閃の軌跡〜変わる物語〜 (名無し名人)
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登場人物

これからも追加していきます。


リィン・アイスフェルト

 

 本作の主人公、中身は日本人男性である。何故か閃の軌跡のリィン・シュバルツァーに憑依してしまいリィンとして生きる事を余儀なくされる。

 原作通り襲撃された後父オズボーンに背負われユミルに行く途中襲撃にあい離れ離れに…偶然が重なり古代ゼムリア文明の空中都市を発見(後にアンファングと名付けた)以後拠点として使用する。以後アイスフェルトの姓を名乗る

 

 

 

フローラ・クリスト

 

 人間に見えるが空中都市《アンファング》を司るコンピューターである。元々は《リベル=アーク》のプロトタイプとして古代ゼムリア人達によって建造された。プロトタイプとはいえそのスペックは現在の科学技術を持ってしても解明しきれない能力を持つ。

 造った人間達が《輝く環》も含めた必要なデータを採った後《リベル=アーク》に移り住んだため《アンファング》は次第に忘れ去られた。以後千年に渡り眠り続けてたがリィンと出会いリィンを主として仕えることになる。 名前はリィンによって名付けられた

 

ユン・カーファイ

 

八葉一刀流の創始者にして《剣仙》の達人。原作通りユミルに滞在していたがリィンが居ないために早々とユミルを去ったがリベールに行く空港でリィンと出会う。リィンに宿る《鬼の力》を見抜きリィンの覚悟を聞きリィンを弟子として迎える。

 

クローゼ・リンツ(クローディア・フォン・アウスレーゼ)

 

リベール王国の王太女であり空の軌跡における主要人物の一人でもある。この時点(七耀暦1197年)では年相応の女の子であり少々お転婆であった。買い物をするために親衛隊のユリアと共に回る予定だったがユリアが急用で遅れるため一人で城下に出てしまう、途中チンピラに因縁をつけられていた子供を助けたがチンピラに手を上げられそうになるところをリィンに助けられる。恩を返す為に一緒にグランセルを観光(デート)した。別れ際に亡き両親の形見の対の懐中時計の片方をリィンに渡し再会を願う。

 

 

カシウス・ブライト

 

リベール王国軍元大佐《百日戦役》の立役者、英雄と呼ばれているが妻の死に目に立ち会えずにいた事を悔いせめてエステルの側に居ようと軍を退役、遊撃士に転向する。ユン老師に背中を押され再び前を向く事を決意する。

 

エステル・ブライト

 

言わずと知れた空の軌跡の主人公、性格等は原作と変わらない。リィンやフローラに対しては友好的に接してる。

 

ヨシュア・ブライト

 

エステルのパートナー、こちらも原作と変更点は無し。リィンに対しては問題無いと判断しているがフローラはリアンヌに似ている事から少々警戒している。

 

シェラザード・ハーヴェイ

 

エステル達の姉貴分であり、『銀閃』の異名を持つ遊撃士でもある。本作においても左程変更はないがフローラとは親友の間柄、原作同様に酒豪であるためアイナ、フローラとは酒呑みを良くやっているらしい…(酒でフローラに一度も勝てたことはない)

 

 



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プロローグ

これは自分がpixivで投稿した作品です。恥ずかしいやら何やらで止めてましたがコチラでもう一回書いてみようかと思い投稿しました。生暖かい目で見ていただければ幸いです


ーとある吹雪の中の雪山ー

 

???(あれ?俺アパートで寝てた筈なのに・・・それに、雪?まだ夏だったよな・・・?しかも背負われてる?ワケがわからない・・・)

 

俺は背負ってる男性の背中を見た。年は30代位?この吹雪の中俺を背負いながら歩き続け、お世辞にも道の状態が良いとは言えない中でも足を前に出し続けていた。 

 

???(誰だ・・・?見覚えがない、筈なのにとても安心する・・・)

 

?????「リィン、もう少し、もう少しで着くからなそれまで我慢していてくれ」

 

???(着く・・・ってどこに?それにリィン?俺の名前か?ってその名前どこかで聞いた覚えが・・・)

 

思考が纏まらない状態で必死に思い出そうとして男性の方から答えが出た。

 

?????「ユミルにいるテオにお前を託す。テオならお前を血の繋がった家族同然に扱ってくれる、だから安心してもいい。」

 

リィン(ユミル!?テオ!?それって閃の軌跡に出て来るキャラクターと地名じゃないか!ということはこの男性は、ギリアス・オズボーン!?)

 

俺は内心驚いているとオズボーンは喋り続けた。

 

オズボーン「ユミルは良い所だぞ。温泉もあって足湯もある、足湯というのはな?文字通り足までしかお湯に浸からないんだがこれが以外に気持ちよく、血行が良くなるんだ。今の時期寒いからな余計に気持ち良いとおもうぞ?それからスポーツはスノーボードというのがある。これは両足をボード状の板で固定して下に滑るスポーツでな?父さんはやったことはないが楽しいスポーツだと聞いてるぞ、若いお前ならすぐ上達するだろう・・・」

 

そこまで明るく一気に喋っていが不意に途切れると絞り出すような声で続けた。

 

オズボーン「リィン済まない、私のせいでお前やお前の母カーシャを巻き込んでしまった。お前はこれから先《呪い》に振りまわされるだろう・・・だがお前には健やかに、幸せになって欲しい。難しい事も我儘な事も承知している。だけどそれでも・・・」

 

怒り、哀しみ、憎悪いろんな感情が混ざっているのが感じられながらも我が子に心配させまいとする〘父親〙の姿がそこにはあった。

 

リィン(嗚呼そうか、そうだよなこの人だって人間だよな、ゲームの中だけで分かったつもりだったけどそれだけじゃないんだ・・・鉄血宰相のイメージしていた自分は恥ずかしいや)

 

リィン(本来の人格じゃないのは心苦しいけど、せめてちゃんと感謝の言葉を言わないと・・・元の人格だってそうするだろうから)

 

リィン「父さん・・・ありが〘パァーン!〙え、なに!?」

いきなりの銃声に戸惑いを隠せずあたりを見回すと少し上の木からライフルらしき物を構えていた男達がいた。

 

オズボーン「くそ!こんなところまで追いかけてきたのか!!リィン!降ろすから隠れてろ!!」

 

オスボ・・父さんはそう言いなが俺を降ろし、懐から拳銃を取り出し応戦した。俺は言われた通りすぐ近くの岩に隠れる。

リィン(何!?どういうことだ??)

 

俺は混乱するあまりに上手く思考が纏まらず同じ言葉が繰り返し出るだけだった。ふと岩陰から相手の方を覗いてみると父さんに撃ち倒されたのか三人血を流しながら倒れていた。だが相手はそんな仲間の姿を見ても怯みもせずゆっくりと撃ちながら近付いてくる。

 

オズボーン「リィン!逃げろ!!」

 

リィン「!!やばい、にげ・・・うわ!??」

 

父さんが声を出して俺に逃げるように促すのに併せて俺は反射的に横に飛び跳ねた直後に銃弾がさっきまで俺の居た空間を通り過ぎていった。顔を上げるとアサルトライフルを構えていた男達が俺の方に走りながら近付いてきた。俺は慌てて起き上がり逃げようと走り出した、だがこの吹雪の中視界が悪かったのが災いして俺は斜面に気付かず転がり落ちていった。 

 

リィン「うわァァァァァ!???」

 

オズボーン「リィィィぃン!!!!」

 

間に合わないと知りながらも俺を助けようと走ってくる父さんの姿が映った。



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第一話

七耀暦1192年

 

リィン「う・・・うぅん、ここは?そうか俺は確か逃げようとして斜面に気付かずに転げ落ちて・・・!」

 

思い出した俺は周りを見渡し背後に転げ落ちたであろう斜面を見て息をついた。

 

リィン「怪我一つ無くて良かった・・・と言いたいがまずいな、完全にはぐれてしまった。父さんが探しに来て・・・いや無理か」

 

父ギリアス・オズボーンはそもそも子どものリィンを避難させるためにユミルに来たのであって、自分が探しに行けばそれは敵も連れて来ることと同意義である。オズボーンが出来ることは敵を自分に引きつけリィンが逃げる時間を稼ぐしかない。

 

リィン「ユミルから救援が来る可能性もある・・・とはいえこの吹雪では捜索なんて無理だ。二次遭難の危険性が高い・・・せめて吹雪さえ止んでくれれば」

 

俺は捜索隊が見つける可能性低い事を否が応でも理解してしまい、ため息一つ吐いて決断を下す。

 

リィン「止むおえない。遭難して悪戯に山の中を歩くのは歩くのは下策だが・・・吹雪から身を守るためには洞窟か何か探さないとそれに・・・」

 

リィンは脇に比較的大きい川が流れているのを見て呟いた。

 

リィン「川が流れる方向に歩けば最低でも麓に降りれるかも知れないしな?女神《エイドス》に祈るばかりだ。」

 

不安を押し込んでリィンは川沿いに歩き始めていった・・・

 

リィン「それにしても本当に子供のリィンなんだなぁ、理解してはいたつもりだけど・・・それにしても」

 

歩いて少し余裕ができたリィンはそんな事を呟きながら続けた

 

リィン「俺の、日本人の俺の名前が思い出せん・・・生まれ故郷や学校、同級生の名前は覚えているのに何故自分の名前だけ・・・?そうして俺が寝る前にやっていたゲームが、閃の軌跡・・・」

 

俺は歩きながら首を傾げこうなった原因を考えていた・・・

 

リィン「原因って言ったって普通にバイトから帰ってご飯食べて風呂入ってゲームして就寝・・・どこにも不自然なところなんてない、のにな?夢だとしたら物凄くリアリティがある夢・・ではあるな、寒さや痛みを感じてなければ」

 

さっきから寒さや痛みを感じているから夢の線は早々に消えた、謎が深まるだけだった

 

リィン「止めよう、何故リィンになったかなんて考えるのは今はどうしようもない。問題はさっきの襲撃者達だ原作では自宅以外での襲撃描写は無かったはず・・いやそうとも限らないか?」

 

あれはあくまでゲームの中の話であって此処は現実である。実際は描写されていないだけで追跡者はいたのではないのか?そうして追撃を振り切ったのが原作であったのではいのか?寧ろそう考えるのが自然な気がリィンはしてきた。

 

リィン「襲撃理由が確か父さんが百日戦役に反対していて其れを良く思わない正規軍の貴族系将校が猟兵を雇って襲わせたんだよな、そして襲うよう依頼した貴族系将校というのがアランドール、レクター・アランドールの父親」

 

ゲームの中のヘラヘラしている男の顔を思い出しながら頭を振った

 

リィン「何を馬鹿馬鹿しい。自宅を襲ったのとさっきの連中は別々かもしれないじゃないか、貴族系将校なんて沢山いるし考えるのはきりがない。」

 

そうしてふたたび黙々とと歩き続ける、幸い足場が良いため転ぶことはなさそうだ。

 

リィン「うぅ、寒い・いい加減凌げる場所を見つけないと本当に命に関わる。・・・・あれは?」

 

リィンが見つけたのは川沿いから少し離れたところに大人が入れる位の洞窟であった。

 

リィン「良かった、これで少なくとも寒さはしのげる。っと冬眠している動物が居るかも知れないな、一応何か武器になるのは・・・」

 

あたりを見回すが石と流木しか見つからない、その中で手頃な尖ってる木の枝を拾った

 

リィン「無いよりマシだな、それに武術の類なんて今はしていないしこれがベストかもな?それじゃあ入ってみるか」

 

???「グルルル〜」

 

リィン「結構深いな・・・あんまり奥に行く必要無いし引き返そ・・あれは?ぼんやりとだかなにか光っている?行ってみよう!」

 

光の元に着いた時そこにあったのは苔生していたが明らかに機械であった。円形状の物体の横には操作パネルらしきものがあった。しいて言うとSF映画に出てくる転送装置に近かった。

 

リィン「これは・・・?少なくとも誰かが利用していたんだろうが、放棄されたのかここにあるのを忘れたのか・・機械に疎いがこれは一年二年でこうはならならないな、それにしてもよく稼働してるなコレいつ壊れても可笑しくない状態だ」

 

よく見てみると外装が剥がれてるところもあり中の配線が丸見えな状態であり動いている事自体が奇跡だった。

 

リィン「結社が置いたのか?でも彼等は独自の転送技術があるからこんな機械を置く必要なんてないし第一こんなところに設置する理由がない、では誰が?」

 

静寂な洞窟に微かな機械音が響いていた・・・

 

リィン「考えてもしょうがない、無事町なり何なり辿り着いたらこの機械のことも・・・」

 

???「グルルル〜!」

 

リィン「!?まさか、最悪じゃないか・・」

 

獣の唸り声に驚いた俺が見たのはオオカミタイプの魔獣が五匹、獲物を確実に仕留める気なのだろう此方にジリジリと近付いて来る。

 

魔獣「ガァウ!!」

 

リィン「俺を食ったって腹の足しにもならんだろうに!!!」

魔獣「ギャン!?」

 

我慢出来なくなった一匹が俺の喉に噛みつこうと飛び掛かって来たのをかろうじて避けて持っていた木の棒をフルスイングしながらヤツの側頭部に叩き付けたら以外にも綺麗に入り沈んで動かなくなった。獲物だと思っていた相手の予想外の反撃に魔獣達は警戒しながら此方を威嚇している。

 

リィン「お願いだから諦めてくれよ・・・」

 

一匹倒したくらいで戦えると思うほどうぬぼれないが相手が怯む程度は期待したかったが・・・

 

リィン「まだ仲間がいるのか・・・!」

 

更に五匹現れてしまい思わず舌打ちが出てしまった。相手は計九匹、後ろは行き止まり唯一の出口は魔獣達が押さえている。強行突破しようにも一匹倒せれば御の字その間に他の魔獣にやられるのは目に見えている。

 

リィン「くそ!こんなところで終わるのか?いやだ!リベールを見てみたい!カルバートにも行ってみたい!世界を見て周りたい!!!!」

 

ピ・・ピピ、テンソウソウチキドウ、・・・・ヘノイドウジュンビカンリョウ、クリカエシマス

 

リィン「え?起動した!?それに何処に移動するって?!」

 

何の偶然か転送装置が起動たが何処に移動するかは分からない、分からないがこのままではやられるのを待つばかり、なら・・・

 

リィン「賭けて見る価値は有る!タイミングを測って飛び込もう。」

 

俺は覚悟を決めてカウントダウンを始める

 

「3( ドライ)・・・2 ( ツヴァイ)1 ( アインス)・・・0 ( ヌル)!!」

 

俺が走り出したのと同時に奴等も駆け出してきた。俺は持っていた木の棒を奴等の先頭に投げた、若干怯みはしたがそれだけで直ぐに立直して追いかけて来る。しかも休み無しでここまで歩いてきたから体力はほとんど残っていなかった。

 

「もう少し、もう少しで・・ゔぁ?」

 

脚がもつれバランスを崩しかけた俺を奴等は距離を詰め飛び掛って来る・・その時

 

ーイキノコリタイカ?ー

そんな《声》が頭に響いたが問答も惜しかったから生き残りたいと願った。

 

ーイイダロウ、スコシチカラヲカシテヤルー

 

リィン?「グ・ヴォォォォォォォ!!?シャァァァァ!!」

 

リィンは胸の奥から、言いようのない熱さを感じ半ば自分の意志を失いながら物凄いスピードで魔獣達を躱していく、そして目的の装置にたどり着きそのまま躊躇いもなく装置の上に乗り転送した。その後魔獣達も飛び込もうとしたが遂に装置が壊れ素通りするだけに終わり洞窟には残された魔獣達と壊れ煙を吐く装置しか残っていなかった・・・

 

ー???ー

 

「ハァハァ、着いたか・・・此処は?」

 

命からがら逃げ延びる事に成功した俺は転送装置を降り装置を置いてあった部屋からでると外は少なくともユミルではない見たこともない建築様式の家が並んでいた。多分住宅街か何かだと思うがところどころ崩れていて人が住んでいる気配はない、辺りを探索してみたかったが・・・

 

リィン「流石に疲れた・・・明日にしよう。色々あり過ぎてもうベットに入りたい」

 

俺は近くの家に入りベットらしき寝具に身体をあずける。

 

リィン(本当に色々あり過ぎた・・・リィンになってユミルに行くはずが襲われて洞窟に入ったら妙な機械を見つけて更に魔獣に襲われて、こんなわからない場所に来てしまった・・・これからどうなるんだろう?もう本来の物語に戻れないのかな?駄目だもう眠いおやすみなさい)

 

翌日

 

リィン「ん〜よく寝た、あとは・・・探索のついでに食料も探さないと。しかし此処はなんで誰もいなくなったんだ?」

 

朝になり明るくなったので見回すとやはり住宅は崩れ人の気配が感じられない。見かけるのは巨大な雲が横を通り過ぎる位だった・・・・

 

リィン「って待て待て!?なんで雲が街の横を通り過ぎるんだよ!・・・まさか!?」

 

俺は嫌な予感を感じ走り出した。兎に角高台か街の端まで行けば全て分かる・・・・

 

リィン「雲が街に掛かるとしらこの街が山の上にできた山岳都市か、あるいは・・・・!」

 

そうして街の端まで来た俺の目に飛び込んできたのは・・・

 

リィン「は・はは、やっぱり・・・此処は《空中都市》かよぉぉぉぉ!」

 

広大な海が広がるその上に浮かぶ《空中都市》に俺の絶叫だけがただ響いていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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第二話

七燿暦1192年ー???ー

 

リィン「はぁ・・・まさか空中都市だなんて、でも《リベル=アーク》ではないよな?あれはまだリベールの湖に沈んでいるはずだし、それに・・・・なんか《リベル=アーク》とはなにかが違うような?まぁゲーム内の知識だし此処は紛れもなく〘現実〙だ。違うのは当たり前かも知れないな」

 

俺は気を取り直して探索を続けることにした・・・やはり住居区域には誰も居らず食料もない(あったとしても腐ってるだろうが)崩れかけた案内板にはどうやら住居区域は東側に位置していて南側には工業区域、北側には商業区域、西側に行政区があるらしい。とりあえず商業区域に向かう、商業区域もかなり崩れているが探索を始める・・・

 

リィン「とりあえず武器屋らしき店からナイフ一本に釣り竿、そして近くにあった公園らしき場所に何故か生えてたリンゴみたいな木・・・食べれるかな?」

 

ナイフは箱に入ってたおかげで多少錆びついているが問題はないだろう、釣り竿は・・・此処で釣れるのがいるか?リンゴみたいなのは・・・一応紅いし問題はない、と思いたい。

 

リィン「まぁ公園に生えてる木に毒持ちを植える馬鹿は居ないと思うんだけど・・・やはり躊躇うな〜」

 

とはいえお腹が空いてるのは事実だし、食べないと身体が持たないから覚悟を決めていただきます。

 

リィン「・・・・・酸っぱく無ければ甘くも無いな、手入れされていない果樹だからこんなものか?」

 

後は身体に異常がなければとりあえず大丈夫だろう。今はお腹に入れば贅沢は言えないし・・・

 

リィン「工業区域は一応回るか、何かあるかも知れない」

 

そうして向かった工業区域は意外に原型を留めてる建物が多く格納庫らしき建物の中を覗き込むと予想外のものを目にした。

 

リィン「トロイメライ・・・?!何でこんなところにこれが有るんだ?」

 

リベール王国王都グランセルのグランセル城の地下にあった封印区画に、《環》に至る道を塞ぐ《門》と一緒に封印されていた《環の守護者》。《輝く環》を封印していた施設《門》の破壊を目的としていた存在だったが《門》の封印と同時に機能を停止していた・・・筈だけどコレは・・・

 

リィン「かなり昔に放棄されたんだな、完全に壊れてる・・・それに他の人形兵器も」

 

よく見ると周りには封印区画に出てきた人形兵器があちこちに朽ち果てていた。その姿はまさに墓場であった・・・

 

リィン「・・・・・こうして見ると一つの文明が滅びたんだと実感するな、それもこれだけ進んだ科学技術を持った人々が・・・残るのは行政区域か」

 

此処に生活を営んでいたであろう人々に思いを馳せるがこれ以上は特にめぼしい発見はないから足早に工業域区を後にして行政区域に向かう。

 

 行政区域と言っても崩れかけたビルが一棟あるだけだった、中に入ってこのビルの案内板を見つけた。どうやら元々このビルは15階建ての地下2階だったらしい、今残っているのは3階迄で1階は市民の公的サービスの受付等があったらしくそれ専用端末みたいなのが備えられていた。

 

 2階も転入届や転出届、出生届を提出するフロアだったらしい。3階は職員達の会議室や資料室もあったらしいが残念ながら瓦礫の下敷きになっていて調べようもなかった・・・地下の方は1階がイスや机などが置かれていただけであり2階は非常用電源があるだけ、ではなかった。

 

リィン「《関係者以外立入禁止》・・・ね?露骨に怪しいな、これ以上部屋が無いのに扉それもロッカーの後ろに隠しているとは・・・」

 

幸いロッカーは何も入っていない上にぼろぼろだったから今の俺でも簡単に撤去することができた。そして扉を調べたが自動ドアであり当然現在は通電していないので開かない、非常用電源も調べてみたが動かす為のエネルギーもなかった・・・

 

リィン「災害発生時に動力が喪失したときに手動で開く為のハンドルか何があるはず・・・」

 

そうして探すことニ、三分で扉の少し離れた場所にハンドルが見つかったが背が低いのでこのままでは届かないので一旦1階に戻ってイスを取りに行き再びドアのところに戻り、イスの上に乗りハンドルを回してみた・・・・少し固かったけどなんとか回してドアを開けて見たら通路の照明が点いている。

 

リィン「ここだけが別系統の導力源がある上にしかもまだ生きている?」

 

疑問を感じつつも進んでいくとエレベーターが稼働していた。

 

リィン「・・・特に何か認証みたいなものは無いみたいだ。乗れば降りられるけど・・・」

 

今更ながら恐怖を感じるが・・・・それ以上にワクワクしてきた!エレベーターに乗り込むと滑らかに下に降りていき、遂に最下層に到達した。そうして目の前に写ったのは巨大なコンピューターがまだ稼働していた!

 

リィン「でっかいコンピューターだなぁ・・・此処がこの都市の中心部か。調べてみよう」

 

???〘ナニモノダ?〙 

 

リィン「・・・誰?」

 

予想外の声に一瞬呆けて尋ねるもやはり自分以外いない、空耳かとおもったが・・・

 

???〘ワタシハオマエノメノマエニルゾ?〙

 

リィン「まさか、コンピューターから?!人工知能搭載なのか?!」

 

???〘イカニモ、ワタシガオマエニキイタノダ。モウイチドキクナニモノダ?〙

 

コンピューターの問いに驚いたが正直に答える。

 

リィン「俺の名前はリィン、魔獣に襲われて地上から此処に通じる装置を偶然見つけて逃げて来た。君を害する気は無い。」

 

リィン「差し支えなければ君の名前と此処は何処なのか教えてほしい。」

 

???〘・・・・ウソハイッテハイナイヨウダナ、イイダロウ。マズワタシノナマエハ●●●●ソシテコノ都市ハ《リベル=アーク》ノプロトタイプ、ソシテ《輝く環》ヲツクリダシダ場所デモアル・・・!〙

 



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第三話

翌日俺は《釣り》をしていた。この空中都市は《釣り堀》が設置していて市民の憩いの場も兼ねていたらしい、いまもその機能は喪ってはないらしく定期的に下の海から捕獲して放したり増え過ぎたら放流しているらしい。

 

リィン「お、カルプが釣れた…さっきはレッドパーチ釣れたし入れ食いだな?しかし、食えるのかな?一応ゲームでは食える種もいる描写もあったから食えるとおもうけど…」

 

食料確保の為とはいえ見たこともない魚(厳密にいえばこの身体の本来の主は違うだろうが…)を食べるのは勇気がいる物である。因みにその他に野菜工場、培養肉工場(海中のプランクトンを肉に加工したものらしい鶏肉、豚肉、牛肉何でもござれ)もありいずれも稼働できるらしい…凄えな古代ゼムリア文明?

 

リィン「まぁ住める事になったのは正直ラッキーだった、話しの分かるコンピューターで良かったよ…」

 

ー9時間前ー

 

リィン「…今俺の知識で言えるのはこれだけです」

 

俺は虫食いの記憶を頼りに古代ゼムリア文明は既に滅び、人々は地上に降りそれぞれ国を作り時に対立しながらも繁栄していること、今はアーティファクトと呼ばれる古代の遺物しか当時の面影を知る術がないことを伝えた…

 

〘ソウカ…ヤハリ《輝く環》ハ人々ノタメニハナラナカッタカ…〙

 

コンピューターはどこか寂しそうにそう呟いた、その姿は人間臭く声だけだったら本当に人だと思ってしまう程だった。

 

リィン「済まないが《輝く環》とは一体何の事なんだろうか?(一応知ってるけど実物知ってる人?から聞きたいしなにより…)そして何故此処は放棄されてしまったんだ?」

 

〘……ソウダナ、イマサラ隠ス必要ナドナイカ…ソモソモ《輝く環》トハ…〙

 

コンピューターの回答は原作と大体同じであった曰く、奇蹟の力により人間の願望を無限に叶えることができるが、意思を持たず抑制は利かなかったため、浮遊都市《リベル=アーク》の中枢として住人たちの願いを叶え続け、結果として《リベル=アーク》に住む人間たちを肉体的にも精神的にも堕落させてしまった。曰く、この《都市》は《リベル=アーク》を建造する為だけに実験的に造り人が住める為に何が必要かを検証した後《リベル=アーク》を建造する物資集積基地としての役割を与えられたらしく、此処で《輝く環》も作り《リベル=アーク》に運んだとのことだった。

 

その後《リベル=アーク》が完成後はここは引き払われそのまま忘れ去られたまま彷徨い続けていたとのことだ。俺が見つけた転移装置は地上から建材を運ぶ為の物だったのでは無いかとはコンピューターの見解だった。《輝く環》の危険性についてはある程度データ・リンクで把握していたらしく警告も送っていたみたいだか大多数の人は《輝く環》を欲したため無視されたため以後コンピューターは今の今まで眠っていたらしい。

 

リィン「なんともまぁ、大変だったんだなとしか言えませんね…人の願望を叶える…そんなご都合主義の様な代物を作り出す古代人の技術は凄いがその技術で自らの首を絞めるとは…」

 

〘ジッサイ『願い』ヲカナエタモノタチハニドトモドッテコナカッタ…〘セレスト〙達ゴク少数派以外ハ《輝く環》ニトリツカレテイタ…ワタシハソレニ絶望シ、ネムリニツイタノダ…〙

 

本当にため息出そうなコンピューターの言葉に俺は同情を禁じ得なかった。

 

〘ハナシハカワルガ、キミハドウスルツモリダ?〙

 

リィン「あ〜出来れば少しの間滞在させて貰えませんか?食糧や装備を整えたら出て行きますし、ここの事は誰にも言いませんよ」

 

〘……モシヨケレバ此処ニ住ンデモイイヨ〙

 

その予想外の言葉に驚きつつ俺は尋ねた

 

リィン「ありがたい話しだけどなんで?…正直自分でも怪しいと思うんだけど?」

 

〘スコシハナシタダケド、キミハシンヨウデキルトハンダンシタヨ、ソレニ……ショウジキサビシイシ、ハナシアイテガホシイ〙

 

リィン「……」

 

余りに切実な願いに涙を禁じ得なかった。

 

〘モチロンキミニメリットモアルヨ、此処ノ施設ヲ自由ニツカッテモラッテモカマワナイ。モハヤセイトウナ所有者ハイナイカラキミノモノダ〙

 

リィン「貰いすぎなような気がするけど…せめて何かして欲しい事ないかい?」

 

〘ソレジャア…ナマエ、ワタシノナマエトコノ都市ノナマエヲキメテホシイ〙

 

リィン「そんな事でいいのかい?」

 

〘モウマエノナマエハイミナイシ、アタラシイナマエヲモラッテイマノゼムリア大陸ヲミテミタイ〙

 

俺の問いにコンピューターは寧ろ名付けて欲しい言ってきた。

 

リィン「分かった…それじゃあ君の名前……うん、決めた君の名前はー」

 

ー回想終了ー

 

リィン「あの後から周りが忙しくなったんだよなぁ、今も蜘蛛型の人形兵器動き回って瓦礫やらを撤去してるし…あ、飲み物?ありがとう」

 

俺は蜘蛛型から飲み物を受け取り、口をつけながら忙しなく動き回る蜘蛛を見てやや後ろめたい感じがした。

 

リィン「本当に手伝わなくてもいいのかなぁ?俺も此処に住むんだから…」

 

????「貴方は5歳なんですからそんな事は気にしないでください。使える物が有れば使う位で丁度良いんです。」

 

俺のボヤきに後ろから十代後半から二十代前半、紅い瞳の美しい女性が現れた。長い銀髪をポニーテールにしてメイド服を着こなしていた。

 

リィン「あぁ、ありがとう《フローラ》新しい名前はどう?気にいったかな?」

 

フローラ「はい、とても気に入りました。そしてコンピューターの私に動き回れる身体の作成の許可を下さりありがとう御座います」

 

そう、この《フローラ》はあのコンピューターが動き回る為に蜘蛛型に命じて残骸から組み上げた身体らしい。ほとんど生身に近い感触で手を触らせてもらったがとても中身が機械とは思えない位だった。

 

リィン「そんなのは良いさ、君の当然の権利だよこれから世話になるんだから」

 

フローラ「はい、所で都市の名称の方は…?」

 

リィン「うん、決まったよ…この都市の名前は……『アンファング』…始まりの意味でこれからここで俺と君の旅が始まる事を意識してみたんだ…どうかな?」

 

流石に小っ恥ずかしくなって頭を搔いて彼女の回答を待っていた

 

フローラ「…『アンファング』良いでは有りませんか、ならば私も…私フローラ・クリストはリィン様と『アンファング』を生涯かけてお仕えすることをここに誓います。」

 

見事なカーテシーを披露してフローラはそう宣言した。

 

リィン「此方こそ宜しくフローラ」

 

 

 

 

 

そうしてリィンの軌跡の一歩がここから始まりを迎えた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第四話

お気に入りが40件に増えた…だと?、読んで下さりありがとうございます!至らないところは多々有りますが楽しく読める様に頑張ります!


七耀暦1192年ー浮遊都市『アンファング』ー

 

あれから二週間が過ぎた。浮遊都市の機能はフローラと蜘蛛型人形兵器の人海…蜘蛛海?戦術によって大体の部分は復旧したので自宅になる家も建てて貰い今は其処に住んでいる。

 

今更だがこの高度で風やら気圧が地上と同じなのは何か特別な仕掛けがあるのかとフローラに聞いたら『アンファング』全体に一定の気温やら風圧に調整するシールドみたいなものを張っているらしい、フローラ曰く「そうでもしないと浮遊都市なんて危険極まりないですよ」とのこと、ご尤もです…

 

今現在陸地は地図上で言えばリベールのルーアンに一番近いらしい、そこでフローラは一旦地上に降りてみたいと申し出たが流石に今はエレボニア帝国とリベール王国は交戦状態だから今は無理だと教えた。少々残念がっていたがフローラの安全には替えられない。

 

リィン「まぁ、地上に降りる事自体は悪い理由じゃないさ…ただ時期が悪いだけだし、七耀教会や遊撃士協会(ブレイザーギルド)といった組織は俺が知る限りのことを教えるよ」

 

フローラ「七耀教会や遊撃士協会(ブレイザーギルド)ですか…?どういう組織ですか?」

 

彼女の質問に俺は説明を始めた。

 

リィン「うん、まず遊撃士協会(ブレイザーギルド)というのは民間人の安全と地域の平和を守ることを第一の目的とした遊撃士(ブレイサー)たちによる民間団体なんだ。最初は準遊撃士、次に正遊撃士とランクアップしていくんだけど、本当はまだ細かいランクはあるんだけど今は省くよ?本部はレマン自治州にあって、「国家権力に対する不干渉」を規約として掲げることにより、ゼムリア大陸各地に支部を持っているんだ。その中立性から、時には国家間交渉の仲介役を担う場合もあるんだよ。」

 

フローラ「民間団体ですか?普通ならその類いは国家が責任を負う筈ではないのですか?それに「国家権力に対する不干渉」ですか…では極端な話今回のような戦争の民間人の犠牲者はどうなるのですか?国家間の戦争だから手を出せないじゃないですか?」

 

リィン「まぁ、そうだね…実際は停戦の仲介役も務めるけどそういった矛盾もあるから遊撃士もジレンマを抱えてるという話も有る位だからね」

 

彼女の疑問は最もだけどこれに関してはどうしようもない…

 

リィン「それでも助かってる人もいるし無くてはならない存在なのは間違いないさ…話を戻すと今度は七耀教会はね、ゼムリア大陸で最も広い信仰を集める宗教組織で、空の女神エイドスを信奉しているんだよ。《大崩壊》直後に成立して、その教義によって人々を導き《暗黒時代》を平定させ、《暗黒時代》後のゼムリア大陸で教会を中心とした新たな秩序を形成したんだ。総本山はアルテリア法国。封聖省、典礼省、僧兵庁といった複数の組織から構成されているよ」

 

リィン「日曜学校とか司祭様が簡単な薬を調合して医者代わりになったり、これも身近な存在だね…ただ」

 

フローラ「ただ…なんですか?別に問題ないような気がしますが?」

 

 

リィン「普通に暮らして居る分には確かに問題ないんだけど、教会にはもう一つ目的があるんだ…」

 

フローラ「目的…?」

 

彼女の訝しげな表情を見ながら俺はやや躊躇いがちに言った

 

 

 

 

 

 

リィン「教会は古代ゼムリア文明の古代遺物(アーティファクト)の回収も含まれるんだ。つまり…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フローラ「私が…というより『アンファング』が教会の回収対象になる可能性がある…と?」

 

 

俺はゆっくりと肯いた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第五話

七耀暦1192年ー浮遊都市『アンファング』ー

 

古代遺物(アーティファクト)は大崩壊以前の古代ゼムリア文明の時代に作られた道具であり、この古代遺物の研究から導力器が生まれている。古代遺物も導力器も導力によって稼働する点では同じだが、異なる機械体系を持つ。字義どおりに古代の遺物であるため、多くはその力を失った状態で遺跡などから発掘されるが、力を失わずにいるものも存在し、その中には強大な力を持つ物もある。

 

七耀教会では古代遺物を「早すぎた女神の贈り物」と定義して、個人が無断で所持したり使用したりすることを禁止しており、力を持ったままのアーティファクトを回収・管理している。力を失った物は教会の回収対象から外れるが、力を失ったアーティファクトは解析することも出来ず、役に立たない

 

リィン「……というのが教会の言い分だな、因みに今までで大きい回収物はノーザンブリアの《塩の杭》という物だね」

 

フローラ「でもリィン様、私はあくまで《リベル=アーク》のプロトタイプですよ?確かに《輝く環》は此処で建造されましたがアレは完成後直ぐに移送されましたし、それ以外はごくごく普通の空中都市ですよ?」

 

リィン「いや、普通都市は空に浮かばないからね?それに今のゼムリア中の科学者集めても多分、半分も君を…『アンファング』を解析出来ないと思うよ?」

 

フローラ「………?」

 

それでもよく解らないと言いたげな表情で可愛らしく首を傾げるばかり、まぁ彼女の価値基準が此処しかないから仕方ないのかな?

 

リィン「(だが実際彼女に使われている技術はそんな簡単に解析出来る物ではない…それこそ黎の軌跡の時点の科学技術でもまず無理だろう、悪意有る者に知られたら間違いなく狙われる)…まぁ頭の片隅にでも留めておいて、それとフローラ此処に武器はない?」

 

フローラ「武器ですか?此処は武装らしい武装は無いですよ?いざという時の為の対空砲は数門しかありませんし、あとは地上の魔獣を攻撃する為の地中貫通爆弾しかありません。」

 

リィン「うん、言い方が悪かった。俺が言いたいのは俺が携帯出来る武器が無いかと聞きたいんだ、後その爆弾は永遠に封印する様に」

 

フローラ「……///////!失礼しました。そっちの方は銃器やら剣やら色々有ります。しかし、何故武器を?まだ早いように思いますが?」

 

恥ずかしかったのか頬を赤くしながらも怪訝そうな顔をするフローラの発言は最もだけど…

 

リィン「言いたいことは分かるよ、だけどその理由は俺が此処に来た原因にあるんだ」

 

フローラ「原因って、魔獣に襲われて此処に来たのではなかったのでは?」

 

リィン「もう少し前の話なるけどね…」

 

そうして俺はこれまでの経緯を話した。エレボニア帝国の出身で俺の家族は猟兵に襲われ母は死に俺も重傷を負って、唯一無事だった父オズボーンに連れられてユミルに身を寄せる途中に俺が《呪い》に侵されたことを知らされた直後にまた襲撃され父と離れ離れになり彷徨い歩いた末に洞窟を見つけ例の装置を発見した…

 

リィン「その後は君と出会い今に至るという訳なんだ…」

 

フローラ「《呪い》ですか…?ではリィン様は御家族を襲った賊に復讐するのではなく、《呪い》を掛けた〘ナニカ〙に対抗するために…?」

 

リィン「あぁ、そのために武器を欲したんだ…」

 

その言葉を聞いたフローラはなにかを考えていながら書類を纏めていた。

 

 

 

 

 

 

フローラ「お話は判りました…ですが、まだリィン様には『早い』と判断せざるを得ません」

 

 

 

 

 




リベールどうしようかなぁ…?


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第六話

七耀暦1192年ー浮遊都市『アンファング』ー

 

フローラから武器の扱う訓練はまだ早いと言われたが、身体の成長の妨げにならない程度の訓練なら問題無しと言われたので『アンファング』内部の訓練場で50アージュ(50メートル)を走ったり、温水プールで25アージュ(25メートル)泳いだりフローラに頼んで蜘蛛型の一体に最初は軟らかいボールを投げてもらい俺がそれを避ける反射神経を鍛える訓練をしていた。

 

そうして訓練の後にはフローラが入手した(いつ降りたんだろう?)帝国や共和国の日曜学校の教科書を使い勉強をしていた。フローラは「私がいれば問題ないのに…」とやや不満げだったが流石に現代と古代ゼムリア文明の一般常識や知識は違い過ぎるので遠慮してもらう。ただ興味はあるので時々教えて欲しいと頼んで納得してもらった…(後日、高度過ぎる内容で知恵熱が出た…)

 

 

リベール王国軍とエレボニア帝国軍双方の通信を傍受したところ原作通りリベール側が飛行艇の開発に成功し、エレボニア帝国軍に空爆を行いその進撃を鈍化させる事に成功したらしい。フローラによると最早帝国軍に逆転の機会はなく早いところでは孤立、各個撃破の憂き目にあっているらしい。

 

リィン「そういえば飛行艇開発されたから何れ此処を発見されるんじゃないのか?」

 

俺の疑問にフローラはそれは無理でしょうと首を振る

 

フローラ「彼等の使う導力レーダーでこの『アンファング』を捉える事は叶いません。此処は光学迷彩やステルス機能を備えています。また万が一発見されたとしても登録されていない船が接近してきてもシールドで弾かれてしまいます、現状その許可証を発行出来るのは私とリィン様以外しかおりません…」

 

その言葉に納得しかけたがある疑問が湧いたので聞いてみた。

 

リィン「じゃあなんで俺は此処に入れたんだ?許可証なんてあの時持っていなかったぞ?」

 

フローラ「それはリィン様が通ったのは資材運搬用の転送装置だったからじゃないでしょうか?此処を建造する時いちいち許可証出してから資材を運ぶのは面倒でしたからフリーパスで通れる様になってましたから…」

 

当時を思い出しているのか苦笑しながら説明するフローラ

 

リィン「ん?じゃあ俺が入った装置以外にも似た物が有ったら容易く入れるんじゃ…?」

 

そう聞くとフローラは微笑みながらそれはもう無理ですと言った。

 

フローラ「私が目覚めてリィン様を主と認識した後軽く地上をサーチしましたがリィン様が通った装置と同型で現在も稼働していたのは今の地上の名称で言えばエレボニア帝国の帝都ヘイムダルの近くとカルバート共和国の首都イーディス、リベール王国の王都グランセルしか確認されませんでした。それ等にしても何れも自爆させましたのでもう入れません」

 

フローラが自信満々に言うのならそうなんだろう…

 

リィン「で、その許可証というのはどういう物だ?」

 

俺はなんとなく察しがついていたが敢えて尋ねた。

 

フローラ「そうでした、此方をお渡ししなければなりませんでした…」

 

そう言ってポケットから取り出し机の上に置いたのは《黒いオーブメント》みたいな物…うん、まんま〘ゴスペル〙である。

 

フローラ「こちらは〘ゴスペル〙と言いまして浮遊都市では必需品です。リィン様の物はあらゆる場所をフリーパスで入れますし、この〘ゴスペル〙なら他者に許可証を発行する権限もあります。但しこの〘ゴスペル〙はリィン様しか扱えませんのでご注意を」

 

そう言ってフローラは俺に〘ゴスペル〙渡した…なんて物を渡すんだ!?

 

リィン「まぁ…とりあえず分かった。ありがとう」

 

あんまり使用する機会がないことを祈ろう…

 

 

フローラ「それでリィン様に提案があるのですが…」

 

フローラが突然そんな事を言ってきた

 

リィン「提案…?なにか気になる事でも…?」

 

俺は訝しみながらも先を促した。

 

 

フローラ「はい…今すぐではなくてもいいので…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーリベール王国に降りて調べたい事があるんです…ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 




次回からリベール編に移ります


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第七話

 

 

 

5年前、戦争は原作通りリベールの反攻により最後までエレボニア帝国軍は敗走続きになり最後のリベール国内のエレボニア帝国軍の降伏によりエレボニア政府は講話交渉に入り、最終的には七耀教会の仲介により講和が成立しエレボニア帝国政府の謝罪を以って戦争は終結した。

 

 

 

この戦争は後に〘百日戦役〙と呼ばれる様になった。

 

 

 

そうして俺達は何時までも『アンファング』に留まる訳にいかず、エレボニア国籍を取得する事にした。取得の際に俺の姓が無い事に気付いた…まさかオズボーン姓を名乗る訳にもいかないし、だからといってシュバルツァーを名乗るのももっと駄目だし…

 

 

 

フローラ「…アイスフェルト?……アイスフェルトは如何でしょう?響きも其処まで変ではないと思いますが?」

 

 

 

フローラの意見に俺は頭の中で反芻してみた…リィン・アイスフェルト…悪くないかも知れない。

 

 

 

そうして俺はリィン・アイスフェルトとしてエレボニア国籍を取得した。その後俺達二人は相談の末リーヴス郊外に拠点を設ける事になった…

 

 

 

 

 

七耀暦1197年ーエレボニア帝国帝都ヘイムダル空港ー

 

 

 

リィン「技術の発展というのは早いものだね…」

 

 

 

リベール行きの定期船をロビーで待ちながら俺はそう呟いた

 

 

 

フローラ「人は便利な物だと判断すれば実用化するのを躊躇いません…かつて《輝く環》は正に人々の福音でした、そうして建造して運用して…実際は自らの首を絞める結果になりましたが…」

 

 

 

自分を造り出した創造主達の顚末を知っているフローラは複雑そうな顔で発着する定期船を見つめていた。

 

 

 

リィン「君はもう《リベル=アーク》のプロトタイプじゃない…一人の女性のフローラ・クリストだよ、過去を気にするなとは言わないし、言う権利なんて俺にはない…でも愚痴位なら付き合うから今は旅を楽しもう?」

 

 

 

俺はそう言って彼女の目を覗き込んだ。

 

 

 

フローラ「……フフ、そうですね。せっかく今の時代を見れるのですから、これからの人の営みを見続けるのも一興ですね」

 

 

 

そう言って彼女は微笑む

 

 

 

フローラ「ですが良いのですか?」

 

 

 

リィン「うん?何が?」

 

 

 

フローラ「いえ…幾ら準備を整えてからとの条件付きとはいえリベールに行きたいというのは私の我儘ですし…」

 

 

 

彼女の疑問に俺は答える

 

 

 

リィン「でも必要だと君は感じたんだろう?それでいいじゃないか?」

 

 

 

ー5年前ー

 

 

 

リィン「リベールに降りたい?それは一体どうして?」

 

 

 

俺が問うと彼女はどう言葉で表現していいのか迷いながら答えた…

 

 

 

フローラ「はい…実はリベールの『四輪の塔』から私と同じ時代に作られたと思われる装置が未だに稼働しているのを確認しまして…」

 

 

 

あぁ、あの塔関係か…

 

 

 

リィン「それを調査したいと?…でもどうするの、その装置を破壊したいとか?」

 

 

 

もしそうなら反対するところだけど…彼女はそうじゃないと頭を振って否定した。

 

 

 

フローラ「アレを破壊したら碌でも無い事は起きるのは予想出来ます。それに…なんの為の装置なのかは凡そ理解できますから…」

 

 

 

じゃあ何の為に?と問うと

 

 

 

フローラ「私…セレスト達が築き上げた国をこの目で見てみたいんです。コンピューターとはいえ私もあの時代を一緒に生き最後まで諦めなかった彼女達の結果を見たいんです…!」

 

 

 

そういう事なら断る理由もないな…

 

 

 

リィン「判った…同胞の行く末を気になるのは当然だろうしな」

 

 

 

フローラ「…ありがとう御座います!」

 

 

 

リィン「礼なんて必要ないよ…どっちみち地上に降りる予定だったんだし…でも、地上の拠点や国籍は必要だからリベール行くのは当分先だけど」

 

 

 

フローラ「それでも充分です!では、降りた時に拠点に相応しい地を選定しておきます!」

 

 

 

そう言ってフローラは笑みを浮かべなが退室していった…

 

 

 

ー現在ー

 

 

 

リィン「時間が掛かったけどまぁ色々手続きとか審査とか土地取得費とかあったからなぁ…」

 

 

 

仕方無いとはいえ役所仕事は長いからなぁ…

 

 

 

フローラ「リーヴスの郊外とはいえ一から造成やら建築ですからねぇ…『アンファング』の機材が使えれば早かったんですが…」

 

 

 

リィン「まぁ、リーヴスの住民との交流も出来たから悪いことばかりじゃないさ…それで予定としては最初グランセルからロレントに行く事でいいんだよな?」

 

 

 

フローラ「はい、ロレントに逗留しつつ翡翠の塔を調べたいと…(pipi)失礼します。」

 

 

 

彼女に直接通信が入るなんて珍しいな…戻ってきた。

 

 

 

フローラ「リィン様申し訳御座いません『アンファング』の方でトラブルが発生したらしく、私は対応のため戻ります」

 

 

 

リィン「深刻なのか?俺も一緒に…」

 

 

 

フローラは心配無いと微笑みながら言った

 

 

 

フローラ「心配するほどのトラブルではありません。念のために戻るだけですのでリィン様は先にリベールに行って下さい。私も後から行きますので」

 

 

 

リィン「解った…じゃあリベールで会おう」

 

 

 

フローラ「はい、いってらっしい」

 

 

 

そう言ってフローラは戻る為に空港を後にした

 

 

 

リィン「さて、あぁは言ったがチケットが一枚無駄になってしまったな…一枚分キャンセル出来るかな?」

 

 

 

???「困ったのぅ…まさかチケットを無くしてしまうとは」

 

 

 

そんな声が後ろから聞こえ、振り返ると歳は70位の老人がうろうろしていた、流石に知らんぷりは出来ないので声をかけた

 

 

 

リィン「もし、おじいさんチケットを落としてしまったんですか?」

 

 

 

???「うん?ああそうなんじゃ、リベール行のチケットをとっていたんじゃが何処かに無くしてしまってのぅ、今日中にリベールに行きたいんじゃが…」

 

 

 

ふむ…?

 

 

 

リィン「おじいさん、実は俺もリベールに行くんですが生憎連れが急に用ができてさっき別れたんですよ。良かったら一緒にどうですか?」

 

 

 

???「ありがたい話しじゃが、こんな爺でいいのかい?」

 

 

 

リィン「どうせキャンセルになる位なら有効的に使った方がいいです。それに俺も退屈しませんし…」

 

 

 

???「ふむ…では有難く使わせてもらうとしようかのう?そうじゃ、お主の名は何と言う?」

 

 

 

リィン「はい、俺の名前はリィン・アイスフェルトと言います。お爺さんのお名前は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ワシはユン・カーファイという者じゃ、宜しくのリィン少年」



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第八話

ー七耀暦1197年リベール上空ー

 

ユン老師という予想外の人物の出会いに驚きつつも一緒に乗る予定だったフローラのチケットを使い無事に乗船を果たしたユン老師と甲板で色々帝国内で回った事を聞いていた。

 

リィン「温泉ですか…気持ち良さそうですね~(間違いなくユミルだけど…)でも、話を聞く限りそんなに長く逗留していないですよね?一体何故…?」

 

俺の疑問に老師は笑いながら答えた

 

ユン老師「なに、お主にはまだ温泉の良さを理解するのはまだ早いわい…長居しなかった理由はの…儂は実は剣術家での?八葉一刀流というのじゃが、知っておるかの?」

 

リィン「あいにく不勉強で…確か東方の剣術でしたか?」

 

俺の答えに頷いたユン老師は続けた…

 

ユン老師「その認識で問題ないぞい、儂はその八葉一刀流の開祖でな?弟子も何人も居る。今回リベールに行くのも弟子の一人と会おうと思ってな?」

 

リィン「そうでしたか…」

 

別に可笑しくない話たけど…

 

ユン老師「儂ももう歳じゃからな…最後の弟子を取ろうと思いユミルに赴いたのじゃが…良き若人が居なかったから逗留もそこそこにリベールに行こうとしたんじゃ」

 

成程…でも

 

リィン「でも何でピンポイントにユミルで弟子を取ろうと…?」

 

ユン老師「勘じゃ」

 

即答!?しかも勘って…

 

ユン老師「勘も馬鹿にはできんぞ?それで時には予期せぬ出会いがあったしの!」

 

呵々大笑しながら言う老師に呆気にとられる。これがユン・カーファイなのか…?

 

ユン老師「さて、儂ばかり答えるのは不公平じゃしな…お主にも答えてもらうかの」

 

リィン「あ、はい分かりました…俺が答えられる事があればいいのですが…」

 

ユン老師「なに、そう難しい問いはせぬよ…ではリィン少年お主…」

 

 

 

 

 

そ の 身 体 の 中 に あ る 異 質 な 力 は な ん じゃ?   

 

 

リィン「!!!!?」    

 

ユン老師「勘違いするでない、別にお主をどうこうしようとは思わん。お主が善人なのは短い付き合いでも分かっておる」

 

心臓が止まるかと思った…これが八葉一刀流ユン・カーファイ…!       

 

リィン「……何故解ったんですか?一度も披露したこともないのに?」

 

 

ユン老師「勘とあとは…お主の気配じゃな?」

 

リィン「気配?」

 

ユン老師「うむ、お主の身体にはお主以外のもう一つの気配が感じたのじゃよ。それも真っ黒な」

 

リィン「…荒唐無稽な話になるかもしれませんが宜しいですか?」

 

ユン老師「構わん」

 

俺は5年前の出来事を話した。(流石にアンファングは話せないが)

 

ユン老師「〘呪い〙か…確かにお主の父親がそういったのじゃな?」

 

リィン「はい、その後に魔獣に襲われた際にこの『力』が発現し、魔獣を振り切るスピードを出せました。」

 

 

ユン老師「………」

 

そう言うとユン老師は考え込んだ。

 

リィン「あの…?」

 

ユン老師「一つ尋ねたい、お主はその力をどう見る。あるいはどうしたいのじゃ?」

 

そんな問いにおれは…

 

リィン「…俺は最初は得体のしれない〘力〙を恐怖を覚えました。でも、俺の窮地を救ってくれたのもその〘力〙でした…もうこの〘力〙は俺の一部で否定出来無い事実です。俺はこの〘力〙を使いこなしたい!俺はこの〘力〙で俺の大切な人達を守りたい…今は、そう思います」

 

ユン老師「……リィン少年、お主の目的地はロレントじゃったな?」

 

リィン「え……はい、そうですが?」

 

唐突な話題転換に怪訝な顔になる…

 

ユン老師「そうか、これも空の女神の導きかのう?」

 

ユン老師「リィン少年、お主のその〘力〙を制御する術を儂等が教えると言ったらどうじゃ?」

 

リィン「え?それはつまり…」

 

ユン老師「儂の弟子にならんか、と言うわけじゃロレントにさっき話した弟子が住んでいるからあやつにも手伝ってもらうがの」

 

リィン「願ってもない話ですが…ご自身の予定とかは?」

 

ユン老師「何、元々予定などあってないような物じゃたから問題はないのぅ…では返事は?」

 

リィン「…宜しくお願い致します。ユン老師」

 

俺は深々と頭を下げた

 

〘本船をご利用頂きありがとう御座います、まもなくリベール王国王都グランセルに到着します。お荷物をお忘れなき様お願い致します〙

 

船内アナウンスが流れ、空の旅の終わりを告げた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第九話

この作品のお気に入り登録が百件いくとは思わなかった…


 

ー七耀暦1197年リベール王国王都グランセルー

 

リベール王国は千年以上の歴史を誇る小国で、君主制を布いているが貴族制は廃止されている。現在の国王は第26代目となる女王・アリシアII世。ゼムリア大陸南部に位置し、北のエレボニア帝国と東のカルバード共和国という2つの大国と国境を接している。小国でありながらも豊富な七耀石資源と高い導力器技術、そして女王の巧みな外交によって両大国とも対等な関係を保っており、緊張感の高い両大国の間に位置する緩衝国として働いている。

 

リィン「これが、リベールか…」

 

空港を降りて見て思うのは、実際に見るのと知識として知っているのでは大きく違うという良い例だろう。人々の笑顔が多い

 

ユン老師「感心するのは良いが此処が目的地では無い事を忘れるでないぞ?」

 

ユン老師に注意され本来の目的地を思い出す

 

リィン「すいません、老師この後の予定はどの様に行くのですか?」

 

ユン老師「うむ、このままグランセルを出てキルシェ通りに徒歩で移動する。途中のグリューネ門に通過すればロレントじゃ、リィンお主は体力に自信はあるかの?」

 

リィン「大丈夫です。少しは鍛えていますので徒歩程度なら問題ありません」

 

ユン老師「良し、では行くとするかの」

 

俺と老師はグランセルを出る為に歩き出した…

 

ユン老師「しかしグランセルも久しぶりじゃ…」

 

懐かしげに呟く老師に俺は尋ねる

 

リィン「老師は前にリベールに来た事が…?」

 

ユン老師「うむ、以前リベール王国に招聘されて士官学校の特別講師として教鞭をとっていたのじゃ、カシウスとはその時からの付き合いじゃな」

 

ユン老師「あの時の候補生が大佐になるとは思わなんだが…うん?」

 

リィン「老師?どうしまし…なんでしょうか?出口に人だかりが出来てますね。王国兵が対応に追われているようですが?」

 

ユン老師「何か起きたのかのう?近付いてみるぞ」

 

リィン「解りました」

 

俺たち二人は人だかりの方に近付いて王国兵に声をかけた。

 

ユン老師「もし、何がありましたかのう?」

 

王国兵「ん?ああ、実はキルシェ通りに大型魔獣が出たんですよ。それで今は民間人に被害が出ない様に封鎖する事にしたんです。」

 

ユン老師「なんと…ではエルベ周遊道に迂回しないと…」

 

王国兵「すいません、そちらもあいにく大型魔獣か出てるんですよ。今遊撃士に依頼を出しましたので…多分一日あれば片付くと思いますので、申し訳ないのですがグランセルに戻って宿を取ってください。では自分はこれで」

 

説明してくれた王国兵はそう言って此方に敬礼して持ち場に戻っていった…

 

リィン「参りましたね…」

 

ユン老師「何、儂が切り捨てれば問題無いわい…」

 

リィン「遊撃士の仕事を奪うのは止めて下さい、面倒な事になります」

 

ユン老師「冗談じゃよ」

 

俺のツッコミに老師はそう言ったが、あれは半ば本気の目だった…

 

ユン老師「仕方がないのう、一旦戻るぞい」

 

そうして一旦戻って来て《ホテル・ローエンバウム》に宿を取った後老師はまた出掛けると言ってきた…

 

ユン老師「折角じゃから儂は〘知人〙を訪ねてくる。お主もこの機会にグランセルを観光してくれば良い」

 

そう言って老師は部屋を出ていった

 

リィン「…歩いて見て回るか…」

 

俺は少し空腹だったので《エーデル百貨店》サンドウィッチを買い近くのベンチに座った。

 

リィン「ボリュームたっぷりで旨そうだな、いただき『ちょっと!貴方何てことするのよ!?』なんだ?」

 

近くの通りに人が集まっていたから俺も近付いて隣の男性に尋ねた。

 

リィン「何が有ったんです?」

 

通行人「チンピラが小さい子供を弾き飛ばしたんだ、それをあの嬢ちゃんが咎めてるんだよ」

 

そう言って指差す方に目をむけると確かに地面に座り込む子供

の前にスミレ色の女の子が守る様に立っていた。女の子の前なはいかにもチンピラ風の男がヘラヘラしながら言った。

 

チンピラ「なに怒ってるんだよ?其処のガキがちんたら歩いてたからぶつかっただけだろうが」

 

スミレ色の女の子「巫山戯ないで!貴方がわざとこの子の進行方行を塞いだのを私は見てたんだからね!」

 

周りからは又アイツだよ…と言う声が聞こえる所を見るにあのチンピラはこの辺では有名らしい、というかあのスミレ色の女の子はまさか…って!あのチンピラあの娘を殴ろうとしてる!?周りも気付いて悲鳴をあげている!…嗚呼もうこうなったら!…

 

 

ースミレ色の女の子視点ー

 

もう最悪!折角久しぶりに町にお買い物を楽しもうと思ってたのに!!ユリアさんは少し遅れるって言うし、町に出たら出たであんなチンピラがあんな小さい子に虐めるのを目撃して気が付いて見れば私はチンピラを咎めてるし、しまいには子供に謝れと言ったらチンピラが逆上して今にも拳を振り上げて殴ろうとしてるし!今更避けられないし、せめてこの子に怪我しないように抱きしめてあげるしかないわ。

 ユリアさんごめんなさい!後でお説教を受けますら!……?チンピラの拳が飛んでこない?恐る恐る目を開けると同い年位の男の子がチンピラをドロップキックで倒していた…!

 

ーリィン視点ー

 

チンピラ「キュウ…」

 

リィン「……」

 

女の子の様子を見てみると怪我一つ無いのが確認出来た。

 

スミレ色の女の子「貴方は一体…?」

 

リィン「唯の旅行者だよ?」

 

そう言って俺は彼女にてを差し伸べた。

 

リィン「大丈夫、立てるかい?」

 

スミレ色の女の子「え?ええ、ありがとう…あの?」

 

リィン「とりあえず場所変えないかな?ちょっと人だかりが多くなったし」

 

スミレ色の女の子「そ、そうね私も賛成」

 

そうして俺達は絡まれていた子供を親に引き渡すとそそくさとその場を後にした…

 

 

《コーヒーハウスパラル》

 

注文したジュースを飲みながら改めてお互いに話し合った。

 

スミレ色の女の子「改めて助けてくれてありがとう、貴方のおかげであの子も私も怪我一つなかったわ」

 

リィン「礼には及ばないさ、だけど無茶もいいとこだよ?幾らチンピラだからといっても大人だからね?」

 

スミレ色の女の子「ゔ…それは、解ってるんだけど性分でつい…あ、そういえば名前を言ってなかったね?私はクローゼ、クローゼ・リンツていうの貴方の名前も教えて欲しいわ」

 

リィン「俺はリィン・アイスフェルト宜しく、エレボニアから来た旅行者さ」

 

クローゼ「リィンね、こちらこそ宜しくリィンは旅行者って言ってたけどグランセルは何時きたの?」

 

リィン「今日来たばっかりさ、本当はロレントに行く予定だったんだけど大型魔獣が街道を塞いでいるから一日ホテルで待機さ」

 

クローゼ「そうなんだ…じゃあお礼にグランセルを案内してあげる!私これでも地元民だからガイドブックに載ってない美味しい屋台とかも知ってるわ!」

 

リィン「いいのかい?」

 

未来の次期女王に観光案内なんて畏れ多い様な…

 

クローゼ「良いのいいの!私も今日久しぶりに買い物したいと思ってたんだけど、付き添ってくれる予定の人が遅れるって言うから一人じゃあつまらなかったから一緒に居てくれると嬉しいわ」

 

ここまで誘ってくれるのに断わるのは失礼かな…?

 

リィン「…じゃあお言葉にあまえようかな?」

 

クローゼ「やったぁ~!じゃあ早く行こう!案内してあげる!」

 

そう言って俺の手を笑顔で引っ張りながら早く行こうと促した

 

リィン「やれやれ、王室に知れたらどうなるやら?」

 

クローゼ「リィンどうしたの?」

 

リィン「なんでもないよ、じゃあ案内頼むよクローゼ?」

 

クローゼ「ふふ、任せて頂戴」

 

そうして俺はクローゼの案内で観光を楽しんだ。歴史資料館を回ったり、再び《エーデル百貨店》でクローゼが欲しがったみっしぃ(太眉バージョン、何故制作者はこれでゴーサインを出した?)を購入したり、リベールの象徴の白ハヤブサを模した髪留めをクローゼにプレゼントしたり(何故か店員が微笑ましげに見たりクローゼが顔を紅くしていた、解せぬ)屋台でクレープを一緒に食べたり充実した一日だった…

 

ーグランセル城前ー

 

クローゼ「今日はありがとう、とても楽しかったわ!」

 

リィン「こちらこそありがとう。楽しい観光だったよ」

 

クローゼ「……明日ロレントに向かうのよね?」

 

リィン「うん、当分はロレントに滞在するつもり」

 

クローゼ「そっか…ねぇ、リィン!これを貰ってよ!」

 

そう言って取り出したのは黒いハヤブサが描かれた懐中時計それも導力を使わないゼンマイ式の時計だった

 

クローゼ「亡くなった父様と母様が私に誕生日プレゼントに贈ってくれた白ハヤブサと黒ハヤブサの時計、リィンに黒いハヤブサの方の時計をあげる!」

 

リィン「そんな…御両親の形見の品なんて受け取れないよ…」

 

クローゼは頭を振った

 

クローゼ「確かに形見たけど、何時までも後生大事に持っていても父さまや母様は喜ばないと思うわ。それだったら信頼できる…貴方に持っていてもらえれば私も嬉しいわ…」

 

これは…ここまで言われれば断れないな

 

リィン「判った。有難く受け取らせて貰うよ。」

 

俺は懐中時計を受け取った

 

クローゼ「またグランセルに遊びにきてね?その時は私も立派な淑女になって歓迎するから!」

 

 

リィン「うん、俺も何時かここでまた会えるのを楽しみしてる」

 

そう言って俺達は互いにわかれた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーホテルにてー

 

ユン老師「のう、リィンよ?」

 

リィン「何でしょうか?老師?」

 

ユン老師「デート楽しかったかの?」

 

リィン「…………ゑ?」

 

 

 

 

 



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第十話

あけましておめでとうございます

やはり書くのは難しいですが、こんな凡作を読んでくれる方達の暇潰しの種になれば幸いです


 

七耀暦1197年リベール王国

 

翌日準備を整えた俺達は早朝グランセルをでてキルシェ通りを歩き、グリューネ門を目指していた。基本的に街道は魔獣除けの街灯?があるから故障しているか昨日の様に大型魔獣が街道に居座るということがない限り比較的安全ではある、只あくまでも比較的であって零ではないので一般人が街道を通るのは少なく、飛行船の発達によってその傾向が拍車を掛けていた。

 

だから街道を利用するのは遊撃士か軍それか猟兵、偶に陸上輸送する業者以外には一般人は滅多にいない…つまり何が言いたいのかと言うと…

 

ユン老師「八葉一刀流 壱ノ型 螺旋撃」

 

「弐ノ型 疾風」

 

ユン老師「フム、やはり魔獣は多いのう…じゃがリィンに見取り稽古を見せる相手が多いに越したことはないからのう」

 

遊撃士が定期的に排除してるとはいえ魔獣は数が多い、しかも魔獣除けの街灯を少し離れるだけでも魔獣の遭遇率は高く跳ね上がる。そんな状況で老師は魔獣を斬り捨てていた…八葉一刀流という物を実際に見せた方が早いと言って目にも止まらぬ疾さで太刀を振るうその姿は正に剣仙と呼ぶに相応しい立ち振る舞いに俺は目を奪われていた。

 

ユン老師「これリィン、ぼ~っとしとらんで儂の傍でちゃんと八葉の技をよく観察せい」

 

リィン「あ、はいすいません。すぐ参ります」

 

老師に注意され俺は慌てて老師の傍に駆け寄った。

 

ユン老師「うむ…ではよく観察せよリィン」

 

「三ノ型 業炎撃」

 

そうした見取り稽古を兼ねた魔獣駆除をしながら無事にグリューネ門を通過した後も見取り稽古を続け、ミストヴァルトの森との分岐点に差し掛かった時だった。

 

????「ヨシュアー!早く、早くー!!」

 

前から同い年位の女の子と男の子が釣り竿を持って走って来た…って今ヨシュアって言ったよな?じゃああっちはエステルか?

