ヤンデレな女の子に愛されるだけの話 (ストレア=リネレイト)
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物語系
ツンデレ幼馴染はあなたが大好き1


正真正銘の初投稿です。
初心者ですがよろしくお願いします。
後々上手くなっていく筈なので見切りをつけないでくれると嬉しいです

12/24 少し編集しました
4/6 少し編集しました


ねぇ!」

 

 俺は成戸正(なりと ただし)ただの高校二年生だ。

 今日は訳あってショッピングモールにいる。

 

ねぇ!」

 

「ねぇってば!!」

 

「本当に聞いてるの!? ったくこれだからアンタは。いい?アンタがどうしてもっていう

 から付き合ってあげてるの。だからアンタに拒否権なんてな・い・の!」 

 

「聞いてる。聞いてる」

 

「本当に聞いてるならさっさとこれ買いなさいよ!」

 

 さっきから騒いでいるこのツインテール美少女は桜崎寧音(さくらさき ねね)

 幼馴染であり、俺の彼女だ。ここに来たいと言ったのも寧音だ

 そして彼女が指で示す先にあるのはとあるネックレス。値段はなんと24000円。

 さっき寧音が突然「これほしい!」と言いだしたのだ

 しかし高校生が思いつきで買うには少し高すぎる。

 

「いやさぁ。こういうの買ってもつけてくれないじゃん」

 

 そう。今までこいつにはいろんなアクセサリーを買わされた。

 しかしそれをつけているのは一度も見たことがないのだ!

 そこをつくと露骨に寧音は目をそらす。そしてすこし目を泳がすと

 

「ねぇ、どうしても買ってくれないの?」

 

「!!」

 

 くッ、こいつ今にも泣き出しそうな顔して。しかもなんだそのツインテールは

 生きているみたいにぴょこぴょこはねやがって! 

 

 そうやっているうちに周りからの目線が集まる。

   

      「見てあの人彼氏かしら」

       「プレゼント買ってもらえないのかな」

     「うわ~あいつ心狭すぎだろ」

 

 周りの声を聞き寧音は少し嗤わらうと

 

ねぇ買ってよう シクシク

 ここぞとばかりに演技しやがって! 

 

 そう考えてる間も周りの視線は厳しくなっていく。

 

        「うわぁあいつ彼女泣かせたぞ」 

       「彼女泣かせるとかマジサイテー」

      「あいつ本当に彼氏かよ」

 

「あぁもう買うから! わかったから!」

 

「やったー!ありがと

 直ぐに寧音は笑顔になる。可愛いなちくしょう。

 

◆◆◆

 

「もうこんな時間かそろそろ帰るぞ」

 

「え~もう帰るの? 全然遊びたりないんだけど」

 こんな事を言っているがあの後もこいつのおかげで

 持ってきたお金のほとんどが消えた。誰ださっき可愛いとかいったやつ。

 

「いいからいくぞ」

 

「ハァ。ったくしょうがないわね。今日はこんくらいで許してあげるわ」

 

 帰りながら考える。

 中3の時は、もっと優しかったのになぁ。彼女は高校に入ってから変わってしまった

 当時は少し指を切っただけで「大丈夫!? すぐ絆創膏はるからね!

 ……痛いの痛いの飛んで行け~。うん。これで良し!」

 だったのに今では

「なにやってんの? ダサいんだけど。ハァ。はい、絆創膏。何故って…たまたま

 持ってただけだから勘違いしないでよね!」と、初手罵倒だ。どうしてこうなった。

 

「はぁ」

 

「どうしたのよ」 

 

「いや、なにも。ほら家ついたよ」 

 

「そう。じゃ、またね」

 

「また明日」

 

 玄関の扉を閉めつつ思う。

 ちょっと、と言うかまぁまぁあたりはきついけどそれでも俺と付き合ってくれてるし

 俺のことが嫌いというわけではないのだろう。

 所謂ツンデレというやつだそれでも俺の金を使いすぎだと思うが。

 せめて一回くらい身につけているところ見たいなぁ。

 

◆◆◆

 

今日は月曜日 昼休みだがやることもなく校内をブラブラ歩いている

 

「──か──つ─あ───?」

「─や─」

 

 奥の空き教室から男と女の話し声がする。これは寧音の声か?少し気になり覗いてみる

 もう片方は──ー!?あれはイケメンで有名な山田だ!

 寧音のことで悩んでるときアドバイスしてくれるいい奴だ

 でも寧音となにを話しているんだ?

 ?今一瞬山田がこっちをみたような…

 

「なんでよ別にいいじゃんあいつは遊びなんでしょ?」

 

「それは、ちg「僕知ってるよ?」

 

「正君に買ってもらったアクセ1回もつけてないんでしょう?」

 

「そ、そうだけどそれは!」

 

「てことは別に彼のこと好きじゃないんでしょう?

 なに、それとも大好きなの??」

 

 寧音の顔が見る見るうちに赤くなる

 

「ばっかじゃないの!あいつがどうしてもっていうから付き合ってあげてるの!

 べ、別にあいつのことなんてどうでもいいんだから!あいつはそ、そう!財布よ私の財布。

 この私が付き合ってあげてるんだから当然よね!」

 

 寧音は早口でしゃべる

 正直、俺は開いた口がふさがらなかった。

 どういうことだ?これじゃぁまるで俺は──

 

「じゃあ僕とつ「ガタッ」

 

 しまった!

 

「あんたここでなにしてんの!?も、もしかしていままでの……!ちがっ」

 

「おや、いいとこにいるねぇ。話は聞いていただろ?」

 

 山田が寧音を遮り目の前に立つ

 

「どうやら彼女は君のことなんかどうでもいいらしい」

 

「だから寧音君は僕がもらうことにするよ」

 

「!!」

 

 俺は耐えきれず走り出す。涙が止まらないクソ。「ちょっと!まってよ!話を聞いて!!ねぇ!」

 確かにおかしいと思った事はあった

 それでも寧音が喜んでくれてるならいいと思っていた。

 だが

 

「俺はただの財布、か……」

 

 気づけば俺はもう家の玄関にいた

 突然帰ってきた俺に驚いたのだろうが、俺の雰囲気を察したのか

 母さんはただ「おかえり」とだけ言ってくれた

 

 

 

「本当に明日からどうしようか」

 

 もう夜だというのにまだ頭から衝撃が離れない

 最初の頃見せてくれていた笑顔は嘘だったのだろうか

 考えれば考えるほど気持ちがぐちゃぐちゃになってくる

 

「はぁ、細かい事は明日考えよう」

 

 そう思い俺は眠りにつくのだった

 

 

 

 

 夜はまだ長い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「正君に嫌われた。正君に嫌われた。正君に嫌われた。なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!なんで!!なんでよ!!!

これも全部あのゴミが悪いんだ。あいつのせいで!どうしようどうやって正君と仲直りしよう?どうすれば…………」

 




誤字脱字あったら報告ください。
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できれば感想お願いします。


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ツンデレ幼馴染はあなたが大好き2

遅くてすみません。
今日から冬休みなので投稿速度は少し早くなると思います。多分。


 翌日、俺は学校に向けて足を動かしていた。

 実を言うと成績が良くないので休むわけにはいかないのだ

 はっきり言うと気分は良くない。しかも俺は寧音と同じクラスだ

 おそらく俺は山田と寧音がいちゃついているところを

 見せつけられるのだろう

 

キーンコーンカーンコーン

 

 チャイムが鳴る。このままだと遅刻になってしまうので

 憂鬱な気持ちになりつつ急いで席に座る。

 

「よし。ホームル-ム始めるぞ~」

 

 ふと、教室を見渡してみる。寧音が暗い顔で座っていた。

 山田が何かしたのかと思い探すが見当たらない

 少し気になり隣の席の田中に話しかける

 

「なぁ山田って休みなのか?」

 

「ああ。よくわかんないけどそうっぽいな」

 

 休んでいるのか。寧音の元気がないのはそのせいか。

 

「ホームル-ムはこれで終わりだ。起立、礼」

 

 ホームルームが終わりすぐさま田中が話しかけてくる

 

「正!休日はどうだった?どうせ桜崎さんと楽しんできたんだろ!」

 

 ……どうゆうことだ?

 まるで俺と寧音が別れたこと、そして山田と付き合ったことを

 知らないのかのような口ぶりだ

 思わず俺は聞いてしまう

 

「え、なに俺と寧音が別れて山田と付き合ったこと知らないのか?」

 

 

 空気が凍る

 

 

「「「「は?」」」」

 

 クラスの全員に驚かれてしまった。

 本当に知らなかったのか?田中が困惑した様子で聞いてくる

 

「何があったんだ?お前らあんなに仲良さそうだったのに……」

 

「いろいろあったんだよ。とにかく俺とね…いや”桜崎さん”はもう他人なんだよ。」

 

 すると突然寧音の親友の松田陽葵(まつだ ひまり)がくる

 

「そう成戸君。だったらこれを見ても同じ事が言えるかしら?」

 

 松田も横を見る。そこにいたのは今にも泣き出しそうな寧音だった

 

「なっ、ひっぐ、なんでそんなこというの?」

 

 しかしそこでフラッシュバックするのは先日の出来事

「ねぇ、どうしても買ってくれないの?」

 

「っ!また、泣き真似しやがって!」

 

「うえぇぇぇえん!!正君のばかぁああぁぁ!!!」

 

 寧音は走ってどこかに行ってしまう

 だが前みたいにはいかない。お前はそうやって俺で遊んでたくせに!。

 

「ぁ!寧音!!成戸君なんてこというの!!」

 

「そうだぞ正!大体、さっき言ってた山田と桜崎さんが付き合うとかあるわけないだろ!」

 

 二人は声を荒げる

 

「うるせぇ!お前らは何にも知らないくせに。いいか!

 あいつは、寧音は俺のことをただの財布だ。お遊びだっていうのを聞いた!!」

 

 田中と松田が目を丸くする。

 

「しかも隣にいた山田が寧音は僕と付き合うからって言ってたんだよ!」

 

 深い沈黙が流れる。二人は驚き、固まっていた。

 くそっ視界がにじんできた。

 

「「………………」」

 

「もういいよ。今日は帰る」

 

 昨日より重い足取りで学校を出る

 空は嫌になるほど青い。

 …寧音のさっきの顔は本当に泣いているように見えた。

 でも俺は信じることが出来ない

 もう遅いんだよ

 

 

 時は過ぎていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回はやっとヤンデレ要素が出てきます。

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ツンデレ幼馴染はあなたが大好き3

投稿速度が速くなるといったな。あれは嘘だ。
‥すみません。ゆるして;;


「あー、お空きれー」

 

 今俺は通学路の途中にある公園で

 ベンチに座って黄昏れていた

 今回ばかりは本当にどうしよう

 

「やぁやぁ。そこで黄昏れている少年」

 

 大人っぽい女性の声がする

 てか俺以外にも黄昏れている奴いるとか

 可哀想な奴ら多すぎだろ

 

「お~い。無視しないでくれよ~」

 

 女性を無視するとか最低だなソイツ

 

「ホントに生きてるのか?」

 

「うわぁ!!」「わぁ!!」

 

 いきなり凜とした女性の顔が目の前に出てきて驚く

 心臓の鼓動がとてもうるさい。

 

「ハァ、ハァ。びっくりした……」

 

「生きてたんだ。少年」

 

 女性はカラカラと笑いながら隣に座ってくる。

 ……近くない?甘いが爽やかさもあるいい匂いがするのだが

 そんな俺の思いも気にせず女性は話しかけてくる

 

「で。少年はなに黄昏れているんだ?

 リストラされたサラリーマン見たいな顔して」

 

「妙に生々しい例えやめてください。

 あとその少年って何ですか」

 

「ゴメンゴメン。でも少年がダメなら『そこの死にかけボーイどうしたんだい!』

 というふうに声をかける方が良かったかな?」

 

 なんなんだこの人。

 悪い人ではなさそうだし一応自己紹介しようかな?

 

「死にかけボーイは止めてくれ。俺の名前は成戸 正だ。」

 

「へぇ。私は青葉 美玲(あおば みれい)よろしく成戸少年」

 

「その少年って…はぁ。まぁそれでいいですよ」

 

「それで?成戸少年はココで何してるのかな

 高校生がそこら辺ぶらついていい時間じゃないよね」

 

 ザ・頼れるお姉さんみたいな顔して青葉さんは聞いてくる

 一瞬相談しようかと思ったが青葉さんに聞かせる話ではないような

 初対面だし。

 そこでどうにか話を逸らせないかと頭を回転させ、話をふる

 

「そういう青葉さんはここで何をしているんですか?」

 

おぉ、見事に逸らしてきたね。まぁいいだろう

 ふっふっふっ私はね、大学をサボっているんだ!!

 

 青葉さんの声が公園中にこだまする

 

「……へ?」

 

 俺は思わず声が出てしまった。

 頼れるお姉さんに見えるが実はダメダメ人間なのでは?

 一瞬でも相談しようと思った自分を殴りたい

 

「安心しろ。一応単位は取れているハズだ。」

 

 えぇ~この人取れてる”ハズ”だとか言ってるけど

 本当に大丈夫なのか?ちょっと心配になってきた

 心配されていることも知らず青葉さんは喋る

 

「あと話は逸らせてないから。

 さっさとしゃべっちゃいな」

 

 そう言う青葉さんの顔はとても優しかった。

 少しなら話してみてもいいかもしれない

 

 「実は…………」

 

 

 

 

◆◆◆

 

「それで今に至るという感じです。」

 

 少しのつもりが全部話してしまった。

 青葉さんはどう思ったのだろうか。

 その疑問に答えるように青葉さんは口を開く

 

「大変だったんだね。とても」

 

 とても優しい声をしていた

 

「…はい。」

 

「でも君が気にすることはないよ」

 

「私は君の元カノさんに何があったかはよくわからない。

 だが一度ちゃんと話を聞いてあげたら良いんじゃないかな。」

 

「……よし!ほら立って!いつまでもクヨクヨすんな。

 そんなの成戸少年には似合わないぞ!

 といっても私達知り合ったばっかだけどな。」

 

 青葉さんが俺を元気づけようと明るく話しかけてくる

 なんだか体が軽い気がする。

 

「ありがとうございます。元気出ました!」

 

 誰かに相談するだけでこんなに違うとは思わなかった

 

「おう。その意気だ少年。もし学校でなにかあっても

 私がいるから。今日はもう帰りな。」

 

「はい!ではまた。さようなら!」

 

「じゃあな。成戸少年。」

 

 青葉さんに手を振り俺は公園を出る

 明日学校に行ったら田中と松田に謝らないとな

 寧音ともちゃんと話をしなくては

 俺は軽い足で歩い「ねぇ。」

 

 

 ひどく、馴染みのある声がする

 

 

「ねぇ。あの女、なに?」

 

 

 でも何故だろうこんなにも背筋が凍るのは

 何故だろう息が荒くなるのは

 何故、こんなにも嫌な予感がするのは。

 

 

「こっちみてよ。」 

 

 

 ぎこちない動きで首を回す

 

 

 

 そこにいたのは……寧音だった。

 ただ様子がおかしい。顔は全くの無表情

 目の瞳孔は開ききっていて全てを呑込みそうだった

 

「ねぇ。答えてよ。」

 

「寧音?ここで何しているんだ?」

 

「いいから答えて。」

 

 寧音には有無を言わさない雰囲気があった

 おとなしく俺は話す

 

「あの人は青葉さんっていう人で

 ちょっと相談していたんだ」

 

「ふ~ん。相談って?」

 

「寧音の事だよ。」

 

 寧音は自分の名前を聞いて少し顔をほころばせる

 

「へぇ。でもね正君、もうあの女と会うのはだめだよ。」

 

「な、なんで」

 

「なんで?決まっているでしょ。あの女は正君を騙して

 自分のものにしようとしているんだよ。」

 

 何を言っているんだ?そんなわけないだろ

 だが、寧音は本当にそう思っているようだった

 

「違う!青葉さんには本当に相談にのってもらってただけだ!

 それに「いや」」

 

 必死に間違いを正そうとするが寧音に遮られてしまった

 

「嫌。私の前で他の女の名を呼ばないで!

 なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで……」

 

 …怖いんだけど

 寧音はいきなり叫び、「なんで」とぶつぶつ言っている

 だが少しして寧音は呟くのをやめた

 

「あ、そっかぁ。正君はおかしくなっちゃったんだよね

 大丈夫だよ。私が助けて、元の君に戻してあげるから」

 

「何をいってガッ

 

 急に頭に衝撃が響く。何を……寧、音………

 

「おやすみ。正君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回で最後です。

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ツンデレ幼馴染はあなたが大好き4

これで最後です。
次から話を分けずに一つにまとめて投稿したほうが良いんでしょうか

1/19 少し編集しました


 目が覚める。あれ?俺何してたんだっけ

 あたりを見回しても部屋が暗くてよく見えない。

 だがなぜかあの女子特有の甘い匂いがする

 ……女子?……女子…女子、そうだ!

 帰る時に寧音に何かされてそこから、そこからどうなったんだ?

 というかここどこだよ。俺の家ではないことはわかる

 とりあえずこの部屋から出てみるか。家の人がいるかもしれない。

 そう考え、ベッドから降りようとする

 

 ガチャ

 

 …え?なにか手に付いてる?

 手で触って確かめるとこれは手錠のようだった

 鎖が付いていてその先はベッドの脚に繋がれていると思われる

 

「な、なんだこれ!?」

 

ガチャガチャ

 

 クソッ!全然外れない!

 鍵穴みたいのはあるが鍵がないので意味がない

 

「どうすれば……」

 

 ふと横を見るとカーテンがあった。

 そうだ!ここから外に助けを求めればいい!

 俺はカーテンへ手を伸ばす。

 よし、ギリギリ届きそうだ

 だがカーテンを開く前に俺の手は止まってしまう

 

パシッ「正君、何してるのかな?」

 

「っ!!」

 

 いきなり部屋の明かりがついたので慌てて目を閉じる

 少しして目を開けるとそこには何かをもった寧音が立っていた

 食欲をそそる匂いがするから、料理だろうか

 寧音は皿を置きこちらを向く

 

「それで、何をしているのかな?私の目には

 その窓から助けを求めようとしているように見えるけど?」

 

 なんでバレてるの?

 だがそんなことよりも

 

「この手錠はなんだ!どうしてこんな事をした!」

 

 手錠をガチャガチャ揺らしながら聞く

 もしかしたら寧音が俺にした仕打ちを周りに知られて

 逆恨みしてこんなことをしたのかもしれない

 だが帰ってきた返答は全然違った

 

「なんでって、好きだから以外に何があるというの?」

 

 当然でしょという顔をして答える寧音

 

「いいから外せよ。大体これは犯罪だぞ!」

 

「愛があるから大丈夫だよ。それに正君が逃げないように、外から守るためにつけているんだよ?」

 

 話が通じない。

 そういえば寧音は今好きだ、とかいっていたがどういうことだ?

 

「なぁ山田についてはどういうことだ

 俺のこと財布だとかいった事は、どう説明するんだ?」

 

 俺は困惑しつつ聞く

 正直どういうことかよくわからない

 寧音は泣きそうになりながら言う

 

「ごめんなさい!君が帰ったあとあのゴミをごうも……聞き出したんだけどね

 あいつは私達を騙して引き裂こうとしていたの!」

 

 今拷問って言いかけなかったか?

 その後も寧音は話を続ける。それを要約すると

 高校に入ってすぐ山田は寧音に目をつけたらしいだが、彼氏である俺がいた。だから二人を別れ

 させれば寧音は自分の物になると考えたらしい。

 それであいつが思いついたのが『俺はツンデレ好き作戦』のようだった。正直なんで?と思った

 が一応あいつなりの考えだったようだ。山田はそういうのには詳しくなくツンデレ=暴力的な女

 というイメージで、寧音はそれを信じてしまい奇跡的にかみ合ってしまったらしい

 寧音の話はまだ続く

 

「あとね、アクセサリーの事なんだけど……」

 

 そうだ。ずっと気になっていた事だ

 寧音は中学の時ですら買ったアクセサリーをつけてはくれなかった

 

「ちゃんと、大切にしてるから」

 

 寧音は指を指しながら言う

 その先にあるのは、ショーケースだった

 ショーケースの中には俺が今まで買ってきたアクセサリー

 それに加え日付と写真、横にUSBがおいてある

 

 

「…なぁ、あの写真どうしたんだ?」

 

 おそるおそる聞いてみる。俺にはあんな写真を撮った憶えはない。

 なんならこの前のショッピングモールでの写真もある

 

「ああ、アレは私がいつも持っている小型カメラで撮った物よ

 横のUSBは隠しマイクで正君との会話を録音していたの。

 アレのおかげで寝る時には正君の声に包まれて幸せに寝られるのよ」

 

 顔を赤らめて「えへへ」とはにかむ寧音

 可愛いがやっている事はかなり怖い。あと目にハイライトがないのは何故だ。

 でもいろいろあったが誤解だった訳か

 

「じゃあ。全部誤解だってわかったから手錠外してくれない?」

 

「だめだよ。さっきも言ったけど外は危ないの。それとさぁ、さっきから外してとか

 ここから出してとか言ってるけどそれっておかしいよね。

 だって正君は騙されて私のことを嫌いになりかけたけど、それは誤解だってわかったんだから両思いだよね?

 でもまだそんなこというならお仕置きだよ?」

 

 やばい、どうやら寧音の琴線に触れてしまったようだ。

 ここで逆らったらその“お仕置き”がくるのだろう

 

「わ、わかった。外さなくてもいいから。でもたまには外の空気吸いたいな~なんて」

 

「まだそんなこと言うの?はぁ、でも今はいいや。

 せっかくチャーハン作ってきたのにちょっと冷めてきちゃったから先にこれ食べて」

 

 一瞬危ないと思ったけど良かった。

 それにしてもチャーハンかずっと何も口にしていないしとても食べたい

 

「ふふっ、食べさせてあげるね。はいあーん」

 

「あーん!?」

 

 最初は驚いたけど、何か言うのも怖いので最後まで

 食べさせてもらった

 

 

「おいしかった?口にあったらいいんだけど」

 

「美味しかったよ」

 

 

「なら、良かった!隠し味の痺れ薬と媚薬ちゃんと隠せていたんだね!」

 

「なん、の冗談だ?」

 

「冗談じゃないよ。既成事実作るんだから」

 

 寧音が少しずつこっちへ歩いてくる

 

「だんだん体が動かなくなってきたでしょ?

 それに呼吸も荒いよ」

 

「ぁぁ、正君温かいよ。」

 

 寧音は体をくっつけてくる

 薬のせいで全く動けない

 俺はこれからどうなるのだろうか

 

「大好きだよ。あ・な・た」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




主人公 成戸 正(なりと ただし)
今回一番の苦労人。あのあと必死に説得して「条件」付きで外に出られることになった
彼は幸せに束縛されます

ヤンデレ娘 桜崎 寧音(さくらざき ねね)
危うく彼氏を失うところだったが愛の力でどうにかした。
寝る前に聞くのは彼氏の囁きボイスになった。

クズ 山田
モブに下の名前などない
寧音のおかげでこいつが学校に通う事は二度とないだろう

条件
GPSと盗聴器はいかなる時も外してはいけない
寧音以外の女子と話してはいけない
寧音から5M以上離れてはいけない
寧音を心から愛すること
上記の3つを破った場合1週間お仕置きコース
最後の一つを破ると日の光を浴びることはもうないだろう






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ツンデレ幼馴染はあなたが大好き1 裏

いやぁ遅くなりました。学校のksみたいな行事がありまして。
スタートダッシュはミスりました。はい。 
無事陰キャコースです。美少女居るかなって思ったけどマスクでわからん;;

今回ちと長めなんで楽しんでください



「ねぇ!」

 

 私の名前は桜崎寧音。今、彼氏とショッピングモールでデートしているのだが

 

「ねぇ!」

 

「ねぇってば!!」

 

 この彼氏…成戸 正君はあろう事か私が呼びかけているのにぼうっとしているのだ!!

