ポケットモンスター蟲スカーレット (放仮ごdz)
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記憶を失くした蟲の女王
VSイワンコ


どうも、パラドックスポケモンの某むし・かくとうの子(ネタバレ配慮)に心を奪われた放仮ごです。発売後三日でクリアして、パルデアを舞台にポケ蟲書きたいなと構想していてようやく書けました。新蟲ポケ最高すぎて書くしかないよね。本当はレジェンズアルセウスでも書きたかったけどさすがに断念しました。

主人公は何故か記憶喪失のラウラです。楽しんでいただけると幸いです。


 諸君。俺は蟲が好きだ。蟲ポケモンが好きだ。愛してる。だからこの愛を以て証明する。蟲ポケモンはかっこよくてかわいくて美しくて最高で最強なのだと。そのためには目の前のチャンピオンを倒さないといけない。

 

 

「ネモ!今日こそは勝たせてもらうぞ!」

 

「うん、いいよラウラ!輝いてる!」

 

 

 俺がメイドとして居候させてもらっている屋敷の一人娘、ネモと日課のバトルに今日も今日とて勤しんでいた。バトルジャンキーなところがある彼女にバトルの腕を見抜かれて以降、毎日飽きもせず戦っている。もはや日常の一部だ。

 

 

「イワンコ!いわおとし!」

 

「マメバッタ!岩を足場に、にどげり!」

 

 

 ネモのイワンコの飛ばしてきた岩を小さな体で身軽に足場にして跳躍し、突進してくるりと反転し蹴りを二連撃で浴びせるマメバッタ。そのまま着地すると、イワンコが体当たりしてきた。

 

 

「かみつく攻撃!」

 

「着地狩りか…っ、こうそくいどう!」

 

 

 マメバッタの脚力を生かして高速で移動させることで回避させる。ネモのポケモンに対抗するべく覚えさせた技だ。しかしネモは不敵に笑う。まるでわかってましたとでも言うように。

 

 

「甘いよラウラ!ステルスロック!」

 

「っ!?止まれ、マメバッタ!」

 

 

 咄嗟に指示するもこうそくいどう中で急に止まることはできず、マメバッタは頭から透明な岩にぶつかって怯む。地面と空中、フィールドの一帯にばら撒かれすぐ透明になる、交代するだけで傷付く尖った岩石だ。これじゃマメバッタの機動力を活かせなくなった。

 

 

「そのまま押し潰して!がんせきふうじ!」

 

 

 ステルスロックで迂闊に身動きが取れなくなったマメバッタに向けて多数の岩を一纏めにしたものを叩き付けんとするイワンコ。ネモめ、ここで決める気か。だが…!

 

 

「懐目掛けて、とびつく!」

 

「なっ!?」

 

 

 がんせきふうじを発動すべく仰け反らせた体勢のイワンコの懐目掛けて飛び込ませる。完全に予想外だったらしいネモは驚愕。すぐに首を振って気を取り直す。

 

 

「距離を取っていわおとし!」

 

「フェイント!」

 

 

 空中に岩を出現させてぶつけようとするイワンコにフェイント。鋭い蹴りがイワンコに突き刺さり先手を取る。

 

 

「にどげりだ!」

 

「かみつく!」

 

 

 すかさず蹴り二撃を叩き込むがしかし、イワンコはにどげりの一撃目にマメバッタの足に噛み付いて無理やりにどげりを止めてきた。

 

 

「がんせきふうじ!」

 

 

 呆気にとられる俺を余所に、噛み付かれて逃げられないマメバッタに岩の塊が炸裂。マメバッタは押し潰されて目を回し、戦闘不能となった。俺はマメバッタをボールに戻し、今回のルールである2VS2のシングルバトルに従って二匹目のボールを取り出し、自然体で口元に寄せてから投げる。

 

 

「タマンチュラ!」

 

「無理は禁物!交代するよイワンコ!…あれ?」

 

「とおせんぼうだ」

 

 

 タマンチュラを出す前にこっそり指示をしておいた技で交代を妨げる。ならばと攻撃に切り替えてくるネモ。

 

 

「いわおとし!」

 

「いとをはいて、カウンター!」

 

 

 いわおとしをいとをはいて飛び退くことで回避、した勢いのままカウンター。イワンコを戦闘不能にする。ネモが交代してきたのはパモだ。手にしたテラスタルオーブからしてテラスタルする気だろうが、それをイワンコに使わなかったのは慢心だぞ。

 

 

「パモ!テラスタルいくよ!」

 

「むしのていこう!」

 

 

 テラスタルして結晶化し、電球の様な結晶を頭部にくっ付けた姿になったパモに、タマンチュラの渾身の技が炸裂する。パモが吹き飛ばされたその威力に驚いている様子のネモ。

 

 

「凄い威力!?なんで…!?」

 

「とくせい、はりこみ。交代で出てくるポケモンに威力は二倍だ!蟲だからってなめるなよ!むしのていこう!」

 

 

 そのまま追撃。俺はこの日初めて、ネモ相手に勝利を収めたのだった。

 

 

「手加減したメンバーとはいえ私に勝つなんて、やっぱりラウラは凄いね!」

 

「それは嫌味かなんかですかお嬢様」

 

「もう、お嬢様はやめてって言ってるでしょ!」

 

 

 嫌味で嫌がってる呼び方にしてやるとぶすっとむくれるネモ。手加減した奴に勝てたって嬉しくないんだけどな。

 

 

「むしろ言わないと旦那様に怒られるんだが……まあいいや。今度は本気のネモに勝つからな」

 

「なら冒険して仲間を増やさないとね!」

 

「記憶喪失の居候の身に無茶を言うな」

 

 

 家もない。身よりもない。記憶もない、何ならこのパルデア地方に俺がいたという記録すらない。気付いたら凶暴な野生ポケモンの巣食う岩場に投げ出されていた俺が覚えているのは名前と蟲ポケモンに対する愛だけ。そんなないない尽くしの俺を助けて拾ってくれたネモと、住み込みのメイドとして雇ってくれた旦那さまには感謝してる。だが身分証明もできないと身動きが取れないのも事実だ。

 

 

「あ、それなんだけどね。お父様のコネでラウラの新しい身分証明書作ってもらったよ!」

 

「は?」

 

 

 そう言ってポケットから取り出したトレーナーカードを見せてくるネモ。ラウラって書いてあるしここに雇ってもらった時に撮った顔写真が貼ってあるな。我ながらもう少し愛想よくできないのか。って違う、そうじゃない。なにそれ聞いてないんだが?

 

 

「一緒にテーブルシティのアカデミーへの転入手続きもやってもらったから思う存分戦えるよ!やったね!」

 

「待て待て待て待て」

 

 

 アカデミーってあれだろ、パルデア地方が誇る世界基準でも有数の歴史がある私立学園。教師の何人かは元ジムリーダーや現役ポケモンリーグ四天王とかいう魔境。この戦闘狂お嬢様の行動力は知っているつもりでいたがここまでとは。伊達に毎朝アカデミーから自宅まで俺と戦うためだけに通っているだけのことはあるな。

 

 

「仕事は?俺、一応ここのメイドなんだが?」

 

「そんなのいいってさ!メイドとして雇ってたのも形式的なものらしいし」

 

「でも無料でそこまでしてもらうのも悪いって言うか……」

 

「アカデミーの課外授業で「宝探し」ってのがあってね。それならラウラの宝物…「記憶」を探すいい機会になるんじゃないかなって。お父様も記憶を見つけてからお返ししてくれればいいってさ」

 

「なるほど…」

 

 

 思わず納得してしまったが正直蟲ポケモンがいたら記憶とかどうでもいいんだが、蟲ポケモンを集めるためにもその課外授業はありがたいかもしれないな。あんまり気乗りはしないが。

 

 

「そう言えば先日引っ越してきたお隣さんのお子さんもアカデミーに通うかもなんだよね。どんな子だろ、楽しみだなあ!」

 

「強い奴だといいな」

 

「うん!ラウラみたいなライバルになってくれるといいな!」

 

「今日初めて勝てた奴がライバルでいいのか?」

 

 

 会話の間に回復させたマメバッタを頭に、タマンチュラを肩に乗せて溜め息を吐く。お前の興味が俺以外に向いてくれることを祈るよ。




記憶喪失したことでTS要素皆無になってタダの俺っ娘メイドになったラウラ。手持ちはデンチュラたちではなく、マメバッタとタマンチュラです。ネモが凄い便利。

キャラ詳細とか前作みたいにあとがきに書いた方がいいかな?

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSカラミンゴ

どうも、放仮ごです。久々のポケモン蟲だったのに沢山の人がお気に入り、中には評価までしてくれる人がいてくれて嬉しい限り。

今回は南一番エリアで蟲ポケモンを探すラウラの話。楽しんでいただけると幸いです。


 数日後。制服やら教材やら買い揃えた俺は、一人でコサジの小道を通って南一番エリアに入りテーブルシティを目指していた。ネモも一緒に来ようとしていたがお隣さんの方も気になったのか迷っている間に一人で出発した。さすがにアカデミーに着くまで何度もバトルするわけにもいかない。俺はバトルジャンキーじゃないのだ。

 

 

「しかし広いな。これでもパルデア地方の南のほんの一部ってマジか……」

 

 

 メイド服から着替えたオレンジアカデミー指定の制服の夏服を身に纏い、頭にマメバッタを、肩にタマンチュラを乗せたままやってきた南一番エリア。ネモに聞いた話だとタマンチュラの他にコフキムシやミツハニー、アメタマといった蟲ポケモンがいるらしい。パルデアにしか生息しないパルデアのすがたのウパーがとくせいもタイプも優秀だからとおすすめされたが正直興味ない。

 

 

「ここからでも見えるってでかい学校だな」

 

 

 南一番エリアの高台から大きく見える学園都市であるテーブルシティに感嘆する。ここまででかい街もシュートシティぐらいしか……シュートシティってどこだ?

 

 

「まあいいか」

 

 

 途中にあるプラトタウンをそのまま目指す…訳もなく。寄り道して蟲ポケモンを探す。目標はコフキムシかアメタマだ。ミツハニーは…何故かそこまで欲しいとは思えなかった。ビークイン強いんだけどな。なんでだろ。

 

 

「おっ、いたいた」

 

 

 水場までやってくると、優雅に水面をスイスイと移動するあめんぼポケモンを見つけて腰をかがめ、じりじりと近づく。波紋で敵を感知してすぐ逃げることができるポケモンだ。慎重に…しかし可愛いなあ。思わず顔がほころぶ。するとげしっとマメバッタに軽く後頭部を蹴られた。痛い。

 

 

「悪かったって。お前も可愛いよ。タマンチュラもな」

 

 

 負けず嫌いなマメバッタからしたら自分以外にいい顔をするのが気にらないのかな。タマンチュラはマイペースなのが特に気にせず欠伸をしているが。

 

 

「!」

 

「あ、やべっ」

 

 

 すると俺達のやりとりに気付いたのか、スイスイと水面を滑走して水場の奥まで行ってしまうアメタマ。俺は慌てて追いかけ、思いっきり足を滑らせて水に落ちてしまった。

 

 

「に、が、す、かぁああああ!」

 

「!?!?!?!?!」

 

 

 別に泳ぎが得意という訳じゃないが根性で手足をばたつかせてアメタマを追いかけると心底驚いた顔で逃げようとするのでタマンチュラを移動させた左腕を突きつける。

 

 

「タマンチュラ、とおせんぼう!」

 

「!?」

 

 

 ビシッとアメタマの動きが固まり、頭の上のマメバッタをボールに入れて投げる。背を向けてあたふたしていたアメタマにぶつかったボールから浮き袋の足場に乗ったマメバッタが水面に飛び出し、構える。

 

 

「こうそくいどう!」

 

 

 足場を蹴って水面を滑り、アメタマの横に回り込むマメバッタ。アメタマは不意を突かれて動けていない。遠慮なく喰らわせる。

 

 

「とびつく!」

 

 

 足場から飛び刺してアメタマにとびつき、水面でしっちゃかめっちゃかになるマメバッタ。前足で頭部にしがみ付きながらげしげしと蹴り付け、アメタマの繰り出す泡をまともに浴びてしまっている。

 

 

「フェイントもおりまぜろ!」

 

 

 俺の指示を受け、蹴りつけると見せかけ頭突きするマメバッタ。初めて出会った時から思っていたがヤンキー気質だなこいつ。だがおかげでアメタマは心身ともに弱った。10個だけネモにもらっていたモンスターボールを取り出し投げつける。

 

 

「!」

 

 

 マメバッタが避けた所にボールが炸裂、アメタマは吸い込まれていき水面にポチャンと落ちてプルプルと揺れ、カチッという音と共に静まった。

 

 

「よし、よろしくなアメタマ」

 

 

 さっそくマメバッタとタマンチュラを定位置に置いて、モンスターボールを手に取って岸まで戻ろうとするが、岸まで辿り着いた瞬間手にしていたモンスターボールを細い脚で蹴り飛ばされてしまう。

 

 

「いたっ…なんだ!?」

 

 

 見てみれば、そこにいたのはピンクのフラミンゴの様なポケモン。そのポケモンは転がったモンスターボールを口に加えると飛び立ってしまう。

 

 

「待てこら!?」

 

 

 慌てて追いかけながらネモに譲ってもらった旧式のスマホロトムを取り出しポケモン図鑑のアプリを開いてあのポケモンを調べる。カラミンゴ。シンクロポケモン。ひこう・かくとうタイプ。あの見た目でかくとうの複合かよ。説明によればお腹に溜めたエネルギーがくちばしから漏れないように首を根元で結んでいる?よく生きてるな、さすが不思議な生き物。

 

 

「くそっ、マメバッタ!」

 

 

 マメバッタに頭の上から跳躍させる。そこそこの衝撃に吹き飛ばされ、ゴロゴロと転がるもマメバッタはカラミンゴにしがみ付けたらしい。

 

 

「にどげり!」

 

 

 カラミンゴは空中で器用に脚を動かして蹴りを繰り出そうとするが、その前にマメバッタの鋭い蹴りが二連撃顔に叩き込まれ、ボールを吐きださせて落下させる。

 

 

「頼むタマンチュラ!」

 

 

 転がった体勢のままタマンチュラを投げつけ、糸に包まれた胴体をクッションにアメタマの入ったモンスターボールを受け止め、手に取り中身を確認する。無事か、よかった。

 

 

「クエーッ!」

 

 

 すると怒り狂ったカラミンゴが突撃してきた。マメバッタとタマンチュラが立ち向かうが巧みな蹴り技と翼の一撃で蹴散らされる。ならばと俺は手にしたモンスターボールを投擲、アメタマを繰り出す。持ってかれた怒りからか小さな体で精一杯威嚇するアメタマ。

 

 

「アメタマ、さっそくで悪いがバブルこうせんだ!」

 

 

 俺に指示に従ってくれたアメタマのバブルこうせんによる大量の泡が全身に纏わりつき、すばやさを下げられたカラミンゴがゆったりと脚を突き出してくるのに合わせて、残り二匹に指示する。

 

 

「マメバッタ、フェイント!タマンチュラ、カウンター!」

 

 

 マメバッタの先手を取った一撃と、蹴りに合わせた体当たりがカラミンゴに炸裂。カラミンゴは吹き飛ばされて戦闘不能となった。

 

 

「…野生だから三匹で連携できたがネモみたいなトレーナーだとこうもいかないんだよなあ」

 

 

 天敵ともいえる鳥ポケモンを倒して喜び、集まってわいわいと騒ぐ三匹を見ながら溜め息を吐く。…早くこの三匹に慣れないといけないなあ。慣れない上品な帽子を被った頭に手を置く。この違和感は何時まで経っても消えないんだろうな。




初見でカラミンゴにボコボコにされた人は結構いると思う。

・マメバッタ♂
とくせい:むしのしらせ
わざ:とびつく
   にどげり
   フェイント
   こうそくいどう
もちもの:なし
備考:むじゃきな性格。ちょっぴりみえっぱり。気絶していたラウラに寄り添いそのまま仲間になったポケモン。ヤンキー気質でかまってちゃん。今作の相棒。定位置は頭の上。


・タマンチュラ♀
とくせい:はりこみ
わざ:とおせんぼう
   カウンター
   いとをはく
   むしのていこう
もちもの:なし
備考:のんきな性格。物音に敏感。コサジの小道で捕獲されたポケモン。のんびりやでどっしりと構えて戦う。


次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VS??????

どうも、放仮ごです。原作主人公の名前どうしようか迷ったけどうちの子(スカーレットの操作キャラ)の名前で行くことにしました。由来は愛読書の推しキャラから。

というわけで今回は原作主人公との邂逅、そして…?楽しんでいただけると幸いです。


 私の名前はアイアール。つい昨日パルデア地方のコサジタウンに引っ越してきたばかりのオレンジアカデミーの転入生だ。お隣さんのネモの案内で、パートナーと共に旅だった私だが、正直オレンジアカデミーへ行くのは気乗りしなかった。昨日の今日引っ越してきたのだ、学校に行くよりもこの地方を冒険したい。ネモによれば宝探しという課外授業があるが、あるかどうかわからないらしい。確か今日中に着けば文句は言われない筈だ。

 

 

「少しだけ寄り道しよっか」

 

 

 クラベル校長からもらった相棒を連れて、ポケモンを休ませたポケモンセンターから先に進まず横に逸れる。カロス生まれの私には知らないポケモンがいっぱいだ。色違いのウパーかと思えば姿が違うだけでパルデアでは普通の種だったり、驚きもいっぱいで楽しい。

 

 

「そーっと、そーっと…てやっ!…やったあ!」

 

 

 さっそくパルデアのウパーやウミディグダを不意打ちで背中からボールを叩きつけると言う前のスクールで習った太古の昔からの手法「背面取り」で捕獲して、ペパー先輩から託されたコライドンと共にボールに入れて一緒に探索していた。コライドンは今は戦えないらしいからなにかあったら相棒とウパーでなんとかしないとか。まあ、なんとかなるだろう。

 

 

「おや?」

 

 

 私を弱そうだと判断して話しかけてくるトレーナーを片っ端から倒しながら探索していると、小高い丘に差し掛かったところでそれを見かけた。私と同じオレンジアカデミー指定の夏制服を身に纏った赤髪の少女が、帽子を顔に被せて周りにマメバッタ、タマンチュラ、アメタマを侍らせて腕枕で横になり、一緒に日向ぼっこしていた。

 

 

「えーっと?」

 

 

 思わず目が点になる。いやあの、練度が低いと言ってもポケモンは人知を超えた不思議な生き物。そんなポケモンたちが跋扈しているここでなんでそんなにのんびり寝ていられるのか正気を疑った。さすがに放っておくことができず、恐る恐る近づいて問いかける。

 

 

「あのー、危ないですよ?」

 

「あん?俺になんか用か?」

 

 

 声は少女だが、言動は不良のそれというちぐはぐな人物が帽子をずらして私に視線を向ける。長くて紅い綺麗な髪と、十人中七人が振り返る整った顔の、少々小柄なれど私と同じぐらいの齢の少女。綺麗な青みがかった灰色の瞳が不機嫌そうに私を射抜く。それが、ネモに続くライバルとなるラウラとの出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前がネモの言ってた引っ越してきたお隣さんか」

 

 

 星々が輝く夜空を思わせるサファイアの様な瞳以外は三つ編みに纏めた茶髪にそばかすと一見地味な出で立ちの少女、アイアールと共にプラトタウンを目指す。寝ている間にお昼に差し掛かったらしく、さすがに初日からばっくれるのはやばいと、同じく今日から転入のアイアールと共にオレンジアカデミーに急いでいる訳だ。

 

 

「そう言うあなたがネモの言ってたラウラさんだったなんて。メイドさんだと聞いてたからてっきりお淑やかな人だと…」

 

「お前ナチュラルに失礼な奴だ。呼び捨てでいいよ、ラウラでいい」

 

「じゃあラウラ。私もアイアールでいいよ」

 

「ああ、よろしくなアイアール」

 

「ところで、ラウラは虫ポケモンが好きなの?連れてた三匹ともそうだったけど」

 

「ああ、大好きだ!」

 

 

 アイアールの問いかけに意気揚々と応える。繰り出したマメバッタを頭に、タマンチュラとアメタマを両肩に乗せて興奮しながら続ける。

 

 

「俺は蟲が好きだ。蟲ポケモンが好きだ。愛してる。だからこの愛を以て証明する。蟲ポケモンはかっこよくてかわいくて美しくて最高で最強なのだと!」

 

「そんなに愛しているなんてすごいね!私もポケモンが大好きなんだ!夢はポケモン博士になること!」

 

「お、おう…お前は引かないんだな?」

 

 

 怯むことなく褒め称えて自分の夢も語ってくるアイアールに思わず動揺する。ネモですら俺の熱意にちょっと引いてたんだが。

 

 

「え?なんで?すごいよ、ラウラは。それを証明するなんて難しいことなのに臆することなく言うんだもん。私はポケモン博士になりたいって思っても断言はできないから…」

 

「アイアールお前……いいやつだな!」

 

「あうー」

 

 

 嬉しくなってアイアールの肩を軽く叩く。するとアイアールは叩かれた勢いでふらーっと倒れてしまったので慌てて抱える。

 

 

「ど、どうした!?」

 

「あ、ごめん…私、朝ごはんをコライドンにあげたせいで何も食べてなくて……」

 

「朝飯食ってないなら言えよ!?お前さては天然だな!?」

 

 

 俺はグーグーお腹を鳴らすアイアールを近くの木陰に下ろすと、背負っていたリュックから小さな鍋と食材を取り出し、周囲から適当な岩や枝を持って来て簡単な竈を作り、そこでほのおポケモンを持ってないことに気付く。

 

 

「やべっ、なんで俺ほのおポケモンがいる前提でいたんだ……」

 

「あ、ほのおポケモンなら…出ておいで」

 

 

 そう言って懐から取り出した四つのボールを投げるアイアール。出てきたのはパルデアのウパーにウミディグダ、そして赤いワニの様なポケモンとでかい四足のドラゴンポケモン…ってえ!?

 

 

「なんだそいつ!?」

 

「コライドンだよ。なりゆきで預かってるんだ。ホゲータ、火をお願い」

 

「ゲータ!」

 

 

 ホゲータと呼ばれたワニのポケモンが口から火を噴いて薪に火をつけてくれて、俺はとりあえずコライドンとやらをちらちら見つつも料理を始める。白米を炊きながら火の加減を調整、オボンのみやら具材を入れたナベを加減してかき混ぜていくと香ばしい匂いが辺りに広がる。

 

 

「ほい、ラウラとくせいきのみカレーだ。召し上がれ」

 

「おおっ!」

 

 

 目を輝かせるアイアールにスプーンを渡し、人間用の受け皿二枚の他に、七匹分のポケモン用の受け皿にも移して俺もスプーンを手に取る。

 

 

「「いただきます」」

 

 

 一口食べる。うん、いいできだ。アイツの作った奴にも負けてない……アイツって誰だ?まあいいか。マメバッタもタマンチュラもアメタマも、ホゲータもウパーもウミディグダもコライドンもご満悦だ。よかったよかった。

 

 

「パルデアの名物ってサンドウィッチって聞いてたけどラウラのカレー美味しいね!」

 

「前にネモに振る舞ったら同じように褒められたよ。俺もなんで作れるのか知らないんだがな」

 

「…確か記憶喪失なんだっけ?」

 

「知ってるのか。ネモにはデリカシーってものを教えないとな」

 

 

 そんな会話をしながら食べていると、なにかの気配を感じて咄嗟におかわりを()ごうとしていた途中のおたまを突きつける。そこにいたのは、コライドンよりもひとまわり大きなポケモンだった。

 

 

「たしか、ウルガモス…?」

 

「いや、似てるが違うぞこいつは…!」

 

 

 白いモフモフとした体に黄色い複眼の黒い顔、上側が大きく伸びた背ビレ状の大きな6枚の翅、短い手足で器用に二足歩行している……まるでウルガモスの様で、だが違うポケモン。土で汚れているところから見て地中を掘ってきたのだろうか、大きな穴が背後に開いている。思わず蟲か!?と興奮しながらも、明らかに敵意を向けているそのポケモンに構える。

 

 

「マメバッタ、とびつく!」

 

「ホゲータ!エコーボイス!」

 

 

 アイアールとアイコンタクトして、ポケモンをボールに戻してそれぞれの相棒を繰り出す。するとウルガモスもどきは小さな手足を駆使してアクロバティックな動きで攻撃を避けて背後を取るとローキックと思われる足払いでマメバッタとホゲータを吹き飛ばし、俺達に向き直る。強い……今の動き、かくとうタイプか?

 

 

「…?」

 

 

 思わず衝撃を受けるだろうと目を瞑って構えるが、何時まで経ってもなにもない。目を開けると、こちらの様子を窺っているウルガモスもどきの姿があった。……うん?俺達を襲いたいわけじゃないのか?あいつの視線が向いているのは………あっ。

 

 

「お前、カレーが食べたいのか?」

 

「(コクコクコクッ)」

 

 

 カレーライスを盛り付けた俺の皿を差し出して問いかけると、言葉が分かるのかそれともニュアンスを受け取ったのか激しく頷くウルガモスもどき。俺とアイアールは顔を見合わせ、苦笑いしながらもカレーを差し出すのだった。




土震のヌシがいるなら別の方法で脱出した奴もいると思うんだ。

というわけで原作主人公ことアイアール、そしてウルガモスもどきの登場です。名前を出すわけにはいかないからニックネームつけないとですね。

カレーを作るのが得意なラウラ。どこのガラルチャンピオンの仕業なんだー。


・アイアール
カロス出身の原作主人公に当たる人物。手持ちはホゲータ、ウパー(パルデアのすがた)、ウミディグダ(放仮ごの旅パで初期からいる面子)。天然気味。ポケモンが大好きで夢はポケモン博士。だけど学校はあまり好きじゃない。


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VSニャオハ

どうも、放仮ごです。何時まで経っても封印の剣が全部見つからず準伝説に遭えない日々を送ってます。ネットに頼るのは負けた気になるからしょうがないね。

今回はウルガモスもどきの名前決め。楽しんでいただけると幸いです。


「こいつの名前どうするかなあ…」

 

「名前?」

 

 

 がつがつとカレーを頬張るウルガモスもどきを見ながらカレーのおかわりを渡すと、アイアールは首を傾げてまた一口食べて至福の表情を浮かべる。

 

 

「…話続けていいか?」

 

「あ、うん。名前って?」

 

「こいつだよ。放っておくわけにもいかないし保護した方がいいだろ」

 

 

 ウルガモスもどきを指差すと、カレーを口元に付けた顔を上げて首を傾げてきた。可愛いなおい。

 

 

「でも野生のままがいいんじゃ?」

 

「俺達に出会うまでろくに飯も食べてなかった奴をか?」

 

「あー」

 

 

 もぐもぐと食べながら合点が言ったらしいアイアール。食べるか話を聞くかどちらかにしなさい。

 

 

「でもこの子は保護されたいのかな?」

 

「うーん、お前はどうだ?俺について来るか?」

 

 

 そう尋ねると、ピッと右前足を上げて多分賛成の意を示すウルガモスもどき。賢いな本当に。もしくはそう教育されたのか?

 

 

「俺についてきたいってことでいいんだな?…お前カレー食べたいだけだろ?」

 

 

 そう尋ねるとコクコクと頷くウルガモスもどきの頭を思わずこづく。正直な奴め。

 

 

「ごちそうさまでした。それで、名前どうするの?モフモフ君とか?」

 

「いやそれはやめとく。うーん…なんか羽化(ウカ)したばかりのウルガモスってイメージだし「ウカ」って呼ぶか。いいか?」

 

 

 尋ねると、命名:ウカはまた右前足を上げて了承の意を示した。なんか「ウカ」っておぼろげな記憶だとシオマネキって意味もあった気もするがまあいいや、呼びやすいのが一番だろ。

 

 

「えっと…入るか?」

 

 

 モンスターボールを取り出して突きつけてみる。できればネットボールがいいんだがジムバッジが複数ないと売ってくれないんだよな…。するとウカは右前足でボールを押して自分からボールに入った。

 

 

「…よし。とりあえず腹ごしらえもすんだし、オレンジアカデミーにいい加減向かうか。ネモにブチギレられそうだ」

 

「ネモって怒るの?」

 

「いつもニコニコ笑顔だけど怒ると怖いぞ」

 

 

 一人でタマンチュラを捕まえた時に屋敷をこっそり抜け出して帰ってきた際に泣きながらブチギレられて追いかけ回されたのはいい思い出(?)だ。そんなことを話しながら近くの水辺で調理器具や皿を洗って片づけを終えて、アイアールと共に出発する。

 

 

「しかしこいつなんなんだろうな」

 

 

 プラトタウンに辿り着き、アイスを買い食いしながらテーブルシティを目指す中でウカの入ったボールを眺める。中ではポケモン用のアイスを美味しそうに頬張るウカがいた。

 

 

「ウルガモスの進化系とか…?パルデアには他の地方にいない進化形が数多くいると聞くよ」

 

「それにしては飛べないのが退化してると言うか……」

 

 

 ポケモンが不思議な生き物と言っても限度があるだろ。どちらかというとウカって名前にした通り、メラルバとウルガモスの中間みたいな姿なんだよなあ。

 

 

「そう言えばコライドンもモトトカゲに似てるって話を聞いたな。関係あるのかな?」

 

 

 そう言ってコライドンの入ったボールを取り出すアイアール。ボールの中のコライドンはジーッとボール越しにウカを見つめるが、興味なさそうにそっぽ向いた。知り合いってわけじゃなさそうだな。っと、見えてきたな。テーブルシティの入り口の巨大な門。

 

 

「あ、いたいた。おーい、アイアールー!」

 

「げ」

 

 

 門の前のポケモンセンターの傍に見覚えのある奴がいた。目を輝かせたネモだ。あいつ、まさかずっとアイアールを待っていたのか。あ。俺と目が遭った途端にさらに目を輝かせた。だよなあ。

 

 

「あ、ラウラも!二人とも、遅かったね!道中のトレーナーと戦って強くなったのかな?」

 

「お、おう。まあそんなところだ」

 

「う、うん。そだね」

 

 

 まさか二人してすぐ学校行きたくないから寄り道したとか言えないわ。

 

 

「どれぐらい強くなったのか、二人とも勝負して試してみようよ!」

 

「え、やだ」

 

「うん、いいよ!」

 

 

 俺は断って、アイアールは快く頷いた。お前はこいつのしつこさを知らないからそんな純粋に頷けるんだなアイアール。俺はこの数日間で嫌というほど味わったからな。

 

 

「さすがアイアール!そしてラウラのけち!蟲ポケモンが弱いから戦いたくないのかな?」

 

「その喧嘩買うぞこの野郎」

 

「沸点低すぎない?」

 

「俺を馬鹿にされるのはいいが蟲ポケモンを侮られるのは我慢ならん。ただし一対一だ。行くぞアメタマ!」

 

 

 ネモもわかっててわざと言ってるんだろうがそこまで言われて引けるかこの野郎。

 

 

「おっ、新顔だ!じゃあ私も新顔で…いけっ、ニャオハ!」

 

「なんか進化したら立ちそうなフォルムだな?」

 

 

 繰り出してきたのは緑色の猫ポケモン。多分くさタイプか。アメタマはみず・むしタイプだから総合的に互角か。

 

 

「ニャオハ、このは!」

 

「アメタマ、でんこうせっか!」

 

 

 ニャオハの飛ばしてきたこのはを高速で移動して回避、四肢をシャカシャカ動かして横から体当たりを浴びせるアメタマ。

 

 

「かみつく攻撃!」

 

「バブルこうせんで牽制しろ!」

 

 

 すると体当たりされた瞬間にかみついてくるニャオハをバブルこうせんで迎撃。距離を取る両者。

 

 

「つめとぎ!」

 

 

 爪を地面で砥ぐニャオハ。攻撃・命中率一段階アップか。厄介だな。だったら…!

 

 

「ひっかく攻撃!」

 

「アメタマ、あまいかおりだ!」

 

「なっ!?」

 

 

 引っ掻こうと接近してきたところにピンク色の霧の様な甘い香りを放ち、回避率をガクッと下げて動きが遅くなったところをアメタマは回避。ニャオハのひっかく攻撃は空を切る。

 

 

「ねばねばネット!」

 

「しまっ…かみついて逃げて!」

 

 

 さらにねばねばネットで拘束すると、ネモは慌てず脱出させようと試みる。だがすばやさがガクッと落ちたニャオハが次の行動に移るのは遅い。

 

 

「遅い!連続ででんこうせっか!」

 

「ニャオハ!?」

 

 

 身動きが取れないところに四方八方からアメタマが体当たり。ニャオハは戦闘不能となり、アメタマが勝鬨を上げる。よしよし、よくやった!

 

 

「これでも蟲ポケモンは弱いか?」

 

「ううん。まさかあまいかおりをあんな風に使うなんて興味深いよ!さすがラウラ!じゃあ次はアイアールだね!ちょっと待ってて!アイアールとは二匹で戦いたいから!」

 

 

 ニャオハをボールに戻すと踵を返してポケモンセンターに向かうネモ。するとアイアールがこちらを向いて苦笑いを浮かべた。

 

 

「私手持ち三匹なんだけど…二匹相手にいいのかなあ」

 

「ポケモンを使う数はそいつの勝手だから別にいいと思うぞ。心配なら二匹だけで勝てばいい」

 

「なるほど!」

 

 

 まあ普通のトレーナーってせいぜい二匹が限界で、最大持てる数の六匹を同時に育成するのは相当難しいって話をネモから聞いたが。三匹使えるって聞いたら喜びそうだな。

 

 

 

 その後、ネモはテラスタルまで使ってホゲータとウパーだけを使うアイアールと戦って惨敗した。いやまあ、くさにほのお、でんきにじめんはまあ、うん。

 

 

「すごいねアイアール!将来有望だ!ラウラと一緒に私が本気で戦える相手になることを楽しみにしてるよ!」

 

 

 その言葉に、かつて一緒にいた誰かを思い出す。…ああ、同じようなバトルジャンキーを知ってる気がする。顔が思い出せないのが残念だ。




とりあえず「ウカ」と名付けました。本当の由来はモフモフしているのがゼノブレイド2の同名のキャラをちょっと思い出したからで「羽化」ってのは無理やりの理由付けだけど個人的にはしっくりきた。他の面子もニックネームつけるべきかな。

ウカはとりあえずコライドンと同じ位置のポケモンなので戦闘に参加はまだまだ後かな?理由は次回にて。

・アメタマ♀
とくせい:すいすい
わざ:バブルこうせん
   あまいかおり
   でんこうせっか
   ねばねばネット
もちもの:なし
備考:せっかちな性格。イタズラが好き。ラウラが新たに仲間にしたポケモン。実は追いかけてきたラウラにビビり散らかしていた。


次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSシルシュルー

どうも、放仮ごです。出したいキャラがいたから筆が乗りました。

今回はスター団との邂逅。楽しんでいただけると幸いです。


 テーブルシティにやってきた俺とアイアール。ネモは俺達にテラスタルしてほしいから手続きしてくると言って先に行ってしまった。

 

 

「私、お惣菜屋に興味あるんだ。一度別れてテーブルシティを見て回ってから一時間後に階段前で合流しよう?」

 

「おう。俺は適当に店を見て回ってみるわ」

 

 

 俺の記憶を取り戻す手がかりがあるかもしれないしな。アイアールと別れ、人の流れが多い道を避けて路地裏を練り歩いて隠れ家的な店を探していると、路地裏の物陰に隠れていた二人組に話しかけられた。

 

 

「きみ、見ない顔だけどその制服。オレンジアカデミーの学生だよね?」

 

「君もスター団に入ってお星さまの様に輝く眩しい青春を謳歌しない?」

 

「スター団?なんだそれ」

 

 

 オレンジアカデミーのものと思われる制服に身を包んだ男女二人。モトトカゲにライドする用のヘルメットに特徴的な星形のサングラスはどうかと思うが、着崩された制服はちょっといいな。

 

 

「なっ!?泣く子も笑うスター団を知らないのか!?」

 

「こちとら勧誘ノルマがあるのよ!入りなさいよ!」

 

「やだよ。俺は蟲ポケモンという輝きがあるからそれ以上はいらん。そこどけ、邪魔だ」

 

 

 そう断ってやるとスター団二人はモンスターボールを構えた。めんどくさいなこいつら。

 

 

「なめられっぱなしだと団の面目丸潰れだ!このまま通すわけにはいかないな!力づくでも入ってもらう!」

 

「それに女の子の癖して俺なんてかっこつけてださいわね!しかもむしポケモン?そんな貧弱ポケモンのどこが輝いているのよ!」

 

「あ?」

 

 

 おう俺を馬鹿にするならともかく蟲ポケモンまで馬鹿にしやがったな許さん。マメバッタとタマンチュラを繰り出して頭と肩に乗せる。やる気ならやってやるぞという意思表示だ。すると両手で星を形作るクソダサポーズをした後に繰り出してきたのは、共にどくタイプのポケモン。

 

 

「俺らスター団どく組「チーム・シー」に喧嘩を売るなんて悶え苦しんでも文句は受け付けねえぜ!いけ、ベトベター!」

 

「パイセンとあたしらスター団に喧嘩を売るなんて、お星さまにしてやるわ!シルシュルー!」

 

「うるせえよ。なんだそのクソダサポーズ。マメバッタ、二体ににどげり」

 

 

 突撃してきたベトベターとシルシュルーに対し、頭から右腕に移動したマメバッタを投げつけ、マメバッタは小さな後ろ足でベトベターを蹴りつけるとその反動で反転しシルシュルーにオーバーヘッドキック。二体とも蹴り飛ばして路地裏の壁に叩きつける。

 

 

「んなっ!?べ、ベトベター!ヘドロこうげき!」

 

「シルシュルー!負けるなアシッドボム!」

 

「壁を蹴って避けろマメバッタ!」

 

 

 毒液を繰り出してくるが、壁を蹴ってジャンプして軽々と避けるマメバッタ。そんなマメバッタに気を取られているうちに、肩から移動していたタマンチュラが壁を這って真横についた。

 

 

「タマンチュラ、いとをはく!」

 

「しまっ……!?」

 

「一人で二匹のポケモンを操るなんて、ジムリーダーのライム並みの実力ってこと…!?」

 

「とどめだ!マメバッタ、とびつく!タマンチュラ、むしのていこう!」

 

 

 そこに空中から急降下して加速したマメバッタの“とびつく”攻撃とタマンチュラから放たれた黄緑色の羽虫の様な光線が炸裂。ベトベターとシルシュルーは戦闘不能となった。

 

 

「手も足も出なかったー!?」

 

「あたしらがお星さまになっちゃった!?」

 

「蟲ポケモンのどこが貧弱だ言ってみろ」

 

「しかもあたしらよりガラが悪いよこの子!?」

 

 

 あちらの方が身長高いが気にせずに女の方の襟元を掴んで引き寄せ睨み付けると涙目になって両手をあげて降参の意を示したので解放する。

 

 

「お、おつかれさまでスター!」

 

 

 すると男の方が女を助け起こすとそのまま背中を向けてピューッと逃げていってしまった。いや待て。おつかれさまでスターってなんだ。上手い事言ったつもりか。……なんだったんだ一体。

 

 

「おまえ、つよいな」

 

「!?」

 

 

 するといきなり背後に何かが落ちてきて声をかけられ驚愕する。どこかの民族みたいな奇妙な文様が描かれた、ウォーグルの羽が飾りとして付いている仮面を被った、オレンジアカデミーの夏服……のネクタイが無い上に両袖を破ってタンクトップ風にしていて、日焼けした浅黒い肌で裸足の、野生児という印象が強い人物だった。声が中性的で性別が分からない。こいつどこから…屋根の上にいて飛び降りてきたってのか!?

 

 

「な、なんだお前!?」

 

「わたし、サニア。おまえ、だれだ?」

 

「俺はラウラだけど……」

 

「ラウラ。おぼえた。こんど、たたかおう」

 

 

 そう言ってサニアと名乗った仮面の人物はマメバッタの様に壁を蹴って跳躍し、屋根の上へと消えて行った。なんだったんだ……。

 

 

 

 

 

 

 その後、路地裏で見つけた美味しいサンドウィッチ店で食事していると一時間経ったので、オレンジアカデミーに続く大階段に向かうと、アイアールがスター団と思われる連中をテラスタルしたホゲータで蹴散らしているところだった。ネモが後方腕組みして先輩面していて、イーブイバッグを担いだ珍しい髪色の子で眼鏡をかけた子がじっと見つめている。どういう状況?

 

 

「あ、ラウラ!見て見て、アイアール、さっそく渡したテラスタルを使いこなしてスター団を倒しちゃったよ!」

 

「俺もさっきスター団とやらに襲われたんだがなんなんだこいつら?」

 

「いわゆるやんちゃな生徒の集まりだよ。蹴散らすなんてさすがラウラ!あ、はい。テラスタルオーブ。ラウラの分だよ!」

 

「そいつはどうも」

 

 

 ネモが笑顔で手渡してきたテラスタルオーブを眺めていると、イーブイバックの子が話しかけてきた。

 

 

「…ねえ、あんたもスター団を蹴散らしたの?」

 

「ん?ああ、蟲ポケモンを馬鹿にしてきたもんでな」

 

「ふうん。強いんだ。じゃ、あの子にお礼を伝えておいて」

 

 

 そう言ってオレンジアカデミーへの階段を登って行くイーブイバッグの子。名前ぐらい教えてくれてもよくないか?不良集団もいれば、名前だけ言ってどこか行く野生児がいると思ったら、名前も言わずにどこか行く眼鏡の子もいる。ついでに言うと生徒会長は戦闘狂。なんなんだオレンジアカデミーの生徒は。

 

 

「あの子も転入生かな?イーブイバッグもふもふだあ……さ、いざこざも終わったし学校へ行こう!地獄の階段頑張って登ろうね!」

 

「うん!」

 

「おう」

 

 ネモの先導でオレンジアカデミーへの大階段を登る。……どうでもいいがこの階段やばいな。地獄の階段と言ってたのもわかるわ。




新キャラ、仮面の野生児サニア登場。名前と見た目、言動からどんなキャラかわかったらすごい。

原作イベントはできるだけスキップしたいところさん。でもスター団は扱いやすくて助かる。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSドンファン(?)

どうも、放仮ごです。序盤はどうしても説明回が多くなる。ポケモンが一切出ない話になってしまいました。

今回はみんな大好き先輩登場。楽しんでいただけると幸いです。


 大階段を登りきり、アイアールとネモと共に巨大な校舎の中に入る。なんだろう、俺の知ってる学校とはだいぶ違う気がする。まるで図書館の様な巨大なエントランスホールを案内するネモ。

 

 

「こんなに広いのにエントランスでのポケモン勝負は校則で禁止なんだー」

 

「「当たり前だと思う」」

 

「え、あ、うん、そうだよね……」

 

 

 アイアールと声が重なるとネモはしょんぼりとして落ち込んだ。俺達に何を期待したんだ。

 

 

「アイアールさん、ネモさん。それにラウラさんですね?」

 

 

 そこにやってきたのはオレンジ色の服を着た白髪に眼鏡と髭が目立つ男性。たしかオレンジアカデミーの一番偉い人だ。名前は……。

 

 

「改めまして。私はクラベル。オレンジアカデミーの校長をさせていただいております。初めての登校はいかがでしたか?」

 

「ラウラとも出会って一緒にカレーも食べました!楽しかったです!」

 

「右に同じ」

 

「そうですか。私も校長として鼻が高いです。ネモさんのおかげでしょうか。さすがチャンピオンランクで生徒会長。アイアールさんの案内、ありがとうございます」

 

 

 満足げなクラベル校長。そういえばアイアールはネモに案内されてたんだったか。途中から俺が同行したけど。

 

 

「友達だから当然ですよ!ラウラもちゃんと案内したかった!」

 

「お前俺に蟲ポケモン以外を捕まえさせるつもりだったろ……」

 

「当たり前じゃん!だってもったいないもん!他のタイプを使えばラウラはもっと強いのに!」

 

「本当にやめてくれ頼むから」

 

 

 もうやだこのバトルジャンキー怖い。

 

 

「あ、先生。そういえば、アイアールとラウラがスター団の人達と戦ったそうです。アイアールは人助けだけどラウラは勧誘されて返り討ちにしたんだっけ?」

 

「なんですって!?それは大ニュースですよ!?どちらでですか!?無事の様ですが…」

 

 

 ネモが報告すると驚いて取り乱して眼鏡を押さえる校長。そんなにやばいやつらなのかあいつら。

 

 

「私は校門の階段下でイーブイバックの子が絡まれていたのでそれを助けて」

 

「俺は街の路地裏で勧誘されて蟲ポケモンを馬鹿にされたんで返り討ちに」

 

「ああなんということでしょう。まさか路地裏までとは……人助けは感心できるアイアールさんもですが、ラウラさん。入学早々ワイルドはほどほどに…一歩間違えれば退学案件ですよ」

 

「「ごめんなさい」」

 

 

 アイアールと共に頭を下げて謝る。まあ確かにやり過ぎとは思うしな。アイアールはそんなことないしむしろネモが焚きつけてたと思うけど。

 

 

「ネモさんも。アイアールさんとラウラさんは今回はしょうがありませんでしたが、そういうときは先生を呼んでくださいね」

 

「…なるほどですねー」

 

「ネモお前わかってないだろ」

 

「そ、そんなことないよ?」

 

「図星だ…」

 

 

 アイアールと二人でネモを睨む。本当に生徒会長なんですかねこの人。

 

 

「イーブイのバッグ…ボタンさんですかね」

 

「ボタンって赤と灰色の髪の眼鏡の子か?」

 

「はい、間違いなくボタンさんです。学校にいらしてくれて何より」

 

 

 ボタンとかいう子は引き籠もりなのかな?まあいいか。

 

 

「一応ネモさんはスター団のことを担任のジニア先生に報告してください。そろそろ始業時間なので教室に急いでくださいね。アイアールさんは1-A、ラウラさんは2-Gです」

 

「わかりました!アイアール!案内するね!ラウラもまた後で!」

 

「おーう」

 

 

 ネモとアイアール、クラベル校長と別れて電子機器の見取り図を見て教室の場所を把握する。急ぐとするかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……失敗した」

 

 

 数刻後、俺は自分の机に突っ伏していた。周りからは奇異の視線を感じる。完全に自己紹介でやらかした者の図である。

 

 

「よっ。その…なんだ、蟲への愛を感じられるすげー挨拶だったぜ!蟲ポケモン大好きちゃんなんだな!」

 

「慰めありがとよ。えーっと……」

 

「俺はペパーだ。よろしくな?」

 

 

 ニッと笑う、髪の毛量が凄い隣の席のメカクレ男子、ペパー。そうなのだ。自己紹介で緊張で上がってしまった俺は「諸君。俺は蟲が好きだ。蟲ポケモンが好きだ。愛してる。だからこの愛を以て証明する。蟲ポケモンはかっこよくてかわいくて美しくて最高で最強なのだと!」とよーわからん宣言をしてしまったのだ。穴があったら入りたい。むしろあなをほるを自分でしてしまいたい。

 

 

「ははは。まさか噂の転入生がこんな愉快な奴だとはな!こんなに笑ったのは久しぶりだ」

 

「噂…?」

 

「スター団の奴等を圧倒的な実力で蹴散らしたって噂で学校中持ち切りだぜ?生徒会長とつるんでるっていうアイアールの噂も負けてないけどな。ラウラお前、すげーつよいちゃんなんだろ?」

 

「誰か見てたのか……ってどうした?」

 

 

 なんかそわそわしているペパーに不思議に思って尋ねる。なにか言おうとして迷ってるみたいだ。

 

 

「いや……お前が強いならさ、実は頼みがあるんだ」

 

「頼み?」

 

「もうすぐ課外授業で宝探しがあるんだ。その時に…俺の野望の実現のため、お前の強さを貸してくれねーか!」

 

「野望なら答えはノーだ」

 

「ね、願いだ!野望なんて邪なものじゃない!」

 

 

 俺が断ると慌てて言い換えるペパー。必死だし話ぐらいは聞いてやるか。

 

 

「意外かもしれねーけど俺の趣味はピクニックでな。料理すんのも得意なわけよ」

 

「ほう料理。カレーも作れるか?」

 

「もちのろんだ!で、今はポケモンを元気にする健康料理を研究してんだけど」

 

 

 そう言って赤い本を取り出すペパー。古びた本だ。そこらで買ったとかじゃなさそうだ。

 

 

「この前見つけたこの本に“秘伝スパイス”っていう全部で五種類の食べればたちまち元気になる、パルデアにしかないガチで貴重な食材の事が載っていたんだ。一口舐めるだけで滋養強壮、血行促進!老化防止に免疫アップなんだってよ!」

 

「へー」

 

「興味なさそうだな…」

 

「蟲ポケモンが寄ってくるなら興味ある」

 

「お前がどういうやつなのかわかった気がするよ…カレーに合うかもだぞ?」

 

「それは探さないとな!」

 

 

 なんでか知らんがカレーは大好きだ。なんというか心身にカレーが刻み込まれてる感じ。自分でもよくわからん。

 

 

「だけど秘伝スパイスはヌシポケモンってのに守られてて簡単に手に入らないんだと。ヌシってのは多分こんなやつだ」

 

 

 そう言ってペパーが見せてきたページに載っていたのはドンファンの様な何か。なんだこれ。エリアゼロに生息している巨大で凶暴な生物…?

 

 

「自分で採りにいきたいけど俺、ポケモン勝負は苦手でさ。強い友達のアテもないし、そこでお前の助けを借りたいわけだ。他にも助けを借りたいと思ってるんだけどよ?」

 

「とりあえず場所だけ教えてくれ。行くかどうかはノリで決める」

 

「おう!ヌシがいそうな場所だ。頼んだぜ!」

 

 

 そう言ってファンシーなスマホロトムを取り出したので俺も普通の奴を取り出すとパルデアの地図の五ヵ所にアイコンが追加された。険しそうな所ばかりだな、秘伝とはよくいったもんだ。するとお腹が鳴る。もう昼か。

 

 

「じゃあ俺そろそろ昼食にいくわ」

 

「食堂に行くなら俺も行くぜ?」

 

「いや、隠れ家的お店でサンドウィッチ買って来たから適当なところで食うわ」

 

「そうか。またな!」

 

 

 そうしてペパーと別れて俺は人がいなさそうなところを捜し歩く。…思考が完全にボッチのそれだが気にしないことにする。しかしヌシポケモンか。……蟲ポケモンの強さを証明するいいチャンスかもしれないなあ。ペパーが何か隠していることだけがちょっと不安だけど、宝探しの時にちょっとは手伝ってやるか。




ラウラ、レジェンドルート参戦。ペパーと同じクラスです。担任は誰なんじゃろね。

感想がえしでも書いたんですが、ラウラは15歳ぐらい、ネモは14歳、アイアールは12歳のイメージで書いてます。なので2年にしたけど、老人とか子供とか普通にいるしどうやって分けてるのかマジでわからなかった結果です。

今回バトル無かったので次回は暴れます。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSカジリガメ

どうも、放仮ごです。物語を動かすためにはどうしても前振りがいるのが大変なところさん。

今回はあの人物とのバトル。楽しんでいただけると幸いです。


「グラウンドは昼間は人気(ひとけ)が少ないのか…別に立ち入り禁止じゃないみたいだし隅っこ使うか」

 

 

 グラウンドにやってきた俺は隅の方に行き、手持ちを全員出す。マメバッタ、タマンチュラ、アメタマ。そしてウカ。ちゃんと全員分買って来たサンドウィッチを取り出し差し出す。購買部でオレンジジュースも買って来たし昼食の準備は完了だ。

 

 

「カレーじゃないが美味いらしいぞ」

 

 

 カレーかきのみしか食べさせてなかったので初めてのサンドウィッチに興味津々なポケモンたち。俺のカレーに釣られて仲間になったウカももぐもぐと美味しそうにその短い前足で持って小さな口に頬張ってる。かわいい。

 

 

「チヲハウハネ」

 

「ん?」

 

 

 すると頭上から聞き覚えのある声が聞こえたのでオレンジジュースを飲みながら見上げると、屋根の上から仮面に覆われた一対の目が覗きこんでいて。それはその場で宙返りすると目の前に右腕を地面に押し付けながら着地してきた。びっくりしてオレンジジュースをそっぽに噴き出す。

 

 

「ぜはーっ!?き、気管に入った……何のつもりだサニア!?」

 

「ラウラ。チヲハウハネ。どこで。みつけた?」

 

「地を這う羽?なんのことだよ」

 

 

 ジリジリと迫ってくるサニアから、咳き込みながら後退する。プレッシャーが凄い。本当になんのことだ。

 

 

「いわない?そう。なら。ちからづく。おしえてもらう!」

 

 

 そう言ってモンスターボールを取り出し、もう片方の掌にボタンを押し付けてポケモンを繰り出してくるサニア。記憶を失う前に見たことがあるのか知らない名前が頭に浮かぶ。かみつきポケモン、カジリガメ。みず・いわタイプのポケモンだ。

 

 

「たたきのめせ。くらいつく」

 

「やる気だってなら相手になるぞ。みんな戻れ。マメバッタ!」

 

 

 既に食事を終えていた四匹をボールに戻し、マメバッタを繰り出すと登場と同時にかみつきを跳躍して回避する。なんだ今の技。何も浮かんでこないってことは記憶を失う前の俺でも知らない技だ。警戒した方がよさそうだ。

 

 

「にげばをなくせ。がんせきふうじ」

 

「避けろ!」

 

 

 するとその場で足踏みし、空中に複数の岩石を出現させて一斉に落としてくるカジリガメ。狙いが的確でマメバッタも避けるのに精いっぱいだ。こいつ、並大抵の練度じゃないぞ…!?

 

 

「さすがにすばやい、ね。ロックカットだ」

 

 

 すると背中の甲羅が研磨されて空気の抵抗を少なくしてすばやさがぐーんと上がるカジリガメ。すばやい身のこなしでマメバッタを翻弄し、がんせきふうじで一ヵ所に封じられた退路に追い込んでいく。

 

 

「くらいつくこうげき」

 

「マメバッタ!?交代だ!」

 

 

 意外と伸びる首を利用して脚に噛み付かれてしまい、慌てて戻そうとボールを構えるが何故か戻せず、そのままカジリガメは高速で突進しマメバッタはがんせきふうじの岩石に次々と叩きつけられていく。なんでだ!?

 

 

「くらいつく。は。てきにくらいついたままはなさない。いたみをあたえつつおたがいのこうたいをふうじる。わざ。マメバッタは。もうにげられない。シェルブレード」

 

「くそっ…かみつかれたまま頑張れ!にどげり!」

 

 

 げしげしっと必死に蹴りつけるマメバッタだがカジリガメは離さず、水の刃を形成した右前足を叩きつけてくる。凄まじい衝撃波と共に沈黙。戦闘不能となったマメバッタをボールに戻す。よく頑張ったな。

 

 

「…今の威力。練度(レベル)50台か……トレーナー初心者にひどくないか?」

 

「それはうそ。ラウラ。つよい。でもいまはよわい?ちぐはぐ」

 

「それは俺も思うよ」

 

 

 こちとら練度(レベル)25ぐらいの面子しかいないんだ。…いや、50ぐらいの奴が一人いたな。いちかばちかか。

 

 

「頼む力を貸してくれ、ウカ!」

 

「むっ」

 

 

 繰り出したのは、ウカ。すると目に見えて警戒しだすサニア。こいつのことを知っているのか?まあいい、スマホロトムのポケモン図鑑で確認だ。名前は不明。タイプはむし・かくとう。覚えている技は…ローキック、ニトロチャージ、しびれごな、とびかかるか。

 

 

「チヲハウハネ。けいかいしろ。カジリガメ」

 

「ウカ!ローキックだ!」

 

 

 再び高速で動き回って翻弄するカジリガメを、軽やかなステップで先回りしてローキックを叩き込むウカ。脚を薙ぎ払われたカジリガメは宙を舞い、落ちてきたところにさらにローキック。グルングルンとカジリガメを回転させて地面に叩き付け、戦闘不能にした。

 

 

「…今の、俺の指示なしでやったのか……」

 

「どうしても。かつ。コジオ」

 

 

 繰り出されたのは見たことないポケモンだ。岩石の様なキノコの様な?いや、なんで俺キノコだと思ったんだ?どうやら言うことを聞かないらしいウカで勝たないといけないらしい。アメタマに交代するべきか?

 

 

「見た所ベビーポケモンだがウカに勝てるのか?」

 

「まだそだててるとちゅう。だけどまけない」

 

「こらーっ!教師に無許可でなに対戦してるんですかー!」

 

「「!」」

 

 

 すると怒声と共に色黒の女性の教師と思われる人物が走ってやってきた。たしか数学の…誰だっけ。

 

 

「タイム。なにしにきた」

 

「こら、サニアさん!先生をつけなさいと何度言えば!許可のない私闘は禁じられてます、直ちにやめるように」

 

「…わたし。あきらめない」

 

 

 そう言ってコジオをボールに戻すと跳躍、窓枠やレンガの隙間などに足と指をかけて身軽な動きで屋根上に去っていくサニア。なんだったんだ。俺もウカをボールに戻してタイム先生に向き直る。

 

 

「またあの子ったら逃げて……ラウラさんも。転入生とはいえ気を付けてくださいね」

 

「以後気を付けます。…あのサニアって奴、何者なんですか?」

 

「今の校長…クラベル校長が就任時に一緒に入学させた子なんですよ。ああ見えて文武両道の優等生で、チャンピオンランクで私と同じいわタイプ使いでもあるんですよ」

 

「チャンピオンランク…!?」

 

 

 そりゃ強いわけだわ。納得。その後タイム先生に軽くお説教されてから解放され、教室に戻ろうとした時だった。

 

 

《ロトロトロトロト……》

 

「スマホロトム?知らない番号だな……もしもし?」

 

《「…ラウラだな?この通話はあなたのスマホロトムをハッキングしておこなってる。私の名はカシオペア。ぜひとも協力を依頼したい」》

 

 

 スマホロトムに知らない番号がかかって来たので警戒しながらも出ると、変声機かなにかで変えた声が聞こえてきた。スクール初日からなんなんだ厄日か?




・サニア
 どこかの民族みたいな奇妙な文様が描かれた、ウォーグルの羽が飾りとして付いている仮面を被った、オレンジアカデミーの夏服のネクタイが無くて両袖を破ってタンクトップ風にしていて、日焼けした浅黒い肌で裸足の、野生児という印象が強い人物。一人称は「わたし」中性的な声で片言で喋る他、ポケモンの様な身体能力を持つ。
 判明した手持ちはカジリガメとコジオ。クラベル校長が就任時に一緒に入学させた文武両道の優等生。さらにチャンピオンランクでいわタイプ使いとハイスペック。
 「チヲハウハネ」と呼ぶものに興味があるらしくラウラを狙う。名前の由来は食虫植物サラセニア。

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VSホゲータ

どうも、放仮ごです。今日は仕事が休みなので早めに投稿です。

今回はやっと旅の始まり。楽しんでいただけると幸いです。


《「私の名はカシオペア。ぜひとも協力を依頼したい」》

 

「いきなりなんだお前」

 

 

 突如かかってきた相手が不明の電話。カシオペアと名乗った相手は、ペパーと同じく俺に協力を求めてきた。なんだって俺なんだ。

 

 

《「…あなたのことは知っている。高い素質を持つ、蟲ポケモン使いのポケモントレーナー。監視カメラに映っていたよ、あなたの活躍は。確認させてもらった」》

 

「それで俺になんの協力をしてほしいんだ?」

 

《「ラウラ……あなたはスター団を知っているな?」》

 

「見てたんなら答える必要ないよな?」

 

《「ふむ。その通りだ。スター団とはオレンジアカデミーに通う生徒たちが作ったいわゆる不良グループ。彼等はアカデミーの風紀を乱し、周囲に迷惑をかけている。そんな彼らを私は放っておくことができ……」》

 

「御託はいい。俺にどうしてほしい」

 

 

 なんか清廉潔白なことを言い始めたので途中で割り込む。俺は正義の味方じゃなくてただの蟲好きなんだわ。

 

 

《「…では単刀直入に言おう。私はスター団を解散させ文字通りの星クズに変える作戦……スターダスト大作戦を考えている」》

 

「ネーミングセンスよ」

 

《「ぐっ。余計なお世話だ。この計画には同志が必要……ラウラ、あなたにも手を貸してほしい。蟲ポケモンを馬鹿にするような連中だ、処しておいた方がいいだろう?」》

 

「それはそうだな」

 

 

 全員が蟲ポケモンを馬鹿にするようもんなら駆逐させるまであるわ。

 

 

《「あなたが戦ったしたっぱはスター団どく組「チーム・シー」に所属している。それを始めとしてスター団には5つの組があり、アジトもそれぞれ分かれている。ラウラにはそこへ向かい、組のボスである5名を倒してほしいのだ」》

 

「5人もいるのか」

 

《「うむ。まとめ役兼BGM担当のあく組「チーム・セギン」のボス、ピーニャ。なんでも屋のほのお組「チーム・シェダル」のボス、メロコ。服飾担当のどく組「チーム・シー」のボス、シュウメイ。最年少でメカニック担当のフェアリー組「チーム・ルクバー」のボス、オルティガ。戦闘指南役のかくとう組「チーム・カーフ」のボス、ビワ。合わせて5名だ。ボスたちは組の名前になっているタイプの使い手で、それぞれ強力な改造車『スターモービル』を有しているのが特徴だ」》

 

「…大半がむしタイプ不利だな。やりがいがある」

 

 

 スターモービルってのはよくわからんが。蟲ポケモンはかっこよくてかわいくて美しくて最高で最強なのだと証明するのにちょうどいい。

 

 

《「頼もしい限りだ。したっぱ軍団が邪魔してくるであろうが私も遠くからサポートさせてもらう。ラウラならきっと大丈夫だろう。というわけでアジトの場所をマップアプリに登録させてもらう」》

 

「それ流行っているのか?」

 

《「なんのことだ?…ああ、先に地図に登録した者がいたのか。できればこちらを優先してもらいたい。ボスを倒すたびにたんまりと報酬を差し上げよう」》

 

「もらえるもんはありがたくもらうとするよ」

 

《「ラウラ……あなたの活躍を楽しみにしているよ」》

 

 

 そう言って電話は切れた。スター団に喧嘩売るか、なんだろう……すごい慣れている気がする。まあ湖を爆弾で干上がらせる様な危険な集団じゃないしな。そう思いながらスマホロトムをポケットにしまって校舎に入ろうとすると、クラベル校長がやってきた。

 

 

「どうもラウラさん。サニアが迷惑をかけたようで、申し訳ありません。それはそうと校内でのスマホ通話はいいですが、もう少し小さな声でお願いしますね」

 

「あ、はい。気を付けます」

 

「大切な個人情報が聞かれてしまうと大変ですよ。では」

 

 

 …今の聞こえていたのに注意はしないのか。どうしたんだろうクラベル校長。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…うーん」

 

 

 授業も終わり、自分の寮の部屋のベッドの上でスマホロトムのマップアプリを眺める。ジム、ヌシポケモン、スター団。……………多すぎない?

 

 

「全部でひーふーみー……18とかえぐいだろ」

 

 

 安請け合いしすぎたか。でもジムは蟲ポケモンの強さを知らしめるために必須だし、ヌシポケモンはカレーに合いそうな秘伝スパイスのために行きたいし、スター団は個人的にぶっとばしたい。

 

 

「…順路どうするかねえ」

 

 

 個人的にむしタイプジムリーダーがいる西から回りたい。で、チャンプルタウンとその傍の偽龍のヌシまで行ったら一度テーブルシティに戻って東を目指す感じかなあ。

 

 

「…テレビでも見るか」

 

 

 上半身を起こし、スマホロトムをテレビアプリに切り替える。面白そうなのは……うん?

 

 

「…ガラル」

 

 

 ガラル特集だそうだ。チャンピオンに関する話題を纏めているらしい。確か前に聞いた話だと、ガラルのチャンピオンは俺と同い年くらいだとネモが言っていたか。

 

 

《「次は、ガラルで起きたムゲンダイナによるブラックナイト事件を……」》

 

「…ふああ。眠い……今日はもう休むか」

 

 

 見ていたら欠伸が出たのでスマホロトムの電源を消して再びベッドに横たわる。今日は疲れた。寝る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日後。課外授業の宝探しの日がやってきた。グラウンドに集まり、クラベル校長の説明を聞く俺達。

 

 

「――――――何処へ行き、誰と出会い、何を成すのか。それぞれがそれぞれのポケモンたちと共に歩き、共に考え、共に感じ……自分だけの宝物を見つけて帰ってきてください!」

 

「俺の宝物……」

 

 

 やっぱりまずは記憶かね。蟲ポケモンとの思い出も、かな。それから、受け損なっていた授業を受けてから外に出ると、アイアールとネモとペパーとコライドンが集まって何やら話していた。

 

 

「あっ、ラウラ!ねえ聞いてよ、ペパーったらアイアールに変なことを…」

 

「変なことってなんだよ!?ラウラと同じように力を貸してくれって頼んでるだけだろ!?選ぶのはアイアール本人だ!」

 

「アイアールもラウラも私と一緒にジム巡りするの!」

 

「え、えっと……」

 

 

 言い争いするネモとペパー。おろおろするアイアールと「あぎゃあ」と吠えるだけのコライドン。カオスだなおい。するとアイアールは俺と目が遭って何か思いついたようで腕を掴んで引き寄せてきた。

 

 

「わ、私!ラウラと一緒にいくね!」

 

「え」

 

「ラウラとなら私も…!」

 

「お、俺も!」

 

「じゃあ私達行くから!じゃあね二人とも!ほらほら乗って、ラウラ!」

 

「おわああ!?」

 

 

 そのままコライドンに乗せられ、まるで乗り物の様にコライドンに乗り込んだアイアールの後ろに乗って駆け出すコライドンに乗せられてしまうことになった。

 

 

「ラウラ、どっちに行く!?」

 

「に、西!ってちょっと待て降ろせ!?」

 

「テーブルシティから出たらね!」

 

 

 そのまま西門に直行し、テーブルシティから出て行くアイアール。投げ出されても困るので必死に掴まっているとようやく止まってくれた。

 

 

「ふう。ごめんね、困ってたところに来たから……でも一緒に旅しようってのはほんとだよ?」

 

「お前なあ…じゃあ俺はこれで」

 

「一人旅不安だから一緒に行こうよ!ラウラのカレーも食べたいし!」

 

 

 俺の服の裾を掴んでそう言ってくるアイアールに、俺は溜め息を吐いた。

 

 

「……じゃあ、俺のマメバッタと一対一で戦って勝てたらいいぞ」

 

「ほんと!?いくよ、ホゲータ!」

 

「いきなりだな!?マメバッタ!」

 

 

 提案するなり相棒を繰り出してくるアイアール。この娘も大概あれだな。脳筋だ。

 

 

「ひのこ!」

 

「当たるか!こうそくいどうで懐に入ってにどげり!」

 

 

 ホゲータの放った火の粉を高速移動で避けて、懐に入り込んだマメバッタは後ろ蹴り二連撃を顎に叩き込んで打ち上げる。悪いが加減はできないぞ。

 

 

「ホゲータ、空中から連続でひのこ!ばら撒いて!」

 

「なに…!?」

 

 

 するとアイアールは空中のホゲータに何度も火の粉を吐かせてフィールドを炎上させてマメバッタの逃げ場を失くしてきやがった。なんだろう、懐かしい気分だ。

 

 

「落ちてきたところにフェイント!」

 

「ほのおのキバ!」

 

 

 そして急降下してきたホゲータとマメバッタが激突。マメバッタは崩れ落ち、戦闘不能となってしまう。

 

 

「やったー!一緒に旅しようね!」

 

「ああ、しょうがないな。とりあえず人気(ひとけ)のないところを探してピクニックするぞ。マメバッタたちを休ませないと」

 

「そうだね。じゃあ川沿いかな?」

 

 

 こうして俺達の二人旅は始まった。コライドンという足がいるのは正直ありがたいかな。揺れが凄いけど。




というわけで原作主人公のアイアールと一緒にコライドンで旅します。少なくとも4人は乗れるはず。

スターダスト★ストリートは原作と異なりラウラだけが参戦します。トレーナーなり立てよりも実力のあって因縁ある人の方がいいとカシオペアは判断しました。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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むしジム、大空のヌシ、あく組
VSコジオ


どうも、放仮ごです。ぶんぷを調べる時にマップがあまり役に立たないことを知りました。見逃してるだけなのかもだけど何番エリアなのかちゃんと書いてほしい。

今回はテーブルシティ西、南2番エリアでのいざこざ。楽しんでいただけると幸いです。


 南2番エリアをコライドンに乗って道なりに進む。すれ違う人々の驚いた奇異の視線が痛い。まあ目立つわな。途中喧嘩売ってくる奴もいたが俺達は交代しつつ返り討ちにした。道中、ハネッコやヤヤコマ、ムックルやメリープ、ディグダにミニーブなどのポケモンたちともすれ違う。

 

 

「なんかピンと来るポケモンいたか?」

 

「今のところいないかなあ」

 

 

 どうやらアイアールはすぐに六匹揃えるタイプじゃないらしい。俺もそうだが、余裕ができてからがいいから同感だ。それに、アイアールの今の手持ちもホゲータ、ウパー、ウミディグダとバランスもいいしな。

 

 

「しかし妙だな」

 

「なにが?」

 

「最初の方は見えていたハネッコとかがいつの間にか消えている」

 

「たしかに。どうしたんだろうね……んん?」

 

「どうした?」

 

 

 岩場に差し掛かった時、アイアールが何かを見つけたのかコライドンを止めた。グルルッと不満げに唸るコライドンの頭を撫でて宥めながらしきりに周りを見渡すアイアール。俺達は一度コライドンから降りてボールに戻して歩くことにした。

 

 

「いったいどうしたんだ?」

 

「何か可愛いのがいた!えっと……あそこ!」

 

「んんー?」

 

 

 視線を向ける。そこにいたのはめちゃくちゃ輝いているキノコみたいな岩の様なポケモン。見覚えがあるやつだ。

 

 

「たしかコジオだったか?サニアの持ってたやつだな。でもなんか光ってるな」

 

「サニアって?」

 

「ネモと同じチャンピオンランクの岩使いだ」

 

「ネモ以外にもいたんだ。まあいいや、捕まえよう!レッツゴー!ホゲータ!」

 

「あ、ちょっまっ」

 

 

 止める暇もなくホゲータを繰り出して突撃させるアイアール。するとコジオはうちおとすを発動、直撃してホゲータは引っくり返り、アイアールは涙目で慌てて駆け寄った。

 

 

「ホゲータァアアアアアッ!?」

 

「言わんこっちゃない。コジオはいわタイプ。ほのおタイプの天敵だ」

 

「ほのおってみずだけが弱点じゃないの!?」

 

「そこからか!?」

 

 

 一度アカデミーに戻ってタイプ相性というものを学んで来いお馬鹿。

 

 

「ウパーのじめんタイプとウミディグダのみずタイプはいわタイプに強いからそいつらで行け」

 

「なるほど!よーし、ウミディグダ!」

 

 

 ホゲータをボールに戻したアイアールが繰り出したのはウミディグダ。するとウミディグダを前にしたコジオの輝きが増していき、結晶化して姿を変えた。

 

 

「テラスタルだと…!?」

 

「え、野生のポケモンがテラスタル!?」

 

「こいつは………何タイプだ?」

 

 

 なんか風船みたいなものが頭についている紫色の結晶の姿。見たことないテラスタルだ。電球のようなでんきタイプや、神殿みたいないわタイプ、燭台みたいなほのおタイプとも違う、

 

 

「ならこっちも…テラスタル!」

 

 

 ならばとアイアールもテラスタルオーブを取り出しウミディグダをテラスタル。噴水の様な結晶が頭部についた、多分みずタイプのテラスタルにすると突撃させた。

 

 

「アクアジェット!」

 

 

 すると不思議がことが起こった。水を纏ったウミディグダの突撃を、コジオはふよふよと浮かんで回避したのだ。

 

 

「あれえ!?」

 

「何だ今の?」

 

「逃がさないよ!まきつく攻撃!」

 

 

 うにょーんとウミディグダの身体が伸びて空中のコジオに巻き付こうとするが、また不思議なことが起こった。ウミディグダの攻撃が、コジオを擦り抜けたのだ。

 

 

「ノーマル技を無効…ゴーストタイプのテラスタルか!?」

 

「コジオっていわタイプじゃなかったの!?」

 

「ネモが言ってた別のタイプに変わる特別なテラスタルってやつじゃないか?」

 

 

 うん?ということはむしポケモンがむしタイプ以外のタイプになることも可能ってことか?ぐっ……ドラピオンがパルデアにいないことが悔やまれる…!本当の意味で蟲ポケモンになれたのに……!……まあそもそも持ってないから関係ないか。

 

 

「ゴーストタイプだから微妙に浮かんでるんだなあれ」

 

「こらー!浮かぶなー!どろかけ!みずでっぽう!」

 

 

 やたらめったら遠距離技を撃ちまくるアイアール。バトルの才能はあるが野生ポケモンの扱いはド下手くそのようだ。しょうがないなあ。

 

 

「手伝ってやれ。タマンチュラ」

 

「シャーッ」

 

 

 手伝うためにタマンチュラを繰り出す。狙いを定めて……。

 

 

「そこだ、いとをはく!そのまま地面に落とせ!」

 

 

 そして糸を吐いてコジオをグルグル巻きにすると勢いよく引っ張り、ふよふよと浮かんでいたコジオを地面に埋める。同時にテラスタルが解除されて普通のコジオに戻った。これでいいだろ。

 

 

「ありがとうラウラ!いけえ、モンスターボール!」

 

 

 そのまま近づいて零距離でモンスターボールを叩き込むアイアール。容赦ないなおい。コジオは観念したのかそのまま捕まった。ちょうどいいので捕獲したデータをポケモン図鑑アプリで共有させてもらう。

 

 

「あれ?」

 

「どうしたんだ?」

 

「図鑑によると近くの西1番エリアにはいるけど南2番エリアにはいないらしいよ?でもここ南2番エリアだよね?」

 

「そのはずだが」

 

 

 マップアプリを表示して現在地を調べる。南2番エリアだな。でも確かにポケモン図鑑のぶんぷにはコジオはもう少し先のエリアに生息しているそうだ。なんでここに?

 

 

「……考えられるとすれば心無いトレーナーに逃がされたか、なにかから逃げてきたか……」

 

「後者だとするとなにから?」

 

「………多分、あれだ」

 

 

 西1番エリアの方角の空を指差す。そこには一見暗雲の様なものが存在していて。アイアールはボールから出したコジオが震えているのを感じながらも視線をやって首を傾げる。

 

 

「なにあれ?」

 

「……あれは鳥ポケモンの群れだ。ムクバードだな」

 

 

 ムクバードは獰猛なポケモンだ。群れと群れのぶつかり合いでは顕著になるらしい、とおぼろげな記憶にある。誰かに教えられた気がする。そしてそれを率いているのは……。

 

 

「コライドンを出せアイアール。逃げるぞ」

 

「なに、が…!?」

 

 

 こちらの派手な戦いを視界に入れたのか、暗雲の様な群れを率いてそれは飛来した。もうきんポケモン、ムクホーク。しかもなんかでかい。今の俺達じゃどう足掻いても勝てない奴だ。道理でハネッコとかが姿を消したわけだよ野生の勘って奴か!

 

 

「コライドン!逃げて!?」

 

 

 アイアールが出して、すぐに事態を察して駆け出したコライドンに飛び乗り逃走を開始する。旅の最初から最悪だなクソッたれ!




オヤブンムクホーク降臨。ラウラに生態を教えたのはなにキなんじゃろね。

ゴーストタイプテラスタルのコジオはうちの子を元にしてます。のろいを使い分けられるのが楽しい子。その名もゴーマシオウ。何故か「オウ」で統一したせいで6匹の王と一緒にチャンピオンを目指す旅だったっていうね。アイアールの手持ちもそのネーミングにするか悩みどころ。同一ポケモンが沢山出るのでニックネームは必須だと思うんですけどね。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSムクホーク

どうも、放仮ごです。前回を投稿してからそう言えばノーマルジムの切札がムクホークだったわ…と頭を抱える羽目になりました。差別化できてるといいといいのだけど。

今回は前作である剣盾編で活躍させることがあまりできなかった蟲ポケモンの登場です。楽しんでいただけると幸いです。


「コライドン急いで急いで!」

 

「もっと速く走れないのか!?」

 

「なんか今のコライドン弱ってるみたいでー!?」

 

 

 次々と空中から飛来するムクバードのブレイブバードを、コライドンの上で身を捩りなんとか回避していく俺達。とんでもない猛攻だ。というか群れに囲まれたまま並走されて逃げ場がない。

 

 

「クソッ、応戦だ!」

 

「うん、コジオ!うちおとす!」

 

「アメタマ!バブルこうせん!」

 

 

 アイアールは両手の間にコジオを出して、俺は肩の上にアメタマを出して応戦。何体かに岩をぶつけ、泡を纏わりつかせて撃墜させて数を減らしていく。だが一匹、別格がいた。

 

 

「キュイィイイイッ!」

 

「掴まれ!」

 

「アギャア!?」

 

「ぐうう!?」

 

 

 横っ腹にとんでもない速度の一撃が叩き込まれ、コライドンごと吹き飛ばされて宙を一回転するコライドンにしがみ付き、地面に叩きつけられて投げ出される。たまらずアイアールがコライドンをボールに戻す。今のはでんこうせっか、か。なんて威力だクソッたれ。

 

 

「アメタマ!あまいかおり!」

 

 

 すばやさを下げるために翼を広げて突撃してくるムクホークに合わせてあまいかおりを放たせるが、ムクホークはそれを察してかでんこうせっかで直角に上昇し回避、翼を羽ばたかせて突風を巻き起こしあまいかおりを吹き飛ばし、怯んだところにブレイブバードでアメタマだけを吹き飛ばす頭脳プレーまでしてきた。戦闘不能になり転がったアメタマをボールに戻す。

 

 

「アメタマ!?なんてやつだ……」

 

「ウパー!ポイズンテールで毒にしちゃえ!」

 

 

 アイアールが右手に繰り出したウパーを空中にぶん投げてポイズンテールを叩き込ませようと試みるも、ムクホークを擦り抜けてしまい、瞬く間に複数のムクホークに囲まれ、四方八方から翼や脚でタコ殴りにされるウパー。

 

 

「かげぶんしんにインファイトか…!?」

 

「ウパー!?コジオ、お願い!うちおとせ!」

 

 

 ボコボコんされたウパーは地面に叩きつけられ戦闘不能。ならばとアイアールは抱えたままのコジオにうちおとすを指示するが擦り抜ける。かげぶんしんに当たってしまったらしい。

 

 

「くそっ…マメバッタ、タマンチュラ!…ウカ!」

 

「コジオ、ウミディグダもお願い!」

 

 

 残るポケモンを総動員する俺達。するとウカが指示する間もなく飛び出してほのおを纏い突撃。ニトロチャージだ。

 

 

「キュイイイイイッ!」

 

 

 ムクホークはかげぶんしんで受け流すとブレイブバードで対抗、空中でぶつかり合う二体。しかし相性が悪いのかウカは押され気味だ。むし・かくとうだもんな、ひこうは四倍弱点だ。さすがにきついか。

 

 

「援護するぞタマンチュラ、むしのていこう!」

 

「ウミディグダ、みずでっぽう!」

 

 

 遠距離攻撃で援護する俺達。しかしムクホークはウカを蹴り飛ばすと再びかげぶんしん。攻撃を回避し、一瞬で近づいてくると翼でタマンチュラとマメバッタを殴り飛ばし、脚でウミディグダとコジオを踏み潰してしまった。

 

 

「みんな!?もう手持ちが……」

 

「ウカ!」

 

 

 そのまま俺達目掛けてブレイブバードで突撃してくるムクホークに、俺はウカの名を呼ぶ。するとウカはムクホークと俺達の間に割り込んでその小さな両腕でムクホークの嘴を受け止めていた。

 

 

「しびれごなだ!」

 

 

 俺の指示を受け、背中の羽から黄色い粉を撒き散らすウカ。しかしムクホークはでんこうせっかで回避、横からウカを蹴りつけて蹴り飛ばすと、インファイトで攻め立てる。ウカまでやられたら本当に後が無いぞ…!?

 

 

「どうしようラウラ…」

 

「げんきのかけらが一個だけあるからこれでコライドンを回復させろ。…あとは逃げる隙を……」

 

「わ、わかった」

 

 

 俺が手渡したげんきのかけらをコライドンの入ったボールに使うのを見ながら周りを見渡す。なにもない野原だ。気を引けそうなものはなにもない。ネモに電話するぐらいしかないか…?ウカとムクホークの戦を見ながらスマホロトムを取り出した時だった。

 

 

「なんだ!?」

 

 

 ムクホークの展開していたかげぶんしんが、瞬く間に切り刻まれて霧散する。高速で動いているナニカに斬り裂かれたらしい。竜巻かの如く高速で円を描いてムクホークのかげぶんしんを切り刻んでいったそれは、天高くに飛び出して姿を現した。

 

 

「キシャアアアッ!」

 

「あれは…!?」

 

「ストライクか…!?」

 

 

 そこにいたのはかまきりポケモン、ストライク。ストライクは俺達に注目されているのに気付くと自慢げな笑みを浮かべ、着地。鎌を構えてポーズをとる。なんだ…?

 

 

「…えっと、自信過剰で目立ちたがり屋?」

 

「…ぽいな」

 

 

 呆気にとられる俺達を余所に、まるで俺を見ろと言わんばかりに大袈裟な動きでムクホークとウカに斬りかかるストライク。咄嗟にウカをボールに戻すとそのままムクホークに向かっていき、ゲシッと顔に蹴りを叩き込まれる。

 

 

「「あ」」

 

 

 そのままブチギレたムクホークに嘴で(つつ)かれ、翼でぶたれ、脚で蹴られてボコボコにされるストライク。そのままげしっと蹴り飛ばされたストライクは瀕死にはなってなかったが、ぶすーっと不機嫌になりそっぽを向いてしまった。

 

 

「しかも自分が活躍できないと拗ねるんだ……」

 

「あーもう、しょうがないな!こいつに賭けるしかないか!」

 

 

 ポケモン図鑑アプリを開いてストライクを見る。練度(レベル)は34程度。わざはれんぞくぎり、くさわけ、つじぎり、つばめがえし……覚えている技的にトレーナーの手持ちだったポケモンか?まあいい。

 

 

「おいストライク!活躍させてやるから手を貸せ!」

 

 

 そう言うとパアッと顔を輝かせてブンブンと凄い勢いで頷くストライク。俺の前に立ち、鎌を大袈裟に構えた。するとかげぶんしんで分身し、一斉に突撃してくるムクホーク。ブレイブバードで纏めて俺達を吹き飛ばそうって腹か。

 

 

「に、逃げようよラウラぁ…」

 

「ギリギリまで引き寄せるんだ」

 

 

 コライドンを出して逃げようと促してくるアイアールを無視してムクホークの挙動を見て指示する。やはり元々トレーナーの元にいたのか俺の指示に従い、構えるストライク。そして、目と鼻の先まで迫るのを待って声を張り上げる。

 

 

「つじぎりだ!」

 

 

 すれ違いざまに十字を描く様に斬撃が炸裂。ムクホークは意識を刈り取られて、そのまま地面に落下。激突して戦闘不能となった。慌てて空で待機していたムクバードたちがやってきてムクホークを脚で掴むと羽ばたいて去っていった。

 

 

「や、やったあ!」

 

「…ふう、助かったぞストライク」

 

 

 そう言うと鎌を上げて俺の腰を指差すストライク。腰を見ると戦闘不能になった皆がいるボールホルダーが。もう一度見ると、腕を組んで踏ん反り返っていた。

 

 

「お前も仲間にしろって?そりゃ願ったりかなったりだが…」

 

 

 そう尋ねるとふんすっと頷くストライク。恐る恐るモンスターボールを取り出すと鎌先で触れて自分から入って行った。……人恋しかったのかな。

 

 

「…ウカもありがとな?」

 

 

 ウカの入ったボールにも礼を告げる。…ウカの助けを借りなくても戦えるぐらい、強くならないとなあ。とりあえずは近くのセルクルジムだ。むしタイプ使いのジムリーダーの力、見せてもらおう。




・ストライク♂
とくせい:テクニシャン
わざ:れんぞくぎり
   くさわけ
   つじぎり
   つばめがえし
もちもの:なし
テラスタルタイプ:???
備考:ようきな性格。自信過剰で目立ちたがり屋。自分が活躍しないと拗ねる。元々別のトレーナーに捨てられたポケモン。

ムクホークの脅威が伝われば幸いです。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSタンドン

どうも、放仮ごです。昨日の分を投稿した後にランキング入りしてました。ありがとうございます。これからも頑張らせていただきます。

また、秋塚翔さんがポケモン蟲の三次創作を投稿しました!そちらもぜひ!詳しくはあらすじから。

今回は速すぎるリベンジ戦。楽しんでいただけると幸いです。


 セルクルタウンに辿り着き、ポケモンセンターに駆け込んだ俺とアイアール。この地方独特のスタンド方式のポケモンセンターで回復をしてもらいつつ、二人で街中を散策しつつ見つけたサンドウィッチ屋にはいり腹ごなしすることにする。

 

 

「じゃあ俺はスパイシーサンドで」

 

「私はトロピカルサンド!」

 

 

 1750円支払って辛味の効いたソースのおかげで野菜の甘味が活きるサンドウィッチを席について食べる。美味いが物価高いんだよなあ。こんなもんかね。

 

 

ひゃあ、あはひひっへふるへ(じゃあ、わたしいってくるね)

 

「落ち着いて食べ終わってから言えお馬鹿」

 

 

 サンドウィッチを口でもぐもぐしながら立ち去ろうとしたアイアールにツッコむ。行儀が悪いわ。しかし止まらなかったアイアールはそのまま出て行き、俺も出ようとして知り合いが店の中にいることに気付いた。

 

 

「…しおっけがたりない。おねがいジオヅム。しおづけ」

 

 

 店の片隅で、サンドウィッチにコジオの進化形と思われるポケモンから岩塩を振りかけてもらっているサニアがいた。満足げに口に入れて咀嚼していた仮面の目と視線が合う。

 

 

「ラウラ。なんのよう?」

 

「飯食いに来ただけだが」

 

「そう。わたしも」

 

 

 そのままどっちもサンドウィッチを食べ終わったので、なんとなしに一緒に外に出る。ポケモンセンターまで戻って回復してもらったマメバッタ、タマンチュラ、アメタマ、ストライク、ウカの入ったボールを受け取った俺に黙ってついて来ていたサニアが険しい顔で口を開く。

 

 

「チヲハウハネ。どこでなかまにした?」

 

「またか。なんのことだよ」

 

「そいつのこと」

 

「そいつって…ウカか?」

 

 

 サニアが指差したボールに入ったウカに首を傾げる。地を這う羽ってウカのことだったのか。どこでなかまにしたっていわれても……

 

 

「南1番エリアで、地中から出てきて俺のカレーを食べたところを仲間にしたんだが」

 

「……それだけ?」

 

 

 するとぽかんとして、見るからに落胆するサニア。どうやらお気に召さなかったらしい。なんなんだよ。

 

 

「…ちちゅうから。つまりあそこからでてきた?」

 

 

 ぶつぶつと考え込みだしたサニアに、俺はウカを見ながら尋ねる。

 

 

「名前もわからないからウカって名付けたんだけどチヲハウハネって呼んだ方がいいか?」

 

「…ううん。そのままよんであげて。そっちのほうがしあわせ。らんぼうもののチヲハウハネ、ラウラにはしたがってる。めずらしい」

 

「言うことは聞かないけどな。…というわけだ、これからもよろしくなウカ」

 

 

 乱暴者なんだな、とかぼんやり眺めていると、何かに気付いたらしいサニアが訪ねてくる。

 

 

「…ラウラのポケモンたち。みんなかいふくしてた。きょうてき?」

 

「ああ、なんかでかいムクホークと戦ってぼろ負けしたんだ。新しい仲間のストライクのおかげでなんとか追い返したが」

 

「…もしかして。おおきい?」

 

「ああ、大きかったが…どうかしたのか?」

 

 

 問いかけに頷いていると合点がいったのか、サニアは見覚えのある本を取り出してきた。ペパーも持ってたスカーレットブックだ。しかも開いたページは例の秘伝スパイスについてのことだ。

 

 

「わたしたちのせいちのしょくぶつ。このちにわたった。ムクホーク。それをたべてつよくなった。かのうせい。ある」

 

 

 せいち…聖地?秘伝スパイスはサニアの故郷から輸入されたものってことか?やっぱりパルデア以外のところから来たんだなサニア。

 

 

「そのストライクのちから。みてみたい。わたしとたたかえ」

 

「おういいぞ。ただ……めんどくさいぞ?」

 

「?」

 

 

 サニアの願いに頷き、セルクルタウンの郊外に一緒に向かいモンスターボールを構える。

 

 

「一対一でいいか?」

 

「うん。そだてはじめたこでいく。タンドン」

 

 

▽いわつかいの サニアが 勝負を しかけてきた!

 

 

 そう言って繰り出したのはいわ単タイプのせきたんポケモンタンドン。何故か、懐かしい感じがした。

 

 

「頼むぞストライク」

 

 

 相性は最悪だがご所望ならしょうがない。ストライクを繰り出すと、ブンブンと鎌を大仰に振り回してポーズをとる。するとサニアは理解できないのかポカーンと呆けた。

 

 

「なに。その。なに?」

 

「こいつは目立ちたがり屋でな。負けると拗ねるし勝たせてもらう。くさわけ!」

 

「こうそくスピン」

 

 

 文字通り草をかき分けるようにしてすばやさを一段階上げながら突撃するストライクのくさタイプの攻撃を、高速で横回転して弾き返すタンドン。大方ロックカットで素早さを上げてくるかと思ったが防御を固めてきたか。

 

 

「えんまく」

 

「つじぎり!」

 

 

 車輪をその場で回転させてえんまくを発生させ姿を隠してきたのでつじぎりで煙幕を切り払うがそこにタンドンの姿はなく。慌てて周りを見渡せば、車輪を回転させ爆走して大きく迂回して突撃してくるタンドンの姿があった。

 

 

「たいあたり」

 

「つばめがえしだ!」

 

 

 スピードに乗った体当たりと、必中の斬り返しが激突。大きく弾かれ宙に舞い上がり滞空するストライク。

 

 

「えんまく。からのうちおとす」

 

 

 再び車輪をその場で回転させて煙幕に包まれ、どこから飛んでくるか分からないうちおとすで攻撃してくるタンドン。むし・ひこうのストライクには効果は抜群だ。このままなら、だが。

 

 

「こいつはどうだ!」

 

「っ!?」

 

 

 猛烈な輝きと共に、うちおとすがストライクに炸裂。文字通り撃ち落とされるストライクが砂埃で見えなくなる。しかし緑色の輝きと共に砕け散った宝石の欠片と共に砂埃が吹き飛ばされ、健在しているストライクが現れるが、その姿は激変していた。

 

 

「…テラスタル」

 

「ああ。俺のストライクはくさタイプのテラスタルだ」

 

 

 まるで花束の様な結晶。以前、ニャオハがテラスタルした時のものと同じものを頭に乗せて緑色に煌めく結晶化したストライク。そうなのだ。このストライク、むしでもひこうでもないくさタイプのテラスタルだったのだ。アイアールのコジオと同じ、タイプが全く異なるテラスタルという事だ。

 

 

「こっちもいくよ。テラスタル」

 

 

 対してサニアもタンドンをテラスタル。岩造りの神殿の様な結晶を頭に乗せて茶色に輝く結晶化した姿となったタンドン。テラスタルにはテラスタルの攻撃しかろくに通用しない故だろう。だが負ける気はない。

 

 

「ストライク!くさわけ!」

 

「タンドン。うちおとす」

 

 

 それぞれの色の輝きを発して、草をかき分け突撃するストライクと巨大な岩石を発射するタンドン。加速したストライクは岩石をぶち抜いて、その勢いのままタンドンに激突。天高く打ち上げてテラスタルを解除させ、優雅に空を舞うストライク。

 

 

「俺たちの勝ちだ」

 

「うん。かんぱい。このストライクなら。もしかして?」

 

 

 スタッと着地してポーズを決めるストライクにサムズアップする。倒れたタンドンをボールに戻し、サニアも楽しそうに笑った(多分)。




感想でも気付かれてましたがくさテラスタルのストライク登場。四倍弱点補完できるタイプのテラスタルです。くさわけを覚えてたのがフラグでした。

ムクホークがスパイス関連だとも判明。サニアは何者なんでしょうね。そして最後の含みの意味とは?

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSバサギリ

どうも、放仮ごです。ちょっと今後の展開を試行錯誤してます。どうしてもラウラと戦わせたいキャラがいるんだけど出す方法が難しい。

今回は題名通りあの蟲ポケモンが参戦。楽しんでいただけると幸いです。


 笑って負けを認めたサニアは拳を握ってぷるぷると震えた。悔しいのかな。

 

 

「つぎ。まけない。ほんき。いく」

 

「まだチャンピオンランクの本気はやめてほしいな」

 

 

 でもおかげでストライクを使いこなせるようになった気がする。するとサニアが腰のポーチに手を伸ばして何かを探し始めた。

 

 

「どうしたんだ?」

 

「わたしたいもの。ある」

 

 

 そして見つけた物を取り出し、差し出してきたサニアに首を傾げる。それは、黒く輝く石の破片だった。

 

 

「それは…?」

 

「これ。つかえ。わたしのしるストライク。おのできをきる」

 

「?」

 

 

 とりあえず受け取る。なんだこれ、ほのおのいしとかその類なのか?すると出したままだったストライクがやってきて興味深げに鎌の先端で触れてきた。

 

 

「おわっ!?」

 

「グラッシャー!」

 

 

 するとテラスタルとは異なる輝きと共にストライクの形状が変わっていき、光が晴れると激変したストライクがそこにいた。ハッサム以外の進化だと…!?

 

 

「そのなは。バサギリ。いわのまさかり。たいぼくをもきる」

 

「バサギリ……」

 

 

 進化した己の姿に困惑するストライク…バサギリに、胸が高鳴るのを感じた。ああ、かっこいいな!最高だな!思わずサニアの手を取ってブンブン振るう。

 

 

「ありがとう!サニア!おい写真を撮るぞバサギリ!」

 

「グラッシャー!」

 

「よろこぶ。なにより」

 

 

 振り回されながら嬉しそうにするサニア。感慨深げにバサギリを見つめてにやける姿は珍しい物を見た気がする。すると街の中心のツリーバトルコートから満面の笑みのアイアールが降りてきた。あっちも終わった様だな。

 

 

「ラウラー、勝ったよー!…ってあれ?誰その子にポケモン?」

 

「ああ、こいつは……」

 

「っ、じゃあまた」

 

 

 するとサニアはアイアールを見るなり苦い顔をしてそそくさと去って行ってしまった。…なんかわけありっぽいな。アイアールから逃げる理由は分からんが。

 

 

「いや、お前が出て行った後にサンドウィッチ屋で出会ったやつだ。で、こいつはバサギリ。ストライクの進化形だ」

 

「ええ!?ハッサムじゃなくて!?」

 

「そうなんだよ。驚いたよな」

 

 

 バサギリの岩斧を撫でようとしたらちょっと触れただけで軽い切り傷がついて引っ込める。凄い切れ味だな。かっこいいぞ最高だぞ!と興奮しているとアイアールが取り出した包帯と傷薬で治療を始めた。

 

 

「いや怪我したなら治療しようよ」

 

「あ、悪い。それで勝ったんだって?」

 

「うん。ホゲータとコジオがいたから完勝だったよ」

 

「初心者向けのジムって話だしな。俺もちょうどいわタイプを手に入れたからいけるかな」

 

 

 そう言ってバサギリを見上げる。180㎝ぐらいか?結構でかいな。進化した自分の力を試したくてうずうずしてるな。

 

 

「よし早速いくか。ジムトレーナー相手に無双しようか」

 

「あ、他の地方のポケモンジムと違ってジムテストってのがあるよ」

 

「ジムテスト?ジムミッションじゃなくて?」

 

「うん。ちょっとよくわからなかった」

 

「そりゃ、ウールー集めとかクイズみたいな?」

 

「ウールー集めって何?」

 

「いや、なんかそれがすぐ浮かんだ」

 

 

 なんでかは知らん。しかし普通にジム攻略するだけじゃ駄目なのか。面倒だな。

 

 

「とりあえずいくか。戻れバサギリ」

 

「私は客席で応援してるね」

 

 

 バサギリをボールに戻し、アイアールと一度別れてセルクルジムに向かう。…なんだろう、大きいんだがこのサイズに違和感を感じる。あとセルクルタウンの雰囲気に合って無くないか?

 

 

「あ、ラウラ!」

 

「げ」

 

 

 なんだろデジャヴ。ジムの中に入るとネモが待ちかまていたんだが。何時来た。というか郊外で戦ってたのに俺に気付かないでここまで来たってことは俺とアイアールがこの街に来る前から待機してたってことか?

 

 

「ポケモンジムに来たってことはアイアールと同じくジムバッジを集めてポケモンリーグに挑戦するんだよね!?アイアールのジム戦の途中にサニアと戦ってたからてっきり興味ないのかと…」

 

「見てたんかい。…蟲ポケモンの強さを証明するんだからやるに決まってるだろ」

 

「っ…!そうだよね!ラウラならそう言うよね!蟲ポケモンだけで勝ち続ける覚悟があるなんてすごいよ!」

 

「…ネモ、お前蟲ポケモンを侮ってるだろ」

 

 

 そう尋ねると口をつぐむネモ。否定して俺のやる気がなくなるのを危惧してたんだろうな。まあ気持ちは分かる。打たれ弱い、弱点も多い、気持ち悪いと言う奴もいるだろう。だけど。だけどな?

 

 

「ちょうどいい。むしタイプのジムであるここで宣言してやる。ネモ、いやチャンピオン。よく聞け?」

 

 

 大きく息を吸い込む。両手を後ろに回して姿勢を正す。転入した時の紹介の様な無様な宣言はしたくない。これは俺の宣戦布告であり決意表明だ。

 

 

「諸君!俺…私、ラウラは蟲が好きだ!蟲ポケモンが好きだ!愛している!だからこの愛を以て、ジムバッジをすべて集めてトップチャンピオンを倒すことで証明する!蟲ポケモンはかっこよくて!かわいくて!美しくて!最高で!最強なのだと!!」

 

「ラウラ……」

 

 

 するとネモは嬉しそうに不敵に笑い、ワーワー!と周りから歓声が上がる。見れば多くは蟲ポケモンを連れたトレーナーたちの様だった。やはりむしタイプのジム、蟲ポケモンが好きな奴が集まる場所らしい。

 

 

「あなた、素晴らしいわ!」

 

「おおっ!?」

 

 

 すると後ろからやってきたふくよかなパティシエールに抱きしめられる。一体誰だ何事だ!?

 

 

「本当に素敵なトレーナーさん~!こんなことを宣言するなんて~私、少し恥ずかしいわ~!そうよね、蟲ポケモンの素晴らしさを見せればいいのよね~!そんな簡単なことにも気づかなかったわ~!」

 

「あ、あの…放して……誰……」

 

「あらら~、ごめんなさいね~?自己紹介がまだだったわね~。私はパティスリームクロジ店長の……ううん、このセルクルジムのジムリーダー、カエデです~。よろしくね~ラウラちゃん?」

 

 

 この人がここのジムリーダーか。特徴的な喋り方だな。

 

 

「貴方と戦えるの楽しみにしてるわね~。オリーブころころ頑張って~?」

 

「オリーブころころ?」

 

 

 そう言い残してカエデさんとやらは去って行った。なんか知らんが気に入られたらしい。するとネモもなんか頷いていた。

 

 

「うん、うん!私も感動した!ラウラの覚悟をちょっとなめてた!なんかこう、いてもたってもいられないや!その辺のトレーナーに片っ端から勝負を挑んでくるね!」

 

「それはやめとけ」

 

「ええー。わかった、我慢するね!…蟲ポケモンの強さ、教えてくれること私も楽しみにしてるね!」

 

 

 そう言ってネモもジムから出て行った。さて改めて、ジムテストに挑むとするか。




バサギリ参戦。サニアは何でくろのきせき持ってたんだろうね、不思議だね(すっとぼけ)

決意表明したらカエデに気に入られたラウラ。ネモにもますます目を付けられました。ネモの心情としては「蟲ポケモンを使わない方が絶対強いのになんでこだわるんだろう?」だったのが「自分の好きを押し付けるのもバトルだよね!」となりました。バトル馬鹿。

次回、ようやくジム戦。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSヒメグマ

どうも、放仮ごです。カエデさんの口調が難産でした。ふわふわしているようで言葉遊びしてるよね。

今回はセルクルジム戦。楽しんでいただけると幸いです。


「オリーブころがし、なぜかはかとなく罪悪感を感じる…!」

 

 

 セルクルタウンの北で開始された、オリーブの産地であるセルクルタウンならではのジムテスト「オリーブころがし」。昔から豊作を願ってオリーブ収穫祭を行うためのまじないのようなものらしいが、なんかどっかの委員長の側近の女性が文句を言ってる姿が幻視される。軽いがこんなでかいオリーブ…を模した玉を押してくのは辛いぞ。

 

 

「押すだけじゃ遅いなら……!」

 

 

 その場で準備運動。拳を握り、ぶん殴る。オリーブ玉は宙に浮いて柵を乗り越えていった。

 

 

「よしいける!オラオラオラオラオラ!」

 

 

 オリーブ玉に追いつき、ボコスカ殴って加速させていく。途中でミニーブで通せん坊しているトレーナーがいたけど無視だ。蟲だけに。殴って柵を乗り越えて行けば問題はない!なんかドン引きされている気はするが、時間をかけるほど余裕はないんだよ!

 

 

「早くバサギリが戦うところを見たいんだぁああああああっ!」

 

 

 渾身の一撃。オリーブ玉は真っ直ぐ横に吹っ飛んで行って、ゴールに激突した。どっからか女性の怒声が聞こえた気がするがまあ気にしない。

 

 

「じ、ジムテストクリアー……ほ、豊作も間違いなしね!うん!」

 

「無理に褒めなくてもいいんだぞ?」

 

 

 案内人が引きつった笑みを浮かべていたので思わずツッコんだ。なんかごめんな?

 

 

「ちょっと微妙だけど合格です!おめでとうございます!ジムテストの結果を受け付けに報告してジムリーダーに挑んでください!ファイトです!」

 

 

 その言葉を受けて、俺ははやる気持ちを押さえてジムに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってましたよ~ラウラさん~」

 

 

 ようやくこれた、街の中心のツリーハウスの上に作られたバトルコート。アイアールも客としているそこで、ジムリーダー・カエデは待っていた。

 

 

「お待たせしました」

 

「改めまして~、ジムリーダーのカエデです~。口に入れて幸せなお菓子もいいですが~、草木に潜む蟲ポケモンも小さいけど大きな力を持っていて素敵~。そのことをわかっているトレーナーさんと出会えるなんて夢の様です~。蟲ポケモンを甘く見るなんてないでしょうけど、足をすくわれないようにふんばってくださいね~?」

 

 

 手袋をはめ直し、掌を合わせてくるりと回ってモンスターボールを構えるカエデさん。あざとかわいいな。

 

 

▽ジムリーダーの カエデが 勝負を しかけてきた!

 

 

 「最初から本気で行かせてもらう!バサギリ!」

 

「やっちゃいなさいな~マメバッタ!」

 

 

 カエデさんが繰り出したのはマメバッタ。そして俺が繰り出したバサギリにどよめくギャラリー。そりゃそうだろうな、俺すら知らない蟲ポケモンだ。バサギリは岩斧を振り回してかっこよくポーズを決めてギャラリーからの称賛を受けて気持ち良さげだ。

 

 

「それはもしかして…バサギリ、ですか~?初めて見ました~!昔のシンオウ地方…ヒスイ地方で森キングとして祀られていた蟲ポケモンなんですよ~」

 

「知ってるのか、さすがジムリーダー」

 

「アカデミーで習っただけです~手加減はしませんよ~!マメバッタ、翻弄していやなおと~!」

 

 

 シュシュシュッと軽快な足取りで周りを跳び回りながら不快になる音を発するカエデさんのマメバッタ。こちらの防御力を下げてきたか。

 

 

「その場でがんせきアックス!」

 

「掻い潜ってにどげりです~!」

 

 

 つじぎりが変化したバサギリの専用技を発動。どこからともなく現れた岩石を纏った岩斧をその場に叩き付け、砕き散らしてその破片を透明化するステルスロックとしてばら撒いて突撃してきたマメバッタを撃墜するバサギリ。

 

 

「今だ!つばめがえし!」

 

 

 逃げようもない、必中の斬撃がマメバッタに炸裂。しかし耐えた上で蹴り弾いてきた。なんだと!?

 

 

「こらえる、はトレーナーの指示なしで出せるようにならないと一流とは言えませんよね~」

 

「なるほど、な!すばやさを上げろ!くさわけ!」

 

「抵抗はさせていただきます~むしのていこう~!」

 

 

 すると凄まじい大きさとなった黄緑色の光がバサギリに炸裂。マメバッタを戦闘不能にすると同時に大きく吹き飛ばされる。今の威力、むしのしらせか。物理技……例えばむしくいだったらヤバかったな。

 

 

「がんせきアックス…ステルスロックをばら撒ける技でしょうか~厄介ですね~頑張りましょう、タマンチュラ~!」

 

 

 次に繰り出してきたのはタマンチュラ。ステルスロックを喰らってダメージを負う。俺の手持ちと二体も一緒か。やっぱりニックネームつけるべきかなあ。

 

 

「タマンチュラ、たいあたり~!」

 

「バサギリ。つばめがえし!」

 

 

 愚直に突撃してきたので迎え撃つ。すると途中で後退してつばめがえしのリーチギリギリで回避するタマンチュラ。なんだと!?

 

 

「蟲ポケモンは生存本能に長けてるんですよ~。いとをはく~!」

 

「れんぞくぎり!」

 

 

 糸を吐いて素早さを下げようとしてきたので連続で斬っていくが糸が岩斧に纏わりついて切れ味を失わせていく。れんぞくぎりで威力上がってるはずなのに切れ味が逆に落ちてるとかどういうことだ。明らかにバサギリのやる気が失われていく。そうしていくうちに岩斧の腕に巻き付いた糸を伝ってタマンチュラが急接近しようとしていた。

 

 

「タマンチュラ、そうよ~もっともっとデコレーションして~!むしくい~からのダメおし~!」

 

「バサギリ!がんせきアックスを勢いよく振り下ろせ!」

 

 

 そう指示するとバサギリは頷いて勢いよく岩石を纏った岩斧を振り下ろす。するとステルスロックとして飛び散る筈の破片がまっすぐ飛んでこちらに向かって突撃していたタマンチュラに炸裂。吹き飛ばして戦闘不能にする。

 

 

「よくやったバサギリ!」

 

「なかなかやりますね~ここからどうころがしましょうか~?…あまり驚かないでくださいね~?ヒメグマ~!」

 

「えっ」

 

 

 すると繰り出してきたのは蟲でもなんでもないヒメグマ。なんで?蟲ジムじゃなかったのかここ?

 

 

「蟲じゃないとお思いですね~?サナギを破り、強く、大きく、育ちましょう~!ビビヨンの様に輝いて、テラスタル!」

 

「…なるほどな」

 

 

 するとカエデさんは帽子を押さえ、テラスタルオーブを取り出してテラスタル、蟲の触角の様なリボンの様な結晶を頭に付けて結晶化したヒメグマが構える。

 

 

「勝負だバサギリ!がんせきアックス!」

 

「キラキラむしデコレーション!甘くないのもめしあがれ~!ヒメグマ、れんぞくぎり~!」

 

 

 瞬間、岩石を纏った岩斧と黄緑色の煌めきを纏った爪が激突。連続でぶつかり合い、火花を散らす。押し勝ったのはバサギリ。岩石を纏った岩斧でヒメグマを叩き潰し、テラスタルを解除させて勝鬨を上げる。

 

 

「貴方とバサギリの強さ、私感服しました~!私のポケモンたちみ~んな蟲の息です~」

 

「いや予想の何十倍も強かった。戦えてよかったよ」

 

「私も~っと進化しないとですね~。改めまして合格で~す!ジムリーダーに勝った証としてジムバッジを差し上げます~カエデ特製ケーキもあるので一緒にたーんと召し上がれ~」

 

 

 ジムバッジと共に、ケーキもありがたくいただくことにした。カレーの辛口が好きな俺でも美味しかった。さすがパティシエールだ。

 

 

「これから貴方が蟲ポケモンで頂点に立つことを願ってますね~」

 

「任された。な、バサギリ」

 

 

 そう問いかけると岩斧を振り上げてアピールするバサギリ。進化しても可愛い奴だなお前は。




オリーブって聞いてあのオリーヴを思い出したのは僕だけじゃない筈。

原作だとカエデさんのポケモンはどうやら二つの技しか覚えてないみたいなので勝手に色々増やしました。いい勝負になっていたら幸いです。バサギリ無双になった感あるけど。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSオドリドリ

どうも、放仮ごです。ニックネームについてアンケートを始めました。

今回はポケ蟲と言えばなキャラが登場。でもその様子はおかしくて…?楽しんでいただけると幸いです。


「お疲れラウラ!バサギリすごかったね!」

 

「ああ、アイアールも応援ありがとな」

 

 

 言いながらセルクルタウンを後にした俺とアイアールはコライドンに乗って西へ目指していた。ボールの中のバサギリも活躍できたのが嬉しいのか上機嫌だ。

 

 

「次行きたいところがあるんだが寄り道していいか?」

 

「行きたいところって?」

 

「大空のヌシってのがいると思われる場所だ」

 

「もしかしてそれ、ペパーの?」

 

 

 マップアプリを開いたスマホロトムを眺めながら言ってると、アイアールが反応してきた。顔を向けると、スマホロトムのマップアプリを開いて見せてきた。ジムの場所と、ヌシがいるかもしれない場所が記されている。

 

 

「お前もか」

 

「うん。だから私も行くよ」

 

「多分危険だぞ?」

 

「なおさらラウラだけで行かせられないよ。コライドンも力を貸してくれるって」

 

「アギャア!」

 

 

 アイアールの言葉に頷いて吠えるコライドン。お前らって奴は…。とりあえずわかってる情報を纏めることにする。

 

 

「えーとなになに……ペパーの情報によれば大空のヌシは近づかなければ無害なポケモン。西1番エリアで山からいわが落ちてくる現象が発生中。大空を自分だけのものにしたいヌシの仕業だと噂され……これってあのムクホークがこんなところで狩りをしてた理由か?」

 

「コジオも西1番エリアからきたっぽいからそうっぽい?でもヌシ自体の危険度は低いって」

 

「案外ムクホークがそのヌシかもな?」

 

「いやいや。ここらを牛耳っていた暴れん坊のムクホークなど比べ物にならない巨体ですよ」

 

 

 そんな声と共に、俺達の頭上からバサリと音を立てて目の前に舞い降りる者がいた。

 

 

「止まっていただいてもよろしいでしょうか?」

 

「いきなり誰!?」

 

「おまえは……」

 

 

 アイアールがハンドルの様な部位を急停止するコライドンの前でその人物は笑う。見覚えがある、気がした。首元に青いスカーフを付けた灰色のロングコートの下には空色のフライトスーツ、黒髪をポニーテールに纏めた紅い瞳の少女。するとボールホルダーが揺れた。見れば、バサギリがなにやら興奮していた。どうしたんだ?

 

 

「おや、私を知っているとは博識な方ですね?私はムツキ。ポケモンリーグの四天王の一人です」

 

「四天王!?」

 

「四天王?ジムリーダーじゃなくて?」

 

「あれ、私なめられてます?」

 

 

 余裕の笑みが崩れて額に青筋を立てるムツキ。いや悪かったって。何故かそう思ってしまったんだ。

 

 

「ジムリーダーが弱いとは言いませんがそれは私が弱そうに見えるからですかね?」

 

「い、いえそんなことは…だよね!?ラウラ!?」

 

「あ、ああ……それでその四天王がこんなところになにしに?」

 

「ひこうタイプ使いとして噂のムクホークを見に来たのが一つ。あと、以前ここに放ったポケモンが迷惑をかけてないかと確認に」

 

「ここに放ったポケモン…?」

 

 

 待て。俺は昔トレーナーに扱われていたのだろうひこうタイプを知っている。今俺のホルダーで暴れているバサギリの進化前、ストライクだ。

 

 

「テラレイドバトルで捕まえたんですけどね。くさタイプになれるからでんきタイプ対策になるかと思えば目立ちたがり屋で言うことも聞かず、問題行動ばかり起こしたのでやむなく逃がしたのです。貴重なわざマシンまで使ったというのに……その顔。何か知ってます?」

 

「それはストライクのことか?」

 

「ストライク……あっ」

 

 

 俺が尋ねるとアイアールも合点が言った様でハッとする。

 

 

「出てこいバサギリ。暴れるなよ?」

 

 

 口元に寄せてボソッと指示しつつバサギリを繰り出す。バサギリが岩斧を振り上げて威嚇すると、合点が行ったのかポンと手を打つムツキ。

 

 

「なるほど。そのバサギリとかいうポケモンはストライクの進化でしたか。お久しぶりです、いい主人に会えたようですね?」

 

「グラッシャー!」

 

「どうやらあんたのことが大嫌いらしいぞ。俺も捨てた奴に返す気はさらさらない」

 

「別にいいですよ、見たところ飛べなくなったようですしどうぞ使ってやってください。それがいたところで私に勝てるとも思えませんし」

 

「…ほう?」

 

「ラウラ?落ち着こう?ね?」

 

 

 ピキーンと来た俺を引きとめようとするアイアールを振り払ってバサギリの横に並んで一緒にムツキを睨みつける。するとムツキはその視線を受けて肩を竦めた。

 

 

「まさかジムバッジひとつ程度の腕前で四天王に勝てるかもとでも言えばいいんですか?私、嘘は付けないんですよ」

 

「お前の言い方は例えジムバッジ8つ集めていても勝てないって言い草だったがな?」

 

「ええ。私、強いので。癪ですがガラル最強のジムリーダーの娘は伊達じゃないんですよ。そんなに文句があるなら戦ってみますか?ストライクを拾ってくれたお礼です、一匹だけならお相手しましょう」

 

 

 そう挑発してくるムツキに、俺達は両拳と岩斧をぶつけて不敵に笑う。

 

 

「ああ、上等だ。俺達の力を見せるぞバサギリ!」

 

「グラッシャー!」

 

「相手してやりなさい、オドリドリ」

 

 

▽四天王の ムツキが 勝負を しかけてきた!

 

 

 やる気満々の俺達に対してムツキが繰り出したのはオドリドリ。薄紫色の、たしかまいまいスタイル。ゴースト・ひこうだったはずだ。

 

 

「一気に決めろ、がんせきアックス!」

 

「踊りなさい、フェザーダンス」

 

 

 舞い踊り、扇子のような両翼を振り回して羽を散らすオドリドリ。その光景は美しく、自分よりも目立ってることに腹を立てたバサギリが攻めたてるも、ひらりひらりと舞踊の如く避けていき、舞い散った羽がバサギリに触れて溶けて行く。

 

 

「受け止めなさい、はねやすめ」

 

「なにっ!?」

 

「ええ!?」

 

 

 ガキン、と。扇子のような両翼で岩石を纏った岩斧を受け止める。驚く俺とバサギリ、アイアール。ムツキは不敵に口元を隠して笑った。

 

 

「ふふっ。はねやすめは一時的にひこうタイプを失くす技。名前からしていわタイプの技でしょう?効果抜群でなければ恐るるにたらず。さあ決めなさい?めざめるダンスです」

 

「受け止めろ!」

 

 

 ムツキの指示を受けて全力で舞い踊り、衝撃波を次々と放ってくるオドリドリ。バサギリは俺の指示を受けて岩斧を構えてゴーストタイプの技であろう不可視の衝撃波を受け止めて行く。悪い、目立てないが耐えてくれ…!

 

 

「防御を崩しなさい。地面にぼうふう」

 

「グラッシャ!?」

 

 

 するとムツキとオドリドリは驚きの行動をしてきた。地面に両翼を叩き付け、地面を伝って暴風を放ってバサギリの防御を打ち崩してしまったのだ。それだけではない、バサギリの89kgはある体が浮かび上がって無防備な状態になってしまう。なんてパワーだ…!?

 

 

「飛んで火に()る……失礼。飛んで風に()る夏の蟲、ってところでしょうか?めざめるダンス」

 

「れんぞくぎり!」

 

 

 暴風で浮いてろくに防御もができないバサギリに咄嗟に指示。不可視の衝撃波を斬り払っていくが迎撃しきれずに次々と炸裂。そのまま風が消えて地面に叩きつけられ、バサギリは気絶してしまう。姿勢を正し、大仰に綺麗な一礼するムツキ。

 

 

「これにて終幕。私のオドリドリの舞はいかがだったでしょうか?」

 

「くそっ、…完敗だ」

 

 

 バサギリを慌ててボールに戻し、俺は悔しさから拳を握り唇を噛みしめる。……なんだろう、負けたのに、これでこそと心のどこかで納得してしまう。いつか、いつかリベンジして見せる。




何故かガラルのジムリーダーではなくパルデアの四天王になってるひこうタイプ使いムツキ登場。知らない人のために説明すると前作にてラウラを苦しめたライバルの一人です。原作のひこうタイプ四天王があの人でチャンスだと思ったのはしょうがないよね。

今作のムツキは身長は前作より結構大きくなっていて大人びてるのが特徴。ストライクを逃がしたり相変わらずストイックで自分勝手が目立ちます。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSオトシドリⅠ

どうも、放仮ごです。ようやくオリジナル展開をどうするか纏まってきたので話をどんどん動かそうと思います。

今回は大空のヌシ戦。と、アンケートの結果。結構僅差であった。楽しんでいただけると幸いです。


「では私も仕事があるのでこれで」

 

「仕事って…」

 

「各地の町で蠢いている怪しい連中がいるみたいでして。四天王として調べないといけないんですよ。ここにきたのはセルクルタウンに行くついでで」

 

 

 オドリドリをボールに戻したムツキはそう言って色違いのアーマーガアを繰り出し、飛び乗って去って行った。完全に気晴らしかよ。

 

 

「バサギリのスペックだけじゃ勝てないやつもいるか…」

 

「あれがトップクラスかあ……強くならないとね、私達」

 

「ああ、そうだな。…ごめんなバサギリ」

 

 

 げんきのかけらを使うべくモンスターボールから出したバサギリは瀕死にも関わらず項垂れて落ち込んでいて。俺はその背中に抱き着いてさする。

 

 

「悪い、悪かった。お前は悪くない、俺の指示がもっと上手ければあんな奴に負けなかったんだ」

 

「グラッシャ…?」

 

「目立ちたがり屋な性格もお前のいいところだ。それを理由に捨てるアイツの方が悪いからお前は気にするな。それに、俺の指示に従って守りに徹してくれたじゃないか。ありがとな、俺の指示を信じてくれて」

 

「グラッシャー……」

 

 

 慰めているとよろよろと立ち上がり岩斧を振り上げるバサギリにげんきのかけらを与えて、背伸びして頭を撫でると気持ち良さげに唸った。これから頑張ろうな。

 

 

「手始めに絶対ひこうタイプの大空のヌシをブッ飛ばすぞ」

 

「グラッシャー!」

 

「うわあ、やる気満々。とばっちりの大空のヌシぇ。行こうか、よろしくねコライドン」

 

「アギャア!」

 

 

 バサギリをモンスターボールに戻してコライドンに飛び乗って爆走して西1番エリアの山を目指す。

 

 

「そういえばさあ」

 

「どうした?」

 

 

 颯爽と駆けるコライドンの(ハンドル)を握るアイアールの腰にしがみ付いていると、アイアールが何か思い出したように言ってきた。いきなりどうした?

 

 

「セルクルジムのバトル、ラウラの手持ちと同じポケモンなせいで言い淀んでたよね。ニックネームつけないの?」

 

「……そういうお前は?」

 

「私は下手に名前を付けるとポケモンの名前を覚えなさそうで……いつか付けてあげたいな。ラウラは?」

 

「俺は……名前を付けると手持ちのみんなだけ特別扱いしているようでな。俺は野生の蟲ポケモンも、敵トレーナーの蟲ポケモンもまとめて愛してるからな!ちょっと忌避感があるだけだ。だが……当の蟲ポケモンたちが混乱するといけないしウカだけ特別扱いするのも駄目だよな、名前付けるか」

 

 

 アイアールにしがみ付きながらボールホルダーに付けられた五つのボールを眺める。マメバッタ、タマンチュラ、アメタマ、バサギリ。それにウカ。さてどうしたものかな。

 

 

「マメバッタ、お前は今日からレクスだ」

 

 

 脚を意味するレッグからだが、王という意味もある。飛蝗は某特撮のこともあって蟲の王と言えるだろう。だからお前はレクスだ。

 

 

「タマンチュラ、お前は今日からダーマだ」

 

 

 蜘蛛ということから某蜘蛛男を連想してなのと、糸玉(いとだま)なことからだ。中々秀逸なネーミングじゃないか?

 

 

「アメタマ、お前は今日からレインだ」

 

 

 アメタマ、そして進化系のアメモース。共通する「アメ」から雨を連想してだ。ちょっと安直過ぎか?

 

 

「そしてバサギリ。お前は……ジャック、ってのはどうだ?」

 

「グラッシャー!」

 

 

 折り畳み式の大型ナイフ、ジャックナイフと切り裂きジャックから連想した。俺の懐刀であってくれ。

 

 

「うん、いいと思う!よろしくねレクス、ダーマ、レイン、ジャック、ウカ!」

 

「よし、心機一転したことだし、突っ走れコライドン!」

 

「アギャアア!」

 

 

 見えてきた。あの山の上から岩を運んで坂道に転がしている鳥が大空のヌシか。ポケモン図鑑で調べる。特徴と一致するのは、おとしものポケモン、オトシドリか。

 

 

「先に行くぞアイアール!頼む、ダーマ!いとをはく!」

 

「ええ!?」

 

 

 ダーマを繰り出し、右肩に乗ってもらい糸を崖に伸ばしてもらいそれを掴んで断崖絶壁をよじ登る。蜘蛛の糸は計算上、糸の直径が0.5mmあれば体重60kgの人間を吊り下げることができる。タマンチュラの糸なら俺ぐらい簡単に支えられる。あとは根性あるのみ!

 

 

「うおおおおおっ!」

 

「ストオオオクッ!?」

 

 

 するとギョッと驚いて慌てて俺のいる崖目掛けて岩を落としてくるオトシドリ。俺は身体を揺らし、振り子の様にして断崖絶壁を駆け回り回避しながら登って行く。

 

 

「ダーマ!とおせんぼう!」

 

 

 ダーマにとおせんぼうを指示。オトシドリの動きを無理やり止めさせ、その間に駆け上る。よし、頂上に辿り着いたぞ!

 

 

「ストオオオクッ!!」

 

「いわおとし!?」

 

 

 鳥ポケモンがそんなのありか!?と思ったけどウォーグルとかもいわなだれ使うから今更か。俺自身が避ける…!

 

 

「ダーマ、むしのていこう!」

 

 

 ぐるりと横に側転。黄緑色の光を飛ばして攻撃するが全く意味をなさない。終いには嘴で連続で(つつ)き始めて来た。ついばむか!?くっ、どうすれば…!?なんとか回転して避け続ける。すると右肩の上にしがみ付くダーマがぶるぶると震え始めた。

 

 

「どうしたダーマ!?もしかして喰らったのか…!?」

 

「ようやく追いついた!って…ダーマが輝いてる!?」

 

 

 追い付いてきたアイアールの言う通り、光り輝いて姿を変えて行くダーマの姿形が変わっていく。そして現れたのは緑色の、さらに蜘蛛っぽくなったポケモン。図鑑を向けると、進化してとおせんぼうも新しい技に変わっていた。

 

 

「ワナイダー…!ダーマ、スレッドトラップだ!」

 

 

 足の間に張り巡らせた蜘蛛の巣で嘴を受け止めるワナイダーに進化したダーマ。勝負はここからだ…!




というわけでニックネームつけることにしました。ネーミングセンスが無いけどめちゃくちゃ考えた。特にバサギリは凄い迷った。

そして大空のヌシ、オトシドリとの対決にダーマが進化、ワナイダー。レベル15と本当に初期で進化するんですよね。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSオトシドリⅡ

どうも、放仮ごです。今後のオリジナル展開が受けいられるかどうかが心配になりながらも書き進める日々を送ってます。一応前回ムツキでフラグ入れたけど上手く展開していきたい。

今回は大空のヌシとの決着。楽しんでいただけると幸いです。


「スレッドトラップで捕まえながら叩き付けろ!」

 

 

 スレッドトラップ。ワナイダーの専用技で、複数の足というか腕の間に張り巡らせた糸の網で罠を張り、相手の攻撃を防ぐと同時に、触れた相手の素早さを下げる効果がある。それを応用してオトシドリを捕らえたまま引っ張って一本背負いで背中から地面に叩きつけるダーマ。

 

 

「ラウラとダーマ、すごい。よーし、私達も!行くよホゲータ!ひのこ!」

 

「ストォオオオクッ!!」

 

 

 アイアールもホゲータを連れて参戦し火の粉を飛ばして攻撃するもオトシドリも負けてはおらず、上空に移動していわおとしを連発。俺とダーマ、アイアールとホゲータは必死に避ける。

 

 

「むしのていこう!スレッドトラップ!」

 

「かみつく!りんしょう!」

 

 

 ダーマは黄緑色の光で撃ち抜きつつそれでも壊せなかった岩は糸の網ならぬ盾で防御。ホゲータもかみついて壊したり、音の衝撃波で破壊したりで応戦する。降りてこいこの野郎!

 

 

「ストォオオオクッ!!」

 

「うわっ!?」

 

 

 すると翼で薙ぎ払うこうげき…つばさでうつを使用。俺ごとダーマを薙ぎ払ってきた。ダーマがスレッドトラップを勝手に使って防御してくれたが、勢いは殺せず俺も押されて崖上から吹き飛ばされてしまう。

 

 

「ラウラ!?」

 

「うわああああああ!?」

 

 

 アイアールが駆けつけて手を伸ばし、俺もその手を取ろうとするが間に合わず落下する。あ、やべ。この高さは普通に死ぬ。すると一緒に落ちたダーマが俺を見据え、腕の一本を突きつけて腕の穴から糸を発射して俺の胸にくっつけた。

 

 

「へ?」

 

 

 いとをはくか、と思った瞬間。他の足で岩壁にくっ付いたダーマが俺の胸にくっ付けた糸を引っ張り上げ、俺を左腕二本で抱きかかえると腕一本で糸を引っ張って上昇した。なんか騎士に抱えられたお姫様みたいだな、俺。どちらかというとヒーローに救われたヒロインか?

 

 

「おおおおおおっ!?」

 

 

 抱えられて飛び出した俺が見たのは、アイアールといつの間にか来たのかペパーと戦ったのか弱ったオトシドリが壁を破壊してそこから出てきた何かの植物を食しているところ。二人の間に着地すると二人してわかりやすく驚いた。

 

 

「うわあ!?ラウラ!?生きてたの!?」

 

「おいおい、ここに向かってる途中で落とされているところを見たから諦めてたぜ……お前、不死身ちゃんなんだな!」

 

「ペパーも来てたのか。なんかもっと高い所から落ちたことがあるような気もするし、俺は大丈夫だ。それより何が起きてる?」

 

「何とか追い込んだんだけど多分、秘伝スパイスを食べて…」

 

「秘伝の食事パワーで強くなってるみたいだ!アイアール!ラウラ!気張って行くぞ!岩落とす上に人を突き落してくるあぶねえ奴にはショッパイ敗北をめしあがれだ!」

 

 

 コジオを使役するペパーの言葉に頷いてダーマと共に構える。アイアールもホゲータと共に臨戦態勢だ。

 

 

「ダーマ、いとをはく!」

 

「コジオ、うちおとす!」

 

「ホゲータ、ひのこ!」

 

 

 まずは撃ち落とさんと遠距離攻撃を仕掛けるも、オトシドリは先程よりも上がった機動力でやすやすと回避。

 

 

「ペパー、ダーマを使え!」

 

「ダーマ?そのワナイダーのことか?」

 

「ダーマ、縦糸でスレッドトラップだ」

 

 

 俺が指示すると糸の網をピンと張り巡らせるダーマ。すると意図を読み取ったのか、ホゲータがコジオを持ち上げて糸の網に投げ入れた。

 

 

「ナイス、ホゲータ!」

 

「いけえ、ダーマ!」

 

「ずつきだコジオ!」

 

「ストォオオオクッ!?」

 

 

 するとパチンコの様にして糸の反動で大空に飛び出すコジオはそのままオトシドリに激突。大きく体勢を崩すことに成功する。急降下したオトシドリはそれでもなんとか体勢を立て直し、突進して来てついばんで来た。

 

 

「カウンター!」

 

 

 余りにも一直線な攻撃にカウンターを狙うも、頭を上げて回避。直上から突いてきた。学習してきただと…!?

 

 

「コジオ、ロックカットからのずつきだ!」

 

「ストォオクッ!?」

 

 

 すると横から素早い動きでコジオがずつきしてついばむをずらしてくれた。ナイスだぺパー。

 

 

「今だホゲータ、やきつくす!」

 

 

 ふらつくオトシドリにアイアールが指示したホゲータの火炎が炸裂。炎上するオトシドリは滅茶苦茶に翼を振るってきた。やけくそか。だが残念だったな、利用させてもらうぞ。

 

 

「甘い!カウンター!」

 

 

 勢いを利用した一撃がオトシドリの顎に炸裂。オトシドリは大きく吹き飛んで地面に叩きつけられ、戦闘不能となった。勝ち誇るダーマとホゲータ、コジオに思わず笑顔になる。

 

 

「うっし!二人とも、お疲れちゃんだぜ!それに無事でよかったぜラウラ、俺のせいでお前を死なせたんじゃないかってさ…」

 

「心配かけて悪かったな二人とも」

 

「ううん。無事でよかった。それで、あのヌシが食べてた秘伝スパイスはこの中にあるのかな?」

 

「そうだな。オトシドリが目覚めないうちにちゃっちゃか調査しようぜ」

 

 

 オトシドリの開けた洞窟の入り口から中に入るアイアールとペパーに続くと、中は薄暗いがちょっとした空間が広がっていて。一番奥には緑色に輝く植物があった。なんというか……。

 

 

「苦そうだな」

 

「そうだね…ペパー、これがそうかな?」

 

「おう、これが秘伝スパイスだ!本で見たまんま!やったぜ!こいつは「にがスパイス」だ!」

 

「だろうな……」

 

 

 にがスパイスはペパーがサンドウィッチにしてくれたのでコライドンやポケモンたちと共に美味しくいただいた。カレーにも合いそうなので少しもらった。…ペパーはなんか隠してるみたいだが、追求しないでおこう。




さすがのヌシも3VS1は無理だったよ。スレッドトラップ小説的に凄い使いやすくて好き。

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VSモスノウ

どうも、放仮ごです。DLCかなんかで追加されたら後悔しそうな役職のオリキャラ登場です。

今回はスター団カチコミ直前。楽しんでいただけると幸いです。


「しかしペパー、バッジ造り上手だな。カエデさんからもらったジムバッジと見比べても相違ないぞ」

 

「料理が趣味って言ってたし手先が器用なんだろうね」

 

 

 そんな会話をしながら洞窟の外に出るといつの間にか夜になっていた。結構長居しちまったな。

 

 

《ロトロトロトロト……》

 

「うん?アイアールのか?」

 

「うん。誰かな」

 

 

《「ハロー、アイアール。そしてラウラ。こちらオーリム」》

 

 

 アイアールのスマホロトムから聞こえてきたのは知らない声。

 

 

「オーリム?」

 

「うん、コライドンの本当の主人の博士だよ。エリアゼロでポケモンの研究してるんだって」

 

《「ラウラは初めましてだね。君の強さは把握している。まだ戦えないコライドンをその強さで支えてやってほしい。記憶を取り戻す足がかりにもなる筈だ」》

 

「あんた、俺の記憶について何か知ってるのか…!?」

 

 

 聞き捨てならない言葉に思わず問いかけるもオーリム博士は無視して続けた。言うつもりはないってか。

 

 

《「それで、こちらでも検知した。コライドンが本来の力をひとつ取り戻したようだな」》

 

 

 そうなのだ。にがスパイスサンドウィッチをアイアールからもらったコライドンは食べるなり何か強化されていたのだ。例えるならバトル中のビルドアップみたいに。

 

 

《「ライド状態であれば水上でなみのり移動も可能になったようだ。コライドンはなみのり中でもジャンプができる、水上のポケモンの捕獲も容易となるだろう」》

 

 

 なみのりといえばひでんマシンとか自転車が必要な気がしたがコライドンもできるのか。すごいな、と素直に感心する。

 

 

《「その調子でコライドンと共にパルデアの広大な大地を駆け巡り冒険を続けてくれ。きみたちの旅に決められたルートはない、地図を参考に君達自身の目的を発見したまえ。好奇心のままにいくのもいい。使命を感じ取っていくのもいい。気ままに探索もいいだろう。様々な経験が君達を大きく成長させるはずだ。引き続きコライドンをよろしく頼んだよ」》

 

 

 そう言って電話を切ったオーリム博士だったが、なにかを思い出したのかもう一度繋げてきた。

 

 

《「ああそうだ、もうひとつ。青いサングラスの一団には気を付けたまえ。見つけても近づかないことだ。コライドンを失いたくなければな」》

 

「それってどういう……あ」

 

「…今度こそ切れたな」

 

 

 青いサングラス……そう言えばテーブルシティを見て回った時に青い壁のカフェに青いサングラスをかけた一団が入って行ったのを見かけた気もするが……スター団やサニアのことが衝撃的過ぎて忘れていた。あれが関係しているのか?

 

 

「…とりあえず、山を下りようか。次はカラフシティかな?」

 

「あ、いや。ちょっと頼まれごとがあるから別行動したい。いいか?」

 

「わかった。じゃあカラフシティで先にジムリーダーに挑んでいるね」

 

 

 そう言ってアイアールはコライドンに乗って去って行った。…さて、山越えしてスター団あく組とやらのアジトに向かうか。

 

 

「頼むぞダーマ」

 

 

 ダーマを繰り出して抱えてもらい、山肌に糸をくっつけて乗り越えて行く。迂回するよりこっちの方が速いからな。

 

 

「ダーマの空中移動、慣れておいた方がいいな…!」

 

 

 ブランブランと揺られて吐き気がしながらもなんとか反対側の麓に降り立つ。ふう、このまま進めばスター団アジトだな。うん?

 

 

「あら、ラウラさんじゃない。こんばんは。いい子にしてる?」

 

「マトイ先生。毎度言ってきますけど俺がいい子にしてるように見えるなら目の病気だ」

 

「あら、心配なだけなのに。それと、先生じゃなくて私はただの司書よ?」

 

 

 スター団あく組アジトのある道から歩いてやってきたのは、先端に行くほど銀色なグラデーションが綺麗な蒼色のロングヘアーと少し暗い赤いツリ目の持ち主の、誰からも好かれそうな雰囲気をした大人な雰囲気の女性。大人の女性らしい青いパンツスタイルの服装に、白コートを着ている彼女の名はマトイ。オレンジアカデミーの司書だ。確か歴史の教師のレホール先生の大親友の考古学者だったか。モスノウを連れている。いいセンスだ。

 

 

「こんなところでなにを?」

 

「ここらへんに四災(スーザイ)と呼ばれるポケモンを封印している杭の一本があるらしくて。調べに来たのよ」

 

「ははあ」

 

「興味なさそうって顔ね」

 

「俺、蟲ポケモンにしか興味が無くて…伝説だろうと欲しくはないです。そのモスノウ、いいですね。懐いている証だ」

 

「あら、わかるかしら?私もみずとこおりタイプのポケモンが好きなの。特定のポケモンに対する愛、タイプは違えど……貴女の心意気は素晴らしいわ。きっと強くなるわね。じゃあまたね、読みたい本があったら探してあげるからいつでも来るのよ。フィールドワークでいないかもしれないけどね?」

 

 

 そう微笑んだマトイさんはモスノウを引き連れて去って行った。うん?電話だ。

 

 

《「…カシオペアだ。スター団のアジトが近いな」》

 

「ああ。協力させてもらうよ、スター団壊滅」

 

《「ありがとう。これであなたも同志……スターダスト大作戦を決行するメンバーだ」》

 

「ちょっと待ってくれ」

 

「誰だ!?」

 

 

 後ろから話しかけられて、咄嗟にダーマに構えさせる。スター団の誰かだと思ったが、予想外の人物がそこにいた。

 

 

「なあその話。俺にも噛ませてくれないか?」

 

《「誰だお前は」》

 

「え。こ、こう……!?」

 

 

 そこにいたのはリーゼント頭と眼鏡が特徴のちょいワル風の、アカデミーの制服を着た初老の男性。というかクラベル校長。あまりの衝撃に固まる。なにしてんだアンタ一体。

 

 

「俺はネルケ。オレンジアカデミーの学生さ」

 

「いやネルケじゃなくてこ…」

 

「ネルケだ」

 

「お、おう」

 

 

 ごり押してくるので黙ることにした。わかったから顔を迫らないでくれ。怖い怖い。

 

 

《「ネルケと言ったか…いつから聞いていた?」》

 

「おいおい。警戒すんなって。俺はコイツの連れだ。そうだよなラウラ?」

 

「え」

 

「おいおい、相変わらずシャイな奴だな!」

 

 

 笑顔で肩を叩かないでください。何なんだこの人。

 

 

《「スター団を相手にするんだ。これは遊びではないぞ。わかっているのか?」》

 

「わかっているさ……俺も団とは色々あるんだ。自分で言うのもなんだがいい仕事するぜ?」

 

《「……わかった。あなたも同志として迎えよう」》

 

「決まりだな。それでカシオペアさんだっけか。あんたは何者なんだ?」

 

 

 それは確かに気になってた。無言で耳を傾ける。

 

 

《「…わたしカシオペアはスター団の元……関係者とだけ言っておく。それではさっそくスターダスト大作戦の説明だ」》

 

「具体的にどうするんだ?」

 

《「近くにバリケードがあるな?その先こそスター団のアジト。奥にターゲットであるチームのボスがいるはずだ。実は既にラウラの名で各アジトに宣戦布告してある。つまり私達はスター団に喧嘩を売ったわけだ」》

 

「やってくれるな。どう足掻いても巻き込ませるつもりだったわけか」

 

《「…すまない。だがスター団には掟がある。ボスは売られたケンカは必ず買わなければならない。そして買った喧嘩で負ければボスを引退しなければならない」》

 

「…なるほどな。それで宣戦布告か」

 

 

 わかったのかネルケ!俺はチンプンカンプンだぞ。

 

 

《「つまりだ。ラウラがスター団アジトに乗り込んでチームを纏めるボスを倒し、その座から下ろすことでチームを解散させる。ボスを失ったチームは統率を失い自然消滅するだろう。だがスター団は数も多く、アジトの中を警備している。並みのトレーナーではボスの元に辿り着くのも難しい。だからこそラウラと手を組ませてもらった。私は表立って行動できないため遠くからサポートさせてもらう。すまないな」》

 

「俺は何をすれば?」

 

《「ネルケはすまないがまだ完全に信用できない。アジト周辺の監視とラウラのサポートを頼む」》

 

「慎重派は嫌いじゃないぜ」

 

《「それでは健闘を祈る」》

 

 

 そう言ってカシオペアは通話を切った。俺はネルケ…校長と視線を交わす。

 

 

「なにしてんですか」

 

「おっと。俺の正体についてはお口にジッパーで頼むぜ。今の俺はネルケ、そういうことにしておいてくれ」

 

「……邪魔をしないなら文句は言いませんよ」

 

 

 さて。スター団アジトか。どう攻略してやろうかね。




新キャラ、マトイさん登場。レホール先生の大親友でオレンジアカデミーの司書もやってる考古学者です。簡単に言うと四災にラウラを関わらせるためのキャラ。

オーリム博士ともついに接触。その言葉の真意とは…?

アイアールと一時別れ、カシオペアとネルケの関係構築。ラウラとのトリオでスター団攻略開始です。

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VSヤミカラス

どうも、放仮ごです。とりあえずジム、ヌシ、スター団を一つずつ相手して節目となります。アンケートによればラウラ以外の視点を読みたい人が多数なのでとりあえず順番に入れて行きたいところ。

今回はスター団チーム・セギンへのカチコミ。楽しんでいただけると幸いです。


「はいはいストップ!」

 

 

 進んでいくとバリケードの前で止められた。星形のサングラスをかけた男したっぱと、青いサングラスをかけた女したっぱがバリケード前に陣取っている。

 

 

「この先、僕たちスター団あく組……通称チーム・セギンのアジトです!」

 

「そそ。不法侵入とか勘弁してほしいわけ。犯罪よ?わかってる?」

 

「ごめんね。帰ってくれないなら追い返さないといけないんだよ」

 

「こうちょ……ネルケは下がっていてくれ」

 

「了解だ。気を付けろよ」

 

 

 ネルケを下がらせ観察する。見た所強そうではない。青いサングラスの方は余裕を感じるのはよくわからないが、少なくとも強そうではない。俺はレクスとダーマとレインとジャックを繰り出し傍に侍らせる。

 

 

「うるせえ。突貫させてもらうぞ」

 

「ええ!?もしかしてだけどアンタ、ラウラ!?」

 

「スター団に喧嘩を売って指名手配中な奴だったり?」

 

「そうだと言ったら?」

 

 

 指名手配されてるまでは知らんが。後でカシオペアに文句を言ってやる。

 

 

「正直すぎてびっくり!迎え撃つぞ後輩!」

 

「アンタが何者だろうと帰んな!さもなくば私達に負けていけ!」

 

「試合じゃないからな。ルール無用で暴れるぞ!」

 

 

 繰り出されたのはヤミカラスとニューラ。俺のポケモンたちを見てなめてかかってるならいい度胸だ。

 

 

「ヤミカラス!ついばむ!」

 

「ニューラ!アイススピナーだ!」

 

「レクス、フェイント!ダーマ、カウンター!レイン、バブルこうせん!ジャック、がんせきアックス!」

 

 

 ヤミカラスをレクスとダーマが、ニューラをレインとジャックが即座に戦闘不能にする。2VS1は卑怯?知らんな。今からこれ以上の数を相手にするんだ、コンビネーションを培う糧となれ。

 

 

「蟲の癖に強くて生意気ぃ~!」

 

「しゅ、瞬殺……」

 

「蟲の癖になんだって?」

 

 

 青いサングラスの女したっぱの胸ぐらを掴んで引き寄せ睨む。やっぱりお前の様な奴らが多いよなあ?スター団は。

 

 

「ひ、ひい!?放しなさいよ!お、お疲れ様でスター!」

 

「ああ!?先輩を置いて行くなよ後輩!?」

 

「アジトに帰って仲間に連絡するだけですー!先輩は時間稼ぎしなさいよね!」

 

 

 俺の腕を振り払って逃げる女したっぱ。残された男したっぱは腰が抜けてしまった様だ。

 

 

「お、お疲れ様でスター……あの、許してください。あの子最近入ったんだけどかなり態度が悪くてですね……へへっ」

 

「お前も蟲を馬鹿にするか?」

 

「そんなことは微塵も!そ、総動員で襲ってくるから逃げるなりなんなり頑張ってくださいね?」

 

「おう、全滅させる」

 

「こわぁ…」

 

 

 そのまま恐怖が限界を迎えたのか気絶してしまう男したっぱ。か弱い奴だな。

 

 

「…ラウラさん。あとでお話ししましょうか」

 

「漏れてますよ先生」

 

「ごほん。……感心しないなラウラ?」

 

「そもそもテーブルシティで蟲を馬鹿にされたから全滅させるって決意したからな」

 

《ロトロトロトロト……》

 

 

 ネルケのお小言に返答しているとスマホロトムに着信が。

 

 

 

「おっ、カシオペアか。もしもし?」

 

《「…見張りに対処できたか。さすがだ。そこを根城にしているのはスター団あく組チーム・セギンのボス、ピーニャ。スター団のまとめ役でBGM担当でもある」》

 

「BGM担当?」

 

《「士気を上げるBGMはお手の物だ。ピーニャの奏でるBGMでしたっぱやポケモンたちは実力以上の力を発揮するだろう。頭が切れるピーニャは宣戦布告にも動じず、むしろ待ち構えているはずだ。したっぱでこちらを消耗させてから襲ってくるだろう。計算高いタイプには正攻法で攻めるのが有効だ」》

 

「ああ、どっちにしろしたっぱは全滅させる予定だ」

 

《「頼もしい限りだ。あなたの実力ならば心もへし折れるだろうな。スター団壊滅も早まる。準備ができたらゴングを鳴らしてチーム・セギンにカチこんでくれ。大作戦開始だ!」》

 

「おう。ジャック。ぶち壊せ」

 

《「へ?」》

 

 

 俺の指示を受けてジャックががんせきアックスを発動、バリケードを破壊して吹き飛んだゴングを鳴り響かせる。カシオペアは呆気にとられていたが慌てて電話を切った。普通に鳴らすのはカチコミとは言わんだろ。

 

 

《ピィィー!ガガ…!「何者かが身の程を弁えずアジトにカチこんできました!スター団の恐ろしさを思い知らせて追い出してやりましょう!」》

 

「へえ、追い出すだけとは優しいな?」

 

 

 吹き飛ばされたスピーカーから鳴り響く音声に不敵に笑っていると、ネルケが話しかけてきた。

 

 

「ラウラ気を付けろ。スター団は団ラッシュという特殊な勝負を好む。一言でいえばポケモンの技、ふくろだたきみたいなもんだ。ポケモンの体力が減ったら俺がサポート役として回復するから安心しろ」

 

「なら手加減はいらないな。いくぞお前ら!」

 

 

 レインを肩に乗せ、ジャックの背中に乗り込みダーマとレクスを先導に突撃する。立ちはだかるは星型のサングラスや青いサングラスを身に着けたスター団したっぱの手持ち。どこからか聞こえてくる派手なBGMをバックに、ヤミカラス、ヤミラミ、ゾロア、マメバッタ、コマタナ、ニューラ、スカンプーの軍団と、俺の蟲ポケモンたちが真正面から激突する。

 

 

「ダーマ、いとをはく!レクスに繋げ!レクスはこうそくいどう!レインはねばねばネットで遠距離攻撃を潰せ、ジャックは近づく奴を片っ端から斬り払え!」

 

 

 ダーマが糸を繋いだレクスが高速移動して次々とポケモンたちの足に糸をひっかけて行き引っくり返していき、それを逃れたポケモンたちもレインとジャックが仕留めて行く。

 

 

「これ以上好き勝手させるな!相手は蟲だ!ヤミカラスを守れば…!」

 

「おうよ!ついばむ攻撃!」

 

「つばさでうつ!」

 

「おいうち!」

 

「あくタイプの癖して素直だな!ダーマ、スレッドトラップ!レクス、にどげり!」

 

 

 突撃してくるヤミカラスもダーマがスレッドトラップで絡め取り、レクスのにどげりで仕留める。

 

 

「げげーっ!?」

 

「ギャラドスかなにかか!?」

 

「ひい!?暴れ出したら止められねえ!?」

 

「こ、こいつは無理だ!俺達じゃ敵わない!ボスを呼んでくるんだ!」

 

「逃がすかよ!ジャック、れんぞくぎり連打だ!」

 

 

 逃げてボスを呼ぼうとするしたっぱのポケモンを始めに連続で斬り飛ばしていく。すると奥のテントが開いてそこからとんでもない物が出てきた。

 

 

「おいおいおいおい!うちの可愛いしたっぱたちになにしてくれちゃってんの!?」

 

「…それがスターモービルか」

 

 

 紫を基調とした派手な装飾の、先端に単眼と口があるデコトラの様な何か。なんか側面とボンネットにポケモンぽいのがついているが、それ以上にミラーボールや色とりどりに輝く装飾、派手なBGMを轟かせるスピーカーが目立つ。スター団のシンボルが描かれた旗がたなびいていてスター団のものだとアピールしていた。その上に乗るのは、ツンツンと尖った黒髪に白い帽子を被り、パソコンを手にしたDJ風の服装の男だった。あれがボスか。

 

 

「セギン・スターモービル!実戦投入は初めてだけど僕達スター団の切札さ。ド派手にやってくれるじゃん!侵入者ことラウラくん!だっけ?僕はピーニャ!a.k.a.DJ悪事!まあ好きな方で呼んで!」

 

「じゃあDJ悪事さんよ。俺に潰される覚悟はいいか?」

 

「聞いてた以上に生意気だね!潰れるのは君さ。鎮魂歌(レクイエム)流してあげるよ。さあ!パーティーのスタンバイだ!永遠にチルアウトさせてやるよ」

 

 

 そう言ったピーニャはヘッドホンから流れるBGMを耳に流して精神統一すると、タイマーボールを構えてきた。俺も全員ボールに戻して構える。

 

 

▽スター団あく組の ピーニャが 勝負を しかけてきた!

 

 

「行くぞレクス!」

 

「頼んだよコマタナ!」

 

 

 そして俺の繰り出したレクスとコマタナが体当たりで激突する。こうして俺と初めてのスター団ボスの対決の火蓋が切って落とされた。




スター団にギャラドス呼ばわりされるラウラ。スター団よりよっぽど悪党やってます。※ギャラドスはきょうあくポケモンとも呼ばれ、この世界では「鬼!悪魔!」の意。

オーリム博士の言及していた存在も登場。なにはともあれピーニャとの激突です。

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VSセギン・スターモービル

どうも、放仮ごです。どっかのカードゲームのライディングなんちゃらを思い出すよねスターモービル。

今回はピーニャとの激突。楽しんでいただけると幸いです。


「スター団に喧嘩売るなんてキミってマジ命知らずだよ」

 

「生憎記憶知らずだ。命知らずとはちょっと違う」

 

「減らず口だね!つばめがえし!」

 

「こうそくいどうで距離を取れ!」

 

 

 振るわれたリーチ内の敵には必中の斬撃を、レクスに大きく距離を取ることで回避させる。はがねタイプは足の遅さが致命的だ。こっちの火力が足りないからそこを突く。ジャックやダーマを出そうにもコマタナの相性や攻撃力は一撃で落とされかねん。

 

 

「こっちは鈍重だってのにすばやさが厄介だね!こわいかおだ!」

 

「しまっ…見るなレクス!」

 

「遅いよ。メタルクローで攻撃上げてこう!」

 

 

 こわいかおですばやさをがくっと下げられて、コマタナに追いつかれ鋼の爪の二撃を受ける。いい技覚えてるな。

 

 

「いいね!さわりはOK!トバしていくよ、侵入者!ダメおし!」

 

「にどげり!」

 

 

 続けて繰り出された一撃を、一撃目の蹴りで弾いて二撃目の蹴りで反撃。鋭く小さい脚の一撃が腹部に入りよろめくコマタナ。

 

 

「いい技覚えてるね!つばめがえし!」

 

「フェイントからのにどげり!」

 

 

 つばめがえしが繰り出される前にフェイントで顔面に攻撃。怖気付かせて二撃必殺。四倍弱点ダメージを二回連続で受けてコマタナは蹴り飛ばされ、ゴロゴロと転がった。

 

 

「なかなかやるね!でも僕のライヴはこっから!BPM上げてくからさ!」

 

▽ピーニャは ブロロロームを くりだした!

 

「そいつが出るのか…!?」

 

 

 ピーニャが座るセギン・スターモービルが周囲を爆走、旋回し始め咆哮する。しかもいかくか、攻撃力が下げられたっぽい。厄介な。しかもライドポケモンの一種なのか、なんて速さだ。タイプははがね……いや、あく組を名乗るぐらいだ。あくタイプだろう。

 

 

「とびつく攻撃!」

 

「DJ悪事の周波数!受信して壊れちゃいなよ!きんぞくおんからのバークアウト!」

 

「レクス…!?」

 

 

 なんとかとびついて死角に入ろうと試みたが、ギャリギャリギャリギャリ!というタイヤからの金属音と咆哮による音の衝撃波を受けて撃墜されて戦闘不能となる。厄介な組み合わせだ、それに速い。

 

 

「降参するなら今のうちさ!脅かしてやれ、スピードスター!」

 

「!」

 

 

 星型の光線が俺に当たらない様にばら撒かれる。なめるなよ?

 

 

「ジャック!れんぞくぎり!」

 

 

 ズバズバズバズバッ!と、繰り出した瞬間岩斧を振るってスピードスターを叩き落とす。そして俺はジャックの背に飛び乗って掴まった。

 

 

「乗り物勝負だ!ジャック、いくぞ!」

 

「ヒューッ、やるね!だけど遅い遅い!ダークアクセル!」

 

 

 飛び出すジャック。ムクホークを翻弄したあの素早さで、セギン・スターモービルに食い下がる。タイヤにエネルギーを纏って突撃してくるセギン・スターモービルと、岩斧で鍔競り合いながら疾走する。 

 

 

「がんせきアックス!」

 

「ちょっ、君も危険じゃん!?」

 

 

 驚くピーニャ。ジャックが肉薄すると言うことは俺も肉薄するわけで火花が凄い飛び散ってくる。怖いけど、ジャックだけにこの恐怖を味わわせるわけにもいかない。

 

 

「ジャックが体を張ってるんだ、主人だけ安全圏で指示するだけとか恥ずかしいんだよ!」

 

「いや僕も人の事言えないけどさあ!?引き離せダークアクセル!」

 

 

 するとセギン・スターモービルは加速して敷地内を走り回り、遅れてジャックも追いかける。その間に俺はボールを取り出し、ボソッと口元に寄せて指示を与えてからわざと取りこぼした。

 

 

「スピードを上げるんだジャック!テラスタル!くさわけ!」

 

 

 なんとかジャックの背に捕まりながらテラスタルオーブを取り出して掲げ、テラスタル。緑色に輝く結晶化したジャックは草をかき分けて加速。セギン・スターモービルに何度も体当たりして体勢を崩す。

 

 

「おっとと……やるねえ!全力で行こうかブロロローム!ダークアクセルを維持したまま、きんぞくおんからのバークアウト!スピードスター!」

 

「斬り弾いてしまえ、つばめがえし!」

 

 

 エネルギーを纏ったタイヤから金属音を、咆哮の衝撃波を、周囲に展開させた星型の光線を、一斉に放つセギン・スターモービル。ジャックはそれを、両手の岩斧を振るって迎撃。なんとかセギン・スターモービルに並走する。

 

 

「負けるなブロロローム!」

 

「いや、お前の負けだ!」

 

「え……!?」

 

 

 瞬間、タイヤが何かに絡まって急停止、後部が跳ね上がり投げ出されるピーニャは目を白黒させ、それの正体に気付く。

 

 

「ねばねばネット!?そのアメタマか…!」

 

「なにも試合じゃないからな。そっちが車を使うんだ、こっちだって手段は選ばん」

 

 

 その足元にいたのはレインだ。さっき落としたボールに指示しておき、ここまでセギン・スターモービルを誘導した。気付かなかったようだがな。

 

 

「ダークアクセルで引き剥がせ!」

 

「やれ、ダーマ。スレッドトラップからのカウンター!」

 

 

 なんとかその場で回転して抜け出そうとするセギン・スターモービルの前にダーマを繰り出し、スレッドトラップで受け止めてカウンターの一撃を叩き込むと黒煙を噴いて沈黙した。ピーニャは呆けてしまった。

 

 

「……まあ、こんなもんかな。おつかれさまでスター。……はは、恐怖を押し殺してよくやったよ…」

 

「よくやった。レクス、ジャック、レイン、ダーマ。俺達の勝ちだ」

 

 

 テラスタルを終えたジャック、レイン、ダーマ、そしてげんきのかけらを使って復活させたレクスと拳、岩斧、脚をぶつけ合う。おっ、ジャック。手加減を覚えたか。いいぞ。レクスはしょうがない、よくやったよ。

 

 

「やれることは十分やったよねえ…新入りのしたっぱたちがいきなり従順になって順風満帆になっていた矢先だったんだけどなあ」

 

「強かったよ。今度は純粋なポケモンバトルで勝負したいな」

 

「僕もそう思うよ。まさかセギン・スターモービルが負けちゃうとはね…自分で作った掟だし潔く団を去るよ。ボスの証ダンバッジもらってくれる?」

 

 

 そう言って取り出したバッジを手渡してくるピーニャから受け取り、握手を交わす。…したっぱはともかくボスは悪い奴じゃなさそうだ。

 

 

「あーあ、これでパーティーもジ・エンドか…それにしても君のポケモンみんなヤバすぎっしょ。それってアカデミーで習ったの?覚えさせた技とか育て方とかさ」

 

「いいや、独学だ」

 

「ふーん、君ってアカデミー行ってて楽しかったりするの?」

 

「まあ楽しいかな」

 

「へえ、ふーん…悪くないか」

 

 

 学校に興味あるらしいな。くればいいのに。するとそこに、勝負を見ていたこうちょ……ネルケがやってきた。

 

 

「ネルケ。終わったぞ」

 

「そうみたいだな、いい勝負だった。それで、あんたがピーニャか?」

 

「イカした髪型の特別ゲスト?ポケモンの技だとダメおし的な?」

 

「あんたと少し話したいんだ。いいか?」

 

「なんか面倒そうだけど暇になっちゃったしOKだよ」

 

 

 ジト目で見てくるピーニャ。なんか悪いことした気分になってきた。

 

 

「わかった。ストレートに聞くことにする。このままだとあんたたち全員退学処分になるんだろ?なぜスター団を解散してアカデミーに行かないのか聞きたいんだ」

 

「そこ聞いちゃう?行かないつもりはないのよ。僕らはツレを待ってるだけ。……帰ってくるかはわかんないんだけどさ」

 

「ツレ…大事な仲間か?」

 

「マジボス。スター団で一番強いボス。トレーナーで言うトップチャンピオン的な?みんなで団を作ろうって誘ってくれた人さ」

 

 

 そんなやつがいるのか。ネーミングセンスはどうかと思うが、まあおつかれさまでスターとか言ってる奴等だしな。

 

 

「そのマジボスは今どこに?」

 

「それが分かれば苦労しないよ。一年半くらい?連絡もつかないしさ。スター団をやめずにいたら連絡来るかもって思ってたけどね。先生たちは団をやめろってうっさいし君らみたいなの出てくるし…むしろ見捨てられちゃったか…マジボス、団、解散したがってたし」

 

「解散させたがっていた?」

 

 

 ……同じように解散させようとするカシオペア。まさかな。

 

 

「マジボスやスター団がそんなに大切なのか?」

 

「そんなの当たり前っしょ。アカデミー的に言うと……宝?的な?君にとっての蟲ポケモンみたいなもんだと思うよ、ラウラ」

 

「そりゃ大事だな」

 

 

 ネルケが尋ねると笑顔でサムズアップするピーニャ。気持ちのいい奴だ。…問題があるとしたらしたっぱか?オーリム博士の言っていた青いサングラスの奴等も気になるが……まあ考えてもわからないことはわからないか。




蟲が車に正々堂々と勝てるとはさすがのラウラも思わないので絡め手で勝利。試合以外で基本ルール守る気一切ないです。文句があるなら最初に提示しろってことで。

 ジャックの背に乗るのが基本になってきたラウラ。多分スターモービルとの戦いはこれが基本になるんじゃないかな。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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サイドストーリー
VSヤングース sideネモ


どうも、放仮ごです。今回から一応区切りがついたので他のキャラ視点を書いていくことにします。予定しているのは今回のネモ、他にアイアール、サニア……そしてもう一人。

今回はネモとラウラの出会いの過去。楽しんでいただけると幸いです。


 出会えたのは本当に偶然だった。新たな手持ちを育てるために訪れた南3番エリア。乾いた風が吹き荒ぶ荒野地帯だ。

 

 

「イワンコにコジオ、カルボウにノコッチ、メェークルにマクノシタ!ココガラにコリンク!将来有望なポケモンがいっぱいだあ!」

 

 

 思わず歓喜の声を上げるぐらい嬉しい。今の手持ちじゃトップとも楽しいバトルができやしない。だから一新する。そうすれば少しはいい勝負ができるだろうと考えての行動だ。

 

 

「…うん?バトルの音…?」

 

 

 思い思いに強くなりそうなポケモンを見極めて捕獲していると、遠くからバトルの音が聞こえてきた。誰かがバトルしてるのかな?と興味を駆られて向かってみる。崖の入り組んだそこの最奥、エリアゼロに隣接する場所でそれは行われていた。

 

 

「くっ……頼む、お前!にどげり!」

 

「あれは……女の子と、マメバッタ?」

 

 

 ヤングースの群れに取り囲まれた、明るい赤色の髪にズタボロの麦わら帽子を乗せた少女の指示で一匹のマメバッタが懸命に守ってる光景。少女の服は麦わら帽子と同じくズタボロだがどこかで見覚えのある黄緑色のユニフォームの様なもの。全身も擦り傷だらけで血を流している。遭難者?と一瞬思ったがどうも違うっぽい。

 

 

「ああ、お前!?」

 

 

 ついには数の暴力でマメバッタが崩れ落ち、慌てて抱きかかえる少女を狙い取り囲むヤングース達。見てられなくなって、捕まえたばかりのポケモンが入ったモンスターボールを手に突撃する。

 

 

「そのバトル、待ったー!」

 

「ざこちゃーう!?」

 

 

 我ながら下手くそなフォームで投げつけたボールがヤングース一匹の後頭部に炸裂。「あ」と声が思わず出て、後頭部にボールの直撃を受けたヤングースはまるでコガネ弁の様な悲鳴と共に崩れ落ち、申し訳なさそうなイワンコが出てくる。ごめんね、こんな初バトルで。

 

 

「えっと……チャーンス!イワンコ、がんせきふうじ!ほら、そこのあなた!逃げるよ!」

 

「え、あ、おう…?」

 

 

 イワンコにヤングース達との間に大量の岩で壁を作ってもらうとすぐさまボールに回収、思わぬ乱入に呆然としていた少女の手を手に取り、その場を逃げ出す私達。南3番エリアの物見塔まで来ると一息つく。

 

 

「ここまでくれば大丈夫だよ!」

 

「あ、ああ……何で俺を助けた?」

 

「俺?」

 

 

 俺っ子なのかな珍しい。でもなんで助けたって言われてもなあ。

 

 

「困っていたら助けるのは当たり前でしょ?」

 

「……それが当たり前なのか分からない。こいつといいお前といい、なんで俺を……」

 

 

 なんだろう、様子がおかしい。凄い不安そうというか。私が回復させたマメバッタを抱えてキョロキョロと辺りを見て警戒している。

 

 

「そのマメバッタあなたのじゃないの?」

 

「マメバッタって言うのかこいつ…ありがとうな。路頭に迷ってヤングースに襲われていた俺を助けてくれたやつだ。可愛い奴だな」

 

「ヤングースの事は知ってるんだ、変なの。……もしかしてパルデアの人じゃない?」

 

 

 ヤングースはアローラ地方にもいるポケモンだ。だからパルデアの人じゃないのかなと思ったけど、根本から違った。

 

 

「パルデア……?すまない、聞き覚えがない。ここがパルデアなのか?…俺は、なんでここに……」

 

「もしかして、記憶が無いの?」

 

 

 閃く。この様子、記憶がないから不安でしょうがないんだ。そう尋ねると合点が行ったようで少女は何かを思い出す様に指を一本ずつ立てて行く。

 

 

「…俺の名前がラウラなのと、マメバッタみたいな蟲ポケモンが愛らしい…いや、愛しているという事しか覚えてない……」

 

「ラウラ、そうかラウラって言うんだ。変なところを覚えてるね?」

 

「これが無いと俺が俺じゃない、そんな気がする」

 

「とりあえずそんな恰好じゃ寒いだろうし着替える?」

 

 

 とりあえず荷物から持って来たオレンジアカデミー制服の秋服を取り出して手渡し、物陰で着替えてもらうことにした。多分だけどこのラウラって子、すごく強い。見ず知らずのポケモンを使って凶暴な野生ポケモンの群れを相手に戦えていたということは、一目で使える技を見抜いた、信頼関係が無いポケモンでもその力を引き出せた、対多数の相手に慣れているという事である。記憶を取り戻せばとんでもなく強いトレーナーになるんじゃなかろうか。

 

 

「とりあえず着替えたが……」

 

「おー、ちょっと大きいかな?」

 

 

 小柄なラウラには私のサイズは合わなかったらしいがさっきのボロボロの服よりはマシだろう。ラウラの全身の傷をとりあえずきずぐすりと包帯で応急手当てしていると、回復したマメバッタが一向に離れないことに気付いた。

 

 

「ラウラ。そのマメバッタ…どうする?」

 

「…できれば仲間にしたいが」

 

「ボールならあるけど」

 

 

 そう言って差し出したモンスターボールを受け取り、じっと見つめたラウラはそっとマメバッタに向けて屈んで差し出した。

 

 

「俺に、ついてくるか?」

 

「!」

 

 

 するとマメバッタはピョンッと跳んでボールのボタンにぶつかり自ら納まった。自発的に捕まるポケモンなんて初めて見た。ラウラのなにかがそうさせたのだろうか。

 

 

「とりあえず、うちにきなよ。ラウラがどこから来たのか調べてみるからさ」

 

「いや、それはさすがに悪いと言うか……」

 

「その代わりお願いがあるの!記憶を取り戻したら私と戦って!」

 

「…そんなことでいいなら?」

 

 

 首を傾げながらも頷いてくれたラウラに、感極まって両手を上げて喜ぶ。

 

 

「やったー!絶対記憶を取り戻そうね!」

 

 

 退屈だった。そんな退屈を崩す出会いに感謝を。こうしてラウラは私の家のメイドとして住み込みで働くことになった。トップ…トップチャンピオンのオモダカさんやらクラベル校長やらに協力でラウラの着ていた服がガラルのユニフォームの一種だとわかったけど、ラウラがパルデア地方に来た記録も、出生記録もなにもなくて正直手詰まりだ。だけど、絶対にラウラの記憶を取り戻して見せる。そして思う存分戦うんだ。ああ、楽しみだなあ。




パルデアに訪れた記録が存在しないのにパルデアにいるラウラ。ズタボロの恰好といいなにがあったんじゃろね?マメバッタやネモとはこんな感じに出会いました。ネモの口調正直難しかった。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSシロデスナ sideアイアール

どうも、放仮ごです。今回は難産だった。具体的にはシチュエーションにちょうどいいポケモンの選別に苦労した。

今回はアイアール視点。ラウラといったん別れた後の話です。楽しんでいただけると幸いです。


 私はアイアール。今現在、一緒に旅していたラウラが用事があるとのことで、別行動してカラフシティにやってきた私。カラフシティのジムリーダー、ハイダイさんに先に挑もうとしたけど当のハイダイさんがマリナードタウンに競り?をするために向かってしまい、財布を落としたのでジムの受付に頼まれて届けにロースト砂漠を越えていた。うーん、できればカラフシティでラウラを待ちたいんだけどなあ。なにしてるんだろ、ラウラ。

 

 

「珍しいポケモンがいっぱいいるなあ」

 

 

 サボネアとかゴマゾウとかアノクサとかヒラヒナとかシガロコとかカヌチャンとかイシヘンジンとかスナヘビとか、カロスじゃ見たことないポケモンがいっぱいだ。シガロコとかラウラ好きそうだな、あとで教えよう。

 

 

「暑い…おいしいみず買っといてよかった」

 

 

 コライドンに乗って水分補給しながら随分進んだ気がするがまだまだ砂漠は広がっている。何度か止まってコライドンの水分補給したりピクニックしたりするが砂に足を取られてすぐ疲れてしまう。ここを越えて行ったってハイダイさん凄すぎやしないだろうか。

 

 

「うん?涼しくなってきた…?」

 

 

 しばらくコライドンに乗って走っていると、燦々と降り注いでいた日光が突如なにかに塞がれ影が差した。雲かな?と見上げると、そこには砂が渦巻いていて。

 

 

「砂嵐!?こんないきなり…!?」

 

 

 瞬間、後ろから吹き荒んできた砂嵐に飲み込まれ、私は必死にコライドンにしがみつく。わぷっ、ちょっと口に砂が入った!

 

 

「コライドン、走って!」

 

 

 砂が入るのも構わず咄嗟に指示。頷いて疾走するコライドン。しかし何時まで走っても砂嵐を抜けることができない。どうして……。

 

 

「もしかして、ポケモンの技…!?」

 

 

 砂嵐という技があるのは知っている。砂嵐はいわタイプのとくぼうを上げたり、いわ・じめん・はがね以外のポケモンにスリップダメージを起こすことができ、それを技やとくせいで発生させることができるポケモンもいるとはアカデミーの授業で習った覚えがある。

 

 

「コライドン!?」

 

 

 ついにスリップダメージを受けていたコライドンがダウン。慌ててボールにしまい、砂嵐のダメージを受けないウパーとコジオを出して周りを警戒する。

 

 

「いったいなにが……コジオ、右にうちおとす!」

 

「防げ、シロデスナ」

 

 

 気配を感じた方向に攻撃させると、女性の声と共にすなあらしが集中して飛ばした岩を弾いて砕いてしまった。何今の動き、まるで砂嵐そのものに意思があるかの様な…?

 

 

「ウパー、コジオ。警戒していて。えっと、シロデスナ……」

 

 

 図鑑の検索機能を使って名前を打ちこみ検索する。シロデスナ……あった。ゴースト・じめんタイプのすなのしろポケモン。ちいさなポケモンをすなのからだにひきずりこみすきなときにせいきをすいとるおそろしいポケモン…!?他には……すなあらしをまきおこしあいてのみうごきをふうじてからせいきをうばう、ビーチのあくむともよばれる…!?

 

 

「恐ろしい情報しか出てこないポケモンだなあ!?他には……」

 

 

 ひとつぶのすなにもいしがある……これだ!多分、この砂嵐そのものがシロデスナってポケモンなんだ。でもそんなの、どうすれば……!?

 

 

「今だ。奪え、シロデスナ」

 

「ああ!?コライドン!」

 

 

 すると砂の奔流が自在に動いて不気味な顔を形作ると、一斉に押し寄せてきて私を擦り抜けると、懐に入れていたコライドンのボールが掠め取られてしまった。目的はコライドン…!?顔はすぐに崩れてしまいどこに行ったか分からない…!

 

 

「ウパー!コジオ!一緒にマッドショット!」

 

 

 砂ならばと、泥の奔流を飛ばすが擦り抜けてしまう。駄目だ、通用しない。でもどうすれば……図鑑になにか…!ビーチにすむがみずがきらい、はげしいあめにうたれるとおしろのかたちをたもてない…?弱点は水……なら!ウパーとコジオを戻し、別のボールを取り出して投げつける。

 

 

「ウミディグダ!みずでっぽう!撃ちまくれー!」

 

「なっ…!?」

 

 

 出てきたのは地面から顔を出した可愛いディグダによく似た白いポケモン、ウミディグダ。その小さな体から水を吐きだして砂嵐の一部に当てると、砂嵐は崩れて行き、砂の城に顔がついたようなポケモンと、何故か小さな赤いスコップを持った、青い服とショートパンツとブーツを身に付けて太腿を晒した、緑色の短髪で緑色のゴーグルを身に着け緑色のリップを塗った女性が出てきた。あの女がトレーナーか!

 

 

「ポケモン図鑑か、忌々しい……!」

 

「コライドンを返せ!ウミディグダ!アクアジェット!」

 

「…返す確率0%。ギガドレイン」

 

 

 すると女性はスコップをシロデスナと思われる砂の城に突き刺すと空洞だった目に光が宿り、ウミディグダの水を纏った一撃を受け止めた上で体力を奪い取ってしまった。そんな……!?

 

 

「とくせい、みずがため。そちらの手持ちで突破できる確率、5%」

 

「なにを!ウパー、ポイズンテール!コジオ、うちおとす!」

 

「受け止めろ。シャドーボール」

 

 

 ウパーとコジオを繰り出して攻撃させるも、先程より硬くなった体表に受け止められてしまい、闇の球体を受けて吹き飛ばされてしまう。そんな……ポケモン図鑑で調べる。みずがため、みずタイプのわざを受けると防御のランクが2段階上がる…!?みずでっぽうとアクアジェットを受けたから四段階も防御力が上がってるってこと!?

 

 

「ならとくこうで……ホゲータ!」

 

「だいちのちから」

 

 

 ホゲータを繰り出すも、地面から次々とエネルギーが噴き出してきて吹き飛ばされてしまう。こうかはばつぐんだ。

 

 

「ホゲータ!」

 

 

 ごめん、相性悪いだろうけどもうあなたしかいないの…!宙を舞うホゲータに思わず目を瞑ってしまう。しかし弱々しいながらも確かに声が聞こえてきて。

 

 

「ホゲータ…?」

 

 

 目を開ける。そこには、ボロボロになりながらも健在のホゲータがいた。瀕死だけど耐えている。持ちこたえてくれたんだ。その身体が輝き始める。これは…進化!?

 

 

「ホゲータ。いや、アチゲータ!お願い!コライドンを取り戻して!」

 

 

 私の言葉に頷き、突撃するホゲータから進化したアチゲータ。

 

 

「シャドーボール、だいちのちから」

 

 

 女性は焦らずに指示を出してくるも、その攻撃全てを避けていくアチゲータ。旅を始めた頃から一緒で、ヘルガーに襲われた時には助けてももらったコライドンを思うが故だろうか。なら私は信じて指示をするだけだ。

 

 

「やきつくせええええ!」

 

 

 瞬間、肉薄したアチゲータの口から大量の火炎が発射される。それはシロデスナの砂の身体ごと焼き尽くしていき、その城の様に強固な身体が崩れて行く。

 

 

「ぐああっ!?アチゲータに負ける、確率…馬鹿な。……撤退!」

 

 

 炎は女性にも掠り、その手に持っていたボールを手放させることに成功。それをキャッチして睨み付けるアチゲータに悔しげな表情を浮かべた女性はシロデスナをボールに戻し、なんとブーツの底から炎を噴射して飛び去って行ってしまった。なんだったの……?

 

 

「ありがと、アチゲータ。コライドンも無事でよかった…」

 

 

 とてとてと戻ってきたアチゲータからコライドンの入ったボールを受け取り、一息つく。…水技が効かない地面タイプ。うちのウパーがそうなのに油断していた、全滅も十分あり得た。

 

 

「…強くならないとなあ」

 

 

 とりあえず岩陰に移動し、辺りを警戒しながらげんきのかけらといいきずぐすりでコライドン、ウミディグダ、ウパー、コジオを回復させた私は、再びコライドンに乗ってマリナードタウンを目指すのだった。




コライドンを狙う青い装束の謎の女性登場。一体誰なんだーー(棒読み)

シロデスナってやばいよねって。今作では自分の体を崩して砂嵐を発生させることで砂嵐そのものになれます。しかも砂嵐を崩すために水をかけると防御力が上がる強敵。一応技はすなあらし、ギガドレイン、シャドーボール、だいちのちからです。ロースト砂漠のシンボルエンカウントテラスタルスナバァ育てたら結構強いよね。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSチオンジェン sideサニア

どうも、放仮ごです。ルートが自由過ぎて物語を構成するのに苦労する原作だと思ってます。前回共々ラウラの知らない間に…って話です。

今回はサニア視点。バサギリに進化させた後の話です。楽しんでいただけると幸いです。


 私はラウラとセルクルタウンで戦った後、教えられた場所に来ていた。

 

 

「……チヲハウハネ。みなみ1ばんエリア。ちちゅう。ここ…?」

 

 

 ううっ、まだ言葉に慣れないが慣れさせるためにも言ってかないといけない。じゃないとクラベルに申し訳ない。言葉に出しながら辺りを調べる。特に珍しいことはない。飛び出て来たであろう穴も土に埋もれて出口の場所は分からない。思わず体育座りして溜め息を吐き、途方に暮れる。

 

 

「…あれから。いちねんはん。か」

 

 

 右も左もわからない場所に投げ出されて途方に暮れていたところを保護してくれたクラベルには感謝してる。でもやはり故郷に戻りたい。そのための手がかりを「宝」と称して探しているが、手がかりが一切得られていない。そんな時に出会ったのがラウラだった。故郷にいた…ポケモン、チヲハウハネを連れた彼女の情報は期待外れだったけど、一縷の望みをかけてここまできた。だけど無駄骨だった。帰ってクラベルを安心させた方がいいだろうか。

 

 

「…うん?なにか。ちがう?」

 

 

 立ち上がり去ろうとして気付く。何か違和感がある。以前来たときとは景色が違うような。なにが、違う?

 

 

「ほこら。あいている?」

 

 

 南1番エリア東の一番奥にあった、閉ざされていたはずの祠が開いている。大きな蓋壁が無惨に崩れ落ち、中は土に埋もれているが空っぽだ。私はボールを取り出し警戒する。

 

 

「カ……、シ……!」

 

「っ!?カジリガメ。ロックカット」

 

 

 聞こえてきた不気味な声に、咄嗟にカジリガメを繰り出しロックカットを指示。何時でも動ける様に構えると、じわじわと紫色のオーラが地面を伝って来てカジリガメに炸裂。力が抜けたのか転倒するもなんとか立ち上がるカジリガメ。

 

 

「これは。わざわいのおふだ?」

 

 

 レホール先生の歴史の授業で聞いたことがある、エネルギーを吸い付くして土地を荒廃させる災厄の力……!

 

 

「これ。つかえる。すなわち。さいやくポケモン?」

 

「カキシルス!」

 

 

 葉っぱの山に埋もれていたそれは、古びた木簡が渦を巻き背負っている、枯葉の体と白色の蔦でできた両目を持つ異形のポケモンだった。レホール先生曰く、伝わる名前はチオンジェン、災いの木簡…!

 

 

「カジリガメ。くらいつく」

 

 

 話が正しければ逃がすわけにはいかない。くらいつくを指示して逃がさないようにする。しかしその身体から伸びた蔦鞭で持ち上げられ、何度も地面に叩きつけられ呻くカジリガメ。攻撃力が足りてない、わざわいのおふだのせいか。

 

 

「ごめん。カジリガメ」

 

 

 さらに体力を根こそぎ奪われて戦闘不能にされてしまいくらいつくが解除され倒れ伏すカジリガメをボールに戻す。パワーウィップにギガドレイン、厄介だ。育てている途中のタンドンとジオヅムは出せない。残るは三体………。

 

 

「きみにきめた。ルガルガン。アクセルロック」

 

 

 繰り出したのはたそがれのすがたと呼ばれるルガルガン。夕方にイワンコを進化させたらこの姿になった、前回の宝探しの時からの仲間だ。岩を纏い高速で移動して翻弄しながら体当たりするルガルガン。

 

 

「かみくだく」

 

 

 そして隙を見てかみくだくを指示するも、チオンジェンは闇の衝撃波を放ってルガルガンに直撃させてきた。体力を失ったのか体勢を崩すルガルガンに、イカサマと思われる攻撃が炸裂。攻撃力が高いルガルガンは確かなダメージを受けるも持ちこたえる。

 

 

「いまのは。カタストロフィ。さいやくポケモン。こゆうのわざ?」

 

 

 確か対象の体力の半分を失わせると言う恐ろしい技だと言っていた。あれがある限り一撃で体力の半分を失い追撃で倒されてしまう。なら作戦変更だ。技から見て恐らくくさ・あくタイプ。私の得意ないわタイプは不利だが、あくにはあくだ。

 

 

「たたきつぶせ。バンギラス」

 

 

 飛び出すと同時に全身の穴から砂を噴き出し砂嵐を発生させるバンギラス。私の切札だ。すなあらしはいわタイプの身体に砂粒が重なってとくぼうを上げる、ギガドレインは通じない。

 

 

「バンギラス。しはいしろ。ほのおのキバ」

 

 

 くさタイプやはがねタイプ対策の技、ほのおのキバ。牙に炎を纏い、地面に叩きつけて炎を草原に燃え広がらせ、チオンジェンを炎で取り囲む。いわタイプに炎は通じないが、くさタイプはそうもいかないでしょ?

 

 

「カキシルス…!」

 

「つかめ。れいとうパンチ」

 

 

 くさタイプ、じめんタイプ対策の技。れいとうパンチ。繰り出されたパワーウィップを掴み上げた拳に冷気を纏い冷気を伝達させて氷漬けにする。効果は抜群だ。

 

 

「ひっぱれ。たたきつけろ。ストーンエッジ」

 

 

 そのまま引っ張り、氷塊に包まれたチオンジェンを宙に持ち上げて叩きつけた地面から岩の柱を突き出させて、勢いのままに背中から貫く。氷塊が砕け散ったチオンジェンは解放されるも瀕死となったのか溶ける様に崩れ落ちた。

 

 

「…いちおう。ほかく。する…?」

 

 

 モンスターボールを取り出しどうするか迷う。でも放っておくわけにもいかないか、と構えたその時だった。

 

 

「アハハ!ご苦労様!やっちゃえタギングル!」

 

 

 それはオレンジ色のショートカットの髪で同色の口紅とゴーグルを付けた、銀色の格子状のゴーグルをつけている、青いプリーツミニワンピースにショートブーツで、オレンジ色のロングソックスを身に付けている派手な女だった。ブーツの裏から炎を出して空を舞い、右手を口元にやって笑いながら繰り出したタギングルを向かわせてきた。

 

 

「じしん」

 

「アハハ!無駄無駄!おだてる!」

 

 

 じしんで反撃を試みるも、放つ前におだてられて混乱。バンギラスは自分を攻撃してしまう。その間にタイマーボールを取り出す青とオレンジの女。咄嗟に近くにあった長い枝を使って棒高跳びの様に跳躍して邪魔しようとするもひらりと避けられる。

 

 

「アハハ!危ない危なーい!杭を全部抜いたのはアタシだし、文句ないわよねー!?」

 

 

 そう言って女はタイマーボールを投げつけてチオンジェンを納めるとタギングルもボールに戻し、そのまま飛び去ってしまった。

 

 

「やられた」

 

 

 奴がチオンジェンを捕獲するのに利用されてしまった。…クラベルに報告した方がいいと判断し、私もバンギラスをボールに納めてその場を去るのだった。




またもや青装束登場。今回はチオンジェンを捕まえていきました。本当に何者なんじゃろね。

サニアの手持ちも一部判明。カジリガメ、ジオヅム、タンドン、そしてルガルガン(たそがれのすがた)、バンギラス、あと一匹です。ラウラの手持ちみたいに紹介した方がいいかな?

