ヒロアカに絶望の邪竜が光臨した模様です (謎多き殺人鬼)
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ヒロアカに絶望の邪竜が光臨した模様です
20××年、超常解放戦線との戦いを終えてデク達はプロのヒーローとして活躍する時代だった。
だが、人々は絶望し、世界が破滅しようとしていた。
突如として現れた地上を覆い隠さんとする程の巨体な体格を持ち、翼を広げた竜が現れ、地上を破壊し、屍の兵士達を繰り出し、ヒーローもヴィランも関係無く蹂躙した。
日本を始め、アメリカやロシア、中国、EUと名だたる国々が立ち上がるも竜の前には無力であり、あらゆる兵器も個性も通用しないまま世界は崩壊した。
それでも尚、抗おうとヒーローとヴィランは互いの立場はこの際には関係無く、自分達が出しうる全てを持って戦った。
しかし……屍の兵士達の数は圧倒的だった。
倒せる範囲ではあったがそれでも百、千、万と数を増やして数少ない生き残りがいる安全な土地に侵攻し、徐々に削り取って行った。
何時しか抗う者の中に大切な者が無残に殺され、或いは発狂し、絶望して死を選び、ただ泣き叫び続け、竜への怒りと憎しみを宿す。
偉大な先人のヒーロー達や邪悪な巨悪たるヴィラン達は既に亡く、残されたのはまだ未熟な若者と僅かに生き残った先人のみとなった。
抗う……ただ抗い続ける。
勝てるか分からず、況してや希望を見い出せない状況の中にいる者を竜は嘲笑い続ける。
「笑うな!!!」
その叫びが竜を黙らせた。
もはや若い頃とは違い無償髭を生やしておっさんとも言える見た目になったA組の生き残り、峯田。
次々に死ぬか、自決するかを選んでいった仲間達を見てきた峯田は何もかも捨て去り、逃げ続けた。
だが、仲間達が残した子供達と会い、今だに諦めずに慣れない動きで戦う姿にかつての仲間達の面影を見ていた。
峯田は再び立ち上がり、ろくに戦い方を知らなかった子供達にかつて雄英で学んできた知識と技術を持ち得るだけ教え込み、戦いをサポートし続けた。
そして現在。
仲間達の面影を残す子供達の苦労と努力を嘲笑う竜に怒りを見せて睨んでいた。
「何がおかしいんだよ!!人を!世界を自分達なりに救けようとするコイツらを嘲笑って!!何でそんな事ができんだよ!!」
峯田の悲痛な叫びに周りが静まりかえる中、竜の姿が消えたかと思えば峯田の前に一人の白髪を二つ結びにした女性が現れた。
峯田達が唖然とする中、女性は不適な笑みを浮かべながら答えた。
「何がおかしいと?ハッハハ!傑作ですね!簡単ですよ……貴方達、虫けらが努力やらで私を何とかしようとするのが可笑しくて……本当に笑えますね」
「誰だよ……お前……?」
「あぁ……この姿は知らないのですね?なら、名乗っておきましょう。我はギムレー。そう……この世界を絶望で満たし、破滅に導いた竜とは私の事ですよ。……峯田さん」
「違う!!絶対に違う!!!」
峯田は信じたくなかった……子供達もその姿を見て峯田と同じ様に否定したかった……しかし、現実は違う。
彼女はルフレ……かつてA組で共に学び、共に窮地を戦い、共にプロになり、母親となった仲間達の最高のブレイン的な存在だった。
竜による蹂躙が始まる前に行方不明となっており、必死の捜索が行われたが見つからずにいた。
だが、目の前にいるのは確かにルフレ……峯田は絶望の中、叫んだ。
ギムレーは笑う……嘲笑い、絶望に打ちひしがれる峯田達を見下し、馬鹿にした様に高笑いする。
「笑い疲れました……もう終わらせましょうか」
ギムレーはそう言って自身の本来の姿である竜の姿を現すと口からブレスを吐いた。
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戦いは終わった……邪竜ギムレーの完封勝利で幕を閉じ、人類は滅亡し、もはや何処を探そうと何処にもいない。
「愚かですね。ファルシオンの無いこの世界が私に勝てる筈もないのに。しかし……厄介な事になりました」
ギムレーには疑念があった。
ヒーローの子供達がタイムリープと言う個性を持つ者の協力を得て過去へと逃亡し、運命を改変し、この世界の事を無かった事にしようと目論んでいるのだ。
当然、ギムレーは別世界のギムレーと同じ轍を踏むまいと阻止しようとしたが峯田が全力を挙げて妨害を阻止し、屍兵達の攻撃を多く貰っても尚、立ち続け、死んでも尚、立っていた。
それだけじゃない。
投獄されていたがギムレーとの戦いの為に出されたトガヒミコが今のギムレーの器たるルフレの息子と娘をあと一歩の所で捕まえられる所まで迫ったのにタイムリープのゲートに押し込まれて逃された。
トガヒミコの勝ち誇った笑みに苛立ったギムレーは屍兵に命じて簡単に死なない様にしながらズタズタ切り裂いて地面にゴミの様に捨て去る形で殺害して考えている所へ戻る。
過去に言っても別世界のギムレー同様に力を失う可能性があり、祭壇の無いこの世界で本来の力を取り戻せるとは限らない。
しかし、阻止しに行かなければ最悪、ギムレーの器たるルフレを殺してでも改変しようとするかもしれない。
別世界のギムレーの様に千年待てば器を得られる訳ではなく、一度でも器が死ねばギムレーは二度と再臨は出来ない可能性がある。
なら、どうするか……ギムレーは考る。
この世界全てに絶望と破滅を振り撒く為に。
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