 

「本当に聞いてるの!? ったくこれだからアンタは。いい?アンタがどうしてもっていう

 から付き合ってあげてるの。だからアンタに拒否権なんてな・い・の!」

 

「聞いてる。聞いてる」

 

 信じられない!彼女とデートしに来ているのにこんな態度するなんて。

 私は心の中に少しイラッとした感情が出てきてしまった

 

「本当に聞いてるならさっさとこれ買いなさいよ!」

 

 私が指を指した先にあるのはかわいいネックレスだ。

 今日のデート627回目記念に買って貰おうと思ってる。

 まぁ、正君になら何を貰っても嬉しいけど。

 かわいい物ならより嬉しいし、私の為に買ってくれてると思うと胸の中がとても満たされる。

 

「いやさぁ。こういうの買ってもつけてくれないじゃん」

 

 ギクッ。でもそれは……えーとこう言う時は確か

 

「ねぇ、どうしても買ってくれないの?」

 

「!!」

 

 よし!効いてる!山田君の言った通りだ!

 じゃあこの感じで

 

ねぇ買ってよう シクシク

 

「あぁもう買うから! わかったから!」

 

「やったー!ありがとっ」

 

 嬉しい!正君、私の我が儘でこんな物も聞いてくれるなんて優しい、好き♡

 ってそうだ。そろそろ新しいショーケース買わないといけないわね。

 ホントは身につけていっぱい可愛いって言ってほしいけど、それ以上に他からの視線がある。

 私は自分で言うのもあれだけど、見た目は良い。だから他の男からの視線がすぐ来てしまう。

 私は正君だけの女だ。正君に貰った思い出を他の男に穢されるのは、お断りだ。

 正君なら、もう分かっているはず。

 それに正君からお願いされれば、いつでもお家でファッションショーを開くのだけど。

 

◆◆◆

 

「もうこんな時間かそろそろ帰るぞ」

 

「え~もう帰るの? 全然遊びたりないんだけど」

 

 あの後私達はゲームセンターに行って遊んできた。

 途中で撮ったプリクラが特にお気に入りだ。

 

「いいからいくぞ」

 

「ハァ。ったくしょうがないわね今日はこんくらいで許してあげるわ」

 

 もっと遊びたいけど、この写真に免じて許してあげる。 

 天井に飾れば、寝る前に正君の顔を見ながら寝れるかなぁ。そしたら素敵な夢がみれるかな。

 あっ、でもそんな事したら恥ずかしくて寝れないかも。

 そう言えば写真撮ったとき正君近かったなぁ。良い匂いがして…

 

「はぁ」

 

 突然正君がため息をしてきた。

 も、もしかして変な事考えていたのバレた!?

 私は恐る恐る聞いてみる

 

「どうしたのよ」 

 

「いや、なにも。ほら家ついたよ」 

 

 良かった。バレてない!そして自然と家まで送ってくれる正君。

 まぁ家は隣だからなんとも言えないけど

 

「そう。じゃ、またね」

 

「また明日」

 

 また明日だって。幸せだな~

 こんな日々がこれからもずっと続くなんて最高ね!

 

◆◆◆

 

 今日は月曜だから学校にいる。

 

「ねえ、桜崎さん。ちょっといいかな?」

 

「あ、山田君、どうしたの?」

 

「今から四階の空き教室に来てくれない?」

 

 なんか山田君に話しかけられた。

 山田君は正君の友達だからよく彼から好きな女性について聞き出してくれる。

 今回もそれ関係かな?ただ言い方が紛らわしいせいで周りの女子がキャーって

 言ってるのは少しダメだけど。

 

 

「それで話って何なの?」

 

「ああ、それはね正君が今日寧音君が他の男の所に行かないか心配していてね」

 

「はぁ、正君ったらそんな事あるわけ無いのに…」

 

 正君には私がどんな風に見えてるのかな。ちょっと悲しい。

 

「いや、分からないだろ。執拗に迫られたらどうするんだい?だから今、練習しないか?」

 

 なるほど。分からなくは無い。やるのだったらツンデレ設定も意識した方が良いのかな?

 

「わかった。やるわ」

 

 すると山田君は、段々こちらへと寄ってきて、気付けば目の前に居た。

 山田君の目は心なしかギラついている。

 

「……山田君?どうしたの怖いんだけど?」

 

「いいかげん付き合おう?」

 

 突然山田君に顎をクイっとされて思わず目を見開いてしまった。

 確かに怖い。そしてそれ以上に気持ち悪い。今すぐ離れたい。

 でもこれは練習だ。ちゃんと対応しなくちゃ。

 

「嫌よ」

 

 すると山田君は不意にどこかをみて少しにやりとした。気のせいかな?

 

「なんでよ別にいいじゃんあいつは遊びなんでしょ?」

 

「それは、ちg「僕知ってるよ?」

 

 さすがに言い過ぎだと思い否定しようとしたが遮られてしまう

 

「正君に買ってもらったアクセ1回もつけてないんでしょう?」

 

 なんで山田君がそれを知ってるの!?もしかして正君から?

 とにかく正君から色々聞いてるとしたら…とりあえず弁明しよう。

 

「そ、そうだけどそれは!」

 

「てことは別に彼のこと好きじゃないんでしょう?

 なに、それとも大好きなの??」

 

 彼の言葉を聞いて思わず顔が赤くなってしまう。

 ここで大好きと堂々と言うのはさすがに恥ずかしい。

 テンパってしまいこの前webで調べたツンデレのテンプレ台詞を

 言うことしか出来なかった。

 

「ばっかじゃないの!あいつがどうしてもっていうから付き合ってあげてるの!

 べ、別にあいつのことなんてどうでもいいんだから!あいつはそ、そう!財布よ私の財布。

 この私が付き合ってあげてるんだから当然よね!」

 

「じゃあ僕とつ「ガタッ」

 

 え?

 音がした方を恐る恐る振り返ると正君が泣きそうな顔をしてドアの隙間から私を覗いていた。

 

「あんたここでなにしてんの!?も、もしかしていままでの……!ちがっ」

 

 正君は泣きそうな顔をしていた。きっと私と山田君が人気の無い所で会ってるのをみて

 不安になっちゃたんだ。

 

「おや、いいとこにいるねぇ。話は聞いていただろ?」

 

 私が正君に説明するのを邪魔するように山田君が私と正君の間に割って入ってきた。

 

「どうやら彼女は君のことなんかどうでもいいらしい」

 

 なんで?ココで演技する必要は無いのに。どうでも良いわけがないのに

 

「だから寧音君は僕がもらうことにするよ」

 

 …あれ?私さっきなんて言ったっけ。正君はさっきから私達を見ていたはずで……あ

 私は気付いてしまった。取り返しが着かないことを言っていたことに。

 私はさっき『別にどうでもいい』、『あいつは財布』そう言った?()()()()

 

 山田君の言葉を聞いた瞬間、正君は走っていってしまった。

 

「!!」

 

「ちょっと!まってよ!話を聞いて!!ねぇ!」

 

 とにかく謝らなくちゃ。追いかけよう。

 本当は違うよ。どうでも良くないわけない、愛してるって言わなきゃいけない。

 なのに

 

「ちょっと待ちなよ寧音君」

 

「…その手を離してよ。正君を追いかけなくちゃ」

 

 山田が私の手をつかんできた。邪魔だ

 

「はぁ、もう良いじゃん。正君はもう君の事嫌いになっちゃっただろうし。

 あいつの事は置いておいて僕の方を見てよあいつよりよっぽど僕の方が良いでしょ?」

 

うるさいいいから離して!」

 

 私は山田の手を振り払って走り出した。

 とにかく行かなきゃ!

 私は学校の門をくぐって正君を追いかけた。

 

「はぁっ、はぁっ」

 

 そろそろ正君の家の近くだ。

 だけどインターンホンに手をかけて思う、このまま対面出来るのか。

 私は酷い事をいってしまった。恐らく嫌われた。

 もし面と向かって「もう来るな」とか言われたら……私は生きていけない。

 

「っ!」

 

 私はただ謝る、それだけなのに怖くなって逃げ出した。

 

 バタン!!

 部屋の扉を勢いよく閉め、ベッドに潜る。

 

 どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう

 酷い後悔の念に駆られる。なんで、どうしてこうなったの?本当なら今日も正君とイチャイチャ出来るはずだったのに。

 

「正君に嫌われた。正君に嫌われた。正君に嫌われた。なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!なんで!!なんでよ!!!これも全部あのゴミが悪いんだ。あいつのせいで!どうしようどうやって正君と仲直りしよう?どうすれば…………」

 

 そうだ元はと言えばあいつが悪いんだ。山田が。あいつが私達の仲を裂こうと動いていたんだ。

 山田に白状させてその上で正君に謝れば…

 

「…よし、やろう」

 

 外を見るともう暗くなってきている。あいつは今家に居るはず。

 確かお父さんがよく使っていた金槌があったはず。近くの公園に呼び出して背後から殴れば良い。

 動けなくしてからじっくりと聞こう。

 

 電話で呼び出せばいいかな。

「……あ、もしもし山田君?」

 

『やぁ、こんな時間に電話してくるなんて僕に気があるのかな?寧音君』

 

 反吐が出る。こいつの言葉なんて聞きたくない。でもここは耐えるときだ。

 

「えーとね。近くに公園があるよね。今から話があるの来てね。」

 

『ふーん。賢明な判断だ。僕の方が正君より何倍も幸せに出来るからね』

 

「っ!…とにかく早めにきてね」

 

『ああ、後でねマイハニー』

 

 

 電話が切れた。

 

「ああ~~!!!!!」

 

 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!!

 誰がお前の物になるか!何がマイハニーだ!

 深呼吸をして一旦落ち着く。後で殴れるんだから。よし。

 正直今からすることは悪い事だってのは解っている。でもやらなくちゃいけない覚悟は決めた。

 でも殺すつもりは無い。警察に捕まって正君と離れてしまうのはもう嫌だから。

 

 時間はある。夜はまだ長い。

 

 

 骨を折るくらいなら大丈夫だよね?




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ではまた次回で


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ツンデレ幼馴染はあなたが大好き2 裏

やっとかけました。テストはどうだったかって?その話やめましょう。
話変わるけどアークナイツでペナンスを無料10連で引けた+スターレイルで景元のキャラと光円錐を30連で引けた作者を褒めてください

5/27 蟷螂好きの影蜘蛛さん 誤字報告いつもありがとうございます

6/3 松田陽葵の口調を直しました


 「すぅ…はぁ」

 

 私は今公園の木陰に隠れて息を整えている。

 そろそろあいつが来るはずだ。

 

 ザッザッ

 

 誰かが来るのか音がする。

 

「あれ、寧音君は…」

 

 この声は山田だ。私は金槌を袖の中に隠した。大きめの服を着ているのでバレにくいはず。

 後は山田をこっちにおびき寄せてこれで殴ればいい。

 意を決して話しかける

 

「ねぇ、山田君」

 

「おや、寧音君そんなとこに居たのか」

 

「うん。他の人に見られると恥ずかしいからこっち来て?」

 

「どうやら僕のお姫様は恥ずかしがり屋のようだ」

 

 深呼吸だ深呼吸。山田の言うこと一つ一つにキレそうになるが頑張って抑える。

 山田がこっちにやってくる。今のところは怪しまれていない。 

 

「それじゃあ、ちょっと後ろを向いてくれない?」

 

「?ああ、かまわないよ」

 

 山田は私に従って後ろを向いた。

 私は袖に隠しておいた金槌をゆっくり取り出す。

 手に力を込めて、少し息を吸う。

 

「……っ、はぁ!」

 

「っ!かはっ」

 

 ゴンっという重たい音と共に山田は倒れた。

 私は頑張ってより見えにくい方へ山田を引きずっていった。

 そして間を開けず倒れた山田に対して必死に金槌を振るった。

 抵抗されないようにと肩を重点的に殴っていく。

 ある程度肩を砕いた所で山田を起こす。

 

「…ふう。ねぇ、聞きたいことあるんだけど……聞いてるの?」

 

 山田は情けなく顔をぐしゃぐしゃにして泣いている。

 

「ねぇ、早くして?殴るよ?」

 

「ヒッ、わか”ったわ”かったから!!な”ん”でも話すから!」

 

「ふう、まぁいいや。それでなんで私達を別れさせようとしたの?」

 

 一旦憤りの気持ちを抑える。さて、本題はここからなんだけど…

 山田は少し時間を置いて、ぽつりと話し始めた。

 

「……それは、君が僕を置いてあんな奴と恋仲になっているからだ」

 

 

 ……は?

 思わず呆けてしまう。だがそんな私を置いて山田は話を続けていく。

 

「入学してすぐの事だ僕は初めて君を見たときに恋をした。これほど僕に相応しい女性は見たこと

 がなった。でも隣にはすでに別の男がいた。なぜだ?僕が好意を寄せているんだぞ、

 だったら隣の男は捨てて僕の物になるべきだろう!」

 

「……………」

 

 言っている事がめちゃくちゃね。何を言ってるの?すでに彼氏がいるのに、

 自分が好きになったから自分の物になれ?頭がおかしいんじゃないの。

 山田は何故かヒートアップして来たようでどんどん喋り出した

 

「だから僕は考えた。2人を別れさせたら直ぐに僕に乗り換えてくれると

 一週間でこれを考えた僕は天才的だよ。友人という立場を利用して恋愛相談に乗る振りをして

 寧々くんが彼に嫌われるように仕向けた。そして2人の仲は悪くなった。

 ここまで完璧だったのに、ここまで完璧だったのに何故君は僕に物にならない!

 あの男よりも顔が良く、優秀で、素晴らしい存在なのに!!」

 

 これはさっきからなんで正君よりも自分が優れているかのような言い方をしているの?

 正君の方が優しくてかっこよくて何倍もずっと優れているというのに。

 それに自分の物にするために別れさせるとか人として終わりだと思う。

 私は自然に腕に力が入っていたことに気付いた。

 何はともあれ何が原因なのかは分かった。これを正君に説明すれば、分かってくれるはず。

 

「うん。話してくれてありがとう」

 

「じゃあ「とりあえず歯食いしばってね」…へ?」

 

 

 

◆◆◆

 

 はああああああああああああああ!!!!!!!!!!!

  こんなっ、こんな奴の所為でっ!

 

 時間は夜11時。私は今部屋でとてつもないほどにキレていた。

 あいつのせいで私達の仲を引き裂かれた挙句、理由が好きになった女に彼氏がいたから

 とか言うとんでもない物だったからだ

 少しだけ殴った後あのゴミとはしっかりお話ししてさっきの出来事を話さないように

 ”説得”してきた。必死に言わないって言ってくれてたし大丈夫だろう。

 

 まぁアレの事は忘れるとして、大事なのは明日だ。

 明日の朝学校でキチンと説明して仲直りする。

 そしたら今までイチャイチャ出来なかった分たくさん甘えちゃったり…なんて。

 今までは正君がツンデレ好きだと騙されていたから心を鬼にして少し強めに当たっていた

 けど、もうそんな演技はしなくて良いんだから。絶対に離さない。

 

 えへへ、明日はお泊まりかなぁ。

 ぜったい最高の日にするんだから。

 

◆◆◆

 

 次の日私は早めに学校へ向かっていった。

 正君が来たらすぐに謝って仲直りしようと思う。

 教室についた。まだ誰も居ないので席に着く

 どうやって謝ろうかな。そう考えていると頭に言葉がよぎった。

 

 もし許してくれなかったら?

 

 急に視界が狭くなった。

 私は今までずっと正君が許してくれると思っていた。

 でもよく考えたら、正君からしたら私は自分を虐めて更に違う男と付き合っていた最低女。

 今更ごめんなんて言っても信じられないだろう。

 私だったら家に閉じ込めてもう二度とそんなことが起きないように調教しないといけない。

 でも正君から完全に拒絶されてしまったら、私は……

 眩暈がして訳もわからなくなってくる

 

「……ハア、ハァ、ハッ」

 

 ガラガラとドアの開く音がする

 

「あっ。寧音早いわね、おは…ってどうしたの!?」

 

、陽葵《ひまり》ちゃん…」

 

「とにかく落ち着いて深呼吸して?」

 

「す〜〜は〜〜」

 

 陽葵ちゃんに促されて私は呼吸を整える。

 気付かないうちに過呼吸になっていたみたい。

 陽葵ちゃんには感謝ね。

 呼吸を整えてると陽葵ちゃんが話を切り出してきた。

 

「ねぇ何があったの?ゆっくりでいいから話してみない?」

 

「…うん。実はね……」

 

 陽葵ちゃんには敵わないな。

 どんなに言いずらいことでも陽葵ちゃんにならしゃべれる気がする。

 


 

「何それ最っ低!山田の奴なんて事を!」

 

「それに関してはもういいの。と言うかゴミの事なんか考えたくもないし。

 そんな事よりも私、正君に謝りたいのにもし許してくれなかったら

 って考えたら怖くなってきちゃって…」

 

 私が話終わると陽葵ちゃんは静かに私の頭を撫でてきた。

 とても優しい手付きで安心する。

 

「寧音、大変だったわね。でも大丈夫。私が手伝ってあげるから!」

 

「ほんとにいいの?陽葵ちゃん」

 

 私から正君に話しかけるのはちょっと難しい。

 陽葵ちゃんが手伝ってくれるならとても助かる

 

「ええ。私が成戸君が来たら彼を呼び出して山田の事を説明してあげる。

 そしたら寧音が出てきて謝って仲直り!どうかしら?」

 

 今の私が説明しても正君は信じてくれないと思う。

 だけど陽葵ちゃんからなら信じてくれるかもしれない

 どうやら私は最高の友達を持っているみたいだ

 

「〜〜ありがとっ!」

 

 後は正君が来るのを待つだけだ

  

 

 

 

 正君が来ない。後少しでチャイムが鳴ってしまう。

 やっぱり怒ってるのかな。私になんか会いたくないって。

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 チャイムが鳴ってしまった。

 

「大丈夫よ、寧音直ぐ来るわ。」

 

 陽葵ちゃんは私を励まして席に戻っていった。

 本当に来るのかなぁ。

 不安になって私は俯いてしまう。

 

「よし。ホームル-ム始めるぞ~」

 

 ホームルームが始まってしまったが、先生の話は全く聞こえなかった。

 

「ホームル-ムはこれで終わりだ。起立、礼」

 

 ホームルームが終わってすぐに陽葵ちゃんがやってきた。

 

「ねぇ!成戸君来てるわ!」

 

「えっ?本当?」

 

「ええ。ほらあっち見て」

 

 陽葵ちゃんの指の先を見てみると…本当にいた!

 

「じゃあ私行ってくるわね」

 

「うん。お願い!」

 

 陽葵ちゃんは正君の方へ……

 

「正!休日はどうだった?どうせ桜崎さんと楽しんできたんだろ!」

 

「え、なに俺と寧音が別れて山田と付き合ったこと知らないのか?」

 

 やめてよ

 

「何があったんだ?お前らあんなに仲良さそうだったのに……」

 

 

「いろいろあったんだよ。とにかく俺とね…いや”桜崎さん”はもう他人なんだよ。」

 

 

「そう成戸君。だったらこれを見ても同じ事が言えるかしら?」

 

 なんで、そんなこと言うの。私はこんなにも正君を想ってるのに。

 私はとっても苦しいのに。君に一日会えないだけでそれだけで

 

「なっ、ひっぐ、なんでそんなこというの?」

 

「っ!また、泣き真似しやがって!」

 

「うえぇぇぇえん!!正のばかぁああぁぁ!!!」

 

 私はたまらなくなって逃げ出した。

 どうしてこんな事になったの。

 なんで私達の邪魔をするの。

 なんでどうしてもういややめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて

 

 

 

 いつの間にか私は家にいた。

 

『いろいろあったんだよ。とにかく俺とね…いや”桜崎さん”はもう他人なんだよ。』

 

「……ッ!」

 

 愛する正君から放たれた完全に嫌われた事を示す言葉。

 あの言葉が頭にこびりついている。

 ずっとなんでを頭の中で繰り返してる。

 

「なんでなんで………………嗚呼、そっか。そうだよねきっと正君は騙されているんだ。

 外の世界は危険だらけだから。私達の邪魔ばっかしてくる」

 

 でも誰に唆された?山田ではないだろう。あれにはおそらく出来ない。

 

「まあ関係ないか。これから正君が危険に晒されないようにすれば良いだけなんだから。」

 

「ふふ、あははははははは!」

 

 そうと決まれば準備しなくちゃね。ちゃんとやらなきゃ。私達のために。

 待っててね。正くん♡

 

 時は過ぎていく

 




若干ヤンデレ要素が足りない気がする。
あと陽葵ちゃんは珍しく全然良い人ですね。

誤字脱字あったら教えてください。


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ツンデレ幼馴染はあなたが大好き3 裏

毎度のごとく遅くなりました。
女の子の口調ムズイです


 今私はネットで正君を守るために必要な物を探している。

 前々から正君に使いたいと思って調べていたのだが買ってはいなかった。

 今買おうとしているのは、手錠と薬あたりだ。

 最近の技術はすごい物で、午前中に注文すれば即日配達してくれるから恐らく

 昼過ぎとかには届けてくれるだろう。

 

 必要な物を購入し終えて暇になる。

 私はぼんやりと昔の事を思い浮かべていた。

 


 

 正君とは小学校からの付き合いだ。

 家が隣同士だからよく一緒に遊んだりしていた。

 中学校に上がる頃には思春期だからか誰が誰を好きだ〜とかよく聞くようになっていた。

 その時はまだ恋とかはよく分からなかったが正君とこのまま一緒にいるんだろうなと

 なんとなく考えていた。

 けどある日状況が変わった。

 

「寧音、今日は先に帰っていいよ」

 

「え?」

 

「ちょっと用事があって長くなるかもだから」

 

 私と正君はいつも一緒に帰っているのに何故か今日は違った。

 私はとりあえず返事をしたが、私は気になって結局放課後に、正くんをつけて行くことにした。

 

「それじゃあ、また明日」

 

「うん。またね正君………よし、陽葵ちゃん行くよ」

 

「ええ、幼馴染をおいてどこか行くなんて怪しいわ」

 

 私は一人だと不安だったので最近仲良くなった陽葵ちゃんについて来てもらう事にしていた。

 私達は正君の後を探偵さながらに尾行していくのだった。

 

 

「あれ、ここって…」

 

 正君について行った先は体育倉庫だった。

 陽葵ちゃん曰くよく告白とかが行われているスポットらしい。

 すると

 

「あっ、待たせてごめん」

 

 正君が誰かに話しかけている声がする。物陰からこっそり見てみると、クラスの女子がいた。

 二人は楽しそうに話している。二人は私達に背を向けてそのまま倉庫に入ってしまった。

 それを見た私の中でナニかが膨れ上がってくる。

 

 なんでそんな楽しそうな顔をしているの?なんで私と話している時には見せたこともないような顔をして私よりその女が良いの?それにココって陽葵ちゃん曰く告白スポットなんだって?てことはその女は告白するために正君を呼び出したのかなそれしかないよねだめだよ正君の隣は私の物なんだからそこは私の場所私がいるはずの場所だよね倉庫に入って何をしようとしてるのそんなの絶対絶対絶対絶対許さない

 

「寧音?顔怖いけど、どうしたの?」

 

「…え!?」

 

 私は顔を触って確かめる。そんな怖い顔してたかな。

 

「ごめん。なんか正君が私以外の女と話してるの見たらなんかムカムカしちゃって」

 

「へ〜嫉妬してたのね」

 

 陽葵ちゃんはニマニマしながら言ってきた。

 私は何を言って…と思ったがすぐにかき消されてしまう。

 

「要するに寧音は好きな男が知らない女と楽しそうにしているのを見て嫌な気持ちになった。

 そういう事でしょ?」

 

「いや、これは好きとかじゃ……それにその好きってのがよく分からないし…」

 

 このモヤモヤとした気持ちが正君が好きだからかと言われると…うーん。

 どういうのが好きというのかよく分からない。

 私が悩んでいると陽葵ちゃんが聞いてきた。

 

「じゃあ寧音、クラスの男に体を見られるのと成戸君に見られる時でどんな気持ちになるか

 想像してみて?」

 

 いきなりだったので戸惑いつつ私は陽葵ちゃんの言う通りに想像した。

 

 クラスの男子にジロジロ見られるのはなんか気持ち悪い。凄く嫌だ。

 でもそれを正君に置き換えると……

 

「えへへへ」

 

「寧音は今こころがぽかぽかしてるんじゃないかしら。それは好きだからよ」

 

 ずっと前から正君に会う度に心がこんな感じになるのは好きだからなんだ。

 私は気付いていないだけでずっと正君が好きだったんだ。

 

「…そうだったんだ。すごい!なんでこんなに詳しいの?」

 

 陽葵ちゃんはふふっと笑ってささやいてきた。

 

「実は私も今狙ってる人が居るの。あと少しで結ばれそうなのよ」

 

「ええー!そうだったんだ!だからそんなに詳しいんだね」

 

「ええ、だから任せなさい。まずは成戸君の目を覚さなくちゃいけないわ。

 そのために何をすれば良いか分かる?」

 

 陽葵ちゃんの質問に対してちゃんと考える。

 正君には今変な女が纏わり付いている。だったらまずその女から離さなくちゃいけない。

 

「陽葵ちゃんあの女を離さなきゃいけないのはわかったけど、どうすればいいか分かんないよ」

 

「大丈夫よ。方法はあるわ。まず一つはあの泥棒猫を消す事よ。でもこれは現実的ではないわ。

 そこで、もう一つは成戸君を家に監禁する事よ。これならあの女から引き離せるし

 一緒に暮らす事も出来るわ」

 

 すごい!正君と一緒に暮らせれる上にあの女から引き離せるなんて!一石二鳥だ。

 陽葵ちゃんは天才だ!

