FILM RED IF 歌姫と麦わらの子 クレド (黑米田んぼ)
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チャプター1 初めましてお父さん

初めまして皆さんウタに脳を焼かれてとうとうルウタ小説を書いちゃいました楽しんで頂けたら幸いです。ではどうぞ。

11月13日色々と直しました。


「おやすみ~あかちゃん~し~ずかにね~~♪・・・・・おやすみなさい」

 穏やかな子守歌が部屋に優しく響く。

 何度も何度も繰り返した陳腐な子守歌を口ずさみながら髪をなでる。

 

「・・・・・ライブはいよいよ明日」

 ベットから離れるウタ。

「ふふふっ、・・・もうすぐだ。もうすぐ新時代が始まるんだ」

 窓からエレジアの外を見る。夜の空には半月が浮かんでいる。

 

「・・・・・絶対に来るよね。私とあの子の為に」

 机の引き出しから一つの紙を取り出す。それは海軍が作った手配書そこに12年待っていた少年の絵が描かれている。

「・・・・・まぁ、アイツも来て欲しいよね」

 ふと、自分を置いていった父の顔を思いだす。

 どんな顔を二人はするのだろうか手に入れた二人の手配書の顔を思いだしながらウタワールドに嘗ての少年と父親の顔を再現させる。

 

「ん?・・・・・また入ってきちゃったね。・・・良い子だから早く解除して寝なさい。私ももう直ぐ寝るからね」

 自分のウタワールドに入って来たのを感じて注意を促す。

「・・・・・十二年長かった。もう直ぐよ。三人で暮らせるんだよ」

 

「やっと会えるね――――――ルフィ」

 成長し立派な海賊になったかつての幼馴染ルフィの手配書を握りる力を上げながらウタは明日のライブに思いを馳せる。

 

 

 

 

 

 

♪♪♪

 

 

 

 

 

 エレジアの古い城。自分と母親と育て親であるゴードンと暮らしている場所。

 そこに少女がいた。

「ねぇ、ゴードンおじいちゃん」

 短い白髪を振らしながらゴードンに話しかける。

「・・・どうしたんだい?」

「お父さんってどんな人なんだろうね」

「さぁ、私にも分からない。・・・だが、良い男であると私は信じているよ」

「お父さん本当に来るんだよね・・・・・」

「・・・・・それは」

 口をつむごうとするゴードンだが。

「!お母さんが呼んでいるお父さんがいるんだって」

「―――呼んでいるのかい?」

「うん」

「そうか、・・・いってらっしゃい」

「うん!・・・行ってくるねゴードンおじいちゃん!」

 少女は虚空から扉を作り上げ古城を後にする。

 

「・・・・・お願いだルフィ君二人を救ってくれ」

 残されたゴードンは拳を握りしめてライブ会場を何とも言えない表情で見つめている。

 

 

 

 

「――――――おいでクレド」

 立ち去ろうとする麦わら一味を呼び止めながらウタは誰かを呼び寄せる。

 暫くすると煌びやかな扉が虚空から現れそこから白髪の少女が現れる。

 

「おい、あの子って!?」

「もしかしてたまにプリンセスウタの配信に現れる子じゃねぇか!?」

 ウタの配信を見ていたウソップやチョッパーはその少女に気づく。

「ホントだ。たまに現れる子だ」

 同じように子供に気づく観客の人たち。

 

「・・・・・・・・・・・」

 少女は立ち去ろうとする一味を見る。

「・・・・・あれ?この子供ウタによく似ているけど目元はちょっとルフィっぽくない?」

 オレンジ髪の女性、航海士のナミがその少女の風貌に興味を持つ。

「へぇ、意外と見る目あるんだ。流石ルフィの仲間だね・・・ねぇ、ルフィ。覚えてる180回目の勝負。偶然見ちゃった大人達の真似事をした遊び」

「ああ・・・・・180回目って・・・・・!?ウ、ウタ、まっ、まさか」

 180の勝負の内容は何だったっけ?と頭を捻った瞬間ルフィの顔色が変わる。

 ルフィの顔色が変わったのを見てウタは少女を抱き寄せる。

「私ねフーシャ村から離れてこのエレジアに来て最初は楽しかったけどある日一夜にしてこの国にいた人たちは今日まで私を育ててくれたエレジアの王様だったゴードン以外死んじゃった上にシャンクスはね私をこのエレジアに置いていったの」

「そんな。シャンクスはお前が歌手になるからって船から降りたって・・・・・」

 中の良かった幼馴染に突然言われた衝撃的な一言。・・・・・だが。

「そっか、そんな事を言ってたんだねアイツ。酷いよねルフィを騙して。それに置いていかれたのは私だけじゃないのに。一月ぐらいだったかなお腹が痛くなって病気かなって思ったけどゴードンは私が妊娠しているって教えてくれたの」

 ザワザワザワ、観客たちがざわめき始める。

「最初は赤ちゃんって突然出来るのかなって思ったけど後になってどうやって子供が出来るのか知って気づいたの180回目の勝負。あれは子作りの儀式だった」

 子供自体はかねてから話題になっていた。この大海賊時代父親のいない子供なんて良くある事だ。

「妊娠していた間は痛くて苦して辛かったし。生まれたこの子をただ一人生き残ったゴードンと二人でこの子を育てたの。辛かったよ。何度も泣き叫んだよ。この12年間・・・でもね、いつかシャンクスかルフィが迎えに来るって、ずっと心の支えにして生きて来たの」

 だが、これは良くも悪くもシャレにならない。弱き者の救世主であるウタの子供の父親の名前が想像道理なら世界が大きく動く。

「だからこの子をクレドって名前にしたの大切な人を信じれる子になれるようにって」

「ウタ、まさか・・・・・」

「そうだよ、この子の名前は――――――モンキー・D・クレド。ルフィ・・・・・私とアンタの子だよ」

 

 その名を歌姫は口にした。

 

――――――――ええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!!!

 会場に仰天の声が響き殆どの人間はエネル顔をする。

「おい、ルフィ。これはどういう事だ!?」

「嘘だろうルフィ!?」

 コックのサンジやウソップはルフィに詰め寄る。

「そっ・・・それは・・・」

 どう答えれば良いのか分からずルフィは困惑する。

 

「ふふふっ、困惑しているのは分かるよ。ずっとやって来なかったのも知らなかったなら許すよ・・・・・もう一度言うよルフィ―――――海賊止めてよ。そしてこの子と3人で幸せに暮らそう?」

「おっ・・・俺は―――――」

「――――――――」

 世界一の歌姫ウタと百獣のカイドウを倒した五番目の皇帝、麦わらのルフィの子クレドの瞳は12年会う事が出来なかった父親に注がれていた。




感想評価コメント等お待ちしております。


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チャプター2 動き出す父と子の時間

結構難産でしたやっぱり小説版買おうかな。
時系列に関してはパラレルとしてある程度多めに見てもらえれば幸いです。
映画ではルフィは五番目の皇帝ですが上の人間からは四皇扱いですしこれからコビーがハンコックに攻め込んだりバギーが四皇になっているのにビックマムが普通に居たりするんです。そこら辺はそう言った世界線と思っていただけると幸いです。


2022/30
一部文章の訂正並びにクレドの一人称を私→わたしに変更。


「マ~ンマママ~とんでもないことを知っちゃったねぇ。まさか麦わらにガキがいるなんてねぇ。それも赤髪の娘と!」

 ビッグマムの海賊船でビッグマムは電伝虫の映像を見て笑っていた。

「確かに驚いたよねペロリン♪オーブンとブリュレが捕まってなければ同情してたけど・・・」

 高笑いするビッグマムを尻目にシャーロット家長男ペロスペローは何とも言えない表情をしていた。

 新たな嵐の中心人物麦わらと歌姫の子。父親を知らない子供の多い自分の弟妹を思うと何とも言えない気持ちになるがウタを捕えようとして捕まった弟と妹が会場に居るために海賊団として兄としての気持ちの板挟みになる。

 救援に向かうためにエレジアに向かおうとするカタクリを見ながら麦わらに若干同情する。・・・飴玉ぐらいの大きさぐらい。

 

 

 

 

「―――――これはどういう事だバギー?」

「しっ、知らねぇよ!糞ゴムにガキが居るなんて知らねぇよ!シャンクスに娘が居る事を知ったのもついさっきだ!!」

「・・・赤髪に娘がいるのは知っていた昔顔を見たことがある」

「噓でしょミホっちゃん!?」

 クロスギルドのアジトでバギー、クロコダイル、ミホークもまた電伝虫でウタとクレドの存在を知った。

 唖然とするバギーに表情は変わらないがピクリと眉毛を動かすミホークとバギーに詰め寄るクロコダイル。

 他のクロスギルドの多くのメンバーも驚いていてザワザワと騒ぎ始める。

「まじかぁ・・・いやまぁ、二年前までシャンクスとは会ってなかったけどさぁ。娘がいるなら自慢しに来てくれても良いじゃなぇかよぉ。糞ゴムと子供までこさせえるまで許すなんてよぉ」

 予想外にショックだったのか珍しく萎れているバギーだがオッサン二人は普通にスルーされている。

 

 

 

「ガァァァァァァァァァプ!!貴様ぁッ!孫に何て教育しているんだァッ!!」

「何言っているんじゃセンゴク。ワシだってルフィが子供を作っていたなんて知らんかったんわいワシだって被害者じゃ」

「遊びで小さい頃に子作りしている時点で子育て失敗しているじゃないか!!ドラゴンと言いどんな環境で子供を育ててたんだ貴様は!!」

 海軍本部でガープとセンゴクは歌姫の現場を確認するために電伝虫を見ていた二人はウタの衝撃の告白に旧時代の英雄たちもまた唖然としていた。

「・・・まったくあの歌姫と子供に危害が加えられたら四皇二人が手を上げる羽目になるのか」

「そうじゃのう厄介じゃ。まぁ、これが終わったらワシは孫に本気で拳骨を落とすだけじゃがな」

「勝手にしろ、こっちに迷惑を持ってくるな私はもう元帥じゃないんだ。迷惑はサカズキにでも持っていけ」

「わハハハこれでワシは曾じいちゃんじゃわい」

 

 

 

 

「アッハハハハハハハハ!!何だこれは最高過ぎる!おい!ライブ会場にいる奴にUTAと麦わらから目を逸らすなって伝えろ!特大スクープだ!海賊嫌いのUTAに愛娘が居た!父親は四皇麦わらのルフィ!!その上UTAは赤髪のシャンクスの娘!こんなの最高だアッハハハハハ!!」

 モルガンズ本社でモルガンズは爆笑していた。

「いやはや、UTAから麦わらに特等席のチケットを贈りたいから協力してほしいってオイオイ何をする気だよ?って聞きたかったが我慢出来て幸いだったなおかげで最高のスクープになったな!!!」

・・・・・なお、現場にいる記者に連絡しても連絡が帰って来ずその後記者がウタワールドに入り込んでさまざまな特大ネタが撮れなかった事が発覚して若干凹むモルガンズであった。

 

 

 

 

 

「―――――ルフィ」

 ルルシアへ向かう船の中。サボもまたライブを映像電伝虫で見ていた。

「俺は信じているぞ。なぁ、エースお前もそうだよな俺たちの弟がそんな奴じゃないって」

 サボの手の中で炎が一瞬広がった気がした。

 

 

 

 

「――――――まさか麦わらに子供がいたとは」

「それも赤髪の娘とな」

 レッドライン、マリージョア。世界のごく潰し天竜人が住むその地で世界の政治の中心人物五老星は映像電伝虫の映像を見ている。

「もし、あの娘が赤髪の実の娘だとしたら」

「最悪だ!フィガーランドとDの一族の子などあってはならん!」

「だが、あの子供に手を出せば四皇二人を敵に回すぞ」

「それを含めてこの状況は最悪だ。あの場であの三人を抹殺できるとは思えない」

「・・・・・だがあの子供によって麦わらが海賊を止めれば」

「覚醒したモデルニカの能力者が身動きが取れなくなるか・・・そうなれば良いがな」

「難しいだろうな子供一つで全てを捨てれるほど麦わらの立場は良くはない」

「我々からすれば麦わらが大人しくなるなら喜ばしいが・・・」

「他の海賊は間違いなく狙う。あの黒ひげやクロスギルドが麦わらの弱点を放っておくわけにはいかない。あの母子は赤髪の弱点でもあるからな」

「どの道ウタによる世界転覆計画を止めなければならない。今は見守ろう」

 

 

 

「ワー!ワー!ワー!ワー!ワー!ワー!ルフィ先輩とウタ様が夫婦!?子供まで!?最高だべ~~っ!」

突然のハプニングに嬉しさのあまりに発狂しているバルトロメオ。

「そんな・・・ルフィさん・・・」

「おい、コビー?」

 唖然としているコビーとコビーに困惑しているヘルメッポ。

 

「―――――麦わら屋、正気か」

 そして呆れた顔をするトラファルガー・D・ワーテル・ロー。

「見た目からして10代手前ウタの言葉が真実ならウタが身ごもったのは9歳頃。そんな頃に妊娠していたなら体がどうなるか分からねぇ」

 流石に呆れてものも言えねぇとローはルフィとウタに注目する。

 

 

 

 

「―――――」

「おい、ルフィ!?」

「随分とビックリしているわね」

「無理もねぇぜ俺たちだってこんなこんなにビックリしているんだぜ。当事者であるウチの船長からすればとんでもない仰天ニュースだぜ」

 唖然としているルフィを現実に戻そうと奮闘している一味。

 

「・・・・・お母さん」

「なぁに、クレド?」

「この人がわたしのお父さん?」

 ルフィの子?クレドは母であるウタにしがみつき問いかける。

 母譲りであり、ある意味では父譲りの白い白髪を揺らしながら少女の目は長年会う事が無かった父を見つめていた。

「そうよ、ほら。昔のルフィが今はこんなに大きくなったのよ」

 ウタは彼女にとっても記憶に残る幼い頃のルフィを作り出しルフィと並べる。

 

「うおっ!?何だよこの子!?」

「もしかして小さい頃のルフィか!?」

「アウ、こりゃ大きくなったら確かにこんな感じに成長するな」

「ほら、他の人も同じ反応をしているじゃない・・・・・で?何時までビックリしているのルフィ!!」

「!!あ、ああ。・・・わ、わりぃ。ま、まさか、俺に子供がいたなんてよぉ・・・」

 バツの悪そうな顔をしながらどんな事を言えば良いのか分からないルフィ。

「そう、・・・でもねぇ、ここまで淡白なのはないんじゃないルフィ!!」

 詰め寄りルフィの胸倉を掴む。

「っ、ウタ」

「ねぇ、私たちの事なんてどうでも良いの?確かに知らせることはしなかったけどもっといろいろやれるでしょう!」

「ねっ、・・・ねぇ、ちょっとウタ少しルフィから離れた方が・・・」

 流石にルフィが哀れに思ったからかナミが助け船を出そうとするが・・・

「五月蠅い!外野は黙っていて!」

 覇王色でも出しているのかと思うほどの威圧がナミを襲う。

「なっ・・・なぁ、ルフィ。取り合えずさ。挨拶はするべきじゃねぇかな」

「・・・・・そうね、ほらルフィ、クレドに挨拶しなさい」

 ウソップの助け船のおかげでウタも少し落ち着く。

「・・・・・ああ、そうだなウタ。わりぃウソップ」

 ルフィは一呼吸してから少女と同じ目線になって話しかける。

 

「―――――その、初めましてだな俺の名前はモンキー・D・ルフィ。お前の・・・父ちゃんだ。よろしくなクレド」

 優しく握手の手を出すルフィ。

「―――その、初めまして。・・・お父さん」

 その手をクレドは握った。

 

――――――ホッ、っと重い雰囲気に包まれていたライブ会場は一段落した。

 

「・・・・・お母さん。お父さんと三人で散歩しよう?ここは嫌・・・」

 何故かクレドはウタにライブ会場から離れようと言ってきた。

「あー、ごめんねクレド。流石に皆を驚かせすぎたからちょっと落ち着かせたいんだ」

「―――――」

 その言葉を聞きクレドは寂しそうな顔をする。

「・・・・・ねぇ、ルフィ。ちょっと先に散歩してきてよ暫くしたら私も合流するからさ。クレドと仲良くしてね」

「・・・・・良いのかクレド?」

 気持ちは分かるが流石に会って間もない子供に父親とは言え預けて良いのかと思うルフィだが。

「・・・・・良いよ。お父さんとは色々話をしたい。・・・でも、早く来てねお母さん」

 ウタの手を掴んでクレドはお願いする。

「大丈夫大丈夫。ほら、ルフィと仲良くしてね」

「うん、・・・お父さん行こう?」

 クレドは門を作ってルフィを催促する。

 ・・・・・・・・・・・・・・

「・・・・・お父さん?」

 クレドのちょっと好奇心に満ち始めた顔とは対照的に何故か周りは何とも言えない顔をする。

「・・・・・クレド、ちゃんとルフィの身長を考えて門を作りなさい。これじゃあルフィが入れないわよ」

「・・・・・あっ!?ごっ、ごめんなさいお父さん。普段お母さんがこういうのするから」

 扉を大きくして再びクレドはルフィを招く。

「そうね、・・・でも、要らないものがあるよね」

 ウタはルフィから麦わら帽子を取り上げる。

「あっ!おいウタ!何しやがる!?返せ!」

 取り返そうと麦わら帽子に手を伸ばすが。

「ダメだよ今のアンタはクレドの父親なんだよ『麦わらのルフィ』は必要ないじゃないアイツの麦わら帽子は私が持っているから」

「ぇぇ・・・」

 流石に困惑するがこれ以上ウタを怒らせては碌な事にならないと思いルフィは扉に入りクレドの元へ向かう。

 

「やべぇ閉まろうとしているぞ行かねぇと」

「そうね、流石にルフィだけじゃあ危ないでしょうね」

 ルフィを追うように一味も動くが。

 

「―――――ダメよあんた達は」

 ウタは五本線を呼び出し一味を曲にする。

「ちょっと何をするの!?」

「おい、ウチの船長と知り合いだからってこれは無いだろうが!」

「今のルフィに子供の相手をするのは酷だぞ。他の子とは違うんだぞ」

 文句を言う一味に対してウタは。

「―――――言ったでしょう。『麦わらのルフィ』は必要ない。アンタたちは私たちには必要ないのよ」

 そう言いウタは一味を曲にして空に晒す。

 

「――――――皆ぁぁぁァァ!!迷惑をかけてごめんね!!悪い海賊は皆やっつけたからライブはまだまだ続くからこれから皆も楽しんでね!!」

 

ワァァァァァァァッ!!こんな事があっても観客たちはウタのライブ続行を喜んでいる。

 狂ったフェスはまだ続く。その裏でローやブルーノ、コビー達はルフィを追いかけ始める。




おまけ

ドラゴン「どうした来てくれって?・・・UTAのライブ?」
革命軍モブ「あっ、ドラゴンさん大変ですよ!」
ドラゴン「?UTAのライブがどうしたんだ?もしかしてサボはエレジアにいるのか?」
『―――――その、初めましてだな俺の名前はモンキー・D・ルフィ。お前の・・・父ちゃんだ。よろしくなクレド』
『―――その、初めまして。・・・お父さん』
モブ「ドラゴンさんお子さんが居ただけじゃなくてお孫さんも居たんですね」
ドラゴン「!?」

終わり


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チャプター3 過去へのしらべ

現在、この作品の割合は4割がウタ虐3割がルフィ虐2割がシャン虐一割がコビー虐となっておりますもっとも、最後は決まっていても道中は多少変わっているかもしれません。
それと振り返ったら大事なタグが無かったのでオリジナル悪魔の実のタグを追加しました。
今回はウタとクレドの過去、そしてクレドの悪魔の実の能力が一部明らかになります。元スレを見ていた方ならああ、そういう風にしたのねな感じです。


「―――――ねぇ、お母さん」

「―――――なぁに?」

 ライブ始まる少し前。

 

「お父さんってどんな人なのかな」

「ふふっ、また同じ事言うんだね」

「だって、何年も会いに来てくれなかったんだよ」

「しょうがないよアイツが私の事を教えてくれなかったんだよ。じゃなかったらとっくにやって来るよ」

「アイツってシャンクスお爺ちゃん?」

「そうだよ子供ぽくって大人げないでも、大事な時はすごいんだよ。会いに来ないんだけどね・・・・・・・」

「―――――お母さん」

「ああっ、ごめんねクレド。ルフィの事ね。・・・そうだなぁ、何度も言っているけど騙されやすいおバカで負けず嫌い。食べるのが大好きで私との勝負でいっつも引っかかって183連敗しているの」

「・・・・・そんなのなのにやって来るの?」

「来る。立派な海賊になってね。風のうわさで海賊のトップの一角と現在交戦中だって、ソイツぶっ飛ばして私のライブにやって来る」

「どうしてお母さんはお父さんにそんな事が言えるの?」

「―――――ふふっ、簡単な事だよルフィはね何時か海賊として大きな事を成せるのよ。だから四皇ぐらい簡単になっちゃうんだよ」

「―――――分からないよお母さん」

「会えば分かるよ」

 

 

 

――――――現在

 

「・・・・・あれ、皆は?」

 振り向くルフィ。しかし、扉は既に閉じた。

「ぁぁ~~!・・・ぁ~うん、・・・なぁ、クレド。・・・その、よぉ・・・もう一度ライブ会場に扉を開けてくれないかアイツらも連れて来たいんだ」

 バツの悪そうな顔でルフィはクレドに頼み込む。

「ごめんけどお父さん以外の海賊は・・・・・」

「―――――分かった」

 ウタと同じだと理解してルフィは気持ちを切り替え質問する。

「ここは?」

「お家」

「そうか、でっけぇ家だな」

 二人はエレジアの一番大きな建物。すなわちエレジア王国の王城にいた。

「・・・・・こっちじゃないや、お父さんこっちだよ」

「おう」

 てくてく歩いていくクレドにルフィは懐かしい物を見るような顔で歩く。

「・・・・・どうしたのお父さん?」

「いや、本当にウタの子供なんだなって思ってさ、振り向く仕草とかアイツそっくりだ」

「そうなの?」

「ああ、母ちゃんそっくりだ」

「そうなんだ。・・・お父さん」

「・・・何だ?」

「お父さん、お母さんに183連敗しているってホント?」

「違うぞさっきチキンレースしてなウタがズルしなきゃ俺の184連勝中だ。・・・シシシ、ウタの真似か?」

「うん、そうやって言い訳しているお父さんをいつもお母さんはこう言っているって『出た!負け惜しみ~ぃ!!』って」

「そうだぞ、アイツとの勝負でいっつも汚い手で勝っているんだぞ。それでなアイツ、海賊に卑怯なんて言葉は無いっていつもな」

「・・・・・そうだよね」

「どうしたクレド?」

 なんでかクレドはその言葉でなぜか萎れて来た。

「・・・・・なぁ、クレド聞いていいか?」

 廃墟の一つに二人は入りルフィが質問をしようとしたちょうどそのタイミングで。

 

「おや、クレド。もう帰って来たのかい。・・・・・君はルフィ君かね?」

「うおっ!?誰だオッサン?」

 突然やって来たフランケンシュタインのような長身の男が質問を遮った。

「お父さん、この人はゴードンおじいちゃん、ずっと私とお母さんを育ててくれたの」

「そうか、おっちゃん、ありがとうな」

「いやいや、私は当たり前の事をしただけだよ。・・・・・クレドちょっと向こうの部屋で待っててくれないか。ルフィ君と話がしたい」

「―――――お母さんだけじゃなくておじいちゃんも?」

「あっ、ウタが何か言っていたのかい?」

「お母さんもわたしよりライブ優先するんだもん」

「ああっ、すまないクレド!私もクレドの気持ちを考えてあげてられなくてすまない。だが、私もルフィ君と話しておきたいことが色々とあるんだ」

「分かった。・・・・・ねぇ、お父さん。覗いて良い?」

「?覗く?何言ってんだ?」

「えへへへ、ちょっとやるね」

 言うとクレドは突如機械仕掛けのようなデカいゴーグルをかけた。

「うおっ!?」

 ルフィの目の前には大量の本が所かしこに現れる。

 本にはカバーがついたり何も書かれておらず鎖で縛り上げられているものなどところせましだ。

「これお前がやったのかクレド!」

 好奇心溢れた顔でルフィはクレドを見る。

「三年前にねお母さんと木の実集めの勝負したのそしたら見たことの無い木の実を見つけて興味本位で齧ったの!すっごい不味かったけどおかげで色々なことが出来るようになったの!」

「私とウタはこれをユメユメの実と考察している。クレドは眠っている者の夢に入り込み夢の世界を自在に操り操作する力を手に入れたと考察している」

「これはね、お父さんの記憶。今お母さんのウタワールドにお父さんはいるからこうしてお父さんの頭の中の記憶を拾い上げられるの!」

「シシシ、そんなことが出来るのか」

 ルフィは幼い頃のウタとシャンクスがカバーになっている本を掴む。

「ねぇお父さんどれか一つ読ませてよ。念じたらその本が自動的に出てくるの。その間おじいちゃんとお話ししててよ」

「すまないが私からもお願いだ。この子は11年外の世界に出たことが無いんだ。私もウタも外の話をしないようにしているから外の世界に興味新進なんだ」

「そうかどんなのが見たい?」

「楽しいお話!いっぱい冒険しているの!」

「そうか、じゃあこれだ!俺が空島に言った頃の記憶だ」

 そう言ってルフィは巨大な黄金の鐘がカバーの本をクレドに渡す。

「空島!何それ!?お空に島があるの!?」

「そうだぞ、空になデッカイ島が浮かんでいてなそれを探したり神様を名乗る変な奴をぶっ飛ばしたりした記憶だ!」

「わぁっ!ありがとうお父さん!早速見てくるね」

 ほころぶ笑顔を見せながら離れていくクレドに何とも言えない表情になるルフィとゴードン。

 

「―――――おっさん。本当にクレドは現実に居てウタと俺の子なんだよな」

「あの子の存在は現実だよ今も私と同じ部屋で寝ている。あの顔も服も全て現実だ。父親は私には分からないウタがそうだと言っているから私にはそうとしか言えない」

「―――――わりぃおっさん。やっぱ俺父ちゃんになっちゃったか」

 何もかぶってない無い頭に何度も帽子の位置を変えるような仕草をするルフィ。嘘だと否定したくてもルフィの見聞色の覇気は生物の感情に強い。それ故にゴードンの本心も良く感じ取っていた。

「すまない私が悪いんだ。私があの子達を閉じ込めてしまった」

 

「―――――教えてくれよオッサン。クレドとウタ、シャンクスに何があったんだ?」

「お茶とかはいるかい?」

「要らねぇ」

「そうか・・・・・12年前の話だ」

 

 ――――――それは12年前、エレジア壊滅の悲劇。

 エレジア国王ゴードンはエレジアにやって来た赤髪海賊団を温かく迎えた。

 特にゴードンは幼くして天使の歌声と呼ぶほどの天才的な才能を持つウタを高く評価し彼女達を国を挙げて歓迎した。

 ウタはエレジアの音楽をスポンジのように吸収していった。

 ゴードン達エレジアは彼女にずっといてほしいと思っていたが彼女は父親たち赤髪海賊団と居たいと言っていたために諦めた。

 

―――――だが、赤髪海賊団とエレジアの関係は一夜にして崩壊した。

 一夜にしてエレジアはゴードン一人を残して全てのエレジア国民は全滅した。

 赤髪のシャンクスは事もあろうに娘であるウタを利用しエレジアに近づき一夜にして国民を皆殺しにして財宝を奪って逃げて行ったのだ。

 用済みなのかそれとも生き延びた国王に皮肉を込めたのか娘であるウタを置いて赤髪海賊団はエレジアを後にした。

 これが世間一般なエレジア崩壊の一件。・・・・・表向きの話。

 

「―――――嘘だ。シャンクスがそんな事をするわけがねぇ!」

 赤髪海賊団を一番知るルフィからすればそれはシャンクスを名乗るナニモノかがシャンクスを嵌めるために言った冤罪にしか見えない。

 ましてやウタを赤髪海賊団の宝を置いていくなど。

「―――――間違ってはいないんだエレジアは『赤髪海賊団』に滅ぼされたんだ」

 頭を抱えてどうしてこうなったんだと言った表情を見せるゴードン。

 

「―――――それからウタは?」

 信じられねぇといった表情で話を続けるルフィ。それに答えるようにゴードンも続きを話す。

「―――――一月ぐらいしてからだ。ウタの体に異変が起きたのは」

 

「お腹が膨らんでいる。まさかウタ君。もしかしたら君は妊娠しているのかもしれない」

「―――――え?」

 12年前当時のゴードンは体調を崩していくウタを見て父親に捨てられ父親が滅ぼした場所で暮らすストレスから体調を崩したと最初は思っていた。だが、徐々にお腹が大きくなっていくウタを見てゴードンはそう言った。

「―――――嘘、私。お母さんになっちゃった」

 定期船に頼んで医者を呼び寄せ診断してもらった結果妊娠が確定した。

「ウタ君、父親が誰か分かるかい?何とかして探し出さないと」

「分かりません。ゴードンさん、どうして赤ちゃんが生まれてくるんですか?コウノトリさんが運んでくるんじゃないんですか?」

「・・・・・すまない。大変ショックな事を言うかもしれないが今から赤ちゃんがどのように生まれてくるか教えてあげよう」

 

「・・・・・・あは、あははは。・・・・・ルフィだ。ゴードンさん。この子の父親はルフィだよ。それルフィとやりました」

「ルフィ?それどどんな人なのかね?」

「ルフィはねフーシャ村であったのおバカで引っかかりやすい私の親友」

「フーシャ村、それは何処の海の村かね私が調べよう」

「・・・・・分かりません。シャンクスやスネイクさんに聞かないと」

「――――――そうか。失礼な事を聞いたね」

「良いんです。・・・あは、あはははルフィ・・・責任取れないよねシャンクス、私を置いていっちゃったし次はいつ会えるんだろうね。・・・ルフィ」

「・・・・・ウタ君」

 虚ろな目で海を見つめるウタにゴードンは何も言えなかった。

 

「なぜ、あんなに良い子がこんな目に遭わなければならなかったんだ・・・・・!済まないルフィ君、それから私は伝手を使って助産師を探したんだこんな時代だ幼子でも安全に出産できる助産師がいるはずだと探したんだ。これでも私は元エレジア王国国王だ顔は広かった。ドラム王国、今のサクラ王国にいた能力者の助産師を招いたんだ。二年前に今は国を離れて個人で助産師をやっていると言っていた」

 

「―――――お願い、静かにして、お願いお願い・・・何で、何で笑ってくれないの何をしたら笑ってくれるのクレド、この曲じゃない?この曲も違うの?ぁぁ、助けてシャンクス、ルフィ・・・・・」

「ウタ君おしめを持ってきたさぁ、替えて上げなさい」

「はい、・・・ほら、クレド。これが終わったらおっぱい飲んで寝ててね・・・何で来てくれないのシャンクス」

 出産が成功したのは良かったものの赤ん坊は本能のままに動き無邪気だ。

 相談できる人物などほとんどおらず二人は苦しんだ。

 

「くすっ、何でこうなったの?・・・全部貴方のせいなのクレド?」

 幼い腕が赤子の首に伸ばされる。

「―――――ぁっ」

 腕に力が入る瞬間、綻ぶような笑顔をクレドは浮かべる。

「っ、ごめんね、そうだよね悪いのは私とルフィとシャンクス達だもんね。私はアイツらと違う。私だけなんだ。この子の親は私なんだアイシテあげないと」

 首を絞めようとした手を胴体に伸ばし抱き上げる。

 

「あの頃のウタはとても精神的にひどかった。私ならいざ知らずクレドに怒りをぶつけようとしていた事も良くあった。クレドが物心がついた頃ぐらいにやっと落ち着くことが出来たから私は気をまぎわらすために教えていたエレジアの音楽を本格化した。想定外だったのはウタだけではなくクレドもまた天性の音楽の天才だった。クレドは楽器の方に興味を持ったがね」

