ボタンの1限目 (ワックス)
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ボタンの1限目

 目が覚めると、そこにはボタンがいた。

 

「あ、起こしちゃった?」

 

 →おはよう

 なんでここに? 

 

「あ、おはよ……。ここには複製したこれでこうして入ったんだ。セキュリティ甘いよね。じゃ、なかった。よかったらだけど朝ごはん食べに行こ。準備終わったら声かけて」

 

 …………。

 

「終わった?」

 

 →うん

 まだ

 

「じゃあ行こっか」

 

 学食は昼時と違いまだまばらだ。それぞれ好きなものを注文しているが、食べざかりな年頃の我先にと詰め込んでいる姿が目立つ。何を頼むか考えてる途中で、あることに気がつく。

 

「ウチは軽くでいいや。……どうしたの? え? 財布忘れたって?」

 

 どうしよう

 →取りに行くから食べてて

 

「じゃあウチが奢るよ。気にしないで。奉仕活動って言われてたけどキチンと給料出るみたいで羽振りが今はいいんだ」

 

 ボタンは返事を待たずにお金を握らせる。それを貴方は返そうとするが、ボタンは

「気になるなら今日のお昼奢って。それにキミ待ってたらご飯冷めちゃうし」

と受け取らない。

 貴方は食べ終えたら財布を取りに戻ろうと決めて注文した。

 

 パクバクモグモグ……! 朝のエネルギーが取り込まれて体も心も元気が充電された気分だ。

 

「……キミってご飯食べるときと写真撮るときは表情豊かだよね」

 

 貴方はボタンの方を見た。少し暗い顔をしている。

 

「昔はご飯もこうして食べられなくてさ。さっと食べられるパンとか買って自室で食べてたんだ」

 

 そうなんだ

 →今は? 

 

「今も実はちょっと怖い。だけど昔と違ってスター団の皆やキミがいるから」

 

 ボタンの視線が向こうを見たので追うと、そこにはビワが他の生徒と食事をしている姿があった。

 

「こうして学校に皆がいれるのもキミのお陰だよ」

 

 貴方は首を振った。

 

 →みんなのお陰

 

「……そうだね。君だけじゃなくネル───いや校長先生や前の校長先生、受け入れてくれた学校のみんなのお陰でもある。でも、ウチはそれでもキミにお礼を言いたいんだ。……ありがと」

 

 貴方は返事をしてから食事を続けた。

 

─教室─

 

 授業は基本的に自分で好きなように取れるため席は自由だ。そしてあなたの隣にはボタンがいた。

 

「……授業久しぶりで、リハビリ付き合ってくれたら助かる」

 

 そう言われて頷いた結果、今日1日同じ授業を取ることにしたのだ。段々と人が集まり騒がしくなる。

 

『私のゴースちゃんがゴーストちゃんになったけど進化させようかな』

『ライドポケモンが飛べたらもっと楽なのに』

『ハリテヤマの新種がいた!』

 

 ボタンが緊張した様子で体を小さくする。普段の内気なようでどこか意志の強いところがある姿とは少し違う。

 

 声をかける 

 手をふる

 →手をにぎる

 

「あっ……」

『グッモーニン! 準備はアーユーレディ? 授業を始めますよ』

 

 先生が入ってくる。ほんの一瞬だけ視線がボタンを見たが直ぐに何時ものにこやかな顔で授業に入る。

 ボタンは視線に気が付かなかったようだ。おずおずとあなたから手をはなすと、授業を聞き始めた。

 ・

 ・

 ・

『ではまたお会いしましょう。シーユー』

 

 ボタンは先生が外に出ると同時に机に突っ伏した。

 

「うーーっ」

 

 →どうだった? 

 疲れた? 

 

「授業ってこんな感じだったなーって。それにしてもなんか元気な人だったね。授業のレベルは……正直楽勝かな」

 

 笑顔で頷くと、ボタンも頷き返した。

 

「なんか安心したらお腹空いたな。お昼に行こうか、キミの奢りで」

 

 ボタンは軽く笑った。

 この日はその後大きな事件も起こらずに授業日程が終わった。

 放課後、ざわざわと生徒は部活や仕事や勉強に向けて支度をしてにわかに独特の騒々しい空気となる。

 

「疲れたー。何か開放感」

 

 →これからどうする? 

 もう帰る? 

 

「あのさ、今からそっちの部屋遊びに行っていい? 用事あるなら済ませてからでいいよ。ここで待ってるから」

 

 あなたはタクシーで市場へ飛びプレミアボールと瞬発の羽を競り落としてレイドバトルを5回ほど繰り返したあと、学校のボタンに話しかけた。

 

─自室─

 

「朝と変わらないね。実は友達の部屋で遊ぶのって初めてでさ。色々用意してきたんだ」

 

 カチャカチャとSwitchやトランプや人ゾロアゲーム、クラッシュエンペルト、その他見たこともないボードゲームがモコモコしたイーブイの鞄から出てくる。

 

「どれから遊ぶ?」

 

 →赤い箱 

 紫の箱

 

 カチャカチャ、クルクル、カチャカチャとプラスチックの音が響く。

 

「ウチの勝ち。……何かお腹空いてきたね。え? 食堂? ……うーんもう少しゲーム一緒にしたいな。そうだ、お菓子とパンあるからそれ食べようよ」

 

 あなたは頷いてゲームを続けた。

 モグモグ、ポリポリ。カチャカチャ、パチパチ、カラカラと色んな音が響く。

 

「もう夜か……あ、あのさ泊まってもいい?」

 

 あなたは首を振り、校則で同じ部屋で止まることはできないはずなことを伝える。

 

「それくらいならバレないようにできる」

 

 …………。

 

 →駄目だよ

 また明日

 

 貴方は少し考えてから答えた。

 

「……うん」

 

 道具を一緒に仕舞う。あっという間に全てバッグの中に収まり、軽く忘れ物はないか確認してからボタンを見送る。

 

「また明日ね。……おやすみ」

 

 →おやすみ

 

 パルテアで起きた事件は紆余曲折、多くの寄り道まわり道の末解決した。

 しかし皆の学生生活はまだまだ続く。




ボタンが可愛いのでクリア後と同時に書き始めたけど、メモとか取ってなかったから口調の再現度がイマイチ低い……
2週目をしてからだと書き終える気がしないので今回書き記す
ボタンを途中まで男の子と思ってました。イーブイバッグモフモフで可愛い。
ゲーム主人公はオリ主タグ必要かどうか少し悩んだ。


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