Re.兄弟子のおしごと! (如月屋)
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第一局 プロローグ

如月です。本当にお久しぶりです。そしてお待たせしてしまい本当にすみませんでした。前作が未完ですが、受験、親の病気、新生活等々の様々な状況が立て続いてしまい遅れてしまいました。

1年もの期間が開いてしまったこと、個人的に失敗だった部分があること踏まえてこういった形での再開になります。変わっているところ、同じところ様々ありますがどうかお付き合いの程よろしくお願いいたします。

それでは第一譜、どうぞ!


30びょーう…40びょーう…」

 

物静かな和室に記録係の秒読みが響く。ここは玉座戦五番勝負の第五局『対局室』である。物凄い重圧が支配するその空間に多くの人が飲み込まれ、見入っていた。

 

「ごじゅ「負けました」

 

緊張と重圧が一気に溶けて対局が終わる。勝ったのは一ノ瀬悠斗六段。いや、新玉座であった。一方で負けたのは『名人』だ。合計24期もの間、玉座の椅子に座り続けた神である。

 

悠斗は興奮冷め止まぬ中、記者からの質問に答えた。その眼には涙を浮かべ、その姿は大きく取り上げられることになった。

 

▲▽▲▽▲

 

「この後記者会見があります。それまでは自由時間ですので」

 

「分かりました」

 

あくまで悠斗は毅然と立ち振る舞った。それは兄弟子として、タイトルホルダーとして、そして一人の棋士としてだ。

 

「ふぅ……」

 

連盟職員がいなくなると彼は着物のまま床に座り込み、今までの気持ちや疲労があふれ出した。

 

「はぁはぁ…やった。はぁ…はぁ」

 

「おめでとう」

 

何処からともなく表れた名人は、彼を祝した。どこか優しく、そして闘志にあふれた目をしていた。

 

「名人…ありがとうございます。すいません、こんな姿で」

 

「そんなこと気にしないさ。ところで悠斗君、君にお願いがあるんだ」

 

「なんでしょうか?」

 

「今日の夜、私と感想戦の続きをしてくれないかい?」

 

「…もちろん」

 

悠斗はこの時、いろいろな気持ちが込み上げた。一つは喜び。名人に誘われた喜びだ。二つ目は敬意。名人も悠斗ほどでなくとも疲れているにもかかわらず、さらに将棋を極めようとする心。その他諸々、全てに尊敬を示した。これは少なからず、彼の将棋人生に影響を与えた。

 

▲▽▲▽▲

 

記者会見は立会人ともはや何語か判らない言語を話し、涙と鼻水で滝を作った師匠『清滝剛介』が同席した。

 

記者会見が終わるなり、剛介は悠斗に抱き着き悠斗の着物を一撃でダメにした。悠斗の後ろからは妹弟子の銀子と弟弟子の八一が抱き着き、桂香は外から笑顔を浮かべていた。

 

悠斗は清滝一門初のタイトルホルダーであり、長年関東に渡っていたタイトルを関西に持ち帰った。10代高校生によるタイトル制覇であり、しかも名人から奪取したのだ。これは世間でも大きな話題を呼び、一躍将棋界を飛び越えて悠斗は世間で知られる存在になった。

 

ある時、とある番組に出演したある棋士が言葉を放った。

 

『我々は、長年名人という天才と戦ってきました。時に勝つこともありましたが、中々勝つ事ができなかったのです。それは、彼が別格であり天才だったからだ。』

 

一息置いて、その棋士は大きな声で宣言した。

 

『彼はそんな名人に打ち勝った。彼も大きな力を持っている。それはやがて、名人にも並ぶ力になるかもしれません。もし彼がそんな大棋士になるなら私は彼をこう呼びます。『天災』とね。』

 

これは、天災と呼ばれた棋士。一ノ瀬悠斗とその仲間、ライバルとのお話しである。

 




前作同様、コメント・評価・お気に入り登録等お待ちしています。それでは次回もよろしくお願いします!


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第二局 今の位置

どうも、お疲れ様です。投稿が遅いのはワールドカップのせいです(暴論)。元々サッカーも好きですがまさかスペインにも勝つとは…しばらく亀投稿が続きそうです。

それでは第二譜、どうぞ!