「―――――」

「大丈夫かね?」

 ルフィは顔が上げられなくなっていた。自分のせいでウタにここまで苦しめていた事に辛くて耐えられなかった。

「わりぃ、まだあるのか?」

「・・・・・あとはそこまで酷く無い。私はまだ幼いクレドはともかくウタの歌声は世界に届けたかったが私にはもう安全にウタの歌を外へ送る力は無かった。3年前、見たことの無い電伝虫をウタが見つけた事で彼女は世界一の歌姫になった。私から言える事は以上だ」

「・・・・・」

「・・・・・」

 重い空気が部屋を支配する。

 

「―――――誰だ!」

 誰かの気配をルフィが察しして声を上げる。

「―――――俺だ。麦わら屋入るぞ」

 そう言い死の外科医。トラファルガー・D・ワーテル・ロー、バルトロメオ、何故か変な格好をしている白熊ミンク族のベポが入って来た。

「トラ男か!」

「外で話は聞いていたがまさかお前がそんな顔をするとはな麦わら屋」

 ひどく重い顔をしていたルフィを見てローはまさか明るく馬鹿なルフィがこんな顔をするのを見て事の事態が別の意味で厄介になっていた事を理解した。

「お前娘はどうした?」

「クレドならあっちに居るぞ」

「そうか、なら都合が良い。麦わら屋あのウタと言う女はかなりヤバいぞ」

「どういう事だ?」

「お前が居なくなった後ゾロ屋達を磔にしてライブを再開し始めたぞ」

「嘘だろ何でだ!?」

「知るか。・・・・・ベポ、うるさい!」

「すみません」

 場をめちゃくちゃにするベポが叱られる。

「ルフィ先輩ウタ様と結婚しているって本当ですかべ!」

「結婚はしてねぇ!」

「ともかく、ウタの能力の謎を解かないと対抗できない」

「―――――君たちはルフィ君の友達かい?」

「違う、俺は元同盟関係だっただけだ。あくまでもこの場を乗り越えるためだけだ」

「そうか、頼むルフィ君ウタの計画を止めてくれ、あの子を救えるのは君しかいないんだ」

「・・・・・計画?このライブか、一体ウタはこのライブで何をしようとしているんだ?」

「それは―――――」

―――――♪歌が響く。

「おいべポ!・・・いや違う」

 

「―――――あれ?他にも海賊がいたんだ」

 ウタがルフィ達の前に現れた。

「・・・・・ウタ」

 何とも言えない表情でウタを見つめるルフィ。

「ゴードンと私とクレドの話でもしていたの?まぁ、いいや」

「ウタ、皆を解放しろ!!」

 情に訴えるルフィだが。

「・・・ダメだよ、まだルフィは海賊を辞めるって聞いてないよ。もう良いでしょう?直ぐ新世界がやって来る。もう海賊なんてやる必要なんてないんだよ『麦わらのルフィ』も『麦わら大船団』も『四皇』もルフィにはもう要らないでしょう?海賊止めてクレドと遊んだり私と勝負したりしようよ」

「―――――でもよぉ、まだ俺海賊王になってねぇしシャンクスに帽子を返す約束を果たしてねぇ」

「シャンクス何てどうでも良いじゃない。昔みたいにチキンレースや腕相撲をして遊ぼうよ」

「ウタ・・・」

「どうしてそんな顔をするの?・・・ぁぁ、そうか」

 ウタはローに視線を向ける。

「・・・・・そう、貴方なんだねトラファルガー、私のルフィに目を付けるのは良い目をしているけどこれ以上ルフィを誑かさないで」

 光の無い紫の瞳に怒りが宿り楽譜が現れる。

「おい待て、何で俺なんだ!麦わら屋が海賊を続ける辞めるなんて俺には関係ない!」

「だって、アンタがルフィを四皇にしたじゃん。アンタがルフィと同盟を組んで百獣を壊滅させたから元同盟のアンタがいるからルフィはまだ海賊やりたい気持ちが残るんだよ、アンタだけじゃない。そこにいるニワトリ何て存在したらルフィの迷惑にしかならないのよ。アイツの旗をまで焼いて、アンタたちが要るとルフィに迷惑がかかるのよだから消えて!!」

 楽譜がロー達に殺到する。

「冗談じゃない。逃げるぞ!」

 ローはルフィ達を連れてワープする。

 

「―――――ッ、許さない。ルフィを連れて行くなんて」

 ウタはライブ会場に向かって叫ぶ。

 

「皆ぁぁぁぁぁぁァァッ!!これから海賊狩りを始めるよ!悪い海賊は捕まえて吊るしちゃおう!!」

 ウタは軍隊を作り出してルフィ達を探し始める。

「待ってくれウタ!落ち着いて話せばルフィ君も分かるはずだ」

 ゴードンはウタをなだめようとするが。

「ゴードン、アンタは海賊の味方をするの?」

「そ、それは・・・」

「・・・・・いっつもそうだよね踏み込もうとせずにいつも中途半端」

 ゴードンを楽譜にして拘束する。

「ウタ!」

「まぁ、クレドがいるだろうしそこで頭冷やしていてね。じゃあね」

 そう言い捨ててウタは廃墟から立ち去った。

 




個人としてはアニメを見ていた時期が空島だったのもあり思い出もありますがワンピースで一番冒険しているのは空島かも知れませんね。


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チャプター4 12年の思い

お待たせしました。コメントでウタが怖いと言われてなら少しぐらいウタルを書けばいいじゃないかと書きましたが思いのほか筆がノリノリでした。

正直後書きでREDで出なかったキャラのおまけを書きたい病が発生していますのでたまに書いたりしています。


「―――――さて、麦わら屋、俺はウタの昔話ぐらいしか聞いてないがお前はウタの能力について幾つか知っているんじゃないか?」

 廃墟から離れてローはルフィに問いかける。

「言うけどよぉここから出せぇぇぇ!!」

 現在ルフィはバルトロメオのバリバリの実によるバリアで閉じ込められている。

「お前を自由にするとウタにやられるだけだ。あの男は言っていたウタは何か危険な計画を企てている。それをどうにかしなければお前だけじゃなくて俺たちも巻き込まれるんだ。あの能力に対応するために情報が必要なんだ」

「分かってるけどよぉ・・・」

 ルフィポリポリと頭をかいて答える。

「ウタは俺が初めて会った頃から歌うと夢の世界に連れていく能力を持っているんだ。けど暫くすると疲れて寝ちゃうんだ。そしたら皆目が覚めるんだ」

「なるほどな。だが、お前の娘はどうなんだ?何かカラクリがあるんじゃないんか?」

「良く分かんねぇよ、クレドはユメユメって言っていたから夢の世界だけじゃないのか?ウタワールドだから俺にも色々できるって」

「・・・・・なるほどな、ウタが歌って作った夢の世界がウタワールドで維持に体力を大きく消耗するためウタが眠ると解除されるか。それならほっとけば勝手に解除されるが奴はライブはエンドレスずっと続けるか・・・・・だとしたら不味いぞ。あれが麦わら屋のせいだけじゃなければ説明がつく。だがその果てにウタは何を考えてる?」

「う、ウタ様は何をしようとしているんですかべ?」

「・・・・・ライブで見せた一面と麦わら屋に対しての楽しそうに遊んだりしている一面が普段のウタならあの完全にキレて俺にまで殺意を向けているのが麦わら屋の腑抜けた態度にウタがキレているのじゃなければ間違いなくウタはネズキノコを食べている」

「ネズキノコ?何ですかべ?」

 

 パカ(ルフィの足元から穴が出てくる)ヒュンヒュンヒュン(声を出す前に落ちていくルフィ)ガッコン(穴が閉じる音)

 

「食べると不眠作用の出るキノコだ」

「それだけなら効果は良さそうだべ、ウタ様のライブをとことん楽しめるべ」

「・・・・・そんな甘いキノコじゃない。ネズキノコは徐々に精神を攻撃的にする。そして数時間後に死に至る毒キノコだ」

「そんなウタ様が死んじゃう!?そんなの嫌だべ!」

「ああ、幸いにもライブには海軍の人間が要るのを確認した。あんな能力だ。世界政府だって注目する。あいつらと協力する。おい麦わら屋・・・・・麦わら屋?」

「あれ?ルフィ先輩?バリアの中にルフィ先輩が居ねぇべ!!何処に行ったんですかべ~~!?」

 二人が見回してもルフィは何処にもいなかった。

「おい、何処に行った麦わら屋!?」

「どうなっていやがる!?ウタなら俺たちから仕留めようとするはずだ!」

「ルフィ先輩~~~!」

 エレジアの空に二人の億越えの海賊の叫びが響く。

 

「うわぁ~~~ぶへっ」

 落ちて地面に叩きつけられるルフィだがゴムなので特に痛みは無い。

「痛てぇ・・・クレド!?何でここにいるんだよ!?」

 ルフィが周りを見ると別の外でありそこにはクレドが居た。

「だって、騒いでいる音がしておじいちゃんが変な楽譜に貼り付けられているし怖い海賊が暴れているんじゃないかって」

「ぁぁ、大丈夫だろウタ強いし。空島の話は終わったのか?」

「うん、理解するだけならすぐだよ。ねぇ、お父さん。メリー号見せてよここにあるんでしょう?」

「・・・・・メリーか」

「・・・・・お父さん?」

 俯くルフィにクレドは困惑する。

「メリーはなもう無いんだ俺たちを助けて限界になって終わらせてやったんだ」

「どういうこと?」

「―――――空島に行った後メリーの調子が悪くってW7って場所に行ったんだ」

「どんな場所?」

「船を造る場所の多い場所でな俺の仲間のフランキーって奴とそこで会ったんだほら、音楽プレイヤーみたいな恰好した奴」

「居た居た、変な人!」

「シシシ、アイツとは色々とあってな、まぁ、それは後でな。W7に来てメリーを船大工に頼んだんだけどなもう、メリーは限界だったんだ。これ以上俺たちを連れて海に出るのは難しいって」

「そうなんだ」

「けどな俺たち何とかして欲しいって頼んだんだけど無理だったんだ。その後フランキーの奴とひと悶着あった後ロビンって黒髪の女居ただろうそいつがさ政府の奴らに俺たちが狙われて自分だけ犠牲にして俺たちを助けようとしたけど俺たちロビンと居たかったから助けるためにエニエスロビーって所に向かったんだ」

「・・・・・政府って世界政府?」

「おう、何とかロビンと一緒に捕まっていたフランキー助けたけど帰る手段が無かったから絶体絶命だっておもったらメリーが助けてくれたんだ」

「・・・・・船だよね」

「船だぞ、でもなメリーは間違いなく俺達の仲間なんだよ」

「・・・・・それからどうしたの?」

「ああ、あの後フランキーが新しい船サウザンドサニー号を作って仲間になったんだ」

「そうなんだ。ねぇねぇ、お父さんもうちょっと先に港があるからお父さんの船もあるんだよね?」

「おう、見たいのか?」

「うん!」

「シシシなら行こうぜ」

 ルフィは何気なく手を差し出しクレドもその手を取る。

 

「・・・・・ねぇ、お父さん。お父さんは海賊なんだよね」

「・・・・・ああ、そうだぞ」

 港に向かう途中クレドはルフィに問いかける。

「海賊って・・・悪い人なんだよね」

「色々といるぞ。悪い奴も良い奴も一杯いる」

「お父さんは悪い海賊?」

「知らね」

「じゃあ、お父さんは悪い事したの?」

「・・・・・ああ、した。俺な血は繋がっていないけど兄ちゃんが二人いてな海賊やってる兄ちゃんが捕まって処刑になったんだよ。助けようとして昔、俺の友達の国をめちゃくちゃにした奴とか悪い海賊が捕まっていた場所に行って助けちまったんだ」

「・・・・・そんなに大事な人だったの?」

「・・・・・ああ、大切な兄ちゃんだったんだ」

「・・・・・死んじゃったの?」

「・・・・・ああ、俺を庇ってな」

「・・・・・辛かった?」

「・・・・・ああ、本当に辛いんだ。大切な人が死ぬのは。辛くって泣いていたけどジンベエって魚人の仲間に失ったものばかり数えるなって言われてさ。エース・・・死んだ兄ちゃんな。エースは死んじゃったけど俺には一緒に冒険して楽しい仲間が居るって、だから頑張ってエースの死の悲しみを乗り越えたんだ」

「仲間・・・ねぇ、お父さん。私にも辛い事も乗り越えられる仲間を作れるかな?」

「出来るさクレドならな、俺の子供なんだろ。だったら出来るさ俺にも負けねぇくらいの仲間をな」

「・・・・・海賊の?」

「何でもさ」

「・・・・・・・・・そうなんだ。着いたよサニー号何処?」

 港には個性的なサニー号どころか船一つ無い。

「あれ?サニー号何処だ?」

 港を見回すルフィ、そこに。

 

「―――――ふぅん、ちゃんとお父さんしているじゃない」

「うおっ!?」

 突然ルフィの目は誰かの手に覆われ見えなくなった。

「ふふっ、だーれだ?」

「おい、何するんだよウタ!」

「ちょっと悪戯しちゃった」

 手を放してウタはルフィの前に立つ。

「・・・・・なぁ、ウタ。俺父ちゃんやっているのか?」

「・・・・・私には仲の良い親子にしか見えないんだけなぁ」

「そうか、・・・・・これで良いのかなぁ・・・」

「?・・・ああ、そうか。そうなんだね。大丈夫だよルフィは立派なクレドのパパだよ」

 ウタはルフィの腕に優しく抱きつく。

「―――――12年間ずっとこうしたかった」

「・・・・・ウタ」

 何も聞こえない二人だけの世界になる。

「なぁ、ウタ。本当に海賊が嫌いになったのか?」

「・・・・・・・・・・・そうだよ、誰かの大事な物を奪って悲しんでいる人が世界には沢山いるんだよ」

「・・・・・・」

 ルフィは何も言えない。ウタに出会えるまでルフィは祖父ガープの教育で海賊に嫌悪感があった。

 事実世界にはシャンクスやロー、キッドのようなルフィにとって仲良くなれるような海賊がいればクロコダイル、ドフラミンゴ、ティーチなどルフィにとって絶対に仲良くなれない海賊などこの世にはごまんといる。

「本当に『ウタ』は海賊が・・・・・シャンクスが嫌いなのか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・嫌いだよ。アイツの話しはしないで」

「俺、信じられねぇシャンクスがそんな事をするなんて」

「もういいじゃない。もう直ぐ新時代が始まる。ライブに来ないアイツなんかどうでもいいの」

「・・・・・なぁ、ウタ。おまえなにか隠していないか?」

「・・・・・全部終わったら話してあげる」

「・・・・・今聞きてぇ。教えてくれウタ。シャンクスと何があったんだ?昔、これはウタとシャンクスの問題だってベックに言われたから聞こうと思わなかったけどよ。こうなっちまったら心配になっちゃってよ」

「・・・・・言いたくない」

「・・・・・何で海賊が・・・赤髪海賊団が嫌いになったって嘘ついて・・・・・うおっ!?」

 ルフィはウタに押し倒される。

「・・・・・ウタ」

 ルフィを見下ろすウタの目には薄っすらと涙が出始めており何かを我慢しようとしているような顔をしている。

「・・・・・ねぇ、ルフィ。クレドはねここが一番のお気に入りなんだ。この十二年ずっと私と足を運んでいたから」

「ここって港?」

「・・・・・そう、12年前、私はシャンクスに置いていかれてからよくこの場所に訪れていた。もしかしたらレッドフォース号がやって来てシャンクスが黙って置いて行って悪かったって謝りに来きてまた赤髪海賊団の音楽家にしてくれるって」

「・・・・・」

「・・・・・二年前からはルフィが海賊になったって新聞で知った時はルフィが迎えに来るってクレドと信じたのよ。頂上戦争の後死亡説やずっと新聞でアンタが顔を出さないから怖くって怖くって辛かったのよ」

「・・・・・わりぃ、そんな気持ちで此処にいたんだな」

 顔を合わせたくなくてそっぽを向こうとしたルフィだが。

「・・・・・こっち向いて」

 顔をウタに向けさせられる。

「・・・・・ウタ」

「もう、・・・・・独りぼっちは辛いの・・・一緒に居たいの」

 純粋無垢な思いのままゆっくりとウタはルフィの顔に自分の顔を近づける。

「っ・・・ウタ!」

 何をしようとしているのか察して顔が真っ赤になったルフィ、普段の彼を知る者からすれば何ボケっとしている!?と思うだろう。

「――――――ルフィ」

「――――――ウタ」

 

「お父さん!お父さん!お母さんも!!こっち来て!変なのが居るよ!!」

「「!!」」

 二人の唇が重なろうとするその瞬間クレドの声にハッとなり二人は顔を真っ赤にして頭を抱えながら声のする方向に向かった。

 

「・・・・・ルフィさん」

「・・・・・アイツあんなキャラにもなるのか」

「でなければ子供などいないだろう」

 離れた所でコビー、ヘルメッポ、ブルーノは三人を観察していた。

「・・・・・どうやら今の麦わらに接触するよりも麦わらがウタとクレドの注意を逸らしているうちに

他のニコ・ロビン達に合流して情報を集めた方が都合が良い。ヘルメッポ、お前が麦わらの監視をしろ」

「なっ、どうして僕じゃないんですか!?」

「お前の見聞色の範囲を考えたら索敵はお前がした方が良い。何より今のお前に麦わらの監視が出来るか心配だ。あのような関係の間に挟まろうとすると碌な目に遭わないぞ」

「・・・・・ッ」

「行くぞ時間が無いウタがネズキノコに倒れる前にウタワールドを解除する方法を探すんだ」

 そう言いブルーノはドアドアの実の力を使いコビーと共にその場を離れる。




おまけ

 何処かの無人島
キッド「おっ、始まるな」
キラー「ファッファッファッ、いい歌だな!」
キッド「そうか?俺の趣味とちょっと離れているな」
キラー「ファッ!?麦わらがUTAとハグした!?」
キッド「おい待てUTAが赤髪の娘!?」
キラー「麦わらがUTAと子供を作っていた!?」
キッド「おい、麦わらぁ!次あったら覚えてろよ!場合によってはお前が一番の格下だ麦わら!!」

終わり


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チャプター5 過去と今 夢と現実

話の展開でもしかしたらバスターコール案件かも知れませんもしそうならコメントください直しますから。


12年前

 

「へッ、くしょん!・・・ぅぅっ・・・ウタぁ!こんな事しないといけねぇのかよぉ?」

 フーシャ村近くにある森に隠れた川で幼い体を震わせ水に濡れた体を飛ばすルフィ。

「当たり前でしょう、アンタの小便ついてそうなのを入れたくないわよ」

「ウタだって似たようなもん・・・・・・・」

「あれルフィどうしたの?」

 そっぽ向くルフィにウタは問う。

「・・・・・その・・・よぉ・・・ウタの体が・・・その・・・綺麗だな・・・って」

「ふふっ、そうなんだ!このぉ、このぉ」

「止めろよウタぁ!」

 顔を真っ赤にするルフィをウタは弄る。

「・・・・・それじゃあ180回目の勝負始めようか」

「・・・・・おう、じゃあ、先ずはよ」

 ルフィは自分の唇をウタの唇に近づけようとする。

「・・・・・!」

 近づく度にウタの顔がどんどん赤くなる。

「・・・ん?ウタ顔真っ赤だぞ。風邪って奴か?」

「ちっ、・・・違うわよ・・・ねぇルフィ」

「ん?」

「・・・・・ちょっと恥ずかしいね」

「シシシ、やっぱか俺もだ」

「不思議だね、見ていた時は変なのって気持ちだったのに実際にやると」

「・・・止めるか?」

「馬鹿ねぇ今更止めないわよ!・・・じゃあルフィ―――――」

 ルフィの体を掴み抱き寄せながら近づくウタ。

「ウタ―――――」

 同じようにルフィもウタの唇に自分の唇を近づける。

 

 

 

現在

「・・・・・ナニコレ?」

「お前もしかしてサニー号か!?」

「え、お父さん。これサニー号なの?」

 港の海岸で三人は固まっていた。

 

「サニー!」

 目の前にいるのはライオンのような姿をしたぬいぐるみのようなナニカ。

 ルフィには自分の愛船サウザンドサニー号の船首。自分の特等席であるライオンの頭にぬいぐるみのような体をくっつけたようなものが目の前にいる。

「・・・・・これがサニー号?とてもお父さんたちをエレジアまで連れて行った船には見えないよ」

「分かってるけどよぉ・・・この頭。どう見てもサニーだ」

 クレドがサニー号改めてサニーくんを興味深く見つめる。

「・・・・・お父さん。サニー号ってどんな姿か見せて?」

 再びユメユメの実の力を使おうと大きな機械的なゴーグルをするクレド。

「良いぞ出してくれ」

 言われてクレドはユメユメの実を使いルフィの体にアクセスする。

 

(―――――何だ。麦わらの頭に謎の機械が?)

 同時刻、貧乏くじを引かれた海軍の中将が一人モモンガは現場の僅かな変化に気づく。

 ウタによる世界転覆計画。海軍の想像した計画とはもっとひどい方向で事態は進んでいた。

 当初ウタによる革命の灯が出来上がらないかと考え先手を撃ってウタを逮捕しようとした。・・・もし成功したら四皇二人による頂上戦争が引き起こされかねないとはさしもの海軍も予想できないどころか予想出来るのが出来たらそれは『本物』の神ぐらいだ。

 実際はウタウタの実でウタの歌を聴くことで夢の世界ウタワールドに連れていき自身がネズキノコによる毒死によってウタワールドによる永遠の理想郷を作り出そうとする計画。

 止めようにも市民に危害を与えることも出来ず。更にはウタによって市民が操られ海軍をもウタワールドに連れて行こうとするのだ。

 

 膠着状態のさなか少しでも状況を打開できる方法が無いか探すモモンガ中将の目に留まったのはウタの足元に眠る麦わらのルフィ。

 何やらウタとルフィには深い関係のようであり事実ウタは眠っているルフィを大事そうに世話しているのを見て何か突破できないか監視していた。

(一体何が?)

 困惑するモモンガの体に冷たい雨が降り注いでいた。

 

 

 

「あはははすごいや!これがお父さんの船!?」

「おう、これが俺のサウザンドサニー号だ!」

「ふぅーん、中々良いデザインじゃない」

 ルフィの記憶にあるサニー号に盛り上がる三人。

 面白可笑しい遊園地のアトラクションのような見た目のサニー号に目をキラキラしているクレドだが一方ウタは別の事が不意に浮かんで何とも言えない顔になる。

 

「・・・・・どうしたんだよウタ?」

「・・・・・ああ、ごめん。レッド・フォース号を思いだして」

「そうか」

「・・・・・」

「・・・・・」

 何を言えば良いのか分からない二人。お互いどう答えていけばいいのかお互い分からなかった。

 シャンクスによってエレジアに置いて行かれて多くの出会いを失ったウタ。シャンクスに麦わら帽子を託され多くの仲間と出会いここまで来たルフィ。

 この手の話題になると何処までも踏み出せない二人。ルフィが切り出そうとしてもウタがそれを望まないせいでどうすれば良いかルフィでさえ分からなくなっていたのだ。

 

「戻れぇ・・・戻れぇ・・・サニー号戻って大きくなれぇ・・・」

「サニー・・・サニー・・・サニー・・・」

 クレドとサニー君はお互いに念じて元のサウザンドサニー号に戻ろうと頑張っている。

 ウタウタの実のエラーによって生まれてしまったサニー君故にウタもクレドもこの状態をどうすれば良いのか分からないのだ。

「ふふっ」

「シシシ」

 なのにクレドとサニー君は必死になって元に戻ろう(戻そう)としているのだ。

「―――――楽しいね」

「そうか?ぽかぽかするけどよ」

「楽しいって言ってるじゃん」

「・・・・・分かんねぇよウタだって知ってるだろ?」

「これから分かっていけば良いよ」

「けどよぉ、色々な奴らに聞きたいしクレドにも皆と楽しんでほしいんだ」

「・・・・・それは新時代が出来てからで良いじゃない」

「・・・・・なぁ、ウタ。お前、お前が作ろうとしている新時代ってどんなんだ?」

「昔言わなかった?平和で食べる物に不自由の無い永遠に音楽の耐えない世界」

「・・・・・本当に今やっている事が本当に自由な新時代なのか?」

「・・・・・大丈夫だよ」

「・・・・・」

 気まずい空気がウタワールドに流れる。

 

「お父さん!他にもサニー号の記憶が見たい!」

 元に戻せないと理解してクレドがルフィに他の記憶も見たいとやって来る。

「おう、・・・・・なぁ、クレドちょっと良いか?」

 と言ってルフィはクレドに耳打ちする。

(―――――もしかしてよぉ、ユメユメの能力って)

(!・・・何で分かったの!?)

(シシシやっぱりか。ちょっとよぉ・・・・・)

 

「何しているのルフィ?」

「わりぃウタ。ウタがよぉ俺の仲間を解放しないから俺の仲間は大丈夫だって二人に見せたいんだ俺の仲間達をな、良いだろウタ?」

 

「・・・・・」

 光の無いアメイズ色の瞳がルフィを見つめる。時間にしてほんの一瞬だが二人にとってかなりの時間が経ったような感覚になる。

「お母さん」

 その間をクレドが止める。

「どうしたの?」

「色々な事を知りたいよ。わたしはお母さんが言うお父さんしか知らないからもっともっと、知りたい」

「・・・・・はぁ、しょうがないなぁ」

 折れて海を見るウタ、ネズキノコを食べてもなお彼女にとって娘は特別なのだ。

 

「良しじゃあこれとか簡単なのから行くぞ」

・・・故に、ルフィがクレドのユメユメの実のゴーグルをかける危険性にウタは気づけない。

 

「うわ~!」

「サニー!」

 ルフィの中にあるサニー号で暮らす麦わらの一味の記憶が映像となる。それを見つめるクレドとサニーくん。

 

「ふふっ」

 娘が船の精霊みたいなナニカと楽しそうに見ている光景にウタは微笑む。

「お母さん!お父さんがやって来たんだよね!・・・もう待たなくて良いんだよね!」

「・・・・・そうね、もう直ぐだよクレド。新時代になったら思いっきりクレドの夢を追いかけて良いんだよ」

 楽しそうなクレドの声を聴きながらウタはそう答えた。

 

 

 

 

「―――――と言う訳だ今麦わらのルフィに接触するのは危険と判断し監視を置いてこちらに合流して協力した方が良いと考えた次第だ」

「敵じゃねぇなら俺は構わねぇお前らはどうだ?」

 一方その頃、ブルーノ達世界政府組は楽譜から脱出した麦わらの一味とローたちと合流しルフィの状況を説明した。

「俺は問題ないお前らが良いならそれで良い」

 ゾロの世界政府組との共闘するのにローも賛成する。

「・・・問題ないわ」

「アウ、この状況で味方なら問題ないぜ」

「ええ、ちゃんとロビンを狙わないなら問題ないわよ」

 一味の中で最もCPに因縁のあるロビン、フランキーが了承しナミも二人が良いならそれで良いと返す。

 

「問題ないそのような命令は受けてない。指令が来るとしたらウタワールドを終わらせてからだろう」

「この場なら味方か・・・しっかしルフィの奴がなぁ・・・」

 ブルーノ発言を聞いて安堵したサンジが次にルフィの話題に移る。

 

「そうですねぇ、まさかルフィさんが甘酸っぱい青春のような仕草をするなんてワタクシ驚きで心臓が止まってしまいますね!あっ、ワタクシ心臓が無いのでしたヨホホホ~~」

「ルフィだってつがいが出来たらそんな反応するんじゃないのか?」

「いや、アイツ肉とか冒険しか興味ない奴だと思ってたしさ」

 ブルック、チョッパー、ウソップが次々とルフィの話をし始める。

 

「・・・・・話をしても良いかね?」

「ごめんなさい。・・・それでゴードンさん。ウタウタの実の情報についてはここにあるのね?」

「・・・・・ああ、ここにはエレジアの歴史や多くの音楽が眠っている君たちならわたしでは気づけなかった『奴』への攻略も・・・」

「・・・・・奴?」

「ああ、済まない」

 ゴードンが鍵を使って地下書庫の扉を開ける。

 

「中には地下書庫にはかつて門番になっていた超古代に作られたガーディアンがある。もう動かないはずだがこの世界だ気を付けてくれ」

「んなのがあるのかよ!」

「・・・・・そんなものがある理由が書庫にはあるのかしら?」

 呆れるウソップを尻目にロビンはガーディアンが居る程の地下書庫に疑問を抱く。

 

「・・・・・すまないが今の私には何も言いたくないんだ。だから今は何も聞かないでくれ」

 辛そうなゴードンを見て一同は次の目的を決め始める。

 

「ゾロ屋達がウタウタの実の攻略法を探している間に俺は麦わら屋に接触する」

「そうか、・・・ルフィ君に接触する際一応ウタだけじゃなくクレドにも慎重に言葉を選んでくれ」

 ルフィの所に向かおうとするローにゴードンが忠告する。

 

「理解している。このウタワールドではユメユメは敵に回してはいけない能力だ」

「・・・・・違う。クレドには余り他人には言うなとウタと共に教えているがこの状況だユメユメの実の本当の能力は夢を操るだけじゃないんだ」

「どういう事だ」

 そう聞くブルーノにゴードンは答える。

 

 

 

「―――――え、ルフィ?どうして?」

 現実世界にあるルフィの体が起き上がる。

「なっ、どうなっている!?何故麦わらが立ち上がろうとしている!?」

 モモンガもまたウタウタの実によって眠っている麦わらのルフィに驚愕する。

 

「―――――ユメユメの実の本当の能力。それは眠っているモノを操る能力だ。もし、クレドに敵意が持ってしまえば眠っている君たちの体を操って攻撃してしまうだろう」

 そうゴードンは告げた。

 

「・・・・・ウタ」

 ユメユメの実のゴーグルを付けたルフィがウタを見つめる。

 

「―――――何で、海軍に囲まれているんだよ。ウタァッ!?」

 無機質なゴーグル越しに見るルフィの目には困惑と怒りが浮かんでいた。




次回変更プロットに巻き込まれる海軍一行


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チャプター6 アナタと最恐

明けましておめでとうございます。本当は年末に書き終えたかった。
年末に起こった大惨事はある意味2022年で起こった様々な社会の膿が崩壊していっている象徴のような気がします。もしかして歪んだ世界を正すためにニカが降臨しているのか(笑い)

これからも黑米田んぼをよろしくお願いいたします。


(―――――なぁ、クレド。お前の能力って寝ている奴を操っているのか?)

「―――――え!?なっ・・・んんぐっ」

(―――シー、ウタに聞こえるだろうが!)

 ビックリするクレドの口をルフィは塞ぐ。

 

(ユメユメで俺の記憶を取り出していた時に俺の頭に違和感があってさ。もしかして寝ている奴らを操って自由な夢を見せる能力じゃないのかなって)

(―――うん、お母さんやお爺ちゃんが余り人に言わないようにって)

(しししし、そうかそりゃしょうがねぇ。・・・なぁクレド。頼みがあるんだがな)

(・・・何?)

(・・・お前ってさ、寝ている奴を操ったりするのか?)

(・・・うん、仮眠で寝ている補給船の人を操ってちょっと海を眺めたりしていたんだ)

(・・・お、おう。・・・ならさ、俺の体を俺が操る事も出来るのか?)

(・・・出来るよ。夢の世界とウタワールドは別でお母さんが起きているからユメユメで外に出ても直ぐに消されるかもしれないよ?)

(良いんだよ。・・・なぁ、クレド。お前ってやっぱり外が好きなんだな)

(うん、だって。色々な物を見て知って、感じて、楽しんで。そうやってわたしは歌を作るんだ)

(―――――歌か。やっぱ、ウタと一緒で歌が好きなんだな)

(うん!いっぱい知って一杯素敵な歌を作るんだ!)

