ラスボスはお母さん (ラスボスはゴッドウソップ)
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これが地獄か
◯月✕日
ゴードンから誕生日プレゼントに日記帳を貰ったので日記を書くようにした。
見られたらヤバい内容になると思うけど、いい加減この地獄みたいな環境について整理をつけたかったし丁度良い機会だと思う。
じゃあ先ずは簡単な説明から。
私ないし僕は転生者だ。
前世でトラックに跳ねられてお亡くなりになり、神様的なやつで死後好きな世界に転生させて貰える……有名なあれにあやかれたタイプの転生者である。
私はそこでONE PIECEの世界を選び、そして異世界転生物のお約束でもある、転生特典というやつで"好きな悪魔の実を選べる権利"と"好きな血統に転生出来る権利"を貰った。
別に隠すことでもないので私が選んだ悪魔の実と血統について書くが、悪魔の実はセルセルの実の遺伝子操作人間。まぁ男になったり女になったり顔を変えたり、身長を急激に伸ばしたりと色々と出来る
今にして思えば、悪魔の実は何故
……さて、取り返しのつかない過去ばかり振り返っていても仕方がないので現実に戻る。
先ず私は今、エレジアにいる。
ONE PIECE史上最高収入を叩き出した劇場版のヒロインにしてラスボス、歌姫ウタの暮らすあのエレジアである。
どうやらここはONE PIECEフィルムの世界線らしい。
既にトットムジカった後なのか住人は元国王のゴードンと死んだ魚の目をしたウタ、そして私の三人のみ。
ウタは15歳で私ことルタは6歳。ゴードンさんは何故かはぐらかされたので仮に41歳としておこう。
何故私がここにいるかだが、ゴードンさん曰く、私はどうやらこの国唯一の生き残りらしく、死んでしまった両親に代わり彼が親代わりとして育ててくれているらしい。
はて?ドラゴンの娘……ルフィの腹違いの妹ルートかと思ったが、
どうなってんだ。バグか?と転生特典であるセルセルの実を手に入れる以前は、そもそも転生特典がなかったことになったのかと思いはしたが、先日、無事セルセルの実を食する機会に恵まれ、それならどういう事だと私はもう一度ゴードンに尋ねることにした。
「ねぇ、私のパパとママは本当に死んだの?」
「……ぁ、あぁ。そうだよ」
……怪しい。さてはお前何か隠しているな!
実はモンキー一族の親戚がこの国で暮らしていた可能性も視野に入れていたのだが、ゴードンの反応でそれは潰える。
ドラゴンが娘の可愛さを想ってエレジアに隠したのか、ガープが風船にくくりつけて飛ばした結果なのかは知らないが、間違いなく何か私にとって良からぬ真実をゴードンは隠していた。
ネームドキャラほど重い過去を抱えているONE PIECEの世界だ。神の天敵と言われるDの一族で出生が不明。いや、出生はモンキー一族なのだろうが、海軍の英雄が祖父で革命軍のトップが父、海賊では四本の指に入る大海賊が主人公と、モンキー一族はDの一族でも危険度はピカ一。
事によっては生きているだけで世界政府から命を狙われる可能性もあるわけで、とてつもない不安に襲われた私はそれを絶対に暴いてやろうと躍起になった訳だ。
そして色々とアプローチを変えてみたり、セルセルの実の力でちょっと脅してみたりもしたが、ゴードンは絶対に口を割らなかった。もう何が何でも話すものかって感じで、鬼気迫る物を感じる。
ここで諦めてしまえばある意味、幸せだったのだろう。
だが、事件は起きた。
「ねぇねぇ、いい加減におしえてよ~」
「だから言っているだろう?キミの御両親は災害で命を……」
「……ルタは私の娘だよ」
「「は?」」
瞬間、世界が凍りついたようだった。
「ウタ……いきなり何を」
「そうだよお姉ちゃん。それはいくら何でも」
夕食のパスタをすすりながら、世間話でもするみたいにとんでもない情報をぶちまけるウタちゃん。冗談だとしても
ほら、いきなりおかしな事言うからゴードンが絞め落とされる三秒前のニワトリみたいな顔してるぞ。
「ルタはまだちっちゃいから分からないと思うけどね、赤ちゃんって子供でも出来ちゃうんだよ。ゴードンは私が大人になるまでルタには黙ってるべきだって言ってたけど……ルタは私が9歳の時に産んだんだ」
何を言ってるんだこいつは。
……まさか!ドラゴンの野郎、ロリコッ
「パパは多分……そう、ルフィ。だから貴方の本当の名前はモンキー・D・ルタってことになるのかな?」
今度こそ、世界は凍りついた。
いや、……そのさ。
何この地獄みたいな設定!重いって!
このクソ神クソ野郎!なんて事してくれとんのじゃああああああああ!!!!!!
と言うのか半年前の出来事になる。
それからはもう……重いよ。ウタのハイライトのない瞳は益々ダークになっていくし、ゴードンは過度なストレスで血を吐いて倒れたし、私のセルセルの能力で胃に空いた穴は塞いだけど、根本的な解決にはならないようで日に日に窶れていっているような気がする。
う~ん。ここが地獄でなくてなんと言う?
……もう死んだほうがいいんじゃないですかね私は。
いや、死んだだけだとゴードンやウタにダメージがガガガガガガ
はぁ……楽しくない、申し訳ない、死にたい、殺して……
私の胃にも穴が空きそう……能力で治せるんだけどね。
うん。
今日はこれぐらいにしよう。
何にも解決しなかったけど、少しだけスッキリした。
これからも続けて行こうと思う。
◯月△日
そうや、ホビホビの力で私の存在をなかったことにすればええやん!
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消えることに必死だった
◯月✕✕日
ホビホビの能力で自分の存在をなかったことにしよう。
そう決意してから行動は早かった。
ようはドレスローザまで行って、適当に暴れてドンキホーテファミリーに捕らえられればいいのだ。
そうなればウタが原作以上に曇ることも、ゴードンの胃に穴が空くこともない。
その日のうちに私は荷物を纏め、定期船に乗り込む計画を建てた。
エレジアは前半の海にあるらしいから後半の海にあるドレスローザまではかなりの長旅となることが予想される。
必要となるのは、その為の資金と食料か。
まぁ途中までは海列車で進んで、何とかカームベルトを乗り越える方法を模索しなければならないが、最悪は
ドラゴンは死ぬかも知れんが……可愛い初孫のお茶目だと思って受け入れてほしいと思う。
別に抱っこぐらいならさせてあげてもいいのよ?
……おげぇ。
まぁそんな訳でエレジアの国庫を漁っていたのだが、速攻でウタちゃんに見つかった。
「何……してるの?」
ヒェ。こいつ目が笑ってねぇ。
「ねぇ……ルタ。お母さんに教えて欲しいな。何を探しているの?」
「お、お姉ちゃ」
「
……少し漏らした。
ちょっと前まではお姉ちゃん、ルタって可愛らしく呼び合ってたのに、今ではこれよ。
諸君、篤と見るがいい……これが地獄というものだ。
肉親のみが子に放つことを許されるという伝説の覇王色の覇気を受けて六歳ボディのルタちゃんは半泣きである。
「お、玩具を……探してたの」
「……玩具。そうだよね。まだ子供のルタがまさか海賊みたいに盗みを働こうなんて悪さをするわけがないよね」
ウタちゃんってもしかして見聞色の覇気持ってる?て疑いたくなるぐらい的を得た考察だが、どうやらギリギリ騙し通せたみたいだ。
◯月△△日
ゴードンにエレジアを出る旨を伝えた。
表向きには隣国であるドラム王国から優秀な精神科医を連れてきてウタちゃんのボロボロメンタルを修復しようという提案である。
「駄目に決まっている」
ですよね~
「いいかルタ?キミはその特別な力で大人の姿になることは出来るが、まだ六歳の子供なのだ。グランドラインは危険な海賊も多い。キミ一人だなんてとても……第一ウタが許す筈がない」
まぁウタちゃんが大嫌いな
「ウタは今、とても不安定な状態なのだ。今まで君へ注ぐべきだった愛情を圧し殺し、姉として細々と注いでいたそれがあの日を境に一気に溢れ出し、歪んだ形となって君に降り注いでいる」
だから専門家が必要なんじゃないですか。
まぁこの頃だと既にバカワポルの手によって優秀な医者の殆どは国外追放されてるだろうから、まともなのはDr.くれはぐらいしかいないんでしょうけども。
「君はウタが何故、三食キチンと食事を取るのか知っているのかね?」
あの完璧なプロポーションを保つ為じゃね?知らんけど
「君の為だ。一時は水も喉を通らぬほど塞ぎ込んでいた彼女は、君に栄養を与える為にバランスの取れた食事をするようになった」
栄養(意味深)……別に六歳児なんだから恥ずかしがらずにおっ◯いとかでもいいよ、て言おうと思ったけど、9歳児のおっ◯い飲んでる赤ちゃんって絵面が最高に犯罪的で洒落にならねぇな。
「あの事件からウタが笑顔を見せるのは君の前だけなのだ。どれだけ歪んでいても今はそれに縋ることしか出来ない私を許してくれ……私にはウタの心を救うことは出来なかった!」
血を吐くように、そう言葉を絞り出すゴードン。
その目尻にはうっすら涙が浮かんでいたが、胃に熱々の鉛を流し込まれたような重い話をされて、正直泣きたいのはこっちである。
別に実年齢を言い訳にするわけではないけど、私まだ六歳よ?
取り敢えず、私が自殺したら二人とも後追い自殺するんだろうなってのは今回で分かった。
よしよし、一歩前進、朗報だ!
…………寝よう。
◯月♡日
今日はセルセルの能力で男になった。
するとウタちゃんの様子がおかしい。
「ル、ルル……ルタ、その姿はやめて」
どうやらこの姿、クリソツではないにしろルフィ寄りの為、どうしても彼を思わせてしまうのだとか。
怒られはしなかったが、それが逆に怖いと言うかなんと言うか……もうウタちゃんの前で男になるのはやめておこうと思う。
◯月☆日
やったぜ。
電伝虫を見つけた。
残念ながらベガパンク製の電伝虫じゃなかったみたいだけど、私はセルセルの実の遺伝子操作人間。電伝虫も生物ならやりようはある。ってことで研究開始だー!
―――――てなわけで完成した。
まさか半日で完成するとは思わなかったけど、ようはラジオと同じだ。周波数を調整して不確定多数に通信が届くようにすればいい。
早速ウタちゃんにプレゼントしたら戸惑いつつも喜んでた。
シャンクスにウタを立派な音楽家にするって約束はこの世界でもゴードンはちゃんと守ってたからね。
その洗練された歌声を電伝虫を通して届ける姿はまさに歌姫…………後は私が消えるだけである。
「凄い、凄いよ!私の歌が素敵だって人がこんなに……そうだ!ルタも何か歌いなよ!」
えっ?
△月◯日
「こんにちは皆!ウタだよー!」
ファン:待ってた
ファン:ウタちゃん~!
ファン:やった!
ファン:ウタのライブだ!
何とか出演することだけは避けつつ、ウタちゃんがライブ配信にハマってから早3ヶ月。あえて小型電伝虫を改良することでウタの配信が聞ける範囲を絞った事が幸いとし、原作のような勢いでファンと言う名の海賊排除主義のカルト信者が急増することもなく、小規模のコミュニティで盛り上がる至って平和な日々が続いている。
その間に私は覇気の練習をしていたのだが……全くと言っていいほど成果を上げられず、途中から能力を伸ばす方法にシフトして、半径30メートル内にある電伝虫のコントロール権を奪うという強いのか弱いのかよく分からない必殺技を獲得していた。
そろそろウタちゃんのメンタルも安定した頃だし、本来の目的を果たしたいのだが、最近はゴードンが私にも歌のレッスンをさせるので計画の為の時間が取れないのが悩みの種だ。
△月✕日
「ルタ……ルタはどこ!?」
「落ち着けウタ。ルタはちょっと隠れているだけさ」
「落ち着け?ルタはまだ六歳の子供なんだよ!?それなのに……あぁどうしよう。ルタがルタがぁぁぁぁぁ!!!!」
前回、ウタのメンタルが安定したとか言ったな?
あれはウソだ。
いよいよこの島から脱出して、モンキー・D・ルタという存在をこの世界から抹消しようという計画実行を間近に控えた日。私はドレスローザに着いてからホビホビの力を受けるまで最低10日は掛かると計算し、果たしてそれまでウタの精神は耐えられるのか?と抜き打ちで時間無制限かくれんぼを決行した。
そして結果はこの通り、6時間でウタちゃんのメンタルは崩壊した。
……正直、これは予想外だ。
1日ぐらいは持つかと思ったが、今にも自殺しそうな勢いである。
取り敢えず直ぐに出ていって土下寝からの頬にキッス。一緒にお風呂、添い寝でウタちゃんの壊れた精神の修復に努めなければならない。
✕月◯日
ドレスローザについた。
最近ちょっとサボり気味だったが……ほんと忙しかったのだ。
まさかウタちゃんがストレスで歌えなくなったり、遂に自傷行為に走り出したりと、それに奔走する毎日は本当に大変で、はぁ……疲れた。
だが、もうすぐこの地獄も終わる。
出来ればウタちゃんがエレジアを崩壊させたという証拠である映像記憶電伝虫だけは破壊したかったが、どれだけ探しても見つからなかった。
まあエレジアに自生しているネズキノコは食べると眠りにくくはなるが、体力が限界近くになると勝手に眠ってしまうように品種改良したので多分大丈夫だろう。
ウタちゃんもゴードンも、この苦しみからもうすぐ解放される。
地獄のような六年だったが、まぁ悪くない人生だった……
ポンッ
あ、そう言えばゴッドウソップがシュガー気絶させたら終わるやんけ。
陶器の人形になった後でそれに気付く。
あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!
【ウタ日記 UTA diary】#n えっ私の過去の配信に子供の幽霊が映ってた!?
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パパが現れた
陶器人形になってから、あっという間に6年経った。
もう原作はとっくの昔に開始して、何なら2年後で、麦わらの一味は既にドレスローザへ上陸している。
確かドレスローザ編は一日の出来事だったから、このまま行けば夕方頃には全部決着が付くんだろう。
……いや、あの壮大な物語が一日の出来事なのかよ!
とツッコミをいれたい所だが、残念ながらそれは出来ない。
今の私は唄う陶器の人形。肉親であるウタから受け継いだ才能とゴードンの指導により開花した天使のような歌声(自画自賛)で人々を魅了する、しがない客引き玩具だ。
自由に動けないこともないが、あまりにらしくない行動は取れないようになっている。
「ん?」
「どうしたルフィ」
「おい、お前。どっかで会ったか?」
そう、私はホビホビの能力を受けた後、シュガーに二つ契約を結ばされたのだ。
一つは言わずもながらドンキホーテファミリーに敵対しないこと。
二つ目は、自身の得意としていることでファミリーの役に立つこと。
契約を結ぶ前に逃げようだなんて、まぁ狙っていなかった訳ではないが、案外この生活も悪くないんじゃないかと思う自分がいる。
玩具になって、折角食べた悪魔の実の力が使えないなどの不便はあるものの、ここにあったのはONE PIECEの世界で生き生きと生きる私の夢だった。
玩具でいれば、生きているだけで胃をキリキリさせることもないし、人前で歌って褒められて、稼いだお金で新聞や映像電伝虫を買い、大海賊時代のうねりの様を見物しながら過ごす……何とも言葉では言い表せないぐらい素晴らしい物だった。
「えっ?会ったことですか?……いや~会ったことはないですね~」
「ししし!!……そうか。何か懐かしい感じがしてな!」
……別に目の前のルフィをパパと呼んではいけないような縛りはないが、前に言ったように、それは私を含めて誰も望んでいない展開である。
正直、ルフィには私の存在は死ぬまで認知していて欲しくない。
だからこのまま一生玩具のままがいいのだが……う~ん。やっぱりずっと考えてたんだけど、気絶したシュガーを速攻で起こして再度玩具にして貰うしか方法はないんじゃないだろうか。
そうしないと麦わらの一味が詰むし。
それまで6年間も一人娘の存在を忘れていたウタちゃんの精神が持つか……だが本当の本当に幸いなことに今日はウタちゃんが配信ライブを行う日なのだ。
私のプレゼントした電伝虫では新世界まで電波は届かない筈なので、劇場版の流れ通りベガパンク製の電伝虫を拾ったんだと思うが、その人気はやはり爆発的であり、ここ二年で急激に名を上げてきたらしい。
お陰で自分で用意しなくても誰かしらが聞いているので、今日がライブの日であることを聞き耳で知る事が出来ていた。
ネズキノコを食べてないウタちゃんは一曲能力を使って歌っただけで眠ってしまうような貧弱?体力しかないので、上手いことタイミングさえ合えば、ウタちゃんが眠っている間に全てを終える事が出来る。
そのタイミングを合わせる為にはシュガーの近くにいなければならないが、何も6年間ただ歌っていただけでなく、あの原作にあった交易港の場所ぐらいは知っている。
だからゴタゴタしてきたタイミングでアッチに乗り込めば……
「なあなあ、今度は違う曲歌ってくれよ!」
……まだ居たのかパパ。
いや……うん。別に一曲ぐらいならいいんだけど、妙に食い付いてきたな。アンタ、歌とかに興味あるタイプとかじゃなかっただろ。
「オーケー、オーケーよ!何かリクエストとかありますか?」
「う~ん……なら、あれがいい!ウタが酒場で歌ってたやつ!」
あぁ、『風のゆくえ』ね。アニメで見た。
それならよく歌ってるから大丈夫。
「ふぅ…………この風ー」
「おいおいウタってやつが誰だか知らねぇが、そんだけでこいつが何を歌えばいいか分かる訳ねぇだろ」
……危っねぇ!!!!
危うく怪しまれる所だった。サンキューフランキー……バレてねぇよな?
「おっとそうだな。確かぁ~世界の大革命とか言ってたような」
いや、絶対言ってない。どういう記憶力してんだ我が父君は。
「って、こんな所で道草食ってる場合じゃねぇぜ」
「そうだ!エースのメラメラの実!歌の上手いやつ!また今度な!」
こうして嵐のように去っていったルフィとフランキー。
これが私が
間違っても「お前、俺の船に乗れよ」的なルートにはなってはいけない。
もし私の正体がバレでもしたら確定で麦わらの一味の関係に亀裂が走る。そして同情の余地はあるとはいえルフィの対応次第によっては子供大好きなナミさんにルフィが殺されかねない。
それは何というか、死ぬほど申し訳ない。
前世の唯一の心残りはONE PIECEを完結まで見届けられなかったことと迷わず答えるぐらいこの世界を愛していた私が、他ならぬ私の存在によって一味を無茶苦茶にしてしまうのだと思うと、本当の本当に……死んでも死にきれないのだ。
今日私のするべきことは気絶したシュガーを起こしてもう一度玩具にして貰うこと。
そしてもう気絶することがないように、そもそもルフィ達とシュガーを接触させない。
接触してまたウソップに気絶させられるようなことになったら、また起こして玩具にして貰う。
セルセルの実の力なら意識を覚醒させることぐらいは出来る筈……気合いを入れろ私!ここを乗り越えれば気負いなくONE PIECE世界を満喫出来る夢の陶器人形生活が待っているぞ!
◯月✕日
なんと ルフィが起き上がり 仲間に入れたそうにこちらを見ている
ちなみにルタの歌唱力は普通に歌が上手い人レベル。
しかし声質はウタにかなり似てる。
ドレスローザで6年暮らしていたが、本当にただ暮らしていただけなのでドレスローザ組とは殆ど交流はない。
キュロス(兵隊さん)と軽く挨拶した程度。
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ウタ日記①
◯月✕日
今日から日記を書くことにした。
理由は……他でもない。
赤髪海賊団のような偽物じゃない本当の家族がもうすぐ生まれるから。
定期船に乗っていたお医者さんの話では小さい私の身体では出産に耐えられるか分からない、もしかしたら死んでしまうかもしれないと言っていたので、もし私が死んでしまった時の為にこの日記を書き残しておく。
◯月△日
……お腹痛い。
◯月♡日
昨日はお腹が痛くて、殆ど何も書けなかったけど、今日は何と産まれてくる子供の名前について考えてみた。
その名前と言うのは……ルタ。男の子でも女の子でもいいように私と多分この子の父親になってしまうんだろう男の子から一文字ずつ取って付けた。
最初に謝っておく。
もしルタが将来アイツと出会うような事があってもどうかあの子を恨まないでやってほしい。
あの子がルタの存在を知らないのは私が悪い。だからあの子の態度にむしゃくしゃしたら私のお墓に当たって下さい。
△月✕日
ドラム王国からお医者さんが来た。
Dr.くれはという元気そうなお婆さんだ。
いよいよ風船みたいに大きくなった私のお腹を見て、もう3ヶ月は早くお呼び!とゴードンを蹴飛ばしていたけど大丈夫だろうか?
△月◯日
Dr.くれは曰く、もうルタはいつ産まれてもおかしくないらしい。そしてあまり産まれる時期を遅らせると母体の中で子供が成長して、出産のリスクがより高くなると言っていた。
「母子共に健康でありたいなら……今日生ませるのがベストだろうね」
もうすぐ生まれるんだろうなと考えて、この筆を取ったのだが、まさか日記を書き始めて数日でこんなことになるなんて考えてもいなかった。
ゴードンもビックリして「本当に今日なのか!?」とくれはさんに何度も尋ねていたけど、アンタは邪魔だと叩き出されて―――なんといつの間にかルタは私の腕の中にいた。
くれはさんは「頑張ったね」て優しく頭を撫でてくれたけど……興奮や歓喜する思いよりも先に戸惑いが強く出てしまう。
怖かったけど、死ぬ覚悟だってしていたのだ。
なのに、こんなあっさり……でいいんだろうか?
△月✕日
くれはさんはそれから半年ほど私の育児のサポートをしてくれた後、残された国の財産の半分を報酬として支払おうとするゴードンに「私はただ子供を取り上げただけさ。医者が治療もしてないのに患者から金を巻き上げるわけにはいかないよ」と返した後、子供の為を思うなら三食キチンと栄養の取れた食事を取るように私に言い聞かせた。
それと辛くなったら周りの人間を頼るんだよ、と私の瞳を見ながら。
✕月◯日
子育てって本当に大変だ。
くれはさんが山のように残してくれた育児ノートを片手に悪戦苦闘する毎日。
ルタは普通の赤ん坊に比べたら夜泣きは少ないし、理由もないのに泣いたりはしないんだけど、兎に角落ち着ける暇がない。
少しでも目を放したら、死んでしまいそうで不安だ。
✕月△日
産まれてきた時は地肌を覗かせるほど薄かったルタの髪は気付けばふさふさになっていた。
私の赤とあの子の黒で半々に分かれた髪色は、ちょっとヤンチャなイメージを抱かせる。
顔立ちは私に似て可愛らしい、けど笑った顔はあの子にそっくりだ。
将来はきっと笑顔が素敵で宝石や花の似合う絶世の美少女になるに違いない。
私の子ってことはやっぱり歌が好きになるんだろうか?
