天道沈めし秋の虫 (ぁさぎ)
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例えば蜻蛉が藪から飛び出るかのような
今日は10月某日、国民の祝日だかなんだかは知らないがとにかく月曜でありながら休みであると言う事で俺は久しぶりに便秘に潜ることにしていた。
「喰らえR18触手アタック!」
「はっ、そんなもんとっくに見切ってるわ!我がイアイフィスト流にて返り討ちに…」
「ばーか、“読み通り”だ!“
「はぁ!?そっから更に派生すんのかよ!ぐへぇ」
俺はモドルカッツォが触手のようになった腕から放たれたゲージ技にHPをそのまま削り取られてしまった。
「まさかあのままHP削りに来るとは思わんかったわ」
「
うるせえやい。というかそもそも久しぶりで初見のコンボに対応できるわけねぇだろアホかこいつは。
「というか
「まあ大体2ヶ月前だけどなそれ。まあ
「うるせーぞユニーク自発できないマン」
竜宮城に閉じこもって年だけ取った爺だってか?やかましいわ。
「は?喧嘩売ってんのかコラいいよかかってきなよ浦島太郎君」
「あ、フレに呼ばれたんで部屋抜けますね^^」
もうとっくに昼飯時だということでログアウトする。腹が減っては戦は出来ぬと言うからな、決して逃げなどではない。
「あっおいおまっ……逃げたか」
「ふぃー…やっぱ久しぶりに便秘やると鈍ってんな」
特に理不尽に対する耐性が。前の俺だったら絶対にあれは防げてただろうに衰えを感じる。
「んあー……昼飯作んのもめんどくさいから出前頼むか」
携帯端末一つでどこでも出前が取れる、現代日本は最高だね。
「出前出前っと……お、これ良いじゃん」
と良い感じのカツ丼を見つけたので注文を発注して……っt
ピンポーン
早い!?出前RTA0.36秒世界記録更新!?いやまあそんな訳はない、家族の何かの宅配だろう……家族のだよな?またなんか届けられたりしてないよな?因みに今家には俺しかいないため俺が出るしかない。父さんは釣り仲間と釣りに行ったし、瑠美はバイトに行っている。母さんは……ガラガラゴスジョイントセンチピード?と呟いてどこかに行った。何かチケットが握り締められていた気がするがきっと気のせいだろう。気のせいであってほしい。
「はーいすみませーん」
と言って扉を開けるとそこには……
「楽郎さん!ずっと前から好きでした!付き合ってください!」
と何処かで聞いたことのある声と初めて見る姿の女の子が俺に告白してくる光景が広がっていた。
こりゃ前よりもハードだぜ……
突然の自宅凸。イッタイダレナンダロウナー(タイトルで丸わかり)
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初対面での家凸はレギュ違反である
出前頼む!RTA記録0.36!そんな訳はなく!家に来たるは見知らぬ少女!
タイトルを考えるのに10分以上かかった上にこのクオリティなのでやっぱり先達は凄いというのを実感する
───思考強制シャットダウン
───思考を再起動します
──────アップデートが一件存在します、アップデートが完了次第再起動します
───なんじゃこりゃ
おい待て、一体どういう状況なんだこれは。整理すると
出前を頼む→一瞬でチャイムが鳴る→出たら初対面の女の子が初対面なのに告白してきた
うん、意味不明。しかも初対面なのに家まで来ている。だが俺はこの声に聞き覚えがある、この声の正体は……!
「楽郎さん?どうしました?」
「あー……秋津茜、か?」
「はい!私、隠岐紅音と言います!シャンフロでは秋津茜という名前でやってます!」
あっていたようだ、が……この場合俺は知り合いである事を喜ぶべきなのであろうか、それとも自宅がバレてしまったことを嘆くべきなのであろうか。まあ後者なのであろうが、それはともかくとして。
「あー、俺は陽務楽郎だ。……立ち話もなんだし、中、入るか?」
正直この目の前の少女……隠岐紅音を家に入れるのは怖い、が……このまま玄関先で話していて他の人に聞かれたらたまったもんじゃない、家に人はいないし入れても問題は無いだろう……おそらく。
「いいんですか?!ならありがたくおじゃまします!」
ものすごい勢いで入ってきた隠岐紅音をとりあえずキッチンに連れて行って座らせる。
「んで、だ……まずなんだが、隠岐紅音はどうs…」
「紅音でいいです」
「いやでもまだ出会って間もn…」
「紅音でいいです」
なんかどんどんと空気がひんやりとしていくような感覚に陥る。まだ秋だというのに冬かの如き寒さだ、おかしいな、俺冷房でも付けてたか?