 会話を終えルフィはクレドの力を借りウタワールドから脱出した。

 

 

 

 

「―――――何で、海軍に囲まれてるんだよウタァ!」

「・・・・・クレドったらルフィにユメユメの秘密教えちゃったんだね」

「おい、ウタ!こっち向けよ。何でこうなったって相談しないんだよ!?お前何をしたんだよ!?」

「・・・・・良いじゃないどうせあいつらこれ以上攻めれないようだしもう直ぐ新時代がやって来るからユメユメ解いてウタワールドに戻ってよ」

「こんな状況で戻れるかァ!?」

「何よ!?ずっと私たちに会いに来なかったくせに!こんな時ぐらい私の言う事を聞いてよ!」

「こんな状況で聞けるか!!」

 そして現在。ビックリするウタの肩を掴んで問い正すルフィとウタは海軍そっちのけで口喧嘩し始めた。

 

「おい、あれ麦わらだよな」

「ああ、ど、どうすりゃあ良いんだよ・・・アイツよ、四皇だよな」

 起き出したルフィに驚愕する海軍の階級の低い兵は騒然していた。

 

「嘘だろあのUTAと口喧嘩しているぞ!?どうなっているんだ!?」

「な、なぁ、・・・もしよぉ、このままUTAを捕縛しようとしたら・・・」

「止めろ!嫌な予想をさせるな!」

 力の弱い海兵からすれば凶悪海賊の一角四皇麦わらのルフィに挑まないといけないのかと震えている。

 元々、民衆から絶大な支持を持つUTAを危険な世界転覆計画を偶然企てていただけで本来は革命の灯となると言うだけでエレジアにウタを捕まえるために来たのだ。

 ただでさえ民衆から反発が来るのが想像できるのにやって来たらウタはウタウタの実を使い民衆を操り人質にされ身動きが取れず。その上明らかにウタに対して親しそうな最悪の世代筆頭四皇麦わらのルフィがいるのだ。

 不用意に戦えば海軍と四皇との全面戦争になってしまう。ただでさえクロスギルドなる海兵狩り組織が生まれた今下手に戦えば疲弊した海軍に金目当ての賞金稼ぎに不意打ちされてしまう可能性があるのだ。

 そもそも下手に動けば覇王色の覇気で落とされるので半端な戦力では文字道理足手まといなのだ。

 

「・・・・・久しいですな麦わらの」

 困惑する海兵を他所目に海軍大将藤虎イッショウがルフィに話しかけた。

 

「トバクのおっさんか!?何でエレジアにいるんだよ!?」

 ようやく話が出来そうな藤虎がやってきてウタから視線を向ける。

 

「あっしら海軍は世界政府から拘束指令が出た歌姫ウタの確保でしてね」

「何で海軍がウタを捕まえようとしているんだよ!?」

「でしょうね、あっしとしてもあまり乗り気ではありませんでしたが状況が変わりましてね。話を変えますが麦わらの、周りに変わった色のキノコがありませんか?」

「はっ?・・・これか?」

 ルフィは食いかけのネズキノコを持つ。

「ネズキノコです!」

 部下の一人が藤虎の代わりに確認する。

「・・・・・そのキノコはネズキノコと言いましてね食べると眠くならなくなりますが」

 

「だめ!ルフィそいつらの話を聞かないで!」

 何を言おうとしたのか気付きルフィを耳を防ごうとするが。

 

「―――――感情のコントロールが出来なくなり凶暴性が増し解毒出来なければ死に至る毒キノコでさぁ、そちらのお嬢さんはネズキノコで自身を毒殺し自分のウタワールドを永遠に持続するきらしいでさぁ」

 藤虎はウタが隠していた世界転覆計画を言った。

 

「―――――ぁぁ」

「―――――嘘だろ」

「海軍がそんな嘘をつく状況では無いのは見ればわかるでしょう?」

 周りには大量の海軍。そして、海軍は明らかに海賊であるルフィではなくウタに注目している。

 ましてや再開してからのウタは明らかに何か隠し事や黙っているのを考えれば藤虎の言葉はルフィであってもこの状況に腑に落ちた。

 

「ウタァ!何やってんだオメェェェェェ!!」

「・・・・・何って何よ!12年も何もしてくれなかった癖に!」

 再びウタに掴みかかるルフィ。それに対してウタもけんか腰で掴みかかる。

 

「さっさと戻ってよルフィ!もう直ぐ新時代が始まるんだよ!」

「ふざけるな!お前が死んで出来上がる新時代なんて認められるわけないだろうが!!」

「死ぬって何よ!大事なのは心でしょう!?」

「俺の心が嫌なんだよ!こんなの全く自由じゃない!お前が一番分かっているだろうが!!」

「っ・・・ぅぅぅっ・・・だからって今の世界が良い訳ないじゃない!!」

 図星を突かれ泣きたくなりそうな表情になりながらウタはトーンダイヤルを取り出しスイッチを入れる。

 

『ねぇUTA。助けてよ世界政府に払うための金を作るためにまた税金が上がってしまったよ!作物が運搬中に海賊に奪われてお金無いのに今年冬を越せるのかな・・・』

『助けてよUTA!俺、昔海軍に捕まった海賊が俺たちの村を襲ったんだ。何か四皇って奴が脱獄させたらしいけど海軍は全然信じてくれないんだ!父ちゃんたちが殺されて姉ちゃんが海賊に攫われちゃったんだ!』

『ねぇ、UTA聞いてよ。家の旦那が戦争で徴兵されちゃったんだよ。世界政府に払うための金を私たちから奪うために来たらしいから向こうも死に物狂いらしいんだよ。海軍に入った長男は七武海を捕まえるために死んじゃってあの人が死んだら他の子供たちをどうやって養っていけば良いのかしら』

『UTA聞いてよ、私の妹、世界政府加盟国なのにシャボンディ諸島で働いていたら人攫いに捕まって人間屋に連れていかれて危うく奴隷にされそうになったの。売られちゃう前に海賊が天竜人とトラブルがあったおかげで助かったらしくて故郷に戻ってこれたんだけど加盟国って奴隷にならないんじゃないの!?これじゃあ人権なんて無いんじゃない!?・・・これじゃあ不用意に海に出かけられないじゃない』

 

「・・・・・聞こえる皆の悲鳴が」

 トーンダイヤルから聞こえる声。UTAとしてウタが聞き続けた悲鳴。

「皆辛い日々を生きている。自由を明日を海賊に奪われる日々を配信や新聞で知った」

「「「・・・・・・・・・・」」」

 ルフィも藤虎もモモンガもトーンダイヤルから聞こえるウタの配信通して多くの人たちの辛い声に何も言えなくなっている。

 ルフィも海軍も彼らを救えない。

 

「―――――こんな世界じゃああの子が不幸になるだけ。ルフィ、もしクレドが海賊に襲われたら私は耐えられない。頂上戦争でアンタに死亡説が出た時よりも生きたくなくなる」

「・・・・・それは」

 ルフィもそれを堪えられない。

 

「この世界は救いを求めている。―――――だからこそ、私が皆を救う!!私は皆の救世主UTAだから!!」

 そうウタが叫ぶが。

「――――――救われたいのはお前じゃないのか?」

「―――――――――」

 そうルフィに言われてウタは驚愕し後ろに後ずさりする。

「―――――俺の仲間を解放しろウタ。話はチョッパーに薬を作ってもらってからだ」

「・・・・・いいよ薬は!!それよりもウタワールドに戻ってよルフィ!!」

「良くねぇ!そんなの許せられるか!薬を飲めウタ!」

「嫌だ!戻ってよルフィ!」

「・・・・・幾ら何でもこれは聞いてやる気はねぇ」

「っ!」

 ネズキノコの毒で感情のコントロールが出来ず泣きじゃくる駄々っ子のような表情でウタはルフィに願ってもそんなお願いは例えウタであってもルフィは拒絶する。

 

「・・・・・トバクのおっさん」

「何でしょう?」

 話にならないと思い藤虎にルフィは話しかける。

 

「海軍引いてくれねぇか?ウタは俺が何とかするからさぁ」

「ははは、冗談をよしてくだせぇ、この状況を良しとするはずがないでしょう?」

 口喧嘩の隙を突いて徐々に距離を詰めていた海軍が動く。

 

「・・・・・・やっぱダメか?」

「海軍を下げてあっしが見守っているなら考えてもよかったんですがねぇ」

「・・・・・わりぃ、それは無理だ。俺は海賊でおっさんは海軍じゃねぇか」

「・・・・・何があったのかは知りやせんがほっとけば多くの人が死ぬかもしれない事態を見逃せは流石に無理ですな」

 武器を構えモモンガ藤虎も刃をルフィに突き付ける。

 

「――――――麦わらのルフィとウタを捕えろ!!」

 モモンガの号令で再び海軍が動く・・・・・が。

 

「―――――――そうか、わりぃおっさん」

 覚悟を決めルフィは覇王色の覇気を放ち藤虎とモモンガ以外の海兵を気絶させる。

「―――――ちぃっ、やはり麦わらの覇王色に耐えられるものが居なかったか。四皇の名は伊達では無いか」

 

「―――――仕方ありませんねぇ」

 藤虎がルフィに迫り愛刀を抜刀する。

「―――――ゴムゴムの鷹ライフル!」

 ルフィは藤虎の刃を流桜で受け止め一瞬だけ拮抗する。

 

「ここでは眠っている乗客に被害が出ますのでね」

 覇気と刀でギシギシとせめぎ合う拮抗した状況になりながら藤虎は自身の悪魔の実ズシズシの実を使い自分とルフィを空に飛ばす。

「うおっ!?」

 飛ばされたルフィは近くのステージの天井の一つに掴む。

 

 

「やりますね麦わらの」

「ししししおっさんもな!」

 ステージの上でルフィと藤虎の空中戦を繰り広げる。

 壊れた瓦礫を浮かばせて飛ばしてくる藤虎に対してルフィは腕や足を伸ばしたり膨らませたり発火させて藤虎に叩き込んでいく。

 

「随分と強くなったんだねルフィ。・・・私もやらないと」

 そんな光景を見て何とも言えない顔になりながら眠っている観客や海賊を残ったモモンガを眠らせるために襲わせるウタ。

 

「クッ、貴様ぁ!」

 守るべき市民に襲われキレるしかないモモンガ。

「・・・・・ルフィ。その人の耳に付いているやつ取ってそしたらその人もウタワールドに連れていけるから」

「・・・・・・・・・・分かった。ギア4、弾む男(バウンドマン)

 仕方ないと納得してルフィはウタの助言を聞いてギア4を使い藤虎のゴーグルを破壊しにかかる。

 

「流石にやりやすね・・・・・あまりやりたくはありませんが」

 そう言い藤虎は愛刀を下に降ろす。

 

「へっ、嘘!」

 ウタの周囲に幾つもの落下の衝撃で被害が出ない適度な速度で隕石が落ちる。

「間違っても観客に当たるような事にならないでくださいね」

 藤虎はウタの観客を人質にするが本心は人が死ぬのを良しとしない良心に気づきウタが観客を逃がしている隙間を突いてウタを孤立にさせる。

「ウタァ!」

 急いで駆けつけようとするルフィだがその隙を藤虎は突く。

 

「重力刀猛虎!!」

 武装色の覇気を乗せた重力波がルフィに迫る。

「ゴムゴムの猿王銃!!」

 咄嗟に猿王銃をぶつける。

 

「流石にやりやすね・・・・・ですが終わりです」

「!」

 動きが取れなくなったルフィの頭上には藤虎が落とした隕石が迫っていた。

 

「あ・・・あ・・・ああぁ、・・・・・ルフィィィィィィッ!!」

 隕石をぶつけられ藤虎によってルフィが誘導されて落ちた場所には白い煙が立っていた。

 

「・・・・・やったか!」

 思わずそう口走ってしまうモモンガ。

 

「・・・・・いえ」

 藤虎は首を横に振る、そして。

 

 ドンドトット♪ドンドトット♪ドンドトット♪ドンドトット♪

「何だ!」

「何・・・これ?ドラム?」

落下地点からドラムのような音が聞こえ始める。

 

「あひゃひゃひゃ、・・・ゴムゴムのォ白い(ドーン)ロケットォ!!」

「ガハァッ!」

「なっ何だ!?」

 煙の中から白いナニカが飛び出し藤虎に突き刺さるように突撃した。

 

「ガハァッ、・・・やりますな・・・・・・」

 藤虎は膝に付くほどの大ダメージを負っても闘志は残っており武装色の覇気を愛刀に付与させルフィに切りかかる。

「あひゃひゃひゃ!受けて立つぞおっさん!」

 ヒトヒトの実モデルニカに振り回されながらもルフィもまた覇王色を纏った拳を藤虎に打ち込む。

 

「・・・・・嘘、触れて無い」

 藤虎の刀とルフィの覇王色が衝突する。

 

「――――――がはっ」

 鍔迫り合いの勝敗はルフィが勝ち覇王色とギア5の腕力、スピードが乗った一撃が藤虎の意識を刈り取る。

 

「・・・・・くっ、こちらモモンガ。大将黄猿はこちらに来れないのか!?今現場にはウタだけではなく四皇麦わらとも交戦している」

 モモンガは電伝虫を使ってエレジア近海にいる本隊に通信するが。

 

『―――こちら・・・!モモンガ中将!現在・・黄猿は・・・に行けません。現在本隊は四皇・・―――――』

「おい、どうした!?応答しろ!・・・・・ダメだ。誰も返答出来ないのか?」

 若干ノイズが入っているのか電伝虫からは何かに大将黄猿は別の四皇と交戦してこちらに迎えられないようだ。

 

「あひゃひゃひゃ、ゴムゴムの―――――」

 既に麦わらのルフィは次の技の溜めに入っている。

「くっ!」

 モモンガはもはや自分ではこの状況をどうする事も出来ずせめてウタワールドに入れられないようにと対ウタウタ用のゴーグルを武装色で強化し自分の体を鉄塊で固める。

「モグラ銃!」

「ガハァッ―――――」

 ゴムゴムのモグラ銃がモモンガの腹に突き刺さり鉄塊の防御も流桜を使った武装色の覇気がモモンガの体内を荒らしモモンガはダウンする。

 

「はぁはぁ・・・・・」

 ギア5を解除し辛うじて老人化しなかったルフィだが大きく消耗していた。

 

「―――――お疲れルフィ」

「なっ!・・・ロビン!」

 ウタの声が聞こえた瞬間ニコ・ロビンのハナハナの実がルフィを捕える。

「・・・・・ウタ、止めてくれ皆を解放してくれ!!」

 やって来たウタにルフィは仲間を解放するように懇願するが。

「・・・・・良いのよもう直ぐ新時代が来る。仲直りはそれからでも良いじゃない」

「良くねぇよ!何があったんだよウタァ!12年前なのか、それとも他の理由があるのか教えてくれよ!俺が何をすればいいんだよ!」

「・・・・・言ったでしょう全部終わったら話してあげるって、新居は用意してあるからベットでゆっくり新時代が来るまで休んでてね」

 ウタワールドの中にあるルフィがかけているユメユメの実の能力で作ったゴーグルを削除していく。

 

「止めろ・・・ウタァ・・・お前が・・・こんなの望んで・・・こんなの・・・アイツらと同じだ・・・俺の一番嫌いな・・・・・ウタ・・・・・」

 伸びる手はウタに届かず解放の戦士は再びウタワールドに囚われていった。

 

「―――――ごめんねルフィ」

 拘束を解き崩れるルフィにウタは優しく受け止め抱きしめる。

「愛しているよルフィ―――――」

 自分のモノだと見せつけるかのようにルフィのうなじに唇を落とす。




まぁ、一言言うとすれば、可哀そうな海軍。一重にてめぇらが色々な意味で弱いせいだが・・・
取り合えず本誌では黄猿参戦の気配もあり変な色眼鏡を付けたくないので黄猿にはルフィの覇王色に気づいた誰かさんに襲われました。
さて、一行は各々の形で現状に気づきました。これから彼らはどう動くのでしょうね。
では皆様良いお正月を!


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チャプター7 迷うウタ

2年前

 

「―――――おや、こんな所にいたのかねクレド」

「あっ、おじいちゃん。ねぇ、おじいちゃん、この扉を開けてよ」

 クレドは地下書庫の扉を指さした。

「ここか、・・・難しいかな暗くて危ない」

「・・・・・そうなんだ」

「ここが気になるのかね?」

 そう尋ねるゴードンにクレドは少し悩み。

「・・・・・笑わない?」

「ふふっ、笑ったりしないさ。どんな理由かね?」

 彼女も音楽家の卵だ。エレジアの歴史を辿り自分の音楽を更に高めたいのだろうと考えていたゴードンだが。

 

「―――――声が聞こえるの」

「・・・・・え?」

「・・・・・寂しい、歌って、誰かに見つけてって声がこの扉の奥から聞こえてくるの」

「―――――それは」

「・・・・・可笑しいよね人なんてたまにやって来る船以外にはおじいちゃんとお母さんと私だけなのに」

 唖然とするゴードンを見てクレドは寂しそうな顔を見せる。

「・・・・・いや、そんな事は無いよ。・・・・・もしかしたら魔王の嘆きかも知れない」

「魔王の嘆き?」

「―――――そうだ。このエレジアには古に封じられた魔王が居るとされる」

「どうして封じられているの?」

「古の時代に魔王はエレジアを滅ぼされ生き残った者たちは身動きの取れなかった魔王を封印しその場所に繋がる場所はこの地下書庫の何処かにあるとされている」

「―――――まるで私とお母さんだね」

「ッ!――――――」

「私のもう一人のおじいちゃんはエレジアを滅ぼしたんだよね。昔のエレジアを滅ぼした魔王はエレジアに閉じ込められてエレジアを滅ぼしたおじいちゃんの子供のお母さんとわたしは此処から出られない。

「―――――クレド」

「・・・・・ねぇ、おじいちゃん。お父さんってどんな人なのかな?」

「・・・・・私もそれは分からない」

「早く来ないかなお父さん」

「―――――クレド」

 何とも言えないゴードンはただクレドを優しく撫でて地下書庫から離れた。

 

 

 

 

 

 

「お母さん、怒っている?」

「う~ん、複雑かな悪いのはルフィだし」

 エレジア城にある音楽室にウタはクレドとサニーを連れて来た。

 

「・・・・・お父さんと何かあったの?」

「・・・・・・・・・・・・まぁね」

 悲しそうなウタを見てクレドは聞く。

 

「・・・・・ねぇお母さん。今日のお母さんは何だか変だよ」

「・・・・・・・・・・」

「いつも明るいのに今日は何処か何時ものお母さんはちょっと辛そうだよ」

「・・・・・はぁ~~何でそんな言葉を言えるのよ」

「おっ、お母さん!?・・・おっ、怒っているの!?」

「・・・・・さっきも言ったじゃない悪いのはルフィだって、何でこうもルフィが言いそうな事になるのか血のつながりを感じるわ」

 顔に手を当て呆れるウタ。

「・・・・・お父さん、お母さんに何か言ったの?」

「・・・・・私とルフィの問題だからクレドは気にしないでも良いのよ」

「・・・・・お母さん」

「なぁに?」

「ちょっとセッションしようよ。そしたら元気になるかもしれないし」

「・・・・・魅力的だけどそろそろライブに戻らないと」

 ライブに戻るとウタが言った瞬間クレドの表情が目に見えて変わる。

「・・・・・なんで、あんな奴らの所に行くの?」

「こら、そんな事を言うんじゃない!皆辛い日々を私が救っているのよ」

「・・・・・」

「そんな顔をしないで新時代が来たら思いっきりお父さんと遊んだり楽しい歌を作ろうね」

「・・・・・ねぇ、お母さん。本当に今作ろうとしている新時代って本当にお母さんの作りたい新時代なの?」

 その言葉はウタを愕然とさせた。

「・・・・・何でそんな言葉を言えるの?」

「・・・・・だって、お母さん。辛そうな顔をしているよ?」

「―――――っ!」

 鏡を見て悲しそうな自分の顔を見てウタは唖然とする。あの目を瞑った海兵はネズキノコには感情の暴走を引き起こすと言った。それを今ウタはちゃんと理解した。

「―――――ごめんね、クレド。・・・ちょっと、ルフィと話してくるからそのライオン君とそこに居てね」

 ウタは音楽室から出ようとする。

「お母さん!」

 クレドの声を聴きたくないのかウタは大急ぎで逃げる。

 

「・・・・・・・・・・お母さん」

「―――――サニー」

 しょんぼりしているクレドをサニーは優しく擦った。

 

 

 

 

 

「―――――会って一日も経ってないのに何でこんなに似るのかなルフィ」

「・・・・・何かあったのかよ」

 寝室にはトランプのダイヤを模した椅子に貼り付けられたルフィがいた。

「揃って私が辛いってハッキリ言うのは血なのかな?なんでそんなにずけずけ言ってくるのかな?」

「・・・・・だったら止めろよ」

「・・・・・今更止められるわけないじゃん」

「んなけわねぇ!!こんなの止めろウタァ!!」

「海賊のアンタと歌姫の私じゃあどうにもならないじゃない」

「そんなわけ―――」

 言い返そうとするルフィの顔の横に巨大なランスが突き刺さった。

「―――――何も言わないでルフィ」

 ウタのアメジストのような綺麗な紫色の瞳がルフィを見つめる。

「―――――ウタ」

 ウタの目に光が無くまるで巨大な宝石のような瞳に何とも言えない気持ちになるルフィ。

「私とクレドの能力は組み合わせれば無数の組み合わせが出来る」

 ランスをルフィの顔に近づける。

「これもその組み合わせの一つ。私の記憶の本を私が槍に変えた」

「その槍にはどんな記憶が入っているんだ?」

「―――――私の一番痛くて辛い記憶。私がクレドと初めて会った日の記憶」

 ウタは目を閉じてルフィの顔を優しく撫でる。

 

「あの日は多分人生で二番目に辛かった日かな。あの日は本当にシャンクスが憎かった」

 せつなそうな顔をしながらウタはその時の事を話す。

「あの日私は一人だった。ゴードンは優しくしてくれたけど当時は他人の扱いでもましな位に距離があったし知り合いは誰もいなかった」

 それでもウタは自分の目をルフィの目に合わせて話す。

「出産の辛さを和らげようと優しい言葉をかけてくれた助産師の先生の言葉は私にはそこまで響かなかった」

「―――――」

 ウタの話をルフィは座して聞いた。

「孤独の中私は出産の痛みを感じながらずっとルフィとシャンクスの名前を叫び続けた。いるはずも無いのにね」

「―――――」

「知ってる?出産の痛みって女にしか耐えられないんだってお母さんは強いってことなんだよね」

 ウタは再びランスをルフィに向けた。

「クレドのユメユメの実で取り出した本はその人の普段は覚えても居ない当時その人が体験した記憶を全て体験する能力でもあるの。もしこの槍にルフィが刺されたらルフィでもただでは済まないよ。だからルフィ、海賊も冒険も全部辞めてよ」

 そう言い放つウタ。

 

「―――――やれよ」

「―――――は?」

 だが、未来の海賊王はウタの予想に無い言葉を言った。

 

「刺せよ、その槍で俺を」

「いや、何を言っているの?私の言っている事何も分かっていなかったの?」

 困惑するウタにルフィは語る。

 

「分かっているよ。でもよ、それはウタが辛くって悲しかった記憶なんだろ?」

「・・・・・そうだよ」

「ウタが辛い思いをしたのは俺のせいでもあるんだ。だから、俺は逃げねぇ」

「死ぬほど痛いよ」

「しししし、俺は死なねぇ!」

 明るく真っ直ぐな瞳でウタを見るルフィ。

 

「―――――馬鹿」

 ランスをルフィに向ける。

 

「―――――わりぃ」

 優しく受け止めようとするルフィ。

 

「アンタのそう言う所。昔から嫌い(好き)だったよ!!」

 ランスがルフィの体に突き刺さる。

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァッッッ!!!!」

 エレジアの城の中でルフィの悲鳴が響いた。



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チャプター8 天使達の演奏会

お待たせしました。大事な話なのでちゃんと考えて作りました。

因みにクレドのユメユメの実は元スレにもあったりします。その上で書いている道中夢の世界を自在に出来るだけにしてモデルサキュバスとかモデルマーリンとか候補にもありましたが戦闘能力よりも便利性を考えてユメユメの実になりました。


12年前

 

「―――――ではここで出産を?」

「そうなるねぇ、多分だけどここで準備した方が良いよ」

 ゴードンと老いた助産師が話をしていた。

「理由を聞いても?」

「ドラムに連れていきたいけどもう五ヶ月ぐらいだろう?あの子の体が幼すぎるのがねぇ、それに・・・」

「それに?」

「聞こえるんだよあの子のお腹から元気な声がね」

「?」

「この仕事をしていたら人の声って奴が聞こえるんだよ。まぁ、見聞色の覇気ってやつさ」

「はぁ・・・」

 

「―――――」

 ベットに横たわるウタ。

「―――――ぅぅっ。またお腹を蹴っている」

 幼いその体のお腹に宿る命が母であるウタに生きている事をアピールしている。

 

「ずいぶんと元気な子供だね」

 助産師がウタに語り掛ける。

「―――――先生。この子はいつまで私のお腹にいるんですか?」

「そう遠くないさそろそろ出産だよ」

「・・・・・大丈夫なんですか?」

「大変だよ。私が悪魔の実の能力者でも子宮を傷付けないだけで一番頑張らないといけないのはお母さんだからね」

「・・・・・」

「大変だけど自分で決めたんだろう?」

「はい、・・・この子に罪は無いから。私とルフィが悪いから・・・」

「そう思うなら頑張らないといけないよ」

「・・・・・」

 ウタは辛そうな顔を更に暗くする。

「しんみりし過ぎたね・・・ああ、そうだ。これをあげようか」

 助産師はウタに太陽十字架を渡す。

「・・・・・これは?」

「北の海の友達に貰ったものでね。置いていった親父さんと友達程じゃないけど神様が辛い事を解放してくれるかもしないと思って握っていなさい」

 

 

 

 

現代

「――――――先生。今も辛いです」

 現実世界では雨に濡れ冷えた体を震わせながらウタは一つの瓶を見ながらあの日貰った十字架を握りしめた。

「・・・・・ルフィ。アンタが悪いんだよ」

 瓶をバスケットに戻してネズキノコを再び食べ始めた。

 

「うわぁぁぁァァァァァァッッッ!!ぁぁぁぁぁっっっ!!痛てぇ!痛ぇよぉッ!!」

 打って変わってウタワールドの王城の一室では部屋の主であるウタはもう居らず残っているルフィはウタの記憶を追体験していた。

「ぁっ・・・ぁがあぁぁぁぁ・・・」

 12年前のクレドの出産の記憶を体験しているルフィは本来ホルホルの実で女にならないと体験できない地獄を味わっていた。

『痛いよ、痛いよルフィ!!イヤァァァァァっっ!!助けて・・・シャンクス。シャンクスゥゥゥゥッ!!』

「ッッッッッ!!・・・ウタァ!!・・・ぅぅっ・・・」

 体験する中で悲鳴と自分とシャンクスに助けを求めるウタにルフィは無力感を抱く。

「痛てぇ・・・こんな痛みをウタは受けていたのかよ・・・」

 記憶を体験するせいで痛みの後でも幻肢痛がルフィの体を駆け巡る。

 本来であれば男に出産する事などあらずその痛みを耐える能力は無い。・・・と言うよりこの痛みに悶えない者はビッグマムぐらいだろう。

 

「ぁ、ぁ、ぁぁ、ぁぁぁぁあっっ・・・・・助けてくれチョッパー!トラ男!この痛みはどうやったら治るんだ!」

 思わず自身の船医や元同盟者の外科医に助けを求める。

 

 

 

 

「・・・・・ねぇ、サニー」

「サニー?」

 音楽室に置いてかれたクレドはサニーに話しかける。

 

「お母さんはね皆に歌を歌うのが大好きなんだよ」

「サニー」

 近くの椅子に座ってサニーを膝に置いてクレドは話しかける。

「三年前ね変なでんでんむしをお母さんが見つけてお母さんの歌はエレジアの外の人達にも届けられるようになったんだ」

「サニー」

「あの時はとっても楽しかったんだ。お母さんの歌はたくさんの人がすごいって褒めてくれて皆で喜んだんだ」

「サニー!」

「うん、良かったんだ・・・最初はね」

「サニー?」

「皆はお母さんの歌を聞いて喜んでいた。辛い今をお母さんの歌が救ってくれたって。・・・でも、段々あいつらはお母さんを・・・何て言うのかな?おかしくさせた」

「サニー?」

「配信を始めて最初はお母さんが歌を歌うだけの配信だったけど。だんだん配信を通してお母さんにアイツら辛い事をお母さんに言ってきた。お母さんはかなしそうだった。エレジアはわたしの名前しか知らない海賊のおじいちゃんがめちゃくちゃにしちゃったからみんなの悲しさを受け止めて上げてそんな世界が終わりますようにって色々な歌を作ったんだ」

「サニー」

「そうだよ。お母さんの歌はすごいんだよ。自分の思い出や配信を聞いて感じたものを元に作った歌は皆に褒められて。そして、だんだん、お母さんは救世主だって。辛い今を終わらせてくれる。街がめちゃくちゃになったから助けてって言ってきた。・・・助けてって言っているのはお母さんなのに」

「・・・サニー」

「お母さんはねよく寝ている時にお父さんと海賊のおじいちゃんの名前を良く言うんだ。その後置いてかないでって言うんだよね。配信止めようとか休もうとか言っても皆が待って居るからって言ってくるんだよね」

「サニー・・・・・」

 悲しそうなクレドを慰めるサニーくん。

「ありがとうサニー」

 慰めるサニーにクレドはサニーの頭を撫でる。

 

「―――――ねぇ、サニー。歌は好き?」

「サニー!」

「皆が楽しそうだよね。そう思うんだ。じゃあ、ちょっと演奏しようか。お母さん一曲終わった後のようだから皆に聞こえるようにしようか」

 クレドは分身し各々が楽器を構え始めた。

「サニー?」

「え?良いのアイツらにって?・・・お母さんが言っていたんだよ皆と歌うのは最高に楽しいって。お父さんも船で楽しそうに皆と歌を楽しんでいたんでしょ?・・・だからわたしもお母さんと歌を楽しみたい」

 ユメユメの実がウタワールド中を覆う。

 

「――――――3,2,1」

 

 ♪~~~♪~~~~♪

 

「――――――何?」

 会場にいる誰かが気づく。

 

 

「おや、ご機嫌な歌が聞こえてきますねヨホホホ~」

「ブルック!曲なんて聞いてないでこっち手伝ってくれ!」

 地下書庫で戦闘している麦わらの一味もまた気づいた。

 

「―――――はぁ、クレドったら。まぁ、良いか楽しいし」

 ウタもまたクレドの奏でる曲に気づき息を整える。

「すぅ―――――♪~~~♪」

 曲に合わせてウタが歌いだす。

「すごい!」

「何だこの曲は!新曲か!!」

「楽しい。わくわくする曲だ」

「中々良い演奏だえ。ウタ共々わちきの子守歌を演奏させるえ」

 カエルの子はカエル。誰もを笑顔にする天使の歌声を持つプリンセスウタの子クレドもまたどんな人を喜ばせる天性の音楽性に加えルフィの持つ万物の声を生まれつき手にしていたクレドはエレジアの声を通してゆっくりとその音楽性を成長させていった。

 故に、二人の演奏は瞬く間に観客たちの心を掴む。

 

「この歌は?」

「クレドの曲だ。最初にあの子が作った曲を私とウタと三人で整えた曲だ」

「・・・・・悪くない曲だが海兵あそこか?」

「はい。・・・ルフィさん大丈夫でしょうか?」

「何がだ?」

「・・・・・先ほどルフィさんがとんでもない程の悲鳴を上げている声がしたんだですよ」

「麦わら屋が悲鳴を上げるような玉か。偶然だろう」

「・・・・・そうでしょうか」

 そんな話をしながらロー達はルフィのいる場所へ向かう。

 

「―――――ん?」

「どうしましたお頭?」

「・・・・・いや、ウタの歌が聞こえた気がしてな」

「・・・・・・そうですか」

 

「はぁはぁ・・・・・」

 記憶による幻肢痛に苦しんでいたルフィ。気絶しそうになりかけていたがウタとクレドの演奏が聞こえてきたことで痛みが和らいできたことで耐えきれることが出来た。

 そして、出産が終わった直後のウタの記憶が流れてくる。

 

 

 

 

「・・・・・これが赤ちゃん?」

「そうさ、本当はもっと後から生まれないといけなかったからねこんな風になっちゃうのさ」

 余りにも幼い未熟児のクレドを見つめるウタ。その目には涙が出ていた。

「ごめんね、私がいけないんだ」

「・・・・・かもしれないさ。でもね、子供は親を選べないんだ。だから、親が子供に愛情を注いであげないといけないんだ。それがやっちまった者の責任さ。こうして謝っているならお嬢ちゃんはそこらの海や大陸のゴミ共よりかは何十倍もましさ」

「はい・・・・・」

 本当はもっと時間をかけないといけないのにと責任を感じてしまうウタ。それを優しく慰めながら諭す助産師。

「そう言えば名前はどうするんだい?」

「あ・・・どうしよう。思いつかない」

「そうかい。・・・ならお嬢ちゃんはこの子をどう育てたい?」

「え?」

「この子をどう育てたい?強い子?優しい子?最終的にこの子がどんな大人になってほしいって願いを込めて名前をつけたら良いんじゃないか?」

「・・・・・じゃあ」

 少し考えてウタは幼子を抱き寄せて言う。

「―――――信じる。約束をちゃんと守って誰かを信じて噓をつかないような子になってほしい」

「良いじゃないかそれに似合う名前があるかな・・・」

「それなら良い名前があるのだが」

 二人の間にゴードンが割って入る。

「とある言語に『我は信ず』を意味し感謝の祭儀などの曲の構成要素にあるクレド何て良いんじゃないか?」

「・・・・・良いね凛々しくて良さそう」

「決まったんだね」

「はい。この子の名前はクレド。モンキー・D・クレド。私の残されたたった一つの宝物。誰かを信じられる子に育ってほしいから」

「モンキー・D・・・まさかね」

「・・・・・ふふっ、私の指を咥えている。可愛い。早く来ないかな」

 

 

 

「―――――ウタ。わりぃ。お前、本当に強いな」

 記憶の追体験が終わりルフィは椅子に背中を預けた。

 

「―――――ふぅ、楽しかった」

 演奏が終わってクレドは本体以外の分身を消して楽器を戻し始める。

「サニー!サニー!」

 とても良かったのかサニーもご満悦だ。

「ふふっ、サニーも楽しかった。・・・でもね、これじゃないんだ」

「サニー?」

 首をかしげるサニー。

「結局この演奏は私とお母さんだけの演奏。二人だけの楽団。夢でしか使えないからそこまで楽しくないんだよ」

「サニー」

「おじいちゃんが言っていたよ。エレジアにはもういないけど、海の外にはお母さんに並ぶほどの音楽家は沢山いるって、だからいつかサニーのようなすごい船とすごい仲間と一緒にこの海を存分に巡るんだ」

「サニー!」

「ふふっ、自分よりすごい船なんていないだって。面白いなぁサニー」

 クレドは扉を作り始める。

「ウタワールド中に響かせたからお父さんも聞いているはずだから感想聴きに行こうね」

「サニー!」

 扉を開けようと少し開いた瞬間。

 

「――――――トラ男!この拘束を解いてくれ!このままじゃあウタが死んじまう!」

 

「――――――――――え?」

 隙間から聞こえたルフィの言葉に唖然とするクレド。

 

 最後の主演が舞台裏に付き。少女が母の真実を知ったのと同時に夢の世界は堕落した竜の末裔の悲鳴によって残酷で辛い現実世界に引き戻される。

 

――――――――――親子の物語はこれより終曲へと移る。




さて、今回の話は良くも悪くも大事な話です。
出産は重大であり子作りはとても大事な儀式。安易にやってはいけませんね。
だからと言って18ものにきつく当たってはいけないと思います。
二次元と肉体的衝動。家庭は全く別でいないといけない。まとめてはいけません。まぁ、一般常識でしょうけどね。
TDG生まれの若者ですが何時かは父親になりたい身として家庭にはしっかりと考えてみないといけないかも知れませんね。
次回は文字道理大惨事。何が起こるのかは言えませんがアンチヘイト、キャラディスリのどうあがいても何人かは深刻な虐待をしちゃいます。そしてルフィシャンクスは最大の試練にぶつかっていただきましょう。


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チャプター9 せかいせいふのぜったいてきなせいぎのなのもとに!!

