

ヘラは絶頂の度に意識をもうろうとさせていき、それゆえ偽りない本音を口にする。

墓の下の夫に操を立てるような日々の中で、存在そのものを否定されていたメスの欲求が、解き放たれている。

古いオスを忘れ、新しいオスを獲得しようとする、欲深くてどこかドライな本能が。

 

「あああぁぁぁっっっ♡ またイクっ♡ おっきくイクのぉっ♡♡♡」

 

その夜の駐車場は、いつにない盛り上がりを見せていた。

 

 

 

 

ゴトン――ゴトン――と重低音が響く電車内。

夜の帰宅ラッシュと思しき混雑の中に、ヘラはいた。

 

「……っ♡」

 

ひどく扇情的な格好だった。

胸元がばっくりと開いた白いシャツ。レースをあしらわれた襟元で、深い谷間が露出している。

下は黒いタイトスカートで、太股どころか尻肉の下まで見えてしまいそうなほど短い。

薄手の生地には下着のラインがくっきりと浮いていた。

 

「ふぅ……っ♡」

 

ヘラは羞恥に頬を染めながら、落ち着かない様子で周囲に目を配る。

スーツを来た会社員や、帰宅中のOL、夜更かしした大学生。

それらの視線を気にしては、目が合う前に目線を外し、正面のドアを見る。

ドアに埋め込まれた窓ガラスには、痴女のような格好をした自分の姿と――

 

「ヘラ、すごく卑猥な姿してるぞ? もうこれ裸の方がマシじゃないか?」

 

兄嫁の背後に立ってヒップを撫でる、修吾の姿が映されていた。

 

「そ、そんな……修吾さんが、着ろって……っ♡」

 

ヘラは泣き出しそうになりながらも、背後に立つ修吾を振り返り、見上げる。

その瞳は潤み、口元は期待するように緩んでいた。

 

「最高に似合ってるよ。すぐにでも犯されたいって、全身がアピールしてる」

 

修吾は興奮を抑えきれない様子で、腰をぐっと押しつける。

ヘラは「んっ♡」と甘い声を漏らし、内股をもじもじさせた。

 

「修吾さん……っ♡ こういうのは、流石に……んんっ♡」

「大丈夫だよ。誰も見てないし、見えても見ぬ振りしてくれてる」

 

確かにそのようだが、ヘラの羞恥心はなにも緩和されない。

 

「それに、きっとヘラはこういうの好きだと思うよ? 少なくとも体の方は――」

 

耳元で囁かれた修吾の言葉と、尻や太股を撫でる手が、ヘラの子宮を疼かせる。

 

「ひゃうっ♡ あっ♡ だめっ♡ いま、触っちゃ……っ♡」

 

触れられたところから快感が広がり、顔と頭をピンク色に染めていく。

 

 

 

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「いい反応だなぁ。もしかして、一度くらいされてみたかった? 痴漢」

「ちがっ♡ わたしっ、そんなんじゃ♡ あぁっ♡」

 

修吾が指先でなぞるのは、胸元の鎖骨部や、スカートが食い込んだ太股の肉。

直接的な性感帯ではないというのに、ヘラの反応は秘所や乳首を刺激されたように敏感だった。

 

「違わないよ。エッチなところでもないのに、こんなに感じちゃってさ。

 全身がすっごく敏感になってる。気付いてる? さっきからお尻で俺の股間を擦ってるの」

「あっ♡ あっ♡ あっ♡ あっ♡」

 

修吾の指摘通り、ヘラは無意識のうちに、尻を押しつけていた。

 

「兄貴とはできなかったセックス、いっぱい教えてあげる」

 

修吾はヘラの肩を掴み、強引に体を反転させる。

向かい合ったヘラは、恥ずかしげに顔を逸らしながらも、抵抗しない。

 

「ほら、胸元を開いて、おっぱい見せるんだ。自分でやるんだよ?

 でないと、他の乗客に見せちゃうよ? ヘラのはしたない体を……」

 

修吾はヘラの耳元に唇を寄せ、甘く囁く。

ヘラは震えながら、言われた通りに服のボタンを外す。

そして、ゆっくりと前を開いた。

シャツの内側からは、ブラジャーに包まれた豊満な乳房がこぼれ出る。

 

「へぇ……ブラもエッチなの着けてるね。ちょっとズラしただけで乳首見えそうだ」

「っ♡」

 

修吾はシャツの中に手を入れ、下着を少しだけずらす。

 

「ほら、勃起してるじゃないか」

「……っ♡」

 

ヘラは頬を赤らめながら目を閉じ、瞼を震わせながら顔を逸らした。

無抵抗。このまま続きをしてもいい――という、無言だが雄弁な女の態度だった。

 

「乳首だけ、重点的に苛めてやるよ」

 

修吾はそう言って、人差し指をピンと伸ばす。

先端を爪で軽く弾いて、くりゅん、くにゅん、と弄ぶ。

 

「ふぅっ♡ んぅっ♡ んんぅぅぅっ♡」

 

ヘラの体が小刻みに痙攣し、切なげな吐息が漏れた。

 

「やっぱり、いつもより敏感だ。こんな状態で、いつも通り責めたら、どうなるんだろうなぁ?」

 

修吾はそう言いながらも、手を休めない。

親指と中指で摘まみ、指の間で転がすように先端を揉みほぐしていく。

 

「あひっ♡ あひぃいっ♡ ちくびっ♡ すごっ♡ きもちいひぃっ♡」

 

ヘラは背中を反らせ、甘い声を漏らして悶えた。

 

「おいおい、こんな場所で乳首イキするのか? どんどん変態になっていくなぁ」

「ちがっ♡ わたしっ♡ へんたいじゃ♡ んぁっ♡ あっ♡ ぁぁぁぁぁっ♡」

 

びくびくびくっ! と、ヘラは電車のドアに背を預け、立ったまま達した。

その秘所へ、すかさず修吾の手が伸びる。

タイトスカートの中に無遠慮に入り込み、ヘラの体をドアに押し付けて、手淫で責め立て始めた。

 

「ひぅぅぅっ♡ らめっ♡ いまはっ♡ あああぁぁぁっ♡」

「おぉ……すごいな。下着越しに擦ってるだけなのに追加イキしてる」

「いやっ♡ いやですっ♡ いや、なのにぃっ♡ またイクっ♡ イッちゃいますっ♡」

 

自分の淫らさに衝撃を受けたのか、ヘラは耳まで赤くなり、舌を出すような顔で再び達する。

 

「もうパンツの中、愛液まみれだよ? これ、直に手マンしてやったらどうなるんだ?」

 

修吾はヘラの腰を掴み、スカートを捲り上げた。

むわっと雌の匂いが漂ってくる。

 

「やだ……やだやだやだっ♡ 修吾さんお願いっ、もう止めましょうっ? 家で、家でならっ♡」

 

怯えたように懇願するヘラに構わず、修吾は中指をヘラの膣内に突き立てる。

 

「ふぅぅぅぅぅ♡♡♡」

 

ヘラは絶叫を噛み殺し、うつむき加減に修吾へ縋りつくと、がくがくと足を震わせた。

 

「あーあ、またイってる。こんなに人が見てるのに、イキ声を聞かせちゃって」

「やらっ♡ らめれすっ♡ こえっ♡ らめぇぇっ♡ んふぅぅううっ♡」

 

ヘラは必死に声を抑えようとするが、指先でGスポットを押し潰されると、どうしても我慢できないらしい。

 

「諦めろよ。アンタの体はこういう風に出来てたんだよ。

 犯されたり、辱められたりするのが大好きな体だったんだよっ!」

「そんなこと……なひっ♡ ないっ♡ ですっ♡ 勝手に、決め、ないでぇ♡」

 

言葉こそ強情だが、修吾の服を掴んで見上げるその顔は、被虐の悦楽に染まっていた。

 

「へぇ、そういうこと言うんだ? ……やっぱりぶち込まないと素直になれないんだな」

 

修吾は声に凄みを持たせて、ヘラの体を逆向きにさせる。

 

「ひうっ♡ 修吾さんっ♡ まさか、ここで……っ」

 

ヘラはドアに手を付いて、露出した乳房を窓に押し潰した。

 

「まだ自分の立場が分かってなかったんだなぁ。

 俺の意思ひとつで、いつでも家から叩き出せるってこと、忘れたのか?」

 

脅しの言葉を口にしながら、ヘラのスカートをまくり上げる。

驚いたことにTバックの際どい下着と、真っ白なヒップが露になった。

 

「いやっ……ごめんなさい♡ 許して……家に、置いてください……っ♡」

 

修吾の言葉は、権力勾配を再認識させるためのものにすぎない。

しかしヘラは、そんな『受け入れるための大義名分』に、ほぼ反射的に食いついた。

 

「だったら……」

 

修吾は逸物を取り出し、Tバックの布をズラして、亀頭を入口にあてがう。

 

「ふぅ♡ ふぅっ♡ ふぅぅっ♡」

 

まるで銃口でも当てられたようにびくびくと震えながら、ヘラは挿入の瞬間を待ちわびていた。

 

「いつでもどこでも、俺のものを受け入れるんだよっ!」

 

電車の振動音と同時に、修吾の怒張が、ヘラの最奥部まで一気に串刺しにする。

 

「あぁぁあぁあぁぁぁあぁぁぁっっっ♡♡♡」

 

ヘラはその一突きだけで絶頂し、ドアに胸を押し付けて仰け反った。

 

「あーあ、イキ声出ちゃったね。もうお終いだね。いいよ、このまま皆さんに聞いてもらおうか。俺の兄嫁が、夫の弟に突かれてよがり狂う声をさぁ!!」

「ひぁあっ♡ だめっ♡ いやぁっ♡ いやですっ♡ こんなのぉっ♡」

 

ヘラは首を振って拒絶するが、その瞳には隠しきれない期待の色があった。

せめて自分で口を塞ごうとしたが、その手は修吾に掴まれ、壁に押さえ込まれる。

 

「ほらイケっ! 皆に見てもらえよ! ドスケベ未亡人にぶち込むとどんな顔でイクのかを!」

 

修吾は下から斜め上へと、ヘラの踵が浮かぶような勢いで、豪快に突き上げた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「んおっ♡ おぉぉぉぉっ♡ んおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ♡」

 

ヘラは獣のような声を上げ、背中を弓なりにそらせて、何度も達する。

電車の駆動音と、男女の衝突音に、ヘラの喘ぐ声が織り交ぜられる。

 

「はははっ、イキすぎだろ? もう何回イッたか分からないくらいだぞ?」

「いやっ♡ いやぁぁっ♡ こんなっ♡ こんなのってぇぇっ♡」

 

ヘラは自分の身体の異常さにショックを受けているようだ。

もはや、自分が公共の乗り物にいるということさえ、頭から消し飛んだようだ。

 

「休ませないぞ。俺がイクまで、連続アクメ決めちまえ!」

「あひっ♡ あへぇぇっ♡ らめぇぇっ♡ らめなのにぃっ♡

 イグッ♡ いぐのぉ♡ きもちよすぎてっ♡ 狂っちゃう♡

 こんなのっ♡ あたまおかしくなっちゃうのぉぉぉっ♡」

 

ヘラは涙を流して悶絶した。

修吾は腰を止めず、片手で乳房を握り潰しながら、激しい水音と共にポルチオを突き上げる。

その度にヘラの正気は失われていき、涎を顎から滴らせながらイキ狂う。

 

「あひっ♡ しゅごいのらめぇぇぇっ♡ イキしゅぎこわいのぉっ♡

 修吾さんのおちんぽ刺さるっ♡ おまんこから頭までイカされりゅのぉっ♡」

 

ヘラは両足を痙攣させ、少なく見積もっても二十度目になろうかという絶頂を遂げた。

 

「くそっ、もう出る!」

 

その締め付けに耐えきれず、修吾は射精した。

どくん、どくんどぐんっ、と大量の精液がヘラの子宮を満たしていく。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ っ っ っ …………♡♡♡」

 

ヘラは窓を舐めるように顔をべったり貼り付けて、膣内射精による最後の大絶頂に打ち震えた。

二人の乗った電車は、いつまで経っても、目的地には着かなかった――

 

「いやぁ、最近のホテルは凄いな。幻影魔法であそこまで電車を再現できるなんて」

「も、もう……あんなの、二度と、しませんから……っ♡」

 

――それもそのはず。

妖魔界の技術を無駄遣いして作られた、一種のイメクラ的な施設である。

電車内に見えたのは室内、乗客は幻術による映像で、音と揺れは簡易な機械仕掛けだった。

 

「夢中になってた癖に」

「あんっ♡」

 

施設を出て駐車場の車に向かう途中、修吾はヘラの尻を掴む。

いまは上着を着ているが、ヘラの淫らな服装だけは、彼女が用意して家から着てきたものだ。

修吾が「とびきりエロい服で」と命じたら、わざわざ通販で購入したのである。

 

「もっと知りたいな、ヘラのエッチな本性……」

「そんなの……分かりません♡ 私にだって……」

「うん、これから掘り起こしていくから。帰ったらSM系も試してみような」

「ひぅ……っ♡」

 

修吾の卑劣な発言に、ヘラの体が震え上がる。

腰砕けになりかけた体を、修吾の腕を抱くことで支えていた。

 

(この人、どんだけ淫らになるんだ……?)

 

修吾自身、驚かされている。

関係を持ち、彼女に自分の本性を自覚させたとき、「もう堕ちた」と思った。

とんだ思い違い――彼女は正しく()()()だ。底抜けの淫乱だった。

 

(兄貴は、知らなかったんだろうな……)

 

ヘラ自身も自覚していなかったことだ、夫も知らなかったに違いない。

兄の知らないヘラの顔を、自分が引き出している。

修吾はそのことに、思わぬ達成感を抱いていた。

 

兄貴に勝った――と。

 

生前は特に対抗意識なんか無く、嫉妬心なども持ってなかったのに。

皮肉にもその死後、ヘラを抱くようになってから、兄貴より彼女を支配したくなった。

もしかすると、自覚してなかっただけで、自分は兄が死ぬ前から、ヘラを奪いたかったのかもしれない。

それが、生きている間ならまだしも、死んで文句を言わなくなった後で、表に出てきたのか。

 

だとすると……自分はなんて、卑しい男なのだろう。

 

「修吾、さん? どうしたの?」

「ん、ああ……なんでもないよ」

 

表情の変化を見たヘラに誤魔化しながら、修吾は車のロックを解除した。

 

帰ったら、またこの兄嫁を抱こう。

もとい――嫌がる彼女を犯してやろう。

 

もっと深く、様々な手法で、彼女の淫らさを引き出して、孕ませてやるのだ。

彼女はそれを望んでいるから、夫への愛ゆえに「抱いて」と言えないだけだから。

そう、自己暗示するように思うと、股間に血が集まってくる。

 

――堕ちているのは、ひょっとすると、兄嫁よりも自分なのかもしれなかった。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

順調に肉欲に溺れていく二人でした。
また兄嫁視点の幕間を挟んで、第三話で完結予定です。

※誤字報告、ありがとうございます。
 いつも助けられております。


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幕間(ヒロイン視点)

 

 

最近は、妖魔界と人間界の間で『通話』をすることも可能になっている。

それを利用して、久しぶりに母と会話をしていた。

 

「そう……残念ね」

 

耳にした実家の近況は、親族の縁談がお流れになったこと。

私の実家は貴族家の傍流で、本家は領主の地位に就いている。

しかし一族の間には、いま『子供』がいない。

お世継ぎがいない一族は領主の座から降りるのが、国の慣習だ。

人間界からすると、まるで大昔の武家のような話だが、それが通る。

 

「相手側はなんて? ……え?」

 

破談について、未亡人である自分の存在が災いしたのかと懸念してみれば、母の説明は予想外のものだった。

 

縁談の相手となる男性――つまり生粋の妖魔界人の男だ。

その人が『結婚』それ自体を拒んでいるのだという。

夫という役割に拘束され、自由を失うのは嫌だと。

家の強権によって結婚させられ、何人もの女と子を作らされ、男児はまだかと催促される。

男性にそのようなことを押し付けるのは、男性差別なのだと。

人間界との出会いは、そういう妖魔界の封建社会に、何かと影響を及ぼしているのだという。

縁談の男性もそれに刺激され、『他者の押し付けた役割になんて従わない、僕は僕だ』的な思想になっているらしい。

人間界に住んでいるから分からなくもないが、それは『役割の完全放棄』ともとれる。

 

なんにせよ、そのような精神状態で円満な夫婦もへったくれもない。

よって縁談の『入札』は中止、実家は別方面から婿(むこ)捜しを始めるという。

 

「そう……仕方ないわね」

 

そんなに男が欲しいなら人間界に有り余っているのでは? とも思うだろう。

しかし血統を重視する一族だと、『異世界人』というのはハードルが高い。

ただ、お家断絶よりはマシなので……いまとなってはそれも選択肢だという。

今後も婿を取れなかったとき、それが一族の救世主になるかもしれない。

そこで、未亡人である自分に「夫の弟さんにお情けを掛けてもらってはどうか」と提案されるに至ったわけだ。

縁談が流れたことで、その期待感はより強まった。

 

「ええ、夫のことはもう平気よ。周りの人たちがよくしてくれているから」

 

電話口の母は、娘の傷心に気を配りつつも、探りを入れていた。

――弟さんとの関係はどう? と。

未亡人の娘に申し訳ないと思いつつも、期待を込めた問いだった。

その人と深い関係になれていたりはしないか、と。

以前なら「夫を裏切れというのか」と激怒したかもしれないが……

 

「いい人よ」

 

修吾のことを、そう伝える。

イエスでもノーでもない、質問を回避する答えだ。

肉体関係にあることはもちろん、犯されているだなどとは、母にも伝えていない。

もし寵愛を授かっていると言えば母は喜ぶだろうが、それが修吾を実家の政略に巻き込む可能性もある。

だから修吾との関係は明言せず、子供だけ授かって妖魔界に帰るつもりだ。

 

「え?」

 

ふと、母からの言葉に、耳を疑った。

 

「……お見合い? 彼と?」

 

ヘラが、ではない。

 

――もしよければ、縁談が流れた一族の娘に、彼を紹介してくれないか。

 

そんな頼みが、一族の本家から実家に届いたという。

 

「……っ」

 

ヘラの手がスマホを握り込み、僅かに軋む音を立てる。

 

修吾さんが? お見合い? 私の親族と?

ああなるほど、一族には男が必要だけど、別にその相手は私でなくてもいい。

 

そうなれば……彼が私以外の娘と、よい仲になれば……

 

彼はもっと若い子と、煩わしくない夫婦になれて……

 

自分はひっそり、亡き夫を偲ぶだけの人生を……

 

「――ダメよ」

 

自分でも驚くような低い声が出ていた。

その後でハッとする。

別に私は、彼の恋人でも妻でもないのに……と。

 

「彼には……」

 

息を整えて、意を決して、母に伝える。

 

「あの人には――()()()()()()()()()()()()()()()

 

母はそれ以上、見合いの話を続けなかった。

電話を切ってしばらく……私は奇妙な胸の高鳴りを感じながら、その場に立ち尽くしていた。

 

 

 

 

夫と同じ血を引く彼だけど、セックスに関しては夫とは別物だった。

なんと言っても逞しい。

夫は眼鏡の似合う文系で、細身で、セックスのときも優しさと愛情表現を重んじてくれた。

私もそれに甘えて、行為のときはこちらが上になって腰を振ることが多かった。

 

「ふぅー、気持ちいいよ、ヘラ」

「あんっ♡ よかった、です……♡」

 

彼はその逆だ。

スポーツをやっていたそうで体付きは男らしい。

こうして風呂場で体を洗わされていると、筋肉の厚みと弾力を強く感じる。

夫よりも強い雄――そんな浅ましい感想が、体に湧いてくる。

 

「どうしたの? こんなに積極的にしてくれるなんて。珍しい」

「別に、なにも……♡ 修吾さんは、楽になさって……っ♡」

 

最近、お風呂は一緒に入ることが多い。

彼に全身を洗われて喘ぐこともあれば、今日のように逆もある。

いわゆるソーププレイで、私は仰向けになった彼の胸板に己を滑らせていた。

 

「その水着、やっぱり似合ってる。ヘラのエッチな体にぴったりだ」

「こ、こんなの……ここでしか着ませんから……っ♡」

 

私の体は、彼が購入した水着に包まれている。

いや、包まれているというより、飾られているというべきか。

なにせ乳首と秘所に最低限の三角形があるだけで、後は紐というような水着だ。

 

こんな恥ずかしいものを着せたがるなんて……私を人形だとでも思っているのか。

まるで……自分の所有物であるかのような……

 

そんな扱いを、嫌だと思っていない自分がいる。

 

「んぅっ♡ んっ♡ んぅっ♡」

「こーら、いまは俺に奉仕する時間だろ? 自分ばかり気持ちよくなるなよ」

 

水着越しに擦れる乳首の快感で声を零すと、彼にヒップを掴まれる。

 

「んあっ♡ ごめん、なさい♡ 精一杯、ご奉仕しますからぁ……♡」

 

水着がズレるのにも構わず、胸やお腹、両手両脚を、彼の同じ部位に擦り付ける。

体を洗身の道具として捧げ、女肉の感触を味わってもらうために。

 

「そうそうその調子、プロのソープ嬢みたいだよ。行ったことないけど」

「あっ♡ はぁっ♡ あっ♡ んっ♡」

 

いつの間にか私には、奉仕の快感が目覚めていた。

夫に対しては、対等であるか、自分が守らなければという目上の感覚だった。

 

彼は違う。完全に私が格下だ。

これまでのセックスで上下関係を叩き込まれた結果、義弟である彼を目上の存在に感じている。

当初は『逆らえない』というだけだったのに、いまは『尽くす悦び』すら感じている。

 

私なんかの体で、彼が悦んでくれるなら――と。

 

日夜、様々な形で体を求められても、唯々諾々と従ってしまうほどに。

 

最後に彼の要求を拒もうとしたのはいつだったか――もう思い出せなかった。

 

 

 

 

「あああぁぁぁっっっ♡ 修吾さん待ってっ♡ いまイってりゅっ♡ イってりゅからぁっ♡」

「いいねぇ、目隠ししたら急に敏感になったじゃないかっ!」

 

風呂の後、私は布団で、絶頂したばかりの膣内を突き上げられていた。

目隠しで視覚情報を絶たれた意識は、自然と体の方に集中している。

そのせいで、ごく普通の正常位による抽送でも、いつもより短い時間で果ててしまった。

義弟はそんな私を更に責め立てようと、絶頂の落雷に襲われている子宮に、追加のピストンを送りつける。

 

「んおっ♡ おぉぉっ♡ おふっ♡」

 

不意打ちで乳首を軽く抓られて、おかしな声が出る。

奥でイかされているだけで女は狂うのに、乳首イキまで追加されたら、もう声の制御はできない。

女の身体が、妖女の被虐嗜好が、こんなに浅ましいものだなんて、知らなかった。

彼に()()()()()()()、初めてそれを知ったのに、日に日に記録を更新されている。

 

「やめっ♡ 許してぇぇぇ♡ こわいのっ♡ イキしゅぎなのこわいのぉぉぉっ♡」

 

夢中で懇願する。

こんなことが続いたら、来週には気が触れているんじゃないかと、本気で思う。

 

「よしよし、怖かったね。ほら、いい子いい子」

 

彼の手付きが途端に優しくなり、子宮口はゆっくり圧迫され、乳房は柔らかく愛撫される。

激しくされた後にこうされると、愚かな私は急に安心しきってしまう。

目の前の彼が、世界で一番優しい男なのだと錯覚すらしてしまう。

 

(あ、この手付き……あの人と、そっくり……♡)

 

夫の愛情豊かなセックスを思い出してしまった。

やっぱり兄弟なんだな……と、妙に可愛らしく思ってしまった。

 

「っ!!」

 

そんな自分の思考に、強い自己嫌悪を覚えた。

いまのは、夫への裏切りだ。

ある意味、どちらが気持ちいいかを比べるより、酷い思考だった。

体はどうなっても、彼の子を孕んでも、心だけは夫のものだと誓ったのに……っ!

 

「んん? どうしたの? やっぱり物足りない?」

「んっ♡」

 

義弟の問いかけも、外れてはいない。

彼に調教されてしまったこの体は、私の意思とは裏腹に獰猛なセックスを望んでいる。

犯されるくらいの荒々しさがないと、辿り着けない絶頂があると、犬みたいに覚えてしまった。

 

「……て」

 

その淫らな体と、自己嫌悪に駆られていた心が、目的を一致させた。

 

「犯して……犯してくださいっ♡ いつもみたいにぃ、無理矢理、私を奪ってぇ♡」

 

自ら腰をくねらせ、見えない彼に手を伸ばす。

女が絶対に口にしてはいけないようなことを、媚びた声音で歌う。

目隠し越しでも、彼の嗜虐心に火がついたことを、肌で感じた。

 

「いいよ。いけない兄嫁に、お仕置きしてあげる」

 

不思議なくらい優しい声音がすると、腰が彼の両手に掴まれる。

どちゅん! と、休まされていた子宮が、お腹の側へと押し潰された。

 

「ひぎゅぅぅぅっ♡♡♡」

 

軽い絶頂を伴う快感が炸裂する。

一度ではない、彼が腰を突き入れる度にだ。

体には、先ほどの絶頂が余熱を残していた。だからあっという間に燃え上がる。

 

「そうっ♡ それぇ♡ 犯してっ♡ もっと♡ ()()()()、滅茶苦茶にしていいのぉっ♡」

 

被虐趣味とは別の動機が、そう叫ばせていた。

犯されればいい。こんな私なんて、滅茶苦茶にされればいい。

夫を裏切り、夫の弟を誘惑し、悦んでしまっている私なんて。

最近は心の中ですら、夫を忘れる時間が増えてきた私なんて。

 

「おぉぉっ♡ しゅごいのっ♡ イったばっかりなのにっ♡ またイっちゃうのぉぉっ♡」

 

だから、これは罰なのだ。

行きすぎた快感は肉体を苛む鞭になる。

彼にそれを振るわせることで、夫への贖罪にする。

自ら鞭を受けることが、夫への愛の証明なのだと――私はそう思い込むことにした。

 

「っ……いいとも、イキまくって痙攣してるおまんこ気持ちいいからね!

 ほらっ! もっと喘げ! 獣みたいな鳴き声を上げちまえっ!!」

 

彼も悦んでくれている。

粗忽に扱っても悦んでくれる女というのは、男の夢みたいなものらしい。

自分が虐げられるのは、不徳な関係を持たせてしまった彼へのお詫びも兼ねてのことだ。

 

「んおっ♡ おっおっおぉぉっ♡ しゅごいっ♡ 修吾さん素敵ですっ♡ あぅんっ♡

 私のからだぁ♡ ああぁぁっ♡ もっと、好きにしてっ♡ ぁぁぁっ♡ いいのぉっ♡」

 

抱き上げられ、体面座位で揺らされながら、彼を雄々しくするための言葉を紡ぐ。

体は快感のために、心は贖罪のために。

そうして心と体が一致すれば、後は何も考えずに喘ぐだけ。

 

「ほら、腕を出して」

 

いつの間に用意したのか、手錠で両手首を拘束される。

両腕が体の前に揃えられるそれは、どこか祈るようでもあって、いまの私には最適だった。

 

「後ろを向けっ。ドMなお尻を叩きながら突きまくってやるよっ!」

「はいぃっ♡」

 

乱暴な命令にも、抵抗なく従う。

お尻を突き出し、揺らして誘う――もうこの一連の動きは癖になってしまった。

 

「思い出せよ。ヘラの旦那さんは誰だ? 俺の兄貴だよな?」

 

パシッ! と軽くヒップを打たれる。

 

「ひうっ♡ そう、です……陽司さん、です……ごめんなさい……っ♡」

 

打たれている。暴力を振るわれている――()()()()()()()()()

 

「じゃあ、いまヘラが尻を振って誘惑してる相手は誰だ!?」

 

パシン! とより強く叩かれる。

私がいま、どんなに不徳なことをしているのか、再認識させるように。

 

「あぁっ♡ 修吾さんっ、ですっ♡ あの人のっ、弟にっ♡ 許してっ♡ 許してぇっ♡」

 

いけないことをしている――そう実感するだけで、子宮から全身に興奮が広がる。

でも、仕方ない――()()()()()()()()()()()()()()

 

「そうだ、謝るんだ。兄貴に懺悔するんだ!」

 

パパン! と、両手が時間差を付けて叩き付けられる。

その痛みと衝撃にさえ、全身に甘い痺れが広がった。

亀頭が秘所にあてがわれるのを感じると、甘美な震えが背筋を駆け上がる。

 

「ああぁぁ♡ ごめんなさいっ♡ あなたっ♡ ごめんなさ――」

 

ずぷぅっ! と、言葉の途中で、彼の長大なものが子宮口まで滑り込んできた。

 

「ふぉぉぉっ♡ おっおっぉぉぉっ♡」

 

一瞬の空白の後、強烈な快感が脳天にまで響いた。

視界が明滅し、呼吸が止まる。膣内を圧迫する剛直の質量に、子宮と意識が潰される。

 

「ほらっ、アヘ顔ばっかりしてないで、兄貴に言うことないのか!?」

「んぁぁごめんなさいあなたっ♡ 気持ちいいっ♡ あなたの弟さんのセックス気持ちよすぎるのぉっ♡ おっきくてっ、硬くてっ、雄々しくてぇっ♡ わたしのおまんこ新しくされちゃったんですっ♡」

 

夫への告解を叫びながら、彼の興奮を煽る。

もっと興奮してくれれば、もっと気持ちよく、ああ違うこれは罰なの罰だから――

 

「ああぁぁまたイっちゃうっ♡ 何度もっ♡ あなたのときよりいっぱいあぁイクまたイっちゃうのぉぉぉっ♡」

 

突かれる度にイって、イってる途中に突かれ、一度目が終わる前に二度目三度目とイキ続ける。

 

「許してあなたぁっ♡ 赤ちゃん欲しいのっ♡ あなたが残してくれなかった忘れ形見っ♡

 修吾さんにもらうのぉっ♡ あなたの血を残すためっ、だからぁっ♡ あひっ♡

 気持ちいいの許してっ♡ んおっ♡ イクの許してぇっ♡ あっあっあっあっあああっ♡」

 

早鐘を打つ心臓よりも早いペースで、絶え間なく反響するオーガズム。

気がつけば揉まれていた胸からも、彼に叩かれる尻からも、別の絶頂が合奏のように加わる。

 

「お゙お゙お゙ぉ ぉ ぉ っ♡♡♡ 来てるのぉ♡ あなたよりすごいイクの来てるのぉぉぉ♡

 これしゅきっ♡ 犯されイキしゅごいぃぃぃっ♡ 見てっ♡ あなたっ♡ 見てぇ♡

 あなたの弟さんっ♡ 立派にっ♡ わたしのこと孕ませてっ♡ あひゅぅぅぅっ♡」

 

ああ――もう、無理――あたま、真っ白――

自分で、なにを――言ってる、のか――

 

「――っ♡ っっっ♡ ――、――――っ♡」

 

自分で自分の声が聞き取れなくなった後も、私はなにか言っていた。

きっと、聞かされている彼でさえ、伝えるのをためらうような内容だろう。

 

そんなことすら、どうでもよかった。

 

気持ちいい。ただ気持ちいい。

イってない瞬間が無いくらいの悦楽の極地に、いまはただ溺れていたい。

全ての思い煩いから解放される、天国のようなこの時間が、ずっと続いてほしい。

頭の中が全てそれで覆い尽くされる直前――ふと思った。

 

 

 

こんな私に……夫への愛なんて高尚なものが……あとどのくらい残されているのだろうか?

 

 

 




ご一読いただきありがとうございます。

心は浮気していないつもりでも、
いつの間にか独占欲を抱いてしまっていた兄嫁でした。


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第三話 いとしさ (挿絵追加)

 

 

 

改めて、修吾たちが住んでいるのは田舎町だ。

どのくらい田舎かというと、主要な買い物や娯楽が全てイ○ンで完結しているくらい田舎だ。

それゆえ日曜日のショッピングモールは、田舎町の住人を掻き集めたかのように、どことなく見知った顔で混雑していた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「なにから買う? 軽いものからがいいよね」

「そうね、食品類は熱さで傷んじゃうから最後に……んっ♡」

 

修吾の運転する車から、平素な服装の修吾とヘラが降車する。

ヘラの装いはいつも通りだ。

ここ最近の『いつも』というと、修吾にOKサインを出すように胸元や足が出ていたり、先日のカーセックスや痴漢プレイのような露出過多なものだが、今日は普通だ。

どのくらい普通かというと、半袖の白いトップスにジーンズという、逆に新鮮なパンツスタイルである。

それでもスレンダー巨乳なスタイルは隠せないが、現代では『どこでも見かける』の範疇だ。

 

「じゃあ、本屋からでいいかな?」

「ええ、私もレシピ本が欲しかったから……はぁ♡」

 

修吾とヘラの距離感も、特に近くない。

手を繋いでもいないし、腕も組んでいない。

傍から見れば『ただのカップル』か『ただの夫婦』という程度だ。

 

「選ぶの、結構長くなるかもだけど、大丈夫?」

「ん……大丈夫よ」

 

ほんの少し、ヘラの言葉に悩ましい吐息が混ざること以外は、ごく普通の休日だった。

 

 

 

本屋で目当ての本を購入した後、主要目的である食品売り場に入る。

妖魔界からの輸入品が並んでいることと、客層に妖女が多いこと以外は、旧時代と大差ないスーパーの光景だ。

店内放送で一昔前の流行曲が奏でられていたり、生鮮食品の売り場で気風のいい売り込みがされていたりする。

 

「んっ♡」

 

その道中、不意にヘラが歩みを止めた。

修吾が振り向くと、彼女は顔を赤くして、口元に手を当てている。

彼女が視線を注ぐ先には、精肉コーナーがあった。

 

「どうかした?」

「……なんでも、ないわ。ああ、そこのウインナーとってくれる?」

 

本当に何事もなさそうに笑って、ヘラは修吾の近くにあった袋詰めウインナーを指さした。

 

「修吾()()、なにか食べたい料理ある? 思いついたものでいいから」

 

ヘラは『修吾さん』とは呼ばなかった。

いまはセックスを通じて上下関係を作られた男女ではなく、兄嫁と義弟の顔で言葉を交わす。

 

「んー、おでんかな?」

「おでん? 真夏なのに?」

「だからだよ、毎年この時期になると『久しぶりに食べたいなぁ』ってなるんだ。冷房を効かせた部屋ではふはふって」

「贅沢ねぇ。じゃあ厚揚げと、がんもと……」

 

くすくすと笑ったヘラは、購入する食品におでんの具材を追加していく。

 

「そういえば、妖魔界の食材でおでんに合うのってあるかな?」

 

修吾は買い物カゴを片手に持ちつつ、もう片方の手でスマホを一瞥する。

 

「そうねぇ、卵は問題なく茹でられるし、大根に似た根菜もあって――ぁ♡」

 

ヘラは指を口に沿えて思案していると、一瞬だけぴくっと体を震わせた。

騒々しい店内で行き来する客は、誰も気に留めていない。

ヘラくらいの美人でも、妖女だらけな現代では、すれ違っても振り返る理由にはならないのだ。

 

「……修吾くん、他に買いたい物はない?」

 

ヘラは少し頬を染めて、修吾に何かを促す。

 

「そうだなぁ、甘い物を少し買って行こうか」

「もう、さっき棚を通ったじゃない……」

 

軽く抗議するような目を向けられたが、修吾はどこか悪戯っぽい笑みで流す。

さりげなく、しかし意図的に、修吾は店内に留まる時間を長引かせていた。

 

「はぁ……んっ♡」

 

そうしていると、ヘラの吐息が徐々に荒くなっていく。

歩みがぎこちなくなり、体が小さく震える回数が増えていった。

 

「修吾、くん……もう、いいでしょう? 冷凍食品が、溶けちゃうから……♡」

「ああ、それで思い出した。アイスも買い足しておかないと」

「……っ、修吾()()

 

ヘラは修吾の袖を抓んで、少し涙目になっていた。

そんなヘラは可愛らしかったが、これ以上は怒られそうだったので、ようやくレジに足を向ける。

 

「ありがとうございました~」

 

会計を終えて店を出る頃には、ヘラの表情から険しさが取れた気がしていた。

車に乗り込み、エンジンを始動させる。

 

「ん……♡」

 

車が発進すると、ヘラは小さく身じろいだ。

シートベルトが胸に間に入り込んでいることもあり、妙に色っぽい。

妙に背筋を伸ばして、両手を膝に置いて座っている。まるで面接だ。

 

「修吾、さん……あまり、揺らさない、で……っ♡」

「んー、どうして?」

 

修吾は片手でハンドルを回しつつ、直線に入ったところでスマホを操作する。

すると、助手席に座るヘラの方から、ウィィィィンというモーター音が響く。

 

「ひぅ、あっ、ああああぁぁっ♡」

 

ヘラが艶めかしい声を上げながら、ビクンと腰を跳ねさせた。

 

「はは、イっちゃったねぇ。お店ではよく我慢してたね。何度も強弱を変えてたのに」

「修吾、さぁん……♡ こ、こんな、こんなのを着けて、お買い物なんて……っ♡」

 

ヘラが荒い呼吸と共にいう『こんなの』とは、ヘラのブラとショーツの中に仕込まれたローターのことだ。

 

「大丈夫だよ。誰も気付かなかったみたいだし」

「そ、そういう問題じゃ……ああっ♡」

 

修吾はヘラの抗弁を封じるように、スマホによる遠隔操作でローターの震動を強める。

 

「あっ♡ あぁぁっ♡ だめ、これぇっ♡ ずっと、同じ、ところ……んああぁぁぁっ♡」

 

ヘラはシートの上で身をよじり、悩ましい声で喘ぐ。

うっかり見とれていた修吾は、道を逸れかけた車の軌道を修正する。

 

「修吾、さん……運転、危ないわ……♡」

「そうだな……ちょっと寄り道、していこっか?」

「……っ、はい……♡」

 

修吾は車の進路を、町の主要な道路から外す。

目的地に到着するまでの間、ローターの振動音は鳴りっぱなしだった。

 

 

 

修吾がヘラを連れてきたのは、周囲に建物もない小川の上流だ。

田舎町を通る地鉄の線路があり、それが川を跨ぐために作られた橋の下である。

橋のアーチを潜るコンクリートの通路は、周囲からの死角となっていた。

 

「修吾、さん? ここで? こんな……明るいうちから、外で……♡」

「誰も通らないし、近くを通っても見えないよ」

 

修吾はヘラを橋の下の壁際に立たせ、壁ドンするように詰める。

 

「ほら、見せて?」

「……っっっ♡」

 

修吾が再びスマホを操作すると、ヘラの双丘と股からモーター音が鳴り響く。

 

「ふぁ、んぁぁっ♡ はぁ……はぁ……♡」

 

ローターの動きが止まらず、ヘラは肩を上下させて息を切らす。

その顔は上気して赤くなり、瞳には情欲の色が宿っていた。

両手は修吾の命令に従い、片手はトップスをたくし上げて、片手はジーパンの前を開いていく。

青いブラとショーツが露になり、その生地に不自然な球体が浮かび上がっていた。

 

「んっ……♡」

 

ヘラは恥ずかしそうに唇を噛みながら、胸を覆っているカップと、臍の下のショーツをずらす。

現われるのは、桜色の乳首と陰核……ではなく、それを覆うような、黒い小さなお椀型のローターだった。

 

「これ、気に入った? 乳首とクリちゃんを包んでくれる吸着型ローター」

「初めてに、決まって、ます♡ こんなのを着けて、お外を、歩くなんてぇ……っ♡」

 

ヘラが抗議すると、ローターが激しく震え出す。

 

「んっ♡ あぁっ♡ うそっ♡ まだっ、強く……っ♡」

「ああ、流石に店内で震動を最大にはしないよ。聞いての通り、結構大きな音がするからね」

 

ヘラの両乳首と陰核を包むローターからは、遠くで回転のこぎりでも使っているような駆動音がしている。

ローターの震動を最大にされたことで、ヘラの体にも最大の刺激が生じていた。

 

「こら、勝手に外そうとしない!」

 

修吾はヘラの両手を掴んで壁に押し付ける。

 

「あっあっあああぁぁぁ♡♡♡」

 

屋外で、人気の無さが不安を煽る橋の下で、硬い壁に手首を押さえ込まれる。

野外レイプを思わせる状況と、性感帯を責め続ける機械に、ヘラは激しく身もだえた。

 

「ふぅぅぅっ♡ 修吾さぁんっ♡ もうっ♡ やめっ♡ おしまいに、してぇ♡」

 

ヘラのショーツは愛液まみれになっており、クロッチが色濃く変色していた。

修吾はヘラの懇願を聞かず、スマホ操作で震動の強弱を不定期に変えて、緩急でヘラを翻弄する。

 

「さっきの質問、まだ答えてないよ? 俺は『気に入ったか?』って聞いたんだよ?」

「ひゃうっ♡ ああっ♡ そんな……っ♡」

 

修吾はヘラの両手首を片手で掴んだまま、もう片方の手で顎を持ち上げる。

 

「正直に答えろよ? ローターで感じさせられながらお買い物するのどうだった?

 同じ町に住む知り合いに、いつ見つかってもおかしくない状況でイったよな?

 あんなお澄まし顔しながら、夫の弟にオモチャで感じさせられるの、どうだった!?」

「あぁっ♡ あはあぁっ♡ ごめんなさいっ♡ 私、気持ちよくなってましたぁっ♡

 義弟にローター仕込まれてっ♡ なに食わぬ顔で、買い物しながらっ♡ イキましたっ♡」

 

淫らな半泣き顔が、修吾に白状する。

 

「そうかぁ。そんなに気に入ったなら、当分ヘラの相手はオモチャに任せようかな」

「え……?」

 

ヘラは信じられないといった表情を浮かべる。

 

「俺も疲れるし、課題も済ませないといけないし、ヘラの相手ばっかりしてられないからなぁ」

「そ、それは……」

 

ヘラは悲しげに眉を寄せる。

この夏のうちに、修吾の子を孕む。それがヘラの目的だ。

この夏を逃したら、次の機会があるとは限らない。

例えば、修吾は大学で恋人を作り、ヘラとの関係を終えるかもしれない。

少なくともヘラから見れば、若い男である修吾がそうする可能性は大きく見えた。

 

「修吾さん……お願い……そんな意地悪、言わないで……っ♡」

「んー? 本音だったらどうする? ヘラは俺にどうして欲しいの?」

「あっ♡ あああぁぁぁっ♡」

 

修吾がローターの震動を高めながら問い詰めると、ヘラはまた嬌声を上げた。

しかしその表情は、修吾がまだ自分に興味を失っていないと分かり、喜んでいるように見えた。

 

「おかし、てぇっ♡ 修吾さんのぉっ♡ ご立派なモノでっ♡ 種付けレイプしてくださいっ♡

 夫以外の子種を欲しがってる不貞な体にっ♡ お仕置きレイプしてくださいっ♡

 修吾さんになら乱暴されてもいいのぉっ♡ ううん、()()()()()()()()()()()()♡」

 

ヘラは必死に懇願する。

犯されてるなら不倫でも浮気でもない。

夫への愛を貫きながら肉欲を満たして子を得るための、唯一の方法を、ヘラは修吾に願う。

 

「……っ」

 

自分がそう仕向けたこととはいえ、ここまで明確にレイプ願望を言葉にされると、こみ上げてくるものがあった。

この女は、いったいどこまで、自分をケダモノにしてくれるのだろう。

 

「後ろを向け、壁に手をつけよ」

 

修吾はヘラに命じる。

 

「はい……仰せのままに♡」

 

ヘラは言われるままに壁に手をつき、尻を修吾に向けた。

修吾は背後からヘラの乳房を鷲掴みにする。

 

「ふぎゅぅぅっ♡」

 

ブラ越しに柔肉を握り込むと同時に、手の平でローターを乳首に強く擦りつける。

 

「下も脱げっ、ほら早く!」

「はいっ♡ はひぃっ♡」

 

ヘラはジーンズを下ろした後、指で引っ掛けたショーツをゆっくり捲る。

陰核にローターを貼り付けた秘所が、妖女のフェロモンをまき散らした。

 

「こんなにして、本当に淫乱だな、お前は……ッ」

「あひゃうっ♡」

 

べりっ! と、修吾の手がローターを陰核の上から乱暴に剥がす。

 

「ほら、これか? これが欲しいんだよな?」

「んあぁっ♡」

 

修吾はズボンから取り出した肉棒を割れ目にあてがい、焦らすように滑らせた。

 

「おねがいしますぅっ♡ 修吾さんのおっきなおちんぽでぇっ♡ 私のことめちゃくちゃにしてくださいっ♡ もう我慢できないのぉ♡ 修吾さんのものになったエッチな体っ♡ あなたのお精子が欲しくて泣いてるのぉっ♡」

「そんなに言うなら、くれてやるよ」

「あぁっ♡ あはあぁぁっ♡」

 

修吾は腰を前に突き出して、亀頭をヘラの膣口に挿入する。

 

「あぁっ♡ きたぁ♡ あっ? なんで、止めないでっ♡ 入口で止めて焦らすのだめぇっ♡」

「こら、自分からケツを押し付けるな。ったく、どんだけ欲しがってたんだ?」

 

わざと亀頭だけの挿入に留めた修吾は、ヘラの尻を押しとどめながら、あえて面倒臭そうに問う。

 

「はいぃっ♡ お待ちしてましたぁっ♡ 修吾さんのおちんちんで♡ 子宮口ぐりぐりされるの想像しながらぁっ♡ ずっと待ってましたぁっ♡」

 

ヘラは媚びるような口調で答え、自ら腰を振って修吾のペニスを求める。

 

「まったく、俺だっていつでもしたいわけじゃないってのに……」

 

修吾はヘラの乳首からローターを剥がすと、地面に捨てて乳首を抓る。

 

「んひっ♡ ちくびきもちいいっ♡ やっぱり、修吾さんのお手々がいいっ♡ むぐぅっ♡」

「声、出ちゃうだろうから、口を押さえるぞ?」

 

この様子では、根元まで入れれば獣のように喘ぐだろう。

だから予め彼女の口を片手で覆い、白昼の強姦魔のように女を黙らせる。

 

「ふぐっ♡ うぅぅっ♡」

 

そんな修吾の荒々しさに興奮して、ヘラはしきりに頷いた。

もはやヘラは淫らさを隠さない。

修吾に犯されるためなら、誇りも尊厳も投げ捨てる女になってしまった。

 

「いい子だ――なっ!」

 

修吾はヘラの強く塞いだまま、一気に腰を突き入れた。

 

「んぐぅぅぅぅぅっっっ♡♡♡」

 

ヘラの口から悲鳴にならない声が漏れる。

膣内は、こちらの方こそバイブ機能でも備わっているのかというほど、激しく痙攣していた。

 

「うわ、これ……入れられたらイったなんてもんじゃないだろ? 意識飛んだんじゃないか?」

「おぉぉっ♡ おふっ♡ ふぉぉぉっ♡」

 

修吾の手中に嬌声を押し潰されながら、ヘラは白目を剥きかけていた。

にもかかわらず腰は動き、ようやく訪れた修吾の巨根を子宮口で味わっている。

木々が茂る小川沿い、薄暗い橋の下で、未亡人の白い裸身が義弟の逸物にヒップを擦っていた。

 

「まったく……自分ばっかり気持ちよくなるんじゃない!」

 

ヘラの口を押さえ込んだまま、乱暴に腰を振り始める。

 

「んぶぅっ♡ んごぉっ♡ おぉぉぉっ♡」

「ははっ、押さえてもらってるからって下品な声ばっかりだな。

 見なくても分かるぞ? すごい顔してるだろ? バックが好きなのはそのためなんだろ?」

 

修吾からは見えないが、ヘラの顔は美貌を台無しにするほど崩れていた。

目が白目を剥きかけた、恥も外聞もないアヘ顔だ。

 

「んおぉっ♡ おほおおおぉっ♡」

 

修吾の言葉など耳に入っていないのか、ヘラは獣のような声で叫ぶ。

口から零れた涎が修吾の手を汚し、手首にまで伝っていく。

 

「んおっ♡ あっ♡ おふっ♡ あ゙っ♡ あっあっあ゙あ゙あ゙っ♡」

「はぁ……はぁ……っ!」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

川のせせらぎと蝉時雨、夏の薫風にざわめく木々、それに混じる男女の(むつ)む声。

ヘラの口には丸めたハンカチが詰め込まれ、地面に敷かれた修吾のシャツに仰向けとなっている。

青姦のせいで手足には土汚れがあり、結っていた髪は解け、汗まみれの顔に張り付いていた。

幾度となく絶頂したせいか眼は虚ろで、顔は涙と鼻水と涎、そして精液で汚れている。

両手が自由になった修吾はヘラの両脚を掴んでおり、何度目かの射精に至っていた。

誰かが目撃すれば、プレイではなく本当の性犯罪としか思わないだろう光景だ。

 

「ふぅ……たっぷり出したぁ。これ、いよいよ孕んだんじゃないか?」

「おっ、ふぅ……♡」

 

吐息をつく修吾の言葉に、意識のないヘラは答えられない。

答えはないが、小刻みに痙攣しながらも、無意識に下腹部を撫でていた。

 

――ヘラが無事に妊娠すれば、この関係も終わる。

 

妖魔界において不吉な『未亡人』から一転、跡継ぎを宿した『妊婦』になり、そのまま帰郷すれば一族から大歓迎を受けるだろう。

自分を犯して孕ませた義弟になど、もう二度と会う必要はなくなる。

交われば交わるほど、自分とヘラの関係は短くなっていくのだ。

それを惜しみながらも、引き延ばすために数を減らそうとか、外に出そうとはしない。

まるで転落していくように、妊娠というゴールを目指して、夢中でまぐわう。

もしかするとそのゴールは……この夏の終わりより、早く訪れるかもしれない。

 

 

 

 

魔法というものは、いまや人間界でも生活のあちこちに活用されている。

洗浄魔法もそのひとつ。

スマホのアプリ操作で使用可能で、体や服の汚れや濡れを素早く除去できる魔法だ。

大抵、情事の後始末に使われている。

おかげで、修吾とヘラは汚れや匂いも残すことなく帰路についた。

事後は流石に気まずく、ヘラは顔を赤くして伏せていたが、家に到着する頃には落ち着いていた。

 

「あ……」

「ん? どうかした?」

 

駐車場に車を入れている間、助手席から外を見たヘラが声を零した。

 

「いま、誰かが……」

 

ヘラの言葉に、修吾は思わず運転を止める。

 

「誰かって?」

「その、門のあたりに」

 

車が車庫に入る途中、ヘラは門前に人影を見たようだ。

 

「……宅配とかじゃなく?」

「いえ、そういう感じじゃ……」

 

修吾はひとまず車を停めて、ヘラの顔色を確認。

少し緊張した様子は、嘘を言っているようには見えない。

嘘と言えば……ストーカー被害は、修吾を家に呼ぶ口実だったはずだが。

修吾の視線からその疑問を察して、ヘラは口を開く。

 

「実は、たまに誰かが家を覗いていたのは本当なんです。

 仕事や買い物から帰ると、家の前に誰かがいて、でも私を見ると隠れたり逃げたり……」

 

どうやら、ストーカーの話は、全てが嘘でもなかったようだ。

そうかも、と思っている間に、妖魔界の実家から修吾との関係を進められ、呼び出す口実に使ったというところだろう。

思い出せば、ヘラが修吾を誘惑しようとした夜も、外に不審者を見たと言っていた。

あのとき、誰なのか確認しようとした自分を必死になって止めていたが、あれは本当に不審者がいる可能性があったからだったのか。

 

「誰なのか分かる?」

「女の子だと思います……いま見かけたのと、同じ人です」

 

そのこともあり、ストーカーとまでは言わなかったが、不審には思っていたようだ。

火野家の立地的に、この家に用がなければ、人が訪れることはない。

そこで何度も見かけるということは、火野家に用がある不審者だ。

 

「……声、掛けてみよう」

 

どうやら、家に帰ったらすぐに先ほどの続きを……とはいかないようだった。

 

 

 

「すみません。なにかご用ですか?」

 

声を掛けるまで、その少女は待っていた。

妙に気まずそうで、もっと言えば怯えているようにすら見える。

なぜそんな顔でいるのか疑問は尽きないが、少なくとも危険は感じない。

 

「あ、あの……突然、すみません」

 

少女はぺこりと頭を下げた。

妖女ではない。素朴な印象の人間女子だ。制服は町内の中学校のもの。

親戚の子ではないし、友人の娘でもない、修吾の後輩ということもない。

隣のヘラを見ると、彼女も心当たりがないようで、怪訝な様子だった。

 

「実は、私――」

 

ヘラの表情が強張っていったのは、彼女が名乗り始めてからだった。

 

 

慎重に言葉を選びながら、彼女は語った。

その内容を結論から言うと――少女は、()()()()()()()()()()

 

 

溺死だった。

溺れていた子供を助けようとして、入れ替わるように溺れてしまった。

 

つまり……その子供は助かったのだ。

 

あれから月日が経った。

当時は小学生だった彼女が、中学に進級するくらいには。

 

「とても、ご迷惑だとは思ってます……でも、どうしても……自分で、言いたくて」

 

修吾とヘラの前で、少女は絞り出すように言葉を紡いでいる。

慎重にヘラの顔を見ると、ヘラは何かを堪えるように唇を震わせていた。

表情は喜怒哀楽のどれとも言えない。

修吾が彼女の手を握ると、ほんの少しだけ、顔の強張りが和らいだ。

 

「ごめんなさいっ!」

 

少女は勢いよく頭を下げた。

目尻からは涙が出ていたし、膝の前で揃えた手が震えている。

彼女がどんな思いで、修吾とヘラの前に顔を出したのかが、十分に伝わった。

 

修吾も経緯は知っている。

兄の死後、兄が助けた子供の両親は葬式に出た。

場を設けて、母やヘラや修吾に深く頭を下げたことは覚えている。

母もヘラも修吾も、その人たちを責めることはしなかった。

思えばそのとき、ヘラはいまと同じような顔で、淡々と相槌を打っていた気がする。

ふとした拍子で、恨み言を口にしそうな自分を、必死に堪えるように。

 

「旦那さんのこと……私の、不注意で……っ」

 

我慢できなかったのだろう。

自分を命懸けで救ってくれた大人が死んだこと。

その勇敢な男には妻がいて、遺族がいるということ。

子供の頃は想像が及ばず、少し大人になってから、その重みを知るに至った。

そうなったら――謝らずに居られなくなったのだろう。

親に謝らせてのうのうと過ごす自分が、許せなくなったのだろう。

だから謝るべきだと。事の重大さを理解したいま、自分から謝るべきだと考えたらしい。

しかし、いざ火野家を尋ねようとすると足が竦み、引き返しては、また足を運ぶ。

そういう、まごついた足踏みが、火野家の前に見え隠れしていた不審者の正体だったのだ。

 

「……ちょっと、待っててね」

 

修吾は彼女に言うと、少しの間だけ沈黙する。

あえて否定的な見方をすれば、身勝手な『お詫び』だ。

罪の意識から解放されたいからという動機で、相手の都合や心労も考えずにした行動だ。

あらかじめ連絡を入れるとか、作法を入念に守った手紙を送るといったこともしていない。

それだけに――子供なりの、未成熟ながらの誠心誠意であると分かる。

第三者であれば、いまどき珍しい子だと褒めてやりたいくらいだ。

ただ、やはり第三者と当事者では、直面することの負担が大違いだった。

 

「…………」

 

気持ちを整えた修吾は、ヘラの様子を見る。

唇を硬く引き結び、修吾の手を強く握っている彼女は、話せそうにない。

一足先に気持ちを整えられた自分が、話をすべきだろう。

 

「うん、話は分かったよ。よく来てくれたね」

 

修吾は息を整え、少女に向き直った。

その行いについて嗜めるべきことはあるが、いまは彼女の気持ちに応えたい。

だからこれは、兄を失った弟として、兄が助けた女の子に向ける、誠心誠意の言葉だ。

 

「まず……兄のことで、君が自分を責めることなんてない」

 

言いながら、ヘラの手を握る。

ヘラはためらいがちに握り返して、何も言わず修吾の横顔を見ていた。

 

「兄貴のことは、残念だったけど……人を助けようとして、誇らしく死んだんだ。

 不幸な事故だったけど、立派だと思いながら見送れた。

 これからも、思い出す度に、誇らしい人だったと思える……きっと、人の死に様としては、贅沢なことだ」

 

思えばこういう話は、ヘラにもしたことがない。

妻であるヘラは違う所感を持っているかもしれないが、ひとまず少女のために言葉を続ける。

 

「兄貴はきっと……」

 

修吾はもう一度、ヘラの手を握る。

 

()()()()、そんな顔をしてほしくなかったと思う」

 

ヘラはハッとして、修吾の顔を見上げた。

少女も少し肩を震わせて、修吾の言葉を聞いている。

 

「生きていてほしいから、人生を終わらせてほしくなかったから、夢中で頑張ったんだ。

 生きていればちゃんと訪れる幸せな未来を、失わせたくなかったから……」

 

ヘラの手を、より強く握る。

()()()()()()()()()、想いを込めて。

 

「だから――もう、()()()のことは、気に病まなくていい。

 この家のことも、自分が罪深いかどうかも、忘れてしまってもいいんだ」

 

横目に見たヘラの顔は、衝撃を受けていた。

そう――これは、目の前の少女に対してだけではなく、彼女に向けた言葉でもある。

 

()()()は前を向いて、胸を張って生きてくれ。

 それが、()()()の願いだから」

「…………っ」

 

ヘラの指先が震えていた。

それでもゆっくりと、修吾の手を握り返してくれた。

気付いてか否か、少女も息を呑んだ後、涙ぐんだ顔を上げる。

 

「っ、ありがとう、ございます……っ!」

 

少女は勢いよく腰を折って、感謝の言葉を口にした。

そして涙を拭うと、ヘラにも深々とお辞儀をして、その場を去って行く。

少なくとも……あの子の心の重荷を取り除くことには、成功したようだ。

願わくは、幸多い人生であってほしい。

 

「……ヘラさん」

 

そして、彼女にも。

目を向けたヘラは、その場に立ち尽くしたまま、目尻から涙を伝わせていた。

突如として現れた、夫の死を思い出させる人物。

激情を必死に堪える時間から解放されて、感情が決壊したのだろう。

 

「違う、の……」

 

ヘラが端的な言葉を零しながら、修吾の手を握る。

 

「わたし……あの子のこと、危うく、責めてしまうところで……っ」

「うん、よく我慢したね」

 

修吾が抱き寄せると、ヘラは胸にゆっくりと額を乗せた。

ヘラの気持ちも当然だ。夫の死因となった人間が不意に現れれば、何か吼えたくもなる。

それでも、彼女は悪くないのだと必死に自制して見送ったのだ。

 

「胸を張って、生きるだなんて……そんなこと、言ってもらう資格なんて……っ!」

「あるに決まってるだろ」

 

胸の中で、ヘラの嗚咽と自責の言葉が聞こえる。

どうやら、少女と同時にヘラにも向けた修吾の言葉は、ちゃんと届いたようだ。

兄のことも、自分のことも、なんなら忘れてしまって構わない。

ヘラが笑って生きていけること、一番の望みはそれなのだと。

 

「俺なんかが言っても、説得力がないかもしれないけど……本当だよ」

 

未亡人の兄嫁を弄んできた身だが、ヘラの幸福を祈る気持ちに偽りはない。

彼女が妖魔界に帰った後、二度とこの町に戻ってこなかったとしても、構わない。

新しい地で、新しい人生を送ってくれていいのだと――兄ならきっとそう言うはずだ。

 

「中に入ろう。今日は、なにもしないから」

 

修吾はヘラに屋敷へ入るよう促した。

頷いたヘラの肩を抱いて、門を潜る。

 

突然の愁嘆場だったので、とてもセックスをするような気分ではない。

ただ、これはこれで、ありがたい機会だった。

 

もし、死んだ兄がヘラに何か言葉を残したかったとしたら――

きっと、あの言葉以上の正解はなく、それを伝えられるのは、自分しかいなかっただろうから。

 

 

 

 

久しぶりの、兄嫁を抱かない夜だった。

 

部屋で一人、布団に入るだけで、妙な寂しさを感じる。

時刻は午前零時が近付いている。この時間帯で居ないなら、今日はヘラも来ないだろう。

 

(静か、だな……)

 

耳に聞こえる分には、むしろ静かではない。

田舎の特徴として、夏には田んぼの蛙が、秋には鈴虫が騒がしい。

それでも、慣れてしまえば無音と同じだ。

幽霊でも住み着いていそうな、この古くて広い屋敷に、たった一人。

そんな寂寥感が、どうしても胸に訪れる。

 

(ああ、そっか……ヘラさんはずっと、こんな気分で……)

 

夫や義母が他界した後、自分の呼吸と足音しか聞こえないような屋敷で、一人ぼっち。

性的なことを抜きにしても、人が恋しくなるのは頷ける。

肉体関係なんて考えず、ただ純粋に、一緒に暮らしてあげればよかった……と思うほど。

 

(いまさら、か……)

 

そんな清純な関係を築く機会は、とっくに逃している。

犯して孕ませてお別れ――そんな歪んだ関係に踏み出した時点で、もう手遅れだ。

 

ただ……もしそれが『達成』されたら。

つまり、ヘラが無事に懐妊して、故郷に帰っていったら。

ヘラも、兄も母も居ないこの屋敷で、自分は一人になるのだろうか――と、ふと思った。

 

ああ、それは……

 

「寂しい、な」

 

カタン――と、部屋の障子戸から音がした。

部屋の外、廊下側に、誰かいる。

いまこの家にいる人間を考えれば、誰であるかは明白だった。

 

「ヘラ?」

 

呼び掛けると、遠慮がちに戸が開かれる。

ネグリジェ姿のヘラが、少し気まずそうに立っていた。

最初に関係を持った日と同じネグリジェだな……と、修吾は何気なく思う。

 

「どうしたの? 今日は別に……」

 

セックスしなくていいんだぞ、と声音で伝える。

あんなことがあったばかりだ。気分じゃないのが普通だろう。

 

「もう……()()じゃないから……」

 

ヘラが一瞥したのは、修吾の部屋にある壁掛けの時計だ。

確かに、午前零時を少し過ぎている。

今日はなにもしない――という修吾の言葉には、反していない。

 

「いや、でも……」

 

これまで強気にヘラを犯してきたことも忘れて、修吾は戸惑う。

ヘラはそんな修吾の隣に両膝をつくと、濡れた瞳で修吾の肩に手を沿えた。

 

「確かめたいの……あの言葉が、本当なのか……」

 

不安そうにも、期待しているようにも見える顔だった。

あの言葉とは、修吾は少女と同時にヘラにも向けた、彼女の幸いな未来を願う言葉。

言い換えれば、ヘラへの誠実な愛情を告げる言葉でもある。

それを、本当かどうか確かめたいのだと、ヘラは言う――

 

「ごめんなさい……他に、思いつかなくて……後で、何をされてもいいから……っ」

 

月明かりが差し込む暗い部屋の中で、ヘラの瞳だけが薄く光る。

見間違いではない――これは『魔力』の光、妖女である彼女が、その能力を使おうとしている。

 

「どうか……一度だけ、許して……」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

――誘惑(チャーム)だった。

 

「っ!?」

 

油断していた。

妖女は目から相手の脳に魔力を送り込み、一種の催眠状態にすることができる。

催眠状態になった人間は、しばらくの間、その妖女の命令に逆らえない。

誘惑禁止条例が作られた原因そのものだ。

だから、妖女が不自然にこちらの目を覗き込んでいるときは、すぐに払いのけなければいけない。

修吾はそれをし損ねた。

結果、ヘラの『誘惑』は効果を発揮した。

 

「修吾、さん……」

 

ヘラは、修吾の魅了状態を確認するように、目元を撫でる。

 

修吾の意識は明瞭だ。

ただ、ヘラの言葉が鼓膜を越えて脳に直接響くかのようだった。

なにか頼まれたり、命じられたりしたら、一切の反駁もなく従ってしまうと分かる。

 

「お願い……」

 

ヘラがネグリジェの胸元を、白魚のような指先でゆっくりと開く、

豊満な胸による谷間が見えて、桜色の乳首が露になった。

頬を染めたヘラは、魔法の呪文を唱えるように、こう告げる――

 

「――()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

魅了状態の修吾は、ヘラの命令に従う。

したいことをする――それは当然、ヘラを抱くことだった。

 

「ん……っ♡」

 

手を伸ばし、ヘラを抱き寄せて、キスをする。

 

「ちゅ……ぁ……んっ♡ ふぁ……?」

 

それ自体はいつものことだが、ヘラはすぐに、いつもとの違いに気付いた。

背中を抱き寄せる腕が、優しい。

唇を重ねる行為が、柔らかい。

舌先を絡める愛撫が、甘い。

なにより――ヘラを見つめる目が、驚くほど澄んでいた。

 

「ヘラさん……」

 

修吾は囁くように呼びながら、何度もキスをした。

まるで恋人のように、丁寧に優しく。

 

「んっ♡ ふぁ……♡ 修吾、さん……?」

 

驚いたような顔をするヘラをゆっくりと布団に寝かせる。

まるで幼子を扱うように、背中を支えながら、布団の上に安置した。

そうして、今度は首筋や鎖骨などに、キスの雨を降らせていく。

 

「あ……っ♡ 待って、修吾さ……あっ……♡ いつもと……違う……♡」

 

ヘラはどこか焦った様子で、無自覚に修吾の頭を抱き寄せた。

普段ならもっと乱暴に、手を押さえ込んでキスマークを刻むのに、いまの修吾はいつもと違う。

 

「ヘラさん……胸に、触りたい」

「っっっ♡」

 

まるで童貞が年上の女性へ甘えるような言葉に、ヘラの顔が赤くなる。

これまで何度も自分を犯して、力尽くで喘がせてきた男と、同一人物とは思えない。

そのギャップたるや、今日初めて彼に抱かれるかのようだ。

 

「…………」

 

ヘラは気恥ずかしそうに視線を外して、小さく頷く。

それを確認してから、修吾の手と口が胸へと触れた。

 

「あ……♡」

 

薄いネグリジェ越しに触れる大きな手に、ヘラが身をよじる。

修吾はそのまま両手で胸を揉み始めた。

 

「あ……はあ……あ……♡ ん……あ……っ……♡」

 

ヘラはもどかしそうに身をよじる。

いつもの粗忽さはどうしたというのか、壊れ物を扱うように優しい手付き。

それなのに、彼の指先が触れるたび、ぞくりと肌が粟立つ。

 

「ひうっ♡ どうして、そんな……優しく……っ♡」

 

好きなようにしていいと、確かに言った。

男にそう言ったのなら、さぞや激しく、身勝手な行為をされるだろうと思っていた。

いままでの過激なセックスを思えば、いつも通りと言ってよい。

それでよかった――今日までの修吾に偽りがなかったと分かるから。

未亡人の兄嫁に同情して、嫌々ながら種を仕込んでいたわけではないと知れれば、十分だった。

本当に怖れていたのは、したいようにしてと誘惑(チャーム)した後、お前なんか抱きたくないと突き放されることだったから。

 

「あっ♡ はぁぁ♡ 修吾、さん……♡ いつも、みたいで、いいのに……っ♡」

 

故に、いまの修吾は予想外だった。

人間の生娘でも扱うような、慎重な愛撫。

いつもの激しさが嘘のような丁寧な奉仕。

 

「うそ……これじゃ……っ」

 

これが、彼の『したいようにした結果』だと言うなら――

 

「私が、いままで……()()()()()()()()()()()()()……っ」

 

乱暴になんかしたくなかった。

犯したくなんかなかった、欲しいのは体だけじゃなかった。

それが、彼の本心だったということになる。

 

「ヘラさん……好きだ……」

「っ!?」

 

再び唇を奪われる。

 

「ちゅ……ん……♡ ちゅる……♡」

 

情熱的なキスに頭がぼうっとする。

修吾は唇を重ねながら、片手で胸を撫でて、もう片方の手はヘラの手と指を絡めた。

完全に、恋人か夫婦の、愛情を最優先した前戯だった。

 

「だ、めぇ♡ ()()()、だめ……♡」

 

しゅるり――と衣擦れの音を立てて、ヘラのネグリジェが脱がされていく。

ヘラはそのことに、犯されていたときよりも、危機感のようなものを覚えた。

これは駄目だ。こんなセックスをされたら、体よりも心に響く。

()()()()()()()()()()()()()()()()

なぜならこれは――

 

「あの人と、同じように……しちゃ、だめぇ……っ♡」

 

いつも愛情たっぷりだった夫のセックスと、まったく同じだったからだ。

 

「嫌だよ。したいようにしていいって、言っただろ?」

 

修吾も服を脱いでいき、股間の逸物を露にすると、ヘラのショーツを足から引き抜く。

 

()れるよ。嫌だったら、ちゃんと言ってね?」

「あっ……ああっ……♡」

 

ヘラは胸を締め付けられるような顔で戸惑う。

優しさを保ちながら、結ばれたいという強い思いを感じる導入だ。

嫌だと言ったら、本当に叱られた犬のように引き下がってしまいそう。

いつものように、強引にされた方が、ずっと楽だった。

拒みたい気持ちがある一方で、それ以上に断れない。受け入れてあげたい。

そんな、純真な男女の想いが、自分と修吾との間にあると知ってしまった。

 

「あああぁぁぁっ♡」

 

 

 

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ずぶずぶと肉棒が押し入ってくる感覚に、体が震える。

入れられただけで達してしまうのも、ここ最近は慣れたと思ったのに、今日のイキかたはいつもと違う。

 

「おか、しい……♡ これ……いつもと……違うのぉ♡」

 

ヘラは呆然としながら、自分の下腹部を見下ろした。

そこにはしっかりと、修吾のペニスが埋まっている。

これまで何度も見てきた光景なのに、初めて体験するかのよう。

 

「ヘラ、愛してる」

 

言葉と同時に、修吾が腰を動かし始めた。

目を剥いたヘラが喉を反らす。

 

「ひぁぁぁっ♡ 待ってっ♡ それは……言っちゃだめぇっ♡」

 

絶頂したばかりの膣内が、びくんと痙攣している。

そこに容赦なく突き込まれ、またすぐに上り詰めてしまう。

男の粗忽さが表れてきて、『いつも通り』に近付いたのに、やはり違う。

必死に自分を押さえ込んでいた男が、愛の深さ故に激しくなっていくという、恋人のセックスだ。

 

「嫌だ、言うよ。何度でもっ。愛してるんだっ!」

「やっ♡ お願いっ♡ それだけはっ♡ そういうの、だけはっ♡ あの人と、だけだからぁっ♡」

 

愛の言葉を伝えられる度、ヘラは首を振って抵抗する。

体は何度も抱かれてきた、卑猥な言葉も口にしてきた、人が変わったように淫らになってきた。

それでも、こういう愛に満ちたセックスだけは、してこなかった。

なぜならそれは、夫との間でするセックスだから。

修吾との間でそれをすることは、心の不貞行為だと、ヘラは思っていた。

修吾もそれを察して、意識して強姦魔のように責めてきた。

でも、本当は――

 

「こんな、にぃ……っ♡ 愛されてた……なんてぇっ♡」

 

目尻から涙を伝わせながら、ヘラは修吾の動きに腰を合わせる。

これまでに比べれば、ままごとのようにスローな行為なのに、快感は劣らなかった。

 

「んっ♡ はぁっ♡ ああぁぁっ♡ 修吾さんっ♡ お願い、待って♡」

 

修吾はヘラの制止を聞かず、より奥深くへと腰を沈めていく。

子宮を優しく押し潰すような挿入に、ヘラの背筋が反り返った。

 

「くぁぁぁっ♡ 奥にぃぃぃっ♡」

 

僅かな衣擦れの音だけを立てながら、ヘラと修吾が体を揺らしあう。

 

「止めてぇ♡ お願いだからぁっ♡」

 

体の挙動は大人しくても、ヘラの胸中は千々に乱れていた。

 

「あの人と、同じセックスで――あの人よりもっ、気持ちよくしないでぇっ♡」

 

上書きされてしまう。

自分の身体にまだ残っていた、夫だけのものだった部分が、塗り替えられる。

いま自分は、本当の意味で、夫から彼に奪われているのだと、ヘラは感じた。

 

「する。してやるっ! 兄貴に、負けないくらい、俺だって! ヘラが好きだから!」

 

痛切な愛の言葉を叫びながら、修吾の腰付きが本格化した。

 

「あっ♡ ああぁぁっ♡ すごいっ♡ これ……すごすぎるぅっ♡」

 

その動きは、いつものように、乱暴で荒々しい。

しかし、優しく解されていたせいか、感じ方がいつもより鋭敏だ。

獰猛さの中にも深い愛情を感じてしまい、女の心身が甘辛く締め付けられている。

 

「ぁぁぁぁぁっ♡ あっあっあっ♡ はぁぁぁぁっ♡ んっんっふぁぁぁっ♡」

 

ヘラの上げる嬌声は、いつもに比べれば大人しい。

しかし肉体に走る絶頂は、いつも以上だった。

稲妻のように打つのではなく、水のように満たしていくオーガズム。

気がつけば絶頂の一線を越えていて、いつまで立っても過ぎ去らない。

スローセックスの末に辿り着く、男女の境地の一つだった。

 

「行くな、ヘラ、どこにも行くなっ!」

 

絶頂に溺れているヘラに、修吾の切実な声が届く。

 

「ずっと、ここに居てくれ……っ!」

 

泣き出しそうな顔の修吾を、ヘラは呆然とした目で見上げていた。

ずっと傍に居てほしいと、縋るような眼差し。

 

「んっ♡」

 

ヘラの返答は、自分からのキスだった。

無理矢理される形でなら何度もしたが、自分から求めたのは、これが初めてのことだった。

修吾もそれ以上は何も言わず、唇を合わせたまま結合部を激しくしていく。

腰と腰をぶつけ合い、互いの粘膜を擦り合わせ、絶頂への階段を駆け上がっていく。

 

「んむっ♡ ちゅぷっ♡ れるっ♡」

 

絶頂間際の激しいピストン運動の最中、ヘラは舌を絡ませてきた。

 

「んっ♡ あっ♡ ああっ♡ あぁっ♡ はっ♡ はぁぁっ♡」

 

お互いがお互いを求め合い、すれ違うことなく快感を与え合う。

 

「修吾、さんっ♡ もっと――ううん、このままでっ♡」

 

犯されるくらいが快感な妖女としては、刺激の不足すら感じる。

それでも、激しさや狂おしさでは満たされないものが、満たされる。

 

「ヘラ、そろそろ、出る……っ!」

「来てぇ♡ 私の中にぃ♡ 修吾さんの想いっ、全部、伝えてぇっ♡」

 

二人は強く抱き合ったまま、同時に果てた。

 

「く……っ!」

「~~~っ♡」

 

膣内に注ぎ込まれる精液の熱さに、ヘラは喉を反らして悶える。

射精は長く続き、ヘラの子宮をいっぱいに満たしていった。

 

甲高い嬌声もなく、悲鳴や懇願の声もない、完全に合意したセックス。

お互いの機微をよく知っている男女が、自然と静かにまぐわって終わる行為。

 

どこからどう見ても――愛し合う夫婦(めおと)の姿だった。

 

 

 

 

その後、ヘラは無事に妊娠した。

どの日のことかは分からないが、二人ともなんとなく、あの夜のことだろうと確信している。

 

妊娠した妖女は、妖魔界に帰郷する。

家族への報告や、故郷で出産する安心という面もあるが、人間界と妖魔界では魔力の環境が異なり、妖女から産まれる子の発達には妖魔界の環境が望ましいからだ。

普通の夫婦でも、妻が妖魔界出身の場合、『奥さんはいま産休で妖魔界に』というのが通常だ。

夫が妖魔界へ渡航するのが難しいときは、妻子の健康を人間界から祈るということも多々ある。

そうした事情で、修吾とヘラも、しばしの別れは避けられなかった。

 

「ヘラ、忘れ物ないか? 後で必要なものがあったら送るから――」

「もう、さっきも確認したでしょう?」

 

場所は日本の各地にある転移港――人間界から妖魔界へ渡るゲートを管理する『空港』だ。

飛行機などの乗り物はなく、小綺麗なエントランスを多くの人が行き交っている。

その中に、スーツケースを引いたヘラと、見送りに来た修吾の姿があった。

心配そうな修吾に、ヘラがくすくすと笑っている。

見ている利用者の誰もが、『出産のため帰郷する妻と、心配そうに見送る夫』と思っただろう。

 

「そう、か……えっと、他には……」

 

修吾は頻繁にヘラのお腹を見ながら、何かすべきことは無いかと思考を巡らせる。

ヘラがさりげなく撫でた下腹部には、修吾との子が宿っていた。

不徳な関係ではあったものの、ヘラは無事に夫の血を引く子供を得られたのだ。

その表情に、当初の未亡人らしい陰は、もう見当たらない。

 

とはいえ、父となった修吾の不安は絶えない。

なにより、ヘラにはこのまま修吾との縁を終えるという選択肢がある。

火野家との関係を円満に絶ち、家族の待つ妖魔界で、安心できる環境で出産して母となれる。

子供にとっても、兄嫁と義弟の子などという複雑な生い立ちを人間界で強いるよりは、幸いかもしれない。

 

「大丈夫よ、修吾さん」

 

 

 

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今生の別れを予感している修吾の手が、ヘラの両手に包まれる。

安心させるように微笑むヘラの顔は……修吾の知る限り、兄が生きていた頃と同じものだった。

 

「ちゃんと、帰ってくるから」

 

はっきりと、ヘラは言った。

いつごろ、どういう形かは明言しなかったが、帰ってくると確かに言ってくれた。

 

愛する人たちが待っている、あの家に――

 

 

 

 

火野修吾が生まれ育った町は、かつては人口減少に悩まされていた。

 

出て行くばかりの若者、シャッターが多くなる商店街、ありもしない観光資源――

 

いまは昔だ。

 

人間界と妖魔界が容易に行き来できるようになると、町も変わった。

 

妖魔界から来た妖女たちと、それと結ばれた男たち、その間に産まれた子供たち。

商店街の人と店舗は増えていき、妖魔界果実アンブロシアの日本有数生産地という資源もできた。

 

それでも、商店街から少し山へ近付くと、ノスタルジックな田舎の景色がある。

家より多い田畑、野菜の無人販売所に精米器。

錆びたバス停の看板、夜はカエルや鈴虫の大合唱。

 

そんな片田舎の高台に、火野家の屋敷はあった。

 

寺と見間違いそうな古風な屋敷は、普段は静かだが、夏になると賑やかになる。

普段は都心で働いている家主や、いまは妖魔界に帰郷しているお嫁さんが、戻ってくるからだ。

 

屋敷の一室には、いくつかの写真が飾られている。

 

仲の良さそうな兄弟の写真――

成長した兄弟のうち、兄とその妻の写真――

 

そして最近、新しい写真が加わった。

 

成長した弟と、兄の妻――

そして、二人の間で笑っている、元気そうな子供の写真である。

 

 

 

 

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ご一読いただきありがとうございました。

兄嫁編、完結です。
最後は愛の勝利な感じになりました。

あーシリアスは疲れたー。
次は頭空っぽなハッピースケベな話にするぞー。


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睡眠編 俺の前で無防備に眠ることがやけに多い近所の妖女さん
第一話 よく遊びに来てはお昼寝するロリ巨乳・リナ (挿絵追加)


 

 

 

人間界と妖魔界の国交樹立から久しく、麗しい妖女やそのハーフがどこにでもいる、今日この頃。

妖女たちが、人間男性を誘惑(チャーム)したことによる『ピンクハザード』も、いまや昔。

数々の常識が変革されながらも、社会は表向きの秩序を取り戻している。

 

その後に生まれた世代には、いまが普通だ。

町を歩けばエルフ系や獣人系の妖女がいて、美しき彼女らが男に飢えていること。

夜になれば家々から悩ましい声が響くこと、大抵の家庭は一夫多妻状態であること。

 

男児は『おねショタ』を警戒して妖女と接すること、思春期に入った妖女は頭がピンクであること、長く目を合わせてくる妖女は誘惑(チャーム)しようとしているから目を逸らすこと、もしされた場合は出る所に出て条例違反で処罰してもらうこと。

 

そして――自分がセックスしたいときは、女性の『襲ってサイン』を見逃さないこと。

 

風間幸太は、そういう世代の、『どこにでもいる平凡な少年』である。

 

 

 

 

休日――幸太は健全な現代っ子として、家でゲームをしようとしていた。

 

ゲーム機よし、お菓子と飲み物よし、通信環境よし。

しかしまだ足りない、一番大事なものが来ていない――

 

ピンポーン♪ と、風間家の呼び鈴が鳴らされた。

最後のピースが来たようだ。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「やあ、リナちゃん」

「えへへ♡ お兄ちゃん、ゲームしよ?」

 

獣人系の妖女、根室(ねむろ)リナだった。

近所に住んでいる妖女系家族の娘さんである。

ここで言う妖女系家族とは、人間男性が複数の妖女と一夫多妻している家庭だ。

幸太の風間家とは、家族ぐるみのお付き合いである。

 

リナはそんな根室さん()の末っ子だ。

人懐っこい小型犬に似た子で、ボブカットの茶髪を伸ばす頭部には、髪と同色の獣耳がある。

今年で○学生になったのだが、その背丈は進学前からあまり伸びていない。

五分丈のリブTシャツとショートパンツという服装はカジュアルだが、まだ子供っぽい印象だ。

 

ただし……シャツの生地を大きく持ち上げる胸元の質量だけは、大人顔負けだった。

 

身長140cmに満たない体躯でありながら、Gカップはあるだろう豊満なバスト。

父親から継いだ人間の血では薄れることのない、妖女の血を感じさせる発育っぷりだった。

 

「準備できてるよ。それはお菓子?」

「うん。妖魔界のフルーツだよ? ママが持って行きなさいって」

 

リナが差し出したのは、母親から持たされたらしいタッパーだ。

 

「お母さん、なんて?」

「ご迷惑をおかけしちゃだめよって。あ、それと――」

 

幸太の問いに、リナは幼さの残る容姿に似合わず、どこか艶然とした微笑を浮かべて、

 

「お兄ちゃんに……『たくさん食べてくださいね』って♡」

 

リナがタッパーを開いて見せたフルーツは、妖魔界果実・アンブロシア。

美容健康の他、精力増進の効能があるという、恋人や夫婦に人気のフルーツだった。

いまは切り分けられてシロップ漬けにされているが、果実のときはちょうど、リナの胸くらいあるという。

リナはその果物を、自分の胸に乗せるようにして、頬を染めながら小首を傾げる。

 

「お兄ちゃん……今日も、いっぱい食べてね?」

 

 

 

 

風間家はそこそこ大きな新築物件だ。

壁には最近需要が多い防音機能が備わっており、部屋数も多い。

幸太は特に防音設備が充実したシアタールームに、リナを連れ込んだ。

何をするかなんて決まっている――

 

「むきゃーっ! なんでリナが一位になると棘甲羅が来るのっ!?

 あっ! お兄ちゃんいまリナに押し付けたでしょ!?」

「やだなー、たまたまブレーキ踏んだだけだって」

 

ゲームである。

大画面にゲーム機を繋げて、画面分割機能で二人分のプレイ画面を映している。

画面とソファーの間にある机には、開封された菓子と飲料が並んでいる。

ソファーはベッド同然に広く、背もたれを倒して寝転がれるもの。

そこに並べたクッションに埋もれるように、幸太とリナが激しい競争を繰り広げている。

 

「あー、疲れたー」

「ちょっと休憩にするかー」

 

幾つかのタイトルを楽しんだり、好きな実況者のライブにリスナーとして参加したりと、なんともゲーム三昧の午前を過ごした。

幸太とリナが画面を消すと、部屋が少し薄暗くなる。

ゲーム画面を愉しむため、照明を弱めていたからだ。目に悪いのでお勧めはしない。

 

「んー、お目々、疲れちゃった……」

「こら、擦らない。目薬さして休めなさい」

 

小さな手で目尻をこしこしと擦るリナに、幸太は目薬を差しだした。

 

「うー、目薬さすの苦手……お兄ちゃん、やって?」

 

ころんと、リナは幸太の膝に頭を乗せる形で、仰向けに寝転んだ。

 

「しょうがないな」

 

こういう世話を焼くのも慣れたものだ。

幸太はリナの目を上下に開き、点眼薬を落とす。

ちゃんとリナに目頭を押さえさせ、鼻涙管を通って鼻孔へ流れ込むことを防がせる。

 

「きゃうんっ。お兄ちゃんの目薬、すぅーってする……」

「こらこら、目薬の後は目をしぱしぱしない。一分くらい閉じてなさい」

「はーい」

 

よいゲームライフには目の休憩が欠かせない。

幸太も自分で目薬を差して、適当な音楽を再生しながら、目を閉じて休憩に入る。

 

「ふぁ……」

 

少し経つと、リナの口から可愛らしい欠伸が聞こえた。

 

「お兄ちゃん……その……リナ、ちょっと疲れちゃったから……」

 

幸太が目を向けると、リナは妙に赤い顔で、

 

「また……『お昼寝』、してもいい?」

 

期待を込めた眼差しで、遠慮がちに尋ねるのだった。

幸太はごくりと生唾を飲みながら、近所の優しいお兄さんの顔を保ち、手を伸ばす。

 

「いいよ。一時間くらいしたら起こしてあげる」

「……うん♡」

 

頭を撫でる幸太の手を幸せそうに甘受して、リナは姿勢を整える。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「あ……でも……」

 

リナはクッションの間に埋もれるように倒れながら、微笑を浮かべて付け足した。

 

「リナ……()()()()()()()()()()()()()()()()()……

 時間になるまで、絶対起きないけど……いい?」

 

リナは何気なく鎖骨に両手を沿えて、歳不相応な巨乳に幸太の視線を誘う。

幸太は静かに息を呑み、それでも視線を露骨にせず、リナに優しく微笑んだ。

 

「大丈夫、時間になるまで、ぐっすり寝てていいからね?」

「んっ♡」

 

頬を撫でるようにして髪を退けられると、リナはくすぐったそうに笑う。

 

「じゃあ……お休み、お兄ちゃん……♡」

「ああ、お休み」

 

ベッドも同然の、背もたれを倒したソファーの真ん中。

多数のクッションに埋もれるように、○学生のような小柄が無防備に安らぐ。

両手は何気なく頭の左右に置いて、顔は気持ち横向きになり、可憐な顔立ちが目を閉じる。

すぅ……すぅ……と聞こえる微かな寝息と共に、小さな身体に不釣り合いの巨乳が上下していた。

 

「リナちゃん……もう寝ちゃった?」

 

囁きかけるも、帰ってくるのは寝息だけだ。

 

「可愛いね。最近はめっきり女の子らしくなったのに、こうしてると天使みたいだ」

「っ♡ すぅ……すぅ……」

 

頬を撫でながら言葉を続ける。

 

「もうお年頃だよね。妖女の子がそのくらいになったら、男の身体に興味津々だよね。

 いつもお兄さんの喉仏や二の腕をチラチラ見てるの、気付いてるよ。嬉しいけど」

「くぅ……すぅ……♡」

 

妖女は思春期に入ると、男性への性欲が爆発的に増加する。

その情欲たるや男子中学生にも勝り、男子より目覚めが早いくらいだ。

ゲーム目当てで遊びに来るばかりだったリナも、すっかりそういう年頃だ。

そしてどうやらリナの体は、幸太の『いい匂い』を感じてくれているらしい。

妖女の嗅覚が、自分の遺伝子に相性のいい男を嗅ぎ分けているのだ。

 

「そんな危うい年頃に、こんな大きなおっぱい揺らして、お兄さんと二人きりになるなんて……

 襲われちゃうって思わなかったの? 襲ってもいいって言ってるようなものなんだよ?」

「っ♡」

 

リナは目を閉じていたが、幸太が自分の左右に手をついて覆い被さるのを感じたようだ。

 

「ちょっと悪戯するくらい……許してくれるよね?」

 

そうして幸太は、リナの豊満な胸に手を伸ばしていった。

 

 

 

誘惑禁止条例は、女性が男性を誘惑することを禁じている。

夫以外の男性を誘ってはならない、求められても応じてはならない、破れば最悪国外退去。

どの程度の事例に適用されるかは別として、それが現代を生きる妖女たちのルールだ。

 

だから、彼女たちは条例の穴を抜ける。

性犯罪被害は条例違反にあたらない――という抜け道を、どうにか通ろうと画策する。

 

リナの編み出した知恵は、無邪気な子供を装って甘えた末の――『寝たふり』だった。

 

 

 

 

「ん……ふぁ……んん……♡」

 

幸太の手が胸に触れた瞬間、リナは可愛く身じろいだ。

しかし目を覚ますことはなく、すぐにまた寝息を立て始める。

 

()()()()()()()、いい子だね」

 

幸太は囁いて、指先で服越しに乳首を愛撫する。

 

「あぅ……っ♡」

 

リナはぴくんと震えるが、やはり起きることはない。

幸太はリナの乳房に両手を添えて、ゆっくり円を描くように揉みほぐしていく。

 

「あっ♡ はぁ♡ ……んっ♡ あ……ん……っ♡」

 

頬を紅潮させ、呼吸を荒くしながら、それでもリナに()()()()()()()()――

 

「いいね、女の声が出てる。もっと聞かせて?」

 

幸太はリナのシャツをまくり上げる。

チェック柄のブラに包まれた、ロリボディに実るGカップが、薄明るい部屋で露になった。

 

「お兄さんは、フルーツなんかより、こっちが食べたいな」

「んっ♡ あ……っ♡」

 

下着をずらして直接触れると、リナの口から艶っぽい吐息が漏れた。

 

「おっぱい大きいのに、全然垂れてないね。形もすごく綺麗だし」

「はぁ♡ あん……♡ や……ん……っ♡ やぁ……ん……♡」

 

直接の愛撫に、リナの反応が激しくなっていく。

体は立派に成熟していても、まだ経験不足な彼女には、ひとつひとつの性感が刺激的なのだ。

 

「嫌だった? そうだね、こんなことはいけないよね……」

 

わざと、残念そうに手を引こうとすると……

 

「っ!」

 

きゅっ――と、リナの小さな手が、幸太の手を握って、

 

「……お兄ちゃん♡」

 

甘い声音で、呼び掛けた。

 

「ああ……()()だね。嬉しいよ、お兄ちゃんの夢を見てくれてるのかな?」

 

幸太は胸への愛撫を再開する。

片手は変わらず、優しく胸を包み込み、もう片方は親指と人差し指の間で、乳首を挟んでコリコリとしごいている。

 

「はぅっ♡ や……ん……っ♡ くぅ♡ はぁっ♡ はぅ……♡」

 

リナは悩ましい声を上げながら、首を左右に振り、性感に駆られた足を何度も曲げ伸ばしする。

髪とクッションが擦れる音、服とソファーが擦れる音が、シアタールームに響く。

 

「リナちゃんは()()が多いからね。ほら、聞かせて? どんな夢を見てるの?」

「っっっ♡」

 

寝たふりなのは百も承知で、幸太が寝言を催促する。

バレているのは百も承知で、リナは寝言を口ずさむ。

 

「食べ、てぇ……♡ リナの……『フルーツ』……美味しい、よ?」

 

リナなほんの少しだけ目を開けて、その唇に淫靡な微笑を描いていた。

 

「――じゃあ、いただきます」

 

幸太はリナの胸を口に含む。

舌の上で転がし、歯を立てて甘く噛み、吸い上げていく。

 

「やっ♡ あっ♡ ああっ♡ あぁぁっ♡」

 

妖女の鋭敏な性感帯が、リナの体を大きく震わせた。

 

「美味しいよ、リナちゃん。もっとお兄ちゃんに食べさせてくれっ」

 

幸太の声に応えて、リナも()()()()()()()()()()()()()()

 

「はふっ♡ お兄ちゃんっ♡ もっとぉ♡ リナのおっぱ――フルーツぅ♡ 味わってぇ♡

 お兄ちゃんにぃ♡ 美味しく、食べて欲しくてぇ♡ おっきく、育ったのぉ♡」

 

リナは幸太の頭を抱きながら、彼の口と両手により胸から広がる快感に、何度も打ち震えた。

幸太の片腕がリナの背中に回り、その細い小柄を軽々と持ち上げ、背を反り返らせる。

胸を突き上げる形になったリナを、猛獣が獲物を貪るように、ちゅぱちゅぱと捕食する。

 

「あぁぁぁぁぁっ♡」

 

やがて幸太が一際強く胸の先端を吸うと、リナは大きく体を跳ねさせて達した。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……っ♡」

 

幸太がその体を寝かし直すと、荒い呼吸を吐きながら、ぐったりと動かなくなる。

 

「ふふふ、可愛かった。次は何をしようか――それとも、もう起きちゃったかな?」

 

続きをしていいかと、言外に問うと、リナは少しためらうように沈黙した後……

 

「ふぅ……♡ すぅ……♡」

 

また、バレバレの寝たふりを始めるのだった。

 

 

 

「あっあっあっあっ♡ あああぁぁぁっ♡」

 

くちゅくちゅちゅぷちゅっ! と、幸太の手がショーツの中で音を立てる。

 

「すごいね、立派な女の子だね。エッチなことされても平気だね」

 

幸太はリナの頭を腕枕するように抱きながら、もう片方の腕で手淫を繰り広げた。

リナの性器に中指を差し入れ、小刻みに動かして膣内をかき混ぜている。

 

「やっ♡ お兄ちゃ――ああんっ♡ ひあっあんっ♡ あっあっあっあんっ♡」

 

指の動きに合わせて、リナの腰がくねる。

手は幸太の服を握り込み、喉がシアタールームに喘ぎ声を反響させていた。

 

「さあ、イってる声を聞かせて。大丈夫、()()()()()()()、恥ずかしくないよ?」

「やっ♡ だめっ♡ あっ♡ イクっ♡ ああっ♡ イっちゃ、ああああぁぁぁっ♡」

 

リナは全身を大きく痙攣させた。

喉を反らして嬌声を歌い、跳ね上がった乳房が降りてくる。

 

「はひっ♡ はぁぁぁ♡ はぁ……ん……♡」

 

リナは絶頂感に意識を奪われ、虚ろな瞳で天井を見つめていた。

 

「可愛いよ、リナちゃん」

 

幸太が囁いて、頬にキスを落とす。

 

「お兄ちゃぁん♡ 好きぃ♡ 気持ちいい♡ お兄ちゃんの、えっちぃ♡」

「うん、()()()()()()()()

 

幸太はソファーに上がると、ベルトを緩めて逸物を取り出す。

すっかり充血している、なかなかの巨根を、眠るリナの眼前に横から突き出した。

 

「さあ、今度はリナちゃんが食べる番だよ。お兄ちゃんの『ご馳走』、食べてくれるよね?」

「あ♡ はぅ……♡」

 

返事はない。

ぱっちりと目が開いているが、そこを指摘するのは野暮だ。

いまは、眼前に肉棒を出されたリナが、目を爛々と光らせている顔が見たい。

妖女の本能が、リナの肉体と精神を支配してしまっていた。

 

「はむっ♡」

 

リナが口を開け、顔を横に向ける形で、亀頭を口に含む。

 

「お兄ちゃんの、おいしっ♡ じゅぽっ♡ ちゅっ♡ れろっ♡ おいしいよぉ♡」

 

リナは小さな舌を伸ばして、竿や裏筋に絡め、口内で丹念に舐め回していく。

 

「上手になったね。リナちゃん。勉強したんだね。えらいえらい」

「ふぅ♡」

 

褒められたことが嬉しくて、リナは微笑んだ。

しかし、その目に躊躇いが過ぎる。

自分からフェラチオをするのは――『誘惑』ではないかと。

 

「リナちゃんは()()()()()からね、たまたま口がエッチなところに触れても仕方ないんだよ?」

「っ! んぢゅっ♡ ちゅっ♡ ちゅぱっ♡ ちゅぷっ♡」

 

幸太の言葉に後押しされ、リナは一心不乱に奉仕を続ける。

その唇が、舌が、口腔粘膜が、幸太の剛直を愛撫する。

 

「あぁ、素敵だよリナちゃん。ちっちゃな口で懸命に奉仕してくれる姿、世界で一番可愛いよっ!」

「うれしっ♡ あふっ♡ ふぅぅっ♡」

 

リナは()()()()()()、幸太の足の間でうつ伏せになる。

そして自らの意思で頭を前後に振り、幸太の逸物を喉奥まで迎え入れた。

妖女に特徴的な、喉奥の性感帯を刺激したいがための、自然と行うディープストローク。

 

「んっ♡ んぐっ♡ んんっ♡ ふぅぅっ♡」

「うっ、くっ」

 

無我夢中の吸引に、思わず声を漏らす幸太。

リナはそれにも気付かず、ただ口内の快感のために、幸太の肉棒をしゃぶり続けた。

獣人の尻尾が、嬉しそうに左右へバタバタと振られている。

 

「んぐぅぅぅ♡ んぶっ♡ ぢゅるるるっ♡ んおっ♡ んぶっ♡ じゅぶぅっ♡」

 

リナの体がビクビクと震える。

あろうことか、胸が膨らんだばかりの○学生でありながら、口内の快感で絶頂に近付いているのだ。

 

「イキそうなの? リナちゃん」

「んぶっ♡ イクっ♡ じゅぶるるっ♡ お兄ちゃんっ♡ もっ♡ んおっ♡ イってぇ♡」

 

リナは喉奥まで幸太を受け入れ、口全体をすぼめて吸い込んだ。

 

「くぁっ!?」

 

幸太が限界を迎えると同時に、リナの体もオーガズムに到達する。

 

「~~~~~っっっ♡ んふぅ♡ こくっ……♡ はむ……ちゅるるるっ♡」

 

精液を吐き出された瞬間、リナは喉を鳴らして飲み下し、尿道に残った分すら残さず吸った。

 

「ぷぁっ……はぁ……っ♡ あっ……はぁぁ♡」

 

逸物から顔を上げたリナは、目尻からは涙を、口の端からは涎と精液を零していた。

その様は、無垢な少女を汚してしまったような背徳感を刺激する。

同時に、彼女の顔は妖女の情欲に染まって、陶然としていた。

 

「リナちゃん……まだ、寝足りないよね?」

「……っ♡」

 

こくりと頷いたリナは、全て寝相であったかのように、再びソファーで眠りに就くのだった。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

四つん這いになったリナを、寝バックで突く。

 

「あっ♡ あひぅっ♡ お兄ちゃっ♡ あぁぁああぁっ♡ 奥っ♡ 当たって♡ はぅぅぅっ♡」

 

覆い被さる幸太の下で、リナはクッションを掻き抱いて顔を埋めていた。

尻の割れ目の上から生えた尻尾が、幸太の腹を叩くように左右へ振られている。

 

()()()()()()♡ そんなにしたらぁっ♡ リナ起きちゃうよぉっ♡」

 

リナは快楽に悶えながら、奇妙な言い方で幸太を振り返る。

 

「いいや、リナは寝てるんだよ。眠ってるリナは、なにをされても起きないからねっ」

 

幸太も事実に合わないことを言いながら、クッションを挟んでいたリナの乳房を両手で掴む。

 

「だから、どんなにエッチになっても、リナは悪くないんだよ?」

「あっあっあっ♡ らめぇぇっ♡ おっぱいっ♡ 先っぽっ♡ いまっ♡ いま触っちゃ♡ あああぁぁぁっ♡」

 

寝バックで子宮口を擦られ、更に乳房まで責められたリナは、大きく口を開けて喘ぎ続けた。

性欲に目覚めて月日の浅い妖女が知るには、深すぎる快感だ。

 

「ああ、すっかりイクこと覚えちゃったね――でも、リナちゃんがいけないんだよ?

 生半可なエッチの知識で、お兄さんを誘惑したから」

「んおっ♡ はぁぁっ♡ ぁぁぁぁぁっ♡」

「甘えるふりして抱き付いて、おっぱい押し付けたり。さりげなくお兄さんの股間を触ったり。

 ばればれの寝たふりして、お兄さんに襲わせようとしたりっ!」

「はひゅっ♡ ひぅぅぅっ♡ ごめん、なしゃっ♡ あああぁぁぁっ♡」

 

間隔を延ばして突きながら、つい最近の出来事を振り返っていく。

当初はリナの、未成熟な性知識に基づく、火遊びのようなものだった。

幸太はそんなリナの好きなようにさせ、期待に応えることで、リナの女を目覚めさせていった。

 

「怒ってないよ、安心して。嬉しいんだよ? リナちゃんの赤ちゃん作りたい男が、俺で。

 大丈夫、リナちゃんは誘惑なんかしてないことにしてあげる。その代わり――」

 

幸太は背後から、リナの耳元に囁きかける。

 

「おねだりしてごらん? 寝言だよ? 寝言だから誘惑じゃないんだよ?」

「はぁ……ぁぁぁっ♡」

 

リナは朦朧とする意識の中、幸太の言葉の意味を理解していた。

妖女はこう教わる――誘惑はいけないこと、したら警察に掴まること。

妖女はいずれ知る――されど、男の方から『わいせつな行為』をされるのは、許される。

眠っている間に悪戯をされてしまっただけなら――()()()()()()

 

「あぅぅぅ♡ おにぃちゃんっ♡ お願いもっとぉっ♡ この気持ちいいのもっとしてぇっ♡

 ああイクっ♡ イっちゃうけどっ♡ 止めないでぇっ♡ あああイクぅぅぅっ♡♡♡」

 

リナは幸太とソファーの間で押し潰されながら絶頂した。

しかし幸太の動きは止まらない。

 

「んおおおっ♡ またイグぅっ♡ わたしこんなっ♡ エッチが♡ しゅごいの知らなくてっ♡

 あっあっあっ♡ もっとぉ♡ したいっ♡ お兄ちゃんっ♡ 教えて♡ リナにっ♡ あひっ♡

 リナっ♡ 女に、なりたいっ♡ お兄ちゃんとぉ♡ エッチできるっ♡ 女にしてぇっ♡」

 

幸太が抽送のペースを速めるほど、リナの絶頂も間隔を短くしていく。

この時点で、人間の女性がセックスで味わう快感を凌駕していた。

妖女であるリナは、その強すぎる快感に、急速に適応している。

 

「大丈夫っ、もうなってるよ! リナちゃんはもう立派な、淫らで可愛い妖女(サキュバス)だよっ!」

「はぁぁぁっ♡ イクっ♡ お兄ちゃっ♡ ああぁぁぁっ♡」

 

リナは背中を大きく仰け反らせ、喉を晒して絶叫する。

同時に膣壁が激しく収縮し、幸太の肉棒を締め付けた。

 

「出るよ、リナちゃんっ!」

 

最後の理性で肉棒を引き抜き、手で擦ってリナの尻に射精した。

 

「ああぁぁぁぁぁぁっ♡♡♡ 熱いっ♡ あついのぉ♡ お尻、かかってるぅっ♡」

 

幸太の精液を浴びたリナは、蝋でも垂らされたように反応して、追加の絶頂を迎える。

 

「お兄、ちゃん……」

 

リナは艶美な表情でこちらを振り返る。

 

「まだ……一時間、経ってないよね? お昼寝、まだ……して、いいよね♡」

 

背丈は小さくても、その姿は、立派な妖女だった。

 

 

 

 

一時間後――幸太とリナは、ゲームを再開していた。

 

「だーかーらーっ! ゴール手前でバナナスナイプ決めるの無しなのっ!」

「いやー、まさか直撃するとは」

 

先ほどまで交わっていたとは思えない騒がしさである。

洗浄魔法で汚れも匂いも綺麗にされ、当人たちもすっきりしているので、興味は再びゲームに戻っていた。

変化といえば、リナが幸太の脚の間に座っていることくらいか。

 

「その……お兄ちゃん?」

「ん?」

 

ロード中に、リナが遠慮がちに問いかける。

 

「リナ……寝てる間、なにか言ってた?」

「んー? 特になにも?」

 

それが先ほどのセックスを指すと理解した上で、幸太はそう返した。

 

「リナに……なにか、した?」

「まさか、そんなことするわけないだろ?」

 

嘘八百もいいところだが、リナはそれを聞いて、安心したように微笑む。

 

「そう、だよね……♡ お兄ちゃんが、そんなことするはず、ないもんね♡」

 

妖女は誘惑してはならず、犯されるしかない――

しかし男性は女性を犯してはならない――

だから、何もなかったことにする。

 

「お兄ちゃん……」

 

リナはさりげなく幸太の腕を抱き、胸に触れさせながら、振り返り気味に幸太を見上げた。

 

「また……『お昼寝』に、来てもいい?」

 

 




ご一読いただきありがとうございます。

しっとりした大人のエロスだった兄嫁編が終わったので、
若い子たちのスケベを描く新章スタートです。
若いのに性癖が歪んでいるのは世界観設定のせいです。


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第二話 俺の体を心配して睡眠薬を持ってくる犬耳JK・レンカ (挿絵追加)

 

 

 

妖魔界ほどではないが、最近の人間界でも男性は希少だ。

特に若い世代では、半数以上が妖女かその混血の女子で、学校の教室に対して男子の割合は三分の一ほどとなっている。

近所に住んでる同世代の子供は女子ばかりというのも、幸太にとっては当たり前だった。

 

根室さんの家の姉妹は、そういう幼馴染寄りのご近所さんである。

根室家の旦那さんは人間で、奥さんは獣人系妖女が三人という、平凡なご家庭だ。

妖女が続々と移住している現代日本では、平凡である。

先日『お昼寝』をしていたリナは、三人の奥さんのうち一人の子だ。

 

「幸太くん。幸太くんっ」

 

そしていま、眠っていた幸太を呼び起こしたのは、また別の奥さんの子である。

 

「もー、また制服のままソファーで寝てるぅ」

「んあ……レンカ?」

 

根室レンカ――獣人系妖女の少女だ。

幸太とは同い年で、同じ学校に通う同級生でもある。

赤茶色の髪を伸ばす可愛らしい子で、頭部からは三角形の犬耳が、スカートのスリットからは髪と同色の尻尾が出ている。

身長は150と小柄だが、スタイルは豊満で、異母妹のリナに負けず劣らずのロリ巨乳体型だ。

ソファーで仰向けになっている幸太の視界も、下半分が制服の胸元に埋め尽くされそうである。

 

「皺になっちゃうから、着替えてきて?」

「うぃーっす」

 

生あくびを噛み殺しながら部屋に行き、制服から簡素な部屋着になる。

今日もレンカと一緒に下校して、居間のソファーで息を吐いたら、そのまま眠ってしまった。

家の前で別れたレンカがまた来てくれなければ、四時間は確実に寝ていただろう。

 

「幸太くん? 冷蔵庫にあった豚バラ肉、何かに使った?」

 

居間に戻ってくると、レンカが米を研いでいた。

肩の出たトップスにデニムスカートという服の上から、愛用のエプロンを装着している。

動きに合わせて巨乳と尻尾が揺れる姿だけで、ご飯がおひつ一杯はいただけそうだ。

 

それはさておき、豚バラ失踪事件の真相だが――

 

「あー、昨夜ちょっとインスタントラーメン食って、そのトッピングにぶち込んだ」

「お肉を一パック丸ごと!? もー、それならせめてお野菜も加えようよっ」

 

いま風間家の冷蔵庫は、実質レンカの管理下にある。

冷蔵庫に限らずティッシュやトイレットペーパーなど、何があって何が足りないかを、自宅以上に把握していることだろう。

 

「ごめんごめん、お肉、使う予定だったなら買ってこようか?」

「それは駄目、もう暗くなるし」

 

日没後に男性を一人歩きさせてはいけないと、妖女であるレンカは言う。

最近の日本は、女性は夜道を一人で歩けても、男性は一人で歩けないからだ。

流石にちょっと大げさだが、『ピンクハザード』の頃は本当にそうだったらしい。

 

「罰として今日のポークカレー、幸太くんはお肉抜き!」

「育ち盛りにご無体なっ!」

 

若い男にベジタリアン向けのカレーとは酷である。

ただでさえ若い男は、妖女のために何かと体力を要するというのに。

 

「せめて味だけでも……焼肉のたれとか混ぜたら行けるかっ」

「たれの味はしてもお肉の味はしないと思うよ?」

 

呆れ顔で研ぎ汁を捨てるレンカだった。

 

「いーい? 幸太くん。男の子に一番大切なのは『健康』なんだよっ?

 顔の善し悪しでも、背の高さでも、お金を稼げることでもないのっ。

 健やかに長く生きてくれるのが一番なんだからね?」

 

なんと優しい言葉だろうと、涙がちょちょぎれそうな信念だが、

 

「それ、希少な男にできるだけ子作りさせるための、妖魔界ルールだよな?」

「きゃうんっ!? そ、そういう意味じゃ、ないよ……?」

 

顔を赤くして、気まずそうに目線を外すレンカ。

男が希少なら自然とそうなる生活風習だろう。

 

「レンカさんや。今時はそういうのを『ヘルスハラスメント』って言うそうだぞ?

 妖女の彼女ができたら酒ダメ煙草ダメと拘束が激しいって、世の男性は嘆いてるらしいぞ?」

「な、なんでもハラスメントって付ければいいというものじゃないと思うのっ!

 自分の彼氏さんに体を壊してほしくないっていう気持ちを汲み取るべきだよ!」

 

男性不足な妖女に溢れる現代ならではの、男女間あるあるだ。

 

「もう、こっちは心配してるのに……」

 

レンカが『世話焼き幼馴染』をしてるのも、そういう理由だ。

妖女にとって、自分のパートナーとなりうる男とは、とにもかくにも健康あるべし。

体調不良を理由にセックスが減ってしまったら大変だからだ。

つまり、レンカが幸太の世話を熱心に焼いてくれるのも、そういう心の働きであって……

 

「怒るなよ。いつもありがとうな」

「きゃうっ♡」

 

背後から抱きしめると、レンカは耳をピンと立てて驚いた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「こ、幸太くんっ? お米、零しちゃうから……」

「ごめんごめん、新妻みたいなレンカを見てたら、つい」

「きゅうんっ♡」

 

獣耳の間に鼻先を埋めて、耳元に囁きかける。

レンカが身じろぐたび、シャンプーやボディーソープなどの香りがした。

 

「レンカが世話してくれるおかげで、俺はこの通り元気いっぱいだよ」

 

肩を抱いていた手を、さも当然のようにレンカの胸へ滑らせていく。

エプロン越しにも感じられる柔らかさと質量に、股間がすぐさまいきり立つ。

 

「あんっ♡ 幸太くん……だめぇ♡」

 

レンカが身を捩りながら、幸太の腕に手を沿えて制止する。

 

「エッチなことは、しないって……約束、でしょ?」

 

頬を紅潮させながらも、レンカはしっかりと幸太の求めを拒否していた。

妖女にありがちな、嫌よ嫌よも好きのうちとは違う、NOの表情だ。

 

「だって、レンカがフェロモンをまき散らすから

 料理だって、妖魔界の精力食材をたっぷり使ってるし」

「きゅぅぅ♡」

 

尻に股間を押し付けると、逸物の硬さを感じたレンカが身を震わせる。

幸太の腹とレンカの背の間で、尻尾が幸太へ絡まるように踊っていた。

 

「また、昔みたいにしたいな。覚えてるだろ? 二人で思春期に入ったときのこと」

「あ、あれは……っ♡」

 

幸太が口にしたのは、昔というほどでもない過去の一時期だ。

同い年の人間男児と妖女子がいれば、二人は同時に年頃になる。

人間の男女なら、男はムラムラするが、女は男を遠ざけるので、間違いには直結しない。

しかし妖女は――互いを憎からず思う幸太とレンカがどうなったかは、説明するまでもない。

 

「あのときは……仕方なかったから♡ エッチなことで、頭いっぱいだったから……♡」

 

幸太の腕の中で身じろぎしながら、レンカは過日を思い出して頬を染める。

 

「そうだったよなぁ。二人で盛りがついたみたいにセックスしまくったよなぁ。

 レンカが俺を押し倒して、『誘惑』して、獣みたいに腰を振らせて……」

「だめぇっ♡ 言っちゃだめだからぁ♡ 悪いって、思ってるから……っ」

 

情熱的な日々を思い出させられて、レンカは抵抗を強めた。

それでも、体は明らかにYESと言っている。

 

「誘惑は……いけないことだって、知らなかったから……っ♡ だから、もう止めようって♡ 約束っ、んんっ♡」

 

あるとき、爛れた関係に理性と良識が待ったをかけた。

誘惑禁止条例だ。

その対象となることを怖れて、レンカは幸太との関係を見直すことにしたのである。

 

「やくそく、したでしょ♡」

 

濡れた瞳で懇願するレンカから、手を離す。

 

「ああ、そうだったよね。ちゃんと、大人になってからね」

「うん……」

 

解放されたらされたで、寂しそうな顔をするレンカ。

理性では拒めていても、体の方は妖女の本能に忠実だ。

実際、妖魔界であれば、レンカくらいの歳になれば精力的に子供を作ろうとするらしい。

だからといって、幸太はそこに漬け込まない。

その必要がないからだ。

 

「あ、幸太くん……」

「ん?」

 

離れる幸太を、レンカの紅潮した横顔が呼び止める。

 

「カレー……チキンカレーにするから」

 

お肉は食べていいらしい。

 

「それと……常備薬、買い足しておいたから……棚に、補充しておいて」

 

レンカが一瞥したのは、キッチンテーブルに置かれた紙袋だ。

食材の買い物だけではなく、常備薬にまで気を回してくれる、よくできた幼馴染である。

ただし――

 

「……これ?」

 

――()()()まで買い置きを切らさない幼馴染は、珍しい。

手にとって見せると、レンカは尻尾を揺らしながら、くすりと微笑む。

 

「だって……幸太くん、いつも眠そうだもん。きっと、睡眠が浅いんだよ」

 

先ほどは断っておきながら、いまの顔は、男を誘惑する妖女の顔だった。

 

「それ……私も使ってみたけど……効き目、すごいんだよ?

 飲んだら、こてんって眠っちゃって。しばらく、何されても気付かないくらいだったよ?」

「へぇ、そいつはすごい」

「うん……だから、幸太くんも……使()()()()()()?」

 

白々しい会話だ。

レンカがこの睡眠薬を持ってきて勧めるのは、今日が初めてではない。

あえてそこは指摘せず、幸太はその睡眠薬を、常備薬用の棚に補充するのだった。

 

――誘惑禁止条例は、妖女のセックスを禁じている。

 

誘ってはならない、誘われても断らなければならない。

 

だが……眠っている間に悪さをされることまでは、禁じていない。

 

 

 

 

「本当だ……効き目は抜群だな、この薬」

 

食後、幸太はリビングで呟いた。

ソファーで眠りに就いている、レンカの姿を見下ろしながら。

 

「すぅ……すぅ……」

 

夕食後、幸太が出した食後のお茶を飲んですぐ、レンカはうとうとし始めた。

ソファーで休んでいいと言うと、「うん……」と寝ぼけ眼で横になり、いまは熟睡している。

豊満な胸を寝息で上下させ、乱れたスカートから肉付きのいい足と、白い下着が露になっていた。

 

「っ」

 

幸太はそんなレンカの無防備な姿を見つめて、ごくりと生唾を飲み込んだ。

 

「レンカがいけないんだぞ? あの頃よりも色っぽくなってる体を、俺に見せつけて……

 なのに、キスもろくにさせてくれないから……」

「んん……」

 

眠るレンカに語り掛けると、あどけない寝顔がぴくりと動いたように見えた。

 

「将来は結婚して、いっぱい赤ちゃん産んでくれるって、約束したじゃないか」

 

肉体関係があった頃、レンカが半ば勢いで口にしたことだ。

妖女であれば、相性のいい男に抱かれれば、誰でもそんな心地になる。

なのにいまは……求めれば必ず応じてくれたレンカが、自分の手を拒む。

レンカの方から誘ってくることが多かったくらいなのに、いまはまるで、友達以上恋人未満のラブコメ幼馴染だ。

一度でも色を知った自分たちが、そんな甘酸っぱいもので――

 

「我慢できるわけ、ないだろ……?」

 

幸太はレンカのシャツのボタンを外していく。

起こさないよう慎重に、爆発物でも扱うように恐る恐る。

 

「んっ♡」

 

その指先を布越しに感じる度、レンカの口から甘い声が零れかけた。

しかしすぐに押し殺されて、何事もなかったかのような寝息に戻る。

やがて幸太の指が、シャツのボタンを全て外し終えた。

 

「相変わらず大きいよなぁ……」

 

ゆっくりとシャツを開くと、ブラに包まれた大きな乳房がまろび出る。

 

「ぁ♡」

 

指先を撫でる程度に這わせると、レンカの体がぴくんっと震えた。

もちろん、この程度では目を覚まさない。

 

「わざわざ薬まで盛ったんだ……ちょっとくらい乱暴にしても大丈夫だよね?」

「っ♡」

 

確認するように耳元で囁くと、獣耳が小さく動いた気がした。

それに小さく笑いながら、レンカのブラを外していく。

 

「ああ、すごいな。ブラを外したら、ふわって大きくなったぞ?