 

ヨシュア「エステルー?ちゃんと前見ないと転ぶよ〜」

 

エステル「大丈夫よー!うわ?!…あれ?」

 

ユン老師「大丈夫かの?お嬢ちゃん」

 

転けかける処をユン老師が支えて無事だった…

 

エステル「あ、ありがとうごさます。」

 

ヨシュア「エステル、だから言ったじゃないか…済みませんお手数おかけしまして…」

 

ユン老師「何、大したことはしてはおらんよ…所でちと尋ねるがお嬢ちゃん、もしかしてカシウスの娘じゃないのかのう?」

 

エステル「え?お爺さん家の父さんを知ってるの?」

 

ユン老師「うむ、よう知っとるよ。あやつに剣を教えたのは儂じゃからな」

 

エステル「へ〜父さんがねぇ〜」

 

ヨシュア「まさか、八葉一刀流の《剣仙》ユン・カーファイ!?」

 

エステル「あれ?ヨシュア知ってるの?」

 

 

ユン老師「そうじゃ、詳しいの少年…ふむ?お主その年で双剣を使うのか?大したものじゃ」

 

ヨシュア「!!?……」

 

 

リィン「老師、此処で話すのもなんですからそのカシウスさんという方の家に訪ねてはどうでしょう?」

 

ユン老師「そうじゃの、元々カシウスに訪ねる予定じゃったし…済まないがお嬢ちゃん、少年案内頼めるかのう?」

 

エステル「いいですよ〜お父さんのお師匠さんだったら大歓迎ですよ〜あ、それで君は誰?」

 

リィン「ユン老師に弟子入り予定のリィン・アイスフェルトって言うんだ、よろしく」

 

エステル「へ〜そうなんだ~あ、私はさっきも言ったけどエステル、エステル・ブライトって言うの、それでこっちが…」

 

ヨシュア「…ヨシュア・ブライトだよ、それでロレントに来たのは父さんに会う為?」

 

リィン「あ〜、ユン老師はそうだろうけど俺はちょっとややこしくてね?今は言えないかな?」

 

エステル「ふぅん?ま、人に言いたくない秘密なんて誰にもあるしね。じゃあ父さんの家に案内するから付いてきてー!」

 

そうして一緒に歩く事三十分でロレント市とブライト家の二又に別れてる分岐に入りブライト邸に近づいた…

 

 

エステル「此処が私達の家だよ〜!父さ〜ん!!お客さんだよ〜!」

 

 

そう言ってエステル達は家に入っていった…

 

????「客…?珍しいなどちら様ですか…な!?」

 

ユン老師「久しぶりじゃなカシウス?お主に奥伝授けて以来かの?」

 

カシウス「老師!?」

 

原作でも描写が無かった邂逅がなされた瞬間だった…

 

 

 

 

 

 

フローラside

 

カルバート共和国首都イーディス

 

フローラ「此処は…何処かしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第十一話

 

七耀暦1197年リベール王国ロレント市 ブライト邸

 

ユン老師side

 

儂とカシウスの再会はそこそこにカシウスはウッドデッキの机の上に盃と酒用意して儂に渡した。カシウスの娘は「真っ昼間からお酒を呑んでどーすんのよ!」と小言を言っていたが流石に大事な話があるのを察してヨシュアという少年とリィンを連れて家の近くの池で釣りを楽しんておるのう。

 

カシウス「いやはや、リベールに来られるのなら連絡の一つでも寄越して頂ければお迎えに上がりましたのに…」

 

ユン老師「何、儂はその様にされたくないのはお主も知っておるじゃろう?儂は気紛れに吹く風の如くじゃよ」

 

カシウス「ハッハッハッ!老師はお変わりないようで安心しました!」

 

カシウスは盃の酒を唇に浸る程度に口をつけていたが…

 

カシウス「…老師、申し訳ありません…」

 

此奴はそう言って頭を下げて謝罪してきおった…やはりあの件か…

 

ユン老師「…お主が剣を置いた話か?」

 

カシウス「はい…老師に奥伝まで授かった身で有りながら…我ながら情けない話です」

 

此奴は力無く笑っておった…

 

カシウス「5年前…《百日戦役》の終盤、帝国軍の砲撃がロレントの時計塔に直撃して妻と娘…エステルがあの時計塔の真下にいました…エステルは妻が庇ってくれたお陰で掠り傷一つ有りませんでしたが、妻は…還らぬ人になりました…」

 

カシウス「私がその事を知ったのはリベール全土で帝国軍を駆逐した後でした…私は情けない旦那です、妻の死に目にも立ち会えず、娘が哀しむ中でも傍に居られず事後処理に追われていました…人々は私の事をやれ救国の英雄だとか剣聖と持ち上げますが、私は肝心の時に大切な家族を守れなかった唯の男です」

 

そう言ってカシウスは度の強い酒を勢いよく呷った…

 

カシウス「せめて娘の傍にいようと軍を辞め、遊撃士になり老師から教わった剣を置いた癖に八葉一刀流を棒術に落とし込みました…フ、剣聖が聞いて呆れますよね」

 

ユン老師「…カシウス、お主は今までの修業が無駄だっと思うか?」

 

カシウス「まさか!老師に教えて頂いだ事は今でも私の糧になっております!!

 

ユン老師「なら良い、お主はお主の《八葉》を極めれば良い…棒術に落とし込んだ?結構な事じゃ、その棒術でもって今度こそ大切な物を守ってみよ」

 

カシウス「あ…」

 

カシウス「…フフフ、矢張り老師には敵いませんね。そんなことを言われたら弱音を吐けないじゃないですか…」

 

ユン老師「吹っ切れたようじゃな?」

 

カシウス「ええ、お陰様で…」

 

ユン老師「なら、早速頼みたいことがあるのじゃが…」

 

カシウス「あのリィンという少年のことですか?」

 

ふむ、まぁ当然判るか…

 

カシウス「彼自体は何の問題は無いでしょう…寧ろユン老師の《最後の弟子》としては賛成です。ですが…彼の〘中〙にある禍々しい《黒いナニカ》が私は気に掛かります。彼はそのことは…?」

 

ユン老師「無論知っておる。その上でリィンはその事実を否定しない、したくないと言いおった…その《チカラ》が自分の命を救った事実を向き合い、この《チカラ》を大切な人達を守る為に使いたいと言うなら儂はそれに応えるまでよ…お主にも協力してもらいたいが如何に?」

 

カシウス「…其処までの覚悟を彼が示したのなら私がどうこう言うのは筋違いですね、良いでしょう…私も彼の修行の手伝いをさせて頂きますよ」

 

ユン老師「決まりじゃな…では明日早速ミストヴァルトの森に入り儂とお主や魔獣達との稽古を始めようかのう、儂が鞭でお主は飴で頼むぞい」

 

カシウス「フゥ…(やれやれ老師のスパルタ稽古か…リィン君頑張れ、老師の修行はきついが必ず君の求める強さを手に入れられる筈だ)」

 

リィンside

 

リィン「ゔ?寒気が?!」

 

 

エステル「大丈夫、風邪?」

 

リィン「いや、只寒気を感じただけだから心配ないよ(それにしてもフローラ連絡ないな…大丈夫かな?まぁ彼女なら危険なことはしないか…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルバート共和国首都イーディス〘黒芒街 闘技場〙

 

フローラ「疾っ!」

 

 

「グハァ!?」

 

 

解説者「決まったー!メイドの拳が《熊殺しのジョン》の顎を捉えたー!!《熊殺しのジョン》起き上がれない!『五十人抜き』賞金百万ミラを手にしたのはなんとなんと、戦いとは無縁そうな美女メイドだぁー!しかもあれだけの人数を連戦したのに息切れ一つしていない?とんでもないメイドだぁー!?皆様彼女に惜しみない拍手を〜」

 

 

 ウ ォ ぉ ぉ ぉ ぉ!

 

チンピラ「いいぞー姉ちゃん!」

 

チンピラ「何処の店だ〜?絶対いくぜー!」

 

フローラ「…どうしてこうなったのかしら?」

 

 



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第十二話

遅くなり申し訳ありません、やっぱり書くのは大変だなぁ…


 

七耀暦1200年リベール王国ロレント市 ブライト邸

 

本格的にユン老師とカシウス師兄に修行してもらうことになってから3年がたった

 

シェラザード「いや〜先生だけじゃなく先生の恩師であるユン老師の修業についてこれる子がいるとはね〜」

 

俺は一日の修業を終えてブライト邸で老師とブライト一家と食事をしながら途中で入って来たシェラザードさんに目を向けた…

 

エステル「う〜ん、父さんやユン老師の修業は見て無いけどリィン君はよくボロボロになって帰ってきてたけど最近はそうでもないよね?」

 

ヨシュア「うん、この前は中伝を授かったし正直驚いたよ」

 

エステル、ヨシュアの二人の言葉に俺は頭を振りながら答えた

 

リィン「まだまだだよ、これからももっと精進しないと…」

 

シェラザード「な〜にかっこつけてるのよ〜人の好意はちゃんと受け取りなさい〜」

 

そう答えたらいつの間にか酔ったシェラザードさんが酒を片手に絡んできた…

 

エステル「ちょ!シェラ姉何時の間にお酒をのんでるの!?」

 

ヨシュア「しかももう二本目開けてるし…」

 

シェラザード「ほ〜ら、リィン飲みなさい〜」

 

うわ!絡み酒だよ…

 

リィン「シェラザードさん何時も言ってるけど俺未成年ですから」

 

シェラザード「だ〜いじょうぶよ〜私があんた位の歳には酒を飲んでたわよ〜」

 

リィン「それは絶対にあかんでしょうが…それにシェラザードさん後ろ見たほうが…」

 

シェラザード「な〜によぅ、そうやって逃げようたってそうは…痛ぁ!?」

 

フローラ「シェラザード、貴女又リィン様にお酒を飲ませようとしたわね…」

 

シェラザードさんの後にフローラが立っていて手にはお盆を持っていた、あれで頭を叩いたのだろう…

 

シェラザード「フローラ痛いじゃない〜大体このお酒はあんたがくれたんじゃない、誰とどう飲もうが勝手じゃないかしら〜」

 

フローラ「未成年に絡むなって言ってるのよ、それに一緒に飲むんだったらアイナに頼めばいいじゃない」

 

シェラザード「アイナは《ざる》じゃない〜私は気持ちよく酔いたいの〜」

 

フローラ「私からすればどっちもどっちよ…」

 

エステル「フローラさん大変ね〜でもフローラさんも結構飲むよね?」

 

ヨシュア「うん、前に居酒屋アーベントを覗いた時にシェラさん達と一緒に飲んでいたのを見かけたよ…フォークナーさんはフローラさんがお酒持ち込んでくれたお陰で店の酒の被害は最小限だったって」

 

リィン「あはは…(汗)」

 

俺が本格的にユン老師達に師事を受けた二日後にフローラと合流したのだがその時にグランセルでシェラザードさんと知り合ったらしい。なんでも当時依頼者のアイナさんの一族の遺産絡みでお家騒動に巻き込まれたシェラザードさん達を助けたのがきっかけだそうだ

 

合流後に老師達と面会したとき老師達はなにか気付いていたらしいけと有り難い事に追及はされなかった…いつか話す事を約束して…

 

エステル「そういえば今日は父さんは長期依頼で出掛けたけど、ユン老師は何処に行って来るって言ったけ?」

 

ヨシュア「確かカルバートに行って来るって言ったかな?リィンは何か詳しい話は聞いてる?」

 

 

リィン「うん?あぁ確か向こうにいる俺の姉弟子に当たる人を呼びにいったらしいよ」

 

エステル「へぇ〜姉弟子!でも父さんからそんな話聞いた事無いなぁ〜?ねぇその人の名前は聞いたの?〙

 

リィン「あぁ、確か名前は ……… シズナ、シズナ・レム・ミスルギと言ったかな? 」

 

食事が終わりそれぞれ寝静まったが俺は寝付けなく仕方なく夜風に当たりに外に出て近くの草むらに寝転がり空を見上げると満月が見えた…

 

リィン「ふぅ…満月が綺麗だな」

 

余りにも綺麗だからか現実味が感じられず不安が浮かんでくる

 

リィン(勝てるのか《黒》に…?歴史の影に蠢く怪物に父さんでも滅しれなかった相手だ、ましてや原作を変えるなんて俺にできるのか?)

 

フローラ「眠れませんか?」

 

いつの間にかフローラは後ろに立っていたが何時もの事なので気にせずに尋ねた…

 

リィン「ちょっとね…シェラザードさんは寝た?」

 

フローラ「えぇ、私が渡したウィスキーの瓶を抱えてご機嫌で寝ています。全く何時も思いますが彼女の肝臓どうなってるのか調べてみたいですよ」

 

 

リィン「ハハハ…」

 

フローラ「リィン様頭をどうぞ」

 

彼女はそう言って俺の頭を自身の膝に当てて膝枕をしてくれた

 

フローラ「大丈夫ですリィン様にはユン老師やカシウスさん、エステルさん、ヨシュアさんがいます。私も微力ながらお力添え致しますので…ですからどうぞ御自分の思う様になさって下さい」

 

リィン「…ありがとう、気が楽になったよ」

 

フローラ「フフ、どう致しまして此の儘で良いですからゆっくり御休みください」

 

そう言って俺に毛布を掛けてくれた…

 

リィン「そう…させて貰おうかな?じゃあ…おやすみ、フローラ」

 

フローラ「はい御休みなさいませ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フローラ「リィン様?私は何時までもあなたのお側におります…私が壊れるその時まで御守りいたします…」

 

          

 

 

 

 



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第十三話

???「はじめまして、私はシズナ・レム・ミスルギだよ。宜しくね弟弟子君?」

 

いつもの修行場に着いたらいきなりそんな発言をしてくる女性に少し戸惑いながらも此方も名乗り返す。

 

リィン「え…と?初めましてリィン・アイスフェルトです。老師よりお話は聞いています。シズナ師姉はカルバートで活動されているとか」

 

シズナ「アハハハ!シズナでいいよ。まだ私も中伝だし、だから其処まで畏まる必要はないよ」

 

リィン「じゃあ…シズナさんで?」

 

シズナ「う〜ん、まぁ其処ら辺が落とし所かな?」

 

そう言ってシズナさんは笑っていたけど…

 

リィン「あのシズナさん、老師は一緒じゃないんですか?」

 

帰って来たのなら一緒にいそうなものであるが…

 

シズナ「あぁ、老師なら君に会うように言った後カルバートの東部に行くって言ってたよ?今頃到着してるんじゃないかなぁ?…そうそう!老師から君宛の手紙を預かっているんだ。確か此処に…はい、これ」

 

シズナさんは懐から手紙を取り出しで俺に渡した。

 

リィン「…此処で読んでも?」

 

確認をとってから手紙を読んでみる…

 

『リィン、お主がこれを読んでいるという事は無事にシズナに会えたのじゃろう…カシウスには伝えていたが、お主にはなんの挨拶も無しに出て行ったことは詫びる。しかし、お主が中伝になった時には決意したのじゃ、お主はもう儂がおずとも自分だけの《八葉一刀流》に至る事が出来ると…次に会う時は奥伝を授ける時まで息災でな…追伸エステルの嬢ちゃんとヨシュアの坊主にも宜しく伝えてほしい、フローラの嬢ちゃんと仲良くな。   ユン・カーファイ』

 

 

フゥ…全くあいも変わらず自由な人だ

 

リィン「シズナさん手紙ありがとうございます。カルバート東部というと砂漠化しつつあるという?」

 

シズナ「そうそう!私にも理由教えて貰えなかったから分からないけどね〜、それにしても…」

 

シズナさんは俺をじっと見回しながら言った。

 

シズナ「うん、老師が言った通り君は面白いね〜《鬼》をその身に宿してるだけじゃない。……それにまだ、何か〘隠し事〙があるんじゃない?」

 

リィン「……ッ!!」

 

シズナ「アハハハ!大丈夫、大丈夫!!無理矢理聞こう何てしないから…だから其処の木の上に居る君もそんな物騒な代物は仕舞ってくれないかなぁ?」

 

「……」

 

彼女の視線の方向に目を向けると対物ライフルを構えていたフローラが険しい顔をしながら此方に近づいて来た。

 

フローラ「勝手な事をして申し訳ありませんリィン様、ですが彼女は警戒せざるを得ません。」

 

シズナ「フフフ主想いだねぇ…でもさっき言った通り無理に聞かないよ?私だって秘密にしてる事一つや二つ有るからねぇ…」

 

リィン「フローラ、銃を下ろして…彼女は多分言葉は違えないと思う。」

 

フローラ「………解りました」

 

そう言って彼女はライフルを収納してから彼女の方を一礼してから後ろに下がった

 

シズナ「さて…手紙も渡せたし私の用事も済まそう…弟弟子君刀を構えなさい」

 

彼女は鯉口を切りながらそう言ってきた

 

リィン「やはりそうなりますか…」

 

シズナ「うん、老師が認めた実力をこの目で確かめたいからね、悪いけど付き合ってもらうよ?」

 

彼女の剣気が高まってきてる!なら…

 

リィン「…解りました。胸をお借りします……コオォォォ、神気合一!」

 

今の実力は原作でいえば閃2の中盤位の実力…だから出し惜しみは無しだ!

 

シズナ「へえ〜それが君の《鬼》の力か〜面白い!」

 

更に剣気を高めてきた…!

 

 

 

「黒神一刀流中伝 シズナ・レム・ミスルギ」

 

 

「八葉一刀流中伝 リィン・アイスフェルト」

 

 

 

 

 

『『いざ』』』

 

 

 

 

 

 

『『推して参る!』』

 

互いの太刀が相手を捉えようと迫り、そして互いに弾くのを繰り返しながら互いに掠り傷ができたのでお互いが切り札を切った…

 

リィン「八葉一刀流 終ノ太刀・暁」

 

シズナ「黒神一刀流 皇技・零月一閃」

 

互いに切り札を出し…互いの太刀が折れた。

 

シズナ「へぇ…老師が一目置く訳だ。これは将来楽しみだな」

 

そう言いながら彼女は折れた太刀を鞘に納めた。

 

リィン「いえ、俺も良い経験になりました。それと…すいません、太刀を折ってしまって…」

 

俺も太刀を納めながら謝罪した。

 

シズナ「アハハハ!良いって…これは数打ちだから気にしなくていいさ!」

 

彼女は柄を叩きながら応えた

 

シズナ「うん、決めた。暫く君の修行に付き合うよ」

 

リィン「それは…俺としても異存はないですがカルバートの方はいいので?」

 

シズナ「問題ないさ、信頼出来る補佐役がいるからね〜それに互いに刺激を貰えばさらなる高みに行けそうだし」

 

そう言って彼女は手を差し出した

 

シズナ「そういう訳だから宜しくね、《リィン》」

 

リィン「こちらこそ宜しくお願いしますシズナさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回空の軌跡に入ろうと思います。


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第十四話

お気に入り登録が200件に登った…だと?信じられない。


七耀暦1202年 ブライト邸

 

エステルside

 

エステル「ふぁぁぁ〜…良く寝た〜ヨシュアは起きたかな?」

 

そう思っていたけど外からハーモニカが聞こえてきた…

 

エステル「あ、起きてたみたいね」

 

私はベットから起き上がりパジャマを脱いで何時もの服に着替えて二階のバルコニーに向かうと案の定ヨシュアがハーモニカを吹いていた。暫くそのまま聴いていたけど切のいい所で演奏を止めたので私は拍手した。

 

エステル「朝から上手いわね〜」

 

 

ヨシュア「おはようエステル、起こしちゃったかな?」

 

エステル「ううん丁度起きたとこ、それにしても本当に綺麗な曲よね〜なんてタイトルだっけ?」

 

ヨシュア「星の在り処だよ」

 

エステル「そう、それ!はぁ〜私もやってみたいけど難しいのよね〜」

 

 

ヨシュア「棒術よりは簡単な気がするんだけど、根気よく練習すればエステルでも上手くなるよ」

 

ヨシュアはそう言って励ましてくれ…ん?

 

エステル「ちょっとヨシュア?今さり気なく失礼なこと言わなかった…?」

 

ヨシュア「気の所為じゃないかな?それに僕より上手い人が身近に居るじゃない」

 

エステル「身近…?あぁフローラさんね、確かにあの人の歌声綺麗よね〜」

 

初めて見た時もあの人すっごく綺麗だな〜なんて言ったのを覚えてる、その上歌も上手だし、スタイルもいいし…

 

エステル「しかも料理も美味しいからついついおかわりしちゃいそうになるのよね〜」

 

 

ヨシュア「食べ過ぎには注意ってね。そういえばリィンはまた彼女との修行に行ったのかな?」

 

エステル「多分ね〜、部屋に居なかったからシズナさんと稽古してるんじゃない?でも正直姉弟子って家の父さん位の歳だと勝手に想像してたけど私達よりちょっと年上なだけなんて…」

 

 

 

 

「以外だったかい?」

 

エステル「うひゃあ!?…ってシズナさんいつから其処に?!」

 

シズナ「う〜ん、ハーモニカが難しいってところかな?」

 

エステル「ほぼ最初からですか…」

 

この人隠形上手いから心臓に悪いわよ…美人なんだけどこういうトコ苦手だなぁ

 

シズナ「いやあ~照れるな〜」

 

エステル「誉めてないですし、さも当然のように心を読まないで下さい!」

 

嗚呼もうこの人は!

 

ヨシュア「落ち着きなよエステル…それでシズナさんが此処に居るという事はリィンも戻って来たんですか?」

 

シズナ「うん、リィンなら下でフローラの食事の準備を手伝ってるよ、多分もうすぐ…」

 

フローラ「皆様ー!朝食の用意が出来ましたー!」

 

シズナ「ほらね」

 

エステル「はぁ、ヨシュアとりあえず食べに下に降りよう。今日は遊撃士試験だし」

 

朝から何で疲れ無きゃいけないのよ…

 

リィンside

 

リィン「フローラ、スープの味付けはこれで良いかい?」

 

フローラ「失礼します…はい、これで大丈夫です。後は盛り分けるので食器を出して下さい」

 

リィン「了解」

 

テーブルに人数分の皿とスプーンを出して準備OK

 

カシウス「やれやれ、毎回思うが君達は客人だから食事の用意なんてしなくても良いのに」

 

リィン「いえ、師兄には時間を割いて稽古に付き合って貰ってますのでこのくらいは当然です」

 

フローラ「同感です。それにこの家には育ち盛りが多いですからカシウス殿一人だと作るのは大変でしょう」

 

カシウス「やれやれ、弟弟子に気をつかわせてしまうとは…」

 

カシウス師兄は溜め息を付いてるけどこの程度は当たり前だと思うんだけど…おっとこの気配は

 

リィン「やぁ、エステル、ヨシュアおはよう。気合入ってるね」

 

エステル「おはよう!父さん、リィン、フローラさんありがとうご飯を作ってくれて」

 

ヨシュア「おはよう父さん、リィン、フローラさんも」

 

カシウス「おはよう。準備出来たから顔を洗って席に付きなさい」

 

シズナ「カシウス師兄どうです?ご飯食べた後運動がてら死合…」

 

カシウス「やらぬよ、それよりさっさと席につけ」

 

シズナ「む〜、分かりました」

 

この遣り取りも何度も良くやるな〜…シズナさんは半ば本気だろうけど

 

カシウス「さて、揃ったことだし…いただきます。」

 

『『『『いただきます』』』』

 

暫く和気あいあいとしていたがカシウス師兄がシズナさんに訊ねた…

 

カシウス「稽古の方は順調みたいだかお前は何時まで此処に滞在するんだ?」

 

シズナ「そうですね…リィンには一部とはいえ黒神一刀流を教えて物にしていますし、そろそろカルバートに戻ろうかと思います」

 

カシウス「そうか…」

 

エステル「え〜シズナさん帰るんですか〜もう少し稽古してほしかったのに〜」

 

シズナ「フフ、悪いねエステルだけど元々私はユン老師にリィンのことを頼まれて来ただけたからね。此処まで逗留する予定ではなかったからね…それに、《猟兵》がリベールに何時までもいるのは不味かろうさ」

 

ヨシュア「まぁ確かに、忘れそうですけどシズナさん猟兵なんですよね」

 

シズナ「そうそう、これでも高位の猟兵団に属してるからね〜帝国や共和国と違ってリベールは猟兵団の運用は禁止されてるからイメージし難いだろうけど」

 

シズナさんが猟兵だというのは初めて会った時の自己紹介の時にエステル達には知られたけどそこまで嫌悪感の類見せなかった彼女達にシズナさんは何故普通に接せるのか?なんて尋ねたら…

 

「え?自分の意志で猟兵という選択したのなら私達がどうこう言うのは筋違いじゃないですか?確かに遊撃士と猟兵は相容れない関係ですけど《個人》にまで色眼鏡掛けたくないですし…」

 

そう返されるとは思わなかったシズナさんはエステルのことを気に入り、「黒神一刀流は教えられないけど稽古には付き合ってあげる」と言ってヨシュア共々稽古に付き合っていたらしい。

 

シズナ「まぁ今日はエステル達の遊撃士試験だから見届けるつもりだから発つにしても明日以降になるだろうね」

 

リィン「エステル、そういえばもうギルドに向かった方がいいんじゃない?」

 

クローゼから貰った懐中時計の時刻を確認するとそろそろ向かっても問題無い時刻である。

 

エステル「あ、本当だ!シェラ姉を待たせちゃ駄目だもんね!」

 

ヨシュア「そうだね、余裕を持って行かないと」

 

カシウス「エステル、済まないがこれで帰りにリベール通信の新聞を買ってきてくれ。お釣りは自分の小遣いにしていいからな」

 

カシウスさんはそう言って千ミラをエステルに渡した

 

エステル「やった、これでストレンガーの新作スニーカーが…」

 

フローラ「女の子としてどうなのかしら?…」

 

フローラのツッコミも分かるけどまぁ…何時もの事だ

 

リィン「俺達も片付けたらそっちに向かうから気をつけてなー!」

 

 

 

 

エステル「うん、分かったわ。じゃ、行ってきまーす!」

 

カシウス「…」

 

シズナ「師兄どうしました?不安になりましたか?」

 

カシウス「いや、そんなこと…違うな確かに不安はあるかもしれん。遊撃士にはなれるだろう…だが、それから先いろんな依頼を受けるだろう。そしていろんな不条理も目にする筈だ。あの娘にそれが耐えられるだろうか?」

 

リィン「エステルなら大丈夫でしょう」

 

カシウス「何故そう言い切れる?」

 

 

 

 

 

 

リィン「此れ迄もヨシュアとエステルが互いに支え合いながら進んで来ました。あの二人なら不条理を乗り越えられるでしょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第十五話

お待たせしました


朝食の後片付けを終えた後俺はフローラと一緒にエステル達の試験を見学するためにロレントに入った。最初フローラの銃の整備を依頼していた《エルガー武器商会》に赴いた。

 

フローラ「おはようございます。エルガーさん」

 

リィン「こんにちはエルガーさん、頼んでいたフローラの銃を取りに来ました。」

 

エルガー「おお、リィンにフローラ嬢ちゃんじゃないか!銃だったな?今出すから少し待っててくれ」

 

そういうとエルガーさんは後ろの棚からケースを出して拳銃とライフルを取り出した。

 

エルガー「帝国製の銃は扱うのは初めてじゃないが部品は取り寄せになっちまたぜ。拳銃は要望通り3点バースト、21発ロングマガジン対応に改修、ライフルの方もカービン化にしといたぜ。でもフローラ嬢ちゃんの細腕で扱えるのかい?依頼を受けといてなんだけど…」

 

受け取った銃を手に構えながら動作確認をしているフローラにエルガーさんは心配そうに訊ねるがフローラは微笑みながら答えた

 

フローラ「心配ご無用です。これでも力は有りますので、それでお幾らでしょうか?」

 

エルガー「まぁ、嬢ちゃんが良いって言うならこれ以上言わないけどよ?全部で1500ミラだよ」

 

リィン「分かりました…確認をお願いします」

 

エルガー「確かに、そういえばエステル達は遊撃士(ブレイザー)試験今日なんだよな?」

 

リィン「えぇ、今頃始める筈です」

 

エルガー「試験終わったら顔見せに来いとエステル達に伝えてくれ」

 

リィン「分かりました。必ず伝えます」

 

クルーセ「あー!リィンにフローラさんだー!」

 

《エルガー武器商店》を出て直ぐ声を掛けてきたのは市内に住むクルーセちゃん、将来リベール通信社に入りたいと記者の真似事をしているのだが…

 

リィン「おはようクルーセちゃん、何か面白い事はあった?」

 

クルーセ「ううん、今はエステル達の遊撃士(ブレイザー)試験が終わったらインタビューしよーと待ってたけど二人にも取材しようと思ってたとこ」

 

リィン「へぇ、それはまたどうして?」

 

クルーセ「だって、カシウスさんに弟子入りしたイケメンにその彼に仕える謎の美人メイド!読者の想像を掻き立てるに充分なタイトルじゃない!」

 

リィン・フローラ『『………(汗)』』

 

フローラ「えっと、クルーセちゃん?確かに私はリィン様にお仕えしてるけど疚しい様な関係じゃないのよ?」

 

クルーセ「分かって無いですよー!フローラさん、そう書いた方が読者の受けが良いんです!」

 

リィン「えっと…良いのかなぁ?」

 

この子の将来が心配だ…

 

彼女とはその場で別れ《エルガー武器商店》の裏手に回った今頃なら丁度地下水路に入る前の筈…

 

 

 

シェラザード「あら?リィンにフローラじゃない?試験を見に来たのね」

 

リィン「えぇ、だけど試験の方を優先してください。」

 

シェラザード「そうさせてもらうわ…エステル、ヨシュアこれが最後の試験よ。今から地下水路に降りて其処にある箱のなかの物を回収して私に渡す事、これを持って試験は終わりよ

 

エステル「えっと、それだけ?」

 

ヨシュア「エステル、油断しないの最後の最後まで気を引き締めないと」

 

シェラザード「ヨシュアの言う通りよ、判ったのなら即行動しなさい」

 

エステル「は〜い」

 

そう言ってエステル達は地下水路に入って行った…

 

シェラザード「さて、どう思うあんた達無事合格出来ると思う?」

 

リィン「大丈夫ですよあの二人は優秀ですから」

 

フローラ「私もリィン様に同感よ、第一貴女がそんな甘い指導する訳無いじゃない」

 

シェラザード「フローラ、あんた私を何だと思ってんのよ…まぁ私が持てる物を全て叩き込んだのは否定しないけど、それとあんた達ロレント出るって本当?」

 

リィン「えぇ、今晩カシウス師兄に話します。元々ユン老師と一緒に師事を手ほどきを受けましたが中伝を授かりましたし《自分だけの八葉》を見つけるためにもまた旅に出ます」

 

シェラザード「そう、寂しくなるわね…折角の飲み仲間が居なくなるなんてね〜」

 

フローラ「寧ろ貴女は酒を少し控えなさい。毎度よくあれだけ飲めるわね、肝臓を壊すわよ」

 

シェラザード「い・や・よ!第一アンタやアイナだって同じ位呑んでるじゃない!幾ら呑んでも酔ったりしないクセにずるいわよ」

 

フローラ「いや、ずるいと言われても困るわよ」

 

本当、仲良いな?まぁフローラは飲み食いしても直ぐにエネルギーに変えるから酔う事ないからなぁ…おっと、この気配は 

 

リィン「二人共雑談は其処までに、エステル達が帰って来るみたい」

 

エステル「よっと…シェラ姉戻ったよー!」

 

ヨシュア「只今戻りました」

 

シェラザード「ご苦労さま、目的の物はちゃんと回収してきた?」

 

ヨシュア「はい、これです」

 

ヨシュアは懐から二つの小箱をシェラザードさんに渡した…

 

シェラザード「…うん、封を切られた跡もなし初依頼達成ね」

 

あ、エステルが冷や汗かいてる…開けようとしたな?

 

シェラザード「では只今を持って全ての試験を終了したわ。後はギルドに戻るわよ。合否はそこで発表するわ、リィン達は…着いてくるみたいね?じゃ行きましょう」

 

アイナ「お帰りシェラザード、エステル達も…あら?リィン君やフローラもどうしたの、依頼かしら?」

 

リィン「こんにちはアイナさん、俺達はエステル達の試験を見届けに来たんです」

 

シェラザード「ま、そういう訳でリィン達は此処でちょっと待ってて頂戴、エステル達は私と一緒に二階に上がるわよ」

 

そう言ってエステル達を連れて二階に上がっていった…

 

アイナ「リィン君は遊撃士になる気はないの?結構いい線いくと思うんだけどなぁ?」

 

リィン「俺に遊撃士は向いてませんよ。それに俺にもやるべき事が有りますから…」

 

アイナ「そう…フローラはどう?」

 

フローラ「私?…私も興味無いわ。友人が困ってる時に手を貸すのは吝かじゃないけど、私は正義の味方って柄じゃないわよ…リィン様のメイドである事に不満もないし」

 

アイナ「街の子供達にお姉ちゃんと慕われてる貴女が柄じゃないなんて思わないけど…と、終わったみたいね」

 

降りてきたエステルの顔を見れば…まぁ分かるけど一応聞こうかな?

 

リィン「どうだった?」

 

エステル「フフフ…合格、合格よー!これで晴れて遊撃士だー!」

 

ヨシュア「準遊撃士だけどね」

 

エステル「そこ!水ささない!」

 

リィン「まぁ何もともあれ、おめでとう二人とも」

 

フローラ「おめでとう御座います。今晩はお祝いですね」

 

エステル「えへへ、ありがとう二人共」

 

シエラザード「感激してるとこ悪いけどまだスタートラインに立っただけだからね。こき使うから覚悟しなさいよ〜」

 

エステル「お、お手柔らかにお願い致します(汗)」

 

シェラザード「それは無理な話ね、まぁ今日は帰って良いわよ。私はこれから仕事があるから失礼するわ」

 

エステル「あ、そっかわざわざ時間割いてくれてたもんね。ありがとうシェラ姉」

 

ヨシュア「お付き合い頂きありがとうございます。」

 

シェラザード「別に良いわよ。当たり前のことしただけだし、じゃ私は行くわ」

 

エステル「じゃあ家に帰ろっから?」

 

ヨシュア「その前にリベール通信買わないと、父さんにたのまれたでしょ?」

 

エステル「あ、そうだった、じゃあ《リノン総合商店》に寄らないと」

 

俺達も同行して《リノン総合商店》でリベール通信を購入し市内を出ようとした時アイナさんが慌てて駆け寄ってきた。

 

アイナ「エステル!ヨシュア!丁度良かった。カシウスさんは家に居る!?」

 

エステル「え…?父さんなら書斎て書類を片付けるって」

 

ヨシュア「何かあったんですか?」

 

アイナ「ルックとパットが…翡翠の塔に向かったって連絡が入ったのよ!」

 

!!…そうだすっかり忘れていた。ゲームでは子供がたった二人で塔に入るイベントがあったんだった!

 

エステル「な!あそこは魔獣の住処になってる筈よね?」

 

アイナ「えぇ!でも今シェラザードも他の遊撃士が居ないからカシウスさんに頼もうと思って」

 

エステル「いえ!アイナさん!私達に行かせて下さい!今から行けば塔に入る前に追いつけるかもしれない!」

 

アイナ「貴方達が…?でも…」

 

ヨシュア「アイナさん、ここはエステルの言い分が正しいです。今は兎に角追いつくのが先決です」

 

アイナ「…解ったわ、責任は私がとります。エステル!ヨシュア!ギルドより緊急依頼です!子供達を早急に保護してください!」

 

「「了解!!」」

 

リィン「カシウス師兄には俺達が伝えます!アイナさんはギルドに!」

 

アイナ「感謝します!宜しくお願いします!』

 

エステル「リィン頼むわよ!」

 

ヨシュア「一刻も早く!」

 

リィン「任せろ!!フローラ!」

 

 

フローラ「承知しました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達はそれぞれ出来る事を全うするために動き出した…

 



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第十六話

大変お待たせしました


リィン「カシウス師兄!」

 

ロレントから大急ぎでブライト邸に戻った俺達は玄関のドアを勢いよく開けてその足で書斎の扉を開けた…

 

カシウス「おおリィン、そんなに慌ててどうした?エステル達の試験は終わったのだろう?」

 

リィン「それどころじゃありません!ルックとパットが…子供達だけで《翡翠の塔》に向かったとギルドに連絡が入りました!」

 

 

カシウス「な ん だ と!!…それで状況は!?」

 

フローラ「現在シェラザードを始めとした正遊撃士が居ない為エステルさんとヨシュアさんが子供達が塔に入る前に保護するために追いかけました!私達はアイナの替わりにカシウス殿に伝える為急いでもどりました!」

 

カシウス「判った!直ぐ支度する!済まないが君達も同行してくれ!!責任は俺が取る!」

 

少し迷ったが子供の生命が掛かってる。手伝える事があれば協力すべきだ!

 

リィン「解りました!フローラは…」

 

フローラ「私も同行します」

 

フローラ「私もそれなりに戦えます!流石にシズナ殿やカシウス殿には負けますが…」

 

微笑みながらもその決意は硬そうだった

 

リィン「師兄…」

 

カシウス「言っただろう?君達も・と、時間が惜しい!民間人協力者としてお願いする!」

 

リィン「解りました!フローラ!行こう!!」

 

フローラ「はい!」

 

カシウス「全速で走るぞ!ついて来い!」

 

『『はい!』』

 

俺達はブライト邸を全速で出てロレントに引返しギルドに立ち寄った

 

カシウス「アイナ!なにか新しい情報はあるか!?」

 

アイナ「あ!ブライトさん…いえ、シェラザードとようやく連絡はつきましたがやはり戻ってくるのに時間が掛かるそうで…」

 

状況は最悪か…!

 

カシウス「わかった!今から俺とリィン達で《翡翠の塔》に向かう!シェラザードが戻ったらそう伝えてくれ!…行くぞ!!」

 

そうして俺達はマルガ山道に向かって走り出した…

 

エステルside

 

《翡翠の塔》前

 

エステル「ねぇヨシュア、此処に来るまで誰にも会わなかったよね?」

 

ヨシュア「うん、やっぱりもう塔の中に入ってしまったんだと思う」

 

拙いわね…塔に入ってしまうと逃げ場が!

 

エステル「猶予はないわ、中にはいるわよ!」

 

ヨシュア「あ、エステルその前にこれ…」

 

これは…ティアの薬?

 

ヨシュア「急だったから二個しか持ってこれなかったからね。一個渡しておくよ」

 

エステル「ありがとう〜、あるとないとじゃ大違いだもん」

 

ヨシュア「どういたしまして、それより早く中を調べないと」

 

おっと、その通りだわ…

 

エステル「良し!じゃあ改めて中に入るわよ!」

 

塔の一層に入ったけどいる気配がない…何処に?

 

ヨシュア「エステル!耳を澄まして!人の声がする…」

 

「……!…?」

 

「……!!…」

 

微かに聞こえるこの声…ルックとパットだわ!

 

エステル「ルックー!!、パットー!!引き返しなさーい!」

 

…反応ないわね、無視したのかしら?

 

ヨシュア「いや、二層に上がったみたいだ。僕達も行こう!」

 

エステル「分かったわ!」

 

「「うわあァァァ!?」」

 

大急ぎで二層に上がると二人の悲鳴が聞こえた!不味い!?

 

エステル「ヨシュア!」

 

ヨシュア「了解!」

 

二人同時に駆けて行くと二人が魔獣に囲まれている!数は7体…こちらから背を向けている。ならば!

 

エステル「はぁぁぁー!せい!!」

 

魔獣「ギャ!?」

 

魔獣「ギイ!?」

 

エステル「遅い!」

 

魔獣「ゲギャ!?」

 

 

一匹目の魔獣の後頭部を叩き込み沈めた後2匹目を首をへし折った時点で3匹目がようやくこちらに気付いたがそのまま側頭部を打ち込まれて動きを止めたのを横目に子供達の前に立った。ヨシュアは…2匹斬り伏せて同じ様にして横に並んだ。

 

「え…?」 

 

「エステルお姉ちゃん!、ヨシュアお兄ちゃん!?」

 

エステル「二人とも、さがってなさい!ヨシュア、一気に畳み掛けるわよ!」

 

ヨシュア「うん!いくよ、アーツ駆動…!」

 

 

残敵は程なくして全て排除した。一般人は兎も角元々私達の実力でも対処出来る魔獣だったから良かった…それよりも!

 

エステル「それで…ルック、パット何故こんなことしたのかしら?(怒)」

 

「う…」

 

「えっと…それは…」

 

話を聞くとどうやらルックは遊撃士になるのが夢で此処を秘密基地として特訓していたとのこと、パットは誘われて着いてきたたらしい…

 

エステル「こ の お 馬 鹿!!魔獣がうろうろしているって散々言われたでしょうが!?帰ったらフローラさんや親御さんにお仕置きされるのを覚悟しときなさい!」

 

「「ごめんなさい…」」

 

ヨシュア「エステル今はその辺にしときなよ。父さんもこちらに向かってだろうし、一刻も早く合流しよう」

 

まぁ確かに…ここから先は保護者の領分ね…

 

エステル「そう…ね、二人とも歩けるわね?」

 

「「う、うん」」

 

エステル「じゃあ、行こっか…しっかし試験日から大変だったわね〜」

 

ヨシュア「まぁそうだね…でも実際の仕事を経験出来たのは大きいと思うよ?子供達も無事保護したし」

 

エステル「そうだけど…リィン達には悪い事しちゃったわね〜大急ぎで父さん呼んでもらったのに」

 

ヨシュア「念には念を入れるのは悪い事じゃないさ、空振りに終わるならそれで…!?エステル!!」

 

塔から出ると目の前の空間が…歪んでる?!ナニよこれ!?

 

ヨシュア「何かが顕れる!?」

 

そう言うと同時に歪みから出て来たのは…全長8アージュもある《巨人》!?

 

エステル「何 な の よ こ い つ はー!?」

 

 

 

 

 

 

 

〘魔 煌 兵 ヘ ヴ ィ ル ヴ ィ〙

 



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第十七話

お待たせしました…見てくれる人いるかなぁ?(汗)


エステル「な…何よコイツは…!?」 

 

何も無い空間から突如顕れた《巨人》は8アージュもあり、その手には大剣が握られていた…その姿はどう見ても普通の魔獣じゃない

 

「ーーーー!!」

 

ヤツは声にならない雄叫びを上げながら大剣を構えてきた

 

ヨシュア「エステル!ルックとパットを中に!」

 

ヨシュアの声で私は我に返り、急いで二人に声を掛けた…

 

エステル「ッ…!!ルック!パット!急いで塔の中に戻って!」

 

「「う…うぁぁぁ」」

 

不味い!恐怖で動けないみたい!仕方無い

 

エステル「ごめん二人とも!」

 

「「え?うわぁぁ!」」

 

私は二人を両脇に抱えて走り出した!

 

エステル「ヨシュア!二人は私が運ぶわ!」

 

ヨシュア「判った!先に行ってて!」

 

ヨシュアは敵を牽制しながら後退してなんとか塔に潜り込むことに成功した、幸い中にまでは入れない様だが自体が好転した訳では無いわ…

 

エステル「ハァ…ハァ…あれ、一体何なのよ?あんなの見た事も聞いた事もないわ…ヨシュアは何か何か知ってる?」

 

ヨシュア「いや…僕も初めて見るよ。そもそもアレ、魔獣のカテゴリーに入るか怪しいけど?」

 

言われてみれば確かに…精巧に造られた人形みたいな印象が感じたわ…

 

ヨシュア「それよりこれからどうする?ヤツは中には入れないけど外に居座り続けるみたいだよ、ホラ…」

 

ヨシュアに促されて外を覗いて見ると確かに入口付近にウロウロしている。

 

エステル「…ヨシュアの見立てではどう思う?」

 

ヨシュア「…塔に立て籠もるのも一つの手だとは思うけど、それは…」

 

どうやら考える事は同じみたいね…となると

 

エステル「ヨシュア?」

 

ヨシュア「うん、その方がいいかもしれない…」

 

なら…ルックとパットに声をかけないと。

 

エステル「ルック、パット大丈夫?」

 

「あ、エステル…」

 

「う、うん…なんとか」

 

元気無いわね、まぁあんなモノを間近で見たらそうもなるわね…

 

エステル「良い?よく聞いて、私達はあの《巨人》の目を引きつけるからあんた達は全速力でロレントに戻りなさい」

 

「「え?」」

 

「む、無茶だろ!?あんなでかい奴相手に二人だけなんて!」

 

「そ、そうだよ?それより此処に立て籠もって救援が来るのを待ってた方が…」

 

エステル「確かに奴は中に入れないわ…だけど」

 

ヨシュア「奴が塔を壊す事なら出来ると思う」

 

「「な!?」」

 

そう、あの図体で大剣を持ってるならこの塔を破壊すること等容易い。私達が出て来るのをじっと待ってるより隠れ場所から追い立てる方が楽だ、私達だけなら崩落する破片を避けることは出来るけど…

 

エステル「あんた達はそれは出来ないでしょ?酷な言い方だけど護衛対象を庇いながらヤツと戦う技量は今の私達にはないわ」

 

ヨシュア「それに、君達にはこちらに向かってる父さんに何が起きてるのか伝えてほしいのもあるね。僕等はその為に時間稼ぎをするんだ」

 

「そ、そんな…」

 

「ぼ、僕達のせいで…」

 

罪悪感でいっぱいになってるわね、フォローしないと…

 

エステル「…あんた達のせいじゃないわ。あんな《巨人》が現れるなんて誰にも予想出来ないわよ、というかあんなもんがホイホイ出て来てたまるかっての」

 

エステル「それに私達もやられるつもりはサラサラないわ、だからこそあんた達には一刻も早く父さんに知らせて欲しいのよ…特にルック、あんた遊撃士になるのが夢なんでしょ?夢を叶える為にも自分が今出来る事をしなさい」

 

「自分の出来る事…?」

 

ヨシュア「パットを無事に連れ帰る事さ、責任を感じているなら友達と一緒に無事に帰る事が君が今出来る事だよ」

 

「……解かった。元を正せば俺が不用意に立ち入ったのが原因だし、カシウスさんへの伝言間違いなくやり遂げるぜ!」

 

なんとか持ち直したかな?それじゃあ…

 

エステル「ヨシュア、タイミングは任せたわよ」

 

ヨシュア「うん、こっちも何時でもいけるよ」

 

良し!それじゃあヨシュアのカウントで5…4…3…2…1…0!

 

エステル「ハアァァァァァ!!」

 

ヨシュア「オォぉぉぉ!」

 

「ーーー?!」

 

ヤツはこっちが打って出るとは思わなかったみたいでヤツの顔面に叩き込んだら体勢を崩し視線が此方に向いた!

 

エステル「今よ!走りなさい!!振り向くな!」

 

「「う、うわぁぁぁぁー!!」」

 

なんとか走り抜けていったわね?頼むわよルック、パット…

 

ヨシュア「本来護衛対象だけで先に脱出させるのもどうかと思うけど…」

 

エステル「まぁ、しょうがないわよ…それよりもヨシュア、奴を倒せる自信ある?」

 

ヨシュア「さっきも言ったけど時間稼ぎしかできないよ、僕等の今の技量ではこれが精一杯だね」

 

エステル「そっか〜しょうがないか、さて…向こうは怒り心頭みたいだし父さん達が来るまで持ち堪えるわよ!」

 

ヨシュア「うん!行くよ!!」

 

それから奴との戦いは始まったけど余り効いてない上に細かいキズも直ぐに修復されてしまう。しかも…

 

エステル「ハァ…ハァ…、コイツ全然動きが鈍らないわ、こっちは体力減ってきてるし、やばいわね…」

 

私もヨシュアも今のところ大した傷は負ってないがこのままだと…え?あれは…

 

???「黑神一刀流 零の型【双影】」

 

あの巨人を一刀で吹き飛ばしたのは、リィン!?

 

リィン「やぁ、エステル、ヨシュア早々大変な目にあったね?」

 

エステル「え?リィンどうしてここに!?」

 

リィン「俺はあの後カシウス師兄に頼まれて救援の手伝いに来たんだ、そうそう子供達は無事に保護したぞ?エステル達が危ないから早く助けてくれってな」

 

合流出来たんだ、よかった…

 

リィン「さて、話は後にして…今はコイツを片付けるとするか」

 

巨人はさっきの斬撃で腹を裂かれているけどまだ動けるの!?

 

リィン「大丈夫、着いたのは俺だけじゃないから」

 

エステル「え?それって…」

 

フローラ「援護します」

 

カシウス「がら空きだぞ!八葉一刀流 【鳳凰烈波】」

 

エステル「す、すごい」

 

フローラさんが銃撃して注意を逸らして父さんの技がヤツの直りきって無い傷口に叩き込まれた!

 

リィン「止めだ!八葉一刀流 四の型【紅葉切り】!」

 

「ーーーー!?」

 

リィンの抜刀した太刀が奴の首を刎ねたら奴は声のならない悲鳴をあげながら消えていった…

 

カシウス「ふう…二人とも無事で良かったぞ」

 

ヨシュア「ありがとう父さん、助かったよ」

 

エステル「少し、いやかなり油断してたからね〜まさかあんなのが出るなんて…」

 

カシウス「それは仕方無いと思うぞ、今まであんなのは確認されなかったからな。しかし、あれは一体…?」

 

リィン「…」

 

ヨシュア「リィン何か考え込んでるけど、ひょっとして心当たりか?」

 

リィン「ん?あぁ少しね?でもとりあえずギルドに戻ろう」

 

エステル「そうね〜もうベッドに横になりたいわ〜」

 

こうして私達の遊撃士の初仕事は終わりを告げた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー????ー

 

「マサカリベールニ〘闘争〙ノタネヲマクタメニ魔煌兵ヲ送リコンダラ当代ノ『灰ノ起動者(ライザー)』ガイタトハナ、予想外ノツヨサダガマァイイ、イクラ強カロウガワレニハトドカヌ…ダガリベールハコレ以上ハ無理ダナ。キタルベキ〘闘争〙ノタネヲウエルニフサワシイ地ハ…ヲヲ、ココガイイダロウ。ゾンブンニアバレロガイイ、イママデノウラミヲハラシテミロ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロスベル」

 

 

 

エレボニアーリベール国際定期船    リベール国境上空

 

 

???「ううぅ…怖いのじゃ、揺れるのじゃ何故こんな鉄の塊が浮くのじゃ」

 

???「お婆ちゃん、大丈夫?」

 

???「大丈夫じゃない…大体空を飛ぶ必要はないじゃろ、地上で馬車を走らせれば…」

 

???「国と国の移動には必要よ?空に魔獣は出ないし…それに今は馬車じゃなくて導力自動車が一般的ね」

 

???「ぐぬぬぬ…これが数百年引き籠もってた弊害か」

 

???「そんな事よりお婆ちゃんいいの?」

 

???「儂にとってはそんな事じゃないわ!…いいのかというのは里を出る事か?」

 

???「うん、まだ私は外には出れないんじゃあ…」

 

???「未来も見透せず《黒》の動きが確認されている以上今更神秘もへったくれもなかろう…それよりお主の方がいいのかのう?」

 

???「なにが?」

 

???「お主の想い人はこの時代ではまだ会ってもいないし、他人行儀されたらお主は…」

 

???「いいの、全て承知の上よ…例え私の知っている〘彼〙じゃなくても、もうあんな理不尽を味あわせたくないもの」

 

???「そうかの…覚悟があるのならもう何も言うまい、儂は客室に戻っておるぞ、エマ」

 

エマ「うん、私はもう少し風に当たってから戻るね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エマ「リィンさん…貴方なら自分の事は忘れて幸せになってっていうでしょうね、でも私は貴方が居ない世界で幸せになることは出来ません。だから…灰の導き手としではなく貴方を愛した魔女エマ・ミルスティンとして貴方を今度こそ救います」



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第十八話

これと間話を投稿します…


ーロレント空港ー

 

昨日の晩事件の解決を報告をしたら、アイナさんがカシウスさん宛に手紙が届いていたと手紙を渡し、内容を読んだカシウスさんが急遽外国に翔ぶことになり、翌日ロレントの空港で俺達は見送りに来ていた。

 

カシウス「いきなりですまんな《銀閃》の、向こうでどうしても俺が行かなければ駄目な件らしくてな。お前も自分の仕事があるのに俺の仕事も振ってしまって」

 

シェラザード「いえ、先生がお忙しいのは何時もの事ですし、それより先生の代役が私に務まるか…」

 

カシウス「なに、お前さんなら大丈夫さそれとエステル達の方サポートも頼む。あの二人でも出来る仕事を回したがまだまだ新人だからな」

 

エステル「ちょっと父さん!?私達だってちゃんとやれるわよ!」

 

カシウス「ハッハッハ!俺から見ればお前達はまだまだ殻のついた雛だ!」

 

エステル「むぅ…」

 

ヨシュア「大丈夫だよ父さん、僕もついてるし」

 

カシウス「まぁそうだな…だがあんまりエステルを甘やかすなよ?」

 

エステル「どういう意味よー!」

 

カシウス「ハハハハ…リィン達も昨日は助かった。お陰で誰も大きな怪我はしないで済んだ」

 

リィン「いえ、俺が居なくともカシウス師兄なら問題なく解決出来たでしょう」

 

俺は偽らざる本音を語った。実際師兄の実力なら魔煌兵の一体なんて軽く屠る事など簡単な筈だし…

 

カシウス「いや、俺一人だったら遅れていた可能性も否定出来なかったさ、だからありがとう」

 

全く師兄は律儀なんだから…

 

エステル「でもリィンに聞いた後でもちょっと信じ難いよね〜見た私が言うのもなんだけど…」

 

シェラザード「まぁ確かにね…オカルトめいた話だったわね」

 

 

 

ー前日 遊撃士ギルドー

 

「「「「暗黒時代の産物??」」」」

 

リィン「ええ、俺も実際初めて見ましたが…」

 

エステル「ええっと…暗黒時代って確か」

 

ヨシュア「《大崩壊》の後500年に渡り大小様々な国が戦いに明け暮れた時代だね」

 

カシウス「そしてその時代に使われた技術は導力では無く魔導とよばれる技術で、今では全く使われなくなった…筈だが?」

 

シェラザード「そんな大昔の遺物がなんで顕れたのかしら?エステル達の話だと何も無い空間から突然出て来たらしいけど」

 

エステル「うん、なんの前触れもなしに出て来た…でもあれ、そんな古い感じしなかった」

 

ヨシュア「確かに、つい最近造られたような印象をうけたよ」

 

シェラザード「誰かが造って送りこんだってこと?…誰が?なんのために?」

 

カシウス「判らん、確かな事はナニカの悪意が動いてると言う事だ」

 

ー回想終了ー

 

カシウス「一応各地のギルド支部には今回の件を周知してもらう様手配したが、次現れるかどうかは正直判らん」

 

エステル「う〜ん、まぁ、ここで幾ら頭を捻っても判らない物は判らないしとりあえず今は良いんじゃない?」

 

『『『『(汗)』』』』

 

シェラザード「全くあんたって子は…」

 

フローラ「可愛いかと思うわよ」

 

リィン「まぁエステルらしいですよ」

 

ヨシュア「確かにね」

 

カシウス「やれやれ…」

 

エステル「??」

 

〘まもなく王都グランセル行が発進します。ご乗船の方はお乗りください〙

 

カシウス「おっと、時間か…それじゃあ俺は乗るからな」

 

エステル「父さんー!お土産期待してるわねー!」

 

カシウス「お前ね…仕事に行くだから」

 

カシウス「まぁ、時間と財布に余裕があったら考えておこう」

 

エステル「やった!」

 

ヨシュア「いってらっしゃい!父さん」

 

師兄を乗せた飛行船はゆっくりと飛び去って行った…

 

シェラザード「さてリィン、あんた達もこれからロレントをでるのよね?」

 

リィン「えぇ、ミルヒ街道を通ってボースに向かいます」

 

エステル「じゃあここでお別れか〜淋しくなるわね」

 

ヨシュア「かもね、でも僕達もいずれ正遊撃士の推薦を受ける為に各都市に回るから案外早く再会するかもしれないよ?」

 

エステル「そっか、そうだよね」

 

シェラザード「ま、あんた達は今受ける依頼をこなすのが先ね」

 

リィン「ハハ…まぁでもまた会いたいものだよ。エステル、ヨシュア、シェラザードさんお元気で」

 

俺は三人にそれぞれ握手を交わしなが別れの挨拶を口にした。

 

シェラザード「ま、あんた達も元気でね。フローラ今度会った時にはエレボニア産のワインでも持ってきなさいよ♥」

 

フローラ「貴女ねぇ…まぁエレボニアのウィスキー位なら考えるわ」

 

エステル「また会おうね〜!」

 

ヨシュア「お元気で」

 

リィン「さて、行こうか?」

 

フローラ「はい」

 

そうして俺達はエステル達と別れミルヒ街道側の通路に向かおうとした時…

 

「お~い!待ってくれー!リィン、フローラさん」

 

リィン「ん?貴方は…ホテル・ロレントの…」

 

声を掛けてきたのは顔なじみのホテルの従業員だった

 

「ハァ、ハァ…良かった…出る前に見付かった」

 

フローラ「どうしましたか?そんなに急いで…?」

 

「いや、実は頼みたい事があって…」

 

リィン「頼みたいって…俺達はこれからロレントを発つんですよ?直ぐに戻って来る訳じゃあないですよ?」

 

「あぁ解ってる…ボースに行くんだろう?だから呼び止めたんだ」

 

フローラ「?どういう事ですか?」

 

「実は…二人にある人のボース迄の護衛を頼みたいんだ」

 

リィン「…?それは遊撃士ギルドの領分でしょう?そっちに依頼すればいいんじゃ…?」

 

「いや、実は頼んだんだけど…空いてる人が居なくて明日になるって言われたんだ…その人は今日ボースに行きたいって」

 

成る程…でも

 

リィン「なら飛行船は?ボース行もまだ出てる筈だけど?」

 

「それが…どうしても歩いて行きたいと言って聞かないんだ…」

 

俺達は顔を見合わせた

 

フローラ「えっと…それならその方を説得して明日行かせれば…」

 

「いや、確かにそうなんだけど、どうしてもほっとけなくて…頼むよ!ちゃんと報酬渡すから!」

 

困ったな…こうして頭を下げられたら断りづらいな…仕方無いか…

 

リィン「判りました…その話受けますよ」

 

「本当か!?助かるよ〜今本人を連れてくるから待っててくれ!」

 

そう言って又来た道を戻って行った

 

フローラ「宜しいのですか?」

 

リィン「仕方無いさ、此処にはお世話になったからな…この程度は受けるさ」

 

フローラ「…確かに、なら私も反対致しません」

 

「おーい!」

 

おや?さっきの従業員が戻って来たか…さて、依頼人はどんな人か…な!?

 

「二人共この人がさっき話しをした人だ宜しくたのんだぞ!」

 

従業員が去った後にその人は自己紹介をし始めた…年若い女性で髪は黒くスタイルが良い…

 

???「突然この様なお願いを聞き入れてくださり有難う御座います。私の名前は…」

 

その顔には両目に包帯を巻いた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リーシャ・マオといいます短い道中ですが宜しくお願いします」

 

東方最強の凶手が目の前に立っていた…

 



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第十九話

俺達はとりあえず従業員から報酬を貰いロレントを発った…

 

リーシャ「本当にごめんなさい、大丈夫だって言ったのに従業員の皆さん心配性みたいで…」

 

リィン「いや、従業員の心配も理解出来ますよ。その目…見えてないのでしょう?」

 

その問いにリーシャは頷いた…

 

リーシャ「ええ…ちょっと仕事でミスをしてしまいまして、お医者様も神父様も光は取り戻せないと仰って…」

 

フローラ「仕事は何をなさっていたんですか?」

 

リーシャ「掃除屋みたいな物です。父も祖父も代々同じ仕事をしていて私がその後継いだ…という事です」

 

フローラ「掃除屋…ですか、それにしては随分と足取りが軽いというか目が見えないとは思えない程障害物を避けていますね?」

 

リーシャ「フフフ、私こう見えても武術を嗜んでるんですよ。だからこの程度は慣れたものですよ」

 

フローラ「そう…ですか」

 

その言葉を聞いてフローラは俺に通信を送ってきた。俺の右耳には小型イヤホンみたいな通信機を装着していて、これでいざという時に離れても互いに通信出来る代物だ。

 

フローラ『どう思われますか?』

 

リィン『まぁ間違い無く唯の掃除屋ではないだろうね…嗜むレベルの足捌きではない、あれはそういう生業にしてる人間の足捌きだ』

 

フローラ『やはりリィン様もそう思いますか、では彼女は…』

 

リィン『いや、多分それは無いと思う。目が見えないと言うのも本当みたいだし、何よりこんな〘暗殺者〙が俺達を狙う理由もない』

 

《黒》であれば理由をでっち上げる事も可能かも知れないが…其処までするメリットもないしな、せいぜい俺を《不死者》にする位だろう

 

リィン『だから警戒はしなくても良い…いや、別の意味で警戒はした方が良いかも知れない』

 

フローラ『別の…?あぁそういう事ですか?了解しました』

 

リーシャ「あの…?どうかなさいましたか?」

 

リィン「いえ、なんでもありません。それでボースに着いたらもう良いのですか?」

 

リーシャ「はい、着いたら市内を観光するだけなので大丈夫ですよ」

 

彼女はそう言ってるが…ふむ?

