オレぁ高校生のデンジ (クソブロ)
しおりを挟む
第1章
1話 デンジくんは今日も頑張る
ごゆっくりお付き合いください。
「んあああァッ!?」
体が浮き上がるような感覚と一緒に飛び起きた。
大量の汗を吸った肌着、ベッドシーツはぐしょぐしょで最高に気持ち悪い。汗をかいてるってことは暑いはずなのに、これだけ汗をかいてるなら相当。それなのにすごく寒く感じる。
…息を整え、シーツの慣れてない部分で体を拭く。朝日が窓から覗いているのを見るに、すでに朝になっているようだ。
「糞…マジで、クソだ…」
最悪の夢を見た。普段見るものとは違って、相当タチの悪い夢を長い間。
重だるい頭と体を無理やり動かしながら、着替え、メシ、歯磨き、登校準備をする。
そして誰もいない家に向かって、
「行ってきまーっす」
ドアは重く、ゆっくりと耳障りな音を立てて閉じた。
今日もなんでもない1日が始まる。
今朝見た悪夢がずっと尾を引いている。
仕方ないって言やぁ仕方ないかもしれない…なにせ奇天烈で、ぶっ飛んでて、馬鹿「………ジ」みたいに糞ついた夢だったから。
そこで俺は悪魔『…い、…ン…』を狩ったり、たまにひでぇこともあるが夢みてえな生活したりしていた。
それだけならまだいい、いつか見た漫画やアニメが俺のイメージと結びついて『デ…ジ!』夢になっただけなんだから。
けど…あれはそうじゃあない。
あのどうしようもない"嫌"なシーンは───
「おいデンジ!聞いておるのか!」
「あ
後頭部をえらく硬えもんで殴られる。下手すりゃ大怪我してても間違いなさそうな硬さと強さで俺の頭は破壊されようとしていた。
こんなことすんのは、俺の知ってるやつには1人しかいない。
「っ…おいパワ子、バカ痛えじゃねぇかテメ〜!」
「仕方ないじゃろ?デンジがワシの挨拶を聞かなかったのが悪い。むしろこのワシに殴られたことを光栄に思うんじゃな!」
「ふざけやがってよぉ、どこの世界に人間の頭をんなでけえ石で殴るやつがいるってんだ!?」
「ワシか?ワシじゃな」
この頭のイカれた行動とネジのはずれた言動をするのは
いつだか調べたが、力子というのは強くたくましく育ってほしいという意味でつけるような名前らしい。
確かにこいつは強く育った、もっともこんなトンチキな方向になんてきっと神様ですら想像してなかったろうが。
割れるような痛みだった頭もちょーっと我慢すればすぐ引いてくる。この体質ってほどじゃないけど、回復の速さにゃあ(こいつと付き合う上で)めちゃくちゃに助かっている。この体でなきゃあ一体何回こいつに殺されたかわからない。
「あれ…そういや今日は収録休みかよ?」
「おう、しばらくはライブもないからのぉ。嬉しいじゃろ?」
「いーや、全く」
こいつは壊滅的な性格と頭をしているが、顔がムチャクチャにいいせいでアイドルとして活動している。しかもバカ売れで頻繁にテレビで見るようなやつだ。
こんな奴がどうしてそんなに売れてるのか?俺にはわからない。きっと世間は頭がイカれてるんだろう。
そしてライブもない、収録もないってことは、今から俺がこいつのお守りをしなきゃならねぇってことに繋がってくる。考えるだけで息が漏れてくる。
「なんじゃなんじゃ、朝っぱらから元気がないのぉ」
「まぁな…糞みてえな夢見て糞みてえな目覚めだからよぉ、あまり気分はよろしくねえな」
「ふぅん」
「体からチェーンソーが飛び出て、そのチェーンソーで悪魔を切り殺すっつう夢だったんだけど…体切れて痛え感触もあって本当ヤだったな」
「そうかそうか、ワシは知らんが!」
このクソ女が顔と同じくらい良い性格になってくれたらなんていつも思う。ツラは本当にいいのになあ…
そうしてとぼとぼ歩き続けて、校門をくぐり、靴を履き替え階段を登る。パワーとは別教室なのでここまでだ(どうせ休み時間に来るけど)
普段通りのなんてことない動作を何も考えずに繰り返して、今日が始まる。
「さぁてと、今日もデンジくんは頑張りますかぁ!」
次は未定ですがチェンソーマンがおもしろいとインスピレーションがわくのでおまちください。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
2話 まぁ普通の1日じゃあねぇっすか?
