多分、きっと、彼は二周目。 (命短し恋せよ乙女)
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前書:だから私は異世界転移を選んだ。
異世界転移をした。
前世でプレイした事のある、知っているゲームの世界に。
しかも主人公が居る、限りなく近い場所に。
死んでしまった……まぁ、仕方が無い。
所謂、流行病だった。
私は「運悪く」、死んでしまった、どうしようもない。
異世界転移、まぁ仕方がないのかもしれない。
世界の輪廻を守っている神様……の恐らく部下の天使みたいな方々が言っていた。
今天国と地獄、のような場所は人が増えすぎたお陰で「てんてこまい」……らしい。
毎日毎日死者が来て、彼らを次の輪廻へと送り出す作業が積もりに積っている……らしい。
勿論斯く言う私も、彼らの世話になった身だ。
最初は同じ世界に輪廻転生したいと言った、一応希望くらいは聞いてもらえた。
ただ、それは叶わなかった……というと語弊がある。
具体的にいうと、「待ちきれない」話だった。
曰く、同じ世界に輪廻転生する事は可能、但し待ち時間がある、と。
なら待てば良い? いやいや、気の長い方の私でも、流石に百億年は待てない。
それくらい、元居た世界は人気があったと言う事。
ならどうなるんですか? という話になった。
輪廻転生は、希望先が大人気過ぎて待ちきれない。
選択肢は二つ。
一つ目は最初に聞いた、「このまま天国、或いは地獄で百億年待つ」というもの。
当然ながら、これは却下。
まず、天国か地獄か、どちらに行けるか分からない。
天国に行くか、或いは地獄に行くかは、この輪廻転生の決定をしてから決まるらしい。
悪い事をした覚えは無い、平々凡々な学生だったし、犯罪なんて犯していない。
ただ逆に、良い事をしましたか? と聞かれれば自信が無い。
そもそも何を基準に、「あなたは天国、あなたは地獄」なのか、分からない。
平々凡々と言う事は、何も成していないとも考えられる。
仮に基準が、そういう事だったら? 地獄に行く事になるかもしれない。
それは、嫌だ。
何が悲しくて、自分から地獄に行く可能性がある選択肢を選ぶのか。
しかも百億年……想像もしたくない。
二つ目、それが異世界転移だった。
前世で居た世界とは全く異なる世界に住む人物に、私の魂を入れる。
記憶そのままで。
少し浮かれていたのは事実だ。
異世界転移物と言えば、私も読んだ事くらいはある。
前世の知識を活かしてチートじみた事をしてみたり、或いは幼少期から修行を重ねてチートじみた能力を得たり……。
だから、即決だった。
詳しい説明も聞かないままに、「異世界転移でお願いします」と言った。
少し面食らった様子で、でも何処か納得しているかのような、天使みたいな方の顔が今でも忘れられない。
その後は早かった。
曰く、世界は選べない。
曰く、性別・年齢も選べない。
曰く、出生・立場も選べない。
持って行けるものは「あなたの知識」だけ。
最後に、止めたくなったら「死んで下さい、魂を回収しに行きます」
覚えてはいるが、その時は聞いてもいなかった。
異世界転移、本当にそんな事があるなんて……!
そんな感じ。
何処か不安そうな天使のような方が、床に円を描く。
「では、飛び込んで下さい」極めて業務的な、機械的な声で天使のような方は言った。
ふぅ……と一息。
新しい人生、旅の始まり。
飛び込んだ先は……。
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