 

「じゃあ、監禁するためにはどうすれ「あれ寧音何やってんの?」…え?」

 

 声のした方へ顔を向けると正君が荷物を持って倉庫から出てきていた。

 このままだと後をつけてきた事がバレてしまう。

 私は慌てて話題を逸らす事にした。

 

「正君こそ女子と二人きりで倉庫でなにやってたの!」

 

 正君の答えを待つ。答えによっては、本当に監禁しなくちゃいけなくなる。

 正君が口を開く。

 

「先生に頼まれて荷物を取りに来ただけだよ?」

 

 正君はそう言って、手に持ってる物を見せてきた。

 

「………え?」

 

 陽葵ちゃんと遅れて倉庫から出て来ていた女子は肩を震わせて笑っていた。

 


 

「ふふっ、懐かしいな」

 

 ちなみにあの女子は私が正君の事を好きだったのは知っていたらしい。

 さらに言うならクラスの全員に知られていたらしい。とても応援された。

 陽葵ちゃんにはあの後無事に好きな人と結ばれたらしい。

 どうやったらデートの記録を残せるかとかを相談もした。

 

 ふう。ちょっと気分転換がしたいな。時間はそんなに経っていない。外にでも行こうかな。

 すぐ近くに小さめの公園があったはずだ。そこに行こう。

 

 少し身だしなみを整えて靴を履く。

 私は戸を開いて外に出た。

 

 

 

 

 

 




あと陽葵ちゃんは珍しく全然良い人ですね。←????
全然病んでました。
もともとヤンデレの素質があっただけの寧音を開花させたのはコイツです

お気に入りと感想ください。(欲望ダダ漏れ)


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ツンデレ幼馴染はあなたが大好き4 裏

約1ヶ月半もお待たせしてホントすみません!コロナとテスト食らってたら内容吹っ飛んで
全然書けませんでした。
お気に入り100超ありがとうございます!これからも頑張っていきます!

今回ちょっと長いです。約5000文字あります。話分けるとこ若干ミスったかも。


 街中をあるいていく。こんな時間に平日の外を出歩くなんていつぶりだろうか。

 何というか新鮮な気持ちになる。いつも見ている街なのに人は全然居なくて聞こえるのは

 鳥のさえずりと車の音が少しだけだ。ちょっとだけわくわくする。

 

 少し軽い足取りで公園に着いた。……?

 不思議なことに誰かの話し声がする。声的には若い男女だ。この時間なら大学生かな?

 もしかして公園デートでもしてるのかな。私だって女の子だ。

 そう言う事はよく考えるし、好きな方だ。

 気になったので顔を少しだけ出して覗いてみた。

 

 

「……え?いやっ嘘っ…」

 

 私は目を疑った。体温が下がって行くのを感じる。

 そこには見知らぬ女とすごく近い距離で話している男…正君の姿があった。

嫌だ嫌だいやだいやうそうそいやだやめてわたしのせいでわたしがわたしの離れろ近づくな

 心の中が黒く染まっていく。目の前のそれを理解したくなかった。

 正君の心が傷ついてる所にあの女がつけ込んだんだ。

 だめだよ正君その女はきっと良くないことを考えてる。

 正君をまた私から奪おうとするんだ。そんなの許されない。二度と起こさせない。

 私はアレを取りに家へ走りだした。

 

◆◆◆

  

「はぁ…はぁっ、これで……」

 

 家に着いた私は早速お目当ての物を手にしていた。

 山田の時もお世話になった金槌だ。

 私の作戦はこれで気絶させて正君を私の家に連れて帰る。

 もうなりふり構っていられない。痛いかもしれないけど我慢してね。

 ちょっとだけお仕置きも兼ねてるんだから。

 

「待ってて今行くからね」

 

 そんな言葉と共に私は元来た道へと走り出していった。

 

 公園に着くと正君はまだ見知らぬ女と話していた。

 私は木陰に隠れてこっそり覗き見る。

 金槌は山田の時と同じく袖の中だ。

 

「それで現場みたいなのを見ちゃって……」

 

 『現場』

 

 その言葉に胸が締め付けられる。私が犯してしまった失態。

 でも大丈夫その失態を取り返せるようにちゃんと監禁して愛し合うから。

 今まで正直になれなかった分いっぱい一緒にいてあげるから。

 家に着いたら何をしようか。愛情たっぷりの手料理を作ってあげたいな。

 それであーんって互いにやって、食べ終わったら一緒にお風呂入って、

 裸を見せるのはちょっと恥ずかしいけど正君になら見て欲しいかも。

 それで寝る前にベッドでいい雰囲気になったら…キスとかしちゃったりして。

 他にも他にも…………

 

「ありがとうございます。元気出ました!」

 

 ん?どうやらイロイロ考えてる間になんか話が進んでたみたい。

 

「おう。その意気だ少年。もし学校でなにかあっても

 私がいるから。今日はもう帰りな」

 

 クソ女が正君に媚び振んないで。

 

「はい!ではまた。さようなら!」

 

 また、とかあるわけないでしょ。正君はこれから私と一緒なんだから。

 あの女について正君に今すぐ問い出したい。

 答えによってはお仕置きしてちゃんと誰の物なのか分からせなきゃ

 

「じゃあな。成戸少年」

 

 正君はやっと女から離れて歩き出す。

 私は後ろから正君に話しかける。

 

「ねぇ。」

 

 彼の足が止まる。

 

「ねぇ。あの女、なに?」

 

 何度も見た後ろ姿。

 大好きで大好きで私の大切な人。

 もう絶対離したりなんてしない。

 

「こっちみてよ。」 

 

 彼はゆっくりとその首をこちらへ向ける。

 ひどく怯えたような顔も愛しく思える。

 

「ねぇ。答えてよ。」

 

「寧音?ここで何しているんだ?」

 

 頑張って話題を逸らそうとしているのは可愛いけど

 誤魔化そうなんて許さないよ?

 

「いいから答えて。」

 

「あの人は青葉さんっていう人で

 ちょっと相談していたんだ」

 

 青葉さんね……名前まで聞いてるんだ。

 よくこの短期間でそこまで仲良くなったね?

 正君の相談に乗っていいお姉さん感出して誘惑してるんだ。

 

「ふ~ん。相談って?」

 

「寧音の事だよ。」

 

 わ、私の事かぁ。へぇ。ちゃんと私のこと考えてくれてたんだ。

 でもね正君尚更他の女に相談するべきじゃないよね?せめて青葉ちゃんとかさ。

 

「へぇ。でもね正君、もうあの女と会うのはだめだよ。」

 

「な、なんで」

 

 そこで動揺するって事はもしかしてあの女の事気にしてるのかな??

 

「なんで?決まっているでしょ。あの女は正君を騙して

 自分のものにしようとしているんだよ。」 

 

「違う!青葉さんには本当に相談にのってもらってただけだ!

 それに「いや」」

 

 正君はいきなり大声を出して私に何かを言ってくる。

 嫌。私の前であの女の事を庇うな。

 嫌。私以外の事なんてどうでもいいでしょ。

 嫌。なんで私の言うことを信じてくれないの。

 

「嫌。私の前で他の女の名を呼ばないで!

 なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで……」

 

 分からないよ。なんで私をそんな目で見るの?

 そこで私は気付いた。

 

「あ、そっかぁ。正君はおかしくなっちゃったんだよね

 大丈夫だよ。私が助けて、元の君に戻してあげるから」

 

 そうだよそれ以外あり得ない。正君は手遅れなんだ。

 あの女に洗脳されておかしくなっているんだ。

 早く助けてあげなきゃ。あ、でも洗脳されてるんだったら抵抗されちゃうかな?

 やっぱり使うしかないんだね。

 

「何をいってガッ

 

 私は何か言いかけてる正君に対して金槌を振るう。

 重たい音と共に正君は少しふらつき、倒れてしまった。

 

「おやすみ。正君」

 

 正君を背負うと私は久しぶりに彼の温もりを感じて、私達の家へゆっくりと帰っていった。

 

◆◆◆

 

 バタン

 

 ようやく家に着いた。人一人背負うのは結構疲れる。

 実を言うと何度か通りすがりの人に正君を背中に抱えているのを見られ

 ちゃったけど、微笑ましい目で見られるだけで終わった。

 私は正君を私のベッドまで運んだら保冷剤とタオルで殴ちゃった所を冷やして応急処置をする。

 

「ふう。一旦これでいいかな」

 

 一応正君が起きても良いように紐でベッドにくくりつけといた。

 でも手錠が届いたらちゃんと交換はする。

 

 時間あるしお昼でも作っておこっと。

 

 

「~♪」

 

ピーンポーン「宅配便でーす。」

 

「はーい」

 

 来た!!私は火を止め、急いで玄関の扉を開ける。

 

「すみません。此方に判子お願いします」

 

「はい。ご苦労様です」

 

「有り難うございましたー」

 

 私はその場で段ボールを開封する。そして私達のこれからを作る大切な物を取り出した。

 媚薬と痺れ薬はキッチンに置き、鎖付きの手錠を持って部屋へ向かう。

 

 ゆっくり扉を開けて正君の様子を確認する。

 

「すぅ……すぅ」

 

 良かった。まだ寝てるみたいだ。気持ちよく眠っている顔に安心しつつ、

 私は素早く拘束具を紐から手錠に変更した。

 やっと完璧に正君を外の世界から守る事ができると感じて笑みが溢れる。

 

「ふふっ、寝顔可愛い」

 

 私は彼の頭からタオルとぬるくなった保冷剤を外して、台所へと向かった。

 一応痺れ薬と媚薬の説明を読んどこうかな。

 痺れ薬は…どうやら5分から10分くらいで効いてくるみたい。

 一方媚薬は…

 『超即効!超強力!愛しのあの人も一瞬で獣に♡』

 ……本当かな、これ。一応少しだけ飲んでみよ。

 私は疑問に感じつつ一口だけ飲んでみた。なんか変な味がする。

 ・・・まぁそんな数秒じゃ効かないか。料理の続きしよ。

 今の私でも簡単に作れるからという理由でチャーハンを作っている。

 でも将来はいろんな料理を振る舞ってあげたい。

 

「ハアッ、ハァっ」

 

 そろそろ完成するのだけど心なしか身体が熱いし息が荒くなっている。

 媚薬が効いてきたっぽい。時間でいうと5分くらいで効いたようだ

 これだったらチャーハンに混ぜておけば食べ終わる頃には効いてくるだろう。

 と言うことでチャーハンに媚薬と痺れ薬をかけて混ぜ合わせた。

 

「よし!皿に盛り付けて、正君のとこへ持って行こう」

 

 皿を持って階段を上がり、ドアを開く。

 するとそこには窓に手を伸ばそうとしている正君がいた。

 起きていた事を嬉しく思いつつ、まだ逃げようとする姿に苛立ってしまう。

 

パシッ「正君、何してるのかな?」

 

 電気を付けて正君に問いかける

 

「っ!!」

 

 私は再度咎めるように聞いた。

 

「それで、何をしているのかな?私の目には

 その窓から助けを求めようとしているように見えるけど?」

 

 正君は一瞬目をそらした。どうやら当たっていたみたいだ。

 そして直ぐさま声を荒げて話を逸らした

 

「この手錠はなんだ!どうしてこんな事をした!」

 

「なんでって、好きだから以外に何があるというの?」

 

 何でって言われても好きだから、一緒に居たいからしかあり得ない。

 

「いいから外せよ。大体これは犯罪だぞ!」

 

 犯罪?そんなの関係ない。君に同意の上だったって言わせれば良いんだから。

 

「愛があるから大丈夫だよ。それに正君が逃げないように、外から守るためにつけているんだよ?」

 

 正君は素直だから他の人にすぐ騙されちゃう。他の奴らはいつも私達の邪魔をする。

 だからそんな事が起きないように対策しなくちゃ。

 

「なぁ山田についてはどういうことだ

 俺のこと財布だとかいった事は、どう説明するんだ?」

 

 !!そうだ正君は何も知らないんだ。説明しなきゃ。

 分かって貰わないと全部全部あいつが悪いんだって。

 

「ごめんなさい!君が帰ったあとあのゴミをごうも……聞き出したんだけどね

 あいつは私達を騙して引き裂こうとしていたの!」

 

 私は一生懸命に説明した。私はホントはあなたが大好きって解ってもらえるように。

 

「あとね、アクセサリーの事なんだけど…ちゃんと、大切にしてるから」

 

 私は部屋の半分を埋めているショーケース達を指さした。

 

「…なぁ、あの写真どうしたんだ?」

 

 あ、やっぱり気になっちゃうか。正君には言ってなかったもんね。

 

「ああ、アレは私がいつも持っている小型カメラで撮った物よ

 横のUSBは隠しマイクで正君との会話を録音していたの。

 アレのおかげで寝る時には正君の声に包まれて幸せに寝られるのよ」

 

 えへへ。言っちゃった。本人の前で言うと恥ずかしいな。

 でも、もう録音はしなくて良いのか今度からは直接聞けるから。

 

「じゃあ。全部誤解だってわかったから手錠外してくれない?」

 

 和んできたところに正君が水を差す。

 何言ってるのダメに決まってるじゃない。

 

「だめだよ。さっきも言ったけど外は危ないの。それとさぁ、さっきから外してとか

 ここから出してとか言ってるけどそれっておかしいよね。

 だって正君は騙されて私のことを嫌いになりかけたけど、それは誤解だってわかったんだから両思いだよね?

 でもまだそんなこというならお仕置きだよ?」

 

「わ、わかった。外さなくてもいいから。でもたまには外の空気吸いたいな~なんて」

 

「まだそんなこと言うの?はぁ、でも今はいいや。

 せっかくチャーハン作ってきたのにちょっと冷めてきちゃったから先にこれ食べて」

 

 まあ正君が絶対に他の人に騙されないって分かるくらいになったら外出も考えようかな。

 私も出来ることなら外でデートとかしたいし。

 そう考えつつ正君に皿を渡そうとして思いつく。

 これって『あーん』チャンスかも!?

 

「ふふっ、食べさせてあげるね。はいあーん」

 

「あーん!?」

 

 恥ずかしがっちゃって可愛い。私は顔が赤くなるのを誤魔化すように

 正君の口へ、スプーンを動かした。

 

 

 最初は恥ずかしそうにしてたのに段々恥ずかしさが消えていって

 普通に味わって食べてくれていた。

 

「おいしかった?口にあったらいいんだけど」

 

 私の初めての手料理だから美味しくないって言われたらどうしよう。

 

「美味しかったよ」

 

 良かった!美味しいって言ってくれた。嬉しい!!

 

「なら、良かった!隠し味の痺れ薬と媚薬ちゃんと隠せていたんだね!」

 

「なん、の冗談だ?」

 

 ……あ、嬉しくて流れで言っちゃった。

 まぁそのつもりで入れたんだしいいか。

 

「冗談じゃないよ。既成事実作るんだから」

 

 半分勢いで正君の方へ近づいていく。

 

「だんだん体が動かなくなってきたでしょ?それに呼吸も荒いよ」

 

 時間的にはもう効いてきているはずだし。

 正君は気付いてないっぽいけど少し呼吸が荒い。

 

「ぁぁ、正君温かいよ。」

 

 私は正君の体を抱きしめた。温かさが伝わってくる

 

「大好きだよ。あ・な・た」

 

 私はこの後の明るい未来を思い浮かべて微笑んだ。

 

 

 




主人公 成戸 正(なりと ただし)
この後、桜崎母のおかげで監禁は免れた。
けどほぼ同棲関係になってしまった。

ヤンデレ娘 桜崎 寧音(さくらざき ねね)
母にばれて普通に怒られた。けどほぼ同棲まで持ち込んだ。強い(確信)

桜崎(母)
娘と正は結ばれるだろうな、と思っていたけど監禁まで行くとは思わなかった。
外堀は成戸母と一緒に秒で埋めた。

次回はヤンデレお嬢様の裏をやっていきます。

お気に入り、感想お願いします
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貴方を助けてくれるヤンデレお嬢様1

どうも久しぶりです。サボってた訳じゃナイヨ?

2/12 少し編集しました




 俺の名は秋風 柊(あきかぜ しゅう)

 今は暇なので教室の隅にある自分の席で空気になろう!ゲームをしている。

 ルールは簡単、ホームル-ムが始まるまでに誰にも話しかけられなかったら勝ち

 話しかけられたら負け。

 ちなみに俺は今までこのゲームで負けたことがない(今日初めてやるのであたりまえ)

 だがそもそも俺に話しかける人なんて

 

「あら、ご機嫌よう。秋風さん」

 

 

 

 まぁ、気を取り直して。説明しよう!

 今話しかけてきた何時代の人ですか?と聞きたくなるしゃべり方をする

 この人は如月 玲奈(きさらぎ れいな)さんだ!

 日本で一番儲けてるという如月財閥のご令嬢様だゾ!

 もし、本当に「ご機嫌ようとか何時代の人ですか?w」とかいってしまったら

 直ぐに黒服のお兄さんがきて次の瞬間にはもうこの世にはいないかもしれないな!

 (この間0.1秒)

 ということでそんな人に話しかけられた俺ができる反応といえば

 

「ア、ハイ。こ、こんにちは」

 

 圧倒的童貞クソ陰キャである。と言いたいとこだが

 彼女の容姿はシミ一つない脚に人形のように綺麗な顔、真っ白な肌に艶やかで綺麗な黒髪。

 どこの液晶画面から出てきたの?と言いたくなるくらいに完成されている。

 おまけに親衛隊なる物がいたり、週2であたって砕ける犠牲者がいるくらいこの人

 を好きな人は多いので関わるだけで後が怖い。

 そんな人に話しかけられたら誰でも絶対こうなるだろう。

 

「ふふっ、そんなに堅くならなくてもいいですよ。同じ学び舎で共に過ごす仲間なのですから」

 

 そう言い微笑む彼女はとても美しかった。

 思わず見とれてしまうほどに

 

「どうかされました?」

 

「い、いえ!なんでもナイデス

 

 あぶねぇ、めっちゃ怪しい奴だったよな今。

 

「ホームルーム始めますよ~」

 

 おっと担任の佐藤先生が来た。先生はふるふわ巨乳で可愛くて学校のアイドルである。

 生徒にめちゃくちゃ優しくて密かに教師と生徒の禁断の恋を狙っている奴が後を絶たないらしい

 俺みたいなやつにも明るく接してくれるので相手が教師でもなければ好きになっていたところだ

 優しいといえばなのだが如月さんもとても優しいのである

 例えば俺が教頭先生に荷物運びをお願いされた時の事……

 


 

「秋風君この教材を資料室まで運んでくれるかね?」

 

「ア、はい……ってこれですか!?」

 

 教頭先生に頼まれたのは教材という名の段ボール✕2だった

 

「さすがに一人じゃきついですよ」

 

「そうだなぁ、では誰か呼んでく「その必要はございません」

 

 救世主のように現れたのは如月さんだった

 

「如月さんなんでここにいるの?」

 

「偶々通りかかったらお困りのようでしたので、お手伝いさせて頂こうかと」     

 

 これには教頭先生も感嘆の声が隠せない

 

「おぉ、それでは二人とも頼んだよ」

 

「「はい」」

 

 教頭先生はそのままどこかへ行ってしまった。

 

「それでは行きましょうか」

 

「ア、今行きます」

 

 慌てて如月さんについて行く。よくよく考えたら今って如月さんと二人きりではないか?

 俺は如月さんの横を歩いているのだがそこまで近くないのになんというか女子の匂いがする。

 ヤバイすごいドキドキしてきた。

 

「あの…」「ひゃい!…あ、その、」

 

 緊張していたとこにに急に話しかけられたから驚いてしまった。

 冷静に、冷静に……

 

「ふふっ大丈夫ですか?」

 

「は、はい。えと、それで何か?」

 

「その箱を持つのは大変ではありませんか?」

 

「いや、全然大丈夫ですよ」

 

 澄まし顔でそう言ったが全くの嘘である。

 実はめちゃくちゃ大変で腕が少しプルプル震えてきている。

 日頃から家にいて一切動いていないので俺に筋力なんてないのだ。

 それとは対象的に如月さんは顔色一つ変えずにいる。

 

 このあと如月さんに「私が持ちましょうか?」と言われたがさすがに自分で持った。

 資料室に着いた時、へとへとだったのだが如月さんに

「先生のお手伝いをしている秋風君かっこよかったですよ」

 と言われてこいつ俺に気があるのでは?と一瞬思ってしまったのはいい思い出だ


 

 このように女神のような如月さんだが他にもまだまだある

 俺がシャーペンの芯を買い忘れてしまった時には

「はい、これをつかってください」と俺が何かを言う前に多機能シャーペンを貸してくれた。

 高級品だからか、()()()()()()()()()()()()()て改めて彼女がお嬢様だと再確認させられるのだった

 余談だが、返そうとすると「いえ、それは貴方に差し上げます」と言われてしまい

 見た目が高級品過ぎて使うのは躊躇ったが一度使うと使い心地が良すぎてどこでもあの

 シャーペンは使わせてもらっている 

 

 他にも他校の有名な不良に絡まれた時の事である

 

「おい、お前ちょっと金貸せや」

 

 学校帰りにテンプレ台詞を喋る不良に絡まれてしまった

 ホントはちゃんと持っているのだが俺の持っている所持金自体が少ないので

 ここは嘘をつこう

 

「も、持ってないです」

 

「嘘をつくなぁ!」

 

「お前この方が誰だか分かってんのかぁ?あぁ!?」

 

「そうだそうだ!」

 

 嘘はばれるし「このお方」とか言われても誰だか知らないし

 今からどうしよう。

 

「ビビって声も出ねぇか。一発くらい殴ったら素直に金出してくれるかなぁ??」

 

 そう言いボスっぽい不良が拳を振り上げる。

 ヤバイこのままじゃ殴ら

 

「ちょっといいかしら」

 

 女神が降臨した

 

「あぁ?誰だてめぇ」

 

「その方に関わるのはやめていただけますか?」

 

 如月さんを見ていたモブAとBがボスっぽいのに

 ひそひそ話しかける

 

「ちょっと兄貴、こいつかなり上玉じゃねぇですか」

 

「金もかなり持っていそうですぜ」

 

ふ~ん、なるほどなぁ。おい女ちょっと俺らと一緒に遊ばねぇか?」

 

 まずい!このままでは如月さんがあの不良達に酷い目に遭わされてしまう

 

「嫌です。なぜ貴方がたの言うことを聞かねばならないのかしら」

 

「あぁ!?ちょっと見た目が良いからって調子乗りやがって

 痛い目見たくなかったらさっさと言うこと聞けや!!」

 

 キッパリと断る如月さんにキレる寸前の不良

 こうなったら最悪俺が身代わりになって……

 覚悟を決める俺だったがその覚悟はすぐに不要となってしまう

 

「はぁ、付き合っていられませんね。おい、おまえたちこの下賎な輩を処分しなさい」

 

「「「「かしこまりました、お嬢様」」」」

 

 うわ!!いきなり黒いスーツにサングラスをかけたTHE SPみたいな人たちが現れた

 そしてものの数十秒で不良達はどこかに連れ去られるのだった

 

「秋風さん、お怪我はありませんか?」

 

「は、はい。えっとありがとうございました」

 

「はい。それではご機嫌よう」

 

 そして如月さんは去って行くのだった

 

 というふうにまるで後を付けていたようなレベルで俺のピンチを救ってくれるのだ

 本当に後をつけている訳ではないだろうが

 とにかく如月さんは俺が困っていると絶対に助けてくれるホントに女神様である

 

◆◆◆

 

 そんなこんなでもう放課後である

 今日はゲームのイベント初日なのでウキウキ気分で下駄箱へ行く

 

「ランキング上位いけるかなぁ」

 

 そんなことを考えて下駄箱を開けると

 

「………………??」

 

 なんか手紙が入っていた

 白い便せんがハートのシールで封をされているとても可愛らしいやつだ

 ふむ、これってラブレターというやつではないか?