よかったら感想などいただけると励みになると思います
始業のチャイムが鳴る。
教室には教卓が、それとたくさんのイスと机。壁には通信だったり、予定表だったりとが貼られまくっている。
これが『普通』。悪魔なんてメルヘンチックなもんと命かけて戦うなんてことはありえねぇことなんだ。
なんでもない連絡を聞いて、授業の時間をボーッと待って、いつのまにか授業が終わる。ノートにゃ多少の板書と、前者に比べてめちゃくちゃに多い落書き。
今日見ていた夢の中での記憶を頼りに、なんとなく描いているだけで時間はあっという間に過ぎてしまっていた。
…しかしまぁトンチキな生き物ばっかいたものだ。
(俺の汚ねえ画力では全くその通りに描けた訳じゃあねぇが)白いヘビのゆるキャラみたいな何か、サメの頭をした人間、髑髏がいくつも連なったクリーチャー……
まぁ側から見れば、小学生が思いつきそうなものばかりだ。これ以外にもたくさんの顔のいい女たちがいた気がするんだけど…俺の絵でそれを描いちゃ、落差が酷すぎて気持ち悪くなりそうだ。全員が100人中100人の俺が"いい"と思えるくらいにはいい顔だった女がそろっていたと思う。
「ハァ〜〜〜〜……」
でかいため息が漏れる。もし叶うのなら、嫌な部分だけは除いてあの夢をもう一度見たい。幸せな部分だけを切り取るように、しばらく落書きを描き続けていた。
「ん…?」
落書きの中に思い出せないキャラがいた。それは犬…だろう。いや犬だ。ずんぐりむっくりで、体が丸っこくて、ただ頭からチェーンソーが生えているだけの。
それは他の落書きに比べてもかなり鮮明に、リアルに描けているような気がした。そして…何か名前があった…のに思い出せない。漠然な何かが頭を覆う。
きっと何か、夢の中の俺にとってはめちゃくちゃに大事だったりしたものなんだろう。ぬいぐるみ?ペット?けどそんなんじゃあない気がする。
(ぬぬ、う、うぐぐぐがぐ…)
『これ』との関係はなんだったのだろう、一体いつ出会ってたのだろう、何をしていたのだろう。名前はなんて言うんだろう、考えが溢れて止まらないで頭が裂けそうだ。
所詮夢ん中でのことにすぎない───なんて言えないくらいには、喉の奥で突っかかるような感覚を覚えた。
「んまぁ…無駄に気難しいことを考えるのは…いいか」
このままいつまでも出てこない考えをし続けたってどうしようもない気がしたから、一度完璧に思考を断ち切った。こんだけ悩むくらいのことなんだから、きっといつか思い出すだろう。シリアスなことなんて考えてても仕方ねえから、仕方ねえ。
気分を切り替えて次の授業の準備をする。長〜く続いた落書きのおかげで、次が終われば昼の時間だ。
「うげ」
次は歴史。昔の偉そうなやつらがなんか色々とやった、ってことを延々と話し続けるだけの授業だ。全ッ然面白くねぇし退屈だし眠てぇし…そんな程度のモンだった。かといってフケて何がどうなるわけでもないので、とりあえず参加だけはしよう。
「悪魔より歴史の授業の方が強えよなあ…」
そうして俺は授業開始から7分も意識を保ち続けるという健闘をしたのだった。
「おうデンジ、飯を食うぞ!」
ぼやけた頭を抱えながら屋上へ来た。広々として街もそれなりに見渡せるいい場所であるが、"ここに来る"という手間や、他の人がいるということに謎の居心地づらさを感じるような空間でもあって、一番乗りしちまえばそのままゆったりと飯が食える。
けど絶対…絶対、学校に来てる日はパワーがいたりする。もしかして人が来ないのはコイツが屋上にいるって話が広まってるからじゃあねえのか?
「…ん?そのパンうまそうじゃのぉ…ワシに献上しろ!」
「ヤ〜だね〜!!!今日の俺ん昼はこれだけなんだ…この常に品薄商品の『超超超・具沢山ピザパン』!こいつに変わるモンがあるってんなら先にそっちを寄越しな!」
「わかったわかった、このさっき拾った形のいい石をやるから、な?」
こいつ相変わらずナメやがって…しかもソレ、俺をぶん殴った時の石じゃねぇか?なんでそんな、それなりに持ち歩きにくいサイズのものをまだ持ってたんだ…?
別にここで断り続けてもいい。断固拒否の姿勢を見せ続けてもいい、が────断り続けていたら、コイツは無理やり奪って全部食べやがるし、校内にいるパワーの狂信的なファンに何されるかわかったもんじゃあねぇし(今も地味に圧を感じる。ドアの裏にでもいるのか…?)、結局大人しく分け与えるのだ。
なるべくウインナーの乗っかった部分をちぎってパワーに食わせる。その様子はまるで動物園のふれあいコーナーだ。
まだ物欲しそうな顔をしていやがるが、これ以上持っていかれると俺の腹がもたないのでパンをかっくらう。それを見たパワーはようやく観念したのか、購買で買ったであろうでかいおにぎりを食べ始めた。
ものの5分も経たずに食べ終わったパワーは横になり、眠る体勢に入る。アイドル業の疲れが溜まってるのか、寝息はすぐに聞こえてきた。
…普段ならくだらない話をしたりして時間を潰すものだが、肝心の話し相手はこうだから仕方ない。今日は屋上に吹く風音と寝息を聴きながら、何も考えずにぼーっと時間が経つのを待つのであった。
不意にチャイムが鳴る。既にそれなりの時間が経っていたようだ。…本当に何もしてなかった。寝るわけでもなく、妄想するわけでもなく…
汚いいびきを立てるパワーを叩き起こして、教室に戻る。午後からは真面目に授業を受けよう、と思い、
「そうだった…あのマスコットのこと、ちったぁ考えてりゃよかったなぁ…」
本当に時間を無駄に過ごした。少しでもあの時間を使ってれば、この喉のつっかえも取れたはずなのに。
謎に気分を落としたまま、午後の授業を受けた。
当然ながら全く頭には入ってこなかった。
もう学校が終わってしまった。今日はほとんど授業の内容が入ってこなかった。普段はもう少しまともに受けてられてた、はず…
どれもこれもあの夢のせいだ、あれが一生ついて回ってくるんじゃねぇかってくらいにはモヤモヤと残り続ける。全部忘れて切り替えようとしても、何分も経たないうちにまた考えさるのだ。
パワーは用事があるとかでさっさと帰ってしまった。こんな時にこそアイツがいてくれたらちょっとは違ったろうに。