もし叶うならこの子と大きな舞台でたくさん歌ってみたいな。
✕月✕日
今日はゴードンと喧嘩した。
喧嘩の理由は……ルタに私が母親であることを話すべきか否か。
当然私は本当の家族なのにウソをつくなんてあり得ないと強く反対したけど、ゴードンが言っていることも理解出来なくはない。
18歳だ。私が18になるまでルタは私の妹として育てる。
△月✕日
昨日はそうは言ったが、ルタはまだまだ赤ちゃんだ。
私がいなければ何も出来ない。
だから物心つくまでは私はこの子のお母さんであり続けようと思う。
△月◯日
シャンクス達の夢を見た。
今の私にとっては憎々しい人たちだけれど、大人になったルフィを前に、ルタを抱っこする大人の私を背にして、「おい、ルフィ……覚悟は出来ているんだろうな?」
「あぁ、責任は取る!」
「そうか。……ならば俺達の屍を乗り越えて行け!」
「はぁ!?」
とルフィと大喧嘩する様には大声を上げて笑ってしまった。
これが夢でなければもっとよかったんだけど……
△月✕日
ルタが熱を出した。
ゴードンは直ぐにくれはさんに連絡を入れようとしたけど、この嵐で電伝虫が上手く繋がらないらしい。
そして繋がっても、この海の荒れようじゃ直ぐに駆けつけることは難しいとゴードンは言っていた。
どうしよう
どうしよう
どうしよう
どうしよう
どうしよう
どうしよう!
ゴードンさんは普通に顔が怖いので物心付く前のルタを抱っこすると高確率で泣かれる模様
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海軍主戦力
紆余曲折ありつつドレスローザ編に当たる原作の流れが終了した今、
シュガーは行方不明となり、何故かルフィに気に入られた。
数年ぶりに戻った体は6歳の時のままだった。
……そんなことは今はどうでもいい。
今重要なのは、ホビホビの呪いが解けてしまった今……ウタちゃんはどう動くのか。それが重要だ。
ドレスローザ
南海岸
海軍仮
―――仏のセンゴクの膝上
と言うわけで私は今、流石にルフィもここまでは追って来ないだろうと無礼にもセンゴクさんの膝の上に腰かけて、無数の電伝虫とにらめっこしている。
「あー、お嬢ちゃん?いい加減ワシも膝が疲れてきたんじゃが……」
「黙って!今はそれどころじゃない!」
私の知るウタちゃんなら、私が消えたと知ったら発狂するより先に探そうとする筈だ。時間無制限かくれんぼの時は結局見付けられずに発狂していたが、一応記憶が戻った時でなきゃ開けられない金庫に私がドレスローザで暮らしている情報は残してきた。
つまり、それに気付けば何らかのアクションを起こしてくる筈。具体的に言えばウタウタの能力でドレスローザ中の人々をウタワールドに取り込み、その中から私を探そうとする的な……この世界に転生する前ならそこまでやらんだろうと笑ったが、それが一番早くて確実な以上、ウタちゃんなら絶対にやるという確信がある。
プルプル プルプル
「はい!もしもしー」
『あー誰じゃ?ワシはセンゴクに掛けた筈なんじゃが』
「私はモンキー・D・ルタ!アンタの息子が不倫して出来たアンタの孫娘だ!これで分かったな?分かったな!!分かったらもう掛けてくるな!私は忙しいんだ!!!」
『孫むっ!?……ちょっ待!!!』
叩きつけるように受話器を落とす。
今のでセンゴクさんの体がブルりと震えたり、周りの温度が数度下がったような気がするが、そんなものは関係ない。
今のウタちゃんが劇場版のようなテロ行為を行えば、麦わらの一味や赤髪海賊団もいないエレジアに海軍や世界政府の役人が押し掛けることになる。
それだけは回避せねばなるまいってことでウタちゃんがウタウタの能力を使ったらいの一番にウタワールドに飛び込んで止めにいく必要があるのだ。
プルプル プルプル
「もしもし!」
『孫娘ってマジでか!?』
「あぁもう掛けてくるなって言ったじゃん!」
『いや、だって……孫娘じゃぞ!?しかもお主、その声からしてまだ小さな子供じゃろ!?それがその……本当にワシの孫なのか?――おい、センゴク!近くにいるなら返事せい!もしこの子が本当にワシの孫なら直ぐに会って抱きしめた……ゴホン、ゴホン。ワシはドラゴンを殺しにいかなければなるまい!』
あーこのうるさいひい爺ちゃんめ。
アンタのせいでウタちゃんが引き起こす惨劇を止められなかったらどうすんだ!
「お嬢ちゃん……冗談だよな?」
「おい、イッショウ。アンタはどう思う?」
「あっしには……確かにガープさんやルフィさんと似たような雰囲気を感じるね。少々ルフィさんの方が気配が似すぎている気もするが……まさかね」
「こりゃ参ったね。アイツの血筋は只でさえ騒がしいってのにここに来て一人追加ときた」
「あぁ。ここで保護出来たのは幸いだったな。……そう言えば何故この子はドレスローザに?」
まさか母親もこの国にいるのか?とセンゴクさんが上から語り掛けてくるが、無視。おつるさんが飴玉を取り出してきたので口に放り込む。
あぁ……数年ぶりの糖分が全身に染み渡る。
でも黒飴よりリンゴ飴の方が好きなんだよな……。
そう言えばウタちゃんもリンゴ飴が好きだったけど、やっぱり親子だから味覚も似てくるのだろうか。
でも私、肉よりサラダ派なんだが……
プルプル プルプル
「もう掛けてくるなって言ったろうが!このクソ爺!」
『見つけた♪︎』
――――あっ。
途端に急激な眠気に誘われた。
タイトル詐欺になりそうなのでタイトルを少し変えるかも?
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ルタ屋
「見~つけた!」
あ、良かった……意外と元気そう。
「もうっ、ルタったら。6年間もお母さんに内緒で何しにいってたの?私、とっても心配したんだよ!」
はは。案の定目の色にハイライトがねえや。
でもこれは予想通り。
「でも良かった。ルタに怪我とかなくて。もしルタが怪我してたらお母さん……どうにかなってたかも」
実はドフラミンゴVSルフィ戦に巻き込まれて……と言うか覇気を使い果たしてしまったルフィを5分間守る為に、41歳とドンパチやりあうことになり、死に目の致命傷とか負ったんだけど、セルセルの能力で治しといて良かったと思うこの頃。
一歩二歩と歩み寄ってくるウタちゃんに臆して下がると、何故か背後に壁が出現して、あっという間に抱きしめられた。
「ごめんね。ずっと一人にして……もうこれからは放さないから」
さて、こんな感じだが一先ずは最悪の事態を避けられたようで結果オーライか?
ウタちゃんならもっとヤバい状態になっているんだろうと思っていたが、よくよく考えて見れば思春期真っ盛りの当時15歳が子持ちという特大地雷を抱えていた前と心身ともに大人となった今とでは精神的余裕も違うんだろう。
ちょっとヤンでるようだけど、これぐらいなら全然リカバリー出来る……て、医者でもないのに何言ってんだ私は。
「ごめんなさい。直ぐに帰ります」
兎に角、ここは変に角を立てずに大人しく帰るのが最善と見た。
「えっ?帰るってどこに?」
「何処も何も……エレジアに」
「ふふ、そっか。でも大丈夫だよ」
―だってこの世界はもう、閉じないから―
そう満面の笑みを浮かべてネズキノコを取り出したウタちゃん。
……無理心中とは恐れ入ったぜ(白目)
「んぉ?起きたか。急に寝てしまったからビックリしたぞ」
……はい。ネズキノコを無毒化していて正解でした。
前回に引き続き、センゴクさんの膝上ですね。
いや~うん。私はやはり存在してはいけない生物でしたわ。これからどうしましょうか……取り敢えずうっかりウタワールドに取り込まれないように鼓膜を潰しときますか。
「ッゥ!?バカな真似は止めなさい!」
ちょっと、やめ。
「この子からナイフを取り上げろ!」
も、もう!ぅ、うるさい!こうでもしないと気がすまないんだよ!!!
「……ガープには面倒なことになるから来させないつもりだったが、こいつは直ぐに呼んだほうがいいね」
あーあー!もう終わりだ、世界の破滅だ!
どうにでもなぁれ!
―
んっ?
―シャンブルズ―
「お前、麦わら屋のガキだろ?」
もう私のライフポイントは0だ。許してくれ。
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俺の船に乗らないか?
「お前、麦わら屋のガキだろ?」
い、いえ違いますよ(震え声)
さっきも言った通り、私のお父さんはドラゴンです。
「まぁ、詳しくは聞かねぇよ。ただ前々から歌姫ウタには第二次成長期を迎える思春期以前に出産を経験した経産婦の特徴が見られていた。その子供や父親が誰かまで突き止めたヤツは恐らく俺ぐらいだろうが、医学に覚えのあるやつなら歌姫ウタに隠し子がいることぐらい察しがつく」
お前、過去のライブに映り込んでいたらしいしな。と一言おいてトラファルガー・ローは腰を下ろした。
「医者として一つだけ聞いておきたい。お前、本当の歳は何歳だ?」
「……じゅ、12歳です」
「となると、麦わら屋は5、6歳ぐらいの時か……ふぅ。こいつはまたとんでもない話だな」
くっ、ぐっ……ヤバい。相手が悪人でない事が幸いだが、よりにもよって…………ONE PIECEキャラ私的人気総選挙第3位にバレてしまった。
と言うかもうちょい粘れよ私。
これではもう肯定したような物じゃないか……うるせぇ!元七武海で最悪の世代の筆頭で、後に四皇ビッグマムに致命傷を与える、万能悪魔の実とも評されるオペオペの実を食べたローさんが圧掛けてきたらどんだけ怖いかお前らは知らんのじゃ!
背後からバールのような物で殴ったらルフィがパパだと判明した所だけ記憶飛ばないかな?と一瞬隙を狙ったが、秒で無理だと悟った。
うむ……ならば仕方ない。
ローさんの体にお手てを当てて、セルセル"細胞活性化"!
「なっ!?――――傷が」
そうだな。治したぜ。これで貸し一つな訳だ。
あとはそう……分かるよね?
「は、今ので俺を攻撃することも出来たろうに……その思考回路は親父譲りか?
まぁ元から誰にも喋るつもりも交渉材料にするつもりない。ただ目の前に歌姫ウタと麦わら屋に似た奇妙なガキがいたからちょっかいをかけただけだ。あとは海軍の元に帰るなり、麦わら屋の船に乗るなり好きな所に行くといい。……もし行く当てがないなら俺の船で面倒をみてやってもいいが、どうだ。お前の能力ならうちでもやっていけると思うぞ」
う……ん。それは非常に興味深い話ではあるのですが、恐らく記憶があやふやでなければこれから暫くローさんは麦わら海賊団と行動を共にするわけで。私は近いうちにエレジアに帰還しなければならないから「……今回はなかったことに」
「そうか。邪魔したな」
ローさんは私の頭をポンポンと叩いて何処かへと去っていく。
もしこの世界にもREDがあるとしたら、わりと直ぐに再会出来るような気もするが、少しだけ哀愁を感じた。
……さて。気を取り直して、鼓膜破りますか!
「あぁ―――これは独り言だが」
おっと、まだ何かあったのね。
「麦わら屋の船には腕の良い船医がいる。お前の腹に抱えている一物だが……治す気があるならそいつを頼るといい」
…………ん?ちょっと何言ってるか分からないけど…………あー、12歳なのに6歳児の見た目のことを言ってるのか?
それともウタちゃんストレスで、セルセルの能力がなければ胃に穴だらけ人間になってるってこと?
どのみち、麦わら海賊団には入るつもりはないしな~。ま、ありがたいお言葉だと思って返事しときますか。
「お~い!ウタウマ~!俺の仲間になれよ!」
すると後方から聞き覚えのある声が、
あー、あー、聞こえな~い。
鼓膜潰したから物理的にも聞こえな~い。
「□□□□□!□□□□□?」
別にセルセルでいつでも治せるけど、エレジアに戻るまでは治すつもりはないし、ルフィには悪いが、アンタの船に乗るつもりは……
「□□□□!!!□□□□□!」
「□□□□!?□□□□!!!」
はぇ?うん!?
何か焦った様子のルフィに抱き抱えられた。
耳が聞こえないので何を言っているかは分からないが、あ、さっきぶりですねローさん。
顔を青くして凄い表情してるけど……大丈夫よ。能力で治せるから。
「□□□□□!□□□」
「□□□」
「□□□□□□□□□!」
私に読唇術はないが……何やってんだお前ー!て言ってるのかな?
二人とも、凄いバタバタしてるし、これは一度鼓膜を治して、ちゃんと仲間にはならないという旨を伝えた方が良さそうだ。
セルセル"細胞増殖・
「えええええ!!!!こいつ、俺の娘なのか!?」
…………なして。バラさないって言ったじゃん。
ハートの海賊団に入るルートだとベポが舎弟になる
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ホールケーキアイランド
△月◯日
ルフィに自身の娘であることがバレた。
母親がウタちゃんであることだけはバレなかったようだが、(もしかして寝込みを襲われた?)
そこから6歳児ボディとほぼ使いたての能力で二人から逃げきれるわけもなく、半ば強制的にバルトロメオの船に乗せられた。
ルフィが大海賊団の船長になったあの名シーンを観ることが出来たのでその点においては現状に感謝しているが、これからの事を思うと胃が痛くて仕方ない。
△月◯◯日
ローさんにカルテを渡された。
オペオペの実で調べた私の体の健康状態と、医者として診た私の精神状態の結果らしい。
身体状態はオールAだったけど、精神状態の欄が漏れなくE判定で笑った。
ローさん曰く、その精神結果なら体にも異常が出ていてもおかしくはないが、自分は能力で治しているからあくまで健康なんだとか。
まぁ物心付いた時から気の休まる日はなかったし、玩具になっていた時が一番救われていたと感じるぐらい地獄な環境で生きてきた私だ。
ウタちゃんのヤンデレレベルがカンストしてると知った今、かつてないほどに私の胃は捻れ上がっている。
俺は外科医なんだが…と頭を抱えていたローさんには取り敢えず謝っておいた。
―追記―
めっちゃお薬出された。
あんまりな量なので拒否したら、あのルフィがちゃんと飲めって怒ってきてて笑う。
娘がいると判明して父性に目覚めたのかは知らないが、兎に角イビキがうるさいので一緒に寝るのは勘弁してくれと思った。
△月◯◯◯日
ゾウに着いた。
流石はワンピ界でデかさが殿堂入りしているだけはある。私は一応ルフィの娘だし、海王類の声が聞こえるという古代兵器ポセイドンと同等の能力があるという疑惑のあったルフィみたいに集中すればズニーシャの声も聞こえるんじゃないかと思ったが………ラジオの周波数がズレた時みたいな雑音だけ拾った。
見聞色を覚えたらちゃんと聞こえるようになるんだろうか?
追記
それはそうと、ゾウには怪我人が沢山いるので私の能力の出番である。
ルフィは何故か私がゾウ入りを果たすのに苦渋していたけど、ここまで来たら一蓮托生だろうと強引に踏みいらせてもらった。
結果、ミンク族のみんなにアホほど感謝された。
いや~モフモフはやっぱり素晴らしいわ。
△月✕日
ルフィが当たり前のように仲間達に私が娘であることを打ち明けようとしたので、蹴りを入れて止めさせた。
そのまま耳を引っ張り、急きょ家族会議を行って、やはり私の母親が誰かなのか激しい言及があったものの、スルーし、私は一時的に麦わら海賊団の船に乗っているだけのロー又はシーザー枠であると説明させることに納得させる。
まぁ折をみてエレジアに帰る予定なので間違ってはいない。
ナミさんにはすごく怪しまれているようだけど、サンジのこともあるせいか一旦保留にしてくれたみたいだ。
△月✕✕日
ペコマムシにルフィの娘であることがバレかけた。
無茶苦茶頑張って……誤魔化せたようだが、鼻の効くミンク族には私とルフィが血縁関係であることは何となく分かるらしい。
それでミンク族は出産適齢期が人間より早いことからルフィが父親だと思ったんだとか。
この対策として疲れはするんだけど常時能力を発動させて16歳ぐらいに肉体を固定させることにした。
……凄い胸だ。動きにくい。
物凄くウタちゃんの血筋を感じる。
でも男性体(大人ver.)だと言い逃れが出来ないレベルでルフィと似ているので、此方に慣れるしかないだろう。
△月✕✕✕日
ズニーシャが怪我をしたので治療を手伝ったら、範囲が広すぎてキャパオーバーで倒れた。
今までそんなことはなかったんだけど、無理に肉体を固定しているから、いつもより体力を使ったみたい。私が倒れたあとはチョッパーが後を引き継いでくれたみたいだ。
気絶する間際、何か「ありがとう」って聞こえた気がするが……気のせいだろうか?
追記
ゾウに残り、どさくさに紛れて別れようとしたらルフィに捕縛された。
△月♡日
ウタちゃんが普通にライブをしてた。
数日前に私と無理心中しようとしていたとは思えないほど、はつらつとした笑顔で歌っている。
……一体全体どうなっているんだろうか?
シャンクス複数人説があるようにウタちゃんは複数人いるんだろうか?
どうやら直ぐに帰る必要はなさそうなので、ホールケーキアイランドまで同行することに。
追記
ルフィが毒魚を食べて死にかけた。うわ言で私が娘であることを話しそう(皆に託しそう)だったので止めを刺したら総ツッコミを受けた。
まぁ原作通りレイジュのキスで助かりましたとさ。
△月♡♡日
ナミさんとお揃いコーデに。
だけど水アメの海から早く抜け出す為に能力をフル活用したから肉体固定が解けて6歳ボディに。
折角買った服が着れなくなってしょんぼり……かと思えばナミさんは子供用の私の服も買っておいてくれた。
何で私が無理に大人の姿になっているか理由は聞かないけど、もっと大人を頼りなさいとのこと。
その優しさに触れ、ほんとの、一瞬。何かの間違いで、何を考えているんだと自分を責めたが、ウタちゃんじゃなくてナミさんがお母さんなら(勿論適正年齢で)……と想像してしまった。
私って最低だ。
△月♡♡♡日
ブリュレに捕まり、ほぼ反射的に能力を発動させたら、何か顔の傷が治ったらしい。あと心なしか可愛くなっているような?
お陰で私だけ見逃された。
ルフィ達にもお前は安全なところへ……と言われたので大人しく避難した。
△月△▽日
クラッカーを倒したらしいルフィ達と合流。
治療して上げようとしたらサンジさんと接触し、決闘。
その後で治して上げようとしたら拒否された。
まぁ男の約束だもの。色々とあるよね。
それならまた事が済んだら戻ってくるからとルフィとナミさんの元を去り………………さて、やりますか。
追記
ビッグマム海賊団やっぱ強いわ。
覇気も使えない、能力も極めた訳じゃない小娘一人でどうにかなる相手じゃなかった。
こいつらが傷ついたルフィ達を襲いに行くので、半分ぐらいは散らせないかと思ったが、海坊主みたいなやつを倒すので精一杯だった。
ただブリュレの顔の傷を治してくれた恩があるとかで、見逃される。
クソ………何か不服だ。
△月△▽△▽日
ベッジアジトにてルフィ達と合流。
サンジとは仲直り出来たみたいで結構、結構。
サンジの結婚式を滅茶苦茶にする会議にも出席し……何かシーザーとウマがあって、主に私の能力の話で盛り上がった。
素晴らしい!お前の能力があれば俺はベガパンクを越える事が出来るかもしれん!
とのことで現在ルタちゃん強化中。
ベッジはシーザーとの話し合いの末、私を切り札として使おうとしてきたが、ルフィ達が猛反対して取り止めに。
私もまだ実戦に移るのは不安だったし、それを普通に受け入れた。
追記
待って。メモメモって今の私に一番必要な能力なんじゃ……よし。乗り込むか!
△月☆日
と言うわけで、結婚式に突撃した。
私の相手は……お前だぁ!特に原作で出番のなかった3将星のスムージー!強化されたセルセルの実……
ボコボコにされて、ルフィに回収された。
流石に四皇幹部クラスはまだ早かったみたい。スムージーは私の能力により暫く悪魔の実の力は使えないだろうが、原作の流れには影響しなさそう。
そのまま私はサニー号まで運ばれ、ルフィが鏡世界に一人で残ろうとしたので私も乗り込んだ。
何で!?
と言われたが、雑魚狩りは任せてと返しておく。
もちろん、ルフィの怪我を治しておくのも忘れない。
ヒューたまんねぇぜこのライブ感!
フランペとその部下達だけは絶対に潰す。
追記
色々あったけど、プリンの血統因子をコピーすることが出来た。
そしてシーザーと協力して、史上初(多分もうベガパンクが作ってるけど)人造
さて、誰に食べさせようか。
強化前ルタ
頑張ればミスター3を倒せるぐらいの強さ
強化後ルタ
対象の血統因子を切断し、デタラメに繋ぎ合わす……事は出来ないが、相手の血統因子を揺さぶり、能力を一時的に封じれるようになった。(これを食らうと吐きそうになるぐらい気持ち悪いらしい)
能力で慢心してるような人にとっては天敵となる。
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ワノ国 一幕目
✕月◯日
私の名はルタ。
セルセルの実の能力者で世界で二番目の天才と称されるシーザー曰く、歩く研究所。
私がいればどんな場所、時間でも超大型の機械が何台も必要な研究を進めることが出来る。(生物学特化)
特にシーザーが長らく研究していた人造悪魔の実においてはまさに、"悪魔の実を複製する為に生まれた悪魔の実"と言っていいほどセルセルの実は優れているらしく、本来なら莫大な予算と時間が必要な筈な人造悪魔の実の作成に成功し、お目立ての品であるメモメモの実をゲットすることが出来た。
流石は転生特典。もう片方が地獄だった為か、良い意味で狂ってる。
あとはこれを誰かに食わせて、ウタちゃんやルフィの記憶の中から私という存在を切り取るのみである。
……本当はホビホビの方が良かったんだが、能力者が気絶したら終わりだし、何よりドレスローザの事件があった後に生きている玩具なんて見かけたら、間違いなく何かあったのだと海軍に通報されて終わりだろう。
だからメモメモの実の力で私は自由を手に入れる。
その為にこの実を食うに値する人間を見つけなければならないが…………どうやって見つけようか。
最初は安易にゴードンに頼んでみようかと思ったが、あの人はあの人で苦労してるし、実の娘同然のウタちゃんに対して二度も家族を奪うような真似をさせるのはちょっと酷なので諦めた。
麦わらの一味は言わずもながら、適当なモブに任せようにも信頼出来ない相手にこれを渡すのは怖い。
私が食べられたら一番手っ取り早かったんだけど……う~ん。
とりま、この船から脱出する方法を考えるべ!
✕月◯日
早朝、ルフィが言った。
すまん!ちょっとだけ時間をくれ!
俺はこいつに冒険をさせてぇ!