遅くなりました。色々な理由で長くなりましたがこうして投稿となりました。
タイトルで何となく予想してそうですが前回も言いましたが今回のテーマは大惨事。ある意味フィルムREDのテーマもちょっと入っているかもしれません。


 時間は少し先戻る。

 

「―――――ルフィさん!大丈夫ですか!?」

「・・・・・麦わら屋何て格好してるんだ」

「コビー!トラ男!・・・ってウシじゃねぇか!?何でいるんだ!?」

 部屋にやって来たコビー達。

 

「任務だ。ウタの世界転覆計画を止めるために一緒にいる。少なくともお前たちに敵対する気はない。流石に曲がりなりにも四皇を倒したお前の道力に挑む気はない」

 そうルフィを説得するブルーノ。

 

「・・・・・まぁ、良いや。それよりもトラ男!この拘束を解いてくれ!このままじゃあウタが死んじまう!」

「え!?どういうことですか!?」

「現実世界でトバクのオッサンと会ったんだ。ウタがなんとかってキノコ食べていてこのままじゃあウタが死んじまうって」

 ルフィがコビーに自分が知った情報を伝える。

「海軍大将藤虎か。ただの歌姫に大将まで呼んだのか。まぁ、妥当の理由か」

「・・・・・そうですか。そうです。ウタさんはネズキノコで自身のウタワールドを維持してキノコの毒で毒死しようとしているんです。このままでは僕たちはウタワールドに永遠に閉じ込められてしまうんです」

 ルフィ達がお互いに情報を交わしていると。

 

「・・・・・なにそれ」

「―――――あ」

「・・・・・クレド!?」

 ユメユメの実で作った扉をくぐってクレドが部屋に入って来る。

 

「教えてよお父さん。お母さんは死のうとしているの?」

「そっ、それは・・・・・」

 あわあわするルフィ一行。

 

「―――――」

 これ喋らないなと思ったクレドはユメユメの実を使い最後にウタが死ぬと言ったコビーの記憶に検索を駆ける。

 

「―――――オジサンお母さんを悪い人と思っているの?捕まえようとしたの?」

 コビーの記憶を知ったせいでコビーの目的がウタの世界転覆計画を止める事、そして、海軍はウタを犯罪者として逮捕しないといけない事をクレドに知られてしまった。

「ちっ、違います!僕たちの目的は君のお母さんの世界転覆計画を止めたいだけでその後は」

「黙って!」

 ユメユメの実で出来た機械的なゴーグルがコビーを捕える。クレドは空島の本、砂漠の本、沢山の船のある本を呼び出した。

 

「なっ!ルッチ!?」

「おい、何だよこれ!?」

 そこからエネル、クロコダイル、ルッチがが現れヘルメッポ、コビー、ブルーノに襲い掛かる。

「気を付けてくれ!ユメユメは記憶を追体験する。ただのパンチでもとんでもない一撃を出すかもしれない!」

「なんだそれは!?」

 

 困惑するコビー達を尻目にクレドの体は光消え始める。

「待ってくれクレド!話を聞いてくれ!!」

 説得しようとしたゴードンだがクレドは聞く耳を持たずユメユメでワープする。

 

 

 

 

「―――――お母さん!!」

 ライブステージにワープしたクレドは何故かテンパっているウタに向かって叫ぶ。

 会場には母ウタ、なんか倒れている黒服。見る事さえ血が拒絶したくなるようなナニカ、クレドには言葉にしにくいが最初とは何かが違う表情をしている観客がいる。

 

「あれ、クレド、どうしたの?ごめんけど今ちょっと手が離せなくて遊んであげれないけど。もしかして、音楽室で演奏するよりもライブで演奏したかった?」

 参ったなぁと言った表情を見せるウタにクレドは言い放つ。

 

「―――――もう止めようお母さん!!」

「止めるって何を?」

 突然の言葉にウタは困惑する。

「何もかもだよ!今作ろうとしている新時代も救世主も何もかも!!」

「――――――クレド」

 必死にファンを宥めていたウタの表情が更に曇る。

 

「聞いたよ!お母さん毒キノコで死のうとしているって!!」

「―――――っ、誰が・・・ううん、もういいや」

 一番知らせたくない人にとうとうバレたと理解してウタはうつむきだす。ルフィかゴードンかウタワールドに連れて行った海軍の誰かに教えて/調べたんだろう。

 

「こんなの新時代なんかじゃない!このままじゃあお母さんが自由じゃない!!」

「・・・・・」

「配信してから多くの人がお母さんの歌を褒めてくれたよ。でも、お母さんは歌手だ!!救世主なんかじゃない!!お母さんの歌が皆を救ってもこんなに命を懸けて誰かを助けるなんて間違っているよ!」

「・・・・・クレド」

「もう止めよう。お父さんやって来たんだよね。ずっとお母さんが頑張って来たから来てくれたんだよ!」

「・・・・・」

 ステージに静寂の風が吹く。

 

「―――――行こう。大海原が新しいステージがお母さんを待っているよ」

 クレドは手を伸ばしウタの手を掴もうとする。

「―――――クレド」

 ウタもまた手を伸ばす。

 

――――――このまま終われ。誤った母を子が正しこの事件に幕を閉じれば何もかも終わらせれると電電虫から見ている五老星やガープ達は思った。

 

 

 

 

 

 

「―――――ふざけるな海賊のガキが!!」

 世界政府の願いは罵声と共にかき消された。

 

「――――――え?」

 何だ?とクレドの思考に空白が生まれる。

 

「救世主を止めろだと!何を言っているんだ!!てめぇは本当にプリンセスウタの子供なのかよ!?」

「UTAは俺たちを救ってくれる救世主なんだ!!」

「何よ子供だからっておかしなことを言っちゃってくれて!!」

 《正義》の火がどんどんと広がっていく。

 

「まっ、待って皆止めて」

 ウタが止めようと声掛けをするが。

 

「そもそも、麦わらってあれだろう!?千両道化と黒ひげと組んでインペルダウンで大量の囚人を脱獄させた大悪党だろう!?」

「海賊王のガキと兄弟分だったって聞いているぞ。その上麦わらの父親は世界最悪の犯罪者らしいぞ」

 傍から見れば滑稽この上もない。先ほどまで天竜人が害されて大将がやって来るのでは?と思いステージから逃げ出そうとしていたのに。ちょうどよい生贄が居れば幾らでも騒げる。・・・それが地獄の道を作っているとも知らずに。

 

「―――――何とか辿り着いたけど」

「・・・・・最悪だな」

 ルフィの記憶を打倒しステージにやって来たコビーとブルーノは最悪の状況になったと確信した。

 

「―――――おい、あれコビー大佐だぞ」

 誰かがコビーに気づく。

 

「皆さん。落ち着いてください。今僕たちは・・・」

 観客を諫めようとするコビー。

 

「コビー大佐!そこの海賊のガキを処刑してくださいよ!!」

「なっ、」

 突然そんな事を言われてコビーはびっくり発言した者の正気を疑う。

 

「そうだ!海賊の子供に生きる価値なんてねぇ!」

「殺せ!」

「殺せ!」

「火拳のように胴体をぶち抜け!!」

 狂った『正義』を掲げステージに熱狂が広がる。

 

「落ち着いてください。この子は何も悪いことはしていません」

「海賊の子供ってだけで十分だ!

 民衆を説き伏せようとするコビーだが観客たちの耳には届かない。

 

「お前ら海軍は関係ない奴だって一緒に殺したんだろうが!!海賊の子供なら猶更殺しても問題ないじゃないか!!」

「そうだ!南の海にいた俺の叔母はもう直ぐ出産だったのに海賊王の子供を身ごもっているかもしれないって理由で殺されたんだ!旦那が必死に無実を訴えても一緒に殺されたんだ!」

「私の息子はオハラで学者になるために勉強していたけど考古学者が政府に反乱を起こそうとしたって罪で一緒に殺されたんだよ!!」

「バカみたいな献上金を沢山差し出してもお前らは平気で関係ない俺たちを殺す癖に海賊のガキには躊躇するのかよ!!」

 

「・・・なに・・・なにこれ・・・ぁ・・・ぁ・・・」

 クレドには理解できなかった。対人関係は幼い頃から母親であるウタと祖父代わりのゴードンで止まっているクレド。

 故に理解できなかった。強烈な悪意、それも、自らの保身と集団心理、自己満足が混ざった文字道理800年世界政府が気づき上げた他者を虐げる事で自尊心を守る差別と言う名の『正義』・・・もっとも、二人を育てたゴードンはそんなものを教える気などサラサラないのだが。

 

「死ね!罪人の子!」

「父親共々撃たれて死ね!」

「お前らは生まれてくる必要が無かったんだ!!」

 

「・・・・・どうして?何で皆ウタの子供にあんなに酷い事を言えるの?」

「・・・・・この人達おかしいよ」

 狂った大人に恐怖するロミィやヨエルカ。

 

「・・・・・もう、止めて・・・クレドを・・・虐めないで・・・」

 狂った熱に突き動かされている民衆に弱弱しく訴えるウタの周りにはいつの間にか漆黒のオーラを放つ楽譜が浮かんでいた。

 

 

 

 

「―――――ダメです。電電虫繋がりません」

 試しにブルーノに電電虫をかけていたルッチは五老星に繋がらないのを伝えた。

「―――――そうか。もう良い。下がれ」

「はっ」

 

「・・・・・困ったものだ」

「奴ら。自分が何に怒っているのか分かっているのか」

「分かっている訳ないだろう」

「このままではトットムジカが現れるぞ」

「・・・そうなったら世界は終わりだ」

 五老星は頭を抱える。800年も支配と差別の天竜人社会を作っていた彼らは逆に今まさに支配と差別によって追い込まれていた。

 流石の五老星もなんて事もない一人の人間のたった一言で世界が滅びかねないなど予想出来なかっただろう。

 

「―――――君、今ウタワールドに取り込まれている地域はどのくらいになっている?」

 サターン聖は外で状況を聞き戻ったルッチに問いかける。

「はっ、恐らくですが世界の6から7割の民衆がウタのウタワールドに取り込まれていると入っています」

「・・・・・このままウタを殺せば世界から最低4から5割の人間が2度と目覚めない死の眠りについてしまうのか」

「麦わらだけで終わればよいものの。もしそうなれば天上金が大きく減ってしまう」

「そのために上げたらますます海賊と革命軍が活気づく。ただでさえモルガンズと炎帝で革命が盛んなのに」

「そんな革命軍とぶつかり双方疲弊したを我々を見逃すほど黒ひげとクロスギルドは甘くはない」

「頭が痛いな」

「・・・・・大将黄猿はどうした?」

「・・・・・四項赤髪のシャンクスに軍艦ごと襲われて現在分かっていません」

「・・・・・八方塞がりか」

 どうすればよいんだ?五老星は頭を抱えていた。

 

 

 

「皆さん落ち着いて!!」

「・・・・・これなら麦わらを引っ張ってこればよかったな」

 暴動した民衆に対してため息をつくブルーノ。

 ブルーノ達はウタの元に向かったクレドを追う際解放すると暴走するルフィは拘束されたままにして夢で作られたルッチ達はローがバラバラにしてどうにかした。その時ルフィを連れてくれば覇王色で民衆を一息に黙らせれたとブルーノは若干後悔した。

 

「ぁぁ・・・ぁぁ・・・」

 民衆の殺意、敵意、戦いを体験していない人間でさえ怯える人間の恐怖に幼いクレドは恐怖した。

「・・・・・お母さん!」

 ウタに駆け寄るクレド。恐怖から逃げたくて幼子は母の温もりを求めるのは当たり前だろう。

 

「UTAに近づくな海賊のガキが!!」

 誰かが投げたものがクレドの頭に直撃する。

 

「・・・ぁ、・・・ぁぁ・・・」

 ウタの瞳に映るもの。

「・・・ぐすっ・・・痛い・・・」

 ぶつけられた衝撃でクレドの額には小さな傷が開き深紅の血がクレドの額を濡らす。

「―――――もういいや」

 大きく息を吸い込みトットムジカを歌おうとするウタ。

「不味い!」

「ウタさん止めて下さい!!」

 ブルーノ、コビーは止めようと距離を詰めようとするが飛び交うものに遮られて上手いように動けない。

 

「カ――――――」

 トットムジカを歌おうとするウタ。このままでは誰もが不死の魔王が現れる誰もがそう思った。

 

「―――――痛いよ。お母さん・・・助けて」

「――――――クレド」

 助けを求める我が子の声がウタの一線を踏みとどませられることが出来た。

 

「―――――ッ!」

 トットムジカで何もかも吹き飛ばすよりもクレドが死ぬんじゃないかの恐怖が上回りウタはウタウタで民衆を人形に変えようとする。

 

「不味い!引くぞ!」

 ブルーノとコビーはドアドアの実で逃走する。

 

「イヤァァァァァぁぁぁっっ!!なにこれ!?」

「何なんだ!?おっ、俺の体が!?」

「誰か誰か助けて!!」

「UTAどうして!!」

 ウタもクレドも姿を消し人形にされた民衆の悲鳴がステージに響く。

 

 

 

 

 

「・・・・・どうしてこうなったの」

 現実ではウタが項垂れていた。

 ステージには意識をウタワールドかルフィによって彼方に飛んでいるため意思を持つものはウタのみだった。

 

――――――彼女の歌は世界を滅ぼす!!

「―――――罪人の子かぁ」

 ウタとて分かっていた。こんなの新時代じゃないと。母親になったウタにとっては自分が今作ろうとしていた新時代は間違っていると。それでも自分のやった事と多くの人の願いは成熟しきっていないウタの背中を押してしまった。

「・・・・・でももう。いいや」

 もう何もいらない愛する子と幼馴染と永遠に永遠に暮らしていれば良いんだ。

 

「・・・・・ごめんなさい」

 痛みも無く一息で我が子と幼馴染のいる永遠の夢の世界に行きたい。と考えゾロの閻魔を引き抜く。

「・・・・・これで・・・終わる・・・」

 首元に刀を近づけ覚悟を決める。

 このままではウタの歌を聞いてウタワールドに閉じ込められた世界の七割近くが二度と治らない植物状態になり世界は秩序無き最悪の大海賊時代が始まる。止めようにもウタを捕まえるためにやって来た紫虎たちはウタを捕まえるための海牢石の拘束具で拘束され完全に使い物にならない。

 

「――――――行こう。クレド。ルフィ」

 ウタは目を瞑り閻魔で自分の首を切ろうとする。

 

 

 

 

「―――――止めなさいウタ」

「―――――――ッ!」

 誰かに腕を掴まれた。・・・・・いや違う。

 

「・・・・・・・・シャンクス?何で?」

 目を開けるとそこには自分のもう一人の父親。赤髪のシャンクスがそこに居た。

 

「――――――久しぶりに聞きに来たんだお前の歌を」

 最後の役者はこうして舞台に舞い降りた。




正直、いやいや、こんなに民度低くはないでしょうとか考えてまずチャルロスをクレドがルッチとか赤犬とかカイドウとか召喚してボコボコにしてからにしようとか考えたけどクレドに懸賞金をつけたくなかったのとドレスローザとか考えたら混乱しているこの状況でちょっと火種を炊きつければ燃え上がるだろうと思ってあんなのにしました。
差別とは安堵だ!!と海軍大将緑牛も言っていましたのでこんな参事をアラマキも見たんだろうなぁと思いやりました。
ここからは選手交代。ルフィから変わり感情ジェットコースターのウタちゃんのお相手をお父シャンがやってもらいます。十二年もほったらかしたんだ頑張れ。


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チャプター10 愛の裏返しは

待たせたね続きだよ!相変わらずですが話が進むと同時に筆の速度が遅くなるのが玉に傷。頭に浮かんでいるのに机に座ると途端に進まない。愚痴はここまでではどうぞ。


「―――――すみません、おでんさん」

 隻腕とは思わない怪力でウタの持つ閻魔を弾き飛ばす。飛んだ刀は持ち主のゾロのすぐそばに突き立つ。

 

「・・・・・」

 12年待った父親を見つめるウタ。アメジストの瞳にその顔が映り嘗ての記憶が蘇る。

 

 

 

「―――――ねぇ、お母さん」

「なぁに?」

 大海原を一望出来る丘を背景にウタとクレドは話していた。

 

「この海の向こうにはわたしが知らない沢山の光景や沢山の人がいるんだよね」

「そうだよ」

「お父さんはこの海がお母さんのステージだって言ったんだよね」

「そうだよルフィったら生意気な事言うんだよね」

「・・・・・でもお母さん嬉しそう」

「・・・・・そう?」

「・・・・・行ってみたいなぁ。見たことの無い物を沢山見てみたい!」

「・・・・・なら、お母さんがもっと頑張らないとね」

「・・・・・どうして?」

「シャンクスがね世界一の歌姫になったら迎えに来るって言ったんだ。まだ私の歌が広まっていないからやってこないんだよね」

「・・・・・・・・・・・」

「大丈夫だよ。シャンクスが来なくてもルフィが来るかもしれないよ。独り立ちして自分の海賊団を作ったんだから私の歌が届けば何時か来るんだよ」

「・・・・・来るんだよね。何時か」

「・・・・・・うん。そろそろ戻ろうかちょっと体が冷えちゃったし」

「・・・うん」

 

 

 

「は、はは、あっははははははははっ!とうとう!とうとう来たんだね!シャンクス!!」

 驚愕、歓喜、怒り。幾つもの複雑な感情で狂った笑い声をあげ涙を流して笑うウタ。

「・・・・・ウタ」

 狂ったような笑い方をする愛娘の姿を見て何とも言えない顔をするシャンクス。他の赤髪海賊団の古参メンバーも同じような表情をする。

 

「―――――もう直ぐ私はあの子とルフィと一緒に新時代に行ける。・・・・・だから!」

 手を掲げ指揮者のように麦わらの一味以外のウタワールドに連れて行った人を動かす。

「ここでアンタとの色々なものを全部終わらせる!!・・・・・皆ァァァァァァ!!一番悪い海賊が現れたよぉぉッ!!―――一緒に倒しちゃおう!!!」

 民衆が海軍が海賊が天竜人が一斉にシャンクス達に襲い掛かる。

 

「―――――」

 敵を吹き飛ばそうとハウリングガブは息を吸い込むが。

「止めろハウリングガブ・・・」

 部下を窘めシャンクスはウタへと近づく。

 

「・・・・・お頭」

 何をしたいのか察するヤソップ一児の父親同士やりたい事は大体わかる。

 殺到する民衆は一斉にシャンクスに襲い掛かる。

 

「・・・・・」

 ウタは見つめる。自分が操る民衆によって袋叩きにあうシャンクスを。

「―――――・・・―――――」

 平民が海賊が海軍が次々とシャンクスに殴りかかる。

「―――――!?・・・ふっ・・・」

 海兵の一撃が顎に綺麗に当たり頬の血を拭うシャンクス。

 

「・・・・・ねぇシャンクス。痛い?」

「・・・・・ああ、かなり痛いな」

 ウタは問いシャンクスは答える。

「・・・・・本当に?」

「本当だ」

 多勢に袋叩きにされているが民衆の一撃はウタに操られているため低いのか。それとも四皇であるシャンクスの防御力が高すぎるためかそこまで効いているようには見えない。

 

「・・・・・分かる?あの日置いてかれた気持ち。ずっと信じていた人に裏切られていた私の気持ちを!」

「・・・・・そうだな」

「・・・・・何であの日私も連れて行ってくれなかったの!?何で今まで来てくれなかったの!?私は待っていたんだよ!?」

「・・・・・それに関してはすまん」

 本音をぶつけながらゆっくりとシャンクスに近づくウタ。

「・・・・・ねぇ、シャンクス。コレなんだか分る?」

 ウタはバスケットから一本の棒状の物と小さな箱を取り出し棒を腰にさして小さな箱の中身をシャンクスに見せる。

「・・・・・それは?」

 箱の中身古く腐った生物のようなもの。シャンクスはおろかベックマンやホンゴウでさえ気づけない。

 

「・・・・・おい、ウタ。・・・それは・・・まさか・・・へその緒か?」

 ―――――ヤソップだけは謎の物体の正体に気づいた。

 

『―――――――――は?』

 ヤソップの言葉に赤髪海賊団は騒然とした。

「・・・・・へぇ、分かったんだ。流石は一児のお父さんだね」

 分かってくれたものが居たので若干ウタの表情が和らぐ。

 

「―――――う、ウタ・・・・・まっ、まさか」

「・・・・・ねぇ、シャンクス。私がエレジアを滅ぼしたあの日。置いてかれた子供って私だけだと思った?居たんだよ。・・・ここにね」

 ウタは自分のお腹に円を描いてポンポンと叩く。

 

「―――――ウタ。・・・お前・・・まさか・・・」

 シャンクスが絶句する。その言葉を聞いてエレジアに行く前ウタが何をやったのか全てを察する。

 

「・・・・・そうだよ。・・・私ね・・・ルフィと子作りしちゃってね・・・それでね・・・シャンクス達が行っちゃって暫く経った日に分かったんだ。―――――私の中に私とルフィの赤ちゃんが居るって」

 ウタは全てを告白した。

 

『――――――――――なぁッ!?』

 赤髪海賊団全員がその言葉に絶句した。

 

「・・・・・ねぇ、シャンクス。何で私を連れて行ってくれなかったの?・・・私はそっちが良かったよフーシャ村で全部教えられても皆が慰めてくれるでしょ」

 ウタはゆっくりとシャンクスに近づく。

「・・・・・それは」

 愛娘の告白にシャンクスの脳はまるでカイドウに殴られたかのような衝撃で揺れていた。それでウタの手にある刃物に気づかない。

 

「ウタそれは止めろ!」

 何をしようとしているか気づき止めようとするベックマンだが気付けば周りには邪魔はさせないと銃器を持った海兵がぞろぞろとおしおせる。

「くっ、殺すな!!武器を持たせるな!!」

 船長が動けないと判断して副船長として指示を出す。

「・・・・・くっ、文句を言うなよ。ウタ!」

 副船長の一声で赤髪海賊団は一斉に海兵たちの戦闘力を奪っていく。ベックマンもまた自分に銃を向けていたチャルロスの両手の甲を打ち抜き両手を一時的に封じる。

 

「・・・ねぇ、シャンクス。何でルフィに帽子渡したの?大事な麦わら帽子じゃなかったの?ルフィにはそれだけ期待していたの?私じゃあダメだったの?・・・ねぇ、シャンクス・・・私は・・・シャンクスの子供なんかじゃなかったの?要らない子だったの?・・・赤髪海賊団の音楽家なんかじゃなかったの?ねぇ、シャンクス。・・・シャンクス。シャンクスゥゥゥゥゥゥッッ!!」

「・・・・・ちっ、違う。俺は・・・!」

 シャンクスの正気が戻ったその時二人の距離は互いにあと一歩の距離だった。

 

「―――――シャンクスのバカァァァァァァァァァァッ!!!」

 ウタはシャンクスに飛び掛かった。

 

「―――――お頭ッ!!」

 赤髪海賊団の誰かの声がステージに響く。

 

「―――――」

 雨が降るエレジアの巨大な生き物の骨を元に作られたステージで赤髪のシャンクスは腹を短剣が突き立てられてもウタを抱きしめた。

 




『これは持論だけどね。愛ほど歪んだ呪いはないよ』—――呪術廻戦0巻五条悟


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チャプター11 例え世界が敵になっても

もう十一話ぐらいになりましたがまだまだ続きます。この話作るきっかけになったウタ妊娠の感想スレが続いていたら向こうのスレでどんな反応されていたのでしょうね。

追記3月25日に掲示板ネタを追加しました。


―――――12年前フーシャ村

 

「わハハハハハ・・・おお!ウタお帰り!・・・ん?ルフィとは今日は一緒じゃないのか?」

 和やかなマキノの酒場で楽しく部下と一緒に酒を飲んでいたシャンクスは遊びから帰って来たウタに話しかける。

「うん・・・今日は疲れたから寝ているね」

「そうか良い夢見ろよな」

「うん。おやすみ」

「ああ、おやすみウタ」

 優しく見守るシャンクスだが寝室に向かっていくウタの歩き方がおかしい事に気づいたシャンクス。

「・・・・・なぁ、ベック。ウタの歩き方って」

 女がらみに強い右腕に問うシャンクス。

「・・・・・あの歩き方は」

 寝室に向かっているウタの歩き方はある行為した後の女性特有の歩き方と一緒だったが。

「違うだろう多分どっかで裂けちゃったんだろう。良くある事だ」

 ホンゴウがそう言って割り込んでくる。

「・・・・・そうなのか?」

「・・・・・話は変わるがお頭・・・もし・・・もしもだ・・・ウタがここにずっと居たいと言ったらどうする?」

「・・・・・そろそろウタは俺たちのような奴と居てはいけない気がするんだ。もしウタが此処に居たいと言ったらしっかり話しつけて納得させてからフーシャ村に置いていく。ここはルフィやマキノが要るしあの拳骨がいるんだそこらの国の首都よりも安全だ」

「・・・・・そうなれば良いんだが」

 

 

 

 

――――――現在

 

 

 

「お頭ァッ!!」

「・・・・・大丈夫だ。急所は外した」

 仲間の声を聴いてシャンクスは無事を安全を伝える。

 

「・・・・・シャンクス」

 短剣を離して呆然とするウタ。

「・・・・・大丈夫だ。このぐらいの傷は慣れている」

 短剣を引き抜き隻腕なのに手慣れた手つきでホンゴウが渡した傷薬と包帯で傷を塞ぐ。

「・・・・・何でかわさないの?」

 ウタの感情が今度は悲しみの方に変わり涙目になっている。

「・・・・・・・・・・お前に何も言わないでエレジアに置いていったのもお前が苦しんでいるのに関わらないようにしたのも全部俺のせいだ。だからこのぐらいどうってことも無い」

「・・・・・でも」

「・・・・・それにな」

「・・・・・それに?」

 治療を終えシャンクスはウタに近づく。

 

「こんな事をしでかしたバカな娘をそれでも愛すさ」

雨の降るステージの中で隻腕でウタを抱き寄せる。12年ぶりのシャンクスの胸の中で泣きだすウタ。

 

「「「・・・・・」」」

 ベックマンを始めとした赤髪海賊団の者は二人をただ見守っていた。

「・・・・・シャンクスぅっ」

「・・・・・悪かった何も言わなくて」

「・・・・・ぐすっ・・・シャンクス」

「ちゃんと話さないとな」

「・・・・・うん」

 シャンクスはゆっくりと会話でウタの心をほぐそうとした――――――瞬間。

 

「―――――八尺瓊勾玉」

「―――――ッ!ウタ伏せろ!!」

「―――――へ!?」

 ウタとシャンクス達に光の雨が降り注ぐ。シャンクス達は武装色の覇気で全力で防御する。

 

「・・・・・何を考えている黄猿!!」

「決まっているでしょう。罪人たちを一掃しようとしただけだよ」

 シャンクスの怒りの籠った声に海軍大将黄猿ことボルサリーノは答える。

「・・・・・正気か俺たちは兎も角ウタまでウタが死ねばどれだけの関係ない人間が死ぬと思っている!?」

 覇王色で黄猿に威圧しながらシャンクスは問う。いくらウタのした事が罪深いとしてもそれに巻き込まれるのは自分やルフィのような者たちぐらいで良いはずだ。

 

