魔法科高校の四葉家次期当主 (鮏乃切身)
しおりを挟む

プロローグ

初投稿です。よろしくお願いします。


プロローグ

 

 ある昼下がり

 

明日は遂に待ちに待った魔法大学付属第一高校の入学式。

 そのための準備もとい確認をしている。そうしていると、

 

 ピンポーン

 

 と少しばかり古臭い玄関のチャイムが鳴った。カメラを見てみるとそこには自分の許嫁であり、明日から自分の先輩となる人が立っていた。今日来るとは聞いていなかったので少し驚きつつも、嬉しい気持ちの方が溢れてくる。

 

 「今開けます。」

 

 とだけ簡潔にマイクを通して言うと小走りで玄関までいく。

 

 この家は自分が一人暮らしをすると決めた時に建築を始めたのにも関わらずとんでもない速さで建築が完了したのである。それに広さも五人家族が住んでも余裕があるくらいには広く自分一人では到底持て余している。なので玄関まで少し遠いのである。

 

 そして玄関まで着くと、鍵を開け勢い良く開ける。

 

 「お待たせしました、真由美さん。」

 

 「ううん大丈夫よ、夜瑠君。」

 

 「どうぞ入ってください。」

 

 お邪魔します、と真由美さんは言い玄関に上がる。相変わらず彼女の立ち振る舞いには気品があるなーと思うが、そこは十師族として当然の作法だったなと自分が実家で受けた教育を思い出す。

 

 そういえばこの家に彼女が来るのはこれが初めてだったと思い出す。確かに住所は教えたとはいえ、この辺りは住宅街なのでそこそこ複雑な道をしていたはず。

 

 「よく迷わずにたどり着きましたね?この辺りは結構分かりづらい道だったと思うんですけど。」

 

 「そう?私はそこまで迷わなかったわ。だって四葉の跡取り息子が住む家よ?それはそれは大きい家なんだろうと思ってたのよ。それにこの辺りは大きい家はここしか無かったし。」

 

 思い出してみると確かにそうである。当初自分はここまで大きな家に住む予定は無かった、というのも母親の真夜様が少し、いやかなり張り切ったからである。

 

 「私がこの家に滞在する時に狭い部屋に泊まれと言うの?」

 

 と言われはしたが自分としては、なら真夜様専用の広い部屋を用意すれば良かったのでは?と思わなくもなかったがいかんせん圧が凄すぎたので笑いながら相槌をするしか無かった。

 

 という話をリビングに案内しながら真由美さんに話すと苦笑していた、そらそうか。

 

 そうこうしているとリビングに到着した。真由美さんを席に通すと自分はお茶の準備を始める。が、

 

 「手伝うわ」

 

 と真由美は申し出てくれたが流石に来たばかりで疲れているだろうと思い、休憩するように言うが自分の横に立ちながら反論してくる。

 

 「気持ちは嬉しいけど私は夜瑠君のい、い、許嫁なんだからこれくらい当然よ。」

 

 などと、少し顔を俯かせながらあざといことを言ってくる。

 自分の許嫁可愛すぎんか?と思ってしまうのは無理もないだろう。自分の身長は165センチと男性としては2090年代に置いて比較的小さい方ではあるが真由美さんはこれよりも低い155センチ程度とこちらも低い。真由美さんと出会うまでは自分の身長があまり好きでは無かったが、出会って仲を深めていくと自分の身長を受け入れられるようになっていた。なぜなら、この身長のおかげで彼女の顔をより近くで見れるからだ。あ、耳赤くなってる。

 

 「耳赤いですよ。」

 

 と言いたくなるのを我慢してそれならば手伝ってもらおうと思い直し

 

 「ならお茶をお願いします。自分はお菓子の用意をしておきます。」

 

 分かったわと返事を聞くと自分はお皿を用意し、昨日東京駅で買ったチーズケーキを出す。何を思ったのかホールで買ってしまったのでまだ4分の3は残っている。チーズケーキの余りを4分の2になるように切り分けお皿にのせ、机まで持っていく。そしてチーズケーキをまた冷蔵庫にしまい終える頃には真由美さんもちょうどお茶を注ぎ終えたらしく共に机まで行き、対面になるように座る。互いに座ると真由美さんの方が先に声を発した。

 

 「改めて、首席合格おめでとう夜瑠君。」

 

 「ありがとうございます、まさか自分も首席で合格するとは思っていませんでした。」

 

 それもそのはず、彼が四葉と言えど正直首席で合格するのは難しいことである。特に今年は親戚である司波兄妹も受験する年である。達也に関しては筆記試験はまるで勝てる気が無かったが、実技試験の方は達也が苦手としていることを知っていたので総合では勝てると思っていた。しかし問題は妹の深雪の方である。筆記は達也程では無いにしろ少なくとも自分と同等レベルであり、実技も自分と同等である。もちろん首席になるつもりではあったがそれでも五分だと思っていた。

 

 「私は夜瑠君が首席になると思っていたけど、それでも今年はとくにレベルが高かったわ。詳しい点数は言えないけど次席の人ともかなり接戦だったわよ。」

 

 「そうみたいですね、それに点数は僕も知っていますよ。確か自分と、3点差でしたっけ?」

 

 「あら、知ってたの。でも四葉なら当然と言えば当然ね。それはそうと新入生総代の準備は出来てるの?」

 

 「もちろん出来てますよ。あれ?メールでスピーチの原稿送りませんでしたっけ?」

 

 「送られてきてたわよ、でもそっちじゃなくて、夜瑠君緊張しやすいじゃない」

 

 と、少し真由美さんは、イタズラっぽくあざとい笑みを浮かべながら問うてくる。

 

 「その事ですか、大丈夫ですよ。精神干渉系魔法を僕自身にかけることで冷静に保つので。」

 

 「それ生徒会長の私の前で言う?校内は原則魔法の使用が禁止よ。だからダメ。」

 

 唇の前辺りで指をバツにしながら言ってくる。あざといな...

 

 「ですよねー。じゃあ今から一度通しで読むので聞いてくれますか?」

 

 「もちろんよ、今日はそのために来たんだから。」

 

 と、笑顔で応えてくれる真由美さん。可愛い。やはり笑顔が可愛い女性である真由美さんと

 

 「結婚したい」

 

 「うぇ!?い、今なんて?」

 

 「あ、口に出てましたか。でも仕方ないじゃないですか、自分は今年一年生で真由美さんは三年生。今年一年間しか共に学校生活を送れないんですよ?結婚はまだ自分の年齢的に出来ないとしてもいっそ同棲してより長い時間を一緒に過ごしたいです。」

 

 「う、ううう。で、でも私たちまだ高校生なわけでしょ?ならまだはやいんじゃないかなー?って」

 

 「まーそれはそうですね、仮になにかあったとしても今の自分では責任取れないですし、とはいえすぐにでも同棲したいのは同じなので考えといてください。さて、自分は端末取ってきます。」

 

 「う、うん分かったわ」

 

 席を立ち自分の部屋に向かっていると、「い、今ナニって言ってたわよね...そ、そんな気の早いことまだ...」

 などと言っていたあざといだけでなく実はむっつりでもあったかと自分の許嫁の属性に恐れおののきながら端末を取ってきて戻ると、まだ顔の少し顔の赤い真由美さんに声をかけスピーチの準備をし、そのまま読み上げる。そして二回目のスピーチを読み終える頃にはすっかりいつも通りの真由美さんに戻っていた。

 

 夕方から夜になる頃真由美さんを家に返した頃、別の家では

 

 ――――――――――――――――――

 

 「お兄様どうかなさいましたか?」

 

 「なんでだい深雪?」

 

 「なにかお悩みのご様子でしたのでつい...」

 

 そう自分の愛する兄がなにか悩んでいたのである。確かにいつもなにか考えてらっしゃっているがそれでも今回はいつもよりも深刻そうに見えたのだ。

 

 「深雪、明日から学校が始まるだろう?それで1つ悩みの種が今になって出てきてな」

 

 「悩みの種ですか?なんでしょうか?」

 

 とつい首を捻りながら兄に再度問いかける

 

 「四葉、いや夜瑠君との事だよ。学校で出会ったら彼とどうやって接しようかと思ってね。」

 

 確かにその通りである。夜瑠君は私たち兄弟が四葉に連なるものだと知っている。どうしましょう?と達也に返そうとした瞬間達也宛にコールがなる。

 

 「こんな時間に誰だ?相手は...ちょうどいい夜瑠君か」

 

 『もしもし?達也?聞こえてる?』

 

 「ああ聞こえてる夜瑠君」

 

 『だから個人間の時は君は要らないと言ってるじゃないか達也。まあいいや実は相談したいことがあってだな』

 

 「俺たちと学校内で出会ったらどうするかという話だろう?」

 

 『そう、設定を決めておきたいんだよ、流石に自分の親戚ってことにするのはそっちは嫌だろ?』

 

 「なんとも答えにくいことを言ってくれるなお前は」

 

 『それでどうする?自分が考えてたのはシンプルに学校内で出会ってそこから友達にっていうのがいいと思うんだけどどうだろう?』

 

 そう夜瑠君はこちらに問うてきた。お兄様がこちらを振り向き目で確認すると私も目で返した。

 

「こちらはそれで問題は無い、ただそれをやるなら出来るだけ人目がある方が効果的じゃないか?」

 

 『それもそうだな、じゃあ入学式が終わり次第こちらから深雪さんに声をかけるよ。内容はそうだな...少し自慢になって嫌だが深雪さんが次席になったことについてで良いだろう』

 

 「ああ、それで大丈夫だろう。ちなみにだが点差は知っているのか?」

 

 『もちろん3点差だよ』

 

 そう聞くと改めて悔しい思いが滲み出してきた。

 

 『フォローするわけではないけど実技の方は深雪さんのほうが僅かに上だったみたいだよ。ま、いいや用は済んだから今日はこの辺で、また明日』

 

 「ああ、また明日」

 

 そういうと通話が切れる。

 

 そして夜は更けていく。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

入学編Ⅰ

お気に入り登録15件もして頂いてありがとうございます。ビビり散らかしてます。また、しおりと評価も嬉しいです。ありがとうございます!
書き溜めはありません。それではどうぞ。


入学式編Ⅰ

朝いつもよりも早い時間に起床し、いつものルーティンをこなしていく。

 

 「ちょっと嫌味っぽかったかな...」

 

 昨日の、司波兄妹との通話のことである。他に思いつかなかったとはいえもう少し言い方があったよなぁと少し後悔している。

 

 「メールは送るとして...それよりも...」

 

 今日はいよいよ第一高校の入学式である。そろそろ制服に着替えて、学校に向かわなければいけない。自分は新入生総代を務めるからだ。そのリハーサルがあるために他の新入生よりも早く学校に着く必要がある。自分の許嫁である真由美さんは生徒会長であるため、自分よりもさらに早く到着する必要があるらしい。

 

 昨日真由美さんの帰り際に自分達の関係を他の生徒たちは知っているか否かを聞いた。自分達は十師族であるため許嫁の関係が決まった段階で互いの両親は方々に報告するつもりだったらしいが自分がそれを止めさせた。なぜならどうせ解消されると思っていたからだ。なんせあれだけの美少女なのだ不釣り合いにも程があると思ってた。(そもそもそんな理由で許嫁は解消されないのだが)しかしその後順調に仲を深めたことで、夜瑠は真由美に惚れ込んでいった。

 閑話休題

 

 話を戻し、他のものは知っているかどうかだが答えは「否」である。

 

 曰く

 

「夜瑠君も望んでいないでしょ?」

 

 との事である。中学生で、かつあまりに会うことのなかった去年まではそうであったが今年からは違う。なにせ学年は違うとはいえ同じ高校に通うのだ。面倒を嫌う夜瑠であるが彼も一人の男である。一つの決断をした。なんせ真由美さんは美少女なのだそんな真由美さんに虫がまとわりつくのは不愉快である。そして一つの決断を口にした。

 

 「でしたら今年は言いましょう」

 

 「なんで?」

 

 と不思議そうに人差し指を頬につけながら首をかしげるあざといポーズを素で行う彼女にたいし「そういうところですよ」と言いたくなるのを我慢しどう言おうかと迷いつつも口を開く

 

 「自分も今年から真由美さんと同じ高校に通います。そうすれば必ず真由美さんと関わる時が来ます、その時に自分達の関係を変に繕うよりもいっそ堂々と言った方が後々楽だと思ったからです。」

 

 誰がどう考えても完璧な建前である。

 

 「ふーん」

 

 と少しニヤニヤしながら答えてくる。あれ?これ建前だってバレてね?

 

 「それで本音は?」

 

 バレてーら

 

 「ただでさえ美少女である真由美さんに変な虫が付くのが嫌だからです。」

 

 これで満足か?と目で伺うと

 

 「よろしい」

 

 と今度は花が咲いたようなと比喩するのが相応しいほどに満足げないい笑顔を向けてくる。少し恥ずかしい思いをしたがこんなに良い笑顔を見せられたから良いやと少し投げやりに思った。

 

 ――――――――――――――――――――――――

 

 制服に着替え持ち物を確認し、キャビネットで第一高校まで向かう。本当は真由美さんと共に行きたかったが自分よりも先に向かわなければ行けないらしい。それでも自分も予定よりも早く行こうかと考えていたところ先読みされていたようで

 

 「明日は夜瑠君の晴れ舞台なんだからゆっくり休んで」

 

 などとウインクしながら言われては引き下がるしかない。

 

 昨日帰り際に言われたことを思い出し改めて気合いを入れ、原稿を読み直しているといつの間にか到着していた。

 キャビネットを降り校舎を見上げるこれから待ちに待った高校生活が始まるのかと希望の眼差しをしているとどこからか声がした、

 

 「ねぇあれ四葉の人じゃない?」

 

 「うわ、ホントだあっち行こ」

 

 ついそちらの方を睨んでしまい女子生徒2人が逃げていく。

 なぜ分かったと思ってしまうが自分の風貌を思い出し

ため息をついてしまう。確かに自分は他よりもやはり顔が割れている。身長は平均よりも5センチほど低い、これだけならまだしも自分の髪の毛は他の人よりも遥かに黒い。それに他の人に言わせるとどうやら纏っている雰囲気も違うようである。目つきもよろしいとはいえず一時期メガネをかけていたこともあった。その時真由美さんとも会ったが掛けない方が良いと言われたためそれ以来掛けていない。なによりあの四葉である。そんじょそこらの魔法士よりも有名だしね。

 

 気を取り直して会場に向かってさっさと入学式の準備をしよう。

 

 

 「おはようございます1年A組の四葉夜瑠です。」

 

 「君が四葉くんか。おはよう、私は生徒会副会長の服部刑部だ。リハーサルまでまだ少し時間がある、そこに掛けて待っていてくれ。」

 

 「分かりました。」

 

リハーサルまだ時間があると言われ流石になにもしないわけにもいかないので原稿でも読もうかと思い目線を下げるとちょうどこちらに向かってくる影が見えた。顔を上げるとそこには自分の許嫁と他に二人いた。

 

 「おはようございます、真由美さん」

 

 こちらから挨拶をすると脇の二人は驚いたようだ。それはそうか真由美呼びだもんな。真由美さんは困ったような顔をして挨拶を返してした

 

 「おはよう、夜瑠君」

 

 これまた脇の二人は驚いてる真由美さんよりも小さい方は仰天と言っていいくらいには驚いている。

 

 「会長、四葉君とお知り合いなんですか?」

 

 と、少し肌が褐色で青みがかったロングヘアーの女性が問う。

 

 「ええ、許嫁なの。それでこちらが市原鈴音通称りんちゃん。でこっちが中条あずさ通称あーちゃん。」

 

 え、そんなサラッと言う?とは思ったが市原先輩と中条先輩それぞれに挨拶をし...あ、ほら中条先輩驚きすぎてもはやノーリアクションになってる。それに周りの人もザワついてるし、まあいいや。

 

 「それで真由美さんリハーサルがもう始まるんですか?」

 

 「いいえそれはまだよ、生徒会メンバーを紹介しようと思ったから服部君は捕まらなかったけど」

 