 

フローラ「リィン様、リーシャさんもうすぐボースに着きますよ!」

 

やっと着いたか…

 

ボースはリベール王国王都グランセルに次ぐ規模の都市で商人達が集う、ボースマーケットは国内外の様々な商品が置かれ経済が活発である。因みに市長は年若き女性であるとの事だ。

 

フローラ「やっと着きましたね、それにしても活気がありますね…」

 

リィン「リベール国内ではグランセルの次に栄えてる街だからな、当然といえば当然だろう…」

 

リーシャ「リィンさん、フローラさんここまでの護衛ありがとうございました。ここでお別れしましょう」

 

リィン「それは構わないのですが…」

 

フローラ「大丈夫ですか?ホテルまで送りますよ?」

 

リーシャ「いえ、本当に大丈夫ですので…私はこれで」

 

そう言って彼女は歩いていく姿を見送った俺達は互いに頷き合い行動を開始した…

 

 

 

 

 

 

 

 

リーシャSide

 

あはは、私何やってるんだろう…父さんから継いだ《銀》としていつもの様に【暗殺対象】を殺ったのまでは良かったのに、まさか最後の力を振り絞って両目を斬りつけられるとは思わなかったなぁ…しかも左手の腱までやられてしまうなんて…

 

闇医者は左手は握力は日常生活程度なら送れると言ってたけど得物を握るのは無理と言われて両目も回復の見込みは無いなんて…もう《銀》としては無理だよね?

 

もう絶望した私は死に場所を探す旅に出たわ。幸い父さんの遺産と今迄の【暗殺】の報酬があったから旅の資金には困らなかったわ…共和国を出て最初にリベールに来たけれど、色んな人が私を心配してくれたなぁ…私はこんなにも血で濡れた手なのに、どんなに言い訳しても相手が悪人だろうと〘人〙の命を奪ったのに…

 

アンセル新道に入って私は《琥珀の塔》向かったわ…あそこなら人に迷惑をかけないし、人知れずに亡くなるなんて暗殺者にはお似合いの末路だわ…

 

そう思ってたのに魔獣が出てきたわね。以前の私ならこの程度の敵なんて目じゃなかったのに…でも魔獣に喰われるのも同じかしら、ヴァレリア湖目当ての観光客が私の死体を目撃するのは申し訳無いけど…ゾロゾロと来たわね?これで最後かしら…

 

それにしても…フフ、あの二人も妙な組み合わせだったなぁ。一人は私と同い年位のメイドに少し年下の男の子…貴族では無さそうだけど互いに確かな絆があったなぁ…

 

嗚呼出来るならば

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーシャ「もう一度…会ってお話ししてみたかったなぁ…」

 

 

 

 

 

 

リィン「黑神一刀流 九十九颯」

 

リーシャ「え…?」

 

フローラ「リィン様!掩護します!」

 

な…なんで?二人がここに…それに今黑神って…

 

リーシャSide OUT

 

 

リィン「ふう…殲滅したな、フローラ!そっちはどうだ!?」

 

フローラ「こちらも完了しましたリィン様!当分は安全です!」

 

 

なら良し、さて…

 

リィン「あまり感心出来ませんね?一人で、ましてや目が視えないのに…」

 

リーシャ「どう…して?」

 

リィン「そのどうしてが何故ここに居るのが判ったのか?なら簡単です。貴女の服に発信機を取り付けてたんですよ。背中の部分にね…」

 

フローラ謹製の超小型の発信機だ。どんなに目を凝らしても気づくまい。

 

リーシャ「なんで…なんで…なんで!助けたんですか!?私は罪人ですよ!?暗殺者ですよ!?如何なる理由があろうと人を殺した事なんて何回もありますよ!?それなのに何故!?」

 

理由か…理由としてならリーシャがいないと特務支援課の行動の変化が起きるとかアルカンシェルのイリアさんとのショーが完成しないとか…いや、違うな、俺は…

 

リィン「貴女が助けを求めていたから…それだけです」

 

リーシャ「ッ…!なにを根拠に!?」

 

フローラ「貴女はまだ気付いてないのですか?己の右手にナイフを握り締めてるのを…」

 

リーシャ「え…?」

 

リィン「無意識なんだろうが貴女は死に抗おうとしていた。それだけで十分な理由です」

 

リーシャ「…でも私はもう目が…」

 

フローラ「治りますよ?」

 

リーシャ「…え?」

 

フローラ「治ると言ったんです。その目も…左手も」

 

リーシャ「ッ…!出鱈目を言わないで!!今の医療技術では無理だって…!」

 

 

フローラ「可能です。私達の《拠点》なら…」

 

リーシャ「《拠点》…?何を言ってるの?」

 

リィン「信じろとは言いません。でも俺達は貴女を救いたい…だからどうかこの時だけは何も言わずに着いてきてくれませんか?」

 

自分でも虫の良い話しだとは思うが、さてどうするかな?

 

リーシャ「…本当に治す術はあるのね?」

 

フローラ「はい、私の持てる技術を使って」

 

リーシャ「…判ったわ、貴方達に身柄を預けます」

 

フローラ「ありがとうございます。それでは肩を貸しますよ?リィン様も私の側に」

 

リィン「了解」

 

リーシャ「あの…一体何を?」

 

リィン「大丈夫、怖く無いから」

 

フローラ「現在座標確認!これより転送を開始します!転送目標

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《アンファング》!」

 

 



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第二十話

上手く書けたか不安だなぁ…


空中都市《アンファング》

 

久々に《アンファング》に戻って来た俺達は早々とその足で医療室に向かいリーシャの健康状態を調べた結果…

 

フローラ「どこも異常は見当たりませんね、これなら直ぐに治療に移れます」

 

それは何より…しかしまぁ解っていた筈だけど古代ゼムリア文明はとんでもないな…日本の医療施設に引けをとらないどころか上回ってるし、でもこの医療設備はそれでもリベル=アークより旧式だというから恐れ入る…

 

リィン「それで、どういう風に治療していく?」

 

フローラ「そうですね…両目は完全に機能していないので彼女から採取した細胞を用いて両目を生成して、それに合わせて視神経も彼女に適応する物を移植しようと思います」

 

フローラ「左手の方もいくつか神経が切れたままなので繋ぎ合わせます。リハビリをすれば武器を持てる位の握力も直ぐに回復します」

 

リィン「そうか…それで手術は何時から始める?」

 

フローラ「採取した細胞からの生成してからの手術ですから…二時間後ですね」

 

リィン「判った。じゃあ俺はリーシャさんにそう伝えて来る」

 

フローラ「承知しました。では私は早速準備に入らせて頂きます」

 

リーシャの病室の前に立った俺はノックをした

 

リィン「リーシャさん?入っていいですか?」

 

リーシャ「リィンさん?はい、大丈夫です。入って下さい」

 

リィン「失礼します…」

 

病室に入るとリーシャが上半身だけベットから起き上がりリィンを出迎えた。

 

リィン「手術、決まりましたよ。二時間後に始めるとフローラが言ってました」

 

リーシャ「そうですか…本当に感謝しても感謝しきれません。ですが…その、本当に治療費は払わなくても良いのですか?私はそれなりに貯蓄してますし、高くても分割払いでもちゃんと払いますが…」

 

まぁ、治療費を払わなくても良いと言われても落ち着かないとは思う…でも

 

リィン「気にするな…とは言っても気になるとは思いますが俺達は謝礼欲しさに貴女を治す訳じゃあありません。だから治療費なんて受け取れません」

 

リーシャ「……判りました。では貴方がたが困った事が起きたら力を貸すというのはどうでしょう?せめてそのぐらいはさせてください!」

 

義理堅いなぁ…

 

リィン「…判りました。もし俺達が困る事がありましたら頼らせてもらいます」

 

リーシャ「えぇ、その時には存分に頼って欲しいです」

 

リィン「では二時間後に…?」

 

リーシャ「あ、待ってください!」

 

病室を出ようと背を向けようとしたらリーシャが腕を掴んできた…?

 

リーシャ「あの…もうちょっとお話ししませんか?二時間もベットで待ってるのは退屈で…///////」

 

まぁ確かに二時間も話し相手もいないと退屈だよな…

 

リィン「えっと…構いませんが」

 

リーシャ「良かった…あ、思い出しましたが私がアンセル新道で魔獣に襲われかけた時にリィンさん黑神一刀流と言ってましたがリィンさんはあのSSS級高位猟兵団《斑鳩》の関係者ですか?」

 

リィン「いえ、違います。俺は元々〘八葉〙を学んでいました。黑神一刀流は老師の紹介でシズナさんと手合わせしただけです」

 

リーシャ「シズナって…シズナ・レム・ミスルギですか!?」

 

リィン「そうですが…知り合いですか?」

 

リーシャは頭を振った

 

リーシャ「いいえ、直接の面識は無いです。唯《斑鳩》にいずれ確かな地位を築くだろうと云われる程の実力者と闇でも噂されています」

 

あ〜あの人やっぱりとんでもない人だわ…まぁ丁度良い俺も聞きたい事あるし

 

リィン「俺からも質問良いですか?」

 

リーシャ「…私の正体についてですね?………今更ここまでしてもらっておいて誤魔化す不義理はしません、お話しします。私の正体を…」

 

 東方最凶の凶手《銀》それが私の本当の正体です…その歴史は古く百年に渡りカルバートの歴史の闇に存在していました。

 

 リィンさんはご存じですか?カルバートの民主革命の時も《銀》が関わっていました…勿論《銀》は不老不死なんかじゃあありません。代々の《銀》は親から子…そしてその子供が親になり、その自分の子を《銀》の後継にしていました…私も例に洩れず父の下で暗器や符術の修練と鍛錬を積みつつ、日曜学校に通って人と接する術を学んでいました。

 

 《銀》としての膨大な知識と記憶を受け継ぎつつ、いつ《銀》の座を継いでもいいように備えていたのです。

 

そしてそんな父も半年前に不治の病に倒れて床に伏せりました…そして父はこう言ったんです。

 

 

 

『 自 分 を 殺 し て 《銀》 を 継 げ 』

 

私はそれを実行出来ませんでした。恐怖したんです…《銀》になることや父を失う恐怖ではないのです。私はこう思ったのです…

 

〘私 は 《銀》 と し て 出 来 損 な い だ っ た の で は な い か と …〙

 

死にゆく父を最後に失望させたのではないか…そんな恐怖を抱いてしまったんです。

 

そして悩み父の命を実行出来ない私に父は苦笑しながらこう言ったんです。

 

「それもまたお前だ・・・お前の《銀》はお前が決めるがいい。」

 

そう言い遺しこの世を去りました。父の最後の言葉は判りませんでしたがそれでも父の持っていた仕事やコネクションを引き継ぎました…その結果がこの有様ですが…やはり私は出来そ「違うと思いますよ?」え…?

 

リィン「リーシャさんのお父さんが多分言いたかったのは自分の《銀》にはなるなと言いたかったのでは?」

 

リーシャ「それはどういう…?」

 

リィン「俺の想像ですが代々の《銀》が必ずしも先代を全て踏襲しては居ないのではないのか?という事です。リーシャさんのお父さんも先代から学び、どれが自分に適してどれが適してないか選択して自分だけの《銀》に近づけるか…そうやっていたと思います」

 

リィン「お前の《銀》はお前が決めるがいい…それは貴女が父の真似た《銀》ではなく貴女の…貴女だけが出来る《銀》を自分で探しなさい…そう言いたかったのでは?」

 

リーシャ「私の…私だけが出来る《銀》…?」

 

コンコン…

 

フローラ「リィン様、リーシャさんの手術の準備が出来ました。手術室までお越し下さい。」

 

リィン「分かった、すぐ行く!…リーシャさん準備出来たので行きましょう」

 

リーシャ「はい…リィンさん」

 

リィン「はい?」

 

リーシャ「ありがとうございます。話しを聞いてくれて…なんとなく父の言いたかった事が解った様な気がします」

 

リィン「お役に立ったてたなら良かったですよ。さぁ手術室まで押して行きますので車椅子にどうぞ」

 

リーシャ「えぇ…(お父さん…見ててください私だけの《銀》をきっと見つけてみせます。だから、どうか安らかに…)

 

 

 

 



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第二十一話

リーシャの手術は成功しその後三日間は静養しいよいよ包帯を取る時がやって来た…

 

フローラ「では包帯を取ります」

 

フローラはリーシャの後ろに回りリーシャの目を巻いていた包帯を取った

 

リーシャ「……」

 

フローラ「目をゆっくりと開けてみてください…」

 

リーシャ「……ッ!」

 

フローラ「私の指が何本立っているかわかりますか?」

 

リーシャ「……3本です」

 

フローラ「ではリィン様が持っている板が何色に見えますか?」

 

俺はリーシャの正面に立って赤と青の板を持っていた。

 

リーシャ「……赤と、青色です…」

 

フローラ「…眼球運動も異常無し、拒絶反応も確認されず…お疲れ様でした。完全に治りました」

 

リーシャ「…治った…?」

 

フローラ「はい、左手の腱も治りました…そっちはもう少しリハビリすればリーシャさんの得物の剣を握れる位に回復しますよ」

 

リーシャ「…空が碧い…雲が白い…当たり前の筈なのに…今までが当たり前じゃなかったんだ…(ボロボロ)」

 

リーシャ「ほんとうに(ヒック)…本当にありがとう御座います!(ヒック)まさか本当に再び見える日が来るなんて…(ヒック)思いもしなかった!!私はもう二度と陽の光を視れないと…(ヒック)思ってた!なのに…なのに…こんなにも嬉しい事はありません」

                   

彼女は緊張の糸が切れたのか大粒の涙を流した…

 

リィン「良かったですねリーシャさん、フローラ彼女を外に連れ出しても問題は?」

 

フローラ「えぇ、特に問題は無いかと…」

 

リーシャ「え?…でも…」

 

リィン「いいから、いいから。折角見える様になったんだから外に出ないのは勿体無いですよ。幸い今日は晴れで見晴らしもいいですし…」

 

リーシャ「判っ、判りましたから引っ張らないでください」

 

彼女を外に連れ出した俺達は《アンファング》の公園に来た…

 

リーシャ「景色が綺麗ですね…リィンさん一つ聞いて良いですか?」

 

リィン「良いですよ、なにを聴きたいので?」

 

リーシャ「貴方がたは何者何ですか?こんな空中都市を有してるなんて…裏の世界でも聞いた事がありません。貴方達は一体…?」

 

リィン「…その問いに答える前に一つ約束して欲しい事があります」

 

リーシャ「約束…?」

 

リィン「はい、ここの事は他言無用…リーシャさんの中だけで収めて頂きたい」

 

リーシャ「…もし約束出来ないと言ったら?」

 

リィン「ここの事や俺達に出会った事も全て《忘れて》頂きます。ですが治した目はそのままにしますので、その点は安心してください」

 

リーシャ「…ふぅ…判りました、どの道貴方がたには恩が有りますしね。ここの事は口外しません。ですので、貴方がたの正体を教えてください…」

 

リィン「…荒唐無稽な話しになりますが、良いですか?」

 

リーシャ「構いません。今更驚く事はありませんし…」

 

リィン「ではお答えします。この都市の名は空中都市《アンファング》…古代ゼムリア文明が築いた都市です」

 

リーシャ「…はい…?」



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第二十二話

読んでくれる人達に感謝です!


ーボース国際空港ー

 

完全に治ったリーシャはリベールを離れると話したので俺達は見送りに来ていた。

 

リーシャ「お世話になりました」

 

リィン「いえ、たいした事はしていないですよ。貴女が決めて行動に移したからこそ結果が出たんです。俺達がしたのはきっかけに過ぎません」

 

リーシャ「フフフ、だとしてもやはり御礼は言うべきですよ。リハビリにも付き合ってもらいましたし…それに」

 

そう言ってリーシャは自分の左手を見つめた

 

リーシャ「古代ゼムリア文明……自分の身でその高度な技術を体感するとは思いませんでしたが…正直リィンさんが話してくれた時予想外で少し理解が追いつきませんでした」

 

 

リィン「まぁ無理もないかと…俺も最初は《生きてる》都市があるなんて思いもしませんでしたし」

 

正直教会に知られたらどうなることやら…

 

リーシャ「《アーティファクト》(古代遺物)ではないにしろ常識外の塊ですからねぇ…フローラさんも含めて、ですが」

 

フローラ「?…確かに《アンファング》は浮遊する都市ですから今の技術では常識外れかも知れませんか、私の身体は残骸から〘即興〙で組み上げただけの物ですので大した物じゃないですよ?」

 

『『…(汗)』』

 

リーシャ「あはは…(即興で人間並みの感情と質感を再現出来る物かしら…?)」

 

リィン「(そこは気にしたら負けでしょう、俺はもう気にしない事にしましたから)」

 

フローラ「…?しかしリーシャさん、大丈夫ですか?幾ら完治したとはいえあの様な〘依頼〙を受けて…」

 

ー 二日前 琥珀の塔前 ー

 

リーシャ「爆雷符!」 

 

ガーゴイル「ーー!?」

 

リーシャの爆雷符によって最後のガーゴイルを仕留め塔前の安全は確保出来た…

 

リーシャ「ふぅ…梃子摺らせてくれたわね」

 

リィン「やはりリーシャさんは強いですね、いともあっさり屠るとは」

 

リーシャ「いえいえ、リィンさんも中々の物でしたよ。流石八葉と黑神を学ぶだけはあります。しかし、この傀儡…ガーゴイルとやらですか、ロレントにも8アージュもの巨人が顕れたと聴いた時は眉唾でしたがこうして実際に見ると信じざるを得ませんね」

 

そう言ってリーシャは胸の前で腕を組むが…その…

 

フローラ「リーシャさん、あの、普段から戦闘着はそれで…?」

 

そう、今のリーシャの姿は原作の様に身体の線が出る服装だから目の遣り場が…

 

リーシャ「?、いえ、《銀》としての《仕事》は男に見せかける為に体型を〘気功〙で操作しているので、もう少し衣服も男性風にしていますよ?」

 

フローラ「そ、そうですか…あら?」

 

フローラが何かに気づき空を見上げていて、其れに釣られて目を遣ると、あれは…鳩?がリーシャの肩に留まった…?その脚に小さな筒、という事は…

 

リィン「其れは…伝書鳩ですか?」

 

リーシャ「えぇ、多分懇意にしている仲介屋の鳩ですね。こういうやって依頼を受ける時もあるんです」

 

フローラ「依頼…ですか?席を外しましょうか?」

 

リーシャ「いえ、そのままで聞いて下さい…『クロスベルの覇権を握る為に貴殿を用心棒として雇いたい 黒月貿易公司 ツァオ』

 

ー現在ー

 

リィン「黒月(ヘイユエ)…表向きは銀行や貿易会社を経営しているが…裏の顔は…」

 

フローラ「共和国最大のシンジケート…そして差出人のツァオ・リーは黒月の幹部にして《白蘭竜》の異名を持ち《月華流》なる拳法を修めてる達人ですね」

 

リーシャ「まぁ、そこは問題じゃありませんね、問題なのは…クロスベルですね」

 

ここのクロスベルも2大国に挟まれた状態なのは変わりはないのだが…少し違うのが

 

リィン「今のクロスベルの民は2大国どころか他の国にも印象は悪いからなぁ…」

 

これには少し訳が有り、原作同様クロスベルの金融業が発展したのだか他国からの投資もあり今クロスベルは日本で言うところのバブルに近い状態であった。

 

 クロスベルの投資家はエレボニアやカルバートの土地を買ったり別荘を建てるのが流行ってるそうだがミラに物を云わせてモラルがない事をするそうだ。

 

例に上げるとレグラムの地にローエングリン城に勝手に近づき写真撮影するのはまだしも城壁に自分の名前を彫ろうとする馬鹿もいたらしい、龍來(ロンライ)でもクロスベル観光客が捨てるゴミが問題になってるそうだ、リベールも徐々に被害が出て来てるらしい…そのせいで余り他国からは《金は落とすが来てほしく無い》と言われている始末である。

 

リーシャ「でもそれはごく一部だとは思いますが…?まぁいろんな意味で火薬庫なのは間違い無いですが」

 

リィン「それでも行くんですね、クロスベルに…?」

 

リーシャ「はい、これからも《銀》として活動していくと決めてる以上依頼を断る選択肢はありません」

 

リィン「そうですか、ではせめてこれを持って行って下さい」

 

俺はリーシャに《ゴスペル》を手渡した

 

リーシャ「?これは…?」

 

フローラ「これは《ゴスペル》と言いまして、《アンファング》に転移する時や施設を使う時に提示する身分証みたいな物です、更に今回渡したのは通信機能も搭載しています。《アンファング》が健在である限りゼムリア大陸の何処だろうが、ノーザンブリアだろうがカルバート東部の砂漠地帯だろうが繋がりますよ」

 

リーシャ「またとんでもない物を…でも有難く戴きます」

 

リィン「それはリーシャさんしか使えない代物ですのでリーシャさんの物です。大事にしてください」

 

フローラ「後、向こうについて一段落したら住所教えて下さい。私からのプレゼントを送りますから」

 

リーシャ「あはは、なにを送られるのやら」

 

〘まもなく王都グランセル行の搭乗が始まります。クロスベル、エレボニア帝国行のお客様はチケットのお買い忘れ無きようお願い致します〙

 

リーシャ「…行ってきます。何か力を貸して欲しい事があったらすぐ連絡してください。直ぐに駆けつけますから」

 

リィン「気をつけて、そっちも困った事があったら遠慮しないで下さい。俺達は《仲間》ですから」

 

リーシャ「はい…!!」

 

そうしてリーシャはクロスベルに旅立った…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーおまけー

 

銀〘良いだろう、この契約で貴様等の用心棒をしてやる〙

 

ツァオ「フフフ、それは畳畳これから宜しく頼みますよ?《銀》殿」

 

銀〘フン、契約分の仕事はこなすさ…用がなければ下がらせてもらうぞ?〙

 

ツァオ「あぁ一つ質問良いですか《銀》殿?」

 

銀〘……何だ?下らない質問ならさっさと行かせて貰うぞ〙

 

ツァオ「いえいえ、確か《銀》殿は両目を負傷したと噂が流れていましたのでね…デマだったのかと御本人にお聞きしたいと思いまして…」

 

銀〘………ふん、その噂は事実《だった》さ、今は問題ない〙

 

ツァオ「それはそれは…良かったらその治した医師を紹介してくれませんか?是非雇い…」

 

銀〘…一つ言っておく、彼等に手を出そうものなら私は貴様等を……『殺す』ぞ?覚えておくことだな…もう行くぞ〙

 

ツァオ「おお、怖い怖い」

 

銀(リーシャ)『ここで良いだろう…ふぅ、久しぶりにあの手合いと話したから疲れたわね、さて居住地を探さなきゃ」

 

「ねぇ貴女ちょっと良い?」

 

リーシャ「はい?」

 

イリア「あたしはイリア、イリア・プラティエっていうの、貴女舞台に興味ない?」

 

 

ーおまけ2ー

リーシャ「プレゼントって…メイド服なんて…でもちょっと着てみようかしら」

 

リーシャ「う〜ん、スカート長い方が好みかしらね?ミニスカバージョンはちょっと…でも、悪く無いわね」

 

イリア「リーシャ〜、入るわよ〜?」

 

リーシャ「ゑ…ちょっと待ってくださ…」

 

イリア「リーシャ次のレッスンについて…だ…け…ど?」

 

リーシャ「あ、イ…イリアさん違うんです!こ、これは…」

 

イリア「……ブハ…!(鼻血)」

 

 

リーシャ「イヤ〜!!イリアさんしっかり!?」

 

 

 



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第二十三話

とりあえず投稿です


リーシャを見送った俺達はこれからの事を話し合った…

 

リィン「どうする?このままルーアンに行くか?」

 

フローラ「いえ、少しボースで買い物しませんか?リーシャさんの件でまだ観光出来ていませんでしたし…」

 

リィン「そうだな…じゃあこのままボースマーケットを見て回るか、フローラは最初何を見てみたい?」

 

フローラ「え?…えっと、それじゃあ服屋に行きたいです」

 

リィン「そっか、じゃあ行こうか?」

 

フローラ「フフ、はい…!」

 

俺はフローラに手を差し伸べマーケットに向かった…

 

要望通り服屋に入りフローラは自分が着る服を吟味した後試着室で試着した服を俺に見せたがその服は…

 

フローラ「リィン様どうでしょうか?おかしな所は無いでしょうか…」

 

フローラが試着した服はドイツの民族衣装ディアンドルによく似た服装で構成は、白いパフスリーブのブラウスに、紐で絞める胴衣とロングスカート、その上にエプロンを巻いたスタイルで贔屓目に見ても可愛い…!

 

リィン「あぁ、よく似合ってるよ」

 

フローラ「フフ、ありがとうございます。お世辞でも嬉しいです…ですが本当にお会計はリィン様が支払うのですか?私の買い物ですからやはり私が…」

 

リィン「全然構わないさ、何時もフローラには助けて貰っているんだ。俺が支払う事に躊躇う事は無いよ」

 

フローラ「…では、お言葉に甘えて」

 

フローラは遠慮がちにでも嬉しそうに微笑って会計を済ませて出ようとしたら…

 

フローラ「何でしょう…?男性二人が言い争ってますね?」

 

そう、通路の真ん中で男性同士が互いの胸ぐらを掴みながらなにか言い争っている。周りの人も何ごとかと目を向けていた…当人同士はこのままだと殴り合いになりかねない程の険悪さだ

。止める義務はないが…

 

リィン「フローラ、悪いが止めに入るから手伝ってほしい」

 

フローラ「承知しました」

 

折角の買い物が気分悪くなるのは避けたいしな…

 

「てめぇが俺の財布を盗んだんだろう!」

 

「なにおう!貴様こそ俺の財布を盗んだのだろうが!」

 

「なんだとう!」

 

「やるか!」

 

リィン「はいはい、そこまで」

 

フローラ「ここはボースマーケットの前です。他のお客さんの迷惑ですよ」

 

「なんだ!お前達は?」

 

「これは我々の問題だ!あんた等は関係ないだろう!」

 

リィン「まぁ確かに関係無いと言われればその通りですけど」

 

フローラ「それでも往来で殴り合うのは違うと思いますが?」

 

「だがこいつが俺の財布を盗んだから!」

 

「まだ言うか!貴様こそ俺の財布を盗んだんだろうが!」

 

「なんだと!」

 

リィン「だから止めなさいって、こういう時こそギルドに行けば…?なにこれ?」

 

〜 ♫ 〜

 

何処からともなく楽器の音色が…これは…リュート?

 

フローラ「リィン様、屋根の上です!」

 

フローラの声でその場に居る全員が一斉にその屋根の上を見るとリュートを構えた金髪の男が立っていた…って何やってんの!?あの《自称愛の伝道師》は?!

 

「な、なんだお前「悲しいな…」は…?」

 

???「暴力は何も解決しないよ。みんな笑顔でラブ・アンド・ピースさ!」

 

〜 ♫ 〜

 

「「「「「「「「…………………」」」」」」」」

 

そう言ってまたリュートを鳴らしながら詩っているのを俺達も含めその場に居た全員が呆然と眺めていた。

 

???「ふ、ご清聴ありがとうでは私はこれで〘ツルッ〙え…?」

 

『『『『『『『『……あ……』』』』』』』』

 

「あ〜れ〜〜〜〜!〘ゴロゴロ…ガッシャーン!〙

 

 ウワー!大変だー人が落ちて来たぞー!

 

 ウエ!?上半身が酒樽に刺さって脚だけが見えてるー?!

 

 

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 

 

「…なぁ?ギルドに相談に行かないか?」

 

「…そうだな、ここで言い争っても解決しないしな…」

 

リィン「その方が良いですよ…」

 

フローラ「私達も付き合います」

 

「なんか…済まない」

 

「せっかく仲裁してくれたのにあの様な物言いはすべきでは無かったと反省しきりだよ…」

 

さっきの光景をみんな目を逸らしてその場を後にした…

 

 

 



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第二十四話

ゴールデンウィーク?なにそれ美味しいの?(涙)


とりあえずボース支部にそのまま行き中に入った…

 

リィン「すいませ〜ん!」

 

ルグラン「ようこそ、遊撃士ギルドボース支部へ儂は受付を務めてるルグランという者じゃ、依頼かの?」

 

リィン「えぇ、ですが俺達ではなくて…この方達です」

 

さっき迄喧嘩していた人達を紹介した

 

ルグラン「ふむ?…とりあえず丁度手が空いてる遊撃士が二人居るから少々待ってくれんかの?…アガット!アネラス!仕事じゃぞ!」

 

???「爺さん、大きい声出さなくても聞こえるぜ、全く…」

 

???「まぁまぁ先輩お仕事ですから…あれ?貴方…もしかして《八葉》の関係者?」

 

リィン「はい…もしかしてユン老師が仰ってた孫娘の…?」

 

???「あ、お祖父ちゃんを知ってるって事は君がお祖父ちゃんが言ってた《最後の弟子》ね?」

 

???「おいアネラス、お喋りは後にしろ依頼人が困った顔をしているぞ。そこの男もだ…どうやらカシウスのおっさんを知ってるようだが、今は黙ってくれ」

 

おっと、確かに…

 

???「すいません、先輩では改めまして…」

 

アネラス「遊撃士協会ボース支部に所属してますアネラス・エルフィードと言います」

 

アガット「同じくボース支部所属のアガット・クロスナーだ。詳しい話は二階で聞かせてもらう」

 

ー 説明中 ー

 

アガット「…成る程な、大体の話は理解したが…お前さん達は何故互いに財布を盗んだ犯人だと思ったんだ?」

 

アネラス「ですよね〜盗まれた《被害者二人》なら兎も角、互いに《犯人》だなんて普通思いませんよ」

 

「いや、それには一応根拠があるんだ」

 

「不愉快だがその通りなんだ」

 

アガット「根拠?…どんな?」

 

「私がマーケットのアクセサリー店で買い物をしているとこの男が軽くぶつかって来たんだ…その後会計をしようと懐に入れた財布を取り出そうとしたから無かったから、コイツしか接触していないからコイツが《犯人》だと判断したんだ」

 

成る程…

 

「フン!それを言うならお前こそ俺が服屋で買い物してる時にぶつかって来ただろう、その後で財布を無くなったのを気付いたんだ!それで奴だと確信したんだ!」

 

アネラス「う〜ん、御二人の主張は解りましたけど…実際お互いに盗まれた財布なんて出てこなかったのよね。え、と?」

 

リィン「リィンです。リィン・アイスフェルト、えぇ確かに御二人にそれらしい物は出ませんでした」

 

フローラ「フローラ・クリストです。因みに財布の特徴を聞いて近辺を探してみましたが此方も空振りでした」

 

アネラス「ありがとう。う〜ん、御二人が勘違いして家に置きっぱなしという事はないのですか?」

 

「いいや、それは無いな…確実に懐に財布をいれたのを覚えてる」

 

「同じく」

 

アガット「じゃあ財布は何処に消えたんだよ…?」

 

う〜んでも実際…

 

リィン「そもそも御二人以外に近付いた人は本当に居ないんですか?」

 

「「居ないぞ!…いや、待てよ?……(汗)」」

 

心当たりがありそうだな…

 

アガット「思い当たる事がある顔してるな、さっさと話して貰おうか?」

 

 

「「……実は……」」

 

ー 説明中 ー

 

正直呆れたな、まさか…

 

アガット「観光に来た女二人組が困った振りをしながら被害者達に密着したと…どう考えても怪しいじゃねぇか」

 

アネラス「なんで気付かなかったんですか?」

 

「「いや〜、美人に密着されて舞いあがっていたからな〜はっはっはー………スイマセン」」

 

女性陣の目が冷ややかに被害者達を見る…

 

アガット「とりあえず重要参考人としてその女二人に事情を聞きたいな、観光を装ってるならホテルに泊まってる筈だ…」

 

〜 ♫ 〜

 

???「それなら急いだ方がいいよ」

 

リュートの音色…まさか

 

???「やぁ、また会ったね」

 

フローラ「あ、屋根から転げ落ちた変人…」

 

???「違うから!いや、確かに屋根から落ちたけど!というか変人は酷くない!?」

 

アネラス「酒臭いですよ〜真っ昼間から酔っ払ってるなんて感心しませんね〜」

 

???「いやいや!これは落ちた酒樽の中身を浴びただけで酔っ払っては、ヒック」

 

アガット「酔っ払ってるじゃねーか、教会に行って薬貰えや」

 

???「お願いだから話しを聞いて…」

 

流石にかわいそうか…?

 

リィン「急いだ方が良いとはどう言う事ですか?それと貴方は一体…」

 

???「おっと、名乗る忘れてたね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オリビエ「僕の名はオリビエ、オリビエ・レンハイムさ、エレボニア帝国から来た《漂泊の詩人》さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アガット「エレボニア人はこんなのばっかなのか?」

 

リィン「あれがエレボニアの標準と思われるのは心外です」

 

 

 

 

 

 

 



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第二十五話

遅くなり申し訳ありません、ゴールデンウィーク中も仕事が忙しく不幸も重なり筆が重くなってました


名乗りおえたオリビエ氏は席に座りアガットさん達に話し始めた…

 

アガット「それでオリビエ、だったか?さっき急いた方が良いと言ってたがどういう事だ?」

 

オリビエ「うん、実は今回のスリ事件の犯人らしき会話を聞いたんだよ」

 

アガット「……詳しく聞こうか」

 

オリビエ「さっきも言ったけど僕はエレボニアからの旅行者でね。当然ホテルに泊まってたんだけど隣の部屋の話し声が少し聞こえてね、唯の会話なら無視してたんだけどその会話が少し怪しかったから聞き耳立ててたら内容が『上手く行ったわね…』 『男って馬鹿よね〜』 『盗った金は…』 『潮時かもね…』 『次は何処に行く?』 …断片的だけどこんな事言ってたかな?」

 

ふむ、話しを聞く限り…

 

アネラス「先輩…!」

 

アガット「あぁ…限りなく黒だな、情報提供感謝するぜ…」

 

オリビエ「礼は及ばないよ。唯の偶然で聞こえただけだしね」

 

アネラス「となると確かに急いだ方が良いですね、さっきの会話を聞いた限りだとボースを離れる気みたいですし…」

 

アガット「だな、問題は何処に逃げるか…だ」

 

アネラス「常識的に考えれば空港に向かうと思いますが…?」

 

ルグラン「其れは無理だと思うぞい」

 

ルグラン爺さんが二階に上がってそんなコトを言ってきた…

 

アガット「爺さんどういう事だよ?なんかあったのか?」

 

ルグラン「うむ、実はさっき飛行船公社から連絡がはいっての…詳しい話しは後でまた入るがロレントに向かってた飛行船が消息を絶ったとの事じゃ」

 

それは…もしや

 

アネラス「飛行船が…!?」

 

アガット「…つまり当分の間飛行船の運行は見合わせると言われたんだな?」

 

ルグラン「…そうじゃ、詳しい事が解らない事には運行する事は出来ないとな」

 

アガット「…そっちも気になるが今はスリを捕まえる方に集中するぞ」

 

アネラス「わ、わかりました。先輩」

 

アガット「飛行船が使え無いのならボースを離れるには徒歩で西ボース街道か、東ボース街道のどちらかにしか向かうしか無い」

 

アネラス「西ボース街道はクローネ山道があります。けれど魔獣の出現頻度は高いですから、女性二人ではまず無理ですね」

 

リィン「なら東ボース街道ですね。このルートなら帝国との国境を守るハーケン門があるアイゼンロードもあります」

 

アガット「決まりだな、アネラス!俺は被害者達と一緒にホテルに行ってその女二人の処に出向く!お前は東ボース街道に張り込んでろ!万が一奴等が逃走したら速やかに確保しろ!」

 

アネラス「は、はい!…あの先輩?」

 

アガット「…何だ?」

 

アネラス「オリビエさんと…リィン君達はどうしましょう?」

 

アガット「…あ〜そうだな、その男はホテルに泊まってる女達の顔も分かるだろうから同行してもらうとして…この二人は元々被害者達の付き添いに過ぎないからな、無理に同行させる理由も無いんじゃないか?幾らカシウスのおっさんの弟弟子だからといっても民間人だし」

 

ま、普通そうだよな実力があったとしても資格無ければ唯の民間人だし、ロレントの時はカシウス師兄が緊急事態だから臨時協力者として扱ってくれただけだし

 

オリビエ「ふむ?彼等の協力も仰いだ方が良いと僕は思うけどね」

 

『『は?』』

 

何を言い出すんだこの自称詩人は…?

 

アガット「おいアンタ、突然何言いやがる。さっき俺が言ったのを忘れたのか?コイツ等は民間人だぞ、アンタだって証言者だから連れて行くのであって荒事に首を突っ込ませる為じゃねぇんだぞ」

 

オリビエ「でも人手は足りないんじゃ無いかい?さっきの逃走ルートにしてもたった二人ではさみ撃ちはきついんじゃ無いかな」

 

アガット「グ……?!」

 

オリビエ「見たところこの二人も十分腕が立ちそうだし、何だったら二人に東ボース街道を見張って貰ってれば遊撃士二人でホテルに向かえるし、無事にその場で取り押さえれば彼等の出番は無いから危険な目には遭わないし…どうかな?」

 

ー 東ボース街道 ー

 

リィン「結局こうなったか…」

 

フローラ「あのオリビエなる男…只の変人ではありませんね。恐らく名も身分も偽証かと…」

 

まぁ実際に皇族だから詐称ではあるな…

 

リィン「まぁ、確かに良い様に使われてる様で面白くはないけど乗りかかった船だ…もし来たら言われた通りに捕縛しよう」

 

フローラ「承知しまし…早速来た様です」

 

リィン「早いな…犯人は?」

 

フローラ「一人の様です、どうやら相方はアガット殿に捕まったみたいですね。すぐ後ろからアネラス殿が追いかけています」

 

リィン「そうか、じゃあ出るか」

 

フローラ「はい」

 

 

リィン「止まれ!」

 

「な、何よアンタ達は?!」

 

リィン「此方は遊撃士の協力者だ、アンタにはスリの容疑が掛かっている!」

 

フローラ「大人しく投降する事をお勧めします」

 

投降勧告を出したが…

 

「ふ、巫山戯ないで!誰が捕まるもんですか!」

 

勧告を拒否して護身用の拳銃を抜こうとしたが…

 

フローラ「悪足掻きが過ぎますよ」

 

「え?…な!早、」

 

フローラが素早く拳銃を取り上げ…

 

フローラ「寝なさい」

 

「ガッ!?」

 

犯人の意識を刈り取った。

 

リィン「お見事だね」

 

フローラ「恐れ入ります。しかしこの鞄はもしかして…」

 

取り上げた銃の弾丸を抜きながら鞄を一瞥して…

 

リィン「多分そうだろうな、アネラスさんに渡して…っと来たな」

 

アネラス「ごめん!リィン君、フローラちゃん!一人そっちに行った…ってうわ、もう制圧してる」

 

フローラ「当分目を覚まさないと思いますよ…それよりちゃん付けは止めてくださいよ」

 

アネラス「え〜可愛いじゃない、可愛いは正義!だよ」

 

リィン「それよりアネラスさんこれを…」

 

犯人が持っていた鞄を回収して彼女に渡した

 

アネラス「これ、もしかして……協力感謝します。ギルドに戻りましょう」

 

ー ギルド ー

 

ルグラン「あの二人は犯行を認めたわい、幸い被害者の財布は中身も含めて無事じゃった」

 

アネラス「良かった〜これで無事解決…何だけど」

 

アガット「まさか件の飛行船の乗船リストにカシウスのおっさんがなぁ…」

 

例の消息を絶った飛行船にカシウス師兄の名…本格的に始まりか…

 

ルグラン「何、カシウスがそう簡単にくたばる訳無かろう…案外件の飛行船には乗っておらんかもしれんぞ?」

 

アガット「…確かにあのおっさんなら突然ひょっこり現れたりしても不思議じゃないな、まぁその話しは後でするとして…」

 

アガット「リィン…だったな?今回の件本当に巻き込んで済まなかった。幾ら人手が足りないとは言ってもやはり民間人を巻き込むべきではなかった」

 

リィン「謝る必要はないですよ。話しを聞いて俺が判断して決めた事です。そちらが悪い訳じゃないです」

 

アガット「そう言って貰えると助かる。因みにあのオリビエとかいう奴は解決したらさっさと行ったから此処には居ないぜ」

 

アネラス「二人はこれからどうするの〜?」

 

リィン「このままルーアンに向かいます。元々そうする予定でしたので」

 

アネラス「…そっか〜、残念だけど仕方が無いね。でも何時かは手合わせしたいね」

 

リィン「その時には喜んでお受けします」

 

俺達はギルドを出て西ボース街道に向かった

 

フローラ「今度行くルーアンには海とジェニス王立学園が特徴といえば特徴ですね学園の方は少し待てば学園祭で賑わうみたいですので長めに滞在するのも良いかもしれません…」

 

リィン「そうだな…(そういえばクローゼはどうしてるかな?会えれば良いけど)」

 

フローラ「リィン様?」

 

リィン「いや、何でも無いよ。じゃあ行こうか?」

 

 

 

 

ー ルーアン ー

 

ピュイ!

 

???「フフ、ジーク良い天気ね?」

 

ピュイピュイピュイ

 

???「え?今日は何だか笑顔が多い?何か良い事合ったか?…そんなに顔に出てた?」

 

 

ピュイ!

 

???「そっか、でも確かにそうかも何だか懐かしい風が吹く予感がするの、もしかしたら…」

 

ピュイピュイピュイ?

 

???「フフ、そうね、もし《彼》ならジークを紹介しなきゃね」

 

 

???「(逢いたいわ…リィン)」

 

 

 

 

ー ??? ー

 

オリビエ「やぁ我が友よそっちは変わりないかい?」

 

 

オリビエ「こっち?此方は良いよ、御飯は美味いし酒も良いのが揃ってるし最高だよ!…ごめんなさい、真面目な話しが有るので切らないでください」

 

 

オリビエ「君に調べて欲しい事があるんだ…例の御仁?いやまだ接触出来ていないよ。調べて欲しいのは別件だよ、こっちで面白い人間に出会ってね?彼等もエレボニア人みたいだけどどうやら《例の御仁》の弟弟子みたいでね。そういう意味でも調べておきたいんだ…《我等が宰相》殿に対抗出来る人材を獲得する意味でもね。じゃあ宜しく頼むよ?……え?名前を聞いてない?……あぁ、ごめんごめん確かに言ってなかったね、じゃあ言うね…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リィン・アイスフェルトとフローラ・クリストこの二名だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第二十六話

お待たせしました


俺達は西ボース街道を出てクローネ山道の関所に到着し中に入った。詰めている兵士に声を掛けた

 

「ルーアンに行くのかい?」

 

リィン「えぇ、それでルーアン側の扉を開けて欲しいのですが?」

 

「開けるのは大丈夫だけどもうすぐ日暮れだよ。今晩は此処に泊まって行きなさい」

 

確かに此処に来た時点で陽は落ちてたからこれ以上は無理だろうな…

 

リィン「そうですね、部屋ってありますか?」

 

「有るけど男女別に出来る程の数は無いから申し訳無いけど、其処の美人のメイドさんと同室になっちゃうんだけど?」

 

兵士はチラッとフローラの方を見て問いかけてきた。

 

フローラ「御心配なく、同室でも私も問題ありません」

 

「ん、判ったよ。じゃあ部屋に案内するから着いてきて」

 

兵士の先導で今晩泊まる部屋に案内された。部屋はベットが三つに机と暖炉があるだけだ…

 

「見ての通りこれだけだから、食事とかはどうする?簡単な物なら出せるけど?」

 

リィン「いえ、此処に来る途中でボースで買った弁当を食べましたので大丈夫です」

 

「そう?じゃあ自分はこれで、なにか有ったら呼んでね」

 

案内してくれた兵士はそう言って持ち場に戻って行った…

 

リィン「…寝るか?」

 

フローラ「そうですね…明日も早いですし…リィン様はどちら側のベットをお使いになりますか?」

 

リィン「じゃあ…窓側のベットを使わせてもらおうかな?」

 

フローラ「では私はドア側の方を使わせてもらいます。おやすみなさいませリィン様」

 

リィン「あぁお休み、フローラ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

ー これは夢だとすぐに分かった…目の前に帝都ヘイムダル、共和国首都イーディス、そしてニ大国にはさまれた自治州クロスベルの映像が流れている。そこに映る人々の何気ない《日常》…それが何時までも続くかとおもった…だが次の瞬間、それぞれの都市が炎に包まれ人々は倒れていた。まるで恐竜の様な《獣》に喰い殺されて…! ー

 

 

 

 

リィン「ーッ!?…フゥ、夢…か?だがあれは一体…?」

 

単純に考えれば戦争が原因なんだろう、だがあれは…

 

リィン「ヘイムダルやイーディスだけじゃなくクロスベル迄…?しかも互いの民が明らかに人によって殺されたのではなく大型の…恐竜?みたいな獣に喰い殺された…?もしこれが現実に起こるとしたら…だがそんな生物はこの世界には居ない筈?」

 

 

…明日フローラに相談してみるか…

 

 

 

ー 翌日 ー

 

「よく眠れたかい?それじゃあルーアン側に入る手続きをしてね…ハイこれでOKだよ。じゃあ開けるね、良い旅を」

 

関所を後にした俺達は少し離れた処で昨日の夢の内容をフローラに話した…

 

フローラ「爬虫類の《獣》が人を喰い殺していたですか…」

 

リィン「我ながら馬鹿げてると思うけどね。所詮夢だから有り得ないと思ったんだけど…ね?」

 

フローラ「…リィン様少し長い話しになりますが聞いて頂けますか?」

 

リィン「うん?まだまだ目的地まで着くのに時間が掛かるし大丈夫だよ。それで話しって?」

 

フローラ「はい…これはまだ私が建造中に古代ゼムリアの学者達の論文データを閲覧した時に興味深い論文がありました」

 

リィン「論文?」

 

フローラ「えぇ、それに拠ると古代ゼムリア文明が興る遥か昔…途方もない時代に栄華を誇っていた種が居ました。その種は文明こそ築いてはいませんでしたが、世界中に広く生息していました。それは爬虫類の一種でかなり大型の種もいたそうです。学者達はそれ等の総称を《古代種》と呼んでいました」

 

リィン「…そんな話し聞いた事ないけど?」

 

フローラ「現代の人間にはまだ知らないのも無理はないでしょう。当時の人間も化石という形で初めて知った位ですし、その論文も出たばかりで研究も始まったばかりでしたから」

 

リィン「俺の夢に出てきたのがそれだと?だとしても、その《古代種》とやらはもう絶滅した筈だろう?」

 

フローラ「えぇ、確かに既に滅んだ種ですが、もう一つ気になる情報がありまして」

 

リィン「気になる情報?」

 

 

フローラ「リィン様はD∴G教団をご存じでしょうか?」

 

リィン「空の女神(エイドス)を否定し、子供を攫い人体実験を繰り返し多くの生命を奪った外道カルト集団だろう?それがなんの関係が?」

 

フローラ「では錬金術は?」

 

リィン「詳しくは知らないけど物質を違う物質に変えるっていう位にしか」

 

フローラ「ハッキングしたD∴G教団のコンピューターには彼等の技術の根幹は錬金術に成り立っていた様でその錬金術は物質だけではなく《魂の錬成》つまり生命を創り出す事をやっていたそうです。そしてそれは骨からでも生前の情報を読み取る事に成功したと…」

 

 

 

 

 

 

 

…おい、まさか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リィン「D∴G教団の残党かその技術を手にした何者かが《古代種》を甦らせた可能性がある…と?」

 

 

 

 

 



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第二十七話

 

フローラ「これは飽くまで推論に過ぎませんし、証拠も無い以上考えても無理です。また仮に有ったとしてカシウス殿が率いた連合隊によってD∴G教団は壊滅している以上そんな設備を維持出来るとは思えません」

 

確かに…あのカシウス師兄がそんな物を見落とす事はないだろうし

 

フローラ「勿論油断はできないでしょうが、頭の片隅に留めて置く位で良いでしょう。それよりもうすぐ着きますよ、マノリア村です。此処を過ぎればルーアンはもう少しです」

 

村に入ると海の香りがするが、はっきり言って…

 

リィン「嗅ぎ慣れてるからあんまり感動がないな…」

 

フローラ「基本的に《アンファング》は四六時中海上に浮かんでますからねぇ」

 

俺達は互いに顔を見合わせて苦笑するしかなかった。

 

リィン「まぁ、それは良いとして関所を出てから食べて無いから丁度良い時間だし此処で食べて行くか?」

 

フローラ「そうですね、直ぐ其処に開いてる店がありますからそこで食べましょう」

 

《白の木蓮亭》という名の酒場兼宿場で食事を摂ることにした

 

「いらっしゃい、食事?それとも宿泊したいのかい?」

 

リィン「食事の方で、何かおすすめは有りますか?」

 

「ならシーフードパスタがオススメさね、新鮮な海産物を使ったパスタは自慢の一品だよ」

 

リィン「じゃあそれを二人前で」

 

「はいよ!すぐに作るから座ってまっててな」

 

お言葉に甘えて席に座って待つ事にした

 

リィン「そういえばフローラ、此処の《紺碧》の塔も訪ねるのか?」

 

フローラ「えぇ、何時も個人的な我儘に付き合って貰い申し訳ないですが…」

 

リィン「それは構わないが…今まで塔を調べて何か判ったのか?」

 

フローラ「はい、前にも話したと思いましたが四つの塔はセレスト達が建造したもので間違い無いでしょう。そしてアレの役割は《リベル=アーク》を封印する為の鍵の付いた扉といった所ですね」

 

リィン「ふぅん?解かれる可能性は?」

 

フローラ「専用の《ゴスペル》を填めて『導力』を注がない限り無理の様です。因みにプロトタイプの私では《リベル=アーク》にアクセスすら叶いません」

 

リィン「フローラでも?」

 

フローラ「寧ろ私だからこそかも知れません。私を建造して必要なノウハウを向こうにフィードバックしてましたから、性能的には向こうのコンピューターが遥かに上です」

 

リィン「そうか…」

 

なら原作における結社の《ゴスペル》のオリジナルは一体何処から手に入れたんだ…?盟主からもたらされたにしても謎だらけだな…

 

「ハイお待ちどう様。シーフードパスタ二人前だよ」

 

リィン「おっと、フローラ話しは後にしよう。今は食べよう」

 

フローラ「そうですね」

 

「あんた達外国人だね?」

 

料理を運んでくれた女将さんが尋ねた

 

リィン「えぇ、判りますか?」

 

「そりゃあねぇ、若干イントネーション違うからね。もしかしなくともエレボニアからかい?」

 

リィン「はい、最も最近までロレントに滞在してましたけど」

 

「あぁ勘違いさせたみたいで悪いね。私は別にエレボニア人だからといって偏見なんてないさね、確かに《百日戦役》でえらい目にあったけどアレは上のお偉方が悪いのであって何の非も無いアンタ達を責めるのはお門違いも放ただしいってもんさ」

 

リィン「そう言ってもらえると助かります」

 

俺の父は関係者だから全く無いとは言えないけど…

 

フローラ「やはり珍しいですか?」

 

「まぁねぇ…唯でさえ飛行船が発達して港も昔程活気は無くなったのに化け物騒ぎで外国人は少なくなったね」

 

リィン「化け物?」

 

「そうさ、ここ最近海の方で化け物が出るって噂がね…その化け物はイカみたいな触手を持った奴らしくてね大きさも50アージュ(50m)もあると言われてるのよ。襲われた船もいたけど幸い鋼鉄製だから沈んだ船はいないけどそれでも損傷する船が後を絶たなくてねぇ…」

 

俺達は互いに顔を見合せながら女将さんに尋ねた

 

リィン「えっと、遊撃士は…戦力が足りないか、軍は対応は?」

 

「勿論海軍さんは動いてるよ?でも、追い払うのが精一杯みたいでねぇ…しかも直ぐに戻ってくるみたいできりが無いみたいだよ」

 

「あんた達も海には行かないだろうけど近寄らない方が身の為だよ」

 

食事を終えマノリア村を出て少し歩いてからフローラに聞いてみた

 

リィン「フローラ、《古代種》ってやっぱり海にも…?」

 

フローラ「はい、発掘された化石の中には海棲軟体動物もありました。先程の話しに該当する生物もいます、名は〘オケアノス〙と名付けられたこれは非常に獰猛でナワバリに入った生物は容赦なく襲い掛かったと考えられました」

 

リィン「そっか…はぁ〜夢であって欲しいよ、ホント」

 

ジュラシック・ワールドはごめんだよ…

 

 

 

「う、うわー!」

 

 

 

フローラ「っ!…リィン様!?」

 

リィン「ああ!誰か魔獣に襲われてるな行くぞ!」

 

 

なんか最近こんなんばっかりだな!

 

 

魔獣除けの外灯が故障したのか街道の真ん中で魔獣に襲われてるのは小さな子供を大勢連れた大人の女性と学生らしき男女三人しかも武器を持ってるのはレイピアを構えてるスミレ色の女の子一人だけ…ってあの子は!?殺らせるか!

 

リィン「八葉一刀流 二ノ型 『裏疾風』!」

 

「え…?」

 

俺は彼女に襲い掛かろうとした魔獣を纏めて斬り捨てて彼女の前に出てフローラに指示をだした

 

 

 

リィン「フローラ!後ろの子供達を守れ!俺はこいつ等を殲滅する!」

 

フローラ「了解しました!リィン様、数だけは多いのでお気を付けください!」

 

 

「リィ……ン?」

 

呆然と俺の名を呟く彼女の声を背にして奴等を殲滅する為俺は魔獣の群れに突っ込んだ

 

ー 十分後 ー

 

リィン「ふぅ、殲滅できたか…フローラ、そっちはどうだ?」

 

フローラ「此方も怪我人はいません」

 

それなら良かった…さて、問題は

 

「助けていただきありがとう御座います。私はマーシア孤児院の院長を勤めてるテレサと申します。この子達は私の孤児院で一緒に暮らしてる子達です」

 

 

魔獣に襲われたばかりだからか先生の後ろに隠れてるな…

 

テレサ院長「すみません、まだ怖いみたいで…」

 

リィン「いえ、この状況では無理もないですよ」

 

子供には刺激が強すぎるわな、そりゃ…

 

今度は学生達が話し掛けてきた

 

「いや、本当に助かりました!あのままやられるかと思いました。あ、申し遅れました私はジェニス王立学園の生徒会長を務めてるジル・リードナーです!そしてこっちの男子は…」

 

「同じくジェニス王立学園の生徒会副会長を務めてるハンスです。いや〜助かりました!俺達は戦えないから彼女に負担をかけてしまってましたから…あ、彼女は「クローゼ」…へ?」

 

リィン「久しぶりだね、五年ぶりかな?元気そうで良かった」

 

クローゼ「ッ…!」

 

俺がそう言うと彼女が駆けてきて…俺に抱きついてきた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クローゼ「久しぶり………リィン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第二十八話

ハンス「え?」

 

ジル「おや♥」

 

テレサ院長「あらあら♫」

 

フローラ「今夜はお赤飯を炊くべきでしょうか?」

 

外野が騒がしいな後フローラ、赤飯は違うと思うぞ。それよりこっちかな?

 

クローゼ「本当に久しぶりね。見違えたわ」

 

リィン「クローゼこそ…本当に綺麗になったね。最初解らなかったよ」

 

クローゼ「フフ…お世辞が上手ね、まだそっちの方は勉強中よ」

 

お世辞じゃないんだけどね…

 

クローゼ「あ、それ…まだ持っててくれてたんだ?」

 

クローゼが渡してくれた懐中時計を見付けたクローゼは嬉しそうに微笑った

 

リィン「うん?当然だよ、大切な贈り物何だから」

 

ジル「お二人さーん?嬉しいのは解るけど何時までもイチャイチャしてないでねー?」

 

おっと確かに、でもその割にはニヤニヤしてませんかねジルさんや?

 

クローゼ「あ…ご、ごめんジル!/////で、でもい・イチャイチャなんて////わ、私は唯久しぶりにあった友人が嬉しくて」

 

ジル「はいはい、そういう事にしておくわ」

 

クローゼ「もう、ジル!」

 

ハンス「おいおい二人共じゃれ合うのは後にしろよ。それでそっちの名前も聞いても?」

 

リィン「済まない、名乗るのが遅れたな。俺の名はリィン、リィン・アイスフェルトと言う、歳は多分そっちと変わらないと思うから敬語はいらないよ。で、こっちが…」

 

フローラ「リィン様にお仕えするフローラ・クリストと申します。以後お見知りおきを…」

 

ジル「リィンにフローラさんね、こちらこそ宜しく!…ってハンスどうしたの?急に黙って?」

 

ハンス「……美人メイドさんだと!?リィン、お前なんて羨ましい立ち位置なんだよ!」

 

うお!?びっくりした…っておいおい羨ましい?

 

リィン「いきなりどうしたのさ?えっとハンスって呼んでも?」

 

ハンス「おう、それで良いぜ。ってかリィン!こんな美人メイドさんに色々お世話されてるんだろう!良いかリィン!世の中の男子はフローラさんみたいな美人なメイドさんにお世話されるのは憧れのシュチュエーションなんだぞ?!そしてメイドさんとの禁断の恋も燃え上るも「ハンス君…?」ヒイッ!?」

 

クローゼの顔は笑ってるけど目が笑って無い(汗)

 

クローゼ「テレサ先生や子供達を何時までも此処に留まらせる訳には行かないでしょう?孤児院に戻るわよ、リィン悪いけど護衛頼めるかしら?私一人だとさっきみたいな事態になるから」

 

ハンス「ハイ、ソウデスネ」

 

リィン「了解、確かにこの人数に対して護衛の数が少ないな…孤児院は此処から近いのか?」

 

ジル「ええ此処から子供達の足に合わせると十五分ってとこかな?私達はマノリア村からの帰りに魔獣に襲われてしまったのよ」

 

リィン「尚更放って置く理由はないな、テレサ院長、俺達も護衛に就く事になりますが宜しいですか?」

 

テレサ院長「えぇ、寧ろ此方からお願いしたい位よ。でもお金は余り…」

 

リィン「俺は遊撃士じゃないですからお金は結構です。それよりも早くここを離れましょう、また魔獣が来たら面倒だ」

 

そうして俺達はマーシア孤児院に向けて歩き出した…

 

クローゼside

 

クローゼ「………」

 

ハンス君にはあぁ言ったけど実際リィンと彼女ってどんな関係なんだろう…綺麗だしもしかしたら本当に…

 

フローラ「クローゼさん、どうしましたか?」

 

クローゼ「あ、いえ何でもないです…えっとフローラさんでしたよね?ちょっとお聞きしたいのですが」

 

フローラ「?はい、私に答えられる事ですか?」

 

クローゼ「えぇ…あの、リィンとは付き合いは長いんですか?」

 

フローラ「(嗚呼、成る程)はい、確かにリィン様に仕えて…かれこれ…十年近く経ってますね?」

 

クローゼ「そう…なんですか」

 

そんなに長いんだ…だとしたら私は…

 

フローラ「クローゼさん私からも一つお聞きしても良いですか?」

 

クローゼ「あ、はい大丈夫ですよ」

 

フローラ「ではお聞きします。クローゼさん貴女リィン様に好意を抱いてますね?友としてではなく一人の男性として…」

 

クローゼ「え…あ?//////」

 

フローラ「やはりそうでしたか…」

 

クローゼ「あ、あの!その…私は…」

 

な、何でわかったの!?

 

フローラ「しかも初恋ですか、微笑ましいですね」

 

クローゼ「あう…/////」

 

うう〜顔が赤くなってるのが自分でも分かるわよ〜!

 

フローラ「フフフ、御安心を確かにリィン様を愛しておりますが私の『愛』は今は主従のそれですので…」

 

クローゼ「今は…ですか?」

 

フローラ「まぁ私の事は良いのです。貴女がリィン様とどうなりたいのかです。後悔の無い様考えて下さい」

 

クローゼ「…」

 

私は…

 

リィンside

 

何事もなくマーシア孤児院に辿り着いたのでテレサ院長とは此処で別れる事にした

 

テレサ院長「本当にありがとう、お陰で誰も怪我なく家に帰れたわ。本当ならお茶の一つ出せば良いのだけど」

 

リィン「気持ちだけ頂きます。クローゼ達を学園に送らなければなりませんし、魔獣除けの外灯の件もルーアンのギルドに知らせなければ」

 

テレサ院長「確かにそうね、お願いするわ…それと、『クローゼさんと仲良くね?』」

 

テレサ院長は俺だけに聞こえる様な声で言った。

 

リィン「?えぇ勿論、クローゼを嫌う様な事はしません」

 

テレサ院長「そう、それなら良いの…ほら皆!お兄ちゃんお姉ちゃんにお別れの挨拶をしなさい!

 

『は~い!』

 

「クローゼお姉ちゃんありがとう!」

 

「リィン兄ちゃん今度来た時剣を教えてくれよー!」

 

「クローゼさん!今度リィンさんとの馴れ初め話を聞かせてください!」

 

「何時結婚するのー?」

 

「フローラお姉ちゃん、また一緒に遊んでー!」

 

元気なのは良い事だ、一部おかしなことを言う子も居たような気がするが…

 

クローゼ「リィン」

 

クローゼが俺の左腕に腕を絡めてきた…?