「あー……じゃあ、紅音はどうして俺の家まで来たんだ?それも突然」
取ろうと思えばゲーム内で連絡を取るなども出来たはずだし、そもそもなんで家に来たのかの理由がはっきりしていない。
「もちろん楽郎さんに想いを伝えるためです!そのためだったら私なんでもできます!」
わーお、重い。今の女の子はこんなに愛が重いもんなんだろうか?
「じゃあ、紅音はどうして俺の名前を知ってるんだ?俺ら、リアルじゃ会った事ないはずだろ?」
「………………そう、ですね。まあそこは調べてる時に知ったっていうことに…」
いやなんだ今の不自然な溜めは。というか調べてるってなんだ。やっぱりさっきから不穏な点が見え隠れしている。
「調べてるってなんだ?そもそもどうやって俺の家がわかったんだ?」
「ああ、楽郎さんの家なら…
ラビッツでサイガ-0さんとロックロール?の話をしてるのを聞いてて、そこから絞りました」
なにやだこの子怖い。
ヤンデレ紅音ちゃんは些細な会話を聞き漏らさないしその僅かなヒントから自宅を割り出し自宅凸を行う(本編)
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ヤンデレが相手なら昼飯時でも油断できない
ピンポーン
「ああ、そういや出前取ってたんだった、ちょっと待っててくれ」
正直なところ紅音が来たインパクトが強すぎて忘れるところだった、危ない危ない。
「すまんな、待たせた」
「楽郎さんのためなら何年でも待てます!」
さっきから紅音が言ってくることがいちいち怖いのだが。明らかに向けてくる感情が重い。
「そういえばですね楽郎さん!私今日お弁当作ってきたんですよ!食べてください!」
「いやさっき出前届いたしそっち…」
「食べてください」
「……」
「食べてください」
「わかったよ、そんなに言うならありがたくもらうな?」
やっぱり明らかにおかしい。凄い変なところに口を出してくるし感情が重い。……これ血とか髪の毛とか入ってないよな?
「いただきます」
おお、野菜たっぷり……トマトとレタスのサラダにきんぴらごぼう、ポテトサラダか。凄い健康に良さそう。うん、おいしい。
「そういえば楽郎さん、あそこにいる虫ってなんですか?」
「げ、母さんキッチンに置きっぱにしてったのか…アレはアトラスオオカブトかな?多分見た目的にフィリピンアトラスだと思うけど……」
「へえ……やっぱり楽郎さんって昔から虫とか好きなんですか?」
「いんや、母さんが虫マニアだから自分もそうしようと小さい時にめっちゃ教えてきてな……」
おかげで小さい頃は人に教えたりして誰かと話すきっかけにできたけど今じゃ無用の長物だ。
「へえ、
おかしいな、今おかあさんの漢字が違かったような気がする。でもさすがに気のせいだろう。
「ごちそうさまでした。美味しかったぜ、ありがとな?」
「楽郎さんに食べてもらえて嬉しいです!片付けますね!」
「ああ、ありがとな」
こういう風に言ってきた時は変にやろうとするよりもやらせてあげた方がいいような気がしてきた、そうした方があの底冷えするような空気を味合わなくて済む。だが……
「なあ、紅音」
「はい!なんですか?」
これは言っておかないといけない、何が起きるかわかったもんじゃないが、答えなければならないものだ。
「告白してくれたことは嬉しいんだ。だけど俺たちはまだ出会ったばかりだし、それに良い返事はできな……!」
何か物凄くこの世の全てを凍らせんとするかのような冷たい空気が漂っている。それに……紅音から、そこから先は言わせないというとてつもなく強い気迫を感じる……!
「………………(無言の笑み)」
怖えよこの状況!そもそもなんで俺はリアルじゃ初対面の女の子とこんなことになってんだ!?
(くそ、何かこの状況を打開する手立ては……!)
「ただいまー」
ひゃっほう愛してるぜ瑠美ぃ!
弁当の中身で何月か大体わかる
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Q.ヤンデレが好きな人の知り合いに女がいるとわかった時の対応
「ただいまー」
瑠美が帰ってきた……これでこの事態も動くはず……!