変わり映えのしない帰り道をトボトボと歩いて、階段を登り部屋に向かう。一人の部屋は温かみもなく、静かな空気が全身を包む感じがする。夏の今頃はまだ夕日も出てないが、けれど腹は減った減ったと主張をしてきている。
(何かコンビニで買ってくるか?…うーん、けどなぁ…また出るのもめんどくせえなぁ)
腹減りと行きたくない気持ちがぶつかり、結局"我慢"に行き着いた。
(別に特別なこともねえし、家でゆっくり食った方がいいしな)
自分を納得させるようにそんなことをひとりごちながら、かといって何もしないで待つというのも"ない"ので、前に借りたDVDを見ることにした。『ザ・カルテットシャーク』と仰々しいタイトルがついてるそれは、白い服を着た人間がサメを囲って崇めている珍妙なジャケットをしている。初めにビビッと来て借りてきたものだが、正直こんなモン面白いのか…?と、今になってそんな想いが湧いてきた。借りてきた以上は見るが。
冷蔵庫から麦茶と買い溜めのお菓子をセッティングして、この悪魔みたいな映画に立ち向かう準備を整えた。
『おお…我らが神が降臨なされる!』
『あれこそ人類を救済に導く
『クソッ、なんとかしてあのサメ狂いと四つ頭サメを止めなきゃなんねぇな』
『こんなこともあろうかと、B棟の倉庫に大量のダイナマイトがあったんで少しかっぱらってきてたんだ。今こそ使う時…じゃない?』
『でかしたエリ!いっちょぶちかましてやるか!』
…………。
カルテット、っていうから音楽がすげぇ映画なのかと少なからずは思ってた。謎の白衣の人間たちを見ないことにして。しかし現実は無情で、ジャケットの人間たちはやはり『カルト』を示していた。
謎の召喚儀式によって呼び出されるサメは四つの頭だし、なんでそのサメが救世主とか言われてるのもよくわからねぇし、B棟の倉庫とかいう聞き覚えのない場所からダイナマイトを持ってきたヒロインも訳がわからねえし…
『死ねええええええ!バケモノぉぉぉ!』
『あっ、なっ、救世主さまぁぁぁぁぁ!!!』
爆散するサメを背に、主人公とヒロインは笑いながら走り出してエンディングに入った。全てがよくわからないまま進んで、理解できないまま終わった映画だった。
…なんだか涙が出てきた。なんでこんなものが世に放たれているんだろうか?俺はこのクソ映画に2時間半も時間を持っていかれたって考えると、虚無が心に訪れる。
止まらない涙をティッシュで抑えていると、ゆっくりと玄関のドアが開いた。
「ただいま…って、なんで泣いてんだよお前」
「ああ…あ、おかえり、
声の主は
今では他人との関係だったアキともそれなりに打ち明けたつもりだ。家事は基本アキがやっているから、飯もアキを待たないと食えないのだ。仕事だからしょうがねえけど。
アキはテレビの画面に表示されていた『ザ・カルテットシャーク』のメニュー画面を見て、何かを察したような表情をした。
「ああ、これか。そんなに感動する映画だったのか?」
「ちげぇよ、あんまりクソすぎるもんで涙が勝手に出てきたんだ」
「…なんだそりゃ。とりあえずメシの準備をするから手伝えよ」
「うーす」
アキが買ってきた袋の中身は豚バラ肉、玉ねぎ、大根、その他諸々…きっと豚と玉ねぎメインに副菜だな。今から楽しみでよだれが出てきそうだ。
アキの料理でまずいことは基本ない。外国のよくわかんねえ料理もめちゃくちゃうまく仕立てるんだから、その腕前は確かなものだ。
みるみるうちにひとつ、またひとつと出来上がっていく。すきっ腹にいい匂いがまた染みてくる。
白米を茶碗に盛って、アキを待つ。二人揃ってから食べないと行儀が悪いから、って待っちゃあいるけど我慢も流石に続けばキツい。
そわそわとしているのがアキにも伝わったのか、やれやれと言った調子で、けれど急ぐわけでもなく、ゆっくりと腰を下ろして食卓についた。
「いただきま「いただきまァす!」ゆっくり食え」
相変わらずアキの飯はうまくて箸が止まらない。
かきこんでかきこんで、たぶんあと3杯は食べないと満足できないだろう。
ひたすらに食べる俺、テレビを見ながらマイペースで食べるアキ。こうして日常の時間はゆっくりと過ぎていくのだった。
…腹一杯飯も食べて、熱い風呂にも入って、しっかり歯も磨いた。これ以上ない幸せな状態で眠れる予感がある。雑誌だらけの床の足場を見定めながらベッドに飛び込んだ。すると一も二もなく眠気が湧き出てくる。
(ああ…サイコーだなぁ…こんな日常送れてていいのかよ…)
幸せすぎて、ふとそんなことを思った。別にこれが"普通"であるはずなのに。
(まぁ、夢の俺はさんざんだったからな。あれを見てたらそう考えちまうのも仕方ねえかもしれねえ)
夢の中の自分を見て、リアルの自分が恵まれているという実感をするのはなかなかに奇妙だろう。
けれど仕方ない、ベッドで寝れるだけですげえことなんだから…
うと、うとと次第に意識は深く落ちていき、すぐに辺りは暗くなっていった。
色々考えて書いているつもりですが、やっぱりむずかしい…
これからも精進したいと思います
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
3話 とチェ ー
7個くらいある案の中で1つを選ぶのは相当難しいことですね
「あれ…?」
気がつくと、狭い路地に横たわっていた。
ゆっくりと立ち上がり周りを確認する。辺りは暗く、乱雑にものが捨てられていたり、なんだか信用のならないチラシが貼られてたりする。
…目の前に開け放たれたドアがあった。しかし家の裏口やどこかの部屋になんて繋がってるようではなさそうだ。何も気に留めることはなく、むしろ惹かれるようにドアの奥へ向かっていった。
目が慣れてきたのか、うす暗い中にもはっきりとものが見て取れるようになってきた。なんでもないゴミが主だが、まだ使えそうなバケツ、中心からひび割れたカメラ、変な形をした筒状の物体(3つの葉っぱのようなマーク?がついている)などが散乱している。
そしてたった数歩だけ歩き、その生き物に気づく。
ぱっちりとした目、丸っこいボディ、
知っている。俺はこの生き物を、知っている。
「─────あ」
なぜ忘れていたんだろう。今まで歩んできた事を思えば、忘れられるはずもないのに。
「…………□□□……!」
(……ああ……!?)