 

リィン「クローゼ?」

 

俺が問うと微笑みながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クローゼ「色々教えて、別れた後どんな事をしていたのか貴方がこれまで見たり聞いたりしたものを教えて欲しい」

 

と聞いてきた…

 

 

 

 

 

 



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第二十九話

クローゼ達を学園に送り届けるまでの間俺の事を少し話すことにした。

 

ジル「へぇ〜、リィンってロレントでカシウス元大佐の師事をうけてたんだ?」

 

リィン「正確にはユン老師っていう方に師事を受けててカシウス師兄はサポートに回ってたんだけどね」

 

 

ハンス「だとしても俺達と同い年で剣を修めてるなんてスゲーよ!」

 

リィン「飽くまで《中伝》であって《奥伝》にはまだ至ってないけどな」

 

クローゼ「じゃあ、あの時グランセルに居たのはその為?」

 

リィン「いや…実はユン老師と出会ったのは帝都の空港でね、その船上で弟子入りすることになったんだ。だから当初の目的はリベールを巡る旅だったんだけどね」

 

クローゼ「そうだったんだ…」

 

ハンス「そーいやリィンとクローゼって何時知り合ったんだ?さっきは五年振りなんて言ってたけど?」

 

ジル「あ、それ私も聞きたい!クローゼが男子に抱きつくなんて珍しいもの見れたし!」

 

クローゼ「もう!ハンス君もジルも絶対面白がってるわね!?」

 

リィン「ハハ、仲の良い友人がいて何よりだ…さっきも話したけど五年前にグランセルで会ってるんだ。あの時は同じ年頃の娘が小さな子供をチンピラから守ってたから驚いたよ」

 

クローゼ「ゔ…だってリィンも見てたでしょう?あの子が危なかったんだから仕方が無いじゃない」

 

リィン「それで逆ギレされたチンピラに手を挙げられかけたんじゃあ意味無いだろう?」

 

クローゼ「でもリィンが助けてくれたわ。おかげで私もあの娘も助かったわ」

 

ジル「ほうほう、クローゼにとってリィン君は王子様だったと…そりゃあ惚れるわね」

 

クローゼ「ジル!////」

 

フローラ「お話し中すいません。リィン様これが原因みたいです」

 

フローラが指す方向に目を向けると確かに導力が切れた外灯が目の前にあった

 

ジル「これが切れたせいであんなことになったのね」

 

ハンス「これ、早く交換しないとマノリア村とルーアンの行き来が大変になるぞ」

 

リィン「フローラ、外灯の番号を読み上げるからメモを取ってくれ」

 

フローラ「承知しました」

 

とりあえずこれで魔獣の侵入は防げるだろう…ん?あれは…件の化け物イカか?悠々自適に浮上してる…

 

ジル「またアイツね!絶対舐めてるわね!」

 

ハンス「追い返してもまた元の海域に戻るからなぁ…おかげでルーアンの漁師は漁に出れないし」

 

クローゼ「……」

 

かける言葉が見つからないが…

 

リィン「行こう、今俺達が出来る事はない」

 

クローゼ「そう…ね」

 

今出来るのは彼女達を無事に学園まで送り届けることだけだ…

 

そうして歩く事二十分を過ぎると目の前に立派な校舎が見えてきた。

 

ジル「着いたわよ、ここがジェニス王立学園よ!」

 

リィン「立派な学園だな」

 

ハンス「そりゃそうさ、リベール最大の名門校だからな」

 

クローゼ「リィンの所もあるでしょ?そういう処」

 

リィン「ん…確かにエレボニアだと、トールズ士官学院とアストライア女学院かな?名門と言われるのは」

 

フローラ「カルバートですとアラミス高等学校ですね」

 

ジル「へぇ~、どれも名前は聞いた事はあるけど実際の交流はないからなぁ」

 

ハンス「俺はアストライア女学院に興味があるなぁ、可愛い娘が沢山いそうだ」

 

ジル「あんたは相手にされないわよ下心丸見えだし」

 

クローゼ「クスクス…確かにハンス君には敷居が高いかもね」

 

ハンス「ちぇ〜二人揃って酷えな〜」

 

雰囲気が明るくなったな…この分大丈夫だな

 

「おお、ジル君達無事に帰ってきたか」

 

顎に白い髭を生やした男性が此方に近づいてきた。もしかして…

 

ジル「コリンズ学園長、只今戻りました!」

 

やはり…

 

コリンズ学園長「うむ、少々帰りが遅いから心配しておったところじゃ、そちらの子達は?わが校の生徒ではなさそうじゃが…?」

 

クローゼ「あの、学園長実はテレサ先生を送る途中で魔獣に襲われて…」

 

コリンズ学園長「なんと!それでテレサ院長達は…?」

 

ハンス「それは大丈夫です。危ない処でしたがこちらの二人に助けて貰い全員怪我無く無事です」

 

コリンズ学園長「そうか…我が校の生徒を助けて頂き感謝申し上げる。儂はジェニス王立学園長を務めるコリンズと申す。貴殿らの御名前をお聞きしたい」

 

リィン「俺の名はリィン・アイスフェルトと言います、こっちは…」

 

フローラ「リィン様のメイドを勤めておりますフローラ・クリフトと申します」

 

コリンズ学園長「リィン君にフローラ君か…改めて生徒を助けて頂き感謝する」

 

リィン「いえ、礼を言われる事では…」

 

コリンズ学園長「なに、礼は素直に受け取っておきなさい、それで魔獣が出た原因は?」

 

リィン「実は…」

 

道中の魔獣除けの外灯が切れていたため魔獣が街道に出た事、俺達はクローゼ達を送り届けたらルーアンのギルドに報告する旨を伝えた。

 

コリンズ学園長「成程…そういう事なら一人ギルドの案内を付けよう」

 

ジル「学園長?」

 

コリンズ学園長「なに、学園の生徒が実際被害に合ったのだから学園側が依頼を出すのが筋じゃろう?二人だけに報告に行かせるのも違うしのう」

 

クローゼ「あの、学園長!それでしたら私が彼等を案内します」

 

コリンズ学園長「クローゼ君が?しかし君はさっき帰って来たばかりじゃここは他の者に…」

 

クローゼ「いえ、学園長私は大丈夫です!」

 

ジル「学園長、クローゼなら大丈夫です。行かせてあげてください」

 

コリンズ学園長「……わかった、そういうなら頼もうかのう?寮母にはクローゼ君の帰りが少し遅くなる事を伝えておこう」

 

クローゼ「…!ありがとう御座います」

 

コリンズ学園長「うむ、ではリィン君、ギルドの方は宜しく頼む」

 

リィン「承知しました」

 

クローゼ「では学園長行って参ります!リィン、行こう!」

 

リィン「ちょ、クローゼ!?引っ張らないで!?」

 

フローラ「失礼します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コリンズ学園長「…ジル君彼女はもしかして…」

 

ジル「ハイ♥本人は隠してるつもりですが」

 

コリンズ学園長「そうか…(良き出会いがありましたな…クローディア・フォン・アウスレーゼ殿下)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




自分的に長くなりすぎたので此処で区切ります


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第三十話

クローゼ「リィン、ようこそ此処がルーアンよ!」

 

クローゼの案内によって着いたルーアンは確かに綺麗な街だが…

 

リィン「やはり少し活気が無い感じがするな」

 

クローゼ「うん、あの巨大なイカみたいな物せいでちょっと、ね。でも人って結構逞しいみたいよ?」

 

クローゼが指差す方向に目を向けると地元民では無い、もしかして観光客の集団?

 

リィン「なぁクローゼ、あの観光客のお目当てってもしかして…?」

 

クローゼ「えぇ、件のイカを見に来た人達みたい、それを相手に商売を始めた人も居て、最近じゃイカを模したぬいぐるみやバッジ何かも売ってるみたいよ?」

 

クローゼが苦笑しながら語ってくれた。確かに逞しいなぁ…

 

クローゼ「唯、軍や遊撃士協会の方針はやっぱり排除したいから、街も本音では早く対策して欲しいみたい」

 

ま、そりゃそうだ実際沈んだ船は無しだか損傷した船が何隻も出たんだから排除しない訳にはいかないわな。たとえ奴にとってナワバリを守る為の当たり前の行動だとしても街には大迷惑被ってるしな

 

フローラ「ですが相手は海の中です。容易には…」

 

まぁそれも解るけど…

 

リィン「それでも対策しない訳にはいかないのはしょうがないさ…それよりクローゼ、ルーアンのギルド支部は何処に?」

 

クローゼ「うん、こっちよ。私に着いてきて」

 

大通りを着いていくと海側にホテルがありその向かいに工房、その隣かギルドの紋章が入った建物が見えた。すぐ近くに跳ね橋があった。

 

クローゼ「あの跳ね橋は《ラングランド大橋》って言ってね。ルビーヌ川は王都に繋がってるから川を遡って王都に入る船の為に毎日決まった時間に跳ね橋が上がるようになってるの。こっちもルーアンの特徴ね、そしてその跳ね橋を渡った先の直ぐに見える屋敷がルーアン市長《ダルモア》氏の邸宅よ」

 

ふ〜んあそこが…

 

フローラ「その向かいにあるのは…倉庫や港湾施設ですね」

 

クローゼ「えぇ…まぁ今は荷揚げする船が少ないし、倉庫の一部はちょっと問題がね」

 

問題…?あぁもしかしてあの連中か?

 

クローゼ「ま、街の紹介はこのくらいにしてギルドに入りましょう」

 

クローゼを先頭に俺達も中に入った

 

「いらっしゃい、ルーアン支部のジャンという者だよ…おや?君はジェニス王立学園の生徒だね?なにか有ったのかい?」

 

クローゼ「こんにちは、えぇメーヴェ海道の魔獣避けの外灯が導力切れで海道に魔獣が現れて孤児院の子達や私達に襲いかかりました」

 

ジャン「…ッ!それはかなり危険だね、怪我とかはなかったのかい?」

 

クローゼ「はい、こちらの御二人に助けてもらいました」

 

「そうか…それなら良かった。それで切れてた外灯の位置とかは判るかい?」

 

リィン「えぇ、外灯の登録番号を此方にメモしておきました」

 

俺はフローラから預かったメモを彼に手渡した

 

「…うん。この位置なら直ぐに行かせられるかな?と言っても今出払って…」

 

その時外の扉が開き姉御肌な女性が入ってきた

 

「ジャン!依頼終わった…おや依頼者かい?」

 

「おぉ丁度いい、カルナさん実はメーヴェ海道の外灯が切れて魔獣が出たらしいんだ」

 

カルナ「へぇ…じゃああたしはその討伐かい?」

 

「いや、そっちじゃなくてその外灯の七耀石の交換を頼みたいんだ。勿論魔獣がいたら殲滅しても良いけど優先順位は交換の方が先だね」

 

「はいよ、早速行ってくるよ…あぁそういやメルツの奴は脱走した犬を捕まえにいったからもうしばらく戻るのは時間がかかるね。じゃあ行ってくるよ」

 

カルナと呼ばれた女性遊撃士はそう言ってまた外に出ていった…

 

「さて、外灯の件ありがとうね。依頼料は学園に請求すればいいかな?」

 

クローゼ「はい、学園長も了承しています」

 

「うん、それなら後はこっち(遊撃士)が責任をもって対応します。ありがとう御座いました」

 

クローゼ「では失礼しました」

 

結局ほとんどクローゼに任せてしまったな…

 

リィン「悪いなクローゼ、全て君に任せてしまった」

 

クローゼ「ううん気にしないで、リィン達には助けてもらったし、学園長が言った様に学園と孤児院が被害に合ったのだからこちらから依頼するのが筋よ」

 

リィン「そうか、それでクローゼは学園にもどるのか?」

 

クローゼ「えぇ、門限もあるし…ねぇ、リィン?」

 

リィン「ん、なに?」

 

クローゼ「何時までルーアンに居られるの?」

 

リィン「…判らない、かな?けどそんなに直ぐに行く様な急ぎの用はないかな?」

 

クローゼ「そっか…ねぇ近い内にジェニス王立学園で学園祭を開催するのその時は一般にも開放されるから…」

 

リィン「勿論見学させてもらうよ。クローゼ達は何をするんだ?」

 

クローゼ「フフ、演劇よジルが監督した…ね?当日に何を演るのか教えるわ」

 

リィン「楽しみにしてるよ」

 

クローゼ「うん!待ってるから!」

 

そう言ってクローゼは学園に帰って行った…

 

フローラ「これからどうなさいます?」

 

リィン「そうだな…うん?」

 

これからの予定を尋ねられたので考えようとしたらルーアン飛行船発着場から一人の女性が歩いてきた。金髪の髪で眼鏡をしているが…度が入ってない伊達メガネだろうか?何かをさがしている?鞄を弄ってる…お節介かもしれないが、

 

リィン「そんなに慌ててどうしましたか?」

 

声を掛けられるとは思わなかったらしい女性は少し驚きつつも恥ずかしげに答えた

 

「えっと…実は財布と今日泊まるホテルの予約券を失くしてしまって…」

 

それはまた…

 

フローラ「発着場は調べましたか?それと最後に見たのは?」

 

「確か…最後に見たのは『ヘイムダル』の発着場です」

 

帝都からか…仮にスリにあったとしたら今頃もう…

 

「うう〜まさかこんな事になるとは、此れでは調査どころでは…」

 

彼女は頭を抱え蹲ってる。流石に見てられないな…

 

リィン「フローラ、構わないか?」

 

フローラ「ご心配なく、私自身余裕がありますから一人増えたところで対して差はありませんわ」

 

有り難い言葉だ、お言葉に甘えよう

 

リィン「あの…俺達と一緒にホテルに泊まりませんか?」

 

「え?しかし…」

 

リィン「流石に若い女性を路上に彷徨わせるのは気分が悪いですし、多分俺達もこれからホテルに行くので…勿論無理強いはしませんが…」

 

「…すみません。お言葉に甘えさせてもらいます。あ、私はこういう者です」

 

差し出された名刺には…エレボニア帝国古生物学研究会?と書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エレボニア帝国古生物学研究会から派遣されたラクシャ・フォン・ロズウェルと言います。今このルーアンを騒がせてる巨大なイカ…《古代種》らしき物を調査する為にリベールに来ました」

 

 

 

 

 

 

 



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第三十一話

ー ホテル 《ブランシュ》 ラウンジ ー

 

ラクシャ「本当に何とお礼を言ったら…泊まる為のお金も貸して頂いて、貴方がたには何から何まで」

 

リィン「いえ、頭を上げてください。困ってる人を助けるのは当たり前の事ですからしかしラクシャさんの属する《帝国古生物学研究会》とは…?」

 

ラクシャ「あぁ、それはですね…」

 

「おっと、その話俺にも聞かせてもらえませんかねぇ?」

 

声がする方向に振り向くとタバコを咥えた無精髭の男性が近付いてきた

 

 

ラクシャ「?、貴方は誰ですか?」

 

「おっと失礼、私はナイアール・バーンズ。リベール通信の記者です。今回ラクシャ博士がリベールに訪れると聞いて取材してこいと上から言われましてね。時間、貰えませんかね?」

 

ラクシャ「…良いでしょう。此処では何ですから場所を変えましょう。あ、ごめんなさい貴方がたのお名前を聞いていませんでしたね」

 

あぁそういえば名乗って無い様な…

 

リィン「すいません名乗り遅れました。俺はリィン・アイスフェルトと言います。こっちの女性はフローラ・クリフトと言います」

 

ラクシャ「リィン君にフローラさんですね、すみませんがちょっと席を外しますね」

 

ナイアール「別に此処でも構いませんが?」

 

ラクシャ「記者としては余計な人は居ない方が良いでしょう?それに…」

 

ナイアール「それに…なんですか?」

 

ラクシャ「此処、禁煙エリアですわ。貴方タバコ吸わないでインタビューできます?」

 

ナイアール「……御配慮感謝します」

 

二人が取材の為席をを外している間にフローラに確認をとってもらった

 

フローラ「確認がとれました。確かに古生物研究会なる組織は実在してます。また、彼女…ラクシャさんはその界隈では有名な人物のようです」

 

リィン「それはまた、女性の活躍の場が広がってるとはいえ帝国では珍しいな?」

 

 

フローラ「彼女の姓から分かる様に彼女の家は貴族ですが代々学者や博士を輩出しているそうです。因みに爵位は子爵だそうです」

 

嗚呼成る程、教育環境が良かったのか、しかし…

 

リィン「古生物学なんて学問がエレボニアにあったなんて知らなかったな?」

 

フローラ「学問自体がマイナーみたいで、そこまで大きい訳ではないようですよ?」

 

リィン「へぇ~、しかし《古代種》は何処で知ったのかな?」

 

フローラ「多分それは…」

 

ラクシャ「全てが私達の努力の結晶ではないのですよ」

 

インタビューが終わったのかラクシャさんが戻って来た

 

リィン「お疲れさまです。それとどういう意味ですか?」

 

ラクシャ「私達は確かに古生物を研究してますがその土台は古代ゼムリア文明の遺跡から発掘された物です」

 

ラクシャ「先程フローラさんが仰ったように古生物学はマイナーでその研究を疑問視する声は以前からありました。『本当に存在するか判らない古代生物の為にミラを掛ける必要があるのか?』そんな風に言われもしました…風向きが変わったのはある日一つの遺跡が見つかった時です。その遺跡には見たこともない生物の骨が完全な状態でみつかりました」

 

ー 最初は古代ゼムリア文明に生きた生物の骨かと思われましたがそれは骨ではなく石に置き換わった化石だと判明しました。年代測定の結果古代ゼムリアより遥かに古い、『約800万年前』の生物であることが判明したのです ー

 

ー これに驚いた調査隊は古生物学を研究していた私達に急遽来てほしいと頼まれました。そして現場に着いて更に遺跡から化石が次々と発掘される中一つの《本》を見つけました。それには《古代種調査録》と書かれていました ー

 

「そしてその遺跡が発掘した《古代種》の研究所である事が判明し我々はその調査録を元に研究を進め今に至ります。だから誇れる様な物ではないですけどね」

 

ラクシャさんは自嘲してるけど…

 

リィン「それは違うんじゃあないかな?」

 

「え…?」

 

フローラ「ラクシャさん達が古生物学を学んでいだからこそ、その遺跡の《古代種》の資料を正しく理解出来たんじゃ無いんですか?」

 

 

「でも、その資料は古代人の…言わば他人の成果を勝手に使った様な物で…」

 

「それが同じ時代に生きてる者なら確かに問題でしょう。だが既に滅びた文明の文献を読んで自分の学問に応用したからと言って貴女が卑下する理由にはならない筈です。それにその文献だけではなく自分達で見つけた成果もあったでしょう?」

 

でなければ古生物研究会なんて組織にまで大きくならないしな

 

「それは…」

 

「もっと胸を張っても良いと思いますよ?俺は」

 

「…フゥ、まさか自分より年下の子に諭されるとはね。ありがとうリィン君、フローラさん少し胸がすっきりしました」

 

多少は吹っ切れたかな?あぁそういえば

 

「帝国古生物研究会のスポンサーってやっぱり帝国政府なんですか?」

 

「確かに国もスポンサーですが貴族がメインですね。一番大きい所は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロワール・ド・カイエン公爵が筆頭ですね」



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第三十二話

私はギリアス・オズボーン、帝国宰相である。現在帝都ヘイムダル《バルフレイム宮》の中の執務室で私の子飼いの《鉄血の子供》(アイアンブリード)達が集まっていた。まぁ一人は諸事情でいないが…

 

私の机には一通の手紙が置かれていた。唯の手紙なら問題は無いのだがその差出人が…

 

「閣下!これはどう見ても罠です!!このような招待に応じるべきではありません!」

 

鉄道憲兵隊(TMP)所属であり《鉄血の子供》の一人クレア・リーヴェルト少尉が声を荒げながら私の机を叩いた。まぁこの内容ではな…

 

 ー 帝国宰相ギリアス・オズボーン殿へ

 

明日夜8時にて我が領地オルディスにて私が出資して建設した《古代種》博物館の開館記念に舞踏会を開きます故、宰相殿にも参加して頂きたい。尚、皇帝陛下にもご出席なされるのでくれぐれも遅れ無きようお願い申し上げる ー クロワール・ド・カイエン公爵

 

「ハ、内容は丁寧だが要は敵地に来れる自信がおっさんにあるかと言いたいんだろうな」

 

同じく《鉄血の子供》の情報局所属レクター・アランドール、飄々とした態度は何時もの事だが、まぁ彼奴の狙いはそうだろうな

 

「へぇ~オルディスか〜美味しい御飯がいっぱい有りそう〜、ところで《古代種》て何?」

 

同じく《鉄血の子供》のミリアム・オライオン、まだまだ子供

故か食い気が先か…優秀ではあるのだかな

 

「《古代種》というのは遥か太古の昔に栄えた生物の事を指すのですよミリアムちゃん…しかし《古代種》を博物館に展示するとは、よほど自らの権威を示したいのかしら?」

 

「ま、実際は《帝国古生物研究会》が発掘しているけどな、カイエン公はそのスポンサーの一つらしいぜ。因みに其処には貴族出身の学者も居るらしいが貴族派とは距離を置いてるらしいぜ」

 

オズボーン「利害の一致という訳だな、研究会はミラが無ければ発掘すら儘ならんからな。帝国政府も出してはいるが出資している貴族はカイエン公以外にもアルバレア候やログナー候も居るらしい」

 

「へぇ~四大も関わってか〜でもオジサンどうするの?断る?」

 

「いや、出席するさ…クレア少尉、列車の手配を頼む」

 

「しかし閣下……!」

 

「落ち着け少尉、そもそも皇帝陛下もご出席為されるのであれば宰相たる私が行かない選択肢等無いからな」

 

「…解りました。では護衛は私が」

 

「いや結構だ、言っただろう?皇帝陛下がいらっしゃると…今向こうが仕掛ければ不利になるのはカイエン公の方だ。陛下の御前でそんな真似をする程奴も愚かではない」

 

「代わりに少尉には《帝国解放戦線》を探ってもらいたい。不穏分子は早く排除するに越したこと無いからな」

 

「了解しました。」

 

「頼んだ…ミリアム、お前はノルドに向かい共和国軍の動向を監視してくれ…お前の《アガートラム》なら可能だろう?」

 

「え〜、ご馳走食べたいのに〜」

 

「お前の年恰好で入れる訳無いだろう…任務をちゃんとこなせば休暇をやるから今はそれで我慢するが良い」

 

「ぶ〜判ったよ〜」

 

「おっさん、俺は…」

 

「フフフ安心しろ、貴様にも仕事はある。貴様にはリベールに飛んでもらう」

 

「は?何でリベールに行く必要が…?」

 

「リベールのルーアンで巨大なイカの化け物が出たという話を聞いた事があるだろう?研究会のラクシャ嬢は《古代種》の可能性があると言ったらしい。政府としても優秀な人材を失うのは避けたいからな、貴様には表向き書記官として彼女に接触して危険を遠ざけろ』

 

「へいへい、人使いが荒いこって(そういえば今頃学園祭の準備始まってるよな〜?…久々にクローゼ達の顔を見てみるか、弄くるのも良いかもな)」

 

「他に何かあるか…?無ければ各自事に当たるように」

 

 

ー 翌日 ー

 

結局護衛を一人も付けないのは要人として如何なものとなりTMPと軍から何名か付き《アイゼングラーフ》号に乗りオルディスに向かう事になった。その中に同じく招待された帝都知事のレーグニッツも同乗することになった。

 

「それではクレア少尉、留守は頼む」

 

「は、閣下もお気を付けて下さい。《解放戦線》は此方の都合などお構い無しですから」

 

そうして《アイゼングラーフ》号は帝都を発車した。帝都の執務室を離れたからと言ってもまだまだ帝国宰相の判が必要な書類が沢山あり、それを処理しながらオズボーンはレーグニッツ知事に訊ねた

 

「そういえば知事殿の子息はトールズ士官学院に進むそうだな」

 

「えぇ、本人は勉学の心配は無いので合否は問題無いでしょう。ですが…貴族嫌いが激しくて無用の対立を引き起こさないか心配でして、貴族と言っても色々居ることを判って欲しいのですが」

 

「フフフ、失敗もまた必要な要素だよ。その失敗を活かすも殺すも彼次第よ」

 

「はぁ…そうだと良いのですが、そう言えばその士官学院に今年に《例のクラス》を発足させるので?」

 

 

 

 

 

 

「うむ、オリヴァルト殿下も理事に加わってな、必要な人材を揃えたので特科クラス《Ⅶ組》を今年度に発足する」

 

 



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第三十三話

「フフフ、オルディスにようこそ宰相殿、会場までの道案内は不肖このオーレリア・ルグィンめが務めさせて頂くので宜しくお願い致す」

 

オルディスに到着した我々の前に現れたのは女傑と名高いオーレリア・ルグィン女伯…!

 

オズボーン「ハッハッハ!丁寧な挨拶痛み入る。まさか名高きオーレリア将軍の出迎えを受けるとは思わなんだ」

 

オーレリア「いやいや、宰相殿の知名度に比べれば私などまだまだ…」

 

オズボーン「ご謙遜を、ヴァンダール流とアルゼイド流、帝国の二大剣術を二つ共納めた御仁が只の人ではありますまい」

 

オーレリア「フフ、それとてよき師に恵まれたからに過ぎませぬ故。此処で話すのはあれですので迎えの車を用意しております」

 

ルグィン伯に促され駅を出た我々はRF社製の高級リムジンに乗り込み会場に向かう。

 

オーレリア「して、宰相殿は今回のカイエン公の思惑をどう見られるのかな?」

 

オズボーン「ほう?貴殿の立場からその様な事を聞かれるとは思わなんだが」

 

オーレリア「この様な話しは宰相殿も知っておられるだろうが《貴族派》と言っても一枚岩では無いのでありまして、カイエン公を支持する一派も居ればアルバレア候を支持する者も居る様に。本気で《革新派》に対抗しようとする者や《革新派》に協調していきたいと本音では願う者も居る。あぁ因みに私は宰相殿には思う処は無いが我がルグィン家もカイエン公との付き合いが長いので《革新派》には寝返る気はないので…まぁ私個人の思惑もありますが」

 

ふむ?なるほどな…

 

オズボーン「…普通に考えるなら今回のカイエン公の思惑はやはり自身の派閥の結束と他派閥と我々の牽制だろうな…まぁ、多分それだけではないと思うが…それと貴殿は本当にカイエン公に属してるのかな?クロワールではない別のカイエン公の血筋の者に仕えて…」

 

オーレリア「…さて?なんの事でしょうか?生憎心当たりはありませぬが…」

 

オズボーン「…まぁ、そういう事にしておこうか」

 

「お待たせしました。会場に到着しました」

 

運転手の声で車から降りると目の前には立派な建物が目に入った…

 

オズボーン「随分立派な建物だな」

 

レーグニッツ知事「此処は元々代々のカイエン公所有の宝物庫だったそうです。今は別の場所に移していたので中身は空でしたが今回の話が出た時に博物館に改装したそうです」

 

別の車に乗っていたレーグニッツ知事が降りて此方に合流してそんな事を言った。

 

オーレリア「フフフ、お二方時間が押してるのでどうぞ中にお入りを…」

 

ルグィン伯に促され会場に入ると多数の貴族共が此方を見てきた。憎々しげに見る者、恐ろしい怪物を見る様な目をした者など様々だが、中には例外もいた…

 

「ギリアス義兄さん…」

 

「テオか、久しいな息災そうで何よりだ。それより余り私に声をかけない方が良いぞ?私は兎も角、お前が他の貴族共に非ぬ誹謗中傷を受けるのは好ましく無い」

 

ボーイから受け取ったワインを唇に浸しながらそうテオに忠告したが…

 

「はは、いちいち一男爵家の行動に目くじらを立てる様な輩はこちらこそ願い下げです。それより義兄さん…」

 

「うん?」

 

テオ「ごめん、義兄さんの子を見つける事出来なくて…あれから何度も捜索したんだけれど…」

 

オズボーン「頭を上げてくれテオ、お前が悪い訳じゃない。悪いのはあの時襲撃した連中とリィンを守り切れ無かった私のせいなのだから…」

 

テオ「そんなこと…!」

 

「それに、死体は見つかって無いのなら何処かで生きているだろう」

 

 

テオ「?…なぜそう言い切れるので?」

 

「親としての勘…だな」

 

まぁ実際は《イシュメルガ》の反応頼みだがな、忌々しいが…

 

テオ「勘って…まぁ義兄さんはそういったのは外れた試しは無いからそうなんだろうね」

 

「おや?宰相閣下にテオ殿ではありませんか」

 

底にまた声を掛けてきたのは若い貴公子で会場にいる婦女子が黄色い声を上げていた

 

テオ「ルーファス君か、久しぶりだね昔鷹狩りを君に教えて以来か…」

 

ルーファス「えぇ、その位かと宰相閣下にもその節はお世話になりました」

 

オズボーン「何、あの時の私は君と同じく鷹狩りに来てた一人の客に過ぎんよ…饗したのはテオの方だ」

 

ルーファス「フフフ、そうでしたかね?」

 

テオ「君が此処に居るということはアルバレア候も?」

 

ルーファス「えぇ、今は自分に近い者達への対応で居ませんが…それと宰相閣下にも一つご報告が、私の弟ユーシスがトールズ士官学院に進学することになりました」

 

オズボーン「ほう、その口振りだともしかして《Ⅶ組》にかね?」

 

ルーファス「はい、無論実力と本人の意思次第ですが」

 

「それなら私の娘も参加するかもしれませんわ」

 

今度は金髪の妙齢の女性だ…彼女はラインフォルトの代表の…

 

ルーファス「これはイリーナ・ラインフォルト女史、貴女もこの会場に?」

 

イリーナ「えぇ、件の研究会が発掘に使ってる機材は我が社(ラインフォルト)製の物ですので、その関係で」

 

 

オズボーン「成る程、して御息女もトールズに?」

 

イリーナ「はい、私の娘も何を思ったのかトールズに行くと言い出しまして…例の《新型オーブメント》のテストにも積極的に参加してましてその流れで…」

 

ルーファス「それはそれは…母親の跡を継ぐ決心でもしたのでしょうか?」

 

イリーナ「さあ…?でも入学するからにはちゃんとして貰わなければ困りますので、家のメイドに補佐を頼もうかしら?」

 

 

「エレボニア帝国皇帝ユーゲント・ライゼ・アルノール陛下がご来場なさいました!」

 

儀仗兵の言葉に全員入り口に顔を向け一斉に頭を下げた。その中で陛下の前に一歩前に出た男…カイエン公が恭しく陛下に頭を下げている

 

カイエン公「ようこそ御出で下さいました。臣として陛下をお招き出来た事を光栄に存じます」

 

ふん、良くもいう…密かに領邦軍の装備近代化を図っているのは周知の事実だというのに

 

ユーゲント三世「カイエン公、今日はこの様な催しを招いてくれて感謝する。して、件の代物は?」

 

「ハ!少々お待ち下さい…おい!」

 

カイエン公が指示すると展示台の床が開き次々と迫り上がってくる《古代種》の化石!!…実物を見るのは初めてだが、確かに自慢するだけのことはあるな…周りの人間もどよめいてるしな

 

ユーゲント三世「これが《古代種》か…中々迫力があるな、これを発掘した研究会とやらはこの場に居るのか?」

 

カイエン公「あ、いえ…彼等は別の場所にてまた発掘しているかと」

 

ユーゲント三世「ふむ?それは残念だ、是非話しを聞いてみたかったのだが…」

 

「その言葉だけで彼等は報われるでしょう。さ、此方へオルディスの海鮮をふんだんに使った料理を用意しております」

 

 

「…うむ」

 

カイエン公が陛下を連れて別室に入るのを見届けると私の前にまた来た…ルーファス卿の父ヘルムート・アルバレア侯爵だ

 

ヘルムート「これはこれは、オズボーン宰相ではないか?てっきり来ていないと思いましたな?」

 

オズボーン「フフフ、確かに帝国宰相は暇な貴族と違い陛下に御報告する書類やら折衝で大変ですが、陛下がいらっしゃる場に私がいないのは問題だと思いましてな」

 

ヘルムート「ほう…暇な貴族とは誰の事かな?その様な輩が居るとは、貴族の風上にも置けんな?」

 

オズボーン「さて?私は噂でしか知りませんが最近その貴族の領邦軍の装備が最新型の物が大量に配備しているとか…」

 

ヘルムート「なるほど、確かに問題かも知れませんが領民を守る為には必要な装備では?」

 

オズボーン「戦車や爆弾を大量に発注するのが領民を守る為だと卿は言うのかね?」

 

ヘルムート「…ふん、そういえば貴様には嘗て息子がいたな?あの時は何故か(…)帝都の中にも関わらず貴様の自宅に猟兵の襲撃を許してしまったか、私とクロワールは責任を感じてせめてユミルまで密かに護衛を付けたのだが何故か崖に滑落してしまったな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オズボーン「………なんだと?」

 

 




なんとか書けた…(汗)


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第三十四話

アルバレア候「ふん、聞こえなかったか?これだから平民は度し難いのだ…多少頭が回ろうと貴様等と我々貴族では見てる世界が違うのだよ」

 

 

今コイツは何と言った?あの時襲撃したのは小奴らの子飼いの者だと?……巫山戯るな、ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな…ふざけるな!!確かにきっかけは《イシュメルガ》だがそれはあくまできっかけだ!こいつ等は自分の意思で俺達家族を…俺やカーシャを、リィンを…(キルナラチカラヲカスゾ…)黙れ…貴様の指図は受けん!だが…

 

オズボーン『ほう?どう見てる世界が違うのか教えて貰おうか?』

 

アルバレア候「何だと、貴様…ヒッ!?」

 

オズボーン『ドウシタ?キサマラハワタシニ《格》ヲミセツケテクレルノダロウ?ソレトモタダノ口先ダケカ?』

 

ふん、この程度の《圧》で怯むとはな…

 

アルバレア候「だ、黙れ…!成り上がりの癖に、平民が貴族に敵う訳が…!」

 

オズボーン『マダ解ラナイミタイダナ?戰場デハ貴族ダロウガ平民ダロウガ一振リノ剣ヤ一発ノ弾丸デ簡単ニ平等ニ死ヌ、貴族ガ特権ヤ贅ヲ持テルノハイザ戦イニナッタラ身体ヲ張ッテ力無キ民ヲ守ル為ニアルノダ。ソレヲ履キ違エオッテ…」

 

アルバレア候「き、貴様!平民の癖に…」

 

「双方そこ迄ににしてもらおうか」

 

この声は…ヴァンダイク閣下か?

 

ヴァンダイク「久しいなオズボーン。最後に会ったのは主が退役願いを提出した時だったかな?」

 

 

オズボーン「フフフお久しぶりです閣下、えぇ懐かしい話しですな。閣下にはお世話になりました」

 

ヴァンダイク「ウム、それより双方陛下の御前でかのような諍いを起こす等あってはならぬものぞ!」

 

アルバレア候「…ッグ!?」

 

オズボーン「フ、確かに少々無粋でしたな。申し訳ないアルバレア候、些か度が過ぎた様だ」

 

奴に頭を下げたが此処で謝罪を受け取らなければ彼奴は度量の小さい男として言われかねないからな…フ、奴には苦痛だろう

 

アルバレア候「グッ……!謝罪を受け入れる…」

 

ヴァンダイク「収まった様だな。それとオズボーン宰相殿、陛下がお呼びになられている。直ぐに向かう様に」

 

オズボーン「陛下が…?判りました、直ぐに向かいます。ではアルバレア候失礼致す」

 

アルバレアside

 

アルバレア候「おのれ……!成り上がりの平民の分際で…!」

 

去って行く奴の後ろ姿を見て忌々しい物を感じながらも奴に《恐怖》を覚えた事にも腹ただしさもおぼえたわ!

 

「ご機嫌が悪い様ですね父上?」

 

アルバレア候「ルーファスか…フン!鉄血の顔を見て機嫌が良い訳が無かろう!して、収穫はあったか?」

 

「こちらの派閥に属する貴族は改めて此方を支持すると…唯アルゼイド子爵を筆頭とする中立派はやはり何方も協力しないと…」

 

アルバレア候「ふん!やはりな…まぁ奴等には宛にはしとらん。良いなルーファス、来たるべき時に《鉄血》を倒した後は次の敵はカイエン公だ…その時に備えて奴の派閥を少しでも切り崩すのだ!」

 

「承知しております。父上…」

 

(その時等貴方には来ませんよ、父上)

 

sideout

 

オズボーンside

 

オズボーン「陛下、ギリアス・オズボーン只今参上致しました」

 

ユーゲント「うむ…ご苦労…オズボーン宰相、此度のカイエン公の催しどの様に見るか?」

 

「…少なくとも己の権威の誇示と私との全面対決に算段が付いたのでしょう。ここまで来れば和解は無理です…何方かが倒れない限り帝国は…」

 

「そうか…やはり〘黒の史書〙の通りになるのか…だが《古代種》については何も書いて無いが?」

 

オズボーン「《奴》はそれについては何も言ってきてません。奴も何も知らないのか、或いは問題無い些細なことなのか…」

 

「……何れにせよ全てが終わった後帝国の歴史家には私の事は史上最低な愚かな皇帝として名を残すな」

 

「陛下…」

 

「卿には申し訳無いが最後まで付き合って貰うぞ?オズボーン宰相」

 

 

 

 

 

「Alles für Seine Majestät den Kaiser(全ては皇帝陛下の為に)」

 

 

 

 

 

 




それっぽく書けたかなあ?


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第三十五話

あれからラクシャさんの調査の手伝いをする事になった。どうやら他のメンバーは帝国領内の《古代種》の発掘調査に駆り出されて一人でこっち(リベール)に来た為現地で手伝いを募集しようと思っていたらしい。

 

因みにカイエン公等貴族派とは関係は良好なのかと尋ねだが答えは

 

「確かに研究会の最大のスポンサーですがはっきり言って〘只それだけ〙ですね。彼等の様な上級貴族は顔すら見た事もないですし、今帝国内で密かに言われてる貴族派と革新派の対立に味方しろとも言われてないですし加担したくもありません。恐らく彼等にとって私達は《古代種》という話題性を得る為の道具としか思って無いかと…」

 

「まぁ彼等の資金力を利用している私達も威張れる立場では無いですか…」

 

とのことらしい…まぁ、あのカイエン公やアルバレア候だと無理ないか?

 

リィン「で?具体的にはどう調査するんですか?専門的な知識は無いですよ俺達」

 

ラクシャ「それは大丈夫です、メーヴェ海道に出て見晴らしの良い所で対象の写真を撮りたいのです。それでお二人にも写真撮影をお願いしたいんです。写真が多ければ多い程良いのでよろしくお願いします」

 

という事らしい、まぁそれで二週間海道に行ってたんだが…

 

リィン「あいも変わらず魔獣が多いな?」

 

魔獣の首を刎ねながら呟くと…

 

フローラ「飽くまで魔獣除けでございますから、少しでも海道を離ればこうもなるかと…」

 

フローラが大型拳銃で丁寧に一発ずつ屠っていきながら答えていたが…まぁ確かにそうだろうけどしかし以外なのが…

 

ラクシャ「お二人共強いのですね?少々驚きましたが…」

 

そう言いながらレイピアで魔獣を斬り伏せるラクシャさん…寧ろこちらの台詞ですが?

 

リィン「随分手馴れてますね?」

 

 

ラクシャ「あはは、これでも一応帝国貴族ですから、剣は嗜みますよ。それに…発掘現場では常に魔獣除けはあるとは限りませんから皆何かしらの自衛手段を持ってないと命は幾つ有っても足りませんから」

 

フローラ「…逞しいですね?(汗)」

 

本当にな…これが学者か、下手な猟兵より強いんじゃね?(汗)

 

ラクシャ「?、まぁかなり撮れましたからルーアンに戻って少し整理しましょう」

 

「あれ、リィン?」

 

ん?この声は…クローゼか、挨拶しようと振り向くと彼女の後ろに見覚えのある二人が…

 

リィン「やぁクローゼ?…それと、エステル?ヨシュアもどうして此処に?」

 

エステル「それはこっちの台詞よ、こんなトコでなにしてんのよ?」

 

ヨシュア「それに、クローゼと知り合いなのかい?」

 

クローゼ「えっと、どうなってるのかしら?」

 

 

ー ホテル 《ブランシュ》 ラウンジ ー

 

リィン「そうか、正遊撃士を目指す為に各都市の推薦状を求めて…」

 

 

エステル「うん、リィンと別れた後市長さんの家に強盗が入ったのを追うのをきっかけにね?」

 

リィン「強盗?」

 

ヨシュア「そう、今年の女王祭に贈る大きい七曜石の塊を奪われたんだ…でその後一度シェラザードさんと一緒にカプア一家と名乗る盗賊団を追いつめたんだけど飛行艇で逃げられてしまってね。その直後に父さんの乗った定期船が消息不明と聞いて…」

 

「その後ロレントを発ってボースで暫く依頼をこなしていたら消息不明だった定期船を見つけたのは良かったんだけど丁度来たハーケン門のモルガンっていう将軍に事件の容疑者として疑われて牢屋にぶち込まれたのよ!メイベル市長が居なかったらどうなってたことやら」

 

リィン「カプア?それって確か…」

 

フローラ「多分そのカプアかと思います」

 

エステル「二人共何か知ってるの?」

 

リィン「直接の面識は無いけど俺達が居を構えてるリーヴスの領主がカプアという姓だった筈」

 

フローラ「確か詐欺にあい財産を失い爵位も手放したとか…リーヴスの町長は心配してましたが…」

 

 

エステル「そっか、それを聞くと少し可哀想かな?」

 

リィン「それでどうなったの?」

 

ヨシュア「うん、最終的には彼等のアジトに乗り込んで捕まってた定期船の乗客を救出してカプア一家は王国軍によって捕らえられたんだ、父さんは居なかったけどね」

 

エステル「それで父さんが宅配便に入れた〘荷〙を私達が受け取ってツァイスに〘荷〙を解析してもらおうって話しになったの」

 

〘荷〙…アレの事か

 

クローゼ「あの、リィンそれでその人は一体…?」

 

あ、そうかクローゼは知らないよな。

 

リィン「済まない。此方の方はエレボニアから来た…」

 

ラクシャ「ラクシャ・フォン・ロズウェルと言います。《古生物研究会》という処に所属しています。今はこの地にいる《古代種》を調査していまして、彼等にも協力してもらってたんです」

 

クローゼ「《古代種》とは…もしかしてあの海に居る?」

 

 

エステル「あ!そうそう、あれなんなの!?あんなの初めてみたんだけど!?」

 

ヨシュア「あれは一体…?」

 

ラクシャは一口紅茶を飲んで語り始めた

 

ラクシャ「リィン君にも手伝って貰ったお陰である程度は分かった事は有ります。ですがその前に古代種についてお話ししましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第三十六話

ラウンジで話す内容ではないのでラクシやさんが泊まってる部屋で解説することにした。

 

ラクシャ「まず始めに今この地に居座ってる《古代種》の名は〘オケアノス〙と私達は呼んでいます」

 

いつの間にかフローラが持ち込んだホワイトボードで書き込み始めた

 

クローゼ「〘オケアノス〙…ですか」

 

ラクシャ「えぇ、非常に獰猛でナワバリに入る者は容赦なく襲い掛かっていただろうと考えられていました」

 

ヨシュア「そんなのが海に…?」

 

エステル「あ、あの〜それって魔獣ではないんですよね?なのにあんなにでかくなるんですか?」

 

エステルの質問にラクシャさんは微笑みながら答えた。

 

ラクシャ「勿論最初は小さな生物でした、しかし親から子へ子から孫へと環境に適応していった結果だと思います。これらの一連の流れは私達の間では『進化』とよんでいます」

 

クローゼ「『進化』…」

 

エステル「え、とよく分からないんだけど…それは赤ん坊が言葉を覚えたり歩き出す様な感じですか?」

 

ラクシャさんは頭を振った

 

ラクシャ「いいえ、それらは飽くまで『学習』です。環境、例えばウサギは後ろ脚が発達してますよね?それは何故だと思いますか?」

 

エステル「え…?」

 

ヨシュア「…なるほどそういう事ですか、ウサギはその瞬発力で天敵から逃れる為に発達した脚が『進化』になる訳ですね?」

 

エステル「あ…!」

 

ラクシャ「その通りです。『進化』は天敵だけではなく地形、気温、色々な要素が絡んできます」

 

クローゼ「では、貴女が最初に言った〘オケアノス〙もあそこまで巨大になったのは…?」

 

ラクシャ「生物が大型化するのには大体二つ有ります。一つは天敵がいない場合、自身を捕食する生物がいなければその生物は徐々に大きくなります。二ツ目は逆に天敵がいた場合ですね」

 

エステル「?…一つ目は何となく解るけど二ツ目も何で大型化するの?天敵が居るんなら大型化するより小型化した方が良いような…?」

 

ラクシャ「えぇ勿論そっちに舵を切ったのも居ます。ですが〘オケアノス〙は群れで行動する生物でなかったと思われます。この事が大型化に繋がると我々は考えました」

 

クローゼ「?…どういう事ですか?単独で動いてるから大型化…あ!そうか!!」

 

エステル「わ!?クローゼいきなりどうしたの?」

 

クローゼ「エステルさん!もしエステルさんが食べる為に狩りをするとして巨大な獲物と小さいけど数が多い獲物どちらを狩りますか?」

 

エステル「え?…状況にもよると思うけど小さい方かな?数が多ければ何匹か仕留められるし、大きい方はリスクがた…か…す…ぎ?」

 

ラクシャ「そう、恐らく〘オケアノス〙が大型化という『進化』を選んだのは天敵よりでかくなれば捕食されないと気付いたからでしょう。現在でも完全に単独行動してないですが巨大な鯨等がいます単純に大きさが武器になる一例ですね」

 

ラクシャさんは一息ついてフローラが淹れた紅茶を飲んだ

 

エステル「は〜凄い話しね〜、因みに《古代種》って言うからには相当古い生物ですよね?どの位古いんですか?」

 

ラクシャ「う〜ん…そうですね?最新の年代測定で約八百万年前から五千万年前と言われてますね」

 

『『『……………は?…………』』』

 

あ、三人共固まった。珍しい、ヨシュアまで思考停止してる

 

フローラ「数字だけ見ても途方もないですから無理もないかと」

 

それもそうか、フローラ今のうちに全員分の新しい紅茶を出してくれ

 

フローラ「承知しました」

 

ラクシャ「フローラさん私には砂糖二杯入りでお願いします」

 

三人が帰ってくる迄暫くフローラ、ラクシャさん俺の三人で紅茶を楽しんでると

 

エステル「…さ、最低でもは…八百万年前〜!?何よ!その数字は〜!」

 

お、戻ってきた

 

クローゼ「なんというか…途轍もなく永い年月ですね…」

 

ヨシュア「古代ゼムリア文明が霞むレベルだね…リィンは知ってたみたいだね?」

 

リィン「ん?あぁ、まぁねでも俺も最近フローラに教えてもらったばかりでね。三人と知ってる事は大差ないよ」

 

クローゼ「そ、そうなんだ?でも《古代種》ってもう絶滅したって事ですよね?何故滅びたのですか?」

 

ラクシャ「う〜ん色々な説が提唱されていますね。例えばウイルス感染による大量死説、何らかの理由で紫外線の増加による絶滅説等ありますがどれも説得力が欠けてるんですが…」

 

エステル「はえ〜よくそこまで考えられますね〜私だったらすぐギブアップするかも」

 

ヨシュア「エステル、考えるより行動だもんね」

 

エステル「む〜別に良いじゃない」

 

クローゼ「クスクス、本当にお二人共仲が良いのですね」

 

ラクシャ「ですが最近になって有力な説が出てきました。」

 

ヨシュア「?…それは一体どのような説ですか?」

 

ラクシャ「……隕石の衝突による大量絶滅説です…」

 

『『『!?!?!!』』』

 

エステル「ちょッ、ちょと待って!?隕石!?隕石ってあの隕石!?」

 

ラクシャ「他がどうなのか知りませんが、その隕石です」

 

クローゼ「…………」

 

クローゼの顔が青いな…無理もない、ショックな話しだからな

 

ヨシュア「……なにか証拠みたいなのがあるんですか?」

 

ヨシュアですら少し動揺してるな

 

ラクシャ「クレーター等は風化して残ってはいませんが地層から痕跡が見られます」

 

ホワイトボードに張ったのはどこかの発掘現場の地層を写した写真だろう。一本の黒い筋が横一直線に引かれていた多分これが…

 

ラクシャ「この黒い線が見えますか?この線の成分を調べたところ煤や灰といった物が検出されました。そしてこの黒い線より上の地層からは《古代種》の化石は見つかってません。この状況から大規模な爆発により粉塵がまい、太陽の光を遮られ絶滅したものと見て間違いないと我々は見ています」

 

エステル「で、でも現に《オケアノス》は居るよ?何処かで生き残って出てきたんじゃ…」

 

「有り得ません」

 

ラクシャさんはエステルの意見をはっきりあり得ないと断じた

 

「え?でも…」

 

ラクシャ「先程粉塵がまい絶滅したといいましたがより正確に言うと粉塵が太陽の光を遮った後は寒冷化が進み生き残っていた古代種達は寒さと飢えにより生命を落としていきました。《オケアノス》も同じです。あれだけの身体を維持するだけの餌は幾ら有っても足りません。その餌が激減した状態で体格を維持しながら生き残るなど不可能です。寒冷化が収まる迄に数千年掛かるというのに…」

 

 

クローゼ「えっとつまり…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヨシュア「あの《古代種》は今を生きてるのは〘不自然な程あり得ない出来事〙という訳………ですか」

 

 




進化についてはこちらの偏見です。間違っていたら申し訳ありません。


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第三十七話

ラクシャさんの解説を聞き終えた俺達はラクシャさんに礼を言って部屋を後にした。

 

エステル「えっと…なんか突拍子も無い話だったね」

 

クローゼ「えぇ確かに…」

 

ヨシュア「《古代種》か…しかも最低でも800万年前の栄えた生物…か、しかもそれが今目の前で生きていて、にも関わらず『生きているのはあり得ない』…か色んな意味で驚くね」

 

エステル「本当に…でも七耀教会がこの話を聞いたらどんな反応するかな?」

 

リィン「…少なくとも自身の教え、というか古代ゼムリア文明よりも古いというのはショックを受けるかもね?」

 

クローゼ「確かに、教会としては俄かに受け入れ難い話しかもしれないわ…」

 

頑迷な人は何処にでもいるからなぁ…でも教会に限らずこんな想像の埒外の話しを簡単に信じる人は少ないか…

 

ヨシュア「まぁ教会は置いとくとしても、問題は《オケアノス》だよね。あの巨体相手では軍の力も必要だ」

 

エステル「そうだ…ね、これは私達遊撃士だけでは無理な話ね」

 

ヨシュア「まずはこのルーアンで依頼をこなしていこう。まずは僕たちが出来る事をやらないとね」

 

エステル「賛成、そう言えばさっき聞きそびれたけどリィンとクローゼって知り合いなの?二人共親しげだし…」

 

クローゼ「え、っとそれは…」

 

リィン「まぁ、エステル達と知り合う前に少しね?」

 

エステル「ふぅん?、何か怪しいなぁ?」

 

エステル、顔が笑ってるぞ…

 

フローラ「御二人ともそろそろギルドに着任報告しないといけない時間です」

 

ヨシュア「あぁもうそんな時間ですか、それじゃ行こうかエステル、クローゼさん、リィン時間あったらまた会おう」

 

エステル「うん!あ、ちょっと待ってよ!」

 

クローゼ「ええ、行きましょう。リィンまた後でね、孤児院の方にも偶には顔を出して、子供達喜ぶわ」

 

リィン「時間空いたらな?」

 

三人がギルドに行ったのを確認してからフローラに尋ねた

 

リィン「古代種の件心当たりある事言わなくてよかったのかな?」

 

フローラ「確証がない話しですし、それに…仮に本当にそうだとしたら何処で聞かれるか分かった物ではありません」

 

リィン「そうか…確かにそうかも知れない」

 

リィン「そうだ、このまま《紺碧の塔》に行ってみないか?フローラ調査したいと言ってただろう?」

 

フローラ「良いんですか?ルーアンにはゆっくり滞在されるのですから、まだ大丈夫ですが」

 

 

「あぁ、俺は構わない、それじゃあ行こうか?」

 

この時俺達はまだ、予想していなかった。テレサ先生の孤児院が火事に遭い建物が全焼するなど思わずフローラと塔に向かって行った…

 

 

 

 

 



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第三十八話

マーシア孤児院が火事に遭ったとの話しを聞き直ぐにフローラと孤児院に向かうも既に燃え尽きた後であった。現場には数人人が居た。

 

フローラ「これは一体…何故火事なんて…?」

 

リィン「…すいません!テレサ院長や子供達は無事なんでしょうか!?」

 

俺は近くの人に訊ねてみた

 

「あぁ、孤児院の人達は全員無事だよ…今はマノリア村の宿屋に避難してるはずだ」

 

リィン「そうですか…良かった、火事の原因は…?」

 

「俺も詳しいことは判らないが放火らしい…犯人はまだ判ってないそうだ」

 

リィン「放火…」

 

という事は犯人は多分…

 

「リィン…」

 

振り向くと今にも倒れんばかりな顔色が真っ青なクローゼとエステル、ヨシュアの姿があった。

 

リィン「クローゼ……」

 

クローゼ「………ッ!!」

 

クローゼが此方に駆け寄って来て腕を掴んで俺に質問を投げ掛けてきた。

 

「リィン!この惨状は一体どういう事!?テレサ先生は!?子供達は無事なの!?」

 

エステル「ちょ!?クローゼ落ち着いて!そんな一気に言われたってリィンだって困るわよ!」

 

ヨシュア「そうだよ、君が落ち着かなきゃ答え辛いよ」

 

二人の言葉を聞いて落ち着きを取り戻したクローゼは掴んでいたリィンの腕を離した

 

クローゼ「ごめんなさい、リィン…貴方に当たるような真似をして…」

 

リィン「気にしないで心配は最もなんだから、それとさっき俺も聞いたばかりだけど、テレサ先生や子供達は全員無事みたいだ。今はマノリア村の宿屋に避難しているらしいよ」

 

クローゼ「あ………ッ」

 

無事を知ったからかクローゼの足の力が抜けてその場に座り込んだ。

 

エステル「良かったねクローゼ…ねぇリィン、孤児院の火事の原因は何なの?」

 

リィン「放火だと聞いたよ」

 

エステル「放火…!?一体誰が!?」

 

ヨシュア「クローゼ、エステル今はそれよりマノリア村の宿屋に行こう!話しも聞きたいし」

 

エステル「あ、そうね…リィンやフローラさんはどうする?一緒に行く?」

 

リィン「いや…少し現場を見て回ってから向かうよ。エステル、クローゼを頼む」

 

エステル「任せて!それじゃあまた後でね」

 

そう言って三人はマノリア村に向かって行った

 

フローラ「リィン様、此方に来てください!」

 

リィン「どうした?何か見つけたのか?」

 

フローラ「これをご覧下さい…」

 

台所があった付近の焼け方が激しい…ここが火元か

 

リィン「此処が燃え方が激しいな?」

 

フローラ「えぇ、ですが此方の方を見て頂きたいのです」

 

フローラが指差す火元の地面をよく見てみると…これは、靴跡か?

 

フローラ「えぇ、少し見えづらいですが確かに足跡です。しかも大きさからして成人男性です。ここの孤児院は男性職員は居ませんからほぼ間違い無く放火犯のものかと…」

 

リィン「…フローラ、その足跡の型は取れるか?靴底の模様を調べれば持ち主を絞れるかもしれない」

 

フローラ「可能です。少々待ってください」

 

準備を始めたフローラを横目に瓦礫の中から無事な写真が見付かった。奇跡的に焦げ一つ無い状態の写真に写ってたのは

 

リィン「…孤児院の子供達と、テレサ院長に…クローゼか、渡しておこう」

 

リィンはその写真をポケットに入れた後フローラから靴跡を取り終えたと報告を受け俺達もマノリア村に向かう事にした。

 

その道中にマノリア村の方向から男性二人歩いて来た一人は初老な男性でもう一人は年若い青年だ多分初老の秘書か何かだと思うが…そう思ってると初老の男性が話し掛けてきた。

 

「初めまして見ない顔だね、観光客かな?」

 

リィン「まぁ、そんな感じです」

 

「そうかおっと名乗るのを忘れてたよ、私の名はダルモア、ここルーアンの市長を務めてる者だよ。こちらの彼は私の秘書のギルバート君だ」

 

この男がダルモアか…記憶が薄れたが原作では今回の首謀者だった筈

 

ダルモア「君はメイドを連れている所を見ると貴族か何かかな?まぁ貴族でなくとも此処ルーアンは良い所だ、是非ともゆっくりしてくれたまえ…まぁあのイカの化け物がいるが、それは何れ近い内に排除されるだろうから安心したまえ」

 

「市長、お時間が…」

 

ダルモア「おっと、そうだったなデュナン公爵の会食が有ったな…ではこれで失礼」

 

そう言って去っていった…

 

フローラ「…随分観光に力を入れてるみたいですね?それにオケアノスを排除とは…見込みが経ったのでしょうか?」

 

リィン「さてな?排除はどうかは知らないが観光は市長として力を入れるのは間違いではないがな、しかし俺を貴族か何かと勘違いしてたが、金持ち向けのリゾートを目指す積りか?」

 

前世の東亰でも似た様な話しがあったなぁ…東亰?

 

リィン「…グッ!?」

 

今何か思い出しそうに…?