 「いえ、服部先輩は先程挨拶をしました。」

 

 「そうなの、それなら良かった。と、そろそろリハーサルが始まるみたいね」

 

 先生と思われる方がこちらに手を挙げている。

 

 「分かりました、自分も準備します。」

 ――――――――――――――――

無事リハーサルも終了し、本番を迎える。その間中条先輩がさっきの許嫁発言をこちらにも聞きたそうな顔をしていたが見なかったことにしておく。真由美さんに聞いてください。

 

 そしていざ本番を迎える入学式はつつがなく進み自分の番になった。自分の四葉の名前が呼ばれた時は割とザワついたがいざ始まれば原稿の内容も当たり障りない内容だったこともあり無事終了した。やっぱり大勢の人の前で話すのは疲れるな。

 

 会場から退出する前に真由美さんに声をかけようとしたが明らかに忙しそうにしていたので遠慮した。すると中条先輩から声がかけられた

 

 「あ、あの四葉くん。」

 

 「はい、自分に何か?」

 

 「え、ええとですね明後日の昼休みに生徒会室に来て欲しいんです。」

 

 「生徒会室に?何故...ああそういえば新入生の首席は生徒会へ勧誘があるんでしたね」

 

 このことは事前に真由美さんに聞いていたが正直断るつもりではあった。確かに学校内で大事な真由美さんと過ごす時間であるが多分真由美さんを目で追ってしまい集中出来ないので断ろうと思っていた。

 

 「そ、そうなんですご存知ですよね…」

 

 「はい、真由美さんに聞いていました。明後日のお昼休みですね。分かりました、伺います。」

 

 「で、では失礼します」と逃げるように去っていった。

 

 うーん怖いよね四葉。改めて帰路に着いた。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

入学編Ⅱ

お気に入り登録、評価、誤字報告等励みになります。本当にありがとうございます。
書きたいことばかり書いてるので本編あんまり進んでません。

それではよろしくお願いします。



入学式編Ⅱ

 

 朝、いつもより少し早起きした。なぜなら今日から真由美さんと共に通学できるからだ朝は苦手だったが今日ばかりはウッキウキで目が覚めた。仕方ないだろう。いつもよりも身だしなみに気を使い気づいたら時間になったので待ち合わせ場所に向かう。通学にはキャビネットを使うかと思っていたが真由美さんからの提案で歩きとなった。何故かと聞いたところ。

 

 「だってキャビネットでなんて味気ないじゃない。それに...」

 

 「それに?なんですか?」

 

 「う、ううんなんでもない」

 

 「そうですか。今までの分を取り返したかったからかと思いましたけど違ったんですね。」

 

 すると真由美さんは顔を赤らめながら

 

 「もう!からかわないで!」

 

 プイッと顔を逸らした。可愛い。

 

 閑話休題

 

 そんな訳で集合場所からは徒歩となった。集合場所にはもう既に真由美さんは居た。

 

 「お待たせしました」

 

 「ううん、今来たとこ」

 

 などとまるで恋人のようなやり取りにお互いむず痒い気持ちになる。

 

 「なんだか恥ずかしいわね...」

 

 「同感です...まあ慣れますよ。それでは行きましょうか」

 

 道中では色々な話をした。最近のマイブーム、気になる映画、通学路でのお気に入りのカフェ、あまりに好きでないカフェ、品ぞろえの良い本屋、古書ばかり扱う本屋、生徒会のこと、部活連のこと、風紀委員のこと、など今まであまり話題に出さなかった事を話した。

 こういう楽しい時間はすぐに過ぎるものであっという間に学校に着いてしまった。

 

 「もう着いちゃった、なんだかいつもよりも早く着いた気がするわ」

 

 「自分もなんだかいつもより時間が過ぎるのが早かった気がします」

 

 ふと顔を見合わせ互いに微笑む。うーん真由美さん可愛いな。もう放課後にしか会えないのか〜と考えていると

 

「あ、そうだ夜瑠君今日遅くなるかもしれないから先に帰ってて」

 

 ……マジ?

 

「いや待ちますよ。それでどれくらいになりそうなんですか?」

 

 「うーんそうね、多分18時は過ぎるわね」

 

 「そうですか、分かりました。適当に校内探索でもして時間潰して起きます。」

 

 「ごめんね、ありがとう。」

 

 いえいえこのくらい、と返し授業が始まるので昇降口で別れ互いの教室に向かった。

 

 ――――――――――――――――――――

 今日は授業初日なのでほぼほぼガイダンスで終わった。この学校は各自で履修登録するタイプの学校である。まあ、出れる授業はとりあえず登録しておくけど。途中カウンセラーの小野何とかっていうやたら巨乳の先生も居たけどそれくらいしか正直覚えていない。

 しかし一番の問題はマジで誰にも話しかけられない。びっくりするくらい話しかけられない。なんなら誰も目を合わせようとしない。四葉が恐れられてるというのは分かっていたつもりだったが、正直ここまでとは思ってもみなかった。自分とは対象的にクラスメイト囲われている一人の美少女。

 

そう、深雪である。休み時間になる度に話しかける人が増えてる気がする。あ、また増えた。男女問わずに囲われている。でもよく見ると嫌そうな顔してる気がする。あ、やべ目が合った。しかも深雪の方はこちらから目線をそらすつもりも無いなこれ。仕方ない。

 

 自分は席から立つと深雪の方に真っ直ぐ向かう。

 

 「初めまして、自分は四葉 夜瑠です。よろしく。」

 

 と四葉の部分を気持ち強めに強調すると取り巻きが後ずさった気がする。いや四葉の名前強すぎだろ、となんとなく誇らしくも少しの嫌悪感も湧いてしまう。

 

 「初めまして、私は司波深雪と申します。こちらこそよろしくお願いします。」

 

 と席から立ち丁寧過ぎる位の所作でこちらに返してくる。

さてとここからは少し嫌味っぽくなる。心の中でごめんと謝りつつ口を開く

 

 「どうやら次席は深雪さんだったみたいですね。確か自分とは3点差だけだったとか」

 

 「そうなのですか?私は点数までは存じ上げませんでしたが本当はにあと一歩だったようですね。少し悔しいです」

 

 と微笑みながら返してくる。うーわこれ想像以上に罪悪感あるな。こんなん真由美さんに知られたら嫌われちゃうなーとか少しブルーな気持ちになりながらも会話は続ける。

 

 「次の時間にはもうお昼ですね、良かったらお昼ご一緒しませんか?」

 

 これで1番長い休憩時間のお昼は人払い出来るだろうと思い誘ってみる。

 

 「そうですね、ぜひご一緒しましょう。色々お話お聞かせください。」

 

 と微笑みながらこちらに応えてくれる。この笑みに周りのものは見とれているようだが自分にはわかる。これは愛想笑いだ。いや、少しではあるが感謝の念も混ざってるな。なぜ分かるのかというと明らかに彼女が愛する兄、達也に向ける笑みとは天と地ほどの差があるからだ。

 

 「それは良かった。楽しみにしていますよ」

 

 と言うとちょうどチャイムが鳴り、各々席に戻った。

 

 ――――――――――――――――――――――――

 

 お昼休みになり予定通り深雪を誘おうと思い、席を立とうとするともう既に目の前に深雪さんが立っていた。

 

 「四葉さんそれでは食堂に参りましょう」

 

 「夜瑠でいいですよ深雪さん。...今更ですが自分も深雪さんと呼ばせていただいても?」

 

 「はい、もちろんですよ。」

 

 「ありがとう。それじゃあ行こうか」

 

 と立ち上がりながら言う。深雪さんを伴いながら教室を出ると追ってくる二人の女性。振り向かずにそのまま歩みを止めな

 

 「あの!」

 

 ...などと決心していると普通に声掛けられた。

 

 「なんですか?」

 

 と自分が返すと

 

 「わ、わたしたちもお昼一緒にいいですか!」

 

と元気よく声をかけられた。ツインテールと呼ぶには少し低めの位置で髪を結った明るい茶の髪をした子と基本はベリーショートでサイドテールを伸ばした眠たげな眼をした子のコンビだ。深雪さんに目をやるとおまかせしますと投げやりに見られたので

 

 「...別に良いよ」

 

 と返すと少しホッとしたような表情をしている。

 

 「食堂混んだら嫌だから早く行こう。」

 

 とベリーショートの子が言う。図太いなと思ったが全く同感なので野暮なことは口にせず自分が先頭になり廊下を進む。もう既に顔が割れてるからなのか皆道を開けてくれる。うーんなんとも言えない気分になるなこれ。...これ以上は考えないようにしようと小さな決断していたら食堂に着いた。

 

 「席は…あそこがちょうど4人空いてますね、あそこで構わないか?」

 

 と振り向くと了承してくれた。

 ちょうど人数分の4人がけのテーブルで自分と深雪さんが通路側、女子二人がソファー側に座った。ここでそういえば名を聞いていなかったなと思っていたら

 

 「そういえばまだ名乗ってませんでしたね、私は光井ほのかです!遅くなってごめんなさい!そしてこっちが」

 

 「私は北山雫。よろしく」

 

 「こちらこそよろしく。自分は四葉夜瑠です。」

 

 「私は司波深雪です。改めましてよろしくお願いします。」

 

 「ま、とりあえず自己紹介はこれくらいにして自分が席を取っておくから三人は食事を持ってきてください。自分はその後に持ってきますよ。」

 

 と言うと深雪さんが

 

 「ではお言葉に甘えさせていただきます。行きましょう、光井さん北山さん」

 

 と三人が席を立つ。離れながらほのかって呼んでとか深雪って呼んでも良い?みたいな微笑ましい会話が聞こえてくる。

 

 すぐに戻ってくるだろう頬杖をつきぽけ〜っとしていると声をかけられる。

 

 「すいません、この隣のテーブル使っても良いですか?」

 

 と丁寧な女性の声が聞こえたのでそちらに目をやると居た。達也が居た。あ、と思っていると達也もどうやらおなじ思いだったようで珍しくポーカーフェイスを僅かに崩している。他の達也以外の三人、特に眼鏡を掛けた紫色のアクセサリーを付けたおっとりした女性はまさに「やってしまった」と言うような顔をしていた。赤い髪のウルフカットのような女子はあららと言うような表情でガタイの良い純日本人では無い顔をした男子はどうした?みたいな顔をしている。流石に声をかけてきた女性が可哀想なので返事をするとしよう

 

 「もちろん構いませんよ。」

 

 と努めて優しい声と表情をして返答をすると声をかけてきた女性はホッととしたような表情で「良かった怒らせてなかった」と小声で言っている。聞こえてるからね?今この事でイジるような関係でもないので座るように促す。達也グループは座りはしたものの未だ気まずい雰囲気が漂っていたので流石に悪いと思いこちらから声をかける。

 

 「初めまして、自分は1年A組の四葉夜瑠です。気軽に夜瑠と呼んでください。」

 

 返事しろよ?と達也にアイコンタクトを送ると無事伝わったようで

 

 「初めまして、俺は1年E組の司波達也。俺も達也でいい」

 

 「じゃあ次は俺な、同じく西城レオンハルト。レオって呼んでくれ。」

 

 とガタイの良い男子

 

 「じゃ次私ね、私は千葉エリカ。エリカって呼んで」

 

 よろしくーと赤い髪の女子、そして最後に

 

 「わ、わたしは柴田美月です。」

 

 よろしくお願いします、とこれで全員の名前が分かった。

 全員二科生か、まあそれはそうかまだ2日目だし別のクラスと仲良くなるって方が無理だ。

 

席順はソファー側に手前側からレオ、達也。

 通路側が手前からエリカ、美月となっている。

それぞれ自己紹介が終わると深雪達が席に戻ってくる。あ、達也の顔を見て明らかに深雪の機嫌が良くなった。

 

 「さて、じゃあ自分も食事を取ってくるよ」

 

 と深雪達と入れ替わりで席を立つ。先に食べてていいよ、と言うのも忘れずに。ちなみに達也グループは既に食事を持っていたようで既に食べ始めている。何にしようかなと少しワクワクしながら見回る。なんせジャンクフードから和食に洋食など色々な種類があるのだ。2、3分くらい迷ったがどうせ今後も食べる機会はあるのだから、と入口から時計回りに食べて行くことにした。今日の所は鯖の水煮だ。普通に美味しそう。と席に戻る時もウキウキして自分達の席に近づくと何やら言い争っている声が聞こえる。

 

 「だから司波さん達は僕達一科生と食事するべきだ!だから席をどけ!」

 

 「はあ?何言ってるの?私達が先に食べているでしょ?ただ自分達が席を探すのが面倒なだけじゃないの?」

 

 言い返してるのはエリカか、今から楽しみな食事なのにしょうもない言い争いをするんじゃないと思い。再び1歩踏み出す。




本日あと1話投稿する予定です。時間は未定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

入学編Ⅲ

本日2話目です。よろしくお願いします。
入学式編から入学編に変更しました。理由は入学式編の語呂が悪いからです。
お気に入り登録40件ありがとうございます!

11月25日16時に加筆修正を行いました。内容としては摩利に名乗らせるのを忘れていたのでその部分です。


入学式編Ⅲ

 

 しょうもない事で争っているテーブルに近づくとほのかさんと雫さんは自分に気づいたらしく少し安堵したような表情をしている。

 

 「何をしているんですか、邪魔です。」

 

 と少し言葉を強めに掛ける。クレーム集団はなんだよ!と言わんばかりにこちらを振り返るとギョッとしたような顔をしたがすぐに表情を戻しなんか文句でもあるのかとばかりにこちらを睨みつけている。これには少し感心した。

 

 「そこは俺の席だから邪魔だと言ってるんですよ。分かります?」

 

 と返すと何を思ったのかニヤリとし、達也グループの方を見る。

 

 「ほらな!四葉もこう言ってるんだぜ!だから早く席をどけ!ここはブルームである俺たちが司波さんたちと食事を食べる場所なんだよ!ウィードのお前らは隅の席にでも行くんだな!」

 

 と水を得た魚かのように勢いよくわけのわからないことをのたまっている。いやホントに何言ってんだこいつら?