「・・・・・だとしたら?」

『!?』

 その言葉に赤髪海賊団は唖然とした。

 

「ウタウタの実による世界転覆計画が始まったためにウタを逮捕するために先行した大将藤虎は四皇麦わらのルフィによって戦闘不能。わっし達後続の軍艦も赤髪が軒並みダメにしちゃったんじゃない」

 相も変わらずゆっくりと喋る黄猿だがその威圧感と異質のオーラは若い組員の恐怖を煽る。

 

「その上今なおウタウタが作り出すウタワールドに民衆は入り込んでいるよね~能力者であるウタはネズキノコで眠れない。海牢石で拘束しようにもわっしは能力者で周りには四皇赤髪のシャンクスとその部下がいる。これはもう海軍ではこれ以上ウタワールドに入られないようにウタを殺す以外にないでしょう」

「俺たちがネズキノコを「海賊の言葉をわっしら海軍が信じると?」・・・・・」

 

「―――――やっぱり私はダメだったんだ」

 ウタは涙を流しながら膝を付く。

「・・・・・ルフィからも皆からも否定されて結局私は世間知らずのバカだったんだ」

 12年の心の支えを夢の為に大切な人たちに否定されウタの心はもうボロボロだ。

 

「―――――違う。お前は悪くない」

 絶望するウタに対してシャンクスは言い放つ。

「・・・・・シャンクス」

「俺が・・・俺たちがいけないんだ。ウタウタの実の危険性を知らずにエレジアに連れて来た事も。お前を置いていってからお前の為に何もしない。しようともしなかった俺たちがな」

「――――――っ」

「ウタは俺の、俺たちの赤髪海賊団の家族だ。それを奪うというなら―――――来い。全力で相手をしてやる!!」

 愛刀グリフォンに覇王色の覇気を纏わせて黄猿に突き付ける。

 

「―――――――はぁ、わっしら踏んだり蹴ったりだよ」

 黄猿は大量のレーザーを赤髪海賊団に放つが相手は四皇とその最高幹部。海軍大将は20億クラスの強さを持つがそもそも相手は10億クラスの化け物揃い。防戦だけならどうとでもいける。

 

「ちゃんと解決してくれよ~」

「当たり前だ!」

 それでも相手は懸賞金40億四皇赤髪のシャンクスだ。瞬く間に距離を詰めるシャンクスの連撃に黄猿は対応しきれず意識を刈り取られる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――そのためウタがトットムジカを歌った時が両方の世界につながりが出来て勝機が出るわ」

「・・・・・そうか」

「――――――それで上手くいったの海兵さん?」

 一方その頃麦わらの一味はローたちやコビー達と合流し互いの情報を交換していた。

「・・・・・それがクレドさんはウタさんにウタワールドを止めるように説得したようですが観客の皆さんはクレドさんをルフィさんの子供と言う事だけで罵倒を浴びせ攻撃してきました」

「・・・・・おい何だそれ!?クレドちゃんは無事なのか?」

「・・・・・残念ながら流れ弾が一つ当たってしまって危うくウタさんが恐ろしい気配を漂わせて恐らくトットムジカを歌おうとしていたのかも知れません。クレドさんが助けを求めたから止めましたが」

『・・・・・』

 その結果に全員が頭を抱えてしまった。もしその場に一味が居たら間違いなくステージで暴れていただろうと思うとある意味では良かったのかもしれないと思う心がコビーの中にあった。

 

「・・・・・そう言えば麦わらはどうした?」

 この中で一番切れてそうなルフィの声が聞こえないのに疑問を持ちブルーノはローに尋ねる。

「麦わら屋はバリアに閉じ込めて・・・・・・おい」

 バリアのあった場所を見ると。バリアの中にはルフィはいなかった。

 

「また抜けられたべ~~!」

「またクレドか!?」

「大丈夫なのか!?」

「ああっ、早くウタやクレドを探さないと」

 

 

 

「――――――痛てぇ!またこれかよ」

 ユメユメの実で何処かにワープされまた頭を撃っている。

 

「・・・ぐすっ・・・お父さん・・・」

「・・・・・ん?クレドどうした?」

 自分を呼ぶ声に振り向いたがルフィはクレドが両手で隠して泣いているように見える事に疑問に思った。

 

「・・・ぐすっ・・・ねぇ・・・お父さん・・・・・わたし・・・生まれてきてよかったの?」

 手を下ろし大粒の涙をせき止めるものが無くなり涙は重力に従い地面を濡らす。

 

「――――――――は?」

 その言葉にルフィの思考は一瞬止まった。




黄猿ホントマジでごめんなさいポジション考えるとこうなっちゃうんだ本当にごめんなさいいやマジで。本誌で黄猿頑張ってほしいですよね。次回も頑張って執筆していきたいと思います。


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チャプター12 過ちに向き合う前に

お久しぶりです。随分と遅いなと思われるので申し訳ございません。どんどん筆が進まない本当に申し訳ございません。OTZもう一つの作品もそろそろ次を出したいなぁ。
では続きをどうぞ。


「―――――何が、何があったんだクレド?」

 その言葉に唖然するルフィ。まるで、まるで今は亡き義兄のエースのような雰囲気を出しているクレドにルフィは気が気でなかった。

 

「・・・ぐすっ、・・・お母さんが死んじゃうって聞いてお母さんを止めようとしたら・・・ぐすっ、・・・周りの人たちが物を投げてきてわたしに向かってお父さんの子だから死ねって・・・お母さんの子なんかじゃないって・・・」

「―――――何だよそりゃ、クレドは何も悪くないじゃないか」

 ルフィとて海軍の祖父の元で暮らしていたからこそ海賊になることの意味は知っていた。

 だからこそその最後がどのようなものになろうと世界政府の旗を打ち抜いたのも天竜人チャルロスを殴ったのも大監獄インペルダウンに挑んだのも四皇ビッグマムに宣戦布告をしたのも全て後悔や悔いこそあれそれがその上で自由を求めて夢の果てを叶えるために海賊になった自分の行動の責任なのだ。

 だからこそ父親を知らずに12年も暮らしていた子にお前の親が悪いなどルフィからすれば逆鱗でDJするような行為だ。

 

「泣くなクレド、お前は悪ねぇ、生まれてきて良いんだ」

普段のルフィならブチ切れて真っ先に怒声を上げるだろうがその相手が目の前にはおらず目の前には泣いている自分と幼馴染が過ちで生まれた子供だけなので怒りよりも慰める方が先だと冷静に動けた。

 

「・・・ぐすっ・・・ホント?」

「当たり前だ!お前は悪くねぇよ。・・・悪いのは俺とウタなんだ。俺が父ちゃんが悪いんだ」

 抱きしめ背中をさすってあげる。そうして慰めていくとクレドの涙をすする音が減っていく。

 

「―――――なぁ、クレド。この海には辛れぇ事がいっぱいある。俺だって今までの旅でも何度も死ぬような目にあっているんだ。仲間を何度も失いかけたし。一回全滅しかけた事もあったし。義兄ちゃんを目の前で死なせたこともあったんだ。」

「――――――」

「―――――けどよぉ、失っても悲しむだけじゃなくて今あるものを大事にして生きるんだ。生きていたらクレドが生きて良かったって思えることはいっぱい出会えるんだ」

「・・・本当?・・・お父さん。わたし、生きて良いんだよね」

「当たり前だ!クレドが自分の自由に生きて良いんだ―――生きて良いんだ。夢を追いかけても良いんだ!」

「わたしは夢を追いかけて良いんだよね。・・・自由に歌と仲間を求めても良いんだよね」

「言っただろう。当たり前だ!なんなら今から俺の仲間に会いに行こうぜ。あいつらを知ったらそんな気持ちは吹っ飛ぶぜ!そしたらウタと仲直りして皆で宴をするぞ!」

 ルフィはクレドに手を差し出す。

「―――――うん!」

 その手をクレドは握った。

 

 

 

「―――――おおぉい!!お前らァ!!いきなり居なくなって悪かったな!!」

 ユメユメの実の能力を使って二人は一味達の元に戻ってきた。

 

「ルフィ!?クレドちゃんも無事なのよね」

 話を聞きクレドを心配していたナミはそれを問う。

「―――――まぁ、大丈夫だと思う」

「そう、なら良かった」

「・・・・・そのよぉ、お前らクレドとあいさつしてないだろう。クレドにもお前らを知ってほしいからさ」

 ぽりぽりと頭をかきながらルフィはバツの悪そうな顔で周りに言う。

 

「―――ふっ、まぁ、そうだな。俺はロロノア・ゾロ。三刀流で夢は天国にまで名を轟かせる世界一の大剣豪になる男だ」

 最初にゾロがクレドに挨拶をする。

「・・・・・片目大丈夫?」

「大丈夫だ。ちゃんと生活出来るぞ」

(―――――道は迷子になるけどな)

 一味は心の中で思った。

 

「私は航海士のナミよ、夢は自分の手で世界地図を作る事よ。サニー号にはミカンの木があるけど私のだから欲しかったらちゃんと言えばあげるわ」

 続けてナミがクレドと同じ目線になって言う。

「美味しいみかん?」

「美味しいわよ。つまみ食いは流石に怒るけどね」

 

「次は俺だな。俺は狙撃手のウソップ!夢は偉大なる海の戦士になることだ!」

「ふっ、ウソップめ」

 自分よりも早く自己紹介をしたウソップにサンジは苦笑する。

「・・・・・お父さんその・・・四皇ってすごい海賊らしいけどおじさんは偉大な海の戦士じゃないの?」

「―――いや、いやいやいやいや、俺なんてルフィ達みたいなとんでもねぇ奴らとは程遠いんだよ」

 そうクレドの疑問にウソップは否定するが。

(ふふっ、普段は良くホラを吹いたり弱腰だけど私たちを何度も助けてくれた立派な海の戦士よ)

(そうなんだ!)

「おいロビン!ルフィの子供に何を言ったんだよ!?」

「ふふっ、何でもないわよ」

 こっそりロビンがウソップの言葉を否定する。

 

「初めましてお嬢さん。俺は黒足のサンジ。夢は全ての海の魚がいるオールブルーを見つける事だ。役職はコックだ。クレドちゃんが食べたいものがあるなら材料があれば何でも作って見せましょう。どうぞ好物を言ってくれ」

 そうサンジが挨拶をする。

「わたし、クリームたっぷりのパンケーキが食べたい。お母さんも大好きなんだ」

「勿論、このライブを終わったら美味いパンケーキを作って見せましょう」

「おい、クレド、そこのエロコック必要以上に懐く必要は無いぞそいつは美人なら誰でも惚れる情けない奴だ」

「何だとクソマリモ!!」

「ああ”!やるかグル眉!」

「・・・・・お父さんこの二人何か戦おうとしているけど」

「ああ、アイツらいつもこんな感じだ。じゃれあっているだけだよ」

「えぇ・・・」

 クレドは呆れた。

 

「次は俺だ!俺はトニー・トニー・チョッパー!役職は医者で夢はどんな病も治せる万能薬になることだ!見た目は変わっているけど俺はヒトヒトの実を食べたトナカイなんだ。狸じゃないぞ!」

 チョッパーが挨拶をする。

「えっと・・・苦い薬は嫌だなぁ」

「しょうがないぞ出来るだけ苦い薬に頼らないようにしないとな。あと変なキノコは食べちゃダメだぞ。毒キノコだったら大変だからな!!」

「・・・・・うん、お母さんを止めよう」

「――――――そう、だな」

 ひずめの手でチョッパーはクレドに握手する。

 

「改めてこんにちわクレドちゃん。私はニコ・ロビン。考古学者で古代文字なら何でも読めるわ。あなたが歴史を学びたいなら教えてあげるわ」

 続けてロビンが手を差し出す。

「お勉強は嫌だなぁ。でも遺跡とかを冒険してそれを曲の参考にはしたいなぁ」

「あははは、そう言う所ルフィそっくりね」

 

「次は俺で良いか?俺はカティ・フラム。周りからはフランキーって呼ばれているからフランキーで良いぜ。船大工で夢は宝樹アダムで作った夢の船を作る事で今ルフィ達が乗っている船サウザンドサニー号がその夢の船でルフィ達が世界一周するのを見送るのが今の夢だ。よろしくなお嬢ちゃん」

 巨大な手を差し出してフランキーは握手を求める。

「・・・サニー号作ったのがおじさん?」

「アウ!そのとうりだぜ」

「じゃあ、わたしが大きくなったらわたしの船を作ってくれる?」

「あはははっ!そりゃデカい仕事だな!頑張って金用意しないとなルフィ!」

「用意するの俺かよ!!」

「おやじならその位用意しないとな」

「ルフィは海賊王になる男よそれぐらい簡単よ」

「おっ、お前らぁ~~~!」

『アハハハハハハハハ』

 笑いが周りを包む。

 

「ヨホホホ、次は私で良いですかね?・・・どうもクレドさん。私はブルック、札付きでございます。以前別の海賊団の船長代理で元の海賊団のルンバー海賊団が壊滅してから随分と一人で航海していましたが偶然出会ったルフィさんに誘われてルフィさんの船に音楽家兼剣士としてきました。どうぞよろしく」

 ブルックが骨の手で握手を求める。

「・・・骨・・・だよね・・・」

「ヨホホホ、私ヨミヨミの実の復活人間でございまして復活するのに元の肉体を探していたらこのようになってしまいましたが私は元気ですよ。死んでますがヨホホホ~」

「音楽家なんだよね何か名前とかあるの?」

「私ちょっと前までソウルキングと言う名で活躍しておりましたよ」

「え!お母さんと聞いたことあるよソウルキングの曲!!後で一緒に演奏しよ!!」

「ヨホホホ終わった後の楽しみが増えて良かったですねクレドさん・・・所でぱn「ブルック?」ヨホホホナミさんそんなに怒らないでください・・・」

 ―――――台無しである。

 

「最後はわしじゃのう。初めましてクレド。わしはジンベイ、付き合いは二年ぐらいあるがルフィの仲間になったのは最近なのでのぉいわゆる新入りだ。役職は総舵手じゃよろしくクレド」

 巨大な手を伸ばして挨拶をするジンベイ。

「・・・・・お魚さん」

「魚人は初めてかのぉ、魚人や人魚にも色々といるが人間と同じように良い者も悪い者もいる。出来れば偏見を持たずに仲良くしてくれるかのぉ」

「・・・・・お腹触っても良い?」

「くっ・・・ワハハハハッ!・・・よりにもよって・・・元七武海のわしに・・・ルフィ!!ホント物怖じしない性格お前さんそっくりじゃのぉ!」

「シシシかもな!」

 ルフィとジンベイは笑いながら新しい仲間を知っている最中。

 

「あっ、おれハートの海賊団の航海士のベポって言います。シロクマのミンク族ですよろしく」

「おいベポ」

 ちょうど良いやと割り込んできたベポに窘めたローだが・・・

「・・・・・おいトラ男俺の娘に挨拶しろよ」

「そうだな。航海士が挨拶したなら船長であるお前が挨拶しないといけないんじゃないかトラ男?」

「おい麦わら屋、ゾロ屋まで・・・」

 じりじりと追い詰められたローは渋々クレドの目線に合わせる。

「ハートの海賊団船長トラファルガー・ローだ。お前の親には一時期振り回された。関係は以上だ」

 素っ気ない言葉で逃げようとするが。

「他にも言えよぉー」

「キャプテン!根暗みたいに思われますよ!!」

「別に良いだろうが!!」

「・・・・・あの次は僕が」

 こっそりコビーも混ざろうとしたが。

「おまえはいらない」

「―――――――――――――」

「・・・その・・・何だ。元気出せ海兵」

「わりぃコビー」

「すみませんルフィさん・・・・・・」

 好感度が下がり切っている状態だからかクレドは嫌がった。コビーは愕然とした。人の心を読む見分色の覇気を得意とするコビーだからこそ気持ちも分かっていてもルフィの子供にそう言われた事実に落ち込んだ。ヘルメッポとルフィはコビーを慰めたブルーノは後ろを向いているが小刻みに震えていた。

 

「―――――んじゃ、ちょっくらい行ってくる」

 ルフィはクレドの手を繋ぎ歩き出そうとする。

 

「ルフィさん何処へ行こうとするんですか!?」

 コビーはルフィに問う。

「ウタの元に行く」

「正気か麦わら屋。ウタはネズキノコの毒で正気を正常な判断が出来ないかもしれないぞ」

 ルフィの言葉にローは正気を疑う。

「・・・・・でもさ。いける気がするんだ」

 その目には光が宿っており何時ものように奇跡のような大逆転をするような目をしていた。

「どの道だな。・・・おいルフィちゃんと決めろよ」

 ルフィの決意を理解してゾロはルフィの背中を押す。

「同感だなウタちゃんを一人にするなよ」

 ゾロの言葉に同意するようにサンジも背中を押す。

「シシシ、分かってるよ。んじゃ行ってくる!!」

 ユメユメの実の力でルフィとクレドはウタの元へワープする。




ウタとクレドの物語はあと1,2回で終わります。ゴールデンウイークで何とかしたいなぁ・・・・・


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チャプター13 外への第一歩

お久しぶりです遅いぞなのは申し訳ありません。仕事が忙しくて書く余裕が少なく短いのにこんなに遅くなりました。
色々と言いたいけどそこそこと言う事で見ていってください。


「―――――あれクレド、ルフィの所にいたんだ。そうか・・・そうなんだ・・・」

 ワープしたルフィ達を見てウタは言う。

 

「―――――シャンクス来たのか?」

「あれ?分かったの?」

 現実世界でウタがシャンクスと会話をしているのをルフィに気づかれウタは驚愕する。

「シシシ、さっきまで随分と泣いていたようだしよ」

「へ?・・・ちょっっと・・・嘘・・・ぁぁぁぁぁっ!!」

 鏡を作って自分の顔に涙の痕が残っているのに気づいて絶叫するウタ。

「最悪ルフィなんかにこんな恥ずかしい所を見せるなんて!」

「シシシ、当たり前だ。何だってお前に184連勝しているんだぞ!!」

 顔を赤らめ頬を膨らませて怒りを露わにするウタ。

「出た負け惜しみ!!・・・・・」

「・・・・・」

 出会えば互いに負けず嫌いの面が顔に出す。だが、それも直ぐに終わる。

 

「――――――で、クレドを連れて何しに来たのルフィ?」

 アメジストのような紫の瞳は真っすぐにルフィを映す。

「決まってんだろ。ウタワールドを閉じろよウタ」

「閉じたらルフィはどうするの。海賊を辞めてくれるの?」

 再開して直ぐの海賊辞めなよの言葉を思い出しウタはルフィに問う。

「止めねぇ」

 ウタの言葉をルフィは切り伏せる。

「・・・・・アンタも海に出るの!シャンクスのように私とクレドを置き去りにして!!」

 ルフィの言葉にトラウマを刺激させられ思わず声を上げるウタ。

「置き去りになんかしねぇ!!お前も!クレドも!お前らを連れて俺は海に出る!!」

 そんな事はしないと反論するルフィ。

「なによ、そんなに何がアンタを突き動かすのルフィ!!」

「海賊王になるためだ」

「海賊王なんかになって何がしたいのよ!!」

「―――――新時代を作るためにだ!!」

「―――――なにそれ」

 その言葉にウタは唖然とする。

「そう言えば聞いていなかったよね。・・・ねぇ、ルフィアンタはどんな新世界を作りたいの。―――――アンタの夢の果てなに?」

 そう問うウタ。

「―――――ああ、そう言えば結局ウタには言えなかったな。よく聞けよウタ」

 心の何処かでその言葉をルフィ待っていたのだろうルフィは一息ついて口を開く。

「俺の夢の果ては――――――」

 少年は言祝ぐ。少女に言えなかった少女に言われて考え決めた己の夢、海賊王になった後のその果てを。

「―――――――――」

 その言葉にすぐそばにいたクレドは何も言えなかった。父の夢、その大きさに、その余りにも無垢な夢の果て。

 

「くっ、あっハハハハハハハハ!!・・・何よ・・・なによその子供の・・・ような・・・夢・・・」

 対する(ウタ)は笑い転げていた。ネズキノコも合わさりその笑い声は大きく響いた。

「えっ、ええ・・・お、お母さん?」

 困惑するクレドだがそこは気にする必要は無い。同じ夢を持った海賊王も白髭にその夢を言った時にガキの夢かと呆れられたのだから。

 

「・・・ぐす、・・・でも、アンタらしい・・・ゲホッゲホッ・・・でもいい・・・夢だよ」

 笑い過ぎて涙目になりながらもその夢を肯定するウタ。それを見てルフィも笑う。

 

「それによぉ、クレドの声もちゃんと聴いてやれよ」

 ルフィはクレドを前に出してあげる。

 

「―――――お母さん」

「何?」

「わたしねお母さんがどんな悩みを抱えているのかは分からないけどわたしはお母さんに死んでほしくない」

「・・・・・そうだよね」

「わたし、もっとお母さんと歌いたい色々なものを見てわたしの音楽に色々なものを入れられるようにしたい」

「・・・・・」

「お母さん生きよう。わたしとお父さんと一緒に大海原に昔お母さんが言った三人で暮らす夢今叶えようよ!自由に、楽しい音楽をお母さんと作りたい!!」

 12年、ウタの独りぼっちにさせなかった愛娘の一途な叫び。

 

「―――――うん、うん・・・そうだね」

 それを何度か頷き咀嚼するようにその言葉を受け止めたウタは。

 

「♪~~~~」

「「―――――ウタ?」」

 現実世界とウタワールドの二つの世界で歌いだしたウタにシャンクスとルフィは思わず同じタイミングは首を傾げた。

 

 歌声はウタワールドの天井に門のようなものが現れた。

 

「なっ、なんだ!?かっ、・・・体が!!」

 門に引き寄せられるような感覚が人々を襲い門へと誘われる。

 

「これって」

「ルフィがやったんだろう」

「だろうな」

「流石だぜルフィ!!」

 一味は上手く説得できたんだと思いそれを受け入れる。

 

 

 

 

「・・・・・お、終わったのか。クレドとウタは?」

 ウタワールドから現実に戻ることが出来たゴードンもまた二人を探そうとする。

「―――――あれ、お母さん」

「―――――ああ、クレド。起きたのか」

 目を覚めたクレドは自分とウタの部屋におり探しに来たゴードンと遭遇する。

「ゴードンおじいちゃん、お母さんは?」

「ウタは・・・・・」

 母親が何処にいるのかを訪ねるクレドに一瞬ゴードンは躊躇する。何処にいるのか察していたが不用意に場所を喋ってクレドにもしもが起こったらと恐れたのだ。

 

「――――――」

「待つんだクレド!!」

 しかし、ゴードンの心配をよそにクレドは外へと走り出す。

 

 

 

 

「―――――ここは?」

 一方ルフィは何処までも懐かしいフーシャ村のマキノの酒場に転移されていた。

 

「―――――ようこそルフィ」

 優しい顔をしたウタがカウンターにいた。




改めて言いますがREDの設定は色々とあるのでここではこうと言う事にしていただけると幸いです。
次回はもうちょっと長くする予定早く書き終えたいなぁ余裕も出たし。
ではでは~~


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チャプター14 闇を照らせ太陽よ

今回でウタとクレドの親子の物語は一旦終わります。そのため普段なら切ってばらしていって投稿していくでしょうが今回はかなり分厚いですが一話を一万以上書いている人に比べたら軽いでしょうと思うので気楽に読んでいってください。


「ここは?」

 思わず疑問を浮かべるルフィ。

「あれ?マキノの酒場ってこんな場所じゃなかった?もしかして十年で変わっちゃった?」

 思った方向の反応をしてくれないから説明するウタ。

「いや、そうじゃねぇけどよ。良いのかよ色々と」

 クレドの事ネズキノコで命を削っている事を気にするルフィにウタは返す。

「・・・・・色々と言いたいの二人っきりで」

「・・・・・・そうかよ」

 確かに疑問はあった。12年前なぜシャンクスがウタを置いて行ったのか。何故あんなに勝気のウタがこんな毒キノコで集団自殺をしようとしているのか。すべてではないだろうが吐き出したいなら受け止めたいと思ったルフィであった。

 

「あ、何か飲みたいものある?お酒には詳しくないけど少しは分かるよ」

「酒は好きじゃねぇからジュースにしてくれ」

「分かった」

 飲み物を用意しながらウタは映像電電虫をテーブルの上に置き酒場には似合わないソファーを用意して座る。

 

「おいでよルフィ」

「おう」

 ウタに促されルフィも隣に座る。ルフィが座ると同時に電電虫が映像を映す。

 

「・・・・・これは何時の記憶だ?」

「・・・一年前かな大体そのぐらい」

 映像には恐らくウタが20歳ぐらいクレドが11歳ぐらいだろうか二人で海辺で遊んでいる光景だ。

 

「楽しそうだな」

 遊ぶ二人の姿はとても明るく見ている者たちの心を喜ばせるだろう。

「うん、あの頃は配信も調子が良くてみんなも笑顔だったから私も気持ち良かったよ。クレドは私がみんなのせいでルフィを嫌っちゃうんじゃないかって嫌がっていたけどね」

「・・・・・そうかよ」

 再開して自分が海賊になったと言った時ウタは海賊を辞めろと言った。その時のルフィの心情は大きく揺れた。

 海賊の楽しさを海賊と言う自由の道を教えてくれたウタが何でそんな事を言うんだと。だがその後ゴードンから聞かされた父シャンクスの手痛い裏切りに12年の孤独の子育て生活はウタであっても辛いのだろう。そんな環境で電電虫を通して伝えられる映像と当事者たちの嘆きの声で出来上がった救世主UTAを作り上げてしまうこと理解は出来た。そして同じように誰かの一方的な言葉だけで変えられていくウタをクレドは母親がどこか遠くへ行ってしまわないか怖くて仕方が無いのだろうと言う事も。

 

『お母さん!!ちょっとあっち行ってくる!!』

 クレドが城の方に戻っていく。

「今思うとホント良かった。アレをクレドに見られたら私は死のうとしてもおかしくなかった」

「アレ?」

「・・・・・直ぐに分かるよ」

 

『・・・・・あれ?何あれ』

 映像には海岸を歩いているウタの姿が映っている。

『映像電電虫?また流れて来たんだ。あの子とは違うなぁ・・・』

 流れ着いた今までウタが使っていたSSGの特殊電電虫ではなく一般に流通している通常種の映像などが記録出来る映像電電虫を弄っているウタ。

 

「ルフィ、私を・・・嫌わないで・・・お願い」

「何でお前を嫌わないといけないんだよ」

 どんどんと顔が暗くなるウタにルフィは更に異常を感じた。その疑問をウタが答える間もなくその音がルフィの耳に届く。

 

《この映像を見ている者に告げる!!・・・あのウタと言う少女は・・・・危険だ!!・・・彼女の歌は・・・・世界を滅ぼす!!!》

 

「―――――――何言ってるんだこいつ」

 その言葉にルフィに驚愕と困惑をもたらした。

 

 

 

「はぁ、はぁ・・・はぁはぁ・・・こ、ここだよねステージ」

 一方ウタワールドから追い出されたクレドはウタに再び会うために彼女がいるエレジア野外ステージに駆けだしていた。

「お母さん」

 再び歩き出そうとするクレド・・・しかし。

 

――――――UTAに近づくな海賊のガキが!!

 

「あ、・・・ぁぁっ・・・」

 足が固まる。溶けた蝋のようにクレドの足は地面から離れられなくなった。

 

「・・・・・怖い・・・怖いよぉ・・・お母さんっ」

 暴言、暴力。先ほどの恐怖がクレドの足を縫い付ける。心も体もまだまだ成長途中誰かが支えて上げなければこれ以上前に進むことも出来ない。

 

「・・・・・お母さん・・・お母さん!!」

 ただただその場で泣き続けるクレド。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁんんっ!!・・・お母さん!!・・・・お母さん!!!」

 泣き続けるクレド彼女以外誰も居ないその場所に。

 

 

 

 

―――――やれやれ、ルフィに似て泣き虫な奴だ。

「・・・・・え?」

 誰かの声が消える気がした。

「だれ?誰なの?」

 その言葉に答える者はいない。

 

――――――ホラ行きな、お袋の元に行きたいんだろう?心配するな、大丈夫だ。ルフィの仲間がお前を守ってくれる。

 クレドの背中は誰かの温かい手で押されたような気がした。

 

「―――――ほのお?」

 その声にクレドはメラメラと燃える炎のような温かさを感じた。

 

「・・・・・行ってきます」

―――――おう、風邪ひくなよ。

 その声に勇気付けられクレドはウタのいるステージに向かって再び歩み出した。

 

 

 

 

「―――――そう、これが真実。12年前エレジアで起こった惨劇その全貌」

 一方ルフィとウタはウタの記憶を見ていた。

 映像には巨大なピエロのような化け物。エレジアに住まう古き魔王トットムジカがエレジアを滅ぼす姿が映されていた。

《俺達の娘を返せこの化け物がァ!!!》

 エレジアを蹂躙するトットムジカに若き日の隻腕ではないシャンクスが赤髪海賊団が挑みかかる。

 されどその魔王は不条理の不死身、条件を満たさない赤髪海賊団の攻撃は届かない。

 覇気を纏った剛剣も銃弾も魔王には届かない。当時10億の懸賞金を持つシャンクスでさえもかの魔王には叶わないのだった。

 

「なんだよコイツは」

「トットムジカ、このエレジアの地下に封じられている楽譜のおばけ。私のウタウタの実で呼ばれる恐ろしい魔王」

「何でこいつが現れたんだよ」

 ルフィの一言に元々暗かったウタの表情は更に暗くなった。

「・・・・・・・・・私が悪いんだよ」

「ウタ?」

「・・・・・・・私が・・・呼んだんだよ・・・この化け物を―――私が!殺したんだ!!」

「おい、ウタ落ち着け!!聞いてやるから説明してくれ!」

 感情的になるウタをルフィは必死に慰める。泣きながらウタは当時の事を離し始める。

 

「12年前、エレジアに着いた私たちはエレジアの皆に歓迎された。私はエレジアの音楽を存分に楽しんだしそこに居たいって思っていたよ。・・・でもね」

――――ウタさえよかったらエレジアで歌手になるために居たらどうだ?