悠斗が玉座の椅子に座ってから数年の月日が経った。悠斗は玉座の防衛を続け、さらにA級1組になった。今では名人と並んで将棋界のトップをひた走っている。

 

悠斗の妹弟子である銀子は女王と女流玉座の女流二冠に輝いた。女性の中で圧倒的な強さを誇り、世間では『最も強い女性』と言われている。さらにプロ棋士の登竜門である奨励会にも入会して段位を獲得。現在もプロ棋士を目指している。

 

弟弟子の八一はプロ棋士となり、現在は竜王のタイトルを獲得している。ある意味で一門の中で最も変化を遂げた人間だ。

 

3人は三者三様の成長を遂げた。一見、順風満帆に見えるがそうは問屋が卸さない。『九頭竜八一竜王 まさかの連敗止まらず!』と見出しが躍るほど八一は絶不調を迎えているのだ。

 

「で、こないな状況を悠斗はんはどう見てるんどすか?」

 

棋士室で悠斗君の膝の上を独占し、実際にスマホで記事を見ていたのは供御飯万智。山城桜花のタイトルを持つ女流棋士。悠斗の彼女(仮)である。

 

「俺にそれ聞くなよ。流石に弟がそんな状況なの気分が悪い」ヾ(・ω・*)なでなで

 

全く当然という素振りで悠斗は万智を撫でる。万智は色々考えながら、八一の過去の棋譜を読み漁る。こう見えて万智は将棋ライターであり、八一のことでも書こうとしていたのだろう。ちなみに、各報道機関の悠斗担当はだいたい万智が代理で担っている。そっちのほうが色々聞けるからだ。

 

「わかった。その代わり、今度辻●でパフェ食べさせとぉくれやす」

 

「ハイハイ、仰せのままに」

 

棋士室はゆったりとしたくうk「きえええええええええ」( ゚Д゚)

 

落ち着いた空気は消え去ったようだ。

 

「師匠だな」「清滝先生ですね」

 

声の主はどう考えても、悠斗の師匠である清滝剛介九段その人である。

 

「今日は雑誌の企画で八一と対局があったよな?」

 

「そうどすなぁ。この様子やと、八一はんが勝ったのやろう」

 

その時、連盟職員が棋士室に飛び込んできた。

 

「失礼します!玉座はいらっしゃいますか!?」

 

「清滝先生が暴れてしまって…」

 

「はぁ…あのバカ師匠が。今行きます」

 

▲▽▲▽▲

 

悠斗が会場に行くと唖然とする記者、絶対零度を放つ銀子、師匠をなだめる八一、慌てる職員、そして駄々こねる剛介。もはやカオスの極みである。

 

「あ、兄弟子!師匠抑えるのを手伝ってください!」

 

「分かったよ。左頼んだ!師匠!九段の威厳があっち向いてほいしてますよ」

 

「いやだわ!あんな奴に負けた!10連敗もしてる奴に!」

 

「マジで落ち着いてください!」

 

名人戦に出たことのある様な棋士がタイトルホルダー二人に抑え込まれるとかいう地獄絵図の完成は後にも先にもこれが初めてであり歴史に残る珍事になったことは言うまでもない。

 

「いやd…お…」

 

「「「お?」」」

 

「オシッコooooooo!」

 

急に止まったと思えばトイレに行きたくなったのか、急に着ていた着物を脱ごうとしだした。

 

「師匠ストップ!」

 

銀子含め女子もいる。棋士もいる。報道陣もいるとかいうカオス・オブ・会館が開催され、そこで用を足そうとしているのだ。鬼である。

 

「オシッコ――――――――!」

 

「師匠ぅぅぅぅぅぅぅうう!」

 

これが俗にいう『清滝の乱』である。

 

▲▽▲▽▲

 

このカオスをどうにか終わらせた悠斗は、棋帝戦の予選に勝利し、万智とイチャイチャして過ごしていた。リア充吹き飛べby作者

 

そんなある日だった。

 

プルルルル…プルルルル…

 

「銀子か…もしもし。どった?」

 

『お兄ちゃん…八一が幼女を家に連れ込んだ!』

 

「うーん…絶☆望」

 

がんばれ、悠斗君!

 




この世界線では万智は悠斗に恋しているので、銀子とのくだりが無いです。そのため、八一読みなんですねー。では次回もよろしくお願いします!


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第三局 ヒナ

レポート一つ書き上げるたら夜中の二時だったてマジ?ども、如月です。前作でお知らせしたところ多くの方にコメント頂きました!ありがとうございます。コメントで『非公開にしないでほしい』という意見を頂いたので前作は公開したままにします。よろしくお願いします。

では、第三譜どうぞ!