何かがおかしい、俺は今確かにはっきりと□□□の名前を言ったはずなのに───
まるでその言葉の意味だけが抜け落ちたように、発したそばから"がらんどう"がやってくる。よくわからない、言葉にしても理解できないが、空虚で何もなくてさみしいもの、という感覚が襲ってくる。
それでも、それでも。なんとか□□□の名前を呼ぼうと試行錯誤した。小さく、大きく、叫び、囁き。
けれど、それのどれも意味をなさず、ただただ無が喉から出ていった。
(なんっ…なんだよ…何だってんだよっ!おかしいだろうが!たった3文字の…家族の名前を呼ぶだけだってのに!)
不思議な力がそれを妨げているかのような気もする。
たかが、されど家族の名前を呼ぶことすらできない、そのクソッたれな状況がなんだか悔しくて、涙すら出てきた。まるで子供のようにうずくまって、涙を□□□に見せないようにとじっと座った。
…いったいどうして?訳がわからない…わからないから、なんでだか涙が出てきてしょうがない。
□□□はそんな俺に近寄ってほおずりをした。数回それを続けると、不意に、
「幸せな"夢"を見ているんだね、デンジ」
「えぁ…?」
「今の生活がいいのなら、それでいい。本来なら私たちみたいなものはいない方がいいからね。キミがいいのなら、このまま私のことは忘れてくれ。…それはそれとして、少し寂しくはあるけど」
「んなっ、ことできるわけねぇだろ…!お前を、□□□っ、ええ、忘れる!?だって、俺はお前の…家族、だろうが!」
「ありがとう、デンジ。キミと出会えて、本当に幸せだと私は思う」
「…っ」
「…ああ、暖かい…キミに抱きしめてもらえている時が、私はこの上なく愛を感じる。
…デンジ、"目覚め"はしっかりとね。本当なら私も…このまま忘れられたくはない。だから、いつものように、デンジがすごい事を見せてくれるって期待してるよ」
「ォチタッ!?」
体が落下し続けていくような感覚を覚えながら飛び起きた。大量の汗を吸った肌着、ベッドシーツはぐしょぐしょで最高に気持ち悪い。
そして、頬を伝う暖かい液体がある。これは…涙?
(ぁれ…俺…なんで泣いてんだ…?)
なんで泣いているのか、よくわからない。
(俺…どんな夢……見てたんだろう…)
目覚めが悪いまま朝を迎えてしまった。
そして気だるげなまま登校をして、今日も学校にいるパワーの相手をして、なんとなく家に帰って、アキの帰りを待ってから風呂、飯、寝る…。
それだけで1日は終わってしまった。なんでもない、くだらない日常を送った。無気力でなんの活力もない、流されるままの日を過ごした。
そろそろ締め切っていては寝苦しくなってきた春と夏の境界、窓からそそぐ心地よい風に当たりながら、そんな今日の日をなんとなく考えていた。
(こんなんでいいのかな…俺ん毎日…)
謎の不安に駆られる。何もないけれど、何もないからこそ感じられるもの。ひどく不快で気持ち悪い。
絶対こんなんじゃダメだ、そんなことだけは思っている。けど、それがどうしてダメなのか?その理由はわからないままだ。
けど、確実にわかることは"足りてない"ことだ。友情?恋愛?青春?…そりゃあちょっとは足りてねえかもしれねえけれど、
『キャアアアアアーーーーッ!』
リビングから女の迫真の叫び声が聞こえてくる。きっとアキが見ている何かの番組だろう。
…このまんまなんとなくベッドに横になっていても、糞ついた気分のまま悶々として寝れねぇだけなのはわかる。気分転換がてらに少し覗いてみることにした。
「どうした?もう1時だ…さすがに寝なきゃ明日が辛いぞ?」
「まぁ…ちょっと寝付けなくてよぉ。この際だし俺も見るぜ、それ」
テレビには上半身と下半身が分断された男の死体が5、6個ほど吊られ、地面に捨てられ、あるいは飾られていた。おそらくさっきの叫び声は、ヒロインか何かの女がこれを見てあげたものだろう。
俺はテレビ真正面に背もたれイスを置いて、リラックスできる体制を作った。反対にアキは立ち上がって、台所で何やらゴソゴソしている。
ほんの数分も経たないうちに、目の前のテーブルには湯気を立てるココアが2人分置かれた。
「あんがと」
「ん」
熱すぎず、すぐにも飲めるちょうどいい温度に調節されたココアは、体の中でじんわりと暖かさを広げていきた。とても心地よい。血みどろのスプラッタ映画を見ながら、この上なくリラックスに向かっての体勢が整ってきた。
テレビの場面は変わって、下着だけになった女がハリツケにされている。鉄仮面のデカ男は赤く染まったチェーンソーのスターターを起動させる。
ヴ ヴ ン
…妙に耳に張り付くその音は、回転するソーで四肢を切り裂かれていく女の悲鳴と共に、頭の中を飛び回っている。
「…一度見始めちまったからとは思って見ていたが、やっぱこんな時間に見るもんでもねえな…」
アキは渋い顔をしながらそう呟く。いつも映画をレンタルしに行っては微妙な映画ばかり引っ提げてくるアキだが、そういえばスプラッタホラーはあまり見たことがない。何か気分の変化でもあったのだろうか。
「なんでまたこんなモン借りてきたんだ…?」
「そりゃあ…アレだ。一見してクソみたいなものでも、蓋を開けてみれば案外素晴らしいものだったりするんだ。…今回に限ってはハズレだけどな」
「ふーん」
特に面白みもない理由だった。別に大した訳が欲しかったつもりじゃないが、かといって本当にどうでもいいと"ふーん"で止まっちまって困るな…。
冷め切る前に、ココアを一気に腹に注ぎ込んだ。画面の中の男は一人目の女を解体し終わったあと、もう一人の女の方にジリジリとすり寄っていく。
『イヤ、イヤ、イヤァッ!助けて!父さん!母さん!ポチタァァァァァァ!!』
ヴィィィィィィィィィィィィィィィィィ
……………ポチタ?