 ほげぇえええっっぇぇぇぇぇえぇぇっぇぇぇっぇぇぇぇ!!!!!!!!マジかぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁああぁあぁぁぁぁ!!!!!

 あ、いや待て。まだ俺に宛てた物だと決まったわけではない。もしかしたら

 間違えて俺のところに入れてしまったのかも知れない

 

 右下の方をよく見ると何か書いてある

 

『秋風柊さんへ』

 

 俺宛だあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!

 

 やっべどうしようやっっべ

 中身を見ると、どうやら校舎裏で待っているらしい

 ラブレターを片手に俺は校舎裏へ行くのだった

 

 

 

 

 

 

 この後どうなるかも知らずに

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?あちらは校舎裏のはずですが何をされるのでしょうか」

 

 私の監視の目は欺けないというのに




お嬢様って難しいですね

誤字脱字あったら報告ください。
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貴方を助けてくれるヤンデレお嬢様2

遅くなりました。何してたか?VALORANT楽しかったです
すんません

2/12 最後を付け加えました


 俺の名前は秋風柊

 今から人生の一大イベントを迎える男だ。ドキわくが止まらない。最高にハイってやつだ。

 この角を曲がれば手紙に書いてあった校舎裏だ。

 名前が書いていなかったので相手が誰かは分からない。一息ついて心を落ち着かせる。

 よし、行こう

 

 曲がった先には一人の女子生徒がいた。意を決して話しかける

 

「このラブレターの差出人ってもしかして君?」

 

「は、はい!」

 

 俺が急に話しかけたせいか驚きつつ答える

 

「えっと、君は確か3組の本田さんだよね」

 

「はい、憶えてくれていたんですね」

 

「憶えるも何もほぼ毎日図書室で会ってるじゃん」

 

 彼女は図書委員をしている本田さんだ。

 友達がいない俺にとって昼休みは暇な時間でしかないのでいつも図書室で本を読んでいる

 そこでいつも彼女と顔を合わせるのだ。

 

「それでさ、このラブレターについてなんだけど、なんで俺に出したの?」

 

 単純に疑問だ。

 本田さんだって女の子である。こういうのはみんなイケメンとかが好きではないだろうか

 だが、俺の質問をどう思ったのかは分からないが本田さんは絶望したような顔をして

 

「…もしかして嫌でしたか?いえ、嫌ですよねわたしなんかに好きとか言われても」

 

 どうしてそうなる。

 

 一応、恋をしているとまでいかなくても俺は彼女に対して好感は持っている。

 本田さんをみる。

 彼女は前髪がとても長く、目が隠れているので顔がよく分からない。それに加えとても気が弱い

 そのせいで根暗女だとか言われているのを耳にしたことがある。

 俺はそうは思わないけど。

 

「い、いや全然嬉しいよ!」

 

「本当ですか?」

 

「ホントだよ」

 

 ふと、彼女と出会った時を思い出した


 図書室に通って最初の方は本田さんとは一切話すこともなかった。

 だが通い続けてしばらくすると、俺が本を借りようとカウンターに寄ったとき本田さんから

 

「これってあの○○さんの作品ですけどお好きなんですか?」

 

 と声をかけてきた。 

 当時の俺は誰の作品かなんて全然分からなくて正直にそのことを言った。

 すると彼女は

 

「これ貸してあげます。絶対に読んでください」

 

 と一冊の本を渡してきた。どうやら俺が借りようとしていた本と同じ作者の作品のようだ

 戸惑いつつ俺は受け取った。家に帰り、読んでみるとめっちゃ面白かった。

 ミステリー小説はそんなに読んだことがないのだがこの物語はすごい。

 

 次の日、その本について感想を伝える。

 すると彼女はドヤ顔で

 

「当たり前です。それと実は最後の謎では……」

 

 と語り始める

 

「それで作者はこういう意図で……」

 

「俺は違うと思うな。ここは……」

 

 俺はそれに対して自分の考えをぶつける。すると

 

「なるほどそんな考え方が…面白いですね。それではこっちの本はどうですか?

 次に来たときに感想を聞かせてください」

 

「わかった。じゃあまた明日」

 

 こうして本を読むだけの図書室が本について語り合う部屋になったのだ

 

 本について喋っている時の彼女の目はとてもキラキラしていた。

 俺が物語の内容に対して質問する度に嬉しそうに答えてくれる。

 本について喋る彼女はとても楽しそうだった。

 それだけ本田さんの本に対する情熱は本物であり、そこが彼女の魅力だろう。


 

 

 

 

「──君、秋風君?」

 

「うわ!!!なに!?」

 

「どうしたんですか?ぼうっとして」

 

「ご、ごめんなんでもないよ」

 

 回想していたら怪しまれてしまった

 まあ、とにかく本田さんと一緒にいるのは楽しい

 それに俺は今まで彼女がいたことがないのでこの機を逃す訳にはいかない

 というより本田さんをフって俺に何の得があるのか

 てな訳で俺が今言うべき事といえば一つだ。

 

「本田さん」

 

「は、はい!」

 

 俺が真面目な顔をしたせいか本田さんは緊張しはじめる

 

「こんな俺で良ければ付き合ってください!」

 

「………、本当ですか」

 

 信じられないという顔をしている

 

「うん。本田さんといるのは楽しいよ。改めてよろしく」

 

「…はい。こちらこそよろしく、お願いします」

 

 段々嬉しさがこみ上げてきたのか泣きそうになる本田さん

 あぁ俺なんかと付き合えてこんなに喜んでくれるなんて

 こんな良い子がいて良いのだろうか。そう考えていたら

 いきなり本田さんに抱きつかれてしまった

 

「えっ!なにしてんの本田さん!」

 

「えへへ、わたしは彼女なんですから別にいいでしょう?」

 

 うっ、この可愛い生き物が俺の彼女ってマジか。

 というか女子の体ってこんなに柔らかいのか

 やばい俺も手を彼女の背にまわして抱きしめたい。いや、そんなことして嫌がられたら……

 

「別に両手で抱きしめてくれて構いませんよ?」

 

 何故バレたのかと思いつつ俺は本田さんを抱きしめる

 

「温かいな」

 

「そうですね」

 

 

◆◆◆

 

 

 俺たちは少し抱き合ったのち、帰路についた

 抱き合ったことの恥ずかしさが後から来たのか

 顔を赤くしてチラチラこっちを見てきたのが可愛かった

 まぁその後は本田さんを送り届けて普通に家に帰ったのだが

 

 俺は現在ベッドで転げ回っている。なぜかって?

 彼女が出来たんだぞ!この俺に!こんなの二度とないかもしれない

 明日から学校に行くのが楽しみで仕方がない

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、お前達……」

「失敗など許されませんよ。もし、そんなことがあれば…理解していますね?」

 

 絶対逃がしませんよ。貴方は私だけの物ですから

 




これなんていうラブコメ?

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貴方を助けてくれるヤンデレお嬢様3

ごめんなさい。モチベが旅をしていました
前回と前々回の最後に付け加えがあるので見てくれると嬉しいです

4/4 蟷螂好きの影蜘蛛さん 誤字報告ありがとうございました


 はい、全国の陰キャ、非リアそして彼女いない歴=年齢の皆様こんにちわ

 昨日より、リア充の仲間入りをしました秋風柊でございま~す

 えw?もしかして、皆さんは、彼女いないんですかぁw?

 俺はどうなんだって?  いますけどなにか^^v

 

「へへへっ」

 

 おっと、声が漏れてしまった。すれ違った人にこいつやばい奴だと

 言わんばかりの目でみられてしまった。気をつけないと

 

 

 さて、そろそろ学校に着くのだがなんというか視線を感じる

 感じるというかめちゃくそ見られている。そんなに俺にやけているか?

 当然だがあと少しで学校に着くので周りに生徒がたくさんいる

 そしてそのほぼ全員がこっちを見ている。なんならひそひそ話までしているやつがいる

 あれ?周りの人たち俺を避けるように歩いてね?

 考えすぎかな。きっと俺が気持ち悪すぎただけかもな

 


 

 なんの変哲もないある日の放課後。とある噂がクラスのグループLI○Eに流れた。

 内容は2年の秋風と言う名前の男子生徒が女子に性的暴行を加えたというものだ

 秋風を見たことがある者からするとただの陰キャ男子にしか見えず。女子に何かする度胸がある様には

 感じられない。彼と同じクラスの殆どがそう考えた。

 だが如月財閥の令嬢様が秋風を特別視しているという噂もある

 最初は親衛隊の誰かが妬んで嘘を広めたのかも知れない。

 一応真実なのかを尋ねると、これが答えだと言わんばかりに動画がアップされた。

 そこには二人の抱き合った男女が映っていた。

 一人は図書委員の女子だという。その女子生徒は男子生徒に抱かれながら肩を震わせている。

 音声がないのでわかりずらいが恐らく怯えているのだろう。

 そして女子を抱きしめているのは秋風柊だ。その男はとても気持ち悪い笑みを浮かべていた。

 ──これは”黒”だ。

 全員が確信した。

 

 この噂─いや事実は瞬く間に広がった。最初は半信半疑の奴もいた。

 だが現場を見たという女子が何人も現れてからそんな者もいなくなった。

 

 さて、こんな事をクラスのグループLI○Eで話して良いのかと思うだろう

 しかし秋風はこのグループLI○Eの存在を知らない。彼はぼっちなのでその話題すら

 振られなかったのだ。今頃は本田と付き合えた事で部屋で転げ回っているだろう

 そんな秋風を置いてきぼりにして事実はねじ曲がり肥大化していったのだった。


 

 

 何かおかしい。そう気付いたのは教室まであと少しで着く頃だった。

 おかしいと言えば校門を通った時もおかしかったのだが。

 男子偶に舌打ちしたり肩をぶつけられる時がある。

 偶然なのだろうが少し回数が多い気がする

 

 問題は女子だ。

 なんかさっきから俺が近くに来るか俺を見る度に「ヒッ」とか「キャーー」とか言われるのだ

 別に俺の後ろをイケメンが歩いている訳ではない

 しかも歓声ではなくかなり悲鳴に近い。なんか泣きそう。

 でも、なんというかそれだけじゃない気がする。

 

 そんなことを考えている内に教室へ着いた。扉を開ける

 ……騒がしかった教室が一気に静かになった。

 皆が俺をチラチラ見ながら何か喋っている。その視線はかなり厳しかった。

 

        「ねぇ、あいつが……」 「キモっ」

      「ああ、例の」「なんで平然と来られるんだ?」「うわぁ」

 

                 「おい」

             

 目の前に巨大な壁が現れる。そこに居たのはクラスの筋肉自慢の金田一君だ

 

「ア、えとなんぐふぉぁっ!!「よくノコノコ来られたな!」     

 

 痛ったい! 頬を殴られたことによる強い衝撃によって俺は後ろへ倒れた。

 

「い、いきなりなにすんだよ!!」

 

「なんだ?まだ足りないってか」

 

 いきなり人を殴っといてなにを言ってんだこいつは。

 

「おい、なにやってんだ~」

 

 あ、良かったどうやら助けが来たようだ。そう思い顔を向けた。

 

「ボーッとしてないで続きをしろよ~」

 

「は?なにいっ「おらぁ!」ぐふっ」 

 

        「かっこいいよ~金田一!」「いいぞ!金田一!」 

            「そんなやつボコボコにしちゃいなさい!」

 

「金・田・一!!」「金・田・一!!」「金・田・一!!」「金・田・一!!」

 

 気付けば金田一コールが巻き起こっていた。なんで皆はこんな奴の応援をしているんだ。

 一筋の光が真っ黒に塗り潰されたような感覚に陥る。なんでこんな事になっているんだ。

 なんで、

 

「なんでこんな事になってんだよ!おかしいだろ!大体お前ら、

 こいつは俺を殴ってきたんだぞ!?なんでそんなやつの応援をするんだよ!!

 俺が何をしたっていうんだよ!」

 

 皆が俺の言葉を聞いて唖然する中

 クラスの男子が俺に近づいてきて言う。

 

「秋風、自分がなにをやったか分かっているのか!?」

 

 記憶を思い返してみるがここ最近で特に何かしたとかは無い。

 本当に何の事を言っているのかさっぱりわからない

 

「……?別に俺は何もしていないけど?」

 

「ここまでお前が馬鹿だったとは思わなかったよ」

 

 言い終わると同時に俺の顔めがけて拳が飛んでくる

 

「お前らもこのどうしようも無いやつをボコボコにしてやろう!」

 

「おい、どういうこガぁッ

 

 そこから俺はひたすら殴られ、蹴られた。

 鼻にツーンとした鉄の臭いがしてきた。

 視界は涙でぐちゃぐちゃになってよく見えない。

 抵抗しようにもそれぞれ両手を押さえつけられて何もできない。

 そこから先はよく憶えていないああ、苦しい。誰か助けて

 

「ねぇ、何をしているのですか」 「如月さんそいつは……」

「この方は私が……」

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなにボロボロになって、可哀想に」

「でも、ここまで苦労しました。あぁ、あの男は後で処分しないといけませんね」

「ふふっ、あと少しであなたが手に入るのですね。とても楽しみです」

 

 あと少しですよ。私の旦那様




感想とお気に入りしてくれると嬉しいです
誤字とかあったら教えてください


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貴方を助けてくれるヤンデレお嬢様4

マジですいません!リアルが忙しすぎました。
次からは活動報告にて何かあったら言わせていただきます
後、訳あって改名しました


「う、う~ん……っ!?痛っ」

 

 体をビクリと震わせ俺は飛び起きた。体中が痛い。

 あれ?ここは?周りを見渡すと見覚えのあるベッドとピンクのカーテンがあった。

 そして独特なあの匂いからここが学校の保健室だと分かった。

 

 でもどうしてここに?

 

「その疑問には私がお答えします」

 

 カーテンが横にずれる。そこに立っていたのは如月さんだった。

 彼女は「声にでてましたよ」と可愛らしく続けた。

 少し顔が赤くなるのを感じたので俺は話題を逸らすことにした。

 

「そ、それで疑問に答えてくれるって?」

 

「はい。最初に、貴方を保健室まで運んで来たのは私です」

 

 さらっと言ってしまう彼女だが本当だとすると俺は同年代の女子にしかもお嬢様に軽々と運ばれ

 てしまったということになる。……あれ、力ですら勝てないって何もかも負けていないか?

 そう言えば前に一緒に荷物を運んだことがあったがその時も…これ以上考えないほうがいいな。

 

「ありがとう。運んでくれて」

 

「いえ、貴方のお役に立てたのなら」

 

 彼女の顔が急に真面目になった。恐らく今から本題に入るのだろう

 俺にも緊張が走る。

 

「次に、なんでこんな事態になったかです。一言で言うならば秋風さんは今、女子生徒を襲った最低の

 人間ということになっています」

 

 ……は?どういうことだ?俺にそんな事やっていないぞ。紛れもない冤罪だ。

 だが、考えてみると色々と納得がいく。例えば皆が俺をチラチラ見ていたのも

 金田一が俺を殴ってきたのもそれが理由だったのかも知れない。

 

 誰が、何のためにこんなことを?

 

「襲われた女子生徒は学校に来ていないので貴方がやっていないという証拠がありません。

 しかも、逆に貴方がやったという証拠はあるみたいです」

 

 如月さんは俺に向けてスマホの画面を見せてきた。そこには二人の男女が抱き合う映像が

 映っていた。

 

 あれ?これ昨日の俺と本田さんでは?なんでこんなのが撮られているんだ。盗撮じゃないか

 

「それで、これの何処が証拠なの?」

 

「映っている…本田さんが泣いている様に見えます。その原因が隣の秋風さんではないか

 ということです。それで秋風さんは女子を泣かせた人という事になっています」

 

 確かに俺のせいで泣いている様に見えなくも無い…そうだ!本田さんに証言して貰えば良いんだ

 俺と本田さんは付き合ってるから問題は無いのでは?

 

「ねぇ、本田さんって今日は来ているの?本田さんに証言して貰えば…」

 

「いえ、本田さんは今日は来ていません。それに証言させるのはむしろ事態を悪化

 させると思います。傍から見れば怯えて家に引きこもっていた本田さんに無理矢理

 証言させたように見えるでしょう」

 

 確かに如月さんの言うとおりだ。こんな状況で僕たち付き合ってま~す!とか

 言っても石を投げられるだけだろう。どうしようかと考える俺に如月さんは

 続けて言う

 

「あと、最初は貴方が犯人と信じない物も居たのですが今朝の貴方が…その、えー…気持ち悪い笑

 みを浮かべていたらしくそれで確信が深まったらしいです」

 

 ………思わず静かになる。慌てて「私はそんな事思っていませんよ」と言う如月さんだが、逆に

 心が抉れるくっそぅそんなに俺の顔はキモいですか。そうですか。泣きたい

 

「ま、まぁとりあえずこれからの事について考えましょう」

 

「そうだね。そうしたほうがいいね」

 

 う~ん。時計を見るとあと10分くらいで1時間目が終わる。ということは俺はあと5時間耐える

 必要がある休み時間毎に金田一に殴られるのは嫌だな。

 

「考えてくれているところ有り難いのですが私に策があります。それは……」

 

 

◆◆◆

 

 キーンコーンカーンコーン。チャイムの音が鳴り俺は軽く欠神する。

 現在4時間目が終わったとこだ。俺は無傷で生きていた。

 それも全て如月さんの作戦のおかげだ。マジ感謝

 彼女の考えた策は『私が風避けになりましょう』だ

 簡単に言うと俺の噂を聞いてやってきた奴らの対応を如月さんがやってくれる訳だ

 これがもう凄いのなんの。金田一はもちろんスッゴいイケメンがやって来たって物怖じせずに追

 い返してくれる。

 まるで姫を助ける王子様だ。……うん?

 

 これ以上考えるのはやめよう。それにもう昼である。

 と、いうことで弁当を持って屋上へいこう。

 

「何処へ行かれるのですか?」

 

 ドアを出て階段の方へ歩き出したが引き留められてしまった。

 

「如月さん?弁当食べに行くだけだよ」

 

「では、私もご一緒します」

 

「は!?」

 

 何を言っているんだ。こんな状況の俺と一緒にご飯を食べるだと?

 周りもこれには「なんで?」とか「襲われちゃうよ」とか言っている。襲わないけど!?

 

「いやいや、さすがにいいよ!」

 

「そうだね。今回はこれの言うとおりだよ」キラッ

 

 

「……あの、どちら様でしょうか」

 

 なんか変なのが来た。見た感じめっちゃイケメンでなんかキラキラ(物理)している

 なんかいちいちフッとかハッとかうるさいなこいつ

 

「なん、だと…?この僕を知らないというのか…?」

 

 そんなにショックか?俺も誰か知らないのだが。

 

「あの、もう通して貰ってもよろしいでしょうか?」

 

「いや、待ちたまえ。お嬢さんの隣に居るそれ、良くない噂があるそうじゃ無いか」シュバッ

 

 イケメンが如月さんの前に俺らを通さないとばかりに立つ

 ふと、隣を見るとなんかプルプル震えている如月さんがいた。怒ってね?

 

「だからどうだい?これは置いていって僕と食事で「結構です」…へ?」

 

「大体、先程から秋風さんを”これ”だとか言って居ましたが何ですか貴方は人の事を物扱いするの

 ですね。そのような人とは関われません。はぁ、貴方のせいで時間を無駄に使ってしまいました。」

 

 イケメンの言葉を遮り、捲し立てる如月さん。明らかに怒っている。

 こんな如月さんを見たことが無かったので見ているだけだった周りも面食らってしまう

 

「な、なんでそこまでそいつの味方をするんだ!……なるほど

 ああ!なんて可哀想なお姫様だ!このようなクズの毒牙にかかってしまうなんて!でも大丈夫

 さ!僕が哀れな姫様を救い出してあげるからねっ!!」シュバッ

 

「結構です。私は騙されて居ませんし秋風さんがそのような事をしない

 心優しい人だと知っております。それでは、ご機嫌よう。」

 

 周りがぽかんとする中、如月さんは俺の手を取り歩き出す。

 

「き、如月さん?えっと、ありがとう。でもここまでして貰う必要はないよ。

 如月さんにまで変な噂が広まっちゃうし……如月さん?」

 

 何故か如月さんは無言で歩いていく

 階段を上っていくとそこはもう屋上だ。

 

「ねぇ、秋風さん」

 

「ん?」

 

 如月さんは扉に手を掛けつつ言った。

 

「私は何があっても貴方の味方です。例え周りの全てが敵になっても、です。」

 

 彼女は扉を開け外に出た。俺も釣られて外に出る。

 

「ですので私をいくらでも頼ってください。」

 

 風によって彼女の髪が靡く。髪を手で抑えながら微笑む姿は聖女のようだ。

 後ろに見えるのは綺麗な青空といつも見てる筈なのにより美しく見える街並み。

 そんな物語の1ページを切り取ったような光景を目にして思わず見惚れてしまう

 

「……取り敢えずお昼にしましょうか。ね?秋風さん」

 

「そ、そうだね!」

 

 慌てて俺はベンチに向かった。

 その後は普通に話しながらご飯を食べた。

 正直内容は全く覚えていないが楽しかった事はわかる。

 

  

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「後少しで全て上手く行きますよ。楽しみにしてて下さい」




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貴方を助けてくれるヤンデレお嬢様5

UA10000有難う!凄いのかわからないけど多分凄い!

思ったより長くなりましたがこれで最後です。
あと作者が学生生活始まっちゃうので、ただえさえ遅い投稿が更に遅くなるかもしれません

4/12 蟷螂好きの影蜘蛛さん誤字報告、感謝!
    少し後書き追加しました


 あれから1週間が経った

 周りからの当たりは日に日に強くなっていったが俺は意外と大丈夫だった。

 本当に味方が一人居るだけでとても力強い。頼れるのは如月さんだけだ。

 と言っても嫌がらせは普通にされている。脚を引っかけられたりぶつかられたり

 物を隠されたりしている。例えば今みたいに

 

「あれ、俺の体操着が無いや」

 

 どうやら俺が帰る前にトイレに行った時にやられたようだ。 

 

「はいどうぞ。秋風さん」

 

「!?…って如月さんか」

 

 そこに居たのは体操着を持っている如月さんだった。

 誰も居ないと思っていたのでとても驚いてしまった。

 

「これって俺の体操着?見つけてくれたんだ」

 

 改めて彼女を見てみると顔がほんのり上気しているということは急いで

 探してくれたのだろうか。

 

「ありがとう」

 

「っ…はい。どういたしまして」

 

 と、言った感じで物を隠されても持ち主の俺より先に見つけてくれる。

 直接殴られたりしないのもいつも隣に如月さんが居てくれるおかげだ。

 

「じゃあ、そろそろ帰ろうかな」

 

「わかりました。お供します」

 

「帰り道で何かないように一緒に帰ってくれるのは嬉しいけど大変じゃ無いの?」

 

 如月さんはなんと俺を心配して一緒に帰ってくれるのだ。

 

「迷惑、でしたか?」

「全然嬉しいです」

 

 上目遣いで言われてつい即答してしまった。

 

「でも、やっぱり女子に送って貰うのは男としてダメだと思うから今日はいいよ」

 

 実はそれ以外の理由もある。如月さんは最近クラスから弾かれ始めている事を俺は知っている。

 原因は俺と一緒に居るせいだ。いつも如月さんの周りにいた人達も今では彼女から目をそらして

 関わりを絶とうしている。俺のせいで彼女に被害が行くのは嫌だ。

 

「………そう、ですか。わかりました。では、ご機嫌よう」

 

 少し間を空けてから、如月さんは答えた。

 正直とても安心出来ていた。彼女には令嬢という肩書きがある。

 だから隣にいるだけであいつらは何も出来なくなる。

 でも気付いた、それは如月さんにただ迷惑をかけているだけじゃないか?