と、私の肩を叩きながら。
するとサニー号の面々はこう答える。
先ずはサンジ
「そうだなぁ、ルタちゃんはまだ仲間になったばかりなのに戦いばっかでろくな旅をしてないそうじゃねえか。アイツらも多少寄り道するぐらいなら許してくれるだろ」
次にチョッパー
「賛成だ!トットランドではルタは大活躍だったもんな!」
その次はキャロット
「うん!良いと思う!個人的にはお野菜が美味しい島がいいな!」
そしてナミ
「もちろん。断るわけないじゃない……でもそうなると手頃な島を見つけないといけないわね」
そんでブルック
「ヨホホホ!良いですねぇ!大賛成です!あ、ルタさん、パンツ見せて貰っても宜しいでしょうか?」
「子供になんてこと言ってんだアンタは!!!」
わぁーお家芸。
と感動している場合じゃない。
まぁ……その何だ。サンジさんには私が仲間ではないことを伝え、皆にはこんな時に悪いと断りを入れる。
これでルフィ達が折れるとも思わなかったが、それならワノ国での戦いを早く終わらせてから一味全員で冒険をしようと言えば、反論しない筈。
「だめだ!」
などと申しておりますが、バカめ。
「あぁ~そっか。ルフィはカイドウと戦うのが怖いんだ。だって相手は四皇だもんね~そりゃ怖いかぁ」
「はぁ!?怖くねぇし!」
お主の煽り耐性が低いことなど百も承知。
REDみたいに笑えない状況なら黙って飲み込む大人の度量もあるが、この反応からして単なる思いつきの類いだろう。
ならば徹底的に煽って、煽って、なかったことにしてくれるわ!
「にしし!負け惜しみ~」
「えっ?」
あっ。不味い。
◯月◯◯日
昨日からルフィの顔が暗い。
多分完全には気付いていないと思うが……かなり怪しまれたと思う。
それこそ見た目が6歳児なので、ルフィが13歳の時はウタは死んでいる(と思っている)のであり得ないと、ギリギリ誤魔化せている現状だ。
これでもし、ローさんかチョッパー辺りが私の本当の年齢を言おうものなら……一味崩壊の狼煙が上がる。
ほんと、何やってんだ私は。
これは一刻も早く、メモメモの能力者を見つけないと。
◯月◯✕日
やったぞ!
何か突然飛んできたオウムみたいなやつに実を食われた時は終わったと思ったが、こいつ……どういう訳か私の言うことをある程度聞いてくれる。
試しに、ルフィから昨日の「負け惜しみ~」の部分を切り取るべく命令したら、本当に取ってきてしまった。
まさかお前、転生特典で転生者が事故った時に現れる救済処置的なやつなのか!?
と感動して抱き締めようとしたら私の記憶もぶち抜かれそうになった。
……無差別じゃねぇか。こりゃ。
まさかさっきのは命令を聞いたんじゃなくて、使い方を知るために……?
◯月✕✕日
焼き鳥は旨い。
◯月✕△日
それはそうとオウムに名前を付けてみた。
その名前はぼう……と、いや、別に食ってないから。昨日はたまたま夕食が焼き鳥だっただけだから。
一度不覚は取ったが、所詮は愛玩動物じゃけ……てことで今は調教中である。
◯月✕✕✕日
ワノ国に到着した。
サニー号転覆の件はサンジさんが背中に乗せてくれたので溺れることはなかった。
今はおでん城跡でルフィ達を待つばかり。ぼう太の調教は順調とは言いがたいが、もうここまで来たらエレジアに帰るのは麦わらの一味の記憶を改竄してからにすることにした。
追記
REDの時間軸ってワノ国編が終了する前みたいだけど、私はともかくルフィ達は大丈夫かな?
◯月□日
ルフィ達と無事再会。
ルフィは天然なのかわざとやってるのか分からないが、ゾロ達に私の紹介で「俺の娘だ!」って言いそうになっていたので「俺のむ、」のところで蹴りをいれておいた。
それでルフィにとっては初めてのカイドウ戦だが……ワンパンKOだった。
捕まる前に治療出来ないかとチャンスを探ったが、ナミさんに引っ張られてそれは無理。
当面はルフィの無事を信じて一味は決戦に備え、各々で頑張るらしい。
何もしないのも気まずいので適当にやりつつ、ぼう太の調教を続けようと思う。
◯月□□日
モモの助と安全な場所にいるべきだとナミさんが言ってきた。
この姿(16歳ver.)もすっかり見慣れた物となってしまって、今では皆も大人として見てくれるのだが、未だにナミさんだけ6歳児として私を扱ってくる。
それがこそ痒いような嬉しいような……でも大丈夫だと今日はゾロについて行った。
ええ……SMILEの症状治せちゃったよ。ちょっと万能過ぎない?
知らないのか?地獄ってのはより強い方が勝つ
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ワノ国 二幕目
△月◯日
お前ら一列に並べー!
そんで片手を出して…………だだだだだだだ連続ハイタッチだ!
「わ、あァ……」
「うォ」
「おおおおおお!!!!」
「んぅっ……!?」
「これは……奇跡か、幻か!?」
ふはは、どうだ私は凄いだろ!この国全てのSMILE患者を連れてこい!私がこの国を救ってやる!!!!
……流石にここまでスピード解決出来た訳ではない。
セルセルの能力ならSMILEによって変質した細胞を活性化させてほぼ元通りにすることは出来るけど、どう急いだって、一人30分ぐらいは掛かってしまう。
更にはかなりの集中力を要し、ちょっとミスれば最悪患者が死んでしまうというプレッシャーの中、主にカイドウへの討ち入りに参加してくれる侍を優先して私は治していった。
ちなみに、
トコちゃんは一番最初に治して、私に治して貰いたい患者で長蛇の列が出来上がる中、少し遅れて現れたトコちゃんのお父さんである康イエさんも治そうとしたのだが、「俺は最後で構わねぇさ!」とのこと。
それよりもトコを治してくれて有り難うと深く頭を下げられ、俺に出来ることはないかと疲労困憊な私に寄り添ってくれた。
……優しい人だ。
オロチのクソ野郎なんかに処刑されていいような器ではない。出来れば死んで欲しくないけど、この人がいたからこそ、あれだけの侍が集まったって事実もあるし……難しい話だ。
今は私に出来ることをしていこう。
追記
チョッパーが医者としてジェラシー感じちゃってるのか私の袖をしきりに引っ張るので、康イエさんに追い出して貰った。
これで治療に専念出来る。今夜は徹夜だ!
△月◯◯日
おいてめぇ、俺が出した薬はちゃんと飲んでんだろうな!
とローさんが来た。
……もちろん飲んでる。でも昨日は飲めなかった。
あれ?その前も飲んでいなかったような……
と、どうやら追加で薬を持ってきたらしい。
そう言えばオペオペでSMILEの症状は治せないのだろうかと尋ねたが、毒素を抽出するだけならともかく、変質した脳細胞を再生させることはオペオペの能力では出来ないらしい。
私のセルセルも小さい傷を塞いだり、免疫力を高めて病気を治すことは出来るが、癌やポリープを取り除くことは出来ないので、適材適所というやつだろう。
△月◯✕日
今日もSMILE患者の治療中。
どうやら勘違いしていたみたいなのだが、てっきりSMILEの症状に侵された人々は国中にいると思っていたが、えびす町の外はそれほどでもないんだとか。
だからこのペースで行けば明日の朝には全員治し終えるらしい。
なーんだ、なら休み休みやれば良かったと思うこの頃である。
追記
えびす町の人達が振る舞ってくれた、おうどんがとっても美味しかった。
原作読んでても思ったけど、えびす町の人達優しすぎな。いくら私が治してあげたからって、自分達が一番お腹空いているだろうに、ない物を出しあって、こんな美味い物を食べさせてくれるとか………こんなん絶対好きになってしまうやつじゃん。全部終わったら移住してやろうか?この野郎!
△月□◯日
えびす町にいる住人の治療を終えたのでぼう太の調教を再開。
なかなかにクセのあるやつだが、私にとっては最後の希望である以上、根気よくやっていくつもりである。
追記
こいつ、人の記憶を勝手に取り出して食べやがった。
直前の記憶だったからいいもの……全く、人の記憶を何だと思ってるんだ。
△月✕✕日
今日はナミさん達と湯屋に。
お湯のせいで力が抜けて6歳児ボディに戻ったら、ロビンさんが驚いていた。
そう言えば私の6歳ボディを見たことがあるのはルフィとナミさんとチョッパー、サンジさん、あとローさんぐらいであった。
どうりでナミが気にかける訳だわ……と得心がいったような顔をするロビンさん。
……ナミさんは子供好きだからね。
ちなみに男でも女にでも成れる私だけど、性自認は一応女である。
今回は混浴だったからあんまり関係ないが、男湯と女湯が分かれていたら女湯の方を選ぶのが私だ。
えっ?なら能力が解けた時はどっちかって?
それを知りたくばラフテルへ行け。
多分答えはないけど、海賊王にはなれるぞ。
△月♡□日
今日は康イエさんに呼び出され、改めて有り難うと深く頭を下げられた。
SMILEの症状は治っているから、とても真面目な顔をしていて、何だがちょっぴり身構えてしまう。
だが何故このタイミングで感謝の言葉を告げに来たのか察せられないほど鈍感ではない。
このおこぼれ町には昨日からオロチの私兵が雪崩れ込むように配備されている。そして日報にてこの国一番の花魁と名高い小紫の葬儀を行うと……。
つまりは原作でいう彼の処刑のタイムリミットが迫っているのだ。
私は死ぬつもりなんですかと康イエさんに尋ねると、それで国が救えるなら、と即答した。
……うん。
私は黙って戸の襖を開ける。するとそこには大粒の涙を浮かべているトコちゃんと般若のお面を付けたナミさんの姿が。
「うぇぇぇん!!!お父ちゃん死んじゃやだー!!!」
「なっ!?トコ、何故ここに!?」
知らないのか?地獄ってのはより強い方が勝つ。
私の地獄を前にはお前らの地獄など天国よ。ってことで天国にしてくれるわ!
△月✕日
えびす町の人達が殺された。
全員ではない……急いで助けにいったんだけど間に合わなくて……何人も殺された。
銃やナイフで急所を一刺しにやられた訳ではない。じわりじわりとなぶるように殺されたんだ。
それでも、えびす町の人達は最後まで笑って逝ったらしい。
反旗の芽を隠す為に。
SMILEの呪縛からまだ逃れられていないのだとカイドウとオロチを騙す為、それだけの為に。
笑って……。
追記
こんなに誰かを殺したいと思ったのは初めてだ。
△月✕✕日
と言うわけでルフィの元へと訪れた。
どうやら私が治療している間に採掘場での諸々は終わってしまったらしく、今は流桜を極めているところらしい。
そこで私はルフィに宣言した。
決戦には私も出ると。
「……ダメだ。お前は連れていけねぇ」
ならいいよ。勝手について行くから。
予想は出来た返答の為、そっぽを向いて歩くと肩を強く掴まれた。
「オレの言うことが聞けねぇのか!」
何故かルフィは本気で怒っていた。
「昨日まで笑い合って、一緒に飯を食った人達が殺されたんだ!何もしないなんて出来る訳ないじゃん!」
そして私も何故かキレた。朝お薬を飲まなかったのがいけなかったのだろうか。
「なら俺を頼れよ!」
「カイドウに一発殴られて気絶したやつが偉そうに言うな!私は役に立つ、カイドウに何がなんでも勝ちたいなら利用してみろよ!海賊なんだろ!」
「っっ……俺が掲げたドクロは自由の証だ!誰かを支配するつもりなんてねぇし!お前に戦えなんて言いたくねぇ!」
今にして思えば、初めて親しい人を亡くして私は動揺していたんだろう。
今まで何とかなったら、今回も何とかなると思っていたから余計に取り乱していたんだと思う。
「だいたいお前は!俺が来るなって言ったのにカタクリとの戦いに助けにきてくれるしよう!ただ親子ってだけで俺のことをろくに知らないのにドフラミンゴから守ってくれるしよう!対して強くもないくせに危ないことに首を突っ込み過ぎたんだよ!!!ちょっとはこっちの心配する気持ちも考えろ!!!」
「うるさい!うるさい!うるさい!私は強いんだ!私が全部悪いんだ!だから私が責任を取らなくちゃ……私がカイドウに触れたら龍になれなくなって弱体化するんだ!私は最強だ!」
「そんなぐちゃぐちゃのまま戦いに出てみろ!絶対に死ぬぞ!」
「別に!私は死んだっていい存在だもん!」
「ッゥ!?」
その時、ルフィの体が動くのが見え、私はビンタされるんだと身構えた。
流石に言い過ぎた。今のは私が悪い。
ルフィはルフィなりに私の事を自分の子供として見てくれているのに、そんな相手に対して……あぁやっぱり私クソだな。
急速に冷めていく思考の中、どうせ原作通りならルフィ達はカイドウに勝つのだ。置いていかれるなら、その間にエレジアに帰ろうと、考えを改める。
けれど身構えた後に訪れたのは鋭い痛みとは程遠い暖かい物で……。
「頼むから、それだけは言うな」
抱きしめられた。
「豁サ縺ォ縺溘>!!?」
幸福、罪悪感、自己嫌悪、安堵、絶望、歓喜、恐怖
私の脳は膨れ上がる複数の感情を制御出来ず、強制シャットダウンした。
追記
これのお陰かどうかは分からないけど、能力が覚醒した。
やっぱり最後に勝つのは愛じゃよ、愛。ひいじいちゃんも言ってた。
今の私なら汚染した土壌や川を聖域レベルに清めることが出来る。やった……ぜ?
△月□◯日
このタイミングでぼう太の調教に手応えを感じ始める。
さては……試されているのだろうか。
一方その頃
「あ、あのぅ……」
「おのれ、トラファルガー・ロー!儂の可愛い孫娘(会ったことはない)を拐うとは、絶対に許さーん!」
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ワノ国 三幕目
どうやらルフィが一味に話を付けたらしい。
私が意気揚々とサニー号に乗り込むと、床から手が生えて追い出された。
ならばと食料室の樽に入ってやり過ごそうとすると、サンジさんに見つかって、お弁当を持たされた後で追い出された。
ミニメリーの中に隠れるとウソップが、寝室に隠れるとブルックさんが、フランキー将軍の中に隠れるとフランキーさんが、ゾロの背中に隠れるとゾロが、みかんの木の影に隠れるとナミさんが、(ちょっとみかんの木が弱ってるみたいだと教えてあげた)
医務室に隠れると、何故か拘束され、怪しげな注射をチョッパーに打たれるところだったが、ここは自力で脱出した。
うむ。一人ぐらいなら味方になってくれると思ったが、麦わらの一味は満場一致で私を鬼ヶ島に連れていくつもりがないらしい。
結構回復要員としては優秀な方だと思うんだけど……。
ならば仕方ない、と言うことでローさんを訪ねてみる。
「乗せるわけねぇだろ。ガキの遊びじゃあるまいし」
……ですよね~
と言うことで、キッドの船を訪ねる。
「……チッ。勝手にしろ」
「いいのか?キッド」
「あぁ、癪だがな。こいつには今回のことででかい借りが出来た。それに能力も使える。面倒になったら麦わらにでも押し付けちまえばいい」
「そうか。お前が言うなら俺も賛成しよう」
すると意外なことに、そのままキッド達と鬼ヶ島に行くことに。
てっきり、ガキは引っ込んでろ!とでも言われると思ったが、キラーさんのSMILEの症状を治した事をキッドなりに『でかい借り』として認識しているらしい。
ここでダメならもう侍達の船に紛れるしかないと思っていたので、これは嬉しい誤算というやつである。
一応セルセルの能力で治せるのは笑いが止まらない部分だけであって海に嫌われる概念的な部分はどうしようもなかったのだが、それだけでも十分だとキラーさんは言う。
いや、本当に……治って良かったぁ……とそれは魂からの叫びであった。
「鬼ヶ島につくまでに麦わら達に見つかっても面倒だ。てめぇは船の中にでも隠れとけ」
キッドの腕は覚醒前ならともかく、覚醒後の今なら生やそうと思えば生やせると言うと、ギョッとして少し迷っている様子だったが、半日は掛かる事を伝えると、ならもっと早く教えろと
どうやら治すことにそれほど抵抗もないようだし、この戦いが終わったら船賃替わりに治してあげるのもいいかもしれない。
いや、それだとキッドのいうでかい借りを返せたことにならないから、金を取る方がいいのか。
……しかし腕一本を生やす適正価格ってどれぐらいだ?
1000万ベリーぐらい?
それとも一億?
いっそのこと、キッドの懸賞金と同じ額(更新後)にしてみたらいいのか?
まぁ高く見積り過ぎて払えなかったらいけないので事前にキラーさん辺りと要相談かな。
キッド海賊団ってあんまり金持ってるイメージないし、それでいてキッドがあれだから、払えないなら生やさなくていいって拒否ってきそうなイメージあるし。
「おらァ!野郎ども出航だァー!」
今度、ローさんに腕一本はどれぐらいで生やしていいか聞いておこうと思う。
そんな訳で、いざ鬼ヶ島へ。
上陸して直ぐに見つかって、麦わらの一味に囲まれた。
「ルタ、お前!?」
「うっそ、着いてきちゃったの!?」
「一体誰の船に乗りやがったんだ?」
「ロー……なわけないよな。と、取り敢えず!着いてきてしまったもんはしょうがねぇ!ルタはおれ達と一緒に行動しような!」
「だ、だなぁ~よおし、ルタは俺に任せてお前らは先に行け~!」
「安心しろ。ルタちゃんは俺が完璧に守ってやるぜ」
「……無念に散った侍達の怨念がルタをここまで呼び寄せたのかしら?」
「フフフ、スーパー問題ねぇ!こんな事もあろうかとブラキオタンク5号は拡張済みだ!」
「流石はフランキーさん、抜け目がない。まぁ抜け"目"がないのは私なんですどね……ヨホホホ!」
「ビッグマムの件では大変世話になった。今後ともよろしく頼む」
いや、だから私は仲間じゃないって。
なんかーうん……脳がバグる。
麦わらの一味に見つかったら……まぁ帰れコールを食らうんだろうなと思っていれば、あんまりにも自然体で受け入れてくれるもんだから……あれ、実は私って麦わらの一味だっけ?
ドレスローザ編で初登場して、ホールケーキアイランド編でサンジ合流とともに一味に入った?
なんて勘違いしそうになる。
流石は日本少年誌の顔というべきか。
私の地獄成分が直前で補給されていなかったら今頃麦わらの一味になっていたかもしれない。
「……よし。ならルタはサンジ達と一緒にいろ。絶対に無理すんじゃねぇぞ。分かったな?」
「肝に銘ずる」
「じゃあ俺はキッド達を追いかけるから………………絶対に着いてくるなよ?」
「イエス、イエス、イエス」
「うし!」
「おいバカ!騒ぎをデカくする気か!」
それでフランキーがサニー号からメカを取り出している最中のことである。
ルフィとゾロが一味を離れ、だが私は一味の元から離れるなとルフィに釘を刺されてしまった。
フリというやつだね。分かるよい!
私はさささっとサンジさん達の元を離れて、ルフィ達の後を追う。
あれ?でもどっち曲がったけ?
こっちか……?
「マ~~~マ、ママ!おやおや~誰かと思えば、うちの息子達に随分と世話焼いてくれた小娘じゃないか。こんな所でどうしたんだい?」
あっ、死んだわ。
シャンクス、腕が!?
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ワノ国 四幕目
「マ~~~マ、ママ!おやおや~誰かと思えば、うちの息子達に随分と世話焼いてくれた小娘じゃないか。こんな所でどうしたんだい?」
い、いえ違いますよ(デジャブ)
貴方の言う小娘ってあれでしょ?6歳ぐらいのツルペタキューティレディのことでしょう?
私は、ほら。ボンキュボンだから。ウタちゃんと同じかそれ以上のボインを持つ16歳だから。
「騙そうたってそうはいかないよ。お前さんが体を自在に変幻させられるってのは調べがついてんだ」
咄嗟にシラを切ろうとしたが、鎌をかけている様子はなく確信を持ってビッグマムは言い放つ。
えぇ……なんで?訳が分からない。
私が16歳に肉体を固定したのってゾウからだよね?何でビッグマムが知ってるん……そういや、フランぺボコる時に男になってたわ。
男になると身体能力上がるし頑丈になるから、何よりルフィ以外麦わらの一味がいないからって滅茶苦茶好き勝手にやってたわ。
途中テンション上がって、巨人並みに大きくなったり、腕伸ばして「セルセルのぉ~
……すいません。どうかお命だけは。
「マァ、マ~ママ!心配しなくともお前の命は取りはしねぇよ!まぁお前があの後で麦わらの傘下に加わったて言うんなら話は別だけどな」
あ、なら大丈夫です。
死んでも入らないんで。
「そうかい、そうかい!そりゃ良かった。おれも娘の恩人を手に掛けるのは忍びねぇって嘆いてたんだ。フランペとスムージーも感謝していたよ。まさか自分達が覇気もつかえねぇガキの一人にやられるほどザコだって気付かしてくれたことをよ!」
へぇ~そうなんですね。
まぁ二人ともう一回やりあったら、フランペはともかくスムージーさんには勝てないと思うので、あんまり根を詰めすぎないように伝えて下さい。
それじゃあ私は行くところがあるので。
「まぁ待ちな」
いや、お構いなく。急いでるんで。
「ここに居るってことは、カイドウの傘下に入ろうとしに来たのか、それともその首を狙っているのかの二つだろう。もし後者なら同盟関係という立場上、お前を殺さなくちゃいけねぇが、もし前者なら…………おれがカイドウの野郎に口を利かせてそれなりの地位に付かせてやってもいいぜ」
まさか私が討ち入りに参加しているとは夢にも思わないマムはそんなことを言い出した。
……なしてビックマム海賊団の人達からの好感度こんなに高いん?
理由の分からない善意ほど後が怖い物はない。
私、貴方の国で考えなしに暴れ回ったテロリストですよ。ブリュレの顔の傷治した功績ってそんなに高いの?それともなに?私が悪魔の実を複製出来るってことを知って利用するつもりとか?裏があるやつパターン?
兎に角……何か怖いんでいいです。
「それによぉ、
……は?
「何だ?お前、俺の部下になりてぇのか?」
マムに言われて振り替えったらあら不思議……酒壷ひっさげたカイドウが目の前に……………よし、プランAではなるべく私はカイドウ戦には加わらずに、回復要員に回ろうと考えていたが私の有用性をアピールして、部下になり信頼を得たあとで裏切るプランBに作戦を変更しよう(この間0.01秒)
「ギャハハハハハ!!!」
では早速、そこの
「ギャハハ……あれ?」
どや。覚醒後なら一瞬で治せるんですよ。
「……おいおい、俺ァ、今幻覚を見ていやがるのか?」
いえ、幻覚じゃないです。私の能力です。四肢欠損や老いが致命的なデバフになるこの世界で、恐らく唯一失くなった四肢を生やせたり、細胞を若返らせて全盛期の肉体を取り戻させたり出来るスーパーな私の能力なんです。
酒も煙草もやりません。安月給でも構いません。肉弾戦もやろうと思えば、やってみせます。
だからどうか私を百獣海賊団に置いて下さい!!!
「そうか。なら飛び六胞の席を一つ開けるからそこに入れ」
「おい待て!そこまで有能とはおれも聞いてねえ!」
やった飛び級出世だ(飛び六胞なだけに)……と浮かれると、マムが待ったをかけた。
「最初に目をつけたのはおれだよ!便利そうな能力だとは思っていたが、まさかここまで使えるとは思ってもいなかった……小娘、いいやルタ!私の所に来るならお前を養女にして四将聖に加えてやってもいい!だから私の元に来い!」
「何言ってやがる!こいつは俺のとこに入りに来たんだ!」
「なら譲れ!」「譲るかバカ野郎!」
と、大剣と金棒を取り出して激しく打ち合い出す両者。
やめて!私の為に争わないで!(建前)
……このまま共倒れしてくれねぇかな(本音)
「お前はおれに一生の恩があるだろうが!」
「それとこれとは別だ!――おい小娘!お前の実力次第なら大幹部の席だって用意してやる!だからこんなババアに寝返ろうなんて考えるじゃねぇぞ!」
……えっマジで?