そりゃあ…その名前は…アレ?そう…確か…
(なんだそっかぁ、そうだ、そうだよ。あいつの名前はポチタだ)
妙に聞き馴染みのある名前だと思ったらそりゃそうだ。夢の中の俺といつも一緒だった、家族みてえな存在だったんだから。
…そんなのの名前を忘れる俺もどうかと思うが、忘れちまってたんだから仕方ねえ。けど、もう忘れない。ぜってー忘れない。
『ギャァァァ!あっ、がっ、ぃあああああ!!!!!』
なんか思い出したら胸がスッとしたな…今なら気持ちよく寝れるかもしれない。今のうちにベッドに入っちまおう。
「まだクライマックスじゃないっぽいけど…いい感じだし、まぁ俺寝るわ。おやすみ」
「ああ、おやすみ」
部屋に戻る。
ポカポカした体のまま、腹だけにタオルケットをかけて横になる。予想通りに眠気がすぐにやってきた。
(なーんか色々考えてた気がするけど…まぁいいや…今幸せなんだもんなぁ…)
全身に熱が巡り、胸の脈がどんどんとゆっくりになり、意識は暗く落ちていく。
そうして完全に眠りに落ちる直前、
ヴ ヴ ン
今回遅くなっちゃってすいません!
一応活動報告をこまめに更新していくつもりですので、気になったらそちらもご確認ください
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
4話 いきなりンなことある?
チェンソーマン好きなわたしですがマキマさんに怒られるかもしれません。
「ありゃとりゃっしたー」
健全な高校生のデンジくんはもちろん、アルバイトをしてお金を貯めることも欠かさない。とはいえ、『ウチから近い』ってだけの理由で100円ショップにバイトをしにきたのは間違いだったって今は思うけどな…!
「いらっしゃっませー、お預かりいたしまーす」
休みなく訪れる客、それのレジ打ちや案内までぜーんぶやらなきゃいけない。何より嫌なのがまた、クソ客が多く来ることだ。
「…ッチ、汚ねえガキだな」
「…あ?…お会計でーふ」
こんなふうに、ただレジ打ちをしているだけでも、初めて会ったばかりの、名前も好きな女のタイプも知らねえカスが唐突に罵倒してくることもある。
普段なら即殴り倒してやってるところだが…今の俺はバイトだし、黙ーって耐えるしかない。
「ありがとござっしたー」
ドン、とカウンターに沢山の商品が詰まったカゴが置かれる。こうやってエンドレスに商品の読み取りを続けるだけで時間は過ぎていく……
(糞…糞…糞!マ〜ジでイラつくなぁガイジがよぉ…)
今日も糞だった。最近は特に嫌なことばかりが多い気がする。何かすげぇ嫌なことが連続しては、ちょろっといいことがあってまた嫌なことが続く。こんなんじゃ身がもたないって予感がする。
いい女との出会いでもありゃあきっと救いがある。けど俺の身のまわりにいる女といえばパワーくらいだし…けれどパワーは女として見れねぇし…けれどもアイツくらいしか俺みたいなやつと関わってくれねえし…
(いけねえやめろデンジ!その考えはドツボにハマるぞ!)
けれど考え出したら止まらない。思考はせきとめたうちからどんどん溢れ出てきて、むしろ勢いを増してくる。
(このまま一生女とは付き合えないんじゃ…)
(老後は寂しく孤独死するだけじゃねぇか?)
(周りの付き合ってる奴ら見ては嫉妬するだけの人生になるのかな…)
ヤバい、ネガティブを打ち切れ/消えねえ止まらねえ!