 だから俺は「脱 庇護下」を目指すことにした。

 俺にかけられている疑いを晴らすことが出来たらその時は守る、守られる

 ではなく対等な関係になりたい。そう考えてつつ俺は校門から出た。

 

◆◆◆

 

「とは言ったけど、どうやって疑いを晴らせば良いんだ?」

 

 ここが一番の問題である。俺は本田さんに何もしていないので

 罪を着せてきた誰かがいるはずだ。手がかりとしては如月さんが見せてくれたあの動画。

 でもあの動画は誰が撮って何処から広まったのだろうか。

 うーん

 

だから秋…だって!

 

 ?

 なんか今呼ばれた気がしたんだけどな。気のせいか?

 俺は声がした方へ行ってみることにした。

 

「何度も言わせんなぁ!」

 

「す、すいやせん!兄貴」

 

「それで、その秋風って奴を捕まえれば良いんですよね?」

 

「ああ、ボスから直接言われた。最重要だとよ」

 

 っ!!!と、っっとお、ちょと、とにかく一旦落ち着こう。

 ふう、よし。秋風って言ってるけど俺と違う秋風かもしれないな。

 とりあえず顔でも確認してみよう。

 ゆっくり覗いてみるとそこに居たのは前にあった不良三人組だった。

 そして話はちょうど「秋風」についてになっていた。

 

「秋風ってどんなやつなんですか」

 

「ああ、あの黒服達に、な?」

 

「…あんときのですか」

 

 黒服と言えば思い当たるのは…うん、これは俺だな。逃げよう!

 物陰から去ろうとして歩き出した。

 

 カランコロン

 

「!!!」

 

 ヤバイ…近くに置いてあった空き缶に脚が当たってしまった!

 

「おい!そこに居るのはだれだ!出てこい!」

 

 あいつらが近づいてくるのが分かる。俺は慌てて走った。

 

「おい、待て!お前ら追いかけるぞ!多分当たりだ」

 

「「へい!!」」

 

 そこからとにかく俺は走った。でも体力の無い俺がどこまで逃げれるかなんて高が知れている。

 そこで途中で入り組んでいる路地裏へ入り隠れることにした。

 辺りはもう暗くなっている。ここなら見つかりにくいだろう

 

「おい!どこいきやがった?お前らも探せ、まだ近くに居るぞ!!」

 

「ヒッ!?。こ、ここからどうしよう」

 

 俺が今居る場所は行き止まりで、ここから出るにはさっき不良が居た場所からしか無い。

 俺が何したって言うんだ。なんで。なんで。なんで。涙が頬を伝う。

 あいつらに会ったのは1回だけだし、その親玉になんて会ったこともない。

 最近はホントに悪いこと続きだ。ここに如月さんがいれば…なんて考えてしまうほど

 彼女の存在は大きくなってしまったらしい。

 

「ここに居たんですね、秋風さん」

 

 なんて幻聴が聞こえる位には。どうやら俺はかなり追い詰められているらしい。

 「脱 庇護下」なんて考えていたのが馬鹿馬鹿しくなってくる。

 これでどうやって対等な関係になれるというのか

 前を見ると如月さんが立っていた。幻覚も見えてきたみたい。

 一瞬本物かと思った。でもそんなわけが無い。  

 さっきまで()()()()()()()()()()()()()。しかも如月さんさんは()()()()()()()

 幻覚じゃ無いならなんだというんだ。

 

「よしよし、怖かったですよね。辛かったですよね」

 

 如月さんは俺を抱きしめて頭を撫でている。

 幻覚は、初めて見るが感触もあるんだな。

 そんな事をぼんやりと考える。

 

「もう大丈夫ですよ。私がいますから。いつでもこうやって抱きしめてあげます」

 

 彼女の囁きが頭の中に染み込んだくる。甘く甘く広がってくる。

 

「もう何もしなくて良いんです。貴方の身の回りは私が全てやります」

 

 だから、もう私に身を委ねましょ?そんな言葉が俺の中に響き渡る。

 そっか。もう何も考えなくていいんだ。彼女がいれば。

 それ…だ…………け……で………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、寝ちゃいましたか」

 

「寝顔可愛いですね。でもこれからは見放題です」

 

「ちょっとくらい悪戯して」

 

「お嬢様、そろそろお時間です」

 

「……はぁ。まあ今は気分が良いので許します。」

 

「っ、有難う御座います」

 

「次は無いですよ。それでは出しなさい」




主人公 秋風 柊(あきかぜ しゅう)
策略に見事に嵌ってしまった可哀想な人。誰のせいだろうね(すっとぼけ)
目覚めたらでっかい屋敷に閉じ込められていたが不自由は無いし、可愛い妻がいるのでどうでも良くなった。
幸せに暮らしている

ヤンデレ娘 如月 玲奈(きさらぎ れいな)
見事にやってしまった犯人。金と権力でどうにかした。
旦那を手に入れてとっても幸せ

本田さん
気づいたら消えていた女。どうなったかは誰も知らない
実は美少女の目隠れ図書委員とか良くね?

金田一
筋肉isベスト。ちなみにこの後消された

その他の秋風に絡んだ奴ら(イケメンとか)
大体消された

次はツンデレ幼馴染のヒロインside→今回のヒロインside→新しいやつみたいにやっていきます。
挿入投稿するので気を付けて下さい

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貴方を助けてくれるヤンデレお嬢様1 裏

お待たせしました。実はお嬢様物欲しいなーってだけで書いたんで出会いとか何も考えていませんでした。
出来るだけそれっぽく書いたんで許してください。

あと、ツンデレ幼馴染のヒロインサイドは一応最後まで投稿したんで読んでくれると嬉しいです


 突然ですが私には愛して止まない方がいます。

 その方の名は名前は秋風 柊。生まれこそ平凡ですがそんなの関係ないくらい愛らしい方です。

 出会いは私が中学生の時。嵐のように突然でした。

 その日は習い事の帰りで送迎の車の中にいました。

 信号に捕まり、ふと外の景色を見ていると角から男の子が飛び出てきました。

 その時の私は特に彼のことを知らなかったので男の子が飛び出てきた。

 気に止める必要もない、たったそれだけの認識の筈でした。

 

 ですが数日経ち、また車の中から外を見ていた時です。

 突然、運転手に「どうかなさいましたか、お嬢様」と言われました。

 最初は何の事かわかりませんでした。ですが、時間が経つにつれて段々と理解してきました。

 私は無意識にあの男の子がまた飛び出てこないか探していたのです。

 それからの私の頭は彼の事で一杯でした。

 

 朝起きても習い事中でも頭の中には彼がいます。何故こんなに彼の事しか考えられないのか、

 どうして彼の事を考えると不思議な気持ちになるのか。

 このままではお父様を心配させてしまいます。私自身もモヤモヤします。

 どうすればいいのか。考えた結果、取り敢えず彼について知る事から始めました。

 

 幸いにも顔はドライブレコーダーに映っています。

 それだけあれば特定は簡単です。我が財閥の情報網を舐めてはいけません。

 2日後に執事が報告に来ました。

 彼の名前は秋風 柊だという事。趣味はゲームなど。住んでいる場所は同じ街。

 性格は人見知りだが優しいですか。現在通っている中学校は〇〇中学校。

 

 彼の事を知れば知るほどもっと知りたい、彼に会ってみたい。

 そんな気持ちが溢れ出て来ました。

 そうして読み進めていくと、私は見つけました。

 『最も進学する可能性の高い高等学校は……』

 どうやら私の行くべき所が決まったようです。

 

◆◆◆

 

 時は経ち、桜の舞い散る季節になりました。

 私は今、新しい学び舎の門を叩こうとしています。

 ハッキリと言ってしまうと私が叩くには余りにも貧相な門です。

 ですが、此処には彼が居ます。それだけでこの貧相な門にも意味があるという物です。

 

 私が入学式を行う体育館まで歩いて行くと周りの視線が集まってきました。

 自分で言ってしまいますが他から見れば私は十分美しいと言われる部類であると自負してます。

 そこで、前もって如月財閥の令嬢が来ると噂を流してあります。

 これで大半の人は距離感を勝手に感じて避けてくれます。

 財閥という名に近寄って来る頭の悪い人もその内関わって来なくなるでしょう。

 後は私の手の者で周りを固めておきましょう。

 そちらの方も準備済みです。年齢など誤差の範囲です。

 

 さて、席に座ると入学式が始まりました。

 長くて無意味な校長の話が始まります。

 

「桜舞い散る季節になり〜〜」

 

 因みにこの校長は学校の資金を横領していて、真っ黒です。

 なので証拠を片手に脅しました。私の手の者が入学出来たのもそのおかげです。

 彼と一緒のクラスにするよう取り計らわせるのも忘れていません。

 

 ですが私にはこれから最も重要な試練があります。

 それは彼が私にとって、私の会社にとって無害かどうか確認しなくてはなりません。

 私が彼にの事もっと知っていく内に抱いているこの感情が恋だと言うことには気付いています。

 そしてお父様にもこの事は報告しました。

 すると返ってきた言葉は「お母様の許しを得られたらいい」とのことでした。

 

 ちなみにですがお父様は如月家に婿に来た人なので実権は殆どお母様にあります。

 なのでお父様は重要な事ほどお母様に任せる、が染みついてしまっています。

 そしてそのお母様ですが「会社の不利益にならないなら」と一言で済ませました。

 

 と言う事で私はそれを確認しなくてはなりません。

 ですが今回は分かりきっています。伊達に何ヶ月も身辺調査を行なっていません。

 彼は人見知りですがとても優しく真面目です、頼まれたら断れません。

 簡単に言うと何処ぞの誰かと違って横領なんてしないと言う事です。

 会社を経営する才能は無いかも知れません、がお父様も似たような者だったらしいので

 問題はありません。では、何故わざわざ確認しに行くのか。

 

 これは私の問題です。

 相手は車の中からチラッと見えた程度。此方は相手のことを知っているのに

 相手は私の事を何も知らない。そんな状況で結婚まで考えてもいいのでしょうか。

 更に言えば私は恋に恋をしているだけでチラッと見えただけの方に幻想を押し付けいる

 のかもしれません。なのでこの疑問は絶対に解消しなくてはなりません。

 

 気付けば入学式なんて終わっていました。

 新入生が退場していきます。

 流れにのって私も退場していきます。

 教室に着いた瞬間すぐさま飛び出ていきました。彼と顔を合わせないように。

 

 踊り場まで走っ所で足を止めます。

 正直言うと私は怖いです。今までのこの思いが幻想だったのではないか。

 彼と会う事でそれが崩れ去ってしまうのではないか。

 調べた所、彼の周りには所謂「富裕層」と呼ばれる人や権力者などはいませんでした。

 つまり私という力を持つ者と初めて出会い、関わっていく内に欲に溺れてしまう。

 彼だって人です。そんな事があってもおかしくない。

 欲に溺れて身を滅ぼしていく人を今まで何人も見て来ました。

 いや、でも彼はそんな人じゃないはず。でも…

 

 不安で思考がグルグル回っていきます。

 少し気持ち悪くなって立つこともままならなくなって来ました。

 

「ぁ、えっと、大丈夫ですか?」

 

 !!

 突然声をかけられ驚いてしまいました。普通なら今はクラスの人と関係を築くために

 一生懸命会話を試みている時間でしょう。

 ならば此処にいる人は一体どんな物好きでしょうか。

 人々の上に立つ者として弱ってる姿を見せる訳にはいきません。

 ですが心配をかけさせてしまった事に変わりありません。腰をあげて顔を見ます。

 

「はい、何でもあり……ぁ、っっ!」

 

 !?!?!?!?

 そこに居た方の顔を見た瞬間、体の隅々までに電撃が走りました。

 ああ、何でこんな…。

 目の前の方が私を心配してくれてる。私が不安で不安で仕方がない時に来てくれた。

 私の為に来てくれた。…いえ、本当は違うのでしょう。

 偶然通りがかっただけ、でもいいでしょう?今はこんなにも胸が高鳴っているのですから。

 

え、なんか顔真っ赤なんだけど。あ、あの、ホントに大丈夫ですか?」

 

ん!はい、本当…に何も、ありません」

 

 またっ!彼に話しかけられる度に身体に電流が流れていきます。

 まずいです。おそらく今の私は顔を真っ赤にして話しかけられる度に身体を震わせてる

 可笑しな人だと思われています。それだけは避けたいです。

 

「そ、そっか。もしかしてめっちゃ怒ってる?え、なんかした?

 

「いえ、怒ってなどいませんよ。少し気分が悪かっただけなので安心してください」

 

…スゥ〜〜あの、すみませんでした!」

 

 そう言って彼は走り去ってしまいました。

 少し名残惜しいですが、此処においては助かったと言えるでしょう。 

 深呼吸をして体の熱を外に出します。

 私は決めました。

 彼は、秋風 柊は私の物にします。その為に出来ることは全てします。

 そう決意した私の胸には先ほどの不安は少しもありませんでした。

 

 それにしても会話をする度にあのような恥を晒してしまうのはどうしましょうか。

 

 

 

 

 

 




秋風視点
トイレ行こうとしたらなんか体調悪そうな女子がいたので声をかけた。美少女でびびった。
顔真っ赤にして怒ってた。陰キャに話しかけられたからキレてたよ絶対。
因みにその後やたら話しかけてくるので絶対目をつけられてたと思った。

如月視点
好き。生涯を共にするのは柊以外考えられない。

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貴方を助けてくれるヤンデレお嬢様2 裏

どうですか。今回早くないですか?この調子で行きたい。
誤字脱字あったら報告ください。

UA 20000ありがとう!これからも頑張ります

8/12 蟷螂好きの影蜘蛛さん 誤字報告ありがとうございます。


「……ん、」

 

 朝日が部屋を照らす中、私は体をゆっくりと起こしました。

 そしてベッドから足を下ろし、近くに置いてあるベルを鳴らします。

 美しい音色が部屋に木霊し、メイドがやって来ました。

 

「お嬢様、失礼致します」

 

「それではお願いします」

 

「かしこまりました」

 

 メイドがラジオの様な物を取り出し、電源をつけます。

 …ふむ。音がしませんね。

 

「映像もつけますか?」

 

「そうですね、では先に用意を済ませてから見ましょうか」

 

 スキンケアなども一通り済ませ、髪も整えます。

 メイドの手によって服も制服へ着替えました。

 

「お嬢様、朝食は本日もですか?」

 

「ええ、彼と同じ物を食べます」

 

「では、こちらをどうぞ」

 

 メイドに感謝を伝え、画面に目を向けます。画面の中には電気の付いていない暗い部屋。

 ベッドの上には秋風さんが映っています。

 はい。隠しカメラを仕掛けさせて頂きました。もちろん家中に仕掛けてあります。

 どうやったかは秘密です。

 

「ふふっ。可愛らしいですね」

 

 これが最近のマイブームです。朝起きて秋風さんの生活を覗き見する。

 そして彼の普段の生活についてもっと詳しくなれます。

 おそらく彼自身が知らない癖まで私は知っています。

 そう思うととても嬉しいです。世界で一番私が彼の事を知っています。

 

 しばらくして彼が起きました。寝ぼけた足取りが愛らしいです。

 リビングへ向かう様なので画面を切り替えましょう。

 

『ほら、柊早く食べな』

 

『ふぁい』

 

 どうやらお母様が朝食の準備をされていた様ですね。 

 パンに卵焼き、ココアですか、早速作らせましょう。

 

「これと同じ物をお願いします」

 

「かしこまりました。…お嬢様の朝食が決まりました。……はい。まずは…」

 

 後ろに控えていたメイドに頼むと早速連絡してくれました。

 数分で出来上がるでしょう。

 それまでは彼の食事を眺めるとしましょう。

 

 それにしても彼はこんな物しか食べれないのですか。

 辺りのスーパーの材料で作られた安価な料理。

 彼が我が家に来たらもっと贅沢をさせてあげましょう。

 

「お嬢様、食事の用意が整いました」

 

「分かりました、頂きましょう」

 

 メイドが手早く食器を目の前に並べて行きます。

 パンの香ばしい匂いと湯気と共に鼻孔をくすぐるココアの甘い香り。どれも美味しそうですね。

 流石我が家が誇る一流の食材と料理人です。

 それにしても同じ時間に同じ物を食べる。これは将来のシュミレーションとしては

 完璧ではないでしょうか。

 

 そろそろ出発しなくてはなりませんね。

 

「ではそろそろ行きますので支度を」

 

「そちらの方は既に済ませてあります。車を準備済みですので、そちらへ」

 

「ご苦労様です」

 

◆◆◆

 

「それではお嬢様、いってらっしゃませ」

 

「ええ、いって来ます」

 

 学校から少し離れた所で車を降ります。本音を言うなら門の手前がいいのですが、

 庶民の皆様の邪魔になってしまうので私なりの配慮です。

 

 教室の扉を開け、私の席へ向かいます。

 

「あら、ご機嫌よう。秋風さん」

 

 既に秋風さんがいたので挨拶をしました。

 未だに心臓がドキドキしますが、表には出さない様に耐性はつけました。

 

「ア、ハイ。こ、こんにちは」

 

 返事をしてくれました!やはり何度聞いても嬉しいですね。

 最初の頃は自分に話しかけられていると思っていなかった様で、中々返事も

 してくれなかったのですが、根気よく接していけば段々と心を開いてくれました。

 ですが、少し前に他の誰かから私が財閥令嬢である事を聞いてしまったようで

 とても畏縮されてしまっています。吹き込んだ輩は許せません。

 

「ふふっ、そんなに堅くならなくてもいいですよ。同じ学び舎で共に過ごす仲間なのですから」

 

 今の私にはこの様に様々な理由をつけて心を開いてもらう他ありません。困った物です。

 

「どうかされました?」

 

「い、いえ!なんでもナイデス」

 

 反応がないのでびっくりしました。一瞬秋風さんに何かあったのかと。

 

「ホームルーム始めますよ~」

 

 おっと、もう始業ですか。この方といると時間の流れが早いですね。

 

 

 授業が始まると彼は私がプレゼントした多機能シャーペンを使ってくれています。

 此方のシャーペンは私のオーダーメイドでボールペンなどの機能も勿論あります。

 ですが勿論それだけではありません。ちゃんと発信機付きです。

 発信機の信号は私のスマホに送られリアルタイムで彼がこのペンを持っている限り

 どこにいるか分かります。

 

 最初は作らせたは良いものの、どうやって渡すかは考えていませんでした。

 すると偶然にも彼がシャーペンの芯を貸してくれと言ってきたのです。

 一瞬でこれは好機だと判断し、このペンを差し上げました。

 おかげで放課後の尾行などもとても楽になりました。本当に“多機能”ですね。

 

「秋風〜ちょっと手伝ってもらっていいか?」

 

「あ、はい」

 

 またですか。彼は優しいのでこういった物を断れません。

 それで教師の評価が上がり、また頼まれる。そして他の教師にも広まってまた頼まれる。

 そして更に評価が上がる。その繰り返しです。

 

 以前にはそのせいで1人では到底運べない様な量の段ボールを運ばされそうになっていました。

 流石に可哀想だと思い手伝って差し上げました。

 実は私は武術も護身用として嗜んでいますので、あの程度簡単でした。

 

キーンコーンカーンコーン

 

 いつの間にか放課後でした。急いで秋風さんを尾行しないといけません。

 スマホで彼が何処にいるか調べます。…?

 

「あら?あちらは校舎裏のはずですが何をされるのでしょうか」

 

 おかしいですね、こんなとこに普段ならば行く必要などあるとは思えません。

 嫌な予感がします。私は教室を飛び出しました。

 

 全く、私の監視の目は欺けないというのに

 

 

 

 

 

 




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貴方を助けてくれるヤンデレお嬢様3 裏

 私が校舎裏へ向かうと何やら話し声がします。恐らく秋風さんと誰かが話しているのでしょう。

 少しだけ耳を澄ませまてみましょう。

 

「…日図書室で会ってるじゃん」

 

「それでさ、この”ラブレター”についてなんだけど、なんで俺に出したの?」

 

 ……へぇ。やってくれましたね。ラブレターですか。一体何処の卑女でしょうか。

 一先ずすべきなのは情報収集です。相手が誰か見てみましょう。

 私は少しだけ顔を覗かせてみました。確か秋風さんと同じ図書委員の女ですね。

 名前は確か…何でしたか。まあ良いでしょう後で調べます。

 一応ボイスレコーダーとカメラを回しておきましょう。あの女生徒を特定するのに必要です。

 

「…もしかして嫌でしたか?いえ、嫌ですよねわたしなんかに好きとか言われても」

 

 ええ。嫌に決まっています。秋風さんは私と結婚する予定なので。

 ですが私は財閥をいずれ率いる者です。庶民の表現の自由ぐらい認めてあげます。

 秋風さんの魅力に気付いたのは褒めてあげたい位です。まあ、どうせ叶わぬ想いでしょうが

 

「い、いや全然嬉しいよ!」

 

 は?い、いえそんな筈がありません。きっとあれでしょう。秋風さんは

 優しいので断りこそしますが一応お世辞を言っているだけでしょう。

 あんな私より権力も無ければ財力も無い、ましては個人としての能力も無い小娘を

 私が近くに居ながら選ぶ訳がありません。

 

「本当ですか?」

 

「ホントだよ」

 

「えへへ。えっと秋風君、秋風君?」

 

「うわ!!!なに!?」

 

「どうしたんですか?ぼうっとして」

 

「ご、ごめんなんでもないよ」

 

 突然、秋風さんが真面目な顔をしました。

 おそらく今から私の為に断ろうとしているのでしょう。

 

「本田さん」

 

「は、はい!」

 

「こんな俺で良ければ付き合ってください!」

 

「………え、本当ですか」

 

 

 は?

