ようこそ間違わなかった教室へ (あもう)
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プロローグ

リハビリなうです。こちらは特に考え無しに気楽に書いていくつもりです。


名前は天野 聖、普通と対極の人生を送ってきた、謎多き男子高校生だ。実家はでかい保険代理店会社、身長は180cm、体脂肪率は6%のチー牛だ。他にも実績を上げだしたらキリが無いのだが、まぁ色々出来る。決して厨二病や変人の類では無い。

 

俺は今バスにゆらゆらと揺れて国立の高校である東京都高度育成高等学校へと向かっている。バスの揺れでこのままでは着く停車駅を寝過ごしてしまいそうなので少しだけでいいので俺に付き合って欲しい。

 

 

問 この世で最も強い力は何か

 

突然だがこの問に着いて考えて見てほしい。この答えは人によってきっと変わってくるだろう。例えば良家の性格の悪いお嬢様ならきっと自分が何かをしでかした時に他人に罪を擦り付けられる『権力』と言うだろうし、そんなお嬢様に冤罪を擦り付けられて賠償金をたんまり貰った奴ならば『財力』と言うだろう。

 

他にも某ジャンヌ・ダルクのような絵に書いたような聖女ならば『団結力』と言うだろうし自分しか信じれない暴力的な暴君の独裁者ならば『暴力』と言うだろう。生まれ持っての天才はきっと『才能』と言うし、逆に努力で邁進してきた凡人、ないしは落ちこぼれは『努力』と言うだろう。他にも偽善の笑顔を作り続けてきたクラスのマドンナは『嘘』と『真実』と言うだろうし、皆の為のヒーローのような男は『協調性』だと言うだろう。

 

何が言いたいかと言うとこの世で最も強い力というのは人によって当然の如く変わってくるという事だ。生まれた家柄、才能、幼少期にやって来た事や遺伝している部分も然り、自分の周りにある様々な現象、事柄において変化する。

 

さて、この話を聞いて誰もが……とまでは言わないが一部の人はきっと気になっただろう。もし気にならなかった場合は俺の心に5ダメージだ。

 

問2 であるならば俺は何を最も強い力と考えているか。

 

この答えを先に行ってしまうならば『情報力』である。とはいえこれは前にも言ったように俺の自論でしかない。

 

唐突なカミングアウトへとなるが、俺は3年前、クラスメイトに虐められている子を庇いバットで頭を殴られて、前世の知識を取り戻した。そしてここが『ようこそ実力至上主義の教室へ』の世界だと気づくことが出来た。

 

元々社長の息子だったので英才教育は積んでいた。英才教育……と言っても内容は地獄そのものだ。勉強やスポーツは勿論、コンピュータ技術や契約書の書き方、俗世間の人が好きな話題作りや保険のシステムなど、自分の会社を継ぐために必要になるかもしれないことはほぼ全て学ばされた。という訳でスペックはそこそこにあるはずだ。数学オリンピックに出させられたり、将棋でプロと戦わされたり絶対要らねぇだろそれというのもあったが口答えする気力も無かった。まぁ自力は着いたと思う。もう思い出しくは無いが。

 

とするとあと必要なのは情報である。ここまでの話を聞いている人は最も強い力はどう見ても権力だろうと、そう思っている事だろう。だが権力はどうしても場所を選ぶ、それはこれから行く事になるであろう東京都高度育成高等学校もそうだ。

 

 

取り敢えず情報が欲しかったので、父親はホワイトルームの話を振った瞬間に急に父親は饒舌になって「俺の英才教育はホワイトルームを元にしているんだ!お前も連れて今度行くか!」と言い出して連れて行かれた。俺は断りたかったのだが残念ながら断る権利は無かった。強制連行である。

 

東京都高度育成高等学校についてもそうだ。原作の時から裏口入学とかどう頑張ってもアウトだしヤバい学校だと思っていたが、どうせ元々この学校は推薦した人物がいなければ入れないシステムになっているので多分大丈夫だろうとタカをくくっていたが全然そんなことはなかった。クソフラグだった。

 

おそらくここまでの話をお聞きの皆さんは分かる事だろう。父親が東京都高度育成高等学校に入れると言い出したのだ。俺は無論駄々をこねまくったが。『入りさえすれば何をしてもいい、その代わり最低1年はいる事。』と父親にある程度の妥協をしてもらうまでには至ったが、ついぞや東京都高度育成高等学校に行かされてしまった。父親曰く『入ったら止められなくなるから!止まらなくなるから!』だそう。完全に麻薬中毒者のそれである。或いは某心理教徒なのか。解せぬ...。

 

 

父親曰く「綾小路先輩も坂柳君も知り合いだからな。こんぐらいどうとでもなるさ!」と言っていたが、何とかなるものではどう頑張っても無いと思うし、何とかならないで欲しかった。というかこの時点で最も強い力が『父親』な気がしてきたが、真面目な場で父親ですなんて言った日にはその日からファザコン呼ばわりされるのは間違えないだろうのし除外である。その父親も『情報力の勝利』だなんて言ってた訳だし。ここは1つ見逃して欲しいものだ。

 

画して2年間、昼は鍛錬を重ねつつ、夜は顧客情報や監視カメラの映像なんかを漁りながら、原作キャラの情報を出来る限り把握する事に務めた。ここまでの話を聞いていると完全にストーカーで牢屋送りになりそうだが、バレなきゃセーフだと思ってるしセーフだろう。

 

コンピューター関連は特に良く父親にぶち込まれたし、データ系の統計学やらなんやらの才能が俺にはあったらしい。父親はその部分には特に力を注がされた。そのせいか情報主義な思考が多少植え付けられてしまったのだ。父親曰く『俺の血を継いでるな。』との事だが継ぎたく無かった。

 

 

まぁ画して、俺は今日、この東京都高度育成高等学校に入学する訳だ。ここまでの毎日は地獄に悪魔を混ぜたような毎日だった。ホワイトルームを参考にしてると言うだけあってとてつもなくゴミみたいな日々だったが、残念ながら俺にはバリバリに感情がある。まぁ父親はお構い無しだったので我慢するしか無かったのだが、東京都高度育成高等学校に父親は入れないし来れない、感情の赴くままに暴れてやる事にしよう。なんでかって?

 

 

父親から開放される毎日は最高だ。とは言えこの高校をいつ出ても後は前よりは自由が保証されている……はずだ。わざわざ退学したくは無いが他の生徒よりは退学したくないとも思っていないのである。Aクラスへの意欲も大体そんな感じである。

 

『バスが止まります、お乗りの方は乗車券をご提示ください。』

 

どうやらバスが来たらしい。俺はそのままバスに乗りこみ、後ろの方の座席を確保する。僥倖だな......。

 

さて、バスの中で出来れば原作キャラの一人ぐらいとは仲良くなっておきたいものだ。個人的には芸能人と会える様な感覚だと思う。流石に握手やサインは貰わないけども......。

 

原作キャラを探す所か、隣に原作キャラはいた。ドストエフスキーの『罪と罰』を読んでいる様だ。隣にいる少女の名前は堀北鈴音、原作では落ちこぼれのDクラスを率いて、Aクラスを目指す、そして兄に認められる為に奮闘していたような気がする。そしてなんか最後に兄と和解して居たはずだ。

 

「さっきからじっと見てきて何かしら?不快だわ。」

 

「......ん?あぁ、ごめんごめん。」

 

確かにジロジロ見られるのは嫌な人もいるな。俺は視線を戻し、窓の外を見る。

 

「窓の反射を利用して私の方をジロジロ見ようとするのはやめてくれるかしら。下賎ね。」

 

「……ん?あぁ、ごめんごめん…?」

 

「なぜ疑問形なのかしら。」

 

「いや別に…。」

 

これは……俺が悪いのか?なんか何処ぞのTwitterにいるフェミニストみたいな事を言われた気がするんだけど、気の所為かな?

 

「今何か失礼な事を考えなかったかしら。」

 

「いや、気の所為だろ。」

 

確かに少し失礼だったかもしれない。俺は左も右も見れなくなったので第三の選択、つまりは目を閉じる事にした。元々眠かったのでスリーピングである。このまま某夢の国のネズミに……。

 

「ぴぎゃっ!?」

 

なんか今右の首辺りに針が刺さったような感覚がしたぞ。気の所為だよな?気の所為であってくれ。ちなみに隣にはコンパスを何故か閉まっている堀北が居た。え?嘘だよな?嘘だって誰か言ってくれよ……行動がクレイジー過ぎるだろ。

 

「私は何もしていないわ。」

 

「え、でも今コンパスしまって……。」

 

「私がコンパスを閉まっているからと言って私が刺したという証拠は無いわ。バスの揺れに生じて私の肩に頭を乗っけようとしたから天罰が下ったのよ。」

 

指した理由は分かった。いや欠片も理解したくないけどまぁ100歩譲って理解した事にしよう。したくないけど……。なぜ首に刺した……一歩間違えたら死ぬぞ、マジで。

 

「バスの揺れのせいで神様の狙いがブレたのかもしれないわね。」

 

バスの揺れのせいで狙いがブレたのか……おのれバス…おのれ神様……次会った時は許さんぞ…ってねぇよ。

 

「いや、お前何したか分かってんのかよ……。」

 

「私は何もしていないわ、言い掛かりはよして欲しいわね。」

 

よし、こいつはもう許しちゃダメだ。初対面の人の首元にコンパス刺して謝りもしないとか頭おかし過ぎるだろ。というか何故コンパスを既に持ち歩いているんだこいつは……。いつか絶対に復讐してやるコイツ。

 

「だ〜か〜ら〜!!お年寄りに席を譲るのは社会の常識なの!分かる?」

 

うるせぇな誰か知らねぇけど……このバスはキチガイしか乗ってねぇのか?