「シャンクスにエレジアに留まるかって聞かれて私はシャンクスと居たいって言ったんだ。・・・その直ぐだったこの楽譜が目に留まった」

 ウタはトットムジカの楽譜をルフィに見せる。

 

「あの日の夜ゴードンは私にエレジアの音楽を沢山覚えていってほしいって沢山の歌を歌わせてくれてその歌を国中に響かせてくれたんだ。そのせいなのか魔王だからなのかな私の歌に釣られて何処からかトットムジカの楽譜は私の前に現れた。その楽譜に惹かれて私は歌っちゃった。その結果がこれ」

 燃える国、死にゆく人々。そのエレジアの光景はまさに地獄絵図。

 

―――――これこそが12年前のエレジア壊滅の全容。魔王を顕現させる力を持っていただけの無辜の少女を利用した卑劣な魔王の虐殺劇。

 

「こんなひどい事をしたのに私は十年以上も私の罪を隠してかばったシャンクスを赤髪海賊団を恨み続けたんだ!!」

 涙を流しながらウタはルフィに思いをぶつける。

 

「全て知った時は何もかも嫌になった!!こんな事をしたのに皆は私を辛い現実から救ってくれる救世主だって言っていて何も言えないんだよ。もう、もう私は私の歌は人を幸せになんか出来ないのに!!」

「―――――だからこの事件を起こしたのか?」

「・・・・・そうだよ、前からずっと私の歌だけ聞いていられる世界に居たいって声は多かったからそのために寝ずに死ねる方法を探してエレジアの図書館でネズキノコを知って皆をウタワールドに連れて行ってネズキノコで死んでそれをウタワールドを永遠にする計画を立てた。ルフィも連れていきたいから沢山の島に新聞を配ることが出来るっていうモルガンズに招待状を渡したんだよ」

「・・・・・ああ、そうだな」

 

 ルフィがここに来るきっかけ。和の国に届けられた招待状。

「・・・・・ん?何だよこれ?」

「これってプリンセスウタのライブ招待状じゃねぇか!!」

「んぁ?ウソップ誰だよそれ」

「世界的人気な歌姫だよ。やべぇぞこれ行きてぇ!!なぁ、ナミに頼んで行こうぜエレジア」

「別にどうでも・・・・・ん?」

「どうしたんだよそれウタのマークだぞ」

「・・・・・なぁ、ナミ此処にい来たんだけどよ」

「おっ、ルフィの奴なんか妙に乗り気だ」

「どうしたんだろうなぁルフィ?」

「知らねぇよ。楽しみだよなぁチョッパー!」

「おう、ウタのライブ楽しみだよな!!」

 

「―――――あのマークちゃんと使ってくれたんだな」

「うん、・・・大事なものだかね」

 ウタの歌姫としてのシンボルマーク。それは幼いルフィが書いた下手糞なシャンクスの麦わら帽子。

 

「―――――なぁ、ウタ」

「何?」

 ルフィはウタからトットムジカの楽譜を奪い取る。

「ちょっと・・・何を!?」

「―――――ゴムゴムの火拳銃!!」

 ルフィはトットムジカの楽譜をゴムゴムの火拳銃で消し飛ばしてしまう。

「何をしているのウタワールドの楽譜何て幾らでも・・・・・」

「―――――なぁ、ウタ」

 ルフィはウタを抱き寄せる。

「へ!?ちょっとルフィなによ!?」

 突然の展開に困惑するウタ。

 

「・・・俺さ、あの映像見てもお前の辛さは全部理解する事が出来ねぇんだ」

「・・・・・うん、分かっている」

「けどよ、俺はウタと一緒にいてぇ」

「ッ・・・でも・・・私・・・沢山の人を・・・」

「しししし、もう俺は30億の大海賊だぞ」

「それは・・・」

「―――――ウタ」

「へっ!?」

「お前が死にてぇって思っても逃げ出してぇって思っても良いんだ。お前の気持ちも言葉も俺のそばで言え全部受け止めてやるからさ」

「ルフィ・・・」

 優しい声で囁かれて頬を赤らめるウタ。

「俺のそばに居てくれ。お前がどんなに逃げたくても、どんなに苦しくても俺はお前の味方でいたい」

「・・・・・」

「・・・俺じゃあダメか?」

「・・・・・良いの?」

「当たり前だ」

 ウタは見る手配書でしか見れなかった幼馴染の顔、まだまだ若く子供っぽいがその目は見果てぬ未来に思いをはせる海の男の目をしていた。

 

 

 

 

「眠っている奴らが起きてゆく」

 一方現実世界では赤髪海賊団がウタを囲んでウタワールドから解放されていく人たちを見守っていた。

 

――――こ、ここは?

――――あれは赤髪海賊団!?何で!?

――――おい、麦わらの一味もいるぞ!?

――――ふわぁ~~良く寝た・・・エッ!?――――――

――――ていうかUTAが海賊たちに囲まれている!?

 

「ウタお前」

 シャンクスがウタに問う。

「・・・・・もう、げほっ・・・い、良いの・・・もう、皆は私の新時代は要らないようだから」

「・・・・・・・・・」

 何も言えないシャンクス。新時代を次代に渡すために。その運命の運び屋として時には調停者として戦ってきた男の苦悶にも見える顔を娘に見せないようにボロボロのウタの背中を支えてあげる。

 

「ウタ。これを飲むんだ解毒剤だ」

 ホンゴウがネズキノコの解毒剤をウタに渡す。

「・・・・・」

「ウタ!早くするんだ!!」

 既にウタの体にはネズキノコの毒で満たされて何時毒で死なないかで心配する赤髪海賊団の面々。

 

「ここは・・・現実世界か」

 ウタを心配する赤髪海賊団を尻目に麦わらの一味が次々と目を覚ます。

「ああああぁぁぁっ!!親父ぃ!!」

「げぇ!?う、ウソップ!!?」

 予想外の再開に仰天してしまうヤソップ親子。

 

「ウソップ悪いが親子喧嘩は後だ。ルフィが起きねぇ」

 誰もがウタワールドから解放されているのにルフィだけは未だに眠っていた。

 

「・・・・・ウタお前まさか」

 まさかルフィと心中するつもりかと嫌な予感をするシャンクス慌てて未来視の見分色の覇気を使おうとするが。

「・・・・・それは違う、クレドを置いてけないよ」

 解毒剤の蓋を開けるウタ。

 

「―――――くっ、まだ痛い。状況は?」

「・・・・・どうやら」

「もうじき終わるようだね~」

 モモンガ、藤虎、黄猿。ルフィやシャンクスに倒された海軍もまた意識を取りもどし始めていた。

 

「お母さん!!」

「・・・クレ・・・ド・・・」

 会場にやって来たクレドにウタが反応する。

 

「あの子がお頭のお孫さんですか」

「・・・ああ、血のつながらない俺の孫なんだろうな」

 幼いウタに似た子供。赤髪海賊団の孫とも言うべき少女クレド。その姿をその目に焼き付けるシャンクス達。

 

「だい・・じょう・・・ぶ・・・お母さん、ちょっと・・・疲れたから・・・お昼寝・・・するね」

「本当!?嘘じゃないよね!ちゃんと起きるよね。また一緒に歌おう!!」

「うん・・・ちゃんと起きるからクレドを・・・一人にしたくないよ・・・置いてかれるのは死ぬより辛いから・・・ほら、指切りしよう」

「うん!指切りげんまん」

「うそ・・・ついたら・・・ハリセンボンの・・・ます」

「指切った!!」

 

「あれが麦わらの子供ねぇ」

「?麦わらに子供?何の事です?」

「わっしがこっちに来る途中に見分色で聞こえて来たんだよね。歌姫ウタと麦わらのルフィの間にはこどもがいるってねぇ~危うく木にぶつかるところだったよロギアでよかったね~~」

「それは・・・どんな姿をしているのでしょうね。あっしには見えなくって」

「短い白髪だね~顔は母親にだね~」

「はぁ」

 

 野外ステージのど真ん中で必死に母親を励ます子供の光景。どの勢力もただ見つめるだけであり海軍でさえ何も言えない。

 

「・・・・・ねぇ、シャンクス。・・・私、シャンクスの子供で・・・良かったのかな・・・」

 まだ話足りないのかウタはシャンクスに問う。

「ああ、あの日海賊船から分捕った宝箱には最高の宝が入っていた。・・・俺の元に来てくれてありがとうウタ」

「・・・・・よかった」

 その言葉を聞きウタは解毒剤を口に近づける。

 

――――――そして、時を同じとして。

「ねぇ、ルフィ。寝る前のキスをしても良い?」

「・・・ああ、いいぜ」

 抱き合うルフィとウタ。互いの体を離さないかのように腕を巻き付けゆっくりと互いの顔を近づける。

 

「――――――ウタ」

「――――――ルフィ」

 12年前何も知らなかった大人たちの真似事とは違う。成長した少年少女は静かに唇を重ねる。

「「――――――――」」

 欲望のままに思いをぶつけ合うように絡み合うのではなくキスした二人はそのままお互いの愛を確認しあうように唇を重ね続ける。

(―――――)

 その中でルフィは思いだした事があった。12年前、過ちを犯したその後の話。

 

―――――これもふーふのすることなんかな。

―――――なんのはなし?

―――――まえにウタが歌ってねていた時にきになって鼻つついていたらマキノがよぉーまるでふーふだってからかってきてよー。

―――――なによルフィ、わたしの鼻をつついていたの?

―――――げっ!?・・・そ、それはよぉー・・・

 

 

 

 

 そして、確認を確かめ終え二人は唇を離す。

「お休みシャンクス/ルフィ」

「「ああ、ゆっくり休んでくれウタ」」

 満足したウタは現実世界とウタワールドにいるシャンクスとルフィに一言言って解毒剤を飲む。

 

「・・・・・すぅ」

 満たされたような顔をしながら寝息を立てるウタ。

「・・・・・お母さん」

「心配するな麦わら屋の娘薬を飲んだんだこれ以上悪くはならないさ」

 心配するクレド。それを諭すかのようにローがやって来る。

 

「トラ男俺達でウタの様子を確認するぞ!」

 チョッパーも近づいてくる。

「・・・・・まぁ、いいさ。子供は親がいた方がいいんだ」

 複雑な表情をしながらルームを展開しようとするロー。

 

「―――――悪いけど世界を滅ぼそうとした犯罪者を逃すことは出来ないんだよ」

 大将黄猿がやって来る。

『!!』

 

 ウタがネズキノコの解毒剤を飲み眠りについた事で事件が終幕を迎えた・・・のはルフィ達海賊側の話である。

「・・・・・正気か黄猿?」

 思わずシャンクスが黄猿に問う。実力は身に染みて分っているはずなのに。

「否定しないよ。けどねぇ、わっしらにも辞められる理由が無いんだよ」

 そう、海軍にとって世界を崩壊しかけたウタ、並びに海賊を逃す理由は無い。ただでさえ天竜人やらクロスギルド、世界会議で革命軍に引っ掻き回されて世界の秩序が下がっている今見逃すための理由が海軍に無いのだ。

 

「下がってろクレド」

 ウタとクレドをかばうようにゾロは3刀流で立つ。同じように麦わらの一味はルフィを抱えたり構えたりと赤髪海賊団、ロー共々徹底抗戦の構えをとっている。

 

「間違っても子供を傷つけないようにね~キレたガープ中将に闇討ちされたいならわっしは構わないけどね~」

 両陣営がぶつかる――――――かに思えた。

 

「―――――そこまでだ!!」

 それを止める声がステージに響く。

「カタクリお兄ちゃん!!」

 ブリュレはその声が兄シャーロット・カタクリだと気づき声をあげる。

「悪いが黄猿このまま撤退してもらえないか。これ以上市民に血を流す可能性を減らした方が良いと俺は思うが」

 そう提案するカタクリ。

 

「しかしねぇ、そんな要求を呑むわけないでしょうが」

 いや無理だろと切り伏せる黄猿。

 

「ああ、分かっている。だがこれを見ても同じことが言えるか?」

 カタクリがとあるものを海軍に見せつける。

「だぇ~~」

 そこにはカタクリにボコられたチャルロスがいた。好物のアイスクリームにも似た三段たんこぶを頭に乗せてモチモチの実でミイラみたいに拘束されていた。

 

「チャルロス聖!?」

「あちゃぁ~~」

 モモンガも黄猿も天竜人が人質になっていたら抵抗出来ない詰みだ。

「引きやしょう、市民の被害が出ます。それともあの海賊に隕石でも落としましょうか?」

「そうだね諦めようか。・・・ただ」

 シャンクスの方に向く黄猿。

「SSGの特殊電電虫とトットムジカの楽譜で手を打たせてもらおう。良いだろう赤髪~?」

 そう問う黄猿それに対してシャンクスは。

 

「―――――分かった。それで手を打とう」

 了承した。

 

「むっ、ルフィが起き出したぞ」

 ルフィを担いでいたジンベエがルフィの目覚めに気づいた。

「ルフィ、目が覚めたか?」

「ああ、わりぃジンベエ下ろしてくれ」

「ああ、分かった」

 目を擦りながらルフィは周りを見てその人影に気づく。

 

「―――――シャンクス」

「・・・・・ルフィか」

 12年ぶりにシャンクスと再会したルフィの頭には再開よりも12年前の約束の方に意識が向けられていた。

 

――――――やくそくね、ルフィがいつかおおきくなってりっぱな海賊になってシャンクスにも勝ったらケッコンしてあげる!




親子の物語が終わったなら次はどの物語が始まると思いますか。完結までまだありますが今年の夏で完結するようにしたいと思いますので応援コメント等お待ちしております。


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チャプター15 望んでいなかった再開

本当はもうちょっと長くする予定でしたがキリも良かったので投稿。



「いやぁ、終わったねぇ。・・・すまなかったねぇ。―――サカズキ」

『構わん。四皇は安易に手を出せんもどかしいが今は我慢の時じゃけぇのう』

 電電虫から現海軍元帥赤犬ことサカズキの声が軍艦に響く。

「本当は自分で行きたかったんじゃないのぉ?」

 海軍大将黄猿ことボルサリーノが赤犬にそう問う。

『あたりまえじゃ!!頂上戦争の時に纏めて殺せればどんなに良かったことか!!』

 ルフィ、ジンベエ、ロー、バギーその他多くのインペルダウン脱獄犯を頂上戦争で仕留めれば今の海がどんなに穏やかになったかそう考えただけで赤犬の怒りは上がっていく。

『今はやらねばならない事ばかりじゃ!そのための貴重な戦力をたかだか小娘一人に削られては堪らんけぇのう!』

「そうだねぇ、チャルロス聖も五老星に諭されて今は痛い痛い。って文句言われてるからね~~」

『・・・・・・・・・・ケッ、それはさておきじゃ。ボルサリーノ、お前から見てウタの影響力をどう思うか?』

「当分は問題と思うよ、わっしから見て体の方が限界に見えると思えるしウタの勢力の異常な拡大の理由であるSSGの特殊電電虫と危険なトットムジカの楽譜は回収した以上ウタが表舞台に出てくるのはそこそこ未来の話になるね~~~」

『そうか・・・だとするけぇのわしらが警戒するとしたら』

「これから始まる四皇対決の勝者だね~~怖いねぇ~~~」

 飄々とした口調で電電虫を切り椅子に座る黄猿その視線は先ほどまで居たエレジア島に向けられていた。

 

 

 

「ではコビー大佐市民が全員エレジアから離れたのを確認し終えた後帰還し再度のボア・ハンコック確保に行ってもらう目的の確保のためにSSGの最新兵器が配備される予定だ」

「了解しましたモモンガ中将」

 モモンガが乗る殿の軍艦が市民の乗る船と共に離れるのを見送りながらコビーは一息つく。

「・・・・・ルフィさん」

 コビーにとって恩人であり尊敬できる目標とも言うべき人物でありながら敵同士でもある男の名前を呟く。

 

 

 

「―――――!チョッパー、トラ男、ホンゴウ、ウタの様子は?」

 一方エレジア城ウタの部屋にてネズキノコの毒で衰弱していたウタの安否を確かめていた各海賊団の船医とハートの海賊団船長トラファルガー・D・ワーテル・ローにルフィは問う。

「問題は無い。命に別状は無い」

「―――そっかぁ」

 また大事な人を無くすのではないかと冷や冷やしていたルフィのその顔に笑顔が戻る。

「だが、ハッキリ言えば重症だ。麦わら屋お前には散々な目にあったが医者として患者の様態はしっかり答えておいておきたい」

「・・・・・分かった聞かせてくれトラ男」

 ルフィに暗い空気が再び包み込む。

「ウタはネズキノコで体のあちこちがボロボロだ。後遺症も無く治りはするが特に血管系や肺や喉にダメージが多い。歩くぐらいならともかく激しい運動、歌は当分控えて貰わないといけない。・・・だからだ」

「・・・・・何だよトラ男」

「暫くは療養するしかない間違ってもエレジアは止めておけ海軍がマークして追撃してくるかもしれないぞ。ここから離れて何処か安全な島で回復するまで休ませるしかない」

「・・・・・そうかあ」

 その言葉にルフィは理解したそしてその答えはローは呟く。

「赤髪と選ぶといいさ誰がウタを連れていくのか看病するか。そこら辺はお前らの自由だ」

 冒険と止めてウタを看病するかそれとも安全な島に預けるか。それともシャンクスに全部託すか。

 

「・・・・・お父さん」

「クレドか」

 離れた部屋からクレドがルフィの元に近づいてくる。

「お母さんは?お母さんは無事なの?」

「大丈夫だってウタの奴結構疲れちゃったようだからよ起きたらあまり動くなって伝えてくれねぇか」

「え?・・・お父さんはどうするの?」

 そうクレドが問うと。

「わりぃ。ちょっとやらなきゃいけねぇ用事が出来たからちょっと行ってくる」

 そう言って抜けようとするルフィだが。

「待って。あぶないことするの?」

「ちげぇよ・・・でも、そうだな」

 そう言いルフィはかぶっていた麦わら帽子をクレドにかぶせる。

「ちょっと預かっていてくれよ父ちゃんちゃんと帰って来るからさ」

「約束だよ」

「おう、約束だ」

 そう言い笑いながらルフィはエレジア城を出る。

 

 

 

 

エレジアの市街地だった場所から少し離れた広場嘗てがどのように使われたのかを知るのは主であるゴードン王しかいない。

 その地には麦わらの一味や赤髪海賊団などのステージに居た海賊団の面々が集まっていた。

「おいヤソップの奴はどうしたんだ!?」

「ハハハっ!!まだ息子に会う心の準備が出来てねぇって船に逃げたぞ」

「ははは、ヤソップの奴め・・・もっとも、こっちもどっこいだがな」

 笑いあう赤髪海賊団の船員その視線には自分たちの大頭赤髪のシャンクスが椅子に座っていた。

「―――――――」

 何処か黄昏た顔をして空を見上げていたシャンクスだが足音が聞こえその持ち主がいるだろう方に顔を向ける。

「・・・・・来たか。・・・ルフィ」

 何処かバツの悪い顔を見せながら12年前麦わら帽子を渡した少年にシャンクスは声をかける。

「・・・・・」

 ルフィは何も言わない後から来たホンゴウがシャンクスに近寄りウタの事を話すのを見守る。

「・・・・・そうか。分かった離れてくれ」

「分かってますよ・・・ばっちり決めてくさいよお頭」

 そう言いホンゴウは仲間の所へと向かう。

 

「―――――まさかこんな形で約束を果たすことになるとはな」

「・・・・・ああ、俺もだよシャンクス」

 眼前の男をルフィは真っ直ぐ見つめる。

 12年前と比べて年を取りその風貌には年相応の貫禄が現れていた。

 服装は十二年前とそこまで変わらない強いて言えば他ならぬにルフィに預けた麦わら帽子が無くなり少し頭が寂しく思えた。

 そして、12年前幼い自分の愚かさのせいで失わせてしまった隻腕の腕。

「麦わら帽子はどうした?」

「アイツに・・・クレドに預けたよ」

「・・・・・そうか、あの子か」

 暗い空気が周囲を包む。されど、沈黙の空気にはならずルフィが言葉を紡ぐ。

 

「―――――なぁ、シャンクス。俺さぁ、・・・本当はもうちょっと後だと思ったんだよ」

「分かる。もう直ぐだと思ったが少し予想が狂った」

「本当はよぉ、もっと色々言いたい事がいっぱいあったんだ・・・あったんだけどよぉッ」

「ああ、俺もだ・・・だがな」

 嗚呼、何て事だと二人の思いは重なる。

「―――こんな事・・・もう言うべき事じゃねぇって・・・場違いだって・・・分かっているけどよぉっ」

「―――――ああ、俺も同じ気持ちだ。俺もお前に言いたい言うべきじゃない事がある」

 ゆっくりと二人の海賊は近づく。

「―――――俺が言うべき資格何て無いって分かっているけどよぉっ」

 

 ――――――一歩

 

「ああ、それでも俺はお前に言いたい事がある」

 

 ―――――――更に一歩言葉に重しを乗せながら。

 

「何で―――――」

「よくも―――――」

 

 ―――――――――――――それは十二年前の喧嘩の続き。本来であればもうとっくに終わった話。

 

―――――――――――されどこの世界線ではその続きが始まる。

 

 

 

 

「何でウタを置いて行ったんだシャンクスッッ!!」

「よくも俺の娘を傷物にしたなこのクソガキ!!!」

 

 二人の四皇の拳と剣が衝突する二人の皇から漏れ出した覇王の覇気がぶつかり天が割れる。男にとっても少年にとっても誰よりも望んだ再開。

 

 けれどその再開は二人が望んだものとは違っていた。――――――言葉にできようと/しようがない戦いが始まった。

 




この小説を書く前はここでREDの話が終わる予定でした。ただ、色々考えてこの作品を書く前完走スレが建てられる前に考えていたこの展開に移しさらに少し変えてから書きました。この展開にすると決めた時この戦いは確定していました。例え解釈違いだと叩かれようと自分はこの展開を書くと決めて胸を張るつもりです。どうぞ皆さまお暇なお時間がありましたらわたしの作品の結末をどうぞ見守ってください。


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チャプター16 宿命の対決赤髪のシャンクス対麦わらのルフィ前編

何とか8月6日までに間に合わせました。話を確認したら多分終わるのは9月頃になるんだろうなと苦笑していますが最後までお付き合いくださいませ。


「―――――始まったな」

 衝突する覇王色による天割りから始まるルフィとシャンクスの激突を見てベン・ベックマンは呟いた。

「すごい激突です。ルフィさんがあんな事を出来るなんて」

 激闘を見ようと集まっていた海賊たちと同じように混ざっていたコビーも呟いた。

「ああ、俺との戦いの後麦わらは更に成長を遂げたようだな」

「ママが他の四皇と戦った時に現れるような光景を起こしているわ」

 同じようにビックマム海賊団も呟く。

「あれは覇王色なのか?」

「なのだろうだが・・・覇王色は纏えるのか」

 その光景をサンジは疑問を持ちそれにカタクリが相槌を打つ。

「・・・・・」

 周りの海賊たちが騒いでいるのを尻目にゾロは無言で二人の戦いを見ていた。

 覇王色を纏うと言う御業ワノの国でゾロの身に起こった自分閻魔による覇王色の覚醒など考える事は多い。・・・・・だがそれよりもゾロにとっては自身の目標世界最高の剣士になる目標である鷹の目、ジュラキュール・ミホークとライバルだったシャンクスを通していずれぶつかるミホークへの参考にそして、自身の船長の戦いを見届けるためにその目を離すことは出来ない。

 

 そして二人の四皇の戦いを見届けるのはエレジアに残った者たちだけではなかった。

「おーおー、ハデにおっぱじめやがったな」

 ウタのライブという一大イベントは権力者にとっても興味深いものがあるため隠し撮りする者もいるだろう。そして、派手が大好きで無駄に高い技術を持つ者を傘下に入れているバギーにとってはライバルとなる二人のその激闘は自身が憧れ目指したロジャーと同じ海賊王の称号を手に入れる近道にもなると。

「ハデに賭けようぜ!!俺はシャンクスにハデに一万ベリー!!」

 バカ騒ぎを更に盛り上げようとバギーは二人の激闘を賭けの材料とした。

「・・・・・同じく赤髪に一万」

 場に酔ったのかそうミホークも呟く。それにつれられ他の海賊たちがぞろぞろと賭け金を出し始める。

「クロちゃんはどうするんだい?」

 空気に乗せられついついクロコダイルに話しかけるバギー・・・すると。

「・・・・・・・・・・・麦わらに二万ベリーだ」

 クロコダイルも賭け金を出す。

「おやおや、糞ゴムなんかに賭けちゃって・・・・・まぁ、良いか!ハデに盛り上がってるしな!!」

 そして多くの者たちは二人の四皇の激闘に魅入られる。

 

「ウォォォォォォォォォッッッッ!!」

 雄たけびを上げ手足に武装色の覇気を纏い見分色の覇気を研ぎ澄ましルフィはシャンクスに挑む。どのような理由であれ相手はルフィにとって海賊王の前に果たすべき目標そのものクロスギルド、ビッグマムそして黒ひげを倒してから挑みたかった存在全身全霊で挑まなければ勝てないし意味が無い。

「ゴムゴムの~~~戦斧!!」

 高く伸ばされた足から放つかかと落としがシャンクスに迫る。・・・だが。

「遅い」

 冷静に数歩歩くだけでシャンクスは戦斧の射程範囲を躱して見せた。

「ゴムゴムの・・・暴風雨!!」

 ゴムゴムの戦斧の衝撃で吹き荒れる砂嵐を目くらましにして回転しながら拳骨のガトリングを放つ。

「・・・・・」

 しかし、隙が多いからかシャンクスは僅かな体の動きで暴風雨を避けきって見せた。

「ギア2!―――ゴムゴムのJET銃乱打!!」

 ならば更にギアを上げ連打で押し切ろうとしたが・・・

 

「―――――っ、あぶねぇ!」

 スピードの上がった拳の連撃をさばき切り一瞬でシャンクスは消えた。ルフィは見分色でシャンクスの気配が背後にあると気づきしゃがむ。直後にルフィの頭があった場所に愛刀グリフォンでの風切り音が響く。

 

「へへっ、やっぱシャンクスはすげぇや」

「当たり前だ。俺は今や四皇最古参だぞそこらの小物に使うような技が俺に通じると思っていたのか?」

 ―――――ギリィッ。エレジアに居る者たちには聞こえない映像向こう側に居るルフィに敗れた敗北者達の歯ぎしりの音が響く。

 

「そうかよ、でもよ。俺の十二年の頑張りの成果見ててくれよシャンクス!!」

 ギア2で身体能力が上がった上でCP9ブルーノから盗み得た六式の一つ剃でシャンクスに迫るルフィ。

「勿論だ簡単に倒れるなよルフィ!!」

 中将でさえ目に捕らえるのが難しいルフィのスピードをシャンクスは見切り後の先を取りながらグリフォンを振り下ろす。

「ッ!ゴムゴムの銃!!」

 グリフォンの腹を武装色で纏った拳で弾きすぐさまルフィはシャンクスにもう片方の手でゴムゴムの銃を放つ。

「フッ、昔教えたよなピストルを抜いたなら命を賭けろよと」

 ピストルは外れ無防備に伸びた腕にシャンクスはグリフォンを振り下ろそうとする。

「ッ―――!」

 グリフォンが腕に届く前にルフィは伸ばした腕を急いで戻しながら剣の間合いに入らないように腕を動かしシャンクスに距離を取る。

 

「シシシどうよシャンクス?」

「―――――このぐらいはやってもらわないとな」

 漆黒の手と剣を構えながら両者は再び間合いを取る。自身が勝つ未来を呼ぶこむために集中力を回復させるためのインターバルを。

 

「―――――すごい。ルフィさんはあんなにも強くなっているなんて」

 決闘を麦わらの一味と共に見守っていたコビーは改めて今見ている戦いのレベルの高さを理解する。

 ハイレベルの足さばきと技の攻防両者能力者と非能力者の違いがあるがその戦闘スタイルは同じ覇気をメインとした接近戦が主である。

(・・・・・それだけじゃないルフィさんのあの戦い方)

 拳の握り方豪快でワイルドな戦い方をする人間をコビーは良く知っている。コビーの師にして上官でありルフィの祖父モンキー・D・ガープに似ている。恐らく体術は教わっていないはずなのにその血か英雄の戦い方は確かに受け継がれていた

「流石にやるな麦わら」

 ビッグマム海賊団幹部シャーロット・カタクリも二人の四皇の戦いに思わず唸る。

「・・・・・だが、どうにも気になる」

「え?ゾロさん何か気になる事がありますか?」

 ゾロが困惑しているのをコビーは質問する。

「あの二人の戦いはただの見分色の覇気を使って戦っているような感じじゃない。まるで・・・なんって言うんだろうな・・・」

「先の先を何度も見ながら一手を打っている詰将棋のような気分になるか?」

 ゾロの違和感をカタクリが答える。

「・・・そうだ。そんな感じだ」

「その答えは簡単だ。あの二人は未来視の見分色で戦っているからだ」

 そしてカタクリはその答えを言う。

「未来視の見分色の覇気ですか!?そんな事が出来るんですか!!?」

 コビーからすれば見分色の覇気でそこまで出来るのかと驚愕する。

「個人差もあるが見分色を極めればそう言った未来も見えてくる。未来視同士の戦いはまさに相手の未来よりも先の未来を見ることが重要になる。・・・そして」

「それだけの見分色の覇気を制御する集中力も体力も必要となるですか」

「そのとうりだ海兵。正直俺でも見えきれない程に複雑に入れ込んでいる。これはそう言う戦いだ」

 コビーの未来視の見分色の弱点にカタクリは正解だと答える。

「動くな」

「ああ、動く」

 ルフィとシャンクスが動きが変わり更なるステージへと二人は歩みを進める。

 

「「ウォォォォォォォォォッッッッ!!」」

 見分色の覇気を持たない者には付いてこれない程に高いレベルの戦いが繰り広げていた。

「くっ、・・・ハァッ!シャンクスゥゥゥゥッッッ!!」

 未来視の見分色で常に相手より一手先を見続けながら相手の集中力を削っていく戦い。ルフィは切りかかって来るグリフォンを武装色で黒化した黒腕で弾きながらシャンクスに一撃を決めるために拳を撃ち込むがシャンクスも同じように迫りくる黒腕を躱していく。

「ッ!・・・うぉっ!?・・・うわぁっ!?」

 迫りくるグリフォンの縦切りを避けたかと思いきや剣を持つ手で武装色のジャブを打ち、溜まらずルフィは死角である隻腕の方に逃げようとして待ち構えていた回し蹴りをもろに食らい吹っ飛ばされる。

 距離を離したルフィに向かってシャンクスは飛ぶ斬撃放ち処理しきるギリギリのタイミングを見計らって大振りの横なぎを上半身と下半身を両断するのではないかと思う勢いで放つが未来視で察知したルフィは剃で回避する。

 シャンクスは実直な剛剣で切りかかって来ると思いきや柔軟にルフィの選択肢を削っていく軟剣の二通りで攻めて来る。そのシャンクスの連撃をルフィはこの二年間で積み重ねた戦いの経験と未来視で潜り抜けていく。

 

(・・・・・ふっ、流石にやるな)

 戦いながらシャンクスはルフィの成長を認めていた。

 三種の覇気を極めハイレベルの体術にヒトヒトの実幻獣種モデルニカの能力を極限まで使いこなす今のルフィを味わいながらシャンクスは幼いルフィとウタの思い出を思いだしていた。

(認めるさお前はあの頃のガキじゃない。間違いなくお前は立派な大海賊だ・・・・・だからこそ今回の戦いは遠慮はしないぞルフィ)

 俺から娘から処女を奪ったツケは払ってもらおうぞと相変わらず大人げないシャンクスであった。

 

「―――――空気が変わるぞ。麦わらが一撃を入れて流れが変わる」

 未来視で見えた未来を口ずさむカタクリ。

「本当かよ!?」

「マジか!?」

「おいおい、カイドウの次は赤髪か!?」

 四皇最高幹部の一言は周りの者たちをざわつかせる。この場に居る者の中でもっともルフィとシャンクスの実力を知っている男の言葉は下手な強者よりも信憑性を持たせる。―――――だが。

「―――――それはどうだろうな」

 とベックマンは呟いた。

 

(――――もうちょっとだ)

 打ち合う中でルフィはシャンクスの隙を見定めていた。シャンクスは同じ四皇のカイドウやビッグマムのように生まれ持った規格外の体力とフィジカル、悪魔の実で戦うのではなく技巧と莫大な覇気を使い分けて打ち合う正しく海賊王ゴール・D・ロジャーの後継者。

 だからこそルフィは待っていた一撃で態勢を崩せるその時を。

「ゴムゴムのJETピストル!!」

 未来視で見えた最高のタイミングで流桜による見えない覇気の籠手を纏いシャンクスの持つグリフォンを大きく弾かせる。

「ッ!?」

 流石のシャンクスもこの展開に思わず驚愕するような声をあげる。

 

「今だァッ!!ゴムゴムの―――――灰熊銃(グリズリー・マグナム)!!」

 最高のタイミングで放つ威力の高い一撃直撃すればその後の戦いに大きく作用する楔となれる一撃。

 

 

 

 

 

 

「―――――未来視の破り方をお前に教える」

 シャンクスの一言が全てを打ち砕く。

 

(――――――は?)