あ、やべ深雪さんごワナワナ震えてるこれはまずいですねぇ。さっさとこいつらどかそう。

 

 「違う、お前ら名も知らない一科生のヤツらに言ってるんだよ。自分は深雪さんはもちろんそっちのレオ達と食事をするんだよ。お前らじゃない」

 

 と言うと流石に効いたのか少し怯んでいる。しかしなおも反論してこようとしていたので先に

 

 「俺の名前、ご存知ない?」

 

 こう言うと流石に焦ったのか捨て台詞を吐き捨てながら去っていった。なんだったんだアイツら。

 

 「悪いな空気悪くして」

 

 「ううん、全然気にしてないわよ。むしろ助かったって感じ。」

 

 「そ、そうですよ!助かりました!」

 

 席に座りながらそう言うとエリカさんととほのかさんがフォローしてくれた。感謝を伝えると

 

 「いいわよそんなこと、それよりもさん付けやめてくれない?普段呼ばれないからムズムズしちゃう」

 

 とはエリカの弁。これを自分は了承すると他の皆もそうするようにと言ってきてくれた。ついでにタメ口も要請された。が、敬語の方は癖みたいなものだから簡単には抜けないよ、と返しておいた。

 

 「ところで大丈夫なの?四葉の名前出して?」

 

 最後の事だろう。雫さ…雫が心配してくれた。自分はしらばっくれる事にした。

 

 「なんの事かな?自分は夜瑠の名前を出しただけで苗字の四葉じゃないですよ」

 

 とお茶を啜りながら屁理屈を言うと苦笑いだったり、ポカーンとしたり仏頂面だったりケラケラ笑ったりと様々な反応だった。あ、今雫が「夜瑠の方も十分悪名高いけど...(意訳)」みたいな顔してる。さっき廊下であった時よりジト目になってる。

 そして食事を開始するとぽつぽつと会話が始まる。深雪さんと達也が兄妹だというのもこのタイミングで話していた。皆は驚きよりもなんとなく納得の方が多いようだ。ちなみに話の流れで雫とほのかがなんで自分に声をかけたのかを聞いたところ、どうやら深雪さんと話をしてみたかったらしい。こんな感じで終始和やかに食事を楽しんでいると突然エリカから爆弾が投下される

 

 「あ、そういえば一つ聞いてもいい夜瑠?」

 

 なんだ?と目線をやるとエリカがニヤニヤしながら質問してくる。え?なに聞くつもりなの?と、戦々恐々として身構えると

 

 「七草生徒会長が許嫁って本当?」

 

 なんだそんなことか、となんとなく気が抜けて自分は

 

 「本当ですよ」

 

 と返した。、えぇっ!?と皆驚いている、そらそうかなんせあの七草家のご令嬢の真由美さんと四葉の跡取り息子の自分だしね、自惚れでもなんでもなく正直ここ数年の日本魔法界では一番のニュースかもしれない。しかも昨日まで発表していなかったわけだし。(親戚の中でもより親しい者たちにしか伝わっていない。四葉で言ったら司波はもちろん黒羽も知っている。七草家の方は...自分が把握しているのは七宝くらい)

 

 「そ、そんな軽く言ってもいいんですか!?」

 

 と美月さんが聞いてきた、もちろん騒ぎが大きくなりすぎるのも考えものだが自分はあの四葉の跡取りなのだ。このくらいの騒ぎはどんと受け止めよう。というような考えをそのまま伝えると皆なんとなく納得したような、感心したような表情をしている。

 

 「すげぇな、俺と同い年でそこまで考えれてんのか」

 

 「あんたみたいな脳筋とはそりゃ違うでしょ」

 

 というような今では当たり前になったレオとエリカのじゃれ合い、もうこんなに仲良くなってすげーなーと素直に感心していると、次は深雪さんの方から質問が飛んでくる。

 

 「お昼は七草先輩とご一緒でなくて大丈夫だったのですか?」

 

 これに関しては今日来る時に話しており、今日は生徒会室で仕事が残っているため一緒に食べれないのだそうだ。残念だか自分は真由美さんの邪魔をしたい訳ではないので仕方なく了承した。と、返答し昼食を食べ終わるとキリよくチャイムが鳴った、まだまだ根掘り葉掘り聞きたそうだったがまたの機会になと話を切り席を立ち、皆で食堂を出た。

 

 ――――――――――――――――――

 教室へ戻り、次の授業に向けて準備をする。ちなみに自分とほのかほ「み」と「よ」なので席は隣同士である。このこともあってか昼休み過ぎてからは深雪さん、ほのかと雫の3人組はほのかの席の近くで喋っている。ちなみに自分の周りは3人以外居ない。これはもはや諦めの域に達している。二日目にして早いとは思うけど仕方ないものは仕方ない。さらに先程の食堂の一件もある。これでより近づかれなくなるだろう。こういう理由もあり深雪さん達は人払いがてらほのかの席で話しているのだろう。などとぽけ〜っと考えていたら急に声を掛けられた。

 

 「夜瑠さんもそう思いますよね?」

 

 やっべなんも聞いてねぇや。適当に相槌を打とうかと思ったがさすがに失礼だと思いやめた。し

 

 「ごめん、何も聞いてませんでした。なんの話?」

 

「部活動の話。やっぱり入るなら魔法を使う競技が良いよね?」

 

 と、雫から返答があった。なるほど部活の事か、なにかしらの部活に入り態度は思ってはいるがまだその段階だ。

 

 「うーん、なにかしらの部活に入りたいとは思ってますけどそれが魔法が関係していなくても良いかなって思ってます。」

 

 「夜瑠さんもそう思うんだ。私はやっぱり魔法関係が良いな」

 

 と雫はこぼした。

 

 「確か部活動勧誘月間があったはずでからその時に考えれば良いのでは?」

 

 それもそうか、と納得したようで今度こそ授業開始のチャイムが鳴る。よし、あと二時間頑張ろう。

 

 ――――――――――――――――――――――

 

 今日の授業が終わりぽつぽつと教室から出て行く中自分はほのかに一緒に帰らないかと誘われていた。しかし自分ほ真由美さんと共に帰る旨を伝えると、微笑ましい物を見る目で三人に見られた。なんだかむず痒い思いをし視線を切るようにそそくさと教室から出る。この後は適当に学校をぶらつきまがら見学でもしよう。

 1時間ほど学校を見て周り図書館広かったなーとか設備良かったなーとか敷地広すぎやとか思いながら校門まで行くと言い争っているのが見えた。この学校荒くれ者しか居ないのか?と思いつつも流石に流血沙汰になったりしたら気分も悪いので様子を見ようとそちらに向かうと聞き覚えのある声がした。

 

 「だから僕達は司波さんに聞きたいことがあるんだよ!」

 

 「そうよそうよ!一緒に帰りながらお話したいだけよ!」

 

 「ですから、深雪さんはお兄さんと帰ると言ってるんです!なんの権利があって二人の仲を引き裂こうとするんですか!」

 

 と美月がなかなかの啖呵を切ると深雪が照れたように身をくねらせている。相変わらずブラコンだなぁと思いつつ様子を見る。自分は何も喧嘩が悪い事とは思っていない、そこから殴り合いになるのが良くない。痛いのは見る側も嫌なのだ。

 

 「これは1-Aの問題だ!ウィードは引っ込んでろ!」

 

 「同じ新入生でしょう!なのにあなた達ブルームがどれだけ優れてると言うんですか!」

 

 あ、美月それはマズイかも。

 

 先頭の男...たしか同じクラスの森崎さんとか言ったか。森崎さんがニヤリと笑うと

 

 「そこまで俺たちのブルームの力が知りたいか」

 

 「おもしれぇやってみろよ」

 

 とレオが返す。あーこれ止まんないな

 

 先頭の森崎さんが魔法の準備に入ると同時に後ろの取り巻き2人も魔法の準備に入る。それを見て焦るようにほのかも魔法の準備に入ってしまう。

 

 森崎さんが腰にあると思われるCADに手を伸ばし、胸の辺りまで腕を勢いよくあげると

 

 「「「…え?」」」

 

 森崎さんのCADが手からすっぽ抜けた。

 

 そしてその後すぐに森崎さんだけでなく達也たちも含めてゾッと寒気では無い何かを感じてしまう。

 

 バッと全員がこちらを振り向くとちょうど森崎さんのCADがこちらに降ってくる。そのCADは俺の方まで飛んできてそのまま自分が地面に落ちないようにキャッチする。CADは精密機械だかな、あの勢いで落ちたら流石にどっかの部品壊れそう。などと思ってもないことを考えながら集団の方に近づく。

 

 「ほら、CAD返しますよ。次は気をつけてください。」

 

 「あ、ああ」

 

 と森崎さんは事実が受け入れられないようで呆然としている。当然だな、こんな凡ミスをするんだからプライドの高そうな森崎さんはより受け入れられないだろう。また、他のメンバーも少し怯えたようにこちらを見てくる。

 自分は顔を周りを見渡すとメンバーを確認する。今日の昼食のメンバーに加えて1-Aのクラスメイト達である。正直名前は覚えてない。見回す時に達也の方を見ると自分が何をしたか気づいてるらしく。やれやれみたいな顔をしてる。

 どう声をかけようかと考えていると背後から凛とした女性の声が聞こえた。

 

「ふむ、通報があったから来たものの、もう既に騒ぎは終わっていたか。四葉、君が騒ぎを止めたのかね?私は風紀委員長の渡辺摩利だ。」

 

 と、聞こえたので振り向くと渡辺風紀委員長と真由美さんが立っていた。真由美さんに声を掛けたい気持ちを我慢し、声をかけてきた女性に返答する

 

「はい、自分が止めました」

 

「生徒間同士の諍いを止めるのは立派だが学校内での魔法の使用は厳格なルールが定められている。今回は注意と全員への聞き取りのみとしよう」

 

 分かったか?と言わんばかりの顔でこちらサイドを見られたので自分達は大人しく寛大な処置に頭を下げた。

 

 




これから徐々に物語は進むと思います。(当社比)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

入学編IV

色々とルートを迷いながら書きました。それではどうぞ。
これからしばらくは1話投稿になると思います。
お気に入り登録、評価ありがとうございます!励みになります!


入学編IV

 

 騒ぎの罰としては注意と聞き取りで終わるというかなり軽いものとなった。どうやら今から聞き取りを行うようで会議室に全員連れていかれた。

 

 「さて、まずはそもそも原因の説明をしてもらおうか」

 

 と、渡辺先輩が言う。自分は途中からしか見ていなかったので無言に徹する。最初は一科生の方からぽつぽつと状況説明をしていたが途中達也サイドの方から反論があったりして険悪なムードながらも少しづつ進められていった。そして一科生側が魔法の発動未遂に焦点が当てられた。流石に一科生側は旗色が悪いのか気まずそうにしているとなんと達也の方から援護射撃があった。

 

「彼らが発動しようとしたのは人を傷つけないように抑えられた魔法ですよ。例えば光井さんが発動しようとしたのはただの閃光魔法でした。」

 

「ほう?君は展開された魔法式を読み取ることができるらしいな」

 

「実技は苦手ですが分析は得意です。」

 

 これには流石に自分も驚いた、ていうか全員驚いている。それはそうだ普通に考えれば今一科生を庇う理由は無い。また、自分と深雪さんは別の意味でも驚いている。今までの達也ではこのようなことはしなかったはずである。そういうような雰囲気を感じたのだろう再び達也が口を開く

 

「自分はただ事実を申し上げたまでです。なにも一科生に貸しを作ろうと思ったりした訳ではありません。」

 

 自分は正直納得いかなかったが一科生や渡辺風紀委員長と真由美さんはなんか納得してるっぽいのでまあ大人しく黙っておこう。

 

「なるほど、まあそういう事にしといてやろう。最後に四葉、君はどうやって騒ぎを収めたのだね?」

 

 と渡辺風紀委員長が問うてくる。真由美さんが心配そうにこちらを見てくるが安心させるように目を合わせ微笑む。再び渡辺風紀委員長に目を合わせ口を開く。

 

 「自分達四葉家のお家芸はご存知ですよね?」

 

 もちろん、精神干渉系魔法だろう?と渡辺風紀委員長ほは返してくるそれに対し自分は

 

 「自分が行ったことは2つです。森崎さんに自分の魔法を掛けました。この魔法については後ほど説明します。そしてあとひとつはサイオンを放出し皆さんを怖がされただけです。」

 

 「ふむ、後者もよく分からんがひとまずは森崎に掛けた魔法についてを説明してくれ。」

 

 と、返された。一般的には自分の魔法を口にするのは嫌がるものだが自分は別に何も思わない。なぜならどうせ防げないからだ。

 

 「わかりました。自分が森崎さんに放ったのは不和という魔法です。この不和は対象の精神に作用し肉体と精神にラグを引き起こします。その結果身体はCADを取り出し構えようとしますが、精神つまり思考はCADを掴もうとしますがその思考が肉体に追い付けなくなります。平たく言えば無理やり手を滑らせた、というわけです」

 

 真由美さん以外皆ぽかーんとしているな。人によってはそれだけ?と思うし。まあ今回に関してはかなり抑えて不和を付けた。本気でかければ1歩踏み出したが最後倒れて歩けなくなる。そのまま廃人にしてしまったこともあるからあまりほんきでかけることはない。

 

「...それだけか?」

 

 と渡辺風紀委員長がなんとか口を開いた。自分はそれを聞聞いてニヤリとしたのが自分でもわかってしまった。

 

「試して見ますか?」

 

「興味はあるが遠慮しておこう。」

 

 そうですか、と返すと次は真由美さんが口を開く

 

「さて、もう遅い時間ですしもういいんじゃない摩利?魔法の使用には厳格なルールが定められています。また、魔法の相談や教え合うことを禁じられてはいませんトラブル防止のため先生の方などに指示を仰ぐ方がいいでしょう。」

 

「生徒会長もこう仰せだ以後気をつけるように。それでは解散。」

 

 やっと終わった、と時計を見るともう既に18時前であった。思ったよりも長引いたな。チラッと真由美さんの方を見ると目が合った。目が合ったことに少し照れくさい思いをしながら真由美さんの方に近づく。

 

「すいません、真由美さんご迷惑をお掛けして。」

 

「通報された時に君の名前を聞いた時には心配したんだからね。気をつけるように」

 

 と、右手を腰の手に当て左手でこちらを指さしながら少し前傾姿勢になり「めっ」と言っている。さすがのあざとさだなとか思いながら分かりました、と返した。

 

「ところで真由美さん、この後もまだ何かあるんですか?」

 

「うん、後片付けが少しあるかな。...だから」

 

「もちろんお待ちしますよ。」

 

 ありがとう、と満面の笑みで返されこの人が許嫁で良かったと思いながらどう時間を潰そうか考える。...カフェでいいか。早速行くか、と出口の方に目を向けるとその脇で達也が渡辺風紀委員長に話しかけられていた。断片的だが明日の昼に深雪さんと共に生徒会室に誘われていた。明日は自分も誘われていたなとか思い出しながら渡辺風紀委員長に挨拶をし、会議室を後にした。

 

 ――――――――――――――――――――――――

 

 真由美さんから用事が終わったと連絡が来たので迎えに行こうと昇降口に行くと既に真由美さんは昇降口に居た。

 

「お仕事お疲れ様です、真由美さん」

 

「うん、ありがと。少し疲れちゃった」

 

 とジト目でこちらを見られたので素直に謝ると、冗談よとコロコロ笑っている。

 

「…帰りましょうか」

 

 手を差しだすと照れながらも微笑んで握り返してくれる。いわゆる恋人繋ぎでは無いがまあいいっかと思い手に意識やると真由美さんの手の温もりを感じる少し変態っぽいが、心地よい温もりを感じながらゆっくりと歩く。部活動の関係かまだ残っている生徒達に見られながらも歩幅を合わせながら歩く。ある男子生徒は驚愕に目を剥き、ある女子生徒達は色めきたつ。明日はこの話で持ち切りかもなと考えながら校門を出る。

 しばらく歩いていると真由美さんがいつもより暗い表情をしながら良かったの?と尋ねられる。なにを?と聞き返す前に真由美さんの口からその答えを聞かされる。自分の魔法についてだった。

 

「全く問題ありません。不和は自分の魔法の中で最も使う魔法の一つですし、なによりも聞いた所で何もできませんよ」

 

「そう…」

 

 と返事はしてくれたがまだ表情は暗い。……恐らく去年、いや一昨年の事件を思い出してしまっているのだろう。自分が初めて手を汚したあの日の事を。自分も同じようにあの日の事件に思考を持っていかれそうになるがなんとか持ち直す。真由美さんはまだトリップしているらしく意識をこちらに向けようと手を恋人繋ぎに握り直す。一瞬真由美さんの肩がビクッとしておずおずとこちらに顔を向ける。

 

「気にしていますか?一昨年の事を」

 

「えぇ…」

 

「どうします?そんなに気になるならやっぱり記憶を封印しましょうか?」

 

 四葉家のお家芸は精神干渉系魔法であるがその精神の部分がやたらと広義であるため対象の記憶に触れることも出来る。

 

「…ううんそれは嫌。これは私も覚えておくべき事だと思ってるから」

 

 決意の籠ったような目でこちらを見てくる。が自分には他の意味も混ざっているように思えた。あの日の事を自分だけに背負わせまいとする優しさも見える。

 

「…許嫁が真由美さんで自分は幸せ者です」

 

「ッ!!!…ありがとう私もあなたが許嫁で良かった」

 

 その後互いは顔を見合わせることを出来ず会話も無かった。

しかし幸福感とむず痒い恥ずかしさの半々な気持ちは二人一緒であった。

 

 真由美さんを夜も遅いので家まで送りとどけると、使用人の名倉さんに迎えられる。お茶をお出ししますと言われたが夜も遅いので遠慮しておいた。真由美さんにそれではまた明日、と挨拶をし自分も帰路に着く。

 自宅に到着すると明かりが着いていた。今現在では家の明かりは基本的に自動となっているので来客かなにかだろうと思い家に入るとやはり来客だったようで正体は黒羽家現当主の黒羽貢であった。自分がリビングに入ると立っており挨拶をしてくれる。

 

「遅くに申し訳ありません夜瑠様」

 

「構いませんよ、貢殿。なにか急ぎの用事だったのでしょう。それでどのような用件ですか?」

 

「落ち着いて聞いてください。あの日の事件ですがまだ終わりではありませんでした。」

 

 ……は?いまなんて?