 こんな窮屈そうにして……前より、大きくなってるんだな」

 

フロントホックを外しただけで、押し込まれていた乳房の内圧により、ブラのカップが浮かぶ。

布地を指で抓んで退けていくと、新雪のように真っ白な丘陵と、先端の突起が目に飛び込んだ。

それはもう、男の欲望を煽るためだけに実った果実のようで……

 

「んあっ♡ はぁぁ……っ♡」

 

幸太がためらいなく乳首を口に含むと、レンカはソファーの上で背筋を反らす。

 

「なんだ? 起きたのか?」

「っ♡ すぅ……すぅ……♡」

 

レンカはいまだ眠りの中にあるようだ。

しかしその体は敏感に反応していて、内股を擦り合わせている。

幸太は眼前の爆乳を吸い、もう片方を愛撫しながら、スカートの中にも片腕を侵入させた。

レンカの下着はすでに湿っていて、ショーツの中はぬかるんでいる。

 

「んんっ♡ んっ♡ ふぅぅっ……♡」

「すごいな、レンカ。触ってもないのに、もうぐしょ濡れだ……

 もしかして、台所で抱き付いたときには濡れてた? その後からずっと?」

「っ♡ っっっ♡」

 

眠っているレンカから返答はない。

しかしその手は、無意識に幸太の頭を抱き寄せ、豊乳の谷間に招き入れている。

 

「待たせてごめんな。いま、慰めてやるからな……っ!」

 

幸太はレンカの乳首と秘所を同時に責め始めた。

 

「ああんっ♡ ふあっ♡ ひぅっ♡ きゅぅぅぅっ♡」

 

ソファーの上で、レンカは身をよじる、

その横側、床に膝をついて上半身だけ覆い被らせた幸太が、左右の乳首と秘所を味わう。

ちゅぱ、ちゅぷ――くちゅくちゅくちゅっ――と、胸を舐める音と膣口を愛撫する音が、レンカの鋭敏な獣耳に響く。

獣人は音や匂いに興奮することが多いが、レンカは音に弱いことを、幸太はよく知っていた。

だから意図的に音が立つよう、唇と指の動きを工夫する。

 

「んっあぁっ♡ だ、めぇっ♡ 幸太、くぅん……っ♡」

「んー? 寝言は聞こえないなー」

 

レンカの声に構わず、幸太は舌先で乳首に唾液を絡め、手淫の指を二本に増やした。

 

「あっあっあんっ♡ あうんっ♡ きゃうぅぅっ♡ きゅぅぅぅんっ♡」

 

獣人系妖女がしばしば奏でる、子犬が泣くような喘ぎ声。

 

「そう、その声だ。イキそうになってるときの鳴き声、可愛いよ。聞かせて?」

「んんっ♡ きゃうっ♡ んあっ♡ らめっ♡ きゅぅぅぅっ♡ 幸太くぅぅぅんっ♡」

 

くちゃちゅぷぐちゅぢゅぱっ! と、激しい手淫の音。

逸物を挿入されているかのような騒々しさに、レンカの鳴き声が重なる。

いつの間にかレンカは足を突っ張らせ、腰を浮かばせていた。

 

「イけっ! レンカっ! 俺の手で、イってくれよ……っ!」

 

情熱的な言葉と共に手を加速させると、レンカの全身が絶頂へと導かれる。

 

「くぅぅぅぅぅっ♡ んあああぁぁぁっっっん♡」

 

レンカの体がびくんっと跳ね上がり、同時に膣壁がきつく締まる。

両腕でソファーの手すりを掴み、『ブリッジ』をするように腰を上げて、愛液を噴いた。

 

「おぉ……っ」

 

予想以上の反応に驚いていると、レンカの腰がぽすんとソファーに堕ちた。

 

「すげえな、レンカ。そんなに良かったのか?」

「はぁ……っ♡ はぁ……っ♡」

 

レンカは薄目を開けて、ぼんやりと天井を眺めていた。

 

「…………」

「…………」

 

お互いの目が合う。

レンカが、自分がなにをされたか理解するには、充分な時間があった。

なのに……レンカは何も言わない。

幸太を睨むこともなく、濡れた瞳で見詰めている。

幸太を制止することもなく、熱い吐息を繰り返している。

幸太の手を振り払いもせず――きゅっ――と、幸太の手を握って、()()()()()

 

「……まだ、寝てるよね?」

「っ♡」

 

レンカの返事はなかったし、体からも力が抜けた。

それこそ、安心して眠りについたかのように、幸太の腕に背を預けている。

 

「まったく、レンカはしょうがないな――」

 

あたかも、世話の焼ける幼馴染を面倒見てやるかのように、幸太は白々しく口にする。

 

「こんなところで寝たら風邪を引くから……ベッドに運ぶぞ?」

 

レンカの背中と太股に腕を回して、お姫様抱っこする。

小柄なレンカの体は軽々と持ち上がった。

本来、意識が無い人間は、脱力していて運びにくい。

しかし、レンカは持ち上げやすいように体を丸めて、目を閉じたまま幸太の肩に頭を乗せる。

目覚めていなければできない反応だが……いまさらそれを指摘するのは、ただの野暮だった。

 

 

 

 

ベッドに寝かせたレンカから、邪魔な衣類を取り除く。

半脱ぎになっていたシャツに、愛液で濡れたスカート、ブラやショーツが床に散らばる。

一糸まとわぬ姿となったレンカは、仰向けになって顔を横に向け、薄目で幸太を見ていた。

 

「よく眠ってるね。いい子だよ、レンカ」

 

服を脱ぎ捨てた幸太は、胸の谷間から下腹部にかけてを、指先で撫でる。

 

「きゅうんっ♡」

 

くすぐったそうに身をよじるレンカ。

まるでお腹をくすぐられた犬のようだ。

それも発情したメス犬だろう。秘裂からは愛液が流れ、シーツに大きな染みを作っている。

 

「ごめんねレンカ。これから思いっきり犯しちゃうけど、許してくれるよな」

 

頬に優しく手を触れて、問いかけながらのキス。

 

「んっ♡ ちゅっ♡ んふっ♡ んんっ♡」

 

舌を差し入れると、レンカの舌の方が絡め取るように引き込んできた。

 

「っ!?」

「ぢゅるっ♡ れるぅ♡ ちゅぱっ♡ んんっ♡」

 

レンカの手が後頭部に添えられ、舌がこちらの口内を暴れ回る。

舌の動きまで犬のようだ。

そして、引き摺り込むようなディープキスは、先ほどの『犯す』という発言への返答でもあった。

 

「ぷあっ♡ 幸太、くぅん♡ またぁ、お薬、盛ったでしょ♡」

 

レンカは幸太の首後ろに腕を絡めたまま、蕩けきった顔で咎める。

 

「睡眠薬、まだ効いてて……体、動けない♡ 抵抗、できないの♡

 意識も、もうろうとしちゃって♡ 夢なのか、現実なのか、よく分かんないよぉ♡」

 

口元を涎で濡らしながら、レンカの足がこちらの足に絡んできた。

 

「こんな有様じゃ、襲われても、逃げられない♡

 だから……幸太くんが、満足するまで――」

 

レンカの片手が、幸太の右手を取って、乳房に触れさせた。

自らの手で胸を握り込ませる淫らなメス犬が、口元をぺろりと舐めて、オスを誘う。

 

「――頑張って、我慢するの♡」

 

つまり……『好きなようにしていい』と、レンカは言っていた。

 

「こ、のっ!」

 

幸太は紳士的になるのを止めた。

両手で左右の乳首を摘まんで引っ張ると、レンカは嬉しそうな声を上げた。

 

「きゃうぅぅんっ♡ ちくびっ♡ やんっ♡ 伸びちゃうっ♡ 取れちゃうっ♡」

「妖女はずるいなぁ! そうやって、気持ちいい思いをするために、男を悪者にしてっ!」

「ひゃああんっ♡ 違うもんっ♡ 私はただ、襲われた、だけでぇっ♡」

「そんな言い訳が通るかよっ!」

 

幸太はレンカの乳房を掴み、指を深く食い込ませて揉みくちゃにする。

その度にレンカの口から甘い鳴き声が上がり、秘裂から愛液を噴いた。

 

「俺のせいだって言うなら、もう手加減しないからなっ。

 昔は怖がるからしなかったけど、レイプだって言うなら、気絶するまでイカせまくってやる!」

「きゃうっ♡ 幸太くんっ♡ お顔、こわいよぉ♡ オオカミの顔、してりゅぅ♡」

 

レンカが、背筋にぞくぞくとした快感を走らせているのが、顔で分かった。

どうやら本当に遠慮はいらないようだ。

 

「そうさ。昔より大人になったからな。レンカみたいな可愛いワンちゃんなら、この通りだ」

 

レンカの両脚を強引に開いて、充血したペニスを陰唇にあてがう。

 

「きゃふぅっ♡」

 

少し擦ってやっただけで、レンカは大きく震えた。

擦りつつ、陰唇の間に深く入り込ませ、入口だけ出入りするように焦らすと――

 

「きゃぅぅぅんっ♡ 幸太くんやだぁっ♡ 焦らすのやなのぉ♡ きゅぅぅぅっ♡」

「なら、あれやってくれよ。おねだりのポーズ、できるだろ?」

 

幸太が催促すると、レンカはしばらく唸ると……

 

「うぅ……♡」

 

両手を軽く握って顔の前に、腕で巨乳を挟んで強調しつつ、両膝も揃えて持ち上げた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「こう……でしょ♡」

 

メス犬が交尾を求めて服従するポーズだった。

 

「よくできました」

 

一気に奥まで突き込んだ。

 

「きゃふぅぅぅっ♡」

 

レンカが背中を反らせて達した。

子宮口を突かれて絶頂したのだ。

しかし、幸太は構わず覆い被さり、上から下へとプレス気味に抽送する。

 

「くぅんっ♡ 幸太、くぅん♡ まだぁ♡イったばっかりなのにぃ♡」

「だからだよ。レンカのここ、きつく締まって、気持ちいいんだ。ほら、もっと締め付けて」

「きゅうっ♡ だめぇ♡ また、イクッ♡ イッちゃうっ♡」

 

挿入したばかりだと言うのに、レンカは早いペースで絶頂を繰り返す。

性感が深く広い妖女にしても、かなり感じやすい状態だ。

 

「ほらっ、ポーズを崩さないっ! メス犬おねだり続けるんだ!」

 

幸太はレンカに『命令』し、更に激しく責め立てる。

 

「きゃんっ♡ あっ♡ しゅる、からぁ♡ きゃふっ♡ 怒鳴らない、でぇっ♡ あうんっ♡ 幸太くんのっ、おっきな声っ♡ あああんっ♡ ドキドキ、しゅるからっ♡ ぞくぞくしてぇ♡ 逆らえないからぁっ♡ あっあっあっあっあああんっ♡♡♡」

 

レンカは健気に姿勢を維持し、幸太のピストンを受け続けた。

ちょっと強気に命令しただけで従うのは、相変わらずだ。

犬は自分より大きな声を出すものを、自分より強者だと判断するという。

獣人のレンカにもそういう本能があるのかもしれない。

なんにせよ屈服したなら――後は思う存分に犯すだけだった。

 

「あんっ♡ きゃうっ♡ ひゃうんっ♡ ああんっ♡ あんっあああぁぁぁっ♡」

 

幸太は腰を振りながら、片手でレンカの乳房を掴んだ。

レンカは嬉しそうに尻尾を振ると、自ら幸太の手首を掴んで、より強く押し込ませる。

 

「らめぇっ♡ おっぱい苛めないでぇっ♡」

「こいつ、自分で揉ませておいて……っ!」

 

彼女は犯されているという体裁で、より激しい刺激を欲していた。

妖女の性欲は人間男性より強い。

誘惑禁止条例で関係を制限され、欲求不満が蓄積するのは、妖女の方だ。

一度でも男の荒々しい快感を知ってしまえば、自慰なんかでは決して満足できない。

 

「ほら、こうか!? ここ弱かったよな!?」

「あ゙あ゙あ゙っ♡♡♡ そこっ♡ ごりごり擦りながら子宮突いちゃだめなのぉっ♡♡♡」

 

だから、犯されてでも欲しいのだ。好きな人からの肉体的な愛が。

むしろ犯すような強い刺激を受けたとき、妖女の性感がいかにマゾ向きなのかを思い知る。

 

「きゃふぅっ♡ 幸太くぅんっ♡ だめだよぉ♡ そんな、力尽くで、イかせ続けないでっ♡

 幸太くんのことっ♡ かっこよく見えちゃうっ♡ すごい人だって思っちゃうからぁっ♡

 んおっ♡ おっ♡ いぐっ♡ またっ♡ イグのぉっ♡ んおおおぉぉぉっっっ♡♡♡」

 

レンカが絶頂して膣内を痙攣させる度に、幸太の肉棒に得も言われぬ快感が伝わる。

 

「っぐ!」

「きゃふぅぅぅぅぅぅっ♡♡♡」

 

どぴゅ! と我慢できずに炸裂する射精感。

レンカの子宮口にぴったり押し付けて放った精子は、彼女に目を虚ろにするほどのオーガズムをもたらした。

 

「はひゅう♡ はぁぁぁ……♡」

 

レンカは幸せそうな表情を浮かべている。

絶頂の余韻に浸っているようだ。

幸太はレンカに覆い被さったまま、彼女の胸を枕にして息を整えた。

 

「レンカ……」

「ふぁい?」

「まだ……薬、効いてるよな?」

「っ♡」

 

一発で終わらせたくないという、幸太の求めを聞いて、レンカは頬を染める。

自分の体はきっと、一度目よりも激しい快感に襲われるだろうと、分かっていながら。

 

「うん……♡」

 

幸太の背中に腕を回して、こくりと頷くのだった。

 

 

 

 

日が沈みきり、月が昇る。

秋の訪れを感じさせる満月が、部屋の窓から室内に差し込み、交わる男女の影を床に描く。

月を背景にオオカミが遠吠えでもするかのように、四つん這いのレンカが喉を反らしていた。

 

 

 

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「きゃふっ♡ あっあっあっあっ♡ んおふっ♡ おおっ♡ おっおっおっおっ♡」

 

夕食からどのくらいの時間が経っただろうか。

延々と絶頂させられたレンカは、もはや人語を失った獣のように、ただ喘いでいる。

 

「くはっ。まだ、もっと、イかせてやる……っ!」

 

幸太はレンカの腰を掴み、背後から乱暴に打ち付けていた。

パチンッ! パァンッ! と音を立てると、レンカの尻尾が激しく振られて幸太の腹筋を叩く。

両手をベッドに突いたレンカが突かれる度に、リズミカルに巨乳が揺れる。

 

「はっ、はっ、はっ!」

「おほっ♡ あひぃっ♡ きゅぅぅぅぅっ♡ んおぉぉぉっ♡」

 

どちらも獣だった。

一心不乱に快感を追及し、それ以外の全てを忘れたような、一対の性獣だった。

無我夢中になった若い男女などそんなものだろうが、燃え尽きるまでが長すぎる。

妖女は人間女性よりも体力自慢だし、妖魔界食材を振る舞われ続けた幸太の体も底無しだ。

 

「あへぇ♡ あひぅ♡ はふっ♡ はふっ♡」

 

幸太が息を吐くと、レンカは顔の前に腕を交差させて、ベッドに突っ伏す。

やがてレンカの方から、続きを催促するように、自分から尻を幸太の腰へ打っていく。

経緯こそレイプだったが、そうするように仕向けたのがレンカならば、さもありなんという光景だ。

 

「ったく、意識もほとんど無いくせにっ、自分から腰を振りやがって!」

 

幸太はこらえ性のないメス犬の尻を叩きながら、少し角度を変えてピストンを再開。

 

「んあああぁぁぁっ♡ おっおっおおおぉぉぉっ♡」

 

レンカがまた猛獣のように悦びの声を上げる。

近所迷惑もいいところ――ということはない。

防音が効いているのもあるが、それ以上に、この時代では男女のまぐわう声など、野良犬や野良猫の声も同然だ。夜になればどこからでも聞こえる。

むしろどこかが騒がしくなると、他の家々でも事が始まる。

同じ町に住んでいる犬の遠吠えが、連鎖するように。

誰が最初の声を上げたのかなんて、誰も気にしない。

どうせどの声も、夜遅くまで鳴り続けるのだから。

 

「うわ……もう、こんな時間かぁ」

 

精根尽き果て、ベッドに倒れた幸太は、時計を見て呆れかえる。

隣ではレンカが、幸せそうに寝息を立てている。寝たふりではない。

 

「掃除と……学校の課題も、やっとかないと……」

 

ふらふらとベッドから抜け出して、幸太は今日の予定を片付ける。

 

「まったく、なにが『睡眠が浅い』だ。元凶め」

 

幸太はレンカにそう言い残して、水を飲むためキッチンに向かう。

キッチンの棚には……一度も開封されていない睡眠薬の箱が、どっさり積み重ねられていた。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

狸寝入りとは別の寝たふり誘惑でした。
セオリーを考えるなら同い年の幼馴染を先に出すべきだったかな?
次回はお姉さんが登場します。

また、語脱字報告をくださった方々、いつもお世話になっております。


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第三話 わざわざ俺の家で酔いつぶれる近所のお姉さん・ターニャ (挿絵あり)

 

 

 

近所の根室さんの家には、三人の奥さんと、それぞれ三人の娘さんがいる。

末っ子はリナ、次女はレンカ、そして一番のお姉さんが――

 

「もーやだぁぁぁ~~~働きたくないよぉぉぉ~~~」

 

いい年の大人なのに、学生の幸太の前で酔いつぶれている彼女、ターニャだ。

 

「よしよし、今日もお疲れ様。ニャー姉さん」

 

つまみになりそうな菓子を出してやりつつ、幸太はターニャを労う。

ターニャは新卒二年目くらいの社会人であり、人間界様式のレディーススーツを着ている。

異母妹のリナやレンカと同じく獣人系の妖女で、彼女たちとは毛色が違うが、獣耳と尾がある。

 

体付きは、流石はあの姉妹の長姉というべきか、非常に肉感的だ。

頭よりも重いのではないかというKカップの爆乳が、オーダーメイドシャツのボタンに負荷を掛けている。

なのに腰や脚は引き締まっていて、お尻はタイトスカートがはち切れそうな安産型。

思春期の男児が妄想する女の身体を、更に凌駕するような肉体だった。

 

こんなOLが街を歩いていたらどうなるだろうか?

どうもならない。二十代の妖女ならこんなものだ。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ううっ、ぐすんっ。(こう)くんが優しいよぉ。

 コンクリートジャングルのビル風に晒されてきた心にDKの気遣いが沁みるよぉ~」

 

キッチンテーブルから顔を上げたターニャは、椅子に座ったまま、隣に立った幸太に抱き付く。

柔らかく巨大な乳房を下腹部に感じるが、シャツを染める涙と鼻水もちょっと無視できない。

 

「はいはい、今日はどうしたの? 頭の禿げたメタボリック課長にセクハラでもされたの?」

「うちの課長はむしろされる側だよ? 私はしないけど、若い妖女が多いから」

「どんな光景なのか想像しにくい……」

 

自分くらいの少年が、大人の妖女さんにかわれるという形でのセクハラなら、実体験から分かる。

最近は男の子相手でも「それセクハラですよ」と怒られる時代だが、中年男性が職場で受けるセクハラとなるとイメージが湧かない。

 

「『やだー、課長ってば頭すべすべー♪ 触ってもいいですかー?』とか、

 『もー課長ぉー? そんなに大きなお腹を揺らしたら目のやり場に困りますよー♡』とか、

 『課長ってもう40過ぎなのに独身なんですかぁ!? なんで? ねぇなんで?』とか?」

「課長に謝れ。きっと泣いてるぞ」

 

そんなメスガキみたいなOLがいる職場の上司にはなりたくない。

 

「たぶん褒めてるつもりなんだろうけどねー。

 妖魔界で育った子は日本に来るとそのあたりの機微が掴めてないのよ」

 

ターニャは幸太の腰から手を離すと、自分の隣の席をぽんぽんと軽く手で叩く。

隣に座れと言わんばかりの態度も、セクハラに該当しそうであるが、幸太はやれやれと従った。

 

「さっきの、褒めてるのか?」

「『ハゲなんて気にしないでっ、私それタイプだから!』

 『お腹の出てるおじさまって、むちむち感あってエロい!』

 『独身なの!? え、待って? 私にもチャンスあるってこと!?』っていう意味だよ?」

「あー……」

 

男不足な妖女たちからすると、中年太りしたハゲでも魅力的らしい。

話には聞いていたが、妖女たちの守備範囲は、ボール球を許さないほど広いのだ。

 

「そんなことより聞いてよ幸くぅんっ!」

 

と、腕を抱いてきたターニャが、こちらの肩に頭を乗せる。

男性に甘えきった美女の上目遣いと、吐息に混じる酒の匂いに、幸太の心臓が高鳴った。

息苦しくなったのかシャツのボタンを外しており、それはもう豊満な胸が作る深い谷間と、紫色のブラの片隅まで見えていた。

絶対にわざとだ――とは言い切れないのが、ターニャお姉さんの困るところだ。

 

「はいはい、課長が問題じゃないなら何に困ってるの?」

「お局様(つぼねさま)だよ!」

 

若い子にはあまり聞き慣れない言葉だが、威張り散らす古株の女性みたいな意味だろう。

 

「厳しい人なの? 妖女さんは人間女性より縦社会だって言うけど」

「お局様は人間女性(ウーマン)なの……」

 

ターニャは陰鬱な溜息を吐いた。

相変わらず喜怒哀楽の落差が激しい人だ。

 

「どんな人?」

「更年期の独身」

「もっと他のところから説明してあげようよ」

 

更年期というと四十代半ばから始まるらしい。

なんというか……いやいや、決して哀れむようなことじゃない。

 

「っていうのも、なんか最近になって旦那さんと離婚したみたいで……」

「それで荒れてるの?」

「うん。旦那さん、どっかの妖女さんに寝取られてたみたい。隠し子が発覚してそのまま――」

 

うわぁ……と、苦笑いさせられた。

妖女たちが人間界に来てから多発している事案だ。想像に難しいことでもない。

 

「もしかして、それでターニャさんに当たってきたり?」

「そう! 割と露骨に! 私の昇進が決まってからはもうひどいんだよっ!?

 指導が必要なのは分かるけど、あれ絶対に私怨が入ってるもんっ!」

 

腕をぶんぶん振って喚いた後、手元のグラスを一気に煽るターニャ。

 

「二年目で昇進なんてすごいね」

「私がすごいんじゃなくて、魔力式AIが優秀なだけなんだけどね」

 

妖魔界の魔法使いと、人間界の科学者が開発したものだ。

動力が魔力なので人間には使い難いが、あれば一台のPCが旧時代のスパコンに迫るという。

妖女とはそれを使える人材であるため、どこでも重宝されるのだ。

 

「そしたらもうっ! 同期や先輩の人女(ウーマン)から風当たりがびゅーびゅー吹いてまいりまして! 自分が一日かけて作るような資料を一時間で作る私に、いつしか悪徳業者を見る目を集めてきましてぇっ! えぐっ、えぐっ!」

「よしよし、そうなるまでは仲良しだったんだね」

 

ターニャに肩を貸してやると、泣き上戸なお姉さんが鎖骨部に頬ずりしてきた。

 

「みゃふぅ♡ 幸くんの胸板、癒やされるよぉ……」

「それはなにより。こんな胸でよければいくらでもどうぞ」

「天使だぁぁぁ」

 

獣人系であるターニャの耳と尾は犬系なのだが、こうしていると懐いた猫のようだ。

肩越しに見下ろした尻では、獣人用のスカートから伸びた尾がばたばたと振られている。

頬ずりされると豊満な胸も押し付けられるので、少し股間が危うい。

 

「や、やっぱり、同じ女性でも妖女さんと人間さんで、たまに溝があるんだな」

 

悩み相談をしているときに勃起は気まずいので、幸太はそう尋ねた。

 

「んー、まあねー。学生さんのときほど露骨じゃないけど……」

 

いまこの世界の女性は、同じ女性でも妖魔界か人間界かで分けられる。

分けざるを得ないほど有為な差が、厳然と存在する。

 

まず妖女の見た目は美しい。

体も豊満で、体力も人間の女性より明らかにある。

外面も中身も、分かりやすく別物だ。

子供の頃なら駆けっこで勝てない程度で済むが、思春期に入って容姿の美醜を意識し始めると話は変わる。

まるで自然淘汰による進化の道筋で、人類よりも先駆けているように、妖女は強く美しい。

それと自分を比較したりされたりする女との間に、どんな壁ができるか、察するに余りある。

 

「いわゆる『人キャ』と『妖キャ』の違いってやつか……」

 

陰キャではなく『ニンキャ』、陽キャではなく『妖キャ』、昨今の俗語である。

いつの世も、人は集団になれば、あっちとこっちで分けたがるものらしい。

 

「単なる性格の違いならいいんだけどねー。妖女と人女の違いって、大人になると収入にまで表れてくるから」

 

ターニャは少しアンニュイな表情で、摘まみを口に運んだ。

 

魔力AIのように、妖女には普通の人間よりできることが多い。

一日仕事を一時間でこなす人材を、一日かかる方と同じ待遇にするわけにはいかない。

会社によっては、朝からずっと働く人間女性を尻目に、子育ての合間に立ち寄った妖女が小一時間だけ働いて、同じかそれ以上の給与を受け取るそうだ。ズルではなく、純然たる仕事量の差で。

もし自分が人間女性に生まれていたら、きっと妖女への妬み僻みは尽きなかった。

 

とはいえ、いま自分のすべきことは、顔も名も知らぬ人女への同情ではないーー

 

「やれ上の男たちは妖女をひいきにしているですとか? 美人が多い方が得だから雇ってるんですとか? 男への不満と見せかけた妬み僻み、ぜーんぶ聞こえてるんですからっ」

 

ストレスが溜まってしまっているターニャの相手をしてやることだ。

 

「嫉妬なんて珍しい感情でもないんだから言えばいいのに、なんで私に言わずに、その場にいない男の人を悪く言って悪感情を着せるかなぁ? 人間女性さんのそこだけはわけわかんないよっ」

 

ぷくーっと頬を膨らませるターニャ。

彼女の一家は妖魔界から移住してきた。妹たちは小さかったので、人間界の常識で育ったものの、長姉のターニャは生まれ育った妖魔界の感覚を保っているらしい。

つまり、男性を守るべき強者と自負するのが『妖キャ』で、男性に守られるべき弱者と自認するのが『人キャ』だ。

このカルチャーギャップが、しばしば両者の間に溝を掘る。

男を守り尊ぶことを誇りとする妖女から見れば、男に守られて当然と思っている人間女性は、少し情けなくも感じるそうだ。

ましてや、『異性のせいにしながらうだうだ言うだけ』という手合いには白い目を惜しまない。こちらに関しては、人間界でも妖魔界でも、男女を問わずだろう。

 

「よしよし、僕たち男のために怒ってくれてありがとうね。無理しないでね」

「ふみゅぅ~」

 

よりかかってきたターニャの肩を抱きつつ、獣耳の根元あたりをなでてやる。

心地よさそうな声を上げて、ターニャの表情から険しさが抜けていった。

 

「妹さんたちに格好悪いところを見せないために、僕の家に来てくれたんだね。

 明日に響かない程度なら、いくらでも飲んでいってね」

「安酒が美酒になるような優しさだよぅ」

 

ターニャは涙しながら、チューハイのプルタブを開けるのだった。

 

 

 

 

やがて、ターニャは酔いつぶれてしまった。

 

「くぴー……ぷしゅー……」

 

テーブルに突っ伏して、腕を枕に寝息を立てている。

間抜けな顔の口元から涎が垂れており、シャツに包まれた爆乳がテーブルの縁から虚空へと垂れ下がっていた。

 

「まったくもう。大学を卒業して、やっと帰ってきたと思ったら、これだもんなぁ」

 

幸太は空き缶を片付けて、ターニャの寝顔を覗き込み……薄く笑った。

 

「覚えてる? 俺が子供の頃のこと……」

「んみゅぅ……」

 

眠っている……らしい。

そこは追及せず、幸太は続けた。

 

「ニャー姉さんが、まだ子供だった俺を『誘惑』して襲ったこと」

「……っ」

 

ターニャには幼い頃からお姉ちゃんとして面倒を見てもらってきた。

そんな彼女と『おねショタ』をしたのは、何歳の頃だったか。

自分に『女』を教えたのは、ここにいる彼女だった。

 

「最初は怖かったけど、気持ちいいこと、たくさん教えてくれたよね?」

「ん……っ♡」

 

ターニャの肩を軽く撫でると、彼女はぴくっと震えた後、何も言わない。

幸太は両肩を軽く揉む程度に手を動かし、触れる範囲を両肩から鎖骨や背中側へと広げていく。

 

「女が気持ちよくなる触り方や、舐め方や、腰の動かし方……」

「ふぅ……っ♡ ん……ぁっ♡」

 

椅子に座ってうつ伏せになるターニャの背後から、幸太は首回りを愛撫する。

その前後左右に動いていた手はやがて、動く範囲を乳房の側へと偏らせていった。

 

「まだランドセルを背負ってた俺に、現役JKの体をたっぷりと覚え込ませてさぁ」

「っっっ♡」

 

幸太の胸が、とうとうターニャの爆乳を下から持ち上げた。

ずっしりと、2リットルのペットボトルくらいに重たいが、指に溶け込むように柔らかい感触。

リナやレンカも大きかったが、手の平の横から流れ落ちてしまいそうなこれは、圧巻だ。

 

「このおっぱいに包まれるのが、あの頃の俺の生き甲斐だったんだよ?」

「っ♡ ……っ♡」

 

ターニャは幸太の声や手に反応しながらも、声を殺していた。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なのに大学に進学して、居なくなっちゃって。俺が泣いて嫌がったの、忘れてないよね?」

「……ふぅっ♡ ……んんっ♡ ……ぁ、はぁ……っ♡」

 

幸太からは見えないが、うつ伏せになったターニャの口から、堪えきれない官能の声が出ていた。

乳房を揉む手は、当初は服だけ撫でる程度だったものが、徐々に内部の柔肉を掴んでいく。

最初は薄い愛撫で焦らして、少しずつ深めていき、段階的に女のボルテージを上げる手付きだ。

 

「なのに、何食わぬ顔で帰ってきたと思ったら、こんな無防備に酔いつぶれて……」

「ん……ぁ……あ……っ♡ はぁ……っ……はぅ……っ♡」

 

大学を卒業したターニャが地元企業に就職して帰ってきたのが、今年のこと。

お互い、昔のことには触れずに接してきたが……今日、ターニャは一人だけで風間家に来た。

 

「犯されても、文句言えないよね?」

「…………っ♡」

 

獣人の聴覚は、たとえ眠っていても幸太の声を拾うはずだった。

それでも、ターニャに起きる気配はない。

軽い痛みが走る程度には胸を揉まれているのに、バレバレの寝たふりを決め込んでいる。

背後の男が『犯す』とまで口にしているのに。

 

つまり、そういうことだと――

 

「んぁっ♡」

 

幸太の手が、不意にターニャの爆乳を握り込む。

指が食い込み、シャツに皺が刻まれ、内部のブラが軋んだ。

音を立ててボタンが飛び、シャツの中でブラのフロントホックが外れる。

シャツの下で窮屈そうにしていた巨乳が、ぶるんっと解放され、重力に従って垂れ落ちた。

 

「ふぅっ♡ ふぅぅ……っ♡」

 

ターニャは荒い吐息を鳴らしながら、姿勢を変えない。

ただ、尻尾だけは、褒めてもらった犬のように、嬉しそうに振られている。

その背中は明らかに、更なる愛撫を待ち望んでいた。

 

「っ!」

 

幸太は噛み殺すような笑みを浮かべながら、両手を動かす。

右手は乳房全体を鷲掴みにして乱暴な愛撫を。

左手は先端を摘まんでコリコリと弄り始めた。

 

「ひゃぅっ♡ んんっ♡ んんんん~……っ♡」

 

ビクンッと震えるターニャ、椅子とテーブルが小さく軋む音を立てる。

幸太は両手を皿のように広げ、ターニャの胸を乗せると、手の平で乳首を擦るようにして上下に揺らす。

たぷたぷたぷたぷっ! と波打つように、ターニャの乳房が手中で踊った。

 

「ふぁぁぁっ♡ あっ♡ あんっ♡ んんっっっ♡」

 

ターニャの声がダイニングに響く。

日頃から体に負担を掛ける乳房が持ち上げられたことによる浮遊感、それと同時に行われる様々な愛撫、体に回ったアルコール。

腕で顔を隠したターニャの口から、一筋の涎が腿へと落ちる。

 

「感じ方、変わってないね。ほら、そろそろイキそうでしょ?」

 

幸太は呟きつつ、ターニャの獣耳を甘噛みして、手の平による両乳首への摩擦を加速させた。

 

「んんんんっっあああぁぁっっ♡」

 

びくんっ!! とターニャの体が震える。

立ち上ってくる香りは、スカートの中で溢れた愛液の香りだ。

 

「イッちゃった?」

「っ♡ はぁっ♡ はぁーっ♡ はぁ……っ♡」

 

ターニャは答えない。

だが、その体は絶頂直後特有の脱力を見せていた。

 

「ほら、起きて」

 

幸太はターニャの肩を掴んで、テーブルに伏せていた上半身を起こす。

 

「あ……っ」

 

ターニャの声が困惑気味なのは、起こされては、『寝たふり』が続けられなくなるからだ。

しかし起き上がらせたことで、開いたワイシャツから零れる爆乳が視認できる。

 

「こ、幸太くん……」

 

ターニャは、胸で達したことを恥じるように、服の前を閉じる。

そして少し目を泳がせると、艶然とした笑みで幸太を振り返った。

 

「お姉ちゃんに……なにか、した?」

 

されたと分かりきっているのに、そんなことを聞かれれば、

 

「ん? なにもしてないよ? ターニャさんが寄って自分で脱いだんだよ? 胸が窮屈だって」

 

幸太もまた、白々しい嘘を返した。

 

「本当ぉ?」

 

ターニャはジト目で睨んできたが、すぐに笑みに変わる。

 

――ターニャは、なにもされていないふりをした。

――幸太も、なにもしていないふりをした。

事を問題化しないことで、『ここで止める』という空気の発生を防ぐために。

 

「きっと飲み過ぎたんだよ。俺の部屋、使っていいから、もう休みなよ」

「っ、うん……♡」

 

続きは部屋で――という提案に、ターニャは頬を染めて立ち上がる。

しかし、酔いのせいか絶頂のせいか、少し足下がおぼつかない。

 

「ほら、掴まって」

「はぁい♡」

 

幸太が腕を差し出すと、ターニャは嬉しそうに腕を抱いた。

ボタンが留められていないシャツから零れかけた胸が、幸太の腕を包む。

 

「幸太くん……その……お姉ちゃんね?」

「ん?」

 

荒い呼吸と共に、酔った妖女がこちらを見上げてくる。

 

「お姉ちゃん……お酒を飲むと、その……記憶、飛んじゃうの♡」

 

寝室に向けて歩きながら、ターニャが幸太の肩に頭を乗せる。

 

「翌朝になると……なーんにも、覚えてなかったりするの♡」

「へぇ……」

 

淫靡な輝きを宿した両眼が幸太を見上げ、嗜虐的な色を宿した目がターニャを見下ろす。

 

「だから、ね?」

 

ターニャは自らの言葉で、『襲われても仕方ない状況』に、自分の身を運ぼうとしていた。

 

「……いけないことしちゃ、ダメだよ?」

 

釘を刺すような確認は、その実、意味が完全に逆だった。

既に二人は部屋の前、幸太は扉を開きながら、ターニャに答える。

 

「――当たり前だろ?」

 

 

 

 

ターニャと関係を持っていた頃は、彼女以外の女に興味がなかった。

それが離れ離れになり、入れ替わるように次女のレンカとセックスするようになって、ターニャ以外の女性を経験した。

セックスというのは奥深いもので、同じ手順でも女性によって反応が異なり、その女性ごとが好む『楽譜』のようなものがある。

同じ楽譜でも、ある女性は大喜びでも、別の女性は反応が鈍いこともある。

ある女性が好むセックスを他の女にしてみたら、その女性よりも激しく乱れることもある。

そういう、ターニャと会えなかった間に蓄えた『経験値』を、幸太は彼女の体に叩き込んだ。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ふぁっ♡ はぁっ♡ あっ♡ あっ♡ はぁぁっ♡」

 

パンッ! パァン! という音を立て、幸太の腰とターニャの尻肉がぶつかり合う。

薄暗い寝室の床には、ターニャから剥ぎ取られたスーツの上下やシャツが落ちている。

縁にブラの引っ掛かったベッドの上、膝立ちになったターニャは、幸太の手付きと腰使いに乱れ狂っていた。

 

「あああぁぁぁっ♡ すごっ、すごいぃぃぃっ♡ 幸太くんのっ、前より、ずっと、おっきく♡ んぁぁぁぁっ♡」

 

ずぶぶっ、と勢いよく膣内を突き上げられ、ターニャは喜悦の声を上げる。

同時に、幸太が手を伸ばした爆乳の先端では乳首が硬く尖り、指先で摘まれる度に歓喜に打ち震えていた。

 

「あぁぁっ♡ はぁぁぁん♡ だめ、そこぉ♡ いま、敏感――ひぁぁぁぁっ♡♡♡」

 

くにくにっと指先で素早く抓りつつ、亀頭で子宮口を擦ると、ターニャは絶頂に打ち震えた。

豊満すぎる乳房を中心に、全身が痙攣する。

 

「またイッたの?」

「イッ、イッてる♡ イッてる、からぁ♡ 休ませ、てぇ……♡」

 

幸太を振り返ったターニャの顔は、度重なる絶頂で目が虚ろになり、口元が涎で濡れている。

獣人が舌を出して荒い呼吸を繰り返す姿は、走りすぎた犬のようだ。

 

「だらしないなぁ。昔は俺の方が搾られてたのに」

 

おねショタをしていた頃に触れながら、ターニャの体を反して仰向けにする。

 

「だ、だって……幸くん、こんなに男らしくなってるんだもん……♡」

 

ターニャは谷間に挟んだ手を口元に添えながら、幸太を見上げる。

 

「前は、私が押し倒せるくらいだったのに……ほんの数年で……もう、びくともしないくらい逞しくなって……はぅぅ♡」

 

可愛い弟のようだった幸太がオスとして成長した姿に、ターニャが身を縮ませた。

いじらしい様子に耐えかねて、幸太は彼女の乳房に両手を伸ばす。

 

「そうだよ。お姉ちゃんに仕返しするために、いろいろ頑張ったんだ」

「ひぁうっ♡ ごめん、なさいっ♡ あの時は、幸くんが可愛すぎてっ♡」

 

ターニャはおねショタ時代の事を詫びながら、自分の胸に食い込んでいく幸太の指を見て、背筋を震わせている。

 

「それは別にいいんだよ。むしろ男に目覚めさせてくれて感謝しているから」

 

幸太に女を教えたのはターニャだった。

女の感触を味わわせ、絶頂に導くための基本を実践させ、腰を振る悦楽を学ばせた。

幼いながらも必死に腰を振る自分を、喘ぎつつも余裕のある顔で受け止めていた彼女を、よく覚えている。

あの頃は、ターニャの言いなりになって、精気を搾られていた。

体もナニも大きくなかったので、主導権は取れず、自分の上で腰を振るターニャを見上げるばかりだった。

 

「でも……」

 

いまは違う――と、幸太はターニャの乳房から手を離し、両脚の膝を掴む。

 

「あ……っ♡」

 

足を開かせて、濡れそぼった秘所に逸物を沿えように腰を入れると、ターニャが震えた。

 

「ま、まって……まだ、休ませ、て……ひぅっ♡」

 

再び挿入されるのだと理解したターニャは、その期待感と不安感に、なにより男根に触れた陰核から走る快感に、打ち震えていた。

そんな初々しくすらあるターニャに、幸太は口角を引いて、こう告げた。

 

「――あの頃とは違うんだってこと、もっと思い知らせてやらないとね」

 

陰唇を解すように亀頭を擦っていたところから――不意の挿入。

ちゅぷん! と滑るような感触と共に、幸太の分身はたやすくターニャの奥地に再突入した。

 

「んきゅぅぅぅっ♡♡♡」

 

ずっぷりと根元まで突き入れられ、ターニャが目を剥いた。

 

「ほら、親指みたいだったあの頃とはサイズが違うだろ?

 入口から奥まで押し広げて、子宮口にキスできるようになったんだよ?」

 

そのままぐりゅっ、と奥地を捏ねるようにして刺激すると、彼女は膣肉を引き締め、子宮口をきつく窄める。

 

「あぁぁっ♡ おっきい♡ 体位が、変わったら、別物みたいに――んぁぁぁっ♡♡♡」

 

それほど動かしていないのに、些細な身じろぎだけで、ターニャは細かく達している。

その身じろぎも、内側から膣を圧迫される快感に身もだえた、ターニャ自身の動きだ。

 

「ニャー姉はエッチだなぁ。自分から腰をくねらせて」

「だってぇ♡ 奥にっ、当たると、勝手にぃ♡ ふあぁぁっ♡」

 

びくびくっと震えたターニャが、背中を反らして硬直する。

 

「またイッたの?」

「イったのぉ♡ 幸くんの、すごく立派になっててっ♡ お姉ちゃんの体、びっくりしてるのぉ♡ んんんっ♡ 幸くんお願い、少し抜いてぇ♡ 奥に、当たらないところまでで、いいからぁ」

 

ポルチオに亀頭が接触しているだけで、ターニャは正気を保てない様子だ。

幸太の背筋を、ぞくりとした優越感が駆け上がる。

おねショタ時代は、ターニャの方が『上』だった。

しかしいまは逆だ。

主導権を握られっぱなしだった頃と違って、ターニャは自分の肉棒と指先に翻弄されるばかり。

あの頃は勝てなかった女に対して、完全に優位に立っている。

そんな昏い悦びが、自然と腰を暴れさせた。

 

「ひあっ♡ だめそれっ♡ ダメだからっ♡ お腹っ、ぐちゃぐちゃに、掻き回さないでぇっ♡」

 

絶頂で敏感になった内壁を容赦なく擦られて、ターニャは悶絶した。

首を左右に振り、体は跳ね上がり、髪と爆乳が振り乱される。

 

「まだだよ、思い知らせてやるって言っただろっ?」

 

幸太はターニャの膝を押さえて足を開かせ、斜め上から落とすように突き入れた。

どぢゅん!!

 

「――――ッッッ♡♡♡」

 

ターニャの口から、声にならない悲鳴が漏れた。

腰を叩きつけた瞬間、彼女の全身が大きく痙攣し、結合部から潮を吹き出す。

 

「ひぎゅっ♡ あひゅっ♡ 幸、くぅんっ♡ あああぁぁぁ許してぇっ♡ 負け、だからぁ♡ んぁぁっ♡ お姉ちゃんっ、降参だからぁっ♡ 幸くんがっ、男らしくなったのっ♡ ぁぁぁあああっ♡ もう、思い知ってるからぁ♡」

 

賞賛混じりの声で懇願されても、幸太の腰は止まらない。

むしろ勢いを増しながら、ターニャを犯し続ける。

 

「すごいっ♡ あひっ♡ すごいのぉっ♡ んおっ♡ 幸くんのセックスっ♡ 女をっ、屈服させるのになってるっ♡ あっあっあっ♡ 勝て、ないぃぃ♡ もう昔みたいに、襲えないっ♡ あ゙あ゙あ゙っ♡ 襲われちゃうっ♡ 幸くんにぃ♡ 犯されちゃってるぅぅぅっ♡」

 

ターニャは口を半開きにして、目を爛々と光らせながら、絶頂を繰り返す。

小さくて可愛らしかった弟分とのセックスを知っているだけに、男らしく育って荒々しくイかされる快感が際立っているようだ。

その顔をもっと見たくて、自分の成長を感じたくて、幸太は乳首とクリトリスにも手を伸ばす。

 

「んおおぉっ♡」

 

左手で勃起した乳首をこね回し、右手で膨らんだ陰核を摘むと、ターニャが仰け反った。

 

「おぉぉっ♡ いまそこだめっ♡ あああぁぁぁおかしくなるっ♡ 幸くんっ♡ すっごく上手になってりゅっ♡ あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ イクイクイっちゃうのぉぉぉっ♡♡♡」

 

これまで以上に膣内が激しく収縮し、子宮口が強く窄まる。

膣肉全体が痙攣するように震え、射精を懇願するように肉竿へと絡みついてくる。

まだだ、まだ射精したくないと、尻に力を込めて耐えた。

 

「んんっ♡」

 

腰を止めて、ターニャにキスをする。

 

「ちゅぷっ……んふっ♡ ふぁぁっ♡」

 

舌を差し入れると、彼女はすぐに吸い付いてきた。

 

「んれぇっ♡ 幸くん♡ キスまで、雄々しくなってる♡ んぐっ♡ んんんっ♡」

 

片手でうなじを掴んで、貪るようにターニャの口内を味わった。

鋭敏になった妖女の性感は口内すら敏感にしており、ターニャがキスで小刻みに達していることが伝わってくる。

 

「ターニャ」

「っっっ♡」

 

口を離して、耳元で名前を呼ぶと、ターニャの全身が震えた。

 

「幸、くん……♡ いま、名前……だめぇ♡ いまそれは、だめぇ♡」

 

ニャー姉なんて子供っぽい呼び方はもうしない。

 

「俺の女に、なってくれる?」

「……♡」

 

返事はない。

しかしターニャは、強く抱きついてきた。

そして、自分から唇を重ねてくる。

 

「んっ♡」

 

幸太は応えながら、ターニャの爆乳を揉みしだいた。

 

「~~~っっっ♡ ぷはっ」

 

口を離すと、ターニャは蕩けた顔で腕を伸ばし、幸太の首を抱いて――

 

「……『なれ』って、言って?」

 

もっと強引に奪って欲しいと、嗜虐心を煽るように微笑んだ。

そんなターニャに――幸太は行動で答えた。

 

「んぉぉぁぁあああっ♡」

 

両手首を掴んで押さえ込み、腰を上から突き落とすことで。

 

「なれっ! ターニャ! 俺のものになれっ!」

 

どぢゅん! どぢゅん!! どぢゅん!! と、膣奥を殴るような勢いでプレスを掛ける。

 

「おほっ♡ おぉおぁぁぁぁっ♡」

 

ターニャは獣のような声を上げて悶絶した。

 

「あっあっあっ♡ なりゅ♡ なりゅぅぅぅっ♡ 幸くんのっ♡ 女になるからぁっ♡ もっと♡ もっときてぇっ♡」

 

ターニャの両脚が腰に絡み付いてくる。

もっともっと深く繋がれるよう引き寄せられるまま、さらに体重を掛けて腰を叩きつける。

亀頭がポルチオを押し潰し、子宮口にめり込んだ。

 

「ひああああっ♡ そこぉ♡ 子宮まできてるよぉっ♡ あっあああっ♡ これっ♡ これなのぉ♡ 待ってたのっ♡ おっきくなった幸くんに奪われるのっ♡ ずっと待ってたのぉっ♡」

 

ターニャは胸板に押し付けられた乳房を揺さぶって誘惑してくる。

胸を広く覆う柔肉の感触が、もっと雄々しくなってほしいと促していた。

 

「っく! 出る! 出すぞっ! ターニャの中にっ!」

 

もっと長く愉しみたいが、流石に限界だった。

 

「出してっ♡ 幸太君のせーえきっ♡ 中にほしいのぉぉっ♡」

 

幸太が射精寸前であることを感じ取り、ターニャはより激しく求めてくる。

 

「くっ……!!」

 

びゅぐっ! と、陰茎が破裂したのではと錯覚する射精感。

 

「んおおおおおっ♡」

 

子宮を満たされて、ターニャは歓喜の声を上げた。

膣内の痙攣に搾られて、精液が止まらない。

 

「あぁ……♡ はぁぁっ♡」

 

ターニャは精子を注ぎ込まれる感覚に陶酔しながら、ほとんど意識を失っていた。

白い吐息、荒い呼吸で揺れる胸、頬を伝う汗、虚ろな瞳――最大限に達した妖女の姿だ。

おねショタ時代には見たことがなかった、させられなかった顔だ。

それを、させている。

自分はいま本当の意味で、この女を獲得したのだという、野性味のある喜びを覚えた。

一人前の男になったのだという実感で、胸が満たされる。

 

「ターニャ、休んだら、もう一回な?」

「あ、ひぅ♡ はぁい……♡」

 

意識を取り戻したターニャが、あまりに従順な女の顔をするものだから――あまり長くは休めなかった。

 

 

 

 

レンカの獣耳は、その声を聞いていた。

風間家の部屋は防音にも優れているが、獣人の鋭敏な聴覚は、漏れる嬌声を拾ってしまう。

異母姉のターニャが、幼馴染の幸太に抱かれる声。

甲高いそれに混ざる、幸太の声。

自分自身も聞いたことのある、女を支配下に置いたときの、男の声だ。

 

「はぁ……っ♡」

 

体が昂ぶる。

今夜、姉が幸太と二人きりになることは、レンカも知っていた。

幸太がどこまで察しているかは知らないが、ターニャ・レンカ・リナの三姉妹は、それぞれ幸太との関係を知っている。

最初は姉のターニャが関係を持ち、地元を離れた姉に代わる形でレンカが、最近は三女のリナが。

 

計画的なことだ。

 

男を体で繋ぎ止めて、囲い込む。

長女が女を教えて、同年代の次女が関係を受け継いで、マンネリ化した頃に育った三女が……

一夫多妻の『多妻』から先に作る妖女は、()()()()()()()

三姉妹は長年に渡り、幸太が他の『群』に目移りしないようにしてきた。

幼い頃はターニャが夢中にさせ、学校ではレンカが周囲を牽制、私的な時間にはリナが甘える。

幸太という男を、オスという貴重な『宝』を、しっかりと独占するために。

 

誘惑禁止条例という縛りのある人間界であっても、妖女はやはり妖女だった。

 

「…………」

 

レンカは薄く微笑むと、身支度を整えて部屋を出る。

幸太には長年、レンカお手製の精力料理を食わせてきた……姉だけでは、明日に響くだろう。

彼もそろそろ、相手が一人では物足りなくなっているかもしれない。

彼から見て、自分たち姉妹がより魅力的な選択であるために、次のステップへと進む頃合いだ。

なにより……姉や妹がしている間、自分は声だけ聞いて我慢するなんて……もう限界だった。

 

「あ……」

 

部屋を出て玄関に向かうと、ちょうど妹のリナがいた。

彼女も身支度を整えて、頬を染めている。

ターニャと幸太の声は、リナにも聞こえていたのだ。

玄関にいたということは……考えは同じということらしい。

 

「…………」

「…………」

 

レンカとリナは無言で顔を見合わせ、どちらからともなく微笑むと、

 

「行こ?」

「うん♡」

 

姉と妹は連れだって、風間家へ向かうのだった。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

投稿間隔が開いてしまって、本っ当に申し訳ありません。
AI画像生成の沼に嵌まっておりました。

お詫びにもなりませんが、前の第一話と第二話を含めて、
挿絵を追加しての投稿となります。


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第四話 『眠っている俺』に好き放題させる三姉妹 (挿絵あり)

 

 

 

柔らかい感触で、緩やかに目を覚ました。

たしか自分は……そう、ターニャを存分に抱いて、そのまま眠りに落ちたはずだ。

酷使した体には気だるさが残っているが、柔らかい感触が全身を包み、それを溶かしていく。

何の感触であるかは、よく知っていた。

女体の感触だ。

 

「んちゅ♡ れろ♡」

「ちゅぷっ♡ んっ♡」

「はぁ♡ ちゅっ♡ はふぅ♡」

 

女体の感触は三方向から、広げた両腕と伸ばした両脚を覆っていた。

とりわけ心地よい乳房の肌触りは腹部に集中しており、寝起きもあって張り詰めた逸物に、小さくて熱い何かが絡まっている。

 

うっすらと目を開くと――リナとレンカとターニャの肢体があった。

 

右側からはリナのロリ巨乳ボディが、左側からはターニャの爆乳が、下からはレンカのスレンダー巨乳が、幸太の腕や足に重なっている。

その中心で、幸太の怒張に、三姉妹の舌が張っていた。

 

「んふぅ♡ あ、お兄ちゃん起きた♡」

「ごめんね幸太くん、起こしちゃって」

「ふふ、動いちゃだめだよ?」

 

三人の妖艶な笑顔が、幸太に向けられる。

 

「な、なにして……」

 

幸太は室内を見回すが、まだ暗い。時計を見ても真夜中だ。

とりあえず寝坊したわけではないと分かって、こんな状況なのに安心してしまった。

 

「っ」

 

すると、彼女たちの唇が一斉に動いた。

まずはリナから、亀頭の先端へキスするように軽く触れ、続けて根元まで一気に呑み込む。

続いてレンカが、カリ首の下側をちろりと舐め上げると、今度はターニャが竿の裏筋をゆっくりとなぞっていく。

 

「く、あっ!」

 

気持ちいい。

三人の舌がほぼ同時に三方向から奉仕してくる。

彼女たちが熱心に口を寄せるにつれて、豊満な胸も肉棒に近付き、三姉妹の乳房に根元が包まれた。

三姉妹は乳房の海から頭だけ出した怒張に、くすぐるようにして舌先を踊らせる。

 

「はむっ……ちゅっ♡」

「れるっ♡ レロォッ♡」

「はぷっ♡ ちゅるるっ♡」

「ぐっ……あ」

 

幸太は思わず声を上げた。

激しい快楽に腰を引こうとするが、流石に三人に腕と足を押さえ込まれては抜け出せない。

 

「もう、逃げちゃだーめ♡」

 

レンカがお仕置きだとでも言うように亀頭に吸い付き、軽く歯まで立てる。

そこに歯を当てられては、大人しくせざるをえず、幸太は抵抗を諦めた。

 

「そうそう、大人しくしてね♡」

 

自分の肉棒の先に見えるレンカの顔は、目を興奮に輝かせていた。

 

「ふぁ♡ すごい、なんだかお兄ちゃん可愛い♡ いつもと逆みたい……」

 

女に押し倒されている幸太を見て、リナも色っぽい吐息をつく。

いつもは寝込みを襲われてばかりだが、今日は逆だ。それがリナには新鮮らしい。

 

「幸くん、じっとしててね♡ お姉ちゃんたちが気持ちよくしてあげるから♡」

 

ターニャも艶然と微笑みながら、鈴口を舌先でくすぐった。

 

「あ、ああ……」

 

幸太は情けない声を出してしまう。

三人の舌使いは絶妙だった。

 

「ちゅるっ♡ れろぉ♡ んはぁ♡」

「はむ♡ じゅるるっ♡ ぴちゃ♡」

「んむっ♡ はむっ♡ はふ♡」

 

三人は巧みに連携しており、舌と胸で全方位から肉棒を責め立てる。

喉奥に突き込んだときとも、膣内に挿入したときとも異なる快感に、逸物が包まれていた。

 

「お前ら、なんで……」

 

思わず問うと、レンカが軽く吸い上げてから答える。

 

「ぷはっ♡ だって幸太くん、妬かせるんだもん♡ お姉ちゃんをあんなに喘がせて……」

 

どうやらターニャとのセックスが、耳にしたレンカにも火を点けたようだ。

レンカが竿を舐め上げると、入れ替わりでリナが口を開いた。

 

「それにぃ、お兄ちゃん、悪い人なんだもん♡ 私も、お姉ちゃんたちも、みーんなにエッチなことして♡」

「ふふ♡ だからぁ、今日は幸くんに『お返し』なの♡」

 

リナに続いてターニャが答えながら、長女と三女でWパイズリを繰り広げた。

 

「いつも私たちを襲っちゃう幸くんに『お返し』して、いつもたくさん気持ちよくしてくれる『お返し』するの♡ だから、大人しく気持ちよくなっちゃって♡」

 

逆襲と返礼、それを同時に行うように、三姉妹は幸太の逸物に激しい奉仕を繰り広げる。

 

「んっ♡ ちゅっ♡ お兄ちゃんのおちん○ん、おっきくて美味しいよ♡」

「れるっ♡ ちゅるるっ♡ 幸太のおち○ぽ、ビクビク震えてる♡」

「ちゅるるっ♡ んっ♡ 幸くんの精液、早く飲ませて♡」

 

三人は一心不乱に、幸太の肉棒にしゃぶりついていた。

その様子は、まるで餌を与えられた犬のようにも見える。

 

「っぐ!」

 

寝起きで油断していたこともあり、幸太は射精感を堪えきれなかった。

 

「きゃ♡」「やんっ♡」「あんっ♡」

 

三姉妹の中心で放出される白濁液。

三人の舌が一瞬だけ離れ、三姉妹の顔や胸を汚していく。

 

「ごめん……我慢できなかった」

 

幸太が謝ると、三姉妹は顔についたザーメンを指ですくう。

 

「えへへ、よかった♡ 幸太くん、気持ちよくなってくれて♡」

「お兄ちゃんのセーシ、濃くていっぱい出てる……♡」

「幸くん、気にしないで♡ もっといっぱい気持ちよくなって♡」

 

三人は幸せそうに笑みを浮かべ、指先の精液をシロップのように舐め取っていく。

 

「でも、これじゃお前ら、誘惑……」

 

幸太は言葉を切る。

無粋なようだが、誘惑禁止条例は、妖女が男性を誘惑することを禁じている。

だから無防備な寝たふりを決め込んで、幸太に襲われているふりをしてきたのだ。

しかしこれでは、そういう言い訳ができない。

 

「いいの♡ もういいの♡ 幸太くんとエッチするのぉ♡」

 

レンカが言うと、三姉妹は身を起こし、仰向けになった幸太の視界を裸身で埋め尽くす。

彼女たちの瞳は爛々と輝いており、幸太は被捕食者の気分を味わう。

 

「ごめんねお兄ちゃん♡ もう無理、寝たふりなんかで待ってられない♡」

 

リナが慎重に不釣り合いな乳房を持ち上げ、愛液の滴る秘所に指を沿える。

 

「安心して、幸くん……これ、夢なの♡」

 

最後にターニャが、幸太に顔を近付ける。

 

「夢って……」

 

そんな無茶なと思うが、レンカやリナも姉に続いた。

 

「そう、夢なんだよ? 幸太くんはまだ寝てるの」

「うん。お兄ちゃんは、ちょっとエッチな夢を見てるだけなの……♡」

 

レンカとリナも顔を近付けてくる。

三姉妹の顔がアップになり、その目が魔力の光を宿し始めた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

――誘惑(チャーム)だ。

 

「だからぁ、幸くんは悪くないの♡」

「夢の中だから、なんでもしていいの♡」

「お兄ちゃんはぁ、私たちにしたいこと、ぜーんぶしていいんだよ♡」

 

幸太の思考が曖昧になっていく。

『誘惑』による催眠状態だ。

自白剤を飲まされたかのように、耳にした言葉に素直に応じてしまう。

 

「なん……でも……?」

 

まだ残っている思考力が、首を傾げさせた。

てっきり、逆レイプされるものだとばかり思っていた。

日頃していることを思えば当然だし、そういうのも悪くないと考えていた。

なのに――

 

「そう……なーんでも♡」

 

レンカは優しく微笑み、幸太の頬を撫でてきた。

それだけで心地よくなり、頭がぼうっとしてくる。

 

「お兄ちゃんがしたいならぁ、私もお姉ちゃんたちも、なんだってしてあげるよ♡」

 

横からリナの小柄が擦り寄ってきて、耳を舐めるように囁く。

 

「今夜は、幸くんが私たちの支配者なの♡ ご主人様なの♡」

 

さらにターニャは幸太の手を取り、自らの胸に誘導する。

柔らかく大きな膨らみが、幸太の掌を包み込んだ。

 

(こいつら……っ!)

 

三姉妹の思惑が分かってしまった。

『誘惑』で思考を麻痺させ、性欲をフルスロットルにさせて、あまつさえそんなことを言う。

 

犯させる気なのだ――普段以上に。

溺れさせる気なのだ――自分たちの体に。

風間幸太という『オス』を、三姉妹という『群』の中に囲い込むために。

自分たちの肉体を餌にして、幸太の精を搾り取ろうとしているのだ――

怖れを知らない淫靡さ、男を獣まで退化させる魔性、子種を得ることが誇りや保身より優先される欲深さ。

正しく妖女――寝たふりで襲わせるなど、彼女たちにとっては序の口だったのだ。

 

「そこまで、言うなら……っ!」

 

幸太は三姉妹の体を抱き締める。

 

「きゃ♡」「あんっ♡」「あんっ♡」

 

柔らかな肢体が腕の中で震え、甘い香りが鼻腔を満たした。

 

「幸太くん♡」「お兄ちゃん♡」「幸くぅん♡」

 

三人の腕が首や背中に絡み付いてくる。

まるで植物の魔物に蔓で絡め取られているかのようだ。

前を見れば、美人姉妹たちの、発情しきった顔に荒い呼吸。

盛りのついた雌犬そのものといった顔を見れば、遠慮はいらないと分かる。

 

「レンカ、挿れろ。騎乗位だ……っ!」

 

幸太は、ベッドの上に仰向けに寝た体勢のまま言った。

 

「うん♡ 幸太くんのおちん○ん、今すぐ欲しい♡」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

レンカは嬉しそうにはしゃぎながら、幸太の腰に跨る。

そして彼の肉棒に手を添えて、自分の秘所へと導いた。

『誘惑』によって亀頭が敏感になっているせいか、レンカの入口が愛液に濡れていることが見なくても分かる。

その証拠に、レンカが軽く腰を落とすだけで――

 

「きゅぅぅぅぅぅっ♡」

 

きゅぽん――とでも聞こえてきそうなくらい軽々と、幸太の剛直が滑り込む。

 

「うぉぉ……っ」

 

膣ヒダに四方八方から舐め回されて、幸太は思わず声を上げた。

 

「ふわぁぁぁぁ♡ おっきぃ♡ 幸太くん♡ いつもよりおっきくて硬いよぉ♡」

 

レンカも気持ちよすぎるのか、両頬を押さえながら艶っぽい声で鳴いている。

男に跨がった細い腰の向こうで、尻尾が左右にバタバタと振り乱されていた。

 

「動けっ、動いてくれっ! 思いっきりだ!」

 

幸太が腰を突き上げて催促すると、その時点でレンカは喉を反らして喘ぐ。

 

「ひゃぁぁぁん♡ 命令っ♡ されてるっ♡ おちんぽで、子宮っ、叩かれてっ♡ 命令されてりゅっ♡ 幸太くんっ♡ こわいよぉ♡」

 

怖いと言いながら、その顔は嬉しそうに紅潮しており、媚びるように尻を振り始める。

 

「んおっ♡ 腰付きっ、乱暴だよぉっ♡ ああぁぁっ♡ 私がっ♡ 上なのにぃ♡ 犯されちゃうっ♡ おっおっおっ♡」

 

幸太が下から突き上げるたびに、レンカの小さな体は跳ね上がる。

やがてレンカも腰の動きを合わせ、髪と胸を躍らせ始めた。

 

「ターニャ、おっぱい寄越せ!」

 

続いて、左腕でターニャの背中を抱き寄せる。

 

「あぁ♡ 幸太くん♡ 強引……素敵ぃ♡」

 

ターニャは嫌がりもせず、幸太の顔を豊乳で包む。

幸太はそれこそ乳房で顔でも洗うようにして、彼女の谷間に顔を擦り付け、べろべろと舐め回す。

そのまま両手で左右の爆乳を鷲掴みにし、指を食い込ませた。

 

「ああっ♡ そんな、飢えたみたいに♡ お腹すかせたワンちゃんみたいにぃ♡ やだ♡ 食べられちゃう♡ 幸くんに、おっぱい貪れちゃってるっ♡」

 

ターニャの受けている刺激は、挿入されているレンカには及ばないだろう。

しかし顔付きの、特に目の色の興奮は凄まじい。

無我夢中で自分の乳房を貪る幸太に、被虐と母性の喜びを同時に感じているようだ。

 

「はふっ♡ はふっ♡ お兄ちゃぁん♡ 私もぉ♡ なにか、なにかしてぇ♡ 構ってよぉ♡」

 

寂しそうに寄ってきたのはリナだ。

 

「当たり前だ。ほらっ」

 

そのためにフリーにしておいた右手を、リナの股間に滑り込ませる。

 

「きゃぅんっ♡」

 

クリトリスに触れると、それこそ犬のような悲鳴を上げる。

ぐちゅ――という生々しい感触。リナのそこはもう大洪水になっていた。

 

「あっあっあっ♡ きゃうぅぅぅっ♡」

 

幸太はそこを、ウォームアップするような加減もなしに、好き放題に掻き回す。

 

「いやぁっ♡ お兄ちゃんっ♡ んぁぁぁっ♡ いじめちゃだめぇっ♡ お手々でっ♡ リナのおまんこっ♡ ぐちゃぐちゃにしちゃらめなのぉっ♡」

「ダメだ。お兄ちゃんの手を気持ちよくするんだっ。ほら、腕に抱き付けっ! そのロリ巨乳で腕にご奉仕するんだ!」

 

命じると、リナは言われた通り幸太の腕に抱き付く。

腿で下腕を挟み、上腕に自分の両手を絡め、乳房は肩と首筋に乗せられた。

 

「きゅぅぅぅっん♡ ひぅぅぅっん♡」

 

そして、何かの機械のように動き続ける幸太の手淫に震え続ける。

少女への気遣いなどまるでない幸太の手付きを、涙目になって耐えているが、尻尾だけは喜びに踊っていた。

 

「あああぁぁぁっ♡ イクイクいってりゅっ♡ イってりゅのに腰とまんないよぉっ♡」

「やっ♡ 幸くんだめぇっ♡ お姉ちゃんのおっぱい溶けちゃうっ♡ ぺろぺろでイかされちゃうぅっ♡」

「んぁっあっあっあっ♡ お兄ちゃんそれぇっ♡ もっとぉ♡ お手々でもっとイかせていいのぉぉぉ♡」

 

レンカが腰を踊らせ、ターニャは幸太の頭を掻き抱き、リナは腕を抱きながら吼える。

そして三者三様に絶頂した。

 

「ふわぁぁ♡ まだイってる♡ イクの重なってりゅのぉっ♡」

「ひゃうんっ♡ 幸くんにっ♡ こんな簡単に、イカされちゃうなんてっ♡」

「おっおっおっ♡ お兄ちゃんすごいぃっ♡ 手マンしゅごいよぉぉぉっ♡」

「くおっ」

 

幸太もまた、レンカの中で果てていた。

 

「んおっ♡ おっ♡ おおおぉぉぉっ♡」

 

膣内射精を受けたレンカは、後ろ手をついて体を支えながら、喉を反らしていた。

子宮に満ちていく精液が、彼女の連続絶頂を締めくくる、最後の絶頂となる。

やがてレンカは意識を失い、騎乗位の姿勢からばったりと仰向けに倒れてしまった。

 

「あら、レンカちゃん気絶しちゃった」

「嘘……こんなに、早く……?」

 

ターニャは痙攣する妹を見て微笑み、リナは倒れた姉を見て唖然とした。

幸太は腰の突き上げだけでレンカを狂わせ、短時間でノックアウトしてしまったのだ。

『誘惑』により加減を失った幸太のセックスに、『誘惑』した妖女の方が耐えられなかった。

 

「次は、ターニャだっ」

 

もちろん、幸太の発情状態は解けていない。

彼の肉棒はまだガチガチに硬く、むしろより強く怒張している。

 

「きゃうっ♡ 幸太くぅん……ちょっと、落ち着いて……きゃんっ♡」

 

ターニャは授乳するようだった姿勢から一転、仰向けにされて足を開かされる。

 

「お、お兄ちゃん……ちょっと、こわい……♡」

 

思わず幸太の腕から離れたリナは、そう言いながらも子宮を疼かせている。

 

「リナは最後な。いい子で待ってるんだ」

「……うん♡」

 

幸太に横目を向けて命じられると、瞬く間に従順になる。

いまの幸太はまるで、三人の獣耳娘たちの飼い主だった。

 

「ほら、行くぞターニャ。ちゃんといい声で鳴けよっ!」

 

そして幸太はターニャの膝裏を両手で掴み上げ、M字開脚させた股に逸物を突き入れる。

 

「あっあっあああぁぁぁっ♡ 幸くんっ♡ そんな、オスの顔、して――きゃぅぅぅぅぅっ♡」

 

いつになく高圧的な幸太に、ターニャは両頬を押さえて恍惚としながら、膣内を埋め尽くす怒張に喘いだ。

 

「んおっ♡ おおぉぉぉっ♡ 幸くんっ♡ 激し、すぎっ♡ あああぁぁぁ♡ 無理矢理ぃ♡ イカされ、てぇっ♡ はぎゅうっ♡」

 

幸太はターニャの反応など気にせず、激しく腰を打ち付ける。

そのたびに、彼女の爆乳がたぷたぷと揺れ、ベッドが軋む。

 

「はふ♡ はふぅ♡ お兄ちゃん……すごい♡」

 

リナは犯される姉と、犯す幸太を見て、言いしれぬ興奮に駆られていた。

 

「ふおっ♡ おおぉぉっ♡ んあっ♡ あっあっあっあっあっあっ♡」

「お姉ちゃん……すごい顔……私も、いつも、あんななの……?」

 

ターニャは既に悦楽に狂わされ、妹に見られていることなど構っていられない。

末妹とはいえリナも妖女だ。その心地よさは知っている。

だが、自分が味わうのはともかく、身近な姉が絶頂している姿は初めて見る。

自分は普段、大好きな幸太とのセックスで、あんなにも淫らに吼えているのか……と。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ♡ イグッ♡ こんなっ♡ ハイペースでっ♡ んおっ♡ イかされ、たらぁっ♡ おっおっおぉぉぉっ♡」

 

幸太に腰を掴まれたターニャが、ガクガクと痙攣する。

 

「こら、まだ気絶するな! 俺がイクまで起きてろ!」

 

意識が飛びかけていたターニャの乳房を、幸太が強く握り込む。

指が深く食い込むと、ターニャの意識が痛みと快感に呼び起こされた。

 

「はひいぃぃっ♡ 痛いっ♡ おっぱい千切れちゃうっ♡ んおっ♡ おおぉぉっ♡」

 

そして、幸太は激しいピストンを再開する。

 

「お、お兄ちゃん……しゅご♡ 後ろ姿、すごく……男、らしいよぉ……♡」

 

リナはそんな幸太の背中に恍惚としていた。

いつも『される側』だから見えない、女を抱く彼の後ろ姿に。

日々のセックスで鍛えられた筋骨が躍動して、女を屈服させている。

その逞しさに妖女の本能が刺激され、リナは自然と幸太の背中に身を寄せた。

 

「お兄ちゃんっ♡ もっと♡ もっとお姉ちゃんを犯してあげてっ♡

 分かるのっ♡ 口では嫌々してるけどっ、お姉ちゃんいますごく気持ちいいのっ♡

 このまま、死んじゃうくらいイカせ続けてあげてぇ♡」

 

あろうことかリナは、幸太がより激しく姉を犯すようにそそのかす。

 

「っ!」

 

幸太はそんなリナの、魔性めいた声に背筋を震わせた。

誘惑状態ということもあり、リナの命令も即座に実行に移してしまう。

じゅぱっ、じゅぱぁん!! と、体重を掛けて叩き付けるように、ターニャに怒張を突き入れる。

 

「んぉ――ぁ――くぁ――あ゙――っ♡♡♡」

 

ターニャはもはや嬌声すら途切れさせ、半ば意識を失ったまま絶頂を繰り返している。

 

「しゅごいっ♡ お兄ちゃん格好いいっ♡ 女を支配してるっ♡ かっこいいよぉ♡」

リナはそんな幸太の背中に乳房を押し潰し、抽送の動きに擦られることで、小刻みに達してた。

「お兄ちゃんっ♡ はやくぅ♡ 早くお姉ちゃんにびゅーって出してっ♡

 その後、私も可愛がってっ♡ お姉ちゃんみたいにっ♡ 乱暴にっ♡ 犯してぇっ♡」

「ああ、もちろんだ!」

 

幸太はリナに促されるまま腰を反らすと、込み上がってきた射精感を我慢せず吐き出す。

虚ろになっていたターニャの両眼が、見開かれた。

 

「んおおおおおぉぉぉぉぉっっっっっ♡♡♡」

 

まるでオオカミの遠吠えの如し絶叫、そして絶頂だった。

 

「きゅぅぅぅぅぅんっ♡」

 

リナは姉に釣られるように、幸太の背中に擦れる乳首で達する。

 

「ふぅ……ふぅ……ふぅぅぅ……」

 

幸太は長く息を吐くと、長い絶頂に痙攣しているターニャを手放す。

 

「リナ……っ」

「きゃうん♡」

 

勢いよく振り返り、リナを押し倒した。

 

「いいんだな!? いつもと違うぞ? 本当に、止まらないからなっ!」

 

目を爛々と光らせる幸太に、リナは震え上がった。

震えるといっても、怖れはほんの一割、後は妖女の興奮のみだ。

 

「うん♡ いい♡ いいよ? 夢だもん♡ これ、お兄ちゃんの見てる夢なんだもん♡」

 

リナは自ら幸太に両手を伸ばし、首の後ろで腕を交差させる。

 

「私、末っ子で、一番ちっちゃいけど♡ 今日はいいの♡ お兄ちゃんのものなの♡

 普段はできないこと、いーっぱいしていいの♡ お兄ちゃんの本気、体で感じたいのぉ♡」

 

幸太はそんなリナのおねだりに応え、唇を重ねた。

 

「ちゅぷ……♡ むふ……♡ れろ……♡ ん……♡」

 

舌と唾液を交換する濃厚なキス。

リナは自ら貪るように舌を伸ばし、幸太の口から掻き出した唾液で喉を鳴らす。

 

「悪い子だ……お仕置きしてやるから、四つん這いになれ」

「はぁい♡」

 

リナは幸太に言われるがまま、ベッドの上で両膝をつく。

 

「もっと尻を上げるんだっ」

「きゅぅぅぅっ♡ 尻尾ぉ♡ 引っ張っちゃらめぇ♡」

 

幸太は軽く尻を叩いてから、獣人の尻尾を掴んで、尻を上げさせる。

そして、レンカやターニャよりも小さな腰を、両手でがっちりと掴み取る。

 

「ほら、行くぞ? 犯されたがりの淫乱おまんこ、準備いいなっ!?」

「きてぇ♡ お兄ちゃんのおちんぽ来てぇ♡ いままでで一番、滅茶苦茶にしてぇ♡」

 

後に知ったことだが――

今夜、幸太を誘惑したとき、自分たちを犯させようと提案したのは、リナだったという。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「おおおぉぉぉっ♡ お゙お゙お゙お゙お゙ っ っ っ っ っ♡♡♡」

 

寝室に響き渡る、リナのものとは思えないほどの、ケダモノめいた喘ぎ声。

細い腰が両脚ごと持ち上げられ、幸太の腰が激しく前後する。

 

「んおっ♡ おにぃひゃんっ♡ いぐっ♡ ああぉっ♡ しゅごっ♡ おっおっおっおっ♡」

 

リナはもう呂律も回らず、口から舌と涎と喘ぎ声を出すばかりだ。

あどけなさの残る顔にはミスマッチな、悦楽に狂った雌の顔だった。

 

「ふぅっ、ふぅっ、ふぅぅっ!」

 

幸太は目を血走らせながら、ひたすらリナの膣奥に怒張を叩き付ける。

リナの体をモノのように扱い、自分の肉棒を扱いて射精するために使うような、身勝手なセックスだ。

完全にケダモノになっていた。

いや、この淫らな三姉妹によって、ケダモノにされていた。

 

「ふふっ、リナちゃんったら、こんな声も出ちゃうんだぁ♡」

「もう、幸くん? リナちゃんには手加減してあげて?」

 

気絶から復活したレンカとターニャも、左右から幸太に擦り寄ってくる。

 

「やらぁ♡ お姉ちゃんっ♡ 止めさせ、ないれぇっ♡ もっとっ♡ イクっ♡ イクのぉっ♡ お兄ちゃんがしゃせーするまでいっぱいイクのぉっ♡♡♡」

 

手心を求める姉たちの言葉を、リナの方が拒否していた。

 

「そうかよっ、ならたっぷり出してやるよっ!」

 

幸太にも、いまさら優しくする余裕などない。そんな思考は『誘惑』に奪われている。

誘惑は複数人で同時に掛けると効果が増すという。三姉妹に重ね掛けされた幸太は、もはや性獣としてしか振る舞えなかった。

 

「ひゃっ! んっんふぅぅっ♡ おにいひゃんっ♡ イってるっ♡ イッてるかりゃぁっ♡ あっまたイグっ♡ んおぉぉぉぉっ♡」

 

絶頂している最中でも構わず、幸太はピストン運動を続ける。

 

「ふぅっ、ふぅっ、ふぅぅっ!」

 

幸太の全身からは、汗が噴き出している。

体中が熱く、湯気が立ち上っているようだ。

 

「すごぃ、幸太くん……♡ 全身から、オスのフェロモン出てるぅ♡」

「やだ……目の前で、妹が犯されてるのに♡ 幸くんが、逞しくて♡ 頭くらくらしちゃう♡」

 

膝立ちで突く幸太の背中から脇腹が、レンカとターニャの乳房に包まれる。

左右から伸びてきた腕は腰や胸を撫でて、リナへの射精を促すように興奮を煽った。

 

「いいよ♡ 出して幸太くん♡ リナにも種付けしてあげて♡ 私たちみーんな、幸くんの赤ちゃん欲しいの♡」

「ええ♡ もう私たちは幸くんのものだから♡ 幸くんのエッチな気持ちは、全部私たちのものなんだからっ♡」

 

レンカとターニャは、魔性の言葉を耳にまで流し込み、幸太の倫理観を壊していく。

自分たちの肢体を餌で釣り、快感という毒を食わせ、生殖能力を絞り出させる――

それどころか『誘惑』という魔法まで用いて、姉妹全員で一人の男を虜にする。

いまの彼女たちは、幼馴染の幸太が見て来た日々のどれよりも、妖女だった。

 

「っぐ、あ!」

 

やがて訪れた限界に抗わず、リナの子宮に解き放つ。

 

「きゃうぅぅぅっ♡♡♡ お兄ちゃんのおせーしっ♡ あちゅいのぉぉぉっ♡」

 

ベッドに顔を埋めながら、リナは激しい痙攣と共に、歓喜の声を上げて気絶した。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

 

一心不乱に交尾していた幸太の意識が、少しだけ正気を取り戻す。

 

(俺……なにを……なんて、ことを……)

 

リナを本気で犯してしまったという罪悪感――しかしそれは、長続きしなかった。

 

「幸太くん……まだ、できる?」

「幸くぅん……お姉ちゃん、もう一回、したいな♡」

 

振り返れば、レンカとターニャが、並んで四つん這いになっていた。

 

「…………」

 

文字通り尻尾を振って媚びる姉妹に、幸太は取り戻し掛けた正気を、また手放した。

『誘惑』の効果は切れかけている。故にそれは、幸太自身の選択だった。

 

「「ひゃうんっ♡」」

 

二人の尻尾を掴むと、嬌声を上げた二人が、従順に尻を上げる。

 

「ああ……犯してやる……お前らが満足するまで、いくらでも犯してやるよ……っ!」

 

そこから先、何をどのようにしたのかは、よく覚えていない。

本当に夢だったのではないかとすら思う。

言葉すら忘れたように、ただ本能に従って、彼女たちを犯した。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「んぎゅぅぅっ♡ お兄ちゃんっ♡ リナにもぉっ♡ リナももっと頑張るからっ♡ 中に出してぇっ♡」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「んほぉぉっ♡ 幸くんしゅごいぃぃっ♡ おまんこ壊して♡ 壊れるまでイかせてぇぇっ♡」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「あひゃうぅぅっ♡ それそれもっとぉっ♡ もっとマゾイキさせてぇっ♡」

 

三姉妹を順番に、後ろから、前から、何度も何度も犯す。

幸太の精力は尽きることがなく、疲れれば姉妹たちが上になった。

誰かが挿入されているときは、他の姉妹も協力してその子を責めた。

嬌声は止まず、絶頂は数知れず、時計の短針が大きく動いても、雌犬たちの宴は続いた。

 

 

 

 

風間幸太は、『どこにでもいる平凡な少年』だ。

近所に妖女が住んでいるのは当たり前で、自然とできる幼馴染的な妖女に世話を焼かれる。

妖女に起こされて登校して、半数以上が女子ばかりの学校で、少ない男子と雑談する。

愚痴の内容は、大抵こうだ――

 

『夜、なかなか眠れない』

 

欠伸を噛み殺しながら授業を受けて、妖魔界食材で精を付け、疲労回復サプリを飲む。

家に帰ってしたいことは、ゲームでも動画視聴でもなく――『仮眠』だ。

もちろん、それも長続きはしない。

 

「幸太くん。ほら、起きて」

 

気がつけばレンカが家に上がり込み、夕飯の支度を調えて、幸太を起こす。

 

「おはよう、お兄ちゃん♡」

 

ソファーから身を起こすと、携帯ゲームをしていたリナの姿があり、

 

「ただいまー♪ もぅ、聞いてよ幸くーん、今日もお局様がねっ」

 

仕事から帰ってきたターニャも、風間家だというのに我が家の如く上がり込む。

 

「…………」

 

三人とも、『今夜』を期待する目で幸太を見ていた。

異性の性欲に敏感であることは、女性だけの能力ではなかったらしい。

 

「……あと、五分」

 

せめて一秒でも多くの休息を求めた幸太だったが、

 

「「「だーめ♡」」」

 

それは当然、欲深いケモミミ三姉妹に却下されるのだった。

 

近所に住む三姉妹は、よく幸太の前で無防備に眠っている。

しかし――こちらの居眠りは、許してくれないらしい。

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

挿絵ありの連続投稿となりましたが、ひとまず睡眠編は終了です。

自作小説に挿絵を付けたいという気持ちを堪えきれず、
賛否あるAI画像生成に手を付けました。
反応を見つつ追加してみます。
とりあえず、完結した別作品にも追加していくつもりです。

また、誘惑条例以外も含め、誤脱字・誤操作の報告をいただき、
まことにありがとうございました。

ご興味が続きましたら、次回の更新をお待ちください。



※本作の挿絵は『PixAI』にて生成されています。


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奴隷編 出稼ぎ妖女の弱みに漬け込んで可愛がる話
プロローグ (挿絵あり)


 

 

 

性犯罪とは、時に権力勾配によって起きる。

つまり、上下関係。加害者と被害者の間に、要求を拒ませない関係があるときだ。

強すぎる権力は、被害者に同意を口にさせる首輪となり、行為を強要する鎖となる。

 

ましてやそれが――主人と奴隷であれば。

 

「ぢゅぷっ、ちゅぱっ、じゅるるっ、ぢゅるっ♡」

 

ベッドの縁に腰掛けた藤次は、脚の間で前後する少女の頭に手を置いていた。

 

「いいぞシーア、その調子だ」

「んんっ♡ ちゅるっ、じゅぷるるっ♡」

 

シーアの長い銀髪が揺れて、ダークエルフの耳に絡む。

背中に流れた髪が、華奢で小柄な体を包むメイド服を彩った。

浅い褐色の可憐な顔立ちには朱が差し、小さな口の中に、藤次の肉棒が呑み込まれる。

 

「日に日に上手になっていくな。物覚えのいい子だ」

「ふぅぅっ♡ じゅぷっ♡ んぉっ♡」

 

藤次が褒める声を聞くと、シーアの口淫が勢いを増す。

首を前後に倒して逸物を呑み込み、舌が裏筋を擦り上げ、上顎に亀頭が滑る。

 

その快感もさることながら、自分の肉棒がシーアのような美少女の口内を征服しているという事実に、得も言われぬ優越感を覚えた。

 

「苦しいかい? それでも続けるんだ。旦那様の言うことが聞けるだろう?」

「ぐぽっ、ずぶっ、おぶうっ……♡」

 

藤次に頭を掴まれて、シーアは喉奥まで陰茎をねじ込まれた。

いや、厳密に言えば自ら顔を突き出し、喉奥まで呑み込んだのだ。

頭を掴まれたことで、強要されているという『体裁』が整ったからだろう。

 

「おごっ♡ んおっ♡ ぢゅぶるるっ♡ ぢゅぷっじゅるっ♡」

 

息苦しさに目を剥き、涙目になりながら、シーアは首の動きを止めない。

妖女であるシーアの体には、人間よりも深く広く性感帯が散りばめられている。

口内、特に喉奥もそのひとつ。

シーアは藤次のペニスを使って、指や舌では届かない喉奥の性感帯で、快感を得ているのだ。

 

「そうだ、もっとだ。気持ちいいぞシーア、もっと喉の奥に擦るんだっ」

 

自らの快感のために、そしてシーアの悦楽のために、藤次は命じる。

命じなければならない。

自分は彼女の主人であり、奉仕を要求する権利があるから。

彼女は藤次の奴隷であり、自分からは求められないから。

 

「んぉふっ♡ ほぉっ♡ んぐっ、ぁぁぁっ♡ おっおっおっ♡」

 

シーアの口から漏れるのは、苦悶というより喘ぎに近い。

もはや藤次への奉仕というより、己の快感のための口淫だ。

琥珀色の肌に珠の汗が浮かび、銀髪を貼り付け、ロングスカートに包まれた尻が左右に揺れる。

可憐なダークエルフの少女には不釣り合いな淫らさに、藤次の興奮は高まり、やがて射精の瞬間を迎えた。

 

「っぐ」

「っっっ♡♡♡」

 

どくっ、とシーアの小さな口内に精液が吐き出された。

シーアは目を見開き、一瞬だけ硬直するも、すぐに口内の白濁を飲み下していく。

 

「んっ、んんっ……ごくっ♡」

 

嚥下しながら、舌は愛おしそうに裏筋を舐め上げていた。

まるで、気持ちよくしてくれたお礼をするかのように。

 

「ぷぁ……旦那様ぁ……♡」

 

藤次を見上げるシーアの顔は、行為を強要された哀れな少女というよりは、褒めて欲しそうな犬だった。

期待に応えて銀髪や頬を撫でてやると、シーアは嬉しそうに、藤次の手を両手で包む。

 

「旦那様……もう、これ以上は、だめです♡

 奴隷に、このようなことを命じては……だめ、なんです、よ?」

 

言葉とは裏腹に、シーアの濡れた瞳は、更なる悦楽を求めている。

 

「これ以上は……旦那様のお立場を、悪くしてしまいます……♡

 ですから、どうか……どうか、お許しください♡」

 

奴隷と主人の間には、契約がある。

その中には、奴隷への虐待を禁じるもの――性的な行為の強要も含まれている。

ただし、契約によっては努力義務に過ぎないものとなり、黙認されるのが常だ。

 

「そんなに物欲しそうな顔をして、なにを言ってるんだ?」

「あ……っ」

 

藤次はシーアの手を引いて、ベッドの上に引き上げると、その華奢な体を押し倒す。

 

「妖女の体が、男のナニだけしゃぶって、それだけで満足できるはずないだろうっ」

 

藤次はわざと乱暴な手付きで、シーアの体を服越しにまさぐる。

 

その度にシーアは身を震わせ、切なげに吐息した。

 

「はぁっ♡ あっ♡ んぅぅっ♡ それ、は……仕方なくてっ♡

 あぅぅっ♡ 申し訳、ありません……っ♡ 身の程も、弁えずっ♡ 体が、火照って♡」

 

激しい衣擦れの音と、シーアの嬌声が、寝室に響く。

他者の目が届かない家という密室の中で、主人が使用人の少女に乱暴せんしている――絵面だけ見ればそうだ。

しかし、それにしては、シーアの表情はあまりにも、喜悦に染まっていた。

 

「ああ、そうだろうな。そんなになっても、奴隷の方から主人を求めるわけにはいかないよなぁ」

 

主人が奴隷に手を出してはいけないように、奴隷もまた主人と関係を持ってはならない。

むしろ罰則の厳しさで言えば、こちらの方が重要だ。

女の奴隷が主人を誘惑するなど、男の奴隷が奥様を襲うかのようなもの。鞭では済まない。

 

「ひゃぅぅぅっ♡ 旦那、さまぁ♡ 胸、そんな、強くぅ♡」

 

だから、シーアは藤次を求めてはいけない。

誘うなどもってのほか、求められても受け入れてはならない。

それでも、体はどうしようもなく求めていて、藤次にはシーアを従える権限がある。

 

「俺に逆らうのか? シーア」

「あっ♡」

 

だから――これが()()なのだ。

 

「主人の言うことが聞けないのか?」

「あっ♡ はうっ♡ あぁぁ♡」

 

高圧的な脅迫を受けて、シーアがぴくぴくと震える。

上下関係による強要を受けた恐怖――とは見えない、欲情の顔だ。

それでも――そういう状況は整った。

 

「お許し、ください♡ 旦那様……どうか、シーアを、お見捨てにならないで……♡」

 

シーアは自ら藤次の手首を掴み、自分の乳房へ引き寄せる。

 

「私は、奴隷ですから……旦那様のご命令には、どんなことでも……従いますから♡」

 

脅迫を受けた途端に、シーアの色気が増した。

被害者という、大手を振ってセックスができる大義名分を、手に入れたからだ。

そして、襲う側である藤次の興奮に、絶対服従の姿勢を示すことで薪をくべている。

 

「旦那様へのご恩を思えば……このくらい、なんでもありませんから♡

 どうか……シーアの粗末な体を、思う存分、お使いになってくださいませ♡」

 

これぞ、妖女。

男に自分を犯させる術を覚えた、被虐の罠で精気を搾り取る、淫魔だった。

 

「いい子だ――さあ、四つん這いになれ。犯されるためのポーズをとるんだっ」

「はい、仰せのままに……♡」

 

シーアは嬉しそうに、言われた通りにする。

ロングスカートを捲れば、ショーツはもう愛液でぐしょ濡れになっていた。

乱暴に掴んで引き落とすと、褐色肌のヒップと割れ目が露になる。

 

腰の細さに反して肉付きのいい尻から、妖女の香りが立ち上った。

妖女のフェロモンなのか、藤次の脳内で性欲を司る部分が急加速していく。

先ほど口で抜いてもらったはずの逸物が、何日も禁欲していたように張り詰めていた。

 

「さあ、尻を上げるんだ」

「はぁ♡ 申し訳、ありません……っ」

 

シーアは膝を揃えて立てると、逆に頭を低くしてベッドに伏せる。

藤次は扱いやすい位置に来たヒップを掴み、逸物の先端をシーアの秘所にあてがう。

 

「ひうっ♡」

 

藤次の手と先端を感じただけで、シーアの背中がびくっと震えた。

そして挿入に備え、力を抜いていく。

肉棒を受け入れることに従順な姿は、自分が少女を支配下に置いていることを実感させてくれた。

 

「当てただけでこれか。まったく、こんなに可愛いのに、淫乱な子だ」

「ひあっ♡ やぁ♡ 旦那様ぁ♡ 擦っちゃ、らめ♡ 変になるっ♡ それ変になりましゅっ♡」

 

フェイントを掛けるように膣口へ引っ掛けると、その度にシーアの腰が震え、数を重ねるごとに震えが大きくなる。

入口を擦られるだけで、絶頂寸前。シーアの体はそこまで燃え上がっていた。

 

「これなら、一気に奥まで入れても大丈夫そうだな」

「あっ♡ 待って、旦那様――」

 

慌てて振り返ったシーアの中に、亀頭が滑り込む。

 

「きゃうぅぅぅっ♡」

 

それで達してしまった彼女へ、ノータイムで追い打ちを掛けるように――

 

「あああぁぁぁっっっ♡♡♡」

 

一気に奥まで突き入れた。

シーアはベッドに突っ伏したまま、大きく口を開いて痙攣した。

絶頂している間に、より強い刺激を受けて、絶頂を拡大されたのだ。

 

「おお……すごいな。おまんこが吸い付きながら痙攣してるぞ?」

 

藤次はシーアの媚態に驚く。

受け入れたときはあっさり子宮口まで呑み込み、引き抜こうとすると熱い柔肉が締め付けて逃がさない。

バイブレーションのような絶頂の痙攣が、これまた別の生き物のように精を搾り取ろうとする。

 

「あひゅっ、ひぅ、あぁぁ♡ おっき……い……旦那様の、おっきなのがぁ……♡」

 

シーツを掴んでうわごとを口にするシーアに対し、藤次はゆっくりを腰を前後させた。

 

「あっ♡ まだ、動いちゃ、だめぇ……っ♡」

 

シーアは真っ赤な顔を振り返らせて懇願するが、その表情は、こちらの嗜虐心を煽るような艶笑だった。

膣内の蠢きはより雄弁で、根元から亀頭まで波打つように、催促の収縮を見せている。

 

「ん? なにが駄目なんだ?」

「ひあうっ♡」

 

軽く尻を叩いてやると、シーアは可愛らしい悲鳴を上げて、言動を一変させた。

 

「ごめん、なさいっ♡ どうぞ、お好きになさってくださいっ♡

 私の体っ、旦那様が気持ちよくなれるように、使ってくださいっ♡」

 

そう言わされている、という体裁で、シーアは抽送を求めた。

誘惑行為を禁じられた妖女が好む、男を雄々しくさせるための手管だ。

 

「いい子だシーア、ほら、行くぞ!」

 

その期待に応えて、藤次はシーアの腰を両手で掴むと、勢いよく腰を前後させる

ぱんっぱんっと、肉と肉がぶつかり合う音が響く。

 

「あひぃっ♡ はいっ♡ きてますっ♡ 旦那様のっ♡ 逞しいのがぁっ♡」

 

シーアの細身の体が、乱暴に揺さぶられていた。

ベッドの軋む音が行為の激しさを物語り、嬌声が壁に反響する。

 

「はぁっ♡ 旦那様っ♡ 旦那さまぁっ♡ もっと、気持ちよくなってぇ♡ シーアの体でっ、ああぁぁ♡ お慰み、させてっ♡」

 

いつしかシーアも尻を振っていた。

藤次の腰使いに合わせて尻を振ることで、より深く、強く肉棒に貫かれるようにしている。

献身的に体を使わせていると見せかけて、己の悦楽を追求しているのだ。

そんなシーアの浅ましさすら、可愛らしい。

だから指摘せず、彼女の望む『奴隷を性欲処理に使う主人』という役に徹する。

 

「そうだシーア、もっと喘げ! 旦那様を楽しませろ!」

「あっ♡ あっあっあっあっあっ♡ だんな、しゃまっ♡ しゅごいっ♡ こんなにっ♡ おっきのがっ♡ あああぁぁぁっ♡」

 

シーアは命じられた通り、快感に対して声を堪えず、喉を枯らすように嬌声を上げる。

釣られるように藤次のピストンも昂ぶり、肉のぶつかる音が甲高くなっていく。

 

「んおっ♡ おおぉっ♡ 旦那様ぁ♡ 素敵、でしゅっ♡ ああぁぁっ♡ 雄々しいのぉ♡ 私の、中からっ、体中がっ♡ 征服っ、されてりゅっ♡ あっあっあああぁぁぁっっっ♡♡♡」

 

シーアの乱れようは増すばかりだ。

 

妖女の性感帯は、人間女性と比べて、深く広い。

それが与える快感も人間女性とは比較にならず、より強く大きな刺激を求める。

結果として生じるのが、男に蹂躙されることを好むような、天性のマゾメス体質だ。

シーアもまた、銀髪美少女の見た目にそぐわず、獰猛なほどにオスを求める妖女だった。

 

「っくう! こいつめ、突けば突くほどイキやがって!」

「あひぃっ♡ ごめんな、さいっ♡ だって、旦那様がぁっ♡ 優しいからぁっ♡ ああぁぁっ♡ シーアのおまんこっ♡ 優しく、苛めて、くれてっ♡ あああイクッ♡ またイッちゃいますぅっ♡」

 

シーアは藤次の逸物に乱れ狂う。

既に十回は達しているが、藤次は止まらず、シーアも止めない。

妖女の淫乱ぶりは、瞬く間に連続絶頂に到達し、それを更に加速させるべく体を動かす。

男の肉棒に向けて腰を振り、男をケダモノになるよう言葉と態度で仕向ける。

藤次は率先してその術中に嵌まり、普段は可愛がっているシーアを、豹変したように突きまくる。

 

「あっ♡ あっあっあっあっ♡ すごひっ♡ おちん○ん凄いぃっ♡ 旦那さまぁっ♡ 私もうだめですっ♡ だめになっちゃいまひたぁっ♡」

 

そこからのシーアは、もはや言葉を紡げなくなった。

赤子か泣くように、動物が鳴くように、ただ喘ぐのみ。

それを藤次の抽送に合わせて変化させながら、終わらないオーガズムに意識を沈めていく。

 

「ああ、まったく! もう獣みたいな声を上げて……こんなに、乱暴に、犯してるのに! お前はどれだけ淫乱な奴隷なんだ!」

 

藤次は一心不乱に腰を振りながら、底抜けの淫乱であるシーアを責めた。

 

「おっおっおっ♡ ああぁぁぁああぁっ♡ んあっあっあっ♡ あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ♡♡♡」

 

もはや藤次のことすら意識にないのか、シーアは己の連続絶頂に酔い痴れている。

肉棒を搾る膣圧も凄まじく、藤次は自然と臨界点を迎え、ためらう間もなく精を解き放った。

 

「出すぞシーアっ!」

「あひぃっ♡ はいっ♡ 出してくださぃっ♡ 旦那様のっ♡ 熱くて濃いのっ♡ シーアの中にっ♡ いっぱい注いでくださいぃっ♡」

 

藤次の射精は長かった。

シーアの子宮口に亀頭を押し付けたまま、大量の白濁液を吐き出していく。

 

「あ――っ――く――ぁ――っ♡」

 

シーアは大きく口を開いて、声にならない声を鳴らす。

対して媚肉は貪るように逸物を締め上げ、藤次の精液を一滴残らず吸い取った。

そして、両者とも同時に脱力、息を吐く。

藤次はベッドに腰を落として、荒い呼吸を繰り返す。

シーアはベッドに突っ伏して、膣内射精による大絶頂を味わい続けていた。

 

(はは……これじゃあ、どっちが性奴隷なのか分かったもんじゃないぞ?)

 

こんな激しい情事が続いたら、音を上げるのは藤次の方かもしれない。

 

「まったく……出会ったときは、あんなに弱々しかったのに……」

 

メイド服を着て、主人の精気を根こそぎ奪う、ダークエルフの美少女奴隷。

 

 

そんな彼女との出会いは、およそ一ヶ月ほど前のことだった――

 

 




ご一読いただきありがとうございます。

新編として奴隷編スタートです。
挿絵はとりあえず外見把握のため表紙のみ。


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第一話 前編

 

 

 

西条藤次が妻と離婚したのは、半年ほど前のことだった。

原因は妻の浪費癖と精神的DV、なにより決定的だったのは浮気だ。

正確には不倫というより、それを装った詐欺にかかったのだが、妻が自覚的に不貞を働こうとしたのは確かだ。

多額の金を奪われた妻と、これ以上は家計を同じくできない。

離婚を切り出し、今更になって反省を口にする妻に応じず、弁護士を立ててケリを付けた。

元妻がその後どうなったかは知らない。子供がいなかったことも、いま思えば幸いだ。

 

(掃除……ロボットだけじゃ行き届かないな)

 

マンションの一室に帰宅した藤次は、棚や机の埃に気付いて溜息を吐く。

魔力AIを搭載した掃除ロボットは優れものだが、SF映画のように何もかもとはいかない。

自分しか使わない部屋の掃除や、自分が食べるだけの料理では、そう熱も入らない。

仕事に必要な身だしなみを整えて、出勤して、できるだけ仕事で時間を潰して、寝に帰る。

妻の浪費がなくなったことでお金は貯まるが、使い道が思いつかない。

 

(兄貴のところは二人目ができたっていうし、何かお祝いでも……)

 

若くして妖女の妻をもらった兄のことを思い出す。

長女のルナちゃんも、もう年頃だ。そろそろ恋人ができている頃だろうか。

……誘惑禁止条例に違反しない交際をしていてほしいものだ。

 

(再婚……いや、まだ考えられないな)

 

よい仕事を得られているだけで幸いだと自分に言い聞かせ、その選択を遠ざけるのだった。

 

「そいつはよくないなぁ」

 

そんな悩みを、バーで同僚に吐露すると、同僚は遠慮なく断言した。

 

「よくないか」

「ああ、そういう悩みを抱えてるって時点で、そいつは一人がダメな奴なんだよ。

 誰かのために働くことがモチベーションになる人間は特にな。

 ここ最近のお前、以前ほど仕事に熱が入ってないぞ?」

 

痛いところをついてくる同僚だ。

しかし自覚できる部分も多い。

 

「とりあえず家事だけでも何とかした方がいい。最近ちょっと痩せてるぞ? 不健康な意味で」

「そうか?」

 

藤次の顔付きは、夫だった頃と比べて、どこか活力が薄れていた。

妻に先立たれると夫は身汚くなるというが、離婚でも同じことなのかもしれない。

 

「そこでだ……そんなお前に打って付けの話があるんだが」

「なんだ、変な顔して」

 

声を潜めてきた同僚に、警戒心が刺激される。

 

「言っておくが、子種だけ欲しがってるような妖女なんか紹介されてもお断りだぞ」

「おいおい、妖女たちは良妻だぞ? 一夫多妻だと夜と子育てが大変なだけで……」

「そういう愚痴を何度も聞かされてきたからだ」

 

この同僚は妖女たちと一夫多妻家庭を築いている。

寝不足そうな顔で出社してきて、昼休みに仮眠をとっていることもしばしばだ。

 

「というか、再婚しろって話じゃない。人を雇ったらどうだ?」

「雇うっていうと、ハウスキーパーとかそういうのか?」

 

家事が億劫なのは確かだが、わざわざ金を払ってまで……という気もする。

 

「ちょっと違うな――()()を買わないかってことだよ」

 

あまりに時代錯誤に聞こえる単語だ。

しかし、人間界と妖魔界が交流を結ぶこの時代では、違う意味を持つ。

 

「妖魔界からの出稼ぎ労働者のことか? 奴隷なんて言い方したら問題になるぞ」

「間に人材会社を挟んで労働者にしてるだけで、向こうでは完全に奴隷だよ」

「闇を感じるなぁ」

 

妖魔界には、人間界よりも数多くの国があり、制度も様々だ。

中には奴隷制度を残している国もある。

そして最近は、その奴隷を人間界へ送り出す事業が熱いのだという。

 

「最近妖魔界のどっかの国が、日本に人を出入りさせられるようになってな」

 

妖魔界の総人口は地球の十倍以上だ。

人間界という新世界で掴めるチャンスは多く、国交樹立を求める妖魔界国は大渋滞だそうだ。

最近、日本は新たな妖魔界国と条約を締結、その国の妖女が出稼ぎできるようになったらしい。

 

「奴隷はいつも以上に供給過多、企業だけじゃ需要が足りないってことで、家庭で雇えるように法整備されたんだ」

「ああ、ニュースで見たな。要は各家庭で使用人を雇うようになったんだろ?」

 

そこそこ裕福な家庭が奴隷を購入して使用人にする――まるで中世のような話だ。

厳密には購入ではなく雇用だが、その労働者たちは身を売るも同然の経緯で渡来しているという。

 

「実は俺の家でも最近雇ってな。ベビーシッターを任せてるんだが、思ってたより平和だぞ」

「そうなのか……もっと殺伐としたものを想像してた」

 

同僚が言うには、家政婦さんと何も変わらないそうだ。

奴隷という言葉のイメージが先行していたのかもしれない。

 

「お前も試しに雇ってみろ。ほら、このサイトがお勧めだぞ?」

 

同僚がスマホを見せる。

そこには――

 

 

【あなただけの奴隷がきっと見つかる! 急成長する奴隷市場を見逃すな!

 契約前の面接パーティで、理想の主従をマッチング!】

 

【スマホでかんたん操作。希望する価格と仕事を入力すれば、条件にあった奴隷をリストアップ。

 顔写真、プロフィール、要求待遇まで一目で分かる!】

 

【利用者の声

 ――納得の行く価格で契約、価格以上の仕事をしてくれました――

 ――子供もペットも懐いていて、いまでは家族同然です――   】

 

【契約前に知っておきたい。奴隷の得意なお仕事、種族別ランキング】

 

【なぜこんなに安い!? 価格の理由をプロが解説 → 外部サイト】

 

 

……ざっと眺めた後、同僚に顔を向ける。

 

「奴隷だよな?」

「安心しろ、合法だ」

 

 

 

 

その後、藤次なりに色々と調べてみたが、どうやら本当に合法らしい。

 

妖魔界で奴隷落ちした人間が、奴隷商人から名を変えた会社に登録、技能に応じて人間界に出稼ぎに出る。

先方とこちらを結ぶ会社が仲介料を取り、労働者が日本に来て、必要とするところに雇用される。

そうした雇用を個人レベルで行うのが、面接パーティだ。

 

(そりゃまあ、家庭に招き入れるわけだから、人となりが重要なのは分かるんだが……)

 

雰囲気が完全に婚活パーティである。

妻との出会いもそれだったな、などと思い出しながら、奴隷たちがいる方を見る。

さながら合戦のように、会場の片側に雇用主たちが並び、反対側に奴隷たちが並んでいた。

 

(当たり前だけど、全員妖女か)

 

妖魔界において奴隷落ちするのは、戦争の敗者だ。

そして妖魔界の戦争とは、敗者が男を奪われるものであり、従って男は奴隷にならない。

 

(……なんでメイド服なんだ?)

 

ここに集まっているのは『家事奴隷』とその募集者だ。

使用人であれば相応の作業着だろうが、まさかエプロンドレスで来るとは。

妖魔界の会社が、日本文化を聞きかじって、ああいう格好で送り出したのかもしれない。

 

(若くて綺麗な子ばかりだし……まあ妖女はそうなんだけど……)

 

妙な誤解を招きそうな会場に呆れつつ、司会による進行を待つ。

オークションが始まったりはせず、藤次たち雇用主はそれぞれ席につき、奴隷たちが各々の対面に来て面接を受けるという形式だ。学生時代に受けた就職説明会に似ている。

 

(こんなことなら、人事にコツでも聞いてくるんだったな)

 

後悔は先に立たず、藤次は慣れない面接官をすることになった。

 

「故郷では騎士をしておりました。資格は魔剣術一級。オークくらいなら素手で倒せます」

「募集してるのは家事奴隷です」

 

気になる経歴だが、平和な現代日本ではお呼びでない。

 

「スリーサイズは上から94・55・95、得意な体位は騎乗位、孕ませ希望です!」

「ここはそういう会場じゃありません」

 

明らかに別の奴隷を志望していたが、性奴隷は普通に違法だ。

 

「私を使役しようというなら、相応の器を示して欲しいわね」

「ご縁がなかったということで」

 

いかにも絶大な魔力を持ってますと言いたげな妖女だが、ラノベの主人公になる気もない。

 

(普通でいい、普通でいいのに、普通の奴隷がいない……っ!)

 

行き遅れのようなことを嘆く藤次であった。

 

「……面接官になんて、なるもんじゃないな」

 

なんだか鼻持ちならない存在にも思える面接官だが、やってみると意外に大変だ。

なにせ相手を見抜くための材料が限られている。

書面、第一印象、質問への受け答え。たったこれだけだ。

人間という奥深いものを知るには、あまりに判断材料が少ない。

 

(婚活パーティで会ったあいつが、割ときっぱり年収聞いてきた理由が分かった。

 出会ってすぐに内面なんて分かるわけないから、すぐ分かる部分を掻き集めるしかないよな)

 

書類や数字だけで自分を判断されてたまるか――などと思うのも人情だ。

しかし、それすらしなかったら、もはや相手を理解することの放棄である。

プロフィール重視の品評も、初対面の人間をできるだけ理解しようという意思の表れと言えよう。

 

だから、ぱっと見で分かる価値や強みを持ち、ぱっと見で分かる欠点を矯正すべきなのである。

いま藤次が求めているのは、そういう妖女だ。

 

「シーアと申します。本日はよろしくお願いします」

 

例えば、いま自分の対面席に座った、彼女のように――

 

(ん?)

 

ダークエルフの少女だ。

肌は褐色、髪は銀髪というのが特徴的ではある。

とはいえ、これも妖魔界出身であることを考えれば驚くことはない。

 

妖女なだけあって美少女だが、それもまあ普通だ。

重要なのは美少女の後半、少女と呼ぶべき年齢であろう。

 

「ああ、これはご丁寧に。西条藤次と申します」

 

名乗ってすぐに、お互いのプロフを交換する。

雇用主である藤次のプロフを渡すのは、向こうにも最低限、選ぶ権利があるからだ。

名目上は労働者とはいえ、実質は奴隷、ろくでもない人間に雇われるわけにはいかない。

 

名前はシーア。

志望は家事奴隷、動機は家族を養うためと人間界留学。

年齢を見ると、まだ学生をしているのが普通な年齢だった。

 

「……君みたいな小さ、若い子が、奴隷に?」

「えっと、はい。故郷の内乱で。恥ずかしながら、一族が風下になってしまいまして」

 

少し暗い表情にさせてしまった。歳不相応な影に心が痛む。

 

彼女の出身国は、同僚との話にもあった、日本と国交を結んだ妖魔界の一国だ。

革命により封建政治が倒れ、それ以前は無かった人間界との国交が選択されたと聞く。

文明開化と言えなくもないが、シーアは旧体制派の一族であり、不幸にも奴隷落ちしたという。

 

「そうか……辛い思いをしたね」

「いいえ。こうして人間界で見聞を広める機会に恵まれ、むしろ幸運だったと思っております」

 

いい子だ……かなり、いい子だ。

戦争で逆境となっても、奴隷となって家族を養おうだなんて……聖人の選択だろう。

 

「では、シーアさん。勤務形態に『住み込み希望』とあるけど……」

「はい。その……支度金が不足しておりまして、住む場所が手配できず。

 あ、もちろん、お金が貯まれば出て行きますのでっ、せめて初任給をいただくまででもっ」

 

奴隷は雇用主の家に住み込むか、仲介業者が紹介した部屋を借りる。

一般的には後者だ。雇用主に防犯上の警戒を与えないためである。

しかし彼女は、すぐに家賃を捻出できる状態にないらしい。

 

「もちろん、家財には決して手を付けませんっ。お台所の隅にでも寝かせていただければっ。

 防犯のため、柱に鎖で繋いでいただいても構いませんのでっ」

「そこは構うべきだろう」

 

なんとしても雇われたいのか、えらく自分を粗末にし始めるシーアだった。

必死さは伝わるが、過度に自分に不利な条件を提示したがるのはよくない。

 

「でしたら、その……『首輪』を通じてご命令ください」

 

シーアが触れたのは、首輪というよりチョーカーだ。

しかしこれは、妖魔界の魔法で作られた、奴隷の首輪である。

 

「たしか、奴隷契約を遵守させるための装置だったね?

 当事者間で合意して契約すえば、以降は命令に逆らえなくなるという……」

「はい。幾つかの例外を除き、旦那様のご命令には逆らえなくなります。

 盗むなとご命令くだされば、私が旦那様の家財に触れることはできません」

 

旦那様と呼ばれていることも気になったが、それ以上に首輪の方が深刻だ。

シーアが口にした『幾つかの例外』とは、緊急避難など本当に最低限のものなのだ。

 

例えば――肉体関係を要求されたら、断ることができない。

 

「奴隷となったのですから当然です。どうかお気に病まないでくださいませ」

 

藤次の表情から内心を見抜いたのだろう。自分への情けは無用だと、シーアは言う。

藤次もそれで察した――そこまでしてでも、彼女は故郷に金を送らなければならないのだ。

 

「う……くぅ……っ」

「西条様っ!?」

 

思わず涙腺に来てしまった藤次に、シーアが慌て出す。

 

「す、すまない。君くらいの歳の姪っ子がいてね。

 そんな悲愴な決意をさせているかと思うと……っ」

 

異国の紛争とはいえ、なんて無力なのだろうと打ち拉がれる。

シーアは、安心とも当惑ともつかぬ微苦笑を浮かべていた。

 

「すまない、話が逸れたね。給与は……」

 

次に確認するのは、彼女の代金だ。

物語の奴隷と違って人生丸ごと買ったりはせず、月単位か年単位での契約となる。

その代金は仲介業者の算出したものを基準として、当事者間で交渉することになるが……

 

「っ!?」

 

唖然とするような金額が記入してあった。

高額だった、はずがない。その逆だ、激しく逆だ。

 

「こ……こんな金額で、いいのかい?」

 

奴隷に対して定められた法定賃金の下限すれすれ――つまり通常の法定賃金より、ずっと安い。

 

「日本円でその金額であれば十分ですから。

 住み込みで働かせていただく以上、欲は出せませんので」

 

プロフを持つ指が震えた。

なるほど確かに、国が違えば通貨の強弱がある。

彼女の出身国における日本円は、かなり高値なのだろう。しかし――

 

(こんな……こんな素直な子がっ! 時給250円みたいな金額でっ、奴隷に……っ!!)

 

神も仏も無いような話に、思わずハンカチで涙を拭う。

 

「も、もちろん家事はきちんとさせていただきますっ。

 日本の家庭料理はもちろん、家電製品の使い方もちゃんと研修を受けましたからっ」

(家電製品も無いような世界の出身……っ!!)

 

藤次のハンカチが湿っていく。

 

「ただ、その……お仕事が早く片付いた後は、勉強をする時間をいただけますと……」

(逆境にめげない向上心……っ!!)

 

爪の垢を購入させてもらいたい心根に、涙と鼻水が止まらない。

 

「それと、故郷への手紙は検閲していただいても構いませんのでっ」

(失われない家族愛っ!!)

 

なんだか唐突に、母に電話したくなった。

 

「そ……そうか……他に、なにかあるかな?」

「いえ、こちらからは特に」

「例えば、そうだな……ああ、住み込みとなると、荷物もあるよね?

 どのくらいかな? 部屋なら空いているから、家具を整理すれば……」

 

妻が出て行ったばかりの家だ。シーアを住まわせることは問題ない。

ただ彼女の持ち込む荷物によっては、多少の模様替えが必要になる。

 

「ああ、ご心配には及びませんっ。このメイド服と鞄ひとつくらいですのでっ」

 

自信ありげに胸を張るシーア。

ぐらり――と、それを聞いた藤次の体が傾ぐ。

 

鞄ひとつ?

彼女のような年頃の女の子が?

旅行ではなく、移住の荷物が、鞄ひとつ?

服とか小物とか思い出の品とか全部ひっくるめて……鞄、ひとつだけ?

 

「お……」

 

藤次はわなわなと震えながら、俯いていた顔を上げると――

 

「おじちゃんが綺麗なおべべ()うたる!!」

 

涙ちょちょぎれの顔で、内定を宣言するのだった。

 

 

 

 

かくして、シーアは藤次の奴隷になった。

あの会場でシーアの雇用を希望したのは、藤次だけだったらしい。

こんないい子がなぜ? と藤次は首を傾げたが、他の参加者が藤次とシーアの会話を聞いていたからだという事実を、彼は知らない。

それを差っ引いても、外国人を家に住まわせるというのは、単純にハードルが高い。

世帯向けの家を持つ独身男性の藤次は、シーアにとっても条件がよかった。

 

「ただいまー」

「お帰りなさいませ、旦那様」

 

あれから一ヶ月。

今日も仕事から帰ってきた藤次は、シーアに出迎えられる。

褐色銀髪のエルフ美少女が丁寧にお辞儀する姿だけで、仕事の疲れが溶けていくようだ。

 

「ただいまシーア。勉強は進んだか?」

「はい、旦那様が参考書を譲ってくださったおかげで!

 あ、もちろんお仕事もきちんと済ませましたのでっ」

 

藤次の家に住み込んだシーアは、藤次が仕事に出ている間に、家事と勉強をしている。

そこで実家から学生時代の教科書を送ってもらい、シーアに譲ったのだ。

翻訳魔法とシーアの利発さにより、順調に学を得ているようだ。

 

「はい、お土産。シュークリームだから、冷蔵庫に入れておいてくれ」

「シュークリームっ!」

 

目を輝かせたシーアだったが、ハッとして顔を厳しくする。

 

「旦那様? 私へのお土産は、週末だけという約束ですよ?」

「いやぁ、安かったからつい」

 

ここ最近の藤次の楽しみは、家で帰りを待っているシーアにお土産を買うことだ。

シーアは特に甘味に弱く、奴隷の立場を忘れて年相応に喜んでしまう姿たるや、親バカが捗る。

 

「こ、これは全て旦那様がお食べください……っ」

(すごい食べたそうだな……)

 

下唇を噛みながら震える手で箱を反そうとするシーアに、噴き出しそうになる。

 

「お店の人が曰く『今日中にお召し上がりください』だそうだ。

 俺だけじゃ食い切れないなー。シーアが食べてくれれば、無駄にしなくて済むのになー」

「も、もうっ。旦那様はいつもそうやって、私を甘やかすんです!