大幹部ルタちゃんルートきた?
キングやクイーン、ジャックと肩を並べて麦わらの一味と敵対しちゃう?
クイーンと一緒に歌って踊れたら楽しそうだな……。
「っっ!なら、ルタを定期的にこっちに寄越しな!」
「一年に一回だ!」
「ふざけんな!三日に一回にしろ!」
「ダメだ!半年に一回!」
「一ヶ月に一回!」
「……まぁいいだろう」
て、あら?もう終わっちゃったんですか。
じゃあ好感度稼ぎの為に二人のダメージを回復させますね~。ちょっとピリッとするけど覇気でガードしないで下さいねー。
あとマムはついでに若返りを……すると麦わら一同が詰み兼ねないので若返りは今度しますね……。
「ウォロロロロロ!!!今日は最高の日になりそうだな!」
「マ~マ、ママ!もう老いたこの体じゃあ子供を産むのもあと二、三回で限界だと思っていたが、どうやらまだまだ家族が増えそうだね……そういや、ルタ。お前さん、男にもなれるんだよね?」
性自認は女!性自認は女!性自認は女!
「おい、止めねぇか。ガキにする話じゃねぇ」
「ふ、冗談だよ」
あっ危ねぇ……危うくウタちゃんに孫が出来るとこだった。
そんなことになったら……考えるだけでも恐ろしい。
しかし……流石は息子のLGBTにも理解あるパパさんですわ。死生観が狂ってるわりにそういう配慮は行き届いてる。
「じゃあ早速、新しい部下の誕生を祝ってやるとしよう………先ずはお前の同格となる飛び六胞の連中と顔を合わせるとするか」
ひょいっと、私をつまみ上げて肩に乗せるカイドウ。
「私は化粧直ししてから行くとするよ」
マムは乱れた髪と衣装を直してから行くとその場に残った。
今さらだけど、皆に説明どうしようか。
油断してる今セルセルで細胞破壊を……しきる前に覇気ガードされて潰されそうだな。
何かな……やっちまった感がある。大人しくしてれば良かったかも。
「と言うわけだ。ページワン、お前には"降りる"か"死ぬ"かここで選んで貰う」
「えぇぇ!!!!?」
いや、これはこれでかき乱す事は出来てるから役に立ってるのか?
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ウタ日記②
これはホビホビの能力により、モンキー・D・ルタが束の間の休息を謳歌していた2年前の話。
「なんだろ……これ?」
今日も今日とてファン達の為に自慢の歌声を披露しようと映像電伝虫をセッティングしていた歌姫ウタは一冊のノートを取って首を傾げる。
「ゴードンのかな?……でも私の字だよね」
何気なしに開いて見ると、それは日記だった。
最初はゴードンの物かと思ったが、それにしては文字が可愛らしい。と言うか私と同じだ。
だがこんな物を書いた覚えはない。誰かが筆跡を真似たのだろうか?ならば何故……と降ってわいた疑問は自然と日記の中身を読み解くことで謎を解明しようと目線を動かし、一ページ目、二ページ目と読み進めていく内、歌姫は今日のライブの事が頭から抜け落ちていった。
ルタって誰?
私の娘……全く覚えがない。
えっ、ルフィと私の子供かもしれない?
検査は出来ないし、確証はないけど………あれだけしか経験はないし…「別に誰が父親でもいい、ルタが私の娘であるなら」ってどういうこと?
ルタが………ルタ……ルタって…………
そして半分ほど読み進めた時であろうか。
ウタは自分の頬から一筋の雫が流れていることを知って、唖然とする。
どういうこと?
こんなの……知らないのに。どうして胸がこんなに苦しいの?
存在する筈がない私の娘。
どれだけ過去を振り返っても、この日記の内容と類似するような思い出はない。
だからウソの筈。なのに……心が苦しくてたまらない。
もう見るのを止めてしまおうかとウタは次の一節を見て、鳥肌が立った。
『ルタがいなくなった。ルタの部屋はまるで新品みたいに綺麗になっていて、今まで書いた日記もこれを残して全部無くなったみたい。
どうして。どうしてなの……ルタ。私はただ貴方と一緒に…………ウタワールドで永遠に生きたかっただけなのに』
これを最後に日記は白紙になっていた。
なんて唐突で不気味な終わり方だろうか。
これでは私は実の娘と心中を計ろうとしたばかりか、その存在を忘れて、今の今まで呑気に生きてきた事になる。
実の家族同然だと思っていた赤髪海賊団に裏切られたショックを知る私が、よりにもよってだ。
未だこの日記に書かれていることが本当だとは思えないが……後味の悪い締めくくりであった。
「きっと誰かのイタズラ……だよね。うん、そうに決まってる……」
このエレジアには自分とゴードンしかいない。
そしてゴードンはこんな事をする人間ではないと分かっていたが、そうでも思い込まないと、その時のウタはどうにかなってしまいそうだった。
「……そうだ。ライブを始めないと……私にはファンの皆が待っているんだ」
とても笑顔で歌うような気分ではなかったが、皆には迷惑をかけられないと自身に活をいれる。
「3、2、1…………皆ー!ウタだよー!」
エレジアの真実を知った時、彼女は架空の存在かもしれないルタに依存するようになる。
「ねぇねぇ!とうきにんぎょうのお姉ちゃん!また歌って!」
「はは、朝早くからどうもすいません。どうやらこの子が貴方の歌声を痛く気に入ったようでして」
「フフフ……良いですよ。お嬢さんお名前は?」
「レベッカだよ!そしてこっちは兵隊さん!」
「そっか。レベッカちゃん……なら今日は特別に私が大好きで大得意な曲を聞かせてあげる。これは
「ほんと!?」
「うん。なら歌うね……ヨホホホ~」
ドレスローザの郊外。
それはそれは楽しそうに歌う陶器人形とそれに瞳を閉じて聞き入る少女と片足のブリキの兵隊。
世界の歌姫がその歌声で世界を魅了する中、こんな一幕があったんだとかなかったんだとか。
現在のルタ
四将星(仮)→ビッグマム海賊団
飛び六胞(仮)→百獣海賊団
麦わらの一味(仮)→麦わら海賊団
海賊王を目指す五番目の皇帝と世界の歌姫の娘
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ワノ国 五幕目
「と言うわけだ。ページワン、お前には"降りる"か"死ぬ"かここで選んで貰う」
「ええぇ!!!!?いきなり何でですかカイドウ様!?」
「ふざけんなカイドウ!私の可愛いペーたんが飛び六胞から降格だと!?目ぇ腐ってんじゃねぇのか!?」
ぽっと出の小娘一人の為に幹部一人が降格or死の二択を突きつけられるのだ。
雰囲気的に殺すのは冗談のようだが当然、荒れはする。
「カイドウさん……アンタの決定なら俺は従うが、そんなにそのガキはスゲェのかい?見たところ覇気は使えねぇようだが……何かの能力者か?」
「へぇ。飛び六胞から一人降格ねぇ……良かったなぁドレーク、お前じゃなくて」
「何故俺を見る?」
「いやなぁ…………」
「あら可愛らしいお嬢さん。名前はなんていうのかしら?」
興味深そうに私を見る残りの一同。
どうやらフーズ・フーはまだドレークが裏切り者だと告げるつもりはないらしい。
「そんなにペーたんを追い出して飛び六胞になりたいなら決闘でありんす!」
「だめだな。本人曰く戦えはするようだが、それが目的じゃねぇ。抜けたページワンにはこいつのお守りをやって貰う。まぁ……言っちゃ何だが立場が変わるだけで待遇を変えるつもりはねぇ。それでもお前が飛び六胞を止めたくねぇ、俺は強ぇっていうならここにいるどいつかを力で黙らせて役目を変わって貰うんだな」
「……あー、それならまぁいいか」
「やったー!ならペーたんはわちしの部下になりしんす!」
「話聞いてた!?」
とページワンは私のお守り係になるそうだ。
とりあえず、私がうるティに殺される未来はないようで一安心というやつである。
「ほら、自己紹介しろ」
カイドウに促されて飛び六胞の前に立つ。
「……あぁ、一応言っておくが俺は嘘が嫌いだ」
ハハハハ!了解であります!
私の名はルタ!
セルセルの実の能力者の遺伝子操作人間。得意な事は治療で好きな事は歌うこと。母親とは9歳しか年が離れてなくて無理心中を狙われ、6年ほど家出中、最近出会った父親とは訳あって超気まずい関係。ちょっと前まではあらゆる柵から解放されて自由になるのが夢だったんだけど、最近では最高の死に方を探してる。やっぱ死って人の完成だよね。初期クロコダイルなら多分勝てる将来有望な少女ルタちゃんで~す!気軽にルタって呼んでね~!
と、言ってはいけない内容についてはそれとなく暈しつつ、自己紹介を終えると、飛び六胞からは「うわー」て顔で見られつつ、カイドウからは爆笑された。
「母親と歳の差9歳って……お前の父親クズ過ぎないか?」
いや、父親とは7歳差なんですよ……。
「……えぇぇ」
まさかのうるティがドン引き。
文字に起こすとキュロスさんとかローさんに比べれば案外マシなほうじゃね?って思ったけどわりとまともな感性を持つ彼女からすれば、一桁で子供が出来た母親に無理心中を迫られるというのは充分に地獄らしい。
「……これから仲良くやろうな」
「……相談のるでありんす」
「辛くなったら言いな」
「酒持ってきたら、悩みぐらいなら聞いてやるよ」
「いつでも頼りにしてくれ」
「……ひたすらに重い」
飛び六胞からの同情するような目線が痛い。
どうせ親バレすることもないだろうからと暴露してしまったが、これは言わない方がよかったやつかもしれない。
「ウォロロロロ!なんて可哀想な小娘。まさかそんな常人なら狂っちまいそうな環境で生きてきただなんて!哀れ過ぎて涙が溢れるぜ……」
おい、止めろ。優しくするな。裏切りづらくなるやろ。
「だがうちに入ったからにはもう安心だ!お前のヤバい母親も複雑な関係そうな父親もお前を縛る物は何もありはしねえ!とことん楽しもうぜ!なぁルタ!」
「9歳で子供、作れるんだな……」
「哀れ過ぎて……何も言えねぇ」
「よし!話は分かった!お前、歌うのが好きなんだってな!特別に俺様のライブに出演させてやるぜ!」
来たな大幹部!
それでやめろクイーン!マジで裏切りづらくなる!
「おう!ならクイーンとこで早速、お前の力を見せつけてやれ!―――おい、クイーン!間違ってもこいつを盗まれるようなヘボするんじゃねぇぞ!」
「ハハ!盗まれるっ?てことはやっぱ特殊な能力者か!分かったぜカイドウさん!俺様の金色神楽で最高にエキサイティングな気分にさせてやるよ!」
えびす町の人達を殺したのはこいつら。えびす町の人達を殺したのはこいつら。えびす町の人達を殺したのはこいつら!
……じゃねぇな。オロチだわ。
なら…………いや、ダメだ。この状況を楽しむなんて。私には不意打ちでカイドウを仕留めるという崇高な目的があるんだから!
「へぇい!お前ら楽しんでるかい!?今日はスペシャルゲストが来てるんだ!その名も~ルタ!プレジャーズ!お前らの救世主となる女神様だぜ!」
イエーイ!皆ールタだよ!!!!
これはあれだ。相手の懐に入って、油断させるあれだから。
全然楽しんでなんかないんだからね!
あ、そこのCPみたいなやつ!写真撮るんじゃねぇ!
CP0「新しい飛び六胞か……取り敢えず撮っとこ」
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ワノ国 六幕目
飛び六胞。
それは四皇カイドウが総督を担う百獣海賊団が、上から大幹部、飛び六胞、真打ち、それ以下と位分けがあるなかで、所謂中間ぐらいの立ち位置にいる幹部六名を指す言葉である。
原作では今一パッとしない強さとそれにしては濃いキャラクター性、一名が裏切り者で、同盟相手である筈のビッグマムに実質二人ほど沈められた事から色々と言われている彼らであるが、まさかその中に自分が加わる事になるとは夢にも思いはしかなかった。
「ひゅー!最高だぜルタ様!」
「いつも俺たちゃ笑っちゃいるが!心の底から笑ったのは久しぶりだ!」
「RUTA!RUTA!RUTA!」
「あんたの部下にしてくれー!」
「一生ついて行くぜ!」
「歌声も素敵だ!」
「ありがとうよー!お姫様!」
「ブハハハ!まさか飛び六胞に入って物の数分でプレジャーズ達を虜にしちまうとは流石だぜ、ルタ!もしかしたらお前にもあるんじゃねぇか覇王の素質?ま、あったとしても美しさは俺には敵わないんだろうけどよ!」
……やばい。楽しすぎる。
美味い飯を食って、歌って踊って、手放しに称賛されるこの現状……私からしたら猛毒以外の何物でもない。
「しっかし、お前のセルセルの実!クッソチート過ぎて一周回って笑いが込み上げて来るぜ!お前の地頭も相当だが、ベガパンクみたいなやつがその実を食ったと考えると、怖くて怖くて、夜も眠れねぇ!」
実力主義の百獣で、ほぼ戦闘経験のない能力頼りの小娘が一人……分不相応な地位を受けて馴染める訳もなく、きっと初心を忘れぬままカイドウに刃を向けられるのだと思っていたが、もう私の刃は完全にナマクラと化してしまった。
……もう一生このままでもいいんじゃなかろうか。
そんな事を本気で考える。
「ルター!」
だが、楽しい時間と言うのはいつまでも続かない物で、アンコールの嵐の中、確かに聞こえるパパの声。
「くそ、またアイツは変な事に巻き込まれてー!」
目を凝らすと……こちらに腕を伸ばそうとするルフィの姿が。
はぁぁぁ…………まぁ仕方ないよね。
「おう?どうしたルタ、何かあったか?」
私はルフィが捕まえやすいように舞台の先端に立つ。
居心地は良かったが、百獣海賊団は間違いなく悪寄りの海賊で、正真正銘、この国の人達を長らく苦しめてきた諸悪の根源。
彼らの性格からして、平和的解決などという生ぬるい話でこの全面戦争が終結するわけもなく……まぁ短い間だったけど私に自由をくれてありがとうございました。
「えっ!?」
私がグルグルとルフィの腕に巻き取られる様を、目が飛び出るんじゃないかというぐらいの驚き顔で見つめるクイーン。
「ちょっま!」
彼は咄嗟に私を掴もうと手を伸ばすのだが、それよりもルフィの方が早く動いた。
「……助けて」
何か、言わないといけない気がしてそう呟く。
その時、稲妻のようにクイーンの脳内にはある一言が駆け巡った。
――おい、クイーン!間違ってもこいつを盗まれるようなヘボするんじゃねぇぞ!――
ルタの有用性。そのカイドウに似通った死生観。
いくら能力が高くてもいきなり飛び六胞に入れるなんて事は本当はあり得ないことで元飛び六胞と大幹部である自分を護衛につける……つまり彼女はカイドウのお気に入りであった。
(これはヤベェ。カイドウさんに殺される)
百獣一のIQを誇る天才は瞬時にその答えにたどり着く。
だから彼は声を大にしてこう叫ぶのだ。
「当たり前だぁぁぁー!」
「「「うぉおおおおお!!!!」」」
鬼ヶ島全体が振動する。
クイーンの叫びに同調したのは、やはりプレジャーズ達であり、彼らは自らを救ってくれた新しい主のため、剣を振り上げてルフィへと殺気をぶつける。
「うお?何だ!?」
しかしルフィは自分の娘が敵に捕まっていると思って助けただけだ。
こんな家族を奪われたような憎しみの目を向けられる云われはない。
だから戸惑って、ついその原因と思われる実の娘へと問い掛けた。
「ルタ、何かしたのか?」
「病気になってたからみんな助けてあげた!」
「そうか。それは偉いな……うん?なら何でこんなに怒ってんだ?」
「さぁ?ルタぁ分かんない!」
「何かお前、ちょっと幼くなってないか?」
ルフィの指摘であるが、ルタはこの時、全くふざけているつもりなどは微塵もなかった。
ならば何故、このような幼稚な喋り方になるのか。
それは後に分かることだが、使用者の頭の出来次第では森羅万象を作り替えることも出来る(クイーン談)セルセルの実には弱点が二つあった。
一つは云わずもながら、海に嫌われているということ。
全ての能力者に例外なく備わっているそれは、例え転生特典という異物であろうとも例外ではない。
しかしあまりにも強力過ぎる力には二つ目、ホビホビの実の能力者でいう肉体年齢がストップするというデメリットが存在するようにセルセルにもそれがあった。
――能力を使い過ぎると一時的にアホになる。
単純なようで実に致命的。
覚醒により能力の拡張の術を得たルタは今回の治療で、キャパを大幅に越えた為、只今6歳児ほどまでIQが下がっていたのだ。
「うぅぅ…!」(ポンッ)
「お、おい!?大丈夫か!?元に戻っちまったぞ!」
「ずっと大人になってるの辛い……ダルいよう。パパ……もう帰ろうよぉ~!」
「パパ!!?」
「あ、ゾロ!?いや、違ッ……くねぇ!そうだ、ルタは俺の娘だ!」
「はぁぁ!?いつの間に出来たガキだよ!?」
「それは俺も知らん!……だけど、今はそれどころじゃねぇんだ!何かルタの様子がおかしい!早いとこチョッパーに診てもらわねぇと!」
本人がこれの為、無数の地雷が連鎖爆発を起こしているのに残念ながら気づけない。
「待ちやがれ麦わら!!!!お前らー!何としても俺らのルタ姫を連れ戻すんだぁぁぁ!」
「うぇ~?何か身体中が痛いぃ、筋肉痛?」
何か凄いことになっていた。
数時間後に気が付いた彼女はそう語る。
「懸賞金はどれぐらいになりそうだ?」
「飛び六胞であるという点だけでも初手で5000万ベリーは固いだろう」
「あんな無害そうな少女が……そんなに」
「油断するな。あんななりでも中身は何を考えているか分かったものではない。下手をしたら一億……いや、最悪の世代を彷彿とさせるような、それ以上の脅威になるかもしれないな」
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ワノ国 七幕目
―――時は少し遡る。
「やはり!やはり!おれこそが内通者であったのだ!錦えもん、おれの首を切れ!おれはもうこれ以上……生き恥を晒したくはない!」
暴風雨が吹き荒れる中、一人の男が介錯を願った。
「バカなことを申すな!お前に罪はない!全てはこれだけ長く時を共にしておりながらお前の内に潜む"鬼"の存在に気付けなかった拙者の未熟さが招いた事!ここにいる誰も、お主の事を責めるものは存在しない!」
「だが、気付けた筈なのだ!おれには所々、
本来であるならその場所には打倒カイドウ、そして光月家の復興を掲げ、四千二百の侍達が集結していた……と思っている赤鞘の男七人とくの一は、破壊された廃船の残骸や約束の時間が過ぎても誰も集まっていないことから、他ならぬ身内の手引き、つまり内通者によって、今回の作戦を完封なきまでに潰されたのだと、勘違いした上で絶望した。
そして、その内通者は誰か……。
それは今こうして錦えもんに首を差し出し、この中の誰よりも絶望しながら詫びているカン十郎をおいて他にいない。
「もうやめろ!過ぎたことを悔いても仕方ない!」
「そうだ!カン十郎は悪くねぇ!」
「しかし!しかし……!」
だがしかし。少なくとも彼らの目の前にいるカン十郎には皆を裏切る気持ちなど欠片もなかった。
彼の忠誠は光月家ただ一つだけに注がれ、黒炭家などむしろこの手で滅多斬りしてやりたいほど憎んでいる。
ならば何故裏切ったと自分で言うのか……それは本当は彼が赤鞘の侍という役を演じていただけに過ぎない黒炭カン十郎であるから…………ではない。
少なくとも、少し前まではそうであったかもしれないが、今の彼にそうした後ろ暗い面は一切なかった。
彼はただ自身の内に潜んでいるであろう"鬼"が全てを台無しにしてしまったのだと本気で思い込んでいる。
「死にたいのなら、全てを終えた後で死ね!もし戦いの最中、お主が再び鬼に取り憑かれるような事があれば!その時こそ、拙者が叩き斬ってくれようぞ!」
「―――あ、ああ!!!」
だから、取り返しがつく……ついてしまった。
ボーウ、ボーウ、ボーウ
この嵐の中で鳥が鳴く。
この喜劇を引き起こした存在は、上機嫌に鳴いていた。
「…………は!?」
そして現在。
セルセルの弱点により、気をやっていたルタは正気を取り戻す。
ここはどこ!?何がどうなった!?
まだ弱点のことを理解していない彼女からしたら、いきなり気を失って、覚醒したような感覚に近い。
「お、目が覚めたか!」
ヤマト!?
だから何故カイドウの息子(娘)である彼女が目の前にいるのか、当然ながら知るよしもないルタではあるが、血を流す彼女を見て、ほぼ反射的に能力を発動させた。
「おお!?僕の怪我を治してくれたんだね!ルフィ達から聞いていたが、凄いなこれは!まるで怪我をする前まで体が元に戻ったみたいだ!」
今、どれぐらい事態が進行しているか分からないが、取り敢えずルフィとは仲良くなった後らしい。
「ありがとう!これでまだまだ戦える!君は危ないからここで待ってて!」
いや、待って!もっと情報を。
「――あぁ、そうだよね。君からしたら突然こんな場所に連れてこられたことになるのか。……一応聞くけど本当に覚えてないのかい?」
と情報を求めたら逆に問い掛けてくる始末。
全く身に覚えはないが、さてはウルティに頭突きでもされて、記憶が飛んだのだろうか。
「そっか……うん!まぁ覚えてないなら仕方ない。僕も急いでいるから簡単に説明するけど、
成る程。だいたい状況は理解した。
つまりルフィがカイドウに
分からないのが二人に執拗に狙われる理由だが……何でだろう。
やっぱりセルセルの能力がチート過ぎるのが、
待って!?
いま、アンタ。何て言った!?
「そりゃ驚くよね。あのカイドウと、カイドウと同じぐらい強いっていうビッグマムに狙われているんだもん」
違う!そこじゃない!もっと前!私がルフィの◯◯◯!て所!!