 

「フッフッフ……私の辞書にそんな言葉は乗っていなぁいのでねぇ……それに私は座っていた方が美しいのだよ。ガール。」

 

このバスのキチガイムードを加速させた彼の名前は高円寺六助。高円寺コンツェルンという中々に有名な会社の御曹司にして、文武両道才色兼備天上天下唯我独尊自由人という文字羅列を並べただけで軽く頭がゲシュタルト崩壊しそうなやべぇ金髪だ。あいつは日本人では無く絶対にアメリカ人だと思う。そして何故喋り方がロズワールっぽいのか……。ツッコミどころしか無いなコイツ。

 

「それにお年寄りに席を譲らなければ行けないなんて法律など無い、勝手な価値判断である事を自覚するべきじゃなぁいのかね?」

 

「私はもういいから……」

 

「師範、大丈夫です。貴方ねぇ……それが目上の人に対する態度?」

 

師範……?あのお婆さんは一体何者なのだろうか…恐らくはこれから出会う事も無いと思われるが。剣道でもやってるのか?

 

ちなみにさっきうるさかったOLだが多少声のボリュームは落ちた。まぁだからなんだと言う話だが。

 

「目上ねぇ……ただ歳を取っただけの人間の事を目上とは言わなぁいのだよ。目上とは立場が上の人間を指す言葉……そう、私のようなものに対して使うのだよ。」

 

なぜ毎度ロズワール形式の喋り方で話すんだこいつ。リゼロを見る高円寺とか想像がつかないのだが……。

 

「貴方高校生でしょ…正しい根拠を言いなさいよ!」

 

「もういいから……ね?」

 

OLはムキムキウッキーと猿のような表情で顔を真っ赤にしているがお爺さんが窘めている。立場としてそれはどうなんだと思うが……。

 

「あの……お婆さん、さっきからずっと辛そうにしているみたいなの。席を譲って貰えないかな…社会貢献活動になると思うんだ?」

 

そう言ってOLの用語に回ったのは櫛田桔梗。この隣のサイコパス堀北と同じマンモス中学校の出身であり、クラス一つの人間関係をぶっ壊して機能停止に追い込んだ八方美人系少女だ。これだけ聞くとこっちのがサイコパスに聞こえるが、地雷女なだけでサイコパスではない。ただのどこにでも居るメンヘラだ。

 

「悪いけど興味が無ぁいのだよ。それともう一つ、席を譲るだけならば他のものたちは放っておいていいのかね?」

 

高円寺はこちらに矢印を飛ばしてきた。何処かの学園都市1位では無いのでこのベクトルを動かす事は当然出来ない。

 

「皆さん、どうかこのお婆さんに席を譲って貰えませんか?お願いします!!」

 

チャンスだ。この隣にいるサイコパスから離れられるチャンスだ。他の奴に取られる前にさっさと逃げよう。そうしよう。そして堀北(妹)、お前は絶対許さねぇからな。

 

「こちらへどうぞ。」

 

俺はそう言い席から退こうとする……が、忘れてはならない。バスの通り道と俺の席の間にはこの自己中サイコパスが居ることを。

 

「あの……通して下さい。」

 

「なんで貴方のエゴの為に私が無駄な労力を割かなくては行けないのかしら?」

 

この会話が1番無駄な労力じゃないですか?流石に人の目のあるここでそんな発言は出来ない。俺はアイツらと違って至ってここら辺は常識人だからな。

 

「では貴方は私にずっと隣の席にいて欲しいですか?そう思うならそのままで結構ですよ。」

 

と、言うわけで神経を逆撫でさせてここから退避することにした。これならば無問題であろう。

 

「はぁ……つくづく性格が悪いわね貴方。池の奥底に溜まっている泥の様ね。」

 

なんか口では色々言いながらもどいてくれた。ちなみに周りはドン引きしている。勿論俺ではなく堀北にだ。まぁ当然だろう。高円寺2号だと皆思っているはずだ。ちなみにお婆さんはちょっと座りたくなさそうにしている。悪いがガン無視で座ってもらおう。あんな地獄は嫌だ。

 

「さ、どうぞどうぞおばあさん。」

 

「あ、……あぁ、ありがとねぇ……。」

 

お婆さんはなんとも言い難そうな顔でそのまま座って言った。俺はそのまま道を進み出入口に1番近い位置を陣取る。どうせあと少しで着く事だろう。ちなみにバスの中はあんな事があったので空気が凍り付いていた。当然である。

 

『東京都高度育成高等学校前、東京都高度育成高等学校前です。』

 

バスのドアが空いた瞬間に俺はなるはやで学校へと向かった。理由?お前さっきのあれ見て高円寺や堀北と関わりたいか?つまりはそういう事だ。そしてこの学校での立ち回りを考え中の俺は一先ず櫛田桔梗と接触するのも後回しだ。歴代の先輩転生者さん達も過信と軽率でぶっ殺されている。まぁ俺は転生してた訳では無いんだけどね。

 

春の訪れを表す桜の花びらが散り、感慨深く学校へと向かう生徒もいる中で俺は競歩のオリンピック選手並の速度で歩いてクラス掲示板の元へと行く。

 

「うーん、まぁやっぱりDクラスか。しゃーないしゃーない。」

 

俺がDクラスなのは父親も言っていた気がする。曰く「空いている枠がそこしかない」とか何とか。やっぱり俺を捩じ込んだのはギリギリだったんだろうとわかる発言だった。それならもうねじ込まなくて良かったんだけどな。

 

こうして、俺の学園生活が始まった。

 




オリ主心の声

→堀北……自己中サイコパス
→高円寺……文武両道・才色兼備・天上天下・唯我独尊・自由人
→櫛田……メンヘラ保身地雷女

こう見てみると第一印象は散々ですね。


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自己紹介

俺が教室に着くと既に何人かの生徒は着席していた。席順は前のホワイトボードに貼ってあるようで、しかも番号や性別に寄らないランダムなものだと思われる。さすがは最近の国立高校、黒板では無くホワイトボード、しかもジェンダーレスや平等なんて事を考えているのかもしれない。フェミニストは嫌いだが平等なのは社会としては大事なのだろう。最も見せかけだけだろうが。

 

さて、ここで突然だがまたもや俺の問に答えて欲しい。いつもワンパターンなのは……まぁ……ほら、コミュ障だから許して欲しい。

 

問 社会とはどうあるべきなのか。

 

世の中は何時だって強者が強者であり続け、弱者が弱者であり続ける為に出来ている。例えこの世界が真に平等になり得たとしてもそれは均等では無い。ただ力の差を明白にするだけであり、それは真の実力至上主義の社会への道を更に加速させるのだ。

 

世の中で天才と言われる人間は所詮、意識も定かで無く、記憶にあるか無いかの時期からそれについて植え付けられているに過ぎない。かの有名な福沢諭吉の『学問のすゝめ』も、生まれ持った際の才能の差は無く、平等である事を言い得ている。ここでの平等とは均等と同義である。

 

仮に天才は生まれ持って決まるものだと言い張る人間が入ればそれは幼少期の親の教育、或いは今までの努力がなし得た技に過ぎないのでただただ傲慢であるとしか言えないだろう。

 

 

話を戻そう。この世の上の地位、つまり強者達は当然ながらその位置から降りる様な真似はしたくない。だからこそ『表向き均等のように見せた自分達に有利な世界』が作りたいのだ。そしてその為の体のいい言葉が平等である。きっと社会は永遠に平等になり得ない。均等にもなり得ない。社会主義ならば社会的立場としては均等に近しくなるがそれでも多少の格差は有るだろう。

 

社会というのはJKが言う「ノリ」や「雰囲気」と何も変わらない。この世界にいる沢山の人間が保身のために生み出した生み出した常識という意味の無い実態だ。そして「ノリ」や「雰囲気」と同じく、異端と決めつけた誰かの人生をドロップアウトさせる事も出来る恐ろしい者だ。1種の猛獣、或いは怪物と言ったところか。それを権力者達は自分に都合がいい様に、『平等』という人参をぶら下げて仕向けているに過ぎない。世の中甘い話等無いのである、人というのは当然欲の塊なので、自分の利益を考えるのは当然である。

 

結論を言おうか。社会とは何か。沢山の人間の欲が生み出した猛獣であり、この世で最も恐ろしいモノである。

 

 

社会を敵にまわして勝つ方法など存在しない。例えば某兵庫県議会の議員は会見で大号泣してマスコミの反感を買い、世間体に避難されて社会からドロップアウトした。そしてそれを消したのは社会の『常識』に他ならない。彼は蛮勇にも社会と戦って負けたのである。

 

 

さて、皆さんはなぜいきなりこんな社会について長々語り出したのか疑問に思っている事だろう。中には校長先生波の長さで爆睡してしまった方もいるかもしれない。そいつはビンタな。

 

そしてここで1つ忘れないで欲しい。学校とは社会の縮図である。つまりさっき言った事は学校生活でも適用される。

 

 

つまり何が言いたいのかというと、世間体と言うのは基本的に大事なものであり、それをコントロール出来るという事は他人を社会から自由自在にドロップアウトさせられる事と同義である。そしてそれができるのが櫛田桔梗だ。まともな生き方をしてると敵に回した瞬間厄介な事この上無いのである。俺が櫛田桔梗という少女の本性を知っている以上まともな友好の道は無いだろう。

 

と、言うわけで櫛田の対処法は何個かあるが、そのうち何個かを初期の段階で実践する必要があるだろう。

 

例えば高円寺は櫛田桔梗に一切で負ける事が無いだろう。それはスペック云々の問題では無く、彼が『非常識』、つまり社会的立場、或いは世間体の一切を捨てているからに他ならない。彼ほど極端では無いにしろ、社会的立場等不必要だという根底概念さえ持てばまず自分の身の安全は確保できる。

 

次に誰かしらを櫛田の様なポジションに送り込めればその時点で攻略可能なのだが……まぁこっちはかなり難しいだろう。それに現状櫛田を排除する予定は無い、こちらが潰されないようにすればいいだけだ。排除したい奴は現状堀北一人である。