 旦那様は奴隷をなんだと思っているのですかっ!」

 

まるで非人道的な行いを咎めるように、シーアは抗議する。

そう言いつつも、しっかり藤次が脱いだスーツの上着を受け取り、ハンガーに掛けていた。

 

「日本人にとって『異世界の奴隷』っていったら、相手がびっくりするほど厚遇するものなんだ」

「わけがわかりませんっ。まあ嬉しいですけど……また服のサイズが合わなくなります……」

 

シーアの発言で、藤次は自然と彼女の体型に目を配る。

 

最初に会った頃、シーアは痩せていた。

あの頃は栄養状態がよくなかったのだろう、妖女にしては慎ましい体型だった。

 

それがいまはどうだ。

藤次と暮らすようになって一ヶ月、藤次はまるで娘ができたかのようにシーアを甘やかした。

カードを預けて豊富な食材を買わせ、孫でも可愛がるように菓子類を土産に持ち帰った。

遠慮するシーアを「健康でないと務めも果たせない」と説得、しっかり三食とらせたら――

 

(まさか、たった一ヶ月でここまで大きくなるとは……)

 

子犬や子猫でもないというのに、シーアは劇的に肉付きがよくなった。

胸は目測で2カップほど大きくなり、瑞々しい肌のトランジスタグラマー体型に一変した。

正直、目のやり場に困ることも少なくない。

 

「こほん。仕事に必要なものは、衣類であっても渡したカードでちゃんと購入するようにね?」

「はい……ご迷惑をおかけします……」

 

この手の奴隷にかかる経費や備品は、ものによっては雇い主が準備しなければならない。

 

「気にするな……元妻の浪費に比べれば可愛いもんだ……」

 

後半は小声に留めて、部屋着に着替え終える。

日に日に人間界の料理を学んでいるシーアの夕食が、今日もいい香りを漂わせていた。

 

 

 

 

――改めて、シーアは奴隷だ。

首には主人の命令を遵守させるチョーカー、服は妖魔界式のメイド服を基本としている。

朝になれば藤次よりも早起きして朝食を作り、掃除をすれば細部まで手抜きをしない。

買い物もこなし、使った金は厳密に帳簿を作り、日本食や栄養学の勉強も欠かさない。

常に主人を立て、自分を風下に置き、住み心地のよい『家』を保ち続ける。

 

離婚した元妻なら、そんな日々のことを『奴隷』と呼ぶに違いない。

 

だから藤次は、妻の愛を保てなかった反省もあって、シーアへの感謝を惜しまない。

契約以上の賃金を決して受け取ろうとしない彼女を、あの手この手で溺愛するのが、いまの生き甲斐だった。

 

「いいですか旦那様。妖魔界において奴隷とは、言わば敗将の矜持なのです」

 

一緒に夕食をとりながら――最初は同じテーブルを囲もうとしなかったが――今日もシーアの話を聞く。

 

「妖魔界の戦争では、過度な殺人を避ける傾向にあります。

 勝利した後に風下へ置いて搾取しなければなりませんからね。

 されど戦争である以上、敵兵を『決してこちらを危害しない状態』にする必要があるのです」

「まあ、そりゃそうだよな。『だから相手を殺害する』わけだし」

 

物騒な話題だが、シーアは故郷の内戦で奴隷落ちしたばかり。その手に話に触れるのも仕方ない。

 

「奴隷の首輪は、言わばそういう『死の代わり』です。

 敗北した兵士は潔く首輪をつけ、家族の助命を保証してもらう。

 一族や国家の長が首輪を付けたなら、一族や国民の命が保証されます。

 これは妖魔界における大事な契約、破ってはならないルールなのです」

「もし破ったら?」

「同情の余地はありません。隷従しない敵は、いつ逆襲してくるか分からないものとして処分。

 代わりに、相手が矜持を示したなら、支配者側も一定の生活を保障する責務を負います。

 ひとたび奴隷となったなら、服従することこそが、自分と同胞の命を守る無形の盾なのです」

 

それが、シーアの言う『敗将の矜持』らしい。

負けを認めて奴隷になったら二度と武器を向けず、多少の扱いは忍耐をもって頷く。

そういう『信用』を損なえば、それだけ同胞が危険に晒されるので、奴隷であることに徹する。

 

「で、す、の、で――私に可愛い服を買い与えようなどという計画はご再考くださいませ!」

 

話題の発端は、そもそも藤次が『今度の休日に服を買い揃えよう』と言ったことだ。

 

「遠慮することないぞ? シーアは可愛いからきっと何を着ても似合う」

「そういうことではないのですっ。奴隷の美徳は清貧これひとつ!

 主人が私財で奴隷におめかしさせるなど、主従の立場が逆ではありませんか!」

 

業務上、必要最低限のものは、シーアも了承した。

ただし購入した服は本当に普段使いのものばかり、年相応の私服など持つことを自分に許さない。

 

「そのような真似をすれば、敗将の誇りにもとる振る舞いをしたとして、一族から非難されてしまいますっ」

「シーアのご実家は厳しいんだな……」

「傍流ながら戦士の一族でしたので」

 

奴隷として売られたシーアなので、実家では冷遇されていたのかとも思ったが、聞けばそうではないらしい。

たぶん、武家にも通じる規律重視の家柄なのだろう。

出稼ぎ先で立派に奴隷の務めを果たしているかどうかが重要なのだ。

 

「明日は旦那様の貴重な休日、どうかご自身の休息とご趣味に時間をお使いください」

「んー、元から趣味なんてあってないようなものだし、最近の趣味といったらシーアを可愛がることなんだが」

「あぅ……っ」

 

シーアは意表を衝かれたように声を零すと、頬を染めてもじもじとし始める。

 

「そ、それはつまり……私にお好みの服を着せて、弄びたい……ということでしょうか?」

 

体を要求されていると解釈したらしい。

その恥じらう姿の色っぽさに、藤次の心臓も高鳴る。

 

奴隷の首輪を装着している彼女は、主人の命令に逆らえない。

こうした『性行為を同意した契約』は、妖魔界と日本の法の狭間で黙認されている。

 

だが……

 

「いやいや、そんな意味じゃない」

 

藤次は他意を否定する。

邪な感情がまったくないとは言わないが、こちらは責任ある大人だ。

当人が悲壮感を出していなくても、奴隷になったシーアにそんな要求をする気にはなれない。

 

「そう、ですか……」

 

シーアがしょんぼりしているのは、なるべく意識しないようにした。

 

「要は、あれだ。主人と良好な関係を築いている方が、故郷のご家族も安心できるんじゃないかと思ったんだ」

「旦那様、シーアはそのお心遣いだけで十分です」

 

誤魔化しの言葉では無いと分かってか、シーアも微笑する。

 

「旦那様が与えてくださった環境は、どれも妖魔界では決して得られないものばかりです。

 一生分の幸運を使い切ったのでは無いかと思うほどに……」

 

シーアの生国は妖魔界でも貧しい国で、日本での生活はおとぎ話のような体験の連続らしい。

奴隷の立場でありながら、この家に住み込んでいるだけで、故郷の富裕層にも勝るという。

 

「家族への手紙には、旦那様の尊いお人柄を隅まで書き込んでおりますので。

 どうか気兼ねなく、シーアの奉仕をお受け取りくださいませ」

 

シーアが献身的な表情で口にした言葉が、藤次に閃きを招く。

 

「そうか、手紙か――」

「旦那様?」

「俺もシーアのご両親に手紙を書こう」

「えっ!?」

 

シーアが目を丸くしている。

 

企業勤めなんてものをしていると、稀に部下の家族へ礼状を書くこともある。

藤次の上司はそのあたりのマナーにうるさい方で、部下の誰かが『田舎の実家から果物が送られてきて』などとお裾分けをすると、職場を代表してご両親に礼状を送っていた。お前も書く機会があるだろうと、一通りの文面も教わっている。

 

「シーアの手紙だけじゃ、変な話だがご両親も『話を盛ってるんじゃないか』と疑い、不安かもしれない。そうでなくても、娘さんを預かっている俺が挨拶の手紙も送らないなんて失礼だった」

 

もっと早く気付くべきだった。

 

「いえ、そんな、旦那様がそのようなことをする必要は――」

「いいや、これは日本人として外せない礼儀だ。失礼がないよう、シーアにも内容をチェックしてほしい」

 

一ヶ月程度の付き合いだが、藤次がこの手のことで譲らないことを、シーアはよく知っていた。

 

「旦那様が望まれるのなら……」

 

諦めたように溜息を吐くシーア。

夕食を終えると、藤次は早々に手紙の準備を始めるのだった。

 

 

 

 

いまでは人間界と妖魔界でも電話ができるが、それも設備が整っていればの話。

シーアの故郷に回線は通っていないため、しっかり紙に書いた手紙を送ることになる。

 

「どうかな? どこかに誤字はないか?」

 

【シーアは立派に仕事を務めている。

 その勤勉さは瞠目に値し、育てられた親御さんのお人柄が窺える。

 自身も彼女に相応しい主人であろうと、身が引き締まる思いである。

 大事な娘さんを預かる者として、彼女の生活が幸いなものとなるよう尽力する所存である】

 

要約すると、そのような内容だ。

 

「大丈夫です。ありません……」

 

妖魔界の言葉なので、シーアにチェックしてもらったが、読み終えた彼女は顔を赤くしていた。

 

「勘違いしちゃだめ、私は奴隷。弁えろ、私は奴隷、私は奴隷……っ!」

 

シーアはなにやら自分に言い聞かせながら、郵便局へ向かうのだった。

 

――翌週、シーアの家から手紙の返答があった。

 

内容はしっかり日本語で、現地の日本人に頼んで代筆してもらった旨が記されている。

読みやすくて助かるが、その内容を読み進めるにつれて、藤次は絶句した。

 

【シーアがよき主人に巡り会えて、胸をなで下ろす思いである。

 貴殿の厚情に深く感謝すると共に、シーアが奴隷の務めを全うすることを望んでいる】

 

シーアの生みの親によるものらしい。なかなか厳格な性格のようだ。

 

【これほどの配慮をいただいて汗顔の至りではあるが、ひとつお願いをしたい】

 

藤次はその文面を目にすると、腰を据えて続きを読む。

待遇のことか、それとも連休には帰省させて欲しいといったことか。

そんなことならいくらでも、と思っていた藤次は、次の一文に目を丸くした。

 

【もし彼女を気に入ってくれたのなら――女として可愛がってやってはくれないか】

 

なにかの書き損じではないかと、前の文章を入念に確認した。

しかし、どう読んでも、これは『シーアを抱いてほしい』という文章だ。

 

【貴殿の誠実な人柄を思えば、不徳な頼みであることは承知している。

 しかし戦に敗れた我々は男児を奪われ、衰退の運命を強いられている】

 

これはシーアからも聞いており、妖魔界の紛争の結果として知られていることだ。

 

【我々の部族は男性との婚姻を禁じられている。

 それゆえ、一族の娘を奴隷として異界に旅立たせることは、ひとつの活路だった。

 異界であれば支配部族の束縛も及ばず、若い娘を奴隷に出すことも禁じられていないからだ】

 

シーアの一族の戦略は分かる。

妖魔界の戦争に負けた国や一族は、男児を奪われて爆速の少子高齢化となり弱体化させられる。

勝者はそれを支配することで利益を得るので、敗者の女が男性と結ばれる機会を絞り、生かさず殺さずの状態に置く。

 

しかしシーアの一族は一計を案じた。

昨今話題の人間界に、一族の娘を奴隷として売りに出す。

支配者側から見れば、人口増加に必要な若い娘を手放す行為なので、敗将の矜持には反さない。

だが、売られた先の人間界は男性が多い。

支配者の目が届かないところで、故郷では会えない男と会い、子を授かる可能性が生まれる。

 

【かような策謀に貴殿を巻き込んだことは、慎んでお詫びする。

 それでも、もしシーアの未来を哀れんでくれるなら、どうか寵愛を授けてやってほしい】

 

息を呑みながら、藤次は続く一文を目に入れた。

 

【奴隷は自ら主人に関係を求めることはできない。

 また人間界には誘惑禁止条例があると仄聞する。

 こちらとしては、ご寵愛を得られるなら、()()()()()()()()()()()()()()()()

 決して貴殿の立場を危うくすることはないと、名誉に懸けて誓う】

 

事情を理解しても、いざ目の当たりにすると、理解が追いつかない。

 

端的に言って、シーアの母はこう言っているのだ。

 

――シーアを、犯してやってほしい。

――肉体的に可愛がり、孕ませてほしい。

――なにがあっても、あなたの罪は問わない。

 

「…………」

 

半ば放心した藤次は、最後の文章に目を通す。

 

【これはシーアも承知したことである】

 

「――旦那様?」

 

背後から聞こえたシーアの声に、藤次は肩が跳ねるほど驚いた。

慌てて振り返ると、楚々とした雰囲気で、シーアが立っている。

 

「シーア……その……」

「その手紙に書かれていることは本当です」

 

手紙の内容に触れまいとした藤次に対して、先手を打つようにシーアが言う。

内容は、シーアも把握していたようだ。

 

「シーア、君は……」

 

藤次は一呼吸をおいてから、大事なことを尋ねる。

 

「君は……そのつもりで、俺の奴隷になった、のか?」

 

一連のことが真実だとする。

シーアが、いわゆる『お手付き』を念頭において、奴隷となったこと。

であれば、シーアはあの面接パーティで、『その相手』を探していたことになる。

 

「っ、申し訳ありません!」

 

シーアは勢いよく頭を下げる。

 

「仰る通り、私は始めから、浅ましい思惑をもってあの場におりました。

 旦那様のお人柄に惹かれたのも確かですが……あわよくばという考えがあったことは、否定できません」

 

顔は見えないが、両手がスカートを握り込んでいた。

怒りを買っても仕方ない、と思っているのだろう。

実際、そういう目で見て主人を選んでいたとは思わなかった。

そこに不快感を示す資格くらいはあるのだろう。

 

「これは奴隷として許されざること。ご不快に思われるのは当然です。

 契約を打ち切られたとしても仕方ありません……」

 

シーアは震えた呼吸を整えて顔を上げると、胸元に手を沿えてこちらを見据えた。

 

「ですが……もし、少しでも哀れに思ってくださるのであれば……」

 

涙ぐみ、頬を染めて、怯え混じりに、彼女はこう言う。

 

()()()()()()()()――(とぎ)を、お命じください」

 

求めてほしいと、抱いてほしいと、シーアは言っていた。

命令に従わせる奴隷の首輪を使って、逆らえなかったことにしてほしいと。

奴隷という立場から、誘惑禁止条例に縛られた妖女として、最大限に踏み込んだ言葉だった。

 

(この子は……そこまで……)

 

シーアの『告白』に衝撃を受ける。

環境に追い詰められていたという、哀れみだけではない。

自分のことを、女としてここまで想ってくれていた――という驚きだ。

 

藤次とて一人前の大人だ。

たとえ事情があっても、シーアのような歳の子に、主従という立場を利用して手を出すなど、許されざる犯罪だと理解している。

 

その一方で、男の端くれだ。

ここまで覚悟を決めた女を、自分が手を出せば救える少女を、保身のために突き放す――そんな真似はできない。

 

「なら――」

 

だったら……どちらも同じくらい大事なことなら……

せめてシーアのためになる方を選ぶべきではないだろうか。

 

「早速だけど、命令だ」

「あ……っ」

 

藤次はシーアの首輪に触れる。

シーアが怯え混じりに赤面すると、首輪が薄く魔力の光を宿した。

首輪の使い方は『命令』を文脈に入れること。

後は藤次が命令を言葉にすれば、シーラはほとんど逆らえなくなる。

 

なにを命令されるのかと、怯えるシーラに、藤次はこう告げた。

 

「嫌なことは、ちゃんと嫌だと言いなさい」

 

奴隷の首輪が、発動する。

目を丸くしたシーアは――じわりと、目尻に涙を浮かべて、命令に従い口を開いた。

 

「嫌、です……」

 

藤次は微笑した。

やはりそうだろう。こんな理不尽な話、年頃の女の子には――

 

「旦那様に、捨てられるのは……嫌です……っ!」

 

褐色の頬に透明な涙を伝わせて、シーアが訴える。

 

嫌なことは言えと命じたら、彼女が口にしたのは、それだった。

 

ああ、そうか――

彼女が怯えていたのは、手を出されることではなく、断られて追い出されること。

 

「そうか」

 

それだけ聞ければ十分、もはや野暮なことは言いっこなし。

藤次はシーアを抱き寄せて、エルフ耳に囁きかける。

 

「やっぱり、お前は可愛いな」

 

ベッドはすぐそこだった。

 




ご一読いただきありがとうございます。

例によって長くなったので、前後に分けて同時投稿です。
次話はエロシーン中心となります。


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第一話 後編

 

 

 

藤次もかつては妻がいた身だ。

セックスについては、それなりに場数を踏んでいる。

だというのに――シーアの唇を奪うことには、かつてない興奮を覚えた。

 

「ちゅぷ……れるっ、んっ♡ ぴちゃっ」

 

舌と唾液を交換し合う水音が、部屋の中で響く。

シーアは目を半開きにして、藤次にされるがままになっている。

 

「ぷぁっ♡ あむっ♡ ちゅるるっ」

 

長身の藤次は、シーアに上から覆い被さるように。

小柄なシーアは、精一杯の背伸びをしながら見上げるように。

二人の唇は、水平方向というより垂直方向で重なり合う。

 

「んんっ♡ ぷあっ♡ あむうっ♡」

 

藤次はシーアの後頭部に手を回し、貪るように唇を()む。

シーアは目を潤ませながらそれを受け入れ、藤次の背中に両手を回した。

彼女の舌も唇も、藤次を拒んでいない。

ぎこちなく舌を絡め、唇を(ついば)む姿は、彼女が不慣れな乙女であることを強く感じさせた。

 

「ぷぁ……っ」

 

シーアの足が、藤次に押される形で後退する。

膝裏がベッドの縁に触れると、自然と腰を下ろし、そのまま背中からベッドに倒れた。

 

「はぁ……っ、はふぅ……っ♡」

 

呼吸も忘れていたのか、頬を紅潮させたシーアは、放心気味にこちらを見上げている。

 

「楽にして。全部任せていいからね」

「はい……♡ 旦那様の、お好きなように……」

 

シーアは献身を口にするが、この様子からして、男性経験はないのだろう。

妖女は成長過程で処女膜を失うので、破瓜の痛みは心配ないが、それでも男に身を預ける怖さはあるはずだ。

だから藤次は理性を総動員して、赤子を扱うような慎重さで、シーアの体に手を伸ばす。

 

「あっ♡ はぅっ♡」

 

耳や首筋にキスをしつつ、服の上から壊れ物を扱うように愛撫していく。

童貞のような焦りのない紳士的な手付きに、シーアの表情が蕩け始めた。

 

「旦那、さまぁ♡ あぅ♡ そんな……キス、たくさん♡ お手々、優しい……っ♡」

 

シーアは藤次の頭を抱いて、キスの雨と愛撫のそよ風を甘受した。

いつの間にかメイド服の胸元が開かれ、白いブラに包まれた丸い乳房が解放される。

一般的な妖女に比べれば慎ましいが、華奢な小柄に比べれば十分に豊かな胸だ。

 

「はふっ♡ 旦那様……どうぞ、ご遠慮なさらず……シーアは、平気ですから……♡」

「いいんだよ。無理をしなくても。慣れてきたら、おねだりしてごらん」

 

シーアが男の手に慣れるまで、藤次はゆっくりと事を進める。

強張りがちな体を解すように、冷えた体を肌の熱で温めるように。

それでいて少しずつ服をはだけさせ、ブラが外され、スカートがまくり上げられる。

 

「そんな……旦那様ぁ♡ これじゃ、駄目です……♡

 これじゃ、私が……奉仕、されてるみたいで……っ」

 

シーアはもっと粗忽なものを想定していたのだろう。

妖魔界では、女性の身分によって、男による『丁重さ』が変わるらしい。

彼女の常識だと、人間男性が人間女性にするような前戯は、『献身的な奉仕』となるようだ。

 

「私……できます♡ ちゃんと、旦那様を、受け止められますからぁ……♡

 我慢、なさらないで……?」

 

シーアは女として、藤次の劣情を正面から受け入れたいようだ。

操を捧げることを決めた女の誇り――その中に隠れた『おねだり』。

藤次はそれを読み取り、シーアの乳房を小猫のように撫でながら、

 

「いい子だな。じゃあ、ちょっとだけ雄になるぞ?」

 

シーアの乳首を口に含んだ。

 

「んぁうっ♡」

 

びくんっ! と、シーアの体が軽く跳ねた。

そのまま唇と舌を使って、片方の乳首を可愛がっていく。

 

「あっ♡ んんんっ♡ んっ♡ んっ♡」

 

シーアは藤次にしがみつき、喉の奥を鳴らす。

 

「旦那、さまぁ♡ 旦那様が……私の、胸ぇ♡ 吸って、るぅ♡」

 

母性が刺激されたのか、シーアの声音から怖れが消えてきた。

 

「もっとしていいか? シーア」

「はい♡ どうぞ……ううん、ご命令ください♡

 旦那様の、奴隷に……お役に立てって、命じてくださいませ♡」

 

あくまでも奴隷として、主人に乳房を捧げたい。

そんな献身の恍惚を感じる言葉に、いよいよこちらの理性も品切れだ。

 

「シーアっ」

 

藤次は乳輪に歯を立てるようにしゃぶりつき、もう片方の乳房を鷲掴みにする。

 

「ひゃあんっ!? はぅ、あうっ♡ 旦那様っ、力強いっ♡」

 

シーアは藤次の頭を抱きしめて悶える。

藤次は構わず、シーアの柔肉を揉んでいく。

 

「んぁあっ♡ 旦那様っ、そのままっ♡ どうかそのままっ♡ あんんんっ♡」

 

シーアの言葉は、奴隷として主人の好きにさせているようにも聞こえた。

だが、それだけではない。

刺激に慣れてきた妖女の体が、「もっとして欲しい」と、快感に食いついているのだ。

 

「そうか、ならこっちもしてやろうな?」

 

藤次は左右の乳房を刺激しながら、片手をシーアの下腹部へ運んでいく。

 

「ひぁうっ♡」

 

下着のクロッチを手で包むと、シーアは嬌声と共に震える。

驚いたような表情は、藤次の手がゆっくりと愛撫していくことで、瞬く間に陶酔へ変化した。

 

「ああぁっ♡ だんな、しゃまっ♡ そこっ♡ はぁうぅっ♡」

 

藤次はシーアのショーツの中に手を突っ込み、直接秘所を触診した。

 

「ふわぁあっ♡ あっ♡ あっ♡ うそっ♡ こんなっ♡ 感じ、ひぁぁぁっ♡」

 

指先で割れ目をなぞるだけで、この乱れよう。

男を知らなかった体が、妖女の本能に目覚め、急速にセックスの準備を始めている。

シーアにとっては、自分の肉体が内側から作り替えられているかのような衝撃だろう。

 

「あうっ♡ あぁっ♡ 旦那しゃまっ♡ 指っ、いいっ♡ それっ、好きぃっ♡」

 

シーアは無意識のうちに腰を上げ、自ら股間を押し付けてくる。

その動きに応じて、藤次も深く指を食い込ませていくが、痛がる様子はまるで無い。

肉体が慣れてくれば心もついてくるもので、シーアは藤次に与えられる快感を歓迎し始めている。

 

「痛かったら言うんだぞ……っ」

 

藤次は一度指を止めて、ショーツの中に滑り込ませていく。

 

「言い、ません……っ。ちょっと痛いくらい、我慢して……ふぁぁぁっ♡」

 

シーアが何かを言いかけた瞬間、膣内へと中指を突き入れた。

 

「ふぁぁぁっ♡ 旦那様の、手がぁ……♡」

「よしよし、ゆっくり解してやるからな?」

「あぅぅっ♡」

 

シーアは甘い声で鳴きながら、藤次に抱きつく腕の力を強めた。

やはり処女膜はないようだが、拒むような膣の締まりを見るに、器具を使った自慰はあまりしていないようだ。

慌てず慣らすのが男の務め。藤次は内壁を撫でながら、少しずつ奥へと指を侵入させていく。

 

「んく……っ♡ 中に、入って、きて……るぅ♡ ひぁんっ♡」

 

早速、よい反応を示す部分が見つかった。

 

「大丈夫だぞ? シーア……声を我慢しなければ、苦しくなくなるぞ?」

 

藤次はシーアの耳元で囁き、背中をさすりながら、見つけた弱点を愛撫してやる。

 

「んぁぁっ♡ 旦那様っ♡ そこっ♡ そのままっ♡ はぁっ♡ あっあっあっあああぁぁぁっ♡」

 

シーアは堪らずといった様子でおねだりを口にする。

それを指摘せず、くすぐるように弱点を擦り続けると、甘い声は嬌声へと変わっていき――

 

「ぁぁぁぁぁっ♡」

 

ガクン! と大きく震えて、絶頂した。

 

「はふっ♡ はっ♡ あぁ♡ いま、私……なに、が……♡」

「イってくれたんだな。可愛いぞ、シーア」

 

自分に何が起きたか分かっていない様子のシーアに、藤次は額へのキスを送る。

自慰をしたこともない、というわけではないだろう。

ただ、男の手で達したことは、これが初めてのようだ。

その絶頂は、彼女の想像を超えるものだったらしい。

 

「気にせず、少し休んで」

「……だめ、です」

 

気を遣う藤次の言葉を、シーアが遮る。

目を合わせると、頬を紅潮させ涙目になりながらも、シーアは真っ直ぐ藤次を見上げていた。

 

「私、奴隷なのに……っ♡ 私ばっかり、よくされちゃ、だめなんです……

 ちゃんと、旦那様を……お慰み、させてください♡」

 

自分への心配は無用だと、シーアは続きを促す。

強がりなのは明らかだが、シーアの目は真剣だ。

 

「可愛がられてばかりじゃ、嫌です……ちゃんと、シーアを、旦那様の女にしてくださいませ♡」

 

彼女が口にしていた、奴隷の誇り。

というより、稚児のような扱いを拒む、大人の女のプライドか。

 

「そうだな……」

 

どちらにせよ、これ以上の甘やかしは、彼女に失礼というものだろう。

藤次は上半身を起こすと、ズボンの中から、ずっと窮屈に我慢していた逸物を取りだした。

 

「あ……っ」

初めて見る男性器に、シーアが息を呑む。

 

「そんなに怖がるな。俺のモノも、お前に負けないくらい熱くなっているぞ?」

 

藤次は逸物の根を手に取ると、シーアの割れ目に触れさせる。

 

「あん……っ♡」

 

シーアは震えるも、腰は引かない。

大陰唇を擦るようにして探ると、濡れそぼったそこは、いつでも受け入れられそうだ。

少女の外見に反した淫らさは、彼女がもう一人前の妖女(おんな)であることの証だった。

 

「いい子だ。力を抜きなさい」

 

藤次はそう言って、亀頭を秘所の入り口にあてがい――

 

「はい……お願いします、旦那様♡」

 

シーアの返事を待ってから、ゆっくりと腰を押し進めていく。

 

「んっ……ふぁっ♡ 入って、あぅぅっ♡」

 

シーアは顔をしかめて、藤次の体にしがみつく。

 

「痛いか?」

「いえ、平気……です……っ♡ 続けて……下さい……っ♡」

 

亀頭を受け入れた程度だが、シーアの顔には興奮の色が濃く見えた。

膣圧は半ば拒むようでいて、奥へと吸い込もうとするようでもある。

 

「旦那様……来て……きてぇ……♡」

 

しばらくそのままにして、シーアが慣れるのを待っていると、藤次の腰に彼女の足が絡み付く。

流石は妖女というべきか、膣が早くも肉棒に適応し始めた。

それでも藤次は、シーアの負担を軽くするよう、ゆっくりと腰を進めていく。

 

「あぅぅ♡ おっきぃ……旦那様のっ♡ くるっ♡ 来てますっ♡ なのに、優しい……っ♡」

 

シーアは小刻みに震えながら、藤次の服の背中を握り込む。

亀頭が膣内の各所を擦るたび、彼女の体に快感の紫電が走っているのが分かる。

 

「もうすぐだ。もうすぐ一番奥まで届くぞ?」

「はいっ♡ 旦那様ので、埋め尽くしてくださいませ……っ♡」

 

シーアの表情は、すっかり蕩けきっていた。

藤次は彼女にキスをすると、シーアの膣が許すように緩んだ瞬間、音もなく腰を沈める。

 

「っっっ、んぁぁぁっ♡」

 

子宮口に触れる感触がすると、シーアが目を見開いて嬌声を上げた。

人間の女性なら、ポルチオは時間を掛けて開発しなければならない。

しかし妖女であれば、最初から最も鋭敏な性感帯だ。

 

「ここだな? わかるか? 今、俺のが、お前の奥に届いた」

「は、はひっ♡ わかりましゅっ♡ シーアの中っ、旦那様でっ、いっぱいにぃ……っ♡」

 

奥に当てたまま腰を止めると、シーアは小刻みに震えながら息を荒げる。

始めて受け入れた男性器のもたらす快感に、認識が追いついていない様子だ。

 

「あっ♡ はふっ♡ これぇ♡ すごい♡ あっ♡ お腹からっ、体中にっ♡ びりびりって♡」

 

膣壁は感触を確かめるように絡み付いており、時間が経つほど意識が快感を拾っていく。

男根を「気持ちのいいもの」と学ぶなり、膣内のうねりは貪欲になっていき、シーアの腰が自然と動く。

 

「あっ♡ あっ♡ あっ♡ なにかっ♡ なにかくるっ♡ きますっ♡ きちゃうぅぅぅっ♡」

 

あろうことか、藤次が腰を動かすまでもなく、シーアは絶頂を迎えた。

指の愛撫による軽い絶頂ではない、肉棒による、子宮口での、「奥でイク」と呼ばれる大絶頂だ。

 

「かふっ♡ はふっ♡ あああぁぁぁっ♡ いま、なにが……ひゃうぅ♡

 旦那様っ、ごめんなさい♡ こんなっ♡ こんなに、なりゅなんて……私、知らなくてっ♡」

 

シーアは恥ずかしそうに顔を覆いながら、自分の体に起きた未知の絶頂に驚いている。

 

(初めて男を受け入れて、これか……っ)

 

妖女の体が淫らであるとは聞いていたが、噂以上だ。

処女なのに、簡単にイキまくって乱れ狂う、生まれつきセックスが大好きな種族。

シーアはいま、そんな妖女として、秒刻みで覚醒していっている。

 

「旦那、さまっ♡ どうぞ、動いてくださいっ♡ 私、もう十分、気持ちよすぎて……っ♡

 だから……旦那様もぉ、気持ちよくなってっ♡ シーアを、お役に立たせてくださいっ♡」

 

シーアは藤次の顔を包むように手を伸ばし、腰を動かす許しを与えた。

男性がそうするものだという知識はあるのだろう。奴隷の誇りを語る彼女らしい献身でもある。

しかし、藤次の見間違いでなければ――もっと大きな快感を得たいと、望んでいるように見えた。

 

「ああ、動くぞシーアっ!」

 

できるだけシーアに負担を掛けないようにという理性が、とうとう底尽きた。

藤次はシーアの太ももを掴んで足を開かせ、斜め上から腰を突き落とす。

 

「ひゃあうんっ♡」

 

シーアは目を大きく開き、喉を仰け反らせて喘ぐ。

 

「あんっ♡ あっ♡ 旦那様っ♡ しゅごい♡ あふっ♡ わたしっ♡ またっ、きちゃうっ♡」

「イクって言うんだっ。イクときはちゃんと言いなさい!」

「は、はひっ♡ イキますっ♡ シーア、旦那様にっ♡ 突かれてぇ、イっちゃいますっ♡ あああぁぁぁ~~~っ♡♡♡」

 

シーアは藤次に言われるまま申告すると、再び全身を痙攣させた。

 

「はふっ♡ ふーっ♡ ふぅぅぅ♡」

「大丈夫か?」

 

藤次が尋ねると、シーアは小さく首肯した。

 

「はいっ♡ 平気です♡ 私のことより、旦那様です♡ シーアは、ちゃんと、できてますか?」

 

絶頂で意識を朦朧とさせながらも、不安そうに聞いてくるシーアは、あまりにいじらしい。

藤次はそんなシーアを力強く抱きしめて、再び腰を突き落とす。

 

「当たり前だろうっ、こんなに気持ちいいことは初めてだ!」

「あぁんっ♡ 嬉しいっ♡ あぁうぅっ♡ 気持ちよく、なって、いただけてっ♡ ああっ、そこっ♡ 奥にいっ♡」

 

実際、シーアの膣内は名器だった。

藤次が知る、人間女性だった妻のものとは、まるで違う。

ひどい例えだが、これまで雑巾しか知らなかった人間が、シルクの質感を知ったかのようだ。

 

「ああぁぁイクッ♡ 旦那様っ、ごめんなさいっ♡ また、私ばかりっ♡ んぁぁぁぁっ♡」

「いいんだっ! いくらでもイっていいんだ! 男はな、自分とのセックスで女が感じてくれるほど嬉しいんだ!」

 

本心からの言葉だったが、シーアは衝撃を受けたように首を振る。

 

「そんなっ♡ そんなのだめぇっ♡ これじゃ、立場が、逆ですっ♡

 わたしがっ♡ 旦那様をっ、気持ちよく、しないと、いけないのにぃっ♡」

 

言葉を交わす間にも、二人のまぐわいは激しさを増していく。

ベッドが軋む音を上げ、結合部の水音と衝突音が部屋に木霊していた。

 

「なら命令だ! もっと乱れろっ! 俺のセックスで、イキまくって気持ちよくなれ!」

 

奴隷の首輪が反応した。

感情を操るようなことはできないが、己の快感に対して正直にさせることはできる。

 

「あひゅうっ♡ 気持ちいいっ♡ 気持ちいいのぉっ♡ 旦那様の、セックスっ♡ どんどんっ、好きになるっ♡ 私の体がぁ♡ 旦那様のことっ♡ 大好きになってるのぉっ♡」

 

シーアの顔が歓喜を隠さなくなり、言葉は肉体の変化を白状する。

 

「命令だ。して欲しいことがあるなら言うんだ!」

「あぁぁぁっ♡ もっとっ♡ もっとしてぇっ♡ 優しくなくて、いいのぉっ♡ 旦那様のっ、雄々しい姿っ♡ もっと見たいっ♡ 感じたいですっ♡ シーアのことっ♡ もっとぉ、求めてくださいっ♡ 強くっ、深くぅっ♡」

 

シーアはより強い刺激を求めていた。

人間女性より性感帯が深く広い妖女の体は、自然と力強いセックスを求める。

それは男を獰猛にしなければ得られないから、結果として被虐の先に悦びを見出してしまう。

シーアはいま、そういう貪欲な妖女として開眼したのだ。

 

「いいぞっ。さあ、後ろを向いて四つん這いになるんだ!」

「はい♡ 聞きますっ♡ 旦那様のご命令、聞かせてください……っ♡」

 

シーアは嬉々として従う。

妖女の被虐趣味と、奴隷の忠誠心、その二つがすっかり混ざり合っていた。

 

「膝を立てて、お尻を上げるんだ」

「はぅぅ♡」

 

言われた通りにしたシーアの尻を撫でつつ、メイド服のスカートをまくり上げ、可愛らしい貝殻のような割れ目に剛直をあてがう。

 

「あぁぁぁ~~っ♡」

 

シーアは、正常位とは異なる角度で肉棒に貫かれ、喉を仰け反らせた。

藤次はシーアの腰を掴んで引き寄せながら、背後からのピストンを開始する。

 

「あふっ♡ はぁんっ♡ んふっ♡ ううっ♡ あふっ♡ ふあぁっ♡」

 

藤次の激しい突き入れに、シーアは言葉を紡ぐ余裕もなく、喘ぐことしかできない。

しかしその嬌声は、彼女がより大きな快感を得ていることを、如実に物語っていた。

 

「ああぁイクッ♡ イクイクイクぅぅっ♡」

 

そうして瞬く間に絶頂し、背中を大きくのたうたせる。

 

「はは、バックが気に入ったみたいだなっ。男の味を知った途端これかっ、エッチな子だ!」

「ひぁうぅ♡ お許し、くださいっ♡ 勝手に、イってばっかりでぇ♡ ごめんなさいっ♡」

 

銀髪を振り乱しながらこちらを見るシーア。

目は涙目でありながら欲情に染まり、口からは涎と嬌声が止まらない。

 

「いいぞ、許してやるっ。その代わり、もう俺も遠慮しないぞ!」

 

藤次はシーアの細い腰を掴むと、自らの快感のために腰を振る。

ぱんぱんぱんぱんっ! と、シーアの柳腰には過剰なくらいの衝突音を、短い間隔で打ち鳴らす。

 

「あああぁぁぁっ♡ しゅごいっ♡ 旦那様がぁっ♡ 私をっ、征服してりゅっ♡ 征服してましゅっ♡ あぁぁイクッ♡ イってりゅのにぃっ♡ またイっちゃいますっ♡」

 

シーアはもはや、自分が何度達しているのか、数えることさえできなくなっていた。

 

「いいぞ、お前は最高の奴隷だな、シーアっ」

「ああぁぁ♡ 嬉しいっ♡ もっとぉ♡ 旦那様ぁっ♡ もっとぉ、支配してくださいっ♡

 可愛がるだけじゃなくてっ♡ 私のっ、心も体もっ♡ 従えてくださいませっ♡」

 

シーアは完全に、蹂躙されるようなセックスを愉しんでいた。

自分は無遠慮な手付きで弄ばれるほど快感なのだと、心身ともに理解してしまった。

 

「いいぞっ。このおまんこも、おっぱいも、体中全部! 今日から俺のものだ!」

 

背後からシーアの胸を掴み上げ、膝立ちにさせて高速ピストンを打ち上げる。

 

「あひゃあっっ♡ すごっ、すごいですっ♡ 旦那様っ♡ なるっ♡ なりましゅっ♡

 シーアのからだっ♡ だんなさまのものなのぉっ♡ 旦那様のっ♡ 慰み者に、してぇっ♡」

 

シーアは喜悦に咽び泣きながら、自ら尻を押しつけてくる。

 

「もちろんだっ! 望み通り、滅茶苦茶にして、ずっと可愛がってやるっ!」

 

気がつけば藤次の理性も焼き切れ、性獣としか呼べない情欲に支配される。

それがシーアを服従させたというより……シーアの魔性に、そうさせられていた。

 

両者とも、それを自覚することもなく――

 

「っぐ、出るぞ!」

「ああっ♡ 来てっ♡ 旦那様ぁっ♡ シーアの中でっ、イってくださいっ♡」

 

同時に絶頂を迎えた。

どくんどくん、とシーアの膣内で脈打つ肉棒。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ っ っ っ ♡♡♡」

 

雄叫びのようなシーアの嬌声が、寝室の壁を震わせた。

 

「はぁ、はぁ……っ」

「はひっ♡ はぁぁ♡ あっ♡ ああぁぁ……っ♡」

 

藤次は半ば放心状態で荒い呼吸を繰り返し、シーアはほとんど意識を失っている。

 

(ああ……やってしまった……)

 

結局、シーアを抱いてしまった。

いいや、主人と奴隷の立場に漬け込んで、犯してしまった。

もはや言い訳も後戻りもできない――彼女やその家族が望んだ通りの展開だ。

 

(まったく……妖女というものは、聞いていたより恐ろしいな……)

 

この日、シーアの体を支配したのは藤次だが――

 

藤次の欲望を支配したのは、間違いなくシーアだった。

 

 

 

 

 

翌日、シーアがどうなったかというと――

 

「~~♪」

 

とても上機嫌だった。

 

「朝から豪勢だな……」

「はいっ。旦那様には精を――こほん。

 主人の健康を保つのも奴隷の務めですのでっ」

 

朝食の席には、妖魔界の食材をふんだんに使われた料理が並んでいた。

それでいて味付けには味噌や醤油が使われ、日本人にも食べやすい。

人間界に来てから、人間界の料理を学んできた成果だろう。

 

「疲れているだろうに。せめて午前中くらい休んでいいんだぞ?」

「はぅ♡」

 

疲れを指摘されたシーアは、昨夜のことを思い出してか赤面する。

メイド服の中で内股気味になり、僅かだが身をくねらせていた。

 

「お、お気遣いありがとうございます……ですがその、むしろ元気をいただいたといいますか、興奮冷めやらぬと申しますか……と、とにかくっ、お休みになるのは旦那様の方ですのでっ!」

 

昨日はあの後も、シャワーを浴びた後にたっぷり愉しんだ。

「命令だ」と言われる度に燃え上がるシーアとは、もう一通りの体位を試してある。

体に疲労はあるだろうが、それ以上に多幸感が残っていて、じっとしていられない様子だ。

 

「そうか、ならゆっくりさせてもらおうかな」

「はいっ」

 

シーアの言葉に甘えさせてもらうと、彼女は喜色を隠さない。

流石に学んだ。

シーアにとっては仕事が楽になるより、仕事をさせてもらう方が安心するのだろう。

 

「はぁ……これです。これが奴隷のあるべき姿なんです。

 姫のように可愛がられるなんて言語道断っ。身を粉にして尽くすことでしか得られぬ誉れがあるのですっ」

 

なにやら身を抱きながら独白しているシーアを見て、藤次は小さく溜息を吐く。

肉体関係を持ったことで、気付いたことがある。

 

「ですから旦那様も、どうかご遠慮なく……『ご命令』、くださいまし♡」

 

以前は、シーアはその立場から、藤次に対して過度の忠誠を誓っているのだと思った。

もちろんそれもあるのだろうが――たぶん、一番の理由は、当人の性癖だ。

求められたり、頼られたり、必要とされたりすることが嬉しい。

粗略な扱いを受けても、「これは自分にしかできないことなんだ」と苦痛を快感にすり替える。

平たく言って、少し屈折したMである。

 

「なら、早速だが――」

「はいっ、なんなりとっ」

 

目を輝かせたシーアに微苦笑しつつ、藤次は箸を置く。

 

「今日は君の服を買いに行くから、ついてきなさい」

「はいっ、旦那さ……ま?」

 

こてん、と首を傾げられた。

服を買い与えることについては、先日も抗議を受けたばかりだが、

 

「勘違いをするな。いつもメイド服ばかりじゃ飽きるからだ。

 夜の相手をしてくれるなら、色んな服装で愉しまないとな」

「はぅ……そ、そういうこと、なら……♡」

 

わざといやらしい顔で笑うと、シーアは身を抱きながら従う。

 

「食事も休息も俺と同じものをしっかりとるように。

 痩せて肉付きの悪い女では抱き心地が悪いからな」

「はい……仰せのままに♡」

「勉強も怠らないように。学のない女は飽きも早い」

「はい――え?」

 

なんだかおかしいと気付いたのだろう、シーアは小首を傾げた。

 

「ああそうだ、ご両親にも改めて手紙を書かないとな」

「旦那様?」

 

シーアが頬をぴくぴくさせながら、問いかける。

 

「鬼畜なご主人様っぽく命令しつつ、実際は私を可愛がろうとしてしませんか?」

「俺の奴隷をどう扱おうと、俺の勝手だろう?」

 

悪役みたいなことを言うと、シーアは嬉しさ半分お怒り半分といった表情で赤くなる。

 

「もうっ! それじゃ肝心なところが変わってないじゃないですかぁぁぁっ!」

 

シーアの抗議する声が、窓からマンションの外へと響き渡るのだった。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

今回の主人公は大人なので、なかなか手出ししませんでしたね。
この主従を描く奴隷編は、もうしばらく続きます。


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幕間 とある人間女性の婚活(非エロ)

 

 

 

彼女の旧姓は西条という。

西条藤次の、元妻だ。

 

「現状では、これ以上の慰謝料減額は難しいかと……」

 

弁護士にそう言われたのは、去年のこと。

ある種の詐欺に引っ掛かって、夫から離婚を宣言された後のことだ。

 

「なんでこっちが払うんですか!? 被害者ですよ!?」

 

事の発端は、SNS上で横行している詐欺だ。

魔力AIなるものが世に表れて以来、人を騙す技術も無駄に進歩している。

例えば、どう見ても人間にしか見えない画像や動画を作り出し、それを用いて人を騙すこと。

 

リテラシーのある人間なら「今日びこんなのに引っ掛かるわけあるか」というものらしいが、彼女のリテラシーは低かった。

 

AIの男を本物と思い込み、卓越した楽器演奏や歌声を披露する彼のファンとなった。

やがてファンの垣根を越えたようなやりとりが起き、泣ける事情が明かされ、金が必要であるとほのめかされる。

いまにして思えば、頭の緩い女しか引っ掛からなさそうなロマンス詐欺だった。

それを不特定多数の人間に、全自動で同時にやっていたというのだから、最近のAI技術には驚きだ。

 

「相手が詐欺のため作られた仮想上のものであることから、慰謝料としては低額です。

 本物だと認識した状態で恋愛関係になりお金を送ったことで、不倫に相当すると判定された判例があり……」

 

例えるなら、囮捜査の殺し屋に依頼をしただけでも、殺人未遂が成立するように。

パートナーへの裏切りを自覚した上で金を送った時点で、条件を満たすと判定されたらしい。

生身の人間と肉体関係を持った場合に比べれば格安だったし、詐欺に注ぎ込んだ金額に比べればよほど少額だ。

 

「だからって……っ」

 

こんなひどい話があるだろうか?

夫婦なのだから、もっと話し合うべきじゃないか。

それをいきなり離婚だなんて。

 

ちょっと貯金に手を付けて、夫の年収分くらいの金額を貢いだだけなのに!

 

「これで赤の他人だ。壮健でな」

 

夫が離婚の意思を覆すことは、ついぞ無かった。

 

 

かくして――彼女の名字は、『西条』ではなくなったのである。

 

 

 

 

「もう十分に休んだだろう。パートでもいいから仕事に出なさい」

 

実家に帰ってしばらく経つと、理解の無い父にそう言われた。

こちらは傷心だというのに、元夫といい父といい、男というものはなぜこうも人の気持ちが分からないのか。

 

だが、これはこれで、いい機会かもしれない。

 

(もっといい男を探そう)

 

要は生活できればいいのだから、再び専業主婦に就職しても文句はあるまい。

そうすれば、男に裏切られた娘に優しくできない親の元など、こちらから出て行ってやる。

 

「……どこかに勤めた方がいいんじゃないかしら?」

 

再婚活動を始めると聞いた母は、少し渋い顔で言っていた。

 

たしかに、大学を卒業した後は、企業に勤めていた。

 

しかし、専業主婦である母は知らないのだ。最近の女性の職業事情を。

 

なんといっても、魔力AIを使える妖女ばかりが優遇される。

生まれ持った魔力で楽をして、多くの給料をもらい、出世していくのだ。

人間女性に回ってくる仕事は、『魔力がなくてもできる仕事』だけで、待遇もそれ相応。

 

――差別である!

 

数年ほど務めて痛感した。いまの世の中、女性は働くだけ損なのだ。

それに、この歳になって新入社員として年下から指導されるのは嫌だし、人生を豊かにするためにはもっと自分の時間を大事にしなきゃならないのでフルタイムはちょっと……

 

とにかく、自分は顔面偏差値には恵まれているし、その強みを活かした人生設計をする方が賢い。

 

よって目指すは、就活より婚活。

前の夫ともそこで出会ったのだから、次はもっといい男を見つけられるだろう。

 

家事を分担してくれて、すぐに子供を欲しがらず、些細なことで怒らない男がいい。

悪くない程度の顔と、低くない程度の背と、まともな性格さえあればそれでいい。

 

流石に若いとは言えない歳になってしまったので、年収については勉強する。

いやむしろ、若い世代ときたら妖女の性的な魅力に釣られる猿ばかりだ。

しかし大人になれば、落ち着いていて聡明な年上の人間女性を求めるはずである。

 

そういう、『普通の男』に出会えさえすればいいのだ!

 

 

 

 

かくして訪れた、久々の婚活パーティだったが、

 

(男が、いない……っ!)

 

そもそも男性の出席者が少数だった。

男女比およそ1:4、男が10に対して女が40といったところだ。

しかも女性側は参加人数の都合で『抽選』である。

つまり、男の参加者がそもそも少なく、女の参加者が多すぎるということだろう。

 

(しかも、妖女ばっかり……)

 

女性側の参加者には、妖女が多かった。

はち切れそうなスタイルのエルフ系や角系、十代にしか見えない獣人系やドワーフ系まで。

半数以上が妖女であり、皆一様に美女か美少女だ。

 

「本当にこれでやるの……?」

 

同じ参加者の人間女性が呟いていた。

 

その気持ちは分かる。

人間女性が妖女と比較されるという図式が、そもそもストレスなのだ。

 

なぜストレスなのか? それを言わせるのは紳士的じゃない。

男なんて、妖女の方に目が行くに決まってる。

 

(なんで妖女(サキュ)人女(ウーマン)を一緒にするのよっ。

 主催はなに考えてるの!? 別々にしなさいよっ!!)

 

おまけに人数差があるせいで、トークタイムもおかしい。

男性一人が腰掛けた席に、女性が四人ずつスタッフに案内され、順番に挨拶や質問をする。

女性側からすると、面接官を前にして集団面接を受けている気分だ。

男性側からしても、四人の女性から囲まれるようでプレッシャーだろう。

 

(元から婚活市場は女余りで、妖女が来てからもっと男不足になったって聞くけど……)

 

予想以上の倍率だった。

自分が若い頃は、概ね男女同数だったが、僅か数年でここまで変わるのか。

 

それでも何とかトークを始めると、ここでも妖女と人間女性に違いが出る。

 

まず、妖女のプロフに記されている年齢や職業からして、若かったり国際企業だったりする。

自己紹介にしても、『○○に勤めており年にこのくらい頂いている』『共働きでもいいし、必要なら夫を養う蓄えがある』『子供ができたら親族の助けを受けられる』『一夫多妻の家庭を希望する』など、目を丸くするようなものが多い。

妖魔界においてはそれが普通なのだろうが……一夫一妻の専業主婦を希望する自分が、相対的にどう見えるかという話だ。

 

これでは自分が、『妖女に及ばない美しさだけを売りに、養ってくれる男を探しに来た実質ニート志望』みたいではないか!

 

ただ専業主婦希望の実家住み家事手伝いバツイチ3X歳というだけでそんな目で見られるなんて、心外な!

 

「では、中間集計の後、フリータイムとなります」

 

婚活パーティの定番として、中間集計が行われる。

つまり、総当たりで面談をした後、誰に興味があるかを記入した紙をスタッフに預ける。

記入した相手には番号などが記されたカードが渡され、後のフリータイムで有利に働く。

 

――自分には、誰のカードも届かなかった。

 

(ほら、やっぱり男は妖女ばっかり……っ!)

 

フリータイムになると、男性のほとんどが妖女と歓談しており、その後にお義理で人間女性と話をしている。

正直この時点で帰りたくなったが、最後にもう一度だけ、マッチングを希望する男性を見定めて提出。

もしこれで、相手側も自分とのマッチングを希望していれば、パーティの仕上げに『カップル成立おめでとう』とばかりに発表されるのだが――

 

マッチングが成立したのは、ほとんど妖女だった。

自分がマッチングを希望した男だけは、別の人間女性とマッチングしていた。

 

 

――――結論、日本の男はロリコンである!!

 

 

結局は、若くて胸の大きな美少女が大好物なのだ。

ネットでは『家計に対する責任感があるから』『子育てに親族を挙げて協力的だから』『一夫多妻の方が経済的に安定するから』などと、もっともらしい理由をあげつらっているが、本音はただの性欲に違いない。そうに決まってる。

そんな日本の男に期待して婚活パーティになど来たことが、そもそも間違いだったのだ。

 

(こんなことなら、離婚なんてしなければ……)

 

元夫のことを思い出しかけて、首を振った。

 

そんなわけがない。

 

自分に離婚届を突き付けたあの男が、実は一生に二度とない優良物件だったなんて。

 

自分の価値とは、若くて美人で稼ぐ夫がいるというだけで、加齢と離婚でそれを失えば無価値だなんて。

 

そんな無価値な自分の人生は、これから転落していくだけだなんて。

 

(そんなわけ、ない……っ)

 

悪い想像を振り払うように、彼女は婚活会場を後にする。

 

――同じ建物、別の会場で、元夫がとある奴隷と出会っていることなど、知る由もなく。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございます。

ちょいと「ざまぁ」に挑戦すべく、元妻でした。
いざ書くとなると、匙加減が難しいですね。
現実的に人間の転落を描くと、重い話が長引くし、
かといって手短にしすぎると知能デバフ感が強くなるし。
意外と職人芸なのでは? ざまぁ。


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第二話(前編)

 

 

シーアの職業は、奴隷以外から選ぶなら家政婦である。

人間界で奴隷と言うと極めて心証が悪いそうなので、表ではそう名乗っている。

今日も愛しの旦那様を仕事に見送り、家事に勤しむ。

 

「……もう終わっちゃった」

 

昼前には片付いた。

 

(どうしよう……人間界の家事、楽すぎる……っ!)

 

愕然と膝をつくメイドである。

洗濯・食器洗い・床掃除は、機械に任せるだけ。

汚れは洗剤で瞬く間に落ち、ちょっと歩けば高品質な品を扱う店がある。

細かな隙間まで掃除して、買い出しまで済ませても、まだ午前中だった。

 

(こんな条件でお給金をいただいてしまうなんて……なにかの詐欺じゃないですか?)

 

後は藤次が帰ってくるまで自由時間だ。

藤次からは古いノートPCが提供されており、家の設備も自由に使っていいらしい。

これから藤次が帰宅するまで、四半日以上という長い休憩が始まるのだ。

 

(うぅ、他の奴隷の子たちは今頃、どこかの農地や工場で汗を流してるはずなのに……)

 

そちらに比べれば、遊んでいるようなものだった。

 

(勉強……せめて、与えられた時間で勉強しないと……っ)

 

妙な罪悪感に駆られながら、シーアは本を手に取る。

 

シーアの故郷は、技術的な進歩に遅れをとった国だ。

封建的な社会や宗教観に固執した旧体制は、人間界という新世界を強く警戒し、断絶を選んだ。

結果、人間界の歴史や技術から学んだ新体制派に敗北、シーアの一族も没落した運びである。

 

だからシーアは学ばなければならない。

 

そして驚いたことに、この日本という国は、学ぶこと自体はどこでもできる。

市民図書館、町の本屋、テレビにインターネット、知識の教授に積極的な知識人たち。

だから学校は無用とまでは言わないが、勤勉であれば結果の出る環境が整っているのだ。

 

(先ずは日本語の筆記、礼儀作法と表計算に……)

 

同年代とはだいぶ異なるカリキュラムなのは、必要性を感じる順に学んでいるからだ。

翻訳魔法で日本語の会話と解読は問題ないが、記入は学ばなければならない。

礼儀はメイドとして恥ずかしくないように、表計算は収支管理のためだ。

 

(あと、旦那様が出してくださった『宿題』も……)

 

日本語に関しては、ネイティブである藤次が簡単な先生をしてくれている。

といっても、ビジネス例文を書かせたりする程度だが、実践的だ。

 

(あ、ここの表現……)

 

謝るときの言葉を『申し訳ありません』としているが、よりよいのは『申し訳ございません』だ。

回答欄を書き直すべきだが……

 

「…………」

 

あえて、シーアは間違いをそのままにしておいた。

 

 

最近の藤次は、仕事の終わりが待ち遠しかった。

家に帰れば、可憐で健気な奴隷が、帰りを待っているからだ。

 

「お帰りなさいませ、旦那様」

 

そう出迎えてもらって、上着と鞄を預ける。

一緒に夕食をとり、一日の出来事を共有して、それぞれの昔話をしたりもする。

なにより――

 

「シーア、今日は一緒にお風呂に入ろう」

「はうっ」

 

食器を洗っていた彼女の小柄を、こうして背後から抱きしめるとき、男として無上の幸福を感じるのだ。

 

「一日の疲れを、シーアに癒やしてほしいんだ。

 ああ、もちろん俺がシーアを洗ってあげてもいいんだぞ?」

「そ、そのようなことは……」

 

頬を染めてもじもじとしながら、シーアは遠慮がちにこちらを見上げて、

 

「……ご命令、ですか?」

 

奴隷の立場、誘惑禁止条例――自分から求められない妖女は、男からの『強要』を催促する。

 

「ああ、命令だ。お風呂で主人に奉仕するんだ」

「あ……っ♡」

 

藤次が言うと、チョーカーのように見える奴隷の首輪が薄く発光する。

軽度の催眠がかかり、主人の命令に従わなければならないという意識への干渉が起きる。

()()()()()()()――とでも思っているのか、

 

「……仰せのままに♡」

 

シーアは淫靡な笑みを浮かべて、藤次の胸板に身を寄せるのだった。

 

 

琥珀色の肌が、白い泡に塗れる。

シーアはその裸身を、マットの上で仰向けになった藤次に擦り付けていった。

 

「んっ、ふぅっ♡」

 

柔らかすぎる乳房の感触が、胸板から腹にかけてを上下する。

シーアは藤次の両肩に手を添えながら、細い体をくねらせていた。

 

「いいぞシーア、気持ちいいよ」

「はい♡ もっと、頑張ります……んんっ♡」

 

長い銀髪を整えて、シーアは胸を藤次へ押し付け、頬ずりするように体を滑らせる。

石鹸にまみれた体は、女体の柔らかさと摩擦の少なさで、独特の心地よさを与えてくれた。

通販で買ったマットも寝心地がよく、体の前後がどちらも気持ちがいい。

 

「シーアのことも、洗ってやろうな」

「あんっ♡」

 

藤次の手がシーアの背中や尻を愛撫する。

逞しい手指がつるつると褐色肌を走り、尻肉や太股を掴もうとしては滑る。

普段とは異なるその感触に、シーアの口から甘い声が零れ出た。

 

「はぁっ、あ、あっ♡ 旦那様ぁ♡ 旦那様は、そんなこと、しなくても……ひゃうぅっ♡」

「ほら、シーアも頑張れ。太股で俺のを挟んでごらん?」

「は、はいっ♡ こう、でしょうか? あうぅ♡ こすれて……あんっ♡」

 

藤次はシーアの腰を掴み、前後に揺すりながら、自らもシーアの秘所を擦るようにして動く。

 

「はぅんっ♡ 旦那様ぁ♡ 動いちゃ駄目です♡ いまは、私が、旦那様の疲れた体を、癒やしてあげるんですっ♡」

 

シーアも負けじと体を動かし、藤次の上半身を両腕で愛撫しながら、胸をより強く擦り付ける。

しかし、敏感な乳首が擦れ、割れ目に肉棒が滑るほど、シーアの快感は蓄積されていった。

 

「ふあっ♡ 旦那様、わたしぃ……あ、あっ、ああっ♡ あぁぁっ♡」

 

シーアはビクンと背筋を伸ばし、全身を大きく痙攣させた。

 

「あ、あは……はあ……っ♡」

 

どうやらシーアは、体を擦り合うだけで達してしまったらしい。

 

「もうイってくれたのか。可愛いなぁ、シーアは」

「申し訳、ございません……っ♡ また、旦那様より、先にぃ……♡」

 

奴隷として、主人を慰めることが優先だと思っているのだろう。

快感に弱い妖女では不利な勝負だが、シーアは自分が先に達するほど、汚名返上とばかりに献身的になる。

 

「どうか、ご命令ください♡ この愚かな奴隷を、旦那様が操ってくださいませ♡」

 

もっと命令してほしいと言っていた。

奴隷として主人に命令されて奉仕する――それを免罪符に、より深い行為をしたいのだろう。

なんだかんだいって年頃の妖女であるシーアは、覚えてしまった性の悦びで頭がいっぱいなのだ。

それを満たすために、藤次に「女奴隷を弄ぶ好色な主人」の役を求めている。

 

「よしよし、お前はやっぱり可愛いな」

 

そんなシーアの内心を指摘するほど野暮ではない。

若い妖女が満足できるよう、全力でその役を担うだけだ。

 

「さあ、起き上がれ。騎乗位でハメるんだ。旦那様を待たせるな」

「はい……♡」

 

仰向けになる藤次の上で、シーアが腰を跨ぐように膝立ちとなる。

熱い吐息を零しながら肉棒を手に取り、感触を確かめるように撫でながら、己の秘所に沿えた。

 

「あ……あっ……ぅぅぅ……っ♡」

 

シーアの膣口が、藤次の亀頭を飲み込んでいく。

 

「そこから、一気に腰を落とすんだ」

「はぅっ♡ そんなっ、だめ、怖いです……っ♡ 旦那様の、おっきいから……っ♡」

「命令だ」

 

シーアのクリトリスに手を伸ばし、軽く揉むように抓る。

 

「んあぁっ!? そのっ♡ やっ♡ ああぁぁぁっ♡」

 

びくっ、びくっ――と、軽い愛撫だというのに激しく震える。

亀頭から感じる膣内の濡れ具合も充分だ。むしろ吸い上げようとするように締めてきている。

藤次と肉体関係を持って以来、シーアの体は色を覚え、男の手指と肉棒に飢えてしまった。

ただ、シーアの精神が、まだ自分の体の淫らさを肯定しきれていないのだ。

 

「どうした? 旦那様の言うことが聞けないのか? ん? シーアはそんな子じゃないだろう?」

 

だからこうして、自分から淫らになれないシーアの背中を、命令という形で押してやる。

 

「はひっ♡ しま、しゅ♡ 旦那様の、言う通りに……んんっ、んんんん~っ♡」

 

シーアは身を抱くように自分の両腕を掴んで、腰を落としていく。

一気に、というには緩やかだったが、彼女が自発的にできる精一杯の速さなのだろう。

 

「はぁっ♡ はぁぁ♡ おっき♡ 旦那様、がぁ♡ 中を、いっぱいにぃ……っ♡」

 

もう何度も受け入れてきたというのに、シーアは挿入するたびに初々しい反応をする。

回を重ねるごとに性感帯が開発され、前よりも鋭敏に陰茎を感じてしまっているからだろう。

 

「まだだ、まだ一番奥まで届いてないぞ?」

「あうっ♡ お許しくださいっ♡ 奥は、届いちゃったら……私、おかしくなって、ご奉仕できなく……っ♡」

 

シーアの腰は、先端がポルチオに触れる直前で止まっている。

そこに肉棒が届いたら、どんなに乱れてしまうのかを、嫌というほど思い知っているからだ。

 

「命令だと――」

 

藤次は嗜虐的な笑みを浮かべて、シーアの腰を両手で掴むと、

 

「言っただろう!」

 

一気に引き落として、シーアの子宮口を突き上げた。

 

「ひあぁぁぁぁっ!♡」

 

ずちゅんっと音がして、二人の結合が深くなる。

 

「あっ、ぁぁぁっ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁっ♡♡♡」

 

シーアは目を見開き、背筋を反らせ、喉から嬌声を途切れさせていた。

膣内は絶頂の痙攣で肉棒を包み込み、豊かな乳房が震え、尖った乳首を揺らしている。

 

「はぁっ♡ あ、あぁ♡ だんな、しゃま♡ あぐっ♡ あっあああぁぁぁっ♡」

 

シーアは自分の痙攣によって、子宮口に肉棒を擦りつけてしまい、更なる快感に襲われている。

藤次は一切動いていないというのに、シーアはもう二度目の絶頂を迎えてしまった。

 

「すごいな、シーアは騎乗位に弱かったのか」

「はひゅっ♡ らって♡ 旦那様のがっ♡ 奥をぉ♡」

「落ち着きなさい。動かずに、慣れるのを待ってやるから」

 

涙目で震えているシーアが落ち着くように太股を撫でる。

しかし、それはかえってシーアに火を点けてしまったようだ。

 

「だい、じょうぶ、ですっ♡ でき、ますっ♡ 旦那様を、気持ちよくするんですぅ♡」

 

シーアはぎこちなく腰を前後させる。

 

「はぁ♡ んんぅ♡ 旦那様ぁ♡ どうですか? 私の中、きもちいい、です、か?」

「ああ、最高だよ」

 

総じて名器ばかりな妖女なので、気持ちよくはある。

それでも他の体位のときと比べて単調なセックスだ。

しかし、健気にこちらを気持ちよくしようとするシーアが愛しくて、意地悪は言えない。

 

「好きなように動いてごらん。いくらでもイっていいからな?」

「はいぃっ♡ あぁっ♡ らめっ♡ またっ♡ 旦那様に、お優しく、されてるっ♡」

 

シーアは藤次の胸板に手を置き、腰を縦回転させるように動かす。

 

「旦那様っ♡ 突いてぇっ♡ どうか、お好きなようにっ♡

 シーアに、奴隷の務めっ、果たさせてくださいっ♡」

 

シーアが懇願してくる。

藤次に気遣われていることを知って、悔しく思ったのだろう。

 

「いいのか? 無理しなくても……」

「無理なんかじゃ、ないですっ♡ ううん、無理、させてくださいっ♡

 私の、臆病な体っ、旦那様の手で、変えてくださいっ♡

 わたし、きっと、おかしくなるけど♡ 途中で、止めないでっ♡

 旦那様を気持ちよくできるように、なりたいんですっ♡」

 

息を呑んだ。

なんて献身的で、健気で、淫らな子なんだろうか。

 

「分かった。後悔しても、知らないぞ……っ!」

 

藤次はシーアの腰を掴むと、腰を踊らせ始める。

 

じゅぱん! じゅぱっ! と、激しい水音が浴室に反響した。

 

「ああぁっ♡ はげひっ♡ すごっ♡ これっ♡ こんなのっ♡」

 

シーアの膣内を掻き回すように肉棒を動かす。

彼女の弱点など知り尽くしていたつもりだが、甘かったようだ。

日に日に、回を重ねるごとに、弱点が増えていく。

どこを突いてどこを掻いても、シーアの膣内は激しい快感に震えていた。

 

「ひぃっ♡ だめっ♡ らめれすっ♡ そんなにされたらっ♡ 私っ♡ すぐ、イっちゃって♡」

「イっていいんだ! いいや、イけっ! 旦那様のおちんぽで乱れ狂うんだっ!」

「あああぁぁぁっ♡ イクっ♡ もうイキますっ♡ あっあっあああぁぁぁっ♡」

 

びくんっとシーアの体が跳ね上がり、結合部から潮が噴き出す。

同時に、膣内の締め付けも強くなった。

 

「はぁ……ぁ……ぁ……ぁ……ぁぁ……♡」

 

シーアは絶頂後の余韻に浸りながら、またゆっくりと腰をくねらせた。

 

「まだぁ♡ まだなのぉ♡ 旦那様、もぉ♡ イって、くれないと♡」

 

半ば意識を失いかけているようにも見えるが、シーアは藤次を射精させようとしている。

妖女の情欲と、奴隷の献身、その二つが混ざり合ったような顔だ。

 

「なら……続きは湯船でな?」

「はぁい♡ 旦那様ぁ♡」

 

シーアを抱き上げると、彼女は幼子のように抱き付いて、湯船に運ばれる。

藤次が湯の中に腰を降ろすと、シーアは対面座位の姿勢で、藤次にしなだれかかった。

 

「あふっ♡ だんなさまっ♡ 好き♡ しゅきぃ♡」

 

意識が朦朧としているせいか、普段なら奴隷だからと口にしないようなことを言って、シーアは藤次の首筋にキスをする。

 

「俺もだよ、シーア。俺の奴隷になってくれて、ありがとうな」

 

そんなシーアの尻を掴み、湯船の中でゆっくり腰を動かす。

 

「あ♡ あふ♡ あぁ♡」

 

水中でのスローペースな挿入に、シーアも心地よさそうな喘ぎ声を響かせた。

湯の跳ねる音と、シーアの小刻みな甘い声。

しばらくその演奏に耳を傾けて、藤次は緩やかに精を解き放つのだった。

 

 

 

 

誘惑禁止条例。

人間界に多数の妖女が渡来して起きた性の退廃、この反動で生まれた条例。

解釈によっては『女性が男性を誘うこと』を禁じている、現代日本のルールだ。

 

この禁欲を最も守らなければならないのが、妖女である。

愚かな同胞が起こした『ピンクハザード』のせいで、人間界は妖女の『誘惑』に過敏だ。

条例違反で済むならまだいいが、そこから刑事事件になって性犯罪の前科がつけば、国外退去もありうる。

 

負うリスクの大きさゆえ、妖女はひときわ誘惑禁止条例を遵守しなければならないのだ。

 

だからシーアは、藤次を誘えない。

抱いて欲しいとは言えない、そういう態度もとれない、露出の多い服装も避けるべきだ。

藤次はきっと、そのくらいなら許してくれるだろうが、それでも駄目だ。

なぜなら――

 

(絶対、歯止めが利かなくなっちゃいます……っ♡)

 

際限の無い肉欲の日々が幕を開けるに違いないからだ。

 

妖女の性欲は人間の想像を超えている。

この人と結ばれたいという男にひとたび出会えば、もう猿だ。

数々のカップルが場所を問わず交わったという『ピンクハザード』は、概ね妖女の側が我慢できずに起きている。

 

シーアとて妖女、抑えのきかないメスオオカミ。

本音を言えば、時間の許す限り藤次とセックスしたい。

そういうわけにもいかないから、条例は破らないという枷を、自らに課している。

 

(でも……)

 

それでも、押さえ込んでも欲は消えない。

だから妖女は、誘惑禁止条例の『抜け穴』に、自然と気付く。

 

(旦那様に……乱暴、()()()()()()()()……♡)

 

性犯罪被害は、条例違反にあたらない。

被害者となってしまえば、条例を破ったことにはならない。

 

シンプルに押し倒されれば、電車のように痴漢されれば――

脅されれば、捕まれば、断れなくさせられれば――

 

この浅ましい体は、どこまでも昇天する。

 

なにせ――愛する人が、倫理道徳を踏みにじるほどの強い熱量で、自分を愛してくれるのだから。

 

(あの聖人みたいにお優しい方が……私を……っ♡)

 

ひとたびその瞬間を求めれば、どんな妖女も策を練る。

 

彼の欲望を掻き立てて、雄々しくなってくれるように。

素知らぬ顔で、しかし心臓に早鐘を打たせながら、そうなるように仕向けるのだ。

 

 

 

 

そんなシーアの思惑は、藤次にも伝わっていた。

 

「こらシーア、また同じ問題を間違えているじゃないか」

「はぅ……申し訳ございません……」

 

藤次が確認していたのは、シーアに出していた『宿題』だ。

学校には通っていないが、シーアが日本に来ている目的は就労だけではなく留学でもある。

それに協力するため、ビジネスで役立つ細々とした日本語表現を教えているのだが、

 

(言えてるじゃないか)

 

『申し訳ありません』より『申し訳ございません』の方がいいという、些細な間違いだ。

別に前者でも問題はないのだが、後者の方がより丁寧というだけのこと。

しかし、前にも同じ間違いをしていたとなれば、叱らねばならない。

 

「どうして間違えたりしたんだい?」

「それ、は……その……」

 

ソファーに腰掛ける藤次の隣で、シーアは頬を染める。

 

「だ、旦那様のことを……考えていたら……集中が、途切れて……」

 

それが、藤次とのセックスを指すことくらい、顔で分かった。

そう言われると責めきれない。

正直、藤次も仕事中にシーアとのことを思い出す。

 

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、だからこそよくない。

 私情で仕事を間違えてしまったら、それは言い訳の余地がないということだ」

「はい、仰る通りです……どうか、お許しください……♡」

 

シーアは藤次の腕を弱々しい力で掴むと、熱い吐息と共に見上げてくる。

発情している――まだ年若いシーアには、妖女の劣情を隠しきることができていない。

だから、彼女が同じ問題を間違えて、わざと藤次の不興を買った理由も、明白だった。

 

「旦那様……どうか、お見捨てにならないでぇ……」

「見捨てたりなんか……」

 

否定しようとして、シーアの艶然とした眼差しにより言葉を切る。

シーアの発言は本音でもあるだろうが、別の意図を含んでいた。

 

自分が、主人である藤次なしではいられない存在であること。

見捨てられないためなら、どんなことでもするということ。

そういう権力勾配を再認識させ、優越感を煽るためだ。

 

「……見捨てはしないけど、お仕置きが必要だな」

 

だから藤次は、シーアの挑発(おねだり)に乗る。

隣にいるシーアの肩を馴れ馴れしく抱き寄せ、顔を寄せて耳元で囁く。

まるで好色な中年男性が少女にセクハラをするような図だが、シーアの反応は、

 

「はぅっ♡ おし、おき……」

 

期待していた通りの言葉をもらえたという喜びが、隠せていなかった。

 

「はいっ♡ おしおき、してください♡ 愚かなシーアに、教え込んでください……っ♡」

 

シーアは抱き寄せる藤次に抵抗せず、胸にしなだれかかる。

 

「旦那様の、威厳あるお手で、シーアが奴隷だっていうこと、思い出させてくださいませ♡」

 

胸にすっぽり納まる小柄な少女が、欲情に輝く眼差しで見上げてくる。

 

「どんな仕打ちでも、耐えてみせます♡

 旦那様の信頼を取り戻すためなら、どのような辱めも、甘んじて受けます……♡」

 

言葉と共に出る吐息すら、媚薬のようだ。

シーアの全身から立ち上る妖女のフェロモンだけで、自分の中の男が騒ぐ。

まるで『誘惑』を掛けられたように、自分の心が彼女の思惑通りに変化していくのを感じた。

 

「旦那様になら……何をされても、平気ですから……ね?」

 

この女は俺の思い通りになる――

俺にはこの女を自由にする資格がある――

そんな、傲慢で好色な悪人に向けて、自分の心が転がっていく。

 

「――悪い子だな」

「ひゃうっ♡」

 

肩を抱いていた腕を下ろして、メイド服越しに尻を掴む。

シーアは甘い声を上げて、一切の抵抗をせず、よりこちらに体重を預けてきた。

 

「そうやって男を挑発するなんて、どこで覚えたんだ?

 俺が君のためを思って与えた勉強の時間に、そんなことを学んでいたのか?」

「あっ♡ 申し訳、ございませんっ♡ 旦那様を、悦ばせたくて……っ♡」

 

どうやら、悪女や小悪魔のテクニックを聞きかじってきたらしい。

それを正直に白状してしまうあたりは、可愛い子だ。

しかし、いま彼女が望んでいるのは、そういう意味での『可愛がり』ではない。

 

「悦ばせたくて? 嘘つきめ」

「ひぁうっ♡ 耳っ、やっ♡ 噛んじゃ、あぅぅっ♡」

 

カリッとエルフ耳を甘噛みすると、シーアの全身が大きく震えて、藤次の腕の中で縮こまる。

 

「もっと激しいセックスに興味が湧いたんだろう?

 いままで『人間向け』のセックスしかしてこなかったからなぁ」

「だ、旦那様ぁ……っ♡」

 

藤次はいままで、人間女性だった妻を基準にセックスをしていた。

それでもシーアは燃え上がっていたが、それは彼女が不慣れな乙女だったからだ。

一般的な妖女が求める、広く深い性感帯を満足させるような手付きは、控えめだった。

 

「ご命令……ご命令、してくださいっ♡ シーアにぃ、なんなりと、命令してくださいっ♡」

 

シーアはひたすら訴えて、藤次の首を抱く。

誘惑と取れる発言を最後まで堪えた、シーアなりの『おねだり』だった。

おもわず口角を釣り上げた藤次の顔は――好色な悪代官か何かのようで、

シーアの期待した通りの、『雄々しい男』の顔だった。

 

「なら、命令してやる――」

 

かくして藤次は、シーアの期待に応えるため、『命令』を口にするのだった。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございます。

元妻の苦悩を露知らず、エロくなっていく主従でした。
やっぱり主従といったらおしおきプレイだよね。
主従でなくてもよく「おしおきだ!」って言わせてるけど…

後編、なるべく急ぎますが、もうしばらくお待ちください。


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第二話(後編)

 

 

 

「旦那様……どうぞ」

 

シーアの部屋の前で、藤次は彼女の呼ぶ声を聞いた。

閉じていた扉を開くと、物の少ない殺風景な部屋のベッドに、シーアが腰掛けている。

 

――扇情的な、黒い下着姿で。

 

「ああ、シーア……」

 

思わず感嘆の吐息を口にする。

シーアの身に付けている下着は、藤次が買い与えたものだ。

恐縮するシーアに「自分が脱がせて愉しむため」と言って、至ってまともな服を買い与えた。

下着だけはシーア一人で選ばせたのだが、しっかり男受けするものを買っていたらしい。

 

『準備してくるから、部屋のベッドで待っていること。下着姿がいい』

 

藤次がした『命令』を、シーアはちゃんと守ったのだ。

 

「へ、変じゃ、ないですか……?」

「よく似合っている。見違えるくらい大人っぽいな」

「旦那様……視線が、熱いです……♡」

 

いまさら裸など恥じる仲でもないのに、シーアは胸元を隠す。

その仕草すらも男心をくすぐるもので、藤次は内心で舌なめずりした。

 

「さっきも言ったけど、本当に綺麗だよ……すごく興奮する……」

「はい……ありがとうございます……♡」

 

藤次に褒められると、シーアは頬を染ながら、藤次を見上げる。

潤んだその瞳は、「綺麗だよ」よりも「興奮する」という言葉に反応しているように見えた。

 

「このまま押し倒して、貪ってやりたいけど……今日はお仕置きだからな」

 

藤次は持ってきた紙袋から、道具の一つを取り出す。

 

「だ、旦那様? それは……?」

 

少し怯えたように、しかし興味を掻き立てられたように、シーアは紙袋を見る。

 

「まずは目隠しだ」

「め、目隠しって……」

 

藤次が仕事帰りに専門店で購入した、SMプレイ用のアイマスクだ。

 

「ま、待って……私、そういうのは、したことなくて……」

「命令だよ?」

 

不安そうなシーアに、藤次は笑顔で命じる。

内心興味があるように見えたシーアは、予想通りその言葉に食いついた。

 

「は、はい……♡」

 

シーアは目を閉じて顔を差し出す。

 

「そうそう、従順な奴隷で可愛いな」

「あぅ♡」

 

ひどい言葉だというのに、シーアは容姿でも褒められたように息を吐く。

そんな彼女の顔に目隠しを装着すると、花のかんばせが無骨な黒い生地に覆われる。

 

「さあ、次は両手だ。顔の前で手首を揃えるんだ」

「っ♡ お、仰せのままに……」

 

藤次は続いて、短いチェーンで繋がれたリストバンドを取り出す。

両手首を、囚人の手枷のように揃えさせる拘束具だ。

 

「さあ、できた。ああ、こうして見ると、本当に奴隷みたいだ……」

 

最初からつけていた奴隷の首輪もあって、目隠しされて両手首を拘束されたシーアは、悪党に連れ去られたエルフそのものだ。

 

「本当にも何も、私は最初から、旦那様の奴隷です……」

 

このような有様でありながら、シーアは口元に笑みさえ浮かべていた。

 

「まだ余裕があるみたいだな。命令だ、両手を頭の後ろに」

 

命令という言葉を感知した奴隷の首輪が光り、シーアに従うことを促す。

その命令に対して、自白剤を打たれたように、脳が抵抗できなくなる。

 

「は、い……♡」

 

シーアは言われた通り、拘束された両手を上げて、手枷の鎖を首後ろに掛けた。

胸元が腕で隠されなくなり、むしろ藤次に胸を差し出すような格好だ。

 

「いい子だ。そのまま足を開け」

「あぅぅ……これ、恥ずかしい、です……♡」

 

羞恥と期待の入り混じった声で返事をして、シーアは自ら両足を開いた。

ベッドの縁に腰掛けたまま細い足が開かれれば、既に湿っているクロッチが露になる。

 

「んっ、ふぅ……っ♡」

 

シーアは藤次の命令通りにしているだけだというのに、呼吸が乱れている。

これからされるであろう行為に期待して、秘所から蜜を溢れさせているのだ。

 

「こんなに濡らして……シーア、分かってるのか? ただ目隠しされて拘束されただけだぞ?」

「ひうっ♡」

 

息を吹きかけるように耳元で囁くと、シーアがぴくんっと震え上がる。

 

「エッチなところなんて指一本も触れてないのに、どうしてもう濡れてるんだ?」

「そ、それは……旦那様が、褒めて、くださったから……っ」

「それだけか? 命令だ、正直に答えろ」

 

奴隷の首輪が反応する。

強い酒が注入でもされたように、シーアの吐息が熱くなった。

 

「き、期待……して、ました……っ♡

 旦那様に、どんな風に、してもらえるんだろうって……っ♡」

「こんなものを使われても?」

 

目隠しを指先でコツコツと軽く叩くと、シーアの呼吸は更に昂ぶる。

 

「はい……っ♡ 目隠しで、見えなくなって……手枷で、抵抗できなくなったら……っ♡

 私、旦那様に、オモチャみたいに好き勝手されちゃうんだって……っ♡

 怖いのに♡ ゾクゾクするの、止まらなくて……っ♡ ああ、私、これじゃまるで……」

「ああ、シーアはMな子だな。苛められるのが大好きなんだ」

 

藤次はシーアの銀髪を撫でつつ、ゆっくりと前髪を掴んで顔を上げさせた。

 

「そんな、はず……ない、のにぃっ♡」

 

手付きこそ優しいが、乱暴を予感させる行為に、シーアは甘い声を零す。

下着の湿りが広がっていることに、彼女自身は気付いているのかどうか。

 

「でも、喜ばれてばかりじゃお仕置きにならないな――これも使おう」

 

藤次が紙袋から取り出したのは――ディルドローターだ。

手動でも遠隔でも振動をオンオフできる、ありふれた仕組みのものだが、

 

「ひぅっ!?」

 

ヴィィィィィッ! という音が鳴る。

見えていないシーアは、機械的な音に過剰な驚きを示した。

 

「なん、ですか? なんの音ですかっ!? 旦那様ぁ」

「ああ、やっぱりこういうのは初めてか。ディルドローターだよ、聞いたことはあるだろう?」

「ディルドって……その、男性の……模型、のような?」

 

シーアの出身国は技術力が遅れ気味だったという。

宗教的な理由から自慰行為に使う器具も禁制だったそうで、ローターは未知の存在に近い。

 

「そう、中の機械で振動していてね。例えば――」

 

不意打ち気味に、命令通り開いたままになっていた脚の間、秘所の部分へと押し当てる。

 

「ひあぅぅぅっ♡ やっ♡ これっ♡ これぇっ♡ なにぃ……っ!?」

 

人生で初めて体験するのだろう、性感帯へのバイブレーション。

それは、先ほどまでシーアの中にあった余裕を、一気に吹き飛ばした。

 

「下着越しに割れ目だけでこれか? じゃあクリトリスはどうだ?」

「あっ、あっ、あ゙あ゙あ゙~~~っ♡」

 

下着の上から、ぐりゅん、と強く押し付けると、シーアは濁った悲鳴を上げる。

 

「だめっ♡ これっ♡ ひぁうっ♡ やあっ♡ 旦那様っ♡ これっ♡ いやですぅっ♡」

 

声は明らかに感じていたが、珍しく『嫌だ』と口にした。

 

「まだ振動は最弱なんだがな。そんなに嫌か?」

「だ、だってぇ……それ、旦那様のじゃない……から……っ。

 旦那様の、お手々や、あれじゃないと……いやです……っ」

 

思ったよりも、可愛らしい理由からの『嫌』だった。

この時点で、目隠しも手錠も外して頭を撫でてやりたかったが――

 

「どんな辱めでも、耐えてみせるんだろう?」

「っ!」

 

自分の言葉を思い出させると、シーアの雰囲気が変わる。

 

「も、申し訳ございません……っ♡ 私、奴隷なのにっ♡ おこがましいことを……っ♡」

 

明らかな喜色の色があった。

奴隷らしくあることに誇りを持っているシーアだが、どうやらそれが性欲と結びついたらしい。

不自由な状態で辱められるという状況に、奴隷と妖女の感情が同時に燃え上がっている。

 

「どうぞ、旦那様ぁ♡ シーアに、奴隷の務めを果たさせてください♡

 愚かにも増長していた私に、誰がご主人様なのか、教えてください♡」

 

シーアはより足を開き、胸を突きだして、藤次に肢体を誇示した。

体を差し出すことで忠誠心を証明し、同時に肉欲を満たそうとしている。

 

「よく言った」

 

ごくりと唾を飲んだ藤次は、振動するディルドを、再びシーアの性感帯に押し付けていく。

 

「ひぅぅぅっ♡ 当たってっ♡ ぶるぶる震えるのっ、当たってりゅ♡」

 

下着の上から陰核に押し付けると、そこから振動が広がったように、シーアの全身が震えた。

そのまま先端でなぞるように、シーアの臍から胸へと撫で上げていく。

 

「ふぁっ♡ くぅっ♡ ひぁっ♡ だっ♡ だんなしゃま♡ くすぐったい――」

 

そう言ったシーアは、しかしディルドが乳房に触れると、ビクンッと背筋を反らす。

 

「はぁっ♡ はぁっ♡ あぁっ♡ んぁっ♡」

 

ディルドの先端は、シーアの下乳から時計回りに動いて、乳房の上を滑る。

渦巻きを描くように動いた先端は、やがて黒下着の中心部、乳首の上へと到達した。

 

「あひうっ♡」

 

ぐりっと強く押し付けられた瞬間、シーアが悲鳴を上げた。

 

「命令だ、動くな」

 

体を逃そうとしたシーアに命じると、奴隷の首輪が光って彼女の身動きを禁じる。

それはシーアに対して、全身をセメントで固められたような、手枷以上の拘束だった。

 

「あっ、あっ♡ あああぅぅぅっ♡」

 

ヴヴヴヴッと音を立てながら、ディルドの先端がシーアの乳首を奥へと押し込んでいく。

すっかり敏感になった乳首から、乳房全体へと振動が伝わっていくと、シーアの声が高くなっていった。

 

「はぁぁぁだめっ♡ 旦那様これだめぇっ♡ おっぱい、先っぽっ♡ 溶けちゃいますぅっ♡」

 

シーアは首だけ左右に振りながら、未知の快感に困惑しながらも、小刻みに達していた。

それを見て、藤次はディルドを引いて乳首から離す。

 

「はふっ♡ はぁっ♡ はぁぁっ」

 

快感の責め苦から解放されて、荒い呼吸を繰り返すシーア。

目隠しをされた顔や、黒下着に包まれた褐色肌には、珠の汗が浮いていた。

 

「まったく、ちょっと撫でてやっただけでこれか?

 ディルドの使い方は、本来こうじゃなくて――」

 

藤次はシーアのショーツに手を伸ばし、クロッチをズラして中身を露出させる。

 

「んん……っ♡」

 

シーアは一瞬恥ずかしそうな声を出したが、抵抗はしなかった。

 

「こうやって使うんだぞ?」

 

今度はディルドの先端が、肉棒を欲してひくついている陰唇へと押し付けられた。

 

「ひあっ♡ だ、旦那様っ♡ そこは……っ♡」

「安心しろ、本物ほど大きくはないから」

 

既に藤次の大きさに開発されている膣は、より小ぶりなディルドを、あっさりと受け入れる。

しかし、音もなく吸い込まれていくディルドは、その振動をシーアの膣内に広げていった。

 

「あぁぁぁっ♡ これっ、なかで、震えてっ♡ やぁぁぁっ♡」

 

ヴィィィン……という低い振動音が、シーアの膣内に隠されていく。

 

「こんなっ♡ ああんっ♡ 旦那様ぁっ♡ ごめんなさいっ♡ 私っ、こんなオモチャでっ♡ 感じ、てっ♡ あひゅううっ♡」

 

シーアの体は、早くもバイブレーションによる快感に適応し始めたようだ。

ディルドに触れた指先に、彼女の膣内が起こす快感の収縮が伝わってくる。

 

「エッチな子だなぁ。俺のモノじゃなくても感じちゃうのか? ちょっと悲しいぞ?」

「やぁっ。違うんですっ♡ 旦那様だからっ♡ 旦那様の手でっ、動かされてるからぁっ♡」

 

主人のもの以外で感じていることを指摘すると、シーアは必死に弁明する。

その様は、まるで別の男がシーアを感じさせているかのような、普段と異なる背徳感を生み出した。

 

「なら、試してやろう……」

 

藤次はディルドの端部から手を離すと、ズラしていた下着を戻して包む。

ディルドはシーアの膣内に残され、下着のクロッチが被さり、抜けないように蓋をされていた。

 

「ひあっ♡ ああぁぁっ♡ 旦那様っ♡ 中にっ、入ったまま……んんんんっ♡」

 

シーアは歯を食いしばって、声を堪えている。

『命令』により腕は下ろせず、足も開いたままなので、ディルドの振動を受け流すことができていない。

 

「ほら、いまは俺も触れてないぞ? まさかオモチャの振動だけでイったりしないよな?」

「ひうっ♡ イキ、ません……っ♡ 旦那様の、以外で……っ♡ イったり、なんかぁ……っ♡」

 

藤次の意地悪に、シーアは気付いた上で、強がってみせた。

この様子だと絶頂は遠くなさそうだが、だからこそ藤次はこう告げる。

 

「もしイってしまったら、もっと酷いお仕置きをすることになるぞ?」

「はぅぅっ♡ イキませんっ♡ 耐えて、耐えてみせましゅ……っ♡」

 

その反応は、お仕置きをされたくないのか、されてみたいのか、判別できない。

 

「そうか。なら、振動を強めてみようか」

 

藤次はリモコンを手にした。

端部のスイッチでもリモコンでも振動を操作可能な品だ。

 

「つ、強くって……あああぁぁぁっ♡」

 

シーアのショーツから聞こえる振動音が、一回りほど大きくなった。

『微弱』から『弱』になったくらいだが、シーアにとっては劇的な変化だろう。

 

「ふぁぁっ♡ ああぁぁっ♡ だめっ♡ 旦那様ぁっ♡」

 

膣内で振動し続けるディルドに、シーアは悶え苦しんでいる。

勢い余って仰向けに倒れても、両手と両足の姿勢は変えていない。

 

「ほら、もう一段階」

 

更に、『弱』から『中』へと振動数を上げる。

ヴィィィンと響く振動音が、先程よりも大きくなっていた。

 

「あひっ♡ あひぃっ♡ やめっ♡ だんなさまっ♡ 止めてっ♡ お止めくださいっ♡」

 

シーアは首を振って懇願するが、藤次の嗜虐心は止まらない。

 

「イってるんじゃないか? 命令だ、イったときはしっかり言うんだ」

「い、イってますっ♡ ごめんなさいっ♡ イって、イっていますっ♡」

「そうか。なら約束通りお仕置きだ」

 

今度は振動数を最大の『強』まで上昇させる。

 

「ひゃうっ♡ そんなっ♡ またっ♡ こんなっ♡ あっあっあっあっ♡ んんんんん~っ♡」

 

シーアの体がビクンッと跳ねた直後、膣内のディルドをぎゅっと締め付ける。

ショーツの中では愛液が噴出しており、下着はびしょ濡れになっていた。

 

「このまま、俺が飽きるまで弄んでやるからな?」

 

藤次はリモコンを操作して、強から弱へ、弱から強へと、波のように変化させていく。

 

「やぁっ♡ うそっ♡ こんな、ことってっ♡ ああぁぁっ♡ 旦那様ぁっ♡ 許してぇっ♡」

 

振動音の変化に合わせて、シーアの喘ぎも変化する。

膣内では、膣壁が収縮を繰り返し、膣圧でディルドを押し出そうとするが、ショーツに阻まれて戻される。

 

「ひぁぁぁっ♡ わたひっ♡ そんなっ♡ 旦那様にっ♡ 触れられてないのにっ♡

 あひぅっ♡ 操られて、るっ♡ 旦那様にっ、体中っ、操られてましゅっ♡」

 

シーアは目隠しされた顔を仰け反らせ、藤次に犯されているかのような台詞を口にする。

 

「まったく、オモチャひとつでそんなにイキまくって……」

「ああぁぁうぅぅっ♡ 違うんですっ♡ 旦那様にっ、していただいてるからっ♡

 オモチャでもっ、旦那様にっ、愉しんでいただけるのがっ、嬉しくてっ♡ ひぁぅぅぅっ♡」

 

駆動音と共に響くシーアの嬌声。

ベッドの上でびくんびくんっと体が跳ね上がり、それらは藤次のディルド操作で増減していた。

まるでシーア自身が、藤次に動かされるラジコンになってしまったかのようだ。

 

「っ」

 

女を一人、指先で操れるオモチャにしている――そんな背徳感と優越感に襲われる。

 

「あああぁぁぁイクイクまたイキましゅっ♡ 旦那様ぁぁぁっ♡♡♡」

 

そして一際強く、シーアの全身が大絶頂に震え上がる。

大きく背中を反らし、小刻みに痙攣し続け、やがて糸が切れたように脱力した。

藤次はディルドの振動をオフにして、シーアの様子をうかがう。

 

「はぁっ♡ はぁっ♡ はひぃ……っ♡」

 

目隠しで両眼が隠されていても、彼女が恍惚に溺れていることが、口元で分かった。

 

「まったく、旦那様をほったらかしにして、自分ばかり気持ちよくなって」

 

藤次はシーアの膣内からディルドを引き抜いた。

愛液に塗れたディルドは、先端部から糸を引いている。

 

「あひゅう♡ 申し訳、ございません♡

 今度は、旦那様がぁ♡ 気持ちよくなってください♡

 シーアの体で、気持ちよくなってぇ♡ 旦那様の、本物のが、欲しいです……っ♡」

 

いよいよ逸物を挿入されると思ったのか、シーアは犬のように息を吐きながら藤次を求める。

その要求に応えたいのは山々だが、そうはいかない――

 

「シーア……誰が、おねだりを命じた?」

 

クリトリスを軽く指で挟み、つねるように刺激する。

 

「ふぁぁぁぁぁっ♡」

 

それだけで、シーアは絶頂していた。

ディルドのときには刺激されていなかった陰核は、不意打ちだったようだ。

 

「ごめんなしゃいっ♡ 驕っていましたっ♡ 奴隷なのにぃ、旦那様の命令もなくっ、おねだりなんてぇっ♡」

 

クリトリスを揉むように刺激すると、シーアは嬌声と共に謝る。

 

「今日は立場を思い知らせる日だろう? なのにお前ときたら、自分が気持ちよくなるために旦那様のおちんぽを使うつもりかっ!? 立場が逆だろう!」

 

藤次はわざと声を荒げて、シーアのブラを破るように外す。

 

「ひぎゅぅぅぅっ♡ お許しくださいっ♡ 旦那様ぁっ♡ 怒らない、でぇっ♡」

 

まろびでた巨乳を五指で掴み、深く食い込ませて揉み回すと、シーアは涎を零しながら懇願する。

妖女の性感帯を乱暴に刺激すると、これほど顕著な反応を示すものなのか。

 

「今夜のお前の仕事は、俺を気持ちよくすることだろうが。分かったら床に膝を付け」

「はひっ♡ ご命令いただき、ありがとうございましゅ……っ♡」

 

藤次はズボンのチャックを開いて、逸物を取り出す。

やっと出番が来たとばかりに、肉棒は張り詰め、脈打っていた。

シーアはフェラチオを要求されているのだと察して、床で膝立ちになる。

 

「両手はそのままだ。目隠しも外さない。口だけでおちんぽを探して咥えるんだ」

「はぃ♡ 仰せの、ままに……♡」

 

藤次の意地悪な命令に、シーアは興奮を隠さない。

明らかになってきた被虐嗜好が、この短時間で成長しているかのようだ。

 

「はふっ♡ ぁぁ……旦那様の匂い♡」

 

手も使えず目も見えないシーアは、鼻先で目の前の空間を探る。

藤次は肉棒の根元を指で抓み、その先端を目隠しの上から額に当てた。

 

「あっ♡ あった――あ、れ?」

 

シーアは顔を上げて舐め上げようとするが、藤次は肉棒を横に動かして、シーアの口から逃がす。

 

「だ、旦那様ぁ? どこ、どこぉ?」

 

顔を動かして再び肉棒を探し、頬に触れた感触を追っては咥えようとするが、また逃げられる。

 

「旦那様ぁ♡ 意地悪ですぅ♡ 動かされたら、お口で、ご奉仕できない……はうっ♡」

 

肉棒の先端を追っては、虚空を噛むように取り逃してしまうシーア。

藤次が少しずつ後退すると、膝で歩くようにして、必死に追ってくる。

その姿は健気で、哀れで、なにより扇情的だった。

 

「シーア、本当は自分が咥えたいだけじゃないか? お口で気持ちよくなりたいんだろう?」

「あっ♡ そ、そんなことは……っ♡」

「命令だ」

「はいっ♡ 申し訳ありませんっ♡ 旦那様の雄々しいものを、お口で感じたいんですっ♡

 ご命令にかこつけてっ、お口を埋め尽くしていただきたくてっ♡

 お許しくださいっ♡ 弁えないシーアを、お許しくださいっ♡」

 

嬉々として従ったかと思えば、やはり本心はそこにあったらしい。

口内にも性感帯が豊富な妖女には、フェラチオも大きな快感なのだ。

 

「従順なふりをして、また自分が得をしようとしていたのか……これは、普通にフェラチオさせてもつまらないなぁ」

「ああっ、そんなっ。旦那様ぁ」

 

藤次の興味が去ってしまうと思ったのか、シーアは泣きそうな声になる。

そんな彼女の頭に両手を置いて、銀髪を撫でながら藤次は命じた。

 

「イラマチオだ。思いっきり口を開けて、喉でしごけ」

「あっ♡ はいっ♡ 喜んでっ♡ シーアのお口、ご存分にお使いくらはいっ♡」

 

シーアは待ちきれない様子で大きく口を開いた。

 

「いままでのように優しくしないぞ? お前が窒息しようと、オナホみたいに突いてやるぞ? いいのか?」

「はひっ♡ どうか、思いのままにっ♡ 私の浅ましい体にっ、旦那様の怖さ、思い知らせてくださいっ♡」

 

乱暴されると宣言したのに、この返答。

いよいよ藤次も、獣性を抑えきれなくなってきた。

 

「その言葉、本当かどうか……試してやる!」

 

藤次はシーアの銀髪を握り込むと、彼女の可憐な唇を割り開いて、赤黒い肉棒を突き込む。

 

「んぶぅぅぅっ!? おふっ♡ んおっ♡ お゙っ♡」

 

上顎を抉るようにして侵入した逸物は、すぐさま喉奥に到達。シーアをえずかせる。

 

「命令だっ、歯を立てるな!」

 

藤次は腰を振って、シーアの頭を揺すり始める。

 

「お゙ぅっ♡ じゅぽっ♡ んぉぉっ♡ じゅぶっ♡ ぁぁぁっ♡ ぢゅるるっ♡」

 

シーアの負担など、なにも考えていないような行為だった。

目の前にある少女の頭部を、まるでよくできたダッチワイフのように、掴んで使う。

シーアは苦しげに顔を歪めながらも、口内の擦り上げる逸物に、鮮烈な快感を覚えていた。

 

「おほっ♡ おぉぉっ♡ んぼぉっ♡ ちゅばっ♡ れろぉ♡ ぢゅぷるるるっ♡」

 

まるで歓迎するように、舌を絡め、口をすぼめて吸い付き、自ら首を前後に動かす。

 

「ははっ、すごいな。口の動きで分かるぞ? こんな乱暴にされながら悦んでいるんだな」

 

藤次はそれこそ立ちバックで膣を突くように、シーアの口腔へピストンを繰り返した。

 

「おぐっ♡ んぉぅっ♡ おっ♡ おっ♡ おっ♡」

 

シーアは必死に鼻呼吸で酸素を取り入れながら、頷くように首を振っている。

ときおり全身に痙攣が走ることから、感じているどころか達していることが分かった。

 

「よし、今度は自分で動くんだ。できるなっ!?」

「んぐぅっ♡」

 

命じられた通り、シーアは藤次の手を借りず、自ら頭部を動かす。

両手を頭の後ろに揃えたまま、顔を下腹部へ叩き付けるようにして、喉奥まで肉棒を吸い込んだ。

自らの動きで口内を犯すように、そうすることでしか得られない快感を思い求めて。

 

「おごっ♡ おぅっ♡ んぁっ♡ おぉぉっ♡」

 

シーアは喉を鳴らしながら、激しくえづき、そのたびに絶頂する。

それでも決して藤次のものを吐き出そうとせず、体ごとぶつかる勢いで巨根を呑み込んだ。

 

「これは、すごいな……っ」

 

予想もつかないシーアの姿と、口内が与えてくれる快感。

油断すればこのまま射精して、一滴残さず搾り取られてしまいそうだ。

 

「そこまで。よくできました」

「ぷあ……っ♡」

 

藤次がシーアを引き離すと、口から陰茎を抜かれたシーアは、大きな呼吸を繰り返す。

酸欠で意識が朦朧としているようだ。万が一のことがないよう、目隠しを外して顔を確認する。

 

「はぁっ♡ あっ♡ あふっ♡」

 

明らかになったシーアの両眼は、女の悦楽に染まり、爛々と輝いていた。

口から涎を垂らし、頬を紅潮させたその顔は、悦び以外の何も描いていない。

 

「だんな、しゃまぁ♡ わたひ、もっと、がんばれるのにぃ……♡」

 

射精するまで続けなかったことを、シーアは藤次の気遣いだと受け取ったようだ。

ここまでされてなお、彼女は、慈しまれることより『使われる』ことを望んでいる。

 

「……っ」

 

献身的――なんて綺麗な言葉には収まらない。

これと決めた雄の心を捉え、子種を獲得するためなら、身も心もなげうつ、妖女の狂気だ。

目の前にいるのは奴隷であるはずなのに、おとぎ話の魔女に誘惑されているような気分になる。

 

「最初の射精は、やっぱりシーアの中がいいからな」

 

気を取り直した藤次がシーアを撫でると、彼女は目を輝かせた。

 

「はいっ♡ ありがとうございますっ♡ 旦那様っ♡」

 

膣内射精を宣言された途端、この喜びよう。

内心で微苦笑しながら、藤次はシーアの両手から手枷を外して自由にする。

そしてベッドの上で仰向けにさせると、

 

「足を上げろ」

「あんっ♡」

 

シーアの膝裏を掴んで、体ごと二つ折りにするように、肩より上まで上げさせた。

 

「やだ……旦那様、これぇ……恥ずかしいです……っ」

 

シーアの秘所が露わになり、濡れそぼった割れ目がヒクついている。

 

「奴隷なら、それ相応の体位で犯してやらないとな」

 

藤次は、シーアの腰の下に枕を入れて高さを出す。

ベッドの上で膝立ち気味になり、二つ折りになったシーアの体を包むように覆い被さる。

 

「あぅ♡ 奴隷の体位……素敵ぃ♡ なるっ、なれるっ♡ 旦那様の性奴隷になれちゃうっ♡」

 

両頬を押さえて興奮するシーアに、思わず生唾を飲む。

今日は特殊なプレイが続いているせいか、シーアの奴隷精神もかなり触発されているようだ。

 

「どうぞ、旦那様っ♡ 私のことなんて、なにも心配いりませんからっ♡

 どんなに突かれても、何回イっちゃっても、構いませんからっ♡」

 

シーアは自ら足を掴んで、自分の体位を固定する。

 

「なにも我慢なさらずに、私のこと……犯し抜いてくださいませ♡」

 

藤次は大きく息を吐くと、シーアの太腿に手を添える。

 

「分かった。どうなっても止めないぞ?」

「はい……っ♡」

 

ゆっくりと挿入していくと、シーアの体がビクンと震えた。

 

「あ……あぁ……っ♡ おっきぃ♡ これっ♡ やっぱり、旦那様のがっ♡ いいっ♡」

 

ディルドとは大違いの、生きた人間の逸物に、シーアが唇を震わせる。

膣内は熱くうねり、蟻地獄のように肉棒を奥へ吸い込もうとしていた。

 

「旦那様っ♡ きてっ♡ きてきてぇっ♡」

「おねだりは、命令してないって――言っただろう!」

 

ドスン! と、不意打ち気味に、最奥部まで突き落とす。

 

「んぉぉぉっっっ♡♡♡」

 

シーアが背筋を伸ばして痙攣する。

 

「はひっ♡ んぉっ♡ お、ぉ、ぉっ♡」

 

子宮口を押し潰され、ぐりぐりと動かされる、シーアは鯉のように口を開閉する。

見開かれた目は焦点を失っており、膣内の激しい収縮が、大きな絶頂を物語っていた。

 

「ああ、やっぱり入れただけでイったな? でも待たないぞ!」

 

藤次はシーアの真上から、杭打ちの姿勢で容赦なくピストンを開始する。

 

「んおっ♡ あああっ♡ ひあああっ♡ あおっ♡ んぉあぁぁぁっ♡」

 

パンッ、パァン、と、肌同士がぶつかり合う音が鳴る。

シーアは絶頂している最中だというのに、同様の衝撃と快感を叩き込まれ、また絶頂する。

それが多重になり、連続絶頂が巻き起こると、シーアはいよいよケダモノめいた嬌声を上げた。

 

「おおっ♡ あはぁっ♡ イクのっ♡ とまらなっ♡ ひぃっ♡ あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ♡」

「気持ちいいかっ!? 命令だっ! どう気持ちいいのか正直に言うんだっ!」

「はいっ♡ はいぃっ♡ おちんぽっ♡ すごいっ♡ 太くて、長くてっ♡ あふぅっ♡ 私の中っ、埋め尽くされてっ♡ ああんっ♡ 気持ちいいとこっ、ぜんぶ擦れてましゅっ♡ 奥ぅっ♡ 奥がしゅごいのぉっ♡ どすんって突き込まれるとっ、イっちゃうっ♡ 勝手にイっちゃうっ♡ 旦那様が来る度にイっちゃうのぉぉぉっ♡」

 

シーアの乱れ用は凄まじい。

首を振り、銀髪を振り乱し、体は幾度も跳ね上がる。

 

「いいぞ、次はおねだりだ。命令だ、して欲しいことおねだりしてみろ!」

「はいいっ♡ 旦那様のっ、ご立派な体でっ♡ 私の卑しい雌穴っ♡ ずぽずぽしてくだしゃいぃっ♡ 旦那様のっ、殿方がしたいことっ、全部シーアにしてくだしゃいっ♡

 私がっ、旦那様のっ、一番の奴隷になるんでしゅっ♡」

 

吐き出されていく被虐的な本性。

 

「恩返しっ、なんでしゅっ♡ 旦那様はっ、私の人生をっ、救ってくださったからぁ♡

 だからっ♡ 旦那様にっ♡ 人生、捧げたいんですっ♡ 女としてっ、捧げたいのぉっ♡

 旦那様にはっ、私のことっ、自分のモノにする資格があるんですっ♡」

 

嘘偽りない本心だと分かるが故に、藤次の背筋を悪寒めいたものが走る。

それに突き動かされるように、シーアの乳房を両手で鷲掴みにすると、

 

「んぉぉぉぉっ♡ おっぱいぃ♡ おっぱいもぉ♡ 気持ちいいっ♡ 乱暴な手付きっ♡ 力強いのっ♡ 好きぃっ♡ もっとっ♡ もっと強くっ♡ 私のマゾメスな体っ、もっと苛めてくだしゃい♡ これなのっ♡ これでないとぉっ♡ ああ来るっ♡ すごいの来ますっ♡ しゅごくイっちゃうの来ちゃうぅぅぅっっっ♡♡♡」

 

シーアは背筋を反らせ、全身を硬直させた。

 

「お……お……お……っ♡」

 

シーアはガクンガクンと体を震わせ、舌を突き出したまま、声も出せない絶頂に震える。

妖女だけが味わえるという、絶頂の天井を越えた大絶頂を、彼女も味わっているようだ。

 

「っぐ!」

 

そして藤次も、堪えきれず射精する。

逸物が心臓になったかのように、脈打ちながら白い体液を放出した。

 

「んぉぉぉっ♡ でて、りゅっ♡ おっおっぉぉぉっ♡ だんな、しゃまがっ♡ 私をっ♡ 孕ませ、て――っ♡」

 

シーアは膣内射精でも絶頂を迎え、朦朧としていた意識を呼び覚まし、膣圧で藤次の精液を搾り取る。

 

「く、ぁ……」

「はひゅっ♡ はひぅっ♡」

 

脱力した藤次は、シーアを押し潰すように体重を預ける。

シーアも藤次の背中に腕を回して抱き留めた。

 

もう言葉すら要らない、セックスを通じて、お互いの心の奥底は曝け出された。

その上で同時に絶頂した――どんなに言葉を尽くすよりも、雄弁な応答だ。

 

「シーア……」

 

射精して落ち着いたこともあり、藤次は普段の慈しみある主人に戻る。

 

「はい♡ もう一度、ですか……?」

 

シーアはそんな藤次もまた愛おしいというように、両頬に手を沿えて見上げた。

 

「いいや――」

 

藤次は微笑み、シーアの額にキスをして、こう告げる。

 

「これから、ずっとだ」

 

 

 

 

街の一角に立つマンションの一室には、一組の主従が住んでいる。

妻と離婚して仕事に没頭していた男性と、彼が雇った妖魔界の奴隷。

その姿を見るようになった当初は、主従だった。

数日も経つ頃には、どこか親子のようでもあった。

しかし、最近は――

 

「もう、旦那様っ? また私に無駄遣いしようとしてっ」

「でも、シーアも欲しがってただろう?」

「欲しいと必要は別なのです。もっとちゃんと資産を管理していただかないとっ」

 

仲睦まじく、遠慮も失われたその姿は――夫婦のそれによく似ていた。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

ハッピーエンドっぽく締めましたが、奴隷編はまだ続きます。
次話からは奴隷ヒロインが増える予定です。


※たびたび、誤字訂正をいただき感謝いたします。
 自分はどこに目を付けてたんだ……というようなミスが多くて恐縮です。


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幕間 とある人間女性の婚活2(非エロ)

 

 

彼女の旧姓は、西条という。

西条藤次の、元妻である。

 

「お疲れ様でしたー」

 

パート勤務を終えて帰宅する。

 

結局、あれから再婚はできていない。

いまは学生バイトのような労働で、ひとまず無職の誹りを回避している。

 

(なんで私が、こんな底辺みたいなことを……)

 

職業に貴賎はないが、印象の差はある。

彼女にとっていまの仕事は、見下ろしてよいものだった。

 

(ううん、再婚すれば寿退社するんだし。

 下手に一般企業に入ってすぐ辞めるのも気まずいし、いまはこれでいいはず)

 

捕らぬ狸の皮算用もいいところだが、彼女の中では筋が通っていた。

 

「…………」

 

時刻は夕刻、日曜日であるせいか、家族連れを多く見かける。

ちょうどいまも、ベビーカーを押している夫婦とすれ違った。

 

外見がパッとしない人間男性と、美しい妖女の夫婦だ。

ベビーカーには二人の幼児がおり、なぜかこちらを眺めている。

 

……なぜか道を空けるという発想が出ず、そのまま直進した。

夫婦の方がベビーカーを少し動かし、自分を迂回していく。

 

誰かが撮影してUPしたら、ベビーカーを車道に迂回させるなんてとプチ炎上だったかもしれない。

 

バカバカしい。なぜ子連れだけ優遇しなきゃいけないのか。

ベビーカーを押していたのは旦那さんだ。常識的に、男性が車道側を歩くべきだろう。

 

最近はベビーラッシュだそうで、少子高齢化なんて昔の話。

世間はそれをよいことのように語るが、自分は到底そう思えない。

 

泣いたり遊んだりする声はうるさいし、歩道や電車やでは子連れ様に道を譲らされる。母親はそんな社会のおべっかに胡座を掻いて、我が物顔で歩いている。何様だ。

 

本当に社会からケアされるべきは、盛って子供を産んだ方ではなく、自分のように苦労している方だろう。ちょっと考えれば分かるはずのなのに、なぜか世間はそう言わない。

 

きっとあれだ、どこかの政治家が、少子高齢化を解決したという手柄を強調したくて、そういう風潮が蔓延するよう命じているに違いない。

 

今も昔もこの国は、人間女性にだけ貧乏くじを引かせることで回っているのだ!

 

――夢中でそんなことを考えていたら、帰宅するまでの時間は潰れていた。

 

 

 

(マッチング、今日もしてないか……)

 

婚活はスマホアプリで継続している。

プロフや希望を入力して、合致する人間を紹介してくれるアプリだが、何度やっても『マッチングしませんでした。条件を変更するか、時間をおいてからお試しください』の一点張り。

 

(プロフの写真も撮り直したのに……)

 

ベッドに寝転んでスマホを眺めながら、溜息を吐く。

もしやサイト側の不具合ではないだろうかと苦情メールも送ったが、特に不具合は発生していないと返事が来た。

なにか別の要因があるのではと検索してみると、それらしいブログが見つかった。

 

『マッチングアプリで希望条件を緩和してもマッチングしない場合。

 残念ながらそのサイト登録者の希望条件にあなたが一件も合致していないか、

 一部条件を満たしていてもマッチングを希望されていないと考えられます』

 

誰が残酷な事実を突き付けろと言った。

続きがあったので、そちらにも目を配ってみる。

 

『よく言われるものとして、専業主婦を希望するのは実質NG。

 昨今の結婚観では男女共働きが基本です。

 

 たまにいる専業主婦を希望する男性は、配偶者に家事を任せたい人。

 もっと言うなら子供ができることを視野に入れて、育児にも専念して欲しい人です。

 

 こういう男性は家事育児を妻に「委任」するつもりで専業主婦を許可していますので、

 家事を公平分担させたり、子供を嫌がったりすると、離婚の原因にもなりえます』

 

一瞬、このブログは元夫が書いたのではないかと思った。

 

(なによそれ……)

 

それだと、自分が悪いみたいじゃないか。

主婦の頃は、夫が家事を半分以下しかしないことや、子供を欲しがることを不愉快に思っていた。

自分の方が多く家事をしているのに偉そう、産む方の身にもなれDVだ――と。

しかし実態は、委任された役目を十全に果たさず、楽な日々ばかり味わっていたのではないか。

 

結論が出た――これは悪質な洗脳記事である!

 

女性が男性にとって都合のいい精神構造になるよう仕組まれた罠に違いない!

 

(もっとまともな助言をしてくれるところはないの!?)

 

検索し直してみると、別の婚活サイトが見つかった。

会員制かつ有料なので後回しにしていたものだ。

 

ふと思う。

いま登録しているサイトは、質が悪いのではないか?

このサイトで見つかるのは、無料登録で結婚相手を探そうという、けち臭い人間ばかりだ。

大した収入もない男と、貧しい妖女ばかりがどっさり集まるから、ああいう結果なのではないか。

そうだ、きっとそうだ。

まともな男なら、こういうところに金をケチらない。

次の結婚をするためには、必要な投資をすべきではないだろうか。

 

「…………」

 

さほど高額ではない。

離婚したときの財産分与で、懐にはまだ余裕がある。

上手くいかなかったなら退会すればいい……そう意を決して、会員登録をクリックした。

 

 

 

 

(――――詐欺だったっ!!)

 

およそ一ヶ月後、部屋で頭を抱えることになった。

幻術で男装した妖女が『サクラ』をしている場所だった。

出来すぎなくらいの男前が、いかにも利用者層が喜びそうなことを並べ立て、いつの間にか別の詐欺案件に誘導する――という手口だ。

利用者の告発によって明らかになったのは、つい先日、自分が被害に遭った後だった。

 

(男装していた妖女は性自認によるもの、詐欺へ誘導されたのも当事者間で起きたもので、当社は責任を負わない? グルでしょ絶対!!)

 

既に運営者や直接の詐欺師たちは、妖魔界へ高飛びしている。

だまし取られた金が戻ってくる可能性は低いし、戻ったとしてもずっと先のことだろう。

 

(やっぱり妖女なんてこんなのばっかり! 日本はとっとと国外追放しなさいよ!)

 

一班を見て全豹を卜す、パンダの目元だけ見て全身を黒いと断じるような錯誤だが、いま彼女にそれを言っても逆上しか得られない。

 

(美人で男不足の色情狂だからって、男どもがほいほい招き入れるからこうなるんじゃない……っ!)

 

人間女性の妖女に対する憎悪は少なくない。

蓄積していた感情は、きっかけさえあれば何らかの形で表出する。

 

オンライン上では、特に顕著だ。

 

『そもそも異世界人なんて怪しい素性のものを、ろくな調査もなく流入させたことがおかしい。

 結局、政治家のジジイどもがスケベ心で大歓迎したってこと』

 

と誰かが言えば、多くの賛同が集まり、同時にこうツッコミを受ける。

 

『地球の十倍という規模の超巨大市場に出遅れていれば、経済競争で多大な遅れを取った。

 遅れた国は美味しいところを取り逃がし、経済はそういう弱いところから搾り取る』

『○○○○が妖魔界の一国に侵略されたように、防衛上の選択でもある。

 妖魔界の大国との条約締結が遅れていれば、いまが好機と攻め込まれていた。

 そういうのを防ぐ界外防衛戦略の対価に求められたのが、早期の市場開放だった』

 

などと、いかにもバカな男どもが好みそうな話だ。

そんなの政治家がちゃんとすればいいだけで、大事なのは私たちの快適な日々でしょはい論破。

 

『給与の男女格差がひどすぎる。特に人間女性だけ低いのは、明らかに意図的』

『妖女が押し上げて、平均賃金の差はもうほとんど無いよ。人女が高収入職に就けてないだけ』

『だから、見かけ上の平均が同じだけで、人間女性だけ稼げてないじゃん。なにを聞いてたの?』

『だから、人女だけ稼ぐための学とスキルと努力が足りてないんだよ。なにを聞いてたの?』

 

誰かが政治を話題にすれば、誰かが経済を話題にする。

同じ人間なのに、どうしてこんなにも会話が成立しないのだろうか。

 

『だいたい魔力技能ってなに?

 妖女か、妖女とヤった男しか増えないものを必須技能として要求すんな。

 人女は妖女とレズプレイしろっての? これがウーマン差別じゃなきゃなんなの?』

『人間でも魔力はトレーニングで増えるんだよ。

 男は妖女との行為がその条件を満たしてるだけで、女は魔力を得られないは早合点からのデマ。

 ダイエットくらいの努力を積めば魔力技能資格を取れる。若い子は皆してるよ』

『それ以前に、体力でも魔力でも、女性と妖女で生まれ持ったものが違うんですが?』

『体力と魔力だけで収入が変わる単純な世界なら可哀想だけど、現実はそうじゃない。

 自分のハートに鞭を入れず、負けても仕方ない理由だけ口走る奴が、出世競争に勝てるか。

 妖女からすると、そういうところが同じ女として情けないんだよ』

 

いつもこうだ。

昨今のジェンダー論争は、男と女と妖女の三国志。

この話題では、妖女は男性側と意見を同じくすることが多い。

同じ『女性』なので『男性による女性差別だ』という反撃を取りにくいことが、また卑怯だ。

 

『いまの社会がいいとは思わないけど、明らかに妖女に私怨を向ける人がいるのはなんで?

 文言を見てると、異世界人だからって感じじゃないんだけど』

『美人で若々しくてチヤホヤされて家庭を築いているイメージがあるから。

 容姿、裕福、優遇、評価、家庭、夫や彼氏、子供、若さ――

 女が嫉妬するものを、妖女は全て持ってる。あくまで妖女の中の成功者だけど』

 

嫉妬……なんかじゃない。

 

確かに妖女は見目麗しく、歳を重ねても外見に表れにくい。

魔力技能で稼げる仕事に就いており、世間の注目度が高く、職場でも頼られ評価される。

男性と結ばれて結婚して、幸せそうな家庭を築いているのも、最近は妖女ばかりな印象だ。

文化的に一夫多妻家庭で、家計・家事・育児も助け合えるので、家のことでも苦労が少ない。

 

なるほど羨ましいことだらけだ。

だからといって、嫉妬だと思われるのは心外である。

 

これはそう……人間女性との間にある不平等への、正当な義憤である!