悠斗は銀子からの電話を切り、早急に八一宅に向かう用意をしていた。案件は色々と大問題であり、頭の回る悠斗の脳をもってしてもオーバーヒートは避けられない内容だった。

 

バイクを走られて八一宅に入ると、確かにロリがいた。八一はまるで獣に襲われる1秒前の鹿であり、銀子は絶対零度を放っている。でぃすいずカオスである。

 

▲▽▲▽▲

 

「...で、状況は?」

 

「えっと....」

 

「なるほど。えっと...あいちゃん..だよね?凄い行動力だね。ただ、親さんを心配させちゃいけないよ?」

 

「....はい」

 

雛鶴あい。八一の元を訪れた女の子の名前だ。竜王戦での八一の姿に憧れ、弟子になりたいという一心で八一の元を訪れたそうだ。北陸から1人で大阪まで来たようで悠斗はその行動力に何より感嘆の意を示した。

 

「とりあえず!...師匠のとこ行くぞ」

 

「師匠のとこですか?」

 

「弟子にとってあげろよ。俺はとるべきだと思う」

 

「お兄ちゃん!」

 

銀子はあくまで反対の意思を示した。

 

「だから師匠に聞け。俺は弟子をとったこともなければ、気持ちもわからん」

 

「銀子もぶーたれて無いで準備しろよ」

 

「分かった」

 

なんだかんだで兄弟子の言うことには素直な銀子である。

 

▲▽▲▽▲

 

なんだかんだで、あいは八一の弟子となることが決まった。『憧れは力となる』という文言でだ。内弟子という、現代ではあまり見ないような関係になりながらも剛介と悠斗の後押しを受けて八一はヒナを育てることになったのだった。

 

「で、師匠的には本当にどう感じたんですか?」

 

その晩は清滝一門が久々に一つ屋根の下に集まった。他の皆が寝静まった後、悠斗は剛介を誘い、酒を飲んでいた。

 

「そうやなぁ…まあ嬉しかったで」

 

「そうっすか…」

 

剛介は昼間、こんな事を言っていた。『師匠が弟子に望むのは、タイトルを取ることと弟子をとること』と。八一はそのどちらをもやってのけたのだ。

 

「あんなにちっちゃかった八一が…ですか」

 

竜王を獲得し、あいという女の子に憧れられて、弟子をとる。師匠明利に尽きる気持ちなのだろう。

 

「俺は、親不孝者ですね」

 

ろくに弟子も取らず、玉座の一冠を我が物にして順位戦A級にして竜王戦1組。だが、天災と恐れられ、ろくに取材すら受けない…というか、相手側が恐れて取材が回ってこない悠斗は師匠の理念からすれば相当な親不孝者なのだ。

 

「んなことはないで。お前は一門にタイトルを持ち帰った男や。わしがそんな男を不幸者なんて言う訳ないやろ」

 

「そう言っていただけるとありがたいです」

 

「まあ、あれや。お前は関西のエースや。4番や…かけられる期待は並外れてるで。正直、悠斗に弟子入りしたい言うてたら止めてたわ。弟子にかかる期待も異常やでな」

 

「…そうですね。でも、いつか恩返しはしますよ」

 

「期待しとるで」

 

そう言うと二人は酒を飲みまた談笑を始めた。

 

八一にあいと言う弟子が誕生し、また一つ師匠に恩返しが果たされた。一方、悠斗のそれは並外れたものだった。『名人獲得』それ一つなのだ。今、最も名人に近い男。それが一ノ瀬悠斗そのひとだ。

 

ヒナを迎えた清滝一門。一門はどこに飛び出すのだろうか…

 




なんか師匠がかっこいい…だと!おかしい、二譜ではネタだったのに…


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第四局 いい将棋やな

明けましておめでとうございます(2月)。はい、大変遅くなり申し訳ありません。新年早々、自動車免許の試験、レポートという悪魔、学年末考査、バイトの研修、大学の実験実習等々と戦っていた結果遅くなりました。

そういう訳で、これからはバイトの日々と戦いながら書いていくのでよろしくお願いします!それでは、第四譜どうぞ!