次回は別視点最後の話。多分皆気になっているであろうあの人物視点です。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSデンチュラ sideユウリ

どうも、放仮ごです。今回は多分待望のユウリ視点。ついでにムツキが四天王になった経緯も描きます。

一方其の頃ガラルの話。楽しんでいただけると幸いです。


 数ヶ月前。――――のガラル地方。その日、私はキリエさんと、次のガラルスタートーナメントについて話し合っていた。

 

 

「それでですね?ご相談というか本題なのですがガラルのキルクスジムジムリーダー、ムツキさんをパルデア地方の四天王としてぜひお迎えしたいのです」

 

「話は分かりましたが……」

 

 

 隣の部屋で話していた会話が聞こえてくる。パルデア地方でポケモンジムを運営しているポケモンリーグ委員長でトップチャンピオンだというオモダカさんがガラル地方を訪れた。対応しているのはガラルのポケモンリーグ委員長をしているダンデさんだ。目の前のキリエさんは娘を他地方の四天王に据えたいと言われて困惑しているようで、私に断りを入れて入室する。

 

 

「失礼します。ダンデの秘書でムツキの母のキリエというものですが…」

 

「ああ、かつての最強のジムリーダーの!お噂はかねがね。何時か戦ってみたいものです」

 

「それは光栄ですが、ムツキちゃん…いえ、ムツキを四天王にとは?」

 

 

 四天王。ガラルにはないが、他の地方ではチャンピオンに続く最強の四人のトレーナーとして君臨する人たちのことだ。個人的にガラルの四天王に当たるのはラウラ、キバナ、ビート、ムツキだと思ってるけど、他地方からスカウトされるとはどういうことだろう。

 

 

「ダンデさんには説明しましたがもう一度説明いたします。現在我がパルデア地方ではじめんタイプ使いのチリ、はがねタイプ使いのポピー、ドラゴンタイプ使いのハッサク…そしてひこうタイプ使いのアオキで四天王を構成しているのですが、アオキは多忙のサラリーマンでさらにジムリーダーも兼任していまして……私は彼の負担を減らすべく他の地方で強力なトレーナーを探してまして……」

 

「なるほど」

 

 

 そのアオキさんという人すごいな。サラリーマンとして働きながらさらにジムリーダーや四天王まで兼任しているとか超人じゃなかろうか。戦ってみたいな。

 

 

「せっかくならと、できればひこうタイプ使いをそのまま担ってほしいだけでなく、パルデア地方独特のポケモンを使って戦ってほしいと考えまして。該当するトレーナーを探していましたところ、ひこうタイプだけでジムチャレンジを突破し、ジムトレーナーから短期間でメジャージムリーダーになり上がり、さらにはポケモンの育成にも長けているというムツキさんのことを知ってこうしてスカウトしに来たわけです。本人に直接お伺いしたのですが、そういうことはリーグ委員長を通してほしいと言われてこうして直接出向いたわけです」

 

「ムツキはなんと?」

 

「なんでも母親……キリエさんを越えたいという目的に合致するので是非にと言っていました。確認を取ってくれても結構です。どうでしょう?」

 

「…本人が乗り気なら、メジャージムリーダーを交代すればこちらとしても問題はないと思うが…キリエさん、どうだろう?」

 

「…娘が大成するのです。応援しない親がどこにいますか?」

 

「許可をいただけて大変嬉しいです」

 

 

 どうやらムツキはパルデア地方の四天王になるということで決まりらしい。寂しくなるな、とちょっと思った。ラウラだったら全力で止めてたけど、ムツキの夢は知っているし友達として応援しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、せっかくなのでオモダカさんとポケモンバトルの手合わせをしたりしたあの日から数日後。私はカンムリ雪原を自転車に乗って走り回っていた。

 

 

「ああもう、どこにいるんだろう。各町にワイルドエリア、ヨロイ島も捜したけどいなかったし、ガラルから出た形跡がないからここしかもうないんだけど……こんな時にムツキもモコウも他の地方に行くし……」

 

 

 パルデア地方に旅立ったムツキはともかく、モコウまで「新しい友達に会いに行く!」と旅立ったタイミングでラウラが「出かける」と言ってから一日経っても帰ってこなくて捜索している私。プラズマ団の一件もあるし心配だ。ドラピオンを捕まえた時みたいに熱中しているだけだと信じたい。

 

 

「うーん、GPSも反応ないし…雪のせいかなあ」

 

 

 スマホロトムを眺めながら全力で漕ぐ。一応ダイマックスアドベンチャーも確認したけど、挑戦はしたらしいけど何も捕まえずに出たらしくいなかった。つまりカンムリ雪原には来てたわけで。もしかしたら遭難してるかもしれない。

 

 

「うん?」

 

 

 山を登っていると、眼下に見覚えのあるものを見つけた。デンチュラだ。ここら辺には野生のデンチュラは生息していなかったはず。ラウラのデンチュラかな?と思って全速力で下山、歩いていたデンチュラに近づくと、こちらを見るなり放電してきた。

 

 

「いきなりどうしたの!?私だよ、デンチュラ!ユウリ!」

 

 

 放電を受けた自転車から飛び降りて受け身を取りながら主張するもデンチュラは敵意の目を向けながら糸を飛ばしてきた。

 

 

「シュバルゴ!」

 

 

 シュバルゴを繰り出して糸を斬り裂いて防ぐ。どうしたんだろう?あの背中に糸で括っているの、もしかしてモンスターボールかな?五つあるけど……ラウラの手持ち!?

 

 

「とにかく落ち着かせないと!シュバルゴ、つるぎのまいで斬り裂きながら近づいて!アイアンヘッド!」

 

 

 糸を次々と飛ばしてくるデンチュラに、シュバルゴは両手の槍を振るって斬り裂きながら近づいていき、渾身の頭突きを叩き込む。デンチュラは目を回して崩れ落ちた。ラウラの相棒ポケモンだけど、主人の指示が無いならそんなに怖くない。

 

 

「…やっぱり」

 

 

 ドラピオン。ウルガモス。ゲノセクト。フェローチェ。マッシブーン。…そしてデンチュラ。ラウラの手持ちだ。不安げな顔でボールの中から私を見てきている。これを持ってデンチュラが彷徨っていたってことはラウラは……?

 

 

「どこに行ったの、ラウラ…?」

 

 

 途方に暮れるしかない私は空を仰ぐ。この青空の下のどこかにラウラがいるはずだから。




オモダカさん直々のスカウトでムツキ四天王入りでした。割と急務だと思うのよねアオキさん問題。意外性合っていいけど現実なら、ね?

そして出かけたっきり行方不明になってたラウラ。デンチュラはいきなり主人がいなくなって錯乱してました。現在ラウラに本来の手持ちがいない理由も、デンチュラになんらかの理由で預けていたからとなります。久々に書いて並べてみましたけど殺意高いですねラウラの手持ち。

次回はラウラ視点に戻ります。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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オリキャラ及び手持ち設定その1

どうも、放仮ごです。今回はラウラの視点に戻る予定でしたが、ちょうどいいタイミングだったので現時点で判明している設定投下します。楽しんでいただけると幸いです。


・ラウラ

 今作の主人公であり、前々作主人公(ダフネ含め)が何らかの理由で記憶を失った姿。手持ちをすべて失い、着ていたユニフォームもズタボロ、全身傷だらけの状態でネモに保護された。ネモの家のメイドとして働きつつネモとのポケモンバトルに勤しんでいたが、ネモの計らいでオレンジアカデミーに入学。記憶を「宝」として宝探しの旅に出る。

 ジム戦だけでなくペパーの秘伝スパイス探しやカシオペアのスターダスト大作戦までやることになり結構多忙。バトルのセンスは相変わらずだが記憶を失ったことで余裕がなくなり焦りもあり許せないものはとりあえずブッ飛ばし、壁があれば殴って壊すザ・脳筋になってしまっている。知らないところで何かが起きているが現状気付いてない。名前の由来は月桂樹のラテン語。

 

 

・レクス(マメバッタ)♂

とくせい:むしのしらせ

わざ:とびつく

   にどげり

   フェイント

   こうそくいどう

もちもの:なし

テラスタルタイプ:むし

備考:むじゃきな性格。ちょっぴりみえっぱり。気絶していたラウラに寄り添いそのまま仲間になったポケモン。ヤンキー気質でかまってちゃん。今作の相棒。定位置は頭の上。仲間たちに追い越されて危機感を抱いている。名前の由来は「レッグ」「王」。

 

 

・ダーマ(タマンチュラ→ワナイダー)♀

とくせい:はりこみ

わざ:とおせんぼう→スレッドトラップ

   カウンター

   いとをはく

   むしのていこう

もちもの:なし

テラスタルタイプ:むし

備考:のんきな性格。物音に敏感。ラウラにコサジの小道で捕獲されたポケモン。のんびりやでどっしりと構えて戦う。オトシドリとの戦いで進化、某蜘蛛男の如く糸で飛び回る力を得た。名前の由来は「糸玉」「某日本版蜘蛛男」。

 

 

・ウカ(チヲハウハネ)

とくせい:???(ポケモン図鑑未更新)

わざ:ローキック

   ニトロチャージ

   しびれごな

   とびかかる

もちもの:なし

テラスタルタイプ:かくとう

備考:ずぶとい性格。物音に敏感。地中から現れラウラのカレーに釣られて仲間になったポケモン。ろくにいうことを聞かないが危ない時は助けてくれる。練度はラウラの手持ちで一番強い。サニアの故郷のポケモンらしいが…?扱い的にはアイアールのコライドンと同じ「七匹目」名前の由来は羽化。

 

 

・レイン(アメタマ)♀

とくせい:すいすい

わざ:バブルこうせん

   あまいかおり

   でんこうせっか

   ねばねばネット

もちもの:なし

テラスタルタイプ:みず

備考:せっかちな性格。イタズラが好き。ラウラが新たに仲間にしたポケモン。実は追いかけてきたラウラにビビり散らかしていた。あんまり出番がないが蟲の苦手ないわタイプに対して有利を取ったり、ねばねばネットでセギン・スターモービルを止めてとどめに繋げたりと縁の下の力持ち。名前の由来は「アメ」

 

 

・ジャック(ストライク→バサギリ)♂

とくせい:テクニシャン→きれあじ

わざ:れんぞくぎり

   くさわけ

   つじぎり→がんせきアックス

   つばめがえし

もちもの:なし

テラスタルタイプ:くさ

備考:ようきな性格。自信過剰で目立ちたがり屋。自分が活躍しないと拗ねる。元々ムツキにテラレイドバトルで捕獲されたものの性格などが理由で捨てられたポケモンで、ムツキを目の仇にしている。サニアの協力でバサギリへと進化した。現状ラウラの切札。名前の由来は「ジャックナイフ」「切り裂きジャック」地味にラウラの前世の記憶が無意識に働いてる。

 

 

 

・アイアール

 原作主人公に当たる人物。星々が輝く夜空を思わせるサファイアの様な瞳以外は三つ編みに纏めた茶髪にそばかすと一見地味な出で立ちの少女。カロス生まれでパルデアに引っ越してきた。オレンジアカデミーに入学したが気乗りせず寄り道してラウラと出会った。

 宝探しの際にラウラとの戦いに勝利して一緒に旅することになった。結構アホだがバトルセンスは本物。コライドンは手持ちと言うより恩人で友達と言う感覚。モデルは放仮ごの操作キャラで名前は愛読書のキャラから。

 

 

・ホゲータ→アチゲータ♂

とくせい:もうか

わざ:やきつくす

   ほのおのキバ

   バークアウト

   りんしょう

もちもの:なし

テラスタルタイプ:ほのお

備考:ずぶとい性格。少しお調子者。アイアールの相棒。シロデスナとの戦いで進化し、砂をも焼き尽くす火力を見せた(もうか込み)。下記を見ればわかるが実はハーレム。

 

・ウパー♀

とくせい:ちょすい

わざ:マッドショット

   ポイズンテール

   たたきつける

   どくびし

もちもの:なし

テラスタルタイプ:どく

備考:ゆうかんな性格。暴れることが好き。アイアールが二匹目に捕まえたポケモン。

 

 

・ウミディグダ♀

とくせい:ぬめぬめ

わざ:アクアジェット

   まきつく

   みずでっぽう

   どろかけ

もちもの:なし

テラスタルタイプ:みず

備考:いじっぱりな性格。おっちょこちょい。不意打ちが得意だが打たれ弱すぎて大体一撃でやられる。

 

 

・コジオ♀

とくせい:きよめのしお

わざ:うちおとす

   いわおとし

   のろい

   マッドショット

もちもの:なし

テラスタルタイプ:ゴースト

備考:のんきな性格。打たれ強い。ムクホークから逃げてきてアイアールの仲間になった。のろいの効果を切り替えられるのが強み。

 

 

 

・サニア

 どこかの民族みたいな奇妙な文様が描かれた、ウォーグルの羽が飾りとして付いている仮面を被った、オレンジアカデミーの夏服のネクタイが無くて両袖を破ってタンクトップ風にしていて、日焼けした浅黒い肌で裸足の、野生児という印象が強い人物。一人称は「わたし」中性的な声で片言で喋る他、ポケモンの様な身体能力を持つ。判明している手持ちは五匹だが六匹目は特別。

 クラベル校長が就任時に一緒に入学させた文武両道の優等生。さらにチャンピオンランクでいわタイプ使いとハイスペック。チヲハウハネを知ってるなど謎が多い。故郷に帰るのが目的。名前の由来は食虫植物サラセニア。

 

 

・カジリガメ♂

とくせい:シェルアーマー

わざ:くらいつく

   がんせきふうじ

   ロックカット

   アクアブレイク

もちもの:なし

テラスタルタイプ:みず

備考:ようきな性格。力が自慢。サニアの先鋒。元々素早さが自慢でロックカットでさらに素早くなり敵を追い詰める。

 

・コジオ→ジオヅム♂

とくせい:きよめのしお

わざ:うちおとす

   しおづけ

   てっぺき

   じだんだ

もちもの:なし

テラスタルタイプ:いわ

備考:のうてんきな性格。食べるのが大好き。初登場の時ラウラと戦ったが、進化した後は今のところサニアのサンドウィッチに塩を加えたのみ登場。最近育て始めた新入り。

 

・タンドン♂

とくせい:じょうききかん

わざ:こうそくスピン

   えんまく

   たいあたり

   うちおとす

もちもの:なし

テラスタルタイプ:ほのお

備考:おくびょうな性格。とてもきちょうめん。最近育て始めた新入り。手加減するバトルの時に使う。

 

 

・ルガルガン(たそがれのすがた)♀

とくせい:かたいツメ

わざ:アクセルロック

   かみくだく

   とおぼえ

   ステルスロック

もちもの:なし

テラスタルタイプ:いわ

備考:さみしがりな性格。駆けっこが好き。サニアの相棒で絶大な信頼を寄せている。

 

・バンギラス♀

とくせい:すなおこし

わざ:ストーンエッジ

   ほのおのキバ

   れいとうパンチ

   じしん

もちもの:なし

テラスタルタイプ:いわ

備考:いじっぱりな性格。イタズラが好き。サニアの主力。

 

 

・ムツキ

 ひこうタイプ使いの四天王。ガラル出身でラウラの親友の一人。ポケモン育成がとにかく上手で練度が桁外れであり、以前ラウラを初敗北させた。前作より背も伸びて大人びている。何故かラウラに無反応だが…?新たな手持ちの一匹はオドリドリ(まいまいスタイル)。色違いのアーマーガアも相変わらず連れている。カヌチャン族の事を知らない。名前の由来はムラサキツユクサと某最強のライダー、自作小説の主人公の名から。見た目と口調は似てるけど性格は真逆。

 

 

・マトイ

 誰からも好かれそうな雰囲気をした大人の女性でレホール先生の親友でもある科学者。レホール先生の事をレーちゃんと呼ぶ。アカデミーの司書でもあり、特に四災の伝説などを調べている。手持ちの一匹はモスノウ。名前の由来はイソトマ。

 

 

・ユウリ

 剣盾の原作主人公に当たる人物でガラルのチャンピオンでありラウラの嫁。その愛は狂気的でもあり一時期暴走した。行方不明になったラウラを捜しているがパルデアのラウラには何故か行きついていない。

 

 

・キリエ

ムツキとその姉であるリヅキの母親。じめんタイプ使いで元ガラル最強のジムリーダーで毎回ラウラを大苦戦させた作中最強クラス。パルデアの四天王のひとりと色々被ってる気がしないでもない。名前の由来はオトギリソウ。

 

 

・モコウ

 名前だけ登場したラウラ、ユウリ、ムツキの親友で中二病のでんきタイプ使い。「新しい友達に会いに行く!」と旅立ったらしい。名前の由来はワレモコウ。




名前の判明していない青装束の二人と原作キャラは省きます。性格と個性を考えるのが一番大変(ボックスのポケモン参考にした)。

次回こそラウラ視点に戻ります。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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みずジム、土震のヌシ、ノーマルジム、偽龍のヌシ
VSシガロコ


どうも、放仮ごです。シガロコ、旅パで使ってたんですが正直進化するまで何度も何度もやられて大変だった記憶しかないんですよね……。アノクサにすら負けてたのはさすがに笑った。

今回は久々にラウラ視点。オリジナルジムテスト入ります。楽しんでいただけると幸いです。


《ロトロトロトロト……》

 

 

 ピーニャと校ちょ……ネルケは話があるとのことで別れ、アジトの外に出ると電話がかかってきたのでスマホロトムを取り出し応答する。

 

 

《「……ラウラ。ピーニャからボスの証ダンバッジをもらったようだな」》

 

「カシオペアか。ああ、ほれ。見えるか?」

 

 

 ピーニャからもらったダンバッジを突きつける。すると画面越しに確認できたようだ。

 

 

《「ふむ。たしかに。これでボスがいなくなったチーム・セギンは崩壊寸前だ。ピーニャ……すまない。少し考え事をしていた。約束の報酬だ。ラウラのスマホにLPをチャージしておこう。わざマシンマシンで作れる種類も増やしておく、戦力増強してくれ」》

 

「おお、それは助かる」

 

 

 レクス達は意外と覚える技少ないからな。わざマシンは助かるな。しかし結構報酬をもらえたな?

 

 

「…5000もいいのか?」

 

《「当然の報酬だ。本当にいい仕事ぶりだった。追加報酬として強力なわざマシン作成に必要な材料も補給班から受け取ってくれ」》

 

「補給班?」

 

「ど、ども……」

 

 

 カシオペアからの電話が切れると、入れ替わるように道の先から誰かがやってくる。見てみれば見覚えのあるやつだった。

 

 

「お前は…アイアールに助けられていた?」

 

「補給班のボタン…あ、覚えてたん?えと、うちも課外授業の宝探しってことで手伝ってる。うち機械とかハッキングとか得意だから裏方なんよ。で、これカシオペアからの追加報酬」

 

「ありがとな」

 

 

 ボタンから袋を受け取り中身を確認する。ポケモンのおとしものか。蟲ポケモン以外興味なかったからありがたいな。

 

 

「スター団のアジトを攻略するごとに報酬を増やすってさ。そんだけ強いならきっと大丈夫。ボスは残り四人。えと…頑張って」

 

 

 そう言ってボタンは去って行った。……なんだろうな、この違和感。まあいいか。

 

 

「早くカラフシティに向かってアイアールと合流しないとな」

 

 

 ダーマの糸のスイングで来たから結構遠い距離を歩かないといけない。ジャックに乗って爆走してもいいが、コライドンの乗り心地には負ける。なんならしがみ付いてるから俺の握力が切れたら死ぬまである。

 

 

「出口側はカラフシティに近いみたいだな」

 

 

 好都合なことにスター団あく組アジトのもう一つの出入り口はカラフシティに近かったのですぐ着いた。さてどうやってアイアールを捜すか……スマホロトムで連絡するか?

 

 

《ロトロトロトロト……ガチャッ》

 

《「もしもし?ラウラ?」》

 

「もしもし、アイアールか?今カラフシティについたがどこにいる?」

 

《「今ジムリーダーのハイダイさんのお店「ハイダイ倶楽部」でごちそうになってるよ」

 

「勝ったのか?」

 

《「もちろん!すごく強かったけどウパーが進化してドオーになってね、なんとか勝てたんだ」》

 

 

 ヌオーじゃなくて?記憶はないが違和感が凄い。どんな見た目なんだろ。

 

 

「ドオーってのに進化するのか。俺も見てみたいな。じゃあ俺も挑んでくるわ」

 

《「わかった、応援に行くね!」》

 

「おう。またな」

 

 

 アイアールとの電話を終え、昇降機に乗って三段になってるカラフシティを歩いていると、店頭に気になるものを置いている店を見つけた。

 

 

「エクスレッグヘルメット……!?最高かよ、特にこのブラックカラーいいな!」

 

 

 ライドポケモン用の道具を売買している店「セグーロ」に入り、即決でブラックカラーのエクスレッグヘルメットを購入。エクスレッグは確かマメバッタの進化系、いいセンスだ。しかも2000円は安い!カシオペアからもらったLPの使いどころさんだ。早速被って外に出る。これならジャックの背に乗っても安心だな!

 

 

「こん…?こんにちは!カラフジムのジムテストは「マリナードタウンスタンプラリー」です。このスタンプ用紙を持ってロースト砂漠を越えてマリナードタウンの市場でスタンプを押して戻ってきてくださいね」

 

 

 ジムに向かうと一瞬戸惑った受付からそう言われた。マリナードタウン…ロースト砂漠を越えた先だと?マジ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このヘルメット買ってきてよかったな」

 

 

 カラフジムのジムテストは難易度が高いと紹介に書いてあったがマジだな。こんな砂嵐吹き荒んで時折地震もするロースト砂漠を越えろってかなりきついぞ。ヘルメット無かったら砂嵐が口に何度入っていてもおかしくないぞ。

 

 

「しかしこの地震はなんなんだ…………うん?」

 

 

 砂に足を取られながら歩いていると、なんか遠目に見えてヘルメットの汚れを(ぬぐ)い取る。……なんかいる。デカい何かがロースト砂漠を歩いている。あれが地震の原因か。

 

 

「そういやペパーに教えられたヌシの一匹の居場所がここだったか……じゃああれが?」

 

 

 ええ……蟲が凄い轢き潰されそうなんだが?……アイアールと合流してから挑もう。そうしよう。今は無視だ。蟲だけに。そんな俺の前を小さな何かが横切る。その姿を確認して目を見開いた。

 

 

「知らない蟲ポケモン!?」

 

 

 泥の玉を後ろ足で転がす蟲型ポケモンがそこにいた。こちらに気付くと玉を押しながら全速力で逃げるそいつをスマホロトムのポケモン図鑑で確認する。

 

 

「シガロコ!シガロコって言うのかお前!」

 

 

 砂に足を取られるのもなんのその。砂を巻き上げながら全速力で追いかける。意外と速いなこの野郎!?

 

 

「待てえええええええ!」

 

 

 砂嵐が吹き荒ぼうとなんのその。マッドショットを飛ばしてきて顔面に受けながらもヘルメットで受け止めながらなんのその。転がって距離を稼ごうとするがならばと四つん這いとなり手でも砂をかき分け追いかける。

 

 

「逃がすかアアアアッ!」

 

 

 砂漠を出るか出ないかの距離を走り抜け、穴を掘って逃げ出そうとしたシガロコの背後からモンスターボールを叩きつける。急所に当たったのかそのまま動かなくなったボールに吸い込まれて行った。やったぜ。

 

 

「よろしくなシガロコ……ってなにい!?」

 

 

 ゲットしたシガロコに挨拶しようとボールから出したら光り輝いてシガロコが別のポケモンに進化していた。なんでえ……?

 

 

「ベラカスって言うのか……よろしくな?」

 

 

 そう言うとベラカスは不満げに唸ってふわふわ浮くのだった。




アイアールがおつかい+競りをクリアしているから他のトレーナーは必然的にそれ以外をするしかないよねって。難易度の高いジムテストと書いてあったからどんなのか想像したら必然的にこうなりました。

カシオペアの報酬でエクスレッグヘルメットを購入して愛用するラウラ。これでポケモンを強化してほしかったカシオペアは泣いていい。エクスレッグをライドポケモン用のヘルメットにするセンスは公式さんさすが。

そしてシガロコもといベラカス参戦。進化した理由は簡単で、1000歩ぐらい続いた追いかけっこが連れ歩き認定されたせいです。細かなスペックはジム戦にて。蟲相手だったらなりふり構わずどこまでも追いかけるラウラ、ネモのことを悪く言えない。

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VSミガルーサ

どうも、放仮ごです。各話に「勝負を仕掛けてきた!」の描写と、各章を追加しました。と言っても何の捻りもないものですが。

今回はハイダイ戦。楽しんでいただけると幸いです。


「はい。たしかに。ジムテストクリアです」

 

 

 シガロコ改めベラカスを捕まえているうちにいつの間にか砂漠を抜けてマリナードタウンでスタンプをもらい、土震のヌシポケモンから隠れながらカラフシティに辿り着いた俺はさっそくジムに戻って報告していた。スタンプのついた用紙を見せて、クリアを言い渡される。やったぜ。

 

 

「3VS3、道具無しの勝負となりますが……激流料理人……ジムリーダー、ハイダイに挑みますか?」

 

「もちろんだ」

 

「それではバトルコートにご案内します。最下層となります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 円形の水場に囲まれたバトルコートで待ってると、観客に出迎えられてやってきたのは特徴的な眉毛と髭の大男。料理人と言うよりは漁師みたいだ。

 

 

「悪いなみんな!これからまたジム仕事でな!オイラのジムテストを久々にクリアしやがったって言うんだよ。待たせとるもんでな、ここは引いてくれないかい!」

 

 

 そう言ってこちらにやってくるハイダイ。慕われているのが見て取れる。

 

 

「お前さんがオイラのジムテストを突破したツワモノかい!ヘイ、ラッシャイ!」

 

「お、おう…?」

 

「オイラのジムテストを突破するとは大したもんだ!感心はすれど、どっこい手は抜かんからな!――――売った買ったは(いち)の競り!切った張ったはジムの競り!技と駆け引き渦巻く海原(うなばら)!オイラ自慢の水のポケモンフルコース!さあさあドドンと召し上がれえ!」

 

 

▽ジムリーダーの ハイダイが 勝負を しかけてきた!

 

 

「叩き潰せジャック!」

 

「ラッシャイ!ミガルーサ!」

 

 

 こちらは最大戦力のジャック。ハイダイが繰り出したのはきりはなしポケモン、ミガルーサ。周囲の水場に飛び込みグルグルと泳いで旋廻する。いわタイプのこちらが不利だ、テラスタルするか。

 

 

「いくぞジャック!テラスタルだ!」

 

「見たこともないポケモン、相手にとって不足はないんだい!アクアカッター!」

 

 

 早速くさタイプにテラスタルして、水場から放たれた水の刃を受け止めるジャック。そのまま水場に突撃して岩斧を振るう。

 

 

「がんせきアックス!」

 

「きりさくだい!」

 

 

 岩斧と鋭い体が激突。岩の破片がばら撒かれ、ステルスロックとしてフィールドにばらまかれるが水場にいるミガルーサには関係ないらしい。地上に上がる牽制にはなるか?

 

 

「くさわけだ!」

 

「ついばむだい!」

 

 

 くさをかき分けるような動きで素早さを上げつつ斬撃を叩き込むジャックと、嘴の様な口で突いてくるミガルーサがぶつかり合い、ならばと出せば出すほど威力が上がる技を指示する。とくせいのきれあじで最初から威力は高いのがいいところだ。

 

 

「れんぞくぎりだ!」

 

「むっ、いい技を使うなあ!ヘイ、ラッシャイ!ならコイツはオイラのおごりだあ!みをけずる!」

 

「なっ!?」

 

 

 連続の斬撃で追い詰めていると、柏手を打ったハイダイの指示で壁にぶつかって自傷ダメージを受け、攻撃と特攻と素早さを2段階上昇させる技を使用するミガルーサ。普通にヤバいな、軽々とジャックの動きを避け始めた。追い付けない……!

 

 

「ジャック!つばめがえし!」

 

「遅い!ついばむだい!」

 

 

 そして効果抜群の攻撃が高速で連続で放たれ、全身をついばまれたジャックはテラスタルが解けて崩れ落ちてしまう。最初からかよ、最悪だ!

 

 

「初陣だ、行くぞベラカスもとい、ケプリべ!」

 

 

 戦闘不能になったジャックをボールに戻し、頭に浮かんだ名前「ケプリ」と、本体?が動こうとしないことから語り部をイメージして名付けたニックネームと共に新顔を繰り出す。その能力上昇、こっちにももらうぞ。

 

 

「こっちも上げてけ!じこあんじ!」

 

「なんてこった!本当にごちそうしてしまったんだい!?」

 

 

 じこあんじ。相手の能力上昇を自分にも反映することができる技だ。ケプリべも攻撃と特攻と素早さを2段階上昇させる。喰らえ!

 

 

「サイケこうせんしながらむしのていこう!」

 

「きりさくんだい、ミガルーサ!」

 

 

 黄緑色の光の群れに包まれたピンク色の光線と、水場から飛び出してきたミガルーサが激突。ダメージレースに勝利しなんとか撃破する。

 

 

「よく頑張ったケプリべ、戻れ」

 

 

 能力上昇は惜しいがここは仕切り直しだ。ケプリべをボールに戻して次の手持ちを取り出す。3VS3なため実質最後のポケモンだ。

 

 

「頼むぞダーマ!」

 

「ラッシャイ!ウミトリオ!」

 

 

 俺が繰り出したのはダーマ。さすがに未進化のレクスとレインに任せるのは少し不安だった。蟲はとにかく耐久が低い。進化してないとなおさらだ。ジャックとダーマ、そして新入りのケプリべがまともに戦える面子だった。ハイダイが繰り出したのはウミトリオ。恐らくアイアールも持ってるウミディグダの進化系か。ステルスロックでダメージを受ける。いいね。

 

 

「気勢を殺いでいくんだい!ひやみず!」

 

「スレッドトラップ!」

 

 

 水を飛ばしてきたがスレッドトラップで防ぐ。あぶねえ。どんな技か分からないが受けたら駄目な気がする。

 

 

「みずのはどう!」

 

「ぶん回せ!いとをはく!」

 

 

 みずのはどうを繰り出してきたウミトリオに対し、腕から伸ばした糸を振り回して相殺するダーマ。しかしいつの間にかウミトリオがいない。地面に潜ったのか?

 

 

「ずつきだい!」

 

 

 ダーマの背後から飛び出し、三連続で頭突きを繰り出してくるウミトリオ。物理で来るのを待っていた!

 

 

「なんと!?」

 

 

 ウミトリオの頭突きの一発と、ダーマの一撃がクロスカウンター。どちらも共に殴り飛ばされ戦闘不能となる。三連続で来たから返しきれなかったか。

 

 

「潮は引いて満ちるもの!こっから怒涛の追い込み漁よ!どちらも共に一匹、でもオイラの最後の一匹は一味(ひとあじ)二味(ふたあじ)も違うんだい!」

 

「そうか、奇遇だな?俺のケプリべも最後の切札があるんだよ」

 

 

 俺はケプリべを、ハイダイはケケンカニを繰り出す。いやみずタイプじゃなくてこおり・かくとうタイプ……テラスタルしてくるのか、慣れないなこれ。

 

 

「そろそろぶっこみ大変身!水も滴るいいポケモン!テラスタルだい!ケケンカニ!」

 

 

 そう言ってケケンカニをテラスタルするハイダイ。噴水みたいな青い結晶、みずタイプだ。対して俺はテラスタルできない、このままいくぞ!

 

 

「サイケこうせん!」

 

「男ハイダイの技さばき!流されんようしがみつけよ!クラブハンマーだい!」

 

 

 ピンク色の光線を水を纏った拳で受け止めながら突撃してくるケケンカニ。ダメージは入っているが物ともしない。まずい、ケプリべの防御は堅いが確かケケンカニの攻撃力は高い上にテラスタイプの技だ。耐えきれない…!?

 

 

「さいきのいのりだ!」

 

 

 咄嗟に指示。ケプリべが光り輝き、その光が俺のボールに伝達。そのままケプリべはクラブハンマーの直撃を受けて戦闘不能となってしまう。よくやった。いい初陣だったぞ。

 

 

「これでオイラの……ん?」

 

 

 勝利したと油断しているハイダイだが、審判から勝利宣誓が聞こえないことに眉をひそめる。そんなハイダイの隙を突き、俺はジャックの入ったボールを投げつけた。

 

 

「ジャック!くさわけ!」

 

「なっ!?」

 

 

 直撃を受け、吹っ飛ばされて戦闘不能となるケケンカニ。倒したはずのジャックが復活したことに困惑するハイダイ。

 

 

「げんきのかけらとかを使ったわけじゃないぞ。さいきのいのり。手持ちの一匹を蘇生する技だ…!」

 

「ウオッウオーッ!?これはしてやられたんだい!」

 

 

 笑うハイダイ。お気に召したらしい。よかった。ケプリべが進化と同時に覚えたこの技、役にやってよかったよ。

 

 

「朝の市場の様なさわやかな敗北だった!油断したオイラの完敗だい!ミガルーサのみをけずるも利用されてもう腹いっぱいだい!ガッハッハ!お前さんはいいトレーナーだい!お手上げ水揚げ!大量だい大量だい!ジムバッジを受け取ってくれ!」

 

「あんたも強かったよ、負けるかと思った」

 

 

 こうして俺はカラフジムを突破したのだった。




じこあんじのシーンをやりたいがためにミガルーサに原作でハイダイが使わない技を追加しました。周りの水場を使うのはだいぶ理にかなってるかなと思います。


・ケプリべ(ベラカス)♂
とくせい:シンクロ
わざ:むしのていこう
   サイケこうせん
   じこあんじ
   さいきのいのり
もちもの:なし
テラスタルタイプ:エスパー
備考:れいせいな性格。イタズラが好き。シガロコの時ラウラに追いかけられた上にボールを叩きつけられた末なんか進化してた。ネーミングはスカラベの象徴とされる神と語り部から。


次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSイダイナキバⅠ

どうも、放仮ごです。クリスマスイブだというのに風邪を引いて午前中寝込んでた馬鹿、はい僕です。あられで濡れた体をそのままにするのはよくないね、うん。

今回はイダイナキバ戦。楽しんでいただけると幸いです。


 ハイダイに勝利し、観客の中にいたアイアールに合流しようとすると、その前に1人の男が歩いてきた。後ろ髪を結んだ金色のワンレングスヘアが特徴的な緑色のスーツと赤いネクタイを着ている男性だ。オレンジ色の目にはハイライトがなく、強者の風格を感じる。

 

 

「あなたが噂のラウラくん…ですかね?」

 

「ああ、そうだけど…あんたは?」

 

 

 一応礼儀なのでヘルメットを外して面と向かうと、男性は感心したように頷いてコホンと咳払いした。

 

 

「ネモくんやアイアールくん、ムツキくんから期待のトレーナーがいると聞いていますとも。急に話しかけて驚かせてしまいましたね、申し訳ない。小生はハッサク。ポケモンリーグ四天王が一人。アカデミーでは美術を担当しています」

 

「ああ、美術……」

 

「あまり興味なさそうですね。仕方ない事です。将来に必要かと言われれば決してそうではないのですから」

 

 

 うんうんと腕を組んで頷くハッサクと名乗った男に苦笑いを浮かべるしかない。四天王ってことはムツキと同等の強さか…エキスパートタイプ次第ではきつそうだな。

 

 

「あなたはアイアールくんと同じく最年少チャンピオンのネモくんと同じ可能性が秘めているやもしれぬ……チャンピオンランクを目指すならいずれ小生とも戦うこととなりましょう。期待しておりますよ。小生が受け持つ美術の授業も、お試し感覚でぜひ受講してくれますようですよ。では」

 

 

 そう言い残してハッサク先生は去って行った。…一瞬感じたドラゴンの様な威圧感、ドラゴン使いか?ひこう使いに続いてドラゴン使いか。いいね、やりがいがある。すると遠巻きに様子を見ていたアイアールがやってきた。頭に知らないポケモンが乗っている。

 

 

「ラウラ、ハッサク先生となに話してたの…ってどうしたの?」

 

「なにがだ?」

 

「だって、笑ってる」

 

「そりゃそうだろ。なにせ世界はこんなにも広い。俺と蟲たちはまだまだちっぽけだ。挑み甲斐が合って楽しいだろ?」

 

「そうかな?そうかも」

 

「ところでその頭に乗ってるのは?」

 

「ヒラヒナの「ヒナ」だよ。ロースト砂漠で仲間にしたんだ」

 

 

 そう言って頭の上から両手に抱えられたヒナとやらが可愛く唸る。うちのジャックには及ばんが中々可愛いな。話しながらポケモンセンターで手持ちを回復させる。

 

 

「エスパータイプだけどひこうテラスタルなんだ。ラウラの蟲ポケモンにも負けないよ。エスパータイプといえばラウラの新入りもそうだっけ?」

 

「ああ。ベラカスのケプリべだ。ひこうになれるのかそりゃあいいな。負ける気はしないぞ。……名前、つけたのか?」

 

「うん。ラウラみたいに付けてみた!」

 

 

 そう言って砂漠を背景に繰り出されたアイアールの相棒たちは逞しくなっていた。

 

 

「アチゲータの「シング」、ドオーの「ドーちゃん」、ウミトリオの「リプル」、ジオヅムの「ツムヅム」、そしてヒラヒナの「ヒナ」!これが今の私の手持ちだよ!」

 

「みんな進化したのか」

 

「うん、ちょっとシロデスナに負けそうになって……ロースト砂漠で鍛えたんだ」

 

「シロデスナ?なにがあったんだ?」

 

「それがコライドンが奪われそうになったってぐらいしか……負けられない理由ができたんだ」

 

「…俺も負けてられないな」

 

 

 まだレクスとレインが進化してないからな。そろそろだとは思うんだが。打たれ弱いからとあまり前線に出さないのが駄目か?過保護すぎるかなあ。

 

 

「次の目的地は土震のヌシのつもりだがいいか?」

 

「うん、砂漠で見かけた奴だよね多分」

 

「ああ、俺も見たが…一目でわかった、あれは別格だ」

 

「でも私達なら……」

 

「ああ、負ける気はしないな」

 

 

 アイアールと頷き合い、エクスレッグヘルメットを被ってアイアールの出したコライドンに跨り出発する。目的は土震のヌシだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コライドンでロースト砂漠を駆け抜けていると、見えてきた。砂嵐の中でも分かるドンファンにもよく似たあの巨体が。

 

 

「見つけた!土震のヌシ!」

 

「まずは動きを止める!レイン!バブルこうせん!」

 

「ヒナ!サイケこうせん!」

 

 

 それぞれ肩に出したポケモンから遠距離攻撃を繰り出して土震のヌシの行く先を遮る。こちらを見据えた土震のヌシは(わずら)わしそうに体を揺らすとじだんだを繰り出してきて、俺達は砂漠に投げ出され、コライドンはボールに引っ込んでしまう。同時に、アイアールのスマホロトムが鳴り響いた。

 

 

《ロトロトロトロト……「ハロー、アイアール、ラウラ。こちらオーリム。まさかとは思ったがイダイナキバと接触したのか。イダイナキバは本来、パルデアの大穴のポケモン。くれぐれも注意して対処してくれ」ガチャッ》

 

「それだけかよオーリム博士!?」

 

「来るよラウラ!お願い、ツムヅム!しおづけ!」

 

「受け止めろダーマ!スレッドトラップ!」

 

 

 鼻を振り上げ、かわらわりを仕掛けてくる土震のヌシ……イダイナキバ。レインを戻して繰り出したダーマが腕の間に張り巡らせた糸の盾で受け止め、糸を引っ掻けて素早さを下げる。さらにアイアールのツムヅムによる岩塩の振りかけが炸裂、しおづけ状態になってスリップダメージを受けるイダイナキバ。よし、ピーニャ風に言うとさわりはOKだ!

 

 

「ドン!フアアアンド!!」

 

「うそっ…!?」

 

「そんなのありか!?」

 

 

 するとイダイナキバはその場で足を細かく動かして、こうそくスピン。糸としおづけを振り払ってしまう。防御技もあるってか。そのまま鼻をスイングしてくるイダイナキバ。恐らくはたきおとす、か。

 

 

「ダーマ、カウンター!」

 

「ツムヅム、目に向けてうちおとす!」

 

 

 鼻のスイングを受け止め、カウンターの一撃を叩き込むダーマと、目に向けて岩を飛ばすツムヅム。アイアールの奴相変わらず容赦がない。だがしかし続けざまにじだんだを繰り出してダーマとツムヅムを戦闘不能にしてしまうイダイナキバ。火力が違いすぎる…!

 

 

「翻弄しろ、レクス!こうそくいどう!」

 

「負けるな、リプル!レクスの作った隙を突いてトリプルダイブ!」

 

 

 ならばと俺はレクスを繰り出し、高速で動いてイダイナキバを翻弄。その隙を突いて足元から飛び出してきた三つの影…ウミトリオことリプルが水を纏った三連撃を叩き込む。今の手ごたえ、効果は抜群…ほのおかいわかじめん辺りか?

 

 

「たたみかけて!リプル!」

 

「確かめるか…レクス!にどげり!」

 

 

 いわタイプなら効果は抜群のはずだ。そう思い指示をするがイダイナキバはリプルを踏み潰してじだんだした上でレクスの二撃をあっさりと受け止め、レクスの小柄な体を鼻で叩き飛ばしてしまう。

 

 

「レクス!?」

 

 

 吹き飛ばされたレクスは岩にぶつかり、粉々に砕き散らして砂ほこりに隠れてしまう。くそっ、ボールに…そんな俺の隙を突いて突撃してくるイダイナキバ。不味い、と思ったその時には鼻の一撃を受けていた。

 

 

「があ!?」

 

「ラウラー!?」

 

 

 サッカーボールの様に吹き飛び砂漠をバウンドする俺の体。不味い、意識が……。そんな俺を誰かが受け止めてくれた。太陽の逆光で何も見えない。だれ、が……ぐう。




明らかにルートを間違えているんだが初見で分かる筈もないのだ(ハイダイの後にイダイナキバに無謀にも挑んで惨敗した馬鹿)。

シロデスナ戦の後に自分の戦力を見直して強化したアイアール。決意表明も兼ねてニックネームもつけました。

・シング/アチゲータ(歌うことが好きだから)
・ドーちゃん/ドオー(ハイダイ戦で進化。そのまんま頭文字から)
・リプル/ウミトリオ(修行で進化。トリプルから)
・ツムヅム/ジオヅム(修行で進化。積む積む)
・ヒナ/ヒラヒナ(新入り。ロースト砂漠でゲット。ひこうテラスタル)
・コライドン(さすがに預かっている(?)ためニックネームなし。拗ねた)

相変わらずダイレクトアタックを受けてるラウラ。ダーマとレクスと言う初期メンもやられて絶体絶命なところを助けてくれたのは…?

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSイダイナキバⅡ

どうも、放仮ごです。クリスマスのごちそう食べてたら投稿遅くなりました。

今回はイダイナキバとの決着。ラウラを助けたのは…?楽しんでいただけると幸いです。


 イダイナキバに吹き飛ばされた俺は、誰かに受け止められたが意識が朦朧としている上に、太陽が逆光になっていてよく見えない。すなあらしまで吹いてきて、朧気な視界じゃ本当に見えない。くそっ、エクスレッグヘルメットを被ってるせいでもあるか?というかヘルメット被ってたのになんて衝撃だあのヌシ野郎。

 

 

「!」

 

 

 すると俺を抱えていた誰かが俺をそっと下ろし、イダイナキバに向けて突撃する。黒いシルエットだけ見えたそいつは、異様に長い脚で蹴り付け、一度離れてイダイナキバのこうそくスピンを避けるとその巨大な鼻を蹴り上げて怯ませる。凄い力だ。何者……いや待て、あの特徴的な脚の形状は…!

 

 

「レクス、なのか…?」

 

 

 そう尋ねるとその影は跳躍して近くの岩に飛び乗り、その姿を露わにした。一言でいうなら刺々しい黒き蟲人。オレンジ色に輝く複眼、人によく似たスタイルだが畳まれて背負っている様に見える後ろ足の異形感が凄くいい。俺の被っているエクスレッグヘルメットのモチーフとなったエクスレッグ、マメバッタ…レクスの進化系がそこにいた。

 

 

「さっき吹き飛ばされた時に進化したのか……立派になったな」

 

 

 スマホロトムを取り出し図鑑を見る。とびつくを忘れて新しい技を覚えていた。あのヒット&アウェイの動きはこれか。

 

 

「レクス、とびかかる!」

 

 

 後ろ足を変形させ、長い脚の姿に変形したレクスがとびかかって前足でイダイナキバの側面に飛びつく。暴れるイダイナキバに組み付き、ロデオの様に乗りこなすレクス。いいぞ、その調子だ!

 

 

「レクス、そのままにどげりだ!」

 

 

 組みついたまま、変形した脚で連続で蹴りつけてバランスを崩す。イダイナキバの巨体が転倒してようとしていた。

 

 

「隙あり!ヒナ!サイケこうせん!」

 

 

 その隙を突いてアイアールがヒナから放ったピンク色の光線を直撃させ、完全に転倒するイダイナキバから離れて俺の前でファイティングポーズをとるレクス。すると倒れたままこうそくスピン。独楽のように回転して俺達を砂煙で吹き飛ばしながらイダイナキバは立ち上がり、のしのしとどこかに歩いて行く。

 

 

「追うぞ!」

 

「待ってその前に回復!ラウラも治療!」

 

「お、おう」

 

 

 追いかけようとするとアイアールが引きとめてきてきずぐすりを振りかけてきた。心配かけて悪かったって。全身擦り傷だらけだから染みる…。

 

 

「オトシドリの時も思ったけどよく骨折しないね?」

 

「意識は飛びかけたけどな」

 

 

 治療を受けながら手持ちを回復する。アイアールの自分の手持ちを回復し終え、コライドンでイダイナキバの足跡を追っていく。

 

 

「ラウラ、あれ!」

 

「オトシドリの時と同じならパワーアップするってのか?ただでさえ強いってのに!」

 

 

 向かった先の岩壁を破壊し、輝く植物をもしゃもしゃと食べるイダイナキバの巨体が凄まじい衝撃波と共に赤いオーラに包まれる。やられた…!

 

 

「ドン!フアアアンド!!」

 

 

 地面に足を叩き付け、じだんだ。コライドンが引っ込み、俺とアイアールはシングとレクスを繰り出す。やっぱり正念場は相棒だよなあ!

 

 

「ちょっと待ったあ!」

 

 

 するとそこにペパーが走ってやってきた。遅いぞ。

 

 

「アイアール!ラウラ!ヌシ見つけたみたいだけどボロボロちゃんだな!?しかしこいつ、本当にポケモンなのか!?」

 

「パルデアの大穴に生息するポケモン、イダイナキバっていうらしいぞ、お前の母ちゃんによればな」

 

「大穴の……へっ、そいつはきばっていかないとなあ!踏ん張りどころだぜ!」

 

「うん、行くよラウラ!ペパー!」

 

「レクスが進化したんだ、負ける気がしねえ!」

 

 

 ペパーが繰り出したのは見たことのないポケモン。なんだそいつ、こわっ!?

 

 

「このへんで捕まえたスコヴィラン!ピリッとホットに活躍してくれよ!はっぱカッター!」

 

 

 はっぱカッターを放つスコヴィランと呼ばれたポケモン。しかしイダイナキバはこうそくスピンで跳ねのけてしまうのでその回転し終えた隙を突いてレクスを向かわせる。

 

 

「レクス、とびかかる!」

 

「シング、足場を奪って!やきつくす!」

 

 

 跳躍し、まるでとびげりでもするかの如く急降下してとびかかり脳天に強烈な一撃を叩き込むレクス。さらに下からはシングが炎を放って足場を焼いて怯ませる。いいぞ、これでじだんだはできなくなった。すると鼻を天高く振り上げてレクス目掛けて叩きつけてくるイダイナキバ。咄嗟にボールを取り出す。

 

 

「はたきおとすか!?ダーマ、レクスを回収しろ!いとをはいてスレッドトラップ!」

 

 

 ダーマを繰り出し、伸ばした糸をレクスに引っ付けて引っ張り、ギリギリ当たるところで回収。そのまま戻ってきたレクスをスレッドトラップで受け止め、グググッと引き絞る。

 

 

「スコヴィラン、かえんほうしゃ!」

 

「シングも!かえんほうしゃ!」

 

 

 アイアールとペパーのポケモンが火炎を噴きつけてイダイナキバを焼いて怯ませていく。こうそくスピンで火炎を振り払うが、その技は隙がデカいぞ!

 

 

「いけっ、レクス!にどげり!」

 

 

 スレッドトラップと己の後ろ脚のバネで引き絞っていたレクスが跳躍。凄まじい勢いで飛び出して、くるりと空中で回転。飛び蹴りの体勢となり向かっていく。

 

 

「ドン!フアアアンド!!」

 

 

 イダイナキバも鼻を振り上げ、かわらわりで対抗。レクスの脚の一撃とイダイナキバの鼻が激突し、衝撃波が砂を吹き飛ばしていく。だがそれはただの蹴りじゃないぞ!

 

 

「決めろ!レクス!」

 

 

 鍔迫り合あったまま、下に潜り込んだレクスの振り上げた脚の二撃目が顎に炸裂。イダイナキバは白目をむいてその巨体が打ち上げられ、引っくり返る。イダイナキバはそのままじたばたするも、諦めて大人しくなるのだった。

 

 

「か、勝った……」

 

「やった!三人がかりで何とかなった!」

 

「ふう、二体目からいきなり強敵ちゃんだったぜ……」

 

 

 俺達三人は自然に拳をぶつけ合い、ポケモンたちが勝鬨をあげる。それにしても、疲れた……。疲れが取れる秘伝スパイスだといいな。




というわけでついにレクスがエクスレッグに進化。イダイナキバ相手に圧倒すると言う大戦果を遂げました。かかとおとしを進化時に覚えさせるかどうかで結構悩んだ。

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VSウルガモスⅠ

どうも、放仮ごです。ぬしポケモンって倒された後どんな状態なんじゃろねと。

今回はイダイナキバ戦その後。楽しんでいただけると幸いです。


「アイツが食ってた秘伝スパイスがこの中にもある筈だ。復活しないうちにちゃっちゃか調査しようぜ!」

 

「そうだね。また砂嵐が吹き荒んで来たし」

 

「まあ当分動けないだろうがな」

 

 

 動かれても困るが。考えうる限りの最大戦力だった。ペパーの連れてきたスコヴィランも結構な練度(レベル)だったし。練度(レベル)だけなら俺達のポケモンより強いんじゃないんか?そんなことを考えながら、砂嵐から逃れる様に洞窟に入ると、淡い輝きで洞窟が照らされていた。ヘルメットを外して見渡すと、それはあった。

 

 

「前回と同じなら……やっぱりちゃんかーっ!」

 

「なんか、色が違う?」

 

「味が違うんだろ。前回のは苦いのだったか」

 

 

 言いながら、黄色く輝く植物を採取するペパーを眺める。

 

 

「本当にあったぜ!うおーっ!やったぜ!ありがとよアイアール!ラウラ!」

 

「間違いなく秘伝スパイスだね、光ってるし!」

 

「…テラスタル思い出すのは気のせいか?」

 

 

 光ってる植物とかよく考えたらやばいだろ。にがスパイスの時は緑だったからそんなこと思いもしなかったが。

 

 

「気のせいだって!えーと?なになに?本によると……これは「すぱスパイス」!滋養強壮!栄養がいっぱい詰まってる!疲れた心と体によ~く効いて、みるみるうちに回復するんだと!」

 

「それでイダイナキバも復活したんだ……」

 

「ありがたいな。今一番欲しかった効果だ」

 

 

 なにせ疲れた。治療したとはいえ全身ズタボロだ。イダイナキバ相手にするのはもう勘弁だ。

 

 

「コイツも料理して食べさせれりゃあ…!よーし、二人とも!飯だ飯!さっそく準備するぞ!」

 

 

 そう言ってペパーの作ったサンドウィッチと俺リクエストのカレーを美味しく…酸っぱさをアクセントにしていい感じに仕上げてくれた……いただいた。手作りだと言うヌシバッジももらいつつ、コライドンやウカ、それに手持ち達みんなも出して食べていると、食い意地の張ったコライドンが自分の分以外に机に置かれていたサンドウィッチを食べようとするとペパーが珍しく怒鳴って止める。

 

 

「さわるな!それはお前のじゃない!」

 

「うっ、びっくりした」

 

「ごめんねコライドンが…」

 

「あ……すまん、大声出して。そんなつもりはなかったんだ……二人にはちゃんと話しておくべきかもな。……出てこい」

 

 

 そう言って大事そうに取り出したモンスターボールから繰り出されたのはおやぶんポケモン、マフィティフ。だが様子がおかしい。目も見えてなさそうだしうんともすんとも言わずに蹲ってる。弱っている…?

 

 

「その子は…?」

 

「こいつはマフィティフ。俺の相棒さ。さ、元気になるサンドウィッチだぞ。ほら、ゆっくり食べろよ」

 

 

 腰を下ろし、小さくちぎったサンドウィッチをペパーが差し出すと、ゆっくりと食べて行くマフィティフ。

 

 

「少しずつでいい。ゆっくり、ゆっくりだ噛むんだぞ。無理に食べなくていいぞ」

 

「…そのマフィティフがお前が秘伝スパイスを求める理由か?」

 

「ああ。こいつ、しばらく前にちょっと大怪我しちまってさ……それ以来ずっと具合悪くて…ポケモンセンターで診てもらったら普通の怪我じゃ病気じゃないんだと。治療法を本やネットで調べてあらかた試してきた。どれもあんまり効果なかったがな…」

 

「そんな……」

 

「だから秘伝スパイスか。合点が行った。」

 

「俺にとって大事なのはコイツ、マフィティフだけなんだ。今はお前たちも大事な友達だけど、一番は変わらない。…俺にとって一番大事な家族だ。どんなことしても絶対治してやるんだ。母ちゃんの研究室で見つけたこの本は嘘みたいなことばっか書いているオカルト本で眉唾物だったけど…信じてよかった!」

 

 

 そう言ってスカーレットブックを差し出してくるペパー。バラバラ捲っていると、秘伝スパイスのページがあって、エリアゼロにて見つけた秘伝スパイスをパルデア各地で育てようとしたところ周囲のポケモンに食べられて強大に成長したものをヌシポケモンだと言うことが書いてあった。…あのムクホークもそうだったのかもな。

 

 

「この本によれば秘伝スパイスを五つ全部食うとどんな病気も怪我も治るらしい」

 

「…それは、記憶喪失も治るのか?」

 

「え?いやそれはわからないけど……可能性はあるな!実際に前のにがスパイス食べたら冷えきったマフィティフの手足がちょっと温かくなったからな!」

 

「…俺がお前に協力する理由が一つ、いや二つ増えたよ」

 

 

 蟲ポケモンではないがマフィティフを放っておくことなんてできない。それにどんな病気も怪我も治る……脳の病気とも言える記憶喪失を治すことができるかもしれない。

 

 

「ラウラの記憶喪失も治せるかもしれないなら、頑張らないとね!」

 

「ラウラお前、記憶喪失だったのか…」

 

「そういやペパーには言ってなかったな」

 

 

 そんなことを話していると、マフィティフが食べ終わったらしく三人揃って振り向く。そこには、ゆっくりとだが立ち上がろうとしてまた蹲るマフィティフがいた。だがハイライトを失った目に光が宿ってこちらをじっと見つめている。

 

 

「おっ、食べ終わったか……ってえ!?」

 

「これって……少し治った?」

 

「お前、これって……目が見えてんのか!?やった!やったぁ!」

 

「凄いな秘伝スパイス」

 

 

 手放しで喜ぶペパー。そのまま男泣きし始めた。

 

 

「ずっとさ、ずっと……目も開けなくって!俺、すげえ心配で……!お前たちのおかげだ!よかった、本当によかった……!へへっ、目がつぶらすぎて開いているのかわかんねー!」

 

「ほんとだ、かわいいね」

 

「そうだろそうだろ!あくタイプとは思えないぐらいかわいいんだぜ!元気になればもっと、もっとな!絶対に昔みたいに元気な姿にしてやるんだ。そーゆーわけだからさ、スパイス探しは残り三つだ!ラウラの為にも、一緒に頑張ろうな!」

 

「ああ、頑張るよ」

 

「うん、任せて!」

 

 

 ペパーの言葉にアイアールと共に頷く。さて、残りも一気に食って先に進むか!

 

 

 

 

 

 

 

 

 後片付けするペパーを残して洞窟の外に出ると、オトシドリの時と同じくいつの間にか夜になっていた。まだイダイナキバは倒れたまんまだな。どうしたもんか。すると鳴り響く電話。アイアールのスマホロトムだ。

 

 

《ロトロトロトロト……「ハロー、アイアール。ラウラ。こちらオーリム」》

 

「ようオーリム博士。よくもさっきは最低限の情報だけ与えて切りやがったな」

 

「や、やめようよラウラ…」

 

 

 通話を繋げたオーリム博士に怒りのままに喧嘩腰に話しかけるとアイアールが止めてきた。いや文句の一つぐらい言いたいんだが。タイプなりを教えてくれてもよかっただろ。

 

 

《「それについては悪かったと思ってる。それはそうと、新たなスパイスを得たようだね。コライドンがまた一つ本来の力を取り戻したようだ。今回は「かっくう」の様だね。空中で翼を開いて滑空が可能になったようだ。引き続きコライドンをよろしく頼んだよ」》

 

「逃げたな」

 

「逃げたね」

 

 

 言うだけ言って通話を切ったオーリム博士に俺とアイアールのツッコミが虚しく夜の砂漠に響く。冷えてきたし近くのマリナードタウンにでも泊まるか。すると洞窟からペパーが出てきた。

 

 

「アイアール!ラウラ!お疲れちゃんだぜ!しっかしこいつ、ヌシっていうかマジでなんだったんだ?どっかで見たことある気はするけど……」

 

「多分スカーレットブックじゃないか?ポケモンって言うより怪獣だったな」

 

「ポケウッドの映画に出てくるあれ?確かにそんな感じだったね」

 

 

 横たわるイダイナキバを見てそう言うペパーに頷く俺達。そんな中、イダイナキバ目掛けてダークボールが投げられ吸い込まれて行ってしまった。

 

 

「うおっ!?いきなりなんだ!?」

 

「イダイナキバが誰かに捕獲された…!?」

 

「……お前、誰だ?」

 

 

 驚く二人と違って俺は見た。闇夜に紛れる、全身黒いボディスーツとヘルメットに身を包んだその人物を。光り輝くヘルメットの青いFの文様を。繰り出してきたのは、ウルガモス。その姿に一瞬見惚れてしまう。しかしその隙は致命的で。

 

 

「アイアール、ラウラ。目標発見。追加ミッションを開始する。ウルガモス、ほのおのまい」

 

「あちっ、燃える!?」

 

「え、誰!?」

 

 

 合成音声らしき声の指示と共に、三人纏めて周囲を炎に巻かれて逃げられなくなってしまった。一難去ってまた一難か、記憶を失う前の俺なんかやらかしてないかこれ。




秘伝スパイスを集めたら記憶喪失が治るかもしれないと希望を抱くラウラ達。そんななかボディスーツのウルガモス使い、参戦。ヘルメットの輝きが青かったり地味に元から変わってます。その目的は…?

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSウルガモスⅡ

どうも、放仮ごです。前回でほぼ答えまで行ったので、タグに「ポケモンXY」を追加。答え合わせといきたいと思います。

今回はVSボディスーツの襲撃者。楽しんでいただけると幸いです。


 カロス地方、ミアレシティにて。ハンサムハウス二代目所長である少女、マチエールは今日も今日とてイクスパンションスーツに身を包んでエスプリとしてミアレシティにはびこる悪党を懲らしめていた。

 

 

「うん?電話だ…誰だろ」

 

 

 イクスパンションスーツの作成者である改心した元フレア団の科学者、クセロシキに改良してもらい電話にも繋げられるようになったヘルメットを操作して電話に出ると、件のクセロシキだった。自首して逮捕された後は司法取引して国際警察の科学者になっているはずの人物からの連絡に喜びながらも首を傾げるマチエール。

 

 

《「マチエール、大変なんだゾ!」》

 

「今はエスプリだよ。どうしたの?」

 

《「無事で何よりだゾ……奴は現物を狙わなかったのかゾ?……いや、リモートコントロール機能を破棄したそのスーツに興味はないのか…?いやしかし……」》

 

「おーい、クセロシキさーん?」

 

 

 自分の考えに没頭し始めたクセロシキに苦笑いしながら呼びかける。

 

 

《「はっ、そうだゾ!今、フラダリラボに来て未回収だったデータを国際警察に移そうとしていたんだが、破棄されずにフラダリラボに残されていたイクスパンションスーツのデータが何者かにコピーされた上で改竄された形跡があったんだゾ!それで現物を持っているマチエールも狙われてないのか心配になって……ということなんだゾ」》

 

「こっちは大丈夫だよ。破棄してなかったの、クセロシキさん?」

 

 

 イクスパンションスーツの危険性は身を持って知っているマチエールは少し非難する声色で問いかけると、電話の向こうのクセロシキはシュンとする。

 

 

《「面目ないんだゾ……」》

 

「私も警戒するけど……心当たりはないの?」

 

《「ボス…フラダリの右腕だったあの女が持ち去った可能性もあるが、表の顔として活動していてそんな暇は無さそうだからその可能性はなさそうだゾ。ありえるとしたら……」》

 

「ありえるとしたら?」

 

《「ボスの左腕。影に潜んで諜報班として暗躍していた奴の可能性が高いんだゾ」》

 

 

 そんな会話があったその頃、パルデア地方ではそのイクスパンションスーツを纏った何者かがラウラと対峙していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウルガモスの放った炎の壁に囲まれる俺達と同じように炎の壁に囲まれてなお平然としている、漆黒のボディスーツとヘルメットに身を包んだ何者かがイダイナキバの納められたダークボールを拾い上げようとする。

 

 

「させるか!レクス!とびかかるだ!」

 

「スニーキング機能作動」

 

 

 するとボディスーツの人物の姿がぶれて、長くて紅い髪に綺麗な青みがかった灰色の瞳を持つ少々小柄な少女……俺と瓜二つの姿に変身。ぎょっとしたレクスは目と鼻の先で急制止してしまい、その隙を突いてイダイナキバのボールを回収した偽物の俺に腕を掴まれ、片腕だけで炎の壁に投げつけられてしまう。なんてパワーだ。

 

 

「戻れレクス!」

 

 

 咄嗟にレクスをボールに戻し、この炎の中で蟲ポケモンを使いたくないし俺の姿だと攻撃できないみたいなので、エクスレッグヘルメットを被り俺の姿をした偽物に突撃。頭突きを喰らわせるも腕を交差して受け止められる。

 

 

「ラウラが二人!?」

 

「よそ見するなアイアール!来るぞ!」

 

 

 見てみるとアイアールとペパーは繰り出したリプルとジオヅムが鱗粉を放って炎を自在に操るウルガモスに一蹴され、苦戦しているようだ。指示なしであれほどの力を……これもコイツの能力なのか!?

 

 

「お前、何者だ…!」

 

「…エスプリ」

 

「エスプリ…?」

 

 

 問いかけると意外と答えてくれた謎の人物…エスプリはいきなり返事されて困惑する俺の隙を突いて掴みかかり、無表情のまま俺の懐に手を伸ばしてきた。炎の壁で、後退できない。

 

 

「くそっ、放せ!?」

 

「チヲハウハネを渡せ」

 

 

 地を這う……サニアがそう呼んでいたウカのことか…?こいつの目的はウカか。

 

 

「渡してたまるか!」

 

 

 抵抗して暴れ、向う脛を蹴りつけるとさすがに効いたのか怯んでよろよろと後退するエスプリに、ヘルメットを外して両手で振りかざし、勢いよく殴りつける。

 

 

「ぐっ……ウルガモス!」

 

 

 両腕を交差して防御したエスプリだったが不利と見たのかウルガモスを呼び寄せ、何の指示もなく俺を翼で攻撃させてきた。咄嗟に前転して避けるが、何も言わずに指示できる何かがあるみたいだな。

 

 

「シング!りんしょう!」

 

「ホシガリス!たくわえて、はきだす!」

 

「ウルガモス。ねっぷう」

 

 

 アイアールとペパーが攻撃するが、ウルガモスが翼を羽ばたかしたことで発生した熱風で防がれてしまう。二人ともへばってきてる。炎の壁の熱で体力が失われているのだろう。シングとホシガリスもあっさり一蹴されてしまう。対してエスプリは俺の顔で涼しそうな無表情を貫いている。何時までも燃え続ける炎の壁、厄介だ。

 

 

「頼む、レイン!」

 

 

 アイアールのリプルも倒されてしまったので、最後の頼みの綱であるレインを繰り出す。レインは炎の壁を見て俺の肩の上で小さな前足で両目を覆ってしまう。可愛いなお前は!でも今はそれどころじゃないんだ!

 

 

「お前だけが頼りなんだ、頼む!」

 

 

 レインを抱え、ウルガモスの放つ炎上する鱗粉を避けながら必死に呼びかける。

 

 

「チヲハウハネ、渡せ」

 

「いい加減、俺の姿やめろお前!?」

 

 

 再び突進して来て襲ってくる俺の姿をしたエスプリにさらに怯えてしまうレイン。ああ怖いよな、俺も不気味過ぎて怖い。レインを抱えながらもう片方の拳で殴りかかるも、手の甲で払いのけられ腰のボールに手が伸ばされる。そんな時だった。泡の光線がエスプリに直撃して吹き飛ばしたのは。

 

 

「今のは…お前か、レイン!」

 

 

 視線を向けると、仲間に手を出されようとして怒ったのかツリ目のレインがいた。そのまま俺の頭の上に飛び乗り、バブルこうせんで周りの火を消火してくれた。

 

 

「ぜーっはーっ!?やっと息できた!ありがとうラウラ、レイン!」

 

「炎の壁がなくなればこっちのもんだぜ!」

 

 

 炎の壁が消えて目いっぱい呼吸するしながらツムヅムを繰り出すアイアールと、スコヴィランを繰り出すペパー。対してエスプリは、俺の姿にノイズを走らせて元のヘルメットとボディスーツの姿に戻っていた。

 

 

「スニーキング機能に不具合、電算リソースをボールジャック機能に回して強化。チヲハウハネとツバサノオウの回収ミッションを遂行する。爆ぜろ。ウルガモス、ほのおのまい」

 

 

 再び炎の壁を展開しようとしたのか炎上する鱗粉を飛ばしてくるウルガモス。強化と言ってるだけあってツムヅムとスコヴィランをあっさり吹き飛ばすぐらいにさっきより勢いが強い。だがエスプリの無機質な声からはどことなく焦りが見て取れた。

 

 

「レイン!テラスタルだ!バブルこうせん!」

 

 

 対して俺はテラスタルでレインをみずテラスタルにして対抗。噴水の様な結晶を頭部に身に着けたレインの威力の上がったバブルこうせんが鱗粉と激突、水蒸気爆発してなにも見えなくなる。うん、風が煙を噴き飛ばして…!?

 

 

「これは…エアカッター?」

 

「ラウラ!レインが!」

 

「進化したぞ!アメモースだ!」

 

 

 二人の声に見上げると、そこには俺の頭上で浮かぶアメモースに進化したレインがいた。テラスタイプはそのままみずタイプの様で、エアカッターで煙を噴き飛ばしつつ威力の上がったバブルこうせんをウルガモスに炸裂させる。

 

 

「ちょうのまい」

 

「させるな、ねばねばネット!」

 

 

 ちょうのまいでバブルこうせんを防ぎながら能力を上げようとしたので、ねばねばネットで妨害。身動きの取れなくなったウルガモスは鱗粉で糸を燃やして脱出しようと試みるが、遅い。

 

 

「バブルこうせんだ!」

 

 

 バブルこうせんが隙だらけのウルガモスに炸裂。防御もできずに直撃したウルガモスは倒れ、エスプリはボールに戻しながら後退する。

 

 

「逃がさないぞ!」

 

「イダイナキバを解放しなさい!」

 

「話も聞かせてもらうぞ!」

 

「作戦失敗。離脱する」

 

 

 するとエスプリは拳を地面に叩きつけて砂ほこりを起こして俺達の視界を塞ぎ、次の瞬間砂煙を飛び出して跳躍。断崖絶壁を乗り越えて上まで逃げしまった。

 

 

「くそっ、逃げられたか……」

 

「なんて身体能力…」

 

「反則ちゃんだぜ!」

 

 

 悔しがるアイアールとペパーを余所に、手持ちを確認する。レクス、ダーマ、レイン、ジャック、ケプリべ、そしてウカ。全員無事か、よかった。胸を撫で下ろす。…あのボールジャックとか言ってたやつ、文字通りなら恐らく……嫌な能力だ。もう二度と会わないといいが、そうは問屋がおろさなそうだな…。




というわけでエスプリでした。マチエールでもないし、クセロシキが一枚噛んでるわけでもなく、破棄しそこねたデータを利用した新しいエスプリとなります。その中身は…?明かされたフラダリの「左腕」もちろんオリジナル設定です。そして青装束の実態や如何に。

リアルファイト、エスプリVSラウラ。咄嗟にヘルメットを鈍器にしたり向う脛を蹴ったり結構乱暴なラウラでした。

レインも進化、アメモースに。後一匹いればラウラのチームは完成かな?

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSヌメラ

どうも、放仮ごです。ネモって純粋だけど数多の実況者に恐怖抱かれているのは少し笑う。

今回はチャンプルタウンへの道中。楽しんでいただけると幸いです。


「俺はここで自分を鍛えて行くぜ。お前ら気を付けろよ!」

 

「うん、またねペパー!」

 

 

 ペパーと別れ、ロースト砂漠をコライドンに乗って駆け抜ける俺とアイアール。西2番エリアに抜けて東へ向かう。目的地は次のジムがあるチャンプルタウンだ。

 

 

「そういえばなんだけど。あのエスプリとかいう襲撃者、もしかしたら……」

 

「もしかしたら?」

 

「シロデスナを使ってコライドンを奪おうとしてた女の人と言動が似てたなって」

 

 

 そう言ってアイアールが説明したのは、俺がアイアールと別れてスター団にカチコミしてる間の話。緑色の髪でゴーグルをつけた青装束の女性がシロデスナを用いてコライドンの入ったボールを強奪しようとしたらしい。確かにエスプリと似てるって言うか同じだな。

 

 

「…もしかしたら同じ陣営なのかもしれないな。それにしてもまた青か」

 

「また?」

 

「スター団にもいたんだよ、青いサングラスをつけた奴らが。ほら、オーリム博士が言ってただろ?」

 

 

――――《「ああそうだ、もうひとつ。青いサングラスの一団には気を付けたまえ。見つけても近づかないことだ。コライドンを失いたくなければな」》

 

 

「ああ、そういえば言ってたね」

 

 

 コライドンのハンドル(?)を握りながら感心したように頷くアイアール。お前忘れてたな?

 

 

「でも緑色の髪の女性はゴーグルだったし、エスプリはヘルメットだったよ?蒼くも無かったし」

 

「その女は青装束だったんだろ?エスプリのヘルメットは青く光ってた。無関係と断じることもできないさ」

 

「でもそうだとして……何が目的?コライドンとウカを狙ってたみたいだけど」

 

「……珍しいポケモンのハンターとか?」

 

「でもサングラスかあ、思い出すなあ」

 

 

 コライドンを走らせ西2番エリアを駆け抜けてパルデア十景のひとつ、列柱洞に入りながら懐かしそうにするアイアールに首を傾げる。なんか懐かしい要素あったか?

 

 

「私、カロス地方出身なんだけどね。カロスでサングラスと言えばフレア団なんだ」

 

「フレア団?」

 

「うん。おy………知り合いが入ってたんだけど、赤いサングラスが特徴の赤いスーツの集団なんだ」

 

「赤」

 

「うん、赤。青とは違うんだけどなんか思い出して……」

 

 

 フレア団。フレア団……聞いたことないな。記憶がないだけかもしれないけど聞き覚えがある感じがしない。だけど今、アイアールのやつ少し言いよどんだか?気になるが……聞かないでおこう。

 

 

「フレア団ね……それのパチモンかなにかかアイツら」

 

「パチモンにしては凄い科学力だけどね、空飛ぶブーツとかあのボディスーツとか。あのジャンプ力も多分そうだよね?」

 

「…だな。人間はあんなに……………いや待て」

 

 

 跳べる奴、俺知ってるわ。いやでもまさか……。

 

 

「誰か心当たりでも?」

 

「サニアって言うんだが……よく思い出してみれば体型も似てたな」

 

 

 そう言えばアイツもチヲハウハネに興味を示していた。まさかエスプリとサニアは同一人物か?いや考察の域を出ないが……

 

 

「とりあえずポケモンセンターについたらポケモンリーグに報告した方がよさそうだな」

 

「博士が連絡してないかな?何か知ってるっぽいけど」

 

「…いや、あの博士は多分何も言わないと思うぞ」

 

 

 俺達にしか連絡してない、それこそ息子であるペパーにも。そんな気がする。

 

 

「あ、見えてきたよ。チャンプルタウン!」

 

「結構でかいけどシティじゃないんだな」

 

 

 夜の暗闇に街の光が見えてきた。あれが目的地で間違いなさそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夜だってのに活気ある街だな」

 

「食事できる店が多いみたい?どうする?」

 

 

 コライドンをボールに戻して二人で歩く。子供だけでこんな時間に歩くのもどうかと思うが気にする人は少ないみたいだ。

 

 

「カレー屋はないのか!?」

 

「えーと……ガレット、コンポート、ラタトゥイユ、キッシュ、ポトフ……カロスの料理もあるなあ」

 

「パエジャ、トルティージャ、アル・アヒージョ、エスカリバダ、ピンチョス、アロス・コン・レチェ、セビーチェ、……何語?」

 

「麻婆豆腐に杏仁豆腐、青椒肉絲(チンジャオロース)、ノノクラゲとキュウリの酢の物、ラーメン……カレーは無さそうだね」

 

「ローリングドリーマー……寿司屋か。そんな気分じゃないんだよな…てか同じ名前の店何個あるんだよ」

 

「あ、串のトリコだって!このピンチョ・モルノってやつ食べよう!」

 

「それにするか……」

 

 

 路地裏で見つけた店で美味しく腹ごしらえをして、とりあえず宿を取って一晩明かすことにした。すぱスパイスを食べたから少しはましだったが今日は疲れた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

《ロトロトロトロト……》

 

 

 翌日。二人でジムに向かうと、アイアールの電話に着信。相手も確認せず電話に出るアイアール。聞こえてきたのはネモの声。

 

 

《「もしもしアイアール?それにラウラ!わたし、わたし!ジムまわってるー?今どこジム…?」》

 

「げ。ネモ」

 

《「げ。とはなんだ、げ。とはー!今どこにいるかなーって電話しただけなのに」》

 

「お前場所を知ったらすぐバトルに来るだろ…」

 

「チャンプルタウンだよ」

 

「お前話聞いてたか?」

 

 

 素直に答えるアイアールにツッコむ。電話の向こうでネモが不敵に笑うのを幻視した。

 

 

《「あ。意外と近め!ちょっと顔を見に行こうかな!バトルしよ!」》

 

「二言目にバトルしよはやめろとあれほど……」

 

 

 思わずメイドとして窘めていると通話を切りやがった。あんにゃろ。

 

 

「上等だ。進化して真の力を得た蟲ポケモンたちで叩きのめしてやる…!」

 

「ラウラも結構バトル好きだよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 数分後。一応ジムテストを始めずにロビーで待っていると、どこにいたのかすぐに駆けつけたネモ。なんか他の参加者がゲッとした顔でそそくさと隠れ始めたのは笑う。有名人なんだろうな、色んな意味で。

 

 

「あ、いたいた二人とも!ジムバッジは2つ目……4つ目?いや見たことないマークだな、2つだね!ラウラは5つ……やっぱり違うや、同じく2つ目!いい感じ!3つ目のジムはここを選んだんだね!かなりの強敵だよここのジムリーダーは!」

 

「ノーマルタイプと聞いて嫌な予感はしてるよ」

 

 

 なんだろうな、ノーマルタイプ使いにいい思い出が無い気がする。記憶ないけど。ころがる。なまけ。かたきうち。うっ、頭が…。

 

 

「二人なら大丈夫!とは思うけど、ジム前の練習として!私と1回勝負しよ!二人とも!」

 

「うん、私も強くなりたい。しよう!」

 

「望むところだ」

 

「わっ、嬉しい!珍しくラウラもやる気漲ってる!それじゃあ決まりね!まずはラウラから!さっそくバトルコートにいこう!」

 

 

 その後、アイアールはネモの手持ちは見ないで正々堂々戦いたいとのことで間食を食べに行って、俺とネモはバトルしていいと言われた街の外に面する街道にて向かい合う。

 

 

▽ライバルの ネモが 勝負を しかけてきた!

 

 

「いくよー!まずは新顔のご紹介!ヌメラ!」

 

「じゃあ俺もだ。行くぞバサギリ!」

 

 

 最初から本気だ。やってやる!




ラウラの考えは「連中はフレア団のパチモン」「エスプリの正体はサニア」とのことですがどこまで当たってる事やら。ちなみにアイアールがカロス出身は既に初登場の時に明かされている出自です。カロスと言えば前作のあの子ですが…?

※ポケモンセンターに着いたらリーグに連絡すると言ってましたが飯とかネモとかのせいですっかり忘れてる2人。

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VSニャローテ

どうも、放仮ごです。最近ヌシだったりエスプリだったりばかりだったからポケモンバトルしてるの新鮮。今年も残りわずかだけどマイペースにいきまっせ。

今回はラウラVSネモ。楽しんでいただけると幸いです。


「うわっ、見たことないポケモン!いいね!3VS3!道具はなし!でいい?」

 

「上等だ。行くぞジャック!」

 

 

 チャンプルタウンの街道で始まったポケモンバトル。ネモはヌメラ、俺はジャックことバサギリ。ヌメラは確か複合タイプではないがドラゴンタイプの打たれ強さと水タイプを思わせる技を多く使うのが特徴だったはずだ。

 

 

「実りある勝負にしようねラウラ!ここは違うけど、ジム戦は街のバトルコートの立地とか材質とかあらかじめ知っておくことが大切!戦況を左右するフィールドを自分のものにするんだ!ということで、あまごい!」

 

「ご教授痛み入る。ならまずは下準備だ!がんせきアックス!」

 

 

 ネモはあまごいを選択。雨を降らし、自分に有利なフィールドにしてくるがそれはこちらも同じ。ジャックが岩斧で攻撃すると同時にステルスロックをばら撒く。これでヌメラと後続のポケモンが動きにくくなったぞ。

 

 

「ステルスロックをばら撒きながら攻撃するなんていいポケモンだなあ!みずのはどう!」

 

「ステルスロックを利用して避けろ!」

 

 

 あまごいにより威力が増した水の塊が発射されるも、ステルスロックを盾に防ぐジャック。こう使うこともできる。水の塊を受けたステルスロックは砕け散ったがまだまだあるぞ。

 

 

「そのまま起点にしてしまえ!くさわけでスピードを上げろ!」

 

「残念!この子のとくせいはそうしょく!くさタイプの攻撃を受けて攻撃力を上げるよ!」

 

「なに!?」

 

 

 やられた。くさわけのダメージを無効化して攻撃力を上げられてしまった。だが確か特殊攻撃がメインだったはず、攻撃力を上げられても痛くもかゆくも……。

 

 

「せっかく上がった攻撃力を利用しちゃえ!じたばた!」

 

「……忘れてたよ、お前はバトルの天才だったな」

 

 

 その場でじたばたする衝撃波でステルスロックを全部破壊されてしまった。よくそんな発想できるな。

 

 

「りゅうのはどうで追い込んじゃえ!」

 

「ジャック、周りを走ってれんぞくぎり!」

 

 

 ろくに動かないヌメラの周りを走ることで翻弄し、りゅうのはどうを避けながら次々と斬撃を叩き込んでいくジャック。れんぞくぎりは使えば使うほど威力が上がって行く技だ。いくら耐久があろうと何時か倒せるダメージに変動する。がんばりやなむしタイプらしい技だ。

 

 

「近づきすぎたね!みずのはどう!」

 

「れんぞくぎり!」

 

 

 真ん前に来た瞬間放たれたみずのはどうと、岩斧が激突。突き破り、大ダメージを与えてヌメラを戦闘不能にする。よし!前は負けてばっかりだったが今は違うぞ!

 

 

「技のチョイスいいね!どんどん実って行く……いや、ラウラの場合戻ってる、のかな?」

 

「お褒めに預かり光栄だ。次、来いよ」

 

「勝ったつもりはまだ早い!この子で逆転させてもらうから!ニャローテ!」

 

 

 ニャローテ?聞き慣れない名前と共に繰り出されたのは、緑色の猫ポケモン。ニャオハと似ているが顔つきが凛々しくなり、なにより二本足で立っている。……もう立ちやがった!?

 

 

「ニャオハの進化系か?くさタイプで蟲ポケモン使いの俺に挑むのはなめすぎてないか?」

 

「そんなことないよ!この子は私の新しい相棒!強いんだから!」

 

「なら俺も進化した相棒を見せてやる。いけ、レクス!」

 

 

 ニャローテを相棒だというネモに合わせて、俺も旅の相棒であるレクス…エクスレッグを繰り出す。互いの進化した姿に思うところがあるのか威嚇し合う両者。勝負だ。

 

 

「レクス!真っ向勝負だ、とびかかる!」

 

「宙返りで避けて!惑わせ!マジカルリーフ!」

 

 

 レクスのとびかかるを宙返りで回避し、葉っぱをいくつか周囲にばら撒くニャローテ。油断を誘う気だな。

 

 

「気を付けろレクス、それは追尾するぞ!こうそくいどう!」

 

「アハハ!よく知ってるねラウラ!でもこの量はどう!ニャローテ!」

 

 

 ネモの呼びかけと共に、まるでトランプの様に葉っぱを取り出し大量にばら撒くニャローテ。凄まじい数が、こうそくいどうで回避するレクスに追従する。

 

 

「こうそくいどうしながら連続でにどげり!全部撃ち落とせ!」

 

 

 素早さを二段階上げつつ後ろ足を展開、にどげりを連発でマジカルリーフを撃墜していく。するとその隙を突いて積み技を行うネモ。

 

 

「つめとぎしながらでんこうせっか!」

 

「フェイントだ!」

 

 

 先行技は優先度がある。でんこうせっかは優先度+1。フェイントは優先度+2。こちらの方が速い。フェイントによる一撃が素早く目の前に移動してきたニャローテに炸裂、怯ませる。

 

 

「とびかかる!」

 

 

 そのまま展開した後ろ足で跳躍し、飛び蹴りを叩き込むレクス。ニャローテは直撃を受けて戦闘不能となった。楽しそうにニャローテを戻し、最後の一匹であろうボールを取り出し下手くそなフォームで投げつけるネモ。出てきたのはイワンコ。メイド時代に何度もやられた因縁の相手だ。にどげりがあるから変えなくていいな。

 

 

「ラウラもテタスタルオーブ持ってるから、今回はフェアにテラスタル!」」

 

「…すっかり忘れてた、テラスタルあったな」

 

 

 テラスタルオーブを取り出してイワンコをいわテラスタルにするネモを見てぽつりと呟き冷や汗を流す。なんか知らんけどテラスタルが無いバトルが当たり前な感じがして忘れてた。

 

 

「新しい技行って見よう!イワンコ、いわなだれ!」

 

「こうそくいどうで避けろ!」

 

 

 にどげりする暇もなく、いわなだれを使ってくるネモ。いわなだれ。高威力のいわタイプの技。最大の特徴は、ダブルバトルやトリプルバトルで二体以上を同時に狙うことができる広範囲の技ということだ。避けきれず、効果抜群な上にテラスタルで威力と範囲の上がったいわなだれに耐えることもできずに打ちのめされ戦闘不能になるレクス。なんて威力だ。

 

 

「よく頑張ったレクス。じゃあまた倒してやれ、ダーマ!」

 

「ワナイダー!タマンチュラが進化したんだね!うん、いいよすごくいい!」

 

 

 ダーマを繰り出すと興奮した声を出すネモ。怖いって。俺もテラスタルオーブを取り出し構える。

 

 

「テラスタル行くぞダーマ!」

 

 

 むしテラスタル。蟲の触角の様なリボンの様な結晶を頭に付けて結晶化したダーマが咆哮する。可愛いぞかっこいいぞ!

 

 

「テラスタルしようがタイプが変わらないなら関係ない!リベンジだイワンコ!いわなだれ!」

 

「スレッドトラップ!」

 

 

 放たれたいわなだれに対し、両手から糸を噴出し、範囲も上がった巨大な蜘蛛の巣を形成して受け止めるダーマ。利用させてもらうぞ!

 

 

「カウンターで跳ね返せ!」

 

「えっ、嘘!?」

 

 

 そのまま岩の溜まったスレッドトラップの裏面を殴りつけ、大量の岩をそのまま打ち返すダーマ。大量の岩に押し潰されたイワンコはなんとか下から這い出してくる。

 

 

「かげぶんしん!」

 

「もう遅い!決めろ!むしのていこう!」

 

 

 影分身で増えて避けようと試みるネモだが、攻撃を続けるべきだったな。そのまま威力の上がったむしのていこうで全てのイワンコを撃ち抜き戦闘不能。崩れ落ちたイワンコに、信じられないという表情を浮かべるネモ。いわテラスタルで勝てると思ったんだろうな。まあダーマが負けていても効果抜群を突けるくさわけを持つジャックが控えていたわけだが。ダーマでまた勝ててよかった。

 

 

「アハハ!どんどん実って行く!蟲ポケモンでいわテラスタルを倒すなんて、あの時の覚悟は伊達じゃないね!ラウラが記憶を取り戻した時が楽しみだよ!」

 

「その笑い方やめた方がいいぞ、怖い」

 

 

 俺が勝ったはずなのに相手が喜んでいるのは不思議な気分だな。あ、そういや忘れてた。

 

 

「あ、そうだ。ネモ、お前確かトップチャンピオンと面識があったな」

 

「オモダカさんのこと?」

 

「ああそうだ。頼む、ポケモンリーグに連絡してくれ。もしくは青装束、もしくはエスプリを名乗るボディスーツの不審者に俺とアイアールが襲われたってな」

 

「なにそれ強いの!?私も戦いたい!」

 

 

 知ってた。お前ならそう言うよな。

 

 

「いやお前なら大丈夫だろうが連絡はしてくれ」

 

「うん、アイアールと戦った後ならいいよ!」

 

「もうそれでいいよ……」

 

 

 とりあえずこれでよし。エスプリと青装束はこれで何とかなるだろう。青サングラスは……襲われてからだな、オーリム博士のウソの可能性もあるし。そんなことを考えながらアイアールとバトンタッチするのだった。




本当ならこのタイミングだとヌメラじゃなくてパモなんだけどそうしょくじたばた書きたかったので「育ててる一匹」として出すことに。

ニャローテいいよね。二周目だとメスのニャオハ引き当てたので愛用してます。

ネモを介してリーグに連絡。とりあえず、ということで。なおエスプリはネモに目を付けられた模様。会ってもないのに不運。

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VSハッサム

どうも、放仮ごです。年末で休みもらえたので早めに書けました。今回は新キャラ登場。オリキャラです。

チャンプルジムテスト、ラウラが出会ったのは…?楽しんでいただけると幸いです。


ネモとアイアールのバトルも無事に終わり、ジムに戻ってきた俺達。

 

 

「で。ジムテストを受けた訳だが、まさかチャレンジャー同士を争わせるとはなあ」

 

「ね。それぞれ別のヒントを与えられたわけだけど」

 

 

 手渡された封筒をひらひらさせるアイアール。その中には俺の封筒と同じ、ヒントの書かれたメモが入っているのだろう。

 

 

「まさか俺達が今やってるジムテストの最後、三人目と四人目だったとはな」

 

「定員四人ごとにジムテストが行われるなんて面白いね。それでさ、ラウラ」

 

「なんだ?」

 

「残り二人、チャンプルジムに挑戦するチャレンジャーがいるみたいだしさ、一人ずつ倒して頂上決戦して勝った方が相手の集めたヒントを得てジムリーダーに挑まない?」

 

「…同じこと考えてたよ」

 

 

 単純にアイアールを含めた三人を倒すよりそっちの方が効率がいい。問題は以前戦った時は負けてしまったことだが……。

 

 

「前回戦った時は負けたからな。今度は油断しないぞ」

 

「望むところだよ!じゃあまた!ヒントを手に入れたらさっきネモと戦った場所に集合ね!」

 

「おう。負けるなよ?」

 

 

 アイアールと別れ、早速もらったヒントを確かめに行く。アイス屋台の仲間外れ……アイス屋台なら昨日、串のトリコって屋台の傍にあった気がする。違うかな。結局違い、「あまいやつめたいや」って店で焼きおにぎりを見つけてこれだと確信する。後はヒントを持つ他のチャレンジャーを捜さないとだが……。

 

 

「…ねえ君、チャンプルジムへの挑戦者でしょ?」

 

「…そう言うお前もか?」

 

 

 振り返る。そこにはオレンジアカデミーの秋服を身に着けた、複眼の様に輝く黄緑色のサングラスで目元を隠した、暗い藍色の髪を蟲の触角の様な髪型にした人物がいた。年は同じぐらいか?

 

 

「失敬。ボクはオレア。セルクルジムで蟲ポケモンでジムバッジをすべて集めてトップチャンピオンを倒すことで最強を証明する、って宣言していたラウラ…だよね?」

 

「…そうだと言ったら?」

 

「ボクも蟲ポケモンを愛用してるんだ。あの宣言、感銘を受けたよ。でもそれを証明するのは君である必要はない、よね?カラフジムで苦戦している様じゃこの先、勝ち進むなんて無理だ。ボクが引き継ぐから安心して負けてくれ」

 

「蟲の好かない奴だなお前」

 

「失敬な。蟲には好かれてるさ」

 

 

 ネットボールを構えるオレアと名乗った生意気なトレーナーが構えるので、俺もモンスターボールを構えて指を二本立てる。

 

 

「2VS2のシングル、道具はなしだ。文句はないな?」

 

「それはいいけど…ネットボールで捕まえないなんて誇りはないのかい?」

 

「愛情があればどんなボールだろうと関係ない。ぶっちゃけ気にしてることだから言うな」

 

「失敬。だったら僕に勝てたら予備のネットボールをあげよう。蟲使いのよしみだ。…勝てたらの話だけどね?」

 

「いいね。ありがたくもらうとするか」

 

 

 睨み合う。蟲使いなら出す奴は決まってる。…唯一あいつが相手だったら最悪だがメタルコートを持たせて交換とか早々できないだろ。

 

 

▽むしつかいの オレアが 勝負を しかけてきた!

 

 

「行くぞジャック!」

 

「蟲は儚くともその身に着けるは刃金(はがね)の肉体!宿すは巧みなテクニシャン。いでよハッサム、いざここに!」

 

 

 俺がジャックを繰り出すと同時に、唐突な前口上と共に繰り出されるはその最悪の可能性として考えていたハッサム。むし・はがねタイプの、ジャック……バサギリと対になるであろうストライクの進化系だ。メタルコートを持たせて交換すると進化する、結構入手しにくいポケモンのはずなんだが…懐かしさを感じるのは何故だろう。

 

 

「バサギリ。知ってるよ、過去のシンオウ地方、ヒスイ地方にかつて存在したストライクの進化系。何故現代にいて、君が持ってるのかは知らないけど……ポケモンは進化し続ける生き物だ。太古の岩斧じゃ鋼の鋏に敵わない!」

 

「そいつはどうかな。こいつは強いぞ」

 

 

 俺がそう言うと岩斧を振り回して乱舞を行い、自慢げに踏ん反り返るジャック。どうだ、俺は凡俗なお前とは違う進化を果たしたぞ、と自慢でもしてるかのような気配を感じる。多分間違ってない。対してハッサムはどこ吹く風、目を瞑って自然体で構えている。それがジャックは気に入らないらしく不満げに岩斧を振っている。

 

 

「ジャック!」

 

「ハッサム」

 

「「つばめがえし!」」

 

 

 岩斧と鋼鋏が交差し、それぞれの頭部を捉える。ふらつく両者。しかしその目には好敵手を得た炎を煌々と滾らせていた。

 

 

「がんせきアックス!」

 

「バレットパンチ!」

 

 

 素早い動きで懐に潜り込み、テクニシャンにより高威力となった拳を腹部に受けながら岩斧を振り上げ、叩き込むジャック。元々素早さが高かったジャックは、いわタイプに進化することでいわタイプ特有の打たれ強さを得た。蟲の素早さと岩の強固さ、相反する二つを併せ持つ、それがバサギリだ。テクニシャンで威力が上がろうとも、効果抜群だろうが、ビクともしない。

 

 

「つるぎのまいで立て直せ!」

 

「くさわけで邪魔しろ!」

 

 

 一度後退し、つるぎのまいで火力を上げようとするハッサムに、ジャックは草をかき分けるような動きで食い下がる。舞うように振るわれる鋏を、岩斧で遮って妨害する。ただでさえテクニシャンで強いのに使わせてたまるかよ。

 

 

「つばめがえし!」

 

「がんせきアックスで受け止めろ!」

 

 

 ポケモンにはタイプ、属性が存在する。それと同じようにこの世界の物質は絶対的な相性差が存在する。つまりだ、ひこうタイプの技は岩に対しては弱体化する。岩石を纏うがんせきアックスなら完全に防ぎきることができる。完全に受け止めると目を丸くするオレア。

 

 

「両腕を使え、つばめがえし!」

 

「距離を取れハッサム!」

 

 

 逆につばめがえしを発動。ハッサムはジャックには存在しない翅を羽ばたかせて大きく後退して避けようと試みるが、左腕による一撃目は避けられたものの、踏み込みながら下から振るったつばめがえしが直撃、大きく打ち上げられるハッサム。

 

 

「そうか、くさわけ……すばやさを上げて当てる速度を上げたのか。いいね」

 

「ご明察だ。れんぞくぎり!」

 

「むしくい!」

 

 

 とくせい「きれあじ」で斬撃技の1.5倍の威力となるれんぞくぎりと、とくせい「テクニシャン」で威力60以下の技が1.5倍の威力となるむしくいが激突。岩斧を鋼鋏が挟み、そして。岩斧が、鋼鋏をこじ開ける。

 

 

「なっ…!?」

 

「がんせきアックス!」

 

 

 そしてステルスロックをばら撒きながら胴体を岩斧で斬り裂き、ハッサムは戦闘不能となって倒れるのだった。

 

 

「…まさかタイプ相性を覆してくるとはね。失敬、どうやらボクは君を見くびっていた様だ。最大限の敬意を持って応対しよう。――――蟲は儚くとも威厳溢れる女王の威光!押し潰せプレッシャー。いでよビークイン、いざここに!」

 

「ビークイン……」

 

 

 繰り出されるはビークイン。やはり何故か懐かしく感じると共に、サイズが少し小さく感じるのは何故だろう。

 

 

「いいね最高だ。やっぱり蟲ポケモンはかっこよくて!かわいくて!美しくて!最高で!最強だ!」

 

「それについては同感だね!」

 

 

 蟲の好かない奴だとは思うが、蟲ポケモンについては熱く語り合えるなと、そう思った。




・オレア
ラウラやカエデ以外の蟲使いのトレーナー。手持ちにハッサムとビークインがいる。蟲ポケモンをリスペクトし、褒めちぎる変人。蟲に対しての愛は誰よりも強いと考えており、ラウラがセルクルジムで宣言したことに対して感心と嫉妬を抱いている。名前の由来はとある毒性植物。蟲で頂点に立とうとするラウラにとって完全なライバル的な存在。モチーフは某魅せる者。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSビークイン

どうも、放仮ごです。大晦日ですね、今年最後の更新となります。だから特別な回ってわけじゃないですがよいお年を。

ラウラVSオレア、蟲好き対決を制するのは…?楽しんでいただけると幸いです。


 蟲使いを名乗ったオレンジアカデミーの学生にしてチャンプルジム挑戦者、オレアと勃発した、互いのジムテストのヒント、そしてオレアのネットボールを賭けた2VS2の勝負は俺の一勝で有利に進んでいた。しかし繰り出されたのは、いわタイプだと既に知っているジャックに対していわタイプが四倍弱点のビークイン。何が狙いなのかと警戒する。

 

 

「ジャック!相手は女王(クイーン)だ、下剋上しようか!」

 

「グラッシャー!」

 

 

 いるだけでとてつもないプレッシャーを与えてくるビークインに怖気づいていたジャックを元気づける。下剋上と言う言葉に目立てると思ったのかやる気マシマシのジャック。お前の扱い方にも慣れてきたよ。

 

 

「いわタイプが四倍弱点を出したのは、采配ミスじゃないよな?」

 

「失敬な。ボクの選択は完璧さ。ビークイン、しもべを」

 

「気を付けろジャック」

 

 

 下腹部の複数の巣穴からいくつもの光球「しもべ」を呼び出し、統率させて攻撃してくるビークイン。しもべたちはビークインの周囲をグルグルと回り、加速していく。まずい、ジャックに様子見させたのは間違いだった。

 

 

「くさわけで接近しろ!」

 

「もう遅い。こうげきしれい」

 

 

 草をかき分けるような動きで突撃するジャックだったが、阻止すること叶わずギュギュギュンッ!と加速した勢いのまま一斉に突撃してくるしもべたち。ジャックの装甲を貫き、さらにしもべの群れは形を変えてまるでドリルの様に編成を変えて突撃、ギャリギャリギャリと次々と削って行き衝撃でジャックは動くこともままならない。

 

 

「がんせきアックス!」

 

「ぼうぎょしれい!」

 

 

 なんとかしもべたちを突破し、攻撃を与えようとするジャックだったが散らされたしもべがまた集まって今度は強固な盾を形成。受け止められて不発に終わる。

 

 

「蜂の巣になれ。パワージェムだ」

 

 

 ぼうぎょしれいによりしもべたちに岩斧を空中に拘束され、身動きが取れないジャックへ容赦なく、六角形の光を並べる様に複数形成して発射してくるビークイン。

 

 

「グラッシャ……」

 

「ジャック!?よく頑張った…」

 

 

 ジャックは意地なのか立ったまま戦闘不能となり、俺はその生き様(死んでない)に頷きながらボールに戻した。

 

 

「タイプ相性を物ともしないしもべの猛攻、ってことか…」

 

「ボクの女王様は気難しくてね。相性で負けることをよしとしないんだ。さあどうする、ボクと同じ蟲で頂点に立とうと志す者よ!そんなものじゃないだろう?」

 

 

 …むし・ひこうのビークインはそもそもほとんどの蟲タイプに有利なポケモンだ、ジャック以外では不利でしかない。レクス、エクスレッグは技の相性も不利。ダーマはそもそも物理に対するカウンターがメインだから相性最悪。ケプリべはエスパー複合故にこうげきしれいになにもできずに落とされるだろう。なら、俺が出すべきは……!

 

 

「進化したお前の力を見せてくれ、レイン!」

 

 

 同じむし・ひこう複合タイプのレイン…アメモースを繰り出す。大きな顔の様にも見える触角を広げていかくし、小さな翅四つを羽ばたかせて浮かぶレイン。…なんか物足りないな。オレアみたいな前口上考えてみるか?

 

 

「アメモース。いいポケモンだ。進化したばかりなのかな?感動的だな。だが無意味さ。ボクの女王様には敵わない!拝謁することすらできずに蜂の巣となれ!パワージェム!」

 

「ああ、蟲だけの力じゃお前の女王様には敵わないさ。だが、俺が力を貸すことで勝てる可能性を作ることはできる!テラスタルだレイン!」

 

 

 オレアの指示を受けてしもべを一度下腹部の巣穴に戻すと六角形の光を並べる様に複数形成、発射してくるビークイン。それに対して俺はテラスタルオーブを取り出しテラスタル、レインをみずテラスタイプに変えてパワージェムを受け止めさせる。

 

 

「なっ……そうか、アメタマの時から引き継いだのか!ならこちらもテラスタルだ!こうげきしれい!」

 

「バブルこうせん!」

 

 

 すると呼応してむしテラスタイプに変えたビークインにしもべを放たせるオレア。しもべは複雑な陣形を取って襲いかかってくるも、強化されたバブルこうせんの泡にしもべ全部を捕らえて遠くに押し流させる。

 

 

「そんな、しもべが…!?」

 

「これでしもべはもう使えない!バブルこうせんにはこういう使い方もあるってことだ!エアカッター!」

 

「エアスラッシュ!」

 

 

 むし単体になったのならと容赦なくエアカッターを指示すると、ビークインは上位互換わざであるエアスラッシュで防いできた。ならエアカッターの利点を使わせてもらおう。

 

 

「でんこうせっかで回り込みながらエアカッター!」

 

「もう一度エアスラッシュ!」

 

 

 直角移動でカクカクとした動きで高速で移動し、ビークインを翻弄するレイン。エアカッターとエアスラッシュはあらぬ方向に飛んでいく。しかしエアカッターはブーメランの様に軌道を変えてビークインに殺到。次々と浴びせて切り刻んで行った。

 

 

「なっ…!?」

 

「同じ風の刃でもまっすぐ飛ぶのと弧を描いて飛ぶ違いがあるんだ!バブルこうせん!」

 

「ぼうぎょしれい!」

 

 

 咄嗟に指示するオレアだったが無駄だと笑う。しかし次の瞬間絶句する羽目になった。バブルこうせんで遠くに飛ばしたはずのしもべが集まって隙間の無い盾となりバブルこうせんを防いだのだ。

 

 

「んなっ!?」

 

「今度はそっちが驚く羽目となったね。さっきのエアスラッシュは攻撃の為じゃない、泡に囚われたしもべを解放するのが目的さ!」

 

「なるほど、ね!だが集まってくれてありがとうよ!ねばねばネット!」

 

 

 口からねばねばネットを放出、しもべの盾を絡め取るレイン。口から糸で繋がったままのねばねばネットを振り回し、加速させていく。

 

 

「しまっ…エアスラッシュ!」

 

「遅い!でんこうせっか!」

 

 

 そのまま一度上に飛び、直角に曲がってビークインの頭上を取るとそのまま直角に急降下。勢いよくしもべの囚われた糸の塊をビークインに叩きつけるレイン。ビークインは翅を糸で無力化された上にでんこうせっかの勢いも上乗せられて地面に叩きつけられ、目を回す。戦闘不能だ。

 

 

「俺の勝ちだ」

 

beautiful(美しい)……!蟲の利点を上手に使った美しい戦い方だった!」

 

 

 すると拍手して称賛してくるオレア。お、おう。ありがとな?

 

 

「もちろんフルバトルだったらボクも負けるつもりはないけど完敗だ!約束だ、ジムテストのヒントと…このネットボールを渡そう!」

 

 

 そう言って封筒とネットボール10個の入った袋を差し出してくるオレア。ありがたい、正直手持ちは六匹+ウカの七匹でいいが、予備はあった方がいいからな。あとで入れ替えとこう。

 

 

「ボクは今回のジムテストに負けたから次の機会を待つべく別のジムから行くことにするよ。だからラウラ、同じ蟲好きとして応援しているよ!じゃあまた会おう!次は負けないよ!」

 

 

 そう言うだけ言って走り去っていくオレア。…騒がしい奴だったな。ヒントでも見るか。

 

 

「階段に囲まれた暗闇、か。捜すか…」

 

 

 しかし男だったのかアイツ、気が合いそうな男性は珍しいな。…あれ、なんだろ寒気が。浮気じゃないぞ。…何言ってんだ俺。




※蟲好き的には最高らしいけど実際は奇抜なファッション

実はラウラのビークインと同じ技の構成なんだけど「しもべ特化型」というのが違う点となります。

そしてオレア「くん」でした。中性的な王子様系です。珍しく男キャラです。ラウラがイケメン枠だったから実は男オリキャラが少ないポケ蟲。小さい頃はむしとり少年だったんじゃないかな。

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VSアチゲータ

あけましておめでとうございます。どうも、放仮ごです。正月からいろいろあって遅くなりました。

今回はラウラVSアイアール。一緒に旅に出て初めてのガチバトル。楽しんでいただけると幸いです。


 【階段に囲まれた暗闇】に隠されていた「だいもんじ」という言葉を見つけ、ポケモンセンターで回復した後にネモとバトルした街道の脇で、ポケモンたちを一度解放してからネットボールに入れ直す作業をしながら待っていると、アイアールが駆け寄ってきた。

 

 

「ごめんラウラ、待った?イキリンコが中々ヒントのワードを言ってくれなくて……」

 

「イキリンコまでヒントに使ってるのかここのジム……で、宝食堂の秘密のメニューの合言葉二つ、わかったのか?」

 

「もちろん!そっちは?」

 

「ばっちりだ。いい出会いもあったしな」

 

「あ、ネットボールだ。どうしたの?」

 

「バトルに勝ったらもらった」

 

「へえ、いい人だね」

 

 

 そう言いながらネットボール6つにレクス、ダーマ、レイン、ジャック、ケプリべ、ウカを入れ終えると、アイアールが対面に移動するので俺も配置につく。言わなくてもやることはひとつだ。それぞれ5匹+α持ってるのは承知済み、六匹じゃないが5VS5のフルバトル。

 

 

▽ライバルの アイアールが 勝負を しかけてきた!

 

 

「それぞれのヒントを賭けて!シング!」

 

「いざ、バトルだ!レクス!」

 

 

 アイアールはシング…アチゲータを、俺はレクス…エクスレッグを繰り出す。相棒対決だ。

 

 

「蟲ポケモン相手なら私の相棒が火を噴くよ!文字通り!」

 

「炎なんぞ相手に負けてる程度じゃトップチャンピオン打破なんて夢もまた夢だ!レクス、こうそくいどう!」

 

 

 後ろ足を展開し、素早い動きでシングの周りを走って翻弄するレクス。素早い動きに動きが遅いシングでは追い切れていない。

 

 

「足元に向けてやきつくす!」

 

「とびかかる!」

 

 

 するとアイアールは足元に向けて炎を放射することで炎の円陣を形成。炎の壁を広げてきたので、レクスにそれを飛び越えさせて突撃させる。

 

 

「ほのおのキバ!」

 

「にどげり!」

 

 

 炎を纏った牙の噛み付きを後ろ足の蹴りで受け止め、続けざまに顎を蹴り上げるレクス。驚異的な脚力による蹴りで顎を蹴り上げられて打ち上げられるシングだったが、諦めずに歯を食いしばり咆哮を上げて口を大きく開いて急降下してくる。

 

 

「やきつくす!」

 

「フェイント!」

 

 

 口から炎を放ちながら落ちてくるシングの攻撃が完全に放たれる前に跳躍、拳を叩き込むレクス。それでもシングが浴びせてくる炎を受けながらもレクスは着地してから足を振り上げ追撃を試みたのを見て、頷く。その意思に応えるべきだろう。

 

 

「にどげり!」

 

 

 腹部に一撃加えて打ち上げてから、跳躍して追い越し背中から一撃。蹴鞠の様に空中で振り回されたシングは地面に叩きつけられ、目を回す。すると何時の間に観客がいたのか歓声が上がる。勝負に集中していて気付かなかった…。だがレクスに歓声を浴びせられるのはいい気分だな。

 

 

「何時の間に…いや、お疲れレクス。一度戻れ」

 

「シング、よく頑張ったね。ありがとう。出番だよ、ツムヅム!」

 

「押し流せ!レイン!」

 

 

 シングを戻したアイアールが繰り出したツムヅム…ジオヅムに対し、俺はレクスを戻してからレイン…アメモースを繰り出す。いわタイプのツムヅムで来るのは分かっていたよ。…偶然なんだろうがつくづく蟲ポケモンの天敵ばかりパーティに入れてるんだよなアイアール。

 

 

「こいつの特性はいかくだ、いわ技だろうが一撃は耐えるぞ。バブルこうせん!」

 

「うん、だろうね!戻れツムヅム!」

 

「なに!?」

 

 

 むし・ひこうタイプであるレインに対して突っ張ってくると思ったらまさかの交代。ボールに戻ったツムヅムの代わりにバブルこうせんを受けたのはドーちゃん……ドオー。じめんタイプにも関わらず泡の奔流を受けて気持ちよさそうにしている

 

 

「この子はちょすい!みず技を受けると回復するよ!」

 

「そいつは厄介、だなあ!でんこうせっか!」

 

「ヘドロウェーブ!」

 

 

 でんこうせっかで周りを飛ぶことで翻弄しようと試みるが、ドーちゃんを中心に全方位に放たれた毒の波を受けて押し流されるレイン。物理特化のはずなのに特殊技を覚えてるだと…!?

 

 

「私はラウラの手持ちを、ラウラの次に一番身近で見てきた!どうやって攻略すればいいのか、いつも考えてた!水技を覚えているレインにはツムヅムで水技を誘発してちょすいのドーちゃん、でもいかくで得意の物理攻撃が効かないから覚えさせたのがこの技だ!」

 

「…なるほど、ね。ねばねばネットで拘束しろ!」

 

「押し流せ、もう一発ヘドロウェーブ!」

 

 

 レインがねばねばネットを放つと毒の波を再び放ち押し流してくるドーちゃん。だが、その技の欠点はドーちゃん自身の視点が低いせいでヘドロウェーブの向こう側が見えないことだ。

 

 

「斬り裂けレイン!エアカッター!」

 

「っ!? ドーちゃん、マッドショット!」

 

 

 咄嗟にマッドショットで打ち消そうと試みるアイアールだがしかし、弧を描いて背後から回り込んできたエアカッターは対処できず直撃。怯むドーちゃん。

 

 

「直上からでんこうせっか!」

 

 

 そこに、直角に曲がって頭上からレインが襲いかかる。すると、アイアールがにやりと笑ったのが見えて。

 

 

「どくづき!」

 

「なあ!?」

 

 

 直上から急降下してきたレインの目の前で、ドオーの背中に六本の角が生えて毒を纏ってレインに突き刺さる。自分の勢いも合わせて致命傷だ。レインは崩れ落ち、俺は慌ててボールに戻す。

 

 

「驚いた?ドーちゃん…ドオーは敵に襲われると退化した手足の代わりに、背中から毒トゲを生やして反撃するんだよ。身を切る覚悟の危険な技だけど…蟲ポケモン以外の生態も無視できないでしょ!蟲だけに!」

 

「それを利用したどくづきか。完全にしてやられた」

 

「今のはツッコんでほしかったな……このまま突っ張ろうドーちゃん!」

 

 

 恥ずかしがるアイアール。なんでだ。いいギャグだったじゃないか。まあ突っ張るなら、やることはひとつだ。

 

 

「確かにお前は俺の蟲ポケモンたちの事を熟知しているみたいだがな?それはお前だけじゃない。ダーマ!」

 

 

 俺が繰り出したのはダーマ…ワナイダー。本当はケプリべを出したかったが、交代されるのも嫌だったので物理に滅法強いコイツで勝負だ。

 

 

「全てを飲み込め!ヘドロウェーブ!」

 

「いとをはくで避けて近づけ!」

 

 

 放たれた毒の波を、糸を飛ばして傍の建物の壁に引っ付くことで回避。跳躍して上から近づくダーマ。こうすればお前はきっと!

 

 

「どくづき!」

 

「カウンター!」

 

 

 そう来るだろうな。ニョキッと再度生えた毒のトゲの間に拳を叩き込み、器用に長い手足でトゲの間の背中に着地するダーマ。地面に叩きつけられたドーちゃんは目を回し、戦闘不能となる。ボールに戻し、悔しそうにするアイアール。

 

 

「いくよツムヅム!しおづけ!」

 

「いとをはくで壁にくっつけ!」

 

 

 再びツムヅムを繰り出してきたので、糸を飛ばして壁にくっついて塩の塊を回避するダーマ。そのまま壁を這って移動していく。

 

 

「うちおとす!」

 

「スレッドトラップ!」

 

 

 岩を飛ばして迎撃せんとするアイアールだが、当たりそうになった物は糸の盾で跳ね返す。

 

 

「壁があるところならダーマは無敵だ!」

 

「なら……のろい!」

 

 

 ダーマが攻撃しないことをいいことに、のろいですばやさを下げて代わりに攻撃力・防御力を上げるツムヅム。そうだ、お前は知っている。カウンターしかダーマに対抗策が無いことを。だから俺はそれを利用する。

 

 

「もう一回、のろい!」

 

「交代、ケプリべ!じこあんじ!」

 

「しまっ…」

 

 

 すばやさががくっと下がり、攻撃力と防御力が二段階上がった状態を、出るなりコピーし自分に反映させるケプリべ…ベラカス。積む相手ならこいつの出番だ。

 

 

「ミガルーサの時もやってたのに失念してた…しおづけ!」

 

「防御力をプレゼント、ありがとな。サイケこうせん!」

 

 

 すばやい動きができない故に固定砲台になるしかないツムヅムがしおづけを当てる前に、サイケこうせんを当てて混乱させる。勝負はここからだ。




観客も湧くガチバトル勃発。一進一退、勝利はどちらの手に。

現在の状況
・ラウラ:レクス(エクスレッグ)、大ダメージを受けたものの健在。レイン(アメモース)、戦闘不能。ダーマ(ワナイダー)、どくづきが掠るもほぼ無傷。ケプリべ(ベラカス)、無傷で能力上昇コピー。ジャック(バサギリ)、無傷。

・アイアール:シング(アチゲータ)、戦闘不能。ツムヅム(ジオヅム)、のろいを二回積むも混乱状態。ドーちゃん(ドオー)、戦闘不能。ヒナ(ヒラヒナ)、無傷。リプル(ウミトリオ)、無傷。

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VSクエスパトラ

どうも、放仮ごです。今回は前作含めて一番いいできになったと思います。

ラウラVSアイアールのガチバトル後編。何時もよりちょっとボリューミーな四千字ぐらいです。楽しんでいただけると幸いです。


 ラウラ。私の旅の相方で、蟲ポケモンだけ使っているのに…いや、使っているからこそ凄く強いトレーナー。私の憧れ、私の目標。私と同じオレンジアカデミー指定の夏制服を身に纏い、綺麗な顔と赤髪は今エクスレッグヘルメットで隠しているけど、その下で輝く鋭い眼光は健在。

 

 

「さすが、やるねラウラ」

 

 

 手放しの称賛を向ける。相棒のシングと、二番目に捕まえた古参のドーちゃんが倒されてしまった。しかもダーマにはろくな攻撃手段がないからと高を括ってツムヅムののろいで突破口を開こうとしたら、それをケプリベの強化に利用されてしまった。さすがだ、強い。記憶喪失だから多分本当の強さはこんなもんじゃないんだろう。今とは比べ物にならないほど強かったであろう過去の記憶を失ってもなお、私の考えた作戦を機転で凌駕してくる。

 

 

「…もう少しかな」

 

 

 相手のレインを倒したことで経験値は得られた。あともう少し、もう少しだ。ラウラに勝つための切札がもう少しで。

 

 

「だから頑張れ!ツムヅム!」

 

 

 ツムヅムのとくせい、きよめのしお。ゴーストタイプの技を半減し、状態異常にかかることがなく、ツムヅムのゴーストテラスタルだと実質弱点があくタイプだけになるという、ラウラ曰くぶっ壊れとくせいであるが弱点もある。その一つが混乱状態。どく・やけど・まひ・ねむり・こおり状態は防げてもこんらんやメロメロは防げないのだ。ちなみにとくせいであるが故にかたやぶりのとくせいにも弱い。それをラウラが知っているが故の混乱を狙ったサイケこうせん、思いっきり混乱してしまった。

 

 

「もう一発、サイケこうせん!」 

 

「しおづけ!…駄目か、どうしよう…?」

 

 

 サイケこうせんを受け、こんらんで自傷してしまうツムヅム。…多分、テラスタルしてゴーストタイプになればエスパーのケプリべには有利は取れる、だけど切らない。交代しようにもドーちゃんとシングがやられた今、紙耐久の二体しかいない。突っ張るしかない。

 

 

「ツムヅムは物理に対しては堅いがとくぼうに関してはそんなにだってのは知っている!サイケこうせん連打だ!」

 

「目を覚ましてツムヅム!自分にしおづけ!」

 

 

 他に通る技が無いのか……というかたしか、じこあんじ、さいきのいのり、サイケこうせん、むしのていこうだからこれしかないか……呼びかけると混乱から目を覚まし、自分に向けて頭上から塩を振りかけるツムヅム。これは私のツムヅムしか出来ない戦い方。その名も!

 

 

「ソルトアーマー!」

 

「なんだとお!?」

 

 

 塩で固めた表面でサイケこうせんを受け止める、白く光る薄い装甲。修行中に進化し、身に着けた応用技。名付けた名前はソルトアーマー。なんか知らないけど特殊に対する耐久が強くなるのだ。驚いただろうし予想外だろうこれは。

 

 

「しおづけしてうちおとす!」

 

「じこあん……いや、さいきのいのり!」

 

 

 切札である、傷付いていれば威力が倍増する「しおづけしてうちおとす」でとどめを刺さんとすると、サイケこうせんでは落とせないとみたのか、光り輝いて直撃を受けるケプリべ。戦闘不能となる。…復活させたポケモンは、一匹しかいないか。

 

 

「再起しろレイン!」

 

 

 出てきたのはさっき倒したレイン。…ラウラの切札、バサギリのジャックにしおづけ当てたかったけどそうは問屋が卸さないよね。

 

 

「もう一度、しおづけしてうちおとす!」

 

「でんこうせっかで避けて近づけ!」

 

 

 でんこうせっかでしおづけしてうちおとすを回避、接近してくるレイン。なにを…!?

 

 

「バブルこうせん!」

 

「みずタイプの技だろうと、無駄…!?」

 

 

 すると泡々した奔流でしおづけで固めたソルトアーマーが押し流され、そのまま直撃を受けるツムヅム。そんな、ただの水流ならリプルのみずでっぽうで耐えれるのは分かっていたけど、泡までは想定してなかった。

 

 

「…さすが」

 

「これしかなかった。難攻不落の要塞だよ、ツムヅムは」

 

 

 ラウラはレクスが大ダメージを受けたものの健在。レインが体力半分で復活。ダーマはどくづきが掠っていたけどほぼ無傷。ケプリべは戦闘不能。ジャックが無傷。私はシング、ツムヅム、ドーちゃんが戦闘不能。ヒナとリプルが無傷だけど……大差をつけられたなあ。とりあえず、突っ張るつもりらしいレインを落とすか。

 

 

「リプル!あなをほる!」

 

「っ、速い…!」

 

「リプルは紙耐久だけど、とくせいのぬめりを応用して、ただでさえ高い素早さを更に上げている!そう簡単に追いつけないよ!トリプルダイブ!」

 

 

 ボールから出るなりあなをほって地面に潜行したリプルに指示、足元から飛び出して三つの身体を伸ばし、水を纏った一撃、否三連撃を叩き込んでレインを戦闘不能にすると観客から歓声が上がる。高い攻撃力とぬめりでさらに増した素早さによる三連撃を耐えるすべは、ない!

 

 

「二回もよく頑張ったレイン。出番だ、叩き潰せジャック!」

 

「ジャックだろうと私のリプルには敵わない!」

 

 

 レインを戻し、いわ・むしタイプのジャックを繰り出してくるラウラ。なので挑発する。いわ・むしタイプのジャックを出してきたってことは必ず……。

 

 

「テラスタルだジャック!くさわけ!」

 

「あ、あなをほる!」

 

 

 だよね。ジャックのテラスタイプは「くさ」、リプルの天敵だ。あなをほって地中に逃げることで誤魔化すも、草をかき分けるような動きで地面を掘り起こされ無理やり顔を出されたリプルに斬撃が叩き込まれる。これは無理だ。でもありがとう、一番厄介だったいわタイプを失くすことができた。

 

 

「行くよ、ヒナ!」

 

 

 最後のポケモン、ヒナがとくせいのきけんよちで身震いすると、観客のボルテージが目に見えて下がる。ラウラは三匹健在なので、三タテしないといけないが、ヒラヒナのヒナでは荷が重いのでそれもしょうがない。このままならね。

 

 

「そいつが最後か。…そういやそいつのことはそんなに知らないんだよな」

 

「経験値は十分。いざ進化の時!」

 

 

 ヒナを捕まえた後、戦闘が苦手だったから調べたんだ。ある程度経験値を得ると進化すること、そして進化した際の強さを。小さかったヒナが光り輝いて大きくなるのを見て目を見開くラウラ。身に纏っていた黄色い布は大きく広がり、下から出ていた脚が巨大に、頭部も首が長く伸びて光が消えると、そこには進化を果たしたヒナ、クエスパトラが立っていた。

 

 

「ヒナ!…クエスパトラ!行くよ!」

 

「エスパー単体のままか?とりあえずすばやさを上げるぞ!くさわけ!」

 

「それ、もらうよ!」

 

 

 ケプリべにこちらの能力上昇を奪われたお返しだ。ジャックがくさわけを行うとヒナのすばやさが上がり、ジャックの斬撃を易々と回避する。このとくせいと、専用技がこの子の強みだ。

 

 

「とくせい、びんじょう。敵が能力を上げると便乗してこちらも上げる!」

 

「厄介だな…!だが!元々速いジャックの方が!」

 

「うん、だから…ジャックにはない要素で対抗する!」

 

 

 そう言って手に取ったのはテラスタルオーブ。それを見て私が以前言っていた言葉を思い出したのか、目を見開くラウラ。

 

 

「天を駆けろ、テラスタル!」

 

 

 ヒナの姿が結晶化し、色とりどりの風船の様な結晶を頭部につける。ひこうテラスタル。ロースト砂漠の結晶洞窟で出会ったこの子の最大の強みだ。空飛ぶようにはできてない翼だが、その脚力で跳躍し、風船の様な結晶の力で空を翔る…否、駆けるヒナ。ジャックは進化した時に飛べなくなった、いわタイプになった弊害だ。そして今はくさタイプ、効果は抜群だ。

 

 

「ついばむ攻撃!」

 

 

 空中から急降下したヒナの嘴がジャックに突き刺さり、テラスタルが砕け散り地面にその巨体を叩きつける。戦闘不能だ。目に見えて焦り、ジャックをボールに戻してダーマを繰り出すラウラ。

 

 

「ついばむだったら、ダーマだ!スレッドトラップ!」

 

「ルミナコリジョン!」

 

 

 進化した際に覚えた六角形の紫色の光を飛ばす技を放ち、ダーマのスレッドトラップを貫き超能力による衝撃を与える。

 

 

「物理の技にしか対抗できないのがダーマの弱点だよ!」

 

「いとをはいて翻弄しろ、むしのていこう!」

 

「チャームボイス!」

 

 

 糸を飛ばして翻弄を試みるダーマだったが、必中のフェアリーわざであるチャームボイスで撃墜する。それに信じられないとばかりに目を丸くするラウラ。

 

 

「なんでだ、タイプ不一致のフェアリー技でしかも威力の低いチャームボイスなら耐えられたはず……」

 

「さっきのルミナコリジョンは、浴びた相手のとくぼうをガクッと下げるんだよ。あと、ドーちゃんの残した、掠らせたどくづきの毒が効いてたね」

 

「なるほど、な…」

 

 

 悔しそうにダーマをボールに戻すラウラ。蟲以外の知識に疎い、それがラウラの弱点だ。残るは瀕死間近のレクスのみ。勝てる、勝てるぞ!

 

 

「レクス。…覚悟を決めろ」

 

 

 レクスを繰り出し、深呼吸してから真っ直ぐ見てくるラウラ。全力で行くよ!

 

 

「空中からついばむ攻撃!」

 

「とびかかる!」

 

 

 展開した後ろ足で跳躍し、その勢いのまま飛び蹴りを繰り出してくるレクスと、空中から急降下して威力を増した嘴を叩き付けんとするヒナ。観客のボルテージが上がる。このまま、貫く!

 

 

「こうそくいどう!」

 

「なっ!?」

 

 

 すると信じられない行動に出た。激突する前に、空中でレクスが加速。同じく加速してしまったヒナが完全に体勢を整える前に、その首筋に蹴りが叩き込まれたのだ。しまった、進化して不慣れな身体のヒナに、急所の攻撃は致命的…!?

 

 

「ルミナコリジョン……!」

 

「悪いなアイアール。そいつはむし・あくのレクスには無効だ。フェイント!」

 

 

 撃墜され距離を離されたので遠距離で最大火力が出るルミナコリジョンを選ぶも、タイプを失念していた。……蟲について全然知らないのは、私もラウラのことを言えなかった。鋭い回し蹴りを受けて地面に叩きつけられるヒナはテラスタルが砕け散り、目を回す。…誰の目から見ても戦闘不能だ。

 

 

「…お前、ネモより強かったぞ」

 

「…はは、それは嬉しいな。参ったよ」

 

 

 まさかびんじょうを逆に利用するなんて。どんな発想だ。まいった、降参だ。

 

 

「…くそぉ」

 

 

 勝てると、思ったんだけどなあ。勝利を確信して油断してしまった。最後まであきらめなかったラウラに軍配が上がるのも当然だ。まだまだ、だなあ。




炎の壁を作るシング。ドーちゃんのだまし討ち。ツムヅムのソルトアーマー。ぬめりを利用してスピードアップしたリプル。経験値を見越したヒナの進化とびんじょう及びテラスタル。かなり作戦を考えラウラ攻略を目指したアイアールでしたが一歩及ばず。ラウラに軍配が上がりました。

五体使っていたというのもありますがラウラをして、手加減しているネモより強いと言わしめる強さはさすが原作主人公。ただ発想の変態さはラウラの方が上手(うわて)でした。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSネッコアラ

どうも、放仮ごです。ムツキが四天王化したことで多分ちょっと救われた、みんな大好きあの人がようやく登場。

今回はVSチャンプルジムジムリーダー。楽しんでいただけると幸いです。


「私、強くなる!」

 

 

 悔し涙を流しながらもアイアールはナッペ山に向かって行き、その間に俺は勝ち取ったジムリーダーへの挑戦をすることに。ナッペ山は強豪ポケモンの生息地だが、アイアールならなんとかなるだろ。さてさて、アイアールから受け取ったヒントは……アイツ、自分が勝つと思って答えを書いとくのを忘れてたな?

 

 

「アイス屋台の仲間外れ【焼きおにぎり】階段に囲まれた暗闇【だいもんじ】それで青いとりポケモンの声……こいつか?」

 

「ニニンマエ!ニニンマエ!」

 

「ああ、【ニニンマエ】そして……常連さんの食べ方、か」

 

 

 街中にいた青いイキリンコからヒントの答えを手に入れ、宝食堂に向かう。ここの常連さんがヒントを知ってるらしい。えっと…常連常連……あのくたびれたサラリーマンがそれかな?

 

 

「失礼。お訊ねするがこの店の常連か?」

 

「ムシャムシャ……モグモグ……ハフハフ……ああ、ジムテスト挑戦者ですね。如何にも……自分はこの店によく来ています。レモンをしぼるとさっぱりして美味いですよ」

 

「なるほど…感謝するよ」

 

 

 しかし美味そうだったな。アイアールが戻ってきたら一緒に食べるか。そんなことを考えながら入り口の受付に向かう。ここで秘密のメニューを注文すればいいんだな。

 

 

「ジムテストのお客さんですね!宝食堂、秘密のメニュー。ヒントはお集まりで?」

 

「はい、頼みます」

 

「……それではご注文をお聞きしましょう」

 

「焼きおにぎりで」

 

「何人前ですか?」

 

「二人前」

 

「火加減にご希望は?」

 

「強火のだいもんじで」

 

「つけ合わせに何かお持ちしましょうか?」

 

「レモンを」

 

「かしこまりました。焼きおにぎり、二人前!強火:だいもんじ、レモン添え~!」

 

 

 受付がそう叫ぶと、奥の料理人が笑顔で反応する。正解みたいだな。

 

 

「あいよー!焼きおに2!だいもん、レモぞえ~!」

 

 

 するとゴゴゴゴゴッ!と音が鳴り響き、訳知り顔の座敷で食事していた人たちやポケモンが自分の頼んだ料理の乗ったお盆を手にそそくさと座敷の大広間から離れて行くと、ぐるりと大広間の床が回転。地盤ごと引っくり返ってバトルコートに早変わりしてしまう。ええええええ!?

 

 

「ば、バトルコートが街にないとは思ってたがこういう…」

 

「おめでとうございます!ジムテストクリアです!ジムリーダーと勝負する資格を得られましたラウラさんは早速ジムリーダーと戦う権利が与えられます!3VS3のシングルバトル。非凡サラリーマン、アオキに勝負を挑みますか?」

 

 

 答えは決まってる。準備もきっちりしてきた。

 

 

「はい…!」

 

「それでは。アオキさーん!出番だよー!」

 

 

 受付がそう呼びかけるとシーンと静まり返り、料理人に「ほらほら!」と呼びかけられて素早く食事を終えて立ち上がり近づいてきたのは先程のサラリーマン。え、マジで?

 

 

「どうも。自分がチャンプルジムに所属しているジムリーダー、アオキです。最近は業務の一部から解放されて普通に食事を楽しんでました、申し訳ない」

 

「あ、いやお気になさらず…?」

 

「私の見立てでは今回のジムテストは強者揃いだと見ていましたが貴方が勝ち残ったのですね。お疲れ様でした。えーと……この店は焼きおにぎり以外も美味いです。おすすめは街の名前にもなっているチャンプル……いえ、雑談ばかりしていると上司に怒られますので勝負を始めますか」

 

「はあ…」

 

 

 なんだこの人、マイペースながらすごい圧を感じる。ジムリーダーとかそんなレベルじゃない、それこそ四天王レベルの……。そんなことを思いながら揃ってバトルコートに上がると、ネモの言葉を思い出す。

 

 

――――ジム戦は街のバトルコートの立地とか材質とかあらかじめ知っておくことが大切!戦況を左右するフィールドを自分のものにするんだ!

 

 

 …だったな。地盤を確かめる。地面と言うかゴム質のコートだが、結構しっかりしている。室内ながらも暴れて問題なさそうだ。

 

 

「…お世話になります、アオキです。何とぞよろしくお願いします」

 

 

▽ジムリーダーの アオキが 勝負を しかけてきた!

 

 

 持っていたカバンを下ろすとネクタイを締め直し、モンスターボールを構えると綺麗なフォームで投げてくるアオキさん。俺もネットボールを構えて投げつける。

 

 

「眠りながらでも働いてください。ネッコアラ」

 

「いくぞ、ダーマ!」

 

 

 アオキさんが繰り出してきたのはネッコアラ。たしかぜったいねむりの特性を持つ、ずっと眠っていて夢うつつであるが故に状態異常が効かないポケモンだ。

 

 

「食後の腹ごなしも兼ねて、程々にいきたいところですが…あなたは強いですね。ちょっとばかし本気で行きましょう。あくびです」

 

「スレッドトラップ!」

 

 

 あくびを防御して防ぐ。初手防御は安定。なるほど、眠りを撒いてくるタイプか。だがこれであくびを使おうにも使えない心理状態に追い込めたはずだ。

 

 

「ふいうち」

 

「カウンター!」

 

 

 しまっ。多分ノーマルの一致技で来ると思ったからカウンターを選んだわけだが、カウンターは受けた技のダメージを倍返しにする技。いまひとつのふいうちじゃそんなにダメージが出ない。偶然ながらやられた…いや、偶然じゃないのか?

 

 

「やはり覚えていましたか。スレッドトラップ、カウンター。相手の攻撃を利用する型ですね。ならば、これはカウンターできますか?ころがる」

 

「いとをはく…速い!?」

 

 

 ゴロゴロゴロと、根っこを抱えたまま転がってくるネッコアラ。いとをはくで動けなくしようと試みたのだが、あっさり避けられ周りを転がられて逆に翻弄されるダーマ。蟲に刺さる技、覚えていたか。最初から使ってこなかったのはカウンター対策か、この人…強い。

 

 

「交代だジャック!」

 

 

 さすがに捉えきれないやつにダーマを出したままにもいかず、ジャックと交代する。するとグルングルンと勢いを強めたネッコアラが跳躍、勢いよく根っこを叩きつけてきた。

 

 

「たたきつける」

 

「がんせきアックス!」

 

 

 がんせきアックスで受け止めるも、ころがるを利用してか威力を増していたたたきつけるに押され、吹き飛ばされるジャック。なんて威力だ。

 

 

「もう一回ころがる。…む?」

 

「…さすがに、パルデア以外のポケモンの事は知らないみたいだな」

 

 

 再び転がったかと思えば、フィールドに散乱したステルスロックを受けてダメージを受けたことに眉をしかめるアオキさん。

 

 

「これでスピードは出せない!れんぞくぎり!」

 

「ふいうち」

 

 

 とくせいのきれあじで威力が増し、高速で動けるジャックならではの連続れんぞくぎりが炸裂。切り刻まれるネッコアラだが、ふいうちでしっかりダメージを与えてから戦闘不能となり、ジャックが勝鬨を上げると観客から歓声が上がる。最後に仕事していったな。あくびにしなかったのは……交代されたくなかったからか?いや深読みさせてってのもあるか。

 

 

「やりますね。何時の間にステルスロックを撒くとは。…いや、先ほどのがんせきアックスと言う技にその効果があるのでしょうか?では真正面から突き破りましょう、ノココッチ」

 

 

 次に繰り出されたのはノコッチに酷似しているがなんか違うポケモン。なにそれ知らない。




某面接で即決で選ぶぐらいアオキさん好きです。歴代ノーマルジムリーダーばりに強いのもいい。

調べたら基本技でころがるを覚えるみたいで、アオキのネッコアラは三つしか覚えてないみたいなので覚えさせてみたら結構凶悪になった。

初見殺しできるバサギリ。伊達にラウラの現切札ではありません。前作で言うドラピオンポジですね。頼れる兄貴分(目立ちたがり屋)。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSノココッチ

どうも、放仮ごです。ノーマルでころがるといえば某ミルタンク使いだなと感想欄で思い至りました。すっかり忘れてたよね。

今回はVSアオキ後編。楽しんでいただけると幸いです。


 ノココッチ、ノココッチ……アオキさんの繰り出したポケモンを図鑑アプリで調べる。あった、ノココッチ。つちへびポケモン、タイプはノーマル。とくせいはにげあしと……てんのめぐみ!?なんか嫌なとくせいだな。

 

 

「ノココッチ。ドリルライナーです」

 

「ジャック、くさわけで避けろ!」

 

 

 武器は目立っているドリル型の尻尾か。咄嗟にジャックを回避させる。あれはたしか、じめんタイプの大技。いわタイプのジャックには効果は抜群だ。だがテラスタルしてくさタイプになるとタイプ一致のノーマル技の通りがよくなってしまう。……なんだろうな、ドリルライナーを使うポケモンに凄い苦戦した記憶があって苦手な印象がある。空飛んでてもじめんタイプの技を当ててきそうだ。

 

 

「すばやさを上げましたか。ではへびにらみ」

 

 

 せっかく上げたすばやさをへびにらみで麻痺になって半減にされてしまった。レアな技覚えてるなあ。

 

 

「…ねむりにまひ、嫌な戦い方だな」

 

「これも戦い方の一つですよ。とぐろをまく」

 

「なんとか近づけ!がんせきアックス!」

 

 

 タイプ一致で一番火力の出るがんせきアックスを選択。とぐろを巻いて攻撃力・防御力・命中率を上げてきたノココッチのドリル尻尾に防がれて弾かれてしまう。麻痺で力が入りにくいか……無理はさせられない。

 

 

「ドリルライナー」

 

「交代だジャック!頼むぞダーマ!いとをはく!」

 

 

 ドリルライナーが炸裂する直前に入れ替えたダーマが糸を飛ばして天井に逃れ、回避。遠くに着地すると、高速蛇行してステルスロックを避けながら突撃してくるノココッチに対して糸を張って防御を試みる。

 

 

「ハイパードリル」

 

「スレッドトラップ……なに!?」

 

 

 そのドリル尻尾の攻撃を喰らった瞬間、糸の盾が引き剥がされて貫かれ、グルングルンと体がドリルの勢いのまま回転して吹き飛ばされ、壁に激突するダーマ。ドリルライナーとはまた違う、なんだ今の技!?

 

 

「ハイパードリル…相手のまもるなどの状態を解除して攻撃する、ノコッチ系統の専用技です」

 

「防御不可能、天元突破っていうことか……それでも一撃で戦闘不能になるとは見通しが甘かった」

 

 

 防御特化ではあるが罠を駆使しての防御がメインのダーマ……ワナイダーは素の防御力が低いのが裏目に出た。タイミングさえ間違えなければスレッドトラップとカウンターで無敵になるんだが。…麻痺しているジャックじゃハイパードリルは回避は難しそうだな。最後の手持ちで行くか。

 

 

「頼んだぞレクス!」

 

 

 ノーマルタイプに効果抜群なかくとう技を持つレクスは外せなかった。だがにどげりは火力が低い。工夫で補わないとな。

 

 

「上司に詰められるよりかはまだまだ余裕がありますね。へびにらみ」

 

「そう来るよな!こうそくいどう!」

 

 

 ひと睨みされただけで麻痺してしまうが、半減したすばやさをこうそくいどうで補う。これはもう回避不可能だから無理やり突破する。

 

 

「とびかかるだ!」

 

「とぐろをまく」

 

 

 後ろ脚を展開して跳躍し宙返り、飛び蹴りを叩き込むレクスだが蜷局を巻いたノココッチに防がれる。厄介だな、防御しながら攻撃力と命中率を上げるのは。

 

 

「ドリルライナー」

 

「こうそくいどう!」

 

 

 下から突き上げる様にドリル尻尾が繰り出され、麻痺して一瞬動きが止まりながらも後ろ脚を畳んでギリギリ顎を引いて回避するレクス。腹部ががら空きだ、今がチャンス!

 

 

「ハイパードリル」

 

「にどげり、からのフェイントだ!」

 

「ほう」

 

 

 後ろ脚を展開して腹部に二撃蹴り込み、続けざまに回し蹴り。蹴り飛ばされたノココッチはバトルコートを跳ねて飛び石の様に吹き飛ばされていき、倒れ伏す。戦闘不能だ。

 

 

「フェイントで繋げることでこちらの技の出を潰すとは見事です。太古のシンオウ…ヒスイ地方で見られた技術、早業に似てますね」

 

「早業?」

 

「力業と言う技術もあるようですが、詳しくは知りません。しかし、なかなかやりますね。負けそうですよ。ムクホーク」

 

 

 早業に力業……偽龍のヌシのところに行ったら一度オレンジアカデミーに戻る予定だし、書庫で調べてみるかと考えていると、最後のポケモンの入っているであろうモンスターボールを取り出して、ムクホークを繰り出したアオキさんに激励する声があった。カウンターの奥にいた女性の料理人……店長なのかな?……だ。

 

 

「コラー!アオキさん!シャキッとしなさいよ!」

 

「店長……?」

 

「腹ペコのお客が待ってるよ!いいとこ見せて頂戴よ!」

 

 

 するとその声に呼応する様に観客が入り口からどんどん入ってくる。店の外から見ていたのが我慢できなくなったらしい。ジャックはそれを見て目立てると思ったのか目を輝かせる。

 

 

「アオキさんも学生さんも負けるなー!」

 

「どっちも頑張れー!」

 

「うおーっ!この街で今一番強い二人の勝負だ!飯が進むな!」

 

「おい最後の誰だ。人の頑張りを飯の肴にするなこら」

 

 

 思わずツッコんでいると、アオキさんは溜め息を一つ着くと軽く屈伸して改めてテラスタルオーブを構え光り輝かせると投擲、ムクホークは頭に宝石を乗せた様な姿に結晶化する。ノーマルテラスタルか。

 

 

「……とのことです。お付き合いくださいラウラさん。ちょっとはサービスしますかね。ムクホーク、テラスタルです」

 

「ムクホークか……また勝ってしまおうか?ジャック!」

 

 

 さて、ムクホークと言えばジャックと出会った一件だが、その個体とは別個体の様だ。ノーマル技を半減で受けれる相性有利なジャックと交代。ステルスロックが刺さったがいかくされてしまった上にアドバンテージを取れるひこうタイプが消されたのが痛い。しかもその癖に飛んでるし。

 

 

「社会人お得意の技!出してもよろしいでしょうか?」

 

「お、おう?」

 

「からげんき、です」

 

 

 やめろよ社会人の得意技って言うの!?悲しくなるだろ!とか言っている間に凄まじい一撃が麻痺して防御が間に合わなかったジャックに炸裂、大きく吹き飛ばすがコートを滑って耐える。半分近く持ってかれたか?いわタイプでこれなら受けない方がよさそうだな。

 

 

「確実に当てろ、つばめがえし!」

 

「こちらもつばめがえしです」

 

 

 鋭い蹴りと岩斧が交差。わずかにジャックの岩斧が掠るも、蹴りが顔面に炸裂し倒れ伏すジャック。さすがに無理か。

 

 

「レクス!こっちもいくぞ、テラスタル!」

 

 

 最大火力で勝負だ。こちらもテラスタルオーブを使い、レクスをむしテラスタル。両者睨み合う。頼むから麻痺しないでくれよ。

 

 

「ステルスロックを利用しろ!とびかかる!」

 

「からげんき!」

 

 

 後ろ脚を展開し、ステルスロックを蹴りつけて跳躍しピンボールの様に勢いを増して行ったレクスの飛び蹴りと、凄まじい勢いで振るわれる翼が激突。するとレクスは使ってない左後ろ足で蹴り付け跳躍してからげんきの威力を殺しながら宙返りすると、ステルスロックに着地。大きく体勢を沈み込む。ステルスロックを利用しろ、と言った時理解したらしい。一撃で決める必要はないと。

 

 

「確実にもう一撃!とびかかる!」

 

「つばめがえし!」

 

 

 そしてステルスロックを蹴り砕く勢いで真横に飛び出したレクスの飛び蹴りが弾丸の様に、技を放とうとしていたムクホークに激突し、蹴り飛ばす。蹴り飛ばされたムクホークはきりもみ回転して天井に激突、床に叩きつけられて目を回したのだった。

 

 

「一敗食わされました…並々ならぬ強さですね。思わず無表情になりました」

 

「それは嘘だな」

 

「…というと?」

 

「応援されていた時のアオキさん、輝いていた様に見えた。それこそテラスタルの様にな」

 

「…目の錯覚です。自分の負けなのでバッジを渡すのですが……」

 

 

 すると鳴り響く腹の音。アオキさんからだ。

 

 

「…戦ったら腹減りました。よければ一緒にどうですか?」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて?」

 

 

 アイアールとはまた来ればいいだろう。多分アイツ三日ぐらい山に籠りそうだし。その後、山になったおにぎりを食べるアオキさんにちょっと引いたり、奢ってもらったりした。ちなみに焼きおにぎりが美味かった。いい人だったな。




以前はぼろ負けだったムクホーク(別個体)に勝利。着実に強くなってますね。

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VSヘイラッシャⅠ

どうも、放仮ごです。某Vたちのバトルを見てこいつらつええな、と感想を抱いたことから生まれた話。

今回は偽龍のヌシに単騎で挑むラウラの話。楽しんでいただけると幸いです。


「お疲れ様です」

 

 

 宝食堂から出ると、そこには野次馬に写真を撮られている毛量のすごい色黒の人がいた。この人は確か……。

 

 

「先程ジムリーダーに勝利されていたようですね。それも四天王業務から解放されバトルに力を入れ始めたアオキに勝つとは……たしかお名前は……ラウラさん。貴方もチャンピオンを目指していらっしゃるのですか?」

 

「はい。俺は蟲ポケモンで貴方を倒すので」

 

 

 この人が誰かを理解した上で唐突な問いかけに、目を合わせて応える。すると女性は楽しそうに笑った。

 

 

「いい返事を聞けました。類い稀な若き才能……さらなる高みを目指して突き進むことを願います。ああ、失礼。申し遅れました。知っている様ですが私はオモダカ。ポケモンジムを運営しているポケモンリーグの委員長です」

 

 

 あえてもう一つの肩書は言わないか。なら俺も触れないでおくとしよう。すると手招きされ、人気の少ない路地裏に案内される。人込みでは話せない内容か。

 

 

「実はネモから連絡をいただき飛んできました。謎の人物に襲われたというのは本当ですか?」

 

「はい。俺と……アイアールが狙われました。そのうち一人はエスプリと名乗ってましたが……恐らく偽名です。同じ勢力かは不明ですが、アイアールを襲った奴は青装束が目印です」

 

「ふむ。実は同じ報告がクラベル校長経由でサニアさんから伝えられていました。半信半疑ですがこうも被害者が多いとなるとなにかが暗躍しているのは間違いないようですね。被害は?」

 

「コライドン…アイアールの手持ちが一度奪われかけたぐらいでなんとかなりました」

 

「さすがです。ですが逃げれる時はすぐ逃げる様に。……ムツキの操作網を掻い潜るとは。真に(さか)しい悪は闇に潜むということですかね」

 

 

 サニアやムツキもなにかしら関係しているのか。

 

 

「任せてください、すぐ対策を講じましょう。トレーナーに危険が及ぶのは放っておけません。ではでは貴方と…アイアールさん。ジムバッジを集め続けるならその先でまたお会いできるでしょう。それではごきげんよう」

 

 

 そう言ってオモダカさんは去って行った。貫禄あるなあ……あれが俺の超えるべき目標か。強くならないとな。記憶があれば元の強さを取り戻せるかもとはネモの談だが……記憶と言えば秘伝スパイスか。

 

 

「…アイアールはいないが、行ってみるか。偽龍のヌシ」

 

 

 チャンプルタウン北西の巨大な湖、オージャの湖にいると言う正体不明のヌシ。アイアールはまだ修行中だろうし呼ぶわけにもいかないだろう。一人で行ってみよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ロトロトロトロト……「ようラウラ!一人か?アイアールは?」》

 

 

 オージャの湖に着くとペパーから電話がかかってきた。どっからか見てるのかね。

 

 

「修行にナッペ山に登ってるよ」

 

《「へえ、まあいいや。今オージャの湖だろ?その湖にどっかに偽龍のヌシがいるらしいんだけどよ?誰一人として姿かたちを見たことがねえんだと」》

 

「なんだそれ。どうすんだじゃあ」

 

 

 本当に情報ゼロか。どこらへんにいるかは目星をつけたいが。こんなに広い湖だし。

 

 

《「それなんだよな。いったいどんな恐ろしい見た目してんだろうな?姿がわからねえんじゃ探し様がないぜ……「オレがヌシー!」ってわかりやすく自己紹介してくんねえかな?」》

 

「今までの感じだとでかいやつがヌシだろ。何とか探してみるさ」

 

《「頼もしいぜラウラ!でも無理はするなよ?危険だと思ったら撤退するのも大事だからな!」》

 

 

 そう言ってペパーの電話が終わり、俺はオージャの湖を高台から見渡す。……うん?あの島、なんか色とりどりだな。赤色とオレンジ色と黄色い物がなんか点々としている。気になるな、行って見るか。

 

 

「…コライドンがいなくても割となんとかなるんだぞっと」

 

 

 そう言って繰り出したのはダーマとレイン。ダーマに抱えてもらい、空を舞うレインに糸を繋いで空に舞い上がり湖上を進んでいくと見えてきた。

 

 

「なんだあれ……寿司?」

 

 

 なんか寿司が小さな島に点在していた。なんでえ?えーと、ポケモンか?図鑑図鑑と…。

 

 

「シャリタツ……ぎたいポケモン。みずとドラゴンなのか。へえ。知能も高いのか」

 

「スシスシー」

 

「スシッスー」

 

「スメーシー」

 

「シャリ!シャリ!」

 

「しかも喋るのかよ。まさか本当にヌシだって自己紹介したりしてな。偽龍って言うか擬態する龍だが」

 

 

 そんな冗談交じりの事を言いながら空から観察していた時だった。

 

 

「ヌシヌシー」

 

「え」

 

「オレヌシー!!」

 

「お前かー!?」

 

 

 なんか自己紹介している赤いシャリタツがいた。なんぞこれ、と思いながら近づくと、突如湖面から巨大な何かが出てきてシャリタツを丸呑みにしてしまう。

 

 

「食われたー!?」

 

「ヘイ!ラッシャー!!!」

 

「ナマズン……いや、違う!?」

 

 

 ナマズンによく似た……だがとにかく巨大なポケモン。図鑑で調べる。20mはあるぞ……本来は12mぐらい!?でかすぎんだろ、おい。名前はヘイラッシャ。おおなまずポケモン。タイプはみず単体。ナマズンの進化系じゃない……だと……!?

 

 

「お前が偽龍のヌシか……!」

 

「ヘイ、ラッシャイ!」

 

「避けろレイン!」

 

 

 大口を開けてみずのはどうを連続して撃って来るヘイラッシャの攻撃を、レインに指示してダーマにしがみ付き大きく旋回して回避する。

 

 

「ダーマ!むしのていこう!」

 

 

 空いている手でむしのていこうを放たせるも、ヘイラッシャは意にも介さずその場で水面から跳躍。その巨体が宙を舞う。のしかかりか…!?

 

 

「レイン、でんこうせっかで逃げろ!ダーマ、スレッドトラップ!」

 

 

 咄嗟に陸地に着地して指示。レインは横に避け、ダーマはスレッドトラップを展開して俺ごとのしかかりを防ぐ。

 

 

「レイン、エアカッター!ダーマ、むしのていこう!」

 

 

 そのままエアカッターとむしのていこうを放つもまるで意に介さずみずのはどうでレインを撃ち落とすヘイラッシャ。レインをボールに戻しながら考える。おかしい、いくらなんでも強すぎるし図体がデカいくせに選ぶ技が的確だ。誰かトレーナーがいる…?すると誰かの言葉が届いたわけもなく、何かの指示を聞く様に頷くと大きく水を纏った尻尾を振りかぶるヘイラッシャ。

 

 

「アクアテールか…!?ダーマ、スレッドトラップ……つぅ!?」

 

「ヘイラッシャー!!!」

 

「え?」

 

 

 俺、飛んで……?瞬間、スレッドトラップを展開したダーマごと、俺の身体はヘイラッシャに薙ぎ払われていた。ダーマが咄嗟に庇ってくれたからダメージは少ないものの、凄まじい勢いで空を舞う俺の身体。

 

 

「あぁああああああああああああっ!?」

 

 

 俺はなすすべなく、ダーマと共に吹き飛ばされるしかなかった。




無謀の(きわみ)ラウラ。オモダカさんやっと出せました。さすがのオモダカさんも早速自分から危険に首を突っ込むとは思わなんだ。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSフォレトス

どうも、放仮ごです。オリキャラ組は最初に六匹の手持ちを決めて、それとどう出会って行くのかをプロットで書いてから執筆してます。

今回は吹き飛ばされたラウラのその後。楽しんでいただけると幸いです。


「うわぁああああああああっ!?」

 

 

 天高く空中を舞い上がる。上がったということは翼を持たない限りつまり落ちると言う事であり。

 

 

「…あー、もう」

 

 

 オージャの湖を飛び越えて眼下に雑木林が見えてきたかと思えば、俺は落下していた。思わずため息と言葉が漏れる。わりぃ、俺死んだ。なんかそんな言葉が浮かんだが、なんか生き残れる気がする台詞だ。

 

 

「っ!」

 

ボヨーン!

 

「ぐえっ」

 

 

 すると落下地点に先に落ちていたらしいダーマが糸でトランポリンを作ってくれてそれに腹から激突、引っくり返って地面に背中から激突した。た、助かった……。頭も打ったがエクスレッグヘルメットのおかげで軽傷で済んだ。

 

 

「いたた……サンキューなダーマ」

 

 

 お礼は大事。セイジ先生もそう言ってた。ダーマをボールに戻し、辺りを見渡す。ラランテス、カリキリ、フォレトス、ヘラクロス、ワナイダー………蟲の楽園かな?みんな空から落ちてきた俺を警戒しているのか一定の距離を保って近づいてこないが。とりあえずとスマホロトムを取り出す、よかった壊れてなかった。

 

 

「えーと、マップっと……随分とまあ飛ばされたな。オコゲ林道、か。とりあえず連絡だな」

 

《ロトロトロトロト……》

 

「おっ、噂をすればアイアールか。もしもし」

 

《「ラウラ!?今どこ!?チャンプルタウンに戻ったらラウラいないし、ジムテストに再度挑んでたらなんかオージャの湖から凄い音聞こえてきたんだけど!?」》

 

 

 電話に出るなりまくしたてるアイアール。チャンプルタウンに戻ってたならもう少し待てばよかったな。

 

 

「落ち着け。その凄い音のヌシは多分俺と偽龍のヌシだ」

 

《「私を置いてひとりで行ったの!?バカなの!?」》

 

「ああ、俺が馬鹿だったよ。いいかアイアール、偽龍のヌシに手を出すな。あれは今の俺達じゃ敵わない相手だ。どう見積もっても四天王クラスに強かった」

 

《「そんな強いやつと戦って、ラウラ無事なの!?」》

 

「吹き飛ばされはしたけど生きてるよ」

 

 

 腰は強打したけど。まあ無事な範疇だろう。

 

 

《「私を連れて行かないから!」》

 

「連れて行ったらどっちか死んでたかもだぞ」

 

《「とりあえず迎えに行くから!今どこにいるの!?」》

 

「オコゲ林道、らしい。蟲タイプの楽園だし六匹目探してみるからゆっくりでいいぞ」

 

《「六匹目と言えば私も捕まえたよ!アルクジラのハルクララ!」》

 

 

 アルクジラ。聞いたことないポケモンだな。でもニックネームと名前が重ならないんだが。

 

 

「…なんでハルクララ?」

 

《「調べてみたらハルクジラってポケモンに進化するのと、出会った時に何故か木に頭突きしてクラクラッてしてたから」》

 

「良いネーミングセンスだな」

 

 

 電話しながら林道を歩いて行く。うーん、ラランテスとかむしタイプじゃないけど凄い食指が動くんだがなんか俺の知らない記憶が「喧嘩になるからやめとけ」って囁いている。過去に持ってたことがあるのかな?ウルガモスもそうだったし。

 

 

「こっちも負けてられないな……あっ」

 

《「あ?」》

 

ドカァアアアアアアン!!

 

 

 次の瞬間、そそくさと逃げようとしていたフォレトスの一匹と目が遭い、だいばくはつが俺を吹き飛ばし、木に背中から叩きつけられる。痛い。エクスレッグヘルメットが無かったらやばかった。

 

 

「…すまん。電話切るぞ」

 

《「今の音なに!?やっぱり今すぐそっちに…」ピッ》

 

 

 また傷付いたとか知ったらうるさそうだから無視して電話を切り、なんとか立ち上がって駆け寄る。そこにはだいばくはつして瀕死になったフォレトスがいた。

 

 

「…ドジな奴だな。驚いてだいばくはつするってどんなヘタレだ」

 

 

 咄嗟に飛び退いたからか、制服が焦げてまた背中を強打しただけですんだ俺と違い、爆心地そのものだ。黒焦げで目を回して倒れているフォレトスを抱え上げてふかふかの草むらに置いてやる。

 

 

「…ほら、げんきのかけらだ。脅かして悪かったな」

 

 

 げんきのかけらを取り出し与えてやる。さすがにこの状態のこいつを一方的に捕まえるのは駄目だろ。ついでにレインもげんきのかけらで復活、ダーマ共々回復させていると、フォレトスが目を覚ました。

 

 

「…?」

 

「よう、目が覚めたか?」

 

「!」

 

ボッカァアアアアアアン!!

 

 

 またかよ。目を覚まして俺を確認した瞬間、涙目になってまただいばくはつしてきて吹き飛ばされたんだが。それでまた瀕死って……お前よく野性を生き残れて来たな。エクスレッグヘルメットのおかげで俺本体は無事だったが、さすがに服が焼けてあられの無い格好になってしまう。…秋服にでも着替えるか。

 

 

「ったく、世話の焼ける奴だなあ…」

 

 

 人目も無いのでその場で着替え終えてどうしたものかとフォレトスを見下ろす。……放っておくわけにもいかないし、だいばくはつさせないためには、仕方ないか。

 

 

「よっ」

 

 

 オレアからもらったネットボールを取り出し、投げつけて気絶したフォレトスを捕獲。アオキさんからもらったわざマシン「からげんき」を鞄から取り出すとスマホロトムと接続し、フォレトスに使用。スマホ画面からだいばくはつを選び、からげんきを覚えさせる代わりにだいばくはつを忘れさせる。しかしヘビーボンバー、まきびし、だいばくはつ、でんじほうを覚えていたのか………うーん。

 

 

「さすがにこんな無理矢理な形で手持ちにするのは駄目だよなあ」

 

 

 ……本人に聞いてみるか。フォレトスをげんきのかけらで復活させ、ボールから出すと不思議そうな顔で辺りを見渡し俺に気付くと踏ん張り、不思議そうに体ごと傾けて首を傾げる(?)フォレトス。やめなさいって怖いから。怯えて木の陰に隠れる姿から、だいぶおくびょうな性格らしい。

 

 

「お前のだいばくはつは忘れさせたからもう自爆する事はないぞ。おせっかいだったか?」

 

「!」

 

 

 尋ねると、体を横に振るフォレトス。だいばくはつは勝手に覚えてしまった技なのだろうか。心なしか嬉しそうな様子が可愛い。

 

 

「お前には二つの選択肢がある。このまま俺の手持ちになるか、それとも野生に還るかだ。俺について来る気があるなら、この手を取ってくれ」

 

 

 そう言って手を差し出すと、フォレトスは考えるかの様に静止すると、ふよふよと浮いて俺の手に砲身のような脚を触れて笑みを浮かべた。どうやら警戒をやめてくれたらしい。

 

 

「じゃあそうだな……今日からお前は「ぼむん」だ!」

 

 

 そう名付けると笑顔でぴょんこぴょんこ跳ねるフォレトス改めぼむん。可愛い。そんな、和んでいた時だった。

 

 

ズゴゴゴゴゴ…ッ!!

 

「ソ……!ゲ……!」

 

「ん?」

 

 

 なにか地鳴りの様な音の後に、謎の声が聞こえてきたのは。




だいばくはつを受けても痛いですむラウラ。夏服がボロボロになったので秋服にバージョンチェンジです。ヘルメットが無かったら重傷だったかもしれん。

ラウラの六匹目、フォレトスのぼむんと、アイアールの六匹目、アルクジラのハルクララ。後者は放仮ごがスカーレットをプレイ中に捕まえた旅パの子に付けてた名前です。お披露目は合流後かな。

フォレトスは構想当初からラウラの手持ちに入ってたポケモンです。理由?ポケスペ五章のフォレトスが好きだからです。可愛いよね。それはそうとあのチビは許さん。だいばくはつして出会う、はプロット初期から考えていたシチュですね。ここに持ち込むためだけにヘイラッシャに突撃させるという無茶をさせました。オコゲ林道に寄る理由がマジでこれしかなかったんや……。

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VSキリキザン

どうも、放仮ごです。ついに敵組織のベールが剥がされます。

今回は災いの器とそれを狙う者との戦い。楽しんでいただけると幸いです。


 新たな仲間、ぼむんを手に入れた矢先に聞こえてきた地響きの様な音と不思議な声。不思議に思った俺はしっかり手持ちのポケモンたちを回復させてからその声の下に向かうと、見覚えのある人物と遭遇した。

 

 

「マトイ先生?なんでここに?」

 

「あら、ラウラさん。また会ったわね。先生じゃなくて私はただの司書よ?こんばんは。いい子にしてる?」

 

 

 モスノウを傍らに連れた、オレンジアカデミー司書、マトイさん。あく組に乗り込む直前に出会って以来だ。そんな前じゃないのに結構前な気がする。

 

 

「私は四災(スーザイ)と呼ばれるポケモンの一匹、鉄器のディンルーを探してきたのよ」

 

「ディンルー…?」

 

「東の国から伝わった4つの宝のひとつよ。封じていた杭がいくつか無くなっていて、気になって祠を見に来たの」

 

「祠?」

 

四災(スーザイ)が封じられている各地にある古代の遺物のことよ。でも今の地鳴り、まさか祠が開いて…?」

 

 

 そう言って早足で歩いて行くマトイさんとモスノウの後を着いて行く。なんだか気になった。行かなきゃいけない気がして。そして、小道の入り口に彼女はいた。

 

 

「災いの鉄器が目覚めた確率、99%……ボスの情報によればこの先にいるはずだ」

 

「何者かしら」

 

「…その格好、お前…アイアールを襲ったやつか!」

 

「お前たちは……」

 

 

 青装束に緑色の髪、緑色のゴーグルにリップ。アイアールの言ってた襲撃者だ。俺達二人を見て驚いた様子を見せたその女は、モンスターボールを構えて不敵に笑んだ。

 

 

「邪魔者を切り刻め、キリキザン」

 

「バトルは苦手だけど、生徒に戦わせるわけには……」

 

「いや、俺が戦う。マトイさんは下がっててくれ」

 

 

 繰り出してきたのはキリキザン。マトイさんが戦おうとしたので手で制してボールを構える。マトイさんの手持ちはモスノウ、はがねタイプ相手にはきつい。

 

 

「レクス!とびかかる!」

 

「キリキザン、つじぎり!」

 

 

 レクスを繰り出して飛び蹴りを繰り出させるも、つじぎりで迎撃させる女。なんて練度だ、相性が悪いつじぎりで迎撃するとは。

 

 

「お前……この強さ、何者だ?」

 

「…………いいだろう。教えてやろう。私はバラ。ブルーフレア団の幹部だ」

 

「ブルーフレア団…?」

 

 

 バイザーで見えない表情でなにか考えてから応えるバラの名乗った名前に首を傾げる。ブルー?アイアールが言ってたフレア団じゃないのか?

 

 

「フレア団…じゃない?」

 

「フレア団はやり方を間違えた。我々は新たなやり方を模索する、新生フレア団だ。名乗ったからには死んでもらう確率、95%。キリキザン!」

 

 

 バラが指示するとはがねタイプとは思えない素早さで駆け抜けるキリキザン。狙いは俺だ。

 

 

「レクス!」

 

 

 後ろ脚を展開して蹴り上げることでキリキザンの刃を弾くレクス。そのまま刃と蹴りの応酬が行われていく。

 

 

「ハサミギロチン」

 

「なに!?」

 

▽いちげきひっさつ!

 

 

 レクスが蹴りを繰り出した隙を突き、バラの指示を受けて鈍い光を纏った刃を交差させて炸裂させるキリキザン。レクスは一撃で瀕死となり、崩れ落ちる。嫌な技覚えているな…!

 

 

「ダーマ!」

 

「つばめがえし!」

 

「カウンター!」

 

 

 次に繰り出したダーマで、キリキザンのつばめがえしに合わせてカウンターの一撃を叩き込む。ズザーッと吹き飛ばされるも耐え抜くキリキザンが一瞬でダーマに肉薄する。

 

 

「アイアンヘッドだ!」

 

「スレッドトラップ!」

 

 

 スレッドトラップを展開しきる前に頭部の刃で糸を斬り裂かれて頭突きが叩き込まれ、ダーマも戦闘不能。強すぎる……今俺の手持ちで一番練度が高いのは……お前か。さっそくで悪いが。

 

 

「頼むぞ、ぼむん!まきびし!」

 

「ッ!止まれキリキザン!」

 

 

 繰り出すと同時に四つの脚の穴から撒菱をばら撒きキリキザンを近づかせない。よし、じめんタイプの力を持つ撒菱だ。そう迂闊に近づけまい。

 

 

「まきびしを射出しろ!」

 

 

 からげんきやヘビーボンバーでははがねタイプには通らない。かといってでんじほうじゃ命中率に難あり。ならばと、設置技のまきびしを攻撃に転用する。ちょうどいいことに、フォレトスの脚は射出するのに特化している。砲台として利用してまきびしを射出する、俺の意図に気付いたぼむんがまきびしを高速で射出。次々とキリキザンに突き刺さる。効果は抜群だ。

 

 

「ヒスイの時代のまきびしの使い方……攻略率100%。つじぎり!」

 

 

 すると射出し続けるまきびしを、バラの指示を受けて刃で斬り落としていくキリキザン。なんて強さと連携だ。相当な時間を過ごしている相棒と見た。仲間にしたばかりのぼむんじゃ分が悪いか。

 

 

「とどめだ、ハサミギロチン!」

 

 

 突進して来て、レクスを倒した斬撃を叩き込まんと両腕を振りかぶるキリキザン。その時を待っていた。

 

 

「近づいてくれてありがとよ!でんじほう!」

 

「なんだと……!?」

 

 

 高威力のでんきタイプの砲撃が零距離で直撃、麻痺して吹き飛ぶキリキザン。これは効いただろう。

 

 

「…なるほど。あのまきびしは、ルートを限定するためのものだったのね」

 

「そういうことです、マトイさん」

 

 

 後ろで見ていたマトイさんが呟いた言葉に頷く。対してバラは自分の計算が外れたからか狼狽えていた。

 

 

「馬鹿な……命中率に難ありのでんじほうを四つしか覚えられない技に採用しているだと……理解不能、理解不能…!」

 

「だろうな。こいつは捕まえたばかりでな、俺はちょっとしか手を加えていない。ヘビーボンバー!からのからげんき!」

 

 

 残り体力は少ないだろうと考え、ヘビーボンバーで接近してからの連続攻撃。押し潰し、恐怖を晴らすかの様に滅多打ちにしたぼむんの猛攻を受けて目を回すキリキザン。戦闘不能だ。

 

 

「くっ……からげんき、だと……理解ができぬ!」

 

「理解しなくてもいいが観念しやがれ」

 

「馬鹿め。まだ手持ちはいるぞ……!」

 

 

 そう言って、バラが次のモンスターボールを取り出した時だった。

 

 

「ソ……ゲ……ソソゲー!!」

 

「「「!」」」

 

 

 俺とマトイさんが最初にそれを見て、バラも一足遅く振り向いて気付く。バラが塞いでいた小道の向こうから、異様なポケモンがやってきたのだ。土石で形成された四足歩行の体に、中心から真っ二つに割れた巨大な青銅の器が立派な角になっている厳しい姿。マトイさんが感動からか口元を手で覆っている。

 

 

「あれが災厄の器ディンルー……美しいわ!」

 

「こいつがディンルーか…!?」

 

「最重要ターゲット……捕獲!」

 

 

 手にしていたモンスターボールをしまってクイックボールを取り出すバラ。捕獲する気か!?

 

 

「させるか!」

 

「邪魔をするな!」

 

 

 咄嗟にバラに飛びかかり、もみくちゃとなる。クイックボールを奪い取ろうと手を伸ばすも、靴底から炎を噴射したバラの飛び膝蹴りを受けてしまう。

 

 

「があっ!?」

 

「邪魔をするからだ。捕獲…なっ!?」

 

「おいおい嘘だろ……!?」

 

 

 俺達が争っていることに苛立ったのか、ディンルーはその重そうな頭部を一振り。地割れを生み出し、俺とバラは巻き込まれる。マトイさんは地割れから離れていたものの衝撃からか吹き飛ばされてモスノウに受け止められていて、バラもブーツからの炎で空を飛んで逃れるが、俺はそうもいかない。

 

 

「ダーマ……は戦闘不能だったー!?」

 

 

 咄嗟にダーマを繰り出そうとするも戦闘不能であり、俺はなすすべなく落ちて行く。

 

 

「うわぁああああああ!?」

 

 

 なんか落ちてばっかりだなと思いつつ、迫ってくる底に死を覚悟したその時、ボールホルダーから勝手に誰かが飛び出してきて俺を抱きとめて着地する。見てみれば、ウカだった。

 

 

「助かったよウカ……ありがとう。しかし参ったな。深さ50mはあるぞ…?」

 

 

 遥か高くの地上を見上げて困っていると、ウカが自分の背を指し示す。乗れってことか?翅の生えている背中にしがみ付くと、ウカはピョンピョンと切り立った岩肌を跳んでいき、一気に地上まで出ると、ちょうどディンルーをダークボールに収めているバラが見えた。

 

 

「なに!?チヲハウハネ……!」

 

「そのまま連れて行かせはしないぞ、ブルーフレア団!暴れろウカ!」

 

「くそっ…潰せディンルー!」

 

 

 そしてバラの繰り出してきたディンルーと、ウカが激突した。




大活躍ぼむん。まきびしで制限してでんじほうを当てるのは「サイケまたしても」って漫画が元ネタ。

四災研究家マトイさん。ポケモンバトルは得意ではない模様。今のところ四災関係の時のイベントキャラですね。

そしてついにベールが剥がされた敵組織。感想欄でばれてたけどフレア団科学者だったバラと、新生フレア団ことブルーフレア団。青いのはまんまでした。どんな組織なのかはまたおいおい。ちなみにキリキザンなのは原作XYでの切札ポケモンだからです。

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VSディンルー

どうも、放仮ごです。前回から切ったのでちょっと短い内容となります。

VS災いの器ディンルー。楽しんでいただけると幸いです。


 激突する、バラの繰り出したディンルーと俺を下ろして突撃したウカ。ヤバい相手だからか言うことを聞いてくれている、行ける!青銅の角と拳が鍔迫り合いとなる中で、バラは一枚のディスクを取り出し袖…の形をしている何かの機械に挿入して袖の小型キーボードを叩く。

 

 

「ディンルー、わざマシン86だ。有利になる確率87%。使え」

 

「ウカ!ニトロチャージ!」

 

「いわなだれ」

 

 

 まず素早さを上げるべく炎を纏わせ拳を叩き込むウカに対し、空中からいわなだれを放ってくるディンルー。するとウカは上がった素早さを使って大きくバックステップ、大きく腕を振り回して身構えると、まるでインファイトの様な動きで岩を殴り砕いて行く。お前、インファイト覚えてなかったはずなのにすごいな!?

 

 

「しびれごなだ!」

 

「カタストロフィ!」

 

 

 両手を腰に合わせて自分の身体から湧き出した黄色い粉を玉状に集め、発射するウカ。対してディンルーは闇の衝撃波を放って対抗、しびれごなを吹き飛ばす。

 

 

「嫌な技を覚えているな。じわれ!」

 

「お互い様だろ!とびかかる!」

 

 

 俺ごと始末をつけようとしたのか、じわれを繰り出してくるバラとディンルー。ウカがディンルーにとびかかるのと同時に俺も側転でじわれを回避。命中率の精度の低さは伊達じゃない。

 

 

「いちげきひっさつ技ばかりに頼るのもいいが、狙いどころは考えないとな!」

 

「普通の人間はそうポンポンとポケモンの技を避けられないものなのだがな?……そうか、お前は。ラウラである確率87%」

 

「お前……俺の記憶についてなにか知ってるのか…!?」

 

 

 弾き返されたウカが俺の傍で構えて睨み合ってた中で、バラが口にした俺の名前に反応する。まだ名前は言ってない筈なのに俺の名前を知っているということは記憶を失う前の俺を知っているのか…!?

 

 

「そうか、そういうことか。同一人物である確率100%……残念だったな、私はお前については詳しくは知らない。だが……安心しろ。ブルーフレア団の敵であることは確かだ」

 

「…お前を捕まえる理由が増えたな。ローキック!」

 

「じだんだ!」

 

 

 前の技が外れると威力が大きくます技、じだんだが襲いかかるもウカは素で耐えて駆け抜け、スライディングして蹴りを叩き込んでディンルーを転ばせる。なんか、大事な誰かを思い出しそうな攻撃だったが今はそれどころじゃないか。

 

 

「いわなだれ」

 

「とびかかる」

 

 

 ディンルーの放った岩の雪崩を、炸裂する前に突撃、渾身の拳を叩き込むウカ。効果は抜群、ってことはあくタイプかエスパーかくさか……それと恐らくじめんタイプの複合か。とにかく、こちらが優勢だ。

 

 

「しびれごな!ニトロチャージ!ローキック!とびかかる!」

 

 

 しびれごなを玉状に纏めて放射して、それをディンルーが頭を振るって防いだところに、炎を纏って突撃し加速した拳を青銅の頭部に叩き込み、たたみかける様に足払いして吹き飛ばし、それを追って跳躍して身を捻り、回し蹴りを叩き込んでディンルーを地面に叩きつけるウカ。戦闘不能らしく、バラは忌々しそうにボールに戻した。

 

 

「……了解。持ち帰ることを優先。シロデスナ。すなあらし!」

 

 

 耳に手を当てて誰かと通信していたバラが次に繰り出してきたのはシロデスナ。出た瞬間自分の身体をばらけさせて砂嵐に変貌、ウカごと俺を飲み込んだ。

 

 

「ぐっ…ウカ、離れるな!アイアールの時みたく襲ってくるかも…」

 

「今の戦力でチヲハウハネに勝つのは不可能。次会った時にはいただくぞ。離脱!」

 

 

 すると砂が吹きつけていたかと思えばシロデスナをモンスターボールに戻し、靴底から炎を噴射させて空を飛び離脱するバラ。あれは追い付けないか。

 

 

「…逃げられた。おちつけウカ、これはお前の勝ちだ」

 

 

 悔しがる様に地団太を踏むウカを宥めつつボールに戻す。また当分は言うことを聞いてくれなそうだな。すると小道の先からマトイさんとモスノウがひょっこり顔を出した。

 

 

「ラウラさん、大丈夫!?」

 

「そっちこそ、姿が見えないんで心配してましたマトイさん」

 

「あのブルーフレア団を名乗った連中……私から校長にお伝えしておくわ。リーグにも伝達されると思う」

 

 

 そらとぶタクシーをスマホロトムで呼びながらマトイさんはそう伝えてきた。これで少なくともオモダカさんには伝わるかな。

 

 

「あ、そうだ。調べたいことがあってアカデミーの蔵書を利用したいんだが…」

 

「いつでもいらっしゃい。貴方もアカデミーの生徒だもの、遠慮することないのよ」

 

「…コネで入ったようなもんですけどね」

 

「関係ないわ。私の親友、レホールの生徒の一人でしょ?そろそろ彼女の授業もあるからぜひ参加してあげて」

 

「…ぜひ」

 

 

 何故か気に入られてて怖かったりするんだがな、あの先生。そうこうしていると、イキリンコに引かれたそらとぶタクシーがやってきて、マトイさんはそれに乗って去って行った。

 

 

「…さて。ハイダイさんやアオキさんにも苦戦したし、バラ相手にもだいぶ押された。……アイアールが来るまで修行するか、暴れたらわかりやすいだろ」

 

 

 げんきのかけらときずぐすり等で回復し、手持ち全員を繰り出す。ぼむんだけ見知らぬポケモンたちに怯えて俺の後ろに隠れてしまい注目を集める。

 

 

「レクス。ダーマ。レイン。ジャック。ケプリべ。そしてウカ。紹介するよ、新入りのぼむんだ。ウカは言うことを聞いてくれないし六匹目として加入する。仲良くな」

 

 

 俺がそう言うと頷いてくれる手持ち達。…ちょっぴり頭が寂しい気もするがこれが今の仲間だ。一緒にジムを、ヌシを、スター団を、そしてブルーフレア団を……乗り越えよう。




シロデスナで勝てたんじゃねと思いますが、なんか通信を受けてバラは撤退しました。通信の相手はブルーフレア団のボスですとだけ。

ピンチの時だけ手伝ってくれるウカ。実力を発揮。レクスが蹴りメインのスピード重視だとすれば、拳メインのパワー重視となります。同じとびかかるなのにだいぶ違いますね。しびれごなをかめはめ波みたいに撃つのも特徴。

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岩壁のヌシ、くさジム、ほのお組
VSアーマーガア


どうも、放仮ごです。まだまだ明かせない情報が多すぎてどう出していくか四苦八苦してます。

今回はブルーフレア団の実態。楽しんでいただけると幸いです。


 パルデア某所。ブルーフレア団のアジト。とある店と繋がっている入り口を開き、不機嫌そうに戻ってきたバラを出迎える人物たちがいた。

 

 

「アハハ!またしくじったの?バラ」

 

「ゴホン。あら。バラ、聞きましたわよ。ジムリーダーでも四天王でもない相手に敗れておめおめと帰って来たんですってね?」

 

「うるさいぞアケビ、グロリア。特にグロリア、新参者の分際で何様だ」

 

 

 サニア相手にチオンジェンを奪い取った人物であるアケビと、銀髪をパーティアレンジに纏め青いドレスの様な衣装を纏い扇子で口元を隠した少女を、バラは苛立ちのまま睨み付ける。ブルーフレア団幹部の一人、その名もグロリアである。

 

 

「何様?わたくし、お嬢様ですわッ!!オーホホホッ!」

 

 

 傍に侍らせた、パルデアではとある天敵ポケモンがいるため珍しいアーマーガアに咆哮させ、芝居じみた高笑いを上げるグロリアをバイザーの下からジト目で睨みつけるバラ。

 

 

「お前こそ仕事はどうした」

 

「もちろん、やることはやってますわよ。結晶洞窟のテラスタルポケモンの捕獲は完璧ですわ」

 

 

 バラからの問いかけににっこり微笑んで返すグロリア。結晶洞窟のテラスタルポケモン。パルデア各地の地表に点在する結晶洞窟の入り口から入れる空間に生息する、通常のとは別のテラスタルタイプのポケモンたち。その乱獲がグロリアに与えられた命令だった。

 

 

「…エスプリと、“用心棒”はどうした?」

 

「エスプリは休止中。用心棒ちゃんは本業に戻ってるわよ、アハハ!健気よねえ!」

 

「それで、バラは仕事を達成しましたの?たしかツバサノオウの確保と…災いの器の捕獲、でしたわね?」

 

「…ツバサノオウの確保は失敗したが、災いの器は無事捕獲した。エスプリがしくじったチヲハウハネの確保もできる算段だったが……次は負けん」

 

 

 言いながら拳を握りしめるバラの、いつもの冷静沈着な彼女らしくない姿を見たアケビは笑い、腕に付けている端末…ホロキャスターを操作してバラから送られてきた映像を確認して首を傾げる。

 

 

「あれ?この子、ラウラ、だっけ?あの時の小娘に邪魔されるなんて無様ねバラ。アハハ!貴方の獲物を取られなくてよかったわね、グロリア!」

 

 

 その映像を眺めて呆けていたところにアケビが呼びかけると、我に返るグロリア。

 

 

「…ええ。ラウラ相手ならバラが負けるのも仕方がない事ですわ。ラウラは私の獲物ですの。そう簡単に勝てると思ったら大間違いですわ」

 

「奴がチヲハウハネを使わなければ殺せていた…!」

 

「アンタらしくないわよバラ。面白いからいいけど!アハハ!」

 

「あそこから脱出したチヲハウハネをラウラが手にしていたとは……さすがですわね」

 

 

 激昂するバラ。煽るアケビ。感心するグロリア。すると三人の耳に取り付けられたイヤホンにザザザッとノイズ音が聞こえる。仲間からの伝達、しかし幹部三人に同時に繋げられたそれは、三人の上に立つものからの通信に他ならない。

 

 

《「――――」》

 

「アハハ!ボス!元気ー?」

 

「貴様いい加減にしろアケビ…!ボス、失礼しました」

 

「ごきげんようですわボス。起動の為に必要なエネルギーは目標量にはまだ到達しませんの。やはりパラドックスポケモンを捕まえる方が効率的ですわね。そこで提案なのですけど、エスプリだけでなくわたくしもチヲハウハネ確保に当たらせてくれません?チヲハウハネを持つラウラは私の獲物なんですの」

 

 

 報告を終えるとそう問いかけるグロリア。通話の相手に苦言を呈されたのか不満げに頬を膨らませる。

 

 

《「―――。――――――」》

 

「わかりましたわ。これまで通りテラスタルポケモンを集めることに尽力しますの。でも、その途中でラウラに出くわしたらバラの様に狙っても構いませんわね?」

 

《「――――」》

 

「ええ、ええ。感謝しますわボス」

 

「我々も引き続き四災及びツバサノオウ確保に動きます」

 

「アハハ!右に同じ!」

 

 

 グロリアにバラとアケビも続く。ブルーフレア団、かつてのフレア団の残党は、青くなるほどに燃え広がった業火でパルデアを飲み込まんとしていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃。回復を終えピクニックで腹ごしらえしたラウラは、手持ちを全員出して鍛えようとしていた。

 

 

「ぼむん、ケプリべ。お前たちは練度が少ないから度胸と命中精度が足りない。全部の技を使って、でんこうせっかするレインとくさわけするジャックをひたすら狙え。レインとジャックはとにかく素早さを鍛えるぞ、ぼむんとケプリベの攻撃に当たるな。レクスとダーマはウカと組手だ。やる気はないが攻撃されたら反撃するだろう」

 

 

 指示を送り、それぞれ訓練を始めるポケモンたちを眺めながら、自分はスマホロトムのポケモン図鑑をひたすら読み込むラウラ。アイアール戦やアオキ戦で露呈した、蟲ポケモン以外への興味の無さ故の無知をどうにかしようと試みたのだ。

 

 

「………はがね・フェアリー、ドラゴン・こおり、じめん・どく、かくとう・ひこう、いわ・どく……なんか俺の知らない組み合わせのポケモンが多いな。パルデア地方のポケモンは覚えにくい」

 

 

 アイアールからしたらレクスのタイプも難しいって言ったっけかなと思いだしつつ説明を読むことに集中するラウラ。蟲タイプは苦手なタイプがいわ・ほのお・かくとう・どく・ひこう・ゴースト・はがね・フェアリーととにかく多い。有利を取れるポケモンもくさ・エスパー・あく・かくとう・じめんと逆に少ないのも特徴だ。それを補うには素早さと手数が必要だ。攻撃力や防御力を上げようにもそもそものスペックが圧倒的に負けているのだから。

 

 

「だから初見の相手に対応できないとアイアール戦の時みたくなるわけだ」

 

 

 有利なあくタイプ使いのピーニャにすらその時は進化してなかったとはいえレクスを落とされたのは記憶に新しい。そんなことを考えながらブロロロームのページを開くと書いてあった情報に首を傾げる。

 

 

「あれ、ブロロロームってはがね・どく…?あくじゃないのか?姿も全然違うし……うーん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「話しかけていいのかな…?」

 

 

 周りで蟲ポケモンたちが暴れる中でスマホを眺めて首を傾げる少女というシュールな図を作り上げているラウラが見えてきて、コライドンの上で思わず考え込んでしまうアイアールの姿があったとかなんとか。




新たなオリキャラ、グロリア登場。地味に書きたかったお嬢様キャラを書けて満足。ラウラを獲物と称する、アーマーガアを手持ちに持つお嬢様です。名前の由来はグロリオサ。

明かされたブルーフレア団のメンバーは、フラダリの「左腕」だった正体不明のボスと、バラ、アケビ、グロリアの三幹部と、装着者がマチエールじゃない正体不明のエスプリ、そして“用心棒”がメンバーとなってます。残りの科学者組は、一度解散しているためボスが見つけられなかった模様。クセロシキは国際警察にいるからそもそも誘われてないです。

修行はするけど徹底的に鍛えるアイアールと違って、手持ちそれぞれの個性を上げることをメインにしているラウラ。苦手なことを覚えさせても意味がないと考えているタイプの人間です。アイアールとも合流。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSアルクジラ

どうも、放仮ごです。今作では初出ですが、前作の記憶がある頃のラウラは、BWまでの知識とバトルサブウェイをやり込んだポケモン知識を利用して戦ってきた転生者故の強さを持つキャラです。今作ではちょっとずつ思い出したり、直感的に使ったりとしてきました。

今回はそんなラウラの戦法が…?楽しんでいただけると幸いです。


 ポケモンたちの修行しつつポケモン図鑑で勉強していると、アイアールがやってきて合流。俺達は北パルデア海沿いのルートを通ってオコゲ林道、オージャの湖西、西2番エリア、マリナードタウン、ロースト砂漠と抜けて西1番エリアを、テーブルシティに向かってコライドンを駆っていた。

 

 偽龍のヌシが予想以上に強かったのと、山越えすると「最強のジムリーダー」と名高いこおりタイプ使いのグルーシャと、「屈指の強さ」と称されるゴーストタイプ使いのライムがいるため、後回しにすることにしてテーブルシティを経由してパルデア東側に出ることにしたのだ。

 

 

「ラウラ、記憶喪失になる前は絶対強豪トレーナーだったよね」

 

「いきなりどうした? なんでだ?」

 

 

 するとコライドンを運転しながらそんなことを言ってきたアイアールに首を傾げる。ずっと考え込んでみたいだがそれを考えていたのか?