 

『結局、日本は本来なら女性が座るはずだった席を、妖女に売ったんだよ。

 仕事も家庭も、番組の出演枠も、最近はスポーツまで妖女様のもの』

 

そうそう、やっぱり私だけの思い込みじゃなかった――

 

『どれも実力で勝ち取るもので、約束されていたものじゃねぇよ。

 日本語から学ばなきゃならない妖女にさえ出世負けしておいて、

 なにが社会の犠牲者だ』

 

黙れ、お前どうせモテない男か出稼ぎ妖女だろう。

 

『はいこれ。妖魔界との国交以降、人間女性の失業率が上昇してる資料ね。

 女性の窮状を理解したクソオスは何か言えよ』

『自分の出した資料くらいちゃんと読め。

 失業してるのは夜職系、以降は失業率も下降して元の水準。

 妖女をタダマン星人とか無料奴隷とかネチネチ言ってるのは大抵そいつら』

 

嘘だ。こじつけに決まってる。

資料を読むのは面倒臭いけどそうに違いない。

 

『要するに、妖女が増えたことで、美人とセックスは価値が暴落したんだよ。

 顔と体で得られるものが無くなり、風俗嬢が客を失うことや、若い美人でも

 専業主婦になれないことは、当初から明らかだった。

 なのにスキルアップもせずSNSポチポチしてた奴が、今頃になって騒いでる』

 

うるさい。聞いてない。

 

『そういう連中の受け皿だった底辺職さえ、いまや出稼ぎ妖女が進出してて、

 学無し技無し魔力無し性的需要なしの人間女性が行き着く先は老人の世話。

 美人なら一生安泰と思ってた花畑、美人が失業してザマァと思ってたブス、

 いまそいつらが歩いてる道がそれ』

 

どうでもいい。バカバカしい。聞く価値もない。

 

『悪いことは言わない。

 該当者のうち、若い子は勉強して資格とって転職しろ。

 アラフォー以上は知らん。できるだけ脳内幸福を高くして生きろ』

 

――ブラウザページを落とす。

 

(……やっぱり、再婚しよう)

 

そうして今日も、その方針を新たに決める。

結局、高収入男を捕まえて専業主婦に戻るのが一番だ。

今日も様々な意見を総合的に判断して、そう決めた。

 

決して、努力の末にスキルアップして大手企業に入社して、元夫と同じくらい仕事をするのが嫌だとか、そういうのじゃないのだ!

ネットのあちこちでも、婚活コンサルタントの助言でも、そうしろと聞いた気がしたが、あいつらは嘘吐きと詐欺師だから騙されない!

 

なるべく、前の夫と近い条件で探そう。

それが自分の唯一の成功例なのだから。

今度は愚かな真似をしないようにして、家事負担や出産育児も前向きに考えて……

 

「…………」

 

ふと、気付いた。

前の夫と同じような男が、自分の理想型だと言うなら――

 

(寄りを戻す、とか……)

 

考えて、しばらく考え続けて、ようやく首を振って却下する。

 

今更、そんなことできるわけない。

いくらなんでも、それはプライドが許さない。

少なくとも、こっちから頭を下げるのは絶対に嫌だ。

 

(あんな男、私が居なくなって、せいぜい苦労すればいいんだっ)

 

家事も簡単なことしかできない男だ。

きっと今頃は、後悔しているに違いない。

薄汚い部屋で、女も抱けず、職場でも嘲笑われて、惨めな日々を送っているに違いない!

 

その哀れな姿を想像するだけで、今夜もよく眠れそうな気がした。

 

同時刻――元夫が、若く可憐な妖女と睦み合っていることなど、知るはずもなく。

 




ご一読いただきありがとうございました。

本編の続きに先立ち、元妻の第二弾です。
奴隷ヒロインの続きは、もうしばらくお待ちください。

こういう架空の世界のネット界隈って、なんでか筆が乗るな。


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第三話(挿絵あり)

 

さて、西条藤次の職場は、広告会社だ。

 

人間界と妖魔界の開通以降に生まれ、急速に成長した、業界内のホープである。

 

藤次の仕事は『制作指示』――広告を『作らせる』のが仕事だ。

企画部やマーケティング部からCM案を受け取り、それを社内の制作部門や社外の制作会社と協力して形にする。

やっていることは上下左右の中間管理。

自分の都合ばかりギャンギャン喚く連中の間に立ってまあまあしながら、空中分解しないよう必死に繋ぎ止める仕事だ。

古代の拷問だか処刑法にある、両手両足を引っこ抜くあれの気分と言ったら、その大変さも伝わるだろうか。

 

とはいえ、こんな仕事にもいいところはある。

例えば――

 

「……最近は、ラブホが大々的にCMを打つ時代かぁ」

 

CMを通じて、世情を知れることだろうか。

 

場所は制作現場、ちょっとした撮影スタジオ。

CMの主役となる俳優たちを撮るところだ。

 

「西条さん、どうかしたんですか?」

 

と、出演女優が声を掛けてきた。

 

「ああ、クレアさん。おはようございます」

 

彼女は木城クレア――人間と妖女のハーフ女優だ。

派手さはないが整った容姿と、ドラマ・バラエティー・映画など各方面で助演をこなしている。

親しみやすく卒がなく、シングルマザーという特徴もあって、主婦層からの支持が厚い。

 

「おはようございます。溜息を吐いておられましたけど、体調が悪いとか?」

「いえ、特に問題はありません」

 

それで済ませようとしたが、理由を説明しなければ、トラブルかと不安がらせるかもしれない。

撮影監督ではないが、出演者には絶好調でいてほしいので、笑って説明する。

 

「私の感覚からすると、ラブホテルのCMを大っぴらに放送するというのが驚きでして」

 

今回のCMは、なんとラブホテルのCMだ。

もちろん濡れ場を流したりはせず、ここにいるクレアともう一人の男優が夫婦を演じ、見栄えのいいエントランスや室内を観覧するというだけのもの。普通の宿泊施設と同じようなCMになる。

 

「ああ、出演しといてなんですけど、実は私もです」

「もちろん、成長市場なのは理解しているのですがね」

 

当たり障りのない言葉を並べておく。

撮影の準備が整うまで数分、自分が彼女の話し相手をすることになりそうだ。

 

「最近は若い子だけでなく、お子様の目を盗みたいご夫婦にも需要があるそうですね」

「ええ。その点、夫婦人気の高い木城さんは、正に適任です」

 

クレアの支持層は主婦層だが、密かにその夫たちも含まれる。

容姿もそうだが、離婚した女性にありがちな、男性に対して角の立つ言動がないからだろう。

悪目立ちをせず、堅実に自分を売り込み、見る目のある人に評価されているタイプの芸能人だ。

こうして話していると、それが画面上だけのキャラでないことも分かる。

 

「っ」

 

ふと、クレアが藤次の左手に注目する。

何か持っていただろうか? と左手を確認するが、なにもない。

ああいや、むしろ『なにもないこと』が問題なのか。

 

「西条さん……記憶違いだったら申し訳ないのですが……以前は指輪を」

「ええ、お恥ずかしながら、離婚しまして」

 

クレアとは、同じCMの第一弾でも一緒だった。今回のCMは第二弾だ。

あのときは妻と離婚していなかったので、結婚指輪をしていた。

 

「それは、失礼しました。無遠慮なことを」

「お気遣いなく。こう言ってはなんですが、これでバツイチ仲間ですね」

 

つまらない冗談を言うと、クレアも「まあ」とクスクス笑う。

 

「西条さんのようないい人とお別れだなんて、元奥様は損をされましたね」

「そちらの旦那さんこそ」

 

社交辞令でも、売れている女優からの褒め言葉は、なんだか特別に聞こえるものだ。

 

「木城さん、お願いしまーす」

「あ、はーい。では、失礼します」

 

撮影準備が整ったらしく、スタッフに呼ばれたクレアは、カメラの前に向かう。

 

(アイツに爪の垢でも煎じて飲ましてやりたかったな)

 

元妻のことを思い出す。

そういえば元妻は木城クレアをあまり好んでいなかったようだが、理由はなぜだったか。

よく思い出せないし、どうでもよいことだった。

 

 

 

 

住み慣れた我が家の、リビングのソファー。

背もたれに体重を預け、酒の入ったグラスを手に、のんびりとテレビを眺める。

心地よい時間だ。

 

「あっ♡ あんっ♡ んぁぁっ♡ 旦那様ぁ♡」

 

腕の中に、対面座位で自ら腰を振るシーアがいれば、言うことはない。

 

「いいぞ、その調子だ。もっと腰をくねらせるんだ。命令だよ?」

「はいぃ♡ ああ、いいっ♡ 旦那様のっ、気持ち良いですぅ♡」

 

シーアはメイド服を着たまま、藤次とまぐわっていた。

藤次の首を抱き、胸板に顔を埋めて、スカートの中では挿入されている。

藤次はまったく動かず、シーアが必死に腰を振っていた。

 

「旦那様っ♡ やっぱり、こんなの駄目ですっ♡ こんな、女が上の体位っ♡ 奴隷の私が、していいことじゃ……っ♡」

 

快感に蕩けた顔で、涙目で見上げてくるシーアを、優しく撫でる。

 

「妖魔界だとそうなのかい?」

「はい……これ、男性が、妻に、自分を好きにさせるときの体位です……っ♡

 こんな、こんなの……っ♡ 私が、旦那様の体を、貪るような……っ♡」

 

シーアの顔には罪悪感と、普段しない体位による興奮が見て取れた。

 

「嫌かい? 旦那様の逸物、実はお気に召さなかったのかな?」

「ひうっ♡ そんなわけないですっ♡ 入ってるだけでぇ♡ イキ、そう、なのにぃ……っ♡」

 

軽く力を込めて肉棒を動かすと、それだけでシーアの体がびくっと震える。

どうやらシーアにとってこの体位は、逆レイプしているような背徳感が強いようだ。

 

「なら、続けるんだ。命令だ、思う存分に腰を振るんだ」

 

命じると、奴隷の首輪が発光して、シーアを従わせる。

するとシーアは藤次にしがみつき、可愛らしいヒップを激しく上下させ始めた。

 

「ああぁぁ♡ そんなご命令、駄目ですぅっ♡ あひゅうっ♡ おっきぃ♡ おっきいのぉ♡ 奥にっ♡ 擦って、当たってっ♡ 自分でっ、なんてっ♡ ひぁぁぁぁっ♡♡♡」

 

自分の動きで子宮口を責めるなり、シーアは全身を痙攣させた。

奴隷の首輪の命令で動かされているため、加減することができないようだ。

 

「ほら、イったからといって腰を止めるな。命令に従え!」

 

ぱんっ! と片手でシーアの尻を叩く。

 

「ふぁいっ♡ 申し訳ありませんっ♡ 旦那様のおちんちんがぁ♡ 気持ち良すぎて、すぐイっちゃうんですっ♡ ああ、またイクッ♡ イったばかりのおまんこっ♡ 自分でいじめてっ、またイッちゃいますっ♡」

 

軽く叩いただけだというのに、シーアの膣内は音を立てるように引き絞られ、肉棒を搾る。

荒い呼吸を繰り返しながら、犬のように腰を振るシーアの顔は、普段よりずっと淫らに見えた。

 

「なんて顔だ、シーア。旦那様の上で、我が物顔で腰を振って、おちんぽ貪ってるじゃないか」

「ああぁぁ♡ 仰らないでっ♡ こんなっ♡ 許されないことっ♡ なのにぃっ♡」

「いつもよりイキやすくなってるぞ? 実はこっちの方が好きなんじゃないか?」

「ちがっ♡ 違いますっ♡ いつもと違うからっ、慣れてないだけでっ♡

 んああぁっ♡ いくいくまたイクぅぅぅっ♡♡♡」

 

もはや何度目か、腕の中でシーアが絶頂を迎える。

 

「はひっ♡ だんな、さまぁ♡ わたひ、腰、抜けちゃって……う、動けない、でしゅ♡」

 

深い絶頂で、一時的に力が入らなくなったようだ。

 

「おいおい、俺はまだイってないんだぞ?」

 

言葉ほど怒っていないことは、髪を撫でる手付きからシーアに伝わった。

だからこそ、シーアは艶然とした笑みで、こう言うのだ。

 

「はひ♡ 不甲斐ない奴隷を、お許しください♡ どうか、お見捨てにならないでぇ♡」

 

自分がいかに弱い立場であるかを強調するように、懇願していた。

シーアのそれは、「藤次の方から襲ってほしい」という、彼女なりのおねだりだ。

 

「手の掛かる奴隷だ。ほら!」

 

シーアのヒップを両手で掴み、腰を突き上げる。

 

「んおっ♡ おおぉ~っ♡」

 

シーアは目を剥きながら、大きな絶頂を全身に轟かせた。

 

「はは、自分でポルチオをいじめすぎて、すっかりイキやすくなってるなっ」

 

シーアの小柄を上下に揺らしながら、何度も肉棒で突き上げる。

 

「あひっ♡ んぉぉぉっ♡ おおんっ♡ ふぉっ♡ ぁぁぁぁぁっ♡」

 

その度に、シーアの体には痙攣が走り、口からは獣めいた声が出る。

リビングの壁に反響するほどの喘ぎ声――彼女が藤次とのセックスで得る快感は、慣れるどころか日に日に新記録を更新していた。

 

「こら、聞いているのか? 突かれる度にイってばかりで、旦那様へのご奉仕はどうしたっ!?」

「はひっ♡ ごめんなしゃいっ♡ どうかっ♡ いっぱい、突いてぇ♡ 旦那様の、お好きなようにぃ♡ わたひっ、イキましゅっ♡ 旦那様が果てるまでっ♡ ずっと♡ 何度もぉ♡ あああぁぁぁイクイクイクぅぅぅっ♡♡♡」

 

意識を朦朧とさせながら、シーアは情欲と献身の入り交じった言葉を紡ぐ。

ほとんど、自分が何を言っているのかも理解していない様子だ。

長引かせて負担になるよりは、このまま最高潮まで行って、射精してやることにした。

 

「いいぞ、オナホにしてやるっ。お前はいま、旦那様を気持ちよくするためだけのものだっ!」

「はひぃっ♡ 嬉しいっ♡ 旦那様のっ♡ んぉぉっ♡ お役に、立てるっ♡ あひぃっ♡ なりゅっ♡ あなたのためのっ♡ んぁぁっ♡ オナホに、なりましゅっ♡ あっあっあぁぁぁっ♡ どうかっ♡ シーアを、使ってくらしゃいっ♡ ぉぉぉぉぉっ♡ だんな、しゃまをぉ♡ おぉぉぉぉ♡ きもちよく、しゅるのぉ♡」

 

ごちゅっ! と、子宮口を押し潰す勢いで、何度も肉棒を叩きつける。

シーアが背筋を大きく反らせ、床に落ちないよう藤次の腕に支えられながら、天井を仰いで髪を振り乱した。

連続絶頂で錯乱しかけている。しかし両手は藤次を離さず、いつしか自分からも腰を振り、オーガズムの嵐に恍惚の笑みを浮かべていた。

 

「出すぞ、シーア!」

「はい、出してくださいっ♡ シーアに、旦那様の大事な精子、注いでくださいましぃっ♡ あああぁぁぁ出てりゅっ♡ いっぱいにされてりゅっ♡ イクイクイクイクぅぅぅっ♡♡♡」

 

シーアは電流が流れたかのように震え、深く長い絶頂に意識を奪われていった。

 

「ふぁ……♡ ん、んくっ♡ んはぁっ♡」

 

目の光を失いながらも、唇を求めてきたため、それに応じてやる。

 

夜はまだ始まったばかり、少し休んだらもう一度やろう。

次はどんなプレイがいいか。また縛ってやるか、窓際でしてやろうか……

そんなことを考えながら、藤次は深く息を吐いて、ソファーに背中を沈めるのだった。

 

 

 

 

さて、奴隷にも休日はある。

日本では奴隷ではなく労働者なのだから当然だ。

シーアは「午後はほとんど休んでいるし、住み込みである以上は」と主張したが、藤次は「せめて週に一日くらいは」と譲らなかった。

最終的には「夜の相手だけは年中無休」という条件で、家事をしない日曜日を迎えている。

 

「久しぶりー、シーア。あ、その服かわいいっ」

「あらぁ、なんだか雰囲気が変わったわね」

 

シーアは同じ奴隷仲間の妖女たちと、街の一角で待ち合わせていた。

 

「ニナっ、それにユスティネもっ」

 

二人は同郷の少女たちだ。

待ち合わせた駅前に、三人の妖女たちが並び立つ。

 

「うんうん、元気そうでよかったー。

 ひどい主人に買われてやせ細ってるんじゃないかと思ってたけど、取り越し苦労だったわね」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

一人はニナ。

シーアと同じく褐色エルフの妖女である。

ショートの黒髪と、気の強そうな目付きが特徴的だ。

 

服装は会社支給のメイド服。

最近は使用人を雇う家庭も多く、秋葉原以外でメイド服を見かける機会も多いので、周囲から奇異の目で見られてはいない。

 

「もう、旦那様はそんな人じゃないって、前にも言ったのに」

「ふふ、そうね。痩せるどころが柔らかくなってるし、なんだか大人っぽくなった気がするわ」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

と言ってシーアを抱きしめるのは、褐色系エルフのユスティネ。

豊かな金髪と豊満な肢体に長身という外見が、小柄な銀髪少女のシーアとは好対照だ。

派手めの美人だが性格は母性的で、シーアへの態度も姉のように見える。

実際、この面子の中ではシーアが最も年下なので、扱いとしては二人の妹分だった。

 

「くんくん……シーア、なんかいい香りしない?」

「えっ!?」

 

ニナが急に鼻を利かせて、シーアを驚かせる。

 

「ああ、やっぱり? 私もそんな気がしたの。香水、じゃないわよね?」

 

ユスティネも小首を傾げながら、二人してシーアの髪が首筋に鼻を利かせた。

 

「な、なにもつけてないよっ!? 香水なんて買う余裕あるわけないでしょっ!?」

 

シーアは、年頃の少女としてはちょっと悲しいことを言って、二人の間を脱した。

 

(で、出かける前に……旦那様に、ちょっとだけ『して』いただいたから……?)

 

匂いの心当たりと言えばそれだけだ。

休日なので友人に会ってくると伝えたら、快く許してくれたが……「会えなくなるのが寂しい」などといって抱きしめるから、嬉しいやら愛しいやらで、そのまま口で……

もちろん歯磨きなどして、完全に匂いは消したはずなのだが。

 

「ふぅん……」

 

頬を染めて目を泳がすシーアに、ユスティネは何か察したような笑みを浮かべている。

ニナは察せておらず、小首を傾げていた。

 

――なにはともあれ、三人は街を巡る。

 

「治安がいい国って話は本当みたいねー。ほら見てよ、若い男が供回りもつけずに歩いてる」

「ええ、店構えも心配になるくらい不用心だし。

 この国に来て以来、揉め事の声なんて一度も聞いてないのよ? 私」

 

奴隷として出稼ぎに来ているため、ショッピングなどという贅沢はできない。

しかし彼女らにとって、日本は異世界の異国だ。店を冷やかすだけでも、普段はできない観光旅行になる。

 

「私はいい待遇で迎えてもらったけど、二人は大丈夫?」

 

道すがら、シーアはニナとユスティネに問いかける。

彼女たちと最後に会ったのは、藤次と契約して以来だ。

三人の中では最初に主人を見つけた形であり、その後は最低限の連絡しか取れていない。

ともすれば、自分と違って冷酷な主人に働かされてはいないかと、気にはしていたのだ。

 

「私は全然平気よ。ご年配なお婆さまの手助けと家事だけ」

 

ニナはからりとした口調で言う。

どうやら彼女を雇ったのはお婆さんの息子夫婦らしく、仕事に専念するためニナを雇ったそうだ。

シーアに比べれば苦労も多いだろうが、そのお婆さんには快く接してもらっているらしい。

 

「私はシングルマザーの方と契約させていただいて、お子さんの面倒を見つつ家事をさせてもらってるわ」

 

ユスティネは働く女性と契約して、その家に家政婦として通っているという。

家事をしつつ、まだ小さいお子さんの相手をしたり、保育園に迎えに行ったりと、裏の無い意味で『アットホームな職場』だ。

実年齢より年上に見られがちなユスティネは、故郷でも子供に好かれていたので、適職だろう。

 

「シーアはどう? 意地悪されてない?」

「たしか、働いている男性の家で、住み込みの家事をしているのよね?」

「意地悪なんてとんでもないっ。信じられないくらいお優しい方ですよ?」

 

シーアが男性に雇われたことは、ニナもユスティネも聞いている。

妖女からすると、男性に仕えるというのは、貴族家に奉公するのと同義なので、名誉ではある。

だが――

 

「シーア、正直に言って? 嘘吐いてない?」

「嘘って……」

「だって話が美味すぎるもの!

 いい年頃で独り身の男性ってだけで不自然なのに、仕事は住み込みで家事だけ!?

 もうそれ裏がありますって自己紹介してるようなもんじゃないっ!」

 

先ずはニナが疑うように、好条件すぎて疑わしい。

人間界からすると首を傾げることだが、彼女たち妖女の常識からすると、まるでおとぎ話だ。

 

「もう、前にも言ったでしょ? 裏なんてなかったし、旦那様は非の打ち所がない紳士だって」

「いやいやいや、いくら人間界でも、そんな天然記念物みたいな人がそうそう居るわけ……」

 

頬を膨らませるシーアだが、ニナはいまだに信じがたい。

 

例えば、いまや妖魔界のみならず人間界でも、未婚の男性とは希少だ。

ナイスミドルな独身男性なんて、よほどの事情が無ければ発生しない。

聞けば奥さんと離婚したというが、性格に難があるどころか、紳士だとシーアは保証する。

 

なにそれロマンス小説? である。

人間男性の視点で置き換えると、『妙齢の未亡人』くらいの、そこはかとないエロさを感じる。

 

妙齢の未亡人と同居して家事するだけの簡単なお仕事です。

しかもその未亡人は美人で気立てがよく、母性豊かで何かとあなたを甘やかしたがります。

おまけにあなたの性欲を感知すると、優しい「命令」でベッドに誘い、激しく乱れたりもします。

……などと紹介されれば、怪しさも伝わるだろうか。

 

「そうねぇ、私もシーアを疑うわけじゃないけど……」

 

ニナほど思い込みは激しくないが、ユスティネも遠慮がちに口を開く。

 

「そんなによい男性の元を、奥様はなぜ去ってしまったのかは、気になるわね。

 一夫一妻の人間界なら、ことのほか」

 

ユスティネとしても、可愛いシーアがよくない男にこき使われていないかは、やはり気がかりだ。

 

「そうよっ! 三十歳を過ぎても独身な人は性格に問題があるって言うじゃない!

 私『いんたーねっと』で知ってるんだから!」

 

ニナが天下の往来で暴論を吐くと、すれ違った人間女性のグループが、刃物で刺されたような顔をしていた。

 

「もう、ニナってば、そういうのに毒されちゃいけないって人間界研修で習ったでしょ?」

「じゃあなんで離婚したのよ?」

「それは……詳しくは聞いてないけど……」

 

西条藤次への嫌疑を収めないニナに、シーアはどうにか疑惑を晴らそうとするが、その言葉が途切れる。

 

シーアが藤次から離婚について聞いたのは、部屋をあてがわれたときのこと。

部屋の荷物に女性向けのものが多くあり、首を傾げたところ、

『離婚した元妻のものだ。処分し損ねていたな』

と、苦笑していた。

もちろん離婚の理由は詮索しなかったが、知りたがっている気配を察してか、藤次はこう続けた。

『私が至らないばかりにね』

何も分からないのと同じだった。

 

「ほらっ、やっぱり何かあるのよ!

 なんかこう『でぃーぶい』とか『もらはら』とかっ!

 一緒になってしばらくしてから本性を現すものだって『ねっと』で――」

「…………」

「あ、はい、すみません……」

 

シーアに無言で見詰められると、ニナは冷や汗を掻きながら撤回する。

 

「まあニナほどには言わないけど、何かあったらちゃんと相談してね?

 雇い主にひどい扱いを受けた場合、会社がちゃんと対応してくれるそうだから」

「旦那様はそんな人じゃありません……っ!」

 

ユスティネの助言にも、ぷいと顔を背けるシーアであった。

 

ニナが「ごめんって」と謝る声を聞き流しつつ、頭の中では、あることが気になっていた。

 

(旦那様の、元奥様……)

 

シーアは真相を知らない。

聞いてしまえば大した内容ではなくとも、知らないということが、様々な不安を掻き立てる。

 

彼はいまでも、その人を想っているのだろうか……

その女性はどんな人で、自分よりも大人で魅力的なのだろうか……

やっぱり人間である彼には、同じ世界に生まれた女性がいいのだろうか……

 

胸の奥底に生じた感情は、しばらく消えることはなかった。

 

帰宅後――この買い物で選んだ私服を藤次に披露して、そのまま抱いてもらうまでは。

 

 

 

 

深夜――寝室で、藤次はシーアに腕枕をしていた。

 

「はぁ♡ はぁ……♡ 旦那様ぁ……♡」

 

事後である。

今日も激しいセックスに耽っていた。

精根尽き果てた藤次は仰向けになり、シーアはその片腕を枕に横たわって、藤次の胸板に頬ずりしている。

 

「シーア、今日は何かあったのか?」

「えっ?」

 

不意に問いかけられたシーアは、目を丸くする。

藤次も半信半疑だったが、その反応で確信に変わった。

 

「今日は積極的だったからな。大したことじゃなければいいんだが」

「はぅ……お見通し、ですよね」

 

セックスの内容はいつも通りだった。

ただ、シーアの求め方は、いつもより強かった気がする。

手足を絡める力が強いとか、あそこの締まりがキツいとか、キスをせびる所作が多かったとか、そういう些細だが雄弁なものが根拠だ。

 

「その……身の程を弁えないことなのですが……」

 

前置きしつつも、それを言ってくれることに、藤次は嬉しさを覚えた。

最初の頃に比べれば、シーアも随分と『甘える』ようになってくれている。

それも大事だが、藤次はシーアが語り始めた悩み事を聞いて、少し驚くことになった。

 

「アイツのこと……元妻のことを気にして?」

「あぅぅ……申し訳ございませんっ。このような、恥ずべき感情に囚われて……っ」

 

シーアは恥ずかしそうに顔を覆う。

体中の全てを晒した仲だというのに、だ。

 

「そんな、恥じるようなことじゃないだろう。妬いてくれるのは嬉しいことだ」

「え?」

「え?」

 

ちょっと古くさいやりとりが起きた。

 

「わ、笑わないのですか? その、昔の女を理由に、失礼なことをしたのに……」

「失礼ってほどのことじゃないし、気になるのは普通……ああそっか、妖魔界は一夫多妻が普通だし、離婚と再婚による入れ替わりも激しいって聞いたな」

 

妖魔界では、数少ない男性との子作りを計画的に行う。

国や地域によって様々で、婚姻・宗教・風習などにより、一人の男性がなるべく多くの女性に子種を授けるようにしている。

一夫多妻の婚姻にしても、子供ができた順に妻の座を降りて、授かってない妾が妻に格上げする――といった風習があったりするらしい。

 

「はい。ですので、夫に前の妻がいるのは当たり前で……それに身勝手な妬心を燃やして夫を困らせるなど、女として未成熟なことの証と申しますか……」

 

シーアは、なにがどう恥なのかを語らされているせいか、更に顔を赤くする。

男はなぜナニの大きさを比べたがるのかと聞かれて説明させられる思春期男子のようだ。

 

「そんなことで嫌ったりしないし、不謹慎だけど愛されている気がして嬉しいものだよ」

「そういう、もの、ですか?」

 

おどおどと見上げるシーアが可愛らしくて、自然と額にキスをした。

 

「なぜ離婚したか、聞いてくれるか?」

 

シーアにはいつか話そうと思っていたので、そう切り出す。

聞かせてもらえると思っていなかったのか、シーアは少し目を丸くした後、真面目な顔で頷くのだった。

 

「最初は、細かいところの不一致だった。

 掃除をどの程度するのかとか、そのくらいの……」

 

生まれた家が違えば異なって当然の、細々としたこと。

食器は食後にすぐ洗うのか、水に漬けておくのか。

掃除は毎日家の隅々までやるのか、ブロック分けしてローテーションを組むのか。

藤次の基準と元妻の基準は結構異なり、藤次からすれば元妻はかなり家事を雑にしていた。

 

それでも、その程度なら、すり合わせればよいこと。

 

「愛を疑ったのは……俺に黙って、子供を堕ろしていたことだ」

「――――っ」

 

シーアは目を限界まで見開いた後、懸命に口を閉ざした。

聡明な子だ。何を言っても栓の無いことだと理解したのだろう。

 

「そこから一気に関係が冷え込んで、騙し騙しやってきたが……

 俺は仕事に逃げるようになって、アイツはまあ、不倫に近いことをして……それを機にきっぱりとな」

 

細々とした部分は省略したが、経緯はそんなところだ。

と言っても、藤次の場合が分かりやすかっただけで、夫婦が離婚に至る理由なんてものは大抵その『細々とした部分』が主役だろう。

 

「シーアは何も気にしなくていい。無いとは思うが、もし電話が掛かってきたりしたら、すぐ俺に繋げ」

 

あの女が、いま自分がシーアと同居していると聞いたら、面倒なことになりそうだ。

 

「私は……」

 

シーアは、藤次の胸の上に置いた手を握り込みながら、震える声を発する。

 

「私は、絶対に……そんなこと、しません……っ!

 旦那様から授かった、大事な御子を……絶対に……っ!」

 

目尻から涙を零して訴えるシーアに、藤次も胸を打たれる。

なにか、元妻との生活でずっと聞きたかったことを、いまになって聞けた気がした。

 

「ここに、おります……っ。

 旦那様の血を、我が子に受け継がせたいと願っている女が、ここに……おりますから……っ!」

 

シーアの目に、藤次はどんな顔をしているように見えたのか。

藤次の追った心の傷を、自分の全身で埋め合わせてあげたいと、目が語っている。

 

「シーア」

 

不思議な気分だった。

胸は熱く、心は清澄。しかし――肉棒はかつてないほど勃起している。

愛と性欲の区別が消失して、混ざり合って新しい何かになったような気分だ。

 

「ありがとう。君を奴隷にしてよかった」

「何よりも、嬉しいお言葉です……っ♡」

 

藤次とシーアは自然と体を動かし、仰向けになったシーアに藤次が覆い被さる。

藤次が邪魔そうに放り捨てたシーツの下では、琥珀色の裸身を晒したシーアの割れ目に、藤次の逸物が添えられていた。

 

「どうぞ、旦那様♡ 思いのままに……いまだけは、私の負担なんて、何も考えないで♡

 旦那様の、お心と、お体を、ありのまま全部――私の膣内(なか)に、解き放ってくださいませ♡」

 

藤次はシーアを固く抱きしめながら、無言で腰を前進させる。

 

これまで――藤次はシーアを激しく責め立ててきたし、高圧的な主人として苛めることもあった。

それでも、シーアが本気で嫌がっていないか、体に負担を掛けすぎていないかという一線を守っていた。

いまは違う。

小さな子供が、大人の女性に甘えるように。

何の思慮もなく、大人の余裕もへったくれもなく――

 

「ふぁぁぁぁんっ♡」

 

ただ本能が望むまま、シーアの入口から最奥部まで、一気に突き通した。

シーアの子宮口は柔らかく開き、亀頭を優しく迎え入れる。

 

「っ、シーア!」

 

それをいいことに、シーアに呼吸を合わせることもせず、ただ好き放題に腰を振る。

 

「あひゅうっ♡ ひあぁぁっ♡ 急にっ♡ んぁぁぁっ♡ 激しいっ♡ ああイクっ♡ わたしもうイってましゅっ♡ 旦那様ぁっ♡」

 

シーアの喘ぎが耳に心地よく響く。

手が勝手に動いて乳房を掴み、口は首筋に吸い付いてキスマークを刻む。

下半身はもちろん、シーアに向けて狂ったように暴れていた。

 

「はぎゅうっ♡ それっ♡ それでしゅっ♡ 旦那様のぉっ♡ 本気ぃ♡ あああぁぁぁっ♡ わたしっ、もうっ♡ イキっぱなしにぃっ♡」

 

シーアは、藤次から与えられる暴力的なまでの快感に悶えながら、その全てを受け入れている。

ベッドが過去一番の軋む音を立て、恨みでもあるかのように腰を打ち付ける音が響く。

 

「はひっ♡ 止めないでっ♡ 旦那様ぁっ♡ そのままっ♡ シーアのことっ♡ 犯し抜いてくだしゃいっ♡ 私が、合わせますからっ♡ 旦那様のっ♡ 一番気持ちよくなれるセックスにぃ♡ 私の体っ♡ あああぁぁぁっ♡ もう、従ってるっ♡ おまんこ悦んじゃってましゅからぁ♡」

 

シーアは藤次を制止する言葉を決して口にせず、より獰猛にするような、忠誠の言葉を紡ぐ。

実際、シーアの膣内は、これまでにない乱雑なリズムで出入りする藤次の肉棒に、収縮のタイミングを合わせていた。

藤次自身ですら把握していない体の動きを、シーアの方が予知しているかのようだ。

 

「ああ、従えっ! 俺に従え! この体っ、全部、俺のものにしてやるっ!!」

 

自分の口から、らしくない言葉が出ていることさえ、どこか遠くの出来事に感じる。

藤次の意識はいま、かつてない解放感と快感に染まっていた。

 

「あぁぁ♡ 素敵っ♡ もっとっ♡ 命じてくだしゃいっ♡ 旦那様のお心のままっ、命令してくださいっ♡ 私のっ、身も心もっ、従えてぇ♡ なりたいっ♡ 旦那様のための奴隷にっ♡ 旦那様に世界で一番ぴったりの女になるのぉぉぉっ♡」

 

ガクガクと痙攣しながら、シーアは爛々と光る目で、奴隷の愛を叫ぶ。

 

「奴隷だけじゃ、足りない!」

 

藤次はシーアの腰を掴んで浮かばせると、角度を変えて高速ピストンを開始する。

 

「はぎゅぅぅぅっ♡ いくいくいってりゅイキかた変わってましゅぅぅぅっ♡」

 

シーツを掴んで半狂乱になっているシーアに、藤次は叫ぶ。

 

「命令だ! 俺の妻になれ! シーア!」

「はひっ!?」

 

ガクン! と、一際の絶頂に震えながら、シーアは目を丸くした。

 

「俺の子を孕むんだろう!? だったらお前は、俺の妻だ!」

「ひゃ、あっ♡ らめっ♡ だんな、さまっ♡ わたし、奴隷――」

「黙れ! もう決めたことだ! 俺の妻になって、俺の子を産め! シーア!」

 

ドスンっ! と、脅しつけるように子宮を押し潰す。

 

「んぉぉぉぉぉっ♡」

 

全身を駆け巡る大絶頂は、どんな暴力よりもシーアの抵抗を奪った。

いや、元より彼女にも、抵抗する気などなかった。

 

「は――い――っ♡ なり、ましゅ♡ だんなさまのぉ♡ 妻に、なりましゅ♡」

 

朦朧とする意識のまま、シーアは藤次に手を伸ばし、抱き上げられる。

 

「シーアの『女』をぉ♡ 全て、旦那様に捧げますっ♡ 旦那様のことっ、私が守りますっ♡ 家のこともっ、子供のこともっ、全部私にお任せくださいっ♡ 旦那様のことぉ、いっぱい幸せにしましゅからっ♡ たくさん、赤ちゃんくださいっ♡ 旦那様の尊い血をっ、いっぱい残すのぉ♡」

 

藤次はシーアの誓いを聞きながら、ベッドの上で膝立ちになる。

シーアは結合を維持したまま持ち上げられ、駅弁に近い姿勢で突き上げられた。

 

「んひぃぃぃっ♡ おほっ♡ おおおぉぉぉっ♡」

 

この体位でするのは初めてだった。

情欲だけでなく、愛情も最高潮となったシーアの魂は、かつてない無上の悦楽に呑み込まれる。

 

「ああ、孕めっ! 俺の子を孕めっ! ずっとずっと、俺の傍にいろっ! 一生、こうやって、可愛がってやるから!!」

「おっおぉぉぉ♡ ふぉっ♡ しゅごいしゅごいのぉぉ♡ こんなイキしゅぎてるのっ、いままで一度もっ♡ これだめ♡ 幸せしゅぎて死んじゃうっ♡ 幸せイキすぎて全部溶けちゃうぅっ♡」

 

プロポーズと共に導かれる絶頂の天国。

シーアの心は喜びの許容値を超えて、既に正気を保てていない。

 

「おふっ♡ おっおっおっ♡ ふぉぉぉっ♡ んおっ♡」

 

正気でないのは、藤次も同じことだ。

可憐な顔立ちを淫らに崩すシーアを、白んだ視界で見続けながら、腰を振っている。

肉棒を起点に、体内が溶かされてしまったかのように、気持ちいい。

 

「もっろぉ♡ だんなしゃま♡ 種付け、ほしぃ♡ シーアの中、埋め尽くしてくだしゃい♡」

 

既に達して、膣内射精していた。

にも関わらず肉棒は萎えず、何かの箍が外れたように、更なる種付けをしようとしている。

いまどんな体位をしているのかさえ、認識しきれていない。

 

「はあっ、はあっ、はあっ!!」

 

犬のように荒ぶる呼吸。

ケダモノどころではない。

もはや性獣だ。

 

「っぐ、出る」

「きてっ♡ 旦那様ぁっ♡ 旦那様のせーえきでぇっ♡ シーアのこといっぱいにしてぇ♡」

 

シーアは両手両足で藤次にしがみつき、その体を抱きしめる。

何度目かも分からない射精が、肉体の限界を告げた。

 

どすっと、シーアもろとも、ベッドに崩れ落ちる。

両者とも放心状態で、髪は乱れ、汗に塗れ、悦楽に蕩けた顔は無様ですらある。

しかし、幸せだった。

人生を振り返っても、この夜に勝るものは滅多にないだろうというほど。

 

「シー、ア……」

 

意識を失う前に、藤次は大事な言葉を残す。

 

「愛している」

 

長い半生の末に出会えた、本当の妻に、藤次は万感の年を込めて囁く。

 

 

 

――――シーアの妊娠が明らかになったのは、しばらく後のことだった。

 

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

新キャラの顔出しと、シーアのおめでたでした。
奴隷編は結構長くなるかもしれませんね。


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第四話(前編)

 

「デキちゃいましたーっ☆」

 

シーアが可愛らしい声と笑顔で報告した相手は、同郷のニナとユスティネである。

 

「「デキちゃいましたぁ!?」」

 

飲み物を零しかけながら、思わず大声で鸚鵡返し。

シーア・ニナ・ユスティネが人間界に来てから、二度目の会合での妊娠報告だった。

場所はよく知られたファミレスのボックス席であり、他の利用者たちが度肝を抜かれている。

 

「うそっ、シーアそれって――やだ、泣きそうっ」

「おめでとう、シーアちゃん。ああ、私も……」

 

ニナは両手を口元に添えながら、ユスティネは思わずシーアを抱きしめながら、共に彼女の懐妊を喜んだ。

真実、我が事のようにだ。

現代日本の感覚と比べて、祝福の熱量が高い。

男が希少で、延いては子供が希少な妖女たちであれば、それも当然のことだった。

 

「えへへ、ありがとう。故郷にもいい報せができそう……」

 

シーアは微笑みながら、腹部に手を沿える。

妊娠検査で陽性が出たばかりなので、目に見える変化はまだ先だが、ニナとユスティネには彼女が聖母に見えた。

 

「「…………」」

 

それと同時に、祝福以外の感情も覚える。

 

羨ましい――と。

 

妖魔界において、妊婦とは英雄の如しだ。

昨日まで最底辺にいたような者でも、周辺の人々が手の平を返して、目上のように扱う。

ましてや生まれた子供が男の子だった日には、物乞いが女王になるかのような名声となる。

 

もし、自分とシーアの立場が逆だったら。

私にも、大人の男性に可愛がられて子を授かることができたのだろうか。

そんな、嫉妬寸前の強い羨望に、ニナとユスティネは心を一時だけ支配される。

 

「ただ、ちょっと困ったことがあって……」

 

というシーアの声で、二人は我に返る。

 

「困りごとって? まさか、あれ? 相手が『ニンチシナイ』とか? それとも『ヨーイクヒ』を払わないとか?」

「そんなのどっちも要らないよ」

 

ニナがまたネットの聞きかじりを披露するが、シーアはさらりと答えてみせた。

実際に妖魔界だと、孕ませた時点で男性の責務は全うされたと認識される。

正妻との間に設けた子でもない限り、子供は授かった女性とその一族のものであり、各種義務も無い代わりに、親権などの権利も主張できないのだ。

よって、やれ認知だとかやれ養育費だとかは、妖女たちからすれば異世界文化である。

 

「もしかして、ご実家の方に問題があったの?」

 

ユスティネが心配そうに尋ねる。

彼女たちの故郷は戦に敗れ、男児を奪われてしまい、出生を管理下に置かれている。

その抜け道として、若い女を人間界へ出稼ぎに送っているのだが、支配者がこれを見咎めると面倒なことになる。

 

「ううん、実家には報告の手紙を送って、まだ返事も来てないの」

 

シーアの返答からすると、困りごとはそちらでもないようだ。

 

「じゃあ、なに?」

 

ニナが促すと、シーアは……どこか嬉しそうでもある微苦笑で、事の次第を説明するのだった。

 

 

 

 

「ご両親に挨拶しなければ」

 

ピシッとしたスーツを着た藤次が、菓子折りを手に宣言していた。

 

「ですから旦那様っ、そのようなことは不要ですってば!」

 

シーアはそれを制止する。

 

「いやでも、こういうことになったわけだし、俺にも男として責任が……」

「責任なんて子を授かっただけで充分ですっ、私の実家もそれで納得しておりますっ」

 

確かに、藤次に届いたシーアの母からの手紙にも、そのような文言があった。

しかし、目出度く我が子ができたというのに、何もしないというわけにもいかない。

 

「旦那様の仰りたいことは、よく理解しております。

 ですが、我が国は内戦が終わったばかりで治安がよくありません。

 旦那様のような殿方が道を歩いていれば即日に誘拐されてしまいます」

 

溜息を吐くシーア。

事実、妖女の悪人は『誘惑』を駆使して男を拐かし、逆レイプして行方をくらますという。

下手をすると人間界から妖魔界に連れ去られ、何人もの妖女に搾られ続けるのだそうだ。

 

「だったらなおさら、シーアを妖魔界に返すわけにはいかない」

 

故に、きっぱりと断言する。

 

「妖女の多くは出産と育児を妖魔界で行うらしいね。

 より多くの親族に助けを得られることや、魔力の環境が関わっているから」

「はい」

「でも最近は、人間界でも周囲の助けは借りられるし、新生児の魔力症例に関しても医療が対応できるようになっているらしい」

 

シーアの妊娠が明らかになってから大急ぎで調べた。

妖女が妖魔界で出産したがる一番の理由は、人間界の魔力環境が理想的ではないからだ。

それが原因で魔力由来の症例が出ることもあり、長らく『妖女は妊娠したら妖魔界に帰る』が通例だった。

しかし、最近の医療はその問題を解決しているらしい。

 

「ですが、そういうのにはお金が……」

「心配ない。こういうときのために蓄えてきたんだ」

 

元妻が無駄にしたが、その後は仕事に逃げていたこともあり、余裕はある。

 

「自分は奴隷だから、なんてのは無しだぞ? もう君は、俺の妻だろう?」

「はぅ……っ♡」

 

先日のセックスでは勢いで頷いたが、素面で言われると恥ずかしいらしい。

妖魔界だと肉体関係があっても、一夜のことか妾がせいぜいであり、正式に『妻』と呼ばれると、お姫様のような気分になるそうだ。

それはさておき、大事なのは次の一点。

妊娠したシーアが、人間界に留まるか否かである。

 

「俺にとっても危険な妖魔界が、子供にとって安全ということもないはずだ。

 無理強いはしないが、人間界で産むことも視野に入れて、ご家族と相談させてくれないか?」

 

シーアは、真剣そのものといった藤次に抗しきれず、

 

「……手紙で、家族に伝えます」

 

愛されていることをひしひしと感じて顔を赤くしながら、頷くのだった。

 

「じゃあ、夕飯にしようか。今日は俺が作るから、シーアは座っているように。ほら、膝掛けだ。身体を冷やさないように」

「だ、旦那様っ? まだ身動きに不自由するのは先ですからっ」

 

すっかり過保護になった主人から仕事を取り戻すべく、シーアは説得を試みるのだった。

 

 

 

 

「惚気か!」

 

ニナが思わずツッコミを入れた。

 

「いい旦那様でよかったわぁ」

 

ユスティネは安心したように手を合わせるが、シーアの悩みの本題はそちらではない。

 

「惚気かはともかく……二人は、どう思う? 故郷に戻るのか、人間界か」

 

問われた二人は顔を見合わせると、ニナの方から迷いなく答えた。

 

「どうって、帰郷した方がいいに決まってるでしょ?

 人間界の、特に日本の育児環境とか頭おかしいし」

 

これはネットの聞きかじりではない。

子供は一族総出で育てる妖魔界からすれば、父母だけで子育てしようという核家族社会は愚の骨頂だ。親族のしがらみといった目先のものを面倒臭がり、より大きな苦労に自分を追い込んでいる気がしてならない。

母親の育児負担だの家計収入だのといった議論には、そもそも『一親等より遠い親族と助け合う』という発想が欠けている。

あくまで妖女の感性によるものだが、この国は出産育児に向いていない。

 

「確かにそこは気になるけど、私は人間界で産むのもありだと思うわ」

 

ニナとは逆の意見を出したのはユスティネだ。

シーアとニナが視線で理由を問う。

 

「シーアの旦那様の話にもあったけど、人間界の医療技術は捨てがたいわ。

 私たちの故郷なんて、いまだに産婆や祈祷師よ?」

「う、確かに……」

 

故郷の文明が遅れていることは、ニナもユスティネもシーアも、日々感じている。

 

「なにより、私たちの実家はどこも新体制派に睨まれてるのよ?

 そこに妊娠したシーアが帰郷して、見逃してもらえると思う?

 産まれた子が女の子ならともかく、男の子だったら……」

「っ!」

 

シーアは反射的にお腹を押さえた。

男の子だったら? 決まっている。支配者は産まれた直後にぶんどって行くだろう。

下手をすると、もっと過激な手段に訴えてくるかもしれない。

 

「残念だけど、リスクの大きさで言うなら、妖魔界の方が危険だと思うの」

 

異論は出ない。

日本も日本だが、故郷も故郷だ。

二つを比較すれば、ダイレクトに命を危険に晒されない側が、断然いい。

 

「一度ご実家の方をお招きして、膝を突き付け合って話す必要はあると思うわ」

 

ユスティネの言うことももっともだ。

シーアも必要はあると感じていたが、藤次やユスティネも同意見だと分かり、気が固まった。

 

「なら、実家の代表者に来てもらって――」

 

シーアが計画を立て始めたとき、ユスティネの首輪から小さな音がする。

 

「ああ、ごめんなさい」

 

奴隷の首輪だが、音が鳴っているのは通信魔法の呼び出し音だった。

最近の通信機器は、魔法の技術が流用されたものだと、指輪サイズにまで小型化できる。

シーアたちの場合は、奴隷の首輪に最低限の連絡機能がついている形だ。

 

「ユスティネです」

 

ユスティネが首輪に軽く指を触れさせると、通話が始まる。

装着型の媒体は骨伝導であることも多く、相手側の声はシーアたちにも聞こえない。

 

「大家さんですか? ええ、ニナも一緒です。え?」

 

ユスティネが目を丸くする。

察するに、住んでいるアパートの大家からの連絡らしい。

ニナも一緒だというのは、二人がルームシェアをしているからだろう。

ユスティネの表情に不穏なものを感じて、ニナも注視している。

 

「――アパートが、全焼した?」

 

青ざめたユスティネの言葉に、シーアとニナも目を見開くのだった。

 

 

「それは、とんだ災難だったな……」

 

帰宅後、藤次はシーアから事の次第を聞いていた。

神妙な顔で「お話があります」と言うから何かと思ったら、親友が住まいを焼失したらしい。

 

原因は住人の失火。

妖魔界では魔法が発展しているため、電気やガスといったものに不慣れであり、人間界に来て日が浅い妖女はそういう事故を起こしやすい。

 

「はい、つきましては――」

 

シーアは座っている藤次の横に立ち、勢いよく頭を下げる。

 

「いいよ」

「彼女たちを、この家にっ――え?」

 

シーアが頼みの言葉を口にする前に、藤次は答えていた。

 

「次の住居が決まるまで、宿を貸してほしいってことだろう?」

「そ、そうですが……その、旦那様? よろしいのですか?

 自分で言っておいてなんですが、これはあまりにも、奴隷として度を超えた頼み事で……」

 

そこは、普段から寛容な藤次も否定できない。

シーアは藤次が雇っている家政婦であり、その友人が住む場所に困っているからといって、家に上げてやる義理はない。常識的に考えて、ホテルに泊まれと言う。

 

「その様子だと、新居を得るまで時間が掛かりそうなんだろう? ホテルも高くつく」

「はい……」

 

昨今は、地球の十倍とよく言われる妖魔界から、膨大な妖女たちが訪れている。

集合住宅も宿泊施設も大抵が満室、事前の準備もなく雨風を凌ぐのは一苦労だ。出稼ぎ労働者であるシーアたちの懐事情にもよくない。

 

「それに……籍はまだだが、君はもう俺の妻だ。妻の親友なら助けるのが当たり前だ」

「っ♡ あ、ありがとうございます……っ!」

 

頬を染めて頭を下げるシーアだった。

 

「というか、外は雨じゃないか。その子たちはいまどこに?」

 

窓の外を見ると、夕方頃から振り始めた雨が、結構な雨量になっている。

 

「近くに待たせてあります」

 

準備がいいというか、本当に他の手段がなかったらしい。

シーアが首輪の通信機能で連絡すると、彼女の親友たちが姿を現した。

 

「ユスティネと申します」

「……ニナです」

 

かくして、藤次は二人の妖女と出会う。

 

「初めまして。大変だったね。どうぞ、椅子に座ってくれ」

 

どちらもシーアと同じ褐色。

長身で豊満で金髪な方がユスティネ、細身で黒髪な方がニナというらしい。

 

「このたびは、恥知らずなお願いを聞いていただき、ありがとうございます。西条様」

「……どうも」

 

ユスティネは鷹揚な態度で一礼するが、ニナは妙に硬い態度で目礼するだけ。

積極的に口を開いたのはユスティネだった。

 

「決してご迷惑はお掛けしません。

 次の新居が整うまでの間だけでも、どうか宿をお貸しください。

 それこそ、寝起きは台所の隅でも――」

 

懇願するユスティネの言葉を聞いて、藤次は小さく吹き出してしまった。

 

「ああ、ごめん。いつぞやのシーアと同じことを言うものだから」

「だ、旦那様っ!」

 

雇った当初のシーアも、部屋なんか使わず台所の隅で寝るとまで言っていた。

思い出したシーアも赤面している。

こうして他人がしているところを見ると、自分が何を口走っていたか分かるのだろう。

 

「楽にしていいよ。いきなり住んでる場所が火事になって、無理な相談かもしれないけどね」

 

彼女たちの経緯を考えれば、態度を責めるのも酷というもの。

こちらを探るように睨んでくるニナにしても、いきなり知らない男と同居することになった少女としては正当だ。

 

「恐れ入ります。シーアから聞いていた通りのお方ですね」

「へぇ、シーアはなんて?」

 

ユスティネが少し緊張を解いた様子で微笑むと、シーアが焦り始める。

 

「聞いたこともないほど立派な紳士だと」

「おや、本当かい? 悪口を言っていたとしても怒らないよ?」

「言ってませんっ、旦那様の悪口なんて脅されても言えませんからっ!

 もうっ! 意地悪しないでくださいませっ!」

 

隣のシーアが藤次の肩を揺する。

ユスティネとニナが目を丸くしている。

奴隷として、というか妖女が男性に接するものとして、目を丸くするくらいには失礼なのだろう。

それが許容されるくらい親しい関係であることが、二人にも伝わったようだ。

結果的にそれが、二人の緊張を解くことにも繋がった。

 

「とりあえず、部屋は余っているから好きに使ってくれ。

 シーア、俺のことはいいから、二人に必要なものを揃えてあげなさい」

「かしこまりました」

 

命じると、気を取り直したシーアも一礼する。

なにせ留守中に家が全焼したのだ。ユスティネとニナは、それこそ身ひとつの家なき子だろう。

だからシーアへの命令には、「俺の金で最低限のものを買ってもいい」という意味を含んでいる。

二人に気を遣わせないため明言しなかったが、シーアもそこは汲み取ってくれていた。

それは既に、息の合った夫婦、または主従の姿である。

 

「「…………」」

 

ユスティネとニナは、そんな二人を呆けた顔で見ていた。

驚いたような――それ以上に、羨ましそうな顔だった。

 

 

 

 

藤次の住むマンションは、それなりに立派だ。

元妻の強い希望で、それなりの階数と部屋数のあるマンションに住んでいる。

離婚後はすっかり閑散としていた間取りも、このたびユスティネとニナを住まわせることになり、空き部屋たちも存在意義を果たせる日が来た。

 

しかしユスティネもニナも、一人一部屋という待遇は流石に遠慮して、空き部屋のひとつを二人で使うことになった。

 

そうして夜になり、二人が部屋で休んだ頃――

 

「んっ……ちゅっ♡ ……んっ♡」

 

いつものように、シーアは藤次の寝室に裸身を晒していた。

 

ベッドの上に座った藤次の上で、同じ方を向く背面座位となったシーアが、ゆっくり腰を動かす。

首は後ろを振り返り、背後の藤次と舌を絡め合っていた。

 

「ぷぁ♡ 旦那様ぁ……私、大丈夫ですから。もっと、動いて、いいですからぁ♡」

「駄目だよ。子宮に負担を掛けるわけにはいかない。ポルチオの手前までで我慢しなさい」

 

いつもは子宮を押し潰す巨根が、今夜は寸前までで止められている。

シーアが自分から腰を落とさないよう、奴隷の首輪でそれを禁じられてさえいた。

 

「んぅぅぅっ♡ 優しい♡ 優しいの嬉しくてっ♡ ああぅぅぅっ♡」

 

奥まで届かなくても、膣道の性感帯だけで、小刻みに達している。

それでもシーアは物欲しそうに腰をくねらせ、より強い快感を得ようとしていた。

 

「旦那様、我慢してる。私、奴隷なのにぃ、我慢させちゃってるぅ……っ!」

「そんなことを気にするな。ほら、ここも好きだろう?」

 

藤次はシーアのスポットを擦りながら、乳首を軽く抓って苛めてやる。

 

「ひゃうっ♡ ああそんなっ♡ 私っ、旦那様にぃ♡ いいとこ、擦らせてっ♡

 これじゃっ、逆ですっ♡ また立場が逆ですっ♡」

「ああ、今日は俺の方が奉仕してやるから、たっぷりイキなさい」

「だめっ♡ そんなのだめっ♡ 旦那様にそんなことさせちゃだめなのにぃぃぃっ♡」

 

シーアは奴隷の信念に反するセックスに、背徳感を覚えてしまっているようだ。

それが力強さの不足を補い、両頬を押さえたシーアは、緩いが長々とした絶頂に陥っていく。

 

「ああっ♡ すごいのぉ♡ こんなイキかた、初めてでしゅっ♡

 ごめんなさひっ♡ 旦那様のお手を煩わせてっ、幸せイキしちゃいましゅぅっ♡

 んあっ、あああ、あっあっあっあっあああぁぁぁっ♡♡♡」

 

せっかく負担を小さくしようとしていたのに、シーアは全身を激しく痙攣させいる。

 

「こら、声を殺すんだ。お友だちに聞こえるぞ?」

「ふぅっ♡ んんんっ♡」

 

シーアは涙目になりながら、片手で口を押さえる。

つい普段と同じように喘いでいたが、今日はすぐ近くの部屋にユスティネとニナがいるのだ。

 

「だんな、しゃまぁ♡ 声、我慢、できましゅから♡ もっと、いじめてぇ♡

 いつもみたいにぃ♡ 旦那様の、逞しさ、感じたいんです♡

 お尻でも、お口でも、いいですからぁ♡」

「わかったわかった、後でイラマチオしてやるからな」

 

藤次はまだ達していないが、妊婦に無理はさせたくない。

ここしばらくの夜は、こういった愛情重視のスローセックスばかりだった。

 

 

当然――別室のニナとユスティネは、情事に気付いていた。

 

「っ――ぁ――っ――♡」

 

という程度に、シーアの声が漏れ出ている。

扉を少し開けて覗き見、などという真似は流石にしていない。

二人で同じベッドに入り、耳をそばだてているだけだ。

 

「「…………」」

 

ニナもユスティネも、褐色の肌を赤くしながら、必死に息を殺している。

物音の一つも立てまいと、身動きすらしない。

お互いが起きているのかどうかも頭にない。

背中を合わせて横になり、寝たふりを決め込みながら、目を大きく見開いて耳をそばだてる。

 

((シーアが……『女』してる……っ!))

 

どちらも、こうして肌で感じるまで、実感がなかった。

ユスティネにとってもニナにとっても、シーアは妹分、真面目で純粋なところが心配になる子だ。

 

それが――あっという間に自分を追い越していった。

 

男性を獲得することを、その経験がない女性と比べて優れているとするのは暴論かもしれない。

しかし、他人と己を比較してそういう強い感情があったら、それは真実である。

 

(いま、シーアが……西条様と……)

 

ユスティネの頭を締めるのは、シーアというより、藤次のことだった。

 

いい匂い――だと思った。

妖女にとってそれは、相性がいいということ。

少なくとも肉体的には――セックスしたいと思っていた。

 

(あの、お優しそうな方に……抱いて、もらって……っ)

 

ユスティネは男を知らない。

妖魔界にいた頃には、約束した男がいた。

約束と言っても結婚ではなく、一夜妻となって子作りをする約束だ。

相手側からすれば、日替わりで相手することを義務づけられた『妊娠希望者』に過ぎない。

その事前顔合わせで、淡泊な対応をされたのが、唯一の男性経験である。

 

(声が、だんだん、大きく……荒々しく、されてるんだ……っ!

 身体に、夢中になってもらって……逞しく、突かれて……っ♡)

 

約束した男とは、内戦の勃発で二度と会えなかった。

ユスティネの属していた旧体制派の家々は、途絶えさせられるか飼い殺しとなり、男は新体制派が連れて行った。

その男性とのたった一夜のため、作法や手管を学んできたことも、全て無駄になった。

妖魔界における『負けた女』の典型と言える。

 

(達するの? 殿方の手で上り詰めさせられるのは別次元だって言うけど……本当、なんだ……)

 

ユスティネは自慰しか知らない。

妖女は成長過程で処女膜を失い、ディルドでのオナニーも嗜むが、それだけだ。

男の手、分厚い身体、生きた逸物を知らない。

一度それに触れたが最後、妖女の本能が爆発するのだということだけ聞いている。

『いい匂い』がする男性ともなれば、人生が変わるのだとも……

 

(いい、なぁ……♡)

 

ユスティネは自分の嫉妬心を、微苦笑しながら受け止める。

手はいつの間にか、乳房と股間に伸びていた。

 

――そのすぐ隣では、

 

(だめ……だめ……だめっ!)

 

ニナが、ユスティネ同様、発情していた。

ただし、発情しているのは身体だけで、頭はもう少し複雑だ。

 

(シーアが……男に、弄ばれてる……っ!

 どうしよう、止めなきゃ……ああでも、二人は恋人で、夫婦で……でも……っ)

 

ニナの家系は、禁欲的だった。

 

人間界でもそうだが、自分の欲を律せよという宗教や思想はあるものだ。

厳格な家に育ったニナもその一人。

妖魔界におけるスタンスの一つとして、家に複数の子がいた場合、『仕事を継ぐ者』と『子供を産む者』に分けられたりする。

 

ニナは『仕事を継ぐ者』であり、人生設計に男性との関係を予定していない。

約束された独身貴族、異性に関するストイックな姿勢は修道女にも近い。

 

しかし、それも人間界に渡るまでの話。

実家は衰退し、ニナは奴隷落ち。

あわよくば人間界で男の寵愛を受けて子を持ち帰れと、人間界に送り出された。

 

(そんなの、嫌……男なんて……私は、男になんて……っ!)

 

ニナも妖女だ。性欲はあるし、自慰もする。

西条藤次という人間も嫌いじゃない。感謝だってしている。

それでも――

 

(セックスなんて……しないっ)

 

これは藤次への拒否感というより、現実そのものへの抵抗である。

少し前まで、望んでも男を得られない『仕事用』の人生を送らされてきたのに、ある日から突然、奴隷に落ちて男に媚びを売ってこい――そんなものを突き付けてくる故郷に対する抵抗だ。

平たく言えば、意固地になっているのだ。

 

(聞いちゃだめ……想像しちゃだめ……あの男に、抱かれるなんて……っ)

 

それでも、本能は思考を支配しに来る。

追い詰められた状況で出会った、聖人のように慈しみある男性。

妖女の嗅覚はYESと言っており、シーアの妊娠を知って女の本能も刺激されている。

 

(私は……絶対、しないんだから……っ♡)

 

たった一つ、年相応のちっぽけな意地に、ニナはしがみつく。

思わず自慰をしそうになる手足を必死に押さえ込み、内股を擦りながら息を荒げる。

 

ニナを狂わせるシーアの艶やかな声は、まだ鳴り止まない――

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……旦那様ぁ♡ ありがとうございます」

「こちらこそ。無理をさせて済まないな」

「無理だなんて……♡」

 

事後――シーアの膣内を楽しんだ藤次は、最後は口で抜いてもらい、息を吐いていた。

妊婦への膣内射精は感染症の可能性があるので、エロ漫画だけにすべきである。

 

「旦那様、ご不満ではないですか? あんなに、その……お優しいのは、嬉しいですけど……」

「まだ言うのか? それとも、シーアの方こそ物足りないんじゃないか?」

「そ、そういうわけでは……」

 

藤次の腕枕で横になりつつ、シーアはごにょごにょと口ごもる。

 

物足りないとは言わないが、もどかしさがあった。

 

(旦那様が、私に飽きてしまわれたら……)

 

シーアはそう思わずにいられない。

相手が妊娠した途端に興味を失い、次の女へ――というのは、妖魔界男性の特徴だ。

子作りノルマを課せられている彼らを責めるのも酷だが、正妻以外の扱いは淡泊である。

 

(旦那様に、ご不満なんて、抱かせたくないのに……っ)

 

同時に、シーアはこうも思うのだ。

自分は、この人に何をしてあげられるのだろう。

こちらは奴隷から妻にまでされたシンデレラだというのに、家事と夜伽しか返せていない。

いずれ身重になれば、それもできなくなる。

だからせめて、セックスだけは……何一つの不満足をさせたくないのだ。

 

「…………」

「シーア?」

 

押し黙って考え込むシーアに、藤次は声を掛ける。

 

シーアは思う。

決して、この人を逃してはならない。

女として、彼に置いて行かれたくない。

藤次はそういう不義理をしないと分かっているが、万に一つの不安さえ潰さなければ安心できない。

シーアにしては昏い、女としての執念のようなものが、彼女の目の色を変えさせる。

 

「旦那様……」

 

そしてシーアは、思えばすぐ傍にあった『妙案』に辿り着く。

 

自分一人が、献身的な奴隷になるだけでは足りない。

自分だけが、この身体を好きにさせるだけでも足りない。

この敬愛すべき主人に、全てを捧げても、まだ足りないなら――

 

「ユスティネとニナを――どう思われますか?」

 

親友たちを捧げるくらいのこと――なにも悩むことはなかった。

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

ハーレムの下準備回でした。
エロシーンは後編でがっつり入れていきます。

※誤字報告くださいました方々、
 作者でなければ気付かないようなとろこまでご指摘いただき、
 いつも感謝です。


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第四話(中編)

 

「二人をどう思うって……」

 

ユスティネとニナをどう思うか――シーアはそう尋ねてきた。

藤次はその問いの意味するところを少し考えて、小さく笑う。

 

「心配しなくても、俺はシーア一筋だぞ?」

「はうっ♡」

 

微苦笑して言うと、シーアは意表を衝かれたように驚きつつ、耳まで赤くなる。

 

「ま、またそうやって……おとぎ話でしか聞けないようなことばかり……っ!」

 

藤次の腕を枕にしていたシーアは、腕の肉をやんわりと抓ってきた。

 

「そういう話ではなく……いえ、すごく嬉しいのですけど……」

「ん? 俺がニナちゃんやユスティネちゃんに浮気するかもって話じゃないのか?」

 

思えば、シーアという婚約者がいるにも関わらず、年頃の女性を家に住まわせてしまった。

招いたのはシーアだが、女心というものが悪い想像に駆られても不思議はない。

 

「浮気、ですか……そうでした、人間界は一夫一妻ですものね。

 あぅ……どうしましょう。これだと、なんだか私だけ、はしたない女みたいな……」

 

なにやら悩んでいるシーアの結論を待つ。

 

「その、旦那様? 妖魔界は、原則的に一夫多妻制なんです」

「ああ、知ってるよ。国や地域によって色々あるみたいだね」

 

妖魔界と一言にいっても、地球の十倍の人口と国家がある。

シーアの故郷がどのような婚姻形態なのかは、思えば聞いていなかった。

 

「私の国では、それほど厳密な決まりはありません。

 最初から複数の女性と男性が結ばれることもあれば、妻が一人ずつ増えることもあります」

「…………」

 

それを聞いて、藤次もようやく、シーアの言わんとすることが理解できた。

 

「シーア、君は……あの二人も妻にしないかと言ってるのか?」

 

驚きの声を怒気と誤解してか、シーアが小さく震える。

髪を撫でて安心させると、シーアは遠慮がちに説明し始めた。

 

「その、いまはまだ身軽ですが、いずれ私のお腹も大きくなります。

 子供が産まれたら尚のこと、家事と育児の人手が必要になると思うんです」

 

それはまあ、そうだろう。

 

「人間界では夫婦で家事分担というのが基本のようですが、私たち妖女は『妻たち』で分担するのが普通です」

「そうか……確かに、その方が安心かもしれないな」

 

主婦の仕事がどのくらい大変かはさておいて、育児が重労働なのは論を()たない。

ノイローゼになり、泣き止まない我が子を殺してしまう母親でさえいる。

それについて親だけ責めて終わるよりも、負担軽減を考えるべきだろう。

一時金だとか夫の育休だとかいう、焼け石に水でしかないものではなく、もっと確実な方法。

妖魔界の家庭は――『親の数を増やす』という形でこれを解決している。

 

「私たちにとっては、母親は複数いるのが当たり前で、同じ夫の子なら我が子も同然に助け合うのが普通なのです」

「確かに、単純に人手が多いっていうのは、強みだな……」

 

子供の夜泣きが激しいなら、昼担当と夜担当の母に別れればいいのだ。

体調を崩したりした日には、他の母たちを頼ればいいのだ。

昔の人々は祖父母や近所が助けていたが、核家族化でその協力態勢が崩壊しているという。

妖魔界はその逆、育児とは一族や地域を挙げての大事なのである。

 

「そうか、子供のことを考えて、苦楽を共にしてくれる家族が、もっと必要だと――そう言いたいんだな?」

「はい……も、もちろん、旦那様が一夫一妻にこだわるのであれば……」

「いいや、そこは遠慮しちゃ駄目なところだ」

 

藤次はこの問題について、シーアが一歩引くべきではないと感じた。

もはや最近は珍しいくらいだが、藤次は一夫一妻の両親に育てられた。

だから漠然と、家事育児をシーアに任せてバリバリ働こうと思っていた。

しかし、視野を広げてみれば、よりシーアの負担を減らして我が子にも幸いする選択肢があったようだ。

これは真剣に検討しなければならない。

 

「シーアは、いいのか? あの二人と、その……」

「ユスティネもニナなら、同じ夫を妻とする『義姉妹』になっても、上手くやっていけます。

 それに……」

 

シーアは、言ってもいいのか迷う間を置いてから、どこか艶っぽい表情で口にする。

 

「あの子たちも……旦那様に、抱かれたいと思っているはずです」

「っ!?」

 

その言葉は意外だった。

なにせ今日会ったばかりだ。

ユスティネはともかく、ニナにいたっては、かなり警戒されていた気もする。

 

「妖女には、分かるんです。自分にぴったりの血を持ってる殿方が……心よりも先に、身体が分かっちゃうんです」

 

掛け布団の中で、シーアが足を絡め、胸板を撫でてくる。

こちらを見上げるその微笑は、どこか魔女のようですらあった。

男を誘惑するのみならず、邪な道へとそそのかす、艶美な魔女だ。

 

「でも、人間界にはあの条例もありますから……」

 

誘惑禁止条例――妖女が男性を誘うことを禁じた条例。

出稼ぎ労働者であるシーアたちのような妖女にとっては特に、違反すればビザ失効もありうる。

だから、ユスティネもニナも、身体に正直なことはできないというわけか。

 

「旦那様さえ、よろしければ……」

 

シーアの手が、布団の中で胸板から腹筋へと下り、臍の下へと静かに移動する。

細い指先に触れられた逸物は、話を聞いている間に勃起していた。

シーアには、何度も触れさせて奉仕させてきたというのに、まるで今日初めて異性に触れられた童貞のように、強い興奮を覚えた。

ともすればシーアの表情すらも、少年をたぶらかす美女のようですらある。

無垢な少年に「いけないこと」の味を教えようとするように――彼女は耳元で囁いた。

 

「あの子たちから……()()()()()()()()、いいんですよ?」

 

藤次は答えなかった。

答えない代わりに、シーアに覆い被さり、もう一度セックスをした。

 

胸の内に生じた、どす黒い欲望を、大慌てで吐き出すように。

シーアは藤次の手付きから胸中を察して、それ以上は何も言わなかった。

 

(あの子、たちを……っ!?)

 

事の最中、藤次の脳裏を、否応なく二人の姿が過ぎる。

ユスティネの豊満な肢体と、ニナの起伏ある細身を……この手に……

 

藤次は善人だ。

セックスの機会が多いこの時代において、女は元妻くらいしか知らないという堅物だ。

そんな自分には似合わない、昏い欲望が――今宵、心の奥底に、根付いてしまった。

 

 

 

 

朝の訪れを感じる。

ここ最近はシーアとのセックスもあって、目覚めがあまりよくない。

仕事に響くから何もせずに眠ろうと決意しても、結局はシーアの身体に溺れてしまうせいだ。

十代の若僧でもあるまいし、今日こそは劣情に流されないぞ――と、藤次は決意する。

 

「西条様? 朝でございます」

 

そんな藤次の決意が、耳に届いた少女の声で消滅した。

不十分な目覚めのせいで顔は見えないが、自分をこうして起こしてくれるのはシーアしかいない。

 

「もう、西条様? そろそろ――きゃっ!?」

 

だからいつものように、シーアをベッドに引っ張り込む。

ぽすんっと、柔らかな感触が胸板の上に乗る。

胸の感触だ。

いまさらシーアの胸が触れたくらいで取り乱しはしないが、いつもより大きく感じる。

 

「西条様っ? あの、私――」

「なってないぞ。まったく駄目なメイドだな」

 

掛け布団を退けて、下腹部を露にする。

パジャマの中では、シーアとの関係以降すっかり身勝手になった肉棒が、朝の隆起を作っていた。

 

「っっっ」

「いつもみたいに、朝勃ちの処理をしてくれ――」

 

シーアは息を呑んでいた。

いまさら自分の朝勃ちなんて、驚くこともないだろうに……と、顔に目を向けると、

 

「っ!?」

 

ユスティネだった。

道理で手に触れる体格が違うと思ったら、シーアではなかったのだ。

察するにシーアに頼まれて自分を起こしに来たのだろう。

それを自分はシーアと勘違いして、朝勃ちの処理をしろなどと……っ!

 

「……っ♡」

 

ユスティネはといえば、藤次の手で身体を股間部に寄せられ、硬直している。

目は見開かれ、藤次のテントを凝視していた。

顔は耳まで赤くなり、唇は震え、目は潤んでいる。

 

「あ、すまない、その、てっきり――」

 

とんだ勘違いだ。訴えられたら負ける、なんなら社会的に死ぬ。

助命嘆願のため詫びようとした藤次に、ユスティナは――

 

「……かしこまりました」

 

自らベッドの上に乗り、藤次の足を跨ぐようにして四肢をつく。

 

何分(なにぶん)初めてのことですので、不調法かとは思いますが、誠心誠意、奉仕させていただきます♡」

 

ユスティネがメイド服の胸元を開いた瞬間――勘違いだと言えなくなった。

大きい――シーアのそれより数段も豊かな乳房が、自分の股間のすぐ傍で開示される。

深い谷間、視覚だけで伝わる柔らかさ、腿に触れる下乳の感触、立ち上る妖女の香気。

それら全てに、男の本能をぶん殴られた。

まるで心を童貞に叩き返されたかのように、脳が目前の乳房に埋め尽くされる。

結果、パジャマのズボンから肉棒を取り出すユスティネの手を、止めることができなかった。

 

「あぁ……っ♡」

 

ユスティネもまた、同じような状態だった。

目の前に表れた男根に目を丸くして、藤次の顔も見ていない。

知性と理性を吹き飛ばされたような、情欲の目だ。

それこそ、男が目の前にある女の乳首へ吸い付こうとするように――

 

「んっ♡ ちゅっ♡」

 

ユスティネは、何の躊躇いもなく、藤次の先端部に口を付けた。

亀頭の先端に、どこか遠慮するように舌先が触れ始める。

 

「ふぁ……んっ♡ じゅるっ♡ んんっ……♡」

 

藤次が拒まないのをいいことに、ユスティネは鈴口から裏筋にかけて舌を這わせていく。

さらにカリ首や竿の部分にも、唾液まみれの口腔を絡ませていった。

 

「んっ♡ んむっ♡ ぢゅるっ♡ ぷぁっ♡ はむっ♡」

 

夢中だった。

こちらが命じるまでもなく、ユスティネの口淫は激しさを増していく。

シーアがフェラをする時と同じだ。

妖女が持つ口内性感帯を刺激するため、目の前の肉棒を積極的に呑み込んでいく。

 

「ぢゅるるるっ♡ ぢゅむっ♡ んぐっ♡ ふぅぅっ♡」

 

喉奥まで使って、根元から先端まで余さず愛撫する。

手慣れた風俗嬢のように大胆かつ丹念なフェラチオだ。

それを、今日初めて男根を見たようなユスティネが、本能的に行っている。

 

(シーアだけじゃない、妖女って、皆こうなのか……っ?)

 

一心不乱に頭を上下させるユスティネを見て、藤次は息を呑んだ。

そう思う余裕があったのは、ユスティネの舌使いに、まだ素人臭さがあったからだろう。

 

「ぷはっ♡ 西条様の、おっきぃ♡ 美味しぃ♡ 私で、興奮して、くださってるっ♡」

 

息継ぎのために口を離したユスティネは、脈打つ肉棒を嬉しそうに眺めていた。

藤次を見上げる瞳にはハートマークさえ浮かんでいるように見える。

 

「ユスティネ……」

「西条様、もう少し、させてください♡ 私、頑張って、気持ちよくしますから――んむっ♡」

 

再びユスティネは、肉棒を口に含んでいった。

息継ぎをしたのはそのためだったのだろう――今度は喉奥まで亀頭を受け入れた。

 

「んぐっ♡ ぐぶっ♡ んぉっ♡」

 

苦しげな声を上げるユスティネだが、その顔には苦痛よりも喜悦が見える。

涙目になりながらも、逸物の根元へキスするように、必死に顔を前後させている。

 

(本気か……命じてもいないのに、根元まで……っ)

 

舌技の不足を吸引力で補おうとするような、凄まじいバキュームフェラ。

上顎で擦り、喉奥で引き絞る、貪るようなフェラチオが、藤次の肉棒を限界に導く。

 

「くっ、出るぞっ!」

「っ♡」

 

ユスティネは一瞬、動きを止めて――

 

「んっ♡ んん~っ♡」

 

どくんっと、吐き出された精液を受け止める。

 

「ぢゅぶっ♡ ちゅるるるっ♡ んっぐ……♡」

 

それどころか、尿道に残っていた白濁液を吸い上げ、当たり前のように嚥下してしまった。

 

「あっ♡ ああぁぁ……旦那、様ぁ♡ 申し訳ありません、わたし……飲んじゃいました♡

 西条様の許可もなく……大事な、貴重な、子種を……っ♡」

 

ひどく背徳的なことをしてしまったように、ユスティネは謝っている。

その顔は上気しており、完全に発情してしまった身体からは妖女のフェロモンが立ち上っていた。

 

「っ」

 

思わず、生唾を飲む。

ユスティネが自分とセックスしたがっているとは、シーアからも聞いていた。

しかし、これほどとは……

勘違いとはいえ奉仕を命じられ、一も二も無く従い、夢中で肉棒を頬張るほどだったとは。

 

(しても、いいのか……?)

 

彼女がOKなのは明らかだ。

シーアと比べて大人っぽい体付き……きっと彼女とは違う抱き心地だろう。

そんな、婚約者ができたばかりの男として許されないような邪念が浮かぶ。

しかも、他ならぬ婚約者のシーアが、ユスティネを抱いてもいいと言っている。

もしかすると自分は、まだ目が覚めていなくて、劣情による夢を見ているのではないか……

 

「西条様……もし、お嫌でなければ……」

 

ユスティネが懇願するような顔で、何かを続けようとしたとき、

ピピピピ! と、スマホのアラーム音が部屋に響いた。

 

「「っ!?」」

 

藤次もユスティネも、何かに叱られたかのように、肩を跳ねさせる。

時計を見れば、そろそろ身支度をしなければならない時間だ。

 

「……その、ありがとう。気持ちよかった」

「はい……し、失礼しますっ」

 

最低限の礼を言うと、ユスティネは気まずそうに部屋を駆け出していった。

たぶん、大急ぎで歯磨きをして、口内の汚れを落とすのだろう。

藤次もティッシュで逸物を拭い、出勤の支度を始めるのだった。

 

 

 

 

昼休み、藤次は同僚に現状を相談してみることにした。

以前、藤次に奴隷を雇うことを勧めた同僚だ。

 

「それは手を出してやるべきだな」

 

同僚の返答は、藤次の予想していたよりも大胆だった。

社内食堂で愛妻弁当(というにはまだ早いが)を広げた藤次は、目を瞬く。

 

「手を出すべきって……」

「お前の奴隷、というか婚約者さんが勧めてきたんだろ?

 つまり奥さんから見て、今後の出産育児と生活には複数の女手が必要ってことだ。

 お膳立てがそこまで整ってるなら、後は据え膳食わぬはなんとやらだよ」

 

確かに、シーアが嘘を吐く理由はないからそうなのだろう。

 

「そっか、お前はご両親も前の奥さんとも一夫一妻だっけか。なら戸惑うのも仕方ないよな」

「ああ」

 

だからこそ、既に妖女と結婚して一夫多妻をしている同僚に聞いたのだ。

 

「俺はむしろ一夫一妻をしたことないから断言はできないが、負担は軽くなるぞ。

 子供なんて夫婦数人がかりで面倒見てやっとだ。女手一つで面倒見るなんて想像もできねぇ」

 

一夫多妻側からすると、妻が一人で家事育児をするというのは、オーバーワークに見えるようだ。

シーアの妊娠が明らかになった以上、その声は無視できない。

 

「家計にもいい。男一人と妖女三人の四人夫婦だとすると、一人か二人が家事育児に専念しても、他の二人が養えるだろ?」

 

お金も当然無視できない。

例えば自分が怪我や病気で休職しても、他に働き手がいるなら安心だ。

 

「精神面でもなぁ。悩みの相談でも何でも、二人だけの夫婦に比べれば解決しやすいっつうか……

 一対一で閉じきった夫婦だと、関係が拗れやすいし修復しにくいと思うんだよな」

 

一度は離婚している藤次には、少し響く言葉だった。

 

確かに、一夫一妻の夫婦とは、良くも悪くも『相手しか見ない』わけだ。

家庭という密室の中で、延々と一対一の関係を続けていれば、それゆえの歪みも生じる。

相手の些細な欠点が大きなストレスになったり、不均衡な関係が構築されてしまったり。

 

その点、一夫多妻型だと、別の誰かが間を取り持ったりすることで、問題の解決を図れる。

人間は群を作る生き物。夫婦と子供だけの最小集団で完結させるのは、むしろ危ういことなのかもしれない。

 

「妖女と結婚するっていうなら国際結婚だ。相手側の文化に歩み寄るのは必要だと思うぞ?」

「それは、その通りだな……」

 

普段は軽薄な同僚だが、必要なところはしっかりしていた。

 

「つーわけで、相手がその気なら他の子も抱いてやれよ」

「いや待て、一夫多妻のメリットは分かったが、それはまた別問題だ」

「なにが問題なんだよ?」

 

曲がりなりにも大人の端くれ。据え膳だからといって食ってはならない事情もある。

 

「婚約した子はともかく、他の子は俺が雇ってるわけじゃない。

 迂闊に関係をもって万が一のことがあったら、その子たちを雇ってる人が困るだろう」

 

ユスティネもニナも、藤次の奴隷ではない。部屋を貸しているだけだ。

それぞれ雇い主がおり、稼ぎは仕送りにしている。

こういう状況の女性を、安易に妊娠させるのは無責任というものだ。

 

「クソ真面目だなぁ。こう言っちゃなんだが、先方だって産休なり寿退職させるなりして他の奴隷を雇うだろ」

「せっかく戦力になったところで産休されて、穴埋めの新人をまた育てなきゃならない苦労は、お前も知ってるだろ」

 

妖女がいる時代における社会問題のひとつ――産休や育休で人員の穴が空きやすい。

おめでたいことなので責められないが、対応する側は大変なのだ。

 

「なにをお局様みてぇなことを……でもまあ、逆に言えばそこまで考えるくらいには真剣なわけだ。なぁんだ、相談するまでもなく腹は括れてるんじゃねぇか!」

 

わははと笑って肩を叩いてくる同僚に対して、特に否定することはなかった。

 

「まあ、とりあえず避妊してカジュアルにセックスしてみたらどうだ?

 最初に形を考えるんじゃなくて、親密になってから然るべき形を考えてもいいだろ。

 ああ、誘惑禁止条例のフォローも忘れずにな?」

「カジュアルに、か……」

 

堅物な藤次の人生には、縁の薄い概念だった。

 

 

 

 

その後、ときおり上の空になりながらも、一日の仕事を終えて帰宅する。

以前は積極的に残業をしていたが、最近は定時上がりだ。

通勤は車であり、自動運転のサポートを受けながら道路を走る。

 

(いままで調べてこなかったが、いまどきハーレムなんて普通なんだな……)

 

先の同僚以外にも話を聞いてみた結果、自分の常識の狭さを思い知った。

ある妖女の女性社員は、義姉妹と一緒に夫を持っており、子供を義姉妹に預けて働いていた。

ある若手の男性社員は、学生時代には妖女と子供を儲けており、その後も妻子を増やしてきた。

姉妹を同時に妻として迎えた者や、頼まれて子種だけ提供してきた『子沢山(こだくさん)の独身』もいた。

 

旧時代からすれば、性の乱れも甚だしい。

しかし婚姻や恋愛の多様化は進み、乱れているのが普通の状態で安定してしまったようだ。

 

こんな時代であれば、自分のように『金で雇った奴隷たちと関係を持つ』くらい、悪徳でもなんでもないのかもしれない。

 

(いいのか……あの子たちに、手を出して……)

 

朝から繰り返してきた自問への答えも、変化していた。

朝のうちは『そんな不徳なことはできない』だったものが、いまでは『皆やってること』になりつつある。

 

(シーアも勧めてくれている。あの子たちもその気。逮捕されるわけでもない)

 

世間に許容されていると分かった途端、押し殺していた浅ましい念も、表に出てくる。

 

例えば――ユスティネ。

 

シーアやニナと同年代とは思えない、あの成熟した肢体。

特に豊満な胸などは、きっとシーアとは異なる抱き心地だろう。

今朝のフェラチオを見る限り、性欲は強い。

弱点はどこだろうか? 好きな体位はなんだろうか? 抱けば一度で分かりそうだ。

 

それに――ニナ。

 

体型はシーアより一回り大人という程度で、メイド服より学生服が似合う。

容姿に不満はないが、あの性格……まだこちらに気を許していないように見えた。

シーアが言うには、セックスはしたがっているという。

あの態度は、身体の欲求に精神が追いついていないことからくる『お年頃』の反応だろう。

つまり――押し切ってしまえば、ヤれる。

存外、ああいう子に限って、女の悦びを知れば一変するのではないか。

 

なにせ、どちらも妖女だ。

 

シーアのような清純な子さえ、犯されることに悦びを見出してしまう天性のマゾメス。

広く深い性感帯への蹂躙を求め、生殖本能の強さゆえ、子種のためならプライドも簡単に捨てる。

きっと、一度抱いてしまえば、時を待たず従順になっていくだろう。

従順になって失うものよりも、得られる多幸感の方が多いからだ。

 

(後は、誘惑禁止条例か……)

 

妖女は男性を誘えない。

形だけでも性犯罪被害ということにしないと、セックスすること自体が違法になる。

シーアとの関係は、雇い主という立場を利用した『強要』という体裁をとった。

 

ユスティネとニナを抱くためには、何かそういう工夫をしなければならない。

例えば、住まいを焼失した彼女らの弱みに漬け込んで……

 

「…………」

 

赤信号で停車すると同時に、藤次は気付いた。

 

(なにを、考えてるんだ? 俺は……)

 

自分はいま、()()()()()()()()()()()()()()()

もちろん体裁上のものでしかない。彼女たちが本気で拒否するなら手を引く。

それでも、女性を辱めるための計画を真剣に立てている自分がいる。これは事実だ。

 

(いつの間に、そんな男に……)

 

性犯罪者になんて、自分がなるはずないと思っていた。

いくら欲情したからといって、女性を脅したり、乱暴したりするはずないと。

仮に相手が望んでいても、法や立場が許さないなら、しっかり断れる男なのだと。

不埒者を蔑視しており、自分は欲求に駆られても踏みとどまれるのだと、確信していた。

 

なのに――いざ『襲ってもいい状況、犯していい女』を目の前にぶら下げられたら、これだ。

 

「はは……」

 

合法か違法か、相手が望んでいるか否かは、問題ではない。

自分が、倫理に背くことに熱心であるという事実が問題だ。

人並みに倫理観があると思っていた自分は、実は紳士でも聖人でもなかったのだ。

シーアと関係を持ったあの日から、自分はとっくに、不徳な猿になっていたのかもしれない。

 

(だったら……今更か……)

 

胸の中に残っていた躊躇いが、いま消えた。

開き直ったとも言えるし、腹を括れたとも言える。

 

車は間もなく自宅マンションに着く。

家に帰れば、自分をたぶらかす、可愛い妖女たちが待っている――

 

 

 

 

「「「お帰りなさいませ」」」

 

玄関の扉を開くと、シーア・ユスティネ・ニナという三人の褐色メイドが、丁寧なお辞儀で迎えてくれた。

先日まではシーア一人で、それでも感無量だったというのに……まるで貴族になった気分だ。

 

「ただいま。三人とも、日中に困ったことはなかったか?」

 

胸の奥から湧き出そうになった邪念を押し殺し、三人に尋ねる。

 

「はい、私の身体はもちろん、食事も喉を通っております」

 

シーアが喜ばしそうに微笑んで、藤次から鞄を受け取る。

妊婦はつわりで吐いたり、味覚が変化したりして食事に苦労する。

そんな状態のシーアを家に残していくのは、毎朝の心残りだった。

 

「私どもも、何も問題ありません。あるのは西条様の厚意への感謝だけですわ」

 

続いてユスティネが、藤次から上着を受け取る。

今朝のフェラチオもあって、顔を合わせると気恥ずかしい。

ユスティネも同じなのか、表情や声音に妙な艶っぽさを感じてしまう。

 

「ニナちゃんは問題なかったか?」

「はい。勤め先からそれほど遠くなかったので……それと、呼び捨てでお願いします」

 

ユスティネとは対照的に、あまり目を合わせてくれない。

しかしその態度も、改めて見ると、思春期の男の子が年頃の女性の前で照れるのにも似ている。

自惚れかもしれないが、異性として意識されているのだろう。

 

なにはともあれ、三人とも日中に問題は生じなかったようだ。

 

「旦那様、お飲み物はコーヒーでよろしいですか?」

「西条様、郵便物が届いておりましたが、お持ちいたしますか?」

 

居間のソファーで寛いでいると、シーアとユスティネが、どこか競うように世話を焼いてくる。

シーアはいつものこととして、ユスティネはどころか、自分の存在をアピールしているようにも見えた。

 

「……ユスティネ? 旦那様のお世話は私の仕事よ?」

「シーアは妊婦さんだもの、無理はさせられないわ♡」

 

笑顔で見つめ合うその視線も、どこか張り合うようである。

ニナはそこに加わらず、夕飯の支度を始めていた。せめてもの家賃代わりだと言って、積極的にシーアの仕事を手伝っている。

 

「飲み物は何か冷たいものを。郵便物は持ってきてくれ」

「「かしこまりました」」

 

命じると、シーアとユスティネがお辞儀して離れていく。

藤次はその片方、シーアの手を握って引き留めた。

 

「だ、旦那様?」

 

まさかここで身体を求めるつもりかという顔をされるが、流石にそんな要件ではない。

耳を貸すように手振りすると、シーアがエルフ耳をこちらに寄せてきた。

 

「……今夜は、ユスティネを部屋に呼びたい」

「っ!」

 

シーアが目を見開く。

藤次は注意深く、その反応を窺った。

シーア以外の女性を抱きたいと、他でもないシーアに伝えたのだ。

 

背徳感を伴う動機が胸を打つ。まるで危険な火遊びをしているかのよう。

 

そんな藤次に向けて、シーアは――

 

「はい」

 

いつも通りの、可愛らしい笑顔で。

しかし瞳の色は、どこか魔性を感じる妖女の色で。

まるで我が事のように、嬉しそうに笑っていた。

 

「今夜、部屋に向かわせます」

 

好色な主人の命令に対応するメイド長のように、シーアは頷くのだった。

ほんの少し、自分のことを忘れないでほしいと訴えるように、藤次の手を握って。

そんなシーアに軽いキスをして、安心させる。

 

「…………」

 

そんな二人を、キッチンで聞いていたニナが、耳まで赤くなりながら横目で見ていた。

 

 

 

 

夜――シーアは藤次の部屋ではなく、あてがわれた自室で休む。

これまで毎夜毎晩のように勤めていた夜伽を、今夜はしない。

代わりに寝室へ訪れたのは、ユスティネだった。

 

「西条様……お待たせしました……」

「おお……」

 

扉を開いて入室したユスティネは、艶やかなネグリジェに身を包んでいた。

薄手の生地が透けて、下着がはっきりと視認できた。

外国人女優のような長身と豊満さが、常夜灯の薄明かりに浮かび上がっている。

 

「とてもよく似合っている」

「あ、ありがとうございます……♡」

 

心から嬉しそうに、そして安心したように、ユスティネは微笑んだ。

藤次が無言で手を伸ばすと、意味を理解して藤次に近付き、ベッドの縁に膝を乗せる。

 

「嫌じゃなかったかい?」

「嫌だなんてっ。いえ、その……西条様には、多大なご恩がありますから……」

 

妖女は誘惑できない。

だからユスティネは「抱かれたい」という主旨の言葉を直前で呑み込み、言外の肯定に留めた。

藤次もそうした、『強要』という体裁を作るために言葉を選ぶ。

 

「君たちを助けたかったのは本当だよ? でも……俺も悪い大人だからね。

 こんな可愛い子と同じ家に暮らしていては、どうしてもそそられてしまう」

「はぅ……♡」

 

ユスティネの手首を引くと、彼女の肢体が胸の中に倒れ込んでくる。

 

「妊娠したシーアに無理はさせられなくてね。ここしばらく、欲求不満なんだ。分かるね?」

「はい……西条様も、男の方、ですもの……♡」

 

緊張に強張っているユスティネの背を撫でると、彼女は肩の力を抜いて、藤次の胸にしなだれかかる。

 

「とりわけ、君は魅力的すぎる。男を狂わせる身体をしている」

「そんな……私のような端女(はしため)に、もったいないお言葉です……♡」

 

恐る恐る顔を上げたユスティネは、目を潤ませ、唇を震わせていた。

怯えている様子は、一切ない。

湯気が立ちそうなほど熱い吐息は、発情した妖女の色香で染められていた。

 

「君だって子供じゃないんだ。何もされずに寝泊まりできるなんて、思ってないだろう?」

「っ♡ もちろんで、ございます……自分の立場は、よく、理解しておりますから……♡」

 

脅しの言葉を連ねるほど、ユスティネは目に見えて興奮していた。

誘惑禁止条例を前提とした『脅迫』はラブコール、犯されることでしかセックスできない妖女にとって、甘美な口説き文句となる。

 

「誰にも言わないと、約束できるかい?」

「あっ♡ はい……決して、誰にも……」

 

背中を撫でる手が腰からヒップに近付くと、ユスティネの身体が震える。

 

「多少は乱暴にされても、我慢できるかい?」

「っっっ♡ はい……私のような妖女に、お気遣いは、無用ですから……っ♡」

 

人間より頑丈で性感帯が深い妖女にとって、男の粗忽さは快楽へ繋がる『愛情』だ。

だから、自分を抱きたいという気持ちが行きすぎている男性は、喜んで受け止める。

それが女の誇り、受け入れてあげられるのは自分だけなのだと、脳内麻薬を分泌させるのだ。

 

「いい子だ、ユスティネ」

「……どうか、ユネとお呼びください」

 

ユスティネは藤次の首後ろに腕を回して、近付いてくる唇を受け入れた。

 

「んむっ♡ ちゅぷっ、れるっ♡ ぢゅるるっ♡」

 

藤次の舌がユスティネの口を犯すようなキス――それは最初だけだった。

数秒後には、ユスティネの方から吸い込むような、貪り合うような接吻に変わっていた。

 

(この子、なんて……これが、男に抱かれたことのない女のキスかよ……っ!)

 

淫乱――今朝のフェラチオの時点で分かってはいたが、彼女もやはり妖女だった。

餌を与えられた動物のように、男の身体へ食いついてくる。

 

「ふあっ♡ あんっ♡」

 

無自覚に乳房に触れると、甘い声を上げながらも、舌を絡め合うことを止めない。

 

「んっ♡ んんっ♡ ちゅっ♡ ふぁふ♡ ぢゅるっ♡」

 

唇を甘噛みされ、親指で乳首をくすぐられる度に、ぴくんっと身体を震わせる。

 

(こんなに、貪欲で、敏感で、大人の身体をして……っ)

 

シーアよりも肉感的な抱き心地に、否応なく興奮が高まっていく。

気がつけばユスティネの身体をベッドに倒し、仰向けにして覆い被さっていた。

 

「はぁっ♡ はぁっ♡ あ、西条様……私、逃げませんから……お、落ち着いて……っ♡」

 

ネグリジェを破くような勢いで胸元を開かせ、黒いブラをめくり上げる。

ブラの端に引っ掛かっていた爆乳が、ふるんっと躍動しながら、上から下へと踊り出た。

本能のまま片方を掴み、もう片方の乳首へと吸い付く。

 

「ふあぁぁぁっ♡」

 

じゅるるっ、と音を立てて吸うと、ユスティネは喉を見せながら悶えた。

蕾を舌先で転がし、右手で柔肉を揉み回すと、腹の下でユスティネの腰が左右によじれる。

 

「あっ♡ わた、しっ♡ ああぅっ♡ 吸われて、りゅっ♡ あぁぁ♡ 殿方にぃ♡ 胸をっ♡ こんなっ、こんなにぃ♡ 求め、られてっ♡ ああぁぁっ♡ 西条様ぁ♡ どうか、そのまま」

「藤次だ」

「ひぁぅぅぅっ♡」

 

命じるように言いながら、ツンと尖った乳首を軽く抓ってやる。

軽い絶頂を声にしながら、ユスティネは恍惚とした笑みを浮かべた。

 

「藤次、様ぁ♡」

 

快感を受け入れ、服従した女の顔だった。

 

「ははっ、まったく、こんなに簡単にメスの顔をしてっ!」

 

藤次は凶悪な笑みを浮かべながら、右手をユスティネの下腹部に。

胸元からネグリジェの下に腕を侵入させ、臍の下から下着の中に指を入れると、濡れそぼった花園が指を包む。

 

「きゃうっ♡ 藤次様っ、そこっ♡ そこはぁ♡」

「君も、妖女なんだな……っ!」

 

軽く割れ目を撫でる程度だというのに、中指があっさりと内部に受け入れられる。

陰唇が指の腹に吸い付き、ざらついた膣内が物欲しそうに締め付けてきた。

指先を曲げて膣壁を撫でてやると、ユスティネの全身が面白いほど敏感に震える。

 

「慣れているな? 本当に男を知らないのか?」

「知り、ませんっ♡ 器具、でしか……っ♡

 こんな、風に、触れていただくのはぁ♡ 藤次様が、初めてですっ♡」

 

妖女にはよくある、成長過程で処女膜を失い、指やディルドで自己開発している淫乱乙女だ。

 

「なら、これを入れても大丈夫だな?」

 

藤次が逸物を取り出すと、目線を下げて見つけたユスティナが息を呑む。

口を半開きにして目を剥く顔は、お淑やかな彼女とは思えない間抜け面だ。

 

「はいっ♡ 受け入れられますっ♡ どうか、シーアと同じように、してくださいっ♡」

 

ユスティネは自ら足を左右に開き、荒い呼吸に胸を揺らしながら、藤次に身体を明け渡す。

瞳孔がハートマークになり、口端からはヨダレが垂れそうだ。

早く犯してほしいと言わんばかりの淫らさに、生唾を飲む。

 

「なら、遠慮はしないぞ!」

 

藤次は腰を沈め、息子の先端部をユスティネの渓谷に触れさせる。

 

「はい♡ 藤次様の、お好きなように――んぁぁっ♡」

 

遠慮しないとは言ったが、その実ゆっくりと、ユスティネの膣内に侵入していく。

 

「あぁぁっ♡ 入って、くるぅっ♡ 男の、方がっ♡ 私の、中にぃ♡」

 

初めて受け入れる実物のペニスに、ユスティネは歓喜の震えを見せる。

 

「お、奥にっ♡ まだっ、奥にっ♡ あっ、あっ、あっ♡」

 

腹の中を拡張されながら迫ってくる肉棒に、ユスティネは大きく口を開け、目を見開いた。

 

「どうだ、初めての男は……っ!」

「すごいっ♡ こんなっ♡ 私の、身体っ、変わってく――あああぁぁぁっ♡」

 

ぴたりと、先端部が降りていた子宮に接触すると、ユスティネは嬌声を上げた。

ペニスから子宮に電流でも通じたように、彼女の全身に何かが駆け抜けていく。

 

「はひっ♡ ふあぁぁっ♡ これっ♡ あっあっあっ♡」

「イったのか。入れられただけで、奥でイったんだな?」

 

がくっ、がくん! と、ただ挿入されただけで、ユスティネは震撼していた。

 

「ああ、私いま、女に、女になってる♡ 藤次様ので、いま初めて、女になってるんですっ♡」

 

ユスティネは両頬を押さえ、自分でも信じがたいというような幸福感を顔に出す。

蜜壺は生まれ変わったように絡み付き、両足は無自覚に藤次の腰を掻き抱いていた。

男を知らなかった身体が、逸物を差し込まれた途端、然るべき機能を初めて起動させたように。

 

「これは、本当に大丈夫そうだな……」

 

軽く気圧されながらも、藤次は腰を動かし始めた。

処女に対するものではなく、シーアと同じくらいのペースで。

 

「くぁぁぁっ♡ 動いて、りゅっ♡ あああぁっ♡ 気持ちいいっ♡ 藤次様っ、わたし気持ちいいですっ♡ あなたのそれでっ、気持ちよくなれてますっ♡」

「ああ、ユネの中も気持ちいいぞっ」

 

驚きと歓喜が入り交じったような顔で、ユスティネは藤次にしがみつく。

 

「嬉しいっ♡ 私、藤次様に、ご奉仕できてるっ♡ 女としてっ、お役に立って――あああぁぁぁっ♡」

 

何度か腰を前後させただけで、ユスティネの膣内が絶頂の震えを起こした。

 

「またイったのか? イったなら言うんだ。声も我慢しなくていい」

「イって、ましゅっ♡ 藤次様にっ、イかせて、もらって――ああ、私、こんな身に余ることっ♡

 藤次様のっ、大事なもので、気持ちよくしていただいてるなんてっ♡」

 

快感が強いせいか、同じセックスでも妖女では『してもらっている』という感覚になるようだ。

そんなに喜んでもらえると、男冥利に尽きるというもの。

 

「だったら、慣らし運転はもう充分だなっ」

 

藤次はユスティネの横に手をつき、膝の位置を整えると、腰を縦回転させるように抽送する。

 

「ひぁうっ♡」

 

下から上に引っ掛けるような肉棒の動きに、ユスティネの腰が激しく跳ねた。

たった一度の動きでそれだというのに、藤次の腰は加速する。

 

ユスティネは藤次にしがみついたまま、振り落とされまいとするかのように脚を絡めて固定した。

 

「はげっ、しいっ♡ こんな、こんなにっ♡ あっあっあっ♡ 気持ちいいなんてぇっ♡ ああイクまたイってますっ♡ 藤次様ぁっ♡ これっ♡ 素晴らしすぎてっ♡ んあぁぁぁっ♡」

「まだだ、妖女の快感はそんなものじゃないぞっ!」

 

藤次はシーアとのセックスで知っている。

まだ弱点を探っている段階でしかない。

本物のセックスによる快感を初めて知ったユスティネが驚いているだけだ。

 

「君の弱いところは、ここだろう!?」

 

藤次は見出した角度に固定して、ユスティネの弱点に向けてのピストンを開始した。

 

「ひうっ♡」

 

ずん! と一突きしただけで、ユスティネは目を見開く。

そこから、同じところを連打すると――

 

「んあああぁぁぁぁぁっっっ♡ だめぇぇぇっ♡ イってりゅっ♡ あああっ♡ 何度もっ、すぐにぃっ♡ はぅぅぅっ♡ イってましゅっ♡ ずっと、ずっとぉっ♡ こんなっ、こんなことっ♡ 信じられ、ないっ♡ あぎゅぁぁぁぁぁっ♡♡♡」

 

察するに、人生で初めて味わうのだろう連続絶頂。

突かれる度にイってしまうような状態に陥り、ユスティネは藤次の背中に爪を立てる。

見る影もなく歪んだ顔で、ケダモノめいた声を寝室に木霊させている。

 

「藤次様っ♡ お待ち、くださいっ♡ ひゃふっ♡ わたひっ♡ どうかしちゃうっ♡ あああぁぁぁっ♡ こんな、のっ♡ 続いたらぁっ♡ おっおっぉぉぉ♡ 溶けちゃうっ♡ からだじゅうっ、とけちゃうのぉっ♡」 

 

オーガズムの連続で、身体が砕け散りそうな錯覚を覚えているのだろう。

手心を懇願するユスティナに、藤次は腰を緩めようとして――

 

「――駄目だ、待たない」

 

いつの間にか心を支配していた嗜虐心に、そう言わされた。

上半身を起こし、ユスティネの乳房を両手で掴みながら、ひたすら腰を振る。

 

「ひぁぁぁぅぁぁぁっ♡ とうじしゃまっ♡ どうかっ♡ あああぁぁぁイクイクイキましゅっ♡ いまおっぱい駄目でしゅっ♡ おっぱいまで変になりましゅっ♡」

 

嫌がる彼女を更なる快感に導く。

ユスティネは首を左右に振って、半狂乱になっていた。

 

(おい、止めろ……この子は、今日が初めてなんだぞ……)

 

自分の中の倫理的な部分が、自分を説得しようとしている。

たとえ快感だとしても、慣れていない女性にそれを叩き付けるのは、暴力に類する。

それを拒む女性を無理矢理に責め立てるのは、本当にレイプ同然だ。

 

「ああぁぁだめだめっ♡ 分かんなくなりゅっ♡ イってりゅのかぁ♡ ないのかぁ♡ もう分かんなくなりましゅっ♡ ゆるしてっ♡ ゆるしてぇっ♡」

 

もはや意識を混濁させているユスティネに、腰が止まらない。

見たい、もっとその淫らな姿を見たい。

自分とのセックスがいかに気持ちいいのかを骨の髄まで叩き込み、二度と手放せないようにしてやりたい。

そういう、男の抑えられない情欲から、抜け出せない。

 

(こんなに、泣いて、怖がってるのに……っ)

 

シーアであれば受け入れてくれた。

妊娠前は、こうでなければ物足りないというくらいに。

しかし、不慣れなユスティネには過大なセックスだ。

だからこれは暴力で、いけないことで、止めなければならないのに――

 

「受け止めてくれるんだろうっ!? ユネ! もうすぐだっ! もうすぐ俺もイクからな!」

 

止まらない。

ここ最近、シーアと全力のセックスができなかったせいか、自分の中の狼が止まらない。

ユスティネの肉壺はシーアと比べて柔らかく、初々しい反応でありながら優しく包み込んでくれる。

どこか母性すら感じるそれに甘えるように、藤次は汗を散らしながら前後運動を加速させた。

 

「イクっ♡ イってくれりゅっ♡ 藤次様っ♡ きてぇっ♡ わたひの、なかでぇっ♡ あっあっあっあああぁぁぁっ♡」

 

藤次が射精を予告すると、ユスティネの反応が変わった。

男性がいま自分の膣内で達しようとしていると知り、妖女の本能が加熱している。

連続絶頂の負担にも適応してきたらしく、身体を駆け巡る悦楽の強さも、もう怖れていない。

 

「いい子だっ! 流石は妖女だなっ! もっとイってくれ! 俺がイクまでっ、ずっと!」

「はいぃいっ♡ イってましゅっ♡ ああ嬉しいっ♡ イクの嬉しくなってりゅっ♡ はひぃいいいっ♡ きてっ♡ きてぇっ♡ あひあぁあっっっ♡」

 

虚ろな瞳で歓喜を歌いながら、ユスティネは藤次に合わせて腰を振る。

それと同時に、柔らかかった膣内が打って変わって肉棒を締め上げた。

 

「っぐ!」

 

不意打ち気味に、解き放たれる射精感。

 

「んあぁあぁあぁぁぁっっ♡♡♡」

 

子宮口に密着した亀頭から、熱い精液が溢れ出す。

それを全身で感じ取ったユスティネは、絶頂に絶頂を重ねていた。

がくがくがくっ! と、ベッドを揺らすほど痙攣して、子宮内を埋め尽くす熱を味わっている。

 

「は、あ……っ♡ あひっ♡ ふぁぁぁ♡」

 

意識を失ったらしい。

淫らな呼気だけを口にして、虚空を眺めている。

その顔は陶然としており、涙と涎に塗れていながら、明らかに幸福そうだった。

 

 

 

 

「じゅぷっ♡ ちゅるるっ♡ ぷはっ♡ はむっ♡」

 

数分後――ユスティネは嬉々として、藤次にパイズリフェラを繰り広げていた。

 

「藤次様ぁ♡ 私の胸、いかがでしょうか? ご満足、いただけてますでしょうか?」

 

両手で掴んだ爆乳を上下させ、肉棒を愛撫しながら、媚びた顔で見上げてくる。

 

「ああ、シーアよりも大きくて、柔らかくて、気持ちいいぞ」

「まあ♡ 嬉しい……こんな乳房でよければ、いくらでも……」

 

シーアと比べて褒められたことが大きかったのか、ユスティネは妖しげな笑みを浮かべた。

 

「さっきは乱暴にして済まなかったね」

「いいえ♡ ちょっと怖かったですけど、最初だけでした……あんなに……」

 

金髪を撫でてやると、ユスティネは乳圧をかけながら、酔い痴れたように続ける。

 

「あんなに気持ちいいなんて♡ 人生が変わっちゃうくらい、気持ちいいなんて思わなくて♡

 女に生まれて、よかったです♡ もっと早くお会いして、犯してもらえばよかったのに……♡」

 

どうやらユスティネは、完全に男の味を覚えてしまったようだ。

事の最中は怯えていたが、過ぎ去ってみればこの様子……

妖女とは、もしかすると女というものは、誰しもこういうものなのだろうか。

 

「っ」

 

藤次の胸に、昏い悦びが生じる。

一人の女を、自分の肉棒で虜にしたという、優越感に似たなにかだ。

 

「なら、今後も愉しませてもらおうかな」

「ふぁっ♡」

 

指先で乳首を軽く愛撫してやると、ユスティネが嬉々として震えた。

 

「はい♡ ご存分に♡ お手々が寂しいときは、私の乳房をお使いくださいませ♡」

「こら、それだと誘惑になっちゃうだろ?」

「あぅ……申し訳ございません」

 

誘惑禁止条例を思い出させると、ユスティネはしょんぼりする。

なまじ快感を知ってしまったために、誘惑できないということの重みが増したのだろう。

だから、藤次の方から、こう言うのだ――

 

「俺が命令したときに、断らなければいい」

「んむっ♡ ぢゅぶっ♡」

 

頭を押して肉棒を咥えさせる。

言われるまでもなく頭を前後させたのは、フェラチオを兼ねた『頷き』だ。

いつでも犯していい――と、態度で訴えている。

そんなユスティネが、シーアには申し訳ないが、可愛らしく思えた。

 

「これからも、可愛がってやるからな?」

 

ユスティネの口淫が、よりいっそう激しくなる。

 

少し経つと、寝室には再び、ユスティネの喘ぎ声が鳴り響くのだった。

 

 

二人の睦み合う声は、他の部屋にも届いていた。

 

「ふぅ……♡ あっ♡ ……んっ♡」

 

一人、ベッドで身悶えるニナのところにも。

 

(してる……ユネが、あの男と、セックスしてる……っ)

 

ニナとユスティネが借りている部屋には、いまニナだけしかいない。

きっと、今日は朝までニナの個室だろう。

 

それをいいことに――ニナの両手は、寝間着の中で乳首と陰核に触れていた。

耳に届くユスティネの喘ぎ声が、たとえそれが無くても伝わってくる男女の燃え上がる気配が、そうさせていた。

 

(脅されて、襲われて、犯されてるんだ……っ)

 

本当にそうなら部屋に乗り込むべきだが、そうではないことは分かっている。

今日、藤次が帰ってくる前、シーアの口からユスティネに『指名』が伝えられたとき……ユスティネの顔を見ていたから。

顔を真っ赤にしながらも、嬉しそうに頷いていた。

 

(次は……私……?)

 

あの男は『家賃』として身体を要求したのだ。

同じ居候である自分にだって、同じ脅迫をしてくるだろう。

 

(男の、手が……ここに……っ♡)

 

そう思うと、生まれたときからの付き合いである自分の手指が、急に物足りなく思えた。

エルフの耳が拾うユスティネの声は、ニナの身体を完全に発情させている。

くちゅくちゅくちゅっ! と、指で秘所を掻き回す音が、自分でも驚くほど大きい。

 

(なら、ない……っ! 私は……あんな風に、なったりしない……っ!)

 

頭の中でそう念じながらも、口から零れる声は高くなっていく。

蕩けた顔には、理性と欲情の葛藤が浮かんでいた。

 

(例え、抱かれたって……媚びたりなんか、しないんだから……っ!)

 

抱かれること自体を拒もうとしていないことに、ニナは気付いていなかった。

 

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

更新がちょっと遅れたのもそうですが、長くなっていて申し訳ございません。
後編はニナ回なので、どうしても中編にまとめざるをえず。
後編はもうちょっとコンパクトになるよう頑張ってみます。



※毎度のごとく、誤字報告をいただきありがとうございます。
 なんか凄い量の訂正をいただき、頭が下がるばかりです。


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第四話(後編)

 

 

 

身体に疲労を溜めないためには、よい風呂が欠かせない。

背中を流してくれる可愛い奴隷がいれば、最高だ。

 

「はぁ……旦那様♡ お背中、気持ちいいですか?」

「ああ、気持ちいいぞ。命令だ、そのまま続けるんだ」

「はい♡」

 

通販で買ったマットが浴室に敷かれ、藤次が腰を降ろす。

その背中にぴっとりと寄り添っているのが、シーアの裸身だった。

 

「はぁ……はぁっ♡ んっ♡ 旦那様のお背中、逞しい……っ♡」

 

ささやかな水音を立てながら、泡に塗れたシーアの乳房が、藤次の広背筋に押し潰されながら上下に滑る。

結われた銀髪が毛先を濡らし、褐色の裸身に絡み付き、少女らしさを残す体躯から湯気が立つ。

 

「俺はユネを洗ってやろうな?」

「藤次様……そのようなことは……あんっ♡」

 

背後にシーアがいる反対側、腕の中にはユスティネの身体があった。

ユスティネを背後から抱く形で、その豊満な乳房に遠慮無く手を這い回させる。

 

「あ、あっ♡ 藤次さまぁっ……その、奴隷の私を、洗うだなんて……んんっ♡」

「そんなこと気にしなくていいんだよ。ほら、先っぽを入念に洗ってあげる」

「ふぅぅぅっ♡」

 

くちゅくちゅくちゅっ! と音を立てて、泡だった乳房を五指が揉みしだく。

そのうち中指の腹が桜色の乳首を擦ると、ユスティネが声を噛み殺した。

 

「シーアは俺を洗ってくれ」

「はい♡ 喜んで……っ♡」

 

シーアは背後から藤次の胸に腕を回し、ボディソープの泡を広げていく。

背中から胸板までがシーアの柔らかさに包まれ、両手にはユスティネの乳房。

なんて贅沢なソープだろうか。一昔前なら大金を取れるだろう。

 

「ふあっ♡ あっあっあっ♡ 藤次様ぁ♡ そんな、胸、ばかり……‥ひぅぅぅっ♡」

「ユネはおっぱいが弱いな、こんなに大きいのに、感度が高くて最高だ」

 

藤次は無遠慮に五指を動かし、ユスティネの乳房を様々な角度から責める。

その度にユスティネは声を噛み殺し、身体を反らしていた。

 

「はぅ♡ 旦那様、申し訳ありません。私のおっぱいが物足りないばかりに……」

「なに言ってるんだ。シーアの胸だって最高だ。後でいっぱいしゃぶらせてもらうぞ」

 

藤次がユスティネの胸に夢中であるせいか、シーアが寂しそうに訴えてきた。

振り返って宣言すると、嬉しそうに顔をほころばせる。

 

「はい♡ 大きさが足りない分は、ユネのをお楽しみくださいね♡」

 

友人の乳房を、まるで自分のもののように使わせる。

シーアの中では、ユスティネの身体も、愛する旦那様を喜ばせるため捧げたものなのだろう。

 

「し、シーア待って……私、本当に、おっぱい駄目で……あぁうっ♡」

 

止まっていた藤次の手が再び動き、浴室にユスティネの嬌声が反響する。

 

「藤次様っ♡ ち、乳首っ、お待ちくださいっ♡ わた、私っ、イッ――あああぁぁぁっ♡」

 

不意打ち気味に乳頭を摘まむと、ユスティネはあっさり達した。

絶頂で身体を震わせ、藤次の胸板にしなだれかかる。

 

「はぁーっ……はぁーっ……藤次、さまぁ……♡」

「よしよし、よく頑張ったね」

 

藤次はユスティネの頭を撫でると、シーアに目配せして離れさせ、マットでの位置を変える。

 

「二人で奉仕してくれるかい?」

 

どっかりと胡座を掻いた藤次に、シーアとユスティネが目を奪われる。

脚の間から高く屹立する逸物に。

 

「はい♡」

「喜んで……♡」

 

シーアとユスティネは気恥ずかしそうに視線を交わすと、どちらも伏せるように頭を下げて、藤次の股間に顔を近付けた。

 

「はふぅ♡ 旦那様、興奮してくださってる♡ 見てるだけで分かります♡」

 

先ずはシーアが、すっかり手慣れた様子で陰茎を愛撫しつつ、ちろちろと舌を踊らせる。

しばらくすると、隣のユスティネに、手本を示したかのように譲った。

 

「大きい、こんなに♡ これが、私の中にあったなんて……信じられない♡」

 

ユスティネも、一度受け入れた後だからか、初めて目にしたときとは違った興奮を顔に出す。

 

「旦那様のもの、なんだか一段と雄々しくなった気がします……♡」

 

シーアもユスティネの反対側から舌を伸ばし、亀頭の側面をくすぐり始める。

藤次自身も思うが、シーアと関係を持つようになってから、一回り肥大したように思う。

最近、シーアが妖魔界産の食材で料理を作る『精進料理』のおかげだろうか。

 

「ぢゅるるっ♡ んちゅっ♡ むぅっ♡」

「ちゅぱっ♡ れぇる♡ んんっ♡」

 

シーアとユスティネのWフェラは、秒刻みで激しくなっていく。

シーアが裏筋を舐め上げれば、ユスティネが鈴口に吸い付き、玉袋を手で揉みほぐす。

 

「おおっ、いいぞ二人とも」

 

藤次が褒めると、シーアは嬉しそうに頬を緩ませ、ユスティネは張り切って(くわ)え込んだ。

 

「旦那様っ♡ もっと気持ち良くなってくださいっ♡ じゅぷっ♡」

「れるっ♡ 藤次さま、私の口の中で、びくびくってして……っ♡」

 

二人の少女が、懸命に奉仕してくれている。

金髪と銀髪の美少女が、爆乳と美乳の妖女が、服従するように頭を低くして。

その光景は、あまりにも男の優越感を刺激してくる。

それこそが、自分にできる最大の贈り物だというように、二人は夢中で口淫を繰り広げていた。

 

「可愛い奴隷だ……」

「んんっ♡ じゅぽっ♡ ぢゅぅぅぅっ♡」

「んむっ♡ ふぅほっ♡ あむぅぅぅっ♡」

 

藤次の言葉を耳にすると、シーアは勢いよく亀頭を呑み込み、ユスティネは根元にしゃぶりつく。

 

「ぐっ」

 

激しく生々しい刺激に、我慢が決壊した。

藤次の精液が、少女たちの顔に、胸にぶちまけられる。

 

「ふわぁぁっ! はぁぁぁっ♡」

「ひゃうっ!? あぁぁ~っ♡」

 

熱い奔流を受け止めたシーアとユスティネは、全身を震わせて悦んだ。

 

「はぁーっ……はぁーっ……旦那様のが、零れちゃった……♡」

「すごい、熱くて、いっぱい♡ ああ、もったいない……っ♡」

 

自分の手や顔に飛び散った精液を、シーアとユスティネは、まるで美術品が割れてしまったように見ていた。

膣内射精されない精液は『無駄弾』であり、子作り優先の妖女にとっては罪深いものらしい。

自分の白濁液をそこまで重んじてくれる女に、思わず生唾を飲む。

 

「さあ、入れるぞ。シーアからだ」

「あっ♡ 旦那様……ですが、今夜は、ニナが……」

 

昨晩はユスティネを寝室に招いた。

順番を考えるなら、今夜はニナを招く流れだ。

実際そのつもりだが、

 

「だから、少しでもすっきりしておきたいんだ。あの子は繊細みたいだからね。荒々しくして嫌われたくない」

「ふふっ♡ 藤次様、よく見てくださってるんですね……」

 

ユスティネが安心したように微笑む。

シーアも「そういうことなら……」と、マットの上で仰向けになる。

今日も、のぼせるくらい長い風呂になりそうだった。

 

 

 

 

その悩ましい声を聞きながら、ニナは激しい自慰に耽っていた。

 

「はぁ、はぁっ♡ んぐっ……あぁぁ♡」

 

秘裂にはディルドローターが挿入されている。

いまやオナホを持つ男性より、ディルドを持つ妖女の方が多い。

ニナが所持しているのも、別に彼女が淫乱だからというわけではなかった。

ごく普通の妖女のオナニー手段として、計算し尽くされた形状のそれを動かし、肉穴を掻き回している。

 

「はぅぅっ♡ これっ♡ んっ、くぅぅっ♡」

 

顔を歪めながら、振動音のする棒を奥へと差し込む。

 

(自分で、加減しちゃ、駄目……っ♡ 男の人は、もっと勝手に動くって……っ♡)

 

ニナの手付きは、自分以外の誰かを想定したものだった。

自分でするとき無自覚にしてしまう手加減や中断を意識して行わない。

止めて欲しいときに続けて責め立て、そこがいいと思ったら別の場所を。

 

「んぁぁっ♡ うそっ♡ やだっ、これ……知らな、い……っ♡」

 

すると、明らかにいつもと感じ方が違う。

止めたい瞬間を越えて擦り続けると、より鮮烈な快感に襲われる。

もっと続けたいという場所を避けると、急速に敏感になっていく。

自分の身体が、自分以外の都合で翻弄されるというのは、こんなにも――

 

「っっっ、あっ!」

 

必死に声を噛み殺しながら、ニナはベッドの上でエビ反りになりながら達する。

同室のユスティネが入浴中なのをいいことに、半裸でディルドオナニーしていた自分に、今更のような罪悪感を覚えた。

 

(違う……私が淫らなんじゃない……っ。ただ、彼に呼ばれたときのために、慣らしてるだけで……)

 

処女を面倒臭がる男もいるという。

処女膜は無いにしても、膣内が素人では不都合も多いだろう。

自分が面倒に思われて以後抱かれないというなら歓迎だが、不興を買うとシーアやユスティネの立場を悪くするかもしれない。

だからこれは、決して彼を受け入れたいとか、気持ちよくしたいとかなりたいとか、そういう理由からではないのだ!