 

ちなみに俺の席は廊下の出入口の最も近くの席……の一個前に位置している。登下校は楽そうで何よりだ。櫛田対策で不必要に人と関わらない方向に舵を切った俺にはちょうど良いのかもしれないな。どうせDクラスの八割はゴミだしな。2000万プライベートポイント貯めたいぐらいだぞ本当に。

 

幸い教室に櫛田桔梗は居ない。堀北……今もうゴミ北でいいか。ゴミ北も居ないので今のうちに会話のシャットダウンをさっさとしてしまいたい所だ。

 

周りから見て極力穏便に、かつ会話をシャットダウンする方法、それ即ち仮眠である。寝てる相手を初対面から起こせば勝手にあっちの評判が落ちる。絶対に起こして話しかけはしないだろう。幸いにも、英才教育(笑)のせいで普段から睡眠負債は溜まっていた為、早々に眠りに着く事が出来た。資料は予め頭に叩き込んでるし問題は無いだろう。

 

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「おい、先生来たぞ、起きろ。」

 

「……んぇ?誰?」

 

俺は爆睡していた所を目の前の奴に起こしてもらう事で、説明中に寝てる、なんてことは無く事なきを得た。自分でも思っていたより寝ていたらしい。幸いにもここは廊下に最も近い席なので、遠くから先生が来てるかどうかはひと目でわかる。それにしても目の前の奴は……初対面の俺をわざわざ起こしてくれたのか、良い奴だな。

 

「ん?あぁ、自己紹介がまだだったな。俺は三宅明人だ。起こしちゃまずかったか?」

 

「いや、普通に助かった。俺は天野聖だ。セイントなんてキラキラネームをつけた父親は絶対に許さん。よろしくな。」

 

「大変だな……よろしく。」

 

目の前のキャラは三宅明人。原作では綾小路グループの1人にして、Dクラスの中にいる数少ないまともな人間、つまりは先述の残りの2割だ。確か弓道部に入るんだったか……今のうちにこちら側に引き込んでしまいたい所だな。よく分からんモブもいるし基準はキラキラネームに引くか引かないかにしておこう。

 

そのまま教室の前の扉がガラガラと音を立てる。そう言えば原作では天井に監視カメラがあるんだったな。俺は寝起きなので首を回すフリをして上を見上げると、天井の四隅に監視カメラが設置されているのが分かった。天井は白なのに対して監視カメラは黒、隠す気はサラサラ無さそうだ。

 

 

そして胸元だけ開けたスーツを着た20代後半と見られる女性が、登校時間のチャイムが教室内に響き渡るタイミングで教卓の前に立った。

 

彼女は生真面目なスーツの着方をしているように見えるが、何故だか胸元のボタンだけ空いているせいで谷間が若干見えている。サイズが絶対にあって居ないと思う。男子高校生を悩殺する気なのかこの人は……コイツらまだ15だぜ?

 

ちなみに皆さんお察しだとは思うが一応外見の話はしておこう。鳶色の長い髪をポニーテールのように垂らし、黒タイツとスーツのミニスカート、何故か胸元の空いたスーツといった感じだ。まぁ恐らくは某担任だろう。目は圧が強く、正直あんまりタイプじゃない……と言っても別に恋愛する訳では無いのだが。

 

それを見た生徒達は、資料から目を離したり、仮眠から目を覚ましたりしていた。須藤と見られる赤髪の奴がまだ寝てる事や、高円寺が爪研ぎをしている以外は概ねちゃんと話を聞く姿勢だろう。高円寺は攻撃と命中率を1段階上げているがここは目と目があってもポケモンバトルはしないと思う。

 

「新入生諸君。私はこのDクラスを受け持つことになった茶柱佐枝だ。担当科目は日本史だ。当校では卒業までの三年間クラス替えはしない。よって、私たちは三年間共に過ごすことになる。よろしく。今からおよそ一時間後に入学式が行われるが、その前に当校の特殊なルールについて説明をしたいと思う。まずはこの資料を配布したいので、前の生徒は後ろの生徒に回してくれ。」

 

 

 そう言いながら茶柱先生は人数分の資料を取り、配布する。

 

さて、茶葉佐枝、このDクラスの担任であり、過去に縛られて誰よりも下克上を望んでいる教師だ、ちなみに個人的には佐倉の1件しかり、軽井沢のイジメを知らなかった件しかり、綾小路を脅した件しかり、原作準拠ではかなり使えない教師という判定を下している。あと偉そうなのと圧が強いのが単純に苦手なタイプだ。成長を遂げた世界線の堀北みたいだな。

 

 

彼女を更迭するのも場合によっては視野に入れていく必要があるだろう。或いはプライベートポイントを払って教師をトレードさせるか。一体いくら掛かるんだろうか……とは言ってもあんまり学生側から見たら意味は無さそうなので案外安いのかもしれない。

 

この高等学校は、この国に47個しかない国立の高校である。そしてここだけは全国各地にある国立の高等学校とは異なったルールが敷かれている。このシステムの学校があるのは他の国だとアメリカ、イギリス、ドイツ、ロシア、中国、イタリア、フランス、ブラジル、オーストラリアの10ヶ国しかない。

 

「まずは大前提として、生徒は在学中、学校が用意した寮で寝泊まりしなくてはならない。そして、生徒は在学中、特例を除き外部との接触を禁じられている。例えば中学時代の友達や、家族との連絡は不可能という訳だな。さらには、学校の敷地内からの外出も禁じられている。

 

勿論破ればそれ相応の罰則が下される。だが心配する必要は無いぞ?この学校がまた生徒に不満を覚えさせないように手配されているのも事実だ。この学校にはスーパーやコンビニは勿論カラオケやシアタールーム、カフェやゲームセンターなんかも存在している。」

 

ちなみにこれを聞いて割を食うのは葛城だ。まぁあんなハゲの事はどうでもいいか。そして俺たちの手元に次は学生証端末が配布される。これの録音は……間に合わなそうだな。

 

 

 

「次はSシステムについての説明をする。今お前たちに今から配る学生証端末。このカードにはポイントが振り分けられており、ポイントを消費することによって敷地内にある施設の利用や売られている商品の購入が可能だ。

 

まあ、クレジットカードだと思えばいい。敷地内で買えないものは無く、また学校内でもそれは同様だ。学生証に振り込まれているポイントは1ポイント=1円の計算になっている。

 

ポイントの使い方は簡単だから迷うことはないだろう。もし困ったらその場にいる職員に尋ねるように。それからポイントは毎月一日に振り込まれる。今現在、新入生のお前たちには10万ポイントが振り込まれているはずだ。」

 

 

 茶柱先生の言葉に、大半生徒はざわついた。

 

 彼女の言う通りなら、オレたちは現時点で、10万ポイントを得ているのだから無理もないだろうが。

 

それにしても電子マネーか……ハッキング対策はしっかりしてあるんだろうか。いやまぁしてないと困るんだけどさ。仮にも国立だし心配要らんか。

 

 

あるものは喜び、あるものは疑い、あるものは爪を研ぐ。その生徒達を、茶柱先生はおかしそうに笑った。最後のは関係ない気もするって?気にするなよ。

 

 

 

「意外か? 最初に言っておくが、当校では実力で生徒を測っている。偏差値が高い高校入試をクリアしてみせたお前たちにはそれだけの価値があるということだ。

 

若者には無限の可能性がある、その評価のようなものだと思えばいい。ただし、卒業後はどれだけポイントが残っていても現金化は出来ないので注意しろ。仮に100万ポイント……百万円貯めていたとしても意味は一切ない。

 

ポイントをどう使おうがそれは自由だ。そうだな、例えば男子だったら最新鋭のゲーム機が売られているし、女子だったら様々な服屋がある。自分が使いたいように使え。逆に使わないのも手だな。もしいらないのならば友人に譲る方法もある。

 

……ああ、苛めはやめろよ? 学校は苛めに敏感だから、もし発覚したらそいつは問答無用で退学処分となるからな。では、良い学生ライフを過ごしてくれ。」

 

 

茶柱先生はそう締め括って、やることはやったとばかりに歓喜の声に包まれる教室から立ち去った。ちなみに俺はこの茶柱先生が原作では龍園が軽井沢を虐めていた際に虐めに対応して居なかった事は知っている。教師として虐めのガン無視とかただのクズだと思う。本当に。もし仮に冤罪で虐められている奴が居たとしても見捨てるだろう。

 

さて、駒の少ない現状真っ先に軽井沢を虐めたい所だが初日に気付いてるのは色々頭おかしい……いや、近くの中学校って事にしとこ。どうせ大方住んでいる地域の特定は出来てるんだ。それにこの学校で俺はAクラスを目指す事よりも退学しない事よりも楽しく生きる事を優先したい。美少女を脅すとか最高に愉悦を感じられそうだ。ウンウン。

 

 

ちなみに補足をしておくと東京都高度育成高等学校の最大の魅力は、就職率、進学率共にほぼ百パーセントの所だろう。国主導で作られたこの高校は、生徒が望む道に応えるのだとか。

 

事実、学校側はそれをホームぺージを通して大体的に告知しているし、卒業生の中には世の中を賑やかせている人……うちの父親なんかがいる訳だが、その実態はAクラスだけしかその権利が貰えない事であろう。まぁ最も俺はどのクラスで卒業しよう行先は会社の社長である。強いて言うならいい大学に行くのに使うぐらいか。こちらも受験勉強をしっかりすればそこそこの所には行ける。なんの問題も無いだろうが。

 

この学校にしてもそうだ、社会にあるもの全てには、上手い話に裏がある。偽善者は何処まで行こうとやる事は己の心を満たすエゴだし、善人なんてのも存在しない。自分のエゴをし続けているに過ぎない。

 

 

茶柱先生にしてもそうだろう。ゴミ北にしてもそうだ。それ自体を否定するつもりは無いが、価値観と合わないものは合わないのだ。

 