 

 

「だって鍛え方が私と全然違ったもの。私の鍛え方は素人考えの浅知恵だし」

 

「山籠もりはまあ効率が悪いだろうな…」

 

「効率?」

 

「ああ、効率。むしタイプみたいに基本的にスペックが低いポケモンを使っているとどうしてもな」

 

 

 なんだろうな、ポケモンを数値で考える自分がたまにいる。努力値とか6Vとかタイプ一致とかAとかSとかなんかそんなワードが直感的に浮かぶのだ。

 

 

「例えばすばやさが高いジャックはそのまますばやさを鍛えればリソースを全部最高効率で回せるだろ?」

 

「???」

 

「あー…例えば遠距離攻撃が得意なシングには物理技を覚えさせないだろ?そういうことだよ」

 

「なるほど??」

 

「分かってないなお前」

 

 

 アイアールは感覚型だからな…。自分の相棒の不得意ぐらいわかっておこう?

 

 

「でも物理技も覚えさせておけばどんな距離でも対応できるよ?」

 

「まあそう言う考えもあるな。だがそれぞれポケモンには得意な距離がある。それを把握しないと威力が予想と違って命取りになるかもな」

 

「あー、だからやきつくすとほのおのキバで威力が違ったんだ」

 

「タイプ一致って言う、自分と同タイプの技を使うと威力が1.5倍になったり、相手のぼうぎょまたはとくぼうで大分変動するがな」

 

「???」

 

「…俺も記憶が無いんだから説明させるな…」

 

 

 溜め息を吐きながらもできる限り説明するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうこうしているうちにテーブルシティに到着し、オレンジアカデミーで一晩明かすことにした俺達。俺は先に戻っていたマトイさんの案内でオレンジアカデミーの蔵書から見つけたヒスイ地方のバトルについての本いくつかを読んでいると。

 

 

「というわけでラウラから習ったことを実践!バトルだ!」

 

「どうしてこうなった…」

 

 

 なんか校庭に呼び出されてアイアールとまたバトルすることになった件。なんでもアイアールがバトル学のキハダ先生に聞いて、俺が先生も知らない情報を知っているということで生徒たちの前で実践と言うことになったのだ。なんでさ。

 

 

「アイアールもラウラも頑張ってー!私の知らないバトルを見せて!」

 

「二人とも頑張れちゃんだぜー!」

 

「…頑張って」

 

「キハダもしらない。バトル。たのしみ」

 

「いけいけラウラー!」

 

「うるさいぞ外野ァ!」

 

 

 ネモにペパーにボタンにサニアにオレア。あと人ごみの後ろから見てるネルケこと校長。知り合いに見られるとクソ恥ずかしいんだが!?

 

 

「言っとくけど先生の方がちゃんとしたバトルについては詳しいと思うぞ。俺のはよくわからん我流だ」

 

「私が信じるラウラを信じろ!いっけえ、ハルクララ!」

 

「あーもう、仕方ない。修行の成果を見せろ、ジャック!」

 

 

 容赦はしないぞこの野郎。俺の情報を実践するならこいつだろ。アイアールは新顔のアルクジラ、相性はこちらが上だ。観客が多いためか無駄に乱舞して注目を浴びて楽しげなジャックに頬が緩む。

 

 

「こおりのつぶて!」

 

「避けろジャック!くさわけ!」

 

 

 氷の礫を飛ばしてくるハルクララ。アルクジラは見た目からして恐らく体力と攻撃力が高いポケモン。少しでも当たるのは不味い。くさわけで回避させて突っ込ませる。

 

 

「がんせきアックス!」

 

「先手を取ったね!ゆきなだれ!」

 

「なっ!?」

 

 

 がんせきアックスを受け止められたうえで空中から出現した大量の雪に埋もれて動けなくなってしまうジャック。相手の攻撃より後に出せば威力が2倍になる技……!すばやさを上げたのが裏目に出た。

 

 

「いいところはそのまま、悪いところは戦略で補え。考えたよ私!ネモにも手伝ってもらった!こういうことだよね!」

 

「お前、ネモに聞くのはずるくないか!?」

 

「ラウラに教えてもらったことをいまいち理解しきれてなかったからね!ネモ、掻い摘んで教えるの上手だよ!」

 

「悪かったな教えるの下手くそで!」

 

 

 そんなところをドヤるな馬鹿。あとネモ、お前もドヤるな。アイアールが知識を吸収して強くなるのが嬉しいだけだろお前。

 

 

「アイススピナー!」

 

 

 そのまま埋もれた雪を吹き飛ばしながら氷の独楽に乗って高速回転しながら突撃してくるアルクジラ。下半身が雪に埋もれたジャックに何度も何度もぶつかって弾かれていく。相性が悪いなら手数で、俺の教えたことだなあ今畜生。

 

 

「そんな雪、吹き飛ばせ!れんぞくぎり!」

 

「とびはねる!」

 

 

 連続で斬撃を放って雪を切り刻み脱出し、高速回転してきたアルクジラに斬撃を浴びせるがとびはねられて回避される。そんな技まで覚えるのか…!?

 

 

「ラウラも勉強してたみたいだけど、技範囲まではさすがに勉強してなかったみたいだね!」

 

「あの図体で跳べるのか…だががんせきアックスでステロを撒けば…!」

 

「はいまた後手をいただきました!空中からゆきなだれ!」

 

「!?」

 

 

 がんせきアックスを使ってステルスロックをばら撒くが、威力が二倍になったゆきなだれでフィールド全体を埋められてステルスロックの上から足場を作られた上に空中のステロも雪で丸見えにされてしまう。

 

 

「アイススピナーしながら落ちて!ハルクララ!」

 

「その場でれんぞくぎり!」

 

 

 シュシュシュシュッ!とその場でドームを描く様に斬撃の嵐を繰り出すジャックと、アイススピナーを脚に展開し回転しながら落ちてきたハルクララが激突する。アイススピナーの氷の独楽を切り刻みかき氷にしていくジャックだったが、その動きが一瞬止まって頭突きを胴体に受けてしまう。

 

 

「なん……とびはねるのまひか!」

 

「技を組み合わせれば可能性は無限大!だよね!」

 

「……まさか全部吸収するとは思うわけないだろ……」

 

 

 呆然となる。これなんて公開処刑?ごめんなジャック。次は絶対リベンジしてやるからな……雪に埋もれて目を回すジャックを見ながら拳をプルプル震わせるしかなかった。………ヒスイの秘伝、使ってみるか。




雑談ついでに親切心で戦法を教えたら吸収して強くなったアイアールの話でした。進化してないアルクジラでバサギリを倒すとかいう変態。頭は悪いけど理解したら強い子。ネモの教え方もよかった。

手痛い敗北を何度も味わったラウラ。そろそろ強化の時。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSウミトリオ

どうも、放仮ごです。実は前回の戦い、1VS1のつもりで書いてたけど書きたいこともあったので3VS3にしました。6VS6はさすがに長くてテンポが悪いのでまた今度。

今回はぼむん、ちゃんとしたバトルに初陣。楽しんでいただけると幸いです。


 それは、俺とアイアールのバトルが行われる数刻前…。

 

 

「素早く、技を繰り出すのが「早業」。力強く、技を叩き込むのが「力業」。前者が威力を犠牲に手数を増やし、後者が手数を犠牲に威力と命中率を底上げする技術、か。技の「皆伝」とやらが必要で、現在はその方法は伝わってない……」

 

 

 アオキさんから聞いたことをマトイさんに話してみたらおすすめしてくれた本を読み進めていると目当ての項目を見つけた。まだバトルのルールも決まってなかった頃のヒスイ地方でのバトル。トレーナー…当時のポケモン使いだけでなく、野生のポケモンも使ってくることがあったらしい。中にはこの「早業」「力業」を織り交ぜた専用技を特定数使うのが進化の条件のポケモンも当時はいたとか。よく調べたな当時の人々。

 

 

「成長と共に技が皆伝することもある……つまり伝わってないだけで俺のポケモンたちが使える可能性もあるわけだ」

 

 

 …これ、今の時代で使えたら強くないか?他にも色々載ってるな…どれどれ。

 

 

「へえ、まきびしやステルスロックは当時はスリップダメージを与える攻撃技だったのか……ほーん、ふーん……これ、使えるな」

 

「ラウラ!こんなところにいた!バトルしよ!」

 

「なんて?」

 

 

 読み耽っていたらいきなり走ってきてそんなことを言ってきたアイアールに首を傾げたのも無理ないと思うんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、今現在。6体のフルバトルは長くなるからと3VS3になったわけだが、切札のジャックがやられた。今回はケプリべを使う気はないので復活は無理だ。最初に選んだ三体のうち残り二体で行くしかない。そっちが新入りなら相性がいい新入りのぼむんで勝負といくか。

 

 

「ちゃんとしたトレーナー戦では初陣だな!頼んだぞ、ぼむん!」

 

「ラウラの六匹目…!相手にとって不足無し!ハルクララ!とびはねる!」

 

 

 またそれか。アイアールの組んだハルクララの戦法は大体わかった。こおりのつぶてで警戒させつつ、アイススピナーや後攻を取ったゆきなだれで確実に大ダメージを与える。とびはねて敢えて隙を作ることで空中から放つゆきなだれのダメージを増やしつつ、アイススピナーで身を守りつつまひを与えて確実に仕留める。組み立て方が上手(うま)すぎないか?

 

 

「なら先にこっちが麻痺させる!力強く!でんじほう!」

 

「なっ!?」

 

 

 命中率に難ありのでんじほうを当ててハルクララを撃墜したことに目を見開くアイアール。これが修行、そして勉強の成果だ。

 

 

「生憎だったな、ジャックやレイン相手に命中率を上げた固定砲台ぼむんに死角はない!」

 

「それずるくない!?」

 

「いいところはとにかく上げれば強くなる!それに加えて「力強く」だからな」

 

 

 土壇場だったが上手く行った。ヒスイ秘伝「力業」。威力と命中率を上げたでんじほうは効いただろう。どうやら麻痺したようでハルクララは満足に動けていない。

 

 

「たたみかけろ!素早く!まきびし!」

 

「まきびしぐらいなら……!?」

 

「じめんタイプで相性も悪いんだがな。刺さると痛いだろ?」

 

 

 動けないハルクララに向けて高速で連続で射出され突き刺さるまきびし。元々練習していた「まきびしを直接当てる」がヒスイの時代に攻撃として使用されていたと知り、その使い方をできるようになったわけだ。

 

 

「蟲ポケモンで直接強敵相手にも立ち向かえるジャック……バサギリと違ってコイツは攻撃力が無いからな。小手先で行くぞ!力強く!ヘビーボンバー!」

 

 

 素早く動いたことで続けざまに技を繰り出せるぼむんが跳躍、急降下してくる。力強く使ったことで威力も上がって隕石のごとし。

 

 

「ハルクララ避けて……足元にもまきびし!?」

 

「元々の使い方だぞ、そう驚くな」

 

 

 さっき射出していた時に外れたものをばら撒かせておいた。これで結構足が速いアルクジラも満足に動けない。これで決まりだ。

 

 

「自分にゆきなだれ!」

 

「なっ…!?」

 

 

 するとゆきなだれで自分を覆い隠して固めた雪でヘビーボンバーを受け止めるも、そのまま雪を吹き飛ばされて押し潰され戦闘不能になるハルクララ。危なかった、なんて奴だアイアール。

 

 

「アルクジラの特性はあついしぼう、こおり技を半減で受けれる…けど。想定してたより威力が強かった、今のは…?」

 

「だからって自分に使うか?今のは「力業」。ヒスイ…昔のシンオウ地方で使われたバトルの技術だ」

 

 

 俺がそう説明すると観客からどよめきが起こる。ネモとキハダ先生に至ってはメモを熱心に取り始めたし、いつの間にかいたレホール先生が目を輝かせている。そういや古い物好きでしたね先生。あ、マトイさんに止められた。というか教師陣まで勢揃いしてるじゃないか。仕事しろ。あとネルケもといクラベル校長、教師陣が増えてきたからって一度隠れて校長の恰好に着替えてくるな。

 

 

「もしかして、さっきのまきびしの時の「素早く」も…?」

 

「そっちは「早業」だ。覚えたてだから練度は低いがな」

 

 

 今まであんまりバトルしてないぼむんだから使えている節はある。他の皆はそれぞれのバトルスタイルを確立しているからな…力業か早業、どっちかが使えればいい方だろ。

 

 

「うん、さすがだね!ラウラから教えてもらった技術で勝とうと思ったらさらに上を行く!やっぱり、ラウラは強いよ!だから……負けたくない。行くよリプル!」

 

 

 次に繰り出されたのはウミトリオのリプル。何が狙いかは知らないが…!

 

 

「素早い奴には動かせないぞ!ぼむん、素早く!周囲にまきびし!」

 

「それ厄介だなあ!リプル、あなをほる!」

 

 

 ギュインギュインと高速回転して脚からまきびしをフィールド全体に撒き散らすぼむん。するとあなをほって地中に逃れるリプル。はがねタイプのぼむんに確実にダメージを与えるのが狙いか。ほのおタイプで四倍を狙えるシングを出さないのは温存だろうな、蟲ポケモン使いの俺に使ってこない理由がない。同じ理由でいわタイプのツムヅムだと思ったんだがな、修行していた時に新顔のぼむんが見られていたから警戒されたか?

 

 

「新技を使うか。でんじふゆう!」

 

「なっ!?」

 

 

 だいばくはつを忘れさせるために覚えさせたからげんき、を更に忘れさせて覚えさせた技。でんじふゆう。ぼむん…フォレトスの弱点に機動力の無さがあげられる。それを補うための技だ。電気を纏い浮かび上がるぼむんに、地面から飛び出してきたリプルの攻撃は空ぶった。

 

 

「ヘビーボンバー!」

 

「アクアジェットで離脱!」

 

 

 そのまま押し潰さんとするも、リプルは水を纏い高速でその場を離脱。まきびしでダメージを受けながらも距離を取る。だろうな、ウミトリオは攻撃力とすばやさは高いが耐久面は紙同然のポケモンだ。だがな、今のぼむんから逃げられると思うなよ。

 

 

「素早く!でんじふゆう!追いかけろぼむん!」

 

「うそお!?アクアジェット!」

 

 

 でんじふゆうを利用して高速で移動するぼむんにアイアールが度肝を抜く。アクアジェットで逃げるリプルと、浮遊し追いかけるぼむん。まきびしのおかげで逃げるルートは分かりやすい!このまま決める!

 

 

「電気を使う蟲を見てると、なんだろう…こう、ゾクゾクするんだよな!でんじほう!」

 

「あなをほるで逃げて!」

 

 

 でんじほうを発射。高威力で命中精度の悪い技だが、機動力を得て肉薄できる上に命中精度も上げた今のぼむんなら当てられる。それを危惧して地中に逃げるリプル。だがそれは悪手だぞ。

 

 

「天高く浮かび上がれぼむん!力強く!」

 

「しまっ…」

 

「ヘビーボンバー!」

 

 

 でんじふゆうで高度を得つつ、力強く繰り出したヘビーボンバーはフィールドを砕き、地中にいたリプルに直撃。できあがったクレーターの中で目を回すリプル。

 

 

「…お疲れリプル。新顔のフォレトス、強いね」

 

「できることを最大限模索した結果だよ」

 

 

 そのせいでむしタイプの技を一切覚えてないどころか半分がでんきタイプの技の高機動力固定砲台が出来上がったわけだが。まあいいか。

 

 

「でもね、負けない。私とこの子は今、最強だ!行くよシング!」

 

「…進化したか」

 

 

 自信に溢れた表情と共にアイアールが繰り出したのはアチゲータのシング…じゃなかった。口・胴体・尻尾が長く伸びた厳つく凛々しいフォルム。アチゲータの時に卵らしき火が灯っていた頭頂部が燃え尽きて恐ろしげな骸骨の様な姿に。その割に可愛い小鳥の様な炎が鼻先に灯ってる。シンガーポケモン、ラウドボーン。ホゲータの最終進化系がそこにいた。




早業と力業、炸裂。まだぼむんしか両方使えませんが中々の戦力アップだと思います。

でんじふゆう、ゲームではあまり採用されませんが「現実」でのポケモンバトルなため採用しました。からげんきよりは間違いなく有用。

・ぼむん(フォレトス)♂
とくせい:がんじょう
わざ:だいばくはつ→からげんき→でんじふゆう
   でんじほう
   ヘビーボンバー
   まきびし
もちもの:なし
テラスタルタイプ:はがね
備考:おくびょうな性格。物音に敏感。びっくりするたび大爆発する問題児だったが、それから救ってくれたラウラに懐く。ラウラ曰く「高機動力固定砲台」に仕上がった。日本語がおかしいがノリで言ってるので気にしたら行けない。現状早業力業をどちらとも使える唯一の存在。

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VSラウドボーン

どうも、放仮ごです。文字数が余ったからブルーフレア団関連の話も入れたらちょっと流れが変になったかもしれない。

今回は再びの相棒対決。楽しんでいただけると幸いです。


 遠く古くヒスイ地方に伝わる秘技、「早業」「力業」を駆使してぼむんでアイアールの手持ち二体を倒し、2VS1で俺に有利に運ぶはずだったが、アイアールが三匹目に繰り出したのはシングが進化したラウドボーン。間違いなく一筋縄ではいかない相手だ。図鑑で一応確認する。タイプはほのおに加えてゴーストが追加。ノーマルやかくとうの技が効かなくなったか…。

 

 

「…なるほどそりゃ切札にするわけだ。進化してたなんてな」

 

「アオキさんとの戦いで進化してくれたおかげで勝てたんだ。断言する、今のシングは最強だ!」

 

 

 あんまりそう言うこと言わない方がいいって。ネモが滾るだけだって。

 

 

「やられる前に仕事はするぞ!素早く!でんじふゆうで上を取れ、でんじほう!」

 

「見上げてシャドーボール!」

 

 

 でんじふゆうで翻弄し、でんじほうを叩き込むもアイアールは目でぼむんの動きを追い、的確に指示して口を大きく開いてはなってきたシャドーボールででんじほうを相殺してきた。なんて威力だ、でんきタイプの技でも高威力のでんじほうとぶつかって相殺するとは。

 

 

「なら直接!力強く!ヘビーボンバー!」

 

「受け止めてシング!」

 

 

 ならばと力業のヘビーボンバーを使用。隕石のごとし一撃が叩き込まれるが、大きな口を開いて噛み付くことで受け止めるシング。まずい、これじゃ身動きが……。

 

 

「それにしたって効かなすぎだろ……」

 

「耐久面が得意だとわかってから鍛えたからね!いいところは鍛える!ラウラの教えだよ!」

 

「俺の馬鹿……口の中にまきびし!」

 

「投げてからぶちかませ!フレアソング!」

 

「LAAAAAAAAAA!!」

 

 

 まきびしで対抗しようとするも、噛み付かれたまま首を振って空中にぶん投げ、咄嗟の事で体勢を整えられないぼむんに向けて、鼻先から離れた小鳥の様な炎が変形した炎のスタンドマイクを介して放たれた、炎を纏った歌うかの様な咆哮の衝撃波が炸裂。炎上して黒焦げとなり、地面に落下する。

 

 

「ぼむん!」

 

 

 ハルクララやリプルからダメージを受けていなかったことにより特性のがんじょうで耐え抜いたが、文字通り蟲の息。だが今ので技の範囲は分かった。

 

 

「一度離れろ!素早く!でんじふゆう!」

 

「逃がさない。もう一度、フレアソング!」

 

「LAAAAAAAAAA!!」

 

「この距離なら当たらな……なっ!?」

 

 

 さっきフレアソングが届いていたレンジから離れたはずだったが、先ほどより威力が増して届く距離も広がったフレアソングを受けて今度こそ倒れるぼむん。なんで……。

 

 

「不思議そうな顔だねラウラ。フレアソングはラウドボーンの専用技。最初の威力は並みだけど、撃てば撃つほどとくこうが上がって行く技だよ!」

 

「なんだその反則技!?」

 

「でんじほうを当ててくるラウラに言われたくはないかなあ!」

 

 

 これだから御三家は………御三家ってなんだ?まあいい。とにかくとぼむんをボールに戻し、最後の一匹を繰り出す。俺の今の相棒、エクスレッグのレクスだ。…あの技が音技ならまだなんとかなるぞ。

 

 

「相棒対決、だね!今度は負けないよ!シング!フレアソング!」

 

「LAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

「レクス!跳躍して避けろ!お前の相棒を知ってて俺が対策してないと思うか?」

 

 

 後ろ脚を展開して勢いよく縮めて大ジャンプ、炎の衝撃波を回避するレクス。そのまま急降下してシングの目の前に着地。右足を振りかぶる。

 

 

「じごくづき!」

 

「シングー!?」

 

 

 修行でレクスが編み出した、フェイントを忘れて覚えた新技。相手の喉元に向かって強烈な突きを入れるあくタイプの強力な技、じごくづき。本来なら手か前足で使う技なんだがレクスは足技に昇華した。喉元に突くような蹴りを入れられて短い悲鳴を上げるシング。

 

 

「なんの!この距離なら避けられない!フレアソング!」

 

「LAA……!?」

 

「え?なんで!?」

 

「たたみかけろ!素早く!こうそくいどう!力強くとびかかる!」

 

 

 そのまま跳躍して目にも留まらぬスピードで移動し、四方八方から飛び蹴りを連続で叩き込んでいく。相性は悪いが速度=威力だ。こうそくいどうで威力を増した蹴りの味はどうだ。

 

 

「フレアソングが出せないなら…シャドーボール!」

 

「素早く!にどげり!蹴り上げろ!」

 

 

 シャドーボールを繰り出すもあらぬ方向に凄まじい速度で蹴り飛ばして逸らし、攻撃を続けるレクスに、アイアールは「なんで」と小さく口にする。

 

 

「なんで、シャドーボールは出せるのにフレアソングが出せないの…?」

 

「じごくづきは喉を潰す技、短い時間だが相手の音技を封印する効果がある」

 

「……えぐすぎない?なまけて回復して!」

 

「俺もえぐいとは思ったよ。とどめだ!こうそくいどうで距離を取れ!」

 

 

 なまける、で回復を試みるシングだがその隙は致命的だぞ。こうそくいどうでフィールドギリギリまで離れてから弧を描いて加速。弾丸の様に突き進むレクス。

 

 

「力強く!」

 

「フレアソング!」

 

「じごくづき!」

 

 

 そしてくるりと一回転。飛び蹴りの体勢を作り真っ直ぐ飛び込んでいき、フレアソングを突き破りながら飛び蹴りが炸裂。シングは吹き飛んでゴロゴロと転がり目を回して、レクスは全身から煙を燻らせながらもスタッと着地する。

 

 

「……負けたあ。強くなったのは私たちだけじゃなかった……」

 

「当たり前だろ。人とポケモンは共に成長するものだ」

 

「…それもそうだね」

 

 

 歓声が上がる。…まだ負けずに済んだがフルバトルだったらどうなるかわからない勝負だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、ネモやレホール先生の追求から逃げているとネルケに助けられ、校長室まで逃れるといつの間にか着替えたネルケ…もといクラベル校長と向かい合う。

 

 

「校長、何時着替えたんですか…」

 

「なんのことでしょう?それより、理事長やマトイさんから聞きました。ブルーフレア団…かのカロスを震撼させたフレア団に連なる者達でしょうか。恐ろしい事です。…サニアからも青装束については報告を受けてます。レホール先生やマトイさんの研究している四災(スーザイ)と呼ばれるポケモンたちが狙われ、二体も奪われるとは…」

 

 

 どうやら理事長…オモダカさんやマトイさんにブルーフレア団について聞いたらしい。マトイさんはちゃんと報告で来たみたいだな。口封じとかされなくてよかった。

 

 

「ディンルーだけじゃないのか?」

 

「…これは内密に。宝探しの課外授業を中止にしたいところですが……ブルーフレア団に狙われたのは今のところラウラさんとアイアールさんだけで、ポケモン強奪が目的で生徒そのものが狙われているわけじゃないというのに中止にするのもいかがなものかという意見もありまして……四天王やジムリーダーが各地で青装束の動向に注意する、として様子を見ることになりました」

 

 

 だろうな。俺とアイアールが狙われたのもコライドンとウカが目的みたいだし……エスプリの時はついでに狙われた感じだった。

 

 

「…ラウラさん。何か隠していることはありませんか?例えば珍しいポケモンを持っている、とか。アイアールさんのコライドンの様な…」

 

「…サニアがチヲハウハネ、と呼んでいたポケモンを所持してます。ブルーフレア団の目的もこいつっぽいけど……俺は手放す気はない」

 

「チヲハウハネ……もしや、エリアゼロから…?」

 

「エリアゼロ?」

 

 

 ウカはそこから来たのか?いや待て。エリアゼロなら聞き覚えがあるぞ。たしかオーリム博士が…。

 

 

「エリアゼロ……イダイナキバってヌシポケモンがエスプリに捕獲されたのも関係ありますか?」

 

「なんと。イダイナキバまでもが……ラウラさんとアイアールさんの実力なら問題はないと思いますがお気をつけて。決して人目につかない場所にいかないように」

 

 

 なんか、話を無理やり逸らされたか?聞かれたくないなら聞かないけど……俺の記憶に奴らが関係あるからにはいつかぶつかることになる、ってのは言わないでおこう。変に動きを制限されるの嫌だしな。




先日スカーレットやってたらじごくづき喰らってラウドボーンがフレアソング出せなくなったことから思いついた話でした。由来見たらえぐすぎて笑った。

多分一番固定砲台していたシングことラウドボーン。なまけて回復とか地味にガチ。これで早業力業覚えたらアイアールさらに化けそう。

そしてブルーフレア団対策。地味に撃退しているから被害が出てないとかの問題もあって手をこまねいているのが現状。四天王とジムリーダーが気を付ける、ぐらいに落ち着きました。ラウラからしたらいずれ絶対戦わないといけないから複雑。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSガケガニⅠ

どうも、放仮ごです。今回からパルデア東編となります。

今回は南3番エリアでのできごと。楽しんでいただけると幸いです。


 あれから数日。授業を受けるために滞在していた俺とアイアールは、旅立つ前にテーブルシティを巡ることにした。今回は以前一人で散策した西側ではなく東側を巡っている。デリバードショップにでも寄ってどうぐを手持ちに持たせるのもありだな。しかしこのテーブルシティ、本当に広いな。

 

 

「ところでラウラ、それ何時までつけてるの?」

 

「いや、これのおかげで助かったからなんか外せなくて…」

 

「この街に危険はないと思うよ?」

 

 

 エクスレッグヘルメットを被っている俺にそうアイアールが苦言を呈してきたがしょうがないだろう。この街でスター団に襲われたこともあるんだから。そんな話をしながら階段を上り、高台までやってくる俺達。いい風が吹いている。

 

 

「ここから一望できるみたいだね」

 

「いい景色だな。コライドンで滑空してみるか?」

 

「多分大騒ぎになるからやめとこう?」

 

 

 いやー、珍しいポケモン一匹ぐらいいてもいいと思うんだよな。一匹どころか四匹ぐらいいても普通な気がする。そんな奴知らんけど。

 

 

「そろそろお昼だね。お腹すいたなあ…」

 

「カレー屋ないのか?」

 

「すぐそれだね……うーん、カレー屋はないけど喫茶店がちらほらあるかな?」

 

「いや待て。この匂い……」

 

 

 アイアールが高台の手すりから身を乗り出してテーブルシティを眺めてそう言ってくるが、俺は風に流れてきたその匂いに気付いて歩き出すと、アイアールもついて来た。…なんだろう、懐かしい香りだ。

 

 

「…ここだ」

 

「橋の下…こんなところにお店があったんだ。カロスで見たことある気がする」

 

 

 橋の下に隠れる様に建てられた、全体的に真っ赤な配色に、差し色として鮮やかな青が使われている。なんかお洒落だ。隠れ家的喫茶店か?「オレンジアカデミーの学生さん値引き」「本場ガラルカレーあります」「カロス風スイーツあります」など書いてある小さな黒板に書かれてある。お洒落だ。店名は「グロリアカフェ」……なんだろう、デジャヴ。

 

 

「お、本場ガラルカレーがあるってさ」

 

「カロスのスイーツもあるんだ…いいね」

 

 

 それぞれ刺さる要素があるこの店にお昼を決め、中に入ると。ローな姿のパンクポケモン、ストリンダ―がお辞儀して出迎えてくれた。店の奥では繁盛しているのか接客している青いウェイトレス姿で高貴そうな髪型の銀髪の少女があくせくお盆を両手に持って働いていた。

 

 

「いらっしゃいませですわ!私が店長のグロリアですの!注文はちょっとお待ちになって!」

 

「お、おう…」

 

「ああもう、店長なんて引き受けなけりゃよかったですわ~!」

 

 

 なんだろう、凄い違和感を感じた。お前そうじゃないだろ感が凄いする。首を傾げながらもアイアールと共にテーブル席につくと、ウェイターらしき男性がやってきた。オレンジアカデミーの学生っぽい?バイトかな。

 

 

「お待たせしました。注文をいただきます」

 

「あ、じゃあ本場ガラルカレーライスとミアレガレット、コーヒーを二つずつください」

 

「かしこまりました」

 

 

 アイアールが注文するのを横目に、グロリアと名乗った少女から目が離れない。…あの顔どこかで見た気がするんだけどなあ。しかし忙しそうだな。意外と繁盛してるらしい。立地がアレなのに。

 

 

「お待たせしましたわ!わたくしが作った自信作!本場ガラルカレーライス二つですわ!」

 

「あんたが作ったのか?」

 

「はい~!わたくし、お嬢様ですがカレーに目が無くて!自分で作るのが趣味なんですわ~!…その趣味のせいでこうしてこの店を任されたのですけど」

 

「それっぽいと思ってたけど本当にお嬢様なんだ…」

 

「もちろんですわ!ほらほら、お召しになって!」

 

「すみませーん」

 

「あっ、ただいま!」

 

 

 他の客に呼ばれてバタバタと去っていくグロリア。…他人の空似か。そうだよな。ちなみにカレーは滅茶苦茶美味かった。気に行った、また来よう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ行こうか」

 

「うん、コライドン!」

 

 

 腹ごしらえを終えた俺達はテーブルシティの東門から出発。コライドンに乗って南3番エリアを駆け抜ける。草原だった反対側の南2番エリアと異なり、山岳地帯が広がっているそこはちょっとだけ新鮮だ。目指すは花と芸術の町、ボウルタウン。その道中で岩壁のヌシのところに行く予定だ。

 

 

「結構色んなポケモンがいるね」

 

「…記憶喪失の俺がネモに拾われた場所でもあるな」

 

「そうなんだ!?…じゃあここにラウラの記憶の手掛かりが…?」

 

「レクスと出会ったのもここだな」

 

《ロトロトロト…》

 

 

 そんな話をしながら突き進んでいると、スマホロトムに着信が。ペパーだ。

 

 

《「ようラウラ!アイアールもいるのか?オージャの湖では災難だったみたいだな……また今度挑もうぜ!ところで今どこだ?」》

 

「南3番エリアをテーブルシティから北上中だ」

 

《「南3番エリア?ってことは岩壁のヌシだな!お前がいる岩場のどっかに岩壁のヌシがいるらしい。その辺り探してみたんだが全然見つかんねえんだよ!まさか岩壁の名の通り高い壁にひっついている…なーんてことはないだろうし!」》

 

「多分それだね」

 

「それだな」

 

 

 ペパーの想像大体外れてるから察しがついてきた俺達は頷き合う。

 

 

《「そんなに深い所にはいねえはずだ!だから探しすぎて崖から落っこちんなよ!俺とマフィティフのために命まで懸ける必要はねえんだからな!それじゃあな!」》

 

 

 そう言って電話は切れた。…命懸ける気はないが俺の記憶の為でもあるってのを忘れてないかアイツ?まあいいや。

 

 

「ここらへんの壁にいるってことだよな」

 

「迷探偵ペパーの推理が誤っていればね」

 

 

 キョロキョロと辺りを見渡していると、崖の上に立つ人物が目に見えた。あれは……サニアか?

 

 

「おーい、サニア!」

 

「ラウラ。それにアイアール。も」

 

 

 俺達を確認すると宙返りして飛び降り、スタッと三点着地するサニア。お前相変わらず人間離れしてるな、エスプリみたいだ。

 

 

「なにしてたの?サニア」

 

「てもちのふるさと。たからものがぶじかようすみに」

 

「お前の手持ちの故郷(ふるさと)?なのか?」

 

「うん。ラウラたちは。なにしに?」

 

「岩壁のヌシを倒して秘伝スパイスを手に入れに……どうした?」

 

 

 事情を話していると、暗い顔になるサニアに首を傾げる俺達。どうしたんだ?

 

 

「ならラウラたち。てき。たおす」

 

「なんでだ!?」

 

「おたからまもる。ガケガニ」

 

 

 そう言ってサニアが繰り出してきたのは、巨大なポケモン。ここに来るまでちょくちょく壁に張り付いているのを見かけたまちぶせポケモン、ガケガニのヌシだった。

 

 

「じゃあ宝って…」

 

「ひでんスパイス。わたしたちのせいちのしょくぶつ。ガケガニのたから。わたさない…!」

 

 

▽いわつかいの サニアと ヌシの ガケガニが 勝負を しかけてきた!

 

 




グロリアカフェ。思いっきりフラダリカフェ2号店です。グロリアにデジャヴを感じるラウラ。なんでなんじゃろね?ちなみにヘルメットを被ってたせいでグロリアはラウラに気付いてません。さすがに食べる時は外してたけど忙しくて見れなかった模様。ニアミス。

サニアの六匹目、ヌシガケガニ。いわタイプ使いとして手持ちにぜひとも入れたかった一匹。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSガケガニⅡ

どうも、放仮ごです。謎が多いキャラばっかり出して、いつ手がかりを出していくのに結構悩んでいます。チャートは決まっているんだけども。

今回はVSサニアとガケガニその1。楽しんでいただけると幸いです。


「いくぞ。ぬすっとども」

 

「ンガアアアニィ!!」

 

 

 サニアがその背中に屈んで搭乗し、咆哮を上げて鋏を振り上げるヌシガケガニ。素早い動きでシャカシャカと節足を動かし、鋏を叩きつけてきて、咄嗟に避けるコライドンとその上にまたがる俺とアイアール。

 

 

「知り合いでもお構いなしか!」

 

「ラウラやペパーの為って言っても聞きそうにないね!どうする!?」

 

「簡単だ。勝って、押し通る!ぼむん!まきびし!」

 

「しょうがない、か!リプル!トリプルダイブ!」

 

 

 俺はフォレトスのぼむんを、アイアールはウミトリオのリプルを繰り出して応戦。まきびしを直接撃ち込み、水を纏った三連打を叩き込む。

 

 

「すばやく!ガケガニ、シザークロス!」

 

「早業…!?」

 

「さっそく取り入れてきたか、天才め…!」

 

 

 サニアの指示を受け、素早い動きで鋏を交差して振るい俺達の攻撃を防ぐガケガニ。俺とアイアールの試合で見せたヒスイ地方の技術の一つ、早業。あれから数日しか経ってないのに物にしたか。さすがはチャンピオンクラスまで行った猛者だ。

 

 

「あんしんしろ。これはガケガニのたからをまもるたたかい。ガケガニをたおせればゆずる」

 

「…本当だな?」

 

「うばいにきたならようしゃはしない。でもかてばゆずるのはしぜんのおきてだ」

 

 

 どうやら他の手持ちを使わず、ガケガニだけでこちらを倒すつもりらしいサニアからは本気が垣間見えた。チャンピオンクラスの本気か、恐ろしいこった。

 

 

「10まんばりき!」

 

「でんじふゆうで避けろ!」

 

「あなをほる!」

 

「それはみた。ちからづよく。いわなだれ」

 

 

 強烈な突進をそれぞれ空中と地中に回避するも、力業のいわなだれでぼむんが撃ち落とされついでに地面も抉られてリプルが戦闘不能で出てくる。さらにこっちまでいわなだれが襲いかかり、コライドンが避けてくれる。

 

 

「リプル!?…リプルの防御力じゃ強敵相手には駄目そうかな…」

 

「言ってる場合か。力強く!でんじほう!」

 

「すばやく!ロックブラスト」

 

 

 アイアールがリプルを戻している間にぼむんにでんじほうを力業で放たせるも、素早く連射された岩の弾丸で相殺した上で貫いて直撃を受けて崩れ落ちるぼむん。力業の弱点、行動が遅くなるのを指示で補っている。やりにくい。

 

 

「シザークロス」

 

「戻れぼむん!いけ、ダーマ!スレッドトラップ!」

 

 

 ノシノシと迫ってきたガケガニの交差して振り下ろしてきた鋏を、糸の盾で受け止めるダーマ。ギリギリと鍔競り合い、弾き飛ばされる。ダーマの防御を力づくで外した…!?

 

 

「ドーちゃん!お願い!どくづき!」

 

「すばやく!いわなだれ」

 

 

 アイアールの投げたボールから飛び出し、毒棘を生やして体当たりするドオーのドーちゃんを、岩の山で押し潰すガケガニ。それでドーちゃんは完全に身動きが取れなくなる。鈍重なポケモンの弱点だ。

 

 

「ロックブラスト!」

 

「ダーマ!カウンター!」

 

 

 放たれたロックブラストに、スレッドトラップは連続で使うと失敗しやすいのでダーマにカウンターを指示。前足を打ち付けて岩を破壊していくが連続で繰り出せずに直撃、戦闘不能となる。くそっ、ダーマが使える技を知られているの不利だな。

 

 

「…2VS1なのに押されてる…」

 

「チャンピオンクラスが育てたヌシとかよく考えたらそりゃあバケモンだな。ジャック!」

 

「イダイナキバでも苦戦したもんね…ツムヅム!」

 

 

 とりあえず俺はバサギリのジャックを、アイアールはジオヅムのツムヅムを出す。アイアールはここ数日でツムヅムに早業と力業を覚えさせていた。たたみかけるしかない。

 

 

「力強く!がんせきアックス!」

 

「素早く!しおづけ!」

 

「だいちをひっぺがせ。ちからづよく!10まんばりき!」

 

 

 それぞれの得意技を叩き込むも、振り上げた一撃で地盤を引っくり返したガケガニに受け止められ、そのまま地盤をぶん投げてきて、俺達を乗せたコライドンは避けるもジャックとツムヅムは押し潰されてしまう。

 

 

「れんぞくぎり!」

 

「のろいをして、ソルトアーマー!」

 

 

 れんぞくぎりで地盤を細切れにし、のろいで素早さを下げる代わりに攻撃力と防御力を上げ、さらに塩の鎧を身に纏うツムヅム。

 

 

「力強く!いわなだれ!」

 

「いわなだれを切り裂いて奴にぶつけろ!素早く!がんせきアックス!」

 

 

 威力の底上げされたいわなだれをがんせきアックスの一撃で粉砕、そのまま岩石の刃(ストーンエッジ)としてステルスロックと共にガケガニに叩き込むジャック。

 

 

「シザークロスでたたきおとせ」

 

 

 しかし渾身の連携技も交差した鋏に叩き落されてしまう。なんて練度だ、全然敵わないぞ。

 

 

「…多分だけど半分も削れてない」

 

「なんでだ?」

 

「ガケガニにはいかりのこうらってとくせいがあるの。体力が半分を切ると防御を犠牲に強化するとくせい」

 

「…なるほどな。…それ、勝てるのか?」

 

「…ちょっと無理、かな」

 

 

 二人してどうしたものかと攻めあぐねていると、横から飛んでくる氷柱があった。

 

 

「パルシェン!つららばり!」

 

「すばやく!ロックブラスト!」

 

 

 氷柱を岩で撃ち落とすサニアとガケガニの隙を突いて、走ってくる奴がいた。2まいがいポケモンのパルシェンを連れたペパーだった。

 

 

「ようやく追いついたぜ!待たせたな!」

 

「ペパー!」

 

「遅いぞ」

 

「わりぃわりぃ、こいつを育てるのに手間取ってな。みずのいし見つけるの大変ちゃんだったぜ…って、こいつがヌシか!?でかすぎんだろ!それにあの上にいるのは確か…サニアだったか!?なんで乗ってんだ!?」

 

 

 驚きまくるペパー。気持ちは分かる。

 

 

「あのガケガニはサニアに捕獲されて、そのガケガニの宝である秘伝スパイスを守ってるんだと。倒せばくれるそうだ」

 

「とにかく倒せばいいんだな!いつもと一緒だな!俺に任せとけ!」

 

 

 三人で構えると、待っていてくれたサニアがガケガニの上にあぐらをかいて座り、お面の下で眠そうに欠伸していた。

 

 

「…はなしはおわった?」

 

「ンガアアアニィ!!」

 

「来るぞ!二人とも…気を付けろよ!」

 

「お互いにな!」

 

「正直みずタイプは凄い助かる!」

 

 

 さあ第二ラウンドだ。




チャンピオンクラス+ヌシ=最強のバケモン。自明の理です。

ペパーも本来出すはずのシェルダーを進化させて参戦。マフィティフのために本気で挑むんだからこれぐらい頑張るよねって。

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VSガケガニⅢ

どうも、放仮ごです。前のアイアール戦でお気づきかもですが、どうしてもテラスタル忘れがちになることに今更気付きました。ゲームでケチってたのが裏目に出てますね。

というわけで今回はテラスタル三昧。VSサニア&ガケガニ決着。楽しんでいただけると幸いです。


 奇妙なお面を被ったチャンピオンクラスの少女サニアと、ヌシのガケガニのコンビに攻めあぐねいているとやってきた援軍、ペパー。さすがに3VS1で不利だと悟ったのか、サニアはテラスタルオーブを取り出した。あの強さに加えてテラスタルだと…!?

 

 

「ふるえろ。かつもくしなさい。あばれろ。そびえたて。ガケガニ。テラスタル」

 

「ンガアアアニィ!!」

 

 

 テラスタルオーブの輝きを受けて結晶化し、サニアの背後に聳え立つように神殿の様な結晶が頭に乗せられる。神殿の結晶の前で腕を組み仁王立ちするサニアは、さながら門番だ。

 

 

「んなのありかよ…!?」

 

「トレーナーがいるならこれもあり得るんだ…!?」

 

「ヌシのテラスタルって滅茶苦茶強いちゃんなんじゃ…!?」

 

「すばやく!ロックブラスト!」

 

 

 神殿の結晶を煌めかせ、鋏の間に次々と岩を出現させてそれを素早く連続で叩き込んでくるガケガニ。片鋏で五発ずつ。計10発の岩の弾丸が襲いかかり、俺は咄嗟にペパーの襟を片手で掴んで引っ張り、アイアールがコライドンのハンドルを握り回避。次々と大地を砕いて行くロックブラストを避けながら指示をする。

 

 

「ジャック!つばめがえしで岩を弾き返せ!」

 

「ツムヅム!自分にしおづけ!ソルトアーマーで受け止めて!」

 

「パルシェン、ひかりのかべだ!」

 

 

 ジャックは迎撃を、ツムヅムは耐え凌ぐことを、パルシェンは防御を試みるも特殊に対して強いひかりのかべじゃ一発も防ぐこともできずパルシェンは硬い殻で岩を受け止め吹き飛ばされる。

 

 

「ペパー!ひかりのかべは特殊攻撃に強いんだ!ロックブラストは物理技、焼け石に水だ!なんならガケガニの技はいわなだれ、ロックブラスト、10まんばりき、シザークロス!全部物理だから意味がないぞ!」

 

「俺はバトルについては詳しくねえんだ!?料理なら任せろ!」

 

「じゃああのガケガニも料理してよー!?」

 

「む。りょうりするのはゆるさない。ちからづよく!10まんばりき!」

 

 

 必死なアイアールからぽろっとこぼれた言葉に頬を膨らませたサニアの指示に、地面に鋏を突き立て地盤を捲り上げながら突撃してくる、ガケガニ。まるでブルドーザーのそれだ。

 

 

「迎え撃て!れんぞくぎり!」

 

「目を狙って!しおづけしてうちおとす!」

 

「ぶちかませ!アクアブレイク!」

 

 

 れんぞくぎりでジャックが地盤を細切れにし、ガケガニの大きな目を狙ってしおづけした岩を飛ばして怯ませ、その隙を突いてパルシェンが水を纏って体当たり。力業で隙ができていたガケガニに炸裂し、その体勢が初めて大きく崩れてその上のサニアは結晶の神殿に手を置きバランスを取る。

 

 

「そろそろ?ガケガニ。うえをとれ」

 

「ンガアアアニィ!!」

 

 

 するとサニアは何かに気付くと、ガケガニがその巨体からは考えられない身軽さで跳躍。傍の切り立った崖の上に飛び乗ると、サニアの足元でその甲羅が罅割れ砕け散って行く。

 

 

▽サニアの ガケガニの いかりのこうら!

 

▽サニアの ガケガニの 攻撃が 上がった!

 

▽サニアの ガケガニの 特攻が 上がった!

 

▽サニアの ガケガニの 素早さが 上がった!

 

▽サニアの ガケガニの 防御が 下がった!

 

▽サニアの ガケガニの 特防が 下がった!

 

 

「…見て分かるほど積んでるな」

 

「いかりのこうらが発動したってことはようやく半分か…」

 

「ヤバそうちゃんだけど負けねえぞ!パルシェンではさみ揚げだ!」

 

 

 テラスタルした上で防御を捨てて攻撃面の能力を全て上昇させたガケガニとか殺意しか感じられないんだが。

 

 

「じゅうりんしろ。ガケガニ。いわなだれ」

 

「っ!交代、ケプリべ!さいきのいのり!」

 

「交代、シング!ごめん受け止めて!かえんほうしゃ!」

 

「耐えろパルシェン!」

 

 

 サニアが冷酷に指示を出すとガケガニは崖の上から跳躍して飛び降りてきてシャカシャカと走ってジャックたちに肉薄してきたので、嫌な予感がした俺はジャックを戻してケプリべに交代して同時にさいきのいのりを発動。アイアールも同じ予感をかんじたのか、ガケガニ相手には無力に等しいシングと交代して火炎を吐かせ、ペパーはそのまま耐える選択。瞬間、悪夢の様な光景が繰り広げられる。

 

 

「そのまま。10まんばりき。シザークロス」

 

 

 テラスタルで威力が上がったいわなだれの流れに、10まんばりきの怪力とシザークロスの動きを重ねて、交差した鋏の動きのままにいわなだれが操られて遠心力を加えてX状にドドドドドドッ!と叩きつけられる。ケプリべとシングは巻き込まれて戦闘不能、パルシェンは直撃を免れて吹き飛ばされるで済んだ。ケプリべはわかるが、耐久よりに育てたと言っていたシングすら一撃かよ。

 

 

「…技に技を合わせるだなんてラウラと同じ…!お願いヒナ!」

 

「反則ちゃんだぜそれは!」

 

「…俺のは攻撃技と補助技の組み合わせだ。攻撃に攻撃を重ね合わせるなんてどんな発想してやがる。レクス!」

 

「シザークロス」

 

 

 とりあえず反撃しようと繰り出した俺とアイアールのポケモンが、一瞬で移動してきたガケガニに纏めて切り裂かれて一撃で戦闘不能になる。生半可なポケモンじゃ無理か。シザークロス、ヒナがエスパータイプでレクスがむし・あくの複合で通りがいいからか。頭の回転が速い。とりあえず攻め方を変えるか。

 

 

「とにかく、またあんなの纏めて喰らったら致命的だ!分かれるぞ!」

 

「え?」

 

「ぼむん、でんじふゆう!」

 

 

 俺は三人乗りにしていたコライドンから飛び降りて、ケプリベのさいきのいのりで復活したぼむんを繰り出して搭乗、でんじふゆうで浮かび上がらせその上にしゃがんで掴まる。ちょっと不安定だが、移動手段として使えるはずだ。

 

 

「俺は右!」

 

「わかった、じゃあ私達は左から!」

 

「パルシェン、お前は殿だ!」

 

「むっ」

 

 

 ぼむんに乗ってガケガニの右側に移動する俺と、コライドンに乗って左側に行くアイアールとペパーに、ガケガニは両の目片方ずつで睨み、サニアは首を左右に振って警戒する。この攻撃力と素早さ、正攻法じゃまず勝てない。翻弄するしかない。

 

 

「ガケガニ。はさみ。りょうほうに。むける。ロックブラスト」

 

「さっきは戻して悪かったジャック。大いに目立て!」

 

「ツムヅムも行くよ!貴方の奥の手!」

 

「パルシェン、俺達も行くぞ!」

 

 

 ガケガニが目いっぱい腕を横に向けて鋏の間から岩の弾丸を飛ばしてくるも、両方に気を取られて狙いが定まらない攻撃なんて避けるのは簡単だ。俺たちは回避しながらジャックとツムヅムを再び繰り出し、三人同時にテラスタルオーブを構えて輝かせる。

 

 

「「「テラスタル!」」」

 

 

 岩の弾丸をばらまくガケガニの右側でジャックが、左側でツムヅムが、前方でパルシェンが、テラスタル。それぞれくさ、ゴースト、みずに冠する結晶を身に付けて咆哮を上げる。

 

 

「ジャック!一気に決めるぞ!くさわけ!」

 

「ぐっ…!?」

 

 

 草をかき分けるような動きで体当たりしたジャックがガケガニの体勢を大きくずらす。

 

 

「さっきまでは素早くて当てれる気がしなかったけど、隙あり!のろいだああああああっ!」

 

 

 空中に出現した巨大な釘のエネルギーで自分の身を削ったツムヅムののろい、否「呪い」がガケガニに炸裂。その体力を削って行く。

 

 

「パルシェン、とどめだ!アクアブレイク!」

 

 

 そこに、気合が乗ったペパーの叫びと共に激流を纏ったパルシェンの突撃が炸裂。ガケガニの巨体がひっくり返って結晶が砕け散る。

 

 

「つぶ、つぶれる……もどれ。ガケガニ。…ごめんなさい」

 

 

 引っくり返ったガケガニに押し潰されていたサニアがボールに戻して大の字に仰向けに寝転がって悔しげに一息つく。こうして俺達は第三(正確には偽龍に続く第四)のヌシ、ガケガニを撃破に成功したのだった。




ゲームとかアニメなら間違いなく専用カットインが入るトリプルテラスタル。

いわテラスタルガケガニ、まるで神殿を背負っているようでかっこいいよね。その前で仁王立ちするサニア、お面を被っているのも相まってかっこいいと思っていただけたら幸い。…さながらサニアと動く神殿。某アニメ映画を見て思いついたとかそんなんじゃないです、はい(汗)。

次回三つ目の秘伝スパイスを手に入れて、ついに…?次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSジメレオン

どうも、放仮ごです。戦闘が無い回だとタイトル付けが相変わらず大変。

今回はあまスパイスの一件。楽しんでいただけると幸いです。


「…わたしとガケガニのまけ。ひでんスパイス。もっていけ」

 

 

 負けず嫌いなのか悔しげな視線を向けてくるサニアに案内してもらい、入り口を塞いでいた岩をサニアが手持ちのバンギラスでずらしてくれた。…いいポケモン持ってるなあ、いつかフルバトルすることになったら間違いなく強敵だろう。

 

 

「うっし!ラウラ!アイアール!お疲れちゃんだぜ!まさかチャンピオンクラスのサニアと戦うことになるとは思わなかったけどよ!」

 

「私達もびっくりしたよ…」

 

「…ごめんなさい。わるいやつに。してやられて」

 

「もしかしてブルーフレア団か」

 

「たぶん。クラベルによるとそう」

 

 

 …あいつらもめんどうなことをしやがって。サニアも関わっていたとは聞いてたがなにがあったんだろう。

 

 

「よし!サニアも一緒に食ってけよ!美味しいもの食えば嫌なこと忘れるって!」

 

「いいの?」

 

「もちろん!ね、ラウラ!」

 

「そりゃあな」

 

 

 四人で洞窟に入ると、淡い輝きで洞窟が照らされていた。ヘルメットを外してきょろきょろと見渡していると、サニアが歩いて行って奥まで向かい、ついていくとそこにあった。

 

 

「これが。ガケガニ。まもっていた。ひでんスパイス」

 

「おっ!秘伝のアイツ、見っけちゃんだぜ!」

 

「桃色に光ってる…」

 

「どんな植物だ」

 

 

 アイアールの言う通りピンク色に輝いている植物を採取するペパー。そのままスカーレットブックを取り出して確認する。

 

 

「えーと?なになに?本によると……これは「あまスパイス」!胃を健康にして食べ物を消化しやすくしてくれる!腹痛(はらいた)や食欲不振にも効果絶大なんだとさ!」

 

「記憶喪失は治りそう?」

 

「五つ揃ったらそれっぽい効果は出るっぽいけどそもそも前例がないっぽいな!とにかくコイツでマフィティフをもっと元気にしてやれる!」

 

「だな。俺の記憶云々は今はどうでもいい。飯にしよう」

 

「おうよ!腕によりをかけてやるぜ!」

 

 

 ささっと調理器具セットを用意して見事な手際で料理していくペパー。サンドウィッチにカレーが瞬く間にできあがっていく。

 

 

「お待ちどうさん!毎度おなじみペパー風サンドウィッチとまろやか甘口カレーライスだ!おまけのヌシバッジもついてくる!ポケモンリーグには使えないけどありがたく受け取れよな!人数分あるぜ!サニアのぶんも、ほら!」

 

「あ、ありがとう…?」

 

 

 よくサニアの分まで用意してたな。…俺達の他にも頼れるやつがいたら頼るつもりだったのかな。しかし美味そうだ。俺達は洞窟も広いので前回より増えた手持ち全員を出す。レクス、ダーマ、レイン、ジャック、ケプリべ、ぼむん、ウカ。シング、ドーちゃん、リプル、ツムヅム、ヒナ、ハルクララ、コライドン。サニアとペパーも六匹全部出した。カジリガメ、ジオヅム、トロッゴン、たそがれのすがたのルガルガン、バンギラス、洞窟の一角を埋める程大きいガケガニ。マフィティフ、ヨクバリス、ジオヅム、スコヴィラン、パルシェン。そうそうたる面子だ。というかジオヅムが三人とも被ってるのな。仲良くしているようで何よりだが。

 

 

「うん、美味しい!」

 

「ギャアンス」

 

「辛くないカレーもいいな!」

 

「うん。おいしい」

 

「マフィティフもほら」

 

 

 これは悪くない。そんな感想を抱きながら、サンドウィッチを食べたコライドンがなんかの能力を取り戻したり、ペパーがマフィティフに少しずつ食べさせて鳴き声が出る程回復したりといった光景を眺めてスプーンを口に運ばせていると、頭痛と共にスプーンを取りこぼす。

 

 

「ぐうっ…」

 

「ラウラ!?」

 

「どうした?」

 

「もしかして不味かったのか!?」

 

「ち、がう…これは……」

 

 

 脳裏に知らない映像がフラッシュバックする。以前出会った四天王のムツキより少し幼く服装も違うムツキとの、どこかの森での知らない出会いと手痛い敗北。知らないはずだが懐かしく感じるゴスロリの少女との出会い。顔が朧気だけどアイアールによく似た少女との出会いと初バトルで勝ったもののジメレオンにしてやられたこと。そして……なにかに引きずり込まれたこと。そこで現実に引き戻される。

 

 

「大丈夫!?ラウラ!」

 

「…ムツキは知り合いだった…?だけど俺と出会った時そんなそぶりは……」

 

 

 アイアールとサニアとペパー、ポケモンたちが心配そうに眺めていたのに気付き、頭を振るう。今のは俺の記憶か…?

 

 

「…不気味な森、キノコが輝いている…あれはどこだ?」

 

「それってもしかしてルミナスメイズの森か?」

 

 

 思い出そうとする俺の呟きに反応したのはペパーだった。思わず両肩を掴んで揺らす。

 

 

「ルミナスメイズ!それだ!それはどこだ!?ペパー!」

 

「お、落ち着けって…ガラル地方の森だよ!そこがどうかしたのか?」

 

「ガラル……そう言えばネモも俺の着ていたのはガラルのユニフォームだって言ってたっけ…」

 

 

 …ってことは俺はガラルから……?あとでスマホロトムで検索してみるか。

 

 

「とりあえず、お前たちのおかげでマフィティフの具合、順調に良くなってる!ラウラもなんか記憶がちょっと戻ったっぽい!お前らと会ってからいいことばっかりだ!」

 

「本当にマフィティフが元気になってよかったよ」

 

「…俺こそ、ちょっと思い出せた。ありがとな」

 

「秘伝スパイスはあと2つ!偽龍のヌシの攻略も含めて、もう少し付き合ってくれよ!」

 

 

 サムズアップして笑顔を浮かべるペパーに頷くと、隅っこで残ったサンドウィッチにカレーをかけて食べていたサニアが笑う。

 

 

「…いいね。たからさがし、まんきつしてる。みつけられるといいね」

 

 

 どこか達観しているサニアに、思い至る。チャンピオンクラスってことはネモと同じで以前の宝探しにも参加したってことだ。でもまた参加している、ってことはネモと同じで宝を見つけることができなかった…のか?

 

 

「…サニア、お前の宝物は…?」

 

「ぜんぜんみつからない。だけど。かならずみつけてみせる。だから。きみたちもがんばって」

 

 

 そう言ってサニアはボールに手持ちを戻し、あまスパイスを一房採取すると洞窟から去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、俺も行くからな!また次のヌシのところで会おうぜ!」

 

 

 ペパーもそう言って去って行き、俺とアイアールも外に出るとお馴染みアイアールのスマホロトムの着信音が。どうせまたあの博士だろうな。

 

 

《ロトロトロトロト……「ハロー、アイアール。ラウラ。こちらオーリム。どうやらコライドンがまた一つ本来の力を取り戻したようだね。今回は「ダッシュ」。ライド状態で加速することが可能になったようだ」》

 

「博士、聞きたいことがある。…俺の記憶について何か知ってるか?」

 

《「……知っているが今は言えない。引き続きコライドンをよろしく頼んだよ」》

 

「おい、待て!?」

 

 

 言うだけ言って切っていきやがった。やっぱりあの博士が一枚噛んでるのか。…ってことはこの南3番エリアじゃなくて、隣接していて博士が住んでるっていうエリアゼロが俺の記憶喪失と関係ありそうだな。チャンピオンクラスになれれば入る許可を取る事ができるんだろうか。頑張ろう。




ついに記憶を一部取り戻したラウラ。仲良しの面子の事と、何かに引きずり込まれたことを思い出しました。エリアゼロがやはり関係ある模様…?ムツキの反応についてはまた後々。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSキマワリ

どうも、放仮ごです。彼女のキャラデザのよさとキャラに沼に落ちた人は数多いと思うんだ。

今回はボウルタウンへ。楽しんでいただけると幸いです。


「つ、ついたぁあああ」

 

「調子に乗ってダッシュばかりするから何度も落ちたんだぞ」

 

 

 なんとか南3番エリアを抜けてようやく辿り着いた花と芸術の町ボウルタウン。アイアールがコライドンを新しい能力のダッシュで爆走させて崖下に落ちまくり、そのたびにぼむんに乗せてもらって上に戻る、を何度か繰り返す羽目になった。学習はしてくれ…。

 

 

「なんか変なのがいっぱいあるね」

 

「あれは芸術品って奴だ。ジムリーダーが作ったらしい」

 

「へー」

 

「興味なさそうだな」

 

「どれぐらい強いかの方が気になるかな」

 

「このバトルジャンキーめ」

 

「ラウラに言われたくないかなあ」

 

 

 失礼な。俺はあいつみたいにバトルジャンキーじゃないぞ。むしろいさめて……あいつって誰の事だ?あのジメレオンのトレーナーか…?

 

 

「どうしたの考え込んで」

 

「いや…なんでもない」

 

 

 少し思い出したとはいえ、俺が何者だったのかすらまだまだ思い出せない。手がかりは四天王ムツキ、名前が分からないゴスロリの少女、顔も声も思い出せないジメレオンのトレーナーの三人。俺と関係があったのは間違いない。どうにか会って話がしたいところだが……ムツキが俺になんも反応しなかったのが解せぬ。今より若いようだったから、彼女の若い頃に負けたトレーナーが俺だったのかもしれない。それだけの関係ならまあ忘れていてもおかしくない、か…?

 

 

「とりあえずジムに行くか。観光するのは後でもいい」

 

「賛成」

 

 

 二人で揃ってジムに向かう。景観に合ってない建物はやはり目立つからすぐ見つかった。中に入ると、見覚えのある人物と見覚えのない人物がいた。

 

 

「「ハッサク先生?」」

 

「おや、アイアールくんにラウラくんじゃありませんか。二人とも、よき調子でジムをめぐっているそうですね。ブルーフレア団という連中については聞きました。小生も四天王としてしっかり警備させていただきますので」

 

 

 オレンジアカデミーの美術の先生にして四天王の一人、ハッサク先生。この人の授業は結構好きだ。すると、後ろを向いてスマホロトムを弄っていたフォーマルな格好の人物がスマホロトムをしまいながら振り返る。とんでもないイケメンがそこにいた。

 

 

「なんや?もしかして噂のコンビか…?へー!アイアールにラウラ、やったっけ。強さエグいらしいやん?」

 

 

 珍しい、コガネ弁だ。ジョウト地方のコガネシティ出身か?長身かつ細身でスタイルがよく、ツリ眉タレ目の端正な顔立ちが輝いている。ポニーテールにしたツーブロックの緑髪がゆらゆらと揺れており、ポケットに手を突っ込んでいる姿が様になっていた。アイアールも同じことを思ったのか共に言葉に詰まる。めちゃくちゃイケメンだな。

 

 

「「そ、それほどでも…」」

 

「よう言うわ!二人とも謙虚やなぁ」

 

「彼女の名はチリといいます」

 

「まいど!チリちゃんやで。美人さんやけど怖がらんといてな」

 

 

 ハッサクさんに紹介されて笑顔で右手を振って応えるチリさん。彼女……女か。なんか納得した。なんか知り合いに似た様な男装の麗人がいた気がする。じめんタイプ使いのやべー奴だった気もする。

 

 

「少しふざけた女性ですが小生と同じく四天王なのですよ」

 

「いや、ふざけてへんけど…?それにしても……ふぅん。あんたがラウラやな?自分、パッと見た感じむしポケモン使いか?おかしいやんな、見た感じ四天王……いやチャンピオン並みの実力がある様に見えるんやけど。そちらの相方…アイアールも含めてなかなかおもろそうやんな?」

 

 

 そう俺達の事を値踏みする様に評価するチリさん。……俺が四天王クラスはさすがに言いすぎだと思う。毎回と言っていいほど苦戦しているんだぞ。

 

 

「当たり前ですよチリ。我らがアカデミーの優秀な生徒でありますからね」

 

「なはは。そらそーや。でもな、これでジム四つ目みたいやけどジム巡るんは半分越えてからがキッツイねん」

 

「たしかに。並みのトレーナーは大半がこの辺りで脱落します」

 

「脱落…」

 

「具体的に言うと挫折ですね。生半可な才能では超えることは難しいのです」

 

 

 …挫折。主にネモのせいな気がするが気のせいだな、うん。

 

 

「…でも、アイアール。ラウラ。自分ら違うんやろ?チャンピオンテストで待っとるさかい。残りのジムもせいぜいきばりやぁ。…邪魔する悪者(わるもん)はうちらが阻んでみせるかんな」

 

「武運を祈っておりますよ」

 

「あ、ちょっといいですか?」

 

 

 去ろうとする二人を慌てて呼び止める。四天王に、それも二人も会えたのは幸運だろう。

 

 

「どうしたんや?」

 

「美術の質問ならまた授業で…」

 

「いや、そうじゃなくて。…四天王の一人、ムツキが俺の事をなんか言ってませんでした?」

 

「ムツキ?……面白いトレーナーがいるってラウラの事を話しとったなあ」

 

「ストライクを保護してもらってよかったとも言ってましたか」

 

「あ、ハッサクさんそいつは…」

 

「おや。口止めされてましたね。忘れてください。これぐらいですが、参考になりましたか?」

 

「…はい。ありがとうございました」

 

 

 …やっぱりムツキは俺の事は知らない、のか……単にひどい敗北したから思い出したってだけかなあ。

 

 

「では」

 

「危ないことに首突っ込むのはほどほどにするんやでー」

 

 

 ばれてる。チリさんに俺がブルーフレア団に関わろうとしてるの思いっきりばれてるなこれ。そのまま視点の二人を見送り、アイアールと顔を見合わせる。

 

 

「ムツキさんがなにかあったの?」

 

「いや、多分関係ない。さっさとジムテスト受けるぞ」

 

 

 アイアールの手を握り、受付に向かい手続きを行う。ジムテストは「キマワリ集め」。ボウルタウンにはキマワリを集めてもてなす風習があるらしく、全30匹を町中に放すので、10匹ずつ集めて「キマワリ広場」に連れて行けばクリアらしい。ジムの右手にあるキマワリのオブジェが目立つ広場に向かい、説明を聞きながらアイアールに提案する。

 

 

「アイアールはコライドンを使え。俺もぼむんを使う。早く集めた方がジムリーダーと先に戦うぞ」

 

「上等!負けないよ!」

 

 

 ぼむんに乗りこなすのは多分今後必要事項だと思う。乗りこなす練習にちょうどいい。やってやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけた!待て待て~!」

 

「…もう少しスマートに見つけられんのかあいつは」

 

 

 ぼむんに乗って空中に浮遊し、辺りを見渡して見つけたキマワリを回収するのを繰り返していると爆走するキマワリと、それを追いかけるアイアールが見えたので先回りして回収する。こういうのは行く先を見極めないと何時まで経っても追い付かないからな。

 

 

「あー!私のキマワリ!」

 

「相手の裏をかくのも大事だぞ。これで10匹。俺の勝ちだな」

 

「うう…負けた!」

 

 

 見ればアイアールも9匹。危なかったな。そんなこんなで俺はジムリーダーのネイチャーアーティスト・コルサと戦える権利を得たのだった。初心者向けらしいがジムリーダーは相手の実力(バッジの数)に合わせて手持ちを調整するらしいし、相性がいい相手とはいえ油断しないで行こう。




噂のコンビになってるラウラとアイアール。チリちゃんからの見立てによれば四天王クラスとまで言われてますが、これは前作二部の当初、実はジムリーダーじゃなくてガラルの四天王にしようと考えていた名残です。そちらはでんき・ひこう・むし・じめんでした。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSアマージョ

どうも、放仮ごです。レクス(王)を名乗らせて、女王とされる同じ蹴りメインのポケモンがいることに運命を感じた今回。

今回はジムリーダー・コルサ戦。立ち位置的には前作のネズさんに近いです。楽しんでいただけると幸いです。


 ネイチャーアーティストと呼ばれるジムリーダー、コルサ。くさタイプの使い手で、『投げやりのキマワリ』『収穫』などを手掛けた芸術家。事前に調べた情報だとこんな感じだったがどんな人なんだろう。バッジの数が三つだと答えたら4VS4と知らされ、案内されたボウルタウンで一番大きい風車の下にあるバトルコートで待っていると、上から声が聞こえてきた。

 

 

「挑戦者よ!」

 

「え」

 

 

 見れば、止まっている風車の羽根の上に茨のような突起のある深緑色の髪型をした男性が立っていた。ええ……。

 

 

「とうっ!」

 

 

 深紅色のシャツに黒色のスラックス、緑色の革靴と左腰に丸めたイバラ型のロープを身に着けているその人物は風車の上から宙返り、見事な三点着地を決めて立ち上がる。

 

 

「よくぞ、友との戦いを制して私のもとに来た!私はコルサ!くさタイプポケモン専門の芸術家であり、ボウルジムのジムリーダーでもある!貴様たちのジムテスト、風車の上から見ていたぞ!」

 

 

 つまり、このコルサさんは俺とアイアールがジムテストを受けている最中ずっとそこから様子を観察してたっていうのか…!?

 

 

「キマワリを見つけ出す洞察力は二人とも実に!アヴァンギャルドッ!!そして貴様はッ!逃げるキマワリを先回りし追い詰める手腕、実に鮮やか!新たなインスピレーションを感じたほどだッ!!」

 

「ど、どうも…」

 

 

 やべえ、この感じについていけない。徹夜でもしてんのかってぐらいのテンションだ。そんなにいいものだっただろうか。

 

 

「どうした!覇気が足りないぞ!その審美眼、そして即決する判断力!…勝負でも発揮されることを祈っているぞ。ポケモン勝負は作品だ、芸術だ。勝ち進んだお前と私の合作アートを作るとするぞ!準備はいいな、構えろラウラ!」

 

 

▽ジムリーダーの コルサが 勝負を しかけてきた!

 

 

 急に落ち着いて来たかと思えば叫んでくるコルサさん。情緒不安定か?と不安になりながらもボールを構える。

 

 

「美しい花で彩れッ!ドレディア!」

 

 

 繰り出してきたのははなかざりポケモンのドレディア。その口上にオレアを思い出した俺は、少し考え込んでからボールを改めて構える。即興だがやってみるか!

 

 

「…蟲は儚くとも、負けじと睨むは二つのめだま!恐怖せよいかくの模様!蟲ポケモン・アメモース!名前はレイン!いざここに!」

 

「いい口上だラウラよ!その調子だ!」

 

 

 恥ずかしいから褒めるのやめてくれ。即興にしては良くできた方だとは思うが。

 

 

「エアカッター!」

 

「ひかりのかべだ」

 

 

 手始めに繰り出したエアカッターをひかりのかべで防がれる。厄介だな。

 

 

「でんこうせっかで横から回り込め!」

 

「はなふぶきで目くらましだ!」」

 

「バブルこうせんで押し流せ!」

 

 

 でんこうせっかの直角軌道で回り込むも、ドレディアを中心に凄まじい量の花弁がぶわっと広がり撃墜、バブルこうせんで押し流すがひかりのかべでほとんど阻まれて全く吹き飛ばせない。

 

 

「目には目を。歯には歯を。蟲には蟲を。ちょうのまい!」

 

 

 するとはなふぶきの向こうで蝶の様に舞い踊るドレディア。嫌な予感がする。

 

 

「バブルこうせんで目くらまし!」

 

「芸術とは破壊と創造!養分にならぬよう足掻くことだ!はかいこうせん!!」

 

 

 泡で覆われたレインに、ドレディアの手の中で溜められた極太光線が放たれる。…ははっ、三つしかバッジ持ってない奴にはかいこうせんかよ……楽しいなあ!

 

 

「素早く!上空にでんこうせっか!」

 

「なんだと!?」

 

 

 アイアール、認める。俺バトル好きだわ。相手を出し抜いた時のゾクゾクする感覚が俺は大好きだ!

 

 

「レイン、新技だ!力強く!むしのさざめき!」

 

「ちょうのまいで避け……むっ、動けん!?」

 

「はかいこうせんは直線状に来ることさえわかっていれば避けることは簡単だ!何せこっちは飛べるんだからな!エアカッター!」

 

「ふっ…道理だ」

 

 

 エアカッターの直撃を受けて崩れ落ちるドレディア。技を行使しているうちにひかりのかべも消えていたらしい。

 

 

「では次の題材といこう!アマージョ!」

 

 

 次に繰り出されたのはフルーツポケモン、アマージョ。蹴り技が得意なポケモンだ。このまま行こう。

 

 

「エアカッター!」

 

「お前なら避けれる!じゃれつく!」

 

 

 エアカッターを単なる脚力だけで避けて、肉薄してボコスカ殴り蹴りつけてくるアマージョ。レインは吹き飛ばされ、体勢が崩れる。

 

 

「でんこうせっかで逃げ……」

 

「掴め。しねんのずつき!」

 

 

 逃げようとするレインの触角を両腕で掴んだアマージョが、念動力を纏って加速した頭突きを叩き込む。手放されたレインはよろよろと崩れ落ち、慌ててボールに戻す。なんてスピードと格闘能力だ。なら相手は決まってる。次のネットボールを構える。

 

 

「蟲は儚くとも、王たる威光を示す蹴撃者(しゅうげきしゃ)。身に着けたるはむしのしらせ。蟲ポケモン・エクスレッグ!名前はレクス!いざここに!」

 

 

 恥ずかしいけどこうなりゃやけじゃい。なんかレクス達もやる気が出るっぽいし今回はこれで行こう。王に関する名前のレクスと、アマージョ…女王が睨み合う。そして俺達が指示することなく、同時に右足を振り上げ、激突した。

 

 

「ほう、蹴り対決か!いいだろう!トロピカルキックだアマージョ!」

 

「素早く!にどげり!」

 

 

 相手の攻撃力を1段階下げる効果がある蹴りと、二連続の蹴りがぶつかり衝撃波を散らす。互角だ。

 

 

「地面にしねんのずつきだ!」

 

「砂煙から逃れろ!上だ!」

 

 

 すると地面に向かって念動力を纏った頭突きを叩き込んで砂煙を上げるアマージョから逃れるべく大きく跳躍して地面から逃れるレクス。あくタイプのレクスに効果の無いしねんのずつきを目暗ましに使うとは。すると砂煙の向こうでにやりと笑うコルサさんが見えて。

 

 

「空中に逃れるとわかっていたぞ!とびひざげり!」

 

「ッ!とびかかる!」

 

 

 砂煙から飛び出してきて、振り上げた右足の膝を叩き込んでくるアマージョに、レクス得意の飛び蹴りを叩き込む。とびひざげりは命中率が低く、外して地面に当たると(・・・・・・・)自分がダメージを負う技。空中に出すことでそのデメリットを失くしてきたか…!

 

 

「レクス!」

 

 

 とびかかるととびひざげりが激突し、押し負けて吹き飛ばされ地面に叩きつけられたレクス。それを追って着地し、とんでもない脚力で肉薄するアマージョ。

 

 

「アマージョ、じゃれつくだ!」

 

「レクス!例の奴だ!」

 

 

 フェアリータイプの技、じゃれつく。あくタイプのレクスには効果は抜群だ。…だがな。まっすぐ来てくれるならやりようはある。

 

 

「…なんだと!?」

 

「…例の奴。じごくづき」

 

 

 レクスの蹴りがアマージョの喉元に突き刺さっているのを見て驚愕するコルサさん。喉元を押さえてえづき、離れるアマージョに、グググッと踏み込んだレクスが一気に飛び込んでいく。

 

 

「力強く!」

 

「トロピカルキックだ!」

 

「とびかかる!」

 

 

 レクスのただの飛び蹴りがアマージョの緑のオーラを纏った蹴りと激突して空中に弾き飛ばされたレクスが体勢を整えて急降下して飛び蹴りを叩き込み、アマージョは背中から地面に押し付けられて目を回した。

 

 

「いいぞ!蟲使い!そうでなくてはな!次の題材だ、オリーヴァ!」

 

 

 楽しんでいるかの如く次のポケモンを繰り出すコルサさん。…俺も楽しいけどきついぞこれ。




コルサさん書くの凄い楽しい。手持ちはクリア後コルサさんから抜粋しました。


「蟲は儚くとも、負けじと睨むは二つのめだま!恐怖せよいかくの模様!蟲ポケモン・アメモース!名前はレイン!いざここに!」
「蟲は儚くとも、王たる威光を示す蹴撃者(しゅうげきしゃ)。身に着けたるはむしのしらせ。蟲ポケモン・エクスレッグ!名前はレクス!いざここに!」

芸術家が相手と言うことでオレア式名乗りを解禁したラウラ。これ考えるの結構難しいけど違和感がなければ幸いです。いや本当にレインで二時間ぐらいかかった。

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VSオリーヴァ

どうも、放仮ごです。むしタイプが一番好きですが次点でくさタイプが好きなのでちょっと優遇してます。ラランテスとか最高だよね。

今回はVSコルサ後編。楽しんでいただけると幸いです。


「いいぞ!蟲使い!そうでなくてはな!次の題材だ、オリーヴァ!」

 

 

 次にコルサさんが繰り出したのはオリーブポケモン、オリーヴァ。オリーブの木でできた女神のような姿が特徴的なポケモンだ。コルサの相棒とも知られている。三つずつオリーブの実がついた翼の如く大きく広がる両腕を上げてオリーブの冠を彷彿とさせる円を形作るオリーヴァ。独特な構えだ。むしタイプで抜群を取れるとはいえ、レクスで行けるか?

 

 

「敵を彩れ!やどりぎのタネだ!」

 

「避けろレクス!こうそくいどう!」

 

 

 くるりと回転し放たれた種を、後ろ脚を展開しフィールドを駆け抜けて回避するレクス。外れた種が地面に落ちて、蔦が伸びてレクスを追いすがる。そんなのありか!?

 

 

「くさポケモンは自分の力を宿らせた植物を操れて当然!やどりぎのタネとは、寄生木(やどりぎ)の種と書く!くさむすび」

 

「上だ!」

 

 

 グネグネと動いて結ばれ、レクスの脚に引っ掻けて転ばせようとしてきた蔦から空中に逃れるレクス。しかし蔦は上空まで伸びてきて、束になって空中で結ばれレクスは囚われ体力を吸い取られていく。

 

 

「くそっ…戻れレクス!」

 

 

 想定外の戦い方だ。対抗できるのは……こいつか。

 

 

「蟲は儚くとも、太陽の如く輝く念の力!身に着けたるはどくまひやけどを移す驚異のシンクロ!蟲ポケモン・ベラカス、名前はケプリべ!いざここに!」

 

「ほう!珍しいポケモンを持っているな!」

 

 

 繰り出したのはケプリべ。こいつも修行でパワーアップしたんだ、そう簡単には負けん。

 

 

「むしのさざめき!」

 

 

 レインと一緒に覚えた、むしタイプの高火力技を叩き込む。すると仰け反り、零れ落ちるてフィールドに草が生い茂る。こぼれダネ。攻撃を受けるとグラスフィールドにする特性か。

 

 

「一撃じゃさすがに無理か…」

 

「くさタイプはねばりも強い。このオリーヴァ、そう簡単には倒れんぞ!だいちのはどう!」

 

「ケプリべ、避けろ!」

 

 

 地面から襲ってきたエネルギー弾を、ふよふよと動いて回避しようとするが直撃するケプリべ。それじゃ駄目だ。ケプリべは機動力が皆無だ、避けるのに向いてない。くさタイプの攻撃だからそんなにダメージは通らないがじり貧だ。

 

 

「さらに生い茂らせろ!やどりぎのタネ!」

 

 

 さらに種を飛ばしてきてケプリべに埋め込み、蔦で雁字搦めにするオリーヴァ。このまま体力を奪い取られて終わりだ。…ケプリべじゃなければだが。

 

 

「そのままくさむすび」

 

「それを待っていた」

 

「なんだと?」

 

「じんつうりき!」

 

 

 すると、くさむすびで締め上げられたケプリべに埋め込まれた蔦がひとりでに動き出して拘束をほどき、紫色の光に包まれて動かされ、オリーヴァを逆に雁字搦めにする。じんつうりき、サイコキネシスには及ばないがエスパータイプの念動力を用いる技だ。操る物があれば、本領を発揮する。

 

 

「締め上げろ!」

 

「くっ…エナジーボール!」

 

「力強く!むしのさざめき!」

 

 

 オリーヴァはエナジーボールで抵抗するも、強化したむしのさざめきで消し飛ばしながら攻撃。オリーヴァは崩れ落ちる。よし、これで3VS1…!俺が有利だ。

 

 

「…よくやったオリーヴァ。映える芸術(アート)だった。なかなか見どころがあるぞラウラよ。作品完成まで一気に導くぞ!」

 

 

 そう言ってコルサさんが繰り出したのはまさかのウソッキー。そのままテラスタルオーブを取り出し輝かせるコルサさん。…この地方のジムリーダーはエキスパートと違うタイプを出してくるから心臓に悪いな。

 

 

「さらなる細工を加えよう!題して『ウソから出た(まこと)!』!!」

 

「…なるほどウソから出た真」

 

 

 くさテラスタルとなるウソッキー。なんか感慨深いな。嘘の木が本物になりやがった。

 

 

「だがくさタイプなら…!むしのさざめき!」

 

「アートは時に速さが命!スピードを上げて行くぞ!くさわけ!」

 

「速い!?」

 

 

 ジャックの使うくさわけとは練度が桁違いの速さで、草をかき分けるように駆け抜けて回避、蹴りをケプリベに叩き込みボールの様な部位を蹴り飛ばすウソッキー。速すぎて当てられない。

 

 

「ほのおのパンチ!」

 

 

 そのまま炎を纏った拳で殴られ、炎上しながら転がるケプリべ。くさタイプ使いがほのお技を使ってくるのは予想外なんだが?さいきのいのりを使う余裕もなかった。ケプリべをボールに戻し、レクスを繰り出す。

 

 

「素早く!とびかかる!」

 

「遅い!ストーンエッジ!」

 

「にどげり!」

 

 

 地面を蹴ったレクスの飛び蹴りも簡単に回避され、返しに地面に拳を打ちこんで隆起させた岩の刃を蹴り砕きウソッキーにダメージを与えるも掠ってしまい、吹き飛ぶレクス。なんとか耐えたが、足元には冷気が迫って来て拘束、氷漬けにされてしまう。

 

 

「れいとうパンチ」

 

「こおり技もかよ…」

 

「ストーンエッジだ」

 

 

 そのままもう一度岩の刃が突き刺さって戦闘不能になるレクス。ほのおのパンチは恐らく蟲対策、れいとうパンチは同じくさタイプ対策、か?厄介極まりない。

 

 

「さあ、最後に何を見せてくれる!?お前の敗北でこの作品を完成させようか!」

 

「そうはいくか。蟲は儚くとも、爆砕!要塞!大喝采!身に着けたるは粉塵防ぐぼうじん!蟲ポケモン・フォレトス!名前はぼむん!いざここに!」

 

 

 出てきたぼむんが困惑している。やべえ、作戦とはいえノリで変な口上を上げてしまった。コルサさんの反応は……。

 

 

「一周回ってありだな!」

 

「いっそダメ押ししてくれ!?」

 

 

 真顔+サムズアップは俺に効くからやめろお。

 

 

「まきびし!」

 

「無駄だ!くさわけ!」

 

 

 照れ隠しにまきびしをばら撒くが、全てとんでもない速さで避けられてしまう。ならこっちも

 

 

「でんじふゆうで追いかけろ!」

 

「ふはは!飛んで火に入る夏の蟲とはこのことだ!ほのおのパンチ!」

 

 

 浮かび上がり、突撃するぼむんに対して振り返り、炎を灯した拳を振るウソッキー。ああ、いい返しだ。完敗だ。…なんてな?

 

 

「ああ、言い忘れていた。ぼうじんは嘘だ。正しくはこうだ、“身に着けたるは炎も耐えるがんじょう”」

 

「なんだと…!?」

 

「この距離なら外さない…でんじほう!」

 

 

 そしてほのおのパンチを耐え抜いていたぼむんの決め技が零距離で炸裂。俺のぼむんのとくせいはがんじょうだ!フェイクの口上に騙されたな!

 

 

「そっちが“ウソから出た真”なら、こっちは“嘘も方便”だ」

 

「アヴァンギャルド!!」

 

 

 ウソッキーが崩れ落ち、頭を抱えるコルサさん。してやったりだぜい。

 

 

「なんというアーティスティックなタクティクス!技のパターン!ポケモンのディティール!蟲ポケモンへの愛!口上すら利用する戦略!すべてが研ぎ澄まされている!キサマとの戦いを芸術と言わずして他の何を芸術と呼ぶのだ!?ああ、インスピレーションが止まらん……止まらんぞ……!」

 

「あ、あの、そんなに褒めないで……」

 

 

 興奮状態でまくしたてるコルサさんを必死に宥める。普通に照れるから。観客も多いんだから褒めないでくれ。頼むから。懇願すると正気に戻った様でスンッと大人しくなった。切り替えが速いな!?

 

 

「……失礼、熱くなりすぎた。私の審査は文句なしの合格だ。その証にバッジを進呈しよう!新作の作成に取り掛かりたいところだがアイアールとやらもいたな……早く来るように言うのだ!ではラウラよ、さらばだ!」

 

「…アイアールならそこに……行っちゃった」

 

「お疲れラウラ。…また登るんだね」

 

「パフォーマンスなんだろ、知らんけど」

 

 

 風車の方に走っていくコルサさんに、観客たちの間からやってきたアイアールと共に首をすくめる。変な人だったなあ。嫌いじゃないけどさ。…しかしくさタイプにも苦戦するとは、苦手なタイプと当たった時がヤバいぞこれ。




蝶の様に舞いはかいこうせんをぶちかますドレディア、凄まじい格闘能力のアマージョ、やどりぎのたねとくさむすびを利用してフィールドを己のものにするオリーヴァ、二色のパンチを使い分け素早く攻撃するウソッキーと曲者揃いでした。


「蟲は儚くとも、太陽の如く輝く念の力!身に着けたるはどくまひやけどを移す驚異のシンクロ!蟲ポケモン・ベラカス、名前はケプリべ!いざここに!」
「蟲は儚くとも、爆砕!要塞!大喝采!身に着けたるは粉塵防ぐぼうじん(身に着けたるは炎も耐えるがんじょう)!蟲ポケモン・フォレトス!名前はぼむん!いざここに!」

正直一番難産だったのがこれ。ポケスペのルビーはあんな綺麗に纏められててすごい。MIMIの口上、進化前進化後共に好きです。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSコータス

どうも、放仮ごです。前々回と前回の口上がお気に召さなかった人もいるようで。僕個人もあんまり自信作でもないのですが、あのウソでの対抗とがんじょう騙しをやりたかったので許してください。

今回はチーム・シェダルへのカチコミ。楽しんでいただけると幸いです。


 アイアールもコルサ戦を無事に終えて、少し観光をしてからボウルタウンを旅立った俺達。アイアールを先に次の目的地であるハッコウシティに向かわせ、俺は真夜中の東1番エリアを歩いてスター団ほのお組『チーム・シェダル』のアジトを目指していた。こればっかりはアイアールを巻き込むわけにもいかないからな。

 

 

「ん?校長…じゃない、ネルケ?」

 

「ラウラか。そうだ、今の俺はネルケ。よくわかってるじゃないか」

 

 

 すると道の途中で待っていたらしいクラベル校長…ではなくネルケと出会う。ペパーといい俺達の動向どうやって把握してるんだろう?校長の仕事も忙しいだろうに…。

 

 

「ラウラ。まずは感謝するぜ」

 

「なにをだ?」

 

「おかげでスターダスト大作戦に加わることができた。スター団の問題とその謎を突きとめるのが俺の目的だからな」

 

「不良集団ってだけじゃないのか?」

 

 

 スター団については詳しくないんだよな。何か既にやらかしてるのか?

 

 

「いじめで多くの生徒を退学に追い込んだ……アジトに籠ってアカデミーを襲撃する計画を立てている……青いサングラスをかけたしたっぱたちによる強引な勧誘……いくつかヤバい噂はあるがあくまで噂レベル。今直面している一番の問題は団員たちのあまりにも長い無断欠席」

 

「不登校しているということか。そりゃあ校長……ネルケも無視できないわな」

 

「したっぱたちはまだいいのですが、こと5名の生徒……スター団のボスと呼ばれる生徒たちは一年以上学校に来ていない。加えて最近は一部のしたっぱたちがやんちゃを始めているようで……ポケモンの乱獲やらトレーナーを複数人で襲撃やら被害も出ているらしいのです。だから私はスター団に解散を要望しました。それを無視するならば退学してもらうほかないと……しかし返事はなかった。解散か退学かどちらかを選択する期限も迫っている……そんな折に聞こえたのが貴方のカシオペアの会話でした」

 

《ロトロトロトロト……》

 

 

 そこまでネルケが言ったところでスマホロトムに着信音。カシオペアだ。

 

 

「で、では続きはまたの機会に…お気をつけて」

 

 

 そう言ってネルケはアジトの方に走り去っていった。それを確認してから電話に出る。

 

 

《「こちらカシオペア。ラウラ、聞こえるか?」》

 

「問題ないぞ。今チーム・シェダルのアジトに向かっているところだ」

 

《「さすがだ。チーム・シェダルのボスのメロコはスター団きってのなんでも屋。どんな問題も強引に対処する。なんでも最近は資金のためにバイトもしているそうだ。恐らくメロコは我々の宣戦布告で荒れているはず。そうでなくてもボスを1人、それもまとめ役のピーニャを倒したことでスター団は警戒を強めている。アジト攻略も前回よりきびしいものになるだろうが……手段は問わない。存分にカチこんでくれ」》

 

「上等!行くぞぼむん!でんじふゆう!」

 

 

 通話を切るなりぼむんを繰り出し、脚に掴まってその頭上に搭乗。姿勢を低くして空気抵抗を減らしつつ、でんじふゆうで浮かばせ突進する。青いサングラスをかけた男したっぱと、星形のサングラスをかけた女したっぱがバリケード前に陣取っているのが見えた。

 

 

「おいなんだよ。ここはスター団のアジトだぞ!?」

 

「止まって引き返せ!でないと正当防衛よ?」

 

「やるなら俺達スター団に刃向ったことを後悔させてやる!」

 

「く、来るの!?ボッコボコにしてやる!」

 

 

 ぐんぐん近づく俺に狼狽えつつ、繰り出されたのはデルビルとシシコ。確かにぼむんには効果抜群を取れるがなめるなよ!

 

 

「パラリラパラリラってな!まきびし!」

 

 

 突進しながら前脚二本の先端を向け、まきびしを高速で射出するぼむん。寸分違わずまきびしを次々と浴びたデルビルとシシコは悲鳴を上げ、迫るぼむんから両脇に避けるしたっぱ二人。

 

 

「パラリラってなんだー!?」

 

「私達の正当防衛がー!?」

 

「止まれぼむん」

 

 

 このままだとバリケードにぶつかるので停止。俺はぼむんの頭上から飛び降り、尻餅をついているしたっぱ二人を見下ろしつつ手持ちを全員繰り出す。レクス、ダーマ、レイン、ジャック、ケプリべ、ぼむんに睨み付けられ悲鳴が上がる。

 

 

「それで、まだ戦うか?」

 

「あんた、めちゃくちゃ強いじゃん……」

 

「っていうかもしかしてスター団に喧嘩売ってる人?ラウラ?」

 

「そうだと言ったら?」

 

「ご丁寧にありがとう!こりゃ激マズだぜ!敵襲!敵襲ー!」

 

「ラウラよ!ラウラが来た!チーム・セギンの様に蹂躙されないでみんなー!」

 

「失礼な」

 

 

 バリケードを開けて叫びながら逃げて行く二人に呆れた視線を向ける。まあ、蹂躙するけどな。特にほのおタイプとかいう蟲ポケモンを舐め腐っているような奴等はお灸を据えてやる。

 

 

「なんだか知らないが、偏見だと思うぜラウラ」

 

「いたのかネルケ」

 

「見張っていたらこいつが来たんでな、引き留めていた」

 

「こいつ?」

 

 

 物陰から現れたネルケの言葉に首をかしげると、俺のポケモンたちに怯えているのかネルケの足元にしがみついているポケモンがいるのを見つけた。

 

 

「カルボウのボウジロウだ。アカデミーで預かっている」

 

「スター団と関係が?」

 

「そうみたいだ。あ、待て…!」

 

 

 するとアジトの方へ走り去ってしまうボウジロウ。…メロコの手持ちとかなんかね。

 

 

「まあいいや、カチこむぞ」

 

「程ほどにしてやってくれ。あまりに可哀想だ」

 

「手加減してやる義理はないな。ぼむん。でんじほう」

 

 

 でんじほうをぶちかまし、バリケードを破壊して吹き飛んだゴングを鳴り響かせる。蟲ポケモン六体を引き連れ中に入ると、星形や青いサングラスを身に着けたしたっぱたちの一団と、コータス、デルビル、ガーディ、シシコ、カルボウ、ドンメルといったほのおタイプのポケモンたちが待ち構えていた。

 

 

《ピィィー!ガガ…!「まぐれでチーム・セギンに勝った奴が身の程を弁えずアジトにカチこんできました!スター団の力の見せ所です侵入者を叩き出してあげましょう!」》

 

「いいぜ、かかってこい。完成された俺のチームは強いぞ!」

 

 

 エクスレッグヘルメットを被り、ジャックの背に乗り込んでレクス達と共に突撃。どこからか聞こえてくる派手なBGMをバックに激突する。

 

 

「レクスはとびかかるで陣形を崩せ!ダーマ、スレッドトラップで味方を守れ!レインはバブルこうせん!ジャックはがんせきアックスで迎え撃て!ケプリべはじんつうりきで援護!ぼむんは空中からまきびしだ!」

 

 

 がんせきアックスのステルスロックとまきびしとじんつうりきで陣地を作り上げつつ、とびかかるで敵の陣形を崩し、バブルこうせんとがんせきアックスで迎撃。致命傷になりそうなほのおタイプの攻撃はダーマが防ぐ、即席のフォーメーション。こちらは致命傷を負うことなく、嵐の如くしたっぱのポケモンたちをひたすら迎撃。そのうち、怖気づいたしたっぱの一部……主に星形サングラスの一団が逃げて行く。

 

 

「あいて、いてっ、まきびしで足の踏み場もねえ!?」

 

「ギャラドスかバンギラスかこの女!?」

 

「だ、誰か逆鱗に触れちまったのか!?謝れ!謝るんだ!」

 

「か、敵う訳がねえ!ボスを呼んでくるんだ!」

 

 

 するとしたっぱたちが逃げて行った奥のテントが開いてチーム・セギンのとはカラーリングや細部の形状が違う、炎を思わせるカラーリングのスターモービルが顔を出す。その上に乗るのは、頭頂部は黄色く染めていて炎の様なオレンジがかった赤色の髪をした女性だった。紫色のリップとラバー材質の上下黒色で揃えた改造制服、腿あたりまで覆う大きなオレンジ色の炎の様なブーツが印象的だ。こいつがメロコか。

 

 

「テメーか、オレらに喧嘩を売ってんのは。こっちはバイトで疲れてるんだけどな……」

 

「そりゃ悪い。一度帰ろうか?」

 

「なめてんのか。細けえことはどうでもいい。喧嘩売られたら買う……それだけの話だ。爆ぜろや」

 

 

▽スター団ほのお組の メロコが 勝負を しかけてきた!

 

 

 俺と同じ一人称か。共通点はあるが仲良くできなそうだ。

 

 

「行くぞレイン!」

 

「テメーはオレが、…はっ倒す。燃やし尽くせ!コータス!」

 

 

 スターモービルの上から投げられたクイックボールから繰り出されたのはコータス。いきなりひでりか、いいぜやってやる!




もうカシオペアもラウラがどう暴れるかは諦めた模様。スター団からも危険人物扱いされてます。ついにはギャラドスだけでなくバンギラス呼ばわり。
※バンギラスは片腕を動かしただけで山を崩し地響きを起こしたり、自分の住処を作る為山を崩したり、暴れると山が崩れ川が埋まり地図を書きかえたり甚大な被害を生み出すポケモン。

VSメロコ。蟲ポケモンの天敵の一人ですがはたして。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSシェダル・スターモービル

どうも、放仮ごです。メロコの口調が思ってたより難しかった件について。

そんなわけで今回はVSメロコ。楽しんでいただけると幸いです。


 スター団ほのお組チーム・シェダルのボス、メロコがシェダル・スターモービルの上に繰り出したのはコータス。一度手持ちを全部ボールに戻した俺が繰り出したのはレイン。目玉模様の触角を広げていかくする。

 

 

「燃えろ……んで灰になっちまえ。コータス!かえんほうしゃ!」

 

「殺意高いな!レイン、むしのさざめきで散らせ!」

 

 

 真夜中を明るく照らすひでりで火力を底上げして放たれたかえんほうしゃに、むしのさざめきによる衝撃波で散らすことで防御。ジリジリと睨み合う。

 

 

「かえんぐるましながらかえんほうしゃ!」

 

「っ……でんこうせっかで回避だ!」

 

 

 頭部と手足を引っ込めて炎を纏い回転、シェダル・スターモービルの上から飛び出すと、かえんぐるましながら頭部に当たる穴からかえんほうしゃを放ち、爆炎が辺り一帯に広がって火の海を作り出すコータス。レインに指示しつつ、脳裏にこうそくスピンしながらかえんほうしゃとふんえんを放つコータスの映像がよぎって頭痛に表情を歪ませる。何だ今のは。俺の記憶…?

 

 

「思い出せ、思い出せ……!その時はどう攻略した、俺…!」

 

「よそ見をしている余裕があるようだな?爆ぜろコータス!」

 

 

 まるで火の独楽の様に回転し地面を炎上させながらレインに追いすがるコータス。思い出せ、思い出せ………ダイマックス、ダイストリーム………雨。そうか、それだ。

 

 

「素早く!バブルこうせん!」

 

「無駄」

 

 

 バブルこうせんを撃たせるも、メロコの言う通り蒸発し水蒸気が上空に飛んでいく。それを目で追いつつ、指示をする。

 

 

「力強く!バブルこうせん!…もう一度だ!」

 

「何が目的か知らないが、なめてんのか?」

 

 

 何度もバブルこうせんを放射、かえんほうしゃしながらかえんぐるまを維持し回転するスピードを上げたコータスがレインの放ったバブルこうせんをまともに受けながら直進、直撃を受けて吹き飛ばされるレイン。…ナイスガッツだ。

 

 

「今のは……やられたしたっぱ連中の分だ」

 

「頼むぞレクス!」

 

「こっちに戻れコータス。かえんほうしゃ」

 

 

 グルグルと回転しながら跳躍し、シェダル・スターモービルの上に戻りつつ火炎を放ってくるコータス。それに対する戦法は一つだ。

 

 

「とびかかる!」

 

「馬鹿なのか?飛んで火に入る夏の蟲とよく言うが本当だな!」

 

「レインを信じろレクス!」

 

 

 一瞬戸惑いつつも俺の言葉を聞いて頷き、炎の中に突撃するレクス。すると次の瞬間、雨が降って来て火炎の威力が減衰する。

 

 

「なっ…!?」

 

「雨の仕組みを知っているか。蒸発し水蒸気になった水分が空に昇り、雲となり、水滴となって落ちてくる。簡単に言うとこうだ」

 

「それがなんだって……まさか、てめえ!」

 

「バブルこうせんを何度も蒸発させたんだ。そりゃあ雨も降るさ!」

 

 

 正直賭けだったが擬似あまごいだ、これで炎も怖くない。

 

 

「力強く!にどげり!」

 

「かえんぐるま!」

 

 

 レクスのにどげりが、再び頭部と手足を引っ込めて炎を纏い回転したコータスと激突。一発目で回転を止めて、二発目で上空に蹴り飛ばす。重量級のコータスが宙を舞ったことに目を白黒させるメロコ。

 

 

「ボディプレスだ!」

 

「落ちてきたところを狙え!じごくづき!」

 

 

 諦めず急降下してきたコータスに、展開して振り上げた右後ろ脚がコータスの頭部が籠っている穴に突き刺さる。短い悲鳴を上げて崩れ落ちるコータス。

 

 

「……チッ!オレはまだ燃えッカスになってねぇんだよ!雨ごと焼き尽くせ、ブロロローム!」

 

▽メロコは ブロロロームを くりだした!

 

 

 コータスをボールに戻したメロコが右拳を左掌に打ち付けながら叫ぶと、咆哮を上げて応えるシェダル・スターモービル。

 

 

「いやなおとを掻き鳴らせ。バーンアクセル!」

 

「レクス!にどげり!」

 

 

 いやなおとで防御力を下げつつ、炎を纏った突撃をしてくるシェダル・スターモービル。タイミングを合わせて反撃しようとしたレクスを、いきなり加速して轢き飛ばし、敷地内を爆走する。今のは…かそくか。嫌な特性をもってやがる。

 

 

「俺達も行くぞぼむん!でんじふゆう!」

 

 

 雨が降る中、ぼむんを繰り出して頭上に飛び乗り、メロコの駆るシェダル・スターモービルを追いかける。ここは崖に囲まれた立地だ。なら…!

 

 

「奴を止めろ!ダーマ!」

 

 

 ぼむんの上で腰を捻り、岩肌に向けてネットボールをぶん投げると繰り出されたダーマが壁に張り付き、そのまま糸を使って移動しスイング。シェダル・スターモービルを追いかける。ヒーロー映画の暴走車を追いかけるヒーローみたいだ。

 

 

「避け付けるな!オーバーヒート!」

 

「スレッドトラップ!」

 

 

 放たれたオーバーヒートをスレッドトラップで防ぎつつ接近、右腕を振り上げながらスイングの勢いのまま突撃するダーマ。

 

 

「はいよるいちげき!」

 

 

 修行で覚えた新技。相手のとくこうを1段階下げる一撃が炸裂、バランスを崩してスリップするシェダル・スターモービル。オーバーヒート分も含めて三段階下がった。もうオーバーヒートも怖くない。

 

 

「ホイールスピン!」

 

 

 するとスリップの回転を利用して激しく回転して攻撃してくるシェダル・スターモービル。すばやさ二段階を犠牲にした強力な一撃に弾き飛ばされて戦闘不能になるダーマ。

 

 

「真正面からぶつかれジャック!がんせきアックス!」

 

「燃えろ!加速しろ!轢き倒せバーンアクセル!」

 

 

 回転している間にシェダル・スターモービルの前に飛び出したぼむんの上からジャックを繰り出し、待ってましたと言わんばかりに岩石を纏った斧を下から振り上げる様に叩き付け、炎を纏った体当たりと激突する。負荷がかかっているのかバチバチと火花が散り、黒煙を上げるシェダル・スターモービル。鍔競り合いに勝ったのはジャック。シェダル・スターモービルを引っくり返し、メロコは投げ出される。

 

 

「ぐっ……いわ・むしか…ホイールスピン!」

 

「がんせきアックスを保ったまま、れんぞくぎり!」

 

 

 空中で回転しタイヤをぶつけてくるシェダル・スターモービルに対し、ジャックはがんせきアックスを維持したまま岩肌や地面を蹴って加速、四方八方から次々と斬り付け空中でれんぞくぎりを叩き込む。

 

 

「ったく、これで終わりかよ。…やれやれ」

 

 

 ジャックの最後の一撃を受けて空中を吹っ飛び、ドンガラガッシャーンと轟音を立てて大破するシェダル・スターモービルに、メロコは雨に打たれながら達観した雰囲気で溜め息を吐くのだった。




雨についてはガバガバだけど、ポケスペ一章ラストバトルと同じ理論です。

ポケモン蟲でコータスと言えば無印のシーソーコンビ編や二部で出てきたあのコータス。ラウラの記憶にも残ってました。

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VSコノヨザル

どうも、放仮ごです。この小説のバトルを考えるためにポケスペを全巻読み直していたんですがやはり仮面の男とかバケモン多いよねって。ほえるの使い方とか思いつかんて。一応前作ラウラはイエローがモチーフなんですが、今作ではモチーフが違ったりします。

今回は原作でもあってよかったんじゃね?と思うオリジナルイベント。楽しんでいただけると幸いです。


 雨が降りしきる真夜中。大破したシェダル・スターモービルの前で雨に濡れながらメロコは佇んでいた。

 

 

「燃えて、燃えて、燃え尽きちまったか。……ここまでだな。テメーのアメモース、マジで気合い入ってたぜ。このオレに勝ったんだ!胸張ってダンバッジ持ってけ」

 

 

 そう言って握手を求めてきたので応じると凄まじい力で締め上げてきた。痛い痛い痛い!お前、実は相当悔しいんだろ!

 

 

「…バイトで手持ちを休ませてなければオレが勝ってたかもな。……用はすんだろ。ひとりにさせろよ」

 

「バイト…?」

 

「こっちの話だ。オレたちも面子が増えて財政難なんだよ。オレは…なんでも屋だからな」

 

 

 世知辛いな。その後、ネルケがやってきてボウジロウとメロコを対面させたり、アカデミーにカチコミするという噂は「マジでありえねえ」とのこと、スターモービルは昔喧嘩用に作ったが実際に使ったのは俺相手が初めてだということ、「スター大作戦」と言うスターダスト大作戦に酷似した名前の「宝物みたいな思い出」があることを知ることができた。

 

 

「あ、あとひとつ」

 

「なんだよ」

 

「青いサングラスのしたっぱは…どういう奴等なんだ?」

 

「…知らねえ。別に服装に規定があるわけじゃねえし、本人たちは「おしゃれ」の一点張りだ。…だけどスター団の評判を落とす問題を起こしているのは主にアイツ等だ。スター団のためだと言って憚らないがな。なにがしたいのかわからねえが、オレからしたらただ調子に乗ってる連中だ。それぐらいだ」

 

「……」

 

 

 一瞬間があったのが気になるが……こんなもんか。ブルーフレア団と関係があるのか気になったが、スター団の評判を落とすのはよくわからないな。

 

 

「あんまりバイト頑張りすぎんなよ。倒れたりしたらピーニャもしたっぱたちも気が気でないぞ」

 

「余計なお世話だ。爆ぜろや」

 

「そいつは勘弁」

 

 

 そうして俺はチーム・シェダルのアジトを後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

《ロトロトロトロト……》

 

「ん、カシオペアか?」

 

 

 北側からアジトから出た所でかかってきたスマホロトムの電話に出ると、いつもと違う切羽詰まった変声機の声が聞こえてきた。

 

 

《「ぐっ……ラウラか、すまない!補給班のボタンが襲撃された、チーム・シェダルのアジトの南東だ。助けてやってくれ!」》

 

「カシオペア!?それはいいが、お前も襲われているのか!?」

 

《「いや、私は……私よりもボタンだ、彼女を救え!」》

 

 

 俺の問いかけに言いよどんだ返答を返すとカシオペアの通話が切れた。…カシオペアも襲われているらしいが、今は非戦闘員(多分)のボタンの救出か。

 

 

「ぼむん、急ぐぞ!」

 

 

 ぼむんに乗り、手持ちを回復させながら急行する。そこにいたのは、ボサボサに振り乱した灰色の長い体毛とギラギラと真っ赤に輝く目、目の下に表れたドス黒い隈と筋肉の盛り上がった両腕が特徴的なポケモンを連れた青いフード付きレインコートに身を包んだガタイのいい巨体の謎の人物と、手持ちなのかニンフィアを繰り出して応戦するボタンだった。

 

 

「ぼむん!ヘビーボンバー!」

 

「っ。コノヨザル、インファイト!」

 

 

 俺は飛び降りて、ぼむんで先制攻撃を行うもコノヨザルと呼ばれたポケモンの防御を捨てた猛乱打に打ちのめされて倒れるぼむん。がんじょうを連打で潰しただと…!?とりあえずとぼむんを戻しながらボタンに合流する。

 

 

「ボタン!無事か!」

 

「ラウラ!た、助けて…ウチじゃ相手にならない…」

 

「…あなたがスターダスト大作戦のラウラ?」

 

「…そうだと言ったら」

 

「ここで潰させてもらうわ」

 

 

 この声、口調。女性か?しかしこの青装束…こいつ、まさか。

 

 

「お前。ブルーフレア団か」

 

「ご明察。…私はブルーフレア団の用心棒にしてスター団かくとう組『チーム・カーフ』のボス…ビワ」

 

「「なっ!?」」

 

 

 そう宣言して下ろしたフードの中から、悪役レスラーを彷彿とさせる鬼めいたメイクを施した顔が出てきたことにボタンと共に驚く。スター団とブルーフレア団が繋がっている、だと?じゃああの青サングラスは……いやだが、メロコは知らないようだったぞ。

 

 

「スター団は潰させない。スター団を解散させたりなんかさせない。ブルーフレア団のボスはスター団を守ってくれると約束してくれた。それを(おびや)かす奴等は……絶対に許さない!マジボスが帰ってくる場所、私達の居場所を守るんだ…!」

 

「いったい何を言って…」

 

 

 ブルーフレア団がスター団を守る、だって?いやだがそれなら他のボスが、ピーニャやメロコが知らないのはおかしいだろ。マジボスってのが何なのか知らんが。…いや全面的に悪いのは潰そうとしているこっちだけどさ。

 

 

「問答無用!ふんどのこぶし!」

 

「レクス!じごくづき!」

 

 

 ビワの指示に呼応したコノヨザルのパンパンに筋肉で膨れ上がった拳と、咄嗟に繰り出したレクスの展開した右後ろ脚が激突し、その衝撃波による風圧に吹き飛ばされそうになるがなんとか耐えながらポケモン図鑑で確認する。ふんどざるポケモン、コノヨザル。…オコリザルの進化系だと?

 

 

「よそ見をしている暇はあるの?」

 

「危ないラウラ!」

 

「っ!?」

 

 

 図鑑を確認していた俺の視界を埋める影と、ボタンからの警告に、咄嗟にバックステップで回避する。月光で影になっていて見えないが声からしてビワか。青いレインコートを翻したビワはそのまま回転、回し蹴りを叩き込んできて、咄嗟に抜いたエクスレッグヘルメットで防御するが弾かれ、ヘルメットが蹴り飛ばされてしまう。

 

 

「…トレーナーが直接攻撃かよ」

 

「大人しくして。痛い目に遭えば諦めてくれるでしょ?コノヨザル、インファイト!」

 

「そいつは勘弁、だな!レクス、とびかかる!」

 

 

 拳と脚の猛乱打を繰り出すコノヨザルと、飛び蹴りを繰り返して対応するレクスの脇で、手と手と組み合い、力比べする俺とビワ。ガタイじゃ負けてるが、コライドンのロデオさながらの動きに掴まったり、ダーマのスイングやヘイラッシャに吹っ飛ばされたりで鍛えられた頑丈さなら負けないぞ…!

 

 

「小さいのになんて力…!」

 

「こっちも伊達に冒険してるんじゃないんだよ…!」

 

「かはっ……負けない、私は…負けない!」

 

 

 力が上半身に来ているのを利用して足払いをかけて体勢を崩し、体重を乗せた前蹴りを腹部に叩き込む。しかしビワは耐えて見せ、逆に掌底で俺を殴り飛ばしてきた。

 

 

「ぐあっ…!?」

 

 

 吹き飛ばされ、地面を転がりなんとか止まる。……いやなにポケモントレーナーがその身一つで殴り合って、しかもこんなに強いんだよ。俺が頑丈じゃなかったら骨が何個か逝ってたぞ。

 

 

「このまま痛めつけて……」

 

「やめてっ、ビワ姉!」

 

「えっ…」

 

 

 なんとか立ち上がるしかない俺に、そのまま追撃しようとしているビワだったが、ボタンに呼びかけられて制止する。…知り合いなのか?

 

 

「…あなた、まさか……ううん、そんなはずない。スターダスト大作戦に加担している訳が……」

 

 

 コノヨザルをボールに戻し、しきりに頭を振りながら歩いて去っていくビワ。すると慌ててレクスがやってきて俺を支えてくれた。可愛い奴だなお前は。

 

 

「た、助かった……」

 

「ありがとうラウラ。…その、助かった。これ、カシオペアからの追加報酬。報酬より先に渡しちゃったけど…じゃあ、これで」

 

「おう。ありがとな。気を付けろよー」

 

 

 お礼を言って追加報酬のポケモンのおとしものを渡し、去っていくボタンを見送る。…一応スターダスト大作戦の仲間だしな、無事でよかったよ、本当に。




ビワの性格からして向こうからきそうだよねって。ゼル伝ブレワイのイーガ団みたく時々襲って来てもよかったと思うんだ。

というわけで明かされた、ブルーフレア団の用心棒だったビワ。ブルーフレア団がスター団を庇護しているとかも判明。その割にピーニャやメロコが言及してなかったり、青いサングラスの団員の行動など矛盾点も多いですがそれはおいおい。

リアルファイトも結構できるラウラ。しかし本家格闘家には敵わなかったよ……。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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ハッコウシティ編:でんきジム
VSケンタロス


どうも、放仮ごです。ようやくここまで来れました。多分、ある謎の答えになるであろう話となります。

今回は東2番エリアでのできごと。楽しんでいただけると幸いです。


 擦り傷などをきずぐすりで治しながらハッコウシティに向かって東2番エリアを歩いていると電話がかかってきた。カシオペアか、あっちは大丈夫だったのか?

 

 

《ロトロトロトロト……「こちらはなんとかなった。そちらは大丈夫だったか?」》

 

「手ひどくやられたよ、ボスの一人ビワ……強いな。うちのぼむんが一撃でやられた」

 

《「ビワは現スター団でも最強だ。そうか、ラウラでも厳しいか……」》

 

「いや、必ず勝つ。…あいつらにはあいつらなりの正義があるみたいだが、負けられない理由が一つ増えたからな。ブルーフレア団に与しているなら負けられない」

 

《「そうか……頼もしい限りだ」》

 

 

 うん?カシオペア、襲撃者がビワだということと、スター団がブルーフレア団と繋がっていることを知ってたのか?反応が薄いような…。

 

 

《「ところで、メロコからボスの証ダンバッジをもらったようだな。ふむ、たしかに。確認した。これでボスがいなくなったチーム・シェダルがなくなるはずだ。メロコ……」》

 

「どうしたカシオペア」

 

《「…すまない。考え事をしていた。一つ聞きたい。スターダスト大作戦の戦闘班のラウラから見て、スター団ってどうなん…だ?」》

 

 

 変なことを聞いて来たな。どうって言われても……。

 

 

「まだ三人としか戦ってないが、ピーニャもメロコもビワも強かったな。ちょっとなめてかかってたが認識を改めたところだ」

 

《「…ふむ。そうか。…生徒のSNSをハッキングして突き止めた情報だ。噂ではあるがスター団も根っからの不良ではないらしい。大半がいじめられていたり、人付き合いが苦手なだけのオレンジアカデミーの学生が集まってスター団が結成されたそうだ。一人では立ち向かえないいじめに打ち勝つために……あの強さはそのために得た強さだろう」》

 

「それはメロコからチョロッと聞いたな」

 

 

 噂といいつつ確定事項にしているところが気になるが。

 

 

《「少なくともブルーフレアとかいう連中は後からスター団に接触してきた連中だ。ビワね……ビワも恐らく騙され利用されているだけにすぎないと思う。なんでも5人のボスを集めて団を作った真の黒幕もいるらしいが…少なくともブルーフレア団ではない」》

 

「それがマジボスか」

 

《「そう呼ばれている存在がいることは確かだ。約束の報酬だ。今回は6000LP渡そう。…傷の手当にも役立ててくれ」》

 

「ああ、助かるよ」

 

 

 通話を終えて、夜空を見上げる。…カシオペア。たしか、星座の名前だ。スター(・・・)団を解散させようとするスターダスト(・・・・・・)大作戦の首魁、カシオペア。…ビワの言葉から知ったマジボスと言う存在、5人のボスを集めて団を作った真の黒幕。………まさかな。それならスター団を解散させたい理由が分からん。

 

 

「…ちょっと疲れた。朝まで寝るか」

 

 

 東2番エリアは草原が広がるエリアだ。リュックから毛布を取り出してお腹に被れば、この時期なら風邪も引かないだろう。

 

 

「みんな、出てこい。誰か一人は見張りしてくれると助かる」

 

 

 レクス、ダーマ、レイン、ジャック、ケプリべ、ぼむん、ウカを出して、リュックを枕代わりにして横になり毛布を被る。これで野生ポケモンに襲われても大丈夫だ。

 

 

「おやすみ、みんな」

 

 

 しっかし昼はコルサと対決にボウルタウンの観光、夜はチーム・シェダルにカチコミとビワの襲撃……大変な一日だったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夢を、見る。

 

 

―――――「はい!ユウリっていいます。まだジムバッジを手に入れてないんですけど…私と、戦ってくれませんか!」

 

 

 三つのスパイスを食べた影響か、夢の中でかつての記憶が断片的によみがえる。

 

 

―――――「我はジムチャレンジを一番に乗り越えし者!人呼んで雷光の死翼(ライトニング・アルバトロス)!我はでんきタイプ使いのモコウだ!同じ、ひとつのタイプを極めしラウラ殿と勝負願いたい!」

 

 

 苦笑する。忘れたくない、忘れられないことはわかるのに、だけど名前も思い出せない大事な親友たち。恐らくその出会いの記憶が、映像として真っ白な何もない空間に映し出されるのを眺める。

 

 

―――――「ここは表ですけど、まあいいですよ、この私、ひこうタイプ使いのムツキにボコボコにされて現実を思い知ってください!」

 

 

 ちょっと思い出しただけでムカつく奴もいるけど、それもしょうがないなあと呆れて笑う自分もいて。頬を伝う水滴に驚いた。

 

 

「……くそっ。会いたいなあ」

 

 

 夢の中だというのに涙がこぼれ、一人ごちる。パルデアで目覚めてからずっと感じていた感情、「孤独」を痛感した。ネモがいる、アイアールがいる、ペパーがいる、蟲ポケモンたちがいる。…それでも足りない。満ち足りない。俺はあいつらと一緒にいたかったんだと、四人で馬鹿を言い合えるあそこが心地よかったのだと、そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁああああああああっ!?たすけ、たすけてー!?」

 

 

 悲鳴が聞こえてきて、微睡から覚醒して起き上がる。目を開ければ太陽の輝きが目に入ってきて。そこにいたのは、萌え袖と言うのか手が隠れてしまっているぐらい長い裾の袖のついた甘ゴスファッションを着た、前髪で片目を隠した金髪ロングヘアー碧眼の少女と、それを追いかけるパルデアケンタロスの群れがこちらに迫ってくる姿。微睡んでいた脳が一瞬で完全覚醒する。

 

 

「レクス、にどげり!ダーマ、スレッドトラップ!レイン、バブルこうせん!ジャック、がんせきアックス!ケプリべ、じんつうりき!ぼむん、まきびし!ウカは暴れろ!」

 

 

 少女がすれ違うのを待ってから、出しっぱなしだった相棒たちに指示。ケンタロスを蹴り飛ばし、糸の盾で受け止め、泡で怯ませ、ステルスロックとまきびしをばらまき、じんつうりきで持ち上げて投げ飛ばし、そこに大暴れするウカが突撃することでケンタロスの群れは沈黙した。

 

 

「…無事か?」

 

「ハア、ハア……助かりました……」

 

「そうか、よかった……!?」

 

「?」

 

 

 へたり込んだ少女に話しかけて、驚愕する。見たことのある顔だった。ガケガニとの戦いの後で思い出した、夢でも見た人物の顔だ。名前が出てこないがでんきタイプ使いだと名乗っていた……首をかしげているおしとやかそうで印象がまるで違う少女を見て思い出そうとする。えっと。

 

 

「たしか…雷光の死翼(ライトニング・アルバトロス)?」

 

「えっ、なんで私が昔名乗ってた名前を知ってるんですか!?」

 

「今は違うのか?」

 

「は、恥ずかしいのでやめてください……命の恩人に名乗らないのも失礼ですね。私、モコウといいます」

 

「誰だお前!?」

 

「さっきから失礼じゃないですか!?」

 

 

 モコウと名乗った少女の強烈な違和感に思わずツッコむと逆にツッコまれた。眼帯を付けていて、雷みたいなギザギザツインテールをしていて、もっと痛々しくて、あれえ?




このモコウ(?)の髪型は以前もらったファンアートのモコウから。詳しくは無印のあらすじをチェックだ。

実はずっと孤独を感じていたラウラ。記憶を思い出せば思い出すほど孤独な思いが募る悪循環。

そんな中出会ったのは、ひらひらしている服のせいでケンタロスを怒らせてしまって逃げていた、モコウを名乗る萌え袖少女。違和感バリバリだけど顔と声はラウラの知るでんき使いと一緒。でもラウラとは初対面の模様。どういうことなのか。

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VSパチリス

どうも、放仮ごです。一応知らない人のための前作モコウの詳細置いときます。

・モコウ
でんきタイプ使いのトレーナーにして最速でジムを突破しているジムチャレンジャー。ラウラの事をライバル視していて後に親友となる。ラテラルタウンの名家出身。一人称は「我」で自称雷光の死翼(ライトニング・アルバトロス)を名乗る厨二病。超がつく程のドジっ子で足元が見えてないタイプ。名前の由来はワレモコウから。

今回はモコウの秘密。難産でした。楽しんでいただけると幸いです。


 俺の記憶の中の少女と顔も名前も瓜二つだが印象が違いすぎる少女、モコウと出会って数分後。俺達は彼女が失くしたと言うボールを探すために東1番エリア物見塔付近に来ていた。

 

 

「それで?朝が気持ち良いから散歩に出ていたらケンタロスの群れに襲われたと」

 

「はい、油断しました……。手持ちの入ったボール5つも落としてしまって。ケンタロスに襲われるのはもう何度目なのかわからないんですけど未だに慣れなくて……」

 

「多分その服のせいだぞ」

 

 

 首をかしげるモコウ。やめてくれ、その無垢な様子は違和感凄すぎてヤバい。ケンタロスってたしかヒラヒラする物に気が立ってしまう性質があったっはずだ。カントーとかのケンタロスは尻尾を振ることで群れを統一してたぐらいだしな。とか考えていると、草むらに転がる青と黄色の球体を見つけた。

 

 

「おい、クイックボールを見つけたぞ。これじゃないか?」

 

「ああ、そうです!あびゃあ!?」

 

 

 拾ったそれを手渡そうとすると、こちらに向かって走ろうとして何もない草むらですっ転んだモコウはビターンと顔から叩きつけられ沈黙する。痛そう。

 

 

「…おーい、生きているか?」

 

「生きてます……いつものことです…」

 

「よく生きてるなお前」

 

 

 俺の差し出した手を、痛そうに鼻を擦りながら手に取りボールを受け取るモコウ。…なんだろう、前もなんかドジってたモコウを助けた記憶があるような、ないような。

 

 

「ごめんねパチリス、置き去りにして」

 

 

 クイックボールからモコウが繰り出したのはでんきリスポケモンのパチリス。なんか意外なポケモンが出てきたな。トテトテと甘ロリを駆けのぼって肩の上に移動してモコウに頬擦りするパチリスに、親しさを感じた。

 

 

「お前の相棒か?」

 

「はい、そうです。こっちに来てから初めて会ったポケモンで……転んでぶつかった木から落ちてきたのが出会ったきっかけです」

 

「痛そう」

 

「痛かったけど、この子に会えたので……」

 

「…こっちに来てってことはパルデア以外から来たのか?」

 

「はい、ガラル地方から。ある事情からここにきて運命に出会いまして」

 

「ガラル」

 

 

 またガラルだ。……うーん。モコウの相棒はもっとこう、かっこよかった気がするんだが……。

 

 

「やっぱり前に会ったことない?」

 

「新手のナンパですか?」

 

「いや、心当たりがないならそれはいいんだけど」

 

 

 うーん、どうしても違和感が凄い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、パチリスに続いてジバコイル、デンリュウ、ストリンダー(ハイなすがた)、ウォッシュロトムと、計五匹のモコウの手持ちを回収した俺達。でんきタイプ使いか、…ハッコウシティのジムリーダーの知り合いなんかな。

 

 

「助かりました、ラウラさん。ありがとうございます!」

 

「まさか崖下まで転がっているとは思わなかったが見つかってよかったな」

 

「ごめんねジバコイル……」

 

 

 ドジにも程があるがこれで日常茶飯事らしく出てきたジバコイルも慣れた様子で目を細めていた。お前らも大変だな……。

 

 

「ああっ!?スマホロトムマナーモードにしてた……」

 

 

 すると何かを思い出した様子でスマホロトムを取り出し時間を確認してビクゥとオーバーリアクションで驚くモコウ。慌ててポチポチとスマホロトムの操作を始めた。

 

 

「お、おいどうしたんだ?」

 

「じ、時間が!」

 

「時間?」

 

 

 朝の九時だがなんかあるのか?と首をかしげていると、スマホロトムに映るのは見覚えのある顔。ハッコウシティのジムリーダーの顔だった。

 

 

《「皆の者~!準備はいい?あなたの目玉をエレキネット!何者(ナニモン)なんじゃ?ナンジャモです!おはこんハロチャオ~!」》

 

「おはこんハロチャオー!」

 

「これは…配信か?」

 

 

 これまでのが嘘の様に画面の向こうの少女と合わせて満面の笑みで挨拶するモコウ。

 

 

《「ナンジャモの~?ドンナモンジャTVの時っ間っだぞー!ごめんね、皆の者~!ボクと一緒にゲームをやってくれるはずだったモコたんが全然来ないし電話にもでないしですっぽかされてさ~。しょうがないから一人でやるね!」》

 

「モコたん?」

 

「うおおおおおっ、謝らねば……でも配信中に電話やメールするわけにはー!?」

 

「モコウ?」

 

 

 スマホロトムを両手で持って百面相しだすモコウ。なんだろう、凄い懐かしい感じがする雰囲気になってる。ちょっと覗いてみると、怒涛の勢いでコメントが流れていて。よう知らんけど人気なんだなあ。

 

 

〈いつもの〉

 

〈どうせドジってマナーモードにしてるとかだぞ〉

 

〈エレキン:もはや様式美〉

 

〈モコたん遅刻何度目だろ〉

 

〈持ち物はじしゃく:数えてる限りだと17回目〉

 

〈そんなに遅刻されて怒りもしないとかナンジャモ優しい〉

 

〈怒るナンジャモと怒られるモコたんの関係好き〉

 

〈モコたん:ごめんなさい〉

 

〈草〉

 

〈コメントに出没してて草〉

 

〈さすがナンジャモのガチ勢〉

 

〈誤ってないで出てもろて〉

 

〈エレキン:終身名誉リスナーがんばれ〉

 

〈誤る草〉

 

〈ほんとだ草〉

 

《「あ、モコたん!またケンタロスに襲われていてるのかと思ったジャン!通話繋げるから声だけでも出て、ほらほら!」》

 

 

 するとプルルルッと電話が鳴り響く。このナンジャモとやらが呼んでる「モコたん」というのはモコウのことらしい。モコウは深呼吸するとちらっとこっちを向いて「シーッ」と人差し指を口の前に立てた。よくわからんけど頷いておく。黙ってろってことだろうな。

 

 

「わわわ、我が来た!皆の者おはこんハロチャオ!ワハハハ!わ、我がモコたんだ!」

 

〈わえがきたこれ〉

 

〈声が震えてる定期〉

 

〈推しと話すオタクの例〉

 

〈声がいい〉

 

〈声だけなのにバズってナンジャモにロックオンされた元リスナーやっぱり笑う〉

 

 

 まるで別人の様に話すモコウ。声だけ聴くと別人だ。

 

 

《「モコたん~?まず最初に言う事、あるよねー?」》

 

「わ、我は悪くないもん!散歩してたらケンタロスに襲われて手持ちのボール全部落とした挙句にアカデミーの生徒に助けられた上にボール探し手伝ってもらったけど、我悪くないもん!」

 

〈草〉

 

〈草〉

 

〈ナンジャモの予想当たってて草〉

 

〈いつものなんだよなあ〉

 

〈声震えてたのその恩人の目の前だから?〉

 

《「あ、やっぱり?相変わらずドジだなー。さすがモコたん!話題に事欠かないね!詳しく教えて教えて?というか傍にいるのかな?声聞かせてほしいなほしいな!」》

 

「え。で、でも迷惑かもだしだな」

 

「オレは別にいいぞ」

 

 

 モコウ困ってるようだし。配信とかよう知らんけど喋ればいいんだろ。

 

 

《「本人もいいって言ってることだし行ってみよう!なんか挨拶とかあるかなー?」》

 

 

 挨拶。挨拶ね。…おはこんハロチャオはさすがに毛恥ずかしいな。配信ってたしか全世界に流れてるんだっけ。俺で尺を使うのも嫌だな……よし。

 

 

「諸君!俺は蟲が好きだ!蟲ポケモンが好きだ!愛している!だからこの愛を以て、ジムバッジをすべて集めてトップチャンピオンを倒すことで証明する!蟲ポケモンはかっこよくて!かわいくて!美しくて!最高で!最強なのだと!!」

 

「ええ……」

 

〈むし狂いだー!〉

 

〈俺っ娘きたこれ!〉

 

〈嫌いじゃないわ!〉

 

〈でもどっかで聞いたぞ〉

 

〈たしか動画が出てたセルクルジムチャレンジャーの宣言だこれ〉

 

〈え、本人?〉

 

〈たしかラウラだっけ〉

 

〈ジムリーダー相手にこの啖呵切れるのすげえ〉

 

 

 やっぱこれしかないだろ。とドヤ顔をしてみると「あわわわ」と慌てるモコウ。どうしたんだ。

 

 

《「ほっほーん。つまりこのボクにも勝つってことでおーけー?じゃあモコたんと一緒にジムに来て来て!オフコラボしよう!」》

 

「そ、それは不味くないか!?」

 

「おふこらぼ?」

 

 

 なんだそれ?




ナンジャモ語難しい(白目)

というわけでこのモコウは「モコたん」と言う名前でナンジャモのリスナー兼声だけ動画に参加している配信者でした。演じているときだけ「我」。声だけでしかもだいぶ印象変わるのでリアルに会ってもまずわからないタイプ。手持ちはパチリス、デンリュウ、ジバコイル、ストリンダー(ハイ)、ウォッシュロトム。

ラウラは前作の掲示板とかにもまず参加しないぐらいネットに疎いのでナンジャモの事は知らないし動画とかも見ないタイプの人間。身バレとかもまったく気にしないです。

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VSハラバリーⅠ

どうも、放仮ごです。今作最強の難敵、ナンジャモ語。ナンジャモは最推しキャラの一人ではあるんですが言語化するとかなり難しいキャラ。

今回はオフコラボ前のいざこざ。楽しんでいただけると幸いです。


 オフコラボ。ネット上でコラボレーションするのではなく、実際に会ってコラボすること、らしい。そんな説明を受けて断ろうとするも、これが俺のジムテストと言われて仕方なく了承した。それはずるくないか?なんか怒らせたかな俺。

 

 

《「それでそれで?モコたんはラウラ氏にどう助けられたのかな?」》

 

「それでだな!このラウラと来たらすごかったんだぞ!むしポケモン六匹で倍以上の数はいたケンタロスの群れをだな……」

 

〈話を聞く限りバケモンで草〉

 

〈強すぎて笑う。…え、嘘だよね?〉

 

〈つい昨日、ボウルジムで本気のメンバーを出してたらしいコルサと互角の名勝負を繰り広げてたからな〉

 

〈くさジムにむしで苦戦するぐらい弱いのか、本気のジムリーダーと互角で強いのかどっちなんじゃい〉

 

〈あのジム初心者向けだけどジムリーダーが弱いわけがないんだよなあ〉

 

〈つまりジムリーダー並ってこと?〉

 

 

 約三時間ぐらいゲームしていたナンジャモの配信にスマホロトムで声だけで参加したモコウを余所に、自身のスマホロトムにかかってきた電話に出る俺。相手はアイアールだ。

 

 

「どうしたアイアール。合流するのはもう少しかかりそ…」

 

《「今からジムに挑もうとしてたらラウラに先にとられてた件」》

 

「悪かったって。なりゆきでそうなったんだ」

 

《「なりゆきでどうしてああなるの?」》

 

「俺が聞きたい」

 

 

 どうやらアイアールも配信を見てたらしい。アイアールの性格からして配信じゃなくてナンジャモがどういう人間なのかを知りたくて観てたんだろうな。

 

 

「なら聞くが、朝起きたらいきなり目の前にいたら、アイアール。お前はどうするよ」

 

《「それは……助けるけど」》

 

「だろ?」

 

《「でもケンタロスの群れを一掃はしないと思う」》

 

「もしかして襲われたか?」

 

《「 ト ラ ウ マ に な り ま し た 」》

 

「俺がいない間になにがあった……」

 

 

 アイアール曰く、俺と別れてから真っ直ぐハッコウシティに向かっていたら、一匹のケンタロスに横から突進を受けてコライドンから投げ出されてしまったらしい。運悪くコライドンが頭をぶつけて気絶してしまい、その身一つでポケモンを繰り出しながらも次から次へと現れる大量のケンタロスから逃げ回ったとか。そりゃトラウマにもなるわ。

 

 

「バラに襲われたことといい、お前はつくづく運が無いな…」

 

《「私のせいじゃないもん!」》

 

「目の前のこいつみたいなことを言うな。……どした?」

 

「いや、あのだな…?」

 

 

 アイアールの怒声に呆れながら視線を向けると、話しかけようとしていたのか手を微妙に伸ばしながらオロオロとした表情のモコウ。その手に握るスマホロトムの画面には、怒涛の勢いで流れるコメントとモコウの袖と似た様な萌え袖?を振り回しながら狂喜乱舞していた。えーと?コメントには〈微笑ましい〉〈草〉〈パルデアのケンタロス怖いよねわかる……〉〈ラウラの圧倒的保護者感〉〈:\1500 2人の仲直り代〉〈朝起きたらモコたんは草〉〈え、ケンタロスの生息地で寝てたの…?〉〈強者の余裕すげえええ〉〈わえのドジいいぞいいぞ〉……んんんん?

 

 

「…今の会話、全部配信に載っちゃったんだが……どうしよう?」

 

《「フヒ…今をときめくコンビの痴話喧嘩!数字がシビルドン登りで超激バズりまくり!ニッシッシッシ!いいぞいいぞー!でもちょっとボク悔しいから皆の者~、慰めのコメント、してして?」》

 

〈ナンジャモかわいいやったー〉

 

〈もっと催促して?〉

 

〈かわいそうはかわいい〉

 

〈涙目の破壊力よ〉

 

〈エレキン:5000〉

 

〈無言スパチャ草〉

 

《「え、嘘っ」》

 

「なんか駄目なのか?」

 

 

 首をかしげる。モコウもアイアールも慌てているがナンジャモは喜んでるしようわからん。

 

 

《「いや悪くはないんだけど……うーん、ナンジャモに挑む時点でこうなるのはしょうがないし……あ、私家に帰ってるから先にジムして待っててね」》

 

「なんでだ!?」

 

《「いや、今のメンバーじゃちょっと不安だから昔、カロスの博士にもらった子を……ま、まあいいじゃん?じゃあね」》

 

「…なんなんだ?」

 

 

 首をかしげていると、スマホロトムを操作していたモコウが肩にパチリスを乗せながら駆け寄ってきた。転びそうになったところを受け止める。危なっかしい奴だな。

 

 

「とりあえずこれ以上流さないために電話切りましたけど……また助けられてしまって恥ずかしい…」

 

「お前すごいな。別人みたいだ」

 

「うぐっ。ああああれは、推しのナンジャモやリスナーたちと応対するために演じているだけでこっちが素です……き、気持ち悪いですよね!配信活動まで知られたくなかった……」

 

「なんでだ。どっちもおまえだろ。俺は好きだぞ、どっちも」

 

「はえ!?」

 

 

 なんか自虐し始めたモコウに物申すと顔を真っ赤にして俯いてしまった。俺またなんかやったか?

 

 

「す!」

 

「す?」

 

「すすすすすきって、いきなりそんなこと言わないでください!?私は我は人の好意に慣れてないから、そんなの勘違いしてしまいますから!」

 

 

 目をグルグルしながらそう絶叫するモコウ。演じている方の一人称出てるぞ。

 

 

「そう言われても…俺は好きだぞ、モコウのこと」

 

「ふやあ!?」

 

 

 違和感は凄かったが、ドジなところや我モードのモコウを見てモコウはモコウなんだなと勝手に納得したからな。記憶はないがちょっと安心感すらある。そう答えるとさらに真っ赤になったモコウから湯気が立ち上る。熱でもあるのか!?

 

 

「お、おい大丈夫か?」

 

「だいじょうぶ、です……と、とりあえずハッコウシティに向かいましょう!ナンジャモから連絡来るまでは私のアパートにいた方が賢明かと…」

 

「なんでだ?」

 

「ラウラさんの顔多分拡散されているので人が多い所だと……あと私、顔は隠しているので身バレは困ります…」

 

「ようわからんがわかった」

 

 

 今日はようわからんことだらけだ。ちなみにコソコソしながら訪れたモコウの部屋はナンジャモのポスターが貼られてナンジャモが描かれたコップやらとにかくナンジャモがいっぱいあって、なんか親近感がわいた。そうだよな、好きなもので部屋を埋め尽くしたいよな。わかる。俺も蟲でいっぱいにしたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数刻後。俺とモコウが呼び出されたオフィスビルの6階にやってくると、そこはバトルできそうなぐらい広い空間と、撮影用なのだろうカメラやらマイクやらの機材が置いてあった。その中心で待つのは、でんきがえるポケモンのハラバリーを連れた、なんかすごいパステルカラーの少女。ナンジャモだ。

 

 

「おはこんハロチャオ!リアルでははじめまして、ラウラ氏!久しぶりモコたん!あなたの目玉をエレキネット!何者(ナニモン)なんじゃ?ナンジャモだよ!こっちは相棒のハラバリー!よろしくね!」

 

「お、おう」

 

「お久しぶりです…」

 

「ノリが悪いなー。そんなんじゃ立派なインフルエンサーになれないぞ!さっそくだけど、ジムテスト「オフコラボ」について説明するね!ラウラ氏有名人みたいだね!ちょっと調べたんだけど、最近アカデミーで早業力業なるものを生み出したのと、バサギリって珍しいポケモンがいることも聞いたよ!」

 

「あれは俺が生み出したわけじゃないが」

 

「うんうん、詳細を知らないリスナーも多いみたいだから、ボクの質問に応えながら、それを使ってここでモコたんと戦ってもらうよ!目指せ同接20万人!到達できたらジムテストクリア!わかった?」

 

「すまん。どうせつってなんだ?」

 

 

 なんだろう、滅茶苦茶大変な気がするぞ。




前回、ラウラだと知って「蟲狂いとか力業早業で有名な子だったな…」「バサギリってポケモン希少性すごいぞ…」的なことを考えてオフコラボを言ったという裏話。宣戦布告にはそんなに怒ってないけどでんき使いとして「むっ」とはなってる。

メンバーに不安があるため実家に戻ったアイアール。連れてくるのは…?

相変わらず女たらしなラウラに落ちるモコウ。この女例の記憶がないからこれを無自覚でやってるのである。ネモとかグロリアとか厄介ファン(?)もつけてるし罪な主人公である。

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VSデンリュウ

どうも、放仮ごです。今回は新たな試み。プレビューで何度も確認したからちゃんとできている、はず。

今回はナンジャモンジャTVオフコラボ!楽しんでいただけると幸いです。


 

 

 

 

 

読み込み中

 

 

 

 

 

■ ▶❘ ・ライブ
 
 ❐ ▭ ▣ 

#ドンナモンジャTV

【ドンナモンジャTV】挑戦者ラウラとのオフコラボ!モコたん顔見せ!?【ナンジャモ】

 19,634 人が視聴中・0分前にライブ配信開始
 
 ⤴640 ⤵ ➦共有 ≡₊保存 … □ 

 
 ドンナモンジャTV 

 チャンネル登録者数 450,145人 

 

「はい、ドモドモー。ナンジャモの~?ドンナモンジャTVの時っ間っだぞー!皆の者~!準備はいい?あなたの目玉をエレキネット!何者(ナニモン)なんじゃ?ナンジャモです!ジムリーダーだよ!おはこんハロチャオ~!」

 

 

 ナンジャモがクルクル回転しながらカメラの前で挨拶する。ドンナモンジャTVの始まりだ。目の前のバトルフィールドの向こう側に立っているモコウがカチンコチンだが大丈夫か?

 

 

〈おはこんハロチャオー〉

 

〈おはこんハロチャオ!〉

 

〈待っていたぜオフコラボ!〉

 

〈モコたんもついに顔出しか〉

 

「今回はなんと!ボクと何度もコラボしてくれるあのモコたんが顔出ししてポケモンバトルしちゃいまーす!相手は期待の超新星!ラウラ氏だよ!今回はラウラ氏のジムテストの名目でオフコラボしてもらうことになったのだ!ジムテストクリアの条件は、同接数を一定数稼ぐこと!公平さのためにどれだけ稼げばいいか教えられないけど、バトル中はこのボク、ナンジャモが視聴者の質問を読み上げてラウラ氏に答えてもらいまーす!ニッシッシッシ!」

 

 

 両手を振る独特の動きでそう説明するナンジャモ。期待の超新星…なんだろうな、むず痒さと一緒に懐かしさを感じる。

 

 

〈ナンジャモも得してて草〉

 

〈バズりそうな相手じゃないとそもそもコラボしないし…〉

 

〈正直待ってた〉

 

〈モコたん絶対可愛い〉

 

〈ご尊顔拝見〉

 

〈モコたんハアハア〉

 

〈モコたんインしたお〉

 

「ナンジャモ!?顔出しするの聞いてなかったし、なんなら身の危険すら感じるんだが!?」

 

「大丈夫大丈夫、今の姿から普段のモコたんは想像つかないって!ラウラ氏もアイデアありがとね!」

 

 

 と言われても、俺の記憶にあるモコウを再現しただけなんだがな。そうしてモニターに映るのはバサギリのジャックを傍らに侍らせた俺と、金髪をジグザグしたツインテールにセットし、ナンジャモが用意したドンナモンジャTVのロゴ入り眼帯を左目に取りつけ、甘ロリではなくナンジャモに言われて自分で用意してきた青に近いカラーリングで萌え袖になってるゴスロリとボーダーカラーのソックスとちょっと大きめの靴を身に着けたモコウだ。稲妻ツインテールは俺の案だな。袖で手が隠れた両手をかかげてなんかかっこいいポーズを取りながら、パチリスを肩に乗せたモコウは目をグルグルさせながら口を開く。

 

 

「おおお、おはこんハロジャモ!じゃない、おはこんハロチャオ!ワハハハ!我の生き様を見届けろ!我がモコたんだ!」

 

〈おおおおおおおおおお〉

 

〈かわいい〉

 

〈痛々しい恰好だけど似合ってるの解釈一致〉

 

〈めちゃくちゃかわいい〉

 

〈隠しきれない清楚さよ〉

 

〈ナンジャモリスペクトの袖から愛を感じる〉

 

〈ナンジャモガチ勢の本気〉

 

〈モコたんかわよ〉

 

 

 流れて行くコメントに顔を真っ赤にさせるモコウ。お前褒め慣れなさすぎじゃね?

 

 

「そんでこっちが挑戦者のラウラ氏だあ!何か一言どーぞ!」

 

「お、おはこんハロチャオ……蟲はいいぞ。ラウラだ」

 

〈淡白で草〉

 

〈エレキン:隣のナンジャモのがっかりした顔よ〉

 

〈あいさつに続く言葉がそれなのかw〉

 

〈恥ずかしいよね、わかる〉

 

〈燃える情熱:ラウラは私の心の太陽ですわ!〉

 

〈後ろのストライクみたいなポケモンなんぞ〉

 

〈でも可愛い〉

 

〈男?女?〉

 

〈コガネの面接官:自分、目ぇ節穴なんか?どう見ても女の子やん〉

 

〈後ろのポケモンなんだあれ見たことない〉

 

〈通りすがりのコルさん:アヴァンギャルドッッッ!〉

 

〈ハッサク:自信を持つのですよ!〉

 

〈なんか四天王で教師の人いない?〉

 

〈先生、本名は不味いです〉

 

 

 挨拶しただけなのになんだこのコメントの速さ、全然読めねえ。するとモコウが回復したのを確認したナンジャモは続ける。

 

 

「二人とも、緊張してるのかな?もっと落ち着いてみよー!」

 

「全世界に生配信とか言われて緊張しないわけないだろ」

 

「的確なツッコミ!うーん、新鮮だあ!ナンジャモ語もちゃんと使えてるしー、意外と場慣れしてんジャン!意気込みはどうかな!?」

 

「何度でも、全世界のトレーナーに向けてだって宣言してやるよ。諸君!俺は蟲が好きだ!蟲ポケモンが好きだ!愛している!だからこの愛を以て、ジムバッジをすべて集めてトップチャンピオンを倒すことで証明する!蟲ポケモンはかっこよくて!かわいくて!美しくて!最高で!最強なのだと!!」

 

 

 そう宣言すると、コメント欄がぴたりと止まった。すると一拍置いてから〈うおおおおおおおおおおおおっ!〉というコメントが次から次へと流れて行き、それに満足そうに頷いたナンジャモはバトルフィールドの真ん中に立ってくるりと回ると続けた。

 

 

「いいね!やる気マンマンじゃん!んじゃ企画の詳しい説明、始めちゃうよ!ラウラ氏はこのポケモン、バサギリを含めた3体で、モコたんの手持ち3体と戦ってもらいます!ってなワケで!スタンバイよろしくね!超バズるバトり、期待しているよ!んじゃもー盛大に盛り上げてネ!」

 

「勝負と言うからには負けないぞ、モコ……たん!」

 

「我もナンジャモが見てる前で無様を晒すわけにはいかないのでな!本気で行くぞ!」

 

「そんじゃあモコたんの初手ポケモン~~~出てこいやー!」

 

 

 俺は先に繰り出していたジャック。モコウはパチリスを肩に乗せたままクイックボールを手に取り投擲する。繰り出されたのはデンリュウ。メリープ系統の最終進化したポケモンだ。

 

 

「行くぞジャック!がんせきアックス!」

 

「デンリュウ!コットンガードで受け止めろ」

 

 

 振り上げた岩石を纏った岩斧が、デンリュウが身に纏ったモコモコに激突。ステルスロックと綿が散らばり、モフモフの綿で見えなくなる。

 

 

「パワージェム!」

 

「素早く!くさわけで避けろ!」

 

 

 そんな中を貫き飛んで来た6角形の光線を、速度を上げたくさわけで回避しながら突撃、デンリュウに肉薄する。

 

 

「力強く!れんぞくぎり!」

 

「マジカルシャインで迎撃しろ!」

 

 

 周囲を回りながられんぞくぎりを叩き込むはずが、デンリュウの額の珠から放出された桃色の光に吹き飛ばされる。いい技覚えてるな。

 

 

「スゴいぞかっこいいぞ!んじゃ、コメントから拾った質問いくよ!〈ジャックと呼ばれてるポケモンの詳細を教えてください〉それ、ボクも気になってたんだー!」

 

「え、今!?」

 

 

 いきなりナンジャモから振られた質問に面食らう。そういやそんな趣旨だったなこれ!

 

 

「こいつはバサギリ!昔のシンオウ地方、ヒスイ地方にいたらしいストライクの進化系だ!タイプはいわ・むし!知り合いにもらった石で進化した!多分パルデアにはこいつ一匹しかいないはずだ!」

 

「隙を突いてかみなりパンチ!」

 

「っ、つばめがえしで迎撃しろ!」

 

 

 俺の隙を突いてモコウが攻撃してきたので、咄嗟に防御を選び吹き飛ばされるジャック。…こいつは、だいぶ厄介だぞ。




動画風画面いかがだったでしょうか。登録数とかはさすがに適当です。ナンジャモって実際何人ぐらいに登録されてるんじゃろ。

顔出しモコたん。前作の恰好withナンジャモとなってます。お淑やかモードとは別人過ぎて身バレの心配なし。

カオスなコメ欄にも色々参戦。気になる人がいたら結構見てそうではあるよね。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSパチリス

どうも、放仮ごです。寒さと疲れで寝てたらギリギリでした申し訳ねえ。

今回はVSモコウ決着戦。楽しんでいただけると幸いです。


 かみなりパンチをつばめがえしで直撃を逸らしながらも吹き飛ばされるジャックだったが、持ちこたえて岩斧を振り上げ咆哮する。そうだよな、全世界に配信されてるんだ。お前が上がらないわけがないよな!

 

 

「ポケモン、バサギリ。名前はジャック。こいつは自信過剰で目立ちたがり屋でな!素早く!くさわけ!」

 

「マジカルシャイン!」

 

 

 迎撃せんと放たれる桃色の光を、持ち前の素早さで全て避けていくジャック。カメラの前でポーズをとるぐらい余裕があって、じれたデンリュウが拳に雷を纏って接近戦を仕掛けてきた。

 

 

「空中に避けろ!頭上からがんせきアックス!」

 

 

 ジャックが宙返りで跳躍することでかみなりパンチから逃れ、デンリュウの首の後ろから岩斧が炸裂。散らばったステルスロックと共にデンリュウは崩れ落ちた。

 

 

「むぐっ……自信はあったのですがさすがに手強いですね……」

 

「モコたん、口調口調!でもさっすがラウラ氏!デキるぞサスガだぞ!次の質問だよ!〈がんせきアックスってどんな技?〉だってさ、ボクも気になる気になる!」

 

 

 恐らく切札級だったのだろうデンリュウが敗れたからか動揺して口調が戻っているモコウに注意しつつコメントを読み上げるナンジャモ。……いや、俺もこの技についてはそんなに知らないんだが。

 

 

「…俺もノリで使ってるけどそんなに知らない。岩石を纏った岩斧で斬り裂いて、同時にステルスロックをばら撒く技だ。多分バサギリしか使えない」

 

「え、強すぎないかナそれ」

 

「俺もそう思う」

 

 

 呆れ顔のナンジャモに、見てみればコメントも〈強すぎて草〉〈専用技って強いよなあ〉〈ステロばらまく攻撃技とかえぐいな〉〈ネズミざんとかね〉などが流れている。何も知らずにビシッ!とポーズを決め続けているジャックに苦笑しつつ、何も言い訳できないんだよなと溜め息を突く。ジャックが楽しいならいいか、うん。

 

 

「頼むぞ、ストリンダー!」

 

「レクス、頼む」

 

 

 するとボールを手に熟考していたモコウがストリンダーを繰り出してきたので、俺もジャックを戻してレクスを繰り出す。睨み合う両者。

 

 

「オーバードライブ!」

 

「素早く!天井に逃れろ、とびかかる!」

 

 

 胸部の弦を掻き鳴らされて放たれた電撃の衝撃波を、跳躍して天井に飛びつくことで回避。天井を蹴って飛び蹴りを叩き込むレクス。よし、このまま…!

 

 

「どくづきだ!」

 

「にどげりで弾いて攻撃!」

 

「ストリンダー、ちょうはつだ!」

 

「っ、乗るなレクス!?」

 

 

 ちょうはつされたレクスが突っ込んでしまった。いい技覚えてんな今畜生。

 

 

〈蟲は時代の敗北者じゃけえ〉

 

〈モコたんのちょうはつ!効果は抜群だ!〉

 

〈乗るなラウラ!戻れ!〉

 

〈取り消せよ、その言葉〉

 

〈コガネの面接官:ちょうはつとはいい技覚えてんなあ〉

 

「ばくおんぱ!」

 

「とびかかる!」

 

 

 ちょうはつでまっすぐ向かって行ったところに放たれ直撃する爆音。飛びかかるで飛び蹴りを浴びせようとしたが空中で吹き飛ばされてしまい戦闘不能となる。パンクロック、ストリンダーのとくせいで威力が底上げされている音技は厄介だな。対抗できるのは……。

 

 

「いけ、レイン!」

 

「でんき相手にひこうとはな!オーバードライブ!」

 

「音には音だ!むしのさざめき!」

 

 

 次に繰り出したのはレイン。ナンジャモ戦のために戦力を温存しないといけないのもあってコイツしかいなかった。オーバードライブを、むしのさざめきで散らすことで威力を半減させて上に回避するレイン。

 

 

「力強く!エアカッター!」

 

「なんだ、この大きさは…!?」

 

 

 力業で強化したエアカッターでストリンダーを怯ませて吹き飛ばす。よし、このまま……!

 

 

「次の質問いっくよー!〈力強くや素早くを指示すると明らかにポケモンの動きが変わってますがなんなんじゃー!〉ほんとそれな!」

 

「タイミング!?」

 

 

 追撃しようとした瞬間にコメントを読み上げるナンジャモに絶叫する。お前、戦闘をちゃんと読んで狙ってんだろ!?

 

 

〈草〉

 

〈タイミングが絶妙で草〉

 

〈ガチンコも見たいけどこれも楽しい〉

 

〈愉悦〉

 

〈いいぞもっとやれ〉

 

〈それはそうと質問にも答えてもろて〉

 

「ほらほら、皆の者も待ち望んでいるよ!答えてあげてラウラ氏!」

 

「ストリンダー、どくづき!」

 

「レイン、でんこうせっかで回り込め!…えっと、素早く技を繰り出すのが「早業」で力強く技を叩き込むのが「力業」という!前者が威力を犠牲に手数を増やし、後者が手数を犠牲に威力と命中率を底上げする技術だ!皆伝した技で用いることができるがやり方は知らん!皆伝したい技をずっと使っていると皆伝するらしい!」

 

 

 叫んで返しながらもレインの軌道を観察する。ストリンダーの直上に来る……ここ!

 

 

「逃がすな、オーバードライブ!」

 

「力強く!むしのさざめき!」

 

 

 力強く放ったむしのさざめきとオーバードライブが激突して相殺。力業の隙をそれで失くすことに成功する。このまま連続で叩き込む!

 

 

「力強く!でんこうせっか!」

 

 

 勢いよく直角にストリンダーの懐に飛び込むレイン。もはやでんこうせっかと呼べない勢いだがまあいいや。

 

 

「ばくおんぱ!」

 

「なっ!?」

 

 

 しかし叩き込まれる直前、隙の少ないばくおんぱが放たれてレインが吹き飛ばされ、同時にストリンダーも崩れ落ちる。ダブルノックアウトだ。

 

 

「すごいバトりっぷりでボクは満足!ボクはどっちかというとモコたんに勝ってほしいな!いけいけモコたん、正直ここまで強くてびっくりだ!皆の者も応援するんだゾ!」

 

「ナンジャモが応援してくれるなら負けられないぞ、パチリス!」

 

「お前に頼るしかないってわけだ……存分に目立て、ジャック!」

 

 

 モコウが繰り出してきたのはパチリス。俺はジャック。体格差がすごいんだがいいのか?可愛く首をかしげるパチリスに、さしものジャックもたじろいでいる。

 

 

「ああ、遠慮しているんだろうが安心していいぞラウラ」

 

 

 瞬間、キッと悪人顔になったパチリスに胴体に飛びつかれ、噛み付かれてよろよろと後退するジャック。

 

 

「いかりのまえばだ」

 

「…体力を半分に減らす技、か」

 

 

 防御力関係ないのずるくないかそれ。ってどんな戦い方をするポケモンなのか分かった気がするぞ。

 

 

「がんせきアックス!」

 

「ほっぺすりすり!」

 

 

 振り下ろした岩斧も華麗に避けて、岩斧にほっぺを文字通りすりすりしてくるパチリス。まひだよなあ、クソッ。

 

 

「距離を取れジャック!」

 

「てんしのキッス!」

 

 

 距離を取ろうとしたところ麻痺して動きが止まってしまい、そこにそっとキスするパチリス。まひにこんらんとか嫌な構成だなあクソッ。

 

 

〈ガチガチで草〉

 

〈燃える情熱:ひっきょうですわ!〉

 

〈正々堂々じゃないけど可愛いから許せちゃう〉

 

〈ドラゴーン!:これも立派な戦い方です、生徒に見習わせたい〉

 

〈ナンジャモの切札も結構ずるいからこれはいいリスペクト〉

 

〈通りすがりのコルさん:いちいち絵になるパチリスだな!〉

 

「くさわけ!」

 

「スパークだ!」

 

 

 まひで下がった素早さをどうにかするためにくさわけを指示するもこんらんして自傷ダメージを負ってしまい、そこに電気を纏ったパチリスの体当たりを受けてしまう。ああくそっ、どうすればいい?考えろ、考えろ……。

 

 

「そうだ!ジャック!」

 

「なにをしようが無駄だ!スパーク!」

 

「ここで決めればかっこいいぞ!がんせきアックス!」

 

 

 そう呼びかけた瞬間。混乱が解けてさらにまひも気合で治したジャックがパチリスを叩き潰した。………最後の一撃は切ない。いやまあ、お前のその目立ちたい根性には恐れ入るわ。

 

 

「うそお」

 

「…そんなのありかあ?」

 

〈草〉

 

〈強すぎて草〉

 

〈目立ちたがりの本気〉

 

〈コガネの面接官:なんでやねん〉

 

〈普通トレーナーへの愛で振り払うのに目立ちたい根性なのは草〉

 

〈ナンジャモお口あんぐりで可愛い〉

 

〈モコたんこれはかわいそう〉

 

〈かわいそうはかわいい〉

 

〈不憫可愛いはいつものこと〉

 

〈モコたんかわいいやったー〉

 

〈通りすがりのコルさん:アヴァンギャルドッ!!〉

 

〈ジャックだけ空気読まずにキレッキレのポーズ決めてるの草〉

 

 

 その後、泣き出してしまったモコウに滅茶苦茶謝った。ナンジャモ曰く、同接5万人を超えてたので合格だとか。そりゃよかったよ。ジャックも楽しそうだったからまあいいや。




色んな意味で伝説の回になったとか。地味に質問でラウラの手の内を引き出しているナンジャモである。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSタイカイデン

どうも、放仮ごです。コメントに既存キャラを紛れ込ませるの結構面白くて癖になる。名前考えるの楽しいです。アオキさんとかサニアとか絶対来ないだろうなあってキャラもいるのが残念なところ。

今回はVSナンジャモ。楽しんでいただけると幸いです。


「激闘渦巻く白熱したバトルを制したのは挑戦者のラウラ氏~!全世界の皆の者も大興奮だったぞよ!フヒ…!ラウラ氏のおかげでチャンネル登録数はシビルドン登り……じゃなくて、同接数が目標より上回った状態でモコたんに勝利したのでジムテストクリアーだ!惜しくも負けてしまったモコたん、なにかコメントあるかな?」

 

「ぐすっ、最後は納得いかないが……認める、強かった」

 

「うんうん、だよねだよね!ラウラ氏リアクションも100点満点だし、勝負すればボクの動画もっと楽しくなりそう!というわけでこのボク、ジムリーダーでエレキトリカル★ストリーマー、ナンジャモと勝負だ!準備をするからこの配信はいったんお開きになります!続きはこの後すぐ!絶対見るんだゾ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

読み込み中

 

 

 

 

 

■ ▶❘ ・ライブ
 
 ❐ ▭ ▣ 

#ドンナモンジャTV

【ドンナモンジャTV】挑戦者ラウラとのマジバトル!負けないゾ!【ナンジャモ】

 23,664 人が視聴中・0分前にライブ配信開始
 
 ⤴640 ⤵ ➦共有 ≡₊保存 … □ 

 
 ドンナモンジャTV 

 チャンネル登録者数 451,264人 

 

「はい、ドモドモー。ナンジャモの~?ドンナモンジャTVの時っ間っだぞー!さっきの配信とは別枠だよ!皆の者~!準備はいーいー?あなたの目玉をエレキネット!何者(ナニモン)なんじゃ?ナンジャモです!ジムリーダーだよ!おはこんハロチャオ~!」

 

〈おはこんハロチャオー〉

 

〈うおおおおおおお〉

 

〈待ってました!〉

 

〈おはこんハロチャオー!〉

 

〈ラウラ!ラウラ!〉

 

〈燃える情熱:ここで負けたら承知しませんことよ!〉

 

〈ナンジャモちゃーん!〉

 

〈コガネの面接官:きばってけやー〉

 

 

 いったん動画を切って建物を出ると、ナンジャモとモコたんとしての姿のモコウと共にハッコウシティ中心にある海上バトルコートへとやってきた俺達。ナンジャモがスマホロトムを使って配信しているのを眺めつつ手持ちがちゃんと回復できていることを確認する。

 

 

「今回はボクのジムリーダーとしてのお仕事!みんなお待ちかねジム戦だ~!ゲストは応援のモコたんでお送りするよ!」

 

「ラウラには悪いが、我はもちろんナンジャモを応援するぞ!」

 

〈ぶれないの草〉

 

〈さすわえ〉

 

〈ガチ勢は違うぜ〉

 

 

 するとスマホロトムが俺の目の前までやってきて、モニターにドアップで俺の顔が映り、ナンジャモが歩み寄って一緒の画面に映る。驚くからやめて。

 

 

「本日の挑戦者は~!?みんなご存じ、飛ぶカイデン落とす勢いのむしつかい、ラウラ氏だー!イェイイェイ!早業力業の話で皆伝(カイデン)言われて驚いたよね!んでんで?今のお気持ち~どんなもんじゃ?!」

 

「蟲ポケモンは最強、負けるつもりはない」

 

 

 何度でも言う。喧嘩を売ってるのは大体わかったがへりくだるのも違うだろ。

 

 

「ほっほーん、でんき使いのボク相手に言うね~!インフルエンサーはこうでなくちゃ!」

 

「いやインフルエンザじゃないが」

 

「インフルエンサー!……ふふっ、やるね…このボクにツッコませるとはなかなかだゾ!4VS4で道具を持たせたり使用するのは禁止。ジムリーダー側はかちぬき制だけど挑戦者は自由に入れ替えてもOK!ルールはいいかな?いいかな?そんじゃそろそろ……ナンジャモのバトり、見たいっ人~?」

 

〈見たい!〉

 

〈見たいぞ!〉

 

〈エレキン:5000〉

 

〈通りすがりのコルさん:いつまで待たせるのだ!〉

 

「…んー?なんか毛色が違う人もいるけど、皆の者も待ちきれないってさ!あ、エレキン氏いつもありがとー!」

 

 

 そう言って反対側に移動し、くるりと回ってポーズをとると萌え袖に包んだ手で器用にボールを手に取るナンジャモ。俺もバトルフィールドの端に立ち、ボールを構える。最初はお前だ。

 

 

「ほんじゃそろそろ行ってみよう!」

 

 

▽ジムリーダーの ナンジャモが 勝負を しかけてきた!

 

 

「いでよおでまし、タイカイデン!」

 

「行くぞ、ダーマ!」

 

 

 ナンジャモが繰り出したのはぐんかんどりポケモン、タイカイデン。俺はワナイダーのダーマ。でんき・ひこうタイプ…相性は最悪だ。

 

 

「視聴者たちが楽しめるようなシビれるバトりをよろしくねー!おいかぜ!」

 

「いきなり補助技か…」

 

 

 使ってきたのはおいかぜ。味方のすばやさを一定時間上げる効果がある補助技だ。だがそれだけじゃないらしい、風を受けたタイカイデンの内側がバチバチと輝いていたのが見えた。

 

 

「知らない皆の者のために教えちゃうぞ!とくせい、ふうりょくでんき!風を受けると「じゅうでん」状態になるゾ!ほうでん!」

 

「スレッドトラップ!」

 

 

 放たれたじゅうでん状態のほうでんを、糸の盾で防ぎきる。触れてくれないとすばやさダウンは狙えないが、一発完璧に防御できるのはやはりデカい。

 

 

「いとをはく!」

 

「すばやさを下げようしてる?当たらなきゃいい……ってあれえ!?」

 

「誰がタイカイデンにやると言った?俺のダーマの戦い方はこうだ!」

 

「なんの~!ほうでん!」

 

「素早く!いとをはくだ!」

 

 

 街灯に糸を射出して引っ張ることで飛びつき張り付いたダーマに度肝を抜くナンジャモ。ダーマは次々と街灯に糸を伸ばし、飛びついてほうでんを回避していく。

 

 

「ぼうふう!」

 

「さっき言ってたな、当たらなきゃいい!」

 

「ぐぬう…」

 

 

 翼を羽ばたかせてダーマを追走したタイカイデンから放たれた突風も、命中率が低いことも相まって簡単に避けるダーマ。ほうでんも当たらないんだ、しかも空中で飛びながら撃つぼうふうだ。当たってたまるかよ。

 

 

「タイカイデン、中心に移動して!ほうでん!!」

 

〈すぐ対処するのさすがジムリーダー〉

 

〈しっかし逃げてばかりじゃ勝てないのになにがしたいんだラウラ〉

 

〈ドラゴーン!:おや皆様わかりませんか。それはですね……〉

 

〈防戦一方にしか見えないけど〉

 

〈女王蜂のしもべ:蜘蛛ポケモンにはある強みがあるんだよね〉

 

 

 

 ナンジャモの指示に従い、ダーマを追いかけるのをやめて中心に移動。全方位に向けて放電を繰り出すタイカイデン。移動しながらだとスレッドトラップも使えないと見たか。それはそうだ、だがもう使っているんだよな。

 

 

「ダーマ。はいよるいちげき」

 

〈おっ、ついに攻撃に転じた〉

 

〈コガネの面接官:性格悪いやっちゃなあ、しらこいわ〉

 

〈だけど空中のタイカイデンに近づのは無謀じゃね〉

 

〈ドリームーン:逆です。相手が悪い〉

 

「避けてタイカイデン!」

 

 

 瞬間。とくこうを下げられては敵わないとばかりに避けようとするタイカイデンが、なにかに引っかかって空中に縫い止められ俺は不敵に笑い、クリーンヒット。顎を捉えて頭部を揺らし、タイカイデンは力なく落ちようとして、ぶらんぶらんとぶら下がることとなった。揺れたことで煌めく糸。タイカイデンは巨大な蜘蛛の巣に囚われていた。

 

 

「な、何が起こってるの!?」

 

「なにも考え無しに逃げさせたわけじゃないさ。スレッドトラップ、すなわち糸の罠。既に使わせてもらった」

 

「ま、まさか!?」

 

 

 モニターを見ても一見わからないが、揺れることで正体を現す、街灯を起点にしてバトルフィールドに張り巡らせたキョダイクモノス……じゃなくて巨大な蜘蛛の巣。空を飛ぶ獲物を相手に蜘蛛はこうやって狩りをするのだ。

 

 

「なんの!振りほどけ!でんこうせっか!」

 

「それを待っていた」

 

「はえ?」

 

「焦ったなナンジャモ。カウンター!」

 

 

 蜘蛛の巣から抜け出そうと高速で突撃させるナンジャモだったが、糸を引きちぎり眼前に迫ったタイカイデンにダーマの返しの拳が炸裂。耐久がそんなにないタイカイデンは崩れ落ちる。

 

 

「どうした来いよでんき使い。じめんタイプしか弱点が無い最強といっても過言じゃないタイプのポケモンよ。蟲は蟲なりに姑息に秀逸に確実に仕留めさせてもらうぞ」

 

「ニッシッシ、いいじゃんいいじゃん!このボクに宣戦布告したんだから、そう来なくちゃネ!」

 

 

 恵まれているでんきタイプは弱点が多い蟲にとっては宿敵と言っても過言じゃない。この戦い、負けられない。




・ドリームーン。ヒント:漢字
・女王蜂のしもべ。ヒント:この小説で女王蜂と言えば…
・コガネの面接官。ヒント:コガネと言えば●●弁
・通りすがりのコルさん。ヒント:アヴァンギャルド!
・ドラゴーン!。ヒント:同僚から電話されて変えたらしい
・燃える情熱。ヒント:花言葉

というわけでコルサと同じく強化版手持ち4体のナンジャモ戦です。タイカイデンの自己完結しているとくせい好き。

キョダイクモノスは前作知ってる人ならにやっとするかも?空を飛ぶ相手には蜘蛛、これはラウラにとって常識。

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VSレントラー

どうも、放仮ごです。強化版メンバーにしているからナンジャモが結構な強敵に仕上がりました。ジムリーダーの中では切札の影響もあって結構強めだと思ってます。

今回はVSナンジャモその2。楽しんでいただけると幸いです。


「うーん、ピンチだ!でもでも、勝負はここから!レントラー!」

 

 

 繰り出されるなり赤い目で睨み付けいかくしてくるがんこうポケモン、レントラー。ダーマは近接戦メインだから攻撃力を下げられるのはきついな。

 

 

「フェンスに移動しろ、いとをはく!」

 

「逃がすな、サイコファング!」

 

 

 念動力で無理矢理上げた機動力を利用した噛み付きが、フェンスに糸を飛ばして移動したダーマに襲いかかる。

 

 

「カウンター!」

 

「今だよ!噛み付いて!」

 

 

 カウンターで迎撃しようとするも、寸前で踏みとどまり空振り噛み付かせることで念の衝撃波を飛ばしてくるナンジャモ。カウンターは当たらなかった上に行動を妨害され、たまらず腕で顔を守ったダーマの懐に飛び込むレントラー。

 

 

「痺れちゃうゾ!ワイルドボルト!」

 

「素早く!スレッドトラップ!」

 

 

 咄嗟に腕の間にスレッドトラップを展開させるが、ギリギリ直撃は防げたものの纏った雷電による衝撃までは殺しきれずフェンスから落下するダーマ。

 

 

「いとをはくで下から回り込め!」

 

「え、そんなのあり!?」

 

 

 ロトムの入ったカメラがフィールド下に潜り込み、糸を次々と出して海面すれすれをスイングしていくダーマを追って行くのをモニターで確認する。便利だなこれ。いやだが、居場所が分かっているのは相手も同じか。…いや、確かレントラーは透視能力がある。位置を正確に探られてしまっている。

 

 

「さあレントラー、最高に映えさせて!地面にこおりのキバ!」

 

 

 フィールドを凍り付かせ、鋭く尖った氷柱の剣山で埋め尽くして迎え撃つ姿勢のナンジャモ。そのまま降り立ったらステルスロックやまきびしと同じ効果を発するだろう。なんならこおり状態にもなるかもしれない。

 

 

〈えぐくて草〉

 

〈こおりタイプでもないのにこんな芸当できるのすげえ〉

 

〈コガネの面接官:さしずめアイシクルフィールドってとこやんな〉

 

〈完全にフィールドを奪い返されたなラウラ〉

 

〈ドリームーン:見た目よりも鍛えられている、さすがジムリーダーです〉

 

〈ある意味映えてるけど違う、そうじゃない〉

 

 

 観てるモニターにコメントが流れて邪魔だがそんなことを気にしてる場合じゃない。そんなところに下からスイングして飛び出してくるダーマ。なんか既視感がある返し方だなクソッ。どうすれば……そうだ。

 

 

「いとをはくでレントラーに括りつけろ!」

 

「え、ちょっ、まっ、タンマタンマ!?レントラー、かみくだく!」

 

 

 落ちてきたダーマは面食らっていたものの指示に頷き、レントラーに向けて糸を伸ばす。かみくだこうとするレントラーの首に巻き付いて引っ張り、氷柱の剣山に横から激突。勢いのまま粉々に粉砕し、そのままダーマは落ちて大ダメージを受け、戦闘不能となった。レントラーも大ダメージを受けた物のまだ健在だ。

 

 

「あちゃー……やられたー」

 

「こっちの台詞だ。してやられた」

 

「想定外に対処してこそ一流のインフルエンサーってものなんだゾ!」

 

 

 ダーマを戻し、考える。次はケプリべを出したかったがかみくだくも覚えているレントラーだと相性が悪いか。ダーマはやられ、レクスもレインもジャックもモコウ戦で手の内を知られている。ならば。

 

 

「行くぞ、ぼむん!」

 

 

 今回のジム戦における切札、ぼむんの登場だ。残ってる氷の剣山を鋼の甲殻で粉砕しながら降り立つぼむんに、楽しそうな顔が一転、苦虫を噛み潰したような顔をするナンジャモ。

 

 

「フォレトス……いいポケモン持ってるね!」

 

「こいつの弱点は炎だけだ。レントラーの技はサイコファング、ワイルドボルト、こおりのキバ、かみくだく。…ほのおのキバ辺りがあったら不味かったが安心して出せる」

 

「なら火力で勝負だ!ワイルドボルト!」

 

「素早く!まきびしだ!」

 

 

 パパパパパッ!とまきびしをフィールドにばらまき、電気を纏っていたレントラーを寄せ付けないぼむん。

 

 

「こおりのキバでフィールドを凍り付かせて!レントラー!」

 

「でんじふゆうで避けろぼむん!」

 

 

 レントラーはこおりのキバでまたフィールドを凍らせてまきびしの上から足場を作りそのままぼむんも凍結させようとしたようだが、でんじふゆうで空中に舞い上がることで回避する。

 

 

〈でんじふゆう実戦で使ってる人初めて見た〉

 

〈コガネの面接官:じめん技が通用しなくなるしたたかな技や〉

 

〈ナンジャモ、でんきタイプ使いなのに凍らせてばかりで草〉

 

〈相手が強すぎるからしょうがないね〉

 

〈ナンジャモがんばれー!〉

 

〈後ろでモコたんが力の限りポンポン振ってるのなんか笑えてきた〉

 

「力強く!ヘビーボンバー!」

 

「ここで逃げたら映えないよね!迎え撃て!ワイルドボルト!」

 

 

 まきびしを活かすべく氷を砕くために力業を選択。隕石の如き勢いで急降下するぼむん。レントラーは氷柱をジグザグに蹴って加速、雷電を纏って突撃して来て上から落ちてきたぼむんと激突。しかし質量の差で押され、地面に激突して氷を砕きながら叩き潰される。氷が砕け散って散らばった破片がスポットライトを受けて煌めく中で、レントラーは目を回し戦闘不能となっていた。これで3VS2だ。

 

 

「自傷ダメージが無かったら危なかったな」

 

「いかく込みでその威力を出せる力業、すごいネ。今度教えてくれないかな?」

 

「だから俺もそんなに詳しくないんだって。さあどうするインフルエンサー」

 

 

 そう挑発するとにやりと笑ってレントラーをボールに戻し、次のボールを取り出すナンジャモ。クルクル回ってカメラも寄せ、注目を集める。

 

 

「ピンチに相棒を出して大逆転!話題性抜群!ニッシッシッシ……これでいこー!んじゃもー皆の者?準備いい?!」

 

〈もちろんー!〉

 

〈来るぞ〉

 

〈ナンジャモの相棒といえば〉

 

〈もちろんOK-!〉

 

〈ナンジャモちゃんー!〉

 

「我も括目するぞ!」

 

「うんー、いいねモコたん!生のリスナーの声は貴重だよー!さあさあ目をコイルにして注目せよ!皆の者お待ちかねの~ボクの超キュートで頼れる相棒、ハラバリー!」

 

 

 繰り出されたのはぼよんぼよんと跳ねて着地したハラバリー。まきびしがなんのその。踏みしめても表情一つ変えずにずんぐりむっくりな身体で聳え立つ。

 

 

「ぼむん、油断するな。力強く!まきびし装填!発射だ!」

 

 

 砲口になってる脚を真っ直ぐと向け、ダダダダダン!と高速で射出するぼむん。しかしナンジャモとハラバリーは動じず、避けようともしない。

 

 

「厄介DMお断り!リフレクター!」

 

「なにっ!?」

 

 

 そして手を目いっぱい伸ばして貼られたエネルギーの壁にまきびしが弾かれて辺りに散らばる。厄介な技を覚えてるな。だが、この世界のリフレクターやひかりのかべは展開している方向しか防げない。上からなら………この世界?って、なんだ?

 

 

〈まきびしを飛ばして攻撃するのは草〉

 

〈じめんタイプの攻撃技になるんかな?〉

 

〈ドラゴーン!:古き文献にはまきびしやステルスロックを攻撃技として使っていたとの記録もありますですよ〉

 

〈ナンジャモのハラバリーは受けて返す型だから相性悪そう〉

 

〈さすがだぞ!〉

 

〈燃える情熱:その身一つで受けなさいな!〉

 

〈しかもリフレクターはダメージを減らすだけだから〉

 

〈あ、今のも攻撃判定になるのか〉

 

〈これで苦しめられる挑戦者多いよね〉

 

 

 なんだ?ハラバリーのお腹に光が集まってバチバチ輝いてる…?不味そうだ、なにかさせるのは駄目だ。

 

 

「ぼむん、でんじふゆうでもう一度浮かんでヘビーボンバーだ!」

 

「知らないリスナーに教えちゃうぞ!ハラバリーのとくせいは「でんきにかえる」!受けた刺激をへそダイナモに集めて電気に変えるのだ!ぶちかませ!かーみーなーりー!ゴロゴロドーン!」

 

「ぼむん!?」

 

 

 レントラーのワイルドボルトでがんじょうを削られていたこともあり、威力が上がっているらしいかみなりが直撃して黒焦げになり落ちてきてガコンッ!と音を立てて転がるぼむん。目を回している、戦闘不能だ。…ハラバリー、マヌケそうな顔をして強敵じゃないか…!




技は原作の二周目手持ちの技を参考にしてます。リフレクターハラバリーほんと強い。

映えるということでアイシクルフィールドとコメントで呼ばれる凍結戦法を多用するナンジャモ。ラウラの戦法に咄嗟に対策しているこのジムリーダーかなり厄介。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSハラバリーⅡ

どうも、放仮ごです。当初の構成より長くなってるナンジャモ戦。ハイダイ戦までは一話だったのにね。推しだからと細かく考えすぎた。

今回はVSナンジャモその3。楽しんでいただけると幸いです。


 予想外の強敵、ナンジャモの相棒ハラバリー。ジムリーダーの相棒なだけはあるな。リフレクターで前からの攻撃は半減される、かといって上から攻撃すればかみなりで撃ち落とされる。…奴の背後に回り込まないと話にならないか。

 

 

「さっすが!超キュートで頼れる相棒ハラバリーだよ!さあさあラウラ氏、次はどの子を出すのかな?」

 

 

 にやりとした顔で挑発してくるナンジャモ。俺のウカを除いた手持ち半分の戦い方は知られてしまっているが、これは4VS4のバトル。ダーマとぼむんが倒され、出して無い手持ちはケプリべのみ。つまり一体は出さないといけない。レクス、レイン、ジャック。いずれも機動力で相手を圧倒する面子だ。ハラバリーの背後に回り込むことができるだろう。ここで誰かを出すしかない。

 

 

「…次はこいつだ。ジャック!」

 

 

 考えたが、でんきが弱点のレインは候補から外し、残るレクスもこうも開けた場所じゃ本領を出しきれない。ジャックしかない。存分に目立ってやる気も出してるしな。ボールから出るなりビシッとポーズを決めるジャックに歓声が上がる。モコウとの戦いはジャックにとって間違いなく得るものがあった。

 

 

「目立ちたがり屋ジャックくんかあ。いいねいいね~その子とはぜひコラボしてみたかったんだ!ボクの相棒の活躍を映えさせる相手になってよ!」

 

「そいつは御免こうむる!回り込め、つばめがえし!」

 

 

 そのストライク時代から見劣りしないすばやさでハラバリーの背後に回り込み、岩斧を振るい回避不可能の軌道を描く斬撃を放つジャック。ハラバリーは高耐久ととくせいを活かしたカウンター型の固定砲台。振り返る前に確実にダメージを与える…!

 

 

「リフレクターを足場にジャンプ!天高く飛び上がれ!みずのはどう!」

 

「なに!?」

 

 

 するととんでもないことが起きた。その鈍重そうな見た目からは想像もつかないボヨンボヨンとした動きで跳躍、目の前のリフレクターを蹴って宙返りすると腕の間に水を集めるハラバリー。でんきがえる(・・・)ポケモンポケモンは伊達じゃないってか…!

 

 

〈すごっ〉

 

〈あの見た目でなんて動きをするんだ〉

 

〈紹介動画で画面外からナンジャモに飛びついたのが印象的〉

 

〈でもあんなに動けたんだな…〉

 

〈バサギリの方もあの重そうな見た目で速いのな〉

 

〈一瞬であの距離移動するのは速いを越えてる〉

 

〈それに反応してるナンジャモとハラバリーやべえ〉

 

「蛙は蟲の天敵だ!負けるなジャック!れんぞくぎり!」

 

 

 放たれたみずのはどうを、高速の斬撃で切り刻むことで防ぐジャック。バシャッ!と水が飛び散りフィールドを濡らす。水浸しのフィールドじゃ踏み込むことも難しそうだな。

 

 

「がんせきアックス!」

 

 

 岩石を纏った岩斧を振り上げ、着地したハラバリーに向けて突撃したジャックはそのまま勢いよく叩きつけるも、ハラバリーはグググッと縮みこませて攻撃に耐えていた。リフレクターなしで耐えただと…!?