「え?君のお父さんであるルフィってとこ?君はルフィの娘だろう?実は違うのかい?」
一人バレるだけでもヤバいというのに「皆がそう言ってたのに……」と、悪夢みたいなことを言い出したヤマト。
知りたくないが……どれぐらい私がルフィの娘だと知っているのか、恐る恐る聞いてみる。
「えっーと、僕が知ってるのだと、まずルフィだろ?あと海賊狩りのゾロ、トニートニー・チョッパー、トラファルガー・ロー、モモの助君に、しのぶさんぐらいかな?」
一気に4人も増えた。
しかもその内、二人は麦わらの一味って。
「そろそろいいかな。あんまり時間がないんだ!早くしないとルフィ達が危ない!」
放心状態となる私を前にソワソワとし出す。
……てけ。
つ
……け。
「え、何?」
連れてけ。
「いや……でも。君みたいな小さな女の子には危ないし」
ならば、問題ない。
と言うことで私はセルセルの能力を発動し、30代の男バージョンへと姿を変えた。
すると、グングンと身長は伸びて今まで見上げていたヤマトを見下ろす形となった。その身長は三メートルは超えているだろう。ただデカくなった訳ではなく、ガープを思わせるような筋肉モリモリマッチョマンだ。
この頑丈な身体なら滅多なことでは死にはしない。
「はぇ……ルフィそっくりって訳じゃないけど、やっぱり親子だから似てるんだね」
あとは適当に顔を弄くれば……ほら、完璧である。
これでルフィの血縁関係だとは疑われまい。
「でもルフィには君を安全な所へって頼まれたし……う~ん」
どうせルフィ達もボロボロなのだろう。
ならば私のセルセルはこれ以上ないほど必要だと思われる。
大丈夫。絶対に先頭には出ないから。
「…………分かった。戦闘に出るつもりがないなら連れていくよ」
よし、これで道案内役は確保出来た。
本当ならもう少し調教を済ませた後にしようと思っていたが、もうこうなったら仕方ない。
これ以上、私の秘密が広がって……それこそ、『モンキー・D・ルタ 懸賞金一億八千万ベリー』とか取り返しのつかなくなる前に、秘密を知っている人間に接触して、ぼう太の能力で記憶を抹消する。
それで一味との関係を断った後、そのままエレジアに直行して………全てを終わらせる。
もう十分良い夢は見たんだ。これぐらいが潮時というやつである。
「あぁ、そう言えば!大切なことを忘れていた!」
ッゥ!?……まさか、まだ何か!?
「僕の名は光月おでん!君たちの仲間になる男だ!以後宜しく頼む!」
……あ、そですか。
なお、調教の練習台とその成果。
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ワノ国 八幕目
「おおルタじゃねぇか!お前、もう怪我は平気なのか!?」
ヤマトの案内について走ると、早速第一麦わらの一味(ゾロ)を発見。
見聞色の覇気持ちで警戒心の強い人だから、かなりの難敵になると予想していたが、まさか包帯で十字固めにされている所に出くわすとはこれは好機!
私はすかさず、マジシャンのように袖に忍ばせていたぼう太を取り出し、剥き出しの顔面に嘴を突き刺した。
「あっ!?ガゥ!?」
――はぁ!?いつの間に出来たガキだよ!
――ルフィの娘……ね。
――はは、面白れぇやつじゃねぇかお前。
――おう、サンキューな。
――ち、バカ野郎!
――合わせろ!俺たち二人で船長を助けるぞ!
――これでまだ戦える!
――ルタ!?……おい、てめぇ!俺たちの仲間に手を出しといて、ただで済むと思うなよ!
そして、パクりとゾロから飛び出た記憶をぼう太が飲み込み、最後にセルセルの能力で怪我を治療した。
「えっ!今何したの!?」
大丈夫!ただ怪我を治しただけだ!早くルフィ達の所へ!
「そうか。うん、分かった!」
さぁ、こんな調子でどんどん行ってみよう!
「おい!ルタ!絶対安静って言っただろ!いくら手術は成功したからってお前は――」
次はチョッパー!
「アグゥ!!?」
――本当なのか?それなら直ぐにオペしないと!
――エヘヘ……お医者さんカッコいいて……別に褒めても飴玉ぐらいしか出さないぞこの野郎!
――ルタはなぁ、Dr.と出会う前の俺に似てるんだ。
――やっぱり、ルタがちゃんと顔を見て話すのはルフィだけだ。何か理由とかあるのかな?
――どうしてルタは冒険するのが嫌なんだろう?俺たちといるのが楽しくないのかな?
――あぁそんな!こんなに進行が進んじまうなんて!急いでオペしねぇと、本当に手遅れになっちまう!
――ルタがルフィの娘!!?
よし、これで全部だな。
ぼう太、飲み込め!
「えっ!?今、治療したのかい!?僕には鳥を頭に叩き付けただけのように見えたけど!?」
知らんのか?これが最近主流のショック療法だ!
「そ、そうなのかな~?」
さぁ次だ!
「ルタ殿!?」
「貴方、ダメじゃない!さっきまでお腹切り開いてたのよ!?」
モモの助君と、しのぶさん。
ハイハイ、怪我してますね~治療しますよ、その前にぼう太!
「グフェ!?」
「ばぁ!?」
――何故だ。何故お主はそこまで拙者達を!
――もう止めて!その子が何をしたって言うの!?
――止めろ!カイドウ、ルタは拙者達の仲間ではない!
――もう私達の怪我を治さないで……お願いだから!自分のことをもっと大切に!
――ルタがルフィの娘?
――私は、また見ていることしか出来ないと言うの?
パクり。
「ねぇ、僕の時はその変な鳥は使わなかったよね?」
使うと能力が高まるんだ。
「……怪しい」
あと二人!一気に行くぜ!
「たくっ……やっぱり戻って来やがったか」
お?前方にはローさんではないか。
彼の周囲には……よし、ビッグマムはいないな。
「しょうがねぇ。そんなに父親の助けになりたいってなら、もう一度俺を治せ。送り迎えぐらいならしてやれる」
食い散らかせ!
「なっ……しまっ!?」
――おいおい、マジか……これは。
――ガキの癖になんて目をしてやがる。……俺が言えた話じゃねえか。
――耳を!?……こいつ、どこまで俺のトラウマを刺激すれば気が済むんだ!
――何だ。このふざけた影は。
――またお前か。いい加減……歌を聞いて欲しい?
――やはり、アイツの心の方の病を解く鍵は麦わら屋か……
――バカ!覇気も使えねぇガキがこんな場所に来るな!
――あぁ!麦わら屋!てめぇら親子揃って最悪だ!
――やっぱりこいつもDの一族か。
――助かるのか?だと……俺を誰だと思っていやがる
げぷっ……。
「今のは絶対におかしい!口に鳥を突っ込んでた!」
ラス1だ!!!!!さぁ早く案内しろ!
「あぁもう!この先だけど、ルフィにもその鳥で変なことしようとしたら止めるからね!?」
「……ルタ?」
さぁチェックメイッッ……あれ?
「あ、ちょっと!」と制止するヤマトを振り切って、ルフィへと一直線に駆け抜ける最中のこと。
ふと疑問に思うことがあって足を止める。
……そう言えば皆、何で顔も性別も変えてるのに私だって分かったんだ?
もしかして、記憶が飛ぶ前に同じ姿で戦ってた?
「おい!危ねぇ、避けろぉぉぉぉ!!!」
とルフィの叫ぶ声。
えっ?
カボチャが砕けるような音がして、私の意識はブツリと途切れた。
ペロ兄「ママ!聞いてくれ、シーザーの野郎がとんでもない事を吐きやがった!その娘は悪魔の実を複製することが出来る!その娘がどの陣営に与するかどうかで、今後の勢力図が容易にひっくり変えるんだ!」
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ワノ国 終幕
しーん。
「ウゲェェ……グフッ」
胃の中の物を吐き出し、獣人形態から人へと戻る。
「完全に酔いが覚めた。正に最後の一撃ってやつか……
カイドウの言うそれは、撃ち抜かれる瞬間にルタがセルセルの能力で血統因子その物を揺らした結果だった。
意識的にやったのか無意識なのかは定かではないが、世界で二番目の天才ことシーザー協力の下に生み出されたこの技は、食らうと反動で暫く能力が使えなくなるばかりか、吐きそうになるほど気持ち悪い。
正に能力に慢心しているようなやつには致命的な技……ではあるが、覇気至上主義のカイドウには能力の使用可否など些細なことだった。
彼は自身の眼下でうつ伏せになるルタに、言葉を投げ掛ける。
「ルタ……てめぇも難儀なやつだ。お前は自由に憧れ、何ものにも縛られぬ最高の死に様を求めていたが、その実、どこまでも己の血に縛られた人生だった」
一度目は見逃し、二度目は制裁を与えた、そして三度目に俺がお前に与えるのは絶対なる死だ。
少し前、バカ正直にも自身の目の前でルフィ達を治療するという裏切りの様を見せつけたルタにカイドウが言い放った言葉だ。
血は裏切れぬというが、血のせいで死んだというのがカイドウのルタに対する総評である。
少しでも息があれば、直ぐに能力で全快して見せる彼女。そんな彼女を確実に葬るべく、能力で底上げした腕力に加え、覇王色の覇気を上乗せした一撃を浴びせた。
「おい、嘘だろ!?目を覚ませよルタ!!!」
彼は能力が解けて全身血塗れとなったルタを抱き上げて狼狽しているルフィに目を細める。
「残念だが現実だ。
見聞色を極めたお前になら分かる筈だ。こいつは死んだ。特殊な
鼓動は完全に止まっている。全身の骨は粉々で、何千、何万と殺しているうち、いつの間にか聞こえるようになった命が砕ける音をカイドウは聞いた。
これで復活するならもう、それはヨミヨミのような死を前提とした能力に期待するしかない。
「お前ー!!!!」
それを理解したのか、激昂したルフィはギア4となり、カイドウへと殴りかかる。がそんな感情任せな攻撃を食らうほど四皇の名は優しくない。
「……麦わら、俺はお前を恨むぜ」
「ふざけんなぁ!お前が!お前がルタを!!!!」
「こいつには、うちでやっていく才能があった。その能力は飛び六砲として申し分なく、部下達とも早期に打ち解け、自由に生きる……その為なら他の不幸を許容する強かさがあった。こいつがいればうちはもっと強く、そして面白くなってただろう。それが……お前のせいで台無しになっちまった」
確かに手を下したのは自分かもしれないが、その原因を作ったのはルフィだというカイドウ。
「ッッ…………ゴムゴムのぉ~!」
「
「バオファン、鬼ヶ島中に結果を報じろ」
彼らは海の底へ落ちていった。
もう死んでいるであろうルタはともかく、あれでは麦わらも助かるまい。
せめてもの弔いとして、飛び六砲の一席は永久欠番とし、この鬼ヶ島をルタの墓標とする。
そう告げたカイドウの顔は失意に沈んでいた。
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赤髪海賊団
◯月✕日
どうも。ルタです(生きてます)
いや~雷鳴八卦なんて食らうもんじゃないですね。危うく死にかけましたわ(笑)
なんて、日記にふざけても仕方ないので状況整理。
先ず私はギリギリ助かった。
完全に不意打ちからの雷鳴八卦を食らった時は流石にもうダメかと思ったが、モンキー一族の頑丈な身体のお陰か、紙一重で命を繋ぎ止め、そしてトドメをさされるまいと、セルセルの能力で仮死状態となったのだ。
そして咆雷八卦の余波で鬼ヶ島から落ちた私は、急いで自己再生、からのセルセルの能力でぼう太を拡大し、滑空。
空中で受け止めたルフィを治しつつ、私に対する記憶を抜き取ってから鬼ヶ島の下に下ろした。
そのあとはもう……わざわざ語るまでもない。
私の記憶が飛んでいる間、カン十郎がオロチを斬り殺したとか、よく分からないことになっていたが、えびす町の人達の敵であるオロチがいない以上、私がワノ国に居座る理由もなく、一直線にエレジアへと向かってる。
九死に一生を得て直ぐに、死ぬために帰省するという我ながら訳の分からん状況だし、そんなことを考えているやつは直ぐに病院行った方がいいと思うが、
流石にぼう太に乗ったまま『
島を出る時に用意した
どっかにエレジアまで連れて行ってくれる気のいい海賊でもいないかな~なんて、下を見れば何やら見覚えのある海賊旗が。
「だははは!見ろよお前ら!でっかい鳥に女の子が乗ってやがる!」
「ははは!お頭!酔いすぎだぜ!」
「流石にそれはないない!」
うーん、うーん……いや、気のせいかなー?
冬島で
「ベックマン!ちょっと跳んで声かけてこいよ!」
……アカン。早く逃げなければ。
「別に構わないが……良いのか?もうすぐ始まるぜ、ウタの配信」
「何ッ!?おいお前ら!直ぐに映像電伝虫を用意しろ!」
えっ?ちょっと待って、暫く観てなかったし気になる…………ええい!
セルセルでちょっと顔を変えて、お邪魔しまーす!
◯月△日
赤髪海賊団の船に乗せて貰うことになった。
理由は私がウタちゃんのファンで、ウタちゃんが初のライブ(おもっきしRED開幕フラグじゃないですかやだー)を行うと昨日の配信で発表したとのことで、そのライブに連れて行って貰うためである。
何か展開が良すぎて作為的なものを感じるが……
肝心の私の両親がウタちゃんとルフィだってバレないかということだが、初手からセルセルで顔を変えていたこともあって、今のところは大丈夫ぽい。
あと二年後の赤髪海賊団というと妙にシリアス風味だったり、五老星の飼い犬疑惑だったりと、勝手に暗いイメージをしていたが、昨日のウタちゃんの配信から盛り上がって「ウタの初ライブを祝して!」「宴だ!宴だ!」とそんなイメージを払拭させるような明るい雰囲気を醸し出していた。
それに絆されて、秘密を打ち明ける……なんてバカな真似はするつもりはないが、私に宛がわれた部屋がどう見ても幼少期にウタちゃんが使ってた部屋で少し居心地が悪い。
今着ている服もウタちゃんの御下がりだろうし(じゃなかったら気持ち悪い)、何と言うか12年前に降りた少女の部屋をそのまま残しておくとか、赤髪海賊団のウタちゃんに対する愛の重さに胃もたれしそうだ。
ここで娘の娘なんて登場してみ?
ルフィは死ぬ。(間違いない)
今さらながら、ひいじいちゃんに迎えにきて貰えばよかったと思うこの頃である。
◯月□日
残り七日もあればエレジアにつくらしい。
流石は四皇の船、鬼早い。
今日は暇だからと、ラッキー・ルーと一緒にご飯を作ることになったのだが、何か子供扱いして雑用任されそうになったのが尺に触ったので、ちょっと本気出してサンジさん直伝の男どもを黙らせる肉汁グルメを作ってやった。
試食したラッキールーが「悔しいが俺の敗けだ!今日から厨房はお前の物だ!」とか言ってたが、別に私は赤髪海賊団のコックになるつもりはない。
◯月△✕日
今日は釣り。
そしたら小型の海王類を引いたみたいでかなり焦った。
ヤソップが速攻で仕留めて、ベックマンが引っ張られそうになってた私を捕まえてくれなかったら今頃は海の底だったかもしれない。
ほんと、二人には感謝である。
お礼に仕留めた海王類を捌いて、大量の料理を作った。
二人は唐揚げがお気に入りで、関係ないがシャンクスは蒸し焼きがお気に召したらしい。
もしよかったら、このまま俺の船に乗らないか?
と、デジャブ。
そんなこと言う暇があったら娘迎えにいけと言いたかった。
まぁ何で知ってるんだって問い詰められたくなかったので黙っておいたが。
◯月□△日
今日は念のためにと、ホンゴウさんから診察を受けて驚いた。
どうやら私は末期の癌……だったらしい。
何故か知らず知らずの内に完治していたようだが、セルセルの能力で目に見える異常は治してしまえるし、痛覚がないものだから今の今まで気付けなかった。
どうりで最近、食欲が増したような気がしてた訳だ。
治った原因は分からないが、美味い物をいっぱい食べることが出来るので良い事知ったぐらいの儲け話であった。
◯月✕◯日
今日はお昼寝をしていたら、怪鳥に拐われたらしい。
寝ている間に赤髪海賊団の皆で取り返してくれたみたいだが、目が覚めるとぐったりとしたシャンクスが膝枕をしてくれていた。
まさか寝ている間に怪鳥に拐われていただんて思わなかった私は、シンプルに膝硬い……なんて失礼なことを言ってしまったが、後で謝っておこうと思う。
―追及―
どうやら怪鳥に拐われた後で海王類に食われそうになったり、黒髭海賊団傘下の変な海賊に捕まったりと、挙げ句の果てには海軍中将と軍艦三隻まで出てきた滅茶苦茶な大冒険だったらしい。
そんだけ騒がしかったら流石に起きたと思うし、是非起きていたかったが、多分、怪鳥に拐われた時に焦ったお頭が覇王色の覇気を使ったのが原因で寝ていながら気絶したんだろうと言われ、悔しくて泣いた。
◯月△✕日
何と言うことでしょう。
私の足元には泡を吹いて倒れる四皇が……。
と言うわけで私が新時代の四皇だ!
冗談はおいといて、剣の稽古をつけてくれると言うので、鞘を着けた剣を思いっきり振りかぶったら鞘だけとんでいって、シャンクスのシャンクスが潰れかけた。
本当に申し訳ない。
ベックマンは子供だからと舐めてかかるからだ……と呆れていたが、セルセルの能力では怪我は治せても痛みは消せない為、シャンクスの痛みが引くまで腰をさすってあげた。
◯月■日
今日は覚醒したセルセルの実の能力を確かめるべく、物資補給に寄った小島で実験だ。
どうやら少し前に海賊に荒らされたらしいこの島には怪我人が沢山いるようなので……島全体に能力を発動させて一気に治してみる。
―追及―
ボンク・パンチとモンスターと即興でバンドを組んでゲリラライブした。
スッゴい楽しかった!
ちょうどウタちゃんの配信がやってたから、疑似デュエットして新時代歌った!赤髪海賊団の皆がいーぱい誉めてくれて、ほんと!スッゴい楽しかったです◯
本編if
ウタ「皆ー!ウタだよ!」
アホの子「わぁー!ママだ!」
赤髪海賊団「「「!!!!?」」」
ウタ「じゃあ次は新時代!」
アホの子「ルタも一緒に歌う!変身も……ええいっ!解いちゃえ!」
赤髪海賊団「「「「……」」」」(疑う必要すらないレベルの面影に無事脳破壊終了)
ロックスター「えっ、何んかこれ?」
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エレジア編 開幕
「うわー!見てみて!あれがエレジアだよー!」
「あー、分かったら急かすな」
思いもよらない事件に巻き込まれつつも七日目。
赤髪海賊団は無事エレジアへと到着しようとしていた。
「いっぱい船が浮かんでるね~!」
「民間の船や海賊船も結構あるな」
「海賊船!?それは大変だよシャンクス!ウタちゃんは海賊が大嫌いなのに!」
「ぅ……ん。そうなのか。それは困ったな」
使いすぎるとバカになるというセルセルの実。先日島一つを対象にして能力を使用とする特大のアホウを噛ましたルタは未だアホアホの実の全身地雷人間であった。
「しかし……少し妙だな。まだ夜明け前だってのに明るすぎる」
「ふふふ!バカだなぁシャンクスは。そんなの灯りをつけているからに決まってるじゃん!」
「それはそうだが……」
シャンクスの目線の先にある、ライトアップされたエレジアの姿。
トットムジカがエレジアを崩壊させてから12年。
これだけの年月と、それなりの蓄えさえあれば復興することは十分に可能だろう。
別にシャンクスはゴードンにエレジアを復興するなとは言っていないし、定期的に宝を流していたから不可能ではない……のだが、何というか嫌な予感がした。
「そう言えばルタは、少し前までエレジアで暮らしていたんだよな?」
「うん!お姉ちゃんとゴードンと暮らしてたよ!」
「他に移民……いや、他の島から引っ越してきた人はいなかったのか?」
「居なかったと思うよ?私が出てってから大分経つからその後のことは知らないけど……」
シャンクスから見て、目の前のルタという少女は6歳ほどにしか見えない。彼女はエレジアで育ち、訳あって島を離れることになったそうだが、年齢からして島を離れてから大分経つと言っても、せいぜい一年か二年の話だろう。
彼女が暮らしていた頃のエレジアは崩壊した後の物であったと言うし……果たして二年ほどでここまで復興出来る物なのかと、シャンクスはウタウタの能力でウタワールドに取り込まれた可能性を疑った。
まぁ実際、ルタが島を離れたのは6年前なのだが、エレジアの街並みは崩壊する前以上の輝きを取り戻していた。ルタもIQが戻れば同じ結論に達するだろうし、何も知らないシャンクスが幻想であると疑うのも無理はない。
「あー!見て見て!シャンクス!ピカピカのお船!」
「……おいおい、あんなやつまでウタのファンなのか?」
シャンクスの呆れたような声。
ウタの歌声はあの"
船と言うより巨大な街のような黄金船が島の裏手からひょっこり顔を覗かせていた。
「シャンクス大変!あそこで出店してる人、海軍だよ!」
「な…………いや、あれは違うぞ」
「あれ?そうなの?シャンクス達捕まらない?」
「それは分からないが……資金集めでもしてるんだろうか?」
元海軍本部大将ゼファー率いるNEO海軍。
海賊撲滅を掲げた過激派組織の末端の兵士が、何故か出店を開いていた。
「シャンクス!あそこー!船が飛んでる!!!」
「…………ウタのファンだよな。ファンであってくれ」
今度は海賊として、大海賊時代を迎える前から海賊王の船に乗っていた者として、
もしあれがエレジアで暴れようものなら……それは腕の一本や二本で済む話ではない。
「シャンクス!これ見て!」
「次は…………このライブの企画担当がブエナ・フェスタだと?アイツは海王類に食われて死んだ筈じゃ」
一体全体、これはどういう状況だと言うのか。
新世界の怪物にNEO海軍に金獅子海賊団に祭り屋フェスタ。
皆が皆、この海に荒波を立てる猛者達だ。
彼らがウタのファンでライブを見に来ただけならいいのだが……何だが頭痛がしてきた。
シャンクスは見聞色の覇気でルタが次にまた何かを発見して、報告してくる未来を見てしまったが、正直もう聞きたくない。
「シャンクス!」
「ルタ、お前に俺はもう何も聞きたくないことを教える」
「でもでも!シャンクス!あれー!」
なるべく見ないようにと目を細めて、ルタの指差す先に視線を向けるシャンクス。
するとそこにあったのは、バギー海賊団の船であった。
「……何だ、バギーか」
バギーなら別に問題ないなと、一息つくシャンクスであった。
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エレジア編 大合戦
「なぁにが「何だ、バギーか」だぁ!安心してんじゃねぇ!事情はどうであれ俺はお前と同じ四皇になったんだ!少しは警戒しやがれ!」
「まぁまぁ落ち着けって。ルタが怖がってる」
「ルタぁ~?何だこいつはお前のガキか?」
「いや、遠くの島で意気投合してな。ウタのライブに行きたいっていうから連れてきた」
怒鳴り散らかすバギーに怯え、シャンクスのローブに隠れるルタ。
あれから直ぐにバギー海賊団に接触した赤髪海賊団。
どうやら鷹の目のミホークとクロコダイルは同行しておらず、偶然チケットを手に入れたバギーはミスター3や
「それよりも聞きたいことがあってな。
……祭り屋やギルド・テゾーロはともかくとして、金獅子やNEO海軍までウタのライブに来たことについて何か知らないか?」
「知るか!折角俺様の捻れ上がった胃とストレスを労う為に政府の目を掻い潜って訪れたってのに、とんでもねぇ奴らが白昼堂々闊歩してやがる。こんな事になるならミホークだけでも連れて来るんだったってハデに後悔中だ」
「そういやアイツ、お前の部下になったんだったな。しかしそうなると弱ったな…迂闊に接触するわけにもいかないし、奴らと連絡を取ろうにもその手段がない」
これでもし、金獅子のシキやゼファーなどが単なるウタのファンで、遠路遥々このライブの為に訪れたというだけなら何の心配もいらないが、わざわざ海賊旗や反海軍をアピールする軍服を掲げている以上、組織単位の思惑があるのだろう。
「…………仕方ないか」
一瞬、思い詰めた表情をしたシャンクスは懐から小型の電伝虫を取り出した。
「あん?誰に連絡取るつもりだ?」
「この国の国王とは面識があってな。もしもの時の為に連絡出来る状況は整えていた」
「おお!成る程……この国の国王ならこの状況も何か知ってるかもしれねぇ。本当にアイツらが歌姫のファンってなら問題ないが、もし歌姫が人質に取られているようなもんなら直ぐにトンズラこかせて……」
「あぁ、その時は俺たち二人で奴らを潰すぞ」
真顔で宣言するシャンクス。
「は?」
とんでもない事を宣う彼に放心するバギー。
いくら自分達が四皇だって言っても、主戦力のあの二人はいないし、何より見習い時代、あのロジャー船長と覇を競いあっていた男が敵になるかもしれないと言うのだ。流石に冗談だと思いたいが、特に弁明する訳でもなくシャンクスは電伝虫のダイヤルを回した。
プルプルプル プルプルプル プルプルプル
「…………ハッ!?」
その瞬間、ルタは正気に戻る。
えっ!?もうエレジア!?