自然と早足になる。すでに外は暗くなって、車もゴールデンタイムより減ってきたために静かな道路がそこにある。
早く帰って横にならないと…それが面白い漫画かテレビ…アニメもいい…とにかくなんでもいいから別に考えられるような何かをしねえと「痛ァっ!」「あうっ!?」
あんまり考え事をしすぎていたせいか、目の前で歩いていた人に気づかずぶつかってしまった。思いっきり頭と頭がぶつかってヒリヒリする。
「んがぐ…う」
「アタタ…ちょっとキミ、気をつけてね?私も不注意だったとは思うけどさ…」
目の前の人物から発せられたのは高くて綺麗でかわいい女の…声。帽子をかぶって額を抑えているので顔が見えないが、この分だと相当にできた顔の女だ。
ぶつかった罪悪感より、目の前のこの人の顔を見てみたいと顔を覗き込む形でかかんだ。
「あっ、あのォ!ケガぁしてませんかぁ!?」
「んん、ああ…大丈夫だよ、大丈夫。互いに大したことなさそうでよかった」
そう言って手が額から避けられた。
現れたのは日本人離れした顔立ち、外国人?どこかはわからない。目は暗くてよく見えないが緑色?サラサラでここまでいい匂いのする髪が特徴的な人だった。
「かわいい…」「えっ?」
つい言葉が漏れてしまった。仕方ない、こんなにも美人な人がいたら100人中100人の俺が思わず言っちまうだろう。
「変わってるね、キミ。今度の人とはぶつからないように気をつけるんだぞ〜」
そう言うと、その人は行ってしまった。
かくいう俺は、その人に対して何か呼び止められたわけでもなく、口でどもってそのまま言葉は出なかった。
「…かぁ〜!あんな美人と付き合えたら、俺ん人生もちったぁ楽しくなるだろうによぉ…」
帰宅道、風呂、飯、寝床で、彼女の香り、声、顔を思い出しながら、あんなことやこんなことを考えながらその日を終わらせた。
(しかしまぁ、昨日の出会いがすげぇ神ってただけで…)
「おうデンジ!奇遇じゃな!」
目の前にいるのは残念代表、パワー。顔以外全てがダメなせいで、俺は異性としてコイツを見れたことがない。
今日は休日だからとあてもなく散歩していたらこれだ。あわよくばあの人と会えるなんて思った俺は馬鹿だったのかもしれない。代わりがこれなんて誰も思ってなかった。
「つーかよぉ、お前最近フツーに見過ぎじゃねぇ!?アイドル業クビになったんですかァ〜!?!?」
「バカデンジが!毎年毎月毎じゅっ…毎日毎時毎分毎秒ワシがテレビ撮影でもしてると思ったかアホめ!」
「噛んだな、今噛んだなテメ〜!俺は聞き逃してねぇからな!」
「は?噛んでないが?」
そのまま街の真ん中でじゃれあいになる。なんだかんだでこいつといる時間は楽しいものだ。
バカでアホで虚言癖でナルシストで差別主義者だけど、気は合うし、それなりに…それなりに話は通じるし。
「それはそれとしてよ、お前ネコ置いて外出ていいのかよ?今日相当暑くなるって言ってたぜ?」
「ん?ニャーコのことならもう外に出ておる。今頃ナワバリでも覗きに行っとるんじゃないかの」
「飼い猫でボス猫かよ、たまげるな」
「それはそれとしてそれとして…デンジよ、実はウヌに用があったんじゃ。ここで出会えたのは本当に奇遇じゃな!」
俺に用〜?ぜってえろくなことじゃねぇぜコイツの用は…。いつだかの記憶で、コイツに用があると頼まれたファンのクラスメイトは、四つん這いで椅子の真似をさせられていた。
あんまりににも王様ムーブをナチュラルにやってのけてるパワーも怖えし、それをサラッとやってのける椅子役のやつも怖かった。人が椅子になるなんて情けなくてしょうがねえだろ普通は。
「で、なんだってんだよ用って。メシおごれってんなら聞かねぇからな!」
「違う違う、元よりウヌに金の頼りなんかしないと決めておるわ。それで用と言うのはな…」
パワーは言葉を溜めて、まるで歌舞伎のように大見得のポーズを取ると、
「デンジ、ワシと一緒にテレビに出ないか!?」
「ハァ〜〜〜〜〜???」
どうやら相当ヤバいことになりそうな予感がする。
展開をあっちこっちさせたりするのがとても難しいです…読みづらいと思われますが、ごめんなさいとしかないです。
その分すげぇ話を作っていくつもりですので、どうぞよろしくお願いします。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
5話 非常識なヤツ〜ー〜!!
「というわけでよぉ、俺テレビに出ることになったわ」
「は?」
アキは困惑したように(というかしてる)、俺の方をぽかんと見ている。しょうがない、いきなり言われてすぐ理解できる方がどうかしてるだろう。
「そのー…なんだ、パワーっていうと?今人気のアイドルだよな…なんでお前と知り合いなんだってのもあるけど…ああもう、なんで先に俺に話をしなかったんだよ!」
「いやぁ、だってよぉ…」
「いいか、仮にも俺はお前の保護者、親代わりなんだよ。色々あったが──まぁ今この話をしても仕方ないが…」
コワ〜…結構頭にキチゃってるよ…眉間にシワがよりまくってる…。確かにまぁ、説明もしねぇでいきなり受けちゃったのはまずかったよな…。
「まったく…だって、じゃないんだぞ。それとも何か?ちゃんとした理由があるのか?聞きはしてやる」
理由…理由…今のアキに説明するのにアバウトなのじゃあダメだ、下手したら約束はパァで、俺はパワーとの約束を破ることになっちまう。
それはダメだ、それだけはダメだ。パワーのためにも俺のためにも。あの時の会話を思い出して、どうにか説得できるようにしてみなくては────
そう、確かあの時…
『普通、他のちゃんとしたタレントやら呼ぶもんだと思われるが、今回の番組の内容が"身近な人とロケをして、自然な反応を撮る"ってことになっとるんじゃ。
『え〜〜〜〜〜〜……普通にヤダよ……テレビに出てすぐ人気者になれるわけじゃあねぇし…俺ただの晒しモンになるだけだし…めちゃくちゃ緊張するし…』
『そんなこと気にするな!そこら辺はリテイクしていいのが撮れるまで頑張るし、編集でなんとかしてくれるじゃろ!だから、な!』
『うーん…けどさぁ、やばくなりそうなのに対して俺側にウマ味がねぇだろウマ味が。なんかねぇのかよ』
『ふむ、その番組はロケ形式じゃから…飯代を向こうで出してくれるから、タダでうまいものを食べられるかもしれんぞ。ワシが口を聞いてやるから、いくらでも買える食べれるって算段じゃ。魅力的じゃろ?』
『…ぬぐ…う…いや…しません!それじゃしません!明らかに釣り合ってねーだろって!』
『面倒くさいヤツじゃのぉ…そしたら…お、そういえば…ふむ…』
『…ワシの知り合いのアイドルと1日デートできるようにかけあってやる、と言ったらどうする?』
『しまァす!』
「放っとけなかったんだよ!ダチが困ってたんだからよぉ!!」
「…気持ちはわかるが…はぁ…」
そう、俺の大切な友達、いや親友、ベストフレンドが困ってたんだ。そりゃあ助けないわけにはいかない。
アキは頭を抑えて、一語一語を考えながら搾り出している。
「まぁ…とにかく…事務所の方とテレビ局の方と、色々話を聞いてからだな。あんまりお前のためにならないようなことだったら断らさせてもらうだけだ。…いいな?」
「ええ〜〜〜」
「返事」
「はい!」
「よし。今度そのパワーちゃんに会ったら、とりあえず俺に会うように話しといてくれ。そこから先方に話を通していくからな」
ひとまずアキとは話をつけられたようだ。…まぁ、問題が先送りになったってぇだけのことだけど。
しかしパワーとアキを対面させてもよいものだろうか、とは思う。真面目なアキと───というかパワーが異常すぎて大抵の人間とは合わない───あのトンチンカンの爆弾なんて居合わせたらどうなる…?