 

 

「その程度の攻撃じゃビクともしないよ!攻撃とはこうやるのダ!ハラバリー、カウンター!」

 

「ジャック!?」

 

 

 ボヨンと跳ねた体の反動を利用した衝撃を集めた光り輝く小さな右手で殴り飛ばされ、吹き飛んで水浸しのフィールドに転がるジャック。何とか立ち上がるも、びしょ濡れで。へそダイナモとやらがバチバチ輝くハラバリーを見て、はめられたと気付いた。

 

 

「ジャック!くさわけでそこから退避……」

 

「遅い!じゅんでん完了!かーみーなーりー!ゴロピカドーン!」

 

 

 俺の指示にジャックは応えようとするもダメージからよろけた隙を突き、放たれる雷電の槍。命中率に不安のある技である故にジャックからは外れたが水溜りに炸裂。轟音と共に大放電が発生してびしょ濡れのジャックに通電して感電。黒焦げとなったジャックの巨体が倒れ伏す。

 

 

〈かーみーなーりー(迫真)〉

 

〈緩い言い方なのにやってることえげつなくて草〉

 

〈みずのはどうを防御させることでフィールドを水浸しにしてかみなりは天才〉

 

〈かみなりは強力だけど命中率に不安があるからな…〉

 

〈コガネの面接官:カウンターで倒すんやなくて水浸しの所に殴り飛ばして確実に仕留めるとか可愛い顔して恐ろしいわあ〉

 

〈リフレクターなしであの専用技素で耐えてるのもやべえ〉

 

〈ゴロピカドンかわいい〉

 

〈ラウラ残り一匹でどうすんだこれ〉

 

〈判明してるのはバサギリ、エクスレッグ、アメモース、ワナイダー、フォレトスだっけ〉

 

〈そのうちエクスレッグとアメモースは戦い方がばれてるから出したくないな〉

 

〈ナンジャモの四匹目あれだしなあ〉

 

〈判明してない残り一匹次第?〉

 

〈どっちにしろ四匹目が強すぎる〉

 

 

 ああそうだよこの野郎。と内心モニターに流れるコメントに悪態を吐く。あっちが俺のことを知ってるならコメントでナンジャモの四匹目を知りたかったがさすがに民度がいいのかネタバレはしてこないか。…いや、出すのはコイツ以外ありえないか。

 

 

「相手はジャックが弱めてくれた、推し通るぞケプリべ!」

 

 

 繰り出したケプリべ……ベラカスに、観客やコメントから落胆を感じた。だろうな、ここ大一番で出すのが小ぢんまりしていてお世辞にも強そうとは思えないケプリべだ。だが蟲について知ろうともしない奴等は知らない。このケプリベ、ベラカスの本体は蟲の様な部分ではなく玉の方だということを。

 

 

〈オワタ〉

 

〈これは無理だ〉

 

〈まだエクスレッグかアメモースの方が…〉

 

〈諦めたんかな〉

 

〈本気出したナンジャモ強いからしゃあない〉

 

〈リフレクター対策で遠距離が使える奴にしたのは分かるけども…〉

 

 

 エスパータイプが無かった進化前からエスパーエネルギーが混ぜ込んだ泥玉に進化のエネルギーを蓄えるためにせっせと転がし続けて培った太陽の様な玉が、今のケプリベの本体…らしいと図鑑には書いてあった。恐らくこのパルデア地方でも俺みたいな物好きしか知らない情報だろう。

 

 

「皆の者はこう言ってるけど、どうなのかナ?諦める?」

 

「まさか。こいつをなめたら痛い目に遭うぞ」

 

「じゃあ見せてもらうよ!ハラバリー、みずのはどう!」

 

 

 またびしょ濡れにして確実にかみなりを当てようとしたのか、みずのはどうを撃ってくるハラバリー。だがそれは、ケプリベに当たる直前でぴたりと空中に縫い止められる。

 

 

「じんつうりき。返すぞナンジャモ!」

 

 

 ケプリベの複眼が輝き、玉が怪しく輝いてみずのはどうにじんつうりきによる念動力を纏って加速、凄まじい勢いで叩き付け、引っくり返るハラバリー。

 

 

「大丈夫、ハラバリー!?」

 

「格の違いを見せてやる。ケプリベ、下にある物が分かるな?それを操れ、じんつうりき!」

 

 

 俺がそう語りかけると、先程よりも激しく光り輝くケプリベの玉。ゴゴゴゴゴッという地鳴りと共に、フィールドの外、下の海面まで吹き抜けになっているそこから現れたのは、蜘蛛の様な脚の形状をした八本の水の柱。下の海水をケプリベが念動力で操り作り出した、文字通りの手足だ。

 

 

〈 〉

 

〈 〉

 

〈 〉

 

〈ええ……〉

 

〈強すぎわろた〉

 

〈蟲だからと馬鹿にしてごめんなさい〉

 

〈ドリームーン:これは、洒落になりませんね〉

 

〈誰だオワタとか言った奴、見てるか?〉

 

「……そんなの、ありぃ?」

 

 

 フィールドを取り囲んでいる、自分より遥かに巨大なそれを見上げて立ち尽くしているハラバリーと、冷や汗を流し絶句するナンジャモに、俺は腕組みして不敵に笑う。うん、満足だ。全世界に見せつけてやったぞ。

 

 

「蟲の強さ、思い知れ」




ちょっと影が薄かったケプリベ、蟲がなめられてる現状を打ち破る面目躍如。これでサイコキネシスではなくじんつうりきなのは溜め込んだエスパーエネルギーの出力の問題。

強敵ハラバリー。みずのはどうで濡らして必中のかみなり、リフレクターで防いでカウンター、と耐久力と技の連携が強み。ぼむんにジャックという現ラウラの切札級二体を落としてるっていう。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSムウマージ

どうも、放仮ごです。どうしても書かないといけないシーンがあったのでちょっと長くなりました。

今回はVSナンジャモ決着。楽しんでいただけると幸いです。


 それは、コルサとのジム戦後のこと。アイアールが戦っている間、アイアールの勝利を確信していた俺は試合を見ることなく、コルサ戦の反省会をしていた。特に、さいきのいのりを使うことなくやられてしまったケプリベだ。

 

 

「ケプリベ、お前の役目は貴重な中距離アタッカーってことと、味方を復活させるヒーラーだ。だけどさいきのいのりは隙がデカいし思惑を見抜かれて妨害されてしまう。わかるな?」

 

 

 俺がそう尋ねると体ごと動かして頷くケプリベ。こいつのは結構耐久力はあるんだが、常に飛んでいるため踏ん張ったりができないので、衝撃を地面に流すなどができずもろに喰らってしまうのが難点だ。

 

 

「なので、相手に気付かれず指示できる合図を考えた。俺の記憶の片隅にあったやつだが……それを覚えてくれ」

 

 

 脳裏に蘇ったそれは、とんでもなく強いハガネールに、俺とムツキを含めた三人で立ち向かう光景だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして今。対峙するはケプリベとハラバリー、上を見て観察している様子のナンジャモと、腕を組んで踏ん反り返る俺。その周り、バトルフィールドの円周を取り囲むのは、ケプリベのエスパーエネルギーで下の海をじんつうりきで操り形成した、八つの蜘蛛脚。

 

 

「やられる前に落とすよ!ハラバリー、みずのはどう!」

 

「叩き潰せ、ケプリベ」

 

 

 俺の指示と共に、巨大な海でできた蜘蛛脚八本が次々と振り下ろされ、みずのはどうを掻き消しながらハラバリーに近づいて行く。慌ててボヨンボヨンと跳躍して宙返りで避けていくハラバリー。避け方までエンターテイナーかよ。

 

 

「ハラバリー、そんなの破壊しちゃえ!かみなり!」

 

「無駄だ」

 

 

 放たれたかみなりは海の蜘蛛脚に直撃するも、表面のエスパーのエネルギーが爆ぜただけですぐ修復され、そのままスレスレに激突し、薙ぎ払うようにハラバリーを蹴り飛ばし、その先にあった蜘蛛脚でまた蹴り飛ばしていく。

 

 

「リフレクターで受け止めて!」

 

 

 さらなる追撃を、背中で滑りながらお腹側にリフレクターを張ることで受け止めて行くハラバリー。しかしボコボコに叩きのめされて身動きが取れなくなっていた。

 

 

〈一方的すぎぃ!〉

 

〈二タテしたハラバリーが遊ばれてる…〉

 

〈こわっ、蟲こわっ!〉

 

〈ところであのケプリベと呼ばれてるポケモン知らんのだけど〉

 

〈これナンジャモの切札でもきつそう〉

 

〈女王蜂のしもべ:ベラカスと言うポケモンだね。シガロコってポケモンを1000歩連れ歩くことで進化する蟲ポケモンだ〉

 

〈1000歩は草〉

 

〈そりゃ知らんわけだ、愛が無いとできない〉

 

〈そもそも蟲を捕まえるやつが少ない定期〉

 

〈こんなに強いなら捕まえてみようかな…〉

 

「心配しないで皆の者!ここから逆転するのが一流のインフルエンサーなのだ!衝撃を~でんきにかえる!フルパワーでかみなり!」

 

「素早く!むしのさざめきで吹っ飛ばせ!」

 

 

 とくせいでじゅうでんしたハラバリーが何とか立ち上がり、バチバチ光る雷電を放とうとしたところに、横から衝撃波を叩き込んで吹き飛ばす。

 

 

「そんなっ」

 

「力強く!じんつうりき!」

 

 

 かみなりを撃とうと溜めていたためもろに受けたハラバリーはボヨンボヨンと転がり、それを追いかけた海の蜘蛛脚がハラバリーを押し潰す。そしてハラバリーを押し潰した海の蜘蛛脚一本はドパンと爆ぜて、津波としてさらなる衝撃を叩き込む。流れてきた海水が俺やナンジャモの足元まで濡らした。

 

 

「これでかみなりは迂闊に使えないな、ナンジャモ!俺とお前まで感電していいなら別だがな?」

 

「体を張ってまで妨害するなんてやるネ!ボクも痺れたくないからかみなりは使えない……だけど、そもそも完敗だよこれは」

 

 

 そう袖を向けた先では、ハラバリーが目を回して倒れていた。「トホホー」と肩を落としながらボールにハラバリーを戻すナンジャモはそのまま涙目でカメラに目を向ける。

 

 

「ゲゲッ!もう最後の一匹!?ちょっぴり、ううん、すっごーくピンチかも!皆の者!ボクへの応援、してしてー!」

 

〈ナンジャモー〉

 

〈がんばれー!〉

 

〈負けるなー!〉

 

〈ぶっちゃけ勝てる気しないけど頑張れー!〉

 

〈いけいけー!〉

 

「…余裕だな?」

 

「なんのことかナ?いっけー、ボクの切札!」

 

 

 そう言って繰り出されたのはムウマージ。またエキスパートタイプじゃないが、まあそういうことなんだろう。テラスタルオーブを取り出し袖の上で構えたナンジャモはカメラ目線を崩すことなくウィンクすると両手で放り投げる。

 

 

「出でよ、ひらめき豆電球-!ナンジャモの底力、見せちゃるぞ!」

 

 

 そしてムウマージは結晶化、豆電球の様な結晶を頭に乗せた姿になる。たしかムウマージのとくせいはふゆう。…なるほどね、でんきタイプになることで実質弱点が存在しないポケモンになるのか。こりゃ皆の者からの信頼も厚いのも頷ける。

 

 

「いいね、相手にとって不足無し!最高だ!」

 

 

 タタタッタン。そうリズムを刻みながらふらふらと体を揺らして踊り、拍手をして獰猛な笑みを演じる。同時にケプリベも光り輝き、再生させた蜘蛛脚八本を動かして臨戦態勢を取る。…さすがだ。

 

 

〈かっけえなラウラ〉

 

〈一緒に踊ろうぜ!とか言いそうな動き〉

 

〈あれ?〉

 

〈ラウラはテラスタルしないのか?しなくていいってこと?〉

 

〈およ?〉

 

〈モニターの、あれ?バグ?〉

 

〈どしたん〉

 

〈ラウラもナンジャモも気付いてない?〉

 

「いくぞっ!電撃注意報!ビリっときたらごめーんね!チャージビーム!」

 

「防げケプリベ!」

 

 

 放たれたチャージビームに、海の蜘蛛脚を動かして間に下ろすことで盾として使う。できるだけ削りたい。

 

 

「チャージビームでとくこうアゲ上げ!マジカルフレイム!」

 

「っ!?」

 

 

 すると回転する火球が海の蜘蛛脚を蒸発させ、崩壊。ケプリベは残りの蜘蛛脚をムウマージに殺到させる。

 

 

「マジカルシャインで防いじゃえ!」

 

 

 しかし片っ端からマジカルシャインで弾かれ、逸れていく中をふよふよと近づいてくるムウマージ。

 

 

「力強く!じんつうりき!」

 

「チャージビーム!」

 

 

 それに対して海の蜘蛛脚を束ねて超巨大な水の塊を形成、叩き込むケプリベだがしかし。電気が迸り、はじけ飛ぶ。その先には紫色のエネルギーを眼前に溜めて行くムウマージ。

 

 

「シャドーボール!」

 

 

 効果は抜群だ。崩れ落ちるケプリベ。…チャージビームでとくこうを上げに上げて質量差を火力で覆しやがった。

 

 

「…毎回上がるってどんな確率だ」

 

「ボクのムウマージはテラスタル特化型。過剰エネルギーをチャージビームでとくこうに変えることができるのダ!」

 

〈あれ〉

 

〈やっぱり〉

 

〈ナンジャモ、後ろー!〉

 

〈つまりそういうこと?〉

 

〈どういうことだってばよ〉

 

「え、どしたの皆の者。ボクの勝ち、だ、よ…?」

 

 

 勝ち誇るナンジャモだったが、流れるコメントを見て不安になってモニターの、俺達の手持ち状況が表示されている画面に視線を向けて青ざめて行き、俺に視線を戻すと既に繰り出しているジャックがポーズを決めていて。

 

 

「何ごとナンジャ!?ちゃ、チャージビーム!」

 

「テラスタル!くさわけだ!」

 

 

 くさタイプにテラスタルして、チャージビームを真正面から受け止めながら突撃。体当たりを決めるジャック。体勢が崩れたムウマージに、岩斧を振りかぶる。

 

 

「がんせきアックス!」

 

「キミのきらめき1000万ボルト~!?」

 

 

 豆電球の様な結晶を叩き斬り、ムウマージはテラスタルが解けて崩れ落ちた。コイル型の髪飾りを頭の上で浮かして回転させ、呆けるナンジャモ。やったことは簡単だ。ハイダイ戦でも使った、ケプリベのさいきのいのりで復活したジャックの騙し討ち。だがあの時とは決定的に違うことがある。

 

 

「なんで、道具は禁止だよね?じゃあ技?…パーモットが使える、さいきのいのり…?でも、いつ、どうやって!?」

 

「さっき、「最高だ!」って言った時だ」

 

「あの時!?」

 

 

 大人気インフルエンサー・ナンジャモとしてではなく、ジムリーダー・ナンジャモとしての素なのか驚くナンジャモ。

 

 

「事前にケプリベに、足音で指示するからと覚えさせた。さいきのいのりなんて馬鹿正直に指示したらばれるからな。……ネット配信されたからもう二度と通用しないだろうがな」

 

「力業早業だけじゃなくそんな技術まで……一体君は何者(なにもん)ナンジャ!?」

 

「俺が知りたい」

 

〈うおおおおおお〉

 

〈どっかで見たことあるぞそれ〉

 

〈キリエじゃねえか!〉

 

〈ドリームーン:あ〉

 

〈ガラルの元最強のジムリーダーのそれ〉

 

〈どんだけ丁寧に教えたらそんなことができるんですかねえ…〉

 

〈コガネの面接官:思いついても普通実行するか?恐ろしいやっちゃなあ〉

 

〈卑怯じゃね〉

 

〈むしろそれを使っているジムリーダーがいたことが驚き〉

 

〈確かに不自然だったしなんならモニターにちゃんと残り数が表示されてたし気付かなかったナンジャモちゃんの完敗だこれ〉

 

〈前例がいるから警戒しない方が悪いってなる〉

 

〈普通警戒すらしないよそんなの〉

 

〈というかさいきのいのりまで使えるベラカスやべえ〉

 

〈どっちも強かったなハイレベルだった〉

 

「ナンジャモ、配信中だぞ」

 

 

 怒涛のコメントが流れて行き、モコウの言葉で我に返ったナンジャモはくるりと一回転して笑顔を取り繕う。

 

 

「うぐぐぐ…納得いかないけど、勝利したのは挑戦者のラウラ氏でした~!悔しいけどボクの負け!皆の者、応援ありがとだぞー!応えられなくてごめんネ!……というわけで!バズりまくりのこのボク、ナンジャモに勝利したラウラ氏には~?ジムバッジをプレゼントしちゃいまーす!……今度はボクが勝つからネ!」

 

「お、おう…」

 

「わかればよし!皆の者~スクショタイムだぞ!脳内フォルダに焼き付けろ~!ほらほら、ラウラ氏もモコたんもポーズポーズ!」

 

「我、参上!……え、参加していいんですか?」

 

「途中で素に戻るのやめない?モコたん」

 

 

 そのままナンジャモ、モコウと共にカメラに向けて両腕を上げるポーズをとることになった。めっちゃ恥ずかしいなこれ。

 

 

「ボクとラウラ氏、モコたんの熱いバトりにビリビリっとキタ人は~?チャンネル登録よっろしっくね~!あなたの目玉をエレキネット!エレキトリカル★ストリーマー!何者(ナニモン)なんじゃ?ナンジャモでした~!」

 

 

 そうナンジャモが締めくくり、今回の配信はお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、我慢できなくて来てしまいましたわ!」

 

 

 ハッコウシティの片隅で、海の蜘蛛脚の騒ぎに紛れて訪れていた人物がいた。その銀髪をパーティアレンジに纏め、今はシックな紺色のワンピースと青いサングラスを身に纏い扇子で口元を隠した少女は、傍らに相棒を連れ、物陰からラウラがいるバトルフィールドを覗きこむ。

 

 

「こんなに早く会えるとは思っていませんでしたわ。わたくしを連れて行ってくださる?インテレオン」




かつての記憶を頼りに足音で指示すると言うとんでもで逆転したラウラ。キリエとかいうこれを全部の技でやる女。ラウラダンス。

ナンジャモに宿敵認定されたラウラに近づく不穏な影。さあ彼女の名前と特徴を思い出してみよう。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSインテレオンⅠ

どうも、放仮ごです。今回は物語が滅茶苦茶動きます。楽しんでいただけると幸いです。


「このパルデアに迷い込んだ異邦人……ラウラを倒すため、ブルーフレア団に入りたい、と?」

 

 

 それは今から2ヶ月ほど前の事。ブルーフレア団のアジトを突き留め、文字通り殴り込んだわたくしの前に現れたのは、フードで顔を隠した人物。冷気の様な殺気を感じながらも、わたくしは余裕の笑みを浮かべて胸に手を当てアピールする。

 

 

「バトルの腕は保証いたしますわ。わたくし、ラウラ以外には絶対に負けない自信がありますわ。この雪辱……勝利を果たさないと気がすみませんの!そのためなら何でもいたしますわ!」

 

「…もし、そのラウラを倒せてもブルーフレア団に反旗を翻すことなく我々の目的のために尽力すると誓えるのかしら」

 

「誓いますわ!なんなら誓約書でもなんでも持ってこいですわ!あ、でもひとつ条件が。今のラウラは手持ちを全て失った状態。わたくしもそんな状態で勝っても嬉しくもなんともねーですわ!」

 

「いいわ。なら実力を示しなさい」

 

 

 パチンと指を鳴らす合図と共に、現れたのはウルガモス、ドンファン、プリン、レアコイル、ムウマ、モロバレル、ボーマンダによく似たワイルドな風貌のポケモンたちと、デリバード、ハリテヤマ、ドンファン、サザンドラ、ウルガモス、エルレイドまたはサーナイト、バンギラスによく似た機械じみた風貌のポケモンたち。その後ろでは緑とオレンジのバイザーを付けた女二人がにやにや笑ってる。

 

 

「この数のパラドックスポケモンに勝てる確率。1%」

 

「アハハ!お嬢様だか何だか知らないけど、後悔しながら死んじゃえば?」

 

 

 ああ、なるほど。この三人はわたくしが並のトレーナーだと思っていますのね。不愉快ですわ。このわたくしが、ラウラ以外に負けると思われてるなんて……。

 

 

「ド!心外ですわ!」

 

 

 繰り出されるはインテレオン、アーマーガア、ストリンダー(ローのすがた)、セキタンザン。パルデアでも目立たない様にと、相棒のインテレオン以外はパルデアでも生息しているポケモンのみを連れてきた。わたくしを守るように取り囲む四体の中心で、わたくしを見るボスに向けて優雅にスカートの裾をつまんでお辞儀する。

 

 

「見たところ野生ですわね?ちょうど残り二匹が欲しかったんですの。いただいてもよろしくて?」

 

 

 その後、私は無事幹部としてブルーフレア団に迎え入れられたのだった。ええそうですの、待ちましたの。ラウラが倒すべき強さに至るまで……すっごくすっごく待ちましたのよわたくし。元々別の奴が営業していた喫茶店の店主になって思う存分カレーを作って振る舞うのも楽しかったですが。わたくしのことを覚えてないのは残念ですけど……思う存分戦えれば何でもいいですわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナンジャモ戦の翌日。アイアールが戻ってくるまでモコウの家に泊めてもらい、モコたんモードのモコウと共にハッコウシティを観光するべく練り歩くこととなった。アイアールも実家で泊まったらしいし昼過ぎぐらいには着くかな?

 

 

「そういえばなんだが」

 

「どうしたモコ…たん」

 

「リアルでの配慮感謝するぞ。いやなに、お前と以前会ったことがあるか無いかの話だ」

 

「なにか思い出したのか!?」

 

 

 露店カントークレープで買ったいちごホイップクレープを食べていたらそんなことを言ってきたモコウに詰め寄る。

 

 

「い、いや思い出したというか……一応ガラル地方にいた時のこともじっくり思い出してみたがそもそも屋敷から出たことすらなかったからお前がメイドとかじゃない限り会ったことはないと思うぞ」

 

「お前も記憶喪失だという可能性は?」

 

「ちゃんと親の顔も全部覚えてるぞ。…ラウラこそ、記憶喪失なんですか?」

 

「素が出てるぞ。ああ。パルデアに来る以前の事を俺は知らない。覚えていたのは名前と、蟲ポケモンへの愛だけだ。ガラルが関係ありそうってことは思い出したんだがな」

 

「だから我に聞いたのか……」

 

「いや、お前はちょっと違う。俺のおぼろげな記憶にお前の顔があったんだ。それとよく似た格好のな。ひょっとしたらってな」

 

「…んんー?」

 

 

 すると首をかしげるモコウ。稲妻ツインテールをぴょこんぴょこんと跳ねさせ、頷くと口を開いた。

 

 

「そもそもこの髪型にしたのは今回の配信が初めてだし、この服だってパルデアで揃えた物だからガラルでこの格好になったことはないはずだぞ?」

 

「なんだって?」

 

 

 じゃあ俺の記憶は何なんだよって話になる。妄想?いや記憶もないのに知らない顔が出てくるか…?すると、ポケモンセンターのある方から手を振りながら駆け寄ってくる少女が見えた。

 

 

「ラウラー!」

 

「ん?ああ、アイアール。早かったな。なんか久々だ」

 

 

 そらとぶタクシーでポケモンセンターに降り立ってきたらしいアイアール。特に何事も無さそうでよかった。

 

 

「お前がアイアールか。我は……」

 

「モコたんですよね!ファンです!握手してください!」

 

「お、おお、我にファンか……私ただのナンジャモリスナーなんですけど……」

 

「こっちが素なのかな?」

 

「そうだぞ。演じてる方が俺は違和感ないが」

 

 

 もじもじしながら握手に応じるモコウと満面の笑みで握手するアイアールに思わず笑ってしまう。

 

 

「とりあえずアイアールの分も買ってやるか。ナンジャモからのファイトマネーがあるんだ」

 

「いいねラウラ!太っ腹ー!」

 

「わたくしもお願いしてよろしいかしら」

 

「ああいいぞ……って、うん?」

 

 

 あまりにもナチュラルに割り込んできた声に振り返る。そこには、傍らにのっぽなみずポケモンを連れている、銀髪をパーティアレンジに纏め、シックな紺色のワンピースを身に纏い扇子で口元を隠した青いV字サングラスの少女がいた。扇子には「celebrity」と書かれている。…なんか既視感があるし、お前はそうじゃないだろってツッコみたくなった。なんでだ?

 

 

「…青いサングラス。お前、ブルーフレア団か?」

 

「ご明察。わたくし、今はブルーフレア団の幹部をしていますの。名乗らなくてもよろしくて?」

 

「ブルーフレア団が何の様だ。ウカか?」

 

 

 周りを見渡し、人が多いことを確認して迂闊に動けないことを察する。何をするか分からない以上、荒事に持ち込みたくない。アイアールにも目で合図を送り制する。

 

 

「ウカ?なんのことかわかりませんけどわたくしはラウラ!貴方にしか興味ありませんの!何せお嬢様ですので欲しいものは何でも手に入るのですわ!んん~セレブリティ!」

 

「何がセレブリティですか!ムカつく双子を思い出します!」

 

「落ち着け口調が崩れてるぞ。…俺の事を知っているのか?」

 

 

 興奮して口調が戻って憤慨するモコウを宥めながら問いかけると、お嬢様は扇子を閉じてこちらに突きつけると、隣のみずポケモンが同じように指を指してきた。

 

 

「もちろん知ってますわ。わたくしの好敵手。もちろん、対処してくれますわよね?インテレオン、ねらいうち」

 

「危ない!?」

 

 

 インテレオンと呼ばれたポケモンの指先からとんでもない勢いの水流が放たれ、咄嗟にモコウの手を引いて一緒に避け転倒する。そのままインテレオンは俺に視線を向けると指先を構え、水流が放たれる。不味い、体勢が……!

 

 

「ゲッコウガ。たたみがえし!」

 

 

 瞬間、俺たちとインテレオンの間に立ちはだかったポケモン、ゲッコウガが手で触れた地面を捲り上げて水流を防ぐ。その隣に並び立ち睨み付けるアイアールに、お嬢様はインテレオンを侍らせ忌々しそうに舌打ちする。

 

 

「一緒に旅できているだけの女が邪魔しないでくださるかしら?」

 

「ラウラの何を知ってるのかは知らないけど。手出しはさせない」

 

 

 なんか知らんけどバチバチ睨み合う両者。いやあの。俺を狙ってきたんじゃないのかこのお嬢様。

 

 

「ラウラはわたくしの獲物でしてよ!弱い女はその隣にふさわしくありませんわ!」

 

「ラウラは私の相棒なの!手を出すな!エセお嬢様!」

 

「いや、あのだな?」

 

「「ラウラは黙ってて!」」

 

「はいぃ…」

 

 

 止めようとしたら二人に怒鳴られて思わず萎縮する。あの、俺、蚊帳の外…?モコウ、慰める様に肩を叩くな。泣くから。




グロリア視点だけどついに出てきたブルーフレア団のボス。パラドックスポケモンを物ともしない実力のグロリア。記憶喪失でもないのにラウラの事を本当に何も知らないモコウ。グロリア襲撃。そしてゲッコウガを繰り出すアイアール。イベントだらけでした。

・グロリア
ブルーフレア団の幹部。ラウラと因縁があるらしく、戦うためだけにブルーフレア団に入った自称お嬢様。パラドックスポケモンの群れを返り討ちにする実力。加入したのはラウラがパルデアに来てからなのでバラに新参者と呼ばれる。銀髪をパーティアレンジに纏めている。手持ちはインテレオン、アーマーガア、ストリンダー(ローのすがた)、セキタンザン。ラウラは既視感を抱いている他、そうじゃないだろという感情を抱くが…?アイアールの事が大嫌い。名前の由来はグロリオサ。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSインテレオンⅡ

どうも、放仮ごです。前回で感づいた人も結構いたようで。今回はアイアール関連です。

今回はゲッコウガVSインテレオン。地味にどっちも蟲の天敵動物モチーフって言うね。楽しんでいただけると幸いです。


「やあアイアール。フラダリ氏から聞いたよ。ポケモン博士になりたいんだって?」

 

「はい、そうです!」

 

 

 それは、カロスに住んでいた頃の話。まだ9歳ぐらいの子供として、私は父親の仕事の上司の推薦を受けてカロスでも有名なポケモン博士であるプラターヌ博士と直接話をする機会を得ることができた。

 

 

「私、バカだけど。大好きなポケモンのことをいっぱい、いっぱい知りたいんです!」

 

「うん、いい夢だ。なら彼を君に託そう。ケロマツという。彼と一緒に旅に出て見ないかい?」

 

 

 そうして私は、最初の旅に出た。……つまり、ゲッコウガは私の最初の相棒だ。でも辛い出来事を思い出してしまうから、他の手持ち共々ずっと家にいてもらっていた。パルデアの旅ではパルデアのポケモンたちだけで乗り越えようと思ってたけど、…色は違うけどフレア団を名乗る奴らが出てきて、本気を出すと決めたんだ。タイプの被っていたリプルには悪いけど家に置いて来たのが心苦しいけど……連れてきてよかった。

 

 

「一緒に旅できているだけの女が邪魔しないでくださるかしら?」

 

「ラウラの何を知ってるのかは知らないけど。手出しはさせない」

 

 

 直感的に分かったんだ。ああ、この女にだけは負けられないって。ラウラとモコウが周囲の人間を逃がしている間に、長い手足を使って格闘戦を演じる忍者とエージェント。共に主に仕える存在だ、負けられない。

 

 

「接近戦だと分が悪いですわね。距離を取りなさいインテレオン、みずのはどう!」

 

「ゲッコウガ。たたみがえし!」

 

 

 インテレオンから放たれた巨大な水の塊を、アスファルトを捲り上げて防ぐゲッコウガ。しかしみずのはどうを撃った直後にインテレオンはそれを追うように駆け抜けて来ていて。

 

 

「みずしゅりけ…」

 

「ふいうちですわ」

 

 

 強烈な回し蹴りが頭部に炸裂、蹴り飛ばされるゲッコウガ。吹き飛ばされたゲッコウガはくるりと宙返りしてビルの壁面に着地。両手に水でできた手裏剣を形成して投げつけた。

 

 

「防ぎなさい。みずのはどう。そしてご返却するのですわ!」

 

 

 インテレオンはみずのはどうをまるで自分を覆い隠す盾の様に展開してみずしゅりけんを取り込むことで防ぎ、さらに大きくなった水の塊を球体に纏めると蹴り飛ばして叩きつけてきた。

 

 

「たたみがえし!」

 

「連続でねらいうち」

 

 

 水の塊を捲り上げたアスファルトで防御。しかしドドドン!と何かが三連続で直撃した轟音と共にアスファルトがぶち抜かれ、ゲッコウガは体勢を屈めて何とか避ける。

 

 

「よく避けましたわね。同じところに寸分たがわず当てればどんな壁だろうが物理ならば貫けますわ」

 

「みずしゅりけん!」

 

「ふいうち」

 

 

 みずしゅりけんを形成して投げつけようとしたゲッコウガの横にいつの間にかインテレオンが移動して蹴り飛ばしてくる。駄目だ、溜めがいるみずしゅりけんじゃ…でも、距離を取られたらあの技が使えない。

 

 

「みずのはどう、ねらいうち」

 

 

 するとまた一瞬で距離を取り、エセお嬢様の傍らに立って水の塊を形成、それにねらいうちを何度も当てて巨大化させ射出してくるインテレオン。…駄目だ、バトルセンスはあちらが遥かに格上だ。

 

 

「かげぶんしん!」

 

 

 ゲッコウガは当たる直前に複数に分身することで回避。インテレオンを取り囲み、私が指示する必要もなくみずしゅりけんを全ての分身が両手の間に形成、一斉に射出する。これなら…!

 

 

「よく見て避けなさいインテレオン。ねらいうち」

 

「うそっ!?」

 

 

 するとインテレオンは身体を器用に逸らして全弾回避。返しに両手を構え、ねらいうちを連射して全てのゲッコウガを撃ち抜いて行く。分身を次々と消して、本物を追い詰めたインテレオンのねらいうち二連射が、壁面から空中に逃れていたゲッコウガを撃ち抜いていた。

 

 

「ゲッコウガ!?」

 

「追撃ですわ。とんぼがえり」

 

 

 力なく落下するゲッコウガに、私は咄嗟に構えたそれを投げつけるも、容赦ない追撃の蹴りが叩き込まれて海まで蹴り飛ばされてしまうゲッコウガ。間に合った、かな…?

 

 

「みず・あくのゲッコウガ。むしわざは効果は抜群ですわ。助けなくてもよろしくて?」

 

「…うん、わかってたよ。とんぼがえりあるんだろうなって。ねらいうち、みずのはどう、ふいうち。三つの技しか使ってこなかった。理由は今わかった。…私相手にインテレオン一人で勝ちたいから、バトル中に手持ちを手放してたんだね」

 

「よく気付きましたわね」

 

 

 そう扇子を広げて笑うエセお嬢様の傍ら、植込みにモンスターボールが五つ乗せられていた。さっきの攻防の時にこっそり手放してたのだろう。それを拾い上げしまいながらエセお嬢様は笑う。

 

 

「わたくしはインテレオンだけで十分ですので。この子たちは使う気はありませんわ。そちらは別に、六匹で来ても構いませんことよ?」

 

「ううん。私もゲッコウガ一匹だけで勝つ。同じ条件で勝たないと勝ったなんて言えないもの」

 

「寝言は寝て言う事ですわ。ゲッコウガは既に……」

 

「倒された、と思ってる?みずしゅりけん」

 

 

 瞬間、海から飛び出してきた、結晶化し頭に噴水の様な結晶を乗せたゲッコウガが、超巨大な水の手裏剣を頭上に掲げた右手に形成、投擲。さっきとんぼがえりを受ける直前にテラスタルして、効果抜群を防いでいたのだ。それに気付いたエセお嬢様は驚愕に目を見開き、インテレオンの陰に移動する。

 

 

「っ、インテレオン!みずのはどう」

 

「それは囮だよ!つじぎり!」

 

 

 みずのはどうで超巨大な水の手裏剣を防ぐインテレオンだが、せめぎ合っているその間に真横に移動。水の刀を手にして、インテレオンを十字に切り捨てるゲッコウガ。忍者とは、心に刃を持つ者と書く。とっておきの懐刀だ。

 

 

「テラスタル……小癪な真似をしますわね」

 

 

 胸部に十字傷を受けて尚、よろめきながらも立ち上がるインテレオン。なんてタフさだ。まるで、自分だけは負ける訳にいかないという気概を感じる。

 

 

「使えるものは何でも使う。ラウラの言葉だ」

 

 

 ゲッコウガを傍に侍らせて警戒しながらもそう宣言すると、サングラスをかけててもわかるぐらい悔しげな表情を浮かべるエセお嬢様。よし、このまま……!

 

 

「みずしゅりけん!」

 

「ねらいうち、ですわ!」

 

 

 睨み合うゲッコウガとインテレオンが、それぞれの手に水を集めていたその時、影が差した。

 

 

「その勝負、待った!はがねのつばさ!」

 

 

 一瞬で落下してきた色違いのアーマーガアの鋭い刃の様な翼が、インテレオンとゲッコウガの首元に突きつけられ、技を中断する両者。そのアーマーガアの背に乗っていた人物を見て、避難誘導から戻ってきたラウラと私は同時に口を開いた。

 

 

「「四天王ムツキ!?」」

 

「うるせーですよ、嵐ですかデコボココンビ」

 

 

 開口一番悪態を吐いたのは、首元に青いスカーフを付けた灰色のロングコートの下には空色のフライトスーツ、黒髪をポニーテールに纏めた紅い瞳の少女。以前、出会った際にラウラとジャックを圧倒した四天王、ムツキさんだ。エセお嬢様は四天王だと聞いて露骨にテンションが下がってブスッとしていた。

 

 

「…四天王、ですか。面倒ですわね」

 

「ブルーフレア団ですね。話を聞きたいのですが。…おや。あなた、ガラルで会いませんでした?」

 

 

 エセお嬢様を見て、サングラスをかけているにも関わらず見覚えがあるのか首をかしげるムツキさん。するとお嬢様は扇子を広げて口元を隠しながらそっぽを向く。

 

 

「なんのことかしら?逃げますわよインテレオン。口惜しいけどここまで、ですわ」

 

 

 瞬間、インテレオンが一瞬で形成したみずのはどうを破裂。目くらましに私とムツキさんが怯んだ隙に、エセお嬢様は繰り出した通常のアーマーガアに乗って空に舞い上がっていた。ムツキさんが追おうとするも、こわいかおされてすばやさが下げられてしまいドンドン距離が開いて行く。

 

 

「あなた、わたくしより高貴そうなアーマーガア連れていて、ド!生意気ですわ!ラウラ、次会ったら今度こそ決着をつけますからそのつもりで!それまでにわたくしのことを思い出しときなさい!」

 

 

 そう言い残し、エセお嬢様は去って行った。……なんだったんだろ。結局、名前もわからなかったな。決着も着かなかった。次はラウラと戦うと言ってたけど、そうはさせるか。次はボコボコにしてやる…と言いたいけど、技量の差があり過ぎる。悔しいけど、強くならないとな。




とんでも技量のグロリアとインテレオン。ムツキはグロリアの事を見たことがある模様。

実は二度目の冒険だったアイアール。ポケモン博士志望なの忘れていた人結構いそう。その過去になにがあったのか。

そして参戦、四天王ムツキ。ついにラウラモコウムツキが一堂に会しました。

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VSホルード

どうも、放仮ごです。ジャッキー・チェンの映画だとフーアムアイが特に好きです。というかこれ思いついたのもそれを久々に観たからだったりします。

今回はラウラの謎に迫ります。楽しんでいただけると幸いです。


「…逃がしましたか。こわいかおとは渋い技を覚えてますね」

 

 

 逃げて行ったブルーフレア団お嬢様に感心したようにぼやくムツキ。…あいつ俺の事を知ってそうだったからとっ捕まえて色々聞きたかったんだがなあ。アイアールに全部持ってかれた上に逃げられてしまった。しかしゲッコウガか、いいポケモンだな。鍛えられているのが一目で分かるし、アイアールへの忠義も感じる。そう観察していると、深呼吸したアイアールがこちらに振り向いて駆け寄ってきた。

 

 

「そうだ、ラウラ!大丈夫だった!?ごめんね勝手に戦って!ラウラなら大丈夫だと思ったんだけど、アイツと戦わせるのが何か嫌で……」

 

「お前のおかげで無事だ。別に気にしてない、助かった。俺もアイツは勝てる気がしなかったからな」

 

 

 なんだろうな、一目見ただけで分かった。こいつは強い、と。一対一なら勝てるがフルバトルだと負ける、そう確信していた。なんでかは分からんが俺の忘れた記憶に答えがあるんだろうな。

 

 

「それよりそのゲッコウガどうしたんだ?親のポケモン?」

 

「ううん、正真正銘私の……最初の相棒(パートナー)だよ。シングは二代目の相棒(パートナー)。家に置いていたんだけど、今の戦力じゃ不安があったから連れてきたんだ。凄く頼れるんだよ」

 

「素人目でもすごく強かったな。異次元のバトルだった…」

 

「見たところ相当な練度(レベル)ですね。よく鍛えられてます、ちょっと見直しました」

 

 

 アイアールの説明に、モコウとムツキも感心する。わかる。するとムツキは俺に視線を向ける。

 

 

「たしか、ラウラ、でしたっけ。ブルーフレア団についてはオモダカさんから聞いています。付け狙われているんでしょうか?大変ですね。我々四天王やジムリーダー、パルデアポケモンリーグも巡回しているのですが……今回に限っては担当のナンジャモが配信してたようですね。あとで厳重注意しときましょう」

 

「しまった、配信見逃した!?あとでアーカイブを確認しないと!」

 

「モコ……たん、お前もぶれないな」

 

 

 スマホロトムで現在配信中のナンジャモの動画を確認しながら溜め息をつくムツキと、涙目になるモコウ。なんだろう、この二人が揃うとなんか落ち着く。あのフラッシュバックした記憶のせいだろうか。

 

 

「そう言えばムツキに会ったら聞きたいことがあるんだった」

 

「奇遇ですね。私もあなたに聞きたいことがあるんです。そちらからどうぞ」

 

「ああ。……まず前提として、俺は記憶喪失で失った自分の記憶の手がかりを探している。そしたら最近とある出来事で思い出した記憶の一部にはムツキ、アンタの顔があった。そこのモコ…たんと一緒にな。そこで聞きたい。俺…もしくはこのモコ…たんと過去に出会ったことはあるか?もしくは記憶喪失だったりしないか?」

 

「新手のナンパかなんかです?ありませんよ、さっきのブルーフレア団なら覚えはありますけどね。記憶を失った覚えはありませんし、私が貴方と出会ったのはストライクの件が最初です。そこのモコたんは動画で何度か拝聴しましたが実際に会うのは初めて、ですよね?」

 

「うむ、そうだな」

 

「またか……」

 

 

 まただ。たしかに記憶はおぼろげながらあるのに、当の本人たちがなにも知らない。なんなんだ、この矛盾は。でも確かに俺の事を知ってるなら、何らかの理由で隠しているにしても初対面の時に大なり小なり反応があってもいいはずだ。でもそんなことはなかった。文字通りの初対面だ。俺の方が異物な気すらしてきた。ネモによれば俺はガラルから来た痕跡しかないのにパルデアに入った形跡も、ガラルに俺がいたという痕跡すらないとのことだし……

 

 

「……俺、知らない未来からでも来たのかなあ」

 

「え。未来人なのラウラ!?」

 

「そうでもないと説明がつかないって言うか……」

 

「セレビィとかいう時空を超えるポケモンがいるらしいとは聞いたことはあるが。ナンジャモの企画配信で」

 

「……貴方と出会ったことはありませんが、貴方の記憶に関する情報ならあるかもしれません」

 

 

 頭を抱えていると、ムツキがそんなことを言ってきたので顔を上げる。もうなんでもいい、手がかりが欲しい。ムツキはスマホロトムを操作すると、昨日の俺が出演していたナンジャモの配信、【ドンナモンジャTV】挑戦者ラウラとのマジバトル!負けないゾ!【ナンジャモ】の動画を開いて操作する。

 

 

「昨日の配信、貴方が出ていたので視聴していました。そこで気になることがあったのです」

 

 

 そう言って突きつけてきた画面を、アイアールやモコウと共に顔を寄せ合い覗きこむ。それは最終盤、ケプリベとムウマージが対峙しているあの時の映像だった。

 

 

《「いいね、相手にとって不足無し!最高だ!」》

 

 

 タタタッタン。そう足でリズムを刻みながらふらふらと体を揺らして踊り、拍手をして獰猛な笑みを浮かべる俺の顔がアップされているシーンで映像は止められた。そこで止めないでくれ、恥ずかしいから。

 

 

「これはコメントでも指摘されている通り、ガラルの元最強のジムリーダー、キリエの得意とする「指示歩法」です。ですが疾うの昔にキリエは引退し、最強のジムリーダーの座はドラゴンストーム・キバナに明け渡しました。つまり、これを知っているのは10年近く前のキリエの活躍を見ていた世代の人間か、彼女と直接戦った者のみ。特にこの特殊歩法はキリエが認めた強者相手にしか使わない奥の手です」

 

 

 そう言って自分のマイリストを開いて【グランドウォール・キリエ】ベストバウト試合まとめ【栄光の記録】なる動画を開いて見せてくれるムツキ。画面の中で、じめんタイプを模しているユニフォームと肩掛けのスーツジャケットを身に着けたムツキとよく似た顔立ちの女性が、無言でコツコツと靴音を鳴らして、ホルードが大地を殴りつけると地面が隆起して土柱が飛び出して相手のペリッパーを撃墜している信じられない光景が流れた。今の、もしかしてじしんか?じしんをひこうタイプに当てやがった…

 

 

「お前はその世代なのか?」

 

「いいえ。私は貴方達と同世代ですよ。実際に見たことはありませんが、私の目的はキリエを越えること。そのため知ってました」

 

 

 俺達と同世代で四天王ってやばいな。どんだけ天才なんだムツキ。

 

 

「私の事よりラウラ、貴方の事です。貴方は……私の母親、キリエの知り合いですか?」

 

「母親!?」

 

「それはどうでもいいんです!」

 

 

 母親が最強のジムリーダーで娘は若き四天王ってすごい親子だな。…しかしなあ。動画を止めてジムリーダー・キリエの顔を見せられるが……思い出すのは、あの戦法を思い付いたきっかけであるとんでもなく強いハガネールの記憶。あれは確か……。

 

 

「…モコウ。ムツキ。お前ら二人と一緒に、とんでもなく強いハガネールと戦った記憶が、俺にはある」

 

「「は?」」

 

 

 俺の言葉に呆けるモコウとムツキ。だよな、覚えがないんだもんな。おかしいのは俺だ。

 

 

「あれがキリエだったのかもしれないが……心当たりはそれだけだ。そもそも記憶が無いんだぞ俺は」

 

「我こんなバケモノと戦った記憶はないが?」

 

「それはおかしいですね。私はまだ母に……キリエに勝てる気がしない。立ち向かうなどとてもとても。そもそも、キリエの手持ちにハガネールはいないはずです」

 

「…じゃあ本当に手詰まりだ。……俺は一体どこから来たんだよ」

 

 

 俺は頭を抱えるしかなかった。




アイアールの初代相棒だということが判明したゲッコウガ。ムツキが評価するぐらい練度があります。

ムツキ、そしてキリエをきっかけに迫るラウラの謎。ラウラはもう未来から来たのかと頓珍漢なことを言う始末。その真相や如何に。

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VSハラバリーⅢ

どうも、放仮ごです。アイアールの異常さがまだあまり伝わってないようだからなんとか伝えたい今日この頃。

今回はアイアールのナンジャモ戦。楽しんでいただけると幸いです。


 とりあえずこれ以上の情報は望め無さそうだったので、アイアールと合流したこともありムツキとモコウとはいったん別れてアイアールと共にジムに行くことにした。俺は無事突破したがアイアールはまだだからだ。

 

 

「だがどうするんだ?ドーちゃんじゃムウマージで詰むぞ」

 

「ムウマージ相手はゲッコウガで行こうかなって。ラウラと違ってじめんタイプがいるだけで結構楽になると思うよ」

 

「じめん・むしがいればなあ…ツチニンがいたか」

 

「サナギラスは蟲じゃないの?」

 

「あれは蟲じゃないな。フライゴンは蟲でいいかもしれんが」

 

「むしタイプじゃなくない?基準がわからない……」

 

「シンオウの四天王はドラピオンを手持ちに入れてるからな」

 

「ドラピオンってむしタイプじゃないの?」

 

「どく・あくだ。ちなみに俺も蟲認定してる」

 

「基準が分からない……」

 

 

 ジムに入りそんな会話をしていた時だった。入り口の自動ドアが開いて誰かが走って入ってきた。

 

 

「アイアール、ラウラー!」

 

「え、ネモ?」

 

「またお前か」

 

 

 振り返ると、そこにいたのはネモだった。チャンプルタウン、いやオレンジアカデミー以来か?

 

 

「またお前かとは失礼だなあ。配信見たよラウラ!強くなったね!すっごく!実ってきた!」

 

「実ってきたはやめろ」

 

「ラウラに会いたくて立ち寄ったら、二人がジムに入って行くのが見えて、来ちゃった」

 

 

 来ちゃった、がここまで怖く言う奴はそういないぞ。

 

 

「この前は勝負できなくてごめんね。あ、全然そんなんじゃないよ!戦いたくて追いかけた訳じゃ……でもちょっとだけ勝負はしたいな……いい?」

 

「やだ」

 

「私はこれからジム戦だから……」

 

「ちょっとだけ!4匹だけでいいから!ね!」

 

 

 4匹だけでいいから、じゃない。誰もがバトルしたくて当たり前って考えてるのは知ってるが俺は自分の記憶の事でいっぱいいっぱいなんだ。

 

 

「あ、でも今の二人に合ったポケモンで戦いたいなー!ごめん!少しの間、手持ち考える時間ちょうだい!その間アイアールはジムへの挑戦おさきにどうぞー!」

 

「やらないってば」

 

「行っちゃった……」

 

 

 言うだけ言ってネモは去っていきやがった。…俺だけ逃げちゃダメ?って視線をアイアールに向けてみる。

 

 

「ダメ。また一人でヌシなりブルーフレア団に突っ込んで死にかけるのが目に見えてるよ。ちゃんと私のバトルを見ててね?」

 

「わかったよ……」

 

 

 ぐうの音も出なかった。アイアール、お前なんか変わった?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アイアールのジムテストは俺と同じくドンナモンジャTVへの出演。ただし、企画内容が違くて「街角ジェントルを探せ」なる、何故かいたネルケもといクラベル校長が隠れるので、街頭カメラで見つけ出せとかいうよくわからんかくれんぼ企画をやらされるアイアール。最後の隠れ方はずるいと思う。

 

 

「ラウラ氏の相方さんだね!相手にとって不足無し!ジムリーダーの底力、見せちゃるぞ!」

 

「ラウラの名前を出されたら、負けられません!」

 

 

 出演もしてない奴の名前を動画で出すのやめない?バトルコートでの戦いを、外周から見守る。試合運びはアイアールの優勢。いわ技で弱点を突けるジオヅムのツムヅムが進化したキョジオーンでタイカイデンを、いかくが意味ないラウドボーンのシングでレントラーを、順調に倒していく。…やっぱりアイアール、俺よりバトルセンスがずば抜けているんだよなあ。あんなに苦戦したナンジャモをあっという間に追い詰めている。そして今、対峙しているのはドーちゃんとハラバリー。ハラバリーの覚えてる技を知っている身としては「あっ」ってなった。完全に詰んでいる。

 

 

「ハラバリー、みずのはどう!」

 

「ドーちゃんのとくせいはちょすい!みず技は効かないよ!」

 

「対策ばっちりだね!?」

 

 

 そもそもアイアールの手持ちはどんな相手だろうが対応できるから初見でも変わらなかったと思うが。俺のナンジャモ戦を確認してナンジャモの手持ちやわざを確認してメモしていたのはちょっと引いた。

 

 

「ドーちゃん、じしん!」

 

「あうあ!?ボク大ピンチ!皆の者、応援してして?」

 

「行くよゲッコウガ!」

 

 

 ハラバリーを一蹴し、切札のムウマージを繰り出させたアイアールは自身の四匹目、ゲッコウガを繰り出す。4匹残した状態で繰り出されたゲッコウガに、観客席からざわめきが起こる。珍しいポケモンと言うこともあるが、見るからにみずタイプを出してきたからだろう。それはナンジャモも同じだった。

 

 

「余裕のつもり?でんきタイプ使いのボクにみずタイプで来るなんて……」

 

「ううん。この子は私が一番信頼しているポケモン。苦手なタイプに勝つぐらい余裕だよ」

 

 

 そんなアイアールの言葉に直立し腕を組んで佇み頷くゲッコウガ。貫禄が凄い。

 

 

「テラスタルいっくぞー!ムウマージ、チャージビーム!」

 

「ゲッコウガ、かげぶんしん!」

 

 

 でんきテラスにテラスタルしたムウマージから放たれたチャージビームが当たる瞬間、ゲッコウガの姿がぶれて消失。ポン!ポンポンポン!と煙と共に次々と複数に分身したゲッコウガが現れ、ムウマージを取り囲む。

 

 

「纏めて巻き込んじゃえ!マジカルシャイン!」

 

「たたみがえし!」

 

 

 アイアールの指示と共に、全てのゲッコウガがバトルフィールドを捲り上げて壁を形成、ムウマージを閉じ込めてしまいマジカルシャインは完全に遮断された光が解放されなかったために自身がダメージを受けることに。

 

 

「なああ!?ラウラ氏といい君といい突飛なことしかしないね!?」

 

「ラウラ譲りだよ!」

 

「風評被害だからやめろ」

 

 

 思わずツッコんだ。……たたみがえしって登場直後に全体技を防ぐって技だった気がするがそれを何度でも使えるようにしてるってよく考えたらアイアールの方がだいぶやばいな。つまり頑張ればであいがしらを何度でも使えるってことか?………ありだな!

 

 

「上からシャドーボール連打!」

 

「足元にたたみがえし!」

 

 

 まるでタネマシンガンの如く、シャドーボールを高速連射して次々とゲッコウガの影分身を消し去っていくムウマージだったが、本体のゲッコウガは足元に手を置いて足場をたたみがえし、その反動で天高く打ち上がる。天に舞うムウマージのさらに上空、太陽を背に急降下するゲッコウガ。

 

 

「マジカルシャイン!効果は抜群だ!」

 

「テラスタル!みずしゅりけん!」

 

 

 あくタイプ複合のゲッコウガに効果抜群のフェアリー技を叩き込もうとしたナンジャモだったが、みずテラスタルしてマジカルシャインを受け切ると巨大な水手裏剣を生成、投擲してムウマージに叩きつけるゲッコウガ。

 

 

「チャージビーム!」

 

「させるな、たたみがえし!つじぎり!」

 

 

 ふらついて落ちて行くムウマージをたたみがえしして打ち上げ、さらに高速で四方八方から斬りつけて行くゲッコウガ。滅多切りにされ続けたムウマージは技を出す間もなく打ちのめされ、崩れ落ちたのだった。

 

 

「……あいつが信頼するだけあって、やっぱり強いなゲッコウガ」

 

 

 アイアールも相当な腕だ。知識不足だったのが嘘みたいだ。……もしかしてあいつ、引っ越してくる前のカロスのポケモンにしか詳しくないとかそんなだろうか。こりゃネモとの戦いが楽しみだ。俺はお断りだが。




相変わらずのネモ。明らかに今のラウラより強いアイアール。二連続で型破りな相手に翻弄されるナンジャモ。

ちなみに最後の滅多切りはスマブラの最後の切札から。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSマスカーニャⅠ

どうも、放仮ごです。早く次の目的地である潜鋼のヌシのところに行きたいんですがまだまだハッコウシティ編が続きそうです。

今回はネモ襲来。楽しんでいただけると幸いです。


 ナンジャモとのジム戦を終えたアイアールを迎えに行くと、オモダカさんと話していたところに出くわした。あの人暇なのか…?

 

 

「ジムリーダーに勝利、おめでとうございますアイアールさん。チリからユニークなトレーナーたちがいらっしゃるとお聞きして、貴方方だと思って会いに来ました。おや?ラウラさんもいたのですね、ちょうどよかった」

 

「あ、ラウラ。どうだったどうだった!?私達の戦い!」

 

「強かったよ。末恐ろしく感じた」

 

「本当!?やったー!」

 

 

 俺があんなにギリギリだったナンジャモ相手に一匹も落とされずに勝ってる時点で俺を越えてるよ、お前は。するとオモダカさんが咳払いする。あ、話の腰を折ってすみません。

 

 

「こほん。まずアイアールさん。先程の試合拝見しましたが、とてもファンタスティックな実力の持ち主です…!ゲッコウガと呼ばれていたあのポケモン、パルデアでは見ない種でしたが芸術に等しいチームワークでした。コルサが見れば感動のあまり崩れ落ちていたでしょう。相手のポケモンを知って対策していたのかもしれませんが、選出も完璧でした。わかっていてもあそこまで上手くはまりませんよ?」

 

「そ、そんなに…?私なんか全然すごくなくて、ラウラの方が……」

 

「お前それ他の奴に言うなよ。嫌味になるぞ」

 

「そうなんです!ラウラさん!配信、見させていただきました!貴方も素晴らしい!蟲ポケモンへの揺るぎなき愛と、それを貫く覚悟!まるでジムリーダーの様でした。それに加えて決して強い部類ではないむしタイプだけで統一しているのに関わらず不利な相手だろうと物ともせず圧倒すらした戦術!ピンチでも諦めず勝利を呼び込む度胸と機転!どれをとっても素晴らしい!」

 

「うんうん。わかっていますねオモダカさん!」

 

「そんなに褒められると照れます……」

 

 

 思わず顔が赤くなり前髪を弄る。あとアイアール、訳知り顔で頷くな。なんでお前が褒められた時より嬉しそうなんだ。

 

 

「その調子でお二方がチャンピオンランクへとコマを進められましたら近い将来ぜひとも貴方たちをポケモンリーグへとスカウトさせ……」

 

「アイアール!ラウラ!戦うポケモン決めたよー!」

 

 

 なんかオモダカさんが凄いことを言いだしたタイミングでやってくるネモ。今回ばかりはナイスタイミング。傍らに仮面をつけた直立している緑の猫みたいなポケモンを連れているがニャオハの最終進化系か。後ろ手に調べる。マジシャンポケモン、マスカーニャか。あ、溜め息ついた。お前も苦労してるな。

 

 

「アイアールのジムの勝負も見てた!まーた強くなっちゃって!ラウラといい実って来たね!」

 

「チャンピオンネモ。お久しぶりですね」

 

「えっ!なんでトップがアイアールと一緒に…!?」

 

 

 話しかけられて初めてオモダカさんに気付いて驚くネモ。お前、バトルの事となると本当に周りが見えてないんだな。あ、またマスカーニャが溜め息ついて頭を抱えた。

 

 

「トップって?」

 

「あれ!?二人にはちゃんとは説明してなかったっけ!?この人はねー、みんなが憧れるチャンピオンランクの更に頂点……トップチャンピオンのオモダカさんなんだよ!」

 

 

 アイアールの問いかけに手を広げて意気揚々と答えるネモ。いや俺は知ってたけど。そうだ、この人は俺の最終目標、勝利することで蟲が最強だということを世に知らしめる相手だ。するとにこっと笑うオモダカさん。ちょっと怖い。

 

 

「ラウラさんは知っていた様ですね。わたくしオモダカ、トップチャンピオンをポケモンリーグ委員長、それとオレンジアカデミー理事長を兼務でやらせていただいています」

 

「ジムの視察できないほど忙しいんじゃなかったでしたっけ!」

 

「こちらは別件です。このたびは有望な人材が二人もいると聞いてヘッドハンティングに参りましたので」

 

 

 やめてください記憶喪失に重要な役割させようとするの。俺が犯罪者とかだったらどうするんだ。ロケット団とかマグマ団とかアクア団とかギンガ団とかプラズマ団とか、あとフレア団とか。あ、したっぱは蟲を使うから結構好印象だったりする。スカウトされたらなびいてしまうかもしれない。ボスを倒して乗っ取って蟲が頂点に立つ世界を作るかもだが。あれ?そっちの方が平和じゃね?……うん?なんで俺、会ったこともない悪の組織の名前としたっぱのことについて知ってるんだ?

 

 

「え!ラウラは知ってたけどアイアールも、もう有名人なの!?でも、ラウラとアイアールは私が最初に目をつけたんですからトップでも横取りダメです!」

 

「俺達はお前のもんじゃねえ」

 

「私、ポケモン博士になりたいからお断りします」

 

「フフ……残念です。動画のコメントも拝見しましたが、お二人とも大人気ですね」

 

 

 そうなの?……自分の出てた時の動画を確認するのすっごい怖くなった。どうしようモコウが困ってたやつみたいに変なファンついてたら。…いや待てよ、ナンジャモみたいに人気者になって俺が蟲ポケモンの良さを広めたらみんなも使うんじゃないか?……ふむ。ありかもしれん。

 

 

「そうだ!まずはアイアール!約束のポケモン勝負しよっ!はやくはやく!バトルコートへ向かうよー!」

 

「お待ちください」

 

「え!なんですか!」

 

「その試合、わたくしもぜひ見学させていただきたく思いまして」

 

 

 はやるあまり凄い顔でオモダカさんを睨むネモに物怖じせず笑顔でそう言うオモダカさんはだいぶ大物だな。いや大物だったわ。トップチャンピオンでポケモンリーグ委員長でパルデア最大の学園オレンジアカデミーの理事長とかどんだけ盛ってるんだ。

 

 

「あはは!わたしは全然いいですよ!アイアールもいいよね?ラウラも!」

 

「うん!」

 

「どうとでも。俺は逃げる」

 

 

▽たたかう

 ポケモン

 バッグ

 にげる

 

 たたかう

 ポケモン

 バッグ

▼にげる

 

 

「「逃がさないよ?」」

 

 

▽にげることが できない!

 

 

 踵を返して逃げようとしたら両側から腕をガッシリと掴まれた。目をキラキラさせているネモと、目からハイライトが消えているアイアールだ。待って怖い、その目の差がえぐすぎて怖い。

 

 

「なんでだ!ネモはともかく、アイアールまで!」

 

「アイアールの次はラウラだよ?もう、追いかける時間がもったいないでしょ?」

 

「私を、じゃない。私の戦いをちゃんと見てて。チャンプルタウンのジム戦、見てくれなかったこと許してないよ?」

 

「怖いって!?」

 

 

 思わず涙目で叫ぶ。ブルーフレア団のお嬢様の時といい、アイアールお前怒ると怖いな!?おい周りのギャラリー、引いてないで助けて。オモダカさんもニコニコ笑って見守ってないで何か言って!って今気付いたけどナンジャモ!何時の間にいて、陰から笑いながらなに撮ってるんだ!?生配信してないよな!?せめて許可を取れ!?いや許可しないけど!

 

 

「感謝いたします。御三方の攻防、楽しみです。それでは参りましょうか」

 

「あ、ボクも撮影していいー?ネモ氏、アイアール氏。実況はこのボクナンジャモ、解説はラウラで配信したいんだ!これで視聴率もシビルドン登り……ニッシッシ…」

 

 

 笑顔で礼を述べたオモダカさんに続いてナンジャモが会話に入ってきた。許可を取れとは言ったが違う、そうじゃない。あとなにしれっと俺を巻き込んでるんだ。

 

 

「もちろん、いいよ!」

 

「ラウラの解説…!」

 

「俺の許可を取れ!?せめて!?あ、待って引き摺らないで。歩くから。ばかぢからでも覚えてるのか二人とも!?」

 

 

 こうして俺はアイアールとネモにバトルフィールドまで連行されたのだった。




アイアールの狂気(?)が加速する。実は「逃げられる」ことに途轍もないトラウマがあるって言うね。チャンプルタウンで自分に無断で先に行ったラウラに怒りを溜めて、今回それが爆発した感じ。

アイアールとラウラをヘッドハンティングしにきたオモダカさん。断られたけどまだ諦めない様子。

しれっと登場ナンジャモ。ラウラ戦が過去最高クラスの視聴率を稼いだからいい物が撮れそうならそりゃあ参戦します。まだ彼女のターンは終わらない。

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VSルガルガン(まひるのすがた)

どうも、放仮ごです。あまりにも長くなってるから章名をへんこうしました。

今回はアイアールVSネモ…を実況するドンナモンジャTV回。楽しんでいただけると幸いです。


 

 

 

 

 

読み込み中

 

 

 

 

 

■ ▶❘ ・ライブ
 
 ❐ ▭ ▣ 

#ドンナモンジャTV

【ドンナモンジャTV】チャンピオンランクのバトルを実況するぞ!特別ゲストもいるよ!【ナンジャモ&ラウラ】

 34,648 人が視聴中・0分前にライブ配信開始
 
 ⤴964 ⤵ ➦共有 ≡₊保存 … □ 

 
 ドンナモンジャTV 

 チャンネル登録者数 452,424人 

 

「はい、ドモドモー。ナンジャモと~?…ありゃ。ほらほら、打ち合わせ通りに!」

 

「わかったよ。ラウラのー!(ヤケクソ)」

 

「ドンナモンジャTVの時っ間っだぞー!皆の者~!準備はいーいー?あなたの目玉をエレキネット!何者(ナニモン)なんじゃ?ナンジャモです!ジムリーダーだよ!おはこんハロチャオ~!」

 

「おはこんはろちゃおー」

 

 

 バトルフィールドがよく見える建物の屋上を借りて急ピッチで作られた仮設スタジオのナンジャモの隣の席に座り、長机にモニターと共に置かれたマイクに喋る。なんでこんなことしてんだろ……。

 

 

〈おはこんハロチャオー〉

 

〈アイエー!?ラウラなんで!?〉

 

〈うおおおおおおお〉

 

〈チャンピオンランクのバトルが見れると聞いて〉

 

〈おはこんハロチャオー!〉

 

〈ラウラやる気なくて草〉

 

〈ナンジャモちゃーん!〉

 

〈バトルコートにいる三人目オモダカ氏じゃね〉

 

「ついさっきジム戦を配信したばかりだけどボク頑張るぞー!本日のゲストは先日ボクを打ち負かしたラウラ氏!実況がボクで解説がラウラ氏だよ!そして今回の内容は~!ついさっきボクを一方的に叩きのめしたすごいやつ、アイアール氏とー!」

 

「チャンピオンランクの悪名高き戦闘狂、ネモの戦いを実況するぞー」

 

 

 机に置かれたカンペをちらちら確認しながら淡々と言って行く。ナンジャモ曰くこっちの方がラウラ氏は人気が出るよー、らしい。無気力ダウナーがうけるとかどんな頭してるんだコメントしている奴等は。

 

 

〈アイアールとかいう別格〉

 

〈ゲッコウガででんきタイプジムリーダーに勝つ変態〉

 

〈そもそもジムリーダー相手に一匹も倒されないのが異常〉

 

〈強すぎてポカーンだった〉

 

〈ラウラより明らかに強いよな〉

 

「では当事者のラウラ氏にどうしてこうなったのか語っていただきましょう!」

 

「そもそもアイアールのジム戦前から始まる。このネモという女は俺が働いてたところのお嬢様で、メイドをしていた時に散々バトルしてた間柄なんだが……そのネモに目を付けられてしまったアイアール共々ライバル認定され、会うたびにバトルを申し込まれるのがお約束になってる」

 

「ラウラ氏メイドさんだったんだー。今度企画するから着てくれない?」

 

「やだ」

 

 

 ナンジャモからの問いかけに即答する。言質取られたら今度は何されるか分からんからな。

 

 

〈草〉

 

〈w〉

 

〈メイドラウラ絶対可愛い〉

 

〈噂に聞いてたけどネモやべえ〉

 

〈ネモに勝ったことあるの?〉

 

「何度か。手加減している手持ちだがな」

 

「それでもチャンピオンに勝ってるのはすごいよー!ね、皆の者もそう思うよね?」

 

〈すごい〉

 

〈さすが〉

 

〈蟲パで勝ったならなおのことすげえ〉

 

〈俺バトルふっかけられたことあるけど鬼みたいな強さだったぞ。力量と言うより技量が〉

 

〈チャンピオンネモの影響で「目と目が遭ったら」じゃなくて「話しかけたら」バトルになったって噂もあるぐらいだからな〉

 

「今回もアイアールがナンジャモに挑もうというところでやってきてな、無理やりバトルしようという流れになった。で、ジム戦の間に今回戦うメンバーを決めてきたらしく、アイアールがジム戦終わったから迎えに行ったらオモダカさんがいて、ネモが襲来した」

 

「襲w来wwんじゃもーオモダカ氏はなんでいたの?」

 

「俺やアイアールをスカウトしたいんだと。あ、これ話してよかったか?」

 

 

 思わず確認のためにバトルフィールドの映っているモニターに視線を向けると、オモダカさんがにっこり笑って右手の親指と人差し指で丸を作っていた。ほっ。よかった。

 

 

〈襲来は草〉

 

〈そりゃスカウトされるわなあ〉

 

〈このコンビのヤバさは皆の者みんな知ってる〉

 

〈トップチャンピオン直々に〉

 

〈コガネの面接官:スーパー総大将仕事せい〉

 

〈未来のチャンピオンランクたりえるものなあ二人とも〉

 

 

 しかしコメントが流れて行くモニターを見ながら話す配信は初めてで慣れん。するとスマホロトムで撮影されているアイアールたちにナンジャモが合図を送ると、オモダカさんが審判の様な位置に移動、アイアールとネモも距離を取る。

 

 

「多分知らない視聴者もいるだろうからアイアールにもっかい説明!いろんなジムを巡ってバッジを集めて行くとポケモントレーナーの最高峰に挑戦することができるんだ!」

 

「ええ。ポケモンリーグです。テーブルシティの北西に位置しております。最強の称号チャンピオンランクのトレーナーが新たに生まれる場所です」

 

「ジムバッジを8つ手に入れたらテストを受けることができて、最強の試験官と戦って勝てばチャンピオンになれるんだよ!そのときの気持ちになって今からイメージトレーニング!最高の舞台を目指していざ、実りある勝負にしよ!」

 

「うん、負けないよ!」

 

 

 そうモンスターボールを掲げて輝くような笑みのネモに、アイアールもオモダカさんに回復してもらった手持ちの入ったモンスターボールを掲げて不敵な笑みを返す。あいつも大概バトルが好きだよな。

 

 

「ラウラ氏質問~、実りある勝負とは!」

 

「俺に質問するな」

 

〈ヒエッ〉

 

〈なんか恐怖を感じた〉

 

〈解説の仕事投げ捨ててて草〉

 

〈ジム全部乗り越えることを当然の様に言ってて草〉

 

〈ラウラ仕事しろ〉

 

〈解説ですら理解できないパワーワードということ?〉

 

〈振り切るぜ!〉

 

「ルールは4VS4。勝ち抜き戦でどうぐの所持・使用禁止。ポケモンリーグのスタンダードルールです。よろしいですね?始め!」

 

「トップや見ているみんなの前だからって緊張しないでリラックスだよアイアール!いけ、ルガルガン!」

 

「頼んだよツムヅム!」

 

 

 オモダカさんの合図と共に、それぞれ初手のポケモンを繰り出す。ネモはルガルガン、アイアールはキョジオーンのツムヅムだ。これは完全にアイアールの読み勝ちだな。ネモ嬉しそう。

 

 

「さあ始まりました!チャンピオンランク最強と名高いトレーナー、ネモ氏VS!期待の新星アイアール氏!さてラウラ氏、あの二体はどんなポケモンなのかな?」

 

「ルガルガンとキョジオーンのツムヅムだ。ツムヅムは俺と一緒にアイアールが捕まえた少々特殊なポケモンで、とにかく防御力が鬼の様に強い。ルガルガンは恐らくイワンコの頃から俺を苦しめてたアイツが進化したんだろうな。ネモの相棒的ポケモンだ」

 

「なるほどなるほど。たしかにツムヅムの堅牢さにルガルガン、攻めあぐねている様子だ!」

 

 

 さすがに平等じゃないので配信では言わないが、ルガルガンの技はおそらくいわなだれ、かみつく、かげぶんしん、そしてアクセルロックだろう。どの技もキョジオーンには今ひとつ、強いて言うならかみつくがまあまあ効くが防御力が高いからあまり通じない。

 

 

「ツムヅムの方も攻撃が当たってないな。かげぶんしんも織り交ぜたあのすばやさ相手は身体が重いキョジオーンにはきつい。これが入れ替えありならどっちか交代してただろうな」

 

「場は膠着している~!個人的にも動画映えしないからそう言うのやめてほしいな!」

 

 

 恐らくオモダカさんがポケモンリーグ公式戦を想定して設定したルールだろうな。関係ないが交代による緊急回避、という裏技がある。ルールもへったくれもない実戦に置いては有用だが、公式戦では忌避される行為だ。そっちの方が動画映えしないのでまあこれでよかったかもしれない。

 

 

「…ん?」

 

「おおっと解説のラウラ氏!何かに気付かれましたか!?」

 

「いや言うのは戦っている二人の迷惑になるだろ。フィールドを見たら気付けるぞ」

 

 

 いわなだれを打ち合っている両者を見てあることに気付いた。キョジオーンがいわなだれを振り払っているのを見て確信する。狙ってやったんだろうがアイアール末恐ろしいな。

 

 

「そこ!アームハンマー!」

 

「アクセルロックで右に回避に…って!?」

 

 

 ネモも気付いたようだがもう遅い。逃げようとしたルガルガンは、いわなだれが積み重なった壁にぶつかって逃げること叶わず、振り下ろされた剛腕が叩き込まれ、ルガルガンは崩れ落ちた。

 

 

「おおーっと!こうかはばつぐんだー!解説のラウラ氏、これは!?」

 

「ツムヅムの一撃は重く、ルガルガンは一撃でも効果抜群のアームハンマーを喰らったら終わり。それをさせないためにネモはツムヅムの挙動に注視していたから、攻撃と見せかけて着々と場を整えられていることに気付かなかったわけだ。しかも牽制のつもりで放ってたルガルガンのいわなだれも利用されてるな」

 

〈やべえ〉

 

〈さらっと言ってるけどそれってつまり相手のトレーナーの挙動すら利用したってこと?〉

 

〈アイアール、恐ろしい子…!〉

 

〈オモダカ氏満面の笑みで草〉

 

〈ネモもなんか喜んでるな〉

 

〈負けてて喜ぶのなんで?〉

 

「いいのもらっちゃった!技の威力も冴えてる!」

 

 

 ルガルガンを戻しながらも楽しそうに褒めるネモ。アイアールが予想以上に強くなっているのが嬉しいようだ。

 

 

「じゃあ次はこの子だ!行って来い、ミミズズ!」

 

 

 次にネモが繰り出したのは……あの六本足、蟲ポケモンか!?




気は乗らないけど解説の仕事はちゃんとするラウラ。初めて見たミミズズに思わず席を立ちあがる。

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VSパモット

どうも、放仮ごです。ネモの強さをどう表現するか考えたらすごいことになった回。

今回はアイアールVSネモ実況その2。楽しんでいただけると幸いです。


 ネモの繰り出したポケモン、ミミズズ。最初は細長いの出てきたな、と思ったが六本脚を伸ばしたことで蟲ポケモンか!?とテンションが振り切る。

 

 

「ラウラ氏、あのポケモンは……あ、ダメだこりゃ」

 

「なんだあのポケモンは!蟲か!蟲なのか!?」

 

〈草〉

 

〈バトルしてた時より興奮してて草〉

 

〈まあ蟲にも見えるけど〉

 

〈蟲ではなくないか?〉

 

〈大興奮のラウラかわいい〉

 

〈ちょっと引いてるナンジャモもかわいい〉

 

〈蟲ではないな〉

 

〈解説が役に立たねえ〉

 

〈有識者ー!〉

 

〈言っている間に凄い攻防してるし!〉

 

〈いわなだれが効かないのは、はがねかいわかじめんタイプだからか?〉

 

〈ミミズズ。ミミズポケモン。タイプ:はがね。砂漠などの乾燥した地域に生息し、土の中の鉄分を食べて金属の体を保っている〉

 

〈ボッコボコに六本腕で殴ってて草〉

 

〈有識者ァ!〉

 

〈はがねタイプなのかあれ〉

 

〈はがね単体は珍しいな〉

 

「おおっ!コメントに有識者が!皆の者の方が優秀だぞ解説のラウラ氏!しゃきっとせんかい!」

 

「あ、蟲じゃないのか」

 

「いきなりスンッてなるなー!?」

 

 

 そんな漫才を繰り広げている間にも、キョジオーンのツムヅムとミミズズの攻防は続く。アームハンマーをアイアンテールで弾かれ、しおづけは長い体を巧みにくねらせて回避され、ボディプレスやじしんで反撃を喰らっている。のろいで防御を固めているようだがじり貧だ。

 

 

「しおづけははがねタイプ相手に効果が増すが当たらないんじゃ意味ないな」

 

「堅牢なツムヅムも防戦一方!追い込まれたアイアール氏!これは勝負あったかあ!?」

 

「いや、生憎とツムヅムにはあれがある」

 

「あれとはなんなのでしょうか解説のラウラ氏!」

 

「俺も度肝を抜いたトンデモ技だ」

 

「これでとどめ!アイアンテール!」

 

 

 勝利を確信したネモが満面の笑みで指示する。するとアイアールがにやりと笑った。

 

 

「自分にしおづけしてソルトアーマー!」

 

「なあ!?なんだあれは!ツムヅムの身体が純白に染まったあ!」

 

〈自分にしおづけ!?〉

 

〈正気か!?〉

 

〈ネモもオモダカ氏も度肝を抜いてるぞ〉

 

〈なんだあれは〉

 

〈解説!仕事してー!〉

 

「ソルトアーマー。アイアールが考案、編み出した塩の鎧だ。アイアール曰く 修行中にジオヅムに進化した際に身に着けた応用技で、理由は分からないが特殊に対する耐久が強くなる、らしい。今回に限っては防御面は意味をなさないがあれは「しおづけ」の塩だ。…はがねには効果抜群だろうよ」

 

 

 白く光る薄い装甲を身に纏ったツムヅムにむんずとアイアンテールした尻尾を掴まれたミミズズが六本腕を出して引き摺られるのに抵抗しようと試みるが体格差はいかんせんともしがたく引っ張られていく。思わず手を合わせて拝む。

 

 

「かーらーのー!アームハンマー!」

 

「南無三!」

 

 

 ゴシャア!と、振りかぶられた右腕が左腕で掴んでいるミミズズに振り下ろされ、頭からバトルコートに叩きつけられ長い体が跳ねる。ありゃ急所だな。

 

 

「ここぞって時の急所!?やっぱり持ってるよねーアイアール……さすがにこれは予想外」

 

「お疲れ、ツムヅム」

 

 

 同時に倒れ伏すツムヅムもボールに戻って行く。これでアイアールは残り3体、ネモは2体か。

 

 

「あれ!?なんでツムヅムも倒れたの!?」

 

「ソルトアーマーは全身にしおづけする技だ。スリップダメージはちゃんと受ける。あんだけ猛攻を受けたんだ、妥当だろうよ」

 

「次は……お願い、シング!」

 

「もっとアイアールの強さを引き出して!パモット!」

 

 

 繰り出されたのは、アイアールはシングでネモはパモット。パモが進化したポケモンだな。

 

 

「ラウラ氏、解説!」

 

「ラウドボーンのシングとパモットだ。シングはアイアールの相棒ホゲータの最終進化系だな。ニックネームの通り歌が脅威で専用技のフレアソングは撃てば撃つほどとくこうが上がる驚異の技だ。しかも結構耐久力もあるから長期戦に持ち込むと厄介極まりない。パモットに関しては知らん。ネモが最近捕まえたパモが進化したらしいが」

 

〈見た目に反してアイアールごついポケモンばかりだな〉

 

〈ホゲータああなるのか〉

 

〈フレアソングぶっ壊れで草〉

 

〈タイプ相性はまずまず?〉

 

〈ネモの手持ち意外と普通だな。ミミズズ以外〉

 

「フレアソング!」

 

「つっぱり!」

 

 

 すると不思議なことが起こった。シングが歌った炎の衝撃波が、パモットが腕を連続で高速で突き出したかと思えば掻き消えたのだ。

 

 

「ナンナモンジャ!?な、な、なにが起きてるんだ~!?解説のラウラ氏!」

 

「見たところつっぱりの風圧を弾丸みたいに撃ち出して相殺したのか…?どんな技量だ……」

 

〈やべえ〉

 

〈なに今のこわぁ〉

 

〈解説もドン引きで草〉

 

〈パルデア最強は伊達じゃねえ〉

 

〈最近捕まえたポケモンができることじゃねえ〉

 

「シャドーボール!」

 

「でんこうせっかで避けてでんじは!」

 

 

 シングの放ったシャドーボールを避けてスレスレで突き進み、近距離からでんじはを叩き込むパモット。まひしたシングは自由に動けなくなった。

 

 

「アハハ!楽しいね!アイアール!」

 

「…うん!楽しい!シング!地面に向けてかえんほうしゃ!」

 

「でんこうせっかしながらつっぱり!」

 

 

 炎の津波を発生し、分身でもしてる様な動きでつっぱりを打ちこみ風圧を壁の様に叩き込んで、せめぎ合う両者。炎と風圧の壁がぶつかって天高く吹き上げられている。もう異次元の戦いになっていた。

 

 

「なあにこれえ」

 

「俺にもわからん。理解を越えた」

 

〈俺達は今歴史を見ている〉

 

〈解説が理解を拒む光景〉

 

〈目の前でとんでもないことになっているのにニコニコ笑顔のオモダカ氏草〉

 

〈アイアールもヤバいけどネモも化け物すぎん?〉

 

〈言うてラウラもやってること変わらんからな?〉

 

〈俺今、生で観戦してることを後悔している。滅茶苦茶あちぃ〉

 

〈海蜘蛛はやばかったですね……〉

 

〈周りが吹き抜けになっているハッコウシティのバトルフィールドじゃなかったら大惨事だぞこれ〉

 

〈なんで至近距離のオモダカ氏涼しい顔なんですかねえ〉

 

 

 すると、せめぎ合いは終わりを迎えた。かえんほうしゃを出し続けるスタミナが無くなったシングが先にへばったのだ。立て続けに風圧つっぱりが叩き込まれ、ゴーストタイプで本来かくとう技が効かないはずのシングがダメージに呻く。

 

 

「シング、いったんなまけて!」

 

「その隙は与えない!スパーク!」

 

 

 シングの虎の子、なまけるで回復を試みようとしたアイアールだったが、電撃を纏ったパモットの突撃を受けてシングの鈍重な身体が吹き飛ばされバトルフィールドを転がった。戦闘不能だ。

 

 

「なまける暇が無かったとはいえ惜しかったな。スタミナは要改善だ」

 

「これ以上凄いことになるの……?…ごほん。これで残りのポケモンはそれぞれ2VS2!互角の勝負だあ!次にアイアール氏が繰り出すポケモンはなんなのか!」

 

「そうだな。でんきタイプに有利なあいつだろう」

 

「ボクも苦しめられたあやつか!」

 

「いっておいでドーちゃん!」

 

 

 アイアールが繰り出したのはやはりというかドオー。スパークもでんじはも効かないからネモはでんこうせっかとつっぱりでこれを突破しないといけないわけだ。

 

 

〈ドオーだ!〉

 

〈みずが効かないやべーやつ〉

 

〈まあ相性考えたらこれしかないよね〉

 

〈ひたすら一方的につっぱりされてやられそう〉

 

〈コガネの面接官:いいポケモン持ってるなあ!花丸満点や!〉

 

〈エクレアみたいでかわいい〉

 

〈ツムヅム、シングと来てドーちゃんか。脊髄で考えてそう〉

 

「ドオーのドーちゃん。アイアールの初期メンバーだ。のんびりしてるように見えるがこいつが中々曲者でな、俺もいっぱい喰わされた」

 

「ほほう!これは期待だ!」

 

 

 ネモの最後の一匹はあいつだろうからシングがやられたアイアールは痛いな。マジでどっちが勝つかわからんぞこれ。




さすがにミミズは蟲認定されなかった。

ブランクあるのにラウラの助けもあったとはいえ一から育てたポケモンたちの能力を最大限に活用するアイアール。
VS
最近捕まえた手持ちだろうがとんでもに育て上げてしまう才能の鬼ネモ。ネモの内心すごいことになってそう。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSマスカーニャⅡ

どうも、放仮ごです。本当にあと何話ぐらいハッコウシティに使うんじゃろね?ナンジャモ戦とグロリアイベントだけで終わらせようと思ったら5つ目ジムがネモ戦だったからしょうがないね。

今回はアイアールVSネモ実況その3。楽しんでいただけると幸いです。


「ドーちゃん、じしん!」

 

「パモット!でんこうせっかでドオーを蹴り上げて跳んで!」

 

 

 ドーちゃんを繰り出すなりメインウェポンのじしんを使用するアイアールだったが、俺のアメモースことレインに負けてない速度のでんこうせっかでドーちゃんまで接近し頭部を踏み台に空中に跳びだすパモット。

 

 

「ネモ氏、ドーちゃんを踏み台にしたあ!」

 

「じしんの弱点だな、空中にいる敵には当てられない………あれ、当てられるんだっけ?」

 

「やだなあラウラ氏、そんなのができたらでんき・ひこうのタイカイデンの面目丸つぶれだゾ?」

 

〈いるんだよなあ〉

 

〈あの足音指示でもしやと思ったけどラウラ知ってるのか〉

 

〈じしんを飛んでる奴に当てる変態〉

 

〈キリエとかいう当時無敗だったダンデのリザードンを初めて倒した女〉

 

〈じしんで地盤を操るやべーやつ〉

 

「つっぱり……ガトリング!」

 

「マッドショットで迎え撃て!」

 

 

 さらに空中からつっぱりを連打し空気弾を乱射しながら降下するパモットと、それを泥の弾丸を連射して迎え撃つドーちゃん。……マッドショットって連射できる技だったっけ?

 

 

「ボクの知ってるマッドショットじゃないねあれ!」

 

「じめんタイプの技を空中の標的に当てるな」

 

〈ラウラそれ解説やない、ツッコミや〉

 

〈もはや理解を放棄したw〉

 

〈いや理解したくないもんなにこの特撮みたいな光景〉

 

〈CGと言われた方が納得できるぞ〉

 

〈オモダカ氏飛び散った泥をニコニコ笑顔でふき取ってて草〉

 

 

「でんこうせっかで回り込め!」

 

「どくづき!」

 

 

 すると何もない空中を当たり前に蹴ってフィールドに戻り、駆け抜けて蹴りを叩き込むパモットだったが、毒トゲを生やして迎撃するドーちゃん。あの騙し討ち強いよな、素早く動けなくても迎撃できるのずるい。

 

 

「ねえラウラ氏」

 

「なんだナンジャモ」

 

「なんかパモットが空を跳んでた様に見えたのは気のせいだよネ?」

 

「Oh!ナニ言ってるかワカリマセーン!コワイネコワイネ…」

 

「雑なセイジ先生の物真似はやめようか」

 

「…じゃあ解説するが多分あの空気つっぱりと同じ原理だ。つまり、空気を蹴ってる」

 

「大体わかった」

 

〈言ってることは分かるがそれをなんでできているのか解説してクレメンス〉

 

〈ナンジャモ宇宙ニャオハ状態で草〉

 

〈通りすがりのジムリーダーだ!〉

 

〈でんじふゆうみたいな技を使わずに空を飛べるひこうタイプですらないでんきタイプがいるらしい〉

 

〈エレキン:5000〉

 

〈通りすがりのコルさん:アヴァンギャルドッ!〉

 

〈あれが技じゃなくて技術ってのがやばい〉

 

「あ、エレキン氏いつもありがとー!」

 

「でんこうせっかしながらつっぱりガトリング!」

 

「真下にヘドロウェーブ!」

 

 

 また分身した様に素早く動いてつっぱりの壁を叩き込むパモットだったがしかし、ドーちゃんは真下から毒の奔流を放出し、噴水の様にして空中を舞う。

 

 

「ドーちゃんが飛んだァアアアア!?」

 

「諦めなければドオーみたいなポケモンでも飛べるんだな」

 

「しみじみ!?ラウラ氏やっぱりアイアール氏に対して親目線だよね!?」

 

「ドーちゃん!パモットに向けて急降下して!じしん!」

 

「でんこうせっ・・・ああ!?」

 

 

 なんとドーちゃんは空中から自分がぶつかることでじしんの振動をパモットに叩き込み、叩き落としてパモットをクッションに着地する。キリエとは違うがじしんを当てやがった。…なんかデジャヴ。似た様な光景を見たことがあるのか、俺?

 

 

「決まったあ!まるでルチャブルのフライングプレスみたいな技だったね!パモットの動きが止まった様に見えたけど……いかがでしょう解説のラウラ氏!」

 

「ん、ああ。ヘドロウェーブを回避と同時に妨害に利用したみたいだな。パモットは肉球を攻撃に使用するポケモンだ。肉球にヘドロが飛び散ってくっついて気が取られたんだろう。今回以前で判明していたニャオハ、イワンコ、パモ、ヌメラ系統のネモのポケモンに関しては俺と一緒に勉強してたからな。多分覚えてたんだろ。アホだが知識を吸収するスポンジみたいな奴だからな」

 

「なるほど!辛辣ながらも信頼溢れるコメントでした!さあこれでネモ氏、四匹目、最後のポケモンまで追い込まれたあ!」

 

〈じしんを空飛ぶ相手に当てる変態二代目現る〉

 

〈ドオーが空飛ぶとかありえねえ〉

 

〈コガネの面接官:やるやないか!〉

 

〈じしんってなんだっけ?〉

 

 

すると俺の解説を聞いたネモは顔に手を当てて笑いだす。眩しくて見てられない、そんな感じだ。

 

 

「アハハ!そうか、そうなんだ!私のポケモンたちのこと調べて対策してたんだ!くぅ~!やられた!ラウラ、ナンジャモ、トップ、視聴者のみんな!見てますか!?わたし、追い込まれてるでしょ!アイアールは凄いんだよ!」

 

〈ヒエッ〉

 

〈追い込まれて喜ぶ変態〉

 

〈見てるよ〉

 

〈何なら見せつけられてるよ〉

 

〈本気じゃないとはいえパルデア最強を追い込むってなに〉

 

 

 心底楽しそうに笑いながら繰り出したのはやはりというかマスカーニャ。今のネモの切札たるポケモンなんだろうな。

 

 

「おおー!ネモ氏が繰り出したのは大人気のニャオハの進化系!マスカーニャだあ!」

 

「ニャオハだった頃に、アイアールがホゲータをクラベル校長からもらった時に一緒に譲ってもらったらしい。後一匹クワッスってのがいたらしいが信頼できる人間に譲ったそうだ」

 

「テラスタルするなら今!トップや視聴者のみんなの目も輝かせちゃう!」

 

 

 そして続けざまにテラスタルオーブを下手くそに投げてくさテラスタルさせるネモ。マスカーニャは威風堂々と佇み、クイクイッと指を動かして挑発する。あれは技じゃないな。

 

 

「負けるなドーちゃん!ヘドロウェーブで飛び上がってどくづき!」

 

「いくよとっておき!しっかり耐えてみせてよね!トリックフラワー」

 

 

 瞬間。再び飛んだドーちゃんが、1歩2歩と進み3歩目歩み寄ったマスカーニャが指パッチンした瞬間。いつの間にか頭上に投げられていた花束が落ちてきて撃墜。ドーちゃんは地面に叩きつけられ、ただの一撃で目を回し戦闘不能になってしまった。…あれがトリックフラワーか。

 

 

「え、え、今のナンナンジャ!?」

 

「何時か戦うと思って調べておいた。花粉と特殊な仕掛けが施された花束爆弾を、相手に気づかれぬよう送り込み、回避しようのない状態で炸裂させるマスカーニャの専用技だ。つまり必中かつ確定急所、自身の攻撃や命中率ダウンだろうが相手の防御や回避率が上昇しようが、リフレクターだろうが問答無用で無効だ。しかも物理攻撃だが非接触技だからせいでんきやメロメロボディ、ゴツゴツメットとかも意味をなさない。鬼に金棒、ネモにトリックフラワーだな」

 

「なにそのチート技!?」

 

「一応蟲ポケモンやほのおとかひこうとか相性不利なポケモンにはあまり通じないが、まあぶっ壊れ技だな」

 

〈なにそのぶっ壊れ〉

 

〈必ず急所に当たる技とかなにそれ怖い〉

 

〈ラウドボーンのフレアソングもそうだけど専用技チート過ぎない?〉

 

〈相性有利なポケモンなら耐えれるのはもはや常識のことなのよ〉

 

「必中急所とか耐えられるかあ!?」

 

 

 アイアールの絶叫が轟く。知っててもこれは無理だ。さあどう対抗する。相性有利なシングを先に出したのは失敗だったぞ。可能性があるとすればひこうテラスタルになれるクエスパトラのヒナだろうが……。

 

 

「……ここで引いたらやっぱり信用してないってことになっちゃうよね。貴方ならできる!ゲッコウガ!」

 

「ああーっ!ここでアイアール氏が繰り出したのはこのボク、ナンジャモのムウマージ相手に完全勝利したゲッコウガだあ!だけどこれは相手が悪いと思うなボクは!」

 

「俺もそう思う。どんだけすばやかろうが必ず当たるからな」

 

 

 どうする気だアイアール。ゲッコウガを前にしたネモとマスカーニャは不敵に笑んだ。

 

 

「相手にとって不足無し!アイアールの本当の相棒の強さ、見せて!トリックフラワー!」

 

「ゲッコウガ、舌に集中!」

 

「うん?」

 

 

 すると不思議な指示をするアイアール。マスカーニャが一歩、二歩と歩いてくる中、直立して目を細め佇むゲッコウガ。そして、三歩目…!

 

 

「三歩目、ここ!蹴り飛ばして!」

 

「なっ!?」

 

 

 瞬間、頭上に出現した花束を、オーバーヘッドキックでマスカーニャに蹴り飛ばすゲッコウガ。仮面を被っているような顔に花束が激突し爆発に巻き込まれたマスカーニャはふらふらと後退する。

 

 

「い、今のは!?ラウラ氏!」

 

「…ゲッコウガのあのマフラーみたいなものはアイツの舌だ。風の流れを感じ取りやすい。アイアールの奴、風の流れを読ませてタイミングを見切って爆発する前に対処しやがったんだ」

 

「手品はタネが割れたらそこまでだよ!」

 

「やるねアイアール!なら…きりさく攻撃!」

 

「つじぎりで迎え撃て!」

 

 

 指から鋭い光の爪を生やし、水刀を展開したゲッコウガに突撃し切り結ぶマスカーニャ。素早いポケモン同士の斬撃の交差は凄まじく、何度も鍔是り合っては蹴りも織り交ぜて距離を取り、また激突を繰り返す。

 

 

「つばめがえし!」

 

「たたみがえし!」

 

 

 マスカーニャの鋭い斬撃を、フィールドを捲り上げて防ぐゲッコウガ。瞬間、アイアールの取り出したテラスタルオーブが輝き、マスカーニャが壁を切り裂いた先では、頭上に巨大な水手裏剣を展開したテラスタルしたゲッコウガが待ち構えていた。指示もなしに技を使うとかどんな信頼だよ、まったく。

 

 

「みずしゅりけん!」

 

「耐えてマスカーニャ!タネばく…」

 

「遅い!つじぎり!」

 

 

 そのままマスカーニャにみずしゅりけんが炸裂。マスカーニャは効果が今ひとつなことをあり耐えて見せるが、なんとゲッコウガが突進してマスカーニャと鍔競り合うみずしゅりけんを掴むと、そのまま十字に斬撃。みずテラスタルで巨大化した水手裏剣を使ったあくタイプの急所に当たりやすい技はマスカーニャの胴体に炸裂。マスカーニャが崩れ落ちる。

 

 

「決着!激闘を制した勝者はアイアール氏だあ!」

 

「あいつ苦手なタイプないのか?」

 

「…今回も楽しかったけど、すごく悔しいなあ!アイアールのこと、もっと注目されちゃうね」

 

 

 楽しげに笑って称賛するネモが印象的だった。さて、終わった終わった。次の目的地に行くか。そう席を立ったらナンジャモに羽交い締めにされた。

 

 

「次はアイアール氏を解説に向かえて、ネモ氏VSラウラ氏だあ!回復のインターバルを挟むから、皆の者はちょっとだけ待ってね!逃げるなラウラ氏!」

 

「HA!NA!SE!」

 

〈草〉

 

〈駄々っ子で草〉

 

〈諦メロン〉

 

〈知らなかったのか?魔王(ネモ)からは逃げられない!〉




ドオーで空飛ぶ変態アイアール。実は似たようなことをセキタンザンでやってる前作原作主人公。これにはキリエさんもびっくり。

つっぱりガトリングのイメージは某ゴム人間の銃乱打です。ゲッコウガの巨大水手裏剣はサトシゲッコウガのアレをテラスタルで再現したものとなります。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSマスカーニャⅢ

どうも、放仮ごです。ポケモン以外にも書きたいものが増えてる一方なんですがハーメルンを開くとどうしてもこれの執筆を優先してしまう今日この頃。

今回はラウラVSネモ実況。楽しんでいただけると幸いです。


 ナンジャモのハラバリーに連行されてバトルコートまで連れてこられた俺はネモと対峙することになった。バトルしないとダメか、これ?

 

 

《「はい、ドモドモー。ナンジャモと~?」》

 

《「アイアールのー!」》

 

《「ドンナモンジャTV後編の時っ間っだぞー!皆の者~!準備はいーいー?あなたの目玉をエレキネット!何者(ナニモン)なんじゃ?ナンジャモです!ジムリーダーだよ!おはこんハロチャオ~!」》

 

《「オレンジアカデミー一年アイアールです、おはこんハロチャオ~!」》

 

〈おはこんハロチャオー〉

 

〈おはこんハロチャオ―〉

 

〈ラウラよりノリが良くて草〉

 

〈こう見えて相手トレーナーの挙動すら利用してとんでもない戦法を使う子だぞ〉

 

〈ドンナモンジャTV以外でも活躍見たいよね〉

 

「はい!ということで次のゲストで解説はアイアール氏です!ラウラ氏よりノリが良くていいね!インフルエンサーの素質あるよ!」

 

「え、そうかな……そうかも……」

 

「はあ、気乗りしないが…」

 

 

 楽しげに会話しているナンジャモとアイアールのいる方角を見ながら溜め息。…やるならさっさと終わらせるかね。ネモと向き直ると、ちょっと怒っていた。

 

 

「ラウラ!言っとくけど、手加減したら許さないからね!」

 

「…ばれてた?」

 

「すぐ終わらせるかとか考えてたでしょ。ラウラの表情は分かりやすいんだから!」

 

「そんなにか!?」

 

 

 え、俺そんなにわかりやすい?いつも記憶の事を考えてるせいかな。いや、蟲と同じで表情筋と脳が直接つながってるみたいでいいことだと考えよう。

 

 

「だが4VS4は長い。俺は今考え事があってそんなに長いこと集中できない。2VS2でどうだ?オモダカさん、ナンジャモ、アイアール!」

 

「ええー!」

 

 

 今も口をとがらせているネモに言ったところでフルバトルしようと言い出すに決まってる。そう考えて審判のオモダカさんと実況のナンジャモとアイアールに提案する。

 

 

「私は構いませんよ。2VS2はシンプルで実力が分かりやすいですからね」

 

《「うーん。ボクとしてはもっと視聴率稼ぎたい……ごほん、もっと面白いバトりを見たいところだけど、取れ高は十分すぎるほどもらったからいいよ!」》

 

《「頑張って実況するね!」》

 

「えー、やだやだ!4体で、いやフルバトルでやーりーたーいー!」

 

 

 快い了承を得た物の駄々をこねるネモ。溜め息を吐いて真っ直ぐ見つめる。

 

 

「ネモ。俺は本気のお前としかフルバトルするつもりはない。バッジ集めてオモダカさん倒すまで待ってろ」

 

「…ほう。言いますね、私を目の前にして」

 

 

 やべっ。オモダカさん本人の目の前で倒す宣言してしまった。いやまあ、既にセルクルやナンジャモの配信で言ってるから今更か。

 

 

「………2体でも本気を出してくれる?」

 

「手を抜くわけないだろ、お前相手だぞ」

 

「よーし、じゃあやろう!行くよルガルガン!」

 

「手加減なしとは嬉しいねえ。お前の出番だ、ぼむん!」

 

《「さあさあ始まりました!パルデア最強のチャンピオン・ネモVS蟲狂いラウラ!繰り出されたのはルガルガンとフォレトスのぼむんだあ!解説のアイアール氏よろしくお願いします!」》

 

《「蟲ポケモンしか持ってないラウラ相手に強気に出れるルガルガンと、それを読んでのいわが通じないはがねタイプのぼむん、なのかな?ラウラはイワンコの頃から辛酸を舐めさせられ続けたって前に言ってたから特に警戒してたんだろうね」》

 

「読み負けかあ!だけど負けない!かげぶんしん!」

 

「周囲に向かってまきびしだ!」

 

 

 かげぶんしんして取り囲むルガルガンに対し、高速回転してまきびしをばら撒くぼむん。見つけた。

 

 

「1時の方向!素早く!でんじふゆうでぶっ飛べ!」

 

「いわなだれで防御!」

 

 

 岩の壁が間に聳え立つも、125.8kgはある質量の体当たりで吹き飛ばし、ルガルガンに激突。吹き飛ばされた岩がルガルガンと共に宙を舞う。

 

 

「ルガルガン、岩を乗り継いでアクセルロック!」

 

「力強く!でんじほう準備!」

 

 

 宙を舞う岩を蹴ってピンボールの様に何度も乗り継いで加速していくルガルガン。ぼむんにでんじほうを準備させ、俺はルガルガンの動きを目で追っていく。駄目だ、追い切れない。いや待て、本体を追うよりも先読みすれば……一番最後に落ちてくる岩は、あれか!

 

 

「右斜め上!放て!」

 

「そんな…!?」

 

「ヘビーボンバー!」

 

 

 そして指示した方向に放たれたでんじほうが直撃し、撃墜されるルガルガン。バトルコートに叩きつけられたルガルガンが麻痺して動けない間に叩き潰して戦闘不能にする。

 

 

《「目にも留まらぬ攻防~!ラウラ氏、かげぶんしんしたルガルガンの本体を見破った様だけどどうやったんじゃ!?」》

 

《「多分だけどまきびしだろうが平然と踏んでいるのは分身だと見抜いたんじゃないかな?あとでんじほうを当てたのは単に動体視力だね」》

 

《「そんなことできんの!?」》

 

《「ラウラならできるよ」》

 

 

 アイアールやめて、俺そんな化け物じゃないから。今回は単に推理だから。

 

 

「相性不利だけど、貴方しか覆せないよね!頑張れマスカーニャ!」

 

「容赦はしないぞ。狙えぼむん。素早く!まきびしだ!」

 

 

 ジャキン、とぼむんの前脚が前方に構えられ、爪を構えて走ってくるマスカーニャ目掛けてまきびしを連射。しかしマスカーニャはネモの指示なくまきびしを次々と斬り払っていき、まるでダメージを与えられない。くそっ、むしわざを覚えていないぼむんの弱点だ。

 

 

「でんじふゆうで舞い上がれ、ヘビーボンバー!」

 

「トリックフラワー!」

 

 

 ぼむんが飛び上がって行く中でマスカーニャは三歩歩いて指パッチン。空中で爆発がぼむんを襲い、撃墜される。

 

 

「握って殴っちゃえ!タネばくだん!」

 

 

 落ちてきたところにアッパーカットするかの様にデカい種を握ったマスカーニャの手がぼむんの下面に炸裂。衝撃波が突き抜け、ぼむんがごてっと転がる。…なんて威力だよ。

 

 

「トリックフラワー、きりさく、タネばくだん、つばめがえし…手堅い技を覚えてるな」

 

「トリックフラワーは強力だけどラグがあるからね。すぐ出せるタイプ一致技は覚えさせとかないと」

 

「お前戦闘の事に関すると頭いいよな。…行くぞレクス!」

 

 

 繰り出したレクスと、マスカーニャが睨み合う。共に進化する前からの顔見知りだ。俺とネモは指し示すことなく、共にテラスタルオーブを取り出して、相手の手に握るそれを見て思わず笑う。

 

 

「考えることは一緒か。レクス」

 

「うん、そうみたいだね。マスカーニャ」

 

「「テラスタル!」」

 

 

 レクスはむしテラスタルに、マスカーニャはくさテラスタルにそれぞれ姿を変える。相性はこっちが有利だがつばめがえしがある。油断は禁物だ。

 

 

「トリックフラワーとタネばくだん!」

 

「素早く!にどげりで蹴り返せ!」

 

 

 タネばくだんを投げながら三歩進んで指パッチン。一斉に花束と種がレクスに襲いかかるも、後ろ脚を展開して素早いバネを利用し蹴り弾く。アイアールのおかげでタイミングは分かった。三歩目だ。

 

 

「こうそくいどう!」

 

「追いかけて!つばめがえし!」

 

 

 こうそくいどうで距離を取ろうとするレクスと、それを追い縋り爪の斬撃を叩き込んでいくマスカーニャ。接近戦じゃ分が悪い、無理やりにでも距離を離す。

 

 

「じごくづき!」

 

「マスカーニャ、タネばくだん!」

 

 

 急制止し振り返り様に喉元向けて叩き込んだ蹴りと、咄嗟に喉元前に構えた手に握られたタネばくだんが衝突、火花を散らして双方弾かれる。マスカーニャは真後ろに。レクスは、空に。

 

 

「トリックフラワー!」

 

「決めろ!とびかかる!」

 

 

 指示したのはそれぞれの最大火力技。空中に放り投げられた花束に、レクスの飛び蹴りが突き刺さる。そして指パッチンする瞬間には、花束ごとマスカーニャの胴体に蹴りを叩き込んでいた。

 

 

レクス()の脚力、なめんなよ」

 

 

 そしてレクスが飛び退くのと同時に、倒れたマスカーニャの胴体で花束が爆発。まるで爆発を背景にポーズをとる特撮ヒーローの様に、モニターにレクスの雄姿が映されていた。

 

 

「さすがだ!かっこいいぞ!レクス!」

 

 思わず駆け寄りわしゃわしゃと頭を撫でる。お前強くなったなあ、マメバッタだった時の非力さが嘘の様だ!するとそこにオモダカさんが歩み寄り、それと一緒に興奮している様子のネモが駆け寄ってきた。

 

 

「お疲れ様ですラウラさん。アイアールさんともども、チャンピオンネモ相手にここまでの戦いぶり…見事な試合楽しませていただきました」

 

「二人とも、トップさえ認めるポテンシャルすごすぎっ!私もうかうかしてられないよ!初めて会った時からなんとなくわかってたけど……ラウラとアイアールなら絶対チャンピオンランクになる。残りのジムもぜーったい大丈夫だから!ね、視聴者のみんなもそう思うよね!」

 

〈それはそう〉

 

〈攻防のレベルが俺らと違いすぎる〉

 

〈あ、やっと気づいた?やっほー〉

 

〈ナンジャモの実況もよかったしラウラとアイアールの解説もよかった〉

 

〈雲の上の存在だったネモのこと知れて満足だわ〉

 

〈学生ってなんだっけ……〉

 

〈四天王の一人もっと子供だからまあわかる範囲〉

 

〈他のジムのバトルもどうにか見れないかな〉

 

〈直接行くしかないんじゃね〉

 

《「トレーナーも強くないとってよくわかる試合だったね!ボクも頑張るぞー!」》

 

 

 そういや配信中だった。忘れてたわ。するとナンジャモに送られたのかアイアールが駆け寄ってきて、それを確認したオモダカさんは懐から何かを取り出して俺達に差し出してきた。耳を傾けてみると、ナンジャモの方はどうやら配信の〆に入ったらしい。

 

 

「ネモ、私もそう思います。そこで私から未来への投資として…こちらを受け取ってください。わざマシン171テラバースト。テラスタル状態で放てばテラスタイプへとタイプも変わり攻撃と特攻、高い方でダメージを与える技です。普段はノーマルタイプの特殊技として撃てますよ」

 

「ほう」

 

「へー」

 

 

 それはいいな。いい技を覚えていないポケモンたちに使うか。テラスタルでタイプ一致で得意な攻撃方法で使えるのは画期的だな。

 

 

「ラウラとアイアール、この二人とならいずれ最高の勝負ができる…!私ももっともーっと、頑張るねー!」

 

 

 そう言ってネモはナンジャモの配信が終わる前に去って行ってしまった。ネモらしいなあ。

 

 

「ふふ、ネモ楽しそうでしたね。友情……応援……信頼……それとも期待でしょうか?いえ…きっと彼女は確信しているのでしょうね、お二人の活躍を。では私もこれで。そろそろ帰らないとチリに怒られてしまいます」

 

 

 そう言ってオモダカさんも去っていった。これで終わりか…な?なんがだいぶ長いことこのハッコウシティにいた気がするわ。二日ぐらいのはずなんだが。




さすがに長くなりすぎも駄目な気がしたんで2VS2に。テンポを優先するか内容を優先するかで毎度迷う。ラウラ視点なのであんまりコメントにも気を配れませんでした。

凄く久々な気がするレクスの活躍。今のラウラの相棒は彼なのだ。ウカももっと活躍させたいところ。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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潜鋼のヌシ、どく組
VSゼブライカ 幕間


どうも、放仮ごです。バトルのあたおか発想を考えるためにポケスペBWを最近読んでるんですけど、ブラックにかなり影響されてるなと思います。あとデンチュラが可愛い。

今回は幕間。名前は出ないけどあの二人が登場です。楽しんでいただけると幸いです。


 チャンプルタウン南東、パルデアの大穴の岩壁にある閉鎖されている門。その奥にある施設「ゼロゲート」の一室で、二人の男女が机を挟んで食事していた。傍にはそれぞれゼブライカとヘラクロスがリラックスして座っている。

 

 

「チャンプルタウンでテイクアウトしてきたラーメンは美味いな」

 

「この施設があるのがチャンプルタウン近くで本当によかったですね。食べ物に困りません」

 

 

 一人は地味な黒いタートルネックと白いズボンで身を包んだ右半分が白で左半分が黒の特徴的な髪を短くまとめた金色の瞳の顔が整った男。もう一人は緑のマフラーを巻いたセーラー服の、前髪で目元を隠した銀髪をふんわりロングヘアーにした、前髪からちらちら見える綺麗な翠の目が印象的な少女。

 

 

「ですが値段がガラルより少々高いですね。持って来た資金ももう少しで底を突きます。換金アイテムとかありません?」

 

「お前、俺を脱獄させて連れてきたの忘れたのか?持って来てるわけないだろ」

 

「ちっ。穀潰しですね」

 

「お前も似た様なものだろうがミニスカートめ」

 

「そっちは犯罪者でしょうが」

 

「お前もそうだろうが」

 

「「……」」

 

 

 いがみ合っててそれぞれ自己嫌悪して、両手で顔を覆ってしまう両者。言い返せないし後悔しているその過去の指摘は非常に効いた。効果は抜群だ。

 

 

「…やめましょうこの話」

 

「そうだな……悪かった」

 

「こちらこそ……まああの勘違いであそこまで大事(おおごと)にしたのはどうかと思いますがね」

 

「謝る気ないだろお前」

 

 

 ズルズルとラーメンをすする中、スマホロトムを取り出し操作する少女は、予想外の情報が出たのかべしべしと男の肩を叩く。

 

 

「ちょっとこれ見てください。ラウラのワードでエゴサしてたんですが…」

 

「痛い痛い。やめろ馬鹿。どうした、ラウラの新情報でも……」

 

 

 そのまま浮かばせて二人とも見える位置で映ったのはドンナモンジャTV【ドンナモンジャTV】挑戦者ラウラとのオフコラボ!モコたん顔見せ!?【ナンジャモ】のアーカイブ。男は思わず黙る。

 

 

「…なにやってるんだラウラ?」

 

「さあ?モコウさんもいる方が驚きなんですが。大変そうですねえ」

 

「ジムリーダーも配信者になる時代かあ…」

 

「キバナさんも似た様なものでしょう」

 

「しかし弱くなったな、これじゃまだまだ記憶も戻ってないと見た」

 

「メンバーがそもそも違うのもあると思いますけどね」

 

 

 動画を見ながら直接持ってスープをすすり、どんぶりを置いてぷはぁと一息つく少女。男がまだ食べているのを見てから、スマホロトムを操作し、【ドンナモンジャTV】挑戦者ラウラとのマジバトル!負けないゾ!【ナンジャモ】のアーカイブに動画を変える。

 

 

「発想の奇抜さはさすがラウラさんですね」

 

「俺と同郷でどうしてここまで発想に差が出たんだ…記憶ないんだろこれ」

 

「そういえばラウラさんとジュリさんと同類とか言ってましたっけ。一緒にするのやめてもらっていいですか?」

 

「どうせ俺は凡人だよ……」

 

 

 少女の辛辣な言葉にずーんと項垂れる男。そして問題のシーン。

 

 

「「あ」」

 

 

 ラウラが足音でさいきのいのりを指示したのを見て、二人は声を揃えると顔を見合わせる。

 

 

「今の、確かキリエのだな」

 

「少し記憶が戻っている、ということですか?」

 

「多分な。どうやって記憶を取り戻すのかが鬼門だったがこれは意外となんとかなりそうだぞ」

 

「じゃああとはブルーフレア団に集中できますね」

 

「お嬢様の“更新”もしとかないとな」

 

「ラウラさんとあんな約束して置いて心苦しいですけどね…」

 

 

 そう話していると、部屋と廊下を繋ぐ扉が開いてブルーフレア団の幹部、グロリアが顔を出す。グロリアは二人の顔を確認すると扇子で口元を隠して高笑いを上げる。

 

 

「オーホッホッホ!ここにいらっしゃったのね!お待たせしましたわメイドに執事!まーたラーメンだなんて庶民のものを食べてらしたの?名前はなんだったかしら!」

 

「そんなことはどうでもいいでしょうよお嬢様。ブルーフレア団はどうです?」

 

「何故か店長を任されたのでカレーを振る舞ったら大人気になりましたわ!」

 

「どういうことだってばよ」

 

「順調そうですねお嬢様。ではこちらに。何時もの、始めましょう」

 

 

 隣の部屋の扉を開けてグロリアを案内しながら入って行く少女と、特に疑うことなくそれに着いて行くグロリアを見届けた男はその間に少女のスマホロトムを操作し、ムウマージがテラスタルしたところで止めて神妙な視線を向ける。

 

 

「…結晶体への変身、か。メガシンカやZワザ、ダイマックスに連なる新仕様か?多分だが剣盾以降の、俺の知らないシリーズなんだろうな。俺の情報アドバンテージは少ないが……一つだけわかる。プラズマ団みたいに同じ地方で再起するならともかく、カロス以外で名を変えているもののフレア団が暗躍するのは必ず理由があると言う事だ。例えば……この地方でしかなしえない目的があるとか、な」

 

 

 男はラーメンを食べ終えると一息つき、椅子に背もたれて天井を見上げる。

 

 

「ラウラ。それに巻き込まれるとかどんだけ運が無いんだお前は」

 

《ロトロトロトロト……》

 

 

 すると少女のスマホロトムに着信。相手の名前を確認した男は勝手に繋ぐ。

 

 

《「ハロー、二人とも。こちらオーリム。…おや?彼女は?」》

 

「今うちのお嬢様の更新中だ。こればかりは欠かせないからな」

 

《「そうか。それは間が悪かった。すまない」》

 

「気にするな。それよりできたのか?」

 

《「ああ、君達の話を参考に限りなく再現できた。しかしこのバトルのデータは凄まじいな、四天王…いやチャンピオンにも通用する機転とは。プログラムを組むのに苦労した」》

 

「当たり前です。彼女は我が地方のチャンピオンに匹敵する数少ない実力の持ち主なのですから」

 

「ラウラは最強なんですわ!」

 

 

 そこに、グロリアを連れた少女が戻ってきて会話に加わる。グロリアもよくわかってないが誰の話をしているのかすぐ分かって踏ん反り返る。

 

 

「ではグロリアお嬢様。頑張ってきてくださいね?」

 

「わたくしに任せておけば問題ありませんわ!」

 

 

 そう意気込んで出て行くグロリアを見送ると、少女は椅子に座りスマホロトムに向き直る。

 

 

「備えが完成したのならよかった。あとはボックス経由で六体をそちらに送って、調整ですね」

 

「俺達もそろそろ動くか。そこらのトレーナーボコって資金もいただこう」

 

「お嬢様にブルーフレア団の資金をちょろまかしてもらってもよかったですね」

 

《「……君達もブルーフレア団に負けず劣らず悪党だな」》

 

 

 そんな言葉に、二人は顔を見合わせて、何がおかしいのか揃って笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、【ドンナモンジャTV】チャンピオンランクのバトルを実況するぞ!特別ゲストもいるよ!【ナンジャモ&ラウラ】を視聴する男と少女。

 

 

「なんでラウラに関わった奴はこう、化け物になるんだ…なにこのアイアールとかいう女とネモとかいうチャンピオン」

 

「ユウリさんもモコウさんもムツキさんもキリエさんもビートさんもマリィさんもジュリさんもヤユイもあたおか(頭おかしい)ですからねえ。あ、キリエさんとヤユイはラウラさん関係ないか」

 

「言っておくが、お前がその筆頭だぞ」

 

「え」

 

 

 案にお前も頭おかしいと言われた少女は男に必死に抗議するのだった。




ドンナモンジャTVラウラ回の視聴者視点にもなりました。

オーリム博士とグロリアと繋がってる、ゼロゲートに潜む謎の男女2人。実は似た者同士なのだこの二人。一体誰なんじゃろね(すっとぼけ)

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSミミズズⅠ

どうも、放仮ごです。前回の感想欄がいい感じに混乱しているようで何より。

今回は潜鋼のヌシ探索。楽しんでいただけると幸いです。


 コライドンに二人乗りし、ハッコウシティを抜けて北上する俺とアイアール。アイアールがハンドルを握ってコライドンを運転する後ろでスマホロトムのマップを開く。

 

 

「東2番エリア。この先の東3番エリアに最後のヌシがいるわけか」

 

「鉱山なのかな?いわタイプやじめんタイプが多いね」

 

「あんまりそそらないな」

 

「ナックラーとかいればよかったのにね」

 

「まあいても今のメンバーを変える気はないがな」

 

 

 坂道を登って道なりに進んでいき東3番エリアに入る。なんだあの転がってる草みたいなの。ポケモンか?

 

 

「そう言えばゲッコウガを入れたってことは誰と交代したんだ?いや、普通に考えたら同じみずタイプのリプルか」

 

「そうだよ。ゲッコウガはカロスの冒険での相棒で……」

 

「その話は初耳だな。もしかしてカロスのジムバッジも持ってるのか?」

 

「……うん。8つ全部。だけど、四天王に挑む前にやめちゃった」

 

「センスの塊のお前なら8つ全部は当たり前だと思うが……なにがあった?」

 

「……それはちょっと、話したくないかな」

 

「そうか。ならしょうがないさ」

 

《ロトロトロトロト……》

 

 

 ちょっと気まずくなったところに俺のスマホロトムにかかってくる着信。相手の名前を見るとペパーだった。

 

 

「ようペパー」

 

《「ようラウラ!アイアール!この鉱山のどっかに潜鋼のヌシがいるらしい。噂じゃその体は半端ねえデカさで超ロング!なんだとさ!」》

 

「ウミディグダかなんかか?」

 

「リプルも一応地上でもいれたけど、さすがに鉱山にはいないと思うよ」

 

 

 それ以外にロングな奴思いつかないんだが。…いや待て、つい最近見たぞ。鉱山にいそうで超ロングな奴。

 

 

《「そんなのすぐ見つかりそうなのにどこにどうやって隠れてんだろうな…?もしすげー素早い奴だったらライドして追いかけてみたらどうだ?」》

 

 

 そう言ってペパーも通話は切れた。……ほぼ確定だな。

 

 

「ミミズズだな」

 

「ミミズズだよね」

 

「あそこに物見塔がある。上から見渡してみよう」

 

「了解!」

 

「アギャア!」

 

 

 ダッシュでドタドタと走って行くコライドン。物見塔の下まで来るとコライドンをボールに戻し、一緒に梯子を登って行く。

 

 

「…ん?」

 

「どうしたアイアール」

 

 

 梯子を登っている途中で止まった、俺の上にいるアイアールに問いかけると、首をかしげている様だった。

 

 

「なんか巨大なモンスターボールが見えた様な…?」

 

「ダイマックスか?」

 

「なにそれ?」

 

「……俺にもわからん」

 

 

 このスッと出てくる知らない記憶にも慣れてきたな。

 

 

「うーん。気のせいかな」

 

「とりあえず上がってからそのクソデカモンスターボール?も確認するぞ」

 

「わかった」

 

 

 登りきると、何故か宝箱が置いてあったがスルー。俺達はレクスとゲッコウガそれぞれ繰り出して一緒に周りを見渡す。うーん、それっぽいのは見えないな。

 

 

「しっかし広いなここ。岩陰とかに隠れられたら見つけるのに苦労するぞ」

 

「そうだねえ。ゲッコウガ、どうかな?舌になんか感じる?」

 

「レクス、お前もどうだ?複眼に何か映らないか?」

 

 

 ゲッコウガは首を横に振り、レクスは後ろ脚を展開して視点を高くしてキョロキョロと見渡している。ヌシのサイズを考えるとどこを移動してようが目立つと思うんだがなあ。…潜鋼のヌシ、ね。

 

 

「…こんだけ探して見つからないとなると、潜鋼……地中に潜ってる可能性があるな」

 

「じゃあどうするの?」

 

「……ドーちゃんのじしんでしらみつぶしに揺らす?」

 

「それ他のポケモンたちが怒って襲ってきそうだね……」

 

「だよなあ」

 

 

 どうしたものか。…そういやさっきアイアールの言ってたクソデカモンスターボールってなんだったんだ?こんな荒野でモンスターボールと見間違えそうなでかいものっていやあ……。

 

 

「……アイアール、お前とネモ戦の動画、開いてくれ」

 

「なんで?」

 

「ミミズズの容姿を思い出したい」

 

「あー、わかった。今出すね」

 

 

 蟲以外に関する記憶力が無い俺の馬鹿野郎。ポチポチとスマホロトムの画面を操作するアイアールを見ながら考える。あの時アイアールの見ていた方向は…確か南だったか。だがこっちは見たが、でかい河とハッコウシティが見えるだけでなにも……あっ。

 

 

「はいラウラ。これがミミズズだよ」

 

「………悪いアイアール、それもういらない」

 

「なんで?」

 

「…張本人が真下にいた。アイツの頭、モンスターボールみたいなんだな」

 

「下?……ほへ?」

 

 

 真下。物見塔のある岩場の下のちょっとした盆地になっているところに、それはいた。モンスターボールみたいな顔だけ出して、呼吸しているのか口をパクパクさせているでっかいミミズズがそこにいた。

 

 

「灯台下暗しってこのことだね・・・」

 

「まったくだ。まだばれてない、奇襲するぞ。コライドンを出せ」

 

「行くよコライドン!」

 

 

 今コライドンが使えるのはなみのり(オトシドリ)かっくう(イダイナキバ)ダッシュ(ガケガニ)。奇襲するには十分だ。コライドンに乗り込み、ジャンプして物見塔から飛び降り滑空。頭上から急降下して襲いかかる。

 

 

「!」

 

 

 俺達に気付いて地中に潜って逃げようとするミミズズ。だがそれは読んでいる。

 

 

「ゲッコウガ!みずしゅりけん!」

 

「レクス!とびかかる!」

 

 

 一緒に飛び降りて着地していた二体が地上から急襲。とびかかるによりクレーターができた地面からミミズズが飛び出し、みずしゅりけんが叩き込まれて吹き飛んだミミズズは地上に完全に出てきて六本腕を伸ばして構える。

 

 

「あの動き、ネモも使っていたアイアンテールが来るぞ!」

 

「ゲッコウガ、たたみがえし!」

 

 

 ドゴンッ!という轟音と共にゲッコウガが捲り上げた地面にミミズズの巨体が激突、崩れ落ちる。なんて威力だ。

 

 

「アイアール、二手に分かれるぞ!こいつに狙いを集中させたら不味い!」

 

「そういうことなら…ゲッコウガ、かげぶんしん!」

 

 

 ミミズズの繰り出してきたずつきを、分身して避けていくゲッコウガ。いい囮だ。

 

 

「そこだ、にどげり!」

 

 

 ゲッコウガに気を取られるミミズズの側面にレクスのにどげりが炸裂、蹴り飛ばす。するとブルルッとミミズズが体を震わせると、大量の砂が吹き荒れてゲッコウガの分身を掻き消し、レクスも吹き飛ばされてしまう。

 

 

「すなあらし、か・・・!」

 

「わっぷ、何も見えないー!ブルーフレア団に襲われた時を思い出すー!」

 

「アハハ!呼んだかしら?」

 

「「!」」

 

 

 そんな声が聞こえて、すなあらしの中で毒の塊が俺達の乗っているコライドン目掛けて放たれ、コライドンは直撃を受けて転倒。投げ出された俺達は、すなあらしの先に、特徴的な青装束を見た。

 

 

「ブルーフレア団…!」

 

「アハハ!封印探してたら目標見つけちゃったんだもの、優先しないとね!」

 

 

 …潜鋼のヌシにブルーフレア団を同時に相手しろってか。最悪だなクソッたれ!




物見塔を見つけてとりあえず登ったらでっかいモンスターボールを見つけて「!?」ってなった人は少なくないと思うんだ。

地味にアイアールが猛者だと言うのも発覚。彼女の過去もチャンスがあれば語って行きたい。

そして乱入ブルーフレア団。ラウラ達・潜鋼のヌシ・ブルーフレア団の三つ巴の戦いはどうなるのか。

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VSミミズズⅡ

どうも、放仮ごです。今更だけどフレア団の面子はポケスペの彼女たちの性格にしてます。XY編地獄にも程があるけど結構好き。

今回はラウラ達VS潜鋼のヌシVSブルーフレア団三つ巴。楽しんでいただけると幸いです。


 倒れたコライドンを慌ててボールに戻すアイアール。すなあらしが薄れてきて、敵の全貌が見えてきた。ミミズズと俺とアイアールが対峙している盆地の様なそこを取り囲むように見下ろしている、青色に染めた髪に青いスーツにサングラスを身に着けた男女が複数並び、一人だけ毛色の違う奴が空から俺達を見下ろしていた。これだけの数、さっき見渡した時に見つけられなかったのは不自然だ。透明にでもなれるのかこいつら。

 

 

「アハハ!人海戦術で封印の杭を探していたらツバサノオウに出会うなんてね!」

 

 

 オレンジ色のショートカットの髪で同色の口紅とゴーグルを付けた、銀色の格子状のゴーグルをつけている、青いプリーツミニワンピースにショートブーツで、オレンジ色のロングソックスを身に付けている女。どことなくバラに似ている、幹部か?右手を口元にやって笑いながら女は笑う。ツバサノオウ……以前エスプリが言っていた。コライドンのことか?

 

 

「囲まれてる……どうしよう、ラウラ」

 

「…ミミズズもいるってのに最悪だな」

 

「アハハ!もしかしてあなた、ラウラ?新入りの標的じゃない!」

 

 

 キョロキョロと周りを見渡しているミミズズを警戒しながら様子を窺っていると、幹部と思われる女がそう言ってきた。なんだ俺有名人か?

 

 

「アハハ!じゃあアタシが()ったらあの私達を眼中に入れていないお嬢様も悔しがるのかしら!元々邪魔者だしやっちゃってもいいわよね!」

 

「元々邪魔者?なんのことだ」

 

「え?…あっ、そうだった!記憶失っちゃってたんだった!あの状態で生き延びるとか本当に運がいいわね!信じられなーい!アハハハ!」

 

「お前、俺の事を何か知って…!」

 

「でも、アハハ!年貢の納め時よ!そこのデカブツと一緒にやっちゃえしたっぱども!タギングル!アシッドボム!」

 

「ゲッコウガ、たたみがえし!」

 

 

 幹部の傍に控えていたタギングルが毒液の塊を飛ばしてくるが、咄嗟にアイアールの指示でゲッコウガが間に割り込んで地面を捲り上げて防ぐ。同時に、ブルーフレア団のしたっぱたちも各々のポケモンを繰り出して一斉に攻撃を仕掛けてきた。それに反応して動き出すミミズズ。アイアールと視線を交わし、頷く。

 

 

「ドーちゃん、じしん!ゲッコウガ、みずしゅりけん!」

 

「レイン、エアカッター!レクス、こうそくいどう!」

 

 

 追加で一体手持ちを繰り出し、同時に指示。大雑把な指示でいいなら六匹でいいが、二匹までなら集中して指示できる。何とか切り抜けよう。ドーちゃんのじしんで大地を揺らして一斉にダメージを与える中にゲッコウガのみずしゅりけんとレインのエアカッターがしたっぱのポケモンたちに炸裂、さらにレクスがこうそくいどうで蹴散らしていく。したっぱはなんとかなる、問題は…!

 

 

「ミミズズズゥー!!」

 

 

 すると六本腕を伸ばして尻尾を振り回し、大暴れしてしたっぱたちを蹂躙するミミズズ。あいつも効果抜群のじしん喰らったはずだろどうなってる!?

 

 

「あれえ!?ドーちゃんのじしん受けたのになんでか元気になってる!?」

 

「…図鑑を見ろアイアール!あいつのとくせいはどしょく、じめんわざを受けると逆に回復する!文字通り喰らったわけだ!」

 

「なにそれずるい!?」

 

「アハハ!よそ見している暇があるのかしら!きりさく!」

 

「つじぎり!」

 

 

 飛び降りてきたタギングルの鋭い爪による斬撃を、水刀で受け止めるゲッコウガ。アイアールが幹部の相手は引き受けてくれている、その間にこっちはミミズズを…!しっかしまあかわいそうなぐらい吹き飛んでいくなしたっぱのポケモンたち。あ、したっぱも何人かミミズズの大暴れに巻き込まれた。

 

 

「交代だレイン!ぼむん!でんじほう!」

 

 

 そのままレインに巻き付こうとしたミミズズの攻撃を、ぼむんに交代することで受け止め、ゼロ距離からでんじほうを叩き込む。そのままぼむんは六本腕で持ち上げられて地面に叩きつけられ、そのままずつきを何度も叩き込まれて地面に埋まってしまうも、まひして動きが止まるミミズズ。

 

 

「戻れぼむん。レクス、にどげり!」

 

「ゲッコウガ、たたみがえしで打ち上げて!」

 

「アハハ、タギングル!ミミズズにおだてる!」

 

 

 レクスがミミズズににどげりを叩き込み、ゲッコウガがたたみがえしでタギングルを空中に打ち上げてとどめを刺さんとしていたが、幹部の女の指示でタギングルはパチパチパチと拍手してキャッキャッと鳴き声を上げてミミズズをおだてて、ブーツの裏から炎を出して空を舞った幹部にキャッチされる。あれはバラと同じ装備か。

 

 

「アハハ!よく仕事したわタギングル。おつかれー!」

 

「なんのつもりだ!」

 

「アハハ!おだてる、知らない?マイナーなわざだもんねえ…わかるわかる!相手のとくこうを上げる代わりに混乱させる、そう言う技よ!どうなるかしらねえ、ヌシポケモンが混乱なんか、し・た・ら?」

 

「「!」」

 

 

 瞬間、俺達は渦を描いて回転したミミズズに弾き飛ばされてしまう。不味い、こんらんして大暴れしている。ここにもトレーナーや鉱山で働く人がいるのを途中で見てきた、こんなのが暴れたら巻き込まれるぞ…!

 

 

「ついでに貴方達のポケモンも混乱しちゃえ!ほらほら、おだてる!おだてる!おだてる!アハハッ!」

 

「ああ!?ドーちゃん、ゲッコウガ!?」

 

「レクス!?」

 

 

 さらにあの女、抱っこしたタギングルにおだてるを使わせてゲッコウガとドーちゃんとレクスを混乱させてきた。ボールに戻させて隙を作るつもりか!?

 

 

「アハハ!アシッドボム。死んじゃえば?」

 

 

 笑っていたかと思えば冷酷な声色で宣告し、毒液の塊を俺とアイアールに飛ばしてくる幹部。ゲッコウガたちは混乱している。手持ちを出して回避、いや取り出すには間に合わない…!?ならせめてアイアールだけでも…!背中で庇うように立つ。

 

 

「くそっ…!」

 

「ラウラ、駄目…!」

 

 

 すると何時まで経っても痛みは来ない。恐る恐る振り返ってみれば、二体のポケモンが俺達を庇うように立ちはだかっていた。勝手にボールから出てくることが多々あるポケモンたち。コライドンとウカがその身を挺してアシッドボムを受け止めていた。

 

 

「ツバサノオウにチヲハウハネ…!アハハ!標的がそっちから出てきてくれるなんて好、都合…!?」

 

 

 するとウカは岩壁を駆け登った勢いで放った飛び蹴りで幹部を強襲。咄嗟にタギングルを盾にした幹部は蹴り飛ばされた勢いのままクルクルと回って地面に落ちて行き、ウカはそれを追いかけて行き崖上に着地。見えなくなってしまった。

 

 

「アイアールはミミズズを止めてくれ!俺はあいつを!」

 

「わかった!だけど、今度は無茶しないでよラウラ!」

 

 

 俺達は混乱している手持ちをボールに戻すとアイアールはコライドンに乗ってミミズズを追いかけて行き、俺は再度繰り出したぼむんに飛び乗ってでんじふゆうで崖上に移動する。ウカは強いから大丈夫だと思うが…追いかけて行った先で俺が見たのは、信じられない光景。

 

 

「アハハ!よくもアタシを足蹴にしてくれたなあ!もういい、事故で死んじゃったことにするわ!縊り殺せ、ハバタクカミ!」

 

 

 ムウマらしきポケモンの髪の毛で雁字搦めにされ手も足も出ていないウカの姿がそこにあった。




ウカ「カレー食わせてくれる人になにしてくれてんじゃボケ」

平然とトレーナーに攻撃するのも手持ちポケモンを簡単に盾にするのも悪役の特権。したっぱのほとんどは既に伸された模様。

こんらん、ゲームでは確率で自傷ダメージだけですが現実にすると厄介極まりないよなって。ボールに戻せば回復するけどそれがない野生だとこうなるよねって。

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VSハバタクカミ

どうも、放仮ごです。今回あるキャラが登場するだけどその口調で苦労しました。

今回はハバタクカミとの対決。楽しんでいただけると幸いです。


 ブルーフレア団の幹部のポケモンだろうか。ハバタクカミ、と呼ばれたムウマに酷似したポケモンの髪の毛に捕まり、じたばたと暴れるウカ。何度もローキックを叩き込んでいるが擦り抜けてしまっている。ムウマみたいな見た目の通りゴーストタイプなのか?

 

 

「なら…レクス!ウカを助けろ!じごくづき!」

 

 

 ボールに入れて混乱から回復したレクスを再度繰り出し、ゴーストタイプに効果抜群なあくタイプの技を指示。レクスは跳躍してハバタクカミの後ろから首元を狙って飛び蹴りを叩き込むが、ハバタクカミは浮遊している体が一切揺れる事すらせず受け止め、ギロリと目だけを動かして睨みつけてくる。

 

 

「効いてない…!?」

 

「アハハッ!騙された騙されたあ!ムウマだと思った!?違うんだなあそれが!ぶっ潰れろムーンフォース!」

 

 

 ウカを捕らえたまま、頭上に桃色の月の様なエネルギー体を形成、ウカを捕まえていない髪の毛を手の様に動かして投げつけてきた。レクスは避けようとするも、あまりの巨大さと弾速に避けきれず巻き込まれてしまう。

 

 

「一撃か…この威力、フェアリータイプも入っているのか?」

 

「アハハ!ごめーさつ!力の差が分かったならこのままチヲハウハネが縊り殺されるのを黙って見てなさい!」

 

「そうはいくか、ぼむん!」

 

 

 フェアリーとわかったのではがねタイプを有するフォレトスを繰り出す。ミミズズにタコ殴りにされたダメージが残っているが、頑張ってもらうしかない。

 

 

「でんじふゆうで上に行け!急転直下ヘビーボンバー!」

 

「サイコショック」

 

 

 空中に浮かび落下のGも含めた最大火力のヘビーボンバーを叩き込むも、空中に設置された念動力の塊三つがぶつかり体勢を崩して見当違いの方向にぼむんは落下。さらに空中の念動力の塊が一斉に射出されて四方八方から衝撃を受けて打ち上げられていくぼむん。物理的なダメージのあるサイコショックをあんなふうに使うなんて…!?

 

 

「ぼむん!?」

 

「アハハッ!撃ち抜けパワージェム!」

 

 

 そしてとどめと言わんばかりにハバタクカミの周囲に現れた六角形のエネルギーが放たれて撃ち抜かれ、ぼむんはなにもできずに地面に落下、目を回す。

 

 

「くっそ…頼む、ジャック!」

 

「なにそれ知らないポケモン。アハハ!生意気!チヲハウハネを落として迎撃しなさいハバタクカミ!」

 

 

 ジャックを繰り出すと、珍しいバサギリなためか警戒してウカをぶん投げて解放、名前の通り髪を羽ばたかせるようにして加速するハバタクカミ。なんて速さだ。ウカは…着地失敗しているけど無事だな、よし!

 

 

「ジャック、がんせきアックス!」

 

「サイコショックで逸らしなさい!」

 

 

 まっすぐ突っ込んでくるハバタクカミに合わせてがんせきアックスを指示。しかし空中に出現した念動力の塊で刃先を逸らされ、空振りしたところに激突。髪の毛に四肢を縛られて持ち上げられるジャック。するとウカが立ち上がり、とびかかってハバタクカミに襲いかかる。

 

 

「そいつを盾にしなさい」

 

 

 しかし盾にされたジャックに拳が炸裂。そのまま解放されてジャックは投げ飛ばされ、ウカは文字通り回し蹴りでジャックを一蹴してしまう。ひどい。

 

 

「アハハ!仲間を足蹴にするなんてひどーい!」

 

「ウカもタギングルを盾にしたお前に言われたくないだろうよ」

 

「それはそうね!アハハ!ムーンフォース!」

 

「ウカ、しびれごなで…って、おい!?」

 

 

 ジャックの様子を確認しつつウカに指示して切り抜けようとするが、ウカは聞き耳持たず巨大な月型のエネルギーをフットワークの軽さで駆け抜けて回避。そのまま炎を纏いニトロチャージで殴りかかるウカ。怒りで血が頭に登っているのか俺の声が聞こえていないみたいだ。

 

 

「アハハ!ろくに言うことも聞かないじゃない!シャドーボール!」

 

 

 髪の毛を伸ばして受け止めるハバタクカミ相手にじたばたと暴れるウカだったが、その真下。ハバタクカミの影から闇の弾が放たれ直撃、四肢をぷらんと垂れさせてぐたっとするウカ。シャドーボールをあんな使い方するとは…。

 

 

「ジャック、テラスタル!くさわけだ!」

 

 

 それを見た俺は咄嗟にテラスタルオーブを取り出しジャックをテラスタル。草をかき分ける動きで高速で突撃し、ハバタクカミの髪の毛を切り裂いてウカを解放するジャックはそのままかっこつけて着地する。

 

 

「なんかその動きムカつくわね…ならこっちもボスから賜ったこれを使おうかしら。テラスタル」

 

「なんだって?」

 

 

 ブルーフレア団の女幹部が取り出したそれ…テラスタルオーブに驚く俺とジャックの目の前で、ハバタクカミは結晶化しハートの形状の結晶を頭部に付けた姿に変貌。フェアリーテラスタル…!?

 

 

「なんでお前らがそれを…オレンジアカデミーで特殊な授業を受けないともらえないって話だったはずだぞ!?」

 

「アハハ!ボスにこれをあげた裏切り者が教師か生徒にいるんじゃない?知らないけど!ムーンフォース!」

 

「ジャック、ウカを連れて逃げろ!」

 

 

 くさわけでさらに上がった自慢のすばやさでぐったりしているウカを抱えて走って逃げるジャックの頭上で、先ほどまでの二倍ほどに大きくなった月型のエネルギーがゆっくりと落ちてくる。

 

 

「アハハ!逃がさないわよ。シャドーボール」

 

「しまっ…ジャック、ウカ!?」

 

 

 しかし逃げきろうとした瞬間、自身の影から放たれたシャドーボールがジャックに炸裂し、よろめいたところにムーンフォースで押し潰されるジャックたち。相手のポケモンの影からも放てるとか反則にも程がある。

 

 

「ジャック!?お前、ウカを庇って……」

 

 

 ムーンフォースが消えたそこにはテラスタルが解けて倒れているジャックだけがいて、ウカは炸裂する寸前でジャックに投げ飛ばされたのか範囲外で呆然とした様子でジャックを見ていた。ジャック、かっこよかったよお前は。

 

 

「アハハ!言う事も聞かない奴を助けて倒されるなんて!貴方の切札なんでしょ、ラウラ?チヲハウハネを捨てていれば逃げれてたかもしれないのに!虫けらみたいに潰されて!拍子抜けね!」

 

 

 ジャックをボールに戻して、ハバタクカミを傍に侍らせ高笑いを上げる幹部を睨みつけ後ろ手にボールを構える。

 

 

「……名を教えろてめえ。お前だけは絶対に許さない」

 

「アハハ!許さないからどうなるのかしら!いいわ、教えてあげる!私はアケビ。ブルーフレア団幹部のアケビよ。もろともに死ね。ムーンフォース!」

 

「ダーマ!スレッドトラップ!」

 

 

 ウカの方に駆け出しながらボールを投擲。糸の盾を張ったダーマの後ろにウカと共に隠れ、衝撃。ダメージ自体は防げたものの衝撃波までは防げず吹き飛ばされるダーマを受け止める。くそっ、爆撃でも受けてるようだ。なんて力だ、あのハバタクカミと呼ばれたポケモン。

 

 

「アハハ!時間稼ぎしてなんになるってのかしら。相棒の助けでも待つ?まだ手こずってるみたいだけど」

 

「……」

 

 

 …ケプリベを出してさいきのいのりでぼむんを復活させる、それしか勝機はない。だがその隙が……。

 

 

「アハハ!だんまりだなんて寂しいじゃない!ムーンフォース!」

 

 

 もう防げるポケモンも迎撃できるポケモンもいない。万事休すか……。

 

 

「ベトベトン!とけるでござる!」

 

 

 すると俺たちとムーンフォースの間に紫色のヘドロが津波の様に現れて球体上に包みこんでムーンフォースを受け止めた。何事かと目を白黒させていると、タンクトップに紫色のズボンと言うラフな格好のかなり爽やかで凛々しい美男子が駆け寄ってきた。レジ袋を持っているところを見るに買い出し途中だろうか。

 

 

「危なかった、無事でござるか!?」

 

「え、誰…?」

 

「名乗るほどのものではござらぬよ」

 

 

 なんか変な口調だがなんかしっくりくるな。俺達を守ってくれたヘドロ…ベトベトンが美男子の傍に侍って警戒する。面白くないのはアケビだ。

 

 

「アハハ!邪魔するなんていい度胸じゃない!イケメンだからって調子に乗らないでよね!」

 

「おいアンタ、助けてくれたのはありがたいがアイツはブルーフレア団って言って危険だ。逃げた方が…」

 

「見た所同じオレンジアカデミーの生徒、困った時は助け合いでござるよ。…それに、ブルーフレア団は我としても見過ごすわけにはござらんよ」

 

 

 そう言ってアケビを睨みつける美男子。なにか因縁があるのか?それならとありがたくケプリベを繰り出す。

 

 

「見ればなにか手がある様子。我が時間を稼ぐ、その間に」

 

「わかった。よろしく頼む!」

 

「アハハ!邪魔するなら纏めて死ね!サイコショック!」

 

「ケプリベ、さいきのいのり!」

 

「ベトベトン!ベトベ(とん)の術でござる!」

 

 

 どくタイプに効果抜群な四つの念動力弾を形成し、一斉に飛ばしてくるハバタクカミだったが、美男子は己にベトベトンを纏わせるように渦を巻かせて弾き返すことで防御。とけるを利用した防御か。すごいな、ただ者じゃないと見た。

 

 

「ケプリベ、じんつうりき!これを空中で…!」

 

「アハハ!諸共に吹き飛べ!ムーンフォース!」

 

「ダストをシュートする術!」

 

 

 ゴミの塊を飛ばしてムーンフォースの着弾を一瞬遅らせている横を飛んでいくモンスターボール。遥か上空で神通力でスイッチを押されて飛び出したぼむんが、ハバタクカミを捉える。

 

 

「力強く急転直下!ヘビーボンバー!」

 

「嘘!?」

 

 

 さらに力業を発動したぼむんの隕石が如き一撃に叩き潰され、クレーターの真ん中でピクピクと震えて気絶しているハバタクカミ。強敵だった……。




ござる口調の美男子参戦。一体誰なんじゃろね。

高威力のムーンフォースにパワージェム、影から繰り出されるシャドーボール、設置型弾丸としても使えるサイコショックと強力な技のオンパレードだったハバタクカミ。さすがのウカでも相手が悪かった。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSミミズズⅢ

どうも、放仮ごです。ゲッコウガといい前回のイケメンござるといい忍者書くの楽しい。

今回はアイアールVSミミズズ。楽しんでいただけると幸いです。


「ラウラが心配だけど……ミミズズは止めないと!」

 

 

 ブルーフレア団幹部のポケモンの放った技で混乱してしまい、地中から半分体を出しながら高速で移動し見境なく暴れ回る潜鋼のヌシ…ミミズズを、コライドンに乗って追いかける。ラウラはブルーフレア団の幹部の相手を引き受けてこっちを任せてきた。任されたからにはやるけど……ああ、心配だなあ!

 

 

「逃げて、逃げてください!危険です!」

 

 

 ミミズズの行く手で戸惑って慌てているトレーナーや鉱夫に必死に呼びかけ避難させる。このままじゃ誰か巻き込まれてしまう。ここは……。

 

 

「ゲッコウガ!お願い!」

 

 

 まだいいニックネームを思いついてない最初の相棒、ゲッコウガ。合流後ずっと頼ってるけどそれ以外に思いつかないのだからしょうがない。

 

 

「かげぶんしんしてたたみがえし!あっちに誘導して!」

 

 

 人差し指で人気(ひとけ)の少なそうな方を指差し指示。一跳躍でミミズズの前方に先回りしたゲッコウガがカーブを描く様にかげぶんしん、地面に手を付けて捲り上げた地面でカーブを描いて無理やりミミズズの進路を変える。地中に潜られたら抜けられてた、混乱しているおかげだ。このまま…!

 

 

「ドーちゃん!…は効かないから……」

 

 

 えーと、えーと。はがねに強いのはじめんの他にはかくとうと……ほのお!

 

 

「お願い、シング!フレアソング!」

 

「LAAAAAA!」

 

 

 コライドンのハンドルを傾けて高台を走って滑空してミミズズに追いつき、並走しながらシングをミミズズの前に繰り出し、炎の歌の衝撃波を放って牽制。ミミズズは暴れながらすなあらしを放ち、それは竜巻状になってシングに叩きつけられる。

 

 

「シング、まただね!すあならしを使ってくる強敵!」

 

 

 コライドンにしがみついてすなあらしに耐えながら、負けじと歌っているシングにそう語りかける。忘れもしない、ブルーフレア団と初めて遭遇したあの時。コライドンを奪われ、すなあらしと一体化して無敵とも言える力で私達を追い詰めたシロデスナ。あの戦いでシングはアチゲータに進化して勝利した。だから私達は、同じような敵とまた出くわしたときでも負けない様に、強くなってきたんだ。テラスタルオーブを取り出し、構える。

 

 

「すなあらしなんか吹き飛ばしちゃえ!テラスタル!…フレアソング!」

 

「LAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

 

 そしてテラスタルしたシングの、渾身の咆哮にも聞こえる歌声が轟き、すなあらしを文字通り吹き飛ばして炎の衝撃波がミミズズに炸裂。地中から半身が飛び出て叩きつけられ、正気に戻ったのかブルブルと頭を震わせてこちらを睨んできた。私はコライドンに乗ったままシングとゲッコウガを両隣に侍らせて睨み返す。

 

 

「今までの大暴れは私達から仕掛けたし、混乱していたから大目に見てあげる。でもこれ以上暴れるって言うなら容赦はしない」

 

 

 そう睨みつけるとミミズズは地中に潜って行き、大地を鳴動しながらどこかへ移動する。そうだ、追いかけないと!ひでんスパイスも目的のひとつだ!あれはペパーのマフィティフと、ラウラの記憶を元に戻すために絶対必要なんだ!

 

 

「コライドン、ダッシュ!」

 

「アギャア!」

 

 

 シングとゲッコウガを一度ボールに戻し、コライドンに全速力で走らせて追いかける。そしてやってきたのは開けた空間。その岩壁を六本腕で殴りつけ、開いた洞窟から何かを取り出し咀嚼しているミミズズがいた。

 

 

「アイアール!騒ぎを聞きつけてきたら、なんか(なげ)え-のがいるなあ!?ラウラはいないみたいだがヌシを追い詰めたのか!?」

 

「ペパー!話は後!ラウラを助けに行かないといけないし、早く倒すよ!」

 

 

 するとそこにペパーがやってきて合流。ペパーは私の焦っている顔から現状に気付いたのか頷いてドククラゲ…じゃない、リククラゲを繰り出した。私もテラスタルしっぱなしのシングを繰り出す。

 

 

「スパイスの栄養で元気ハッスルちゃんみたいだな!眠らせてやるぜ!」

 

「ペパー、間違ってもじめん技撃たないでね!回復するから!」

 

「おうよ!アイアール、力を合わせるぞ!」

 

「うん、シング!フレアソング…!?」

 

 

 すると振り返って咆哮を上げたミミズズが高速で蛇行して頭部をシングに叩きつけてきて、怯んでしまう。ずつき、テラスタルしてゴーストタイプが無くなったから通じる様に…!?

 

 

「でっかくても関係ねえ!リククラゲ風味でバッチリ料理してやる!くさむすび!」

 

 

 すると横からリククラゲが地面から草を生やしてきてミミズズを拘束。すなあらしを放ち、身を捩って抜け出そうともがくミミズズ。シングは…駄目だ、まだ怯み…というか脳震盪から回復できてない。

 

 

「キノコのほうし!」

 

 

 すかさずキノコのほうしを振りかけてミミズズを眠らせるペパー。ペパーやっぱり結構強いよね!?

 

 

「今だぜアイアール!ぶちかましてやれ!」

 

「え、あ、うん!かえんほうしゃ!」

 

 

 そして大口に炎を溢れさせ、一気に解き放つシング。ミミズズは焼き尽くされ、黒焦げとなって目を回して倒れ伏す。

 

 

「やったな!アイアール!お疲れちゃんだぜ!それにしてもヌシポケモンの顔、意外とつぶらで笑っちゃったぜ…でかすぎてそれ以上に恐怖も大きかったがな!」

 

「ペパー、ひでんスパイスをお願い!私はラウラを…!」

 

「あ、おい!」

 

 

 私はシングを戻してコライドンに跨り、来た道を引き返す。無事でいて、ラウラ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私がラウラの向かったであろう場所に辿り着くと、ちょうどぼむんがムウマ……ムウマ?を倒している瞬間だった。ラウラの傍にはレジ袋を持ったラフな格好のイケメンがいて……誰!?

 

 

「ラウラ!」

 

「お、アイアール!そっちはどうだ?」

 

「なんとか沈めてスパイスも見つけたよ!その人は…?」

 

「ああ、こいつは名前も知らないけど助けてくれた…どうした?」

 

 

 するとイケメンは何かに驚いたような顔で手を口元にやってブツブツと何かを呟いていた。変な人だなあ。

 

 

なんと、ユーがあのラウラだったのか。なんという巡り合わせか…いやそれよりも。ユー、ブルーフレア団に聞きたいことがあるでござる。…そこに転がっている団員、どこで仕入れた?」

 

「…アハハ、なにそれ。そんなこと教えるわけないじゃない」

 

 

 するとイケメンに尋ねられたブルーフレア団の幹部は意気消沈していたのが嘘の様に元気になる。するとイケメンは右手を向けて傍のベトベトンに視線でなにやら指示を送ると、ベトベトンは腕を伸ばして幹部の首を締め上げる。ちょ、それはやりすぎ……。

 

 

「ぐっ、があっ…!?」

 

「おいなんのつもりだ!?」

 

「これは我らの問題。ラウラ殿たちは首を突っ込みめされるな。…見た所まだ若い者が多く見られる。大半がスター団から引き抜いたでござるな?」

 

「スター団…!?」

 

 

 ラウラも止めようとするも出てきたワードに止めようとする手が止まる。すると幹部は苦しげな声を上げながらも確かに、にやりと笑って見せた。

 

 

「アハハッ!……そうか、あなた、そうなのね!仲間の大半に離反されていたとも気付いていない不良ごっこのお子様たち!傑作だわ……」

 

「知ってることを全て話すでござる!」

 

「やなこった。生憎とこっちには隠し玉があるのよ……エスプリ!」

 

 

 そう、幹部のバイザー越しの視線の先。私達の背後から強烈な熱風が放たれて私とラウラとぼむん、イケメンの人とベトベトンは吹き飛ばされてしまう。拘束から逃れて倒れ込んだ幹部に肩を貸すのは、以前イダイナキバとの対決後に襲ってきた、全身ヘルメットと黒スーツで身を包んだ人物だった。

 

 

「アハハ!ハバタクカミがやられた時に既に救難信号は出しておいたのよ。残念だったわね!」

 

「目標確保。離脱する」

 

 

 どこからともなく飛んで来たファイアローの群れがブルーフレア団のしたっぱたちを持ち上げて飛び去って行き、自身もファイアローの脚に掴まったエスプリと共にブーツ下から炎を出して離脱する幹部。その間もねっぷうを放って時間稼ぎしていたウルガモスもボールに戻され、ブルーフレア団は完全に撤退してしまった。

 

 

「待つでござる!ユー、…まさか」

 

「…アンタ、スター団なのか?」

 

 

 何故かショックを受けた様子で固まっていたイケメンさんにそう問いかけるラウラ。イケメンさんは神妙な顔で振り返り、頷いた。

 

 

「我はスター団どく組チームシーのボス…シュウメイという」

 

「シュウメイ…お前がそうだったのか」

 

「まさかスター団の怨敵であるラウラ殿と共に戦うことになるとは思わなかったが……次会う時は全力で挑ませてもらうでござる。ごめん!」

 

 

 そう言ってベトベトンをボールに戻し、代わりに繰り出した車みたいなポケモンに乗って西の方に去っていくシュウメイ。それを見送ったラウラは笑っていた。

 

 

「…いいね。戦ってみたいと思った相手は今の記憶では初めてだシュウメイ。正々堂々挑んでやるよ」

 

「……いつもは正々堂々じゃないの?」

 

 

 話についていけてなかった私はそうツッコむことしかできなかった。




シロデスナ相手の大苦戦がトラウマになっているアイアール。同じ砂嵐を使う相手に勝利し克服。

ラウラを助けてくれたのがシュウメイだとも判明。こんな始まりの関係もいいじゃない、と。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSミミズズⅣ

どうも、放仮ごです。ロケット団とかの服を着てる悪堕ちはしてないヒロインが結構好きです。

今回はラウラの記憶が判明。楽しんでいただけると幸いです。


「よう、戻って来たかアイアール!ラウラも無事みたいだな!よかったぜ!」

 

 

 アイアールと共にコライドンに乗って連れてこられた場所には、ヌシミミズズになにかを食べさせて見送っていた、満面の笑みのペパーが待っていた。ミミズズに食べ物でもあげたんだろうか?なにはともあれ心配かけたみたいだな。

 

 

「遠目にあのヘルメット野郎が見えたけど大丈夫だったのか?」

 

「エスプリか。あいつは仲間を回収しに来ただけみたいだ。……なんか違和感はあったがな」

 

「ほのおタイプ使いっぽかったね」

 

 

 ウルガモスを使っているところや機械的なのは変わらなかったが、なんというか…体型?印象が違った気がする。いや全身隠しているし前に至っては俺の姿に変身していたから印象もくそもないが。それにシュウメイがなんか気付いてたっぽいんだよなあ。戦う時に聞いてみるか?

 

 

「待っている間にちゃっちゃか調査して置いたぜ。この中にスパイスちゃんがあるのを見つけた。特徴からしてひでん:しおスパイスだ。採取するのはお前たちが来てからがいいと思ってな」

 

 

 そう言いながらペパーが案内した洞窟内にあったのは白く光り輝く植物。…お前も早くマフィティフに食べさせたいだろうに。わざわざ俺達を待ってくれたのか、なんか悪いな。

 

 

「この形!色艶!すげえ不味くて体に良さそー!」

 

「しおか…カレーには合わなそうだな。いや、隠し味程度なら…?」

 

「ラウラ絶対記憶失う前からカレー好きだよね」

 

 

 それは思った。この間グロリアカフェで食べたカレー本当に美味かったんだよなあ…。

 

 

「えーと、なになに?本によると…ひでん:しおスパイスは手足の痛み・痺れをやわらげてくれる!筋力の低下にも効果があるらしい!だってよ!早速調理開始だ!」

 

 

 てきぱきと調理器具セットを用意、ホシガリスにジオヅムにスコヴィランにリククラゲと繰り出した手持ちと共に見事な手際で料理していくペパー。「ずりゃ!おりゃー!」という謎の掛け声と共にサンドウィッチにカレーが瞬く間にできあがっていく。俺達は手持ち六匹+ウカとコライドンを出してわくわくと待つ。この大所帯にも慣れたな。

 

 

「お待ちどうさん!食べて健康!ヘルシーサンドおあがりよ!今回はさすがに合うとは思わなかったからお好みでサンドウィッチに付けるカレースープも用意したぜ!友情のヌシバッジを見つめながら食ってくれ!」

 

「美味いな。特にカレーがいい」

 

「これ食べれるのも次で最後になるのか…ちょっと残念」

 

「おいおい、俺らはもうダチなんだぜ!いつでも食わせてやるよ!マフィティフも、ほら」

 

 

 マフィティフにサンドウィッチをちぎって食べさせながらそう言うペパー。ありがたい限りだな。…こうして前もカレーをたくさん食べてた気がする。そんなことを考えながらカレーを付けたサンドウィッチを口に運んでいると頭痛が襲ってきた。

 

 

「ぐうっ…」

 

「ラウラ!?」

 

「もしかしてまた記憶が…?」

 

 

 脳裏に知らない映像がフラッシュバックする。どこかの雪原で、デンチュラを連れてなにかを探していたこと。突如空中に出現した穴に引きずり込まれ、咄嗟に手持ちの収まっているボールホルダーをデンチュラに託して吸い込まれたこと。色とりどりな空間で何度も電撃を浴びながら飛び出した先、どこかの洞窟でバラとアケビ、そしてもう一人の人物が何か話していたところに出くわしたこと。ポケモンを嗾けられ、手持ちもいないので対抗できずに拘束され、そして……。

 

 

――――試作型イクスパンションスーツの負荷に耐えられなくなったのね。十分なデータは取れたわ、どこか人気(ひとけ)のない所に捨て置きなさい

 

 

「思い、出した……。ブルーフレア団に捕まって、俺もエスプリにされて…」

 

「エスプリ!?」

 

「エスプリってあのヘルメットのか!?」

 

 

 断片的にしか思い出せないが、俺にはデンチュラが手持ちにいて、雪原からどこかに飛ばされて、そこでバラやアケビたちブルーフレア団に遭遇して……エスプリの着ていたあのスーツ、あれとよく似たものを着せられて一週間近くひたすら実験されたんだ……。

 

 

「……結局、俺はいったいどこから来たんだよ……」

 

「…ラウラ」

 

「でもよかったな、ラウラの記憶が少しでも思い出させて。こっちは駄目みたいだ。サイコーな食いっぷりだったけど、毎回ちゃんと元気になるとは限らないみたいだ」

 

「マフィティフ、駄目だったか…」

 

「コライドンも力を取り戻してきてるみたいだけどバトルフォルムに戻る気配が一切しねえ。こっちは身体は元気だけど精神的な理由なのか…?戦いで怖い体験したからトラウマになって戦うのが怖くなったのかもな」

 

「ごめんねコライドン、いつも戦いに巻き込んで…」

 

「アギャアス…」

 

 

 それぞれ別の理由で落ち込む俺達。するとペパーが両頬を叩いて立ち上がった。

 

 

「大丈夫だ!安心しろ!俺とラウラとアイアールが一緒に、絶対元気にしてやるからな!マフィティフも、ラウラの記憶も、コライドンもだ!残り一つ、偽龍のヌシ!そいつを倒せば全部解決だ!きっと……うん、きっとそうだ!」

 

「…ああ、落ち込んでいる場合じゃないな。記憶を取り戻せば全部わかるんだ」

 

「うん!スパイス探しの旅も次でラストだもんね!」

 

「気合い入れて探すぞ!エイ、エイ、オー!」

 

「アギャ!」

 

「バフ…」

 

 

 ペパーに元気づけられ、俺とアイアールもコライドンもマフィティフも頷く。……ブルーフレア団に聞きたいこともできたが、もうひとつ。俺も着させられていたあのスーツ……エスプリは何者なんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあな!俺は先に偽龍のヌシの所にいって弱点を探っておくぜ!」

 

「うん、わかった!できるだけ早く合流するね!」

 

 

 ペパーが去っていき、俺とアイアールも一息つく。さて、いつもの調子ならそろそろ……。お馴染みアイアールのスマホロトムの着信音。来たか。

 

 

《ロトロトロトロト……「ハロー、アイアール。ラウラ。こちらオーリム。どうやらコライドンがまた一つ本来の力を取り戻したようだな。今回は「大ジャンプ」。ジャンプの高度が上がった様だ」》

 

「博士。ひとつ質問がある。空に大穴が開く事象を知らないか?」

 

 

 そう尋ねると、スマホロトムの向こうから息を飲む声が聞こえた。何か知っているとしたらアンタしかいないだろうさ。

 

 

《「………どうやら君がパルデアに来た時の事を思い出したようだね。それに関してはすまない。私が奴等の凶行を止められなかったばかりに……稼働実験に巻き込まれてしまった」》

 

「その奴等ってのはブルーフレア団のことか」

 

《「…そうだ。君が捕まり、利用されるのを私は見ていることしかできなかった。…スパイスを食べてそこまで記憶を取り戻したということは次のスパイスを得た時、完全に思い出す可能性が高い。そのあと全てを君に話そう。引き続きコライドンをよろしく頼んだよ」》

 

 

 そう言ってオーリム博士は通話を切った。…話が見えてきたぞ。オーリム博士の研究かなにかがブルーフレア団に無理やり使われて、その影響で俺はここに来た。なすすべなく捕まった俺は実験台にされて、その影響で記憶を失い捨てられた。多分こうだ。

 

 

「…バラにもアケビにも借りがあるからな。ぶっ潰す理由が増えた」

 

「ラウラ…でもあの、フレア団は…ううん、なんでもない」

 

「アイアール?」

 

 

 アイアールの様子が気になったが、とりあえず今は気にしないことにした。何時か話してくれるだろうから。




思い出したのはブルーフレア団との因縁。エスプリにされていたって言う。

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VSコンパン

どうも、放仮ごです。今回は結構シリアス回になります。楽しんでいただけると幸いです。


 ブルーフレア団をぶっ潰すと言う決意も新たに東3番エリアを突っ走るコライドンに乗る俺とアイアール。目的地は東3番エリアの西に位置する鉱夫の町、ピケタウンだ。そこからジムが二つあるナッペ山か、スター団どく組チーム・シーのアジトがあるしるしの木立ちどちらかを目指すのが安定だろう。

 

 

「しっかし広いなここは」

 

「そうだねー、おいしい水を買い溜めしといてよかった」

 

 

 しるしの木立ちに行くなら東3番エリアの途中で北上するのが一番早いのだが、コライドンなしで行くのは辛いし、アイアールを巻き込みたくないからとりあえずピケタウンに行くことになった。ロースト砂漠にも匹敵する広さと暑さだ、油断はできない。

 

 

「でもラウラ?」

 

「なんだ?」

 

「スター団に巻き込まれるかどうかは今更だと思うんだけど……もっと危険なブルーフレア団に何度も遭遇してるし」

 

 

 真っ直ぐ前を見て運転しながらそう言ってくるアイアール。まあそれはそうなんだが…。

 

 

「こればっかりは俺の問題だ。お前もまで恨まれるわけにもいかないだろ」

 

「あ、私を心配してなのか……一蓮托生だから気にすることないのに」

 

「もし俺が本格的に狙われるようなことになったら、お前と別れて一人ででも旅する覚悟だ」

 

「……そういうの、やだな」

 

 

 前を見続けるアイアールの表情を窺うことはできないが、声色から怒っていることは想像ついた。

 

 

「いや、コライドンを持っているからブルーフレア団に狙われることはしょうがないにしても、スター団はお前には本当に何も関係ないだろ。わざわざ面倒事を増やすな」

 

「だから、私も一緒に戦えるよ!1人より2人での方が……それとも私、そんなに弱い!?」

 

「いや、お前の強さは認めるがそれとこれとは関係ないだろ。俺はお前に巻き込まれて欲しくないだけで……」

 

「むしろ巻き込んでよ!友達でしょ、一緒に旅してる仲間でライバルでしょ!私はやれるよ!」

 

 

 そう声を荒らげるアイアール。……だけどなあ。アイアール、明らかにブルー…いや、フレア団になにか悪感情を抱いているんだよなあ。

 

 

「……前回のほのお組でわかったんだが、スター団はブルーフレア団の庇護下にある組織らしい。ボスの一人もブルーフレア団の用心棒で……シュウメイとアケビの問答でも言ってた通り、奴らの息がかかった団員が何人もいる。多分一枚岩じゃない」

 

「…ブルー、フレア団の……」

 

 

 説明すると分かりやすく意気消沈するアイアール。やっぱりな。初めて会ったバラやエスプリの時は多分、フレア団とブルーフレア団が繋がらなかったから平気だったんだろうが…重なったんだろうな。俺がバラと遭遇したときの電話とか、あまりに過剰に心配していた。

 

 

「お前の過去に何があったかは知らない。だけど、フレア団と何かあったのは分かる。抱いている感情は恐らく、恐怖か…畏怖、または嫌悪か」

 

「っ……」

 

「…それでも関わりたいか?」

 

「……ごめん、無理」

 

「アギャ?」

 

 

 立ち止まり、心配する様にアイアールに顔を向けるコライドン。アイアールは自身の身体を両手で抱えて震えていた。

 

 

「何時から気付いてた?」

 

「アケビの襲撃の時だな。明らかに強張っていた。…会ったことがあるんじゃないか?」

 

「…あっちは覚えていなかったみたいだけどね。ねえ、入り口まで送るぐらいならよくない?」

 

「…お前がいいなら」

 

 

 その後、しるしの木立ちに進路を変えてまた走り出す。その間、どちらも無言で何とも言えない空気が流れていた。こんな空気にしやがって、ブルーフレア団ぶっ潰す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…じゃあこのポケモンセンターで待ってるね」

 

「必ず帰ってくるから安心しろ」

 

 

 しるしの木立ち前のポケモンセンターに辿り着き、コライドンから降りてアイアールと別れた俺は林の中に入って行く。なんで荒野の横にこんな生い茂った森があるんだ?カラフルな模様が描かれているのはスター団の縄張りの証とかそんなところか。すると森に入ったすぐ先に見覚えのあるリーゼントが見えた。

 

 

「お。校長…じゃない、ネルケ!」

 

「ラウラ。今の俺はネルケだ。そういうことにしといてくれ。いい機会だ……この前話しそびれた続きを聞いてくれ」

 

「なんでしたっけ」

 

「俺がスターダスト大作戦に参加しているのはスター団の問題と謎を探るため、スター団に入っている生徒たちの不登校の理由を知るためだ。団を解散させたいカシオペアと利害は一致してるしな」

 

 

 そういやそんなこと言ってたっけか。…ブルーフレア団も関係あるんかな。

 

 

「実際、ラウラとスターダスト大作戦に加われてスター団に近づくことができたし、団のボスたちと話してわかってきたこともある。だがもう少し情報が欲しい。そのために残るスター団たちとも話がしたい。だからアジトに挑むなら力を貸すぜ。じゃあ俺は見張りに戻る。またなラウラ」

 

 

 言うだけ言ってネルケは行ってしまった。どうせカチコミする時に合流するんだし一緒に行ってもよくないか…?まあいいや。それよりも、だ。

 

 

「蟲ポケモンがいっぱいいそうないいところだが……」

 

 

 …なんだ?林に入ってから視線を感じる。見張られている…?

 

 

「おっ、ダーマ…じゃない、ワナイダー。それにコンパンまで…天国かここは?」

 

 

 木の上にしがみ付くワナイダー可愛いな。コンパンもとてとて歩いてる姿が可愛い。……いや本当に可愛いな?

 

 

「……ちょっとぐらい寄り道してもいいだろ」

 

 

 道を外れて、コンパンを追って林の奥に入って行く。ああ、癒される……コンパン手持ちに入れてもいいかもなあ。でも今のメンバー外したくないしなあ……あれ、コンパンどうしたんだ?そこで止まって、振り…返って…?

 

 

「げほっ、ごほっ!?」

 

 

 崩れ落ちて咳き込む。なんだ、これ……毒か?コンパン、いやこいつは囮か…くそっ。足音が聞こえて、なんとか首を動かして視線を向ける。そこには、青いサングラスをかけたスター団のしたっぱの男女二人が立っていて。

 

 

「引っかかった引っかかった♪やりましたねパイセン!よくやったコンパン!」

 

「スター団のボスは馬鹿だからな。気付きもしないだろうさ」

 

「なにも待ち構えなくても、罠にかければコロッと引っかかる。これで私達、幹部ですかね!?パイセン!」

 

 

 くそっ、やらかした……青いサングラスのスター団……ブルーフレア団のやり口をなめていた…ちく、しょう…




アイアールとはぎくしゃくした空気になったあげく、罠にかかってしまうラウラ。前作でもそうでしたが、自分を思ってくれる人の心がわからないやら、蟲に首ったけなのがラウラの欠点ですね。

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VSベトベターⅠ

どうも、放仮ごです。仕事で疲れてて遅くなりました。申し訳ない。

今回はラウラ大ピンチ。楽しんでいただけると幸いです。


「……いくらなんでも遅くない?」

 

 

 ラウラがしるしの木立ちに向かって半日。戻ってこないどころか一切連絡が無い。スマホロトムに何度連絡を入れても反応が一切ない。ラウラなら長くても一時間かからないだろうに……なにか、あった?

 

 

「…どうしよう」

 

 

 スター団がブルーフレア団と関わっていると聞いてから嫌悪感と恐怖がぬぐえない。しるしの木立ちに足を踏み出そうとして、怖気づく。

 

 

「アギャ?」

 

「ゲッコ」

 

 

 傍で私を見ていたコライドンが首をこてっと傾げ、背後に控えていたゲッコウガが腕を組みながらじっと見つめている。…この感情は今の手持ちだとゲッコウガしか知らない。コライドンは今にもラウラを捜しに行こうと促していて、ゲッコウガは黙って私に従う意向の様だ。

 

 

「…うん。フレア団には正直もう関わりたくないけど……ラウラが心配だ。お願いコライドン、この強張って動けない私の身体を連れてって」

 

「アギャアス!」

 

 

 意を決してコライドンに跨り、しがみ付くとラウラの匂いを辿っているのか爆走するコライドンと、走ってついてくるゲッコウガ。すると目と鼻の先にあるスター団のアジトらしきバリケードではなく横に逸れて、森の奥へ奥へと入って行く。

 

 

「…ラウラ、なんでこんなところに…?」

 

 

 そしてコライドンがあるところまでやってくると、嫌な顔をして飛び退いた。ゲホゴホと咳き込んでいるのを見るになにか目に見えない嫌なものが充満しているらしい。

 

 

「コライドン、大丈夫!?」

 

「アギャス…」

 

「ありがとう、戻っていいよ」

 

 

 力なく首を横に振るコライドンをボールに戻し、ゲッコウガと共に辺りを散策する。……周りにはワナイダーやコンパン、カリキリにビビヨン、ビークインとラウラ好みの蟲ポケモンがいっぱいだ。大方これらに惹かれて道を外れたとかそんなんだろうけど、連絡に出ないのはさすがにおかしい。

 

 

「もう一度電話…」

 

《ロトロトロト……》

 

「え?」

 

 

 もう一度電話をかけてみると、スマホロトムの着信音が聞こえてきてキョロキョロと周りを見渡すと、ゲッコウガが茂みの中に手を突っ込んでそこからスマホロトムを抜き取った。ラウラのスマホロトムだ。それだけじゃない、ゲッコウガがまさぐった茂みの中から転がってきたのは見覚えのあるもの。

 

 

「エクスレッグヘルメット…ラウラのだ」

 

 

 これが転がっているってことは、ラウラは転倒した可能性が高い。確かバッグに入れて持ち歩いていたはずだ。さっきのコライドンが咳き込んだものといい、ポケモンの恐らくどくのこななどの技を受けたのだろう。意を決して、様子を窺っていたカリキリに尋ねてみる。

 

 

「ねえ、これを被っていた女の子がどこに行ったか知らない?」

 

 

 すると、少し考えてからとてとてと歩き出すカリキリ。私とゲッコウガは顔を見合わせると、それについていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意識が覚醒する。しかし身動きが取れない。見てみれば木にロープでグルグル巻きに縛られていた。

 

 

「ぐうっ、げほっ!ごほっ!…ここは……?」

 

 

 咳き込んで異物を吐き捨てながら周りを見渡す。傍にはスター団のマークが描かれたテントが設置されている。林の中でひっそりと建てられている辺り、チーム・シーのアジトじゃなそうだ。縛られている後ろ手でなんとか腰のボールホルダーに手を伸ばすが……ない。バッグもない、服以外の身ぐるみ剥がされている。そこで思い出す、コンパンに誘われて着いて行った先で苦しくなって倒れ、青いサングラスのスター団…ブルーフレア団したっぱに襲われたことを。

 

 

「…あれはどくのこなか。エクスレッグヘルメットを被っていれば防げたんだろうが……油断したな」

 

 

 身を捩るが、ロープはきつく縛られていてビクともしない。なんとか首を下ろして噛み切れないかと頑張る。もう、少し……。といったところでスター団のテントから誰か出てくる。見ればオレンジアカデミーの着崩した制服に身を包んだ、モトトカゲにライドする用のヘルメットに青いサングラスのスター団の男女二人組、意識を失う前のアイツらか。

 

 

「あ、ラウラ起きてるよパイセン!」

 

「よう、俺達を覚えているか?」

 

「…生憎としたっぱの顔を全部覚えているほど暇じゃないんでね」

 

 

 俺を見下しながら尋ねてくる男のしたっぱにそう吐き捨てると、傍に控えていたベトベターのドレインパンチと思われる拳で腹部を殴られえづく。

 

 

「がっ…!?」

 

「これでも思い出さないか?」

 

「あんたが思い出せなくてもこっちは恨み募っているんだからね!」

 

 

 そう言う女の方の傍にいるのはシルシュルーとコンパン。このコンパンは…ベトベターに、シルシュルー……スター団どく組チーム・シー……あれ、どっかで。

 

 

「お前らまさか、宝探しの前にテーブルシティで俺を勧誘した…?」

 

「ようやく思い出したか。いつぞやは世話になったなあ!」

 

「そうよ、お久しぶり。貧弱ポケモンを使うむしけらさん?」

 

「てめっ…があ!?」

 

 

 そのままシルシュルーに肩をかみつかれ、ベトベターに顔を殴られる。それをにやにやと眺める二人。俺が初めてであったスター団か…!

 

 

「正直欲しくも無かったけどアンタを誘き寄せるためだけに捕まえたこのコンパンのどくのこなのお味はいかが?」

 

「俺を捕まえるためだけに蟲を利用したってのか…!」

 

 

 こいつ、絶対に許さん!首を伸ばして噛み付かんとするが、届かない。くそっ、こんな拘束…!

 

 

「悔しいならほら、手を出して見なさいよ?もっとも?手も足も出ないだろうけどね!」

 

「お前ら、ブルーフレア団の手先だったのか…!?」

 

「お前と前に会った時は正真正銘スター団だったぜ?でも俺達は選ばれたんだ!どうだこのサングラス、いかすだろ?」

 

「私達と貴方の戦いを見ていたある方に勧誘されてね。才能あるって言ってくれたのよ。見る目の無いスター団のボス共とは違う!私達の輝ける才能を見出してくれたあの方に一生ついていくと決めたの!」

 

 

 …それ絶対騙されてるだろ。そんな意を込めたジト目で睨みつけるが、二人はまるで意に介さない。

 

 

「まだしたっぱだけど、私達はこんなところでくすぶっているような連中とは違う!」

 

「ラウラ、お前を捕まえることで俺達は幹部になり上がる!お前の持っているハチウヲネハ?を献上するんだ!」

 

「チヲハウハネだ馬鹿野郎」

 

 

 口内に溜まった血を吐き捨てながら訂正すると、今度はベトベターにはたかれる。指示することなく以心伝心するとは仲よろしいようでうらやましいこった。

 

 

「口の利き方に気を付けろ?ベトベターがその気になったらどくしゅで死ぬぞ?」

 

「このままこの没収したお前のポケモン全部を献上してもいいんだけどね?私とパイセンはアンタに恨みがある。それを発散してからでも遅くないわよね?」

 

「安心しろ。ここは人も滅多に来ないスター団穏健派のテントだ。今は人払いしているから誰も来ない」

 

「悲鳴をいっぱい聞かせて私達の溜飲を下げることね!」

 

 

 くそっ、万事休すか……。と、次の瞬間。二人の足元に突き刺さって弾ける水の手裏剣。二人は驚いて飛び退き、周囲を警戒する。

 

 

「何者だ…!?」

 

「危ないわね!?」

 

 

 すると、木の上からゲッコウガに抱えられて飛び降りてきた人物がいた。オレンジアカデミーの夏服に身を纏い、顔をエクスレッグヘルメットで隠した謎の人物がビシッとかっこいいポーズを決める。…って。

 

 

「わ、私は……えっと、通りすがりの謎のヒロインエクス!その人を離しなさい!」

 

 

 …なにしてんだ、アイアール?




まさかまさかの、序盤で最初にラウラと出会った、チーム・シーを名乗っていたあのコンビでした。あのあとブルーフレア団に鞍替えしているという控えめに言ってクズコンビ。なんならラウラがスター団ぶっ潰すと決意したのもこいつらのせいであるはた迷惑コンビです。

そこに登場、通りすがりの謎のヒロインエクス…ことアイアール。なんでこうなったかは次回にて。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSベトベターⅡ

どうも、放仮ごです。今回はポケスペ金銀編のある戦いを参考にしました。

今回はラウラを救うためにアイアールもとい、通りすがりの謎のヒロインエクスが大奮闘。楽しんでいただけると幸いです。


 数刻前。ラウラのエクスレッグヘルメットを拾った私は何か知ってるらしいカリキリを追いかけて森の奥へ向かっていた。しばらく歩くと聞こえてくる怒号と、ラウラの声。

 

 

「いた……だけど、ブルーフレア団…」

 

 

 会話を聞かなければよかったかもしれない。奴らがフレア団に連なる者だと知らなければ愚直に突っ込めた。でも無理だ、足がすくむ。手が震える。カチカチと歯が鳴る。もう関わりたくないと心が叫ぶ。

 

 

「ひっ、、はぁ、こひゅっ……すぅ、はぁ!」

 

「ゲコッ」

 

 

 過呼吸になって苦しくなるもなんとか落ち着こうと肩で息をしていると、ゲッコウガに両肩を叩かれて正気に戻る。ジッとこちらを見つめてくるゲッコウガ。

 

 

「…うん、ごめん。君に甘えてばかりだね」

 

 

 私の最初の相棒。なのに関わらず、嫌でも最悪な記憶を思い出してしまうから、カロスの旅を中断してからずっと他の手持ちと一緒に、……がいなくなって人手が足りない家の手伝いをしてもらっていた。申し訳ない気持ちでいっぱいで、話すことすら最低限だったのに、今でも言うことを聞いてくれているのが、泣きたくなる。

 

 

「もう、目を背けて逃げ続ける訳にもいかないよね。真正面から向き合わないと…でも、動けないよ。ラウラを助けたいのに、どうすればいいんだろう……」

 

「ゲコ」

 

 

 するとゲッコウガが私の抱えているラウラのエクスレッグヘルメットを指差してきた。被れって、こと?そう言えばラウラ、これを被ったらいつもより強気になってた。高かったって言ってたしそういう効果があるのだろうか?

 

 

「…ええい、ままよ!」

 

 

 眺めていてもラウラの苦悶の声が聞こえてくるだけなので、意を決してエクスレッグヘルメットを被る。あ、ラウラの匂い……って、そうじゃない!なんだろう、顔を隠しただけなのに落ち着いてきた。安心感があるというかなんというか。…うーん、なんだろ。今なら何でもできる気がする!

 

 

「ゲッコウガ、私も連れて上に!」

 

「ゲコ」

 

「牽制する様にみずしゅりけん」

 

 

 そう指示した私を抱えて跳躍、木の上に飛び乗って様子を窺ってからみずしゅりけんを発射。スター団の恰好をしたブルーフレア団……ややこしいな!とにかく、ラウラから遠ざけることに成功する。

 

 

「何者だ…!?」

 

「危ないわね!?」

 

「ゲッコウガ、お願い」

 

 

 ゲッコウガに抱えられたまま飛び降りて、警戒させるためにそれっぽいポーズを決める。え、えっと、なんか言った方がいいかな!?(目グルグル)

 

 

「わ、私は……えっと、通りすがりの謎のヒロインエクス!その人を離しなさい!」

 

「なにが謎のヒロインだボケこら!そのゲッコウガとかいうポケモン知ってるぞ!」

 

「ドンナモンジャTV見たもの!ラウラの相棒のアイアールでしょアンタ!」

 

「すぐばれた!?……な、なんのことかな!?」

 

「いや、無理があるぞ…」

 

 

 ラウラにもツッコまれたけど、もうこのまま行くしかない!

 

 

「ゲッコウガ、たたみがえし!」

 

「え、あ、シルシュルー!?」

 

 

 たたみがえしで打ち上げられ、四方八方から水刀を構えたゲッコウガに切り刻まれ、落下するシルシュルーは目を回して崩れ落ちた。戦闘不能だ。

 

 

「この…やっちゃいなさいコンパン!とびつく!」

 

「ベトベター、ドレインパンチ!」

 

 

 女の指示で飛びついてくるコンパンをゲッコウガが殴り飛ばすも、横から溶けた状態でいきなり実体化したベトベターの拳が炸裂、殴り飛ばされる。あくタイプのゲッコウガに効果抜群の攻撃ばかり…厄介だ。

 

 

「どくのこな!」

 

「そんなもん、効くかあ!」

 

 

 するとコンパンが横からどくのこなを放って来たが、エクスレッグヘルメットのおかげで全然効かない。命令していた女にずんずん近寄り、ヘルメットの頭突きを叩き込む。

 

 

「いったーい!?」

 

「今!ゲッコウガ、コンパンにみずしゅりけん!」

 

 

 悲鳴を上げながら仰向けに倒れる女したっぱ。コンパンはそれを見て狼狽えてキョロキョロと見渡し、そこにみずしゅりけんの束が炸裂。コンパンはぱたりと倒れて戦闘不能となった。

 

 

「後輩!?やるな……だが、俺達がラウラに負けてからなにもしてないと思ったら大間違いだぞ!」

 

「そんな付け焼刃!つじぎり!」

 

「付け焼刃かどうかはその身を持って味わえ!ちいさくなる!」

 

「なっ!?」

 

 

 するとシュルシュルシュルと瞬く間に縮んで草陰に隠れて見えなくなるベトベター。水刀は空振り、前転したゲッコウガは体勢を立て直して警戒する。

 

 

「ヘドロこうげき!」

 

「きゃっ…ゲッコウガ!?」

 

 

 すると死角から飛んで来たヘドロの塊から、私を横抱きで抱えて飛び退くことで回避するゲッコウガ。私を狙ってきた!?げしげしと女を蹴って起こそうとしている男が見える。また2VS1になったらこの状況を覆せる気がしない!

 

 

「おい、起きろ後輩。お返しさせてもらうぜ!マッドショット!」

 

「アイアール、逃げろ!」

 

 

 さらにヘドロこうげきに織り交ぜて泥の弾丸まで飛ばしてくるベトベター。泥の弾丸が掠ったゲッコウガのすばやさが下がり、ゲッコウガにヘドロこうげきが当たり始めた。ラウラがそう言ってくるがそういうわけにもいかない。ゲッコウガは木を蹴って次から次へと飛んでくるヘドロこうげきを回避し続けるが、このままじゃじり貧だ。

 

 

「ゲッコウガ、あのね………みずしゅりけん!」

 

「そんなもん当たるかよ!」

 

 

 四方八方から次々飛んでくるヘドロこうげきを避けながら、みずしゅりけんを投げるゲッコウガ。ベトベターに当たるとは思ってない、目的は…!

 

 

「いたたっ…ってパイセン!?ラウラが逃げてる!」

 

「なんだって!?」

 

 

 目を覚ました女したっぱが指摘した通り、いつの間にか縄が切れてラウラは逃げ出していた。ベトベターを狙っていると見せかけたみずしゅりけんで、密かにラウラの拘束を解いていたのだ。もうあとはラウラ任せだけど!