 ルフィを始めとするエレジアに集まった見分色使い達の見分色のレーダーからシャンクスの姿がぽっかりと消える。

(―――――マズ)

 どんな理由であろうと戦いの前で思考を停めてはいけない。いけないはずなのに想定外の方法で見分色を破られたルフィにはどうしよも無い思考の停止を起こしていた。

 そして、それを見逃さない黒刀の一撃がルフィに迫る。




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チャプター17 宿命の対決赤髪のシャンクス対麦わらのルフィ 中編

皆さんお待たせしました二週間も経ってやがるこれじゃあ夏までに終わらねぇと頭抱えておりますが皆様は気にせず楽しんでいってください。


「ッ――――――!!」

 シャンクスの気配を見分色で探れないルフィは全力で流桜による覇気の壁を山勘で作る。

――――――ガギィンッ!!? 覇気の壁と黒刀がぶつかる音が響く。

「当たった!!」

 豪運に助けられたルフィは直ぐに距離を取る。

 

 

 

「なっ、何とかなったな・・・だが。あれは何だカタクリ!?」

 とんでもない展開にこの状況に一番詳しいカタクリに注目が集まるが。

「・・・・・分からない」

「分からない?それはどういう事だ?」

「言葉道理だ海賊狩り。突然俺の見分色からまるで元々そこに居ない、消えたかのように消えたんだ。―――だが」

 一呼吸置いてカタクリは語る。

「見分色の覇気は相手の気配を探る覇気だ。だから気配を隠せば理論上は出来る――――しかし」

「あんな激戦でしかも狙いすましたように気配を消す方法があるのかだな」

「そうだ。あのレベルの戦いなら多少は気配が残るはずだそれをああも容易くとなるとな」

「そのカラクリを解かないとルフィは勝てないぞ」

 ぽつりぽつりと雨が降り始める中でルフィと協力または敵になった者たちの声が響く。

 

 

「――――武装色の覇気を操作して作り上げる防壁か。大将とかが使う覇気の防御手段だな」

「ワノ国でヒョウじいって爺さんから触れない覇気を教えてもらったんだ流桜って言うらしいぜ」

「ヒョウ五郎の爺さんかカイドウ相手から良く生き延びたな」

「知ってるのかよ?」

「昔ロジャー船長と一緒にワノ国に言った時に一度な」

「そうかよ、あの見分殺しも覇気の応用だよな。見分か覇王だろシャンクス?」

「・・・・・ふっ、一度見せて本質の一端は分かったんだ海賊なら盗んで見せろ」

「ああ!やってやるぜシャンクス!!ゴムゴムの~~~巨人の雷斧!!」

 足を巨大化させて偶然近くに落ちて来た雷を吸収してシャンクスに振り下ろす。

「小物相手の技は通用しないって言ったはずだがな」

 そう苦笑するがシャンクスとて分かっているこれは『繋ぎ』だ第二ラウンドに向かうためのルフィの準備。

「ギア4!!弾む男(バウンドマン)!!」

 筋肉に空気を入れ巨漢の形態バウンドマンに変身するルフィ、足が地面に着く度にゴインゴインと重いバネの弾む音がする。

「ふっ、見かけ騙しになるなよルフィ」

「ああ、分かっている」

 両者しっかりと相手の顔を見ながら見分色で未来を見極める。

 

「ゴムゴムの猿王銃!!」

 先手は言わずもがなルフィ、猿王銃をシャンクスに放つ。当たれば七武海クラスの海賊でさえ堪える漆黒の剛腕がシャンクスに迫る。

「威力はまずまずだが」

 対するシャンクスは未来視で猿王銃の進路捕らえ剛腕をグリフォンで弾きその勢いを利用して武装色を纏った足で蹴りを放つが即座にルフィも未来視で防御する。

 それに対して数歩下がり仕切り直しの為に距離を取るシャンクス。

「ゴムゴムの大猿王銃!!」

 距離を取ったシャンクスに対しルフィは迫りながら右腕に更に空気を入れる元々空気を入れ巨大化させた腕を更に巨大化させ面積と威力をあげた猿王銃を撃ち込もうとする。当たれば億越えでさえOKされる必殺の一撃当たればシャンクスでさえ大ダメージは免れないだろう。

「まだだ。俺からすれば小鳥でも狩るつもりかと言いたいな」

 だが、四皇の赤髪のシャンクス相手は速度が足りない。大猿王銃に対してシャンクスは武装色を纏ったグリフォンで受け止めさらに流桜による弾く覇気でルフィの体勢を崩し続けて飛ぶ斬撃を数発放つ。

 

 しかし、ギア4を発動させた今のルフィは武装色と巨大化させた体による高い防御力を持っているその防御力を前には牽制の斬撃では皮膚さえ傷つけられない。

 

「シシシ、シャンクスって今まであった四皇と違うな、なんかやりずれぇ」

「否定はしないさロックス時代の化け物共と比べると俺は体格や力は劣る」

「でも、磨いた技と覇気がある」

「そのとうりだ。俺の娘を嫁にするならこれぐらい乗り越えて奪い取って見せろ」

「シシシ・・・ああ、そうだよな。海賊らしくなァ!!」

 足から空気を噴射させ距離を詰めるルフィ。

「ああ、簡単にやらないけどな!!」

 再び始まる超高度な先読みによる接近戦剛腕を振るうルフィに対して技を駆使するシャンクス。濃密な覇気のぶつかり合いによって周りには黒い稲妻が飛び散る。

 

「―――――そこだァ!」

 一瞬のスキを突きルフィは両手に空気を入れ大猿王銃ほどの大きさになった両手をバズーカの姿勢に入る。

「ゴムゴムの獅子王バズーカ!!」 

 両手を圧縮し放つ巨大な一撃先の大猿王銃とは躱す面積も威力も違う。

「ならば」

 対するシャンクスは武装色を更に込めたグリフォンで正面から迎え撃つ。全力の一撃であれば30億の海賊でさえ打ちのめせるシャンクスの一撃。

「―――――ふっ」

 嘗て神すら縛ると豪語した男を正面から打ち破ったルフィの一撃、受け止める事に成功したシャンクスでさえ威力を抑えきれず口から血が流れた。

「へへ、当てたぜシャンクス」

「ふっ、やっと一撃を当てただけだろうルフィ?」

 不敵に笑う両者当たれば無事では済まない戦いなのに二人は笑っていた。

 

「ウォォォォォォォォォッッッッ!!」

 再び接近戦を仕掛けるルフィ。

 対するシャンクスは落ち着き払い愛刀を構えルフィを迎え撃つ。

 

 先の巻き戻しかのように繰り返される四皇同士の接近戦、ルフィはギア4で強化された剛腕をシャンクスに叩きつけ対するシャンクスは冷静にルフィの連撃を捌く。

 ガガガガガガガッ!!!とても人間同士の戦いでは起こらないような音を響かせる。

 

 ルフィの連撃を捌きながらシャンクスは未来視で一瞬の隙を突きグリフォンをルフィの喉元に鋭い突きを打ち込むが同じくルフィも未来視でシャンクスの突きを察知し首を曲げて躱す。

 時間にして一秒にも満たない攻防、超越者達の戦いにおいて瞬き程の隙でさえ好機となる。

「ゴムゴムの大蛇砲!!」

 獲物を追い詰める大蛇のごとき追尾性と猿王銃クラスの一撃を持つ技がシャンクスに迫る。

「―――――ッ」

 シャンクスは後ろに下がり距離を離しても伸び続け、左に逃げようと追跡し迫る大蛇の大砲。

 

 シャンクスはゴムゴムの大蛇砲を躱しながら息を整え覇気を込めた一撃で大蛇砲を弾く。―――そして、大蛇砲を攻略するのに時間をかけるほど相手に隙を与える事だ。

「―――――ゴムゴムの犀榴弾砲!!」

 大蛇砲で伸びている片腕を戻しながらルフィは両足を圧縮したドロップキックをシャンクスに撃ち込む。

「―――――くっ!」

 シャンクスは流桜で武装色の防壁を作り犀榴弾砲を受け止める獅子王バズーカの事を考え更に覇王色の覇気を防壁に混ぜる。

 バチチチチチチ!!!覇気と覇気のぶつかり合いはまるで電流のような音を響かせる。

「フンッ!」

 防壁を使ってゴムゴムの犀榴弾砲を弾く。

 

「「――――――」」

 シャンクスが距離を取り両者は互いに一息つく。

 

「―――――やっぱりシャンクスは強ぇな」

「ふっ、当たり前だ。夢のために仲間や友達を守るために強くなったんだ」

 ルフィは嬉しかった。憧れの男は強くなった今の自分でさえも勝てるかどうか分からないほどに強かったことに。

 ルフィの右腕であるゾロと同格下手すれば越えるかもしれない剣の腕。ルフィの知る中でもっとも武装色、見分色、覇王色の三種の覇気を極め。見分色でも捕らえるのが難しいスピードはシャンクスの赤髪もあり赤い彗星と形容するほどだ。

 更に自分の見分色から気配を隠す謎の技術を持っている。

 12年前に別れてからずっと追いかけていたモンキー・D・ルフィの憧れの海賊、赤髪のシャンクスは今もなおルフィにとって最高の海賊なのだ。

 

―――――――だからこそ。

「何でだよ―――――」

 ルフィの心の中に溢れる赤い感情。

「何でウタを置いて行ったんだよシャンクス!!」

「・・・・・ルフィ」

 激昂するルフィを見てシャンクスの顔も暗くなる。

「どうして!!ウタを一人にしたんだよ!!――――――ギア4蛇男(スネイクマン)!!」

 ルフィは腕に空気を再度入れギア4の形態を変える。

「ゴムゴムのJET大蛇砲!!」

 怒りと覇気を込めた一撃がシャンクスに迫る。

「早いがまだ――――――ッ!?」

 躱しても大蛇砲の真価はその追尾性その上追えば追うほど速度が上がる追尾弾がシャンクスに迫る。

「くっ――――」

 付き合いきれないと判断したシャンクスはグリフォンを盾にして大蛇砲を防ぐ。

「こんな事俺が言うべき事なんかじゃないってわかっているけどよぉ・・・それでも、それでもよぉッ!」

 蛇男で上がった攻撃のスピードを駆使してシャンクスに攻撃していく。

「それでも何だルフィ!!」

 ああ、付き合うさこれは男の戦いなのだから。

「突然一人になっちゃう気持ちを考えたことあるのかよシャンクス!!」

 ルフィの腕が肩にめり込んでいくその光景はまるで弦が引き締められていく弓のようだ。

「俺さぁっ!!シャンクス達に会うまでずっと一人だった!!じいちゃんが帰って来る時以外夜は一人で寝たくないから村の皆の所に泊めてもらったんだ!!」

 引き締められた腕が今発射される。

「ゴムゴムの黒い蛇群!!」

 追尾性を持った剛拳のラッシュがシャンクスに迫る。

(これは避けきれんな)

 シャンクスは回避しきれないと判断して未来視と見分殺しを駆使して被害を最小限に済ませる。

「シャンクスはウタの父ちゃんだろう!?ウタはシャンクス達と別れたいって言ったのかよ何も言ってねぇんじゃねぇかよ!?」

「・・・・・」

 連撃を潜りながらシャンクスはルフィの思いを聞いていた。

(そこだ――――)

 シャンクスは再び見分殺しでルフィの見分色の索敵範囲をすり抜け高スピードでルフィの背後に迫る。

(悪いな―――)

 覇王色を纏ったグリフォンを握りなおしルフィに必殺の一撃を決めようとした――――――その時。

 

「――――――なっ!?」

 シャンクスの見分色の索敵範囲にいたルフィが一瞬だけ消えた。偶然かそれともモノにしたのかこれまで見分色殺しでルフィを振り回したシャンクスは逆に見分色殺しでルフィを見失ってしまった。

 

「独りぼっちは痛いより辛いんだァ!!!」

 シャンクスの真上に陣取りルフィは次の一撃のための準備を完了していた。

「ゴムゴムの覇蛇龍王砲!!」

 黒い稲妻を伴いながら覇王色を纏ったナーガがシャンクスに迫る。

 

 赤髪は少年の一撃を喰らい地面に叩きつけられた。




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チャプター18 宿命の対決フーシャ村のルフィ対赤髪のシャンクス 後編

一月以上経っちゃいましたがやっと投稿です。これは完結は11月かなフィルムREDも再上映らしいのでまたウタちゃんで盛り上がるのだろうか。


「んっ・・・ぁぅ・・・・・」

 意識を覚醒させ柔らかいベットの感触に心地よさを覚える。

 

「・・・こ、・・・ここ・・・は」

 目を覚まし見慣れた場所が視界に広がる。

 

「あ、・・・・・あれ?・・・おっ・・・起き上がる・・の・・・が・・・ぁぁっ!?」

 ゴロンとベットから床に倒れ落ちる。

 

「――――――お母さん!?」

 どたどたと走る音が響き部屋にクレドがやって来るのをウタは視認する。

「・・・クレ・・・ド・・・」

「無茶をしないでくれウタ」

 一緒にやってきたゴードンがウタの体を支える。

「ぅっ・・・ごほっごほっ・・・」

 咳き込み項垂れるウタ。ネズキノコの毒で弱った体を必死に立たせながらウタはゴードンに問う。

「皆は?何処にいるの?」

「・・・・・それは」

 うつむくゴードンそれに合わせて。

ドォォォォォォォォォォォンンッ!! 巨大な何かが地面に衝突したような音がウタ達にも響く。

「なっ!?何!?何が起こって・・・・・あれ?クレドその麦わら帽子」

 ようやくウタはその違和感に気づいたクレドの頭にはウタの良く知る麦わら帽があるではないかと。

「ねぇ、クレドその帽子の持ち主は何処にいるの?」

「・・・・・」

 クレドは指を刺すその場所は先ほど巨大な物音がした場所だ。

「・・・・・馬鹿ばっか」

 ウタは外に歩き出そうとする。

 

「ウタ止めなさい!安静にするんだ」

 動こうとするウタを止めようとするゴードン。・・・だが。

「止めないで!」

 ゴードンを見つめながらウタは思いを口にする。

「・・・・・体は大丈夫なのかねウタ?お医者さんはあまり激しい運動はしてはいけないと言われたのだが」

 ウタの瞳にある熱意にゴードンは既に心が折れていた。分かっていたのだ今度は引き留めてはいけないと。

「大丈夫、でもちょっと疲れているから支えてゴードン」

「・・・・・ああ、分かった私の手を掴んでくれウタ。シャンクス達の場所は私が分かっている」

 城を出るウタ。ゴードンとクレドに支えられながらルフィとシャンクスが戦っている場所に向かう。

 

――――――もう置いてかれたくない。その思いだけでボロボロの体に鞭打ってウタは歩く。

 

 

 

 

 

 

「お頭がルフィにデカいの当てられたァッ!?」

 ラッキー・ルウのデカい声が響く。

「マジかよさっきまで振り回されたのに」

「一瞬気配消しやがったぞ偶然かそれとも盗みやがったのか!?」

「マジかよルフィの奴そこまで強くなりやがったのか」

「自分は皆さんがそこまで嬉しいのが分からないんですがね」

 幼いルフィを知る古参の赤髪海賊団のメンバーは心なしか嬉しそうだ逆に赤髪新人であるロックスターにはどうしてそこまで自分達のお頭が麦わらに殴られたのが嬉しいのか分からないでいた。

 

「きっ、決まった!?」

 思わずコビーも声をあげる。

 

「本当に麦わらが四皇を二人も倒してしまうのか!?」

「そうなったら麦わらが四皇最強になるのか!?」

 ざわざわと多くの人。目の前で麦わらが新たに四皇を打ち倒すのを見届けれると錯覚する者が多くだろう。

 

「さて、それはどうかな」

 ざわつく者たちを尻目に赤髪海賊団副船長ベン・ベックマンは不敵に笑う。

 

「・・・・・」

 蛇龍王砲は四皇さえ通用する技。それを覇王色を纏った一撃は世界一のタフガイであるカイドウでさえダウンする代物直撃すれば9割は戦闘不能だろう。

「・・・・・」

 手ごたえはあったはずだなのにルフィは未だに戦闘態勢でシャンクスが要る場所を睨みつけていた。

 

―――――来る。当たれば四皇でさえ致命傷である一撃を打ち込んでさえモンキー・D・ルフィは赤髪のシャンクスは反撃をしてくると信じているのだ。

 

 土煙が晴れないせいでシャンクスは今どうなっているのか分からない。そんな時間が数秒たった――――直後。

 

「ッ!?」

 土煙から飛ぶ斬撃がルフィに迫る。斬撃を相手にルフィは武装色で硬化した腕で弾くがそれが陽動なのは皆が分かっていた。

「上か!?」

 土煙を煙幕にしてルフィに迫るシャンクス。黒い稲妻を伴って必殺の斬撃をルフィに叩き込もうとするのだろう。

 

 武装色で硬化したギア4の体でさえ切り裂く剛剣を流桜で受け止めるが――――それはシャンクスが仕掛けたフェイントだ。

 

「ガハッ!」

 剛剣を囮に本命の武装色を纏った飛び蹴りがルフィの腹に突き刺さり今度はルフィが逆に地に落とされる。

 

「―――――独りぼっちは痛いよりも辛いだったな」

 バウンドし体制を整えたルフィにシャンクスは追撃しながら本音をさらけ出す。

「俺だってウタと別れるのは辛かったに決まっているだろうがァ!!」

 シャンクスはキレながらグリフォンによる剣術と蹴り技を放つ。感情的になり怒りで漏れる覇王色は周りの弱い者や電電虫の意識を刈り取る。

「俺だってずっとあいつと居たかった。あいつが世界一の歌姫になるのを見届けたかったさ」

 目にも止まらない連撃。見分色の覇気を習得しているものでさえ見切れるのか妖しいレベルの技がルフィに撃ち込まれる。

「だがな!俺は海賊だ。危険と人の悪意の闇の世界だ。ウタとは住む世界が違うんだ。ましてや今や俺は四皇、俺を倒すためにウタを狙おうとする奴だっているだろうさ」

「だとしてもウタとちゃんと話せよ父ちゃんなら!!」

 隙とは言えない隙を縫ってルフィがカウンターをシャンクスに喰らわす。

「そんな余裕が無かったんだよ!!」

「知ってる!!」

「何をだ!?」

「ウタが教えてくれたんだよエレジアが滅んだ理由をな!!全部あのお化けが悪いだけじゃねぇか!!」

「!?・・・あの時か」

 その言葉を聞いて思わず驚愕するシャンクス。

 

「ルフィさん何を言っているのでしょうか?」

「さぁな。だが、これはあいつらの話だ。俺たちが入る話じゃないだろうさ」

 拳と剣の炸裂音が響くためコビー達には二人の話声はかき消されるため聞こえない。

「「「「・・・・・・・・」」」」

 対して話の内容を想像できた赤髪海賊団の古参メンバーは何とも言えない表情になる。

 

「言いたいことは良く分かった。・・・だがなルフィ。ウタを本気で思っているなら本気で俺を倒しに来い」

 ルフィへの思いを聞きながらシャンクスは距離を取りながらルフィを挑発する。

 

「・・・・・どういう意味だよ」

 思わず疑問が混じった言葉を返すルフィ。

「お前はまだ覚醒を使っていない。覚醒した姿で俺に挑んで来いと言っているんだよ。出し惜しみする時間はもう終わりだ。見せてくれお前の全てを」

「ああ、そうか。・・・・・良いんだよなシャンクス」

 鋭い目でシャンクスを見つめるルフィ。それに対してシャンクスは。

「ふっ、何を言っている。俺は『赤髪』だぞ舐めた口を聞くなクソガキ」

「・・・・・はは、そうかよ」

 不敵に笑うシャンクスにルフィは少し子供のような笑みを浮かべた。

 

――――――男と男の思いと怒りのぶつけ合いは終わった。これから始まるのは男の意地のぶつけ合いだ。

 

「・・・分かった。見ててくれよシャンクス」

 ルフィは右腕を自分の心臓部分に当てて一呼吸置く。

 

「上がれ心臓の音…!!ギア―――(フィフス)!!」

 

ドン、ドドン、ドン、ドドン、ドドドン、ドン、ドント・・・ドドント、ドンドット、ドンドット♪ドンドット♪

 

 エレジアにドラムの音が鳴る。

 

「―――――来た」

 

 全てをひっくり返す軽快なドラムの音が響く。

 

「あひゃっひゃっひゃ・・・これだァッ!この音だ!!ニシシ」

 ルフィの黒髪が月光のように太陽の輝きのように純白の白に染まる。

 

「これが俺の最高地点。ギア5だシャンクス!!」

 

 空想のままに戦い人々を笑顔にした解放の戦士。太陽の神ニカがそこにいた。

 

「―――――ふっ、ようやくお目にかかれたか」

 手配書ではなく現実のニカを覚醒させたルフィの姿を見てシャンクスは少し満足げだ。

 

「ニシシシ、加減しなねぇぞ。覚悟しろよぉ、シャンクス!!」

 笑いながらルフィは地面に拳を叩きつけ地面をゴム化させ布団の汚れを飛ばすように地面を数回揺らす。

 

「―――――うぉっ!?」

 地面がゴム化して足場が不安定になりシャンクスの姿勢が崩れる。

「そこだ!!」

 ルフィは距離を詰め覇気を込めた右ストレートをシャンクスに撃ち込む。

 

「うぉっ!?」

 姿勢を戻し回避したシャンクスはすぐさま覇気とグリフォンで防御するがルフィの攻撃の衝撃が予想以上に強く防御を越えシャンクスが飛ばされる。

 

「まだまだァッ!」

 飛ばされただけでは当然攻撃は終わらない。空想のままに戦うニカの戦い方のように常人には出来ないような変幻自在の軌道でルフィはシャンクスに迫る。

 

「ゴムゴムのォ~~白い(ドーン)ピストル!!」

 覇気を腕にまとわせ覚醒したニカの能力で更に強化された腕力でシャンクスに殴りかかる。

 

「甘い!!」

 しかしながら四皇シャンクスはそんな分かりやすい一撃をもらうような簡単な海賊ではない。見分色の未来視でルフィの来るルートを先読みしすぐさまルフィの攻撃を回避し更に見分色殺しでルフィの見分色をかいくぐりグリフォンでルフィに襲い掛かる。

 

「あひゃひゃ、そんなそこだァ!!」

 読みにくい見分色殺しを激戦で得た勘で被害最小限で済ますルフィ。そしてシャンクスと同じようにルフィも見分色でシャンクスを捉え応戦をする。

 

(全く強くなったもんだ・・・)

 何処までも強くなったルフィを噛みしめながらシャンクスは目の前にいる敵を分析する。

 

 五老星曰くヒトヒトの実幻獣種モデルニカの能力とは自由性のあるゴムの体に耐熱耐性を与える固有能力と動物系の特徴である身体能力と耐久力の強化。

 そして覚醒する事で上記のゴムの体に更なる腕力と自由を与える世界でもっともふざけた能力とのこと。

 

「行くぞォシャンクス!!ゴムゴムの~~モグラ銃!!」

 通常であれば決してシャンクスに当たらない地面に向かって突き刺さるスピードで飛ばされるパンチ。だが、浮上しシャンクスに迫る変化球の技だ。

 

「くっ、・・・はははっ・・・なんだよルフィ随分とふざけた方向に強くなったじゃないか」

 覚醒したニカに常識は通じない。地面をゴムにし身体を自由自在に動かす。―――更に。

 

「ゴムゴムの雷!!」

 空から落ちる雷を掴み幼い頃エースやサボと共に暴れた時の相棒だった鉄パイプのように構える。

 

「アハハハハ!!行くぞォシャンクスゥ!!」

 雷を棒に見立てて我流の棒術でシャンクスに殴りかかるルフィ。

「ふっ、俺に獲物で挑みやがって後悔させてやるぞルフィ!!」

 グリフォンに流桜を纏わせ関電対策を澄ませて武器戦を挑もうとするルフィを高笑いしながらシャンクスは迎え撃つ。

 

 ルフィは長くギザギザした雷を更に伸ばしかなりのレンジを持つスタンロットに雷を改造しシャンクスに振り下ろす。対するシャンクスは冷静に回避し雷を振り回せない至近距離に迫る。

 

 回避され距離を詰められると判断したルフィは伸ばした雷を圧し折り短めのサイズに加工しルフィの腹部に迫るグリフォンの一撃を防ぐ。

 続けざまにシャンクスはローキックを放ち思わずルフィはそちらに気を取られその隙にシャンクスは覇気を込めたグリフォンをルフィの顔面に叩きつける。

 だが、ルフィもまた見分色でシャンクスの本命を見抜き躱して距離をとる。

 

「行っくぞぉぉぉっっ~~~!!」

 ルフィは空を飛び腕を雨雲に突っ込み漁るように大量の雷をかき集めシャンクスに向かって投げつける。

 

「マジかよ!?」

 ビッグマムの天満大自在天神かよと驚愕しながらシャンクスは覇王色の覇気のバリアを張る。

 

 シャンクスが雷のガトリングに対処しているその間にルフィは更に空へと飛ぶ。

 

「ルフィの奴一体何を?」

 そう思ったシャンクスは見分色の覇気のレーダーを伸ばしてルフィを探す。

 だが、シャンクスの疑問は直ぐに答えが出た。

 

「――――――えええ!!?」

 この場にいる多くの者たちを代表してコビーが絶叫する。

 

 雲を引き裂き現れたルフィはその右腕を小島一つ叩き潰せる程に超巨大にしていた。

 

「コイツで終わらせてやるぞシャンクス!!」 

 叫ぶルフィ。だが見分色でルフィの状態を把握できた者はルフィが大きく消耗している事に気づきこの一撃で勝負をつけるきだと理解した。

 

「――――――ああ、もちろん受け止めてやるさ」

 自分の持つ覇気を構えているグリフォンに注ぎ込む溢れる覇王色の覇気が黒い稲妻となってシャンクスの周囲を鳴らす。

 

「ルフィ、越えて見せろ俺をロジャー船長(大海賊時代)を越えて見せろ!!!神―――――」

「当たり前だ!!!ゴムゴムの~~~!!」

 巨大な腕が動き出す。憧れを目標を大切な幼馴染の父親に全てを込めて―――――。

 

「―――――猿神銃(バジュラングガン)!!!」

「―――――避!!」

 

 百獣のカイドウを打倒した必殺の一撃と海賊王の一撃が衝突する。

 

 

 

 

 

 

「おい!早くハデに映せ!!見れねぇだろうが!!」

 覇王色で電電虫が気絶してしまった者たちはあの手この手でこの先を見れないか必死に動いていた。

 既存する中で最も古い四皇と新参で最年少の四皇のタイマンあらゆる意味で見たい者たちは幾らでもいる。

 

「座長!電電虫息を吹き返したようですもう直ぐ回線が戻ります!」

「マジか!?ハデに早く映せ!!」

 急かすバギーほどなくして電電虫はクロスギルドからはるか遠くにあるエレジアの光景を映し出す。

 

 

 

 

「―――――げほっ、げほっる、ルフィさんは?」

 激しい砂煙が二人の戦いを見守っている者たちを遮る。

 

 ゴムゴムの猿神銃と神避の激突によって途轍もない衝撃波が地面を捲る。規格外の覇王色の覇気使い同士の激突は地形さえ変える人外の戦い。もし猿神銃と神避の激突をバギーが見ることが出来たらロジャーとガープが戦っている時もこんな感じだと言うだろう。

 

 砂煙がゆっくりと晴れ見届けていた者たちは気づく。先ほどまで雷が落ちるほどに荒れていた空は雲一つ無い快晴の空になっていた。

 

 ルフィとシャンクスは互いに全力を出し尽くし地面に倒れ伏していた。

「痛っててったくデカくなりやがって」

「シシシ当たり前だ。もうガキじゃないんだ」

「・・・・・そうか」

 ルフィのその言葉にシャンクスは少し微笑んだ。

 

「―――――はぁっ、・・・はぁっ・・・はぁっ・・・ る、ルフィ。シャンクス」

 大の字で話し合っている二人の傍にウタ達がやって来る」

 

「ウタ!!」

「おまえ体は!?」

「私より二人の方!!ボロボロじゃない!!・・・げほっげほっ」

 大声を上げ思わずせき込むウタ。

 

「そんなに体を酷使するんじゃないウタ。大丈夫だお頭もルフィもこの程度なら直ぐに回復する」

 そんなウタをホンゴウは落ち着かせて他の海賊団の医者と共に接戦をした二人の体を手当てする。

 

「チョッパーもう良い。・・・・・クレド帽子返してくれ」

 チョッパーによって切られた場所や蹴られた場所を包帯やシップを張り終えたルフィはクレドに手を伸ばす。

「あ、・・・うん分かった」

 慌ててクレドはかぶっていた麦わら帽子をルフィに渡す。

 

「・・・・・シャンクス約束だ。これ―――返すよ」

 ゆっくりとシャンクスに近づき両手で麦わら帽子をシャンクスに差し出す。

 

「え?え!?ルフィ先輩どうしたんですかだべ!?ルフィ先輩の象徴である麦わら帽子を何で赤髪に!?」

 その光景にバルトロメオが驚愕する。ルフィを敬愛するバルトロメオにはルフィの行動が理解できないのだ。

 

「何だ。まぁ、俺たちの旗を焼いたから知らなくて当然か」

 困惑しているバルトロメオにベックマンは笑う。

「どういう事だべ!!」

 四皇大幹部に突っかかるバルトロメオだがベックマンは余裕の表情を見せる。

 

「ハハハ、簡単な事だよルフィの麦わら帽子はなお頭の大事な宝物で立派な海賊に成ったら何時か返しに来いってな!」

 笑いながらラッキールウが理由を言い放つ。

 

「「「「「ええええええええ!!?」」」」」

 周りにいる者たちが一斉に驚愕する。赤髪と麦わらが並々ならぬ関係を持っているのは想像出来たがそんな経緯だったとはと驚く。

 

「・・・・・」

 12年ぶりに愛用の麦わら帽子を見るシャンクス。親代わりから貰った大事な物でありルフィとの間に交わした約束の象徴。

 

「―――――なぁ、ルフィお前はまだ海賊王を目指すのか?」

 そうシャンクスは問う。

 

「勿論だ!海賊王に俺はなる!!」

 それにルフィは満面の笑みで答える。

 

「・・・・・ならまだいい」

 麦わら帽子を押し戻す。

 

「いいのかよ」

 思わずそう聞いてしまうルフィ。

 

「ああ、それに。今回は引き分けだ。それじゃあ踏ん切りがつかなくてな」

 シャンクスは立ち上がるそしてルフィに言う。

 

「次は海賊としての戦いをしよう。赤髪海賊団がお前たち麦わら大船団の海賊王の道に立ちはだかる最後の壁だ。―――――ラフテルで待っているぞルフィ」

 そう赤髪のシャンクスは言い放つ。

 

「―――――ああ、分かった待ってていてくれよシャンクス!!」

 麦わらのルフィもまたそう返す。




次回は大分短いので早く出したいですねではまた次回。


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チャプター19 雲一つないどんちゃん騒ぎ

休みと勢いがあるうちに書ききってしまおうと思い投稿です。残り短いですがどうぞ楽しんでいってください。


「アハハハハハやっぱ腹減っている時に食べるメシはうめぇ!!サンジお代わり!!」

「あーちょっと待っててくれ他で手が」

「おいルフィ!今骨付き肉が焼きあがったんだが食うか?」

「食う!!」

 四皇同士の決闘の空気は何処へやらエレジアに漂う笑いと笑顔の空気。今のエレジアは麦わらの一味と赤髪海賊団。そしてハートの海賊団を始めとするその他の海賊たちや残っていた観客たちを含めた大規模な宴が開かれていた。

 

 最初こそ海賊と一緒に食べあうなんて・・・エレジアに来た者たちの多くは海賊によって多くの被害を受けて来た人も多く嫌悪感を抱く者は多い。

 だが、様々な理由でエレジアに留まった者たちにとってサンジを始めとする大海賊団の料理人たちが作る料理の匂い。他の海賊であるはずなのに平気でサンジに料理の注文をするロー、そして笑いながら一緒に食べようぜと四皇とは思えないオーラを放つルフィとシャンクスに心を許して宴に混ざっていく。

 

「・・・・・変な感じ」

 そんな光景を見てクレドはそんな空気を感じて不思議な気持ちになる。

 