 

(下着、もっといいの買っておけばよかったかな……いや、なに気にしてるの私!)

 

荷物が焼失してしまったこともあり、映えるものがない。

それを不安に思っている自分の『女々しさ』に気付いて、首を振る。

もう難しいことは考えず、相手のベッドでされるがままになればいいのではないか?

いやそれはマグロというもので、むしろこちらから積極的になにかすべきなのでは?

 

赤裸々な思考が浮かんでは消えていく間に――シーアたちが風呂から上がってくるのだった。

 

 

 

 

かくして、今日も夜が訪れる。

町の家々からは、夫婦や恋人やその他の関係の男女たちが、大小の喘ぎ声を零している。

藤次の暮らすマンションは防音設備が整っているが、ベランダにでも出れば聞こえてくるだろう。

そんな『合唱』に、彼女も加わろうとしていた。

 

「お……お待たせしました……」

 

不服そうな顔で寝室にやってきた、ニナだ。

地味なパジャマ姿で、少し不安そうに枕を抱きながら、部屋の扉の前に立つ。

ユスティネのときと違い色っぽさは主張していないが、どこか生活感のあるパジャマ姿も、違う興奮を招く。

まるで、親戚の娘でもベッドに連れ込もうとしているような、背徳感を覚えた。

 

「ああ、よく来てくれたね」

 

部屋に立っていた藤次は、嬉々としてニナを出迎える。

ニナは藤次の言葉に頷くだけで、扉の前に佇んでいるだけだ。

 

「近くに来てくれないかい?」

「……はい」

 

藤次と目を合わせようとせず、仕方なく従っているという風に、ニナが藤次の前に歩み出る。

だいぶ緊張している――もっと言うなら、嫌われているのかもしれない。

妖女だからといって、誰も彼も色情狂というわけではないのだ。

 

「怖いかい?」

「っ、いいえ! 怖くなんて――ありません」

 

声を荒げようとしたニナが、慌てて敬語に戻す。

硬い。これから交わる男女としては、非常に硬い。

これで藤次がもっと下衆な男だったら、そういう女を無理矢理に犯すのも悪くないと燃えたかもしれないが、そこまで外道ではない。

 

「なら、そこに座って。少しお話しよう」

「そ、そういう気遣いは……平気、ですから……」

 

とっとと始めろと言うようなものだが、不慣れから来るものだと分かる。

 

「そうかい? なら、おいで」

「っ」

 

慎重に肩を抱いて、共にベッドに上がった。

ベッドの中央に並んで腰掛ける。

ニナの鼓動が早鐘を打つ音が、触れた手を通して聞こえてきそうだ。

 

「その……なにをすれば、いいですか? 添い寝だけじゃ、ないですよね?」

 

情緒のない問いかけに、小さく笑ってしまう。

こういうときにリードしてやるのも、大人の役目というものだろう。

 

「そうだね。じゃあ定番だけど、キスしようか」

「っ……はい、どうぞ」

 

ニナが、大きく深呼吸してから、目を閉じて顔を上げる。

藤次もそれに合わせて、彼女の頭を撫でながら引き寄せる。

 

「んっ」

 

ちゅっ、と。二人の唇が触れ合う。

いまごろ各地で巻き起こっている、男と妖女の激しいセックスに比べれば、なんとも可愛らしい。

 

「ちゅ……ん……はぁ……んっ♡」

 

それを少しずつ、彼女の緊張を解すように背中を撫でながら、繰り返す。

 

「んっ♡ はぁっ♡ んんっ♡」

 

ニナの息が乱れる。

特に舌も入れていないし、性感帯を刺激したわけでもない。

しかしニナも妖女の一員、男との密着姿勢で、本能の暖機運転が始まっている。

目は潤み、身体からはフェロモンのような香気が立ち上り、藤次の方も欲を刺激されてきた。

 

「ま、待って……」

 

強く抱きしめると、ニナは反射的に藤次の胸を押し返す。

自分の身体の変調を感じて戸惑い、咄嗟に逃げるような仕草だった。

 

(繊細な子なんだな……)

 

ごく普通の、人間女性に近い反応である。

シーアやユスティネのような妖女とばかりしてきたせいか、忘れかけていた感覚だ。

 

「大丈夫、乱暴にはしないから、じっとしていなさい」

 

藤次は唇ではなく、首筋や鎖骨にキスし始める。

 

「んんっ♡ な、なんで、そんなところに……ぁっ♡」

 

軽いキスの音がする度に、ニナはやんわりと藤次を拒みながらも、ときおり甘い声を零す。

ニナは自分のそれを耳にする度、慌てて口を閉ざし、息を殺していた。

 

「あ……や……っ♡」

 

いつの間にかニナはベッドに押し倒され、藤次が隣から覆い被さるような姿勢となる。

鎖骨から胸骨あたりにかけて、ステップを踏むようにキスをすると、ニナの手が頭に触れて止めようとした。

弱々しく押し返そうとして、それ以上の抵抗をしないのは、YesとNoが混在した彼女の胸中そのものだろう。

 

「胸を、見せてくれるかな?」

「っ……わ、笑わない、なら」

 

自信がないのか、消極的な肯定だった。

怯えさせないよう、慎重にパジャマのボタンを外していく。

さらり――と衣擦れの音を立てて、褐色肌に映える白いブラが開示された。

 

「綺麗だね」

「そ、そんなお世辞……いい、ですからっ」

 

言う間にもブラが外され、柔らかな半球と桜色の突起が露になる。

ユスティネほどではないが、シーアよりはある、美乳と巨乳の間くらいといったところか。

 

「恥ずかしがることはないよ」

 

藤次はニナを安心させるよう微笑んでから、その双丘に手を伸ばす。

 

「あっ……んぅ……ふ……ぁ♡」

 

両手で包み込むように触れただけで、ニナの身体が明らかに跳ねた。

明らかに男性慣れしていない反応だ。

 

(ああ、この子に触れる男は、俺が初めてなんだな……)

 

シーアやユスティネも同じはずだが、ニナの仕草があまりに乙女で、異なる心境になる。

いたいけな少女を、自分が汚してしまっているかのような、不徳な興奮だ。

 

「ふぁぁっ♡ やっ、胸っ、吸っちゃ……っ♡」

 

知らぬ間に吸い付いていた乳首から、ニナの全身に不意打ちの快感が走り、声を上げさせる。

藤次もいまさら止まれない。

初々しい乳首を舌で転がしながら、手はニナの身体を愛撫していき、やがて右手が下腹部へ。

 

「待ってっ、そこだめっ!」

 

下着の中に指が入りかけたところで、ニナが強く拒絶した。

 

「嫌だったかい?」

「っ……」

 

藤次の謝罪に、ニナが顔を背ける。

どう答えたらいいのか分からない――という様子だった。

怖れてはいるが、本気で嫌がっているわけではないように見える。

押すべきだ――と、藤次は決めた。

 

「この期に及んで、臆病風か?」

「っ!」

 

ニナが目を見開く。

指摘されたことはもちろん、藤次の声音にも驚いたようだった。

 

「覚悟は決まってると思ってたんだけどね。見込み違いか」

「ちがっ――」

 

嘆く藤次に、ニナは咄嗟に反論しようとして、言葉を切る。

 

「ごめん、なさい……いえ、申し訳、ありません……」

 

やがて、耳まで赤くなりながら、藤次の腕を押しとどめていた手を退ける。

 

「いい子だ」

 

そうして藤次は、ニナのパジャマのズボンの中、更に下着の中の茂みへと右手を入れた。

 

「ひゃうっ!?」

 

突然に性器に触れられて、ニナの口から悲鳴じみた声が上がる。

だが藤次はそれを気にせず、ニナの陰唇を開き、奥にある穴の周囲をなぞった。

 

「あっ、んんんっ♡」

 

些細な愛撫だというのに、ニナの全身がびくびくと震え上がる。

やはり妖女、性感の強さは彼女も人間以上のものがあった。

 

「力を抜け、すぐに慣れる」

「そんな、こと、言われても……んぁぁぁっ♡」

 

指の腹で陰核を擦ると、再びニナの嬌声が響く。

ニナ自身、自分の身体を驚いたように見下ろしていた。

 

「うそ……こんな、こんなに……んっ♡ あっ♡ あはぁっ♡」

 

藤次は本格的に手淫を始める。

膣口は既に蜜で潤っており、藤次の中指をしゃぶっている。

ちゅぷっと、中指を膣内に入れてやると、またニナの身体が跳ねる。

 

「んっ♡ んんっ♡ んんんんんんんっ♡」

 

指先で入口の裏側をくすぐられただけで、ニナは声にならない声を上げた。

 

「気持ちいいか? ニナ」

「やめっ♡ それっ♡ あぅっ♡」

 

ニナは咄嗟に拒んでしまいそうになる自分を押さえ込むように、唇を噛む。

その態度が可愛らしくて、藤次はさらに激しく彼女を追い詰めていく。

 

「ほら、ここがイイんだろ?」

「ひあぁぁっ♡ だめっ♡ だめそこだめっ♡」

 

ぐりゅっ、とGスポットを強く刺激され、ニナは大きく仰け反り喘ぐ。

 

「素直になるんだ。君の身体も立派な妖女だ。こうなるのが普通なんだよ」

「あっあっあっあっあっ♡」

 

説きながら手淫を続けると、ニナは藤次の身体を掻き抱きながら、腰を浮かせていき――

 

「やっ♡ 待って♡ 止めてっ♡ これ、以上――んぁぁぁぁぁっ♡」

 

絶頂した。

必死に噛み殺していた声を、堪えきれなくなるほどの、強い絶頂だ。

 

「っ~~~~~~~!!!」

 

ガクンガクンと身体を痙攣させ、声すら出せずに悶絶する。

秘所からは愛液を吹き出し、シーツに大きな染みを作っていた。

 

「んぅ……ふ……ぁ……♡」

(驚いた、怯えてた割にイキやすいな)

 

シーアやユスティネに比べても、達するまでの時間が短く、快感の度合いが深い。

どうやらこの子、当人が自覚しているよりもずっと、快感に弱い身体をしている。

 

「これなら、入れてもよさそうだな」

 

藤次がパジャマのズボンに手を掛けると、放心していたニナが我に返った。

 

「ま、待って! 待ってください……っ」

 

ニナの声でその手を止める。

見ればニナは、涙目になって震えていた。

 

「私、それは……まだ、怖くて……っ」

 

フリではなく、本気のようだ。

成長過程で処女膜を失い、ディルドで自慰をするのが普通の妖女だ。単純に挿入が怖いというわけではないだろう。

 

「身体、変なんです……っ。いま、受け入れたら……どうなるか、分からない……っ」

 

自分の肉体の淫らさを告白するような言葉は、誘っているとも解釈できる。

だが、ニナにその気がないことは表情で分かった。

怯えているのだ、強すぎる快感に。

苦痛でなくても、肉体への負担と言えばその通り。我が身が別物になったような不安は小さくないだろう。

それでも、このまま押し切れば、きっと彼女は堕ちる。

強すぎる悦楽にもすぐ適応して、シーアやユスティネと同じように、自分とのセックスに溺れるに違いない。

 

「…………」

 

しかし――藤次は手を引いた。

彼女はシーアと違って『自分の奴隷』ではない。

家賃を身体で払わせるという名目もあるが、ここまで怯えた子に強いるほど、藤次も酷ではなかった。

 

「なら……今日は手でするだけにしようか」

「え? あ……っ♡」

 

藤次はニナを抱き起こし、体位を変えた。

ニナはベッドの上に座らされ、後ろに座った藤次の腕に包まれる。

 

「な、なにする、の……?」

「愛撫するだけさ」

 

藤次はニナのうなじにキスしながら、胸と秘所に手を伸ばす。

 

「んっ♡」

 

ビクッとニナの肩が跳ねる。

そのまま乳首を指先で摘み、陰核を親指で擦ると、ニナの口から甘い声が上がった。

 

「あ、はぁぁ……っ♡」

 

挿入されるわけではないと分かったからか、強張っていたニナの身体から余計な力が抜けていく。

藤次は人間の処女を扱うように、ゆっくりと愛撫から始めていき、徐々に刺激を強めていった。

 

「はぁ……っ♡ んっ、はぁぁ♡ っく、あっ♡ あああぁぁぁ……♡」

 

ニナは身体を丸めたり、逆に反らしたりしながら、吐息に滲む快感を濃くしていった。

 

「やっ♡ ま、待って――」

「いいんだよ、イっても」

 

絶頂するのが恥ずかしいのか、ニナは制止するが、そんな彼女の臆病心を優しく封じ込める。

 

「あっあっあっ♡ やっ♡ だめっ♡ んぁぁぁぁぁっ♡♡♡」

 

そうして陰核と乳首を同時に責めると、達しやすい彼女は容易に臨界点を超えた。

背中を大きく仰け反らせ、がくがくと全身を痙攣させる。

 

「イキやすいね。いつもこうなのかな?」

「そんな、わけ、ない……っ♡ 今日が、変な、だけ……っ♡」

 

覗き込んだニナの顔は、目の焦点を失いかけていた。

自分でするのと男性にされるのは大違いだというが、ニナはその差が顕著なのかもしれない。

 

「なら、いっぱいイって慣れておこうか」

「やっ♡ お願い待ってっ、私ほんとに、こんなになるの初めてで――ああっ♡」

 

再び指を膣内に侵入させると、ニナが過敏に喉を反らす。

今度は先ほどよりも奥深くへ、中指を根元まで差し込んでいくと、

 

「ひあっ!?」

 

ぴと――と、固いものに指先が触れた。

子宮口だ。

 

「うそっ♡ 奥っ、一番奥にっ、届いて……っ♡」

「ああ、さっきイったとき、子宮が降りてきたんだね」

 

せっかくなので、そのまま指先でゆっくりポルチオを愛撫してやると、

 

「んぁぁぁうううっっっ♡♡♡」

 

ニナは腰を浮かせながら、ぶるっと身体を震わせた。

 

「こりゃすごいな。ポルチオも自己開発済みか」

「んぅぅっ♡ くふぁぁっ♡ ダメぇっ♡ いまそこっ♡  おかしくなるっ♡」

「いいんだよ、なっても。セックスでおかしくなるのは、何も恥ずかしくなんだよ?」

 

くりくりと、円を描くように子宮口を刺激すると、ニナはベッドから腰を浮かせ始めた。

 

「あぐぅっ♡ はひっ♡ あああぁぁぁっ♡ あぁぁ~~~っ♡」

 

両足をベッドに突っ張り、下腹部を突き上げるような姿勢で、ニナはまた絶頂していた。

恥も外聞も無い下品な姿勢と、吼えるような嬌声。

当人が怯えるのも分かる。ここまで派手に乱れてしまうとなると、他人には見せたくあるまい。

だが、流石に自分の前でだけは、その恥を掻いてもらわなければならない。

 

「いいぞ、もっとイってしまえっ。恥ずかしく思う気も無くなるくらいになっ」

 

恥ずかしいという感情は、周りの反応にも左右されるものだ。

自分が恥じていても、周りがまったく気にしないことなら、いずれ恥じる思いも失せるもの。

だからニナには、いっそのこと、とことんイってもらうことにする。

 

「やぁぁぁっ♡ んぁっ♡ おっ♡ イ、クっ♡ これっ♡ もうっ♡ 無理っ♡ あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっっ♡♡♡」

 

再開されたポルチオ責めで、ニナの顔が蕩けていく。

藤次の指先の動きに合わせて、ニナの腰も激しく揺れていた。

 

「こんなっ♡ ずるいっ♡ 指先でっ、指だけでぇっ♡ わたひのっ、からだっ♡ 簡単にっ♡」

 

男の指一本で全身を支配されるような心地なのだろう、ニナは恨めしそうに藤次の腕を掴む。

 

「そうさ。男に抱かれるっていうのはこういうことだ。諦めて身を委ねるんだ」

 

くちゅくちゅくちゅくちゅっ! と、藤次の手がニナの秘所を掻き回す。

中指は最奥まで伸ばし、人差し指と薬指で大陰唇を刺激しつつ、手の平でクリトリスを愛撫。

 

「んおっ♡ おっおっおっ♡ ぉぁぁぁぁっ♡」

 

刺激を増やされたニナは、大きく口を開けて喉を反らし、吼えるように達し続けた。

肉棒を挿入されたわけでもない、手淫だけでの連続絶頂である。

 

「すごいな、君は」

 

その乱れように、藤次は息を呑む。

挿入していない以上、藤次としては不満足な時間だが、それを忘れるほどだった。

自分の快感以上に、激しい快感に狂う彼女を、もっと見てみたい。

 

「愉しんでるじゃないか。ん? 乳首もしてやろうか?」

 

手淫を継続しながら、もう片方の手で乳首をくにくにと揉んでやると、ニナの全身がより一層に震え上がる。

 

「おっ♡ んおおっ♡ 胸だめっ♡ ちくびだめえぇぇぇっ♡♡♡」

「駄目なのは君だ。男に奉仕させてイってばかりじゃないかっ」

 

エルフ耳を軽く噛んでやると、また一段とニナの反応が昂ぶる。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙っ♡ ごめんなしゃいっ♡ ゆるしてっ♡ んおっおっおっおおおぉぉぉっっっ♡♡♡」

 

言葉責めが効いたのか、雄叫びのような声を上げて、極大の絶頂に打ち震えた。

 

「か――は――ぁ――っ♡」

 

がくんと、ニナの全身から力が抜ける。

 

「おっと」

 

抱き留めた藤次は、腕の中で小刻みに痙攣するニナを覗き込む。

 

「はひ――ふぁ♡ あっ♡ あはぁ……っ♡」

 

どうやら気絶してしまったようだ。

虚ろな瞳を開いたまま、終わった後も揺り返してくる絶頂の余韻で恍惚としている。

 

「やれやれ……」

 

藤次はニナの身体をベッドに寝かせてやる。

シーアやユスティネとの経験上、これはしばらく目を覚まさないレベルの気絶だ。

挿入もしていないのに、前戯の手淫だけでダウンされてしまうとは……と、微苦笑する他にない。

 

「まあ、焦ることもないか」

 

自分もニナの隣で横になり、二人の身体に掛け布団を乗せる。

そうして久しぶりに、ベッドで体力を消耗しない眠りを迎えるのだった。

 

 

 

 

翌朝――

 

(や、やってしまったぁ……っ!!)

 

ニナは顔から火が出る思いで出勤していた。

 

昨夜は結局、前戯で気絶したまま眠ってしまった。

男女の間でこれがいかに失態であるかは、言うに及ばず。

藤次は笑って許してくれたし、シーアやユスティネには気付かれなかったが、それでは済まない。

 

(結局、怖じ気づいたまま寝ちゃったなんて、これじゃただの腑抜けじゃない!)

 

あのときは、自分の身体に走る快感があまりに未知で、とんだ醜態を晒す予感がしていた。

それが結局、より大きな失態を招いてしまった。

 

(こんなことならいっそ『首輪』で命令してもらえばよかった……)

 

シーアは藤次とセックスするとき、首輪で命令させるプレイを好むという。

彼女が言うには、そうすることで恥ずかしさや怖さが気にならなくなるからだと。

自分は奴隷だから彼に従わなければならないという義務感で、背中を押してもらっているのだ。

 

(まあ、あの人は私の主人じゃないから無理だけど)

 

ニナもそうであれば、昨夜の結果も違ったかもしれない。

しかしニナの雇用主は藤次ではない。今日も足を運んでいる家のご夫婦だ。

 

(切り替えよう。とにかくいまは仕事っ)

 

汚名を雪ぐ方法は後に考えるとして、目の前の仕事を蔑ろにはできない。

今日も雇用主である息子夫婦に代わり、持病のあるお婆さんを手助けしながら家事をする。

一日の始まりは夫婦のどちらかに挨拶をすることからだ。

そうした勤め先となる家屋に近付くと――

 

「……え?」

 

家の前に――救急車が止まっていた。

 

 

 

 

「亡くなった……?」

 

帰宅した藤次が聞かされたのは、訃報だった。

 

「はい。ニナがお世話を頼まれていたお婆様が」

 

シーアがニナに代わって説明する。

幸い――と言っては失礼だが、藤次の身内の訃報ではなかった。

 

「そうか、気の毒に」

 

藤次はシーアの隣に座るニナを注意深く見る。

その表情は暗く、目に影が掛かっていた。

 

「元々、持病があったんです。朝見たら、冷たくなっていたって。たぶん、夜中に発作があってそのまま」

 

ニナは切れ切れに語る。

ニナを奴隷として雇用したのは夫婦だった。

依頼内容は家事と介護、年老いたお婆さんの世話をすることがメインだという。

お婆さんはニナを孫のように可愛がってくれたと聞くが、今日の朝、往生してしまったそうだ。

 

「それで、少し困ったことが」

 

シーアを挟んでニナの逆側から、ユスティネが切り出す。

帰宅するなり改まって相談を持ちかけられたことから、藤次も話は察していた。

 

「お世話をするお婆さんが亡くなられたことで、ニナを雇う理由が……」

「ああ、そうか。やむを得ないな」

 

依頼主は介護業務を理由にニナを雇っていた。

不幸にもその必要が無くなったため、ニナを雇う理由が失われたのだ。

 

「次の雇い主が必要なんだね」

 

ニナは、藤次がシーアと出会ったときのように、再び契約相手を探さなければならない。

それまでこの家に住まわせてほしいということなら、改めて頼まれるまでもないが……

 

「はい、それも早急に」

「早急に?」

 

シーアによる追加情報が、少し意外だった。

 

「実は今月末にビザの更新がありまして、それまでに雇用実態がないと、ビザが失効してしまう可能性があるんです」

 

盲点だった。

シーアたちは妖魔界からの出稼ぎ労働者、就労ビザによって日本に滞在している。

そしてビザには更新期間があり、これは年に一度だったり数ヶ月に一度だったりする。

共通しているのは、どこかに就労している実態がないと、ビザの更新が認められないことだ。

 

「流石に、事情を話せば猶予はもらえるんじゃないか?」

「普通はそうかもしれませんが、私たちは妖女ですから。

 恥ずかしながら、ビザだけ取得して男漁りしかしない者も多いので……」

 

ユスティネが触れたのは、水面下で騒がれる社会問題のひとつだ。

口から出任せでビザを取得して、実は犯罪目的だったり、不法滞在したりする外国人――どの国でも、旧時代からよくあることだった。

妖魔界から人間界に大量の妖女が移住する昨今、これに関する警戒の目は強い。

 

「汲み取るべき事情がある人にまで、手厳しい判断が下される可能性があるってことか」

 

であれば、その危険を回避する手段はなにか。

彼女たちが相談を持ちかけてきたのはその方法だろう。

 

「俺にできることはあるかな?」

 

彼女たちには既に案があるようだと、表情から察した。

シーアたちは頷き合うと、ニナに目線を集める。

するとニナは席から立ち上がり、テーブルを迂回して藤次の隣に立つと――床に跪いた。

 

「っ!?」

「西条さん――いえ、旦那様!」

 

土下座とまでは言わないが、正座で手を付いて見上げてくるニナの姿に、目を見開く。

そんな藤次に、ニナは真剣な表情で、少し赤面しながら、こう言った。

 

「私を……あなたの奴隷にしてくださいっ!」

 

ニナが頭を下げる。

勢いに驚いたが、考えてみれば妥当な手だ。

一時的にでも藤次に雇用されていれば、ビザの停止は避けられる。

 

「それは、次の雇い主が見つかるまで、という意味かい?」

 

ニナの真剣さが気になって、その点を確認する。

 

「いいえ――旦那様が私をご不要と仰るなら仕方ありませんが、

 私は、旦那様にこの身命を捧げる覚悟をもって申しております」

 

少女というより騎士が誓いを立てるかのような目で、ニナはこちらを見上げてくる。

 

「……そこまで思い詰めなくてもいいんだぞ?

 ビザ停止を回避するための、一時的な雇用でも、この家に住む資格は充分だ」

「いいえ」

 

ニナの返答には、己への手厳しさがあった。

 

「お言葉ですが、旦那様は甘すぎます。

 私は本来、この家に住まわせていただく方がおかしいような人間です。

 ご厚情に甘えて転がり込み、家の仕事にもろくに貢献できず……伽も満足にできず」

 

最後の部分は顔を赤らめて視線を反らしていた。

それはともかく、ニナは間借りする上で充分な対価を払えていないと思っているらしい。

確かに、家事はシーアの仕事で、家賃は入れておらず、身体で払うことすらできていない。

 

「家出娘ですら身体で払う覚悟はあるのに、私ときたら……

 現状、私が旦那様にしたことなんて、『態度の悪い同居人を増やしただけ』です……っ!」

 

昨日までの自分を振り返って、ニナはそう言い切った。

 

「にも関わらず、私はまだ旦那様を頼ろうとしています。

 この上、何も差し出せないようであれば、私はただの寄生虫になってしまいます。

 ですからせめて、私に支払える唯一のもの……『自由』を、受け取っていただきたいのです!」

 

気圧された藤次の肩に、シーアの手が置かれる。

 

「旦那様……どうか、ニナの覚悟を受け取ってあげてください」

 

戸惑っている主人に、シーアは第一の奴隷として、或いは妻として語り掛けた。

 

「ニナは誇り高い子ですから。旦那様のご厚情に甘えてばかりの自分が許せないんです」

 

良くも悪くも、誇り高い子なのだろう。

プライドがあるから、藤次に抱かれて乱れてしまいことを嫌がる。

プライドがあるから、男のヒモになっているような現状を許せない。

よい結果ばかりを招いてはいないが、見習うべき高潔さではなかろうか。

 

「藤次様、私からもお願いいたします」

 

ユスティネはニナの隣に膝をつき、彼女の肩を抱いた。

 

「この子、臆病なんです。

 普通にしてるだけじゃ、昨夜みたいに臆病風に吹かれてするべきこともできない子なんです。

 命令されたり、追い詰められたりしないと素直にもなれない、面倒くさい子なんですよ」

「ユネ……っ」

 

ニナの性格について、明け透けに語るユスティネ。

ニナは不満そうに睨んでいるが、藤次からしても、頷ける部分はあった。

 

「昨夜のことは察してます。ニナ、ちゃんとできなかったんでしょう?」

 

シーアが、藤次の肩に体重を預けながら、耳元で囁く。

見透かされたような発言に、ニナだけでなく藤次もなぜか小さく震えた。

ニナも藤次も話していないが、シーアにはお見通しだったようだ。

 

「だから『首輪』の力を借りて、今度こそ旦那様のものになりたいんですよ」

 

首輪――奴隷の首輪のことだ。

藤次がニナを雇えば、合意次第であの首輪を使えるようになる。

あの首輪の強制力があれば……なるほど昨晩のようにはならなかったかもしれない。

ニナは、身体で支払うことに尻込みする自分を、奴隷の首輪によって動かしてもらいたいのか。

 

「……っ」

 

目線をニナに向けると、頬を染めた顔を俯かせていた。

言外の肯定だ。

 

「そう、か……」

 

これも複雑な女心というやつなのか。

 

ニナは、それが可能なら藤次の厚意に甘えて逃げてしまう。

そんな自分を厭うからこそ、奴隷になることで逃げ道を塞ごうというのだ。

 

「――いいだろう、君がそこまで言うなら、俺がニナの主人になろう」

 

藤次は背筋を正した。

このまま放り出して、よくない人間を雇い主にするくらいなら、その方がマシだ。

そう自分に言い聞かせて椅子から降り、ニナの前に膝をつく。

 

「っ……でしたら、これを……」

 

一瞬だけ嬉しそうな顔をしたニナは、すぐに表情を引き締めて、『首輪』を差し出した。

藤次がこれをニナに装着することで、ニナは藤次の奴隷になる。

どこか指輪の交換にも似た、儀式的な作法なのだろう。

 

「ああ、後悔はないね?」

「はい……その……あなたなら、信用できますから……」

 

最後に確認すると、ニナは照れ臭そうに目を泳がせながらも、そう言ってくれた。

昨晩、下手に強引ぶって最後までしていたら、この言葉は得られなかったかもしれない。

 

ならばと、藤次は手にした首輪をニナの細い首筋へ運ぶ。

左右に開いていた輪を当てて、反対側で閉じると、固定具がカチリと音を立てる。

同時に魔力の光が瞬き、ニナが藤次の奴隷となったことを可視化した。

 

「あぁ……」

 

ニナは軽く感動したような顔で微笑する。

誰かの奴隷になるなど、喜ぶようなことではないだろうに、恋が実ったかのように。

 

「ふふ、おめでとうニナ。これで私の後輩ね」

「いいなぁ」

 

シーアは嬉しそうに手を合わせて、ユスティネは羨ましそうに首輪を見ている。

奴隷である彼女たちにだけ分かる何かがあるのだろうか。

 

「だ、旦那様……」

「ああ、なんだ?」

 

ニナは、改めてそう呼ぶことを噛み締めるように、藤次を旦那様と呼ぶ。

そしてこう続けた。

 

「ご命令……ください……昨夜、できなかったこと……今度は、命令して、ください……っ♡」

 

陶然とした顔で見上げられ、藤次は息を呑んだ。

昨夜の、快感を怖れて震えていたニナとは、明らかに違う。

正式な奴隷となって覚悟が固まったからか……

 

或いは、藤次の知らないニナの性癖が、いま目覚めたのかもしれない。

 

 

 

 

かくして、昨夜と同じように、ニナは藤次の待つ寝室に現れた。

 

「お、お待たせしました……旦那様……♡」

 

着ているのは、昨日と同じようなパジャマだ。

しかし、身にまとう空気が、明らかに『女』だった。

表情に艶があり、口の端には微笑まである。

昨晩の手淫で、身体が色を知ったこともあるだろうが、それ以上に精神的な変化を感じた。

 

「さあ、おいで。服を脱いでな」

 

いまや自分は彼女の『主人』だ。

シーアがそうするよう求めたように、下手に出るような言葉は避ける。

それはニナにも顕著な反応を招いた。

上の立場から『強要』された女の、困った表情、それでも覆い隠せない期待の表情だ。

 

「ご、ご命令……ですか?」

 

やがて藤次に向けられたのは、男に強引さを期待するような、メスの顔だった。

自分の顔が邪悪な笑みを刻むのを感じる。

 

「当たり前だろう。命令だニナ、服を脱いでこっちに来るんだ」

「っ♡ はい……」

 

意識して強い口調で命じると、ニナは小さく震えながら、服のボタンに手を掛けた。

ひとつずつ外していく度に、褐色肌のノーブラ美乳が見えてくる。

恥ずかしさは消えていないらしく、その手付きはゆっくりしたものだ。

 

「ほら、早くしろ」

「んっ……はい♡」

 

急かすと、ニナはパジャマの上着を落とし、ズボンに指を掛けて足を抜く。

そして、耳まで赤くなりながらショーツを脱ぎ、床に落とした。

 

「お、お待たせしました……♡」

 

大人と少女の合間にあるような肢体が、ベッドに上がってくる。

藤次の横から膝を乗せ、どこか女豹のように手をついて、猫が懐くように胸元へ擦り寄ってきた。

 

「いい子だ」

「はぅ♡ 褒め、ないで……」

 

抱きしめて頭を撫でてやると、ニナは嬉しそうに震えながらも、否定の言葉を口にする。

 

「私、旦那様に、褒めていただくようなこと、してないです……っ♡

 昨夜も、それまでも、失礼な態度ばかりとって……なのに、奴隷にしていただいて……っ♡」

 

濡れた瞳と震える唇。

感謝と申し訳なさが、性的興奮に織り交ぜられている。

 

「ちゃんと、主人として命じてくださいっ♡ 愚かな私が、逃げられないように……っ♡

 これ以上、甘やかすようなことをされたら……自分で、自分を許せないんです……っ!」

 

確かに、ユスティネも言っていた。

ニナは臆病だから『命令』に背中を押してほしいのだと。

だとすれば、自分がするべきは、主人として厳格に命令権を行使することだろう。

 

「いいだろう。命令だ、ニナ」

「はい♡」

 

首輪を撫でながら、命令を伝える。

 

「――抵抗するな」

「っ♡」

 

首輪が淡く輝き、ニナの身体から力が抜ける。

 

「――気持ちいいこと、してほしいことは、ちゃんと言え」

「ぁ……♡」

 

また首輪が光り、ニナの表情が蕩け始める。

 

「して……」

 

早速、ニナの口が『命令』に従おうとする。

つまり、『してほしいことを言う』という命令に。

 

「私を、女にしてください♡ 嫌がっても、泣いても、止めないで、最後までしてください♡

 シーアや、ユスティネや、他の妖女みたいに……脅して、襲って……犯してくださいっ♡」

 

自分の臆病心を振り切るための言葉だったのだろう。

しかしそれは、きっとニナが想像している以上に、藤次の理性を焼き切った。

 

「んむぅっ♡」

 

歯がぶつかるような勢いで唇を奪う。

舌を差し込み、乱暴に口腔内を犯していく。

 

「んっ♡ ちゅぷっ♡ れるっ♡ あふっ♡ 旦那様っ♡」

「舌を出せ」

「はぁひ♡ れろぉっ♡ ぴちゃっ♡ ぢゅぱっ」

 

背中を抱き、後頭部を掴みながら、貪るようなディープキス。

息継ぎのために口を離すと、ニナの首輪が発光する。

 

「キスぅ♡ 気持ちいい、です♡ 頭、ふわふわしてる♡」

 

気持ちいいことは言う、という命令を、首輪が遵守させていた。

 

「おくち、蹂躙されてるっ♡ んむっ♡ ぢゅぷっ♡ 怖い、のにぃ♡ ちゅるっ♡ れるっ♡ もっと♡ んっ♡ もっと、されたいですっ♡ あっ♡ わたし、なに言って――んむぅっ♡」

 

再び口づけをして、ニナの言葉を塞ぐ。

こちらの意向に反してまで喋ろうとはしないらしい。

 

「あっ♡」

 

くるりと身体を回して、ニナをベッドに押し倒した。

そのまま身体を押さえ込んで胸を掴み、首筋へ甘噛みするように吸い付く。

 

「はぁっ♡ 旦那様っ♡ 胸っ、胸いいですっ♡ 男の、逞しい指がっ♡ あぁぁ貪ってるっ♡ 私のおっぱい、揉みくちゃにされてっ♡ 感じてますっ♡ 乱暴で、痛いのにぃ♡ 優しいよりもずっと気持ちいいのぉっ♡」

 

妖女の深く広い性感帯が作るマゾ体質を、ニナの口が赤裸々に語る。

相手がよがっているなら遠慮はせず、藤次は思うがままにニナの美乳を弄び、乳首を吸い上げた。

 

「あああぁぁぁっ♡ それっ♡ それ好きですっ♡ 乳首っ、食べられるのっ♡ きゅんきゅんするの止まらないのっ♡ ああやっぱりだめぇっ♡ 言わせないでぇ♡ 旦那様っ♡ これ恥ずかしいですっ♡ 私のエッチなところ、全部ばれちゃうっ♡」

「駄目だ、命令に従えっ! それとも――」

 

藤次はひとしきり乳首を味わった後、右手をニナの下腹部へ運び、昨夜のように手淫を開始した。

 

「お前の忠誠はこんなものか? 俺の奴隷になったんじゃなかったのか!?」

 

ちゅぷっ! と、藤次の指が同時に二本も、ニナの膣内に侵入した。

 

「っ~~♡♡♡ ごめんなさいっ♡ でも私っ♡ 弱くてっ♡ すぐイっちゃうからぁっ♡

 あっあっあっ♡ 指っ、気持ちいいっ♡ 奥っ♡ もっと奥にぃっ♡

 旦那様の指っ、ディルドなんかよりずっといいっ♡ ぐちゅぐちゅ鳴らすのすぐイっちゃうのぉっ♡」

 

激しい水音を立てて膣内を掻き回すと、ニナの言葉が意味を失い始める。

 

「昨夜よりずっと感じやすくなってるな。やっぱり、人間素直が一番ってことか?」

「あっあっあああぁぁぁイクぅっ♡ イキますぅっ♡」

 

ニナは限界まで背を反らして絶頂した。

両腕を引き絞り、腰を浮かせ、藤次の手を愛液で汚すと、糸が切れたように脱力した。

 

「あひっ♡ はひゅぅ♡ やっぱり、気持ちいい♡ 旦那様の手で、弄ばれるの♡ 情けないのに、気持ちよすぎて、全部よくなっちゃいます♡」

 

ニナは虚ろな瞳で胸中を吐露している。

藤次の奴隷でなかった頃のニナは、屈辱を嫌って快感を拒んでいた。

しかし奴隷となったいまは、主人のオモチャにされるのも『名誉』だと思っている。

反転したプライドが、ニナという妖女を、かつてないほど淫らに変えていた。

 

「最後までするって、約束だったな」

 

藤次はニナをベッドの中央に寝かせると、逸物を取り出す。

 

「あ……っ♡」

 

ニナは目を丸くして、そそり立つ肉棒を凝視した。

昨夜はこれを見る前に気絶してしまったので、初めての対面となる。

 

「怖いかい?」

「怖い、です……でも、すごく……知り、たい♡

 旦那様の、それを、受け入れたら……どうなるか、知りたい、です♡」

 

乙女のように身を縮こまらせながらも、情欲に潤んだ瞳で見上げてくる。

その愛らしさと淫らさを見て、遠慮をする余裕が無くなった。

 

「命令だ。足を開いて力を抜け」

「はい……♡」

 

ニナが両膝を割り開く。

秘所が晒されると、褐色の女性器が入口を半開きにしていた。

そこに腰を近付け、亀頭でキスをすると、

 

「んぅぅぅっ♡」

 

過敏に感じ取ったニナが震える。

しかし足は閉じず、両手でシーツを掴んで、挿入の瞬間を待ち構えていた。

 

「いい子だ。可愛いぞ」

「はぅ♡ 褒めちゃ、だめって……」

 

優しく頭を撫でて、半ば油断させてから――一気に貫いた。

 

「っ――――あっ―――ああぁぁぁっっっ♡♡♡」

 

不意を打たれたニナの嬌声が、寝室の壁を震わせる。

子宮口に衝突を受けるなり目を見開き、大きく喉を反らして、乳房を揺らしながら痙攣。

膣壁は驚くほどすんなり怒張を受け入れた後、根元から先端までを震えながら締め上げる。

 

「ひぁっ♡ なに、いまっ♡ あひゅっ♡ なかっ、入って――あっあっああぁぁっ♡」

 

ニナは自分の下腹部を見て唖然としていた。

腰が勝手に動き、膣がペニスを招き入れることで、またポルチオに亀頭が擦れ、追加の性感に襲われる。

 

「きて、りゅ♡ 旦那様のっ♡ これっ、本物っ♡ しゅごい♡ おっき♡ 熱いっ♡ 動いて、りゅっ♡」

「この感触、ディルドで慣らしていたんだな。偉いぞ」

 

男は初めてなのに受け入れ慣れているのは、そういうことだろう。

 

「ちがっ♡ これっ♡ あうっ♡ ぜんぜん違うっ♡ こんなに、なるのぉ♡ 知らないっ♡ 初めてでっ♡ あっ、またくるっ♡ 入ってるだけなのにっ♡ またっ♡ んぁぁぁっ♡」

 

お互いの僅かな腰の動きで子宮口が愛撫され、ニナはまた達している。

そんな自分の身体に、信じられないという顔をしていた。

 

「動くぞ」

 

藤次が覆い被さりながら腰を引くと、ニナは反射的に抱き付きながらも首を横に振る。

 

「ま、待って♡ 旦那様っ♡ 私こんなのっ、どうなるか――」

「言うことを聞くんだっ」

 

ぐん! と、引いた腰を奥まで押し込む。

 

「~~~っっっ♡」

 

子宮を押し上げられたニナは、また弓反りになって絶頂した。

 

「ぁぁぁっ♡ ごめんなしゃいっ♡ 聞きますっ♡ 約束通りっ♡ 最後までっ♡ 止めないでぇっ♡」

 

初めて足を踏み入れた、男性とのセックスによる、拷問めいた悦楽。

それに対する恐怖と抵抗を、ニナは奴隷としての忠誠心にしがみつくことで越えようとしていた。

 

「いいぞ、その意気だ!」

 

藤次はそんなニナに漬け込む形で、勝手気ままに腰を突き入れる。

 

「はひぃ♡ 気持ちいいですっ♡ こんなにっ、イキすぎてっ、苦しいのにっ♡ ああっすごいっ♡ 犯されてるっ♡ 犯されてるのにっ♡ 頭っ、蕩けちゃうっ♡ 旦那様の太いのがぁっ♡ おかしくするっ♡ わたしのことっ♡ おかしくするのぉっ♡」

 

藤次は様々な角度で腰を動かしながら、ニナの反応が顕著な場所を探り当てていく。

抽送が重なるにつれて、その狙いは定まっていき、ニナに突き刺さる快感はより鮮明になっていった。

 

「そこっ♡ そこだめっ♡ 突かれるとっ♡ 真っ白っ♡ あたま真っ白になるからぁっ♡」

「ここか? ここをどうして欲しいんだ? ちゃんと言うんだっ!」

「ああぁぁっ♡ してぇっ♡ ぐりゅって♡ もっと押し込んでくださいっ♡ 私の弱いとこっ♡ 見つけてっ♡ いじめてぇっ♡」

 

いつしかニナの中で、快感への恐怖は薄れていた。

自分の身体を男に預け、その腰の動きをねだることで快感を得る、女の悦び方に従っている。

 

「ははっ、あれだけ怖がってたのにな。踏み切ってしまえば、気持ちいいだけだっただろう!?」

「はいっ♡ ごめんなさいっ♡ ああぁぁっ♡ こんなにっ、いいことっ♡ んぁぁぁっ♡ 嫌がってたなんてぇっ♡ おかしいっ♡ 私がおかしかったんですっ♡ んおっ♡ お詫びっ、お詫びにっ♡ あっあっあっ♡ 好きに、してくだしゃいっ♡ 私のことっ♡ 旦那様のっ♡ 思い通りにしていいですからぁっ♡」

 

不定期に絶頂して、呼吸もままならない状態でありながら、ニナは藤次に懇願する。

 

「いいぞっ、このままセックスの良さを教え込んでやるからなっ!」

 

藤次は指先で乳首を転がしてやりながら、明確になってきた膣内の弱点を集中的に責め立てた。

 

「あひぃいぃいぃぃぃっ♡ イグぅっ♡ イッてるのにまたイクっ♡ あっあっあっあっあっ♡ 旦那様ぁっ♡ これじゃ、またすぐっ♡ へあっ♡ きちゃいましゅっ♡ わたひっ♡ バカになっちゃうっ♡ あひっ♡ イキしゅぎてっ♡ あたまっ♡ おかしっ♡ あひぁぁぁっ♡」

 

首を激しく左右に振り、口の端から涎を散らす。

膣内に巻き起こる絶頂のバイブレーションは止まらず、愛液が結合部からシーツを濡らしていく。

 

「いいんだっ! いまはどんなに乱れてもいいんだっ! いいや命令だ! 喘げ! 淫らな自分を隠すな!」

 

藤次は身体を起こすと、リナの足を掴んでM字に開かせる。

一糸まとわぬ淫らな姿勢を見下ろされ、リナは羞恥と敗北感に襲われるが、それと同時に恍惚感も覚えていた。

 

「あぁ、旦那様ぁ……っ♡」

 

目の前の男に屈服するほど、快感を得られる。

いつしかそれは区別がつかなくなり、屈服することが快感になる。

 

「きてっ♡ きてくだしゃいっ♡ 私をっ♡ 壊してっ♡ 昨日までの私っ、無茶苦茶にしてっ♡ 新しい女に、生まれ変わらせてくださいっ♡」

 

M字に開かれた両足を自ら抱え込み、淫らに腰をくねらせた。

 

「いいぞ、思いっきりイキまくれ!」

 

じゅぱ! じゅぱんっ! と、水音と共に鳴る男女の衝突音。

腰の動きを変え、ニナの弱点を別角度から擦り上げた末、子宮口を連打する。

 

「はぎゅっ♡ しゅごいっ♡ イってりゅっ♡ あへぇっ♡ イクたびっ♡ 変わっちゃう♡ ああぁぁぁっ♡ 私の身体っ、変わっちゃうっ♡」

 

ニナは目尻を下げ、涙を浮かべながらも、全身をくねらせて悦楽を表わす。

 

「だんなしゃまっ♡ もっとぉ♡ んぉぉっ♡ もっと、わたしのことっ♡ あっあああぁ♡ 屈服ぅ、させてぇ♡ 意地っ張りな、バカな私をっ♡ 終わらせてくださいっ♡ いっぱい、イカせてっ♡ 旦那様のっ、女にしてぇっ♡ んおっ♡ おっおっおっぉぉぉっ♡♡♡」

 

体位を変えて、バックから突く頃にはもう、ニナは別人になりつつあった。

 

「ぉぉぉぉぉすごいぃっ♡ 奥っ♡ 奥にドスドスってぇ♡ すごすぎりゅうっ♡ おほぉっ♡ あたまっ、バチバチってぇぇぇっ♡」

 

ぱん! ぱんっ! ぱぁん! と、藤次の腰がヒップに衝突するたび、ニナの肢体はオーガズムに震えていた。

 

「あへぁっ♡ もうらめっ♡ 落ちちゃうっ♡ 意識、どっか落ちちゃうっ♡ だんなさまっ♡ イって♡ お願いですっ♡ しゃせーくださいっ♡ 中出しっ♡ 感じたいっ♡」

「ああ、もう出るぞっ!!」

 

どぴゅぅっ! という音を、藤次は自分の分身から聞いた。

 

「あああぁぁぁきたぁぁっ♡ あちゅいのっ♡ あっあっあっ♡ なかだし、されてっ♡ んおおおぉぉぉっ♡♡♡」

 

妖女の生殖本能を最も満たす瞬間に、ニナはこれまでで一番の大絶頂を迎える。

 

「――っ♡ ぁ――かはっ――♡」

 

そうして意識を失い、ベッドに突っ伏す。

藤次が後ろから覗きこむと、表情は幸福そのもので、悦楽に溺れきった牝の顔だった。

 

 

 

 

――十分後。

 

 

「ほら、命令だ。腰を動かせ!」

「ふぁあんっ♡ 旦那様っ♡ もっと♡ もっと命令っ♡ いっぱい命令してくださいっ♡」

 

ニナは仰向けになった藤次の上で、一心不乱に腰を振っていた。

騎乗位で挿入された陰茎が、腰を前後させるニナの膣内で激しく絞られる。

もはやニナの方が、藤次の肉棒を貪っているようなセックスだ。

 

「そうだな、自分で胸を揉んでみろ。男の力に負けないくらい強くだ」

「はひぃっ♡ 仰せのままにっ♡ ああっ♡ 私の痴態っ、お楽しみくださいっ♡」

 

ニナは嬉々として藤次の命令に従い、自分の乳房に深々と指を食い込ませる。

もちろん腰を動かせという命令も中断していない。

そこにいるのは、快感を怖れていた繊細な少女ではない。

自ら乳房を握り潰し、踊るように腰をくねらせる、淫ら極まる妖女だった。

 

「旦那様ぁ♡ もっとです♡ 私もっとできます♡ 旦那様のご命令、果たしてみせますっ♡」

「やれやれ、おねだりしたいなら素直に言えばいいのに」

 

藤次はニナの太股を撫でながら、たまに不意打ちするように腰を突き上げる。

 

「ふぁんっ♡ 違いますっ♡ 奴隷だからっ♡ 私、旦那様の、性奴隷だからぁ♡

 どんな命令でもっ、聞けるって、証明しないとっ♡ 見捨てられちゃうからっ♡

 シーアや、ユネに、迷惑掛けちゃうからっ♡ だからぁ♡ 旦那様ぁ♡」

 

命令されているという体裁で、ニナは自分の性欲を満たそうとしていた。

覚えたばかりの快感に、夢中になっている。

しかし自分からは誘惑できないので、『奴隷としての献身』に置き換えているのだ。

 

(この子、性欲の強さで言えば、シーアやユスティネ以上じゃないか……)

 

あまりの絶頂で気絶しても、目が覚めたらもう一度というくらいには、絶倫だ。

下半身には自信のある藤次でも、流石にもう限界が近い。

 

「ほら、クリと一緒に奥を責めてやる。いい声で鳴けよっ」

 

藤次は指でニナの陰核を擦りながら、腰を小刻みに揺らして子宮口を連打する。

 

「んぉぉぉおおぉぉ♡♡♡ イグっ♡ 旦那様それすごいでしゅっ♡ おまんこイキまくってましゅっ♡ あああぁぁぁ旦那様ぁぁぁっ♡ わたしまたっ♡ また飛んじゃうっ♡ 意識っ、持たないっ♡ おっおっおっ♡ お゙お゙お゙お゙お゙っ っ っ ♡ ♡ ♡」

 

絶頂の沸点が低いニナは、早くも連続絶頂に陥ってしまい、意識を保てなくなる。

 

「まったく、イカせやすい女だな。こんなに快感に弱い身体、妖女でも珍しいだろうにっ」

「違うのっ♡ 旦那しゃまがしゅごいのぉっ♡ おちんぽしゅごしゅぎてっ♡ 私の身体すぐ負けちゃうんですっ♡ あああぁぁぁ来る来るすごいの来ちゃうぅぅぅっ♡♡♡」

 

びくん! と全身を大きく震わせて、ニナは背中を反らす。

 

「あ――ぅぁ――はっ――ひぁ――♡」

 

まるで致命傷でも負ったように息を乱して、言葉すら失う大絶頂へと沈んでいく。

背中を反らしたまま後ろへ倒れていったニナを見て、藤次は溜息を吐きながら起き上がる。

 

「ふぅ……まったく、手の掛かる子だな」

 

藤次はニナの中から肉棒を抜き取ると、ひどい有様で痙攣している彼女の姿勢を正してやる。

ティッシュで軽く身体を清めてやり、枕に寝かせてやると、アヘ顔だった表情は安らかな寝顔になっていた。

 

「んぅ♡ だんな、しゃまぁ……もっとぉ……できましゅ……♡」

 

ニナは寝言を口にしながら藤次に抱きつき、藤次は彼女の頭を撫でてやる。

 

(流石に、覚え立てだからだよな? これを毎回とは言わないよな?)

 

ニナを抱く度にこうなるとしたら、いくらなんでも身体がついていかない。

なにせ自分には他にも、シーアやユスティネという女がいるのだから。

きっと今頃、ニナの嬌声を耳にして、羨ましく思ってるかもしれない。

 

(……対抗意識とか、燃やさないといいんだが)

 

あの二人まで張り合って、より激しいセックスを求めてきたとしたら……

ちょっぴり背筋を寒くしながら、藤次はベッドに身体を沈めて、眠りに落ちていくのだった。

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

前話のあとがきで言っていたコンパクトとはなんだったのか、
むしろ前より増えました。

ほら、あれです。
初夜で失敗してしまって、それを取り戻そうと躍起になる女の子って可愛くない?
やってみたらシーンが増えてこうなった運びです。

次回は存在を忘れられていた元妻となります。
また来週くらいに、ご一読のほどよろしくお願いします。


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幕間 とある人間女性の婚活3(非エロ)

 

 

 

彼女の旧姓は西条という。

西条藤次の、元妻である。

 

「…………」

 

夜――彼女は自室でPCの画面を眺めていた。

 

以前より肌が荒れて、無駄な肉がついている。

自室も、実家に戻ってきてから明らかに散らかっていた。

 

PCの画面には、SNSのページが表示されている。

 

『離婚した夫から「洗濯機ってどう使うの?」ってメッセが来たから、

 洗濯機が泡を吹くような洗剤の量と設定時間を教えてやった。

 いま抗議の電話が来てるけど無視してる』

 

先ほど投稿したものだ。

そこそこの高評価が集まっており、思わず口の端が上がる。

ただ――

 

(最近、反応が鈍いなぁ……)

 

フォロワーの数にはそこそこ自信があるが、反響が薄い。

 

(あの時は、あいつをネタにできてたから……)

 

離婚する前は、夫とのことをよく投稿していた。

割ってしまったカップを撮影して、夫が理不尽にキレて壊したとしたり。

掃除をさせたら半端な仕事をしたから夕飯をカップ麺にしてやったとしたり。

虚実を織り交ぜた夫婦生活を投稿していたら、フォロワーが増えた。

一度、夫に見つかって白い目を向けられたものだ。器の小さいことである。

 

(こういう『別れた夫が』系の投稿も、そろそろ飽きられるかな……)

 

いま自分のアカウントは『再婚を志す婚活アカ』だ。

しかし、そちらに関する成果はと言えば――

 

(今日も、マッチングなし……)

 

新しく登録した婚活サイトで、希望する条件の男性は紹介されていない。

希望条件から遠い者なら紹介されているのだが、自己紹介の日本語が怪しかったり、顔写真がAI製だったりと、詐欺の匂いしかしない。

 

手動で登録者を検索することもできるが、こちらからの面会希望によい返事はない。

やがて名簿から消えているのは、別の女性と――恐らく妖女とマッチングして、婚活の必要がなくなったからだろう。

明らかに冴えない男性でさえ、マッチングして婚活サイトを卒業していく。

気がつけば、彼らを見下していた自分だけが売れ残っていた。

その事実を再認識するたびに、舌打ちを我慢できない。

 

(こうなったらエア彼氏でも……適当なタイミングで別れたことにすれば……)

 

人はこうした感情を虚栄心と言うが、嵌まっている人間はそこから抜け出せない。

『他人の目に映る自分』という、己自身からは微妙に切り離されたものにばかり傾注していれば、満たされないのも当然なのだと気付けないのだ。

 

「――っ――っ――♡」

 

そんな彼女の耳に、今日もご近所からの『雑音』が聞こえてくる。

 

(また? あのマンション、妖女多すぎでしょ……)

 

久しぶりに戻ってきた田舎は、人口が増えていた。

妖魔界との国交以降、田舎には多くの妖女が住み着いていると聞いていたが、離れていた地元もそうだったようだ。

家の近くに建っていたファミリー向けマンションにも、妖女系の家族が多く住んでいる。

それはつまり……毎夜のように『お盛ん』であるということだ。

 

(夜はこれだし……日中は子供がうるさいし!)

 

セックスの声と、子供の遊ぶ声。

一部の層には、これがどうしても癪に障る。

パートナーや子供の有無に劣等感を抱く層には、特に。

 

(どこに行っても、妖女、妖女、妖女……っ!)

 

最近、実感することが多い。

いま、脚光を浴びるところにいるのは、妖女ばかりだ。

 

経済は妖魔界という巨大市場で動き、消費者として大口な妖女のための商品が連発している。

料理もスイーツも妖魔界の食材が注目され、店に並ぶ服も豊満な妖女体型に向けたものばかり。

ニュースを見れば政治家が妖魔界との外交を重んじ、スポーツでは人間より一回りタフな妖女選手が表彰台に。

恋愛や結婚については言うに及ばず、妖女というズルい存在が、男を人間女性に譲らない。

 

生活で見聞きする様々なものが、こう語っていた。

世界はいま――妖女(サキュバス)を基軸に回っている。

 

(あいつと一緒だったときは、気にならなかったのに……)

 

以前は妖女の席巻を聞いても、焦る気持ちは無かった。

少なくとも自分には夫がいたから。不満はあれど男がいたからだ。

自分より優れた妖女がどれだけいても、彼の存在が、知らぬ間に自分の心を支えてくれていた。

やっぱり自分には、あの男しか――

 

「ああもうっ、うるさい!」

 

浮かんだ思考を追い払うように、キーボードをタイプする。

予定にはなかったが、閃いたものを投稿することにした。

 

『地元に戻ったら、元同級生の男が病院に隔離されてるって聞いて驚いた。

 妖女と結婚したとは聞いてたけど、なんか性病をうつされたみたい。

 旦那を媒介にサブ妻たちも全員感染したんじゃないかな?

 家には誰も寄りつかないし、子供とか絶対イジメられるよ。

 無責任交尾の危うさがよく分かる』

 

もちろん嘘だが、このくらいはいいだろう。

これを見た男や妖女がセックスを控えたら、全国のセックス騒音トラブルも減るに違いない。

 

(巡回しよ)

 

そして今夜も、オンラインにどっぷり浸かる。

 

『隣室のギシアンがうるさいのでフリー素材の心霊音声を流し続けたら空き部屋になった』

『全国の○等学校、教師と生徒の淫行を「実質黙認」。教育崩壊へ』

『妖魔界、半数の国が「中世の文明水準」と判明』

『妖魔界性病「HNTI」、猛威をふるう』

『朗報:若者の妖女離れ、起きる。若者「セックスばっかり。ストイックな女性がいい」』

 

お気に入りのサイトや、SNSのタイムライン、動画サイトのゴシップ動画。

ソシャゲでイケメンアイドルを育成しながら、見たい情報を酒のように流し込む。

 

……こうしている間だけ、心の平穏が戻ってくる。

 

 

 

 

パート勤務になって以来、久しぶりの休日だ。

どこにも出勤しなくていい日というものは、こんなにも貴重なものだったのかと思う。

 

「暇だったら、買い物してきてくれる?」

 

だというのに、母はそんな手伝いを要求してくる。

こっちは疲れているというのに、なぜ休日だからといってそちらの仕事をさせるのか。

母は専業主婦なのだから、自分の仕事は自分ですればいい。しかもその家事だって雑だ。

しかし図太い母は動じることなく、

 

「あんただって、同じこと言った旦那さんに手伝わせてたんでしょ?」

 

……親孝行だと思って、町内のスーパーに足を運ぶことにした。

パートの勤務先でもある。

 

自分が地元を離れている間に、大手のチェーン店が進出してきたらしい。

妖女の移住と妊娠出産により、継続的な人口増加が期待できるようになったからだろう。

以前は見向きもしなかったくせに、妖女の子連れ様がいると分かった途端に擦り寄ってきたのだ。

 

やはり日本社会は妖女ばかり贔屓にしている!

 

扱っている商品にしてもそうだ。

妖魔界の食品類や、魔力を用いる生活用品――

異世界産の食品なんて何が入っているか分からないし、魔力用品は人間女性には使いにくい。

こんなところまで女性差別とは、なんて酷い国に生まれてしまったんだ。

 

(子連れの妖女ばっかり。当てつけ?)

 

店内には子供の騒ぐ声が複数あった。

子供用のショッピングカートを押しているガキのせいで歩きにくい。躾しろ。

美人でスタイルのいい妖女の女性が子供の手を引いている。見せつけてるつもりか。

父親と一緒に、妖女らしい綺麗な娘が歩いている。ロリコンみたいで気持ち悪い。

 

あれも、これも、ほらそれも。

暗に露骨に、人間女性を風下に置くものばかり。

社会は男と妖女のために作られており、私たち人間女性は隅っこに追いやられているのだ!

 

店内の客を見比べてみれば、人間女性はみんな不幸そうな顔をして――

 

「あれ?」

 

頼まれていた商品を探していると、近くの女性に声を掛けられた。

人間女性だ。自分と同年代。服や化粧は華美ではないが品がいい。

訝しんでいると、記憶にある顔立ちだった。

 

「あっ」

「久しぶりっ、帰ってきてたんだ!」

 

中学時代の同級生だった。

当時この町は子供も少なく、仲の良し悪しに関わらず顔と名前を覚えている。

 

「そうなの。何年ぶり?」

「中学を卒業したのが最後だから……やだー、もう二十年以上も前じゃないっ」

 

歳がバレるようなことを言って笑う元同級生に、口の端が引きつった。

おばさんになったことを笑いに変えたいなら、自分一人でやれというのだ。

 

「ここいらもずいぶん様変わりしたでしょー。昔はもっと小さいスーパーだったのにねぇ」

 

彼女は気さくに昔を懐かしむ。

彼女はもっと引っ込み思案というか、卑屈な性格だったと記憶している。

容姿も優れていなくて、服や化粧も知らない、田舎の芋娘だったが、変わるものだ。

 

「そうね。特に妖女さんが増えたみたいね」

「そうなの。ここ十年くらいでぐんとね。

 家やマンションが増えてたでしょ? あれほとんど妖女さんが住んでるみたい」

 

それは夜中の喘ぎ声で把握している。

口振りからしてずっとこの町に住んでるようだが、彼女は特に不満を抱いてないらしい。

嘆かわしい。彼女も妖女優遇社会に洗脳されてしまったか、迎合することを選んだ『名誉妖女』なのだろう。

 

「あ――」

 

ふと、気付いた。

彼女――左手の薬指に、指輪をしている。

 

「結婚、したの?」

 

つい聞いてしまった後、「しまった」と思う。

 

「もう随分前にね。あなたは……ごめんなさい、結婚したって聞いてたんだけど、もしかして」

「ええ、離婚しちゃって」

 

苦笑しながら、左手を軽く握り込む。

まるで自分が、かつて見下していた彼女よりも『下』になってしまかったかのようで……

 

「前の旦那がひどい人でね」

「そうなの?」

「ええ……その、いわゆる、DVとか、モラハラとか? とにかくひどかったの」

 

口が勝手に言い訳めいたことを並べ立てる。

もちろんそのようなことはされていない――

 

否、ストレスに感じることは色々あった。

離婚のときの酷い態度などは、精神的虐待だ。

 

そう、いま思い返せば、私はDV被害者だったのだ!

 

「まあ、あまり気を落とさないで――」

 

彼女が励ましの言葉を口にしようとすると、奥の方から子供が三人ほどやってきた。

妖女系の可愛らしい子供たちだ。年頃も幼くて、子供嫌いでも思わず母性が刺激される。

その子たちは、彼女の買い物籠にお菓子の袋をこっそり入れる。

 

「あ、こらっ。お菓子はもうあるでしょ?」

「「「えー」」」

「これが欲しいなら、どれかひとつ戻してきなさいっ」

 

彼女が言いつけると、子供たちはお菓子を選出して、商品棚に戻しに行く。

 

「走らないのっ」

 

また言いつけられると、素直に並んで歩いていった。

一連の出来事は可愛らしかったが、それより気になったのは……

 

「えっと、お子さん?」

「そうなの。もうやんちゃな年頃で」

 

苦労の滲む母の笑みだった。

それを見て、胸がざわつく。

言語化できないそれを持てあましていると、彼女は気付いたように説明を付け足した。

 

「ああ、外国人っぽい見た目の子は他の奥さんたちの子。うち一夫多妻なの」

 

驚いたが、納得はいった。

先の子供たち、容姿が日本人なのは一人だけで、他は妖女系だった。

 

「一夫多妻……?」

「そう。一応、法的な妻は私で、他は内縁だけどね。

 私を含めて奥さん三人と旦那で、それぞれ子供は全員のを合わせて五人」

 

最近よく聞く家庭環境だ。

人間男性と妖女が作る一夫多妻家庭には、妻の一人として人間女性が混ざることもある。

彼女は、夫が自分以外に妖女の妻を持つことを認めたらしい。

 

「大変じゃ、ないの?」

 

また、胸がざわつく。

元同級生が予想外の形で結婚していた驚き、ではない。

主義思想に合わないものに対する嫌悪感――でもない。

 

彼女が、あまりにも――――幸福そうだからだ。

 

「それはもう大変よ。私は専業主婦させてもらってるけど、子供と家のことぜーんぶ押し付けられちゃって。まあ旦那と他の奥さんが働いてくれてるから家計は安心だし、育児がピークだった頃はそれぞれのご親戚が手を貸してくれて助かったけど。最近は家政婦さんを雇って、やっと私も仕事できるようになってね。コツコツ魔力トレーニングしてたから、いまはそれ系の――」

 

年長の主婦らしい、矢継ぎ早のお喋りが始まる。

内容は愚痴っぽいが、角が立たないようにそうしているだけで、口調はポジティブだ。

 

「……そう、なんだ。へー、いまはそういうのがあるんだ」

 

相槌を打ちながら、理解した。

いま自分の胸中を密かに荒れさせている感情は、驚きでも嫌悪感でもない。

 

幸福な家庭を築いている彼女への――嫉妬心だ。

 

「覚えてる? 同級生の――お子さんがいま妖魔界に留学してて――」

 

聞いてもいないのに、他の同級生たちの近況を報告してくれる。

自分が友達にしたのは、隣を歩いても恥ずかしくない容姿の子だけだった。

だから彼女が語る同級生たちのことは漠然としか覚えていない。

ただ、聞く限り男子も女子も立派な大人になり、結婚して子供がいるようだ。

 

「…………」

 

なんでだ――

お前たちみたいな貧乏ブサイクは、もっとそれ相応の人生なはずだろう。

男に縁なんてなくて、分相応の弱者男性すら妖女に奪われて、下唇を噛んで生きているはずだ。

 

なのになんで――幸福そうなんだ。

 

なんで髪や肌の色艶がいいんだ、なんで着ている服が上質なんだ、なんで声音が溌剌としているんだ、なんでそんなに友達の近況がすらすら出てくるんだ――

 

なんで、なんで、なんで、なんで――っ!

 

結局、何を喋ったのかもよく思い出せないまま、家に帰ることになった。

 

 

 

 

帰宅した後、買い忘れについて小言を言う母を無視して、部屋に入る。

 

(違う、違う、違う……っ!)

 

自分に対して、必死に言い聞かせようとする。

 

さっき会った彼女は――幸せなんかじゃない。

 

彼女は、一夫多妻家庭の『妻の一人』だった。

その時点で愛されていない。夫は彼女を『顔は悪いけど扱いやすいからキープしとこ』とでも思ってるに違いない。あんな芋女を妻にする男なんてそうに決まってる。

子供の世話や家事を押し付けられていたことからも明らかだ。

クズ夫と性悪妖女たちが、奴隷として確保しているのだ!

きっと自分たちは仕事と称して贅沢な食事をしてセックス三昧に違いないきっとそうだ!

 

ネットで見たことがある――こういうのを『新家父長制』という!

 

男が見目麗しい妖女を従え、その下に人間女性を奴隷化しているような状態のことだ。

人間女性が活躍する場を奪い、下女として搾取するために、暗黙の内に作られた悪魔の社会構造だ。彼女はその犠牲者なのだ。自分が幸せだと錯覚している哀れで惨めで愚かしい女なのだ。あれは幸せなんかじゃない本当の幸福じゃない違う違う違う違う――!

 

「ふぅーっ、ふぅーっ」

 

知らぬ間に息が荒くなり、歯の隙間から音を鳴らしている。

無自覚にSNSを開き、キーボードへ指を走らせていた。

 

『田舎って腐ってる!

 ちょっと買い物で地元スーパーに行っただけで、子連れがマウントとってくる。

 どう見ても十代で妊娠させられた妖女もいれば、モテなかった人女も子供産まされてるし、夜ごと女性がレイプされる声が町中に響いてるのに誰も助けない! 妖女におだてられたザコオスが調子に乗って治安を悪化させて病気ばら撒いてる危険地帯!』

 

ついでに動画も貼り付けておく。

近所のマンションを窓から撮ったもので、女性の喘ぎ声が捉えられている。

いつか騒音被害の証拠として提出するつもりだったが、いまが使いどころだ。

 

『クソガキ被害も深刻! 道を歩いていれば背後から体当たりしてくるし、人の家の庭で小便しまくる。これ子供版のレイプと射精だよね。絶対に親の真似してる。

 私の母校も校内性犯罪と性病の温床で、顔にぶつぶつができた人女の児童が泣きながら帰っていく!』

 

自分の劣等感を刺激するものを全力で叩く。

そうして対象を『悪』とすることで、劣等感を『義憤』に、自分を『正義』に。

一説によるとオーガズムを越える快楽物質を分泌させるという、『正義の立場から悪を叩く』という行為が、ストレスを溶かしてくれる。

 

『勤務先でもパートの女性が上司の男に呼ばれて「残業」させられてる。

 とうとう私にもさせようとしてきたから無言でスマホ出して見せたけど、舌打ちしながら手を振って「帰れ」だってさ。大手スーパーの総菜店ですらこうなんだから、商品にも何が付着してるか分かったもんじゃない』

 

まるで酒に溺れるように――

あるいは腕に注射器を刺して薬物を投与するように――

 

『警察や役所にも通報してるのに対応してくれない。

 たぶん性病の蔓延で風評被害になるのが嫌だから揉み消されてるんだろうなー』

 

そんな努力の末、ようやく冷静さが戻ってくる。

 

(……妖女たちの一夫多妻って、人間が混ざるのもありだったんだ)

 

冷えてきた頭が、そこに思い至る。

検索してみれば、情報はいくらでも出てきた。

 

日本の法律は現在も一夫一妻制だ。

そのため日本国内での一夫多妻は、法的に結婚している妻+内縁の妻だという。

 

(平均世帯収入は……こんなにっ!?)

 

さっきまで口汚く罵っていたというのに、急に目の色を変えた。

 

(そっか。個々の年収が低くても、それが三人か四人いれば一千万を越えるんだ!

 なんで気付かなかったんだろっ)

 

更に調査を進める。

 

(例えば男と妖女数人が働いて、私が主婦になれば、高収入を掴まえたのと同じ!

 旦那と妖女を働かせて、家計は私が管理して、家事は出稼ぎ妖女の家政婦を雇う。

 やだ、悠々自適じゃない!?)

 

要はサークルを掌握するようなものだ。

男と妖女に稼がせて財布の紐を握る――それに成功した自分を想像して生唾を飲む。

 

(そっか、妖女たちが子供を産むなら、私が妊娠する必要もないんだ……

 妖女の子なら可愛いだろうし、面倒見るのが私なら実質ママは私だしっ)

 

都合のいい想像は膨らむ。

業腹だが、自分が子供を産んでも、妖女ほど容姿には恵まれないだろう。

だから産まずに、美形が約束された妖女の子たちのママになればいい。

 

その方が――()()()

 

ブサイクかもしれない子を産むより、妖女の子たちを生みの親以上に懐かせれば、なんと身を痛めることなく母になれる。

天使のような娘たちの母という、自慢できる地位が手に入るのだ。

 

(あり、ありじゃない!?)

 

男性と妖女には寄生目的で目を付け、子供には容姿で優劣を付けて、生みの苦しみを押し付けた妖女から親の座だけ盗み、自分を飾るもののように扱う――そういうメンタルに、自覚は及んでいなかった。

 

(でも、妖女と共同生活か……)

 

そこが難点だ。

ただ……最近は婚活パーティやパート先で、妖女と実際に会う機会も増えた。

反りの合わない部分は多いが、言うほど悪人ではなかった。

 

(ちょっと調べてみよ)

 

彼女はこのとき、人生で始めて、妖女に向き合う。

好悪の感情を忘れ、フェアな目線で、妖女のことを理解しようと試みた。

 

(……木城クレア?)

 

やがて行き着いたのは、一人の芸能人。

日妖ハーフの女優として、随所で見かける人物だ。

 

 

『日妖ハーフが見てきた、妖女と女性の違い。その断絶の理由とは――木城クレア――』

 

マウスポインタが、彼女のブログを開く。

 

『人間界と妖魔界が結ばれ、私のようなハーフが大人になるほどの年月が経ちました。

 

 近頃また水面下で、人間女性と妖女との対立が深まっているように見受けられます。

 

 であれば、ハーフとして生きてきた私の視点が、何かの役に立つかもしれません。

 私見ながら、妖女と人女の不一致がどこから生まれているのか――

 二つの『女性』が持つその違いから見ていきたいと思います』

 

どうやら木城クレアは、人女と妖女の不仲を憂いているようだ。

 

『人女と妖女の最大の違いは、容姿でも魔力でもなく「男らしさ」です』

 

『妖女は男性が極端に少なく、社会は女性の手で回ってきました。

 なんだか女性の理想郷ができそうですが、実際そんなことはありません。

 人間界と同じような社会の苦労と困難を、全て女性がやるというだけのことです』

 

妖魔界とはいわゆる『女だけの街』だ。

一時期ネットで話題になったあれである。

女性が『男性社会からの解放願望』として提唱し、実現を目指すわけではなく『怪談』のように消費したものに対し、男性は実現を目指した『計画』として受け取り、できもしない妄言として揶揄したもの――思考の性差が如実に表れている。

妖魔界では、それが空想では済まないのだ。

 

『いわゆる封建社会において、男性は家の外、女性は家の内とされてきました。

 妖魔界ではそれを「外務・内務」と呼び、女同士で分担しています。

 妖女たちは、必要に応じてどちらも務められるように育てられ、外務と内務を表裏一体のものと捉えています。

 

 この外務能力を、性差で分業していた人間界では「男らしさ」と呼んでいます。

 逆に言えば「男らしさ」とは、性別由来のものではなく、社会的な役割に起因するところが大きいのです。

 女だけの街で男性的な役割を担っていれば、女も男らしくなります。

 共感よりもルールを重んじたり、感情よりも道理を重視したり、

 女性が男性に対して「自分たちと違う」と感じるものを、生活の節々で垣間見せます。

 人間女性に、妖女に苦手意識を持つ方がいることの一因でしょう』

 

――ざっと読んで、腑に落ちる。

ネットで妖女の発言を目にするたび、同じものを感じていた。

 

『――妖女からすると、そういうところが同じ女として情けないんだよ』

 

そういった台詞で、人女を「甘ったれ」として扱うときに。

 

一部の女性は、そんな妖女たちと対峙することを避ける。

声高に叫んできた幾つかの持論が、崩れ落ちてしまうからだ。

 

同じ女性である私たちにできたことを、お前たちは「女性だから」と逃げるのか――と。

 

妖女が現れる以前にも、社会の前線で戦う女性が、うだうだ言う同性に向けてきた言葉だ。

妖女と人女の対立とは、実は人種ではなく、そういうものなのかもしれない。

 

『さて、対して人間女性は、内務のみに専念させられてきました。

 これは肉体の性差から生じた分業で、男性が押し付けたとも女性が甘ったれたとも言えません。

 時代が進むとイギリスの女性解放運動など男女の不均衡を正す動きが始まり、男女同権が社会正義となりました。しかしそれも、せいぜい百年。人類の歴史からすればまだ短いキャリアです。

 人女は男性の後ろに隠れて苦労を押し付ける癖に態度がデカい――といった印象を抱いている妖女たちには、人間界の男女比と歴史的な経緯を汲み取る努力が欠けています』

 

そう、そうなのだ!

なのに男どもときたら、やれ男女同権なら男と同じ苦労をしろだの――

 

『ですが、人間女性も環境のせいばかりにしてはいられません。

 妖女の存在で「女性だけでも社会は回る」ことは証明されています。

 女にはできないと排除されることもない一方で、女だからできませんも通用しません。

 社会が男女同権を推進する分だけ、女性が背負う責任も、求められる気骨も増しています』

 

文章に雲行きの怪しさを感じた。

ここから先には、自分にとって見たくないものが記されているという予感だ。

 

『妖女にとって、男性の庇護から巣立てない女性は、非常に幼稚に見えます。

 男に「自分を庇護し養うこと」「問題を解決すること」という父性的機能を過度に求める女性は、人女が「マザコン成人男性」に対してそうする程度に侮蔑されます。

 それが正当か否かはさておき、心証が悪いという事実は心に留めておくべきです』

 

『こうした妖女と人女が、お互いに対して腹に据えかねることを口にすることで、今日もどこかで火花が散るわけですね』

 

『要約すると――

 妖女は、人間女性の歴史的背景に思慮が足りない。

 人女は、男性に対する父性的な依存心から巣立てていない。

 それが二者間の不和を生み出す精神的な要因となっています。

 こうした部分を表に出さないように、胸の内で解消するだけでも、諍いは減ることでしょう』

 

『なお、男性は上手に間を取り持つか、無理なら放っておいてください。

 下手に口を挟まれると、どっちの味方なのかと詰められて、より面倒になりますので』

 

――男性を落ちに使う形で、ブログはそこで終わっていた。

 

「…………」

 

目から鱗とまでは言わないが、頭の視野が広がった気がする。

耳に痛い話も多かったが、妖女たちの視点に触れたのは初めてだ。

 

(私たちが……幼稚……?)

 

そんなはずはない――と、言えるだろうか。

自力ではろくに稼ぐこともできず、結婚という形で男に養われようとしている自分には、無理かもしれない。

 

男に食わせてもらい、男に各種問題を解決してもらう。

それは、パパに甘える娘が大きくなっただけではないか。

掲示板で悪し様に語られる、「妻に母親の如しものを要求するマザコン亭主」と、大差がないのではないか――

 

(妖女って、人女が嫌いなわけじゃないんだ。ただ単に……手厳しいんだ。男と同じくらい)

 

内心で分かっていた。ネットでも耳にしていた。

 

妖女が嫌うのは人間女性ではなく、『ヒモ』なのだと。

 

信頼できる女性なら一夫多妻を共にすることもあるようだが、自分が彼女らの評価基準を満たしているかというと……恐らく、落第だろう。

 

つまり、当初の目的である『妖女の一夫多妻家庭に加わる』という婚活法は、望み薄だ。

 

(……いい加減、自分のこと、なんとかした方がいいのかな)

 

珍しく殊勝なことを考える。

実際問題、自分が相手側だとして、こんな自分と家庭を共にしたがるだろうか?

楽な方に逃げてきた自分を、そろそろ見直すべきなのではないだろうか……

 

(待って……そもそもこの人の言ってること、本当なの?)

 

そこでふと、疑問を覚える。

知識人ぶった顔と口調でバカ全開なことを言う輩は、どこにでもいるものだ。

内容を見極める知見があれば見抜けるものだが……自分には無理だ。

 

こういうときは、検索するに限る。

辞書のようなプロフィールではなく、オンライン記事でどう扱われているかを調べる。

得た情報を噛み砕くのではなく、他人がどう言っているかだけで決めようとする愚に、彼女は気付かない。

 

その選択が無ければ――彼女の運命は、少しだけマシになったかもしれなかった。

 

「…………ふふっ」

 

しばらく後、PC画面を見ている彼女の顔が、侮蔑的な笑みを零す。

 

『木城クレア、炎上! 奴隷売買に加担していた!』

 

ああ、やっぱりそうだった。

 

炎上している。

炎上しているということは悪人である。

悪人なのだから、言っていることは全て嘘だ。

 

所詮はこの女も、妖女が利益を得るための世論工作員だ。

一見中立と見せかけて、実は人女を誘導しようとしているだけの、卑怯な金稼ぎだ!

 

危うく騙されるところだった。

 

 

やっぱり――間違っているのは、自分ではなかった!!

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

非エロの上に長文で恐縮ですが、元妻の第三弾です。
丸々と太ってきたので、もうすぐ収穫かな。


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第五話(前編)挿絵あり

 

 

 

思えばシーアとは、デートのひとつもしていない。

 

藤次がそこに思い至ったのは先週末のこと。

だから日曜日の今日、藤次はシーアと外出することにした。

 

「お、お待たせしました……」

 

先に部屋を出て車の前で待っていると、シーアがやってくる。

普段のメイド服ではなく私服姿だ。

 

「ああ、可愛いな」

「そ、そんなことは……」

 

袖がシースルーになった肩出しのシャツと、膝丈までのスカート。

妖魔界の様式を取り入れた人間界のものであり、シーアからすると着慣れないらしい。

奴隷になる前のシーアは武門一筋の体育会系だったそうで、おめかしとは無縁だったという。

 

「さあ、乗って。車酔いしたときはちゃんと言うんだぞ?」

「はい、ですがその前に――」

 

紳士ぶって助手席を開いてやった藤次に、シーアはぴしっと指を突き付ける。

 

「旦那様? 本日はくれぐれも、私のための無駄遣いはお控えくださいっ」

「お、おお……」

 

財布の紐をしっかり握ったような釘刺しに、軽く気圧される。

 

「デートで最初にそう言う女性も珍しいな」

「人間女性はどうか知りませんが、妖女なら普通ですっ」

 

言葉を交わしながら、二人で車に乗り込む。

 

「人間女性がそれを喜ぶという理屈は分かります。

 自分と子供を養ってくれる、飢えさせない男性を求めるのは、必要とされて培われてきた本能でしょう」

 

発進した車の助手席で、シーアは説く。

 

実際、人類の原始時代は、オスが狩猟採集をしてメスが巣で子育てだ。

こうした頃から、オスは胸が大きくて腰が括れたメスを求めていたという。

理由は、胸のある方が母乳が出て、骨盤の広ければ出産時の事故率が下がるからだ。

 

逆にメスは、より多くの糧を獲得してくれるオスを求めるので、背の高い屈強な男性を好み、分かりやすい証明として『奢ってくれること』を喜ぶ。

 

広義の意味ではこれも『性欲』、性別に大きく関わり、生殖のために備わった欲。

一見して我欲に見えるそれら、実は男女どちらも子供のために培われてきたものなのである。

 

「ですが、妖魔界においてそれはまかり通りません。

 むしろ、女が男にご馳走するなりなんなりして、自分たちの『力』をアピールするものです」

 

よって、妖魔界出身の妖女だと、デートでは男性が奢るものという慣習からして無い。

それを聞いた妖女は、人間男性が女性に奢らせる男性を見たときと同じ反応をするそうだ。

そうでなくても、奴隷として遠慮深いシーアだ。

いま着ている服とて、布さえあれば自分で作ると言い張るシーアを説き伏せてようやく買い与えたのである。

 

「分かった分かった。今日は俺の買い物に付き合ってくれ。二人で使うものを、二人で選ぼう」

「もう、前もそう言って贅沢させようとしたじゃないですか……」

 

シーアは軽く頬を膨らませる。

今日こそは何を買い与えようとしても断るぞという固い決意が見て取れた。

 

「どうしてもというなら、お金はこの子のために……ね?」

 

極めつけに、お腹を撫でながらそう言われては、藤次も財布の紐を締める他になかった。

 

とはいえ、何の特別感も無かったらデートにならない。

そこを加味して、シーアと計画を立てた結果、二人が来たのは――

 

「わぁ……こういう風になってるんですねっ」

 

ラブホテルだった。

 

「うわ、ベッドがふかふかですっ。トランポリンみたいですよっ。

 この透明な部屋はシャワー室? な、なんだか恥ずかしいですね。

 はうわっ!? 旦那様っ? なんだかベッドが回転し始めたのですが何かの儀式ですかっ!?」

 

はしゃぐシーアである。

デートということもあり私服姿だが、そちらは清貧な彼女らしく簡素なもの。

いつもは下ろすか結うかしている髪型を少し工夫しているくらいだろうか。

それは魅力的なのは、何も不満は無いのだが……

 

(どこか行ってみたいところはないかとは聞いたが、ラブホテルかぁ……)

 

食事もせずにいきなりホテルという、人間女性が相手なら平手打ち必至のデートプランだ。

 

「人間界にはセックスのための専用施設があるって本当だったんですねぇ……」

 

というように、シーアもここがどういう場所なのかは知っている。

正真正銘、彼女の希望を聞いた結果、噂に聞くこの場所を見てみたいという返答だったのだ。

 

「旦那様? またそんなお顔をして……私は別に気を遣ったわけじゃないんですよ?」

「ああ、それは分かってるんだけどな……せめてちょっといい店で食事くらい……」

「ですから、それはこの子が産まれた後に。食事や遊園地には三人で行きましょう」

 

晴れやかな笑顔でそう言われては、藤次も二の句がない。

 

「そうだな。そのときはシーアにもたっぷり楽しんでもらうからな?」

「はいっ」

「観覧車とかジェットコースターとか、世の中には楽しいことが沢山あるって、おじさんが教えてやるからなっ! ううっ、う……っ!」

「ですからっ、不幸な身の上の子みたいな扱いはお止めくださいっ」

 

シーアは困り半分に怒り出すが、藤次としては涙腺が緩む。

人間界に生まれていれば、友達と遊園地に遊びに行ったり、男にデートで奢らせたり、そういう年相応の楽しみを味わえただろうに――と。

もちろんそれは、他人の幸不幸を外野から定めるという傲慢なので、これ以上は控える。

 

「そんなに気が咎めると仰るなら……その……」

 

シーアは仕方なさそうに息を吐くと、頬を染めて藤次の胸に顔を寄せる。

彼女の方からこうやって甘えてくるのは珍しい。藤次は喜んでその身体を抱きよせた。

 

「今日は、旦那様を独り占めさせてくださいませ♡」

 

こちらを見上げるシーアのおねだりは、眩暈がするほど可愛らしかった。

 

最近はユスティネやニナという同居人が増えて、二人きりというのは久しぶりだ。

セックスに関しても、どこか他の二人に聞こえたり見られたりすることを気にしている。

それでも3Pをしたりはするが、二人きりで気兼ねなくという解放感は不足していた。

シーアが行先にホテルを選んだのは、そういう意図もあったのだろう。

 

「いいぞ、今日の俺はシーアのものだ。なんなら、立場を逆にして命令したっていいんだぞ?」

「そ、そんな恐れ多いこと……っ」

 

シーアはいつものように断ろうとしたが、それはそれで藤次の気持ちを蔑ろにしていると感じたらしい。

少し迷うように目を泳がせて、ベッドに視線を止めた後、改めて藤次を見上げる。

そして、恐る恐る口を開いて、こう言うのだった。

 

「……今日だけ、ですよ?」

 

男に二言はないが、いざ命じられるとなると、なにをされるか不安になるものだった。

 

 

 

 

改めて、誘惑禁止条例というものがある。

妖女が誘惑(チャーム)を用いること、派生して婚姻関係にない男女のセックスを禁じる条例だ。

逆に言えば――夫婦であれば問題はない。

妖魔界において『誘惑』とは、妻が夫にするものであり、男が女に全幅の信頼を示すとき許すものである。

 

「ほ、本当に、いいんですか……?」

「ああ、シーアならいい」

 

だから藤次は、シーアに『誘惑』を使うことを提案した。

 

「で、ですが、夫婦といっても、籍はまだ……」

「妖魔界では、愛の証明としても使われるんだろう? なら、俺もそうしたい」

「はぅぅ♡」

 

シーアは頬を押さえ、耳まで赤くなる。

妖女にとっては、一生に一度でいいから聞いてみたいという熱烈な言葉だった。

 

「さあ」

 

藤次はベッドで仰向けになり、シーアを自分に覆い被させる。

普段なら騎乗位の命令だと解釈するところだが、今回は完全な女性上位。

 

「はっ、はふ……っ♡ だ、旦那様……わ、私、旦那様を、押し倒して……っ♡」

 

シーアの瞳は、興奮と背徳感で焦点を失いかけていた。

妖女の本能は、本来ただ男に抱かれて孕みたいという受け身なものだけではない。

誘惑という能力を駆使して男を虜にして、跨がって子種を搾り取りたいという、逆レイプの本能でもある。

シーアは生まれて始めて、そういうメスの獣として振る舞うことを許されていた。

 

「い、一度だけ……一度だけ、ですから……っ♡」

 

シーアは藤次の腰に跨がり、両手を伸ばして夫の頬を包む。

 

「後で、どんなお仕置きでも受けますから……っ♡」

 

そうして顔を近付けると、可憐な顔立ちの大きな両眼に、魔力の光が瞬いた。

 

「どうか……許して……♡」

 

目の光を認識した瞬間、脳裏に火が灯るような感覚を覚えた。

どこかから電波でも受信したかのように、自分の意思に反して性欲が燃え上がる。

思春期の頃、初めて自覚する性欲というものに戸惑ったときの感覚、それを十倍にしたかのよう。

 

(これは……驚いた……っ)

 

妖女の誘惑を受けるのは初体験だが、これほど強制的に昂ぶらせてくるものなのか。

なるほど禁じられるわけだ。信頼できない相手からされたら、精神的な尊厳を傷付けられた気分である。

 

「シー、ア……」

「あぁ……っ♡ 旦那様、そんな、お顔で……っ♡」

 

呂律すら怪しくなった藤次を見て、シーアは可愛さと罪悪感を同時に覚えたような感嘆を零す。

そんなことはいいから抱きたい、すぐにシーアに挿入して思う存分に腰を振りたい。

欲求に従って手を伸ばそうとすると、

 

「いけません♡」

 

手がシーアの身体に触れる直前、彼女の優しい声で硬直する。

甘い声音だというのに、子供が大人に怒鳴られたかのように従ってしまった。

 

「旦那様は、じっとしていてください。今日は……ぜーんぶ、シーアが決めますからね♡」

 

シーアはそう言うと、悩ましい手付きで服を脱ぎ始める。

わざとゆっくり、早く肌を見たいと目で訴えるこちらを焦らすように。

 

「ああ、そんな物欲しそうなお顔をして……おかわいそう♡ いま、お見せしますからね♡」

 

シーアは腕を交差させてトップスを頭から引き抜き、上半身を露にする。

まるで初めて恋人を脱がせた日のように、琥珀色の肌が目に焼き付いてきた。

 

「次は、こっちです……♡」

 

待てを命じられた犬を愛でるように、シーアはスカートのホックを外す。

スカートの布地が降りていき、扇情的な下着や鼠径部、少女的な太股が解放される。

 

「さあ、ご覧になってください♡ これから、旦那様を気持ちよくする身体です♡」

 

藤次を跨いで膝立ちになったシーアは、まだ膨らみの目立たない腹から胸元を指で撫で上げた。

必至に腕を動かし、邪魔な下着を剥ぎ取ろうとするが、『誘惑』の効果で動きを封じられている。

もどかしい、まるで絶頂の寸止めを受けたような感覚が、動かそうとした各部で起きていた。

 

「シーア、早く……」

「まあ♡ 旦那様が、おねだりしてくださるなんて……♡ ふふ、いつもと立場が逆ですね」

 

シーアは白い息を吐きながら、ブラとショーツを外していった。

見慣れているはずの妻の全裸、それがまるで、積年の悲願であったかのように心を奪う。

 

「さあ、旦那様も脱ぎ脱ぎしましょうね♡」

 

シーアもノってきたようで、子供をあやすように言いながら、藤次のベルトに手を掛けた。

カチャリ、という金属音が響く時間が、拷問のように長く感じる。

 

「はぅ♡ おかしいです。このくらい、いつもしてるのに……♡

 まるで、旦那様を、辱めているみたいで……っ♡」

 

シーアは不徳な悦楽を告解しながら、藤次の逸物を解放した。

その肉棒はいつも以上に張り詰め、血管の凹凸が激しく見える。

 

「あぁ、こんなに漲られて……いいんですよね。私が、旦那様を、好きにして……あむっ♡」

 

我慢できないという様子で、シーアは藤次の分身を口に含む。

 

「んむっ♡ んぐっ♡ ぢゅるるっ♡」

「うぉ……っ」

 

藤次は思わず声を漏らしてしまう。

シーアの口内が熱い。火傷しそうなほどの熱量なのに、とても柔らかくて心地好い。

いや違う――シーアの口が変わったわけではない、自分の逸物が普段より過敏なのだ。

これも『誘惑』によるものなのだろう、シーアの舌どころか吐息まで、鋭敏に感じ取っている。

 

「シーア、そのまま……っ」

「ぷあっ♡ 旦那様、いつもより敏感です♡ いっぱい、気持ちよくして差し上げますね♡」

 

シーアは口を離している間も、白魚のような細指で陰茎を扱き、亀頭を転がすように撫でる。

再び口内に呑み込むと、藤次の弱点へ的確に舌を絡めてきた。

口内の性感帯を刺激したがる妖女のフェラではなく、扱い慣れた夫を感じさせる妻の口淫だ。

 

「くっ……」

 

藤次は歯を食い縛って耐えようとするが、シーアのテクニックはそれを許そうとしない。

 

「ぢゅぶっ♡ んんんっ♡ ぷぁっ♡ あむっ♡ じゅっ♡ んぐぅっ♡」

 

鈴口から裏筋、カリ首まで余すところなく舐られ、快感で腰の奥から射精欲がこみ上げてくる。

 

「ぷはぁ♡ ふふ、旦那様? ()()()()()()()()()()

 

シーアがこちらに目を合わせて言うと、下半身に不可解が現象が起きる。

まるで見えない栓でもされたように、絶頂の直前でブレーキが掛かった。

堪えようとするまでもなく射精できず、逆に放とうとしても解放されない。

寸止めどころではない、自分の身体が自分の意思に反した行動を取っている。

 

「な……っ、これ、は!?」

「魔力を強めると、こういうこともできるんですよ?」

 

シーアが艶然と微笑する。

妖女が、自分の逸物を愛撫しながら唇を舌で湿らせている。

まるで、悪い魔女に捕らえられた少年のような気分だった。

自分はいま、ピンクハザード時代に多発したという事件のように、妖女の『誘惑』で弄ばれているのだ。

 

「あぁ、旦那様、そんな顔なさらないで……もう少し、もう少しだけ、許してください……っ♡」

 

シーアは身を起こす。

紅潮した顔では、罪悪感と欲情がせめぎ合っていた。

酷いことはしたくないが、どうしても自分を止められないという、犯す者の顔だ。

 

何をされるのか分からなくて怖い。

その一方で――こんな顔をしている相手を拒めない、受け入れて果てさせてやりたいという感情も生じる。

 

「……っ」

 

ひょっとすると、自分はいつもこんな顔でシーアを抱いていて、シーアはこんな気分で抱かれているのだろうか。

だったら、今日は自分がシーアを自由にさせてやるべきではないか。

 

「……いいぞ、好きにしてごらん」

「あぁ……はい♡」

 

短い言葉でも気持ちは伝わったようだ。

シーアは嬉しそうに足を開き、片手で藤次のペニスを手に取ると、口を開いた陰唇でキスをする。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「んっ♡ はぁぁぁぁっ♡」

 

騎乗位での挿入は、滞りなく済んだ。

自分の匙加減で挿入したせいか、シーアの反応は普段ほど激しくない。

しかし藤次に跨りながら髪を掻き上げる仕草からは、普段以上に大人びた色香を感じた。

 

「んぅっ♡ 旦那様、いかがでしょうか? 敏感おちんぽ、気持ちよくできてますか?」

「ああ……っ、すごく、締まって……っ」

 

シーアの膣内を、陰茎の表面全体で感じ取る。

過敏になっているせいか、締め付けがきつく感じる。肉ヒダの一本まではっきり分かる。

 

「ふふ、嬉しいです♡ いつもは、旦那様にお任せしてばかりですけど……♡」

 

シーアは腰を上下させるだけでなく、円を描くように動かしてみた。

 

「っく」

「今日はぁ、シーアが全部いたしますから♡ 旦那様は、動いちゃだめ♡」

 

誘惑の力で命じられたせいか、本当に身体は動かない。

快感に身をよじることもできず、シーアの動きひとつで、快感により征服されるようだ。

 

「んっ♡ んっ♡ んぅ~っ♡」

 

シーアは腰を上げ下げし、藤次の剛直を味わう。

水音と肌のぶつかる淫靡な音が、ホテルの部屋に響く。

藤次は脳裏に白い火花を散らしながら、先端部に子宮口の硬さを感じて我に返る。

 

「シーア、奥は……っ」

 

お腹の子に負担がかかるようなセックスはよくないと訴えるが、

 

「大丈夫っ♡ ですっ♡ この子、だって♡ このくらいっ♡ へっちゃらですからぁ♡」

 

シーアは藤次の腹部に両手をついて、激しくない程度に腰を上下させる。

 

「ふぅっ♡ んぁぁっ♡ はぁぁっ♡」

 

シーアの息遣いが荒くなり、甘い声が笛の音色さながら奏でられる。

単純な快感の絶対値で言えば、藤次が動いているときの方が強いだろう。

しかし、シーアの瞳に浮かぶ恍惚感は、主人の身体を思うがままにするいましか味わえないものだった。

 

「旦那様っ♡ まだイかないでっ♡ 私がっ、いいで言うまでっ♡ イっちゃだめですからぁ♡」

「ぐ、あっ」

 

藤次にはもう、返事をする余裕がない。

誘惑による射精管理状態に置かれ、絶頂寸前のまま、敏感になったペニスを膣内で弄ばれる。

 

「あぁ、旦那様……っ♡ お辛そうっ♡ 許してっ♡ いまだけっ♡ 旦那様のことっ♡ 苛めさせてぇ♡」

 

シーアは両手で藤次の胸板を愛撫して、乳首を指で擦る。

ちゅぱんっ、ちゅぱんっ――と音を立てる結合部。

控えめな音に反して、藤次に与えられる苦楽は激しい。

上下運動、前後運動、円運動と、シーアの腰付きだけで肉棒から全身が翻弄されるかのよう。

 

「シー、ア……っ!」

「旦那様っ♡ イキたいっ? イキたいですかっ?」

 

シーアも小刻みに達しながら、快感に苦しむ藤次から目を離さず、どこか嗜虐的に聞いてくる。

 

「ああ、っ! 出したい、シーアに……っ」

「あぁっ♡ はいっ♡ 私もイクっ♡ 旦那様と一緒にぃっ♡ 一緒に、()()()()()()()

 

シーアがそう言った途端、これまで栓をされていた射精が、急に許された。

中出しは拙い! と思って、自由になった腕でシーアの腰を掴む。

シーアもぎりぎりのところで腰を浮かせ、藤次の肉棒を膣外へ抜く。

肉棒が白濁液を放ったのは、その直後だった。

 

「っぐ!」

「あぁぁぁぁっ♡」

 

どぴゅう、と勢いよく放たれる精。

シーアの秘所に、腹に、胸元にまで届いて、琥珀色の肌を白く汚す。

 

「ぁ―――♡」

 

シーアは自分の身体にかかったスペルマを見て、陶然とした表情を浮かべていた。

 

「ふぁぁ♡ 私、旦那様を……犯して、犯しちゃいました♡ あぁ、なんてこと……っ」

 

頭が冷えてきたのか、シーアは自分のしたことの重大さに気付いたように顔を覆う。

 

「俺から言い出したことだ、気に病むな」

 

身体を起こして、シーアを抱き寄せる。

いつの間にか身体の自由は戻ってきており、性感過敏な状態も去っていた。

 

「気持ちよかったか?」

「うぅ……その……はい。新鮮でした……」

 

腕の中、シーアは俯いて顔を隠しながらも肯定した。

相手の身体を自分の思い通りにできる悦び――いつもは自分がシーアに味わわせてもらっているものを、彼女にお返しできたようだ。

 

「でも……」

 

恐る恐る、シーアが顔を上げる。

先ほどまでの艶然とした妖女の顔ではなく、可愛らしい甘え下手な少女の顔で――

 

「やっぱり……いつもみたいに、してほしいです……♡」

 

誘惑(チャーム)』なんかより、よっぽど誘惑された。

第二ラウンドがいつも以上に長く激しくなったのは、言うまでもない。

 

 

 

 

帰宅した後、藤次はメールをチェックする。

休日だというのに仕事の連絡がないか気にしてしまうのは、もはや習慣だ。

なぜなら――

 

『弊社CMが炎上しているようです。

 明日にでも報告求められると思われるので、確認お願いします』

 

こういうメールが、届いていたりするからだ。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

更新が遅れてしまい申し訳ございません。
詫び挿絵を加えつつ、シーア回となります。
取り急ぎ、他のヒロインとのHも描きつつ、炎上案件を進めていきます。


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第五話(中編)挿絵あり

 

 

 

仕事で起きた問題を上層部に釈明するのは、どんな業種でも憂鬱なものだ。

 

「弊社CMの炎上についてですが、結論から申しまして――不利益はありません」

 

会議室に並ぶお歴々、年配の男性や妖女のキャリアウーマンに、きっぱり断言する。

休日返上で行った調査の結果は、資料として配付してあった。

 

「炎上はSNSに限られており、起用した女優の炎上が、当社のCMに飛び火した形です」

「そうか。個人的な炎上とは?」

「妖魔界の労働者との個人契約――これが奴隷売買と見なされたことによるバッシングです」

 

他人事とは思えない炎上だ。

それだけに、起用した女優こと木城クレアの擁護にも熱が入る。

 

「今般、妖魔界の奴隷を人間界で雇用することを、人間界の奴隷問題と混同して叩く論調が散見されています。無論、その奴隷たちは妖魔界の企業に雇用された時点で法的には労働者、人間界でも不当な扱いは固く禁じられており、いわゆる黒人奴隷や児童労働と結び付ける声は的を外しております」

 

理解の浅い大衆による、奴隷という単語への過剰反応だ。

人間界では心証の悪さを鑑みて、報道などでは労働者と呼んでいる。

しかしシーアたちのような当事者が、誇りを持って奴隷を名乗ってしまうこともあり、妖女の外国人労働者=奴隷という認識が、水面下で広がっていた。

 

「また、魔力AIを用いて実際にバッシングを行うアカウントを調査したところ――ネガティブな反応を示す人間は、問題となったCMの顧客層ではないことが確認できております」

 

藤次も若者ではないが、広告業という職業柄、ネットの炎上に関しては目を配っている。

だが経営陣には、炎上などについて肌感覚の無い者が多い。

そんな彼らに、今回の炎上がどの程度のものなのかを伝えるのが、いまの藤次の仕事だ。

 

「資料を見ると、炎上の勢力となっているのは人間女性のようだね」

「しかも大部分が独身で、恋人の存在に言及するコメントがない……」

「CMはラブホテルだったな。確かに、顧客層ではないな」

 

簡潔に作った甲斐あって、反応はいい。

 

「ラブホテルの客層は、パートナーのいる夫婦や恋人たち、つまり男性と妖女になります。

 この層は弊社CMに否定的な反応を示しておらず、非難する層との意見対立が目立つほどです」

 

それについては、割といつもの光景だ。

聴衆の一人である重役が片手を上げる。

 

「ラブホテルだけならそうだろう。だが奴隷問題が絡んでくると、痴話喧嘩では済まない。

 先ほど君の口にした奴隷問題へのバッシングに、顧客層が賛同する可能性は低いのかね?」

 

ただラブホテルのCMが炎上しただけなら、話は簡単だ。

利用しない連中が喚いたところで、利用したい男性と妖女は流されない。

だが、その男性と妖女も『奴隷問題』となれば、「それはよくないのでは……」と影響されうる。

しかし――

 

「はい。妖魔界の奴隷と人間界の奴隷では、歴史的背景も境遇も大きく異なることが、SNSの訂正機能により認知されています。

 過去に起きた類似の炎上案件でも、顕著な売上の低下は起きておりません。

 現状、奴隷バッシングは一部界隈が内輪で盛り上がっているものであり、それ以外の心を掴んでいるとは言い難いのです」

 

要約すると『こんな炎上、大したことないですよ』と言っている。

それだと舐めているように聞こえるが、ボヤで済むか大火事になるかは見極め可能だ。

 

「故に、現状のままであれば不利益はない、か――話はよく分かった」

 

重鎮の男性が安心したように微笑み、しかし妙に鋭い視線を藤次に向ける。

 

「だが、こういう火事は燃え広がると莫大な不利益をもたらすものだ。

 もしこの件が拡大するとすれば、どういう展開が考えられるだろう?

 状況の悪化を避けるため、我々は何を警戒し、何を未然に防げばいいだろうか?」

 

試されていると感じた。

この男は、不意にこういう問題を出されても、聡明に返答できるだろうかと。

内心で生唾を飲みながら、藤次は「そうですね……」と一拍の間を置き、口を開く。

 

「炎上の対象となった主演女優の木城クレアさん――彼女が炎上への対応を大きく間違えば、顧客層の印象も悪化するでしょう。こちらについては既に事務所を通じて連絡を取り、相談の上で慎重な対応を取ることを約束しております。」

 

資料にない部分も抜かりはないぞと、胸を張って答える。

重鎮は満足そうに頷いて、手元の資料を揃え直した。

 

「それを聞いて安心した。そのまま続けてくれたまえ」

 

災い転じてというほどではないが、藤次はこの会議で、重役たちからそれなりの評価を勝ち取るのだった。

 

 

 

 

さて、仕事と言えば、シーアたちの仕事にも変化があった。

 

例えばシーアは藤次に家政婦として雇われたが、いずれはお腹の子に専念してもらうことになる。

その代打となるのが、先日契約を結んだニナだ。

しかし現状、シーアはまだ動けるし、動ける限りはしっかり務めを果たしたいと言っている。

ならニナと協力して家事をすればいいのではないかというと、彼女たちが言うに「二人がかりでやるほどの仕事量ではない」という。

元妻などは、主婦がいかに重労働であるかを事あるごとに説いてきたが、現状の我が家は人手不足ならぬ人手過多のようだ。

 

「こんなので給料もらうのは心苦しいし、追加で他の仕事を探してもいい?

 もちろん、主人は旦那様だけだけど……」

 

照れ臭そうに付け足しつつ、ニナは『副業』の許可を求めてきた。

 

妖魔界の奴隷契約と、仕事の雇用契約は、微妙に別物だ。

ニナが藤次の奴隷だからといって、その家政婦や情婦以外の仕事をしてはならない、ということはない。

彼女たちが人間界で汗を流す第一の理由は、故郷への仕送りだ。蔑ろにはできないだろう。

 

「そういうことなら……紹介できるかもしれない」

 

相談を受けた藤次はふと、ニナを必要としている人物を思い出したのだった。

 

 

 

 

「ああ、義姉さん? ニナはまだそっちに居るかな?

 よかった、寄れそうだから迎えに行くよ。ああ、そっちで待たせてやってくれ」

 

終業後、藤次は車を運転しながら、ハンドフリーで兄の家に電話を掛けていた。

 

兄は藤次よりずっと早く結婚している。

お相手は妖女であり、二人が学生時代からの付き合いだった。

間に生まれた姪っ子もシーアたちと同年代なのだが、最近、兄夫婦は新たな命を授かったらしい。

 

そこで藤次は、副業先を探していたニナを、兄夫婦に紹介してみた。

 

「それ助かるーっ。お腹も大きくなってきたし、家政婦さんを雇うかどうか迷ってたのっ」

 

兄夫婦のうち、妊婦の兄嫁がそう言ってからは、話は早かった。

兄には彼女以外にも事実婚の妻がおり、頼めば妊婦の手助けをしてくれるだろうが、その妻たちにもそれぞれ仕事がある。

誰かが休職するか、家計から支出して家政婦を雇うか迷っていたところに、藤次がニナを紹介したわけだ。

 

「旦那様のご親戚なら、仕事に手は抜けないわね」

 

ニナもこの話を歓迎した。

藤次としても兄夫婦に預けるなら安心だし、兄夫婦としても藤次の紹介なら招きやすい。

こうした三方よしの縁により、ニナは兄夫婦の家で家政婦をしているのだった。

 

「今日もお疲れ様、ニナ」

「うん、旦那様こそ。迎えなんていいのに……」

 

兄夫婦の家でニナを車に乗せ、自宅に向けて走らせる。

メイド服姿のニナは助手席にちょこんと座っており、藤次の運転を興味深そうに見ている。

 

「車はまだ慣れないか?」

「それもあるけど……なんだか、旦那様がそうやって動かしてるの見てるの、変な感じで……」

 

ありふれたオートマ車の操作に、ニナは興味深そうな目を向けていた。

妖魔界の感覚からすると、人が車内から車を操るというのは、超能力めいているらしい。

 

あるいは、運転している男性がどこか魅力的に見えるという、女の心理なのかもしれない。

 

「ニナもそのうち免許を取るといい、仕事にも役立つぞ」

「考えてはいるけど、事故を起こしそうで怖くて……」

「そこはもちろん気を付けるべきだけど、例えば妖魔界だとまだ自動車は珍しいんだろ?」

「珍しいどころか異界の乗り物よ? 妖魔界だと竜とかゴーレムとかが車を引いてるのよ?」

 

なんともファンタジックで信じがたいが、藤次も動画で見たことがある。

 

「じゃあ、いつか故郷に帰ったとき、異世界の乗り物を華麗に使いこなしていたら、みんな驚くんじゃないか?」

「それは、ちょっと楽しそうだけど……」

 

容易に想像できるのか、ニナはくすくすと笑う。

 

――ニナとは主従となり、肉体関係も持ったが、普段はこういう気安い態度で話している。

当初はニナも、シーアと同じように敬語でへりくだろうとしたのだが、それは藤次が拒否した。

シーアは元からああいう口調らしいが、ニナは少し無理をしているように感じたからだ。

 

案の定、シーアとニナは「奴隷として」「主従として」と敬語を推してきた。

最終的には、聞いていたユスティネが『必要なときには奴隷らしく振る舞う』という条件を出して、いまの形に落ち着いたのだった。

 

(なんだか、奴隷っていうより、娘がいたらこんな気分なのかもな……)

 

ニナはシーアやユスティネと比べて、年相応の不器用さがある。

そのせいか、既に自分の奴隷であると理解していても、娘のご機嫌を伺う父親のような心境にさせられた。

 

「義姉さんの世話はどうだ? 何か苦労してないか?」

 

ニナの新しい職場となる兄夫婦の家について尋ねる。

ニナは歓迎されているか、兄夫婦や姪っ子の生活はどうかという、二つの意味での質問だ。

 

「とてもよくしてもらってる。旦那様のお兄さんとその奥様、とても仲良しね」

「ああ、周りが困るくらいにな。学生時代からああなんだ」

 

兄と義姉の仲睦まじさは、周辺空間の糖度を上げる勢いである。

年頃の娘さんもいるのに――と考えて、その子のことも気になった。

 

「娘のルナちゃんとは会ったか?」

「ええ、年も近いし、名前も似てて縁起がいいし。連絡先も交換しちゃった」

 

ルナとは兄夫婦の娘で藤次の姪っ子だ。

盆や正月に会う程度だが、混血の妖女として、年々魅力的な美少女に成長している。

 

ちなみに、名前が似ていると縁起がいいというのは、妖魔界のジンクスだという。

 

「それはよかった。あの子も年頃だし、母親が妊娠して家政婦まで家に来るとなると……な」

 

家族が増えるというのは、大きな環境の変化だ。

難しい年頃の姪っ子が、ニナという家政婦を歓迎してくれるかどうかは、大きな懸念だった。

 

「そういう心配は、たぶん要らないと思う。

 ルナちゃん、家の門限ぎりぎりまで彼氏の家にいるし、よく泊まってるみたいだし。

 私が仕事を終えて帰る前後に、ちょっと会って話すくらいだから」

「彼氏? ……もう居るのか」

 

年頃なのだから当然だが、まだ早いのではないかと過保護な叔父心も湧いてくる。

 

「たしかご親戚の、奥様の従弟さんだって聞いたけど」

「義姉さんの? あー、結婚式のとき親族の挨拶で見かけて以来だな……」

 

驚いたことに姪っ子の彼氏は、母の従弟、つまり「いとこ叔父」らしい。

血縁上はセーフだろうから、野暮は言わないでおく。

 

「色々と興味深い話も聞かせてもらってる……どうやって襲わせてるのかとか、拘束プレイとか」

「ん? すまない、よく聞こえなかった」

 

後半が小声だったので聞き逃してしまった。

 

「ガールズトークしてるってこと」

 

屈託無く笑うニナを見たら、聞き逃したことなど、どうでもよくなった。

シーアやユスティネ以外の友人を得たこともあり、ここ最近、表情がすっかり柔らかくなった。

 

「旦那様? 緑色は進むんじゃないの?」

「おっと、すまない」

 

青信号に変わっていたことに気付かされ、アクセルを踏む。

道は帰宅ラッシュでマイルドな渋滞が起きており、あと一秒でも遅ければ背後からクラクションだった。

 

「旦那様、お疲れなんじゃ……」

「そういうわけじゃない――こともないな。今日はちょっと予定外の仕事が増えたからね」

 

担当したCMの炎上釈明で、気疲れが起きていたのかもしれない。

 

「その、大丈夫? 夜、あまり寝れてないみたいだし……そっちは私たちのせいでもあるけど」

「はは……『週休二日制』にしてもらっただけ御の字さ」

 

シーア、ニナ、ユスティネ――三人の妖女を囲うのは、若くない体に響く。

とはいえ、彼女たちのような美少女に求められて「今日は寝る」とは言えない。

シーア特性の精進料理や最新のサプリメントで滋養を養い、早めにベッドに入る今日この頃だ。

 

「もし、なにかあったら言ってよね……体のことだけじゃなくて、気持ちのことでも……」

 

ニナは照れ臭そうに黒髪をもてあそびながら、そう言ってくれる。

 

「体はともかく、気持ちって?」

「だからその……昨日は、シーアがひどいことしたって聞いたし……」

 

酷いこととは『誘惑』のことだろう。

どうやらシーアたちは各自のプレイ内容を共有して、藤次の攻略に役立てているらしい。

 

「まあ、あれはあれで……こほん。とにかく、ひどいってほどじゃなかったぞ?」

 

藤次は微苦笑する。

内心ではニナが「じゃあ次は私の番ね」と言い出さないか冷や汗を掻いていた。

 

「それならいいんだけど、その……お仕事が上手くいかないこともあるだろうし……」

 

しかしニナの表情は、その予想とは異なり、しおらしい。

女の機微に聡い方では無いが、ニナが何かを切り出そうとしているのは分かる。

藤次がゆっくり待っていると、車が赤信号で止まったタイミングで、ニナが続きを述べた。

 

「イライラ……してない?」

 

頬を染め、探るような聞き方に、妙な色気を感じた。

これは、額面通り藤次が苛ついているかいないかを聞いているのではない。

むしろ、そうであって欲しいと言いたげな……

 

「もし、なんだったら……解消、してもいいから……私で」

「っ」

 

ハンドルを切り損ねるところだった。

気恥ずかしそうに、素直になれない乙女心を感じさせる横顔で、ニナは言っている。

自分の体を使って、ストレス解消をしてもいい、と。

抱かれてもいいというだけに留まらず、乱暴な扱いでもいいという、過激なサインだった。

 

横目に見ると、ニナはエルフ耳まで赤くしながら、目を泳がせている。

動く視線はちらちらとこちらを伺い、吐息は熱を帯びて、車内に妖女のフェロモンを放出していた。

 

「夜まで我慢できるな?」

「……うん♡」

 

 

 

 

「まあ、ニナがそんなことを?」

 

帰宅後、ニナの話を聞いてそう反応したのは、シーアだった。

場所は浴室であり、一糸に纏わぬシーアが背中を流してくれている。

 

「ああ、乱暴にして欲しいっていう意味なんだろうが……妖女だと、やっぱりそのくらい普通なのか?」

「ふふっ、なにをいまさら♡」

 

シーアは藤次の体に満遍なく泡を広げていく。

まるで着替えすら自力でしない貴族のような扱いだ。

 

「ああでも、ご存知ないかもしれませんね。妖女にとっての『性癖』の重みは」

「性癖の、重み?」

「はい。苛められたいとか、猫かわいがりされたいとか、こうしてご奉仕してあげるとか」

 

シーアはまるで幼子を扱う母の如く、藤次の世話を焼いている。

こうして風呂で背中を流すのも、最近は誘惑のためではなく、純粋に藤次のケアをしたいからだ。

セックスになれば喜んでするが、しなかったとしても何一つ不満はないらしい。

 

「妖女は業の深いもので……普通に抱いていただけるだけでも至福の時を過ごせるのに、それに慣れてくると、自覚した自分の性癖を満たしたくなるんです」

「それは……普通じゃないか?」

 

セックスとは、不慣れなうちはそれだけで特別だ。

スタンダートな行為でも、異性の体に衝撃を覚え、絶頂を知れば夢中になる。

しかし場数を踏んでくると、単なるセックスでは物足りなくなり、各々の性癖に沿った展開を求めるものだ。

 

「もう、旦那様ってば……お忘れですか?」

 

ぴたり――と、シーアが藤次の背中に身を寄せる。

豊満な乳房が背中に押し潰され、大人びた声音が背後から耳元に響いてきた。

柔らかな半球と中心の突起を、背中に感じる。

 

「妖女は、人間さんよりも、ずーっとエッチなんですよ?」

 

シーアが緩やかに体を上下させ、泡に塗れた乳房が背筋を滑る。

極上の感触に背中を流され、藤次の逸物がみるみる立ち上がっていった。

 

「んっ♡ 普通のセックスですら『あれ』なんです……はぁ♡

 力強く……突いて、いただくだけで……っ♡ 達するの、止まらなくなるほどなんですよ?