 

 

「逃がすか!」

 

「ベトベター!そのまま続けろ!後輩、絶対に逃がすな!」

 

 

 ベトベターに攻撃を続けさせながら、男の方がブロロンを出して二人してラウラを追いかけるしたっぱコンビ。ラウラはなにかを探しているのかキョロキョロと辺りを見渡している。あれ、ボールは多分あのテントの中だと思うけど…とっている間にまた捕まることを危惧したのかな?じゃあ、何を探して…?

 

 

「いた!……こっちだのろま!」

 

「なんだと!?ブロロン、ずつきだ!」

 

 

 すると顔を輝かせたラウラが挑発、ブロロンが放ったずつきを、華麗に避けて木にぶつけさせた。バサバサと木の中にいたのかヤミカラスの群れが飛び立っていく。

 

 

「万事休すだなあ、ラウラ?」

 

「大人しく捕まるのが身のためだと思うけど?」

 

「…ああ、同感だ。お前らがな」

 

「「は?」」

 

 

 瞬間、二人の間の足元に突き刺さる、モンスターボールを改造したと思われる手裏剣。次の瞬間ボールが開いてベトベターが飛び出し、そのドロドロの身体で二人を飲み込んで拘束してしまった。

 

 

「今だ、みずしゅりけん!」

 

 

 それに驚いてベトベターの攻撃が止まったところにみずしゅりけんが炸裂、撃破してラウラに駆け寄ると、腕を組んでドヤ顔していた。

 

 

「い、いったいなにがあ…!?」

 

「ここはお前らスター団のテリトリーなんだろ?なら、異常が起きれば来るはずだよな?お前らのボスが」

 

「…かたじけのうござる。ラウラ殿を待ち構えていたら、こんなことになっていたとは」

 

 

 そこに降り立ったのは、紫の忍者。え、誰?その口調、もしかしてシュウメイさん?

 

 

「シュウメイか。悪いな、お前の手を借りるしか思いつかなかった」

 

「こちらこそ悪かったでござる。…仮にもうちの部下がこんなことをやらかすとは。謹んでお詫び申す。これではいじめっ子どもと何も変わらんでござるぞ」

 

「「ひ、ひぃ~!?」」

 

 

 怯える二人。…何だか知らないけど、解決した様で何よりだ。




結構強かった男したっぱでした。ベトベターの技はドレインパンチ、ちいさくなる、ヘドロこうげき、マッドショット。なお女。

ヘルメットを被って現れたのは、仮面効果故でした。違う自分になった錯覚は意外と馬鹿にならないのだ。ラウラの匂いで安心したのもあるかもしれない(目そらし)

目に見える異常を起こすことでシュウメイを呼びだし勝利。感想でボール手裏剣のこと言われてビクッとなりました。こういうボスとの関係もあっていいじゃない。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSベトベトンⅠ

どうも、放仮ごです。ゲームとかを小説にすると原作のイベントをどう消化するのかが一番の鍵になりますよね。まんまだとダメですし。

今回はシュウメイとの語り合い。楽しんでいただけると幸いです。


「うちの…元部下が迷惑かけたでござるな」

 

 

 包帯と傷薬を手に傷付いた俺の身体を治療するシュウメイに事のあらましを話すとそんな言葉が返ってきた。エクスレッグヘルメットを被ったままのアイアールはテントの中に入って物色しているようだ。

 

 

「いや……災難なのはお前たちもだろう。アケビによればしたっぱのほとんどがブルーフレア団に鞍替えしているとか」

 

「信じたくないでござるが……そもそも我々スター団はいじめられっ子の寄せ集めでござるからな。服従を強制しているわけでもなし。気が変わっても仕方がないやもしれぬ」

 

「カシオペアが言っていたな…大半がいじめられていたり、人付き合いが苦手なだけのオレンジアカデミーの学生が集まってスター団が結成された…一人では立ち向かえないいじめに打ち勝つために、だっけか」

 

「カシオペア…?」

 

「…あー、忘れてくれ」

 

 

 シュウメイから語られた言葉に思わず言ってしまったが、これ内緒だった。危ない危ない。

 

 

「…その話、どこから得たでござるか?」

 

「生徒のSNSをハッキングして突き止めた情報らしいが」

 

「それは妙でござるな。当時の事を知っている生徒がSNSで話すとは到底思えぬ……新たな教師たちに我らの事情を説明しようともしなかった連中でござるし…スター団からしたら思い出したくもない過去でござる」

 

「…それは確かにおかしいな?」

 

 

 じゃあカシオペアはどこからその情報を…?するとテントの中から、やっぱりエクスレッグヘルメットを被ったまんまのアイアールが俺の鞄とボールホルダーを手に出てきた。お前何時までそれをつけてるんだ…?

 

 

「ラウラの荷物と手持ち、見つけたよ。七匹とも、みんな無事みたい」

 

「ありがとうアイアール」

 

「それにしても、そこの御仁」

 

「な、なんですか?」

 

 

 俺に荷物とボールホルダーを渡してから、シュウメイに声をかけられて手をちょこんと伸ばして身構えるアイアール。ホアーとか言って振り回してるのアホっぽいぞ。

 

 

「そう身構えなくてもよい、我は手負いを襲うような野暮はせぬよ。それよりも、いいポケモンをお持ちでござるな。ゲッコウガといったか…興味深いでござる」

 

「あ、ゲッコウガですか!私の相棒で、しのびポケモンでですね!みず・あくタイプでみずしゅりけんが得意技で、とくせいはたしかきz…」

 

「落ち着け!」

 

「はう!?」

 

 

 シュウメイに相棒の事を聞かれて嬉しかったのか、極度の緊張状態だったせいかペラペラと早口で喋りだしたので背中を叩いて正気に戻す。

 

 

「しのびポケモンでござるか…どくテラスタルがいたらぜひとも捕まえてみたいでござるな。我は忍者の末裔故」

 

「そうなのか?」

 

「自称でござる。我は忍者オタク故。オタクの道は修羅の住まう棘道(いばらみち)。凡人に理解を乞う気はござらぬよ」

 

 

 そう語るシュウメイのまなざしは哀愁漂っていて。……スター団の根幹に当たるものが分かった気がした。……あの二人みたいなクズは少数派と考えた方がよさそうだな。

 

 

「そうか…いいと思うぞ、好きなものは貫きたいよな。俺も蟲オタクだ」

 

「私はポケモン博士志望!」

 

「なんと、種類は違えど同志でござったか!……もう少し早くユーたちと出会えていたらよかったでござるな……」

 

「シュウメイ……俺は、あの二人に大好きな蟲ポケモンを貶されて、スター団はみんなそういう奴等だと思ってぶっ潰そうと決めたんだ」

 

「…そんなことをしたでござるか」

 

「「ひい!?」」

 

 

 シュウメイに睨み付けられてベトベトンに捕らえられているしたっぱ二人は震え上がる。やっぱりあれはこいつらの独断だったか。

 

 

「……だけど、そうじゃないらしい。ピーニャやメロコ、ビワと出会って戦って、お前らにも信念があると分かった。こういう奴等は一握りだってこともな。だから、スター団だからって恨むのはやめにする」

 

「…かたじけない。でもだからといって手は抜かないでござるよ。正々堂々カチコミして我の(もと)まで辿り着くがいいでござる」

 

「望むところだ」

 

「…これは?」

 

 

 拳を突き出すと首をかしげるシュウメイ。…うーん、なんだろう。無意識に拳を突き出してたけどなんだっけ…あ、そうだ思い出した。

 

 

「なに由来かは忘れたけど友情(ダチ)の証だ。お前とはダチとして戦いたいと思ってな」

 

「ダチ…!よもやマジボス殿たち以外とそのような関係に……喜んで、でござる!」

 

「こうしてこうして、こうだ!」

 

 

 シュウメイも突き出した互いの拳を数回打ち合わせて、揃って笑みを見せる。こいつとは気持ちよくバトルができそうだ。

 

 

「では我からもこれを」

 

「これは…手裏剣型のモンスターボールか?」

 

 

 シュウメイが懐から取り出して手渡してきたのはベトベトンも入っていたあのボール手裏剣だった。…なんか既視感あるんだよなあ。

 

 

「ある地方の忍者のものを参考にして改造したボールでござる。かなりの飛距離を飛んで壁などにも突き刺さるため不意打ちに使えるでござるよ。…ブルーフレア団と戦っているならこういう絡め手も重要でござる」

 

「なるほどな。ありがたく受け取るよ」

 

 

 ウカ辺りを入れて切札として使うかなあ。ウカが言うことを聞いてからじゃないとろくに使えなそうだが。

 

 

「…ちょっと妬けるな」

 

「なにがだ?」

 

「なんでもない!」

 

 

 アイアールがなんか呟いてたけどなんだったんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では我はこれで。この二人の処遇は任せてもらおう」

 

「ああ、また後で会おうな」

 

 

 ベトベトンに二人を捕らえたまま去っていくシュウメイを見送り、俺とアイアールは一息ついてから歩いてチーム・シーのアジトの入り口を目指して歩いて行く。あ、そういえば。

 

 

「アイアールはどうする?」

 

「心配だからついていく!あ、でもこのヘルメット貸してね。これないと不安になるから…」

 

「…あとで返せよ、それお気に入りなんだから」

 

「……私も買えばよかったなあ」

 

「そんなに気に行ったのかよ」

 

 

 そんな会話をしながらバリケード前にやってくると、なにか揉めている様だった。なんだ?星型サングラスをかけたスター団のしたっぱと……あのちっこいのはオレンジアカデミーの生徒か?

 

 

「……いい加減、帰ってくれないかなあ!」

 

「やだ!どく組ボスのシュウメイ殿に会いたいんだ!」

 

「だからさ!本人に言われてるのよ団員以外は誰も通すなって!今はただでさえラウラって奴に宣戦布告されてて大変な時期なんだしさあ!わかる!?」

 

「絶対に会う!シュウメイ殿とおはなしするんだ!」

 

「勘弁してくれよ、もう……誰か助けてくれー!」

 

 

 なんか知らんがちっこいのはシュウメイに用があるみたいだな。

 

 

「なんだか揉めてるみたいだけど、どうする?」

 

「ほっとくわけにもいかんだろうよ。おい!」

 

「あれ?」

 

「あーあ、また誰か来ちゃったよ……しかも一人は見るからに怪しいし…スター団の新人ってこんなにめんどいんだ……入らなきゃよかったかも。でも楽しいんだよなあ」

 

 

 話しかけながら近づくと、げんなりと肩を落とすスター団。なんか悪いな。すると少年はなにかに気付いたようであからさまに警戒し始めた。俺なんかしたかな?

 

 

「待ってしたっぱさん!この赤髪の人ってラウラじゃない?」

 

「ラウラってうちらに喧嘩売ってるやつ?」

 

「おう。カチコミだ」

 

「やはり!」

 

「わわ。ヤベえー!昨日オールでゲームしてたしアジトの奴ら絶対寝てる……」

 

「楽しそうだな」

 

「あ、それでシュウメイ買い出ししてたんだ…」

 

 

 アイアールがボソッと呟く。なんでボスが買い物してるかと思ったが合点が行ったわ。すると少年がしたっぱと俺達の間に立ちはだかってきた。

 

 

「そのカチコミ、待った!ここは任せて!したっぱさんは仲間を起こして!」

 

「はっ?なんでお前が?」

 

「アジトがむぼーびだとシュウメイ殿もあぶないんでしょ!シュウメイ殿はおんじんであり僕の同胞…!危機には万難を排し馳せ参じるが道理なんだい!」

 

「難しい言葉を使えて偉いが、俺はそのシュウメイとダチだぞ」

 

 

 そう言ってさっきもらったばかりのボール手裏剣を見せると、少年としたっぱは揃って驚愕した。これ便利だな。

 

 

「シュウメイ殿のトモダチ、つまり同胞!?」

 

「アイエエエッ!?指名手配のラウラがボスとダチとかマジ!?いやでもカチコミに来たって言ってるし、あれえ!?」

 

「なんでもいいがとりあえず仲間を起こしてこい。誰もいないのにカチコミとか寂しいぞ。準備できたら教えてくれ」

 

「お、おう!なんだかわからないが助かるぜ!じゃな!」

 

 

 促すとスター団したっぱはそそくさとアジト内に入って行った。…さてと。

 

 

「シュウメイに用事があるらしいな?俺は今からアイツと戦いに行く、ついてくるか?」

 

「じゃ、じゃあお言葉に甘えて…」

 

「いいの、ラウラ?」

 

「いつもはこうちょ…じゃない、ネルケもいるし、今回はアイアール。お前もいる。今更一人増えても変わらんさ」

 

 

 その10分ぐらい待つことになってからさっきのしたっぱがやってきてOKサインを出してくれたので開戦する。待たせ過ぎじゃないかなあ!?




ラウラのダチ認定されることなったシュウメイ。拳のぶつけ合いは宇宙キターなあれです。どうでもいいことは覚えているラウラの頭。ラウラとはオタク仲間。アイアールとは忍者仲間で親和性高かったシュウメイでした。

ヒロノブくんイベントは友情の証でスキップ。次回ようやっと開戦です。

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VSスカタンク

どうも、放仮ごです。プロットをよく見てみたらヌシミミズズ加入?って書いてあって「あっ」ってなった今日の仕事帰り。

今回はスター団チーム・シーにカチコミ。楽しんでいただけると幸いです。


「ラウラ!無事か!あまりに遅いからなにかあったのかと…」

 

「「校長…?」」

 

「んんっ!俺はネルケだぜ…?」

 

「まあ、気にするな」

 

 

 準備を待っている間に合流したネルケも加え、ゴングを鳴らそうとすると鳴り響くスマホロトム。カシオペアか。

 

 

《ロトロトロトロト……「こちらカシオペア。ラウラ、聞こえるか?」》

 

「ああ。ちょっとスター団…から鞍替えしたブルーフレア団のバカどもに襲われたがアイアールのおかげで無事だ」

 

《「なんだと?……アイアールもいるのか」》

 

「ああ。だけどカチコミは俺一人でやるぞ。シュウメイとはダチになったからな」

 

《「了解した……初めましてだなアイアール。私はカシオペア、スターダスト大作戦…スター団を解散させる計画を立てた者だ」》

 

「あ、初めまして…」

 

《「機会があればあなたにも助力願いたい。それでだ。そのアジトに集まっているのは言うまでもないがスター団どく組チーム・シー。ボスのシュウメイは手先が器用な服飾担当。ちょっと…一風変わった男だ」》

 

 

 あいつ服を作るのが得意なのか。あの忍者服も自作なのか?…制服以外にはメイド服しかないし、頼めばなんか作ってくれるかな。

 

 

《「本来なら予測不能なんだが……その心配はなさそうだ。ゴングを鳴らして存分にカチこんでくれ」》

 

「おう、任せろ。…行くぞ」

 

 

 通話を切ってからアイアールたちに目配せし、ゴングを鳴らしてバリケードをどかして中に入る。スピーカーから音声が鳴り響く。

 

 

《ピィィー!ガガ…!「とうとう!うちのアジトにもスターダストなんとかがやってきました!チーム・セギン、チーム・シェダルの仇をとってみんなでかがやきましょうー!先頭の三匹だけで10分以内に団のポケモン30匹を倒せたらボスはお目見えするって伝言だ!…お願いだからバンギラスみたいに暴れないでください!」》

 

「そういうルールだったのか」

 

「ラウラ、団ラッシュを理解していなかったのか……」

 

「じゃあ私達は離れてついていくね」

 

「この数相手に立ち向かうなんて…ご武運を!ラウラ殿!」

 

 

 先頭の三匹、ジャック、ぼむん、ケプリベを出して俺自身はストレッチ。ぼむんに乗り込み、右手を前に置いてしゃがむ体勢を取る。…青いサングラスが見えないな、どうやらシュウメイが手を打ったようだ。繰り出してきてるのはタマゲタケ、モロバレル、シルシュルー、タギングル、ハブネーク、ゴース、ゴースト、パルデアウパー、ドオー、ゴクリン、マルノーム、ベトベター、コンパンか。相手にとって不足無し。

 

 

「3、2、1……行くぞオラー!ぼむん、まきびし!ジャック、れんぞくぎり!ケプリベ、じんつうりき!」

 

 

 俺を乗せたぼむんがでんじふゆうで突撃しながらまきびしを周囲に連続射出して次々と撃ち抜いて行き、逃れたポケモンたちはジャックが高速で切り刻み、ケプリベがハブネークを浮かばせて高速回転させ薙ぎ払って行く。

 

 

「もう竜巻かなにかだろこれぇえええ!?」

 

「アタシのハブネークぅ!?」

 

「バリケードを吹き飛ばさなかったから反省したと思ったらそんなことなかったぜ!」

 

「三匹だけなのに近づくこともできない~!?」

 

「俺たちじゃ敵わない!ボスを呼んでくるんだ!」

 

 

 したっぱたちが一目散に逃げていくのを追いかける。…あれ、もう30体倒しちゃったかこれ?1分も経ってないぞ?

 

 

「…ラウラ、対多数に強すぎない…?」

 

「いつもよりは大人しかったな」

 

「こ、これがラウラ殿の実力……」

 

 

 なんかついてきてる三人も慄いていた。俺、最適解を選んだだけなんだけどなあ?

 

 

「いやはや、速すぎてもはや感服でござるよラウラ殿」

 

 

 するとしたっぱたちが逃げて行った奥のテントが開いてチーム・セギンやチーム・シェダルのとはカラーリングや細部の形状が違う、毒を思わせるカラーリングのスターモービルが顔を出す。その上に乗るのは忍者姿であぐらをかいて座っているシュウメイだ。

 

 

「シュウメイ、ここに推参。如何に友と言えどユーはスター団に仇なす不届き者。我がポイズンにて蝕んでくれよう」

 

「せっかくだ。同じ数で挑んでやる。正々堂々、試合しようか」

 

「望むところでござるよ。……シュウメイ!推して参る!!」

 

 

▽スター団どく組の シュウメイが 勝負を しかけてきた!

 

 

 そして、アイアールたち三人やスター団したっぱたちが見守る中で、シュウメイはその場で宙返りしてスターモービルの上に着地。俺とシュウメイは同時にネットボールと、リピートボールを投擲する。ボール手裏剣じゃないのか。

 

 

()くでござるよスカタンク!」

 

「なんかそいつ苦手な気がするなあ!ぼむん!」

 

 

 シュウメイはスカタンク。俺はぼむん。相性は……あの技を覚えているなら最悪だ。どく・あくだからケプリベ出してたら詰んでたまである。

 

 

「ポイズンで蝕めぬはがねタイプとは……食えない相手でござるな」

 

「よく言うよ。わかっててその選出だろう」

 

「ご明察。かえんほうしゃ!」

 

「でんじふゆうで空に逃げろ!」

 

 

 その身に纏った可燃性ガスを利用して放たれたかえんほうしゃを、空に逃れるぼむん。やっぱり覚えているよな。

 

 

「まきびし!」

 

「ベノムショックでござる」

 

 

 空中から放ったまきびしを毒の弾丸で撃ち落としていくスカタンク。なんて練度だ。

 

 

「我らスター団ボスはスター団を纏めあげ引っ張ってゆかねばならぬ者!生半可な強さじゃ勤まらないでござるよ!」

 

「なら真っ向勝負だ!コイツに毒は効かねえ!ヘビーボンバー!」

 

「ふういちでござる」

 

 

 急降下しようとしていたぼむんの目の前に跳躍したスカタンクの尻尾による不意打ちが炸裂。体勢が崩れてそのまま落下するぼむん。

 

 

「落ちながらかえんほうしゃでござる」

 

「っ!」

 

 

 自身も落下しながらぼむんに向けてかえんほうしゃを放つスカタンク。ふいうちでがんじょうが削れた、耐えられない。なら…かえんほうしゃを利用する!

 

 

「そこだ!でんじほう!」

 

「なんと!?」

 

 

 ギリギリまで引き寄せてから、かえんほうしゃでスカタンクの視界からぼむんが消えた瞬間を狙ってんじほうを発射。かえんほうしゃを突きぬけてきたでんじほうを回避できるはずもなく直撃。黒焦げでごとんと倒れるぼむんと、痺れて落ちてくるスカタンク。

 

 

「よくやったぼむん。交代だ、レクス!」

 

「スカタンク、どくどく!」

 

 

 そしてぼむんを引っ込めて、スカタンクの落下地点にレクスを繰り出すと慌てて指示するシュウメイ。どくまたはもうどくってのはダメージが入るまでにラグがあるんだよ!

 

 

「そんな毒で止まるような俺の相棒じゃない!じごくづき!」

 

 

 そして、後ろ脚を展開して振り上げた蹴りがスカタンクの喉元に突き刺さり、崩れ落ちる。かえんほうしゃを選んでたら負けてたかもな?

 

 

「これで3‐3、イーブンだ」

 

「いいや、そちらはクレイジーポイズンで蝕まれている。ただの互角じゃないでござるよ―――()くでござる、ブロロローム」

 

「…びっくりした、スターモービルじゃないのか」

 

 

 出てきたのは車のエンジンの様なポケモン。スターモービルの元になったポケモンか。

 

 

「スターモービルの元となっているブロロロームとブロロンはこやつの子たちでござる。掠っただけでどくる技もある故、怯えるでござるよ」

 

「上等!」

 

 

 猛毒に蝕まれながらも咆哮を上げ、ブロロロームと激突するレクス。勝負はここからだ。




正々堂々戦っても結果は変わらなかったよ……。

スカタンクと言えばかえんほうしゃですよね。DPのジュピターのスカタンクに返り討ちにされた人結構いると思う。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSシー・スターモービル

どうも、放仮ごです。書いていて一番楽しかったまであるシュウメイ戦後編です。

今回はシュウメイの忍法が炸裂。楽しんでいただけると幸いです。


「ブロロローム!アイアンヘッド!」

 

「レクス、じごくづき!」

 

 

 ブロロロームの空中を駆け抜けて加速した鋼の頭突きと、その場で左足を軸に一回転して遠心力を加えたレクスの右足による回し蹴りが激突。鬩ぎあいにはレクスが勝利し、ブロロロームを大きく蹴り飛ばす。

 

 

「こうそくいどうで追いかけろ!」

 

「じならしでござる!」

 

 

 こうそくいどうで追いかけて追撃せんとするも、地面に着地してタイヤを回して大地を揺らしたブロロロームのじならしで体勢を崩され、ギャリギャリギャリとドリフトしてきたブロロロームの車体の側面をぶつけられて転倒するレクス。

 

 

「ヘドロこうげき!」

 

「じごくづきで大地を蹴れ!」

 

 

 放たれた毒の塊を、大地を蹴り砕いてその破片で防ぎつつ立ち上がるレクス。

 

 

「触れずに毒を掻き消すとは本当に食えないでござるな!」

 

「掠りでもすればどくるんだろ?つまりそうなるように鍛えてるってことだ」

 

 

 状態異常は重ねがけされる。既に猛毒状態のレクスだが、通常のどくも重ねがけされて一気に体力をごりっと減らされるのは避けたい。食えない奴はお前だよ、シュウメイ。

 

 

「ご明察でござる!ヘドロこうげきに続いてダメおし!」

 

「にどげりで大地を砕いてから、迎え撃て!」

 

「ボス、楽しそう…」

 

 

 そんなスター団したっぱの声が聞こえたとおり、生き生きと指示するシュウメイにこちらも笑みが浮かぶ。毒の塊を放ちながら突撃してくるブロロロームに対し、地面を蹴り飛ばして土で毒の塊を撃ち落としつつ、石のタイヤの一撃を脚で受け止め蹴り弾くレクス。もうそろそろ猛毒で体力が尽きそうだ。次で決めないと。

 

 

「次で決めるぞ!こうそくいどう、とびかかる!」

 

「受けて立つ!アイアンヘッドでござる!」

 

 

 大地を蹴り、真っ直ぐ跳躍しながら飛び蹴りを叩き込むレクスと、タイヤを回転させて大地を爆走し体当たりするブロロロームが激突。双方弾かれて力なく崩れ落ちる。ダブルノックアウトかよ。

 

 

「やるでござるなラウラ殿!」

 

「お前もな、シュウメイ!」

 

 

 それぞれボールに戻しつつ、ネットボールとボール手裏剣を構える。ということはあいつか。恐らくはシュウメイの相棒。

 

 

「我が忍法、ベトベ(とん)の術をご覧に入れよう!ベトベトン!」

 

「ジャック、出番だ!」

 

 

 繰り出されたベトベトンとジャックが睨み合い、俺とシュウメイも無言で気を窺う。先に動いたのはシュウメイだ。

 

 

「忍法、毒津波の術!」

 

「れんぞくぎりで防げ!」

 

 

 放って来たのは恐らく、ヘドロウェーブ。自身の身体から染みだした猛毒の液体を津波にして放って来たベトベトンの攻撃を、連続で空を斬り裂いてまるで斬撃のドームを作るように迎撃する。それを見て脳裏でひらめくものがあった。

 

 

蟷螂制空圏(とうろうせいくうけん)とでも名付けるか?いいぞジャック!」

 

「なんと、これは斬撃と素早さを合致させた刃の(きわみ)か…!ならば、煙幕の術でござる!」

 

「どろかけか…!?」

 

 

 すると地面に触れて削り取るように飛ばしてきた泥で土煙を起こして煙幕で姿を隠すベトベトン。まさに、忍ぶ術か!

 

 

「変幻自在の動きについてこれるでござるか?!ベトベ(とん)の術!」

 

「ジャック、その場でがんせきアックスだ!」

 

 

 煙幕で姿が見えないベトベトンにシュウメイが指示したのは恐らくとける。あの時見せた流動体になる術だろう。つまり足元から溶けて攻撃してくるはずだ。がんせきアックスでステルスロックをばら撒きながら衝撃波で吹き飛ばす。

 

 

「甘いでござるよ!我がベトベトン、素早さを特に鍛えている故!」

 

「なんだと!?」

 

 

 すると流動体となったベトベトンはいつの間にかがんせきアックスの範囲外に離れていて、一瞬の間にジャックに纏わりついて締め上げ始めた。なんて奴だ…!?

 

 

「ゼロ距離ならば外しようがあるまい!ダストをシュートする術!」

 

「それ他に忍法なかったのか!?」

 

 

 ツッコミながらも零距離でゴミの塊を握って振りかぶられた右手がジャックの頭部に叩きつけられ、目を回してベトベトンの中で崩れ落ちるジャック。…やられた。

 

 

「どうでござるか?我とベトベトンの息の合った忍術コンビネーション!」

 

「恐れ入るよ。だがな、手の内を全部晒したのは悪手だぞ?」

 

 

 そう言って俺が繰り出したのはケプリベ。エスパータイプを持つこいつは今回の切札だ。さいきのいのりもあるからまだまだいける。ベトベ遁の術(とける)煙幕の術(どろかけ)毒津波の術(ヘドロウェーブ)ダストをシュートする術(ダストシュート)。この技構成なら完封まである。

 

 

「例え相性が悪かろうと!毒津波の術でござる!」

 

「むしのさざめき」

 

 

 放たれたヘドロウェーブを、衝撃波で散らして吹き飛ばしつつダメージを与える。

 

 

「生憎と、こいつの防御は鉄壁だ」

 

「ならば!ダストをシュートする術!」

 

「じんつうりき。返してやれ」

 

 

 投げつけてきたゴミの塊を念動力で固めて、念の塊として返して大ダメージを与える。エスパータイプは技の自由度が高くていいな。

 

 

「煙幕の術、ベトベ(とん)の術!」

 

「じんつうりきで一滴残らず持ち上げろ!」

 

 

 また煙幕で姿を隠しつつ隠れて攻撃しようと試みるベトベトンを、念動力で溶けているベトベトンを一滴残らず空中で持ち上げて磔にする。俺は上機嫌にステップを踏んで天を仰ぐ。ああ、お前は最高だケプリベ!

 

 

「なんと!?」

 

「タイプ相性ってのはそう簡単に覆せないんだよ!たたきつけろ!」

 

 

 そして勢いよく地面に叩き付け、ベトベトンはぺちゃんこに潰れて目を回し戦闘不能となった。

 

 

「ベラカスがいたのは知っていたが予想以上でござった…!だがしかしここまででござる!」

 

▽シュウメイは ブロロロームを くりだした!

 

「問題はそいつだな…」

 

 

 咆哮を上げるシー・スターモービル。さすがにじんつうりきであの質量を操るのはちょっと難しい。海やベトベトンみたいな液状ならいけるんだが、最重量級のポケモンはどうしようもないのがケプリぺの弱点だ。

 

 

「普通にダメージを与えるか!じんつうりき!」

 

「ポイズンアクセルでござる!」

 

 

 毒を纏った車輪で体当たりしてくるシー・スターモービルにじんつうりきでダメージを与えるもまるで通じず跳ね飛ばされ宙を舞うケプリベ。不味い、あのままじゃ直撃コースだ。しかもあれ、毒もらってるな。最悪だ、結構あるケプリベの耐久力もほとんど意味がない!

 

 

「むしのさざめきで落下速度を落とせ!」

 

「遅いでござるよ!ホイールスピン!」

 

 

 さらにその巨体をドリフトさせ、落ちてくるのを待ってからぶつけてきたシー・スターモービルの車体に、あっけなく吹き飛ばされたケプリベは地面をバウンドする。まだ健在か、よかった。

 

 

「ニトロチャージ!」

 

「……速いな今畜生」

 

 

 安堵した瞬間、炎を纏った車体に轢き飛ばされ崩れ落ちるケプリベ。それはずるいて。

 

 

「我の勝ちでござるな!」

 

「…それはどうかな?」

 

「なにゆえでござるか?4VS4の真剣勝負、道具もなし。さいきのいのりを持つベラカスと言えど使えなければ……まさか!」

 

 

 勝ち誇るシュウメイに、ネットボールを構えてボタンを押す。出てきたのはレクスだ。同時にテラスタルオーブを取り出して輝かせる。

 

 

「出た!ラウラの、指示歩法!」

 

「馬鹿な、指示もなく使っていたでござるか…!?」

 

「お前の忍術と同じだよ。テラスタル。行くぞ!」

 

 

 むしテラスタルし、跳躍するレクス。体勢を整えてシュウメイの乗るシー・スターモービルに狙いを定め、急降下して飛び蹴りを叩き込む。

 

 

「とびかかるだ!」

 

「ポイズン食らわば皿まで!シュウメイ、この命最期まで!ポイズンアクセルでござる!」

 

 

 そして激突。正面からぶつかったレクスとシー・スターモービルは鬩ぎ合う。体格差は如何せんがまだだ。

 

 

「そのまま、こうそくいどう!にどげり!じごくづき!」

 

「なんと!?」

 

 

 レクスは加速。鬩ぎ合っている右脚はそのまま左足の蹴りを叩き込み、その反動で離れた右脚で再度鋭い蹴りを叩き込んで、レクスの脚のバネが爆発したかのような衝撃波と共に、シー・スターモービルを蹴り飛ばした。

 

 

「……さすがはラウラ殿の相棒。四つの技の重ねがけとはなんという……いや、言い訳にしては駄目でござるな。みんな、すまぬ!だが、恨み辛みも浮かばぬほど気持ちのいいあざやかな完敗でござった!」

 

 

 シー・スターモービルが吹き飛ぶ前に跳躍して飛び降り、腕組み直立しながら笑みを浮かべるシュウメイ。満足した様で何よりだよ。

 

 

「全身全霊にて修練を積んだでござるが……真の強者には抗えぬが定め。定めは掟……これを受け取るでござる」

 

 

 そう言ってシュウメイの手渡してきたダンバッジを受け取る。よし、これで三人目だ。

 

 

「掟、か。…なあシュウメイ。お前はボスではなくなったがまだスター団だよな?」

 

「そうでござるが…?」

 

「なら、頼みがある。俺をスター団に入れてくれ

 

 

 そう、アイアールやネルケ達に聞こえない様に伝えると目を丸くして驚くシュウメイ。悪いな、頼むよダチ公。




もはや定番になってきたケプリベ戦法。初見の相手には通じるのだけどね…動画が拡散されてるからほとんどの人にばれてるっていうね。

使える技四つ全ての重ねがけでスターモービルを撃破。割とトンデモ技術です。そして最後のはあることをすると…?

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VSベトベトンⅡ

どうも、放仮ごです。前回の最後のぼかしはあまり通用してなかったみたいですね。

今回はバトル無しの会話回。前回のラウラの真意とは…?楽しんでいただけると幸いです。


「なら、頼みがある。俺をスター団に入れてくれ」

 

 

 そう小声で言うと驚いたシュウメイに連れられて、アイアールたちと離れて人気(ひとけ)のない隅っこまで離れ、シュウメイは人目を気にしながら問いかけてくる。一応げんきのかけらで復活したベトベトンでドームを作って外界から遮断してくれた。ありがたい。

 

 

「…正気でござるか?確かに、掟ではユーであっても入ることは可能でござる。だがブルーフレア団に近づくためとはいえ我等のようなアウトローに入るのは……」

 

「それだけじゃないんだ。……俺が参加しているスターダスト大作戦。これは、カシオペアって奴が発案で俺がボス全員を倒してボスをいなくさせることでスター団を瓦解させる作戦だ」

 

「なんと……カシオペアとは何者か」

 

「それで俺をスター団に入れてくれってのに繋がる。俺はこのままカシオペアの思惑通りにさせたら、ボスを失ったスター団のしたっぱたちがブルーフレア団に鞍替えするんじゃないかと危惧している。そうなるとブルーフレア団の思うつぼだ。だが、俺が手加減して残るチーム・ルクバーのボスとビワに負けたとしても、恐らくカシオペアはアイアールもしくはネモを使ってでもスターダスト大作戦を完遂するだろう。なら俺が全員倒した方がいい」

 

 

 恐らくカシオペアはブルーフレア団がそこまで根強くスター団に侵食しているとは気付いてない。かといってそれを伝えた所で止まることはないだろうと想像がつく。何故ならカシオペアは…いや、確証もないことを言ってもしょうがないか。

 

 

「だが、「ボスは売られた喧嘩は必ず買わなくてはならない」「ボスが挑戦者に敗れた場合、ボスの座を引退しなければならない」そういう掟がある故、ブルーフレア団に飲まれるのも運命(さだめ)でござる……」

 

「そうはいくかよ。お前はもうダチだ。ダチが困ってるなら助けるのがダチだろうがよ。簡単な話だ。ボスがいなくなって統制がとれなくなるならボスが増えればいい」

 

「ユー、まさか……」

 

「スター団むし組。…チーム名はカストゥラってのはどうだ?」

 

 

 これはスター団の元ボスの協力が無いと決して為し得ない。だからシュウメイにこの話を持ちかけた。

 

 

「…ユーは既にボスの証であるダンバッジを三つ持っている猛者。恐らくすべて集めて、賛同者がスター団全体の過半数がいれば、恐らく可能でござる。…だが本来ならば我らがやらればならぬこと。ラウラ殿の力を借りる訳には……」

 

「俺もお前らの仲間になりたいんだ。それじゃ駄目か?」

 

「…負けたでござるよ。我も協力するでござる。…これからよろしく頼むでござるよ、ボス」

 

 

 そう言って片膝を付き跪くシュウメイ。話は聞こえてなかったが様子を窺っていたであろう周りがどよめく。目立つからやめろって。

 

 

「え?いや、お前まで入らなくてもいいんだぞ?それにお前らにはマジボスが…」

 

「無論、マジボス殿が戻るまででござる。それに、元ボスが所属していた方が説得力もあるというもの。それとも、我では不足でござるか?」

 

「…いや、そんなことない。こちらこそよろしく頼むよ、シュウメイ。…あと二人に勝つまではブルーフレア団について調べて欲しいけど…」

 

「心得た。忍者オタクの力を見せてくれよう」

 

「話は終わったか?」

 

 

 立ち上がって頷いたシュウメイと友情の証を交わしていると、いつの間にかベトベトンが気を利かしてかドームを解いていて。俺達を尊重してか離れてネルケが問いかけてきた。その傍にはうずうずしているアイアールと、シュウメイに会いたがってた少年、ヒロノブが。あ、忘れてた。

 

 

「盛り上がっているところ悪いがシュウメイ。どうしてもアンタに会いて直接話がしたいって奴がいてな」

 

「シュウメイ殿!」

 

「ど、同胞?気付かなかったでござる…」

 

「シュウメイ殿、聞いて!ちょっとだけでいいんだ!」

 

「……何故(なにゆえ)ここに?ユーはオレンジアカデミーで平穏無事な学生生活を送っているはず…」

 

「同胞を助けたくて!このまま不登校が続けばシュウメイ殿は退学処分なんでしょ…?いじめられっ子だった僕たちが今、学校に通えているのはスター団が頑張ってくれたあの大作戦のおかげ!そんな人たちが退学なんて僕、嫌なんだ!」

 

「……すまぬな。ボスで無くなったとはいえ不登校をやめる気はないでござる」

 

「まだマジボスって人に連絡は付かないの…?」

 

「うむ。あの日以来……マジボス殿がいなければ団はなく……団が無ければウキウキアカデミーライフはなし!マジボス殿がご帰還されるまで我等はアジトを守り続ける他なし!……団員たちも蒼き炎の手から守らなくてはいけないでござる」

 

「うきうきあかでみーらいふ?」

 

 

 アイアールが首をかしげる。気持ちは分かるが黙ってような?

 

 

「アンタたちがそこまで信頼しているマジボスってのは一体誰なんだ?」

 

「我らが実際にマジボス殿とお会いしたことはない、電話やメールのやりとりだけでござる。本人曰くひきこもりとのこと……我ら同様いじめが発端らしいが……」

 

「かわいそう……」

 

 

 ……電話やメールのやり取りだけ、ね。やっぱりお前がマジボスなのか、カシオペア……ならなおさら、俺がスター団に入るしかないな。多分このままスターダスト大作戦を完遂するのだけは駄目だ。

 

 

真名(しんめい)も姿も知らぬが我らの(ともがら)に変わりはない。我らはただマジボス殿のカムバックをアジトで待つのみぞ!」

 

「だからシュウメイ殿は学校に行かないんだね……でも忘れないで!シュウメイ殿にはスター団以外にもラウラ殿やアイアール殿、それに僕って言う同胞がいるんだって!」

 

「その通りだな」

 

「うん、私達も友達だよ!」

 

「同胞……ラウラ殿、アイアール殿……かたじけない。フッ……スター団のみが至宝と信じてきたが…誤りだったのやもしれぬな」

 

 

 感動したように目を伏せるシュウメイ。するとネルケが眼鏡を押さえて何か考え事をしている様だった。

 

 

「いじめ……不登校……また一歩、真相に近づいたな…いや、そんなことよりも……生徒たちが抱いている問題や……行動理由……そして、大事な絆……全く関知できていなかった自分が恥ずかしいです。ところでラウラさん、彼と何を?」

 

「うん?ああ、内緒話だ。それより校長が出てるぞネルケ」

 

「おや、失敬」

 

 

 そうして俺はシュウメイとスマホロトムの番号を登録しあい、アイアールと共にスター団どく組のアジトを後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ロトロトロトロト……》

 

「ラウラ、電話」

 

「カシオペアだな」

 

 

 しるしの木立ちを歩いているとかかってきたスマホロトムの通話を繋ぐと、機械で変声した声が聞こえてきた。

 

 

《「……ラウラ。シュウメイからボスの証、ダンバッジをもらったようだな」》

 

「おう。これで三つ目だ」

 

《「たしかに。これでボスがいなくなったチーム・シーは壊滅するだろう。シュウメイ……すまない、いろいろと思うことがあってな。これで残るアジトは2か所……スターダスト大作戦は順調だな」》

 

「ところで聞きたいんだが、この間襲われたチーム・カーフのボス、ビワはブルーフレア団の用心棒だと言っていた。スター団の一部がブルーフレア団に鞍替えしているという話を聞いたがお前は知っているのか?」

 

《「……知っている。これ以上ブルーフレア団に好き勝手させないためにもこのスターダスト大作戦は完遂しなければならない」》

 

「本当に、スターダスト大作戦を完遂すればすべては解決するのか?」

 

《「そのはずだ。…あなたがこの作戦に疑惑を抱き始めたのは理解した。ラウラにはこの作戦の最終目的を伝えておきたい」》

 

「アイアールもいるがいいのか?」

 

《「ラウラが負けたらアイアールに頼もうと思っていた。あなたも参加してくれるか?アイアール」》

 

 

 やっぱりそうか。元々あの日、スター団を容赦なく蹴散らす俺の映像を見て俺にこの話を持ちかけたんだもんな。あの日、別の場所でスター団を蹴散らしていたアイアールも候補に挙がるのは当然だ。

 

 

「うん、私にできる事なら」

 

《「嬉しい返事をありがとう。スターダスト大作戦の最終目的……それは、5人のボスを集めてスター団を作った真の黒幕……マジボスを倒すことだ」》

 

「…へえ?」

 

「マジボスって人を?」

 

《「君達二人は知っているようだな。5人のボスを率いる謎の人物、マジボスと呼ばれていること以外、その正体は一切不明だ……奴を倒し、解散を宣言させればスター団は完璧に終わる。目立つことを嫌うマジボスはアジトも持たず正体を隠している。だがボスが全員引退すれば表舞台に現れるはずだ、間違いない」》

 

 

 ………ああ、なんとなく読めてきた。このカシオペアを名乗る人間がなにをしたいのか。

 

 

《「約束の報酬だ。スマホロトムにLPをチャージしておこう。今回は7000LPだ。ラウラ、あなたには感謝している。これからも助力を願いたい。…まもなく補給班も着くだろう」》

 

「う、うーっす……ラウラ。それにアイアール、うちのこと…覚えてる?」

 

「もふもふのイーブイバッグの子!あなたもスターダスト大作戦に参加してたんだ!」

 

 

 カシオペアの通話が切れると同時に、ボタンが歩いてやってきた。アイアールが覚えていることを聞くと嬉しそうにはにかむ。そういやスター団に絡まれていたボタンをアイアールが助けたんだったな。

 

 

「え、えと……なんか深刻な話してた?」

 

「アギャッス!」

 

「「「!?」」」

 

 

 するといきなりコライドンが出てきて、ボタンを見つめて首を傾げる。いきなりどうしたんだ?

 

 

「え?え?な、なに?あぁああああああ!?」

 

「ストップ!コライドン、すとーっぷ!?」

 

 

 ボタンにのしかかり、ペロペロとボタンを舐めまわすコライドン。アイアールが必死に尻尾を引っ張って止めようとしているがまるで気にしてない。ええと……ご愁傷様?

 

 

「く、黒幕の存在……カシオペアからうちも聞いたよ。スター団の創始者、諸悪の根源……そいつを倒さないとうちの宝も失われちゃう……」

 

「? ボタンの宝って?」

 

「あ、いや、その……えと…これ、報酬!忘れないうちにね、ん!」

 

 

 ベトベトの身体を拭きながら袋を渡してくるボタン。いやあの、触りたくないんですけど…いやもらうけどさ。

 

 

「じゃ、渡したから。………ラウラ。負けないでね」

 

「おう。俺は負けないよ。カシオペア」

 

「うん。…えっ!?いやいや、うちはカシオペアじゃないし!?じゃ、じゃね!」

 

 

 そう言ってボタンは慌てて走り去っていった。……やっぱり、そういうことだよなあ。シュウメイ、頼んだぞ。




スター団むし組チーム・カストゥラのボス、ラウラ爆誕?いつぞやに書いた気がしますが最初、ラウラをスター団にいれようとしていたのをそのまま流用してみました。その目的はスター団の瓦解を阻止する事。はたして認められるのだろうか。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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ゴーストジム、フェアリー組
VSソウブレイズ


どうも、放仮ごです。ようやっとナッペ山編に入ります。

今回はピケタウンでの一幕。楽しんでいただけると幸いです。


 スター団どく組のアジトを後にして、東3番エリアを抜けてやってきたのはピケタウン。次の目的地であるジムがあるナッペ山を登るための準備を買い揃えるべくやってきた。

 

 

「働き者が多い採掘の町ピケタウンだって」

 

「なるほど活気立ってるな。さて、俺は登山に必要なもの2人分を買い揃えてくるが…お前はどうする?」

 

「私はサンドウィッチ屋に行こうかな。潜鋼のヌシのあと食べてないからコライドンも腹ペコだろうし」

 

「わかった。じゃあまたあとでな」

 

 

 各町にあるサンドウィッチのチェーン店「まいど・さんど」に向かったアイアールと別れ、適当な店を見つけて登山用具を買い揃えて行く。厚着の上着にマフラー、ブーツにおいしいみず、他には……そう考えながら別の店に向かおうとすると同じく買い物していた知り合いとばったり出会う。先端に行くほど銀色なグラデーションが綺麗な蒼色のロングヘアーと少し暗い赤いツリ目の持ち主の、誰からも好かれそうな雰囲気をした大人な雰囲気のオレンジアカデミー司書の女性、マトイさんだ。

 

 

「マトイさん」

 

「あら、ラウラさん。こんなところで会うなんて奇遇ね。いい子にしてる?」

 

「まあ、…いい子にしてるかどうかといったら微妙ですが」

 

「いい子にしないとダメよ。私は親友のレーちゃん……レホールから頼まれた骨董品を探しに来たのだけどね、持ち主からドーミラーのおとしものを要求されて追い返されたところなの」

 

「ドーミラーのおとしものなら持ってるけど…いります?」

 

 

 カシオペア……じゃなくてボタンからの報酬に入ってた気がする。見つけて差し出すと嬉しそうに手を合わせるマトイさん。

 

 

「あら、助かるわ。それじゃあね。ブルーフレア団には気を付けるのよ」

 

「はい、そちらも気を付けて」

 

 

 …そういやレホール先生、教師になったせいでフィールドワークができないと嘆いていたっけ。それを親友のマトイさんがカバーしてるのか、仲いいな。マトイさんも四災を研究しているというしwinwinの関係なのかな。そんなことを考えながら、その後しばらく色々な店を巡って買いあさっていると、悲鳴が聞こえてきた。同時に爆発音、場所はピケタウンの中央か。

 

 

「なんだ!?」

 

 

 駆けつけると、街並みの一角が破壊され、紅焔と蒼炎が猛り爆ぜっていた。その中心にいるのはよく似ている二匹のポケモン。

 

 

「あれはボウジロウ……いや、その進化系か」

 

 

 以前、メロコと戦った時に出会ったボウジロウことひのこポケモンのカルボウによく似た、金色の壺じみた鎧を身に着けた深紅のポケモンと、青紫色の甲冑に身を包んだ黒騎士の様なポケモン。ポケモン図鑑アプリを開き確認する。ほのお・エスパータイプのひのせんしポケモン、グレンアルマと、ほのお・ゴーストタイプのひのけんしポケモン、ソウブレイズ。その二体が何故か激突し、その余波で町が破壊されているようだ。

 

 

「いったい何が……」

 

「おお、いいところに!そこの強そうなトレーナー!わしは骨董品コレクター!おめでたい骨董品を集めているのじゃが、いきなり二匹のカルボウが飛び込んできて骨董品を奪ったかと思えば進化して暴れ始めたんじゃ!」

 

「どうしてそうなった!?」

 

「わしが知りたい!」

 

「だよなあ!レクス、ジャック!頼む!」

 

 

 相性有利なレクスとジャックを繰り出して止めようとするも、グレンアルマは地を伝い下から吹き上げるサイコパワーのワイドフォースを、ソウブレイズは自身の影に潜って不意打ちしてくるゴーストダイブを発動。ジャックとレクスは翻弄され、吹き飛ばされてしまい、二体は再び激突を再開する。邪魔な奴は協力して倒しておきながら全力でぶつかる。この矛盾はなんだ?

 

 

「まずソウブレイズから落とすぞ!レクス、こうそくいどうで背後に回り込んで羽交い締めにしろ!ジャック、がんせきアックス!」

 

 

 レクスがソウブレイズを背後から羽交い締めにして後ろ脚を展開して持ち上げ、手足をじたばたさせて逃れようとするソウブレイズに岩を纏った岩斧が炸裂。大きな切り傷を受けて解放され、よろめいて後退するソウブレイズだったが、サイコパワーの弾丸……サイコショックがぶつかり、吹き飛ぶレクスとジャック。グレンアルマだ。

 

 

「レクス、じごくづき!ジャック、つばめがえし!」

 

 

 レクスの蹴りを壺の様な肩鎧で受け止めるグレンアルマ。ジャックの岩斧を両腕の剣を交差して斬り弾くソウブレイズ。駄目だ、堅過ぎる。そのまま脚を掴まれて振り回されるレクスと、弾き返されたジャックは背中から激突。グレンアルマとソウブレイズに挟まれる形になる。

 

 

「むっ!?気を付けろ、アーマーキャノンとむねんのつるぎが来るぞ!」

 

「なんて?」

 

 

 骨董品おじさんが警告した次の瞬間。両肩の巨大なアーマーを腕に移動・合体させてキャノン砲の様な形状にしたグレンアルマと、怨念の様な炎の様なエネルギーで構成された剣になっている両腕を燃え上がらせて交差するソウブレイズ。見るからにヤバい!?

 

 

「レクス、跳躍しろ!」

 

 

 咄嗟に指示するのが精いっぱいで。次の瞬間、凝縮された火炎弾と、炎を纏った斬撃がジャックに炸裂。ジャックは崩れ落ちたばかりか、ソウブレイズは負った傷が燃えて再生していく。ほのおタイプのドレインパンチか!?逆にグレンアルマの方は鎧に罅が入ったようだが、こっちはほのお版インファイトか…。

 

 

「レクス、とびかかる!」

 

 

 空中から飛び蹴りを叩き込むレクスだがしかし、グレンアルマの右手に受け止められて右脚を掴まれ地面に叩きつけられ目を回し、また戦い始める両者。いくらなんでも強すぎないか?

 

 

「野生にしては練度がおかしいぞこいつら…」

 

「グレン!ブレイズ!止まれ!止まってくれ!?」

 

 

 次のポケモンを出そうと構えると、オレンジアカデミーの生徒と思われる少年が泣きながら駆け寄ってきた。巻き込まれそうになったところを襟を掴んで引きよせ止める。

 

 

「止めないでくれ!あの二体は僕のポケモンなんだ!」

 

「お前のポケモン!?ボールを奪われたのか!?」

 

「い、いや……ボールはここに。いきなりボールが紅く輝いたかと思ったら二体が勝手に出てきてこんなことに……」

 

「勝手に…?」

 

 

 トレーナーである少年の言葉にもまるで反応してない。つまり強制的に操られてるってことか?……いや待て、前に似たようなことがあったぞ。あれは確か……エスプリの、ボールジャックか。

 

 

「まさか?」

 

 

 周囲を見渡すが怪しい人物はいない。それはそうだ、エスプリは俺の姿に化けることができた。一般人にも化けれるとしたら探し様がない。くそっ。

 

 

「っ!?」

 

 

 すると周りを見渡していた俺の隙を突いて、ソウブレイズが右腕を振りかぶって襲いかかってきた。咄嗟に少年を突き飛ばし、バックステップで避けるとグレンアルマのアーマーキャノンが放たれ、倒れ込んで回避する。いきなりこっちを襲ってきた、やっぱりどこからか指示してるのか。俺に探られるのを嫌がってる?

 

 

「レイン、ケプリベ…ぐあっ!?」

 

 

 みず技が使えるレインとジャックを復活させるべくケプリベを出そうとするも、ソウブレイズに両手を軽く斬られてしまう。見れば、ボールの開閉スイッチが壊されていた。中のレインとケプリベが暴れて出ようとするもビクともしない。やばい、残りはぼむんとダーマ…炎に対抗策がない二体だけだ。

 

 

「ぼむん!」

 

 

 手の傷を庇いながらぼむんを出すも、瞬く間にほのおのうずとむねんのつるぎで撃破されてしまう。がんじょうを潰した上で追撃か、クソッたれ。

 

 

「ダーマ、スレッドトラップ!」

 

 

 言うことを聞かないウカを除いた最後の一匹、ダーマを出すもじり貧だ。アイアールは呑気にサンドウィッチでも食っているのだろうか。天然なあいつのことだ、ありえる。万事休すか…!?

 

 

「ツンベアー。なみのり。そしてふぶき」

 

 

 次の瞬間、波が押し寄せてきたかと思えばグレンアルマとソウブレイズを飲み込み、続けざまに放たれた冷気でカチンコチンに凍り付いた。ほのおタイプの二体が、だ。

 

 

「僕の管轄で暴れるなんて…サムいことするね」

 

 

 そう言って現れたのは、荒野の傍であるこの街に似合わぬ厚着の恰好をした、マフラーで顔を隠した美形の人物。ナッペ山ジムリーダー、グルーシャ。まさかの人物の登場とその実力に、俺は呆然とするしかなかった。




暴れるグレンアルマとソウブレイズと、それを操っていたと思われるエスプリの存在。何が目的だったんでしょうね?何故か来ないアイアールは多分サンドウィッチでも食べてたんでしょう。

そして登場、パルデア最強のジムリーダー、グルーシャ。キリエと同格みたいに描きたいところ。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSブロスター

どうも、放仮ごです。超絶シリアス注意報発令。数話前のほのぼのが嘘みたいなシリアスです。ブルーフレア団のボスがついに判明です。

今回は前回のアイアール視点。楽しんでいただけると幸いです。


 どうやらブルーフレア団に対する警備でピケタウンも管轄になったらしいグルーシャが、怪しい人間を探すべく歩いて行ったのと、正気を取り戻したグレンアルマとソウブレイズと抱き合って号泣している少年を見送り、俺は騒ぎに来なかったアイアールを捜してピケタウンを散策していた。

 

 

「……」

 

「あ、いたいた!アイアール!」

 

 

 何故か人気(ひとけ)の無い場所で呆然と立ち尽くしているアイアールとゲッコウガを見つけ、駆け寄る。近くが水で濡れているがバトルでもしたのか?

 

 

「おーい、どうしたんだ?」

 

「…え、あっ。ラウラ。…なんでもない、よ…?」

 

「なんで疑問形?」

 

 

 呼びかけると我に返り、首をかしげるアイアール。強い奴とでも戦って放心してたのだろうか。

 

 

「…ラウラ、記憶を取り戻さないとダメかな?」

 

「なんだ藪から棒に。ダメに決まってるだろ、俺は記憶を取り戻したいんだ」

 

「それがどんなに嫌な記憶でも…?」

 

「どうしたんだ急に」

 

「ううん。なんでもない…」

 

 

 元気がないように見えるが…本当にどうしたんだ?とゲッコウガに視線を向けてみる。ゲッコウガは何故か俺を睨みつけていた。なんだよ、また俺なんかした?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数刻前。まいど・さんどでサンドウィッチを食べていたアイアールとコライドン。すると轟音が聞こえてきて、食べかけのサンドウィッチを慌ててちゃんと噛んでから飲み込むと立ち上がる。

 

 

「なんの音…?コライドン、ごめん!行くよ!」

 

「アギャッス!」

 

 

 サンドウィッチをモグモグと味わっていたコライドンを連れて外に出るアイアール。そして少し進んだ瞬間、背中に冷や水をかけられた様な感覚と共に、コライドンを戻してゲッコウガを繰り出し、その主を攻撃せんとするも巨大な鋏でみずしゅりけんを受け止められる。周囲の人間は中央での騒ぎに気を取られて気付いていないようで、周りから人気(ひとけ)がなくなっていた。

 

 

「…ブロスター」

 

「なるほどね。危険を感じた瞬間迷わず反撃に転ずる容赦のなさ、アケビの言う通りの逸材ね」

 

 

 ゲッコウガのみずしゅりけんを防ぎきったポケモンが自身も知っているカロスにも生息しているランチャーポケモン、ブロスターに警戒するアイアールだったが、ブロスターの陰に隠れていた先端に行くほど銀色なグラデーションが綺麗な蒼色のロングヘアーを見て息を飲む。

 

 

「…マトイ先生?」

 

「私はただの司書で先生じゃないわアイアールさん。こんにちは、いい子にしてる?…って聞くまでもないわね。人にいきなり襲いかかるなんて駄目よ?」

 

 

 そう指を立てて「メッ」と注意してくるマトイに、アイアールは信じられないとでも言いたげに焦燥しきった顔で後ずさる。

 

 

「い、今アケビって…」

 

「あら。なにもおかしくなんてないわよ。だって私がブルーフレア団のボスなんだもの」

 

「うっ、ぇえ……」

 

 

 衝撃のカミングアウトに、口元を押さえて吐き気を押さえるアイアール。ゲッコウガが慌ててアイアールを心配してオロオロと取り乱し、マトイはその様子を見て苦笑する。

 

 

「エスプリはいい具合に搖動できているみたいね。ボールジャックできる距離、二体同時行使、どこまで強くできるのか、細かい指示ができるのか…そのテストも兼ねた搖動だったけど、100点満点。あの子には花丸をあげないとね」

 

「ううっ……なんでっ」

 

「なんでまた知り合いが悪人なんだって顔ね?いいえ、貴方のバトルやポケモンの勉強に司書として付き合ってあげた私は身内も同然だったかしら。お父さんの事でも思い出した?」

 

「ひっ、、はぁ、こひゅっ……すぅ、はぁ!」

 

 

 図星だ。アイアールの脳裏にフラッシュバックするのは大好きだった父親の笑顔、旅立ち、赤装束のフレア団したっぱたち、そのうち一人がサングラスを外して手を差し伸べて―――――気付かぬうちに過呼吸になっていて、ゲッコウガが背中を擦ってくれてなんとか落ち着く。その様子を見てご満悦のマトイは自分の顔を指差しながらズズイッとアイアールの眼前スレスレまで顔を近づけてにっこり笑う。

 

 

「私の顔に見覚えないかしら?」

 

「え…?」

 

「私ね、研究者としてのフラダリ様……フラダリさんの部下として貴方と会ったことがあるのよ?ポケモン博士志望の希望に満ち溢れていた将来有望な女の子、アイアールちゃん!残念ながら貴方は忘れてしまってたようだけど。それだけじゃないわ、バラも、アケビも、コレアもモミジもクセロシキも……フレア団としてじゃなく、研究者として貴方と既に会っているわ。仲良くしてくれたお姉さんたちやおじさん、覚えてない?」

 

「え、あ、え…?」

 

 

 思い出す。父親の上司として出会ったフラダリに付き従っていた科学者たち。研究職志望だと知って仲良くしてくれた人たち。アイアールの顔が絶望に染まって行く。

 

 

「なんならフレア団は貴方の父親の様な幹部や、したっぱとして表立って活動していた人間だけじゃない。カロス中どころか各地方にも一般人として潜んでいたわ。もしかしたら貴方の隣人や友達もフレア団だったかもね?」

 

「もうやめて!聞きたくない!」

 

 

 耳を押さえて目を瞑り、嫌嫌と首を振るアイアール。ゲッコウガはそんな主人の姿に、見ていることしかできない。自分が守ろうとすれば、なおさら過去を思い出させてしまうから。

 

 

「フレア団じゃないけど各地にもフレア団みたいな組織は数多くいるわ。ロケット団、マグマ団、アクア団、ギンガ団、プラズマ団etc.……ああ、そうそう。あのラウラさんもプラズマ団の一員だったみたいね?」

 

「嘘だ!」

 

 

 それだけは嘘だと声を荒らげて睨み付けるアイアール。そんなアイアールの目の前に突き付けられたのはマトイのスマホロトムの画像データ。そこには、小柄な体に灰色の戦闘服の様な物を着込み、首元に稲妻の走ったPのマークが描かれた白のマフラーを巻いて口元を隠して軍帽を被った長い赤髪の少女。顔を隠しているが間違いなく、ラウラの姿だった。

 

 

「これはラウラさんがパルデアに来た直後、私達が回収した彼女のスマホロトムよ。こんな画像が入ってたってことはつまり……記憶を失う前の彼女はそういうこと、なんでしょうね?」

 

「そんな、嘘、嘘だ…」

 

 

 全幅の信頼を寄せているラウラまで“そう”だと知ってよろめくアイアール。それを見て深い笑みを浮かべたマトイは視線を下げてアイアールの目と合わせる。

 

 

「ブルーフレア団は捕まらなかった元フレア団員を集めて再編した組織よ。その目的は、失われた最終兵器を取り戻し、フラダリさんには成し遂げられなかった「争いのない美しい世界」を創世する計画を成功させること」

 

「…争いの無い、美しい世界…?」

 

「そうよ。悪の組織だのなんだの言われてるけど、私達の目的は正義そのもの。フラダリさんはやり方を間違えて悪にされてしまったけど。そこで相談なのだけど」

 

 

 そう言って手を差し出すマトイに、アイアールは絶望しきった顔を上げる。その様子は菩薩が手を差し伸べるかのようだった。

 

 

「フラダリさんや父親の事で苦しむなら、貴方も仲間になってしまえばいいのよ。貴方もブルーフレア団に入って争いのない美しい世界を創らない?歓迎するわ」

 

「わた、しは………」

 

「答えは今すぐじゃなくてもいいわ。でも……私の正体を話したりしたら、許さないわよ?「目」はどこにでもいるのだから」

 

 

 そう忠告していると、街の中心に巨大な氷塊が生み出されたのを見て立ち上がり踵を返すマトイ。蒼いカバーを付けたスマホロトムを取り出してどこかに通話する。

 

 

「ここまでね。実験は成功。目的も達成したわ。エスプリ、撤収しなさい。…それじゃあね、アイアールちゃん?」

 

 

 そう言って通話を切ったマトイは、ブロスターを引き連れて去って行き……冒頭に繋がるのだった。




というわけでブルーフレア団のボスはマトイでした。名前の由来はイソトマ。花言葉は猛毒、強烈な誘惑、神聖なる思い出、優しい知らせ、心を開く。これまでの登場シーンはそれぞれ四災の調査に加え、スター団の勧誘、バラへの指示、などなどブルーフレア団と関係あるものしかなかったという。

勧誘され陥落しかかっているアイアール。物は言いよう。最終兵器の実態について一切話してません。プラズマ団ラウラについては前作を参照。上手い事利用されました。フレア団との因縁もチョロッと判明。結構な人間不信を抱いてます。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSマニューラ

どうも、放仮ごです。前回の展開を書いて作者の自分が一番ダメージを受けていたりします。悪堕ちはそこまで好きじゃないけど面白さ優先だからしょうがないんだ…。

今回はその後のラウラとアイアール、そしてグルーシャ。ちょっといつもより短いです。楽しんでいただけると幸いです。


 ピケタウンのはずれ、ナッペ山方面。気の乗らない見回りの続行しようとしている厚着の女にも見える男のスマホロトムに着信。その人物、グルーシャは手袋を外してスマホロトムを手に取り相手の名前を確認すると通話に出る。

 

 

「…ああ、委員長。暴れていたポケモンは鎮圧した。だけどおやのトレーナーに確認を取ったけど、強制的に操られていた形跡があったよ。ブルーフレア団って奴等の仕業かもしれない。サムい連中だ」

 

《「やはりそうでしたか。ご苦労様ですグルーシャ。ですが妙ですね、ピケタウンで暴れる理由なんて思いつきませんが……」》

 

「そう言えば噂の彼女に会ったよ。ラウラとかいう。そこまで強そうじゃなかったな。あれは慢心して思わぬところで足を掬われるタイプだ。いつも一緒にいるっていう片割れがいなかったのが気になったかな」

 

《「アイアールさんですか?」》

 

「ん。それ。じゃあ三日に一度の見回りも終わったし僕はジムに戻るから。……さて」

 

 

 そう言って通話を切り、モンスターボールを手にして振り返るグルーシャ。その冷たい視線の先には、何の変哲もない鉱夫2人がいて。

 

 

「あんたたち。こっちは仕事場じゃないだろ。せっかく人のいない道を通っているんだ。お粗末な変装はやめろ、サムいよ」

 

「……ミッション失敗。カモフラージュ機能OFF」

 

「命令受信。ボールジャック開始。ミッションを遂行する」

 

 

 その姿がぶれて、現れたのは瓜二つのヘルメットに黒いボディスーツを身に着けた人物。エスプリが二人、そこにいた。

 

 

「…はあ。僕はお粗末な変装を解けと言ったんだけど。そのヘルメットの下の顔、見せてもらうよ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 様子のおかしいアイアールとぎくしゃくしながらも、コライドンに乗ってピケタウンからナッペ山への道を進む俺達。やっぱり、俺がグレンアルマとソウブレイズと戦ってた時に何かあったのだろう。ゲッコウガにも睨まれたし、ありえるとすれば……。

 

 

「なあ、アイアール…」

 

「なに?ラウラ」

 

「…俺、お前に嫌われることでもしたか?」

 

「……なんで?」

 

 

 心底不思議そうに首をかしげるアイアール。違ったか、一人で買い物に向かったからご立腹だと思ってた。

 

 

「今のラウラにはなにも怒ってないから安心して。それに私がラウラを嫌う事とか、あ、ありえないから…」

 

「泣きながら言っても説得力ないぞ!?本当にどうした!?」

 

 

 ラウラを嫌う~辺りで我慢できずに泣き出して嗚咽するアイアールに、コライドンの後部上で慌てる俺。コライドンもギョッとして止まり、俺はとりあえずハンカチを差し出して泣き止むのを待つ。

 

 

「うん、ごめん、ありがと……そうだよね、こんなにやさしいラウラがそんなわけないよね」

 

「なにがだ?」

 

「ううん、なんでもない。それよりそろそろ着込んだ方がいいんじゃないかな?肌寒くなってきた」

 

「同感だ」

 

 

 一度コライドンから降りて、荷物から防寒具を取り出し身に付けて行く。………「今の」?もしかしてアイアール、以前の俺のついてなにか知ったのか?聞きたい、けど地雷っぽいしなあ。

 

 

「ポケモンの「声」が聞ければなあ…」

 

 

 そしたらゲッコウガから事情を聞くことができるんだが。あれ、なんでポケモンの声が聞けるなんて突拍子のない発想ができたんだろう?記憶が、少しだけ浮かんできた。

 

 

「……プラズマ団の、王様…?」

 

「…!」

 

 

 思わずつぶやくと、怖い顔で睨んでくるアイアール。な、なんで…?(涙目)

 

 

「…やっぱりラウラは……」

 

「お、俺やっぱりなにかしたかなあ…」

 

「え、あ、泣かないで…?」

 

「アギャッス」

 

 

 涙目でオロオロする俺と、そんな俺を見てたじたじなアイアールと、そんな俺達を見て呆れた様な鳴き声を上げるコライドン。なんだこの奇妙な図。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ…!」

 

 

 荒げた息で乱れたマフラーを元の位置に戻すグルーシャ。繰り出したハルクジラは苦戦を強いられていた。対するはモスノウ、ツンベアー、マニューラ、チルタリス。グルーシャの残りの手持ち達だった。

 

 

「…人のポケモンを奪って操るとか聞いてないけど、グレンアルマとソウブレイズの謎が解けたね。雪のように冷たい現実を教えられた気分だ」

 

 

 ブルーフレア団と言う伝説ポケモンを持っている可能性が高い一団が相手と聞いて本気の手持ちを連れて来ていたのが災いした。仮にもパルデア最強のジムリーダーと呼ばれる己の手持ちだ、本領発揮できないまでもシンプルな強さと数で苦戦を強いられていた。

 

 

「ジムリーダー、グルーシャ」

 

「降参を推奨。危害は加えない」

 

「やなこった。人のポケモンを奪うような奴等に誰が従うか」

 

 

 拉致するつもりなのか降伏を推奨してくるエスプリ二体にそう吐き捨てるグルーシャだったが、やせ我慢をするので精一杯だ。

 

 

「モスノウ、むしのさざめき。ツンベアー、つららおとし」

 

「マニューラ、つじぎり。チルタリス、ぼうふう」

 

「全てを吹き飛ばせ、ハルクジラ!アイススピナー!」

 

 

 いっせいに放たれた攻撃と、せめぎ合うハルクジラだったが一瞬でも張り合えたのが奇跡であり吹き飛ばされ、グルーシャはぶつかって転倒し、ハルクジラに押し潰される。動けない、万事休すだ。

 

 

「確保する」

 

「大人しくしろ」

 

「…ああ、やっぱり僕はこの程度か。サムいなあ」

 

 

 諦め、目を瞑るグルーシャ。しかしてここはピケタウンからナッペ山に続く道。即ち。彼らの通り道だ。

 

 

「レクス、こうそくいどう!」

 

「シング、フレアソング!」

 

 

 高速で移動する黒いなにかに翻弄され、モスノウとツンベアーとマニューラとチルタリスが一塊になったところに放たれた炎の衝撃波に吹き飛ばされる。四倍弱点を受けたモスノウと、耐久の低いマニューラが崩れ落ちる。エスプリ二人は攻撃の飛んで来た方に振り向くと、エクスレッグとラウドボーンを侍らせた、コライドンに乗った二人の少女がいた。

 

 

「あれって、グルーシャさん、だよね?」

 

「ああ。ブルーフレア団め、また卑怯な手を使ったな?」

 

 

 コライドンから降りながら襲われている人物を見て確認を取るアイアールと、拳と掌を打ち付けて不敵な笑みを浮かべるラウラ。二人とも、鬱憤を晴らさんが如くやる気満々だ。

 

 

「ラウラとアイアールを確認」

 

「ツバサノオウとチヲハウハネの所持者。確保する」

 

「できるもんなら!」

 

「やってみろ!」

 

 

 そして、ツンベアーとシング、チルタリスとレクスが激突した。




まさかまさかの二人のエスプリ。ジムリーダーのポケモンすら操るボールジャックの脅威。

中途半端に記憶を思い出したせいでさらにアイアールに疑惑の目を向けられるラウラ。ついには泣いてしまう始末。そのあとにかっこつけても誤魔化せていないのである。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSツンベアー

どうも、放仮ごです。スマホがいかれましたがノートパソコンがあるので特に支障はないです。FGOできるかな…。

今回はVS二人のエスプリ。楽しんでいただけると幸いです。


 グルーシャのピンチに二人が駆けつける、その数刻前。

 

 

「な、泣かないで…こっちも不安になるから…」

 

「アギャッス」

 

「…フフッ」

 

 

 なんでアイアールに距離を取られているのか謎過ぎて泣いてしまった俺の前でオロオロするアイアールと、呆れた様な声を上げるコライドンの様子に思わず笑ってしまう。泣いている場合でも笑っている場合でもないが、何時もの感じに安心してしまった。

 

 

「な、なに?」

 

「いや……お前に何かあったと心配してたけど、変わってないってわかったから安心した。…俺に関することで悩んでるのか?」

 

「…うん」

 

 

 俺の問いかけに神妙な顔で頷くアイアール。ピケタウンのどこで俺について知ったのか気になるが…言わないってことは理由があるんだろう。無理に聞くのも駄目だ。

 

 

「俺に言えないことなら無理しなくていいよ。記憶についてなら知りたいが、お前が苦しむぐらいだったら知らない方がいい」

 

「…ごめんね。いつか。いつか、話すから。ちゃんと整理してから、話したい。コライドンも心配かけてごめんね?」

 

「アギャアス!」

 

「よし、先を急ぐぞ。目指すはフリッジタウンだ」

 

「うん!」

 

 

 元気が出たらしいアイアールの操縦でコライドンが走り、その後ろにしがみ付く。ちょっとでも憑き物が落ちたならよかったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれって、グルーシャさん、だよね?」

 

「ああ。ブルーフレア団め、また卑怯な手を使ったな?」

 

「ラウラとアイアールを確認」

 

「ツバサノオウとチヲハウハネの所持者。確保する」

 

「できるもんなら!」

 

「やってみろ!」

 

 

 そんな中、二人のエスプリに追い詰められているグルーシャさんを見つけて加勢したが、冷静になってみたらなんでエスプリが二人もいるんだ!?

 

 

「アイアール、ボールジャックってのに気を付けろ」

 

「ボールジャック?」

 

「イダイナキバの時はウルガモスを強くしてたが…多分、その真価は」

 

「気を付けて……そいつら、人のポケモンを操るよ」

 

「…だよなあ」

 

 

 グルーシャさんの忠告に頷く。ってことはこのツンベアーとチルタリスはグルーシャさんの手持ちか。だが、イダイナキバの時は俺の手持ちを操ることはなかった。つまり条件がある。

 

 

「ツンベアー、つららおとし」

 

「レクス、連続でにどげり!」

 

 

 ツンベアーが上空に凍てつく息を噴きつけて、凍り付いた息から降り注いだ氷柱の雨を蹴り砕いて行くレクス。なんて数だ、もはやゆきなだれだろこれ!?

 

 

「チルタリス、りゅうのはどう」

 

「シング、かえんほうしゃ!」

 

 

 横ではアイアールがシングでチルタリスの放った竜の形をした波動と火炎をせめぎ合っていた。ツンベアーはグレンアルマとソウブレイズの無力化に使ってたポケモン…恐らくこの二体は切札級だ、練度が高い。

 

 

「レクス、とびかかる!」

 

「ツンベアー。プラスパワー。受け止めろ」

 

「なに!?」

 

 

 レクス渾身の飛び蹴りを、片手で受け止めるツンベアー。しかしその表情は苦しげだ。…今の指示で攻撃力…筋力を無理矢理上げたのか?エスプリ、強制的にポケモンを強くすることができると考えて間違いなさそうだ。

 

 

「スピーダー。アクアジェット」

 

「レクス、こうそくいどう!」

 

 

 水を纏って高速で動くツンベアーと、こうそくいどうでぶつかりあうレクス。しかし体格差で押し負け、吹き飛ばされてしまうも、レクスは空中で体勢を立て直す。

 

 

 

「とびかかる!」

 

 

 そして急降下して飛び蹴りが胴体に突き刺さり、ツンベアーはダウン。倒れたツンベアーの傍で一息つくレクス。やったか?

 

 

「ボールジャック、起動」

 

 

 瞬間、エスプリの手が掲げられると、一瞬立ち止まってからこちらを振り向くレクス。…おいおい嘘だろ?

 

 

「ジャック!」

 

 

 レクスの蹴りを、咄嗟に繰り出したジャックの岩斧で防ぐ。戻そうとボールを構えるも反応しない、ボールごと乗っ取られたか。今ので分かったぞ。

 

 

「アイアール!多分、こいつらのボールジャックの条件は「意識の隙」だ!臨戦態勢で待機している手持ち達は大丈夫だが、ダメージを受けた瞬間乗っ取られる!」

 

「それはもう少し早く聞きたかったかな!?」

 

 

 振り向いてみれば、アイアールも、大口を上げて噛み付かんとするシングをアルクジラのハルクララの大きな体でつっかえさせて防ぎながらこおりのつぶてでチルタリスを対処していた。シングもやられたか!

 

 

「エクスレッグ、とびかかる」

 

「ラウドボーン、かえんほうしゃ。チルタリス、ムーンフォース」

 

「ハルクララ、ゆきなだれ!」

 

「ジャック、れんぞくぎり!蟷螂制空圏(とうろうせいくうけん)だ!」

 

 

 いっせいに放たれた攻撃に、防御に使える技を選択。なんとかハルクジラを押しのけたグルーシャさんを庇うように防ぐ。くそっ、さすがに相棒ポケモンまで敵に回ると厄介極まりないな!ハルクララのあついしぼうでかえんほうしゃを半減で受け止めてくれているが時間の問題だ。

 

 

「…きみ!」

 

「え、わたし、ですか?」

 

「これを使え!」

 

 

 大ピンチに陥ったその時、グルーシャさんが懐から何かを取り出してアイアールに投げ渡した。見てみると、それはこおりのいし。意図を悟ったアイアールはそれをハルクララにかざすとその巨体が一回り大きくなり、ハルクジラに進化を果たす。

 

 

「ハルクララ!」

 

「ハルクジラ!」

 

「「アクアブレイク!」」

 

 

 そしてハルクララは水を纏ってグルーシャさんのハルクジラと共に前に出て突っ込み、敵三体の陣形を崩すことに成功した。

 

 

「今だ!」

 

「ゲッコウガ!たたみがえし!」

 

「ダーマ!いとをはく!」

 

 

 グルーシャさんの熱い叫びに頷き、アイアールはゲッコウガを繰り出してたたみがえしで六角形に地面を捲り上げてドーム状にし、三体を取り囲んで隔離、飛べるチルタリスやレクスも封じる。俺はダーマを繰り出しエスプリたちを指差していとをはくを指示。意図を読み取ったダーマは駆け抜けてエスプリたちの周りを回転すると糸でグルグル巻きに二人を拘束、掲げられていた両手をどちらとも下ろすことに成功した。

 

 

「動けぬ…!?」

 

「ボールジャックが…!」

 

 

 すると正気に戻ったらしく壁の中で暴れる音が止まった。やっぱりな。すると力を入れて糸の拘束を破ろうとするエスプリ二人だがそうはいかない。

 

 

「お前らのボールジャック、手を翳して電波かなにかを放つ必要があるんだろ?腕さえ下ろせば乗っ取り効果も消えるってわけだ!そして残念だったな、蜘蛛の縦糸は頑丈なんだ!」

 

「逃がすなハルクララ、こおりのつぶて!」

 

 

 ならばと縛られたまま跳躍して逃げようとするエスプリ二体の足元に突き刺さる氷の礫。アイアール、なんか殺気立ってないか?いやシングを乗っ取られた気持ちは分かるけど。

 

 

「僕のポケモン、返してもらうよ。チルタリス、ぼうふう」

 

 

 するとたたみがえしのドームを破壊して飛び出してきたチルタリス。あれを破壊して出てくるってどんな力だ。エスプリもここまで想像してなかったんだろうな。

 

 

「れいとうビーム。風邪でも引いて反省しろ」

 

 

 さらに首から下を完全に凍り付かせて拘束するチルタリス。恐ろしいな……。そして無言で歩み寄ってヘルメットを無理矢理外すグルーシャさん。出てきたのは…!?

 

 

「お前らは…!?」

 

「…ラウラ、知ってる顔?」

 

「確か、チーム・セギンとチーム・シェダルの…」

 

「うう、ここは…」

 

「お前、ラウラ!?」

 

 

 ヘルメットを外して出てきた顔の片割れは、いつぞやのチーム・セギンとシェダルのアジトで青いサングラスを身に着けていたあの女したっぱと男したっぱだった。二人はなにをしていたのか覚えていない様子だ。エスプリの正体がこいつら……いや、違う。

 

 

「…量産型エスプリってことかよ」

 

 

 なんでスター団のしたっぱを勧誘していたのか気になっていた。量産型であろうエスプリの被験体にしてたってことか。そう考えていたせいだろうか。

 

 

「…これが本当に争いの無い世界に必要なの?」

 

 

 アイアールがそう呟いていたのに、俺は気付いていなかった。




少しだけ改善された二人の関係。そしてエスプリの正体。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSユキメノコ

どうも、放仮ごです。ナッペ山が一番ルートを考えるのに苦労してます。フェアリー組やらジム二つやら行くべき場所がバラバラにありすぎるんよ…。

今回はフリッジタウンへの道中。楽しんでいただけると幸いです。


 エスプリにされていたスター団したっぱ二人を氷漬けにしたまま、二言三言交わしたグルーシャさんがこちらを振り向く。

 

 

「この二人の引き渡しは僕が引き受けよう。助けてくれて感謝するよ。だからってジムに来た時は手加減したりしないけど…」

 

「望むところです」

 

「絶対倒します!」

 

「サムいね。だけど、羨ましくも感じるよ」

 

 

 そう言って見送ってくれたグルーシャさんと別れ、プルピケ山道を抜けて洞窟の中を進んでいく俺達。

 

 

「チャンプルタウンはこっちってさっきの看板に書いてあったけど合ってるの?」

 

「山の中にポケモンセンターがあってそこから内部を登っていくルートもあるが、チャンプルタウンの方から登った方がフリッジタウンは近いらしい」

 

「つまり……私がハルクララと会った辺り?」

 

「多分そうだ」

 

 

 いつぞやの偽龍のヌシと戦った時にアイアールはナッペ山で修行してたから二度目の登山になるのか。

 

 

「前はどうだったんだ?」

 

「寒かった!」

 

「だろうな」

 

「あと、結構野生ポケモンが強かったよ」

 

「ちょうどいい、最近苦戦続きだからな。ちょっと鍛えて行くか」

 

 

 ちゃんプルタウン方面から道なりに登り、コライドンを警戒してか襲ってくるクマシュンやユキワラシやデリバードなどを倒しながら中腹のポケモンセンターに訪れる。

 

 

「あら。この間の子ね、また来たの?」

 

「え、私のこと知ってるんです?」

 

 

 ポケモンセンターに訪れてネットボール六つを預けるなり、ストーブの前に手を掲げて温まっていたジョーイさんがアイアールの顔を見て不思議そうに首をかしげる。アイアールの方は覚えがないらしい。しかしいつも思うがどこのジョーイさんも瓜二つだが姉妹かなにかなのか?……いや、よく見れば細部が違うか。同じ髪型と服にしているだけかな。

 

 

「木に何度も頭をぶつけていたアルクジラを捕まえていた子でしょ?捕まえようとして逆に吹っ飛ばされてたけどめげずに頑張ってた」

 

「お前そんなことしてたのか…」

 

「あはは……前は強くなるための修行で、今回はフリッジタウンを目指してきたんです。あ、この子が今のアルクジラ…ハルクジラのハルクララです」

 

 

 そう言ってモンスターボールを見せるアイアール。先の戦いで進化したハルクララは顔見知りなのか嬉しげに手を上げた。

 

 

「進化したのね、よかったわ。いつも気絶したアルクジラを治療していたから感慨深いわね。いつか死んじゃうんじゃないかって心配してたの。大事にしてくれてありがとね?」

 

「い、いや…トレーナーなら当たり前です」

 

「謙遜するな、立派なことだぞ」

 

 

 恐らく強くなるためとかじゃなくて、見てられなくて捕まえたんだろう。アイアールはそう言う優しいやつだ。すると機械を操作していたジョーイさんは何かを思い出したように紙の束を取り出した。

 

 

「そうだ、ここ近辺で行方不明者が何人か出てるの。フリッジタウンを目指すなら気を付けてね」

 

「行方不明……」

 

「ブルーフレア団の仕業かな?」

 

「さあな。エスプリの件もあるしな…気を付けるだけ気を付けとこう」

 

 

 そうして一休みした俺達は再びフリッジタウンに向けて出発するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「吹雪いて来たね……」

 

「地図によるとフリッジタウンは近くのはずなんだが……」

 

 

 道なりに進んでいると、突然吹雪いて来て、ドラゴンタイプなのか縮こまってしまったコライドンから降りてボールに戻し、歩いて進む俺達。防寒対策してなかったらヤバかった。

 

 

「アイアール、ちゃんとロープは結んであるか!?」

 

「だいじょうぶー!」

 

 

 逸れない様に結んだロープが繋がってるのを確認し、吹き荒ぶ雪風から顔を隠しながら雪道を登って行く。大声を上げないと意思疎通できないし、いくらなんでも吹雪が強すぎる。もしかして、自然発生じゃないのか?

 

 

「アイアール、ポケモンかなにかがこの吹雪を操ってるかもしれない!警戒しろ!………アイアール?」

 

 

 返事が聞こえないのでロープを引っ張りながら振り返る。そこには、風に吹き飛ばされそうになってるロープの切れ端がひらひらと浮いていた。先端が白く染まっているところを見るに氷か何かで斬られたらしい。気付かなかった。

 

 

「アイアール!?」

 

 

 慌てて大声で呼びながら周囲を捜すが、返事も聞こえないし見当たらない。本格的に不味いぞ!?

 

 

「くそっ……こうなったら、ケプリベ!」

 

 

 生憎とウルガモスは手持ちにいないし、ニトロチャージが使えるウカは言うことを聞いてくれない。ならばとケプリベを繰り出すと、雪の中でぼんやりと玉が輝くのが見えた。

 

 

「フルパワーだ!じんつうりきで吹雪を止めろ!」

 

 

 そう指示すると玉が強く光り輝き、桃色の波動が周囲にドーム状に広がって、吹雪の雪をその場で固定する。約5メートルのドーム状の空間内で雪風は完全に静止した。すると背後に気配。こおりタイプと読んでぼむんの入ったボールを掲げる。

 

 

「ぼむん!でんじほう!」

 

 

 するとオーロラの様な壁ででんじほうが防がれる。オーロラベール、あられもしくはゆきの時だけ使える技で、ぶつりととくしゅに強いバリアを発生させる技だ。その向こうにいるのは、一見人型だが頭部から両腕が伸びているという特殊なフォルムの全体的に白く着物を着た少女を思わせる可憐な容姿のポケモン。図鑑を確認する。

 

 

「ユキメノコ、こおり・ゴーストタイプのポケモン…!」

 

 

 図鑑説明によれば気に入った人間やポケモンを冷気で凍らせ、巣穴に持って帰って飾るとある。つまり行方不明者やアイアールはコイツに氷漬けにされて誘拐されたのか?それで俺も捕まえようとして…。

 

 

「ぼむん、ヘビーボンバー!」

 

 

 空中に舞い上がり、急降下攻撃を繰り出すぼむんだったが、雪煙が晴れたそこにユキメノコの姿はなく。とくせい、ゆきがくれか…!

 

 

「警戒しろ、ぼむん!」

 

 

 ケプリベは吹雪を固定しているから戦闘には参加できない。もう一匹出してもいいが、正直ぼむんの周りや俺の周囲を警戒するのでいっぱいいっぱいだ。考えろ、考えろ…恐らく奴の覚えている技はゆきげしき、オーロラベール。ふぶきも覚えているかもしれないがそれならアイアールだけ連れ去られた理由が分からないから多分違う。アイアールだけを音もなく凍らせてしまう技ってなんだ…?

 

 

「ぼむん!?」

 

 

 考え事をしていたら、気付いたら氷漬けになってゴトンと音を立てて雪の中に転がり、追撃の鬼火の様な波動を受けて目を回すぼむん。今のはたたりめか…?なんだ、奴は何をしている?

 

 

「ダーマ!」

 

 

 相手の攻撃の正体を見極め反撃するためにダーマを繰り出す。ダーマのとくせいは「はりこみ」交代してきた相手に攻撃する際、こうげき・とくこうが2倍になるというとくせいだがもうひとつ、警戒心が非常に高く隠れている相手の動きもある程度観測できることができる。蟲ってのはか弱いから、外敵に対する備えは強いのだ。俺が見るよりも、ダーマが反応するのを待った方が確実だ。

 

 

「スレッドトラップ!……こおりのキバ、か」

 

 

 ダーマが反応したのを見て指示、糸の盾で受け止めて下手人を糸で絡め取るダーマ。攻撃の正体はこおりのキバ。あれでひっそりと噛み付いて連れ去っていたのだろう。そして、ダーマが動きを止めてくれているならもう一匹ポケモンを出して反撃できる。

 

 

「ジャック、その場でがんせきアックス!」

 

 

 そして繰り出したその巨体に怯えるユキメノコに、ジャックが振り上げた岩斧がスレスレ目の前に振り下ろされる。倒してしまったらアイアールたちの居場所が分からないからな。

 

 

「これで斬られたくなかったらアイアールたち…お前が攫った女の子たちの居場所を教えろ」

 

「(コクコクコクッ)」

 

 

 軽く脅すと全力で首を縦に振ったユキメノコをダーマで縛り上げ、歩かせるとかまくらが存在し、中で氷像にされていたアイアールたちをウカに頼んでニトロチャージしてもらい溶かして救出した。さすがに仲間と認識しているアイアールのピンチにはウカも手を貸してくれるらしい。

 

 

「助かったよラウラ……シングを出す暇も無くてさ」

 

「肝が冷えたぞ」

 

 

 ユキメノコは反省した様なので逃がしてやり、俺達はユキメノコに囚われていた人々と共にフリッジタウンに到着、一息つくのだった。




ブルーフレア団関係ない話は久々かな?

アニポケとかポケスペとかなら多分主人公達の手持ちに入っているであろうタイプのユキメノコ。技はゆきげしき、オーロラベール、たたりめ、こおりのキバです。

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VSジュペッタ

どうも、放仮ごです。ポケモン新情報来ましたね!個人的に六角形の正体が分かってよかったです。でもお今後のポケ蟲紅の展開に関係する新設定出されるのが怖いのが本音。似た様なことをちょっと前にエヴリンレムナンツでもぼやいてた記憶。

今回はいろいろすっ飛ばしてVSライム戦。楽しんでいただけると幸いです。


 氷漬けにされて本調子じゃないアイアールを置いてフリッジジムを先に攻略することにした俺。なんだろう、氷漬けは他人事じゃない気がする。考えるだけで体に残っている傷跡が痛む。正体不明の傷跡だが氷漬けとなんか関係あるんかな。そんなことを考えながらジムに向かっていると、ジムの方から誰か歩いてくるのが見えた。あれは……。

 

 

「タイム先生?」

 

「残念ながら違うね!タイムはアタイの姉さ!アタイはライム!人呼んでa.k.a.ソウルフルビートさ!」

 

 

 オレンジアカデミーの数学の先生、タイム先生によく似たゴールデンな装飾品と化粧がアクセントとなった黒ずくめのラッパー風の衣装の人物。この人がここのジムリーダー、ライムさんか。でもなんでここに?

 

 

「アンタがラウラだね?行方不明になってた人達に聞いたよ!アタイも手を焼いていたユキメノコを退治したんだろ?その実力に敬意を表して、ジムテスト無しで戦ってやろうってね!既に名前は登録してあるよ!」

 

「いいのか?」

 

「行方不明事件を解決したってことはそれぐらい凄い事なのさ!たまにはオープニングアクトもないゲリラライヴもいいだろうさ!4VS4のダブルバトルだけど問題はないね!」

 

「なんならトリプルバトルでも!」

 

 

 そう言ってモンスターボール型のゴージャスなマイクを取り出し複雑な手の動きをするライムさん。な、なんだ?変な迫力が…。

 

 

「蟲使いルーキー!無茶苦茶QT!アタイに、身震い!ちょうだいよ!HEY!」

 

「お、おう…」

 

「なんだい、ノリが悪いね!こいつはラップ!音の響きが同じ言葉を繰り返し紡ぐ魂の歌さ。ヤミラミ旅立ち、たちまちかみなり♪そんな毎日、だいたいありがち♪…ってな感じさ!伝わったかい?」

 

「はあ…」

 

「ま、アンタはポケモントレーナー!昂ぶるハートは勝負で出しな!ほらほら、ステージに乗った乗った!」

 

 

 ライムさんに促されるままにジムの横にある大きなステージに乗せられる俺。何事かとぽつぽつと観客が現れる。ナンジャモの所で慣れたとはいえ、これは恥ずかしいぞ…?

 

 

「頑張れラウラー!」

 

「大声で呼ぶな恥ずかしい!?」

 

 

 混ざってたアイアールの声援に顔を真っ赤にして返す。すると反対側に立ったライムさんが手に握ったマイクを口元に寄せてどこからともなく流れてきた音楽のビートに乗って体を揺らし始めた。

 

 

「さあて、アンタたち!ジェラシー感じるノイジー♪ナイスな加減にご機嫌かい!?こいつはラウラ♪強い奴さ♪蟲を使う食わせ物♪いっぱい食わされる準備はいいかい♪」

 

「…ラップはできないが宣言はできる。諸君!俺…私、ラウラは蟲が好きだ!蟲ポケモンが好きだ!愛している!だからこの愛を以て、ジムバッジをすべて集めてトップチャンピオンを倒すことで証明する!蟲ポケモンはかっこよくて!かわいくて!美しくて!最高で!最強なのだと!!」

 

 

 ブルーフレア団関連のことばかりでここ最近宣言できていなかった心の言葉を叫ぶ(シャウト)。それを聞いた観客はなんか知らんが盛り上がる。こんなんでいいのか?とライムさんを見るとぐっとサムズアップを返してくれた。及第点だったらしい。

 

 

「YO!YO!ゴーストタイプを♪こよなく愛するアタイに♪言ってくれるね♪痺れるね♪」

 

 

 ズンズンチャッチャカとリズミカルなメロディーに合わせてそうビシッ!ビシッとポーズを決めて行くライムさん。

 

 

「YO!YO!アタイにゃ響いたが現実どうだ♪怖気づいたら帰りな、去っときな♪アタイはライム♪優しさ皆無♪じゃないか?ライク、ザ・ダイナマイツ♪ラックで勝てるほど甘くないさ♪ラップで少しは学びな♪ナンマイダ♪HEY!」

 

 

 怒涛のラップに思わず怯む。なんかすごい迫力がある…!

 

 

「骨ある相手♪いないかね♪アンタにゃ期待しているよ♪メーン!語りなバイブス!霊・生命!勝負するフィールド!」

 

 

▽ジムリーダーの ライムが 勝負を しかけてきた!

 

 

 マイクを握ったまま拳を打ち鳴らし、ボールを二つ器用に片手で構えるライムさん。俺もネットボール二つを手に取る。

 

 

「ジュペッタ、ミミッキュ!ビートに乗りな!」

 

「レイン、ぼむん!頼んだ!」

 

 

 ライムさんはジュペッタとミミッキュ、俺はアメモースのレインとフォレトスのぼむんだ。まあいるよな、ゴーストタイプでも強力なミミッキュは!読み通りだ、ぼむん頼んだぞ!

 

 

「レイン、エアカッター!ぼむん、ミミッキュにヘビーボンバー!」

 

 

 まず素早さの高いレインがエアカッターでジュペッタにダメージを与えつつミミッキュのばけのかわを剥がし、そこにぼむんが空中から急降下して襲いかかる。

 

 

「ダブルバトルはライム'sスタイル!かわるがわるでワンダフル!ジュペッタ、フォレトスにふいうち♪ミミッキュ暴れな♪アメモースにじゃれつきな♪」

 

 

 するとエアカッターを受けながらも跳躍してぼむんの不意を突いて叩き落とすジュペッタと、同じくエアカッターを受けながらもばけのかわで受け止めて接近、ボコスカとレインを殴りまくるミミッキュ。ラップに乗りながら対策された!?

 

 

「ぼむん、でんじふゆうで逃げろ!レインはバブルこうせんでミミッキュのすばやさを下げろ!」

 

 

 ぼむんを空に逃がしながらミミッキュをバブルこうせんで牽制する。ご自慢のすばやさは下げられたくない筈……ジュペッタは何処に行った?

 

 

「影に隠れる♪ゴーストお得意♪ゴーストダイブ!」

 

 

 瞬間、ぼむんの真下。影から飛び出したジュペッタの一撃がぼむんの下部に炸裂。目を白黒させて墜落するぼむん。

 

 

「レイン、エアカッター!ぼむん、まきびし!」

 

「二体揃ってかげうちだよ!」

 

 

 ミミッキュとジュペッタ揃ったところに風の刃と撒菱を叩き込まんとするも、その前に影から一撃が放たれてレインとぼむんに炸裂、技を出させることなく吹き飛ばされる。強い、というより上手い。やりたいことをさせてくれない。

 

 

「レイン、もう一度エアカッター!」

 

「ミミッキュ、ひかりのかべ。ジュペッタ、こごえるかぜ」

 

 

 再度放ったエアカッターも、光の障壁を展開されて防がれた上に、ジュペッタの放った凍てつく突風を受けたレインは崩れ落ちる。効果は抜群だ。

 

 

「そんなもんかい?蟲の底力!」

 

「魅せてやるよ蟲の底力。ジャック」

 

 

 レインを戻し、繰り出すはジャック。目立ちたがりなこいつにはナンジャモの所に続いて最高のステージだ。

 

 

「研ぎ澄ませるぞお前の新技!――――つるぎのまい」

 

「っ、させるんじゃないよミミッキュ、ジュペッタ!かげうち!」

 

 

 つばめがえしを忘れさせて覚えた新技、つるぎのまい。両手の岩斧をまるで舞踊の様に振り回し、攻撃力をぐーんと上げて行く。それだけじゃない、放たれた影からの挟み込む様な攻撃も、乱舞で斬り弾く。さらにジャックのとくせいは「きれあじ」斬撃の威力を高める、これにより。本来変化技のつるぎのまいは、攻撃技に昇華する。

 

 

「くっ、じゃれつく!」

 

「させるなぼむん、まきびし。そしてジャック、ぶった切れ」

 

 

 まきびしをばら撒いて迎撃せんとしていたミミッキュを怯ませ、ジャックは岩斧を振り回しながら突撃。舞うような斬撃で、ミミッキュを天高く斬り弾く。

 

 

「…やるね。つるぎのまいで攻撃してくるなんて驚きだよ」

 

「一寸の蟲にも五分の魂ってな。俺の蟲は強いぞ」

 

 

 続けてハカドッグを繰り出すライムに、俺とジャックとぼむんは構える。さあ、3‐3。ここからだ。




ユキメノコを倒した報酬に直接ジムリーダーとのバトル。ラップが難産でした、上手くできてるかな?

そして前作でも猛威を振るったつるぎのまいがパワーアップして登場!ジャック大暴れです。

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VSハカドッグ

どうも、放仮ごです。今作のジムリーダー戦は台詞が多くていいですね。全台詞を回収するのが最近の趣味だったり。

今回はVSライム、決着。楽しんでいただけると幸いです。


「「「ライムのポケモン撃破!?うひょー!興奮してきたよ!」」」

 

 

 うん?なんかいつの間にかすごい増えた観客から歓声を浴びたらぼむんとジャックの能力が強くなった気がする。具体的には攻撃と特攻が上がった気がする。なんで?

 

 

「このステージは特別性!観客(オーディエンス)の歓声でポケモンの能力が上がるのさ!」

 

「なるほど、派手に立ち回ればいいわけだ。ジャック、ぼむん!」

 

 

 歓声を受けてテンション高めのジャックと、引っ込み思案ながらも悪い気はしないのかはしゃぐぼむんに対するは、ジュペッタとハカドッグ。

 

 

「ジュペッタ、こごえるかぜ!ハカドッグはその斧を噛み砕いてやりな!」

 

「ジャックはれんぞくぎりで蟷螂制空圏(とうろうせいくうけん)!ぼむん、でんじふゆうで上を取れ!」

 

 

 放たれたこごえるかぜとかみくだくをれんぞくぎりによる斬撃のドームで寄せ付けず、でんじふゆうでぼむんをステージ上空に飛ばす。

 

 

「素早く!がんせきアックス!力強く!ヘビーボンバー!」

 

 

 蟷螂制空圏の動きの延長戦として素早くがんせきアックスを振るってステルスロックを遠距離攻撃として飛ばし、それに怯んで動きが止まったところに隕石の如く急転直下ヘビーボンバーが炸裂。罅すら入らないステージ上に円形に衝撃波を発生させる。がしかし。

 

 

「ゴーストダイブ。甘いね」

 

「どっちも使えるのかよ……」

 

 

 影に入って時間差攻撃を仕掛けるゴーストダイブを両者ともに使ったのか、ハカドッグもジュペッタも姿が見えない。ならば。

 

 

「ぼむん、影を埋める様に素早く!まきびし!ジャックはがんせきアックス!」

 

 

 ぼむんにまきびしを、ジャックに通常のがんせきアックスを使用させ見える影と言う影をまきびしとステルスロックで埋め尽くす。狙い通り、飛び出してきたハカドッグとジュペッタは全身を傷だらけにして転がった。

 

 

「今だぼむん、でんじほう!」

 

「生憎と近づくのが目的さ!ほのおのキバ!」

 

「なっ!?」

 

 

 でんじほうを確実に当てるべく手近なハカドッグに近づいたぼむんだったが、いきなり炎を纏った牙で噛み付かれて炎上、崩れ落ちるぼむん。覚えていたか…!

 

 

「本当はこおりのキバだったんだけどね。ユキメノコ対策に覚えさせた技さね」

 

「…そりゃ、最悪のタイミングだよ」

 

「「「効果抜群!超タイトだぜ!ライム!ライム!ライム!」」」

 

 

 観客から歓声が上がる。これでライムさん側の能力が上がったわけだ。3‐2で逆転された。切札を出すしかない。

 

 

「頼むぞ、レクス!」

 

 

 レクスとジャック、事実上の俺の主力である二体が並び立ち、咆哮を上げる。

 

 

「ジュペッタ、こごえるかぜでまきびしやステルスロックを払いな!

 

「ジャック、素早く!くさわけで巻き上げろ!レクス、ジュペッタにじごくづき!」

 

 

 体勢を低くしたジャックがブルドーザーの様にフィールドを岩斧で制圧してまきびしとステルスロックを空中に巻き上げ、まるで流星群の様に降り注がせる中でまっすぐ横に跳躍し、ミドルキックをジュペッタの顔面に叩き込んだ。崩れ落ちるジュペッタ。

 

 

「「「すました顔で弱点ディグる!かなりSWAGじゃん!」」」

 

「「「速攻アンサー返しちゃえ!ライム!ライム!ライム!」」」

 

 

 大盛り上がりな観客たち。次がライムさんの最後のポケモンか。ダブルバトルだから早く感じるな。

 

 

「セットリストはいよいよラスト♪ハウっていくよ♪CLAP YOUR GHOST!」

 

 

 そうライムさんが叫んで繰り出したのはローの姿のストリンダー。やっぱりゴーストタイプじゃないのね。繰り出したと同時に、観客席にあった墓石が動き出して次々とハカドッグが顔を現し、スピーカーの上ではいつの間にかいたボチが健気に後ろ足で立って踊る。

 

 

「アタイの歌は死者をも蘇らせる!DJ BOCHIもゴキゲンだね!」

 

 

 そう言ってテラスタルオーブを取り出し、白眼になりながらもストリンダーをテラスタルさせるライムさん。紫の体色に似合うな!

 

 

「魂こめなストリンダー!そうすりゃお客はブチョヘンザ!バサギリにたたりめ!」

 

「つるぎのまいだジャック!」

 

 

 俺の指示に頷き、岩斧を舞踊の如く振り回して放たれた鬼火の様なエネルギー弾と鬩ぎ合うジャック。しかし押し負け、大ダメージを受けて後退する。

 

 

「「「ゴーストテラスタル、サイコー!ライム、マジ輝いてるよ!」」」

 

「「「ライムの攻撃を持ちこたえてる!がんばれ、がんばれー!」」」

 

 

 観客のボルテージも上がって行く。原理は分からないがこっちの能力が上がったと考えてよさそうだ。

 

 

「ハカドッグ、ほのおのキバ!」

 

「レクス、こうそくいどうで懐に飛び込め!じごくづき!」

 

 

 ハカドッグが牙に炎を纏って飛び込まんとするも、その前に懐に潜り込んで後ろ蹴りを顎に叩き込んで蹴り飛ばす。これで1‐2。

 

 

「オーバードライブ!」

 

 

 しかしそこに横から電撃を纏った音波が放たれ、レクスはダウン。とくせいのパンクロックも合わさって凶悪な威力だ。1‐1に持ち込まれる。ならばとテラスタルオーブを取り出してジャックをくさテラスタルさせる。これででんきタイプのオーバードライブは効かない。

 

 

「「「ここでテラスタルとは!なかなかなタイミングだ!」」」

 

「ジャック、くさわけ!」

 

「ストリンダー、たたりめ!」

 

 

 放たれた鬼火の様なエネルギー弾と、草むらをかき分けるように放たれた岩斧がかち合って大爆発。その中を突き進んで距離を詰めるジャック。

 

 

「つるぎのまい!」

 

 

 グルングルングルンと、両手の岩斧を振るって独楽のように回転。連続で斬撃を叩き込んで上空に打ち上げると共に切り刻む。テラスタルが空中で解けて宝石の欠片が雪の様に降り注ぎ、力なく落ちてきて倒れ伏すストリンダー。

 

 

「―――パンチラインは段違い!負けてもアタイはSO FAINE!」

 

 

 それを目にしたライムは顔を背けながらもサムズアップをする。ギリギリだった。ユキメノコに勝てていい気になってたけど、やっぱりジムリーダーは強いな。

 

 

「HAHAHA!いいねぇ!アンタの魂、ビンビン感じたよ!まるで年不相応の魂だ!アタイを唸らせるとは気骨がある!フンッ!ジムバッジ、持っていきな!」

 

 

 えらく上機嫌なライムさんからバッジを受け取る。これで六つ目。あと二つで、リーグへの挑戦権だ。…ブルーフレア団もほっとけないけど、こっちも頑張らないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあやあ、ラウラくん!」

 

「…ハッサク先生?」

 

 

 手続きを終えてアイアールと合流するべくジムから出ようとすると、そこに現れたのはハッサク先生だった。

 

 

「ジムリーダー・ライムとの勝負、陰ながら拝見しておりましたが……100点満点天晴れ!……でございます!!」

 

「そ、そうでしたか…?」

 

「先手でアメモースとフォレトスを繰り出すや否や!そこから怒涛の攻撃!特にあのつるぎのまい!実に美しい!相手がピンチに陥ったかと思えば!鍛え、重ね塗られたポケモンの技の数々!そのグラデーションが……!!ハッ!?……申し訳ないです!感情がだいばくはつしてしまいました」

 

 

 興奮して一気に捲し立てたかと思えば我に返って急に落ち着くハッサク先生。このテンションはなんか「セレブリティ!」って幻聴が聞こえてきそうでちょっと苦手だ。

 

 

「コホン……要するに腕を上げたようですね。あなたがバッジを全部揃えるのが待ち遠しいですよ。小生も四天王として楽しみに待っておりますのでね。それと……ジムリーダー・グルーシャからの報告を聞きました。一応貴方は関係者なのでその後の報告を」

 

 

 その言葉に顔を引きしめる。教えてくれるのはありがたい。

 

 

「元スター団したっぱの彼等に着せられていたボディスーツは内臓プログラム?とやらに強固なロックがかけられていてろくな情報を引き出せなかったとのこと。したっぱ二人も記憶が抜けていてどうしてあの中にいたのかも、どうしてブルーフレア団に入ったのかも覚えていないとのことです。つまり、なにもわかっていませんね!」

 

 

 …やっぱり負荷がでかいのかそれとも意図的か、あのエスプリのボディスーツには記憶を失わせる効果でもあるのだろうか。

 

 

「もちろん貴方は学生の身です、大人である我々に任せて宝探しに専念してもよいのですが…その顔、意地でも巻き込まれてやるって顔ですね。それも結構!決意ある若者を阻むわけにも参りません。ですが、たまにはアカデミーに戻って勉学にも励むようにですよ。では」

 

 

 そう言い残してハッサク先生は去って行った。……ジムのことばかり考えられたらいいんだけどな。見て見ぬふりするわけにもいかないんだ。




 レクスとジャックというラウラの二大戦力の活躍でした。上から落ちてくるまきびしは凶悪だと思う。

ハッサク先生の報告によりエスプリについてあんまりわかりませんでした。ロックを解除できるような人材がいればいいんですけどね?

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VSボチ

どうも、放仮ごです。情報の小出しが相変わらず難しい。

今回は幕間。ある事実が明らかに。楽しんでいただけると幸いです。


 ジムテストのステージアクトをアイアールが行って大いに盛り上げ、ゴーストタイプにテラスタルすることできよめのしおの効果であくタイプ以外弱点が無くなったキョジオーンことツムヅムが無双してライムさんに完勝した、その後。

 

 

「きよめのしおでゴーストテラスタル、ゴーストタイプも半減するの鬼みたいなとくせいだな。しかも堅牢な要塞だし」

 

「ほぼ無敵だけどあくタイプって大体のポケモンのサブウェポンにあるから結構博打なんだよね…ラウラの戦いで予習できたのがデカかったよ」

 

「先にジム戦すると後の奴にそういう強みがあるよな」

 

 

 言いながらフリッジタウンの屋台「串のトリコ」で購入したピンチョ・モルノ……串焼きを美味しく立ち食いする。アイアールは焼きおにぎりを購入して頬張っていた。なんかチャンプルタウンを思い出すなそれ。最初はまいど・さんどで昼食をいだたこうとしたのだがアイアールが嫌がったのだ。ピケタウンでは行ったはずなんだがな?

 

 

「ふぅ、食った食った」

 

「次はどこに向かうんだっけ?」

 

「スター団フェアリー組「チーム・ルクバー」のアジトのある北3番エリアだな。ここから北上してナッペ山を下りる必要がある。できればお前には待っていてほしいんだが……」

 

「コライドンもなしでナッペ山を降りる気?自殺行為だよ」

 

「それなんだよなあ」

 

 

 ぼむんだとバランスも崩しそうだし、何より結構急斜面だ。かっくうもできるコライドンの力を借りるしかないよなあ。

 

 

「しょうがないか……でも手出しはするなよ。これは俺の喧嘩だ」

 

「それはわかってるよ」

 

 

 スター団むし組のためにも、スター団のボス全員に一人で勝つ必要があるからな。その邪魔はされたくない。そんなことを考えながらフリッジタウンを出発する。目指すは北だが、来た道を道なりに戻って行く。一度、アイアールとハルクララを覚えていたジョーイさんのいたナッペ山のポケモンセンターまで戻り、そこから別の道を進む必要がある。

 

 

「…よし、ここを右だ」

 

「了解」

 

 

 ポケモンセンターが見えて来たら右に曲がり、そのまま下り道を降りると北上する。すると、道の先でボチの群れに群がられて倒れている人影が見えてきた。どこかの民族みたいな奇妙な文様が描かれた、ウォーグルの羽が飾りとして付いている緑を基調とした仮面が傍らに落ちている、華奢な体にオレンジアカデミーの夏服のネクタイが無い上に両袖を破ってタンクトップ風にしていて、日焼けした浅黒い肌で裸足の、野生児という印象の人物。一瞬サニアか?と思ったがその顔は思いがけない人物だった。

 

 

「ペパー!?」

 

「オーリム博士!?」

 

「……え?」

 

 

 ペパーにそっくりなその顔の人物、アイアールが言うにはオーリム博士らしい。ペパーの母親だから似ててもおかしくないか。いやだが、学生服?なんで?

 

 

「と、とにかく助けよう!」

 

「でもなんでボチなんかに……」

 

 

 アイアールにコライドンを操縦してもらって近づきながら、ポケモン図鑑アプリを開いて調べる。ボチ、おばけいぬポケモン。ゴーストタイプ。人と関わることなく命を落とした野良の犬ポケモンが生まれ変わったと言われている。人懐っこくて寂しがり。ちょっとかまっただけでもいつまでも後をついてくる。ふむふむ…ふむ!?

 

 

「近くにいる人の生気を無自覚に少しずつ吸い取っているため、長時間遊ぶのは避けたほうがよい…!?」

 

「そういうこと!?コライドン、吠えて!」

 

「アギャアアアアアスッ!!」

 

 

 アイアールの指示に頷いたコライドン渾身の咆哮を受けて蜘蛛の子散らすように逃げて行くボチの群れ。そりゃボチの群れに群がられたらひとたまりもないわな。

 

 

「おーい、生きてるかー!?」

 

 

 というか服も夏服だし普通に寒さにもやられてるっぽい。なんとか上半身を起こし、荷物からモコモコの上着を取り出して被せると、その人物…少女は目を開けて驚きに目を見開いた。

 

 

「ラウラ。なんで?」

 

「その声…お前、サニアか?」

 

「驚いた、オーリム博士にそっくりだ」

 

 

 その正体は仮面が外れたサニアらしい。アイアールの言う通り、ペパーにもよく似た美形の顔が目を引く。

 

 

「かんけいない。わたし。サニア。それだけ」

 

「お前、こんなところでなにしてたんだ?そんな薄着で自殺行為だぞ」

 

「……エリアゼロ。ぬけみち。さがしていた」

 

「「エリアゼロ?」」

 

 

 エリアゼロってのはたしか、パルデアの大穴の中のエリアのことか。オーリム博士がいるとかいう。なんでそんなところに?とアイアールと一緒に首をかしげる。

 

 

「ゼロゲート。とじられてて。だんがいぜっぺき。はいれない。だから。さがしてた」

 

「なんでエリアゼロに?」

 

「わたし。あそこにかえりたい。クラベルにはかんしゃしてる。だけど。てがかりがほしい」

 

「なんのだ?」

 

「わたしのこきょうに。かえるほうほう」

 

 

 真剣な顔でそう語りながら仮面に降り積もった雪を手で払って装着するサニア。つまり……サニアはエリアゼロから来たってことか?いや帰る方法の手がかりってのはどういう意味だ?

 

 

「わたし。とおいところからきた。とおい。とおいところから。かえりたい。でもわからない。だからいく。エリアゼロに」

 

「いやいや、わけがわからないよ?」

 

 

 そういうアイアールだが、俺の中では線と線が繋がった気がした。遥か昔のシンオウ、ヒスイ地方にしか生息してない筈のバサギリに進化するためのアイテムを持っていたこと。現代人らしからぬ民族の様な風貌。片言の言葉。もしかして、もしかしてだけど。

 

 

「サニア、お前……過去から来たのか?」

 

「え?」

 

「わからない。だけど。ここ。わたしのしるばしょとちがう」

 

 

 なんだろう、無関係とは思えない。誰も俺を知らない、それどころか痕跡すらないパルデアやガラル。俺の記憶では知り合いのはずなのに何も知らないモコウとムツキ。そして、どこかを通ってやってきた記憶。

 

 

「…まさか、エリアゼロは別の時間に繋がっていて、俺も別の時間から来たのか…?」

 

「え?え?」

 

「ラウラも。わたしと。おなじ?」

 

 

 首をかしげるサニア。困惑するアイアール。固まる俺。場は混沌としつつ、膠着して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、チャンプルタウン郊外で。

 

 

「グレイ。少々大人げなくないですか?」

 

「ここの奴らが使えないメガシンカでボコボコにしてるお前に言われたくはないぞ、ダフネ」

 

「その言葉そっくりそのまま返しますよ色違いメタグロス羨ましいですね今畜生」

 

「キュレムやケルディオ、ゲノセクトがいないからな。俺はトウヤやお前ら以外に負けたくない」

 

「恋しいからってゾロアークにキュレムに化けさせるのやめましょう?騒ぎになって困るのはこっちなんですからね」

 

「悪かった。善処する」

 

 

 

 

「残業確定ですか……事情を聞かせてもらいますよ」

 

「「あ」」

 

 

 付近のトレーナーに片っ端から勝負を仕掛けてカツアゲ紛いの如く賞金を乱獲し、通報を受けたジムリーダー・アオキに職質される男女二人組がいたとかいないとか。




ボチの群れに懐かれて行き倒れし、仮面の下がペパーによく似ていてオーリム博士に瓜二つだと判明したサニア。その正体は…?

一方その頃、アオキに職質されるアホ二人。その行く末や如何に。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSパフュートン

どうも、放仮ごです。久々に書きすぎてグレイのキャラがぶれぶれだけど気にしないでください。一皮むけてこうなったってことで。

今回はグレイVSアオキ。楽しんでいただけると幸いです。


 ――――のガラルから持って来た軍資金が尽きた私とグレイのコンビは、賞金を得るべくトレーナーに片っ端から勝負を挑んでいた。ラウラさん捜索のためにジュリさんの発案でガラル辺境(ワイルドエリアとカンムリ雪原の間)にある刑務所から条件付きで脱獄……もとい出所させたグレイは一度壊滅したプラズマ団をたった一人で再興しただけあってかなり優秀だ。しかし数を稼ぎたいあまりメガヘラクロスやメガメタグロスを使ってたのは悪手だった。しかもグレイはキュレム(の姿に化けたゾロアーク)まで使うし。そりゃあ通報もされますよね。

 

 

「まさかジムリーダーのアオキさんが来るとは思いませんでしたが……」

 

「ごほん。チャンプルタウンのジムリーダーが俺達に何か用だろうか?」

 

 

 念のためネットで調べて置いた情報によれば、ジムリーダーの中では平均的な強さの非凡サラリーマンだっただろうか。グレイが咳払いして平静を保ちつつ誤魔化そうとしている。正直私達の存在が知られるわけにはいかないのだからなんとか誤魔化してほしい。なにせ戸籍ないから捕まるだけでアウトだ。

 

 

「見たこともないポケモンで脅されてカツアゲされたと通報がありましてね。一番近かった私が派遣されました」

 

「いやいや。我等はちゃんとルールに則りカツア……げふん。金を稼いでいたのだが、何か法に触れただろうか?」

 

「かつてイッシュを氷漬けにしたというドラゴンポケモンを連れていたという話もありますが」

 

「俺達はキュレムなんて連れてないぞ」

 

「はて。名前を言ったでしょうか。ダウトです。残業確定ですねこれは」

 

 

 そう言われてハッと失言に気付き、悪いと言いたげな顔をこちらに見せるグレイ。貴方はその馬鹿正直治した方がいいですよ、ったく。持っていたカバンからモンスターボールを取り出すアオキさん。ノーマルタイプの使い手だとは知っていたのでヘラクロスを繰り出そうとするも、グレイに手で制された。

 

 

「お前を失うのはあの二人を失うと同義だ。ここは悪役に任せておけ」

 

「まあ心配してませんけど。お願いだから傷害事件は起こさないでくださいよ」

 

「反省はしているさ!」

 

 

 そう言ってグレイが手にしたマスターボールから繰り出したのはキュレム。それを見て意図を理解してヘラクロスを繰り出し、持ち上げてもらってその場を離脱する。

 

 

「逃がしませんよ。パヒュートン、タネマシンガン!」

 

「それはこっちの台詞だ。ゾ…キュレム、こごせるせかい!」

 

 

 去り際に見たのは、こちらを妨害しようとしていたパフュートンの周りを凍結させて怯ませるキュレムとグレイの姿だった。癪ですが任せましたよ、共犯者!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダフネは行ったか。名前を出さなかったのは調べられるのを避けるためだろうな。さて、ああ啖呵は切ったはいいが手持ち三匹でどこまでいけるか。

 

 

「そのキュレム。本物ではありませんね。冷気を一切感じない」

 

「ばれたか。もう少し騙されてくれるとよかったんだがな」

 

 

 アオキの言葉に振り向くキュレム。俺が頷くとキュレムの姿がぶれてゾロアークへと戻る。

 

 

「ナイトバースト」

 

「アイアンヘッドです」

 

 

 ゾロアークから放たれた暗黒の波動を、頭突きで吹き飛ばすパヒュートンとかいう豚のポケモン。大概の相手ならこれで勝てるんだがな?本当にジムリーダーか?

 

 

「のしかかり!」

 

「ふいうち!」

 

 

 その鈍重そうな見た目からは想像もつかない身軽さで飛びかかってくるパフュートンの押し潰しを、頬を蹴り飛ばすことで迎撃。そのまま技ではない爪と髪の斬撃の嵐を叩き込んでいくゾロアーク。

 

 

「イカサマ!」

 

 

 足払いで浮かばせたところに鋭い爪の一撃を叩き込み、パフュートンを突き飛ばし戦闘不能にした。アオキは特に驚きも無く冷静にボールにパフュートンに戻し、ウォーグルを繰り出してきた。どこぞのひこう使いを思い出すな。

 

 

「ウォーグル。ブレイブバード」

 

「ゾロアーク、近づけさせるな!ナイトバースト!」

 

 

 猛禽類型のオーラを纏って突撃してくるウォーグルを暗黒の波動で迎撃するも、あっさり突き破って肉薄してきた。ブレイブバードで攻撃するのが目的じゃない、ということはばかぢからか……。

 

 

「インファイト」

 

「そう来るよな!とんぼがえり!」

 

 

 放たれた翼の一撃を、ゾロアークは宙返りしながら蹴りつけることでボールに戻り、交代したメタグロスが翼と爪の一撃を弾き返す。

 

 

「そのポケモンは…」

 

「メタグロス。パルデアにはいないらしいな。俺の切札の一匹だ」

 

 

 そうして右拳を掲げると、ユウリが取り返してくれた指輪型のメガリングが光り輝き、メタグロスの持つメタグロスナイトと繋がって光の繭に包まれて罅割れ、現れたメガメタグロスが咆哮を上げる。

 

 

「サイコキネシス」

 

「むっ」

 

 

 スーパーコンピューター以上を誇る頭脳を用いた念動力でウォーグルを拘束、引き寄せて振りかぶるメガメタグロス。終わりだ。

 

 

「アームハンマー。バレットパンチ。コメットパンチ」

 

 

 上の腕二本で叩き潰し、下の腕二本でタコ殴りにするメガメタグロス。四つの技の同時行使。どんな奴だろうが叩き潰すメガメタグロスの必勝法だ。崩れ落ちるウォーグルを無言でボールに戻すアオキ。このまま全タテしてやるよ。

 

 

「なかなかやりますね。負けそうですよ。ですが仕事が増えるのは勘弁願いたい。ネッコアラ」

 

「っ…」

 

 

 負けそうですとか言いながら繰り出すポケモンだ、見た目に騙されちゃいけない。相手を侮るのは負けに繋がる、俺はそう学んだ。蟲ポケモンだろうと最強の伝説ポケモンすら倒せるのだ。この転寝(うたたね)しているネッコアラ相手にも油断はできない。

 

 

「アームハンマー!」

 

「ふいうち」

 

 

 下二本腕を振り上げて勢いよく振り下ろしたメガメタグロスの一撃を、ゴロリと転がってメガメタグロスの真下に転がり込み、勢いよく跳躍して手にした根っこを下部に叩きつけて天高く吹き飛ばすネッコアラ。

 

 

「なんだと…!?」

 

「このネッコアラは私の相棒ポケモンでしてね。メガシンカだろうと負けるような鍛え方はしていません」

 

「…お前、ジムリーダーじゃないな?」

 

 

 俺のメタグロスは言っちゃあなんだが負けたくない奴に勝つためだけに鍛えた俺のポケモンの中でもトップクラスに強いポケモンだ。それを一蹴とは、ジムリーダーの訳が無い。……元ジムリーダーでも化け物級の奴はいるがあれは例外だろう。

 

 

「いいえ。今は本当にジムリーダーでしかありませんよ。ありがたいことに四天王を解任されましたので」

 

「元四天王か……ムツキの前任者か」

 

「私の後任の知り合いですか。それはちょっと…面倒ですね?」

 

 

 なんとか踏みとどまって戻ってきたメガメタグロスと共に相手の隙…と言っても寝ていて隙だらけにしか見えないが、窺っていると、何か考えていたアオキが問いかけてきた。

 

 

「一つ聞きたいのですが、よろしいでしょうか?」

 

「なんだろうか。逃がしてくれるのか?」

 

「いえ。そう言う訳には。単刀直入に聞きましょう。貴方方は、ブルーフレア団ですか?」

 

 

 ……うーん、どう答えた物か。身内であるグロリアお嬢様がいるからな。いやだが、これが隙か。

 

 

「俺達は………ブルーフレア団の協力者で……、ブルーフレア団の敵だ」

 

「むっ!?」

 

 

 人差し指を突きつける。それだけで思惑に気付いたメガメタグロスがサイコキネシスでアオキの足元の地面を破裂させる。主人を襲った攻撃にネッコアラが意識を逸らした隙に、メガメタグロスに飛び乗り空を飛んで離脱する。

 

 

「ウッドハンマー」

 

「!?」

 

 

 一旦オージャの湖方面に飛び立とうとしたところで、飛んで来た根っこが顔スレスレを飛んでいく。投げつけてきたのか、この距離を?どんだけ強いんだあのサラリーマン…非凡ってのは言い得て妙だな。ダフネと合流するとするか。




相変わらず結構強いグレイ。伝説に頼ってばかりでしたがトウヤやジュリが認めるぐらいには普通に強いです。

そんなグレイでも逃げるしかなかった強敵アオキ。手持ちはクリア後の面子です。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VS災いの剣

どうも、放仮ごです。諸事情からタイトルが特殊な形になりました。

今回は雪山での逃走劇。楽しんでいただけると幸いです。


「…とりあえず。わたし。いく。これ。かりてもいい?」

 

 

 うんうんと悩んでいたら、サニアが肩にかけたモコモコの上着を指差しながらそう言った。いやそれはいいが……。

 

 

「サニア。俺の記憶が戻ったらお前が帰れる手がかりになるかもしれない。それを待ってからでも……」

 

「きおくがもどるかくしょうがない。それならわたしが。みつけだしてみせる」

 

「うん、それはいいね。秘伝スパイスを全部揃えても記憶が戻らない可能性もあるもんね」

 

「それもそうか……」

 

 

 なんかアイアール、急に生き生きしだしたな?なんか思いついたのか?まあいいか。

 

 

「じゃあそういうことで。ラウラ」

 

「うん。なんだ?」

 

「アカデミーのマトイ。きけん……」

ドドドドドドドドドドッ!

 

「「「!?」」」

 

 

 去り際にサニアがなにか言おうとした瞬間、地響きが起きてその方向を見てみると雪崩が迫って来ていた。なんで、いきなり!?

 

 

「っ!」

 

「ラウラ!掴まって!」

 

 

 相変わらずのポケモン顔負けの身のこなしで上着を翻して逃げるサニアと、コライドンに乗り俺に向けて手を伸ばしてくるアイアール。その手に掴まり、かっくうで北3番エリア方面目掛けて空飛ぶ中で。雪山の上に、それを見た。

 

 

「キ……ル……」

 

「…なんだ、あいつは?」

 

「放さないでね!」

 

 

 全身雪の様な真っ白い細い体躯の獣の姿をした、口先には2つに割られた古びた剣が一対の牙の様に生えているポケモン。そいつは、アイアールが俺を無理やり後部に乗せて雪崩の上をピョンピョンと飛び移って行くコライドンを、雪崩の流れに乗るようにして追いかけてきていた。

 

 

「気を付けろアイアール!来るぞ!…ジャック!」

 

 

 跳躍して剣の牙で斬りかかってきたのを、ジャックを繰り出して岩斧で受け止める。くさわけで雪崩をかき分けてそのポケモンに襲いかかるジャックだが、素早い身のこなしで突撃を回避。氷の礫を放って牽制してきた。

 

 

「あれ、なに!?」

 

「わからない、スマホロトムも調子が悪くて図鑑が見れない!」

 

 

 何故か砂嵐状態になっていて起動すらできない、多分認識もできてないなこれ。

 

 

「ヒナ、手伝って!なんとかここから離脱する!」

 

「ジャック!がんせきアックスだ!」

 

「ルミナコリジョン!」

 

 

 脚力に自信があるヒナを繰り出し念力攻撃を仕掛けるアイアールに合わせて、岩斧を振るうジャック。しかしルミナコリジョンはまるで通用せず、岩斧を斬り弾かれてしまう。さらに雪崩を再度起こしてジャックとヒナを薙ぎ払ってしまい、慌ててボールに戻す。

 

 

「エスパーが効かない!あくタイプ!?」

 

「もしかして、四災(スーザイ)(つるぎ)か!?」

 

「なにそれ!?」

 

 

 以前出会ったディンルーの同じ出鱈目な力、四災の一匹なら納得がいく。呼ぶなら災いの(つるぎ)か。

 

 

「くっ……あーもう!どう見てもこおりタイプだから雪崩さえなければシングが出せれば一発なのに!」

 

「レクス、頼む…!」

 

「ゲッコウガ!」

 

 

 この雪崩で出せるポケモンは限られてくる。ジャックはやられた。空を飛べるレイン、相手がこおりタイプだろうからダメ。同じく空中移動ができるダーマ、糸を繋げる場所が無いからダメ。浮けるケプリベ、スピードが無い上にエスパーであくに弱いからダメ。でんじふゆうで飛べるぼむん、相性はいいがノーモーションで素早く動けないからダメ。脚力に優れるレクスしかない。アイアールも似たような結論に至ったのかゲッコウガを繰り出す。

 

 

「みずしゅりけん!」

 

「とびかかる!」

 

 

 雪山の冷気で凍り付いたみずしゅりけんを斬り弾いた隙を突いてレクスが飛び蹴りを叩き込む。蹴りはこおりのつぶてで逸らされ、空中でとっ組み合うレクスと災いの剣。

 

 

「かげぶんしん!」

 

「にどげり!」

 

 

 空中で取り囲んだゲッコウガの分身を聖なる光を纏った牙を振るい、纏めて薙ぎ払った災いの剣の一撃を受けながら二連撃の蹴りを叩き込むレクス。ダメだ、火力が足りない。もっと、もっと強い技がいる…!

 

 

「ああ!」

 

 

 次の瞬間、避けられた蹴りをそのまま、大きく振り上げた脚を勢いよく振り下ろすレクスの一撃が災いの剣の頭部に直撃する。今のは…!

 

 

「かかとおとしか!」

 

「キル!!キル!!」

 

 

 すると明らかにブチギレた災いの剣は闇の衝撃波を放って来た。あれは確か、四災の専用技カタストロフィ。対象の体力の半分を失わせると言う恐ろしい技だが、言ってしまえばあくタイプでとくしゅのひっさつまえばだ。失うのは現在の体力の半分だけ…!

 

 

「素早く!こうそくいどう!力強く!かかとおとし!」

 

 

 さらに追撃。雪崩の間を駆け抜けて一瞬で近づき、背中に踵を叩き込むレクス。かかとおとしは命中率が低く外したら自身が大ダメージを受ける技だが、力業で命中率を上げて使用することで弱点を無視して使えた。ならばと苦しみ悶えながらもこちらに向けてこおりのつぶてを飛ばしてくる災いの剣。傷付いてもこっちを仕留めるつもりか!?

 

 

「危ない、たたみがえし!」

 

「助かった、アイアール!……今の行動、もしかしてトレーナーがいるのか?」

 

 

 ゲッコウガが防いでくれたおかげで周囲を見る隙ができた。だけど、人間なんてどこにも……うん?あそこの風景が歪んでたような?

 

 

「…アイアール、ゲッコウガであそこを狙ってくれ」

 

「わかった。ゲッコウガ、みずしゅりけん!」

 

 

 俺の指差した方角目掛けてゲッコウガが凍り付いたみずしゅりけんを叩き込む。するとカキン!と小気味いい音と共にみずしゅりけんが砕け散り、バチバチと稲妻が走ってヘルメットにボディスーツのエスプリが姿を現す。

 

 

「エスプリ!?」

 

「アイツの仕業だったのか!」

 

 

 そうか、擬態能力……風景にも溶け込めるのか。

 

 

「ジジジ……任務失敗、失敗……回収して撤退する」

 

 

 災いの剣を取り出したタイマーボールに戻し、跳躍して崖上から飛び降りるエスプリ。レクスがそれを追いかけようとするが、ネットボールに戻して引き留める。

 

 

「もういい、ありがとなレクス。かかとおとし、かっこよかったぞ」

 

「……なんだったんだろうね、エスプリ。それより、逃げてるうちについたみたいだよ」

 

 

 そう言うアイアールに視線を前に向けてみると、ポケモンセンター。北3番エリアまで来たみたいだ。

 

 

「ラウラ、スター団フェアリー組を倒したらどうするの?」

 

「え?いや、偽龍のヌシに再度挑もうと思っていたが……」

 

「だったら……私。行きたいところがあるから別行動するね。あとでオージャの湖で合流しよう?」

 

「それはいいが……いきなりどうした?」

 

 

 ついて来る気満々じゃなかったか?まあいいけどさ。

 

 

「じゃあな」

 

「うん、またね」

 

 

 アイアールと別れて下山していく。さあ、フェアリー組よ。覚悟しろ。シュウメイみたいにダチじゃないから容赦しないぞこの野郎。




サニアと強制的に別れさせられ、災いの剣に襲われるラウラとアイアール。またもやエスプリでした。したっぱのノリで出てくる悪夢よ。そんな中、習得。かかとおとし。代わりに忘れたのはにどげりです。

そして何かの思惑と共に離れるアイアール。その目的地は…?

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSギモー

どうも、放仮ごです。昨日は息抜き小説を投稿していてこっちは更新できませんでした申し訳ない。「ゼノブレイド2 悪意の箱舟」もしよろしければこちらもご確認くださいませ。

今回は校長とサニアの話、そしてVSイヌガヤ。楽しんでいただけると幸いです。


 アイアールと別れて北3番エリアを進んでいると、落ち着かなそうにその場をうろうろしていたネルケが俺に気付いて駆け寄ってきた。

 

 

「ラウラ!雪崩があったようだが大丈夫か!?」

 

「ああ、ネルケ。俺は大丈夫だ。サニアが無事かはわからんが」

 

「サニア……ですって?」

 

 

 俺がその名を出すと取り乱すネルケ…いや、クラベル校長。サニアの保護者だもんな、気になるか。

 

 

「ど、どうしましょう……安否を確かめるべきか…いやでも、余計な心配はしなくていいと言われてますし……」

 

「ネルケ。あんたは、サニアの素顔を知っていたのか?」

 

 

 俺がそう尋ねると、慌てるのをやめてスンッと真面目な顔になり眼鏡の位置を戻すネルケ。

 

 

「…あなたも、知ってしまいましたか」

 

「アイアールもな。どういうことだ、ペパーにそっくりだったしアイアールが言うにはオーリム博士と瓜二つって……」

 

「その理由は私も知りません。ですが、オーリムにそっくりな彼女が倒れていたのを見て実験に失敗したのかと思い保護したのはたしかです。その後すぐにオーリムと通信して別人だと分かりましたが。彼女は……記憶を失ったわけでもないのに何も知りませんでした。言葉も、ポケモンも、文明も。保護した時の服もあの仮面と、服とは呼べぬ毛皮の衣装で野生児としか……そのせいでオーリムと誤認しましたが」

 

 

 オーリム博士も野生児みたいな恰好なのか?しかし、それは今の姿からも想像できる。襟をわざわざ破り裸足で駆け回る姿は野生児そのものだ。

 

 

「私はまず、簡単な言葉をなんとか教えて彼女を特例としてオレンジアカデミーに入学させました。すると持ち前の知能で難しい言語やモンスターボールにバトルなどを理解して用い始め、優等生になったばかりか宝探しでチャレンジしたジム制覇も成し遂げチャンピオンクラスにまでなったのです。彼女は天才です。ネモさんにも匹敵しうる。ですが……自身の宝……故郷へ戻ることを渇望している。それを知っている故に私は自由行動をさせていたのですが……」

 

「…多分無事だよ、アイツは強い」

 

「私もそう思います。心配しすぎも駄目ですね、彼女は実の子でもないのですし……」

 

 

 そう心配している時点で親みたいなものだろうけどな。…ブルーフレア団がオレンジアカデミーの生徒が入っているってことは多分オモダカさんから連絡を受けてるだろうから言わない方がいいか。ネルケとしても俺の計画を察せられても困るし。するとネルケは咳払いした。

 

 

「ごほん。スターダスト大作戦、進んでいるな。残るボスは二人か」

 

「あ、ネルケに戻るんだな」

 

「げふんげふん。この作戦のおかげでいろんなことが見えてきて助かってるぜ。……ところでラウラはカシオペアのこと、どう思ってる?」

 

「正直に言うなら危うい、だな」

 

「危うい、とは?」

 

「スターダスト大作戦を終えた後、どうなるのかわかってない。起きるのは混乱し行き場を失ったしたっぱたちの暴走だ。そこまで考えてないんだろうな、スター団のことを「大丈夫だ」と盲信している節がある」

 

「……なるほどな。俺も同じだ。カシオペアがスター団を恨んだり憎んだりしているとは思えない。むしろ逆だ、信頼すら感じる。あいつが団を解散させたい本当の目的は一体……」

 

「それだよな」

 

 

 なんとなーくわかっては来たが確信には至らない。そう思いながらスター団アジトの入り口のバリケードを見やると、見慣れない格好の人物がいることに気付く。

 

 

「…とりあえず行ってみるか。ネルケ」

 

「ああ。回復は任せておけ、思う存分戦ってくれ」

 

 

 ネルケと二人で近づくと、その人物とスター団したっぱ……星形サングラスから見てスター団のままっぽい……の会話が聞こえてきた。

 

 

 

「それではまた後ほど。ピアノのお稽古の時間に。坊ちゃまによろしくお伝えください」

 

「わっ、わかりました!イヌガヤさん!」

 

「……おや?」

 

 

 その人物はこちらに気付くとネルケに驚いた様子を見せてから会釈し、こちらを向いてきた。何だ今の反応?

 

 

「貴方様も坊ちゃまのご学友の方でしょうか?」

 

「坊ちゃまって誰だ?多分違うぞ」

 

「左様でございますか……ご存じないかもしれませんがここはオルティガ坊ちゃまが率いるフェアリー組・チームルクバーのアジトなのです」

 

「あっ、あの、そういうの、勝手に教えないで……」

 

 

 慌てるしたっぱ。なるほど、オルティガが坊ちゃまか。お坊ちゃまなんだろうあ、この人は執事ってところか。

 

 

「大変失礼いたしました。このおかたはどちらさまなのでしょう?」

 

「多分、アンタ、ラウラだよね!私達の敵です!」

 

「ああ、ラウラだ。カチコミに来たぞ」

 

 

 正直に頷いてやる。すると戦意を見せたのはしたっぱではなくイヌガヤの方だった。

 

 

「なるほど。ということはお坊ちゃまの敵……ということで?」

 

「そうなるな。オルティガをぶっ倒しに来たからな」

 

「ふむ。なるほど。であれば……」

 

「へ……?」

 

「ワタクシと一戦、願えませんでしょうか?もちろん、一対一で構いません」

 

 

 …この人、ただの執事じゃないな。圧を感じる。ネルケがさっきから何も言わないし、知り合いなのだろうか。

 

 

「いいぞ。オルティガの味方だってなら俺の敵だ」

 

「それでは参ります。ギモー」

 

「頼むぞ、ぼむん」

 

 

 繰り出されたのはしょうわるポケモンのギモー。なんか既にオーロンゲに進化していてもおかしくない練度を感じる。俺はフォレトスのぼむん、フェアリータイプの巣窟だからと先頭にしていたはがねタイプだ。

 

 

「ぼむん、一気に決めるぞ!ヘビーボンバー!」

 

「ねこだまし」

 

 

 バチン!と。目の前で合掌されて怯むぼむん。技が出せない。くそっ、嫌な技を!

 

 

「もう一発だ!」

 

「いちゃもんをつけなさい」

 

 

 再度ヘビーボンバーを叩き込もうとするも、いちゃもんをつけられてぼむんが怒り、同じ技を連続で出せなくなってしまった。や、やりにくい…!

 

 

「なら、でんじほう!」

 

「ないしょばなしでございます」

 

 

 手をメガホンの様に構え、実体化した吹き出しを撃ち込まれてとくこうを下げられてしまい、でんじほうを真正面から受け止めて耐えてしまう。ねこだまし、いちゃもん、ないしょばなし。技四つの内三つが妨害技だと!?

 

 

「ヘビーボンバー!」

 

「そこです、どげざつき」

 

 

 それでもとどめを刺すべく重量級の一撃を叩き込まんとするぼむんだったが、なんとギモーは後ろを向いて土下座をすることで回避。ギモーの目の前、真後ろに激突したぼむんに、槍の様に尖った髪の毛を突き刺してきた。吹き飛ぶぼむん。なんだ?なんで筋力が無いポケモンがあんなに強い…!?

 

 

「なにか情報は……」

 

 

 いつの間にか復帰していたスマホロトムのポケモン図鑑アプリを起動してギモーの情報を目にする。ベロバーの時から人間や他のポケモンのマイナスエネルギーを主食としており、民家に忍び込んで盗みを働くなどで悔しがる相手から発せられるマイナスエネルギーを鼻から吸い込む…!?

 

 

「つまり……俺のせいか?」

 

「そのようですね。このギモー、ここ最近で一番元気です。バトルに焦っている様ですが、なにか悩み事でも?」

 

「ぐっ…」

 

 

 そうイヌガヤに言われて言葉が詰まる。……そうだよ、ここ最近の様子がおかしいアイアールに散々悩んだ。エスプリ二人や災いの剣との戦いで元の関係に戻ったと思ったけど、去り際のアイツは間違いなく様子がおかしかった。だけど俺は逃げた、アイアールの答えを聞くのが怖くて逃げだした。でも、だからって…!

 

 

「じゃあどうすればよかったんだよ!素早く!でんじふゆう!」

 

 

 俺の怒りに呼応し、ギモーが妨害技を出す隙もない動きで追い詰めるぼむん。

 

 

「ないしょばなしで隙を…!」

 

「気を引け!素早く!まきびし!」

 

 

 パパパパパン!とまきびしを高速で射出して足元に撃ち込み怯ませて技を出させない。ここで決める!

 

 

「人の悩みを勝手に餌にしてるんじゃねえぞ!力強く!ヘビーボンバー!」

 

 

 ドカン!と、轟音と共に叩き潰されるギモー。戦闘不能だ。

 

 

「……これはこれは。お見事ですな。よかった、我が主オルティガお坊ちゃまにはそのような悪感情をぶつけてほしくなかったので。ワタクシ以上にやり手ですのでご注意くださいませ」

 

「イヌガヤ…さん、あんた」

 

「お気になさらず。それでは失礼したします」

 

 

 そう言って去っていくイヌガヤさん。…敵ながら、助けられたな。

 

 

「おっ、お疲れ様でスター……今の紳士はね。アカデミーの前の校長?みたいなんだけど?今はボスの教育係?らしくて。時々ボスを迎えに?くるの……」

 

「なんだって?」

 

 

 ああ、だからネルケと知り合いっぽかったのか。

 

 

「…って、話してる場合じゃなかった!君がラウラで敵だと確信したので私は報告してきまーす!ちゃ、ちゃんとカチコミしてよね!お疲れ様でスター!」

 

「お疲れ様でスター」

 

 

 …そういやスター団に入るってことはこの挨拶にも慣れて行かないとなのか。ちょっと恥ずかしいな?




ポケスペでベロバー系統の能力を知ってこれは活用せざるを得ないと思った結果の話でした。

サニアと校長のなれ初め(?)が判明。サニアは天才児で本気のネモとも戦える人間だけど、宝探しの方に興味があるためネモとあまり戦いたがらないって言う。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSカヌチャン

どうも、放仮ごです。蟲と言えば、虫と王様モチーフの戦隊、キングオージャーが始まりましたね!ゴッドクワガタが好みのビジュアルで早速気に入ってます。ロボも蜘蛛要素が戦闘にも使われたりかなり好き。

今回はチーム・ルクバーにカチコミ。楽しんでいただけると幸いです。


 ラウラが厄災の剣と戦っていた頃、スター団フェアリー組チーム・ルクバーのアジト最奥にて。

 

 

「話の分からないガキンチョですわねえ!だーかーらー!ブルーフレア団に与しさえすれば幹部であるこのわたくしがラウラを倒してやるって言ってるんですわ!スター団の体裁は守りながら、ブルーフレア団の庇護下に入る!何も悪い話じゃないでしょう!もう二人のボスに賛同してもらってますわ!」

 

「馬鹿なのか!?あいつらがそんな賛同するわけがあるか!」

 

「そんな馬鹿なことがあったのですわ!」

 

 

 言い合いするのはピンクを基調とした高貴な雰囲気の衣装を身に着けた桃色の髪の、黄金のモンスターボールを模った杖を手にした如何にもなお坊ちゃまな少年、オルティガと、銀髪をパーティアレンジに纏めシックな紺色のワンピースを身に纏い「celebrity」と書かれている扇子で口元を隠した青いV字サングラスの少女、グロリアが怒鳴り合っていた。突如空から舞い降りたグロリアからいきなり持ちかけられた「ブルーフレア団の傘下に入れ」という要求にオルティガが突っぱねている光景だ。

 

 

「じゃあどいつだよ、そんな…スター団の裏切者は!」

 

「証拠ならありますわよ。ビワさんと――――」

 

 

 そう言って何かの書類のコピーをどこからか取り出し突きつけるグロリア。それを疑惑に満ちた目で確認し、目を見開くオルティガ。

 

 

「そんな……この二人が、お前たちに与したって言うのか…!どんな汚い手を使ったんだよ!」

 

「失敬な。我らがボスが懇切丁寧に説得したのですわ」

 

「じゃあそのボスとやらが来いよ!幹部程度がスター団ボスである俺達と交渉できると思うなよ!」

 

「本当に聞き分けのないクソガキですわね…」

 

「例え俺以外のみんなが与したところで俺はお前たちに与したりなんかしない!それに、ラウラとか言う奴だってこの俺がボコボコにしてやるからお前なんか必要ないね!」

 

「ラウラを嘗めてますの?貴方程度に勝てるわけがないでしょう。ラウラに勝てるのは何処の世だろうとただ一人、わたくしだけですわ」

 

 

 激昂するオルティガと対照的に静かに怒るグロリア。交渉は平行線どころか決裂しようとしていたその時、サングラスの弦の部分に付けられた通信機がピーピーピー!と小さく音を鳴らし、ハッと我に返り弄るグロリア。

 

 

「…なるほど、やはり(のが)したのですわね。…オルティガ、いい知らせと悪い知らせですわ。どちらから聞きたいですの?」

 

「どっちでもいいよ」

 

「ではいい知らせから。有言実行する機会が早くも来ましたわよ。そして悪い知らせは、ラウラが来ましたわ。お手並み拝見と行かせてもらいますわね?」

 

「っ…いいじゃん、俺が勝つからせいぜい余裕かましてろよ!」

 

 

 不敵に笑むオルティガに、不機嫌そうにアーマーガアを繰り出して背に乗り、空に飛び立つグロリア。そこに、ラウラが門前にやってきたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ロトロトロトロト……「こちらカシオペア。ラウラ、聞こえるか?」》

 

 

 バリケードの中に入って行くしたっぱを見送っていると電話がかかってきたので繋げると、カシオペアの変声機で変えた声が聞こえてきた。

 

 

「ああ。なんかオルティガの執事がいたからブッ飛ばしたぞ」

 

《「イヌガヤか。彼を倒すとはさすがだ。そのアジトの主はスター団フェアリー組……チーム・ルクバー。ボスのオルティガはスター団メカニック担当。ボスの中では最年少だが贔屓目無しでもボスの中では二番目に強いと腕は確かだ。侮るなよ」》

 

「一番はビワのことか」

 

《「そうだ。ボスは全員ビワからバトルを学んでいる、彼女の強さは別格だ」》

 

「だろうな」

 

 

 コノヨザルもやばかったしなんなら本人も強かった。あれに勝てるかどうかは正直わからない。

 

 

《「オルティガはビワに次ぐ実力と才能の持ち主だが、彼は基本的に自分より他人に行動させる司令官気質。だが少しプッツンしやすく、怒るとボス自ら戦地へと乗り込んでくるだろう。つまりいつも通りに暴れれば大丈夫だ。準備ができたらゴングを鳴らして思う存分チーム・ルクバーにカチこんでくれ」》

 

「いいね、わかりやすい。派手に行くぞ!ぼむん!」

 

 

 通話を切るなり、ぼむんを繰り出して背に乗り体勢を低く構え、エクスレッグヘルメットを被る。機嫌が悪いんだ、八つ当たりさせてもらおうか。溜め息を吐きながらついてくるネルケはこの際気にしない。

 

 

「ヘビーボンバー!」

 

 

 俺を乗せたまま全体重を乗せた体当たりしてぶちかまし、バリケードを破壊して吹き飛んだゴングを鳴り響かせる。一応ルールは守ってぼむんの他にジャックとレインを引き連れ中に入ると、星形や青いサングラスを身に着けたしたっぱたちの一団と、マリル、ミミッキュ、バウッツェル、ベロバー、プリン、マリルリ、フラージェス、カヌチャン、キルリア、プクリン、パピモッチ、ナカヌチャン、オーロンゲ、サーナイトといったフェアリータイプのポケモンたちが待ち構えていた。

 

 

《ピィィー!ガガ…!「緊急事態!エマンジェーシー!チーム・ルクバー!スターダスト大作戦のギャラドスが如き悪名高きラウラ発見!ラウラ発見ッッッッ!!ただちに体勢を整え、ボスをお守りするのだー!」》

 

 

 どこからか聞こえてくる派手なBGMをバックに突撃してくるしたっぱとそのポケモンたち。見る限り半分ぐらいブルーフレア団に鞍替えしてるな。エスプリの実験台にされているかもって知らないのか?まあいいや。

 

 

「ネルケは入り口で待っていてくれ。ぼむん、まきびし!ジャック、つるぎのまいで蹴散らせ!レインはエアカッターで怯ませろ!」

 

 

 ぼむんがまきびしをばら撒いて動きを制限し、遅くなったところにつるぎのまいが炸裂。その隙を突こうとした奴等もエアカッターで怯ませる。完璧な防御陣だ。飛んで火に入る夏の蟲。次から次へと飛び込んできては切り刻まれていく。

 

 

「台風でも襲って来たってのかー!?」

 

「おーたーすーけー!?」

 

「俺のサーナイトー!?」

 

「卑怯だぞ!まともに戦え!」

 

「だったら一対一で来やがれ!相手してやるぞ!」

 

 

 数で襲って来てる奴等がなに言ってるんだと怒鳴ってみたらしーんとなるしたっぱたち。そんな勇気もないなら人を卑怯者呼ばわりするんじゃねえ。

 

 

「守りきれませんでした……そろそろボスの出番です!」

 

 

 するとしたっぱたちが引いて行くと同時に奥のテントが開いて他のチームのとはカラーリングや細部の形状が違う、ちりばめられたハートなど妖精を思わせるピンクを基調としたカラーリングのスターモービルが顔を出す。その上に乗るのは、ピンクを基調とした高貴な雰囲気の衣装を身に着けた桃色の髪の、黄金のモンスターボールを模った杖を手にした如何にもなお坊ちゃまな少年。こいつがオルティガか。なんというか…不敵な笑顔といいあざといな。エクスレッグヘルメットを外して対峙すると、値踏みする様に睨み付けてきた。

 

 

「へー……ふーん……お前がラウラなんだ……素材の良さを全然活かせてない時点で程度が知れてるね!あいつが言うだけの奴かと思ったら期待外れだ!」

 

「こっちも期待外れだよ。スター団ボスで二番目に強いとかいうから期待したらこんなよわっちそうな奴が出てくるとはな?」

 

「お前にだけは言われたくないよ、チビめ。ショージキ予想外だよ、もっとゴツいの期待したのに。他のボスに勝てたのもただのまぐれなんだろ?ま!誰でもいいんだけどさ。俺が負けるとか無いし」

 

「ボスで二番目なのにか?」

 

「…………ぐうっ」

 

 

 ぐうの音しか出ないってか。舌戦が得意なんだろうが屁理屈なら負けないぞ。すると図星なのか憤慨してゴージャスボールを取り出すオルティガ。俺もネットボールを構える。

 

 

「ふ、ふん!フェアリータイプのかわいくないとこ、じっくり体験して行けばいいんだ!」

 

「だったら俺は蟲タイプの恐ろしさ、見せてやるよ」

 

 

▽スター団フェアリー組の オルティガが 勝負を しかけてきた!




暗躍するグロリア。彼女が語ったビワ(厳密には本人に裏切ったつもりはない)に続く裏切り者とは…?

実は舌戦も強いラウラ。オルティガに完勝。むしタイプに不利なフェアリータイプ相手にどう立ち回るのか。

次回で通算百話だけど、設定回は除くので100話記念回は次々回にしようと思います。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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番外編:とある■■■■■掲示板

どうも、放仮ごです。前回は次々回に、と書いてましたがよく考えたらこのタイミングの方がいいと思い100話記念回を投稿しようと思います。

今回は今作初の掲示板回。楽しんでいただけると幸いです。


謎の学生トレーナー、ラウラについて語るスレ

・・・・・・・・・

 

 

64:名無しのトレーナー

いやあ、まさかラウラのナンジャモ戦以外の公式戦がリーグから公開されるとはなあ

 

65:名無しのトレーナー

ラウラ本人が記憶喪失で何かの手がかりになるならって公開許可出したんだっけ

 

66:名無しのトレーナー

記憶喪失なのになんでこんな強いの…?

 

67:名無しのトレーナー

全戦全勝、しかも一発目で、蟲ポケモンしか使ってないとかやべえ

 

68:名無しのトレーナー

しかも太古のシンオウ、ヒスイ地方にいたとかいうバサギリってストライクの進化系を使ってたり

 

69:名無しのトレーナー

毎回毎回ギリギリの勝負をしているのもいいよな

 

70:名無しのトレーナー

>>68

そのヒスイ独自の戦法である力業早業を使いこなしたりな

 

71:名無しのトレーナー

レホール先生に習ったものが続々出てくるからこのジム戦映像が資料扱いされて授業に流されたの笑った

 

72:名無しのトレーナー

使えるものはなんでも使う姿勢見習いたい

 

73:名無しのトレーナー

キハダ先生の授業でも力業早業が取り入れられてたけどまだ誰も使えてない事実

 

74:名無しのトレーナー

調べただけで使いこなしているラウラなにものなん…?

 

75:名無しのトレーナー

多分だけど俺達は色んなポケモンまんべんなく使うけど、ラウラは面子をずっと変えずに戦ってきたから皆伝ってのができてるんだろうな

 

76:名無しのトレーナー

愛の勝利…ってこと?

 

77:名無しのトレーナー

アカデミー司書のマトイさんに頼んで資料見せてもらったけどバサギリ本当にどうやって手に入れたんじゃろ

 

78:名無しのトレーナー

セルクルタウンでサニアとバトルしてた時まではストライクだったぞ

 

79:名無しのトレーナー

ジャック好きだわ。自信過剰の目立ちたがり屋ってのがいい

 

80:名無しのトレーナー

目立ちたい根性でこんらん解いたの笑ったわ

 

81:名無しのトレーナー

モコたん不憫可愛い

 

82:名無しのトレーナー

フリッジジム戦ではつるぎのまい覚えてすごいことになってたな

 

83:名無しのトレーナー

サニア、ミステリアスなチャンピオンだし、ストライクをバサギリにする何かを持ってそう

 

84:名無しのトレーナー

バサギリ!つるぎのまい!ベストマッチ!

 

85:名無しのトレーナー

岩斧エンターテイナ―!

 

86:名無しのトレーナー

バサギリ剣舞(けんぶ)

 

87:名無しのトレーナー

ヤベーイ!ツエーイ!モノスゲーイ!

 

88:名無しのトレーナー

岩と蟲本当にベストマッチよな

 

89:名無しのトレーナー

>>84、85、86、87

お前らの連帯感好きだわ

 

90:名無しのトレーナー

>>88

いわタイプになった代わりに飛べなくなったらしいぞ

 

91:名無しのトレーナー

噂によればスター団とも対決してるらしいなラウラ

 

92:名無しのトレーナー

え?俺はロースト砂漠のヌシポケモンに戦いを挑んでたの見かけたぞ

 

93:名無しのトレーナー

俺はサニアが乗ったクソデカテラスタルガケガニと戦ってるの見たぞ

 

94:名無しのトレーナー

実はスター団あく組と戦っている光景を上からビデオに収めた俺

 

95:名無しのトレーナー

え?ジムリーダーとスター団とヌシポケモンを相手にしてるってこと?

 

96:名無しのトレーナー

>>94

ちょっと待て。なんだそのレアもの映像

 

97:名無しのトレーナー

見せてクレメンス

 

98:名無しのトレーナー

スター団のボスたちは実力高いと聞いたぞ

 

99:名無しのトレーナー

団ラッシュってのがどんなのかも見たい

 

100:名無しのトレーナー>>94

しょうがないにゃあ。ほれ(動画リンク)

 

101:名無しのトレーナー

アカデミーの生徒がスター団にカチコミしてるって噂本当だったのか

 

102:名無しのトレーナー

>>100

あざっす!

 

103:名無しのトレーナー

>>100

その気持ち悪い語尾も気にならないぜ!

 

104:名無しのトレーナー

え、ええ……

 

105:名無しのトレーナー

オレンジアカデミーの校長だよね?なにやってるんこれ

 

106:名無しのトレーナー

リーゼントってのが古くて校長らしいなwww

 

107:名無しのトレーナー

会話は聞こえないけどスマホロトムで誰かと通信してるっぽい?

 

108:名無しのトレーナー

うわあ!びっくりした!

 

109:名無しのトレーナー

カチコミってそういう。面子にいない奴もいるしレクスとか進化してないからだいぶ前だな

 

110:名無しのトレーナー

バリケードを吹き飛ばされてスター団も唖然としてるじゃあないか

 

111:名無しのトレーナー

うん?サングラスが変なのいない?

 

112:名無しのトレーナー

全員変だぞ(辛辣)

 

113:名無しのトレーナー

ほんとだ、いつもの星形クソダサじゃなくて青い四角いお洒落サングラスかけてる奴等いる

 

114:名無しのトレーナー

4体のポケモンを同時に指示するとかどんな頭の回転してんだ?

 

115:名無しのトレーナー

強すぎて草

 

116:名無しのトレーナー

まあジムリーダーでもないと相手にならないわな

 

117:名無しのトレーナー

スター団よりも悪党みたいな笑い方してて草

 

118:名無しのトレーナー

もうギャラドスかなにかだろこの暴れっぷり

 

119:名無しのトレーナー

▽ラウラの あばれる! ▽ラウラはこんらんしない!

 

120:名無しのトレーナー

なんか出てきた

 

121:名無しのトレーナー

なあにこれえ?

 

122:名無しのトレーナー

見た所ブロロロームをエンジンにした大型車両…?

 

123:名無しのトレーナー

あんなのスター団持ってたのか。上に乗ってるのがボスかな?

 

124:名無しのトレーナー

もしその気になってあんなのが暴れたら俺達ひとたまりもないぞ

 

125:名無しのトレーナー

それに怖気づいたりせずに啖呵を切ってるらしきラウラよ

 

126:名無しのトレーナー

ベビーポケモンでガチンコ対決してる…

 

127:名無しのトレーナー

コマタナはわかるけどなんでマメバッタでこんなに戦えるの?

 

128:名無しのトレーナー

 

129:名無しのトレーナー

 

130:名無しのトレーナー

 

131:名無しのトレーナー

それが直接出向くの…?

 

132:名無しのトレーナー

ポケモンバトルちゃうやんけ!!

 

133:名無しのトレーナー

ああ、マメバッタが果敢にも挑んで無惨に轢き飛ばされた…

 

134:名無しのトレーナー

それはそう

 

135:名無しのトレーナー

しかもスピードスターとかポケモンの技も出せるってことはコイツ一応ポケモンなのか?

 

136:名無しのトレーナー

対するはジャック。頼もしさがえぐい

 

137:名無しのトレーナー

ぶっとーばせーとーつーげきー!げーきーとーつーインセクット!

 

138:名無しのトレーナー

あれだけの数のスピードスターを斬り落としてて草

 

139:名無しのトレーナー

え、ラウラも乗るの…?(困惑)

 

140:名無しのトレーナー

ポケウッドの映画のカーチェイスバトルみたいな?

 

141:名無しのトレーナー

つばぜりあって火花を起こしている件

 

142:名無しのトレーナー

相手慌ててて草

 

143:名無しのトレーナー

うん?モンスターボールを落とした?

 

144:名無しのトレーナー

というかこの頃はモンボだったんだな、ネットボールじゃなく

 

145:名無しのトレーナー

カラフジムでのバトルではモンボだったけどチャンプルジムでのバトルではネットボールになってたからそのあたりなんかな?

 

146:名無しのトレーナー

ジャックのテラスタルがくさテラスなの目立ちたがり屋の体現みたいでいいよね

 

147:名無しのトレーナー

あの大型車両とぶつかり合って張り合ってて草

 

148:名無しのトレーナー

ラウラ直接乗ってるのになんでそんな勇猛果敢に挑めるの…?

 

149:名無しのトレーナー

大型車両が変に跳ね上がった!?

 

150:名無しのトレーナー

なにが起きた!?

 

151:名無しのトレーナー

ボスも狼狽えてるし想定外っぽい

 

152:名無しのトレーナー

あれはさっきボールを落としていた場所!

 

153:名無しのトレーナー

後部によく見たらアメタマおるやんけ!

 

154:名無しのトレーナー

ねばねばネットで引っ掻けたのか

 

155:名無しのトレーナー

さっきの一瞬でそこまで指示したってこと?

 

156:名無しのトレーナー

ラウラやべえ

 

157:名無しのトレーナー

結構弱いと有名なワナイダーで倒したあ!?

 

158:名無しのトレーナー

ラウラやべえ

 

159:名無しのトレーナー

ラウラやべえ

 

160:名無しのトレーナー

おっ、ここまでか

 

161:名無しのトレーナー

>>94

よく撮ったなこの映像

 

162:名無しのトレーナー

ところで言っていいかわからないけどこれ、盗撮じゃね?

 

163:名無しのトレーナー

驚愕映像とかこうやって撮られるからノーカン

 

164:名無しのトレーナー>>94

怖いから匿名でリーグに提供しよ

 

165:名無しのトレーナー

ここまで強いラウラは一体どこから来たんじゃろね

 

166:名無しのトレーナー

まさかトレーナーなり立てでこんな強いわけがないし

 

167:名無しのトレーナー

相棒のアイアールも過去にカロスで旅してたの目撃されてるしな

 

168:名無しのトレーナー

記憶喪失してるってことはなんかの事件に巻き込まれたってこと?

 

169:名無しのトレーナー

まさか情報をあまり出さない国際警察の一員の可能性が!?

 

170:名無しのトレーナー

映画かよ

 

171:名無しのトレーナー

さすがにそれはもうこんな有名になった時点で保護されていると思われ

 

172:名無しのトレーナー

そういやこの間東3番エリア方面で地震あったやん?

 

173:名無しのトレーナー

国際警察ならこの強さ納得だけどね

 

174:名無しのトレーナー

>>172

なんや藪からスティックに

 

175:名無しのトレーナー

>>172

ピケタウンとハッコウシティも揺れたあれな

 

176:名無しのトレーナー

それがどしたん?

 

177:名無しのトレーナー>>172

わい炭鉱夫。避難中にそこで青装束の女とラウラが戦ってたのを見たんよね

 

178:名無しのトレーナー

青装束の女とは

 

179:名無しのトレーナー

>>177

なんのポケモン使ってたか見たん?

 

180:名無しのトレーナー

その青装束とラウラの出自に関係あるんかね

 

181:名無しのトレーナー

知り合いなら戦うことはなくない?

 

182:名無しの炭鉱夫>>172

いやそれがさ……ムウマ?とウルガモス?だったんだよね

 

183:名無しのトレーナー

さらっとコテハンしてて草

 

184:名無しのトレーナー

ラウラ、ウルガモス持ってたんか

 

185:名無しのトレーナー

あれ、でも六匹既にいるよな?七匹目?

 

186:名無しのトレーナー

>>182

なんで疑問符がついてるん?

 

187:名無しのトレーナー

ウルガモス持ってるならコルサ戦で使うと思うんだけどなあ

 

188:名無しの炭鉱夫

>>186

いやあの…多分ムウマとウルガモスだと思うんだけど……なんか違ったのよね

 

189:名無しのトレーナー

なんか違うとは

 

190:名無しのトレーナー

実はムウマージとメラルバだったとか?

 

191:名無しのトレーナー

色違いだったんだろ

 

192:名無しの炭鉱夫

いやなんか…ムウマの髪は翼みたいに長かったしウルガモスは二本足で立ってた

 

193:名無しのトレーナー

は?

 

194:名無しのトレーナー

は?

 

195:名無しのトレーナー

なあにそれえ

 

196:名無しの炭鉱夫

疑問符がついてもしょうがないだろ?

 

197:名無しのトレーナー

リージョンフォームとかじゃなくて?

 

198:名無しのトレーナー

そういやラウラ、ガラルのユニフォームを身に付けてたって公式情報にあるな

 

199:名無しのトレーナー

むしユニフォームなんだろうなあ…

 

200:名無しのトレーナー

ガラルから来たってならユウリやホップやムツキを倒してチャンピオンになったマリィと知り合いなんかね?

 

 

 

・・・・・・・・・




普通の掲示板回かと思いきや衝撃的事実を暴露していくスタイル。つまりそういうことだ。

一応この掲示板はパルデアだけでなく他の地方の人達も話しているのでこの情報網は結構バカにならないのだ。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSプクリン

どうも、放仮ごです。一応裏でルート通りに進むデータをプレイしているのですが、オルティガの状態異常や変化わざ祭に滅茶苦茶苦戦してしまいました。ビワより面倒まである。

今回はVSオルティガ。楽しんでいただけると幸いです。


「強く、あざとく、美しく!いけっ、マリルリ!」

 

「鋼の甲殻見せてやれ、ぼむん!」

 

 

 オルティガが指で示したのは4VS4。そしてオルティガが繰り出したのはマリルリ。俺は先頭に置いていたぼむん。マリルリは確かはがねが等倍になってたはず、相性不利だな。

 

 

「かわいがってやるから、吠え面かいて帰れよ!」

 

「吠え面かくのはどっちだ、永遠の二番手!」

 

「なんだと!?マリルリ、とびはねる!」

 

 

 フォレトスのタイプ相性を知らないのかむしタイプに効果抜群なとびはねるを仕掛けてくるも、余裕で耐えきるぼむん。

 

 

「ヘビーボンバー!」

 

「それを待ってた!あざといの食らえ!キュートな強さに悶絶しろ!じゃれついてアクアテール!」

 

 

 そのまま突撃するが、それを見越していたかの様にマリルリは一歩引いて直撃を避けて、拳の一撃でぼむんを浮かしたかと思えば一回転。水を纏った尻尾を叩きつけてぼむんを地面に埋めてしまう。

 

 

「っ…戻れぼむん!」

 

 

 その状態じゃ何もできないため、咄嗟にぼむんを戻してジャックを繰り出す。

 

 

「今のどう見てもじゃれつくじゃないだろふざけんな」

 

「力の差、思い知った?降参するなら今なんだけど」

 

「この程度で降参して溜まるかよ」

 

「あ、そう。アクアテール!」

 

「素早く!つるぎのまい!」

 

 

 今度は横に回転して放たれた水を纏った尻尾と、ジャックの高速で振り回した岩斧の乱舞がぶつかり合い、弾かれて距離を取る両者。

 

 

「あまえる!」

 

「遅い!力強く!くさわけ!」

 

 

 つるぎのまいでぐーんと上がった攻撃力をあまえるでガクッと下げてプラマイゼロにしようとしたようだが、その前に勢いよく草をかき分けるような斬撃がマリルリに炸裂。効果は抜群だ。

 

 

「マリルリ!?くっ……美味しく料理しちゃえ!バウッツェル!」

 

「むしろ料理される側だなそいつは!?交代、ぼむん!」

 

 

 力業は万能じゃない。どうしても隙ができてしまう。上げた攻撃力と素早さはもったいないがジャックは温存するべく、ぼむんを再度繰り出すと、ルクバー・スターモービルの上からバウッツェルが飛び降りてきた。こんがりと焼き上がったパンや焼き菓子でできた様な姿から香ばしく良い香りを放つその体は確か、とくせい:こんがりボディ。ほのおタイプの技を受けると、ダメージを受けずにぼうぎょのランクが2段階上がるとくせいだ。例えばウルガモスや、アイアールのシングにとっては天敵だろう。特定のタイプを無効にするとくせいはそれだけ強い。

 

 

「まあ俺ほのおタイプ持ってないから関係ないが」

 

「ウルガモス持ってないのかよ!メロコが言ってたぞ、強いって!」

 

「持ってても出さねえよ」

 

 

 敢えて言うならウカがニトロチャージを使えるが使う理由はない。

 

 

「ぼむん!ヘビーボンバー!」

 

「あざとく防げ!つぶらなひとみ!」

 

 

 ヘビーボンバーを叩き込まんとしたが、うるうると輝く瞳で見つめられて動きが鈍ったぼむんの一撃を真正面から受け止めるバウッツェル。なんて防御力だ!?

 

 

「そう簡単に当てさせないぞ!どろかけ!」

 

「てめっ!?くそっ…まきびし!」

 

 

 さらに泥をかけられて命中率を下げられてしまう。咄嗟にまきびしを放たせるが見当違いな方向にばら撒かれる。ダメか。なら、あえて近づかせる。

 

 

「かみくだくで防御を下げろ!」

 

「直上にでんじふゆう!」

 

 

 噛み砕こうと大きく口を開いて牙を突き立てんとしたバウッツェルの攻撃を真っ直ぐ上昇することで回避。ぼむんの真下に位置し、差した影に見上げるバウッツェルに、ぼむんが迫る。

 

 

「下がった攻撃力は勢いでカバーだ!力強く!ヘビーボンバー!」

 

 

 直撃。ぼむんがそそくさと離れると、叩き潰されたバウッツェルは目を回してオルティガに回収される。悔しげに歯噛みするオルティガ。

 

 

「蟲なんかにここまで追い詰められるなんて…」

 

「一寸の蟲にも五分の魂ってな。なめてると痛い目を見るぞ」

 

「まったくだよ。じゃあこいつはどうだ。プクリン!」

 

 

 繰り出してきたのはプクリン。逆転できるとは思えないが……用心していこう、交代だ。

 

 

「頼むぞレイン。怯ませろ、エアカッター!」

 

「プクリンの歌声に聞きほれろ!うたう!」

 

「しまっ……」

 

 

 エアカッターを受けながらもアイドルソングの様な美声が響き渡り、空中で眠りこけてしまうレイン。プリンの代名詞、覚えていたか…!

 

 

「相当速いだろそのアメモース?ジャイロボール!」

 

「いい技覚えてるな!」

 

 

 なにもできないまま縦に高速回転したプクリンに轢き飛ばされ、目を回すレイン。耐久力の無さは要改善だな。

 

 

「頼む、レクス」

 

 

 ぼむん、ジャック、レインに続く四匹目の選出はレクス。フェアリーに弱いあくタイプだがやるしかない。

 

 

「見るからにあくタイプ?は?なめてんの?」

 

「そいつはどうかな?」

 

「まあいいや。容赦なくやっちゃえプクリン、うたう!」

 

「遠ざかれ、こうそくいどう!」

 

 

 放たれた歌声が聞こえない距離まで一瞬で遠ざかるレクス。これしか思いつかなかった。ってやばい、あんまり聞いていると俺も眠くなってくる。

 

 

「見るからに接近戦タイプだ!近づくしかないだろ!うたう!」

 

「空から攻めろ!」

 

 

 俺の指示に頷き、アジト内に乱立するステージや木を乗り継ぎながら跳躍していくレクス。ルクバー・スターモービルが納まっていたキャンプの上からさらに跳躍し、歌声を避けていく。

 

 

「落ちてきたところにのしかかれ!じゃれつく!」

 

「決めろレクス……かかとおとし!」

 

 

 覚えたての新技を指示。天高くから片足を振り上げながら急降下し、勢いよく踵を叩き込むレクスと、こちらも跳躍してお腹から体当たりをしながら拳を振るうプクリン。その脳天に踵が叩き込まれ、同時に腹部に拳が叩き込まれる。こうかはいまひとつ、だが…!

 

 

「どうした、プクリン!?」

 

 

 目を回してふらつき、そのまま自身の頬を全力で殴りつけ背中から倒れ込みダウンするプクリン。狙い通りだ。

 

 

「こんらんだ。かかとおとしは30%の確率で相手をこんらん状態にする」

 

「それを引いたってこと?はあ!?おかしいだろ!なんで俺が追い詰められてんだよ!!」

 

▽オルティガは ブロロロームを くりだした!

 

 

「出たか…」

 

 

 ルクバー・スターモービルが咆哮を上げると同時に濃い桃色の霧が足元に立ち込めた。ミストメイカーか。このままフェアリータイプの技で攻めてくるか、それともこのフィールドを利用してくるのか。どっちだ?

 

 

「マジカルアクセル!」

 

「レクス、避けろ。……レクス!?」

 

 

 桃色のオーラを纏いながら突撃してくるルクバー・スターモービルに、回避を指示するも反応しないレクスに不思議に思って見てみれば、何故かびくりとも動かなかったレクスに直撃、吹き飛ばされる。なんでだ…!?

 

 

「プクリンは仕事したよ。じゃれつくの前にのしかかりを当てたんだからな」

 

「…器用な真似をするな」

 

「あと二体!あざとくキュートに決めてやるから覚悟しろ!」

 

 

 さりげなく技を放つとは、二番目の強さは伊達じゃないな。ぼむん、行くぞ!




あざとい曲者揃いなオルティガの手持ち。

ゲームでは命中率が低くて使い物にならないかかとおとしもリアルバトルでは大活躍。絶対痛い。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSルクバー・スターモービル

どうも、放仮ごです。ルクバー・スターモービル、なんでわざわざ展開したミストフィールドをアイアンローラーで消すんだろうなあと調べてみたらちゃんと意味があって笑った今日この頃。

今回はオルティガとの対決、決着戦。楽しんでいただけると幸いです。


 足元に濃い桃色の霧が立ち込めた敷地内。ミストフィールド。神秘的な霧のフィールドを発生させ、敵味方共に状態異常にはならなくなる。またドラゴンタイプの技ダメージが半減する効果もある、主にダブルバトルなどで活躍するとくせいだ。もう少し早ければレクスもまひしないで済んだんだがな。

 

 

「ぼむん、乗せろ!」

 

 

 オルティガを乗せて爆走を開始するルクバー・スターモービルを追いかける様に、エクスレッグヘルメットを被りながらぼむんに飛び乗り、体勢を低くして凹凸に掴まり追跡する。

 

 

「ヘビーボンバー!」

 

「アイアンローラー!」

 

 

 するとオルティガがヘビーボンバーに対抗する様に指示してきたのは、エレキフィールド、サイコフィールド、グラスフィールド、ミストフィールド状態でのみ行使可能な高威力の代わりにフィールドを消し去ってしまうと言うはがねタイプの大技。

 

 

「うわああああああ!?」

 

 

効果はいまいちだが巨体から繰り出される一撃はとんでもない衝撃でぼむんを吹き飛ばしてしまい、俺は必死に掴まるも目を回し悲鳴を上げてしまう。いやこれ無理。吐きそう。

 

 

「あやしいひかり!」

 

「でんじうゆうで避けろ!」

 

 

 ミストフィールドが消えたここぞとばかりにまるでマシンガンの様にばら撒く怪しい輝きの光球を、右へ左へと磁石の反発で弾かれるようにして避けていくぼむんから投げ出されない様に必死に掴まる。

 

 

「前方に向けてまきびし!」

 

「マジカルアクセルで肉薄しろ!」

 

 

 ぼむんの脚からまきびしを放つも、車体で受け止めて身に纏ったピンク色のオーラで消し飛ばしてしまうルクバー・スターモービル。そのまま体当たりを受け、揺らいだかと思えばクルクルクルとその場で回り出したぼむんから飛び降りる。

 

 

「こんらんだと!?」

 

「マジカルアクセルは確率で相手をこんらんさせる!かかとおとしのお返しだ!」

 

「……いつも思ってんだけど、ダークアクセルとかバーンアクセルとかポイズンアクセルとかマジカルアクセルとか俺、聞いたこともないんだが?」

 

「そりゃ俺が生み出した技だからな!」

 

「“俺の考えた最強のポケモン”ってか?餓鬼だな」

 

「うるさい!どくづきとか色々利用するの大変だったんだぞ!」

 

 

 元々は別の技ってことか。煽って情報を引き出そうと思ったけどあんまり意味なかったな。とりあえずこんらんから解放するためにぼむんをボールに戻す。その間止まって待ってくれる辺り根は真面目だとうかがえるオルティガ。勝負と行こうか。

 

 

「ジャック!行くぞ!」

 

 

 ネットボールを投擲し繰り出して背中に飛び乗ると咆哮を上げるジャック。そのまま突撃し、岩斧と車体を激突させる。

 

 

「ホイールスピン!」

 

「つるぎのまい!」

 

 

 ギャリギャリギャリとタイヤの音を響かせながら後部車両を叩きつけるように回転してくるルクバー・スターモービルに対し、こちらも回転するような舞いで応戦。弾かれるようにして両者が共に走り出すが、明らかに相手のスピードが落ちている。ホイールスピンの効果で素早さがガクッと落ちたのだろう。チャンスだ、前に回り込んでぐーんと上がった攻撃力で決めてやる。

 

 

「力強く!がんせきアックス!」

 

「あやしいひかり!」

 

「しまっ!?」

 

 

 こんらんし、攻撃力がぐーんと上がった状態で自身の胴体に斬撃を叩き込むジャックから落とされる。逆に利用されてしまった。くそっ、早くボールに戻さないと……。

 

 

「ホイールスピンだ!」

 

「うわっ!?」

 

 

 ボールを構えるも迫りくるルクバー・スターモービルから飛び退いたせいで戻すのが遅れ、地面に転がり立ち上がった時にはジャックは吹き飛ばされ、木に背中から叩きつけられて目を回していた。最悪だ!

 

 

「普通のポケモンバトルじゃないんだ、邪魔にいるところにいる方が悪い!」

 

「正論だ、何も言い返せないな。ぼむん!」

 

 

 ぼむんを繰り出し、再び飛び乗る。相手の技はいまひとつばかりだが、こんらんさせられたらもう回復手段がない。とにかく逃げて機を窺わないと。

 

 

「ぼむん、でんじふゆう!逃げるんだ!」

 

「逃がすもんか!マジカルアクセル!」

 

 

 突撃してくるルクバー・スターモービルから逃走し、まるで反発する磁石の様に直角に高速で移動していくぼむんに必死にしがみつきながらぼそぼそとぼむんにしか聞こえない距離で指示をする。

 

 

「くっ…!」

 

 

 ばしゃん!と水溜りの上を高速で移動したことにより水しぶきをまともに受けて顔をしかめていると、濡れた手がずるずるとぼむんの凹凸からずれ始めた。やばい、濡れて掴みづらく…!?

 

 

「うっ、わああああああ!?」

 

 

 つるん、と手が滑って高速で移動するぼむんから投げ出され、水溜りに落ちてゴロゴロと転がって行く。ずぶ濡れで泥だらけ、ついでに小さな傷が全身について血塗れで崩れ落ち、水や泥が口の中に入ってしまったため咳き込む。見れば、気付いたぼむんが慌てて止まって駆け寄ろうとしていたが、咳き込みながらも手を突き出して制する。チャンスは、ここだ。

 

 

「えっと……大丈夫?」

 

 

 俺を轢きそうになって慌ててルクバー・スターモービルを停めて覗きこんで問いかけてくるオルティガに、ふらふらと立ち上がりながらもバッドサインを向けて笑ってやる。

 

 

「これで終わりだオルティガ」

 

「なにが?無事ならそこで見てろよ、お前の最後の手持ちを叩き潰した後で治療して追い出してやるから!」

 

 

 そう言って俺を無視してぼむんに向き合うオルティガ。……お前、とんでもなく優しいな?だが悪いな、もう終わりだ。

 

 

「マジカルアクセルだ!……なんだよ、どうした!?」

 

 

 するとぼむんに突っ込もうとしてバキン!と言う音と共に前輪が砕け散ってザザザッ!と水溜りのぬかるみに沈み込んでしまいその衝撃でびしょ濡れになるルクバー・スターモービル。よかった、オルティガまで濡れてないな。

 

 

「さっきから逃げながらまきびしを水溜りに撒いていたの気付かなかったか?お前のタイヤはじわじわとダメージを受けていたんだよ。それで偶然だが俺が落ちて止まった衝撃で完全に罅割れていた。お前のいる場所からは見えなかっただろうがな?」

 

「そ、それがどうした!まだホイールスピンやあやしいひかりが……」

 

「びしょ濡れになった時点で終わりだよ、そうなるように水溜りに仕掛けたんだ。その車体、鉄だろ?いくら加工していても水に濡れてるんだ、電気はよく通るよなあ?」

 

「っ……ブロロローム!あやしいひか……」

 

 

 オルティガも気付いたようだがもう遅い。改造ポケモンである故の弱点だ、自分を呪え。

 

 

「でんじほう」

 

 

 ぼむんから放たれた一撃はルクバー・スターモービルに正面から炸裂。びしょ濡れの車体前方に放電を起こして黒焦げにし、ショートを起こして小爆発を起こす車体。フロントにつけられたブロロロームは目を回して舌を出している。戦闘不能だろうなこれは。

 

 

「くそっ、くそっ!くそぉおおっ!なんで気付かなかった俺のバカ!なんで負けるんだ!なんで、なんで!なんでだよーーー!!」

 

 

 地団太を踏んで悔しがるオルティガ。…強かった。絡め手を多用してようやくだ。車体が鉄じゃなかったらヤバかった。すると俺の前に飛び降りてくるオルティガ。悔しげにしながらもダンバッジを取り出した。

 

 

「ちくしょう!負けて悔しいのにお前を認めてる俺もいる!負けたらボスを降りる……掟を破るのは団に対する裏切りだもんな。しかたないからやるよ。光栄に思えよ!」

 

「それなんだが、提案がある。俺が……」

 

 

 ダンバッジを受け取り、そう言いかけたその時だった。放たれた水の弾丸を、咄嗟にオルティガを庇って抱えながら飛び退き、回避する。今のは間違いなくオルティガを狙っていた…!方向は、灯台の上!

 

 

「見事なバトルでしたわ。さすがはラウラ!今のも避けるとは期待以上!」

 

 

 アーマーガアに乗って優雅に舞い降りてきたのは、見覚えのあるお嬢様。名前も知らないブルーフレア団のお嬢様か……!

 

 

「何の用だ。…えっと、お嬢様!」

 

「あら、名乗っていませんでしたわ?失礼。改めて名乗りましょう、わたくしはグロリア。ラウラ、貴方の宿敵ですわ!」

 

 

 グロリアと名乗ったお嬢様に構える。……はて、どこかで聞いたような。どこだったっけ。ってヤバいぞ、今は手持ちが三体やられてるってのに…!

 

 

「ポケモンがやられているのはそっちの都合、こんな悪条件でも引っくり返すと信じてますわ!アーマーガア!」

 

「嫌な信頼だなクソッたれ!ダーマ!」

 

 

 くそっ、やってやるよ!




車体ならではの弱点を突いて勝利、したところに急襲するグロリア。彼女とついに対決です。

水溜りに落ちた時に傷付いて血塗れだったのはまきびしに引っかかったからだったりします。それで気付かなかったのがオルティガの敗因。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSセキタンザン

どうも、放仮ごです。ネルケで全回復するかそのままで行くか滅茶苦茶迷った結果がこちら。

今回はラウラVSグロリア。楽しんでいただけると幸いです。


「アーマーガア!アイアンヘッドですわ!」

 

「スレッドトラップ!」

 

 

 グロリアと名乗ったブルーフレア団の幹部であるお嬢様の指示したアーマーガアの頭突きを、咄嗟に繰り出したダーマの糸の盾で防ぐ。レクスとジャックとレインがオルティガにやられ、ぼむんも満身創痍。体力満タンなのはダーマとケプリベ、そしてウカだけだ。相手は恐らくフル六匹。どうにかしないと。

 

 

「ラウラ!俺のことはいいから逃げろ、こいつはやばい!」

 

「そうはいくかよ、これから仲間になるかもってんだ。見捨ててたまるか!」

 

「ラウラ…」

 

 

 オルティガが逃げろと促してくるも一蹴して後ろに庇う。オルティガみたいないいやつを見捨てられるか。やるぞ!