 

フローラ「リィン樣!?大丈夫ですか!!」

 

リィン「大丈夫だ、少し目眩がしただけだ。心配掛けて済まない」

 

フローラ「…いえ、私はリィン様に仕えるメイドです。主を心配するのは当たり前です。マノリア村に着いたら少し休みましょう」

 

リィン「そう、だな少し此処まで無理したかもしれないかもな?」

 

俺はフローラの好意に甘える事にした。そしてマノリア村に着くと今度はエステル、ヨシュア、クローゼが走って来た。

 

リィン「どうしたんだ、慌てて?」

 

そう尋ねるとクローゼがこちらに気づき止まると

 

クローゼ「リィン!クラム君知らない!?」

 

と尋ねた、クラムは帽子を被ったヤンチャな男の子でエステルの準遊撃士バッジを盗ったりもした子だ。俺やフローラも当然面識がある

 

リィン「いや、見てないが…宿屋に居るんじゃ無いのか?」

 

エステル「それがね…」

 

ヨシュア「さっき、孤児院の放火で疑わしいのが居るという話を盗み聞きしてその疑いがあるレイヴンという不良グループの所に行ったみたいなんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

リィン「…………はい?………」

 

 

 

 

 

 




???「フフ」


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第三十九話

遅くなりました。このような下手な小説を見て頂き有難う御座います。コレからも皆様の暇つぶしの材料になれば幸いです


走りながらクローゼ達に詳しい話しを聞くとマノリア村で無事な姿のテレサ院長以下の子供達を確認して事情を聞いたら炎で出口が塞がれた危機に銀髪の男が助けてくれたらしい。

 

リィン「その人が、子供達を助けたのか。」

 

クローゼ「ええ、そうみたい。」

 

とクローゼは答える。

 

リィン「その男と孤児院に関係は?」

 

クローゼ「…いいえ、無いはずよ?…」

 

リィン「そうか…」

 

エステル「それでテレサ先生は子供達を連れてマノリア村の宿屋で一息ついたの……」

 

ヨシュア「その後に僕達の後からダルモア市長達が来て焼失した孤児院の代わりに王都にある自分の別荘を孤児院の代わりに使って欲しいと提案してきたんだ」

 

リィン「なるほど、それでダルモア市長の別荘に?」

 

クローゼ「いえ、それが……」

 

エステル「先生はあの場所が愛着があるからって断ったの……」 

 

ヨシュア「その席でダルモア市長の秘書がルーアンにたむろしているレイヴンという不良グループが怪しいと零したんだ」

 

リィン(原作とほぼ同じ展開か)

 

リィンはダルモア市長と秘書の会話を思い出す。

 

リィン(ルーアンを観光地にしたいダルモア市長、そして別荘地としてうってつけな孤児院の立地、黒いが…今証拠がない今それを三人に言っても混乱するだけだな…) 

 

エステル「それで、市長達は帰ったんだけど……」

 

ヨシュア「どうやら僕達の話しをクラム君が盗み聞いたらしい孤児院の火事がレイヴンだと思い込んで……」

 

リィン「それで、みんながルーアンに行く事になったのか止める為に」

 

エステル「ええ……」

 

クローゼ「私、子供達に宿屋の食堂で子供達にアイスをご馳走してたんだけどクラム君が途中から居なくなったのが気づかなくて……」

 

ヨシュア「…ごめん。まさかこんな事になるなんて」

 

リィン(なるほど…)

 

リィンは原作でのレイヴンの行動を思い出す。

 

リィン「事情はわかった、俺達も一緒に止めに行く、フローラ!ルーアン市内の吊り橋の開閉時間は後どのくらいある?」

 

フローラ「……たしか、後三十分位です」

 

リィン「なら、急ごうクローゼ!レイヴンのねぐらは何処に!?」

 

クローゼ「港の倉庫の一角よ」

 

ヨシュア「うん、吊り橋が上がる前には捕まえたいね」

 

こうして五人はルーアン市内に急ぐのだった。

ルーアン市内に入ると小さな男の子が見えた、クラム君だ。

 

リィン「クラム君!」

 

クローゼ「よかった、無事だったのね」

 

エステル「もう、心配したのよ?」

 

ヨシュア「……無事で何よりだよ」

 

フローラ「どうやらまだ倉庫街には辿りつかなかったみたいですね」

 

と五人人が安堵の声を上げる。

 

だが、クラム君はリィン達には気付かずにそのまま走って行った

 

リィン「あ!」

 

クローゼ「待って!」

 

と五人はクラムを追いかけるのだかランド大橋がクラムが通り過ぎた後に丁度跳ね橋が上がっていった。

 

リィン「しまった!」

 

クローゼ「そんな!?」

 

エステル「もう、こうなったら泳いでいくわよ!」

 

ヨシュア「……いや、確かホテルに遊覧のためのボートがあった筈だよ!」

 

リィン「よし、急ごう!」

 

五人はホテルに急ぐのだった。

ホテルに着くと受付で事情を話しボートを貸してもらう事ができた。

 

クローゼ「ありがとうございます」

 

エステル「さあ、急ぎましょう!」

 

そして対岸の倉庫に向かうと倉庫から人の声がする、ここがレイヴンのねぐらはここらしい。

倉庫の中に入る。

 

リィン「クラム!」

 

クローゼ「クラム君!」

 

エステル「遊撃士よ!ここに子供が来たでしょう?」

 

ヨシュア「大人しくするんだ!」

 

フローラ「失礼します」

 

と五人が言うと倉庫の奥から三人組の男達が出てくる。そしてその真ん中にクラム君が居た。

 

クラム「ク、クローゼ姉ちゃん!?、それに準遊撃士の…何でリィン兄ちゃんやフローラ姉ちゃんまで!?」

 

「あ、何だよテメェ等は?このガキの知り合いか?」

 

「だったらさっさと引き取ってくれや、五月蝿くて落ち着いて煙草も吸えねぇじゃねぇか」

 

「それと酒もな」

 

不良共はそんなことを言っているがまだ未成年だろうに…

 

クローゼ「その子は孤児院の子です。とある事情で貴方達が怪しいという話をこの子が聞きまして…」

 

「あ?孤児院?…何の事だ?」

 

「…あ〜あれじゃね?なんか火事があったとかなんとか…」

 

「…だとしたら俺達は知らないな、その時間帯は酒盛りしてたしな」

 

エステル「それを裏付ける証拠や証言は?」

 

「港のバーのマスターに聞けや、あそこで呑んでたからマスターも俺等がいた事覚えてる筈だぜ」

 

ヨシュア「…リィンどう思う?僕は彼等が嘘をついてるようには見えない」

 

 

リィン「多分本当に何も知らないと思う、それに実は孤児院の焼跡から足跡を見つけたけど成人男性の物だったんだ。どう見ても彼等とは似つかないよ」

 

クローゼ「そう、なのね……」

 

クラム「え?」

 

リィン(……やはりコイツ等も利用されたんだろうな)

 

「話しはそれだけか?ならさっさと失せろや」

 

不良共は話し終わると倉庫の奥へと移動していく。

 

エステル「あ!待ちなさい!」

 

「…何だ?放火は無実なのは証明出来ただろう?」

 

 

ヨシュア「確かに放火は無罪だけど未成年の飲酒や喫煙は御法度だよ」

 

フローラ「それと街の人達に迷惑かけているのも事実、大人しく説教を受けるのが貴方達の為でもありますよ」

 

「チッ!うるせえな大体遊撃士と言ったって俺等と然程、歳変わらねぇだろうが!」

 

「しかも遊撃士なのはそこの二人だけみたいだし、後はジェニス王立学園の生徒に旅行者…しかも一人は美人メイドさん連れだと?…羨ましい!」

 

「お前メイドスキーだったのか!?」

 

「ちげーよ、男なら美人メイドは誰だって憧れるだろうが!」

 

「……ま、まぁという事で抵抗させて貰うぜ」

 

そう言ってレイヴンメンバー各自はナイフを構えてきた

 

リィン「…クローゼ、クラム君を下がらせて」

 

クローゼ「……ええ、わかったわ。クラム君こっちにおいで……」

 

クラム「う……うん」

 

ヨシュア「……どうやら話し合いの余地は無いみたいだね」

 

リィン「(……仕方ないか)フローラ殺さない程度に無力化を、武器は…必要ないだろう」

 

フローラ「了解しました」

 

エステル「少しお灸を据える必要があるわね」

 

と五人は得物を構える。そして不良共がリィン達に襲いかかってきたがエステルやヨシュアは危なげ無く制圧してクローゼも特に危険なことは無かった。無論俺も素人相手に武器を使うこともなく撃退したし、フローラも…何かフローラが撃退した不良が満足そうな顔をしていたが…

 

「くそ!まさか歳が変わらねぇ奴等に負けるなんて…」

 

エステル「そりゃその手の訓練受けてるんだし、負けないわよ…それにしてもあんた達元気有り余ってるんなら遊撃士めざしたら?」

 

「…は…?何をいきなり…」

 

エステル「だからあんた達やりたい事無いからチーム組んでこんな所で燻ってるんでしょうが、少なくとも目標を定めてやってみれば良いじゃない。まぁ別に遊撃士じゃなくてもいいしね」

 

「…は!アガットが抜けた時の様なセリフを吐きやがって…」

 

エステル「え…?」

 

ヨシュア「その名前は…」

 

???「たく、まだ馬鹿やってたのか…」

 

そこに現れたのはボースで世話になったアガットさんだ…

 

リィン「アガットさん、お久しぶりです」

 

アガット「あ?お前は確かボースで会った…まぁ良い少しこいつ等と話があるから待ってくれや」

 

アガット「久しぶりだな…」

 

「ふん!今更なんの用だよ!勝手にチームを抜けた奴が説教かよ!」

 

アガット「は、説教なんざ柄じゃねぇよ。だがな曲がりなりにも古巣がまだこんな人様に迷惑を掛けてるのはみてられねぇんだよ!」

 

「何だと…!?居場所のねぇ奴等の為に結成したのがレイヴンだろうが!結成したお前がそれを否定するのか!」

 

アガット「確かに結成した時はそうだった…だがな俺達はいつまでも餓鬼で居られねぇんだよ!!メンバーの大半はもう十六、七だろうが!?もう居場所はてめぇで見付けれるだけの判断と責任は備わってるだろうが!、いつまでもぬるま湯に浸かってられねぇんだ!!それはもう判っている筈だ!」

 

「……ッ!!」

 

アガット「巣立てや、お前等はこれからが本当の意味で居場所を見つけるんだ。その為の手伝いなら喜んでしてやる」

 

 



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第四十話

UAが8万に届くとは思いませんでした。読んでくださった皆様に御礼申し上げます。そして長く更新せず申し訳ありませんでした。


俺達はアガットさんと一緒にレイヴン達の事をルーアン支部に任せるために訪れた。

 

ジャン「それじゃあ彼等の事は此方に任せてね」

 

アガット「あぁ、頼んだぜ」

 

ジャン「それにしても…フフ、嘗てルーアンの問題児だった君が立派な遊撃士になったねぇ」

 

エステル「え?何々?ジャンさん!コイツそんなにワルだったの?」

 

エステルが興味津々に受付に居るジャンに尋ねた

 

「そりゃもう悪ガキだったよ、今のレイヴンと比べられない位にね」

 

アガット「おいジャン!人の黒歴史を勝手に語るんじゃねぇよ!」

 

その言葉を無視してジャンさんは続けた。

 

「まぁ、それがカシウスさんにボコボコにされてレイヴンを抜けてカシウスさんの師事を受けて遊撃士の道に進むとは思ってもみなかったけどね」

 

エステル「へ…?」

 

ヨシュア「アガットさん、もしかしてリィンと同じ八葉の…?」

 

アガット「…ハッ!そんな訳無いだろうが、あのオッサンには確かに基礎を叩き込まれたが八葉は教えてもらってねぇよ、というか俺には八葉は性に合わないんだよ。俺はこっちの方が性に合っているしな」

 

アガットさんは自分の背中に担いでいる重剣を指しながら言った

 

フローラ「しかしルーアンで再会するとは思いませんでした。てっきりボースに居るのかと…」

 

アガット「依頼でこっちに来たんだよ、それでジャンに顔出して報告に行ったら孤児院の放火事件とあの馬鹿共が疑われていると聞いてな。話しを聞こうと思って行ったらお前達が居たという理由だ…」

 

フローラ「成程…」

 

リィン「そういう事でしたか…」

 

エステル「えっと、リィン?さっきから思ってたんだけどコイツと知り合い?」

 

リィン「ん?あぁ、ボースでちょっと事件に巻き込まれてね、その時に対応してくれたのがアガットさんなんだ」

 

フローラ「大変お世話なりました」

 

エステル「へぇ〜この無愛想な男がね〜?」

 

アガット「おいこら、それはどういう意味だ…?まぁ良い、孤児院の放火の捜査はこっちで引き継ぐからお前等はここで手を引けや」

 

エステル「え…?ちょっと!なんでそうなるのよ!?」

 

ヨシュア「いきなり過ぎやしませんか?」

 

アガット「当たり前だろうが!!準遊撃士のお前達が扱うには明らかに荷が重い案件だ!しかも民間人も巻き込んでるなんて何考えてるんだ!万が一怪我の一つでもしてたらどう責任を取る積りだ!」

 

エステル「うぐ!」

 

ヨシュア「…それは…」

 

まぁ正論ではあるが…

 

クローゼ「あの…お二人は悪くありません。私が無理を言ってついてきたんです」

 

リィン「右に同じ、それにアガットさん貴方も人の事言えないのでは?」

 

アガット「ヴッ!?それを言われると…」

 

エステル「リィン、クローゼそれは違うわ…」

 

エステルは俺達の話しを遮りアガットさんに言った…

 

エステル「…分かったわ、アンタに放火の捜査を引き継ぐわ…」

 

ヨシュア「エステル…良いのかい?」

 

エステル「言い方はキツいけどコイツの言ってる事は正しいわ、それに…私達があの人達に出来る事はあると思うし」

 

ヨシュア「エステル…」

 

クローゼ「エステルさん…」

 

アガット「……捜査次第だが手が足りない時には応援として呼ぶかもしれねぇ。備えだけはしとけ」

 

リィン「あ、アガットさんこれ孤児院の焼跡から成人の靴跡が見つかったので型を取りましたので良かったらどうぞ」

 

そう言ってフローラに預かってもらってた証拠品を手渡した

 

アガット「…あぁ、助かる。何か分かったら連絡する」

 

そう言ってアガットさんはギルドを出ていった…多分彼なりの気遣いだろう、俺達もギルドを後にした。

 

クローゼ「ごめんなさい…私が付いてきたばかりに」

 

エステル「も〜大丈夫だって!別にクローゼが悪い訳じゃないんだから」

 

ヨシュア「そうだよ、エステルの言う通り僕等が迂闊なだけだったんだから、寧ろこっちが謝るべきだよ。リィンも巻き込んでごめん」

 

リィン「俺も気にしていないさ、どっちかと言うと役に立てて無いのが心苦しい位だし…あ、そうだクローゼこれ…」

 

俺は孤児院の焼け跡から見つけた孤児院の子達の写真を渡した

 

クローぜ「…?これ!どうしてこれが…!?」

 

リィン「現場から奇跡的に燃えていないのを見つけたんだ。テレサ先生達に渡しておいて、大切な品だろうし」

 

クローゼ「…ありがとう、リィン…全部無くなったかと思ってた…」

 

クローゼは写真を胸に抱いて静かに泣いていた…

 

エステル「うんうん、良かったねクローゼ…でもこれからどうしょうか?他の依頼を片付けるにしてもねぇ…」

 

ヨシュア「うん、せめて孤児院の子達の気分転換になる事があればまだ違うんだろうけど…」

 

フローラ「気分転換…ですか…」

 

リィン「…クローゼ、確か学園祭には一般に公開されてるんだよね?」

 

エステル「へ?学園祭?」

 

ヨシュア「ジェニス王立学園の伝統ある祭りだね。生徒が主導して行われる学園の祭りさ」

 

エステル「へ〜面白そう…でもそれがどうかしたの?」

 

クローゼ「うん、勿論近隣の人達も毎年訪れるから…もしかしてリィン?」

 

リィン「うん、テレサ院長や子ども達を招いて学園祭を満喫すれば良い気分転換になるかと思ったけど…」

 

エステル「ナイスアイディアよリィン!それなら…」

 

ヨシュア「少しは気が紛れるね」

 

クローゼ「そうね、学園長に相談してみるわ。リィン、ありがとう!…そうだ!エステルさん、ヨシュアさんにも後日依頼出すから学園祭の準備を手伝ってくれませんか?勿論リィンも手伝って欲しいわ」

 

エステル「え?それって大丈夫なの?」

 

クローゼ「はい、学園祭では遊撃士に警備の依頼を出しますからちっとも不自然ではないかと…」

 

エステル「う〜ん、それなら良いかな?ヨシュアはどう思う?」

 

ヨシュア「僕も賛成かな?断る理由はないしね」

 

クローゼ「ありがとう御座います。リィンはどう?…都合が悪いなら無理しなくても…」

 

リィン「俺も大丈夫だ、だからそんな不安そうな顔しないで欲しいだけど」

 

クローゼ「!…うん、じゃあ私は学園に戻って学園長に許可を貰って来ます!」

 

クローゼはそう言って学園に向けて走り去って行った…

 

エステル「さて…それじゃあその依頼が来るまでは別の依頼をこなさなきゃね?じゃあリィンまたねー!」

 

ヨシュア「あ!ちょっと待ってよエステル!ごめんリィン、これで失礼するね」

 

エステルやヨシュアも去って行き俺とフローラだけになった

 

リィン「…そういえば、フローラ勝手に学園祭の手伝いを引き受けて悪かった。今更だが何か予定あれば君だけでも…」

 

フローラ「いえ、私はリィン様のメイドです。リィン様の決めた事に口出す様な真似は致しません。それに…もう我儘を叶えて貰いました。これ以上は貰い過ぎですわ」

 

そう言ってフローラは微笑むが…でもなぁ

 

リィン「もっと我儘言っても良いのだけれど…ん?」

 

フローラ「どうされましたか?」

 

リィン「いや…誰かに見られていた様な気配がしたんだけど…?」

 

フローラ「…私のセンサーには不審な人物は見当たりませんが?」

 

リィン「……気の所為かフローラ、ホテルに戻ろう」

 

フローラ「判りました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「ふう、やれやれ危うく気付かれる処だったわ。アイツこの時代であんな実力があるなんて…まさかユミルに居ないと思わなかったけどまさかリベールに居るとはね」

 

???「しっかしアイツは相変わらず人誑しね〜エステル・ブライトにヨシュア・ブライトに加えてクローディア王太女ともこの段階で知り合うとはね…」

 

???「問題はあのメイドね…《前回》はあんなメイド居なかった筈…やっぱり私が知ってる歴史とはなんか微妙に違うし何か関係してるのかしら…?」

 

???「ま、良いわとりあえず『リィン』を監視した結果を報告しなきゃね…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エマもそろそろ来る頃だしそれまでルーアンの魚料理を楽しみますか」




次回ジェニス王立学園訪問


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第四十一話

お待たせしました


エステル「大きいわね〜」

 

途中で合流したエステル達とジェニス王立学園の門の前でエステルは間の抜けた顔をしながら呟いた。

 

ヨシュア「それはそうでしょ、リベール随一の伝統ある学校だし授業を受ける生徒の数も日曜学校の比じゃないよ」

 

エステル「へ〜、何か想像できないや子供の頃の日曜学校の同世代で一緒に授業受けたのは私やヨシュアを含めた四人だったけど…あ、でもリィンも途中で加わったから五人か…」

 

リィン「エステルは神父様やシスターの授業受けてる時良く居眠りしてたよね〜」

 

ヨシュア「そうそう、それで起こすのは僕かリィンの役目だったね。当時手伝いで授業の手伝いをしてたフローラさんの授業だけはしっかり聞いてたけど」

 

エステル「ゔ!だってしょうが無いじゃない!フローラさんの授業中に眠ったらチョークが飛んでくるのよ!?居眠りなんてしようがないじゃない」

 

当時を懐かしく振り返るがエステルには苦い思い出もあるが…

 

フローラ「居眠りしないのが普通ではないかと…それにチョークだってそんな痛く無かった筈ですよ?」

 

エステル「いや、痛くないとかそういう問題ではなくて…」

 

フローラ「?」

 

ヨシュア「ハハ、でもフローラさん教え方上手でしたよね。神父様達何時も誉めていましたし、最近までロレントの日曜学校の講師引き受けてましたし…何処でそんな知識を学んでいたのですか?」

 

フローラ「メイドですから」

 

エステル「いや、答えになってませんから」

 

クローゼ「皆、来てくれたんですね」

 

校門前でそんな事を話しているとクローゼが駆け寄って来た

 

エステル「やっほー!クローゼ!依頼見て来たわ」

 

ヨシュア「それでどうすれば良いのかな?」

 

クローゼ「ちょっと待ってください、今門を開けます」

 

クローゼは門の閂を外して俺達を招き入れた。

 

クローゼ「改めて依頼受けてありがとうございます。リィン達もわざわざありがとう」

 

リィン「礼を言われる程じゃないよ。で、早速手伝えば良いのかな?」

 

クローゼ「ううん、まず最初にコリンズ学園長に挨拶したいからついて来て」

 

クローゼが歩き出したので俺達もついて行く

 

エステル「静かね〜」

 

クローゼ「今は授業中ですから、ここが本館で普段の授業はこっちでします。私は客人を案内するという事で授業を抜け出しましたけど…あ、学園長室はこっちです」

 

クローゼが学園長室と書かれた部屋の前で止まった。

 

クローゼ「学園長、クローゼです。学園祭の手伝いをしてくれる遊撃士の方をお連れしました」

 

コリンズ学園長「入りなさい」

 

クローゼ「失礼します」

 

俺達はクローゼの後に続いて入った

 

コリンズ学園長「ようこそ当学園に、私はこの学園の長をしているコリンズという者じゃ」

 

エステル「準遊撃士のエステル・ブライトです」

 

ヨシュア「同じく準遊撃士のヨシュア・ブライトです」

 

コリンズ学園長「うむ、この度は当学園の依頼を受けて頂き感謝申し上げる」

 

コリンズ学園長が頭を下げて感謝の意を伝えてきた

 

エステル「いえ、民間人の手助けするのが遊撃士の役目ですから」

 

コリンズ学園長「ふむ…君も久しぶりじゃな、確か…リィン・アイスフェルト君とフローラ・クリフト君じゃったかな?クローゼ君から聞いたよ、君達も手伝ってくれるとね」

 

リィン「ええ、お久しぶりです」

 

エステル「へ?リィン知り合いなの?」

 

リィン「知り合いと呼べる程親しくは無いけどね。会うのはこれで二回目だし」

 

コリンズ学園長「ホッホッホ、当学園の生徒を救ってくれた恩人を閉ざす門などありはせんよ。それより学園祭を手伝ってくれるなら市内との往復が面倒じゃな……ふむ、どうだね学園祭までこの学園に寝泊まりして授業も受けてみないかね?」

 

エステル「へ…?」

 

ヨシュア「良いんですか?」

 

コリンズ学園長「何、いちいち学園とルーアンを行き来するのは効率悪いからの、それなら学園の寮で寝泊まりして手伝って貰えば早いからのう。儂から他の教職員に伝えておこう…あぁ無論リィン君とフローラ君も此処で寝泊まりして貰うのでな。クローゼ君、ジル君達にも紹介してきなさい。今頃は生徒会室に居る筈だよ」

 

「学園長ありがとう御座います。では…失礼します。エステルさん達こっちです」

 

クローゼを先頭に学園長室を出た俺達は再び外に出て向かったのは二階建ての建物だ。

 

クローゼ「此処の建物はクラブハウスです。正確には一階が学生食堂で二階がクラブハウスですね。生徒会室も二階に入ってるんですよ」

 

エステル「ねぇクローゼ?本館とクラブハウスの間にある裏道は何処に繋がってるの?」

 

エステルの指差す方へ目を向けると確かに裏道があった。確かあそこは…?

 

クローゼ「あぁ、あそこは『旧校舎』に続く道です。今の校舎が建てられてからずっと使われていないので今は誰も立ち入りませんよ」

 

エステル「ふぅん?」

 

クローゼ「とりあえず入りましょう」

 

扉を開けて食堂脇の階段を登り二階のクラブハウスの部室を通り過ぎると生徒会室と書かれた部屋に着いてノックをした。

 

クローゼ「ジル?私よ遊撃士の方達と別の助っ人も連れて来たわ」

 

 

「クローゼ?どうぞ〜鍵は開いてるよ〜」

 

ジル「クローゼ、案内御苦労様その二人が遊撃士ね…ってリィンも一緒なのね」

 

ハンス「話しは聞いてたけど正直助かったよ」

 

 

エステル「えっと…?」

 

ヨシュア「彼等とも知り合いなのかい?リィン」

 

リィン「さっき学園長が言ってただろう。『当学園の生徒を救った』って彼女らの事だよ」

 

ジル「因みにそこに居るクローゼも私達と一緒に救われてリィンに抱き着いたんだよ〜」

 

クローゼ「ジル!!///////」

 

ヨシュア「あの…そろそろ自己紹介初めない?」

 

ジル「おっと、そうだった…はじめまして私はジェニス王立学園生徒会長を務めるジル・リードナーです。よろしくお願いします」

 

 

「同じく生徒会副会長のハンスだ。話しはクローゼから聞いてるぜ宜しくな」

 

エステル「あ、準遊撃士のエステル・ブライトです」

 

ヨシュア「準遊撃士のヨシュア・ブライトです。それでどんな手伝いをすれば?」

 

ジル「うん、まずは当日までは飾り付けやらあるけど…生徒会としては生徒会主催の演劇に出て欲しいんだ」

 

エステル「演劇?」

 

ジル「そ、『白き花のマドリガル』っていう演目でね。知ってる?」

 

ヨシュア「確か…百年前ぐらいの実話を元にした話だっけ?詳しくは知らないけど…」

 

ハンス「そう、この話はまだこの国が貴族制を敷いていた時代の話だ。簡単に言うと保守的な貴族と力を付けて台頭してきた平民の対立、そして王家の姫セシリアを巡るそれぞれの勢力に属する二人の騎士の恋と友情の話なんだ」

 

エステル「へぇ〜本格的だねーでも、何が問題なの?お姫さま役ならクローゼかジルさんで決まりじゃないの?」

 

クローゼ「あはは…それはですね」

 

ジル「呼び捨てで良いわよ。それでね今回は男女逆転で行こうと思ってたの」

 

フローラ「男女が逆?つまり姫役やメイド役は…」

 

ハンス「そうです。男子が女装して役をやるんですよ…」

 

リィン「それは…保護者や教師達が文句言わないか?」

 

ジル「大丈夫よ。性別で役が決まるのは差別だとかなんとか言って説得したから、で問題が紅の騎士ユリウス役とセシリア姫役なのユリウスは蒼の騎士オスカーと剣での決闘をするからリアリティを出す為に剣の扱いに慣れた人が良いんだけど…」

 

クローゼ「オスカー役は私が出ることになってます。この学校で剣の扱いに慣れた女子が私以外に居なくて…」

 

フローラ「なら私も駄目ですね。剣も扱えますが生徒の演劇にメイドが出る訳には行かないでしょうし、私は少し背が…」

 

エステル「あ、それなら私がユリウス役やろうか?剣の扱いも慣れてるし背格好もクローゼと変わらないと思うから衣装も着られると思う」

 

ジル「それならエステルに頼むとして…セシリア姫役は男子全て見苦しいのよね、特にハンスは悪夢だったわ…」

 

ハンス「悪かったな見苦しくて、でもどうする?この演劇の中心だぞ…」

 

エステル「ならヨシュアならどうかな?」

 

『『『『『『へ?』』』』』』

 

「ほらヨシュアは男子の割には細身だし顔もそこまで男っぽいのが少ないから行けるんじゃないかな?」

 

ジル「ふむ…」

 

クローゼ「確かに…セシリア姫のイメージにピッタリかも…」

 

ハンス「仮縫いの衣装次第だけど然程変更はしなくてもいいかもな…」

 

「ち、ちょっとエステル!?それを言うならリィンだって…って何時の間に部屋の隅に!?」

 

フローラと一緒に壁際まで退避を済ませた俺は言った

 

リィン「済まない、無理」

 

ヨシュア「即答!?で、でもリィンだって背丈は似てるし…」

 

ジル「残念だけど私達のイメージするセシリア姫は丁度ヨシュア君みたいな子なのよ」

 

ジルがヨシュアの右肩に手を置いて言った

 

エステル「あははは…ごめんヨシュア、でもこれも遊撃士のお仕事だと思えば…」

 

エステルが左肩にてを置いて言った

 

ヨシュア「う…あぁもう解ったよ!演るよ。演れば良いんでしょ!?」

 

ジル「いや~悪いね、でもお陰で良い劇が出来そうかも…ヨシュア君の尊い犠牲で」

 

ヨシュア「そうでなきゃ僕は心の底から絶望するよ…」

 

エステル「あはは、でもリィン達はどうするの?劇の役はもう無いんでしょ?」

 

クローゼ「あ、それは大丈夫だと思います。リィン達には照明や受付とかに廻って貰います。生徒会のメンバーだけで回すのはきついですから、リィン事後承諾で悪いけど構わないかしら?」

 

リィン「うん、問題ないよ」

 

ジル「よ〜し、それじゃ学園祭の準備をみんなで張り切っていこー!」

 

エステル「オー!」

 

クローゼ「あ、ジル一つ片付けて欲しい書類あるの」

 

ジル「へ?何それ?そんなの有ったっけ?」

 

クローゼ「エステルさん達四人分の学園の長期宿泊許可書…サインと判をお願い」

 

その後宿泊許可証を貰った俺達は男子寮と女子寮それそれ別れて泊まる事になった。

 

ハンス「此処が俺の部屋だ今丁度二人分ベッドが空いてるから好きに使ってくれ」

 

ヨシュア「ありがとうハンス、はぁ今日は疲れたよ…まさか女装する羽目になるとは…気が滅入るよ」

 

ハンス「ハハ、まぁご愁傷さまだな…だけど本当の話学園の男子があの衣装着せられた時女子からのブーイングが凄くてな、どうしようと思っていた時にお前が現れたからマジ空の女神(エイドス)に感謝しちまったぜ」

 

ヨシュア「全然嬉しく無い…」

 

リィン「それにしてもフローラは仕方無いけど三人分の教科書を良く用意出来たな?」

 

ハンス「まぁ、年に何回か紛失する生徒が居るからなその予備を廻しただけだ。それよりもっと有意義な話ししないか?」

 

ヨシュア「有意義な話?何のさ?」

 

ハンス「おう!ズバリ『気になる女の子がいるか?』話だ!」

 

リィン「……」

 

ヨシュア「……」

 

ヨシュア「寝ようか?」

 

リィン「そうだね」

 

ハンス「だあぁぁ〜!ちょっと待てお前等ノリ悪過ぎじゃねぇか!?」

 

ヨシュア「いや…それじゃあハンスはどうなの?言い出しっぺ何だから…」

 

ハンス「自慢じゃねぇが居ない!」

 

リィン「本当に自慢することじゃないね…」

 

ハンス「だってよ、出会いが無いんだぜ!?学園には可愛い娘は居るけど既に彼氏持ちとかだぜ!?畜生羨ましいじゃねぇか!何で俺に出会いがないんだ!」

 

ヨシュア「知らないよそんなの…第一身近な女子といえばジルやクローゼが居るだろ?」

 

ハンス「ジルはどちらかというと腐れ縁で今更異性って見れね

ぇよ。クローゼは…遠慮しとく、消されたく無いし、って俺が言ったんだからお前等も言えよう」

 

リィン「…はぁ、興味が無い訳じゃないさ…只俺の場合は目的があるからな…恋愛をする暇がないというか…」

 

ハンス「何だそれ?修業か?」

 

リィン「それもある」

 

ハンス「何だよつまんねぇな〜、ヨシュアはどうなんだよ?」

 

ヨシュア「僕も似たりよったりかな?まだエステルと一緒でまだまだ新米だしね、それに……ちょっと僕にはあの輝きは眩しいからね…」

 

ハンス「???」

 

女子side

 

エステル「ジル、クローゼ、シャワー浴びに行かない?フローラさんも誘って」

 

ジル「あ〜ちょっと先に行っててエステル、今クローゼと学園祭の事で話があるから」

 

エステル「うん?まだ何かあるの?手伝える事有れば手伝うよ?」

 

クローゼ「いえ、書類をチェックするだけなのでエステルさんは先に行ってて下さい。大した量ではないので」

 

エステル「そう?じゃあ御言葉に甘えるねー!」

 

ジル「やれやれ、明るい子ねー」

 

クローゼ「クスクス、それがエステルさんの長所かも知れないわね。他の子達とも直ぐに打ち解けたし」

 

ジル「ま、そうかもねところでクローゼ少し聞きたい事があるけど」

 

クローゼ「何?なにか不備でもあった?」

 

ジル「いや、そうじゃ無くてヨシュアがセシリア姫役演るじゃない?」

 

クローゼ「そうね、まさかあそこまで似合う人が居るとは思わなかったわね」

 

ジル「それは同感、でクローゼがオスカー役演るじゃない?」

 

クローゼ「うん?」

 

ジル「で、ラストシーンでオスカーとセシリア姫のあの《シーン》の事は覚えてる?」

 

クローゼ「………」

 

ジル「どうするの?一応《した振り》だけどアンタは……」

 

クローゼ「シーンの変更は無いわ、ジルも解っているでしょう?」

 

ジル「それは…そうだけど……クローゼが良いならとやかく言わないわ、でも後悔が無い様にね…シャワー浴びて来るわ」

 

 

 

クローゼ「………リィン………」

 

ー 同時刻 ー ルーアン市

 

???「いや〜やっぱルーアンはオルディスに劣らない港湾都市ね〜、魚が美味いわ。でも少し高いのがね〜あのイカの化け物のせいね!」

 

 

???「なにを愚痴ってるの《セリーヌ》猫の姿で喋るのは控えてとあれほど…」

 

セリーヌ「ようやく来たわね《エマ》私がそんなヘマしないわよ。それと…お久しぶりね、いやこの世界でははじめましてかしら?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《アリサ・ラインフォルト》何時《こっち》に?」

 

アリサ「どっちでも良いわ、それと《こっち》に来たのは六年前ね。聞かせてリィンの様子を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回クローゼが…!


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第四十二話

何時もこのような駄作を読んでくれる皆さんに感謝を、今回はちょっと変化を付けました……上手く書けたかな?


ジェニス王立学園に寝泊まりすることになってから三日、俺達三人は学園長の厚意により他の学生達と一緒に授業を受けながら学園祭の手伝いをこなしていた。

 

授業は流石名門校なだけでありレベルが高く為になるがエステルはやや苦戦しているがフローラの的確な教え方でついてきていた。フローラは臨時教師として教壇に立ち生徒に教鞭を執っていた。

 

その美しさに男女問わず見惚れる者が相次ぎ今では学園の人気教師の一人らしく噂だと告白も何回もされたらしい…断られているが…

 

フローラ「…導力革命において乗り物もその恩恵を受けました。リベールでは飛行船、帝国は列車、共和国は自動車と方向性は違えど此等の発明と進歩により物流が良くなり経済が活性化してきました…ではリベールの導力器の礎を築いた科学者は誰でしょう?…ではエステルさん答えてください」

 

エステル「ゑ…え、と確かA・ラッセルという名前だったかな?」

 

フローラ「はい正解です。因みにラッセル博士の他にエレボニア帝国のシュミット博士、カルバートのハミルトン博士この三名が最初のオーブメントを発明した故エプスタイン博士の弟子であり《三高弟》と呼ばれています。では次のページを…」

 

その時授業終了を知らせる鐘が鳴った

 

フローラ「では今日の授業は此処までです。学園祭の準備も忙しいでしょうが慌てず怪我の無いようにしましょう。クローゼさん号令を」

 

クローゼ「起立、礼」

 

フローラが教室を出ると一気にな騒がしくなる

 

エステル「はぁ〜疲れた〜」

 

クローゼ「クスクス、お疲れ様ですエステルさん」

 

ヨシュア「大分慣れて来たんじゃない勉強?」

 

エステル「冗談じゃないわよぅ〜今にも頭がパンクしそうよ。ねぇリィン、フローラさんって何処で学んでたの?メイドの枠超えてるわよ」

 

リィン「さぁ?俺だって彼女の全てを知ってる訳じゃないさ」

 

実際俺が知っている事は限られているしな…

 

ヨシュア「まぁ為になる授業じゃないか、さっきの話しにしても興味深かったし」

 

エステル「そりゃあ…そうだけどさ」

 

「ねぇねぇ、エステル!二階の廊下の飾り付け手伝って!」

 

そこにエステルと仲のいい女子生徒が手伝いを頼みに来た

 

エステル「あ、判ったー!すぐ行くー!じゃ私行ってくるねー」

 

そう言って元気良く走り出していった

 

ヨシュア「やれやれ、授業が終わって疲れたなんて言ってたのにね」

 

ヨシュアは苦笑しながらノートを机に仕舞った

 

リィン「それがエステルらしいとも言えるんじゃない?」

 

ヨシュア「ハハ、違いないね」

 

「おーい!ヨシュア!校庭で看板の色塗りしたいから手伝ってくれー!」

 

「うん、今行く、ごめん二人共また後で!」

 

今度はヨシュアと仲の良い男子生徒に頼まれ去って行った。教室に残っていたのは俺とクローゼだけになった…何気に二人だけなのは珍しいが

 

リィン「さて、俺はクラブハウスの方の手伝いに行くけどクローゼは?」

 

クローゼ「私はジルと少し詰める事があるから生徒会室に行くわ。どうせ同じ建物だし一緒に行きましょう?」

 

フローラ「おや?リィン様にクローゼさん丁度良かった。お二人に頼みたい事がありまして」

 

教室を出ようとしたら段ボールを二、三個重ねて持っていたフローラが入って来て頼み事をしてきた

 

リィン「頼みたい事?」

 

フローラ「はい、実は講堂の飾り付けが手を付けていないのでお二人に行ってもらいたいのです」

 

リィン「それは構わないが…俺はクラブハウスの手伝いがあるんだが?」

 

クローゼ「私もジルの打ち合わせがあるのですが…」

 

フローラ「そのジルさんからの要請だそうです。『こっちは大丈夫だから講堂の方お願い』とのことでした」

 

やれやれ…

 

リィン「解った講堂だな?今誰か居るのか?」

 

フローラ「いえ、今は講堂に人は居ないので私が集めて来ますのでお二人は先に始めてて下さい」

 

そう言ってフローラは出ていった

 

リィン「すっかり教師として定着したみたいだな」

 

クローゼ「他の先生方も評価が高いみたい、良く気が回るって褒めてたわ」

 

リィン「フローラは生徒受けも良いし、教師に転職しても良いかも知れないな」

 

クローゼ「あら?ならこのままジェニス王立学園に正式に編入する?歓迎するわよ」

 

リィン「魅力的なお誘いだけど俺も目的あるからなぁ、学園に留まる訳にはいかないな」

 

クローゼ「あら残念、せっかく一緒に勉学に励めるかと思ってたのに…」

 

リィン「クローゼみたいな娘にそう言われるのは嬉しいけどね、そろそろ講堂に行こう?」

 

先に出た俺はクローゼの呟きは聞こえていなかった

 

クローゼ「……本当、一緒に学生生活送れたら素敵だったのに…」

 

講堂に着くとまだ誰も居ない

 

クローゼ「まだ誰も来てないようね、先に始めましょう」

 

そうして俺達は先に飾り付けを始めた

 

クローゼ「…ねぇリィン?ルーアン離れたらどうするの?」

 

リィン「ん?ツァイスに行って其処での用も終わったらグランセルに向かう予定だよ」

 

クローゼ「そう…その後リベールに留まるの?」

 

リィン「いや…この国でやる事を終えたらクロスベルやエレボニアに行く予定だよ。良い国だから未練が残るかも」

 

俺は苦笑しながら言った

 

クローゼ「なら…」

 

リィン「だけど俺はやらなきゃならない事がある…言われたからではなく、誰かの都合だからでもなく俺の、大切な人達を守る為に」

 

クローゼ「……その大切な人達に私も含まれてる?」

 

リィン「ん、勿論だ」

 

クローゼ「……リィン、私があげた黒ハヤブサの懐中時計ある?」

 

リィン「うん?勿論懐に大切に持ってるよ」

 

クローゼ「リベールの国鳥が白ハヤブサなのは知っての通りだけど黒ハヤブサも特別な意味があるの」

 

リィン「特別な意味?」

 

クローゼ「そう、これは今では知る人は少ないけど」

 

ー その昔、何代前のリベール王が狩りをしていたときお供と離れ離れになり困り果てた王の前に黒ハヤブサを従えた美しい女性が現れたの、その人は言ったの『この先に私の住む家があります。粗末ですが御休みなされてはいかがでしょう…』王はその言葉に甘え彼女の家に休ませてもらい無事に城に帰る事が出来たの、そして王はその女性を忘れられず彼女を妃として迎え入れたの。そして彼女に従っていた黒ハヤブサは二人を祝福するかのように宝石を咥え二人の前に置いたの ー

 

クローゼ「だから昔は黒ハヤブサの象った物を送るのは『貴方が好きです』のプロポーズの意味なのよ」

 

リィン「へぇ~………ん?…つまりその」

 

クローゼが脚立から降りてこっちに近付いて来た

 

クローゼ「そうよ、私クローゼ・リンッ…いいえクローディア・フォン・アウスレーゼはリィン、貴方の事が好きです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言って彼女は俺の唇にキスをした…

 



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第四十三話

ー ルーアン市内レストラン ー

 

エマside

 

私は再会したアリサさんとセリーヌで近くのレストランてジュース片手に音頭を取った

 

エマ「ではお互いの再会を祝して、乾杯!」 

 

アリサ「て言ってもまだジュースなのよね、この歳の時は」

 

エマ「まぁまぁ、しょうが無いですよ。まさかお酒を頼む訳にはいかないんですから」

 

セリーヌ「人間ってなんで酒なんて飲むのかしら?酔っ払うだけで何も美味しく無いじゃない」

 

私とアリサさんは顔を見合わせながら苦笑しながら言った

 

アリサ「そりゃあ…ねぇ」

 

エマ「セリーヌも何れ分かるわ。大人になると色々あるのよ」

 

セリーヌ「私使い魔、大人になるワケ無いじゃない?」

 

アリサ「そうなの?」

 

エマ「う〜ん…でも、時間が経てばお婆ちゃんみたいになると思うけど」

 

セリーヌ「ロゼみたいな例を出されても困るわよ!何百年生きてると思ってるのよ…」

 

アリサ「そういえばロゼさんは?一緒に居たって聞いてたけど…?」

 

エマ「お婆ちゃんなら郷に帰りましたよ。一応《転移》で何時でも来られる様ですし」

 

アリサ「そう…ねぇ、エマそろそろ初めない?」

 

エマ「…そうですね、まずは確認するわ。まず私が《戻った》のは七年前、セリーヌは確か三年前よね?」

 

セリーヌ「えぇそれは間違い無いわ」

 

エマ「うん…それでアリサさんは六年前に《こっち》に戻ったんですよね?」

 

アリサ「えぇ、私は自宅で寝てる時にね…エマも?」

 

エマ「……はい、ベットで寝てる時に突然記憶が…何故こうもバラバラなのかは分かりませんが、因みにそれとなくお婆ちゃん以外の郷の人に聞いてみたのですが記憶を持っていたのは結局私達だけでした」

 

アリサ「私の所もそうね、母様や社員には記憶はないみたい」

 

セリーヌ「ん?あの万能メイドはどうしたの?アンタなら真っ先に尋ねたと思ってたけど、というか何時も傍に居るのに珍しいわね?」

 

アリサ「あぁ、シャロンならね…」

 

「少し帝国で調査をアリサお嬢様に頼まれたのですわ♥」

 

セリーヌ「うひゃう!?お、驚いた…」

 

いつの間にかラインフォルト家のメイドにしてトールズ士官学院第三学生寮管理人のシャロンさんが立っていた

 

シャロン「うふふふ、お久しぶりですわエマ様、セリーヌ様私シャロン・クルーガーも記憶持ちですわ♥」

 

エマ「そうだったんですね…これで四人、か」

 

アリサ「あらシャロンご苦労様、何か判った?」

 

シャロン「はいアリサお嬢様、まず帝都に住んでいるマキアス様やエリオット様ですが…偶然を装い接触しましたが私の事を全く覚えていない様でした。レグラムのラウラ様は修業とのことで接触できず、ユーシス様も接触は適いませんでした。ノルド高原のガイウス様はなにか覚えてる様な感じはしませんでした。フィー様はサラ様と一緒ですので所在は掴めず、ミリアム様は…今はオズボーン宰相の元ですのて…」

 

アリサ「う〜ん大体解ったわ、トワ会長は?」

 

シャロンさんは頭を振った…

 

アリサ「そう…どうしてかしら?てっきりⅦ組関係者が全員が《戻った》と思っていたけど…」

 

エマ「まだ何とも言えないのでは?《戻った》時期がズレて居る以上もしかしたらこれから…という事かもしれませんよ?」

 

アリサ「そうかもしれない…けど、不安ではあるわ…私達の知る『過去』とは全く違う…」

 

シャロン「《古代種》…ですね?確かにそのような存在は前は無かった筈ですわ」

 

エマ「単に知らなかっただけ…と思いたいですがこのルーアンの海に住み着いてるアレを見ると話題にならない訳有りませんか…」

 

セリーヌ「ま、今アレの事を考えてもしょうが無いわよ。それよりリィンの事報告するわよ」

 

アリサ「!…リィンはいるのよね!?ユミルに居ないから心配だったけど…何故リベールに?」

 

セリーヌ「あー、なぜリベールに居るのかは判らないけど多分八葉を教わってたと思うわ、太刀を携えてたし」

 

エマ「良かった…けど同行者が居たって…しかもリベールのエステル・ブライトにヨシュア・ブライトそれにクローディア殿下ってどうしたら知り合えるのかしら?」

 

セリーヌ「知らないわよそんなの、というよりあんた達やアルフィン皇女だってアイツに好意を向けてたんだから今更じゃない?それより問題はこの写真に映ってるメイドね」

 

セリーヌがテーブルの上に出したのはリィンさんに微笑む銀髪の女性の写真…

 

アリサ「…見覚え無いわね。エマやシャロンはどう?」

 

エマ「いえ、私も面識無いです」

 

シャロン「ラインフォルトの同僚でも《結社》でも有りません…写真を見る限りリィン様に仕えている様ですか」

 

リィンさんの傍に…羨ましいな…

 

シャロン「リィン様の側付きですか……フフフ、リィン様に対する『愛と献身』がどの程度の物か確かめるのも良いですね」

 

シャロンさんが燃えている…メイドとして思う処があるのかしら?

 

アリサ「…まぁ写真を見る限りリィンを害する様な女性(ヒト)ではないわね。それにしてもここまで変わる何て、私達の記憶が何処まで当てになるのか検討が付かないわ」

 

エマ「…もしかしてリィンさんはトールズには行かないのかも知れません」

 

アリサ「?どういう事、確かにユミルに居ないからリィンが入学する理由は無いけど彼処には《アレ》があるのよ?リィン以外で動かせる人なんて…」

 

エマ「それについてお婆ちゃんが気になる事を言ってました」

 

アリサ「気になる事?」

 

エマ「えぇ、お婆ちゃん未来を占ってみたけど本来リィンさんの立ち位置に別の人がヴァリマールに乗る姿が視えたそうです」

 

シャロン「?Ⅶ組の誰かがリィン様の変わりになると…?」

 

エマ「いえ、それが…《アルノール》に連なる気配だと」

 

アリサ「え?それって皇族の方がトールズに来るって事?」

 

セリーヌ「待って、それじゃあオリヴァルトがヴァリマールを呼ぶの?」

 

 

「「「「………プッ、アハハハハ!」」」」

 

皆想像してみた…殿下がヴァリマールを喚ぶ姿…何故か笑えてきた

 

エマ「ちょ、ちょっとセリーヌ!それは幾らなんでも有り得ないでしょ、アハハ…」

 

アリサ「そうそう、あの殿下がそんな…プッ、クク…」

 

シャロン「ですがある意味納得は出来ますが、元々ヴァリマールはドライケルス帝の乗機、血筋的には問題ないかと…」

 

アリサ「でもオリヴァルト殿下が試練に望む姿は無いとして現在の血筋的に可能なのはセドリック殿下とアルフィン殿下しかいないわ」

 

エマ「でもセドリック殿下は《テスタ・ロッサ》がある筈では?」

 

アリサ「それこそ宛てになるかどうか…もう私達が知る未来は無い可能性の方が高いわ…それでも抗うしかないわ、来るべき《世界大戦》を防ぐ為にも…」

 

 



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第四十四話

UAが九万いくとは…そのうち十万行くんじゃね?ハッハッハ!……いかないよね?


ー ジェニス王立学園祭前日 ー

 

エステル「遂に明日か〜長い様で短い様な一週間だったわね〜

 

講堂で演劇の最後の練習を終えたエステルがそんな事を言った。

 

ジル「お疲れ様〜でも、明日が本番だからね。明日に備えてゆっくり休んでね」

 

エステル「りょ〜かい、でもこの衣装は文句ないけど時代設定が百年前だからてっきり鎧を着るかと思ってたわ」

 

エステルは自身が着ている紅い軍服風の服を見ながら呟いた

 

ジル「鎧は流石に重いからね〜、現在の王室親衛隊の制服をアレンジすることで落ち着いたのよ」

 

クローゼ「因みに私が演じる《蒼の騎士オスカー》とエステルさんが演じる《紅の騎士ユリウス》の服の色が違うのはそれぞれの勢力の色なんです。蒼の騎士オスカーは平民側だから蒼、紅の騎士ユリウスは貴族派だから紅といった具合ですね」

 

エステル「へ〜そうなんだ、でもやっぱりクローゼって剣捌き上手いよね?私は普段剣は使わない事を抜きにしても見事だわ」

 

クローゼ「フフフ、有難う御座います。クラブ活動で剣を握ってますし、此処に来る前にも教えてもらってましたから、そう言うエステルさんこそ見事な太刀筋でしたよ。とても棒術がメインとはだとは思えませんでしたよ」

 

エステル「うん、それはー」

 

ヨシュア「エステルは父さんの妹弟子にも稽古つけてもらってたからね」

 

そう言ってヨシュアはセシリア姫の格好で出てきた

 

「「………」」

 

ヨシュア「……頼むから何か言って…」

 

エステル「いや〜、何て言うか…」

 

クローゼ「えぇ、正直似合い過ぎて何も知らなければ同性と言われても違和感無いというか…」

 

女としては複雑な気分ではあるが…

 

ジル「うんうん、これで劇は盛り上がるわね!」

 

ハンス「俺も思わずナンパしそうになったからな、自信持って良いぜ!」

 

ヨシュア「…全然嬉しくない感想ありがとう…ところでリィンは?」

 

ジル「リィンならフローラさんと一緒に校門の最後の飾り付け

に行ってるわ、もうすぐ終わると思うけど…あ、来たみたいね」

 

リィン「只今戻りました」

 

クローゼ「あ、リィンお疲れ様、終わった?」

 

 

リィン「うん、これで全て終わったよ。後は明日の本番を迎えるだけだ」

 

「「………」」

 

二人の距離に違和感を覚えたエステルとジルは声を潜めながら話した。

 

エステル(…ねぇジル?何かリィンとクローゼの距離近くない?)

 

ジル(あ、やっぱりそう思う?物理的にもそうだけど何と言うか、精神的にも距離が縮まってるわね)

 

エステル(やっぱりアレかな?)

 

ジル(アレでしょ…ズバリどっちかが告白したとか♥)

 

エステル(うわ…どっちだろう////)

 

ジル(そんなのは後でクローゼに問い詰めれば良いわよ。まぁ百%クローゼからだと思うけど)

 

ヨシュア「エステルとジル何を話してるんだろう?」

 

ハンス「止めとけヨシュア、あの手の女子の会話に男子が入る余地なんて無い…それにしてもリィン羨ましいぜ」

 

嬉々とした女子二人の会話に首を傾げるヨシュアをハンスは諌める

 

クローゼ「そういえばリィン、フローラさんは?一緒じゃなかったの?」

 

リィン「あぁフローラなら飲み物貰いに食堂に…」

 

フローラ「お疲れ様です皆様、ホットココアを貰って来たのでどうぞ」

 

エステル「わ!フローラさんありがとうございます」

 

ジル「助かります。丁度喉が乾いていましたので」

 

ヨシュア「でも良いのですか?一部生徒に依怙贔屓みたいに…」

 

フローラ「ご心配なく、既に学園の全生徒と教職員には配布済みです。貴方方が最後ですので遠慮なくどうぞ」

 

ハンス「……流石フローラ先生(汗)」

 

フローラ「リィン様、クローゼさんもどうぞ」

 

リィン「ありがとうそういえばフローラ、招待状の方はどうなってる?」

 

フローラ「ボース市長やルーアン市長始めとした各方面の招待状は既に送付済みです。無論テレサ院長達マノリア孤児院にも送りました」

 

 

エステル「そっか…じゃあ後は明日何が何でも成功させなきゃね!」

 

ジル「という理由だから明日はがんばろー!えいえい、おー!」

 

エステル「おー!」

 

ヨシュア「エステル、ノリノリだね…」

 

ハンス「ま、良いんじゃね?楽しんだ者勝ちってな」

 

ヨシュア「まぁ良いけど…じゃあこれからご飯食べに行こう」

 

そう言って講堂を出ようとしたヨシュアにフローラが声をかけた。

 

フローラ「あ、待って下さい。ヨシュアさん」

 

ヨシュア「?まだ何か有りましたか?」

 

フローラ「………いえ、衣装…着替えなくて良いんですか?」

 

ヨシュア「…………あ(汗)…………」

 

…本人ですらすっかり忘れていた様だ…

 

ー ジェニス王立学園 正面玄関前ベンチ ー

 

リィン「ふぅ…満腹だ…やっぱり学食は美味いからつい食べ過ぎてしまう」

 

リィンは皆と食堂で食事を終えた後別れてこのベンチで一休みしていた。

 

リィン「……此処は本当に居心地が良い…たった一週間、なのに一年過ごしたかの様に感じてしまう」

 

クローゼ「なら本当に編入する?」

 

女子寮の方からクローゼが近付いて来た

 

クローゼ「こんばんわ、さっきぶりね。隣、良いかしら?」

 

リィン「どうぞ、君を拒む理由はないよ」

 

クローゼ「フフ、ありがとう…」

 

隣にクローゼが座ってきた

 

リィン「どうしたの?こんな時間に…てっきり寮に戻ったかと思ってたけど…?」

 

クローゼ「大した事じゃないわ、ジルとエステルさんにリィンにどう告白したか追求されそうになったから逃げてきたら貴方を見つけただけ」

 

リィン「………俺喋ってないけど…?」

 

クローゼ「女の子はそういうのは敏感よ、特に他人の色恋沙汰の話しは女子は大好きだから聞きたがる物よ。覚えておいて」

 

リィン「ハハ……クローゼもそういう話しは好きなんだ?」

 

クローゼ「当然よ、だって誰かを好きになる話しは素敵だもの…まぁ私が当事者になるとは思わなかったけど、人を好きになるって家族以外でこんな気分になるなんて初めて」

 

リィン「…家族…か…」

 

父オズボーンは今どうしてるだろうか?…もし《呪い》が無かったら両親と今も帝国で幸せに暮らしていただろう。だがそれはクローゼに出会わなかったに違いない

 

リィン「ままならない物だよ全く…」

 

クローゼ「リィン?」

 

リィン「いや…何でもないよ」

 

クローゼ「………ねぇリィン……」

 

リィン「…ん……?……っ!?」

 

クローゼの頭がリィンの肩に寄りかかり彼女の良い匂いが鼻腔を擽る

 

クローゼ「前にリィン言ってたよね?自分にはやるべき事が有るって…」

 

リィン「……うん……」

 

クローゼ「それはどうしてもリィンがしなくてはいけないの?他人に任せる事は出来ないの?貴方がそんな事をする必要は無いんじゃ無いの?」

 

…それは何度も思った事でもあった…自分が体を張る必要があるのか?この世界は遊戯(ゲーム)ではなく紛れもない現実であると…主人公などこの世界には居ない、リィン(自分)が居れば何とかなる等自惚れではないかと…でも、それでも…

 

リィン「……ごめん、これはどうしても必要なんだ。大切な物を守る為には抗いたいんだ」

 

世界の人々を守る為等と自惚れた事は言わない、俺は、俺の身近な人を守りたい。これまで関わってきた人々、父オズボーン、エステル、ヨシュア、シズナさん、リーシャ、フローラ、そして…

 

リィン「クローゼ、君を守りたい…愛してる君を」

 

クローゼ「…………リィン目を閉じて……」

 

リィン「…え?どうして?…」

 

クローゼ「良いから早く…!」

 

リィン「わ、分かった…これで良い…ムグゥ!?」

 

言われた通り目を閉じるとクローゼの唇の感触が…

 

クローゼ「…全て納得したわけじゃないけど今はこれで良いわ/////………でも絶対何時か話してね!そして無事に戻って来てよ、貴方の事をお祖母様や伯父様やユリアさんに紹介したいんだから!勿論フローラさんも一緒にね!」

 

リィン「…リベール王家との対面か…それは大切な跡取り孫娘に纏わり付く虫みたいに思われそうだな?」

 

クローゼ「大丈夫よ、皆ちゃんと話聞いてくれるわ」

 

リィン「ならまずは明日の学園祭を成功させなきゃな」

 

クローゼ「うん……!」

 

 

 

 

そして何方ともなく口づけを交わした…

 

 

 

 




次回学園祭に入ります。予想外の人物が出るかも?


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第四十五話

まさかこの作品が続くとは当初思わなかったけど自分が書いたキャラが《動く》のがここまで嬉しいとは…読んでくださってる人達、評価をしてくれた方達に感謝を、そして『閃の軌跡〜変わる物語〜』を楽しんで読んで貰える様に頑張ります。


ー ジェニス王立学園祭当日 ー

 

エステル「うわ〜、校門の前もう人が集まってる…」

 

学園祭の開催宣言をする為に生徒会長のジルを筆頭に他の生徒会メンバーの後にエステル、ヨシュア、リィン、フローラの四人も校門の前に詰めていた。

 

ヨシュア「リベールが誇る名門校の学園祭だからね、此処を卒業したOBの中にはボースのメイベル市長も居るし注目されるのは寧ろ当然だよ」

 

エステル「え?そうなの?メイベル市長、此処の卒業生なんだ、知らなかった…」

 

リィン「俺は会わなかったが噂に聞く限りでは優秀な人らしいね?」

 

ヨシュア「うん、人望もある女性(ヒト)だったよ」

 

フローラ「皆さんそろそろ始まりますよ」

 

フローラの言葉を聞き三人共ジルの方を向いたらジルが少し前に出て話し始めた。

 

ジル「お集まりの皆様、本日は当学園にお越し頂きありがとう御座います。皆様もご存じかも知れませんが今ルーアンは海に化け物が棲み着いており人々に暗い影を落としております。一部の方にはこの様な時に学園祭等不謹慎ではないかと思われるかも知れません」

 

ジル「しかし、その様な時だからこそ学園祭を開き暗い気持ちを吹き飛ばす!そう判断しました。さて、長々話すのは趣味ではありませんので…私生徒会長ジル・リードナーはジェニス王立学園祭の開催をここに宣言します!」

 

市民の拍手と共に門が開かれ今学園祭が始まった。

 

ジル「は〜疲れた…」

 

宣言を終えたジルはそう言いながらこっちに来た

 

クローゼ「ジル、お疲れ様」

 

エステル「うんうん!良く人前であれだけスピーチ出来るわね、私ならちょっと無理かな?」

 

ジル「ま、将来は政治家志望だからこれぐらいはね?」

 

ハンス「んで、早速生徒会室に戻るか会長?」

 

ジル「もちろん、あ、予定通りクローゼはエステル達を学園内の演し物廻りの案内ね?」

 

クローゼ「それは構わないけど…本当に大丈夫なの?」

 

ジル「大丈夫よ、多少何かあっても私とハンスで対処出来るし学園祭に支障きたす様なトラブルは事前にフローラ先生が潰してくれたから」

 

リィン「……フローラ、なにをしたんだ?」

 

フローラ「…質の悪い食材を卸そうとした業者を少々《オハナシ》しただけです。最後には自分の非を恥じてましたよ?」

 

リィン「なら何故目を逸らす?」

 

《オハナシ》という名の肉体言語じゃないよな?

 

ジル「まぁまぁ、良いじゃない…そういう訳だから劇まで時間あるからそれまで学園祭楽しみなよ」

 

という訳なのでお言葉に甘えて学園祭を楽しむ事にしたのだか…

 

エステル「ヨシュア〜!こっちこっち!クレープ売ってるよ〜」

 

ヨシュア「判ったから、エステル腕引っ張らないで!?」

 

エステルは学園祭を満喫していた…

 

クローゼ「………えっと?リィン、エステルさん達って本当に付き合ってないの?」

 

リィン「言わんとする事は判るけど、あれが二人の普段の距離感だ…」

 

クローゼ「………あれで?……」

 

リィン「……うん……」

 

そのせいでヨシュアに好意を抱いてた娘は早々に諦めてたからな…

 

クローゼ「…リィン、手繋ご?////…何かあの二人を見てたら…」

 

リィン「クローゼ…うん…」

 

二人は手を繋いで歩いた。指と指がぴったりと重なって、二人の心も一つになった。

 

クローゼ「何か照れ臭いね?告白したのに…////」

 

リィン「まぁ、お互い恋愛初心者だしな////」

 

『『…でも…悪く無い…』』

 

互いに同じことを思った。

 

フローラ「お二人が恋人同士なのは大変結構ですが私が傍に居るのを忘れては困ります」

 

『『…あ…ごめん/なさい』』

 

普通に忘れていた、ごめんフローラ

 

フローラ「もう少し周りに気を遣った方が宜しいで…あら?こちらに近づく人が居ますわ…」

 

フローラが指差す方に目を向けると前世で言うアロハシャツみたいな服を着た赤髪の男が、ってもしかしてあれって…?

 

クローゼ「レクター先輩!?」

 

レクター「よぉー、クローゼ久しぶりだな〜学園祭が盛況でなによりだ。俺も鼻が高いぜ〜」

 

クローゼ「いえ、というより先輩は何しにリベールに?」

 

レクター「何って…仕事に決まってるだろう?」

 

クローゼ「仕事…?遊びに来たの間違いでは?」

 

レクターの服装はどう見ても遊ぶ気満々だ。クローゼが訝しむのは無理無いだろう

 

レクター「失礼な、俺はちゃんと上司に言われた事をこなして余った時間で母校を見に来たんだぜ〜」

 

クローゼ「でもそんな服用意してる時点でその上司に内緒で遊ぶ気だったのでは?」

 

レクター「おいおい、先輩を疑うのかよ…俺は悲しいぞ。所でお前の隣に居る男子は?見覚えないが…というより何故メイドが…何処かの金持ちの侍女か?」

 

クローゼ「あぁ、紹介します。彼はリィンと言いまして今回の学園祭の手伝いをしてくれた一人です。彼女は彼が主です」

 

リィン「はじめまして、リィン・アイスフェルトと言います。そしてこっちが…」

 

フローラ「リィン様にお仕えしておりますフローラ・クリストと申します」

 

レクター「(リィン!?まさかおっさんの…)あ、ああ俺はレクター・アランドールっていうんだ宜しくな、しかしクローゼお前さんが男子と仲良く歩いてるなんてな、ふーんもしかして…彼氏か?」

 

レクターは半ば冗談のつもりの発言だったが…

 

クローゼ「えぇ、そうですよ////」

 

レクター「…はい?…いやぁ、クローゼ冗談を返すの上手くなったなぁ、は、は、は、は………マジ?」

 

クローゼ「本当ですよ。彼と恋人同士です」

 

レクター「は、え?ちょっと待て!?クローゼ!お前、えぇ〜?リィンだったな?お前どうやってコイツを口説いたんだよ!この真面目ちゃんがどうすればこんな恋する乙女になるんだよ!」

 

よっぽど意外なのかレクターは本気で混乱しているようだが…

 

「あら、貴方が人の恋路にとやかく言う程詳しかったかしら?」

 

レクターの後ろからプラチナブロンドの美しい女性が現れレクターの肩を摑んだ

 

レクター「…げ、ルーシー…」

 

クローゼ「あ、ルーシー先輩お忙しい中ありがとう御座います」

 

ルーシー「久しぶりねクローゼ、可愛い後輩が招待してくれたもの、来ない訳がないわ。そちらの彼は初めましてね、私はルーシー・セイランドよ。宜しくね、それと…レクター?」

 

端から見ても分かる程にレクターの肩を摑む彼女の手が力強くなっている…

 

ルーシー「フフフ、レクターちょっと来なさい。色々と言いたい事が沢山あるわ…それと十発、いや二十発殴らせなさい」

 

レクター「おいおい、楽しい学園祭を流血沙汰に…って、いてて!?ルーシー!お前力込めすぎだろ!?そして何処に連れて行く気だ!?」

 

ルーシー「黙りなさい、丁度良い機会だから貴方にはきついお仕置きを据えるわ」

 

 

レクター「はぁー!?待て待て!俺は仕事があるんだぜ!?そんな余裕なんて…」

 

ルーシー「あら?貴方さっきは仕事終わらせて此処に来たと言ってなかったかしら?なら時間有るでしょ?キリキリ歩きなさい!クローゼ!!悪いけど使ってない部室を借りるわよ!」

 

クローゼ「はい、どうぞご自由に」

 

ルーシー「ありがと、あぁ言い忘れてたわ…クローゼ良かったわね、良い人に出逢えて…今の貴女良い顔してるわ…其処の彼もクローゼを心配掛ける様な事しないように!じゃあまた後でね」

 

レクター「俺の休暇〜!!」

 

彼女に引き摺られながら彼は姿を消した…

 

リィン「…凄い人達だったな、色々な意味で」

 

クローゼ「レクター先輩はこの学園の生徒会長を、ルーシー先輩は副会長を務めていたんだけどレクター先輩は当時からあの性格でサボりの常習犯だからルーシー先輩がよく武力で鎮圧してたわ」

 

リィン「武力って(汗)」

 

フローラ「同僚にその噂は聞きましたが良く会長がリコールされませんでしたね?」

 

クローゼ「何だかんだ言っても有能でしたし、生徒の受けも決して悪くはありませんでしたから」

 

リィン「…よくわからん人みたいだな?」

 

画面で見る分には面白い人だったが…

 

 

「あ、クローゼ先輩!フローラ先生ちょっと良いですか?VIPの方々が一部到着したのですが…」

 

クローゼ「え、もう?少し早いわね…ごめんなさい、リィン…」

 

リィン「良いから行きな、こっちは大丈夫だから、ほらフローラも今は先生何だから…」

 

フローラ「…判りました、少し席を外れます」

 

クローゼ「ごめんなさい、また後で!」

 

そう言って二人共後輩の後を追いかけリィン一人だけになった

 

リィン「さて…あぁは言ったもののどうしようか?エステル達は出店巡りに行ったきりだし」

 

どうしようかと悩んでいると菫色の親子が此方に近づいてきた…というかあれは…

 

「こんにちは、学生さんですか?」

 

親らしき男性が話しかけてきたので応じた

 

「こんにちは、いえ俺は知り合いの手伝いに来ただけです」

 

「あぁそうなんですね?失礼名乗っていませんでしたね、私はハルロド・ヘイワース。クロスベルで貿易商を営んでいます、今日たまたま商談がありましてその時に学園祭の話が出まして…それで娘にも見せようと思いまして、ほらお兄さんにご挨拶しなさい」

 

ハルロド氏に促され親と同じ髪色の女の子が前に出てきた

 

 

 

 

 

 

 

 

「うふふふ、こんにちはお兄さん、私レンっていうの宜しくね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第四十六話

レン「うふふ、レンって言うの宜しくね、お兄さん」

 

ヘイワース「こら!レン、済みません背伸びしたいのか最近少しませた事を言い始めまして…」

 

レン「あらパパ、こんなのは背伸びのうちには入らないわよ。それに女の子は成長が早いんだから」

 

ヘイワース「だからといってだな…!」

 

リィン「大丈夫ですよ、気にしていませんから俺も名乗り遅れましたがリィン・アイスフェルトです。楽しんで下さいね」

 

俺も名乗ったがもしかしなくてもこの娘は…

 

レン「ねぇお兄さん、講堂で劇やるんでしょ?まだはじまらないの?」

 

リィン「ん、あぁアレは昼過ぎからだからまだだな…劇好きなのかい?」

 

レン「うふふ、勿論よレンは物語は大好きなの…だから今日の演劇は楽しみなの」

 

リィン「そうか…ならさっきも言ったけど昼過ぎに来なさい。それまではお父さんと一緒に学園内を見て回ればいいと思うよ?」

 

レン「………そうね、パパ!行こう!」

 

ヘイワース「こらこら、そんなに引っ張らないで祭りは逃げないのだから…済みませんこれで失礼します」

 

ヘイワース氏を引っ張って去っていったがレンが一瞬見せたあの顔は間違い無く嫌悪のそれだ…やはりあのヘイワース氏は…レンにとってはまだ赦せないのか

 

リィン「…無理は無いのかもしれないが…今俺が言った所で頑なになるだけだな、やはりあの子はエステルに任せた方が無難か…」

 

あの太陽ならレンの心を溶かせるだろう、些か他力本願だが…

 

リィン「…出店を回るか…」

 

考えても仕方がないから出店を回る事にした…学園内は学生が外部から来た客に元気よく声をかけていた

 

「ん?リィンじゃねぇか!休憩か!?」

 

リィン「そんなとこだ、お前のとこは…」

 

友人が声を掛けて来たので覗き込むと鉄板に丸い凹みに生地を流し込み更にタコ…これって…

 

「フ、フ、フ、!どうだ!これは東方より更に東の極東という処で食されてるその名も…「タコ焼きだろ?」ガク!なんで知ってるんだよ!?」

 

リィン「いやまぁ、なんでって言われでも…」

 

前世では馴染み深い食べ物だったしなぁ

 

「はぁ…まぁ良いや、リィン売り上げに貢献してくれや、余り芳しく無くてな」

 

リィン「…じゃあ六個入りを一つくれ、てかタコ食うから出したんだろう?」

 

「はいよちょっと待ってな、いや実はな…地元ルーアンっ子でも食べる奴少ねぇんだわ…」

 

リィン「……はぁ!?じゃあなんで出すんだよ?」

 

「このバカ極東の食文化珍しいから売れるだろうって、思ってたみたいよ」

 

隣りで別の屋台出してた女子が呆れた様子で言った。しかもその女子が出してるのは…

 

リィン「たい焼きか?」

 

「あら?博識ね。ちょっとマイナーなお菓子なのに」

 

「お前だって極東の食文化の食べ物じゃねーか!」

 

「売れてないアンタと一緒にしないで、こし餡は…まぁ敬遠されてるけどカスタードクリームは順調に売れているわよ」

 

リィン「こし餡が売れないのか?」

 

「まぁね〜、豆は食べるけどそれを甘くする発想が無いからね、リィンは平気なのかしら?」

 

リィン「全然平気だが、こし餡のたい焼き一つくれ」

 

驚いたが前世でも外国人が羊羹なんかの菓子を敬遠された話聞いた事があるし別に不思議でもないか…

 

「ありがと…はいこれサービスでカスタードとこし餡二つずつ入れといたわ、フローラ先生の分」

 

「あ!ズルイぞー!ならリィンこっちも一舟サービスだ!フローラ先生に絶対渡してくれよな、な!?」

 

「あんたまだフローラ先生諦めて無いの?懲りないわね〜三度告白して全て断れてるじゃない」

 

「良いじゃねぇか!好きになっちまったんだからしょうがねぇだろうが!」

 

人気者だな、フローラだけど…

 

リィン「残念だがこの学園祭終わったら此処を去るぞ?元々俺やフローラは手伝いで居るだけだからな」

 

「そうなんだろうけどさぁ…どうすればいいんだよ。この気持ちの遣り場」

 

リィン「同級生同士で恋人作れば良いんじゃ無いか?別にお前顔悪い訳でもないだろう?」

 

「そりゃーそうなんだが……なぁ?お前は先生と同じ出身なんだろ?なら誰かいい娘紹介してくれよ」

 

リィン「俺に振るなよ」

 

「はぁ……少し期待してたのになぁ……お前なら女の一人や二人くらい簡単に引っ掛からせると思ってたんだがよ」

 

リィン「人を女誑しみたいに言うな……」

 

原作みたいに多数に好意向けられる人物じゃねぇぞ俺は…

 

リィン「…まぁ良いや、有り難く貰うさ頑張れよ。ハイ、お代」

 

クラスメイトと別れ近くの簡易席に座り買ったばかりのたこ焼きを食べてみる

 

リィン「うん、美味い…」

 

外はカリッと中はトロリ、タコも大きくソースやマヨネーズとよく合う。たい焼きも程よい甘さで日本なら列を並んでも買う人が居るだろう。

 

リィン「アイツ、たこ焼き屋に向いてるんじゃないか?」

 

そんな事思いながらたこ焼きを完食した時後ろから見慣れない一人の男子生徒が近付いてきた。

 

「あ!リィンさん丁度良かった。旧校舎に『獣』みたいなのが居るんだ!追い払って下さい」

 

リィン「獣?魔獣じゃなく?」

 

「はい!未確認なので断定出来ませんが…何方にしても人前に出られるのは避けたいからお願いしたくて」

 

言いたい事は解るが…

 

リィン「エステル達には話したのか?まずは遊撃士に尋ねるのが筋だろう?」

 

 

「勿論伝えましたが、トラブルの仲裁で少し遅れると…」

 

「…判った旧校舎だな?君は生徒会には付近には近付かない様に伝えてくれ。来客達にもさり気なく立ち入らせない様に」

 

「判りました!すぐ伝えます」

 

男子生徒は走り去っていった…

 

リィン「やれやれ…まぁクローゼ達の為にも遊撃士の真似事をしますか」

 

そしてリィンは旧校舎に向かった…先程走り去った男子生徒が角で哂っていた

 

 

 

「いやぁ、中々面白い人だね〜♥カシウス・ブライトの弟弟子にしてカルバート最強と謳われるSSSランク猟兵団《斑鳩》の中でも黑紳一刀流剣聖に近いと言われるシズナ・レム・ミスルギの弟弟子リィン・アイスフェルトか…《幻焰計画》がスケジュール通り進むかヒヤヒヤしたけど…寧ろ強くなってないかい?まぁ多少のトラブルは折り込み済みか…さて盟主に報告しょうか」

 

 

 

リィンは旧校舎の中に入ったが…この気配は、

 

リィン「………そろそろかくれんぼは辞めないか?お嬢さん」

 

「フフフ、バレちゃったか…」

 

リィンの問いに旧校舎のエントランスからあの娘…レンが出てきた

 

レン「さっきぶりねお兄さん、レンは待ってたのよ?」

 

リィン「…お父さんはどうしたのかな?君を心配するぞ」

 

レン「…あんなのレンのパパじゃないわ…本当のパパは!…それよりレンと遊んでよ、お兄さん?」

 

リィン「遊ぶ?」

 

レン「そう、レンのお人形たちとの相手をね…」

 

レンが手を出すと自身の身の丈程ある大鎌を取り出すと軽々と振ると背後からヨシュアの人形が出てきた!