 

「あの事件の首謀者はブランシュなのはご存知だと思いますがその下部組織エガリテの存在が第一高校にて確認されました。」

 

 あの日ブランシュの日本支部に居たメンバーは間違いなく皆殺しにしたはず。ということは逃げ出し、潜伏していたやつが居るのか。

 

「貢さん」

 

「なんでしょうか夜瑠様」

 

「近いうちにブランシュ日本支部を叩きます。今度こそ、必ず潰します。情報を集めてください。」

 

 出来るよな?と目をやると

 

 「かしこまりました。失礼します。」

 

 それだけ言うと貢さんは帰っていった。……まさかあの時取り逃していたとは思わなかった。

 

 ブランシュ…反魔法主義団体か、別にそれ自体はどうでも良いけどあの日真由美さんを誘拐した事は許していない。

 

 あの日奴らは真由美さんを囲むとアンティナイトを使用しキャストジャミングによって魔法を使用できない状態に誘拐した。奴らの要求は十師族の解体であった。別にその要求自体は当時の自分にとってどうでもよかったがその時既に真由美さんと許嫁の関係にあった自分はそれはもう怒り狂った。十文字家代表の克人さんや同い年で一条家のクリムゾンプリンセスこと将輝にも止められたがそれを振り切って一人でアジトに乗り込んだ。(アジトの場所自体は以前から知っていた。黒羽家は優秀なのだ)結果的に言えば自分の使える魔法を全て本気で使い殺しまわり、廃人にしてまわった。その時は真由美さんを救うことしか考えてなかったので誰を殺したかすらも分からなかったので誰がリーダーで誰が実行犯なのかすらも分からなかった。その時は真由美さんには悪いことをしたなにせ彼女の目の前で人を殺しまくったのだ。その時に真由美さんの記憶を封印しようとしたが拒否されたので止めた。これが一昨年に起こった事件である。事件後に海外のブランシュから四葉に抗議が来たそうだが全て跳ね除けたらしい。

 

 ……嫌なことを思い出した。少し早いけど今日はもう休もう。そう思い立ち上がると荷物が置いてあるのに気づいた。話の内容が内容だっただけに気づかなかった。中を見てみると頼んでいたものだった。忘れないように制服のポケットに入れておく。少し明日が楽しみになった。




最後の一昨年の事件は今話でかくつもりありませんでした。なんか書いちゃった。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

入学編Ⅴ

今話から少しずつ夜瑠の実力について明かしていきます。

新規お気に入り登録ありがとうございます!励みになります!
もう72件も行くとは思ってませんでした。


入学編Ⅴ

 

 衝撃的な事実を貢殿に聞かされた翌朝、正直あまり寝付けなかった。自分が、というよりも校内の状況をを聞いた時の真由美さんが不安だった。まあ生徒会長だから知っていても不思議では無いが。結局眠りの浅いまま朝を迎えた。

 

 家を出る時間になり身だしなみを整え待ち合わせ場所に向かう。無事合流し朝の挨拶をすると自分の顔色が少し悪いのに真由美さんが気づいて心配してくれる。少し夜更かししただけですよ、と返すと無理はしないでねと返してくれた。優しさに心を浮つかせてしまうなかどうしてもあの時のことを思い出してしまう。もしまた真由美さんが誘拐されてしまったらということを嫌でも考えてしまう。

 

「……真由美さん、明日からは家まで迎えに行っても良いですか?」

 

 ポカンとした顔をこちらに見せてくる。可愛いなちくしょう。

 

「どうしたの?急に」

 

「いえ、単純に彼氏が彼女を迎えに行くというシチュエーションに憧れがありまして。それに少しでも長い時間を過ごしたいと思いまして。」

 

 まあ許嫁だから厳密には彼氏彼女では無いんですけど、と少しおどけながら付け加える。真由美さんはふーんと言いながらこちらを向きで、本音は?といつもの様に返してくる。また、やり返せると思ってるのだろう。だが流石に今回ばかりは本当のところを言う訳にはいかない。

 本音ですよ。と返しながら昨日の帰りと同じように恋人繋ぎになるように握る。

 ……すこし不自然だっただろうか。と思い真由美さんの様子を見るとまだ少し怪しんでいたがこれ以上は追求して来ないようで前を向いている。良かった、と自分をも前を向き再び再び一つ、いや二つ決心し学校へ向かう。

 何気ない会話をしながら通学路を行く。歩いていると突然携帯端末が震える。真由美さんに断りを入れるとメールが来ていた。誰からかと見てみると学校からだ、と呟くと真由美さんがニヤニヤしながら何やらかしたの〜と言ってきたのでジト目を返しておく。真由美さんにも見えるようにメールを開くと

 

件名:風紀委員教職員推薦について

 

 なるほど推薦って事は自分が選ばれたわけか。チラリと真由美さんの方を伺うと嬉しそうな、悲しいような複雑な表情をしていた。訳を聞くと毎年新入生首席は生徒会メンバーに勧誘するのが慣習だそうだ。

 

「…それでどうするの?」

 

「そうですね正直風紀委員会の活動を聞いてみない事にはなんとも言えませんね」

 

「それもそうね、それじゃあお姉さんが教えてあげしょう」

 

 胸を張り少しドヤ顔をしながら言った。どうやらご教授してくれるらしい。

 

 「風紀委員は学校の風紀を守る委員会の事よ。」

 

 ……え?それだけ?と真由美さんを見ると「どうしたの?」みたいな顔でこちらの顔を見返してくる。どうやら真由美さんは少しポンな部分もあるらしい。と新たな一面を知れたから良いかと無理やり納得し、先生に聞けば良いやと思い。今は真由美さんとの会話を楽しむことにしよう。

 学校に到着し、昇降口まで向かうがまだ3日目だからか自分と真由美さんを見てザワつく声は多い。自分は特になんとも思わないが真由美さんは恥ずかしいのだろう、少し顔が赤い。繋いでいる手を振りほどきたそうにしているけどダメです。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 真由美さんを解放し(む〜っとした目で見られたが可愛かったのでノーダメージ)教室に行くと既にほのかと雫、深雪さんが既に登校していた。おはよう、と挨拶を学校からの連絡事項などを確認していると

 

「夜瑠さん!真由美さんと手を繋ぎながら学校に来たってて本当ですか!?」

 

 と興奮気味にほのかに聞かれる。そちらに顔を向けるとほのかと雫は少し前のめりに深雪さんは少し困ったように笑みを浮かべていた。他にも既に登校していたクラスメイトも聞き耳を立てているようだ。

 

「本当ですよ。」

 

 と簡潔に述べる。今嘘をつく意味もないしね、ほのかは「きゃ〜」と黄色い声を上げ、雫も声は上げないが似たような反応をしている。意外なのは深雪さんはこういうのには興味が無いかと思っていた、しかし実際は隠しているつもりだろうが興味深そうである。なんだかんだ深雪さんも年頃の女の子だなぁと思う。それに深雪は実の兄であるから普段は隠しているが達也という想い人もいる。それに一応深雪は時期当主候補でもあり達也はそのボディガードという立場の違いもある。

 

「それでそれで許嫁がいるってどんな感じですか!?」

 

 再びほのかに問われる

 

「そうですね、毎日が幸せですよ。恥ずかしながら自分は朝が弱かったのですが真由美さんと登校する事になって朝が楽しみになりましたね。」

 

 その後も色々と聞かれるうちにあっという間に始業の時間になった。

 

 昼休みに入ると自分は予定通り生徒会室に向かう。その事をほのかと雫に言うと再び興奮していたが深雪さんと達也も来ることを伝えると残念そうにし興奮は収まった。

 深雪さんに達也を迎えに行って生徒会室に行こうと提案し教室を出ると既に達也がA組の教室に来ていた。自分も生徒会室に呼び出された旨を告げると達也は頷きじゃあ行こうか、と歩き始める。ちなみに自分と司波兄妹の関係は自分の方がもちろん上なのだが少なくとも学内では砕いた口調で話すように言ってある。理由は単純に同級生なのに自分にだけ敬語だっまらおかしいからだ。え、自分?自分は全員に敬語だからセーフ。などとくだらないことを考えていると生徒会室に到着した。ドアをノックし開けるとそこには真由美さんをはじめ服部先輩以外の生徒会メンバーに加え渡辺風紀委員長もいた。

 

「1年A組の四葉夜瑠です、失礼します。」

 

 最初に挨拶した自分に続き達也と深雪も挨拶し入室する。

 

 席は上手側のいわゆるお誕生日席に真由美さんが座りその左手側に順に市原先輩、渡辺風紀委員長、中条先輩の席順で。その向かい側に自分、達也、深雪さんの順で座る。

 

 最初に口を開いたのは真由美さん

 

「よく来てくれたわね三人とも本題に入る前に好きなプレートを選んで」

 

 と、お昼を注文するように言われる。どうやら生徒会室には専用のマシンがあるらしく生徒会室で直接お昼を出してくれるらしい。とはいえ種類は少なく、精進、肉料理と魚料理しかない。達也と深雪さんは精進を選び自分は魚料理を選択した。注文し、プレートが出てくると食べながら話しましょと真由美さんに言われたのでそのまま食べ始める。

 

「それで本題なんだけど夜瑠君生徒会メンバーに入ってくれない?」

 

 予想通りの話であった。実はもう既に自分の中で答えは出ていた。(授業中に考えてた)

 

「せっかくですが、お断りします。」

 

 期待したような表情の真由美さんであったが一気にガーンというような表情に変わる。罪悪感すげぇなこれ。でも可愛い。

 

「ど、ど、どどうして?」

 

 思ったよりも動揺していた。

 

「真由美さんは知っていると思いますけど、自分は風紀委員に教員推薦枠ですし、せっかくならそちらに入ろうかなと思いまして。それに恥ずかしながら自分はデスクワークよりも現場の方が得意ですから」

 

 と返すと一応は納得したようだが少しムスッとした、表情をしている。実は今の理由は本当ではあるのだが建前的な意味合いが強い。本当の本音は流石に理由が理由なので恥ずかしく帰り際に二人になった時に言おうと思う。

 

「ほら、真由美ムスッとするな。それなら今年の新入生の分は確か…」

 

「次席の人になりますね。今年の次席は確か司波さんでしたね。」

 

「ほう、ならばちょうどいいどうだ?司波さん?生徒会に入る気は無いかね?」

 

 となぜか風紀委員長の渡辺先輩が勧誘している。

 

「自分からも頼むよ深雪さん」

 

 深雪は困惑していたが意を決して口を開く

 

「皆さんは兄の成績をご存知でしょうか?」

 

 …おや?流れ変わったな。

 曰く兄は自分よりも筆記の試験が上。曰く実務なら兄の方が活躍出来る。と異議を申し立てていたが市原先輩に

 

「それは無理です」

 

 としげなくあしらわれていた理由簡単規則だから。これは差別でもなんでもなく不文律らしい。ここまで言われ深雪さんは観念したように生徒会入りを、了承した。深雪さんはそんなことは思わないだろうが、少し借りが出来たな。もし将来的に達也と一緒になりたいなら…と考えたところで復活した真由美さんが

 

「ようこそ、司波深雪さん生徒会へ」

 

 と歓迎した。話はこれで終わりかと思ったがまだ終わってないらしく今度は達也が風紀委員に生徒会推薦枠で入らないか、と勧誘されていた。これには流石の達也も驚き渡辺先輩と押し問答を始める。自分は実技が苦手だから二科生だと。これに渡辺先輩は関係ない、私は君の起動式を読み取る頭脳と目を買っているのだ。とこの後も少し押し問答が続いたがチャイムがなってしまい無理やり打ち切りとなってしまった。

 続きは放課後に、と言われ退室する。出る前に自分は職員室に行き推薦を受ける旨を伝えてきますとだけ言い教室に戻った。あ、真由美さんに渡そうと思ってたの渡しそびれた。まあ放課後で良いか。

 

――――――――――――――――――――――

 

 その後各々教室に戻りつつがなく授業は進み放課となる。そして自分は予定通り職員室に行き、担当の先生と風紀委員の教職員推薦について話し合う。風紀委員についての説明を受けたあと風紀委員に入る旨を伝え職員室を後にする。その足で生徒会室へと向かう。扉をノックしようとすると声が聞こえる。どうやら深雪さんの声らしい。しかも何か言い争っているようだ。話が終わるまで待つか一瞬悩んだがこのままヒートアップするのはどうかと思ったので一瞬クールダウンさせる目的でノックした。

 

「失礼します。1年A組の四葉夜瑠です。」

 

 そのまま返事も聞かずに入る。

 

「外まで声が漏れてましたよ。一体なんの話をされてたんですか?」

 

 この場にはお昼のメンバーに加えて服部副会長も居た。

 

「達也君を生徒会推薦枠として風紀委員に推薦してもらったのだがそれを服部が反対してな」

 

 と、渡辺風紀委員長が肩を竦めながら説明してくれた。なるほど、様子からして深雪さんと服部副会長がそれについて言い合っていたのか。なるほど、と自分が納得していると再び二人は言い争う。服部副会長の主張としては達也は実技が苦手なのだから二科生なのだろう、深雪さんの主張としては達也の実力も知らずに門前払いはおかしいだろうとのこと。

 自分と深雪さんは達也の本来の実力を知っているからこう言えるが達也の実力は秘匿すべきものであるためあまり強くも言えない。どうしたものか、と自分も考えていると達也本人がこちらを見ている。…なるほどね、了解。達也の言いたいことを理解し仕方ない、と思うことにし自分は口を開く

 

「それならば模擬戦をやってみればいかがでしょうか?」

 

 他のメンバーが深雪さん含めて驚いている。特に深雪さんは四葉本家の者である自分が深雪を守ること以外で達也が戦うことを許したからだろう。正直なとこは自分の考えとしては「分解」と「再生」さえ知られなければ他の魔法、例えば「術式解体」はバレても良いと思っている。確かに使用者の少ない魔法であるがただそれだけである。どうでしょう?と服部副会長を伺うと達也を睨みつけ良いだろう、と了承した。そして生徒会側を見て目で催促すると七草生徒会長と渡辺風紀委員長により模擬戦が承認された。

 達也はCADをまだ学校に預けているらしく取りに行くらしく先に実技棟に行っててください。と言い残し深雪さんと共に退室した。自分達も行きましょうか、と切り出すと真由美さんに待ったをかけられる。そらそうか、と思い皆の方に振り返る。

 

「なんで達也さんとはんぞーくんの模擬戦を提案したの?」

 

 珍しくと言ったら失礼だがかなり真面目な顔をして問うてくる。自分はどう誤魔化そうか、と考えたがやはり本当のことを言うことにした。

 

「達也にアイコンタクトされたんですよ、俺から言うようにって。…そんな顔しないでください。自分は完全に人の心を読めるわけではありません。」

 

「例えば服部副会長と渡辺風紀委員長はなぜそんなことができるのかと思っているでしょう?」

 

 と言うと驚いた顔をしている。

 

「皆さん経験があるでしょう?なんとなく相手が文句を言いたそうにしてるのが分かったり、今話し相手は居心地が悪そうだったりとかそういう事を感じる精度が人より高いだけですよ。」

 

 と言うと皆納得したようなしてないような反応を示した。

 

「一応なぜそんなことが出来るのか、という質問に対しては自分が四葉だからとだけ答えておきます。」

 

 そういうと皆気まずそうな顔をしている。四葉が人体実験をしていたことはある程度の魔法士は知っている。それを思い出してしまったのだろう。これに関してはこちらが気にするなと言っても気にしてしまうだろう。ちなみにこの程度は自分の力の末端も末端だ。その気になれば本当に心を読むことが出来る。まあその場合は魔法を使う必要があるが。

 こちらからは特に何も励ましたりはせずそろそろ行かないと遅れますよ、と言い自分は退室し実技棟に向かう。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

入学編VI

お待たせしました。ここ最近忙しかったので投稿できていませんでした。

お気に入り140件ありがとうございます!