「…………楽郎さん、あの人、誰ですか?」
確かに事態は動いた。良い方にとは一言も言ってないがな!クソが!
「え、あーあいつは瑠美って言って俺のいm……」
「あー!お兄ちゃん家に女の子連れ込んでるー!」
「違ぇわ!」
むしろ自分は家に来られた側だ。決して連れ込んだ訳では無い。……確かに自分が家に入れたが、断じて連れ込んだ訳では無い。
「へえ……妹さんなんですね」
不意に、すっと気迫が薄くなった。
「それでお兄ちゃん、この子誰なの?知り合い?」
「いや、あーそうだな、ゲームで知り合った……」
「私は楽郎さんの彼女です!!!」
割り込むように、どこか強調しながら紅音が叫んだ。いや待て、まだ俺は返事をしてないし何なら否定をしようとしていた最中なんだが!?
「へえ、お兄ちゃんって彼女いたんだ」
「いや違うからな!?」
そもそも初対面だし、何ならいきなり家にまで来られたというのに彼女である訳が……
「違うんですか?楽郎さん……」
「……っ」
泣かれると何か悪いことをしている気分になるんだが!?俺は何も悪いことをしていないはずだ、落ち着け、落ち着くんだ。ビークール、ビークール。
「お兄ちゃん、どうせもう彼女とかできないんだし受ければいいのにー」
「「それは一体どう言う意味だ/ですか」」
仮にも兄に向かってその発言はライン越えではないか妹よ……
「だってお兄ちゃんこんな服装してて好きになる人なんている訳無いじゃん!」
しかし、受けた方が良いというのはそうなのかもしれないのではないか?
「楽郎さんは頭が良くて優しくてカッコいいんです!好きになる人なんて沢山いますよ!」
会ったばかりだし受けてしまうのは怖いが………紅音相手に断ってしまうと言うのも、それはそれで何か嫌な予感がするのだ。
「もちろん、一番楽郎さんの事を愛しているのは私ですけどね!」
何よりも、ここまで一途──一途と言うにも愛が重すぎる気がするが──な子に好意を向けられていると言うのに、それに応えてあげないと言うのは、何かその……間違ってる気がするのだ。だから──
「そうですよね、楽郎さん!」
「紅音」
「はい!なんですか?」
「付き合ってくれないか?さっき断ったのに直ぐ心変わりしてるようで悪いとは思うけどさ……こんな俺でも、愛しているって言えるか?」
「はい!もちろんです!」
なんか切る位置悪い気がするけどここまでです。遂に付き合いましたね。四話…一般的な恋愛小説だったら早いのですが、紅音ちゃんが相手だと遅い気がしてしまいます。別に付き合ったからと言って終わりなんて事は無いので安心(?)してください
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番外編1:ヤンデレ楽紅のバレンタイン
今日は2月14日、すなわちバレンタイン。男どもはいくつチョコをもらえるかと盛り上がり女子は女子で好きな人に渡せるかなんかで盛り上がったりするイベントであるわけだ。まぁ当然ながら俺のクラスでもそういう話題で盛り上がるわけで──
「お前らいくつチョコもらえたよ?まあどうせお前らのことだし?どうせだれももらえてないんだろ?」
「わり、俺3つもらった」
「俺4つ」
「えーいいなー俺1つしかもらってないや」
「俺プロポーズされたわ」
おい誰か1人チョコだけじゃなかったやつ混じってるぞ
「お前ら嘘だろ?!なぁ!嘘だと言ってくれよ!誰もいねぇのかよ……この……裏切りもんどもがぁぁぁぁ!!」
「まぁまぁ落ち着けよ暁ハート先生、その名を聞いて誰か今からでも渡しにくるかもしれないだろ?」
因みに雑ピはついに他学年のやつらにも暁ハートであることがバレたらしい。図書室でノート開きっぱにしてトイレに行くとか無用心すぎるだろ……
「うるせぇよ!!!……というか楽郎!お前はどうなんだよ!お前もどうせもらってんだろ?!斎賀さんあたりに!」
「「「うんうん」」」
「いやもらってねぇよ。お前ら一体どれだけも俺と斎賀さんを付き合ってることにしたいんだよ。……というか、付き合ってることにされると大変なことになりそうだから嫌なんだけどな(ボソッ)」
本当に今誰かと付き合ってるとか噂が流れるのは洒落にならない。何をされるのか分かったもんじゃない。
「いやお前らどっからどうみたって付き合ってるだろ?斎賀さんとかお前の前の時だけ顔赤らめてんじゃねぇか……というかお前なんか言ったか?」