あいの弟子入り騒動が起きた翌日、悠斗は東京へと出張に出ていた。理由は、東京のAb〇ma TVに収録に来ていたのだ。帝位戦紅白リーグの対局の解説である。

 

ただし、今日の悠斗は『聞き手』であり、『解説』ではない。では、解説は誰なのか?回答は彼である。

 

「おはようございます。」

 

『名人』。過去には七冠独占を果たし、現在も名人位をはじめとして複数のタイトルを保持するトップ棋士である。今日はとある出来事を祝した特別解説となっているのだ。名人の二つ名である『神』と悠斗の二つ名である『天災』からとってこの組み合わせは『天神』と呼ばれ、この二人による解説となっているのだ。

 

「おはようございます、名人。」

 

この二人が横に並ぶというのはそれこそ重要な対局など相応の場所であり、周りのスタッフ一同息をのむのが必然であった。

 

▲▽▲▽▲

 

「本日は帝位戦紅白リーグ、九頭竜八一竜王対神鍋歩夢六段の対局をお届けします。Ab〇ma特別企画としまして、解説は名人。聞き手は私、一ノ瀬悠斗が務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。」

 

解説はこのような感じ。大阪の将棋会館では将棋が始まった。

 

「今期の帝位戦挑戦者決定リーグは神鍋六段大活躍ですが、名人はどうお考えで?」

 

「そうですね。彼も新進気鋭の若手棋士ですからね。ぜひとも頑張ってほしいです。一ノ瀬玉座としては弟の竜王について、どうですか?」

 

「いや―今期は厳しいですねぇ。2連敗ですよ⁉まあ、最近は彼奴らしくない将棋が続いてますから…貪欲に勝ちに行ってほしいですね。」

 

「戦形は相矢倉のようですね…」

 

相矢倉はそのまま互いに矢倉を組む戦形だ。定石として非常に確立されているため、ポンポンと将棋が進んだ。

 

その後に飛び出した一手は神鍋流1五香だった。歩夢の新手であり、これを原動力として歩夢は帝位戦を勝ち上ってきたのだ。

 

「一ノ瀬玉座、この手はどうです?」

 

「そうですねえ…」

 

長考に入った八一そっちのけで二人は新手について語り合っている。あまりに解説が高難易度であり、視聴者も置いてきぼりになったことで『解説にこの二人の組み合わせは避けるべし』と言われたとかなんとか…

 

▲▽▲▽▲

 

逆転に次ぐ逆転。二人が“数分”で出した八一の攻勢からの歩夢のさらなる一撃の場面になった。あまりに、盤上が二人の言う通りになるのだから皆ドン引きであった。

 

それは別として、盤上にいる若手の二人は止まらなかった。八一はいつ形作りに入ってもおかしくない場面だった。しかし、彼は諦めなかった。まるで運命に抗い続けるが如く、駒を動かし続けた。

 

「熱いですね。」

 

「面白い将棋ですね。」

 

一人がノータイムで指せば、もう片方がノータイムで指し返す。熱すぎる将棋がそこにはあった。非常に泥臭い将棋だった。そして夜遅く、もうあと少しで日付を跨ぎそうなほど夜遅くになってもその将棋は続いた。同世代のプライドがぶつかる将棋は歩夢のわずかなミスによって八一の勝利に終わった。

 

「今回の将棋を振り返ってどうでした、兄弟子の一ノ瀬玉座?」

 

「そうですね…どこまでも泥臭くて、粘って、粘って勝利をつかむのは『タイトルホルダーらしくない。』なんて言われるんでしょうか。でも、ハナから諦める将棋より何倍も美しくて、熱い。そして面白い将棋だと思いますよ。少なくとも連敗中の彼よりもとてもいい顔をしていた。だから私は今日の将棋を評価しますよ。『いい将棋やな』ってね。」

 

悠斗の地元である岐阜の方言が出たこのコメントは彼の本音が出ているとして、瞬く間に拡散され、界隈でバズりまくったのは言うまでもない。

 

▲▽▲▽▲

 

もはや朝と言ってもいい時間。八一とあいは将棋会館を出た。超泥試合を制した八一だが、勝負の後ということもあり、アドレナリン全開で眠気など全く無いようだった。

 

しかし、八一は歩夢の夜に弱いという弱点を突いた番外戦術ともとれることを行ったのだ。それ相応叩かれることも恐れていた。しかし、それでも八一は5ちゃんねるやTwitterを確認した。そこには批判コメントは全くなかったのだった。

 

『めちゃくちゃ面白かった!』『両者乙』などのコメントにあふれ、最後に見つけたまとめ記事に真相を見つけた。

 

「『いい将棋やな』か。もっと頑張らないと。」

 

悠斗のコメントを見て心の底から安心した八一、兄弟子に感謝しつつ気持ちを新たに夜の大阪に消えていった。この時、更なる嵐が舞い込むことを彼はまだ知らなかった。後ついでに、悠斗にクソほどどうでもいい災難が舞い込むこともこの時、誰も知らなかった。

 




悠斗には何が起きるんでしょうかねぇ…ニッコリ

次回もよろしくお願いします!