入学編VI

 

 実技棟に到着すると既に達也と深雪さんは到着していたようで達也はCAD、シルバーホーンの準備をしていた。…相変わらずシルバーホーンはカッコイイな。記録によれば2000年代以前から男子はこういった機械や銃火器に心惹かれるらしい。などと100年前の同士達に思いを馳せながら達也たちのほうに歩み寄る。二人は扉を開けた時点でこちらに気づいてたようで歩み寄る自分を見ている。

 

「早いな二人とも」

 

「先輩方は?」

 

「書類を書いてから来るらしい。それはそうと達也」

 

 達也の方に一歩近寄り達也を見上げると心当たりがあるのか少し気まずそうな顔をしている。自分はそれを無視する。そして達也の背中まで歩くと思いっきり背中を引っぱたく。

 

「これで許してやるよ」

 

「助かる」

 

 というちょっとしたやり取りをしたら先輩方が到着した。

 

「すまない、待たせたな」

 

「いえ、自分も今来たところです」

 

 そうか、と渡辺先輩が返すと服部先輩に準備をするように促す。どうやら渡辺先輩が今回の審判をするようだ。

 達也と服部先輩の準備が整うのを確認すると

 

「はじめっ!」

 

 の渡辺風紀委員長の掛け声で模擬戦が始まる。結論から言うと達也の圧勝だった。一瞬で服部先輩を気絶させ試合終了となり深雪さんは誇らしそうに、自分は相変わらず速いなーと思う。他の人は皆驚いて固まっている。固まっている渡辺先輩に自分と達也がチラリと目をやるとハッと気も取り戻す

 

「勝者、司波達也!」

 

 それに合わせ達也は礼をする。達也はそのままCADを片付けようとジュラルミンケースに向かうが渡辺先輩に呼び止めれる。もちろん試合内容についてだ。 その内容というのが試合開始の合図と共に達也が服部先輩の後ろに回りこんだと思ったら服部先輩が倒れた、というものだ。渡辺先輩は達也が予め事故加速術式を展開していたかを聞いた。これに対し達也は

 

「いえ、正真正銘、身体的な技術ですよ。」

 

 とだけ言い残りは深雪さんが継ぐ

 

「兄は忍術使い九重八雲先生の教えを受けてるんですよ」

 

 と、嬉しそうに誇らしそうに説明する。それを聞き真由美さんを以外の渡辺先輩、市原先輩、中条先輩は驚いていた。真由美さんは自分が過去に自分も九重先生に教えを受けたのを知っているため、こちらを跳ねるように顔を向けた。自分はそれに対し顔を振って誤魔化す。

 

「では服部を倒したのも忍術か?サイオンのを放出したようにしか見えなかったが?」

 

「違います。服部先輩は酔ったたんです。」

 

補足するように市原先輩が

 

「波の合成ですね。複数のサイオン波を服部君の座標で合成させた...」

 

 自分はそこまで聞くと自分はもう何が起こったのかわかっているので服部先輩の様子を一応見ることにする。…ふむ、問題なさそうだな。そういえば元々呼ばれた理由ってなんだろうか、自分はもう既に風紀委員の内定が決定されていたのでここに来なくても良かったと思うのだが……

 と考えていると服部先輩が目を覚ました。

 

「服部くん大丈夫ですか?」

 

「あ、ああ大丈夫だ中条、ありがとう。」

 

 中条先輩が心配して声を掛け服部先輩はよろめきながら立ち上がり大丈夫だと返答する。佇まいを正し服部先輩は深雪さんに向き直る

 

「司波さん身贔屓などと失礼なことを申し上げました、目が曇っていたのは私のようです。申し訳ありませんでした。」

 

 と服部先輩が謝罪を口にする自分が知らない事なので自分が生徒会に行く前に話していた内容だろう。それだけ言うと服部先輩は立ち去ってしまった。

 

「さて、それじゃあ私たちは予定通り風紀委員室に向かおうか」

 

 なるほど元々の予定はこれだったのか

 

「「分かりました」」

 

 そう言った後にポケットの中に入っていた物の存在を思い出す。

 

「すいません、その前に少し」

 

 自分以外が疑問に思う中、自分は真由美さんの方に歩み寄る。真由美さんは不思議そうに頭を傾けている。あざとかわいいな。そしてポケットからカード状のものを取り出す。

 

「これは?」

 

「鍵です。自分の家の。」

 

 あ、固まった。なんなら女性陣皆固まっている。

 

「いざという時あった方がいいと思いまして。知っていると思いますけど自分は基本家にいるのでいつでも来てください。」

 

 それではまた後ほど、と言い実技棟を出る。少し遅れてきた渡辺先輩を含める女性陣は皆少し顔を赤らめていた。確かに合鍵を渡すのいうのは2090年代の男女の距離感としては許嫁というのを加味してもいささか大胆である。ま、自分にとってはあまり気にすることでも無い。真由美さんは気にするだろうけど。

 

「どうしました?渡辺先輩行かないんですか?」

 

「あ、ああ今行く」

 

 そういう渡辺先輩も少し顔が赤くなっていた。

 

 ――――――――――――――――――――――――――

 

「さて、ここが風紀委員室だよ、少し散らかっているがまあ、好きなところに掛けてくれ」

 

 部屋はかなり散らかっていた。特にCAD系の機材が多かった。達也がこれを見て思わず

 

「先輩、ここ片付けてもいいですか?」

 

 不思議そうな顔をする渡辺先輩に達也は続けて言う

 

「魔工技師志望の自分としてはこの状況は耐えられないんですよ」

 

 さっそく取り掛かる達也に渡辺先輩は先程の模擬戦が頭をよぎったのだろう。疑問を口にした

 

「あれほどの腕前を持ちながら魔工技師志望?魔法師ライセンスは取らないのか?」

 

 達也は机の上にあるCADを検分しながらその疑問に答える。

 

「自分の腕ではせいぜいC級ライセンスが限度ですよ。」

 

 これには自分も同意する。実戦の腕ならまず達也は負けない。しかし、この国の魔法師ライセンスにおいて求められる技能が達也と合っていないのもまた事実。故に、という訳では無いが達也は魔工技師を目指している。とはいえトーラスシルバーの名前では現時点でも凄まじい名声を得ている。

 自分は黙ってそれを聞きながら手を進めていると渡辺先輩に話を振られる。

 

「四葉もそう思わないか?」

 

「…そうですね、自分も魔法師としてはいい線行くと思いますけど達也の場合は体術あってこその戦闘能力みたいなので純粋な魔法戦闘力だけなら微妙だと思います。」

 

「ほうたったあれだけの立ち合いでそこまで分かるんだな?」

 

 と少し挑発するように渡辺先輩が言ってくる。

 

「自分は人を見る目だけはありますので、今回の達也の場合は模擬戦が決まってかずっと自信に満ち溢れていましたので。どうやって習得したかはまあ、自分の魔法に関わることですので」

 

 渡辺先輩は自信云々の所は聞きに徹するだけだったが自分の魔法云々の所は興味深そうに笑みを浮かべていた。それはそうだまだ自分の魔法は『不和』のことしか知らないのだ。なんならその対となる魔法もまだ見せていない。まあこれは風紀委員の活動を行っていく内に真っ先に使う事になるだろうけど。

 

「そんな事より早く片付けてしまいましょう。」

 

 と達也が言い自分もそれに賛成する。渡辺先輩は渋々といった感じだったがいざ手をつけたら黙々と片付けをしていた。始めるのが遅いタイプなのだろう。

 

 ――――――――――――――――――――――――――

 

 片付けも終盤に入った頃渡辺先輩が口を開いた。

 

「達也君を風紀委員に勧誘した理由は…そういえばほとんど言ってしまったな」

 

「確か二科生との溝を埋めるためと仰っていましたね。」

 

「そうだ。一科と二科の間には感情的な溝がある。一科が二科を、取り締まれるのに対しその逆がないというのは溝を深めるばかりだった。」

 

「それは自分には逆効果だと思います。二科生の上級生は今まで同じ立場のだったはずの下級生の生徒に急に取り締まられることになれば面白くないと感じる生徒が今後出てくるでしょう。」

 

「二科生の同級生は歓迎すると思うが?」

 

「二科生はそうかもしれませんが一科生はそうじゃないと思いますよ。森崎達が突っかかってきましたしまた今後似たような機会があるでしょう。」

 

「森崎達か、そういえば森崎は今年度から枠が増えた教職員推薦枠の2人目だ。」

 

「え」

 

「君も動揺するんだな」

 

「それはそうですよ。」

 

 と、徐々に話が逸れていきだんだん他愛ない雑談が始まると扉が開けられる。扉から2人の男性が入って来る。どうやら風紀委員のようだ。互いに自己紹介し、3年の辰巳先輩と2年の沢木先輩というらしい。先輩方は達也の制服を見て二科生であることに気づき風紀委員に入ることに対して懐疑的であったが達也が服部先輩に模擬戦で勝利した事を聞くと驚嘆し達也の風紀委員入りを歓迎した。ちなみに自分が四葉と聞いた時はそれ以上に驚き歓迎してくれた。

 

「とろこで自分達はいつから活動が始まるのですか?」

 

「いい質問だ。来週から部活動勧誘週間があるのは知っているな?つまるところ来週が初仕事になるな。それ以降はシフト制になる。」

 

 なるほど来週からか、自分たち風紀委員が全員集まるところを見ると相当治安がわるくなるのだろう。さっそく高校生としてイベントがある事に少しテンションがあがり楽しみになってくる。

 風紀委員室の片付けが終わるとこの日は解散となった。それぞれ帰路に着く。携帯端末を見ると真由美さんから連絡が入っていた。どうやら真由美さんも生徒会の仕事が終わったらしい。カフェで待っているとのことだ。

 

「四葉なにか嬉しそうだな?」

 

「顔に出ていましたか?」

 

「それはもう」

 

 と渡辺風紀委員長はニヤニヤしながらこちらを見てくる。

 

「真由美さんがカフェで待っているみたいなので今から迎えに行くだけですよ。」

 

 そう返すと渡辺風紀委員長はゲンナリした様子でこちらを見てくる。これを自分は無視すると

 

「それではお先に失礼します」

 

 とだけ言い風紀委員室を後にし真由美さんを迎えにカフェへと向かう。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 カフェに到着すると真由美さんの他にあと一人長い黒髪の女性も同席していた。おそらく深雪さんだろう。自分は2人に近づきくと声をかける

 

「お待たせしました。」

 

「ううん大丈夫よ。それに深雪さんが話し相手になってくれたし」

 

 「いえ、こちらこそありがとうございました。」

 

 と、真由美さんに微笑むとこちらを向いてくる

 

「ところで、お兄様は…」

 

 と言うとタイミング良く背後から足音がするそちらを向くと達也が立っていた。

 

「お待たせ、深雪」

 

「い、いえ今来たところです」

 

 と数年ぶりに愛する相手に会えたかのような笑みを浮かべる。これを見ると自分と真由美さんの会話は大したものでは無いのではと思ってしまう。真由美さんもそれを感じたのかこちらを見て苦笑いを浮かべる。苦笑いもかわいいなぁって思っていると真由美さんがアッと何事かを思い出すと立ち上がりこちらに詰め寄ってくる。なんだなんだと思っていると例のカードキーを取り出す。

 

「これ!どういうこと!?」

 

「さっき言いませんでしたか?」

 

「言ったけど!言ったけれど!」

 

 と興奮と困惑が織りまぜになった顔をしながらこちらを見上げてくる。うーんかわいい。

 

「なにもあんな場面で渡さなくてもいいんじゃない!?」

 

 あ、そっちね。とはいえその通り過ぎることを言われてしまった。何故かと聞かれればその理由は実にしょうもない男としてのプライドみたいな物である。

 

「いや、まあそれはそうなんですが」

 

「何、言えない理由なの?」

 

 ムスーッとした顔で見てくる。この人表情変わりすぎじゃありませんかね。

 

「いえそんなことはないんですけど。あーまあなんというただの独占欲みたいな物ですよ。」

 

 というと徐々に顔を赤らめてバッと逸らす。

 

「ふ、ふ〜ん」

 

 と声にもならない声を返す。すると「ほあ〜」と少し間抜けな声が聞こえそちらを向くと深雪さんが顔を赤くし両手で口元を抑えている。達也は相変わらず真顔だ。

 

「真由美さん、暗くなってきましたしそろそろ帰りましょう。」

 

「そ、そうね…」

 

 今日は自分と真由美さんだけでなく司波兄弟も居るが構わずいつも通りに真由美さんと手を繋ぐ。それを見て深雪さんは少し羨ましそうにこちらを見ている。達也はそれを察したのか深雪さんと手を繋ぐ。すると深雪さんは満足したらしく満面の笑みである。

 雑談をしながら帰り道を歩き途中で司波兄弟と別れ真由美さんを家まで送り届ける。

 

「それじゃあ、また明日。真由美さん。いつでも来てくださいね。」

 

「もう!からかわないでよ!ま、まあ近いうちに行くわ。」

 

 と、またまた少し顔を赤らめながら返事してくれる。その時を楽しみにしながら自分は家に帰る。今日は色々あったな。

 

 




最後の方の帰りくだりは深夜4時くらいに書きました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

入学編Ⅶ

入学編Ⅶ

 

 晴れ渡る空、心地の良い気温。そんな布団を干したくなってしまうくらい心地ようある日。自分は

 

「1年のくせになんだこいつ!やっちまえ!!!」

 

「「「「「おおおおおおおお!!!!!!!」」」」」

 

 暴れ狂う上級生をひたすらに鎮圧していた。

 

 ――――――――――――――――――――――――

 

場所は風紀委員室

 

「今年もあの馬鹿騒ぎする1週間がやってきた。幸い今年は1年の補充が間に合った。紹介する。」

 

 そう渡辺先輩が言うと自分と達也、そして森崎さんが立ち上がる。渡辺先輩は自分達の紹介をすると風紀委員メンバーの1人が

 

「使えるんですかい?」

 

「無論だ。司波の実力はこの目で見たし森崎の技術もなかなかのものだ。四葉は…そういえばよく知らないな。」

 

 言われてみればそうだ。確かに深雪さんを巡ったいざこざを確かに自分がおさめはしたが渡辺先輩が来たのはおさめた後であった。

 

「問題ありません。学生相手ならば遅れはとりません。」

 

 と自分ははっきりと告げる。これは自分も思っている事だ。もっと言ってしまえばプロのA級ライセンスを持った魔法師にも負ける気はしない。自分はそれだけの力と才能と努力を四葉でしてきたのだ。それをたかだか高校生に負ける道理はない。

 

「ほう…ならば頼りにさせてもらおうか。他に言いたいことがある者は?……よしならば出動!」

 

 渡辺先輩が出動の掛け声で続々と風紀委員は見回りに向かった。自分たち1年は事前に少し残るように言われていたため出動せずに風紀委員室残っている。

 

「さて、まずはこれを渡しておこう。」

 

 そうやって渡されたものは腕章と通信機器だった。

 

「君たちにも早速見回りをしてもらうことになるのだがその前になにか質問はあるか?」

 

 すると達也が

 

「質問があります。CADは風紀委員のものを使用してもよろしいでしょうか」

 

そういう達也に渡辺先輩は不思議そうに答える

 

「それは構わないがあれは旧式だぞ?」

 

「確かに旧式ですがブロでも使えるハイエンドモデルですよ、あれらは。」

 

「なるほどそういう事か。どうせホコリを被っていた代物だ好きに使うといい。」

 

「それではこちらの2機をお借りします。」

 

 そういうと手首を覆うタイプのCADを棚から取りだした。なるほどあのモデルは自分も見た事がある。なんなら自分も前まで使用していたのだ。今は真由美さんから誕生日に貰った物を使用しているがたしかにあのモデルは使い勝手の良いものだった。

 

「本当に面白いやつだな君は。他に質問はあるか?…無いようだな、それでは君たちも出動したまえ。」

 