 奇しくもあの女と同じ事を考えてしまいました。嘘ですよね本当の筈がありません。

 気付かない内に手に力が籠ってスマホが悲鳴を上げました。

 

「うん。本田さんといるのは楽しいよ。改めてよろしく」

 

「…はい。こちらこそよろしく、お願いします」

 

「えっ!なにしてんの本田さん!」

 

 余りにも信じがたい光景でしたが、あの女はさらに私に追い討ちをかける様に秋風さん

 を抱擁しました。秋風さんが穢されていきます。

 

「…っ!!卑しい売女め!」

 

 奥歯を万力の如き力で噛み締めます。耐えなさい。今は耐える時です。

 本当はこの場で殴り殺したいです。ですがそれを秋風さんの前でやってしまえば

 彼は私を恐れ、離れて行ってしまうでしょう。私は全力で頭を使い、策を練ります。

 

「えへへ、わたしは彼女なんですから別にいいでしょう?」

 

「別に両手で抱きしめてくれて構いませんよ?」

 

「温かいな」

 

「そうですね」

 

 目の前の会話を見て思います。本当に腑が煮え繰り返りそうです。

 そうですね、ただ別れさせるのではつまらないです。

 あの女には報いを受けて貰わなくてはいけません。私の愛しい方を誘惑した大罪の。

 恐らくこの後二人は帰るでしょうから、ここは一足先に撤退しましょう。

 私はメイドに電話を掛けました。

 

「遅くなりすみません。車を。

 あと、学校に潜入している者達を屋敷に早急に呼び出してください」

 

 門を出て少しすれば車がやって来ました。運転手に急ぐ様伝えます。

 

 屋敷に着き、潜入している者達が全員いる事を確認すると私の部屋に集めます。

 

「揃いましたね。端的に言います。秋風さんが他の女に誑かされました」

 

 何で集められたか不安になっていた彼らに緊張が走ります。

 

「なので貴方達には働いて貰います。まずは誑かした女についてです。」

 

 私はスマホの動画を彼らに見せます。すると一人の男が答えてくれました。

 

「お嬢様、恐らくですがその少女は図書委員会に所属しており、名前は本田だったはずです」

 

 本田、ね。名前は判明したので男に全力で調べさせるように伝言を託して退室させます。

 家の諜報部は優秀ですからすぐに成果を上げてくれるでしょう。

 

「さて、別れさせる為の案がある者はいますか?」

 

 私が尋ねると何人は困った様な顔をしてしまいます。まあ当然すぐには出てきませんか。

 と、思いきや2人の女がおずおずと手を挙げました。

 

「あ、あの。単純に消すと言うだけではダメなのでしょうか」

 

「駄目です。それでは生温いです」

 

 正しく一刀両断。

 何を言うかと思えば、その程度の事ぐらい思いつかない訳がないでしょう。

 

「さて、あなたの方はもっと良い案が?」

 

「はい、悪評を広めるというのはどうでしょうか。流石に悪い噂がある相手と交際と

 言うのは嫌でしょう」

 

「それは悪くは無いのですが、広める噂をどうすれば…」

 

「それについても私に案があります。先程お見せいただいた動画を使いましょう」

 

 動画?あれにはとても悪評となる物はあると思えませんが…一体何をするのでしょうか。

 少し興味が出てきたのでもう少し聞くことにしました。

 

「それで旦那様の悪評を流します」

 

「お前、今何を言っているのか分かっていますか?」

 

 この女どんな名案があるのかと思えば秋風さんの悪評を流す?

 そんな事許される訳がないでしょう。

 あの女を排除するためとはいえ秋風さんを傷つけるのは違います。

 

「はいりかいしています、ですが本題はここからです」

 

 ですがこの女は私の琴線に触れているのもお構いなしに話を続けます。

 そこまで自信があると言うなら聞かせて貰いましょう。

 

「まず流す噂に関しては旦那様がその女子生徒を襲ったことにしましょう。

 潜ませている者達全員で噂を広めればかなりの効果があるかと。

 すると旦那様への風当たりは当然強くなります。」

 

「はぁ?それであなたはそれで何が言いたいんですか。

 巫山戯ている様なら後に相応の処分を覚悟なさい」

 

「落ち着いてください。周りは敵だらけの旦那様、もしそこに寄り添ってくれる

 美しき方が居ればどうなると思います?」

 

 お嬢様?と最後に付け足す彼女。ふむ、少し考えてみましょう。

 やってもいない罪をやったと言われ周りは敵だらけ、そんな中1人だけ

 自分を信じてくれる存在。

 

「…良い案ですね、秋風さんを傷付けるのは不本意ですがリターンが大きいです。

 やりましょう。という事で、提案してくれた貴女が現場を見つけて

 動画を撮った人、他の方々がそれを扇動させましょう。」

 

「動画はそのまま流されますか?」

 

「いえ、取り敢えず音を消すなどして真実が分かりにくくなる様にしましょう

 後はもう少し襲われている様に誇張を入れれば良いと思います。

 丁度解析を頼んでいますので、同時にやらせましょう」

 

 段取りはこの辺りでいいでしょう。

 後は時間が経てば噂が広まり自然と彼が頼れるのは私だけになります。

 秋風さんの心が折れて私に依存するまで少し時間がかかるでしょうが、

 一度広まれば後は此方のものです。

 

「ところでお嬢様、この案を採用されても相応の処分はするのですか?」

 

「はぁ、抜け目無いですね。上手くいけば無くなるかもしれませんよ」

 

 一応今回潜入させている者は尻尾を切っても問題ない様な者ばかりなのですが。

 本当に解ってるのでしょうか。

 

 この者達の気を引き締めさせるために、少し語気を強めて言い放ちます。

 

「おい、お前達……」

 

「失敗など許されませんよ。もし、そんなことがあれば…理解していますね?」

 

『ッ!はい、お嬢様』

 

「よろしい。それでは速やかに行動に移しなさい」

 

 絶対逃がしませんよ。貴方は私だけの物ですから。

 にしても私に依存している彼はどれだけ素晴らしいのでしょうか。

 楽しみです。

 

 

 

 




潜入している人達
大体が弱みを握られている。子会社の娘とかそんなのが多い。

強かな女
自分の案が採用されて嬉しい。この後、少し待遇が良くなった。

感想とか評価してくれたら嬉しいです


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貴方を助けてくれるヤンデレお嬢様4 裏

設定を忘れててやり直してたら遅くなりました。
夏休み終わるまでに終わらせたかった;;
誤字脱字あったら報告下さい


 早速行動を開始した夜。

 私達は経過報告をする為にもう一度集まっていました。

 

「それで今の所の成果はどれ程ですか?」

 

「報告します。結果から言うと予想以上の成果です。クラスLI○Eにて、動画と共に秋風という男

 子生徒が女子生徒を襲っていたと言う旨の話を出しました。すると何人かの生徒、特に親衛隊が

 反応を示しました。そこで、その者達に親衛隊内で噂を広めるように促しました。

 恐らく、親衛隊内にはかなり広まっていると思います。」

 

「ご苦労、ですが少し気になる単語があります。その親衛隊とは何でしょうか?」

 

「え、ご存知無いですか?」

 

 周りを見渡してみると、私以外は知っている模様で驚いた顔をしていました。

 なんと、私もまだまだですね。上に立つ者が手下程度に遅れをとるなんて。

 

「えっと、簡単に説明するとお嬢様のファンです。お嬢様を偶像化して……」

 

 その後も長い説明がありましたが、纏めると親衛隊というのは私を好きな方々が集まって

 組織を形成したらしく、私に近づく不埒な輩から守ろうとしたり、勝手にグッズなども

 作ってるらしいです。良い迷惑ですね。これでは秋風さんの近くに居られないじゃないですか。

 今回は役に立ちそうですが。

 

 話を戻しましょう。

 

「それで、他は?」

 

「はい。クラスLI○Eの内容を誇張し他のクラスにも拡散した結果かなり良い反応が出ています。

 更に、お嬢様の名前も少し出せばこの通りです」

 

 そう言い、スマホの画面を見せてきました。

 

『ねぇ、アレ聞いた?なんか女子襲った奴いるってはなし』

『みんなしってんぞw』

『明日もそいつ来るかな』

『来たら倒してヒーローなるわww』

『ワンチャン如月様に認めてもらえるかもね』

『マ?じゃあおれもやろっかな!w』

『だれがやったん?』

『3組の秋風。』

『あの電車で痴漢してそうな陰キャかw』

『わかる。』

『明日ボコボコにしてやるか』    

     ・

     ・

     ・

 

 その後は秋風さんへの罵詈雑言が続いていました。

 元々、私達によって起こした事ですが、かなり複雑な気持ちです。

 

「秋風氏は周囲との関わりが薄いので否定する者もいません。そのおかげで噂は広がる一方です。

 現在は学校中に広まっていると見て良いです。

 正直ここまで上手くいくとは思いませんでした」

 

 私も同じ気持ちです。幾ら私たちが扇動したとはいえ今は情報社会ですよ?

 出てきた情報が真実かどうか位確かめないのでしょうか。ここまでいくと呆れますね。

 まぁ、これに関してはこの辺りで良いでしょう。次です。

 

「あの女の身辺についてはどうなっていますか?」

 

「はい。父親は偶然にも財閥の本社で働いていました。役職には就いていません。

 母親は専業主婦で近隣との関係は悪くないようです。

 父親はお嬢様の命令通り、先程帰宅させました」

 

「よろしい。それでは寝静まった頃に誘拐しなさい。それでその後は……」

 

 私は入念に打ち合わせをしました。今回は表沙汰になれば火消しが面倒ですし、

 入念にやっといて損はないので。

 その後、要件を伝え終わった私は、就寝するのでした。

 

◆◆◆

 

 次の日、私はとてもスッキリとした気分で目覚めました。

 邪魔者が消えるというのは良い事ですね。

 

 メイドを呼び出し、日課をこなします。

 ふむ、今日の秋風さんは起きるのが早いですね。

 

『あら、今日は珍しく早いじゃない』

 

『そんなことないよ。ちょっと気分が変わっただけ』

 

 気分が変わっただけ、ですか。秋風さんはあの女が消えた事を知らないので

 仕方がないですがあいつの所為で、となると嫌ですね。

 偶にニヤニヤしたりしていますがすぐにその感情を向けるのは私になって貰います。

 

 ふむ、今日の朝食は少し豪華ですね。

 

◆◆◆

 

 少し早足で学校へ向かいます。理由は簡単です。

 いつもと違う秋風さんの様子に準備をするのも忘れて見入ってしまったのです。

 お陰で秋風さんが家を出る時に私は、起きた時と何も変わっていませんでした。

 

「ふぅ、どうやら間に合いそうですね」

 

 昇降口で時計を見てみると始業まで5分もありました。これなら間に合いそうです。

 ……?何やら起きている様です。遠くから喧騒が聞こえてきます。

 周りの人もなんだなんだと歩いて行っています。

 

プルルプルル

 

 電話が掛かって来ました。名前を見ると同じクラスに潜入させている者の一人。

 

『お嬢様!急いで教室に来てください。乱闘が起こっています!!』

 

 電話を取ると一番に焦った様な声で言われました。

 何やら只事では無さそうです。そして、乱闘という言葉。

 つまりこの遠くから聞こえる騒ぎはその乱闘という事でしょう。

 

「一度落ち着きなさい。詳しく状況の説明をください」

 

『そ、それが…秋風氏がクラス中から総出で攻撃されていて…』

 

 ‼︎

 気付けば私は走り出していました。恐らくこれは、私が招いた事です。

 計画が上手く行っていると言えば聞こえはいいですが。場合によっては取り返しがつきません。

 教室に近づくに連れて騒ぎ声が大きくなっていきます。

 周りの者達は私に気がつくと、驚きつつも道を空けてくれました。

 

 教室の前に立つと中で罵声が複数と、更には笑い声も聞こえます。

 意を決して取っ手に手を掛け中へと踏み出します。

 

「ねぇ、何をしているのですか」

 

 自分の物とは思えない程、冷たい声により教室が静まり返りました。

 私の目の前にいるのは顔をぐしゃぐしゃにして倒れている秋風さんとそれを取り囲むように

 立っている数人の男子、周りでスマホを構えている女生徒も居ます。

 どうやら教育が足りていないようですが、今はそれどころではありません。

 一刻も早く秋風さんの手当てをしなくては、と思い秋風さんへ近づくと大柄の男子が

 話しかけてきました。

 

「如月さんそいつは……」

 

「どうやら女子生徒を襲ったとされているらしいですね」

 

「なら…」

 

「ならば抵抗もない相手に集団で襲い掛かってもいいと?」

 

 私の言葉に目の前の男子は口を噤みました。そこで私は畳みかけます。

 

「仮にこの人が女子生徒に卑劣な行為をしたとしてもそれは手を出して良い理由にはなりません。

 証拠を学校へ提出するなり被害者に事情を聞くなりして理性的に行動すべきです」

 

「いや「まだ何か?」…っ」

 

「周りの方々も同じです。特にカメラを構えているあなた」

 

 急に話の段上に上げられ困惑する女生徒。貴女に関しては秋風さんのあられも無い姿を撮って

 いたので極刑です。

 

「あなたも事と場合によってはこの者達と同罪ですよ。」

 

 教室が重苦しい空気に包まれていますが私には関係ありません。

 

「この方は私が運びます。では、ごきげんよう」

 

 私は秋風さんを背負い、保健室へと向かいました。

 

 

「ふう」

 

 秋風さんをベッドに寝かせ、一息つきます。実を言うと治療はすでに済ませてあります。

 あの私に連絡をくれた者が一緒に我が家の医者に連絡をしてくれていたようです。

 流石本場の人間と言うべきか素早く適切な処置をしてくれました。

 

 今でこそ秋風さんはスヤスヤと眠っていますがさっきまでは顔をたくさん殴られていました。

 

「こんなにボロボロになって、可哀想に」

 

 手が自然と力んでしまいます。本当に許せません。

 と言っても私が仕組んだ事なのですが…でも正直暴力まで行くとは思いませんでした。

 予定としては周りの人間が物を隠すなどの精神的な虐めをして弱っていく秋風さんに私が

 寄り添って気付けば信頼できるのは私だけになり、その信頼は段々愛情へ……

 となるだったのですがどういう訳か暴力沙汰になってしまいました。

 

「でも、ここまで苦労しました。あぁ、あの男は後で処分しないといけませんね」

 

 ええ、そうです。原因があの男にあるわけではありませんが、必要以上に秋風さんを

 殴っていたのも事実です。なので生きていて欲しくありません。

 

 因みに一つ朗報があるとすれば秋風さんは比較的軽症だったと言う事でしょう。

 どうやら彼らはそこまで本気で殴っていなかった様です。

 あくまで、悪者を成敗するヒーローの様な感覚だったという事でしょうか。

 

「…少し心を落ち着かせましょうか」

 

 まず考えるべきはこれからの事でしょう。一応秋風さんの治療中に考えてはあります。

 まず、秋風さんを孤立させるのは成功と見て良いでしょう。なので後はただ寄り添うだけです。

 何人か消えて貰わなくてはいけませんが些細な事です。

 

 

 「ふふっ、あと少しであなたが手に入るのですね。とても楽しみです」

 

 秋風さんの頬を優しく撫でて呟きました。

 あと少しですよ。私の旦那様



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貴方を助けてくれるヤンデレお嬢様5 裏

20日ぶりにこんにちは。設定を考えてなくて結構難産でした。
誤字脱字あったら報告ください。

9/25 最後の所を少し加筆しました


 秋風さんの頬を暫く触っていると邪な気持ちになってしまったので一旦外に出ます。

 深く息を吸い、吐き出して火照った体を冷やします。

 一応、後は寄り添うだけと言いましたが。正直それだけで済むと思えません。

 情報を流して次の日には暴行に出る様な奴らです。

 正直私達の時間を邪魔される未来が想像できます。と、少し憂鬱になっていると

 

「う、う~ん……っ!?痛っ」

 

 中から秋風さんの声が微かに聞こえてきました。どうやら目が覚めた様ですね。

 

「…でもどうしてここに?」

 

 ふむ、少し混乱されている様ですね。無理もないですか。

 なのでここは私が説明して差し上げましょう。

 

「その疑問には私がお答えします。あ、声に出てましたよ?」

 

 声が出ていた事に気付いたのか顔を赤くする秋風さん。

 

「そ、それで疑問に答えてくれるって?」

 

「はい。最初に、貴方を保健室まで運んで来たのは私です」

 

 私はその後も秋風さんに現状を説明していきました。

 コロコロ表情を変えていく秋風さんは見ていてとても面白かったです。

 特に女生徒を襲った事になっていると伝えた時は凄く良い表情になっていました。

 

「……と、言う事ですが、いかがですか?」

 

 秋風さんに今後の対応について伝えました。簡単に言うなら私が秋風さんを守るだけです。

 少しだけ微妙な顔をされてしまいましたが、これしかないと納得して貰いました。

 

「えっと、迷惑かけてごめんなさい」

 

 突然秋風さんに謝罪の言葉をかけられます。改めて秋風さんを見ると暗い顔で俯いていました。

 なので私は優しく声をかけます。

 

「勘違いされているかもしれませんが、私は貴方だから助けようとしているのですよ。

 私がやりたくてやっている事なので気にする必要もありません。

 こういった場合は素直にありがとう、と言えば良いのです」

 

「……あ、ありがとう」

 

 秋風さんはぎこちない動きでしたがしっかりとそう言いました。

 

「はい。どういたしまして。それではそろそろ戻りましょうか」

 

「ぇ、もう戻るの?」

 

「大丈夫ですよ。私が付いています。さ、行きましょう」

 

 最初こそ嫌そうでしたが、私が先に出ると慌てて付いてきてくれました。

 

 

 教師の声だけが響く授業中の教室に突然ガラガラと戸を開ける音がなりました。

 教室に着くと、授業を受けていた皆さんの視線が一斉に此方へ向きました。

 まずは私へ、そして次にやって来た、秋風さんへと。

 所々に湿布などを貼っている彼を見て、幾人かには薄ら笑みを浮かべて居る人もいます。

 

 私は気にせず席に着きました。

 先生に何処に行っていたのかと聞かれたので保健室に怪我人をを運んでいたと端的に伝えます。

 

 授業が終わると私の周りには早速人が集まってきました。

 

「ねぇ、如月さんどうゆうつもり!?」      「そうだ〜」

  「なんであいつを庇ってるんだ!」  「被害者の気持ちも考えなよ」

 

 一つ一つ答えるとようとすると面倒なので秋風さんを信じているの一点張りで

 通す事にしました。

 

◆◆◆

 

 時は経ち、昼休みになりました。

 

「何処へ行かれるのですか?」

 

 秋風さんを食事に誘おうとしたところ、何処かへ行かれる様子だったので慌てて呼び止めました。

 今の秋風さんには敵が多いので彼の行動一つ一つに注意しなければ何があるかわかりません。

 

「如月さん?弁当食べに行くだけだよ」

 

 全く、この人は自分が危険な状況である事を覚えているのでしょうか。

 このままでは本当に彼の身が危ういですね。

 

「では、私もご一緒します」

 

「は!?いやいや、さすがにいいよ!」」

 

「そうだね。今回は”これ”の言うとおりだよ」

 私達が教室の前で話していると突然変な男が割り込んできました。

 

「……あの、どちら様でしょうか」

 

 何というか面倒そうな方なので早めに何処かへ行ってほしいのですが。

 

「なん、だと…?この僕を知らないというのか…?」

 

「あの、もう通して貰ってもよろしいでしょうか?」

 

 正直、初めて見た顔ですし、隣の秋風さんもよく分からなそうな顔をしています。

 

「いや、待ちたまえ。お嬢さんの隣に居る”それ”、良くない噂があるそうじゃ無いか」シュバッ

 

「だからどうだい?これは置いていって僕と食事で「結構です」…へ?」

 

 先程から言わせておけば秋風さんを軽視しすぎではないでしょうか。

 

「大体、先程から秋風さんを”これ”だとか言って居ましたが何ですか貴方は人の事を物扱いするの

 ですね。そのような人とは関われません。はぁ、貴方のせいで時間を無駄に使ってしまいました。」

 

 …っは!私とした事が頭に血が昇ってしまいました。

 横目で周りの状況、主に秋風さんも反応を確認してみると、意外そうに驚いてるだけでした。

 私がここまで大きい声で喋った事が無かったからでしょう。

 

「な、なんでそこまでそいつの味方をするんだ!……なるほど

 ああ!なんて可哀想なお姫様だ!このようなクズの毒牙にかかってしまうなんて!でも大丈夫

 さ!僕が哀れな姫様を救い出してあげるからねっ!!」シュバッ

 

 さて、目の前の男が何か言っていますがそろそろ時間がなくなってきてしまうので

 少し強引になってしまいますが切り上げてしまいましょう。

 

「結構です。私は騙されて居ませんし秋風さんがそのような事をしない

 心優しい人だと知っております。それでは、ご機嫌よう」

 

そう言うと私はすぐさま秋風さんの連れてその場を離れました。

 少しの沈黙の後に秋風さんがおずおずと口を開きました。

 

「き、如月さん?えっと、ありがとう。でも…

 

 秋風さんがまた謝られそうだったのでそれを必要ないと彼に言うために

 自然と意識が向いた時です。衝撃が走りました。

 

 な、なぜ私は彼の手を握っているのでしょうか。手に彼からの温もりが伝わってきます。

 ままマズいです。手汗とか大丈夫でしょうか!?

 

「如月さん?」

 

 !?もしかして今何か話していたのでしょうか。どうしましょう何も聞いていませんでした。

 焦っているともう屋上に着いてしまいました。取っ手に手をかけつつ必死に考えます。

 ええと、話の流れで言うなら……… 

 

 

「ねぇ、秋風さん」

 

 ドアを開けて前に進みました。涼しい風を赤くなっているであろう顔で感じつつ私は話します。

 

「ん?」

 

「私は何があっても貴方の味方です。例え周りの全てが敵になっても、です。

 ですので私をいくらでも頼ってください。」

 

 これは紛れもない私の本心です。上手く喋れているかは分かりませんが。

 

「……取り敢えずお昼にしましょうか。ね?秋風さん」

 

 面と向かって言うのは少し恥ずかしくて、誤魔化すようにベンチに座りました。

 その後は他愛もない話をしたり、初の共に昼食を食べた事もあってか

 少し勢いに身を任せ、食べ物の交換なんて事もしてしまいました。

 

 

 今はそれを思い出して悶えている所です。

 

「…お嬢様準備が整いました」

 

「はい、今いきます」

 

 後は少し手を加えるだけです。

 

「後少しで全て上手く行きますよ。楽しみにしてて下さい」




お気に入りとか評価してくれたら嬉しいです。


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貴方を助けてくれるヤンデレお嬢様6 裏

お久しぶりです。3000文字に1ヶ月かけて来ました。
今回で終わりです。


 次の日、私は山奥のとある施設までやって来ていました。

 

「お嬢様こちらです」

 

 メイドに案内され、施設の奥へと入っていきます。

 実はここに来るのは初めてなので造りがよく分かっていません。

 

「手早く済ませてしまいましょうか

 

 

 薄暗い廊下を進んで行くと大きな窓の着いた部屋に辿り着きました。

 窓の向こうは簡素なベッドとトイレしかない部屋となっています。

 そして中にはそれに見合った少女が入っています。これが今日の目的です。

 

 一旦部屋を出て、隣にあるドアをメイドに開けさせます。

 ギイィと重厚な音を立て、ゆっくりと扉が開きます。

 

っ!……ぇ?どうしてここに…」

 

「お久しぶりですね、元気に過ごせていましたか?本田さん」

 

 と言う事で今回の目的は本田さんです。

 今の彼女は以前の様な健康的な姿では無く少しやつれ、声に覇気がありません。

 明らかな栄養失調です。まあ、最低限の食事にするよう命じたのは私ですが。

 

「も、もしかして私のために…?」 

 

 ?ああ、そう言う事ですか。この女は私が助けに来たと思い込んでいるのですね。

 ならば少し遊んでみましょうか。

 

「はい。そうですよ。その為に色々と準備をして来ました」

 

「そこまで…ほんとうにありがとうございます…!」

 

 そのまま安堵の表情で彼女は涙を流し始めました。

 それを見て側にいるメイドに合図を出しました。

 

「失礼します」

 

「はい?…ってちょ、いたい!え!?」

 

 メイドが素早く彼女の体を縛り上げ、ベッドに拘束しました。

 ベッドに縫い付けられた本田さんは何が何だか分からないという表情をしています。

 

「これはどう言う事ですか!?」

 

「まだ分からないのですか?貴女を此処に閉じ込めているのが誰なのか」

 

「……ぇ、まさ、か」

 

 段々と彼女が恐々とした表情に染まっていきます。

 

「なんで私なんかにこんな事をするんですか!あなたに何もした覚えはありません」

 

「はぁ、まあいいです。分からないならそれで」

 

 説明するのが面倒になって来たのでさっさと終わらせます。

 

「アレを呼びしなさい」

 

 メイドが部屋を出て、再び戻って来ます。ですが後ろには新しく人影が増えていました。

 

「それで、この女をヤればいいのか?」

 

「はい。お願いします」

 

 現れたのは以前秋風さんのお金を奪おうとしていた不良です。

 最初は適当に処分して終わらせる予定だったのですが、利用価値を見つけたので

 生かしていました。

 

「この人達は…?」

 

「今から貴女と仲良く遊んでくれる方々です。

 それでは早速始めてください」

 

「ほんっとに性格のいいお嬢様だな」

「ちょ!兄貴ぃ、そんな事言ったらマズイですよ!」

 

 彼らは流れる様に嫌味を言いつつ縛られている本田さんへと近づいていきました。

 

「俺らも命かかってんだ、悪く思うなよ」

 