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第五局 入会試験・前半

えー...お久しぶりです☆
前の投稿から、藤井先生が8冠になったり、羽生先生が会長になったりとんでもないことになってきた今日この頃。中の人はテストとレポートと実習に追われています。
テストが近いですが気分転換に制作しました。忙しすぎてワロエナイですがこれからも頑張るのでよろしくお願いします!
それでは第五局どうぞ!


あいが八一の家に転がり込んできて何日かが経った。そして今日、遂にあいが研修会の試験を受けるのである。

 

「おっ!2人ともおはよう。」

 

「兄弟子、おはようございます。」

 

「あっ!おじさん先生、おはようございます!」

 

悠斗も一応付き添い兼見守り役として付いていくことになっている。3人は集合すると将棋会館に向かって歩き出した。

 

▲▽▲▽▲

 

八一とあいは将棋会館で既に始まった研修会に参加している。一方で悠斗は八一の代わりにあいの両親を将棋会館の前で出迎えた。

 

「先生!」

 

あいの父親が悠斗を見つけるや否や慌てて声をかけた。

 

「これはこれはあいさんのお父様にお母様。タイトル戦等でいつもお世話になっております。今日はわざわざ、遠いところを大阪までありがとうございます。」

 

急にキモいぐらいの丁寧な言葉だが悠斗は将棋界の顔であるタイトルホルダーの一角であり、余計に社交辞令に余念がない。

 

「こちらこそ娘が勝手なお願いをしてしまい...九頭竜先生や一ノ瀬先生、清滝一門の皆様にご迷惑をお掛けしてしまい...」

 

「そんなことないですよ。私としても若い子が将棋に興味を持ってくださり嬉しい限りです。っと、こちらが...」

 

「ええ。私の妻です。」

 

「これはご挨拶が遅れました。私、あいさんが弟子入りされた九頭竜八一の兄弟子の一ノ瀬悠斗と申します。遠いところをありがとうございます。」

 

「...まだ、弟子入りを許してはおりませんので。」

 

「おい!」

 

あいの母親はかなり弟子入りに否定的であることを悠斗は理解していたが、それにしても冷たいことを悠斗は感じた。

 

「...これは失礼しました。早速ですが、あいさんが試験中ですのでこちらへどうぞ。」

 

▲▽▲▽▲

 

3人が会場に入ると何故か研修会幹事の久留野七段と対戦するあいが居た。

 

「八一!どういう状況?」(ボソッ

 

「えっと...」

 

悠斗は八一から状況を聞いた。研修会生を倒したあいは研修会幹事であるプロ棋士と対局中だったのだ。

 

あいの相手は久留野七段。プロの中でも七段はタイトル1期獲得や竜王戦1組昇級といった難題をクリアしなければ辿り着けない。そんな棋士との戦いに研修会生だけでなく噂を聞きつけた女流棋士やプロ棋士まで集まっていた。

 

「ふむ...なら」

 

久留野七段は定石にない手を繰り出した。参考書にない応用問題を出したと思えばいい。あいはその一手に一瞬動じたようだが再び落ち着きを取り戻した。

 

「こうこうこう....」

 

あいはひたすらに深く読み、プロにも引けを取らないような手を繰り出す。その一手一手が久留野七段をも熱くし、彼を本気にさせた。その勝負はまさしくプロのようであり、あいの一手一手に驚きと称賛の声が響いた。

 

「...正しくいけば詰むな。」

 

悠斗の一言にあいの両親は驚く。

 

「本当ですか?」

 

「はい。ああ...もう詰みましたね。」

 

「負けました。」

 

あいはプロに勝った。駒落ちとは言え素晴らしい実力としか言いようがないことである。このまま勢いで悠斗と八一はあいを研修会に入れようとしたが「あくまで3勝」とあいの母親が言い、試験は続行になった。

 

「でも最後は誰なんですかね?」

 

「...」

 

悠斗には流れが見えていた。

 

「(次に来るのはきっと志願したあいつだろう。1番厳しいだろうな)」

 

そして見事に予想は当たったのだ。

 

「「浪速の...白雪姫ッ!」」

 

「姉...弟子⁉︎」

 

そこにいたのは天災の妹であり、竜王の姉。女性として最強の名を欲しいままにし、プロに最も近い女性と言える存在。『浪速の白雪姫』空銀子()()であった。




次回は早く上げるよう頑張ります()
ついでに次回は感想戦あるかも...


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