「いや、なんにも……というか顔を赤らめてるんじゃなくてあれが普通なんじゃないのか?」
玲氏は少し顔が赤めの人だからそれを勘違いでもしてるのだろう。両方に迷惑な話なんだからやめてもらいたいんだがなぁ…
「いや、お前……さすがにお前鈍感が過ぎやしないか……?」
「何言ってんだお前」
人のことを珍獣でも見るような目をしやがって……半裸でも鳥頭でもないんだぞ。
「とにかく、俺にはまだしも、斎賀さんにも迷惑がかかるから付き合ってるだなんだと囃し立てるのはやめてくれ」
「いや、はぁ…………いいよ、お前がそういうやつだっては分かった。これでもう話は終わりだ。はぁぁぁ………」
「とりあえずもういいんだよな?んじゃもう帰らせてもらうわ」
「おう、もう勝手にしろ………」
ったく、家に帰ったらどんなことになってるか分かったもんじゃないのに拘束しないでくれ……少しでも遅くなったら何されるか分かったもんじゃない。とりあえず勝手にしろとも言われたしさっさと帰るか──
──────────────────────────
結局学校では誰からももらうことは無かったわけだが……むしろそれでよかったかもしれない。うちの
「あの、えっと、陽務くん!」
「あれ、斎賀さん?どうかした?」
「え、あ、ひゃい!斎賀でひゅ!っじゃなくて!陽務くん!よかったらこれもらってくらしゃい!」
訂正。たった今もらうことがなかったのは嘘になった。どうやら神は俺に随分な試練を与えたいらしい……碌なやつがいないな神ってのは。
「おぉ、チョコレートか……ありがとう、受け取らせて……ってもういないし。どこ行ったんだ……」
渡された手前断ることもできないしもらったが……これを持ち帰った日にはどうなることか……
「おい」
「あ?」
誰だ今を俺を呼んだ奴は。いや今の声はさっきまで聞いていた、そう──!
「雑ピ!」
「うっせぇ!というかやっぱさっきの嘘じゃねぇか!とっ捕まえろ!」
おい待て嘘だろ!?クソ!こんなところで力尽きてたまるかってんだ!
「うおぉぉぉ逃げろぉぉぉぉ!!!」
というか本当にどこに行ったんだ玲氏ぃぃぃぃ!!!
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なんとか逃げ切れた……今日は陸上部の野郎が休みで助かったぜ……
(とはいえ、本当にこれを持ち帰るわけにはいかないんだよなぁ………でももらったものを捨てるのは流石に……)
思考がぐるぐる回る、恐怖と申し訳無さに板挟みにされて結論を出すことができない。そうやって考えている間にも俺の足は進み──
(やべ、もうつく……)
遂に俺の家まであと少しというところにまで辿り着いてしまった。紅音はおそらく家の前で待っているのだろう。もうこうなってしまった以上覚悟を決めるしかあるまい。その決意を胸に抱いて今俺の家に足を踏み入れる。
(えぇい、なるがままよ!……ってあれ?
しかしだれもいなかった!……なんてことが紅音に限ってあるはずがない。……もしや既に家の中に入っているのか?確認の意味も込め、気をつけながら家の中に入る。
(いやいやそんな、さすがに紅音といえど鍵を閉めた家になんて入れるわけ……)
「おかえりなさい、楽郎さん!」
「おう…ただいま???」
いた。いてしまった。しかしどうやって入ってきたんだ?そこのところはきちんと聞かないといけない。
「楽郎さん、どうかしましたか?そんなに不思議そうな顔をして」
「いや、紅音はどうやって家に入って来たのかなって……鍵とか閉め忘れてたなんてことはないだろ?」
「あ、合鍵です!一週間くらい前に作りました!」
おい待て、さらっと言われたがいつの間に合鍵なんて作っていたんだ。
「とりあえず、
「いや、ここ俺の家なんだがな……まあそうだな、部屋かどこかに行くか」
そう言いながら靴を脱ぎリビングに入る。
「あら、楽郎おかえりなさい」
「ただいまお母さん……え、っていうかお母さん何か紅音に言うことないの?」
リビングに入ればお母さんに迎えの言葉を送られた……んだが、なんでお母さんは紅音に何かしらの疑問なり何かを持っていないのだろうか。一応南米から帰ってきたあとに彼女ができたとは言ったが、どんな子だとも言ってないし紹介したこともなかったはずだが……というか冷静に考えると色々言ってなさすぎでは?