……まぁ全部その時に考えるか!
(とりまメール打っとくか…もうケータイも慣れたモンだな)
ケータイを持たされてから2ヶ月くらい経つが、手が最適化されてっているのがわかる。頭ん中で浮かべた文もすぐ打てるようになってきたから、成長してるってことなんだろう。
(『ウチの親みたいなのに説明しなきゃいけないから、今度ウチに来てくれ。なる早がいいな』っと…)
これで大丈夫だろう。見てなくても学校で会って話せばいい話だ。もう22時くらいだし、風呂終わらせてさっさと寝よっと…。
「今日は風呂じゃなくてシャワーでな、お湯も捨てて洗っておいてくれ」
「へェぇぇぇ〜〜〜?い……」
普段ならゆっくり風呂入ってグッスリ眠りにつくが、今日はシャワーだから眠りが浅そうだ、なんてことを考えていると、アキが干し芋を食べていたので横から少しいただいた。
「もう一袋あるからもっと食っていいぞ」
「うぇ〜い」
干し芋、あんまパッとしねぇけどそこそこうめぇんだよな…。
2個、3個となにも考えず食べ続けていたとき、
ピンポン
「あ?」「なんだ…?」
唐突にそのチャイムは鳴った。
ピンポン
「デンジ、何か注文でもしたか?」「いや、俺ぁしてねぇぞ?」
ピンポン
「それに配達にしては遅いし…なんなんだろうな?つか誰だ?ちょっと不気味だな」
「結局わからないか…今行きます!」
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
「うるっ」「さぁっ!?」
「ああもう、誰だこんな時間に、しかもピンポン連打までしやがって!出方次第じゃタダじゃおかねぇぞ!」
アキはドスドスと音を立てながら玄関に向かう。俺もアキも心当たりがなくてわけがわかんねえって感じだけど、少なくとも扉の奥のヤツはまともじゃなさそうだ。
……なんだか嫌な予感がした。扉の先に大量殺人鬼がいるなんて訳じゃあねえとわかってはいるが、それでもなぜか、なんだか背筋に異物感を感じてならなかった。もしかして、もしかしてだが、
「なぁアキ、ちょっと──」
「オイ!今何時だと思ってんだ!?一体何の用で──」
アキが勢いよく扉を開けて怒鳴り散らかす。なんというか思ってた通りというか、そこにいたのは、
「ぅるっさいのぉ…こんな時間に叫んだら近所迷惑じゃろうが!ちったぁ考えんかアホめ!」
メールを打ってから30分も経ってないのに、しかも夜中なのに、更には俺の家なんて教えた事ないはずなのに、パワーがそこには立っていた。
うむむ…中身を悩み悩んで遅くなっては仕方ない気が…
これからも精進せねば
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
6話 印象最悪の邂逅
SEKIROはラスボスがすごくむずかしかったのでそこで止まってます。
勉強のために月姫リメイクをかいましたが、全くチェンソーマンのふいんきとは合ってないんじゃないかとおもってる人格が自分のなかにいます。
「…………で、メールが来たし暇だったから、今この時間に来たって事か」
「おう」
「……」
「あ、アキ…」
やべぇよ…アキの奴、眉間のシワがこれ以上ないくらい寄ってるよ…。こうなったら相手がどうとか気にしねぇだろうな…。
流石にこのままだとパワーがメタクソに言われる未来が確定してしまうので、助け舟を出すことにした。
「わりぃアキ、悪いのはこの時間に来たパワーじゃなくて、時間決めてなかった俺だよ」
「時間を決めてなくても普通こんな時間には来ねえよ」
クソ、ぐうの音も出ねえ正論だ。パワーとアキは夜のこんな時間に"暇だから"で許されるような関係でもないし、単に非常識すぎてどんなフォローもできないのがどうしようもない。
当人はそれが当たり前のように人の干し芋を食いまくってる。あまりに馴染みすぎて、元からこの家の住人だったようだ。
でかいため息をついたアキは、一語一語をゆっくり選びながら、
「なぁ…パワーちゃん、君がこの時間に来たのはこの際いいとして、デンジがテレビに出るってことで色々と話がしたいんだけど、いいか?」
「あ〜?ワシはもう眠たいんじゃがのぉ、また今度じゃダメか?」
「……!」
「落ち着けアキ!ちょ…バカ!」
今にも掴みかからんとするアキを羽交い締めにする。ダメだ、徹底的にウマが合わねえぞこいつら!