ちなみにDクラス内だが……。

 

 

「ねぇねぇ、後で一緒に買い物行かない? 持ってこれた私物はかなり少ないし、服でも見に行こうよ!COOLUAのチョコも食べたいしさ。」

 

 

「うん! 今だったら何でも買えるしね。……私、この学校に入学出来て良かったな〜。絶対に落ちたと思ってたもん。私バカなんだよねぇ〜。」

 

 

「私も私も〜!!この学校入れて本当によかった!」

 

 

「なぁ、さっきの先生の言葉が本当ならさ。最新鋭のゲーム機が売られてるんだろ? ちょっと見に行かねぇか?俺ポケモン買いてぇ!」

 

 

 

「もちろんだ。最近出た第14世代のポケモン売っていると良いなあ……。すぐに完売になったからな、お前どっち買う?俺はαかな。」

 

 

「お前もか? ならさ、一緒に買って一緒にプレイしようぜ!俺はβ買うわ。」

 

 

十万円という大金を得た喜びに浸り、浮き足立つ沢山の生徒。この時期にわざわざ無能と関わるメリットは無い。賭けと称してプライベートポイントを巻き上げてもいいが普通に訴えられそうだしな。

 

 

「皆、ちょっと良いかな?」

 

 

大半生徒たちが声主に視線を向ける中、そこには数多の視線を身に浴びながらも堂々とした態度を崩さない一人の男子生徒が居た。俗に言う爽やかイケメンタイプである。だいたいこう言う奴がサッカー部なのだ。まぁ彼はボールと友達な訳でも超次元サッカーをする訳でもエゴイストでも兄の心臓が胸にある訳でも無いのだが。

 

 

「僕らは今日から三年間共に過ごすことになる。だから自己紹介を行って、一日も早く友達になれたらと思うんだ。茶柱先生の言葉を信じるなら、入学式までに一時間はある。どうかな?」

 

本来、原作では入学式の後だった気がするが、こうしてみると取捨選択の有無がないな。逃げるつもりだったがまぁ……乗り掛かった船だな。タイタニック号じゃない事を信じよう。

 

 

「賛成ー! 私たち、まだお互いの名前すら知らないしね。」

 

 

 

 一人の少女が賛同したことによって、流れは前に前にと進む。多分あれが軽井沢だな。それにしても虐めっ子上がりでこの合せの上手さって凄くね?

 

 最初に自己紹介をしたのは、やはりというか発案者の少年だった。そして多分こいつが平田だな。

 

ちなみに俺は自己紹介はあんまりしたくない。下の名前がキラキラネームだからだ。察して欲しい。ここはDクラス、三宅みたいに誰しもが許容範囲が広い訳では無いだろう。

 

「僕の名前は平田洋介。中学の時は皆から洋介って言われていたから、気軽に『洋介』って呼んでくれると嬉しいかな。趣味はスポーツ全般だけど、その中でもサッカーが好きで、サッカー部に入部する予定だよ。よろしく。」

 

 

 拍手喝采。

 

 イケメン×爽やか×サッカー×クラスリーダー×陽キャ=テンプレートの公式を見事に持っていらっしゃる。属性過多でありながら系統が揃っており綺麗なバランスのある属性だな、と前世の記憶の無い俺ならば言っていた事だろう。

 

平田洋介、陽介では無く洋介、昔なんやかんやあったせいで極度の平等中毒者になり、他人を斬ることに反対し続ける人間だ。コイツクラスの雰囲気的に絶対Bクラスに送るべきだったと思うんだけど学校側は問題を起こしたせいでDクラスにぶち込んだ。ちなみに彼がこのままな間はクラスの足切りが出来ないのでスペック云々を差し引いても割と邪魔だと思っている。神崎と交換所望だな。

 

 

ちなみに拍手自体は皆送っているが、女子生徒の拍手の度合いが凄まじい。今のたった数秒の自己紹介で、彼の玉の輿を狙う女はおいくらかおいくらか。世の中は顔面偏差値に満ちている。

 

 

「もし良ければ、端の方から自己紹介をお願い出来るかな? えっと、そこの君。頼めるかい?」

 

そう言い隣の少女を指名する。なんか幸薄そうな顔してるな……貧乳ゆんゆんみたいだ。誰だっけこの人。

 

「え、わ、私……ですか??」

 

 

「うんそうだよ。気を悪くさせたらごめんね。」

 

イケメンスマイルと場の雰囲気でゴリ押しに掛かったなコイツ…まぁ助けてやる義理も無いか。

 

そのまま数秒、数十秒と場の空気が過ぎていく、彼女はあがり症なのだろう。この場の雰囲気は平田が最高にして最悪のパスをしたせいで自己紹介のハードルが上がり過ぎている訳だから無理もないが。他の周りも初手から突っ込んだ事はしたくない、か。

 

仕方ない。クラスでの立場なんか要らない俺は泥にどれだけ塗れようとなんの問題も無い。特に助ける価値は感じないが助けに入るか。

 

「平田……だったか。ちょっといいか?悪いがトップバッターは俺に任せてくれないか?ここら辺でお遊びは終わりだって所を見せてやりたい。」

 

ちなみにここで大事なのはいかに上手い自己紹介をするかでは無く、いかに周りからドン引きされる自己紹介をするかである。どうせ大半は何も見てないだろうしな。俺の狙いポジションが高円寺に近しい時点で特に問題はないだろう。さて、腕の見せ所だな。

 

「お遊び……??よく分からないけどそれじゃあお願いしようかな。」

 

周りの女子の一部はこの時点で少し引いているが、ドラゴンボールネタを知っている男子からは割と期待された視線を送られている。ムードメーカーだと思われているのかも知れないな。まぁ悪いが……その幻想(イメージ)はぶち壊す事にするが。

 

「我が名はセイント!父親にキラキラネームを付けられて復讐を誓い、最強を目指すもの!この出会いは運命の出会い!以後よろしく!……というわけで次の自己紹介頼むわ。」

 

俺の自己紹介を聞いた反応で最も多かったのはドン引きだ。特に女子に多かった。引いてない女子は片手で数えられそうだった。ちなみに次の自己紹介を押し付けた相手は三宅である。この手順で回せばあの自己紹介をどもった少女は折り返し半分程度になる。しかも彼女の前に高円寺も居ることなので、まぁ失敗しても俺と高円寺がやばすぎてなんとかなると見た。

 

時点で多かったのはヤバいやつを見る目だ。まぁそりゃあんな厨二病MAXな自己紹介をしたら当然である。しかも自分の事をセイントとか名乗ってるしな。

 

そして何故こんな事をしたかを察したごく一部は表情は様々だった。人数にして8人ぐらい……思ったよりはいたな。

 

何考えているか分からん綾小路と無関心の極みの高円寺を除いてこの三パターンの反応で留まった。てかみんな紅魔族って知らねぇのか?

 

「入学初日から自分の身を犠牲にして助けるなんて……凄いなな、お前。」

 

そして目の前の彼、三宅はどうやら気付いていた様だ。

 

「なんの事だ?」

 

俺は恍けることにした。周りが聞いているかもしれないしな。

 

「まぁそういう事にしておく。」

 

それだけ言うと俺も三宅も自己紹介を見る方向に視線を戻した。

 

 その後も自己紹介は続く。

 

 次に立ち上がったのは、一人の男子生徒だった。

 

 

「俺の名前は山内春樹。小学生の時は卓球で全国に、中学時代は野球部でエースで背番号は四番だった。けどインターハイで怪我をして今はリハビリ中だ。よろしくぅ!」

 

山内春樹……特に語ることも無い雑魚だが原作ではネタが多い。山内テンペスト、ブラックルーム、泥掛け山内、坂柳有栖を倒した男、坂柳櫛田綾小路堀北と一人でバトルした男等様々な呼び名がある。Aクラスにいる戸塚弥彦と顔含めよく似てる気がする。

 

ちなみに彼は嘘つきの小心者だ。なんか顔含めて何処かの世の中クソだなが信条の自己中キャベツ刑事にそっくりに見えるのは俺だけだろうか?

 

 

「じゃあ次は私だねっ!!」

 

来たか、この学校である意味最強の奴。メンタル最強メンヘラ地雷女。

 

 

「私は櫛田桔梗と言います。中学からの友達は一人もこの学校に進学していないので一人ぼっちです。だから早く皆さんの顔と名前を憶えて友達になりたいと思っています。」

 

ダウト!堀北は同じ中学校じゃねぇか!まぁ勿論この場で言うつもりは無いのだが。

 

 

「私の最初の目的として、ここにいる皆さんと仲良くなりたいです。是非、皆さんの連絡先を教えて下さいねっ♡ 」

 

 

 

拍手喝采。男子からは雄叫びが上がる。さっき自己紹介していた彼女募集中の池なんか目がハートだぞ。マジで。

 

雄叫びをしていた1部の男子を見た女子はドン引きだった。初日から崩壊しかかってるのはどうなんだ一体。

 

そしてそのまま自己紹介は続いていく。

 

「それじゃあ次の人、お願い……出来……る……かな?」

 

 

 

司会役としてサラッとリーダーシップを披露した平田は次の生徒に促すが、その生徒は真正面から睨み付けることで対抗した。

 

髪の毛を真っ赤に染め上げた、如何にもな不良少年。さっき爆睡していた須藤だろう。

 

 

「俺らはガキかよ。自己紹介なんて、やりたい奴だけやればいいだろ?あ!」

 

出たよヤンキー、俺の嫌いなタイプ。

 

須藤健、原作では恐ろしい成長速度を遂げるヤンキーだ。ちなみに元々は短期かつバカ、運動神経だけはいいがそれだけだ。なんというかとあるバスケ漫画の赤坊主に似ている気がする。

 

「僕に強制させることは出来ない。不愉快にさせたら謝りたい。」

 

 

だが平田はサラッと謝罪の言葉を述べて、そう言って頭を深く下げた。

 

 

「なによ、自己紹介くらい良いじゃない!」

 

「先生の説明中も爆睡していた癖に!」

 

「ガキって言うけど、アンタの方がガキじゃない!」

 

「桜木花道のパクリみたいな髪型している癖に!!」

 

 平田の謝罪と同時に彼を擁護する声が須藤へと突き刺さる。ちなみに全部女子だ。なんというか……地雷原でタップダンスしてないかあいつら?