バギーがいる!!?
突然ビックリドッキリな彼女ではあるが、
取り敢えずエレジアに着いたら、ウタワールドに取り込まれない為に鼓膜を潰そうと考えていた為、咄嗟に潰した。
ガチャ
「もしもし、ゴードンか?」
『ありがとう。シャンクス……ルタを連れてきてくれたんだね』
「な……」
「お、おい?」
四皇一名脱落。
…………えっ?
まさかいきなり?と恐らく電伝虫越しからウタワールドに取り込んだのであろうウタのヤバさに怯える彼女であるが、この時はまだ余裕があった。
急いで電伝虫を切り、バギーにお願いしてシャンクスを背負って貰う。
彼女がまだ安心出来るのには多々理由があるが、一番の理由がウタウタの実の最大最強の力であるトットムジカの楽譜はとっくの昔に燃やしてあるからであった。しかも謎の超パワーで復活しないように燃えカスは海に捨てるという徹底ぶりだ。
だからウタワールドにさえ取り込まれなければ何とかなると思っていた。
当たり前だが、劇場版の敵が勢揃いしているとは夢にも思ってはいない。
「何だ?こいつがいきなり気絶した理由について何か知ってるのか?」
……う~ん。よし!
エレジアの様子が大分違ったり、ルフィ達はもう来ているのかとか、色々分からない事だらけだけど、さっさとウタちゃんから記憶を抜き取って終わらせよ!
本編でいうライブ会場を目指して歩くルタ。
「おい、ちょっ!置いてくんじゃねぇ!!!」
そう意気込む私の後をついてくるバギー。
別について来てもいいけど、面白くないと思うよ?
歩を進める傍ら、そういや何でバギーがエレジアにいるんだ?
REDには出てなかったよな。とか飛んでいた記憶の穴を埋めるように思考を加速させていく。
そして、会場の入場入り口に着いた時であった。
「ジハハハハ!!!これが今の四皇の力か!弱すぎて反吐が出る!」
「ちっ、一番活きが良いのを取りやがって……部下程度じゃあ肩慣らしにもなりやしねぇ」
「くそぉぅ……」
「「ルフィ!」」「ルフィ君!」
「ルフィさん!」
苦戦するルフィと麦わらの一味。
それに対する金獅子のシキ(何故か若い)とダグラス・バレット。
……そっと私は来た道を引き返す。
「おやおや、ショーはこれからだってのに何処に行こうっていうんだい?」
その肩を掴んだのはギルド・テゾーロ。
――おら!セルセル!
「なっ!?ウゲェェェ!!!!」
能力を使って私は逃げた。
「はぁはぁはぁ!クソー!シャンクス!これで生き残ったらテメェから財宝巻き上げてやるからなー!」
それでシャンクスを背負っているバギーも一緒に逃げた。
もうヤダ!なにこの理不尽!何で劇場版のキャラがいんの!?
と一先ず安全なところを目指して、私の私室へと走る。
「やはりここまで来たか。モンキー・D・ルタ!」
そりゃ居るよね!ゼファー先生ー!(やっぱり若い。モドモドかな!?)
続けて立ち塞がってきたゼファーにセルセルの能力で一端吐き気に苦しんで貰おうと手を伸ばすルタ。
「ハァァァ!!!!」
なっ!?こいつ……覇気で私の能力を!?
能力は強すぎる覇気でガード出来る。
ゼファーは覇気の達人→つまり私の天敵。なんてバカみたいな図式が頭に浮かんだが、ここまで来て諦めてたまるかと能力で体を成長させ、セルセルの
「はは!流石はガープの曾孫といったところか!その年にしてこの拳の重さ……育て甲斐がありそうだ!」
鼓膜潰しているから何を言ってるか分からないが、褒めても何もでんぞ!この野郎!
セルセル自己改造→セルセルのぉ~
「だがしかし!能力に頼りきりになっているのは減点だな!そんなあからさまな攻撃で倒せるとでも?
俺を誰だと思ってやがる!俺の名はZだ!」
お、おおおぉぉぉぉぉ!!!!!
力比べで負けてたまるかぁぁぁぁ!!!!
バキッボキッバキバキ!!!!
「ちっ!こいつに痛覚はないのか?!このままだと腕が砕けて使えなくなるぞ!」
お?何か……力が弱くなった気がする。このまま押し切れ……!
「ならば仕方ない!幼いお前には負担は大きいが、覇気の真髄をお見せしよう。遠い国、ワノ国で流桜と呼ばれる力!覇気による内部破壊だ!」
あぎばばばばばばば!!!!
……だ、ダメだ!これ以上は。
「はっ!隙だらけだぜこの野郎!食らえ!特製マギー玉!!!」
「何ッ!?」
寸前の所で思わぬ助太刀が入り、何とか気絶する前に能力による回復が間に合った。
「おら!さっさと逃げるぞガキ!」
言葉は聞こえないが、この時だけは何を言ってるのか理解出来た。
私は口笛を吹いて、ぼう太を呼び寄せ、その上に乗る。大人二人は能力で肉体を幼くして何とか重量オーバーをパスした。
「よし、このまま俺の船まで……て、おい!何処に向かってやがる!」
バギーには悪いが、あと少しなんだ。
あの会場にウタちゃんはいなかった。城にもゼファー先生だけでいない、となると後一つだけウタちゃんが居そうな場所で残されたのは…………私が生まれたあの家しかない!
トットムジカの影響から逃れて唯一破壊されずに孤立した小谷の上にある家。
ウタちゃんが産みの親であると判明するまで一緒に暮らした、思い出深い場所だ。
そこに行けば全てが終わるんだと、ぼう太に乗ってその家の扉の前に降り立った私は勢いよく扉を開けた。
「おかえりなさい、ルタ」
すると、やはりいた。私のよく知るウタちゃんだ。
彼女は満面の笑みを浮かべ、歓迎するように両手を広げる。
「あ、お姉ちゃ」
「そして、お休みなさい。……永遠に」
そしてグサリと刺されましたとさ。……ハハ!!!
Q.何故麦わらの一味がいるの?
A.カイドウ戦が終わったあと、最高の船と最高の操縦士が何十回も風来バーストして、いつの間にか追い越してた。
何でそんなに急いでいたかは……次回へと続く。
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選択編
エレジア編 白昼夢
刺されたのは右胸だった。
致命傷だが、心臓をやられた訳ではない。
色々と思う所はありつつも、6年間も家族同然の間柄として共に育ったウタちゃんに刺されたと言うのは、かなりショックだったが……まだ、死ぬわけにはいかない。
だから傷を治そうと能力を発動させようとして……上手くいかなかった。
「あ、え…………?」
何だか全身の力が抜けたようで、そのまま地面に倒れてしまう。
「ま、……さか。これ、て」
「海楼石って言うんだよ。これに触れると能力者は力が出なくなるの」
「ぁう?なん、て……」
「……やっぱりルタは耳が聞こえなくなってるんだね」
何を思ったか、ウタちゃんは倒れる私を抱き上げて……ナイフを引き抜いた。
すると、どうだろう。全身に活力が戻ったように謎のダルさが消える。
だから私はセルセルの能力で体を癒し―――「カフッ」それを見計らったかのようにウタちゃんはまた私の右胸を刺した。
「今度は聞こえるかな?」
「え、ハ……」
「大丈夫……大丈夫だよ。ちゃんとルタも新時代に連れていってあげるからね。赤髪海賊団の皆とは違って……私は貴方を絶対に見捨てたりはしないから」
耳は聞こえている筈なのに……何を言ってるのか、本当に意味が分からなかった。
実の娘を二度も刺しておいて見捨てない?大丈夫?能力者が海楼石のナイフで刺されたらどうなるか知らない訳でもないだろうに……このままでは死んでしまうではないか。
「お姉…………お母さん。お願い、だから……これ、抜いて」
「ごめんね。それはダメなの……でも大丈夫、大丈夫だから」
ドクドクと血は流れ、目が霞み始めてきた。
抱きしめられているのに寒くて、寒くて堪らない。
今のウタちゃんが言う新時代とは……ウタワールドのことではないのだろうか。
この時、初めて私はウタちゃんが完全に壊れていたことを理解したのかもしれない。
いや、壊れたんじゃなくて私が壊したのか。
……せめて、死ぬならウタちゃんの記憶だけでも。
それでも記憶を消そうとしたのは、多分彼女を歪めてしまった罪の意識からだとか、優しい彼女に戻って欲しかったからではなかったと思う。
ただ十年近く願い続けていた妄念による無意識。これが一番近い。だって、その時私がウタちゃんに抱いていた感情は……恐怖以外の何物でもなかったのだから。
私はなんとか震える唇を動かして、ぼう太を呼ぼうとする。
「おい早くしねぇと、ゼファーの野郎がここに!――――何やってんだテメェ!!!!!」
しかしそれより先に飛び込んできたのはバギーで。
「……何だ。まだ"起きている人"がいたんだ」
冷めた目をしたウタちゃんの言葉には私ですら引きつった悲鳴を漏らした。
「おうおうおう!噂名高いウタ様とやら!!そいつとは別に付き合いが長いって訳じゃねぇし、何の恩も義理もねぇが……この俺様の前で殺そうとするとは随分とハデなことくれるじゃねぇか!」
「……なに?どうせ貴方も海賊なんでしょ」
「うちじゃ宝の為なら略奪や殺しもするが、何も持ってねぇガキを殺すほど落ちぶれちゃあいねぇんだよ!」
食らえ!バラバラ砲!
「な、きゃぁ!?」
バギーが飛ばした腕は軽くウタちゃんを吹き飛ばし、そして私を回収してバギーの元へと帰った。
「――と、勢いで助けたはいいものの、どう見ても虫の息。生憎今回俺は船医を連れてきてねぇ……シャンクスの船に行けばギリギリ間に合うかぁ?」
「って…………このナイフを抜い、て」
「バカか!こういうのは抜いたらダメなやつなんだよ!」
「……もう、ぃ!」
「おいバカ止めッ!?」
私は無理やりナイフを抜いて、そしてセルセルの能力で何とか傷をふさいだ。
失った血は直ぐには戻せない為、少しリカバリーが必要だが、さっきよりは大分楽になった。
「成る程……海楼石のナイフか。酷いことしやがる」
血のベットリとついたナイフを拾い上げ、嫌悪するバギー。
私はその間にぼう太を側に呼び寄せ、そしてさっきの衝撃で気絶してしまったウタちゃんの前に立つ。
ごくり。と唾を飲んだ。
これで、これで、やっと解放される。
「ぼう太。お願い」
ゆっくりとウタちゃんの額にぼう太の嘴を押し付け、軽く噛ませる。そしてぼう太を引き上げると……そこには生まれたばかりの私を号泣しながら抱きしめるウタちゃんのフィルムがあった。
そしてそれから始まる、初めて私が寝返りした時の喜びや、立った時の喜び、自我が芽生え始めて姉として接しなくてはならなくなった悲しみ等々……実に6年分の記憶が詰まっていた。
「ぼう太、飲み込んで」
ゴクリと飲み込んだのを見て、あぁ……終わった。
海楼石に触れた時のように全身から力が抜けた。
これで……もういいや。
あとは助けてくれたバギーを船に送り届けて…………兎に角、気が済むまで眠りたい。
目的を達成して今分かったが、別に私は死にたがっていた訳ではなかったようだ。
ただ掲げた目標が高過ぎて、死に逃げようとしていただけ。
……そうだ。バギーの船に乗せて貰えないかな?
何だか急に思考が軽くなったような気がする。
まだ問題ごとは残っているのに……我ながら現金な性格だ。
「よし!問題も済んだようだし。ハデにトンズラこくぜ!」
うん!
ONE PIECE FILM RED ルタの章~完~
「……これがルタの夢なんだね」
え?
「痛たた……おい!シャンクス!何だって、てめぇが!」
「ウタを傷つけるやつは誰であろうと俺は許さない」
何でバギーがシャンクスに取り押さえられ……。
あれ?私はウタちゃんに抱きしめられたままで、何で治した筈の傷が……ナイフがそのまま……でも血が全然出てない……何というかあんまり刺されていないような……浅い?
「私、ウタウタの能力を頑張って鍛えてね。その人が一番幸せだと思う
ルタは……私からルタに関する記憶を消して自由になりたいってのが夢なんだね。
あと、私が救いようがないほど狂っていて、後腐れなく別れたいってのもあるのかな?」
白昼夢のような出来事に混乱していると、ウタちゃんが答えを教えてくれた。
一体いつから、その新能力に取り込まれていたかは知らないが、言葉通りに現状を理解しようと言うならこのシャンクスや劇場版のラスボス達はウタちゃんの従順な兵士となっているわけだ。
「そっか。薄々感じてたけど、やっぱりルタは私のことが嫌いなんだね」
「いや、違っ」
「ううん。いいの、嘘はつかなくて。だって、こんな頭のおかしいお母さん、私だって願い下げだもん」
そこでウタちゃんは私が怪我しないようにと、軽く押し付けているだけだった海楼石入りのナイフを放り投げる。
「ほら、良いよ」
「えっ?」
「私の記憶を消して、ルタは自由になるといいよ」
「で、でも…………いいの?」
「うん、勿論!私がルタを苦しめている原因になっているって言うなら、それでルタが救われるっていうなら、私はルタの事を忘れても構わないよ」
…………それなら。いやでも。
さっきの事もあって躊躇してしまうのは無理もなかった。
そもそも鼓膜を潰した私が何故ウタワールドに取り込まれたのか、いつからウタワールドの出来事だったのか。ウタちゃんの新能力……何か海賊無双とかで出てくる催眠アイテムみたいな力だが、それにしたって、こうも劇場版のキャラ達を都合良く集められるものだろうか。
ここはまだウタワールドの世界で、劇場版のキャラ達は私の記憶を元にウタちゃんが作り出した……と言われたほうがまだ信じられる。
だからこの行動にも裏があるんじゃないかと…………私は迷った。
このまま言う通り、ウタちゃんの記憶を消してしまうべきなのか。
それとも一旦逃げて、計画を建て直すか。
それとも……。
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バギーに期待の眼差しを向ける
それとも……バギーに期待の眼差しを向けてみる。
どうしてその選択肢を選んだのか、正直自分でもよく分からない。けど私は生まれて初めて誰かを頼るという選択を選んだ。
これでダメなら死んでやる。
そんな思いを込めてウタちゃんに抱きしめられたまま、シャンクスに拘束されているバギーへと助けを乞うような目を向ける。
「……いや、普通に無理だが?」
……ですよね。
まぁ分かってたけど、うん。
無敵のキャプテンバギーでもこうまで地獄な空気&シャンクスに拘束されてるという詰みな状況ではどうしようもないみたいだ。
「……そりゃおめぇの生まれには同情するが、流石に金獅子やシャンクスをいとも簡単に洗脳しちまうような鬼ヤベぇお前の母ちゃんとは関わりたくねえ…………と言うわけでなんで、俺は関係ないから帰してくれませんかね?」
「……私が海賊を野放しにするとでも思った?」
それに貴方はルタにとって、重要な人みたいだし。とボソリと呟くウタちゃん。
彼女はシャンクスに命じて、地下牢にでも閉じ込めているようにと告げる。
「さて、ルタはどうしたいのかな?」
改めて聞こうと言うのだろう。私を抱き締める力がぎゅっと強くなる。
「私は……」
もう、どうすればいいのか分からない。
ポキリとその時、私の心は完全に折れた。
もう何も考えたくない。心を空っぽにして、ウタちゃん……お母さんにとって都合の良い人形になってしまおうと全身から力を抜いた。
「えっ」
その瞬間、何かに胸ぐらを捕まれて引っ張り出される。
「ルタッ!」
えっ?
一体何が、と胸元を見ると片手が宙に浮いている。
「ぶわはは!!!馬鹿め!俺を本気で拘束したいなら海楼石の鎖でも持ってくるんだったな!」
狼狽したウタちゃんの姿、バラバラになったバギーを捕まえようと躍起になっているシャンクスの姿、そして高笑いしながら出口に走るバギーが、私を。
「おい!小娘!ハデに逃げるぞ!」
なんで、助けた。
一人で逃げればいいのに、それに私がここで逃げたらウタちゃんは……。
「知るか!さっきも言ったがおめぇの家庭事情なんて俺は知らねぇ!だがここから逃げるにはお前の能力が必要だからな!そんなクソ食らえな関係からは――海賊らしく奪ってやるんだよ!」
……なんて、滅茶苦茶な。そして理不尽だ。
これは状況が状況なら一種の告白というやつでは?と普段の私なら怪しんだが、あまりにも強引で、利己的な勧誘に度肝抜かれていた。
「あーくそ!動かねぇなら抱えてでも走るからな!」
その直ぐ背後からは剣を抜いたシャンクスの姿がある。
彼は私を抱えて逃げるというが、子供一人を背負って逃げきれるほど相手は甘くないだろう。
「チクショー!あの野郎、完全に俺を殺す気だー!」
私には分からないが、多分バギーの反応からしてシャンクスは覇王色の覇気を纏っているらしい。
……少しぐらいなら時間稼ぎになる筈だから、私を捨てて逃げれば?
「断る!俺は一度自分の物にしたもんを他人に奪われるのが死ぬほど嫌いなんだ!」
よく分からないが、私はバギーに惚れられでもしたのだろうか。それとも海賊らしく大胆で臆病で、ガキみたいな理由で我を突き通そうとする、こういう性格だから四皇に成れたんだろうか。
セルセル……。
何か情けないというか、哀れに思えて、私はぼう太を巨大化させて、バギーと乗り込む。
「へ!やっとてめえも逃げる気になったか!」
「違う。一旦逃げてお姉ちゃんを救う方法を考えるだけ」
「そりゃいい!戦略的撤退って言葉は俺の座右の銘でもあるんだぜ!俺たち意外と気が合うかもな!」
それから、なんやかんやでエレジアを脱出し、なんやかんやでエレジアをバギーの縄張りにして、ウタちゃんと折り合いをつけつつ、最終的にバギーを海賊王にしましたとさ。
ちゃんちゃん
ONE PIECE FILM RED バギーの章~完~
BADエンド1:バギーに期待の眼差しを向ける
「私が居ないとこの人は……」
モンキー・D・ルタ 懸賞金 一億三千万ベリー
ウタちゃんに刺された事が若干トラウマになって、包丁を見ると顔がひきつる。
数ヶ月後ぐらいにバギーを説得しクロスギルドの幹部達とウタちゃんと和解しようとしたが、失敗。
燃やした筈のトットムジカを歌ってしまったウタちゃんは原作と同じような末路をたどり…………「ルタ、生まれてきてくれてありがとう」心がぶっ壊れる。
結果的に持ち直したが、バギーを海賊王にすることを自身の夢の果てにした。
多分このルートでルフィが海賊王になれなかった最大の原因にして元凶。
覇気は習得不可。
心は折れているし、顔に出して笑えないが、本人曰く楽しくない訳ではない。
あの日から一度も歌っていない。歌うと母や父と過ごした日々を思い出すから。
BADエンド理由 ラスボスから逃げきってしまった。
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ぼう太で記憶を抹消する→ルタ
それとも……ぼう太で記憶を抹消してみるか、私の。
それはあまりにも逃げの選択で、卑怯なことだとは分かっていたが、もしかしたらウタちゃんが歪んでしまったのは『ルタ』のせいではなく『私』が前世の記憶を持って生まれた化け物だからではないか。
幼いながらに察しの良い子供はさぞ不気味だったのだろう。親の顔色を伺っている様は実に気味が悪かったろう。
それでも自分は親だからと育てる事を強要されるのはさぞ、苦痛だったに違いない。
(なんだ……悪いのは私か)
そう思うと、何だが凄くしっくりときて、私はぼう太を額に押し付けて、記憶を全て引き抜いた。
「「―――ルタァ!!?」」
……あれ?ルフィとウタちゃんが、二人……どうして。
その瞬間、『私』という自我は綺麗さっぱり消失した。
「…………記憶喪失だ。ルタはもうおれ達のことも、ウタのことも、何も覚えてねぇ」
あぁ、嘘だ。そんなのってない。
「何とか……ならねぇのか?」
「分からない。元々生物の脳ってのは複雑で今の医学でも分からない事が多いんだ。それに加えてルタの記憶喪失は悪魔の実によるものだ。あの鳥を捕まえないことにはどうしようもない」
「そうか……」
折角、ルフィ達と仲良くなって、ルタのことも打ち明けて受け入れて貰えたのに。これから私達はルフィの船に乗って沢山冒険する筈だったのに。
「ルフィ君。やはりあの鳥は島の外へと出てしまったようじゃ……それで言いにくいのじゃが、あの鳥の別名はグランドバードと言って、自らが住みやすい環境を探して
「……そうか。こんな時間になるまで探してくれてありがとな。悪いけど、アイツらを集めてきてくれねぇか?」
「あぁ、分かった」
私達の目の前にいるルタ。
まるでただ眠っているだけのようなのに、そこに彼女はいない。心臓が動いていても息をしていても、決して目覚めることのない透明だ。
どうしてこんなことになってしまったのか。
私だ。私があの子を追い詰めたからだ。
それを自覚して、やっと謝ろうと決意した時には遅かったんだ。
もっと前に、6年ぶりにウタワールドで再会した時……一言「ごめん」と言えばこうならなかったかもしれないのに。
私は……娘を殺してしまった。
「ウタ、そろそろお前も休め。ルタは俺が見守っておいてやる」
「ああ……ごめんなさい、ルフィ。
あんたはルタと冒険をしたい、見せたいものが沢山あるってあんなに楽しそうに話してくれたのに、私のせいで……」
「いや、違ぇ。お前だけのせいじゃねえ」
いや、私のせいだ。
ルタとファンの皆を巻き込んでウタワールドで生きようとし、その為に集めた人達の想いを散々弄んで、挙げ句の果てに娘にこんな最低な逃げ道を用意してしまった。
ルフィ達はむしろその逆で、ルタだけでなくこんな救いようのない私ですら救おうとしてくれた。
だから、ルタが死んだのは全部私が悪い。
だから、ごめんなさいルタ。
私は最後まで貴方の母親にはなれなかった。
もし、叶うならどんな酷い死に方をしてもいい。
もう一度だけ、やり直す機会を………………。
本当にやり直せないのだろうか?