いやウマが合うどうこうってかパワーがやばすぎるだけで、なんも相性がどうこうって話でもないんだけど…。
「パワー…アキはっ、俺がテレビ出るってことで、なんかっ、お前の上司の人とかに話聞きてぇんだってよ…っ」
「なんじゃ、そんなことか。……そんなことなら別に今呼び出さなくてもよかったんじゃないかの?マネも寝てるとは言わんが、そろそろ帰る時間じゃろうし」
「テメーがっ…勝手に…来たんだろうがよぉ!」
「その言い草はなんじゃ?アレか?ウヌは王様か?ワシを呼びつけた挙句に勝手に来たとほざくその頭はどうなっておるんじゃ?」
「よしアキィ!一緒にこいつに常識って奴ぁわからせてやろうぜぇ!」
アキの拘束を解いた。パワーはいつもこんな感じ…いやちょっとひどいか?それにしても普段に増してイラついてきた。家だからか?今はどうでもいいけど。
こいつのヤキに俺も加勢しようとすると、アキは大きく息を吐いてゆっくりと腰を下ろした。
「もうわかった…
「…初めて会う人間に対して態度がなっとらんのぉ…その気になればこの家にワシのファンを送りつけることも可能なんじゃが?ここの家主にいじめられたとでも言うか?」
「コワ〜…」
俺の知ってるパワーとアキじゃない…時間とタイミングが悪すぎたにしても、ここまで険悪なムードになるもんかよ…なんだか少し居心地が悪い。
いたたまれない気持ちでいると、アキはパワーの脅しをなんでもないかのように、
「お前がが言った通りに俺はここの家主だ。だから俺はお前に対して警察を呼ぶことだってできる。『非常識な時間に押しかけてきた挙句暴言を吐いてきた』とでも言うか?現役アイドルがなんて不祥事起こしたらどうなるんだろうな」
「ぐぬ…なんだかワシが悪くなりそうな予感がする…」
「いや、たぶん10:0くらいでお前が悪いぞ」
こればっかりはどうもパワーをフォローできる気がしない。下手すりゃこのまま絶交しろとまで言われそうなくらい最悪のコンタクトを果たしてしまったが、ここからどうしてテレビの話にもち込もうか…?
「俺からは2つだ。お前の上司…マネージャー?テレビ局のプロデューサー?この場合はわからんが、とにかくお前より偉い人と俺と話をする場を設けること。デンジがどんなことをするのかって話をまとめなきゃ、俺から許可はできない。…そして俺の言うことは素直に聞くことだ。下手な反抗も、何もしないでな」
アキはすごい威圧感を放ちながらパワーに言った。当然そんな言い方でパワーがすんなり言うことを聞くわけもなく…
「1個目はまぁ、聞いてやる。元々デンジに、ワシがいきなり言っただけの話じゃからな。それはそれとして2個目はなんじゃ?なんの得もないのになんでウヌの話なんぞ聞かなきゃならんのじゃバ〜カ!」
「…デンジ」
「んぉ?」
「撮るぞ、はいチーズ」
「お?うぇーい」
パシャ、とケータイのカメラ音が鳴る。アキがいきなり写メを撮った理由はわからなかったが、すぐにその意味はわかるようになる。
「わかるか?お前と同じくらいの歳の男とツーショットで写ってる。この意味がわからないわけじゃないだろ、売れっ子アイドル」
「……いつかそのうち泣かせてやるからな!気持ち悪い髪をしよってこのチョンマゲが!」
「黙れ、話は終わりだ。お前は言われた通りのことをやれ」
す、すげぇ…今の行動だけでパワーを完全に封じ込めた。あの写真がなんらかの形でもメディアに流されたら、パワーのアイドル活動に支障が出るのは間違いないだろう。ついでに写ってる俺もヤバいのはわかってて…アレ、俺もヤバくないか?
パワーは捨て台詞を吐いて、ドアを力任せに閉めて帰っていった。台風のように来襲して、帰った後はおそろしく静かな部屋がそこにはあった。
少しの間そんな無音が続いて、アキが不意に大きくまたため息をついた。
「…いや、ごめんな?アキ。いつもあれほどイカれては──いやいつも…うーん…」
「なんでもいい…もうあんなのと関わるのは勘弁してぇな…してぇが…あんなのでもお前の友達なんだもんな…」
「え?…ああ、そーだな」
なんだかんだ言って、アキは俺とパワーの関係のことを気遣ってくれてたらしい(その上であんなにキレてたんだから、まともな人間とパワーを鉢合わせたら誰でもああなるんだろう)。
本当にできた人間だ、アキは。
「とりあえず約束は約束だ、どんなものであれやり遂げてこい…と言ってやりたいが、相手方があいつと同じくらいイカれてたら絶対に出させねえ。それだけはいいな?」
「おお、全然いいぜそれくらいは」
「…っと、もうこんな時間か。デンジ、もう寝とけ」
「へぇい、っと」
あんな空気の場所にいたからか、なんだかすげぇ疲れた気がする。今日はすぐ寝れそうだから、代わりに嫌〜な夢でも見そうな感じだな…。
芋を食べたから歯を念入りに磨いて、ベッドにゆっくりと横になる。
なんだか今日もすげぇ1日だったなあ…。
「……」
チッ、とライターには火が灯る。火はアキの口に咥えられたタバコにゆっくりと近づいて、その葉を燃やす。勢いよく
(…糞ったれ…余計なストレス抱えちまった…)
思い出してイラつきつつも、タバコを吸うたびに頭はクールになっていく。そうして一本目が吸い終わる頃には、完全に気分は落ち着いていた。
(いつものことだ…こんなんで胃を痛めてもしょうがねえな)
そこまで思って、ふと気づく。
(……
インパクトが強すぎて頭が混乱してるんだと結論づけて、寝る支度をすることにした。
窓から見える月はいつもより明るくて、そしてとても薄い三日月だった。
私はチェンソーマンのファンです。
彼がぐちゃぐちゃに悪魔の肉体を切り裂き、臓物を引き出し、暴れているところを見るのが好きです。
けど家族の団欒を見るのも好きです。
目次 感想へのリンク しおりを挟む