 

レン「うふふ、お兄さんがヨシュアと親しいのは調査済みだからヨシュアの実力は知っているでしょう?レンのお人形は本人と同じ実力…だからね?本気で来ないとお兄さん……死ぬわよ?」

 

アーツの駆動音…!やるしかないか!

 

リィン「……良いだろう、君の遊びに付き合おう。八葉が一刀中伝リィン・アイスフェルトだもう一度君の名を聞きたい」

 

太刀を構え問うた

 

レン「うふふ、良いわよ…《結社》身喰らう蛇が一柱、執行者No.XV『殲滅天使レン』よ!」

 

名のり終えると同時にレンとヨシュア(偽)が疾走ってけきた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第四十七話

ヨシュア(人形)の頸を撥ね飛ばし、倒した人形の影からまた襲い掛かる人形の双剣を受け取めその腹を蹴り飛ばす!

 

視界の端からまた二体此方に向かってくるのを確認し先程倒した人形の双剣の片割れを奪い取りそれを投擲し一体が顔に刺さり崩れ落ちるがもう片方はお構い無しに突っ込んで来てこちらの首に刃を突き立てんとするのを躱し逆にその胴体を切り裂いた

 

リィン「数だけは多いな…君の人形遊びはこんなに数を使う…のかい!」

 

接近してきた人形の顔を右ストレートを叩き込み蹌踉めいた人形を真っ二つにした。レンは人形達を指揮しながらリィンの隙を突こうとしていた

 

レン「ふふふ、そんな事はないわ、レンの人形遊びは精々五体迄だもの…お兄さんが異常なだけよ?」

 

レンは自身の持つ大鎌をリィンの首を刈りとらんと投擲してきた

 

リィン「人を人外扱いするのは止めてもらおうか?第一君の仲間ならこの程度の軍勢片手間で片付くだろう!」

 

投擲してきた大鎌を弾き返しレンは弾かれた大鎌を手に取り接近してきた

 

レン「う〜ん、確かにヴァルターや鋼のお姉さん、マクバーンなら楽勝かな?あ!勿論レーヴェも出来るわね!でも片手間ってのは聞き捨てならないわね?人形とはいえヨシュアの強さはレンだって判るんだから!」

 

レンの大鎌とリィンの太刀が斬り結び離れ、互いに疾走りながら語った…

 

リィン「ヨシュアの強さは俺も重々承知してるさ…唯この人形達が弱いだけだと言っている!」

 

リィンの袈裟斬りをレンは受け止め返す刃でリィンの胴体を切り裂かんとしたがそれより疾くバックステップして躱した

 

レン「へぇ?お兄さん随分ヨシュアのこと買ってるのね?…」

 

背後から襲って来た人形を裏拳で沈めながらレンの疑問に応えた

 

リィン「君とヨシュアの絆は知らない、だがこれだけは言えるさ、ヨシュアは《闇》には戻らないよ」

 

リィンは再度斬りかかりレンは受け止めながら話す

 

レン「……ッ!、ヨシュアの《闇》はそんな簡単に晴れる訳がないわ!トラウマ…失った物が大きければ大きい程人は大切なものを再び失うのを恐れるものよ!」

 

レンは太刀を弾きリィンの首を再度狙う、それを躱し間合いを取りリィンは構える

 

リィン「そうだな、大切な物を失う恐ろしさは一度失った者にしか判らない、けどな、だからこそ大切なものを得たヨシュアは俺とは別種の強さを得つつあるんだよ『家族を守る』という強さを!……コォォォォ!神気合一!」

 

レン「か…ぞく?……ッ!それこそなんの意味が…じゃあレンのパパやママはなんで、何で迎えに来ないのよ!!良い子で待ってたのに!なんで、何でよぉー!」

 

さっきまでの冷静さが消え失せレンは残りの人形と共に突撃してくる

 

リィン「それは俺が軽々しく言う事ではない、だけど君もエステル達に会えばわかるよ…八葉一刀流四ノ型【滅・紅葉切り】」

 

レン「あ…」

 

すれ違い様に人形達を切り飛ばしレンの大鎌も弾き飛ばし床に刺さる

 

リィン「勝負あり…だね、立てるかい?」

 

リィンは太刀を納めレンに近寄って手を差し伸べた

 

レン「…止め、刺さないの?」

 

リィンの手を取り立ち上がりながら問う

 

リィン「俺は遊撃士でもないが殺し屋でもないんだ、子供を斬る趣味は無い、無力化して学園祭に支障をきたさなければそれで良い」

 

レン「……お兄さんって変な人ね?」

 

リィン「変かな?」

 

レン「えぇ、とっても」

 

リィン「……そうか、まぁ良いや聞きたい事があるけど?」

 

レン「…何かしら?」

 

リィン「何故俺を狙ったんだい?ヨシュアを狙うならまだ解るが…」

 

レン「…フウ、それは簡単よ、一つは剣聖カシウス・ブライトの弟弟子のお兄さんの戦力調査、可能なら抹殺も視野に入れてたわ。負けたけど…それでもう一つは…」

 

『盟主直々に君と接触したいだって』

 

 

リィン「ッ…!!」

 

リィンがさっきまで居た場所から突然一人の少年が現れた

 

レン「カンパネルラ…!」

 

カンパネラ「やぁ、レン負けちゃったみたいだねぇ♥…まぁ八葉の中伝相手だと無理はないか、しかも彼、黒神一刀流も習ってたみたいだし…」

 

レン「フン!!まだレンにはパテル・マテルという奥の手が…」

 

カンパネルラ「だけどそれは負け惜しみじゃないかなぁ?今は素直に受け入れなよ」

 

レン「むぅ…」

 

リィン「結社の者か?」

 

リィンは再度太刀を構えた

 

カンパネルラ「あはは、ごめんごめん、自己紹介がまだだったね。結社身喰らう蛇が一柱執行者No.0《道化師》カンパネルラ、以後宜しくね♥」

 

リィン「…何が目的だ?」

 

カンパネルラ「あはは、この場ではもう争う気は無いから武器を降ろしてよ。学園祭についても手出ししないことを盟主の名にかけて誓うよ」

 

レン「因みに盟主の名をかけるという言葉は私達には絶対よ、確実に守るからそこは安心してね」

 

その言葉を聞きゆっくりと構えを解いた

 

リィン「もう一度聞くが何が目的だ?先程お前達の盟主が会いたいと言ったが?」

 

カンパネルラ「うん、そうだよ。詳しい話は知らないけど盟主が君と話たいんだってさ、だから僕とレンが接触したのさ」

 

リィン「秘密結社の最重要人物が俺に?だとしても俺はお前達の拠点に着いて行く訳にはいかんよ。学園祭もあるからな」

 

レン「それは心配要らないわ、だって…もう此処に居るもの」

 

リィン「…なに!?」

 

そう言うと同時に二人の後ろから足音が聞こえて着て暗闇から一人の女性が現れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めまして、リィン・アイスフェルトさん、私が結社《身喰らう蛇》を束ねる盟主です。お話…しませんか?」

 

 

 



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第四十八話

旧校舎において盟主との会談に望む事になってしまったか…

 

カンパネルラ「お茶菓子です」

 

カンパネルラがテーブルと菓子を用意したが…おいこら

 

リィン「これ、俺が買ったたい焼きなんだが?」

 

何でカンパネルラが持っている?

 

カンパネルラ「あはは♥何言ってるんだい?君が彼処に置きっぱなしにしていたからわざわざ持って来たんだよ♥それに…熱い内に食べないと美味しく無くなるじゃないか」

 

悪びれもせずそんな事をのたまうカンパネルラ…

 

レン「ふふふ、良いじゃないのお茶だけじゃ味気無いもの」

 

レンはレンでお茶を用意しながら言う

 

レン「ふふふ、流石に死線のお姉さんには負けるけどレンのお茶だって美味しいんだからね」

 

出来上がったお茶をティーカップに注ぎながらレンは自信たっぷりに言った

 

リィン「…よく茶会を開くのかい?」

 

レン「えぇ、よく付き合ってくれるのはレーヴェとヨシュアと鋼のお姉さん、さっき言った死線のお姉さん、次に多いのはヴァルターやブルブラン、ルシオラお姉さん、あぁ《破戒》のおじさんや《黃金蝶》のお姉さんも多いかな?マクバーンは…偶に参加する程度ね」

 

結社って一体…?

 

「ありがとう御座います。レン、カンパネルラ少し席を外してください。彼と二人で話したいのです」

 

 

カンパネルラ「承知しました。では終わりましたらお呼び下さい」

 

レン「うふふ、お兄さんまた後でね」

 

カンパネルラは恭しく言いレンは手を振りながら退室していった。そして残ったのは俺と…盟主

 

「さて…折角あの二人が用意してくれたのですからまずはお茶を楽しみましょう?」

 

そう言って彼女はたい焼きを手にして…首を傾げる?

 

「あの…これ?どっちから食べれば良いのでしょうか?」

 

たい焼きの頭と尻尾を見ながらそんな事を尋ねてきた

 

リィン「…正式な食べ方は無いのでお好きな方から食べればいいかと思います」

 

「そうですか…では改めて、頂きます」

 

彼女はそう言って背鰭から食べた…いや、そっちかい!確かに正式な食べ方は無いけど…

 

「これは…美味しいですね。生地とカスタードクリームとの相性が良いですね」

 

 

リィン「それなら良かった。作った奴も喜ぶでしょう」

 

俺もレンの淹れたお茶を口に含んだ

 

リィン「美味い…」

 

確かに自慢するだけはあるな…

 

「あの娘は死線からお茶を習ってましたから…良く鋼や死線もお茶の品評に付き合っていました」

 

何か…納得する光景だな

 

それからはしばらく静かな、他愛もない話に興じてたが本題に入る事にした

 

「さて、本題に入る前に私の名を教える訳にはいかないのですが…それだと不便でしょうから、そうですね…アルマとお呼びください」

 

リィン「……それは本当に仮の名ですか?」

 

アルマ「ご想像にお任せしますわ」

 

リィンの問いに盟主改めアルマは上品に笑って応えた

 

リィン「…まぁ判りました。ではアルマさん、貴女は俺に用があると仰ったが如何様な?」

 

アルマ「…単刀直入に言います。リィンさん、貴方は《カルナス》をどうする気ですか?」

 

《カルナス》…?

 

リィン「失礼だが《カルナス》とは…?」

 

アルマ「貴方が有してる浮遊都市の名です」

 

…なに?

 

リィン「…貴女は、彼女の事を知ってるのですか?」

 

アルマ「…その様子だと中枢コンピューターの事も知ってる様ですね」

 

彼女はお茶を含みながら応えた

 

アルマ「…かの地の放棄を決めた時私も居ました。分解して資材化する事も検討されましたが、万が一何か有った時のバックアップとして残す事になりました…しかしその様な事がなく次第に《カルナス》は忘れ去られました」

 

リィン「貴女は…一体何者ですか?」

 

アルマ「……それは何れ判る日が来るでしょう。もう一度聞きます、貴方は《カルナス》で何をする気ですか?」

 

彼女は険しい顔になり此方を見る…俺の答えは…

 

リィン「どうもしません」

 

アルマ「…は?…」

 

リィン「どうもしない…と言ったんです。多分貴女は《カルナス》…今はアンファングと俺は呼んでますが、技術が悪用されるのを懸念してるのでしょう?」

 

アルマ「…え、えぇ『アレ』には今の世に出すのは早過ぎる物が…」

 

リィン「……フローラ、貴女の言う中枢コンピューターは寂しがっていました」

 

アルマ「え?…」

 

リィン「最初俺と初めて会った時彼女はとても寂しかったのでしょう。行く宛の無い俺を住んでも良いと言ってくれました。当然でしょうね二千年近く人を見ずたった一人で彼処で過ごして居たのですから」

 

アルマ「………」

 

リィン「誰にも知られずにこのまま朽ち果ててしまうかもしれない…そんな恐怖を感じてしまうのは当たり前です。だから…嬉しかったのでしょう、地上に降りたいと彼女の我儘を許可した時の嬉しい顔は今でも覚えてます」

 

アルマ「……それは……」

 

リィン「貴女の危惧は解るし、危険性があるのは否定出来ない事実です。ですが…敢えて言います

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故彼女を一人にした!?彼女がどれだけ寂しい想いをしたと思っているんだ!!仲間が…同胞が一人も居なくなって寂しく無いなんて…ある訳、無いじゃないかよ…!」

 

 

アルマ「……返す言葉もありません。カルナス…フローラの事を置き去りにした事実は変わり有りません。ですが……何故貴方はそこまで……」

 

リィン「…家族だからです、俺にとっては大切な家族の一員だから…」

 

アルマ「…やはり貴方に会ってよかった…」

 

リィン「……」

 

アルマ「今更この様な事を言っても遅いですが…貴方と共に暮らせている事が彼女にとって何よりの喜びでしょう……どうかこれからも彼女の事、宜しくお願いします」

 

そう言って頭を下げる盟主に俺はこう言った。

 

リィン「えぇ、勿論家族としてちゃんと支えていきますよ」

 

アルマ「今の話は私の胸の内に収めておきます。結社の誰にも言わないので安心してください」

 

リィン「それは…有り難いですが良いのですか?」

 

アルマ「えぇ、元々技術流出を危惧して会いに来たのですが…貴方なら安易に危険な技術は渡さないと確信しましたので」

 

リィン「…一応聞きますが、貴女は結社の活動を辞める意志は?…」

 

アルマ「それは有り得ません」

 

リィン「そうですか…」

 

そうして茶会という名の会談は終わりを告げた

 

カンパネルラ「では盟主は僕が責任を持って送るよ♥」

 

話が終わった後アルマ…盟主はカンパネルラ達を呼び転位術で帰る事になった

 

「時間を割いて頂きありがとう御座いました。有意義な話しが出来ました」

 

リィン「こちらこそ…こういうのは変でしょうが、お元気で」

 

「えぇ、何時かまた会いたいものですね」

 

リィン「…そうであれば良いのですが」

 

「あぁ、それともう一つ…此処ルーアンで騒がしてる『古代種』…オケアノスもそうですが他にも居るので出来れば排除してほしいのです」

 

リィン「構いませんが…理由を聞いても?」

 

「…『アレ』は外道な者達によって滅びを向かえなかった憐れな存在です。ですが、彼等の本質は獣です。そして人間とは相容れない彼等にとって人の倫理や決まり等関係有りません。ただ本能のまま捕食し縄張りを拡大します。それは人でも例外ではありません、老人、女子供も容赦なく捕食するでしょう…」

 

リィン「承知しましたが…殺せるのですか?」

 

「殺せます…が根本的に絶たなければイタチごっこになるでしょう」

 

リィン「根本的?」

 

「…クロスベルを訪れてください、かの外道達の遺産が其処に…」

 

リィン「…判りました、この件に関しては共闘という事で良いのですか?」

 

「ありがとう御座います、その認識で結構です」

 

カンパネルラ「フフフ、それでは御機嫌よう。今度会う時は敵同士かもね♥」

 

カンパネルラの転位術が発動し二人共消えていた…のだが

 

リィン「…レン、君は帰らなくて良いのか?」

 

何で俺の隣にいるのかね?

 

レン「何でって…まだ学園祭満喫してないもの、それにヨシュアの出る劇で面白い事するんでしょう?これを撮らないで帰るなんて無いわ」

 

そう言ってZCF製導力カメラを取り出した

 

リィン「…講堂はカメラ禁止だぞ?」

 

レン「あら、そうなの?なら写真じゃなきゃ良いのよね」

 

レンは悪戯っぽく笑いながら言った

 

リィン「……他の観客の迷惑にならないようにな」

 

もう色々諦めたよ…

 

レン「フフフ勿論よ…さぁ、お兄さんレンを連れて行って頂戴?」

 

レンは面白そうに笑いながらこちらに手を伸ばした…

 

 

 

 

 

 

 



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第四十九話

まさかUAが十万いくとは…(汗)


レン「♫〜」

 

レンは俺の手を握りながら楽しげに鼻唄を歌ってる

 

リィン「楽しそうだな」

 

レン「えぇ、とっても流石はリベールが誇る名門校ね」

 

リィン「レンは学校には…?」

 

レン「……行ってないわ…行く必要無いもの、学ぶ事なんてレンには無いわ、だってレンは天才なんだから…」

 

レンはそう言うがその目には憧れと諦めの二つの混在した感情が読み取れた

 

リィン「なら通えば良いさ」

 

レン「あのねぇ…レンの話聞いてた?レンは…」

 

リィン「勉強だけが学校に行く理由じゃないよ」

 

レン「……どういう意味かしら?」

 

呆れた声で言うのを遮り持論を言うと怪訝な顔をした

 

リィン「学校は友を作る場でもあるという事さ、同じクラスで同じ席で勉強して遊び、一緒にご飯を食べる。それはかけがえのない大切な時間だよ」

 

この先レンは生涯の友のティータと出会うだろう、だがそれ以外にも得難い友を増やすのはこの娘にとっても悪い事じゃない筈だ

 

レン「……秘密結社の幹部が学園に通えると思ってるの?」

 

リィン「君の盟主から執行者にはあらゆる自由が認められていると聞いたよ。それを使って此処に通えば良いさ」

 

レン「……」

 

リィン「君はまだ若い、選択肢を増やす事は何ら問題ないよ」

 

レン「選択肢?何の?」

 

レンは再び怪訝な顔をして問う

 

リィン「例えば君が結社を辞めて普通の女の子になる」

 

レン「あり得ないわ」

 

即座に否定してきた、だけど…

 

リィン「例えばの話さ、結社だけが生きる道ではないし、まだ君の知らない知識、結社だけに居たのでは得られない物も在るかもしれないよ?」

 

レン「…結社以外でそんな事…」

 

リィン「人間は進歩するものだよ。十年前《百日戦役》で船が空を飛ぶなんて誰が想像出来た?これから先技術の進歩は目まぐるしくなる。その数だけ新しい知識が生まれる、何時までも結社が先行しているとは限らない」

 

リィンはレンの頭を撫でながら言った

 

レン「…あっ…」

 

リィン「此処じゃなくてもカルバートのアラミス高等学校という選択肢もある。何れにしても君は学ぶ権利はある、検討の価値は有ると俺は思うな」

 

レン「……興味湧いたらパンフレット取り寄せてみるわ…」

 

リィン「今はそれで良いさ」

 

レン「ところで…何時までレンの頭撫でてるのかしら…?」

 

レンはジト目をしてリィンを見た

 

リィン「おっと、済まない」

 

撫でる手を退けるが心無しかレンの顔が赤い…

 

レン「全く…レンはレディなのよ?子供扱いしないで頂戴…」

 

リィン「レディならもう少し優雅にならないとね」

 

レン「む…言ったわね。レンがお兄さん位の歳になったら絶対素敵な女性になってるんだから!」

 

リィン「期待しないで待ってるよ…っと着いたよ。ここが史劇をする講堂だよ」

 

丁度良く人が集まり出して来たな。レンは…講堂を見つめていた

 

リィン「…ヨシュアに会っていくかい?」

 

レン「…フフフ、それはそれで面白そうかも知れないけど今回は観客席でヨシュアの晴れ舞台(笑)を鑑賞するわ」

 

リィン「…至って本人は真面目に演じてるから笑わないでやって?」

 

レン「努力はするわ、あ!そうそう、案内してくれたお礼にこれ受け取って」

 

レンは茶色い封筒を投げて寄越してきた

 

リィン「これは?」

 

レン「お兄さんが今知りたい事が『それ』に入ってるわ。例えば此処の市長さんの事とか…レンには必要無いからあげる」

 

リィン「…良いのか?」

 

レン「言ったでしょう?必要無いって、レンが人に渡そうが燃やそうがレンの自由なの、だからお兄さんもそれをどう使おうがお兄さんの勝手なのよ」

 

 

そう言う事なら…

 

リィン「有り難く使わせてもらうよ」

 

レン「フフフ、どうぞご自由に…じゃあレンは中に入らせて貰うわ、案内ありがとうね。お兄さん」

 

そう言ってレンは中に入って行った

 

リィン「…さてとこの封筒は後でエステル達に見せるか…どうやって手に入れたのかと聞かれるなこりゃ」

 

「あら…?貴方は…?」

 

どう言い訳するか悩んでいると後ろから声をかけられたので振り向くとテレサ院長等マーシア孤児院の子供達の姿が

 

リィン「テレサ院長、お久しぶりです」

 

テレサ院長「あぁ!確かリィン君よね、この前はグラム君を連れ戻してくれてありがとう。この子も反省してね…ほら、グラム君?お兄さんに言うことあるんでしょう?」

 

テレサ先生に軽く背中を押されグラム君がバツが悪い顔で前に出て来た

 

グラム「あ…あの、この前はごめんなさい、クローゼ姉ちゃん

や兄ちゃん達に迷惑かけてしまって…」

 

謝って来たグラム君の頭に手を置き撫でながら言った

 

リィン「…反省したならもう良いさ、今日は一日学園祭を楽しんでくれ」

 

グラム「…うん!」

 

テレサ院長「良かったわね、それでクローゼが言ってた史劇を演じる講堂って此処で良かったのかしら?」

 

リィン「えぇ、今頃準備してるはずですから是非見ていって下さい」

 

テレサ院長「そうさせて貰うわね。皆んな入るわよ?」

 

「は〜い!」

 

テレサ院長達が講堂に入るのを見送るのと同時にまた別の人が来た、あれは確か…

 

リィン「えっと、ルーシィさん…でしたよね?」

 

ルーシィ「あら、貴方確かクローゼの彼氏よね?どうしたの、講堂の入り口に立って?」

 

リィン「いや、劇の案内をしていたのですけど…あの、首根っこ掴んでるのってもしかして…」

 

ルーシィ「勿論レクターよ?仕置き終わったからクローゼ達の劇観ようかとおもってね」

 

リィン「そ、そうですか(汗)」

 

文字通りボロボロ状態なんだが…生きてるのか、これ?

 

ルーシィー「あぁ大丈夫よ、この馬鹿はこの程度すぐ回復するわ」

 

リィン「…左様で」

 

レクター「…か、勝手に人外扱いにするんじゃねぇ、おっさんなら兎も角俺は善良な一般人…」

 

あ、復活した…

 

ルーシィ「寝言は寝てから言いなさい。大体善良な人間が授業さぼって昼寝したり市内のルーレットで遊ぶ訳無いでしょうが」

 

レクター「失礼な、ちゃんと必要な単位は取ってたぜ。その上で遊んでいたんだぜ」

 

ルーシィ「あ・ん・た・はその単位を自分で自主退学して棒に振ったんでしょうが!!あの後私達がどんなにあんたの穴埋めに奔走したか…!」

 

リィン「あ〜お二方?言いたい事は有るでしょうがまずはクローゼ達の劇を観終わってからにしたら…」

 

ルーシィ「…そうね、劇が終われば時間たっぷりあるしね…ほら!レクター何時までぐったりしてるの?行くわよ!!」

 

レクター「イテテ!耳引っ張るんじゃねぇよルーシィ!あ、そうだリィンって言ったか?俺からも一つ聞きたいことがあるんだが」

 

リィン「うん?なんですか?」

 

レクター「お前ギリアス・オズボーンをどう思ってる?」

 

リィン「……仰る意味がいまいち判りませんが?」

 

レクター「何、深く考えなくてもいい、お前さんが感じた事をそのまま言えば良いさ」

 

リィン「…『焔』ですかね」

 

レクター「…『焔』?」

 

リィン「宰相は自身の身ごと灼き尽くす印象を受けました。目的の為なら自分すら焔に包まれることを厭わない…」

 

レクター「……かも知れねぇな、『焔』が消える時は燃え尽くした後になり最後は何も残らない」

 

『只今より生徒会主催の《白き花のマドリガル》を開演します。席にお座りになりお待ち下さい』

 

レクター「と…開演か、悪いな変な質問して…入らせてもらうわ」

 

リィン「いえ…楽しんでください」

 

そうしてレクター達は講堂に入って行った…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第五十話

劇は無事に終わり舞台袖でジルはエステル達を労った

 

ジル「いや~皆お疲れ様、『白き花のマドリガル』大盛況でお客さんの反応も上々、監督の私が言うのも何だけど最高だったわよ!」

 

クローゼ「最初は男女逆の配役は笑われてましたけど…途中から真剣に観てくれて良かった」

 

ヨシュア「うん、そうだねあんな格好をした甲斐があったよ……二度としたくないけど」

 

ハンス「まぁ、そう言うなよ写真部の連中、お前さんのシーン何枚か写真撮りまくってたぜ。現像したらお前に送るってよ」

 

ヨシュア「勘弁して…」

 

ヨシュアはげんなりとした表情で応えた

 

ジル「エステル達も売れると思うわよ?男子共もそうだけど下級生の女子たちにね、騒がれるかもよ?『お姉様〜!』てね」

 

クローゼ「もう…ジルったら!」

 

エステル「………」

 

うん?エステルの様子が可笑しい…

 

フローラ「おや?どうしましたか、エステルさん?」

 

エステル「…え?あ、いや…」

 

リィン「大丈夫か?心此処にあらずみたいだか…?」

 

ハンス「まぁ初めての演劇だから疲れたのかもな…」

 

ジル「疲れたなら医務室にいこうか?」

 

エステル「大丈夫よ!この程度の疲れは日常茶飯事たから!…唯、ちょっと気が抜けたというか、頭が混乱してるというか…」

 

ヨシュア「混乱?」

 

クローゼ「…あっ、もしかしてエステルさん…?」

 

エステル「あ!いやいや!別にクローゼが気にする事は…」

 

クローゼ「…エステルさんこっちに…」

 

エステル「ほえ?」

 

クローゼはエステルを手招きして舞台袖の隅に行き声を潜めた

 

エステル(えっと?クローゼ?)

 

クローゼ(大丈夫ですよ、劇の最後の『キスシーン』アレはキスしたフリですから)

 

エステル(え…?そうなの?)

 

エステルは目を丸くした

 

クローゼ(そうです、大体好きな人が居るのに誰が好き好んで劇とはいえ本当にキスする訳無いじゃないですか)

 

エステル(た、確かに…あれ?という事はリィンに告白したのって…)

 

クローゼ(…まぁそうですね。リィンが誤解するとは思えませんが想い人の前でフリとはいえキスするのは嫌でしたからその前に…と)

 

エステル(うわ、クローゼ大胆///…)

 

クローゼ(まあ、でもエステルさんの危惧は判りますから…)

 

エステル(ふえ?…)

 

クローゼ(少し出会う順番が違えば私はヨシュアさんに好意を抱いてたと思いますし…)

 

エステル(え、えぇー!?)

 

フローラ(…愛されてますね。リィン様?)

 

リィン(…言うな//)

 

ヨシュア「???、エステル達何を話してるんだい?」

 

エステル「な、何でもないから!それよりマーシア孤児院の再建費用の寄付金が目標額に届いて良かったわー」

 

ジル「まぁねー、例年来た人達に寄付を呼びかけているけど今年は公爵やボース市長等の名士が来たのが大きいわね」

 

ハンス「それでも百万ミラ、よく届いたよなぁ…」

 

クローゼ「確かにね…でもジル、良いの?」

 

ジル「良いも何も元々福祉活動に使う物だから、孤児院の再建に使われるなら納得してくれるわよ」

 

ハンス「それに学園長に許可貰ってるしな」

 

ヨシュア「じゃあテレサ院長に会いに行こうか」

 

全員でテレサ院長に会い寄付金を渡したが本人は当初断わっていたが子供達の為にも…という全員の説得に折れ寄付金を受け取ってくれた。

 

そして学園祭の全ての行程が終わり来場者も次々と帰って行き後片付け一段落して夕方になり俺達も去る時が来た…

 

ジル「…せっかくだからもう一泊していけば良いのに、これから学園祭の打ち上げもあるのよ?」

 

エステル「あはは、気持ちだけは受け取っておくわ。依頼を達成したから何時までも居る訳にはいかないし」

 

ヨシュア「今日中に報告したいからこれで失礼するよ」

 

ハンス「そうか…リィン達も行くんだったな?寂しくなるな…主に男子連中がフローラ先生関係で…」

 

リィン「まぁ…元々此処の生徒じゃないし、フローラもね…」

 

フローラ「引き継ぎの資料を作って置きましたし、同僚達にも挨拶を済ませてあります…まぁ、男子生徒からの引き留めがありましたがリィン様のメイドを辞める積りは更々無いので…」

 

ハンス「やっぱり?…はぁ〜又一人寮生活か〜」

 

ヨシュア「一人なら気楽そうな気もするけどね?」

 

ジル「それはどうでも良いけど、クローゼは院長の所に行くのよね?」

 

クローゼ「うん、話したい事あるし…外泊許可貰ってきたわ」

 

ジル「折角の打ち上げに主役が揃って居ないのは残念だけど…まぁ、仕方無いか…また遊びに来なさいよ」

 

ハンス「勿論泊りがけでな!」

 

エステル「あはは、解ったわ」

 

ヨシュア「また寄らせて貰うよ」

 

リィン「じゃあ又な」

 

フローラ「お二人もお元気で」

 

そうして俺達はジェニス王立学園を離れルーアンとマノリア村と学園を繋ぐ街道のT字路まで歩いた。

 

ヨシュア「さて、ここでお別れだね」

 

クローゼ「はい…この一週間本当に有難う御座いました」

 

エステル「アハハ良いって、私達も楽しかったし…それじゃあ先生とあの子達にもよろしくね?」

 

クローゼ「はい」

 

ヨシュア「リィン達はどうするの?僕達と一緒にルーアンに行くのかい」

 

リィン「いや…邪魔じゃなければもう少しクローゼに付き合ってマノリア村まで行こうと思ってる。女の子を一人で行かせる訳にはいかないし、構わないかクローゼ?」

 

クローゼ「フフ、ありがとうリィン勿論良いわよ。エスコートお願いね?」

 

「お~い!」

 

それぞれ動こうとした時一人の男性がマノリア村の方角から走って来て此方に声をかけてきた

 

エステル「あれ?貴方は…」

 

ヨシュア「確かマノリア村に住んでいる…」

 

「ハァ、ハァ…そ、そういうあんた達は遊撃士だったよな…ハァ、ハァ」

 

「す、済まない…少し、息を…整えさせて…」

 

フローラ「何が有ったのか知りませんがお水をどうぞ」

 

「あ、ありがとう…ング…ング…プハァ!助かった、ありがとう」

 

フローラから差し出された水筒の水を飲み落ち着いた処で尋ねた

 

ヨシュア「それで一体何があったんですか?」

 

「あ、ああ!そうだ!!大変なんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テレサ院長達がマノリアの近くで何者かに襲われた!」

 

クローゼ「………え?………」

 

 

 

 

 

 

 

 



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第五十一話

クローゼ「先生!」

 

テレサ先生達が襲われたとの話を聞き俺達全員でルーアンの宿に向かい運び込まれた部屋に入ると先生と護衛をしていたカルナさんが寝ていた

 

クラム「あ…」

 

「お姉ちゃん!!」

 

気がついた子ども達が此方に駆け寄ってきた

 

クローゼ「良かった…!皆無事ね?」

 

「うん…!でも、先生が…」

 

エステル「二人の容態はどうなんですか!?」

 

エステルは宿屋の女将さんに尋ねた

 

「二人共怪我は大した事は無いんだけど未だに意識が戻って無いのが心配ねぇ」

 

リィン「…フローラ」

 

フローラ「はい…少し失礼します…」

 

フローラはベッドに寝ている二人に近付き診察する

 

フローラ「……どうやら二人共睡眠薬を嗅がされたようですね」

 

エステル「す、睡眠薬!?」

 

フローラ「はい、幸い使用されたのはポピュラーな物みたいですから後遺症はないかと…」

 

エステル「一体誰が…」

 

ヨシュア「…クラム一体何があったか教えてくれるかい?」

 

クラム「……」

 

クラムは下を向いていたので別の娘が話した

 

「…私が、説明します。先生と遊撃士のお姉さんと帰ってる途中で黒い覆面を被った人達が現れて…それを遊撃士のお姉さんが追い払おうとした時に囲まれて、先生も私達を守ろうとしてあの男達に向かって、それで…!」

 

エステル「もう大丈夫、よく話してくれたね」

 

エステルは泣きそうになった女の子の頭を撫でながら言った

 

クラム「……あいつ等先生が持っていた封筒を奪ったんだ」

 

リィン「封筒って寄付金が入った…?」

 

クラム「うん、取り返そうとしたけど振り払われて…」

 

エステル「……許さない、誰がそんな巫山戯た真似を…!」

 

クローゼ「………確かな事は単なる強盗ではないという事ですね、遊撃士の方が碌に抵抗出来ずに気絶させられたならかなりの手練でしょう」

 

子ども達を静かに慰めてたクローゼが自身の推論を言った

 

エステル「クローゼ…大丈夫?」

 

クローゼ「はい…落ち込んでる場合ではないですから…」

 

リィン「計画的だろうな、犯人達の狙いは間違い無く寄付金、孤児院放火も多分そいつ等…」

 

ヨシュア「…可能性は高いね」

 

フローラ「となると一刻も早く犯人を見つけ無いと」

 

「そいつについては同感だな」

 

そんな声が聞こえると部屋に入って来たのは…

 

エステル「あ、アガットじゃない!?」

 

アガット「また会ったなヒヨッコ共、話はギルドで聞いた。また厄介な事が起きたみたいだな?」

 

エステル「厄介って、アンタねぇ…!他人事みたいに言わないでよ」

 

アガット「判ってる、騒ぐんじゃねぇ…カルナがやられる程の手練れ…相当やばい連中みたいだな?大まかで良い、一通りの事件の流れを説明しろ」

 

ヨシュア「判りました」

 

ヨシュアは寄付金が奪われたことを含め説明した…

 

アガット「ハン…なるほど、単なる偶然とは思えねぇな」

 

リィン「何かあったのですか?」

 

アガット「あぁ、『レイヴン』が姿を消した…」

 

エステル「ッ…!あんですってー!じゃあ…!」

 

ヨシュア「いや…彼等がカルナさんを出し抜ける程の技量があるとは思えない」

 

アガット「まぁな、それにアイツ等に寄付金を奪うなんて度胸はねぇ…が、このタイミングで姿を消したのは何かしらの関係はあるかも知れねぇ…」

 

リィン「でもそれを確認する暇も無い…ですか?」

 

アガット「そう言うこった。オラ、ヒョッコ共行くぞ」

 

エステル「へ…?行くって何処に?」

 

アガット「襲われた現場に決まってるだろうが、『レイヴン』が関係しているかは兎も角、手がかりは見つけ無い事には話にならんだろうが」

 

エステル「確かに…」

 

ヨシュア「判りました。同行します」

 

アガット「おっと、アイスフェルトにメイドの姉ちゃんは此処に残ってくれないか?」

 

俺達も同行しようとしたらアガットはそう言ってきた

 

リィン「何故でしょう?」

 

アガット「カルナ達が目を覚ました時に事情を話す人間が一人も居ないのは問題だからな、孤児院のガキ共の面倒を女将一人に任せるのもなんだしな」

 

リィン「まぁ…確かに」

 

フローラ「承知しました、此方はお任せ下さい」

 

クローゼ「リィン…先生をお願い…」

 

リィン「うん、クローゼも気を付けて」

 

そしてエステル達が捜査に出て一時間…

 

フローラ「リィン様」

 

リィン「フローラ、子供達は?」

 

フローラ「全員疲れ果てて向かいの部屋でぐっすり眠りました」

 

リィン「そうか…この村には異常は?」

 

フローラ「そちらも設置したセンサーには反応無しです。少なくとも不審な人物は感知してません」

 

リィン「……なら大丈夫か、フローラも少し休めば良い、こっちはまだ…」

 

フローラ「いいえ、メイドが主より先に休む等有り得ません。リィン様こそ少しお休みを…」

 

リィン「いやまだ俺は良い…」

 

フローラ「…リィン様何かありしたか?」

 

リィン「うん?どうした急に…特に何か有った訳…いや、そうだな…なぁフローラ」

 

フローラ「はい、なんでしょうか?」

 

リィン「もし…フローラの同胞が一人でも居たらどうする?」

 

フローラ「えぇっと…?仰る意味が判りませんが、そうですね…」

 

フローラは少し考えてから答えた

 

フローラ「多分、居たんだな…位にしか思わなないかもしれません」

 

リィン「えっと?同胞なのに?」

 

フローラ「まぁ…多少一人にさせた事への文句は言うかも知れませんが、もう私が仕えてた国家は滅びてますし、今私が忠誠を誓うのはリィン様以外有り得ません。私が壊れるか貴方が命尽きる迄貴方のお側にお仕えします」

 

リィンの眼を見ながらフローラは力強く宣言した

 

 

リィン「……ありがとう、フローラ」

 

カルナ「う……ん、こ…ここ、は?」

 

フローラ「あ、目が覚めた様です」

 

リィン「此処はマノリア村の宿屋です」

 

カルナ「マノリア村…?何で…っ!?テレサ院長や子供達は!?無事なのかい!」

 

フローラ「落ち着いて下さい、テレサ院長は貴女の隣て寝ています。子ども達も無事です」

 

カルナ「…そうかい、良かった…護衛を引き受けておきながら不甲斐ないねぇ…あんた達の顔は見覚えあるね、確か外灯の不調を知らせてくれた時の…」

 

リィン「俺はリィンと言います。こっちはメイドのフローラです」

 

カルナ「今更だけど遊撃士のカルナだよ、悪いんだけど状況を知りたいだけど説明してくれるかい?」

 

リィン「えぇ、判りました」

 

彼女等が睡眠薬を嗅がされ倒れた後寄付金が奪われアガットやエステル達が現在捜査中のことを説明した

 

カルナ「そうか…アガット達には迷惑掛けたね、ならあたしも寝てる場合じゃないねぇ」

 

そう言って彼女は起き上がろうとした

 

リィン「まだ寝てなくては駄目ですよ!まだ睡眠薬の影響が残ってる筈です」

 

カルナ「なぁに、この程度日常茶飯事さ…それに犯人が未だに見付かってないなら尚更寝てる暇なんて無いさね」

 

テレサ院長「う、ん?リィンさ…ん?」

 

リィン「先生、目が覚めましたか…!」

 

テレサ院長「子供…達は?」 

 

カルナ「安心しな、向かいの部屋で寝ているそうだよ」

 

テレサ「カルナさん…良かっ…た無事でそれと…巻き込んでしまってごめんな…さい」

 

カルナ「院長が謝る必要は無いよ、寧ろ此方が謝るべきだよ…護衛があっさりやられるなんて不様晒してしまって…!」

 

テレサ院長「いいえ…貴女はよくやってくれてました…だから、どうか自分を…責めないで」

 

カルナ「院長…」

 

テレサ「済みません…まだ、眠気が残ってるので…もう少し…」

 

リィン「えぇ、どうぞゆっくり寝てください…子ども達の事は任せてください」

 

テレサ「は…い…宜しく、お願いします…」

 

テレサ院長は再び眠りに就いた

 

カルナ「…余計に寝て居られないね、止めても無駄だよ」

 

リィン「…はぁ〜、判りましたでも…」

 

エステル「リィン!」

 

いきなりエステル達が入ってきた

 

「うおッ!?お帰り、丁度今二人共目が覚め…いやテレサ先生はまた眠ったけど…」

 

エステル「え!?あッ本当だ!?カルナさん大丈夫ですか?!」

 

カルナ「あぁ平気さね心配掛けて悪いねエステル、ヨシュア」

 

ヨシュア「いえ、無事で良かった…」

 

フローラ「それで…そんなに慌ててどうしましたか?」

 

エステル「あ、そうだった!リィンちょっと治療道具持って一階に来て!」

 

リィン「へ?」

 

一階に降りると拘束されたレイヴンとダルモア市長秘書のギルバートが足に銃創が受けていてクローゼがアーツで治療していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クローゼ「あ、リィン治療手伝って!今回の事件ダルモア市長が関わってるかも知れないの!」

 

 

 

 

 

 

 



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第五十二話

ギルバートとレイヴンは村の倉庫に入れて拘束する事になった

 

カルナ「さて、こいつ等の監視は任せなあんた達はジャンに報告してきて欲しい」

 

エステル「それは良いけど、本当に大丈夫カルナさん?無理しないでね」

 

カルナ「なぁに、隙を突かれて睡眠薬を嗅がされただけだよ。あんまり連中の格好は覚えていないけどこれ以上醜態は晒せないしねぇ…」

 

ヨシュア「無理も無いですよ、あいつ等は相当の手練れでした。アガットさんを含めた四人で退けたんですから」

 

クローゼ「あの子達が無事なのはカルナさんが頑張ってくれたお陰です。余り自分を責めないでください」

 

リィン「そのアガットさんは黒尽くめの男達を追っていったんだよな?」

 

エステル「うん、結構心配ではあるけど…」

 

カルナ「アイツの腕は知ってるけど…無茶しなけりゃ良いんだけどね…」

 

相手が相手なだけに全員が心配していた

 

ヨシュア「……今はアガットさんを信じて僕達でやれる事をやろう、それが最善だと思う」

 

エステル「ヨシュア…」

 

カルナ「うん、その通りさね…取り戻した寄付金は全てが解決するまで預かってるから頑張ってきなよ」

 

カルナさんがそう言うのと同時にギルバートの治療をしていたフローラが拘束している倉庫から出てきた

 

フローラ「完全に血が止まりました、もう生命に別状はないでしょう。後は放っといても意識は戻ると思います」

 

クローゼ「そうですか…」

 

カルナ「悪いね、拘束しているとはいえ犯罪者の傷の手当てなんてしてもらって」

 

フローラ「いえ、この程度は苦でもないです」

 

エステル「じゃあ、ルーアンに行こっか!」

 

そうしてマノリア村を少し離れた処エステルが憤慨した表情で言う

 

エステル「まさかダルモア市長が犯人だったなんてね…あの親切も全部演技だった訳ね!」

 

クローゼ「あの…気になるんですが、今回の件で市長を逮捕出来るのでしょうか?」

 

エステル「…え…?」

 

リィン「…遊撃協会は国家の内政に干渉は禁ずる…だっけヨシュア?」

 

ヨシュア「うん、それが原則だからね…ルーアン地方の責任者である現職市長を逮捕するのは難しいね」

 

エステル「ちょ、ちょっと!それは可笑しくない!?犯罪を犯したのに容疑者を逮捕出来ないなんて!」

 

ヨシュア「確かに可笑しいけどそれが規約だかね…これが有るからこそギルドはエレボニア帝国にすら支部を設立出来てるからね…」

 

エステル「だからといって…!」

 

エステルは納得いかないといった様な苦虫を噛み潰したような顔だった

 

リィン「……」

 

フローラ「リィン様?何か…?」

 

リィン「…なぁヨシュア、もしダルモア市長の犯罪の証拠があったら逮捕は出来なくても尋問は出来るかい?」

 

ヨシュア「う…ん?多分、かなりグレーだけど尋問なら可能かも…でも今回の件はあくまでもあの秘書の言葉だけだから否定されたらそれで終わりだよ?」

 

リィンはレンから渡された封筒を取り出した

 

リィン「これ、とある信頼出来る所から入手したモノ何だが曰く知りたい事が書かれているらしい」

 

リィンはヨシュアに封筒を渡した

 

ヨシュア「知りたい事…?何故そんな物が君に渡されたんだい?それに…本当に信頼出来るの?その提供者?」

 

リィン「まぁ、疑うのは判るけどそこは大丈夫だ。偽物ではないさ」

 

エステル「う〜ん、気になるけど今はジャンさんの所に急がない?それはその時に見れば良いと思うわ」

 

ヨシュア「…うん、そうだね。ごめんリィン、君を疑ってる訳じゃないんだ唯、ね…」

 

リィン「だから気にしなくて良いってば、それよりギルドに急ごう」

 

そうして学園の近くまで来た時にクローゼの足が止まった

 

エステル「どうしたのクローゼ?」

 

クローゼ「あの…先にギルドに行っててください、私やる事がありますから…」

 

ヨシュア「もしかして学園長に報告するのかい?」

 

クローゼ「あ、はい…そんな感じです。終わったらすぐに向かいますから」

 

エステル「そっか…じゃあギルドで待ってるかねー!」

 

エステルとヨシュアは先に行きリィンとクローゼが残っていた

 

リィン「…覚悟を決めたのか?」

 

クローゼ「…えぇ、今回の件に限らず遊撃士の手が及ばない事態が出た時罪無き王国民を守るのは国…引いては王室の責務よ、今までその責務の重さに目を背けてた…でも!あの子達の笑顔を守る!もう、逃げないわ」

 

リィン「そっか…クローゼなら良い女王様になれるさ、頑張れクローゼ」

 

クローゼ「フフ、ありがとうリィン…でも貴方も貴方で秘密ありそうね?さっき言ってた提供者って女性じゃないの?」

 

クローゼはジト目をしながら言った

 

リィン「…何でそう思うノカナ?」

 

クローゼ「前に言ったでしょ?女の子は勘が鋭いって、特に恋人に関しては特に…」

 

リィン「…クローゼ…俺は」

 

言いかけたリィンの唇を人差し指を当てて塞いだ

 

クローゼ「はい、ストップ!良いリィン?前に私は貴方を疑わないって言ったわよね、何時かきっと話してくれると信じてる…今もそれは変わらないわ。だから今はダルモア市長の犯罪を暴くのが先!良いわね?」

 

リィン「…判った。じゃあ俺もエステル達の処に急ぐからクローゼ…!」

 

クローゼ「えぇ…又後で」

 

リィンもエステル達の後を追いかけ行った

 

クローゼ「さてと…準備しないと」

 

クローゼは手帳とペンを取り出し書き始めた

 

クローゼ「うん、これでいいわ……ジーク!」

 

ー ピュイ! ー 

 

 

 

 



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第五十三話

ー 遊撃士ギルドルーアン支部 ー

 

ジャン「……話は大体解った…はぁ〜、しかしまさかダルモア市長が黒幕とは…スキャンダル間違い無しだな」

 

ルーアン支部受付のジャンは大きな溜息をついた

 

ヨシュア「それでジャンさんダルモア市長を逮捕する事は出来ますか?」

 

ジャン「…はっきり言えば難しいと言わざるを得ないな、現職の公務員の逮捕権は遊撃士には与えられていないからね。現行犯なら問答無用で逮捕出来るけど…」

 

エステル「そんな…!じゃあ泣き寝入りしろと…!?」

 

ジャン「まぁまぁ落ち着いてよ、手がない訳じゃないよ。遊撃士が逮捕出来ないのであれば逮捕出来る処に逮捕して貰えば良いのさ」

 

エステル「え…?」

 

リィン「…リベール王国軍、ですか?」

 

エステル「あ、そっか!」

 

ヨシュア「成る程、確かに軍なら逮捕出来る…!」

 

ジャン「正解!だからエステル達には市長邸に行って事情聴取に行ってくれ、多少怒らせても良いから時間を稼いでくれ…僕はその間に王国軍に連絡を取るから」

 

エステル「う〜ん、軍に頼るのは釈然としないけど…解った!」

 

ヨシュア「後はクローゼと合流して…っとそう言えばリィン、ジャンさんにアレ見せても?」

 

リィン「構わないよ元々渡すモノだったし中身は俺も見てないし」

 

ジャン「何かあるのかい?」

 

エステル「うん…実は…」

 

クローゼ「ハァ…ハァ…お待たせしました」

 

少し息が荒いクローゼかギルドに入って来た

 

エステル「あ、来たわね」

 

ヨシュア「学園に寄って行った割に随分早いね?」

 

クローゼ「え、えっと脚には割りと自信ありますから…あら?フローラさんは…?」

 

リィン「フローラなら市長邸に先に行って監視してくるって、多分もうすぐ戻って…」

 

フローラ「只今戻りました」

 

丁度戻って来たのでそのまま報告して貰う

 

リィン「ご苦労様、どうだった?」

 

フローラ「予想通り市長邸に居る様です。それと来客が居てダルモア本人が対応しているみたいです」

 

エステル「来客?」

 

フローラ「デュナン公爵です」

 

エステル「…はぁ〜…あの公爵さんね…」

 

ヨシュア「…ふぅ…」

 

完全に呆れた状態である…

 

リィン「…その反応でどんな人か判るが何だかなぁ…」

 

クローゼ「あ、あはは…そ、それで伯父…公爵はどの様な用で?」

 

フローラ「ダルモアが推し進めてる別荘地の用地に興味を持ったらしくかなり購入に前向きの様です」

 

クローゼ「……何やってるのですか伯父様……」

 

リィンにしか聞こえない程度の声で呟きクローゼは頭を抱えた

 

ジャン「えっと…とりあえずヨシュア見せたいモノを…」

 

ヨシュア「あ、はいこれです…」

 

ヨシュアはジャンに渡し封筒の中身を確認した

 

ジャン「ふむふむ…こ、これは…!これは確実にダルモア市長を逮捕出来るぞ!」

 

エステル「え?本当に!!」

 

ジャン「あぁ!大至急で軍を呼ぶから急いで市長邸に向かってくれ!」

 

ジャンは封筒を返し通信機に向かい連絡を取り始めた

 

クローゼ「…ねぇ、私余計な事したかしら…?」

 

クローゼは他の人に聞こえない様にしながらリィンに耳打ちした

 

リィン「いや、そんな事は無いと思うよ…早ければ早いほど良いに決まってるさ」

 

エステル「よーし!兎に角ダルモア市長に会いにいくわよ!」

 

そう言って全員でギルドを後にして直ぐにダルモア市長邸に向かった

 

ー ルーアン市長邸 ー

 

エステル「しっかし大きな屋敷ねぇ…悪どく稼いでるから住めるのかしら?」

 

ヨシュア「流石にそれは関係無いと思うけど…」

 

クローゼ「ダルモア市長は元は大貴族の家柄ですから…この屋敷も代々の当主から受け継いだ物だと思います」

 

リィン「歴代の当主の功績の賜物の屋敷か…」

 

エステル「そっか…確かに屋敷に罪はないわよね…まぁいいや、兎に角あの市長を問い詰めてやらなきゃ」

 

中に入ると来客に気付いたメイドが対応してきた

 

「ルーアン市長邸にようこそ、申し訳ありませんが只今市長は接客中でして…また来ていただけますでしょうか?」

 

ヨシュア「その来客の事なら僕達も承知しています。デュナン公爵閣下ですよね?」

 

「まぁ!その通りですわ…ひょっとして皆様も招待されていらっしゃっるのですか?」

 

ヨシュア「はい、市長から直々に…お邪魔しても構いませんか?」

 

「…よく見たら遊撃士の方達ですわね…そういう事情でしたらどうぞ、お上がりになってください。市長と公爵閣下は二階の広間にいらっしゃいます」

 

ヨシュア「わかりました、ご丁寧にありがとう御座います(ニッコリ)」

 

「……ポッ/////……そ、そうだわ。お客様が増えるのだったらその分のお茶を用意しないと……わたくしこれで失礼しますね!」

 

メイドは頬を紅くしながら足早に食堂へ去っていった

 

「「「「…………」」」」

 

ヨシュア「あれ、どうしたの?」

 

エステル「べっつに〜」

 

クローゼ「あ、あはは」

 

フローラ「…たらしですね」

 

リィン「そ、それにしても良く招待されたなんて咄嗟に言えたな?」

 

エステル「ホント良く悪知恵働いたわね、出まかせ言っちゃって」

 

ヨシュア「出まかせじゃないよ、初めてダルモア市長に会った時に言われたじゃないか『レイヴンの連中が迷惑かけたら遠慮なく市長邸に来ても良い』って」

 

エステル「あ、そっか…」 

 

クローゼ「フフ…確かに招待されてますね」

 

リィン「物は言いようだけど…まぁ確かに言ってるな」

 

フローラ「ではお言葉に甘えましょう」

 

ヨシュア「えぇ、二階の広間に行きましょう」

 

そして二階に上がり広間の扉の前に立つとヨシュアがリィンに話しかけた

 

ヨシュア「リィン、悪いけど少しここで待機してくれないかい?」

 

エステル「ヨシュア?」

 

ヨシュア「大人数だと流石にダルモア市長も警戒するかもしれないからね。リィンとフローラさんには僕達がダルモア市長と話してから適当なとこで証拠と一緒に入って来て欲しいんだ」

 

リィン「…ん、解った。なら俺達は少しここで待ってるからな」

 

そう言って待機する事になった。

 

リィン「フローラあれから何分たった?」

 

フローラ「約二十分かと…中に入るには良いタイミングかと思います」

 

リィン「じゃあ中に入るか…」

 

「あん?お前さん達は…」

 

そして二十分後そろそろ入ろうとした時に以前ラクシャ博士を取材に来たリベール通信の…確かナイアルだったけが?来た

 

リィン「貴方は以前ラクシャさんを取材しに来た…」

 

ナイアル「リベール通信のナイアルだ、あの時に居た坊主と美人メイドのねーちゃんじゃねーか、こんな所で何してんだ?…もしかして別荘地の件か?土地購入はやめとけ、此処の市長はかなりヤバい事に手を染めてるみたいだぜ」

 

リィン「あぁ…いえ、そうじゃなく俺達はエステル達遊撃士の捜査に協力していて…」

 

ナイアル「あん?あいつ等も来てるのか…なら丁度いいか…俺も一緒に入らせてもらうぜ」

 

リィンとフローラは顔を見合わせたが断る理由もないので一緒に入るとエステル達の他ダルモア市長と酒を飲んだのかほろ酔いのデュナン公爵もいた

 

エステル「あ、リィン!…ってナイアル!?」

 

ヨシュア「どうして此処に?それにリィンも一緒に…」

 

リィン「待ってたらこの人が来てな」

 

ナイアル「んで話しを聞いて折角だから俺も便乗しようと思ってな」

 

ダルモア「な、何だね君達は!?」

 

ナイアル「あぁ、失礼しました。リベール通信の記者のナイアル・バーンズと申します。んでこっちは…」

 

リィン「リィン・アイスフェルトと申します」

 

フローラ「リィン様に仕えているフローラです」

 

ナイアル「んで、来た理由ですが実はですねぇ…最近市の財政状況を調べてさせてもらったんですがねぇ…市長、貴方市の予算を使い込んでますね?」

 

ダルモア市長は明らかに動揺しつつも答えた

 

ダルモア「そ、それは…べ、別荘地の造成のための予算として…」

 

ナイアル「それは通りませんぜ、まだ工事は一切始まっていない、ちょっと妙だと思って飛行船公社まで足を運んで貴方の動向を調べたんですよ。すると驚きましたよ…一年程前から共和国に度々訪れていらっしいますよねぇ?」

 

ナイアルにばかり喋らすのも何だからフローラにもたせていた封筒を受け取り中身を見ながらリィンも喋り出した

 

リィン「…こちらでも調べてみましたが帝国にも訪れていますね?しかもラクウェルに長期滞在して…」

 

エステル「ラクウェル?どんなとこなの?」

 

デュナン「帝国西部のラマール州の内陸部に位置する帝国有数の歓楽街であるな?小劇場やカジノ、賭博場、高級クラブが軒を連ねておると聞いた事がある。儂も一度は行ってみたい場所じゃ」

 

エステル「……まぁデュナン公爵の感想は兎も角、歓楽街に…?」

 

ダルモア「…た、ただの観光だ……」

 

ナイアル「と、いうのは表向きの理由…本当の理由はアチラの相場に手を出して大火傷をしたからでしょう?」

 

リィン「そして帝国でも賭博やカジノで大損したんですよね?」

 

ダルモア「ッ!!!」

 

エステル「えっと…カジノや賭博は分かるけど相場ってなに?」

 

クローゼ「市場の価格差を利用してミラを稼ぐ売買取引です。例えばある品が安い時に買い込んで高くなったら売るような…」

 

エステル「あ、なるほど〜…んで、この市長さんはどの位損しちゃった訳?」

 

ナイアル「共和国に居る仕事仲間の調べによると…約一億ミラらしい…そっちはどうなんだ?」

 

リィン「えっと…資料だと八千万ミラの損失と同額の借金を抱えてるようです」

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

その場に居た全員が驚いた

 

エステル「あ、合わせて一億八千万ミラ〜!?」

 

ヨシュア「寄付金の百倍以上ですか…確かに犯罪に手を染めても可笑しくない額ですね」

 

デュナン「ヒック、一億八千万とはな…私もミラ使いが荒い方だがお主には敗けるわ」

 

ダルモア「ぐっ…!!!」

 

エステル「張り合う事じゃ無いでしょうが…」

 

ナイアル「まぁ、という訳で…莫大な借金を返す為に市の予算に手を出したのはいいが問題は先送りになっただけで解決したわけではない…どうするのかと思ったらまさか放火や強盗してまで別荘地を造ろうとするとはねぇ…」

 

ダルモア「……ふ、フン!そんな証拠何処にある!憶測だけで記事にしてみろ!名誉毀損で訴えてやる!」

 

ナイアル「あらま、開き直った」

 

フローラ「…証拠ならこれでどうです?」

 

フローラが封筒に手を入れ取り出したのは前世でよく見かけたデープレコーダ…

 

ダルモア「な、何だそれは!?」

 

フローラ「音声を録音する機械ですわ…このボタンを押すと…」

 

フローラが押すとダルモアの声が再生された

 

『……良いか?孤児院をどんな手を使っても良い!必ず立ち退かせろ!多少の犯罪行為をしても揉み消してやる!いいな!?』

 

フローラか停止ボタンを押すと場の空気が凍っていた

 

ダルモア「な、ななな…?」

 

リィン「…ふぅ、よく使い方解ったな?」

 

フローラ「似たようなものは御座いますから…」

 

エステル「…さて、どういう事でしょうか市長さん?」

 

ヨシュア「まだ何か言いたい事がありますか?」

 

クローゼ「……ダルモア市長一つお尋ねしたい事があります……どうして御自分で借金を返そうとしなかったんですか?」

 

ダルモア「な、なに…?」

 

クローゼ「確かに一億八千万ミラは大金です…でも例えばこの屋敷を売りに出せば立地から言っても一億は軽くいく筈です。残りもダルモア家の家宝なりを出せは完済は可能な…」

 

ダルモア「き、君は我がダルモア家の財産を売れと!?代々受け継いだ大切なものを手放せというのかね!」

 

クローゼ「あの孤児院だって同じです…先生や子供達が紡いだ掛替えのない、お金には変えられないものが沢山在りました……貴方はそれが解らないのですか?」

 

ダルモア「わ、我がダルモア家と貧相な孤児院を一緒にするな!どいつもこいつも素直に明け渡しとけばいいものを!」

 

クローゼ「…貴方は可哀想な人ですね…ですが!貴方が侵した罪を償って貰います!子供達の為にも!」

 

クローゼのレイピアがダルモアに向けた

 

ダルモア「……おのれ、こうなったら後のことなどどうなろうと知ったことか!」

 

ダルモアは席を立ち後ろの壁を何か操作して隠し扉を開き…

 

ダルモア「出てこい!ファンゴ、ブロンゴ!餌の時間だ!」

 

隠し扉から出てきたのは…二匹の狼型魔獣!