「そっか、またやり直せばいいんだ」
なんだ。そうだよ。何で気づかなかったんだろう。
記憶がないならまたやり直せばいい。
美化もせず、風化もせず、1ビット足りとも違うことない貴方を造ろう。
幸いにも透明なだけで貴方はそこにある。
だからウタワールドに貴方を運んで、どれだけ時間が掛かったとしても、どんな手段を使ってでも、本当の貴方を彩り、もう一度会いに行こう。
それで会えたら今度こそは、貴方の夢を叶える。
だから少しだけ先の未来で待っててね、ルタ。
私も直ぐにそっちに行くから。
ノーマルエンド:ぼう太で記憶を抹消する→ルタ
「無限ループって怖くね?」
モンキー・D・ルタ 懸賞金 なし
ウタちゃんが能力を超強化してウタワールド内で時間加速とか宇宙規模まで世界を展開出来るようになる。
ウタちゃんにちょっかいかけた黒ひげがかなり痛い目を見る。
ルフィとウタが結婚する。
ルタは救われる(強制)
なお転生者時代の記憶は再現出来ない為、ウタちゃんの知るオリジナルのルタに限りなく近いナニかになる模様。
最終的にハッピーエンドが確約されているので、ある意味、ハッピーエンドとも捉えられなくはない。
ノーマルエンドの理由は「HappyかBADか」それを下す本当のルタちゃんが存在しなくなってしまった為。
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ウタちゃんにハグする
それとも……そうだ。ハグしよう。
もうこんな地獄、愛でしか解決できない。
お爺ちゃんも言っていた、愛にまさる物はないと。
「え、はい!?」
と言うわけで食らえ!愛のハグ!
「お母さん大好き!お母さん大好き!お母さん大好き!お母さん大好き!お母さん大好き!お母さん大好き!お母さん大好き!」
「ちょ!ちょ!ちょ!ええっ!?」
まだ足りないか!
ならばこうだ!
セルセルで腕を伸ばして、シャンクスを引っ張り……ダブルハグ!
「うぉ……どういう状況だ!?」
ん?洗脳が解けたようだな……好都合!
「おはようお爺ちゃん!改めて自己紹介するね。私の名はモンキー・D・ルタ!あんたが帽子を託した少年とウタちゃんの子供だよ!ねえそうでしょ!お母さん!」
「う、うぅん……そうだよ」
「はいぃい!!!?」
フハハハ!!!驚いているようだな。だが私がお前の孫だと知ったからには存分にお願いを聞いて貰うぞ!
「と言うわけで、お爺ちゃん!お母さんが寂しいみたいだから一緒にギュッてしよ!」
「い、いや!そのだな。急に俺に孫が出来たって言われると何というか感傷深くなるというか、柄にもなくちょっと涙が……」
「うるせぇ!ハグしろ!」
「あ、ぁぁ」
「ちょっとルタにシャンクス!?こんな時にふざけないでよ!」
ふざけてなどいない。私はいつだって大真面目で全力で生きてきた。
……そんな私が恥も外聞も投げ捨ててハグで万事解決しようというのだ。
やるからには全力で…………おいバギー!次いでだ!お前も来い……て、もう逃げてら。
「ルタァァァ!!!」
「ふげば!?」
と思えば、そんなバギーを踏み台にして乗り込んできたギア5のパパンである。
「パパ!」
「ししし!そうだお前のパパだ!」
「いきなりで悪いけど抱き締めて!ウタちゃんとシャンクスまとめて!」
「おう!」
「ななな!!!?」
トリプルハグ。
どうだ。これが今の私に出来る全力だ!
これには流石のウタちゃんでも平気ではいられまい。
最後に止めで……
「ママ?もうこんな事は止めてパパの船で冒険しよ?」
「いや、ウタ達は俺の船に乗ろう。その方が楽しいぞ……絶対」
「ししし!勿論いいぞ!お前らには見せたい物が沢山あるんだ!」
言葉によるだめ押し。これで駄目なら一生ハグしつづけてやる。
「……もう、分かったよ。お母さんの負け」
あら、憑き物が落ちたようなスッキリとしたお顔。
にしし!これにてミッションコンプリート!
あ、そう言えばパパン。外にいた海賊達どうした?
「全部倒してきた!」
流石はパパン。
と言うわけで今度こそ本当の本当に万事解決!
これで私は自由だー!!!!
「…………うん、これだけはないな」
「どうしたの?早く記憶を消して自由になろ?」
あまりにも都合が良すぎるだろうと、私は選択肢から除外した。
Happyエンド:ウタちゃんにハグする
「絶対無理じゃん」
モンキー・D・ルタ 懸賞金 五億六千万ベリー
流石にルタの妄想通りとはいかないが、だいたい同じような結果になる。
赤髪海賊団と麦らの一味でウタルタを取り合う戦争(デービーバックファイト)が起きるが、死者怪我人共になし。
ただルタ本人に選ぶ気が0。絶対に上手くいかないと思っている。
えっ?何でルフィの記憶が戻ってるかって?
A.解放の戦士を縛るものなし
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自殺するorウタちゃんと会話を試みる
ウタちゃんに刺された、と言うか殺されかけた。
海楼石のナイフでろくに抵抗も出来ぬまま一方的に。あれはウタちゃんが見せた夢だとは分かってはいるけど……怖かった。
ほんとの本当に怖かった。
どれぐらい怖かったって、そりゃ目の下の傷が疼くぐらい。
これはルフィみたいだからと敢えて能力で消していない傷だが、ウタちゃんが癇癪を起こして、それを止めようとした時に爪で引っ掻かれて出来たものだ。
今まで疼いたことなんて一度もなかったけど、まるで今になって傷口が開いたみたいにズキズキする。
いや……待って、本当に痛いんだけど。
堪らず私は片目を抑えた。
「……ルタ?」
それを不審に思ってかウタちゃんは私に歩み寄る。
すると傷の痛みが増した。
「来ないで……」
「えっ?」
「来ないでよ!」
能力が暴発して、プラズマ化したエネルギーが家を滅茶苦茶にする。
ウタちゃんはシャンクスが守ったようだ。
バギーはこれ幸いと逃げ出した。
「もううんざりだ……もう嫌なんだ。もうこれ以上、私のせいで誰かが傷つくのを見ていたくないんだ!だから記憶を消して一人で死のうと思ったのに!」
ぼう太をけしかけると……ほら、やっぱり。シャンクスが止めた。つまりウタちゃんは初めから記憶を消させるつもりはなかったんだ。
「ルタ……落ちついて、これにはちゃんと訳があるの」
「……訳?」
ウタちゃんは徐に取り出した映像電伝虫を起動し、ライブ会場の映像を映し出す。
『ごぼほぼぼ』
『ジハハハ!!何れだけ能力が強かろうと、能力者が海水に触れちまえばどうってことねぇ!あのロックスですら死因は溺死だったのさ!どうだ麦わら!その四皇の座、俺に譲り渡してみるかぁ?』
『ルフィ!!』
『ここは戦場だぜ。他人の心配をする暇が何処にある?』
『皆!この金粉に触れてはダメだ!』
『イッツショータイム!』
すると劇場版のラスボス達を相手に意外にも追い詰められているのは麦わらの一味で、(何故かヤマトもいたが)ウソップは血だらけで地面に倒れ付していた。
「シャンクスにバギー、そしてルフィ。あとは黒ひげっていう、この海で悪さをしている海賊を全員倒してね、この
フェスタがいるんだからまさかとは思ったが……ラフテルへのエターナルポースはウタちゃんが持っていたようだ。
そして分かった。どうやらウタちゃんはウタちゃんなりに
だからこんな強引な手段を取ったのだろう。
私が例え一生エレジアに帰って来ることがなくても……いや、この規模を考えれば、たった数ヶ月で用意出来る代物ではない。
恐らくは日記か、記録映像かで私の存在を知り、そして幸せにしてあげようと思った。
しかし何処にいるかも分からない相手を幸せにするなどどうすればいいのだろうか。
ウタワールドに人々を取り込んで自害し、心だけの存在となって永遠に過ごすという原作のルートでは私を取り零してしまうかもしれない。だから現実そのものの事象をどうにかしようと考え、そしてよりによって自身が海賊王となって作る新しい世界を新時代とした、そう言う事だろう。
「さっきのはウソじゃないの。でも今記憶を抜かれると……私の決意が揺らいでしまうかもしれないから、もう少しだけ待って欲しい」
そして、そう。
この計画は私という存在があってこその物。
私を忘れるなんて事になれば、最悪崩壊する。
「私はどれだけルタに嫌われてもいい、でもルタは幸せになって欲しいの。だから……ね?」
ぁぁ……。
つまりこれは私のせいで、ウタちゃんの新時代に多少の変更はあったもののウタちゃんが壊れていない証明だ。
傷の痛みがすうっと引いていく。
「……分かったよ。ありがとうお母さん」
「良かった。分かってくれたんだね」
「私勘違いしてた。でもお母さんと話してちゃんと理解したから……記憶を消すのは止める。それでごめんなさい、私はお母さんと暮らすのは合わないみたいだから、これからは自由な旅に出るよ、それが私の夢だったから」
「そっか……うん。どうか気を付けて」
私は自殺した。
Trueエンド:自殺するorウタちゃんと会話を試みる
「やっと……」
モンキー・D・ルタ 懸賞金なし
何の気兼ねなく自殺する。
ルフィ達はまぁ何とかなるだろうと思っている→尚、本当に何とかなった模様
刺される夢を見る前ならもう少し踏み込んだ話をしたが、ウタちゃんという存在そのものがトラウマになりつつあったので、早期に切り上げてしまった。
自殺した理由はまたルフィに認知されたり、自身の出生のせいでこれ以上誰かに迷惑をかけたくなかったり、何より他人の人生を大なり小なり振り回した責任を取ろうと思っていた為。
……こんなことで責任など取れる訳もないのだが、残念ながらそれを教えてくれる存在は彼女の側にはいなかったようだ。
Trueエンド理由 ルタが一番望んでいた最後
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フーシャ村ルート
◯月✕日
マキノさんから誕生日プレゼントに日記帳を貰ったので今日から日記を書くことにした。
まだ小さい私に日記帳は早いって村長さんは笑っていたけど、私ってば天才なので、これから毎日沢山文字を書いて驚かせてやるのだ。
と言うわけで自己紹介!
私の名前はモンキー・D・ルタ
お姉ちゃんがママでお兄ちゃんがパパな男の子にも女の子にもなれるちょっと不思議な女の子。
不思議な力が使えるようになった日、変な果物を食べて、それがあんまりにも不味かったから色々大切な事を忘れてしまったような気がするけれど、優しい皆に囲まれて毎日楽しい日々を送っているんだ。
特に今日は私の六歳の誕生日で、ドラゴンじいじがお祝いに来てくれて、一年に一回ぐらいのペースで顔を見せにくるシャンクスお爺ちゃんも来てくれた。
山の上で暮らしてるダダン婆ちゃんや山賊の皆、エースにぃまで降りてお祝いしてくれて、今日が人生で一番楽しかったんじゃないかって思ってる。
明日はガープ曾じいじが遊びにきてくれるし、なんと、今回はついにガープ曾じいじの船に乗せて貰えるらしい。
私が物心つくずっと前にマリンフォードって所に一度お姉ちゃんと連れていって貰って、私たちに異常がないか偉いお医者さん達に詳しく検査されたんだけど……私は癌だったとかで、お姉ちゃんがショックで泡を吹いて倒れたって話を聞いた事があるぐらいで、島の外に連れて行って貰ったことがないから本当に楽しみにしてるんだ。
今回はマリンフォードまでは行かないけど、音楽で有名なエレジアって所まで行って、有名な音楽家の演奏を聞きに行くらしい。
ウタちゃんは一回だけその島に行ったことがあるみたいだったけれど、その時ちょうど私を妊娠している事が発覚したこともあって、ついて早々、フーシャ村までトンボ返りしたんだとか。
でも道中にあったドラム王国という冬島にいるDr.くれはってお医者さんに、「ここで産んでいきな」って足止めされたから、私の本当の生まれ故郷はドラム王国ってことになるらしい。
その時の事は全然覚えてないけど、お姉ちゃんはその時、タヌキみたいなトナカイさんから手作りのこぶたのぬいぐるみを貰っていて、それは今私の物になっている。寝るときには外せない私のキーアイテムだ。
でも流石に六年も経つとボロボロになってきてしまったので、途中でドラム王国に寄り道してトナカイさんに治して貰えるようにお願いしてみようって考えてる。
でもって、お姉ちゃんよりは歌は得意じゃないけど、大好きな私はエレジアに着いたら大きな舞台でお姉ちゃんと一緒に歌って踊るのだ。
最近は練習してお兄ちゃんみたいに腕を伸ばしたり出来るようになったからターザンみたいに客席を回りながら派手に歌うのが私の夢だ。
それと下手って訳じゃないけど、出来ればもっと上手く歌えるようになりたいし、音楽の先生を見つけて、どうしたら上手く歌えるのか教えて貰おうと考えてる。
あとあと、これはガープ曾爺ちゃんには内緒だけど、あっちでシャンクスお爺ちゃんとも会う約束もしているので、軍艦も良いけど、本場の海賊船にも乗せて貰う予定なのだ。
あー、早く明日が来ないかな~?
今日はここまで!
◯月◯日
と言うわけで!ガープ曾じいじだ!
「うおぉおおお!!!我が愛しの曾孫娘よ!曾じいじが会いに来たぞー!」
「うおー!曾じいじが来たー!」
「こら、ルタ。ご飯を食べている時に叫ばない」
マキノさんの酒場でご飯を食べていたら、いきなり来たガープ曾じいじに飛び掛かる。
「ねぇねぇ!今日も沢山戦ってきたの!?」
「ガハハハ!そうじゃぞ~今日はここにくるまでに五隻も沈めてきた。そんで、その中に億越えの懸賞首が紛れ込んでおってな、それがまた強くて強くて……ま、最終的には儂の拳骨で黙らせたんじゃが、久しぶりに良い汗を流せたわい」
ルタにも見せてやりかったな、いやーあん時の儂、格好良すぎたわ……チラチラと視線を送るガープ曾じいじ。
「あれ、あんたのワンパンだったでしょう」て苦笑いしてる副官の声はルタの耳には届かず、「ガープ曾じいじやっぱり格好良い!私も将来海兵になる!」と叫ぶ彼女に「うぉぉぉぉ……儂は今、猛烈に感動しておる!」と号泣し、「じゃが、今の海は危険なものばかりじゃ、ルタはこの平和なフーシャ村で健やかに成長しておくれ」とガープは頭を撫でていた。
「こら!ルタ。ご飯中に席を立ったら行けません!久しぶりにガープさんに会えて嬉しいのは分かるけど、ご飯を作ってくれたマキノさんに申し訳ないでしょ!」
「うぅぅ……ごめんなさーい」
「ガハハハ!久しぶりだのぅウタちゃん!ルタ共々元気そうで儂は嬉しいぞ!」
私は早く軍艦に乗りたくて急いでご飯を食べた。
◯月△日
エレジアに着いた!
ここに来るまで一週間ぐらいかかって、その半分は強風で海に投げ飛ばされた私をカイドウってドラゴンさんが偶然拾ってくれて、届けてくれるまでの期間だったけど、その間にカイドウさんとは大分打ち解けて、良く分からないけど番外真打ちって称号を私にくれた。
もしカイドウさんが総督を務める百獣海賊団の人たちと会う機会があったら、それを名乗れって。そしたら良くしてくれるように計らってくれるらしい。
「酔った勢いで、こんな辺境にまで来ちまったが久しぶりに楽しかったぜルタ!でっかくなったらうちに来いよ!ウォロロロ!!!!」
「うん!バイバイ!お酒は飲み過ぎないようにね~!!!」
とエレジアまではカイドウさんに送り届けて貰ったのだ。
「ウダぁぁぁぁぁ!!!!!」
「お゙姉゙ぢゃ゙ん゙!!!!」
それはそうと、海に投げ出されて三日もお姉ちゃんと離ればなれだったのは寂しかった。
だからいざ再会したらその時の気持ちが膨れ上がって、お姉ちゃんと一緒に号泣した。
◯月◯◯日
昨日は泣き疲れて寝ちゃったけど、今日はいっぱいエレジアを楽しむし、歌っちゃうぞー!
と朝からやる気に満ち溢れると、顔を怪我してる女の人がいたので私の能力で治して上げた。
「うぇ!!!?ブリュレ、顔の傷が無くなってるぞ!」
「えええ!?本当だ!」
「何かよく分からないけど、良かったなぁ!」
「やった!やった!」
「…………あの娘」
この力はあんまり他所で使っちゃだめって皆に言われているからこっそり。
あと顔の傷は勲章だって人もいるから、ちゃんと能力であの怪我に対する負の感情を読み取ってから治してあげた。
でも女の人のお兄さんにはバレてしまったようで、スッゴいデカイな……て私が呟くと、しゃがんで地面に頭をつけてまでありがとうって言ってくれた。
そんな事して欲しくて治したんじゃない!って驚いて叫んだんだけど、「いや、これは俺が一生かけても返せない大恩だ。もし俺の力が必要になったらいつでも言ってくれ」ととっても大きなドーナツをくれた。
聞くにこの人達は万国って所から旅行で訪れていたみたいで、暫く話していると、この人達のお母さんのリンリンさん(またスッゴク大きい人なの)と仲良くなって、肩に乗せて貰い、今日はこの人達と街を回ったんだ。
「マァ、マ~ママ!楽しいね~愉快だね~こんなに心踊った日はいつぶりだろうか!」
途中、リンリンさんの大きさじゃあ入れないお店があったから、私の能力で体をブリュレさんぐらいまで小さくしてあげたら、それはリンリンさんはひどく喜んで、私を掲げて小躍りした。
「お前さんには、ただでさえ娘の傷を治して貰った恩があるってのに、オレの夢まで叶えて貰った。こんなに恩を借りてばっかじゃあ、うちの名が廃るってもんだよ。……どうだい、お前オレの娘になるつもりはないかい?」
どうやらリンリンさんは万国の女王様で、私がリンリンさんの娘になったら好きなだけお菓子を食べていいんだとか。
それは非常に夢のある話だったけれど、私はお姉ちゃんの娘だから丁寧に断っておいた。
すると案の定、リンリンさんは残念そうにしていたけれど、
「でも私、将来海に出る予定だから。その時、私が万国に来たらいっぱい美味しいお菓子を教えてね!」
「そうかい、そうかい!ならその時の為にとびっきりのお菓子を用意しておかないとねぇ!」
同じ食卓で同じ目線で皆が嬉しそうに笑い合った。
明日も一緒に回ろうと思っていたけど、どうやら急用が出来たみたいでリンリンさん達は鏡の中に入っていってしまった。
◯月◯✕日
いえ~い!世界の歌姫になる予定のウタと「ルタだよ~!」
てことで今日は念願のウタちゃんとのライブ!
流石にでっかい会場は借りられなかったけど、初めてのライブにはシャンクスお爺ちゃんも観に来てくれて、とっても楽しかった!
「素晴らしい歌声だった……君たちはまさにダイヤの原石のようだ」
しかもこの国の王様であるゴードンさんの目に止まって……なんと、私たちったらこの人に歌のレッスンをつけて貰うことに!
勿論、フーシャ村に待たせているお兄ちゃんをいつまでも待たせるわけにもいかないから、この旅行が終わるまでだけど、「にしし……私ってばゴードンさんにお姉ちゃんより才能があるかもって言われちゃった!」
残りの日はいっぱい練習して、お姉ちゃんを越えるぞー!
◯月◯△日
今日は朝から変な事が起きた。
お姉ちゃんと一緒に発声練習をしていると、お空から楽譜が降ってきたのだ。
「なんだろうこれ?」
「さぁ?」
誰かが落としてしまったのだろうか?
私達二人で持ち主を探したけど、周囲に人影は見当たらず、お姉ちゃんは楽譜の内容を見て、試しに歌ってみようか?なんて言うから、私がお願いしたら―――「あれ?」
気がついたらお姉ちゃんはウタウタの能力を使ったあとみたいに眠っていて、私は何故か裸で倒れこんでいた。
痛てて、あれ?私ってばいつの間にか寝てた?なんて直前の記憶を探るけど、何にも覚えてない。
「うぇ?――て、ルタ!なんで全裸で寝てるの!!!」
「う~ん……私もよく分かんない」
私達が寝ていたのはほんの30分ぐらいの事だったらしい。
ゴードンさんから、先ほど物凄い音がしたが君たち大丈夫だったか?と聞かれたけど、何か爆発でもしたんだろうか。
何か変な1日だったけど、その日もゴードンさんと一緒にレッスンをした。
◯月△◯日
今日は変な生き物を拾った。
ピエロみたいな手が鍵盤みたいな変なやつ。
お姉ちゃんは元居た場所に帰して来なさいって言ったけど、どうしても付きまとってくるので、仕方なしに私が面倒をみることに。
名前は何となく頭に思い浮かんだムジカにした。
ご飯は食べないしお昼寝もしない。見た目は全然可愛くなかったけど、私が歌うと何故か楽しそうに踊るのだ。そういう事されると何だがこっちまで楽しくなっちゃってその日はムジカといっぱい踊った。
帰ったらさっそくお兄ちゃんに紹介しようと思う。
◯月△△日
今日で歌のレッスンはおしまい。
それで最後までレッスンを頑張ったご褒美としてこの島一番の劇場で歌わせて貰えることに。
ただお姉ちゃんとは別々だったから少しだけ不安だったけど、私が一番大好きなビンクスの酒を歌ったら、沢山の拍手と喝采を貰った。
その後のレッスンで益々磨きがかったお姉ちゃんの歌声を聞くとまだまだお姉ちゃんは越えられたとはとても言えないが、この瞬間のことは多分一生私は忘れないんだと思う。
「どうだ?君達さえ良ければエレジアに残らないか?ここで歌を学べば君たちは間違いなく世界の歌姫と成れるだろう」
「それは……でも」
「私達には待ってくれている人がいるから帰らないと!」
お兄ちゃんにマキノさんに村長さんにダダンさんにエースお兄ちゃんが待つフーシャ村。
いずれは巣立つ日かくるかもしれないけど、それは今じゃない。
だからバイバイ!また来るねー!とエレジアを私達は去った。
あー!また強風に拐われる~!!!!
「グラララ……何だ。この鼻垂れは?」
……To Be Continued?
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フーシャ村ルート2
○月✕日
大変なことになっちゃった。
突風が吹いて船から落ちちゃた私は、なんとか海面につく前に能力で体重を軽くしたまではいいものの、また一際強い突風が吹いて、軽かったからものだからすごく飛ばされてしまい、知らない海賊船に乗り込んでしまったのだ。
「ゼハハハハ!おいサッチ!チェリーパイの追加を頼む!こいつはとんだ大食いだぜ!」
「たくっ、とんでもねぇ食欲だぜ、こいつは……」
シャンクスお爺ちゃんが海賊って言うのは俺達が例外なだけで、本当はお前みたいなチビを喜んで食べちゃうような怖い人達だって言ってたから、おっきい白髭の人を前にして怖くてお漏らししちゃったんだけど、どうしてだが今はチェリーパイを御馳走になっている。
「ウマイ!ウマイ!ウマイ!」
まさか、私を太らせて食べるつもりなんじゃ……て思うんだけど、美味しくて手が止まらないよ!
助けてお兄ちゃん!!!!