 はぁふ♡ そんな体が……ぁ♡ これという性癖を、刺激されちゃったら……あん♡

 それはもう……新しい世界が始まっちゃうんです♡」

 

藤次の背中に乳房と乳首を擦り付け、シーアは言葉に喘ぎ声を混ぜる。

 

「はぁ♡ 普通のセックスでも、何度もイキ続けて……んぁっ♡ 天国に、行けるんです♡

 あっ♡ その上、性癖に沿ったプレイをされると……ふぅっ♡

 もっと上の、言語に絶した悦楽の時間が、始まっちゃうんです♡ あっ♡ はぁぁ♡

 あれを、知ってしまったら♡ はふぅ♡ もう、それが、生きる意味になっちゃうくらい♡」

 

甘い声と、泡立つ体が擦れ合う音が、浴室に奏でられる。

思わず振り返って押し倒したくなるが、今夜はニナとの約束があるので、ぐっと堪えた。

 

「ニナはたぶん……()()()()()()()()()()()

 誇りも、羞恥心も、全部へし折られないと……浅ましくよがり狂う自分を、許せないんです」

 

確かに、過去にニナを抱いたときにも、そのような傾向があった。

『逆らえない命令』という免罪符を得た途端、抑圧された欲望を解放されて、淫らに狂うところがある。

 

「条件付けられてるんです。命令されたり、脅されたりすると、燃え上がっちゃうんです。

 自分が淫らなメスだって再認識させられると、自由になった気がしちゃうんですよ。

 それこそ、怖い態度で強要された方が……()()()()()()()()()っていうくらいに……♡」

 

親友の性癖を暴露しながら、シーアの手が背後から胸板をなで回して、屹立する股間を撫でる。

 

「もしものときは、私のせいにして構いませんから……今夜、試してみてくださいな」

「……試す?」

 

答えは分かっているが、ためらう気持ちから、鸚鵡返ししてしまった。

シーアは、藤次の理性の鎖を解錠するかのように、艶っぽい口調で答える。

 

「犯してあげてください♡ 悪徳な貴族様のように……あの子を、性奴隷として厳しく躾けてあげてください♡」

 

結局――風呂ではシーアを抱かなかった。

今日の精力を、全てニナに叩き込むためだ。

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

ぱんっ! ぱぁん! ぱぁんっ!

 

藤次の腰が、ニナのヒップに衝突する音が、寝室で繰り返される。

 

「んあああぁぁぁっ♡ だめだめぇ♡ 旦那様ぁっ♡ そんなっ、どすんって、強くぅ♡」

 

ベッドの上で伏せたニナが、嬌声を上げている。

足は膝立ちになって尻を上げ、逆に頭は低く、両手は顔の横でシーツを握り込んでいる。

その顔には目隠しがされており、両手は手錠で拘束されていた。

以前、シーアにも使ったSMグッズだ。

 

「ふぅっ、ふぅっ!」

 

藤次は琥珀色のヒップを掴み、膝立ちになって腰を振る。

ニナの膣内に収まった剛直を、抜ける直前まで引いてから、一気に奥まで打ち付ける。

ぱん! と、自分の鼠径部がニナの尻肉にぶつかり、陰茎が膣壁に包まれた。

 

「ひぁうぅぅぅっ♡ しょんなっ♡ んおっ♡ 乱暴にっ、突き入れるのぉ♡ ああぁぁっ♡ こわいっ♡」

 

助走を付けて打ち込むような抽送を受ける度、ニナは全身を痙攣させていた。

藤次の肉棒に膣道の性感帯を擦られ、子宮を突き上げられる度に、達しているからだ。

 

「なんだ? 拒むのか? ニナ」

「ひうっ♡」

 

ぱんっ! と、抽送ではなくスパンキングの音と共に、ニナを問い詰める。

 

「誘ったのはお前だぞ? こうして欲しかったんだろう? ほら!」

「んぉぉぉっ♡」

 

ずんっ! と角度を変えて腰を押し込むと、大きく口を開いたニナは獣めいた声で鳴いた。

両眼を覆われていても、その顔に描かれているのが恍惚であることは、十分に見て取れる。

全裸の肌に浮かんだ汗が、絶頂の痙攣で流れ落ち、シーツにぽたぽたと降り注ぐ。

 

「俺のイライラを解消してくれるんだろうっ!? この体でっ! 犯されるの大好きな淫乱おまんこで!」

 

ぱぁん! ぱぁん!

不規則なリズムで激しい抽送が連続すると、ニナは喉を反らしたり首を振ったりと、ロッカーのように髪を振り乱した。

 

「ひぎゅぅぅっ♡ それ、はっ♡ 旦那様がっ♡ お辛いかと、思ったからぁ♡」

「なんだ? 俺のせいにするつもりか? んん?」

「ああぁぁぁ♡ やぁぁ♡ おしりぃ♡」

 

左右の手で尻肉を抓るように揉み回すと、挿入とは別種の快感に襲われた妖女が身をよじる。

人間の女なら「痛い」と拒否するような、乱暴な責め立ての連続だ。

しかし、ニナの体に走るのは鮮烈な性感ばかり。

妖女だからというだけではなく、目隠しによっても鋭敏になっているようだ。

 

「まったくお前たちといったら! 事あるごとに俺を誘惑して!」

「んおっ♡ おっ♡ おおおぉぉぉっ♡」

 

強弱のあるスパンキングを織り交ぜながらピストンすると、ニナは再び連続絶頂の時間に入る。

シーアやユスティネに比べればボリューム不足な肢体だが、容易にイってしまうその敏感さは、征服のし甲斐があった。

 

「こっちは疲れてるっていうのに! 男に腰を振らせて好き放題に喘ぎやがって! イキたがりの色情狂が!」

「はひぃっ♡ んぁぁぁっ♡ ゆる、し、て――ああぁぁぁイクイクまだイってるのにイクのぉぉぉっ♡」

 

罵倒しながら責め立てると、ニナは怯えるどころか、達する頻度を上げていく。

怒張の出入りだけでなく、尻を叩かれるだけでもイキ始めた。

 

「こうして欲しかったんだろっ!? 命令だ白状しろ!」

 

藤次の声に反応して、ニナの首輪が輝く。

 

「はひっ♡ 欲しかったのぉ♡ あなたのっ、このっ、すっごいセックスっ♡ してほしくてっ♡ あああぁぁぁ犯してっ♡ 私を逆らえなくしてっ、無理矢理イカせてぇっ♡ でないとっ♡ でないと駄目なのっ♡ こんな風にいっぱいイけないのぉっ♡」

 

ニナは口の端から零れる涎にも気付かず、淫らな告解を繰り広げる。

 

「知っちゃったからっ♡ あぁんっ♡ 旦那様にっ♡ 蹂躙、されるのっ♡ あひゅっ♡ 服従するとっ♡ こんなっ♡ 気持ちよくなるってっ♡ んぉぉっ♡ 教えられ、ちゃった、からぁ♡」

 

ニナが喋っていようといまいと、藤次はセックスを止めない。

腰を掴んで上下に揺らしながら突き続け、ニナの膣内を肉棒で味わい尽くす。

自分の快感のために女体を使う身勝手なセックスだというのに、彼女の膣内は歓喜の痙攣で応えてくれる。

 

「おねだりっ、できないからぁ♡ 奴隷だからっ♡ あああぁぁっ♡ だからっ♡ 命じて、もらわないとっ♡ んんんんっ♡ できないっ♡ して、もらえないからぁ♡ そういうのっ、察してよぉ♡」

 

立て続けの絶頂に苛まれながらも、ニナは言葉を紡ぐ。

その間にも、ポルチオに押し込まれた亀頭に達し、尻を指圧するように押し込まれた親指でイキ、奥を突く直前で寸止めされてはアクメを迎える。

 

「そうかそうか、それは済まなかったな。なら命令だ! もっとイケ! おまんこ締めろ!」

「ひぎゅぅぅ♡ はいっ♡ イクっ♡ イクイクイキましゅいっぱいイクからぁぁぁっ♡」

「いいか、いまお前は奴隷なんて上等なもんじゃない! 性奴隷だ! いまお前がしていいことは、この淫らな体で俺を愉しませることだけだ!」

「んぁぁぁぁっ♡ そんなっ♡ んぎゅぅぅぅっ♡ ひど、いっ♡ ああぅぅぅぁぁぁぁっ♡ なりゅっ♡ 性奴隷しましゅっ♡ イクのっ♡ イキまくるの気持ちいいのぉっ♡」

 

シーアの見立ては正しかったようだ。

普通のセックスでも連続絶頂に陥る妖女の体が、更に一段階上の恍惚状態に上り詰めている。

その快感があまりに強すぎて、他の何を失っても手放せない。

誇りも、名誉も、これまでとこれからの人生を全て捧げても、この天国を味わっていたい。

それを与えてくれる男が、いつしか神様に思えてくるほどに。

 

「旦那様もっと♡ もっと犯してっ♡ 妊娠してるシーアにできないことっ♡ 私にしてぇ♡ 優しくなんてっ、なくていいからぁ♡ 私にはっ♡ 悪くてエッチな旦那様でいいのぉっ♡ 嫌がってもっ、逃げようとしてもっ♡ 無理矢理っ、押し切ってっ、気持ちよくしてよぉっ♡」

 

自分がなにを言っているのかは……当然、分かっていないのだろう。

そういう状態だからこそ、自分でも自覚できない深層心理が表れるのかもしれない。

 

「ああ、いいぞ。泣こうが喚こうが、最後まで好きにしてやるよ!」

 

藤次もまた、理性を手放した。

一度ペニスを引き抜き、ニナの体を仰向けにさせ、正常位へ。

 

「ひぁっ♡ あっ♡ んぁぁぁ♡」

 

自ら足を開いたニナの秘所に、再び肉棒を挿入する。

すんなり奥へ入った反面、角度が変わったことで、ニナは小さく達していた。

拘束された両腕を頭上に上げて、こちらに向けられた胸の先端で、乳首を尖らせている。

その細い腰をがっちり掴み、軽く呼吸を整える。

 

そこからは――彼女の膣内を、逸物でサンドバックにする時間だった。

 

「あああぁぁぁっっっ♡ んぉぉぉおおおっ♡」

 

ぱんっ! ぱぁんっ! 肌と肉がぶつかり合う音と、結合部からの水音が重なる。

ニナはもう、意味のある声を発せられなくなっていた。

獣じみた鳴き声を漏らすだけの雌へと成り果てていた。

 

「喘ぐだけか!? 無能な性奴隷だな!」

「おっ♡ おちんっ、ぽぉっ♡ すごっ、おっきぃっ♡ あああぁぁぁ♡ わたひのっ♡ 奥からっ♡ 体中っ♡ イカせ続けてりゅのぉぉぉっ♡ しゅごいっ♡ しゅごいのっ♡ 旦那様のレイプしゅごしゅぎるのぉっ♡ 私のことっ♡ 支配してりゅっ♡ してっ♡ してぇっ♡ あなたのっ♡ ものにっ♡ なりゅっ♡ なりゅのぉぉぉっ♡」

 

もはや絶頂していない瞬間がないというほど、ニナは痙攣し続ける。

そんな中でも首輪の命令で喋り続け、正気を失うほどの悦楽を物語っていた。

 

「ああ、出そうだ。出すぞ?」

「だし、てっ♡ あひっ♡ 孕ませてっ♡ 私もっ♡ 旦那様のっ♡ お嫁さんにしてっ♡ ああぁぁっ♡ シーアみたいにぃ♡ 幸せに、なるぅっ♡」

 

これもまた、本音。

妖女の強すぎる生殖本能の発露。

シーアという親友が、日に日に妻となり、母の顔をする姿を見て、ニナもそういう願望を育てていたのだろう。

 

「っぐ!」

 

それについて、深く考える余裕は、藤次にも無かった。

目の前に自分の子種で孕みたがっている女がいるから、後先など考えずに射精した。

 

「あああぁぁぁ旦那様っ♡ 中出しっ♡ してっ、くれりゅっ♡ ぉぉぉぉぉっ♡」

 

膣奥に注がれる精液を感じながら、ニナは幸福に包まれた表情で果てていく。

最後にして最大の絶頂を迎えたニナは、藤次が逸物を抜いた後も、打ち上げられた魚のようにビクビクと震え続けていた。

 

「いい子だ。外してやる」

 

そろそろ手錠を外してやることにした。

自由になった両手は、いまだ脱力したままで、シーツの上から動かない。

 

しかし、目隠しを外そうとすると――

 

「っ!?」

 

急に動き出したニナの手が、藤次の手首を掴んだ。

 

「はひゅ♡ だんな、しゃま♡ もっろ……でき、ましゅ♡ わたひ……もっろぉ……♡」

 

うわごとのような言葉だが、意識はあるのだろう。

その手は、目隠しを外そうとした藤次を制止している。

 

外さないで、このまま続けて――と、行動で言っていた。

 

「……そうか」

 

少し休憩したいと思っていたが、肉棒が再び元気になってしまった。

 

その日のニナは、翌日に喉が枯れてしまうのではないかというほど、激しかった。

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

事後、藤次は気絶したニナをベッドで休ませた後、キッチンで冷蔵庫を開いていた。

流した汗を補うため、飲み物をグラスに注いで飲み干す。

妖魔界の果物を使ったという、シーア特性のジュースだ。

疲労回復と精力亢進に効果的であり、効能は体で確認している。

 

「旦那様……」

 

声を掛けられて目を向けると――ユスティネが立っていた。

豊満な肢体をネグリジェに包んでいる姿は艶やかだが、その表情は明るくない。

 

「ユネ? どうした?」

 

ニナとの声を聞きつけて我慢できなくなった……という顔ではない。

顔には影があり、どこか怯えているようですらある。

なにか、言いにくいことを言わなければならないという様子だ。

 

「その、私……」

 

彼女が言いよどんでいる間に、藤次も心構えをする。

 

何かあったことは間違いない。

内乱直後であるという故郷で変事があったか、勤め先で問題が起きたか。

それとも妊娠したのか、まさかこの家を出て行きたいというのか。

 

そういうものを予想していた藤次は――

 

「私……っ、旦那様のお仕事を、炎上させてしまったかもしれません!」

 

予想外の言葉に、目を瞬くのだった。

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

本文を書き上げていながら投稿を忘れるというアホなミスをしておりました。
次話はユスティネの話と炎上案件ですかね。


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第五話(後編)挿絵あり

 

 

 

今日も藤次は、社畜にあるまじきことに八時間労働で仕事を終えた。

以前は自主残業する独身のワーカーホリックだったが、最近は既婚者組と同じ時間帯での終業だ。

 

しかし今日に限って言えば、早々に帰宅する大義名分もある。

先日から対処しているCM炎上に対処するため、とある人物に会うからだ。

 

場所はとある喫茶店。

雰囲気とメニューからして大人向けで、ビジネスで利用されることが多い。

藤次がその一席で待っていると、ほとんど同じ時間に、待ち合わせの人物がやってきた。

 

「西条さん、お待たせしました」

 

木城クレア。

会うのはCM撮影のとき以来だ。

ハーフ妖女の美貌とスタイルをレディーススーツに包み、社交的な笑顔を輝かせている。

 

「この度は、私の不用意でご迷惑をお掛けしております」

「いいえ、当社も事情は把握しております」

 

今回の炎上案件について、クレアは頭を下げ、藤次も下げ返す。

 

――発端となったのは、彼女の投稿したブログの炎上だ。

 

人間と妖女のハーフに生まれた彼女は、デビュー当初から双方の不和を憂い、その解消を目指した発信を行っている。

ハーフという視点と是々非々な姿勢が評価され、女優業と共に随筆家(エッセイスト)としての注目度も高い。

時に説教臭い内容が『ボヤ』を起こしていたが、その程度で済んでいた。

 

しかし偶然撮影された『メイドの妖女と歩く姿』から、妖女の家政婦を雇っていることが発覚。

これが、『妖女の労働者を雇っている=妖魔界の奴隷を買っている』という風潮に引火。

同じタイミングでラブホテルのCMに出演していたことも追い風となり、炎上と呼べる規模に拡大した運びだ。

 

「それにしても予想外でした――まさか、ユスティネの雇い主が、木城さんだったとは」

 

藤次との意外な接点が、ユスティネだった。

 

「私も驚きました。もちろん、ユネさんにとっては雇用主の個人情報ですから、いたずらに話すわけにはいきませんよね」」

 

ユスティネがシングルマザーに雇われているという話は聞いていた。

藤次の家に住んでいるのはアパートが焼失したからで、雇い主は藤次ではない。

藤次はユスティネの雇い主が木城クレアとは知らず、逆に木城クレアも『親友の雇い主が親切で部屋を貸してくれた』としか説明されていなかったそうだ。

 

「ユスティネからも聞きましたが、彼女と一緒にいるところを写真に撮られたとか……」

「はい、娘とユネさんと一緒に買い物をしていたところを撮られてしまったようです。

 芸能人を見かけても迷惑を掛けないところが、日本のいいところだと思っていたんですけどね」

 

木城クレアは困ったように微笑む。

写真自体は、クレアとその娘さんとユスティネが街角を歩くだけのもの。

撮影したのは記者でもパパラッチでもなく一般人で、SNSで話題になればという程度の気持ちだったらしい。

 

しかし、ネットに放流されたこれに対して、底意地の悪い者が指摘した。

 

『この褐色の女性、妖魔界の奴隷なのでは?』

『服が妖魔界の奴隷商人と提携してる人材会社の支給品なので確定』

『元奴隷の労働者であって奴隷じゃないぞ。ロンダリング済みだぞ』

『普段あれだけ偉そうな口を利いといて奴隷売買かよ』

 

妖魔界からの出稼ぎ労働者を雇用することを奴隷問題とする論調が、クレアに牙を剥いた。

 

「画像は消去させましたが、気がつけば槍玉でした。

 私は有名税みたいなものですが、ユネさんには責任を感じさせてしまったようで……」

 

クレアは自分の風評よりも、ユスティネの胸中を案じていた。

ユスティネは人間界のネット事情に疎く、事の次第を把握したのもつい先日のこと。

クレアからは「気にしなくていい」と言ってもらえたが、堪らず藤次に相談してきたわけだ。

 

「実際のところ、木城さんの私生活に影響は?」

「いいえ、具体的なことはなにも。記者や投稿主の粘着もありません。

 奴隷バッシングそれ自体、狭い界隈でいま流行しているだけの難癖商売ですし」

 

シーアもニナもユスティネも、故郷の内乱で奴隷化したのは事実だ。

しかし人間界に来た頃には企業を通じて『解放済み』、その後の待遇も決して奴隷ではない。

主人の立場を利用して抱いている藤次が言えた義理ではないが、元奴隷を雇うことを奴隷購入と見なすのは暴言すぎる。

筋が通らないことを承知で、体のいい『棍棒』に使う者たちが居るだけだ。

 

「では、対策を立てましょう」

 

藤次にこの件を相談してきたときのユスティネは、ひどく落ち込んでいた。

自分のせいで、雇い主のクレアにも、藤次の仕事にも、泥を塗ってしまった――と。

 

だから藤次は会社に説明して、木城クレアと共に『消火』に当たることにしたのだ。

 

「うちの可愛いユネを泣かせた奴ら、生かしておかない――って顔してますよ?」

「え? ああ、失礼。そこまで物騒なことは……」

 

クレアに内心を言い当てられて、藤次は我に返る。

しかし彼女は、むしろ藤次のそんな顔が見られて安心したように微笑んでいた。

 

「ご心配なく。私も同じ気持ちです。

 私が私の言動で燃えるならまだしも、落ち度の無い方々まで罵られるのは許せませんもの」

 

微笑するクレアの瞳にも、静かな闘志が見て取れる。

 

これまでは、仕事を通じた浅い付き合いだった。

しかし、いまこのとき、藤次は女優・木城クレアと、同じ敵を相手にする同胞となるのだった。

 

 

 

 

多くの人々が帰路につく頃、藤次は木城クレアを車で送る。

クレアの家で勤務しているユスティネを拾って帰るためだ。

 

「どうぞ、部屋の前まで」

「よろしいんですか?」

 

質の高いマンションの地下駐車場に入ると、クレアに誘われる。

女性を送るにしても、部屋の前まではあれなので、車内でユスティネを待つつもりだった。

 

「せっかくですし、ユネさんを驚かせてあげましょう」

 

小粋な笑みで言うクレアの申し出を断るわけにもいかず、藤次は彼女の部屋まで同道する。

 

(妙に……距離感を近付けられてる気が……)

 

もちろん、共に炎上案件を解決する仲だからだろう。

しかし、話題の芸能人に親密にされると、年甲斐もなくドギマギしてしまう。

 

「ただいまー」

 

そうしているうちに、クレアの部屋に到着。

 

「奥様、お帰りなさいませ」

「ママおかえりーっ」

 

出迎えたのはユスティネと、クレアの娘さんらしい少女。

後者の娘さんは、小学校低学年くらいだろうか。

耳の形などは人間だが、クォーターでも妖女だけあって整った顔立ちだ。

 

「アイナ、いい子にしてた?」

「うん、ユネにネットのこと教えてあげたんだよ?」

「また? もう、この子は……」

 

母親の顔になったクレアに、アイナというらしい娘さんは胸を張る。

時代というか、このくらいの歳の子なら、人に教えられるくらいには精通しているらしい。

 

「えっ、藤次様っ!?」

「やあ、お疲れ様。迎えに来たよ」

 

ユスティネはというと、クレアと一緒にいた藤次に驚いている。

それを見て、アイナも藤次に注目した。

 

「だれ?」

 

人見知りはしないらしく、クレアの手をくいくいと引いて尋ねている。

 

「ふふ、ユネお姉さんの大事な人よ」

「奥様っ!?」

 

クレアの紹介を聞いて、ユスティネが慌て出す。

察するに、藤次とユスティネの関係は、クレアにもだいたい把握されているようだ。

だとすると気まずいが、反応を見るに悪いようには伝わっていないらしい。

 

「ユネの彼氏っ?」

 

物怖じしないのは母親譲りか、初対面のおじさんである藤次にも、アイナは目を輝かせる。

 

「初めまして。お母さんにはお世話になってます。

 お察しの通り、ユスティネの彼氏さんだよ」

「っ」

「おーっ、ユネってばやるーっ」

 

あっさり言い切られて、ユスティネは頬を染め、アイナは興奮していた。

恋人というより婚約者公認の愛人みたいなものだが、彼氏でもいいだろう。

 

「お、奥様っ? お夕飯はもうできておりますのでっ。お嬢様の学校の連絡書はテーブルの上に」

「ええ、ありがとう。帰りが遅くなってしまってごめんなさいね」

 

ユスティネは慌てて話題を動かし、クレアが小さく笑いながらそれに応じた。

 

「ユネ、もう帰っちゃうの? まだ動画途中だよ?」

 

そこでアイナが残念そうな顔をして、ユスティネの袖を掴む。

どうやら藤次たちが来るまで、一緒に動画でも見ていたようだ。

 

「申し訳ありませんお嬢様、また明日……」

「うぅ……」

 

どうやらアイナはユスティネとお別れしたくないらしい。

ユスティネの袖を離さず、母に訴えるような目を向けている。

 

「「はぅっ」」

 

そんな少女に胸を打たれるユスティネと母クレア。

可愛いのは分かるが、ユスティネが無理に残れば時間外労働が長引く。

ユスティネからも言い出しにくいし、クレアからも頼みにくいことだろう。

となれば自分はどうするべきか――と、藤次は少し考えて、結局は子供のおねだりに負けた。

 

「まあ、動画一本くらいなら」

「でしょ!」

 

そのくらい待てると言う前に、アイナが味方得たりとユスティネを引っ張る。

 

「あらあら。藤次様、申し訳ありません。すぐに――」

 

お転婆なお嬢様に引っ張られたユスティネは、部屋の奥へ。

 

「まったくもう……ごめんなさい西条さん。お時間を取らせてしまって」

「いいんですよ。私は車で待ちますので」

「そんな。どうぞ上がっていってください。お茶くらいはお出しします」

 

今度は藤次がクレアに引き留められる。

 

(まあ、今後に備えて子育てのコツを聞くのもありか)

 

シーアに帰りが遅れることを連絡しつつ、藤次は有名女優の家に上がらせてもらうのだった。

 

 

 

 

「そうですか、前の旦那さんとはそのような経緯で……」

「ええ、主夫の仕事もろくにせず趣味に没頭して。

 子供の面倒も十分に見なくなったので、妻たちで相談して同時に離縁しました」

 

藤次とクレアは、ダイニングテーブルを挟んで、それぞれの昔話を交換していた。

二人の共通点はバツイチであるということ。

それが有名女優との話の肴になるとは、藤次も思わなかった。

 

「私と元妻も似たようなものです。人間、誠意を欠けば同じ末路を辿るものなんでしょうな」

「はい。自分がそうならないよう、他山の石と思うしかありませんね」

 

クレアは離婚以前、一夫多妻家庭の一員だったらしい。

しかし専業主夫だった男は、いつしかヒモのような生活に甘え、家事や子供の世話を怠るようになった。

文句を言っても改善は一時的で、浪費癖もあったことから、妻一同は離婚を決心したという。

 

「木城さん、他の奥様方とは……」

「一斉離婚したとき、ほとんどが妖魔界に帰りました。私は人間界の生まれだったので日本に残りましたが」

 

夫を共有する妻たちは義姉妹の契りを結ぶ。

離婚後も義姉妹の縁は維持されることもあるらしいが、クレアはそちらも離縁となったようだ。

となると、正真正銘のシングルマザー。母一人、子一人の人生だったようだ。

 

「だから、ユネさんには本当に助けられているんです。

 急に一家離散めいたことになって、あの子には寂しい思いをさせてしまいましたから」

 

確かに、いまユスティネと一緒に人気配信者の動画を見ているアイナを思うと、離婚なんて起きない方がいい出来事だ。

 

「それだけに、今回の炎上、ユネさんに気負わせてしまったことは心苦しいです」

 

愛称で呼んでいることからも分かるが、クレアはユスティネを大事にしてくれているようだ。

そしてその気持ちなら、藤次も遅れは取らない。

 

「彼女は、私の妻になる女性の親友であり、いずれ義姉妹として迎えたく思っています。

 今後のことがどうなろうと、私たちが彼女を見捨てることはありません。

 そこだけはご安心ください。もちろん、彼女の雇い主である木城さんについても同様です」

 

照れ臭いことを言い切った後、お茶を口に運ぶ。

 

「まあ……」

 

クレアは驚いたような、羨ましそうでも嬉しそうでもある顔をしていた。

 

「でしたら、ひとつ提案があるのですが――」

 

ユスティネに聞こえないよう、クレアは声を潜める。

藤次がその提案を受け取り、前向きな検討を約束する頃には、ユスティネとアイナの動画視聴も終わっていた。

 

 

 

 

さて、今回の炎上については、シーアたちも知るところとなった。

 

「うっわ、炎上ってこういうのなんだ……リアルタイムで見るの初めて……」

 

ユスティネから事の次第を聞いて唖然としたのは、ニナだった。

藤次のスマホを借りてSNSを開いた彼女は、炎上の内容に目を通している。

 

「まるで言葉戦いのみの合戦……いえ、無秩序な乱闘ですね」

 

ニナの隣から画面を覗いたシーアが、見慣れない様子で感想を述べる。

 

「火事と喧嘩はネットの華だな」

 

ニナがトレンドにあった『#奴隷』に触れると、奴隷問題に関する投稿が確認できる。

そのほとんどは、妖魔界で奴隷落ちした妖女を労働者として迎え入れるのは奴隷売買への加担だとする非難の声だ。

フォロワー数の多い発信者を中心に、賛同する者たちの声が書き連ねられていた。

 

「……私は、こういうものはよく分かりませんが」

 

シーアの目が細くなる。

幸か不幸か日本語の解読に熟達した彼女には、なにを書いてあるか分かるようだ。

日本の男は元から女性を奴隷にしているから驚かないとか、自我を持った女性を妻にするより自我を奪った妖女を奴隷にしたいのだろうとか、概ねそういう系統の愚痴や煽りが並んでいる。

 

「この方々は、奴隷という悪を責めていながら、実際に奴隷がどんな日々を送っているかには興味がないのですね」

 

インターネットには素人なシーアにも、察するものがあったようだ。

 

「同感。これは正義なんかじゃない」

 

静かな怒りを宿した昏い瞳でスマホ画面を見ているのは、ニナも同じだ。

 

「戦も知らない連中が、卑しい真似をする大義名分のひとつまみに、何かを使ってるだけ。

 内乱のとき、前線にも立たず略奪や暴行に熱心だった連中は、だいたいこんなだった」

 

忘れそうになるが、シーアたちは『戦争』を知る者たちで、敗者として奴隷に落ちた者たちだ。

奴隷バッシングを行うアカウントの誰よりも、奴隷のなんたるかを知っている。

 

「最近ユネが落ち込んでたのはこういうこと」

 

ニナが憤懣やるかたない顔で溜息を吐く。

シーアも憮然としていたが、案じる表情を藤次に向けた。

 

「旦那様、この炎上なるものは、深刻なのでしょうか?」

「ユスティネにも言ったが、もう手は打った。このまま何事もなければ、収まっていくはずだ」

 

藤次は居間から廊下の方に視線を配る。

視線の先には風呂場の扉があり、いまはユスティネが使っているところだ。

今回の炎上は、何か違法行為が発覚したわけでもなく、大多数の人間を敵に回すような不謹慎があったわけでもない。

なにが起きるか分からないのがネットとはいえ、この炎上が深刻化する可能性は薄い。

 

「そもそも君たちのような出稼ぎ労働者の受け入れは、国同士が約束した経済協力の一環だ。

 企業も魔力持ちの労働者は歓迎しているし、大手メディアも奴隷バッシングには乗っていない」

 

もっと言うなら、人間界と妖魔界で積極的に人材を出し合い経済を活性化させることは、両世界の主要国が大々的な会議で合意したことである。

 

「こうした奴隷炎上がいくらか予想を超えたとしても、君たちが人間界にいられなくなるなんて事態には至らないだろう」

「それを聞いて安心しました」

 

今回の炎上を知って、シーアたちが不安になるとすれは、そういう展開だろう。

自分はもちろん、他にも奴隷となっている同郷の者たちの未来が、気がかりだったのだ。

 

「あとはユネですね。だいぶ気に病んでるみたいですし」

 

シーアがユスティネの胸中を案じる。

藤次も言葉を尽くして大丈夫だと保証したのだが、様子を見る限り、隙あらば表情が曇っていた。

そこで、風呂に入ったところを狙って、なにか妙案はないかとシーアやニナを助けを求めたのだ。

 

「もう、しょうがないなぁ……」

 

ニナは壁のカレンダーを横目に見る。

カレンダーには『シーア』『ニナ』『ユスティネ』といった名前が曜日ごと記されており、たまに『休み』とも記入されていた。

つまり、「その日は誰の番か」ということであり、今日はニナと記されているが……

 

「旦那様、今夜はユネを部屋に呼んであげて」

「……いい、のか?」

 

藤次の確認には、順番を譲っていいのかという意味と、落ち込んでいるときにそんなことをして大丈夫かという意味がある。

 

「こういうときは、何かも忘れさせてもらうのが一番なの」

 

どこかお姉さんぶった顔で言い切るニナに、思わず笑みが零れる。

 

「代わりと言ったらなんだけど、今晩このスマホ借りてもいい? もっと色々見てみたいし」

「ああ、おかしなサイトは覗くなよ?」

 

ニナはネットに興味が深いらしい。

いずれお金を蓄えてスマホやPCを揃え、電子の世界に名乗りを上げるつもりらしい。

藤次は私用と仕事用で二つ持っているので、ひとつ貸すくらいは問題ない。

 

(精力剤、飲んでおこう)

 

なんにせよ、今夜も頑張らなければならないようなので、妖魔界製の滋養強壮剤を接種しておくのだった。

 

 

かくして、寝室。

 

「んぢゅっ♡ ちゅぷっ♡ んっ♡ じゅぶるっ♡」

 

ベッドの縁に腰掛けた藤次に、ユスティネが熱烈なフェラチオを繰り広げていた。

 

「んぐっ♡ んんっ♡ ぢゅるるるっ♡」

 

全裸になった藤次の見下ろす先で、ネグリジェに豊満な肢体を透かせたユスティネは、逸物を根元までくわえ込んでは吸い上げる。

舌を裏筋に絡みつかせ、亀頭を喉奥で責め、頬をすぼめてバキューム。口内を真空にするようなディープスロートだ。

 

「いいぞ、そのまま、思うように続けてごらん」

 

藤次はユスティネの頭を軽く撫でながら、優しい口調で声を掛ける。

しかしユスティネは、それをどう受け取ったのか、より激しく頭を前後させた。

 

「んぐっ♡ んんっ♡ ぢゅぶるっ♡」

 

上目遣いに藤次の反応を見ながら、ユスティネは懸命に頭を前後させる。

妖女は口内の性感帯を刺激するため熱心なフェラをしてくれるが、ユスティネのこれは、自分の快感のためではない。

自分の快感など後回し、己の呼吸を犠牲にしてでも、主人に快感を与える献身的な口淫だ。

健気で、それ以上に必死な様子に、藤次は笑みを返す。

 

「気持ちいいよ。その調子だ」

「ああ、よかったぁ……♡」

 

金髪をくしけずるように頭を撫でると、ユスティネが安心したように表情を和らげた。

その手がネグリジェの肩紐を下ろすと、彼女の豊満な乳房が姿を現す。

 

「お胸でも、いたしますね♡」

 

ユスティネは妖しく微笑みながら、口から抜いた藤次のペニスを谷間に挟む。

その豊かな膨らみが、藤次の半身を柔らかく圧迫する。

 

「あぁ、たまらないなぁ」

「ふふ、これだけは、シーアにもニナにも負けませんもの♡ んっ♡ ちゅるっ♡」

 

ユスティネの両手で上下に揺らされた乳房が、陰茎を左右から擦り上げる。

谷間から顔を出した亀頭は、再び彼女の口淫に包まれた。

 

「藤次様、もっと、遠慮無くご命じになってください♡

 おっぱいでも、お口でも、おまんこでもお尻でも、お好きなようにお使いくださいませ♡」

 

パイズリフェラを継続しながら、エルフ耳まで紅潮させて、誘惑の言葉を口にする。

普段は控えめなユスティネだが、今夜はやけに積極的だ。

 

「…………」

 

そんなユスティネに、藤次は――

 

「見ていられないな」

 

底冷えした声音で、そう口にするのだった。

 

「え? きゃっ」

 

藤次はユスティネの手を引いて、強引にベッドに上がらせる。

藤次の膝上で対面するような形になったユスティネは、戸惑いと不安の表情でこちらを見ていた。

 

「ユネ……無理してるだろう?」

「っ」

 

驚きに目を見開いたユネは、すぐ気まずそうに視線を反らした。

 

「そ、そのようなこと……藤次様にご奉仕させていただくのに、無理だなんて……」

 

藤次とするのが嫌というわけではない――という意味では本音なのだろう。

だが、こうして身体を重ね合う行為の中で、心の機微を隠すのは難しい。

 

「君とするのも、今日が初めてというわけじゃないんだ。身体が強張っていることくらい分かる」

 

藤次はユスティネの背中を抱き寄せ、子供をあやすように撫でた。

 

「と、藤次様……?」

「勘違いならいいんだけど、まだ……自分のせいだと思ってるんじゃないか?」

 

ユスティネの肩が小さく震えて、図星を物語る。

やはり炎上の件が、ユスティネをセックスに集中させていない。

妖魔界出身のユスティネにとって、ネットの炎上は『最悪、被害者を失職や自殺に追い込むもの』という印象だろう。

正確な実態は伝えたつもりだが、やはり奴隷である自分がクレアや藤次に負担を掛けたことを思い悩んでいる。

 

「だからせめて、必死に気持ちよくしようとしてくれたんだな」

 

怖れから来る『媚び』だった。

普段の、相手の男性を興奮させてより燃え上がろうというテクニックのようなものではない。

弱い立場の者が、見捨てられたくない一身で下手に出るような……不徳な者しか喜べない部類の媚びだ。

 

「違うん、です……」

 

やがてユスティネは、絞り出すような声で答え始めた。

藤次は安心させるように髪を撫でて、続きを待つ。

 

「なにもかも自分のせいだとまでは、思っておりません。ただ……悔しくて」

 

ぽつぽつと語りながら、ユスティナは藤次の胸板の上で手を握り込む。

 

「私たちは誇りをもって奴隷を名乗っておりますが、実際に人間界での生活は、奴隷とは程遠いものです。本当に奴隷なら、いまごろ水と粗食だけを対価に畑を耕さされていたでしょう……」

 

彼女がそんな境遇になっている未来を想像してしまい、藤次は思わず抱く腕に力を込めた。

気持ちは伝わったのか、ユスティネも抱き返してくれる。

 

「そうならずに済んだのは、人が奴隷商人と呼ぶ方々が、人間界への道を与えてくれたからです。

 クレア奥様も、卑しいこの身を蔑まず、藤次様は私に女の幸福を教えてくださいました……っ」

 

奴隷と出稼ぎ、どちらがマシかで言えば明らかに出稼ぎだ。

むしろ奴隷になる以前より快適な暮らしを送れている――と、口にする妖女も多い。

故郷に仕送りをしながら学びを得て、よりよい仕事に就いて一人前になった元奴隷も、続々と現れている。

もし奴隷のままでいたら、その可能性すら奪われていたのだ。

 

「そんな、私たちを救ってくださった方々が……」

 

ユスティネが顔を上げると、目尻からは涙が零れていた。

 

「まるで、悪人のように誹られていることが、悔しくて……っ。

 止めさせることのできない自分が……無力で……っ!」

「…………」

 

少し驚いた。

ユスティネのこんな表情は初めて見る。

彼女は、気に病んでいたのではない――怒っていたのだ。

 

「ですから、藤次様……」

 

ユスティネは罪悪感の目で藤次を見上げる。

藤次は、普段は優しい言葉を紡ぐ彼女の唇が、よくない言葉を紡ぐことを予感した。

 

「もし、私がご迷惑になるようなら……どうか、容赦なく……んんっ!?」

 

強引に唇を塞いだ。

容赦なく自分を追い出してくれ――とでも言おうとしたのだろう。

そんなことは、言葉にすることさえ許さないと、身体で説き伏せる。

 

「んっ♡ ちゅっ♡ んむっ♡」

 

最初こそ驚いていたユスティネの顔が蕩けていき、頬に涙を伝わせる。

 

「そんなこと、二度と言うな!」

 

藤次はユスティネの両肩を掴み、ベッドの中央に押し倒しながら声を張る。

 

「あ……っ」

 

こうも怒りを露にする藤次は、ユスティネはもちろん、シーアやニナも見たことがない。

思わず硬直したユスティネだったが、何が原因で怒っているのかを理解すると、口元を押さえた。

 

「俺が、この程度のことで、お前を切り捨てるとでも思っているのか! 二度と言うな!」

「も、申し訳、ありません……っ」

 

ユスティネは胸を打たれたように震える。

自分は、思っていたよりずっと、彼に愛されていたのだと理解して。

そんな彼に、なんて馬鹿なことを言ってしまったのだろうと、後悔していた。

 

「そんなに言うなら……」

 

藤次はユスティネの頬を撫でると、彼女のエルフ耳に軽くキスをして、耳元で囁く。

 

「お前が、どれだけ必要とされてるのか、身体に教えてやる」

 

先ずはキスの雨からだった。

 

「あっ♡ は、ぁうっ♡」

 

耳から首筋へ、首筋から鎖骨へ、胸の谷間へ、乳房の縁へ。

直接的な性感帯にはあえて触れず、愛情表現を最優先して、ユスティネの褐色肌をついばむ。

 

「は、うっ♡ 藤次、様ぁ……っ♡」

 

甘い前戯を受けたユスティネが、戸惑うように身をよじる。

妖女の身体には、物足りないくらいの刺激だろう。

 

「やぁ♡ そんな、お優しく……んぁぁう♡」

 

しかし今回のユスティネの蕩け方は、いつもと違った。

いつもの彼女は、肉感的な肢体を好き放題されることを好んでいた。

こういう、恋人との幸せな時間を大切にするような前戯は、あまり体験していない。

 

「だめ、ですぅ♡ こんなのっ……んあぁぁ♡ 生娘でも、ないのに……あぅっ♡」

 

両肩から両腕、腰から足を愛撫されて、ユスティネは呼吸を荒げる。

快感の量は普段より乏しいのに、心に響く。

自分がいま慈しまれていることを強く感じさせる行為が、彼女の胸を甘く締め付けていた。

 

「じっとしていろ。何も考えなくていいんだ」

 

藤次の手が、ようやくユスティネの豊乳に触れる。

触れるにしても羽毛が乗るくらいの浅いもので、だというのにユスティネの身体は鋭敏に震えた。

 

「はぁっ♡ ああっ、ああぁぁっ♡」

 

手の動きはゆっくりで、決して強くない。

ただ、そんな弱い愛撫が、ユスティネの精神を誘導していく。

 

「藤次様ぁ♡ 分かります、お気持ち、伝わってきて……あぁ♡ 私、こんなに思われてっ♡」

 

気持ちいい、ずっとこうされていたい――と思う反面、

もっと強く、もっと激しくしてほしい――と渇望する。

心は慈愛を感じて癒やされているのに、体はいつもより焦らされているため燃え上がる。

そうした相反するような熱情に挟まれて、それ以外のことなど何も考えられなくなっていた。

 

「藤次様っ、私、もう大丈夫ですからぁ♡ さっきみたいなこと、もう、思ってませんからぁ♡」

 

気がつけばユスティネの心からは、当初あったネガティブな感情など消し飛んでいた。

 

「本当かい?」

「はい♡ 藤次様、すごいです……私の気持ち、こんなに簡単に、綺麗にされちゃって……まるで、魔法みたい……」

 

気持ちの込められたスキンシップで、心が洗われる。

肉体が性に敏感な妖女だからこそか、性の悦びはメンタルケアにも効果的だった。

 

「お気を遣わせました……どうか、ここからは、いつも通りに……♡ 私にも、あなたを癒やさせてくださいませ♡」

 

ユスティネは藤次の頭を両腕で抱き寄せる。

相手のことを考える余裕が生まれてきたのなら、大丈夫だという言葉も強がりではないだろう。

 

「そうか、なら……」

「あっ♡」

 

乳房に置かれた両手の指に少し力を込めて、谷間に顔を埋めながらユスティネを見上げる。

 

「今日は、お前に甘えさせてもらうぞ」

「っ」

 

驚いたような顔をするユスティネの乳首を口に含む。

 

「はぅっ♡」

 

思わず、といったように声が漏れた。

かなり敏感になっている。いつものように、強く責めれば責めるほど喘ぐだろう。

 

「ひあっ♡ あっ♡ んんっ♡」

 

しかし、いまはそういう気分じゃなかった。

復活したとはいえ気落ちしていた彼女を、ことさら責め立てるのは気が乗らない。

 

「ふぁ♡ 藤次、さま? あっ♡ な、なんだか……いつもと、んんっ♡」

 

だから、それこそ赤ん坊が母の乳を求めるように、静かに乳首を吸っては舐める。

 

「は、ああぁっ♡ んうぅっ♡」

 

ユスティネも最初は困惑していたが、手は無意識のうちに藤次の頭を撫で始めた。

その顔には困惑と興奮が混ざり合い、頬の朱が色濃くなっていく。

 

「やっ♡ そんな……藤次様、こんな……赤ちゃん、みたいにぃ……♡」

 

ぴくんっぴくんっ――と、小刻みに震えながら、ユスティネが声を絞り出す。

 

「甘えて、る……っ♡ 藤次様が、私に……っ♡ ふぁうっ♡ おっぱい、吸って、るぅ♡」

「嫌か?」

 

過敏な反応を示すユスティネに尋ねると、彼女は首を強く横に振った。

 

「嫌なわけないですっ♡ 藤次様みたいな方が、私なんかに甘えてくださるなんてっ♡ あっ♡ んんっ♡ そんな、可愛らしいお姿っ♡ 見せて、くださるなんてっ♡ ひぁうっ♡」

 

可愛いという評価は複雑なので、吸ってない方の乳首を軽く指で転がす。

 

「そんなに意外か? これだけ大きな胸を前にしたら、男なら甘えたくなる」

「だって、藤次様はいつも、大人で、頼もしくて……あぅぅっ♡ なんだか、変な気分に……ひぅっ♡」

 

それほど強く刺激しているわけでもないのに、ユスティネの反応が顕著だ。

 

(もしかすると……)

 

ふと浮かんだ仮説を検証するため、再び目の前の谷間に顔を埋める。

 

「ユネのおっぱい、美味しいよ」

「ひぁうっ♡ そんな、ことっ、仰らなくても……あっあっ♡」

 

口に含み、舌先でくすぐる程度のことで、ユスティネは頭を掻き抱いてくる。

 

「ずっとこうしていたい。だから、どこにも行くな……っ」

「ふぁっ♡ あぁんっ♡」

 

あえて弱々しいことを言い、縋るように抱きしめると、ユスティネは切なそうに背筋を反らす。

 

「行きませんっ♡ んあっ♡ どこにも、行きませんからぁ♡ あぁんっ♡ ずっと、お側におりますからっ♡」

 

やはりそうだ――

強い刺激を与えたわけでも、テクニックを尽くしたわけでもないのに、快感の声が高い。

 

どうやらユスティネは――母性を刺激されることに弱いらしい。

 

「ユネ……っ」

 

そうと分かれば、自分が大の大人であることも忘れて、彼女の体にべったりと体重を預ける。

 

「ふぁぁぅぅっ♡ あっあっあぁぁ♡ 音っ、らめですっ♡ ちゅぱちゅぱ、しちゃ♡ んぁぁぁっ♡」

 

音を立てて乳首を啄むと、ユスティネはまるで激しい挿入でも受けているように、何度も体を反らした。

 

「嫌だよ。ユネから離れない」

「ひぅっ♡」

 

まるで子供のように甘えたことを言うと、ユスティネは目を潤ませ、耳まで赤くなる。

子供好きなのは知っていた。元から母性の強い子だった。

しかし、セックスの中でそれが機能するのは、彼女にとっても初の体験なのだろう。

これまで彼女とのセックスは、猛獣のように腰を振って感じさせるか、大人の男としてリードするかだった。

ユスティネにとって藤次は『目上』であり、母性を覚える視点はなかったのだろう。

しかし、藤次が恥を捨てて少年のように甘えてきたことで、性欲と母性が連結されてしまった。

その結果が――

 

「あっあっ♡ だめっ♡ 変っ♡ 身体が変ですっ♡ おっぱいだめっ♡ やっ♡ 違うのっ♡ 止めちゃだめっ♡ 離れちゃ駄目ですっ♡ あっあああぁぁぁ♡」

 

単調に乳首を吸われ、胸を触られるだけだというのに、ユスティネの達する頻度が急増していく。

こちらに対する言葉も、どこか年下を扱うようなものに変化していた。

母性と雌性を同時に満たされるような快感に戸惑いながらも、完全に酔っている。

 

(こんなになるのか……一度や二度抱いたくらいじゃ、分からないもんだな)

 

新たに知ったユスティネの一面に、こちらも昂ぶる。

胸だけでは満足できなくなってきた。

 

「ユネ、いいね? ユネの中で、気持ちよくなりたい」

「っっっ♡ 来て♡ きてぇ♡」

 

真っ直ぐ見詰めてストレートに宣言すると、ユスティネの顔が歓喜に震え上がり、自ら足を開く。

 

「私のここに、おいでになって……気持ちよくなってくださいませ♡」

 

どこか、貴族の令息に女の味を教えようとするメイドのように、ユスティネは自ら秘所に指を運び、大陰唇を指で広げて見せた。

思わず息を呑む。

それこそ、女を知らぬ少年に戻ってしまったかのように。

ユスティネの母性を刺激するため子供めいた態度をとったせいか、こちらの精神まで子供に戻ってしまったのか。

 

「っ」

 

そんな興奮に背中を押されて、ユスティネの脚の間に腰を入れる。

彼女の乳房に夢中で気付かなかったが、我慢させていた肉棒は限界まで張り詰めていた。

上向きに高く反り返るペニスを指で下ろし、ユスティネの膣口にあてがう。

 

「ふぅっ♡ ふぅーっ♡ ふぅーっ♡」

 

淫唇が噛む程度に先端が埋まると、ユスティネは軽く震え、耳に響くほど呼吸を荒くした。

片手の指を唇へ添え、濡れた瞳でこちらを見上げてくる姿は、あまりにも艶やかで美しい。

 

「あうっ♡」

 

片手で乳房を掴む。

挿入の瞬間に意識を向けていたユスティネは、不意を打つ刺激に身体を震わせ――

 

「あっ♡ あああぁぁぁぅぅぅっっっ♡」

 

そのまま覆い被さるように腰を入れると、熱く濡れそぼった膣内を突き進む肉棒に、大きく身体を反り返らせた。

フェイントを掛けるような挿入は効果的だったようだ。

きゅんきゅんきゅんっと震えるように締まる膣内、それと同じタイミングで全身に入る痙攣。

 

「はひゅうっ♡ 入って、りゅ♡ 藤次様、きてりゅぅ♡」

 

入れらただけで達してしまうのは、妖女の彼女ならいつものことだが、今日は格別に反応がいい。

 

「ユネ……あぁ、気持ちいいよ」

「ああぁう♡」

 

背中に腕を回して、胸に顔を埋めながら言うと、また母性が刺激されたのか嬌声が上がる。

心身の両面から堕とすようなセックスは、彼女にかつてない悦楽をもたらしているようだ。

 

「あっ♡ 藤次様……私やっぱり変ですっ♡ いつもと、イキかた違くてっ♡ 長くてっ♡」

 

目尻を下げ、半開きになった口からこぼれる声は甘く官能的だ。

膣壁が蠕動し続けているのは、また絶頂が続いているからだろう。

 

「動くよ、ユネっ」

「ふぁぁうっ♡ いいっ♡ 動いてっ♡ 私のことっ♡ ああぁぁっ♡ 気にしなくて、いいですからっ♡」

 

まだ絶頂の残っているユスティネに向けて、ゆっくりと腰を前後させる。

 

「んくぅぅっ♡ あぁぁっ♡ おくっ、コツコツって♡ ふぁうっ♡ ゆっくり♡ ゆっくりなのにぃ♡ すごいっ♡ じわーって♡ 体中にっ♡ ゆっくり、イってますっ♡」

 

普段のセックスと比べればスローペースなくらいだが、ユスティネの乱れ用はいつも以上だった。

ベッドが軋む音も、結合部からの水音も、さほど聞こえない。

ただユスティネの乱れる声だけが、ヴァイオリンによる切なげな演奏のように響いている。

 

「んぁぁぅっ♡ だめですっ♡ いまっ、おっぱいだめっ♡ 吸われたらっ♡ だめっ♡ あっあっあああぁぁぁっ♡♡♡」

 

左右の乳房を掴み、顔の前まで持ち上げて中央に寄せる。

そうして二つの乳首を同時に舌でくすぐると、ユスティネは首を激しく左右に振った。

枕との間で擦れたせいか、髪留めが外れ、ポニーテールだった金髪がベッドの上に広がる。

 

「んひゅっ♡ い、吸っても、おっぱい出ませ、んっ♡ ああぁあっ♡♡♡」

 

よほど敏感になっているのか、舌先で叩かれるだけで、膣内の収縮が起きる。

小さな水音と共に舌を踊らせながら、腰の動きを少しずつ加速させていくと――

 

「ぁぁぁあああっ♡ らめっ♡ イってるんでしゅっ♡ ずっとずっとぉ♡ イったままなのにぃ♡ こんなっ♡ 幸せな気持ちにっ♡ ひゃぅぅぅっ♡」

 

ユスティネの手足が、背と腰をホールドする。

 

「だめだ、止まらない。もっと、ユネの中で気持ちよくなりたい……っ」

「ふぁぁぁ♡ 言っちゃだめっ♡ そんなっ♡ 可愛いことっ♡ だめでしゅっ♡ いまだめなんしゅっ♡ 甘えてくれるの気持ちよすぎるぅぅぅっ♡」

 

素直な言葉で懇願すると、ユスティネはまた大きく背中を反らし、深いオーガズムを迎える。

流石に小休止を入れてやるべく、胸から顔を離して、彼女の全身を見下ろした。

 

「はひっ♡ はうっ♡ ふぁぁ♡ あっ♡」

 

長い金髪を広げたユスティネは、まるで女神のように美しかった。

それ以上に、湯気が立つほど火照った肌に汗を浮かべ、蕩けた顔で喘ぐ彼女は、あまりに色っぽかった。

 

「っ!」

 

我慢の限界だった。

ユスティネの母性を刺激するため、あえて弱々しいセックスをしていたが、これ以上は自分のオスを抑えきれない。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「ふあっ♡ 待って――」

 

腰を両手で掴まれたユスティネは、こちらの興奮状態に気付いて目を丸くする。

彼女の予感を裏切らず、彼女の腰を軽く浮かせて、ハイスピードの抽送を叩き込む。

 

「ふあぁあぁぁっ♡ 急にっ♡ そんなっ♡ 奥っ♡ つよくしちゃっ♡ あっ♡ あ゙っ♡ あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ っ♡」

 

これまでのスローセックスで、身体はすっかり出来上がっていたようだ。

子宮口を連打されるユスティネは、枕を掴んで激しく身をよじり、猛烈な連続絶頂に乱れ狂う。

 

「まったく、何が『可愛い』だ! これでも可愛いかっ!? んんっ!?」

「んおっ♡ おっ♡ おゆるしっ、くださいっ♡ おっおっおぉぉ♡」

 

先ほどまでの縋りつくような抽送から、蹂躙するようなピストンに変わったことで、ユスティネの身体に駆け巡る絶頂も強烈になっているようだ。

目を見開き、口からは涎が垂れ、獣めいた喘ぎ声が鳴り響く。

 

「怒ってないぞ、安心してイけっ! ただユネに、一人前の男だって、思い知らせたいんだ!」

「んっ、んぎっ♡ イって、ましゅっ♡ 最初から、ずっとぉ♡ 藤次様のぉ♡ 逞しさっ♡ じゅうぶん、おぼえてまひゅっ♡♡ あぁあぁ゙あ゙っ♡♡♡」

 

先ほどまで子供っぽかった男が、突如として雄々しくなったような感覚だろうか。

 

「らめらめゆるしてぇっ♡ イクの長いんですっ♡ 終わってないのにっ♡ 増えてるのっ♡ イクのっ、いっぱい重なって、ぁぁぁぁぁっっっ♡♡♡」

「許さないぞ。自分の立場を忘れて、上から目線になってたメイドには、お仕置きだ!」

 

腰のグラインドに角度を付けて、執拗に膣道の弱点を擦り、子宮を奥へと押し込んでいく。

結合部からの衝撃と、ユスティネ自身の絶頂痙攣で、彼女の爆乳がばるんばるんと音を立てそうなほど揺れ動いていた。

 

「あ゙ぁ゙あ゙ぁ゙っ♡ こんなっ♡ しゅごいっ♡ さっきまで、甘えてたのにっ♡ あっという間にっ♡ 男の人にっ♡ ずるいでしゅっ♡ こんなの溶けちゃうっ♡ 体も頭もとろとろになっちゃいましゅっ♡」

 

かつてない恍惚状態に陥っている。

性癖を満たされた上での激しいラストスパートは、妖女にこれほどの悦楽を与えるものなのか。

 

「気持ちいいだろうっ。俺の女でいれば、いくらでもこうしてやるっ! だから、どこにも行くなっ! ずっとずっと、俺のものでいるんだ!」

 

ごちゅん! と、一際に強く怒張を押し込む。

ユスティネの膣が痙攣し、彼女の瞳が瞼の裏に隠れそうになる。

 

「んおっ♡ ぉぉぉっっっ♡ いま、しゅっ♡ お側にっ♡ ずっとぉ♡ いさせてくださいっ♡ ずっとずっとぉ♡ イカせてくだしゃいっ♡」

 

泣き笑うような顔で訴えるユスティネ。

 

「なら、俺の奴隷になれ! そうすれば、中出ししてやる!」

「はひっ♡ なりましゅっ♡ なりたいっ♡ ニナみたいにっ♡ あなたの雌奴隷になりゅっ♡ シーアみたいにぃ♡ ママになりたいでしゅっ♡」

 

射精を目掛けて腰を加速させながら命じると、ユスティネの口から心の奥底が吐き出された。

連続絶頂の只中ゆえに吐露された、彼女の願い。

ユスティネはシーアと違って婚約者ではなく、ニナと違って正式に奴隷でもない、下宿人だった。

あるいはそのことに、彼女は不満や劣等感を抱いていたのかもしれない。

そんな愚かしいコンプレックスを塗りつぶすように――下腹部の熱を解き放つ。

 

「っぐ!」

「お゙っ♡ んぉぉぉっ♡ あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ っ っ ♡ でてりゅぅぅぅっ♡ しきゅーっ♡ あちゅいのっ♡ いっぱいにされてましゅぅぅぅっ♡」

 

妙な、そして深い達成感があった。

自分はいま、ユスティネのより深い部分に、自分を刻みつけたのだと。

肉体のみならず、彼女自身も知らなかった性癖を通じて精神までも、自分に耽溺させたのだ。

歳不相応に豊満な肢体を持つこの少女を、自分だけの雌奴隷にする資格を勝ち取ったのだ。

 

「しゅきっ♡ だいしゅきっ♡ 藤次様、らいしゅきでしゅ♡」

 

焦点の合わない瞳で、うわごとのように訴えながら、しがみついてくる。

膣内射精された精液を一滴も逃すまいとするように、指は背中に爪を立て、足は腰をホールドして離さない。

彼女の愛情や依存心が、これまでの何倍にも増幅されたことが実感できた。

 

「はひゅっ♡ なりゅ♡ どれい♡ とうじさまぁ♡」

 

やがて意識が保てなくなったのか、絡み付いていた手足が解かれ、ベッドの上で脱力する。

涙や涎で汚れた顔を、軽くティッシュで拭いてやる。

するとその寝顔は、まるで恋の実った少女のように可憐だった。

 

「ふぅ……これで、一安心、かな?」

 

彼女に全てを忘れさせる――その目的は成功したようだ。

炎上のことだとか、藤次やクレアへの負い目だとか、シーアやニナへの些細な劣等感だとか、そういうものはもう塗りつぶせただろう。

 

「あ……藤次、様?」

 

ユスティネの体を清めてやり、自分も汗を拭った頃、彼女が目を覚ます。

意識が戻ると、先ほどまでの自分の醜態を思い出したのか、顔を赤くしていた。

そんなユスティネの、下ろされている金髪を軽く撫でつつ、隣り合って横になる。

 

「その……も、申し訳ありません。お気を遣わせて……」

 

藤次がセックスを通じて何をしようとしていたのか、ユスティネも気付いたようだ。

 

「いいんだ……それより」

 

このまま幸せに眠ってしまいたいが、実はまだ大事な用件が残っている。

 

「俺の奴隷になってくれるって、本当かい?」

「あ……っ」

 

先ほどの情事の中で出た言葉を再確認すると、ユスティネはハッとする。

 

「それは……その、あのときは……私はまだ、クレア奥様に雇われた身で……」

 

気まずそうに目を泳がせると、涙目になって撤回しようとしていた。

それが正しい。彼女の雇用主はクレアで、藤次の奴隷になると宣言したのは『気持ち』の問題だ。

しかし――

 

「実は、そのクレアさんから提案があったんだ」

「え?」

 

藤次の言葉に、ユスティネは目を丸くする。

ユスティネを迎えにクレアの家まで行ったとき、娘さんとユスティネが遊んでいる間に、交わした言葉があった。

 

『ユネさんをお譲りします――あの子、西条さんをお慕いしているみたいですから』

 

クレアはユスティネのことをよく見ていた。

シーアやニナと共に同居している中、シーアは藤次の婚約者となり、ニナは藤次の奴隷となった。

そんな中でユスティネだけが他に雇い主を持ち、居候しているだけの立場であることを気に病んでいると。

 

『それは……』

『誤解なさらず。決して厄介払いしたいわけではありません。

 我が家での仕事は、西条さんのところから出向していただく形で。

 賃金も私から西条さんにお支払いした後、ユネさんに届けていただければ』

 

つまり、雇い主こそ藤次になるが、仕事は変わらずクレアの家での家事と子守りだ。

ユスティネに懐いているアイナも、寂しい思いをしなくて済む。

何より――ユスティネは、好きな男性と正式な関係を結ぶことができる。

 

「そ、そんな話が……」

 

知らぬ間に進んでいた話を聞いて、ユスティネは目を丸くしていた。

 

「君の人間界での生活に、責任を持ちたいんだ。シーアやニナと同じように」

 

ユスティネを抱き寄せ、語り掛ける。

 

「だからもう一度言うぞ――ユネ、俺の奴隷になってくれ」

 

まるでプロポーズのように、ある意味でそれに相当することを承知で、ユスティネに訴える。

その形態が結婚だろうと主従だろうと、君の人生をくれと伝えるなら、意味は同じことだろう。

 

「あ……はぅ……ぁ……♡」

 

ユスティネは衝撃を覚えたように目を見開くと、その目を潤ませて頬を朱に染めた。

やがて、抱き寄せる藤次の腕に身を預けるように、胸板に顔を埋めて――

 

「はい――()()()♡」

 

こくりと頷きながら、藤次のことをそう呼ぶのだった。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

かなり投稿が送れてしまい、まことに申し訳ございません。
二話同時の執筆なんてするもんじゃないね。
次話の幕間も同日投稿しております。

※誤字報告いただきました方、度々ありがとうございます。


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幕間 とある人間女性の婚活4(非エロ)

 

 

 

彼女の旧姓は、西条という。

西条藤次の、元妻だ。

 

 

彼女は考えた。

 

――自分が結婚するためには、なにをすればいいだろう。

 

正攻法の婚活パーティは望み薄だった。マッチングアプリも芳しくない。

どちらも、男が人間女性に見向きもせず、妖女を選ぶだけの場所だった。

 

男性と妖女たちによる一夫多妻家庭に加わるという線も考えた。

 

しかし、そちらもあまり成功が見込めない。

その手の婚姻は人間同士の縁によって結ばれることが多く、知人でも友人でもない女性を新たな妻にという募集は、ネット上ではあまり見かけない。

 

職場や友人など、自分の持つ縁の中に、再婚の助けとなるものはなかった。

 

であれば、どうするか――

 

かくなる上は、現実を見る他にないのだろう。

 

これまで目を逸らしてきたことを直視し、プライドが邪魔をして避けてきた選択をするべきときがやってきたのだ。

 

そう、つまり――

 

「決めた、整形しよう!」

 

もっと美人になることだった。

 

 

 

 

妖魔界の魔法が技術として輸入されたことで、整形もまた進化している。

妖魔界だと、外科的に顔を変える技術はあまり発達していない。

しかし怪我を治す魔法などは発達しており、包帯を巻く期間を大幅短縮することはできる。

 

思えば自分も老けてしまった。

いままで目を背けてきたが、そろそろ鏡に正直になるべきだ。

肌の張りと艶は衰え、皺とクマが目立ち、髪も質は愚か量まで不安になってきた。

それでも、元の骨格は美人だからと化粧で覆い、婚活も有利に進められると思ってきた。

 

それが間違いだったのだ。

人間女性ってなんでお化粧にあんな時間かかるんですか? と素で首を傾げる妖女たちに並ぶためには、より気合いを入れた『お洒落』をしなければならない。

 

顔面偏差値が同じ水準になれば――自分だってまだ行ける!

 

元は既婚者だったのだから、未婚の小娘たちよりも、ずっと男の心を捉える雰囲気や話術が養われているはずだ!

 

そうと決まればと、数日かけて選出した美容外科に足を運ぶのだった。

 

「これが、私……っ!?」

 

効果は劇的だった。

流石に親が見間違えるほど手は加えていない。

目鼻を微調整して、肌をアップデートするくらいのもの。

手を加えて治癒魔法を掛けるだけの日帰り手術で、ここまで見違えるとは……

 

元がいいので楽でした――なんて担当医に言われるだけのことはある!

 

元夫が見たら、離婚したことを後悔するに違いない!

 

(でも、まだ終わりじゃない)

 

次は服や化粧品だ。

女の人生が掛かった勝負なのだ、もう金に糸目を付けている場合じゃない。

離婚後の詐欺被害や諸経費によって貯金も乏しくなってきたが、いい男を捕まえられればそれも好転する。

損して得を取る、これはいたってクレバーな、自分自身への投資である!

 

(顔も若返ったんだし、服も少し若者っぽくした方がいいかな?)

 

これから自分は婚活戦場で妖女というチートたちと競う。

三十代でも十代半ばに、四十代でも二十代に見えるような妖女と張り合うのだ。年相応の格好をしていてはオバサンっぽく見えてしまう。

 

これまで婚活の首尾が悪かったのも、そこを見落としていたからだ。

いまは夫が居ないからと、財布の紐を固くしていたのが全ての敗因だ。

整形をして、コーデも見直せば、あの妖女どもと対等の勝負ができるはずなのだ。

 

(次は靴を……)

 

買い物袋を腕に提げながら、休日の繁華街を歩く。

地元では品揃えが悪いので、少し遠出して都心に出てきた。

なにせ最近のアパレル業は妖女向けばかりなので、人間女性を優先した店舗を探すには、多くの店が集まるところに来なくてはならない。

男性と妖女によるカップルや家族を四方八方に見かけるのは不愉快だが、いまに見ていろ、見下したような態度をとっていられるのもいまのうちだ!

 

「……ん?」

 

ふと、足を止めて振り返る。

 

――見覚えのある男性だった。

 

道路を挟んで向こう側の歩道だ。

距離はあるが、人違いではない。

嫌になるほど一緒に暮らしていた男の顔だ、見間違えようがなかった。

 

「…………」

 

目を剥き、息を呑む。

 

その男は、女性と一緒に、繁華街を歩いていた。

 

女性は妖女、それも複数。

遠目に見ても見目麗しく、瑞々しい色香を感じる、妖女たちだ。

 

つまり……『あの男』の妻ではない。

彼の妻は、人間女性だったはずだから。

 

(嘘……でしょ……っ)

 

愕然とした。

その男が、複数の妖女と仲睦まじく歩いている光景に、血の気が引く。

若年カップルのように手を繋ぎ、楽しそうに笑い合うその姿、お友達では済まされない。

 

他人のそら似であることを願って再確認しても、結果は同じ。

彼は、間違いなく――

 

 

――妖女と浮気をしている、父だった。

 

 

 

 

「すまなかった」

 

家に帰った後、緊急で開かれた家族会議で、父は頭を下げた。

自分は対面席におり、隣には母が無言で座っている。

 

――あの後は、なかなかの修羅場だった。

 

町で父を目撃した後は、ちょっとした探偵の如く尾行した。

父と並ぶ妖女がただならぬ仲であることを確信するのに、さほど時間はいらなかった。

 

その途中で父が娘の尾行に気付き、気付かれた以上は追及し、唖然とする妖女を帰らせた父が、激昂する娘の追及を受け、「家で話そう」となった運びである。

 

「お母さん、知ってたの?」

「ええ、あんたが離婚するちょっと前にね」

 

母は憮然とした顔で言う。

父の浮気を伝えても、さほど驚いていなかったのは、そういうわけか。

 

「実はもう、離婚の手続きも済んでいるんだ」

 

父から説明されたのは、娘の自分が知らないうちに進んでいた、両親の離婚調停だった。

 

原因は父の浮気、相手は職場の縁で知り合った妖女、しかも複数だという。

夫にそんな甲斐性があるとは思ってなかった母は、最初こそ随分と驚き、激しく糾弾したらしい。それについて、父は平謝りだったそうだ。

しかし父も、「相手との関係を絶て」という母の要求には頷かなかった。

 

「相手の女性には……もう子供がいる」

 

人生で父親から聞くとは思わなかった台詞に、眩暈がした。

てっきりパパ活の類かと思ったら、かなり『真剣な交際』だったようだ。

 

いい歳して――と思ったが、妖女が溢れるこの現代、珍しい出来事ではない。

妖女が既婚男性に手を付けて、男性が妖女に乗り換えるという――逆NTR不倫だ。

 

「こうなった以上、子供のために頑張らなきゃいけない。

 お前も独り立ちしていたし、財産を分けて家も譲って、出て行くつもりだったんだが」

 

相手の子供が幾つか知らないが、父親の存在は必要だろう。

対して本妻との子である自分はもう大人、いまの妻と離婚して浮気相手とその子供の元へ行くという父の選択は、理解が及ばないでもない。

ただ、娘の自分がなぜ、いまのいままで知らされていなかったのかと言えば――

 

「伝えようとした矢先に、お前の方から『離婚する』と言われてな」

 

親子だからといって、こんなところまで似る必要はなかっただろうに。

両親の離婚が進んでいたのと同じタイミングで、自分も元夫と離婚していた。

そしてタッチの差で、自分の方が先に報告した。

 

「そんなときに親が離婚というのもあれだから、お前の身が落ち着くまで黙ってたんだ」

 

もし自分が離婚していなければ、事の次第が伝えて、父は家を出ていたことだろう。

しかし娘は離婚した。

そんな状態で家を出るのは道義に反する。

せめて娘が立ち直るまではと、母や浮気相手と話し合い、家に残った。

自分が実家に帰ってからの両親は、ずっと仮面夫婦だったのだ。

 

だが、娘である自分は、なかなか自立しない。

仕事はパート、再婚活動は思わしくなく、離婚の件を切り出せない。

そうこうしているうちに、不運にも今日の『目撃』となった運びである。

 

「どうする、の……?」

 

何にせよこうして発覚した以上、今後どうするのかと問うと、父はあまり動揺した様子もなく答える。

 

「手続きは済んでる。家も母さんに譲る。慰謝料も母さんの口座に一括で支払い済みだ。お前については……養育費、という歳じゃないが、しばらくはお金を振り込む」

 

金銭的なことを聞いて安心している自分がいた。

そんな自分を嫌う思いが、心の片隅に過ぎった。

――過ぎるだけだった。

 

そこから先は、父に対する罵声の連続だった。

感情が爆発するままに、あらん限りの罵倒を父に叩き付けた。

元夫と離婚したとき、ストレスがピークに達したときもこうだったな……と思い出す。

 

なんならその元夫に対する憎悪や、男性というものに対する不満の数々も、無関係である父にぶつけた。

 

父は最後までそれを聞いていたが――「そもそもなぜ浮気なんて」という問いには、逆にこちらが気圧されるくらい、冷え切った声と表情で答えてくれた。

 

「うんざりなんだ……何年も何十年も働き続けてるのに、稼ぎは全て妻の懐で小遣い制。趣味にもろくに使えず、家に帰れば家事をさせられATM扱い。男としても、親としても蔑ろにされる。それでもようやく送り出したと思った娘は、すぐに離婚して帰ってきて、ろくに自立しない」

 

冷や汗が出た。

父の中の積年の不満が、静かに噴火して溶岩を垂れ流すようだった。

 

「知ってるか? お前が生まれる前だけどな……母さんは浮気したことがあるんだ」

「っ!?」

 

唖然として母に目を向けると、母は気まずそうに目を逸らしていた。

浮気されたにしては父を責めていないと思ったら、そういう負い目があったのか。

 

「泣いて謝るから、無かったことにしたが……

 正直、お前が離婚すると聞いて、藤次くんに事の次第を聞いたとき思ったよ……」

 

自分の離婚の際、元夫は父と話していたらしい。

元夫の性格からして、ありのまま全てを語ったことだろう。

それを聞いた父は、こう思ったという……

 

「俺もそうしておけばよかったかな――って」

 

父を見て、ここまで背筋が凍ったのは、生まれて初めてだった。

 

「こうして離婚の話をして、お前の反応を見ていて、確信した。

 家やお金を差し出すと言った途端、露骨に安心していたな? あとは罵倒だけ。

 お前にとって、もう会えなくなる父さんは……()()()()だったんだな……」

 

何も言い返せなかった。

言葉に込められた感情の重みが違った。

人生の後悔と、母や娘への失望が、凝縮されているかのようだった。

 

息を呑むと同時に、確信する。

てっきり父は、若くて美人で好色な妖女に迫られたから、間違いを犯したのだと思った。

だが違う。父はきっと、それだけを理由に浮気をしたのではない。

 

浮気をした方も辛いんだという顰蹙(ひんしゅく)ものの常套句が、男にも許されるとしよう。

だとすれば自分と母は、父に愛想を尽かされるほどのことを、長い年月を掛けて積み立ててきたのだろうか。

妻子よりも、浮気相手とその子供の方が、生きる理由になるほどに。

 

はっきり言えるのは――

 

「明日にでも、父さんは家を出て行くよ。

 後は母さんと二人で……頑張ってな」

 

もはや離婚の撤回は、不可能であろうということだった。

 

 

 

 

「はぁ……」

 

部屋に戻り、深い溜息を吐く。

まさか自分が離婚した矢先に、両親の熟年離婚とは……

 

(まあ、父さんはもちろん、浮気相手の妖女からも慰謝料があるみたいだし……)

 

家も勝ち取り、財産分与もある。

浮気性の父親を追い出して金まで得たと考えれば、損な話でもない――

 

「っ!」

 

いや、違う。

よく考えれば、大黒柱である父を失ったのだ。

財産分与といっても、元からあった家の財産が半分になったということ。

慰謝料なんて一時の儲けにしかならない。今後は自分と母だけで生活することになる。

 

専業主婦だけの人生で歳を食った母に、大した仕事はできないだろう。

自分もまたパート勤務だ。稼げる金額は母と大差ない。

 

ざっと計算するだけでも、豊かとは言えない生活が訪れる。

 

(嫌っ、そんなの絶対に嫌っ!)

 

父がいた状態でさえ、離婚後に戻ってきたこの家での暮らしを質素に感じていたのだ。

それが更に乏しくなったらどうなる?

最新の服も買えない、課金もできない、豪邸にも高級マンションにも住めない。

それらの生活を取り戻すための婚活にも、金と時間を掛けられない。

今後は、老いていく母と薄給労働をしながら、自分も老けていくだけ――

 

「っっっ」

 

身の毛がよだつ。

慰謝料という甘美な言葉で安心していた自分が愚かだった。

人生が、また一手、詰みに近付いている――離婚してから静かに感じてきたその足音が、急に明瞭になって心を打つ。

 

(どうしよう……そうだ、ネットで……なにか、いい情報……)

 

縋りつくようにSNSを開く。

街で父の浮気を発見してから、日が沈んで夜になるまでの長い時間、触れていなかった。

 

とにかくこの出来事を広く伝えて、感情を吐き出したい。

文面は、そうだ――父親が妖女と不倫して熟年離婚することになった。自分が悪いくせに態度は終始横柄で、しまいには殴られそうになった――そんなところだろう。

浮気相手の妖女についても盛っておこう。母のことをババアと嘲ったとか、毅然と文句を言った自分に水をぶっかけたとか……きっと大反響だ!

 

もっと他に使うべきことのある頭をフル回転させながら、SNSを開く。

 

「え? ……なに、この通知の数」

 

ホームページを見ると、見慣れない量の通知が蓄積されていた。

何かの投稿が跳ねたのだろうか? 胸に期待感が広がる。

そうだ、自分にはこれだけ多くの賛同者がいるんだ。

浮気性のクソオヤジに報いを受けさせる方法くらい、集合知で得られる。

これだけフォロワーがいるなら、そろそろ情報商材に手を付けてもいいかもしれない。

 

(そうだ。私にはこれがある!)

 

父親が大黒柱? 古い古い。

女でも、大手企業の社員でなくても、こういうセンスある方法で稼ぐことができるのだ。

 

元夫も、父も、こんな才女を手放したことを遠からず後悔することだろう!

 

(DM? 何かの案件とか……っ)

 

ほら早速、自分の知名度を買った誰かが、話を持ちかけてきた。

長年に渡り育ててきたアカウントが、ついに花開く時が来たのだ――

 

『このメールはロイヤーAIにより作成されています。

 あなたのアカウントから、当AIの保護するアカウントに対して、違法性のある行為が確認されました。この通知は法的な証拠として記録されます。

 詳細については――』

 

見慣れない内容に、しばらく理解が追いつかなかった。

 

(ああ、詐欺ね。無視無視)

 

脅すような文言で動揺を誘って、金でもだまし取ろうというのだろう。

ロイヤーだかワイヤーだか知らないが、AIに作成されているという時点でろくなものではあるまい。人気者になるとこういうものが増えるから困る。

 

気を取り直して、別の通知を確認する。

目についたのは、自分の投稿が引用されたことの通知だった。

 

『反妖アカさん。“性病デマ”“情事盗撮”“偽計業務妨害”のハットトリック』

 

何者かが、自分の投稿をそのように紹介していた。

 

「…………は?」

 

ハットトリック? デマ? 盗撮? 業務妨害?

意味が分からず詳細を確認すると、取り上げられているのは以下の三つ。

 

『田舎って腐ってる!

 ちょっと買い物で地元スーパーに行っただけで、子連れがマウントとってくる。

 どう見ても十代で妊娠させられた妖女もいれば、モテなかった人女も子供産まされてるし、夜ごと女性がレイプされる声が町中に響いてるのに誰も助けない! 妖女におだてられたザコオスが調子に乗って治安を悪化させて病気ばら撒いてる危険地帯!』

 

『勤務先でもパートの女性が上司の男に呼ばれて「残業」させられてる。

 とうとう私にもさせようとしてきたから無言でスマホ出して見せたけど、舌打ちしながら手を振って「帰れ」だってさ。大手スーパーの総菜店ですらこうなんだから、商品にも何が付着してるか分かったもんじゃない』

 

確かに、自分の投稿だ。

文章が二つ、最後の一つは動画投稿であり、近所のマンションを撮影したもの。

喘ぎ声がうるさくて、いつか警察に提出するかもと撮影した動画だ。

もちろん情交する男女を映したりはしておらず、夜にマンションの外観を撮影して、漏れ聞こえてくる喘ぎ声を拾っているだけのものだが……

 

「……っ、ヤバ」

 

血の気が引いた。

投稿の内容を再確認すると、流石に拙いということに、いまさら気付く。

 

というか、自分はいつの間にこんな過激な投稿をしたのだろう?

ああ、あのときだ。元同級生とスーパーで遭遇して、幸せそうな子連れ姿を見せつけられた後、激情を抑えきれず衝動的に書き殴ったものだ。

フォロワーからの高評価が結構集まったので、削除することもしなかった。

 

それがいま――取沙汰(とりざた)されている。

 

自分と同じ思想を持つ著名アカウントなら歓迎だが、引用時のコメントからして逆だ。

 

妖女や妖魔界に攻撃的な界隈を『反妖』と呼ぶ。

その『反妖』に対して否定的な、妖女や人間男性を中心とする勢力だ。

 

つまるところ――厄介な連中に目を付けられたのだ。

 

『人が映っていなくても喘ぎ声を捉えて部屋の位置を特定可能なら、個人を特定しうるに充分なので、これは盗撮』

『他投稿を見ると性病デマひどいな。なんだよ「顔にぶつぶつができた児童」って』

『早くも過去投稿に訂正がぶらさがってるな』

 

引用投稿の返信欄には、大量のコメントが並んでいた。

その内容は上記の通り、自分の公道の違法性や不徳を指摘するものだ。

 

慌てて確認すると、自分のホームページはもっとひどい。

 

 

『地元に戻ったら、元同級生の男が病院に隔離されてるって聞いて驚いた。

|妖女と結婚したとは聞いてたけど、なんか性病をうつされたみたい。

|旦那を媒介にサブ妻たちも全員感染したんじゃないかな?

|家には誰も寄りつかないし、子供とか絶対イジメられるよ。

|無責任交尾の危うさがよく分かる』

『世界保健機構の発表している、妖女から人間に感染しうる妖魔界の性病に、罹患者の隔離を必要とするものはありません。

 また妖女は性病に高い免疫力を持っており、人間界の性病に対しても強い抵抗力が認められているので、エイズなど人間界の性病の媒介となった可能性も低く見積もれます。

 こうした認識の不足により健常者を性病患者として扱うことは、深刻な人権侵害として厳しく糾弾される向きがあるため注意が必要です』

 

 

有志の知識人による、デマ防止目的の訂正記事が、自分の投稿に付記されている。

つまり、『この人は大嘘つきです』という焼き印だった。

 

「ちょっと、なんでよっ」

 

動揺と動悸に襲われながら、他も確認していく。

 

『いまだに性病デマで妖女や既婚者を攻撃する人が居て驚きました。

 ご職業によっては退職を迫られますよ?』

『婚活競走で妖女に追い抜かれてイライラしちゃったのかな?』

『離婚を報告してから反妖女思想が急速に尖ってきてるの、色々と察する』

 

好き勝手な言葉が並んでいる。

自分のアカウントが下品な落書き帳にされている気分だった。

コメントしている奴に一人ずつ物申してやりたいが、それは後回しだ。

 

『木城クレアの宣戦布告から逃げ損ねたな。

 ロイヤーAI使うって宣言されてから、騒いでた奴らの大半が削除逃亡したけど、変な意地張ったり甘く見たりした奴らが、いまこうやって狩られてる』

 

木城クレア?

最近、奴隷売買に加担していた説教おばさんのことだろうか。

それにロイヤーAI、つい先ほど目にした単語だ。

 

慌てて調べる。

 

ロイヤーとは弁護士、または法律家。

膨大で煩雑な法の知識を詰め込み、法に保証された権利の行使を助けるものだそうだ。

魔力式AIの一種であり、多くはSNS上でのトラブルを防ぐために使われる。

 

持ち主のアカウントに対する声を精査して違法性のあるものを記録したり、その発信者に警告文を自動で送ったり、いざ裁判となればプロの弁護士にその記録を提出したりして、内容を提供会社が保証するそうだ。

 

先ほど届いていた『このメールはロイヤーAIにより作成されています』とは、自分が木城クレアの奴隷炎上に関してしたコメントへの警告だった。

 

(それならそうと分かるように書いておきなさいよ!)

 

木城クレアは奴隷炎上の規模が大きくなってきたのを見て、『ロイヤーAIを用いて対処する』と発表した。

一昔前で言うところの『法的措置を検討する』みたいなものだが、実行力が違う。

 

魔力式AIの普及により、煩雑だった法の手続きも簡易化されているという。

結果、裁判沙汰も旧時代と比べて金と時間が掛からなくなっている。

最近はオンライン上での揉め事程度なら、同じオンライン上での簡易裁判でケリが付けられるよう法改正もされているそうだ。

 

この程度のことで訴えられるわけない、相手にとって時間と金が割に合わない

そう高をくくっていたらガチの文書が届いて青ざめた、なんて事例が多発している。

言い方を変えれば――以前よりも悪行が見過ごされなくなったのだ。

 

(警告文が届いた時点でコメントは記録されてるから削除しても意味がない?

 そこから正式に訴えられるかどうかは相手次第? ちょっと、嘘でしょ……)

 

調べた結果、自分は不利な状態にあると分かった。

自分の生殺与奪が、他の誰かに握られている気分だ。

 

(そんな、こんなので? このくらい、他の人だって言ってるでしょ!?)

 

確かに自分は、木城クレアの炎上に乗じた。

でも、別に大したことは言っていない。

奴隷を購入した時点で戦争犯罪者だとか、離婚した夫も精神DVを受けていたんだろうとか、娘さんが虐待されてないか心配だとか――普通のことしか言ってない!

 

(ロイヤーAIを使うって宣言されてすぐ削除してれば……ああもう、今日は忙しかったから! うちの毒親が離婚なんてしなければ!)

 

整形手術に時間を取られていたせいでもあるが、どうやら自分は逃げ遅れたらしい。

多くの批判者が削除逃亡する中、SNSを放置していた自分はそうしなかった。

結果的に、自分以外の批判者は論争の場から消え失せ、残った自分が悪目立ちしている。

そんな自分に、奴隷炎上を聞きつけた木城クレアの支持者が目を付けたのだ。

 

『どんな奴かと思って過去投稿を精査してみたら――

 1:若い頃から田舎コンプと美人マウントあり

 2:結婚後は自称ミドルセレブ、しかし不倫と浪費で離婚される

 3:再婚のため婚活するも惨敗、妖女・既婚へのヘイトが目立ち始める

 4:木城クレアの騒動に便乗、暴言を連発して炎上する ← いまここ』

 

どこぞの暇人が、自分のアカウントを分析し始めていた。

最近はプロファイリングAIなるものまであり、誰かのアカウントをAIに精査させて、主義思想や発言傾向を解析させると聞く。

 

(どうすれば……)

 

ここまで派手に炎上した経験はない。

過去にも頼んでない説教を垂れてくる者はいたが、今回は人数と規模が違う。

まるで数百人の前に立たされ、指さして糾弾を受けている気分だ。

 

『あまりに典型的な底辺婚活おばさんで釣りアカを疑ったけど、

 20年前の学生時代からあるアカウントだからガチなんだな。

 その歳でこのメンタルじゃ、誰も結婚したがらんわな』

「っ!!」

 

ぷつん――と、何かが切れた。

クレバーな立ち回りを模索していた思考が、怒りに塗りつぶされる。

 

気がつけば、指がコメントを入力していた。

 

『ちょっと目を離した隙にキモいのが大量発生してて笑えるんですけどw

 私、なんか負け組さんのコンプレックス刺激しちゃいましたか?』

 

後になって振り返れば、これが試合開始のゴングだった。

この段階では、彼ら彼女らにもまだ慈悲があったのだ。

問題発言を撤回するなり削除するなりして息を殺せば、膨大なネットの森に埋もれる木の一本として忘れ去られ、またいつも通りのSNSライフが戻ってきただろう。

 

――得てして炎上とは、ボヤで済むものに自ら油を撒くことで起きるものである。

 

 

 

 

『誰が何と言おうと奴隷売買は悪で、購入者も同罪。

 法的に問題ないとか言い訳して買う奴がいるから、

 妖魔界の少女も奴隷として売られる。これは絶対に変わらない事実』

 

最初は奴隷問題から入ることにした。

奴隷は広く悪と認知されている、これを武器にしようという安易な発想は――

 

『じゃあ、他ならぬ奴隷だった私が教えてあげるよ。

 奴隷になった原因はシンプルに戦争だし、奴隷は出稼ぎに昇格できて喜んでるよ。

 出稼ぎとして雇われなかったら奴隷に逆戻りなのに、

 あんたらは「雇うのは悪だ!」って騒ぎ立てる。

 それこそ、出稼ぎを奴隷に降格させる運動で、悪の助けにしかなってないよね?』

 

自称するところ元奴隷の妖女が登場したことで、出鼻をくじかれた。

嘘に決まってる! と、確信した。

出稼ぎ労働者がこんな頭の良さそうなことを言うはずがないからだ!

 

『奴隷がスマホでSNSやってるわけないでしょw

 バレバレの嘘ついて恥ずかしいねぇぇぇ』

『はいこれ、故郷でもらった奴隷解放証書。

 妖魔界語だけど、画像からでも翻訳できるよね。

 あと、言葉の節々に奴隷を見下してることが見て取れるから気を付けなよ』

 

妖魔界の文字で記された書類を突き付けられて、冷や汗が噴き出した。

翻訳しなくても分かる。こうして公表するのだから、相応の内容なのだろう。

名前など素性を特定しうる部分は見切れるように撮っているのもリアルだ。

 

【――ブロックしました――】

 

他の選択が思いつかなかった。

負けたわけじゃない。ただ、そう、こいつは扱いが面倒そうだからだ!

最低限、人として話が通じる相手でないと、会話が成立しなくて困る!

 

『元奴隷の出稼ぎを雇うなという運動は奴隷を増やす。

 この矛盾を指摘すると決まって発狂するか話題をズラすの、なんなんだろうね』

『奴隷を助けたいのではなく、自分たちの底辺職を出稼ぎに奪われたくないから。

 そういう奴らを扇動して付け火商売したい輩が、いま続々と炙り出されてる。

 もちろん、煽られてる兵隊たちの生活はなにもマシにならない』

 

何か発信すると、それを引用して外野が盛り上がる。

不愉快だが……奴隷問題に絡めた発言はもう止めておこう。

 

『今日、手術を終えて、やっと家に帰ってきたところなのに。

 もう病みそう。なんなのこの国』

『病弱キャラ作ろうとしてるとこ悪いけど、

 昨日「明日ついに整形してきます☆」って投稿してるの忘れてない?』

 

顔が耳まで赤くなった。

 

『整形とは別の手術です。休日に一気に片付けたかったんです』

『「メスを入れるなんて初めてで緊張する」って台詞はどこ行ったの?』

『整形の後に本命の手術をしただけですが何か?』

『治癒魔術療法を行う手術をした場合、同日に外科手術を行うことは通常ありません。

 術後も作用し続けている治癒魔術が、施術の妨げになるためです』

 

【――ブロックしました――】

 

なんなんだ……なんなんだこいつらは!

人がちょっとしたミスをしただけで、頼んでもいない知識、聞いてもいない法律、求めていない説教! ハラスメントだ!

 

『情事盗撮の動画、撮影場所はここだな。公開3D地図と一致する』

『ド田舎じゃん。職場の「総菜店の入ってる大手スーパー」なんて一店舗しかないぞ』

『この町、発信者が学生だった頃は小中高が一校ずつしかないので母校も自動特定だな』

 

こういうとき、ネットの住人たちは何かの兵法のような動きを見せる。

自分がレスバトルしている間に、外野では特定が進んでいた。

前線が敵を引きつけている間に別働隊が動くかのようだ。

 

『性病デマとかありますけど、嘘なんか吐いてませんから。

 病名までは分かりませんが、たぶんHNTIだと思います』

『やべぇ、こいつ逸材だwww』

『HNTIってネットミームですよ?』

『その名前が出たら何か面白い症状を考案するっていう大喜利の一種だよ。

 反妖界隈だと「ナニが腐る」とか「顔面崩壊する」とか、カップルざまぁ妄想にばかり使われてるみたいだけど、もしかしてそれしか見聞きしてなかった?』

 

手元のマウスを壁に投げつけても、状況は好転しなかった。

 

『なんだか特定した気になってる人がいますけど、私その町にすら住んでないです。

 住んでる人にご迷惑が掛かっても、あなたの責任ですからね。

 一応、夫の会社の弁護士に相談しておきます』

『夫いねぇじゃん』

『離婚して婚活してんじゃねぇのかよ』

『別れた妻の揉め事を会社の顧問弁護士に対処させるとか査問だろ』

『自撮りの背景が公開地図と一致するんですが……』

 

浅知恵は次々と看破された。

そういう奴を百人は斬ってきたとでも言うように、彼らは扱いを心得ていた。

ある者が煽って失言を引き出したかと思えば、別の誰かが味方を装って激励の言葉を贈り撤退させず、過去の発言を掘り返して、フォロー関係を洗う。

 

『同じ婚活サイトに登録してるけど、この人じゃない?』

『婚活サイトのプロフからSNSも見られるのか』

『登録時にSNSと提携するんだよ。最近は相手の内面を知るためSNSも閲覧できる』

『この夫叩きアカをプロフに公開してたのかよ……』

『公開というか、規約を読み飛ばして、閲覧可能だってこと気付いてなかったんじゃ?』

『なんでマッチングしないんだろぅ――って思ってたんだろうなぁ』

『そうと知らず「地雷ばっかり!」ってサイト叩いてるの、もう哀れで笑えない』

 

自分の半生が、性格が、思想が、自覚の及ばない癖までもが、丸裸だ。

学生時代から現在に至るまでの全ての発言が――

自分の不徳が、無知が、愚行が、深層心理までもが、片っ端から暴かれていく。

裸に剥かれて弄ばれるような屈辱の時間は、真夜中まで続いた。

 

 

 

 

数日後――

 

「…………」

 

皮肉にも、フォロワーは急上昇していた。

反面、相互フォロワーは急減しているが。

 

(なんで……こんなことに……)

 

よせばいいのにネットでエゴサーチを繰り返す。

仕事が早いもので、一連の出来事をまとめたゴシップ動画まで投稿されている始末だ。

 

(父さんに、相談……ああ、もう居ないんだっけ……)

 

母と離婚した父は、娘の炎上など知りもせず、家を出て行った。

いまごろは浮気相手の妖女たちに迎えられ、共同で借りたファミリー向けマンションで、愛欲に爛れたセカンドライフを送っているのだろう。

それを思うと不幸な事故を願うばかりだが、その余裕さえなかった。

 

(パート……クビかぁ……)

 

案の定というか、職場には正義感に溢れるネット民により苦情が寄せられていた。

貴社の社員が上司による女性社員への関係強要を告発しているが事実なのか――

総菜店の商品に異物が付着している可能性に言及しているが衛生管理は――と。

 

「他の人たちは心当たりが無いというんだが、君は?」

 

とんでもない疑惑を掛けられた上司は、怒り心頭で聞き取り調査をした。

体調不良を理由に休んでいた自分は、電話で問い質されたときはシラを切ろうとしたが、家がほぼ特定されていたことが決め手となり、謝り倒す羽目になってしまった。

会社の方で対応を検討した結果として退職を強く勧められ、頷く他になかった。

 

しかし地域住民が頼りなスーパーの醜聞は町を巡り、自分が退職したらしたで「告発者を辞めさせたのではないか」と問われているらしい。

 

「うちも潔白を証明したい。『刑事告訴も視野に入れる』と発表させてもらうからね」

 

刑事と言えば、盗撮に関しては本当に通報されたらしく、警察が家に来た。

寝耳に水だった母の狼狽は凄まじく、パトカーが停車したことで近所の注目も集まって、咄嗟に「成りすましだ」と言い訳してしまった。

だが、撮影されたマンションの住人から、撮影している姿を見たと証言があった。

 

「あんた、声が聞こえるたびに窓を開けて聞き耳立ててるでしょ!?

 気味悪いけど見逃してやってたのにっ、自分から耳をそばだてて何が騒音被害よ!!」

 

マンションから家に凸してきた妖女数人に、玄関先でそう糾弾されたときは、顔から火が出るような思いだった。

なお、その様子を近所の誰かが撮影――「いま話題の婚活反妖女、盗撮したマンションの住人に吊し上げられる」と題して投稿し、炎上の第二波を招いている。

 

「なんなのあれ!? 私なにか気に障ることした!?」

 

抗議は――友人からも来た。

友人というか、先日スーパーで偶然会った元同級生だ。

幸福な姿に妬心を掻き立てられ、一夫多妻に興味を抱くきっかけとなった彼女である。

 

炎上の火種となった投稿には、友人や元同級生という単語があった。

もちろんその場で思いついた作り話であり、特定の誰かを名指しする意図はないと説明はしたのだが――

 

「子供にまで被害が及ぶような大嘘ついて! そんなにバズりたければ裸踊りでもしてなさいよ! 二度とこっちに関わらないで! は? 他の同級生には言わないで? 自分で何とかしなさい!」

 

烈火の如く言い捨てられ、着信拒否の憂き目にあった。

連絡網さながら同級生に共有されているとすれば、同窓会に出る資格は無さそうだ。

 

「困るんですよねぇ、性感染症に関するデマは。

 いまの世の中、防疫にはとても厳しいんです。

 聞こえますか? いま役所は電話が鳴り止まないんです。

 役場の業務に支障をきたしているんですよ!? 町中の利用者が迷惑してるんです!」

 

役場の職員もご立腹だった。

名前も覚えられてしまっただろう。今後、丁寧な対応は期待できるのだろうか……

 

「先生のこと覚えてるか? そうか、よかった。なんで先生が来たか分かるか?」

 

特定された母校も同じ状況だったらしく、かつての恩師が家を訪ねてきたりもした。

話を聞いた元同級生の誰かから、タレコミがあったらしい。

平謝りを小中高と三回も繰り返す頃には、自分がなにをしているのかもよく分からなくなっていた。

 

「言いにくいんだけどね……社の規約で、SNSに虚偽の内容を載せがちな人は雇えないんだ。うん、君が反省してるのは分かったよ。でも規約だから……」

 

新しいパート先を探して面接を受けに行ったら、気まずそうにそう言われた。

田舎の世間は狭い。SNSのアカウントを明かしてもいないのに、身バレしていた。

 

「なんであんなことしたの!? あんたは学生の頃からいつもそう!!」

 

娘の不祥事で謝り続けていた母に泣いて説教されたのも、なかなか響いた。

夫と離婚して、専業主婦を廃業した矢先に、娘と同じく町に歓迎されなくなってしまい、勤め先を見つけるのも難航している。

いまこの家に居るのは、田舎で『札付き』になってしまった母と娘が二人だけ。

離婚時に得た財産と慰謝料を溶かしながら、ほとぼりが冷めるのをただ待っている。

 

(貯金、いつまで持つかな……)

 

生活するだけなら当分は問題ない。

でも、専業主婦しかしてこなかった母と自分に、今後どの程度の仕事ができるだろう。

 

なにより、いまこの町には、自分を偽計業務妨害で訴えられる人間がごまんといる。

偽計って罰金を払うんだろうか? 払うとしたら幾らなんだろうか? それは何件分か。

 

気が重い。胸焼けめいた不快感がせり上がる。

 

こういうとき、いつもならSNSに逃げ込んでいた。

しかし、いまは――

 

(投稿……するようなこと、思いつかない……)

 

あれからSNSには投稿していない。

なにを投稿しても再燃を招くだけだ。

 

夫叩き、妖女叩き、虚言――思えば自分がしてきた投稿はそういうものばかりだった。

 

それ以外の引き出しが……無い。

炎上する可能性が無くて、かつ人の興味を惹けるものが……思いつかない。

 

聞いた人の心が温まるようなエピソード――無い。

時事やニュースを叩く以外で語れる知識――無い。

人の心を掴むような絵や工芸を作る技術――無い。

 

何かを非難したり、誰かを攻撃したりする以外の方法が――びっくりするほど、無い。

 

(ああ、そっか……私って、何も無いんだ……)

 

自分はこんなにも、薄っぺらい人間だったのか。

 

先日の炎上でも、散々に精神解剖されていた。

若い頃は美人だけが取り柄、結婚後は夫だけが取り柄、離婚して若くなくなればどっちも失い、それを持っている人間に憎悪を向けて、いまに至る。

自分で振り返ってみても、自分の人生は、そう要約できるものだった。

 

元夫は、よくもまあ、こんな女と結婚していたものだ……

 

「…………」

 

そこでふと、彼を思い出す。

この世界で唯一、こんな自分と添い遂げたいと言ってくれた男。

何もかも上手く行かなくなったのは、彼と離婚してからだった。

 

なら――失ったものを取り戻す方法も、ひとつしかないのでは。

 

(フォロー……外されてない……)

 

先の炎上で数多くの相互フォロワーを失ったが、彼の名前はまだあった。

職業柄チェックする必要があるからと作られた視聴用アカウントだが、一応は妻のアカをフォローしていた。

一緒だったころは、アカウントを通じて言いにくい不満や要求をすることもあったから。

 

(まだ……見てくれてる?)

 

目に光が戻ってくるのを感じる。

離婚後、こちらはフォロー解除したが、あちらからはしていない。

普通なら、離婚した妻のアカウントなんてフォローしないものではないか?

なのにフォローしているのはなぜか……

 

「…………」

 

脳裏に仮説が浮かぶ。

 

――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

様子を注視して、機会を窺っているのではないだろうか。

そうすることで、言外にサインを出しているのではないだろうか。

 

――戻ってきてほしい、と。

 

(そうだ……きっとそうだ!)

 

ベッドから跳ね起きる。

男はいつまで経っても別れた女を忘れられないという。

海外ドラマなどでも、離婚した妻に執着する弱い男は、たくさん出てくる。

 

彼もそうなのではないか?

 

思えばそういう情けないところがあった。

元妻が言うんだから間違いない!

 

諸々のことで追い詰められていた精神が、そう結論付けた。

 

「はぁ……しょうがないなぁ」

 

満更でもなさそうな笑みで、そう呟く。

まるで手の掛かる年下の彼氏でも扱うかのように。

 

身支度をしながら、考える。

なにを? 決まっている。

 

自分がいないと駄目な男が、素直に戻ってきてくれと懇願できる方法を――だ。

 

それこそが――彼女に残された、最後の婚活だった。

 

 

 

 

「ん?」

「旦那様? どうなさいました?」

「いや、急に寒気が……」

 

その頃、元夫はと言えば、居間のソファーで寛いでいた。

隣には可愛らしい銀髪のメイドがおり、膨らんできたお腹を撫でている。

 

「まあ、それはいけません。上着を――」

「いや、大丈夫さ」

「もう、気を付けてくださいね?」

 

話を聞いた別のメイド――金髪で豊満な妖女が、背後から彼に身を寄せる。

 

「……ほら、こっちも」

 

逆隣からは黒髪のメイドが、少し無愛想ながら好意の滲む態度で、主人に身を寄せる。

 

「もう、二人とも?」

「だって、旦那様が体調を崩したら大変だもの」

「暑かったら、すぐ離れるから……」

 

銀髪メイドは軽く頬を膨らませ、金髪メイドは母性的に微笑み、黒髪メイドは照れ臭そうに言いながら離れない。

 

「大げさだな」

 

元夫は微笑みながら、三人のメイドに密着される心地よさを堪能する。

やがてどちらからともなく、互いの身体を愛撫しあうのだった――

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

懺悔することがあります。
ひとつは投稿まで日が開いたこと。
ひとつは、私の性根が腐っていたことです。
ネットの炎上を書くのなんでか楽しいよぅ……


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第六話(前編)

 

 

 

その後、木城クレアを中心とする炎上は、つつがなく鎮火していった。

 

芸能人として仕事の話を失うといった損害もなく、炎上で生じた批判者が、その倍の支持者を呼び集めるという結果に終わった。

いまでは、カウンター気味に炎上した幾つかのアカウントが、野次馬たちに『蜜の味』を提供している。

一連の騒動は結局、妖魔界からの出稼ぎに職を奪われたくない底辺層の反発を利用したキャンセルカルチャーに過ぎなかったのだと、ネットの民たちは結論付けた。

 

そういう面倒な仕事が片付いた後の、朝――

 

「ちゅっ♡ んんっ♡」

「ぷあっ♡ ふふっ♡」

「はぅっ♡ おっきい」

 

藤次は、シーア・ニナ・ユスティネの三人掛かりで、肉棒を慰められていた。

 

「みんな、朝から済まないな」

 

シーアたちに起こされ、飲み物を渡された藤次は、それを飲み干して下腹部を見る。

そこでは三人の褐色エルフたちが、各々の乳房で肉棒を取り囲んでいた。

 

「もう、駄目ですよ旦那様♡」

「そうそう、そこはもっと威厳ある感じにしてくれないと♡」

「私たちは奴隷ですもの。もっとこう、従える感じにしてくれた方が嬉しいんです♡」

 

正面からはシーアが、左右からはニナとユスティネが、三方向から額を付き合わせる。

彼女らの眼前にはそそり立つ雄の柱があり、それは雌の象徴たる乳房たちに埋もれていた。

三人は胸で『押しくらまんじゅう』をするように乳圧を掛け、顔を沈めて舌で奉仕している。

肉棒の全方位を包み込むトリプルパイズリフェラを、まるでモーニングコーヒーのように堪能している自分が、いまだに信じられない。

 

「威厳か……なら、お前たちに命令だ。俺がいいと言うまで続けろ」

「あぅ♡」「はぁい♡」「喜んで♡」

 

あえて偉そうな口調を心がけ、仰向けになってベッドに身体を沈める。

両手を頭を後ろに沿えて、ビーチで日光浴でもするように。

そんな男の下腹部を中心に、ベッドの上で伏した三人の美少女が口淫を続ける。

彼女らの背中とヒップが身じろぎする様は、ベッドの上に妖花が咲いたかのようだ。

 

「んふ……ちゅ♡ れろ、ちゅっ♡」

「ぺろ、れるっ♡」

「ちゅっ♡ ちゅっ♡」

 

三人それぞれ違った舌技で、藤次の肉棒を悦ばせる。

シーアは先端に吸い付き、ニナは舌を突き出してカリを舐め、ユスティネは横笛を吹くようにキスをする。

それぞれの手は己の乳房を捧げ持ち、根元から幹を甘く包んで、乳肉で擦り上げた。

 

「ふふ、旦那様はじっとしていてくださいね♡」

「毎日頑張ってくれてるおちんぽ、癒やしてあげるから♡」

「他にして欲しいことがあったら、いつでもご命じくださいませ♡」

 

まどろむように、彼女たちの奉仕を堪能する。

ともすればこのまま二度寝をしてしまいそうな、睡眠と性感が融合した悦楽だ。

 

「ふと気になったんだけど、胸や口でするのは、女性も心地いいものなのか?」

「もちろん♡ お腹で受け止めるのとは、また違った気持ちよさがあるんですよ♡」

「それにこれなら、旦那様をずっと気持ちよくしてあげられるもん♡

 入れられちゃったら、こっちがイキすぎて、すぐ動けなくなっちゃうし……♡」

「ですから、遠慮せず堪能してくださいね♡

 旦那様に普段いただいている快感を思えば、百分の一も返せていなんですから♡」

 

という彼女たちも、飽きることなく奉仕を続ける。

舌と胸の感触を用いて、眠る猫の背を撫でる程度に、愛情と献身を示していた。

 

彼女らの首には、いまでもチョーカー型の首輪がある。

シーアも、ニナも、そして先日にはユスティネも自分の奴隷になった。

 

こんなに可愛く美しく、淫らで献身的な少女たちを三人も、我が物にしている――

不徳ながら、雄の本能を満たす光景に、寝ぼけていた劣情が動き始める。

 

「そろそろ入れたい……ユネ、仰向けになれ」

「ぁ♡ はい……」

 

一声かけただけで、三人は肉棒からパッと離れた。

 

「もう、ユネってばズルい……」

「やっぱり旦那様、大きい方が好きなんじゃ……」

 

仰向けになったユスティネの左右、半ば並ぶようにして、シーアとニナが身を低くしている。

三人ともメイド服の胸元を開いて乳房を踊らせており、さりげなくスカートをめくり上げて、藤次に下着を披露していた。

日に日に、そういう男を誘惑する小技を上達させている。

 

「二人も可愛がってやるから、いまは旦那様を手伝うんだ」

「あっ♡ だ、旦那様? 手伝うって……」

 

ユスティネの足を開かせると、彼女はそちらには逆らわなかったが、シーアとニナに向けられた命令について不安がる。

彼女がそうであるように、シーアとニナも命令の意味を察して、少し頬を染めていた。

 

「どうした?」

 

あえて、圧迫するような確認をすると、強気な態度を見た二人は軽く息を呑む。

威厳ある態度で――という注文を守った藤次に、命令に従う悦びを触発されていた。

 

「ふふ、ごめんなさいユネ」

「旦那様の、命令だから……」

「きゃっ」

 

シーアとニナは、ユスティネの両腕をそれぞれ掴んでベッドに押さえ込む。

片手で手首を拘束しつつ、もう片方の手をユスティネの下半身へ。

 

「さあ、旦那様……♡」

「ユネのおまんこ、準備できたよ♡」

 

シーアはスカートを指先で抓んで持ち上げ、ニナはショーツのクロッチを指でズラして秘所を晒させる。

まるで、貴人が服の着替えをするとき、指一本たりとも使わせず補助するように。

ベッドの上で女を脱がすことにさえ、主人の手を患わせない――これはそういう奉仕だった。

 

「ふ、二人とも……っ、やっ、恥ずかしい……っ♡」

 

藤次はともかく、同性のシーアやニナに脱がされるという体験に、ユスティネは困惑と羞恥を覚えている。

そこに初々しさを感じて、普段とは別の興奮が肉棒を滾らせる。

 

「ニナ、入口を広げろ。シーアは、無理をするなよ」

「「はぁい♡」」

 

シーアは子供を宿したお腹を忘れないようにさせ、ニナにはユスティネの陰唇を指で開かせる。

 

「やっ、見ないで……っ」

 

まるで生娘のように顔を覆うユスティネだが、口を開いた膣は濡れそぼり、湯気が立ちそうなほど熱を帯びていた。

 

「駄目よ、ユネ。あなたも旦那様の奴隷になったんだもの」

「恥ずかしいのは分かるけど、そんな可愛い顔してたら、旦那様がかえって燃えちゃうよ?」

 

シーアとニナが左右から語り掛ける間に、張り詰めた逸物を秘裂にあてがう。

ニナの指の間、左右に広げられた陰唇の中心に、赤黒い亀頭がすんなりと滑り込んでいくと――

 

「くぁ……っ、ふぁっ、んんんぅっ♡」

 

ユスティネは口を吐いた嬌声を必死に噛み殺すが、身体に走る痙攣が絶頂を物語り、豊満な胸が震動している。

 

「わぁ……ユネのお腹に、旦那様の形が浮いて……」

「明るいところで見ると、こんな風になってるんだ……」

 

シーアとニナが息を呑む。

自分に入っているときとは異なる視点が、二人にとっても新鮮なようだ。

 

「こら、見てないで手伝うんだ」

「ひゃうっ♡ あっ♡ あんっ♡」

 

藤次は緩やかに腰を動かし、ユスティネの膣内を解しながら、シーアとニナに命じる。

 

「旦那様……?」

「手伝うって……」

「もちろん、ユネが感じるように、気持ちいいところを弄ってやるんだ。

 いつも俺がお前達にしているように、乳首やクリトリスを苛めてやりなさい」

 

お前達にしているように――という台詞があれば、それ以上の説明は不要だった。

シーアとニナは顔を赤くして生唾を呑み、ユスティネが血相を変える。

藤次は彼女らにレズプレイを強要しているのである。

 

「だ、旦那様っ、それはお待ちくださ――ああんっ♡」

 

慌てて制止しようとしたユスティネは、子宮口を擦り上げて黙らせる。

 

「だ、旦那様? 確かに、同じ夫を持つ『義姉妹』がそういう工夫をすることはありますが……」

「それは、その、マンネリ解消というか……わ、私たちには、まだ早いかなって……」

 

シーアとニナは赤面しながら戸惑っている。

表情から読み取る限り、本気で嫌がってはいない。興味はあるが踏ん切りはつかないというところだろう。

だったら、自分がすることは一つだった。

 

「お前達……」

「ひゃっ♡」

「やんっ♡」

 

シーアとニナの秘所に指を這わせた。

ユスティネに左右から覆い被さる形で尻を向けていた二人に、両腕を駆使して手淫を見舞う。

腰では真ん中のユスティネを責めるのも忘れない。

 

「自分の立場を忘れたのか?」

 

腰と両手を用いて、三つの膣内を同時に掻き回すと、三人の嬌声が上がった。

 

「あぁぁんっ♡ 申し訳、ございませんっ♡」

「ふぁぁっ♡ 旦那様っ、怒らないでぇっ♡」

「忘れてませんっ♡ 片時もっ、忘れてませんからぁっ♡」

 

三つの秘所から鳴る水音を伴奏に、少女三人が喘ぎ声を合唱する。

 

「なら命令に従え! お互いを気持ちよくするんだっ!」

 

思い切って命令を口にすると、奴隷の首輪が淡く発光する。

すると、シーアとニナが、抽送を受けて揺れるユスティネの乳房に吸い付いた。

 

「きゃうっ♡ 二人ともダメっ♡ やっ♡」

 

敏感な乳首を同時に責められたユスティネが、たまらず嬌声を上げる。

藤次にされたときよりも抵抗感が強いようだが、『命令』されたシーアとニナは止まらない。

 

「ちゅっ♡ ごめんねユネ、旦那様のご命令だから……っ」

「れるっ♡ こうして見ると本当、おっきい。男の人が夢中になる気持ち、分かるかも……♡」

「ひっ♡ あっ♡ やんっ♡ あっあっあっ♡ んんんっ♡」

 

二人はユスティネの腕を押さえ込んだまま、自分がされてきた舌使いを真似るように乳首を転がす。

そんな三人をじっくり眺めながら、緩やかに腰を前後させる。

 

「ふぁっ♡ やぁっ、旦那様ぁっ♡ わたしの、おっぱい、旦那様のなのにぃ♡」

 

乳首を膣内を三人がかりで責められるユスティネは、その三点責めよりも、藤次以外の人間に感じさせられているということに困惑していた。

 

「俺だけじゃ飽きられるかもしれないからな。色んな方法で気持ちよくなってほしいんだ」

「ひぁうっ♡ しょんなことっ、ないでしゅっ♡ 旦那様のお手々や、お口でされるのっ、いつもすっごく気持ちいいのにっ♡」

 

挿入に喘ぎながら、ユスティネは藤次の手による愛撫を欲していた。

女の細い指や舌では、男にされているときと比べて物足りないのだろう。

 

(楽ができるかと思ったが、物足りないなら仕方ないか――)

 

そう思い、手を動かそうとすると。

 

「ユネ? なにを言ってるの?」

 

先んじてシーアの片手が動き、驚いたことにユスティネの陰核を指先で抓っていた。

 

「ひきゃうっ!?♡」

 

陰核を抓られたユスティネは、突然訪れた強い刺激に素っ頓狂な声を上げた。

シーアが指先をピンと伸ばすと、その腹でクリクリと転がす。

 

「旦那様にご挿入いただいているだけで幸せなのに、愛撫までおねだりするなんて……

 あなた、自分の快感のために、旦那様のお手を煩わせるつもりなの?」

 

シーアの声音が少し怖い。

艶然とした笑みの中に、どこかサディスティックな影が差している。

まるで女主人のような口調で説教しながら、親友のクリトリスに指を踊らせて。

 

「あああぁぁぁっ♡ シーアぁっ♡ だめ待ってっ♡ ひぁうぅぅぅっ♡」

 

こちらは腰の動きを変えていないが、ユスティネの嬌声が甲高くなる。

シーアとニナの手管が、ユスティネの性感帯を扱い慣れてきた証だろう。

 

「勘違いしちゃダメよ? 私たちがおねだりしていいのは、旦那様がそれをお喜びになるとき。

 お疲れの旦那様にご負担をかけるような奴隷は、うちにはいないのよ?」

 

きゅう! と、シーアの指先がユスティネの陰核を抓り上げた。

 

「ひきゃぁあああっ!?♡」

 

これまでより強い刺激に、ユスティネの視界が白く染まる。

 

「こら、シーア」

 

藤次は嗜めるように、彼女の膣内を掻いていた指を奥へ進めた。

 

「ぁぁああっ♡♡」

 

シーアは甘く達して背筋を反らし、ユスティネが責め苦から救われる。

 

「あまり苛めてやるな」

 

最近、シーアはたまにSな一面を垣間見せる。

元から秘めていたのか、それとも妊娠による気性の変化だろうか。

 

「申し訳、ございません♡ 差し出口、でした……っ♡」

 

くちゅくちゅと膣内を掻き回され、小刻みに痙攣しながら、シーアは艶然とした笑みで振り返る。

 

「俺はただ、皆で気持ちよくなりたいだけだ」

「ひぁうっ♡」

 

ニナの膣内に入れた指も奥へ進める。

 

「ほら、ペースを上げるぞ。二人でユネをたくさんイかせてやるんだっ」

「んぁんっ♡ あっあっあっあっあっ♡ だんなしゃまぁっ♡」

 

射精が近付いてきた怒張の動きも加速させた。

 

「ユネ、乳首を強く吸われるのが好きなのよね? ちゅぅぅぅっ」

「ここ、お腹のところ……子宮を上から押さえたら気持ちいい?」

 

シーアが音を立ててユスティネの乳首を吸い上げつつ、肉芽への手淫も加速させる。

ニナもまたユスティネの乳首に舌をちろちろとさせながら、肉棒に突かれる子宮を手の平で軽く圧した。

 

「んおっ♡ おぁっ♡ あ゙あ゙あ゙ っ っ っ ♡」

 

ユスティネは目を剥いて、喘ぎ声を乱れさせる。

藤次一人とのセックスでは体験できなかった、集団で多数の性感帯を刺激される快感に狂わされていた。

 

「らめぇ♡ らめなのぉっ♡ シーアでっ、ニナでっ、わらひっ♡ おっぱいイってりゅっ♡

 だんなしゃまのおちんぽで敏感な身体っ♡ お友だちにまでイかしゃれてりゅっ♡

 これだめですっ♡ 知っちゃいけないのですっ♡ ああぁぁ変わっちゃうっ♡ わたしまたっ♡

 旦那様に生まれ変わらされるっ♡ 旦那様の思い通りに作り替えられちゃいましゅっ♡」

 

女同士の快感を覚えてしまったユスティネは、初めて男を知ったときのような顔をして、絶頂の間隔を短くしていった。

 

「いいぞ、その調子だっ」

 

左手はニナを、右手はシーアを感じさせる。

その二人はユスティネを感じさせ、ユスティネは膣で藤次を悦ばせる。

そういう奉仕の好循環めいたものが、ベッドの上で繰り広げられていた。

 

「あぁんっ♡ 旦那様っ♡ お手々そんな動かしちゃ、お手伝いできないですっ♡」

「やだ、ユネってば、そんなイかないで♡ こっちまで、伝わって来ちゃってっ♡」

 

ユネに引き摺られてか、シーアとニナも藤次の手淫により、小刻みに達し続けている。

 

「っく……っ!」

 

やがて訪れる射精の瞬間。

それに逆らわず、逸物をユネから引き抜いて、彼女の腹部に放出させた。

 

「んあっあ゙あ゙あ゙ぁぁぁっっっ♡」

「ひゃうぅぅっ♡ 熱いの、お手々にっ♡」

「やだっ、私もっ、イクぅぅぅっ♡」

 

こちらが達すると同時に、ユスティネが大絶頂に至り、シーアとニナも手淫に果てる。

飛び散った白濁液は、ユスティネの腹や臍だけでなく、ユスティネに触れていたシーアとニナの手にも撒き散らされた。

 

「はっ♡ はぁっ♡ はぁぁぁっ♡」

「はふぅ♡ 旦那様の、お精子……♡」

「外になんて、もったいない……♡」

 

ユスティネは息も絶え絶えに放心。

シーアとニナは手に付着した白濁液を見て恍惚とし、まるで美酒でも扱うように香りを吸い込み、舌で味わう。

 

「ふぅ……みんな、良かったぞ」

 

内容こそ濃密だったが、藤次の負担は小さく済んだ。

なにせ軽く腰を前後させただけで、それ以外はシーアとニナがユスティネを感じさせてくれた。

それでも、朝の運動というには、いささか過激だったが……

 

 

 

 

あれからシーアたちは、少し変化した。

以前よりも露骨に、ご奉仕するようになってきたのだ。

それは媚びるというより、迷惑にならないようにと我慢してきたものを、我慢しなくなったように見える。

 

(前の炎上で、『遠慮しなくていいんだ』と思うようになったのかな)

 

彼女らは先の炎上を通じて、人間界の世情を学んだようだ。

 

妖女や奴隷を忌避する層はいるが、大多数は肯定的であること。

自分たちは存外に、人間界の人々に歓迎されているということ。

いわゆるノイジーマイノリティとサイレントマジョリティを学んだのだ。

 

結果どうなったかというと、奴隷であることを遠慮しなくなった。

 

出勤の前に上着を着せたりネクタイを締めたりなんて新妻的なことは序の口。

家事は万端、風呂に入れば一緒に入って身体を洗い、上がればタオルで身体を拭いて髪を乾かす。

お酒の手酌は決して許さず誰かが注ぎ、主人が欲情すれば予知していたように近くにいてガードを緩める。

事がセックスになれば、相手を疲れさせないよう積極的に動き、主人が責めたいときにだけ淫らに求める。

 

至れり尽くせりとはこのことだ。

 

思わずほくそ笑みそうになるときがある。

まるでその人間が、一から十まで自分のためだけに存在しているかのような愉悦に。

それも見目麗しい妖女が三人も――悦に浸るなという方が無理な相談だ。

 

最近、仕事をしている間も、そんな彼女らの待っている我が家に早く帰りたい。

シーアたちという、一流の使用人かつ性奴隷である妖女たちが待つ家は、まるで自分を王様にしてくれる城だった。

 

(人生、何が起きるか分からないな……)

 

ほんの少し前には予想もしなかった生活だ。

 

元妻と夫婦だった頃といったら……家のあちこちにはホコリや抜け毛が積み重なり、流し台には洗っていない食器が小山となり、洗濯機の中には夫の服だけが脱水後に放置されていて、出前ばかりで使われなかった食材が冷蔵庫の中で賞味期限を迎えている――

分担したはずの家事はいつしか常習的にサボり始め、日中の有り余る時間でなにをしていたのかと問えば、SNSがソーシャルゲームや動画視聴に主婦友ランチを『色々』と要約するだけ。

夫と話すより電話やボイスチャットをしている時間の方が長く、こちらのスマホに届くメッセージは帰宅途中の買い物リスト――

ベッドに誘えば二回に一回は舌打ちで拒否され、スマホを覗いてみれば夫に対する悪口雑言……

改めるように言うと――モラハラ、精神虐待、家父長制、生理なんだと喚き立て、数日間の不機嫌アピールと家事ストライキ。

そういう女が、化粧を落とすと正直好みではない顔で、雑な部屋着姿でソファーに寝転び、「おかえり」ではなく「冷蔵庫に入れといて」と出迎える。

 

ほんの少し前まで、自分にとっての家とは、そういう場所だったのだ。

 

「っと」

 

よくない思い出に囚われていた意識が、スマホの呼び出し音で我に返る。

信号待ちを利用して画面を見ると――

 

「…………」

 

噂をすれば、と言っていいのだろうか。

あまり気分のよくない名前が表示されていた。

 

(まあ、いいか)

 

運転中であることを言い訳に、ハンズフリーにもせず応答を断る。

ただいま電話に出ることができませんという案内が、向こうに届いていることだろう。

折り返し掛けるのは、時間ができたときでいい。

 

――三人の妖女と暮らす日々に、そんな時間がいつ出来るのかは、自分にも分からない。

 

 

 

 

「というわけで、ケーキを買ってきたから、皆で食べなさい」

「なにが『というわけで』なんですかっ!」

 

帰宅するなり、シーアに叱られてしまった。

 

「シーアにはちゃんと酸味のあるものを買ってきたぞ?」

「それは、助かりますけどっ。旦那様と来たら私は愚かニナとユネまで甘やかそうとしてっ」

 

シーアは相変わらず、奴隷を贅沢させようとする主人に対してご立腹だ。

 

「わぁ、綺麗……これ本当に食べ物なんですか?」

「へぇ、こういうのって、テレビとかで誇張されたものだとばっかり思ってた……」

 

ユスティネとニナは、既にケーキの箱を開けて、色とりどりの品に驚いている。

シーアもそうだが、人間界の甘味は、彼女たちにとってかなり新鮮なのだそうだ。

むしろ彼女らの故郷の甘味はどんなものだったのかと聞いてみると、『砂糖を舐めていた方がマシ』とのことだ。

 

「日頃の感謝を形にしただけだ。山のように積み重ねても足りないくらいだよ」

「もう、それはこっちの台詞ですのに……」

 

いつものようなやりとりの後、全員で夕食を取る。

食後のデザートに舌鼓を打つ彼女たちを愛でつつ、藤次は手紙を開いていた。

 

(シーアのお母さんからの手紙か……いや、もう俺もお義母さんと呼ばないとな)

 

以前にも手紙でやりとりした、シーアの母。

最初はシーアを抱いてやって欲しいと頼まれて驚いたものだが、思えばそれあってこその今だった。

その後は、妊娠したシーアには人間界で出産させたいという意向を伝えており、手紙の内容はその返答だ。

 

「…………」

 

目を通して、沈黙する。

内容は……決して悪い報せではないが、一部に目を疑うような文言がある。

 

「旦那様? 母が何か……」

「ああ、ちょっとな。シーアは読んだか?」

「私への手紙は別に届きましたので」

「なら、済まないがこっちも読んでみてくれ。このあたり、翻訳上の手違いじゃないか?」

 

首を傾げながら、シーアに手紙を渡す。

受け取ったシーアの左右から、ニナとユスティネも覗き込んだ。

 

「出産は人間界でも構わない――はい、私に届いた手紙と同じですね」

 

シーアは喜ばしそうだった。

やはり、治安に疑問符のつく故郷よりも平和な日本でということになった。

 

「それは嬉しいんだが、その続きだ」

「はい。えっと……『貴殿のおかげで、我が国は二度目の内乱を避けられそうだ』」

 

話の飛躍が大きすぎた。

いったい自分はいつの間に、異国の内乱を未然に阻止するなんていうスパイ映画めいたことを成し遂げたのか。

 

「あー、旦那様、想像がつかないって顔してる」

「ふふ、でも決して大げさじゃないんですよ?」

 

ニナとユスティネが微笑んでいることから、手紙がおかしいわけではないようだ。

 

「そうですね……」

 

シーアが言葉を噛み砕くような間を置いて、説明してくれる。

 

「実は、私の実家、それなりの軍閥なんです。

 特に一族の長であるお婆様などは、革命に破れた旧体制に忠誠を誓っておりました。

 同じような家々を束ねる中心人物でもあり、下手をすれば『革命返し』の旗印になるくらいに」

 

王家に仕える騎士とか、主君に尽くす武士とか、そういう家柄だったらしいとは聞いている。

 

「それだけに終戦後は冷遇されており、力を削がれていたんです。

 ですが、新体制の下で力を尽くしてくれるなら好待遇で受け入れるとも言われていました。

 一族の中にも、母を含めその選択を推す声もあったのですが……当主のお婆様は保守的で。

 異界の思想や道具に毒された新体制になど従わぬ、と……」

 

シーアの祖母は、なかなかの頑固者だったようだ。

保守的な老人、悪く言えば老害、よく言えば忠臣、そんな女傑なのだろう。

 

「それが、曾孫が出来たと聞いたら、手の平をくるっと返してしまいまして」

「え?」

 

少し気恥ずかしそうに笑うシーアに、目を瞬いた。

曾孫とはつまり、いまシーアが宿している我が子のことだろう。

唖然としていると、ニナとユスティネも説明に加わってきた。

 

「妖魔界において、子供ってそれだけ説得力があるもんなの」

「婿を得た孫や、産まれた曾孫が、安心して帰省できる故郷にしたいと思われたのでしょうね」

 

子や孫が出来ると人が変わるというが、シーアの祖母もそうだったらしい。

どうやら自分とシーアの関係は、妖魔界で第二の内乱を引き起こしかねないキーパーソンのメンタルに多大な影響を与えてしまったようだ。

 

「手紙によると、お婆様は新政府に歩み寄り、一族の待遇もかなり改善されたようです」

「それは……まあ、よかったな……」

 

なにはともあれ、シーアの故郷は平和に一歩近づき、家の台所事情も改善されたらしい。

 

「もう、旦那様? これは旦那様のおかげなんですよ?