 

 

「ダーマ、はいよるいちげき!」

 

「そんなの当たりませんわ……むっ」

 

 

 反撃に下からの突き上げを叩き込むと訝しむグロリア。スレッドトラップのすばやさダウン効果だ。これならひこうタイプとも渡り合える。

 

 

「ドリルくちばしで無理矢理剥がすのですわ!」

 

 

 すると回転して突撃しながら、体に纏わりついた糸も吹き飛ばしてすばやさ低下を解除するアーマーガア。そんなのありか!?ダーマは紙一重で回避する、危なかった。

 

 

「くそっ、いとをはくで空中戦だ!」

 

「させませんわ。ちょうはつ」

 

「嘘だろ!?」

 

 

 灯台の上に糸を伸ばしてアーマーガアの頭上を取ろうとするが、ちょうはつされて不発に終わる。

 

 

「とどめですわ、ブレイブバード!」

 

「そこだ、カウンター!」

 

 

 勘違いされやすいがカウンターは変化わざではなく物理わざ。ちょうはつされようが繰り出せる。反撃の一撃を受けたアーマーガアはブレイブバードの反動も相まってダウン。ちょうはつの効果も切れる。

 

 

「やりますわね。だけど…これはいかがでしょう?ストリンダー!」

 

 

 繰り出してきたのはストリンダー(ローのすがた)。まただ、何故か懐かしい感覚。インテレオン、アーマーガア、ストリンダー…この並びを俺は知っている。

 

 

「オーバードライ…」

 

「ヤレユータン!さいはい!」

 

 

 すると、突如割り込んできたヤレユータンが手にしたグンバイを振るった明後日の方向に放たれるオーバードライブ。

 

 

「何者ですわ!」

 

「俺はネルケ!ラウラの仲間だ!」

 

 

 そこにやってきたのはクラベル校長、もといネルケ。遠くからここまで投げるとかなんて強肩だ。

 

 

「ラウラ!今、回復を!」

 

「いい。こいつは敵の追加を予期していなかった俺のせいだ。なんとかする」

 

 

 ネルケが回復しようとしてくるが断る。いつだって体力全快で戦えると思う方がおかしいんだ。なんとかしてやる。

 

 

「そうか……わかった、オルティガは任せろ。俺が守る」

 

「ありがたい。交代だ、ケプリベ!」

 

 

 遠距離メイン相手には不利なダーマをネットボールに戻し、代わりにケプリベを繰り出す。

 

 

「いい心意気ですわ。でも容赦はしませんことよ!オーバードライブ!」

 

「むしのさざめき!」

 

 

 電気を纏った音波と音波が激突する。何とか隙を作ってあの技を…!

 

 

「じんつうりき!」

 

「むっ、ヘドロウェーブで押し流しなさい!」

 

 

 地面をじんつうりきで砕いてストリンダーを打ち上げるも、合わせた両手の間から毒の奔流を放って吹き飛ぶ地面を受け止めて宙に浮き、そのまま飛び降りてくる。

 

 

「空中だと逃げ場はないだろ!じんつうりき!」

 

「ばくおんぱですわ!」

 

 

 空中のストリンダ―目掛けてじんつうりきを叩き込むも、なんと爆音の衝撃波を放って相殺してしまう。攻守ともに優れてるな、くそっ!ここしかないか。

 

 

「さいきのいのり!」

 

「オーバードライブ!」

 

 

 そのまま着地して電撃を纏った音の衝撃波を放ってくるストリンダーだがしかし、ケプリベはしっかり役割を果たして戦闘不能となる。代わりに出したのは、ぼむん。

 

 

「まきびし!」

 

 

 満身創痍なれど脚先の砲口から放った複数のまきびしの弾丸をストリンダーに叩き込み、戦闘不能にする。よくやったと言う間も無く燃え上がりながら出てきたそれに押し潰され、戦闘不能になるぼむん。…最悪なポケモンを持ってやがる。

 

 

「ヒートスタンプ。わたくしの対ラウラ用ポケモン、セキタンザンですわ」

 

「ほのおでいわとかむしタイプに対する殺意高すぎないか?」

 

「貴方が強すぎるのがいけないのですわ」

 

「お前と戦うの初めてのはずなんだがな?」

 

「…そうですわね。わたくし(・・・・)もラウラと戦うのは初めてですわ。…あら?なら私は何時貴方に負けたのかしら」

 

 

 少し考えてから俺の言葉に頷く様に答えてから首をかしげるグロリア。なんだ?今の。

 

 

「お前も記憶喪失かなにかか?」

 

「そうかもしれませんわ。だけど貴方に負けたことだけは覚えている。貴方と戦えと魂が叫んでいる!これぞ、セレブリティなド!根性ですわ!」

 

「……不思議だな。お前はそうじゃないだろと俺の魂も叫んでいる、その滅茶苦茶な言葉も懐かしさを覚える。行くぞ、ダーマ」

 

 

 ダーマを繰り出し、セキタンザンを相手に身構える。一撃でもまともに受けたら終わりだ。

 

 

「弱点を突きますわよ!いわなだれ!」

 

「スレッドトラップで跳ね返せ!」

 

 

 セキタンザンが吠えて虚空から出現させた岩雪崩を糸の盾で受け止め、跳ね返して攻撃するダーマ。物理の遠距離技ならなんとかなる。

 

 

「じしんですわ!」

 

「い、いとをはく!」

 

 

 するとその場でセキタンザンが四股を踏んだかと思えば地面が隆起し、次々と土柱が剣山の様に飛び出してきて、いとをはくで灯台の壁に逃れるダーマ。それ本当にじしんか!?物理版だいちのちからじゃないか!?…と思ったが、なぜか納得してしまう。このじしん、俺は知っている。

 

 

「逃がしませんわ!ボディプレス!」

 

「スレッドトラップ!」

 

 

 さらにその重量級のフォルムに似合わぬ身軽さで跳躍し、押し潰そうとしてくるセキタンザンのヒップアタックを糸の盾で受け止めながら落下、地面とセキタンザンにサンドイッチにされるダーマ。ググググッと糸をたわませて何とか受け止めている。

 

 

「そのままヒートスタンプですわ!」

 

「カウンター!」

 

 

 そのまま燃え上がって押し潰そうとするセキタンザンだったが、それの発動を狙ってカウンターを発動。殴り飛ばし、同時に黒焦げになり崩れ落ちるダーマ。ダブルノックアウトだ。

 

 

「もう三匹もやられてしまいましたのね…やっぱりラウラはそう来なくちゃ!…ですわ!」

 

「よく言うよ。こっちは残り二体だ」

 

「残りはさいきのいのりで復活させた一匹だけではなくって?」

 

「悪いな。七匹目がいる。卑怯とは言うまいな?ウカ」

 

 

 そう言いながらウカを繰り出すと、やる気に満ちているのか大きく頷いてくれた。…もしかしてフリッジジムのバッジを手に入れたから言うことを聞くようになったのかこれ。

 

 

「なるほど、そういうことでしたの。そう言えば報告にありましたわね。卑怯とは言いませんわ。…わたくしも大概卑怯ですので」

 

 

 そう言って両手に握った二つのタイマーボールから繰り出されたのは、サーナイトの様なエルレイドの様な、だけど光沢を帯びた鋼鉄のロボットの様なポケモンと、メガボーマンダの様な三日月を思わせるシルエットだが鳥の様な印象があるポケモン。

 

 

「どちらから戦いたいですわ?テツノブジン。トドロクツキ」

 

「…なんだそれ?」

 

 

 いやこっちも大概だが…本当に何だそれ?




ネルケの回復を拒み、ぼむんとケプリベとダーマをやられながらもアーマーガア、ストリンダー、セキタンザンを落とすラウラ、ウカを出陣。

そして登場、トドロクツキとテツノブジン。決して共にいるはずのないポケモン二体が揃っているその理由とは。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSテツノブジン

どうも、放仮ごです。秋塚翔さんが書いている拙作の三次創作「ポケ蟲 サイドストーリー」が更新されました。あらすじから飛べますのでぜひそちらもどうぞ。

今回はグロリアとの対決、決着。楽しんでいただけると幸いです。


「まさか、トドロクツキ…!?それにあれは一体……?」

 

「知っているのかネルケ!?」

 

「あなたから行きましょうか。テツノブジン、行くのですわ!」

 

 

 何か知ってるらしいネルケに質問する暇なく、トドロクツキと呼ばれたボーマンダっぽいのが引っ込んでテツノブジンと呼ばれたサーナイトもしくはエルレイドっぽいのが前に出る。メガサーナイトとメガボーマンダにニックネームをつけた感じか…?いや、メガシンカとも全然違う。近いのはあれだ。ムウマによく似たハバタクカミ…あれと同じ存在と考えてよさそうだ、同じブルーフレア団だしな。…もしかしてウカもそうなのか?

 

 

「ウカ!とびかかる!」

 

 

 エルレイド・サーナイトに共通するエスパータイプだと推理し、効果抜群のむしタイプの技である飛び蹴りを叩き込む。しかし難なく受け止め、刃の様な腕で弾き返すテツノブジン。エスパータイプじゃ、ない?

 

 

「チヲハウハネ。知ってますわよ、むし・かくとうタイプ!ソウルクラッシュですわ!」

 

「しびれごな!」

 

 

 確か、オーロンゲの使う技だった気がする。フェアリータイプの技のはずだ。つまりフェアリータイプか?しびれごなで妨害、麻痺させて行動をキャンセルさせる。とびかかるに対応する高い素早さもこれで低下させることができた。行ける!

 

 

「まひ程度で止められると思ったら大間違いですわ!エレキフィールド!」

 

「なんだと!?」

 

 

 刃を地面に突き立て、電気が迸るフィールドを作り上げるテツノブジン。でんきタイプ……いや、違う。内部で何かの器官がエレキフィールドから迸る電気を吸い取り、光輝く。

 

 

「とくせい、クォークチャージ!ある一定の条件下…その一つ、エレキフィールドが発動すると最も高い能力を底上げしますわ!」

 

「なんだそのとくせい!?」

 

「これがこのポケモンたち…パラドックスポケモンの強みですわ!インファイト!」

 

 

 瞬間、すばやさが底上げされたのかまひする前よりも素早い動きで一瞬でウカの目の前に現れるテツノブジン。そのまま拳や肘打ちや蹴りの応酬が叩き込まれる。この威力……フェアリー・かくとうタイプか!?こいつらはパラドックスポケモンというのか、普通のポケモンじゃないらしいな。だが技を使って、タイプもあるのも同じなら…!

 

 

「いつものポケモンバトルと何も変わらねえ!ウカ、ニトロチャージ!」

 

「距離を取ってサイコカッターですわ」

 

 

 インファイトでぼうぎょととくぼうが下がった隙を突こうと試みるが、高速で離脱して両腕を振るって念力の刃を二つ飛ばしてくるテツノブジン。ウカは俺の指示を受けることなくチーム・ルクバーの敷地内を駆け抜けていくが念力の刃は追いかけてくる。軌道を自在に操れるのか。なら、それを利用する!

 

 

「加速しろウカ!そのまま…!」

 

「!」

 

「ニトロチャージだ!」

 

 

 俺の思惑を呼んでくれたのか頷き、炎を纏ってすばやさを上げて加速するウカ。サイコカッターはそれを追いかけていき、すれ違った木を容易く切断、水場が蒸発して水蒸気を発生させグロリアからは見えなくなったはずだ。さらにウカは加速、木を機転にUターンして水蒸気の向こうのテツノブジンまで向かっていく。

 

 

「っ!?ソウルクラッシュで迎撃ですわ!」

 

「すれ違え!ローキック!」

 

 

 さらにローキックを発動して加速。炎を纏ったウカはまひして技が出せなかったテツノブジンにスライディングキックを叩き込んでその背後に急停止。足を崩され宙に浮いて身動きが取れないテツノブジンに、ウカを追いかけてきたサイコカッターが炸裂。

 

 

「とびかかる!」

 

 

 大きく吹き飛ばした先で跳躍したウカの飛び蹴りをまともに受け、テツノブジンは勢いよく蹴り飛ばされて地面に激突。大きなクレーターを作り上げ、バチバチと火花を散らす。戦闘不能らしい。

 

 

「まさかサイコカッターを利用するなんて……」

 

「かくとうタイプっぽいからな、効果抜群だろ?」

 

「やられましたわ……ならこの子はどうかしら。トドロクツキ」

 

 

 テツノブジンをタイマーボールに戻し、代わりに繰り出し空を舞い咆哮を上げるのはトドロクツキと呼ばれるボーマンダに似たポケモン。なるほど、轟く月か。あの翼が三日月みたいだからそう呼ばれているのか………地を這う羽(チヲハウハネ)とか羽ばたく髪(ハバタクカミ)とか鉄の武人(テツノブジン)とか、まんますぎないか?

 

 

「残るポケモンと交代はさせませんわよ。くらいつく!」

 

「ウカ!?ニトロチャージ!」

 

「持ち上げなさい、りゅうのまい!」

 

 

 ウカの腕に噛み付いてきたので炎を纏って逃れようと試みるも、そのまま空中に持ち上げられてしまい振り回される。羽があっても飛べないんだぞ、ウカは!

 

 

「蹴りつけろ、ローキック!」

 

「スケイルショット!」

 

 

 蹴りを叩き込んで引き剥がそうとするも、バババババッ!と至近距離から鋭い鱗が連続で射出され大ダメージを受けて呻くウカ。あの連続攻撃は不味い。だがローキックが効いているようだ。見た目からしてあくタイプか?

 

 

「とどめですわ、テラスタル!」

 

「なに!?」

 

 

 当たり前の様にテラスタルオーブを取り出してテラスタルするグロリア。結晶化したトドロクツキの頭に付けられたのは、全然似合わない風船型の結晶。アイアールのヒナと同じ、ひこうテラスタルか…!

 

 

「そらをとぶ!」

 

 

 くらいつかれたまま空に連れ去られるウカ。もはやフリーフォールじゃないか。ウカはむし・かくとうタイプ。ひこうタイプは四倍弱点だ。もう無理だろう。ならせめて…!

 

 

「しびれごな!」

 

「もう勢いは止められませんわ!」

 

 

 そして急降下してきたトドロクツキに地面に叩きつけられ、ウカはダウン。戦闘不能だ。だがしかしトドロクツキをまひさせてくれた。十分すぎる仕事だ。

 

 

「よくやったウカ。…行くぞレクス。お前に任せた」

 

「さいきのいのりで復活させたのですわね」

 

 

 ウカを戻し、繰り出すはレクス。さいきのいのりで復活したはいいが体力は半分。まともに技を受けれない。

 

 

「やることは変わりませんわ!くらいつく!」

 

「連続で殴りつけろ、こうそくいどう、とびかかる!」

 

 

 まひして動きが鈍いトドロクツキを、高速で移動して四方八方から飛び蹴りを浴びせていくレクス。このまま、と思ったが一瞬の隙を突かれて噛み付かれてしまう。不味い、連れ去られる…!?

 

 

「そらをとぶ、ですわ!」

 

「レクス…!」

 

 

 先程のウカと同じように空に連れ去られるレクス。まだだ、レクスの脚は変形して伸びるんだ…!

 

 

「かかとおとしだ!」

 

 

 畳んでいた右脚を解放し、オーバーヘッドキックの逆版を叩き込むレクス。効果は抜群だ。

 

 

「…まさか、この二体がやられるとは。ド!驚愕ですわ」

 

「俺の勝ちだ」

 

「あら。何を勘違いしてますの?」

 

 

 切札であったであろうテツノブジンとトドロクツキを倒して終わった、と思っていると首をかしげるグロリア。一体何を勘違いしてるって……あっ。

 

 

「アーマーガア。ストリンダー。セキタンザン。テツノブジン。トドロクツキ。私はまだ五体しか出していませんわよ。――――インテレオン」

 

 

 絶望的な事実を告げられ、繰り出されたのは体力全快のインテレオン。こちらは満身創痍のレクス。大ピンチが過ぎる。

 

 

「ねらいうちですわ」

 

「こうそくいどう!」

 

 

 ねらいうちをこうそくいどうで回避していくが、じり貧だ。一発でも受けたら終わる。でも、だったら!勝負に持ち込むしかない!

 

 

「懐に飛び込め!できるな、レクス!テラスタルだ!」

 

 

 偶然、というか完全に忘れていたがオルティガ戦では温存していたテラスタルオーブをここで解放。むしテラスタルとなったレクスがねらいうちを避けながら突っ込んでいく。

 

 

「点で駄目なら面ですわ。みずのはどう!」

 

「とびかかる!」

 

 

 地面を抉るように放たれたみずのはどうに、真正面から飛び込んで飛び蹴りでぶち抜くレクス。そのままインテレオンに叩き込み、勢いよく蹴り飛ばした。

 

 

「あ」

 

「え」

 

 

 吹き飛んだ先にはグロリアがいて。激突してもみくちゃになってしまう。あれは痛いぞ。

 

 

「…大丈夫か?」

 

「いたたた………戻って、インテレオン……」

 

 

 気を失っているインテレオンにのしかかられて目を回していたが、ボールに戻すことで立ち上がるグロリア。その目が俺を捉えると、驚愕に見開いた。

 

 

「え、あ、ら、ラウラ!?」

 

「いきなりなんだ、グロリア」

 

「いや私グロリアじゃなくてユウリだよ!?え、なにこの格好?趣味じゃないんだけど…」

 

 

 自分の恰好や髪型を見渡して首を傾げだすグロリアもといユウリ。なんだ、どうしたっていうんだ!?

 

 

「たしか私、ラウラが記憶喪失だって聞いていても立ってもいられなくなって、そしたらダフネのイオルブに……あれ、何この記憶?ってそうだ、大丈夫ラウラ!?怪我してない!?」

 

「いやお前のせいでやばかったんだが」

 

 

 俺にずずいっと顔を近づけ安否を確かめてくるその様子に、頭の中でピースが繋がった気がした。そうだ、俺はグロリアを知らない。だけど、ユウリは知っている。ようやく違和感が消えた、気がした。




レクスとウカだけでテツノブジンとトドロクツキを乗り越えるラウラ。かつての強さが戻ってまいりました。

グロリアの正体、その名はユウリ。インテレオンやアーマーガア、ストリンダーにセキタンザンを使っていて名前もユウリがかつて変貌した姿の通称まんまで、なんなら髪型も服装も剣盾にあった奴という伏線でした。お嬢様なのはダフネの趣味。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSファイアロー

どうも、放仮ごです。今回で物語が大きく動き出します。

今回はラウラとユウリ、そしてアイアールの話。楽しんでいただけると幸いです。


「グロリア、じゃなくてユウリ…だったか?俺の事を知っているのか?」

 

「もちろん!私達、夫婦だもん!」

 

「………は?」

 

「え、そうなの…?」

 

「おや」

 

 

 オルティガとネルケが驚きの声を上げるが俺はそれどころじゃなかった。

 

 は?   は?   は?   は???

 

 

「なんて?」

 

「だから、私達夫婦だよ。ちゃんと婚姻届出したもん」

 

「……ちょっと待て」

 

 

 ユウリを手で制し、こめかみを押さえて考える。ちらっとユウリを見る。当たり前でしょと言わんばかりに踏ん反り返っている。その自信に溢れた佇まいは本人の意思はともかくお嬢様っぽい。育ちがいいんだろうな。

 

 

「いくらでも待つよ!悩んでるラウラ可愛いから退屈しないし!」

 

「…その、ラウラさん。なんというか…」

 

「言わないでくれネルケ。励ましは俺に効く」

 

 

 記憶を失う前の俺はなにを思ってそんなことになったって言うんだ。頭を抱えていると、首をかしげるユウリ。

 

 

「いやでもなんでそんな他人行儀……あっそうか、記憶喪失なんだっけ。プラズマ団の時といいラウラらしいといえばそうなんだけど……かふっ!?」

 

 

 するとバチン!という音と共に火花が散ってユウリが崩れ落ちる。その背後には、今の今まで透明になってそこにいた人物が立っていた。

 

 

「エスプリ…!」

 

「グロリアの回収任務完了。帰投する」

 

「させるな、レクス!」

 

 

 ユウリを右腕で抱えるとファイアローを繰り出して左手で脚に掴まり、離脱しようとするエスプリ。ファイアローってことは前にアケビを回収したエスプリと同一個体か?咄嗟に指示して攻撃するが指示もなく放たれたねっぷうでレクスが吹き飛ばされてしまい失敗する。すると反応したのはオルティガだ。

 

 

「そのファイアロー……!お前、まさか……本当に裏切ったのか、メロコ!」

 

「なんだって!?」

 

 

 オルティガが呼んだその名はメロコ。スター団ほのお組チーム・シェダルの元ボスの名だった。あの中身がメロコだって!?

 

 

「どういうことですかオルティガさん!」

 

「グロリアに見せられたんだ。ブルーフレア団の庇護下に入ることをよしとしたボスの署名に書かれた、ビワとメロコの名前を…!おいウソだろ、ビワはまだわかる!あいつはスター団のためなら何でもする!でもお前はそんなんじゃないだろ…!」

 

「私はエスプリ。邪魔をするなら排除する。ファイアロー、ひのこ」

 

「レクス、防げ!」

 

 

 エスプリとユウリを持ち上げたまま、まるで弾丸の様な火の粉を飛ばしてくるファイアロー。レクスは足を振るい風圧で打ち消す。くそっ、不味いぞ。俺の手持ちで動けるのはレクスだけ…!

 

 

「逃がすなレクス、とびかかる!」

 

「おいかぜ。ひのこをばら撒け」

 

 

 レクスが飛びかかるが回避し、おいかぜを放ち、散らばせたひのこを炎の波にして放ってくるファイアロー。炎に撒かれ、レクスの体力が削られていく。

 

 

「ラウラ、オルティガ!今回復する!」

 

「助かる、ネルケ!」

 

 

 するとネルケがげんきのかけらとまんたんのくすりで俺とオルティガの手持ちを全快させてくれた。さらにヤレユータンを繰り出して臨戦態勢。俺もレクスを戻しジャックを繰り出し、オルティガもマリルリを繰り出す。

 

 

「アクアテールで炎を消すんだ!」

 

「ヤレユータン、さいはいでおいかぜ!」

 

「ジャック、がんせきアックス!」

 

「ぐっ……邪魔をするな」

 

 

 マリルリが炎を消し飛ばし、ヤレユータンがファイアローに無駄行動をさせて、その隙をジャックが突くと手を翳してくるエスプリ。するとジャックが俺達に振り向き、岩斧を振るってきた。ボールジャックか…!どうでもいいけどボールジャックでジャックをジャックする、ややこしいな!

 

 

「だが無駄だ!ジャック!洗脳から自力で復活したらかっこいいぞ!」

 

「! グラッシャァアアアアアッ!!」

 

「むっ!?…ならば!」

 

 

 俺が呼びかけると、ジャックは自分で自分を斬りつけて復帰。自分に向けて向き直ったのを見て驚愕するエスプリは、クイックボールを取り出すと繰り出したのはコータス。メロコのポケモンか…!

 

 

「コータス、しろいきり」

 

「しまっ…」

 

 

 してやられたと思った時には既に遅く。コータスの鼻息で白い霧が発生して何も見えなくなり、霧が晴れる頃にはエスプリも、ユウリも、ファイアローもコータスの姿も無かった。逃げられたか。

 

 

「やられた……メロコがあのエスプリってのは間違いなさそうだな」

 

「ユウリと名乗った彼女は連れらされたみたいだな……」

 

「あいつ、ブルーフレア団の幹部のはずだから悪いようにはしない筈だけど…」

 

「そうだといいがな」

 

 

 グロリアから戻ったユウリがなにされるかわかったもんじゃない。……いやしかし爆弾残して行ったな、おい。

 

 

「プラズマ団のどうの言ってたし…記憶を取り戻すのが怖くなってきたぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃。チャンプルタウン北西の巨大な湖、オージャの湖の中央にある比較的大きな島。そこでは、様子を窺っていたペパーとアイアールが合流していた。

 

 

「アイアール!ラウラはどうしたんだ?」

 

「ラウラは自分のやらなきゃいけないことを優先するって。こっちは任されたんだ。だから私が偽龍のヌシをなんとかするよ」

 

「そうか、ラウラに任されたなら頼もしいな!お前もアイツに負けないぐらい強いしな!ようし、マフィティフやラウラの為にも頑張るぜ!」

 

 

 笑って宣言するアイアールに、頼もしそうに頷くペパー。そのまま見下ろせば、湖を雄大に泳ぐ巨大なヌシのヘイラッシャがいた。その頭の上には赤いたれたすがたのヌシのシャリタツが横たわってのんびりしていたが、アイアールとペパーの姿を捉えると驚いてヘイラッシャの頭をぺしぺしと叩き、開いた口の中に入る。

 

 

「シャリタツのとくせい、しれいとう。ヘイラッシャの中に入って合体して指示することで強くなるんだって。ラウラもアレにやられた。多分、二匹で一匹が偽龍のヌシなんだと思う」

 

「じゃあどうするんだ?ただでさえあのヘイラッシャは強いんだぜ。ギャラドスだろうがワンパンしてた。でもそんなに頭はよくないみたいだ、絶対追い付けないミガルーサを延々と追いかけてた」

 

「じゃあシャリタツをまず追い出そう。確かヨクバリスいたよね?」

 

「いるがどうするんだ?」

 

 

 モンスターボールを構えながら頷くペパー。アイアールもモンスターボールを取り出して頷く。

 

 

「ヘイラッシャの攻撃を耐えてくれたら私のポケモンが何とかするよ」

 

「分かった、任せろ。援護するぜ。ヨクバリス!タネマシンガン!」

 

 

 浅瀬まで飛び降り、ヨクバリスを繰り出してタネマシンガンで気を引くペパー。その様子を高台から窺い、チャンスを窺うアイアール。そしてヘイラッシャが咆哮を上げようと口を開いたその瞬間、ボールを投げつける。

 

 

「今だ!ハルクララ!こおりのつぶて!」

 

 

 その刹那。ハルクジラのハルクララを繰り出して氷の礫を射出し、口の中に叩き込むアイアール。するとたまらずシャリタツが飛び出てくる。

 

 

「出たぞ!のしかかりだヨクバリス!」

 

「アイススピナー!」

 

 

 一斉攻撃を受けて怯むシャリタツ。慌ててヘイラッシャの口の中に戻ると、ヘイラッシャが島の壁を破壊し、そこに口から飛び出たシャリタツが現れた洞窟に入って行く。

 

 

「今のうちにヘイラッシャを!ドーちゃん、どくづき!」

 

「任せろ!タネマシンガン!」

 

 

 水技が効かないドオーのドーちゃんに交代して水中から攻めるアイアールと、引き続きヨクバリスでタネマシンガンを叩き込むペパー。すると洞窟からりゅうのはどうが放たれてヨクバリスが吹き飛ばされ、シャリタツがやってきて口の中に飛び込むと、赤いオーラを纏ってパワーアップするヘイラッシャを前に、構えるペパーとアイアール。

 

 

「大丈夫かヨクバリス!踏ん張りどころだ、食物連鎖を見せてやろうぜアイアール!」

 

「うん!……ラウラが来る前に、終わらせる!」

 

 

 それぞれの思惑を胸に、パルデアを覆う闇は蠢いて行く。




攫われるユウリ、エスプリにされていたメロコ、ペパーと二人で偽龍のヌシを攻略するアイアール。原作で言うと終盤に入る頃だろうか。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSヘイラッシャⅡ

どうも、放仮ごです。スマホの買い替えとかしてたら遅れました。

今回は蠢くブルーフレア団の回。ラウラ視点はありませんが、楽しんでいただけると幸いです。


 パルデア某所。ブルーフレア団のアジト。そこでは、エスプリ……メロコが拘束している、暴れているユウリの前にマトイが姿を現していた。

 

 

「ラウラとの再会を邪魔して!放して!私になにをするの!?」

 

「やっぱりグロリアとは虚構の存在だったのね。見た顔と思ったのよね……ガラル地方のジムチャレンジャー、ハロンタウンのユウリ。いや・・・貴方のいた世界では貴方がチャンピオンだったのかしら。興味深いわね」

 

「…な、なんのこと?わたくしはグロリアですわよ」

 

 

 そっぽを向いてお嬢様言葉を使うユウリだったが、それを見て愉快そうにくすくすと笑うマトイ。

 

 

「取り繕わなくて結構よ。貴方が何者かはある程度察しがつきます。あんな実力者が名を知られていないなんておかしい話だもの。でも貴方はまだ利用価値がある。ここに宣誓書があるわ」

 

 

―――――「…もし、そのラウラを倒せてもブルーフレア団に反旗を翻すことなく我々の目的のために尽力すると誓えるのかしら」

 

―――――「誓いますわ!なんなら誓約書でもなんでも持ってこいですわ!」

 

 

 マトイが懐から取り出した丸めた書類に、悪い顔で笑うユウリ。

 

 

「生憎だけど私はユウリ。グロリアじゃないからその宣誓書を守る義理はないよ!」

 

「それもそうね。でもね、その口で誓ったのだから我々の目的のために尽力してもらうわ。あれを」

 

 

 そう言って合図するマトイ。すると奥から何かを持った二名のエスプリが現れる。

 

 

「…強い。私の知らないところでこんなエスプリまで……待って。それ、何をする気?」

 

 

 その二人から強者の気配を感じとったユウリだったが、その手に持ってある物を見て顔色を変える。女性らしい体つきのエスプリは自身のものと同じヘルメットを、少し華奢だがガッシリしている体格のエスプリは折りたたんだ黒いボディスーツを持っていた。

 

 

「もちろん尽力してもらうのよ。心の底からね」

 

「…待って、それはやめて!」

 

 

 エスプリの一人からヘルメットを受け取り、カシュッと音を立てて後ろ側の開くとユウリに被せていくマトイ。すると暴れて抵抗していたユウリだったが、すぐに大人しくなり、エスプリ(メロコ)の拘束を解かれてなお、静かなままボディスーツを受け取り自ら着用していく。

 

 

「最強の手駒が手に入ったわね。エスプリ(グロリア)とでも呼ぼうかしら。これなら計画も最終段階に持って行けるわ。エスプリSはエスプリGの調整を。エスプリOはバラとアケビに連絡を。エスプリMは彼女を迎えに行きなさい。――――始めるわよ。最終兵器を手に入れるわ」

 

 

 不敵に笑むマトイ。水面下で揺らめいていた悪意の青い炎が、ブルーフレア団が動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラウラにも、ペパーにも嘘をついてしまった。ラウラに黙り、ペパーを騙して先に偽龍のヌシを倒すことにしたけど、こんなにも心が痛むだなんて。でもやらなきゃいけないんだ。ラウラの記憶を取り戻させるわけにはいかない。

 

 

「強い…!」

 

「食物連鎖に興味津々!コイツでごちそうさんしてやるぜ!」

 

 

 恐らく秘伝スパイスを得たであろうシャリタツを飲み込みパワーアップして暴れるヘイラッシャ。ハルクララとペパーのヨクバリスで抑え込もうとするが、その巨体を前に吹き飛ばされ、宙に浮いたところをいっちょうあがりでドーちゃんが、アクアテールでヨクバリス薙ぎ払われてしまう。ちょすいを読んできた!?

 

 

「ドーちゃん!?」

 

「ヨクバリス!?」

 

 

 戦闘不能になったハルクララとヨクバリスをボールに戻すも、その隙をついてみずのはどうを乱射してきた。咄嗟にペパーと一緒に両脇に逃れ、走って避けていく。

 

 

「アイアール!どうする!?こいつの狙いが遅いから避けられているが!」

 

「私がなんとか隙を作るから、ペパーのポケモンで攻撃をお願い!シャリタツならともかくヘイラッシャは、私のポケモンじゃ有効打が無い!」

 

 

 正直シャリタツも相性最悪だからヒナぐらいしか有効打無いけど。こおりが効かないドラゴンタイプででんきが効かないみずタイプってずるだよね。

 

 

「わかったぜ!お前の出番だスコヴィラン!」

 

 

 スコヴィランを繰り出すペパーに頷き、ボールを構えて投げつける。出てきたのはここぞの時に頼れる相棒、ゲッコウガだ。

 

 

「ゲッコウガ!たたみがえし!」

 

「タネばくだんだスコヴィラン!」

 

 

 連射されるみずのはどうを、スコヴィランを庇うように地面を捲り上げて盾にして防ぐ。その間に横からスコヴィランがタネばくだんを叩き込む。大ダメージに呻くヘイラッシャ。すると口の中からよいしょとばかりにシャリタツが出てくる。あの動きは、りゅうのはどうか!

 

 

「かげぶんしん!」

 

 

 たたみがえしで捲り上げた地面をぶち抜いて放たれたりゅうのはどうをかげぶんしんで回避、水中含めて周囲に複数のゲッコウガが出現し、シャリタツとヘイラッシャは分かりやすく取り乱す。シャリタツはこごえるかぜで掻き消そうとするも、ヘイラッシャから離れられないのはわかっているのでやすやす回避させることができた。

 

 

「つじぎり!」

 

 

 いっせいに飛びかかり、斬りかかるように見せて消えて行くゲッコウガの分身たち。ヘイラッシャがパニックになって暴れるも、当たったゲッコウガは次々と消えて行く。

 

 

「合わせろスコヴィラン!ソーラービーム!」

 

 

 それによってシャリタツとヘイラッシャ怯んだところに最後のゲッコウガによる斬撃が二体纏めて叩き込まれ、そこにペパーが指示したスコヴィランのソーラービームが炸裂。ヘイラッシャは目を回して崩れ落ちる。

 

 

「あとは!」

 

「シャリタツだけ!」

 

「オレモヌシー!」

 

 

 気絶したヘイラッシャの上で変な鳴き声を上げながらこごえるかぜを吹き荒れさせるシャリタツ。もはやふぶきだ。なんて力だ。

 

 

「こんな小さな奴をここまで強くするスパイス、絶対手に入れたくなってきたぜ!元から絶対手に入れるけどな!マフィティフとラウラが待ってんだ!」

 

「……うん、そうだね!」

 

 

 ペパーの言葉に思うところはあるけど、合わせておく。ごめんねペパー。でも、マフィティフを元に戻したいのは本当だから!

 

 

「ゲッコウガ、交代!ヒナ!」

 

 

 攻めあぐねていたゲッコウガをボールに戻し、代わりにクエスパトラのヒナを繰り出す。

 

 

「テラスタル!」

 

 

 シャリタツから放たれてスコヴィランを押し流してしまっただくりゅうを回避し、空に舞い上がるテラスタルしたヒナ。

 

 

「マジカルシャイン!」

 

 

 華麗に空を舞い、煌めく光の攻撃で応戦する。りゅうのはどうで撃ち落とそうとしてくるシャリタツの猛攻を擦り抜けながら急降下するヒナの一撃が、その背中に突き刺さる。

 

 

「ドリルくちばし!」

 

「オレヌシー……」

 

 

 崩れ落ちるシャリタツ。私とペパーは頷き、ハイタッチ。洞窟の中に入るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「……アハハ!本当に倒しちゃった!マトイ様が目をつけるだけあるわね!」

 

「うるさいぞ。奴等に気付かれる確率、36%。回収して帰還する」




特別なエスプリたち。色とか付けて差別化したい。スターモービル、どんなデザインでも似合ってていいよね。

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VSマフィティフⅠ

どうも、放仮ごです。原作イベントが長くなってくる時期なのでどう消費するのかが目下の課題。

今回はアイアール視点のレジェンドルート。楽しんでいただけたら幸いです。


「最後の秘伝スパイス!!ひでん:からスパイスだぜ!」

 

「これが最後の…」

 

 

 洞窟に入り、光源を辿って行くと見つけたのは真っ赤に輝く植物。ペパーが駆け寄り、採取する。これさえなければ…!

 

 

「ん?どうしたアイアール。怖い顔して」

 

「え、あ、いや、なんでも……」

 

「えーと、なになに?スカーレットブックによると…ひでん:からスパイスは代謝を上げる!循環機能に効き目があって、いっぱいの汗と一緒に体から毒素も出て行くんだってさ!さっそく調理開始だ!」

 

「お、おー!」

 

 

 やる気満々のペパーに拳を突き上げて承諾する。危ない、別のこと考えてたら意識が逸れてた。気をつけないと。

 

 

「うおおおおおおおっ!ずりゃっ!おりゃーっ!」

 

 

 手際よく秘伝スパイスを調理していくペパー。口では激しい言いぶりだけど実際は凄い繊細だ。サンドイッチが次々とできあがっていく。燃え上がるような辛さを感じるサンドイッチだ。

 

 

「お待ちどうさん!ペパーお兄さんの元気じるし!ファイナルスパイスサンド、だあっ!」

 

「おおー」

 

「ラウラがいないからカレーはないけど、いつも通り友達(ダチ)の証のバッジを握りしめながら食ってくれよな!」

 

「アギャッス!」

 

 

 待ってましたとばかりに出てくるコライドン、シング、ドーちゃん、ツムヅム、ヒナ、ハルクララ、ゲッコウガ。ゲッコウガが咎めるような視線を向けてくるがそっぽを向いて無視する。わかっているよ、だけどこればっかりはやめるわけにはいかないんだ。

 

 

「ほら、ゆっくり味わうんだぞ」

 

「アギャアス!」

 

 

 そう言って自分のポケモンたちも繰り出して私のポケモンたちも一緒にサンドイッチを与えて行くペパー。するとコライドンが吠えて身震いする。新たな力を思い出したのだろうか。そしてマフィティフを繰り出すペパー。相変わらず弱々しい。本当によくなるんだろうか。

 

 

「それじゃマフィティフも…今食べさせてやる。最高に減気が出るぞ。俺とアイアール、それにラウラがうんと頑張って集めたんだ。効かなきゃ嘘さ」

 

 

 そう言ってサンドイッチを千切って分けて与えるペパー。もしゃもしゃとゆっくり食べて行くマフィティフを固唾を飲んで見守る。

 

 

「…また昔みたいにさ。いっぱい、いーっぱい、ボール遊びしよう。それにもうお前にだけ無茶はさせない。俺たちにはもう仲間がいる。お前も守ってみせるからさ。……元気になってくれよ。それだけでいいから」

 

「ペパー…」

 

「アギャ…」

 

「ゲッコ!」

 

 

 私も、コライドンも、ポケモンたちも見守る中で。何かに気付いたゲッコウガが舌を伸ばして転がしたマフィティフの入っていたモンスターボールが、マフィティフの下に転がって行く。

 

 

「バフッ…ワフッ!」

 

「え……」

 

 

 すると吠えたかと思えばモンスターボールを咥えこんでペパーに駆け寄るマフィティフ。

 

 

「ああっ……!」

 

「バウッ!」

 

「うん……うん!」

 

 

 ペパーも駆け寄り、膝から崩れ落ちながらも這いずって近づくと、マフィティフがモンスターボールを口から落とし、受け取るペパーは涙ぐんで抱き着く。よかった、本当に効果はあったんだ。その後、数分にわたり抱擁し続けたペパーに、頃合いを見て話しかける。

 

 

「よかったね、ペパー」

 

「ああ、ありがとうアイアール!お前とラウラのおかげだ!」

 

「…うん。それでなんだけど。合流したら私が手渡すから、ラウラの分のサンドイッチもらえるかな?」

 

「ああ、もちろんだ。ちゃんと渡してやってくれよな!」

 

 

 ペパーからサンドイッチを受け取る。…これで、ラウラはラウラのままだ。すると電話がかかってきた。このタイミング、オーリム博士かな?

 

 

《ロトロトロトロト……「ハロー、アイアール。ラウラ……はいないようだな。こちらオーリム」》

 

「…!」

 

「アギャア!」

 

 

 名乗ったオーリム博士に反応するペパーとコライドン。ペパーは電話を聞くのは初めて、だっけ?

 

 

《「コライドンが戦う力以外すべてを取り戻したようだな。ライド状態で壁に捕まれば「がけのぼり」移動も可能になった様だ。アイアールに任せて間違いはなかった」》

 

「ケッ、何様だよ……」

 

《「その声は……ペパー。そこにいるのか?」》

 

「……」

 

「いますよ、博士」

 

 

 悪態を吐きながらも話しかけられたら黙ってしまったペパーに代わって博士の言葉に頷く。

 

 

《「ずっと……ずっと連絡を取りたかった。君以外に研究所に入れる人間がいなくてな。協力者は得たがこればかりはどうしようもなくてね」》

 

「はえ?」

 

「……はあ?」

 

 

 こ、これが久々の親子の会話……?なんというか、淡白すぎると言うか合理的と言うか……少しだけ、お父さんを思い出してしまうな……。

 

 

《「アイアールと共にコサジの小道の灯台にある研究所に行ってくれ。君達が目的地に辿り着いたらまた連絡する」》

 

 

 そう言って電話は切れてしまった。いくらなんでも白状すぎないだろうか。マフィティフのことなんて気付いてもいなかったのだろうか。

 

 

「コサジの小道の灯台って……ペパーと初めて出会った?」

 

「……ああ。知ってるかもだけど、アイツさ……俺の母ちゃんだ」

 

「うん、知ってる」

 

「昔っから研究が忙しくていつも家にいなくてさ。声聞いたのなんて数年ぶりだ。なのにアイツ、息子パシらせる気マンマンちゃんか!?……マジふざけんな、だよな」

 

「…うん、わかるよ。私も親で色々あったから…」

 

 

 私の父親なんてもっとひどい。拘置所で出会うなり、お前がいなければよかっただなんて言われるよりはオーリム博士はましだと思う。

 

 

「…お前とコライドンは行くんだよな?」

 

「…そのつもり」

 

 

 まだジムが残ってるけど、気になるし。それに、罪悪感を忘れられるかもしれない。

 

 

「腹ん中グツグツだけど仕方ねえからついてってやるよ。今のお前は放っておけないしな」

 

「何の話?」

 

「俺の気が変わらねえうちにさっさと行くぞ!」

 

「バゥフ!」

 

「う、うん…」

 

 

 マフィティフに押されてポケモンたちみんなで外に出る、その間際。

 

 

 

「…………本当にアンタなのか?」

 

 

 

 ペパーがそう言っていたのが印象に残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユウリをエスプリことメロコに連れ去られた後、駆けつけたイヌガヤさんがネルケもといクラベル校長の知り合いでオレンジアカデミーの前校長だったり、オルティガもいじめられていた過去があったり、一年半前にスター団がいじめっ子に立ち向かう事件が起きたがそれを以前の教頭がもみ消し職員が一部を除いて総入れ替えしていたり、ある生徒がスター団全ての責任を負って引き換えに仲間たちの処分の免除をお願いして来てそれが留学したという形をとったなどが判明したりした、その後。

 

 

「…メロコやビワが裏切っていたとする。お前はどうする?オルティガ」

 

「俺は信じない。あいつらは俺の宝物だ。例え裏切っていたとしても…何か理由があると思う」

 

「俺もそう思うよ。…ビワが心配だ、俺はチーム・カーフのアジトにカチこむ。じゃあな!」

 

「あ、待てラウラ!」

 

 

 ジャックに乗って真っ直ぐ東を目指す。アイアールと合流は後だ。スター団がヤバいのは間違いない、こっちを優先しよう。




地味にアイアールの父親のことも明かしていくスタイル。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSオンバーン

どうも、放仮ごです。最近忙しくてあんまり書けてません。とりあえず書きたいのは、エスプリが脅威にも程があるという事。XYに続編があれば絶対猛威を振るっていたと思うんだ。

今回はラウラ大ピンチ。楽しんでいただけたら幸いです。


 ジャックに掴まりナッペ山北を登山していると、スマホロトムに通話がかかってきたので起動する。すると健気についてきながらスマホロトムが通話する。悪いなスマホロトム。

 

 

《ロトロトロトロト……「……ラウラ。聞こえるか?」》

 

「ちょっと風の音がうるさいが聞こえるぞ、カシオペア」

 

《「……なにをしてるんだ?」》

 

「チーム・カーフに向かっている」

 

 

 そう言うと通話の向こうで絶句するカシオペア。さすがに予想外だったか。

 

 

《「では、オルティガからボスの証ダンバッジをもらったのだな」》

 

「ああ、バッチリだ」

 

《「これでボスがいなくなったチーム・ルクバーは終わりだな…と言いたかったが、もはやチーム・カーフまでもを潰そうとしているのか。いよいよ残るボスは一人。作戦が上手く進んでいるのはひとえにラウラのおかげ……頼もしい限りだ。まるで昔のみんなみたいだ」》

 

「みんなって?」

 

 

 イヌガヤさんから聞いた話でほぼ答えは出ている。だからこれは答え合わせだ。スター団の全責任を負ってガラルへ留学。これであてはまるのは一人しかいない。

 

 

《「…いや。なんでもない。補給班にチーム・カーフへ先に向かわせよう。そこで追加報酬を得てくれ」》

 

「わかったよ。…なあカシオペア」

 

《「なんだ?」》

 

「…お前はスター団を潰したいんだな?」

 

 

 そう尋ねると、スマホロトムの向こうで押し黙るカシオペア。葛藤する彼女の姿が目に見える。だいぶ時間をかけてから、彼女は口を開いた。

 

 

《「………ああ。もちろんだ」》

 

「わかった。なら俺もやることは決まった」

 

《「何の話だ?」》

 

「こっちの話だよ。またな」

 

 

 そう言って通話を切る。…うん。ならなおのこと、やることは決まった。早くビワとメロコをどうにかしないと。

 

 

「ジャック、急げ。山を越えるぞ」

 

 

 岩斧を駆使して雪山の断崖絶壁を登って行くジャック。頼もしい限りだ。このまま…そう思っていた時だった。

 

 

「なんだ?」

 

 

 山の向こうから何か飛んでくる。あれは……オンバーンの群れか?しかし様子がおかしい。おぼつかない飛び方でぶつかって復帰、を複数匹が繰り返している。

 

 

「やばい、パニックになってるぞ!こっちにくる!気を付けろジャック!」

 

 

 バサバサバサと蝙蝠じみた羽音を響かせながら迫ってくるオンバーンの群れ。レインを繰り出して迎え撃つ準備だ。

 

 

「バブルこうせん!」

 

 

 パンパンパンと当たるたびに破裂していく泡がオンバーンたちを正気に戻していく。それでも襲いくる個体が三体いた。しょうがない、戦闘不能にするか。そう、レインを戻してジャックにしがみ付くと、重低音の衝撃波が一斉に放たれ、咄嗟に耳を塞ぐ。

 

 

「っ、これは…ばくおんぱか!?」

 

 

 それにより怯んだところにエアスラッシュやりゅうのはどうが襲いかかり、ジャックが高速で岩肌を駆け抜けて回避していく。目につくやつを狙っている割には同族を狙わない。…あいつらの仲間になにかあって怒り狂っていると見るべきか。

 

 

「危ない、しがみ付けジャック!」

 

 

 続けて襲いかかる三体合わせてのぼうふう。とんでもない風圧の暴風に体ごと浮かされ飛ばされそうになるのを岩斧で岩肌に引っかけて耐えるジャックと、その背にしがみ付く俺。防戦一方だ。かといって飛べるレインやケプリベでもこの風じゃ耐えきれない。耐え抜くには突破力が必要だ。

 

 

「頼む、レクス!一体でいい、地面に落とせ!かかとおとし!」

 

 

 瞬間、跳躍して体勢を逆転、オンバーンの一匹の顎にかかとおとしを叩き込むレクス。そのまま打ち上げられたオンバーンに捕まって天高く飛翔、飛び降りるとオンバーンの一匹が落ちて行く。よし、まず一匹。

 

 

「こうそくいどう!」

 

 

 さらに周囲を飛び交う大人しくなったオンバーンたちをも足場にして空中で翻弄。オンバーン二体はばくおんぱを放とうとするも仲間を目にして攻撃をやめる。間違いなく群れの仲間だからだろう。大人しくなったのに悪いな、利用させてもらう。

 

 

「とびかかる!」

 

 

 高速で周囲を跳び回って十分に加速してから飛び蹴りをオンバーン一体に叩き込むレクス。空中で体勢が崩れたその個体にすれ違いざまに掴まり、二段キックを胴体に叩き込む。技でもなんでもない攻撃だが結構効いている。

 

 

「じごくづき!」

 

 

 さらにその個体を蹴り飛ばして舞い上がったレクスが横に一回転。鋭い蹴りの一撃を喉元に叩き込んで勢いよく地上に蹴り飛ばした。これで二体。

 

 

「レクス!?」

 

 

 油断したであろうそこに目掛けて放たれるエアスラッシュ。こうかはばつぐんだ。戦闘不能になってないものの落ちて行くレクスをボールからの赤い光で回収する。そして俺とジャック目掛けて翼を羽ばたかせて真っ直ぐ飛んでくるオンバーン。ばくおんぱを放ちつつ迫って来て、逃がす気は無さそうだ。妙だな。あいつだけ妙に巧みだ。誰かの指示を受けている…?オンバーンの群れがパニックになってたのもアイツの仕業か?

 

 

「つるぎのまいだ!」

 

 

 俺を背に乗せたままもう片方は岩肌にひっかけている岩斧を片手だけ振り回し、防御するジャック。ジャックがまともに戦える場所まで耐えなきゃいけない。

 

 

「ダーマ!スレッドトラップ!」

 

 

 ただでさえ狭いジャックの背の上でダーマを繰り出し、糸の盾でエアスラッシュやりゅうのはどうを防いでいく。その間に岩斧を必死に動かして移動していくジャック。しかしそうはさせないとばかりに暴風が襲いかかり、俺とダーマは投げ出されていた。……あ、デジャヴ。

 

 

「大空のヌシぃいいいいい!?」

 

 

 絶叫しながら落ちて行く。すると俺目掛けて糸を伸ばすダーマ。なんかそのまま首が折れて死ぬ未来(ビジョン)が見えた。待て、そのまま胸にくっつけられると反動で逝く。

 

 

「グラッシャアアアッ!」

 

 

 するとジャックが飛び降りてきて、重い体を活かして追い付き空中でダーマと俺を抱え込んできた。そのままジャックに抱えられたまま、岩肌に何度もぶつかり転がり落ちて行く俺達。ジャックが守ってくれたおかげで無事だが、下は海。

 

 

「…まいったなこりゃ」

 

 

 岩肌の崖際から投げ出され、俺達はまっさかさまに海に落ちて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ラウラの始末、成功。任務完了。帰投する」」」




なんでダーマで逝きそうなビジョンを見たのかはアメイジングな二作目参照。いやあ、まさか数年経ってからあのフラグを回収するとは思わなんだ(今更ホームな三作目を見た)

量産型エスプリ三体がオンバーンを操ってラウラを始末しようとした、のが今回。ブルーフレア団が本気になるとこうなる。ラウラの安否や如何に。

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テーブルシティ編
VSテツノツツミ


どうも、放仮ごです。ラウラ不在のポケモン蟲、始まります。

今回はシュウメイとピーニャside。色んな謎の答え合わせ。楽しんでいただけたら幸いです。


 ラウラが海にまっさかさまに落ちた、その頃。しるしの木立ちの元スター団チーム・シーのアジトのスターモービルを納めていたテント内では、呼び出されたピーニャがシュウメイと二人きりで会合していた。

 

 

「ラウラ殿をボスとした、マジボス殿が帰ってくるまでのチーム。その名もスター団むし組、チーム・カストゥラ。この提案、我等に理があると思うが如何だろうかピーニャ殿」

 

「いいね。ラウラなら僕も異論はないよ。マジボスが関わってるならなおさらだ」

 

「うむ。だがラウラ殿からビワ殿が敵……ブルーフレア団に回ったという情報と、メロコ殿も回っている可能性がある」

 

「なんだって?」

 

「敵の幹部を逃がしたのが恐らくメロコ殿の手持ちだった。我の記憶が正しければな」

 

 

 アケビとハバタクカミとの戦いの直後の出来事を思い出して頷くシュウメイ。仲間のポケモンだ、見間違えるはずもなかった。

 

 

「そいつはやばいね。でもビワやメロコが裏切るとは思えない。十中八九騙されてるか……洗脳じゃないかな」

 

「同意でござる。メロコ殿はその時ヘルメットとボディスーツを身に着けていたと思われる。ラウラ殿からはエスプリと呼ばれていた」

 

「エスプリ……そう言えばメロコが言ってたっけ。今やっているバイトは簡単で、指定の服を着て寝ているだけでいいとかなんとか」

 

「それがあのヘルメットとスーツだと?」

 

「恐らくね。他に情報は何かない?」

 

「ラウラ殿の話ではエスプリは他人に化けることと、ボールジャックなるものができると聞いている」

 

 

 シュウメイはラウラからもらったメモを見ながら読み上げる。誰にでも変身できるエスプリを警戒して口頭では言わなかったものだ。

 

 

「ボールジャック……文字通りボールの機能をジャック(乗っ取り)する力、かな?」

 

「そう聞いたでござる。なんでもポケモンの強化までできるとか、命令無しに技を発動したりなども」

 

「中々厄介だね。それに他人に化ける、は…メタモンの変身能力を参考に科学力で再現したものかな?ブルーフレア団は恐らくオルティガ以上の技術力があると見たよ」

 

「それは相当でござるな」

 

「うん。そしてこれは恐らく複数存在する」

 

 

 そう言ってノートパソコンを取り出して操作。目的の情報を見つけたのか画面に映し出してシュウメイに見せるピーニャ。

 

 

「パルデア各地で突如、トレーナーのポケモンが暴れる事件が多発している。居合わせた各地のジムリーダーや四天王が鎮圧していたけど、共通する点が一つ。どのトレーナーもボールに入れていたポケモンが突如暴れ出した、という情報があるんだ。多分これはエスプリの実験だったんだろう」

 

「なるほど、納得でござる。なればメロコ殿のエスプリは……」

 

「アルバイトと称してメロコを引き入れたんだろうね。それも恐らく、シュウメイの言うブルーフレア団に寝返った青いサングラスのしたっぱたちもエスプリにされていたんだろう。彼等からの話を聞く限りね」

 

 

 少し前にシュウメイに伝えられるなり自分のところでも捕縛した青いサングラスのしたっぱから聴取した情報を纏めたファイルをピーニャが開いていると、ピコント言う音とともにメールを受信。眉をひそめる。

 

 

「…今、オルティガからメールが来た。ブルーフレア団の幹部に庇護下に入るように言われたらしい」

 

「なんと!オルティガ殿の下まで…!」

 

 

 オルティガからのメールを開いて内容を伝えるピーニャに、戦慄するシュウメイ。ピーニャはメールの内容を確認して苦々しい表情を浮かべる。

 

 

「ビワとメロコがブルーフレア団の庇護下に入ると言うサインが書かれた書類のコピーを見せられたらしい。その見せた張本人である幹部がなんか味方?になったけど、それをヘルメットとスーツで確認はできなかったけどメロコに連れ去られたとある。ラウラもその場に居合わせたと」

 

「ラウラ殿も居合わせたのか!…恐らくスターダスト大作戦の後だったのだろう。そこを狙われれば如何にラウラ殿とオルティガ殿と言えど…」

 

「うん、きつかっただろうね。そのままラウラはビワを倒しにチーム・カーフのアジトに向かったらしい」

 

「それが上手く行けば全ボスを倒し、チーム・カストゥラ誕生に繋がるでござるが……当のボスのうち二名が敵方に回っているとなると……聊か面倒でござるな」

 

「少なくともしたっぱたちを纏める説得力はなくなるだろうね。ならやることは一つ」

 

「我等元ボスでメロコとビワをなんとかすること、でござるな」

 

 

 シュウメイの言葉に頷くピーニャ。やることは決まった。

 

 

「ビワはまだ正気だと思う。ラウラに負ければ掟に従うだろう。だからまずはメロコだ」

 

「うむ。バイト先は何処か分かるでござるか?」

 

「突き止めたよ。そのバイトが募集されていたちらしを過去の監視カメラのデータで確認した限り、テーブルシティのとある喫茶店だ」

 

「……喫茶店でスーツ試着とかめちゃくちゃ怪しいでござるな」

 

「メロコは変なところで真面目だからね……スターモービルの出力が足りないからとカルボウたちを本当に進化させてきたし」

 

 

 そんなことを話していた時だった。テントの入り口からシュウメイの同胞ことヒロノブが慌てて入ってきたのだ。

 

 

「大変だ、シュウメイ殿!」

 

「同胞!どうしたでござるか!?」

 

「とにかくこれを見て!」

 

 

 そう言ってスマホロトムの画面を見せてくるヒロノブ。シュウメイとピーニャが首を傾げて画面を覗き込むと、liveニュース映像の様だった。

 

 

《「繰り返します!こちらテーブルシティ!今のこの街は、突如現れた謎のポケモンたちとそれを操る黒いボディースーツの一団によって制圧されてしまいました!今はこの門近くも危険で……」》

 

《「デデデデリデリデリ・バー」》

 

《「え、なにこのデリバード……きゃあああ!?」》

 

 

 女性のニュースキャスターが必死に報道していたが、最後は機械仕掛けのデリバードとしか言えない謎のポケモンによってカメラが破壊されたのか、砂嵐状態の後にスタジオに映像が移る。被害状況について詳しく報じられていた。

 

 

「……見たでござるか、ピーニャ殿。謎のポケモンを操っていた一団」

 

「ああ。あれがエスプリか。つまり今テーブルシティに行けば確実にいるってことだ」

 

「ええ!?そんな、シュウメイ殿!危ないよ!」

 

「止めるなでござる、同胞。奴等はスター団の一員だった者達。我らが行かなければならぬのだ」

 

 

 慌てて止めるヒロノブだったが、シュウメイもピーニャも聞く耳持たずに準備を始める。

 

 

「オルティガにも連絡した。プラトタウンで合流の後にカチコミだ」

 

「こちらがカチコミをかけるのでござるか。なかなか燃えるシチュエーションでござるな」

 

「ああ。僕たちから奪われたものを取り返しに行こう」

 

 

 拳を突き合わせたシュウメイとピーニャは笑う。スター団ボスの絆は健在だ。




メロコのバイトの正体がエスプリでした。そして起きたのはテーブルシティ占拠事件。その目的は…?

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VSハブネーク

どうも、放仮ごです。前回に引き続きブルーフレア団の真相解明回となります。

今回はオレンジアカデミーにて。楽しんでいただけたら幸いです。


 テーブルシティが突如現れたヘルメットとスーツの一団とワイルドな風貌だったり機械仕掛けの様な風貌だったりの知っているようで知らないポケモンたちの軍団により制圧されてから、一時間。テーブルシティの最奥に聳え立つオレンジアカデミーは、教師がすぐに事態に気付き生徒と共に校舎に立てこもって抵抗を続けていた。

 

 

「まさかテーブルシティが制圧されてしまうとはな。過去のクーデターを彷彿としていて実に面白い」

 

「言ってる場合じゃないでしょ、レーちゃん」

 

 

 そんな中、オレンジアカデミー校庭。不謹慎な発言をするレホールを咎めるマトイ。気の知れた友人同士だからこそツッコめる関係だ。

 

 

「レーちゃんは防衛に参加しなくていいの?」

 

「タイム先生からここの守りを任されてるからな。私は校長にしか従う義理はないのだが、今は彼女が司令塔だ。正直一部のポケモンたちには興味が滅茶苦茶惹かれるが生徒は守らんとな」

 

「教師の鑑ねレーちゃん」

 

「校長がいない時を狙われるとは、敵は策士だな」

 

…そのつもりはなかったのだけど。こんな時にどこに行ったのかしらね、校長」

 

「本当にな。もしもの時は貴様にも戦ってもらうぞ、マトイ」

 

「ええ、そのつもりよ」

 

 

 そんなことを呑気に話している時だった。蹲って怯えていた生徒の一部が突如立ち上がったかと思えば、青いサングラスを身に付けて手にしたボールからポケモンを繰り出して他の生徒や教師を襲い始めたのだ。慌てて逃げて行く生徒たち。応戦する教師陣。

 

 

「なっ!?サングラス…スター団か!?ハッサム、ハブネーク!」

 

 

 自分の手持ちを繰り出して応戦するレホール。教師陣でも上位の実力でサングラスの一団…ブルーフレア団のポケモンを蹴散らしていくがしかし、災いの器ディンルーと災いの木簡チオンジェンの出現と、放たれた“カタストロフィ”により体力を削られハッサムとハブネークを倒されてしまう。

 

 

「まさか、四災(スーザイ)だと!?クソッ、こんな時じゃなければ…!マトイ!貴様も手を貸せ!」

 

 

 次のポケモンであるゲンガーを繰り出しながらレホールは背後のマトイに呼びかける。しかしなにも反応が無いことに訝しみ振り返ると、悲しそうな笑みを浮かべるマトイが立っていた。

 

 

「残念だわ。本当に。せめて四災を優先してくれれば、こちらに引き込むという選択肢もあったのだけど…やっぱり教師としての責任を選ぶのね」

 

「…ディンルー、チオンジェン。そしてそいつは……災いの剣、パオジアンか」

 

 

 マトイの傍に控える第三のさいやくポケモンに、全てを察するレホール。フッと嘲笑する。それは騙されれていた自分に向けられてか、敵である自分に親愛を向けるマトイへか。

 

 

「貴方から得られる四災の情報はいずれも貴重だったわ、レーちゃん。貴女との友情は本物よ?でもね……フラダリさんが失敗したのは、そういった物を捨て切れなかったからなの」

 

「…話にあったブルーフレア団。その首魁がお前か」

 

「知っての通り私はカロス出身の、古代の遺物を調べ運用する科学者。でもその実態はかつてのフレア団の大幹部の片割れにして、ブルーフレア団のボス。フラダリさんお抱えの伝説ポケモンの研究者でゼルネアスを見つけた功績もあるのよ?」

 

 

 誇らしげに、自慢するかのようにそう説明するマトイに、レホールは不敵な笑みを返す。

 

 

「それは羨ましい限りだな。立場が同じなら私もさぞ喜んだだろう。貴様の目的はなんだ」

 

「知れたこと。失われた最終兵器を取り戻して、フラダリさんの思想を完遂する。即ち「争いのない美しい世界の為に人間の数を減らすだけでなく、争いの道具にされる可能性があるポケモン達も消し去ること」これのみよ。テーブルシティとオレンジアカデミーは最終兵器のための土壌となってもらうわ」

 

「馬鹿な。カロス地方のカロス神話における最終兵器、数年前にフレア団が起動させようとしたアレか!貴様、アレの放つ毒がどんなものか知らないわけじゃあるまい!」

 

「人も、ポケモンも、愛しているわ。その愛がある故に……全てを消し去るのよ」

 

 

 マトイの狂気の光が宿った目に、怖気づくレホール。だがしかし思い浮かんだ疑問を口にする。

 

 

「だが何故パルデアだ!何故、カロスではなくここなんだ!」

 

「カロスのセキタイタウンに眠る最終兵器は完全に停止した。数が強みだったフレア団のしたっぱも、捕まえた最終兵器の燃料となるポケモンたちももういない。でもパルデアにはいるじゃない」

 

 

大量のエネルギーを持つ(テラスタル)ポケモンが」

 

 

地方を上げた学校と言うヒエラルキーの権化(懐柔しやすい大量の人材)が」

 

 

「なにより……過去に失われたものだろうが取り戻せる(タイムマシンの)研究をしている博士が…!」

 

 

 そう、手を胸に当てながら捲し立てるマトイ。先端に行くほど銀色のグラデーションが綺麗な蒼色のロングヘアーと羽織っている白コートが大きく揺れる。

 

 

「…オーリム博士か」

 

「タイムマシンをハッキングして、実験としてこの時代に連れてきたのが彼等パラドックスポケモンよ。途中、いらないものも来たけどね。過去、未来。どの時代にも繋がる…!例えば、大昔に起動した瞬間の最終兵器でさえ…!」

 

 

 そう興奮する様はマッドサイエンティストのそれだ。レホールはポケットから取り出した腕輪に同じく取り出したひし形の宝石を装着。腕輪を握って大きくポーズをとる。

 

 

「もういい。親友として貴様を止める。ゲンガー!Zワザだ!」

 

「止めれるかしら。私達はブルーフレア……つまり、青い炎は普通の炎よりも、温度が高いのよ。私は、それすら凍らせるけど!」

 

 

 そして両者は、激突する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 テーブルシティ南、ブラトタウン。そらとぶタクシーでここまで訪れたシュウメイとピーニャは、同じくそらとぶタクシーで駆けつけたオルティガと合流していた。しかし来たのはオルティガだけではなかった。

 

 

「俺もついて行くぜ!中の人達が心配だからな!」

 

「と、言う訳で助っ人。強さは申し分ないよ」

 

 

 リーゼントを撫でながら叫ぶのはネルケ、ことクラベル校長。オルティガから事情を聞いている時に舞い込んできた今回の事件、校長としての責任を持って助けんと駆けつけたのだ。ネルケとはすでに知り合っているため頷くピーニャとシュウメイ。

 

 

「たった四人か。少し頼りないけど申し分ないね」

 

「ではいくでござるよ皆の衆。死地に…!」

 

「フェアリーの怖い所を存分に見せてやるよ」

 

「貴方達が戦う必要はないのですが……止めれませんね。では」

 

 

 そう意気込む四人を、家屋の陰から見つめる二つの人影があった。

 

 

「どうします、グレイ?グロリア…もといユウリさんとも連絡が取れなくなって半日もせずにこの事件ですが」

 

「アオキから逃げ延びたってのに厄介ごとばかり起きるな畜生。お前は手伝ってやれダフネ。俺はいったんゼロゲートに戻る。準備を始める」

 

「もしかして、あれですか!?」

 

「あれだ。最終手段だったがしょうがない。ここで使わず何時使う」

 

 

 男の言葉に頷き、駆け出す少女。もう一人の蟲使いが、参戦する。




地味に以前ちょっと出ただけで実質初登場なのに重要な役どころになったレホール先生。この小説ではアローラ出身と言う仮説のもと書いてます。

というわけで元フレア団大幹部(パキラの対になるフラダリの左腕)、マトイの真意が明かされました。タイムマシンがあって、高エネルギーを持つポケモンがうじゃうじゃいて、人材がいる。パルデアはその目的にとって完璧な土地だった。

ちなみにパオジアンは以前出たときはエスプリに貸し与えていただけでマトイ本人のポケモンです。マトイがパオジアン、バラがディンルー、アケビがチオンジェン、とこんな感じ。

カチコミ開始する元ボス三人+ネルケ、そして参戦ラウラの代打バッター。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSテツノドクガ

どうも、放仮ごです。まずひとつ訂正。あまりに勘違いされまくりだったのでマトイについての出せる限りの情報を投下します。

マトイはフラダリの様に絶望した訳でもその思想やカリスマを狂信・心酔した訳でもなくその善悪基準で善側と判断、その計画が本当に全てのポケモンやトレーナーを救う物だと信じて行動しており、本気で思いやっており、レホールとの友情は確かに本物。ある意味純粋な悪党より性質が悪いかもです。

今回はシュウメイ達VSエスプリとパラドックスポケモン軍団。楽しんでいただけたら幸いです。


「いくでござるよ!ベトベ遁の術(とける)!」

 

 

 閉じ切ったテーブルシティ南門に、隙間からベトベトンを忍び込ませてロックを解除した我は、ピーニャ殿とオルティガ殿、ネルケ殿と共に突入すると、そこはワイルドか鉄染みた謎のポケモンが跋扈する地獄だった。それぞれベトベトン、ドンカラス、マリルリ、ヤレユータンを繰り出して応戦する我等。

 

 

「こいつらは一体なんなんだ!」

 

「生放送のデリバードもどきとかすごく怖かったんだけど!」

 

「ラウラ殿も持っていたウルガモスっぽいのもいるでござるな!」

 

「こいつらはパラドックスポケモン!鉄みたいなのはわからないが、ワイルドな風貌なポケモンたちは遥か太古に生息したと言われている強力なポケモンだ!タイプもまるで違うから気を付けろ!」

 

 

 事情をいくらか知っているらしいネルケ殿の言葉に頷く。見た目に惑わされるなということでござるか。いや待て。そんなにも強力なポケモンをこの数も捕獲できるものだろうか。

 

 

「敵。排除する」

 

 

 手を翳す複数のエスプリの姿が奥に見える。ボールジャックと言うのは文字通りモンスターボールをジャックし支配する力だと思っていたが、もしやボールに入れなくてもある程度行使できるのでは…?

 

 

「ならば!皆の衆!エスプリを狙え!恐らく、あの腕を上げさせなければ統率が乱れる!ベトベトン!忍法、毒津波の術(ヘドロウェーブ)!」

 

 

 敵にどの技か悟らせないために忍術と呼んでいる技を使用し、パラドックスポケモンとやらの一団を飲み込み拘束する。身動きさせなければ恐るるに足らず!

 

 

「シュウメイ!君の洞察力を信じるよ!ドンカラス、おいかぜ!あくのはどうで怯ませろ!」

 

「やるぞネルケ!お前のヤレユータンで混乱させろ!マリルリ、れいとうパンチで凍らせるんだ!」

 

「了解した。ヤレユータン、さいはい!」

 

 

 ピーニャ殿とドンカラスがおいかぜで味方のすばやさを上げてあくのはどうで我とベトベトンが捕らえ損ねたパラドックスポケモンたちを怯ませていき、そこにオルティガ殿とマリルリが地面に冷気を纏った拳を叩き込んで氷漬けにし、それを妨害しようとする奥にいて巻き込まれなかったパラドックスポケモンたちをネルケ殿とヤレユータンが操り同士討ちさせる。

 

 

「今でござる!突撃!煙幕の術(どろかけ)!」

 

「おいかぜに乗るんだ!ぼうふう!」

 

「薙ぎ払え!アクアテール!」

 

「サイコキネシスでエスプリたちの動きを止めろ!」

 

 

 我が煙幕を放ち、それごと巻き込む形でピーニャ殿が暴風を発生させることでパラドックスポケモンたちの動きを止め、そこにオルティガ殿が激流で薙ぎ払うと、ネルケ殿がエスプリたちを拘束し腕を下げさせた。見える限り全員、総勢五人の動きを止めるとはなんて練度か。ネルケ殿、できるでござる。すると明らかに狼狽し混乱するパラドックスポケモンがいて。

 

 

「おぬし、先ほどの攻撃からどくタイプと見た!ゲットでござる!」

 

「あくタイプもいるね!僕も!」

 

「なら俺も!お前フェアリータイプだろ!」

 

 

 そこに我とピーニャ殿とオルティガ殿がそれぞれリピートボール、タイマーボール、ゴージャスボールを投げて捕獲。我は鋼鉄のウルガモスの様なパラドックスポケモン、ピーニャ殿はワイルドなモロバレルの様なパラドックスポケモン、オルティガ殿はワイルドなプリンの様なパラドックスポケモンをそれぞれゲットした。

 

 

「テツノドクガとアラブルタケとサケブシッポの捕獲を確認」

 

「最優先で排除する」

 

「ボールジャック、起動」

 

 

 拘束から無理矢理抜け出し、捕らえたばかりのボールを乗っ取ろうと手を翳すエスプリたちに、ノートパソコンを手にしたピーニャ殿が立ちはだかる。

 

 

ジャック(乗っ取り)にはジャミング(妨害)だ!その毒電波はカチコミの間に解析済みだ!僕らに向けられるものはリミックスして書き換えてやるよ!a.k.a.DJ悪事をなめるなよ!」

 

「ナイスだピーニャ!行くぜ、サケブシッポ!多分使えるだろ、ムーンフォース!」

 

 

 それに続いて、明らかにドラゴンなワイルドなボーマンダに似たパラドックスポケモンと鋼鉄のサザンドラみたいなポケモンをサケブシッポが放った月型のエネルギーで押し潰すオルティガ殿。我も負けてられないな!

 

 

「テツノドクガというのでござるか、ラウラ殿が好きそうなポケモンでござるな。さて、先ほど使っていた技は……焔の舞、の術でござる!

 

「?」

 

「…ほのおのまいでござる!」

 

 

 失念していた、捕まえたばかりでは我の忍術にはついてこれないか。テツノドクガから放たれた鱗粉から燃え上がる炎で壁を生み出して即席のバリケードを作る。よし、ピーニャ殿には近づけさせないでござる!

 

 

「僕もいくよ!アラブルタケ、多分使えるっしょ?かみくだく!」

 

 

 炎の壁を越えてきた以前も戦ったムウマの様なパラドックスポケモン…ハバタクカミを、ノートパソコンを操りながらのピーニャ殿の指示で文字通り噛み砕いて戦闘不能にさせるアラブルタケ。

 

 

「サイコキネシスで援護です!」

 

 

 ネルケ殿がエスプリの動きを阻害してくれている。今だ。

 

 

「ベトベトン!」

 

「ドンカラス!」

 

「マリルリ!」

 

「「「ヘルメットを外せ!」」」

 

 

 そこに炎の壁を越えて行ったベトベトンとドンカラスとマリルリがヘルメットを奪い、吹き飛ばし、弾き飛ばし、中から見覚えのある者達が現れる。やはり、スター団の仲間でござったか。

 

 

「ううっ、ここは……」

 

「う、動けねえ…」

 

「あ、ボスたち…こ、これはですね…」

 

「どうやら裏切ったことに負い目を感じている者達がエスプリにされていた様でござるな」

 

 

 どうやら安全装置が働いているのか身動きが取れない様子のスター団のしたっぱたちを(たしな)める。目を瞑って背けようとする彼らの頭をポンポンと撫でる。信じられないと言いたげな表情を浮かべる同じスター団だった者達。

 

 

「もう我等はボスではござらん。そんなことも知らずにエスプリにされていたでござるな。……怖かったでござるよな、居場所を失うのは。強い居場所を求めるのは道理でござる」

 

「操られていただけだしね、怒りはすれど恨みはしないよ」

 

「でもな!悪い大人かどうかの判別ぐらいは付けろよな!」

 

 

 そう言って、ベトベトンとテツノドクガ、ドンカラスとアラブルタケ、マリルリとサケブシッポと共に構え直す。先には、エスプリだけじゃない。裏切ったことに未練や負い目すら感じていない者達であろう青いサングラスにスーツ姿の若者たちが残りのエスプリに混ざってやってくる。そのうち十数人はもともとの構成員であろう大人も混ざっている。数で潰す気でござるな。

 

 

「ネルケ殿。すまないが、彼らを安全なところに運んでもらってもよいでござるか?」

 

「ああ、俺は構わないが…どうするんだ?」

 

「あれでも我らの元同胞。お仕置きでござる」

 

「責任もって僕らボスがOHANASHIしないとね」

 

「まあ俺らもうボスじゃないからそんな責任もうないけど…落とし前は付けないとな」

 

 

 戦力差は絶望的でござるが、少なくともメロコ殿を助けるまで負けられないでござるな。一斉に襲い掛かってくるパラドックスポケモンの軍勢と、ブルーフレア団したっぱたちから繰り出されるポケモンたち。我等は身構えるも、それは杞憂だった。

 

 

「ロックブラスト!」

 

 

 横から岩の弾丸が次々と放たれ、全部脳天に命中させて怯ませ止める者がいた。緑のマフラーを巻いたセーラー服の、前髪で目元を隠した銀髪をふんわりロングヘアーにした、前髪からちらちら見える綺麗な翠の目が印象的な少女で、傍らにヘラクロスを連れている。

 

 

「こっそり本丸を落とそうと思ってましたけど、貴方達の言葉に胸打たれました!助太刀させてもらいます!」

 

「おぬしは?」

 

「私はダフネ!…えっと、通りすがりの蟲使いです!行きますよヘラクロス…メガシンカ!」

 

 

 そして首にかけたペンダントを握りしめると、溢れ出た眩い光がヘラクロスの持ち物から溢れた光と繋がって虹色の光球に包まれてそのシルエットが変化、光球が弾けてその姿を現した。全体的にマッシブになって角が新たに巨大な物が増えて背中は黄色く、腹部には排気口の様な器官が現れ、触覚も長く伸びて、細かった腕は丸太の様に太く、強靭になった姿。メガシンカ…話には聞いたことはあったが、これが。

 

 

「蟲ポケモンのかっこよくてかわいくて美しくて最高で最強なところ、見せてやります!」

 

「それはラウラ殿の……助太刀、喜んで受けるでござる!」

 

 

 その嬉々とした姿がラウラ殿と重なって、信じることにした。ラウラ殿曰く、蟲を好きな者に悪い奴はいない!




パラドックスポケモンをゲットする元ボスたち。どくタイプで蟲ポケモンだったから今作のシュウメイにぴったりだなとこういう感じになりました。ピーニャはトドロクツキでもよかったけど扱いやすさでアラブルタケにしてます。

そんなピーニャ、エスプリのボールジャックをジャミングするまさかの有能ムーブ。ネルケもヤレユータンで名采配。この二人がいなかったら詰んでるまである。

そして参戦、ダフネとメガヘラクロス。カロスのフレア団が元の組織が相手だからメガシンカを使うダフネは適任でした。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSコスモウム

どうも、放仮ごです。そろそろ完全にネタバラシをしていきます。

今回はグレイの回想。楽しんでいただけたら幸いです。


「オーリム博士!…オーリムAI!いるか!」

 

 

 ゼロゲートに戻るなりモニターの電源を付けて捲し立てるグレイ。中々通信に出ない。通信相手が出るのを待つグレイは、ここ数ヶ月の事を思い返していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数ヶ月前。『ソード』の世界。『スカーレット』の世界とは違うそこのガラル地方南、ガラル辺境であるワイルドエリアとカンムリ雪原の間の山脈にその建物はあった。俗に言う刑務所である。その面接室にて、ダフネとグレイは面会していた。

 

 

「わざわざ面接に来たと思えば……ラウラが消えただと?」

 

「はい。またあなた方プラズマ団が攫ったのかと」

 

「お前らが潰しただろうが」

 

「残党でもいて、唯一捕まってない新生プラズマ団の幹部だったラウラさんをまた幹部に仕立て上げてなんか企んでいるのかと」

 

「それなら俺は知らないな。俺やゲーチスみたいな先導者でもいないとあいつらはなにもできないさ」

 

 

 そう言う人間ばかり集めたからな、と悪びれるグレイ。ある一人のトレーナーに負けて心無い言葉をかけられ、王になり見返してやると言う歪んだ野望を抱いた末に自分たちに敗北した目の前の男に、ダフネは気を引き締める。彼が率いたプラズマ団には家族も同然の手持ちを引き離された恨みがあるがどんな因縁がある人間だろうと希望はここにしかない。終いには、頭を下げていた。

 

 

「…なんのつもりだ?」

 

「お願いします。もう貴方しかいないんです」

 

「……どこで消えた?」

 

 

 あまりに必死な姿に溜め息を吐いて問いかけるグレイ。それを聞いたダフネは表情を明るくして鞄から書類を取りだした。

 

 

「カンムリ雪原です。デンチュラと他の手持ちはユウリさんが見つけて保護しましたが、隅から隅まで探してもガラル地方のどこにもラウラさんの痕跡すらありません。他の地方に行った痕跡すら見られない。公の記録によればカンムリ雪原駅を訪れたのを最後に消息を絶っています」

 

 

 警察からもらった記録の書類をガラスの向こうのグレイにも見える様に並べるダフネ。親友の一人であるラウラの妹分、ジュリも心労で弱って来ていて、いても立ってもいられなくなったダフネ。もう頼る人間はグレイしかいなかった。ラウラと「同類」だと語ったこの仇敵である男しか。

 

 

「目的は聞いているか?」

 

「妻…夫?のユウリさんに出かけると言っただけのようです」

 

「結婚したのかアイツら……ちなみに、その見つけた手持ちってのは?」

 

「ええっと…」

 

 

 グレイの問いにダフネはメモ帳を取り出しペラペラ捲り、目的の(ページ)を見つけたのか引っくり返して突きつける。

 

 

「デンチュラ。ドラピオン。ウルガモス。ゲノセクト。フェローチェ。マッシブーン。…ラウラさんの最強メンバーですね。何か事件でも追ってたのでしょうか」

 

「そのメンバーでカンムリ雪原か……ああ、合点が行った。あそこにはあれがあるからな」

 

「あれ?」

 

「知らないのか。ああ、この世界で知っているのは一部の人間だけだったか。ウルトラホールだよ」

 

 

 また含みのある言い方に顔をしかめながらも、言われた言葉に首をかしげるダフネ。

 

 

「うるとらほーる?」

 

「ウルトラホール。フェローチェやマッシブーン、ユウリのウツロイドみたいな異形のポケモン……ウルトラビーストが現れる時空の穴だ。国際警察も知らないんだろうが、カンムリ雪原にはコスモッグがいる。ウルトラホールを開くことができるポケモンだ」

 

「何で国際警察も知らないことを貴方が知ってるんです?レジギガスのこともそうですけど」

 

 

 至極当然の問いかけをするダフネに、グレイは「あー」と失言したことに気付いて目を逸らす。それはグレイにとっても、ラウラにとっても、ジュリにとっても禁忌と言っていいことだからだ。結局、他の奴に押し付けることにした。

 

 

「それはラウラかジュリ……我が同類にでも聞くんだな」

 

「貴方とラウラさん、ジュリさんの二人を一緒にしないでください」

 

「お前俺が嫌いだな?」

 

「嫌いです。ジュリさんの凍傷まだ治ってないんですからね!キュレムで容赦なく凍らせて!シュバルツの怪我もまだ治ってないんですよ!」

 

「それは本当に悪かった」

 

 

 躊躇なく頭を下げるグレイに、反省しているのだと察して口をつぐむダフネ。溜め息を吐いた。

 

 

「で、そのウルトラホールがラウラさん失踪とどう関係があるんです?」

 

「Fallと言う人間がいる。ウルトラホールを通って異世界から来た人間で、その影響かウルトラビーストを惹き付けやすい体質となり、ショックかなにかで記憶を失っているそうだ。ならその逆も然りだろう」

 

「…ラウラさんはそのコスモッグが作ったウルトラホールに落ちたと、そういうことですか?」

 

「恐らくだがな、ラウラはフェローチェとマッシブーンを生息地の異世界に里帰りさせようとかそんな理由でカンムリ雪原を探索してたんだろう。そこで何かが起きた。この世界から痕跡なく消えるとしたらそれしかない。他にはヨノワールの作り出す異空間に落ちたとかフワンテに連れ去られたとか色々仮説もあるが…わざわざ連れて行った理由はそれしかないだろうな。だとすると可能性としてはラウラはウルトラホールに落ちた、これしかない」

 

 

 洗脳しても蟲好きは治らなかったからな、とグレイは笑う。

 

 

「…ジュリさんの言ってることは本当でしたね」

 

「うん?ジュリの差し金か。アイツは知らなかったのか?」

 

「『私はそんなにやりこんでないから知らないけどグレイなら知ってるかも?』とジュリさんの談です。あと、貴方を脱獄…じゃなくて出所させようという考えもジュリさんですね」

 

「なんだって?」

 

 

 いきなりのカミングアウトに反射的に問いかけるグレイに、ダフネはしてやったりと笑みを浮かべる。

 

 

「今ユウリさんがダンデさんやらに働きかけているはずです。貴方みたいな極悪人をここから出所させるのは骨が折れますよ、まったく。ところで出所って響きかっこよくないですね、脱獄の方がかっこよくありません?」

 

「お前は俺に余罪を増やすつもりか。いやそうじゃなくて…俺を出所だと?」

 

「ラウラさんを見つけるまでの緊急処置です。見つけたら減刑もあるかもですよ?」

 

「…俺よりよっぽど極悪人だなお前らは」

 

 

 グレイは笑う。ダフネも笑う。すると一人の刑務官がやってきて見張りの人間に何か話し始めた。どうやら上手く行ったらしいことを確認したダフネはグレイに問いかける。

 

 

「では共犯者。よろしくお願いしますよ」

 

「わかったよ。せいぜい働かせてもらうさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、これがコスモッグ?」

 

「正確にはコスモウムだな」

 

 

 三日後。カンムリ雪原フリーズ村近くの森にて、手分けして探しだしたそれに、集まった五人…ダフネ、グレイ、ユウリ、ジュリが顔を見合わせる。星雲の繭の様な不思議なポケモンだった。

 

 

「コスモウム?」

 

「ソルガレオまたはルナアーラに進化するコスモッグの進化系だ。似た系列で言うとビードルとコクーンとスピアー、ヨーギラスとサナギラスとバンギラスみたいな関係に近い」

 

「なんでそれを知っているのかはともかく、そうかあ…この子がソルガレオの進化系なんだ。ミヅキもこの子を進化させたのかな」

 

「そうか、お前はミヅキを知ってるんだな」

 

「うん、友達だよ」

 

 

 チャンピオン友達のアローラのチャンピオンの持つソルガレオを思い出しながらそう言うユウリ。レジギガス事件でも助けてくれた友人だ。

 

 

「しかし最悪だ」

 

「最悪ってどういうこと?この子にウルトラホールを開いてもらえばいいんじゃ…」

 

「馬鹿野郎。それだとラウラと同じだ、迷い込むだけで帰る事すらできないぞ。それにコスモウムは休眠状態だ。コスモッグみたいに自在にウルトラホールを生み出せない」

 

「じゃあどうするの?」

 

 

 ユウリの問いかけに、グレイは不敵に笑う。ジュリもなにか思い出しかけたのか首を傾げる。

 

 

「ジュリ。お前ならわからないか?コスモウムを目覚めさせ、ウルトラホールを自由に移動する方法があるだろう」

 

「あ、そうか!祭壇!」

 

「そうだ。月輪だが日輪だか知らないが……いや、ソルガレオがいるなら日輪の祭壇か。とにかく、アローラに行くぞ!」

 

 

 そうして彼等はガラルを出て、アローラ地方に向かった。




※脱獄ではなくちゃんと手続して出所させました。

知らない人のために念のため。記憶があるラウラ、ジュリ、グレイは「転生者」「転移者」というゲームのポケモン知識があります(ラウラはBWまでだけどバトルサブウェイやり込み勢、ジュリは剣盾までのストーリー勢、グレイは剣盾まででやり込み勢)。

チャンピオンマリィとかから察しもついていたと思うけどついに明かされました。前作「ソード」の世界と今作「スカーレット」の世界は別の世界でした。お気づきだろうか、「VSデンチュラ」などユウリたちsideの過去回で「―――――のガラル」と書いていたことに。「ソードの世界のガラル」という意味だったのだ。

ついでに言うとムツキの四天王就任はあっちでもこっちでも起きていたことというミスリードでした。ムツキとモコウがラウラの事を知らないのもそのはず、そもそも知り合ってないから。ラウラの痕跡が無いのも、そもそも世界が違うから。どうにかこうにかミスリードさせるのに苦労しました。

前作でコスモッグを放っていたのは続編作るなら使えそうだなと思ってたからだったり。地味に便利だからねウルトラホールの設定。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSルナアーラⅠ

どうも、ぼんやりとしか考えてなかった経緯を書くのが意外とすらすらできて驚いている放仮ごです。

今回はアローラにて。楽しんでいただけると幸いです。


 遠路はるばるアローラ地方アーカラ島カンタイシティへとやってきたダフネ、グレイ、ユウリ、ジュリの四人。ライドポケモンのケンタロスに乗り移動することにして、グレイの先導でカンタイシティの道路を走っていた。

 

 

「しかし暑いね……さすが南国、ガラルとは大違い。それに、なみのりやそらをとぶの移動のための使用が法律で禁止されているアローラ地方はライドポケモンで移動するんだね。レンタルがあってよかった」

 

「アローラに住んでたことがあるヨハルも呼べばよかったですかね。ヴァイスの看病をしているから遠慮しましたけど。それで、目的地はそのなんとかの祭壇なんです?」

 

「日輪の祭壇だよダフネ。あれ、でもポニ島じゃなかったっけ」

 

「それは後だ。目的地は空間研究所。そこでウルトラホールを研究しているバーネット博士に用がある。まさか、無数に存在する異世界を片っ端から探すつもりだったのか?」

 

「「「……」」」

 

「そうか、お前らが馬鹿だとよくわかった」

 

 

 グレイの皮肉にぐうの音もでない女性陣トリオ。実際そのつもりだったのだから何も反論できなかった。そうこうしているうちに空間研究所に辿り着き、ユウリが一度電話してから代表であるユウリを先頭に入る面々。

 

 

「いらっしゃい、よく来たね!ガラルのチャンピオン、ユウリさん!連絡をもらった時は驚いたよ!」

 

「あ、さんづけはよしてください、年下なので…」

 

「バーネット博士だ、本物だあ…」

 

「ジュリさん、今は自重してください」

 

 

 何時もの如く限界化するジュリに慣れた様子でダフネがツッコミを入れるのを横目に、ユウリが説明しようとして支離滅裂なことを言いだしたことに溜め息を吐いてグレイが前に出る。

 

 

「ユウリに代わって俺から要件を伝えます。ユウリの……えっと、妻…夫?とにかく大事な人であるジムリーダー、ラウラが行方不明になったのはご存知ですか?」

 

「ああ、聞いてるよ!心配だねえ…ここに来たってことは、なにか進展が?」

 

「はい。俺達はラウラがいなくなった場所でコスモウムを発見。状況から、ラウラはコスモッグの出したウルトラホールでこの世界から消えたんだと推理しました」

 

「コスモウムだって!?リーリエのほしぐもちゃんの他にも個体がいることは知ってたけど…なるほど、だからここに来たんだね?」

 

「はい、なにか手がかりはないでしょうか。ジュリ」

 

「うん」

 

 

 グレイに話を振られて頷いたジュリが一応捕まえてきたコスモウムをダークボールから繰り出す。それを見て興味深そうに顎に手をやるバーネット博士。

 

 

「…ミヅキの手持ちになったほしぐもちゃん…ソルガレオや別個体のコスモッグを研究させてもらってるんだけどね…ガラルにもいただなんて興味深いわ。ちょっと生体組織をもらうわね。痛くないから」

 

 

 小型の機械を取り出してそっと触れてサンプルを手に入れたバーネット博士は、すぐさま奥の機械に小型の機械から取り出したプレパラートをセット。キーボードを操作して画面に何やら波形の様なものを映し出す。

 

 

「コスモウム及びコスモッグ、ソルガレオが生み出すウルトラホールはね。個体ごとに微妙な相違点があるの。特にウルトラホールを作りだすエネルギーには独自の波形があるのね。これはウルトラホールで可視化される。上がこのコスモウムの、下がソルガレオや別個体のコスモッグの波形よ。違うでしょう?」

 

「たしかに…?」

 

「波形が違うってことは……つまり、辿れる?」

 

「コスモウムはリーリエやエーテル財団の研究者曰く、コスモッグが力を使い果たしてしまい休眠状態になった状態。つまりそれだけのエネルギーを使っているということになるわ。このコスモウムがどれだけの生物を異世界に飛ばしたか分からないけど、エネルギーは徐々に薄れて行く。だから濃い波形のものを捜せば辿りつける可能性は高いわ。……コスモウムを進化させてウルトラワープライドするつもりなのよね?

 

「…うるとらわーぷらいど?」

 

 

 確信を持ったバーネット博士の問いかけに、オウム返しで首をかしげるユウリ。慌ててグレイが説明を入れる。

 

 

「ウルトラワープライド、ソルガレオに乗ってウルトラホール内を移動することだ。……この世界USだったのか…

 

あれって無印SMにはないんだっけ?でもその割にネクロズマ見ないけど……さすがに危険だからかな?

 

少なくともレジギガスを止めた時には連れて来てなかったはずだぞ

 

じゃあゲーム通りの世界じゃないとか?

 

「そこ、二人だけにわかる会話しないでください」

 

「ラウラと同じでなんかあるの隠す気ないよね二人とも」

 

 

 こそこそと話すジュリとグレイにツッコむダフネとユウリ。そんな姿に笑いながらも、バーネット博士は金庫を開いて中から二つの笛を取り出した。それぞれ太陽と月が模られている。

 

 

「ソルガレオに進化するためには太陽の笛と月の笛が必要なんだけど……ここに、二つを解析してエーテル財団との協力の元に作成したレプリカがあるわ。本物は今、ミヅキとリーリエが持ってるのだけど……急ぎならこれを使えば、成功するかもしれないわね」

 

「そりゃ好都合だ…なにせ博士の話通りなら時間が無いからな」

 

「既にラウラさんが失踪してから数ヶ月は経っていますしね」

 

「うん、賭ける価値はあるね!」

 

「グレイとジュリがそう言うなら……お借りします」

 

 

 ユウリが代表して笛のレプリカ二つをバーネット博士から受け取り、ジュリがコスモウムをボールに戻す。

 

 

「成果があったら聞かせてね。念のためにミヅキとリーリエに連絡を入れておくわ」

 

「あ、ミヅキには私がもうしてます。でも忙しいらしくて…」

 

「ダーリンを始めとして色んな挑戦者からチャンピオンの座を防衛しないといけないからね…」

 

 

 そうしてバーネット博士と別れた一行はライドポケモンであるリザードンを呼び出して日輪の祭壇があるポニ島に…行く前に、異世界に行くための準備をすることにした。

 

 

「金が同じかはわからないが持っていって損はあるまい。記憶を失っている可能性があるから辿りつけたとしても探すのに長時間かかる可能性があるからな」

 

「着替えもいるね。あとカップ麺とかの食料も」

 

「そう言えばユウリさん、仕事はいいんですか?」

 

「溜まってた有給全部使った」

 

「お、おう…凄い覚悟ですね」

 

 

 問いかけに即答するユウリにちょっと引くダフネ。そうこうしているうちに準備を終えてポニ島にやってきた一行は、険しい道を辿ってなんとか祭壇まで辿り着くことに成功した。もう既に夜となり月光が眩く輝いて四人を照らす。

 

 

「なんですかあのジャラランガ…すごく強かったんですけど…」

 

「ヌシポケモンだね。ユウリさんがいなかったら勝てる気がしなかった…」

 

「キュレムとかいれば話は別なんだがな」

 

「キュレムもケルディオも赤いゲノセクトも国際警察に確保されたから取り戻せなかったんだよね……いやまだグレイを信用した訳じゃないけど」

 

「泣けるぜ…」

 

 

 そんなことをぼやきながら長い長い階段を登り切り、日輪の祭壇の頂上までやってきた四人。コスモウムを中央に置いて、ダフネが太陽の笛を。ジュリが月の笛を奏で始める。そしてコスモウムが輝き、現れたのは……。

 

 

「マヒナペーア!!」

 

「…あれ?ルナアーラ?」

 

「…なんでだ?」

 

 

 ゴースト使いであるジュリが捕まえたせいか、ソルガレオではなくルナアーラへと進化を遂げた、太古の時代から月の使者として崇められ人々から「月を誘いし獣」と呼ばれていた、月夜を思わせる身体と月の形をした翼を大きく広げて咆哮を上げた。

 

 

「えっと…ソルガレオじゃないけどウルトラワープライドできるの?」

 

「ああ、大丈夫だ。ジュリ、指示を」

 

「えっと…ごめん、いきなり目覚めさせて。でもお兄ちゃんを捜す手伝いをしてほしいの!ウルトラホールを開いて、ルナアーラ!」

 

 

 ジュリがそう指示すると、ルナアーラは頷いて翼を掲げ、祭壇に亀裂を生み出した。そして地に(こうべ)を垂れると背中をジュリ達に向け、促した。

 

 

「乗れってこと…?」

 

「ジュリさんは信用されたみたいですね、よかった」

 

「恐らく臆病な性格なんだろうがジュリに捕まって心境が変わったりしたんだろうか…?」

 

「よし、行こう!」

 

 

 ユウリの号令に、頷く三人はそうして旅立ったのだった。




コスモウムがルナアーラに進化したのはジュリがおや故とかじゃなくて、単に「ルナアーラに進化する異世界の個体のコスモッグ」だったからです。

バーネット博士登場。調べたらSMが初出じゃないことにちょっと驚いた。口調はポケスペのを参照にしてますが多分だいぶ違うけど気にしないでください…。

次回、そしてパルデアへ。楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSピッピ

どうも、放仮ごです。前回のコスモッグの波長云々はオリジナル設定です、念のため。

今回はパルデアに来たユウリ達の話。楽しんでいただけると幸いです。


 ジュリが先頭に乗り操縦するルナアーラを駆り、ウルトラホールを飛んでいく四人。さすがに重いのか少しふらつきながらも、三日月の様な角を握られたルナアーラはしっかりと前に進んでいく。

 

 

「うん、操縦はあれと同じだ!感覚でどうにかなる!」

 

「いや、それにしたって…よく電撃も関係ない穴も全部避けて加速に入れるな?」

 

「得意だったからね!RPGよりアクションとかレースの方が好き!」

 

「何の話ですか?」

 

「「ゲーム」」

 

「「はあ!?」」

 

 

 訳わからない会話を繰り広げるジュリとグレイにダフネとユウリが呆れる中、時折失速してウルトラホールに点在する色とりどりの穴へと入って行き、いくつかの世界を巡る四人。

 

 少年とピカチュウがポケモンマスターを目指している世界。ポケモン図鑑を手にした10人の少年少女が海の魔物と相対している世界。巨大隕石に滅ぼされそうな中、善人も悪人もポケモンも手を取り合い共に抗っている世界。顔が濃いピッピがハチャメチャに暴れる世界。ポケモンの言葉が解かり怪力持ちの野生児がポッチャマと共にギンガ団に立ち向かっていく世界。人間とポケモンが合体し戦士となり激突する世界。妙に渋い声で喋るピカチュウと少年が怪事件へと立ち向かっていく世界。人間がいない世界でポケモンたちが探検隊として冒険している世界。時に関わりながら、時にグレイの判断で見物に留め、ラウラを探索していく中、一週間。

 

 

「…図鑑所有者に会えるとか感激でしかない……」

 

「ReBURSTとかポケモンDPとか懐かしすぎだろ……」

 

「サトシさん、ポケモンマスターになれるといいですね」

 

「うん、私と張り合えるぐらい強かったしね」

 

 

 半ば放心気味のジュリとグレイを放って異世界で出会った少年の話で盛り上がるダフネとユウリ。ラウラが見つからない事実から逸らすための話題だがしかし、顔に焦燥感が浮かんでいる。もうそろそろ精神的にも限界だった。そんな中、ルナアーラと繋がった光がひときわ輝く穴を見つけた。

 

 

「多分、あそこかな!?」

 

「もし違ってもまた入り直せばいい。突っ込めイノムー!」

 

「掴もうぜ未来って言えばいい!?」

 

「掴むのはラウラの手だからね!」

 

「ああもう滅茶苦茶です……」

 

 

 疲れから脳のフィルターを通さず喋って支離滅裂になっている三人にダフネが呆れ、そしてその穴に突入する四人とルナアーラ。飛び出したのは、中央に巨大な穴が存在している地方の遥か上空だった。その圧巻の光景に絶句する四人。

 

 

「すごい…広い!」

 

「森がほとんどない、解放感あり過ぎるだろここ…どこだ?」

 

「多分パルデア地方!大穴が有名な土地はそこしかない!ムツキが四天王に選ばれた地方だけど……それで、ラウラはこの世界に!?」

 

「いやでもここが出口だとして、無事なんでしょうか…」

 

「「「……」」」

 

 

 そんな冷静なダフネの言葉に思わず押し黙る三人。これまでの世界は比較的出入り口が地表に近いところにあっただけあって、あまり心配していなかったがこうなると話は別だ。恐る恐る下を見る。地表、のさらに下まで繋がっている大穴があった。

 

 

「とりあえずウルトラホールの真下に行くね」

 

 

 そう言ったジュリの操縦でゆっくり降下していくルナアーラ。聳え立つ雪山を尻目に、大穴の中へと舞い降りて行く。

 

 

《ロトロトロトロト……》

 

「「「「!」」」」

 

 

 大穴の底、絵の具で塗りつぶしたかの様な緑の草地が広がる大空洞が見えてきたところで、ダフネのスマホロトムに着信。画面を見れば非通知だ。四人は顔を見合わせ、もしやラウラなのではと頷き、ダフネが通話に出る。

 

 

「もしもし、ラウラさんですか!?」

 

《「ハロー。残念ながら私はラウラではない。私の名はオーリム、君達のいるエリアゼロの最奥、ゼロラボの研究者だ」》

 

 

 通話先の相手がラウラじゃないと知ってあからさまに落胆する四人だったが、気になることがあったのか首をかしげるユウリ。

 

 

「オーリム博士……フトゥー博士じゃなくて?」

 

「フトゥーって誰だ?」

 

「ムツキがパルデアに行くって言うから強い人いないかなって調べたの。そしたらグレープアカデミーの成績優秀な博士でエリアゼロにいるっていう博士の名前が出てきて・・・でも、男性だったよ?」

 

 

 声的に女性なオーリムに怪訝な表情のユウリ。すると、スマホロトムの向こうで笑い声が聞こえた。

 

 

《「ふふふ……はははは。フトゥーは私の夫だ。…グレープ…こちらではオレンジアカデミーというんだ。そうか、そちらの世界ではフトゥーが私の代わりに研究しているのか。因果なものだな。オーリムも異世界という視野を入れるべきだったのかもしれないな」》

 

「異世界の存在を知っている…!?」

 

「それに自分の事を他人事みたいに…?」

 

「あなたは一体…?」

 

「ラウラを、ラウラを知っていますか!?」

 

 

 明らかに異様なオーリムにそれぞれ問いかける四人に、画面の向こうのオーリムは「落ち着け」と宥め、スマホロトムに座標を送ってそこに行くように誘導する。ジュリはルナアーラを操縦してそこ…ゼロゲートの建物へとやってきた。その奥の部屋まで案内されると、部屋の一面を埋めた巨大モニターに原始人の様な服の上から白衣を着たワイルドな女性が映し出される。

 

 

《「改めて名乗ろう。私はタイムマシンを研究しているオーリム……を模して造られたアンドロイド、俗に言うAIだ。初めまして、ラウラと同じ世界から来たものよ」》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タイムマシンと来たか」

 

 

 オーリムAIの爆弾発言で固まっていた四人の中でいち早く回復したグレイがそう述べる。テロリスト(ロケット団)大自然の力(マグマ/アクア団)宇宙創世(ギンガ団)真実と理想の思想(プラズマ団)神話の最終兵器(フレア団)異世界の脅威(エーテル財団)無限のエネルギー(マクロコスモス)と歴代のポケモンを知っている故の発言だった。その言葉に頷き、オーリムAIは自身のタイムマシンの原理を描いた図を表示して説明する。

 

 

《「そうだ。テラスタルのエネルギーを用いてモンスターボールだけを過去あるいは未来へ飛ばし、その時代のポケモンを捕獲して転移する……この時代の生態系を破壊こそすれどただそれだけの装置だった。とりわけオーリムと言う人間は古代のポケモンに強く魅了されていてね、古代と現代のポケモンの共存を願っていた。合理的とは言えないが一人だけになったため自分をコピーした私を作ったりもしたが不幸な事故から死んでしまった。それ以降残されたタイムマシンは稼働し続け時空を超え続けている……ここまではいいかな?」》

 

「ああ。続けてくれ」

 

 

 よくわかっていない他の三人は放っておいて頭の中で整理しつつ続きを促すグレイにオーリムは頷く。

 

 

《「その日もいつも通り稼働していた。だがしかし、突如外界からゼロラボにアクセスがあり何者かがコントロール権を掌握、出力を上げてモンスターボール以上に巨大な通路を生み出そうと試みた。その結果生まれてしまったのが上空の時空の(ひずみ)だ。時空を繋げるだけの装置は想定してない使い方をされて異世界と時空を繋げてしまったのだ。そうして、現れたのはラウラと言う少女だった」》

 

 

 繋がった。四人は顔を見合わせ、頷く。希望はここに紡がれた。




ウルトラホールはポケモンがいる世界にしか繋がってない説。ちょうどポケ蟲三次創作にて話題が上がってましたね。

この小説はオーリム博士/フトゥー博士の配偶者が志半ば折れたもう一人だったんじゃないかという仮説で書いてます。ラウラ達の「ソード」世界ではフトゥー博士、つまりヴァイオレットでした。

今回の事件の発端は、モンスターボールの規格しか想定してないタイムマシンの出力を無理矢理上げて巨大な時空トンネルを生み出そうとしたため、でした。さすがに外からのハッキングによる干渉は最強AIも想定してないんじゃないかなと。あのAI、歴代チャンピオンラーニングとかボールロックとか強いけどあれゼロラボの中ゆえの強さだよねと。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSイオルブ

どうも、放仮ごです。三話くらいで終わるかなあと思ってた過去開示編、結構続いてしまって申し訳ない。

今回はパルデアに来た直後のラウラの話。楽しんでいただけると幸いです。


 オーリムAIからラウラがこの世界に来たことを伝えられ、安堵する一同。しかし安心している場合じゃないとユウリが尋ねる。

 

 

「ラウラが!?無事なんですか!」

 

《「無事だ。運がいいのか悪いのか上空を飛んでいたコライドン…ああ、私のポケモンだ……に激突してエリアゼロの洞穴エリアに不時着。それに気付いた私が連絡をつけて事情を聞いていたところ、そこでラウラはある一団と遭遇した。青いスーツとサングラスの一団だ」》

 

「スーツとサングラスの一団?」

 

 

 その言葉にグレイに振り向くジュリ。グレイもまたジュリを振り向いていて。彼らの頭の中で、赤装束の一団と合致した。

 

 

《「奴等はブルーフレア団と名乗った。タイムマシンを使って最終兵器を目覚めさせると語った彼等はそのまま、手持ちがいないながらも太古の蟲ポケモンであるチヲハウハネを味方につけたラウラと交戦。一騎当千とも言うべき大立ち回りを演じたラウラだったが、圧倒的なポケモンを持つ彼らのボスにより敗北。拘束され、連れて行かれてしまった。スマホロトムも敵に奪われ消息不明だ。それが、一年と半年以上前の出来事だ。それから太古のポケモンとは思えない鉄仕掛けのポケモンも現れ始めた。十中八九奴等だろう」》

 

「そんな前なんですか…」

 

「時間の流れがそんなに違うんだ…」

 

 

 ちなみにこの時のユウリたちは知る由もないが、サニアがクラベルに保護されたのと同時期であることをグレイは後から知った。

 

 

「ラウラの、記憶はどうだったんだ…?ウルトラホールを彷徨った者は記憶に影響が出てしまうんだ」

 

《「記憶?なるほど、異世界に来ると記憶も飛ぶのか…なるほど合点が行った」》

 

「というと?」

 

《「ラウラは自分がジムリーダーであること、ガラルから来たことは理解していたが、何故そんなことになったのか肝心な部分を忘れていた。ただ単に別の地方に迷い込んだと思っていたが、ラウラの記録が存在しないことを知って異世界だと理解していた。何故か分かるか?」》

 

「…俺達と同じで、異世界があると知っていたからだろうな」

 

「ああ、フェローチェたちウルトラビーストの存在か」

 

 

 納得しているユウリにそれだけじゃないんだけどなと思いつつ口に出さないグレイ。

 

 

《「そしてつい先日、ラウラが見つかった」》

 

「え?」

 

「は?」

 

「ん?」

 

「お?」

 

 

 そう言ってオーリムAIが手元のコンソールを操作したかと思えば巨大なモニターの端に何故かきっちりしたメイド服姿のラウラの画像…角度からして監視カメラの映像だろうか…が映し出され、マヌケな声を出すユウリ、ダフネ、ジュリ、グレイ。その反応にオーリムAIは満足げにしながら映像を再生すると、買い物しているらしきラウラにネモが駆け寄り、品物を見つくろうと共にどこかに帰って行く光景が音声と共に流れていく。

 

 

《「ラウラ、ラウラ!何買ったの?」》

 

《「夕飯の材料だよネモお嬢様。今日は旦那様も奥様も帰ってこないそうだから俺が作ることになったんだ」》

 

《「その呼び方やめてよもー。あ、じゃあ好きなもの買ってもいいかな!?」》

 

《「好きにしろ…してください。雇い主はアンタだ。記憶を失った俺を拾ってくれたんだからな」》

 

《「かしこまるの禁止だってば!私達はライバルだよ!今日こそ()ろう!」》

 

 

 メイドラウラとネモの仲睦まじい様子に、約一名が鼻血を垂らしながらわなわなしだす。それを見て察する他三人。特にダフネはモンスターボールまで構えだす始末だ。

 

 

「なにこれうらやまし、いやラウラ可愛い、え、怒るところトキメクところ?どっち?この風景、さっき上空から見た!確か南の町だ!今すぐ行って……」

 

「ダフネ。やれ」

 

「どうどう。落ち着いてくださいユウリさん。イオルブ、さいみんじゅつ」

 

「あびゃっ!?」

 

 

 ルナアーラを持ってるジュリの首根っこを掴んでゼロラボから飛び出そうとするユウリに、グレイの指示でダフネが容赦なく繰り出したイオルブのさいみんじゅつを行使。ジュリを掴んだままその場で固まり、うつろな目で静止するユウリ。

 

 

「悪く思うなよ、これ以上事態をややこしくされたくない」

 

「あの上空から見れるとかどんな動体視力なんですか…」

 

「しかしお兄ちゃん、なんて姿に……」

 

 

 グレイとダフネがユウリに呆れ、なんとかユウリの手から抜け出したジュリが何とも言えない表情で映像のラウラを見つめていると、オーリムAIは映像を消すと別のデータを提示した。

 

 

《「これはプラトタウンの映像だ。私はAIなのでね、ネットに「ラウラ」という検索ワードが上がったのを確認して映像を捜した結果がこれだ」》

 

「検索?」

 

《「ラウラの素性、ガラルのジムチャレンジの記録がスマホロトム会社の大手やポケモンリーグのサーバーからアクセスされていた。これを見るに、ラウラは私と会話した時以上の記憶、そのほぼすべてを失っている。覚えているのは名前と蟲ポケモンへの愛のみだ。恐らくブルーフレア団に連れ去られたあとになにかしたのだろう」》

 

「そんな……プラズマ団の時とは雲泥の差じゃないですか…」

 

「蟲ポケモンへの愛を忘れてないのはお兄ちゃんらしいけど……」

 

「…記憶を取り戻さないと無理に連れ帰ってもどうしようもないだけだな」

 

《「今はスマホロトム会社の大手のご令嬢…チャンピオンランクのネモと言う少女に拾われメイドとしてその屋敷で働いているようだ。ポケモンリーグに戸籍登録の申請があったから恐らくこのパルデア最大の都市、テーブルシティのオレンジアカデミーに入学することになるだろうな」》

 

 

 そう言ってネモの写真とデータを提示するオーリムAI。学生の身分故にラウラも同じオレンジアカデミーに入学することになる確率などが示されている。

 

 

「チャンピオンランク…?」

 

《「そうか、別の地方から来たから知らないのか。このパルデアではポケモントレーナーはランクが存在し、チャンピオンと呼ばれる者も複数いるのだよ。この世界だけかもしれないがね」》

 

「つまりこのご令嬢はユウリと同じぐらい強いってことか。無理に取り返しに行っても捕まるだけだなこりゃ」

 

 

 キュレムやゲノセクトがいればなあとぼやくグレイを尻目に、ダフネはオーリムAIに尋ねる。

 

 

「…ラウラさんの記憶を取り戻す方法はありますか?」

 

《「まだ未確定だが、あるにはある。秘伝スパイスというものが存在する。全てを摂取すれば普通の医療では治せないような不調も治せるというこのエリアゼロ由来の植物だ。恐らく私……いやオーリムの息子が近々行われる宝探しのタイミングでそれを手に入れるべく旅立つだろう。そして恐らく、秘伝スパイスを守る強力なヌシポケモンを倒すためにラウラもしくはネモに協力を申し出るはずだ」》

 

「つまり放っておけば記憶が戻る可能性が高い…?」

 

「いや、でも…ブルーフレア団がいるならラウラさんのことです、絶対関わって二の舞になる!それはなんとしても避けないと!」

 

「…ならやることは三つだ」

 

 

 少し考えてからそう言って二本指を立てるグレイ。ダフネとジュリ、オーリムAIの視線が集まる中で冷静に述べて行く。

 

 

「まず一つ目。記憶を失ったラウラが記憶を取り戻すことをこの世界で待つこと。俺達が秘伝スパイスを集めてもいいが、俺達ははっきり言ってこの世界では戸籍も実績もない胡散臭い存在だ。そんな奴等から渡されても摂取したりはしないだろう」

 

「だろうね。お兄ちゃんは元々重度の引き籠もり。記憶がないならなおさら絶対警戒心が高くなってる」

 

 

 ジュリの言葉に頷きながらグレイは指を一本下ろして続ける。

 

 

「二つ目。ブルーフレア団の目的と、ラウラの記憶を失わせた手段を探る事。こればかりは探し出して潜入するしかないだろうな。これは俺達の存在をばれると利用されてしまうかもしれないから細心の注意を払わなければならない。手段を選んでいる場合じゃないだろうな」

 

「…手段、ですか」

 

 

 そう言いながらもグレイの視線はダフネに向いていて。自分がそれをできることを知っているダフネはユウリに申し訳なさそうな視線を向けながら神妙そうに頷く。

 

 

「そして三つ目。同時進行でブルーフレア団に対抗できる戦力を得る事。知らない太古のポケモンとはいえ蟲ポケモンを使ったラウラが負ける相手だ。間違いなく強い。ユウリでさえ負けるかもしれない。これは必須だ。ブルーフレア団は俺達が元の世界に戻るために絶対邪魔になる」

 

《「戦力か。ならば私が役立てるかもしれない。私はオーリム博士をコピーしたAIだからな」》

 

 

 オーリムAIの言葉に頷くグレイ。すると、何を考えたのか扉に向かい出て行こうとするジュリ。

 

 

「どうしたジュリ、まさかお前もユウリみたいに今すぐにでもラウラに会いたいっていうんじゃないだろうな?」

 

 

 グレイの問いかけに寂しげに振り返りながらもジュリは否定して。

 

 

「ううん、少しさびしいけどそれがダメなのはわかってるから。……四つだよ。私は――――」




ラウラが来て、ブルーフレア団がタイムマシンの出力を上げたのは時系列的には一年と半年、あと二ヶ月ぐらい前。実はサニアと同時期なのだ。つまり…?

暴走ユウリ。止められるのは実績があるダフネのめちゃつよさいみんじゅつだけっていう。

そして救出組で唯一ジュリだけがいない理由とは…?

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSルナアーラⅡ

どうも、放仮ごです。グレイによる過去回想、今回で終結となります。

今回はジュリの決意、グレイとダフネの誓い、グロリア誕生。楽しんでいただけると幸いです。


 グレイが提案した三つの「やるべきこと」をよそに、一人ゼロゲートの出口に向かうジュリは、グレイたちに振り返り寂しげな笑顔で告げた。

 

 

「ううん、少しさびしいけどそれがダメなのはわかってるから。……四つだよ。私は――――元の世界に一度戻るよ」

 

 

 ラウラに会いに行く。グレイは知っている。ダフネやユウリの知っている“兄貴分”のラウラではなく、不幸な死により引き裂かれた本当の兄妹だったジュリにとってそれは、なによりも優先すべき願いだと。それを捨てる理由とは何か考えて、そして察する。

 

 

「…重量オーバーか」

 

「うん。ルナアーラ、四人で既に限界だった。ここまで来るのにも一週間かかった、お兄ちゃん失踪から数えたらもう半年近く。こっちの時間では一年と半年も、だよ?帰りに五人で乗って、万が一それでまたお兄ちゃんを失ったら…考えたくもない」

 

「あ…」

 

 

 反論しようとしていたダフネも納得したらしい。グレイ達が乗ってきたのは疲れない乗り物なんかじゃない、ポケモンだ。グレイもゲーム基準で考えて失念していた。そもそもルナアーラはポケスペのサンムーン編曰く最大三人乗りである。四人で乗っただけでも無茶だったのだ。だから、ルナアーラを操れるジュリが行くのは道理だった。

 

 

「私は一度戻ってミヅキさんを連れてくる!ルナアーラだけじゃなくソルガレオもいれば、みんな余裕で乗れる!例え会う方法がアローラのポケモンリーグの四天王を突破してチャンピオン防衛線に辿り着くしかないのだとしても、私は絶対やる!やってみせる!もう、お兄ちゃんと離ればなれだけはぜっっったいに嫌だ!」

 

 

 思いの丈を一心不乱に叫んで吐きだすジュリに、さいみんじゅつで固まっているユウリはもとより、グレイも、ダフネも、オーリムAIも押し黙る。なにか別の方法があると反論しようとしたが、コスモッグの特定の波長が薄まっている現状、ラウラを連れてすぐ戻れないならそれしかないとグレイも理解する。即ち、一度戻ってから虱潰しにでもここに戻ってくることを信じるしかないと言う事だ。

 

 

「だから、お兄ちゃんと一緒にみんなで帰ろう!任せて。…必ず戻るから」

 

 

 可能性は薄く脆い。しかしそう宣言したジュリに、グレイとダフネは顔を見合わせ頷いた。

 

 

「わかった。ジュリ、そっちは任せる。こっちは任せろ。俺とダフネと……ユウリもいる。お前の兄貴分は絶対取り戻してやる」

 

「はい、グレイに言われるのは癪ですがジュリさん!私達に任せてください!ユウリさんもいますし!」

 

「……ユウリさん私と一緒に一度帰った方がいいまでない?」

 

「いやお前は我慢強いがユウリは駄目だろ」

 

「そうですよ、我慢なんかさせたらまたグローリアビーストになりかねません。でもこのまま固めているわけにもいかないんですが…」

 

 

 不安からか顔を曇らせるジュリに、グレイとダフネは冷静にツッコみつつイオルブのさいみんじゅつで虚ろな目で固まっているユウリを見る。するとジュリは何か思いついたのか、顔を輝かせて続けた。

 

 

「じゃあさ、ユウリさんを別人にしちゃえば?強さはそのままに、お兄ちゃんへの愛を別物に置き換えちゃえばいいんだよ!それなら私達の事はばれずにブルーフレア団に潜入できるんじゃない?名前はそうだな、グロリアとか!」

 

「ユウリは眠らせて別の人格を作って行動させるってことか?…ありだが、どうする?」

 

「私のイオルブのさいみんじゅつですね…。本人にとって最も都合のいい夢を見せて肉体を操る、という技術です。応用すれば別人格を作るのは可能だと思いますが……」

 

《「人格を増やすのはおすすめしない。私も制御できない別の人格(AI)を持っている身だ、その恐ろしさはよく知っている」》

 

「大丈夫、短期間の期限を設けて目的を果たすまで何度も催眠し直せばいいんだよ。そう言うの…えっと史上最強のなんちゃらで読んだことある!あれやってたの悪役だったけど、改心したグレイの悪知恵と知識、ダフネの技術と悪を許さない意思があれば大丈夫!」

 

 

 割り込んだオーリムAIの言葉にも根拠のある自信を返すジュリ。ユウリが勝手に出向いて勝手に暴走すればラウラの記憶が戻らなくなる可能性の方が高い。そして自分たちでは正攻法ではユウリを止められない。故の奇策だった。

 

 

「…じゃあ後で三人揃ってユウリさんに怒られますか」

 

「そうだな。誰も止めなかったんだ、怒られてもしょうがない」

 

「私は提案しただけだけど…私達、共犯者だね?」

 

 

 そう嘯くジュリに、グレイとダフネはそれぞれの顔を見て、笑って頷くと拳を軽く突き出した。首をかしげるジュリに元悪役コンビは不敵に笑う。

 

 

「何年かかってもいい、必ず迎えに来い。お前は俺でもキュレムなしじゃ倒しきれなかった強者だ、四天王ぐらい楽勝だろ?」

 

「約束です!私達もやるべきことを果たします!だからそちらも……信じてますよ、親友!」

 

「うん!任せて!」

 

 

 三人で拳を軽く突き合わせて誓い、そしてジュリはウルトラホールのある上空へと飛び立っていった。青空が広がる上、煌めく光の穴に吸い込まれていく小さな夜空が消えたのを確認し、一息つく二人。

 

 

「いっちゃいましたね」

 

「ああ。ここからは二人か。寂しくなるな」

 

《「…いい仲間を持ったようだな、ラウラは。少し羨ましいよ。何せ私は、仲間がいなくなったから自分自身のコピーで補おうとしたオーリムの夢の残骸だからね」》

 

 

 話しながら戻ってくると、オーリムAIが感慨深げに話しかけてきた。その言葉に顔を見合わせ、何がおかしいのか笑うグレイとダフネに、オーリムAIは不満げに抗議する。

 

 

《「なんだ、なにがおかしい?私がAIらしくないと笑っているのか?」》

 

「何を言うかと思えば。ラウラさんを案じ、助けてくれようとした時点で貴方もラウラさんの仲間ですよ、オーリムAI!」

 

「アンタの作る、ブルーフレア団にも負けない戦力!期待しているぞ!」

 

 

 AIである自分にも分け隔てなく話す二人に、オーリムAIは呆気にとられて笑う。

 

 

《「そうか、そうか……これが、オーリムになかったもの……仲間、か。心地いい物だな。これを知らずにオーリムは逝ったのか……どうか、ペパーにもこんな仲間が……いや、任せてくれ。君達仲間の期待に応えよう」》

 

「よし。じゃああとはユウリ、改めグロリアの設定だな。どうする?とりあえずパルデアにいるポケモンの種類を調べて、ユウリの手持ちのメンバーの調整しないとだが。ムゲンダイナとか駄目だろ」

 

「絶対ありえないんですけど、ラウラさんがこの世界に来た直後に負けてしまってリベンジを誓うプライドの高いお嬢様とかどうでしょう!」

 

 

 キラキラと目を輝かせながらそう進言するダフネ。グレイは顎に手をやり一考する。

 

 

「ああそうか、ブルーフレア団がラウラがいつこっちに来たのか知らなければ誤魔化せるか。ラウラにリベンジを誓うってのもユウリらしくていいな、強い感情にも申し分ない。……だがなんでお嬢様なんだ?」

 

「私の趣味です!いいでしょう!?」

 

「今お前にとあるマッドサイエンティストのムカつく笑顔が重なったよ」

 

「私達はその執事とメイドでですね、お忍び旅行としてパルデアにやってきて、リベンジを誓うあまりその手段としてブルーフレア団に潜入して……」

 

「こんな妄想癖があるとか聞いてないんだが?」

 

《「ハハハハハッ!愉快だな君達は!」》

 

 

 そうしてグロリアは生まれ、グレイとダフネのパルデアでの隠匿同居生活が始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そのグロリアが敵に鹵獲されるのは想定外だったがな…!エスプリを量産している情報が分かった時点で察するべきだった!オーリムAI、聞こえるか!アレの出番が来たぞ!応答しろ!」

 

 

 これまでの出来事は頭に浮かんでは消えていたグレイはそれを振り切り、真っ黒なモニターに叫ぶ。するとジジジッと点滅しだし、オーリムAIの姿が巨大モニターに現れた。

 

 

《「すまないグレイ。研究所のアイアールとペパーと話していたタイミングだった。いい報告だ、君達に探してもらっていたスカーレットブックの所在を見つけたぞ。ペパーが持っていたんだ」》

 

「ってことはゼロラボを開けるんだな!だが今は時間が無い。第二プランだ。ちょうどいいところに操り人形(エスプリ)がいる!あれを使え!ハッキングは俺も手伝う!」

 

 

 ちょっとした反則でアクロマに匹敵する頭脳を持つグレイがコンソールに手をかけ、オーリムAIは笑う。

 

 

《「了解した。ネット経由で送り込もう。君達の協力で私の作った、オーリム博士の楽園防衛プログラムにも負けない秘密兵器を…!」》




というわけでジュリはルナアーラと共にソルガレオを持つミヅキを迎えに行ってました。バーネット博士の説明通り、時間がたてばたつほど痕跡は消えて行くのでこれはかなりの博打になります。

ユウリの知らないところでグロリアにされていたの巻。ユウリのままにしておいた方が全ての計画がおじゃんになるからしょうがなかったのだ。

そして現代に。ブルーフレア団に打ち勝つ「戦力」こと秘密兵器起動です。そして視点はテーブルシティに戻ります。

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VSクリムガン

どうも、放仮ごです。過去編は終わり、現在へ。ダフネ合流後のシュウメイ視点です。

今回は幹部参戦。楽しんでいただけたら幸いです。


 加勢に現れたラウラ殿を思わせる言動のダフネと名乗った少女。ヘラクロスをメガシンカさせ、パラドックスポケモンの群れを蹴散らしながらエスプリに突撃、容赦なく殴って行く。

 

 

「い、いやダフネ殿……一応そいつらは我らの元仲間である故、手心を…」

 

「このエスプリとかいうスーツは防御力も高いので容赦なくぶん殴っても大丈夫です!ヘラクロス、ロックブラスト!」

 

 

 ドドドドドッと岩の弾丸を連射して寸分違わずエスプリたちに当てて行くダフネ。吹き飛ばされたエスプリは呻きこそすれど、気絶にまでは至ってない。なるほど、確かにがんじょう…もとい頑丈らしい。

 

 

「ならば遠慮なく…テツノドクガ、ヘドロウェーブでござる!」

 

「じゃあ僕も!アラブルタケ、ふいうち!」

 

「俺は最初から容赦してないけどな!サケブシッポ、じゃれつけえ!」

 

「気は進みませんが…ヤレユータン、サイコキネシスでブッ飛ばしなさい!」

 

「ぐあっ…」

 

「ま、巻き込まれるぞ、逃げろー!」

 

 

 エスプリ相手に加減しなくてもいいと確認して容赦なく攻撃しだす我等スター団元ボス組とネルケ殿に、エスプリじゃないしたっぱたちは逃げ始める。巻き込むほど下手な実力はしてないつもりでござるが。なるほど、寝返った連中は我等をまるで信用していなかったのだなと痛感する。

 

 

「貴方たちのせいでめんどくさいことになったんですよオラー!」

 

 

 どくにあくにフェアリーというわりかし殺意高めなタイプのエキスパートの我等だが、ダフネ殿が一番容赦なく感じる。恨みでも溜まっていたのだろうか。

 

 

「「カタストロフィ」」

 

「「「「「!」」」」」

 

 

 するとオレンジアカデミーに続く大階段の方から闇の波動が放たれて、吹き飛ばされるポケモンたち。逃げたブルーフレア団したっぱたちと、冷静に後退したエスプリたちを侍らせながら階段を降りてくる二人の人物がいた。

 

 

「騒ぎを聞きつけて来て見れば…侵入者か。私達に勝てる確率、0%」

 

 

 一人は見たことが無い。青い服とショートパンツとブーツを身に付けて太腿を晒した、緑色の短髪で緑色のゴーグルを身に着け緑色のリップを塗った女性。冷徹さを感じる。傍には土石で形成された四足歩行の体に、中心から真っ二つに割れた巨大な青銅の器が立派な角になっている厳しい姿の異様なポケモンを連れていた。

 

 

「アハハ!戦力差を理解できてない馬鹿が五人もいるじゃない!無謀だって、わからない?」

 

 

 もう一人は見た顔だ。オレンジ色のショートカットの髪で同色の口紅とゴーグルを付けた、銀色の格子状のゴーグルをつけている、青いプリーツミニワンピースにショートブーツで、オレンジ色のロングソックスを身に付けている派手な女。名前は確かアケビだったか。傍には古びた木簡が渦を巻き背負っている、枯葉の体と白色の蔦でできた両目を持つ異形のポケモンを連れていた。

 

 

「ブルーフレア団幹部、バラとアケビですか。うちのグロリアがお世話になりました。返してもらいますよ」

 

 

 すると反応したのはダフネ殿だった。もう一人はバラと言うのか。しかしグロリアとはたしかオルティガ殿の言っていた…?

 

 

「貴様、あのエセお嬢様の知り合いか。生憎と奴はボスを除いた我等の中でも最強の戦力。返すわけにはいかない」

 

「アハハ!残念だったわね!私達が来た以上、ボスの邪魔はさせないわ!貴方達なんか四災(スーザイ)を使わなくても十分…!」

 

 

 するとそれぞれの傍らに置いたポケモンを手にしたタイマーボールに戻し、代わりに取り出したモンスターボールを投擲するバラとアケビ。繰り出されたのはシロデスナと、青と赤のドラゴンポケモン。パルデアにはいない種だ。

 

 

「シロデスナに、クリムガンですか…」

 

「クリムガンというのでござるか。タイプは?」

 

「ドラゴン単タイプです!」

 

「ならば…オルティガ殿!いくでござるよ」

 

「OKだシュウメイ!フェアリー相手にどこまでやれるか見せてみろよ!」

 

 

 ピーニャ殿の方がシロデスナは相性がいいだろうが、相変わらず仕掛けてくるエスプリのボールジャックを対処しているピーニャ殿に無理させるわけにもいかない。どくタイプはじめんタイプに相性が悪いが、我がいくしかあるまい。ダフネ殿とネルケ殿がしたっぱやエスプリを対処してくれるはず、ならば我とオルティガ殿がやるべきは幹部の足止めしかない。

 

 

「敵は五人。こちらは二人。したっぱやノーマルエスプリでは相手にならない。このままではせっかく集めた戦力が壊滅だ」

 

「アハハ!じゃああの子に働いてもらいましょ!用心棒の~ビワちゃん!」

 

「「「!」」」

 

 

 アケビの言葉に我とピーニャ殿とオルティガ殿が反応した瞬間、青いフード付きレインコートに身を包んだガタイのいい巨体の人物が建物の上から飛び降りてきて着地した。同時に横にコノヨザルが着地する。あのコノヨザルは…!

 

 

「…ごめんね、シュウメイくん、ピーニャくん、オルティガくん……私、わたし……」

 

 

 レインコートを脱ぎ去って現れたのは、我自ら彼女のために仕立てた純白で仕上げられたアイドルや女子プロレスラー風の改造制服を着こんだ、鬼を想起させる悪役レスラー風の厳ついフェイスペイントの少女…ビワ殿。その表情は申し訳なさと悲しみに満ちている。

 

 

「ビワ姉!」

 

「やれ、用心棒。命令を聞かないなら…わかっているな?」

 

「大事なメロコちゃんがどうなってもいいなら話は別だけど?」

 

「や、やめて!メロコちゃんに危害を加えないで!従うから!シュウメイくんたちとでも、戦うから…!」

 

 

 アケビが言いながら近くにいた、他のと違う赤い炎の様なマークが描かれているヘルメットをつけたエスプリを抱き寄せると、涙さえ目尻に浮かべて懇願するビワ殿。…話は分かった。やはりビワ殿は我らを裏切ってなどいなかった。恐らく我らのためにブルーフレア団の姦計に乗ってしまい用心棒として雇われ悪事の片棒を担がされ、さらにはバイトで手中に収めたメロコ殿を人質にとり従う他なかったのだろう。

 

 

「見下げ果てた外道でござるな…!」

 

「かつての私達…フレア団はやり方を間違えた。フラダリ様は手ぬるかったのだ。シロデスナ、すなあらし」

 

「アハハ!やるなら徹底的にやらないとつまらないもの!クリムガン、りゅうのはどう!」

 

「テツノドクガ!ほのおのまいでござる!」

 

「ヤレユータン、さいはいでほのおのまいを!」

 

 

 我ら五人とそのポケモンを囲う様に炎の壁を作ってシロデスナが崩れ去って発生した砂塵と、クリムガンから放たれたりゅうのはどうを受け止める。さらにネルケ殿がほのおのまいを重ねさせてさらに強固にした。問題はビワ殿、我等スター団ボスの中でも最も強い、最強と呼べる実力者…!しかも、チームカーフのアジトから無くなっていたアレも…!

 

 

「ブロロローム、ファイト…ッ、アクセルぅ!」

 

「っ、散開でござる!」

 

 

 今にも泣きそうな淡々とした声色で指示が聞こえると、エンジン音と共に車両が炎の壁を突き破って来て思わず叫び、四方八方に散る。東へ逃れた我の前に、ブーツから炎を出したバラが空から舞い降りてきた。

 

 

「見ての通りカーフ・スターモービルも我らが手中にある。それに加えて先程スペシャルエスプリも放った。戦力差は歴然だ。仲間になるなら私からボスに幹部に推薦してやる確率76%。お前の指示はエスプリやしたっぱどもを更に強くするだろう」

 

「断固お断りでござるよ。我らの大事な仲間と守るべき学び舎……返してもらうでござるよ。ベトベ遁の術!」

 

「そうか。残念だ」

 

 

 流動体となりバラを捕らえようとしたベトベトンが、砂の壁で阻まれる。負けられない戦いがここにある…!




ただでさえ強いのに四災を持ったボス、幹部たち+ただのトレーナーでも合理的なバトルマシンになるエスプリ軍団+それに加えて元の素体が実力者なスペシャルエスプリ数体(グロリアやメロコ含む)+そんなに強くないけどスター団やアカデミーの不満を抱えた生徒も加わって数の暴力を誇るしたっぱたち+一年以上かけて集めに集めたパラドックスポケモン軍団+メロコを人質に取られ本気で戦う用心棒ビワ+カーフ・スターモービル。間違いなく史上最強の戦力を持つ悪の組織です。

用心棒ビワ、参戦。最初は騙されていただけだけど今回の大規模作戦に置いてネタバラシされメロコも人質に取られ従うしかなくなってました。カーフ・スターモービルも鹵獲されてしまうっていう。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSミライドンⅠ

どうも、放仮ごです。ラウラが関係するとギャグになるけど忘れてならないユウリという女。ラウラ以外に負けたことがない本シリーズ屈指の実力者なのだ。

テラレイドで大人気のあのポケモンが参戦。楽しんでいただけたら幸いです。


 

 それは、テーブルシティ襲撃が起きる前。呼び出した自分の下を訪れたエクスパンションスーツを身に着けエスプリにされたグロリアもといユウリを前に、マトイは取り出したタイマーボールを構える。

 

 

「グロリア……いいえ、エスプリG。貴方にこの子を託すわ。タイムマシンの稼働実験で偶然呼び寄せたものの凶暴で大暴れし、やむを得ず私が捕獲したけどエスプリのボールジャックでさえ手が付けられなかったこの子を」

 

「アギャアアアアッス!!!」

 

 

 タイマーボールから繰り出され、捕らえられた怒りのままにマトイに襲いかかろうとする、別の世界ではミライドンもしくは楽園の守護竜と呼ばれるパラドクスポケモン。しかしそれは、水を纏った脚で蹴り飛ばされ床を転がって行く。

 

 

「私に手を出すことは許さないわよ、テツノオロチちゃん?クラベル校長から託され私手ずから鍛えたボディーガードがいるのだから」

 

 

 まるでエキゾチックなダンスでも踊るかのように全身を揺り動かしていながらも隙が無い、不思議な構えをするそのポケモンの名はウェーニバル。炎のホゲータ、草のニャオハに続くパルデア御三家の一匹、水のクワッスの最終進化系であるダンサーポケモンだ。

 

 

「私はこれでも人心掌握に長けていてね。活動しやすくするために信用を得ていたら私が水と氷タイプのポケモンをこよなく愛しているとレーちゃんから聞いたらしい校長が託してくれたのよ」

 

 

 ミライドンはウェーニバルを前に敵わないと判断したのか、じっとしているエスプリGに襲いかかる。しかし次の瞬間、繰り出されたインテレオンに首の裏を掴まれ地面に首を垂れ下げさせられていた。

 

 

「インテレオン、みずのはどう」

 

 

 冷徹な声での指示に一瞬反抗の意を示そうとするも、エスプリGの掲げられた手から放たれた電波を受けて両手を突き出し、ミライドンを巨大な水の塊の中に閉じ込めてしまうインテレオン。

 

 

「アギャッ、アギャアス…!?」

 

 

 水の塊の中で溺れて溜まらず四つの脚を展開しもがくミライドン。そのエスプリを見つめる目が恐怖に染まって行く。

 

 

「落とせ」

 

「アギャッ!アギャッ!」

 

「ねらいうち」

 

「アギャアス!?」

 

 

 そのまま床に叩きつけられ、びしょ濡れで水を吐き出しえづくミライドンに、容赦なく水の弾丸で滅多打ちにするインテレオン。事細かく指示しなくても、エスプリの思い通りに操れるボールジャックとユウリのバトルセンスはベストマッチだった。

 

 

「アァギャアアスッ!」

 

 

 するとミライドンは専用技であるイナズマドライブを使用。ホイール状に変形し相手に急降下しつつ突撃、通り過ぎた後に敵に強烈な雷を落とすと言う技なのだが、インテレオンが両手の間に展開した水の塊…みずのはどうに受け止められて再び閉じ込められてしまい雷も水に通電して当たることはなく、ならばとパワージェムを繰り出そうとするミライドン。

 

 

「アギャッ…!?」

 

 

 しかしその瞬間に叩き込まれた横蹴り…ふいうちで水の塊ごと蹴り飛ばされ、蹴られた衝撃で息が漏れて体内に水が入り、ミライドンはもがき苦しみながら吹き飛んで壁に叩きつけられ自ら解放されて床に叩きつけられる。なんとか立ち上がろうとするその姿は、アイアールのコライドンに通用するほど弱々しいものだった。

 

 

「アギャアス…」

 

 

 指を構えて突きつけるインテレオンに、ミライドンは頭を下げて降参の意を示し、満足げなマトイから渡されたタイマーボールをエスプリGが構えると自らその中に納まる。

 

 

「さすが、100を越えるテラスタルポケモンをたった一人で捕まえてきた手腕は伊達じゃないわね。エスプリSと一緒に邪魔者の相手は任せたわよ」

 

「御意」

 

 

 圧倒的な実力とエスプリになったことで得た冷徹で残酷な手段を選ばない合理的な性格による恐怖でミライドンを従えたエスプリGは、その姿を四天王のチリのものへと変えて無表情で歩き出し、無表情のムツキと合流して去っていく。そして、テーブルシティ襲撃は実行された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シュウメイたちがダフネと合流し無双していた頃。テーブルシティ北西にそびえる白い建物。パルデアポケモンリーグ。この地方のトップに立つ五人のトレーナーが君臨するそこは、現在たった二人のエスプリによって壊滅状態に陥っていた。各地のジムリーダーもこのテーブルシティ襲撃と言う事態を受けて出向こうとしたがそれぞれの町や管轄エリアで野生ポケモンが暴れてそちらの対処に回ってるため、トップチャンピオンであるオモダカと四天王が出向こうとした刹那。チリとムツキに化けて乗り込んできたエスプリの侵入を許してしまったのだ。

 

 

「この実力は……間違いなくチャンピオンクラス、それにその手持ち……貴方ですか、サニア」

 

「ガケガニ。力強く、シザークロス」

 

 

 屋上のバトルフィールにて、いわタイプのマークがヘルメットに描かれているエスプリの指示による、生半可なポケモンでは使用できない力業を行使する巨大ガケガニに、繰り出していたゴ―ゴートが敗れ去りオモダカはそのエスプリの正体を察する。トップチャンピオンである己を圧倒できる人間は少なくない。チャンピオンクラスの一人、サニアだと。雪崩にあった際ラウラと別れた後、ブルーフレア団に鹵獲されエスプリにされていたのだった。

 

 

「……サニアが敵に回ったよりも、あちらの方が問題ですかね」

 

 

 とくせいである【そうだいしょう】で今まで倒れたポケモンたちの分パワーアップしたドドゲザンを繰り出しながらオモダカは眼下、ポケモンリーグ入り口前に目を向ける。そこには、自分が囮を買って出て、先にテーブルシティに向かったはずの四天王が、たった一人のエスプリに足止めされていた。

 

 

「テツノオロチ、パワージェム。インテレオン、ふいうち」

 

 

 そこでは青い稲光を纏った鉄ノ大蛇(テツノオロチ)、ミライドンとインテレオン二体を操る王冠マークの描かれたヘルメットを身に着けたエスプリ、エスプリGが四天王全員を圧倒しているという、信じられない光景が広がっていた。ミライドンの背に乗りインテレオンを侍らせて四天王たちを冷酷に見下ろすエスプリG。

 

 

「嘘やろ、チリちゃんたち四天王が手も足も出ないやと…」

 

 

 でんきタイプにもみずタイプにも強いちょすい持ちのドオーが切札である四天王、じめんタイプ使いのチリが歯噛みする。

 

 

「はっちゃれもへもへぇなんですの……」

 

 

 四天王最年少にして天才トレーナーである四天王、はがねタイプ使いの少女ポピーが気絶したデカヌチャンを抱えて目を回す。

 

 

「相性が悪いとはいえ、ここまでの差があってたまりますか…!」

 

 

 ガラルの元最強のジムリーダー、キリエの娘にしてポケモン育成の天才である四天王、ひこうタイプ使いのムツキが悔しげに拳を握りしめ震わせる。

 

 

「むうう……末恐ろしい、なんたる強さ……!敵でなければ手放しに称えるところです…!」

 

 

 オレンジアカデミーの美術教師にしてポケモンリーグにおける実技テスト最後の砦を守る竜である四天王、ドラゴンタイプ使いのハッサクが悔しげに吠える。

 

 

「ここは通させてもらうで…!ドオー、隆起せい!じしんや!」

 

「負けられないんですの!ドータくん!アイアンヘッド!」

 

「ぶちかましなさいウォーグル!ゴッドバード!」

 

「うおおおおっ!ドラゴーン!セグレイブ、きょけんとつげき!」

 

 

 誰か一人でも突破してテーブルシティの救援に向かえればいいと一斉攻撃する四天王たち。しかし。真下の地面から土柱を生成し飛んでいようと突き上げるドオーのじしんはバリアの様に展開されたパワージェムで相殺され。ドータクンのアイアンヘッドはインテレオンの振り上げた脚によるふいうちにより天高く蹴り上げられ。ウォーグルの力を溜めた渾身の突撃はエスプリGを乗せたままイナズマドライブを発動したミライドンとすれ違う形で雷を受けて撃墜され。セグレイブの逆立ちし背中の槍のような背びれを向けて突撃すると言う捨て身の専用技はねらいうちで胸部を撃ち抜かれて炸裂することなく崩れ落ちる。

 

 

「なんでやねん!ムツキから聞いたトンデモ芸当を結構苦労して再現したんやぞ!?お前、なんやねん!?」

 

「ここは通さない。排除する。じゅうでん、イナズマドライブ」

 

 

 チリの絶叫を意にも介さず、エスプリGは冷酷に指示を出す。ガラル最強のチャンピオンの実力はエスプリになってなお、健在だった。




何気にみずタイプとこおりタイプが好みだと判明したマトイの手持ちがまた一匹。よりにもよって信用してしまったクラベル校長に良かれと思って託されていたクワッスが進化したウェーニバルが加入してました。だいぶストイックなポケモンだから相性が良かった。

そしてそのマトイでも御しきれなかった、仮にもバイオレットのラスボスであるミライドン(凶暴)を一方的に叩きのめして従え、四天王四人を一人で相手取るエスプリGことユウリ。ラウラですら一対一でしか勝てない女は伊達じゃない。

そしてさらっと判明、エスプリにされていたサニア。スペシャルエスプリの一人、エスプリSです。

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VSイーユイⅠ

どうも、放仮ごです。ラウラが全然でなくて蟲成分が足りないからダフネやもう一人の蟲使いで補っていきたいところさん。

今回はダフネVSエスプリM。楽しんでいただけたら幸いです。


 シュウメイさんの指示でメガヘラクロスと共に散開した私は、私を追いかけてきた人物が足に掴まったファイアローの嘴をメガヘラクロスに防がせて対峙していた。

 

 

「私を追ってきましたか。あの中にいた奴等で一番強いのは貴方ですね、炎のエスプリ…グロリアさんから報告にあったスペシャルエスプリの一人。メロコさんを素体にしたエスプリM、でしょうか。貴方を正気に戻せば少なくとももう1人、止めれそうですね!」

 

 

 グロリアさんからの情報とシュウメイさんから移動する間に軽く聞いた事情からスター団チーム・シェダルのボスであるメロコさんが素体で間違いないだろう。彼女を人質にされてブルーフレア団に従っているビワさんも止めることができるはずだ。ほのおタイプ使いでむしタイプの天敵なのが厄介なところだが…生憎と私のメガヘラクロスは相手がほのおタイプだろうがいわタイプだろうが戦える。

 

 

「私はただのエスプリだ。…む?」

 

「どうしました?ボールジャックが効かなくて驚いてます?」

 

 

 ファイアローに掴まったまま右手を突き出してくるエスプリMに、胸を張ってドヤ顔でそう尋ねる。してやったり。グロリアさんに情報を集めさせていたのに、対策をしてないわけがないでしょう。なにもただずっとラウラさんの記憶が戻るのを食っちゃ寝で待ってたわけじゃないんですよ!

 

 

「理解不能。ピーニャのジャミングもここまでは…」

 

「あ、それは私も驚きました。この世界にもあれほどの天才がいるんですね」

 

 

 いやまさかボールジャックされていたから助太刀しようとしたらまさか自力で解決してしまうとは本当に驚いて思わず隠れて様子を窺ってしまった。そんなことを考えながら私は右腕のダイマックスバンドを見せつける。

 

 

「これはダイマックスバンド。これにはねがいぼしが埋め込まれてまして、莫大なエネルギーが宿っています。こちらにも度を越した天才がいましてね。本人曰くアクロマ並みの頭脳を持つ彼がボールジャックの情報を聞いて即座に開発したチップをこれに埋め込んでまして、ねがいぼしのエネルギーを利用して私を覆う目に見えない波長のバリアが展開されているのです」

 

「なに…!?」

 

 

 飛び降りて着地し、ヘルメットの耳辺りにあるダイヤルを弄って私を覆う波長のバリアを視認したのかたじろぐエスプリM。いやほんと、即座に対抗策を考え着くとかグレイが味方なの頼もしすぎる。本人の前では絶対言わないけど

 

 

「さすがにダイマックスバンドが私とユウリさんの分しかパルデアにないため量産はできませんでしたが、私にボールジャックは通用しません!……いやほんと、異世界に行くつもりだったのは分かりますがダイマックスバンドとメガリングを置いて行くのはどうかと思いますよラウラさん」

 

 

 連れてた手持ちにメガシンカできるのがいなかったからメガリングは百歩譲ってわかるが、ダイマックスバンドを置いて行くのはダイマックスできないのが前提だったのだろうがストイックすぎて理解が及ばない。

 

 

「お前の手持ちがジャックできなかろうが関係ない。燃えろ、そして灰になれ。フレアドライブ」

 

「ロックブラスト!」

 

 

 エスプリMの指示で炎を纏い突撃してくるファイアローを、四倍弱点のいわタイプの技であるロックブラストで迎え撃つ。それに加えて私のヘラクロスがメガシンカした際のとくせいはスキルリンク、連続技が最大数で繰り出せる。両腕から五発ずつ、合計10発の岩の弾丸がファイアローに襲いかかる。

 

 

「爆ぜろ」

 

 

 すると信じられないことが起こった。ファイアローの纏った灼熱の炎に触れた瞬間、ロックブラストの岩の弾丸が燃えて炭になって崩れ落ちてしまったのだ。

 

 

「岩すら燃やす炎…!?なんて力なんですか…!カブさんのそれより強い…!これはメロコさんの実力…いや、エスプリの力…?」

 

「カムラのみを食べてすばやさを上げろ。アクロバット、はがねのつばさ」

 

「ヘラクロス、メガホーンです!」

 

 

 すると持たせていたらしいカムラのみを食べてすばやさを上げて、同時に持ち物を無くしたことで身軽になり威力が上がったアクロバットしながらはがねのつばさを放ち、四方八方から斬撃を叩き込んでくるファイアローに、メガヘラクロスはメガホーンで対抗。しかし圧倒的なすばやさに手も足も出ない。

 

 

「ブレイブバード」

 

「交代!イオルブ!サイコキネシス!エスプリに叩きつけて!」

 

 

 懐に飛び込んでからの四倍弱点であるブレイブバードをもらうわけにはいかないと当たる直前で交代に成功。イオルブがサイコキネシスで眼前で受け止め、キリモミ回転させながらエスプリM本人に叩きつける。頑丈でも速度の乗った質量はひとたまりもないでしょう。

 

 

「ナンジャモ戦のラウラさん、私のこの子を思い出してあの技を使ってくれていると嬉しいですね……むっ!」

 

「ヘルメット破損。装着者の催眠状態に電算リソースを回して維持。低下した戦闘能力を補う術を検索……実行。エスプリGと記憶を同期。ポケモンの記憶に接続、ひのことブレイブバードを入れ替える」

 

 

 ヘルメットが割れてそこから目を瞑っている赤髪の少女の顔が見えたかと思えば、右腕に取り付けられている小型のブレスレットの様な装備を操作。ファイアローが上空に舞い上がってひのこをばら撒き、炎上させてイオルブを取り囲む。

 

 

「フレアフィールド…!?」

 

 

 その戦法は、見たことがある。ガラルスタートーナメントのラウラさんとモコウさんと、ムツキさんとキリエさんの試合。ラウラさんがウルガモスで披露していた、通称フレアフィールド。炎上していることで上昇気流が発生し、さらに高く舞い上がってひのこを雨の様に降らしてくるファイアロー。空も地上も火の海で逃げ場がない。今の感じ……覚えている四つの技を切り替えた?そんなことまでできるんですか…!

 

 

「だがしかし相手が悪かったですね!サイコキネシス…!」

 

 

 サイコキネシスで炎を操り、一纏めにして巨大火球を形成、凝縮して拳大にすると誘導する火炎弾として発射。ファイアローは羽ばたいて複雑な軌道を描いてテーブルシティの街並みの間を逃げ回り、反転してイオルブを狙うもイオルブが加速させた火炎弾の直撃を背中に受け、大爆発。凝縮されていた炎が空中で膨れ上がり、太陽の様な光景が広がりファイアローは撃墜され落ちてきた。ラウラさんよりもむし・エスパーとの付き合いは長いんですよ…!私の家族ですから!

 

 

「イーユイ、喰らえ」

 

「!?」

 

 

 するとエスプリMの手にしたタイマーボールから繰り出した小さな赤いポケモンがふよふよと火球に飛んで行ったかと思えば体を赤熱させて炎の中に飛び込んだかと思えば、中心から溢れた更なる血の様に真っ赤な炎で焼き尽くされ、消えてしまった。

 

 

「…それは四災(スーザイ)の一体ですか。そうか、さっきのファイアローの異常な火力もそれの…!」

 

「3000℃に及ぶ炎を操る力を持ち、大地を焼き砂利や岩を溶かしてマグマに変え、まるで水中かの如く悠々と泳ぐ、全てを焼き尽くし炉の様に溶かす災厄の力。とくせい、わざわいのたま。あまりの危険度にボスがほのおタイプの扱いに長ける装着者を得た当機に託された。このイクスパンションスーツも特別に火炎耐性が高く設計されている」

 

 

 こちらの絶望を煽って戦意を喪失させるためか、長々と説明してくるエスプリMに、私は放たれる灼熱から逃げる様にじりじりと後退しながら後ろ手にネットボールを構える。

 

 

「骨も残らず爆ぜろ。ふんえん」

 

「くっ、グソクムシャ…!」

 

 

 そして噴火の様な灼熱の炎が襲いかかり、私の視界は白に染まっ(ホワイトアウトし)た。




最後の四災、イーユイ登場。他の三体はボスと幹部が持ってることから分かる通り、エスプリMはブルーフレア最古参のエスプリにして幹部扱いされているエスプリ、一番最初にイダイナキバを捕獲してラウラと交戦していたあのエスプリです。ウルガモスを使ってたのがヒントだった。

アクロマ並みの頭脳を持ってるから結構便利なグレイ。ボールジャック対策は完璧です。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSオラチフ

どうも、放仮ごです。今回の時系列はシュウメイ達がカチコミしかける辺りとなります。

今回はアイアールとペパーの話。楽しんでいただけると幸いです。


 コライドンの後部にペパーを乗せてオージャの湖を横断し、西3番エリア、列柱洞、西2番エリア、ロースト砂漠、西1番エリア、南2番エリア、南4番エリア、プラトタウンを経由してコサジの小道の灯台までやってきた私達。全速力でダッシュし数時間はかかる長旅で疲弊したコライドンをボールに戻して労わりながら、以前ペパーが出てきた灯台に併設されている建物の扉を見やる。

 

 

「ここがアイツの研究所……小せえ頃よく遊びに来てた、第二の家みたいな場所だ。俺たち呼びつけて何の用なんだろうな?プラトタウンが騒がしかったがなんか関係あるのか?」

 

「そういえば慌ただしかったね。なにかあったのかな?」

 

「まあいいや。今、開けるぜ」

 

 

 テレビもなんも観ずに真っ直ぐここまで来たからなあ。鍵を取り出して開けようとするペパーを見ていると、鍵を開けずになにを思ったのか静止した。

 

 

「ペパー?」

 

「……天才的なポケモン博士なんだとさ。……俺の母ちゃん。ポケモン博士志望のアイアールにとっては憧れの存在ちゃんかもしれないが、間違ってもアイツみたいになるな」

 

「…たしかに久しぶりの会話にしては淡白だなとは思ったかな」

 

 

 そう思ってたことを言うと、暗い表情を浮かべるペパー。

 

 

「いくら天才だろうが権威だろうが、子供の俺にとっては最悪だった。物心つく前に父ちゃんはいなくなってたから俺にはあの人とオラチフ…今のマフィティフしかいなかったのに、いつも仕事ばっかで全然家に帰ってなんて来ねえし。遊んでもらった記憶もねえ。いっつもマフィティフだけが俺の傍にいてくれたんだ。…開いたぜ。行くぞ、ちゃちゃっと終わらせようぜ」

 

「う、うん……」

 

 

 扉を開けたペパーに続いて研究所に入って行く。……でもねペパー。真正面から「お前がいなければよかった」と言われて存在を否定されるよりは、オーリム博士はましだと思うんだ。だって、出会えさえすれば仲直りすることもできるかもしれないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中は真っ暗で、長年放置されていたとよくわかる埃が降り積もっている状態だった。机やキッチン、冷蔵庫に本棚など生活空間と研究する空間が仕切りもなく繋がっていて、奥には複数のモニターとコンソールが存在し、勝手に起動して光が灯って行き私とペパーは顔を見合わせて頷き、近づく。

 

 

《「頼みがある」》

 

 

 ジジジッ!と点滅してそれが納まるとモニターに映ったのは、いつぞや校長室でモニター越しに出会ったオーリム博士その人だった。

 

 

「…頼みってなんですか?」

 

《「私は今、パルデアの大穴…エリアゼロの最深部にあるゼロラボという研究所にいる。この場所でずっと特殊なポケモンの研究をしているのだ。君達にはオーリムの輝かしい研究……その、最後の手伝いをしてもらいたい」》

 

「…最後の?」

 

 

 なんだろう、なにか引っかかる言い方だ。まるで自分を別人として扱ってる様な……。

 

 

「最後の手伝いってなんだよ?」

 

《「手伝いに必要な鍵がその研究所のどこかにある。その鍵とはオーリムの愛読書、スカーレットブックだ」》

 

「ペパー、それって……」

 

「ブックってもしかして…これか?」

 

 

 そう言ってペパーが取り出したのは秘伝スパイスのことについて調べるのに使っていた本だった。これが…鍵?

 

 

《「ああ、ペパー。君が持っていたとはな。ならばなおさら都合がいい。実は協力者にとりにいかせたのだが研究所の鍵は今現在ペパーしか持っていないから探索すらできなかったのだ。スカーレットブックを持ってエリアゼロ最深部にまで来てくれ。そうすれば宝物のような経験ができると約束しよう」》

 

「…それだけ、なの?」

 

《「む?」》

 

「アイアール?」

 

 

 私はいつの間にかわなわなと拳を震わせていた。怒りが抑えきれず、怒鳴り散らす。

 

 

「あなたは……!ここまで一切、ペパーに何も言ってない。オーリム博士以外で唯一の家族のマフィティフのことで大変で、私とラウラに会うまでずっとひとりで頑張って来て……それに関して何も言わず、言うにこと書いては都合がいい?ペパーは!宝物なんかよりも、あなたと一緒に過ごすことの方がずっと…!」

 

「アイアール……」

 

「親なんでしょ!?ペパーにとって唯一の肉親なんでしょ!?まだお母さんがいた私と違って、ペパーには貴方しかいないんだよ!?それに、エリアゼロってイダイナキバみたいなポケモンがいるところでしょ!?そんな危険なところに、息子を行かせる?また、マフィティフが怪我するかもしれないのに冗談じゃない!私たちは絶対に行かない!むしろ、そっちが来い!」

 

 

 止めようとするペパーを押しのけ、モニターに顔を近づけて捲し立てる。ゼーハーと肩で息をする。すると返ってきたのは、冷静な言葉だった。

 

 

《「まったくもって正論だ。私は、オーリムはペパーを確かに愛しているが……ああ、そんなことになっていたとは知らなかった。もう少し気にかけるべきだった。だが……私はここから離れることができない。だから君達にスカーレットブックを持って来てほしいんだ。頼む」》

 

 

 そう言って頭を下げるオーリム博士。ああ、この人は……愛するのが下手なんだ。愛情表現が本当に苦手なんだろう。でも、それはそれ。これはこれだ。ペパーが悲しんでいたのは事実なんだ。私は拳から人差し指を立てて突きつける。

 

 

「ああ、分かりました。行く!行ってやる!首を洗って待ってろオーリム博士!一発ぶん殴ってやる!」

 

《「ああ、存分に殴ってくれて構わない、だが気を付けてくれ。アイアール、君の言う通りエリアゼロは狂暴なポケモンと強固な電脳システムに守られている。君達二人では少々手こずる苦難があるだろう。他に頼りになりそうな仲間を集めてからで構わない。なんなら今はゼロゲートに滞在している私の協力者たちの手を借りるのもいいだろう。…エリアゼロ最深部にて君達の冒険を待っているよ」》

 

 

 そう言い残してオーリム博士は通信を切ってしまった。……仲間を集めて、か。そう言われて真っ先に浮かんだのはラウラだった。今どうしているんだろう。勝手に偽龍のヌシを倒した私に怒ってるかな?電話がなにもないのが気になるけど……。

 

 

「エリアゼロ……アソコはやばい。アイアール、お前は知らないで言ってくれたんだろうが…マフィティフが怪我したのも大穴の奥……エリアゼロなんだ。母ちゃんに会いに行こうとして、それで……正直トラウマで、もう二度と勘弁って場所だけど……お前は行くんだな?」

 

「…うん、一人でだって行くよ。ペパーが嫌なら無理にとは言わない」

 

 

 正直、仲間を集めるのは怖い。お父さんやフラダリさんの様に優しい仮面を被っているかもしれない。ラウラだって記憶を失う前はプラズマ団かもしれないんだ。私でも知っている。かつてイッシュ地方でポケモン解放を謳い、イッシュを氷漬けにした宗教団体の悪の組織。その一員かもしれないだなんて、記憶を取り戻してほしくない。私は、裏切られるのが怖い。大好きな人間が敵意を向けてくるのが、本当に怖い。

 

 

「…たのまれちまったもんな」

 

 

 押し黙ってしまった私をじっと見て、ふっと笑うとそう言うペパー。驚く私に不服そうにする。

 

 

「水臭いちゃんだぜ。友達(ダチ)が危険な場所に行くのを黙って見てられねえよ。今のお前は心配だし、一人で行かせられるわけがねえ。俺も行ってやる!」

 

「ペパー……」

 

「お前みたいに殴る、とまでは行かないけど母ちゃんに文句も言いたいしな。よし、アイアール!表に出ろ!エリアゼロでもやっていけるか、ポケモン勝負で力試しだ!……いや、お前の実力は何も心配してねえよ?主に!俺の!力を!試すの!」

 

「…ふふっ。いいよ、やろう。手加減しないからね」

 

 

 必死に弁明するペパーに笑ってしまう。ああ、ペパーは……安心できるな。

 

 

「望むところだ!そして全部吐き出しちまえ!」

 

「…なにを?」

 

「………もちろん、ラウラの事だよ」

 

 

 その言葉に思わず固まるのも、しょうがないと思うんだ。




このあとオーリムAIはグレイの通信に応えます。

アイアールの心情が明らかに。大好きな人に悪意を向けられることに臆病になっている子供、というキャラです。フラダリと父親の裏切りが根強いトラウマになってます。

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VSヨクバリス

どうも、放仮ごです。今回の副題は「愛ある逆転」逆転裁判をちょっと意識してます。

今回はアイアールVSペパー、ガチンコ勝負。楽しんでいただけると幸いです。


「…ら、ラウラの事って?」

 

 

 ひとまずすっとぼけてみる。するとペパーはちょっとだけ怒った顔になった。

 

 

「言う気がないってんならバトルで引き出す。やるぞ!」

 

「あ、待って引っ張らないで…」

 

 

 右手を掴まれ、無理やり外に引っ張り出され、ペパーは一定距離を離れてボールの中のマフィティフに呼びかける。

 

 

「うしっ!マフィティフも準備はいいか!?」

 

「バウッ、ワウ!」

 

「マフィティフもいけるってよ!恩人のお前の悩みを解決したいのは俺もこいつも一緒だ!」

 

「ま、マフィティフと!?大丈夫なの?」

 

 

 本当に半日前ぐらいに復活したばかりだと思うのだが。するとペパーは照れ臭そうに笑う。

 

 

「へへっ。お前、やっぱり優しいな。まー、お前が不安な気持ちもわかるけどよ……コイツ、病み上がりだと思えねえほど元気ハッスルちゃんでさ。アイアールと戦わせろ戦わせろってギャンギャン鳴くんだよ。そーいやもともと、勝負が大好きだったんだよな。……生徒会長には負けるけどさ」

 

「ネモには誰だって負けると思うよ」

 

 

 思わず苦笑する。そう言えば、ネモは今頃どこにいるんだろう。

 

 

「ってなわけで心配ご無用!スパイスで生まれ変わった新生俺たちの味わい!たーんとご賞味あれ、だぜ!」

 

 

▽ポケモントレーナーの ペパーが 勝負を しかけてきた!

 

 

 気は進まないけど、とラウドボーンのシングを繰り出す。多分、最初はあのポケモンだろう。ここに来るまで手持ちの交代とかしてなかったし。

 

 

「頼むぜヨクバリス!スパイス巡りで出会ったポケモンオールスター、だぜ!」

 

「やっぱり来るよね、ヨクバリス…!」

 

 

 偽龍のヌシと決着をつけた時以外でも、私がペパーと初めて出会った時に繰り出したのが恐らく捕獲したてのホシガリスだった。あの一撃でやられていた子がここまで逞しくなるとは、旅ってすごい。

 

 

「そっちはそいつか!ヨクバリス、負けたこと覚えているか?リベンジ戦、だぜ!」

 

「本気で行くからね!シング、フレアソング!」

 

 

 撃つたびにとっこうを上げるフレアソングは撃ち得だ。シングの火力を上げて一気に突破する!…無駄話をする暇も与えない!

 

 

「噛み砕け、サイコファングだ!」

 

 

 すると念動力の鋭い牙を目の前に形成して、フレアソングを噛み砕いて防御するヨクバリス。そんな、届かない…!?

 

 

「もう一発フレアソング…!」

 

「タネマシンガンだぜ!」

 

「なにを……!?」

 

 

 口を開いてスタンドマイク状になった鳥型の炎を前方に置いてフレアソングを放とうとするシングにタネマシンガンを放つペパーに首をかしげたが、すぐに使った理由が分かった。ヨクバリスの口から射出されたタネが当たるたびにシングは仰け反ってしまい、撃つことができないんだ。

 

 

「な、なら…足元にかえんほうしゃ!」

 

「ならのしかかりだ!」

 

 

 タネマシンガンを焼き払うべく地面に向けてかえんほうしゃを放ち渦の様にして防御するが、何を思ったのかヨクバリスに跳躍させるペパー。のしかかりはノーマルタイプのわざ、ゴーストタイプのシングには効果が無いのに。

 

 

「飛んで火に入る夏の蟲!フレアソング!」

 

「当てなくていい、着地に合わせてじしんだあ!」

 

「っ!?」

 

 

 撃墜しようと上空のヨクバリスに向けてフレアソングを放つが、当たる直前に急降下して地面に勢いよく着地、した勢いで衝撃を地面に送り込みじしんを引き起こすヨクバリス。シングには効果が抜群だ。

 

 

「のしかかりは、じしんの威力を上げるために…!?」

 

「そうだぜ!お前とラウラのよく使っていた技と技の組み合わせだ!…そうだ、お前たちをずっと見てきたから俺には分かる。お前がラウラと別れて行動するなんてどう考えてもおかしい!」

 

「ぐっ……」

 

「教えてくれよ。ラウラが自分の記憶より優先する事ってなんなんだ?」

 

「…スター団の、壊滅だよ。カシオペアって人のお願いを聞いて」

 

 

 嘘ではない。ラウラとはスター団を攻略してからオージャの湖と合流しようと言って別れたんだ。行きたいところがあるから別行動すると言って。

 

 

「人の頼みを聞いて自分をおろそかにするのは確かにラウラらしいお人好しちゃんだ。でもあいつは俺とマフィティフのことや自分の記憶を取り戻すことに躍起になっていた。そもそもラウラがスパイスの事をお前に任せたってのもおかしな話だ。あいつが、大事なことを他人に頼んで放っぽり出すわけがねえ!」

 

「うぐっ」

 

 

 その言葉に言葉が詰まる。ラウラの事は多分、ネモよりも知っている自信がある。だからこそラウラらしくないとは思いながらもそう言うしかなかったんだ。

 

 

「ずばり言ってやるぜ。お前、ラウラに黙って俺と合流しただろ?」

 

「そんなこと、ない…っ」

 

「なら聞くが、お前、秘伝スパイス入りのサンドイッチをくるんでバッグに入れていたな。それ、どうするんだ?」

 

「も、もちろんラウラに会ったら渡す……」

 

 

 しどろもどろになってしまう。ダメだ、真っ直ぐ見つめてくるペパーに嘘がつけない。

 

 

「…お前、俺と別れたらそれをすぐ処分するつもりだったろ。あの時は何も言わなかったがな、おかしいと思ったんだ」

 

「なにが…」

 

 

 完璧だったはずだ。私は確かに、ラウラに託されて全力で偽龍のヌシを倒した私、を演じ切れたはずなんだ。何のミスもしてない筈……!

 

 

「秘伝スパイスのこと、ラウラから託されたんだろ。それを手に入れたなら普通、電話なりメールなりするだろ。お前はそんなそぶりすらなかった」

 

「あっ……」

 

 

 言われて気付く。失念していた。ペパーからサンドイッチを受け取った直後にオーリム博士と連絡すらしてるんだ、壊れていたとか言い訳も通じない。確かに、明らかに矛盾している。

 

 

「十数年前のポケギアとかの時代ならともかく、俺達はスマホロトムを持ってるんだ。それをしない理由がねえ」

 

「そ、それは…」

 

「…アイアール。お前、ラウラには渡さず処分する気だったろ。食べ物を粗末にするのはいけないんだぞ」

 

「っ……!?」

 

 

 思わず怯み、頭から帽子が落ちて左手で髪を掻き乱す。ああ、駄目だ。…やっぱりペパーはあのオーリム博士の子供だ。頭がいい。私みたいな凡才の浅知恵じゃ、敵わない……。

 

 

「俺に教えてくれないか。偽龍のヌシを倒した時に再会する前、潜鋼のヌシを倒した後でお前の態度は明らかに様変わりしている。……なにがあったんだ。俺の大事な親友(ダチ)に、なにがあったってんだよ…!」

 

「ペパー……」

 

 

 泣きそうな顔で拳を握りしめるペパーに、視線を左右と彷徨わせて言うべきか迷う。……駄目だ。言えない。こんなこと知っているのは私だけでいい。

 

 

「……シング、なまける」

 

「なっ…」

 

 

 元々耐久よりに育てているシングだ。威力を上げたじしんも体力の半分ぐらいしか削ってない筈だ。なまけて完全回復させる。もう同じ手は食わない。

 

 

「…ペパーは知らなくていいことだよ。かえんほうしゃ」

 

「アイアール…!」

 

 

 炎の海となる中で、シングを侍らせて私は熱風に髪を揺らせながら仁王立ちする。さながら魔王みたいだな、と自嘲する。いや、ラウラの為なら魔王にだってなってやる。

 

 

「どうしてもって言うなら、私に勝てたら教えてあげる」

 

「…上等だ!意地でも勝って、聞き出してやる!そして、お前を笑顔にしてやるんだ…頼む、ヨクバリス!」

 

 

 パンパンと頬を叩いて自身を鼓舞し、ヨクバリスを向かわせてくるペパー。友達のためにまっすぐ突き進めるその姿が、少し羨ましいと思った。




実はオーリムとの電話のあとで悟っていたけど、アイアールから話してくれるのをずっと待ってたペパー。この男、完全に主人公である。

対して自分の殻に引き籠もりペパーの助けも拒絶するアイアール。前回の男気は何処に行ったのやら。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSパルシェン

どうも、放仮ごです。複雑なキャラばかり書いているけど別に得意なわけじゃないから四苦八苦してます。アイアールは過去最高クラスに難しいキャラ。

今回はアイアールVSペパーその2。楽しんでいただけると幸いです。


「ヨクバリス…!?」

 

 

 じしんを受けたらなまけるで回復、タネマシンガンによる妨害もかえんほうしゃで怯ませて、撃つたびに徐々にとっこうが上がって行くフレアソングを乱射して黒焦げとなったヨクバリスが転がり、ペパーが慌ててボールに戻す。さっきから頭が澄み切って冴えわたってる。

 

 

「ラウラの提案で育てた要塞型ラウドボーンのシングだよ。そう簡単には落とされない」

 

「そうらしいな。だから全力全開!俺の手持ちフルコースで突破してやるぜ!パルシェン!」

 

 

 そう言ってペパーが繰り出したのはパルシェン。岩壁のヌシのガケガニとサニアと戦った時にペパーが使っていた、ダイヤモンドよりも硬い殻に籠れば、ナパーム弾でもびくともしない鉄壁の防御力を誇るポケモンだ。……ナパーム弾ってなんだろ。わざ?

 

 

「でも無駄!焼いてしまえば焼きパルシェンの出来上がりだよ!かえんほうしゃ!」

 

 

フレアソング×5でとくこうが五段階上がって極太の火柱のようになったかえんほうしゃをぶちかます。しかし、火柱が通り過ぎた後にパルシェンの姿はなくて。

 

 

「え…?」

 

「からをやぶるだ!当たらなければモーマンタイだぜ!アクアブレイク!」

 

 

 見れば、甲殻を罅割れさせて防御力を捨てたパルシェンがいつの間にかシングに肉薄して水を纏った体当たりを叩き込んでいた。からをやぶる、防御・特防を1段階下げる代わりに攻撃・特攻・素早さを2段階上げると言う破格の性能を誇る技だ。威力が上がり過ぎたかえんほうしゃを逆手にとって隠れ蓑にそれを使うだなんて…!?

 

 

「か、回復を……なまける!」

 

「その隙を与えるな!ロックブラストぉ!」

 

 

 なまけるで体力を回復させた隙をついて岩の弾丸を連射してくるパルシェン。ロックブラスト、いわゆる連続技はランダムで2~5回発動する低威力の技だ。二回なら……と思ったが、最大数の五回放たれてさすがのシングの耐久と言えど耐えきれず崩れ落ちてしまった。

 

 

「そんな…イカサマダイスでも持ってるの!?」

 

「いいや違うぜ。こいつのとくせいはスキルリンク!連続技を必ず最大数で撃てるんだ!ポケモン博士志望なのに知らないだなんて言わせないぞ!」

 

 

 そうだ、失念していた。私は知っていたはずだ、なのに焦って考えることを放棄していた。

 

 

「ツムヅム!」

 

 

 シングが倒れた今、パルシェン有効打があるのはいわタイプのキョジオーンのツムヅムだけだ。だけど身軽さじゃ圧倒的に不利だし、みずタイプも弱点だが……ツムヅムなら、いける。

 

 

「しおづけ!」

 

「塩漬けにされちゃたまらないぜ!もう一度からをやぶるだ!」

 

 

 身震いしてさらに甲羅を罅割れさせると目にも留まらぬ速度で移動し始めるパルシェン。ダメだ、追い切れない。鈍重なツムヅムじゃなおのことだ。ならば。

 

 

「ツムヅム、連続でのろい!」

 

 

 のろいで素早さが1段階下がる代わりに攻撃・防御が1段階上げるのを繰り返し底上げしていく。そっちがバフで来るならこっちもバフだ。さらにテラスタルオーブを取り出す。切るならここだ。

 

 

「ぶちかませ!アクアブレイク!」

 

「そこ!テラスタル、受け止めて!」

 

 

 二回のろいを積んだのを確認してから、テラスタル。高速で突撃してきたパルシェンが激突する直前にゴーストテラスへと姿を変え、ボディで受け止め両腕を伸ばしパルシェンを拘束するツムヅム。

 

 

「んなっ…効いてない!?」

 

「キョジオーンは最高峰の防御力を持つポケモン。それがのろいでさらに二段階防御が上がっている。からをやぶるを二回使用したパルシェンでも、突破できない!」

 

「っ…つららばり!」

 

「いわなだれ!」

 

 

 そして両腕で掴んで拘束しているパルシェンに、二段階攻撃力が上がっている状態でのいわなだれを直撃させる。防御が二段階も下がっているんだ、いくらパルシェンでも耐えきれられない。崩れ落ち、戦闘不能となった。

 

 

「よくやったパルシェン。あのラウドボーンを突破する姿は最高だったぜ!キョジオーンにはキョジオーンだ!」

 

 

 次に繰り出されたのは、大空のヌシことオトシドリと戦った時にペパーが使っていたコジオが進化したであろうキョジオーン。でものろいでバフを積んでゴーストタイプになっているこっちが有利だ。

 

 

「ステルスロック!」

 

「のろい」

 

 

 何故かステルスロックをばら撒いてきたペパーのキョジオーンに対して、私がツムヅムに指示したのはのろい。バフるのではなく、巨大な金属釘の幻影を出現させて自身に打ち込むツムヅム。ゴーストタイプとそうでないタイプではのろいは効果が変わる。ゴーストタイプが使うのろいは自身の体力を最大HPの半分削り、相手のHPを最大HPの1/4ずつ削る技になるのだ。しおづけも含めてとんでもないスリップダメージを技を発動するたびに叩き込める。

 

 

「おまっ…自分のポケモンを犠牲にするのか!?ストーンエッジだ!」

 

「これがゴーストテラスになれてのろいも覚えているツムヅムの強みを最大限にいかせる戦法だよ。それにただ犠牲にしたわけじゃない。じこさいせい」

 

 

 地面から突き出てきた岩の刃ストーンエッジを腕で受け止めながらじこさいせいする。じこさいせい、体力を半分回復させる技。これで全快近くに回復したツムヅムが咆哮を上げる。しおづけ、のろい、いわなだれ、じこさいせい。アームハンマーは忘れさせて私のツムヅムはのろい特化型にした。じこさいせいできる数は五回なので、最大五回はのろいを叩き込める。テラスタル前にのろいを積んでおけば盤石だ。

 

 

「私のツムヅムは絶対に突破できない」

 

 

 さらにキョジオーンのとくせいは「きよめのしお」どく・まひ・やけど・ねむり・こおりの目に見える状態異常にならない(こんらんとかメロメロにはなる)上に、ゴーストタイプの技を半減するとくせいだ。これでこのツムヅムはあくタイプ以外弱点が無い要塞と化した。もともと防御が高い上にのろいで底上げし、弱点の比較的低いとくぼうも自分にしおづけして特殊攻撃に強い装甲を身にまとうソルトアーマーも使えば決して崩れぬ白亜の城壁となる。ラウラも「突破できる気がしない」と言わしめた私の切札の一つだ。

 

 

「それにペパーもからをやぶるを使ったじゃん。パルシェンも危険になるのに、私に勝つために使ってる。同じだよ」

 

「同じじゃねえ!こいつらは、お前の悩みを聞き出そうとしている俺のわがままに付き合って命張ってくれてんだ!お前とは、覚悟が違う!」

 

「っ……私に、ラウラを守る覚悟が無いって言うの!?いわなだれ!」

 

 

 激昂した私の指示に合わせて、いわなだれでキョジオーンを叩き潰す。こうかはいまいちだが、のろいとしおづけのスリップダメージも合わせてキョジオーンは崩れ落ちた。結局、なにがしたくてキョジオーンを出したんだろ。ステルスロックをばら撒くのが狙いだった?なんのために?

 

 

「ラウラを守る、か。なにがどうしてラウラの記憶を取り戻さないことが守ることになるのか知らねえが……これだけはわかるぜ。お前は迷っている。迷いながら勝てる程ポケモンバトルは甘くないぜ!キョジオーンだけにな!」

 

「……甘くない、けどしょっぱいってこと?」

 

「人のボケをツッコむのはボケ殺しちゃんだからやめような?」

 

 

 疑問符が浮かんだので聞いてみたら真顔で怒られた。ごめん。

 

 

「…きよめのしおで状態異常は効かないんだったな。ならもう、お前が行くしかねえよな!マフィティフ!」

 

「っ……」

 

 

 繰り出されたのはマフィティフ。ペパーの相棒にして切札だろうポケモンだ。来た。今の無敵のキョジオーンの唯一の天敵、あくタイプ。いくら防御力が硬くても弱点は弱点だ。突かれたら一気に崩される。でも普通の威力なら大丈夫、そう言い聞かせているとテラスタルオーブを取り出すペパー。持っていたの…!?

 

 

「出し惜しみはなしだ!快気祝いのテラスタルだ!光っとこうぜマフィティフ!」

 

 

 ペパーが逆手に持ったテラスタルオーブが光り輝き、マフィティフは結晶化。頭にいかにも悪そうな結晶を乗せたその姿はまさしくあくテラスタル。……それは、まずいかな。思わず冷や汗を流した。




無敵キョジオーン爆誕。このゴーストテラスキョジオーンの進化前のジオヅムが普通に手に入るのよく考えたらやばいよね(ロースト砂漠と列柱洞の間にいる)

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSスコヴィラン

どうも、放仮ごです。6VS6のフルバトルはわかっていたけどやっぱり長いですね。蟲が関わらないフルバトルを書くことになるとは思いませんでした。

今回はアイアールVSペパーその三。ペパー視点です。楽しんでいただけたら幸いです。


「出し惜しみはなしだ!快気祝いのテラスタルだ!光っとこうぜマフィティフ!」

 

「グルル……ワウッ!」

 

 難攻不落のアイアールのキョジオーン、ツムヅムを相手に相棒のマフィティフを繰り出し、テラスタル。あくタイプのテラスタルになったマフィティフは悪そうな笑みを浮かべて一声吠えた。いいぞ、完全に調子が戻って来たな!

 

 

「マフィティフが元気になれたのもアイアールとラウラのおかげだ!礼を言うぜ!だが解せねえ!ラウラの何が心配だ!あいつは根っからのいい奴だ!記憶を取り戻してお前が困る事ってなんだ!ラウラのために記憶を取り戻させないは矛盾してるじゃねえか!かみくだいちまえマフィティフ!」

 

「っ…矛盾、してない!いわなだれで防御!」

 

 

 こうかばつぐんと防御力ダウンを狙ったかみくだくを、いわなだれで壁を作って防ぐアイアール。こっちがなにしたいのかわからなくてとにかく防御に徹しているな?それは意味ないことを教えてやるぜ!

 

 

「ステルスロックにじゃれつくだ!」

 

 

 いわなだれの壁で視界が塞がったのを確認してから指示を出す。するとマフィティフは戦場を駆け回り、設置されているステルスロックに次々とじゃれついて弾き飛ばしていく。その先にはあるのは、のろいですばやさが二段階下がってろくに動けないツムヅムだ。

 

 

「え、なに!?…そうか、のろい!」

 

「負けるなマフィティフ!のろいをサイコファングでかみくだけ!」

 

 

 次々とツムヅムに突き刺さるステルスロックに、最初は困惑していたアイアールだったがこちらの目的を悟ってのろいで妨害してくるが、現れた鉄釘の幻影…というか呪いのエネルギーを、同じエネルギー体であるサイコファングを展開して、さらにかみくだくの威力も上乗せして破壊。ツムヅムはただ体力を半分削っただけに終わった。

 

 

「かみくだく!」

 

 

 そこにテラスタルの力を解放したマフィティフの噛み付きがツムヅムに炸裂。崩れ落ちさせる。悔しげにボールに戻すアイアールに合わせて、こちらもマフィティフをボールに戻す。

 

 

「ステルスロックを展開するだけしてキョジオーンがやられた理由って……」

 

「もちろん、ツムヅム突破のためだ!ステルスロックはどんな相手だろうが必ず突き刺さる!どんなに防御力が高いポケモンだろうとだ!」

 

「だからステルスロックをぶつけて定数ダメージを与えてきたんだね…焦ってのろいを指示した私のミスだ。ごめんねツムヅム……お願い、ドーちゃん!」

 

 

 俺の残りのポケモンを思い出してか、くさタイプに有利などくタイプのドオーを繰り出すアイアール。俺の残りの手持ちはマフィティフの他にはリククラゲとスコヴィラン、その判断は正しいぜ。だが…!

 

 

「推し通るぜ、スコヴィラン!」

 

 

 俺が繰り出したのはスコヴィラン。くさ・ほのおで弱点が少ないポケモンだ。どくタイプには弱いが、もちろん対策もしてある。

 

 

「ヘドロウェーブ!」

 

「乾かしてしまえ!にほんばれ!」

 

 

 アイアールは毒の津波で対抗しようとしてきたが、にほんばれで乾かしてカピカピになって固まった毒の津波を頭突きで粉砕して突進するスコヴィラン。あまりの素早さにドーちゃんの目が追い付いていない。

 

 

「俺のスコヴィランのとくせいはようりょくそ!戦闘中の天気がひざしがつよい時、すばやさが二倍になるぜ!」

 

「ドーちゃんじゃ、追い切れない…!?」

 

「しねんのずつき!」

 

「どくづき!」

 

 

 緑の頭部が念動力を纏って振りかぶられた瞬間、毒のトゲを生やして抵抗しようとするアイアール。しかしスコヴィランはしっかりもう一つの赤い頭部の目でそれを捉えて急停止。緑の頭部を引っ込めて赤い頭部でアッパーカットの様にしてドーちゃんを打ち上げる。

 

 

「ま、まだだ!じしん!」

 

「大気に振動を加えるか!やっぱりお前ら……とんでもないな!だいもんじ!」

 

 

 空中で体を震わせてじしんの振動を大気に伝えてくると言うとんでも技術を使ってくるドーちゃんに、にほんばれで威力が上がっただいもんじが炸裂。黒焦げになってドーちゃんは落下、目を回した。

 

 

「……何がバトルが下手、だよ。すっごく強いじゃん…嘘つき」

 

「騙してなんかねえ!あのとき、宝探しが始まる前にお前とラウラに頼んだ時の言葉は本音だ!この強さは、お前とラウラだけに頼ってられねえ、俺の力でマフィティフを今度こそ守るんだってお前らをお手本にして考えて、鍛えた強さだ!」

 

 

 なにか傷付いた様子で言ってきたため、全力で言い返す。騙したなんて人聞きが悪い。俺がお前とラウラを騙すかよ。

 

 

「――――お前とラウラのおかげで今の俺達があるんだよ!俺が弱いから話せねえってんならお門違いだ!遠慮なく話せ!ダチだろ!?」

 

「友達だから話せないこともあるの!ヒナ!ドリルくちばし!」

 

「逃げろ、スコヴィラン!」

 

 

 次に繰り出してきたクエスパトラはとんでもない速さでスコヴィランの目の前に先回りしてドリルくちばしを叩き込んでくる。いくらなんでも速すぎだろ…!?