 

ナイアル「な、何だぁ!?」

 

デュナン「ま…ま、魔獣うううう!?…う〜ん、ガクリ」

 

フィリップ「こ、公爵閣下!?」

 

デュナン公爵が気絶して執事のフィリップが駆け寄った

 

クローゼ「貴方…正気ですか!?魔獣を飼ってるなんて!」

 

ダルモア「ククク、お前達を消せば真実を知る者は居なくなる。こいつ等が食べ残したモノは河に流してやるから安心したまえ」

 

ナイアル「く、狂ってやがる!?」

 

魔獣がテーブルに上がり戦闘態勢に入ったので此方も構えた

 

エステル「こんな室内で魔獣と戦う事になるなんて…!」

 

ヨシュア「でもこれで市長を逮捕出来る…!」

 

リィン「フローラ、リベールの法ではこのケースはどうなる?」

 

フローラ「国に不許可で魔獣を…それも凶暴な個体を飼育していましたから…数年は牢屋で過ごす事になるのは確実かと…」

 

 

クローゼ「……あなた達に恨みも憎しみもありませんが…人を害なすなら容赦しません!」

 

その言葉と共に両者は激突した…

 

 

 

 



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第五十四話

クリスマスなのでもう一本投稿


狼型魔獣は咆哮をあげながら近くにいたエステルに襲いかかろうとしたが、エステルはその突進を危なげ無く躱し逆に顔面にエステルの持つ棍での一撃に大きく仰け反り、それをヨシュアは追撃しようとしたが別の魔獣に邪魔され後退する。

 

エステル「あぁ、もう!こいつ等すばしっこい!」

 

ヨシュア「そりゃそうだよ。でも、逆に屋敷の中だからその素早さも制限されてる…」

 

ヨシュアは双剣で魔獣を切りつけたが魔獣も脚の爪を振り上げヨシュアを襲おうとしたがフローラのショットガンに吹き飛ばされる

 

ヨシュア「ありがとうございます。フローラさん、でもショットガンって…(汗)」

 

フローラ「ご心配なく、今のはゴム弾です。流石に関係無い人が居る処で実弾は使っていません」

 

排莢しながらそう応えつつも目線は魔獣から離さない。そして吹き飛ばされた魔獣もダメージを負ってるもののまだ闘う気である

 

フローラ「…頑丈ですね。ですが!」

 

エステル「脇がガラ空きだよ!」

 

フローラ達に気を取られてる間にエステルが近付き先程フローラがゴム弾を叩き込んだ脇腹に追撃を加え骨が折れた。その激痛に魔獣は悲鳴をあげのたうち回る

 

エステル「ヨシュア、とどめを刺して!」

 

ヨシュア「うん!断骨剣!」

 

ヨシュアは用心深く近づき双剣で魔獣の頸を刎ねた

 

ヨシュア「よし!これであと一匹…!あっちはリィンとクローゼが…」

 

リィン「八葉一刀流『陸ノ型』緋空斬!」

 

其処に目を向けるとリィンが魔獣の脚を切り飛ばしその機動力を奪いクローゼがとどめを刺したところだった

 

ダルモア「ば、馬鹿な……私の可愛い番犬達が…貴様らよくもやってくれたな!」

 

エステル「それはこっちの台詞よ!」

 

リィン「大体アンタが悪いんだろうが」

 

ヨシュア「遊撃士協会の規約によりダルモア市長、貴方を現行犯で逮捕します」

 

フローラ「素直に投降する事をお勧めします」

 

ダルモア「ふ、ふふふふふ………こうなっては仕方ない…奥の手を使わせてもらう!」

 

ダルモアは懐から杖を出した

 

エステル「なに?」

 

ヨシュア「杖…?」

 

フローラ「あれは…?いけない!あれを使わせないで!」

 

ダルモア「時よ、凍えよ!」

 

ダルモアが杖をかざすと身体が動かなくなった…

 

エステル「か、身体が動かない…!?」

 

ヨシュア「こ、これは導力魔法(オーバルアーツ)なのか!?」

 

フローラ「ち、違います!あれはアーティファクトです!」

 

クローゼ「しかも教会が管理しても可笑しくない危険な類いの…!」

 

ナイアル「な、何だそりゃあ!」

 

ダルモア「ほう?そこのメイドやクローゼ君は博識だね。これぞ、我がダルモア家に代々伝わる家宝アーティファクト《封じの宝杖》……一定範囲の中に居る者の動きを完全に停止させる力があるのだよ」

 

エステル「な、なんてデタラメな力…」

 

ヨシュア「こんな強力なアーティファクトが教会に回収されずに残ってたのか……!」

 

ダルモア「フフフ、流石は古代文明の叡智の結晶……戦術オーブメント如きとは比較ならぬ力を備えている。最も一つの機能しか無いのが残念だがね」

 

フローラ「黙りなさい!犯罪行為の為にそれは作られた訳ではないのよ!貴方如きが持って良い物ではないわ!」

 

ダルモア「ふん!何を理由のわからない事を言っている?…まぁ良い、仕方ないから君達の始末は私自らの手で行ってあげよう…フフフ、光栄に思うのだな」

 

ダルモアはそう言って銃を取り出し近付いてきた

 

ダルモア「まずはそうだな…そこの生意気な小娘から…」

 

エステル「誰が生意気よ!」

 

ヨシュア「汚い…手でエステルを触るな…!傷一つ、つけてみろ…アンタを八つ裂きにしてやる…!」

 

エステル「ヨシュア…」

 

ダルモア「フ!指一本動かせない癖に良く吠える…いいだろう小娘は最後だ…最初は、君に決めたよ太刀使いくん?」

 

ダルモアはリィンの額に銃口を突き付けた

 

クローゼ「リィン!」

 

フローラ「リィン様!?」

 

ダルモア「フフフ、そういえばそのメイドの主が君だったな、なら彼女に命令したまえ、証拠を私に渡せと…そうすれば主従とも生命は助かるかも知らんぞ?」

 

リィン「断る!…誰が犯罪者に屈するか…!」

 

ダルモア「強情な事だ。まぁ良い…ならお望み通り女神(エイドス)の元へ送ってやる、メイドもすぐに後を追わせるから安心したまえ」

 

クローゼ「や、止めてぇぇぇぇ!」

 

すると突如エステルのポシェットから黒い光が光り始めた

 

ダルモア「な、何だ!?その光は…」

 

ダルモアはリィンから思わず離れた

 

クローゼ「この光は……」

 

ナイアル「くそ、この手が動けばカメラを……」

 

黒い光が一瞬強く輝くと身体の自由が戻り、ダルモアの杖も壊れた

 

クローゼ「身体の自由が……戻った?」

 

ヨシュア「エステル……今の黒い光は?」

 

エステル「う、うん…父さん宛てに届いたあの黒いオーブメント…これが光ったみたいだけど…」

 

ダルモア「そ、そんな馬鹿な……家宝のアーティファクトがこんなことで壊れるものかぁぁぁ!」

 

ヨシュア「どちらにせよ…貴方の切り札はもう無い。現実を見た方が良いんじゃ無いですか?」

 

エステル「そ、そうよ!よくも悪質なやり方でいたぶってくれたわね〜!」

 

クローゼ「最低です…」

 

フローラ「リィン様に危害を加えようなど…万死に値する!」

 

リィン「諦めて投降しろ…」

 

ダルモア「くううぅぅぅぅ……誰が捕まるものか!」

 

ダルモアは魔獣が出てきた隠し部屋から逃げて行った

 

エステル「ああ!逃げた!!」

 

ヨシュア「追いかけるよ!」

 

リィン「おぉ!」

 

クローゼ「はい!」

 

フローラ「往生際が悪い!」

 

ナイアル「ああっ、待ちやがれ!こ、こんなスクープ逃してたまるかってんだ!」

 

ダルモアを追いかけると邸宅の外に出てダルモアは三艘ある内の一艘のヨットに乗り逃走した

 

エステル「あ、あれは……」

 

クローゼ「ダルモア市長所有のヨットです!」

 

ヨシュア「このボートで追いかけよう二人共乗って!リィン達はそっちのボートで!」

 

それぞれボートに乗り込みヨシュアが先に出てリィン達も出ようとしたらナイアルも乗り込んできた

 

リィン「って、何で着いてくるんですか!?危険ですよ!」

 

ナイアル「馬鹿野郎!こんなスクープ逃す記者なんざ居やしねぇよ!それよりさっさと行くぞ!問答するのも惜しいだろうが!」

 

リィン「…あぁもう!フローラ出してくれ!」

 

フローラ「はい!」

 

リィン達のボートも出て少ししてフローラに指示を出す

 

リィン「フローラ、銃火器をチェックするように…すぐに必要になる…!」

 

ナイアル「ちょっと待て!確かにダルモアも銃を所持しているが、そこまで警戒する事か!?」

 

リィン「ダルモアだけなら…そうでしょうね!」

 

ナイアル「?じゃあ何で…」

 

フローラ「お忘れですか…?今このルーアンの海に居る厄災を……!」

 

エステルSide

 

ダルモアの乗ったヨットとの距離が徐々に縮まり始めた

 

エステル「待ちなさ〜い!」

 

ヨシュア「このまま行けば追い付ける…!」

 

ダルモア「えぇい!しつこい連中だ、これでも喰らえ!」

 

エステル「はぁぁぁぁ!」

 

ダルモアはエステル達に発砲したがエステルの棍によって直撃コースの弾丸は全て弾かれた

 

ダルモア「な、なにィぃぃ!?」

 

エステル「ふっふーん!見たか!シズナさん曰く銃口と目線を注視してれば弾道なんて簡単に読めるのよ!ヨシュア、奴のヨットの右側につけて!」

 

ヨシュア「了解!……あれ?段々速くなってる…」

 

クローゼ「これは…沖合の流れる風です!」

 

ヨシュア「不味い…こうなったらヨットのほうが断然有利だ…」

 

エステル「あんですって〜!」

 

ダルモア「わはは!女神(エイドス)は私の方に微笑みかけてくれたようだ!さらばだ、小娘共!」

 

ダルモアのヨットがさらに増速してエステル達のボートを引き離す

 

ヨシュア「く、ダメだ…このままじゃ!」

 

エステル「………」

 

クローゼ「?…エステルさん……?」

 

エステル「ねぇ…ダルモアのヨットの針路上に気泡が出てるんだけど…?」

 

ヨシュア「え!?」

 

ダルモアSide

 

ダルモア「さて…これからどうするか、とりあえず帝国に高飛びして…ん?」

 

ダルモアは前方の気泡に気付き訝しんだ

 

ダルモア「何だ…あれは…まるでナニかが居るよ…う、な、ななななぁぁぁぁぁっ!?」

 

突如海面から浮かび上がったそれは現在の生物では有り得ない大きさであり今ルーアンの海をを寝蔵としているその生物の名は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《太古の世界より蘇りし海魔》

 

『オケアノス』

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第五十五話

もうすぐ年明けですね…皆様良いお年を!


ダルモア「あ…あ、あ…」

 

ダルモアは部下からの報告は聞いていたし実際軍に駆除を依頼もしようと検討していた。だが…たかがでかいだけの生物だとしか認識していなかった、所詮人間が本気になればあっという間に片付くと本気で思っていた。

 

しかし、実物を初めて見てしまったダルモアは悟った。これは人如きがどうにかできる存在ではないと…圧倒的な存在感を目の当たりにし恐怖したダルモアの取った行動は……

 

ダルモア「う…うわぁァァァァァァ!?」

 

ー カチッ ー

 

オケアノスに向けて無意味に発砲したことだった。だが文字通りオケアノスにとって豆鉄砲にしかならず弾切れになったにも構わず引き金を引いていたがオケアノスがダルモアに視線を向けるとダルモアはへたり込んだ

 

ダルモア「ヒィッ!?来るな…来るなあぁぁぁぁ!?」

 

そんな願いは聞き入れる筈もなくオケアノスの脚が大きく振り被りダルモアのヨットに降り下ろされた

 

ダルモア「あっ……」

 

ダルモアは自身が乗ったヨットごと粉砕されたかに見えたが…

 

エステル「ヨシュア!ダルモアは確保したわ!急いで離脱して!!」

 

ヨシュア「言われなくても!」

 

粉砕される直前にエステル達のボートが追いつきエステルがダルモアの襟首ひっ捕まえてギリギリのところで回避したのだった。だが自身の縄張りに侵入した不届き者をオケアノスは見逃す筈もなく…

 

クローゼ「オケアノスが追ってきます!」

 

エステル「あぁ!もう!縄張りから出るんだから見逃してもいいじゃない!?」

 

ヨシュア「多分縄張り荒らされたと思ったんだと思うよ!?」

 

そう言ってる間にもオケアノスはまた足を振りかぶりボートに目掛けて振り下ろした

 

エステル「ヤバ…!ヨシュア左に回避!!」

 

ヨシュア「了解!」

 

左に回避するとさっきまでいた空間にオケアノスの脚が叩きつけられ海面を大きく揺らした

 

クローゼ「きゃぁぁ!?」

 

エステル「ちょっ…冗談じゃないわよ!あんなの当たったら…」

 

ヨシュア「さっきのヨットの二の舞いになるね…」

 

ダルモア「ヒッ…!ヒィィィッ!?あ、あんなのに喰われるのは嫌だぁァァァ!」

 

エステル「煩い!誰だってアレに喰われたくないわよ!」

 

ヨシュア「でもどうする!?相手は潜水していないから追いつかれてないけどこのままだとルーアンに連れてきてしまうよ!」

 

エステル「かと言ってこのまま逃げ回っても何れエンジンが止まってしまうわよ!そうなったら…!」

 

クローゼ「く…!(ユリアさんまだ…!?)」

 

その時オケアノス頭に何かが当たり爆発した

 

エステル「え…?」

 

クローゼ「今のは…!?」

 

ヨシュア「対戦車火器(パンツァーファウスト)!?一体誰が…」

 

エステル「ヨシュア、あれ!」

 

エステルが指差す方向に目を向けるとリィン達の乗ったボートが接近しパンツァーファウストを構えたフローラが次弾を装填し直していた

 

フローラ「リィン様!やはり余り効いてないようです!」

 

オケアノスの頭には少し焦げた跡があるだけだった

 

リィン「構うな!兎に角ヤツの注意を此方に引け!エステル達を安全な場所に退避出来る迄の時間を稼ぐ!」

 

フローラ「了解!……喰らいなさい!」

 

そう言って再びパンツァーファウストを発射したフローラは弾切れになった発射筒を捨て重機関銃を構え発砲した

 

ナイアル「う、うおおぉぉ!?す、スクープだぜ!まさかルーアンの怪物をこんな間近に…タイトルは、『ルーアンの海魔その姿を晒す!!』…いや、それとも?」

 

リィン「言ってる場合じゃないでしょうが!邪魔にならないように頭を下げてて!」

 

リィンもエンジンを動かしながらサブマシンガンで牽制していた

 

エステル「あれは…!」

 

クローゼ「リィン!!」

 

リィン達のボートはエステルのボートに並走した

 

リィン「エステル!今の内に退避を!」

 

ヨシュア「助かったよ!けど…リィン達は?」

 

リィン「このまま時間を稼ぐ!ナイアルさんをそっちに移乗させてくれ!」

 

ナイアル「おい!勝手な事抜かすな!こんなスクープ滅多に…どわ!?メイドの姉ちゃん、放してくれよ!」

 

フローラ「ジャーナリストが立ち入る場所じゃないのよ…生命のかけた戦いの場は!」

 

ナイアル「いや、それを言うならアンタだって…うわぁ~!?」

 

フローラはナイアルの首根っこを掴んでエステルのボートに放り投げた

 

エステル「っと…、判った。無茶しないでね!」

 

リィン「もとより無理する積もりは無いよ!」

 

投げられたナイアルを受け取りながらエステルはリィンにそう言ったのを応え再びオケアノスに向けてボートを反転させようとした時…

 

クローゼ「…っえい!」

 

リィン「は?えぇぇ?!」

 

エステル「え!?ちょっ、クローゼ!?」

 

クローゼがリィンのボートに飛び乗って来てリィンはクローゼを受け止めた

 

クローゼ「エステルさん!そのままルーアンに戻って!私はリィンと一緒に時間を稼ぎます…!」

 

リィン「クローゼ!?何を馬鹿な事を…!今すぐエステル達のボートに戻れ!」

 

クローゼ「あのボート元々三人乗りなのよ!エステルさんとヨシュアさん、それにダルモア市長と記者さんで既に四人、そこに私も含めたらボートの速力は落ちるわ!なら誰か一人こっちに移った方が良いわよ!」

 

リィン「だからといって…!」

 

クローゼ「私も剣を修めてるのはリィンだって知ってるでしょ!?足手まといにはならないからお願い……!」

 

リィン「〜〜っ!フローラ、針路このまま!オケアノスを遠距離で牽制しつつルーアンから遠ざけるぞ!」

 

フローラ「ハッ!了解しました!」

 

クローゼ「リィン…!!」

 

リィン「クローゼはアーツで補助に回ってくれ…!後悔しても知らないからな?」

 

クローゼ「大丈夫よ……貴方の背中護るわ、死ぬ積りもないし…」

 

リィン「そっか…なら尚更殺られるわけには行かないな…」

 

フローラ「リィン様!前方に小さな島が!」

 

牽制射撃しながら操船していたフローラの言う通り確かに島が見えた

 

リィン「上陸出来そうか!?」

 

フローラ「砂浜が見えます多分…!ちぃ!!」

 

フローラが右に舵を切った瞬間オケアノスの脚が海面を叩きつけた

 

リィン「このままじゃあ不利だ!あの島に上陸する!フローラ全速力!!」

 

フローラ「了解!しっかり掴まってて下さい!」

 

ボートの速度が上がりオケアノスの攻撃を躱しながら島の近くまで辿り着いた

 

フローラ「これ以上は近付けません!」

 

リィン「充分だ、クローゼちょっと失礼するよ…」

 

クローゼ「え?ちょっとリィン!?//////」

 

リィンは所謂お姫様抱っこでクローゼを抱えた

 

リィン「フローラ、跳ぶよ!」

 

フローラ「判りました!」

 

クローゼ「ちょっ、キャアァァ!?」

 

リインとフローラは海面に僅かな出ている岩礁の岩を足場に飛び跳ねて上陸した

 

リィン「さて…上陸出来たが…っと済まないクローゼすぐ降ろす」

 

クローゼ「あ…ね、ねぇ重く無かった……?」

 

リィン「いや全然?寧ろ軽い位だよ」

 

クローゼ「そ、そう…」

 

フローラ「お二人共語らいは結構ですが客が来ましたよ」

 

重機を構えたフローラは海面を睨めつけていたらオケアノスが出て来た

 

クローゼ「改めて見るとかなり大きいわね……!」

 

フローラ「四十、いや五十アージュは固いですね」

 

リィン「(やれやれ、アルマ殿との約束は早速実行に移すとはな…)」

 

クローゼ「リィン?」

 

リィン「いや…何でもない」

 

リィンは太刀を抜刀し切っ先をオケアノスに向けた

 

リィン「お前にとって理不尽な話だがお前がルーアンの海に居ると人々の害にしかならないんだよ。悪いが討伐させて貰う!」

 

リィン「これよりオケアノス討伐を行う!相手は其処らの魔獣と違い数万年前の生物だ勝手が違うだろうが力を貸してくれ!」

 

『『おおっ!』』

 

オケアノスとの戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第五十六話

オケアノス『ーーー!!』

 

オケアノスは咆えながら此方に足で攻撃してきた

 

リィン「ッ!散れ!!」

 

全員が散らばるのと同時に先程まで居た地にオケアノスの脚が叩きつけられ小さなクレーターが出来ていた

 

リィン「海洋生物の癖に咆えるか…!」

 

フローラ「あの図体ですから発声器官があっても可笑しくはありませんが…」

 

リィン「…クローゼ、軍の応援は…?」

 

リィンはクローゼに訊ねた

 

クローゼ「……そろそろ来る筈だけど、まだ少し時間掛かるわね」

 

リィン「なら、それまで持ち堪えるまでだ…!クローゼはアーツ主体で攻撃してくれ、ヤツの図体で何処まで通じるか判らないがやらないよりマシだ!フローラは俺と一緒に接近戦を仕掛ける」

 

二人はそれぞれ頷きリィンとフローラはオケアノスに敢えて接近戦を挑み、クローゼはアーツを発動させた

 

クローゼ「アーツ駆動…!」

 

フローラ「余り、調理しても、美味しく、無さそうですね!」

 

フローラはオケアノスの右側から攻め振り上げるオケアノスの脚を巧みに避けながら重機関銃で攻撃した。だが効いた様子はない

 

フローラ「やはり効きませんか…なら、これならどうです!」

 

オケアノス『ーーー!!』

 

オケアノスは今度は反対側から攻めて来るが、それをリィンが迎え撃つ

 

リィン「ッ!」

 

オケアノスの攻撃を受け止めたが想像していたより重く、リィンは後方に弾かれてしまった

 

リィン「クッ!」

 

フローラ「させません!!」

 

とすかさず援護のアーツを放った

 

リィン「ハァ!!」

 

体勢を立て直したリィンとクローゼは二人で息の合った連係攻撃を繰り出しながらオケアノスに確実にダメージを与えていった。流石に堪えたのかオケアノスは距離を取った

 

リィン「逃がさない!行くぞ、フローラ!!」

 

フローラ「はい!」

 

二人同時にオケアノスに接近した。リィンは跳躍し頭部に一撃を加えたが、大したダメージには至らなかった。だがそこでクローゼの追撃が来る

 

クローゼ「これで……!!」

 

クローゼは渾身の力を込めたアーツをオケアノスに放った。するとオケアノスはその巨体を大きく揺らし倒れた

 

リィン「やったか!?」

 

だがまだ多少傷ついてたがまだ健在だった…

 

フローラ「これでも駄目ですか……!っと、しつこいですね!?」

 

反撃が来たのでフローラは後ろに躱しながら撃ち続けた

 

リィン「八葉一刀流 肆ノ型[紅葉切り]」

 

リィンは左側から攻めオケアノスをすれ違い様に抜刀し斬りつけたがそれすらヤツにはかすり傷にしかならない

 

リィン「チィッ!?文字通り面の皮が厚いな!うお!?」

 

オケアノスの脚が迫って来たので近くの脚を蹴り回避した

 

クローゼ「受けなさい!ハイドロカノン!!」

 

クローゼのハイドロカノンがオケアノスに直撃したがそれも余り効いた様子もない

 

クローゼ「嘘!?いくらなんでも出鱈目でしょ!?」

 

フローラ「図体に見合う硬さの骨格を持ってますね…」

 

リィン「伊達に太古の海を支配した生物なだけはあるな…」

 

三人は合流し再び構えた

 

リィン「さて…どうしたものかな…?」

 

リィンは玉砕等するつもりもなければ諦めるつもりも更々無いが手詰まりなのは否めない……その時

 

リィン「ん……?この音は……」

 

フローラ「導力(オーバル)エンジンの音……?」

 

クローゼ「……来た……!」

 

突如オケアノスの周囲が水飛沫が上がった

 

リィン「砲撃!?どこから……?」

 

フローラ「空です!王国軍の船です!!」

 

上空を飛ぶその船は今までのリベールが採用している警備艇と違い美しく、優雅な船だった…

 

リィン「あの紋章は…!!」

 

フローラ「王室親衛隊……!?ならあれは……」

 

クローゼ「ええ、リベールの最新鋭高速巡洋艦…『アルセイユ』よ」

 

ー アルセイユ艦橋 ー

 

「命中しました」

 

???「やれやれ間に合った様だな…まさかダルモア市長の逮捕の筈がまさかルーアンを騒がしてる海魔の退治とはな」

 

「目標は未だ健在のようです。いかがしますかユリア中尉?」

 

ユリア「無論そのまま攻撃を続けろ!ルーアンの海魔を今此処で仕留めるのだ!」

 

『『『イエス!マム!!』』』

 

「なら私は地上に降りて彼等を援護しよう」

 

そう激を飛ばすユリア中尉の背後からリベール王国軍が採用している緑色の軍服ではなく黒色の軍服を着用した男が出てきた

 

ユリア「……えぇ、宜しくお願いします……リシャール大佐殿」

 

リシャール「ふ、勿論だよ…あのような化け物を何時までも我が物顔でリベールの海に居座られては敵わん」

 

そう言って艦橋から出ていった…

 

「…宜しいのですか?」

 

ユリア「……実際あの化け物を野放しにする訳にはいかないだろう?確かに『情報部』の動きが不気味だが今は詮議してる場合でもない、判ったなら任務に集中しろ!」

 

「ハッ!」

 

「……杞憂であれば良いのだがな…」

 

ユリアは部下に聴こえない位の小さな声で呟いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第五十七話

あんまり上手く書けないなぁ…やっぱり戦闘シーンは書くのは向いてないのかも?


リィン「アルセイユ…!」

 

リィンはオケアノスを攻撃した後此方にフライパスしたアルセイユに一時その船の美しさに目を奪われた…碧い空に浮かぶ正に《白き翼》に相応しい姿だ…

 

フローラ「?…リィン様!あの船の後部ハッチから人が…!」

 

フローラが指摘した通りハッチが開いて黒い軍服を着た軍人が飛び降りてきた…もしかして?

 

リィン「リベール軍の方ですか!?」

 

砂浜に難なく着地したその軍人にわかりきった事を尋ねた

 

リシャール「そうだ!手短く名乗るが王国軍大佐のリシャールだ!君達がダルモア市長の不正の連絡をくれた提供者かね…ちぃ!鬱陶しい!」

 

オケアノスの攻撃を躱しながらリシャール大佐は答えた

 

リィン「正確には協力者です!市長は遊撃士が拘束してルーアン市にいる筈です!オケアノス…この海魔はその時のダルモア市長の逃走劇にヤツのナワバリに侵入したから怒ったらしいです!」

 

リシャール「了解した!ならばこのまま協力してくれないか!?見たところ君も八葉の教えを受けてると見た!リベールの為どうか力を貸して欲しい!」

 

リィン「無論です!しかし、勝算は有るんですか?」

 

リシャール「ある!…と言いたいがあの化け物…オケアノスと言ったか?正直舐めてたかもしれん。アルセイユの砲撃を受けて尚まだ健在だとは」

 

オケアノスは傷を負っていたがそれでもアルセイユに向けて脚を伸ばして捕まえようとしたり海中から岩を掴み投擲して叩き落とそうと試みていた

 

フローラ「何か弱点を突かないと無理ですね!」

 

フローラも銃撃しながら応えていた

 

クローゼ「でも弱点何て…何処に!!」

 

その答えがアルセイユから聞こえた

 

『眼を狙ってください!』

 

その声に聞き覚えがあった…この声は…

 

リィン「ラクシャさん!?」

 

ラクシャ『オケアノスの額に眼みたいなのが見えますか?あの辺りはオケアノスの神経索や心臓等の内臓が集中しています!其処を攻撃が通ればオケアノスといえど…』

 

その場に居た全員がオケアノスの《額》をみた、確かに眼らしいのが見える。なら…!

 

リィン「フローラ!対戦車ライフルはあるな!?俺達がオケアノスの注意を引く!その隙にオケアノスの眼を狙え!」

 

フローラ「了解!」

 

リシャール「よし、なら私は左から攻める。君は右から奴の注意を引いてくれ」

 

リィン「えぇ…クローゼはフローラと一緒に居てくれ、万が一ということもある」

 

クローゼ「……解ったわ、気をつけてね?」

 

リィン「…行きましょう?」

 

リシャール「ああ…!」

 

それに頷きリシャールとリィンはそれそ居合いを構えオケアノスに向かって走り出した

 

二人に気づいたオケアノスは迎撃してきたが二人共巧みに躱しオケアノスの脚に飛び乗りオケアノスの眼に向かっていった。狙いに気付いたオケアノスは眼を守る為にガードしてきた

 

『『はあァァァ!【八葉一刀流】 伍ノ型 残月!!』』

 

渾身の居合いでガードしていたオケアノスの脚を切り飛ばしオケアノスの眼の射線が通った……!

 

リィン「撃てぇ!フローラ!」

 

フローラ「ッ…!」

 

フローラが引き金を引いた弾丸がオケアノスの額に吸い込まれるように着弾した…!

 

「■■■■■ーーッ!??」

 

オケアノスは断末魔をあげながら崩れ落ちるかのように海に倒れた。リィン達は着地した後振り返りそれを見た。

 

リシャール「やったか……?」

 

リィン「それは言っちゃいけない気がするんですが……」

 

フローラ「どう……ですか?」

 

クローゼ「倒せたの!?」

 

だが、倒した筈のオケアノスが海から上半身だけを出した状態になっていた、明らかに大ダメージを負っていたがその眼はまだ赤く光っていた。

 

「……ッ!」

 

そのオケアノスの額に何かがが当たり今度はオケアノスの頭部を貫通した!そして今度こそ崩れ落ちた…

 

「!?」

 

リシャールとリィンが目にしたのは…

 

リシャール「突撃槍(ランス)だと!?一体誰が…?」

 

リィン「……(今のは……)

 

ー ??? ー

 

???「流石ですわ!マスター!あの様な化け物を一撃で…!」

 

「……いいえ、アレは彼等が弱らせたから出来た事…私はそれに横槍を入れただけです」

 

「そのような事……!」

 

「それよりも引き上げましょう。此処の担当は本来『白面』殿…盟主の命で赴いたとはいえ『使徒』が二人もなど面白くないでしょう」

 

「…『白面』ですか、自分は余り…」

 

「好ましくありませんか?デュバリィ?」

 

デュバリィ「はい……正直に申し上げると、実力は兎も角その…」

 

「判ってます。貴女が言う様に私も彼の在り方に眉を顰めてますが盟主がお決めになった事です。その様な不満は胸の内に収めなさい」

 

デュバリィ「ハッ!……」

 

「解ったのなら良いのです。さ、引き上げますよ」



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第五十八話

 

オケアノスとの戦いが終わりルーアンに戻る事にしたが使っていたボートは破壊されていたのでさてどうしたものかと頭を抱えていたが其処にリシャール大佐から提案が出た

 

リシャール「アルセイユに乗れば良い、艦長には私が説得する……まぁ、軍事機密の塊だから目隠しはしてもらうが…」

 

と言われた艦長のユリア中尉は当然渋る、最新鋭の艦艇に民間人を乗せる等有り得ないのだから当たり前の反応だ……クローゼは除けばだが、最終的にはユリア中尉が折れて乗艦を許可してくれた

 

ユリア「済まない…幾ら機密とはいえあの化け物相手に戦っていた諸君等をこのような…」

 

ルーアン空港に到着し下船した俺達にユリア中尉は頭を下げて謝罪した

 

リィン「まぁ、機密情報防止の為でしょう?当たり前の措置ですよ。寧ろ乗艦させて貰えただけでも有り難いぐらいですし…」

 

ユリア「そう言って貰えると助かる。今更だが私は王室親衛隊のユリア・シュバルツ中尉だ、今回ルーアンの海を脅かしていたあの化け物……オケアノスと言ったか?討伐に協力感謝する」

 

リィン「俺はリィン・アイスフェルトです、隣の彼女はフローラ・クリフトです。でこっちの彼女はクローゼ・リンツ、ジェニス王立学園の生徒です。それと…ラクシャ博士は何故アルセイユに?」

 

ユリア「うん?彼女を知っているのか?それはな…」

 

「私が連れて来たのだよ」

 

そう言ってアルセイユからリシャール大佐とラクシャ博士、それと女性士官が下船してきた

 

クローゼ「ッ……」

 

リシャール「やぁ、お疲れ様だったねお陰でルーアンの脅威は去ったよ。改めて名乗ろう、リベール王国軍情報部所属のリシャール大佐だ此方は私の副官のカノーネ大尉だ」

 

紹介されたカノーネ大尉は目礼をした

 

リィン「礼を言われる程では……それでさっきの言葉は…?」

 

リシャール「何、あの化け物の事を詳しい人間がこのルーアンに滞在していると聞いたからね。協力を要請舌のさ」

 

ラクシャ「……いきなり部屋に入ってきてオケアノスのことを詳しく教えてくれなんて言われて驚きましたけどね、此方としては…」

 

リシャール「申し訳ない、あの時は切羽詰まっていたもので」

 

フローラ「ですが助かりました。弱点を教えて貰ってなければアレには勝て無かった…」

 

クローゼ「同感です…アレは魔獣とは根本的に異なりました」

 

ラクシャ「まぁ役立てたのなら良かったのですが、私としても死骸とはいえオケアノスを見れたのは古生物学者として嬉しい限りでしたが…」

 

ラクシャは何か難しい顔をしていた

 

リィン「…?ラクシャさん、なにか?」

 

ラクシャ「あぁ…いえね、あの後私はオケアノスの死骸を観察していましたよね?その……頭部に焼印が入れられていたんですよ」

 

ユリア「焼印だと?何が入れられたんだ?」

 

ラクシャ「えぇと数字とマークですね数字は1053と……マークは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄気味悪い目にD∴Gと書かれていました」

 

 

 

 



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第五十九話

《ラングランド大橋》

 

エステル「やれやれ、ようやく一段落したわね」

 

遊撃士としてダルモア元市長逮捕の残務処理を終えたエステル達は《ラングランド大橋》の橋上で風に当たっていた

 

ヨシュア「うん、ダルモア市長が不正を働いて王国軍に逮捕されたという発表を市民に知られた時は流石に動揺していたけど今はすっかり落ち着いたみたいだね」

 

エステル「う〜ん、これからどうなるのかな?」

 

ヨシュア「暫くは王国から派遣された役人が代行するみたいだよ。その後は然るべき人を選出して正式な市長を任命するようだよ」

 

エステル「そっか……そういえばダルモアは素直に取り調べに応じてるって?」

 

ヨシュア「そうみたいだよ?よっぽどオケアノスが怖かったみたいでその反動じゃないかって…」

 

エステル「まぁ、気持ちは分かるけどね…自業自得だしやった事を考えればいい薬になったんじゃない?そのオケアノスはリィン達とあのリシャール大佐が討伐したみたいだけど死骸どうするのかしら?」

 

ヨシュア「あぁ、それなら…」

 

「一部引き取られたよ」

 

そこにフローラとラクシャを連れたリィンが合流した

 

エステル「あ、リィン、フローラさんそれに…ラクシャ博士も?引き取るってもしかして……」

 

ラクシャ「お久しぶりです。えぇ、王国軍と交渉して一部切り取って冷凍して帝国に持ち帰る予定です。何しろ古生物学者としては垂涎モノですからね」

 

エステル「はぁ…そういうものですか?」

 

ラクシャ「そういうものですよ、私達にとっては……生涯夢見てたものの一つが目の当たりにする訳ですから」

 

ラクシャ博士はかけていた眼鏡をクイッと上げながら言った

 

ヨシュア「なるほど、そういえばリィン…クローゼはどうしたんだい?一緒にいたんじゃないのかい?」

 

リィン「あぁ、クローゼなら少し遅れるって言っていたな…多分もうすぐ来ると思う」

 

エステル「そっか……でも良いのリィン?」

 

エステルはニヤニヤしながら尋ねた

 

リィン「良いって……何が?」

 

エステル「惚けちゃって〜、クローゼと折角恋人同士になれたんだからこのままルーアンに滞在すればいいのに〜、このこの〜」

 

エステルは揶揄うようにリィンの肩を軽く叩く

 

リィン「なに言ってるのさ……元々リベールを周ってる途中だったし、クローゼだって俺だけに構ってる訳にはいかないさ、それに……今生の別れでないからね。また、会える日は来るさ」

 

エステル「う…良くくさい台詞を吐けるわね…?聞いたこっちが恥ずかしくなったわ……////」

 

ヨシュア「揶揄うなんて慣れない事するからだよ…」

 

ラクシャ「クスクス、あぁ私はこれから定期船で帝国に帰るのでここでお別れです」

 

ヨシュア「え、随分急ですね?」

 

ラクシャ「元々オケアノスが居たから此処に来たのですから…それも居なくなったのであれば此処に留まる理由もありませんから、特大のお土産も出来ましたし」

 

リィン「そうですか……あの時はありがとう御座いました。貴女がオケアノスの弱点を教えてくれたお陰で全員生還できました」

 

リィンは手を差し伸べラクシャに握手を求めた

 

ラクシャ「礼を言われる程ではありません、私は自身の知ってる事を言っただけです。勝利は貴方方が引き寄せた結果です」

 

ラクシャも握手に応じリィン、フローラ、エステル、ヨシュアの順な握手していった

 

ラクシャ「では私はこれで……帝国に来たら帝都に遊びに来てください。歓迎しますので」

 

そう言って去って行った

 

エステル「さて…後はクローゼだけど……」

 

 ー ピュイ ー

 

エステル「お、ジーク!貴方が来たって事は…」

 

「ごめんなさい!遅れました」

 

クローゼが走って此方に駆け寄って来た

 

クローゼ「ハァ…ハァ…ごめんなさい、遅れました」

 

ヨシュア「いや、そんなに待ってないよ」

 

エステル「も、もしかして走って来たの?そんな慌てなくてもいいのに」

 

クローゼ「いえ、見送るのに遅れる訳にはいきませんから、それに……」

 

クローゼはリィンの方を向いた

 

クローゼ「……行くのね?」

 

リィン「……うん」

 

クローゼ「そう……また会える?」

 

リィン「勿論、ちゃんと会いに行くよ」

 

クローゼ「……なら良いわ」

 

エステル「えっと……?二人共?」

 

ヨシュア「はは…それじゃあ出発しようか?」

 

エステル「あ、そうね…ツァイス地方に行くには南口に出れば良いんだっけ?」

 

クローゼ「あ、はい南の街道の先にある《エア=レッテン》の関所があります」

 

クローゼ「彼処からツァイスへの街道に出る事ができます」

 

エステル「ん、分かったわ。それじゃレッツゴー!」

 

そうして一同はアイナ街道を進み《エア=レッテン》の関所に到着した

 

エステル「前も思ったけどなんか関所っていうより観光地みたいな雰囲気ね〜」

 

クローゼ「実際、滝目当てに訪れる観光客も大勢いますよ」

 

エステル「あ、やっぱり?う〜ん、ルーアンって綺麗な所多いわね〜観光客が来るのも納得だわ」

 

クローゼ「そんなことないですよ?私はロレントも素敵な街だと思いますよ」

 

リィン「ロレントにも来た事があるんだ?」

 

クローゼ「えぇ、五大都市には一通りね。あ、この先にあるツァイス市なんですけど……とても個性的で驚くかとおもいますよ」

 

ヨシュア「個性的?」

 

エステル「う〜ん、それは楽しみね」

 

フローラ「では関所で通行許可証を貰いましょう」

 

クローゼ「そうですね、入口に入って直ぐに受付がありますからすぐに貰えますよ」

 

クローゼの言う通り直ぐに許可証を貰えたリィン達はカルデア隧道の入り口まで来た。

 

エステル「うわ〜すごいわね〜でも滝といっても川からじゃなくて水路から落ちてきてんだ?」

 

水路から落ちてくる水を見てそんな感想を漏らす

 

ヨシュア「確か、ローツェ水道という名前だったかな?中世に造られた水道橋だとか…」

 

フローラ「位置的にはヴァレリア湖に繋がってるんですね」

 

クローゼ「その通りです。ヴァレリア湖から此処まで水を引いてるんです」

 

エステル「う〜んオーブメントもないのによく造れたわね、それであっちが……」

 

エステルの視線の先には隧道の入り口が

 

ヨシュア「トンネル道の入り口だね…じゃあ、此処でお別れだね」

 

クローゼ「はい……本当にありがとう御座いました。何から何まで…あの、エステルさん達はリベールを一周するんですよね?なら王都でまた会えるかも知れません」

 

エステル「え、そうなの?」

 

クローゼ「はい、実は女王生誕祭に実家に戻る予定なので…」

 

ヨシュア「女王生誕祭は確か一ヶ月先位だったかな、確かにその頃には王都に着いてるかもしれ無いね」

 

エステル「そうなんだ~あ、じゃあさ実家の用事が終わったらギルドに連絡出してよ!そうすれば会えると思うから!」

 

クローゼ「えぇ……必ず連絡しますね………エステルさん、ヨシュアさん、それに……リィンにフローラさん本当にありがとう御座いました、どうかお気をつけて」

 

エステル「うん!ありがとう!クローゼもまた会おうね〜」

 

ヨシュア「テレサ院長達にも宜しく伝えて欲しいな」

 

二人は先に隧道に入っていった

 

クローゼ「………リィン、やっぱりエステルさん達に伝えなくて良かったのかしら?《D∴G》について…」

 

リィン「…何れは言う必要はあるだろうね、でも今は正遊撃士を目指してる二人には余計な負担をかける訳にはいかないさ」

 

クローゼ「そう…ね……ねぇ、リィン?女王生誕祭で会えたらさ……デート、してくれる?」

 

リィン「喜んで、その日を楽しみにしているよ」

 

クローゼ「うん!!」

 

そうして二人は口づけを交わして別れて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第六十話

ー カルデア隧道 ー

 

リィンはクローゼと別れ隧道に入ると先に入ったヨシュアとエステルが待っていてくれた

 

リィン「ごめん、待たせたみたいだね」

 

ヨシュア「いや、平気だよ」

 

エステル「いや〜、でもリィンも大胆ね〜彼処でクローゼとキスするなんて〜」

 

見てたのかエステルはニヤニヤしながらまたリィンを揶揄う

 

リィン「別に、今更恥ずかしいとは思わないからね。それを言うならエステルこそ、そろそろはっきり伝えたら?」

 

エステル「つ、伝えるって…何を?(汗)」

 

リィンはニヤリと笑うと続けた

 

リィン「何って……そりゃあ勿論ヨシュ…」

 

エステル「ワー!ワー!、ストップ!!ごめん!悪かったからそれ以上は言わないでー!」

 

エステルは慌ててリィンの口を手で塞いだ

 

ヨシュア「???……何の話だい?」

 

エステル「いや〜、何でも無い、何でも無いからね〜アハ、アハハハハ〜(汗)」

 

フローラ「……エステルさんちょっと良いですか?」

 

エステル「あ、うん!どうしましたかフローラさん?」

 

これ幸いと話題転換を図ったエステルはフローラの方に向いた

 

フローラ「ダルモア市長がアーティファクトで我々の動きを封じた時エステルさんのポシェットから《黒い光》が出てアーティファクトが壊れましたよね。あの光は一体…?」

 

エステル「あ〜うん、何て言えば良いのか…どうするヨシュア?」

 

ヨシュア「そうだね……正直に話した方が良いかも、あの場に居たんだから秘密にする意味はもうないし」

 

エステル「それもそうか……リィン、フローラさんこれは遊撃士の仕事の関係ですので二人には話しますが他言は無用で」

 

そう前置きしてからカシウスに届けられる予定だった『荷』の中身を見せた

 

エステル「この『黒いオーブメント』みたいなのは何がなんだか解らなくてコレと一緒に入っていた手紙には『R博士に解析をお願いする』としか書いてなくて」

 

ヨシュア「それでその『R博士』というのがツァイスのラッセル博士だと当たりをつけてツァイスに向かう事にしたんです。あの現象は僕達も判りません」

 

エステルの手にはまさしく『ゴスペル』が握られてた

 

フローラ「……少し触らせても良いですか?」

 

エステル「えっと…少しだけなら、でも直ぐに返して下さいね?」

 

フローラは頷いてその『ゴスペル』を取り暫く回してみたり指で軽くフレームの表面を叩いて観察していた

 

フローラ「……メンテナンス用の蓋も無し、製造番号も無し…これは…」

 

エステル「あの…?」

 

フローラ「あぁ、ごめんなさい。でも一体誰がこれを…」

 

そう言ってエステルに『ゴスペル』を返した

 

ヨシュア「そういえば僕もフローラさんに聞きたい事があります」

 

フローラ「何でしょうか?私に答えられる事でしたら」

 

ヨシュア「フローラさんはあのアーティファクトを知っていたんですか?」

 

フローラ「……どうしてそう思うんですか?」

 

ヨシュア「ダルモア市長がアレについて自慢気に喋っていた時、フローラさんこう言いましたよね『犯罪行為の為にそれは作られた訳ではないのよ!貴方如きが持って良い物ではない』って…あの台詞は作られた経緯を知らなければでない台詞です」

 

フローラ「……深読みし過ぎですよ、私は只作った人の事を思ったらあの者が悪用したのが許せなかっただけですよ」

 

ヨシュア「それにしては……!」

 

エステル「も〜ヨシュアったら考え過ぎよ。女は秘密が多いのよ、過度に詮索するとモテないわよ?」

 

ヨシュア「…それは少し違うような…でも確かに少し無神経だったね。すみませんフローラさん」

 

フローラ「いえいえ、気にしてませんから頭を上げて下さい」

 

エステル「それじゃあ改めてツァイスを目指してレッツゴー!」

 

ヨシュア「ハイハイ、慌てないで」

 

エステルとヨシュアはツァイスに向け歩き始めた

 

フローラ「……」

 

リィン「フローラ……」

 

フローラ「大丈夫ですわ、少し罪悪感ありますが…」

 

リィン「何時か話せる日が来るさ、その時には一緒に謝ろう…それとあの『ゴスペル』はどうなんだ?」

 

フローラ「はい、あの『ゴスペル』は多分〘リベル=アーク〙で製造された物で間違い無いかと…内部は私達が使う『ゴスペル』とは異なる機能が搭載されていますね。使い道は…やはり『塔』でしょう」

 

リィン「そうか…どうする?」

 

フローラ「……正直迷ってます。アレは壊したほうが良いとは思いますが…」

 

リィン「アレ一つとは限らないしな、今は現状維持が無難か…さて、俺達もツァイスに行こう」

 

リィンはフローラの肩を叩いてエステル達の後を追った

 

 

フローラ「……私とリベル=アーク以外で生き残りが居るとでもいうの?」

 

フローラはリィンの後ろに付き従いながらボソッと呟いた

 

 

 



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第六十一話

ー カルデア隧道 ー

 

リィン「もう少しかな?」

 

ヨシュア「大分魔獣を排除しながらだからちょっと遅いけど…多分そうじゃないかな?」

 

エステル「はぁ〜長いトンネル道よね〜陽の光を見たいわ……うん?」

 

フローラ「どうなさいました?」

 

エステル「あ、いやなんか人の声、それも多分私達よりも年下そうな子の声が聞こえたような」

 

リィン達は多少の魔獣に遭遇したが敵ではなく排除しながら進んで行くとツァイス側の方から少女が走ってきた

 

「あ、こんにちは!」

 

リィン「うん、こんにちは」

 

エステル「貴女一人なの?危ないわよ」

 

「あ、はい大丈夫ですよ、良く此処は入るので慣れてますから…あ、そうだ!あの…お姉さん達はルーアンから隧道に入ったんですよね?何処か照明が壊れてないか見てませんでしたか?」

 

エステル「へ?照明…?う〜ん、ごめん私は気付かなかったかな、みんなは?」

 

リィン「此処まで歩いて来たけど、壊れた照明は見てないな?」

 

フローラ「私もです」

 

ヨシュア「…多分アレかな?壊れてはいなかったけど照明の明かりが弱くなってたのが一つあったかな?」

 

「あ!多分それです!何処にありましたか!?」

 

ヨシュア「確か…川を二つ越えた所のだったかな?」

 

「あう…やっぱり、急がないと……す、すみません!私はこれで!」

 

女の子はお辞儀をしてリィン達が来た道を走って行った

 

リィン「忙しい娘だな?」

 

フローラ「ツァイスの住人みたいですね」

 

エステル「……ねぇ、ちょっとあの娘の事気になるから追いかけない?」

 

リィン「……ふぅ…そう言うと思った」

 

ヨシュア「でも、確かにあんな女の子が一人でいるのは危険だしね」

 

フローラ「なら急ぎましょう、遠くには行って無いとは思いますが…」

 

そう言って来た道を少し引き返す形で女の子の後を追った…

 

リィン「居た…!」

 

ヨシュア「確かに壊れてるね…というか既に魔獣達が群がってるけど…」

 

壊れた照明に魔獣が集まってきていた

 

エステル「不味いわね、襲われる前に保護しようよ」

 

フローラ「ちょっと待ってくださいあの娘何を?…小型導力砲!?まさか…!」

 

少女の小型導力砲が火を吹いた

 

あの後魔獣を追い払う為の威嚇が通じる筈もなく魔獣達が少女に向かって来たのでリィン達が介入して魔獣を排除した

 

「あ、あの…ありがとう御座いました」

 

エステル「はあ〜無事で良かった…でも、余り感心しないわよ。魔獣を刺激するなんて」

 

ヨシュア「そうだね、魔獣だって馬鹿じゃない…威嚇したからと言って必ずしも退くとは限らないしね」

 

「あう……でも放っておいたら照明が壊されちゃうから……」

 

エステル「そういえば…どうしてあの魔獣達は壊れた照明に群がってたのかしら?」

 

フローラ「オーブメントの中身の七耀石は魔獣の好物ですから…だからこそ街道灯には魔獣除けの機能が搭載されてますが」

 

照明の損傷がないかチェックしているフローラが疑問に応え

 

ヨシュア「その機能が停止したから逆に狙われたという訳さ」

 

ヨシュアが最後を締めた

 

エステル「あ、な〜るほど以前ロレントで街道灯の交換した時も同じか!…まぁだからといって危ない事には変わり無いわよ」

 

リィン「まぁまぁ、この娘も怪我も無かったし、反省もしてるからそこまでにしときなよ」

 

ヨシュア「それにエステルが無茶するな何て言っても説得力ないしね?」

 

エステル「それ、どういう意味よ!?……あぁ、まだ名乗っていなかったわね。あたしはエステル、それでこっちは……」

 

ヨシュア「僕はヨシュアだよ、それと今照明をチェックしている二人は男がリィン、女性がフローラさん」

 

リィン「宜しく、因みにエステル達は遊撃士だよ」

 

「わぁ〜、だからあんなに強かったんだ…あ!私ティータって言います。ツァイスの中央工房見習いをしています」

 

エステル「へ〜、だからそんな格好してたのね?…ねぇティータちゃん、ツァイスに戻るなら私達と一緒に行かない?」

 

ティータ「ふぇ?」

 

フローラ「それが良いですね、また魔獣が出て来たら大変ですし…」

 

ティータ「わ、良いんですか?ありがとうございます。あ、でもちょっと待ってください。その前に照明を直しますね」

 

エステル「あ、確かにこのままは危険か…でもどうして此処の照明が壊れたって判ったの?」

 

ティータ「たまたま工房にある端末のデータベースを閲覧していたら偶然見つけたんです。あの照明は動作不良なのに手違いで設置されたみたいなんで…」

 

リィン「なるほど……大事になる前に気づいて良かったね」

 

エステル「……端末?…でーたー?」

 

ティター「さてと…そうと決まれば早く直さなきゃ、あ、お姉さんどうですか?」

 

フローラ「目立った損傷はないわね、動作不良の箇所と七耀石を交換すれば直ると思うわ」

 

ティータ「分かりました。じゃあ直ぐに終わらせますね」

 

そう言ってティータは数分後には照明を直した

 

ティータ「はい、お待たせしました」

 

エステル「はえ〜手際良いわね〜」

 

リィン「見習いとはいえツァイスの工房に務めてるのは伊達じゃないね」

 

 

ティター「えへへ、大したことはしてませんよ。クオーツの接続不良を直して導力圧を調整しただけですから」

 

エステル「???」

 

フローラ「謙遜しなくても良いわ、貴女の歳でそれを理解して直せる子は居ないわ」

 

ティータ「そ、そうですか?でもでもフローラさんも素早くチェックしてて驚きました!フローラさんも技術者なんですか?」

 

フローラ「私?私はご覧の通り只のメイドよ」

 

エステル「とりあえずそろそろ出発しない?こんな所で立ち話も何だし」

 

ティータ「それもそーですね、もうちょっと聞きたかったけど…」

 

ティータを加えた一行が隧道を進み遂にトンネル道の終点に辿り着いた

 

エステル「此処からツァイス市に入れるのね?」

 

ティータ「はい、そーです正確には中央工房の地下区画に出るんですけど」

 

エステル「そっか、あの有名な…」

 

フローラ「工房都市ツァイスが誇るオーブメント技術の総本山」

 

リィン「建物自体も相当大きいと聞くけど」

 

ティター「はい、かなり大きいですよ。初めて来たお客さんは戸惑いますよ」

 

エステル「へ〜そうなんだ?」

 

ティター「とりあえず一階に上がれば街に出る玄関に出ますから私そこまで案内しますね」

 

エステル「ありがとうね。助かるわ」

 

ヨシュア「じゃあ中に入ろうか?」

 

中に入りエステル達は最新式のエレベーターに乗りツァイスの工房一階に着いた

 

エステル「へ〜此処が一階ね」

 

ティータ「はい、此処は主に受付と一般のお客さん向けの

窓口があります」

 

「あ!ティターちゃん丁度良かったわ今トランス主任が貴女のこと探してたわよ。演算室に来て欲しいって」

 

ティータ「あ、はい分かりました」

 

エステル「あらら急用が入ったか」

 

ヨシュア「案内してくれてありがとう。助かったよ」

 

ティータ「いえ、とんでもないです。私の方もお世話になりました。では私はこれで」

 

ティータはエレベーターに再び乗り込み去っていった

 

エステル「さてと…早速町に向かう?」

 

ヨシュア「そうだね、ギルドに報告したいし、父さんや例のオーブメントについても相談したいしね」

 

エステル「ん、オッケー…リィン達はどうするの?」

 

リィン「宿屋に入るよ、流石に疲れた」

 

ヨシュア「うん、じゃあ何かあったら相談してね。当分こっちに居るから」

 

そう言って先に町に出ていった

 

リィン「さてと…俺達も行くか?」

 

フローラ「はい」

 

そして工房をでるとそこかしこに機械が動いてた

 

リィン「流石工房都市といったとこだな」

 

フローラ「……」

 

リィン「…やっぱり複雑か?」

 

フローラ「…えぇ便利さは認めますがその便利が使え無くなった時人は…」

 

進んだ科学で滅んだ例を間近で見たフローラからすれば今のツァイスは危ういと感じるのも無理はないかも知れない…

 

リィン「…まずは宿を取ろう。腰を落ち着けよう」

 

フローラ「…そうですね」

 

そうして宿屋に着いて部屋をとって休もうとしたら宿屋の主人が客が来たと言ってきた

 

リィン「客…?誰だろうエステル達がいきなり来る訳ないし…」

 

 

そうして一階に降りて受付をみるとそこに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シズナ「やぁ、リィン久しぶりだね?ちょっと『お願い』があって来たんだけど」

 

八葉の姉弟子にして猟兵〘斑鳩〙の副長シズナ・レム・ミスルギがにこやかに手を振ってこちらに来た…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第六十二話





ツァイスのレストランでリィンとフローラそして…シズナの三人で一緒に夕食を摂る事になった

 

シズナ「う〜ん、やっぱりリベールは美味しい物が多いね〜カルバートも美味いけど当たり外れが多いしね〜あ、エステル達は正遊撃士の資格得る為にリベール一周してるんだよね?どう?二人の仲は進展した?」

 

シズナは注文したパスタを食べながら矢継ぎ早にリィンに質問した

 

リィン「…確かにリベールは野菜一つとっても美味しいのは分りますが、カルバートは東方料理が美味しいと聞きますが?エステル達は今このツァイスに居ますよ、他の支部の推薦を取り付けてツァイス支部の推薦取れば後は王都支部だけですよ。仲はまぁ……互いに意識はしてると思いますが恋人になるかはまだまだでしょうね」

 

リィンは注文したスープを飲みながらシズナの質問に淀みなく答えた

 

シズナ「あははっ!やっぱりねぇ!!あの二人なんだかんだ言っても鈍いからねぇ」

 

フローラ「鈍い…?私には両思いに見えるのですが?」

 

シズナ「鈍いさ、なまじあの二人は一緒に暮らして互いの良い所や悪い所を見て育ったんだ。家族としての時間が長ければ長い程相手を異性として見る前に家族という意識が邪魔をする。

血の繋がりが無いと頭で判っててもそう簡単に切り替えられないさ、それこそキスの一つでもしないと進展しないんじゃあないかな?」

 

フローラ「…随分詳しく語る様ですが御自身の経験で?」

 

シズナ「いや?単なる観察眼だよ?」

 

フローラ「観察って……」

 

フローラは呆れた顔でシズナを見た

 

リィン「……まぁ雑談はこの位にしましょうか、シズナさん俺に頼みとは?まさか俺と死合しに来たと言うなら断りますよ」

 

シズナ「あはは、それも魅力的だけど残念ながら今回は猟兵として此処に居るんだ」

 

リィンは目を細めた

 

リィン「リベールに害なすなら幾ら姉弟子でも斬りますよ」

 

殺気をシズナに叩き込んだがシズナは涼しい顔だ

 

シズナ「へぇ~…面白い事言うねぇ……君は人を斬れると?」

 

シズナも静かに殺気を放ち周囲の空気が重苦しくなり他の客はそそくさと離れた

 

リィン「俺は正義の味方じゃない、全てを救うなんて傲慢な考えは無い…けど、俺の大切な物を守る為に必要な事なら例え相手が貴女でも…」

 

シズナ「……まぁ冗談はこれ位にしようかな?別にリベールに害なせと依頼された訳でないしね、今回私…というか斑鳩を依頼してきたのは〘共和国政府〙でね」

 

殺気を消し普段通りの表情でそんな事を言ってきた。

 

リィン「カルバートが?SSSクラスの高位猟兵団に依頼する案件?」

 

シズナ「うん、君も知っての通り此処ツァイスは共和国との国境に通じる街道がある。で、その国境を越えた共和国側の都市がバーゼル市」

 

フローラ「カルバートを代表するメーカー、ヴェルヌ社の本社とバーゼル工科大学ですね。古くから職人の街としても知られてますが…」

 

シズナ「知ってるなら話しは早いね、で当然バーゼルには兵器開発の側面もある。今回私達が受けた依頼はとある男の捕縛」

 

捕縛…?