○月△日
「成る程……つまりおめぇさんは赤髪んとこの娘って訳か」
「ううん!違うよ!シャンクスお爺ちゃんは私のお爺ちゃんなの!」
「はぁぁ?」
昨日は怖がっちゃったけど、何とこの人達はシャンクスお爺ちゃんの知り合いらしい。
チェリーパイ同盟を結んだティーチに肩車してもらって、それでもおっきい白髭のおじちゃんを見上げて話してみると、ぜんぜん悪い人達じゃないことが分かった。
「訳ありって感じか」
「あんまり深入りしない方が良さそうだよい」
それでも強そうな人ばっかりで、思わず尻込みしてしまったんだけど、そんな私に変わってティーチが全部話してくれたんだ。
「オヤジ。ちょっくら船を離れてもいいか?」
「何だ。まさかおめぇがこのガキを送り届けるとでも?……珍しいこともあるもんだな」
そして何とティーチは私を送り届けてくれるという。
「悪いよティーチ……この船が次に立ちよった島で降りて海軍に連絡すれば私は帰れるのに」
「ゼハハハハ、ガキが遠慮すんじゃねぇ!それにこの船は補給を済ませたばっかで、どんなに早くても次の島まで一ヶ月はかかる。それまでお前は待てんのか?」
「待てない……早くお家に帰りたいよぅ」
「なら決まりだぁ!」
そんな訳でティーチとフーシャ村まで旅をすることになった。
「そう言えば、白髭のおじちゃんは病気みたいだったけど治してあげなくてよかったの?」
「あぁ……オヤジももう歳だ。下手に延命はしたくねぇ………時に任せて余生を送りたいのさ」
ティーチは何でも悪魔の実っていう私の能力に詳しいらしくて、私が白髭おじちゃんの病気を治せるって直ぐに気付いたみたいだけど、白髭おじちゃんはそんなことはしたくないからって私が余計なことを言い出す前に止めてくれたんだ。
ティーチって本当に頼りになる!
○月△✕日
「なん……だと?」
ティーチと一緒にキャラベル船でユラユラと。
途中白髭おじちゃんを狙っていたらしい海賊と鉢合わせて、ティーチが一人で相手にするという事件はあったものの、ものすごく強いティーチのお陰で船には埃一つついていない。
ティーチは海賊達の船から宝箱を取ってきたようで、二人でワクワクしながら蓋を開けたんだけど、そこに入っていたのは美味しくなさそうな果物だった。
腐ってはいなさそうだけど、黒っぽくてネジネジしてて食欲をそそらない。どうせ果物ならチェリーがよかったのにねーとティーチを見ると、その美味しくなさそうな果物を震える手で掴んだと思ったら、雄叫びを上げた。
「うぉぉぉぉぉ!!!!!ついに手に入れたぞ!」
どうやらティーチがずっと探していたヤミヤミの実っていう悪魔の実らしい。
悪魔の実は一人一個しか食べちゃいけなくて、私は昔食べちゃったそうなので、食べれないから興味なかったけど取り敢えずおめでとうって拍手しておいた。
△月○日?
「………は?」
「これがグラグラの実で、こっちがキラキラの実、そしてこれがマルコさんのトリトリの実だね!」
ヤミヤミの実を食べて、ヤミヤミ人間となったティーチと能力の修行をする最中、ティーチのふとした閃きからセルセルの実の本当の能力という物を試すことになって、白髭海賊団の人たちの悪魔の実をコピーすることになった。
「いや……ありなのかこれ。いやしかし……図鑑にすら乗ってねぇ、セルセルの実。持ち主がDの一族であることから何かあると思っていたが………まさか、ここまでとは」
私たちはもう悪魔の実を食べちゃったから、もう捨てるしかないと思ったんだけど、ティーチはグラグラの実をパクッと食べちゃった。
直ぐに吐き出させようと、ティーチから教わった血統因子を揺らして相手を強制的に吐かせる技を使おうとしたら食い気味に止められた。
曰く「それはヤバいからマジで止めろ。あと俺の体は特殊で、悪魔の実を二つ食えるんだぜ」とのこと。
何それずるい!と私が言うとティーチは特製のチェリーパイを御馳走してくれた。
△月△日
「なぁ、ルタ。お前、俺の船に乗らねぇか?」
ティーチがグラグラの実を食べてから、少し。いよいよフーシャ村も近くなり、ティーチとチェリーパイを作ったり、能力で遊んだりしていたら、真面目そうな顔をしてティーチが言う。
「ティーチとはずっと居たいけど…………まだ私、六歳だよ?」
「そういやそうか……つい忘れそうになるが、まだ親が恋しい時期だったな」
将来はシャンクスお爺ちゃんのように外の世界を旅したいと思っていた私としてはティーチからの提案はとても魅力的だったけど、今すぐお姉ちゃん達と離れて旅をするのは寂しいと感じた。
「ガキのうちに無理やり丸め込んで、しょうもないとこで死なれるよりはある程度大きくなった所で回収する方が得か?」
「えっ?何か言った?」
「いや、急に変なこと言ってすまなかったな」
ワシャワシと私の頭を撫でるティーチ。
△月✕日
そしてティーチとの別れの日。
「また会おうぜ!」とお土産に大量のチェリーパイを持たせてくれたティーチを涙ながらに見送り、何だか騒がしいフーシャ村に私は帰ってきた。
「あ、お兄ちゃん!」
「ルタ!?」
フーシャ村ってあんまり人はいなかった筈だけど、人がとにかく一杯で、道が人で溢れかえっている。
運良くお兄ちゃんを見つけた私は、呼び掛けるとびっくりした様子のお兄ちゃんが私の体をぐるぐると見渡して、一先ず怪我がないことが分かるとホッと息を吐いた。
「良かった。爺ちゃん達が見つけてくれたんだな」
「うん?」
「ウタが心配してたぞ。直ぐに会いにいこう」
そして人が多い理由も分からぬまま、マキノさんの酒場を目指して歩く。
「なんだぇ~お前。不敬だぇ」
すると私の目の前に金魚鉢を被った変な人が立ち塞がった。
次回
ONE PIECE
【ついに炸裂!シャンクス、怒りの神避】
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エレジア編 グランドルート①
「ばがら゙、ル゙ダな゙ん゙でや゙づ、お゙で゙ばじら゙ね゙え゙っ゙で!!!」
「ふざけんじゃないわよ!アンタもゾロもチョッパーまで!特にアンタは……子供が親に知らないって言われるのがどれだけ辛い事か分かってんの!!!」
カイドウとの激闘から直ぐのこと。
セルセルで直前に治療を受けた為、また何故かカイドウが能力を使えない、そして復活したルフィと数度言葉を交わした後――ガチギレして覇気が乱れまくっていた事もあり、比較的軽傷で勝利した筈のルフィは風船のように顔を腫れ上がらせていた。
「あー、そのルタってやつがルフィの娘ってのは本当なのか?」
「本当も、どうも何も!それを教えてくれたのはアンタでしょ!?」
セルセルで治療を受けた為、また軽傷であったゾロ。
ルタに関する記憶のない彼であるが、何気にとんでもない事を仕出かしていたようで、ルフィ、チョッパーを除く残りの麦わらの一味は彼経由でルタがルフィの娘であることを知ったらしい。
「覚えてねぇけど確かに、おれのカルテに名前がある。重い精神疾患を抱えていて、過度のストレスからか痛覚を上手く感じ取れないらしい。あと………胃に悪性の腫瘍がありだって。
三時間前にローと一緒に手術したことになってる」
まさかおれがこんな大切な事を忘れるなんて……と、チョッパーは酷くショックを受けているような様子であった。
「もう!どうしたのよアンタ達!そんだけの事があって!何でッ!」
「あー、待った。その事についてなんだけど僕に心当たりがあるんだ」
荒ぶるナミを宥めるように、声を上げたヤマト。
「ルタに関して君たちに共通するのは一つ。ルタが失踪する前に、直接ルタから治療を受けているということ。そしてルタが抱えていた妙な鳥を頭に押し付けられたということなんだ」
「はて?妙な鳥とは……ルタさんのセルセルの能力は非常に強力なものですが、記憶に干渉するような物ではなかった筈。文脈から読み取って、それが今回の事件のカギとなるということでしょうか?」
ブルックの憶測を混ぜた質問に、首を縦に振る。
「あぁ、恐らくね。それで君たちが一番気になっている事だろうけど………………ルタは生きてる。カイドウはあぁ見えて身内にはとことん甘い。きっと本人は殺すつもりだったとしても無意識に力を抜いていたんだろう。これがその証明さ」
そしてナミ達、記憶を失っていない麦わらの一味が一番気にしていたルタの生死の行方である。
あのカイドウが自ら手に掛けて殺したと宣言したのだ。死体を確認した訳ではないが、ならばこそ今日この時まで、とても勝利を祝うような気分ではなかった。
ヤマトが取り出したルタのビブルカード。
本人の精神があれな為かなり縮んでこそいるが、燃え尽きる様子はない。
「……良かった。本当に良かった」
最初に声に出したのは、ずっと荒い海流の中で「せめて亡骸だけでも」と、ルタを探し続けていたジンベエであった。
「……やっと落ち着いて一服出来るぜ」
「ふはー!良かった~!」
「おう!迎えの船が必要なら任せろ!エネルギーのコーラは急ピッチで製造中だ!」
「……しかし、何故ルタさんは我々の元を黙って去ったのでしょうか?ルフィさん達の記憶を消すような真似までして」
「生きてるなら、取り敢えず会って話さなきゃ。例えあの子なりの理由があったんだとしても、ちゃんと言葉を交わして理由をきかないと」
「ふふ、そうね」
どうやら記憶保持組は満場一致でルタを迎えに行くために動くらしい。
「勿論おれも行くぞ!」
「……俺は船長の決定に従う」
チョッパーもそれに続き、ゾロはルフィの顔を立てる為、あえて賛成の声を飲み込んだ。
麦わらの一味の視線がルフィに集まる。
「う~ん……分かった!俺はワノ国で待つ。ルタってやつとの話しはお前らでつけてきてくれ」
「「「は?」」」
皆が耳を疑った。
「だって、ルタってやつは俺たちに忘れてほしくて離れたんだろ?だったら記憶を消された俺が迎えに行くのはおかしな話じゃねぇか」
「あんた……それ、本気で言ってるの?」
「勿論」
「そうか。なら俺も行かね」
「え、あ、ぁぁ……でも!」
そこにゾロまで同意したものだからチョッパーはしもうもどろする。
この時ナミは心の底からルフィを軽蔑したと後に語った。
「ふざけんな……このバカ男!!!!」
「ぶっっっ!!!!」
ビンタし、胸ぐらを掴んで引き寄せる。
「あの子はね。確かに何かを抱え込んでいる様子で最後まで自分があんたの娘であることは打ち明けなかった。
道中でもあんたが娘であることを言おうとすると必死になって妨害してきた。
……ずっと苦しそうだった。でもそれはあんたが嫌いだったんじゃない。相手が誰かも分からないあんたにとって自分が迷惑だからって分かってたからよ」
ナミは思い出す。一緒に釣りをして笑い合う二人、いつの間にか寝ていると思ったら同じ寝相だった二人、ルフィが褒めるとあからさまに機嫌が良くなっていたルタ。
嫌いな相手にあんな笑顔をするわけがない。ただあの子にとって血の繋がりは負い目だったのだ。
「どこであの子があんたの子供だって知ったのかは分からない。母親が誰なのかも知らないけど、あの子はあんたが船に乗せたの。あんたにとっては娘かもしれないけど、私たちにとってはもう大切な仲間なのよ。離れ離れになった仲間を迎えに行くのに船長がいなくてどうするの?親としてダメでもそれぐらい責任を果たしなさいよ」
「……なぁナミ、俺さ……記憶が消えてもルタについて一つだけ分かることがあるんだよ」
「なによ?」
「きっとそいつは、俺の船に乗っちまったせいで自由を奪われた。やりたいことも好きなことも制限されて苦しかったと思うんだ」
ドレスローザからこれまでの旅はお世辞にも愉快だったとは言えない激動の中だった。
いつ死んでもおかしくない。そんな中でのつかの間の幸せが全てを帳消しに出来たとは思えない。
「だからそいつが自分の意思で船を降りたんたら親でも船長でも、迎えに行く資格は俺にはねぇよ」
帽子を深くかぶり直し、ルフィは下を向いて立ち上がった。
「もう一度言う。俺は行けない。ルタに会いたいならお前らだけでいってくれ」
「……おいルフィ」
何かを言おうとするサンジの肩をウソップが掴む。
こうなったら我らが船長は梃子でも動かない。
ナミ達は顔を見せ合って、自分達だけで向かおうか思考を悩ませる。
「え、ルタのビブルカードが」
「「「ッ!?」」」
そんな時だった。
ヤマトの持つルタのビブルカードが燃えて半分の大きさになったのだ。
「ウソ!?どういうこと!?」
「まさか航海士もなしに海に出て嵐にでも巻き込まれたんじゃ!」
「そんな、あの子は能力者なんだぞ!?」
実はこの時、赤髪海賊団の船に定席していて怪鳥に拐われるという事件に巻き込まれていたが、全員が知るよしもない。
「ど、どうしましょう!!?」
「兎に角直ぐに船を出すわよ!」
全員が火が付いたように走り回り、流石のルフィも自分の娘が死ぬかもしれないと知って、動揺を露にしている。
「ヤマト、ビブルカードは!?」
「まだ燃え尽きていない!さっきので一端止まってるよ」
「て、ことは海に落ちた訳じゃなさそうだな。道中で海賊にでも捕まったのか!?」
「な!?」
「おいルフィ!こんな状況になっても行かないって意地張るつもりか!?」
「サンジくん!もうルフィはほっといて準備して!あぁそれにしても、ルタのビブルカードが向かう場所が三つのログと全部逆だなんてついてない。仮に連れ去られたとしたら相手はどこに向かうつもりなの?場所さえ分かってたらクー・ド・バーストで先回りすることも出来るのに!」
「場所はエレジアだ、恐らくそこでルタ屋は自身の血縁に決着をつけるつもりだろう」
そこに映像電伝虫を持ったトラファルガー・ローが現れた。
流れるように彼が起動した映像電伝虫には、あの歌姫ウタが世に名だたる大海賊達をバックに全世界中継ライブを行うというものだった。
「ウタ!?どうして…………まさか!!?」
死んだと思った幼馴染みが生きていた。
それ自体で驚きだがルフィも鈍くない。成長したウタと、
「俺も記憶抜かれたが、どうにもこいつは、お前らの娘になったことに強い罪悪感を覚えているらしい。お前の記憶を消したってことは次に向かうのは母親のところじゃないか?」
「エレジアって、ならどうしてビブルカードがこんなになってるんだ?」
「さぁな。分かることはこの映像をみる限り、歌姫はかなりヤバイ連中と関わりがあるらしい。そいつらにルタが捕まったのか、それとも途中で怪我でもしたのか。分かることはそのビブルカードは真っ直ぐエレジアに向かってるということだけだ」
エレジアと書かれた
何でそんなものを持っているかと聞くとベポが近々開かれると噂されていたライブに行きたいと駄々をこねていたので用意していたらしい。
「この手の患者は何回か診てきたが、死んでも死なない気力に溢れていると思えば、やりきることをやったら驚くほどポックリいきやがる。……まだ今週分の薬を出していなかったそうだからな。俺は行くがお前はどうする?」
「んなの!行くに決まってるだろ!!!お前ら!さっきのは全部なしだ!自分の自由の為に一味を離れたってなら俺もどうこう言うつもりはねぇよ!でも俺たちだけじゃなくて、一人になるために皆の記憶を消すってそんな辛いこと、ルタにさせるわけにはいかねぇ!」
「ふっ」
「もっと早くに言えよバカ船長」
「よっしゃ!ならスーパーにルタを迎えに行くぜ!」
「そうね。こうでなくっちゃ」
「いっくぞー!ルタのもとまで!」
こうして新四皇麦らのルフィとその一味は音楽の島エレジアへと向かうことになった。
これから待ち受ける波乱万丈の一幕でルタを救うことが出来るのか。
それはまだ誰にも分からない。
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エレジア編 グランドルート②
現在の麦わらの一味とルタの動向。
赤髪海賊団の船に乗り、一直線にエレジアへと向かうルタであったが道中で怪鳥に拐われ、そして黒ひげ海賊団傘下の海賊、中将クラスを乗せた軍艦3隻の海軍による赤髪海賊団を交えた三つ巴の戦いに巻き込まれて進路を遅らせていた。
その間に麦わらの一味はコーラを使いきる勢いで
「え、ウソ!もしかして追い越しちゃった!?」
「ウソだろ!?コーラはもう空っぽだぞ」
ルタのビブルカードはいつの間にか真反対を示している。
引き返そうにも、船の燃料は尽きてしまったそうだ。
この島にコーラがあるかどうかは分からないが、急いで補充しなければならない。
皆がそう動こうとしている時に、「あのー」ブルックが手をあげる。
「こんな時に言いづらいのですが、この島にはルタさんの母親……ウタさんがいるそうではないですか。ルタさんを発見することが何よりも優先されるのは理解出来るのですが、何故ルタさんが関係者全員から記憶を消そうとしているのか未だ不透明なところがあります。そこでここは二手にわかれてルタさん捜索チームとウタさんに現状を伝える、又はあぁなってしまった原因について母親である彼女に尋ねるチームへと分かれるべきだと……私は思います」
彼が気まずそうにしているのも無理はない。
何せ外見年齢からしてルタは5、6歳と行ったところだ。ルフィが今、19歳だから少なくとも彼が13の時にそういった関係になった訳で、ルフィ本人は身に覚えがないという。
しかもその当時のウタも15歳ほどの若さだ。
かなり、かーなり闇を感じる話。
深掘りするのが怖くて、皆が無意識に避けていた話題であるが、この島でルタのこれまでを一番知っている可能性が高いとしたらそれはウタ以外にありえないだろう。
「…………だな。じゃあウタには俺が会いに行くよ。俺が行かなかったらアイツを困らせるだけだろうし、ルタについてちゃんと聞いてくる」
「大丈夫なの?……その、身に覚えがないんでしょ?」
「あぁ、それどころかルタが生まれたぐらいの時はアイツは死んだんだと思ってた。海賊になるまで島の外に出たことねぇから、アイツの方から訪ねてきたんだと思うけど、もしかしたらその記憶も消されてるのかもな」
そこで一同は、あの妙に癇に障る呆け面をしていたルタのペットを思い出す。
「言われて思い出したぜ、ぼう太だったか?アイツも取っ捕まえてルフィ達の記憶を取り戻させねぇと」
「あれはワシの記憶が確かならグランドバードと言って、自らが住みやすい環境を探して
ジンベエは七武海だった頃、Dr.ベガパンクの研究所で同じ種族の鳥を見たことがあるらしい。
「空を飛ぶならウソップとサンジ、相手が動物ならチョッパーは外せないな」
「二手に分かれるなら、俺はルフィについていく」
「クソマリモとルフィだけだと無事にたどり着けるか不安だな。ジンベエ……は前科があるから…………ヤマトちゃん頼めるかい?」
「あぁ、任せてくれ!」
「いや、止めておけ。麦わら屋には俺がついて行く」
「ええ!なんで!?」
「…………バカが二人から三人に増えたところで意味がないだろうが」
本音を言えば、今のウタと会うのにルフィとセットで女性を付けることに嫌な予感を覚えたからであるが、性自認は男であるようなのでローは黙り込んだ。
「じゃあ、ルフィ、ゾロ、ローがウタのところへ。それ以外のメンバーはルタの捜索とぼう太の捕獲。それでいい?」
「「「おう!」」」
解散。一先ずコーラの調達へとフランキー達は街の方に向かったが、ルフィらは一番目立つ城を目指して走ることに。
「しかし……妙だな。街並みが綺麗過ぎる」
「は?どういうことだ?別に普通じゃねぇか」
「お前らは知らないとは思うが、ここ音楽の島エレジアは10年前に赤髪海賊団によって滅ぼされている」
「え、シャンクスが?そんな筈ねぇ!」
「当時の記事では住人は国王と少女一人を残して全滅。最も最悪な事件として赤髪の懸賞金の額を一気に引き上げた有名な話だぞ?恐らくこの生き残った少女と言うのが歌姫ウタなんだろうが、歌姫ウタは大の海賊嫌いで有名だ」
「そんな……でも、アイツはシャンクスの娘なんだぞ!?」
「ッ!?マジか……となるとルタ屋は赤髪のシャンクスの孫で麦わらのルフィの娘……現四皇二つと結びつきがあるとは…………流石はDの一族ってところか」
「はぁ!?俺って四皇になってんのか!?」
「お前、そんなことも」「なんだ、最近の若いのってのは新聞も読まねぇのか?」
「「「ッゥ!?」」」
野太い声に三人を覆う大きな影。
見上げると巨大な岩が振ってきていた。
「誰だ!」
ルフィがそれを拳で打ち壊すと、唇を鳴らした金髪の男がニヤリと笑って地面に降りる。
(本当に誰だ?風貌だけなら、映像電伝虫にも映ってた金獅子のシキにそっくりだが、どう見ても若すぎる)
溢れ出る覇王の貫禄。ただ者ではないと三人は構えるが、男は呑気に葉巻に火を着けて一服していた。
「麦わらルフィ 懸賞金30億ベリー……あの船見習いを倒して四皇になったやつがどんな面をしているか拝みにきてみれば……嘆かわしい。やはり今の海は甘すぎる、仮にも皇帝と言われてる海賊のトップがこんなガキだとは」
「なんだてめぇ!いきなり人の悪口言いやがって!──それにしても30億になってんのか、それは教えてくれてありがとう!」
「ハァ……
男は『
「出来ればお前は生かして連れてこいって命令だが、これはダメだな。例え魂を縛られていたとしても俺のプライドがこんな腑抜けを生かしておくことを許さねぇ」
義足なのだろう。金属の足で力強く地面を踏み込むと三人の体が宙に舞った。
「あの世に逝く前に俺の名を聞いていけ!俺の名は金獅子のシキ、お前ら軟弱どもを全員ぶっ殺して、海賊王になる男だ」
シキが二刀の名刀を引き抜き、三人が構える。
そして時を同じくルフィ達とは別行動を取っていた麦わらの一味
「なんだてめぇら!?」「海軍……いや、何か違う!?」
「どうやらメインディッシュはシキの野郎に取られちまったみたいだが、腐っても四皇幹部……お前らはどこまで俺を満足させられる?」
「我々がまさか海賊と肩を並べることになろうとは……でもこれがゼファー先生の望みながら」
元ロジャー海賊団 ダグラス・バレット
そしてNEO海軍に囲まれ、逃げ道は黄金で塞がれていた。
「ふふ、ふふふ………………早くおいで、ルタ」
「………………」
城の奥深く。
ルタの好きだったブタのぬいぐるみを抱き締めて、含みある笑みを浮かべるウタとその護衛を任されている元海軍大将Z。
「にしししし!おじいちゃん、ひげじょりじょり~!かゆ~い!!!」
「おいおい、俺はまだおじいちゃんって言われるほど歳は取ってねぇって」
「おじいちゃんはおじいちゃんなんだもん!ルタ、おじいちゃんの匂い好きー!でもお酒の匂いは嫌ーい!」
「たくっ……仕方ないなぁ」ナデナデ
そして能力の使い過ぎによりアホアホになっているルタは
REDとの相違点
ワノ国編直後
ルフィの手配書の写真(ギア5→ギア4)
ヤマト参戦
ライブ3日前
何故かいるONE PIECEフィルム(一部例外)のボス一同
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