 

 

「ヒナのとくせいはびんじょう。相手の能力変化に便乗して同じ能力を上げる。こっちもすばやさ二倍だよ!」

 

「だいもんじだ!」

 

「ルミナコリジョン!」

 

 

 放っただいもんじも、ヒナの放った念動力で相殺されてしまう。分が悪いな、交代だ。

 

 

「戻れスコヴィラン。頼むぞ、リククラゲ!」

 

 

 俺が選んだのはリククラゲ。こいつにはきんしのちからといって変化わざが後攻になる代わりに相手のとくせいを受け付けないという、ツムヅムの攻略にも使えそうなとくせいがあるんだが敢えて残しておいた。

 

 

「マフィティフ…じゃない!?」

 

「エスパータイプ相手に馬鹿正直にあくタイプを出すほど単純じゃないぜ!マジカルシャインとか覚えてるんだろ!」

 

「ご明察!関係ない、このままヒナで三体を突破する!ドリルくちばし!」

 

「パワーウィップ!」

 

 

 放たれたドリルくちばしに、触手を巻き付かせて受け止めるリククラゲ。こう見えてこいつは素早い。だからゲッコウガ用に取っておいたんだが、見せちまったならしょうがねえ!

 

 

「ルミナコリジョン…!」

 

「きのこのほうしだ!」

 

 

 とくぼうをガクッと下げるルミナコリジョンを受け止めながらきのこのほうしを放つリククラゲ。瞬く間に眠りについたヒナを触手で巻き付けたまま軽々と持ち上げ、振り上げる。

 

 

「ヒナ、さわぐ!」

 

「さわぐを覚えていたのか、危ないが…眠る前に使わなきゃ意味なしちゃんだぜ!パワーウィップ+だいちのちから!」

 

 

 そして地面に頭から勢いよく振り下ろすと同時に地面から湧き上ったエネルギー波を直撃させ、ヒナは眠ったまま崩れ落ち、戦闘不能。残り二体…!追い込んだぞ!

 

 

「勝ったら教えてもらうからな!」

 

「負けない、負けられない。お願いだから放っていてよ!ハルクララ!」

 

 

 絶叫を上げながら繰り出されたのはハルクジラのハルクララ。主人思いなのか大きな咆哮を上げてこちらを威嚇する。こいつの強さは知っている、進化前の時点でラウラを追い詰めていたやべーやつだ。リククラゲと相性最悪だが……たしかあついしぼうなんだよな、スコヴィランでもきつい。交代したところを狙われたらアウトだ、このまま突っ張る。

 

 

「…俺は、友達(ダチ)として…お前らを放っておけねえ!お前の苦しむ顔も、ラウラが記憶のことで焦る姿も見たくねえ!諦めてもらうことを諦めるんだな、俺はしつこいぞ。医者が諦めろと言ったマフィティフが回復する方法を諦めずに探し当てるぐらいにはな?」

 

 

 お前にそんな顔は似合わねえんだよ、アイアール!




ラウラとアイアールのトンデモ戦法を吸収して強くなったペパー。ナンジャモの動画も確認して勉強している徹底ぶりです。

じしんを空中の敵に当てるのではなく、大気を振動させる荒業に昇華させたアイアール。キリエもびっくりのあたおかです。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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スター団IF VSビビヨン

どうも、放仮ごです。今日はエイプリールフールと言うことで特別回です。もし序盤のラウラがアイアールと出会わず、スター団ともめ事も起こさずにスター団に入ったら?というIFとなります。当初の構成はこうでした。楽しんでいただけたら幸いです。


 オージャの湖西に位置するオコゲ林道。まるで蜘蛛の巣の様なバリケードで囲われたそこに、アイアールはミライドンに乗って訪れていた。

 

 

「…ここが、最後のスター団ボスのアジト…」

 

 

 カシオペアのスターダスト大作戦を実行すべく、これまでピーニャ、メロコ、シュウメイ、オルティガ、ビワとスター団のボスを倒してきたアイアール。当初は五人倒せばスター団のボスはいなくなり、スター団解散に追い込める…そう、カシオペアは言っていたのだが、最後に倒したビワがとんでもないことを言いだしたのだ。

 

 

――――「マジボスも知らない、私達の新しい仲間。六人目のボスには貴方も勝てない。他の皆にバトルを教えた私も手も足も出ない、最強の蟲使い…ラウラがいれば、スター団は終わらない」

 

 

 スター団のリーダー、マジボスがいなくなったあとにスター団に加入しボスになり上がった人間が存在する。そう聞いてパルデア中を駆け巡り、ようやく見つけ出したここ……強力なポケモンが生息しトレーナーもそうそう寄り付かないオコゲ林道の一部を覆った蜘蛛の巣のバリケードを、かっくうしたミライドンの上から見つけてようやくたどり着いた。

 

 

《「ロトロトロト……「六人目のボスを見つけたようだな、アイアール。私も知らない、六人目のボス…彼もしくは彼女を倒せばスターダスト大作戦は最終局面を迎える。即ち、マジボスとの決着だ」》

 

「うん、だけど……ビワよりも強い最強のボスだって…」

 

《「ビワの強さはよく知っている。だからこそ、蟲使いに負けるわけがない。アイアールを脅かすための嘘だと考えた方がいい。よくてビワに次ぐ強さだろう。君なら大丈夫だ」》

 

「そんな感じはしなかったけどなあ…」

 

 

 カシオペアと通話しつつそんなことを言いながら入り口と思われる場所までやってきたアイアールを待っていたのは、五人のスター団だった。

 

 

「やあ。待ってたよ、アイアール」

 

「ピーニャ、メロコ、シュウメイ、オルティガ、ビワ…なんでここに!?」

 

《「なんだと!?」》

 

 

 待っていたのはスター団の元ボス五人組。アイアールの言葉にカシオペアもスマホロトムの向こうで驚き、五人は顔を見合わせて笑った。

 

 

「なんでって。ボスを守るために決まってるじゃん?」

 

「心配ないと思うけどな。スター団したっぱとしてここにいるだけだ」

 

「掟には「ボスが挑戦者に敗れた場合、ボスの座を引退しなければならない」とあるが、別にスター団をやめるとは言ってないでござる故」

 

「それで俺達が門番を買って出たってわけさ」

 

「今度は負けない!」

 

 

 それぞれタイマーボール、クイックボール、リピートボール、ゴージャスボール、ヒールボールを構えるピーニャ達。アイアールもモンスターボールを構えてウミトリオのリプルを繰り出して応戦しようとすると、通話が繋がったままのカシオペアが割り込んだ。

 

 

《「待て!そこまでして、スター団に残る理由はなんだ!?もういじめっ子はいない!学校で、平穏に過ごせば……」》

 

「何でって、決まってるじゃん?」

 

「「「「「スター団はマジボス(殿)が作ってくれた宝物だから」」」」」

 

《「ぐっ……」》

 

 

 揃って何でもない様に言い返すスター団に、何も言えなくなったのかカシオペアの通話が途切れる。

 

 

「やっぱりあんまり気が進まないけど……カシオペアとの約束なんだ!推し通る!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 五人を撃破し、コフキムシやコロボーシ、マメバッタやアメタマなどを使ってくる割に練度(レベル)が高い団ラッシュも乗り越えて、なんとか最奥まで辿り着いたアイアール。そのキャンプから出てきたのは、これまでにない異様なスターモービルだった。まるで蜘蛛の様に八本の昆虫の脚を模したメカアームが伸び、前輪からは蟷螂の様な鎌が取り付けられている、どぎついパッションピンクで蜘蛛の巣がペイントされたボディでライトは複眼を模している。その上に、意外と小柄なその少女はネットボールが取り付けられた虫取り網を肩にかけて目深に被った麦わら帽子をちょんと上げて鋭い眼光と赤い髪を覗かせアイアールを睨みつける。

 

 

「俺の育てた蟲ポケモンたちを突破してよく辿り着いたな。まず聞くぞ。お前は蟲ポケモンを軽んじる者か?」

 

「それ、は……」

 

「言いよどんだな?いきなりの問答に人間は蟲の脳の様に表面と直結した反応を見せる。それがお前の本音ってことだ」

 

 

 クルクルと新体操のバトンの様に虫取り網を振り回し、片手で握って突きつける少女。

 

 

「俺がスター団の六大ボスの一角にして、むし組チーム・カストゥラ頭領、ラウラだ。蟲ポケモンをいじめる生徒に言って聞かせていたら、のけ者にされてな?拾ってくれたスター団の用心棒をしている」

 

 

 ラウラと名乗った少女は妙に貫禄のある威風堂々とした佇まいで続ける。

 

 

「お前はスターダスト大作戦のアイアールだな?五人を倒してきた割に迷いを感じるな。もう一つ聞くぞ。何のためにスター団を襲う?スター団から居場所を奪ってなにがしたい?」

 

「私はただ、カシオペアにお願いされて、不良集団のスター団を解散させたいだけで……」

 

「それが答えか?そこにお前の意思はないのか?それならば、足りない足りない、足りないなあ!!」

 

 

 虫取り網を振り回し、まるで何かを確保するような乱舞で取り付けられたネットボールからビビヨンを繰り出して、周囲を旋回させ鱗粉をばら撒かせ煌めく中で舞い踊るラウラに、アイアールは怖気づいて後退する。

 

 

「――――――諸君!俺は蟲が好きだ!蟲ポケモンが好きだ!愛している!だからこの愛を以て証明する!蟲ポケモンはかっこよくてかわいくて美しくて最高で最強なのだと!」

 

「っ…」

 

「わかるか?お前に足りないものは、それは――――情熱、思想、理念、頭脳、気品、速さ、優雅さ、勤勉さ!そして何よりも ――――― 信念 が 足 り な い !!」

 

「信念……」

 

 

 そしてラウラが虫取り網を構えてポーズをとると、ビビヨンを筆頭にラウラの腰からコロトック、ビークイン、エクスレッグが繰り出されてカストゥラ・スターモービルと共にアイアールを取り囲む。

 

 

「自分の好きなもの(信念)を貫くトレーナーは強いぞ」

 

 

 そう豪語するラウラに、アイアールはモンスターボールを握った拳を突きつける。その目に迷いはなかった。

 

 

「私は……私は、私だけの宝物を見つけるために、できることをやるだけだ!シング!」

 

「ほのおタイプが!飛んで火に入る夏の蟲……そう簡単に燃えると思うなよ!」

 

 

 そして、繰り出されたシングの放ったフレアソングと、他のポケモンが引っ込み残ったビビヨンの放ったりんぷんが激突。爆発し、アイアールとラウラは激突した。




オコゲ林道をアジトとする六つ目のスター団、むし組チーム・カストゥラのボスとして君臨するラウラ。記憶はないのでなんか変なテンションになってます。立ち位置は隠しボス。

このアイアールはコライドンじゃなくてミライドンと出会っているし、ゲッコウガではなくリプルを使い続けています。あと多分ブルーフレア団もいない世界(構想当初はブルーフレア団を出す予定じゃなかった)

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSマフィティフⅡ

どうも、放仮ごです。昨日は間違えてバイオの小説をこっちに投稿する大ポカをやらかしました、更新されたとぬか喜びさせて申し訳ない。

今回はアイアールVSペパー、決着!楽しんでいただけたら幸いです。


 対峙するリククラゲとハルクジラのハルクララ。リククラゲはペパーが指示することなくハルクララを翻弄する様に周りを走り出す。素早い、だけどハルクララには通じない…!

 

 

「ゆきなだれ!」

 

「後ろに避けながらキノコのほうし!そいつは後攻で威力が上がる技だろ!」

 

 

 後出しすれば威力が上がるゆきなだれを指示したが、それを読んでキノコのほうしを指示してくるペパー。とくせいのきんしのちからで後攻にしてきた。ゆきなだれを受け止めた上で眠らせてくる。上手い、四倍ダメージスウェーで直撃させないことでダメージを押さえた上で行動不能にまでしてきた。

 

 

「くっ…起きて、ハルクララ!」

 

「今のうちに交代だ、スコヴィラン!にほんばれ!」

 

 

 いったん収まっていたにほんばれ状態をまた行使するペパー。まずい、いくらとくせい:あついしぼうでもこうかばつぐんを耐えれる威力は限度がある。

 

 

「ハルクララ!アクアブレイク!」

 

「だいもんじ、だぜ!」

 

 

 そしてにほんばれで巨大に炎上する大の字の火炎弾が放たれ、ギリギリで目を覚ましたハルクララの放ったアクアブレイクと衝突。ゆきなだれで冷やされた空気が熱膨張を起こして水蒸気爆発。ハルクララとスコヴィランはどっちも吹き飛ばされ、共に戦闘不能になってしまった。

 

 

「スコヴィラン!?」

 

「ありがとう、ハルクララ……負けられない、話したくない!お願い、ゲッコウガ!」

 

 

 ハルクララを戻してから、繰り出したのは最後の一匹であるゲッコウガ。リククラゲと相性最悪だけどやるしかない。

 

 

「約束は守ってもらうからな!おし、頼むぞリククラゲ!」

 

 

 ペパーが繰り出してきたのはやはりというかリククラゲ。じめんタイプが入っているおかげでみずタイプは等倍だけど、くさタイプはあまりにもきつすぎる。

 

 

「テラスタル……は使ったんだった…」

 

 

 ツムヅムで切ったのは早計過ぎたか。ツムヅムで全部突破できる自信があった故なのだが、ペパーが予想より強かったのを気付けなかった。だけど、それで諦める理由にはならない。

 

 

「ぜっ!たいに…!い!や!だ!」

 

「話すだけなのになんでダメなんだよ!?」

 

「……話しただけで危険だからだよ!」

 

 

―――――「私の正体を話したりしたら、許さないわよ?「目」はどこにでもいるのだから」

 

 

 マトイさんに言われたことがフラッシュバックする。ブルーフレア団に入るつもりは毛頭ない。でも、ラウラがプラズマ団だったかもしれないってことを話すということはその情報源についても多かれ少なかれ言及してしまうってことだ。私は核心に迫らないで話す自信が無い。そしてあの時のマトイさんの目は本気だった。もし話したらペパーが酷い目に遭うかもしれない。そんなの嫌だ。

 それに、ぺパーがブルーフレア団なわけがないし、ラウラがプラズマ団かもと知っても今さらペパーが忌避しないのは頭ではわかってる。でもそれでも。……「聞かなきゃよかった」とか言われて恨まれるかもしれない、豹変して私を攻めたてるかもしれない。人間には裏の顔がある。…信じるのが怖いよ。

 

 

「勝てば、納得して、くれるよね!みずしゅりけん!」

 

「いいぜ!納得はしねえが無理に聞くのは諦めてやるよ!だが俺は負けねえ!お前が……そんなに苦しむ必要ないだろ!友達(ダチ)なら、遠慮なく巻き込めよ!パワーウィップ!ヘドロばくだん!」

 

「たたみがえし!」

 

 

 みずしゅりけんを触手で薙ぎ払い、ヘドロの塊を飛ばしてくるリククラゲの攻撃を地面を捲り上げて防ぐゲッコウガ。そのまま捲り上げた地面を蹴り砕いて破片をリククラゲにぶつけて怯ませると、ムーンサルトでその背後に回り込む。

 

 

「つじぎり!」

 

「後ろにだいちのちからだ!」

 

「かげぶんしん!」

 

 

 すると地面から噴き出た光線に撃ち抜かれながらもゲッコウガはその姿を消失させ、上からつじぎりを叩き込み、急所に炸裂してリククラゲはダウン。咄嗟にかげぶんしんを指示できたけど、ゲッコウガの動きにペパーはついてきていた。かげぶんしんも多用したら見破られるかもしれない、気をつけないと。

 

 

「頼むぜマフィティフ!頑固なアイアールの心の壁を噛み砕け!」

 

「…っ」

 

 

 次に繰り出されたのはテラスタルしたマフィティフ。さっきからペパーは本気で私の身を案じている、様に聞こえる。信じていいのかな。ううん、裏切らないとはわかってるんだ。…こんなに強いなら、話しても大丈夫かも…?

 

 

「マフィティフ!全力でぶつかれ!かみくだく!」

 

「……ゲッコウガ、みずしゅりけん!」

 

「ゲコ」

 

 

 頭部の宝石を輝かせて、大きく口を開けて突撃してくるマフィティフに、両手の間に水で手裏剣を形作るゲッコウガだったが、何を思ったのかみずしゅりけんを形成するのをやめてしまった。驚く暇もなく、マフィティフのかみつきの直撃を受けて大きく弾き飛ばされるゲッコウガ。

 

 

「げ、ゲッコウガ?」

 

 

 信じられないとばかりに大の字に倒れたゲッコウガに視線を寄せる。するとゲッコウガは戦闘不能のはずなのに、視線を向けてきた。それはまるで、促しているようで。もしかして、わざと攻撃を受けて負けたの…?なんで、ゲッコウガは絶対に裏切らない、はず…。

 

 

「…案外、決着はあっけないちゃんだったな」

 

 

 テラスタルを解いたマフィティフと共に歩いてくるぺパーにびくっとなりしゃがんで頭を抱える。いやだいやだいやだ、話したくない!ペパーにまで裏切られたくない!

 

 

「……まあそんなこったろうと思ったぜ。お前は一つ決めたら頑固だからな。しかも納得いかなかったら執拗に攻めたてるねちっこさもある。…でもな、ゲッコウガがわざと負けた理由は分かるぜ」

 

「え…?」

 

 

 思わず顔を上げる。そこには、満面の笑みでゲッコウガに手を貸して立ち上がらせるペパーの姿があった。

 

 

「お前のことが大好きだから、お前のそんな顔を見たくないから、命令に背いてでも自分の忠義を貫いたんだ。大した奴だぜ、さすがお前の相棒だな!」

 

「…ゲッコウガ」

 

 

 よろよろとふらつきながらも私をジッと見てくるゲッコウガに、言葉がつまる。……そうか、私は……ラウラのことも、ペパーのことも、昔からの相棒のゲッコウガのことも……私自身が、信用しきれてなかったんだ。

 

 

「…ありがとう、ペパー。ペパーのおかげで誤解しなくて済んだ。約束だから教えるね」

 

「いいのか?」

 

「うん。…私も腹をくくった。狙われるなら、私が守ればいいんだ……ある人から。ブルーフレア団のボスを名乗った、オレンジアカデミー司書のマトイさんから……ラウラがプラズマ団だって証拠を見せられたんだ。だから、記憶を取り戻さなきゃいいだなんて…勝手に動いた。マトイさんのことを話したら許さないととも言われて、私どうすればいいか分からなかった」

 

「なんだって!?マトイさんっていやあ、マフィティフを治す方法を一緒に探してくれた人だぞ!?あの人が……それにラウラがプラズマ団だなんて、それもありえねえ!あいつはむしろ蟲ポケモンと一緒に過ごしたいって人間だろ!?」

 

「うん、そう。そうなんだ。私は、ペパーみたいにまず疑うことをしなかった。マトイさんに裏切られたってショックで、冷静に考えることを忘れていた。ラウラがプラズマ団だろうがなんだろうが関係ない。ひとつわかっているのは、ラウラが私の友達だってこと。だから私、信じるよ。ラウラを信じて…スパイスを、渡してみる」

 

 

 父親に。フラダリさんに。マトイさんに。科学者のみんなに。プラズマ団の恰好をしたラウラの写真に。裏切られて、裏切られて、裏切られて、裏切られて、裏切られて……信じることをいつの間にか忘れてしまっていた。怖がってばかりじゃ駄目なんだ。

 

 

「…おう!その顔だ!俺はお前のその顔が大好きなんだぜ!アイアール!」

 

「えっ」

 

 

 吹っ切れた私の言葉に呆気にとられていたペパーがいきなりそんなことを言ってきた。お、臆面の無くそういうこと言うんだ…顔が熱くなるのを感じて、慌てて背けると、慌ててプラトタウンに走って行くトレーナーたちが見えた。

 

 

「おい聞いたか!テーブルシティが謎の連中に占拠されて、不良集団のスター団が戦ってるらしい!」

 

「本当かよそれ!?見に行くぞ!」

 

「……聞いた?ペパー」

 

「ああ。プラトタウンの騒ぎはこれみたいだな。俺達も行くぞ!ラウラも来てるかもしれない!」

 

「うん!」

 

 

 コライドンを出して、ペパーを乗せてプラトタウンに走り出す。謎の集団とは十中八九ブルーフレア団だろう。恐怖を乗り越えるんだ。そしてラウラに会えたら……まず、謝ろう。




信じる、それが足りなかったアイアールでした。


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VSシビルドン

どうも、放仮ごです。なんと17話ぶりのラウラのターンとなります。

今回は断崖絶壁から落ちたラウラのその後。楽しんでいただけたら幸いです。


 首から下の冷たい感覚に、目が覚める。目を開けたら、切り立った崖が揺れて見えて。周りを見渡すと、海のど真ん中でプカプカ浮いていた。これは……糸が俺の胴体に巻き付いて浮き輪みたいになってる…?泳ぐの苦手だから助かった。

 

 

「っ、そうだ!ダーマ!ジャック!」

 

 

 一緒に落ちた二人を探して辺りを見渡す。間違いなく、俺が土左衛門にならずに浮いてこれたのはダーマのおかげだ。代わりに溺れているとかだったら洒落にならない。

 

 

「ああ、よかった…無事だったか」

 

 

 じたばた暴れてなんとか体勢を整え、泳いで探していると岩肌の向こう側に、同じく糸でグルグル巻きにされて仰向けにプカプカ浮いているバサギリのジャックと、その上に呑気に寝ているワナイダーのダーマがいた。瀕死に近いようだが無事の様だ。よかった。

 

 

「戻れ」

 

 

 二体を落として無かったネットボールに戻し、プカプカ浮かびながら上を見る。とんでもない断崖絶壁だ。よく生きてたな。いや、ダーマとジャックが庇ってくれたから無事なのか。こりゃ登るのは骨だぞ。

 

 

「えっと」

 

 

 手持ちを確認する。レクスとジャックとダーマが瀕死で……残るはレインとケプリベ、ぼむんとウカか。……うちの面子、登ることにかけては苦手な奴が一人もいないな。レクスに抱えてもらって跳んでもらうのもよし。ジャックにしがみついて登るのもよし。ダーマに抱えてもらって糸を伸ばして登るのもよし。レインで飛ぶのもよし、ケプリベに持ち上げてもらうのもよし、ぼむんに乗って浮かぶのもよし、ウカにしがみついて登るのもよし。…レインがいいかな。

 

 

「頼む、レイン」

 

 

 アメモースのレインを繰り出して、その下部の突起に掴まると、パタパタと小さな翅を懸命に羽ばたかせて持ち上げて飛んでくれるレイン。よしよし、このまま登り切ってからぼむんに切り替えるか。そう思っていた時だった。

 

 

「ぐううう!?」

 

 

 ビリリリッと衝撃が突き抜けて、たまらずレインから手を離してしまって水面に落ち、全身を襲う痺れにもがく。見れば、細長く黒い体のポケモンが十字の牙を大きく開いて泳いできていた。あれはシビルドンか…?いや、なんかキラキラしている。宝石の身体……テラスタルか。あの形状はドラゴンテラスタルか?お前の住処を荒したから怒っているのかもしれないが、ダーマの糸製救命胴衣がなかったら死んでたぞこの野郎。

 

 

「っ…ぜー!はー!……レイン!エアスラッシュ!」

 

 

 なんとか海面に浮かび上がって、息継ぎしてからレインに指示。空中から風の刃を飛ばして水中のシビルドンを狙うレイン。しかしシビルドンは素早い身のこなしで全弾回避、水中からほうでんしてレインを撃ち落としてしまう。

 

 

「なんとか地上に……時間を稼げ、ケプリベ!じんつうりき!」

 

 

 生憎、俺の手持ちで水中戦ができる面子は存在しない。レインが水に耐性があるぐらいだ。だから遠距離戦ができるベラカスのケプリベを選択。じんつうりきで海を竜巻状に持ち上げてその中にシビルドンを巻き上げることに成功する。

 

 

「よし、このまま…!?」

 

「ズボボボ!」

 

 

 するとシビルドンはとぐろを巻いたかと思えば全身に電撃を纏ったワイルドボルトで念動力ごと水の竜巻を吹き飛ばし、口から竜の形をしたエネルギー…りゅうのはどうを放ってケプリベを一撃で落としてしまった。

 

 

「嘘だろ…!?」

 

 

 慌てて必死に泳いで遥か彼方に見える断崖絶壁じゃない岸を目指す。あそこまでいければ、ウカなりぼむんなりで迎撃できる…!

 

 

「ぐあああああっ!?」」

 

 

 しかし容赦ないほうでんが背中から襲い、突き抜ける衝撃に絶叫を上げる。やばい、意識が一瞬飛んだ。しかも海水に浸かってるせいでスタミナも……くそっ、せっかく生き延びたのにここまでかよ……

 

 

「あ、いたいた!」

 

 

 あれ…?あまりに意識が朧気になりすぎたせいで絶対聞こえない筈の声が聞こえてきた。おかしいだろ、お前がここにいるのは。今頃どっかのジムで待ち伏せでもしてるんじゃないのか…?

 

 

「あれ?私に気付いてないのかな?おーい、ラウラー!」

 

「ね、も……」

 

 

 やべえ、岸に立ってこちらに大きく手を振ってる幻影まで見えてきた。あの世からの死神がネモの姿にばけてでてきたか…?だとしたらわかってないぞ死神め。俺は確かにネモが苦手だが、恩人だしアイツとのバトルは結構好きだ。めんどくさいだけで。だから俺を手招けると思ったらお門違いだぞ。

 

 

「なんか失礼なことを考えてる気がする……あ、もしかして後ろのシビルドンに襲われてる?ラウラだったらそれぐらい簡単に倒せそうだけど……なんか弱ってるのかな?よーし!マスカーニャ!」

 

 

 するとネモの幻影がマスカーニャを繰り出してきたが無駄だ。いくらトリックフラワーでもあれはあくまで相手に気付かれない様に投擲する技。こんな遠いところまで当てれないだろ。

 

 

「アイアールのゲッコウガから思いついて練習した新技、いっくよー!マスカーニャ、オーバーヘッドトリックフラワー!」

 

「え?」

 

 

 瞬間、自分の目の前に花束を落としたかと思えば、綺麗に引っくり返りオーバーヘッドキックで花束を蹴り込んでくるマスカーニャ。思わず目が点となった俺の頭上を越えて、シビルドンに直撃。吹っ飛ばした。

 

 

「え、ええ……」

 

「次!パーモット、でんこうせっか!」

 

 

 今度はパーモットを繰り出したかと思えば、当たり前の様に空を蹴ってこっちまでやって来たかと思えば俺の手を掴んで海水から引き揚げ、そのままネモの下まで蜻蛉返りしてしまった。ネモの傍の砂浜に投げ出され、ゲホゴホと飲み込んでいた海水を吐きだす。

 

 

「大丈夫?ラウラ。脱水症状にもなってるっぽい?ほら、水筒!」

 

「ありがとう。……え、幻じゃない…?」

 

 

 差し出してきた水筒を受け取り喉を潤して、これが幻じゃないと実感しネモに振り向く。いつも通りの制服姿のネモが首を傾げて立っていた。

 

 

「おま、なんでここに……?」

 

「ラウラ達遅いなーって、ラウラに買ってあげたスマホロトムの保護者追跡機能を見てみたら変な位置にあったから探しに来てみたんだよ。アイアールは?一緒じゃないの?」

 

「待て待て待て待て待て待て」

 

 

 今なんか聞き捨てならないことを言ってなかったか?え、保護者追跡機能?たしかに今のスマホロトムはネモが実家の会社のコネでもらった最新版で設定とかも全部ネモがやってくれたが……え?そんなことしてたのお前?

 

 

「もしかしていく先々で出くわしてたのって……」

 

「もちろん、戦いたいなーと思ったら確認して会いに行ってたんだよ?」

 

「……そうだった、お前はネモだった」

 

「なんか失礼な意味で私の名前を言ってない?」

 

「気のせいだ。多分。きっと。メイビー」

 

 

 そう思うことにする。じゃないとネモに恐怖を抱きそうだ。

 

 

「? まあいいや、それでアイアールは?」

 

「アイツはなんかやることがあるとかで別行動していて、俺はスター団チーム・カーフのアジトに向かっていたところでオンバーンの群れに襲撃されてこんな有様だ」

 

「もしかして上から落ちたの?よく無事だったね!さすがラウラ!」

 

「お前こそ俺の名前をなんか失礼な意味で言ってないか…?」

 

「そっか、アイアールのやらないといけないことか……もしかしてあれかな?気になったけどラウラと戦いたかったから無視してたけど」

 

「おいそっぽを向くな」

 

 

 すると自分のスマホロトムを取り出してテレビのチャンネルを映すネモ。そこに映っていたのは、ドローンロトムから撮影されいるらしきテーブルシティ…!?

 

 

「ピーニャ、シュウメイ、オルティガ!?それにバラにアケビに…なんだこの数のエスプリは!?」

 

「なんか、テーブルシティ襲撃されたんだって。他の町でも襲撃されていてジムリーダーたちが対処に追われてるみたい?」

 

「お前、そういうことは早く言え!?もしもし、そらとぶタクシーか!?」

 

 

 本当に俺と戦いたかったのか興味が薄いネモにツッコみながらスマホロトムでそらとぶタクシーを呼び出す。ブルーフレア団の奴らがおっぱじめやがった、急がないと。

 

 

「ネモ、お前も来い!…そのあとならいくらでも戦ってやるから!本気でだ!」

 

「本当!?女に二言はないからねラウラ!」

 

「それ言うなら男に、だぞネモ」

 

 

 やっぱりネモ、バトルジャンキーなんだなと実感した。




ダーマの機転のおかげで無事ですんでいたけど長い事気絶していたラウラでした。

ペパーのターンの次はネモのターン。とんでも技を引っ提げてネモ参戦。優先順位がラウラ>アイアール>ポケモンバトル>越えられない壁>それ以外、という清々しさ。地味にラウラのスマホロトムに仕込んでました。

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VSウェーニバル

どうも、放仮ごです。ラウラとチヲハウハネのコンビを倒したマトイの実力発揮です。

今回は最後の役者VSマトイ。楽しんでいただけると幸いです。


 オレンジアカデミー校長室。元々研究室として使われていたそこのコンソールでマトイはフレア団時代からの部下を数人率いて機材を操作していた。傍にはウェーニバルが踊りながら待機している。

 

 

「ボス、餓鬼どもが殴り込んできたみたいですけど大丈夫なんです?」

 

「戦力差は圧倒的よ。本来はエネルギー確保用だけどグロリアさんが予想以上に集めてくれたおかげで戦力として起用できた四災(スーザイ)もいるわ」

 

 

 自身も持つタイマーボールに入っている四災(スーザイ)の一匹を見ながらそう言い、カタカタと高性能スペックのコンソールを動かすマトイ。自前のでもいいのだが、性能の高い方を使った方が安定するという考えだ。

 

 

「残るアイアールさんは籠絡済、ラウラさんが生死不明になった以上、不確定要素はネモさんだけね。今のうちに最終兵器を呼び出すわよ」

 

 

 そう言ってエンターキーを押そうとしたマトイだったが、突如校長室の扉が吹き飛ばされて、飛んで来た火炎を、傍に控えていたウェーニバルが水を纏った蹴りで相殺する。振り返ったそこにいたのは、キョダイマックスのイーブイを模したバッグを背負い、フードで顔を隠している小柄な少女だった。傍にはブースターが控えている。

 

 

「お前、何者だ!」

 

「邪魔はさせんぞ!」

 

「ブースター、ばかぢから」

 

 

 ブルーフレア団したっぱである男女が手持ちのデルビルとメグロコを繰り出して応戦するも、ブースターで一蹴する少女。そのまま吹き飛ばしたデルビルとメグロコでしたっぱを押し倒し、校長室に足を踏み入れる。

 

 

「……私の名はカシオペア。私の宝物を返してもらう」

 

 

 そう名乗って手をかざしたカシオペアに頷き、身構えるブースターと、マトイを庇うように前に立つウェーニバルが睨み合う。そして加勢しようと残りのしたっぱがボールを構えるのを、マトイは手で制した。

 

 

「カシオペア……ラウラさんが参加していたスターダスト大作戦の首魁ね?まさか貴方だったとはね…ボタンさん。こんにちは。いい子にしてる?」

 

「…まあばれてるよね。ウチの相談にも乗ってくれてたし」

 

 

 フードを下ろして現れたのは、スターダスト大作戦の補給班だったはずのボタン。ボタンは驚きもせず身構えると、マトイは楽しそうに笑う。

 

 

「貴方がスター団のマジボスだってことも知ってるわ。前の教頭が消したデータを復旧させて見させてもらったもの。ここにきた目的は、スター団を乗っ取った私への復讐かしら?」

 

「違う。レホール先生との会話は自室で監視カメラをハッキングして聞いていた。パルデアを滅ぼすだなんて、そんなこと断じてさせない。みんなを死なせない。…外の様子もハッキングして確認した。ピーちゃんとシュウメイとオルくんが、メロちゃんとビワ姉と戦ってるところなんて見たくなかった。お前を倒して二人を取り戻す!」

 

 

 そう怒りをあらわにするボタンに、マトイは笑って腕を組み挑発する。

 

 

「あなたにできるかしら?」

 

「できるかじゃない。……スター大作戦と同じだ。やるんだよ!ブースター、フレアドライブ!」

 

「ウェーニバル、アクアステップ」

 

 

 そしてそれぞれ炎と水を纏ったブースターとウェーニバルが激突、水蒸気が校長室に充満する。

 

 

「交代。リーフィア、リーフブレード!」

 

「こちらも交代。モスノウ、おいかぜ」

 

 

 水蒸気の中で交代させたボタンのリーフィアが草の刃となった尻尾を叩きつけるも、同じく交代していたモスノウが突風を発生させて水蒸気をリーフィアごと吹き飛ばし、さらにリーフィアの身体が凍り付いて行く。マトイが司書として活動している際に連れていたことで存在はボタンも知っていたポケモンだ。

 

 

「私は水と氷タイプの使い手。水と氷はさりげなく、確実に広がって行く。こなゆき」

 

 

 おいかぜに乗せて放ったこなゆきで、さりげなくリーフィアを凍り付かせていたマトイに、ボタンは実力の差を実感して苦々しく表情を歪ませる。

 

 

「リーフィア、にほんばれ!」

 

 

 対してボタンはにほんばれを指示して校長室を日差しが強い状態にするとかいうよくわからないことを起こし、その日光をリーフィアに充填させる。

 

 

「ソーラービーム!」

 

「むしのさざめき」

 

 

 そして発射されたソーラービームとむしのさざめきが激突。したっぱが衝撃波に巻き込まれて転倒し、機材が吹き飛んでいく。それを見たマトイは肩を竦めた。

 

 

「ここを巻き込むわけにはいかないわ。外に出ましょうか」

 

「誰が…」

 

「ちょうのまい」

 

 

 誘いに乗ろうとしないボタンごと、蝶々が舞い踊るような動きで翅にリーフィアを巻き込み、窓から飛び出させるモスノウ。マトイもそれを追って素の身体能力でスタッと着地。裏庭でマトイとボタンは対峙することとなった。

 

 

「無茶苦茶な・・・こんな人だとは思いもしなかった」

 

「時には大胆にやるのも嗜みよ?」

 

「リーフィア、にほんばれからのソーラービーム!」

 

「ちょうのまい、こなゆき」

 

 

 相性が悪いと分かっていながらも撃つしかなかったソーラービームを、軽々と回避。返しにこなゆきで着実にダメージを与えて行くモスノウ。にほんばれで威力が下がっていながらも鋭いダメージを与えて行く。

 

 

「ふぶきは命中率が低い技だから採用してないのよね。使うなら確実性を取るわ。こうすればいい。おいかぜ、こなゆき」

 

 

 おいかぜを発生させ、それにこなゆきを乗せることで擬似的なふぶきを使用。リーフィアは凍り付いて崩れ落ちる。慌ててリーフィアを戻すボタン。

 

 

「私のみずタイプに対する打点が減った様ね?」

 

「でもにほんばれは使えた。ブースター、頼んだ」

 

「モスノウ、戻りなさい。頼んだわ…ブロスター」

 

 

 再度ブースターを繰り出すボタン。対してモスノウを戻したマトイが繰り出したのはブロスター。アイアールと接触していた時に使っていたポケモンだった。

 

 

「かえんほうしゃ!」

 

「防ぎなさい。あくのはどう。りゅうのはどう。みずのはどう」

 

「避けて、ブースター!フレアドライブ!」

 

 

 巨大な右腕の鋏で炎を防ぎ、「はどう」の技の威力を上げるとくせい、メガランチャーを持つブロスター故の猛攻がブースターに襲いかかり、炎を纏って加速し回避していく。

 

 

「逃がさないわ。はどうだん」

 

「くっ……ばかぢからでこじ開けろ!」

 

 

 対して必中のはどうだんを当ててダメージを与えるマトイに、ボタンは強引な手段を選択。ばかぢからでブロスターの防御をこじ開けんとする。

 

 

「フレアドライブ!」

 

「付き合う必要はないわ。吹き飛びなさい、みずのはどう。そしてりゅうのはどう」

 

 

 鋏を弾いたそこに最大火力の技をブチ込むも、ブロスターは鋏から放出した水流で空を飛んで回避。さらに空中からりゅうのはどうを放ってブースターを撃ち抜き、戦闘不能にした。

 

 

「ブースター!……なら、ブラッキー!」

 

「それは面倒ね?」

 

 

 ブースターを戻したボタンが繰り出したのは、防御に優れたブラッキー。遠距離型のブロスターと言えど崩すのは難しいポケモンだ。

 

 

「いいわ。貴方の強さに免じて……ちょっとだけ本気を出してあげる。ガブリアス」

 

「は?」

 

 

 そして、ブロスターを戻したマトイが繰り出したのはガブリアス。みずでもこおりでもないポケモンに首を傾げるボタンだったが、続けてマトイが掲げたものを見て納得する。それは、テラスタルオーブだった。

 

 

「根源の水の力を得なさい。テラスタル」

 

 

 光り輝き、青い輝きと共に噴水の様な宝石を頭部に身に着け咆哮を上げる、みずテラスタルのガブリアス。

 

 

「…それは反則でしょ」

 

「ラウラさんすら圧倒したこの子の力、見せてあげるわ」




カシオペアことボタン参戦。これで役者は揃った。

マトイはみず・こおり使い。現在判明している手持ちはモスノウ、ブロスター、ウェーニバル、ガブリアス(みずテラス)、パオジアンとなります。六匹構成なので後一匹いたり。

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VSガブリアスⅠ

どうも、放仮ごです。今作オリジナル要素が解禁です。

今回はマトイVSボタンの続き。楽しんでいただけたら幸いです。


 まるでウェイターがお盆を持つかの様に、左手を腰にやり涼しい顔で右手で持ったテラスタルオーブが眩く光り輝き、マトイの前で両腕を交差し大きく開いて咆哮を上げたガブリアスの姿が結晶化し噴水の様な結晶を頭部に身に着け両腕に水流を纏う。そんな相手と相対し、歯を噛みしめるボタンと身構えて威嚇するブラッキー。

 

 

「そいつ、絶対攻撃力高いだろ!イカサマ!」

 

「アクアブレイク」

 

 

 敵の攻撃力を利用するイカサマを指示するボタンに、黒いエネルギーを纏い突撃するブラッキー。しかしガブリアスは水を右腕の爪に集めて地面に叩き付け、津波を発生させて触れることなくブラッキーを押し流す。

 

 

「さっきからようわからん技の使い方をして…!」

 

「あら、愚直に技をそのまま使う方がナンセンスよ。テラスタルは特定の技の威力がさらに上がるのが特徴よ。利用しない手はないわ」

 

「あくのはどう!」

 

「じしん」

 

 

 ならばと距離を取って遠距離から放ったあくのはどうも、ガブリアスが地面に爪を突き刺して震動を送り込み土の壁を隆起させて完全に防いでしまう。

 

 

「おまっ……ガラルのグランドウォールみたいな真似を…!?」

 

「強者の戦い方は取り込んで行かないとね?なにせ世界を敵に回すのだから。ドラゴンクロー!」

 

「そりゃ道理だ。でもウチも、伊達に酔狂でスター団を立ち上げた訳じゃない…!のろい!」

 

 

 のろいですばやさを犠牲に攻撃力と防御力を底上げし、身構えるブラッキーにドラゴンクローが突き刺さり、吹き飛ばす。

 

 

「ブラッキー、負けるな!あくのはどう!」

 

 

 吹き飛ばされたブラッキーは空中で身を捩ってあくのはどうを放ちながら着地。ガブリアスはそれをドラゴンクローで受け止めながら突撃する。

 

 

「アクアブレイク!」

 

「あくび!」

 

 

 咄嗟にあくびを指示。ブラッキーは水を纏った一撃が突き刺さる直前に欠伸をガブリアスに移して、そのまま吹き飛んで崩れ落ちる。戦闘不能だ。

 

 

「よくやった、ブラッキー。そのまま使い続けたら眠るけど、いいん?」

 

「よくはないわね。してやられたわ。交代しましょう」

 

「シャワーズ!」

 

 

 ブラッキーを戻し、シャワーズに交代するボタン。対してマトイもガブリアスが眠る前にボールに戻すが、次のポケモンを出してこない。

 

 

「…?なんのつもり?ウチをなめてんの?」

 

「まさか。この日光を利用させてもらってるだけよ」

 

 

 瞬間、横から伸びてきた氷の鎖に四肢を捕らえられ、空中に持ち上げられるシャワーズの身体が凍り付いて行く。こおり状態だ。

 

 

「シャワーズ!?一体どこから……」

 

「私が繰り出したのはフリージオよ。知ってるかしら?フリージオは気温が高いと水蒸気になるけど、死んだわけじゃなく気温が低くなれば元に戻る。つまりは……水蒸気の姿でも活動できるのよ。そして氷の鎖で相手を締め上げるとそのまま一気に凍らせてしまうのよ」

 

「なるほどね……でも、ウチのシャワーズはガラル出身だ!ねっとう!」

 

 

 にやりと笑ったボタンの指示に頷き、熱々の熱湯を発射するシャワーズ。パルデアのポケモンは覚えない技の一つ、ねっとう。自身がこおり状態でも使える技であるそれは氷の鎖の先にぶつかり、水蒸気となっていたフリージオが実体化しふらつく。

 

 

「なかなかやるわ、ね!フリーズドライ!」

 

「シュウメイ直伝!水遁の術(とける)!」

 

 

 みずタイプにも効果抜群な冷気を放つフリージオの攻撃を、その身を溶かして液体化することで素早い動きで回避。フリージオに纏わりつく。

 

 

「そのままねっとう!」

 

「熱湯如きで氷は溶かせない。ぜったいれいど」

 

 

 そのままねっとうを溶けた体から放出し、フリージオに大ダメージを与えようと試みるが、凍てつく視線でマトイが指示したぜったいれいどが発動。周囲一帯が凍てついて氷の世界に変貌し、凍り付いたシャワーズがごとりと音を立てて崩れ落ちる。戦闘不能だ。

 

 

「くっ…やっぱりウチには、ラウラ程の実力は……!サンダース!」

 

「眠気からは覚めたかしら?ガブリアス」

 

 

 悔しげにシャワーズをボール戻し、サンダースを繰り出すボタン。対してマトイはテラスタルしたせいででんきが弱点となっているガブリアスを繰り出した。

 

 

「…やっぱりウチのことをなめてんの?そっちがその気なら……星々の様にテラスタル!なりたい自分に変身しろ!」

 

 

 ボタンは最後の一匹ではないが切り札を切ることを選択。サンダースをテラスタルさせ、電球の様な結晶を頭に乗せた姿に変身させる。

 

 

「ぶっ飛べ!じゅうでん!からの……かみなり!」

 

 

 じゅうでんさせ、威力が二倍となった上にテラスタルでさらに威力が上がったかみなりをぶちかますボタン。しかしマトイは冷静に、懐からあるものを取り出して光り輝かせる。

 

 

「生憎だけど、私のガブリアスはただのテラスタルじゃないわ。メガシンカ……否。テラシンカ」

 

 

 瞬間、手にしたそれ……虹色の宝石が中央に埋めこまれた黒い菱形のブローチ、メガブローチから溢れだした虹色の光と、ガブリアスの胸元から溢れだした虹色の光が繋がり、虹色の繭に包まれて、さらにそれが結晶化。砕け散った瞬間、かみなりを凄まじい速さで回避してサンダースの背後に現れるガブリアス。雷の着弾速度をあっさり超えていた。

 

 

「え、はや……!?」

 

「アクアカッター」

 

 

 一瞬で目にも留まらぬ斬撃を与えてサンダースを戦闘不能にさせたガブリアスの姿は激変していた。

 

 

「…メガシンカ、いや違う…!?」

 

「メガシンカ+テラスタル、即ちテラシンカ。ポケモンとの絆が無いと出来ない、最強の力よ」

 

 

 ガブリアスがメガシンカした姿、メガガブリアスに似てこそはいるが、テラスタルしていることを表す様に全身結晶化しているだけでなく鋭く細部がシャープになっており、加速しやすい形状となっている。結晶化した牙も一対口からはみ出しており、角の様に天を突き。特徴的な頭部のヒレは鋭い三日月状の刃と化しており、瞳はギラギラと深紅に輝き。爪は三つに増えてさらに鋭く湾曲しており、腕ヒレは長く鋭い太刀の様に変化。背中の背鰭は大きく半月状に広がっており、全身から刃を生やした様な姿になったガブリアスが、氷の世界に立ちはだかっていた。

 

 

「メガガブリアスは強大な力故にすばやさを犠牲にするけど、テラガブリアスは違うわ。防御力を捨てて空気抵抗と水圧の抵抗を更に少なくし、さらに攻撃力と素早さに特化した姿。たしかにラウラさんとチヲハウハネのコンビは強かったわ、即席とは思えないほど。でもこの子には手も足も出なかった。断言するわ、今のこの子は最強よ」

 

「……(知らせないと)」

 

 

 最強の敵。それを前にしてボタンが考えたのは、避けられない自身の敗北と、この存在を誰かに伝える事。そして脳裏に浮かんだのはラウラとアイアール、自身の希望となった二人の顔だった。

 

 

「ニンフィア!マジカルシャイン!」

 

「むっ…!?」

 

 

 ボタンはサンダースを戻すなり、最後のボールを地面に叩きつけてニンフィアを繰り出すと発光させ目くらまし。それに思わず目を瞑るマトイとテラガブリアス。そして目を開けると、ボタンとニンフィアは消えていた。

 

 

「…やられたわ。彼女もエスプリにしようと思っていたのに。……放置するのも面倒になるかしら」

 

 

 そう言って校舎を一瞥するマトイ。その視線は、冷酷に研ぎ澄まされていた。




テラスタル+メガシンカ=テラシンカ。理論上はできそうよね。

・ガブリアス→テラガブリアス♂
とくせい:さめはだ→きれあじ
わざ:アクアブレイク
   ドラゴンクロー
   じしん
   アクアカッター
もちもの:ガブリアスナイト
テラスタイプ:みず
備考:れいせいな性格。ちょっぴりみえっぱり。列柱洞出身のあいつ。カロスから持ち込んだメガシンカと、パルデア特有のテラスタルを合わせたマトイの切り札であり、キリエのじしん戦法も使える。防御力が紙も同然となっており、その分攻撃力とすばやさが底上げされている。その速さは雷の着弾速度を越える程。ラウラとチヲハウハネのコンビを一方的に敗北に追い込み、ラウラがエスプリの実験体にされ記憶を完全に失うこととなった原因。


次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSイーユイⅡ

どうも、放仮ごです。多分今回はみんな首を傾げそう。

というわけでネルケもといクラベルsideの話です。楽しんでいただけると幸いです。


 カーフ・スターモービルの突撃から逃れたネルケ……クラベルはスペシャルエスプリの一人……蜂の巣の様な模様がヘルメットに描かれたエスプリ(オー)に襲われ、応戦していた。ビークインを使うエスプリOにヤレユータンを倒され、じり貧のクラベル。

 

 

「むしタイプでここまでの強さ……ラウラさんじゃないとするとオレアさんですか。スター団のみならず、こんなにも生徒が悪党に利用されるとはなんたること…!それに気付かなかった自分が愚かしい…!」

 

 

 エスプリOの装着者の正体に気付いたクラベルは悔しさと不甲斐なさから歯噛みする。そもそも持っているポケモンがヤレユータン、ユキノオー、ポットデス、モロバレル、ギャラドス、ヘルガーと大半以上がむしタイプに弱いメンバーであるクラベル。ヘルガーを繰り出して応戦するが、完璧なタイミングで放たれるぼうぎょしれいで防がれた挙句にパワージェムで追い詰められていた。

 

 

「ヘルガー!」

 

「こうげきしれい」

 

 

 ビークインがしもべを呼び出し、ヘルガーを滅多打ちにして戦闘不能にしてそのままクラベルを狙うエスプリO。指示しなくても自在に操れるボールジャックを利用した戦法はオレアの実力を遺憾なく発揮している。

 

 

「私は不甲斐ない校長ですが……せめて、貴方だけは救って見せます…!」

 

 

 ヘルガーを戻してギャラドスを繰り出して徹底抗戦の構えを取るクラベル。対して無情に手を突き出して無言で指示を送るエスプリOだったが、突如何かに気付いたかと思えばヘルメットを押さえて暴れ始めた。

 

 

「なんです!?」

 

「ぐ、う……外部アクセス、不正ログイン……ファイアウォールを突破……コードが書き換えられ……―――――」

 

 

 そしてガクンと電源が切れた様に項垂れるエスプリO。ビークインとギャラドスは顔を見合わせ恐る恐るとエスプリOに視線を向け、クラベルも何ごとが起きたのかわからず困惑するのだった。そして、ダフネの方では……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イーユイの放った灼熱の炎に、視界がホワイトアウトし咄嗟に目を瞑る。ほのおタイプの使い手に蟲ポケモンで挑むのはさすがに無謀だったかと後悔するももう遅い。兄さん、ごめんなさい……。

 

 

「……あれ?」

 

 

 何時まで経っても灼熱の炎が来ないことに 目を開ける。そこには、ビークインがぼうぎょしれいと思われる六角形の小型エネルギーを並べたバリアで灼熱の炎を防いでいる光景があった。

 

 

「新手の存在を確認。即対応……ぐあっ!?」

 

 

 エスプリMも驚いている様子で、イーユイに指示してビークインもろとも焼き尽くそうとしたようだが、突如横から別のエスプリが飛び出してきて飛び蹴りをエスプリMに叩き込み、蹴り飛ばす。そのエスプリはネットボールを取り出すとビークインを戻し、代わりに別のポケモンを繰り出す。こおろぎポケモン、コロトックだ。

 

 

「イーユイ、れんごk」

 

「コロトック、ほろびのうた」

 

「え?」

 

 

 そのエスプリから聞こえた声はラウラさんその人で。両手をバイオリンと弦の様に構えたコロトックの演奏した旋律を聞いたエスプリMはれんごくを使おうとしていたイーユイを咄嗟にタイマーボールに戻すエスプリM。

 

 

「ラウラ、さん?」

 

「ダフネか。下がってろ、アイツは俺が倒す」

 

 

 そう、いつもの頼もしい声色で返してくるラウラさんと思われるエスプリ。するとエスプリMがイーユイの代わりにウルガモスを繰り出すと、ラウラさんと思われるエスプリもコロトックを戻してウルガモスを繰り出し、エスプリ二人が手をかざすと同時にウルガモス二体も翅を羽ばたかせて突撃、激突する。

 

 

「「ウルガモス」」

 

「ほのおのまい」

 

「ちょうのまい、ぼうふう!」

 

 

 エスプリMのウルガモスの放った自在に動く灼熱炎の津波、イーユイのわざわいのたまの力で火力が上がっている。ラウラさんと思われるエスプリのウルガモスがひらりひらりと舞うことで炎の津波を回避しながら懐に飛び込んで放った強烈な突風がエスプリMのウルガモスを吹き飛ばし、地面に叩きつける。戦闘不能だ。

 

 

「――――過去のデータと一致。対象を記憶を取り戻したラウラと測定。全力で排除する。グレンアルマ」

 

「交代、ハッサム」

 

 

 たしかほのおとエスパータイプで高火力を誇るグレンアルマを繰り出したエスプリMに対し、ラウラさんと思われるエスプリはほのおが四倍弱点のハッサムを繰り出す。…そう言えば、あの手持ちどこから持って来たんだろう。ビークインやウルガモス、ハッサムはラウラさんの元の手持ちにもいたがコロトックはガラルにはいないから使ってなかったはずだが。

 

 

「爆ぜろ。燃えろ、そして灰になれ。めいそう、アーマーキャノン」

 

 

 両肩の壺の様な鎧を両手にずらして合体させ、大砲にしたグレンアルマから灼熱の火炎がまっすぐ撃ち出される。目の前まで灼熱の火炎が迫る中、動じもしないハッサムとラウラさんと思われるエスプリ。

 

 

「…グレイ曰く、鍛えれば実体のないゴーストポケモンだろうが斬ることができると言う。なればこのハッサムは、炎を斬ることも容易い。つるぎのまい」

 

「なっ……!?」

 

「理解不能…!?」

 

 

 なんとハッサムは鋏を振るって十字に火炎を斬り払い、そのままつるぎのまいを終えて攻撃力を二段階上げる。完全に、ラウラさんのつるぎのまいの使い方と同じだ。彼女の切り込み隊長だったテッカニンを思い出す。するとエスプリMは理解の及ばない状況にヘルメットのディスプレイを点滅させて腕をぶんぶん振るって抗議する。エスプリじゃない、メロコさんの意識が出ている…?

 

 

「アーマーキャノン、知ってるぞ。インファイトと同じで、使った後ぼうぎょととくぼうが低下する。とくぼうはめいそうでカバーした様だが、ぼうぎょはそうもいかないんじゃないか?」

 

「ワイドフォース!」

 

「バレットパンチ、むしくい!」

 

 

 手を翳したラウラさんと思われるエスプリに応えて突撃してくるハッサムに、巨大な念動力の塊を形成して叩き潰さんとするグレンアルマとエスプリMだったが、バレットパンチの高速移動を利用して回避、眼前に迫ると鋏による拳、むしくいを叩き込んで殴り飛ばすハッサム。

 

 

「イーユイ、れんごく!」

 

「ミヨミヨー!」

 

「交代、ビビヨン。ふんじんだ」

 

 

 たまらずエスプリMは切札のイーユイを繰り出して灼熱の炎をぶつけようとしたが、ラウラさんと思われるエスプリはビビヨンを繰り出し、カロス地方のビビヨンとアローラ地方のアブリー系統のみ覚えられるふんじんという技を使用。

 

 

「ミ…… ヨ……!?」

 

「ビビヨン、ドレインキッス」

 

 

 相手がほのおタイプの技を使うと効果を一切無効化し、逆に相手にダメージを与えてしまうという、早い話が粉塵爆発であるそれはイーユイに大ダメージを与えて怯ませ、そこに効果抜群のドレインキッスを叩き込み戦闘不能にしてしまった。

 

 

「生憎とほのおタイプ対策は万全だ。このビビヨンは覚えていなかったが、イクスパンションスーツの機能を使って覚えさせた。便利だな、これは?記録を利用して強制的に使用できる」

 

「ファイアロー!アクロバット」

 

「無駄だ。てをつなぐ」

 

 

 負けられないと言わんばかりにファイアローを繰り出しアクロバットを叩き込むエスプリMだったが、なんとラウラさんと思われるエスプリは「てをつなぐ」を使用。限られた個体しか覚えない「意味の無い技」であるそれでファイアローの翼を受け止めたビビヨン。するとファイアローの動きが止まり、エスプリMが手を翳してもまるで反応しなくなった。

 

 

「どうした…?なぜ…!」

 

「みかたの ポケモン どうしが てをつなぐ。 とっても しあわせな きもちに なれる。だとさ。ボールジャックの洗脳も解けるらしい。駄目もとだったがな」

 

「馬鹿な…!?」

 

「交代、モルフォン。サイコキネシス。ヘルメットを外せ」

 

 

 そして最後の手持ちなのだろうモルフォンを繰り出し、サイコキネシスで無防備なエスプリMのヘルメットを取り外すと、赤い髪の少女の顔が現れ崩れ落ちる。ラウラさんと思われるエスプリの完全勝利だった。

 

 

「ラウラさん、凄い……でも、何時の間に記憶が……?でもあれ、まさか…あなたは?」

 

「そうだ、ダフネ。俺は、ラウラ―――だ」




エスプリことイクスパンションスーツに身を包んだラウラ(?)参戦です。手持ちは今までのラウラと異なり、ビークイン、コロトック、ウルガモス、ハッサム、ビビヨン、モルフォン。偶然ですけどスター団ルートのラウラと一部一緒ですね。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSルカリオ

どうも、放仮ごです。そういえばむしテラスタルの最強ダイケンキ捕まえました。ポケ蟲としてはどうにかして使いたいけど出し方がむずい。

今回はオルティガVSビワ。楽しんでいただけたら幸いです。


 カーフ・スターモービルの上に搭乗したまま追いかけてきたビワさんに、サケブシッポと共に振り返る。やっぱりビワさんに次ぐ実力の俺を狙ってきたか。自分から俺達仲間を押そうとは思えないし幹部辺りに命令されたのか?

 

 

「ビワさん…!まさかあんたと戦うことになるなんてな!」

 

「ごめんなさい、オルティガくん!……でも、メロコちゃんとスター団の為なの…!コノヨザル、ふんどのこぶし!」

 

「なら負かしてやれば文句ないよな!ムーンフォース!」

 

 

 放たれた巨大な拳の幻影を、月の幻影で相殺する。多分だけどサケブシッポはフェアリーとエスパータイプ、ゴーストタイプは苦手だ。ここは交代しかないな。

 

 

「交代、マリルリ!」

 

「インファイト!」

 

「アクアジェット!拘束しろ!」

 

 

 コノヨザルのインファイトを、アクアジェットで割り込んで阻止。殴り飛ばしてそのまま尻尾で右腕に巻き付いて拘束する。逃がさないぞ。

 

 

「思う存分じゃれつけ!」

 

「シャドーパンチ!」

 

 

 左拳によるパンチと共に影から拳が飛び出して二連撃叩き込まれるが、マリルリは耐えて効果抜群のじゃれつくを叩き込みボコスカ殴りまくり、尻尾に拘束されたコノヨザルはぐったりと崩れ落ちる。戦闘不能だ。

 

 

「かくとうタイプに負けるようなフェアリータイプのエキスパートじゃないんだよ!」

 

「さすがオルティガくん、強いね。…でも負けない、負けられない!ルカリオ!」

 

 

 次に繰り出してきたのはルカリオ。はがね・かくとうでフェアリーが等倍しか通じない数少ないかくとうタイプだ。…俺の選択肢はマリルリでつっぱるか、クレッフィ、ブリムオン、プクリン、バウッツェル、サケブシッポのいずれかに交代するか。……つっぱるか!

 

 

「マリルリ!アクアジェット!」

 

「ルカリオ、バレットパンチ!」

 

 

 同時に距離を詰め、クロスカウンターして双方殴り飛ばされるマリルリとルカリオ。ちからもちのマリルリと張り合うってどんなポテンシャルだよ。

 

 

「はどうだん!」

 

「アクアリング!」

 

 

 距離を取って放たれたはどうだんをアクアリングで相殺する。ラウラと戦って思いついたんだ。補助技を馬鹿正直にそのまま使うのは馬鹿のやることだ。使い方次第でポケモンは無限の可能性があるってな!

 

 

「そんな使い方が……」

 

「ビワさん。アンタは俺達にバトルを教えてくれた、凄い奴だ。アンタは強い、フェアリータイプ使いの俺でもそう簡単に勝てないぐらいに。でも今のアンタは見てられない。今回は俺が勝つから、せいぜい余裕かましてろよ!」

 

「っ……ルカリオ!インファイト!」

 

「アクアテールでブッ飛ばせ!」

 

 

 啖呵を切ると、何か言おうとして唇を噛みしめ、ルカリオに突撃を指示してくるビワさん。マリルリの水を纏った尻尾で薙ぎ払い距離を取る。ダメだ、苦しんでいる姿が見てられない。早く解放してやらないと。負けたならブルーフレア団も文句ないだろ。

 

 

「アクアジェット、じゃれつく!」

 

「ルカリオ、みきり!」

 

 

 水を纏って高速で移動し、連続で放つ拳の連打を、両手を的確に振り回していなしていくルカリオ。波導の力、以前ビワさん本人から聞いたことがある。全ての生物には波導が存在し、ルカリオはそれを感知することで相手の動きを読むことができると。それがこの他のより精度が高いみきりの正体か。

 

 

「…隙が無い、オルティガくん強くなってる……でも、私達は負けられないんだ…!」

 

 

ふるふると震わせて右手の甲を見せてくるビワさん。その手首には見慣れない無骨なリングが付けられていて。いや、あの虹色の宝石はついさっき見たぞ。ダフネって奴が使ってた、メガシンカの……。

 

 

「ルカリオ、メガシンカ!」

 

「なあっ!?」

 

 

 するとリングから溢れだした虹色のエネルギーとルカリオの胸元から溢れだした虹色の光が繋がり、光球の膜につつまれてそれが弾け飛び、姿が一変したルカリオが顔を出した。体は一回り大きくなり金属質の黒い部分が流れる模様となって身体の随所を走り、長くなった頭部の黒い帯状の部位やトゲが増えた両手両足の先端はより強固となって赤く変色しており、胴体部分の体毛も増えて逆立ち、尻尾も腰回りの毛に覆われて見えなくなっている、全体的にかっこよくなってる。

 

 

「メガルカリオ、バレットパンチ!」

 

「マリルリ、アクアリング…!?」

 

 

 バレットパンチの指示に、咄嗟にアクアリングを指示して防御を試みるが先程よりも素早く一瞬で目の前に現れたルカリオ…メガルカリオにマリルリは対応しきれず、殴り飛ばされ戦闘不能になる。だめだ、こいつはやばい。単純なスペックがただでさえ高いルカリオの力がさらに底上げされている。とにかく場を整えないと……。

 

 

「クレッフィ!まきびし!」

 

 

 フェアリー・はがねタイプでありフェアリーの弱点であるはがね・どくに耐性があるかぎたばポケモンのクレッフィを繰り出す。クレッフィのとくせいはいたずらごころ。変化わざを相手より速く使用できる。それでまきびしをばら撒いて動きを制限する。クレッフィで場を整えて、サケブシッポで一気に倒す…!

 

 

「…それ、どうしたの?少なくとも前にビワさんと会った時は持ってなかったよね?」

 

「ブルーフレア団の用心棒になるのと引き換えにまt……ブルーフレア団のボスからもらったの。カロス地方に伝わるメガシンカに使うメガリングとキーストーン、だって。私達の絆なら使えるだろうって……あんなに悪い人だとは思いもしなかった」

 

「そいつがビワさんを誑かして脅迫しているのか。俺が勝ったら誰か吐いてもらうよ」

 

「いいよ。でも……負けない、メロコちゃんに万が一危害が加えられないためにも…メガルカリオ、練習していたオリジナル技、いくよ」

 

「オリジナル技?」

 

 

 なんだろう、嫌な予感がする。すると頷いて大ジャンプし、上空にはどうのエネルギーかなんかで浮遊するメガルカリオの両手が蒼く煌めき、太陽の如く輝く。あれはやばい…!

 

 

「クレッフィ、ひかりのかべ!」

 

「波導、最大!はどうだん……いや、はどうのあらし!」

 

 

 そして限界まで溜められた波導エネルギーを巨大なレーザーのように放射。それをグルグル回転させ、何度も何度もクレッフィに叩き込むメガルカリオ。クレッフィはひかりのかべで初撃こそ耐え抜くが何度も何度も浴びせられては耐えられたものではなく、あっけなく撃沈。さらに地面に敷いていたまきびしもすべて薙ぎ払われてしまった。

 

 

「……なんだよ、その反則技……」

 

「ピーニャくんからアローラ地方にZワザっていう凄い技があるって聞いて、できないかなって練習してたんだ。本当はスター団の皆を守るための技だったんだけど……」

 

「それがスター団に向けられるってどんな皮肉だよ……でもそれ、連発できないだろ?それにさっきの「波導、最大」って言葉……波導も当分使えないんじゃないか?」

 

「っ…そんなこと、ないよ?」

 

「アンタは嘘が下手だよなビワさん。クレッフィに使ったのは失敗だったな!サケブシッポ!」

 

 

 下手な嘘をついて視線を逸らすビワさんににやりと笑い、クレッフィを戻してサケブシッポを繰り出す。さっきの精度が高い回避ができないんだったら容赦なく決めてやる!

 

 

「サケブシッポ!めいそう、ムーンフォース!」

 

「みきり!」

 

 

 金色の瞳を輝かせて巨大な満月のエネルギーを形成し、真上から落とすサケブシッポ。メガルカリオはみきりで避けようとするもやはり精度が悪く、避けきれず大きく吹き飛ばす。

 

 

「メガルカリオが負けたら俺に打つ手はないだろ。俺の勝ちだ。ビワさん」

 

「……うん、強くなったねオルティガくん」

 

 

 俺達の大事な仲間、まずは一人取り返させてもらうぞ!許さないからなブルーフレア団!




書いてて思ったけどクレッフィのタイプ相性本当に極悪ですね。その相性、蟲ポケモンにください。

はどうのあらしはスマブラにおけるルカリオの最後の切札から。それを使える様になるまで修行したビワさんマジストイック。スター団の二人、奪還です。ただし…?

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSドドゲザン

どうも、放仮ごです。仕事が忙しくなってきたのでそろそろ毎日更新が途絶えるかもしれませんが頑張ります。

今回はシュウメイVSバラ、時系列はラウラ(?)参戦と同時刻となります。楽しんでいただけたら幸いです。


「全てを飲み込め、すなあらし!」

 

ダストをシュートする術!(ダストシュート)!」

 

 

 シロデスナそのものが変化した砂塵と、零距離でゴミの塊を握って振りかぶられたベトベトンの右手が激突、吹き飛ばすもすぐに砂嵐は集まって、バラの背後で巨大な顔を形作る。とんでもない、このバラと言う女はとんでもない実力の持ち主だ。恐らくビワ殿よりも、このテーブルシティにいる者の中で最も強い存在だ。なんとしてでも押し止めねばなるまい。

 

 

「無駄だ。このシロデスナは前回のアイアールとの戦いに敗れた経験を糧に強くしてある。邪魔者は全て飲み込み、干からびて骨も朽ちるのみだ。シャドーボール!」

 

「それはどうでござるかな?ベトベ遁の術(とける)!」

 

 

 我とベトベトンを取り囲むように円形に大量に形成されたシャドーボールを、とけるで液状化したベトベトンに我を取り囲ませて防御。そのまま渦状に回転させて弾き飛ばす。

 

 

「こちらもポイズンのエキスパート。苦手なじめんタイプの対策もしているでござるよ。新忍法、氷拳の術(れいとうパンチ)!」

 

 

 そして、元の形態に戻ったベトベトンは冷気を纏った拳を地面に叩きつけて凍結させ、その冷気は砂嵐にも伝播して凍り付かせていく。

 

 

「なっ!?…ギガドレインで大地から養分を奪い取れ!」

 

 

 ベトベトンには効果が薄いと見たのか、凍り付いたまま蠢いて砂嵐を石畳の下に潜り込ませて養分を奪い取ったのか罅割れ、砕けて行くテーブルシティの大地。なんてやつだ、ギガドレインをそんなふうに使うとは。

 

 

「ベトベ遁の術!砂嵐を吹き飛ばすでござるよ!」

 

 

 我を中心に液状化したベトベトンを回転させて竜巻状に広げ、砂嵐になってこおり状態からも回復したシロデスナに連撃を浴びせる。本来攻撃技ではないでござるが、ラウラ殿との戦いで思いついた。技は全て、使い方次第でござる。

 

 

「なに!?」

 

「とくせい、あくしゅう!攻撃した際に怯ませることがある、でござる!氷拳の術(れいとうパンチ)!」」

 

 

 怯んで元の形態に戻ってしまったシロデスナに、冷気を纏った拳を叩き込む。いやまあ駄目もとであったが!そこは嘘をついて騙す、いや隠し通すでござるよ!多段ヒットさせるベトベ遁の術故の戦法でござる!

 

 

「シロデスナ、もう一度すなあらし!」

 

「ベトベトン、毒津波の術(ヘドロウェーブ)!」

 

 

 自身の身体で形成している砂嵐に渦を形成して飲み込まんとするシロデスナに、自身の身体から染みだした猛毒の液体を津波にして放ったベトベトンの攻撃が叩き込まれる。猛毒の津波を丸呑みにしてたまらず実体を取り戻すシロデスナ。

 

 

「我がエキスパートタイプ、即ちポイズン。毒を喰らわば皿まで。スター団に仇なす不届き者は我がポイズンに蝕まれるがいい、でござる」

 

「厄介だな。如何に実力差があろうと毒はその差を縮める。やはりお前は恐ろしい奴だ。実力じゃビワに劣っていても、戦い方が(うま)い。お前は強敵だ」

 

 

 そう言ってくるバラに、胸に手を当てお辞儀をする。礼儀は大事でござる。

 

 

「お褒めに預かり恐悦至極。掠っただけでどくる技もある故、怯えるでござるよ。シュウメイ!推して参る!!ダストをシュートする術(ダストシュート)!」

 

「その気が抜ける指示はどうにかしろ!だいちのちから!」

 

「それも我の術中でござるよ!」

 

 

 ダストシュートを受けながら地面からエネルギーを解き放ったシロデスナの一撃に、ベトベトンは崩れ落ちるがシロデスナも毒で崩れ落ちる。ダブルノックアウトが限界でござった。

 

 

「…ならば。鋼の体は通じない。そうだな?ドドゲザン」

 

 

 そして繰り出されたのは、キリキザンがキリキザン同士の合戦に勝ち続け、大軍勢の頂点に立つ事ができた個体だけが進化できると言うだいとうポケモン、ドドゲザン。後頭部から一際長い黒髪が垂れており、髪の先を曲げる事で座る椅子になっているそれにどっしりと構えたドドゲザンはバラの相棒なのか確かな信頼を感じる。

 

 

▽ドドゲザンは 倒された 仲間から 力を もらった!

 

 

「とくせい、そうだいしょう。シロデスナがやられた分、強くなる」

 

「総大将というわりに出てくるのが早過ぎるでござるな?」

 

「では聞くがこいつを突破できるのか?」

 

「時間を稼ぐことはできるでござるよ。ドヒドイデ」

 

 

 テツノドクガを出したいところだが、あちらはこちらがテツノドクガ持っていると知っているからなにかあるはずだ。そのため様子見のためにドヒドイデから入ることにした。とくせいのひとでなしは意味をなさないがしょうがない。さあ、なにをしてくる?

 

 

「アイアンヘッドだ」

 

棘陣地の術(トーチカ)!」

 

 

 棘の生えた強固な触手で固めてアイアンヘッドを受け止めるドヒドイデ。いや、今のは明らかにトーチカを誘発した動き……次の技が恐らく本命!

 

 

「ドゲザン」

 

「じこさいせい!」

 

 

 今度は土下座するような動きで頭部の刃を振り下ろしてくるが、受け止めてじこさいせいで回復する。これが切札でござるか…?そう思った時だった。

 

 

「残念だったな、意味をなさん。動けない己を呪え。ハサミギロチン!」

 

「なんと!?」

 

 

▽いちげきひっさつ!

 

 

 やられたでござる。まさか一撃必殺を覚えているとは……確率がどうのこうの言ってたでござるが、まさか計算しているでござるか…?

 

 

「我らの頼れる新入りを出すしかないようでござる。テツノドクガ!」

 

 

 我が繰り出したのはテツノドクガ。恐らくタイプはほのお・どく。はがねタイプに対抗できる唯一の手持ち。引きずり出されてしまったが、こやつしか勝ち目はない。

 

 

焔の舞の術(ほのおのまい)でござる!」

 

 

 さっきの戦いで我の指示の仕方を覚えてくれたのか頷き、自在に動く炎の津波を放つテツノドクガ。そのままドドゲザンを飲み込まんとするも……。

 

 

「メタルバーストだ」

 

 

 しかし高火力のそれをドドゲザンは耐え抜き、ダメージを倍にして鋼の閃光として返してきた。そんな馬鹿な!?いや、こらえるなどは見られなかった。ならば道具か。

 

 

「きあいのタスキでござるか…!」

 

「卑怯とは言うまいな?」

 

「気付かなかった我が悪いでござるが…テツノドクガのすばやさを越えられるでござるか!焔の舞の術(ほのおのまい)でござる!」

 

「メタルバーストを交換。ふいうちだ」

 

 

 するとバラは袖の機械を何やら操って、ドドゲザンはふいうちを使用。五つ目の技…!?

 

 

「ああ、言ってなかったか。我々はポケモンの技を戦闘中に変えることができる」

 

「忍者よりも汚いでござる…!?」

 

 

 テツノドクガは見た目通りむしタイプじゃないからふいうちは完全に通るでござる…!?

 

 

「…テツノドクガ、すまない。我ではお前の実力を発揮できなかったでござる。ブロロローム!」

 

 

 崩れ落ちたテツノドクガをボールに戻し、ブロロロームを繰り出す。ドドゲザンの残り体力は1、どうにかこうにか突破するでござる!

 

 

「ホイールスピン!」

 

「ふいうち!」

 

 

 ドリフトするような動きでタイヤを叩き込むブロロローム。その前に拳の一撃を受けてしまったがなんとか倒せた。このまま推し通る…!

 

 

「よくやったドドゲザン。ヌシの力を見せてもらおう。シャリタツ」

 

 

 次に繰り出したのは通常よりも大きく見える赤い姿のシャリタツ。ヌシとは、ラウラ殿と初めて会った時に戦ってたと言うミミズズの様な強力な個体か。そんなものまで捕まえているとは…!

 

 

「ドラゴン勝負でござるよ!ドラミドロ!」

 

 

 生憎とドラゴンに強いこおりやフェアリーはいないので同じドラゴンタイプで対抗しようとした、その時だった。

 

 

「アハハ!ヘイラッシャ、アクアテール!」

 

「ぐうっ!?」

 

 

 水しぶきが上がったかと思えば、アラブルタケと共にピーニャ殿が転がってきた。それを見て慌てて駆け寄る。

 

 

「ピーニャ殿、無事でござるか!?」

 

「やあシュウメイ…あいつら、僕のパソコンを狙っているらしくてね…この様だよ、ははは…」

 

 

 ボールジャックを阻止できるピーニャ殿を直接狙うとはなんて奴ら…見れば、通常より巨体なヘイラッシャに乗ったアケビがやってきた。

 

 

「アハハ!バラ、ちょうどいいから合体しない?貴方のしれいとうで一気に倒しましょう!」

 

「それはいいな。ドラミドロに対してどうするか迷っていたところだ」

 

 

 そして目の前でシャリタツがヘイラッシャの口内に入り込み、目に見えて能力が上がる。…さすがにまずいでござるな、これは。




 実は強すぎるマトイやグロリアに次ぐブルーフレア団最高戦力の一人なバラ。冷静な判断力と強力なポケモンたち、ブルーフレア団驚異の科学力の組み合わせは凶悪です。

実はアイアールとペパーと戦った後捕獲されていた偽龍のヌシコンビ。しれいとうが発動です。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSシャリタツ

どうも、放仮ごです。ようやくここまで来れたって感じです。いやー、ここに持って来るまでが長かった。

今回はVS偽龍のヌシと、ブルーフレア団のオリジン。楽しんでいただけたら幸いです。


 それは、マトイ達フレア団の残党がパルデアにやってきて潜伏していた頃の話だった。スター団によるスター大作戦が起きる一年近く前のできごとである。

 

 

「まず報告。私は学者仲間の伝手を使ってオレンジアカデミーに司書として潜り込むことができたわ。表向きの古代の遺物を調べ運用する科学者としての顔が役に立った。学校と言うヒエラルキーの権化に潜り込めたのは僥倖よ、減った仲間を集めることができるわ」

 

「命令通り店舗にバイトとして潜り込めたが、我々はどうすればいいだろう」

 

「アハハ!一応捕まらずに済んだ部下もパルデアに連れてきたけどクセロシキが裏切った今、時間の問題かも?」

 

 

 テーブルシティの外れで秘密の会合をするマトイ、バラ、アケビ。

 

 

「私は新たな仲間を秘密裏に募ると同時に計画の要となるタイムマシンを開発しているというオーリム博士について調べるから、貴方達はパルデアの社会に溶け込むことに集中しなさい。そして、最終兵器の燃料になるテラスタルポケモンを少しずつでいいから集めなさい」

 

「御意」

 

「パルデアには四災(スーザイ)って伝説ポケモンやヌシポケモンってのもいるみたいですけどそれも捕獲考えた方がいいのかしら?」

 

 

 特に異論なく頷くバラと、自分の考えを遠慮なく言ってくる対照的なアケビの二人に苦笑しながらマトイは顎に手をやって考える。

 

 

「そうね……フレア団は数こそ多かったけど、実質的な使える戦力は貴方達科学者陣だった辺り幹部の質が悪すぎた。最終兵器の準備だけでなく戦力もそろえる必要があるわね。最終兵器のエネルギーになるなら尚良い…。クセロシキからいただいたイクスパンションスーツ…エスプリの設計図もあるけど、これはまだ開発できてないし……そうね、元々私が研究してい四災(スーザイ)やヌシポケモンの捕獲も目標の一つにするわ。ただし、エスプリの被験者候補を探すためにも今すぐ捕獲はなし。頃合いを見ましょう。いいわね?」

 

 

 物資も人材も戦力も何一つ足りてない、たった一人の少年に壊滅状態に追いやられたフレア団の残党に過ぎない現状は切実で。今でこそ最大最強の規模を誇るが、最初は三人の中心人物と十数人のしたっぱだけの組織であった。

 

 

「名もフレア団から改める。フラダリさんの失敗を乗り越えるためにも、心機一転するわ。私達はブルーフレア団。フレア団の炎すら飲み込んで大きく燃え広がる厄災の炎よ」

 

 

 そうしてパルデアを飲み込む青い業火の種火は生まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前たちがこの二体に勝てる確率27%。ルールなしだ、合体したヘイラッシャとシャリタツ、それもヌシにどう挑む?」

 

「アハハ!滑稽ね!どこまで耐えられるかしら!」

 

「「ぐうっ…!」」

 

 

 ヌシシャリタツが口内に入りしれいとうを発動したヌシヘイラッシャの猛攻に、ただただ下がるしかない我とピーニャ殿。バラもアケビも何も指示してないのにいっちょうあがりにアクアテールと猛攻を叩き込んでくるヌシヘイラッシャに手も足も出ない。なんで、指示もないのにこんなに技を多用できる…!?

 

 

「不思議そうな顔だな?イクスパンションスーツの機能を取りいれたことで我々もボールジャックを使用できる。あらかじめ組んでおいたプログラムの通りに戦わせるのは造作もない」

 

「アハハ!特にシャリタツは頭がすこぶるいいみたいでね?勝手に判断して動いてくれるのよ。最高よね?」

 

「ボールジャックだってならジャミングの範囲を広げて…!?くっ、隙が無い…!」

 

「我が隙をなんとか作る!ピーニャ殿はジャミングに集中してくだされ!」

 

 

 拙者のドラミドロでなんとしても食い止め、ピーニャ殿がボールジャックをジャミングして無効化するしかない。そう、意気込んでいた時だった。

 

 

「させると思うか?イダイナキバ、ディンルー」

 

「アハハ!タギングルとクリムガンはやられちゃったけどまだいるのよ!ハバタクカミ、チオンジェン」

 

 

 それを嘲笑うかの様に繰り出される、厄災ポケモンとパラドックスポケモンが、それぞれ二体ずつ。ヌシポケモンに加えてその戦力でござるか…!?

 

 

「それだけじゃない」

 

「うわああああ!?」

 

「くっ…!」

 

 

 すると絶叫と共にオルティガ殿と、オルティガ殿を姫抱きにしたビワ殿が、ドリフトするカーフ・スターモービルから逃げているのか跳んでやってきた。さらには苦々しい顔のネルケ殿と共に、大量のブルーフレア団したっぱとエスプリ軍団までやってきて。まだこんなに残っていたでござるか…。

 

 

「どうやらビワは負けたらしいが保険にカーフ・スターモービルはプログラムを書き換えて置いた。メロコ…エスプリMはあの蟲使いに手こずっているらしいな。だが奴には四災(スーザイ)を持たせている、時間の問題だ」

 

「アハハ!それでもこの戦力差!どう足掻いたって無駄よ!四天王とトップチャンピオンもスペシャルエスプリが(じき)に倒すわ。無駄な抵抗はやめて降伏しなさい!そしたら私達もボスの援護にいけるから!」

 

 

 そう言われて退く奴がいるわけないでござろうよ。ビワ殿は…吹っ切れた顔をしている。オルティガ殿がやり遂げたでござるな。

 

 

「…ビワ殿。戻って来てくれて嬉しいが……戦えるでござるか?」

 

「うん、何匹かはオルティガくんと戦ことなく温存しているよ。…ごめんなさい、シュウメイくん、ピーニャくんも。でもメロコちゃんは……」

 

「メロコ殿も必ず助ける。その前に、こいつらを蹴散らすでござる。力を貸してほしい」

 

「もちろん!…行くよ、ナゲツケサル!」

 

「ああもう、下ろせよビワさん!俺だって負けてないぞ、サケブシッポ!」

 

「俄然ノって来たよ!行くよアラブルタケ!」

 

「ドラミドロ、踏ん張りどころでござるよ!」

 

「…素晴らしい生徒たちですね。ギャラドス!」

 

 

 スター団のボス四人と、ネルケ殿で身構える。どれほど絶望的であっても、もとよりスター団はいじめっ子に立ち向かう集団。これぐらいどうってことないでござるよ。

 

 

「…待て。ネルケといったか…お前を相手にしていたはずのスペシャルエスプリ…エスプリOはどうした?」

 

 

 すると何かに気付いたらしいバラがそうネルケ殿に尋ねる。ネルケ殿は一考してからにやりと笑った。

 

 

「…さてね。ただ、誰よりも頼もしい援軍が来たと言いましょうか」

 

 

 その時だった。我らを取り囲んでいたブルーフレア団のしたっぱたちとエスプリ軍団が薙ぎ払われたのは。

 

 

「ヘラクロス、メガホーン!」

 

「ファイアロー、アクロバット!」

 

 

「ゲッコウガ、みずしゅりけん!」

 

「マフィティフ、じゃれつくだぜ!」

 

「パーモット、つっぱりガトリング!」

 

 

「あれは…!」

 

 

 そして、その後ろから現れたのはダフネ殿と、首から下だけエスプリのスーツを身に着けた炎を思わせる髪の少女…メロコ殿。そしてアイアール殿と、名前は知っているアカデミーの生徒、ペパー殿に、生徒会長のネモ殿だった。

 

 

「メロコ殿…!」

 

「わりぃ、待たせた。オレはもう大丈夫だ」

 

「メロコさんは何とか取り戻しました!もう何の気兼ねなく戦って大丈夫ですよ!」

 

「シュウメイさん、大丈夫!?気付くの遅れた、ごめん!」

 

「悪い子ちゃんたちがうようよいやがるし見覚えあるイダイナキバやヘイラッシャまでいやがるし…助太刀するぜ!」

 

「うーん、手ごたえが無いなあ!一番強い奴出てこーい!」

 

 

 頷くメロコ殿とダフネ殿。頼もしいアイアール殿にペパー殿。ネモ殿はなんか違う気がするが…頼もしいことこの上ない。

 

 

「馬鹿な……薙ぎ払え、シャリタツ!」

 

 

 すると明らかに焦っている様子のバラが指示をして、ヘイラッシャとのその中にいるシャリタツが動き出そうとする。すると、そんなヘイラッシャの頭上に天高くから飛び降りる人影があった。

 

 

「そこか。コロトック、とどめばり。そしてむしのさざめき」

 

 

 ヘイラッシャの頭上に着地するなり繰り出たコロトックで頭部を突き刺し、内部のシャリタツごと音波で大ダメージを与えたらしいその人物。蜂の巣が描かれたヘルメットのエスプリだったが、その戦い方は…ラウラ殿?

 

 

「エスプリO…裏切ったのか?…いや、その声は…!」

 

「アハハ、ラウラ!?なんでそれを着ているの!?」

 

「なんでもいいだろ。反撃開始だ」




ブルーフレア団のオリジンを語ったうえでその計画をぶち壊していくスタイル。

ついにスター団ボスが集結、アイアール、ペパー、ネモも合流です。そして相変わらずぶっ壊れなラウラよ。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSカーフ・スターモービル

どうも、放仮ごです。前回に引き続きようやくここまで来れました。意外とあっさりかもしれない。

今回は前回より少し前の話。楽しんでいただけたら幸いです。


 イキリンコのそらとぶタクシーに乗った俺とネモは、上空からテーブルシティで行われている戦争の様な抗争を確認、プラトタウンのポケモンセンターに一旦降りると、コサジの小路から走ってくる二人の人物と出くわした。

 

 

「あ、ラウラ!」

 

「それに生徒会長じゃねえか!」

 

「アイアール、それにペパー!?」

 

「二人とも、なんでここに?」

 

 

 アイアールとペパー、何でこの二人がここに?するといきなりアイアールが頭を下げた。いきなりなんだ!?

 

 

「ラウラ、ごめん!私、嘘ついてた!」

 

「なにがだ?」

 

「ラウラに記憶を取り戻してほしくなかったから、先にペパーと合流して偽龍のヌシを倒してスパイスを処分しようとしてた!ごめんなさい!」

 

「え、そうだったのか?」

 

 

 なんか隠しているんだろうなとは思ってたが気付かなかった。アイアールの言ってた用事ってそれのことか。

 

 

「…俺にとって記憶がどれだけ大事か分かったうえでやったのか?」

 

「ラウラ、あんまりアイアールを責めてやらないでやってくれ。こいつ、だいぶ苦しんだんだぜ」

 

「言い訳はしない。だけど……ラウラが、プラズマ団だって……」

 

「は?」

 

 

 プラズマ団ってあれか?イッシュ地方で暴れたとかいう宗教団体。ネモから教えられたことしか知らないけど。

 

 

「滅茶苦茶強いって噂のイッシュのチャンピオンの少年が倒した組織だね!」

 

「ああ、それか。…俺がそのプラズマ団?ありえないだろ。誰から聞いたんだ?」

 

「プラズマ団の恰好をしている写真を見せられて……それは、ラウラのスマホロトムだって。……ブルーフレア団のボスだったマトイさんに」

 

「マトイさんが!?」

 

「ブルーフレア団のボス!?」

 

「……それで合点が行った」

 

 

 ブルーフレア団に勧誘されていたらしきスター団チーム・セギンのアジトの近くで出会ったこと。バラと出会ったのもマトイさんと一緒にいた時だ。全部あの人が暗躍していたなら納得できる。

 

 

「…それにしても、ブルーフレア団のボスの言うことを信じたのか?」

 

「…だって、写真が…」

 

「合成かなんかだろ。俺がプラズマ団なわけがないしな。…いや、記憶を取り戻さないとわからないが」

 

「それで、処分しようとしたそのスパイスはどうしたの?」

 

「ああ、それならここにあるよ」

 

 

 そう言って鞄から大事そうに梱包された包みを取り出すアイアールからそれを受け取り包みを開くと、サンドイッチがあった。それを前にして、思わずごくりと生唾を飲み込む。

 

 

「…大丈夫か?」

 

「…ああ。記憶が戻るかもと思うと、な」

 

「でも記憶が戻ったラウラ絶対強いよね!早く食べてよ!」

 

「ネモ、さすがに空気を読もう…?」

 

 

 心配してくれるペパー。空気を読まずに急かしてくるネモ。それにげんなりしながらツッコむアイアール。それを見て、記憶を取り戻してもこいつらとの関係が変わる筈もないかと思わず笑って。

 

 

「ええい、ままよ!」

 

 

 結構な辛味の効いたスパイスで味付けされたサンドイッチをがつがつ食べる。うん、美味い。できればカレーが良かったが……!?

 

 

「ぐうっ…」

 

「ラウラ!?」

 

「大丈夫!?」

 

「記憶が戻ったのか!?」

 

 

 襲いかかる頭痛に頭を押さえる。次々と情報で頭を殴られる感覚に襲われる。どこか元気が無かったフェローチェとマッシブーンをどうにか故郷に戻せないかと、アイツらと出会ったカンムリ雪原を調べていた時に、空間に突如開いた穴に吸い込まれてしまったこと。飛び出した先で、自分が何でそこに来たのか記憶が朧気だったところにスマホロトムに電話をかけてきたオーリム博士と会話したこと。ブルーフレア団に襲われ、出くわしたチヲハウハネ……ウカと共に迎撃したが、サングラスで顔を隠した謎の人物…今思えばマトイさんだったか…の繰り出したメガシンカとも違う姿になったガブリアスに手も足も出ずに敗北、エスプリのスーツに押し込まれたこと……ユウリ、モコウ、ムツキとの関係も、全部、全部思い出した。

 

 

「…そうか、ウカ。お前、俺の事を知っていたのか」

 

「ラウラ?…大丈夫、だよね?プラズマ団だったりしないよね?」

 

「ああ、思い出した…俺は、エンジンシティのラウラだ。あとすまん。……詳しいことは割愛するけどプラズマ団だったことあるわ」

 

 

 アクロママシーン改で洗脳されてプラズマ団の幹部にされていたとか話してもわけわからんだろうな。

 

 

「ええ!?」

 

「そーなんだ」

 

「興味なさげちゃんだな生徒会長おい」

 

「本来の手持ちじゃないが…今ならいつも以上に力を引き出せる気がするよ。もうマトイさんにも負ける気がしねえ」

 

 

 そう意気込んでいると、電話がかかってきた。出てみると、相手はカシオペアだった。こんなときになんだ?とりあえず、出るか。

 

 

「カシオペア?どうした?」

 

《「ラウラか。今、テーブルシティが占拠されているのは知っているな?オレンジアカデミーに奴等の首魁がいる。テラシンカと言う、メガシンカとテラスタルを合わせた力を持っているから要注意だ」》

 

「お前、何でそれを知っているんだ?」

 

《「頼むラウラ、奴を止めてくれ」》

 

 

 俺の問いかけに応えることなく電話を切るカシオペア。…アイツも中にいるのか?

 

 

「俺はオレンジアカデミーに乗り込んでマトイさんを倒す。お前らはテーブルシティの連中を頼む、シュウメイ達に助太刀してくれ」

 

「うん、任せて」

 

「微力ながら全力で行くぜ!」

 

「強い奴がいるといいな!」

 

「よし。行くぞ!」

 

 

 そうして俺達はテーブルシティに乗り込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「え」」」

 

 

 コロトックでヌシヘイラッシャと中のヌシシャリタツをダウンさせたエスプリOの言動に驚いたのは外から乱入してきたアイアール、ペパー、ネモの三人だ。

 

 

「え、その声、ラウラ!?先にアカデミーに向かったんじゃなかったの!?」

 

「カシオペアって奴から連絡が来て、それで…」

 

「しかも何時の間に着替えたの!?」

 

「うん?……ああ、それは別にいいだろ?それよりこいつらをぶっ潰すぞ」

 

「スターモービル!」

 

 

 ブロロン!という轟音と共にカーフ・スターモービルが突撃。それを一瞥するエスプリO。片手間に繰り出したハッサムが突撃を受け止める。

 

 

「バレットパンチ」

 

 

 一瞬で五連続、鋼鉄の拳を叩き込んでカーフ・スターモービルを押し返すハッサム。さらにコロトックに頭部を突き刺されていたヌシヘイラッシャが動き出し、エスプリOに向けて突撃する。アケビが己のボールジャックでヌシヘイラッシャを指示したためだ。

 

 

「アハハ!油断したわね、ポケモンの意識が無くてもこっちで操れるのよ!いっちょうあがり!」

 

「パーモット、テラスタル!でんこうそうげき!」

 

 

 それを、横からテラスタルしたネモのパーモットが電撃を纏った両拳を叩き込んでヌシヘイラッシャの巨体を殴り飛ばす。殴り飛ばされたヌシヘイラッシャの口から白目をむいたシャリタツが飛び出してりゅうのはどうでしつこくエスプリOを狙うも、上から急降下してきたゲッコウガに押し潰された。

 

 

「なにがなんだかわからないけど、ラウラに手は出させないよ!」

 

「ヌシって言うからどんなもんかと思ったけど手ごたえ無いなあ!…ラウラのせいかな?」

 

「俺のせいにするな」

 

「…頼もしいでござるな」

 

 

 難敵だった偽龍のヌシとカーフ・スターモービルを一蹴したエスプリOとアイアールたちに思わず崩れた頭巾の下で苦笑いを浮かべるシュウメイ。すぐにきっと真面目なものに表情を切り替えてバラたちに向き直る。

 

 

「まだだ。勝った気になるなよ…イダイナキバ、ディンルー!」

 

「アハハ!やっちゃえハバタクカミ、チオンジェン!」

 

 

 パラドックスポケモンとわざわいポケモンを向かわせるバラとアケビ。そして。

 

 

「ラウラぁあああああああっ!」

 

 

 パルデアポケモンリーグの方からミライドンに乗ったエスプリが舞い降りる。ユウリことエスプリGだ。ラウラが来たと察して洗脳されているにも関わらず来たのである。

 

 

「どの世界に来てもお前は変わらないな、ユウリ!」

 

 

 そして、エスプリ同士のポケモンがぶつかった。




スパイスで記憶を取り戻したラウラ、完全復活。安定のネモである。

そして四天王を相手にしてたはずのエスプリGも参戦。決戦開始です。

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VSカゲボウズ

どうも、放仮ごです。時系列的には、前回の前半→前々回の最後→前回の後半⇔今回って感じです、ラウラが二人いることになりますね、どういうことなんですかね(すっとぼけ)

今回はラウラのオレンジアカデミー突入。楽しんでいただけたら幸いです。


「…うーん」

 

 

 とりあえず、隠れてテーブルシティに忍び込み様子を探ってみたら門は閉じられていたので、一度外に出て堀からジャックにしがみ付いて崖を登ってオレンジアカデミーの敷地内に忍び込んでみたが、まあ当たり前と言うか、窓と言う窓をブルーフレア団のしたっぱが巡回しているし、入り口は巨大な氷で閉ざされていた。

 

 

「……どうすっかなあ」

 

 

 記憶を取り戻したからわかる、マトイさんの実力はキリエさんに匹敵する。特にあの…テラシンカだったか。カシオペアから伝えられたメガシンカ+テラスタルしたガブリアスは本当にヤバい。できれば不意打ちして有利に戦いたい。考える。ジャックで屋上まで登ってグラウンドから乗り込んでもいいが、まず間違いなく巡回しているブルーフレア団したっぱにばれる。そしたら不意打ちもなにもない。

 

 

「………レイン、ケプリベ」

 

 

 アメモースのレインとベラカスのケプリベを繰り出し、指示をするとふよふよと飛んでいく二体。頼んだぞ。

 

 

「レクス。ダーマ。ぼむん」

 

 

 エクスレッグのレクス、ワナイダーのダーマ、フォレトスのぼむんを繰り出し侍らせる。ジャックとウカは温存だ。この三体で、殴り込む。

 

 

「レクス、じごくづき!カチコミだオラア!」

 

 

 レクスのじごくづきで氷を粉砕し、入り口を強引に蹴り開ける。するとロビーに屯ってたブルーフレア団したっぱが反応して集まってくる。

 

 

「な、なんだ!?」

 

「あいつ、スターダスト大作戦のラウラだ!」

 

「あんな手持ちでここに殴り込んでくるとか馬鹿か!?」

 

「蟲を馬鹿にした奴どこのどいつだゴラア!かかとおとし!」

 

 

 脚を大きく振り上げ、その場に勢いよく振り下ろして蜘蛛の巣状の巨大な罅を刻み込むレクス。その衝撃で近づいていたブルーフレア団したっぱたちを吹き飛ばす。

 

 

「カゲボウズ!シャドーボール!」

 

「ダーマ、スレッドトラップ。跳ね返してやれ!」

 

 

 背後から襲ってきたブルーフレア団したっぱのカゲボウズの放ったシャドーボールを糸の盾で受け止め、弾き返すダーマ。するとわらわらと溢れ出るブルーフレア団したっぱたち。見た顔ばかりだ、元スター団もしくはオレンジアカデミーの生徒か?まあ関係ないが。どんだけいるんだよ、新生プラズマ団の比じゃないぞ。

 

 

「怪我したくなかったら退いてろ。ぼむん、砲身固定。まきびし装填。まきびしキャノン!」

 

 

 ネモのつっぱりガトリングとかのオリジナル技から着想を得たぼむんの、まきびしを、ぼむんの得意技だっただいばくはつの要領で圧を加えて高速で連射する技、まきびしキャノン。大したダメージはないが高速で突き刺さるまきびしだ、滅茶苦茶痛い。ダメージと言うか、痛い。さらに外れてもまきびしとして起用する。

 

 

「ぎゃあああああ!?」

 

「いてええええええ!?」

 

「いたっ、刺さるっ刺さるっ!?」

 

 

 一応ポケモンを狙ったはずだが運悪く命中したりまきびしを踏んだブルーフレア団したっぱたちが激痛に泣き喚く。ブルーフレア団に入って俺と敵対したことを嘆くんだな。

 

 

「先に進むぞ。レクス、こうそくいどう!ダーマ、いとをはく!ぼむん、まきびし!」

 

 

 レクスのこうそくいどうで立ちはだかるしたっぱを蹴散らし、ダーマのいとをはくで即席のトラップを作って転ばせていき、ぼむんのまきびしで足場を奪いながら歩いて行く。マトイさんがどこにいるかはわからないが、片っ端から殴り込んでやる。

 

 

「カシオペアのやつ、どこにいるかぐらい教えろよな…!」

 

 

 エントランスホールから移動し、学生食堂、購買部、生物室、美術室、1-A教室、家庭科室、医務室、2-G教室、職員室と順繰りに見て行く。誰もいないが廊下にはブルーフレア団したっぱが蔓延ってるため蹴散らして進む。そして、グラウンドに入った時だった。

 

 

「生徒たちに手は出させま…ラウラさん!?」

 

「無事であったか!」

 

「ジニア先生、サワロ先生、キハダ先生、タイム先生、セイジ先生、ミモザさん、……レホール先生!?」

 

 

 グラウンドには教師陣と生徒たちが縛られた状態で集められており、その中には気を失ったレホール先生がいた。みんな無事だったようだが、レホール先生は大丈夫なのか?

 

 

「レホール先生は大丈夫。敵のボスと…マトイさんと戦った余波で気を失ってるだけだから」

 

「そうか、ならよかった……マトイさんは今どこに?」

 

「校長室に機材を運び込んでいたのを見ましタ!」

 

「ありがとうございますセイジ先生。ジャック、縄を斬れ」

 

 

 レクスとダーマとぼむんに入り口を警戒させながらジャックを繰り出し、一番手近にいたミモザさんの縄を斬る。一人でも解放しておくだけで変わるだろ。…マトイさんは校長室か。……ケプリベ。

 

 

「後は任せました。したっぱはあらかた倒してるから何とか出られると思います」

 

「ラウラは?まさか無茶をするつもりじゃ…」

 

「ボスをぶっ倒して全部解決する」

 

「待って!あー、もう!」

 

 

 ジャックをボールに戻してミモザ先生の制止を振り切り、ぼむんに乗り込んでレクス、ダーマと共に廊下を走って立ちはだかるブルーフレア団を蹴散らしながら校長室に突き進む。ネルケ…クラベル校長辺りに見られたら説教されそうだな。

 

 

「ボタンさんは何処に隠れたのか……貴方は知ってるかしら?」

 

 

 レクス達をボールに戻してから静かに校長室に入ると、コンソールを真面目な顔で操作していたマトイさんがにっこり笑いながら振り返る。俺がここに来たことにはまるで疑問を抱いてない様子だ。後ろの壁に大穴が開いているがなにがあったんだ。だがちょうどいいな。

 

 

「さあな。少なくともここに来るまでは出会わなかった」

 

「そう。捜索を部下に任せて調整に戻ってきて正解だったわね。貴方を止めれるのは残念ながら私だけみたいだし。もう3000年前の過去から最終兵器を転送する準備は終わったわ。止めたければ私を突破してこれを破壊すればいい。簡単でしょ?」

 

「簡単だな?レイン、ケプリベ!」

 

「っ!?」

 

 

 俺の呼びかけと共に大穴から飛び込んできたレインとケプリベがマトイさn…マトイに突撃。レインが加速し、さらにケプリベがそれを念動力でカバーして最高速度で突撃したのを、マトイは手にしたダイブボールからフリージオを繰り出して氷の鎖で受け止めさせる。

 

 

「危ないわね、卑怯じゃない?」

 

「安心しろ、もっと卑怯だ。ケプリベ、じんつうりき!マトイを拘束しろ!」

 

「ぐっ…!?」

 

 

 レインは囮、本命はケプリベだ。じんつうりきで固めてその横を通り抜ける。そしてネットボールを叩きつけるようにして、レクスを繰り出す。

 

 

「レクス!ぶちかませ!かかとおとし!」

 

 

 そして脚を大きく振り上げ、勢いよく振り下ろしてコンソールを粉砕。バラバラに砕け散る機械の残骸をバックに、俺は振り返る。

 

 

「なにもできないと思ってたろ?蟲ポケモンをなめすぎだアンタは。あの手この手でどんな強者にも勝つ、勝って見せる!それが蟲ポケモンだ!パルデアで完成させた俺のチームは、アンタに負けた時とは一味違うぞ」

 

「…残念だけど今破壊したそれはブラフよ。既にハッキングは終えてるの、最終兵器召喚はもう止まらない。貴方も氷漬けになって大人しく見ているがいいわ。ぜったいれいど」

 

 

 フリージオによりケプリベが氷漬けにされて解放されたマトイが笑い、フリージオが絶対零度の冷気を放つ。しかし、俺には届かない。

 

 

「バラもハサミギロチン使っていたがなあ。そもそも当たらなきゃいいんだよ、いちげきひっさつってのは」

 

 

 咄嗟に繰り出したダーマのスレッドトラップだ。ポケモンを出す速さもトレーナーの役目だと(要約)ポケスペでサカキが言っていた。

 

 

「蟲の恐ろしさ、思い知れ」

 

「悪い子だったのね、残念だわ。いいわ、来なさい。また完膚なきまでに叩きのめしてあげる」




記憶を取り戻したラウラ本領発揮。何も正々堂々戦うのだけがバトルじゃない。

最終兵器召喚開始。止めないと、3000年前の「起動している」状態のが出てきて、ブルーフレア団の集めたポケモンたちのエネルギーを糧にした死の毒で全てが終わります。AZの鍵とかもいらなかったんや。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSフリージオ

どうも、放仮ごです。今回のタイトルが思いつかなかったので前回をVSフリージオからVSカゲボウズに変更しました。

今回はラウラVSマトイの激闘。楽しんでいただけたら幸いです。


 校長室に突入し、マトイと激突する俺達。機械を破壊したレクスを戻し、ダーマとフリージオが対面する。屋外で無いからダーマの本領発揮はできないが、ケプリベがやられている。どうにか主力を押さえて相手の数を減らしたい。

 

 

「ダーマ、…いとだまバルカン!」

 

 

 ネモのオリジナル技を見て、そらとぶタクシーの中でネモと話し合って既存技を別の使い方することでオリジナルの技に昇華、即ち四つ以上の技「昇華技」を生み出すいう荒業を考えた。時間はあったので一匹一つ以上は考えた。そのうちの一つがいとをはくの昇華技「いとだまバルカン」当たった相手のすばやさを下げるいとだまを連射する技だ。さらに物理で受け止めると糸が広がって拘束するおまけつきだ。ガブリアスで使いたかった。

 

 

「無駄よ、全て凍り付かせる。フリーズドライ」

 

「いとをはくで横から攻めろ!力強く!はいよるいちげき!」

 

 

 しかしそれは凍りつく息吹でカチンコチンに凍らされて氷塊と化してゴロリと床に転がり、そのままダーマを狙って真っ直ぐ放たれるが、糸を伸ばして右の壁に移動して飛びつき、姿勢を低く突撃し下からアッパーカットするかの様に腕を振り上げるダーマ。

 

 

「薙ぎ払いなさい、アイススピナー」

 

「いとをはく!外に逃げろ!」

 

 

 するとフリージオが横に高速回転、氷を纏って氷の独楽と化してダーマを弾き飛ばし、咄嗟に糸を伸ばして入り口正面の壁に開いた大穴から飛び出したダーマを追いかけて浮遊して回転しながら迫ってくる。

 

 

「ひたすら素早く!いとをはく!」

 

 

 対して早業を使ったダーマは両腕から何度も何度も何度も糸を伸ばし、回転するフリージオに絡み付かせてグルグル巻きにする。サムライミ版スパイダーマンでよく見た動きだ。デンチュラよりも人型に近いフォルムのダーマならでは。

 

 

「こおりのつぶて!」

 

「スレッドトラップ!これいらないから返すぞ!」

 

 

 フリージオは回転をやめてこおりのつぶてをいくつも生み出して糸を斬り裂きながら飛ばしてくるも、スレッドトラップで受け止め、袋詰めの様に纏めて投げ返してダメージを与える。

 

 

「アイススピナー!」

 

「いとをはく、力強く!カウンター!」

 

 

 そして回転して突撃してきた勢いのまま糸を絡ませて一本背負い。壁の穴の縁にぶつけて戦闘不能にした。これでようやく5-5か。

 

 

「全て撃ち抜きなさい、ブロスター。あくのはどう。りゅうのはどう。みずのはどう」

 

「避けろ!いとだまバルカン!」

 

 

 次に繰り出してきたのはブロスター。三連続ではどう技を連射して来て、必死に避けつつ糸玉を高速で連射するダーマ。ハサミにぶつかって糸で縛るも、簡単にハサミを開いて解き放って来た。

 

 

「この子に小手調べは無駄よ。これは避けれるかしら。はどうだん!」

 

「スレッドトラップ!」

 

「みずのはどう!」

 

 

 必中のはどうだんが放たれるが、糸の盾で防御。しかし続けざまに放たれたみずのはどうまでは避けられず、まともに浴びて崩れ落ちてしまう。戦闘不能だ。

 

 

「レイン!」

 

「相性が悪かろうがひんしになるまで当てれば問題ないわ。十連射、はどうだん」

 

「そんなのありかよ…!?」

 

 

 はどうだんに耐性があるレインを繰り出すも、ブロスターはハサミを大きく開いて必中のはどうだんを十発連続で放って来た。エネルギー弾の列車が弧を描いてレインに襲いかかる。

 

 

「素早く!でんこうせっか!」

 

 

 レインは得意技のでんこうせっかを発動。はどうだんを同士討ちさせて撃ち落としていく。それだけじゃないぞ、レインの「昇華技」見せてやる。

 

 

「むげんほうよう!」

 

「っ!?」

 

 

 瞬間、姿を消して四方八方からブロスターに襲いかかり、滅多打ちにして戦闘不能にするレイン。バブルこうせんとでんこうせっかを同時に行使する昇華技。バブルこうせんを赤青緑の三原色にすることで太陽光と合わせて透明化、さらに同時にでんこうせっかを行うことで不可視の猛攻を叩き込むワザだ。記憶を取り戻した今なら完全にわかったが、ポケスペのワタルのハクリューが使うバブルこうせんを応用した技である。夢幻泡影から名をいただいた。

 

 

「…目に見えない泡…知らない技のオンパレードで楽しくなってきたわ。これが貴方の実力なのね、ラウラさん!」

 

「生憎と急ごしらえだがな」

 

「ならわたしはさりげなく攻略して見せるわ。モスノウ」

 

「モスノウ…!」

 

 

 次に繰り出してきたのはマトイさんの手持ちとして接してきたポケモン、モスノウ。別のモスノウが俺の仲間にいるからちょっとやりづらい。

 

 

「ボタンさんにも言ったけど。私は水と氷タイプの使い手。水と氷はさりげなく、確実に広がって行く。ちょうのまい、おいかぜ。こなゆき」

 

「力強く!むげんほうよう!」

 

 

 さらに泡の数を増やし、勢いを増したレインが襲いかかるがモスノウはその複眼で軌道を読み切って全てを蝶の様にひらひらと勢いを受け流す様に回避しながらおいかぜを発動し、それにこなゆきを乗せることで泡が全て凍り付き砕け散って行く。まるでポケスペのエリカとヤナギを合わせた様な戦い方だな!

 

 

「力強く!エアカッター!」

 

「むしのさざめき」

 

 

 ならばと無理やり突破しようとするも音波を盾にして相殺してきた。するといつの間にか凍り付いていたレインがごとりと音を立てて落下する。何時の間に!?

 

 

「風に乗せたこなゆきで凍てつく風にしてさりげなく凍らせただけよ。ひこうタイプだったからかよく効いたわね」

 

「…くそっ」

 

 

 ケプリベとダーマとレインがやられた。残るはぼむん、ジャック、レクス、そして…最大6体までの試合じゃないからこそ使えるウカ。もう少し温存したかったがしょうがないか。

 

 

「行くぞ、ジャック!」

 

「バサギリ、古代のポケモンね?サニアさんからくろのきせきでももらった?あの子も生態系を滅茶苦茶にする悪い子ね」

 

「…やっぱりサニアは太古から来たのか」

 

「そうよ、タイムマシンの出力を上げたことで貴方が現れたウルトラホールの様に、時間を越えてやってきてしまった古代人。それがサニアさん。彼女の存在が、場所さえあれば最終兵器を召喚できる根拠になった。今では強力な駒となってくれたし思わぬ収穫だったわね」

 

「…あの雪崩の時か」

 

 

 好き勝手言うマトイに、なにかが切れた音がした。サニアはパルデアでできたダチの一人だ。本来なら古代で平和に過ごしていたはずがこの人の勝手な実験で何も知らない現代に連れて来られて、終いには手駒として利用されているだと?

 

 

「人を何だと思ってやがる。俺もサニアもアイアールも、ユウリもスター団のみんなも……お前にとっては使える手駒でしかないって言うのか!」

 

「私は人もポケモンも愛しているわ。だからこそ消し去るのだけどね」

 

「お前の愛は愛じゃねえ。俺の蟲ポケモンへの愛で、お前の愛を否定する!」

 

 

 そう宣言すると、ジャックも憤っているようでその感情がひしひしと伝わってきた。

 

 

「ジャック、お前にとってもサニアは進化させてくれた恩人だもんな。許せないよな…やるぞ、お前の昇華技」

 

「また知らない技?いいわよ、来なさい。モスノウ、おいかぜ。そしてこなゆき。ふぶきはこうやって使うことができるのよ…!」

 

 

 おいかぜとこなゆきが吹き荒れ、ちょっとした吹雪の様になる校長室。だが関係ない。ジャックの持ち味は素早さだ。そして専用技のがんせきアックス。がんせきアックスは重たい岩斧を振り下ろす技で、せっかくの素早さの勢いを殺してしまう技だ。ならば、素早さを残したたまま使えたらどうだろう?

 

 

「がんせきリッパー!」

 

 

 吹き荒れる吹雪がなんのその。床を蹴ったジャックが高速で右、左と動いて斬撃を叩き込み、最後に真後ろから両腕の岩斧を高速で横に振るい、斬撃。モスノウは四倍弱点を耐えきれずに崩れ落ちる。

 

 

「なっ…」

 

「愛があればどんなことだってできるんだ」

 

 

 あと三体。このまま押し切る…!




いとだまバルカン。むげんんほうよう。がんせきリッパー。ラウラの新技術「昇華技」発動です。正確にはネモが発案してパーモットが使ってたアレのことですが。既存の技を組み合わせたり別の使い方をすることで擬似的に五個以上の技を使うことができる技術です。
いとだまバルカンは映画スパイダーマンでよく使うアレ、むげんほうようは本文でも語った通りポケスペのワタルから、がんせきリッパーはジャック繋がりの某運命の殺人鬼の宝具から。

地味にサニアの事も明言。ブルーフレア団のタイムマシン出力上げ実験に巻き込まれた古代人でした。

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VSパオジアン

どうも、放仮ごです。現在のラウラの手持ちはケプリベ、レイン、ダーマがやられてレクス、ジャック、ぼむん、ウカ。マトイの手持ちはフリージオ、ブロスター、モスノウがやられてウェーニバル、パオジアン、ガブリアスとなってます。

今回はラウラVSマトイの激闘。楽しんでいただけたら幸いです。


 新技術、昇華技を使ってなんとか3VS4まで追い込んだ。俺はウカ含めて七体だけど最初にケプリベが半ば不意打ちでやられてるから問題ないな、よし!

 

 

「私の邪魔をするものを悉く蹴り飛ばしなさい、ウェーニバル!」

 

「御三家か…?クワッスの進化系か!アンタが持っていたとはな、交代だレクス!」

 

 

 繰り出してきたのはウェーニバルと言うらしい、まるでエキゾチックなダンスでも踊るかのように全身を揺り動かしていながらも隙が無い、不思議な構えをするポケモンの足技に、交代したレクスの足技で対抗する。明らかに御三家のみずタイプっぽい。恐らくクラベル校長が信頼できる人間に託したと言っていたクワッスの最終進化系だろう。なんて人に渡してるんだ、騙されてたっぽいけど。

 

 

「この子はクラベル校長から託された信頼の証。私手ずから鍛えたボディーガードよ。生半可な鍛え方はしてないわ。アクアステップ!」

 

「力強く!かかとおとし!」

 

 

 ウェーニバルの水を纏った両足でダンスをするかの様なステップを踏んでからの横蹴りを、レクスが変形させ振り上げたものを勢いよく振り下ろした右足をぶつけて拮抗する。レクスの脚力と互角だと!?なんて筋力してやがる。

 

 

「アクアステップ!」

 

「っ、速い!?じごくづき!」

 

 

 続けざまに放たれた先程よりも速度を増したウェーニバルの蹴りを、ギリギリ突き出したレクスの脚で相殺する。さっきよりも明らかに素早さが上がっている!?

 

 

「よく反応したわね?アクアステップは使えば使うほどすばやさを上げる技。撃てば撃つほど対処困難となるわ」

 

「………ラウドボーンやマスカーニャに比べると地味だな」

 

 

 思わずそのまま浮かんだ感想を述べると、明らかにショックを受けたかのように翼で口元を覆うウェーニバル。あ、気にしてたのか。

 

 

「チャンスだ!とびかかる!」

 

「ウェーニバル、しゃきっとしなさい!アクアステップ!」

 

 

 好機と見てレクスに飛び蹴りを叩き込ませるも、マトイの言葉に我に返り水を纏った脚で踏み込んで高速で蹴りを放ってきたウェーニバルに弾かれる。ダメか。

 

 

「なんてひどいことを言うのかしら。ウェーニバルも気にしてるのよ!」

 

「それは悪かった。だがいくら素早さが上がろうが…動体視力までは蟲に勝てる道理もないだろ!こうそくいどう!」

 

 

 連続で床や壁を蹴りつけ、高速で校長室内を跳び回りウェーニバルを翻弄し、四方八方から体当たりを叩き込むレクス。レクスの目は複眼だ。高速で動こうが正確に視界に捉え続ける。対してウェーニバルは普通の目だ。追い切れるわけがない。

 

 

「見る必要ないわ。全体に攻撃すれば関係ない。フェザーダンス」

 

 

 するとその場で腰を振って翼を振るい、踊り狂うウェーニバル。青い羽毛を散らばり、不味いと思った時にはもう遅く、壁に穴が開いているとはいえ室内なのもあって高速で移動していたレクスはそれに触れてしまう。

 

 

「オボンのみを食べなさい。アクロバット!」

 

 

 そして攻撃力を減少させる羽毛に触れてしまったことで勢いが下がったレクスに、効果抜群の素早い身のこなしの鋭い蹴りが叩き込まれるも、もう片方の左足を振り上げてウェーニバルの首を締め上げるレクス。さすが、指示しなくても自分で判断して使ったか。

 

 

「昇華技、レッグツイストだ!」

 

 

 それはじごくづきとかかとおとしの昇華技「レッグツイスト」。変形する脚を持つレクスならではの、コブラツイストの様に締め上げる足技だ。ギリギリと締め上げるレクスと、翼をレクスの脚にかけてもがくウェーニバル。このまま気絶まで追い込め…!

 

 

「ローキックで軸足を払いなさい!」

 

 

 しかしローキックで右足を払いのけられてレクスは転倒、解放してしまう。決まらなかったか。だが、呼吸して酸素を取り込んでいる間に攻撃力が下がったレクスは交代させてもらう。

 

 

「交代、ジャック!」

 

「っ…アクアステップ!」

 

「がんせきリッパー!」

 

 

 交代して繰り出したジャックが床を蹴り高速で右、左と動いて斬撃を叩き込んでウェーニバルの蹴りと相殺、弾いたところに真後ろから両腕の岩斧を高速で横に振るう。背後から強烈な二撃を叩き込まれたウェーニバルは吹き飛んで崩れ落ち、戦闘不能となる。よし!あと二体!…そのうち一体にして切札はガブリアスとしてもう一匹は何だ…?

 

 

「ここまで追い込まれるとはね…四災(スーザイ)の力を見せなさい、パオジアン」

 

「キ……ル……!」

 

 

 そうして繰り出されたのはいつぞやの全身雪の様な真っ白い細い体躯の獣の姿をした、口先には2つに割られた古びた剣が一対の牙の様に生えているポケモン、災いの(つるぎ)。雪崩を起こしたあのポケモンだ。パオジアンというのか。

 

 

「カタストロフィ!」

 

「素早く!つるぎのまい!」

 

 

 放たれた闇のエネルギーを防ぐようにつるぎのまいを指示するも、突きぬけて直撃するジャックが大きく怯む。あくのはどうみたいな技か?

 

 

「がんせきリッパー!」

 

「せいなる……つるぎ」

 

 

 攻撃力を上げた上で連続で斬撃を叩き込まんとするが、牙になっている剣から光の剣身が伸びて一閃。一撃でジャックは吹き飛ばされ、崩れ落ちる。せいなるつるぎ、コバルオンたち三剣士の専用技だったのがもう当たり前に他のポケモンも使ってくるなこの野郎。だがジャックの防御力なら一撃は耐えれたはずなのに……そんなに攻撃力が高いのか?

 

 

「知らないなら教えてあげる。カタストロフィは相手の体力を半分削る技よ。そこの効果抜群、ひとたまりもないわ」

 

「なるほどね。なら喰らわないようにするか。リベンジだ、レクス!」

 

 

 以前、パオジアン相手に新技まで披露してしてやられた経験のあるレクスに交代する。やる気十分だ。

 

 

「こおりのつぶて!」

 

「こうそくいどう!」

 

 

 まるでマシンガンの様に連射される氷の礫を、高速で校長室を駆け廻り回避しながら当たりそうになるものは蹴り返していくレクス。パオジアンも蹴り返された氷の礫を宙返りで回避しながら氷の礫を乱射。次々に校長室の備品が破壊されていく。………あとでクラベル校長に怒られるなこれ。

 

 

「レクス、力強く!かかとおとし!」

 

「つるぎのまい、せいなるつるぎ!」

 

 

 クルクル空中を回転しながら脚を大きく振り上げて急降下したレクスの振り下ろした右脚と、首を大きく振り回したパオジアンの振るった牙から伸びた光の剣が激突。しかしつるぎのまいで火力の上がったせいなるつるぎに力負けして空中に弾かれるレクス。

 

 

「とびかかる!」

 

「っ、カタストロフィ!」

 

 

 しかし天井を蹴って一回転、飛び蹴りの体勢となり急降下して強烈な一撃をパオジアンに叩き込む。四災(スーザイ)なら恐らくタイプはあく・こおりだろう。効果は抜群のそれを背中に受けたパオジアンはべたんと床に叩きつけられ、クレーターを作り上げてその真ん中に崩れ落ちた。だがカタストロフィを撃たれた、削れてた体力を更にその半分まで削られたか。………要はあれだな、いかりのまえばか。

 

 

「ここまで追い込むなんて、さすがはラウラさんね。でもこの子に勝てるかしら。ガブリアス、テラシンカ」

 

 

 そう言ってガブリアスを繰り出すと、懐から虹色の宝石が中央に埋めこまれた黒い菱形のブローチ、メガブローチを取り出して掲げ、溢れだした虹色の光とガブリアスの胸元から溢れだした虹色の光が繋がり、虹色の繭に包まれて、さらにそれが結晶化して砕け散り、ガブリアスはメガガブリアスとも違う攻撃的な姿に変貌。俺とレクスは身構える。

 

 

「あの時とは違うぞ。行くぞ、レクス!」

 

「さあ、水と氷の蒼さに沈みなさい」




レクスの昇華技は「レッグツイスト」変形する脚で相手の首を締め上げるというえぐい技です。

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VSミライドンⅡ

どうも、放仮ごです。FGOで見事な大爆死をかましましたが私は元気です。嘘です。

今回はテーブルシティでの大乱戦。楽しんでいただけたら幸いです。


「テツノオロチ、イナズマドライブ!」

 

「ハッサム、つるぎのまい!」

 

 

 近くの建物の屋根の上に飛び乗ったエスプリO…ラウラさんとエスプリG…グロリアことユウリさんがハッサムとテツノオロチと言うらしいポケモンで空中戦を行う下。テツノオロチが現れてからエレキフィールドとなった地上で、駆けつけた四天王も加わった私達はバラとアケビ、そしてブルーフレア団したっぱとエスプリ軍団を相手に戦っていた。

 

 

「ディンルー、じわれだ!」

 

「アーマルド、シザークロス!」

 

 

 アーマルドの背に乗り、バラのディンルーの放ったじわれを回避、シザークロスを叩き込む。四災(スーザイ)はいずれもあくタイプだ、もう一個のタイプが分からなかったがこの感じ…いわじゃない、じめんタイプか。

 

 

「イダイナキバ、はたきおとす!」

 

「ドラミドロ、水遁の術(なみのり)!」

 

 

 横ではシュウメイさんがバラがボールジャックで操るイダイナキバとぶつかっていた。あれはたしか、ラウラさんの記憶を取り戻すために必要なひでんスパイスの一つを守ってたヌシポケモンだ。グロリアもといユウリさんから報告をもらってたけど手懐けた……んじゃなくて無理やり操ってるのか。

 

 

「カーフ・スターモービル、作った我ながら強すぎるな!誰だ、とくせいをじきゅうりょくにしたの!俺だったな、クソッ!サケブシッポ、ムーンフォース!」

 

「なにコントをしてんねん!?うちのポピーの方が働いてるで!バクーダ、ふんえん!」

 

「さっきの人に比べたらへっちゃらもへもへなんですの!デカヌちゃん、じゃれつく!」

 

 

 カーフ・スターモービルを相手取るのはオルティガさん、四天王のチリさんとポピーさんだ。ラウラさんがフロント部分をひしゃげさせたもののじきゅうりょく…ドロバンコとその進化系であるバンバドロの専用とくせいであり、攻撃を受けると防御が1段階上がるというとくせいなのもあって苦戦している様子だ。状態異常も効かず、ビワさんに代わってその上に搭乗して操っているエスプリのボールジャックもあってとんでもない難敵になっている。

 

 

「アハハハ!チオンジェン、カタストロフィ!ハバタクカミ、パワージェム!」

 

「爆ぜろや!コータス、かえんぐるまだ!」

 

「もう、屈しない!ナゲツケサル、つばめがえし!」

 

 

 チオンジェンとハバタクカミを操るアケビを相手取るのはエスプリのスーツを身に着けたままのメロコさんと、ビワさん。チオンジェンのカタストロフィで確実に体力を半減させてハバタクカミで仕留める連携を取っているようで攻めあぐねている。

 

 

「ヒナ、ルミナコリジョン!」

 

「パーモット、でんこうそうげき!」

 

「マフィティフ!かみくだくだぜ!」

 

 

 ヌシシャリタツとヌシヘイラッシャはアイアールさん、ネモさん、ペパーさんが押さえこんでいる。こちらは時間の問題か。

 

 

「ドラゴーン!!オノノクス、げきりん!」

 

「ウォーグル、ブレイククロー!」

 

「ギャラドス、アクアテール!」

 

「ボールジャックは僕に任せろ!片っ端からジャミングしてやるよ!」

 

 

 エスプリ軍団とブルーフレア団のしたっぱたちはピーニャさんの援護を受けたネルケさん、四天王のハッサクさん、ムツキさんが蹴散らしている。あのままいけばそのままこちらに加勢できるだろう。

 

 

「テツノオロチ、パワージェム!」

 

「アギャアアアアッス!!!」

 

「バレットパンチだハッサム!」

 

「ハッサ!」

 

「悔しいですがあいつと渡り合うとは…!ラウラ、あんなに強かったんですか…!?」

 

 

 テツノオロチが蜷局を巻いて放つ流星群の様に降り注ぐパワージェムを、全て鋼の拳で打ち砕いているハッサムにムツキさんが感嘆の声を上げる。…もしかしたらラウラさん以上に強くなってる可能性すらあるんですよねえ。ラウラさんに負けた私とグレイの知るラウラさんですから。

 

 

「よそ見とは余裕だな!ディンルー、じだんだ!」

 

「交代、イオルブ!サイコキネシス!」

 

 

 隙を見てバラが指示してきた、前の技…この場合じわれが外れた場合威力が上がるじだんだを、サイコキネシスで無理矢理振動を相殺することで防ぐ。そう簡単にはやられませんよ。

 

 

「これでもプラズマ団に喧嘩売った身でして。悪の軍団に負けるわけにはいかないんですよ」

 

「我々が悪、か。我々の悲願を邪魔するお前たちこそ我々にとって悪なんだがな?」

 

「じゃあかしいんですよ。こんなに人々を洗脳して、被害者ぶるのはやめなさい」

 

「どうせみんな死ぬのだ。エスプリになったことで生き延びられるのに感謝してほしいぐらいだな」

 

 

 まったく悪びれない様子のバラに、シュウメイさんが怒りからか睨み付ける。同感だ。

 

 

「ふざけるなでござる。そんな自分勝手な恩の押し売りがあってたまるか」

 

「…仲間(グレイ)から聞きましたよ、死の猛毒をばら撒く咲いてはならない地獄の花、カロスの最終兵器。フレア団はその毒を防ぐ赤スーツを高値で売って購入した者を「選ばれし者」として助かるようにしていたとか。とんだ偽善ですね、選ばれし者ってつまり金を持っているかどうか、じゃないですか」

 

「今回は違うぞ?金持ちであろうとなかろうと我々に与する者だけが助かる。そして生まれるのは自分勝手な者達が消えた理想の世界だ。そしてなにより、私はあの最終兵器の死の花が咲いた姿を科学者として見たい。そのためならばなんでもするさ」

 

 

 それが本音か。このマッドサイエンティストめ。

 

 

「アケビも同じですか?」

 

「いいや。あいつは単に自分が楽しめればそれでいい人種だ。一緒にしないでもらいたいな」

 

「いや、同じでしょうが」

 

「同じでござるよ」

 

「……一緒にしないでもらいたいな!イダイナキバ、ぶちかまし!」

 

 

 照れ隠しの様に繰り出してきたのは、知らない技!?あの感じ、インファイト同じ防御を捨てた強力な一撃か。ならばこちらもとっておきだ。

 

 

「さいみんじゅつ!」

 

「なに!?」

 

 

 私とイオルブの十八番(オハコ)、さいみんじゅつが決まってイダイナキバを眠らせる。それに気を取られてディンルーへの指示が遅れるバラ。…エスプリと違って機械的じゃないからこそできた隙だ。

 

 

「シュウメイさん!」

 

「心得た!猛毒爆撃の術(ヘドロばくだん)!」

 

 

 そこにドラミドロから猛毒の塊が放たれ、直撃。眠ったまま毒に犯されイダイナキバは崩れ落ちた。あとはディンルーだけ…!

 

 

「くっ…エスプリG!加勢しろ!」

 

「テツノオロチ、じゅうでん。パラボラチャージ。ストリンダー、オーバードライブ」

 

 

 するとテツノオロチでラウラさんを相手にしたままエスプリGがストリンダーを繰り出してきて、エレキフィールドで威力が増した電撃を纏った音波が襲いかかって来てイオルブとドラミドロが戦闘不能となる。

 

 

「くっ…スカタンク!」

 

「アブリボン!」

 

 

 ポケモンを交代するが分が悪い。しかもパラボラチャージってことは、ラウラさんとの戦いで負ったダメージも回復している。

 

 

「ウルガモス!オーバーヒートだ!」

 

 

 そこに空からウルガモスが飛来、強烈な火炎を解き放ちテツノオロチを焼き尽くす。メロコさんのコータスのひでりを利用した一撃か。さすがだ。

 

 

「パラボラチャージ。イナズマドライブ」

 

 

 しかしテツノオロチはすぐ回復して、ホイール状に変形し相手に急降下しつつ突撃、通り過ぎた後に敵に強烈な雷を落としてウルガモスを感電させる。多分とくせいかなにか…エレキメイカーでエレキフィールドを作って威力を増すって、強すぎないかそのポケモン。多分パラドックスポケモンなんだろうけど。

 

 

「……鬼に金棒、ユウリに強ポケ。面倒この上ないな」

 

 

 ラウラさんが降りて来ながらそう吐き捨てる。なんかのことわざなのかな?

 

 

「監視カメラにハッキングして見たところ、あっちの俺も苦戦している。誰か援軍送りたいところだな」

 

「そうなんですか?」

 

 

 それはまずい。ネモさん達の言いぶりから記憶は取り戻してるっぽいが、それが苦戦しているなんてよっぽどだ。

 

 

「なら私が!…私が、行く!」

 

 

 そう胸に手を当てながら進言したのは、アイアールさんだった。




本音を告白したバラ。最終兵器を起動させようとするのは科学者故です。狂人しかいないからこそ再編できたブルーフレア団。

あっちのラウラとかこっちのラウラとか混乱しそうですが、今は詳しく語らないことにします。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSガブリアスⅡ

どうも、放仮ごです。一応の補足として、マトイと戦っている方のラウラはダフネやグレイの存在には気付いてなかったりします。

今回はラウラVSマトイ、終盤戦。楽しんでいただけたら幸いです。


「くそっ……レクス、かかとおとし!じごくづき!こうそくいどう!とびかかる!」

 

「無駄よ」

 

 

 怒涛の連続攻撃。普通のポケモンならひとたまりもないそのコンボ攻撃を、全て紙一重でとんでもない速さで回避して反撃の斬撃を叩き込んでくるテラガブリアスに、攻撃していたはずが防戦一方で必死に避ける羽目になってしまうレクス。レクスの脚力がずば抜けているから致命傷こそ負ってないがさっきからこれの繰り返しだ。

 

 

「技を使わずにこれかよ…化け物め」

 

「化け物とは失礼しちゃうわね。じゃあそろそろポケモンらしく技を使おうかしら。アクアカッター」

 

 

 瞬間、両腕を顔の前で交差したテラガブリアスが爪に水流を纏い、勢いよく振り下ろしてX状の水の斬撃が放たれ、咄嗟に俺を抱えたレクスが天井目掛けて跳躍した瞬間には俺のいた場所を水の斬撃が通り抜け、校長室の入り口の扉を四等分に斬り裂いて吹き飛ばしてしまった。

 

 

「…レクスじゃなくて俺を狙ったな?」

 

「貴方を狙えばポケモンの動きも制限される。道理よね?アクアブレイク」

 

「レクス、俺を離せ!とびかかる!」

 

 

 全身を煌めかせて水流を纏って右腕に集束させ、床を蹴って天井に着地していたレクスの目の前に一瞬で移動、咄嗟に俺を手放したレクスが飛び蹴りを叩き込もうとするも逆に殴り飛ばされ机に激突してしまう。なんとか受け身を取って着地した俺は慌てて駆け寄った。

 

 

「レクス!無事か!?」

 

「効果抜群じゃないとはいえ攻撃と素早さに特化したテラガブリアスの一撃をまともに受けたらひとたまりもないわ。特に蟲ポケモンの耐久じゃなおさらね?」

 

「…俺の今の相棒を舐めるなよ」

 

 

 そこには、瀕死になりながらも立ち上がるレクスがいた。ガラルでもそうだった。モコウのライボルトみたいに、トレーナーに応えて体力をミリで残して耐え抜くポケモンがいるのだ。レクスのもそれだろう。

 

 

「ラウラさんがその子に向けた沢山の愛情に応えてくれたのね。感動的だわ。でも無意味よ、テラガブリアスには勝てない」

 

「…そうだな」

 

 

 同じぐらいの素早さで防御を担当してくれる奴がいるなら別だが、今のレクスじゃ奴の速さに対応できても超えることはできない。ここは交代が吉だろう。

 

 

「行くぞ、ウカ」

 

 

 繰り出すはチヲハウハネ、ウカ。エリアゼロに迷い込んでブルーフレア団と対峙した際に出会い、協力してくれたアイツが俺を追って外に出て来たらしい。可愛い奴だ。

 

 

「あら、またその子?こっぴどくやられたのを覚えていないのかしら」

 

「覚えている……思い出したさ。これはリベンジだ」

 

「できるといいわね。ドラゴンクローよ」

 

 

 ジャキン、ジャキンと三つずつに増えた鋭い爪に青色のエネルギーを纏い、凄まじい速さで突撃してきたテラガブリアスを、両手を突き出してどっしりと構えて手首を掴んで受け止めるウカ。いくら素早かろうが、蟲の複眼なら捉えられる。

 

 

「そのまま投げ飛ばせ!とにかく素早さを下げるぞ!しびれごな!」

 

「アクアブレイク!」

 

 

 そのままテラガブリアスを一本背負いで空中に投げ飛ばし、両手の間に溜めた黄色い粉塵の玉を投げつけるウカ。それを水を纏った爪で薙ぎ払い、壁に着地したテラガブリアスは跳躍してそのままウカに斬りかかる。

 

 

「とびかかる!」

 

 

 ならばとそのスピードを利用してこちらから突撃し相手の爪を振るうタイミングをずらすことで直撃を回避し跳躍してのパンチを叩き込む。効果は薄いがこいつは見たところ防御を捨てて素早さと攻撃に全特化させている能力配分だと見た。結構効いただろ。

 

 

「じしん!」

 

「なっ!?」

 

 

 すると蹴り飛ばされ着地したテラガブリアスが床を殴りつけたかと思えば。部屋全体が振動。建物自体が崩れるかと思ったがそんなことはなく、どんだけ器用なのか机やら機材やらを振動で跳ね飛ばし、まるでピンボールの様に四方八方からウカに襲いかかりタコ殴りにされる。

 

 

「そんなのありか!?」

 

「屋内で使えないデメリット、ガラルのキリエとかいう元ジムリーダーが参考になったわ。ナンジャモさんの配信で教えてくれた貴方のおかげよ?アクアカッター」

 

「ニトロチャージ!」

 

「っ、アクアブレイク!」

 

 

 ならばとニトロチャージで素早さを上げて水の刃を回避。そのまま突撃して水を纏ったテラガブリアスと鍔競り合うウカ。相性は悪いが勢いはこっちが上だ!

 

 

「せっかくの素早さ、後手後手じゃあ意味がないぞマトイ!ローキック!」

 

「しまっ…」

 

「交代、ぼむん!」

 

 

 足払いでテラガブリアスが一回転し宙に浮いた千載一遇の好機。唯一みずテラスタルに効果抜群を取れるぼむんに交代。頭がいいので何も言うことなくすでに準備完了していた。さすが、俺の相棒たちだ!

 

 

「でんじほうだ!」

 

 

 放たれるはでんじほう。この距離なら外しようがない。他の手持ち五体は既に倒している、交代して逃げることもできない筈だ。勝った!

 

 

「交代よ、ガブリアス」

 

「なっ!?」

 

 

 テラガブリアスがボールに引っ込み、代わりに繰り出されたのはとんでもない冷気の靄で隠れた巨体のシルエット。前世で見たライトアップされた怪獣王を思わせるそれは、でんじほうを難なく受け止めてしまった。

 

 

「七匹目だと…!?」

 

「六匹だけだなんて何時言ったかしら?セグレイブ!かみくだく!」

 

 

 そして冷気の靄を突き破り、現れたのはひょうりゅうポケモン、セグレイブ。多分、このパルデア地方特有の600族だ。ぼむんの甲殻に噛み付き、文字通り噛み砕いてしまい罅が入った状態でふよふよと後退するぼむん。ま、まだだ。セグレイブはこおり・ドラゴンタイプ。はがねタイプのぼむんなら有利を取れる…!

 

 

「でんじふゆう、ヘビーボンバー!」

 

「撃ち落としなさい、れいとうビーム!」

 

 

 でんじふゆうで天井まで浮かび上がり、急降下するぼむんだったが、セグレイブの口から放たれた放射熱線……ではなく凍える冷気の光線で撃墜され、氷漬けにされて落下してしまう。

 

 

「貴方も七匹いるんだから、卑怯とは言わせないわよ?きょけんとつげき」

 

 

 そのまま逆さになり、鋭利な背びれを前に向けて凍った頭で滑走しながら突撃するセグレイブ。半ばギャグみたいな技だが強大な威力を誇るその一撃を受けたぼむんは強固な防御力を誇ったはずなのに、一撃でやられてしまった。

 

 

「くそっ……」

 

 

 テラガブリアスに対する有効打を失った俺は思わず後ずさりしてしまう。どうする、セグレイブはかくとうタイプのウカかかかとおとしを使えるレクスでどうにかなる。だがテラガブリアスに対する逆転の術が一切思いつかない。…俺は策を弄して相手を翻弄するスタイルだが、ムゲンダイナみたいに相手のスペックが強すぎるとさすがにどうしようもない。ムゲンダイナに勝てた時はユウリやモコウ、ムツキやホップ達…みんながいた、だが今は……俺は、独りだ。

 

 

「観念したみたいね。楽にしてあげるわ。つららおとし」

 

「っ、ニトロチャージ!」

 

 

 次のポケモンを出すこともできていなかった俺の頭上に冷気の息吹が放たれて氷柱を形成、それを落下させてくるセグレイブ。俺は咄嗟にウカを出して炎を纏わせて防ぎ、そのまま突撃させるも、セグレイブはまるで意に介していなかった。

 

 

「なに…!?」

 

「知らなかったのかしら。とくせい、ねつこうかん。やけど状態にならない上で、ほのおタイプの技を受けると攻撃が一段階上昇する。……ラウラさん、前から思っていたけど蟲ポケモン以外の知識が中途半端だと思うわ。つららおとし」

 

「くっ、ウカ!蹴り砕けローキック!」

 

 

 ローキックを無理やり回し蹴りの様に使って氷柱を蹴り砕いて行くがじり貧だ。テラガブリアスどころか、セグレイブすら突破できない。

 

 

「惜しかったわね。私の愛の勝ちよ。れいとうビーム」

 

「くそっ…」

 

 

 俺ごとウカを飲み込まんと、冷気が口に充填されていく。駄目だ、何も思いつかない。ガラルの手持ちならともかく、今の手持ち、残りのウカとレクスで突破する手段が思いつかない。ダイマックスも使えない、メガシンカも使えない。小手先が、通用しない。ここまでか……!

 

 

「ラウ、ラぁあああああっ!」

 

「え?」

 

「たたみがえし!」

 

 

 瞬間、外の穴から飛び込んできたゲッコウガが、俺たちとセグレイブの間の床を捲り上げて壁を形成、れいとうビームを防ぎ切り。その背に舌で抱えられていた少女が飛び降りる。ゲッコウガを連れていてオレの名前を知っている奴は一人しかいない。

 

 

「アイアール、なんでここに?」

 

「…マトイさん。貴方が私に接触してきたのは、私のトラウマを煽ってあわよくばラウラを排除しようとしていたんだよね。私の弱さのせいで、今回の対処が遅れた。こうなったのは私のせいだ。でも、だからこそ。私は貴方を乗り越える。ゲッコウガ…!」

 

 

 瞬間、咆哮したアイアールと、ゲッコウガが重なったビジョンが見えた。そして足元から発生した水流に包まれるゲッコウガ。激流が吹き飛んだ時、ゲッコウガは姿を変えていた。アイアールを思わせる三つ編みの茶髪の様な意匠に、星々が輝く夜空を思わせるサファイアの様な瞳。背中に出現した水でできた巨大十字手裏剣はやはり宝石のように輝いていて、テラスタルの様だった。

 

 

「ようやくできた、きずなへんげ…!行くよラウラ!私達で、マトイさんを倒す!」

 

「っ…ああ!行くぞ、アイアール!」

 

「いいわ、来なさい。二人に増えようが現実は変わらないことを教えてあげるわ」

 

 

 そうして、パルデアの命運を握る決戦は始まった。




このシリーズでは六匹制限は、大体のトレーナーが一度に使役できて愛情を注ぐことができる上限、みたいな扱いなのでラウラやマトイみたいな愛情が規格外な人たちは普通に七匹目を持ててます、別に地の文でしか六匹とは言ってないのだ。

そしてアイアールのゲッコウガ、覚醒。その名もサトシゲッコウガ…ではなくゲッコウガIR。テラスタルみたいに水流が輝いているのが特徴です。以前シュウメイの時にちょっとだけきずなへんげと言いかけてましたね。

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VSゲッコウガIR

どうも、放仮ごです。ここ2日ほどボイロ探偵Wばかり投稿してました申し訳ない。あちらも山場だったので…。

今回はラウラ&アイアールVSマトイ。楽しんでいただけたら幸いです。


「ウカ、とびかかる!」

 

「ゲッコウガ、みずしゅりけん!」

 

 

 アイアールと並び立ち、同時に指示を出す。拳を握り横に跳躍して殴りかかるウカと、宝石の様に煌めき硬質化した水の十字手裏剣を二本握って投げつけるゲッコウガの攻撃を一回転して尻尾で薙ぎ払うセグレイブ。それがそのゲッコウガの能力か。

 

 

「なんか固まった!?」

 

「ってお前も知らなかったのか!?」

 

「だって今初めて使えたんだよ!?きずなへんげ!」

 

「ごちゃごちゃ喋っている暇があるかしら。れいとうビーム!」

 

「っ、たたみがえし!」

 

 

 俺達が話している隙を突いて氷漬けにせんと放たれるれいとうビームに、咄嗟に指示を出してゲッコウガに防がせるアイアール。捲り上げた床ぐらいじゃぶち抜いてもおかしくない威力のれいとうビームだったが、今までのたたみがえしとは違った。右手を触れた箇所から持ち上げる様にして水流の壁を生み出し、それを宝石の様に煌めかせて硬質化させて完全に防ぎきってしまったのだ。

 

 

「すごい、ゲッコウガ……いや、ここでニックネーム決める!今日からあなたはツキカゲだ!」

 

「ゲッコ!」

 

 

 アイアールの言葉に嬉しげに頷くゲッコウガ、いやツキカゲ。そうだよな、相棒なのに唯一ニックネームをつけてもらえてなかったんだ……偶然だが士気も上がった。これなら行ける!

 

 

「お前、脊髄反射で生きてるよな…ウカ、ローキックだ!体勢を崩せ!ゲッコウガ……ツキカゲに繋げろ!」

 

「そんなもの、打ち砕いてあげるわ。きょけんとつげき!」

 

「たたみがえし…で打ち上げて!」

 

 

 ウカがローキックを叩き込むが崩れた体勢を利用して引っくり返り、背鰭を向けて突撃してくるセグレイブを、下から水流の壁で押し上げることで打ち上げるツキカゲ。

 

 

「かげぶんしん!」

 

 

 セグレイブが天井に叩きつけられたところに、六匹に増えたツキカゲの分身が煌めいて硬質化、次々と体当たりして空中に浮かせたまま打ちのめしていく。分身で惑わすことができなくなったが、攻撃的になっているな。

 

 

「くっ…つららおとし!」

 

「しびれごな!」

 

 

 空中から氷柱を形成して反撃せんとするセグレイブだったが、ウカが両手の間に集めた鱗粉の塊をボール状にして叩き付け、麻痺させて行動を阻害させる。やっと決まった、隙が無さ過ぎるんだよこの野郎。

 

 

「ツキカゲ、つじぎり!」

 

 

 そこを逃さず、両手から飛び出した水流を煌めく硬質化させて二本の水の太刀を握ったツキカゲの交差する斬撃が炸裂。硬質化した水の太刀が砕け散るほどの勢いのそれはセグレイブの意識を刈り取り、戦闘不能にした。

 

 

「最後の一匹まで追い込まれるなんて……でも負ける理由にはならない。根源の水に沈みなさい。テラガブリアス」

 

 

 繰り出されたのはテラガブリアス。問題はこいつだ。アイアールの助力があってもきつい。

 

 

「…アイアール。他の手持ちは?」

 

「ごめん、ここに来るまでにだいぶ消費しちゃって万全なのツキカゲだけ」

 

「…じゃあなんとかするか」

 

「うん。ツキカゲ、つじぎり!」

 

「ウカ、昇華技行くぞ!スタンパンチ!」

 

 

 ウカの昇華技の一つ。しびれごなを両腕に纏い、とびかかるを応用してまひ効果のあるパンチを叩き込む技を、テラガブリアスは大きくバックステップして回避。ツキカゲのつじぎりも回避して、その勢いのままマトイを抱えて壁の穴から外に飛び出す。

 

 

「アクアカッター!」

 

「とびかかる!」

 

「追いかけるよツキカゲ、雨霰の如く!みずしゅりけん!」

 

 

 外に飛び出しながら放って来た水の刃を回避し、追いかけて拳を叩き込むウカと、校長室の穴の上から硬質化したみずしゅりけんを天高く連続で投げつけて、流星群の様に降り注がせるツキカゲ。

 

 

「貴方なら避けれるわ。ドラゴンクロー」

 

 

 マトイを下ろしたテラガブリアスはまるで瞬間移動するかの様なスピードで全弾回避、ドラゴンクローをウカに叩き込んでくる。ウカは一度戦った相手だからか、落ち着いて複眼で相手の動きを捉えて拳で払いのけて行く。ウカは対応できている、俺も負けてられないな!

 

 

「そこだ!ローキック!」

 

「下がりなさい。じしんよ」

 

 

 ドラゴンクローが空ぶったのを見てからローキックを指示、下段蹴りを叩き込むウカだったが大きく後退したテラガブリアスは両手を地面に叩きつけて大地を八匹の龍の形状に変形させて攻撃してきた。キリエ式じしんか。とんでも技術を普通に再現するな、しかもキリエのより強そうだし。

 

 

「ニトロチャージだ!」

 

 

 見たことのない攻撃にウカは炎を纏って回避、防戦一方に追い込まれるが、そこに硬質化したみずしゅりけん二つを両手に持ったツキカゲが舞い降りてきて大地の龍を叩き斬る。

 

 

「みずしゅりけん!」

 

「無駄よ。アクアブレイク」

 

 

 そのままみずしゅりけんを投擲するツキカゲだったが、テラガブリアスの水を纏った腕で薙ぎ払われる。ダメだ、あの投擲速度じゃ届かない。

 

 

「ツキカゲ、みずしゅりけんをつじぎりで叩き込んで!」

 

 

 するとアイアールの突飛な指示に頷き、四つ形成して投げつけたみずしゅりけんを追いかけてつじぎりを打ち込み、加速させていくツキカゲ。硬質化しているからこそできる荒業だった。

 

 

「速い…!アクアカッター!」

 

 

 避けるのは諦めて迎撃に徹するテラガブリアスの前で、水の刃で砕かれたみずしゅりけんの結晶がキラキラと舞い散る。ここしかない…!

 

 

「ウカ、もう一つの昇華技だ!」

 

 

 俺の指示に頷き、アクアカッターとみずしゅりけんが激突している戦場に突撃するウカ。両手の間にしびれごなを集束させ、それを握ってテラガブリアスに叩き付け、ニトロチャージで業火を纏う。

 

 

「ふんじんねっぱ!」

 

 

 そして、大爆発。しびれごなとニトロチャージととびかかるを昇華させた、自爆覚悟の粉塵爆発攻撃だ。最後の切札にも等しい大火力技である。ウカも自傷ダメージを受けたが、なんとか倒れずにはすんだ。

 

 

「…驚いたけど、残念だったわね。倒すには至らなかったわ。アクアカッター!」

 

「ウカ!?」

 

「ツキカゲ!?」

 

 

 耐久力が無いテラガブリアスはよろめくも、しかして健在。大きく伸ばした水の刃のアクアカッターでウカとツキカゲ、二体纏めて薙ぎ払われてしまう。二体とも戦闘不能だ。だが、追い込んだぞ。

 

 

「…テラガブリアスが大ダメージを受けて怯む、そこまでいければよかったんだ」

 

「なにを…!?あ、アクアブレイク!」

 

 

 繰り出したのは、俺の最後の手持ちであるレクス。それを見てすぐに理解したのか、指示するマトイだったがガブリアスはやけどとまひで動きが止まる。それを待っていた。

 

 

「むしのしらせ、発動!とびかかるだぁあああああ!」

 

 

 根性で耐えたから体力ミリのレクスの、発動したむしのしらせ。簡単に言うと御三家ポケモンのもうか、しんりょく、げきりゅうのむしタイプバージョン。瀕死になったらむしタイプの技の威力が上がる、それだけのシンプルなとくせいだ。その効果を上乗せしたライダーキックがテラガブリアスに炸裂。テラガブリアスは宝石が砕け散る様にメガガブリアス、通常ガブリアスへと次々と姿を変えながら吹き飛び、オレンジアカデミー校舎裏の崖に激突、崩れ落ちた。

 

 

「…そんな、そんな馬鹿な…!?」

 

 

 信じられない様子で呆然としているマトイに、俺とアイアールはハイタッチ、同時に拳を突き出して不敵に笑う。

 

 

「俺達の」

 

「私達の」

 

「「勝利だ!」」




ゲッコウガIRの能力は全わざにみずタイプ付与+技のテラスタル化です。メガシンカ寄りだったサトシゲッコウガと違ってテラスタル寄りになっているきずなへんげですね。

ウカの昇華技、スタンパンチとふんじんねっぱ。どちらもしびれごなが起点です。粉って強いよね。

決めてはむしのしらせとびかかる。シンプルながら熱いとくせいですよね。

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VS最終兵器

どうも、放仮ごです。今回ラウラが反則、禁じ手とも言うべき行動をとってますが緊急事態ということで大目に見てやってください。

今回は題名通り最終兵器降臨。楽しんでいただけたら幸いです。


 アイアールの助力もあり、なんとかマトイを降した俺達。七匹持ち、ゲームじゃありえない番外戦術には恐れ入ったが蟲ポケモンの勝利だ。

 

 

「…私の可愛い手持ちたちに勝ったのは流石だわ。でも、どうやって最終兵器を止めるつもり?」

 

 

 俺達の背後を見たマトイが信じられないと言った顔からそう言って立ち直り、不敵な笑みを浮かべる。もう手持ちもいないのになんのつもりだ?

 

 

「どうやってって校長室の機械は大体破壊したんだ、もうとっくに止まって…」

 

「ら、ラウラ!あれ!」

 

「あれ?」

 

 

 マトイの視線が気になったのか後ろを振り返ったラウラが肩を叩いてきたので、レクスに警戒させたまま俺もその方向を見やり、絶句した。現在俺達はオレンジアカデミー校舎西側にいる。戦っているうちに移動していた。その校舎の向こう側、テーブルシティ。巨大な、宝石の様な物質でできた巨大な蕾が、テーブルシティの広場に開いた巨大な虚空の穴から生えてきていた。

 

 

「あれ、は……」

 

「あれこそが……カロスの伝承に存在する最終兵器。以前、カロス地方を滅ぼさんとした死の花よ……負けるつもりなんてなかったけれどね?結局は時間を稼げればよかったのよ…。地下に集めたテラスタルポケモンやパラドックスポケモンたちの生体エネルギーを使って、あの花が開花した時……良い子にしていたブルーフレア団以外の、全ての生物が死滅するのよ…!こんなにも、美しい事なんて他に無いわ!」

 

 

 今まで抑えていた感情を爆発させながらも、どこかまだ余裕があるかのように歓喜の声を上げるマトイ。そこに、ジニア先生、サワロ先生、キハダ先生の三人の先生方がやってきた。

 

 

「ラウラさん!一体何がどうなって…」

 

「ちょうどいいところに!マトイを頼みます!行くぞアイアール!」

 

「え、あ、うん!」

 

 

 先生方にマトイを任せて、とりあえず鞄から取り出したげんきのかたまりでジャックを復活させてその背に飛び乗り、げんきのかけらでツキカゲを回復させて抱えてもらったアイアールと共にテーブルシティ広場に急ぐ。見れば、場は混沌と化していた。

 

 

「ちい!あとお前だけなんだがなテツノオロチ!」

 

「テツノオロチ、イナズマドライブ」

 

 

 なんか俺の声で喋るエスプリがビビヨンに掴まってビークインを駆使し、なんかコライドンやモトトカゲに似ている青い竜のポケモンに乗った別のエスプリ……声からしてユウリか?が空中で戦っているし。

 

 

「さっさとこいつ、いてこましてアレをなんとかするで!」

 

「わかってるんだよそんなこと!こいつの耐久ほんとふざけんな昔の俺!」

 

「いくら攻撃しても全然効いてる気がしないんですの……」

 

 

 四天王のチリとスター団ボスのオルティガ、あと知らないちびっ子がエスプリが乗ってるスターモービルと思わしきマシンを全力で攻撃している。なんであれだけの猛攻受けてビクともしてないんだあのスターモービル。

 

 

「ビワ!あれはやばい!一気に燃やすぞ!合わせろ!」

 

「うん、メロコちゃん!」

 

「アハハハ……なんで子供がこんなに強いのよ!?あいつだけで十分だっての!」

 

 

 洗脳が解けたのかエスプリのスーツを身に着けたままのメロコと、顔だけ見たことあるスター団ボスのビワが、アケビの操る草木のカタツムリみたいなポケモンを相手取っている。あそこは時間の問題だな。その時間が無いわけだが。

 

 

「彼らの邪魔はさせません!オノノクス、ワイドブレイカー!」

 

「いい加減、減りなさい!ウォーグル、おいかぜ!」

 

「これ以上は手加減できませんよ!ギャラドス!アクアテール!」

 

「ミミズズ、アイアンヘッド!アイアンテール!もう一つおまけにアイアンヘッド!」

 

「とにかくぶっ壊せキョジオーン!しおづけだあ!」

 

「どこからか遠隔操作されてるっぽいからそれを見つければ何とかなりそうなんだけど…」

 

 

 ハッサク先生とこの世界のムツキ、ネルケことクラベル校長が邪魔しようと突撃してくるブルーフレア団したっぱを薙ぎ倒している横で、ネモとペパーが最終兵器を壊そうと技を叩き込み、ピーニャが地面に置いたノートパソコンを一心不乱に操作していた。ピーニャ凄いな、マトイが遠隔操作していたことを見抜いたのか。

 

 

「テツノドクガ、毒液爆弾の術(アシッドボム)!」

 

「ヘラクロス、インファイト!」

 

 

 そしてテツノドクガというらしい蟲ポケモンを操ってバラのディンルーと戦っているシュウメイの横に信じられない奴がいて、俺は思わず全力でツッコむ。

 

 

「なんでお前がいるんだ、ダフネえ!?」

 

「あれえ!?ラウラさん!?記憶戻ったんですか!?」

 

「ホワッツ!?そんな馬鹿なでござる!?」

 

「なに、ラウラが二人だと…!?」

 

「あ、うんそうなるよね」

 

 

 別の意味で驚いているシュウメイとバラと、なんか納得しているアイアール。え、やっぱり今あのユウリっぽいエスプリと戦ってるエスプリ、俺なの?どういうことなの…?

 

 

「そんなことよりあれどうにかしてください!グレイが言うにはあれが開いたらすべて終わりだそうです!」

 

「グレイも来ているのか!?…いや、わかった。ジャック!がんせきリッパーだ!」

 

「私も!ツキカゲ!みずしゅりけん!」

 

 

 頷いたジャックが四方八方から斬撃を叩き込み、再びきずなへんげしたツキカゲが硬質化したみずしゅりけんを何発も叩き込むが、最終兵器には傷一つついていなかった。これが効かないってのか!?

 

 

「ラウラ、まずいよ!開花が始まっている!」

 

「ああ、もう!お前ら邪魔だ!レクス、こうそくいどうだ!」

 

 

 ここに来るまでに完全回復させておいたレクスを繰り出して頭をかきむしりながら指示、頷いたレクスは俺の意思をくみ取ってくれて、高速で移動しユウリらしきエスプリを始めとしたエスプリたち、ブルーフレア団のしたっぱたち、アケビ、バラの意識を刈り取ってくれた。その手持ちであるポケモンたちは困惑しているが、人間しか無力化できないから混乱し続けるのを祈ろう。スターモービルは知らん!いや待て!めんどくさいやつははめんどくさいやつに任せるのが一番だ!

 

 

「ネモ、スターモービル頼んだ!そいつ倒したらオレのとっておきで相手してやる!」

 

「え、いいの!?わかった!でんこうもうげき!」

 

 

 俺がそう言うとオルティガ達を押しのけてスターモービルの相手をしだすネモ。繰り出したテラスタルしているパーモットで両腕に電撃を纏ってインファイトみたいな猛攻を叩き込んでいた。もうなんか普通に昇華技使ってるしあいつひとりでいいんじゃないかな、と言っている場合でもないか。すると真っ先に俺に駆け寄ってきたのは俺の声で喋るエスプリだった。

 

 

「どうするんだ、俺?」

 

「お前は誰なんだよ」

 

「俺はお前だ。そんなことより、こいつを何とかするのが先だろ」

 

 

 それはそう。よし、多分チリと一緒にいる子供も四天王だろ。これだけ頭数がそろえば物理的になんとかなる。

 

 

「みんな!コイツを押さえこめ!絶対に開花させるな!」

 

「「「「「おう!」」」」」

 

 

 俺の言葉に頷き、残っている手持ちを総動員して物理的に全方向から押して開花を止めようとネモとピーニャ以外のみんなが動くが、少し遅くなっただけで最終兵器は開き続けている。ぶっ壊すしかないと思うが、その手段がない。詰んだかこれ!?

 

 

「ピーニャ、どうにかならないか!?」

 

「無茶言わないでくれよラウラ!発信元は見つけたけどなんか強固なプログラムに守られてる!僕一人じゃ無理だ!せめてあと一人、同等の技術を持つ人間がいれば…」

 

「ハックなら、うちがやる!」

 

「え…?」

 

 

 そこに現れたのは、ボタンだった。イーブイバッグから小型のノートパソコン(ブイズのシールが張られている)を取り出して、ピーニャの横に座り打ち込み始める。ピーニャの手が止まる。理由はなんとなくわかるが呆けている場合じゃないぞピーニャ!

 

 

「ピーちゃん、手を止めないで!」

 

「え、あ、うん!了解!」

 

「よし、ならあとは…!」

 

 

 ボタンが加わったならそう時間はかからないだろう。なら無理矢理閉じ続けるだけだ。

 

 

「レクス、とびかかる!ダーマ、いとだまバルカン!レイン、むげんほうよう!ジャック、がんせきリッパー!ケプリベ、じんつうりき!ぼむん、まきびしキャノン!」

 

 

 ダーマのいとだまバルカンで無理矢理開閉部をくっつけ、ケプリベのじんつうりきで補強し、レクスの飛び蹴り、レインの泡の連撃、ジャックの斬撃の嵐、ぼむんの連射で無理矢理最終兵器の蕾を閉じる。それでも無理やり開閉せんとする最終兵器の蕾。するとバチバチと音と稲妻を発生させながら、沈み始めた。ボタンとピーニャがやったらしい。

 

 

「今だ、押し込めええっ!ウカ、ふんじんねっぱ!」

 

 

 ダメ押しとばかりに跳躍したウカが上空から大爆発を叩き込み、無理やり虚空の穴に押し込んで、そして、最終兵器は開花することなく姿を消したのだった。




これにてテーブルシティ解放戦、終結。禁じ手、トレーナーに直接攻撃。キリが無かったからしょうがないね。相変わらずネモい人は置いときます。

ポケスペXY編のジムリーダーたちの奮闘が地味に好きだったりします。特にフクジ老人とバラのやりとりいいよね。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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オリキャラ及び手持ち設定その2

どうも、合間に入れよう入れようと思ってたらこんなに遅くなってしまった設定投下です。前回がピーニャ直後ってマジ…?楽しんでいただけると幸いです。


・ラウラ

 ウルトラホールを潜った事故とブルーフレア団の人体実験で失っていた記憶を秘伝スパイス五つを摂取したことで取り戻した主人公。早業と力業、指示歩法や昇華技などを会得した上で前世含めて記憶を取り戻したので前作以上に強くなっている。

 寂しがっていたフェローチェとマッシブーンを元の世界に戻すためにすぐ戻るつもりでユウリにも無断でカンムリ雪原で探索していたところ、コスモッグの影響で発生したウルトラホールに咄嗟に手持ちを全部デンチュラに預けた上で飲み込まれ、「ハートゴールド(ヒビキ)、アルファサファイア(ユウキ)、ダイヤモンド(ヒカリ)、ブラック及びブラック2(トウヤとメイ)、Y(セレナ)、サン(ミヅキ)、ソード(ユウリ)、バイオレット(男主人公)」の世界から「ソウルシルバー(コトネ)、パール(コウキ)、ホワイト及びホワイト2(トウコとキョウヘイ)、X(カルム)、ウルトラサン(コウタ)、マリィがチャンピオンになっているガラルのシールド(こっちでもユウリ)、スカーレット(女主人公のアイアール)」の世界のパルデア地方上空に飛ばされてエリアゼロに迷い込んでしまった。

 そこで軽く記憶喪失の状態で電話してきたオーリムAIと状況確認していたところにタイムマシンを直接奪取しに来たマトイ率いるブルーフレア団と遭遇、ウカことチヲハウハネと協力して蹴散らすもマトイのテラガブリアスに敗れ、試作型イクスパンションスーツの実験台にされ完全に記憶を失い用済みとばかりに捨てられたところをネモに拾われ、本編に至る。

 ネモやアイアールをバトルジャンキーと呼んでいるがラウラ本人も認めてしまうほどにバトルジャンキーで、特に相手を出し抜くのが好み。羞恥よりも利を取るタイプ。

 

 

・レクス(マメバッタ→エクスレッグ)♂

とくせい:むしのしらせ

わざ:とびつく→とびかかる

   にどげり→かかとおとし

   フェイント→じごくづき

   こうそくいどう

昇華技:レッグツイスト(じごくづき+かかとおとし)

もちもの:なし

テラスタルタイプ:むし

備考:むじゃきな性格。ちょっぴりみえっぱり。ラウラの現在の相棒にして切札。イダイナキバとの戦いで進化したことで得た脚力が武器。指示が無くても意思疎通して自発的に技を使用できる。

 

 

・ダーマ(タマンチュラ→ワナイダー)♀

とくせい:はりこみ

わざ:スレッドトラップ

   カウンター

   いとをはく

   むしのていこう→はいよるいちげき

昇華技:いとだまバルカン(いとをはく+スレッドトラップ)

もちもの:なし

テラスタルタイプ:むし

備考:のんきな性格。物音に敏感。糸を使った戦法に磨きがかかった。空中の高速移動手段だったり落下した時の緊急手段として使われる。

 

 

・ウカ(チヲハウハネ)

とくせい:こだいかっせい

わざ:ローキック

   ニトロチャージ

   しびれごな

   とびかかる

昇華技:スタンパンチ(しびれごな+とびかかる)

    ふんじんねっぱ(しびれごな+ニトロチャージ)

もちもの:なし

テラスタルタイプ:かくとう

備考:ずぶとい性格。物音に敏感。ラウラの七匹目で、実は一番最初にパルデアでラウラと出会った手持ちで追いかけて地面を掘ってエリアゼロから出てきた。最初は記憶喪失したラウラを認められなくて言うことを聞いてなかったが記憶を取り戻していくうちに言うことを聞いて行った。かわいくてつよい(重要)

 

 

・レイン(アメタマ→アメモース)♀

とくせい:すいすい→いかく

わざ:バブルこうせん

   あまいかおり→エアカッター

   でんこうせっか

   ねばねばネット→むしのさざめき

昇華技:むげんほうよう(バブルこうせん+でんこうせっか)

もちもの:なし

テラスタルタイプ:みず

備考:せっかちな性格。イタズラが好き。イダイナキバ戦後のエスプリMとの戦いで進化した。でんこうせっかのスピードに磨きがかかっており、超高速で空中戦が可能。

 

 

・ジャック(バサギリ)♂

とくせい:テクニシャン→きれあじ

わざ:れんぞくぎり

   くさわけ

   つじぎり→がんせきアックス

   つばめがえし→つるぎのまい

昇華技:蟷螂制空圏

    がんせきリッパー(がんせきアックス+れんぞくぎり)

もちもの:なし

テラスタルタイプ:くさ

備考:ようきな性格。自信過剰で目立ちたがり屋。よくラウラに頼られる切札とも言うべきポケモン。モコウ戦やナンジャモ戦で目立ちたがり屋の本領発揮をしたほか、とくせいのきれあじでつるぎのまいを攻撃技に昇華した上に、斬撃でドームを形作る蟷螂制空圏と言う防御技を手に入れた。

 

 

・ケプリべ(ベラカス)♂

とくせい:シンクロ

わざ:むしのていこう→むしのさざめき

   サイケこうせん→じんつうりき

   じこあんじ

   さいきのいのり

昇華技:不明

もちもの:なし

テラスタルタイプ:エスパー

備考:れいせいな性格。イタズラが好き。シガロコの時ラウラに追いかけられた上にボールを叩きつけられた末なんか進化してた。ネーミングはスカラベの象徴とされる神と語り部から。ナンジャモ戦ではじんつうりきで海の水を操り圧倒することで蟲の強さを全世界に見せつけた。進化条件が条件なのでレアポケモン扱いされてる。さいきのいのりで味方を復活させるヒーラーとしても活躍している。

 

 

・ぼむん(フォレトス)♂

とくせい:がんじょう

わざ:だいばくはつ→からげんき→でんじふゆう

   ヘビーボンバー

   まきびし

   でんじほう

昇華技:まきびしキャノン

もちもの:なし

テラスタイプ:はがね

備考:おくびょうな性格。打たれ強い。オコゲ林道でラウラと出くわし自爆したことで拾われたポケモン。ネーミングは爆弾と爆発音から。でんじふゆうで便利な移動手段として時々使われる。

 

 

 

・アイアール

 原作主人公に当たる人物。カロス地方出身であり父親の上司であるフラダリやその友人であるプラターヌ博士を尊敬している。しかしプラターヌからもらったケロマツとのカロスでの旅でフレア団の陰謀に巻き込まれ、父親とフラダリがフレア団だったと知り戦意喪失。さらにその後カルムに倒され逮捕された父親に心無い言葉を浴びせられ、親しい人間から「裏切られる」ことが極端に苦手な人間不信になってしまっていた。

 ラウラやネモ、ペパーなどパルデアで出会った友人たちとの交流で少しずつ治っていたがマトイの接触により記憶を取り戻したラウラに不安を抱き、ラウラを騙して秘伝スパイスを処分しようとしたりなど不穏な行動が目立ったがペパーの説得で人を信じることを思い出して関係改善した上で、ゲッコウガとのきずなへんげも覚醒させた。

 一言で言うとめんどくさいながらも良くも悪くも主人公らしい人物。

 

 

・ツキカゲ(ケロマツ→ゲコガシラ→ゲッコウガ→ゲッコウガIR)♂

とくせい:きずなへんげ

わざ:みずしゅりけん

   たたみがえし

   つじぎり

   かげぶんしん

もちもの:なし

テラスタイプ:みず

備考:しんちょうな性格。ちょっぴり強情。アイアールのホゲータより以前の相棒ポケモンで、リプルことウミトリオと入れ替わる形で加入した。それまではアイアールがカロスでのことを思い出してしまうためニックネームも付けられず、他の手持ち共々母親の手伝いをさせられていた。アイアールを思うあまり深い信頼関係が築けていなかったが、吹っ切れたアイアールに応える様にゲッコウガIRへの変身能力を覚醒させた。

 

 

 

・サニア

 ブルーフレア団のタイムマシンの実験に巻き込まれ現代のパルデアに迷い込んだ古代人でクラベルに保護され学生として宝探しと称して元の時代に戻る手がかりを探していた。チヲハウハネやバサギリを知っていたのも古代生まれなため。くろのきせきは偶然持って来てた石槍にくっ付いてたもの。

 ナッペ山からエリアゼロに潜入できないか試みていたところ、パオジアンの雪崩に巻き込まれ寒さで行き倒れになっていたところをブルーフレア団に捕縛されスペシャルエスプリの一人、エスプリSとして利用されてしまった散々な人。

 

 

・オレア

 パルデアの蟲使いである少年。登場回数なんと二回(もう少し出番があったはずなのだがテンポ優先で特に掘り下げなくテーブルシティ編で再登場になってしまった)。ブルーフレア団に実力者として目をつけられて捕縛され、エスプリOとして利用されていた。キャラモチーフはポケスペのルビーで前口上を多用する。もう一人のラウラが使っていたハッサム、ビークイン、ウルガモス、コロトック、ビビヨン、モルフォンは彼の手持ち。名前の由来はキョウチクトウ(夾竹桃、英:oleander(学名ネリウム、オレアンダーセージとも)。

 

 

・ムツキ

 アオキに代わるひこうタイプ使いのパルデア四天王。ガラル出身でラウラの親友の一人。ポケモン育成がとにかく上手で練度が桁外れであり、以前ラウラを初敗北させた…のは「バイオレット」の世界のムツキ。「スカーレット」世界のムツキはメロンを相手に挫折した後ラウラがいないため立ち直ることができず、そのまま逃げる様にパルデアにやってきてマトイにスカウトされ四天王になった。キリエと和解できてないため反抗心が強い。

 

 

・キリエ

ムツキとその姉であるリヅキの母親。じめんタイプ使いで元ガラル最強のジムリーダーで毎回ラウラを大苦戦させた作中最強クラス。その強さは異世界でも変わらず、ラウラを始めとしてチリやマトイなど多くのトレーナーに影響を与えた。

 

 

・モコウ

 ラウラ、ユウリ、ムツキの親友で中二病のでんきタイプ使い…なのは「バイオレット」の世界のモコウ。「スカーレット」世界のモコウは友人に恵まれずジムチャレンジに参加することもなく中二病を卒業し、親族から逃げる様にパルデアにやってきて配信者となっていた。ナンジャモの終身名誉リスナー。バトルの腕はそこそこ。

 

 

 

 

 

・ブルーフレア団

カロスで壊滅したフレア団の後継組織。マトイがパキラに無断でパルデア地方で残党を集め、更にスター団の現状に不満を抱くしたっぱや、スター団のためだとしてビワをも引き込んで復活させたフレア団。以前と違い、青いサングラスと青スーツがしたっぱの特徴。元スター団も青いサングラスを着用する。子供であるスター団を利用して復活した悪い大人の集団。尚、マトイ自体は善性として活動させているため悪だと認識してない節がある。特にクセロシキからハッキングして奪ったイクスパンションスーツが主戦力であり、実力あるトレーナーをエスプリとして利用する、パラドックスポケモンを扱う、四災を全て手に入れる、AIに守られているタイムマシンをハッキングするなど、組織としての戦力は歴代最強クラス。

 土地、エネルギー、人材がすべてそろっているパルデア地方で過去の最終兵器を呼び出し世界を浄化しようと目論んだ。

 

 

・マトイ

 誰からも好かれそうな雰囲気をしたセクシーな大人のお姉さんでレホール先生の親友でもある科学者。アカデミーの司書でもあり、特に四災の伝説などを調べている。かつては心理学も学んでいた為、人やポケモンの心に干渉する術に長けているが、レホールの事をレーちゃんと呼び、ブルーフレア団としての顔を抜きにしても、彼女に対して重く深い親愛の情を向ける程、その友情は本物だった。口癖は「いい子にしてる?」

 その正体は、旧フレア団大幹部の片割れにして、ブルーフレア団ボス。フラダリお抱えの伝説ポケモンの研究者でゼルネアスを見つけた功績も持つが、フラダリではなく彼が持っていた思想に感銘を受けた為、XY本編で失われた最終兵器を取り戻しフラダリには成し遂げられなかった計画を成功させる為、古代を研究しているオーリム博士のタイムマシンを悪用せんとする。

その見た目と、かつて学んだ心理学を応用した話術や干渉術、例え親友であろうと「美しい世界を創る」という目的の為に利用する程に冷酷な覚悟を持っており、トレーナーに対しても容赦なくポケモンの技を放てる他、キリエの技術を模倣したばかりかパワーアップさせたり、テラシンカを唯一使えるなどトレーナーとしての技術はトップクラス。

 手持ちポケモンはウェーニバル(校長から人格を信用されて受け継いだポケモン)・フリージオ・モスノウ・ブロスター・セグレイブ・ガブリアス(テラスタル:みず 切札)・パオジアン(七匹目の手持ち)とみず・こおりタイプ。手持ちへ向ける愛情はラウラと大差ない。名前の由来はイソトマ。花言葉は猛毒、強烈な誘惑、神聖なる思い出、優しい知らせ、心を開く。

 

 

・ガブリアス→テラガブリアス♂

とくせい:さめはだ→きれあじ

わざ:アクアブレイク

   ドラゴンクロー

   じしん

   アクアカッター

もちもの:ガブリアスナイト

テラスタイプ:みず

備考:れいせいな性格。ちょっぴりみえっぱり。列柱洞出身のあいつ。カロスから持ち込んだメガシンカと、パルデア特有のテラスタルを合わせたマトイの切り札であり、キリエのじしん戦法も使える。防御力が紙も同然となっており、その分攻撃力とすばやさが底上げされている。その速さは雷の着弾速度を越える程。ラウラとチヲハウハネのコンビを一方的に敗北に追い込み、ラウラがエスプリの実験体にされ記憶を完全に失うこととなった原因。

 

 

 

・グロリア/ユウリ

 ブルーフレア団の幹部。ラウラと因縁があるらしく、戦うためだけにブルーフレア団に入った自称お嬢様。パラドックスポケモンの群れを返り討ちにする実力。加入したのはラウラがパルデアに来てからなのでバラに新参者と呼ばれる。銀髪をパーティアレンジに纏めている。手持ちはインテレオン、アーマーガア、ストリンダー(ローのすがた)、セキタンザン、テツノブジン、トドロクツキ、ミライドン。アイアールの事が大嫌い。名前の由来はグロリオサ。幹部としての仕事はテラスタルポケモンの確保。

 その正体は剣盾の原作主人公に当たる人物でガラルのチャンピオンでありラウラの嫁。ダフネに洗脳されてブルーフレア団に潜入させられていた。ラウラとの戦いで洗脳が解けてしまい、マトイに用済みとしてエスプリGとして利用されてしまい、四天王全員を足止めした上で圧倒する、もう一人のラウラと互角の戦いを繰り広げるなど規格外っぷりを発揮した。

 

 

・ダフネ

 前作第一部カンムリ雪原編の悪役にして前作第二部の主人公である天才蟲使い。ローレルと言う兄がいる。イオルブを使ったさいみんじゅつが得意技で、幸せな夢を見せて自在に操れるが、それは反省して封印していた。ラウラを追って「スカーレット」の世界までやってきて、グレイと共に情報収集と準備に勤しんでいた。もう一人のラウラについて何か知ってる模様。相棒はメガヘラクロス。名前の由来はラウラと同じ月桂樹、に姿を変えたニンフから。モチーフは「ほうかご百物語」の多々羅木美生。

 

 

・グレイ

 前作第二部の悪役にして無印ポケットモンスター蟲のラスボスだった新生プラズマ団の首魁。捕まっていたがラウラ捜索のために釈放されブレーンとして捜索に力を貸し、「スカーレット」の世界にやってきてダフネと共に情報収集と準備に勤しんでいた。テーブルシティ編では秘密兵器を作動させるが…?

 ラウラと同じで転生者であり、純粋な転生者のラウラと異なり「スーパーマサラ人に匹敵する身体能力」「アクロマに匹敵する頭脳」「マスターボール6つ」という特典を持っている、いわゆる神様転生。名前の由来は灰色から。

 

 

・ジュリ

 少々ややこしいが、「バイオレット」世界に転移してきた前世のラウラの妹でゴーストタイプ使い。そのためラウラを「お兄ちゃん」と呼ぶ他、ダフネと共に旅をした親友でもある。

 今作ではルナアーラを新たに仲間にして、ラウラを追いかける一助となった。現在は全員が帰れるように元の世界に戻ってソルガレオを連れてくるべくチャンピオン防衛戦に挑戦中。

 

 

・もう一人のラウラ

 突如エスプリOが異常をきたして乗っ取る様に現れたラウラ。ラウラと同じ性格、同じ声、同じ蟲ポケモンへの愛情、そしてラウラ以上の戦闘技術を要する。その正体は…?




ポケモンの設定はラウラの手持ちとアイアールのツキカゲとテラガブリアスのみとさせていただきました。

次回からポケモン蟲スカーレット最終章に入ります。マトイは「表」のラスボスだったのだ。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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最終章、後始末
VSテツノイバラ


どうも、放仮ごです。今回から最終章に入ります。

今回はテーブルシティ編の後日談。楽しんでいただけると幸いです。


「まだだ、まだ終わらん…!」

 

 

 最終兵器を虚空の穴に押し戻したことで湧いていた俺達の前に、レクスが意識を失わせたはずの女がよろよろとやってきた。傍らにはディンルーとイダイナキバを連れている。

 

 

「バラ…!お前、まだ…!」

 

「ディンルー、イダイナキバ!全てを破壊しろ!最終兵器の手に頼らずとも、世界を破壊する手などいくらでもある!」

 

 

 自身はブーツから炎を噴射して空に舞い上がったバラに指示されたディンルーとイダイナキバが俺達に向けてじわれとじしんで同時に襲い掛かる。この場にいるのは全員実力者なのに、とんでもない威力に耐えるのに必死で手も足も出ない。くそっ、空に逃げやがった…!あいつを逃がしたら、やばい。

 

 

「ラウラ!例え貴様がどれだけ強かろうと、ブルーフレア団の科学力には手も足も出ない確率99%!そうだろう!」

 

「空飛ぶのはずるいぞお前!」

 

「逃がすかい!ドオー、隆起せい!じしんや!」

 

「ウォーグル、追いなさい!」

 

 

 するとチリさんがドオーでキリエの如くじしんで土柱を形成して伸ばして空中のバラに攻撃、ウォーグルに肩を掴ませたムツキが空に舞い上がり突撃するが、バラは自在に空を飛んで土柱を全て回避し、ムツキは地上から飛んで来たバンギラスに似たメカメカしいポケモンの電撃が襲いかかって撃墜してしまう。あいつもエスプリと同じボールジャックの力が使えるのか…!

 

 

「テツノイバラ。ミサイルばりだ!」

 

 

 右手を翳してそう指示すると、メカバンギラス……テツノイバラと言うらしいそいつは電撃を纏った全身のトゲをミサイルの如く乱射。俺達はそれぞれのポケモンで防御するが、ブルーフレア団のしたっぱやそのポケモンたちもろとも巻き込まんとする奴に、俺達はそれも守るのに必死だ。くそっ、バラを逃がすわけにはいかないってのに…このテツノイバラと、ディンルー、イダイナキバをどうにかしないとバラを追うこともできない。

 

 

「俺が!」

 

 

 するとじわれ、じしん、ミサイルばりの猛攻をその身体能力で避けるエスプリがいた。俺の声で喋るあいつだ。あの無茶も俺と同じだ、なんなんだあいつは。

 

 

「シュウメイだったか?そのテツノドクガ、借りるぞ!」

 

「なっ!?」

 

 

 ボールジャックを使ったのかシュウメイの黒鉄(くろがね)のウルガモスみたいなポケモン……テツノドクガと言うらしいそいつに飛び乗り、空に舞い上がりバラに突き進むエスプリ。テツノイバラの妨害を的確な指示で回避し、バラに向けて跳躍する。

 

 

「なんだと!?くそっ……お前は一体何なんだ!?」

 

「俺はラウラさ。俺がだいぶ世話になったと聞いている。観念してお縄につけ」

 

「くそおおおおお!?」

 

 

 そのままエスプリに首根っこを掴まれ、バランスを崩して落下するバラ。するとバラのちゃんとした手持ちであるディンルーとイダイナキバはどうすればいいのか分からずオロオロしているが、ボールジャックが切れたせいか暴れ狂うテツノイバラ。制御する奴がいなくなって逆に厄介になってやがる。

 

 

「こいつは俺に任せろ!テツノドクガ、お前も力を貸せ!ウカ!お前もだ!」

 

「ラウラ殿の指示に従うでござる、テツノドクガ!」

 

 

 ディンルーとイダイナキバは他の奴に任せることにして、テツノイバラは俺が何とかするか。空から降りてきていたテツノドクガにシュウメイがそう言って頷き、ウカの隣に浮かぶ。…こいつ、ドラピオンと同じ感じだ。蟲みたいだがむしタイプじゃない、俺が苦手なこの感じ、どく・ほのおか?