 

もしこれからの学生生活の立場考えるのなら須藤はこんな事をするべきでは無いだろう。クラス内での立場は無いも当然になる。

 

 

「うっせぇ。俺は別に、仲良しこよしするためにここに入ったわけじゃねえよ」

 

そしてそのままは席を経ち教室を出ていった。それに追随するようにして数名の生徒も立ち上がる。自己紹介をしたくないのだろう。それっぽい人間はゴミ北、佐倉、長谷部、幸村ぐらいか。アイツらすげぇな。いつの間にこんな度胸を持つように……ってそうじゃないそうじゃない。

 

 

 その後も着実に自己紹介は続いていく。

 

まぁモブが続々続くが、次が一番大事だろう。大喜利としては、だが。

 

「私の番か……ふむ。私の名前は高円寺六助、かの高円寺コンツェルンの御曹司だよ。可愛いガール達に囲まれる学校生活を所望していぃるよ。」

 

なぜ毎回ロズワール口調なんだろう……リゼロ好きなんだろうか?そして貧乳ゆんゆん事井の頭心も無事自己紹介に成功し、そのまま自己紹介は続いていく。そして最後に……彼の番になった。

 

「じゃあ最後に、そこの君。お願い出来るかな?」

 

 

「……えっ? オレか?」

 

 

「うんそうだよ。」

 

彼は綾小路清隆、最強にして最高。天才にして怪物。無機物して虚空。ホワイトルームの最高傑作の主人公だ。まぁ一言で言うならヤベェやつ。

 

 何十人分もの視線が綾小路の方を見る。失敗する自信しかないな。

 

綾小路はゆっくりと立ち上がる。

 

 

 

「えー……えっと、綾小路清隆です。趣味は……えー、特にありません。……好きな事とかも……えー、得意なことは特にありません。えー、……皆と仲良くなれるように頑張りたいです。……えー……よろしくお願いします。」

 

 

 

「よろしくね綾小路くん。一緒に仲良くなっていこう。」

 

 

向けられる同情の眼差し。平田の言葉がさらに綾小路の心のダメージを加速させている事だろう。

 

そして俺は綾小路とのファーストコンタクトに頭を抱えながら、そのまま周りの八割からキチガイを見る目線で見られるのに入学式まで耐えるのだった。

 

行動には責任が伴う。そう感じた瞬間だった。



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チュートリアル

オマケ…主人公のプロフィール

高度育成高等学校学生データベース (4/7時点)
アマノ セイント
氏名 天野 聖

学籍番号 S01T004771

誕生日 10月19日

評価

学力…A

知性…A

判断力…A-

身体能力…A

協調性 B-


面接官コメント

学力知力身体能力全てに置いて好成績を残している。また、試験の際も余力を残しているように感じられた為この評価よりも上である可能性も考慮される。

また、面接の際も最初は多少消極的な部分はあったものの、将来像もハッキリしており、コミュニケーション能力も平均よりも上であると思われる。

他にも、調査書には様々な多彩な技能資格、検定が乗っており、レベルの高い今年の受験生の中でも総合力では頭一つ抜けている印象を受ける。

Aクラスへの配属予定だったが、理事長判断によりDクラスへの配属とする。その高いポテンシャルを持って周りを引き上げてくれる事を期待する。




入学式はアホみたいに長い校長先生の話だったので割愛する。だいたいあの手の話に意味を感じられる様な事は1ミリもないだろう。無用な長物って奴だ。そして入学式を終えて今教室に戻ってきたという訳だ。この学校の理事長たる坂柳理事長は出てこず、前島校長とかいうハゲて太ったいかにもなオッサンが長話しているだけだった。

 

「さて、これにて今日は解散となる。各自注意事項を守るように、以上だ。質問はあるか?無いな?……よし、無いな。」

 

本当に必要最低限の言葉だけ残してそのまま茶柱先生は職員室へと帰っていった。最後の発言には皆ドン引き……する事も無く浮かれていた。こいつらエゴイストか?ここはいつからネオエゴイストリーグになったんだ?

 

「俺は一人で買い物に行こうと思うが、お前はどうする?」

 

そんな事を考えていると目の前の三宅が話し掛けてきた。どうやら友達認定されてる……よな?これ。

 

「ちょっと色々気になる事もあるからな。俺も今日は一人で回ろうと思う。連絡先交換しとくか?」

 

「そうだな。……ところで気になる事ってのはなんだ?」

 

とある「俺か、俺以外か。」という有名な言葉を残したホストも顔負けのさり気なさで俺は三宅の連絡先をゲットする。

 

「うーん……まだ分からんからなぁ……ちょっと様子を見させて欲しい。またなにか分かったら連絡する。」

 

友人関係の作成は大事な事だが、Dクラスの大半はゴミだし取り敢えず放置でいいだろう。目の前の三宅と国交を持てただけ棚ぼただと考えよう。

 

俺はバックを背負いそのまま教室を出る。狙いは勿論古今東西の無料品漁りだ。

 

さっさと種明かしをしよう。この学校は毎月10万プライベートポイント貰える訳では無い。毎月クラスポイントというポイントに応じたプライベートポイントが貰えるだけだ。そしてそのクラスポイントは実力、言い換えるならば日々の授業態度やテストの点数なんかで決定する。ちなみにうちのクラスは不良品のDクラスなので原作通り行ってしまう場合は、そんなものに期待するだけ無駄だと思う。

 

勿論原作通り行けば、だがな。傲慢不遜かもしれないがまだこの時期ならばいくらでもやりようはあると思う。原作では0とかいう目も当てられない状態だったが、多少は残せるはずだ。

 

とはいえやらなければ行けない事は山積みだろう。イヤイヤではあるがこのクラスを率いる事も打診しなければいけないし、軽井沢の駒化に綾小路の懐柔、櫛田も何とかしなきゃ行けない上にプライベートポイントを稼ぐ必要もある。二次なんかでは賭けシステムがあるのだが実際はどうなのやらである。

 

他にもとにかくデータというデータが片っ端から欲しいが、それ以前に生活用品の確保が必須だろう。俺は近くにあるコンビニに入る事にした。したのだが扉の前で何やら誰かしらが揉めているようだ。

 

この世界のこういう時の鉄則は撮影、それに尽きる。情報の使い方以前にある無いで話は変わってくるからな。

 

「何すんだ、この野郎!?それは俺が買ったファ王だぞ!」

 

だがタイミングが悪かった。赤髪のヤンキー、多分須藤と誰だか知らない上級生が喧嘩しているのだ。てかファ王ってなんだよ。俺の知ってる世界と若干ズレているのかもしれない。我がカップラーメン生涯には1片と言わず10片ぐらい悔いがあったけどな。

 

 

コンビニ前のコンクリートにはカップラーメンの麺と汁が散乱してしまっている。車を止める訳では無いので想像以上に敷地が狭くなっているのは新鮮な光景だな。

 

上級生側は3人。彼らが顔付きでカップヌードルをダメにしている所は既にしっかり撮影されている。会話内容と雰囲気からしてもCクラス、或いはDクラスって所だろう。

 

どうにも3対1の多い須藤である。原作での冤罪被せも3対1だったし彼は何かそういう運命なのかもしれない。

 

「三年の俺様たちに随分な口の利きようだなぁ!オイ!今年は生意気な一年が入ったもんだぜ。生意気のくせに腰抜けみたいだがなぁ?」

 

三年生たちはそういいながらケラケラと笑い、須藤を挑発する。彼らの挑発は1ジンバブエドルすら満たないレベルの安さだろう。

 

「あ? いい度胸じゃねえか!」

 

そしてそれに乗る須藤である。彼のメンタルは時限バカ弾なのかもしれない。

 

「おー怖い怖い。お前クラスはなんだ? あー悪い。……当ててやるよ──Dクラスだよな?」

 

 

「だったら何だよ、クソが!」

 

 

「聞いたかお前ら? Dクラスだってよ!」

 

 ゲラゲラと嘲笑うする彼らだがこれでDクラスだったらただのブーメランである。恐らくは三年Cクラスか、よっぽど自覚の出来ない3年Dクラスと言った所か。

 

ちなみにコンビニから出たそうな他の利用客や、本来ならば明らか営業妨害で訴える事が出来そうな店員さんは困ったような表情を浮かべているが特に何もしない。関わり合いになりたくないのだろう。

 

 

それにしても男女共に顔面偏差値が高いな。店員さんも可愛いし……俺この学校に入れて良かったぜ……目から血涙が……ううっ。

 

それにしてもヒントだらけだなアイツら。多分上級生のルールに抵触してんじゃねぇの?知らんけど。

 

「可哀想な『不良品』のお前らには、特別に今日はここを譲ってやるよ。感謝するんだな」

 

 

「逃げんのか、オラ!」

 

 

「弱い犬程よく吠える。せいぜい最初で最後の楽をするがいいさ。地獄を見るのはお前らだからな!」

 

 

そう言い残し、二年生たちは嗤いながらコンビニを出て行った。さて、プライベートポイントを稼ぐいい機会と見た。残念ながら急すぎて契約書は無いので音声を録音する形にして、後日書面を書かせる事にしよう。

 

 

「ちっ、クソがよ! 入学早々何だってんだよ!」

 

 

確かあのカップラーメンは原作通りならば後で綾小路が片付けたはずだ。無視していいだろう。今綾小路と関わるのも悪くないが目先の利益を優先させてもらう。俺は彼らを追いかける事にした。ポケットの携帯の録音はオンにしておこう。

 

 