 男達の内の1人が本田さんにのし掛かり、服に手をかけました。

 ここまで来れば何をされるか彼女も気付いたようで、

 

「っ!!嫌!やめて、離して!」

 

「いい気味ですね。それでは私は人の情事を眺める趣味はないのでこの辺りで失礼します」

 

「いやあぁぁ!助けて、誰かぁ!秋か「バタン」

 

◆◆◆

 

「すんすん。すんすん」

 

 あれからまた数日が経ちました。

 彼女の後処理はメイドに任せたので心配はありません。

 肩の荷が一つ下りただけなのにここまで気分が楽になるとは思いませんでした。

 

 「スーハースーハー」

 

 今日の予定としては先日の不良達を使い秋風さんを追い詰めます。

 そして心身共にボロボロになった彼に優しく語りかけ、彼の中に私を刻むだけです。

 これだけ聞くと簡単に思えますが今の秋風さんは精神が疲弊しているはずです。

 そこに更に追い討ちをかけるだけであっさりと堕ちるはずです。 

 つまりあとはゴールへと歩いていくだけです。

 そのお蔭かは知りませんが少しだけ行動も大胆になって来てしまいました。

 

「スーハースー「お嬢様そろそろお時間が」…っは」

 

 制服姿のメイドに注意され、名残惜しみつつ後片付けをしました。

 急いで彼がいるであろう教室へ戻ります。

 

「あれ、俺の体操着が無いや」

 

「ふぅ…はいどうぞ。秋風さん」

 

「!?…って如月さんか」

 

 どうにか間に合いました。

 私は手に持っていた体育着を手渡しました。

 …どうせなら新品と取り替えれば良かったですね。

 

「これって俺の体操着?見つけてくれたんだ。ありがとう」

 

「っ…はい。どういたしまして」

 

 なんというか元から盗んだのは私で、更に少しはしたない事に使っていたので

 真面目に感謝されると申し訳なくなってしまいますね。

 どちらかといえば此方が感謝すべきでしょうに。

 

「じゃあ、そろそろ帰ろうかな」

 

「わかりました。お供します」

 

「帰り道で何かないように一緒に帰ってくれるのは嬉しいけど大変じゃ無いの?」

 

 大変な訳がないでしょう。此方は幸せでいっぱいです。

 雑談をして並んで歩くなんてもう夫婦じゃないですか。

 でも、突然聞いて来たという事は何かあるのでしょうか。

 少し不安になってしまったので迷惑ではないかだけ聞いてみました。

 

 すると「とても嬉しい」と食い気味に言ってくださりました。

 良かったです。これで微妙な反応を返された時にはどうなってしまうかわかりません。

 そして軽い足取りで一歩を踏み出した時でした。

 

「でも、やっぱり女子に送って貰うのは男としてダメだと思うから今日はいいよ」

 

 私の楽しみを奪うつもりですか。

 この場合は…予定とは違いますが特に問題はないでしょう。 

 

「………そう、ですか。わかりました。では、ご機嫌よう」

 

 という事で帰路へと向かう彼に一旦別れを告げました。

 そして私は勿論後をつけて行きます。

 

 暫くすると不良達と秋風さんが出会いました。秋風さんは一目散に逃げて行きます。

 私はその後をバレない様に程々に距離を保ちつつ、ついて行きました。

 

◆◆◆

 

 その後も彼は根気よく逃げて行き、それは周りが暗くなる程長時間でした。

 流石にもう頃合いと判断した私は秋風さんを癒すべく薄暗い路地へ進んでいきました。

 

「秋風さーん。何処ですか?助けに来ましたよ」

 

 私とした事が入り組んだ道のせいで秋風さんを見失ってしまいました。

 そして路地裏を数分彷徨っていると誰かが啜り泣く声が微かに聞こえて来ました。

 声のする方へ進んで行くと…

 

「ここに居たんですね、秋風さん」

 

 蹲って泣いている秋風さんに話しかけます。

 彼は涙の浮かぶ瞳で此方を見て一瞬驚くと少しだけ笑みを溢しました。

 私を見て安心してくれたのでしょうか。

 

「よしよし、怖かったですよね。辛かったですよね」

 

 私は膝を着き優しく包み込む様に秋風さんを抱きしめました。

 

 今までの不安を、苦しみを取り除く様に。

 

「もう大丈夫ですよ。私がいますから。いつでもこうやって抱きしめてあげます」

 

 何もしなくても生きていける。私がいる限り。

 

「もう何もしなくて良いんです。貴方の身の回りは私が全てやります。

 …だから、もう私に身を委ねましょ?」

 

 反応が遅いなと思い秋風さんの顔を覗いてみるといつの間にか眠っていた様です。

 

「ふう、寝ちゃいましたか…寝顔可愛いですね。でもこれからは見放題です。

 ちょっとくらい悪戯して…」

 

 この後は我が家に連れ帰るつもりですが何をしましょうか。

 やりたい事が多過ぎます。とりあえず一般の夫婦がやっていそうな事は全部やりたいです。

 一緒のベッドで寝たり、様々な物をペアルックにしたいですね

 

「お嬢様、そろそろお時間です」

 

 そうして妄想の世界に入ろうとする前にメイドに止められてしまいました。

 

「……はぁ。まあ今は気分が良いので許します」

 

 後ちょっとで良いところだったので思わず睨みつけてしまいました。

 

「っ、有難う御座います」

 

「次は無いですよ。それでは出しなさい」

 

  本当に私達の時間を邪魔するのは誰であろうと許しませんよ。

 

 それでは帰りましょうか、旦那様はーと




主人公 秋風 柊(あきかぜ しゅう)
起きたら天蓋つきベッドでビビった。
学校へ行く事は出来ないけど割とどうでも良い。
ヒモになる事が決定した。

ヤンデレ娘 如月 玲奈(きさらぎ れいな)
旦那様が居て幸せ。高校は辞めて最近は社長になる為の勉強を始めた。
元々は親が元893となる予定だったけど描かれる事はなかった。

次回は一話のみの予定です。

誤字があったら報告下さい。
感想と評価をしてくれると圧で書くのが早くなります。



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甘いイタズラ

どーもハロウィンだったので作りました。もう三週間たってます。
誤字報告あればください。


 カタカタ…カタカタカタ……

 

 キーボードのタイピング音が薄暗いオフィスに響いていた。

 

「………………」

 

 時折り眉間を押さえて上を向き目の疲れを紛わしてはもう一度パソコンへ向き合う。

 そんな事を繰り返して……

 

ぁああ〜〜〜終わった〜」

 

 秋から冬へと移り変わる季節にの中、小鳥遊 奈義(たかなし なぎ)は残業をしていた。

 普段なら残業仲間が何人か居るはずだが今日に限っては奈義一人だった。

 

(いつもなら凛先輩がいるのにな)

 

 凛先輩とは奈義の二つ上の先輩だ。

 スーツが良く似合う美人の女性で少し目つきが鋭く語感が強いので何かと誤解されがちだが

 入社したての頃よくお世話になっていて、本当は優しくて面倒見が良いという事を知っている。

 残業がある時はいつも最後まで付き合ってくれるのだが、

 今日は予定があるのか先に帰ってしまった。

 

 帰るためにPCの電源を落として、立とうとした時の事。

 奈義の後方から音を立てずにゆっくりと近づく影があった。

 それは背後に立つと奈義の肩をパシッと叩いて囁いた。

 

「せ〜んぱ〜い」

 

「ぎゃぁーー!!って何すんだ!」

 

 奈義が振り向くとそこに立って居たのはツインテールが特徴的で

 いたずらに笑う小悪魔の様な後輩の女性。名前は甘井 真里(あまい まり)

 

「ビックリしました?センパイ」

 

「当たり前だろ!というかなんで居るんだよ、お前は残業ないだろ」

 

「なんですかその態度は。飲み会にも誘われず一人ぼっちで残業している

 憐れなセンパイを想って待っていたのに」

 

 真里は奈義の二年後輩で奈義が同じ部署の先輩としてあれこれ教えていく内に懐かれた。

 そして最初の頃は大人しかったのだが段々といたずら好きの本性が出て来てしまったのだ。

 

「何それ、飲み会なんて聞いてないんだけど」

 

「はい。センパイがいない所で話が進んでいたので」

 

(だから残業は俺だけだったのか)

 

 他の社員は飲み会の為に全力で仕事を終わらせていたのだがそれを知らない奈義は

 いつも通りのペースでやっていたので一人だったのだ。

 

「しかし全員が行くなんて珍しいな。凛先輩もそれでか」

 

「はい。凛先輩には幹事をしてもらっているので。ほら、立っていても仕方がないので

 もう行きますよ」

 

「あ、ちょっと速いって!」

 

 元気よく歩き始める真里を奈義は慌てて追いかけて行った。

 

◆◆◆

 

「本当にこっちの方なのか?」

 

「はい。勿論合っていますよ」

 

 奈義は真里に案内されて飲み会の場所へと向かっていた。

 しかしネオンが輝く駅周辺を外れて住宅街にまで進んでしまっている。

 不安になって真里に聞いてもただ「合っている」と言われるだけだった。

 そして更に歩く事5分ほど。

 

「センパイ、着きましたよ!ここです」

 

「いや、あのさ…どう見てもマンションなんだけど?」

 

 真里が指を指す先にあるのは居酒屋ではなく立派なマンションだった。

 どう見ても大人数で飲み会をする場所では無い。

 

「当たり前じゃないですか。ここは私の家なので」

 

「いや、なんで!?」

 

「はぁ、まだ分からないんですか?私とサシって事ですよ!」

 

 奈義の頭は?で一杯だった。

 飲み会は?なんでコイツは行かないんだ?サシってマジ?

 疑問で溢れかえっていた。さらにそこに特大の爆弾が落とされた。

 

「はぁ、そもそもですね、センパイは飲み会に行く事になって無いんですよ」

 

「…は?」

 

 何を言って居るんだと言わんばかりに真里が説明を始めた。

 

「は?じゃないですよ。飲み会に行くんだったら『行く』って言わなきゃダメですよね。

 センパイには話すら回ってないんで『行く』って返事してませんよね?」

 

「つ、つまり?」

 

「センパイは最初から行く事になってないので席がありません!」

 

 会社に入ってから数年も経てば流石に人脈は作られてくる。

 更にはいつも気にかけてくれる先輩にすら声をかけられていない。

 奈義は膝をついてしまった。彼のメンタルはズタズタだ。

 

(なんで誰も言ってくれないんだよ。くっそ、行きたかったな〜………ん?)

 

「じゃあなんでお前は行ってないんだよ。お前友達多いだろ?

 もしかしてお前もか?」

 

「はぁ?センパイと一緒にしないで下さい。私最初に言いましたよね?

 憐れなセンパイの為に待っていたって」

 

「いや、聞いたけど…」

 

「どうしようもない人ですね、センパイの為に飲み会蹴って

 来てあげたんですよ!」

 

 真里は顔を赤くしてそっぽを向きながら言い放った。

 奈義からすればその姿は女神同然だった。

 

「あ、ありがとう〜!わざわざ俺のためにっ。今度昼奢ってやるからな」

 

「言いましたね、ゼッタイですよ!」

 

 そう言いながら二人はマンションへと入っていった。

 

 エレベーターが止まりドアの前まで着いた。

 すると真里はハッと思い出したかの様に言い出した。

 

「センパイちょっと待っててください、部屋が大丈夫か見て来ます」

 

 真里が部屋の中に入っていくと中から爆音がして来た。

『ドガッ、ボゴッ、チャキンバリンガタガタ、ぺりぺり……』

 本当に人が出しているのか思う程の音が中から出ていた。

 そして数分後、ようやく扉が開いた。

 

「はぁはぁ、センパイ、終わったんで入って良いですよ」

 

「あ、ああ。お邪魔します」

 

(うわ、すっご。俺の部屋より全然綺麗だし、しかもめっちゃ甘い匂いする)

 

 奈義は固まった。何せ女性の部屋に入るのは初めてだったので刺激が強かったのだ。

 真里の後を付いて廊下を歩くとリビングについた。

 

「センパイはソファーに座って待っててください。着替えてくるので」

 

「わかった、待ってるな」

 

 そう言って真里は扉の向こうへ消えていった。

 奈義は疲れもあってソファーで目を閉じて待つ事にした。

 

ガチャ

 

「センパ〜イってあれ寝てる?」

 

 真里が着替えて戻ると奈義はソファーで寝息を立てていた。

 真里はそれを見て何かを思いつくと奈義の元へ行き、息を吸った。

 

「センパイ、ハッピーハロウィン!!!」

 

「うわ!」

 

 真里に突然何かを大声で言われて奈義は飛び起きた。

 そして真里に向かって目を向けて思考が一瞬止まった。

 

「な!?どうしてそんな格好をしてるんだ!」

 

「え?当たり前じゃないですか」

 

「当たり前なわけないだろ!」

 

 真里が着替えてきたのは胸の辺りに付いた小さなリボンが特徴の黒のミニドレスとレースの手袋

 ここまででも部屋着ならば十分謎なのだがなぜかネコ耳と尻尾まで付いている。

 シンプルなドレスだがそれが真里の小悪魔感をより増している。

 

(あんまり派手じゃない感じが甘井に似合っていて可愛いな…って違う!)

 

「何言ってんですか今日はハロウィンですよ」

 

「ハロウィン?今日だっけ?」

 

「はぁ、そうゆうのセンパイは疎そうですもんね。

 飲み会もハロウィン飲み会として今日やってるんですよ」

 

「そうなのか…」

 

「ほら、そんなに落ち込まないでください!そんな飲み会なんて行かなくても

 私と二人で飲めば良いんですから」

 

 真里はそのまま冷蔵庫から缶ビールを取り出し、グラスと一緒に机に置いた。

 

「ありがとな」

 

 奈義は缶を開けて二つのグラスに注いで一つを真里に渡した。

 そしてグラスをコツッと当てた。

 

「「乾杯!」」

 

 奈義が最初の一杯を味わっていると真里が思い出したかの様に言い出した

 

「そうだ〜センパイ〜今日はハロウィンですよ?〜」

 

「ああ、そうだな」

 

「それじゃあ…トリック・オア・トリート〜〜お菓子くれなきゃイタズラしちゃいますよ?」

 

 わざとらしく猫の手を作り、体を寄せて来た。

 

「おい、そんな格好で近づくな!あと、今知ったのにお菓子なんて持ってるわけないだろ」

 

「え〜?持ってないんですか?じゃあそんなセンパイにはイタズラするしかないですね〜」

 

「おい、手をワキワキさせて近づくな!何しようとしてんだ」

 

 真里は奈義の隣にピッタリとくっつくとニヤッと笑った。

 

「ふふっ、大丈夫ですよ。すぐにはしません。まあ、楽しみにしててください」

 

「ふ〜ん、そう言うそっちはなんか用意してんのか?」

 

「はい、ちょっととって来ますね」

 

 奈義は思わず「あるんだ」と呟いてしまった。

 真里がオーブンで何かを温め始める事数分、両手で皿を持ち戻ってきた。

 

「センパイ、ハロウィンと言えばこれ!パンプキンパイです!」

 

 ドンと置かれたソレは食欲をそそる香ばしい匂いをしていた。

 思わず奈義は喉を鳴らした。

 

「これ食べてもいいのか?絶対美味しいじゃん」

 

「はい、先輩の為に焼いたのでしっかり味わって食べてください。

 …よいしょっと。切り取れたのでどうぞ」

 

「おお、ありがとう」

 

 真里から小皿に乗ったパイとフォークを受け取った。

 パイをフォークで更に小さく切り取って口へ運んだ。

 

「んん!美味いな。店のよりも上手いんじゃないか?」

 

(噛むとサクサクと噛みごたえがあるパイの生地に甘い香りが広がって

 めちゃくちゃ美味しい!こんな物用意してくれるなんて、最高だろ…)

 

 その後も真里が事前に買っていた酒やおつまみを楽しんだ。

 酒に関しては全て飲んだら酔い潰れる程買ってきていたが真里に煽られ

 奈義は勢いよく飲んでいた。

 

「あれ〜?センパイ眠いんですか〜〜」

 

「…ん、ふわぁあ」

 

「それじゃあ、ベッド貸してあげます〜こっちですよ」

 

 真里に手を引かれ、フラフラと奈義はベッドに横たわった。

 奈義は柔らかい布団に包まれ、すぐに夢の世界へと旅立った。

 

「ふふっ、センパイ。私は欲深いのでおかしもイタズラもしちゃいますよ。

 それじゃあ、おやすみなさい♡」

 

◆◆◆

 

 早朝、スマホのアラームと共に目が覚めた。

 重い体を起こして私は隣で寝ている人を見た。

 

「ふふ、おはようございますセンパイ」

 

 昨日は最高の日だった。始まりは誰かがハロウィン飲み会をしようと言い出した時だった。

 最初は普通にセンパイを誘うだけのつもりだったけどあのおばさんが邪魔だった。

 だからあのおばさんを幹事に仕立て上げ、おばさんが勝手な事をできない様にした。

 そしてセンパイにこの話が行かない様に私が聞いて来た事にしてセンパイに

 行くかどうか聞く人がいない様にした。そして結果は大成功だった。

 

 センパイにはお酒をたくさん飲ませて酔わせた後、ベッドで眠らせて一つになった。

 おかげで疲労が凄いがそれよりも幸福感が大きい。

 

 私はセンパイを起こさない様にベッドから降りた。

 そしてセンパイのご飯を作る為にキッチンへ向かった。

 ……やっぱり作る前に湿布を貼った方がいいかも。

 

◆◆◆

「ん……ぁぁ。朝か………?…どこだっけ…」

 

 朝日が目に当たり奈義は目を覚ました。奈義の視界に映るのはいつもの自分の部屋ではなく

 見たこともない恐らく女性の物と思われる部屋だった。奈義は一瞬パニックになりかけたが

 うっすらと昨日の出来事を思い出した。

 

「ぁ、たしか……じゃあ甘井の部屋か」

 

(記憶がはっきりしないな。昨日はソファーで眠った様な気もするが…

しかも何故か服が乱れまくってるな。もしかして酔ってなんかやったか?)

 

 奈義は何かしてしまってたらマズイと思って取り敢えず、真里に聞きに行こうと考えた。

 そこでベッドから立ち上がった時、酷い頭痛によってよろけて盛大に尻餅を着いた。

 

「っ、いってぇ」

 

 奈義が腰を抑えていると音を聞きつけた真里がすっ飛んで来た。

 

「センパイ!大丈夫ですか!?」

 

 真里は奈義に駆け寄り尻餅をついている奈義を慌てて起こした。

 そして奈義は起こしてくれた真里に感謝を伝えた。

 

「甘井、ありがとな。ちょっと二日酔いが酷いみたいだ」

 

「わかりました。ご飯は出来ているのでその後に飲んでください」

 

(昨日飲んでいたはずなのに結構早めに起きてやってくれたのか…ってすごっ!)

 

 奈義が食卓に目を向けるとそこには白米や出来たての味噌汁などがあった。

 

「さ、食べてください。腕を振るって作ったので口に合うと良いんですけど」

 

 真里に促されて奈義は味噌汁を一口飲んだ。

 

「!!あぁ~シジミがしみるな。この肉じゃがも美味いな」

 

「ホントですか!良かったです」

 

 真里は嬉しそうにはにかんだ。そしてそのまま奈義をじっと見つめていた。

 

「な、どうしたんだよ。米粒でもついてたか?」

 

「いえ、美味しそうに食べてくれるな~って思って」

 

「そうか……………そのまま見んな!お前も食べなきゃだろ」

 

「ふふっ。分かりました。いただきまーす」

 

 そうやって少しふざけつつ仲良く食事を取る二人だった。

 

 

「センパーイ、もう鍵閉めていいですか?」

 

「おう、忘れ物とかはないな。行くか」

 

 真里は会社に行く為に着替え、奈義は風呂を借りてサッパリするなど各々の

 支度を済ませ、今は家を出るところだ。

 

「またいつでも来てください。センパイならいつでも歓迎ですよ。

 なんなら合鍵作ります?」

 

「要らないし、他人にそんな事簡単に言うなよ」

 

「センパイだからですよ…」

 

「ん?まぁいいや、それでなんで甘井はついてくるんだ?会社は逆方向だぞ?」

 

「知ってますよ?家に行くんですよね」

 

 さも当然かの様に真里は言ったが始業時間を考えると家に帰ってからでは

 ギリギリになってしまう。

 

「ついて来たら会社に着くのギリギリになるから先に行けよ」

 

「ギリギリで良いんですよ、ほら電車来たんで乗りますよ」

 

 電車のドアが開くと真里に背中を押され、一緒に電車に乗り込んでしまった。

 そして次々と他の乗客が押し寄せてしまい、気付けば真里と奈義は正面から

 密着する形になってしまった。

 

「!!ごめん、ちょっと離れるな」

 

 奈義は狭い車内に中頑張って隙間を開けようとした。

 …が真里によってそれは防がれてしまう。

 

「ダメですよ、他の人に迷惑じゃないですか。」

 

 真里は奈義の背中に手を回してぎゅっと抱きしめた。

 そして奈義に身体を密着させる。

 

(やっばい!甘井の顔がめっちゃ近いし、その上目遣いは駄目だろ…)

 

 奈義は頑張って離れようとしたが動き過ぎると周りの迷惑になる為

 一生懸命に別の事を考えて心を落ち着かせるしかなかった。

 

 

「はぁ、やっとついた」

 

「ほう、ここがセンパイのお家ですか」

 

 悟りが開そうな程長い時間の末、ようやく二人は奈義の家についた。

 だがこの部屋に来たのも束の間。奈義は真里を置いて急いで着替えた。

 

「よし、着替えたし荷物持ったから行くぞ!」

 

「えー?まだちゃんと部屋見れてないです」

 

「いや、電車ヤバいから!」

 

「あ!待ってください!」

 

 走って駅へと向かう二人だった。

 

◆◆◆

 

「ハァ、ハァ……間に合ったな…」

 

「……はい、死ぬほど走りましたからね……」

 

 

 なんやかんやあて、ようやく二人は会社についた。奈義に関しては二日酔いの

 所為で少しグロッキーになっている。

 二人がデスクへと向かおうとしたところで声をかけられた。

 

「おい、小鳥遊。どうして今日はこんなにも遅いんだ?」

 

「凛先輩、おはようございます。ちょっといろいろあって…」

 

 声の主は話の所々で出て来ていた凛だった。

 いつものクールな佇まいだが何処か不安そうで少し怒っている様にも見えた。

 

「ふーん、それは甘井と一緒に出社した事に関係あるのか?」

 

(なんか今日の凛先輩の雰囲気いつもより怖いな…

ギリギリに出社するのが珍しいからか?)

 

「はい、甘井の家で飲み過ぎてしまって…」

 

「な…ッチ、そう言う事か。それ、じt「凛先輩ー」…」

 

「これ見てくださいよー先輩の寝顔。ほら」

 

「いやお前いつのまに撮ってたんだよ。いいから消せ」

 

「あ、ダメですよこっち来ないでください」

 

 凛が何かを言う前に真里が遮ってしまった。

 真里はニヤニヤとした顔でスマホの画面を凛に見せている。

 奈義は凛に寝顔を見せまいとスマホを奪い取ろうとしたが、相手が女性な手前

 無理に奪い取ることができない。

 

「これ良くないですか?とっても気持ちよさそうで。私もすごい嬉しかったです」

 

 真里は顔を紅くして相当良い事があったのだろうか思い出す様に言った。

 相対的に凛は段々と画面を見ながら顔を青くしている。

 しまいには涙目で俯いてしまった。

 

(なんか凛先輩の様子おかしいな)

 

「あ、そうだ。〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「っ!」

 

 最後に真里が凛に何かを耳打ちすると凛は何処かへ逃げる様に走り去ってしまった。

 

「え、凛先輩!?おい甘井、何したんだ」

 

「プククっっwwwいい気味ですね。あれですよハロウィンのイタズラです」

 

 甘井は心の底から愉快だと言わんばかりに笑っているが奈義は不安が拭えなかった。

 

「なぁ、甘井。本当は何見せてたんだ?」

 

「さぁ?なんでしょうね」

 

「うわー、俺もあんなレベルのイタズラされるのか」

 

「あ、大丈夫ですよ。もうたくさん仕掛けてあるので♡」

 

 甘井はそう言い残し自分のデスクへ向かった。

 

(マジかよ、一つじゃないんかい……はあ)

 

 奈義はこれから何が起こるかと気が重くなりつつ、いつもの業務へ戻った。

 

 

 数日後、母から『あんた可愛い彼女できたんだね!』ととても嬉しそうな電話が来た。

 

「これ絶対あいつのせいだろ!!!」




主人公 小鳥遊 奈義 (たかなし なぎ)
トリックオアトリートのトリック部分(受ける側)
本人は何も分かってないやつ。

ヤンデレ娘 甘井 真里 (あまい まり)
トリート部分。奈義を酔わせて色々やった。
酒は一気に飲ませると死ぬのでやめよう!