 

 

「ウカはしびれごなだ!でんきタイプみたいだから効かないだろうがアイツの周りにばら撒け!テツノドクガはほのおのまいだ、使えるか?」

 

 

 多分、テツノイバラはでんきといわタイプだろう。ウカのかくとうタイプの技で攻めるにしても隙が欲しい。ウカがしびれごなの塊を叩き付け、テツノドクガが頷いて自在に動く炎を放ってテツノイバラを取り囲みしびれごなに着火。粉塵爆発で大爆発を起こしてテツノイバラを怯ませる。

 

 

「ウカ、ローキック!テツノドクガはヘドロウェーブ!」

 

 

 そこにウカがスライディングキックが叩き込んでテツノイバラを転倒、そこの毒の奔流が叩き込まれてテツノイバラは崩れ落ちた。

 

 

「…これで本当に終わりだろうな?」

 

 

 なんか見たことあるクソデカシャリタツとヘイラッシャとか、ディンルーの他にも二体、四災(スーザイ)と思われる明らかに禍々しいポケモンが二体ほど転がっているが、戦闘不能になってるっぽいからいいか。

 

 

「ラウラー!あのデカブツ倒したよー!」

 

 

 そこに、爆走するスターモービルを追いかけていたネモが戻ってきた。見れば、ネモが来た方向の先には無惨にもスクラップにされたスターモービルが転がってる。ブロロローム無事だろうか。

 

 

「じゃ!バトルしよう!」

 

「自重しやがれ学校の危機にもやる気出さなかった、バトルバカネモ」

 

「バカとはなんだー!」

 

「俺はそれどころじゃないの!後で戦ってやるからブルーフレア団の捕縛しろ!お前強いんだからアイツらも反抗しないだろ」

 

 

 言いながら辺りを見渡す。…ボタンはいつの間にかいなくなってるな。やっぱりあいつが…。ってダフネもいなくなってる。何時の間に。アイツには聞きたいことが山ほどあるってのに……。

 

 

「…以前、危険ごとに首突っ込むなと言ったのに思いっきり突っ込みおったなラウラ」

 

「チリさん。めんぼくない」

 

 

 そこにポケットに両手を突っ込んだチリさんがやってきた。なんかボロボロだけど大丈夫か?

 

 

「安心せい。外のポケモンたちの暴走もジムリーダーたちが無事鎮圧したと今さっき連絡があった。うちのトップも無事や。エスプリにされてたサニアを元に戻したらしい。先生方が捕縛してるっていう、自分(ラウラ)とアイアールが倒した首魁のマトイも今うちのハッサクとポピーが回収に向かっとる」

 

「サニアも利用されてたのか…よかった」

 

「で、あの逃げようとした女、捕まえるんやろ?うちも手伝うで」

 

「ああ、チリさん。助かる」

 

 

 チリさんを引き連れて、二人が落ちてったテーブルシティ東の高台に向かう。バラもそうだが、もう一人の俺が何なのかも知りたいところだ。高台までやってくると、気絶しているバラと、その隣でヘルメットを外してオロオロしているエスプリ…オレアがいた。チャンプルタウン以来だなおい。

 

 

「あ、ラウラ!ここは…テーブルシティだよね?なんかボロボロだけど…僕に何があったか知ってる?」

 

「オレア。…中身はお前だったのか」

 

 

 そりゃ蟲ポケモンを持ってるわけだ。……じゃあ、あの俺はなんだったんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方其の頃。テーブルシティ西門から出て走るポケモンとトレーナーがいた。アーマルドの背に乗ったダフネだ。そのままスマホロトムを手にグレイと電話していた。

 

 

「でもよかったんです?ラウラさんに事情説明しなくて」

 

《「どうせエリアゼロに呼ぶんだ。その時でいい」》

 

「絶対怒ってますよラウラさん…それにアレ、まだ細かい調整すんでなかったんじゃ?」

 

《「ああ。緊急事態であれしか打開策が無かったからな。実際凄い助かっただろ?」》

 

《「やあダフネ。私の最高傑作はどうだっただろうか。変なところはなかったかい?」》

 

「あ、オーリムさん。みんな混乱するぐらいラウラさんでしたよ」

 

 

 するとグレイの声の向こうからオーリムAIの声が聞こえて笑顔で頷くダフネ。

 

 

《「君達の話からデータを纏めた仮想人格だがそこまで完成度が高かったか。よかった」》

 

《「対ブルーフレア団秘密兵器『ラウラAI』成功だな。本体は使わずじまいだったが…まあゼロラボにスカーレットブックを届ける前にブルーフレア団が事をおっぱじめたからしょうがないな」》

 

「まあ使い道は後から考えましょう。ラウラさんの記憶も戻りましたし、あとはのんびりジュリさんを待つだけですね!」

 

 

 そう簡単に終わらない。




しつこかったバラ。自分の欲望に結構忠実。

ラウラ視点なのでラウラ以外が細かくどう動いているのか書くのができなかったのが申し訳ない。

そして判明、ラウラAI。といっても感想欄のほとんどでばれてたみたいですが。あからさますぎたか。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSタイレーツ

どうも、放仮ごです。ここ2日、Fate/Ibを更新してました申し訳ない。

今回は決戦のその後。再出発。楽しんでいただけると幸いです。


 その後、サニアの無事も知らされた俺達はやってきた国際警察に事情聴取される羽目になった。まあ当事者だからな、しょうがないか。異世界から来た云々の明言は避けて、俺は全部話した。

 

 ブルーフレア団のタイムマシン起動実験に巻き込まれてここに来たこと(多分だけど、これしか原因が思いつかん)。敗北して捕まってエスプリの実験台にされて記憶を失っていたこと。知る限りのエスプリの性能全てとその脅威。気絶したまま拘束されてしまったユウリが俺と同じところから来た知り合いで、エスプリに洗脳されてただけで危険じゃないと説明する。……多分ダフネのさいみんじゅつのせいだろ、あのグロリアの状態。

 

 

「だからユウリは解放してくれ。あいつは洗脳されていただけだ」

 

「彼女が行方不明のブルーフレア団幹部の一人、グロリアと同一人物だという話がありますが?」

 

 

 そう尋ねてきたのはあっちだと知り合いどころかゲノセクトを譲ってもらった恩もあるリラさん。なんでも、俺が虚空の穴からパルデアにやってきたと聞いて来たらしい。俺が「Fall」の可能性が高いと言う話だが、まあそうなんだろう。フェローチェとマッシブーンを帰すつもりが同類(ストレンジャー)になってちゃ世話無いな。

 

 

「言っとくがあれはユウリじゃない。違和感すごかったぞ。十中八九洗脳されてた、多分ブルーフレア団に捕まって利用されてたんだ」

 

「…正直彼女の手持ちは危険度も高くて放置するわけにもいかないのですが、懐いて離れないのです。あのままというわけにもいきませんし、貴方が責任もって見張っていると言うのなら解放しましょう」

 

「それは助かる!」

 

 

 手を打って喜ぶと、リラさんは溜め息を吐いた。

 

 

「本来ならあなたも国際警察で保護するべきなんですが…余程愛されているようですね。貴方を連れて行かないでくれってたくさんの人に懇願されました。様子見するに留めることとします。…あとひとつ」

 

「なんでしょう?」

 

「ダフネと呼ばれた少女も貴方の仲間だという話でしたが……では、ラウラと呼ばれたエスプリの正体はわかりますか?」

 

「オレアではなく?」

 

「多くの人間が証言しました。あれはたしかに、ラウラだったと。オレアという少年はその『ラウラ』に乗っ取られた状態でした。あの時はオレアくんだけだったかもしれない、だけどもしも体を持たない存在であれば…つまりそれは」

 

「…エスプリがまだ、野放しにされているということになる?」

 

 

 たしかにアイツよくわからなかったんだよな。悪い奴じゃなさそうだったけど。ネモによれば俺より強いとかいうのが納得いかないけど。

 

 

「我々国際警察は『ラウラ』を追います。なにか思い出したことがあればこの連絡先に」

 

「わかりました」

 

「では」

 

 

 そうして、俺とユウリは解放された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし派手にぶっ壊したな」

 

「そりゃじわれとかじしんが当たり前に使われてたもの」

 

「街の被害を気にしないで暴れるの楽しかったな!」

 

「ネモ。それ絶対警察の前で言うなよ?」

 

 

 気絶したユウリを背負い、アイアールとネモ、ペパーと共に高台の上からテーブルシティのあちこちをタイレーツが資材を運んでいるのを横目に眺める。

 

 

「ところで、その人は?あのとんでもなく強かった」

 

「俺の…………嫁だ」

 

「ええ!?」

 

「先約済み!?」

 

「いやそこじゃねえだろ!?」

 

 

 なんかアイアールの視線が冷めた気がする。俺、またやらかしてないよな?心配になってくるぞ。

 

 

「ラウラ、どういうこと!?」

 

「取り戻した記憶がそう言ってるんだからしょうがないだろ。籍も置いてるぞ」

 

「はえー、ラウラのいた世界だと同性同士の結婚ありなんだ…」

 

「ラウラは男らしいと思ってたからありだと思うぜ!俺は!」

 

「そうかー、…そうかー……グロリア許せない理由が分かった気がするや」

 

「アイアール?」

 

「何も始まらずに終わっただけだから気にしないで」

 

「お、おう?」

 

 

 お前の様子可笑しいと洒落にならないからちゃんと話してほしいがブチギれている時のユウリと同じ気配がするから、触らぬ神に祟りなしだ。

 

 

「ユウリもそうだがサニアとかオレアとか、エスプリにされてたやつらの大半はみんな眠ったまんまらしいな。ユウリも病院に預けてくればよかったかなあ。とりあえず」

 

 

 ユウリの手を握り、ボールのボタンをユウリの指で押して繰り出したのは青い体に稲妻迸る蛇竜のポケモン。出てくるなりユウリを心配する様に四足歩行で見つめてくる。

 

 

「名前わからないからミライドンと呼んでいいか?」

 

「アギャ!」

 

「お前の背にユウリを乗せてもいいか?」

 

「アギャアス!」

 

「よしよし、いい返事だ」

 

 

 ミライドンの背にユウリを乗せて一息つく。多分、ゼクロムレシラムみたいにコライドンの対になる奴だろ。古来の対なら未来で合ってるはずだ。

 

 

「…さて、どうするかなあ」

 

 

 スター団とは、ビワとの対決はまたにすることにして別れたし、まあ一つしかないか。オモダカさんに喧嘩売ってしまったしな。

 

 

「アイアール。また旅に出るか」

 

「…え?」

 

「え?ってなんだよ。いやなのか?」

 

「ううん、そんなことは絶対ないよ!」

 

 

 アイアールの了承は得た。お前ならそう言ってくれると思ったよ。

 

 

「なあ、ネモ。ペパー」

 

「なあに?」

 

「なんだよ?」

 

「アイアールと俺さ、ジムバッジ6つで止まってるんだよ。それに、スター団との決着もちゃんとつけたい。だからまた、パルデアを巡る旅二周目に出るけどさ……一緒に旅しないか?」

 

 

 アイアールとの二人旅も楽しかったが、今回の一件で確信した。今の俺にとってのユウリ、モコウ、ムツキはアイアール、ネモ、ペパーの三人だ。だからこれは、二人になんの得もないわがまま…だけど。

 

 

「もちろん!いくいく!言われなくてもついていく!毎日バトルしようね!約束したし!」

 

「俺とアイアールは行きたいところもあるしな。そのついでだ、ついてってやるぜ!」

 

「毎日は勘弁してくれ…って言ってもお前は納得したいよな。ああ、いいぜ。それにとびきり強い奴もいるからな!お前も満足するだろ!なにせこいつは、ガラル歴代最強のチャンピオンで俺の好敵手だからな!」

 

「やっぱり、そんなすごい人だったんだ!」

 

 

 そう言って親指でユウリを示すと目を輝かせるネモ。呆れるアイアールとペパーがもはや様式美だ。

 

 

「ガラルってダンデとかキリエとかキバナとか最強と呼ばれている人間が数多くいる地方でしょ!?異世界とはいえそこの最強で、ラウラの好敵手!?私も本気で戦えるかも!」

 

「お前を満足させることを約束するよ、こいつもバトルジャンキーだからな」

 

「それで、まずは何処に行くの?」

 

「とりあえずの目的地はパルデア西の高台にある街。ベイクタウンだ」

 

 

 そうして俺達の二周目の旅は始まった。




ラウラ、アイアール、ネモ、ペパー、そしてユウリの旅が始まる。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSトドロクツキ

前回に引き続きお久しぶりです。趣味満点の小説の更新に精を出してました。毎日投稿だと投稿する順番困りますね。

今回はネモの屋敷にて。楽しんでいただけると幸いです。


 また旅に出ると決めた訳だが。さすがに昏睡中のユウリを連れて出る訳にもいかないので、俺達はネモの屋敷で寝泊まりしていた。ここ数日間、俺は再度メイドとして働いている。オレンジアカデミーでもよかったのだが、校舎の一部が破壊されたり生徒の大部分がブルーフレア団だったこともあって大混乱に陥ってるからこっちの方が都合がいいのだ。

 

 

「マトイさんから事情聴取したリラさんから教えられたけどエスプリにされてた人達はラウラと同じで脳に負荷がかかって脳が疲弊した状態になってるんだって」

 

「俺と同じみたいに記憶が?」

 

「ラウラの時とは改良しているからその心配はないってマトイさんは言ってたみたい?遅くても停止してから一週間で目覚めるってさ」

 

「俺の犠牲のおかげだな」

 

 

 そう皮肉るのは昼下がりのネモ邸の庭。パラソルの下で海風を浴びていたアイアールにミックスオレを持って来たときの話だった。一応アイアールとペパーは客扱いだから丁重に扱わないとメイド長に怒られるからな。傍ではペパーが気分よさそうにバーベキューしている。マフィティフが助かって余裕を持てたみたいでなによりだ。

 

 

「オレアさんはあの時話してからすぐにぶっ倒れたけど、戦いの最中にヘルメットを無理やり外したメロコさんを始めとした人達は無事だったみたい?予期せぬエラーでかかる負荷が緩和されたらしいよ」

 

「じゃあ全員ヘルメットを外しておけばよかったのか」

 

「ユウリさんの暴れっぷりはそんな隙なかったけどね…」

 

 

 もう一人の俺が相手してたから被害は最小限ですんだが、その前は四天王全員を相手に圧倒して押し止めていたらしい。ガラルに四天王はいないが、もしいてもあんまり変わらないことが証明されたな。こっちの世界のムツキが四天王になってると気付いた時は驚いたが。あいつ絶対こっちでもぶっ倒してやる、蟲をなめてるのは変わらないみたいだからな。

 

 

「ラウラお待たせー。修理完了したってお父様が」

 

 

 すると、ハッコウシティに外出していたネモが戻ってきた。その手にはむしタイプカラーのスマホロトムが握られている。あっちの世界で俺が持ってたスマホロトムだ。国際警察がマトイさんから押収していたのだが壊れていたので、スマホロトムを扱っている会社の社長であるネモの父親…旦那様に修理を頼んでいたのを、ネモが預かって来たらしい。

 

 

「助かった、お礼を言っといてくれネモ」

 

「お父様は今日の夜に帰ってくるらしいから自分で言ったらどうかな?」

 

「ああ、そうするよ。…さて。ヘイ、スマホロトム。ネモになんかされたか?」

 

『変なアプリを入れられたロト』

 

「やっぱりか」

 

 

 メニュー画面では非表示になってるらしいので、設定の項目からアプリ一覧を開いて見覚えの無いアプリを消してやる。異世界のスマホロトムだ、ネモにすべて用意してもらったために例の保護者追跡機能とかいうのが付けられていた今のスマホロトムと違うからなんか仕掛けてると思ったが追跡アプリか。やだこの子怖い。ユウリはまだ俺のプライバシーを守って………なかったわ、掲示板でよく暴露しているとかモコウに聞いたわ。

 

 

「ばれた?ごめーん」

 

「ごめんですんだら警察はいらん。いい加減にしないと国際警察に突き出すぞ」

 

「そんなことで呼ばれるほど国際警察も暇じゃないと思うよ?」

 

 

 それはそう。前世なら間違いなく犯罪だから遠慮なく警察に突き出せるんだがな、ポケモンの世界だと普通に行方不明が多発するから安全管理が第一とされているから追跡系統は合法だ、強く言えん。

 

 

「とりあえず今のスマホロトムの連絡先とか入れておくか…」

 

「今のスマホロトムはどうするの?」

 

「予備に持っておくさ。最新モデルだからな」

 

「そっちをメインにすればいいのに」

 

「こっちに愛着あるんだよ」

 

 

 写真も確認する。よし、消えてないな。あっちの手持ち達蟲ポケモンたちとの集合写真も、ユウリとモコウとムツキと一緒に撮った写真も、そのまま残ってる。さすが旦那様だ。…そう言えば、デンチュラたちは無事だろうか。ユウリが目覚めたらそれも聞かないとな。

 

 

「あ、これが例の奴?本当だ悪の組織だ…」

 

「それがアイアールが騙されてた理由?」

 

「勝手に見るな。オイヤメロ写真で写真を撮るんじゃない。ん"やぁーめぇーろぉぉぉ!?」

 

 

 プラズマ団に洗脳されてた時の服を出来心で着て深夜テンションで撮影したもののできがいいから残してた写真をアイアールとネモに撮られそうになってスマホロトムを抱えて逃げる。ああ、くそっ、ロングのメイド服だから歩きにくい!普通に恥ずかしいからヤメロオ!?

 

 

「何してんだお前ら。ほら焼けたぜ。めしあがれちゃんだぜ!手を洗いな!」

 

「「「おおー!」」」

 

 

 するとペパーが完成したらしいバーベキューの串を手にして笑い、俺たちは言われるままに手を洗いに一度屋敷に戻り水で手を洗っていると、轟音が外から轟いた。

 

 

「え、なになに!?」

 

「爆音がしたけど…!?」

 

「なにごとだ!?」

 

 

 慌ててアイアールとネモと共に外に出ると、そこではボーマンダ…ではなく、トドロクツキがペパーの肉を匂いに釣られたのか暴れ、バーベキューの串を両手に持って庭を駆け回って逃げるペパーの光景があった。トドロクツキってことは…ユウリの手持ちのアイツか!?

 

 

「今畜生!両手が塞がっててマフィティフが出せねえ!でも俺は恥も外聞もなく叫ぶぜ!助けてくれラウラ!アイアールー!」

 

「止めるよツキカゲ!きずなへんげ!」

 

「ダーマ、糸でふん縛れ!すばやく!いとだまバルカン!」

 

「マスカーニャ!顔にハットトリックフラワー!」

 

 

 情けなく絶叫して助けを求めるペパーに、アイアールは出ると同時にきずなへんげしたゲッコウガのツキカゲを、俺はワナイダーのダーマを、ネモはマスカーニャを繰り出す。マスカーニャがトリックフラワーをオーバーヘッドキックで蹴り飛ばす昇華技を顔にブチ当て、ダーマが当たったら拘束する糸が巻かれる糸玉を乱射して四肢を縛り、ゲッコウガが結晶化したみずしゅりけんを手に頭上から叩きつける。

 

 

「グオアアアアアッ!」

 

 

 しかしトドロクツキは翼を上げてゲッコウガを吹き飛ばし、首を回して糸を噛みちぎり、マスカーニャに突進。噛み付いて天高く投げ飛ばしてしまう。

 

 

「強い…!でもなんで出てきたの!?」

 

「ごめんなさいお嬢様!わた、わたしが……眠っているお客様の部屋の掃除をしていた時に、珍しいポケモンだからちょっと見たいと思って触ってたらテーブルから落ちてスイッチが…」

 

 

 そうのたまうのは新人メイド。そんなことある!?って思ってみて見たらユウリの寝ている部屋の壁に大穴が開いていた。……それで肉の匂いに釣られて庭に出てきたってことか。

 

 

「くそっ…ユウリが育てただろうから強いぞ!全力で止めろ!ダーマ、はいよるいちげき!」

 

「ツキカゲ、かげぶんしん!からのつじぎり!」

 

「マスカーニャ、じゃれつく!」

 

 

 一斉攻撃を仕掛けるも、尻尾の一振りで薙ぎ払われる。指示なくここまで強いとかどんだけだユウリのバカ!

 

 

「五月蠅いなあ。ゆっくり寝れないよ…インテレオン、とんぼがえり!」

 

 

 すると壊れた壁からヒョコッと顔を出した手に握られたモンスターボールから出てきたインテレオンが待ってましたと言わんばかりに地面を駆け抜け、サマーソルトキックをトドロクツキの顎に叩き込んで怯ませ、ボールに戻って行くと代わりに空中に飛び出したのは、セキタンザン。

 

 

「セキタンザン、じしん!」

 

「あぎゃあああ!?」

 

 

 そして急降下して接触した瞬間に振動を叩き込んで、トドロクツキは泡を吹いてセキタンザンに押し潰された。

 

 

「…あ、ラウラだ!無事だったの!?」

 

「それはこっちの台詞なんだが?ユウリ」

 

 

 そして壁の穴から顔を出して満面の笑みのユウリに、思わず苦笑するしかなかった。




目覚めるユウリ。スマホロトムとか、メロコが何故無事だったのかなどのフラグも回収させていただきました。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSインテレオンⅢ

どうも、放仮ごです。そういやきずなへんげのデメリット書いてなかったなと気付きました。マトイ戦は半ば無双だったし必死だったからノーカンにしてください。

今回は目覚めたユウリVSアイアール。楽しんでいただけると幸いです。


「ってラウラ、メイドさんだあ!激写激写…ってあれ、私のスマホロトムはー!?服もなんか寝間着だしー!?」

 

 

 起きるなり騒がしいユウリ。一週間はかかるはずなのに三日も経たずに起きやがったコイツ…バケモンかなにかか。あと寝間着じゃなくて病衣だ。

 

 

「スマホロトムというかお前の服がそもそもなかったからコイツで我慢しとけ」

 

「え、つまり私裸だったってこと?ラウラのスケベ!」

 

「絶好調だなお前」

 

 

 言いながら俺の二つ目のスマホロトムを浮かして手渡す。今は中身空だが連絡手段にはなるだろ。するとネモが意気揚々と口を開いた。

 

 

「とりあえず服は私の服を着ればいいよ。メイドたち、着せてあげて!そのあとバトろう!強いんでしょ、ユウリ!」

 

「え?寝起きの相手にいきなりバトル申し込むとか頭私なの?喜んで!」

 

「自覚しているようで何よりだ」

 

 

 バトルジャンキーは惹かれあう。ユウリとネモの相性は抜群の様だ。バーベキューを皿に並べながらペパーが笑う。

 

 

「なんというか…すげーやつだな。ラウラ、お前の嫁」

 

「凄い奴なんだよ。こっちはマリィがすごいみたいだが」

 

 

 いやまあ、驚いた。こっちの世界のユウリもダンデも倒してガラルのチャンピオンにマリィがなったらしい。バタフライエフェクトってやつか?するとそうこうしているうちにメイドたちに着せられたのか、グロリアを思わせる高そうなワンピースを着たユウリが屋敷から出てきた。

 

 

「えっと、私全然覚えてないんだけど。なんか趣味じゃない格好でラウラと戦ってたの覚えてる!あのあとなにがあったか知らないけどラウラが無事でよかった!記憶も戻ってるみたいだし!ところでここどこ?」

 

「俺の取り戻した記憶が正しければ異世界のパルデア地方らしい。帰る方法は多分ダフネが知ってる」

 

「パルデア地方ってムツキが四天王にスカウトされた?」

 

「そっちでもそうなのか?こっちではパルデア四天王だぞあいつ」

 

「へえ、それはぜひ戦ってみたいな!ねえみんな…ってそうだ、新しい子が三匹いるんだった。紹介するね。テツノブジンとトドロクツキと、テツノオロチ!」

 

「ミライドンお前、そんな名前だったのか…」

 

 

 そう言ってユウリがインテレオンとアーマーガアとセキタンザンとお馴染みの面子に続いて繰り出したのはリラさん曰くパラドックスポケモンと呼ばれる個体三匹。グロリアだった時の記憶はあるみたいだな。トドロクツキはダウンしているが不憫な…。

 

 

「ミライドンってテツノオロチのこと?いいね、呼びにくいと思ってたんだ。そう呼んでもいい?」

 

「アギャアス!」

 

「ごめんね。エスプリにされてたとはいえあんなことして。これからも一緒に戦ってくれる?」

 

「アギャ!」

 

「いい子だね、ミライドン!」

 

 

 そういやミライドンは前にグロリアと戦った時はいなかったな。エスプリにされてた時に捕まえたのか。仲が良くて何よりだ。

 

 

「ところでそこの三人はラウラの友達?私はユウリ!ラウラのライバルで旦那さんだよ!」

 

「おおう、自分を旦那さんっていうなんてクレイジーちゃんだぜ…あ、俺はペパーだ。ラウラには相棒のマフィティフを助ける手伝いをしてもらった仲だ。よろしくな!」

 

「私はネモ!ラウラのライバルで雇い主だよ!さあバトルしよう、すぐバトルしよう!」

 

「私はアイアール、ラウラと一緒にパルデアを旅した相棒だよ!」

 

「雇い主?一緒に旅?相棒?」

 

 

 するとハイライトを失った目でこっちを見てくるユウリ。やめて、お前のこと忘れてたんだから許して。あとネモは分かるがアイアールは何でそんな喧嘩腰なんだ!

 

 

「へー、そうなんだー。ネモごめんね。でも私、ラウラの相棒だっていうアイアールの強さを確認したいなー、旦那として!」

 

「あっちのガラルでは最強らしいけど、ハッコウシティで私に負けそうになったの忘れてる?」

 

「あれは勝負がついてないからノーカン!もしかして今度こそ負けてラウラの前で恥をかくのが怖い?」

 

「こっちの台詞だよ!ツキカゲ!」

 

「グロリアと私を一緒にしてもらったら困るな!インテレオン!」

 

 

 バチバチと火花が散る幻視が見える程睨み合うユウリとアイアール。繰り出されたツキカゲとインテレオンは共に溜め息を吐いている。お前らも大変だな…。

 

 

「そっちこそ、前の私と一緒だと思わないでね!きずなへんげ!かげぶんしん!」

 

 

 そしてツキカゲはきずなへんげ。硬質化して実体を得た分身を次々と生み出し、体当たりさせていくがインテレオンは紙一重で舞うように回避。ユウリの指示なく次々とねらいうちで撃ち抜いて破壊していく。

 

 

「相手にとって不足無し!インテレオン、みずのはどう!とんぼがえり!ねらいうち!」

 

 

 みずのはどうを形成し、それをサマーソルトキックで蹴り飛ばしてツキカゲの目の前まで飛ばすとねらいうちで撃ち抜いてツキカゲにダメージを与えつつみずのはどうを破裂させて追加ダメージを与えるユウリ。手持ちを全員出している状態でのとんぼがえりは、トレーナーの元に帰って他の手持ちと交代すると言う効果が発動しないテクニックだ。相変わらずとんでもないな。だが甘いな、きずなへんげは声を出すことなく意思疎通して指示できるとくせいでもある。その証拠に、撃ち抜かれたゲッコウガは結晶化して砕け散る。偽物だ。

 

 

「残念!それもかげぶんしん!今だよ、たたみがえしで打ち上げて!つじぎり!」

 

 

 下から水流の壁を吹き上げてインテレオンを空中に打ち上げ、さらに水の壁を複数周囲に作り硬質化、四方八方から斬撃を叩き込むツキカゲ。空中ではさすがのインテレオンも回避できず、なすすべなく切り刻まれていく。ユウリがただのトレーナーならこれで負けてたんだろうな。

 

 

「やるね…でも、壁を蹴る反射角度を読めば…!右後ろ、みずのはどうで受け止めて!」

 

「なっ…!?」

 

 

 ユウリの言う方向にインテレオンが形成したみずのはどうに飛び込んでしまい拘束されるツキカゲ。トレーナーとしてのアイアールも天才だが、ユウリもトレーナーとして天賦の才を持っている天才だ。攻撃技のみずのはどうを防御と拘束を同時に行うとかどんな発想だ。

 

 

「ぐっ…そんなもの、ツキカゲ!」

 

「ふいうち」

 

 

 何故か苦しそうなアイアール。みずタイプ故にすぐ抜け出そうとするツキカゲだったが、その瞬間、長い尻尾の一撃が腹部に突き刺さり動きが止まる。アイアールも一瞬意識が飛んだようだ。…まさかきずなへんげって…。

 

 

「そういうことか。ねらいうち、連射」

 

「があ!?」

 

 

 さらにみずのはどうに閉じ込められたまま水の弾丸で滅多撃ちにされるツキカゲと、それに反応して体を跳ねさせるアイアール。これ以上は不味い。

 

 

「その力、強力だけど…シンクロしている故に貴方もダメージを受けるんだ。本人も知らなかったみたいだけど。まだやる?」

 

「これぐらい…なんてこと、ない…って、ラウラ?」

 

 

 挑発するユウリ相手にまだ戦おうとするアイアールを、手で制して止める。ツキカゲももう限界だ。

 

 

「やめておけ。それ以上は倒れるぞ。今回はユウリの勝ちだ。きずなへんげは使いどころを考えような」

 

「ううっ…完敗、です…」

 

 

 そう言ってふらっと倒れそうになるアイアールを受け止めるのと同時に、ツキカゲのきずなへんげも解けて倒れ込む。少し休ませないとな。

 

 

「すっっっっごく強いねユウリ!次は私!私が戦う!」

 

「そこは空気を読もうぜ生徒会長…」

 

「うん、いいよ!ミライドンの強さを試したい!」

 

「そしてそんなネモと波長が合うんだなユウリ!?おみそれちゃんだぜ!」

 

「ペパー、ツッコミご苦労」

 

 

 その後、バカどもは滅茶苦茶バトルをした。




爆誕。ネモのお嬢様服を身に着けラウラのスマホロトム(二代目)を装備しパラドックスポケモンを連れたユウリ。

きずなへんげはサトシゲッコウガと同じでダメージシンクロがあります。ユウリの攻撃は「相手が苦しむ箇所に攻撃して怯ませる」ことに特化しているので効果的でした。

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VSパーモット

どうも、放仮ごです。やべーやつらのやべー要素をかき分けるのが地味に大変。

今回はユウリVSネモ。楽しんでいただけると幸いです。


「パーモット、テラスタル!でんこうもうげき!」

 

「でんこうそうげき、じゃない…!?」

 

 

 休み休みにユウリから状況を聞きつつ、もう早くも三度目にもなるユウリとネモの一対一のポケモンバトル。一進一退の攻防を繰り広げている二人が今回出したのはアーマーガアVSパーモットだ。息をする様にテラスタルからの昇華技による、四方八方からインファイトの様な動きで放たれるでんこうそうげきにアーマーガアは防戦一方だ。

 

 

「ラウラ曰く昇華技!技と技を組み合わせて別の攻撃に昇華する技術だよ!」

 

「ラウラさすが!また新しい技術考えてる!すごいすごい!それを使いこなすネモも凄いよ!」

 

「失礼な。キリエみたいにポンポントンデモ技術を生み出せるほど頭ぶっ飛んでないぞ」

 

 

 いや本当に。あの人頭おかしいって。でんこうせっかがギガインパクト級だわ、じしんを飛んでいる奴に当てるわ、いわなだれで流星群してくるわ、足音だけで細かい指示するわ、じしんで巨人を作って操るわ、なんか会うたびに度肝を抜かれた記憶しかない。

 

 

「おいアイアールとペパー、なんで生暖かい目でこっちを見る。ネモもユウリも!」

 

「いやあ、自覚してないんだなあって」

 

「そのキリエがどんなに凄いちゃんか知らないけど俺の知る中で一番すごいのはお前だぜ」

 

「ラウラったらもー、謙遜しなくてもいいのに!」

 

「いやあれラウラ素で言ってるんだよ怖いよね」

 

「お前にだけは言われたくないぞユウリこら。あと人の事言えないからなアイアールお前」

 

「え、私?」

 

 

 お前、ネモの視線を利用してだまくらかしてただろうが。あと本気の手持ちのナンジャモにも完勝してたやつが弱いわけないだろ。

 

 

「私のインテレオンと張り合えている次点で十分強いと思うよ。私といい勝負できたのラウラとダンデさんと本気のホップとマスタード師匠とグレイぐらいだし」

 

「誇れアイアール。お前、ユウリに負けるまで10年無敗のチャンピオンとその弟と、18年もの間ポケモンリーグチャンピオンの座を維持し続けたレジェンドと新生プラズマ団ボスと同格扱いされているぞ」

 

「アイアールだから当然だね!」

 

「あの私、ただのポケモン博士志望の学生なんですけど……」

 

「ラウラもそう扱われることについてはツッコまない方がいいか?」

 

 

 ペパー言うな。ホップは見たことないから知らないが、その三人がアホみたいに強いのはよく知ってる。グレイとか俺が一度負けた相手だぞ。…初見ゾロアークで騙してキュレムは誰でも無理だと思うが。いやあいつシンプルに強いけどさ。

 

 

「よーし、私も昇華技考えよう!えーと、そうだな……はがねのつばさとドリルくちばし!はがねのあらし!」

 

「えっ」

 

 

 即座になんか思いついて実行するユウリ。はがねのつばさにより硬質化した羽根を舞い散らさせて、ドリルくちばしで回転させながら撃ち出し、まるで竜巻か暴風雨の如く斬撃の雨霰を叩き込むアーマーガア。いや理解してから習得するまでが早過ぎるんだよお前は。しかも俺の小手先昇華技よりよっぽど強力だぞこれ。

 

 

「パーモット!つっぱりガトリングで押し返せ!…ううん、それじゃ対抗できない!でんこうそうげきもプラスさせて!へきれきガトリング!!」

 

 

 ネモの叫びに応え、前世で見た鬼狩りの漫画の霹靂一閃という技を思い出す速度で残像が見える程の速さで雷撃を纏った拳の連打を叩き込んではがねのあらしを一発一発殴り飛ばしていくパーモット。ユウリも天才だがネモもやっぱり天才だな。

 

 

「アハハハ!いい!いいね!ネモ!すっごく楽しい!アーマーガア!さらにてっぺき!はがねのつばさとドリルくちばしも合わせてブレイブバード!名付けて、くろがねのあらし!」

 

「そんな、こっちは全力なのにさらにパワーアップするなんて…!?」

 

 

 漆黒に染まった硬質化した羽根の竜巻に、パーモットは弾き返すことができなくなり一瞬拮抗するが飲み込まれてしまう。

 

 

「あはは、完敗だあ……」

 

 

 完膚なきまでに叩きのめされてぺたんと座り込み空笑(そらわら)いを浮かべるネモ。ここまで圧倒的な完敗はこの三度目が初めてだ。一対一とはいえ、本気で挑んだのに負けたのが信じられないのだろうか。

 

 

「今度、今度はフルバトルで……ううん、それはアイアールとラウラと戦う時のためにとってあるんだ!そのあとに、今度は六匹で決着をつけよう!ユウリ!」

 

「いいよ!私も、インテレオンが負けたマスカーニャに借りを返さないとね!」

 

「ネモ、もういいのか?」

 

「うん。いったん満足した!」

 

「ユウリと戦ってその感想になるのすごいなお前」

 

 

 タイプ相性が良かったとはいえあのインテレオンに一本取ったから誇るべきなんだけどな。その前はセキタンザンにルガルガンがボコボコにされてたけど。あのセキタンザンには俺もオニシズクモをボコボコにされて………そうだ、聞きたいことがあったんだ。

 

 

「ユウリ!デンチュラは、俺の手持ちは無事か!デンチュラならお前のもとに向かってくれると思ったんだが…」

 

 

 ウルトラホールに吸い込まれる直前、なんとかボールを全部持たせて逃がそうと試みたデンチュラたち。あいつらまでウルトラホールに巻き込まれて吸い込まれて異世界に行ってたら目にも当てられない。

 

 

「ああ、デンチュラたちならみんな保護したから安心して。こっちにも連れてて来て………あはは、ごめん。蟲ポケモンに好かれやすいダフネに預けてたから今どうしてるか知らないや…」

 

「そうか、無事か…それならよかった」

 

 

 責任感のあるダフネが持っているなら安心だろう。今どこにいるか知らないが。…電話したら出るかな。

 

 

「えっとダフネの連絡先…おっ、あったあった」

 

 

 ダフネの名前のすぐそばにダンデさんの名前があるけどこれかけたらどうなるんだろう。この世界のダンデさんに繋がるんだろうか。よし、試しにダフネに電話かけてみるか。

 

 

《ロトロトロトロト……ガチャッ「はいもしもし。ラウラさんですか?」》

 

「普通に繋がるのかよ。なんで何も言わずにいなくなった?」

 

《「いやブルーフレア団の被害者であるユウリさんはともかく私とグレイは完全に不法入国者でアオキさんとかに追われているので迂闊に人前に出られないんですよ…」》

 

「こっちのお前らのふりしたらどうだ?」

 

《「こっちの私なんか普通にガラルで学生しているみたいで…ラウラさんに会わなかったIFだとああなるんでしょうね。ちなみにラウラさんとグレイ、ジュリさんはいませんでした。なんででしょう?」》

 

「なんでだろうなー、不思議だなー」

 

 

 転生者や転移者の俺達は不純物ってことなんだろうな。ちょっと悲しい。

 

 

「ユウリから大体の事情は聞いた。ジュリが戻ってくるまで帰れないんだってな。バトルの休み休みに聞いたからどうなってるか知らんが。ユウリももう一人の俺について知らなかったしな」

 

《「そこには誰がいます?」》

 

「俺とユウリ、アイアールとネモ、あとペパーだな。あ、アイアールって言うのは…」

 

《「あ、大体知ってます。調べたので。アイアールさんとペパーさんには既に言ってるのですが、仲間を集めてエリアゼロに来てほしいんです。そこでオーリム博士が貴方達を待っています」》

 

「オーリム博士が?」

 

 

 そういや俺がこっちに来た時に会ってたんだよな。あのときはたしかスマホロトム越しだったが。

 

 

《「できれば一ヶ月以内に来てほしいです。多分それが限度だとグレイも言ってます」》

 

「限度?」

 

《「それは本人から聞いてください。では」》

 

 

 そう言って通話を切るダフネ。なにかあるのか?オーリム博士。…一ヶ月か、ギリだな。最悪なにかを諦めるしかないか。

 

 

「…よし。明日出発するか」

 

「急だね!?」

 

「出発って?」

 

「パルデア二周目の旅をするんだよ!ユウリは知らなかったっけ!」

 

「寝起きでバトルを挑むやつがいて話せなかったからな…」

 

 

 目標。ジム二つと四天王、オモダカさんの攻略。そしてスター団との決着。そのあとにエリアゼロに向かう。これだな。早速明日までにルートを考えよう。




昇華技、はがねのあらし及びくろがねのあらしとへきれきガトリング。ネーミングセンスは許して。事前に考えてたラウラと違って即興でやってるのが怖い所。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSリングマ

どうも、放仮ごです。アニポケ新作でストライクやらキャタピーやらビードルやらが活躍していてご満悦な今日この頃。

今回はセルクルタウンにて。楽しんでいただけると幸いです。


「ダフネの電話によると期限は一ヶ月らしい。そらとぶタクシーでセルクルタウンに向かい、そこから西へ。ベイクタウンにまず向かう」

 

 

 ユウリが目覚めた翌日。朝食にペパーが用意したサンドイッチとカレーをみんなで食べてる途中でそう切り出す。ダフネについてはテーブルシティ奪還戦で助力していた俺の仲間と軽く説明してある。

 

 

「二周目、そらとぶタクシー使うんだね」

 

「西へ東へ北へ行ったり来たりするからな。さすがに徒歩はコライドンとミライドンがいても無理だ」

 

 

 一応ミライドンもコライドンみたくライドポケモンとして移動できると聞いたのでできるっちゃできるんだが、物理的に時間が足りない。

 

 

「ベイクタウンは特に過酷なところにあるからな。一番最初に行く」

 

「直接いかないのはなんで?」

 

「道中、強いポケモンたちが屯しているらしい。エリアゼロに行くなら強くなった方がいいだろ」

 

「お、俺も頑張るぜ!」

 

「うん、私とツキカゲ達も強くならないと」

 

「私も私も!」

 

「じゃあ私も!」

 

「最後の二人はこれ以上強くならないでくれ後生だから」

 

 

 勝てるもんも勝てなくなるわ。特にユウリ。お前ならポケモンのリアル世界じゃ不可能に近いレベル100も達成できそうだからな。たしかグレイ曰く俺達の世界だとレジギガスしか存在しないんだっけか。そんなことを考えていると口を尖らせるバトル馬鹿二人。

 

 

「「えー」」

 

「えーじゃない、今以上に強くなってどうするんだ」

 

「そうなったら何時まで経っても追い付けないからね…」

 

「勝負の世界は世知辛いんだな…」

 

 

 ペパーの言葉に頷くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺とネモとペパー、アイアールとユウリ(どっちも俺と二人で乗ろうとするから喧嘩になった)ずつに分かれて乗り込んだそらとぶタクシーで空の旅を送り、セルクルタウンにやってきた俺達。食材を購入しに出かけたペパーと別行動で旅の準備を進めていると、見知った顔に出会った。セルクルジムのジムリーダー、カエデさんとハッコウジムのジムリーダー、ナンジャモだ。

 

 

「あらあ。ラウラさんにアイアールさん、久しぶりです~」

 

「ご無沙汰!奇遇だねラウラ氏、アイアール氏。ネモ氏!」

 

「カエデさん…はともかくなんでナンジャモまでここに?」

 

「なんでカエデ氏だけさんづけなのかな?カナ?」

 

 

 圧を感じる笑顔でナンジャモに凄まれて思わず後退すると、ユウリが前に出てナンジャモを睨み付けた。

 

 

「うん?どこかで見た顔だけどナニモノナンジャ?」

 

「ラウラの配偶者ですけどなにか!うちの嫁をいじめないでください!」

 

「あらまあ」

 

「なんと!」

 

 

 思わず頭を抱える。衆人環視の中で何大声で叫んでるんだ恥ずかしい。

 

 

「ラウラさん、結婚してたんですか~微笑ましいですね~」

 

「激熱ネタ、ゲットだぜ!大人気で話題に出すだけでトレンドに上がるラウラ氏が実は結婚していた!これはバズるぞー!」

 

「ん"やぁーめぇーろぉぉぉ!?」

 

 

 思わず肩の人形に手を出された終末主義者の様な悲鳴を上げてしまった。お前いい加減にしないとブッ飛ばすぞナンジャモこら。

 

 

「ラウラの夫氏!ネタにしてもいいかな!」

 

「ユウリだよ。ネタ?なんの?」

 

「あれ、ボクのこと知らない?配信だよ!ナンジャモの~ドンナモンジャTV!」

 

「あー、モコウが最近はまってるっていう。いいよ!」

 

「了承いただきありがとね!……なんて?」

 

 

 マメパトがタネマシンガンを喰らったような顔をするナンジャモ。そこまで呆けた顔は珍しいな。心底信じられないって顔だな。

 

 

「モコたんが?最近?はまった???」

 

「モコたん?うん、そうだよ…って、こっちではモコウ、モコたんだったっけ。あ、じゃあ違うのかややこしいな…」

 

「あー、そのだな、ナンジャモ、これはだな?」

 

 

 このインフルエンサーに異世界云々がばれたら不味いことになりそうなので誤魔化そうと試みる。なんかいい言い訳考えろ俺。

 

 

「その言い方…まるでボクの知らないモコたんを知っている言いぶりだけど…」

 

「あ、そうだ!各地で暴れたポケモンたちをジムリーダーが対処してたと聞いたがそちらは大丈夫だったんですか?カエデさん、ナンジャモ」

 

 

 カエデさんも巻き込んでそう尋ねる。なんか核心に迫ってるっぽいのはさすがナンジャモだがこれはめんどくさいことになるに決まってる。

 

 

「私達は問題ありませんでしたよ~ラウラさんに負けない様に強く育てましたので~」

 

 

 そう言ってカエデさんが繰り出したのは、以前戦ったヒメグマが進化したもしくはその親なのだろうリングマ。ジムリーダーは本気のメンバーと手加減のメンバーがいるらしいから多分後者かな。

 

 

「相変わらず蟲テラスじゃないと目を疑うポケモンですね」

 

「それはいいっこなしよ~」

 

「ボクは前にラウラ氏たちがブルーフレア団に襲われたことでこってり絞られてたから真面目に対処したよー。電撃ビリビリデスマッチを生放送したぞよ」

 

「生放送したのかよ余裕過ぎるだろ」

 

「真面目とは」

 

 

 アイアールと一緒にツッコむ。やっぱりナンジャモはパルデアジムリーダーの中でも上位の実力者なんだろうな。俺が以前ピケタウンで戦ったグレンアルマとソウブレイズみたいな暴れる異様に強いポケモンの集団が暴れていたと聞いてるんだが。

 

 

「そんなことよりもモコたんの話!ね、ね!踏み込まないからさ、ユウリ氏の知ってるモコたんについて教えてくれないかな?」

 

「いいよ!モコウはね、稲妻みたいなツインテールで眼帯付けててゴスロリ着てて、かっこつけで雷光の死翼(ライトニング・アルバトロス)を名乗っていて、でもドジで足元が見えてなくてよくスッ転ぶんだよ。でもでんきタイプのジムリーダーでガラルのジムリーダーではトップクラスの実力者で、ライボルトとエレキブルが凄く強くて、切札にレジエレキって言う伝説ポケモンが…」

 

「ほむほむほむ!こっちのモコたんとは違うけど弄れるネタゲットだぜ!」

 

「やめたげろ」

 

 

 本人の知らないところであっちとこっちのモコウの致命傷になる情報を言ってやるんじゃあない。あとネモもわくわくするな。お前こっちの世界のモコウに宣戦布告か突撃でもする気だろ。アイツ泣くぞ絶対。

 

 

「ナンジャモさん、さすがに疲弊したらしくて私のスイーツで癒されるためにって来てくれたんですけど楽しそうで何よりです~あ、ラウラさん。貴方と会ったら渡そうと思ってたものがあるんですよ~」

 

「? なんです?」

 

 

 するとカエデさんが懐をゴソゴソと漁り、何かが入れられた小袋を取り出した。何だろうと思って開けてみると、銀色の粉末が入っていた。

 

 

「ぎんのこな…」

 

「ラウラさん、ナンジャモさんの配信で火力不足で悩んでいた様でしたので~」

 

「助かります」

 

 

 いや本当に助かる。持たせると、虫タイプの技の威力が1.2倍になるどうぐだ。入手の仕方が分からなくて困ってたんだ。

 

 

「ラウラさんがオモダカさんに勝利して蟲ポケモンがかっこよくてかわいくて美しくて最高で最強なのだと証明する時を楽しみに待っているんですよ~頑張ってくださいね」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 ぎんのこなをまた包んでから大事にバッグにしまう。戦略が広がるぞ。

 

 

「うーん、やっぱりボクとカエデ氏で対応が全然違うなー」

 

「それはちょっと悪いと思ってる」

 

「ちょっとかー。悪いと思うならまた配信に出てよね!ボクもみなのものも待ってるゾ!」

 

「それはことわ……いや、こちらこそ頼む。ただし一ヶ月後で」

 

 

 配信は蟲ポケモンの素晴らしさを全世界に伝えるいい機会だ。逆に利用する気でいないとダメだろう。

 

 

「一ヶ月後でも嬉しいよ!今日は大収穫だぜい!」

 

「じゃあ俺達はそろそろ。急いでるんで」

 

「ご武運を~」

 

「次はベイクタウンのリップ氏かな?相性いいからと油断していると痛い目見るゾ!」

 

「肝に銘じとくよ」

 

 

 そうして俺達はペパーと合流し、セルクルタウンを旅立った。目的地はベイク空洞だ。




というわけでカエデとナンジャモの再登場でした。ナンジャモは結構カエデの店に入り浸って食レポしているかオフで楽しんでいるイメージがあります。

ぎんのこなゲットでパワーアップ。できればブルーフレア団と戦う前に欲しかったね。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSヨーギラス

どうも、放仮ごです。仕事が忙しいのと新作ゼルダが楽しくて執筆をおろそかにしてしまう。

今回はベイク空洞での出来事。楽しんでいただけると幸いです。


 ベイク空洞を目指して、コライドンに乗ったアイアールと俺、ミライドンに乗ったユウリとネモとぺパーで進む。バイクみたいに完全変形しているミライドンの方乗り心地よさそうだな。コライドンはロデオみたいでなあ、慣れたけど。

 

 

「アギャア」

 

「あっ、ラウラ今不満に思ったでしょ!コライドンにはわかるんだからね!」

 

「悪かったよ」

 

 

 不満げに鳴くコライドンとぷんすか怒るアイアールに平謝りする。なんか機嫌がいいな?

 

 

「むう、乗り慣れたコライドンがいいだなんて…」

 

「うーん、快適快適!ね、ペパー!」

 

「不満たらたらのユウリにそれどころじゃないぜ…」

 

 

 以前大空のヌシであるオトシドリとも戦った崖を抜け、海沿いの断崖を駆け抜けると見えてきた、ベイク空洞の入り口だ。

 

 

「何でも下のルートから行ける近道もあるらしいが、俺達は真正面から突っ込むぞ!」

 

「事前に調べた内容だとコライドンが思い出したライド技…大ジャンプにかっくうにがけのぼりが活用できそうだよ」

 

「ミライドンも使えるみたいだから安心だね!」

 

 

 ベイク空洞に突入すると、とてつもなく広い空間が広がっていた。イッシュのチャンピオンロードぐらい縦にも横にも広そうだ。

 

 

「しっかり掴まってて!コライドン!」

 

「アギャアス!」

 

 

 すると大ジャンプして岩壁にしがみ付き、段差をするすると登って行くコライドン。これが偽龍のヌシを倒してひでん:からスパイスを食べたことで思い出したって言うがけのぼりか。ロッククライムより便利まであるな。こいつはいい。下を見てみればユウリ達もミライドンで同じようについて来ていた。あ、そうだ。

 

 

「そういやユウリ、お前の使った四つの技全部を使った昇華技なんだが!」

 

「こんな時になーにー!?」

 

「威力が明らかに違ったから別に名前を付けて差別化したいって考えてた。完全昇華技なんてどうだ?」

 

「それ今言う事かなー!?」

 

「ラウラもアイアールやユウリやネモに負けず劣らずマイペースちゃんだぜ…」

 

 

 失礼な。一緒にするな。今思いついたんだからしょうがないだろ。そうぶつくさ文句を言ってる時だった。

 

 

「ラウラ、危ない!?」

 

「おわっ!?」

 

 

 横から何かが体当たりして来て、俺はコライドンから手を放して下まで転がり落ちる。いたた、咄嗟に受け身を取れたがいったいなんだ!?

 

 

「ヨーギラッス!」

 

「ヨーギラスか…!」

 

 

 そこにいたのはいわはだポケモン、ヨーギラス。あのバンギラスに進化するポケモンの幼体だ。見れば他の皆も次々と横の岩肌から穴を掘って飛び出してきたヨーギラスの一団に次々と撃墜され、俺の傍まで落ちてきていた。

 

 

「よっ」

 

「ほっ」

 

「あいたっ」

 

「いきなりなんだ!?」

 

 

 アイアール、ユウリは難なく受け身を取って着地するが、ネモとペパーは尻餅をついて痛がる。ペパーは分かるがネモもか、意外だな。

 

 

「私そんなに体力無いんだ…意外でしょ?」

 

「ああ、意外だよ。それでこの場で一番パルデアに詳しいネモお嬢様、ヨーギラス達が襲ってきた理由に心当たりは?」

 

「ないね!多分縄張りにでも入っちゃったんじゃない?」

 

「そういやこいつら土が主食だったな」

 

 

 土を主食にするから洞窟を好んで住んでるポケモンだ。ここにいるのも納得だが、怒り方が尋常じゃない。まるで逆鱗にでも触れたかのような。そんなのが十数匹もいる。厄介だなこれは。

 

 

「来るぞ!レイン、バブルこうせん!」

 

「ヒナ!ルミナコリジョン!」

 

「テツノブジン、ソウルクラッシュ!」

 

「ミミズズ、アイアンテール!」

 

「パルシェン、つららばりだ!」

 

 

 飛びかかってきたのを、全員で応戦。しかし吹き飛ばされたヨーギラス達は負けじと立ち上がり再度襲いかかってきた。なんだこいつらの根性。

 

 

「みんな、ここは任せた!俺はこいつらが起こっている理由を捜す!」

 

 

 そう言ってレインにの下部に掴まり、パたパタパタと懸命に小さな翅を羽ばたかせるレインにさっきヨーギラスに吹き飛ばされた付近まで連れて行ってもらう。なにかないかと探してみるが、段差の土壁があるぐらいでなにも……うん?違和感……何かが見ている?

 

 

「危ない!むげんほうよう!」

 

 

 瞬間、空中に展開されたいわなだれから、三原色バブルこうせんで透明になりながらでんこうせっかで高速で移動する昇華技を行ったレインに掴まりなんとか逃れる。肩が外れると思った、もう掴まっているときに使うのはやめとこう。

 

 

「お前が原因か、サナギラス…!」

 

 

 それは、土の壁の中から目を開いてこちらを見ていた。だんがんポケモン、サナギラス。ヨーギラスの進化系であり、恐らくヨーギラス達の群れのリーダーだ。サナギラスとして進化の時を待っていたところ俺達がやってきて、ボスが進化するのを邪魔させないとばかりに守るべくヨーギラス達が必死に襲いかかってきた。そんなところか?どうやら土の壁に埋まっているみたいで身動きが取れないようだ。蟲らしい生態だが蟲ポケモンじゃないんだよな…。

 

 

「悪いが倒させてもらうぞ!バブルこうせん!」

 

「…!」

 

 

 効果抜群をぶちかまそうとすると、ベイク空洞が揺れ始める。これは、じしんか…!?こんなところでぶちかましやがって、洒落にならないぞ…!

 

 

「ぐっ…」

 

「ラウラ!」

 

 

 崩れてきた岩盤が左腕に掠り、アイアールの悲鳴が聞こえる。ちょっと擦り切れて血が流れているようだ。やるじゃないか、サナギの分際で。

 

 

「サナギは大人しく閉じこもってろ…!レクス!」

 

 

 レインに掴まりながら、血の滴る左手で懐から取り出したボールを投げつけレクスを繰り出す。サナギラスはいわ・じめんタイプ。バブルこうせんが効果抜群だがこんな地震状態じゃ狙いが定まらない。直接蹴り砕く!

 

 

「かかとおとし!」

 

 

 右脚を振り上げて縦に回転する勢いで叩き付け、サナギラスの埋まっている地盤ごと蹴り砕くレクス。クリーンヒットしたサナギラスは地盤からぽろっと外れて下に急降下していく。やったか?

 

 

「…すなあらしだと?」

 

 

 するとじしんが納まったベイク空洞内で吹き荒れ始める砂塵の嵐。嫌な予感がしてサナギラスが落ちた箇所を見やると、アイアールたちの目の前でサナギから突き破るようにしてそれは現れた。

 

 

「バンギャアアアアアアッ!」

 

 

 よろいポケモン、バンギラス。ヨーギラス、サナギラスの最終進化系だ。咆哮を上げ、さらに全身の穴から砂を噴き出させて俺達を飲み込んでいくバンギラス。レインも吹き飛ばされて不時着してしまう。不味いぞ、閉鎖空間で砂嵐は…!

 

 

「ユウリ!」

 

「インテレオン、みずのは……ゲホッ、ゴホッ!」

 

 

 ユウリが繰り出したインテレオンに指示しようとするが、砂嵐を吸い込んでしまったのかむせてしまいその間に殴り飛ばされてインテレオンが吹き飛んでしまう。お前対人戦は強いけど野生ポケモンと戦うのは得意じゃないのは相変わらずか!ネモもすなあらしが効かないミミズズで対抗しようとしているがこちらもむせてる。アイアールとペパーも同様だ。トレーナーに指示させないのはずるいぞ!?

 

 

「くそっ、レクス…!」

 

 

 バンギラスはいわ・じめんだったサナギラス、ヨーギラスと異なりいわ・あくタイプだ。かかとおとしさえ決まれば、一撃で倒せる。だがかかとおとしは命中率が低い技、このすなあらしじゃ自滅してしまう。万事休すか…!?

 

 

「サーナイト。サイコキネシス」

 

 

 瞬間、すなあらしが止んだ。紫色の光に包まれ固定されたすなあらしが煌めく中、困惑するバンギラスの前にふわふわと舞い降りてきたのは、サーナイトを傍らに連れた一人の女性。なんとか一息つく俺達を一瞥した女性は手を翳す。あれは、ベイクジムリーダーのリップ…!

 

 

「あなたが最近ここを通るトレーナーを襲っているヨーギラスたちの親玉ね?リップの美の秘訣、ハードコースで体験入学させてあげるわ。エステしてあげなさい、サイコキネシス」

 

 

 あくタイプに効果はないサイコキネシスを選択するリップ。するとバンギラスの足元の岩盤が浮かび上がり、まるで花弁が閉じる様にバンギラスを押し潰してしまった。崩れて埋もれた地盤の中から目を回して崩れ落ちたバンギラスが見え、それを見たヨーギラス達は蜘蛛の子を散らす様に逃げて行った。…これがパルデアでもトップクラスのジムリーダーの実力か。相性を物ともしない、燃えるじゃないか。




命名、完全昇華技。ヨーギラスの群れの襲撃。リップ登場でした。個人的に書きたかったサナギラスを書けて満足です。

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VSチャーレム

どうも、放仮ごです。今日は疲れているのでいつもより短いです、申し訳ない。いわゆる繋ぎ回となります。

今回は挑戦!喜怒驚楽エクササイズ!楽しんでいただけると幸いです。


 ヨーギラスの群れとそのボスであったサナギラスが進化したバンギラスを一蹴したリップさんは、そのまま俺達と同行すると申し出た。コライドンとミライドンに乗る俺達の後ろから念動力でふわふわ優雅に浮いてついて来ている。

 

 

「災難だったわね。ブルーフレア団の事件以降、野生のポケモンたちピリピリしてるのよね。強制的に操られて扇動されていたのだから当然よね」

 

「今パルデアはそんなことになってるのか…」

 

「特にここは顕著でね。強力なパラドックスポケモンが暴れてみんな気が立ってるのよ。ただでさえ通りがかりに襲いかかってくるのに、そのポケモンちゃんたちをパラドックスポケモンと勘違いして攻撃的になってたのね。なんて種なの?」

 

「コライドンとミライドンです」

 

 

 納得した様子のリップさん。ユウリ曰くコライドンとミライドンは正真正銘パラドックスポケモンらしいが今は言わんとこう。

 

 

「そんなわけでリップが定期的にパトロールしてるってわけ」

 

「なるほど…洞窟の戦いに慣れてるんですね?」

 

「エスパータイプはどんなところでも自由に戦えるのが売りなのよ」

 

 

 その圧倒的な火力と当時の相性から初代では最強のタイプだと称されていたのがエスパータイプだ。一筋縄ではいかないだろうな。そうして進んでいると、出口らしき光源が見えてきた。

 

「さあ、もうすぐ出口よ。ここまでくれば大丈夫。リップは先に行ってラウラちゃんとアイアールちゃんの試合の手続きしておいてあげるからさっそくジムテストしてらっしゃいな。黒いジャージの女性が目印、なるはやで急げば間に合うはずよ!リッププロデュース、喜怒驚楽エクササイズに!」

 

「喜怒驚楽?」

 

「エクササイズ?」

 

「なんだそりゃ?」

 

 

 俺とアイアールとペパーの疑問の声を背に受けながら出口に飛び去って行くリップさん。…まーためんどくさそうなジムテストの気配を感じるぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 出口を抜けると草原で、少し進んだところにどこか古めかしい石造りの街が見える。あれがベイクタウンか。

 

 

「ここが、ベイクタウン…」

 

「皿で有名な街だな」

 

「ようやくついたね!それにバッジ6つ集められるの一割もいないんだよ。ラウラとアイアールは凄いね、さすが私の見込んだトレーナー!」

 

「ラウラはそれぐらいできて当たり前。でもムツキが四天王になった時に調べたけど、興業が根強いガラルより実力主義で厳しいんだっけ」

 

「ガラルのジムリーダーもアホみたいにレベル高いけどな」

 

「へー、戦ってみたいなあ!」

 

 

 楽しそうなネモ。主にネズさんとキバナとキリエさんだなあ。あの三人は別格だった印象がある。コライドンとミライドンから降りて観光することにしたらしいユウリ、ネモ、ペパーと別れて俺とアイアールは街の様子を見ながら黒いジャージの女性を捜していると、奥の方にひとだかりを見つけた。その中心にはチャーレムを傍らに連れた黒いジャージの女性…ってあの人は。

 

 

「キハダ先生!?なんで!?」

 

「ようこそ転入生コンビ!喜怒驚楽エクササイズ会場へ!リップから話は聞いているぞ!」

 

「なんでオレンジアカデミーのバトル科のキハダ先生がジムのインストラクターをしてるんですか?」

 

「ジムリーダーのリップと私は子供の頃からの付き合いでね。負けた方が勝った方の言うことを聞くってルールでポケモン勝負してそれでごにょごにょ……」

 

 

 ああ。たしかキハダ先生はかくとうタイプメインだったか。エスパータイプ使いのリップさん相手じゃ厳しかったか…

 

 

「なんかユウリみたいな奴だな」

 

「えっ、そんなえっちなことをユウリとしてたの!?」

 

「えっち言うな。一度も負けてないから問題ない」

 

 

 一対一だから負けてなかったが負けたらどんな命令されてたのかと思うと怖いが。

 

 

「…ま!体つくりにもなるし授業が無い時に手伝っているというわけさ!エクササイズのルールは簡単!私が指示するからその動きをするだけだ!チャーレムの動きを参考にするといいぞ!それでは始めるぞ、相棒ポケモンを繰り出せ!心と体の準備はいいか!?」

 

 

 言われてレクスとツキカゲを繰り出す俺達。それを確認するとキハダ先生は大きく笑顔で頷いた。

 

 

「それではレッツ!エクササイズ!感情を爆発させてくれ!」

 

「へ?」

 

 

 その言葉に嫌な予感がしたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「プンスカ!怒って!!」

 

「はい!」

 

「え?え?」

 

 

 

 

 

 

 

「最高の喜びを表現!!」

 

「はい!」

 

「ん?こう?か?」

 

 

 

 

 

 

「ビックリ仰天!驚くよ!!」

 

「わあ!」

 

「待ってちょっと待って」

 

 

 

 

 

 

「思いっきり驚いて!!」

 

「うひゃあ!」

 

「二回連続!?」

 

 

 

 

 

 

 

「めいっぱい!喜んで!!」

 

「はい!」

 

「どう表現すればいいんだよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

「全身で!驚きを!!」

 

「おわあ!」

 

「いや、無理…凄い無理…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「心の底から!楽しめ!!」

 

「わーい!」

 

「楽しめるかあ!」

 

 

 

 

 

 

 

「エクササイズを楽しんで!」

 

「はい!」

 

「二回連続やめろマジで!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「フィニッシュだ!」

 

 

 チーン。という擬音が似合うほどに、俺は倒れ伏していた。いや無理、精神的に無理……なんでそんな感情抱いてないのに演じないといかんのだ……あとなんでアイアールは全部文句なく対応できてるんだよ…。

 

 

「アイアール!筋がいいぞ!そしてどうしたラウラ!全然なってないぞ!これではクリアはやれないな!」

 

「なん……だと………!?」

 

 

 わりかし真面目に絶望した。嘘だと言ってくれよバーニー……その後、もう一セット繰り返して結局アイアールだけが合格した。俺はめでたく二周目やることになった。解せぬ。




ラウラは合理的タイプなのでこういうのは大の苦手です。羞恥心に負けるタイプ。蟲好きを公言するのとはわけが違うのだ。

というわけで次回はアイアールVSリップとなります。

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VSリキキリン

どうも、放仮ごです。リップの口調が結構難しい。

今回はリップVSアイアールその一。楽しんでいただけると幸いです。


 珍しく全然できずにボロボロなラウラはそのまま喜怒驚楽エクササイズを続ける中、私は一足先に街の中心にある建物の屋上にあるスタジアムまでやってきていた。リップさんはジムと兼ねている仕事…モデルの電話がかかったらしく遅れてきているとのことだ。ルールは4VS4でどうぐは持たせるのも使うのもなし、挑戦者である私だけ入れ替えが許されているいつものルールだ。

 

 

「そうね…わかった、こっちで進めておくわ。キャッチコピーは分かりやすく『ナチュラルに 美しさを』。アイシャドーの新色も発注シクヨロね。…いつもありがと。それでは失礼しまーす」

 

 

 そんな電話をしながらスマホロトムを耳に当てて歩いてきたリップさん。すごく、業界人って感じだ。バトルフィールドの反対側に立ち、通話を終えてこちらに振り返るリップさん。

 

 

「こんばんはアイアールちゃん、ジムリーダーのリップよ。メイクアップアーティストが本業なんだけどね?キハダちゃん、褒めてたわ。あなた、とってもゴイスーだって。でもラウラちゃんはやっぱり苦手だったわよね。そんな気はしてたんだけど。メンゴメンゴよ」

 

「ラウラに苦手なことがあるだなんて意外でした…」

 

「んふふ……やっぱりアイアールちゃん、ラウラちゃんに対して盲目的なところがあるわね。可愛い挑戦者ちゃん。アオハルね」

 

「そんなこと…」

 

 

 ないとは、断言できなかった。ラウラに対して理想を見ているところは、正直ある。ユウリとの関係を知ってショックを受けたのもそうだし、ラウラがジムテストでいきなり挫折するとは思ってもいなかった。ラウラも私と同じ人間だったんだなあと驚いたものだ。

 

 

「それはさておき、リッププロデュースのエクササイズでさらに美しくなれて嬉しいでしょ?」

 

「は、はあ…」

 

「ポケモンの身体もちゃあんと綺麗にしてるし、…出会った時から思ってたけどナイス美意識ね。特にゲッコウガがいいわ!ゴイスーよ!」

 

「ツキカゲのことを褒められるのは嬉しいかな…」

 

「人間もポケモンも身だしなみは大事だもん。誰でも変われるマジック…それがお化粧、それがメイク。アイアールちゃん、恋する乙女だからかしら。貴方は特に意識しているのを感じるわ、薄くだけどやってるわね?うんうん、感心感心」

 

 

 なんか勝手に納得するリップさんに気圧される。確かに毎朝薄くだけどやってるのを見抜くなんてすごい。ラウラなんか同じ女なのに気づきもしなかったし。男っぽいとは思ってるけど意識も男っぽいんじゃないかなあれと最近思ってきたところだ。

 

 

「せっかくだから貴方もリップがお化粧してあげたいけどその前に……リップの(メイク)でポケモンちゃん、もーっと美しくしてあげる!!」

 

 

▽ジムリーダーの リップが 勝負を しかけてきた!

 

 

「美しく飾り立てなさい!リキキリン!」

 

「お願い、ツキカゲ!」

 

 

 リップさんが繰り出してきたのはリキキリン。私が繰り出したのはゲッコウガのツキカゲ。右拳を顔の前に掲げ、大きく振り被って天高く突き上げる。私とツキカゲの意識がシンクロする。

 

 

「きずなへんげ!ラウラ命名、ゲッコウガIR!」

 

 

 自分で言ってみたらクソ恥ずかしい名前だ。足元から発生した水流に包まれ、激流が吹き飛んで姿を変える。私の髪型と同じ三つ編みの茶髪の様な意匠に、星々が輝く夜空を思わせるサファイアの様な瞳と、背中に出現した水でできた巨大十字手裏剣は宝石の様に、テラスタルの如く光り輝く。ラウラの応援をしたいから最初から全力だ。一気に決める!

 

 

「つじぎり!」

 

「優雅にゴルフの如く。アイアンヘッドよ」

 

 

 両手から飛び出した水流を煌めく硬質化させて二本の水の太刀を握ったツキカゲの交差する斬撃が、首を大きく振りかぶったリキキリンの鋼と化した頭部と激突。硬質化した水の太刀が砕け散るほどの勢いだったが弾き返して見せるリキキリン。ビリビリとした衝撃が私の腕にまで伝わってきた。

 

 

「ぐう…互角!?そんな…」

 

「私の専門はエスパータイプ。念動力で威力をカバーしているのよ」

 

「なら…みずしゅりけん!」

 

「かみくだきなさい」

 

 

 宝石の様に煌めき硬質化した水の十字手裏剣を二本握って投げつけるツキカゲ。しかしそれらは首の軌道を念動力で操っているらしき変幻自在な動きでそのフードみたいな牙で噛み砕かれてしまい、まるで通じない。この人、強い…!

 

 

「リフレクターよ」

 

「なら回り込んで…!」

 

「しねんの、ず・つ・き」

 

 

 念動力の壁を展開してくるリキキリンに、シンクロした意識で背後に回り込もうとするツキカゲだったが、なんとリキキリンはリフレクターをしねんのずつきで粉砕。その欠片を勢いよく散らばせて念動力の刃の雨を放って来て、全身を切り刻まれる。

 

 

「ゲコッ…!?」

 

「うああああっ!?」

 

「んん?もしかしてシンクロしている?明らかにパワーアップした代償みたいね」

 

 

 全身を切り刻まれたダメージの感覚に、身体を抱えて蹲る。弱点を指摘されたばかりなのに、焦って決めようとして事を急いた…!しかも相手にそのことがばれてしまった、不味い。

 

 

「だからといって加減はしないわ。せめて一撃で仕留めなさい、アイアンヘッド」

 

「た、たたみがえし!」

 

 

 ダメージで朦朧としながらも咄嗟に指示。右手を触れた箇所から持ち上げる様にして水流の壁を生み出し、それを宝石の様に煌めかせて硬質化させて防ぐツキカゲだったが、その威力までは殺せず吹き飛ばされて地面を転がり、そのダメージが私にまで響く。ダメージが100%伝わるわけじゃないけど、これ以上は不味い。戻さないと…。

 

 

「戻って、ツキカゲ!」

 

「懸命ね。次はどの子で来るのかしら?」

 

「くっ…」

 

 

 私の手持ちで相性がいいのはツキカゲ、シング、ゴーストテラスのツムヅムだけだ。4VS4のこの対決、あと一匹ドーちゃん、ヒナ、ハルクララの中から選ばないといけない。相性の悪く素早く動けないドーちゃんは論外、残るはヒナとハルクララ…。

 

 

「お願い、ヒナ!」

 

「…へえ。クエスパトラ、いいポケモンを持っているわね」

 

 

 私が選んだのはクエスパトラのヒナ。健脚が自慢のスピードファイターだ。まずはとくぼうを下げる!

 

 

「ルミナコリジョン!」

 

「首を振り回してしねんのずつき!」

 

 

 こちらの放った六角形の念動力を、首を振り回して頭部の念動力を渦の様にしたリキキリンが受け止め弾き返す。まだだ、リキキリンは長すぎる首が祟ってそんなに動けない。たたみかける!

 

 

「マジカルシャイン、ドリルくちばし!」

 

「アイアンヘッド、リフレクター、しねんのずつき!」

 

 

 マジカルシャインを鋼と化した頭部で打ち消し、リフレクターでドリルくちばしを受け止めしねんのずつきでリフレクターを零距離で破壊、刃と化した破片で全身を切り刻まれるヒナ。

 

 

「最後の技は何?!それとも打つ手なしかしら?出し惜しみしていたら勝てないわよ?」

 

「とっておくことに意味がある技もある!とっておき!」

 

 

 渾身の蹴りがリキキリンの胸部に炸裂。勢いよく蹴り飛ばす。とっておき、他の技を全部使用してから使うことで使用できる高威力の技だ。急所に受けたのかそのまま崩れ落ちるリキキリン。やっと一匹倒せた…

 

 

「一息ついている暇はないわよ。同じポケモンというのも乙なものよね、クエスパトラ」

 

 

 そう言って繰り出されたのはアイシャドウが施されたクエスパトラ。ヒナと同じ種族、それも相手はエキスパート。…これはきつい戦いになりそうだ。




アイアールの切札であり明確な弱点になってるきずなへんげ。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSサーナイト

どうも、放仮ごです。すっかり週一投稿になってますが更新速度はまた上げて行きたい。

今回はアイアールVSリップその二。楽しんでいただけると幸いです。


 私のクエスパトラのヒナVリップさんのクエスパトラの対決は一方的だった。一歩的に、追い詰められていた。

 

 

「は、速い…!?」

 

念動力が上げられる(メイクアップする)のは威力だけじゃないの。機動力もカバーできるのよ」

 

 

 こちらの攻撃が一切当たらない。サイコキネシスで自身の機動力を上げ見てから回避してくるクエスパトラに、ルミナコリジョンもドリルくちばしもマジカルシャインもとっておきも、何一つ当たらない。スピード自慢ヒナが追い付けないなんて…!ラウラなら、ラウラならどうする…!?そうだ、ラウラなら…!

 

 

「フィールドに向けてドリルくちばし!」

 

「なにを…!?」

 

 

 当たらないならばと、フィールドを抉るようにドリルくちばしで破壊、竜巻状に粉塵が舞い上がり、フィールドを覆い尽くして見えなくさせる。

 

 

「視界を…!」

 

「見えたから回避余裕でした、なら見せなきゃいい!そしてこっちからは見える!」

 

「クエスパトラ、サイコキネシスを解除…」

 

「とっておき!」

 

 

 サイコキネシスで念動力を身に纏っているため淡く輝いているクエスパトラに、とっておきの一撃が炸裂。耐久力はそんなにないクエスパトラは崩れ落ちる。

 

 

「やった…!」

 

「戦い方がいきなり変わった…?今の、ナンジャモちゃんの動画で見たラウラちゃんの機転みたいだったわね。意識してるのかしら?」

 

「い、意識してるだなんてそんなこと…!」

 

「一匹も倒せず三匹目まで持ち込まれるなんてね…サーナイト。マジカルフレイムよん」

 

 

 次に繰り出されたのはほうようポケモン、サーナイト。両手に炎を生み出すとジャグリングするかのようにポンポンと次々と生み出して円を描き、10発のそれを一斉に飛ばしてきた。

 

 

「マジカルシャインで撃ち落として!」

 

「サイコキネシスで操りなさい」

 

 

 マジカルシャインで迎撃を試みるも、10発のマジカルフレイム全ての軌道を複雑に操ってマジカルシャインから逃れさせると空中でギュルギュルと円を描いて回転させるとその勢いを保ったまま高速で急降下。ヒナは健脚でフィールドを走って回避していくが、その前にふわりと浮いたサーナイトが立ちはだかる。

 

 

「飛んで火に入る夏の蟲ならぬ鳥ね。マジカルシャイン」

 

「しまっ…ヒナ!?」

 

 

 至近距離からマジカルシャインを受けたヒナは吹き飛ばされ、崩れ落ちる。こっちと違ってタイプ一致でとくこう特化のサーナイトの一撃だ。耐えきれるはずが無かった。

 

 

「…ツキカゲ、いや駄目だ」

 

 

 きずなへんげしてもタイプはみず・あくのままだが、相手はエスパー・フェアリータイプ。ツキカゲのあくタイプはエスパータイプに強くてもフェアリータイプには弱い。冷静になれ、ツムヅムで耐え抜こう。

 

 

「ツムヅム!ソルトアーマー!」

 

 

 繰り出したのはキョジオーンのツムヅム。自身にしおづけして特殊攻撃にも強い塩の防護膜を全身に纏う。ソルトアーマーを用いることで物理特殊どちらの耐久力もピカイチの子だ。

 

 

「ソルトアーマー……聞いたことのない技名だけどオリジナルの技かしら。いいわ、なんて表現力なの!」

 

「さらにのろい!攻撃力を上げて!」

 

 

 リップさんがなんか称賛している間に素早さを犠牲に攻撃力と防御力を高めて行く。ツムヅムは火力はそんなにないからソルトアーマーを維持している間に積んで行かないと。

 

 

「でも残念。私のサーナイトはどんなタイプでも対抗できるように技を構成しているのよ。エナジーボール」

 

「なっ!?」

 

 

 エナジーボールを受けてソルトアーマーが砕け散るツムヅム。マジカルフレイム、サイコキネシス、マジカルシャイン、エナジーボール。まさか、リップさんの手持ちの技構成、全部攻撃全振り!?…い、いや、変化わざを多用するのはラウラみたいな頭のネジが少し外れている人ばかりでこれが普通なんだった。私のヒナもそうだしね。エスパータイプって変化わざを多用するイメージがあったから意外だった。

 

 

「めいそうでもしてくると思った?工夫次第で変化技を使わずともポケモンちゃんは強くできるの。こんなふうに。エナジーボールをサイコキネシスで止めなさい」

 

 

 すると目の前に展開したエナジーボールをサイコキネシスでその場に固定するサーナイト。リップさんは口元に手をやって笑い声を上げる。

 

 

「ふふふっ!技も飾り立てることができるのよ!エナジーボール、連打」

 

「っ…ツムヅム!いわなだれ!」

 

 

 サイコキネシスで固めているエナジーボール目掛けてエナジーボールを連射して固めているエナジーボールを大きく膨れ上げさせて巨大化していくサーナイトに、それ以上させまいと積むのを中断して攻撃。しかしサイコキネシスでいわなだれを遮るように壁を展開されて当たらない。同時に二つの事をサイコキネシスで行うなんて…!

 

 

「片手間に行うなんて造作もないわ。エスパーポケモンにとって念動力は息を吸うようにできるのよ?放ちなさい、エナジーボール」

 

「そ、ソルトアーマー!」

 

 

 そして、ツムヅムの機動力じゃ避けきれない範囲を襲うエナジーボールが放たれ、咄嗟にソルトアーマーでコーティングしたツムヅムを飲み込んで大爆発。ソルトアーマーを砕かれて吹き飛ばされたツムヅムが崩れ落ちる。まさか、ツムヅムが一撃で…!?

 

 

「……ツキカゲ!」

 

「今のエナジーボールを見てみずタイプを出す勇気は褒めてあげるわ」

 

 

 この超火力を相手にするには機動力が足りないシングじゃ駄目だ。ツキカゲしかない。やるしかない。

 

 

「エナジーボール連打、サイコキネシスで操りなさい」

 

「ツキカゲ、つじぎり!」

 

 

 上空目掛けて乱射され、複雑な軌道を描いて凄まじい速度で襲いかかるエナジーボールの雨に対し、ツキカゲは水刀を装備して硬質化。私と意識がシンクロして、2人分の視点でどこから来るのかを見切り全てを切り捨てて行く。そうだ、攻撃を受けると私もダメージを受けるのが弱点なら、攻撃を受けない様にして私が弱点にならなければいいんだ…!

 

 

「うおおおおおお!みずしゅりけん!」

 

「なっ…!?」

 

 

 エナジーボールを全て斬り捨てると、みずしゅりけんに切り替えて硬質化させ二つ投擲。二つの水手裏剣は弧を描いてサーナイトの目の前でぶつかり破裂。サーナイトは目を瞑って怯み、その間にツキカゲは目の前に移動し水刀を振るう。

 

 

「つじぎり!」

 

 

 そして斬撃。十字に腹部を斬り裂かれたサーナイトは吹き飛んで崩れ落ち、戦闘不能となる。リップさんは驚きながらも冷静にボールに戻し、フラージェスを繰り出した。切札か…!

 

 

「まだよ、フラージェス!飾り立てましょう、テラスタ…」

 

「たたみがえし!」

 

 

 テラスタルさせる前に足元から出現させた水を硬質化させてフラージェスを打ち上げ、こちらも足元からの水で跳躍し追従。

 

 

「かげぶんしん!みずしゅりけんでつじぎりだあ!」

 

 

 空中に打ち上げられたフラージェスの周りで、六匹に増えたツキカゲの分身が煌めいて硬質化、次々と体当たりして空中に浮かせたまま打ちのめし最後に勢いよくフィールドに叩き付け、爆発。ツキカゲが着地すると、フラージェスは目を回して崩れ落ちていた。

 

 

「完敗よ…戦いの中で進化するなんてね」

 

「やった、やったよツキカゲ!」

 

 

 勝利の嬉しさでツキカゲに抱き着く私。このまま強くなって、チャンピオンになって…ユウリにリベンジして見せる!




弱点をカバーすることを覚えたアイアール。戦いの中で強くなるのは主人公の特権。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSエルレイド

どうも、放仮ごです。なんか目を離していた隙にバサギリにちからずくが実装されていた件について。うちのジャックは隠しとくせいの切れ味だけどなんとか活かしたい今日この頃。

今回はラウラVSリップ。楽しんでいただけると幸いです。


「や、やっとクリアした……」

 

 

 チーン、という擬音が再び似合うぐらい俺は地面に顔から突っ伏していた。一緒に踊ってたレクスがぽんぽんと背中を撫でてくる。やだ優しい、惚れそう。…やべえ、情緒不安定だ。もうやだ、絶対二度とやりたくない……。七周したぞ…途中からバトル終わったアイアールや見物を終えたユウリにネモにペパーにまで見られるしもういやだ。蜘蛛みたいなどこぞのクソ野郎でもいいから救い求めたくなったぞ今畜生。

 

 

「よく頑張ったなラウラ!文句しかないがまあ合格だ!…なんであそこまでぎこちなくしか表情を変えれないんだ?」

 

「強制されるの苦手なんですよ…」

 

「なんにしてもリップへの挑戦権を得られたぞ!早速バトルして来い!リップのエスパータイプのポケモンたちは強いぞ!得意なタイプだろうが油断しないことだな!」

 

 

 そう言ってキハダ先生に送り出された俺はその足でバトルコートのある建物に向かっているとアイアールたちが駆け寄ってきた。

 

 

「大丈夫?ラウラ」

 

「大丈夫じゃないな。よくお前はできたなアイアール」

 

「多分ラウラ以外みんなできると思うよアレ」

 

「陽キャのお前と一緒にするなユウリ」

 

「そんな調子で大丈夫!?ちゃんとバトルできる!?なんなら私とバトルして調整する?」

 

「なんとかするからすぐバトルに誘うなネモ」

 

「ペパー特性からスパイス入りカレーサンドイッチ作ってきたぜ!こいつで元気出せラウラ!」

 

「サンキュー、ペパー」

 

 

 一枚のパンを折ってそこにスパイシーなカレーを挟んでいるカレーサンドイッチをマジで元気でた。アイアールとペパーはサンキュー。ユウリとネモはちょっと反省しておけ。今の精神状態で相手するのマジで疲れるから。バトルコートのある建物の屋上までやってくると、忙しいのかスマホロトムを耳に当ててどこかと通話しているリップさんがいた。こちらに気付いて輝く笑顔を見せる。

 

 

「はい、はい…ではその通りに。あ、やっと来たわねラウラちゃん。おはようございまーす。私の喜怒驚楽エクササイズはお気に召さなかったみたいね?キハダちゃんに聞いているわ」

 

「それは本当にすみませんけどマジで恨んだぞ」

 

「砕けた口調のラウラちゃん素敵ね。可愛いわ」

 

「…この鬱憤、バトルで晴らすから覚悟しろリップさん」

 

「いいわ、ラウラちゃんたちの美しさ見せて?」

 

 

▽ジムリーダーの リップが 勝負を しかけてきた!

 

 

「美しく飾り立てなさい!リキキリン!」

 

「行くぞ、ダーマ!」

 

 

 リップさんはキリンリキ……に似てるけど尻尾と首が一体化している様なポケモン、リキキリン。俺はワナイダーのダーマ。キハダ先生はあんなこと言ってたが負ける気しないぞ。

 

 

「アイアンヘッド!」

 

「スレッドトラップ!」

 

 

 首をスイングさせ勢いを増した鋼鉄と化した頭突きを、スレッドトラップで受け止めて糸に巻いて締め上げる。ワナイダーは世間じゃ弱いポケモンと侮られているがとんでもない。人に近いサイズの蜘蛛が弱いわけがないんだ。するとリップさんは手で四角を作りファインダーの様にしてこちらを見てくる。

 

 

「あなたたち、とってもいい素材。気付いてないかもしれないけど喜怒驚楽エクササイズで嫌な汗が流れてより美しくなってるのよ?次はどんな魔法をかけようかしら?」

 

「余計なお世話だ!俺に美しさは不要だ。蟲ポケモンのかっこよさ!かわいさ!そして美しさを証明するだけだ!」

 

「すごくゴイスーよ貴女!気に入ったわラウラちゃん!その自分の信じる芯の貫き方!本当に美しいわ!しねんのずつきよ!リキキリン!」

 

「なっ!?」

 

 

 すると縛られたまま念動力で無理矢理に首を振り回し、ダーマはしがみ付いて大きく左右に揺られる。そんなのありか!?

 

 

「エスパーは時に強引に。それは美しく恐ろしいものなのよ」

 

「それは奇遇だな。蟲はしたたかに獲物を仕留める恐ろしさを有しているんだ。いとをはくだ!」

 

 

 振り回された勢いのまま、糸を伸ばして大きく距離を取るダーマ。そのままスレッドトラップに糸をくっつけて勢いを利用してきつく縛り上げ、はいよるいちげきの挙動を利用して頭上の支柱に宙返りしながら糸をかけて背後に降り立ち、吊り上げる様に締め上げてリキキリンの首を持ち上げる。

 

 

「なっ…!?かみくだいて糸を…!」

 

「もう遅い。必殺!スレッドマフラー!」

 

 

 ぶくぶくと泡を吐きながら気を失い崩れ落ちるリキキリン。考えていたダーマの昇華技その二「スレッドマフラー」。いとをはくとはいよるいちげきの昇華技だ。ダーマの弱点である火力の低さをカバーするエグめの必殺技だ。元は某必殺仕事人である。

 

 

「なんてこと……リキキリンがこんな方法で敗れるなんて。もしかして喜怒驚楽エクササイズ…思ったより怒ってる?」

 

「ちょっと頭に来てるな。ブルーフレア団のボスと戦った時よりどす黒い感情に飲まれてるかもしれん」

 

「それはちょっと想定外…体と心をリフレッシュるためのもののはずなんだけど。なら私も、本気の手持ちを出させてもらうわ。全てを美しく断ち斬りなさい、エルレイド!」

 

 

 そう言って繰り出されたのはエルレイド。糸で勝負するのはちょっとまずいか…?いや、ダーマなら行ける!

 

 

「いとだまバルカン!」

 

「無駄よ。リーフブレード!」

 

 

 糸玉の弾丸を連射するダーマだったが木の葉が散り、一緒に切り刻まれる。切り刻んだ先から糸が刃に絡み付くが、何かが弾けて糸がほどけてしまう。

 

 

「サイコカッター……明らかに相性悪いのに突っ張る理由を考えたら、技になにかあると考えるのは当然よね?」

 

「念動力を刃に纏っていたのか…」

 

「本来は中距離を攻撃する技だけど纏うこともできるのよ。シザークロス!」

 

「いとをはく!」

 

 

 桃色に淡く輝く両腕の刃を交差して振るい、X字の斬撃を飛ばしてくるエルレイド。いとをはくで空中に逃れスイングするダーマだったが、次々とX字の斬撃が飛んでくる。スレッドマフラーする余裕もない、真っ向勝負しかないか。

 

 

「背後を取れ!はいよるいちげきだ!」

 

「リーフブレード」

 

 

 完全に背後を取り死角を突いた一撃だった。俺の指示でリップさんが反応できるとしても、反応する前に仕留められるはずだった。想定外。…いや、俺はそれを知っていた。

 

 

「エルレイドの刃は背後にも伸ばせるのよ?知らなかった?」

 

「……ポケスペプラチナ編のコクランのエルレイド……」

 

 

 エルレイドの肘から伸びた刃がダーマの胸部を貫いていた。全く同じ光景を見たことがある。まさか、リップさんがそれをしてくるとは思わなくて油断していた。相手はエスパータイプのエキスパート、エスパーポケモンの事を熟知していて当たり前なのに…!

 

 

「インファイト!」

 

 

 貫いたまま振り返ったエルレイドの怒涛の攻撃がダーマを叩きのめし、なすすべもなく滅多打ちにされ崩れ落ちるダーマ。戦闘不能だ。

 

 

「よくやったダーマ。…エルレイドと戦えるのはお前だけだ、頼むぞジャック!」

 

 

 目には目を。歯には歯を。斬撃には斬撃を。こちらの斬撃のエキスパート、バサギリのジャックの登場だ。ギャラリーが多いのを言いことに岩斧をブンブン振り回し、ビシッとポーズを決めるエンターテイナーの姿に、エルレイドが怯む。いいぞその調子だ。

 

 

「その子の強さは知っているわ。一気に仕留める!サイコカッター、インファイト!」

 

「れんぞくぎりで防げ!蟷螂制空圏だ!」

 

 

 念動力の刃をインファイトの勢いで撃ち出してくるエルレイドの攻撃を、連続で空を斬り裂いてまるで斬撃のドームを作るように迎撃するジャック。シュウメイ曰く斬撃と素早さを合致させた刃の(きわみ)だ。

 

 

「がんせきアックス!」

 

「リーフブレード!」

 

 

 そして蟷螂制空圏で防ぎながら近づいたジャックのがんせきアックスを刃で受け止めるエルレイド。鍔競り合う両者は、そのまま一瞬退いて連続で斬撃をぶつけ合う。勝負はここからだ…!




新昇華技「スレッドマフラー」登場。ワナイダーに絶対似合う技。やってることはかなりえぐいです。

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VSフラージェス

どうも、放仮ごです。ミラクル交換してたらパーフェクト赤いギャラドス手に入れました。厳選用のレベル1マメバッタと交換なの申し訳ないけどそういう要素だからしょうがないね。

今回はラウラVSリップその2。楽しんでいただけると幸いです。


「がんせきアックス!」

 

「リーフブレード!」

 

 

ジャックとエルレイドの刃のぶつかり合いは続く。体格差もあるのになんて奴だ。念動力でパワーをアシストしているのか、厄介な。攻撃力を上げるか。

 

 

「ジャック、つるぎのまいだ…!」

 

「隙ありよ。エルレイド、インファイト!」

 

「くさわけで突っ込め!」

 

 

 いったん距離を取りつるぎのまいで火力を底上げしようとしたジャックに、ググッと構えて突撃してくるエルレイド。咄嗟に俺はくさわけによる突撃を指示、ジャックは指示の切り替えにもちゃんと応えてくれてインファイトが完全に発動しきる前に懐に飛び込んで行動を妨害する。

 

 

「がんせきリッパー!」

 

「っ!?リーフブレード!」

 

 

 地面を蹴ったジャックが高速で右、左と動いて斬撃を叩き込み、エルレイドはそれに合わせて両腕の刃を伸び縮みして対応。しかし背後を取ってとどめ、までがセットの昇華技だ。最後に真後ろから両腕の岩斧を高速で横に振るい、斬撃を胴体に叩き込んで居合が如く残心するジャック。そして、エルレイドは膝から崩れ落ちた。戦闘不能だ。

 

 

「…リップの本気のポケモンがまさか負けるとはね。ラウラちゃんには純エスパータイプのクエスパトラは不利ね、貴方に決めたわサーナイト!」

 

 

 リップの三匹目はサーナイト。蟲ポケモン相手に出してくるってことはやっぱり、マジカルフレイムは確実にあるな。ビートを思い出す。

 

 

「行くぞ、レイン!」

 

 

 対して俺はジャックを戻してレインを繰り出す。喜怒驚楽エクササイズをしていた時に偶然見えたんだ、恐らくアイアールと戦っていた際に高速で宙を舞う火球の雨を。恐らくサイコキネシスでマジカルフレイムを自在に操るのだろう、難敵だ。水技があり、あれを振り切れる機動力を持つレインで勝負するしかない。

 

 

「むしのさざめき!」

 

「マジカルフレイム。サイコキネシス」

 

 

 ポンポンポンと音を立てながら出現、サーナイトの掌の上でクルクルクルと輪を描いて宙を舞う四つの火球のひとつがむしのさざめきとぶつかって相殺、広がった爆炎の中から残り三つの火球が飛び出してくる。

 

 

「バブルこうせん…にエアカッター!」

 

 

 それに対して俺はバブルこうせんを撃たせてからそれをエアカッターで引き裂いて泡を破裂させ、内包している水でマジカルフレイムを打ち消そうとするが水に触れても全く勢いを衰えずに飛んでくる火球三つ。嘘だろ、サイコキネシスでカバーして水を弾きやがった!?

 

 

「いい作戦だったけど残念ね!エスパーに雨は通らない!」

 

「でんこうせっか!空に逃げろ!」

 

 

 太陽が上がってきた上空に向けて超加速して上昇するレイン。それを追いかけて行くマジカルフレイム。

 

 

「エアカッター!」

 

「無駄よ!サイコキネシス!」

 

 

 上昇しながらエアカッターで迎撃を試みるも、サイコキネシスで軌道修正されて全弾回避するマジカルフレイム。やっぱり駄目か、ならこのまま決めてやる!

 

 

「レイン、わかってるな?でんこうせっか!」

 

「なにを…!?」

 

 

 するとレインは太陽を背に急降下、マジカルフレイムの横をすり抜けてサーナイトに突撃する。それを追ってくるマジカルフレイム、しかしレインを見上げて太陽の逆光で目を瞑るサーナイト。狙い通り。その隙が命取りだ!

 

 

「いけえ!」

 

「しまっ……」

 

 

 逆光で怯んだところに体当たりし、すぐさま離脱したレインを追いかけてきたマジカルフレイムが全弾サーナイトに直撃、炎上させる。この絶好のチャンス、ものにしなきゃ嘘だ。

 

 

「むしのさざめき!」

 

「前よ!サイコキネシス!」

 

 

 レインの最大火力と、サーナイトの時にはブラックホールすら生み出すと言う念動力が同時に放たれ、同時に炸裂。耐久力がそんなにないレインはもとより、マジカルフレイムのダメージもあってサーナイトも崩れ落ちる。ダブルノックアウトだ。

 

 

「倒しきれなかったか…」

 

 

 太陽が出てくるのがもっと早ければ昇華技のむげんほうようも選択肢に入ったんだけどな。光の三原色を使う都合上、太陽が無いと使えないのが弱点過ぎる。それぞれボールに戻し、俺は再度ジャックを繰り出す。レクスは切札だからな。

 

 

「ラウラちゃん…想像以上よ。あなたってとってもトイシブなのね」

 

「といしぶ?」

 

「ちゃあんとクレンジングしなくっちゃ。フラージェスちゃん!」

 

 

 そして繰り出されたのはくさ・フェアリーだった気がするフラージェス。もういい加減驚かないぞ。取り出されたテラスタルオーブからの輝きが、フラージェスを結晶化させていく。こちらはまだ切らない。ジャックがしたところでくさテラスだしな。

 

 

「フラージェスちゃん、今度こそお色直しよ!新しい自分に生まれ変わって!」

 

 

 頭部に冠するは巨大な単眼の様な紫色の結晶。あれがエスパーのテラスタルか。アイアールのヒナがひこうテラスだったから何気に初だな。

 

 

「ジャック、相手は切札だ。倒せばかっこいいぞ」

 

 

 目立ちたがりのジャックのやる気を上げるのも忘れない。エスパータイプ単体になったなら話は速い。一気に行くぞ!

 

 

「れんぞくぎり!」

 

「女の武器は愛嬌よ。あ・ま・え・る♪」

 

 

 瞬間、両手を重ね合わせて目配せするフラージェスに、ジャックの岩斧の勢いが弱まる。不味い、攻撃力をガクッと下げられた!

 

 

「なっ…!?」

 

「飾り立てるのも時には大事。はなふぶき」

 

 

 花束の様なその身体から爆発するかの如く花弁を放出してその姿を隠すフラージェス。ジャックは花弁に包まれながら闇雲に岩斧を振るうが当たる筈もなく。

 

 

「女は度胸なのよ!サイコキネシス」

 

 

 さらにはあまえるで勢いの衰えた岩斧はサイコキネシスで完全に勢いを殺されてその手で優しく受け止められ、もう片方の手を頭上に掲げるフラージェス。

 

 

「時には大胆に、ね?ムーンフォース」

 

 

 そして出現した月の幻影に押し潰され、戦闘不能となるジャック。あまえるでこっちの攻撃力をガクッと下げて無力化、はなふぶきで姿を隠し、サイコキネシスで確実に動きを止めてからのムーンフォース。凶悪コンボだ。昇華技と呼んでもいいかもしれない。俺は肩を震わせながらジャックをボールに戻す。エスパータイプのエキスパートに蟲ポケモンたちが追い込まれるのは中々に悔しいな。

 

 

「待たせたな…行くぞ、レクス!王の威光を見せつけろ!」

 

 

 真打登場。エクスレッグのレクスを繰り出す。お前も喜怒驚楽エクササイズで鬱憤溜まってるだろ。一緒に、やってやるぞ。…え?俺が手間取ったせい?なんのことだか、知らんな。

 

 

「じごくづき!」

 

「自身にサイコキネシスよ」

 

 

 一跳躍で接近し、真っ直ぐ叩き込んだ脚を自分にサイコキネシスをかけて浮遊することで横に回避するフラージェス。レクスは次々と脚を入れ替えながら連続でじごくづきを叩き込んでいくが、当たらない。

 

 

「はなふぶき」

 

「こうそくいどうで外に離脱しろ!」

 

 

 ブワァと広がる花弁から、こうそくいどうで範囲の外に出ることで逃れる。あのまま接近されていたらあまえるをされていて危なかった。あまえるは強力だが、現実のバトルでは近い距離じゃないと効果を発揮しない。遠くで甘えられても効果があるわけがないからだ。

 

 

「はなふぶきをサイコキネシスで操って!」

 

「う、上に逃げろ!」

 

 

 サイコキネシスで花弁一枚一枚を操って勢いよく殺到させてくるフラージェス。レクスは跳躍して逃れようとするも全身を切り刻まれてしまう。

 

 

「テラスタルせずにあくタイプでいることでサイコキネシスを攻略したつもりだったみたいだけど、直接当てなきゃいいのよ。落ちてきたところにムーンフォースでフィニッシュ。美しく散りなさい!」

 

「…良いダメージを与えてくれたな。ムーンフォースで一撃で仕留めなかったのは悪手だぞ」

 

「え?」

 

 

 不敵な笑みを浮かべた俺に困惑の声を上げるリップに、テラスタルオーブを突き付け輝かせる。フラージェスの頭上で満身創痍のレクス、このタイミングしかない。

 

 

「今こそテラスタルだレクス!さらにむしのしらせで最大火力だ!とびかかる!」

 

 

 そして空中から急降下。最大火力の飛び蹴りをフラージェスに叩き込んで蹴り飛ばすレクス。フラージェスは床に叩きつけられ、その衝撃でクレーターが刻まれパキン!と音を立てて結晶が罅割れ砕け散る。戦闘不能だ。

 

 

「俺は証明する。蟲ポケモンはかっこよくて!かわいくて!美しくて!最高で!最強なのだと!!」

 

 

 俺は両手をかかげて、呆気にとられているギャラリーに向けて宣言する。これは、記憶を取り戻してから初めての、改めての誓いだ。

 

 

「…諸君!俺…私、ラウラは蟲が好きだ!蟲ポケモンが好きだ!愛している!だからこの愛を以て、ジムバッジをすべて集めてトップチャンピオンを倒すことで蟲ポケモンの全てを証明してやる!」

 

 

 待ってろ四天王。待ってろオモダカさん。そこに行くまで、あと一歩だ。




できるだけ昇華技を使わずどこまでいけるか書いてみました。アイアールに瞬殺されたフラージェスも面目躍如できたかな?

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSロトム

どうも、放仮ごです。今回はちょっとずつちらつかせていたあの要素回収回。楽しんでいただけると幸いです。


「あなたの強さは解けないマジック。…余裕を持って優雅に立ち回ろうとしたリップの負けね。汗とか色々でメイク落ちちゃった。なるはやでメイク直さなくっちゃケツカッチンね」

 

「ケツカッチン…?いや、喜怒驚楽エクササイズの鬱憤で勝てたようなもんだ。あんたは強かったよ」

 

 

 いやマジで。もう二度とやりたくないから絶対勝つ!って息込んでたのでかいと思う。それぐらい強かった、蟲ポケモンで有利なエスパータイプとは思えない強さだった。

 

 

「作った本人の前でそういうこと言っちゃう?自信作なのだけどそんなにお気に召さなかったかしら」

 

「いや多分俺以外には好評だと思いますよ…俺が苦手ってだけなので」

 

 

 多分ボタン辺りも苦手だとは思うが。俺達同じ陰の者だよな…?

 

 

「勝負に負けて、美しさでも…引き分けと言いたいところだけど上を取られちゃったわ。完敗よ。なんて美しい啖呵と生き様なのかしら!ラウラちゃん、あなた、イイ!すっごく、うん、最高!いずれビッグになる前にリップが囲っちゃおっかな?」

 

「だーめーでーすー!ラウラには私という先約がいるんですー!」

 

 

 リップさんに褒められているとユウリが乱入してきた。お前、嬉しいけど恥ずかしいからやめてくれ。ペパーとネモも呆れてるだろ。アイアールはなんか物言いたげだけど。

 

 

「あら、お熱いわね。アイアールちゃんだけじゃなかったのね。リップもキハダちゃんがいるからわかるわー。でもねラウラちゃん。ちゃんと向き合ってあげないと火傷しちゃうわよ?」

 

「え?それは、よくわかってますけど……?」

 

 

 グローリアビーストっていう前例があるからな……。あの時はマジで死ぬかと思った。

 

 

「うーん、リップがプロデュースしてあげたいけど今は自分磨きをやり直さなくっちゃいけないのよね、残念。おめでとラウラちゃん、ご褒美のジムバッジよ。とっておきのポーズであげちゃうわ。ほらほら、ここをこうして…」

 

「いや、あの、俺、体が硬い……」

 

 

 なんかヨガみたいなポーズで記念写真を撮った。バランスを崩して転倒した俺に対してリップさんは驚異のバランス感覚を見せてくれた。すごいなほんと。バトル以外で勝てる要素を一切思いつかないぞ。

 

 

「体幹を鍛えるのも大事よ。ポケモンちゃんの技の余波で体勢が崩れている間に戦況が激変していることもあるんだから。あ、そうだ。たしかエスパーポケモンがいたわよね。体幹を鍛えればこの技もバッチグーで使えると思うから受け取って?」

 

 

 そう言って渡されたのはわざマシン120「サイコキネシス」だ。ありがたい、次の戦いで主力になるであろうケプリベの強化になる…!

 

 

「アイアールちゃんにも言ったけどリップとのツーショット、SNSに上げちゃダメダメよ?」

 

「いや俺やってません…」

 

「あらもったいない。自分の信じる美しさを周りに示したいならネットも大事なのよ?じゃ、お疲れ様でーす」

 

 

 そう言ってリップさんはその場を後にした。………ネット、か。ナンジャモの時も思ったんだよな。蟲ポケモンのよさを広めるためにもありかもしれないって。俺、この世界じゃジムリーダーでもないし手段は限られてるんだよな。そんなことを考えていると、観客に見知った顔がいて、アイアールと話していたことに気付いた。なんで四天王がここに…?

 

 

「チリさん」

 

「おうラウラ!まいど!チリちゃんやで!アイアールも、なんやジム巡り調子ええみたいやん。どっちも痺れる強さやったで!」

 

「あ、ありがとうございます…?」

 

「チリちゃん!チリちゃん!」

 

 

 すると、チリさんがすらりとした長身過ぎて気付かなかったが足元にいた女の子がズボンを引いてチリさんの名前を呼ぶ。可愛いな。たしかこの子はブルーフレア団事件の時ちらっと会ったな。名前は確か…。

 

 

「ポピー、だったか?」

 

「おう、正解や。今回はな、この子が会いたい言うんで連れてきたんや。会うのは二回目やな。いやほんと、初対面が事件の場とか四天王の悲しい(さが)やで」

 

「お、おねーちゃんたちのポケモンもつよかったけど、ポ、ポピーのポケモンもとてもつよいとおもいますけど…!」

 

 

 なんか対抗してきた。可愛い。

 

 

「どっちが強いんやろなあ?ラウラとアイアールはトップも認めてるぐらいポケモン強いさかい。あのブルーフレア団のボスも倒してしもうたしなあ!」

 

「えーと、えーと!ポピーしてんのうだからポピーのほうがすごいのです…!」

 

 

 そうなんだよな、四天王なんだよなこの子。記憶を思い出したからわかるが子供で四天王ってポケモンの歴史的にもすごくないか?

 

 

「アッハッハ!かーわいい!。ポピーな、先の戦いで苦戦したのが納得いってないらしくてなあ。活躍した二人の強さを見たいってなあ」

 

「ポピーのポケモン、おねーちゃんたちにはやくちゃんとみせたいです!ポケモンリーグというさいこーほーのばしょでいまかいまかとまっておりますのでー!」

 

 

 照れ隠しの様にそう言ってとてとてと走り去っていくポピー。どこまでも可愛いな。

 

 

「あ、ちょ、待ちい!というわけでな、ポピーのためにもがんばったってな。ナンジャモところのアーカイブ動画も見て楽しんでるんやで。…こらポピー!チリちゃん置いてくなー!」

 

「あ、いっちゃった…」

 

 

 こちらが特に何か言うこともなく行ってしまった。嵐の様だったな。するとチリさんを見つけてからペパーの後ろに隠れていたユウリがおずおずと出てきた。

 

 

「で、お前はどうしたユウリ」

 

「いやあの、エスプリにされた私がボコボコにしてたからなんか気まずくて…」

 

「四天王全員をボコボコにしたって字面がまずすげーよ」

 

「四天王全員と同時バトル…!私もやってみたいなあ!」

 

「ネモは平常運転だね…」

 

 

 …四天王もあの動画見てくれてるのか。俺のネームド率結構すごいのか…?……前世の経験からぺーぺーの初心者の動画なんか誰が見るのかと思っていたが…やってみる価値はありそうだな。

 

 

「なあ、次の所に行く前にちょっとやりたいことが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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■ ▶❘ ・ライブ
 
 ❐ ▭ ▣ 

#ラウラの蟲かごチャンネル

【初配信】蟲ポケモンのよさを伝えたい【ラウラ】

 640 人が視聴中・0分前にライブ配信開始
 
 ⤴120 ⤵ ➦共有 ≡₊保存 … □ 

 
 ラウラの蟲かごチャンネル 

 チャンネル登録者数 64人 

 

 

 

「このスマホロトムに向けて喋ればいいんだったよな…え、始まってる?えっと、おはこんセクト。…なんか毛恥ずかしいな。ラウラだ」

 

〈おはこんセクトー〉

 

〈おはこんセクト!〉

 

〈おはこんセクトとは…?〉

 

〈多分インセクトからじゃね?〉

 

〈あのラウラが配信すると聞いて〉

 

〈あのコラボ配信で蟲ポケモンに興味を持ちました!〉

 

「なんか知らんがそこそこ有名なのなんでだ。あ、あれで興味持ってくれたのなら嬉しいな」

 

 

 拝啓、今頃アローラで頑張っているジュリ。蟲ポケモン解説系動画配信者、始めました。




動画配信者ラウラ、爆誕。蟲ポケモンのよさを伝えるためならなんでもする女の結論。初配信の視聴者数とか登録者とかはちゃんと知らないので適当です。ちょっと多いのはナンジャモ効果。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSアリアドス

どうも、放仮ごです。過去一ラウラが饒舌な回。楽しんでいただけると幸いです。


 

 

 

 

 

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■ ▶❘ ・ライブ
 
 ❐ ▭ ▣ 

#ラウラの蟲かごチャンネル

【初配信】蟲ポケモンのよさを伝えたい【ラウラ】

 3,640 人が視聴中・15分前にライブ配信開始
 
 ⤴264 ⤵ ➦共有 ≡₊保存 … □ 

 
 ラウラの蟲かごチャンネル 

 チャンネル登録者数 2364人 

 

 

 

「それで蟲ポケモンの目は大半が複眼といって複数のレンズによって構成されている。蟲ポケモンの視野が非常に広いのはこれのおかげだ。ちなみにレディバとか複眼じゃない蟲ポケモンも結構いるぞ」

 

「だからレクスの反応速度が異様に速いんだ…」

 

「せんせー!複眼は周りの光景を別々に見ることができるんですか?」

 

「いい質問だネモ。残念ながら広い視野ってだけでそういうことはできないんだ。ネモの言ってることが監視カメラのモニターだとしたら、蟲の複眼はモザイク画みたいだと言えば分るか?」

 

「なるほどな!勉強になるぜ!」

 

 

 今現在、ベイクタウンからちょっと離れた高原で撮影している。ホワイトボードを置いて、こっちの世界にもいるらしいから顔出しできないユウリが撮影しているスマホロトムのカメラと俺の間にアイアール、ネモ、ペパーが座って生徒役をしてくれている、という授業か講義みたいな形式である。ホワイトボードはベイクタウンの塾から借りてきた。

 

 

〈ほへー〉

 

〈ドリームーン:蟲の癖に小癪ですね〉

 

〈普通にためになって草〉

 

〈通りすがりのコルさん:機能美に優れた蟲ポケモン、実にアヴァンギャルドだ!〉

 

〈この15分で蟲の恐ろしさを知った気がする〉

 

〈ドラゴーン!:授業の次の題材が決まりました〉

 

〈女王蜂のしもべ:これだから蟲は推しなんだ!〉

 

〈ネモがさっきから俺達の知りたいことを聞いてくれて助かる〉

 

〈蟲と言うジャンルのポケモンがどれだけ機能美に優れているか説明しているだけなのにチャンネル登録数倍増どころじゃなくて草〉

 

「え?」

 

 

 そんなコメントが偶然目に入って確認してみたら1000人にも満たない登録数から2000人以上に増えていた。同時接続数も三桁から四桁、というか3000人ぐらいいるんじゃが。ホワイトボードに図や説明文を書くのに夢中で気付かなかった。どういうことなの…?

 

 

〈急にどうした?〉

 

〈あわあわしだして草〉

 

〈コガネの面接官:お、やっと気づいたみたいやな〉

 

〈ナンジャモとかコルサとかリップとかが拡散してて広まってバズってるんよな〉

 

「暇なのかジムリーダー!?」

 

 

 なにやってるんだ本当に。え、何この羞恥プレイ。尊敬している知人に自分のはじめての配信見られるとか地獄か?それにその道のプロのナンジャモとかリップさんとかにも観られてるって…。

 

 

〈暇なのかジムリーダーは草〉

 

〈実際ジムテストを突破する人少ないから暇なんだろうね…〉

 

〈ドンナモンジャTV:こんなの拡散するしかないよね!〉

 

〈本人だ!?〉

 

〈珍しくおやすみしてると思ったら…〉

 

「ナンジャモ!?これゲリラ配信だぞ!?お前本業大事にしろ!?」

 

「調べたら配信の開始時間をずらしてるみたい。人気だねえラウラ。嫁は私だけど!」

 

 

 ユウリがカメラを回しながらスマホロトムを操作しながらそう笑う。お前は喋るな、声だけでも特定する奴がいたらどうする。

 

 

〈よめ〉

 

〈読め?〉

 

〈ヨメ〉

 

〈夜目?〉

 

〈余命?〉

 

〈もしかしなくても嫁か?〉

 

〈女の子の声だったんじゃが〉

 

〈つまりキマシタワー〉

 

〈カッチカチのぽぴん:あらまー!〉

 

〈俺っ娘が旦那は解釈一致〉

 

〈いいぞもっとやれ〉

 

「お前らもコメントの速度上がるな!?」

 

 

 こんなの読み切れないぞ!?いやナンジャモの時に比べたら少ないんだが、よく捌けてたなアイツ。

 

 

〈嫁さんも出ていいのよ〉

 

〈カメラマンしてるのかな?〉

 

〈声から絶対可愛いとわかる〉

 

「あ、じゃあ出ようかな…」

 

「残念ながらこいつは非公開だ。続けるぞ」

 

 

 このままじゃ脱線し続けると思ったのでばっさり切って次の題材を書いて行く。ホワイトボードにでかでかと書いたのはアリアドス。次いで真っ直ぐな線とでこぼこした線を書いて、それぞれ横に「縦糸」「横糸」と書く。ついでにダーマも繰り出してカメラに向き直った。

 

 

〈アリアドス?〉

 

〈パルデアにはいないポケモンだな〉

 

〈ワナイダーも出したってことはもしかしてクモポケモンか?〉

 

「おっ、鋭いな。そうだ。次は蜘蛛ポケモンの糸について解説する。俺と蜘蛛ポケモンは切っても切れない関係でな、これはぜひとも誰かに解説したかったんだ」

 

〈生き生きとしてて可愛い〉

 

〈コガネの面接官:好きなのが伝わってくるなあ〉

 

〈蟲ポケモンの中でも異質だよな、足が多いし〉

 

「いいところに気付いたな!」

 

 

 視聴者の中でいいところに気付いた人のコメントを拾う。そうなんだよ、蜘蛛は蟲だけど昆虫とは違うんだ!

 

 

「そもそも蟲ポケモンは大きく分けて三種類いてだな。バタフリー、スピアー、メガヤンマなどの「昆虫類」ワナイダーやドラピオンなどが該当する「鋏角類」ペンドラーやマルヤクデなどが該当する「多足類」に分かれている。実はもっと細かいんだが今回は割愛するな、今度話題に出すから知りたい人はチャンネル登録してくれ」

 

「それはどう違うんだ?」

 

 

 ホワイトボードを裏返して、昆虫類の字とメガヤンマ、鋏角類の字とデンチュラ、多足類の字とマルヤクデをデフォルメで書いて行く。

 

 

「昆虫類は基本的に頭部・胸部・腹部の3つに分かれていて、3対6本の脚を胸部に持つのが特徴だ。鋏角類は前体と後体という2部だけに分かれていて、1対の鋏角と1対の触肢と4対の脚を持つため、頭で歩くのが特徴で…多足類は文字通り名前の通り沢山の脚を持つ!これはあくまで基本であって、全部がそうじゃないぞ。ポケモンは不思議な生き物、そこらへんは実はアバウトだ!」

 

〈草〉

 

〈その通りだから草〉

 

〈一番ポピュラーなのは昆虫類かな?〉

 

〈ドリームーン:可愛い絵ですね〉

 

「だいぶ脱線したから戻るぞ。蜘蛛ポケモンはこのダーマことワナイダーとその進化前であるタマンチュラ。バチュルとその進化であるデンチュラ。シズクモとオニシズクモ。そしてここに書いたアリアドスとその進化前であるイトマルが今のところ確認されている。ちなみに今はいないがデンチュラとオニシズクモは俺の手持ちで、デンチュラに至っては相棒だ。今はいないが…」

 

〈 い ま は い な い が 〉

 

〈※大事なことなので二回言いました〉

 

〈すっごい悲しみを感じる〉

 

〈声の重みが凄い〉

 

〈相棒が今はいないってどういうことなの…?〉

 

 

 あ、やべえ。デンチュラたちに会えない鬱憤ががががが。流れを変えないと。

 

 

「その中でも蜘蛛の糸を用いるのは、いとをはく、クモのす、どくのいと、ねばねばネット、エレキネット、スレッドトラップなどの技が該当する」

 

〈どくのいと?〉

 

〈エレキネットは知ってるがクモのすとどくのいとは初めて聞くな〉

 

「マイナーなわざだからな。クモのすはネバネバした糸でできたトラップを絡ませる技だ。相手を交換できなくする、野生ポケモンとのバトルでは相手を逃げられなくする。つまりくろいまなざしだな。ちなみにゴーストタイプには効果がない」

 

〈草〉

 

〈なんて悲しい技なんだ…〉

 

〈ラウラなら凄い使い方しそう〉

 

「残念ながら俺も使い道が分からん。ただしクモのすはくろいまなざしよりもPP(パワーポイント)が多い利点がある。だからどうしたって話だが」

 

 

 マジで使い道がない技なのだ。同系統のエレキネットとねばねばネットの方が有能過ぎるというのもあるが。

 

 

「俺の相棒のデンチュラはキョダイマックスしてキョダイクモノスと言う技が使えるが今回は関係ないので割愛する」

 

〈待て待て待て待て待て〉

 

〈え?なんて?〉

 

〈キョダイマックスするデンチュラなんて聞いたこともないんだが〉

 

〈キョダイクモノスとは〉

 

〈チャンネル登録不可避だってこんなん〉

 

「たた!かい!たい!」

 

「どうどう落ち着けネモ」

 

「ラウラの相棒も特別なんだね…!」

 

 

 なんかネモとアイアールがキラキラした目を向けてくるがアイアールのゲッコウガの方がよっぽど珍しいと思うぞ。きずなへんげなんて俺も知らないとくせいだし。

 

 

「どくのいとはアリアドス系統の専用技でどくタイプの変化わざだ。毒を纏った糸を吐きかける事によって相手の素早さを下げ、さらに毒状態にしてしまう有能なわざだ。相手がどく状態だったり、どく・はがねタイプである場合は素早さが下がるだけだが、それでもかなり強いと思う」

 

〈強すぎない?〉

 

〈専用技はこれだから…〉

 

〈でも知られてないんだよなあ〉

 

 

 アリアドスがそもそも生息地域少ないからしょうがないんだよな。

 

 

「それで本題だが、蜘蛛の糸は縦糸と横糸にジャンル分けができる。主に口から吐く糸が縦糸、尻から伸ばすのが横糸だ。ポケモンは不思議な生き物だから口から横糸を吐いたりできるが。縦糸はワイヤー並みに頑丈で重い物を支えることができて、蜘蛛の巣を作る支柱を形成する。逆に横糸は簡単にちぎれるほど脆いがねばねばしていて、纏わりついて獲物を捕らえる役割を持つ。これらを用いる蜘蛛ポケモンは蟲ポケモンでも生粋のハンターで、鳥ポケモンだろうが捕らえてしまうんだ。ちなみにワナイダーの糸は主に横糸だ。スイングする時は縦糸で、違いがよくわかるだろ?」

 

「ダーマの糸ってそう言う役割があったんだ…」

 

〈こわっ〉

 

〈女王蜂のしもべ:美しいね〉

 

〈すっごい合理的に分けられてるな〉

 

〈なるほど機能美〉

 

 

 やっと話したいことが話せた。俺が蟲の中でも蜘蛛を特に愛する理由の一つがこれだ。無駄が無い、美しい機能美。みんなに知ってほしい。そして好きになってほしい。これは俺の本音で、この配信を始めた理由の一つだ。視聴者よ、お前も蟲好きにならないか?




蟲解説(ガチ)系配信者ラウラ。多分この世界の学者より詳しい。

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番外編:とあるスカーレット世界の掲示板1

どうも、放仮ごです。無印の方のポケモン蟲も昨日更新しました。今回は久々の掲示板回です。楽しんでいただけると幸いです。


 

 

 

 

 

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■ ▶❘ ・ライブ
 
 ❐ ▭ ▣ 

#ラウラの蟲かごチャンネル

【初配信】蟲ポケモンのよさを伝えたい【ラウラ】

 31,640 人が視聴中・60分前にライブ配信開始
 
 ⤴1964 ⤵ ➦共有 ≡₊保存 … □ 

 
 ラウラの蟲かごチャンネル 

 チャンネル登録者数 21,364人 

 

 

 

 

 

「そろそろ時間だな……この場を借りて宣言しとこうと思う。諸君!俺…私、ラウラは蟲が好きだ!蟲ポケモンが好きだ!愛している!だからこの愛を以て、パルデア地方のジムバッジをすべて集めてトップチャンピオンを倒すことで蟲ポケモンの全てを証明してやる!蟲ポケモンはかっこよくて!かわいくて!美しくて!最高で!最強なのだと!!……今登録者数見たらなんか怖くなってきたから今回はここまでにしとくよ。あとな?俺なんかを見るぐらいならナンジャモとかのアーカイブでも見た方がいいぞ、これ本当に」

 

「「そんなことないが?」」

 

「そこ被るなアイアールと嫁」

 

「バトルしたらもっと伸びると思う!そんで相手は私とかどうかな!」

 

「バトルしたいちゃんなのはわかるが自重しようぜネモ」

 

「と、とにかく!おつセクト!じゃあな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

新人配信者トレーナー、ラウラについて語るスレ

・・・・・・・・・

 

 

64:名無しのトレーナー

初配信一時間で伝説になった女

 

65:名無しのトレーナー

初配信のゲリラライブで登録者数二万人、同時接続数三万人を超えたバケモノ

 

66:名無しのトレーナー

ナンジャモ効果があったとはいえ偉業が過ぎる

 

67:名無しのトレーナー

なお内容は単に蟲ポケモンの解説だけな模様

 

68:名無しのトレーナー

あと愉快な仲間たちとの漫才もだぞ

 

69:名無しのトレーナー

嫁がカメラマン、相棒、パルデア最強、有名な博士の息子が生徒とかいう豪華メンバー

 

70:名無しのトレーナー

嫁ってガチなんかね

 

71:名無しのトレーナー

ラウラや仲間が特に否定しなかったってことはガチなんでしょ

 

72:名無しのトレーナー

まんざらでもなさそうなラウラの顔よ

 

73:名無しのトレーナー

そして不満げだったアイアールの顔よ

 

74:名無しのトレーナー

キマシタワー?

 

75:名無しのトレーナー

女の子があんなにモテるなら俺がモテてもいいじゃない

 

76:名無しのトレーナー

ラウラとかいう蟲に全てを捧げた俺っ子。なんでモテてるんだろね

 

77:名無しのトレーナー

>>75

ラウラだからモテるんだぞ

 

78:名無しのトレーナー

>>75

鏡を見てどうぞ

 

79:名無しのトレーナー

蟲ポケモンと結婚しそうまであるラウラが女の子の嫁持ってるとはなあ

 

80:名無しのトレーナー

>>78

ブーメランおつ

 

81:名無しのトレーナー

>>78

ここにいる奴のほとんどに刺さる言葉をありがとう

 

82:名無しのトレーナー

>>79

シンオウかどっかの図書館で見たけど昔の人間はポケモンと結婚してたらしいな

 

83:名無しのトレーナー

可愛らしい女の子が男勝りに喋ってはしゃいでいるのが見られる配信だもんな

 

84:名無しのトレーナー

気持ち悪いって人が多い中で蟲をあそこまで愛して決してぶれないどころか世界中に向けて宣言するやべーやつ

 

85:名無しのトレーナー

あそこまで愛を貫いているのはすごいよなあ

 

86:名無しのトレーナー

ヒワダジムのツクシやシンオウ四天王のリョウも蟲好きを明言しているけどここまでじゃなかったよな

 

87:名無しのトレーナー

有名なむしタイプ使いってイッシュのアーティ、シンオウのリョウ、ヒワダのツクシ、カロスのビオラ、パルデアのカエデぐらいだっけ

 

88:名無しのトレーナー

むしとりしょうねんとかいう蟲使いの鑑

 

89:名無しのトレーナー

アローラ地方のスカル団のボスのグズマもむしタイプ使いと有名だぞ

 

90:名無しのトレーナー

その中で一気に蟲使い代表にまでなった一般トレーナーがいるらしい

 

91:名無しのトレーナー

むしタイプと検索したらラウラが出るんだよな今…

 

92:名無しのトレーナー

あ、そうだ一般トレーナーだった……

 

93:名無しのトレーナー

なんかジムリーダーみたいな雰囲気出してるから忘れてた…

 

94:名無しのトレーナー

実際ジムリーダーぐらい強いよね

 

95:名無しのトレーナー

むしタイプのエキスパートなのは間違いない

 

96:名無しのトレーナー

なんならブルーフレア団のボス倒したのラウラらしいぞ

 

97:名無しのトレーナー

それマ?

 

98:名無しのトレーナー

テーブルシティを占拠した連中のボス?

 

99:名無しのトレーナー

めっちゃ不気味だったよなヘルメットとボディスーツの軍団

 

100:名無しのトレーナー

俺あのテレビに映ったデリバードもどきガチで怖かった…

 

101:名無しのトレーナー

現地にいた人は地震とかもっとやばかったらしいな

 

102:名無しのトレーナー

俺プラトタウンから見てたけどもう戦争みたいだったぞ

 

103:名無しのトレーナー

なんでもあの時虚空から出てきたでっかい宝石、カロスの最終兵器と同じ物だったらしいな

 

104:名無しのトレーナー

下手したら俺ら死んでたやつ

 

105:名無しのトレーナー

誰もが知ってるフレア団の最終兵器事件

 

106:名無しのトレーナー

ラウラ俺らのヒーローやん

 

107:名無しのトレーナー

他にもアイアールとかネモとかあとスター団のボスたちもいたらしい

 

108:名無しのトレーナー

スター団って不良集団の?

 

109:名無しのトレーナー

悪い奴等じゃなかったか?

 

110:名無しのトレーナー

むしろ一番最初に駆けつけたのスター団のボスたちなんよな

 

111:名無しのトレーナー

テレビカメラに映ってたね。なんかクラベル校長らしき人もいたけど

 

112:名無しのトレーナー

あのクソダサリーゼントが校長だったら世も末じゃね

 

113:名無しのトレーナー

あとなんかメガヘラクロスを使ってた女の子いたよな

 

114:名無しのトレーナー

ラウラじゃなくて?

 

115:名無しのトレーナー

蟲使いの女の子が他にもいるってマジ?

 

116:名無しのトレーナー

変装してたカエデさんでもなく?

 

117:名無しのトレーナー

カエデさんはその時セルクルタウンの近くで暴れるポケモンの対処してたぞ

 

118:名無しのトレーナー

なんなら他のジムリーダーもそうだぞ

 

119:名無しのトレーナー

カロスとかシンオウとかカントーでも同時刻にブルーフレア団と暴走したポケモンたちが暴れてたんだよなあ

 

120:名無しのトレーナー

地味に世界中で足止めされてその間に最終兵器起動されて全部終わるところだったんよな

 

121:名無しのトレーナー

ラウラやっぱりヒーローやんけ

 

122:名無しのトレーナー

本人はそんなことよりも蟲ポケモンのよさを布教してたって言うね

 

123:名無しのトレーナー

それでそのもう一人の蟲使い誰さ

 

124:名無しのトレーナー

メガシンカするってことはカロスかホウエンかアローラのトレーナーなんだろうけど

 

125:名無しのトレーナー

他の地方ではメガシンカ普及してないもんな

 

126:名無しのトレーナー

女の子がむしタイプ使うの流行ってるのか?

 

127:名無しのトレーナー

関係ないかもだけどチャンプルタウン辺りでメガヘラクロスとキュレムを使う男女のトレーナーにカツアゲされるって噂無かった?

 

128:名無しのトレーナー

それだ!

 

129:名無しのトレーナー

いやそいつじゃん

 

130:名無しのトレーナー

キュレムってイッシュの伝説の?

 

131:名無しのトレーナー

イッシュ第三の竜だろ?知ってる知ってる

 

132:名無しのトレーナー

あれだろ、いつだったかイッシュ地方を氷漬けにしたプラズマ団が利用してたポケモン

 

133:名無しのトレーナー

え、つまりプラズマ団の残党がパルデアにいるってこと?

 

134:名無しのトレーナー

なんでそんなのがパルデアにおるん?

 

135:名無しのトレーナー

それと一緒にいるのがメガヘラクロスってのが笑う

 

136:名無しのトレーナー

伝説と並ぶ蟲ポケモンとかラウラ喜びそう

 

137:名無しのトレーナー

ところでブルーフレア団の話をした時思い出したんだけど

 

138:名無しのトレーナー

どしたん

 

139:名無しのトレーナー

ラウラの話に戻りたいんやけど

 

140:名無しのトレーナー

関係あるなら聞いてやろう

 

141:今思い出したことがある>>137

いやさ、テレビカメラにラウラが二人映ってなかった?

 

142:名無しのトレーナー

は?

 

143:名無しのトレーナー

同じ人間が二人いるわけないだろいい加減にしろ?

 

144:名無しのトレーナー

もしかして仲間割れしてたヘルメットボディスーツのこと?

 

145:名無しのトレーナー

たしかに蟲ポケモンを使いこなして無双してたやつがいたけど

 

146:名無しのトレーナー

>>144

>>145

そう、それ。あれなんだったのかなって

 

147:名無しのトレーナー

敵に潜入するために着替えたラウラとかじゃなく?

 

148:名無しのトレーナー

あれを着たラウラ想像してみたらやばい

 

149:名無しのトレーナー

ラウラより強かった気もするし別人だろ?

 

150:名無しのトレーナー

コロトックでヘイラッシャ倒してたところやばかった

 

 

 

・・・・・・・・・




ブルーフレア団事件の全貌でした。カロスの五人組が来なかった理由がこれ。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSアイアント

どうも、放仮ごです。こんなサブタイトルですけど名前が出るだけでアイアントは出ないです。

今回はまさかの再開。楽しんでいただけると幸いです。


 ベイクタウンを後にして。俺達はそらとぶタクシーでチャンプルタウンに訪れていた。アイアール、ユウリ、ネモ、ペパーと一緒にローリングドリーマーで食事をとっているのだが、なんか視線をめっちゃ感じるけどなんなんだ。

 

 

「…落ち着かねえ」

 

「そりゃ視線も集まるぜ。新進気鋭の急成長にも程がある有名配信者ちゃんだからな」

 

「私わかってたから変装してきたもんね」

 

「ユ……グロリア、わかってたなら教えろ」

 

 

 髪型をお嬢様風にして青くない普通のサングラスとパーティードレスで変装しているユウリを、人前なので本名ではなく偽名のグロリアでツッコみながら寿司を口に入れる。高級店言うだけあって美味いな、前世の回らない寿司には負けるが。

 

 

「まさかラウラが配信者になるなんてねえ」

 

「遅すぎたぐらいだと思うよ!だってジャックがいるんだし!」

 

「ラウラは蟲ポケモンの事を最優先にするから早かれ遅かれだったろうね」

 

 

 アイアールとネモの会話に、お見通しと言わんばかりのグロリアに口答えしようとして、マジでそうだからぐうの音も出なかった。

 

 

「次の配信でジャックを出す気ではあるけどさあ…」

 

「母ちゃんの事も忘れんなよ、後一ヶ月もないんだからな」

 

「忘れてないさ。まあエリアゼロの入り口のゼロゲートはすぐそこなんだが」

 

「こんなところにあったんだね」

 

「チャンピオンランクでも立ち入り禁止なんだけど博士はどうやって入れるつもりなんだろ」

 

「……私達無断で立ち入ったけど思いっきりダメな奴だったかあ」

 

 

 チャンプルタウンはゼロゲートのすぐ傍、即ちエリアゼロに最も近い町だ。用事を全部済ませたらまたここに戻ってくることになるだろうな。そんな会話をしながら緑茶っぽいなにかを隣のユウリと一緒にゆっくりとすすっていると、出入り口の扉が開いて見覚えのある二人が入ってきた。

 

 

「何名様でいらっしゃいますか?」

 

「グレイ、お腹すきました」

 

「わかったから大人しくしてろ。二名だ。カウンター席で頼む」

 

 

 白黒のBW男主人公みたいな恰好をしたグレイと、BW女主人公みたいな恰好をしたダフネがそこにいた。

 

 

「「ぶーっ!?」」

 

「「わー!?」」

 

 

 思わずお茶を噴き出して緑の液体を目の前のアイアールに、ユウリはネモにひっかけてしまった。ハンカチを取り出したペパーに顔を拭かれるアイアールとネモを余所に、ユウリと一緒に立ち上がってそそくさと席待ちしている二人に駆け寄る。

 

 

「グレイ、ダフネ!?お前らなんでここに!?」

 

「追われているとか言ってなかった!?」

 

「馬鹿たれか」

 

「「~!?」」

 

 

 まくしたてるとビシッとユウリと一緒にグレイのチョップを頭頂部に喰らい悶絶する。なんか周りが騒がしいな。…あっ。思い出した、今の俺有名人だった。

 

 

「…悪い、悪目立ちしてるか」

 

「まったく。ダフネ、先に食ってろ。俺は外で話してくる」

 

「わかりました!」

 

「ユ…グロリアも戻っとけ。逆に悪目立ちする」

 

「わかりましたわ」

 

「グロリアお嬢様、まだそのキャラやってるんです?」

 

「誰かさんのおかげでしみついちゃったの!」

 

 

 二人で仲良く(?)席に向かっていくユウリとダフネを尻目に、俺はグレイについて外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、なにしてんだ?」

 

「こっちの台詞だ。なに配信なんかやってるんだ馬鹿かお前は。あんなことしたら物好きに素性を調べられて面倒なことになるかもしれないだろ」

 

 

 俺の問いかけに半ギレで返してくるグレイ。どうやら配信したことがお気にに召さなかったらしい。

 

 

「いや大丈夫だろ、戸籍からしてないんだから」

 

「ないから厄介なんだよ……記憶が無いときならまだいいが記憶があってそれとか確信犯か?本当に馬鹿なのか?」

 

「馬鹿馬鹿言うなよ。これでも考えたんだぞ、ジムリーダーと言う立場じゃなくなっても蟲の素晴らしさを教えるにはどうすればいいか!」

 

「よーしわかった蟲馬鹿だお前は!」

 

「俺を馬鹿にするのはいいが蟲を馬鹿にするな!この伝説厨!」

 

「誰が伝説厨だ!俺は灰色厨だ!」

 

「赤いゲノセクト連れてた奴がなに言ってんだ!あいつ赤だぞ!赤!」

 

「目の色が灰色だろうが!」

 

「それはたしかにそうだ!」

 

 

 言い合いして、変な方向に着地して二人してゼーハーと肩で息をして落ち着く。…なに話してるんだ俺達。

 

 

「…はあ、まあいい。有名になった物はしょうがない。元の世界に帰る前に後始末はしろよ」

 

「プラズマ団の科学力で異世界でも配信とかできないのか?」

 

「お前科学を万能だとでも思ってるのか、馬鹿。………フーパと言うポケモンがいればあるいはできるかもしれんが」

 

「フーパ?聞いたことのないポケモンだな」

 

「そうだったな……前世のお前のポケモン知識はBW2から一切進んでないんだったな……よく逆に情報を仕入れずに2020年の年末まで生きてこれたな」

 

 

 首をかしげる俺にがっくりと肩を落として呆れるグレイ。いやまあそれは、大金はたいて買ったペットの蟲たちを育てるのに人生賭けてたからな……あと息抜きにBWのサブウェイを延々やってたぐらいか。ペンドラー抜き蟲ポケモン縛りでノボリクダリのコンビと戦えるぐらいにはやりこんだなあ。アイアントとか懐かしい。ガラルにはいたけどパルデアにはいないんだよなあ。

 

 

「フーパは光輪の超魔神フーパって映画に登場する幻ポケモンだ。手にしたリングで次元と次元を繋げることができるってポケモンだ。ちなみにエスパー・ゴーストのいたずらポケモンだ」

 

「パルキアよりやばくね?」

 

「さすがに神のパルキアの方がヤバいだろ。そいつを見つけられたら異世界でも配信できるかもな?」

 

「……配信の為だけに幻ポケモン捕まえるのは違くないか?」

 

「お前が言い出したんだろうが!」

 

 

 それは失敬。……俺が入ったウルトラホールを安定させることができればもしかしたらって感じだろうか。俺アレにそんな詳しくないけど。

 

 

「それはともかく、お前たちは何でここに?」

 

「外ばかり警戒されてるからいっそ中に入れば追跡を逃れられると思ってな」

 

「ゼロゲートから出なけりゃいい話じゃないのか?」

 

「そろそろ惣菜とかカップ麺じゃなくて外食食いたかった」

 

「お、おう…」

 

 

 悲壮感を漂わせるグレイ。いつもペパーの飯とか食ってて、なんかすまない。

 

 

「それで、ゼロゲートまで来る気なのか?」

 

「いいや、まだジムリーダーとスター団ボスと四天王とマジボスとトップチャンピオン倒さないとだからな。ここには最後のジムにいくために来た」

 

「……なんて?」

 

「最後のジムにいくために」

 

「そこじゃねーよジムリーダーとスター団のボスと四天王とマジボスとトップチャンピオンを残り二週間ちょっとで攻略する気なのか?」

 

「そうだが?」

 

「馬鹿だ、真正の馬鹿がいる……」

 

 

 無謀かもしれんが一発クリアすれば間に合うかもしれないじゃないか。

 

 

「…わかった。俺は万が一のためになんか策を考えとく」

 

「それは助かる、お前はプラズマ団の再建した手腕は確かだからな」

 

「余計なお世話だ」

 

「ところでなんで一ヶ月が期限だったんだ?」

 

「ああ、それか。ダフネは言わなかったんだったな」

 

 

 言うべきかどうか顎に手をやって悩んでいるグレイ。結論に至ったのか頷いて向き直ってきた。

 

 

「…一言で言うとパルデアの危機だ」

 

「最終兵器がまだ残ってるのか!?」

 

「…いや、そうじゃない。ブルーフレア団のマトイが最終兵器を転移させるために空間をガバガバにしてくれたせいで、タイムマシンを早く止めないと一ヶ月も経てばダムが決壊する。すなわち」

 

 

 

 

 

 

――――――パラドックスポケモンがパルデアに溢れだす

 

 

 

 その言葉に、俺は絶句するしかなかった。




ローリングドリーマーの内装は某チェーン店をイメージ。人前に出る時に黒歴史のグロリアを演じないといけなくなったユウリである。

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VSテツノワダチ

どうも、放仮ごです。SVのストーリーよく考えてみたらツッコミどころ多いよねって。楽しんでいただけると幸いです。


「すなわち、パラドックスポケモンがパルデアに溢れだす」

 

 

 グレイの口から紡がれた言葉に、思わず絶句する。パルデア地方に、イダイナキバみたいに一匹だけでも強力で凶暴なパラドックスポケモンが溢れだすだって…!?俺のウカはともかく、ユウリやシュウメイ達みたいな実力者じゃないと手名付けられない、バケモノと呼んでも差し支えないポケモンたちだぞ!?

 

 

「…嘘だろ?」

 

「こんな嘘を言ってどうする。ちなみにブルーフレア団の計画が上手く行った場合、ゲーム版…XYやポケスペのXY編によると最終兵器起動後は死の世界になるらしいから雪崩込んで来た時点でパラドックスポケモンも死んでるな。よくできてる計画だ、褒めてやる」

 

「何様だお前。……いや、王様志望だったな確か。しっかしポケスペにXY編なんてあったのか。Zもあるのか?」

 

「……お前、一応聞くが2020年の年末に死んだんだよな?」

 

「洗脳された時は親友関係だったとはいえ馬鹿正直に言いすぎじゃね?俺。そうだけど」

 

「…その頃にはXY編は終わってサンムーン編も結構佳境に入ってるぞポケスペ……」

 

「さんむーん?」

 

「そこからか……お前が転生したガラルが剣盾の舞台だってことも妹に聞いて初めて知ったんだっけか。どんな生き方したらそんなピンポイントに無知でいられるんだ。アローラのゲームだ」

 

「あー、ミヅキのところの。今ジュリがいるところか」

 

「そうだ。BWのあとは色々番外作品もあるが…XY、サンムーン、剣盾とシリーズが続いているんだ。ちなみにルビーとサファイアもリメイクされてるぞ」

 

「……リメイクされたテッカニンが見れるならそれやってから死にたかったな…」

 

「本物を見ている奴がなにを言っているんだ」

 

 

 それはそうだが、ダフネに見せられた夢でBWやった際に懐かしく感じたみたいに、ゲームのポケモンでしか味わえない要素もあるんだよなあ。

 

 

「話を戻すぞ。つまりブルーフレア団のボスであるマトイは後先考えて無茶をやってたわけだ。後先考えずにただ止めたお前たちとは違うな」

 

「喧嘩売ってるなら買うぞ」

 

「そんなことしている暇があるならさっさとやることやってスカーレットブックと一緒にエリアゼロに来い。パラドックスポケモンの雪崩を止める方法はただ一つ、出口を閉じる事だけだ」

 

「…?オーリム博士がタイムマシンを作ったなら止めれる筈だろ?なんで俺達が行く必要がある?」

 

 

 そうだ、そこが気になっていた。ペパーが必要なのはわかったが、なんで俺達全員なんだ。

 

 

「正確には来てほしいのはスカーレットブックを持つオーリム博士の息子ペパーと、エリアゼロに蔓延っているパラドックスポケモンの群れを打倒して最深部まで辿り着ける戦力だ。ラウラ、ユウリ、ネモ、そしてマトイを打倒したアイアール。お前たちしかいない。欲を言えばもう一人、機械に詳しい奴も欲しいが…まあそこは俺が何とかする」

 

「お前とダフネは駄目なのか?」

 

「生憎と俺達の実力はお前に比べると二流だ。俺は全力の手持ちじゃないし、ダフネはシンプルに練度不足だ。来た当初はそんなことなかったんだが、滞在している間にブルーフレア団がやらかしていたらしく気付いたらもうどうしようもない数にまで増えていた。バリアでエリアゼロに閉じ込めているとはいえ、最深部まで辿り着くどころか逃げ帰るのが精いっぱいだった。ゼブライカは重傷を負ってポケモンセンターに預けている」

 

 

 この二人で敵わないだと…?確かにグレイはキュレムとかケルディオとか赤いゲノセクトとかがいないんだろうが、それでも普通に四天王クラスのバトルの腕を持っている。ダフネだって俺が認める蟲使いだぞ。

 

 

「オーリム博士は?」

 

「ゼロラボに閉じ込められている。起動キーのスカーレットブックが無いと出ることも、タイムマシンを停止することもできない。…まあそれだけじゃないんだが」

 

「おいそれどうやって生きてるんだオーリム博士」

 

「あー……保存食を買い込んでたらしい」

 

 

 目を泳がせてからそう言うグレイ。なんか怪しいが、この世界というかポケモン世界の保存食は有能で美味いから問題ないのか。

 

 

「そうか、それなら大丈夫だな」

 

「チョロすぎかお前」

 

「なんて?」

 

「なんでもない。とにかく期限はオーリム博士の計算によればあと二週間と四日ぐらいだ。…間に合うのか?」

 

「……俺、約束したんだよ。シュウメイと、オモダカさんに。誓ったんだよ、世界に」

 

 

 ああそうだ、約束したんだ。もうブルーフレア団云々の理由はなくなったけど、スターダスト大作戦を止めるって。必ず全部のジムバッジを集めてあの人のもとに向かうって。そしてなによりも。

 

 

「蟲ポケモンはかっこよくて!かわいくて!美しくて!最高で!最強なのだと!証明する、そう世界に向けて宣言したんだ。…急ぐ理由はないんだけどさ。やるなら期限は決まってた方がいいだろ?」

 

「…ああ、ポケスペのルビサファ編か」

 

「80日の誓いとまではいかないがな」

 

 

 ポケスペ第四章。ルビー・サファイア編にて主人公のルビーとサファイアはひょんなことからジムとコンテストの制覇を競うことになり、その期限を80日とした。それをちょっと思い出した。

 

 

「安心しろ。一週間もあれば十分だ。チャンピオンランクになってから行ってやるよ。今より強くなった方がお前も好都合だろう?」

 

「それもそうだな。ただでさえ強いお前がさらに強くなれば鬼に金棒、ピカチュウにでんきだまだ」

 

「それを言うならアルセウスにたまむしプレートだろう」

 

「すまん、それはちょっとわからない」

 

「なんだと。創造神が蟲になれば無敵だろうが」

 

「お前はあれ蟲扱いなのか?」

 

「いや、丁寧にお断りする」

 

「なんなんだお前」

 

 

 あんなフォルムの蟲がいてたまるか。…うん?地響き?というよりは……鉄か何かが地面を擦る音?

 

 

「…なんだ?」

 

「この音は…嘘だろバリアを突破したのか!?」

 

 

 その瞬間だった。目の前の崖の岩盤をぶち破る様にして巨大なタイヤが飛び出してきた。いや、タイヤ、じゃない。あれは…ドンファンを模したロボットのような……イダイナキバと似ているが、テツノドクガと同じタイプのパラドックスポケモンのドンファンか!?テーブルシティでの戦いで見かけた気がするが!

 

 

「テツノワダチ、未来のパラドックスポケモンだ!構えろラウラ!メタグロス!」

 

「未来のポケモンになにがあったんだよ!?ウカ!」

 

 

 チャンプルタウンの人々が逃げて行く中で、グレイは色違いメタグロスを、俺はウカを繰り出して構える。このままじゃ店にぶつかる、中にいるアイアールたちもただじゃすまないだろう。ここで止める!

 

 

「サイコキネシス!」

 

「ニトロチャージ!」

 

 

 グレイのメタグロスが念動力で回転を止め、それでも回転しようとじりじり動いているテツノワダチに炎を纏ったウカの拳が叩きつけられる。この感触、はがねタイプか!

 

 

「これ以上は持たないぞ…!」

 

「ウィ・ルドン・ファー!!」

 

「打ち上げろ、ローキックだ!」

 

 

 サイコキネシスを打ち破ってきたテツノワダチの回転する体をローキックで上空に打ち上げる。空中じゃ走れないだろ!

 

 

「しびれごな!とびかかる!」

 

 

 さらにしびれごなを浴びせて麻痺し、落ちてきたテツノワダチを殴り飛ばして草原に叩きつける。さすがに硬いな、一気に決める!

 

 

「ウカ!決めるぞ!」

 

 

 俺の呼びかけに応えたウカが両手の間にしびれごなを集束させ、それを握ってテツノワダチに叩き付け、ニトロチャージで業火を纏う。

 

 

「ふんじんねっぱ!」

 

 

 そして、大爆発がチャンプルタウンの真横を吹き飛ばし、その中心でテツノワダチが崩れ落ちたところにグレイがハイパーボールを投げて捕獲した。

 

 

「キュレムの代わりになるといいが…こいつも使って俺たちでパラドックスポケモンは食い止める。待っているぞ。じゃ、俺達はこれで」

 

「なにごとですかグレイ…って、まだ全然食べてないのにー!?」

 

 

 騒ぎを聞きつけて出てきたダフネの手を握ってメタグロスに乗り去っていくグレイ。…なんでそんなに急いでるんだ?と首を傾げて、気付く。…やっべ、草原が真っ黒焦げだ。さらに悪いことにムクホークに乗って今一番来てほしくない人が来てしまった。

 

 

「…何事かと来て見れば、なにをしてるんですかラウラさん」

 

「アオキさん。これは、ですね?」

 

 

 グレイめ、覚えてろアイツ。




というわけで改めて期限内に攻略をすることを決意したラウラでした。テツノワダチが出てきたのは余裕がそんなにない表れです。地味にグレイの戦力アップ。

ラウラがBW以降を知らないのは無理があるなと思ったけど意図的に避けてたならワンチャン?

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VSケケンカニ

どうも、放仮ごです。こちらではお久しぶりです。無印もこっちも完結まで頑張ります。

今回はナッペ山での出来事。楽しんでいただけると幸いです。


アオキさんに全力で謝ってパラドックスポケモンの襲撃だと理解してもらった後、ナッペ山の登山を始める俺達。洞穴内のポケモンセンターを経由して、洞穴内の登山道を登って行く。コライドンとミライドンなら壁も登れてショートカットできていいな。とんでもない縦地形に驚くユウリが新鮮だ。

 

 

「すごっ…ガラルじゃまず見ない地形だよ…」

 

「そもそも平坦なガラルとパルデアじゃ地形が全く異なるからな。こんな標高の高い山も……カンムリ雪原ぐらいか?そんなに急じゃなかったが」

 

「カンムリ雪原?」

 

「それってたしかラウラがうるとらほーる?に落ちたって言う?」

 

「そうだ。強いポケモンが沢山生息するガラル南部の秘境だ。多分ネモも気にいるぞ」

 

「それはぜひ行ってみたいね!」

 

「お前はブレないちゃんだな…ガラルは俺も行ってみたいな。カレーの本場なんだろ?お前らの為にも勉強したいしな!」

 

「ペパーがガラルで学んだら最強のカレーができるね!」

 

 

 最強のカレーと言われてカレーのポケモンが頭に浮かんだが振り払う。なんだカレーのポケモンて。この世界中を探したらいそうだけど。…いやクリームのポケモンがいるからいてもおかしくないな本当に。

 

 

「なんかラウラが変なことを考えている気がする……」

 

「ラウラが変なことを考えているのはいつものことじゃない?」

 

「ユウリとアイアールは人の事言えないと思うぞ…」

 

「きっと次のバトルの事をシミュレーションしてるんだよ!」

 

「ネモもかよ…というか俺以外全員バトル馬鹿だったぜ…」

 

「カレーのポケモン考えてた」

 

「「「「カレーのポケモン???」」」」」

 

 

 カレー馬鹿のユウリにまで首を傾げられた、そんなどうでもいいことを話しながら上まで登りきる。あとはこのまま道なりに行けばいいだけだな。コライドンとミライドンで先を急ごうとしていたその時だった。

 

 

「なんだろこれ、地響き?」

 

「何のことだユウリ?」

 

 

 ユウリが何かを感じ取ってボールを構える。首をかしげていると程なくして、地響きが俺達にまで聞こえてきた。

 

 

「またパオジアンか!?ここで雪崩は二度目だぞ!?」

 

「パオジアンは国際警察が保護したはずだよね!?」

 

「雪崩ってそれはやばいちゃんじゃないのか!?」

 

「端的に言ってヤバイね!ナッペ山は学生の死亡例が一番多い場所だからね!」

 

「洒落にならないこと言うな馬鹿ネモ!?」

 

 

 むしろ楽しんでいる様子で馬鹿言い始めたネモの頭をはたきながら、走り出したコライドンとミライドンに掴まる俺達。なんでだ、なんで俺達が上に出て程なくして雪崩が起きた?人為的、いやポケ為的な作為を感じる。この山に住むポケモンでこんなことができて、動機がある奴は何だ?

 

 

「ラウラ、あれ!蟲ポケモンかな!?」

 

「いやあれは蟹でマケンカニ…ガラルにはいないがパルデアでは結構ポピュラーなポケモンで……」

 

 

 雪崩から逃げる中でユウリが見つけて指差したポケモンを見て思わず蟲じゃないと否定の言葉が出て、思い至る。マケンカニが群れを成してこちらを見物している?そういやマケンカニの進化系って……。

 

 

「ケケンカニか…!」

 

 

 以前ハイダイさんの切札として戦ったけがにポケモン、ケケンカニ。てっぺんを取りたがる性格のマケンカニの進化系であり、トップになることを諦めきれずに雪山にまで来てこおりタイプに進化したポケモン。そいつなら多分、こんなことができる。だが動機はなんだ?

 

 

「ケケンカニか!あいつの切り離せるハサミは進化前含めて美味なんだぜ!わざわざ山にグルトンを連れてもげたハサミを探すトレーナーもいるぐらいだ!」

 

「それだあ!」

 

 

 ペパーのマメ知識に思わずツッコむ。モンハンモンスター見たく狩猟されてるならそりゃ人間が来たら攻撃するわな。特に物理的にてっぺんを目指している故にビルの上とか物理的に高い所を好むマケンカニやケケンカニならなおさらだ。じゃあどっかたかい所にいるはずか。

 

 

「アイアール、コライドンで雪崩の上を行けるか!?」

 

「ラウラも無茶苦茶言うね!?コライドン、行ける?」

 

「アギャアス!」

 

「行けるって!」

 

「よし、じゃあ行くぞ…!」

 

「え、なにする気!?」

 

 

 アイアールに呼びかけて、コライドンは急停止して反転。雪崩に向けて走り出して跳躍する。雪崩れ込む雪の上を蹴って逆走し、雪山の上を目指す。山の中腹に雪に隠れるようにしてそれはいた。

 

 

「あれだ!あいつがこの雪崩を起こした主だ!」

 

「え、どこ!?よく見えたね!?」

 

「蟲ポケモンの擬態を見破れないと捕獲も出来ないからな!来るぞ!」

 

 

 俺達を目ざとく見つけたケケンカニは大きく跳躍して雪崩が流れた後の雪に着地。冷気で凍らせて硬くしたハサミを切り離してロケットパンチを繰り出してきたのを、咄嗟にぼむんを繰り出して受け止める。

 

 

「ヘビーボンバー!」

 

 

 飛び上がって急降下するぼむんだがしかし、切り離したハサミを瞬時に再生させたケケンカニは両手で受け止め空中に弾き返す。なんちゅう自己再生能力だ、ドラピオンやビークインみたいなヌシポケモンか!?よく見ればなんかデカいな。

 

 

「あれもブルーフレア団の?」

 

「いや多分ここら辺を縄張りにしているだけのやつだ。気を付けろぼむん!でんじふゆう!」

 

 

 でんじふゆうで空を飛んで翻弄するぼむん。するとケケンカニは口から冷気を閉じ込めた氷の泡を吹いてぼむんの動きを止めてきた。氷漬けになったぼむんが崩れ落ち、拳を受けて殴り飛ばされるのをボールに戻して回収する。強い、誰で行くべきか…。

 

 

「私が行く!行け、シング!フレアソング!」

 

 

 誰で行くべきか悩んでいるとアイアールがラウドボーンのシングを繰り出して炎を纏った歌を放つ。するとわかりやすくケケンカニは跳躍して回避すると腕に水を纏ってシングに叩きつけて叩き潰してしまった。高耐久のシングを一撃で…!?

 

 

「多分、クラブハンマー!てつのこぶしで強くしてある!私じゃ無理!」

 

「なら回避優先だな!レイン!でんこうせっか!」

 

 

 俺が繰り出したのはアメモースのレイン。高速移動で翻弄するレインを、氷を纏った両ハサミを振り回して対抗するケケンカニ。アイスハンマーか。厄介だな。

 

 

「バブルこうせん、エアカッター!」

 

 

 バブルこうせんで繰り出した水の泡が即座に凍り付き、落下したそれをエアカッターで切り刻んで氷の礫にして飛ばすと、雪崩すら受け止めると言う猛ラッシュで全て打ち落とすケケンカニ。インファイトまで使えるのか。…ゆきなだれ、クラブハンマー、アイスハンマー、インファイトか。その構成ならレインよりも…

 

 

「交代、ケプリベ!」

 

 

 交代したのはベラカスのケプリベ。ただの攻撃なら再生されるなら、再生されない攻撃をすればいい。

 

 

「操る物ならいくらでもあるぞ!ケプリベ、昇華技だ!ばんしょうマリオネット!」

 

 

 漢字にすれば万象操演。ケプリベの昇華技であるそれは、海水や砂岩、氷雪など操れる物体を好きな形に変形させて操ることができる。ナンジャモ戦のアレを名付けた物である。じんつうりきとじこあんじの合わせ技だ。操るのは雪。空に浮かぶ巨大な蜘蛛を作り上げ、脚を動かさせる。

 

 

「叩き込め!」

 

 

 インファイトで対抗し、次々と雪の脚を破壊していくケケンカニ。そうだろうな、お前はそうするさ。脳筋オブ脳筋の動きだ。

 

 

「固めろケプリベ!」

 

 

 破壊された雪すら操り、ケケンカニに集束させて雪像にして雪を固めて閉じ込める。身動きが取れなければあの厄介なパワーも出せないだろう。ミライドンに乗ったユウリ達も追い付き、俺達は雪像になったケケンカニを見つめる。

 

 

「お前が蟲なら捕まえたぐらいには強敵だったよ」

 

「蟲っぽいけど蟲じゃないんだね」

 

「あ、じゃあ私がもらうね」

 

「え」

 

 

 すると横からボールが投げられてケケンカニが捕獲される。それを手にしたのはネモだ。

 

 

「強くならないとなんでしょ?じゃあ私も強くなった方がいいよね。欲しかったんだ、上昇志向が強い子!」

 

「お、おう……」

 

 

 お前これ以上強くなる気なのか…思わず呆れてしまうがネモの言う通りではある。…こりゃライバルに塩を送ってしまったかな。




ヌシポケモンケケンカニをネモがゲット。原作とは違うメンバーになります。素でじこさいせいできるやべーやつ。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSモスノウ

どうも、放仮ごです。こちらではお久しぶりです!大晦日ですね。2023年最後の更新がこれとなります!よいお年を。
碧の仮面も藍の円盤も十分楽しんでポケ蟲のストーリーも完全に固まったので戻ってまいりました。制限時間を設けなければ最終決戦前にキタカミの里にラウラいかせるとかもできたなあ後悔してますがそれはそれ。来年から頑張って更新していきまっせ。

遂にグルーシャ戦!楽しんでいただけると幸いです。


 ハプニングに襲われながらも辿り着いたナッペ山山頂のスキー場。予期せぬハプニングに相変らず襲われたが、ネモの強化という結果を伴って乗り越えた俺達。最後のジムリーダーが、ここにいる。以前助けてもらった、グルーシャが。

 

 

「ここが最後のジムか。まさか街にないとはな」

 

「ラウラとアイアールにとって最後のジムだね!」

 

「うん、これで最後だ……!」

 

「いいなあ、グルーシャとかいうジムリーダー強そうだから私も戦いたかった……」

 

「学生じゃなくても挑めるんじゃないか?知らんけど」

 

 

 そんな会話をしながらジムに入り、いつも通り受付に行こうとしたところで。待っていたのは予想だにしない人物だったよ。

 

 

「やあ。待ってたよ」

 

「ごきげんよう。皆さん」

 

「グルーシャさん…!?」

 

「それにトップまで…!?」

 

 

 ナッペ山ジムリーダー、グルーシャさんとパルデアポケモンリーグ理事長オモダカの二人がそこにいた。

 

 

「本当ならジムテストをやってもらいたいところなんだけど……事情が変わった。トップが急いでほしいと言ってるからラウラとアイアールはジムテストはなしだ。テーブルシティでの頑張りの報酬だと思ってほしい」

 

「事情…?」

 

 

 グルーシャさんの言葉に首を傾げる。ジムテスト免除はリップのところがあったから正直嬉しいが……。

 

 

「私達としましても、せっかく最終兵器を止められたのに結局滅んでしまうのは望みませんので」

 

「……オモダカさん、知ってたのか」

 

「グレイと名乗る方から協力の申し出がありましてね。緊急事態だからあなた達のエリアゼロ侵入を許してほしいと。しかしあの場所は大変危険な土地……侵入を許可するにしてもチャンピオンクラスの実力を持たないと許すことなど到底できません。なので、ネモさん以外のあなた方には示してもらいます」

 

 

 そう言うオモダカさんには有無を言わせぬ迫力に、自然と背筋が張り詰める俺とアイアール。……まだスター団のいざこざがあると言ったら怒りそうだから黙っとこう。

 

 

「あの、俺達ジムバッジ持ってないんですが……」

 

「ペパーさんとユウリさん、でしたね?さすがに今からジムバッジ全てを集めろというのも酷ですので……貴方たちはこれからポケモンリーグに向かい、不肖この私オモダカとバトルしてもらいます。本気を出しますので一体でも倒すことができたらエリアゼロへの侵入を許すことにしました」

 

「……そ、それならなんとかなりそうだぜ……ユウリ?」

 

 

 胸を撫で下ろすペパーだったが、ユウリが黙っているのを見て訝しむ。名前はグレイ辺りから聞いたんだろうが、何か思うところがあるんだろうか。するとユウリは自らの胸に手を当て、とんでもないことを言いだした。

 

 

「いいですよ、パルデアの頂点。私は六匹全部倒すことが条件で」

 

「……ほう?」

 

「グレイから聞いているかはわかりませんが、私もガラルの頂点に立つ人間として……舐められるわけにはいきませんので」

 

 

 そう自信満々に語るユウリは、チャンピオンの風格を醸し出していた。ゴクリ、と喉を鳴らすオモダカさんも冷や汗を流している。

 

 

「ではそうしましょう。ラウラさんとアイアールさんはすぐにでもポケモンリーグに来ますよね?」

 

「え、あ、はい…」

 

「ではポケモンリーグで合流してもらうとしましょう。ネモさんはどうします?」

 

「ユウリの本気が見たいから、トップと一緒に待ってます!」

 

「では。お待ちしていますね」

 

 

 そう言ってオモダカさんはユウリとペパー、ネモを伴って去っていった。2人残された俺とアイアールは顔を見合わせる。

 

 

「……二人に戻っちゃったね」

 

「スター団のこと言えなかったな……」

 

「二人とも。準備ができているなら始めるよ」

 

「「あ、はい」」

 

 

 ジムから出ようとしているグルーシャさんを慌てて追いかけると、斜面についているバトルコートに出た。危なくないのかこれ。入り口から左側に移動しながら説明するグルーシャさん。

 

 

「ルールは4VS4のシングルバトル。ジムリーダーの方は勝ち抜き戦で挑戦者は交代自由、どうぐの所持・使用禁止。どっちから来るかい?」

 

「…俺から行くぞ」

 

「うん、頑張ってラウラ」

 

 

 俺が前に出ると、グルーシャさんは冷たい視線を向けてくる。ゾクッと寒気が走った。

 

 

「うう……サムい……最初は君か。雪山は危険だ。雪山は簡単に人生のコースを狂わせる。ポケモン勝負も同じ。…いつだって慣れ始めが恐ろしい。7人のジムリーダーを倒してきたらしいけど、それが偶然じゃないだなんてどうして言い切れる?」

 

「言い切れるさ。蟲ポケモンはかっこよくてかわいくて美しくて最高で最強だ」

 

「サムい返事だ。自分たちが最強だと信じて疑わない……昔の僕と同じだ。僕も仕事だから、悪く思わないで」

 

 

 一度マフラーを下にずらして深呼吸し、軽くストレッチしてからモンスターボールを構えるグルーシャさん。俺もボールを放り投げてキャッチし突きつける。勝負だ!

 

 

ジムリーダーの グルーシャが 勝負を しかけてきた!

 

 

「最初からフルスロットルだ!ウカ!」

 

「雪の様に冷たい現実を教えてあげるよ。モスノウ」

 

 

 俺は完全に言うことを聞いてくれるようになったチヲハウハネのウカ。対してグルーシャさんはまさかのモスノウ。ガラルに残してきた俺の手持ちを思い出す。

 

 

「モスノウ………ううっ」

 

「泣いてる場合じゃないよラウラ!?」

 

「何をホームシックに浸ってるか知らないけど……先手はもらうよ。モスノウ、ゆきげしき」

 

 

 思わずホームシックに浸っていると晴天の空に雪を降らしてくるモスノウ。あられと違ってダメージこそ受けないが、こおりタイプのぼうぎょが1.5倍に上がるフィールドだ。厄介な…。

 

 

「一撃で落とすぞ!ニトロチャージだ!」

 

「おいかぜ」

 

 

 炎を纏っての突撃を、追い風で勢いを弱めてその間に空に逃れるモスノウ。強い……俺のモスノウとはまた違う動きだ!

 

 

「ふぶき」

 

「ニトロチャージで耐え凌げ!」

 

 

 ゆきげしきで必中になったふぶきを、炎を纏って耐え凌ぐ。なんて猛攻だ。隙が無い…!

 

 

「馬鹿の一つ覚え?そんなんじゃ僕には勝てないよ。ふぶき、ゆきげしき、おいかぜ」

 

「なにを…!?」

 

 

 変な指示をしだしたグルーシャさんに首を傾げていると、吹雪の雪が風で集束、巨大なモスノウの形を形作ると羽ばたき、その翅をウカに叩きつけてきた。

 

 

「これは、キリエの……!?」

 

「キリエを知ってるんだ、通だね。ならわかるよね?僕はこれでもパルデア最強のジムリーダー。ガラルのジムリーダーにできて僕にできないわけがないよ」

 

「ごもっともで!ローキック!とびかかる!」

 

 

 スライディングキックで雪でできた翅を消し飛ばし、アッパーで殴り砕くウカ。そしてしびれごなを振りかけ、ニトロチャージで火をつける。

 

 

「ふんじんねっぱ!」

 

 

 そして大爆発。雪のモスノウは木っ端微塵に吹き飛んだ。……ちょっともったいなかったな。

 

 

「やるね。ならこうしてみようか。むしのさざめき」

 

 

 するとモスノウから音波がウカではなく雪山に向かって放たれる。なにを…?そう思った瞬間、雪崩が引き起こされて襲い掛かってきた。ついさっきも戦ったばかりなんだがなああ!?

 

 

「ラウラ!乗って!」

 

「お、おう!」

 

 

 咄嗟にコライドンを繰り出し俺に伸ばしてきたアイアールの手を取り、コライドンの後部座席に乗り込んで雪崩に乗る俺達。見ればグルーシャさんも、何処から出てきたのかアルクジラの背に乗って雪崩に乗っていた。ウカとモスノウも、雪崩に乗って滑り降りてくる。

 

 

「トップから頼まれたんだ。自然の猛威と君たちを戦わせてほしいって。だから今日だけは戻ることにした。スノーボーダーに。もっともボードに乗るつもりはないし危険なことをするつもりはないけどね」

 

「もう十分危険なんですがぁあああ!?」

 

「ふざけんなよあのトップマジでええええええ!?」

 

 

 そうして、変則的なジム戦が始まった。




ユウリ、ペパー、ネモ、一足先にポケモンリーグへ。そしてまさかの雪崩の中でジム戦。地味にキリエの再現しているグルーシャである。

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VSハルクジラ

あけましておめでとうございます。どうも、放仮ごです。力業早業を最近使ってなかったことに気付きました。

今回はオモダカさん側の事情と雪崩ライドバトル。楽しんでいただけると幸いです。


 私達は、オモダカさんの呼び出したそらとぶタクシーに4人で乗ってポケモンリーグに向かっていたのだが、わたし達が飛び立ってすぐに、ナッペ山で雪崩が起きているのが見えた。まさか、地震!?

 

 

「トップ。なんか、すごいことになってません?」

 

「心配はご無用です。ラウラさんが恐らくグルーシャとの戦いで使うであろうふんじんねっぱというオリジナルの技で熱されて緩んだ雪をグルーシャが刺激して疑似的に起こしただけのことです」

 

「いやそれ大丈夫じゃねえだろ!?今すぐ引き返して、助けにいかないと…!」

 

「雪崩でどれだけ被害が出ると…!?」

 

「そこに関しても心配ご無用。ポケモンリーグのスタッフが麓に辿り着く前に雪崩をせき止め、被害に遭う可能性のあるトレーナーやポケモンたちは既に保護済みです」

 

 

 そう言ってのけるオモダカさんに、私とネモ、ペパーは顔を見合わせる。

 

 

「貴方方にはそれだけ期待しているということですよ。パルデアの命運をね。……子供に任せきりで大人だけなにもデメリットを負わないというのも違うでしょう。我々パルデアポケモンリーグは、これまでエリアゼロを監視するだけして何も対処してこなかった。これはその責任なのです」

 

「なんで、なにもできなかったんですか?」

 

「エリアゼロはどうしても大人は手を出せないのです。探検家や研究者、密猟者が何人も訪れて、その誰もが同じ末路を辿りました。オーリム博士のタイムマシンなどなくとも、パラドックスポケモンは太古の昔からあの地に存在していたのです」

 

「スカーレットブックに記されていたやつだ……」

 

 

 私の問いかけに応えたオモダカさんの言葉に、ペパーが赤いブックカバーの本を取り出して呆然とする。パラドックスポケモンってあれだ、私の今の手持ちのテツノブジン、トドロクツキ、ミライドン、ラウラのウカ、アイアールのコライドンのことだ……。たしかペパーのマフィティフは、エリアゼロのパラドックスポケモンにやられて最近まで危なかったんだっけ…。

 

 

「我々は少しでも犠牲を減らそうとエリアゼロの監視及び、侵入者の回収を秘密裏に行っていました。もしもパラドックスポケモンや、珍しいポケモンが多数存在するあの場所が露見すれば、パルデアは危険な土地として知られることになるでしょう。そうなることは好ましくありません」

 

 

 ラウラ越しにグレイから伝えられた話を思い出す。パラドックスポケモンがエリアゼロからあふれ出す。そんなことになれば、隠蔽はできない。ただでさえブルーフレア団騒動で世界的に注目されているのにそんなことになったら、致命傷は免れないだろう。

 

 

「……ここまで致命的な状態になったのはマトイの裏の顔に気付かなかった我々大人の責任です。その尻拭いに未来有望な若者たちを頼ることになったことを、お許しください」

 

「あ、それは大丈夫。私もラウラも、ガラルで何度も危ない目に遭ってるんで今更なので」

 

 

 頭を下げるオモダカさんにあっけらかんと伝えるとぽかん、という顔を向けてきた。ムゲンダイナ、アルルカン、ダフネ、グローリアビースト、新生プラズマ団……こんな危険な目に遭うのは今更だ。

 

 

「アイアールとネモ、ペパーがもしいけなくなっても……私とラウラだけで何とかしてみせる。だから心配しないでください」

 

「そうはいかないぜユウリ。俺も、母ちゃんに会いたい。今度こそマフィティフと一緒に、乗り越えて見せる」

 

「私も私も!強いポケモンと戦えるならむしろどんとこいだよ!」

 

「…ま、心配なさそうだけどね?」

 

「……感謝します」

 

 

 さてラウラ。高所からの落下とか、しまいには世界まで超えて。これぐらいの難関、切り抜けられるよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラウラ、大丈夫!?」

 

「お前は運転に集中しろ!」

 

 

 コライドンに乗った俺とアイアール、アルクジラに乗ったグルーシャさんの、いきなり始まったポケモンライド雪崩バトル。先手を取ったのは俺達だ。

 

 

「ウカ!ニトロチャージ!」

 

「モスノウ!ふぶき!」

 

 

 ウカの炎を纏った突撃と、モスノウの指向性を持たせたふぶきが激突。水蒸気爆発が起きて上空に舞い上がるウカとモスノウ。俺たちとグルーシャは雪崩に乗りながら、頭上に視線を向けて指示する。

 

 

「むしのさざめき!」

 

「ローキック!しびれごな!」

 

 

 空中に浮かぶウカに向けて放たれた音波を、急降下キックで回避しながらしびれごなを振りまき、麻痺したモスノウが雪崩にぶつかって吹き飛んでいく。あれは戦闘不能だろう。

 

 

「戻れモスノウ。よくやった。こんな状況でも対応するなんて、大した才能だ。だけどこいつはどうかな?ハルクジラ、アイススピナー」

 

 

 繰り出されたのは以前、エスプリ戦で共闘したハルクジラ。氷の独楽を身に纏って雪崩をかき分けながら突撃してくる様は脅威の一言だ。ウカは両手で受け止めるも雪崩の勢いのままに押されていく。

 

 

「踏ん張れないだろ?雪山の雪崩を舐めないことだ」

 

「ニトロチャージだ!」

 

「アクアブレイク!」

 

 

 炎を纏った突撃で氷の独楽を粉砕するも、次の瞬間には中から出てきたハルクジラの水を纏った体当たりを受けて鎮火され吹き飛ばされ目を回す。戦闘不能だ。

 

 

「パラドックスポケモンもこんなものか。先日の暴れてたやつらの方が骨があったかな」

 

「それは聞き捨てならないな?行くぞレクス!」

 

 

 レクスを繰り出し、雪崩の上を跳んで移動させる。ウカのことをなめられたからには負けられねえ!

 

 

「力強く!かかとおとし!」

 

「ヘビーボンバー」

 

 

 レクス渾身のかかとおとしを、鋼の塊と化したハルクジラが受け止める。ヘビーボンバーを防御に使っただと!?

 

 

「こおりのつぶて」

 

「じごくづき!」

 

 

 雪崩に乗って滑りながら放たれる氷の礫を蹴り壊していくレクス。どんどん距離が離されていく。まずいぞこれは。

 

 

「力強く!こうそくいどうで距離を詰めろ!」

 

「アクアブレイク!」

 

 

 大きく力を入れて雪崩に踏み込んだこうそくいどうで無理矢理距離を詰めれば、水を纏った体当たりで弾かれ、飛沫が凍り付いてレクスの足を拘束。

 

 

「レクス!?」

 

「アイススピナーだ」

 

 

 動きが止まったレクスに氷の独楽を纏って突撃、回転に巻き込んで空中高く打ち上げるハルクジラ。このままじゃ格好の的だ。

 

 

「素早く!」

 

「こおりのつぶて」

 

「とびかかるだ!」

 

 

 早業を発動。さらにむしのしらせを発動したとびかかるを高速で放ち、氷の礫を蹴り砕きながらハルクジラに叩き込む。結果、ダブルノックアウト。レクスとハルクジラは同時に倒れ、共にボールを構えて戻す。

 

 

「まさか相打ちになるとはね……行こう、ツンベアー」

 

「そっちこそ、あんなアクアブレイクの使い方は度肝を抜かれた。突破口を切り開け!ぼむん!」

 

 

 俺はぼむんを、グルーシャはツンベアーを繰り出す。忘れもしない、ピケタウンでグレンアルマとソウブレイズ相手に完封して見せたあいつだ。

 

 

「アクアジェット」

 

「素早く!でんじふゆう」

 

 

 水を纏った高速の体当たりを、早業のでんじふゆうで浮かび上がることで回避する。ぼむんなら雪崩の影響をそんなに受けない。チャンスだ。

 

 

「まきびしキャノン!」

 

 

 昇華技のまきびしキャノンをここで発動。空中からツンベアーを狙い撃つ。このまま一方的に…!

 

 

「つららおとし!」

 

「しまっ……」

 

「判断が遅い。じしん」

 

 

 しかし氷柱が空中に形成されてぼむんは撃墜され、そこにツンベアーが腕を押し付けて衝撃を叩き込んでぼむんに大ダメージを与えて雪の中に押さえ込んできた。

 

 

「こんなものかい?蟲使い」

 

「まだまだ!ここからだ!でんじふゆう!」

 

 

 ツンベアーの真下から浮かび上がらせて頭突きを叩き込んで怯ませ、空中に舞い上がるぼむん。さあ、どうしたもんかね。




エリアゼロ関連の事情を考えるの結構楽しかったです。絶対密猟者とか多そうだよね。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。


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VSチルタリス

どうも、放仮ごです。ポケモンスカーレットDLC、番外編までクリアさせていただきました!エキセントリックすぎてビビったけどおかげでポケ蟲スカーレットのストーリーが完全に組み立てられましたので期待あれ。

最強のジムリーダーとの決着。楽しんでいただけると幸いです。


「ぼむん!ヘビーボンバーだ!」

 

「ふぶき!」

 

 

 雪崩の上を駆け抜けるコライドンを操縦するアイアールの後ろで掴まり、でんじふゆうで空に舞い上がり急降下したぼむんが、ふぶきを放って勢いを弱めようとするツンベアーと鍔迫合っているのを追いかける。振り返ればアルクジラの上でスノーボードの様に滑るグルーシャがいた。引退したのを感じさせないぐらい軽やかに動くじゃねえか。

 

 

「ラウラ!こっちは気にしないで!バトルに集中して!」

 

「もとよりそのつもりだよ!ぼむん!素早く!まきびしキャノン!」

 

「ツンベアー、爪を武装。アクアジェットで弾くんだ」

 

 

 牽制のつもりで発射したまきびしキャノンが、手に吐息を吹きかけて氷柱を装備した爪を振るったツンベアーの水を纏った高速のジャブで全弾撃墜される。

 

 

「つららおとし!」

 

 

 間髪入れずに上空に冷気の吐息が吹きつけられ、流星群の様に降ってくる氷柱を身を縮こませて耐え抜くぼむん。

 

 

「その場でヘビーボンバー!」

 

 

 高度を取ることなく、下に向けて衝撃を与えて雪煙を発生させて視界を隠す。でもこれじゃ俺も見えない、だから協力してもらう。

 

 

「アイアール!視点を変えてくれ!上だ!」

 

「了解!」

 

 

 

 コライドンが空中に飛び出し、滑空する。この角度からなら雪煙に隠れながらもよく見える。ぼむんの顔の角度、ツンベアーの位置。左手でコライドンを掴んだまま右手の親指と人差し指で丸を作ってツンベアーを見据える。

 

 

「“ロックオン”なんてなあ!そのまま目の前にぶちかませ!ぼむん、でんじほう!」

 

「じしんだ!」

 

 

 俺の言葉を信じて目の前にでんじほうを発射するぼむん。回避は不可能と断じたのかじしんで同士討ちを狙うグルーシャ。普通にでんじふゆうを指示するんじゃ間に合わない。だが俺には、早業と力業がある。

 

 

「素早く!でんじふゆう!」

 

「なっ!?」

 

 

 ツンベアーにでんじほうが直撃。同時に早業で空中に浮かび上がり、じしんを回避するぼむん。結果、ツンベアーだけ崩れ落ちる。これでこっちはウカだけやられて、ぼむんと残り二体残している。対してグルーシャは手持ち三体倒されて残り一体。行ける、過去最高に流れがいい。

 

 

「蟲ポケモンの強さ思い知ったか!」

 

「蟲ポケモンと言うより君の強さって感じだけどね。確かに言うだけの事はあるけど……踏み外せばすぐに奈落だよ。君の場合、ひっくり返って真っ逆さまだろう」

 

「ご忠告どうも。この状態でも逆転するって意味か?」

 

「勝負と雪山は似てるんだ。あっとういう間に姿を変える。真逆の光景にね。いけ、チルタリス」

 

 

 繰り出してきたのはひこう・ドラゴンタイプのチルタリス。前にも会ったな。テラスタルでこおりタイプになるのか。ぼむんのヘビーボンバーで決めて……!?

 

 

「ぼうふう」

 

「テラスタル……しないだと!?」

 

 

 周りの雪崩ごと、暴風で天高く打ち上げられるぼむん。重量級のぼむんがあんなに軽々と……!?

 

 

「でんじふゆう…!」

 

「いくら浮かぶことができてもひこうタイプのチルタリスとの速度は雲泥の差だ。りゅうのはどう!」

 

 

 どさどさと音を立てて落ちてくる雪の塊の中で、浮かんで何とか体勢を立て直すぼむんの背後に回り込むチルタリス。放たれた竜の形をした青い炎に貫かれ、撃墜されるぼむん。しくじった…!まさか、タイプを変えてこないなんて……!

 

 

「即テラスタルして得意なタイプに変える、たしかにそれはジムリーダーの定石だ。だけどね……別に使わないといけないなんて決まりはないんだよ。あくまでテラスタルは「切札」に過ぎない」

 

「そうか、それは勉強になったよ……レクス!」

 

 

 ひこうタイプはこの雪崩のフィールドにおいて圧倒的なアドバンテージがある。なにせずっと空中にいるんだ、雪崩の影響を受けない。対して俺のひこうタイプはレインのみだが、ひこうタイプはこおりタイプと相性が悪い。ならばとある程度空中戦ができるレクスを選出したわけだ。

 

 

「雪崩を蹴れ!じごくづき!」

 

「ぼうふう」

 

 

 雪崩を利用して壁キックし、喉元に向けて蹴りを突き刺すレクスだったが、暴風が放たれバリアの様になってレクスは弾き飛ばされる。だがその技は、雪崩も一緒に打ち上げてしまうのだとさっきの攻防でわかった!

 

 

「素早く!こうそくいどう!」

 

「むっ」

 

 

 打ち上げられた雪の塊を足場に蹴り、目にも留まらない高速でピンボールみたいにチルタリスの周囲を球体を描くように駆け抜けるレクス。この速さと脚力なら、本来なら身動きが取れない空中だろうが関係ない。

 

 

「力強く!かかとおとしだ!」

 

 

 真上を取ったレクスが、渾身の踵落としを叩き込まんとする。スピードを乗せて、重力落下も合わせ、更に力業を伴った、渾身の一撃。かくとうタイプの技と相性が悪いひこうタイプだろうが確実に堕とせる、そう考えての指示。しかしそれは、悪手だったと思い知る。

 

 

「素早く。ムーンフォースで叩き潰せ」

 

 

 瞬間、空中に顕現し落ちてきた月の幻影に押しつぶされ、チルタリスに触れること叶わず、雪崩に叩き込まれるレクス。今のは……早業、だと?

 

 

「……僕はナンジャモのリスナーでね。大会前とかたまに観て元気をもらってたんだ。君とコラボした動画も見て、見よう見まねで習得させてもらった。早業と力業。相棒のチルタリスしか仕込めなかったけどね」

 

「ナンジャモのリスナーだったのか…?」

 

「変な挨拶やりだす前から知ってる。昔のほうが体張ってて好きだったかな。最近は企業案件多いし、変に大衆向け狙ってて、結構サムくなってるよね」

 

「厄介な古参リスナーだな!?」

 

 

 そっちも衝撃的だが結構不味い。ただでさえ強いチルタリスに、早業と力業まであるだと…?……一か八かか。左手でアイアールの肩を掴んでしがみつきながら、テラスタルオーブを構える。

 

 

「最後のポケモンをいきなりテラスタルして出すつもり?サムいことをするね」

 

「……蟲ポケモンを舐めるなよ。打たれ弱いが根性はすごいぞ!」

 

「なっ…!?」

 

 

 瞬間、むしテラスとなって雪崩から飛び出してくるレクス。ムーンフォースは致命傷だった。だが耐えた。レクスは耐えて見せた。体力も瀕死ぎりぎりで、むしのしらせが発動。ここで使わず何時テラスタルを使うんだ。

 

 

「次に繋げるんだレクス!素早く!とびかかる!」

 

「チルタリス、こっちも力強く!ぼうふうだ!」

 

 

 先程までとは比べ物にならない暴風が吹き荒れ、レクスの飛び蹴りと激突する。何のために早業で使ったと思っている……!早業は、次の技に繋げるように行動できる…!

 

 

「力強く!とびかかる!」

 

「っ!素早く!れいとうビーム!」

 

 

 せめぎ合いながら力業を発動。風の壁を貫き、飛び蹴りをチルタリスに叩き込んで、れいとうビームを受けて今度こそ戦闘不能となり崩れ落ちるレクス。……よくやった。

 

 

「お前が総大将だ!ジャック!」

 

 

 最後に繰り出すのはジャック。いわタイプと言う、こおりタイプの弱点の一つ。テラスタルするとくさになってしまうからレクスに切るしかなかった。

 

 

「素早く!がんせきアックスだ!」

 

「久々に熱くなってきた……サムいとは思うけど、最大火力で勝負だ……!テラスタル!」

 

 

 早業で岩石を纏った斧を振るい、ステルスロックを展開してそれを足場にして雪崩の影響なく直立するジャック。チルタリスもこおりテラスにテラスタルし、迎え撃つグルーシャさん。

 

 

「力強く!れいとうビーム!」

 

 

 極太のレーザーとなったれいとうビームが冷気の渦と共に放たれる。アニメのポケモンとかなら最大火力で迎え撃つんだろうが、これは現実のバトルだ。真っ向から迎え撃つ必要はない!

 

 

「素早く!がんせきリッパー!」

 

 

 早業+昇華技。極太レーザーをぎりぎりで回避しながら回り込んだジャックの斬撃が横から叩き込まれ、れいとうビームを中断して横に吹き飛び雪崩に巻き込まれるチルタリス。身軽な体も雪の重さじゃ浮けないだろ!

 

 

「力強く!がんせきアックス!」

 

 

 渾身の力でその場で振り下ろした斧に纏った岩石がミサイルの様に吹っ飛び、チルタリスに直撃。テラスタルが砕け散る。

 

 

「…僕の氷、すっかり溶かされちゃったな。君の勝ちだラウラ」

 

「それはいいけど、この雪崩どうするんだ!?」

 

「それに関しては大丈夫、ほら」

 

 

 視線を下に向けるグルーシャさんに釣られて向くと、久々に見た気がするサニアがいて。いわなだれで雪崩をせき止めている光景があった。

 

 

「…トップ……ひとづかい、あらい」

 

「さすがに対策はしてるよ。……あのトップならしない場合もあるから怖いけど」

 

「…お前らも大変だな」

 

 

 オモダカさんの下にいる彼らに、本当に同情した。




ナンジャモのリスナーって情報をDLCで知った時に早業力業使わせるの確定したよね。たまにはテラスタルのタイミングをずらしてくるトレーナーがいてもよかったと思うんだ。

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