「ちょっと待ってくださいよ先輩達〜僕とお話しませんか?」

 

ちょうどいい感じに人の少ない所へ来てくれたので助かった。それにしてもこんな所に公園があったんだな……地図には載ってたっけな。

 

「あ?なんだよお前は!!」

 

「頭悪そうな顔だなぁ!おい!」

 

「ブサイクだな!お前モテねぇだろ!」

 

開幕早々の言葉がこれか……彼等のあだ名は三馬鹿に決定でいいだろう。そして多分こいつらは俺より頭悪いしモテないだろう。取り敢えず須藤の時みたいに乗っかったフリでもしておくか。

 

「な、なんだとぉ!巫山戯んな!おい!取り消せよ!」

 

周りに聞こえないように怒った口調と怒った顔の表情を作ってみせる。お粗末なものだろうが、コイツら相手ならこの程度でも問題無いだろう。

 

「ククク!!お前もDクラスだな?不良品のゴミみたいな要素が詰め込まれてるぜ!」

 

この中のリーダーと言わんばかりのやつが目の前に出てきた。黒髪マッシュなのが尚更ムカつく。なんというか、成長の方向性を間違えた池みたいな奴だな。

 

「お前らだってDクラスだろ!!それブーメランって言うんだぜ!」

 

あくまでも今回大事なのはコイツらを煽るだけ煽って録音で優位に立つことだ。焼け石に水程度かもしれないがコイツら相手にはその程度でいいだろう。

 

「は?」

 

え?コイツらDクラスなの?Cクラスじゃねぇの?

 

「まさか……あんなこと言ってDクラスなんですか?本当に?プークスクス受けるんですけどぉ!」

 

何処かの宴会芸……じゃなかった、水の女神様みたいな笑い方をしてしまったが勿論わざとだ、うん、決して本気で笑った訳じゃないぞ?だからそんな目を向けないで欲しい。

 

「コイツ!!調子に乗ってんじゃねぇ!」

 

ボコッ!

 

「待て、殴るのは不味い!!」

 

「落ち着け、これじゃ俺らが不利になるぞ!!」

 

目の前の黒髪マッシュ君……では無くその隣の耳元にピアス……?を付けている非行の道に走った山内みたいな奴が図星を突かれて頭に来たのか普通にぶん殴ってきた。まさかこんな事になるとは思って無かったのでカメラを起動し忘れたのは完全にやらかしだ……ちくせう。とはいえ録音でも証拠は残せる。

 

「先輩……いきなり顔面を殴るなんてなんて事するんですか!」

 

「うるせぇ!俺達はなぁ!俺達は元々はCクラスだったんだよ!テメェらとは違うんだ!あ?」

 

なるほど……彼らはCクラス落ちのDクラスか。道理でDクラスを見下している訳だ。大方周りのせいで巻き添えを食らって落とされたとか思っているのだろう。

 

「なるほど……それでは今から録音した音声とさっきのうちのクラスメイトと揉めてた時の動画を持って先生の所に行くとしましょうか。元Cクラスの先輩達の勇姿を皆にも見てもらった方がいいですよね!ね!後輩を脅して喧嘩を吹っ掛けるなんて先生も驚きますよ!」

 

我ながらとてつもない三下感を出した後のこの煽りスキルは中々だと思う。英才教育の一つ、演技力だ。将来駆け引きが大事になるので演技力を培っておけという父親の言い分の元やらされた訳だが保険代理店の営業ならともかく社長に必要なのかそれ、と思ってしまったのは心の隅に置いておこう。

 

「……おい、不味いぞこれ、こんなのバレたら俺達は終わりだ。」

 

「待て……!!馬鹿にしたことも殴った事も謝る。だから頼む。どうかそれは……。」

 

「クソっ……!!中田!!お前のせいだぞ!責任取れよ!」

 

そんなんだからコイツらこんな簡単に嵌められるんだよ……。まぁいいや。

 

「そうだなぁ……それじゃあ契約を結んでもらう事にしようか。まずはおたくらプライベートポイントはいくら持ってる?」

 

俺の笑顔はさぞかし悪魔みたいなコトだろうが、本来保険代理店はこういう仕事である。(違う。)

 

「なんで俺達が……そんな事っ……!!」

 

「辞めとけよ浅生、逆らうだけ無駄だぜ。」

 

それは正解なのだが何故殴った張本人がこんなに落ち着いているのだろうか。神経逆撫でするぞ、それ。

 

「まずはお前ら、俺の連絡先を追加して今持ってる全額のプライベートポイントを俺に送り込んで貰おうか。退学……なんて嫌だよなぁ?この学校は虐めに敏感らしいし。」

 

まぁこの程度なら良くて停学な気もするが、多少盛って置くべきだろう。

 

「「「はい……。」」」

 

そういうと3人は黙々と端末を出して金を送金する。上手く出来すぎている気もするが単純にこいつらが馬鹿なだけだと思う。

 

どうやら俺を殴ったやつの名前が由中、それに文句を言っていたやつが浅生、そして最後の影の薄い一人が鷹見らしい。

 

俺は中田から6万5196プライベートポイント、浅生から5万9651プライベートポイント、鷹見から10万5153プライベートポイントの系23万プライベートポイントを回収出来た。個人的な感想としては「思ったより持ってたな。」である。なんでもDクラスに落ちたのは最近の事らしいので納得は行く。

 

「よし、お前ら今から俺が送った文面に同意出来るならばそのまま読み上げろ、いいな。」

 

俺は3人をギロリと睨む。ちなみに怖い迫力の出し方も我が家の英才教育でやった。社長としての交渉術としてあると大変便利らしい、特に中小企業相手に。

 

案の定効果はあったようで、3人は怯えた表情ですぐに読み上げ出した。

 

「私中田誠一と浅生龍之介、鷹見魁斗は以下の契約に従います。

 

契約書

 

1.私達3人は毎月一日と十五日に所持している全てのプライベートポイントを天野聖さんに譲渡します。

 

2.私達3人はバイトや賭け事、試験などの学校側から何かしらの理由で配布される際に得たプライベートポイントを得た日に全て天野聖さんに譲渡します。

 

3.私達3人は最低週5日以上バイトをして働きます。

 

4.以下の契約を破った場合学校側に100万プライベートポイントの負債を肩代わりしてもらい、学校側に利子なしで返済するものとします。

 

私達はこの契約に同意します。」

 

「「同じく同意します。」」

 

「俺も同意します。さて、取り敢えず1つ目はこれでいいとして次は……そうだなぁ。この学校のシステムの裏の顔についてでも教えてもらおうか。」

 

原作と乖離している可能性もゼロではないのでいちおう塞いでおくべきだろう。それにコレで色々と言い訳もたつ。

 

ちなみに話した内容は原作と全く差異が無かったので割愛させてもらう。データ通りの展開で素晴らしい限りだ。

 

「なるほどなぁ……」

 

取り敢えずこれで俺がこの学校のアレコレを知っている事に対する裏付けは作れた。想像より早いが明日から早速行動に移すとしよう。

 

「取り敢えずプライベートポイントは33万って所か……おいお前ら、また要件があったら呼ぶが勿論無視なんてした日にはわかるよな……?」

 

「はい、それはもちろん!はい!」

 

「よし、今日の所は帰っていいぞ。この事は誰にも言うなよ。」

 

いつでも呼び出せるだろうしひとまずはこれでいいだろう。

 

俺は潤った懐に嬉々としながら、そのまま電化製品屋へと向かった。だいたいのメジャーな店屋はケヤキモールの中にあるのでわかりやすい所だ。目的はノートパソコンだ。後はボイスレコーダー。

 

「い、いらっしゃいませぇ〜。」

 

電化製品屋に入ると気持ち悪い顔と声の男がいた。恐らくはこいつが佐倉のストーカーだろう。現状でどうこう出来るものでも無いのだが……まぁ一先ずは放置だ。

 

俺はそのままノートパソコンとボイスレコーダーの売り場に行く。それにしても偽物の監視カメラやら盗聴機まである辺りこの学校きな臭過ぎないか?

 

「それにしてもピンキリだな……。」

 

本当にピンキリと言わざるを得ない、パソコンは高いものは100万近くするが安いと5000ぐらいだ。ボイスレコーダーも最高級だと20万程度するが安ければ1000プライベートポイントもあれば買える。

 

さて問題はどれの性能がいいのかだ。ボイスレコーダーはまだしもパソコンは長い間お世話になる事だろう。タブレット型でも良いのだがなんにせよなるべく値段を抑えて高性能なものが欲しいところだ。

 

「もしやお主は同じクラスの紅魔族の名乗りをあげた天野殿ではござらんか?」

 

なんか侍みたいな口調の声……材木座みたいだな。

 

そう思いながら言葉をかけられた先に視線を向けるとそこには外村らしき人物がいた。

 

「そうだが……えーと、お前は確か外村だったか?」

 

これで自己紹介してなかった場合は爆速で去ろう。まぁキャラ的にすると思うんだが。

 

「良く覚えていたでござるね。それでここで何をしていたんでござるか?」

 

「いや、ちょっとボイスレコーダーとパソコンが欲しいんだがどれを買うべきか悩んでてな。」

 

外村秀雄、通称博士。原作ではDクラスの三バカの4人目として活動し、コンピュータやアニメ関連に対してめっぽう強い僕が考えた最強のオタクみたいなやつだ。材木座では無い。大事な事なのでもう一度言うと材木座では無い。原作では水着レートをして女子からドン引きされてたり、盗撮を企てたりあんまりいいイメージが無いな。ちなみにデブなので身体能力はゴミカスだ。

 

とは言え彼のオタク力は俺よりもある。使い方さえ間違えなければ使い物になるはずだ。大事なのはファーストコンタクトだな。いやもうそれ終わったわ。二重の意味で……うん。

 

 

「それなら拙者に任せるでござるよ!拙者の事は博士って呼んで欲しいでござる!!天野殿はどんなものが欲しいのでござるか?」

 