「アハハハハハ、クレド!そんな所で突っ立ってないでお前もこっちに来いよ!!」

 ルフィ(父親)がこっちに来いと誘ってくる。

「あ、・・・うん・・・」

 ゆっくりとルフィに近づくクレド。

 

「おっと、クレドちゃん。さっき出来たばかりなんだ食べてみないか?」

 料理を持ってきたサンジが料理を小分けにしてクレドに差し出す。

 

「・・・・・はんぐっ・・・・・美味しい♪」

 サンジの料理が上手いと声を上げるクレド。

 

「シシシ、サンジのメシは上手いからな」

 笑いながらルフィも料理を食べる。

 

「追加の食材を取って来たぞ」

 ハートの海賊団のペンギン、シャチと共にエレジア近海で大量の魚介を取って来たジンベエ。

 

「ハハハ、これは酒が進みそうだルー調理頼むぞ」

 様々な魚介類を見てシャンクスも楽しそうに片手でエビを掴む。

「任せろお頭ライバルが多くて腕が鳴るぜ」

 ラッキールウが食材を持っていく。

 

「―――――」

 遠くで宴を見守るウタ。12年ぶりの楽しい宴。12年ぶりの大勢の人達とのふれあい。あの日が戻って来たのだと。

 

「―――――でも良いのかな?」

 ウタの心にチクりと刺さる後悔トットムジカを解放してしまいエレジアを滅ぼさせてしまった罪望まない者たちを自分の勝手な善意で夢の世界に閉じ込めようとした事がウタの足を重くする。

 

「―――――おや、此処にいたのかねウタ」

 ウタの背後からゴードンが声をかけてくる。

 

「あ、うん―――――え、ゴードンそれって?」

 振り向いたウタの視線にはゴードンが手に持っている物に注がれていた。

 

「ああ、ルフィ君が教えてくれたんだこれの存在を。君の部屋に巧妙に隠されていたのを見つけたんだ」

 ゴードンが持っているもの、それは12年前の真実が映っている電電虫だ。

 

「あ、ああ・・・」

 ウタの顔が青白くなる。その電電虫が世に流れたら自分はクレドは・・・そんな悪寒がウタの体を包む。

 

「ウタ、私は考えたんだ12年前の罪それを前にずっとすくめていた。けれど、私もいいかげん前に進もうと思うんだ」

 真剣にゴードンは言葉を紡ぐ。

 

「嫌・・・待って・・・止めて・・・ゴードン・・・」

 何をしようとするのか察したウタはそれをやめようとする。

 

「いや、止めるつもりはないよウタ。それに、君が思っているようなことはしないとも」

 そう言いながらゴードンは電電虫を操作していく。

 

「え?どういう事?」

 困惑するウタ。

 

「こういう事だよ」

 ゴードンは最後の操作を終える。

『映像を初期化します完了まで3・・・2・・・1・・・初期化完了しました』

 電電虫が初期化を告げる。

 

「―――――どういう事?」

 ウタは問う。何故エレジアの惨劇の真実を消したのだと。

 

「ウタ、君はあの悲劇を自分のせいだと思っているんだね」

 ウタの問いに答えるためにゴードンは質問を質問で返す。

「・・・・・うん、あれは私のせいだ。私のせいで沢山の人が死んだんだ」

 顔を下げてウタは自罰する。

「そうか、・・・ウタ、君はそれを自分の罪だと思っているのだね?」

「うん」

「なら、その半分で良いんだ私が背負っても良いかね?」

 そうゴードンは言う。

「え?・・・どうして?」

 そうウタは聞く。

「あの惨劇は私の管理責任だ。君のウタウタの実に気づく事も出来なかった君の歌をエレジア中に響かせてトットムジカがやって来たのも私の責任だ。私の罪なんだ。・・・・・君は悪くないんだ」

 ゴードンは自分の思いをウタに告げる。

 

「違う。悪いのは好奇心で歌っちゃった私の責任だって」

 ウタは堪らず反論する。

 

「そうか、だが。全て君が悪い事は無いのじゃないかね?」

「でも「ウタ」」

 ゴードンはウタの肩に手を乗せる。

 

「君は十分苦しんだ罪は十分与えられたはずだ」

 しっかりとウタの目を見るゴードン。

 

「君に、君の歌に罪はないんだ。悪いのは全部自分勝手な魔王のせいなんだ。君が罪を感じているなら歌って欲しい。君の歌は世界を変えられる力があるんだ。それは音楽王国エレジアの国王である私が確固たる自信をもって言える事なんだ」

「―――ゴードン」

 涙を流すウタ。やっと本音で言ってくれたのだと歌ってくれと。

 

「これから私はエレジアを復興させたいんだ。もう一度音楽溢れるエレジアを取り戻したいんだ」

「・・・・・そうか。ならクレドは最初の国民何だね」

「ああ、クレドが笑顔で歌える故郷にしたいんだ」

「それは・・・いいね」

「ああ、とても良い事だ」

 ゴードンやっとその思いをウタに言うことが出来たのだ。

 

「さぁ、行こうウタ。君の大切な人たちがいる場所へこの楽しい時間をこの電電虫に残して行こうじゃないか」

 そう言いながらゴードンは電電虫を録画モードにする。

 

「うん。行こうクレド達がが待っている」

 ウタもそう言いながら二人はルフィ達のいる所に向かう。

 

「ん?ウタ!体は大丈夫なのか?」

 ウタに気づいたシャンクスが声をかける。

 

「うん、調子が戻って来たから」

 ウタは穏やかな笑顔を見せ皆を笑顔にさせる。

 

「はしゃぐのは良いがほどほどにな酒とかはダメだぞ」

 船医であるホンゴウが一言言う。

「「えー」」「ウタは兎も角お頭は何を言ってるんですか」

「せっかくウタも20超えたし娘と酒を飲みたいのだが・・・」

「そんなのは完治してからでも良いでしょうが」

 楽しそうに笑う赤髪海賊団。嘗て赤髪海賊団の音楽家だった少女の笑顔が更に明るくなっていく。

 

「良かったなウタ。シシシ」

 クレドと一緒に料理を食べながらウタの様子を見ていたルフィも釣られて笑う。

 

「楽しそうですねルフィさん」

 そう言ってコビーも宴を楽しんでいるのか飲み物を片手にルフィの元にやって来る。

「おう、コビーも宴を楽しんでいってくれよ!」

「ええ、でも程々にしないと皆に迷惑をかけてしまいますので」

「シシシ海軍は大変だな!」

 互いに笑いあうルフィとコビー。海賊と海軍相容れない敵同士。それでも二人の仲はそれさえも超える友情なのだ。

 

「・・・・・」

 そんな笑いあう二人を見つめるクレド。我慢が出来ず声を上げる。

 

「お父さん、何で海軍なんかと仲良くしているの!?」

 声を上げるクレド。それに対してルフィは。

 

「まぁ、そうだよなでもよコビーは友達なんだよ」

 あっけらかんと答える。

「ええ・・・でも海軍はお母さんを」

 困惑するクレドそれに対してルフィはクレドの頭を優しく撫でる。

「しょうがねぇよウタがやろうとした事はそれだけヤバい事だったし俺たちは悪い海賊で海軍は一応正しいし、俺だって海軍に死ぬほど嫌な奴がいるけどそれでもコビーは俺の友達なんだ」

 そう笑うルフィの隣にコビーも立って言う。

「僕はルフィさんのおかげで海軍に入ることが出来た恩人なんです。でも同時にルフィさんは僕が越えたい目標なんです」

「そうだな俺たちはライバルだ」

「そ、・・・そうですね。ライバルですよね」

 少し頬を赤らめるコビー。

 

「ん?そこにいるのは何時ぞやの若い海兵か久しぶりだな」

 コビーに気づいたシャンクスがウタと共にやって来る。

 

「おっ、覚えていたんですか僕みたいなのに!?」

 顔を覚えていた事にコビーは驚いた。

「ん?シャンクス。コビーを知っているのか?」

 疑問を持つルフィ。ルフィはコビーがルフィの祖父にして海軍の英雄ガープの傍に近い立場であっても四皇と絡む程の場面を入って二年ほどのコビーがいくらあるのだろうかと。

 

「ふっ、頂上戦争の時にな当時の海軍大将赤犬に啖呵を切った奴を覚えていないはずがないさ素直に良かったぞ若き海兵」

 木製のジョッキをテーブルにおいてシャンクスは笑う。

 

「それにお前四皇になったバギーに5億相当の懸賞金をかけられたそうじゃないかウチの傘下はともかく他の海賊からすれば格好の獲物になるだろうな」

「あ、はは。そうですよね」

 笑うシャンクスに対してコビーは苦笑いをする。それに対してルフィは。

 

「シャンクス俺はあいつを四皇何て認めないぞ!」

 バギーの名前を聞いてぶー垂れるルフィ。

 

「ハハッ、バギーが嫌なんだなルフィ。デカくなったと思ったがまだまだガキだな」

 ぶー垂れるルフィにシャンクスは笑いながら酒を飲む。

 

「だってよぉシャンクス。あいつシャンクスの麦わら帽子を傷つけて唾まで吐いたんだぞ」

 麦わら帽子を擦りながらルフィは開いた手で食べ物を食べる。

 

「・・・・・そうか。まぁ、それは俺とあいつの問題だからなルフィが分からなくても仕方ないさ」

 酒を鏡にしながら自分の顔を見るシャンクス。その表情を見てルフィとウタはシャンクスとバギーのただならぬ関係を感じ取った気がした。

 

「変なのお父さん海軍に友達がいるのに大っ嫌いな海賊がいるんだ」

 ルフィとシャンクスの会話を通してクレドはそう思った。

 

「ああ、人ってのは色々な関係を持っているものだ。ロジャー船長もお前のひい爺さんである海軍のガープ中将と何度も戦ったが船長は楽しく戦う友達だと思っていたし同じ大海賊であっても白ひげとは仲が良くても金獅子とは相いれない敵としてぶつかったりしたんだ」

 シャンクスは自分の幼き頃のゴール・D・ロジャーの友人関係を思いだす。

 

「え?わたしのひいおじいさん海軍なの?」

 困惑するクレド。海賊であるルフィを父に持つクレドからすれば自分に海軍の身内がいるとは思わなかった。

「おうじいちゃん海軍だぞ」

 それに対してルフィはあっけらかんと答えた。

「で、でもお父さんは海賊で・・・」

 

「誰が親であっても自分がやりたいように生きればいいのさ。自由にお前がやりたい事をすればいいのさ」

 そうシャンクスはクレドに優しく諭す。

 

「そうなんだ・・・」

 その言葉をクレドはゆっくりと飲み込む。

 

「はいクレドこれ上げる。あーん」

 話が終わったと思ったウタは集めていた料理の一部をクレドに食べさせようとスプーンをクレドに伸ばす。

「あーん。・・・美味しい!」 

 口に入った料理にクレド興奮する。

 

「ウタ俺も俺も!!」

 それを見てルフィは口を大きく開けてウタに催促する。

 

「んもう、・・・はい、あーん」

 別の料理をフォークに刺してルフィに突っ込む。

 

「おぐぅっ・・・もぐもぐ・・・うめぇ!」

 フォークを自分の手で掴み口の中にある食べ物を食べるルフィ。

 

「ウタ俺にも・・・」

 そんな二人を見てシャンクスも催促するが。

「シャンクスは自分で食べてよ」

 ウタにあっさりと切り捨てられた。

 

「―――――すみませんウタさん麦わらのルフィさん写真を一枚欲しくないですか?」

 ガーンと落ち込んでいるシャンクスを尻目に料理を食べているルフィ、ウタ、クレドの三人の元に一人のカメラを持った男がやって来る。

 

「おっ、良いなウタ、クレド?」

 面白そうだと思いウタ達に問うルフィ。

 

「うん良いね」

「わたしもー」

 二人も喜んで撮影に臨む。

 

「はい・・・もっと寄せて・・・はい・・・お子さんを中心に・・・はい。良いですよ。では笑って笑って・・・ハイチーズ!・・・完璧です写真は麦わらの一味の船にで良いですか?」

 男は現像した写真は何処に送れば良いのか聞く。

 

「赤髪と麦わらに一枚ずつでお願いします」

 そうウタは言う。

 

「分かりました。ありがとうございましたいい写真を期待してくださいね」

 そうい言ってモルガンズの記者はその場を去って行く。

 

 

 

 

――――――宴は盛り上がっていく。

 

「・・・・・」

 クレドの瞳に写る人々の楽しい光景。

 

 ベックマンとゾロが二人で静かに酒を飲む光景。

 

 ハートの海賊団の面々がサンジの料理を食べてリクエストを言うが船長であるローが苦言を言うがサンジに差し出されたおにぎりは直ぐに手に取った光景。

 

 ウソップに追いかけられるヤソップの光景。

 

 幾つもの料理をタッパーに詰めてルフィに一言告げてその場を去ろうとするカタクリ達の光景。

 

 何もかもが幼いクレドには新鮮でその光景はクレドの将来を形づけるのには十分すぎるものであった。

 

「お父さんわたし一曲演奏した!!」

 お城からギターを取り出しワクワクしながらルフィに言う。

 

「おっ、良いじゃねぇか。そうだもっと宴を楽しめブルック。クレドと演奏してやってくれ!!」

 その言葉にルフィは嬉しそうにブルックに頼む。

 

「ヨホホホ了解しました!最高の一曲を演奏しましょう!」

 ブルックも楽器を取り出し観客たちによって整えられたステージに向かう。

 

「おっと、ボンク・パンチ、モンスター俺たちの孫娘の初舞台だ盛り上げてくれ」

 シャンクスも自分の船の音楽家の名前を呼ぶ。

 

「分かったぜお頭。やるぞモンスター!」

「ウキキ」

 1人と一匹の音楽コンビも自分の楽器を手に取りステージにやって来る。

 

「えへへ、こんなに沢山の観客。わたし上手く歌えるかな?」

 色々な音楽家たちがステージに集まりその主役であるクレドは不敵な笑みを浮かべながら緊張する。

 

「ヨホホホそんなに肩を張らなくて良いんですよ。宴の歌って言うのはどんなに下手でも楽しければモーマンタイですよ」

「ハハハ、そこの骨の言う通りだ。楽しければ何でも良いんだ俺達がサポートするお嬢ちゃんは自分の思いのままに演奏すれば良いんだ」

「キッキー」

 音楽家たちがクレドを鼓舞する。

 

「うん・・・じゃあ行くよ・・・先ずはお母さんの新時代!!」

 ギターが鳴り響き。ドラムの音色が響く。宴のメインイベントが開かれた。

 

「・・・・・ルフィ」

 クレド達の演奏が響く中ウタはルフィの手に自分の手を絡ませる。

「うん?どうしたんだよウタ?」

 ルフィは突然の行動に疑問を覚える。

 

「私ねやっぱりエレジアを滅ぼしたことを許せないの」

「・・・・・そうか」

 ウタの思いをルフィは静かに聞く。

「でも、私は私の出来る罪滅ぼしをしようと思う。だから支えてお願い」

 ウタは絡ませた腕を強く握る。

 

「ああ、大丈夫だ俺もシャンクスもついている」

 手と手を握る二人この愛は決して断ち切られることは無いとシャンクスは軽く笑った。

 

 

 

――――――宴から一夜明け海賊団達は各々の進路を船に漕ぎ出す。

 そんな海賊たちに世界中に世界経済新聞社モルガンズによる新聞がばら撒かれる。

 

―――――世界の歌姫UTAが結婚!!お相手は新四皇麦わらのルフィ!!二人の間には既に愛の結晶が!!

 ・・・・・と書かれたトップページは世界中の人たちをざわつかせた。

 あるものはその結婚に驚愕し。

 

 ある者はその結婚を祝福した。

 

 またある者はその結婚に酷く驚き泣き叫ぶ者も多い。

 

 ざわめく人たちの声を聴きそれだけ世界はそのスクープに心を躍らせたのだろうとモルガンズは笑っていた。




次回最終回偶然と過ちによって生まれた少女の未来をどうぞ見届けて下さい。


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エピローグ ROMANCE DAWN NEW GENERATION

いよいよ最後の話となります色々な思いは後書きで書きたいと思います。
過ちから生まれた子供とその親子の物語どうか見届けて下さい。


―――――楽しい宴が終わり私とクレドは12年住んでいたエレジアに別れを告げた。

 

 ボロボロの私が療養するためにクレドと共にシャンクスのレッド・フォース号に乗船した。

 

 ルフィとシャンクスどちらが私たちを療養を手伝うか揉めるかと思ったけどクレドがシャンクスの船に乗りたいって言った。正直私は意外だったルフィの船と友達って言っていたからルフィの船に興味を持つと思っていた。

 

 でも、クレドはお父さんには自由でいて欲しいって・・・もう子供なんだから甘えても良いのに。

 

 でも、ちょっと嬉しかった。懐かしいレッド・フォース号何年も寝食を共にしたもう一つの私の家そこに戻れたのは私としては懐かしさもあって嬉しかった。

 

 昔私が使っていた部屋をシャンクス達が使いやすいように戻してくれたから私自身結構気楽だった。クレドも初めての船旅に興味津々だった。

 赤髪海賊団は私のいた頃と比べると船員が色々と増えたりいなかったりして心配だったけどクレドは楽しんでいるようだから良かった。

 船旅は楽しかった。12年前赤髪海賊団の音楽家だった頃を思い出せて楽しかった。

 ・・・・・でも、戦闘の時は相変わらず部屋いろと言われた。クレドもいるし体も万全じゃないからしょうがないってあきらめた。

 

 それから暫くして私たちは巨人たちの国エルバフに辿り着いた。

 

 私たちよりも何十倍も巨大な巨人たちに私もクレドも興奮した興奮しすぎて膝をついて暫く部屋から出してもらえなかったぐらいには。

 シャンクス達の用事と私の体調を次の船旅の為に整えるために赤髪海賊団は暫くエルバフに滞在することになった。

 

 エルバフでの生活はそこそこ楽しかった。エルバフは元々シャンクス達赤髪海賊団と中が良かったらしい。それに、シャンクスの友人でルフィ達の友人らしい巨人族のドリーとブロギーとも出会えた。

 

 クレドもエルバフを楽しんでいるようだった。道中も幾つかの島を楽しんでいたからエレジアにあった巨人族の本で語られている巨人族にも興奮しているし新しい友達も沢山できたようだった。

 

 過ごしていると沢山のシャンクスの友達である傘下の海賊団達がエルバフにやって来た。そんな海賊の人たちは意外と愉快で人が良い人たちがいっぱいいた。

 シャンクスもウチの傘下弱くてな俺達が守ってやらないとって呟いた。電電虫で聞いていた海賊たちのイメージが違っていて碌でも無い理由で酷い理由で色々な事情で海賊になった人たちがいる事を知って私の世間知らずだって事いやってほど理解した。

 

 もっとも、巨人族の国なだけに騒々しく出発する少し前もシャンクス達がよその海賊団と喧嘩になっていた。何処かで見覚えがあるはずなんだけど何処の海賊だったんだろうあの赤髪の海賊。

 

 準備が出来て出発した私たちは療養の地であるとある島に着いた。

 

 穏やかな空気緑豊かな土地で赤髪海賊団の縄張りでシャンクス達が守っているからか他の土地と同じく私たちに優しくしてくれてた。

 

 穏やかな時間、美味しい空気で私はゆっくりと体を休めていた。

 

 そんな中で世界の動きをルフィの同行を新聞を通して追いかけていた。

 

 ルフィは相も変わらずハデに動いていた。エッグヘッドって場所で暴れてて海軍の包囲を突破してベガパンクって人を連れて行ったらしい。

 それから私たちが離れたエルバフで更にひと悶着があったらしい。

 

 穏やかな時間をクレドと一緒に過ごした。ゆっくりとした時間が流れたからこそクレドとちゃんとするべき話し合いをしておこうと思った。

 

 そして、健康になった私はシャンクスと共に最後の島ラフテルにやって来た。

 

 最後の島海賊王が宝を隠した辿った最果ての島。程なくしてルフィ達もやって来た。

 

 エレジアで行われたルフィとシャンクスの二つの海賊団の激突の続き、それを私とクレドは見守った。

 

 激戦だった。皆が皆全力ですべてをぶつけた戦いはエレジアの規模をはるかに超えていた。

 

 その激戦を勝てたルフィは本当に強くなったんだなって思えたんだ。

 

 激戦を制したことで名実ともに海賊王になったルフィ。そして私たちは最後の島で見た。思わず笑ってしまうような莫大な宝をそしてルフィのゴムゴムの実を大昔に食べたジョイボーイって人が残した夢と世界の真実を私たちは知ってしまった。

 

 

 その直ぐに世界を賭けた頂上戦争が始まった。

 

 きっかけはルフィの友達を手に出した事。孤独な王様が800年前の戦いを再び引き起こしたのだ。

 

 私もクレドをゴードンに預け戦いに向かった。

 

 私が私だけが出来る私の戦いを必死にした。

 

 私だけじゃないルフィがルフィのお父さんやお義兄さん率いる革命軍、ルフィを慕い子孫に未来を渡すために戦った様々な人たち。・・・・・そしてシャンクスが戦った。

 

 そして、ルフィは800年続いた支配と差別の時代を終わらせた。

 

 ついでに大海賊時代も終わった。

 

 ルフィの後海賊王の称号を手に入れたバギーって人が捕まって公開処刑されたから。・・・でも、とある場所でよく似た海賊を見かけたんだけど人違いかな。

 

 世間でバギーって人が海賊王になったのに良いの?とルフィに聞いても偉くなりたいわけじゃないって言ったから私はそれ以上は言わなかった。

 

 それから私とルフィは正式に夫婦になって色々な場所に航海をして新しい子供達をもうけてそれから――――――5年の月日が経ちました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――いよいよだな」

 エレジアの港に集まった人たち。これから始まる一大イベントに心を躍らせていた。

 

「いよいよですねぇ」

「ああ、いよいよだ。お前さんとしては寂しくないのか?」

「寂しいと言えば寂しいですがあの子がそうしたいのならそうするべきですよ。ましてやルフィさんの子供ですからねヨホホホ~~」

「そうじゃの夢を追いかける者を止める事はできないしの」

 ブルックとジンベエがしみじみと言う。

 

「材料はこれで良いでしょうか?」

「悪くはねぇな・・・ちゃんと材料の良い悪いは確かめて使えよ。もしクレドちゃんに腐った料理を食わしたら何処までも追いかけて海王類の餌にしてやるからな」

「わ、分かりました師匠」

「師匠じゃねぇ」

 サンジとサンジを師匠と呼ぶ料理人が料理の材料を仕分けしている。

 

「流石に海賊王の船大工が作った船ウォーターセブンからエレジアまで楽々と行きましたね」

「アウ、そりゃあな。けど定期的に港で点検受けてもらった方が良いぜ」

 「分かりました。出来るだけ壊れたりしないように頑張ります」

「アウ、頑張れよナミの海図も大事に使えよどんなにいい船でも航海士がだめなら直ぐにダメになっちまうから」

「はい、胸に刻んでおきます」

 赤いオウムをシンボルとするスループ船の前で船を造ったフランキーと船の航海士を務める男が話をする。

 

「この薬草とレシピはこちらに頼みます」

 1人のミンク族が運ばれていく荷物を自分の部屋に持っていくように指示する。

 

「全部運び終わったのか?」

 チョッパーが訪ねて来る。

「はい問題無いです」

「そうか!じゃあクレドの事頼むぞ」

「はい分かりました先生」

 二人が優しく手を重ねる。

 

 

 

 

「―――――とうとうこの日が来ちゃったんだね」

 エレジアの城でウタは呟く。

「そう!この日が来たんだよお母さん!」

 寂しげなウタとは対照的にクレドは楽しそうだった。

 

 5年の月日は幼い少女を成長させるには十分だった。背は伸び体つきも母親譲りの女性らしい丸みを帯びていた。

 17歳になり大人の女性の顔とまだまだ幼い少女の顔が混じった美少女の美貌で楽し気に笑い太陽のように明るいその笑顔は身も全てを魅了するだろう。

 

「・・・・・ほんと、私の子達は何処までも飛びたくなる子ばっかりで寂しいよクレド」

「―――ごめんね。お母さん。それでも『私』はみんなと共に夢をかなえたいだ」

 クレドは黒いショートズボンを履いてSONGとソフトクリームが書かれたラフなTシャツを着て背中にギターを背負う。

 

「―――――ねぇ、クレド。一つ聞いて良い?」

「なに?お母さん」

 ウタに聞き返すクレド。一息置いてウタは言う。

 

「私の元に生まれてきて良かった?」

 12年もの間ウタはクレドをゴードンと二人で育てた。その12年ウタは幾つもの後悔と自己嫌悪を繰り返した。だからこそウタは聞きたかった。本当に自分なんかが母親で良かったのかと。

 

「―――――何言っているのよお母さん」

 クレドはウタに抱きつく。

「クレド」

 抱きついたクレドにウタも優しく手を回す。

「私はお母さんとお父さんの子供だよ。誰が何を言おうとそれだけは誰にも否定させない。だから―――――産んでくれてありがとうお母さん」

 その言葉を聞いてウタの目に涙が流れる。

 

「うん、ありがとう。私も生んで良かったよクレド。本当に私の元に来てくれてありがとう」

 エレジアの城の部屋に流れる穏やかな風が流れる。

 

「あれ母ちゃんと姉ちゃん抱っこしているおれもおれも!!」

「ホントだわたしも抱っこ――!」

 赤髪の少年と黒髪の少女が二人に抱きつく。

 

「あー、もう。やんちゃな弟と妹だな。あーもう」

 黒髪の妹を抱き寄せるクレド。

 

「ふふっ、今日がお姉さんの旅立ちだったって覚えているよね」

 ウタも赤髪の娘を抱き寄せる。

 

「いーな。おれも冒険したいな父ちゃん達ここ最近連れていってくれないし」

「あたしもー」

「ふふっ、アンタ達も大きくなったら仲間を集めて冒険に行けばいいのよ今が一番強くなれる方法がいっぱいあるんだから」

 笑いあう姉妹達その光景を見てウタは柔らかく微笑んだ。

 

「あれルフィは?」

「お父さんはまだ寝ているよ」

「・・・・・はぁ、全くルフィったら相変わらずなんだから。寝すぎていたら起こさないと」

「うん。私の旅立ちをお父さんに見届けて欲しいからね」

 

 

 

「ああ、来たんだねクレド。・・・おやウタとルフィ君は?」

 船に幾つもの荷物を運ぶのを確認し終えたゴードンの元にクレドがやって来る。

 

「まだ寝ているよお母さんが起こしに行ったよ」

「あははは、相変わらずルフィ君らしい」

 その言葉を聞いてゴードンは若干呆れ気味な顔を見せる。

 

「話を変えるが・・・ここで良いのかねクレド?」

「何の話?」

 話の内容が分からないクレドはゴードンに返す。

 

「旅の始まりをクレドの夢の始まりをこのエレジアで始める事にだよ。他にもあったんじゃないのかと」

 ルフィの生まれ故郷フーシャ村を始め船旅の始まりなら幾らでもあるはずだと。

 

「何言っているのここしかないじゃない」

「そ、そうなのかね」

「だって、私は此処で生まれてここで沢山の音楽を学んだんだよ」

 しっかりとした目でゴードンを見つめるクレド。

 

「私たちしかいなかったエレジアは今じゃあ沢山の人たちが音楽を学ぶためにやってきている。私はエレジアの音楽をもっと広げたいそれも私の夢だから私の始まりの場所エレジアこそが私の旅の始まりの港なんだよ」

「―――――そうか、なら私もちゃんと送り届けないとね」

 満面の笑みで語るクレドをゴードンも優しく微笑んだ。

 

「クレド!いよいよだな」

「クレドちゃん見送りに来たよ」

 人ごみをかき分けてサボとコアラがクレドに会いに来る。

 

「サボおじさん!コアラさんも!おじいちゃんは?」

 サボを始めとした革命軍の面々が来たら自分の祖父であるドラゴンも来るのではないのかと思い聞く。

 

「あ~ドラゴンさん仕事で忙しいから代わりに見送ってくれって」

「そっか大変だよねおじさんたちが来てくれただけでも良かったよ」

 

「お~~いクレド待ってくれ!!」

 そう言いながらルフィがウタと一緒に走って来る。

 

「おっ、ルフィ遅かったじゃないか」

「もう!娘の旅立ちを寝坊するなんてルフィくんたら」

「シシシわりぃ」

 頭をかきながらルフィはクレドに近づく。

 

「クレドいよいよだな」

「うん。お父さんたちと一緒に旅した時とは違う新しい冒険が私を待っているんだって思うとワクワクするんだ」

 嬉しそうに笑うクレドにルフィも釣られて笑う。

 

「そうか、ならよこいつをクレドに託すよ」

 そういいルフィは首にかけた麦わら帽子をクレドに被せる。

 

「――――――え?待ってこれって」

「シシシこいつをお前に託すその麦わら帽子が似合う音楽家になるんだぞ」

「―――――お父さん」

「頑張れよクレド」

 ルフィが拳を突き出す。

「うん!」

 クレドも拳を突き出しぶつける。

 

 

 

 そしてクレドとその仲間たちの船出の時がやって来た。

 

「クレド頑張って来いよ」

 ゾロが手を振る。

「クレドちゃん頑張っていってね」

 ナミも手を振る。

「クレド!楽しい冒険をしろよ!!」

 ウソップも手を振る。

「行ってらっしゃい。貴方と貴方の仲間達の旅を祈るわ」

 ロビンも手を振る。

 

 麦わらの一味だけではない。フーシャ村の人たちがアラバスタの人たちがリュウグウ王国の人たちがドレスローザの人たちがワノ国の人たちがクレド達の船出を見送る。

 

「うん!皆ありがとう行ってきます!!!」

 手を振る皆にクレドも手を振る。

 

「それじゃあ行きましょうかリーダー」

 魚人の男がクレドに声をかける。

 

「うん。行こう皆。行こうオケアノスエコー最果ての海まで私たちの歌を響かせるために」

 性別も違えば種族も違う同じ夢を追いかける仲間達に自分達を乗せる船の名前を呟きながら船首に歩み寄る。

 

 決して楽しいだけの度じゃない事はクレドも分かっている。どれだけルフィ達が新しい時代を切り開きほとんどの海賊たちが冒険者や船乗りなっても海賊になる人間はいっぱいいる。

 

「―――――うん見守っててね。おじいちゃん、おじさん」

 麦わら帽子をかぶりなおしてクレドは大声で叫ぶ。

 

「世界一の歌姫に私はなる!!!」

 何時かの父親のように少女は叫ぶ。

 

――――――力、名声、愛、この世全てを手にした男海賊王モンキー・D・ルフィ彼が作り出した新時代は人々を海へ駆り立てた。世はまさに大冒険時代。

 

 そんな大冒険時代に一人の少女が自分の夢の果てを叶えるために漕ぎ出す。少女の冒険がどうなるのかはそれはまた別の物語。

 

 

 

 

 

―――――――――おしまい。




色々とありましたがこれにて完結となります。最初の日付を見たら最初の投稿から一年たってない事が分かって意外だったなぁって思います。

正直書き始めた当初のエンディングはこんなにさわやかなエンディングではありませんでした。当初のエンディングはもっとしんみりしたモノになるはずでしたが多くの人のコメントを拝見して徐々に話が変わっていきこのエンディングになりました。

続編を望んでいる声も多いでしょうが正直言います無理です。
書いていた当初は色々と考えていましたがいざ書いているとこれ以上は蛇足で俺がプレッシャーで潰されます。
 書いている途中逃げ出したい気持ちになる事も度々ありましたので無理やり頭を回して続きを書くのは苦行なので諦めて下さい。
 
それはそれとしてワンピース以外にも新しい小説のアイディアが幾つも湧き上がるので色々と書きたいですね。まぁ、執筆中の作品幾つもあるのですが(苦笑)

最後に素晴らしい作品のアイディア元になったあにまんと応援してくださった皆様に感謝を。

尾田栄一郎先生に乾杯。


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