 分かりました。と各々返事すると達也と森崎さんは風紀委員室を出る。自分も出ようとしてそういえば、と振り向き口を開く。

 

「渡辺先輩はどうされるのですか?」

 

「私は真由美と十文字と共に別室で待機することになる。」

 

 なるほど、と納得し退室しようと扉に向き直ると

 

「ウィード如きが調子に乗るのもいい加減にしろ!」

 

 と森崎さんの声がうっすらと聞こえたどうやらまた達也に突っかかったらしい。達也も大変だなと思いながら扉を開けると今まさに立ち去っている森崎さんの背中が見えた。達也の方をチラリと見大変だな、と言うと肩を竦めていた。

 

――――――――――――――――――――――――

 

 自分と達也は共に各部活がテントを張ってまるで縁日のようになっている通りに到着した。さて、ここを見て回るか運動場を見て回るか、それとも…と軽く考えていると達也が突然走り出す。何事かと視線を前に向けると赤い髪をした女子が今まさに囲まれていた。あれはエリカか、今更自分が走り出してもどうせ達也1人で事足りるだろうと思いそちらには向かわないが一応達也に「不和」と対となる魔法の「調和」を付与する。

 精神干渉系魔法「不和」の効果が対象を無理やり絶不調にするとしたら「調和」は対象を無理やり絶好調にするのだ。地味に思える魔法かもしれないが調和をかけることで魔法の発動が早くなったり、身体的な反応が早くなったりと他にも色々あるが馬鹿にできない魔法である。自分は基本的に相手に「不和」を付与、「調和」を自分に付与し相手に「硬化魔法」で固めたこぶしで殴るというのが自分の基本的な戦い方だ。

 無事エリカの救出に達也が成功するのを見届けると自分は運動場の方に向かう。第一高校の運動場はかなり広くサッカーと野球、ラグビー部がそれぞれ試合をしても余裕な程度には広い。それぞれ勧誘活動をしており実際にボールを使っているスペースもあるので極力邪魔はしないように見回る。スポーツはやるのも見るのも割とすきな部類ではあるので楽しそうだなーとか思いながらも仕事は真面目にこなす。

 

「なんだてめぇやるのかああん!?」

 

「そっちこそやる気ならかかってこいよ!!!」

 

 と言い争う声が聞こえたのでそちらを向くとサッカー部と野球部が言い争っていた。そちらに近づいていきよく見ると2人の女子を挟むようにしている。雫とほのかである。2人はどうしたらいいかと戸惑っている様子であたふたしている。

 

「いいぜやってるよ後悔してもおぜェぞ!」

 

「おうおうかかってこいよ!」

 

 といいお互い手首に巻いているCADを構え魔法を使用するために起動式を展開した。これはまずい。互いが喧嘩をしてケガをするのならば自業自得だが、間には雫達もいるのだ2人が巻き込まれたら目も当てられないと自分は鎮圧するために動き出す。

 駆け出すと同時に真由美さんから貰った汎用型CADトールギスを起動する。すると足元に魔法式が現れ「調和」を自分に付与する。そして仕方なしと言わんばかりに雫と、ほのかごと「不和」を約30人ほどの集団にかける。そのまま集団に割り込むと集団に向かってこう宣言する。

 

「風紀委員です、今すぐ魔法をキャンセルしてCADを地面においてください」

 

「なんだァてめェ」

 

「もう一度言います。今すぐ魔法をキャンセルしてCADを地面においてください」

 

 ……キャンセルの様子なし、制圧するか。その前にまずは

 

「ごめんよ」

 

 とだけ言い雫とほのかをかかえ15mほど離れた場所に一瞬で移動して2人を下ろす2人は何が起こったか分からないようであった。そして魔法が発動する。どうやら全員からヘイトを買ったらしく全員こちらに向かって魔法を発動した。自分は慌てることなく障壁魔法を展開し防ぐ。この障壁魔法は十文字家の「ファランクス」ほどでは無いしろ十分な性能を有している。魔法が止み集団の方に向き直ると再び魔法を発動しようとしていた。ため息をひとつつくと駆け出し、次の瞬間には先頭の男が気絶していた。それを見て周りの人間は怯まずにこちらに向かってくる。

 

 そして冒頭へと戻る。

 

「1年のくせになんだこいつ!やっちまえ!。」

 

 その怒号と共にこちらに向かってくる。面倒だが相手をしなければならないらしい。とはいえ自分はタイマンよりも多人数対自分のという構図の方がやりやすいのだ。理由は簡単加減しなくて良いから。

 まずは正面の先輩が顔面にフックを入れようとしてきたので相手の懐に潜り込みそのまま鳩尾にこっち硬化魔法で固めた拳で殴り一発でKOさせる。次に後ろから駆け出してきた2人は右の相手には手を払い目を潰し左の相手は股間を蹴りあげる。背後に魔法式起動を感知したので振り向かずに魔法弾を撃ち込む。

 3分もしない内に制圧が完了した。一つ伸びをしこの#先輩たちをどうしやって連行するか考えてる。1人2人ならともかく30人ほどいるのだ

 

「こっちです!」

 

 声のした方を見るとほのかと雫が見える。後ろにまだ沢木先輩と他の風紀委員が2人見える。どうやら助けを呼んでくれたらしい。

 

「助けを呼んでれたのか、ありがとうほのか、雫もありがとう。」

 

「遅かったみたいだけど」

 

「そんな事ないよ、3分位で呼びに行ってくれたんだから。」

 

「この人数を短時間で制圧したのは素晴らしいな。どうやら君を侮っていたらしい四葉君。」

 

「恐縮です。沢木先輩。ところでこの人数どうすれば良いですか?」

 

「それはこちらに考えがあるから気にするな。四葉は巡回に戻れ。」

 

「分かりました。」

 

 そういうと自分は野外演習場のある方面に足を向けた。歩を進めると後ろから雫とほのかが着いてくるのが気配でわかる。歩く速度を落とし2人に並ぶと声をかける。

 

「2人も野外演習場の方に用があるのか?」

 

「ううんあんまり興味は無いよ」

 

「ならなぜ?」

 

「夜瑠さんに着いていけば安全かなって」

 

 雫が相変わらず変化の少ない表情で言う。なるほど、ボディガードか。

 

 

「なるほどな、それは良いけどなにか騒動があったら自分の言うことを聞くように」

 

 はーいと2人の間の伸びた返事を聞き巡回をする。今日はこの後は軽いトラブルを収めたくらいで風紀委員初日は無事終わった。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 帰る時に真由美さんが自分がほのかと雫と回っていたことをどこからか聞きつけたらしく少し機嫌を悪くしていた。なので帰り道にあるカフェによりケーキをご馳走する事にした。

 自分と真由美さんは奥の方のカップルシートに案内され、注文を済ませる。機嫌はまだ悪いようだがいつもよりも距離が近い気がする。まるで猫のような人だな。かわいい。ほんわかしていると扉が開けられる。自分たちの席は扉が背中側にあるので誰かは分からないが若い男女の声がする。よくよく聞いてみると深雪さん達の声だ。1人なら声をかけるが今は真由美さんとの時間を楽しみたい。

 

「お待たせ致しました。」

 

 紅茶が2杯とモンブラン、ショートケーキが来た。ショートケーキは真由美さんにモンブランは自分が注文した物だ。まあ半分真由美さんに献上するのだが。ニコニコでケーキを食べていた真由美さんだったが次第に申し訳なさそうな顔に変わっていく。

 

「ごめんなさい夜瑠君...面倒よね私…」

 

 どうやら所謂ヘラったというやつになったらしい。自分からしてみればこういうところも可愛いとは思っている。もちろん枕詞に真由美さんはつくが。

 

「自分は真由美さんしか居ないので分かりませんね。ほのかや雫も友達だとは思ってますがまだ会って1週間ほどしか経ってません。それで比較するのはどっちにも失礼だと思います。」

 

 最初以外は明らかに蛇足でしか無いがついつい口に出してしまった。とはいえ全て本音ではある。ちらりと様子を伺ってみると両手を太もも付近に置き複雑な表情をしている。

 

「自分はそういうところ含めて真由美さんのことを愛おしく思っているので自分の前では変に取り繕わないでください。」

 

 ここで照れ隠しに紅茶をひとつまみ…チラリと真由美さんの方を見るとその横に顔を真っ赤にした美月がいた。その更に横にはニヤニヤしているエリカもいる。お互い固まっていると後ろから珍しいものを見たというような顔をした深雪さんが歩み出た

 

「すいません、私たちはもうお開きなので一応お声がけしようと思ったのですが…お邪魔だったようですね」

 

 失礼しますとだけ言い深雪さん達は去っていく。達也とレオも目だけ合わせて帰って行った。

 

 真由美さんは顔を真っ赤にして俯いてしまっている。これはまだしばらくティータイムだな。

 

 




最後のカフェはフィーリングで書きました。、


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

入学編Ⅷ

お久しぶりです。更新せず申し訳ありません。実家に帰ってダラダラしておりました。それはそうと感想を1件いただけました。恐る恐る感想を読んだのですが好意的なものでとても嬉しかったです。絵師さんとかが感想貰えて嬉しいという気持ちが少しですがわかった気がします。

誤字報告、お気に入り登録ありがとうございます!

それではどうぞ。


入学編Ⅷ

 

 あの後半刻ほど真由美さんが再起動するのに時間がかかりその間コーヒーを飲みまくっていた。真由美さんにそろそろ遅い時間なので帰ることを提案する。

 

「そ、そうね。か、帰りましょうか」

 

 そういい端末を取り出し支払いを済ませようとするが既に自分が支払った後だ。

 

「支払いは済ませてあります。」

 

「そ、そう?ありがとう。ごめんね?」

 

 真由美さんも自分も一介の高校生ではあるがそれなりにお金は持っている。真由美さんがお小遣い制なのかどうかは知らないが自分は母さんから貰った会社の名ばかりの社長でもあるのでそれなりには収入がある。また、四葉の任務を遂行することでもお金を得ている。なので余程高い買い物をしなければ高校生の支出程度は余裕である。

 

「さて、帰りましょう。」

 

 真由美さんをエスコートしながら店を出る。真由美さんを送り届ける。自宅に戻ると机に封筒が置いてあった。開けてみるとどうやら貢殿からだったようだ。内容に目を通すと思わず笑みを零してしまった。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 翌日、放課後になると風紀委員としての活動を始める。昨日と同じようにトラブルを解決しながら巡回する。体育館に入ると剣道部と剣術部が言い合っているのが見えた。

 

「どういうこと!桐原くん、まだ剣道部の時間よ!」

 

「あんな雑魚じゃ実力が出せないだろ?協力してやろうって言ってんだぜ壬生。」

 

 様子を伺っているとどうやら決闘を行うらしい。基本的には自分は魔法さえ使用しなければ介入はしないことにしている。もちろん度が過ぎていれば止めるが。さてどうなるか、と自分の反対側に目立つ赤髪の少女が見える。エリカだ。その横を見てみると達也も見える。

 

 (深雪さんに怒られるぞ〜)

 

 とどうでもいいことを考えていると決闘が始まった。互いがほぼ同時に踏み込み相手の腕に竹刀を打ち込む。どうやら、壬生という女子の勝ちのようだ。壬生先輩の方が深く打ち込めている。あれが真剣なら骨に届いていただろう。自分と同じことを思ったのだろう。壬生先輩が口を開く。

 

「私の方が深いわ。真剣なら致命傷よ。」

 

 そう言い放ち竹刀を振り払う。しかし桐原先輩はニヤリと笑う。

 

「真剣?なんだ壬生真剣が良かったのか」

 

 そういうと桐原先輩は「高周波ブレード」を起動させる。と、同時に自分は桐原先輩に「不和」をかける。自分が「不和」をかけるとこれに合わせるように達也が前に出た。それに合わせ自分は「調和」を達也にかけると桐原先輩をあっという間に制圧した。相変わらず見事な体術だ。ここまでの体術は自分には無い。自分に「調和」を掛けてやっと、というところだろう。

 

「なんだテメェはァ!」

 

 デジャブを感じる。昨日もあったなこれ。そう声を上げた先輩が魔法を発動しようとするが失敗する。達也がキャストジャミングを使用したのだ。中身は未だ研究中のとの事で詳しいことを教えて貰っていないがアンティナイトを使ったものを応用したものとしか知らない。魔法がキャンセルしたくらいで彼らが収まるはずもなく達也を囲みジリジリと歩み寄っている。達也なら心配は無いが流石に手を出さない訳にも行かないので自分も前に出る。当然「不和」と「調和」をかけながら。自分が前に出るのに気づいた先輩が自分に殴りかかってくるが自分は「調和」の効果によって相手の急所をより正確に捉えることができ、攻撃の軌道も当然のように察知出来る。当たり前のように攻撃を躱し鳩尾に拳を叩き込む。

 

「別に一対一じゃなくてもいいんですよ、先輩方?」

 

 つい相手を煽るように言ってしまう。自分の良くないくせだ。とはいえ逆上した相手の方が対処がしやすくなるので悪いことばかりでは無いのだが。

 挑発に乗ってしまった先輩方は達也と自分に殴り掛かる。実は自分と達也は四葉の本邸にある道場で同時期に鍛錬していた事もある。さらに任務を何度か共にしたこともありコンビネーションは、なかなかのものである。正直気持ちいいくらいにボコボコにしてしまったのでもはや演武に見えた人もいるのではないだろうか。

 

「これで終わりか。お疲れ達也。」

 

「お疲れ。1人じゃ危なかった、助太刀ありがとう。」

 

 自分はそれに肩を竦めて返す。達也ひとりでも問題なかっただろうに。てかこのあと連行しなきゃじゃん。面倒だ。

  事後処理はまあまあ面倒だった。自分と達也が報告に行った。十文字会頭、真由美さんこと七草生徒会長そして渡辺風紀委員長の3名に対してである。普通なら緊張のひとつでもしそうであるが自分は精神干渉系魔法を自分にかけることで平常時のメンタルにしている。達也はまあ、うん心が無いから緊張してないと思う。

 結論から言えば今回の件は懲罰委員会には届け出ないらしい。殺傷性ランクBの魔法を使用したにしては温情のある裁定となった。報告は基本的に達也がしてくれたため自分は真面目な顔してる真由美さんかわいいなぁとか思いながらたまに振られる質問に答えているだけであった。

 無事報告が終わるともう既に下校時間が迫っていた。とりあえず帰宅の準備をして真由美さんを待つことにする。

 いつも通りカフェで待つ旨をチャットで送りカフェに向かい。3杯目のコーヒーを飲み終えた時に真由美さんと合流できた。

 いつも通り真由美さんを送り届け自分のCADであるトールギスをメンテナンスし就寝する。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「おはようございます。」

 

 教室に入るなり朝の挨拶をする。既に雫やほのかは投稿していたようで自分が席に着くと話を早速話題を振ってくれる。

 無事に勧誘週間は終わり風紀委員の初仕事は無事終了となる。来週からはシフトが組まれそれに沿って活動することになる。

 

 しかし1点問題があった。それは達也がブランシュの下部組織エガリテと接触した事だ。達也は自分がブランシュを嫌悪していることを知っているため直ぐに連絡が来た。エガリテ及びブランシュの件については自分と黒羽を含む自分の部下と共に対処するつもりだったので達也の手を借りるつもりは無い。なんなら普段は深雪さんのガーディアンでもあるがこの時ばかりは真由美さんも守ってもらうつもりであった。

 

 ……………

 ………

 ……

 …

 

「そういう訳で達也。真由美さんの護衛も頼むよ。」

 

「まあやれるだけやるさ。」

 

 そういうが自分は達也の戦闘技術に対して全幅の信頼を置いていると言っても過言では無い。

 それと一つ言っておくこともある。

 

「それと真由美さんにはブランシュ、及びエガリテの事は言うなよ。過保護かもしれないがあの時のことを思い出させる訳には行かない。」

 

 そう四葉家次期当主としての威厳のようなものを発しながら言うと頷いて答えた。

 

 以上回想終了

 