「とにかく性能重視かな。値段はある程度までなら出せる…そうだなぁ、ノートパソコンは予算6万プライベートポイントってところかな。ボイスレコーダーは2万ぐらい?」

 

生き生きとしている外村改めて博士と対象に俺の内心はストーカー野郎と目が合ったせいで少しげんなりしていた。だって怖いじゃんストーカー。ちなみにノートパソコンもボイスレコーダーも相場は知らない。

 

「ちなみに何に使うつもりでござるか?それによって優先する性能も変わってくるでござるが……。」

 

俺は天井をちらりとみる。やっぱり監視カメラあるよなぁ……取り敢えず博士には悪いけど適当に誤魔化しとくか。

 

「えーと…さっきコンビニ行ったらクラスメイトの……あの赤髪の奴が先輩に絡まれてたんだよ。護身用にボイスレコーダーを持っておきたいなと思ってさ。ノートパソコンは趣味だな。」

 

ノートパソコンはまだしもボイスレコーダーはどう頑張っても誤魔化せないだろう。ボイスレコーダーを趣味とか言い出したらただのストーカーである。ちょうど今あそこで口笛を吹いている某店員と変わらない。

 

「ふむふむ……ノートパソコンは何をしたいかによっても変わってくるでござるが…オススメはこれでござる。処理性能も高くかつ高画質でござろう。

 

少し値段が張る他のと比べても段違いでござる。値段は5万プライベートポイントと少々張るでござるが性能だけなら10万程度のものと大差無いでござろう。唯一の欠点は画面とキーボードを離せない事でござるが………。」

 

「まぁそれぐらいなら問題無い。それじゃあノートパソコンはこれにしようかな。」

 

少なくとも話を聞く限りだとこれを選んで大失敗、とかは無いだろう。主な用途もクラッキングなんかではなく情報を纏めたり電子的データを集めたりといった事をする為なので最低限のスペックがあればいい。

 

「ボイスレコーダーでござるが……最安値のこれは玩具レベルでござる。まずオススメはしないでござる。」

 

「そうなのか…。」

 

最安値を大量買いしようとしてた俺としてはありがたい情報だ。やっぱり情報は大事だな。

 

「そして2万プライベートポイントするこれも1万プライベートポイントのボイスレコーダーに毛が生えた程度でござる。買うならばリーズナブルにいきたいのなら5000プライベートポイントのものを、機能重視なら10000プライベートポイントのものを買うのがいいでござろう。」

 

なんかだんだん占い師じみてきた博士だが電子機器にはやはりとても詳しいらしい。やっぱりDクラスは一芸特化が多いな。

 

「それじゃあそれぞれお試しで1個ずつ買わせてもらおうかな。正直どれが何とか分からんかったから助かったわ。」

 

家に居た頃は大体全部最高級の奴を勝手に父親が買ってきてたからな。本当に俗世間のここら辺は分からない。

 

「お役に立てて良かったでござるよ。ここで会えたのも何かの縁でござろう。連絡先を交換して欲しいでござる。」

 

「あぁ、いいぞ。これからよろしくな。」

 

これで俺の連絡先は博士と三宅の二人になった。あの自己紹介をやらかしといて初日で2人ならなかなかいいスタートだと思う。

 

「ところで天野殿はクラスLINEには入ったでござるか?」

 

「え?もう出来てるの?」

 

初耳なんだけど、みんな作るの早くね?

 

「既にクラスの半分ちょっといるでござる。出遅れなくて良かったでござるねぇ。」

 

「本当にな…ところでそれってクラスメイトなら誰でも呼んでいいか?」

 

サラッとクラスから除け者にされなかった事に安堵しつつ、俺は自分がクラスラインに入ったのが26番目である事を確認する。そしてやはりというかなんというか、名前のないメンバーは想像通りだった。

 

綾小路、堀北、高円寺、佐倉、長谷部、三宅、須藤辺りが居ないのは特に華奢であろう。

 

「いいと思うでござるよ。でも一体誰を呼ぶ気でござる?」

 

「三宅だ。席が前後だったから仲良くなったんだよ。」

 

俺は三宅にクラスラインの招待を送る。いくら孤独を好むと言えども流石にこれは来るだろう…多分。

 

「彼からは主人公の匂いがするでござる……。拙者の勘はよく当たるでござるよ……フフフ。」

 

その勘大ハズレで主人公は綾小路だぞ。とは口が裂けてもいえなかった。人を見る目はゼロだな。

 

そのまま俺は外村と別れ、店という店の余ってた無料の品を貰えるだけ貰って帰るのだった。

 

この後『入学初日からタダの商品ばかり漁るやばいDクラスの男子がいる』と噂になり俺はまた一つキチガイの階段を登るのだが、当時の俺にそれを予測しろと言うのは当然無理な話であった。




三バカ先輩

・中田誠一……山内に初期須藤の精神力を持たせたみたいなやつ。お察しの通りアホ。

・浅生龍之介……初期池のようなチャラさと馬鹿さにCクラスみたいなチンピラ精神を持った奴。お察しの通りバカ。

・鷹見魁斗……コミュ障。ありとあらゆる無駄をくっつけた綾小路みたいな奴。綾小路という名前だけで強く見えてしまうのはどうしてだろう。趣味は貯金だった。お察しの通りカス。


なお担任からの評価と主人公の部活動に関してはこの時点で書くとネタバレになりますので判明し次第書かせてもらいます。申し訳ない。


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動き出せ

学校に入学してから2日目、早くも大半の生徒が授業を真面目に受けていなかった。まだ2日目だぞテメェら嘘だろ?

 

「と、言うわけでネアンダール人は.......」

 

ちなみに今授業をしているのは担任の茶柱先生なのだが、須藤とかは爆睡、高円寺は髪型のセット、池と山内とかが駄弁っててその他はスマホ弄りと言った所か…斜め前ではR18指定の漫画を読んでいるやつが居るし早くも世紀末だった。このままではクラスのポイントが大幅に激減してしまう.......仕方無い。これが5時間目だしこの授業が終わったら動くしかねぇか。

 

本音としてはクラスのリーダー格の誰かしらを味方に付けてからが望ましがったが平田も櫛田も軽井沢も他の人間に囲まれてそれ所では無かった。一応本来のDクラスのリーダーになる堀北に頼んでみるだけみるか。俺は授業が終わり次第堀北に話し掛ける。

 

「堀北、ちょっと手伝って欲しい事があるんだが.......」

 

「嫌よ。そもそも話かけないで頂戴、気持ち悪い。」

 

ザンネンながら一蹴されてしまった。こいつは絶対クラスリーダーにしてやんねぇ!べー!

 

「何を頼むつもりだったか知らないが、堀北に頼むだけ無駄だと思うぞ。」

 

心の奥底で堀北に悪態を吐いていると、隣から初対面綾小路に話しかけられた。

 

「お前は確か.......綾小路だったか。どういう事だ?」

 

綾小路は名前を覚えていて貰った事が嬉しかったのか口が少しニマニマしている気がする。ニマニマピーポーだ。こいつ本当にポーカーフェイスなのか?

 

「堀北は誰とも関わろうとしないんだ、オレも苦労している。」

 

「.......そうか。綾小路、連絡先を交換しないか?」

 

綾小路の連絡先は何処かで持っておきたかったところだし僥倖だ。ちゃんと位置探知等のやべぇシステムは全部オフにしてあるしなんの問題もないだろう。

 

「いいぞ。えーと.......確か自己紹介で失敗した.......」

 

「天野だ、その覚え方は本当に辞めてくれ。」

 

綾小路にその覚え方をされてるなら既にクラスで大ピンチじゃね?まぁ当たって砕けろ、やるだけやってみる価値はあるか。俺は綾小路と連絡先を交換した後、教室の教壇に立った。クラスメイトは大半教室にいるので問題は無いだろう。不幸にも皆の平田は不在だが。

 

「皆、授業を真面目に受けてくれないか!!」

 

時間も無いので俺は単刀直入に話を切り出した。まぁきっといい感じに櫛田がフォロー.......あ、櫛田が何処か行った。これ終わったんじゃね.......?

 

「なんでお前の言う事なんか聞かなきゃ行けないんだよ!」

 

案の定須藤が噛み付いてきたか。まぁ想定通りだ。

 

「いいか須藤、俺達はこのままでは.......」

 

「うるさいわよ!黙りなさい!」

 

篠原.......最後まで喋らしてくれ。話を聞けばきっと理解して貰えるはずだ。俺がクラスのヒーローになる為にも。

 

「だいたいさ、昨日も思ったんだけどあんまり出しゃばらないでくれない?あんたみたいな友達も居ない陰キャがしゃしゃり出て来ないで欲しいんだけど。」

 

軽井沢が俺にトドメの一言を放つ。俺は.......俺は.......嫌われてなんか.......