 

リィン「一人を捕らえのに高位猟兵団を使う?それなら遊撃士なり、共和国の警察に任せれば良い筈でしょう?」

 

シズナ「……これは他言無用でお願いね、その男ヴェルヌ社の社員何だけどそいつは次期新型主力艦の開発に関わっていてね?あろうことか艦のスペックの事細かく書いた機密文書を盗み出してそれを手土産に帝国に亡命しようとしていてね、既にリベールに入ったらしいんだ」

 

リィン「……はい?まさかその男はわざわざ国境越えてツァイスに入ってると?何故?」

 

シズナ「発覚自体は比較的速かったみたいだけどその男がずる賢いみたいでね。主要道路は封鎖されたけど国境方面は封鎖するのが遅れていたのを突いてまんまとこっちに逃げて来たみたいだよ」

 

リィン「ならもうツァイスに居ないのでは?」

 

シズナ「ところがそうでもないよ、リベールの定期船の運行が停止していた影響で足止め喰らって……お?」

 

突然食堂の照明が消えたがそれだけじゃなく辺り一帯の照明全てが…

 

「おいおい、なんだよ?なんで照明が消えるんだよ!?」

 

「おい!外を見てみろ!何処かしこも明かりどころかエスカレータすら止まってるぞ!?」

 

周りの客から戸惑いの声が挙がってきた

 

リィン「これは…」

 

シズナ「おやおや、暗くなったねぇ…故障かな?」

 

フローラ「いえ…どうやら街中の照明が全て消えた様です」

 

シズナ「う〜ん、どうしたものやら…おや?」

 

「嗚呼あァァァ!何やってんだあの人はぁァァァ!」

 

五分経った時頃全ての照明が復旧したと同時に白衣を着た男性が物凄い速さで通り過ぎていった

 

「おい、マードック工房長だ?あの人が走って行く先って……ラッセル博士の自宅じゃないか?」

 

「なんだ、何時ものか…博士もこりないな〜」

 

人々は何時もの事だと家に入って行った

 

『『……何時も??』』

 

シズナ「アハハハハ!中々愉快な御仁みたいだねぇ…あ、そろそろ返事聞きたいけどなぁ、協力してくれるかい?」

 

リィン「……はあ、判りましたよ。どの道今の話だと両国に余計な火種を持ち込まれるのはごめんですからね」

 

シズナ「お、そうこなくっちゃ、勿論報酬も出すからね。じゃあ明日出発するから」

 

リィン「出発って……何処にですか?」

 

 

 

 

 

 

シズナ「あぁ……エルモ村という温泉のある村だよ。ターゲットは其処に潜伏してるとさ」

 

 

 

 

 

 



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第六十三話

エルモ村はツァイスから見て南に位置する温泉を有する村である。何時もなら硫黄の匂いがするそうだが…

 

リィン「硫黄の匂いが薄いですね…」

 

シズナ「それに湯気も出て無いしどうしたのかな?」

 

其処に事情を聞きに行ったフローラが戻って来た

 

フローラ「どうやら源泉を汲み上げるポンプが故障したようです。今ツァイスから技師を呼んだそうなので復旧は出来るみたいですが…」

 

シズナ「あらら、折角温泉にありつけるかと思ってたのに」

 

リィン「シズナさん…本来の目的忘れた訳じゃないですよね?」

 

リィンのジト目に涼しい顔で

 

シズナ「アハハハハ!勿論忘れてないさ、さっさと仕事終わらせて一風呂浴びたいしね。君は温泉に興味無いかい?」

 

リィン「無いとは言いませんが……で?ターゲットは何処に居るんですか?」

 

シズナ「あぁ…それならウチの〘草〙がそろそろ報告来ると…あ、丁度良く来た」

 

地元の人間らしき男性がこちらにに近づいて来た

 

「こんにちは、『バーゼルから来たのですか?』」

 

シズナ「いや、『龍來(ロンライ)から来たよ』」

 

「お待ちしおりました姫様、目標はこの紙に書いた所に…」

 

さっきまでの笑顔を消し懐から紙を取り出しシズナに手渡す

 

シズナ「ご苦労さま、標的の様子は?」

 

「ハッ…息を潜め怯えております。ここ二〜三日は外にも出ない有り様です。ところでそちらの御仁は……?」

 

シズナ「彼は私の弟弟子だよ。今回の件で手伝って貰う積りだから其処は承知しといて…不満かい?」

 

「いえ、姫様のお決めになった事なら…」

 

シズナ「なら良い、下がって良いよ」

 

男は一礼し音無く去っていった

 

リィン「……斑鳩の者ですか…」

 

シズナ「うん、斑鳩(ウチ)はこういうのも得意でね。他の猟兵団では真似出来無い特色だと自負してるよ」

 

シズナは自慢気に胸を張って渡された紙の内容を確認した

 

リィン「で、何と書いてるんですか?」

 

シズナ「この村外れの空き家に潜んで居るみたいだね。あ、因みにこれが標的の顔写真ね」

 

シズナから渡された写真を見て第一印象は如何にも技術者らしい体格の男が写ってた

 

リィン「……シズナさん、これは本当にSSS級猟兵団が出張る程の依頼ですか?」

 

シズナ「おや?新型艦のスペックを書いた資料の奪還…充分過ぎると思うけど?」

 

リィン「投入する戦力と対象の戦闘力に開きが大き過ぎると思いますが?対象は武術を修めてるのですか?」

 

シズナ「いいや?調べた限り武術のぶの字も関わり無いね」

 

リィン「なら余計に過剰でしょう、さっきの彼も一般人を制圧出来る位の力はあるのでしょう?……何か他の目的があるのでは?」

 

シズナ「……さてね?仮に有ったとしても事実として機密文書の奪還は本物だからね。リィンは奪還に協力してくれれば良いからね」

 

そう言ってシズナは先に歩き始めた…

 

フローラ「宜しいのですか…?何か隠してますよ。彼女?」

 

黙っていたフローラが近づき耳元に囁いた

 

リィン「…思うとこはあるけどね、大体は想像出来る。それよりも一刻も早く対象を捕縛するぞ万が一帝國に亡命等されたら冗談抜きで戦争になりかねん」

 

フローラ「承知しました」

 

そうしてリィンもフローラもシズナの後を追いかけた

 

シズナ「彼処が奴が隠れてる空き家だよ」

 

リィン「空き家の割には手入れが行き届いてますね?」

 

綺麗というか今にも人が住めそうな…

 

シズナ「つい最近までお婆さんが一人で暮らしてたみたいだよ?歳とって心配になった王都に住んでいる息子夫婦の勧めで王都に移り住んだから家財は最低限残っている筈だよ」

 

リィン「なるほど…」

 

フローラ「……確かに人の気配がしますね、どうしますか?グレネードで吹き飛ばしますか?」

 

リィン「やめろ書類ごと木っ端微塵にするつもりか、それに村の人達に迷惑だろうが」

 

シズナ「ま、正面から行こうか、どうせもう逃げられないし」

 

そう言ってシズナは玄関に立った

 

リィン「鍵はあるんですか?」

 

シズナ「無いけれど斬れば問題無いね」

 

シズナは居合いの構えをとり素早く扉を真っ二つに斬った

 

リィン「強引ですね」

 

シズナ「後で部下達に修理させるさ、いいからさっさと終わらせて温泉に入ろうよ」

 

そう言って中に入っていったが中は椅子やテーブル、中身のない本棚があるだけだったが

 

「な、なんだね!君達は⁉人の家に勝手に入って…」

 

写真に写ってた男が部屋の角に怯えながら此方に銃を構えてた。その手には書類が入ってると思しき鞄を抱えながら…

 

シズナ「人の家って…此処は空き家でしょうに、勝手に住み着いた人間に言われたく無いなぁ…」

 

リィン「その鞄を渡して下さい。今なら手荒な真似をしません」

 

「なに…!君達は共和国の回し者か…!?糞!話が違うじゃないか…」

 

リィン「話が違う……?」

 

フローラ「兎も角大人しく持ち出した物を返して投降しなさい。これ以上罪を重ねるのは貴方にとっても不利益ですよ」

 

「ふ、巫山戯るな!私は何も悪くない!悪いのは現場を見ないお偉方だ!開発に時間とコストがかかるのは当たり前なのに無駄な金を削れ、安く仕上げろ、引いた設計図も碌に見ないで毎回やり直しを命じる上司のところなんてもう働きたくもない!」

 

「「……(汗)」」

 

 

フローラ「リィン様これは……」

 

リィン「所謂パワハラというヤツだな…確かに可哀想だが…」

 

シズナ「ま、私達は依頼されただけだしね…その手の文句は共和国の役人に言いなよ。さっさと投降して盗んだ機密文書を返しなよ」

 

シズナは太刀の切っ先を男に向け降伏を勧告した

 

「嫌だ!!誰が好き好んで捕まるか!」

 

男が銃を発砲しょうとしたが…

 

フローラ「だから悪足掻きは…!」

 

リィン「止めろと言ってるだろうが!」

 

「ガッ!?」

 

フローラが素早く男の銃を叩き落としリィンが男の懐に入り顎を蹴り上げた。

 

男は宙を舞い床に叩きつけられ気絶した

 

シズナ「お見事、二人共息ぴったりだねぇ…私は楽出来て助かったよ…うん、間違い無い目的のモノだ」

 

シズナは男が持っていた鞄を回収し中身を確認した

 

フローラ「どうしますか?一応拘束しましたが…」

 

シズナ「あぁ、大丈夫人手はあるからね…居るんでしょ『クロガネ』」

 

 

「お呼びになりましたか、姫?」

 

拘束した男を一瞥して何処からともなく自身の配下を呼び出すシズナ

 

その男は黒装束に仮面を纏い表情が伺い知れないがかなりの実力者だろう…

 

シズナ「悪いけどこの男を連れて一足先にクライアントに引き渡してくれないかな?」

 

シズナは拘束したまま気絶している男の首根っこを掴んでクロガネとやらに渡す

 

クロガネ「承知しました…姫はどうなさるので?」

 

シズナ「私は弟弟子達とエルモ村の温泉に入りたいから宜しく〜」

 

クロガネ「……余り御迷惑をお掛けにならぬように、リィン殿申し訳ない姫様にもう少し付き合ってくだされ。姫様は少々…いや、かなりの温泉好きでしてな。こうなったら意地でも入りたがので…」

 

リィン「はは…本人もそう言ってましたが、そこまでですか…」

 

シズナ「ちょっと、クロガネ!!別に良いじゃないか温泉位…」

 

クロガネ「っと、では拙者はこれで失礼致す」

 

そう言ってクロガネは姿を消した

 

シズナ「全く…まぁ良いやリィン、宿に行こう。温泉、温泉♫」

 



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第六十四話

「あんた達タイミング良いね、丁度今温泉が復旧したとこさね」

 

シズナ「本当かい!!」

 

リィン「シズナさんあんなに目を輝かせて…」

 

フローラ「余程温泉に入りたかったのでしょうね、表情だけ見れば年相応といいますか…」

 

温泉宿に入り女将さん(マオ婆さんで良いと言われた)の言葉に目を輝かせてるシズナにリィン達は苦笑するしかなかった

 

マオ婆さん「おやおや、よっぽど温泉が好きみたいだねぇ…アンタ見たとこ共和国…東方の出だろう?」

 

シズナ「アハハハハ!やっぱり判る?」

 

マオ婆さん「そりゃあそうさ、その太刀やら共和国訛りの言葉を聞いて気付かない訳ないさ」

 

シズナ「それはそうか、で?泊まれるかい?」

 

マオ婆さん「勿論出来るよ……で別々の部屋を…」

 

シズナ「あ、それなんだけど三人纏めて同じ部屋にしてくれない?」

 

マオ婆さん「あら?出来るけど男一人に女二人、しかも二人共別嬪じゃないかあんた達それでも良いのかい?男は狼だよ」

 

シズナ「アハハハハ!大丈夫、彼は私の弟弟子だし、他人が嫌がる事はしないよ」

 

フローラ「私も…リィン様のメイドですので問題ありません」

 

マオ婆さん「あらあら、アンタも大変だねぇ…こんな別嬪さんに信頼されてるんだから期待を裏切らない様にね!…っでどっちが本命なんだい?」

 

リィン「イタッ…!そりゃあそんな無粋な真似はしませんが、本命って…」

 

リィンの背中を笑いながらバシバシ叩きながらそんな事を言ってきた

 

マオ婆さん「そりゃあアンタも男だから好みの女の子位居るだろう?しかも二人共別ベクトルの別嬪さんと来た。これで興味無いなんて事はないだろう?っでどっち…」

 

「ただいまー!マオお婆ちゃん」

 

突然聞き覚えのある声が聞こえてきた

 

マオ婆さん「おや、ティータお帰りポンプ修理ありがとうねぇ無事に温泉出てきたよ」

 

ティータ「えへへ…あれ?お客さん、っていうかお兄さんは…」

 

エステル「あれ?リィン、フローラさん…それにシズナさんも?」

 

ヨシュア「何時リベールに来たんですか?」

 

シズナ「お〜エステルにヨシュア久しぶりだねぇ、元気そうで安心したよ」

 

シズナはそう言ってエステルに近付いてエステルを抱きしめた

 

エステル「うわっぷシ、シズナさんちょっと苦しい…////」

 

シズナ「うんうん、無駄な筋肉は無く鍛えているみたいだね。それでいて女らしい柔らかさは損なわれていないね」

 

ティータ「は、はわわわ…!////」

 

ヨシュア「シズナさんその位にして…仕事ですか?」

 

シズナ「ん?まぁそうだけどもう終わったよ。安心しなよ君達が危惧するような件ではないから…」

 

ヨシュア「リィン、そうなのかい?というか君も…」

 

リィン「まぁ事実だ、二人と別れた後宿でシズナさんに会ってな…助力を頼まれた訳だけど大丈夫、危険はないよ」

 

ヨシュア「そう……」

 

マオ婆さん「なんだいあんた達知り合いなのかい?」

 

リィン「あー…確かに知り合いですがこの娘…ティータとシズナさんは初対面ですね」

 

シズナ「そういえばこの娘はどうしたんだい?お使いの護衛依頼でも受けたのかい二人共?」

 

エステル「まぁ確かに護衛依頼だけどこの娘ただの子供じゃないわ」

 

ヨシュア「ラッセル博士の孫娘です」

 

シズナ「へぇ~!!あのラッセル博士の…」

 

ティータ「あのあの…!ティータ・ラッセルです!宜しくお願いします」

 

シズナ「おやおや、礼儀正しく可愛らしい娘だこと…私はシズナ・レム・ミスルギ、共和国から来たんだ宜しくねティターちゃん」

 

そう言ってシズナはティターの頭を撫でた

 

ティータ「あ、はい!宜しくです…」

 

フローラ「さっき護衛依頼と言いましたがもしかしてポンプ修理の技師を?」

 

エステル「あ、そうですけど修理したのはこの娘…ティターてすよ」

 

フローラ「あら…?なんでこの娘に修理を?」

 

ティータ「えっと、温泉を汲み上げるポンプはお爺ちゃんが四十年前に設置した初期型なんです…だからメンテナンス出来るのは私かお爺ちゃんしかいなくて、お爺ちゃん今黒いオーブメントで忙しいから…あ!」

 

ヨシュア「大丈夫リィン達も知ってるから…シズナさんは」

 

シズナ「私は興味無いからなんにも聞いてないよ?」

 

ヨシュア「…助かります。それでティターが代わりに修理に来たという訳です」

 

マオ婆さん「何だか良くわからないけど知り合いならティター達も泊まってきなよ」

 

ティータ「え…?でもお爺ちゃんが心配するかも…」

 

マオ婆さん「大丈夫さ、さっきラッセルから連絡があってね、今日一晩泊めてやってくれって頼まれたんだよ」

 

ティータ「お爺ちゃんが?」

 

マオ婆さん「あぁ、だから安心して泊まって行きな勿論あんた達もね」

 

エステル「へぇ~、ラッセル博士気が利くじゃない」

 

ヨシュア「ならお言葉に甘えようかな」

 

マオ婆さん「あぁ、遠慮しなくても良いよ、二階の『柚子の間』っていう部屋に荷物を置いておきな、夕飯迄には時間あるしその間にお風呂に入りな」

 

エステル「えっと、ご飯の前にお風呂?お風呂は寝る前に入るものじゃ…」

 

シズナ「チッチッチ、甘いよエステル温泉は何度入るべきだよ私は一日三回入るよ」

 

マオ婆さん「その通りさね!折角の温泉なんだから楽しまなきゃ損だよ」

 

エステル「そ、そうなんだ…なんかのぼせそうな」

 

ヨシュア「とりあえず部屋に荷物を置いたら早速行ってみようか」

 

マオ婆さん「あぁ、あんた達の方はティター達の隣の『金柑の間』を使って良いからね」

 

リィン達にマオ婆さんはそう言った

 

リィン「ありがとうございます」

 

シズナ「それじゃあ部屋に荷物置いたら温泉に行こ♪」

 

そうして二階に上がりそれぞれ割り当てられた部屋に入った

 

リィン「へぇ…中も東方風なんだ」

 

フローラ「異国情緒ありますね」

 

シズナ「多分あのお婆さん東方出身だと思うよ名前もあっちの響きだし」

 

リィン「確かにそんな感じですね」

 

フローラ「どうしますか?夕飯の前にお風呂入りますか?」

 

リィン「そうだな、折角の機会だし温泉に入ろうか」

 

シズナ「じゃあ荷物置いて早速行こう♪」

 

荷物を置いて部屋を出たらエステル達も出てきた

 

リィン「あ、そっちもこれから?」

 

エステル「うん、それで温泉ってどこにあるの?」

 

ティータ「あ、裏手にある離れがお風呂専用になってるんですよ。奥には大きな露天風呂もあるんです」

 

シズナ「お!良いねぇ、最高だよ」

 

ヨシュア「露天風呂っていうと…野外に造った風呂場だね」

 

エステル「へぇ〜なんか面白そう」

 

そう言って全員で離れに向かい途中で東方風の庭を見かけた

 

エステル「へぇ〜これが東方の庭なんだ」

 

ヨシュア「風流だね、本場もこんな感じですか?」

 

シズナ「うん、大体そうだね。でもこの様式は極東と呼ばれる地の様式だね龍來(ロンライ)のとは少し違うかな?」

 

エステル「へ〜、本場も見てみたいわね」

 

シズナ「正遊撃士になってカルバートに来る用事があったら案内してあげるよ」

 

「あれ〜エステルちゃんだぁ〜」

 

風呂場に続く廊下から間の抜けた声が聞こえ一人の女性が近付いてきた

 

エステル「あれ、ドロシー?」

 

ドロシー「エステルちゃん達も入りに来たの〜?」

 

エステル「まぁね、アンタ先に入ってたみたいね?」

 

ドロシー「うん〜ここの温泉とっても快適だから〜ついつい長く入るんだ〜お陰で少しのぼせ気味〜って、わわ!エステルちゃん少し見ない間にすっごい大所帯になったね〜?」

 

エステル「あはは、確かに私もそう思うわ…」

 

ドロシー「初めまして〜リベール通信社のカメラマンを務めてるドロシーと言います〜」

 

ティータ「あ、私はティータって言います」

 

リィン「俺はリィンと言います、帝国から来ました」

 

フローラ「フローラです、リィン様のメイドです」

 

シズナ「私はシズナだよ、共和国から来たんだ宜しく」

 

ドロシー「こちらこそ宜しくお願いします〜あ、そうだエステルちゃん達もこの旅館に泊まるんだよねぇ、良かったら一緒に食事しない?」

 

エステル「あ、良いわね。みんなはどう思う?」

 

「構わないかな?」

 

「特に断る理由もありませんし」

 

エステルが話を振ってきたが断る理由もないから全員承諾した

 

ヨシュア「じゃあ僕達が上がるまで待っててください」

 

ドロシー「うん、フルーツ牛乳飲みながらまってるから〜それじゃあまた後でね〜」

 

そう言ってドロシーは本館に入って行った

 

リィン「のんびりした人だな」

 

エステル「あれでもカメラマンとしては一流だって、因みにリィンはナイアル覚えてる?アイツのパートナーがさっきのドロシーなのよ」

 

リィン「成る程」

 

ヨシュア「まぁそれは後で、風呂場に行こう」

 

そして風呂場の入り口に着いた

 

エステル「えっとここがお風呂の入り口なのよね?」

 

ティータ「はいそーです、こっちが女湯で手前にあるのが男湯です」

 

エステル「あ、別々なんだ…そりゃあそうよね、着替えたりするわけだし」

 

ヨシュア「コホン…それじゃあ四人とも一旦ここでお別れだねね」

 

エステル「うんまた後でね」

 

ティータ「失礼します」

 

フローラ「リィン様また後で」

 

シズナ「温泉♪」

 

リィン達は室内風呂で寛いでいた

 

リィン「あ〜生き返る〜シズナさんが勧めるの分かるわ〜」

 

ヨシュア「本当だね…ねぇリィン、その胸の傷…一体なにがあったのさ?相当な深手だよそれ…」

 

リィン「あ〜少し…ね?これはまだ言いたくはないな」

 

ヨシュア「…ごめん、変な事聞いた」

 

リィン「気にする必要無いさ、何時か話すさ」

 

ヨシュア「うん…僕は露天風呂に行くよ。リィンは?」

 

リィン「俺はもう少し内風呂を堪能するさ」

 

エステルSide

 

エステル「はぁ〜…」

 

シズナ「どうしたんだい?エステル、溜息ついてさ?」

 

エステル「いや…だってシズナさんとフローラさんスタイル良いじゃないですか、私もそこそこあると思ってたけど…」

 

胸とか腰とか肌とか…

 

フローラ「別にエステルさんも充分魅力的だと思いますよ?成長期ですからまだまだかと…」

 

シズナ「そうそう、第一他人と比べたって意味無いよ」

 

エステル「そうかなぁ…?」

 

ティータ「あの…エステルさん?」

 

エステル「ん?どしたのティータちゃん?そんな改まって…」

 

ティータ「あのあの、エステルさんはヨシュアさんとおつき合いされてるんですか?」

 

エステル「……ぇ゙、いやいや!ヨシュアは父さんの養子だから!血は繋がって無いけと家族だから!」

 

シズナ「でも所詮養子だからね〜その気になれば結婚出来るしね〜」

 

エステル「シズナさん!!?」

 

フローラ「確かに養子縁組を解消してからおつき合いすれば何の問題もありませんね」

 

エステル「フローラさんも!?何言ってるんですか!!////」

 

シズナ「いや、エステル大真面目な話ヨシュアに好意抱いてるでしょ?」

 

エステル「はう!?」

 

ティータ「そうなんですか?」

 

フローラ「えぇ…ただご覧の通り距離が近すぎて一歩踏み出せないみたいですが…」

 

エステル「〜〜!!わ、私少しのぼせたから露天風呂に行くね〜!」

 

ティータ「あ、エステルさん露天風呂は混浴…なんですけど、行っちゃった…」

 

 

 

露天風呂でエステルがヨシュアと鉢合わせして悲鳴をあげたのは三分後だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第六十五話

リィン「呆れたな…混浴だってデカデカと書いてたろう?」

 

事の次第を聞いたリィンは夕飯の漬物を齧りながら呆れていた

 

エステル「うぅ……言わないでよ〜すっごく恥ずかしかったんだから〜」

 

エステルは汁物を口にしながら言った

 

シズナ「アハハハハ!…まぁ湯着着てたから厳密には裸じゃないから見せてないから良いじゃないか?あ、この煮魚美味いねぇ」

 

エステル「よ、良くないですよ!…湯着着てたからと言ってもヨシュアの…は、裸を///」

 

フローラ「ですが不幸中の幸いで他の客は居なくて我々だけで良かったですね。遊撃士が旅館でお騒がせしたなんて洒落になりませんからね。あ、リィン様お代わりをよそいますか?」

 

リィン「ありがとう」

 

エステル「ウグッ!?た、確かにそうだけど…それでも乙女の恥じらいというものが…」

 

ヨシュア「エステルは自業自得だよ、まぁ……今回恥かいたからもう同じヘマしなければ意味はあったんじゃない?」

 

エステル「それは…そうなんだけど、というか何でヨシュアはそんなに冷静なのよ?」

 

エステルはジト目で冷やっこを食べているヨシュアにツッコミをいれた

 

ヨシュア「別に…というかあそこまで驚かれるのは少々納得いかないけど…」

 

エステル「だ、だからそれは…!」

 

ティータ「え、エステルお姉ちゃん、ヨシュアお兄ちゃんもケンカは駄目だよぅ…」

 

ティータが仲裁に入ろうとしてるが、というか…

 

リィン「随分親しくなったみたいだな?」

 

エステル「あ…えへへ、ちょっとね。色々お話ししてね」

 

リィン「仲良いのは良い事だ。」

 

エステル「何でリィンが生暖かい眼で見るのよ…」

 

ティータ「あ、あの!リィンさんってお姉ちゃん達とはどういう関係何ですか?フローラさんもメイドと言ってますけど貴族か何かですか?」

 

リィン「ん?あぁそうだね、俺は八葉一刀流という剣術を使うけど師はユン・カーファイ、その弟子がエステルの父カシウス・ブライト大佐、そしてその弟弟子が俺という訳だよ。因みに俺は貴族ではないし、フローラは…まぁ偶然の成り行きでね」

 

フローラ「リィン様とは十年以上お仕えしていますね」

 

シズナ「因みに私はリィンの姉弟子に当たるわ〜」

 

ティータ「そ、そうなんですか?その年で弟子入りなんて凄いです…!」

 

シズナ「そう?私達の感覚からすれば君の方が凄いと思うけどね?」

 

ティータ「ふぇ?」

 

フローラ「ですね、貴女の歳であのラッセル博士の側で学び、今回の様なポンプ修理をこなせる子供は居ませんから…」

 

 

ティータ「そう…でしょうか?全然自覚はありませんが…」

 

リィン「まぁ『隣の芝生は青い』とは違うかもだが自分とは違う分野で頑張ってる人を見るとそう感じるのも無理はないかもね…さてと、ご馳走様」

 

リィンは箸を置いて立ち上がった

 

エステル「あれ?リィンもう寝るの?」

 

リィン「まさか、また温泉に入ってくるよ。何度も温泉に入れる機会なんてそうそうないからね。エステル達はどうする?」

 

首だけ振り返りそう言ってエステル達に尋ねた

 

ヨシュア「僕達はもう少し此処で会話してるかな?遠慮せずに入って来ればいいさ」

 

リィン「ならそうさせて貰うよ」

 

食堂を後にして再び浴場に向かった。因みにカメラマンのドロシーは一緒に食事を摂っていたが食べ終えたら直ぐに船を漕いでいた…

 

リィン「ふう、気持ちいい……露天風呂なんて前世でも数える位しか入っていないから余計にな…それにしても…」

 

リィンは顔を上げ夜空を見た。排気ガスが無く汚れていない、綺麗な星空…

 

 

リィン「………」

 

フローラ「リィン様」

 

後ろを振り向くと湯着を纏ったフローラが立っていた。その姿は正に絵に書いたような美女

 

フローラ「隣、よろしいですか?」

 

微笑みながらそう言って歩いてきた

 

フローラ「ふぅ…いい湯です。私は疲れなんて感じない筈ですが身体が軽くなる様な気がします…アンファングにも温泉設置しようかしら?」

 

リィン「ハハ、それは良いなスペースは余ってるしな…流石に効能は再現出来無いよな?」 

 

 

フローラ「いえ、出来ますよ?打ち身、切り傷、打撲、冷え性、美肌、肩こり、火傷…あ、何なら若返りも…」

 

リィン「それはやめとけ(汗)確実に面倒な事が起きる…」

 

フローラ「?そうですか、しかし本当にいい湯です。龍來(ロンライ)の温泉とやらも是非行ってみたいですね」

 

リィン「そうだなぁ…向こうの温泉も機会があれば行きたいものだな」

 

「それなら私が案内してあげるよ。良い穴場を知ってるし」

 

二人揃って入り口を見ればシズナが入ってきた

 

リィン「シズナさん…」

 

シズナ「やぁリィン私も隣に入らせてもらうよ?」

 

リィンを真ん中にして右側にフローラ、左側にシズナと挟まれて風呂を入った

 

シズナ「いや〜エルモの温泉はいいね〜ご飯も美味しかったし、それに…リィンどうだい?美女二人に挟まれて温泉に入るのは約得でしょ?」

 

リィン「二人が美女なのは認めますが…何か用があるのでしょう?」

 

シズナ「おや?私はただ可愛い弟弟子の背中を流しに来ただけだよ?」

 

リィン「その言葉も嘘では無いから余計にタチが悪いですが、今回の機密文書の強奪犯…アレ本当はあの男一人の犯行ではないでしょう?」

 

シズナ「……彼奴は開発班のメンバーだよ。盗むぐらい訳無いでしょう?」

 

リィン「唯の研究員がたった一人で共和国軍やリベールの国境警備隊の目を掻い潜り密入国したと?」

 

シズナ「………」

 

リィン「何らかの組織が手引きしてエルモの村に来たとしか思えません。実際あの男も言いましたよね?『話が違う』と……シズナさん…なにを隠しているんですか?」

 

シズナ「…はあ〜やれやれ、まぁ確かに用はあるよ?他言無用でお願いね?」

 

シズナはリィンの正面に回り顔を近づけながら言った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シズナ「革命家気取りのテロリスト共を捕縛……これが本当の依頼さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第六十六話

ー 翌日 ー

 

エステル「じゃあ私達はお先に失礼するけど……うぅ、良いなぁ〜リィン達まだ此処に居るなんて…」

 

ヨシュア「しょうがないじゃない、僕達は仕事なんだから、それにリィンも用事あるみたいだしね

 

一泊したエステル達はツァイスに戻る為に出発する事になりそれをリィン達は見送る事になった

 

シズナ「アハハハハ!まぁ私も『仕事』が残ってるからねぇ、リィンにはその手伝いを頼んだのでね…終わったらまた入ろうかな?」

 

ヨシュア「……リィン本当に大丈夫なのかい?何ならティータをツァイスに送り届けたら僕達も……」

 

リィン「大丈夫、シズナさんは無茶な頼み事はしない…いや偶にするかな?」

 

シズナ「おや心外だね?可愛い弟弟子を騙す訳無いじゃないかい」

 

ドロシー「うぅ〜シズナさん、フローラさんやっぱりウチのモデルになってくれませんか〜?お二人の美貌なら間違い無く表紙に飾れますよ〜?」

 

リベール通信社のドロシーは二人の美貌に注目してリベール通信の専属モデルに誘っていたが…

 

フローラ「興味ありません」

 

シズナ「右に同じく、撮られたくないし」

 

ドロシー「そ、そんな〜」

 

にべも無く断られたが…

 

フローラ「それより、エステルさん達はツァイスで引き続き例のモノの解析に動くんですよね?」

 

ティータ「あ、はいお爺ちゃんが今も『ゴスペル』を真っ二つにしてでも解明しようとしてる筈です…丸ノコ何本駄目になったかな?」

 

フローラ「そう……(まぁ材質が低いとはいえゴスペル、そう簡単にはいかないでしょうね)」

 

エステル「?フローラさん…?」

 

フローラ「何でもありません。それよりそろそろ出発した方が良いのでは?」

 

エステル「あ、それもそうか」

 

ヨシュア「それじゃあ僕達はこれで…」

 

リィン「うん、じゃあまたな」

 

そうしてエステル達はエルモ村を発った。

 

リィン「さて…聞かせて下さい。昨晩の話の続きを…」

 

シズナ「まぁもう少し待ってくれない?まだ役者が揃ってないから」

 

リィン「役者……?斑鳩の者じゃなく?」

 

シズナ「そっちは別口、そろそろ着く頃だけど……」

 

「悪い、待たせたな」

 

振り向くと村の入口から熊みたいに大きな男が歩いてきた

 

シズナ「やぁ、随分遅かったね」

 

「勘弁してくれ、こっちはエルモ村なんて来た事ないんだからな……で?そっちの坊主と麗しい御婦人は?」

 

シズナ「彼は私の弟弟子さ、八葉のといえば判るかな?」

 

「おお!カシウスの旦那の弟弟子か!噂は聞いているぜ!『八葉の最後の弟子』!」

 

大男はリィンに近寄りその背中をバシバシ叩いた

 

リィン「ぐ……!?貴方は…?」

 

「ん?おぉ!自己紹介がまだだったな」

 

ジン「カルバート共和国遊撃士協会所属のジン・ヴァセックだ宜しくな」

 

村の旅館の共用スペースで話をする事になった

 

フローラ「B級遊撃士ですか、凄いですね…」

 

ジン「いやいや!まだまだですよ!しかしお嬢さんの様な美女に褒められるのは悪い気がしませんなぁ~」

 

リィン「……で、B級遊撃士の貴方がどうして此処に?」

 

ジン「あぁ、俺は温泉と王都に用事があったんだ……『表向き』にはな」

 

リィン「依頼がそうだと?」

 

ジン「………話したのか?」

 

シズナ「安心しなよ、腕は確かだし裏切る心配も無いよ。何より老師の弟子だよ」

 

ジン「………判った、ならついて来てくれ。歩きながら話す」

 

ジンはベンチから立ち上がり歩き出した

 

リィン「何処に向かうんです?」

 

首だけ振り返り答えた

 

ジン「テロリスト共の拠点さ」

 

村を出てトラット平原道を歩きながらジンさんが話し始めた

 

ジン「知っての通りカルバート共和国は百年前の革命によって王政を倒して建国された国家だ。市民はそれ自体は誇りにしてるしそれは問題無いんだが困った事にごく一部過激な共和主義者が居る」

 

ジン「そいつ等は世界革命とやらを掲げリベールやエレボニア等の封建国家を滅ぼし共和国家を樹立するという馬鹿げた主張をしている一団なんだ」

 

リィン「それは……リベールは共和国にとっても友好国で女王陛下が善政を敷いてる国なのに」

 

シズナ「彼奴らはそんなのは関係ないんだろうさ、で困った事にこの主張に賛同する人間は決して少なくない」

 

「はぁ…?そんなのが支持されるんですか?」

 

ジン「実はこの主張はかなり昔からある話でな、なまじ革命が成功したから他国にも共和主義を広めようという活動は共和国成立直後からあったらしい」

 

フローラ「勢力としては小さくとも革命という熱はカルバート人には受け入れ安い……と言った処でしょうか?」

 

ジン「概ねそんなとこだろう、だが当然共和国政府はこんな主張を認める訳が無い。各国の王族や帝室を根絶やしするなんてほざく勢力を支援する理由も無いし、下手をしなくても共和国自体のイメージが最悪になってしまう。それは避けたいから政府は奴等の政党の結党を認めずに非合法化したんだ。だが先程も言ったが支持者は決して小さくなくてな……」

 

シズナ「軍内部や研究者にも賛同者が居てね、そいつ等が不満を持っていた研究員を唆して機密文書を強奪を手助けしてたのさ」

 

リィン「そして強奪犯をわざとリベール側に逃がしてリベールが機密文書を強奪したと罪を擦り付け大義名分を手に入れ影響下にある軍部隊を動かしてリベールに侵攻する…ってとこですか?」

 

シズナ「ま、そうだろうね。唯これは成功しようがしまいがどっちでも良かったらしい」

 

リィン「と言うと?」

 

ジン「テロリスト共は既にこのリベールに潜伏しているのさ、そして狙いは女王生誕祭だ」

 

リィン「……成る程、それで遊撃士と猟兵が手を組んだ訳ですね」

 

ジン「まぁな、共和国内は警察や遊撃士で対処出来るが流石にリベールではな、無論リベール側にも伝えているが共和国の恥は出来るだけ共和国人で片付けたいと政府が依頼してきてな?猟兵(そっち)との共闘は条件付きだがリベールも黙認の上で現在行動してる訳だ」

 

シズナ「因みに斑鳩(ウチ)は今回殺しは厳禁の条件でリベールとカルバート政府と合意して依頼を受けたよ」

 

フローラ「……強かですね、リベール王国は猟兵の運用は厳しい筈なのに」

 

ジン「ま、理想だけではどうにもならない事は多々あるからな…と着いたぞ」

 

 

其処は『紅蓮の塔』とヴォルフ砦の間にある大きめの小屋だった

 

リィン「ここにテロリストが?」

 

ジン「あぁ、そっちの斑鳩の姫さんの手の者の情報ではな」

 

シズナ「それは大丈夫さ、奴等に潜り込んだ〘草〙が逐一報告してくれたからね」

 

フローラ「では作戦はどうしますか?」

 

ジン「この人数だ、下手に作戦など言っても取りこぼすのがオチだ。真正面から行くさ」

 

そうしてジンさんはスタスタ歩いて扉の前に立つと

 

ジン「葩ァ!」

 

扉を正拳突きで破壊して乗り込んだ…

 

リィン「それで良いのか?B級遊撃士…」

 

シズナ「アハハハハ!私はこっちの方がわかりやすくて良いけど?」

 

フローラ「とりあえず中に入りましょう」

 

続いて中に入ると二、三十人程の人間がいた

 

「な、何だ!?貴様らは!俺達を誰だと…」

 

ジン「俺は遊撃士だよ、お前さん達を捕まえに来たんだよ。テロリスト共が…」

 

「な!?遊撃士だと…我等の革命の邪魔をするというのか!?」

 

シズナ「革命……ねぇ…?そこの大量の爆薬を仕込んでどうする積りかな?」

 

奴等の足元には爆薬を詰めた樽が何個も置いてあった

 

「決まっている!愚かにも未だに王政を維持しているリベール王国に正規の鉄槌を下すのだ!」

 

ジン「巫山戯た事を抜かすな、リベールは友好国であり民衆にも慕われてる女王を害する理由等無いだろうが!」

 

「それがどうした?王政等という古い体制にしがみつく特権階級など裏では民衆を搾取することしか考えん!リベールとて同じだろうが!」

 

フローラ「百年前のカルバート王国と同列にするのはどうかしてると思いますが?大体正義と言ってますがその爆薬を使えば無関係の市民まで犠牲になりますが」

 

「ふん!大義の為なら多少の犠牲はやむを得ないんだよ!アリシア女王とクローディア姫を殺し……ッてグハァ!?」

 

リィンは問答無用で男の顔面に太刀の入った鞘を叩きつけた

 

シズナ「ヒュウ♪」

 

「リーダー!?テメェなにを…」

 

リィン「黙れ……さっきまでは怪我をしたく無かったら投降を勧告しょうかと思っていたが…少々頭にきたのでな、腕の一本や二本折れる覚悟しろ!一人残らず叩き潰してやる!」

 

 

 

 

 

 

 

 



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第六十七話

「叩き潰すだぁ〜!?笑わせんな!我等の革命をテメェ見たいなガキに………!ギャ!?」

 

五月蝿い馬鹿の顔面に正拳突きで黙らせてやった。顔が陥没して歯が何本か折れたようだが生きているから問題無いだろう…

 

リィン「革命、革命とバカの一つ覚えみたいに…それしか貴様らの辞書には載ってないのか?」

 

「黙れや!死……」

 

ジン「余所見とは随分余裕だな?」

 

「な!?グハァ!」

 

いつの間にか距離を詰めたジンさんが男のみぞおちに体重を乗せたアッパーを喰らわせ男の意識を刈り取る

 

ジン「やれやれ、先走り過ぎるぞ?」

 

リィン「すいません、どうしても我慢できなかったので…」

 

ジン「ま、どの道奴等は投降する気は無いみたいだしな…無力化するぞ!気合い入れろ!」

 

リィン「はい!」

 

「調子乗るな!蜂の巣になりやがれ!」

 

テロリストがライフルを構え発砲する

 

リィン「疾!」

 

リィンは抜刀して銃弾を弾く 

 

「は、はぁ!?銃弾を弾くだとぉ!?」

 

リィン「この程度の銃弾を弾けないようでは剣士を名乗れないのでな!」

 

「ふ、巫山戯んな!そんなチートキャラ居て堪るか!」

 

テロリストは叫びながら乱射していたがリィンは弾きながら近づく

 

リィン「貴様が信じようが信じまいがどうでもいい、さっさと行動不能にさせて貰う!八葉一刀流、二ノ型〘裏疾風〙(峰打ちバージョン)!」

 

「ぐぎゃぁぁぁぁ!」

 

リィンの太刀は峰にしてテロリストの脇腹に叩き込んだから生命には別状無いが肋骨は二、三本はへし折れ激痛にのたうち回った

 

ジン「お~い、やり過ぎるなよ?」

 

ジンさんはそう言いながら敵二人を軽々と吹き飛ばしていた

 

「ヒイ!…何だ!あいつ等は……?」

 

「ば、化け物か…!」

 

「こ、こうなったらあの女達を人質にするぞ!どうせ女はたいした事は……」

 

シズナ「おやおや女だからって侮るのは心外だねぇ、今の時代女も戦えるんだよ?」

 

シズナ達に近付き人質に取ろうとしたテロリスト達の懐に入ったシズナは掌底で敵の顎を突き上げ、男の一人を蹴り飛ばした。

 

「ガアッ!」

 

シズナ「せい!」

 

次に膝蹴りを敵の腹に叩き込んでから飛び蹴りで更に二人倒す。

 

「ぎゃっ!」

 

「ぐっ」

 

あっという間に三人倒したその動きに誰もが呆然とした。

 

シズナ「あんた達程度、太刀を抜くまでも無いね。ほらどうしたの、かかってきなよ?それとも素手の女が怖いのかい?」

 

敵を挑発しているがシズナの足元に倒れてる味方を見てテロリスト達は二の足を踏む

 

「な、なんだよこの女!」

 

「お、おい!逃げようぜ!?」

 

フローラ「逃がすとお思いですか?」

 

恐れをなして逃げようとした敵の前にフローラが立ちはだかった

 

「ちっ、退けぇ!権力者に尻尾を振る売女がぁ!」

 

テロリストがフローラに掴み掛かろうとしたが…

 

フローラ「せいっ!」

 

「な!ガハッ!?」

 

フローラは素早くテロリストの腕を掴み背負投げをし床に叩きつけた。男は背中から諸に入りたまらず肺の空気が全て抜け意識を失った

 

フローラ「汚い手で触らないでください、私に触れていいのはリィン様ただ一人なのですから…さて?」

 

「ヒィ!…」

 

フローラ「襲い架かってきた側が何を怯えてるんですか?暴力を用いて来たのですから自分達が暴力で怪我するのも覚悟の上でしょう?」

 

「あ…う…」

 

フローラ「はぁ…もう良いです、寝てなさい!」

 

「ぐぇ…!?」

 

フローラは溜息をつくと敵の頭に踵落としを叩き込み沈黙させた

 

シズナ「お見事、メイドにしてはやるねぇ『斑鳩』に興味無いかい?」

 

フローラ「生憎、リィン様のメイドである事に不満はないですので…それより害虫がまだ居ますよ?」

 

「誰が害虫だ……ぎゃ!?」

 

「このアマ……、ぐわッ!」

 

 

フローラは倒した敵の懐から銃を拾い素早くチェックを済ませ射撃を開始し肩や脚を撃ち抜きテロリストを行動不能に追い込む

 

 

シズナ「おや残念、リィンも忠誠心厚いメイド持って幸せだねぇ…ま、私も契約分の仕事しますか」

 

シズナも負けじと敵を蹴散らしにかかった。そこからは四人による蹂躙劇が始まった…テロリスト側が圧倒的に人数が多かったが遊撃士やプロの猟兵も居る相手には敵わず全て拘束され、テロリスト三十七名の内生命に別状は無いものの重傷者二十五名、軽傷者九名、無傷で投降した者が三名という有様だった。

 

「なじぇ革命の邪魔ヺずる…!?」

 

最初にリィンが顔面を潰したテロリストのリーダーが縛られた状態でまだそんな事を抜かす…

 

リィン「……はあ〜呆れたな、まだそんな事を言うとは…大体革命が成功したとして貴様らはどういう政府を目指す積りだったんだ?」

 

「ぞれば勿論身分差が無い゙平等の゙社会を゙…」

 

リィン「……馬鹿か貴様?身分差が無い社会なぞ不可能だろうが…」

 

 

「ば?な゙に゙を゙言っで…?」

 

リィン「尋ねるが貴様の母国カルバートの一番偉いのは誰だ?」

 

「ぞれば勿論大統領……あ゙れ゙?」

 

リィン「そう、大統領だこれも立派な身分だよな?王政だろうが共和制だろうが人が集まり組織を創れば必ず上下関係が発生する。その時点で平等なんて無い、どんな組織もな…」

 

シズナ「ま、そうだろうね私達猟兵も団長とかなんやらの区分あるしね。それが当たり前だし可笑しいとは思わないかな?」

 

ジン「遊撃士協会も似たようなもんだな、纏め上げる上役が居るからこそ協会が成り立つ…」

 

フローラ「そう言う意味では貴方達の言う身分差の無い社会とやらは夢物語ですね……」

 

リィン「そう言う事だな」

 

「何言っでる!テメェ等さえ邪魔じなければ良がったんだ!」

 

ジン「はあ……どの道お前等はもう終わりだよ」

 

「ふざげんな!な゙に゙を゙根拠に…」

 

ジン「今頃カルバート本国では密かにお前等の仲間の検挙が始まっているぞ」

 

「な!?嘘だ!そ、それは……」

 

ジン「嘘じゃない、とっくに準備は整ってたからな。お前達の暴走を鎮圧する為にな……今頃は全員捕まっているだろうよ」

 

「そ、そんな……俺達の野望がぁ……」

 

リィン「だから夢物語と言ったんだ。お前達みたいなテロリストの言う革命は民の為ではなく自らが権力者に為りたいが為の物、貴様らは唯の犯罪者に過ぎないんだよ!」

 

「……あ………」

 

その言葉を聞いたテロリスト達は拘束されたまま戦意喪失して項垂れてしまった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第六十八話

上手く書けないなぁ…


拘束したテロリスト達はヴォルフ砦にてカルバート軍に引き渡され(リベール守備隊は通達があったらしく粛々と任務を果たしてた)小屋に遺された武器弾薬類はリベール軍によって処分され依頼は達成したリィン達はエルモ村に戻り…

 

ジン「今日はありがとうな、宿の食事宿泊は俺が奢るから遠慮なく食ってくれ!」

 

ジンさんの奢りで飲み食いする事になった…

 

シズナ「アハハハハ!良いねぇ、流石は『不動のジン』と言った処か太っ腹だねぇ」

 

シズナさんは手酌で大吟醸を猪口に注いで……え?

 

リィン「あの……シズナさん?確か俺と歳一つか二つしか違わない筈では…?」

 

シズナ「うん?私の生まれた地では齢十六から飲酒は出来るし、斑鳩でも飲んでるよ?だから問題無し!」

 

リィン「問題しか無いでしょう……」

 

ジン「済まんなアイスフェルト、今回の仕事は公には出来無いからお前さんには遊撃士協会から報酬は出せなくてな。代わりと言ってはなんだが遠慮なく食ってくれ」

 

ジンさんは既に空になった盃を手にしながらリィンに言った

 

リィン「いえお役に立てたのなら良かったです」

 

フローラ「リィン様お注ぎします」

 

リィン「あぁ、有難う」

 

フローラがジュースを注いでくれた

 

ジン「ハハハハ!こんな美人さんに注いで貰うなんてアイスフェルトも隅におけんなあ?」

 

 

シズナ「おや?『不動』殿、他の女をナンパしているなんて知られたらかの≪飛燕紅児≫殿が嫉妬するんじゃないかな?」

 

ジン「お、おい、どうしてそこでアイツが出てくるんだよ!(汗)というか何故知って…」

 

フローラ「≪飛燕紅児≫?」

 

シズナ「『不動』殿と同じ泰斗流の使い手の方さね、噂だとツァイスのギルドの受付をしてるとか……」

 

ジン「だからアイツとは何にも無いっての!?というかそう言うお前さんはどうなんだ、ミスルギ!?」

 

シズナ「私?そうさねぇ……私はリィンに興味あるかな?弟弟子としても、男としても…その『秘密』にも…ね?」

 

シズナは獲物を見る様な顔をしてリィンを見つめていた

 

リィン「……斑鳩には入りませんよ?」

 

シズナ「それは残念、でも諦める積りもないけどね?」

 

ジン「おいおい、未来ある若者を誑かすな」

 

シズナ「誑かすとは人聞きの悪い事を言うね?彼の剣を活かす職場を紹介しているだけさ」

 

ジン「それを言うなら遊撃士だって活かせる職場だぞ?どうだアイスフェルト、遊撃士はアットホームな職場だぞ?」

 

 

シズナ「アットホーム?人手が足りなくてしかも依頼が多くて捌くのが追いついていないブラックな環境の間違いじゃないのかい?」

 

ジン「猟兵だって同じだろうが、どんな依頼も受けるから生命の保証が無いだろう」

 

双方酒を呑むペースが早くなり顔を紅くしながら言い争いしていた

 

シズナ「……埒が空かないね。此処は飲み比べといこうかね?」

 

ジン「おぉ、受けて立つぜ!おい店主!済まないが酒をどんどん持ってきてくれ!」

 

あれやこれやと酒瓶が運ばれ呆然とするリィン達の前で二人して飲み比べを始めた

 

 

リィン「……外に出るか?」

 

フローラ「……ですね」

 

リィン達は店から出て近くのベンチに座った

 

リィン「やれやれ…」

 

フローラ「今日はお疲れ様でした。リィン様」

 

リィン「全くだ…革命なんて馬鹿な真似をして…フローラ聞いて良いか?」

 

フローラ「?ハイなんでしょう?」

 

リィン「フローラ達古代ゼムリア文明の人達の政治体制はどんなのだったんだ?一度も聞いた事なかったからこの際聞きたいけど…」

 

フローラ「そうですね……私の知る限りでは国家元首は王ではなくて評議会議長でしたね、その中で多く議長や閣僚を排出した名家と呼ばれていたのが複数居ましたね」

 

リィン「へぇ~どんな?」

 

フローラ「えっと……確か有名どころはアウスレーゼ家と

 

 

 

 

 

アルノール家、バルトロメウス家だったかな?」

 

 

 

 

 

 



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フローラのカルバート滞在記
間話1


 

私はフローラ・クリスト人間ではなく浮遊都市《アンファング》のコンピューターです、嘗て《リベル=アーク》や《輝く環》を建造した人々によって造られた《リベル=アーク》のプロトタイプのコンピューターでした…当時の私は《リベル=アーク》や《輝く環》を完成させるための試作品兼工場として認識され、名は無く型式番号のみでした。

 

現在の私はリィン様にお仕えするメイドであり、フローラという名もリィン様につけて頂きました。

 

本来ならば今頃はリィンと一緒にリベールに入国していた筈でしたが《アンファング》の留守を任せていた蜘蛛型が何者かのハッキングを受けて防衛に梃子摺っているとの報告が入ったので止む無くリィン様と別れ《アンファング》に戻りました…

 

フローラ「しかし、《道化》…ねぇ?今の人間がハッキングの技術を持ってるなんて少し甘くみていたかしら?蜘蛛型を少しアップデートさせるべきかしらね」

 

中々に腕の立つハッカーですがプロトタイプとはいえ《リベル=アーク》に搭載されているコンピューターとほぼ同じスペックである私の敵ではありません!《道化》は敵わぬと見て退却していきました。ついでに《道化》の発信元を追跡、気付かれぬ様手早く確実に相手方データベースをハックして逆に抜き取りました。

 

フローラ「《身喰らう蛇》…それが《道化》の所属する組織ね…構成員、幹部クラスは流石にセキュリティが高いからこれ以上は無理ね?でも少なくとも科学技術は今の人間達の中ではトップクラスに高いわね…此処を特定出来るとは思えないけど念には念を入れるべきね」

 

私は蜘蛛型から受け取ったコーヒーを飲みながらそう結論づけたました…因みに私の身体は確かに機械ですが人間と同じ様に《食べる》や《飲む》といった行為もできます。勿論摂取した食べ物はエネルギーに変換されます…お陰でリィン様の食事のお世話には困りません。

 

フローラ「深さは…13セルジュ(1300m)程度の海の中に潜降して、シールド展開海面に降下…潜降開始…目標深度迄5・4・3・2・1・0…目標深度到達、シールド異常なし水圧問題無し…これで彼等に見つかる可能性は低くなったかしら?…《身喰らう蛇》少し厄介な相手になりそうね。余り関わりたくないけど状況次第では…フゥ、リィン様に報告しないといけないわね」

 

疲れは感じない筈ですが精神的にというかサーバー的に負荷が少し掛かってるのかしら?

 

フローラ「とにかくリィン様と合流しないと…いきなりリベールに転移するのは駄目ね、やはりサザーランド州のパル厶の町からタイタス門に入って入国するのが確実かしら」

 

《アンファング》のトラブルも解決したから転移装置に乗り込み座標を設定する

 

フローラ「じゃあ留守番を頼むわよ。念の為ファイアウォールの強度は上げとく様に」

 

私は蜘蛛型にそう伝え転移した…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルバート共和国首都イーディス トリオンタワー屋上

 

フローラ「…なんでカルバートに転移するのよ?」

 

《アンファング》に通信を入れると転移装置が直前にバグを起こしたらしく復旧には48時間掛かると報告してきた。

 

フローラ「はぁ…でもまぁある意味丁度良いかしら?カルバートの実態を見て回りましょう」

 

そうして私はトリオンタワーから跳び降りて人ごみの中に紛れ込みました…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー某所ー

 

???「う〜ん、可笑しいな〜?」

 

???「あらカンパネルラそんなに首を傾げてどうしたの?」

 

???「あ、レン…いやね?さっきまで正体不明のコンピューターをハッキングしてたんだけどね?一度も突破出来なくて退散したんだよ〜」

 

???「へぇ~未だ普及していないハッキング対策を講じた所が有るのね〜しかもカンパネルラが音を上げるレベルなんて相当じゃない?でも正体不明ってどういうこと?」

 

???「そのままの意味さ、全く何も知らないし追跡しようにもあっという間に姿を晦ますんだ」

 

???「へぇ…?ちょっと興味湧いたかしら」

 

 

 

 

 



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間話2

読んでくださりありがとう御座います!


カルバート共和国 首都イーディス トリオンモール

 

予定外にカルバートに来てしまったけど成程確かに人種の坩堝である。白人も居れば黒人や東方から来た人間も居る、これなら私一人紛れても目立た無いだろうと思ったのだけど…

 

フローラ「何だか周りの視線が私に向いている様な?…メイド服が目立つのかしら?」

 

そう思ったけど聞こえてくる声で判明した…

 

『綺麗…』『モデルさんかな?髪がサラサラ〜』『おい、お前声掛けろよ?』『馬鹿!あんな美人俺達なんて相手にする訳ないだろう!』『何処のメイドだ!?是非雇い…』『ア・ナ・タ?(怒)』『いやまって!じょうだ…ギャァァァ!』

 

どうやら私の容姿に視線を集めてるみたいだけど私自身何処にでもいるメイドなんだけど…せいぜいが帝国のリアンヌ・サンドロットをモデルにしている程度だから注目されるとは思わなかったわ…

 

フローラ「…まぁ、他者がどう思うのかは自由だし、どの道そんな長く滞在する気もないから放っておくのが一番かしらね」

 

そんな周りの喧騒を私は無視して近くの観光案内所からパンフレットを貰い何処に行くのかを検討する

 

フローラ「…とりあえず中央駅前通りに行った方が早いかしらね、転移装置を使うにしろ鉄道を使うにしろ一度は確認しておいて損はないわね」

 

私はそう結論づけてバスに乗り込みバスに揺れる事二十分で駅前に到着した

 

フローラ「さて、駅員に尋ねて…あら?」

 

「カルバート政府は移民政策を見直すべきである!」

 

「移民に仕事を与えるよりも国民を先に仕事を与えろー!」

 

広場で集団が何かを叫んでいた。どうやら移民政策に反対するグループの抗議集会らしい、でも…

 

フローラ「何か違和感を感じるわね…」

 

???「彼等の大半は《貴族》だからじゃないかな?」

 

違和感が分からずモヤモヤしていたが第三者の声がそれに答えた

 

振り向くとスーツ姿の男性と小さい女の子の手を握りながら此方に近付いてきた…

 

???「やぁ、こんにちわ旅行者かな?」

 

フローラ「ええ…エレボニアから来ました。貴方は…?」

 

 

???「あぁ、失礼私はロイ・グラムハートという者だこっちは娘のアニエスだ、ほらアニエス挨拶しなさい」

 

アニエス「あ…はじめまして、あにえす・ぐらむはーとです」

 

その年相応の反応に微笑ましさを感じ私は彼女の目線まで屈んで頭を撫でながら此方も名乗った

 

フローラ「そう、私はフローラ・クリストというの宜しくねアニエスちゃん」

 

アニエス「うん…」

 

ロイ「済まないね、娘は恥ずかしがり屋でね」

 

フローラ「いえ、気にしていません。それでグラムハートさんさっきの言葉はどういう意味ですか?」

 

ロイ「そのままの意味さ彼等の構成員の大半は《カルバート貴族》を占めてるんだよ…勿論本当に移民に反対している一般市民も参加しているがね」

 

確かカルバート貴族といえば革命後に様々な特権を失い一部の成功者を除き殆ど一般人と変わり無いと聞いたが…

 

フローラ「まさか〘夢よもう一度〙と復権を夢見てると?」

 

私は呆れ気味にそう言うとグラムハート氏は肩を竦めながら答えた…

 

ロイ「そうだと思うよ、まぁ実際彼等の視点だと移民は神聖なカルバートに入れたくないというのもあるだろうがね」

 

フローラ「取り締まりはしないんですか?普通に内乱罪適用出来そうな気がしますが…?」

 

ロイ「彼等は法に則り集会の申請をして【上】はそれを認めている。そして彼等は只主張をしているだけだ…それがどんなに過激な〘主張〙でもね?」

 

フローラ「…一応聞きますが本気でそう思ってます?」

 

ロイ「想像にお任せするよ」

 

そう言って再び肩を竦めるグラムハート氏…

 

ロイ「そう言うフローラ嬢はどう思うのかい?エレボニアの視点も些か興味があるが…」

 

フローラ「(正確にはエレボニア人ではないのだけれど)…移民に関して言えば目くじらを立てる必要性なんて感じません。彼等がカルバートに住み、法を守り税金を収め、その国家に帰属することを選んだのなら〘同胞〙として迎えるのは筋じゃないかとは思いますが…」

 

ロイ「…成程、参考になったよ。君はこれからどうする気だね?」

 

フローラ「元々駅の時刻表を調べる予定でしたのでこのまま駅に入ります」

 

ロイ「そうか…ではここでお別れだね、ほら、アニエス?」

 

アニエス「あ、あの…おねぇちゃんさようなら」

 

フローラ「フフ…ええ、さよならお父さんと仲良くね?」

 

アニエス「うん…!」

 

そうして私はこの二人のカルバート人親子と別れた…父親が後に次期カルバート大統領に就任するなど予想しえないまま…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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間話3

カルバート共和国首都イーディス〘黒芒街〙

 

あの後駅の時刻を確認した後、折角なのでこのカルバートの《闇》を覗いて見ることにした。なんでもこの《黒芒街》は首都イーディス地下に存在する十三区の内。開発から忘れ去られた区画で、裏社会の人間若しくは表に出られない犯罪者などが居住している。当然のことながら、地上の一般市民には知られていないらしい。

 

軍や警察、果ては遊撃士協会や七耀教会もその存在を認知しているが、犯罪者紛いの集団や猟兵も集っていることが結果として地上に及ぶ危険を減らしている側面があることから半ば放置されている。それどころか、遊撃士にとっては表で集めにくい情報を仕入れてくれる情報屋や腕の良い武器職人、違法ドラッグや共和国の病院でまだ認められていない医薬品を扱う業者も自然と集まる=有益な情報が多く舞い込んでくるために公然と利用している。

 

ここにも一定のルールがあり、表の人間には手を出さないのが暗黙のルールとなっている。破ろうものなら先住民達からの制裁が待っており、下手をすれば追い出されてしまう。なお、廃棄区画と呼ばれる最奥は黒芒街の主要街区に住む人間でさえ滅多に立ち入らず、せいぜい一部の半グレやゴロつきぐらいしかいないとのこと…

 

フローラ「まぁでも、この手合いはどこにでもいるんだけど…」

 

私の周りには下卑た顔でチンピラ共が武器を片手に近付いてきた…五人か

 

チンピラ1「よう姉ちゃん、一人でこんなトコに居るとあぶねえぜ〜?俺達が守ってやるよ」

 

チンピラ2「その代わり俺達の《世話》をしてほしいぜ〜勿論その身体でな〜」

 

聞くに堪えないわね…

 

フローラ「結構よ。貴方達に付き合う義理はないわ」

 

適当にあしらいさっさと行こうとしたらその内の一人が私の肩を掴んできた…

 

チンピラ「つれないこと言うなよ〜遊ぼう、ぜ!?」

 

しまった、つい気持ち悪くて裏拳が出てしまったわ…まぁいいか、排除しよう

 

フローラ「汚い手で触らないで頂戴?私に触れて良いのはただ一人なの…」

 

全く…リィン様以外に触られたくないのに…

 

チンピラ「このアマ!下手に出てやればつけあがりやがって!やっちま…グハ!?」

 

フローラ「敵の前で悠長に喋ってるとあぶないわよ?」

 

ナイフ持ち男の頭を蹴り抜き、そのままパイプを構えてる男の懐に一気に入り…

 

「え?な、早?グァ!!」

 

奴の顎をアッパーで沈め…

 

「このアマ!」

 

「これでも喰らえや!」

 

ハンドガン持ち二人が発砲してきたが私はその弾道を正確に読んで…

 

「な!?こいつ!壁を走りやがっー」

 

一人を蹴り倒しその手に持ってた銃を奪い…

 

「な、なんなんだー!?お前はー!グギャ!」

 

その最後の一人に両足を撃ち抜いた…

 

フローラ「これに懲りたら二度この様なことをしないことね」

 

私はその場を去った…

 

その後この〘黒芒街〙の武道大会とやらに飛び入りで参加し50人抜きをやらかしたお陰で賞金50万ミラを入手出来た。

 

そうして雑貨屋を見ていると面白い物を見つけた。

 

フローラ「ねぇ、これはなんなのかしら?オーブメントの様に見えるけど?」

 

「お客さん、それはとある骨董品コレクターから流れて来た一品でさぁ何に使うのかはさっぱり解らないんだよ」

 

フローラ「へぇ~…お幾らかしら?」

 

「へぇ、使い道が解らないから2500ミラでどうですかい?」

 

フローラ「買ったわ」

 

「へへへ…毎度ありがとうございます」

 

あ、そういえば

 

フローラ「ねぇ、これの名称分かる?それだけは聞きたいわ」

 

「へぇ、これを売り付けた奴はこう言ってました…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〘 ゲ ネ シ ス 〙…と

 

 

 

 



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間話4

カルバート共和国首都イーディス『旧市街』

 

 

フローラ「ゲネシス…「発端」「起原」…ね?随分御大層な名を付けたのねこのオーブメントを作った人物は、何を願い何を遺したかったのかしらね?」

 

先程買った謎のオーブメントを調べてみたけどアーティファクトではなくかと言って現在の人間が作ったとは思えないくらい高度な技術が使われてる事しか分からなかった…

 

 

フローラ「これを作った人物は間違い無く天才ね…一度お目にかかってみたいわね。…まあ今はこっちが先ね」

 

《黒茫街》を出てから尾行されているのを解ってたけど数は…五人、半グレではないわね。そういう事に慣れたマフィアというとこかしらね?目的は…このゲネシスのようね

 

フローラ「さて、どうしようかしら?」

 

このまま走って撒くのも言いけど…あそこが丁度いいわね

 

モブマフィアside

 

全くジェラールさんも人使いが荒いぜ、たった一枚の写真に写るオーブメントを探して来いなんてよ。《黒茫街》に出向いて探してたらまさか本当にあるとはな、だがそのオーブメントはほんのついさっきにメイドが買って行きやがった。

 

銀髪の美人メイドを尾行していたらおあつらえ向きに旧市街に入りやがった。サツの巡回が少ない上目のたんこぶの遊撃士も依頼が無ければこっちには来ねぇ、後はあのメイドを拉致って脅してオーブメントを出させれば良い。その後であのメイドで久々に《楽しめ》るぜ…と、メイドがタバコ屋の手前の路地に入ってた、馬鹿め!そっちは行き止まりだぜ!だが…

 

「あのアマがいねぇぞ!?」

 

「そんな馬鹿な!?ここは行き止まりの筈だ隠れる場所なんてねぇ!」

 

「じゃあどこに消えたんだよ!?」

 

「俺が知るかよ!」

 

「ジ、ジェラールさんになんて報告すりゃいいんだよ!」

 

ヤバイヤバイヤバイヤバイ!目的のブツを持った奴を見つけて置いて見失うなんて…このままじゃあー

 

 

「と、兎に角もう一遍周りを探すぞ!このまま何も成果無しじゃあ俺達は本当に…」

 

「そ、そうだな」

 

その後俺達は探し回ったが遂に見つからずトボトボと帰らざるを得なかった…

 

フローラside

 

フローラ「諦めたようね。まさか壁を登って三階の屋上に居るとはおもわなかったようね、しかし、ジェラールか…確か《A》の幹部の筈よね?そんな奴が何故《ゲネシス》を…?」

 

フローラ「まぁいいわ、取り敢えず下に降りるとしますか」

 

 

 

ー???ー

 

???「つまり何かい?君たちは目的のブツを見つけて置きながら奪えもせず、あまつさえ見失ったと?」

 

 

「は、はい!げ、現在あらゆるルートを張っていますのでや、奴を見かけたら直ぐに取り押さえる手筈を…」

 

だから二度目のチャンスを欲しいって?随分図々しいねぇ…

 

???「どうします。ジェラール?コイツを殺ってしまおうか♥」

 

「ひぃぃぃ!?」

 

ジェラール「良いさ、メルキオル許してやれ。俺は今は凄く気分が良い。気が変わらない内にさっさと件のメイドとやらを探してきな」

 

おや?珍しい、ジェラールがそんな事言うなんて…

 

「あ、有難うございます!」

 

メルキオル「へえ、良かったね。でも…次こんな失態をしたら僕が直々に殺るよ♥」

 

「は、はいぃィィ!」

 

奴に釘を刺して置いてから訊ねる

 

メルキオル「良いのかい?あんな事言って」

 

ジェラール「《ゲネシス》は確かに優先的に確保するが持ち主が解っているなら何時でも奪えるさ、暫くそのメイドに預かってもらおう」

 

メルキオル「ふぅん?で、何か良い事でもあったの?」

 

ジェラールがそこまで機嫌が良いのは滅多に無い筈なんだけど?

 

ジェラール「フフフ、その答を聞きたいならこれから地下に行くが付き合うか?」

 

へぇ…

 

メルキオル「フフ、喜んで♥」

 

この地下は確かジェラールと認められた学者しか入れなかった筈、今のボスにすらここの事を知らない。何をしてるんだろう?

 

 

ジェラール「メルキオル《古代種》を知ってるか?」

 

「なんだい?藪から棒に…?何それ初めて聞いたけど?」

 

ジェラール「遥か昔…古代ゼムリア文明が興る更に前に栄えた種だ。文明を興す程の知能は無かったが種としてはおおいに栄えたそうだ」

 

「ふぅん?それがどうしたの?そんな昔の事がなんの関係が…」

 

ジェラール「まぁ聞け、クロスベルのD∴G教団がクロイス家より《ホムンクルス》を作る技術をもたらされた時教団幹部はこう思ったそうだ」

 

 

ー これを応用すれば化石からでも復元できるのではないのか? ー

 

ジェラール

「ホムンクルスの技術を応用した研究は早速始まり幾つかの失敗を繰り返しながら《それ》は完成したそうだ」

 

はは、まさか♥

 

メルキオル「もしかしてジェラール、この先に…?」 

 

大きな扉の前に立つジェラールに問うと…

 

ジェラール「ハーハッハッハ!あぁ、そうだメルキオル良く見ておけ…これが現代に蘇った《古代種》だ!」

 

扉が開くと其処には…培養槽に入れられた巨大な〘獣〙が!

 

 

「あは♥何これ?…凄い!これが《古代種》なんて大きいんだ♥これは肉食なのかい!?」

 

「あぁ、学者連中に言わせればこれでまだ最大級の種じゃないそうだ」

 

つまりまだ大きいのが居るのか♥

 

「生憎まだコイツ1体だけだがな、いずれ生産体制は整う。メルキオル、想像してみろ。コイツの様な存在が突然イーディスのど真ん中に現れたら?そしてそれが百、いや千、万と出てきたら?」

 

 

あは♥それは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最高じゃないか!最大級の恐怖と絶望が世界に広がるじゃないか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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