 雫やほのかとの何気ない朝の会話を楽しんでいると深雪さんも教室に入ると挨拶も程々にこちらに向かって歩いてくる。少し悩んだような顔をしているので恐らく達也がブランシュのことを深雪さんに話したのだろう。

 これで全然違ったら恥ずかしいてけど。あ、自分をチラ見している。これはブランシュ関連で確定だろう。恐らく真由美さんのガードを頼んだことで兄との時間が減ることを少し不満に思っているだろう。隠しているつもりでも自分にはわかる。これが人間観察の結果だ。というか四葉の次期当主の自分に対してこのような態度を取るということは深雪さんとも友好な関係が築けているということだろう。

 とはいえ不機嫌なのもあれなので深雪さんには遊園地のペアチケットでも渡そう。全然自分と真由美さんが行くための先発隊とかそういう訳では全然ないのだ。

 

 『キーンコーンカーンコーン』

 

 チャイムが鳴り皆が席に着く。これから朝のホームルームが始まりのその後授業、昼休み再び授業そして放課と当たり前の日常を今日も過ごす。

 今日は昼休みに生徒会室に昼食を誘われているのでそれに行くくらいで放課後の予定もない。書斎に積んでいる本を読むのもいいかもしれない。

 昼休みになりいつも通り教室を出る。雫とほのかも着いてこようとするがその前に自分が声をかける

 

「すまん、今日は生徒会室で昼食をどうかと誘われていてな。」

 

「あ、そうなんですか?それは残念です…いってらっしゃい。」

 

「実は私もそうなんです、だから2人で楽しんで」

 

 なんと深雪さんも同じくお呼ばれしていたらしく申し訳なさそうにほのか達に言った。ほのかと雫は残念そうにしていたが気を取り直して食堂へと向かった。

 

 生徒会室に向かう途中で深雪さんを感じる迎えに来るつもりであったのだろう達也とも合流した。

 

 生徒会室に入ると既に自分達以外のメンバーは揃っていた。お待たせしましたと言いながら入りそれぞれプレートを注文する。全員分のプレートが用意され早速食べ始める。席順は入って左手側に自分たち1年が逆側には服部先輩を除くメンバーが並んでいる。左手側は奥から自分、達也深雪さん。向かい側に真由美さん、渡辺風紀委員長、市原先輩の隣に中条先輩という具合だ。

 

 皆のプレートが半分ほど減った頃渡辺先輩が達也に対し話題を振る。

 

「そういえば、昨日壬生を言葉攻めにしたというのは本当か?」

 

 言葉攻め?そんな深雪さんに怒られそうなことしてたのか。

 

「先輩も年頃の淑女なんですからもう少し言葉遣いに気をつけた方がいいかと思います。」

 

「ほう、私を淑女扱いしてくれるんだな?」

 

「先輩を淑女扱いしないとは先輩のボーイフレンドは酷い人ですね」

 

「そんなことはない!!!しゅうは!!!しゅうは...」

 

 うーん言葉攻めしてますねこれは。お茶をすすりながらそう思っていると何やら寒気がしてきた。深雪さんの方を見るにどうやらサイオンが漏れ出ているようだ。

 あっという間にプレートが凍ってしまった。電子レンジで温めるか。生徒会室なんでもあるな〜。

 

「お兄様言葉攻めとは一体どういうことでしょうか...?」

 

「落ち着け深雪!ちゃんと説明するから!」

 

 そう言うとハッとして深雪さんは落ち着く。

 

「申し訳ありません…」

 

 そう謝罪する深雪さんに達也は笑みを返し先輩方に向き直る。

 

「実は…」

 

 達也曰く風紀委員の仕事は点数稼ぎと認識されているらしい。確かに傍から見たらそう見えるかもしれない。

 

「点数稼ぎね、それは壬生の勘違いだ。生徒会は全くの名誉職で内申点には加算されない。」

 

 渡辺先輩に続き真由美さんが続ける。

 

「だけど風紀委員会が校内で高い権力を持っているのもまた事実。権力を傘に立てて居るというふうに思っている人も一定数いるの。正確には何者か噂を流しているみたいなんだけど…」

 

 間違いなくブランシュ、エガリテだろう。自分は確信に近い直感を感じた。達也にアイコンタクトを送ると同じ結論に至っていたらしく

 

「そうですか、それはいち早く突き止めることが出来れば良いのですが」

 

 お茶を持つ手がつい力んでしまう。既にアジトに突入する最低限の準備は出来ている。だが油断は禁物でそのせいで失敗するのは唾棄すべきことである。今週末には完全に準備が整うそれまでの我慢だ。




次回アジトに凸ります。初めての本格的な戦闘描写になりそうで戦々恐々としております。それではまた次回お会いしましょう。

Qどこまで連載するつもりなの?

A最低限パラサイト編まで行きたいなぁ...


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

入学編Ⅸ

皆さんお久しぶりです。
色々とゴタゴタがあったので更新できずにいました。
それではどうぞ


入学編Ⅸ

 

 昨日生徒会室でお昼をご一緒した時に出た話題で風紀委員は点数稼ぎのために活動しているという噂の存在を知った。それ自体は自分にとってはどうでもいいが噂の出どころがブランシュの下部組織エガリテであり、元気に活動されているとなると話は変わってくる。

 

 自分は近いうちにブランシュ日本支部を叩き潰す。

 

 そのために自分が戦闘時に使用しているCADを調整しているところだ。形状は拳銃タイプで特化型となっている。特化型CADは9個までの同系統魔法をインストールすることが出来る。そして魔法の種類を犠牲にしたことで汎用型で発動するよりも発動速度が速くなっている。カートリッジを入れ替えることでも魔法の種類を変更出来る。

 

 自分は基本的に収束系魔法「エア・ブリット」に殺傷性を上乗せした「ペネトレート・エア・ブリット」、更に殺傷性を落とす代わりに連射速度を獲得した「ブレード・ストーム」これは単発ではなく5点バーストであり制圧だけならこれだけでも十分なほど。

 

 精神干渉系魔法は自分の最大の切り札である魔法以外は汎用型CADの方に入っている。「スリープダーツ」「フィアー」などはこちらに入っている。それぞれの効果は名前通りである。

 

 ――――――――――――――――――――――――――

 

 今日も今日とて真由美さんと通学して教室でいつものように雑談し、授業に入る。今日の1限目は実技である。この授業では四角い滑車のついたロボット掃除機のようなものを魔法で往復させるという内容だ。いくら一高の一科生といえど台数に限りがあるため並ぶ必要がある。

 

「次ど、どうぞ」

 

 まだ名前の覚えていない女子生徒にありがとうと言いながら自分の番になる。

 

 最初に台車を前進、加速させ壁にぶつからないように減速、そして停止させる。同じようにこちら側に加速、減速停止させ終了となる。タイムは今のところクラス2位のようだ。

1位は深雪さん、うーん流石である。とはいえまだまだ順番は回ってくるので1位になるチャンスはある。

 

 ちなみに授業中は「調和」は使用していない。なぜならそもそも地力がなければいくら絶好調になったとしてもたかが知れている。そのため平時は「調和」を使用せずに地力の底上げを行っている。

 

 自分の番が終わり自分の後ろに並んでいるほのかに譲る。実は四葉家本邸にも似たような訓練場があり、本邸で訓練していた時よりも少しずつであるが着実にレベルアップしているのが分かり確かな満足感を得ていると一往復終えたほのかが後ろに回ってきた。

 

「夜瑠さん嬉しそうですね!何かいい事あったんですか?」

 

「ん?あぁ実は実家にも同じような訓練装置があってその時よりもレベルアップしてたから嬉しくって。」

 

 なるほど〜と納得し更に続けて

 

「それにしても夜瑠さんも魔法お上手ですね!サイオン漏れがほとんどありませんでした!きちんと魔法を使えているからこそですよね!」

 

「そこまで褒められると少し照れるな。ところで も ってことは他にも居たの?」

 

「はい、1度だけですが受験の時に達也さんを見ました!」

 

 よく覚えているなと思っていると雫が話に加わってきた。

 

「うん、入学前にもほのかが言ってた。達也さんに会えた時はすごい喜んでた。」

 

 言わないでよ〜とほのかと雫がじゃれていると再び自分の番になった。

 

 実技を5回ほど繰り返すとチャイムがなり、授業が終わり教室に戻る。後の授業は全て座学である。内容は魔法工学や魔法基礎など基礎的なものばかり。この当たりの内容も本邸で教育されたから遅れをとることはないだろう。

 

 そして何事もなくこの日の授業が終わりいつも通り真由美さんを待つためにカフェにでも行こうとしたら急に教室のスピーカーがハウリングを起こした。何事かと思い思わずスピーカーを見やると音声が流れてくる。

 

 『私たちは学内の差別撤廃を目指す有志同盟です。』

 

 なるほどエガリテの連中だろう。とうとうこのような手段に出るまでになってしまったか。とれあえずこれは放送室に行くべきだろう。と、その前に

 

「ほのか、雫もし何かあったらすぐに連絡してくれ。あと、クラスメイトが騒ぎすぎないように注意もよろしく。それじゃ行ってくる。」

 

 2人が頷いたのを確認すると急いで放送室に向かう。

 

「お待たせしました」

 

 たどり着くと既に渡辺風紀委員長と市原先輩さらに十文字会頭も居た。十文字さんとは同世代の次期当主として一条家の将輝共々世話になっていたりもする。入学してからは桐原先輩の件で1度会ってはいるがそういえばきちんと挨拶出来ていないことを思い出す。とはいえそのようなことで怒る人物では無い事は確かだ。しかしこれは礼儀なのだ。

 

「お久しぶりです、十文字さん。挨拶が遅くなり申し訳ありません。」

 

「構わない。その話はまた後に。」

 

「ありがとうございます。状況はどうなっていますか?」

 

「お待たせして申し訳ありません。」

 

 そういうと同時に達也が深雪さんと共に到着した。

 

 チラリと市原先輩を見やると状況を説明してくれた。

 もう既に放送室の電源は切ってあるため追加の放送はできない。鍵を締められて盾籠っており、このためにマスターキーを盗み出している。なるほど立派な犯罪行為であるのは自明だ。

 

「立派な犯罪行為じゃないですかなぜ突入しないんです?」

 

 達也も自分と同じことを考えていたようだ。この疑問に対して市原先輩が答えてくれた。

 

「それはこれ以上彼らを刺激して暴発させないようにするためです。」

 

「確かにその通りだが、多少強引にでも解決するべきではないか?」

 

 こう返したのは渡辺先輩だ。自分もどちらかと言えば渡辺先輩派だ。なぜなら多少暴れたところで自分の精神干渉系魔法でも無傷での制圧な長けている「スリープダーツ」を当てれば良いのだから。とりあえず十文字さんの考えを聞いておこう。

 

「十文字会頭はどうお考えですか?」

 

「俺は交渉に応じても良いと考えている。元より言いがかりに近いのだ。後顧の憂いを経つためにもしっかりと反論するべきだ。」

 

「では、この場は待機と言うことですか?」

 

 達也がそう聞き返す

 

「それについては決断しかねている、犯罪行為を放置すべきでは無いが学校施設を破壊するほどの緊急性があるとは思えない。」

 

 なるほど一理ある。だがその場合結局待ちになってしまう。自分はさっさと真由美さんと下校デートをしたいのだ。

 どうするか自分も考えていると達也がなにやら端末を取りだし通話を始めた。

 

「もしもし、壬生先輩ですか?今どちらに?」

 

「放送室ですか、それはお気の毒に。いえ、馬鹿にしているわけでは……」

 

 なるほど壬生先輩に電話していたようだ。にしてもプレイベートナンバーを知っているとは達也やるな。

 どうやら話はついたようで出てくるらしい。この時壬生先輩以外の身柄を確保するために構えろと言われた時は確かに壬生先輩以外の身柄保証しなかったがそれにしても少し引いた。

 

 ――――――――――――――――――――――――――

 

「今日も疲れちゃったわ〜」

 

 自分の手を握りながら真由美さんは言う。いつも疲れたなどと口にしないから今日は本当に疲れたんだろう。マッサージの1つでもしてあげたいところだがやり方なんて知らないシンプルに甘いものでも食べよう。

 

 あの後放送室から出てきた壬生先輩以外を拘束した時はそれはもう怒ってたが十文字さんが宥めているところに真由美さんが登場した。どうやら今回の件を学校側は生徒会に一任するようで明日の放課後に討論会をすることになったようだ。

 

 明日とはまた急すぎる話だが相手に時間を作らせないための戦略だろうことは理解できる。

 

「ところで明日の討論会、生徒会側はどなたが登壇するのですか?」

 

 自分がそう聞くと人差し指で真由美さんは自身を指さした。

 

「おひとりでですか?」

 

「えぇ、そうよ。複数人で出て矛盾点を突かれたら嫌だし。それに、今回の討論会別に負けてもいいと思ってるの。」

 

 自分は無言で続きを促す。

 

「もし私を打ち負かせるくらいしっかりとした考えがあるのならそれを実行できるように頑張れば良いからね」

 

 真由美さんはそういうがただでさえ激務なのだ。少し心配になってしまう。まあ自分は今週末に某所を襲撃するんだけど。つい強く手を握ってしまったからか真由美さんがこちらを少し不思議そうに見上げてくる。いやかわいいな。

 

「自分に出来ることならなんでも言ってください。できることなら何でもしますよ。」

 

「あら?なんでも?」

 

 そういう真由美さんの顔はいたずらっ子というのが相応しい感じの顔をしている。

 

「はい、なんでもいいですよ。例えば明日から一緒に生活するとかでも」

 

「そ、それはまだ少し早いかなーなんて……」

 

 少し願望が出てしまった。

 

「では…今日のところはケーキを奢るということで。」

 

 ~場所は移り~

 

「は〜美味しい。」

 

 近くのカフェに入り注文を済ませる。今回はお互い紅茶を注文した。

 

「ところで夜瑠くん」

 

「なんですか?」

 

「わたしに何か隠し事があるわよね?」

 

 女性の勘は鋭いというやつだろうか。まあ実際にブランシュの事を隠している。だがこればかりは言うつもりはない。ならばここは正直に言おう。

 

「はい、隠していることはあります。」

 

「あら、あっさりと認めるのね?」

 

「えぇ、それはもう色んなことを隠してますよ自分は。」

 

 隠していることを認める。しかし中身は言わない。譲歩できるのはここまでだ。

 

「教えてくれるつもりは無いのね?」

 

「はい。」

 

「どうしても?」

 

「どうしてもです。」

 

 むうーとか頬を膨らませてもダメです。かわいいけどダメです。しかし言えないのは事実だ。だれでも今週末ちょっと敵対組織のアジト襲撃してきますなんて普通言えるはずがない。

 

「じゃー真由美さんは自分に隠してること何も無いんですか?」

 

 自分がそういうと真由美さんは「うっ」という表情をした。相変わらず分かりやすい人だ。

 

「そういうことです。」

 

「じゃ、じゃあ私が夜瑠くんに隠してること言ったら教えてくれる……?」

 

 そう真由美さん頬をほんのり赤らめながらこちらに言う。

 そんな照れながら何を言うつもりなのか。

 ……流れが変わったな。

 

「いやいやそんな無理して言う必要無いですよ。」

 

「で、でも秘密を共有したらより仲良くなれるって記事に……」

 

 聞いた事がある。今若い女性を中心に人気が出ている新興のメディアがあると。(2020年代にアメリカやヨーロッパを中心に同性愛を初めとした多様性を求める運動が一部で活発になったことがあるそうだ。こういった運動が行き過ぎた結果、男性向け女性向けなど特定の人種をターゲットとした娯楽や雑誌が排斥されていった。しかし2070年代にこれまたアメリカやヨーロッパが真逆ことを言い始め現在に至っている。つまり、再び女性向けや男性向けの娯楽が活発になり始めたのだ)。

 

 というか真由美さんが言ってるのは友人の段階から恋人へと発展するための手段だ。許嫁以上の関係はもう夫婦なんですよ。

 ……そう考えたら別にいい気がしてきた。

 

 いや良くない。冷静になれ。しかしどうやってごまかそうか考えていると自分の端末が震えた。見てみると貢殿からメールだった。件名を見るにブランシュの件のようだ。

 

 「誰からなの?」

 

 「四葉の者ですよ。頼んでいたことの準備が出来たみたいなのです。なのですいませんが……」

 

 「うん分かったわ。今日はお開きにしましょうか」

 

 真由美さんには悪いがなんとかごまかせたか?