 旦那様が私に子を授けてくださったから、故郷で第二の内乱が起きることを避けられたのです」

「……大げさじゃないか?」

 

シーアは首を横に振る。

ニナやユスティネにも目を向けると、同じような反応だった。

 

「大げさでも何でもなく、あり得たことよ」

「そうですねぇ。例えばですけど、シーアが人間界で旦那様と出会わず、冷遇されたり搾取されたりしていたら、シーアのお婆様はいまとは逆の選択をしていたと思います」

 

逆と言うと、新政府と和解せず、反乱分子という方向に力を注ぐ選択か。

なるほど確かに、政府軍との衝突は避けられそうもないし、その後は復讐の連鎖で紛争ループ……なんてことも国際社会ではしばしばだ。

それを防ぐことに役立てたなら、シーアに出会えてよかった――

 

「旦那様、微妙にご理解いただけてませんね?」

「本当、名誉貴族にされたっていいくらいなのに」

「人間界の男性って、女を妊娠させることを『男の功績』と思わないんですねぇ」

 

なぜか笑顔で呆れられていた。

 

「まあ、先方から感謝されているってことは分かったよ」

 

改めて手紙を読むと、自分たちをよい方向に変えてくれたことを感謝すると書き連ねられていた。

いつか直接お会いしなければと決めて、手紙を畳む。

 

「旦那様? 感謝しているのは、実家だけではないんですよ?」

 

と、隣席のシーアが身を寄せてくる。

 

「そうそう、もうちょっとこう、恩に着せてもいいんじゃない?」

「旦那様がどう思われていたとしても、私たちは旦那様に人生を救われているんですよ?」

 

いつの間にか席を立ったニナとユスティネも、肩や腕に手を触れてきていた。

言うまでもなく、誘われている……

これも、遠慮が無くなってきたと喜ぶべきか。

 

シーアは受け入れられていることを感じ取り、安心したようでいて艶のある微笑を浮かべると――

 

「その……お礼を、させていただけませんか?」

 

 

 

 

そして、ケーキなんかよりもずっと甘い時間が始まる。

 

「はい、旦那様♡ どうぞお召し上がりくださいませ……♡」

 

居間のソファーで、仰向けに寝転ぶ。

頭の後ろにあるのは、ユスティネの太股だ。

そして目の前にあるのは、メイド服の胸元を開いた彼女の、下から見上げる豊満な乳房。

ユスティネは藤次を膝枕しながら上半身を屈め、垂れ下がらせた豊乳を口元に運ぶ。

 

「はぁふっ♡ 旦那様ぁ……おっぱい、そんな掴まなくても♡ あっ♡ 逃げませんからぁ♡」

 

口元に降りてきた乳首を迷わず口に含み、もう片方は手中で弄ぶ。

柔らかな膝と胸に頭部を挟まれると、脳まで蕩けてしまいそうだ。

 

「んっ♡ ちゅ♡ 男の人でも、乳首は気持ちいいって、本当?」

 

胸板にはニナが頬ずりして、乳首にキスをしている。

床に膝をつき、ソファーで仰向けになった藤次のシャツをはだけさせ、露にした乳房を擦り付けながら、手では腹筋をなで回していた。

胸板から腹部という、あまり重点的には触れない部分への奉仕が、新鮮な快感を与えてくれる。

 

「ふあっ♡ あんっ♡ 旦那様っ♡ シーアも、頑張りますからっ♡ あまり、突き上げちゃ、ダメですからね?」

 

そして下腹部、とっくに張り詰めた逸物の上では、半裸のシーアが腰をグラインドさせていた。

膨らみ始めのお腹を大事そうに撫でながら、慣れたような腰使いで騎乗位を愉しんでいる。

お腹の子供を気遣って動きは激しくせず、膣を用いてペニスを揉みほぐすような動きだ。

 

「あぁ、いいぞ……」

 

視界はユスティネの乳房に覆われて、彼女たちの姿は見えない。

しかし、乳首を舐めると後頭部で身もだえするユスティネの太股、泡嬢のようにボディを撫でるユネの身体と舌、逸物を包んで太股に擦れるシーアの膣と尻――

三人の妖女たちに全身を包み込まれるかのような、女肉の布団に包まれているかのような、この恍惚感……っ!

 

「ひあっ♡ あふぅっ♡ 旦那様っ、嬉しそうに♡ 私のおっぱい吸ってるぅ♡」

「んっ♡ 旦那様、身体がびくんってしてる♡ 私、旦那様を、感じさせてる♡」

「あっあっあっあっあっ♡ 旦那様ぁ♡ 先っぽが、赤ちゃんをノックしてる♡」

 

平凡なマンションの居間で繰り広げられる、四人の痴態。

舌や結合部の立てる水音も、女の喘ぐ声も、比較的に大人しいものだ。

しかしそれが三重奏となると、優れた楽曲のように脳を支配していく。

 

(ずっと、こうしていたい……ああでも、もっと突きまくって喘がせてやりたい!)

 

相反する欲求すらも法悦のうち。

いまは後者の念が堪えきれなくなるまで、シーアとニナとユスティネによる全身奉仕を満喫することにした。

 

「あっはぁ♡ 旦那様ぁ♡ ひうっ♡ しょんな、私っ♡ おっぱいだけ、なのにぃ♡ んっ♡ んんんっっっ♡」

(ユスティネは、相変わらず乳首だけでイってるな……)

 

頭部を包むユスティネの身体が小刻みに痙攣している。

その間隔をより短くするために、息継ぎする間も惜しんで乳首を責めてやる。

 

「はぁっ♡ はふっ♡ 旦那様? 片腕、開いてるよね? お手々、ここに……っんあ♡」

(ニナは、物欲しそうだな。思い切り挿入されたいって、身体の動きに出てるぞ……)

 

ニナは藤次の片腕を抱き寄せ、指先をスカートの中に導いていた。

それに答えて下着越しに手淫してやると、嬉々として身を寄せ、美乳を胸板に滑らせてくる。

品に欠けるくらい全力で、目の前の男を誘惑する女の動きだ。

 

「あああぁぁぁ♡ 旦那様ぁ♡ シーアのおまんこ、気持ちいいっ? この締め方、お気に召して、くださってますね♡」

(シーアは、いつの間にか、余裕をもって腰を振るようになって……っ)

 

三人の中では最も経験豊富なシーアは、腰の動きと膣圧の変化で肉棒を翻弄する。

童貞くらいなら手玉に取れそうな、熟達した女の腰付きを会得していた。

もちろんそれも、主人を心地よくしたいという一心で学んだものだ。

 

「あっあっあああぁぁぁっ♡ 溶けちゃうっ♡ おっぱい溶かされながらイっちゃうぅ♡」

「ひぁぁぁああんっ♡ 指っ♡ しょんなっ♡ むりやりっ♡ イかされちゃうっっっ♡」

「んぁあぁっっっ♡ 旦那様っ♡ イってぇ♡ 私と一緒にぃ♡」

 

やがて訪れたのは、四人同時の絶頂だった。

ユスティネは乳首への集中的な刺激で深いオーガズムに至り、ニナは指で膣内と陰核を掻き回されて達し、シーアは藤次の射精と同時に腰を震わせ、弾みで引き抜けたペニスからの白濁液を浴びた。 

 

全員が息を荒げながら、余韻を味わう。

甘い静寂も、長くは続かない。

女体に包まれるような奉仕の時間は最高だったが、その間に我慢していたもう一つの欲求は、まだ満たされていない。

動かずに奉仕されるのではなく、動いて蹂躙したいという、獣めいた方の欲求が。

 

「誰か……部屋からオモチャを持ってきてくれ」

 

気がつけば、悪人のような笑みで、そう命じているのだった。

 

 

 

 

居間のテーブルに置かれたスマホが、手短な着信音と震動を鳴らす。

メッセージアプリのアイコンと、出だしの文章が表示されていた。

 

『久しぶりだけど、最近どうしてる?』

 

時間を置いて、また受信する。

 

『ちゃんとご飯食べてる?』

『家電とか適当に使うと故障するよ?』

 

心配するかのような文面は、時間が経つと変化していく。

 

『ちょっと困ったことがあるんだけど、相談していい?』

『ネットで誹謗中傷を受けてて、脅迫までされてるんだけど』

『忙しい? 電話できる?』

 

切り口を変えて試すような問いかけのどれにも、既読はつかない。

三人の妖女たちが嬌声を奏でる部屋の中で、誰にも気付かれることなく、見過ごされていった。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

更新がやたらと伸びてしまい、まことに申し訳ございません。

挿絵も入れたかったですが、ハーレムプレイは作るのが大変で、
後日また追加させていただきます。

もうちょっとで奴隷編も完結です。


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第六話(後編)

 

 

 

シーアたち奴隷と暮らす生活には、新たな日課が加わっていた。

 

木城クレアの住むマンションの部屋まで、ユスティネを迎えに行くことだ。

 

「いらっしゃい、西条さん」

「ああ、旦那様。本日もお仕事、お疲れ様でございます」

 

そんな自分を迎えたのはクレアと――シーアである。

 

「いつの間にか仲良くなったんだな……」

 

最近、藤次やシーアたち西条家と、木城クレアとアイナの母娘は、親交が深まっている。

元はユスティネがクレアに雇われていた縁に始まり、そのユスティネの雇用をこちらに譲ってくれたことから、会う機会が多くなった。

ユスティネの紹介で知り合ったらしいシーアも、こうしてよくお邪魔している。

それというのも――

 

「木城様には、母親経験者として色々とご指導をいただいているんです」

 

シーアが言うように、妊娠した彼女の相談に乗ってくれているからだ。

 

「もう、クレアでいいのに」

「はい、クレアさん」

 

と、すっかりママ友めいた距離感になっていた。

 

「ささ、どうぞ上がっていってください」

「いつもすみません。これ、お土産です」

 

かくして、今日もクレアに招かれる。

お土産に菓子類も忘れていない。なにせ――

 

「あっ、藤次おじさん!」

 

素直にそれを喜んでくれる可愛い娘さん、アイナがいるからだ。

 

「こんばんは、アイナちゃん。今日はアイスだよ?」

「やった! 開けてもいい!?」

「こらアイナ、お礼を言うのが先でしょう?」

 

人気店のアイスが入った箱を恭しく差し出すと、無遠慮に喜んだアイナを、クレアが叱りつける。

 

「ありがとっ」

「はは、喜んでもらえてなによりだよ」

 

その無邪気さに心が癒やされる。

いずれシーアから産まれる子も、きっと彼女のように愛らしいのだろう。

 

「もう、あまり甘やかさないでくださいね?」

「申し訳ない、口下手には他の方法が思いつかないもので」

 

微笑するクレアに詫びながら、鞄をシーアに預けるのだった。

 

 

 

 

「ニナ、ここにトラップを置くんだよ?」

「こ、こう? もう、人間界の子供ってこんな複雑なゲームで遊んでるの?」

「お嬢様、そんなに画面に目が近いと視力が落ちますよ?」

 

リビングでは、アイナの他に、ニナとユスティネの姿があった。

いまはニナが手にしたスマホで、何かゲームをしているらしい。

 

「ニナまで気軽に上がり込むようになって……」

 

ニナが務めているのは、藤次の兄夫婦の家だ。

その家がクレアのマンションから程近い位置にあるせいか、仕事帰りに『ユスティネを手伝う』という名目でお邪魔して、実質的にはアイナの遊び相手になっているらしい。

 

「お気になさらないでください」

 

テーブルの対面席から、クレアが言う。

 

「元々は、一夫多妻の家庭で育った子ですから。賑やかな方が安心するんですよ。離婚してからは、寂しい日々だったでしょうから」

 

申し訳なさそうに娘を眺めるクレアに、「なるほど」と納得させられた。

一夫多妻の家庭に産まれれば、母や姉妹が多数いる大家族状態が当たり前だ。

クレアは夫と離婚すると同時に、他の妻たちとも疎遠になったらしい。

それはアイナにとって、何人もいた家族がたった二人になってしまうという、大きな喪失だったのだろう。

 

「私たちとしても、お嬢様のお世話をさせていただくのは幸いです。

 予行演習……といっては失礼ですけど、もう可愛くて……」

 

隣の席ではシーアが、膨らみ始めた腹を撫でつつ、目はアイナを眺めている。

いずれ出会う我が子の将来像を、アイナに見ているのだろうか。

 

「ところで、西条さん。今月分の振り込みをさせていただきたいのですが」

「あ、はい。お願いします」

 

クレアがスマホを取り出して操作する。

アプリを通じて、藤次のスマホにお金が振り込まれた。

ユスティネの給料やその他の諸経費だ。

 

「確認しました。ありがとうございます」

「こちらこそ。ユネさんの働きを見れば、心苦しいくらいです」

 

ユスティネはいま藤次の奴隷で、それをクレアに貸し出している形だ。

その代金の振り込みなのだが――

 

「今更ですが、よろしかったのですか?」

 

クレアがユスティネの雇用を藤次に譲ったことで、こういう手間を踏んでいる。

藤次がユスティネを貸さないと言えば、クレアはメイドを失うことになるので、彼女にとって得のある話ではない。

 

「構いませんよ。ユネさんも首輪を嵌められるなら愛しの旦那様がいいでしょうし。

 それに、こうして西条さんとのご縁もできますから」

 

後半は少し照れ臭そうに微笑みながら、思わせぶりなことを言う。

いや、思わせぶりというか、明確にそういうメッセージだ。

つまり、ユスティネをきっかけに、クレアは藤次と親しい関係になりたい――と。

 

「願ってもないことです。こちらもシーアたちがお世話になっておりますから、このご縁を大事にしていきたいと思っております」

 

こちらもそう答える。

言外の意味に対する明確なYesだ。

 

直言を避けながら気持ちを伝え、シームレスに恋仲へ――大人の恋愛である。

まだ肉体関係などはなく、娘のアイナの反応を見ながらの『お試し期間』といったところだが。

まさか電波に乗っている女優と、そんな関係になるとは夢にも思わなかった。

 

「私も、クレアさんは信頼できる方だと思います」

 

シーアもそう言ってくれている。

主人であり婚約者である藤次が新たな女を作った形だが、一夫多妻が基本の妖女にとって、そこは不倫ではないようだ。

もちろん、クレアのことを隠さずに伝えて、シーアの目で人となりを確かめたからこそである。

妖女の一夫多妻家庭に新たな妻が加わるときは、夫よりも妻たちの合意と信頼が必要不可欠なのだそうだ。

 

「藤次おじさん、おじさんもやろっ?」

 

と、大人の話など一顧だにせず、アイナが袖を引いてきた。

母親が見知らぬ男を家に招くようになってストレスではないかと懸念したが、こうして懐いてくれるのは嬉しい限りである。

 

「もうアイナ? いまお話してるから――」

 

クレアが嗜めようとすると、スマホが着信音を鳴らした。

藤次のスマホだ。

 

「…………」

 

表示されている発信者の名前を見て、思わず眉間に皺を寄せる。

 

「どうぞ?」

「ああ、いえ……」

 

クレアにそう促されて、応答拒否をしようとしていた指を止めた。

ここで露骨に拒否しては怪しまれるかもしれないという気持ちが生じて、咄嗟に選択を改める。

 

「では、ベランダをお借りします」

 

いまにして思えば、かえって怪しい振る舞いだったが、このときは気付かなかった。

シーアやクレアの怪訝そうな視線に見送られながら、ベランダに出て応対する。

 

「もしもし――ああ、久しぶりだな。どうした?」

 

冷たい声音で答えながら、ちらりと部屋を振り返る。

シーアとクレアは何か話しており、ニナとユスティネはアイナと盛り上がっている。

耳に聞こえるのは、相手の、妙に同情を誘おうとするような声音だけだ。

 

「そうか、大変だな。まあ喉元過ぎればというし――」

 

両親が離婚したとか、帰った地元でイジメを受けているとか、どこまで本当か分からない苦境を聞き流す。

気に入らないのか、相手の口調がヒートアップしてきたが、こちらの心は妙に冷え切っていた。

久しぶりに声を聞くが――いつの間にか、こんなに感情を動かされない存在になっていたのか。

 

「俺か? 実は、近いうちに再婚するんだ。子供も産まれる」

 

ベランダから室内のシーアを一瞥した後、視線を夜景に戻す。

相手は絶句しているようなので、静かにたたみ掛けることにした。

 

「そういうわけだから。そちらのことはそちらで何とかしてくれ――」

「おじさーんっ。早くやろーっ?」

 

思わぬタイミングでアイナの声。

相手側にも聞こえただろうが、説明するのも面倒だ。

 

「じゃあ、達者でな」

 

通話を切った後、即座に着信拒否設定。

これだけ言っておけば、流石に関わってこようとはしないだろう。

 

「お待たせ、アイナちゃん。そのゲーム、おじさんにもできるかな?」

 

夜景に背を向けて、明るい室内へ。

昔のことなど振り返らず、彼女たちとの輝かしい未来の方へと足を向ける。

 

 

 

 

「お腹の子供を保護する魔法?」

 

その日の夜、寝室でシーアが口にした言葉を、思わず繰り返した。

寝室にいるのは藤次とシーアだけだ。

今日はシーアの日なので、ニナとユスティネは別室でもう休んでいる。

 

「はい。妖魔界にはそういうものもあるんですよ?」

 

妖魔界には魔法がある。

ただ、呪文をうんたらかんたら唱えたら炎が出るといったRPG的なものではない。

その多くは生活に根ざしたものであり、庶民的な需要によって生まれるものばかりだ。

 

「そうか。よく考えたらあって当然なくらいだな」

 

シーアの腹部に目を向ける。

ネグリジェを着たシーアの腹部は小さく膨らんでおり、そこを撫でる微笑みは聖母のようである。

注目すべきは、シーアが腹部をさすると、ネグリジェの下でうっすらと紋様が輝いたことだ。

まるで成人向け作品に出てくる『淫紋』のようであるが、色は白く、紋様はどこか神秘的だった。

 

「クレアさんから教わったんです。外部から衝撃を受けても胎児を保護する護身魔法ですね」

「触れてもいいか? ああ、本当だ。見えないクッションみたいなのがあるな……」

 

ベッドの縁に腰掛けた藤次は、正面に立ったシーアのお腹を両手で撫でる。

素肌に触れる直前、それと区別がつかない感触の、見えない何かがあった。

漫画のように言えば魔法障壁のようなものが生じているらしい。

 

「凄いでしょう? 物がぶつかったり転んだりすることはもちろん、強い震動や圧迫も平気なんだそうです」

「それは安心だな……」

 

後に調べたが、人形や卵などを用いて徹底的に検証された魔法だった。

妖魔界において子供は至宝、胎児を保護する魔法の研究が徹底されたのも道理だろう。

 

「それに、他にも……」

 

すると、シーアがもじもじとしながら、言葉を足そうとする。

頬を赤らめた様子から、口に出される前に察しが付いた。

 

「激しいセックスをしても……大丈夫、だそうです♡」

 

妖しげな笑み。

妊娠したことで精神的な変化があったのか、歳を経た魔女が男を魅了するかのようだ。

 

「まさか、そのために……?」

「いえっ、もちろんお腹の子を守るために修得したのですがっ。

 そういうときにも役立つって、今日、クレアさんからお聞きしまして……」

 

こちらが目を離している隙に、そんな話をしていたらしい。

いやもちろん、胎児の保護はいくらしても足りないので、その魔法を伝授してくれたのは大助かりだが。

 

なにはともあれ、寝室でそれを教えたシーアの意図は明白だ。

いままではお腹の子を気にしてマイルドに済ませてきたが、いまなら――と。

まだ妊娠してなかった頃のような、思う存分に生殖器をぶつけ合うようなセックスが、またできるのだと……

 

「っ」

 

生唾を呑む。

この子を、あのときのように蹂躙してもいいのだと言われて。

改めて、自分の妻となる彼女の肢体に見入る。

少し大人びた顔、大きくなった乳房、敏感になった肌に、また欲望を叩き付けていいというのか。

 

「本当に、大丈夫なのか……?」

「はい♡ 世界中の夫婦が証人だと……」

 

人間と妖女の夫婦となると、妊娠しても営みは絶えないのだろう。

胎児を保護した状態でまぐわう夫婦も少なくあるまい。

それで特に事故や副作用が報告されていないなら、安心してもいいはずだ。

 

「なら――」

 

欲望のまま伸ばそうとした手は、シーアを抱き寄せる直前に止まった。

 

「いや、万が一ということも……」

 

あるべき自制心だった。

自分はもう父親になるのであり、彼女は大事な身体だ。

決して、欲望のままに突いていいような身ではないのだ。

 

「旦那様……」

 

躊躇っていた主人の代わりに、シーアの方から抱き付いてきた。

反射的に腰を抱いて受け止めると、抱き寄せられた頭の横から、耳元に囁かれる。

 

「私だって気付いてます。なにか、お嫌なことがあったんでしょう?」

 

見抜かれていた。

それについて驚きもない。むしろ彼女に隠す方が難しいだろう。

 

「言いたくないならいいんです。ただ、旦那様のお気持ちを軽くできないままではいられなくて」

「シーア、だからって……」

 

シーアはこちらの心中を察して、問い質さずセックスで晴らそうとしている。

しかし、妊娠する前ならいざ知らず、妊婦にそんな真似をさせるわけにはいかない。

 

「いいんです――いえ、こういう言い方は卑怯ですね。

 私が……我慢、できそうにないんです♡」

 

シーアはこちらの手を取ると、ふくよかさを増した胸に導いた。

ふわりとした感触が右手に広がり、自然と指を乳房にかぶせる。

見上げたシーアの目は、色情に濡れていた。

 

「妊娠して以来、旦那様はお優しくて……私に無理のないよう、気を遣いながら可愛がってくれて……♡ 嬉しいんですよ? 気持ちいいんですよ? でも……」

 

熱い吐息と共に、彼女の熱情が言葉となって掛けられた。

 

「忘れられないんです♡ 私を孕ませてくださったときの、あの雄々しいセックスが♡

 蹂躙するような激しさで、完膚なきまでに果てさせられて……

 身も心も抵抗できなくなったまま思い通りにされてしまうのが、何よりも気持ちよくて幸福な♡

 あの、全身全霊が旦那様のものになっているような時間が……恋しくて、仕方ないんです♡」

 

シーアは欲求不満だったのだ。

そこまでは言わないにしても、気を遣われたセックスに不完全燃焼を覚えていたのだろう。

お腹の子を守る防護魔法を修得したのも、蓄積した不満足を解消するためでもあったのだ。

 

「それとも……旦那様は、ご不満じゃないんですか?

 私のこと、前みたいに、気が狂うほどイかせて支配したくないですか?

 一度孕ませた女はもう……そういう対象じゃ、なくなっちゃいましたか?」

 

誘惑の言葉に織り交ぜられた不安の声に、胸を打たれる。

シーアからすれば、ニナやユスティネに続いて、クレアまでもが、藤次と近しくなっている。

一番の女である一方で、一番に『古い女』であるという不安もあったのだろう。

彼女がそんなことを思っているのだとしたら――

 

「そんなわけ、ないだろう……っ!」

「んんっ♡」

 

シーアのうなじを掴むようにして顔を引き寄せ、唇を奪う。

 

「ぢゅっ♡ んっ♡ ぷあっ♡ あっ♡ ちゅぅっ♡」

 

唇を甘噛みして、舌を強引に侵入させる、貪るようなキス。

妊婦として気遣うようになってからは、あまりしてこなかった獰猛なキスだ。

一心不乱のオーラルセックス、腕に抱いたシーアの身体が火照っていくのを肌で感じる。

 

「ぷぁ……っ♡」

 

やがて唇を離し、間近で見つめ合う。

 

「しつこいようだが……本当に、大丈夫なんだな?」

 

最後の確認であるという念を込めると、シーアは濡れた瞳で見詰め返す。

その瞳は――魔力の発光に染められていた。

 

「はい……()()()()()()()()()()()()()♡」

 

誘惑(チャーム)』だ。

 

以前デートしたときにも、されたことがあった。

あのときはこちらの身動きを封じられ、シーアに責められるという貴重な体験だったが、今回はその逆――

 

「近頃は調子に乗ってる私に……旦那様の力強さ、思い出させてください♡

 私が奴隷なんだってこと……この身体に、改めて思い知らせてくださいませっ♡」

 

最近は聖母のような表情しか見ていなかった。

しかしいまは、主人に犯されることを待ちわびる、メス犬の顔。

そして、『誘惑』を駆使してまで自分を犯させようとする、業の深い妖女の顔だった。

 

 

 

 

「んおっ♡ ぢゅぼっ♡ おぐっ♡ ぢゅるるっ♡ んぉぉうっ♡」

 

開幕からすぐ、シーアの口内に逸物を突き入れていた。

『誘惑』で酩酊した頭がそうさせた。

 

シーアはベッドの上で仰向けになり、喉を大きく反らして口内から喉を水平にしている。

藤次は床に立ち、ベッドの縁から虚空に出たシーアの顔を掴んで、口内に怒張を挿入している。

見下ろすのは、仰け反ったシーアの顎と首筋と揺れる乳房――リバースフェラチオとも呼ばれる、過激な口淫だ。

 

「おお、いいぞっ。この角度からするのは初めてだけど、なかなか気持ちいいじゃないかっ」

「ぢゅぼっ♡ んぼぉっ♡ おぶっ! お゛ぉ~~~っ♡♡♡」

 

顎を掴んだ手を前後させ、シーアの口内に抽迭を繰り返す。

そんな強引な責めをされても、シーアは藤次の腰に腕を回して受け入れていた。

喉奥を刺激するたびにビクビクと身体が震え、すっかり豊満な部類になった胸がふるふると踊る。

 

「いいのか? お前も気持ちいいのかシーアっ! こんな、金玉が顔に何度もぶつかるようなイラマチオされてっ、感じてるのかっ!?」

「ぉぼっ♡ お゛ぉっ♡ んぶぅっ♡ ぢゅるるるる~~っ♡♡♡」

 

シーアは答えられない。

ただ藤次の腰にしがみつき、首を縦に振って、頷くと共に肉棒へ快感を与えてくる。

 

「そうかっ、ならこのまま胸を揉んだらどうなるっ? どうなるんだっ!?」

 

仰向け状態で口淫をしているシーアの乳房は、腕を下ろせば揉める位置にある。

シーアの胸には目隠ししても分かるほど触れてきたが、この角度から指を食い込ませるのは新鮮だった。

 

「ひゃうっ♡ あひぃっ♡ だんなしゃまぁっ♡」

 

乳房を揉まれたことでシーアがさらに感じたようで、ついに肉棒を口から離して身悶える。

 

「なんだ、もう限界か?」

「ちがっ、違うんでしゅっ♡ いま、おっぱいが♡ こんな触られ方、したことなかったからっ♡ しゅごく、敏感でっ♡ ひゃぁぁうぅぅっ♡」

 

そう訴えるシーアの顔には、額から口にかけて巨根がべったり張り付いていて、表情がよく見えない。

しかし声音や口元からして、新しい悦楽を見出して耽溺しているのは確かだった。

 

「そうかそうか、お前の身体には、まだまだ楽しみ方があるみたいだな……っ」

 

ほくそ笑みつつ、イラマチオはここまでにしておく。

防護魔法でお腹は保護されているが、呼吸困難は別問題だろうからだ。

代わりに、シーアの頭上から覆い被さるような形で、彼女の乳房に吸い付く。

 

「んあああぁぁぁっ♡ これっ♡ ひゃうぅぅっ♡」

 

シーアの視界は、きっと男の胸板と腹筋で覆い隠されているだろう。

見えない胸元では、藤次の五指と口が、乳房と乳首を蹂躙している。

普段とは視覚的な上下が逆なせいか、平衡感覚が狂い、浮遊感のある陶酔をもたらしていく。

 

「はぁっ♡ はぁっ♡ はぁ……っ♡」

 

ひとしきり胸でイかされたシーアは、ベッドから転げ落ちそうな姿勢で脱力していた。

そんな彼女を抱き上げて、ベッドの真ん中に寝かせる。

メイド服の胸元をはだけ、頬を紅潮させた彼女は、自ら両足を開いて下着を晒す。

 

「旦那様♡ きて、来てくださいっ♡ 私にこの子を授けてくれたときみたいに、思いっきり♡」

 

いつのことだったか、激しく突きながら「妻になれ」と命じた日を思い出す。

確かにあのときは、支配的な主人として振る舞い、理性をかなぐり捨てて腰を振ったものだ。

そのときと同じようにして欲しいと願う彼女に、答えずにはいられない。

 

「本当に、大丈夫なんだなっ? 俺だって、我慢してたんだぞ……っ」

 

シーアの前で膝立ちになり、忙しなくベルトを外し、痛いほど張り詰めた逸物を取り出す。

 

「お前の中を、半狂乱になるまで掻き回すのをっ」

「はふっ♡ はぁぁ♡」

 

脅すように問いかけると、シーアは両頬を押さえて震え上がる。

下着をズラして露にした秘所は愛液を滴らせており、その様を見れば返事など聞く必要はなさそうだった。

 

「分かるか? お前に『誘惑』されたせいで、いつも以上に張り詰めてるんだ」

「ひうっ♡ 分かります♡ いつもより、おっきぃ♡ そんなに、太く、張り詰めて……っ♡」

 

まるで初めて目の当たりにする生娘のように、怯え混じりの目で凝視される。

根元を指でとり、先端を秘所に触れさせると、電気ショックを受けたように二人の体が震えた。

シーアはもちろん、藤次の方も鋭敏になっている。

 

「ああ、入れる前から分かるぞ……こんな状態で突っ込んだら、絶対に理性が飛ぶ。

 頭が真っ白になって、無我夢中で腰を振るんだ……お前の負担なんて考えないバカな男になってしまう」

「んぁぁぁっ♡」

 

先端を軽く秘裂に割り入らせ、引っ掛けるようにして外すと、シーアが嬌声と共に震えた。

フェイントを掛けるような焦らし一つで、愛液が噴き出ている。

 

「はい♡ 私も、分かりますっ♡ ぜったいおかしくなるっ♡ バカみたいに喘いじゃいますっ♡

 頭も身体もトロトロになって、ずっとずっと犯されたい女になっちゃう……っ♡」

 

自分の気が狂うことを体験から理解していても、歯止めが掛からない。

そうなりたい、一対のケダモノになってしまいたい――お互いにそうなのだと肌で感じる。

 

だから、無用になった理性など、気がつけば手放していた。

 

「っ!」

 

何度か焦らした後の不意打ちで、一気に最奥部まで貫いた。

 

「っっっっっ、ぁぁぁぁあああああ゙あ゙あ゙あ゙あ゙♡♡♡」

 

まるで処女を喪ったかのような嬌声。

大きく身体を反らし、顎を上げながらの絶頂。

挿入しただけで絶頂するどころか、気絶寸前まで上り詰めていることが見て取れた。

 

「っぐ」

 

それは藤次も同じことだ。

『誘惑』によって鋭敏になった逸物が、絡み付くシーアの膣壁を感じ取る。

いままでと比べても格段に気持ちよく、いつもと違った肉ひだの感触だ。

 

(先っぽに、クッションみたいな感触が……これ、防護魔法か?)

 

シーアの子宮口に当たる亀頭に、そこだけ薄いゴムを装着したような感覚があった。

胎児を保護している防護魔法の効果なのだろう。

つまり――遠慮はいらないということだ。

 

「はひゅっ♡ あっ♡ うそぉ♡ わたひ、いまぁ……っ♡」

「動くぞっ!」

 

いまは脳の言語野よりも腰を動かしたかった。

それも全力で、現世の全てから解放されて踊り狂うように。

 

「んぉっ♡ お゙っ♡ らめっ♡ おひっ♡ これっ♡ ちがっ♡ あひゅぅっ♡

 だんな、しゃまっ♡ いつもとっ♡ 感触、ちがって♡ んおっ♡ おっおっおぉぉぉ♡」

 

腰を叩きつければ打ちつけられるほど、シーアは獣じみた声で叫ぶ。

ベッドのスプリングによる上下の動きだけでなく、腰を回し、押しつける動きも加えながら抽迭を繰り返す。

 

「いぐっ♡ イってりゅっ♡ わたし、もうっ♡ イキっぱなしでしゅっ♡

 いぐっ、いぐいぐいぐいぐゔぅ゙ぅっっ♡♡♡」

 

シーアの膣が絶頂を繰り返し、搾り取るような圧迫感を連続させる。

 

(なんだ、シーアの膣内、まるで別人……っ)

 

もはや違う女を抱いているかのようである。

シーアと身体を重ねるたび、結合の噛み合わせが一致していくのを感じてはいたが、それとは違う。

 

「んああっあ゙ぁぁっ♡ だんなしゃまぁ♡ これっ♡ 私っ♡ お腹、おっきくなったからっ♡

 中の形っ♡ 変わってりゅっ♡ きゅんきゅんしたときの形、変わっちゃってるんですっ♡」

 

どうやら身重になるに連れて、膣内の状態も微妙に変化しているようだ。

ここしばらく奥を突くことはなかったし、逸物も『誘惑』により限界以上に張り詰めている。

それらの要素が、まるで初めて交わっているかのような新鮮さを生み出していた。

 

「ああ、まったく、お前は……っ!」

 

ぐん! と下から上へと角度を付けて突き上げる。

 

「んお゙ぉぉっ♡」

「妊娠中なのにっ、前よりも淫らになって!

 あれほどっ、孕むまで犯してやったっていうのにっ、まだ足りないのか!?」

 

ずん! ずんっ! と、防護魔法をいいことに子宮口を様々な角度で連打する。

そのたびにシーアは嬌声を上げ、秘裂から潮を噴く。

 

「あぎゅうっ♡ らって♡ らってぇ♡ 旦那様がっ、淡泊になった気がしてっ♡ んぁぁんっ♡

 赤ちゃん、大事なのに♡ ひぁうっ♡ 幸せ、なのにぃ♡ 足りないって、身体が言うですっ♡

 旦那様にっ♡ んおっ♡ またっ♡ 雄々しく、屈服させられたいって♡ あっあっあああぁぁぁっ♡」

 

足を広げられ、上からプレスされながら、シーアは懺悔するように喘ぐ。

言葉の切れ目に抽送を受け、大小の絶頂を挟みながら、目の前の男を興奮させる言葉を止めない。

 

「まだっ、産んでもないのにっ♡ 二人目っ、欲しがってるんですっ♡ お゙ぉ っ♡

 旦那様にっ♡ あひゅっ♡ 孕ませレイプされちゃった体験っ♡ 忘れられないんでしゅっ♡」

 

両手で腹部を抱きながら、乱暴なピストンを無抵抗に受け入れ、喘ぎながら訴える。

目は悦楽に輝き、口の端からは涎が零れ、顔は淫らに紅潮していた。

 

性癖――ただでさえ淫らな妖女が、より乱れ狂うことになる、性癖。

シーアのそれが何なのか、いま分かった。

 

「お仕置きっ♡ お仕置きしてくださいっ♡ ひぎゅうっ♡ お仕置きれいぷっ♡ してぇっ♡

 シーアのっ、聞き分けのないおまんこっ♡ んぁぁっ♡ だんなしゃまのぉ、逞しいのでぇっ♡ 

 増長してる私にっ♡ ああぁぁっ♡ 奴隷のっ♡ 悦びぃ♡ 思い、出させてぇっ♡」

 

服従させられること、屈服させられること。

奴隷として全ての権利を奪われ、自分より強く優位なオスの支配下に置かれること。

肉欲の限りを尽くされたときだけ味わえる、心身を砕くような連続絶頂。

そんな悦楽の極地に膝を折り、一匹の雌奴隷に堕ちていく時間に、シーアは魅せられていたのだ。

 

「できない、なら――()()()()()()()♡」

 

『誘惑』が、追加された。

連続絶頂で虚ろになっているシーアの目が、再び魔力を宿らせて、こちらを魅了していた。

 

「っっっ!」

 

思考が飛んだ。

危険な薬物でも投与されたのではないかというほど、頭が真っ白になった。

 

(犯、す――この女、を――俺の、奴隷――っ!)

 

原始人に退化してしまったような頭が、獣欲に染められる。

 

『誘惑』の重ね掛け――最初の一度だけでも正気を失う誘惑を、二重に掛ける。

こうなってしまったら、人間の男はもう止められない。

満月を目にした狼男のように、人すら食いかねない精神状態へ陥る。

 

「あ……が……ぁ……っ」

「あぁ♡ 旦那様……なんて、お顔♡ すごい、私、取り返しのつかないこと、しちゃった♡」

 

シーアは背徳感の混ざった笑みを浮かべ、自ら体位を変える。

二重誘惑で放心している藤次の逸物から秘所を抜き、四つん這いに。

 

「膨らんだお腹が見えたら、遠慮しちゃいますよね♡」

 

シーアが尻と背中を向けたことで、妊婦の腹が隠れる。

目の前にあるのは、妊娠前と変わらない――丸いヒップ、腰の括れ、なだらかな背に掛かる銀髪。

そして何より、犯されることを待ち望む――妖女の艶笑だ。

 

「さぁ……旦那様、我慢しないで♡

 どんな目に遭っても、怒りませんから♡ 嫌ったりしませんから♡

 この、どうしようもなく淫らな奴隷に、相応しい扱いをしてくださいませ♡」

 

ここからは――誘惑禁止条例を回避するための、形式上のレイプではない。

 

()()ではなく、()()()でもなく、徹底的に犯してほしいと。

 

そんな、終わるまで撤回できないトリガーを、シーアは引いてしまったのだ。

 

「こ、の……っ、ド淫乱が!」

 

ぶちこんだ。

シーアの腰を掴んで、抜けていた肉棒を秘裂に滑り込ませるなり、乱雑に下腹部を打ち付けた。

 

「んあぁぁんっっ♡ きたっ♡ きてりゅぅっ♡」

 

途端に、シーアは顔をのけぞらせ、舌を突き出して絶頂した。

腰を引くと、肉襞の絡み付き具合に腰が震える。

鋭敏になった肉棒がもたらす快感に、口から涎が垂れるのを感じたが、拭いもせず腰を踊らせる。

 

「お前はっ、妊娠してるのにっ! 母親になるのにっ! そんなことばかり考えていたのか!」

 

片手は握り潰すような強さで尻肉を掴み、もう片方の手は甲高い音を立ててスパンキング。

相手がMだからというプレイの範疇ではない、苦痛を与えることを目的とするような強さで。

 

「んぎぃぃっ♡ しゅ、すみませんっ♡ ごめんなさいぃっ♡ んおっ♡

 せっかく、旦那様にっ、妻にしていただけたのにっ♡ あああぁぁぁっ♡ 身体がっ、欲深くてっ♡ あぎゅうっ♡ メスにされるのっ♡ 赤ちゃんいてもっ、止められないっ♡ 我慢できないんでしゅっ♡」

 

シーアはやはり妖女だった。

どんなに健気でも、謙虚でも、その奥底には妖女の過剰な肉欲が眠っていたのだ。

それが男を知り、夫にまでなってしまったことで、彼女もついに自重の限界を迎えたのだろう。

 

「だんな、しゃまぁ♡ 従えてぇっ♡ こんなっ、淫らな私をっ♡ 従えてくだしゃいっ♡

 だめなの♡ 私みたいな妖女はっ、男の人に、言うこと聞かせられないと、だめなんでしゅっ♡

 エッチなご褒美とお仕置きでぇ♡ 飼い慣らされないとっ♡ だめなのぉっ♡」

 

パン! パン! パン! と、盛大な衝突音が室内に木霊する。

 

「ふうっ、ふぅっ、っぐ、ふぅぅぅっ!!」

 

苛めるというより、いたぶると表現する方が適切なくらいの、激しい抽送だ。

藤次はそれこそ人型の獣のように、言葉を忘れて、半ばのけぞりながら、ひたすら男根を前後させる。

 

もはや逸物はシーアの膣内と融け合ったかのようで、正常な感覚が機能していない。

まだ射精は堪えられているのか、それとも既に射精してしまったのか。

いま勃起状態なのか、とっくに萎えていてそれでも突いているのかも、分からない。

はっきり言えるのは、意識を失うまで腰を振り続けるであろうということだけだ。

 

「おっおっおっおっ♡♡♡ 奴隷で、いいっ♡ 性奴隷でいいのぉっ♡

 あああぁぁぁっ♡ 旦那様のっ♡ 一番の、お気に入りになれるならっ♡

 あひゅあぅっ♡ 支配してっ、犯してっ、孕ませてっ、産ませてっ♡

 旦那様のためだけに生きるっ、雌奴隷でいいっ♡ してっ♡ してぇっ♡」

 

肉棒が往復する度に絶頂しているシーアは、顔を半ばシーツに埋めながら、半狂乱になって叫ぶ。

 

「ああっ、なれっ、してやる! お前は俺の女で、妻でっ、可愛い奴隷だ!」

 

腕を伸ばして、シーアの銀髪を生え際あたりから掴む。

 

「ひぁうっ♡ 髪ぃ……♡ 引っ張ったら♡ あっあっあぁぁ♡」

 

頭を後ろに引かれ、顔を上げさせられたシーアは、四つん這いの姿勢となって尻を揺らした。

女性にとって尊厳の一種である髪の毛を、乱暴に引っ張られる――

勢いでしてしまった藤次の脳裏に、「やりすぎたか」という懸念が過ぎるが、

 

「あへぁぁっ♡ 素敵っ♡ しゅてきでしゅっ♡ 旦那様がっ、犯してるっ♡ 私のこと蹂躙してりゅっ♡」

 

少し振り返ったシーアの横顔には、悦楽に染まった鮮烈な眼差しと、顎から首筋まで垂れた涎があった。

 

「ああ、お前はっ、なんてっ! エロくてっ、可愛くて、健気でっ、従順なんだ!」

 

馬の手綱でも扱うように片手で髪を引き、もう片方の手を伸ばして胸を鷲掴みにする。

 

「ひぎゅうっ♡ あひぁぁぁうううっ♡」

 

乳房を握り潰すような握力に、シーアは悲鳴に近い嬌声を鳴らした。

女体を扱うには乱雑すぎる行為、男が感触を愉しむためだけの手付きだというのに、シーアの膣は激しい痙攣で歓喜を訴える。

 

「最高だっ! お前は最高の女だっ!

 命令すればいつでも抱けてっ、ちょっと甘やかしただけで喜んでっ!

 モノみたいに犯してもイキまくって、何人も子供を産みたがるっ、男に服従するために生まれたような女じゃないか!」

 

思っても口にすまいと思っていた雑言が、止め処なく口を吐いた。

気まぐれに尻を叩き、腕を引き、背後から突く角度を変化させる度に、シーアの嬌声が音色を変える。

 

「いいのかっ!? こんな酷い旦那様でいいのかっ!?」

「いいっ♡ いいのぉっ♡ それっ、それなんですっ♡

 旦那様のっ、そういうお言葉っ、聞きたかったんでしゅっ♡」

 

この期に及んで、シーアは愉悦の極みに達したような声を上げる。

 

「わたしっ、もらいすぎですっ♡

 お優しさもっ♡ 雄々しさもっ♡ 気持ちよさもっ♡ 子供もぉ♡ 

 全部っ、全部あるっ♡ 私の幸せなことっ、全部あるぅっ♡」

 

肉欲もあるし、愛もある。

夫婦であり、主従であり、男女である。

爛れた夜があると同時に、プラトニックな愛も損なっていない。

全部ある。

 

奴隷と主人だから愛ではないとか、乱暴なセックスだから清くないとか、そんな潔癖は無意味だった。

お互いの持っている感情や願望を全て曝け出して、相手のそれを肯定できて、受け入れ合える。

そのことが嬉しくて、あまりにも幸福で、甘美だった。

 

「く、ぁ……っ」

「ぁぁぁぁぁっ♡ 出てりゅっ♡ 熱いの、あああぁぁぁ……っ♡」

 

一度目なのか何度目なのかも分からない射精感。

防護魔法に阻まれて子宮には届かなかった精液は、結合部から外へ溢れ出た。

その余韻を味わいながら体位を変えて、正面から見つめ合う。

 

「はふぅ♡ 旦那様ぁ……んっ♡」

 

恍惚とした顔を向けたシーアと唇を重ねれば、手足を絡めながら応じられる。

 

「まだだ……今日は、限界までするぞ」

 

『誘惑』の効果は薄れてきた。

しかし、そんなものが無くとも、止まれそうになかった。

 

「はい♡ いっぱい、これからもずーっと……」

 

お互いにゆっくり腰を動かし始め、再び夢中になってしまう前の一時に、シーアの唇が言葉を紡ぐ。

腹部を片手で撫でながら、もう片方の腕でこちらの首を抱き寄せて――

 

「私たちのこと、可愛がってくださいませ♡」

 

精根尽き果て、体力的な限界を迎えるまで――二人の動きが止まることはなかった。

 

 

 




ご一読ありがとうございました。

一気読みしてくださった方はありがとうございます。
そうでない方々は、筆が止まってしまい大変申し訳ございません。
奴隷編、このまま完結まで一挙更新です。


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幕間 とある人間女性の婚活5(前編)

 

 

 

その日は、木城クレアとアイナを招いての、食事会だった。

 

『すまない、急な仕事の遅れが起きてしまって。一時間くらいすれば片付きそうなんだが……』

 

スマホを手にしたシーアが聞いたのは、そういう残念な報せだった。

スマホは藤次のプライベート用であり、シーアたちへの連絡のため貸しているものだ。

仕事用のスマホから自分のサブ番号に掛けた藤次は、声音からして落ち込んでいる。

 

「はい、かしこまりました。どうか気になさらないでください」

 

シーアは優しげな微笑を浮かべている。

スマホを片手に持ち、もう片方の手は妊婦用のドレスに浮かぶ腹部を撫でている。

 

「遅れるからといって、慌てて脇見運転などなさらないでくださいね?」

『もちろんだ。本当に済まない、帰りにお土産を買っていくから――』

「はいはい、いつものお店でお願いします。

 クレアさんとアイナちゃんにも伝えておきますから」

 

主人には自分たちのことで気に病ませるより、お仕事に集中してもらいたいという声音だった。

 

「旦那様、遅くなるって?」

 

概要は察している様子で、ニナが尋ねる。

日本語の勉強のためダイニングテーブルに筆記具を広げており、服もメイド服ではない。

今日は『仕事』ではなくホームパーティなので、私服である。

黒地のカッターシャツに白いスキニーパンツという、スタイリッシュな出で立ちだ。

 

「ええ、少し遅くなるって。デザートは期待してもよさそうよ?」

「じゃあ、クレアにメッセしておくね。スマホ貸して」

 

ニナはシーアからスマホを受け取ると、手早い入力でクレアにメッセージを送る。

藤次が預けたスマホは、もっぱら現代機器への理解が早いニナが管理していた。

 

「返事来た。ユネもクレアの車で来るって」

「なら、到着したら始められるようにしましょう」

 

シーアは電話で中断していた料理を再開して、ニナは片付けと食器の準備をする。

 

ほどなくして、木城クレアとアイナの母娘が、ユスティネと共にやってきた。

 

「むー」

「もう、アイナってば、そんなにむくれないの」

 

不機嫌そうなお姫様は、アイナである。

 

(((可愛い……っ♡)))

 

シーア、ニナ、ユスティネは、幼女のふくれっ面に胸をときめかせる。

 

「ごめんなさいね、この子、藤次さんに会うのを楽しみにしてたのよ」

「お母さんっ」

 

クレアが説明すると、アイナは恥ずかしそうに声を上げた。

母の交際相手である藤次のことは、アイナも気に入っているらしい。

嗅覚で相性のいい男を選ぶ妖女の血が、母と同じ男を好ませるのだろうか。

 

「旦那様もそれほど遅くならないようですし、束の間の女子会とまいりましょう」

 

かくして、女たちのホームパーティが開かれる。

 

「まだ先の話だけど、皆で一緒に暮らすなら、ファミリー向けマンションに引っ越そうって話があるの」

「そういえば、旦那様もそのようなことを言っていました」

「あ、私それネットで見た。フロアを丸ごと借りるっていう多世帯向けの賃貸でしょ?」

「お嬢様の学校から遠くない場所があればいいのですけど」

 

彼女たちの関係は良好だ。

藤次を中心とする、シーア・ニナ・ユスティネという奴隷三人、そこにクレアが上手く溶け込んだ形である。

一夫多妻の家庭に新たな妻が加わる上で必要な信用獲得を、クレアがしっかりとこなしたからだ。

 

いま相談しているのは、シーアの子供が産まれた後のことも含めた新生活の計画である。

 

「私が旦那様と入籍してしまってよいのでしょうか? 同じ人間界出身のクレアさんの方が」

「そんなこと気にしちゃ駄目よ。妻はシーアさん、ニナとユネは引き続き主従で内縁の妻ね」

「クレアは?」

「私は同棲してるパートナーになるけど、藤次さんにはアイナの後見人になってもらうわ」

 

料理に箸を進めつつ、一夫多妻家庭の下書きを描いていた頃。

 

――部屋の呼び鈴が鳴らされた。

 

「旦那様、でしょうか?」

 

シーアは小首を傾げた。

一時間ほど遅れると言っていたが、それにはまだ早い。

そもそも自宅なのだから、藤次が呼び鈴を鳴らすはずもない。

とはいえ、思ったより早く帰れて、お土産が多くて両手が塞がっているという展開もありうる。

 

「私が出るわ。シーアは座っていて」

 

妊婦のシーアに代わって、ユスティネが席を立ち、インターホンを操作する。

 

「はい、西条でございます」

 

小さな画面に、玄関前の来訪者が映し出されると、ユスティネは挨拶しながらも小首を傾げた。

妙な反応に、シーアたちもユスティネの様子を窺う。

すると、インターホンのマイクが、来訪者の声を届けてきた。

 

『あなた……どちら様?』

 

なぜか、尋ねてきた客人が、そう聞いた。

本当に分からないというより、そこはお前の居場所じゃないと言うような含みがあった。

 

「この家の主人に雇われている者です。当家に御用でしょうか?」

 

剣呑な顔色の客人に、ユスティネが用件を促すと――

 

『っっっ――ここは、私の家よ!!』

 

 

 

 

彼女の旧姓は、西条という。

西条藤次の――元妻である。

 

ネットの一部界隈では、人間女性の恥と誹られている。

炎上の一件以来――彼女の生活は、悪化の一途を辿っていた。

 

『性病デマについての釈明は?』

『法的措置するって脅された者だけど、訴状まだ?』

『諦めないで! このまま炎上路線で行けば小銭稼げるかもしれないよ!』

 

SNSには、まだ残り火がくすぶっている。

ちょっと私事を投稿しただけで、誰かが見張っていたように過日の醜態を蒸し返す。

界隈における自分の印象は、『頭こじらせて不道徳を重ねた婚活おばさん』で固定されていた。

 

(アカ消し……やっぱりダメ! 何年掛けてフォロワー増やしてきたと思ってんの!?)

 

学生時代から続けてきたそれはもう己の半身に等しい。

そういう人間にとって、炎上は顔を焼かれるようなストレスであり、アカ消しは指を切り落とすかのようだ。

なまじ反響を受けていた頃もあるため、ストレスになると分かっていても、SNSを手放せない。

 

『このたびは結婚相談所○○をご利用いただき、ありがとうございます。

 まことに残念ながら、お客様のプロフィールを参照しましたところ、

 弊社規定による条件を満たしておられないため、サービスを提供することができません。

 入会の条件を再度ご確認の上――』

 

婚活は絶望的だった。

自分のSNSが閲覧可能な状態だったというサイトは退会して、新しく相談所に入会しようとしたら、お断りのメールが届いたのだ。

成婚率が高いと聞いていたが、入会条件が厳しかったらしく、女性でも年齢や年収でフィルターに掛けられていた。

他にも、専業主婦希望や無職などもアウト条件に明記されており、彼女はその大半に抵触していたのだが――

 

(どうせ人女を追い出して妖女ばかり集めて成婚率を上げてるんでしょっ! なんで日本で日本人が人種差別されるの!?)

 

彼女がしたのは、そのような主旨の長文抗議を送りつけることだけだった。

女性が年齢や年収で門前払いされることは以前からもあったが、妖女が溢れて以来、より顕著になった。

希少となった独身男性を争奪しているのは、女だけではなく相談所も同じ。

望み薄な女性を養分にするより、アラフォー無職の女を紹介されたという悪評で男性を遠ざけない方が大事なのだ。

 

しかし『人女より妖女の方が成婚率が高い』という劣等感が巣食う彼女の頭は、この件を人種差別として変換している。

 

(パートと、お父さんから振り込まれるお金を合わせて、最低支出を引いても……これだけ?)

 

経済面の不安もつきまとっている。

 

パートの給料を計算に加えてはいるが、それも解雇されている。

新しい勤め先は見つかっていない。いまは探す気力もない。

探せば見つかる仕事もあるが、スーパーで総菜を作ることさえ屈辱だった自尊心は、清掃や介護といった募集を選ばせない。

かくして、ほとんど蓄えを切り崩しながらの生活だ。

 

(このまま、こんな古い家で貧乏暮らしなんて……っ)

 

支出を減らして収入を増やせばいいのだが、それはできない。

元夫の潤沢な収入があった頃の浪費癖をいまだに引き摺っており、ごく普通の節制を『貧乏』と認識してしまっている。

本格的な職探しをしようとすると、売り込むところのない自分に気付き、直後に『妖女ばかりが優遇されるのでやるだけ無駄』と、逃げ口上で蓋をする。

だから結婚で人生逆転を狙おうとして、そのために服や美容に金を掛けようとする。

ギャンブルで貧乏を解決しようとするような、悲惨な悪循環だった。

 

(友達だと思っていた連中も、どいつもこいつも……っ)

 

誰かに話して楽になろうと、友人に会ったり電話をしたりもした。

面倒臭そうに相槌だけ打って話を切り上げるか、やんわりと「あなたが悪い」と指摘するかの二通りだった。

最近は、学生時代の友人からも、離婚する前の主婦友達からも、距離を置かれている気がする。

まるで炎上が起きる以前から、そうする機会を求めていたかのように――

大方、以前の自分がいい暮らしをしていたことに嫉妬していて、ここぞとばかりに陰口を叩いているに違いない!

 

(こんなの、まるで犯罪者みたいじゃない……っ)

 

一瞥した机の上には、不愉快な書類がある。

警察から届いた、威力業務妨害に関して罰金を支払えという主旨の通知だ。

最近はこういう法的な手続きが早く、SNS上でのことにも温情が無い。

つまり正真正銘の犯罪者なのだが、彼女の中では人気の無い夜道で信号無視した程度の認識となっている。

 

警察以外にも、示談を要求する者や、民事訴訟を宣言する者もいる。

全てに対応した場合、どれだけの金が飛んでいくことになるのだろう……

 

『だからSNSなんか止めなさいって言ったでしょう!?

 そんなことしてる暇があったらいい人かお仕事を探しなさいよ!』

『お母さんこそっ、なんで離婚なんかしたの!?

 だいたい浮気してたってなに!? 信じられない!』

 

母との関係も険悪になった。

父と離婚して、そこに娘の不祥事が重なり、母の気性は荒くなってしまった。

ちょっとしたことでヒステリックに喚く。

反論をすれば、いかに自分が母として主婦として苦しんできたか説いたり、お前は幼少期にこんな苦労を掛けさせたと昔話を蒸し返したりと、まったく理路整然としない。

 

ゾッとする。

そんな母の論法が――元夫と口論していたときの自分と酷似していたからだ。

母は……そして自分は……こんなにも、話が通じない人間だったのか。

 

『ねぇ……あんた、藤次くんと寄りを戻せない?』

 

互いに疲れ切るまで口論したあるとき、母が気味の悪い目で、そう言い出した。

 

父という大黒柱を失ったから、その代わりを立てようと言うのだ。

そこそこ稼いでいるあの男なら、自分たちに安心感をもたらすだろう。

あわよくば義母となる自分もその恩恵に預かり、老後も安泰――

そんな卑しい思惑が、老いつつある母の相貌に、不気味な半笑いを描いていた。

 

「……っ」

 

おぞましかった。

自分もまったく同じことを考えていたからだ。

親子だった。思考回路が似ている。特に悪いところばかり。

この醜く卑しい初老の女が、自分の将来像なのだと思うと、背筋が凍った。

 

何より屈辱なのは――この愚母が口走った解決策を、とっくに試みていたことだ。

 

『俺か? 実は、近いうちに再婚するんだ。子供も産まれる』

『そういうわけだから。そちらのことはそちらで何とかしてくれ』

 

先日の電話で、そう切り捨てられた。

 

元夫は自分に未練があり、やり直したがっているのではないか――

いつの間にか抱いていた身勝手な期待は、真っ正面から打ち砕かれた。

 

(最低っ、最低っ! 再婚ってなによっ、まだ離婚してからそんなに経ってないでしょ!?

 なのになんで再婚!? ちょっとは人の気持ち考えないの信じられない信じられない!!)

 

自分が婚活している事実を盛大に棚上げして、悲劇のヒロインのように顔を覆う。

 

重要なのは、元夫が自分より先に再婚相手を見つけたという点だった。

元夫と再び話すのなら、自分がより良い男と再婚して幸せを見せつけるときか、相手が自分との離婚ですっかり落ちぶれて「戻ってきてくれ」と懇願するとき、その二つしか認められなかった。

どちらにせよ、元夫が自分に『敗北』している絵図しか、思い浮かべていない。

これまで夫に依存してきた癖して、胸中では見下しているが故の妄想だった。

 

それが、再婚するという。

もう子供も産まれるという。

自分が神経をすり減らしながら婚活をしている間、あの男は早々に新しい女を見つけて、とっくに先に進んでいたのだ。

 

(なんなのそれ当てつけなの見せつけてるでしょ嫌みったらしいのよっ!!

 きっと私が電話するように仕向けてその話して悔しがらせるつもりだったんだ!!

 最低最悪なんて奴なの性格腐ってるどういう神経してんのクソクソクソクソッ!!)

 

無意味に壁を蹴飛ばしていたら、踵が入ったせいで壁が割れてしまった。

どうしよう? 壊れた壁の修理方法なんて分からない。

業者に頼む? いいやお金がもったいない。そんな無駄遣いはできない。

お父さんに――もう居ない。

 

「……っ」

 

壁に穴が開いたことをきっかけに、改めて自室を見回す。

脱ぎ散らかされた服、床に溜まった抜け毛やホコリ、色あせた壁紙、汚れた電灯。

みすぼらしい、薄汚い、狭くて貧相でまるでゴミ屋敷だ。

全ては掃除もろくにしないからなのだが、彼女の脳はこれをシンデレラ状態として変換した。

自分はいま、理不尽に、酷い環境に置かれているのだと。

意地悪な継母や姉に相当する悪人たちのせいで、こうなっているのだと。

 

(なんで、なんで誰も私を助けてくれないのっ!?)

 

自分はいまこんなに不幸なのだから、誰かが助けてくれるのが当たり前じゃないか!

シンデレラのように、少女漫画のように、恋愛ドラマのように、ネット小説のように――

報われないヒロインである自分の元には、それを一発逆転してくれる素敵な男性が現れるべきだ!

 

(なのにあいつときたら……っ)

 

『そちらでなんとかしろ』と切り捨てられた。

責任放棄だ、これまで妻として尽くしてきた恩を踏み倒す気なのだ!

 

(それに――)

 

元夫との通話を思い出す。

 

『おじさーんっ。早くやろーっ?』

 

子供の声が聞こえた。

声から察する年齢的に、あれが再婚相手なんてことはないだろう。

恐らく、電話したときに再婚を予定する相手が近くにいて、その連れ子の声ではないか。

そうであるなら、思うところはあるが、追及するようなこともない。

 

でも、本当にそうなのだろうか……

 

(やっぱり、あの子供の声って……()()()()()()()()?)

 

その発想に至ったのは、父の離婚だ。

父は妖女と浮気しており子供までいた。

その強烈な印象が、彼女の想像力を同じ方向性に走らせる。

 

(そうだ、絶対そうだ! 私と離婚する前から女がいて、子供まで作ってたんだ!)

 

トリックを解いた名探偵の如く、脳裏に稲妻が閃く。

 

(だから私と離婚したんだっ、適当な理由をでっち上げて追い払ったんだ!)

 

頭の片隅では、そうとは限らない、考えすぎでは――と言っている。

それ以外の大部分は、根拠もなく確信していた。

いわゆる女の勘だ。こういうのは当たると相場が決まっている!

 

(許さない……っ!)

 

勝手な確信が怒りを燃え上がらせる。

『恨む対象』を創出することで精神の安定を保つ――これまでの人生でついていた悪癖が、過去一番に仕事をしていた。

 

(直接、問い詰めてやる……っ!)

 

そうと決まればと服を着替え、化粧をする。

まるで武装でもするように、できるだけ魅力的に見せて、元夫が離婚したことを後悔するように。

 

離婚してからも美容に金を掛け、整形までした自分を見れば、あの男は見とれるに違いない!

そんな元夫に勝ち誇った笑みを浮かべる自分を想像するだけで、心が躍る!

 

(待ってなさいよ、西条藤次!)

 

目指すは、元夫と住んでいたマンションの部屋。

ちょっと前まで自分の家でもあったその場所に、いま誰が住んでいるのか、彼女は知らない。

 

 

 

 

もちろん――そんな彼女の事情を、シーアたちが知るはずもなかった。

 

「失礼ですが、部屋をお間違いでは?」

 

よって、インターホンを通じてユスティネがそう尋ねるのも、やむを得なかった。

 

『私、この部屋を借りてる男の――西条藤次の妻なんですけど?』

 

なにやら揚げ足を取ってやったような顔をしていた。

とはいえ、その発言を聞いたシーアたちは顔を見合わせる。

 

『元、ですけど』

 

仕方なく付け足したような言葉で、得心がいった。

 

「前の奥様?」

「うわ、これっていわゆる……家凸?」

 

クレアが怪訝な顔をして、ニナは聞きかじりのネット用語を口にする。

 

「…………」

 

そしてシーアはと言えば、神妙な無表情で、玄関の扉を見ていた。

 

「お引き取り願いましょう」

 

溜息を吐いたクレアが言うと、ユスティネも頷いた。

 

「申し訳ございません。ただいま立て込んでおりまして、主人が戻りましたらお伝えして――」

『いいわ、中で待つから』

「できません。お引き取りください」

 

ユスティネはきっぱりと断り、玄関扉に鍵が掛かっていることを確認した。

不穏な気配を感じたのか、アイナが不安そうな顔をするが、ニナが平然と笑う。

 

「あー、大丈夫。最悪、中に突入されたとしても――」

 

カチャン! と、玄関扉の鍵が開けられる音がした。

唖然とする一同は、同時に気付く。

 

(合い鍵!?)

 

元妻というなら、作って所持していても不思議ではなかった。

藤次も離婚後に置いていかせたはずだが、こんなこともあろうかとと隠し持っていたのだろう。

 

「お邪魔します!」

 

かくして扉は開き、元妻が強気な足取りで玄関に足を踏み入れると――

 

「っ!」

「きゃあ!?」

 

ユスティネが目を鋭くするなり、瞬時にその腕を捻り上げ、背中側に極めて拘束した。

 

「ほらね? 伊達に内乱してきてないし」

 

ニナが肩を竦める。

内乱時の徴兵で培った格闘術だ。

そうでなくとも、妖女の筋骨は人間女性と比べて明確な優位に立つ。

 

「ちょっ、痛い! なんなのアンタ! 警察呼ぶわよ!?」

「こちらの台詞です。暴れると折れますよ?」

 

ユスティネに見据えられた元妻は、血の気を引かせた。

同性から肉体的な暴力を受けたことが無い彼女と、内乱で同性と殺し合ってきたユスティネとでは、飼い猫と野生の虎だ。

 

なにはともあれ、元妻が大人しくなったので、改めてその姿を見る。

 

妙に……ちぐはぐなものを感じる容姿だった。

 

目元と鼻筋は美人なのだが、整形によるもののせいか他のパーツから浮いている。

ほうれい線と厚塗りの化粧から察して40歳前後、それにしては洒落た髪型だが、髪質は悪い。

服は着飾っているが、二十年ほど前に流行した意匠であると、女優のクレアは一目で見抜いた。

いまの自分に似合うものではなく、全盛期の自分に似合っていたものをコーデしてしたのだろう。

胸や足は出ており、色気のある女性を主張しようとしているが、出ている肌の色艶と張りが悪い。

手厳しく評価するなら――痛々しいまでの醜態である。

 

後は、家に乗り込んでくるという蛮行を鑑みれば、どういう人間なのかも察しがついた。

 

「ユネ、そのままマンションの警備員に――」

「いいえ」

 

面倒ごとを早々に片付けようとしたクレアだが、ここでシーアが席を立つ。

熟練の使用人のように丁寧な佇まいで、しかし半透明のオーラをまとっていた。

感情の高ぶりによる魔力光か、それとも見る者の幻覚か。

 

「私がお話します」

 

シーアはリビングから廊下を進み、ユスティネに取り押さえられている元妻の前に立ち、背筋を正したまま見下ろす。

メイド服ではなくマタニティドレスだったこともあって、立ち姿は貴族の婦人さながらだった。

 

「はぁ……アイナ、ユネと一緒にデザートを買ってきてくれる?」

 

止めるに止められないものを感じたクレアは、とりあえず娘をこの場から離脱させるのだった。

ユスティネは少し迷ったが元妻を解放して、アイナの手を取り、ニナと視線を交わす。

ニナは頷いた。「また暴れたら自分が対処する」という意味だ。彼女も心得はある。

 

「な、なんなの、アンタたち! 人の家でなにしてんのよ!?」

 

元妻はといえば、解放された腕を痛そうにさすりながら、感情のまま吼えている。

離婚したので彼女の家ではないのだが、そういう道理が無意味な精神状態だと一目で分かるので捨て置いた。

代わりに、シーアはリビングの一席を手で示す。

 

「お掛けになりますか? 元奥様」

「……っ」

 

元妻は、普通に考えれば退散するべきだった。

なにせ肉体的な暴力まで振るわれたのだから。

しかし、ここで一世一代の肝っ玉を発揮、挑戦を受けて立つようにリビングに踏み込んでいく。

 

婚約者と、元妻――

いまの女と、昔の女――

それが、いまここに、対峙する。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

元嫁、ついに精算のときです。
後編の散り様をお楽しみください。


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幕間 とある人間女性の婚活5(後編)

 

 

 

彼女の旧姓は、西条という。

西条藤次の、元妻だ。

 

「…………」

「…………」

 

彼女はいま、『懐かしの我が家』にいた。

離婚する前、夫と住んでいた、このマンションの一室だ。

 

その光景は一変していた。

 

もちろん間取りや家具の大半は変わっていない。

しかし、住んでいたからこそ、些細な変化が大きく感じる。

 

例えば、全体的に綺麗だ。

床はもちろん、テーブルの隅、ソファーの色艶、窓や壁や調度品が、明らかに輝いて見える。

他にも、テーブルを囲う椅子の数が増えていたり、花が飾られて品のある香りがしたり――

認めたくないが、自分が家事を担っていた頃に比べれば、雲泥の差だった。

 

(当てつけ?)

 

不愉快を覚えた。

ノータイムで被害妄想に直結するのはさておき、どこか見せつけられるような気分だった。

 

かつては自慢していた、そこそこ高価なマンションの部屋。

そこは自分が住んでいた頃より綺麗で、いまは別の女のもの。

対して自分は、質素な実家の汚い部屋住み――

 

そういう落差に気付いてしまったことで、劣等感を刺激されてしまったのだ。

 

「粗茶ですが」

 

と、手元にカップが置かれたことで、我に返る。

自分の知らないカップだ。茶葉は妖魔界のものなのか、新鮮だがいい香りがする。

お茶を置いたのは、ニナというらしい妖女だ。

十代にしか見えないが、妖女は三十を越えても十代にしか見えないようなチート種族なので、実年齢は分からない。

 

(女と子供がいるのは知ってたけど、こんな何人もいるなんて……)

 

正面には銀髪と浅褐色の、エキゾチックな美少女――シーアというらしい。

年齢以上に注視すべきは、彼女が妊婦であることだ。

テーブルを挟んだ対面席に行儀良く腰掛けており、小柄に反して風格を感じる。

たぶん彼女が、元夫の新しい妻なのだろう。

 

(というか、隣の人……木城クレア? いやまさか、芸能人がうちに居るわけ……)

 

テーブルの左側で見守っているのは、見覚えのある美女だ。

最近、炎上させてやろうとしたら返り討ちにされた女優と、よく似ている。

先ほど、ユスティネと呼ばれていた金髪美女と共に外出したのは、彼女の子だろうか。

 

「……っ」

 

ひとまず、容姿については『相手が格上』と認めざるを得なかった。

もっと言えば、この中で一番の年増で、顔面偏差値が低いのは、自分だった。

なぜそんなことを気にするのかと言えば、彼女にとって女の価値を計る主要な物差しだからだ。

 

故に、屈辱感を覚える。

人間女性の中では若く見える美人だった自分が、いま最も『低い』ということに。

自分と別れた夫が、自分よりも若く美しい女性を何人も囲っているということに。

 

婚活を始めた当初は、イケメン高収入を獲得して元夫に見せつけ劣等感を与えてやることを想像していた。

しかしいざ乗り込んでみれば、立場はまったく逆。

藤次やシーアたちからすれば、まるでその気のないところで、元妻は自傷行為めいたストレスを高めている。

 

「それで、ご用件は?」

 

張り詰めるような沈黙を前置きにして、とうとうシーアが口を開く。

元妻も小さく肩を震わせながら、唇を引き結んで睨み付けた。

 

ニナとクレアは――格闘技のゴングが鳴る音を幻聴した。

 

「あなたが、彼の()()()()奥さん?」

「はい。この通り、指輪を贈っていただきました。

 私のような若輩には、籍とこの子だけで十分でしたのに」

 

顔だけはにこやかに確認する元妻と、はにかみを浮かべるシーア。

言葉を深読みすると――

 

「お前は所詮(しょせん)二番目だぞ」

「あなたいい歳して指輪してませんね」

 

――だ。

再婚活動が絶望的な元妻は、口の端をひくつかせる。

 

「そう……彼の相手は大変でしょう? 家事とかお金のこととか口うるさかったり」

「いいえ、とても素晴らしい方です。きっと元奥様の頃からお変わりになられたのでしょう。

 ただ、何かと私たちを甘やかそうと、色々なものを買い与えたがるのは困りものですね」

 

アイツは女に家事をさせるしケチだぞ、結婚したら不幸になるぞ――

とても可愛がってもらってますが、あなたは違ったんですか? である。

 

強い――と、元妻は内心で冷や汗を掻く。

チクチク言葉による女同士の格付けに、まるで怯む様子がない。

 

「他の方々は?」

 

シーアから視線を外し、ニナとクレアに目を向けて、元夫との関係を問う。

 

「私たちは『内縁』、さっき出て行った金髪の子もね」

「一緒にいた子供は私の娘になります」

 

ニナは元妻への軽蔑を隠さず、クレアは仕事用の笑みで答えた。

 

「あなたの子?」

「そうですが、うちの子がなにか?」

 

怨敵を見るような目を向けられ、クレアは怯みこそしないが怪訝な顔になる。

 

「そう、彼とはいつから?」

「藤次さんとの交際について聞いているのでしたら、今年の夏あたりからですが」

 

クレアは嘘偽りなく答えたが、元妻は吐き捨てるように笑う。

 

「嘘つかなくていいから。あいつなんでしょ、父親」

「…………はい?」

「だから、あなたでしょ? あいつの不倫相手」

 

鬼の首でも取ったような顔で追及する元妻に、クレアとシーアとニナはそれぞれ顔を見合わせた。

 

「……ああ、なるほど。そういう考えで乗り込んできたわけですか」

 

察しが付いたらしいクレアは、呆れたように溜息を吐いた。

その目に同情と軽蔑を感知して、元妻は声を荒げる。

 

「なにとぼけてんの!? 人の旦那に手ぇ出しておいて!

 おかしいと思ったのよ急に離婚なんて! あんたがあいつと組んで嵌めたんでしょ!?」

 

話が見えないシーアとニナは、突然の怒声に驚くでもなく、ただ不可解そうに首を傾げた。

彼女らへの説明も兼ねて、クレアは再確認する。

 

「つまりこうお考えなのですね?

 あの子は私と藤次さんの子であり、あなたが彼と結婚している間に設けた隠し子だと。

 あなたが彼と離婚になったのは、愛人の私がそそのかし、邪魔な妻を追い払ったからだと」

「そうよ」

「よって離婚の際に自分が慰謝料を払ったことや、財産分与がなかったことも不当であり、

 自分にはそれを受け取る資格があるので取り立てに来たのだ――と」

「正当な権利でしょ!?」

 

元妻は頷き、シーアとニナは唖然とした目で元妻を見ていた。

こいつ本気で言ってのか? という意味での唖然だ。

 

「僭越ながら、とんだ勘違いです。

 私が藤次さんと交際を始めたのは、彼が指輪を外した後のこと。

 あの子は私の元夫との子です。相続問題などに備えてDNA鑑定も済んでいます」

 

DNA鑑定とまで言われて、元妻は目を丸くする。

 

「そもそも彼とあなたが離婚したのは、あなたの不義理と浪費が主因でしょう。

 嵌められただなんて、まるで他の誰かに罪をでっち上げられたかのように……」

 

その思考に呆れ果てたというクレアの態度に、元妻は顔を紅潮させる。

少なくとも、自分がとんだ勘違いをしていたことだけは理解した。

 

「だ、だからっておかしいでしょ!? 離婚してこんなすぐに女ができて再婚なんて!

 前から関係があったに決まってる!」

 

彼女のような人間に見られる傾向として、苦しくなると勢いだけで主導権を取り戻しに掛かる。

 

「私も、シーアさんたちも、純粋にご縁があったというだけのことです。

 私たちでなくとも、彼ほどの男性なら、周りの女性が放っておかなかったでしょう」

 

芸能界で揉まれたクレアに、まくし立てるだけの手法が通じるはずもなかった。

それはシーアやニナにも言えることである。

 

「で、あんた、他に何か用があるの?」

 

ニナが鬱陶しそうに問う。

 

「なによ、その言い方……」

「ここに乗り込んできた理由は早合点だって分かったでしょ?

 ならもう用は無いじゃない。ここからどう粘っても、ビタ一文も持ち帰れないと思うけど?」

「っっっ!」

 

淡々と指摘するニナに、元妻は言葉を詰まらせる。

怒りで顔は真っ赤になり、額に血管が浮いていて、いまにも憤死しそうな顔色だ。

 

「ニナ、止めなさい」

 

シーアは制止した後、改めて元妻と目を合わせる。

 

「ですが、元奥様から他にご用がないのでしたら、お引き取り願います」

「なんであんたにそんなこと言われなきゃなんないの!?」

「私が留守を預かる妻だからです」

 

元妻がどれだけ激昂しても、シーアが気圧されることはなかった。

むしろ相手に反比例して、目と雰囲気が冷たくなっていく。

 

「だから、ここは私の家でもあるって――っ」

「離婚されたのですよね? 法的にも道義的にも、あなたの家ではありません」

「そういう問題じゃないでしょう!?」

 

逆に元妻の頭は熱暴走を起こしていた。

クレアやニナの言うように、元夫の隠し子疑惑を追及して暴き、納得の行く金額を約束させるつもりだった。

それが勘違いだと分かったいま、詫びて退散すべきだが、引くに引けなくなってしまっている。

元夫の新しい女たちに返り討ちにされ、大人しく帰るということを、感情が選択させない。

そんな彼女が選んだ反撃は――

 

「だいたいなんでアンタらみたいな妖女が結婚なんかすんのっ!?

 子供が欲しいだけならヤることヤって妖魔界に帰ればいいでしょ!

 どうせアイツの年収いいからって『誘惑』でたらし込んだんじゃないの!?

 男なら誰でもいいならそこらのジジイでもいいでしょなのにいい男ばっかり横取りして――」

 

――罵詈雑言をぶちまけることだった。

 

蓄積していた妖女への憎悪が、ここで堰を切っている。

 

異世界からやってきた生殖したがりの原始人、

『誘惑』という魔法で狙った男を落とせるチート、

本来は自分たちというか自分のものになるはずのハイスペ男を盗んでいく泥棒猫、

自分のように罪のない人間女性を貶めていく、とにかく卑猥で卑怯で卑賤な異民族――

頭ではそれが不当な偏見だと分かっていても、心の奥底にはそういう感情が凝り固まっていた。

 

それを、ここぞとばかりに吐き捨てる。

もはや、ここに来た目的すら投げ捨てている。

ただ『妖女に言ってやった』という精神的勝利を持ち帰ることに、全てを注ぎ込んでいた。

 

「ここは日本なの妖魔界じゃないの! 日本の男が稼いだ金は日本の女に使われるべきなの!

 なのにあんたら妖女は男に媚びた顔と体で盗み取って! 泥棒よ泥棒! 迷惑なのよっ!

 だいたい男も子供も無理して欲しがるものじゃないでしょなに必死になってるの!?

 とっとと妖魔界に帰りなさいよいますぐいますぐ帰れ帰れ帰れ帰れっ!」

 

発狂とはこのこと。

シーアたちの沈黙を感じ取った元妻は、「勝った」と思った。

異常者に対する沈黙を、強者に言い負かされた沈黙として曲解した。

 

「……言いたいことは、それで全てですか?」

「なんていうか……救えないのね」

「ええ、悲惨ね」

 

しかし、シーアたちは誰も気圧されていなかった。

シーアは寒気のする無表情、ニナは軽蔑、クレアは同情混じりの溜息。

虫が前脚を広げて威嚇しているけど、触れたくないので叩き潰さない――という様子だ。

西条藤次が離婚届にサインした理由が、よく分かった。

 

「とりあえず、あんた自分がなに言ってるか分かってる?」

 

仕方なさそうに、ニナが淡々と説く。

 

「『男の稼ぎ=女のもの』で、『妖女が男と結婚するのは泥棒』で、けど『男も子供も欲しがらない』?」

 

元妻の支離滅裂に聞こえた発言を繋ぎ直して、ニナはこう結論付けた。

 

「あんたが欲しくて守りたいものって、居もしない旦那の財布だけなのね」

 

無我夢中の叫びに滲んでいた本性を暴かれ、元妻は背筋が凍る。

直視しかけた自分のおぞましさ――それを否定するために、手元のカップに手を伸ばす。

 

「ご自身が不法侵入していることをお忘れ無きように。

 その熱いお茶を顔に掛けようものなら傷害罪ですよ」

「そ……そんなつもりじゃ、ないから」

 

クレアの警告を聞いて、元妻は気まずそうにカップから手を離した。

 

「元奥様」

 

正確に呼吸を読んだシーアの声が、元妻の口を閉ざした。

 

「お気が済みましたなら、どうぞお引き取りを。

 そして、二度とこの家の扉を叩かぬように」

 

シーアは淡々と、幸い人語を理解する虫に窓を開けてやるように、退室を促す。

 

「っ! っ! っ!」

 

言葉に出来ない屈辱感が、奇怪な呼吸音だけを生み出す。

何か言い返そうとしても、言葉が浮かばない。

自分が元夫の金目当てで突撃してきた醜い人間であると、流石に自覚させられる。

それを省みるのではなく、どうにか「そうではないことにしたい」と必死になり、しかしその手段が無い。

 

「あの人に、電話してくれる?」

 

元妻の頭に浮かんだのは、元夫だった。

思考の正常さはさておき、追い詰められたときに頼る存在として、彼女は藤次を思い浮かべた。

もちろんそれは、慕っているというのではなく、甘えや依存に分類される卑しい感情だったが。

 

「電話、というと?」

「だから、私が来てるって連絡してよっ!」

 

シーアの確認に怒鳴り散らすと、シーアたちは耳元で放屁の音でも聞かされたような顔になる。

 

「ご自身で連絡は取らなかったのですか?」

「あいつ着信拒否してるの! 逃げてるのよ!」

「であれば、私たちが取り次ぐわけにはまいりません。

 それに、いまはお仕事が長引いておられるそうなので――」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!?」

 

椅子を蹴倒すように立ち上がり、元妻は感情のままに叫ぶ。

 

「そもそも全部あいつのせいじゃない! あいつが作った問題じゃない!」

 

今度は、全ての原因を元夫にあるものとし始めた。

自分の不徳から目を逸らすために、男を槍玉に挙げるという浅知恵に、全力を注いだ。

 

「あいつがつまらないことで離婚なんかするから!

 なんで私にだけ不幸を押し付けてなんで幸せになろうとするの!?

 どうせ若い女に乗り換えたかっただけでしょ別れなさいよあんな男!!」

 

元妻はテーブルを叩きながら泣いて喚く。

もはや彼女の願いは、元夫とシーアたちの間に、少しでも亀裂を走らせることだった。

自分が得をしないなら、得をしている者たちのそれを壊してやりたいという、惨めな熱意だ。

 

「どうせ家事とセックスさせる奴隷が欲しいだけなのっ!

 そもそもアンタたちみたいな歳の子と結婚して上手く行くわけないでしょ!?

 お腹の子供のことも含めてもっとよく考えて――」

 

『――黙れ――』

 

シーアの両眼が、魔力を宿して発光した。

言葉は日本語ではなく、妖魔界の母国語だ。

しかし、知らない言語であるというのに、言葉の意味だけは脳までダイレクトに飛び込んできた。

 

「っ」

 

元妻は椅子に座り直す。

正確には腰を抜かしたのであり、その先に椅子があった。

一瞬だけ魔力光を宿したシーアの眼を見て、それが銃口であるかのように震えている。

 

『誘惑』の能力から派生した眼力だ。

相手の精神状態に影響を与える眼を、精神的な威圧に用いたものである。

妖魔界だと親が子供を叱るときに使うくらい卑近なもので、人間でも胆力があればちょっと怖いだけだが、元妻にそういう気骨はなかった。

 

「あなたがどんな方かは、旦那様からも聞いておりますし、私たちなりに調べてもいました。

 一応、言葉を交わしてから人柄を推し量ったつもりですが――離婚した旦那様は正しかった」

 

一呼吸をおいて日本語に戻したシーアは、軍法裁判めいた面持ちで断言した。

小さく震える元妻は、自分がなぜこんな目に遭っているのか分からないという顔をしている。

それを見たニナは――純然たる慈悲で、溜息の後に口を開いた。

 

「はぁ……あんたが自分の不徳で野垂れ死にしようと知ったことじゃないし、

 だから説教してやる義理もないんだけど、知りたくも無い精神構造が見えたから教えてあげる」

 

故郷の内乱が起きる前は秀才と知られていたニナは、こう切り出した。

 

「あんた、『自分の人生は、最低限、幸福であるべきだ』って思ってるでしょ?」

「……当たり前でしょ?」

 

ようやく喋れるようになった元妻は、不可解そうに眉根を寄せる。

 

「そうね、幸福を追求するのは当たり前よね?

 でも私が言ってるのは、()()()()()()()()()()()()()()()って思ってるんじゃない? ってこと」

 

幸福を追求するのではなく、下限を設定している。

しかもその最低限を、得るのではなく貰うものとして認識している。

元妻の頭でどうにか理解できるラインを見極めながらの指摘だった。

 

「それが大間違いでしょ。無条件で得られる幸福なんてあるわけないじゃない。

 そんな認識でいることが許されるのは子供だけ。

 大人になったら自力で獲得するものだし、もっと言えば大人は子供に幸福を与える側なの。

 これを道理とする世界に、与えられて当然っていう幼児メンタルで生きてれば、そりゃあ虐げられてるように感じるでしょうし、結婚っていう成熟した大人のすることにも向かないでしょうよ」

 

ニナは、解読した元妻の心理に基づいて、彼女が抱いている不幸感の出所を明かしていく。

 

「おまけに、あんたの想定している『最低限の幸福』ってこうでしょ?

 貧しくなくて、辛くもなくて、周りは概ね善人で、仕事は上手く行って、趣味の時間もある。

 伴侶や子供は自分にストレスを掛けず、国や社会は極端な内戦状態でも経済危機でもない。

 知ってる? それ世界の平均値からすると、楽園みたいにパーフェクトな『すごい幸福』なの」

 

戦火を見て来た人間の闇が、ニナの瞳を過ぎる。

 

「そ、そんな最底辺と比べたって仕方ないでしょ!?」

 

それに対する恐怖ゆえか、元妻も咄嗟に抗弁した。

 

「そうかしら? あんたには必要な認識だと思うけど。

 10点満点の生活水準を、『マイナスではないだけの0点だ』って思ってるあんたには」

 

向上心から現状に満足しないことと、贅沢を求めて現状を無価値とすることは、別物だ。

 

「最低限を満たして1点、より裕福や成功があって2点や3点、SNSで見る海外セレブでようやく10点満点――ええ、そりゃ不幸でしょう。

 妥協しても楽園レベルになる高い『理想値』があって、現実がそれを下回っていたら『不幸せ』なんだもの。

 世間の上澄みや海外のいいとこ取りで構築された脳内理想郷を基準にして見る現実は、さぞかし地獄でしょうね」

 

他から見れば楽園のような環境に生まれても、常に楽園以上を下限にしているので、理想が高いほど世は地獄。

 

「これに加えて、幸福になるための手段が『与えられること』しかない。

 自分を幸福にしようと考えても、『与えられるための努力』しか積まない。

 自力で獲得する力を培っていないから、望んだものはなかなか得られず、不幸せ。

 誰かが誠心誠意で与えてくれた幸福も、望んだものと違えば『得られてない』から不幸せ。

 いま手元にごまんとある幸福も、理想値以下を不幸とする思考の前では、ああなんて不幸せ」

 

ニナはお茶を一口飲んで、スマホを持ち上げながら微笑む。

 

「幸福を追い求めながら、いまある幸福を無価値にして、自ら不幸感を量産していく――

 そんな手前勝手な悪循環に嵌まっている人間には、与えるだけ無駄よ。

 婚活なんかより、出家して仏教でも囓ってその迷妄を晴らした方が幸せになれるんじゃない?」

 

ニナがテーブルに置いたスマホには、元妻のSNSページが表示されていた。

 

「な、なんで……それ……っ!?」

「旦那様に許可もらって、SNSにも触れさせてもらってたの。

 仕事の役に立ちそうなものしかフォローしてない旦那様が、唯一フォローしていたプライベートの女性アカウント。内容を見てれば、元奥様だとお察しするには十分でしょ?」

 

元妻は青ざめた。

一連の炎上、自分の醜態が凝縮されたような一件が、筒抜けだったと知って。

 

「こんなので人の心が分かるとは言わないけどさ、あんたは本音をぶちまけるタイプでしょ?

 大方、炎上がきっかけで生活が下り坂になったから旦那様を頼ろうとしてたんだろうけど……

 これだけ生き恥を引っ提げて、よくもまあ復縁を迫れたもんね」

 

ニナは頬杖をつき、先ほどのシーアにも劣らぬ軽蔑の眼差しを元妻に突き刺す。

元妻が藤次と寄りを戻そうとしていたことも、把握されていた。

 

「人手はいくらあっても足りないけど、性根の腐った乞食はいらないの。

 あんたがこの家に戻ってくることなんて、審議される前から満場一致で否決されてんのよ」

 

元妻は何か言い返そうとしたが、先ほどシーアの眼光に感じた恐怖心が、口を閉じさせる。

下唇を噛むように歪んだ口元に、その葛藤が表れていた。

 

「申し遅れましたが、私は木城クレアと申します。

 奇遇ですが、先の炎上騒動でご縁があったようですね?」

 

追い打ちを掛けるように、今度はクレアが口を開いた。

 

「っ!? 木城クレアって……まさか本物っ!?」

「顔を見ただけで気付かれないようでは、私もまだまだですね」

 

芸能人として一言を加えつつ、クレアも冷たい微笑を元妻に送る。

 

「ロイヤーAIのログにあなたのアカウントがありました。

 無関係な他人だからと見逃していたのですが、こうなると、然るべき措置を執るべきでしょう」

 

交際相手である藤次の元妻が、SNS上で自分をキャンセルしようと動いていた。

胸に秘めておいたその件を、元妻は知らずに掘り返してしまったのだ。

 

「だ、だったらこっちだって! このことっ、ネットでばら撒いてやるから!

 マスコミとか、週刊誌とか! 木城クレアの熱愛報道! スキャンダルよ!」

 

苦し紛れに訴える元妻だが、クレアの微笑は揺らがない。

 

「どうぞ、無意味です。

 なにやら誤解なさっているようですが、私は別にアイドルというわけではありません。

 交際や結婚の報告でファンが離れるようなタイプの芸能人ではないのですよ」

「っ!」

 

強がりではないと、元妻は理解する。

 

元妻の認識では、女優やアイドルとは、容姿だけでバカな男どもを釣る娼婦紛いだった。

どうせ顔がいいから持て囃されてるだけですぐに姿を消すに違いないというか消えろ――と。

しかし昨今、そういう芸能人は淘汰気味である。

妖女の到来で美人の希少性が失われ、歌も演技も、よりスキルが重視されるようになったのだ。

そうしたクレアと比べると、容姿以外に取り柄がなかったのは、元妻の方だった。

 

「お話を聞いて、あなたは私たちにとって有害であることがはっきり分かりました。

 ですので、私が持つ資本と人脈の限りを尽くし、対処させていただきます」

 

そのとき、部屋の呼び鈴が鳴らされる。

クレアが席を立ち、来訪者を確認して、玄関扉を開いて案内した。

 

「例えば、シンプルに警察へ突き出すとか」

 

警官だった。

男性と女性が数人、その後ろにはユスティネとアイナの姿もある。

 

デザートを買ってきてと送り出されたユスティネだが、まさか本当にコンビニまで行ったりはしていなかった。

アイナを連れて、マンションの警備員に事の次第を伝え、警察を呼んでもらった運びである。

ただの痴話喧嘩なら民事不介入だが、

 

「住人の元妻が、不当に作られた合い鍵で家宅侵入して、妊娠中の後妻に詰め寄っている。

 再三退去するよう言っても退去しない」

 

となると、母子の身を案じないわけにもいかない。

どうか仲裁だけでもというユスティネの訴えは聞き入れられ、万が一に備えて付近のパトカーが向かわせられたのだった。

 

「け、警察っ!?」

 

元妻にとっては恐怖である。

前科と言えるものがある身だ。仕方なくやってきた警官も物々しく見える。

 

「なんでよっ!? なんで家に来ただけで警察なんか呼ぶのっ!?」

 

もはや元妻の声など誰も聞きはしない。

クレアは警官たちに事情を説明、ニナはちゃっかり録音していたことを伝えている。

 

「元奥様」

 

ただ一人、シーアだけが、いつの間にか元妻の背後に立って、肩に手を置いていた。

猛禽の爪のように指が食い込み、背後から殺気めいたものが叩き付けられる。

本能的に硬直した元妻に、シーアは平坦な声で告げる。

 

妖女(おんな)というものは、夫や子供を守るためなら、いくらでも鬼になります。

 守られることばかり考えている人女(おんな)には想像も付かないほど、徹底的に」

 

ゆっくりと、シーアの手が元妻の背中を押す。

微速で前進する重機に押されるように、元妻は警官の方へと進まされた。

 

「今後は、他人の幸福に薄汚い靴跡を残されませんように」

 

耳元で囁かれた元妻は、幽霊でも見たような顔で、女性警官に引き取られる。

 

「なんでなの……なんでこうなったの……私がなにしたの……」

 

ぶつぶつと呟きながら、警官に腕を引かれて部屋を出て行く元妻。

残していった言葉を聞いたニナは、ほとほと呆れたという顔で、額に手を沿えた。

 

「ここに至るまで、何を聞いてたんだか……」

 

反応しない元妻に、言葉が届いたかどうかは分からない。

いずれにせよ、彼女が取り戻したかったものを取り戻すことだけは、叶わなかった。

 

 

 

 

――かくして、元妻は家宅侵入の現行犯で連行された。

不起訴処分とはなったが、次に同じことがあればと釘を刺され、合い鍵も手放すことになる。

 

しかし、刑事は免れても、民事レベルで木城クレアが追撃した。

見逃されていたネット上での侮辱投稿を皮切りに、元妻の行動で違法性のある部分を、顧問弁護士を通じて追及。

もはや逆ギレする気力も失ったのか、元妻は謝罪文を提出、示談金の支払いと、西条家への接近禁止を受け入れた。

 

その後、藤次たちとの関わりを断った彼女だが、生活の改善は見られず。

相変わらず貯金を切り崩して美容へ注ぎ、財布となる男を求め、様々な婚活会場へ足を運ぶ。

 

――幸福になるための手段が与えられることしかない。与えられる努力しか積まない。

 

ニナから追及された気質はなにも変わらず、むしろ自らの正当性を証明しようとするように。

 

歳と職が原因で男を紹介されなければ、運営や相談員に食ってかかり、聞き飽きたような正論にまた反発。

パーティに参加すれば必死さを隠せず、狙った男につきまとい、妖女がいれば露骨に牽制して口論にまで発展。

男性からはストーカー被害を訴えられ、幾つかのパーティには出禁となり、業界のブラックリストに名を連ねた。

 

婚活以外は家に引きこもり、SNSでは開き直ったように妖女や男性への暴言暴論を繰り広げる。

その内容は、妖女や妖女を選ぶ男性を悪し様に語るもの。

どこか、妖女を選ぶ男性を減らし、人女を選ぶ男性を増やそうという思惑も嗅ぎ取れたが、世間がそれに応えることはなかった。

 

ネット民はインプレッション稼ぎの匂いを感じてか、打って変わって相手にしなくなる。

結果、注目を集めようとより過激な文言を並べたアカウントは、無事に凍結された。

SNSが半身も同然だった彼女にとって、その喪失感はどの程度であったか……

 

以降、彼女がどんな日々を送ったのかは、誰にも分からない。

 

 

はっきり言えるのは――彼女の婚活が実を結ぶことは、ついぞ無かったということだ。

 

 

もっとも、

 

「ただいまー。いやぁ、遅くなってごめん」

「お帰りなさいませ、旦那様」

「入れ替わりでパトカーが出ていったみたいなんだけど、何かあったのかな?」

「さあ? 特に変わったことはありませんでしたが」

 

西条藤次がそれを知るのは、もう少し先の話である。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

怒濤の説教回でしたが、元妻とはこれでお別れです。
ざまぁ展開の作り方、もっと修行が必要ですね。


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エピローグ

 

 

 

それから、月日が経って――

 

「あっあっあっあんっ♡ 藤次、さんっ♡ やっ、待っ♡ ふぁんっ♡ さっき、イって♡ ふぁぁぅっ♡」

 

藤次とクレアは、肉体関係を持つ仲になった。

 

女優の裸身が、自分のベッドの上で悶えている。

木城クレアが、結婚したい女性としてアンケート上位に名を連ねるような美女が。

服の上から見た印象よりも豊満で肉感的な肢体が、珠の汗を浮かべて火照り、自分の挿入で達している。

 

「やだっ、そんな目で、見ないでぇ♡ ああんっ♡」

 

彼女の腰を掴みながらの正常位。

ピストンの勢いで揺れる乳房と乱れる顔を恥じるクレア。

しかし抽送の角度を変えると、また背筋を反らして嬌声を上げる。

 

メディア上で彼女の姿を目にした男は、いくらでもいる。

妖女が溢れた時代、美人を目にする機会に恵まれている男たちでも、魅力的だと感じる女優。

それがいま、自分だけの女となって、自分の逸物を受け入れて喘いでいる……っ!

 

「クレア、そろそろ出したい。後ろからでいいか……っ」

「もう、お好きなんだから……♡」

 

限界が近付いてきたので頼むと、クレハは嬉々として応じ、体を反す。

その間にも結合部を離さず、挿入を維持したままだ。

互いの息が合わないのできない、体を重ねることに慣れた男女の動きである。

 

「後ろから、女を征服するような体位……♡」

 

豊かな乳房が強調されていた正面から、なだらかな背中と丸いヒップを描く背面に。

ベッドのシーツを軽く掴んで尻を上げ、片手で髪を撫でながら、こちらを振り返る。

紅潮したその横顔は、この後バックで激しく突かれることを知った上で、そこから得られる快感を待ちわびている。

女優の彼女だが、その表情が演技でないことは、おねだりするように肉棒を締める膣の動きが保証していた。

 

「っ!」

 

艶美な姿に我慢できず、尻肉を掴みながら腰を打ち付ける。

 

「ああぁぁんっ♡ いきなりっ、つよ……いぃっ♡ あぁぅっ♡ 音っ、立てちゃっ、やぁ♡ あああんあんっ♡」

 

クレアが甲高い声で喘ぎ、悶える度に揺れる尻。

その肉に指を食い込ませながらピストンを続けた。

激しく身体を打ち付ける音と水音が混ざり合い、互いの興奮を昂らせていく。

 

「あああぁぁぁっ♡」

 

一際強く腰を打ち付けると、子宮口を突き上げられたクレアが全身を痙攣させる。

同時に膣が強く収縮し、絶頂を物語る。

それでも動きは止めない。絶頂の一つや二つ、目指す快感の極地の階段に過ぎないからだ。

 

「んはぁっ♡ 藤次さぁんっ♡ イって、イってます、からぁっ♡」

「まだだよ、クレア。もっとだ」

「ひぅっ!? ああぅんっ!♡」

 

膣が痙攣している間もピストンを続け、大人の女性ぶった余裕の態度を奪っていく。

女優、母、大人、そういう彼女のプライドを一枚ずつ快感で剥がしていき、ただのメス一匹にするための連続絶頂。

この時間こそ、クレアという美女を完全に自分のものにした気分になる。

 

「ふぁっ、ああんっ♡ またっ、んっ♡ イっ、くぁぁぁっ♡ これ、ひぁうぅぅっ♡ だめ、んんっ♡ 止まらな、ぃぁぁぁ♡ イクのぉっ♡ 止まらな、ぁぁぁぁぁっ♡♡♡」

 

そしてクレアもまた、全てを忘れてただの女になるこの時間を愛していた。

絶頂に何度も押し上げられているクレアの膣は、次第に痙攣の度合いを激しくしていく。

それでも男根を逃すまいとするように締め付ける膣内は、普段の知的な彼女からは想像も出来ないほど貪欲だった。

 

「ふぁぁぁっ♡ おっぱい、またぁ♡ 後ろから、掴むのっ♡ んぁぁぁうっ♡ らめって、言っ♡ あっあっあぁぁぁイクイクからぁぁぁっ♡」

 

ハーフとはいえ、彼女も妖女だった。

妖女の血が半分なら淫らさも半分かと思えば、生粋の妖女に何ら引けを取らない。

性感帯は広く深く、男の無骨で力強い手指に最適な女体をしている。

前の夫と離婚して以来、一人娘のためストイックな女優業を送っていた体は、その反動が来たように藤次とのセックスに溺れていた。

 

「やぁんっ♡ んあぁぁっ、だめぇっ♡ まだっ、イクぅ♡ ずっとイッてるぅぅううっ♡♡♡」

 

絶頂に次ぐ絶頂でイキまくりながら膣を締め付けて藤次の射精感を促すクレア。

 

「っぐ!」

 

そんな女体に容赦なく、膣内に溢れんばかりの白濁液を放った。

 

「あっああぁぁあぁ~~~~~♡♡♡!!」

 

クレアは叫びながら全身を痙攣させ……くたりと脱力する。

 

(聞こえなかった、よな?)

 

かなり喘がせてしまったことに気付き、部屋の壁を見回す。

たぶん、大丈夫だろう。壁や扉の向こうに、他の住人たちの気配は無い。

 

ここは新居――人間男性と妖女たちの一夫多妻家庭に合わせた、新時代のマンションだった。

 

 

妖魔界の様式を取り入れた、少し洒落た外観のマンションだ。

8LDKや10LDKといった大家族向けの間取りが1フロアごとにあり、昨今の一夫多妻家庭に対応している。

都心のタワーマンションというほどではないにせよ、羽振りがよく見えるが、働き手が多数いる一夫多妻家庭なら現実的だ。

壁や窓の防音機能が特に優秀であることも、現代的である。

 

「ごめんなさいっ、寝過ごしちゃって! 朝食はいいわっ」

「そうだろうと思いまして、サンドイッチです。運転中はダメですよ?」

 

朝、予定より起床が遅れてしまったクレアが、ユスティネからバスケットを受け取っている。

以前の炎上事件があっても、クレアの女優業は多忙なままだ。今日も朝からどこかで収録らしい。

 

「旦那様? あまり『夜更かし』はいけませんと、昨夜申したはずですが?」

「いや、その……すまない……」

 

クレアを見送った後、笑顔で振り返ったユスティネに、藤次が詫びる。

自分ではなく彼女の方が熱心だったのだ――などと、朝食の席では言えない。

 

「クレアさんだけではなく、旦那様のお体も、ですよ?」

 

と、主人を気遣ってくれるユスティネは、相変わらずメイド服だ。

以前はクレアとアイナの暮らすマンションに家政婦として通っていた彼女だが、いまはこの広いマンションで一緒に暮らしながら家事をしてくれている。

 

「いいんじゃない? ママ、明らかに前より活き活きしてるし」

 

などと言って朝食を終えたのは、クレアの愛娘ことアイナだ。

クレアと事実婚の状態にある藤次にとっては、正式にというわけではないが、義娘となっている。

子供の成長は早いもので、前より背が伸びて、顔立ちも流石は女優の娘と言わしめるものになってきた。

 

「あ、でも妊娠は計画的にねっ? キャリアのこともあるし、ママにはもう私がいるんだから順番は最後でも――」

「ごふっ、ごほっ!」

「あははっ、パパってば動揺しすぎー」

 

連れ子から思わぬ釘を刺されて、むせかえる藤次である。

 

「あ、アイナちゃん? 近頃の小学校じゃ、そのくらいの話題は普通なのかい?」

「うん。クラスの子たちも一夫多妻な家の子が多いし」

 

自分たちもそうであるとはいえ、驚くべき時代だった。

 

「耳年増なのはこの際いいとして、その、ボーイフレンドとかはまだ早いからなっ」

「えー、でも私、結構モテるからなー」

「ダメだからなっ!」

「やだ、パパ可愛いっ」

 

なぜかアイナは嬉々としているが、藤次としては若年層の性の乱れが不安で仕方ない。

せめて中学、いや高校、いやいや大学生になってから――と、すっかりお父さんである。

 

「ふぁ~、アイナぁ? 旦那様にヤキモチされて気持ちいいの分かるけど、あまり遊ばないの」

 

欠伸をしながらやってきたニナが、アイナを嗜める。

はぁい――と、素直に言うことを聞くアイナ。二人のその様子は、姉妹を思わせた。

クレア・アイナの母娘と同居するようになって、最も関係が気安くなったのは、この二人だろう。

 

「もう、ニナ? だらしないわね。また夜遅くまで仕事?」

「まあね。翻訳業も楽じゃないわー」

 

朝食の席に遅れて来たニナを、ユスティネが迎える。

 

ニナはいま、メイドではない。

日本に来てから日本語を学び、いまは翻訳業に就いている。

以前は藤次の兄夫婦の家で、妊娠した兄嫁を助けていたが、彼女のスキルアップのために『転職』を決意した。

その時点で奴隷でもなくなっているのだが、外した首輪の代わりにチョーカーを常用しているのは、藤次との主従関係までは止めていないというメッセージだろう。

 

「いまは何の翻訳をしてるんだ?」

「児童文学。本当は学術書とか翻訳して故郷に役立てたいんだけど、それは経験を積んでからね」

 

ニナが翻訳業を選んだのは、人間界の本を故郷の言葉に翻訳して届けるためだ。

文化や学問を伝えることで、何かと後進的だった故郷を変えたいのだという。

故郷では奴隷となり、外国に出稼ぎに行くほどだった彼女は、新たな人生を歩もうとしているのだろう。

 

「もっと稼いでお金を貯めれば、その……安心して子供も作れるし……」

「ああ、俺もいまより稼がないとな」

 

気恥ずかしそうに期待を口にするニナに、藤次は迷いの無い顔で頷いた。

それを見てニナは嬉しそうに微笑むと、朝食に手を伸ばす。

仕事もするし母にもなる――ニナの故郷では『働く女』と『産む女』に二分されていたそうだが、人間界に来たことで『仕事と家庭の両立』という選択肢を知り、彼女はそれに挑戦している。

勢いで子供を作らず、しっかり前準備を重ねるところも、彼女らしい。

藤次もそんな彼女に歩調を合わせている。

彼女もまた、妻の一人なのだから。

 

「さて、そろそろ行かないと」

 

こちらも出社の時間が迫っている。

 

「行ってらっしゃい、パパ」

「ああ、行ってきます」

 

アイナにそう見送ってもらえるだけで感慨の極みだが、朝の幸せはまだ残っている。

食卓を離れ、とある一室に立ち寄った。

 

「シーア」

 

シーアの私室だ。

 

「ああ、旦那様。おはようございます」

 

朝食の席に姿が無かったシーアが、椅子に腰掛けている。

服の胸元が開いているのは、別に藤次を誘惑したいわけではない。

 

「ああ、おはよう。(とおる)はどうだ?」

「ふふ、ご覧の通り、食欲旺盛ですよ」

 

シーアの腕の中には、赤ん坊がいた。

名は透――男の子だ。

その後、無事に産まれてくれた、藤次とシーアの子だ。

 

「ああ、相変わらず美味しそうに吸っているな」

「もう、旦那様? そんな羨ましそうな顔をしないでください」

「おいおい、そういう意味じゃないぞ?」

 

妊娠が明らかになってから月日が経ち、シーアは人間界で出産した。

母子ともに健康、その後も健やかに育ってくれている。

眠るような顔でシーアの母乳を飲んでいるその姿を見ているだけで、脳内に温かい幸福感が広がっていった。

 

「沢山食べて、大きく育つんだぞ」

「男の子ですもの、きっとすぐ大きくなります」

 

邪魔をしないよう優しく我が子の頬を撫でると同時に、シーアの肩も軽く抱く。

妻と子を同時に抱擁するこのときほど、幸福を実感することはない。

 

「朝食は出来てるから、シーアもちゃんと食べるようにな」

「はい。ごめんなさい、ご一緒できなくて。いま動かすと、ぐずるものですから」

 

赤ん坊のご機嫌もあって、シーアは朝食を後回しに授乳を優先していたのだ。

こういう細々とした育児の苦労もあるが、家にはユスティネが常駐しているし、翻訳業のニナも基本的に在宅なので、その手助けを受けている。

経産婦であるクレアの経験も大助かりだし、アイナも弟として可愛がってくれていた。

おかげでシーアに育児負担が集中することもなく、一夫多妻家庭の強みを存分に活かせている。

 

「今週末にはお祖母ちゃんも来るんだったな」

「まったく、わざわざ妖魔界から週一で通おうとしなくても……」

 

言及したのはシーアの母、この子のお祖母ちゃんについてだ。

男の子だと聞いたときの、シーアの実家の悦び様は、それは凄まじいものだったという。

男児が希少な妖魔界においては慶事も慶事、地域の一大ニュースとなるそうだ。

 

「最初に会ったときは切れ者の女傑かと思ったら、孫を見た途端にデレデレだったものなぁ」

 

産後、この新居にシーアの母や祖母を招いて紹介した。

シーアの実家は武門というだけのことはあり、その母も祖母も褐色銀髪の武人然とした女性だった。

初めて土を踏む人間界にも臆することなく、藤次との挨拶も凜然としたものだったのだが……この子を一目見た途端に、その硬い表情は溶けていった。

シーアをして、「人生で初めて見ました」というくらいに。

 

(こんなに沢山の美人に愛されて、羨ましい奴め)

 

実母のシーアを始めとして、ユスティネやニナやクレアもまた間接的な母であり、アイナという姉もいる。

妖女だらけの家に生まれた男の子は、それゆえの苦労もあるが、可愛がられて育つという。

妖女の血を引いているから男前になることは確実だ。少なくとも、女に困ることはあるまい……いや、逆に女難の人生だろうか。

なんにせよ、健やかに育ってくれればそれでいい。

 

「旦那様、お時間が……」

「おっと」

 

幸せホルモンの分泌で時間を忘れてしまっていた。

名残惜しいが、お父さんとなったいま、仕事に手を抜くことはできない。

 

「じゃあ、行ってくる」

「はい――」

 

部屋を出る前に、改めてシーアと子供を振り返る。

授乳が終わって服を正したシーアが、子供を腕に抱いて見送ってくれている。

 

思えば数奇な出会いだった。

妻と離婚して、同僚の勧めで奴隷を雇ったら、姪っ子のような歳のシーアと出会い――

同郷のユスティネやニナが家に転がり混み、三人のご主人様になったら、女優のクレアと縁ができて――

いまでは彼女らに囲まれ、息子すら生まれた。

そして元奴隷だったシーアはいま、可愛い我が子を抱いて、自分を見送ってくれる。

 

「行ってらっしゃいませ、旦那様」

 

見送りを受けて、藤次は仕事に向かう。

 

今日のお土産は何にしようか――と考えながら。

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

クリスマスイブにエロ小説を一挙更新して夜勤の支度をする自分に
目から汗が出そうな今日この頃ですが、『奴隷編』完結です。

色々と迷走気味になった本編を追ってくださった皆々様に、
改めて感謝を申し上げます。

誘惑シリーズはまだ続きますが、引き続き不定期更新となります。
思い出したときにでも覗き見てやってください。


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養母編 清純なママが母性に隠した淫らな本性
第一話


 

 

まったく何の自慢にもならないが、太智の生い立ちは不幸である。

 

物心ついたときには、母一人子一人。

後に知ったところ、父親とは離婚したらしく、母は養育費を娯楽に空費していた。

当然のようなネグレクト状態だったことを振り返るに、離婚の原因は母にあったのだろう。

滅多にないけど探せばどこにでもある不幸せなご家庭が一丁上がりといったところだが、時代の変化が太智を救った。

 

――男性が極端に少ない異世界から来た、妖女たちの存在である。

 

妖女にとって『子は国の宝』だ。

おためごかしのような言葉に対する熱量は、地球人の想像を絶する。

 

人間界の存在を知った妖女たちが驚かされたのは、男性の多さもさることながら、児童への保護の甘さだという。

男性が希少なら子も希少、特に男児への虐待なんて、妖魔界では悪事の最たるものだったそうな。

 

だから妖魔界は、人間界に働きかけた。

なぜ被虐待児をしっかり保護しないのか、お前らがやらないなら私たちがやるぞ――

具体的に言うと、なんか魔法的な技術で動く飛行戦艦で制圧して政治の支配権を握るぞ――という勢いで。

 

いくらなんでも、他国の児童虐待を阻止するために戦争までしない?