 

「お、俺は.......。」

 

「まだ分かんないの?アンタクラス中から嫌われてるの。分かったら黙って席戻ったら?」

 

軽井沢.......お前.......。俺は必死に虚勢を張って傷付いていない振りをしながら話を続ける。このままクラスポイントを減らすわけには行かないんだ。俺は最後のなけなしの度胸を振り絞り再三、皆に話すべく会話を始める。

 

 

「嫌われててもいいから取り敢えず話だけでも聞いてくれ。授業を真面目に受けないとこのままでは.......」

 

嘘です。嫌われてるなんて無茶苦茶悲しいです。どうして高円寺や須藤、山内もいる中俺がクラス中から嫌われてるなんておかしいだろ絶対。

 

「皆さん授業の用意をしてください。授業を始めますよ。天野君、今から授業ですので話す事があるのでしたら授業後に話してください。」

 

残念ながら俺のなけなしの度胸は坂上先生に阻まれてしまった。げせぬ。

 

「もう話さなくていいから、分かったでしょ、もう。あんたの話なんか誰も興味無いから。」

 

篠原と軽井沢の連携プレーによって俺のメンタルはズタボロだった。悲しみも大きいが、それ以上にストレスのが大きい。

 

俺は軽井沢虐めを決行する準備をする事を心の奥底で誓って席に戻る。

 

「さっきの、どういう意味だ?」

 

俺が席に戻ると、三宅が話しかけて来た。大半の人間は俺の事をキチガイだと思ってるらしい。高円寺と同じ枠組みに入れるのは勘弁願いたい所だ。博士もこちらに来たところを見ると内容は同じらしい。

 

「うーん、今この場で話すのもなぁ.......放課後空けといてくれ。そこで話そう。」

 

「了解でござる。店の用意は任せるでござるよ!」

 

「わかった。.......お前のやる事だ、意味の無い事だとは思わないが.......。あ、あと安い店で頼む。」

 

俺を信じてくれる人がいるのは大変嬉しい.......が、だからこそコイツらにも被害が及ぶ前に有害物質は取り除かなきゃ行けないな。準備しておくか。

 

「その集まり、オレも行ってもいいか?」

 

そんな事を考えていると、綾小路が来た。何を考えているのか分からないが、ここで俺が断ると暗に警戒していると言ってるようなものだ。とはいえ警戒するのは自然だろう。

 

「俺は綾小路ならば構わないが.......山内とか池は御免だぞ。」

 

「拙者は誰が来ても構わないでござる。」

 

2人とも賛成のようだ。こうなると反対する理由が無いな、仕方ない、連れていくか。懐柔出来るとは思えないができるならそれに超したことは無いし。

 

俺たちはそのまま解散して放課後に時間を決めて落ち合う事にした。

 

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「ここは.....いやまぁ確かに安いのか?」

 

放課後、俺は博士に頼んだ店の場所を見て頼む相手を間違えたことを酷く後悔した。なんで博士に頼んだんだ俺は。

 

「ここは.....どういう店なんだ?」

 

綾小路は知らないらしい。まぁホワイトルームでこんな事教えていたらそれこそドン引きものだが。というか三宅はキレそうだな。俺これを綾小路に説明するのは凄く嫌なのだが.....外村は今度グーパンだな。

 

「ここはだな.....まず名前をメイド喫茶と言う。ある一点を除けば喫茶店と対して変わらない。」

 

そのある一点が問題なのだが。これを考えたヤツは天才.....じゃなかったただの神.....あ、アホなんだうん。俺は危うく本能に洗脳されそうになるのを必死に堪えて説明を続ける。

 

「ある一点?」

 

「メイドがいるんだが.....まぁ習うより慣れろだな。というか三宅はブチギレるんじゃねぇか?これ。」

 

不思議そうに首を傾げる綾小路を連れて俺は店の扉を開ける。もう既に三宅と外村は入っているらしいがどっからどう見ても修羅場になる未来しか見えない。

 

俺は覚悟して扉を開ける。普段メイド喫茶に来るような欲望に忠実な奴はそう多くは無いらしい、今日は他に誰もいないようだ。

 

「お帰りなさいませご主人様!!」

 

三宅は.....怒ってない.....のか?思ったよりも落ち着いているな。博士はパーリーピーポーしてやがる。絞めるかコイツ。

 

「これは.....成程、知識としては知っていたが.....。」

 

後ろで綾小路はブツブツ呟き出した。これなんてカオスワールド?現実世界にキング・クリムゾンが無いことを俺は悲しみながら席に着く。

 

それにしてもこの店、天井に監視カメラはあるようだが俺らの席の位置は範囲外っぽいな。好都合だ。ある意味良い店の紹介とも言える.....か?

 

俺たちは博士の目の前の席に腰掛ける。博士はうんまぁ.....お察しの通りデレデレだった。三宅も.....コイツ思ってたより満更でも無さそうだな。

 

「これがメイド喫茶というものか.....。」

 

隣でメイド喫茶についてブツブツ考察を始めた綾小路を他所に、俺は先輩をボコった事を盾に対策を話し始める。

 

「さて、お前らを今日ここに呼んだのは他でも無い。このまま行くとうちのクラスはどん底に落ちるからだ。」

 

「ドン底?どういう事でござるか?」

 

こいつの足りない頭での理解.....は無理だな。とはいえおいおい強化していくべきではあるのだろうが。

 

「そうだなぁ.....俺の推測と、上級生から聞いた情報だけだから確定って訳では無いんだが.....お前らこの学校に来て変だなと思ったことは無かったか?」

 

「ダメだ.....オレには分からない。」

 

演技かもしれないが綾小路の場合そもそも普通の高校を知らない可能性があるのであんまり突っ込めない。常識無き者は最強である。

 

「拙者にも分からないでござる。三宅殿はどうでござるか?」

 

「毎月10万プライベートポイント貰えるのに無料の品があちこちに置いてある、というのは少し変じゃないか?」

 

流石は三宅、説明のしやすさが段違いである。賢いっていいな。他のDクラスの面々もそれぐらい優秀ならいいんだけどな。

 

「そうだな、さてここで茶柱先生が言ってた事を思い出してみようか。『毎月初めにプライベートポイントが貰える。』そして『入学した俺達には10万の価値がある。』だ。」

 

「.....なるほどな、貰えるプライベートポイントの量が変動するって言う事か。だが個人でプライベートポイントが変動する可能性もあるんじゃないか?」

 

綾小路の言う通りだろう。割と想定通りの質問だ。

 

「そうだな。まぁここに関してはクラスだと上級生に既に確認を取った、さて次の問題だ、そのポイントの変動はどうやって決まると思う?」

 

「.....そういえば至る所に監視カメラがあるな.....日頃の行いって事か。」

 

三宅君大正解!彼は何故Dクラスにいるのか一切合切わからん。原作でも深堀してたわけじゃないしこれに関しては情報も出てこなかったんだよなぁ.....。

 

「恐らくね。そして俺は初日にあのクラスの赤い髪のヤンキー、須藤に対してDクラスを揶揄する発言を上級生がしていたのを目撃している。まぁ上級生の情報もソイツらから聞いたんだけどな。」

 

「なるほど.....大方天野の予測通りだろう。だが呼び掛けに失敗したがどうするつもりだ?」

 

こちらも想定通りの質問だ。この頃の綾小路はまだ日常的な生活を送りたいから敵視もクソも無いんだっけか。

 

「まぁそこは俺に一計ありだ。.....所でなんで俺の所にだけメイドさんは居ないんだ?ここメイド喫茶だよな?」

 

「嫌われてるんじゃないんでござるか?」

 

こいつ.....腹の贅肉を筋肉に変えてやろうか.....。

 

「俺は嫌われていない。」

 

何故か俺の横にだけメイドが居ないのは何故だ.....商売だよな?これ。悲しすぎて某有名なあのセリフを口走ってしまったじゃないか。

 

「お前がまだ何も頼んでいないからじゃないか?.....それにしてもいいなコレは。」

 

メイド喫茶に楽しみを持ち出した綾小路は少し見たくなかったが、まぁ何はともあれ本来の目的は終わりだな。後はメイドさんを堪能するとしよう。

 

「じゃあ俺はこの『愛の共同作業カレー』にしようかな。」

 

綾小路はさっさとこっち側に抱き込んでしまうのが吉なのかもしれないな。と思いつつ俺はメイドさんを楽しむ事を選んだ。

 

「愛の共同作業カレーですね!わかりましたご主人様!」

 

内心メイドさんに嫌われていないかヒヤヒヤしたが何とかなってそうで良かった良かった。

 

「そういえばメイドさんって何プライベートポイントで買えるんですか?」

 

そう言えばプライベートポイントで買えると言っていたが人身売買は流石に無理か?まぁダメ元って奴だが.....なんで皆そんなに引いてるんだ?こんなの大企業の裏側じゃあ良くある事じゃんよ.....。

 

「えぇと.....私は売り物じゃありませんよ.....?」

 

「流石に国営の学校が人身売買の斡旋は不味いか.....じゃあ連絡先ぐらいなら買えるのかな?」

 

だからなんでそんな引いた目で見てくるんだよ、普通だろ?

 

「えーと.....プライベートポイントってそう言うものじゃないですよ?」

 

なんだろう.....金で買えるような安い女だと思わないでくださいって顔に書いてある気がする。気の所為かな。

 

「さっきから何を言っているんだ天野.....。」

 

「いやぁ.....プライベートポイントでなんでも買えるって言うからには売り物だけじゃなくて情報やらも買えると思うんだけど.....個人的私有物は個人間での取引だけっぽいねこれは。」

 

だからなんでそんな引いた目線なんだよお前ら.....。

 

「お待たせしましたご主人様!愛の共同作業カレーです!こちらレシート置いておきますね。」

 

そう言ってメイドさんはレシートの裏に何やらを書いて俺に渡してくれた。裏を見てみると11ケタの番号がある。これ連絡先じゃね?というかデジタルなのにレシートはあるんだな。

 

「内緒ですよ.....?」

 

耳元でボソボソ囁かれて不覚にもドキってしてしまった.....これが世界の理の扉か.....。ジョジョ.....俺は人間をやめるぞ。

 

「何だこのカレー美味しすぎる.....。」

 

二つ星のカレー屋より上手いんじゃないか?これ。思い出補正って最高の調味料だな。

 

「あぁ.....こんな世界があったなんてな.....次から集合場所はここにしよう。」

 

綾小路がブンブンと首を縦に振っている。誰だこいつ.....。

 

「そうでござろうそうでござろう!次からの集合場所はここで決定でござろう!」

 

こうして次からの集合場所はここになった。満腹になった俺たちはそのまま会計を終えて店を出た。そのまま俺達は店前で解散して、俺は1人ショッピングモールで軽井沢虐め用の道具を買って家に帰った。

 

 

 

この後、レシートを店に置いてったせいで次にメイド喫茶に行った時に担当してくれたメイドさんにブチギレられるのだがこの時の俺には縁もゆかりも無い話であった。

 



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