 

 「それと、さっきの隠し事は話せるようになったら話してくれる?」

 

 うわあこれ良心の呵責がすごい。

 

 「はい必ず。」

 

 ちなみにメールの内容は明日第一高校で暴動が起こる可能性があるというものだった。

 

 え?そんなことある?

 

 

 

 




調和と不和を作ったの正直後悔してる



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

入学編X

お久しぶりです。


入学編X

 

    ~早朝~

 

 朝起床すると昨日貢殿から送られてきていたメールについて頭を悩ませる。そもそも今回の討論会自体も突然決まったにも関わらず決まった後の2時間後にはもう暴動の情報が出るなんていくらなんでも早すぎる。

 いや、そもそもこのシチュエーションを作ることが目的と考えれば全て奴らの計画通りなのではないだろうか。……さすがに飛躍しすぎか?まあ相手は所詮テロリスト、何をするかわからないのがテロリストというものだ。

 とりあえず自分は真由美さんを第一に考えよう。他の生徒はまあ余裕があれば助けよう。さて、もう家を出ないと真由美さんを待たせることになる。もし本当に事が起これば……

 

 今日潰してしまおう。

 

 いつも通り真由美さんと登校。教室に入ると深雪さんとほのか、雫は既に登校していたようだ。そういえば司波兄弟は今日のことを知っているのだろうか?

 

 「おはよう3人とも」

 

 「おはよう」

 

 「おはようございます!」

 

 「おはようございます」

 

 挨拶がてら顔色を窺ってみるといつもよりも少しだけ不安そうな顔をして……いる気がする。うーんわからん達也ならわかりそうだが、というか達也に後から聞けばいいか。知らなかったら適当に指示も出しておこう。というか達也なら指示もいらない気はするが。

 

 とりあえずいつも通り授業を受けるとしよう。今日は実技が多めとなっている。内容としては平たく言えば魔法の反復練習である。それで何を練習するのかといえばある程度自由となっている。ある程度というのは毎週の課題があるのだがそれを授業時間内に終わらせる必要がある。自分は既に今週の課題は終わらせてしまっているため課題で少し気になっていた魔法の発生速度の練習をする。

 

「夜瑠くんってすごく努力家ですよね」

 

 一段落したところでほのかが褒めてくれたようだ。自分は簡潔に「ありがとう」と返すと続いて質問が来た

 

「どうしてそんなに努力ができるんですか?」

 

 これまた難しい質問だ。自分にとって魔法における強さとは強すぎるくらいには人格と結びついてる。強いのが当たり前で、強くなければ四葉家次期当主としての価値は無い。そういう教育を今までされてきたのだ。今更この価値観を捨てるなんてことはそう出来ない。それに強くなければたった1人の守りたい人ですら守ることも出来ない。

 

「うーんそうだな。自分にとっては魔法の訓練をすする事はもはやライフワークと言っても過言じゃない。それに四葉とか関係なく守りたい人もいるしね。」

 

 そういうと女子特有の黄色い悲鳴が聞こえてくる。真由美さんのことを想像したのだろう。

 

 (やっぱり女子はこういう話題好きなんだなー)

 

 ――――――――――――――――――――――――

 

 お昼休みは真由美さんと過ごそうかと思ったがやはり放課後の討論会の準備が忙しいようで邪魔をするわけにもいかず声を掛けなかった。。今日は初めて1人でお昼を食べたがゆっくり出来たので悪くはなかった。たまにはいいのかもしれない。

 

 さて、肝心の討論会だが正直お話にもならなかった。討論会というより真由美さんの演説になっていた。30分を経過する頃には討論相手は反論する気概さえも失っていた。

 

「以上の事を私の最後の生徒会の仕事としま」

 

 ドオオオオオオン

 

 突然の轟音と共に会館が揺れた。

 

 CADを待機させながら真由美さんのもとに駆け寄り、自分よりも小さな体躯をかばう。

 

 まさか情報通り本当に来るとは。さてまずはこの会館に潜伏しているエガリテから制圧していこう。

 

カタン

 

 窓ガラスが割れ地面に落ちる金属音がしそちらを見ると

 

 (グレネード!障壁...間に合うか!?)

 

 片手でCADを操作しながら真由美さんの体を抱きながら後退する。

 

 しかし爆発はせず代わりに煙が舞い上がる。どうやら催涙弾のようだった。ハンカチを真由美さんの口元覆い真由美さんがハンカチを抑えたのを確認すると自分の口を制服で抑える。真由美さんの扱いが少し手荒になってしまったことは後から謝ろう。

 

 しかし服部先輩が魔法で煙を抑え込み外に移動させる。

 

 (流石の魔法操作ですね…。)

 

 感心していると座っていた生徒の一部が立ち上がる。手元を見てみるとエガリテの証であるブレスレットをしている。外は銃声も聞こえてくる。とりあえず目の前の生徒を取り押さえよう。――――――

 

 渡辺先輩が指揮をとりあっという間に制圧が完了してしまった。一般の生徒たちは生徒会と風紀委員が主導で避難させるようだ。お自分も風紀委員である以上こちらを手伝うことになるだろう。手早く打ち合わせをしていると

 

「委員長!俺は実技棟の方を見てきます」

 

 そう言って達也と深雪さんが外に駆けて行くのが目に入った。追うか考えたが達也が負けることは無いだろうと思い。自分は職務を全うすることにした。

 

 騒ぎは夕方になる頃には沈静化していた。

 どうやら奴らの狙いは第一高校の図書館にある機密データベースだったらしく、そこには剣道部の壬生先輩もいた。彼女はブランシュに利用されていただけらしく、逃げようとしたところをエリカが捕らえたらしい。

 そして今は保健室で事情聴取をしており真由美さんに渡辺先輩。更に克人さんと現場に居合わせたということで司波兄弟とエリカも同席している。話を要約すると渡辺先輩に関する記憶を操作、というより肥大化させることによって結果的に一科生に対する不満となっていったらしい。途中壬生先輩が泣き始めて正直焦ったが達也が慰めた。前々から思ってたけどこいつタラシの才能あるな?顔も良いし。なんなら達也の胸の中で壬生先輩泣いてたし。相変わらず奴らは気に食わない。話が一段落したところで達也がブランシュの連中はどこにいるのかと言い始めた。

 

「まさかブランシュに乗り込むつもりじゃ」

 

 こう言った渡辺先輩を真っ向から否定するのが達也。

 

「違いますよ渡辺先輩。叩き潰すんですよ。」

 

「危険だ、学生の部を超えている。」

 

 ポーカーフェイスを努めるが自分も叩き潰そうとしてるんですよ...なんなら過去潰したんですよ…。

 

「危険よ!私も反対だわ。」

 

 こう言うのは真由美さん。

 

「そうして壬生先輩を家裁送りにするんですか?」

 

「なるほど警察の介入は好ましくないか。そしてこのまま放置も出来ない、か。」

 

 納得してみせるのは克人さん。

 

「だがな司波相手はテロリストだ。俺たちは誰も当校の生徒に命をかけて欲しくは無い。」

 

 ……先輩達の言葉が心に効いてしまう。

 

「無論生徒会や部活連の力を借りる必要はありません。」

 

「一人で行くつもりか?」 

 

「本来ならそうしたいつもりなのですが」

 

「お供します。」

 

 いの一番に深雪さんが立候補するとエリカとレオもこれに続く。

 

「私のためならやめて!私は罰を受けるだけのことをしたんだから。それよりも司波君たちになにかある方が…」

 

「違いますよ壬生先輩。俺と深雪の生活空間がテロの標的にされたんです。安全の確保のためのテロリストの排除は俺の最優先事項です。」

 

そう言い捨てると皆が呆気に取られている。あ、でも深雪さん心無しか嬉しそう。

 

「ですがお兄様どうやってブランシュの拠点を見つければ良いのでしょうか?」

 

「それは知ってる人に聞けばいいんだよ。」

 

 そう言ってこっちを見てくる。それに釣られ皆見てくる。あーなるほどな、達也最初からこのつもりだったのか。

 

「夜瑠くんまさか…」

 

 すごい心配そうな顔で真由美さんがこちらを見てくる。

うーん罪悪感が凄い。諦めたように息を吐き、真由美さんの肩に手を置き達也の方に向き直る。

 

「ああ、知ってる。なんなら今日潰しに行くつもりだ。」

 

「夜瑠くん、まさか私のために?」

 

 真由美さんがそう聞いてくる。

 

「まあ、その通りです。」

 

「お願い、危険なことはやめて。もうあなたにはあんなことして欲しくないの!」

 

 彼女が言っているのは数年前に1度ブランシュのアジトから誘拐された彼女を救い出したの時のことである。

 何せあの時は人を殺しに殺しまくった。正直あまり思い出したくはない。

 

 「大丈夫です。今回自分はほとんど相手をするつもりはありません。既に四葉の部隊が周辺を封鎖、囲んでいます。それとエリカ、確か千葉家は警察と繋がりが強かったよな、今回の四葉が関わったことは出来れば喋らないで欲しい。」

 

「わ、わかったわ。」

突然声をかけられたので驚いたように返事をしてくれる。

 

 そして再び真由美さんに向き直る。相変わらず不安そうな顔をしている。そしてガバッと抱き締める。

 

 一同は驚愕している。

 

 そして囁くように安心させるように声をかける。

 

「大丈夫です。絶対に無事に帰ります。」

 

 更に声を潜めて続ける。

 

「そして良ければ家で待っててください。真由美さんの手料理が食べたいです。」

 

 自分がそういうと真由美さんは驚いたように身を強ばらせる。

 

「いいですか?」

 

 そう聞くと僅かに頷いてくれた。

 

「ありがとうございます。」

 

 そういうともう一度強く抱き締め体を離す。

 

 真由美さんは照れたような、不満そうな顔をしていたがやがて諦めたように

 

「無事に帰ってきてね」

 

 と言ってくれた。

 

 そして自分が立てていた作戦を話し始めるが皆

 

(いやこの流れでは無理だろ)

 

 みたいな顔をしていた。耳だけ傾けてこっちみないでくれ。

 

 ――――――――――――――――――――――

 

 話終えると距離もあるから車で移動することにした。一応予備で2台分待機させていたため直ぐに移動を開始出来た。

 場所は郊外の工場跡地。第一高校の裏門を出ると既に車が待機していて乗り込む。

 

「状況は?」

 

「はい、工場内には武装した構成員が建物内に配備されています。数は60です。ブランシュ日本支部リーダーの司一も確認済みです。また、既に工場の包囲は完了しています。」

 

「分かりました。」

 

 待機していた構成員に状況を報告してもらい出発することになった。

 

 自分の車に乗るのは自分、エリカ、桐原先輩。(桐原先輩は克人さんが連れてきた。)

もう一台が大きい車のため達也、深雪さん、克人さんレオの4人が乗ることになった。

 

 そして、車に配備されている通信機を手に取り息を吐き出し意識を切り替え待機している四葉構成員に指示を出す。

 

「各員、傾聴。これよりブランシュ日本支部制圧作戦を行う。本作戦は拘束を目的としているが自らの命の危機があった場合はこの限りでは無い。また、諸君の任務は2つ。私が突入、制圧後の残党の捜索と逃亡者の確保である。各員それぞれの職務を全うすることを期待する。以上。」

 

 言って一息つくと同乗している2人がなにやらニヤニヤしていた。

曰く

「七草先輩が今のを見たら惚れ直すわね」

 

 との事。やかましいわ。

 

 それはそれとして言うべきことは言った。第一高校からはかなり距離がある。後はCADの確認と到着まで集中するとしよう。

 目を瞑って集中していると停車した。車から降り最後の確認を行う。正面から突入するのは自分、達也、深雪さんの3人。裏口は克人さんと桐原先輩。レオとエリカは逃走者の確保。そして貢を含む四葉構成員はさらに広い範囲を囲っている。

 

「それでは確認も済んだので突入しましょう。と、その前に突入の前にまずはこれからだよな。」

 

 汎用型CADトールギスを取りだし魔法を起動する。

 発動する魔法は精神干渉系魔法「ナイトフォール」

効果としては広範囲に、自分のサイオン波を流し込む。結果当たった対象は軽い恐慌状態となり視野狭窄に陥る。特に銃相手だと「構える▶︎撃つ」という訓練通りの動きの精度が落ちることも期待できるためこの魔法を開戦の狼煙とした。ついでに相手の居場所が何となく分かる。ちなみにこの魔法は対魔法師相手だとあまり効果がない。

 

 さて、行くか。

 

 柵を越えて扉を開けると目の前には早速ブランシュと思われる構成員らが居たが既に、銃先は震えている。このままスルーしても良いのだが後ろから打たれるのを防ぐため特化型CADリーヴァーを構える。発動する魔法は「スリープダーツ」本来この魔法は興奮している相手には効果は薄いが今回の場合効果覿面なのでいつも対非術師に対してはこのセットアップを使用している。

 

 構成員を眠らせながらどんどん進んでいくとこれまでとは違いきちんと銃を構えることが出来ている部隊に出会う。中心部には眼鏡をかけた胡散臭そうな薄紫色の髪色のいかにも私が教祖ですみたいな服を纏った長身の男性が立っていた。

 

「ようこそ、君が四葉夜瑠君だね?そして後ろの君たちは司波達也君と深雪くんだね?」

 

「お前が司一だな。一応勧告しておく、銃を置いて即座に降伏しろ。」

 

 言うと司一は突然笑い始めた。、

 

「ふはははは、これだから魔法を絶対的なモノだと勘違いしている馬鹿なり連中は。」

 

「馬鹿?馬鹿はそっちだろう。前支部を自分が潰したことを忘れたのか」

 

「確かに前支部はキミに潰されたさ、だがなんの備えもなくまた現れるわけないだろう!」

 

 そう司一が言うと構えるように手首をこちらに向けてくる。

 

「くらえ!四葉……」

 

 言い終える前に部屋に入る前に発動しておいた「ブレード・ストーム」を発射し、肩を撃ち抜く。

 

「ギャアアアアアァァァァァ!!!」

 

「やはり馬鹿はそっちだろう。なにかする前にみすみす見過ごすはずがないだろう。アニメの悪役じゃないんだ」

 

 さて、周りをみると構成員は驚愕した顔をこちらに向けている。その中の一人が司一のように手首に着けた装置をこちらに向ける。

 

「貴様ァ!」

 

 次の瞬間わずかに肉が焦げる匂いがした。

 

 どうやら達也が「フォノン・メーザー」を使って助けてくれたらしい。

 

 そして次々に周りの構成員達を制圧していく。

 

「う、うわあああああああ」

 

 司一が逃げた。面倒だが追いかけるとしよう。この場は深雪さんに任せることになった。正直こういう汚れ仕事はあまりさせたくないのだが工場の地図がないため達也の「エレメンタルサイト」が必要なため仕方ないがない。

 

 追いつくとちょうど克人さんと桐原先輩と挟み撃ちの形になった。

 

「そいつが司一です。」

 

 とだけ言うと桐原先輩が露骨に反応して

 

「こいつか!壬生を誑かしたのはァァァァ!!!」

 

 そう言いながら飛びかか理刀を振り下ろし、司一の右腕を切り落とした。血がとめどなく溢れるが克人さんの魔法によって止血された。

 そして無事制圧作戦は成功した。

 

 工場を出て警察を呼ぶと不満そうな顔をしたレオとエリカと合流した。どうやら暇だったようだ。そんなこと言われてもと心の中で思いつつ自分たち四葉も撤退する準備をする。とは言っても正直自分にやることは無い。強いて言えば皆を送り届けるくらいだ。今日は疲れた。愛おしい人が待つ家へ帰るとしよう。




思ったよりも入学編長引いちった。

どことは言わないけど深夜テンションて書いた所すごいな...


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。