「楽郎さんいったいどういうことですか」
「ちょっと紅音は静かにしてて……いや、ほんとうに言うことないの?ほら、勝手に家に入ってきたこととか……」
「え〜だって楽郎の彼女さんなんでしょ?それに楽郎が合鍵を持たせたんじゃないの?今回は別にいいけど、今度から合鍵を作るときはちゃんと言ってね?」
なぜ俺が合鍵を持たせたことになっているんだ?まさかとは思ったが、紅音ならやるだろうと小声で聞く。
「なぁ紅音、もしかしてなんか勝手にお母さんに色々言ったりしてないか?」
「楽郎さん、嘘も方便ってやつです」
やっぱりかぁ………勝手に色々言われても困るんだがなぁ……そのことは後できちんと言っておかなきゃいけないな。
「なにか言ってる?楽郎」
「いや別になんでもないよ。とりあえず俺の部屋行くか?紅音」
「はい、初めてなので楽しみです!」
──────────────────────────
とりあえず俺の部屋には着いた……が、これは同時に逃げる場所がないということでもある。そんな中玲氏からもらったチョコレートなんて見つかった時にはどうなることか……カバンから出さなければなんとかなるかもしれないが、こういうタイプは謎の力でそういうものを見つけてくると俺の経験(ピザ)がそう言っている。
「とりあえずさっき言ってたあげたいもの……ってかまあ今日に限ってはほぼ一択か。まあいい、とりあえず出してくれないか?」
「はい!ちょっと待ってください……ああ、その前に楽郎さん」
「どうした?」
まさかカバンの中にチョコがあることがバレたか……?いやいやさすがにそんなまさか……
「ちょっとカバンの中見せてくれませんか?多分チョコ入ってますよね?」
バレてるーー!!!!俺の勘は間違ってはいなかったか……なんでこんな時ばっかり正解を引き当てるんだ。
「いやぁ?なんのことかなぁ?ちょっとさっぱりわからないなぁ?」
「やっぱりありますよね?見せてください」
「いやだからないって!というかあったとしてだからなんか問題あるのか?見せる必要がないだろ?」
「いや、あります。いいから早く見せてください」
「あっ待て──」
待って紅音普通に力強くないか?!取られる……!
「ほらやっぱり入ってる……なんで隠したんですか?」
「いや………それは…………」
「言わなくてもいいです。言いたくなかったんですよね。大丈夫ですよ」
「そうか……それでそれは……」
「でも、楽郎さんを愛しているのは自分だけでいいんです。わかりますか?だからこんなものいらないですよね?ねぇ、楽郎さん」
いや、人からもらった物をいらないと言う訳にはいかん……!しっかりここは否定しなくては……!
「いや、そんなことな……」
「いらないですよね?」
「いや、そんな……」
「いらないですよね?」
「いや」
「いらない、ですよね?」
「………………ハイ、イラナイデス……」
圧に負けた。いや、怖すぎるだろ……
「うんうん、わかってくれたらいいんです……コレ、自分が預かっときますね?」
「ハイ……ハイ」
「あと、最後に教えて欲しいんですけど……これって誰からもらいました?」
「いやーえーそれは………」
これを言うと玲氏身に何が起こるかわかったもんじゃ……待てよ?玲氏なら返り討ちにするんじゃ………いや、そう言う問題ではないか…………とにかく、今度こそこれを言ってはいけない。
「なんで言ってくれないんですか……?私たちの間に秘密は必要ないですよね……?」
「いや、紅音だって言えないことの一つや二つくらいあるだろ?例えば……あー………その…………ス、スリーサイズとか……」
「?私のスリーサイズはバスト……」
「OKわかった、紅音がなんの躊躇いもなくそう言うのが言えるのはわかった、だから言わなくていい。……ともかく、紅音はなんでも言えるのかもしれないけど、俺は秘密とかはきちんと保っときたいタイプなんだ。わかってくれるか?」
「はい、わかりました。だから、これは私のわがままです。教えて、くれませんか?」
「いや、だから教えられないって……」
「教えてくれませんか?」
「何度だって言うぞ?俺は教えられない」
今度は絶対に負けない……こんな手には屈さないぞ……!