言ったはずだ――想像を絶すると。

流石に侵攻とまでは言わなかったが、『軍も参加しての抗議活動』という演習めいたものが行われたという。

 

そんな豪快な外圧にテコ入れされた制度で、太智は実母から保護された。

制度上、母には心を入れ替えて育児能力があることを審査で証明すれば、太智を取り戻すことができたのだが……人間には向き不向きというものがあるようだった。

 

やがて、環境の整った施設で、自分の半生を客観視できる程度には成長した頃――

 

「私……太智くんのお母さんになりたいな?」

 

とある妖女が、太智の前に現れた。

 

(……絵本の妖精みたいだ)

 

第一印象は、そのように無邪気なものだった。

泉から出てきて、金の斧か銀の斧かと聞いてきそうな、金髪の美女。

緩くウェーブした長い金髪に、色白の肌と緑の瞳という、エルフ系の妖女だ。

背は当時の太智より少し高いくらいで、お母さんというよりは姉と思われそうな外見をしている。

 

(この人が、お母さんに……?)

 

経歴を考えれば、大人に不信感を抱く理由はいくらでもあった。

それでも――

 

「うん、いいよ」

「本当っ!? えっと、私、コレットっていうのっ。

 お母さんでも、ママでも、名前でも、好きに呼んでねっ」

 

あっさりと頷く太智に、目を輝かせて喜ぶコレット。

施設の人間が驚くほど、会ってすぐに決まった養子縁組。

 

簡単に決めた太智に、施設の人間は「本当にいいの?」と尋ねたが、太智は首を縦に振った。

養護施設も無限のキャパシティがあるわけではないから、無事に引き取られていく子供がいるのはいいことだ。

しかし、無邪気でも素直でもない子供だった太智が、二つ返事で誰かを信用したことが、不思議だったのだろう。

 

実は太智も不思議だったのだが、その理由に気づいたのは、正式な手続きが完了してからのことだった。

 

「太智くん、ママ頑張るからね。頑張って、太智くんのこと、幸せにするからね……」

 

そう抱きしめてくれたコレットに――自分は一目惚れしていたのだ。

 

 

 

 

 

 

――妖女の大半は、男を知らない。

 

旧時代のアイドルが『平凡』になりそうな美女ばかりでも、

豊富な母乳と安産を約束する肉感的なスタイルばかりでも、

多少粗雑なセックスでも快感にする性感帯があっても、成長と共に処女膜を失う天性の淫魔でも、

 

僅かにしかいない男と交われるのは、彼女たちの中でも勝ち組だけ。

その勝ち組すら、領内の数少ない男を巡る長い順番待ちに身を投じて、年単位の予約待ちを越えて一夜を迎えて、それでもお目当ての子供を授かるとは限らない。

右手やオモチャばかりを恋人に、淫らな肉体を活かせず、年齢ばかり重ねていく。

 

だから、そんな妖女たちが人間界に来れば、これが起きるのは必然だった。

 

妖女による人間男性の買春行為――俗称の一つを選ぶなら、『ママ活』である。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「んああぁぁぁっんっ♡ 来てるっ♡ あんっ♡ 男の人のがっ♡ ぁぁぁ中にっ♡ 私の中に来てるぅぅぅっ♡♡♡」

 

町の一角にあるラブホテルには、今宵も妖女の嬌声が響いている。

とりわけここには、妖魔界から観光に来た妖女と、今日会ったばかりの若い男が多い。

男がごろごろいる人間界に期待してきた妖魔界の喪女と、快楽と実益を兼ねて個人情夫をしている男の、ママ活スポットだからだ。

 

「すごいっ♡ 気持ちいいっ♡ わたしっ、男の子にっ♡ 気持ちよくされてるっ♡ こんなにっ、抱きしめられてぇ♡ 丁寧にっ、激しくっ♡ こんなっ、こんなのぉ♡ 知らな――あああぁぁぁぅぅぅっ♡」

 

太智の腕の中で、純朴そうな妖女の婦人が、涙目になって身をよじっていた。

妖魔界で男性と縁が無かった、平凡にやや劣る階層の妖女だ。

劣るとは身分などの話で、容貌は妖女――顔立ちは若々しく、身体はメスとしての性能を誇示するように肉感的で、性感帯は広く深く鋭敏だ。

それでいて、年齢は30代以上。張りと瑞々しさの若い妖女が、吸い付くような柔らかさを持った、妙齢の妖女だ。

 

「僕も、気持ちいいよっ。ママの身体、柔らかくて、いい匂いで。安心して、興奮するっ」

 

相手の女性をママと呼びながら、太智は正常位で腰を動かす。

もちろん血縁は無い。金銭のやりとりを前提とした『ママ』である。

 

「んぁぅあっ♡ 嬉しいっ♡ あふっ♡ できて、りゅっ♡ あぁんっ♡ 私でもっ、男の人っ、気持ちよくできてるぅっ♡」

 

妖女の両手と両足が、太智の身体を挟むように抱きしめる。

胸板に押し潰された豊乳が、素晴らしい感触を液体のように広げてきた。

肩に感じる二の腕や、腰を挟む太股まで、若い女とは別物のような柔肉だ。

その割に膣内を硬く感じるのは、彼女に男を受け入れた経験が少ないからだろう。

 

「いいんだよ、僕のことは気にしないで」

 

太智の胸に、背徳感を伴う熱が生じる。

見下ろした妖女の、大人の女性であることを感じさせる顔立ちと体型――

それこそ()()()()()()()()()()()()()()を抱いて、快楽に染めているのだと思うと……得も言われぬ昏い悦びが背筋を駆け上がる。

 

「ママの方こそ、いっぱい気持ちよくなって。僕が頑張って、イかせてあげるからねっ」

「ひぅぅぅっ♡ だめそんなのっ♡ 言っちゃだめっ♡ イっちゃうっ♡ 普通じゃないイキかたしちゃうぅぅぅっ♡♡♡」

 

固く抱きしめながら囁いてやると、男性に奉仕されていることを実感したのか、妖女は瞬く間に達してしまった。

指とディルドしか知らなかった性欲過多な肉体は、初めて味わう男性に堕ちてしまっている。

 

「はひっ♡ はひゅうっ♡ イっちゃ、たぁ♡ こんな、こんなにすごいなんて……いままで、知らなかったなんて……♡」

 

肉棒で膣奥をイかされた妖女は、未知の体験に頬を押さえて恍惚としている。

妖魔界の男性は、とにかく数をこなすため、愛妻以外へのセックスは雑だと聞く。

それに比べ、男女同数の人間界では、男性が女性を悦ばせるための手練手管が研鑽されてきた。

聞きかじった程度のテクニックでさえ、彼女のような平民妖女には、人生が変わるほどの快感をもたらす。

 

「愉しんでもらえた?」

「うん♡ もう、言葉が出ないくらい……私、あぁ♡ 女に生まれて、よかったぁ♡

 勇気出して、人間界に来てみて、よかったぁ♡」

 

彼女のような観光客は、自分のようなママ活男子に抱かれると、初回はいつもこんな様子だ。

 

「あんっ♡ ふぁぁ♡ おっぱい、触って、くれてる♡」

「アフターは大事だからね。ん――」

「ひぅっ♡ そんな、吸っちゃ♡ あっあっあっぁぁぁ♡」

 

左右に流れていた乳房を両手で集めて、愛撫しつつ乳首を吸えば、性感を受けた肢体が震える。

 

「はぅぅ♡ 幸せ、幸せすぎるっ♡ 私みたいな、女にぃ♡ 年下の、男の子が、こんなに、エッチに、甘えて♡ 夢みたい♡ いまでも、信じられないよぉ♡」

 

夢見心地で頭を抱き寄せる妖女に、太智は指先で乳首を転がしながら問いかけた。

 

「どう? 僕はまだできるけど、このまま『追加』で、体位を変えてもう一回する?」

 

事前の話では、『好みの体位で挿入して明確に達するまで』を一回と数えて、料金を払う約束だ。

達するまでとは、男ではなく女の方だ。射精がある男性と比べて誤魔化せそうだが、妖女なら誤魔化しようのない絶頂を迎える。

既にその一回は過ぎたが、追加料金を支払うならもう一度してもいいという提案だ。

 

「す、するっ♡ いくらでも払うからっ♡ あなたがイくまで、何度でもっ♡」

 

即答だった。

男に抱かれなければ味わえない絶頂を知ったばかりの妖女は、容易く理性をかなぐり捨てる。

 

「だ、だから……中に……中出しして♡ もし出来ても育てるからっ♡ 迷惑掛けないからっ♡」

「ごめんね、避妊はするって決めてるんだ。その代わり、たくさんイかせた後で、たっぷり出してあげるね」

 

太智の逸物の根元には、半透明のリングが装着されている。

コンドームの輪となる部分だけ残したようなこれは、尿道を通る精液に干渉する、避妊魔法具だ。

 

「さあ、今度は後ろからしてみよっか。うつ伏せに寝るのと、四つん這いと、どっちがいい?」

「あぁ♡ いい♡ どっちでも♡ どっちもっ♡」

 

妖女は避妊に残念そうな顔をしていたが、第二ラウンドを告げられると、途端に呼吸を荒くして背を向ける。

男性に屈服するようなバック姿勢には、何の躊躇いも無いようだ。

背を向けられたことで顔が見えなくなると、太智は口角を上げる。

 

(妖女って本当に……チョロいなぁ……)

 

初対面の、歳が倍近く離れた男子に、性欲のためにこうも媚びる。

こんな極上の身体を、安売りするどころか、金を払ってまで抱いてもらおうとする。

淫らすぎる肉体に逆らえず、矜持も体裁もなげうってしまう、哀れで可愛い、異界の淫魔。

 

「あ゙あ゙あ゙あ゙っ♡ きたっ♡ またおちんぽきたぁぁぁっ♡♡♡

 しゅごいっ♡ もうイクっ♡ しゅぐイっぢゃうぅぅ♡♡♡」

 

そんな妖女から、金と快楽をいただくために、太智は張り切って腰を打ち付けるのだった。

 

 

 

「ふぅ……」

 

その後、財布の中に紙幣を増やした太智は、夜の町を歩く。

場所を選べば性売買が行われる程度には、建物の密度が高い繁華街だ。

 

(悦んでくれるのはいいけど、有り金を全部渡そうとしてくる人が居るのは考え物だな)

 

この『バイト』に関しては、あまり貰いすぎないようにしている。

少なくとも、旧時代のパパ活女子よりは、ずっと謙虚な価格設定だ。

現代ではママ活男子の方が多いくらいだが、情報交換で得た彼らの相場よりも良心的だ。

 

(まともなアルバイトだって言ってあるし、あまり羽振りがよくなるとバレちゃうよな)

 

謙虚な価格にする理由は、欲に溺れないためだけではない。

いまも、太智が普通のアルバイトで汗を流していると信じ切っているだろう『彼女』を、傷付けないためだ。

時間を確認、伝えてある嘘のアルバイト終業時刻は過ぎている。

このまま帰宅すれば、ちょっとコンビニに寄ってきたと言えば疑われまい。

 

「あまり遅くなると、また心配しちゃうしな」

 

女の香水が残っていないか入念に確認しながら、太智は帰路につくのだった。

 

 

 

 

 

 

「太智くーん。起きてる? 朝だよ?」

 

いつものように、母の呼ぶ声で目を覚ます。

肩に触れる、柔らかくて細い指の感触――それが遠慮がちに太智を揺する。

 

「ほらぁ、お寝坊さんはおしまいだよ?」

 

鈴の鳴るような声と、妙に落ち着く女性の香り。

それが心地よくて、本当は起きているのに、ずっと味わいたいがために寝たふりをする。

彼女の養子になってから数年、毎朝のように味わってきた、一日の始まりを告げる時間だ。

 

「もう、寝たふりしたって無駄だよー?」

 

やはりバレているようなので、ゆっくり目を開く。

妙齢のエルフ美女が、優しい微笑みで、こちらを見下ろしていた。

緩くウェーブした金糸の髪に、やや童顔で可愛らしい顔立ちと――豊満な胸の膨らみ。

春物のシャツの上からエプロンを着けているのは、朝食の支度をしていたからだろう。

 

「おはよう、母さん」

「ふふ、おはよう♡」

 

エルフ系妖女であり義母であるコレットは、寝ぼけた息子を、今日も愛おしそうに眺めていた。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

――人間界と妖魔界が容易に行き来できるようになって、幾年月。

何が起きたかと聞かれると、男女の風紀が著しく乱れた『ピンクハザード』が代表的だ。

しかしその陰で、別の社会問題も発生していたという。

 

妖女による男子児童の誘拐――『おねショタ誘拐』である。

 

大枠ではピンクハザードの一例とも言えるが、『誘拐』にまで発展するとなると話は変わる。

妖女の中には男の確保に手段を選ばない不届き者もおり、妖魔界に連れ去り、故郷の女たちと代わる代わる……なんて事件も多発した。

 

うらやまけしからん! と、冗談ばかりも言っていられない。

 

多少は性に寛容な時代でも、男子児童への性犯罪や略取誘拐は立派な悪事だ。

ダイレクトな誘拐事件だけでなく、児童養護施設から男児を引き取ってその先で……という手口も横行したという。

児童を保護しろと訴えていた一方で、同胞がそういう悪事を働いていたというのは、妖女にとっても不名誉なことだ。

だから妖女たちは、こう考えた。

 

『悪人の手に渡る前に、私たちが保護しちゃえばいいじゃない!』

 

言うなれば、正攻法。

ろくでもない痴女を排除して、まともな妖女が引き取ればいい。

妖魔界の国々は、そういう国際団体を立ち上げた。

正々堂々と日本の国籍を取り、厳正な審査をクリアした妖女が、信頼を得た上で養母となる。

養母役となった妖女は妖魔界からの経済支援で育児に専念し、立派に育て上げるのだ。

慈善を旗印に税金をちょろまかす偽善団体とは違う、正真正銘の慈善事業である。

 

国を挙げた慈善事業の享受者と、妖魔界からやってきた聖母。

血縁は無いが、血よりも深い慈愛と信念によって成り立つ、母と息子。

それが、太智とコレットの関係だった。

 

 

 

 

 

 

「~~♪」

 

早起きしたおかげで、朝食から登校までの間に、寛ぐ時間ができた。

聞こえる鼻歌はコレットのもので、食洗機から取り出した食器を拭いている。

その後ろ姿を、太智は横目に眺めた。

 

背は平均的だ。

波打つ金髪が、体の動きに合わせて腰あたりで毛先を揺らしている。

エルフの長い両耳は形がよい。シャープな形状はエルフの中でも美形に類するという。

体が少しでも側面を向くと――背中に隠れていた豊乳が、途端に視界へ映り込む。

春物のシャツはゆったりしたもので、体型を強調してはいないのだが、誤魔化せない大きさだ。

ロングスカートに覆われた下半身も、たまに身動きで生地が揺れて、重量感のあるヒップの輪郭が垣間見える。

 

『本日は全国的に晴れ模様、風の強い一日となるでしょう』

 

居間のモニターに、天気予報の動画が映し出されている。

テレビではなく動画視聴用のモニターで、妖魔界の番組なども受信可能なことから、昨今はこちらが主流だ。

天気図の前で解説するリポーターはエルフ系で、妖女らしく起伏あるスタイルの美女である。

 

(でも、色気では、絶対に母さんが上だよな……)

 

同じエルフ系と見比べても、コレットはなんというか……人妻めいた肉感がある。

既婚者でも経産婦でもないのだが、日々の生活で垣間見える肢体が、あまりに色っぽい。

むちっ、たぷんっ――といった擬音めいたものを、見る度に幻視してしまう。

 

『では、全国のニュースです。

 〇〇県〇〇市の小学校で、女性教員が男子児童とわいせつな行為をしたとして――』

 

報道では聞き飽きたような不祥事を伝えている。

大方、妖女と児童のおねショタ案件だろう。現代の男の子なら数人に一人は通る道だ。

せいぜい、被害児童が性癖の歪みを抱えないことを願う程度である。

例えば、初体験があまりに気持ちよすぎて、似た女性しか受け付けなくなった――とか。

 

「はい、お弁当♡」

「ん、ありがとう」

「忘れ物ない? ハンカチとティッシュは持ってる?」

「持ってるよ」

 

家の玄関口で靴を履いていた太智は、見送ってくれる義母コレットに微笑する。

小学生じゃあるまいし――とも感じるやりとりだが、恥や苦に思うことは一度もなかった。

 

「今日もアルバイトしてくるの?」

「うん、いつも通り」

 

コレットは片頬に手を添えながら、心配そうに訪ねてくる。

 

「前にも言ったけど、お金の心配なんて要らないのよ?

 生活費は妖魔界の基金から潤沢に出てるし……」

「別に家計のためにしてるわけじゃないよ。個人的な贅沢のためだし」

「もうっ、それこそちゃんと言えばいいのに。お小遣いが足りないのね。

 待ってて、実家の伝手を使って足の付かない予算を組んでもらうからっ」

「嫌だよそんな闇の深いお小遣い」

 

この母、妖魔界ではそれなりの血筋の人物らしく、電話一本で多少のことを起こせる。

だとしても、妖魔界の国々が人間界の児童を保護するための基金だ。

自分以外のまっとうな子供たちのため、後ろ指さされない浄財のままにしておいてほしい。

 

「だってだってっ、太智くんに何かあったら!」

「闇バイトしてるわけじゃないよ? 漫画喫茶のスタッフだよ?」

「十分危険よっ! 最近は妖魔界からの観光客がたくさん来るって言うしっ、中には漫画喫茶なんて表向きの怪しいお店もあるって言うじゃないっ!」

「うちの店は普通だよ。下世話な勘ぐりは失礼だよ」

「でもでもっ、太智くん可愛いからっ、盛りの付いた妖女に誘惑されたりとか……っ」

 

おろおろし始める義母に溜息を吐く。

心配してくれるのはありがたいが、やっぱりコレットは少し過保護だ。

 

「妖魔界から観光に来る妖女なんて、人間界は男ばかりだから『デキる』って思ってるビッチばかりなのっ! ふれぶてしい態度でお酒を飲んで『兄ちゃんちょっとこっち来てお酌しろよ』みたいなこと言い出すのっ!」

「そんな漫画の酒場じゃないんだから……スタッフにそんなことしたら即警察だよ」

「ならバイト先の店長とか先輩とかが権力勾配に漬け込んでいけない残業を……っ」

「同僚は男ばっかりだよ」

「帰ってくる途中でどこかに連れ去られたりっ」

「人通りの多い道しか通らないから大丈夫だよ」

 

コレットの中で、この平凡な住宅地は西部劇のように治安が悪いらしい。

妖魔界の常識だと、年頃の男を供回りも付けずに町へ出すなんてあり得ないらしいので、妖女としては正常な心配なのだろう。

 

「やっぱり、護身用の武器くらい……」

「遅刻するからもう行くね」

「あ、うん。行ってらっしゃい。気を付けてね」

 

鞄を手にとって玄関を開くと、我に返ったコレットが笑顔で見送ってくれる。

太智の住居は小家族用のマンションで、部屋面積は慎ましいが設備は充実しているタイプだ。

コレットの養子になってから数年、不自由の無い暮らしを送らせてもらっている。

自分のするべきことは、心身ともに健康で、勉強をして、コレットに孝行することだろう。

そういう殊勝な決意を胸に秘めながら、今日も太智は学校へ向かう。

 

「太智くーん、スタンガン忘れてるよー?」

「持っていかないよ!?」

 

 

 

 

 

 

さて――コレットの心配は、強ち外れていない。

もちろんスタンガンが必要というわけではなく。

『漫画喫茶なんて表向きの怪しいお店』――というところだ。

 

「こうやって、白い玉をキューで突いて、番号順に端の穴に落としていくんです」

「こ、こう、ですか?」

 

駅前の、少し人通りから外れた路地にある、地下の漫画喫茶。

妙に目立たない入口に反して中は広く、設備も充実している。

業務形態は正真正銘の漫画喫茶だが――公然の秘密がある。

 

この地域における――『ママ活スポット』であることだ。

 

「上半身が少し浮いてるかな? こう、腰を直角に近い角度で曲げて――」

 

太智はスタッフではなく、普通の利用客だ。

ただし『ママ待ち』――女性に声を掛けられることを前提として、一人で寛いでいる。

ここで言うママとは当然、人間界の男を求めて財布にお札を詰め込んだ、妖女たちのことだ。

 

「はぅ……はぁ……♡」

 

今日、店内で太智と一緒に遊んでいるのは、エルフ系の妖女だった。

ノーラというらしい、妖魔界からの旅行者である。

どこにでもいそうな普通の妖女だ――つまり、美人で、スタイルがよい。

顔立ちや服装から受ける印象は少し地味で、年齢は30後半といったところか。

といっても妖女なので、若々しく魅力的だが、その妖女の中では相対的に魅力値が下がる。

羽振りがいいようにも見えないので、店内にいるママ活男子からすると、魅力的な客ではない。

 

「こんな感じ。やってみて」

「は、はいっ」

 

ノーラは初心な婦人だった。

いまも、ビリヤードのレクチャーをしている太智の手首や首筋に、興奮を隠せないでいる。

 

(男に胸を見られてるのに気づく女って、こういう気分なんだろうな)

 

指先や喉仏といった男性の部位は、性欲の強い妖女たちにとって、非常に刺激が強いらしい。

ごく普通に妖魔界で暮らす妖女は、男性と会って話す機会も稀で、生涯処女もざらにいる。

ノーラもそのタイプだろう。

こちらに声を掛けるときは緊張した様子だったし、いまも視線が露骨で下心が隠せてない。

 

「縁に近いときは、こうやってキューを立てて突き落とすように――」

「はうっ♡ こ、こう、ですか……?」

 

手を取って指導してやると、男性との密着で耳まで赤くなっている。

「こういうお店は初めてですか?」と聞きたくなる反応だ。

 

この初心な妖女――たぶん、妖魔界では真面目に働いているのだろう。

されど男日照りに耐えかねて、人間界に男を買いに来たのだろう。

言わば、一念発起して長年の童貞を風俗で捨てに来た男性客、その女性版だ。

 

「飲み物、とってきますね」

 

太智はナインボールに夢中なノーラから離れ、ドリンクバーに。

そもそもなぜ、一緒に漫画喫茶で遊んでいるかと言うと、フィーリングタイムのようなものだ。

 

旧時代にあったというパパ活では食事も有料だったりするように、本番に至る前の時間がある。

特に妖女は、男性を直接出会ったときの嗅覚で判断するという。

だから、ママ待ち男子たちは漫画喫茶などに集い、客の妖女が事前に品定めできる環境を作った。

 

店に来た妖女たちは、男を複数より取り見取りという天国みたいな環境に驚く。

そして、最も『子宮に来る』男に声を掛けて、雑談したり遊戯に興じたりする。

後は、双方合意の上で、店の近くにあるラブホテルへ――という寸法だ。

 

なお、漫画喫茶は出会いの場にされているだけで、ママ活に協力しているわけではない。

 

「よう、イッチ」

 

と、ママ活仲間の青年が、ドリンクを注いでいる太智に声を掛けてきた。

 

「掲示板を最初に立てた人みたいな発音やめろ。『イチ』だよ『イチ』」

「悪い悪い。しかし源氏名まで使うとは用心深いなーお前も」

 

青年もドリンクを補充に来たらしく、太智の隣に並ぶ。

太智のここでの通り名は『イチ』だ。身バレ防止の一環である。

 

「この七つの異世界を跨いだ情報社会、どこでバレるか分からないからな」

「いまどきママ活する男子なんて珍しくもないだろうに」

 

青年はそのような認識だが、デジタルタトゥーという言葉もある。

将来、どこか重要な局面で悪印象を抱かれないとも限らないので、個人情報は引き締めていた。

 

「それより、また冴えない熟女を救済してやってんのか?」

「失礼なこと言わない。純粋で可愛い人じゃないか。あと熟女って言うほど老けてないだろ」

 

青年からすると、太智が相手をしているノーラは、冴えない熟女だそうだ。

旧時代の感覚で言えば、柔和な顔立ちの美人女優で通る。肌も髪も瑞々しく皺も無い。

しかし妖女を見慣れた現代人は、同じ妖女との相対比較で、旧時代の『妙齢の美女』をババァと言い切ることがある。

 

「お前本当に熟……年上好きだな。

 他の奴に振られたマダム、みんなお前が拾い上げてるだろ」

「そんな気はないよ。僕は僕好みの女性をナンパしてるだけ」

「ならいいけどよ。あんまり安売りして相場下げんなよ」

「値段交渉は各自の責任だろ? まあ、気を付けておくよ」

 

手短に話を済ませて、太智はノーラの元へと戻っていく。

 

「あ、イチさんっ。ナインボール、もう一回勝負しましょうっ」

 

台に戻ると、ノーラが楽しそうにキューを構えている。

これがフィーリングタイムであることを忘れて、異世界の遊戯に夢中といった様子だ。

 

(可愛いなぁ)

 

自分よりずっと年上の、妙齢の女性なのに。

早ければ十代半ばで母となる妖女の基準で言えば、親子ほどにも歳が離れているのに。

それこそ、義母のコレットと同じくらいの年頃で、同じエルフ系で、体型も近くて――

そんな女性が、自分に抱かれたがっている。

 

 

――だから太智は、ママ活を止められない。

 

 

 

 

 

 

コレットは、マンションの部屋で一人、太智の帰りを待っていた。

 

コレットの仕事は専業主婦だ。

太智の養育費や生活費は、妖魔界の基金から出ており、コレットはその代表者として世話を担っている。

 

妖魔界には「母親になりたい」という願いを叶えられない妖女も多い。

不妊症という例もあるが、男性との巡り合わせに恵まれなかったり、肉体関係の機会があっても子供を授からなかったりした女性たちだ。

そのような妖女たちが、人間界に渡って男を漁るという不徳な道を選ばず、正攻法で養子を取った例が、コレットである。

 

人間界の児童保護プロジェクトにおいても競走が激しい『育児役』を勝ち取り、太智を引き取ったときは、涙が出るほど嬉しかった。

初めて『母さん』と呼んでくれた日のことは忘れられないし、いい子に育ってくれていることが何より誇らしい。

 

(大丈夫、よね……?)

 

日が沈んだ窓の外を眺めて、太智を案じる。

手元には、所属団体から届いた書類があった。

最近、人間界では若い男性による売春行為が問題視されており、保護者は子供の変化を見逃さないように――という主旨のものだ。

自分たちが保護している子供は、生みの親を失った経験から、安易に大人との関係を持ちたがることもあると。

 

(う、うちの子に限って……っ)

 

思わず、太智がそのようなことをしている姿を想像してしまう。

卑しい顔をした妖女に金を受け取り、ベッドに連れ込まれる息子を。

人間界に来た妖女が、あの子のように可愛い男子高校生にすることなど決まっている。

『誘惑』で自由を奪われ、騎乗位で跨がられて子種を絞られる哀れな姿を想像すると――

 

「っっっ!」

 

凄まじい激情が、胸の内から燃え上がって意識を焦がす。

それは親としての激しい怒りであり、我が子を辱められる恐怖であり、

更に言えば、自分のものだと思っていた息子が他の女に取られるという、母の嫉妬心であり――

 

「は……ぁ……っ♡」

 

太智の痴態を想像してしまったことで生じた、妖女の興奮だった。

 

(だめ、なに、考えてるの……っ)

 

必死に頭の中をリセットしようとする。

 

息子はもう高校生、すっかり『男』になった。

親の贔屓目を無視しても、顔立ちは可愛らしい部類に整っている。

そのくせ体付きは立派な男性となり、背は大きく、適度に細くて逞しい。

なにより……年頃のせいか、男の色気とでも言うべきものが漂っている。

 

(だめ、そんな目で見ちゃだめっ! 私は、あの子の、母親なんだからっ!)

 

自分の両腕を抱き、痛みを与えるように指を食い込ませる。

誇りある事業の一員として保護した子供に、決して向けてはならない感情だ。

たとえ血縁は無くても、自分は彼の母なのだ。

 

(落ち着いて……家族でも、つい体に視線が行っちゃう瞬間はあるって、聞いたし……)

 

異性の家族に対して、ごく一瞬だけでも異性を感じてしまうのは、長く暮らしていればやむを得ないことだ。そういう生き物として避けられない瞬間を忘れながら、どの家族も過ちを犯さず歳を食っていくという。

だから――これもきっと、一時的なものに過ぎないのだ。

 

(太智くん、も……最近、私のこと、見てるし……)

 

コレットが、年頃の太智に男を垣間見てしまうように――太智からも視線を感じる。

 

妖女の体は人間男性にとって刺激が強いという。

男の子の親になるに当たって、団体でも男性について勉強している。

つい薄着になって胸元の開いた服を着たとき、谷間をちらちら見られたりとか……

洗い物をしているとき、背後から背中やお尻に熱い視線を感じてしまったりとか……

そういうのは、ほんの一時だけ本能を刺激されたに過ぎず、心から交わりたいと思っているわけではないのだと。

 

だからこれは、まだ半分子供である彼が、本能を御しきれない時期だけの出来事なのだ。

だから――

 

「ん……はぁ……はぁ……っ♡」

 

太智の視線を思い出すたびに火照ってしまうこの身体も、いつかは正気に戻るはずなのだ。

 

それまで、それまでの辛抱。

いつか彼が大人になって、恋人を作り、結婚したりするまでの――

 

「…………」

 

コレットの目から、光が薄れる。

あの子が、太智が、私の手塩に掛けた彼が、世界で最も可愛くて尊い男の子が?

自分の手を離れて、どこの下女とも知れぬ未熟な女に惑わされ、自分を捨てていってしまう……

 

親ならいずれ迎える別れ――コレットはそれを予感する度に、心から何かが欠落するのを感じる。

 

(まだ……帰ってこない……よね……?)

 

少し荒くなっている呼吸を響かせながら、コレットは椅子から立ち上がり、寝室に向かう。

 

(忘れ、なきゃ……こんな、母親に相応しくない感情……忘れなきゃ……)

 

扉を鍵までしっかり閉めて、窓のカーテンも閉じて、スカートのホックを外す。

 

(忘れるため……だから……っ)

 

コレットの豊満な肉体を包んでいた服が、寝室の床に落ちていった。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 




ご一読ありがとうございました。

忙しかったですが、そろそろ更新再開です。
ヒロインは色々な候補の中からママに。
とりあえず前座で、脱税売春してる不良息子とそっちのママでした。


追記
また誤字報告をいただき、まことにありがとうございます。
誤字は無いに越したことはないのですが、孤独感に襲われずに済んでおります。


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第二話

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

太智はノーラを連れてホテルに入る。

先日も別の女性とセックスしていた、ママ活男子ご用達のホテルだ。

ホテルに来たことで、いよいよ意識してしまったらしく、ノーラは落ち着かない様子で室内を見回している。

 

「あの……お金、先に払った方がいいですよね?」

 

やがてノーラが口火を切り、財布からお札を取り出した。

素朴だが魅力的な妖女が、性の対価として現金を差し出してくる光景は、何度見ても慣れない。

 

「ありがとう。じゃあ前金として半分だけ受け取らせてもらうね」

「半分だけ?」

「うん。もしも内容が気に入らなかったら……例えば僕がすごく下手なセックスをしてご満足いただけなかったら、残りの半分はいただきません」

 

というわけで、ノーラの手元からお札を半額分だけ受け取る。

意地汚く財布には入れず、近くの小机に置いた。

 

「あ、あの……本当に、こんな金額でいいんですか? 桁を間違えてるんじゃ……」

「妖女さんにはよく言われるけど、間違ってないよ?」

「でもっ、妖魔界で男性と夜の機会を得るときは、本当にこの百倍くらいの心付けが必要でっ」

「あはは、妖魔界の男性は強気だね。でも、人間界の男は妖魔界の百倍多いって言うくらいだし、そう考えると百分の一で妥当な価格じゃない?」

 

そうなんでしょうか……と、ノーラは常識の崩壊で目を回している。

 

「それに、僕自身も気持ちよくなれることだしね」

「あ……っ♡」

 

じれったいのでノーラを抱き寄せ、顔を近付けて見つめ合う。

少し熟れた肢体は柔らかく、しかし男を知らないせいか緊張して硬くなっている。

それを解すために、ゆっくりと唇を近付けてキスをした。

 

「ん……♡ んちゅ……♡」

 

ノーラは目を丸くするが、抵抗はしない。

間違いなくファーストキス、それもセックスを前提とした濃密なもの。

 

自分が男性とこういうことができるなんて、思ってもみなかったという様子だ。

そのせいか、最初は戸惑い気味だったが、事が始まれば妖女の本能が勝ったらしい。

ノーラの手は太智の背を抱き、唇をついばむ太智の口に、同じことを返してきた。

 

「ちゅっ♡ れろ……っ♡ ちゅるっ♡」

 

どちらからともなく舌先を出し、お互いの唇や舌先を軽く舐める。

最初は遠慮がち、徐々に大胆に。

そして、やがて舌を絡め合わせ始めた。

 

「ちゅっ……ちゅるっ♡ くちゅ……♡ じゅるっ♡」

 

接触が深まるのは口だけではない。

ノーラの両腕が太智の背中を堪能するように動き、ロングスカート越しに太股を絡め、乳房を胸板に押し付けて擦る。

初めて女の肌に触れた男のように、ノーラは太智の身体に夢中だった。

気弱な性格も、失礼が無いようにしようという事前の決意も、若い男に抱きしめられた途端に瓦解している。

 

「ママ、落ち着いて?」

「っっっ♡」

 

太智が口を離して囁くと、ノーラの顔が赤く染まる。

はしたなく求めていたことを自覚すると同時に、ママなどと呼ばれたせいだろう。

 

「あっ♡」

「慌てなくても、僕の方からしてあげるから」

 

ノーラが動揺している間に、太智はベッドへ誘導して、背中を抱くようにして優しく押し倒す。

 

「あ、あの……わ、私……け、経験、無くて……上手く、できるか……」

 

顔は待ちわびているのに、言葉は躊躇っていた。

自分がなにをされるかではなく、不心得で相手の男性を不満足させないかどうかを恐れている。

 

「なら、僕がいっぱい気持ちよくしてあげるね」

「あぁ♡ お願い、します……」

 

覆い被さりながら優しく宣言すると、ノーラは恥ずかしそうに顔を反らしながら、無抵抗に仰向けになる。

 

(こんなに、熟れた身体なのに、初々しいなぁ……)

 

そういうところが堪らない。

年上なのに可愛らしい顔立ち、肉感的な肢体、なのに男を知らない。

純朴なのに性欲は強く、長年にわたって自慰を繰り返してきた身体に、男を教える。

ママ活を止められない理由のひとつだった。

 

(胸、母さんと、同じくらいかな)

 

頭の片隅に、そんな思考が浮かぶ。

コレットの、毎日のように見ているのに、触れることは無いし許されない、あの爆乳――

日頃から押さえ込んでいる彼女への想いを解消するように、太智はノーラに手を伸ばしていった。

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

同時刻――コレットは寝室のベッドで身悶えていた。

 

「んっ……あ……っ♡ はぁ……‥んんっ♡」

 

自慰をしていた。

コレットの細い指が、豊満すぎる乳房に深く食い込む。

数字にして100センチオーバーもある爆乳が、指を呑み込んでいるようでさえある。

 

「んはっ♡ んっ♡ あんっ♡」

 

もう片方の手は脚の間に入り込み、恥裂の隙間に指を踊らせている。

そこは既に濡れそぼり、膣口から垂れた愛液がシーツに染みを作っていた。

くちゅくちゅという水音が寝室に響き、口から零れる甘い喘ぎ声も高くなっていく。

 

(足り、ない……こんなんじゃ……っ♡ 男の子の手は、もっと……太くて、強くて……っ♡)

 

コレットは自分の細い指を恨むように、胸と秘所に指を食い込ませる。

自慰にしては強い刺激だ。

しかし、彼女が思い浮かべている男性の指は、この程度のものではない。

女のそれと違って、彼らの指は太くて長くてゴツゴツしていて、なのに器用に動く。

それが自分の肢体を掴み、愛撫し、敏感な部分を責めるところを想像して、コレットの指先に力が入る。

 

(太智、くん……っ♡)

 

コレットの脳裏に浮かぶのは、愛する養子である太智だった。

食事のときなどに目にする彼の指先を思い出すと、自慰のために描いていた妄想のリアリティが急激に増す。

身体は鋭敏になり、指先にはより力が込められ、走る快感が増していく。

 

「あっ♡ ああっ♡ あああんっ♡」

(太智くんっ、だめぇ……っ♡)

 

妄想の中で、コレットは太智に襲われていた。

自分の熟れた身体に辛抱できなくなった彼が、養母である自分にとうとう手を伸ばしてくる。

自分はそのことに驚き、必死に彼を制止しながらも、男の強い力に抗えず、乳房と秘所を責められるのだ。

 

「んあっ♡ あっあっあっ♡ ふぅぅぅっ♡」

(ごめんね……太智くんっ♡ ごめん、ねっ♡)

 

母にあるまじき、息子への劣情。

それを自覚しながら、どうしても他の男を思い浮かべることができない。

日々の暮らしの中で彼に男性を感じる度に劣情は蓄積され、コレットを自慰に走らせる。

オナニーの最中、脳内で勝手に演じられるのはいつも、あの素直な愛息子がケダモノとなって自分を求める光景だった。

 

「ふぐっ♡ うぅぅっ♡ んぁぁぁっ♡」

(許してっ♡ いまだけっ♡ こんな、いけないお母さんのことっ♡ 許してぇっ♡)

 

なんて浅ましい、なんて卑しい、口に出すのも憚られる劣情。

手塩に掛けて育てた息子に欲情するなど、母のクズそのもの。

そうと分かっているからこそ、背徳感が背筋を駆け上がり、コレットの性感帯を鋭敏にしていく。

 

「くはっ♡ あっ♡ っっっ、んぁぁっ♡ ふうっ、ふうっ、ふうっ♡」

 

せめて自分を罰するかのように、コレットは自慰の手つきを荒々しくする。

もう絶頂が近いことを悟りながら、決して手を緩めない。

妄想の中の太智は、こちらの罪悪感や抵抗など構わず、自分を絶頂に導こうとしているから。

快感を怖れる女の制止を聞かず、男の腕力で拘束しながら強引に果てさせようとしているから。

そうされたときにこそ、女が自分の意思では怖くて越えられない先にある大きな悦楽があると、知っているから。

 

「あっあっあっあああぁぁぁっ♡♡♡」

 

自分の妄想が、現実の自分とシンクロする。

そして――絶頂を迎えた。

 

「太智、くん……♡」

 

恍惚感の中で、コレットは声に出して太智を呼ぶ。

男性であれば賢者タイムに入るところだが、妖女は逆だ。達したことでスイッチが入る。

どれだけ清純に振る舞っていても、コレットもまた妖女、人間女性よりも強い性欲を秘めている。

太智がアルバイトから帰るまで、その劣情を秘める必要もない。

 

(まだ……時間、ある……太智くんが、帰ってくる前に……)

 

コレットは準備していた器具に手を伸ばす。

息子には間違っても見つけられないように隠し持っている、ディルドローターだ。

 

(こんな、気持ち……晴らしておかないと……っ)

 

この浅ましい本性が、彼に気づかれないように。

下手に欲求不満のまま態度に出てしまうよりも、綺麗さっぱり解消してしまうために。

これはそのために必要なことなのだと――言い聞かせるように。

 

(太智くん……いいよ♡ 私の中に、きてぇ……っ♡)

 

彼の肉棒を想像しながら、コレットは手にしたディルドを膣口へとあてがうのだった。

 

 

 

 

服を脱がせたノーラの身体に、太智は前戯を繰り広げる。

 

「ふあっ!? あっ♡ んっ……っく、ああんっ♡♡♡」

 

マシュマロのように白くきめ細やかな肌に、太智の指と舌が踊る。

ブラを外された豊乳の片方を愛撫しながら、もう片方を口に含み、同時に秘所への手淫も行う。

左右の乳房と股にそれぞれ異なる刺激を与えられたノーラは、驚きの混ざった嬌声を上げていた。

 

「あぁ……吸って、るっ♡ 本当に、男の子がっ♡ 私のおっぱい、吸って――んぁぁぁうっ♡」

 

男に愛撫されるというだけで、ノーラは夢見心地だった。

 

自分とは大きく異なるオスの指が、ただ膨れているだけだった乳房を楽しげに揉んでいる。

もう片方は当然のように口に含まれ、熱い舌が上下左右や円軌道で先端を弄んでいる。

そして何より、濡れそぼった淫唇と膣口に、巧みな手淫が繰り広げられている。

 

どれ一つ取っても、ノーラがこれまでしてきた自慰とは桁違いの快感と興奮だった。

 

「ママの身体、気持ちいいよ。もっと触れていい? おっぱい、吸ってもいいよね?」

「んぁっ♡ あっ、あぁぁぁっ♡ いいっ、いいです♡ こんな身体でよければっ、お好きに♡ ひあぅぅぅっ♡」

 

当初は鮮烈な快感に戸惑っていたノーラだが、僅かな時間で嬌声も甘くなっている。

同時に身体が痙攣し始め、膣口からは愛液が滴り落ち、太智の手を濡らしていた。

 

(こういう妖女さんの身体は、素直でやりやすいなぁ)

 

男を知らずに生きてきた妖女の肉体は、扱いやすい。

性欲は強いので自慰だけは散々しており、多少の刺激には怯えない。

それでいて男性に触れられた経験はなく、妖女の深く広い性感帯を男の力で刺激してやれば、経験したことの無かった鋭い快感に翻弄される。

最初こそ、予想以上に力強い刺激に抵抗を示すが、妖女の身体は容易に快感を拾い始め、多少の痛苦など頭から吹き飛ばしてしまう。

雑なテクニックでも大いに喘いでくれる、難易度の低い敏感ボディだ。

 

「乳首を吸われるの、気に入ってくれたみたいだね。エッチな声、もっと聞かせて?」

「ああっ!? そんなっ♡ ああんっ♡ あひっ、ひぁぅっ♡♡」

 

乳首に歯を立てながら強く吸い立て、膣内ではGスポットを指先で擦り上げる。

ノーラの性感帯は、あっという間に絶頂へと駆け上がっていく。

 

「あっ♡ ああぁっ♡ だめっ、もうっ……♡」

 

太智が膣壁を擦る度に、ノーラは腰を浮かせて快感を訴える。

直後、脳天まで突き抜けるようなオーガズムが、彼女の身体を駆け抜けた。

 

「ひぐっ♡♡ あ゙あ゙あ゙ぁぁあああぁぁっっっ♡♡♡」

 

ぷしっ、と愛液が飛沫をあげる。

がくっ、がくんっ! と、ベッドの上でノーラの身体が跳ね、豊乳が派手に踊った。

 

「はひっ♡ はぁっ♡ あっ、いまっ、わたしっ♡ イっ、イって……?」

 

ノーラは頬を紅潮させ、焦点のぶれた瞳で自分の身体を見る。

自分の肉体に走った絶頂の強さが、信じられないという顔だ。

 

「男にイかされると、違うでしょ?」

「は、はい……こ、こんなこと、いままで……はぅ♡」

 

ノーラは両頬を押さえて感極まる。

いままで自慰しか知らなかった妖女が、初めて男にイかされたときにする顔だ。

ママ活で幾人もの妖女を抱いてきた太智が、何度も見てきた顔だ。

 

「イってる顔、すごくエッチだよ。ママはエッチする素質あるかも」

「そ、そうです、か? 自分では――あんっ♡」

 

達した身体をゆっくり愛撫すると、ノーラが小さく嬌声を上げる。

一度イったことで性感が鋭敏になっていることが確認できた。

 

「これなら、本番に入っても大丈夫そうだね」

「ほ、本番って……っ♡」

 

太智がズボンのベルトを外し始めると、ノーラは次の展開を理解して息を呑む。

男性が脱ぐ様を見るのも初めてなのだろう。まるで初心な少女のように顔を赤くしている。

しかし、その表情に怖れや怯えは感じられない。ただ強い興奮を隠しきれずにいる。

つまり、淫乱な妖女の、期待の表情だった。

 

「っ!」

 

やがて太智の取り出した逸物に、ノーラは目を見開いた。

勃起した太智の男根は、ノーラが知っているディルドローターよりも、赤黒くて生々しい肉の塊だ。

 

(ほ、本物……大きい……大きく、なってる♡ わ、私で……私なんかで……っ♡)

 

男性が自分に勃起しているという事実に、嫌悪感は無かった。

妖魔界では下層階級だった自分に、格の高い女たちの顔色をうかがっていた自分に……

その女たちは数少ない男性との逢瀬を必死に待っているというのに、自分はその順番をごぼう抜きにして、殿方に求められている!

彼女の胸中たるや、硝子の靴を履かされたシンデレラさながらの、幸福感と優越感に満ちていた。

 

「怖かったり、痛かったら言ってね?」

 

太智はその肉棒を秘所に触れさせる。

くちゅり――と淫猥な音があがる。

 

「ひぁうっ♡」

「ゆっくり、進むからね?」

「……っ♡」

 

優しい声に脳が蕩ける。

男性にここまで丁寧な扱いを受けるなんて、妖魔界ではあり得なかった。

身体は勝手に、喜びに打ち震えている。

自分が女に生まれたのはこの瞬間のためだったのだと、心と体が同時に理解していた。

 

(やっぱりこの人も、妖女なんだなぁ)

 

そんなノーラの、誰の目にも明らかな淫乱さを確認して、太智はほくそ笑む。

苦労して人間界を訪れ、金を払ってでも男を求め、簡単な愛撫で容易に達し、ペニスをあてがわれただけで感極まる。

いっそ気の毒なくらい好色で、心配になるくらい手玉に取れる淫乱な、熟れた妖女。

 

(あの人も、そうなのかな……)

 

太智の視界で、ノーラの顔が、よく知った別の妖女と重なる。

その女性を目掛けて、太智は剛直を突き入れていくのだった。

 

 

 

 

コレットの指先に導かれたディルドローターが、彼女の膣内にすんなりと滑り込む。

 

「太智、くん……ああっ♡」

 

コレットの甘い声が、知らぬ間に息子の名を呼んだ。

用いているディルドは、震動もしていないし、殊更に大きくもない。

ヴァイブレーションは肌に合わなかったし、小さめの方が可愛らしいと思ったからだ。

幼い頃、一緒にお風呂に入った頃の記憶でしか、太智のそれを知らないというのも一因である。

 

「だ、めぇっ♡ んぁっ♡ だめなのぉ……っ♡」

 

そんな幼さを残した太智が、コレットの脳内で、彼女を犯す。

母への愛が行きすぎてしまった可愛い息子が、目覚めたばかりの性欲を堪えきれず、過ちを犯してしまう――そんな出来事の被害者となることが、彼女のオナネタの常だった。

 

「んっ♡ あっあっあっ♡ っ、くぅぁぁぁっ♡」

 

ディルドの後端を掴み、膣壁に擦り付けて刺激する。

コレットも妖女の端くれ。その性欲と性感は強く、ディルドを出し入れするペースも速い。

膣に対して余裕のある大きさの逸物が、子供らしい必死さで暴れ回るくらいの刺激が、彼女のお気に入りだった。

 

(ごめん、ね……っ♡ 太智くん……っ♡ こんな、こんなお母さんで……っ♡)

 

息子には死んでも明かせない劣情を、自慰の最中に悔やむ。

それと同時に、ディルドをより奥へ、子宮口へ届くところまで押し込む。

 

「んっぁぁぁぁっ♡」

 

ごりごりと最奥部が擦られ、快感の中にも苦しさが混ざる。

その痛苦を感じたときこそ、コレットは手を緩めず、己を苛むようにディルドを擦る。

これは、自分にある母として許されない感情を満たし、晴らし、そして罰するための自慰だった。

恥ずべき劣情を抱いた自分に、罰を与えるべきなのだ。

コレットはそうすることで、息子を思いながら自慰に耽る自分を肯定していた。

 

「だめっ♡ 太智、くんっ♡ 突いちゃだめっ♡ 奥っ♡ ひぁうっ♡」

 

白々しいことに、口では太智を制止している。

妄想の太智は止まらず、自分の膣内に包まれた逸物に快感を覚え、夢中で突いてくる。

あの逞しくなった身体に押さえ込まれた自分は、その行為に逆らえず、喘がされるのだ。

 

(やっぱり、無理っ♡ 太智くん以外の男、思い浮かべられない……っ♡)

 

動画で見た美男子などを想像しようとするが、どうしても消え失せる。

知らぬ間に愛息子と置き換わり、気がつけば自分の手は乳房を掴み、ディルドで膣内を掻き回す。

ぴちゃっ、くちゅっ! と淫靡な水音が響き渡り、愛液の飛沫が散っていた。

 

「ふぅぅぅっ♡ んぅぅぅっ♡」

 

コレットは意識して乳首を抓り、自分に痛みを与える。

保護した息子に卑猥な感情を向ける、母の風上にも置けぬ色魔。

そんな自分を痛みで罰することで、勝手に許しを与えて肯定するための行為だ。

 

(痛い、のにぃ♡ 痛くしてるのにぃっ♡ 気持ちいいっ♡ 気持ちいいの止められないっ♡)

 

気がつけばコレットの身体は、快感に痛みが混ざることを許容してしまった。

最近は条件反射がついたのか、軽い痛みならかえって身体が盛りつくようになってしまった。

これも一種のマゾヒズムなのだろうか……と不安に思いながらも、コレットはディルドを限界まで押し込んだ。

 

「っっっ、んあああぁぁぁっっっ♡」

 

悲鳴に近い嬌声を上げたコレットの全身に、鮮烈な快感が駆け巡る。

すぐに訪れたのは、臨界点を超えた火山が噴火するような、猛烈なオーガズムだった。

 

……最近は、一度だけでは満足できなくなってきた。

 

 

 

 

 

 

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初めて本物の男根を受け入れたノーラが、その快感を知るまで、さほど時間は掛からなかった。

 

「っ♡ んぁっ♡♡ あ゙あっああっ、あ゙ぁぁあぁぁ~~っっ♡♡♡」

 

ガクンと腰を跳ね上げるように浮かせて、ノーラはオーガズムを迎える。

 

「どう、ママ? 僕のセックス、気に入ってくれたっ?」

「ひぁいっ♡ しゅごいっ♡ 知らないっ♡ こんな、こんな気持ちいいの知らなくてっ♡ あああぁぁぁっ♡」

 

ありふれた正常位だった。

太智はベッドの上に膝を付いて腰を落とし、仰向けになったノーラの腰を引いて抽送する。

上半身をはだけて、スカートをめくり上げられたノーラの裸身が、全て見下ろせる。

火照り、汗ばんだ肌。揺れ動く豊乳に、蕩けきった表情。ときおり起きる絶頂の痙攣。

自分の肉棒で喘がされる妖女の姿に、太智は口角を引く。

 

「いいんだよ。格好なんか気にしないで、僕に全部任せて、好きなだけ喘いでいいからねっ」

「んあっあぁあんっ♡ おくっ♡ 奥すごいっ♡ 奥からっ、体中っ♡ イっちゃうぅぅぅ♡」

 

先ほどまで男を知らなかったはずのノーラは、いま入口から子宮口までの膣全体で、男を感じている。

やはり妖女――膣内には広く性感帯が行き渡り、どの角度でピストンしても、快感として受け取ってくれた。

ごく普通のペースで腰を動かすだけで、全身をくねらせて容易に達するため、主導権は常に太智のものだ。

 

「男とのセックスはこんなものじゃないよ。ほら、こうしてお豆もくすぐってあげると……」

「ひっ♡ だめっ♡ そこ、一緒にされたらまたすぐイっちゃうからぁっ♡」

 

陰核も責めてやれば、また電流が走ったように跳ね上がる。

素直で淫靡な身体だ。クリトリスを触るだけでも面白いくらい感じてくれる。

 

「わ、私、もう何度もっ♡ イっちゃってる♡ 一回だけって、約束、なのにぃ……っ♡」

「ああ、そのこと?」

 

事前の約束では、『明確に一度イかせるまで』ということになっている。

太智がノーラを膣内で絶頂させた時点で、これでお終いとしてしまっても、契約通りなのだが――

 

「この程度のイキかた、妖女さんには『一回』のうちに入らないよ」

「ひぁぁぅぅうっ♡」

 

クリトリスを片手で愛撫しつつ、もう片方の手で乳首を捏ねてやると、快感を追加されたノーラが更に乱れる。

腰は緩やかなピストンを維持しており、絶頂の直前を長引かせるような悦楽を与え続けていた。

 

「知ってるよ? 妖女さんにはあるんだよね? 普通にイクのとは違う、頭がおかしくなっちゃうくらいの強いイキかた」

「そ、それって……っ」

 

ノーラは目を剥いた。

 

絶頂にもレベルのようなものがある。

軽くイクこと、大きくイクこと、そして――意識が飛ぶほど深く激しく達すること。

人間女性なら熟練の男が手練手管を尽くして稀に到達する強烈なオーガズム、妖女はそれに、容易に辿り着く。

 

「だめっ♡ 来ちゃうっ♡ このままされたら来ちゃいますっ♡ おっきくてすごいイキかた来ちゃって、あたま真っ白になっちゃいますからぁっ♡」

 

ノーラも自慰の末に体感したことがあるのだろうか、怯え交じりの様子で訴える。

分かるのだろう。このまま男とのセックスで快感を積み重ねられたら、人生で体験したこともないオーガズムに襲われると。

 

「ほしくない? せっかく人間界に来て、僕とセックスできたのにっ。

 男とする本物のセックスでしか味わえないイキかた、してみたくない?」

「っっっ♡」

 

太智が上体を倒し、半ば覆い被さるように顔を近付けて問う。

その動きで肉棒を押し込まれたノーラは、その快感に打ち震えながら、逡巡の顔で息を呑む。

太智は返答を急かさず、ゆっくりと胸を揉みしだいた。

 

「……して、みたい、です♡」

 

ノーラがそう答えるのは、分かりきっていたからだ。

 

「じゃあ、ちょっと激しくなるよ……っ!」

 

太智はノーラの腰を掴んで軽く浮かせると、自分の股間で彼女の尻を持ち上げるようにして、腰を突き入れる。

 

「ひぁぁぁっ!?」

 

ノーラが不意打ちに声を出す。太智は構わず、律動を始めた。

そして、最初の宣言通り――そこからの抽送を一気に速めていく。

 

「はぎゅっ♡ んあああぁぁぁっ♡ 待っ、深いっ、つよいっ♡ 突くのぉっ♡」

 

ぱんっ! ぱちゅっ! ずんっ!

激しい衝突音が繰り返され、その度にノーラの嬌声が高くなる。

 

「んおっ♡ はぁふぅっ♡ しゅごっ♡ イクのっ、続いてるぅっ♡」

 

当初は驚くようだった顔は、一突きごとに陶酔の色を強めていく。

自慰では辿り着けない領域の快感に、彼女の意識が沈んでいっているのが、視覚的に分かる。

 

「乱暴でごめんね、ママ。でも気持ちいいでしょ? 女の人はね、こうやって男の力で、体重を掛けておちんぽ押し込まれないと、得られない快感があるんだよっ?」

「んあああぁぁぁ♡ 来てますっ♡ おっきいのが奥まで来てますっ♡ 私の中っ、全部押し広げられてっ♡ 押し潰されてっ♡ 気持ちいいですぅっ♡」

 

ノーラは太智の下で何度も身体を跳ね上げる。

初めて体験する、膣内で暴れる男根。自分の身体をオスの粗忽さで掻き回される体験。

それを瞬く間に快感として受け取ってしまう、天性の淫乱にしてマゾ。

ノーラの身体はいま、人生で最も妖女だった。

 

「きてぇ♡ やめないでっ♡ このままっ、ずっとイキたいっ♡ ああぁぁ来る来るきちゃうっ♡ おっきいのきちゃうぅぅぅっっっ♡♡♡」

 

ノーラが太智の身体に手足を絡めて悲鳴を上げる。

太智もその昂ぶりに合わせて腰を加速させると、逸物に感じる膣が急速に痙攣し始めた。

 

「んあぁあぁぁあああ゙あ゙ぁっ♡」

 

ガクガクガクッ! と、ノーラの全身が、巨大なオーガズムに打ち震える。

 

「はひっ♡ ふぁっ♡ あっ♡ はぁぁ♡ あふっ♡」

 

太智が動きを止めても、ノーラの絶頂は止まらない。

目は虚ろで、顔は幸福そうに蕩けきり、身体は小刻みに震えている。

びくんっと、数秒に一回ほど身体が跳ねるのは、大きすぎる絶頂の余韻による軽イキだ。

 

「ママ、どうだった? 僕のセックス、気持ちよかった?」

「は……はひ♡ しゅご、かったぁ……こんな、きもちひいこと♡ 生まれて、はじめて、で♡」

 

ノーラは涎を垂らしながら、呂律の回らぬ口で悦びを語る。

男に与えられる快感が、気絶するほど鮮烈なものなのだと知ってしまった、妖女の顔だ。

 

また、純朴な妖女に、男を覚えさせてしまった――

そんな昏い喜びにほくそ笑みながら、太智はノーラの耳元で囁く。

 

「追加でいただけるなら、僕がイクまで延長戦してあげるよ?」

「っ♡ お願い、しますっ♡ いくらでも払いますからっ♡」

 

即答するノーラは、全財産を投じても構わないという様子だ。

過去に抱いた他の妖女たちも、全員そうだった。

ずっと年上の女性が、自分のセックスに夢中になり、服従と言ってもいいほどに媚びる。

この瞬間の、優越感と征服感がたまらない。

 

「じゃあ、いっぱいイかせてあげるからね」

 

せっかくなので、ノーラには様々な体位を経験してもらう。

ホテルの時間いっぱいまで、ノーラの嬌声が鳴り止むことはなかった。

 

 

 

 

多くの家庭が夕食をとる時間帯に、太智は『アルバイト』から帰ってきた。

 

「おかえり、太智くん」

「ただいま、母さん」

 

出迎えるコレットと、玄関で靴を脱ぐ太智。

どちらも、妙にすっきりした表情だった。

心なしか、肌がツヤツヤしているようにも見える。

 

「お疲れさま。お仕事、大丈夫だった?」

「まだ心配してるの? 普通の『接客』だってば」

 

漫画喫茶でスタッフをしていることになっている太智は、コレットの問いに何食わぬ顔で答える。

 

「ならいいけど。ああ、お夕飯、すぐに食べるよね?」

「うん。部屋で着替えたらすぐもらうよ」

 

いつも通りの、母と息子のやりとり。

しかし、太智が自室へ向かうためコレットの傍を通り過ぎると、

 

「……っ」

 

コレットが小さく息を呑む。

太智はそれに気づくことなく部屋に入り、扉を閉めた。

 

「……ふぅ……っ♡」

 

コレットは太智に背を向ける形で硬直しており、吐息に熱を帯びさせる。

頬は紅潮し、スカートの中では軽く内股になっていた。

 

(太智くん……やっぱり、なんだか色っぽい……っ)

 

コレットの内心では、衝撃が渦巻いていた。

ここしばらく、太智に近付くと、猛烈なフェロモンを感じる。

特に『アルバイト』から帰ってきた直後などは、僅かに体臭を感じただけで興奮させられる。

まるで――ついさっきまで、そういうことをしていたかのように。

 

(だめなのに……そういう目で見ちゃ駄目なのに……っ♡)

 

コレットは太智の色気を、自分の見る目がいやらしいからだと解釈した。

自慰をして、欲求不満を解消していても、いざ本人を前にすると子宮が騒ぐ。

いよいよ否定できない――自分の身体は、守るべき息子に男を感じてしまっている。

自分が、児童を保護しておきながら成長したら涎を垂らすような、極めて卑賤なメスなのだと思い知る。

 

(忘れなきゃ……忘れられると、思ったのに……っ)

 

ここ最近は特に、自慰だけでは劣情を晴らせなくなった。

太智を思って散々に自慰をした身体は、むしろそれこそが前戯であったかのように、本物の太智を前にすると熱を帯びる。

このままでは、なにか、取り返しの付かない過ちを犯してしまうかもしれない――

 

(やっぱり、オナニーじゃ、足りないのね……)

 

薄々感じていたことだ。

太智を施設から保護する形で母となったコレットは、生まれてこの方、男を知らない。

そんな自分の拗らせた性欲は、もう指やディルドでは飽き足らなくなっている。

 

これを解消するにはどうしたらいいのか?

答えは以前から、コレットの頭に浮かんでいた。

 

「…………」

 

太智が部屋から出てくる前に、コレットはスマホを取り出す。

開くのはウェブページ。

 

(オナニーじゃ、足りないなら……)

 

――ママ活を募集する男子を記載した、言わば売春紹介サイトだった。

 

サイトにはママ活を求める少年や青年たちのSNSアカウントが紹介されている。

買いたい女はその中から選んでコンタクトを取り、どこかで待ち合わせて一線を越えるのだ。

少年たちの脱税売春が問題視されていると知り、実態調査という名目で調べた結果、ここに行き着いた。

 

(誰か、男の人に抱いてもらったら……もしかしたら……っ)

 

コレットは考えた。

自分は欲求不満のあまり息子にさえ浅ましい感情を抱いている。

なら、いっそ男を知ることで、色欲の対象を別の誰かに上書きできないだろうか?

そうすれば、自分の劣情はその人に向くようになり、息子という許されざる相手に向かうことは無くなるかもしれない。

 

(一度、だけ……誰にも、見つからないように……一回、だけ……っ♡)

 

コレットは生唾を飲み、表示されているママ活男子を流し見る。

男たちは芸名のようなものを使っており、真偽不明のプロフィールや、目元を隠した自撮り画像などが表示されている。

それこそ……息子とそう歳の変わらないような子まで。

 

(一回だけ……だから……っ)

 

このリストの中から選んだ子にDMを送って応じられれば、後は財布を手に待ち合わせるだけ。

そんな背徳的な名簿の中から、コレットは一人の少年を見定める。

 

真実から多少はズラしているだろう生年月日や職業。

目元を隠した自撮り写真と、ママ活の値段や内容に関するルールの明記。

どこの誰かなんて家族でも分からないだろう――というほど制限された個人情報だ。

 

なのに、コレットはなぜか、この少年に親しみやすさを感じていた。

 

 

 

(名前は……『イチ』くん……)

 

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

ママ編の続きですが、まだママとやってません。


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第三話

 

 

 

妖魔界から数多くの妖女が訪れるこの時代。

そこでママ活なんてものをしていると、たまに『団体客』が訪れる。

仲の良い妖女同士で人間界を訪れて、皆で男を買おうというのだ。

 

こうした場合、ママ活男子たちのガイドラインでは、一人で複数の女を相手にすることを推奨していない。そのまま誘拐、という事例もあるためだ。

そこで、女が複数だった場合は、ママ活仲間に声を掛ける。

 

つまり――乱交パーティの幕開けだ。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「あああんっ♡ きてるっ♡ おっきいのきてるぅっ♡」

「あっあっあっあっ♡ 素敵っ♡ もっとっ、突いていいからぁっ♡」

「らめらめらめぇっ♡ 乳首と一緒に奥はだめだからっ♡ 弱いからぁっ♡」

 

ラブホテルの大部屋に響く、数人の妖女たちの嬌声。

同じ人数の男たちが彼女らと絡み合い、艶やかな合唱を奏でさせている。

演奏者の一人は太智であり、エルフ系の妖女を抱いていた。

 

「あひゅっ♡ んおっ♡ しゅごいっ♡ 君っ、可愛いのにっ、おちんぽしゅごいよおっ♡」

 

今日の客である妖女が、騎乗位で突き上げる太智を歓迎している。

年齢はたぶん三十代。全体的に若々しい妖女なので、人間女性に置き換えると二十代ほどの瑞々しい見た目だが、触れる肌の柔らかさは妙齢のものだ。

 

「ママのおまんこも気持ちいいよ。体は大人なのに、ここだけキツくて、凄い締まりだ」

 

部屋の中心にある広いベッドの一角で、太智は腰の動きを工夫していく。

 

「んぁぁぁぁ気持ちいいっ♡ やっぱり気持ちいいっ♡ 人間さんのセックス好きぃ♡」

「んおっ♡ おおおっ♡ イグぅっ♡ イグイグいっぱいイってりゅぅぅぅっ♡」

 

一夫多妻の夫婦が利用することを想定したラブホの大部屋には、他の妖女もいた。

 

「いいねぇ、おまんこがしゃぶりついてるねぇ」

「妖魔界じゃこんなことできないんでしょ? たっぷり愉しんでいいんだよっ」

 

ママ活界隈では先輩に当たる青年たちが、楽しげに妖女を絶頂させている。

 

「ああぁぁぁっ♡ すごいっ♡ 人間界って最高っ♡」

「人間さんっ♡ エッチすぎっ♡ いっぱいセックスしてくれるぅっ♡」

「ははっ、エロいのは妖女さんの方だろっ」

「俺みたいな男でもこんなに喘いでっ、セックス好きすぎだろっ」

 

興が乗ってきた男たちが、手付きを荒々しくしていく。

当初の、お客に対するサービスとしての行為ではなく、自分が愉しむための動きだ。

 

「んおぉぉぉっ♡ おほっ♡ イっでりゅぅぅぅ♡ おっ♡ ずっとなのぉぉぉ♡ イグのもうずっと続いてっ♡ おっおっおっ♡ ぉぉぉぉぉっ♡」

 

中でも、太智が相手にするエルフの婦人が乱れている。

前にも相手をしたことのある『ママ』なので、弱点は把握していた。

言葉を使って気分を盛り上げるような段階は過ぎ、一頭の雄となって腰を振っている。

 

これでは、どちらが金を払っているのか分からない。

だが、何度かイカされて燃え上がっている妖女たちは、更なる快感のために雄々しさを許容する。

 

「ほーら、こっちも負けてられないよっ」

「んあああぁぁぁっっっ♡ だめだめ子宮おかしくなりゅぅぅぅ♡」

「俺も、そろそろイキそうだよっ、ママの中でイっていい?」

「きてぇっ♡ 中出しっ♡ 夢なのっ♡ 中出しでイクの夢だったのぉぉぉ♡」

 

大きな円形ベッドを三方向から切り分けるように、三組の男女が熱狂する。

 

「ああ、出るよっ!」「俺も!」「っ!」

「あはぁぁぁっ♡」「出てる出てるぅぅぅ♡」「んおおおぉぉぉっっっ♡」

 

狂乱の宴は最高潮に達し、三組の男女がフィニッシュを迎える。

どうでもいいものであるかのように、支払われた金が床に散らばっていた。

 

 

 

 

 

 

最近は、ドラッグストアでポーションが買える。

傷がたちどころに治ったりはしないが、セックス後の疲労回復には定評がある。

 

「おつかれー」

「お疲れさま」

「お疲れさまです」

 

『団体客の接待』を終えた太智たちは、仕事明けの一杯さながら、ポーションの瓶を開けていた。

夜の繁華街の一角にあるドラッグストアの前に屯する姿は、単なる三人の若者であるが、その正体は情夫である。

 

「あー、腰がいてぇ」

「今日は忙しかったなぁ」

「あの団体さん、リピーターになりそうでしたね」

 

太智と青年たちは、まともな仕事でもしてきたかのように言葉を交わす。

客だった三人の妖女は、それぞれ大満足した様子で、名残惜しそうに別れていった。

人間界で男を知った彼女たちは、男日照りな妖魔界に戻った後、さぞや鼻高々に自慢でもするのだろう。

 

「そういや、目標金額は貯まったか?」

「おう、今日の分でちょうどだぜ」

「車でしたっけ? おめでとうございます」

 

ママ活仲間の一人が、嬉々として親指を立てる。

彼は特に生活苦というわけではなく、欲しいものを買うためにママ活をしていた。

 

「お前こそ、留学費用だっけ? 目標まであとどのくらい?」

「俺もそろそろゴールだな。羽振りのいい妖女をあと何人かってところか」

「今日の方から贈り物も貰ってましたよね? あれ、中はなんだったんですか?」

「また腕時計だよ。妖女って男はこれ送っておけばいいと思ってるとこあるよな」

 

もう一人のママ活青年は、夢を追うための留学費用を求めての売春だ。

健全なのか不健全なのか分からない話だが、彼が『ママ』にその話をして財布の紐を緩めようとしているところは、見たことがない。

 

「イチは相変わらず貯金か?」

「ええ、まあ。いつか必要になるときまでは」

 

お金というより趣味感覚のママ活である太智は、澄ました顔でポーションを飲む。

これ一本であと一回戦はイけると評判の栄養ドリンク的なスタミナポーションが、疲れた足腰と股間に染み渡るようだ。

 

「そういや聞いたか? いつもの漫喫、目を付けられ始めたらしいぞ」

「げ、マジかよ」

「それって、いわゆるガサが入るってことですか?」

 

話題になったのは、太智が偽のバイト先としている漫画喫茶だ。

マッチング会場として使われているそこに、どうやら法の正義が及びそうだという。

 

「いまのところは、『あの店でママ活が行われている』って知られ始めたくらいらしい。近隣の警察とか学校とか、目を光らせてるかもな」

「てことは、あの店も潮時かぁ。まあ、そのうち新しい出会いの場ができるだろうさ」

 

よくあることらしい。

セックスで稼げることを知った青少年がいると、いつの間にかママ活スポットが生まれ、そこに良識ある大人たちのメスが入る。

するとママ活男子たちは、ここはもう駄目かと街へ散り、またどこかに新しいスポットを構築するのだ。

 

「イチ、お前は特に気を付けろよ? 俺たちは大人だから追徴課税で済むだろうけど、お前くらいの歳だと保護者まで呼ばれてひと悶着だぞ?」

 

青年が太智に警告する。

追徴課税は『済む』と言えることではないが、自分一人で片付けられることだ。

しかし太智は、日中には制服を着ている身だ。お巡りさんを通じて家に連絡が行く。

息子は健全なアルバイトを頑張っていると信じている、コレットに。

 

「そう、ですね……試験も近いですし、一時休業しつつ様子を見ます」

 

太智はそう言って時計を確認する。

バイト帰りに寄り道したと言って済む時間は、そろそろ過ぎそうだ。

青年たちと別れて、帰路につくことにした。

 

(あの場所は、次のお客さんで最後にしよう。バイト先は治安が悪そうだから辞めたとか適当に……)

 

太智は怪しまれない言い分を考えながら、信号待ちの間にスマホを手に取る。

SNSのママ活用アカウントを開き、メッセージが届いていないかを確認していた。

 

先日のノーラから、やたら丁寧なお礼の文章が届いていたかと思えば、また別の女性からもう一度抱かれたいというラブコールも届いている。

のめり込まれても面倒が増えるので、基本的に同じ女性と何度も会うことはしていない。探しているのは、新しい女性からのメッセージだ。

 

『拝啓、イチさん。

 お目にかかりたくご連絡しました――』

 

あった。

なんとも丁寧な書き出しの、不慣れそうな文章だ。

流石にこちらがそういうアカウントであることは承知しているようで、どこに足を運べば出会えるか、お代はいくらほど準備すればいいかと聞いてきている。

 

「……っ!?」

 

驚いたのは、アカウント名だ。

最初は偶然かと思った。妖女なら珍しい名前じゃない。

しかし、その他のプロフィールに目を走らせると……

 

(母、さん……っ!?)

 

アカウント名には堂々と、『コレット』という名前が記されていた。

 

 

 

 

 

 

今夜――自分は男を買う。

人生でそんな選択をするなどとは、思ってもみなかった。

 

(大丈夫……大丈夫よね? 多かれ少なかれ、みんなしてるって言うし……)

 

帰宅した太智がアルバイトに向かうのを見送った後、コレットは服を着替えた。

青いニットのセーターに、膝あたりまでのスカート。

大人の女性として露出度は控えているが、セーターには豊満すぎる胸の曲線が如実に浮いており、なんなら露出しているよりも卑猥だ。

自分が異性の気を惹ける魅力など『これ』しかない――と、コレットは思っている。

男性経験の無い彼女は、自分の魅力に気づいていないタイプの喪女だった。

 

(お金、もっと下ろしてきた方がよかったかしら? でも、調べた限りこれで足りるみたいだし……人間界の男の子、安売りしすぎじゃない?)

 

ネットで『ママ活』については調べた。

検索はいつしかマッチング目的のサイトに行き着き、そこではママを求める少年たちが、素性を隠しつつプロフィールと希望額を紹介していた。

その金額は、妖女であるコレットからすると、黄金を銅貨数枚と交換するかのようだ。

 

(売ってしまう男の子の中には、苦労してる子も多いって聞くけど……こんな端金で身を売るほどだなんて……)

 

おこがましい思考に囚われる。

息子とそう歳も変わらぬような少年が、妖女基準では考えられない安売りをしている――それを哀れに思うと同時に、「助けてあげたい」という善意が湧いてくる。

しかしその善意は、「これは人助けなんだ」と、買春へのハードルを下げるばかりだった。

 

(待ち合わせの時間……遅れちゃう)

 

いずれにせよ、もう後戻りはできない。

紹介サイトから見つけた『イチ』という少年には、もう会う約束をしてしまった。

震える指で入力したメッセージのやりとりで、時間と場所を伝えられている。

いまさらキャンセルなんて、殿方の面目を潰すようなことはできない。

 

(なにより……もう……身体が……隠しきれなくなっちゃう……っ)

 

これから男に抱かれるのだと思うと、心臓が早鐘を打ち、各部が熱を帯びる。

今日も家に帰ってきた太智を見て、劣情に襲われた。

特に今日は、いつも以上に、雄々しい視線を向けられているように思えた。

きっと、自分の欲求不満がそう感じさせたのだろう。

 

このままでは、いつか本当に、太智に気づかれてしまう。

自分を清廉潔白な養母だと信じて疑わない我が子に、本心では劣情を覚えていたのだと。

そんなことになったら――全て終わりだ。

コレットの中では、死よりも避けたいくらいに、太智からの失望と軽蔑が怖い。

 

(解消、するだけ……ちゃんと、太智くんの、お母さんでいるために……この、浅ましい身体の、メスの部分を、鎮めてもらうだけ……っ)

 

だからこれは、自分たち親子を守るために必要なのだと――

そう自分に言い聞かせながら、コレットは身を潜めるように繁華街を歩き、待ち合わせの漫画喫茶を訪れる。

 

「……っ」

 

自分の横顔が――欲情した妖女であることに、彼女だけが気づいていない。

 

そしてその顔は、すぐに青ざめることになる。

 

 

 

 

 

 

「……イチ、お前どうした?」

「ん? どうしたって?」

「いや、いつになくキレ気味の面してるぞ?」

 

いつもの漫画喫茶で、太智はママ活仲間の青年に冷や汗を掻かせていた。

 

「ああ……そんなに顔に出てた?」

「おう。張り込みしてる刑事だってもっと柔和な顔してるぞ」

 

青年が指摘するように、漫画喫茶のソファーに腰掛けた太智は、親の仇を待ち構えるかのような表情で、出入口を睨んでいる。

 

「声掛け待ってんなら、もうちょっと愛想良くしろよ。空気硬くなるだろ」

「ごめんごめん、今日は待ち合わせだから、相手が来たらすぐ出て行くよ」

 

この漫画喫茶で行われるママ活は二通り。

事前に連絡をとって待ち合わせているか、男を買いに来た妖女を寛ぎながら待っているかのどちらかだ。

今夜の太智は、とある女性にSNSで予約されている。

 

「珍しいな。お前がフィーリング抜きでホテル直行とか。そんなにいいママなのか?」

 

青年は興味深そうに尋ねる。

容姿がいいのか、金払いがいいのか、どちらなのかと。

太智は複雑そうな顔をして沈黙した後、店の出入口を見たまま、やがて答える。

 

「……まあ、控えめに言って最高かな」

 

店内に現れたのは、太智にとって唯一無二の『(ママ)』である、コレットだった。

 

(本当に、来ちゃったんだ……)

 

緊張した様子で店内を見回しているコレットに、太智は目を細める。

 

太智のママ活アカウントに連絡を入れてきたときは驚いた。

コレットという名前は偶然だと思ったが、そのSNSを覗いてみると平凡な主婦アカで、明らかに太智の暮らすマンションの部屋が投稿画像に散見される。

彼女は機械やデジタルに弱い。

男を買うためのアカウントを新しく作るなんて発想は、無かったのだろう。

 

当初は、自分のママ活がバレてしまったのかと思った。

息子のママ活用アカウントに母親が突撃するという痛烈な形で、叱りに来たのかと。

しかし違った。

コレットは『イチ』が自分の息子だと気づいていなかった。

顔は晒していないし、プロフィールも本当の自分から年齢などをズラしている。

 

もしやと思ってメッセージをやりとりして、確信した。

あくまでこれは、数奇な偶然なのだと。

 

そして――彼女はいたって本気で、ママ活をする男を探しているのだと。

 

(あんなに、余所行きの格好して……っ)

 

見慣れているはずの義母は、一段と綺麗だった。

触り心地の良さそうな生地のニットセーター、清楚だが大人びたスカート。鞄や靴まで、女としての気合いを感じさせる。

彼女は……あの服で、あの身体で、男を買いに来たのだ……っ!

 

「…………」

 

自分が昏い瞳をしている自覚があった。

胸の内の感情は、一言では表せない。

 

信頼していた母が、一人の女として劣情を抱き、男を求めている。

それに対する驚きと怒りと落胆、これまで彼女に向けてきた性欲。

息子としての感情と、オスとしての感情が、ない交ぜになっている。

心臓は煮えたぎるように熱いのに、頭はゾッとするほど冷静だった。

 

そんな自分を不思議に思いながら、太智はソファーから立ち上がり、背後からコレットに近付いていく。

 

「コレットさんですか?」

「あ、はいっ」

 

コレットは喜色満面で振り返った。

待ち合わせしている『イチ』だと思ったのだろう。

いかにも今日初めてママ活をしますという、初心で淫乱な妖女の顔で、振り返る。

 

「――――っ!?」

 

絶句、沈黙、驚愕。

それら三つが同時に、コレットの顔を凍り付かせる。

 

ああ、それはそうだろう。

これから若い男と金でセックスをしようとしていたところに、息子が現れたのだから。

 

「た……いち……くん……?」

 

完全に思考力を失っている様子で、息子の名前を呟くコレット。

その顔は急速に青ざめていき、血の気が引く音がこちらまで聞こえてきそうだった。

 

()()()()()、イチです」

 

逆に太智の頭は冷えている。

白々しい笑みを浮かべながら、さも初対面のように挨拶しつつ、彼女の肩を抱く。

 

「え?」

「――話を合わせて、怪しまれる」

 

当惑しているコレットのエルフ耳に囁く。

判断力を喪失しているコレットは、思惑通りハッとして、口から出そうになった声を噛み殺した。

 

「さあ、行きましょう。待ちきれなかったんです」

 

あたかも、下心を隠せない年下の彼氏とでもいった風情で、コレットを出口に導く。

漫画喫茶の精算を済ませ、来たばかりのコレットを屋外に連れ出した。

 

あの場所にいて、コレットが親子であるとバレるようなことを口走る前に。

同時に――あの場所にいる他の男たちが、彼女に興味を抱かないように。

 

「た、太智くん……っ!? あの、なんで、ここに――」

「そっちこそ」

 

動揺しているコレットをひと睨みすると、怒声を浴びたようにビクッと身を竦ませる。

 

主導権は渡さない――

 

いま彼女は、『息子の売春を見咎める母親』などではない。

あくまで、『買春の現行犯を息子に押さえられ母親』でいてもらう。

 

「それっぽく振る舞って。バレたらお終いだよ」

「っ」

 

太智はコレットの手を引いて、夜の繁華街を歩き出す。

 

冷静になって考えると、お終いということはない。

こんな時間に母と息子が繁華街を歩いているのは、不自然と言えばそうだが、なにかしら用事があったことにすればいい。

 

しかし冷静さを欠いていたコレットは、太智に思考を誘導される。

いまこの場で、自分たちが親子であると発覚するのは、致命的なことなのだと思い込む。

 

「そこで話そう」

 

太智が示したのは、ホテルだ。

良心的な価格でご休憩ができる、ホテルだ。

 

「えっ? で、でも――」

「誰にも邪魔されないからだよ」

 

コレットは、どう考えても息子と入ってはいけない施設に慌てるが、太智がそう言うと、他意は無いのだと解釈したのか、また従順に手を引かれる。

 

大きな間違いだ。

太智は『邪魔されない』と言っただけで、『そういう行為』を否定していない。

 

そんなことにも気づかないほど、コレットは混乱しており、自分に従わされている。

この状態を保つために、太智はコレットにたたみ掛けた。

 

「色々と聞きたいことがあるんだ。まさか逃げないよね?」

「っ」

 

部屋を借りながら脅すと、コレットは震え上がる。

完全に、自分が糾弾される側だと認識してしまっていた。

 

彼女には、太智に「こんなところで何しているんだ」と追及することもできた。

だが、息子に決して見られてはならない場面を見られてしまった――という罪悪感が、その発想に至らせてくれない。

 

気がつけばコレットは……男女の睦み合いを想定した部屋に連れ込まれていた。

 

「あ……」

 

思わず部屋を見回して、コレットは唖然とする。

飾り気のない内装だ。ビジネスホテルだと言われたら真に受ける。

しかしコレットの視線は、白く清潔なシーツに覆われたベッドに向いていた。

そういう行為を想定した部屋に、事もあろうに息子と居る――そんな異常事態を認識してしまったのだろう。

 

「た、太智く――」

「母さん! なんであんなところに居たんだ!」

 

我に返りかけたコレットが太智に向き直ると、太智が両肩を掴んで声を上げた。

ビクッと震えたコレットを、太智は怒気を宿した真剣な顔で睨み付ける。

 

 

 

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「え、あ……それ、は……」

 

コレットは青ざめる。

愛する息子に、決して知られてはならないことを知られてしまった――

金で異性を買おうなどという不貞行為の現場を、誰より信頼を損なってはならない息子に見つかってしまった――その現実を直視させられて。

 

「偶然、知っちゃったんだ。母さんが、ママ活をしようとしていること。

 だから待ち構えて、何かの勘違いならいいって思ってたけど……」

 

太智は、大げさに怒り、悲しんで見せる。

怒っているのも悲しんでいるのも本当だが、コレットに考える余裕を与えないためだ。

客観的に見れば、ママ活に関して『初犯』かつ『未遂』のコレットより、何度も繰り返し売春してきた太智の方こそ糾弾されるべきだ。

そこに思い至らせないために、太智はコレットの精神を揺るがす。

 

「母さんが、そんな人だなんて、信じたくなかった!」

 

強烈な言葉を真っ正面から受けたコレットは、呆然と目を見開いた。

 

「ご……ごめん、ね……ごめん、なさい……っ」

 

コレットの目から光が失われ、目尻から涙が零れる。

太智が掴んでいる肩と、謝罪の言葉を紡ぐ唇が、震えていた。

 

終わった――という顔だ。

自分の人生が、母親として培ってきた全てが、終わってしまった。

 

「――っ」

 

その顔を見たとき、自分の胸中に生じたものを、太智には言語化できなかった。

 

傷付けてしまったという罪悪感。

追い詰められて泣いている母への哀れみや慈悲。

あるいは、自分の糾弾で心が敗北している彼女への、優越感。

そして何より……

ホテルで、ずっと見ていた女性が、弱々しく震えている姿への、否定しがたい――欲情だ。

 

生唾を飲む。

しかし耐える。

 

まだだ――この千載一遇の好機を逃してはならない。

勢いに任せてしまっては、このチャンスを無駄にしてしまう。

 

太智の中の、自覚しているよりも狡猾な部分が、悪魔のように囁いていた。

 

「……いいんだ。怒鳴ってごめんね、母さん」

 

太智は、打って変わって優しい口調になると、コレットを抱き寄せた。

 

「っ、太智、くん……?」

 

当惑するコレットは、太智の胸板に顔を埋めさせられ、頬を染める。

身体が大きくなったことは日々に生活で見ていたが、こうして密着するなど何年ぶりか。こんなときだというのに、息子の成長を喜ぶと同時に、男の逞しさを肌で感じてしまう。

 

「母さんだって、大人の女性だもんね。

 いつも僕のことばかり考えて、負担が溜まって、誰かに甘えたかったんだよね?」

「っ」

 

首を交差させるように抱き合っているため、互いの顔は見えない。

 

コレットは、バツが悪そうな顔をしていた。

太智が理解を示し、怒気を鎮めてくれたのことにはホッとしている。

 

(違う……私が、ここにいるのは……そんな、同情してもらえるような理由じゃ……)

 

辛くて寂しかったから誰かに甘えたかったなんて可愛いものではない。

もっと浅ましくて、醜いもの。

息子への欲情を、同じ年頃の男に抱かれることで解消しようとしていたという劣情なのだ。

 

(いま、だって……っ……こんな、ときに……っ♡)

 

証拠に、いまも身体が火照っている。

自慰の折に幾度も思い描いていた太智の腕と胸板に抱かれ、念願が叶ったとばかりに体が反応してしまっている。

動悸が高まる、体温が上がる、ブラの中で乳首が尖り、腹の奥で子宮が疼く。

目の前にある息子の体を、オスとして認識してしまっていた。

 

「……っ♡」

 

そんな自分に見て見ぬ振りをして、コレットは太智の背に恐る恐る腕を回す。

この状況をこれ幸いと、あたかも母と子が感動の和解に至るシーンであるかのように利用して――愛しい息子(おとこ)の抱擁を味わっていた。

 

「…………」

 

そんなコレットの欲情に――太智が気づいていないはずもなかった。

 

ママ活で何度も妖女を抱いてきた嗅覚が、妖女のフェロモンを嗅ぎ取る。

この母はいま、自分に抱きしめられることで、メスとして反応しているのだ。

 

(ああ、やっぱり……)

 

見られている――と感じることはあった。

 

妖女が男性に欲情するときの気配は鮮明だ。

ママ活で女を知るようになってからは、より見逃さなくなった。

 

母は……自分に性的な目を向けている。

そんなまさかと思っていた感覚を、確信に変えるために――腕に力を込める。

 

妖女の体は性感帯が豊富で、欲情していれば相応に敏感になる。

抱きしめられ、豊満な胸を男の胸板に押し潰され、逞しい両腕で肩と背中を包まれる。

そんな状態のまま力を込められ、引き締めるように抱かれれば――

 

「……ぁ♡」

 

明確な、性感の声が、コレットの口から零れ出た。

 

慌てて口を閉じるコレットだが、太智が聞き逃すはずもない。

コレットからは見えない太智の顔が、どこか邪悪に、口角を釣り上げる。

 

()()

「っ!?」

 

エルフ耳に囁くと、腕の中でコレットの体がびくっと震える。

息子の気配が一変したことを、肌で感じ取ったのだろう。

 

「ごめんね……僕、やっぱり悪い子だった」

「た、太智くん……?」

 

ゆっくりと足を動かして前進すると、コレットも押されて後退する。

向かう先は――睦み合うために設置された、ベッドだ。

 

「ママのこと――犯したくなっちゃったよ」

 

二人の体がベッドに倒れる音と、コレットの短い悲鳴が、部屋に響いた。

 

 

 




ご一読ありがとうございました。

四話も同日登校しております。


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第四話

 

 

一目惚れした女性の養子となった。

幼い太智がその失敗を悟ったのは、性の目覚めが起きる頃だった。

 

年齢的にも、異性の裸というものに不可解な情動を覚える年頃だ。

そんな無垢な少年に、成熟した妖女は刺激的すぎる。

勃起や精通も知らない未熟な性欲を自覚した太智は、子供心に思う。

 

これはきっと……「いけないこと」なのだ。

 

コレットとの間に育むべきは、健全な親子関係。

彼女もそれを望んでおり、自分はその願いに応えるべきなのだ。

 

だから――性欲は他の女で解消することにした。

 

童貞卒業は、近所に住んでいた妖女のお姉さんだったか。

コレットと似た金髪のエルフ系だった。

無邪気な少年を装って声を掛けた太智が、その妖女をショタに目覚めさせるまで、さほど時間は掛からなかった。

 

才能か、子供ゆえの吸収力か。

太智はコレットの目を盗んで、男児に劣情を催す妖女を誘惑するショタコンキラーと化す。

 

学校の女教師、近所のJKやJD、母子家庭の母親――そんな妖女たちを、何人も抱いた。

 

誰彼構わず、ではない。

金髪だったり、エルフ系だったり、どこかしらコレットと共通点のある妖女を選んだ。

優しく神聖な母であるコレットの代替としては、面倒になる前に乗り換えていった。

太智にとって『家』とはプラトニックな場であり、ママ活スポットである漫画喫茶などが肉欲に基づく狩り場だった。

 

――そんな狩り場に、聖母は来てしまった。

 

聖母などではなく、妖女(おんな)なのだと、雄弁に物語っていた。

 

こちらはずっと……神聖なあなたを汚さないよう自分を律してきたというのに!

 

裏切られたかのような衝撃、それと同時に噴出する悪魔のささやき。

これは好機だ。千載一遇の好機だ。

手が届かなかった聖母が、自ら卑しい妖女になりに来たというなら、それを手中に収めるのは誰だ? 決まっている。自分以外にいない。

積年の欲情を晴らすのは、今夜をおいて他にないのだと――そう理解した太智は、気がつけば静かにケダモノと化していた。

 

「きゃっ!? た、太智くん……っ!?」

 

かくして、太智はいま、コレットを押し倒している。

 

ベッドの上で仰向けに倒されたコレット、その両肩を掴むように上を取る太智。

コレットの顔は驚きと怖れを描きながらも、発情の朱が差している。

それを見下ろす太智の目が、男の情欲で爛々と輝いた。

 

「ママが悪いんだよ? あんな場所に来るから……男とセックスしたがってる女の顔を、僕に見せるから……っ!」

「っ、うそ、太智くん……やだ、冗談、よね……っ?」

 

目の前の現実が信じられないという顔をするコレット。

息子に押し倒された母としては、叱るべき反応だろう。

しかし、余分なものがある。

発情――セックスを予感した妖女の肉体が火照り、香気を立ち上らせている。

太智の鼻をくすぐったそれは、媚薬のように脳と下半身を昂ぶらせた。

 

「本気だよ」

「んあっ♡」

 

太智の手が、コレットの胸を掴む。

強すぎず、されど優しくない、太智の葛藤が表れたような手付きだ。

しかし、自慰しか知らないコレットには、男性の手指が胸に触れたというだけで、思わず甘い声が出てしまうほど衝撃だった。

 

 

 

 

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「っ!」

 

コレットの口から、女の声が出た。

自分の手で、あの義母が、清らかな聖母が、メスになっている……!

妖女を抱き慣れたはずの両手が、童貞のように制御できなくなった。

 

「やあっ♡ た、太智く――んぁっ♡ やめっ、なんでっ、ああんっ♡」

「胸っ、ママの胸っ! ああ、大きいなぁっ!」

 

服越しに感じるコレットの乳房、その感触は電流のように脳まで届き、思考力を肉欲に染める。

これまで他の妖女に尽くしてきた加減や手管なんて、頭から吹き飛んだ。

ただ触りたいから触って、揉みたいだけ揉み回す。相手の負担なんて考えない。

 

「太智くんっ、だめぇっ! んあっ♡ 落ち、ついてぇっ♡ こんなっ、こんなことしちゃっ。あぁんっ♡ だめ、だからぁっ♡」

 

息子がケダモノとなって、自分の乳房に頬ずりしながら指を食い込ませている。

あまりの事態に混乱しきったコレットだが、肉体は過去最大に敏感だった。

服越しに感じる太智の手指、その逞しい刺激はすぐさま快感となり、乳房から脳天へと、電流のように駆け上がる。

 

襲う男と拒む女。

言葉と行動は相反しているが、体に走る快感は同じだった。

 

「ごめん、ママ、抵抗しないで!」

 

太智は、胸を隠そうとするコレットの手を掴み、ベッドに押さえ込む。

懇願するように声を荒げると、コレットはびくりと震えて、放心気味に太智を見上げた。

 

「いまだけ、今日だけでもいいっ!」

 

濡れた瞳で、荒々しく訴える太智。

間近に見たコレットは、いつの間にか子宮が激しく鳴動していたことに気づく。

ああ、これじゃまるで、毎日のオナニー妄想が現実になったみたいじゃないか……

 

「終わった後、どうなってもいいから――」

 

そんなコレットの胸中を肌で感じながら、太智は宣言する。

 

「ママと、エッチしたい。セックスしたい」

「っっっ」

 

コレットの顔が耳まで赤くなり、脳内に未知の興奮が広がる。

 

「嫌がっても止めない。怒られても、叱られてもっ、今日ここで、ママを抱きたい!」

「あ……ぁぁ……っ♡」

 

コレットは現実であることを疑った。

実は自分は自慰の途中で気絶していて、妄想の続きを夢に見ているのではないか。

だって、これでは、あまりにも――自分の卑しい部分が望んでいた通りの展開で――

 

「できるだけ、優しくするから……大人しくしてね?」

 

耳元で囁く太智に、コレットは答えない。

体を小さく震えさせている姿は、犯されることに怯えているように見える。

何も答えないことも、抵抗を止めたことも、脅かされているがためと見える。

 

――濡れた瞳と紅潮した頬で、女の性欲に火がついたことを物語ってさえいなければ。

 

「あっ」

 

太智の手が、コレットの服をめくり上げる。

露になったのは、紫色のブラに包まれた爆乳と、それが作る深い谷間だ。

 

「ああ、もうっ! こんなにエッチな下着、持ってたなんて!」

 

太智の中で、『母』がまた『女』になった。

清らかな聖母であったコレットの、妖女としての面を見る度に、苛立ちに似た獣欲が湧き上がってくる。

それを自覚するより前に、彼女の胸を掴んで顔を埋めていた。

 

「ふぁんっ♡ だめっ♡ 太智くんっ、お願いっ♡ こんなのだめぇっ♡」

「だめなもんかっ! この下着で、男を誘惑するつもりだったくせに! このおっぱいを、誰かに触らせるつもりだったくせに!」

 

ママ活を咎められたコレットが、罪悪感から反射的に口を紡ぐ。

太智はその弱みを利用して主導権を握り、ブラを剥ぐように双丘からずらして、とうとう彼女の乳首を暴き立てた。

 

「ほら……こんなに、乳首が勃ってる……エロい、いやらしい……」

 

先端を尖らせた桜色の乳首に、太智の理性が奪われる。

幼い頃、風呂に入れられたときに見て以来、ずっと忘れられなかった、彼女の乳首だ。

それがいま、手の届くところで、男を待ちわびている。

 

「っ」

 

コレットは。目を爛々と光らせる太智と、勃起した自分の乳首を見て、息を呑む。

息子が、愛しい男が、自分の胸に無我夢中になっている。

そのことに、言いようのない興奮を覚えている自分がいた。

 

「これは、僕のだっ!」

 

ぢゅぅぅぅ! と音がするほどの強さで、太智はコレットの乳首に吸い付く。

 

「あぁぁぁんっ♡」

 

鮮烈な快感に、コレットは仰け反りながら嬌声を上げた。

太智は止まらず、もう片方の乳房を右手で掴み、思うがままに指を沈ませ、柔肉を弄ぶ。

 

「ひあうっ♡ やんっ♡ ああぁぁっ♡ らめっ♡ たいち、くぅんっ♡」

 

コレットは、自慰とは比べものにならない快感に身悶える。

刺激する場所は同じでも、女の指と男の手では、性感の規模が違った。

逞しい指が乳房に深々と食い込んでくるだけで、声を堪えきれない。

だというのに、太智の手は指を食い込ませたまま暴れ回り、鮮烈な快感を継続させる。

鉄砲水に押し流されるような性感の嵐で、思考力を粉砕される。

 

(吸って、るぅ♡ 太智くんがっ♡ わたしの、おっぱいっ♡ 吸ってるぅ♡)

 

夢中で乳首を吸う太智の姿に、母性が爆発する。

この行為を止めさせなければならない理由が、なにも思い出せなくなる。

気がつけば、コレットは太智の頭を抱いていた。

彼女の中では、「必死の抵抗」をしているつもりだった。

 

(デカいっ、柔らかいっ! なんだよこれっ! 指が沈むっ、乳首美味いっ!)

 

太智もまた、正気を手放している。

妖女は何人も抱いてきた。胸なんて浴びるほど味わってきた。

なのになんだ、この興奮は。

まるで、人生で初めて女の肌に触れたかのよう。

 

「これだっ、これだよっ。ママっ、僕はずっと、これが欲しくて……っ!」

 

いままで抱いてきたどの妖女よりも、この乳房が欲しい。

感触や大きさはそれほど違わないのに、誰よりも美味しくて心地良い。

自分はきっと、最初から、コレットの乳房が欲しかったのだ……っ!

だから飢えた獣が獲物の肉を食いちぎるように、両手で左右の乳房を絞り、二つの乳首を同時に吸い上げる。

 

「やぁぁぁっ♡ だめだめっ♡ おっぱい取れちゃうっ♡ 潰れちゃうぅぅっ♡」

 

被捕食者感を伴う激しい快感に、コレットは髪を振り乱した。

自慰の中でなら、太智にこのように求められることを何度も想像してきた。

全部、ままごとにもならない、薄っぺらな妄想だった。

現実の、生きた男の体で貪られる衝撃は、女の想像力を凌駕していた。

 

(痛い、のにぃ……なんで……やめて、ほしくない……っ♡

 止めてって、言わなきゃ、いけないのにぃ……言えないっ。

 気持ちよすぎて、言えないっ♡ 言わなきゃっ♡ やだっ♡ イ――)

 

男の荒々しい手付きに、妖女の性感帯が呼応していた。

人間女性よりも丈夫で、性感帯が広く深く分布している妖女の体が、女の手指では決して得られない重厚な刺激に、早くも味を占めてしまった。

 

(イ……っちゃうぅぅぅ♡)

「んっ♡ あああぁぁぁっ♡」

 

やがて、限界を迎えた体が痙攣する。

覆い被さっていた太智も、達した女の愛らしい震えを肌で感じた。

 

「イった……ママを、イかせてやった……っ」

「はっ♡ はぁ……はぁ……っ♡」

 

太智は強い達成感を覚えた。

自分の手で、この義母を、聖母のように不可侵だった女性を、淫らに果てさせた。

いままで数々の妖女を抱いてきたのは、この瞬間のためだったのではないかとすら思う。

 

「た、太智くん……もう、おしまい……おしまいに、しよう?

 こんなの、やっぱり……私、怒らないから。お願いだから……っ」

 

息子に乳イキさせられたことを自覚してか、コレットは紅潮した顔を隠しながら懇願する。

その姿は太智に、自分がコレットを辱めてしまったのだということを実感させた。

ただ嘆いているだけなら、太智の熱も冷めただろう。しかし――

 

「そんなエッチな顔して、なに言ってるの? ママ」

 

太智が腕を掴んで暴いたその顔は、艶やかな恍惚感に染まっていた。

 

「ママだって、ずっと僕のこと、そういう目で見てたくせに!」

 

太智はコレットの服を剥ぎ取り始める。

 

「やっ、違……違うのっ! そんな、こと――」

「嘘だっ。気づかないわけないじゃないかっ!」

 

コレットは否定しようとしながら、最後まで言い切れない。

抵抗しようとした腕も、太智の強い口調に止められて、上着の袖を引き抜かれていく。

 

「だから、ママには、僕を拒む資格なんか無いんだよ?」

 

上半身が裸になったコレットを、嗜虐的な笑みで見下ろす。

ブラも剥ぎ取られ、華奢な肩幅には不釣り合いな爆乳が、ある程度の張りを保ちながら左右に流れている。

反射的に隠そうとしたコレットの手は、太智の手に捉えられ、頭上に揃えて片手で拘束された。

 

「ごめ……ごめんなさいっ。私が、私が悪かったからぁ……もう二度と、あんなことしないからぁ……っ」

 

ママ活に走ったことを詫びているのだろう。

もはやそんなことはどうでもいいのだが、太智はその負い目に容赦なく漬け込む。

 

「なら、大人しくしててね?」

 

太智は強引な理屈を並べると、コレットのスカートをまくり上げ、ブラと同色の下着に包まれた秘所に手を伸ばす。

 

「ひあっ♡ そこ、は……っ」

 

コレットは反射的に脚を閉じようとした。

しかし太智は膝を使ってコレットの足を開かせ、ショーツの上から割れ目をなぞり上げる。

 

「んぁっ♡」

 

すでに湿っていた。

淫裂に沿って指を前後させると、下着に愛液が染み出てくる。

 

「ほら、やっぱり、こんなに濡れてる……っ」

「っっっ」

 

太智の指摘を聞いて、コレットが耐えかねたように顔を逸らす。

恥辱の色もあるが、それ以上に興奮を隠し切れていない。

 

「んっ♡ あっ♡ あっあっあっ♡」

 

女芯を引っ掻いてやると、僅かな指先の動きひとつで、コレットの全身がびくびくっと震える。

かなり敏感になっていた。

母の矜持から拒んではいるが、体はとっくに、太智をオスとして認識して、求めているのだ。

そう確信した太智は、右手を彼女のショーツの中へと侵入させる。

 

「ひぅっ♡ あっ、やだっ。だめだめっ♡ そこっ♡ そこはっ♡ あああぁぁぁっ♡」

 

下着越しにも分かる濡れそぼったそこに指を添えると、太智は躊躇なく膣内に中指を挿入した。

驚くほどあっさりと、指の根元まで滑り込んだ。

 

「ああ、すごい……ママの中、どろどろに熱くなってるよ?」

「ひあぁぁっ♡ だめっ♡ いわないでっ♡ ああぁっ♡」

 

挿入した中指をくすぐるように動かしてやると、コレットの体が歓喜に震える。

指先と連動するように膣内が蠢き、咥え込んだ指を肉壁で絞り上げてくる。

コレットの体が太智を求めていることを、極めて雄弁に物語っていた。

 

「いいんだよ、ママは何も考えなくて。僕が勝手に、ママを犯すだけだから……っ!」

 

指先で弱点を探り当てた太智は、手の形を膣内と陰唇にフィットするよう整えると、手淫の速度を上げていく。

 

「ひゃうっ♡ あああっ♡ んああぁっ♡ らめっ、それらめぇぇっ♡」

 

ただでさえ敏感になっているところに、弱点を集中して責め立てる。

コレットは目尻に涙を浮かべ、呂律を崩しながら嬌声を上げた。

大きく跳ねるように身悶えるが、両手をベッドに押し込まれているため、逃げられない。

身悶えるコレットの動きによって、爆乳が左右に揺れ動き、目にした太智の獣欲を掻き立てる。

 

「イって、ママ。僕の手でイってよ! もっと、エッチなところ見せてよっ!」

 

くちゅくちゅくちゅくちゅ! と、水音が激しさを増していく。

淫裂は粘液にまみれ、太智の指に粘りつき、膣襞が痙攣を始めている。

 

「イ……く……っ♡ イッ、ちゃうぅぅぅ……っ♡」

 

コレットの膣内が緊張し始めると、弓弦でも弾かれたかのように、全身が跳ねた。

 

「んあああぁぁぁぁっっっ♡」

 

膣奥から、蜜液が潮を噴くように勢いよく噴き出す。

太智の手をびちゃびちゃに濡らしたことにも気づかず、コレットは余韻に浸っていた。

 

「あ……っ♡ あ……は……っ♡」

 

蕩けた顔は、深い絶頂に到達したことを示していた。

放心しているその隙に、太智はベルトを外してズボンを下ろす。

 

(やる……このまま、最後まで……! この人を、犯す! 僕のものにする!)

 

妖女など何度も抱いてきたというのに、いまは一秒も我慢できない。

 

「ぁ……ら、め……たい、ち……くん……や、めぇ……♡」

 

朦朧としながらも太智が何をしようとしているのか見たコレットが、うわごとのように制止する。

しかし太智は彼女の足を開かせ、クリトリスを軽く擦ってやった。

 

「んぁぁぁぁ……っ♡」

 

抵抗するなと命じられるような愛撫に、コレットの抵抗が緩む。

 

(そうだ……ずっと、ずっと……こうしたかった。最初から、こうすればよかったんだ……っ!)

 

コレットが自分を性的な目で見ていたというなら、自分も躊躇う必要はなかった。

ママ活で他の妖女と出会い代替にすることもなく、義母への劣情に苦悩することもなかった。

そんな積年の回り道を経て、長い登山の終わりを迎えるかのように――

 

「ママっ!」

「あっ♡ あっ!? あああっ♡ ぁぁぁあああんっ♡」

 

ずずずずっ――と、

早くも遅くもないが、決して止まることなく、太智の剛直はコレットを貫くのだった。

 

「っ、くぅ!?」

 

初めて感じるコレットの膣内に、太智は目を剥く。

 

(なんだ、これ、母さんの膣内、全体にぴったり絡み付いて……っ)

 

陰茎の先端から根元まで、満遍なく掛かる膣圧。

カリや裏筋の凹凸まで、まるであつらえたかのように、ぴったり嵌まる。

例えるなら鍵と錠前が一致するかのように、膣壁と肉棒がミリ単位で噛み合っている。

 

「あ……っ♡ ひぁ……っ!? はふっ♡ あっ♡ あ、あ、ぁぁぁ……っ♡」

 

それはコレットにとっても同じだったのだろう。

気がつけば自分の中を埋め尽くしていた息子の分身に、驚きの交じった放心顔をしている。

 

こんなことが、あるんだろうか?

血縁の無い自分たちの性器が、ここまで一致するなんて。

血縁があれば具合がいいというわけでもないだろうが、まるで初めから結ばれる運命だったかのように。

 

端的に言って、相性がいい――

同時にそれを理解した二人は、その瞬間、ただの雌雄のケダモノと化した。

 

「動くよっ! ママっ!」

「え……待っ、んっ、あああぁぁぁっ♡」

 

太智が本能に従って腰を突き入れ、コレットの膣内を往復する。

 

 

 

 

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「ふおっ♡ んぁっ♡ あああらめぇぇぇ♡ こんなっ♡ おっき♡ 熱いのっ♡ 奥ぅっ♡」

「すごいっ……ママの中、すごすぎる……!」

 

膣襞をカリで引っ掛けるたびに、脳天まで稲妻が走るほどの快楽が生まれる。

 

コレットの方は、もはや言葉すら失いかけていた。

とうとう息子のものを受け入れてしまったのだとか、初めて感じる男性器の感触だとか、そういうものに意識が行ってない。

 

「すごっ♡ なに、これっ♡ んあっ♡ あっあっあっああぁぁぁんっ♡」

 

ただ、膣内を前後する肉棒からの快感が凄まじくて、思考力すら消し飛んでいた。

相性の良さはコレットの快感にも繋がり、膣内のいいところを最適に擦る太智の逸物で、体が弾け飛びそうなほどの悦楽に襲われる。

 

(イって、イってる!? 私、いつからっ!? 太智くんの、おちんぽっ♡ 動く、度に――)

 

コレットは太智のピストンを受ける度、脳内がスパークするのを感じていた。

絶対値の大きすぎる快感は、男を初めて知るコレットにとってはもはや、快感以上の何かだった。

 

「んあ゙っ♡ あ゙っ♡ あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っっっ♡」

 

口から出ている自分の雄叫びめいた声すら、別の誰かのものに感じる。

もはや太智を拒むとか受け入れるとか、そういう段階ではない。

ただ全身を襲う悦楽が鮮烈すぎて、溺れるように太智にしがみつき、赤子のように鳴いた。

 

(母さんがっ、母さんがイってる! 僕のセックスで、こんな下品でエロい声でっ!)

 

太智の理性も既に飛んでいた。

慣らすような抽送からペースアップしていこうなどという思考は、とっくに消え失せた。

ただ本能のまま、一心不乱に、相手の負担も考えず、ひたすら腰を打ち付ける。

 

「あっ♡ ああぁっ♡ あ゙あ゙っ♡ んあああぁっ♡」

 

子宮を突き上げられる度に、コレットの体が絶頂に震える。

すでに数え切れないほどイかされているが、終わりが見えない。

絶頂している瞬間と、そうでない時間との境界ですら、曖昧になっている。

 

(だめ――気持ち、いい――なんて、もんじゃない――こんなの、死んじゃうぅ♡)

 

コレットは忘我の中で、歓喜と恐怖が入り混じるのを感じていた。

相反するはずのそれは化学反応を起こし、神経を灼き焦がす悦楽へと変わる。

 

(でも――太智くんが――こんな、夢中に――私の、中で――男に、なって――る♡)

 

方向感覚すら失ったコレットに感じ取れるのは、抱きしめ合う太智だけだった。

犯されているとか、誰が悪いのかとか、そういう思考はもはや無い。

ただ、愛しい息子が、ずっと抱かれることを妄想していた彼が、自分の膣内で果てたがっている。

いまコレットに認識できるのはそれだけであり――

 

(受け、止めて――あげ――な、きゃ♡)

 

雄々しくも可愛い息子を満足させてやりたいという、母性があった。

 

「んおっ♡ おおおっ♡ たいち、くぅん♡ あふっ♡ んぉぉぉおおおっ♡」

 

この子のためなら自分の身を犠牲にしても構わないという聖母めいた慈愛、

この逞しく荒々しい男性に完膚なきまでに征服されたいという妖女の性愛、

二つの熱情はコレットの中で混ざり合い、このセックスを肯定させた。

 

「ああ、イクよ、ママっ! もう、僕……っ」

 

太智は悔しそうに訴える。

早漏だった覚えはないが、コレットの名器によって、最短記録で射精させられそうになっていた。

 

「んあああぁぁぁっ♡ いいっ♡ いいのぉっ♡ もうっ、我慢しないでぇっ♡♡♡」

 

連続絶頂の最中でコレットが叫んだのは、太智の射精を受け入れたいという思いだった。

 

コレットは思う――この子はずっと、こんな熱い想いを溜め込んできたのだ。

自分を母として慕うと同時に、許されざるオスの念を隠し、悩んでいたのだ。

自分も、そうであったように。

母として、女として、それを許してあげなくてどうするのか――と。

 

そんな母の慈愛を見て取った太智の腰使いが、限界まで加速する。

 

「うあ゙ぁっ♡ あ゙あ゙っ♡ んおっ♡ ふあぁぁぁぅぅぅっっっ♡♡♡」

「出るっ!」

 

太智が膣奥を突き上げると、コレットの体が跳ね上がると同時に、熱い粘液が迸った。

二人の視界が同時に白む。

 

「…………っ!」

「――――っ♡」

 

最後にして最大の絶頂を迎えた母と息子は、ここに来て無言だった。

言語に絶したオーガズムに、どちらも腰を震わせ、魂が抜けたように脱力する。

 

「はぁ……はぁ……っ」

「んっ……はぁ……♡」

 

荒々しい太智の呼吸と、いまだ快感に染まっているコレットの吐息。

覆い被さった太智は義母を強く抱きしめ、コレットはそんな息子を優しく抱擁する。

襲った男と、犯された女であるはずなのに――まるで初めから愛し合っていたかのようだった。

 

 

 

 

 

 

およそ二時間後――

太智とコレットは、ホテルから家に帰ってきた。

 

「着いたよ、母さん。大丈夫?」

「う、うん……大丈夫……よ」

 

太智はホテルからの帰り道、コレットの肩を抱いていた。

激しい情事で足腰が立たなくなったコレットは、太智に寄りかかるような形で、どうにかマンションに帰ってきた。

 

道中、コレットは太智の話を聞いていた。

 

引き取られた当初から、ずっとコレットを想っていたこと。

その気持ちを忘れるため、数々の妖女と関係を持ったこと。

趣味と実益を兼ねてママ活をしていたら、コレットが客として現れたこと。

そのこともあって気持ちを抑えられなくなり、あのような行為に至ってしまったこと。

 

犯してしまったことを謝りながら語られた本心に、コレットはある意味、犯されたとき以上の衝撃を受けた。

 

(ずっと、私のこと……)

 

そう想うと、レイプされたことに対する抗議の念も薄れてしまった。

体が許容してしまっていたこともあるし、自分もまた太智を想っていたこともある。

ママ活をして多数の妖女と関係を持っていたという話も、ショックではあったが――

『母さんの代わりに、と思って』

男としての熱情をコレットに向けないためだったと言われて、怒れなくなってしまった。

 

(私が、もっとちゃんと、気づいてあげれば……っ)

 

いつしかコレットの思考は、犯された女のそれではなくなっていた。

そこまで思い詰めてしまった息子を、何とかして救わなければという方向にシフトしていた。

 

だから、太智が自分を襲ったことについては、もう触れなかった。

二度とするな――と、言うべきはずのことを、言えなくなってしまった。

 

そんな自分を見た太智が、一瞬だけほくそ笑んでいることに、気づくこともなく。

 

気がつけば無言のまま、こうして自宅の前に辿り着いたのである。

 

「今日はごめんね、母さん」

 

太智は玄関の鍵を開きながら、コレットに声を掛ける。

 

「ううん……いいの……でも、その……」

 

コレットは言葉に迷いながら、肩を抱く太智の腕を見る。

力強い腕と指が、自分を離してくれない。

お前はもう俺の女だ――とでも主張するかのように。

 

「母さんを悲しませたくないし、もうママ活は止めるよ」

「う、うん……」

 

それを聞いてほっとする。

だが、太智の言葉と、より強く抱き寄せてくる腕に、強い含みを感じた。

 

「だって……これからは、一番の『ママ』が一緒だもんね」

「っっっ」

 

それが、どういう意味なのか、頭よりも本能が先に理解した。

つまり太智は……今後は自分を『ママ』にすると言っているのだ。

ママ活をもうしないというのは、代替物となる妖女を漁る必要が無くなったからで、性欲を堪えて倫理的に生きるという意味ではないのだと。

ホテルでの一件を、あの一度きりで終わらせる気はないと――体を通じて伝えていた。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「た、太智くん……」

「一緒に、居てくれるよね?」

 

太智は玄関口を開きながら、被せるように確認する。

大人っぽくて色気のある目付きに、コレットの心臓どころか子宮までもがざわついた。

 

「…………」

 

視線を前に向けると、住み慣れた我が家の玄関がある。

敷居をまたぐことに、一切の迷いも躊躇いもいらないはずの、自宅の玄関だ。

 

(この扉を、通ったら……)

 

しかし、太智の言葉が、火照るコレットの体が――その意味を変えていた。

 

(これからも、太智くんと……っ)

 

自分を完全に『女』として認識している太智と共に、この家で暮らすということ。

この扉を潜るということは『同意する』ということなのだと、心理的に結び付けられていた。

 

明言はされていない、考えすぎかもしれない。

だが太智は、明らかに考えさせた上で、コレットにも言外の返答を求めている。

 

『これからは、自分の女になると、誓え――』

 

ただ帰宅するというだけのことに、太智はそういう意味を持たせていた。

 

「それとも、もう嫌になっちゃった? 僕なんかとは、一緒に暮らせない?」

「ち、違……っ」

「そうだよね……もう僕なんか、息子じゃないよね。()()()()()()()()()()()()()()……」

「っっっ」

 

寂しがってみせる太智の言葉が、悪魔のささやきのようにコレットを揺さぶる。

――脅迫だった。

親子愛を人質に取るような、脅しに等しい懇願だ。

太智を拒むことは、親子の縁を切ることと同義であると、コレットに錯覚させていた。

 

「だ、め……っ」

 

コレットは涙ぐみながら、太智の服を掴む。

それこそ、捨てられることを怖れる恋人のように。

 

「そんなこと、言わない……で……っ」

 

ここで自分が彼を責めたら、彼はこの家を出て行ってしまう。自分を捨てていってしまう。

コレットの頭を支配するのは、その恐怖だった。

 

――犯されるよりも、恐怖だった。

 

「なら……」

 

打って変わって微笑を浮かべた太智が、コレットの肩から手を離し、腰を軽く押すように玄関へ進ませる。

ぴくんっと体を震わせたコレットは、胸を隠すように手を組んで、玄関に足を踏み入れる。

 

「これからは、ずっと一緒だね――ママ」

 

『同意した』――そうであると宣言するように、太智は語り掛ける。

 

卑怯な話術から強引に取った同意だ。契約とは到底言えない。

だがここで重要なのは、コレットに同意した認識があること。

 

今後、隙あらば自分を犯すだろう太智と、一緒に暮らす。

そのことに、言外だろうと何だろうと、自分の意思で選択させることに、意味がある。

 

聖母のように純粋だったコレットは、いま悪魔のような息子の言葉に心を絡め取られて――

 

「…………っ♡」

 

――発情していた。

 

目は濡れて、耳まで赤くなり、半開きになった口から荒い呼吸を繰り返す。

興奮した妖女のフェロモンが香り、服の下で乳首が勃ち、秘所が湿っていると分かる。

 

同意していないのは言葉だけなのだと、誰の目にも分かる、淫らな妖女の姿であった。

 

 

 

かくして――太智とコレットが、玄関を潜る。

いつもと同じ音を立てて、玄関扉が閉じられる。

 

 

 

それでも――もはや二人の住むこの家は、いままでと同じ家ではなかった。

 

 




ご一読いただきありがとうございました。

二話から間が空いてしまいましたが、三話と同日更新です。

ご感想、誤字報告をいただき、まことにありがとうございます。


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