「そうですか………なら、少し、手荒な手に出るしかないですね……?」
何をする気でいるんだ?そう思ってる間に紅音は持ってきていたカバンから何か取り出す。それはそこら辺のスーパーとかで買えそうなどこにでもある、しかしそれでいてしっかりと光沢を放つ
「ひっ」
「痛い目にはあいたくないですよね……?大丈夫ですよ、私も一緒です………言ってくれれば、それで済みますから……ね?」
「……いや、それでも………言いたく、ない……」
もはや半ば自分に言い聞かせるように否定の言葉を重ねる。
「そうですか……なら……」
何をするつもりだ?とそう思っていると紅音は一気に顔をズイっと寄せ、カッターを持った右手を見せつけるように視界の中央に置き言い聞かせるように語る。
「これが最後の通告です……痛くされたくなかったら、もう、言っちゃってください」
「ヒィッ……エト、アノ…………サイガ、レイサンデス……」
カッターナイフを突きつけられて脅されたんじゃもう言わざるをえない……というか近くで刃をみたらちょっと赤黒いもんが付いてたんだが、もしかしてもう使ってる……?
「さいが……サイガ………れい……へぇ………?はい、ありがとうございます、楽郎さん?」
「あぁ……わかったからもうそれを仕舞ってくれないか……?恐ろしくてしょうがない」
「ああ、はい!わかりました!今しまいますね!………えっと、それと……今こんな流れで渡しちゃうのもアレなんですけど、チョコレートです!よかったら今ここで食べちゃってください!」
と、いつもの元気な感じに戻った流れでそのままチョコをもらった。ハートの形をしているが、作るのに失敗してしまったのだろう、歪んだ形をしている。サイズはそんなに大きいわけじゃなくて食べやすい。
「へぇ、これ手作りか?わざわざ作ってくれてありがとな?それじゃ、さっそくいただくとしますか!」
口を開けて一口食べる。おいしい。甘さと共にほろ苦さが口の中に広がるビター味のチョコレートで何度も食べたくなる味をしている。……のだが、二口目のあたりで気になり始める。何か
「楽郎さん?どうですか?おいしいですか?」
「うん、おいしい、おいしいんだけど……
「あぁ、血とか入れてますよ?愛を伝えるのに良いってネットにあったので!ほら、血入れるために
本当に入れやがってたぞこいつ……こういうのも愛とかそういうのなんだろうがさすがに生理的嫌悪感がヤバい………
「うえっ……気持ち悪くなってきた………つーかお前もそれ大丈夫かよ……」
「はい!楽郎さんのためですから!」
「それさっきも聞いたわ………あっやばいちょっとトイレ行ってくる」
「大丈夫ですか楽郎さん?!」
────都合により映像を変更してお送りします────
nice boat.
はー気持ち悪い………でも少しは楽になったぞ…………
「紅音ぇ………とりあえず今度からそういうのはやめてくれ…………こうなるから。うぷっ……」
「はい………すみません……今度、お詫びと言ってはなんですがまたチョコ持ってきても良いですか?」
「んあ……別にいいけど、今度は血とか入れるなよ?というかそもそもなんか異物を混入させるなよ?」
「…………………はい」
絶対今度は髪の毛とか入れるつもりだっただろ………さては反省してないな、こいつ……
「まぁわかればいい……というか紅音って家遠かったよな?明日も学校あるんだしちょっと早いかもだけどもう帰っておいたほうがいいんじゃないか?」
「そう、ですね、まだ一緒にいたいですけど……もう帰っておくことにします」
そう話し、俺らは部屋から出て玄関の外へと向かう。
「それじゃ、またシャンフロで会いましょう!さようならー!」
「おう、じゃあな」
そうやって別れの挨拶を済ませたあと、家の中に戻る。紅音も帰ったことで何か「バレンタイン」という日が終わってしまったかのように感じる。そうやって今日という日を大事にしながら生きていく……というのはカッコつけすぎか。
「あ゛ぁーなんか疲れた……今日はもう寝ちまうか……」
あー布団が気持ちいいウェルカムお布団グッバイ意識……zzz……
因みに後で聞いた話によると雑ピはあの後
えー更新サボっててマジごめんなさい、Twitter見ればまあわかるんですけど音ゲーにどハマりしてました。Arcaea楽しすぎ。とりあえず星ポテに到達してある程度の目標は達成したんでまあ今後は頑張っていきます。はい。
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