可哀想な人 凛先輩
奈義と二人でハロウィンを過ごそうと思ってたのになんかすごい事になった。
高身長クール系美人お姉さんって好きなんですが分かれ。

お気に入りとか感想くれるとモチベ上がるんでください。
追記:テスト前なんで次の投稿が遅くなります。


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飼い犬に手を噛まれる

皆様お久しぶりです(約4ヶ月ぶり)細かい事は活動報告または後書きで。
約1万4000字と長いですがまずは楽しんで!
誤字脱字あったら報告ください。

4/8 誤字報告ありがとうございます。なのですが…誤って報告を消してしまい
  誰か分からなくなってしまいました。すみません!
  誤字以外に表現に関しても教えてくれたので助かりました!


 ダッダッダッ

 少女が学校の廊下を爆走していた。

 その目は何かを必死に探しており、周りの者は思わず端の方へ寄ってしまう程だった。

 そして先生に呼び止められようとも気にも止めずに走っていた。

 

「…あ!いたぁ!」

 

 やがて何かをみつけたようで更にスピードを上げて……そこに居た少年へ飛びかかった。

 

「ぐべぇ!……って、さっさとどけ!歩希!」

 

「えへへ、だってそこに新太がいるから」

 

 このたった今、飛びかかった少女は春園 歩希(はるぞの ふき)だ。

 その少女は可愛らしいボブカットで黄金の様に輝く小麦色の髪をしており、

 そのくりくりとした大きな瞳やコロコロ変わる表情、体全体を使って喜びを表すその姿

 それは美少女と言っても差し支えはないものだった。

 

「理由になってないし、いいからどけ!!」

 

「おおーまたやってんな~」

「さすがバカップル」

 

「違うわ!!」

 

 先程から歩希に抱きつかれてるこの少年は犬飼 新太(いぬかい あらた)

 たった今「バカップル」と揶揄られたばかりではあるが

 新太の言う通り実際に付き合っているわけではない。

 

「おいそこ、何さっきから廊下を走り回ってんだ?」

 

 二人がじゃれている後ろから怒気混じりの声が飛んできた。

 歩希が恐る恐る後ろへ振り向くいた。

 

「げ、先生じゃん」

 

「そうだぞ、春園が何回も廊下を爆走してるのを見ている先生だ」

 

 歩希が怒られる未来を察知した瞬間、新太は逃げる事にした。

 

「先生、俺は関係無いので、教室へ…「だめだ」なんで!?」

 

「そりゃこいつの責任は保護者であるお前の責任だからな」

 

「誰が保護者だ!!」

 

「そんなの決まってんだろ。本人公認だぞ?」

 

(本人公認って別に俺は認めたことねぇよ!クッソ、一体誰が……)

 

 本人公認とはどう言うことだろうか。こんなふざけた事を言いそうなのは誰か。

 頭の中で探して、ふと気付いた。

 

(本人公認?本人ってこの場合俺と…)

 

「えへへ///」

 

「お前だな絶対!!」

 

 そこには顔に私がやりましたと言わんばかりの歩希がいた。 

 新太はゆっくりと歩希に近寄り、思いっきりほっぺたを引っ張った。

 

「このっ。この口が悪いんか」

 

「ほへぇんひゃい。ほうひひゃへん〜〜(ごめんなさい。もうしません〜〜)」

 

「おいそこ、いちゃついてるとこ悪いんだがお説教の時間だ」

 

「なんでだよ〜〜!」

 

 

「ったく、酷い目にあったわ」

 

「えへへ」

 

 二人の関係を表すなら正確にはこうだ。

「犬と飼い主」

 少なくとも新太自身はそう思っている。

 

「ねぇねぇ、これあげる!」

 

「ん?これジュースじゃん。いつの間に買ってきたんだよ」

 

「さっきのお詫びとして買った」

 

 歩希はペットボトルを渡すとすぐさま少し屈み新太を見つめた。

 

「ったく、しょーがないな。ほらわしゃわしゃわしゃ〜!」

 

「きゃ〜〜〜〜〜!!」

 

 歩希の意図を察した新太は全力で歩希の頭を撫で始めた。

 歩希はもっともっとと言うように新太に体を寄せていく。

 周りには普通に人は居る。だが二人は気にも止めずにじゃれ合っていた。

 周りからは「あ、バカップルか」と慣れた様に呟かれる。もはや風景の一部かの様だ。

 

 勿論だが二人は付き合ってはいない。

 二人は出会ってから一年以上経っておりここまで仲良くなっているが、

 初めからこうだった訳ではない。

 最初から歩希は元気だったが体に触れてくるほどでは無かったし

 新太も美少女である歩希に関わるたびに心をドギマギさせていた。

 

 だがそれは今ではどうだろう

 

「ほーれ!よしよしよし」

 

「えへへへ~~//」

 

 新太の目には主人に甘える大型犬しか写っていない。

 どうしてこんな事になってしまったのだろうか。

 


 

 入学したての頃、歩希はその見た目と元気で誰とでも親しくなれる雰囲気から

 直ぐに学年中に広まりクラスの中心で愛されキャラとなった。

 新太も中心とまでは行かないが周りと仲良くでき、歩希と話す事も多くなった。

 

「… それでねー凄い楽しかったんだ」

 

「へー!」

 

「あ、そうだ!今週末丁度もう一回行くんだけど春園さんも一緒に行く?」

 

「あー……。私、小学生の弟が居るからあんまりそういうの行けないんだ…」

 

「え!弟さん居るんだ。じゃあ面倒見なきゃだね。わかった」

 

「うん。…また今度行こうね!」

 

 歩希は少し俯いた後またいつものように笑った。

 それはぱっと見一緒に出かけれないのを残念に思っている様だ。

 新太自身にもそう見えた。だが暫く関わっていく内に何処か違和感を感じる様になった。

 

◆◆◆

 

 新太は家で歩希に対する違和感について考えていた。

 

 特に気になるのが「小学生の弟」だ。

 歩希は誰かに誘われても弟を理由にいつも断っている。

 どんな時でも使うので一部からは嘘かと疑問を持たれてさえいる。

 だけどそうでは無い気がする。

 弟に関して喋る時に偶に見せる顔、特に「弟の世話なんて偉いね」「お姉ちゃんなんだ」

 と周りから言われた時の歩希の反応は少し影を感じた。

 

(うーん、考えてても良くわかんないなぁ。気のせいかもしれないし

漫画でも読もうかな……)

 

 漫画アプリを開くと偶々とある漫画がホームに出て来た。

 それは自殺しようとしているヒロインを主人公が救う話で

 確かヒロインの自殺の理由は出来の良い妹と比べられて…的な感じだった気がする。

 

(出来の良い妹…春雨さんには弟がいたな。もしかして……そうか、そう言うことか!)

 

 新太の頭の中でカチリと何かがハマる音がした。

 

(きっと彼女は出来の良い弟と比べられて劣等感を抱いているんだ。

だから家族関係の話になるとあんな反応をするんだ)

 

 はっきりと言えば新太の推理は穴だらけであるがそれを訂正する者はいなかった。

 新太は自分の推理が当たっていると確信して明日、歩希に話しかける事にした。

 

 

「ねえ、春園さん。ちょっと話があるんだけどいいかな」

 

「?いいよ、新太くん」

 

 彼女の様子はいつもの様に天真爛漫でこっちまでも元気になる。

 そんな彼女にいきなり家庭について聞く事になる。だが何かあってからでは遅いのだ。

 歩希を人気の無い場所まで連れて来た新太は意を決して歩希に聞いた。

 

「あー。なんかさ春園さんは悩みとかあったりしない?」

 

「どうしたの?いきなり」

 

 新太は歩希の雰囲気が少しだけ変わったのを感じた。

 少しだけ体に緊張が走る。

 

「いや、無ければいいんだけどさ。なんとなく聞いただけ」

 

「ふーん。じゃあ、もし有るって人がいたらどうするの?」

 

「え?」

 

 新太は困り果てた。聞いたは良いもののそれ以外は何も考えてなかった。

 新太は焦りつつ必死に頭を働かせた。何か、何かいい答えは無いか……

 その時、昨日の漫画の事を思い出した。そうだ、そこではどうしていた?

 1分にも満たない時を経て新太は口を開いた。

 

「ありきたりだけど隣で寄り添ってあげるとか、話を聞くとか?

 手を握って君の味方だよって言うだけでも全然違うんじゃないかな」

 

「聞いてなかったけど、なんでそんな事を私に聞こうと思ったの?」

 

「偶に苦しそうな顔をしてる様に見えたから……

 ってずっと見つめてたとかいう訳じゃ無いけど」

 

「……そっか

 

 歩希は小さく呟くとまたいつもの笑顔に戻った。

 

「優しいんだね!それじゃ頼りにしてるよ!バイバイ!」

 

 そのまま走り去って行った。

 そして残された新太は少しの間立ち尽くしていた。

 冷静になると自分が何をしたのか思い出した。

 

(俺って今唐突に女子を呼び出してなんか色々やっちゃって無かったか?

確証もなくお前って悩みあるんだろって決めつけてなかったか?)

 

「ぐぅうう、なんか怖くなって来たぁ」

 

 この後、新太は何事も無かった感を出して教室に戻った。

 そして後日、徐々に歩希からのスキンシップが増えていくことになった。

 最初は向こうから話しかけて来る様になり、もしかしたら昨日の事が

 プラスになったのか?と思える程度だったのが日が経つにつれて

 一緒に居る時間が増え、どこにでもついて来る様になったり、逆につれて行かれたりする様に

 なった。

 

「そうそうそれ…あ、新太くんだ、おはよう!…ごめん、いくね」

 

「いやいや、行ってきな〜」

 

 歩希は友達と話していた様だが、こちらへ来るらしい。

 最近は朝、教室に入る度に誰かと話してようがこっちを優先する様になった。

 

「なあ、本当に大丈夫なのか?何か話してたろ」

 

「ううん全然大丈夫!そんなのより今日一緒に学食いこうよ。私食べたい物が〜〜」

 

 歩希は流れる様に新太の隣に行き、腕を絡めた。

 周りからは少しだけ歓声が上がり同時に悔し涙を流す者も出た。

 

(やっっば女子の香りなんですけど。なんで春園さんはこんなに近くで話されてるんでしょうか!?

距離感バグってんだろ。いつまで経っても慣れないし!

てかおかしいって先週は隣にピッタリとくっつくだけだったでしょうが!!)

 

 二人きりで話したあの日から歩希はアハ体験かの様にちょっとずつ

 物理的に距離を近づけて来ていた。

 そして意外にもそれは効果的で最初はちょっと肌が触れるだけでろくに返事も出来なかったのが

 今では少しくっ付かれる位なら表面上は何事も無く振る舞える様になった。

 

「……ねぇ聞いてる?」

 

「え!?あ、うんうん勿論いいよ」

 

「やったー!」

 

◆◆◆

 

 ある日の体育の授業中にて。

 

「いやぁ、新太はいいよな!あんな良い彼女がいて」

 

「だれだよそれ!…あ、投げる方向ミスった!」

 

「よっと!…春園さんに決まってんだろって」

 

「そっちボール飛んでったぞー!」

 

 今はソフトボールでキャッチ練習をしている。

 そして新太の友人である飯田の「あぁ〜彼女ほしーな」と言ういつもの呟きから始まった。

 

「あいよーっほら、でなんで春園が出てくんだよ。どう見てもそこまで行かないだろ」

 

「いや何ゆーてんの?どう見てもそうだろ」

 

 事実、二人はどこに行くにしても一緒で腕を組んだりしているのだ。

 客観的に見ても十分にそういった仲には見えるだろう。

 

「うーん、えー?まぁ物理的な距離はだいぶ近いけどさ…どんな奴にでもそんな感じじゃない?

 別に俺だけがそう見られてる訳じゃ無いでしょ」

 

「うわー!これが彼氏の余裕ってか!!そんなに余裕ぶってると気付いた時には遅いんだぞ

 むかつくからボール当ててやる、オラ!」

 

 飯田は心底呆れた。あんなに良い彼女作っといてしかも彼女の方は新太をとても

 気にかけてると言うのに…

 

「あっぶな!!いやだから付き合ってねぇての!ホントどう言う事だよ」

 

「ハァ〜しょうがねえな。俺が二人が別れない様にアドバイスしてやんよ」

 

「いやだk「お前の自信はわかったから、聞くだけ聞けって」はぁ」

 

 新太は諦めた。おそらく飯田は俺が何をいっても聞く耳を持たないだろう。

 そして飯田は得意げに語り始めた。

 

「まずな、春園さんはお前とその他じゃ反応が全然違うからな。

 例えば朝お前が来ると絶対にお前の方に行くんだ。まずこれでお前がどれだけ大事かわかるな?

 あの子、凄い嫉妬深そうだぞ。」

 

「いや、ないない。春園がなんで俺に嫉妬するんだよ」

 

「彼氏が違う女の子と楽しそうにしてたらそりゃ嫉妬するだろ」

 

「彼氏じゃねぇっての」

 

「とにかくお前は覚えていないかもだけどなそん時の顔凄かったんだぞ。なんて言うかな…

 『何あの子、私の彼氏に色目使って…』って顔だったぞ」

 

「はいはい、覚えときまーす」

 

「お前絶対直ぐに忘れるじゃん!」

 

 この時の新太は軽く流したがこの事は後々意味を知る事になるのだった。

 

◆◆◆

 

 先日の飯田との会話をしてとある事に気づいた新太。

 それは自分と歩希の絡みが周りからしたらイチャイチャしてる様に見える事だ。

 正直、役得だなぁとショートする頭でいつも思っていたが周りからの

 見え方を知った今は話が別である。

 

「ねぇちゃん居る?」

 

「はいよー」

 

 新太は思った。女の事は同じ女に聞けばいいと。

 と言う事で新太は姉に聞く事にした。

 

「聞きたい事あるんだけどさ、女心って分かる?」

 

「あんた女に向かって何言ってのよ」

 

「それでさ、実は最近困った事があってさ」

 

「スルーしたわね…まあ良いわ。全てわかったわ。つまり女ね」

 

「間違っては居ないけどさ」

 

「いや〜遂に新太にも春が来たか〜。で、どんな相手で何があったの!」

 

「はぁ、えーとクラスの女子の距離が凄い近いんだけど、どうしたらいい?」

 

「キャーーーキター!!純粋で初々しい!!」

 

 騒がしい姉を目にしてちゃんと話を聞いてくれるか少し心配になったが

 スルーして続きを話す事にした。

 

「その子は元々家族関係で問題があったぽくてさ」

 

「それを新太が解決したのね!わーー!漫画の主人公みたいじゃない!!

 アンタやるわね!!」

 

「……それで距離が近いのはなんでかなーって」

 

「好きだからでしょ」

 

 姉は当たり前の様に言い切った。

 

「違うよ!他に、なんか、もっとないの!?」

 

「他にってそっちこそ他になんかないの?あるでしょ、良い感じのエピソード

 ない訳?」

 

「えー?そうだな……」

 

 新太は他に何か無いか思い出そうとした。

 すると気になる事が一つ。

 

「あ、なんか毎日ちょっとずつ距離を詰めて来るんだけど「キャー、なんていじらしい!」

 ……あれなんだよ休日とか土日挟んだ後だけグイって来るんだよ」

 

 すると姉は何か分かったのかニヤニヤとし出した。

 そしてやれやれと首を振った。

 

「ふ〜ん、なるほどねぇ。そんな事もわからないなんて新太の乙女心への

 理解度はまだまだね。」

 

「は?なんだよ」

 

「決まってるじゃない!好きな男子と二日もあえない。寂しくて寂しくて

 胸が張り裂けそう!!そして久しぶりに見る事で思いが溢れだす!どお!?」

 

 姉は語り終わった様でドヤ顔でこちらを向いた。

 一応姉の言葉を受け止めて新太は考える。

 

(とりあえず好きな男子とかは置いといて寂しいとかはあるかもな)

 

 姉に聞くまで失念していたが歩希には厳しい家庭環境という大前提があるのだ。

 やっと現れた自分の事を理解してくれる人。だが会えるのは学校のみ、休日という

 長い2日を家で過ごすのは苦痛だろう。

 

「ありがと。どうすれば良いか分かった」

 

「おお、じゃあ良い報告待ってるよー」

 

 部屋に戻るとボスッと自分のベッドに倒れ込み自分のすべき事を再確認する。

 

(春園は闇を抱えてるんだ…だから積極的に触れて来る。

つまりこっちからも積極的に接すればその内、家の事なんて気にならなくなるだろう。

今まで愛に触れて来なかった悲しき少女だ。

だからその分を俺が補ってやらなくちゃいけないんだ!)

 

 新太はその胸に強い決意を宿した。

 自ら女の人に触れに行くのはかなりのハードルがある。

 だがそれで彼女が救われるなら十分である。

 

 そうして新太と歩希の関係はまた変わり、今の様になった。

 新太は次の日から実行して歩希を含め、周りを驚かせたが直ぐに「あ、付き合ったんだな」

 となった。

 


 

 そして現在、長い長い回想を経て、新太は今……海外にいる。

 いや、正確に言うならば客船の上にて全力で楽しんでいた。

 

「「うわ〜〜!海、輝いてる!!」」

 

「あんまり身を乗り出して落ちないでよ〜」

 

「「はーい」」

 

 事の発端は数日前。姉がいきなり部屋に突撃してきた。

 

「新太!明日から旅行行くわよ!!豪華クルーズ船!大体1〜2週間」

 

「は!?いきなり何言ってんだ」

 

「実はさ〜この前福引で当てちゃったのよ。しかもその存在忘れてて〜w」

 

「はぁ、でも俺学校あるし……」

 

「ハッハッハ。すでに学校には所用で行けません。と言ってあるので問題ナシで〜す。

 と言う事で40秒で支度しな!家族全員で行くわよ!」

 

 と言う事で新太は突然ではあるが旅行に行く事になった。

 それではその間、歩希はどうなってしまうのだろうか。

 飼い主を失った忠犬はどうすれば良いのだろうか。どうやって生きていくのだろうか。

 

◆◆◆

 

 私には大切な人がいる。

 その人は唯一本当の自分を曝け出すことができて私の悩みを全て受け止めてくれる人。

 私の過去はただ一つ。ただ、良い姉である事だけを求められてそれに応えるだけ。

 弟が生まれてから親はそれだけを私に求めてきた。

 もちろん愛情だって少しは注いでいたのだろう。だけどそれは弟がいて初めて成り立つ私

 であってありのままの私ではない。

 

 私はちゃんと良い姉であろうとした。親からも周りからも褒められた。

 それが嬉しくて私は頑張った。明るく振る舞い、誰にでも優しい自慢の姉。

 全ては両親に褒めてほしい、認められたい。そんな子供のよくある欲求で。

 

 けどある日の事、そんな純粋な思いにも簡単にヒビが入ってしまった。

 

 その日は弟と近くの公園に遊びに行っていた。

 すると弟が他の子供が肩車されるのをみて私にもやってほしいと言ってきた。

 私は最初は無理だと思い断ったが駄々をこね始めてしまったのだ。

 私は代わりにおんぶする事にした。

 

「わーい!」

 

 どうやら喜んでくれている様だ。でも動かれると少しキツイかも。

 この時はまだ小学生で私には小さいとは言え弟を長時間も安定して持っていられる力はなかった。

 つまり......

 

「あっ、あまり動かないで...きゃっ!」

 

 当然の如くつまずいてしまった。

 さらに前のめりに転んでしまった為背負っていた弟の下敷きになってしまった。

 

「イタタ…」

 

 弟は転んだ時の恐怖で泣き出してしまった。

 自分の膝を見ると擦りむけて血が出てしまっている。いたい。

 だけど自分はお姉ちゃんだ。涙はこらえてまずは弟の心配をしなくちゃ。

 必死に我慢して弟に話しかようとした。

 

「ちょっと!!大丈夫!?何があったの!」

 

 どうやらお母さんが泣き声を聞いて駆けつけてくれたみたい。

 そのまま弟の元へ行き、頭を撫でてあやしている。

 少しして弟が落ち着くと次はこっちに来た。

 

 やった!自分も頭を撫でて貰える!!そう思って頭を前に出した。

 

 パシンッ

 

「え………」

 

 頬に走る痛みと衝撃で頭の中に空白が生まれた。

 

「何をやってるの!!」

 

 なんでそんなに怒ってるの?私お姉ちゃんしてたよ??

 

「なんで?そんなのあなたが弟を泣かせたからに決まってるでしょ!!」

 

 で、でも私は頼まれて、おんぶして。それで背中で動いちゃうから…

 

「自分のミスを弟のせいにしないで!!」

 

 でもほら!わたし泣かなかったよ。それで、それで…

 

「はぁ?その程度は姉として当たり前じゃないの?」

 

 

「それじゃあ、姉失格ね」

 

 

 わたしは目の前が歪んで真っ暗になって何もわからなくなった。

 私は親に今までの全てを否定されたのだ。褒められたいからその為に頑張ってきたのに。

 

 お母さんは弟をおんぶすると私の手を引いて歩き出した。

 私に出来るのは足をもつれさせながら痛みに耐えるだけだった。

 

 中学に上がっても私はまだ良い姉を演じていた。

 勿論とっくに親が私を見ていない事には気づいている。

 でも、心のどこかでもしかしたらと思って続けていたらもう戻れなかった。

 

 そして何事もなく3年が過ぎて高校に入った。選んだのは少し遠めの高校。

 家から近いと中学の人も一緒に来る事になる。

 私の事を知ってる人が居ない所なら、私は本当の自分を出していけると思ったのだ。

 

 だけど現実はそこまで甘くない。私が約十年もの間被り続けてきた仮面は

 固くくっついて取れなくなってしまった。

 

 結局高校も同じ様に過ごすのかなぁ…と思っていた。

 

「ねえ、春園さん。ちょっと話があるんだけどいいかな」

 

「?いいよ、新太くん」

 

 最初は告白でもされるのかと思った。

 実際に中学でも何回かあったけど、全部私の見た目が〜とか性格が〜みたいな

 結局は作られた外側しか見てないものだった。

 結果として女子からは妬まれて肩身が狭くなった。

 入学して半年も経たずにこれか……とか考えてたら。

 

「あー。なんかさ春園さんは悩みとかあったりしない?」

 

 予想とは全然違うものだった。初めての質問に無意識に警戒してしまう。

 

「どうしたの?いきなり」

 

「いや、無ければいいんだけどさ。なんとなく聞いただけ」

 

 その表情は何処となく何かを心配していて、『なんとなく』と言うくせに

 最初の質問は少し確信を得ている様な感じがあった。

 気になった、試したくなった。だから聞いてみた。

 

「ありきたりだけど隣で寄り添ってあげるとか、話を聞くとか?

 手を握って君の味方だよって言うだけでも全然違うんじゃないかな」

 

 じゃあ、なんで…

 

「偶に苦しそうな顔をしてる様に見えたから……

 ってずっと見つめてたとかいう訳じゃ無いけど」

 

 バレてたんだ。上手く隠してるつもりだったんだけどな。

 

「……そっか」

 

 この人はちゃんと私を見てくれたんだ。

 この時はまだ私の気持ちに整理がついてなくて逃げる様に帰ってしまった。

 家でも彼の事が頭から離れない。

 だから次の日から私はこの人の近くにいる事にした。

 寄り添ってくれるんでしょ?私の味方なんでしょ?

 

 暫くして私は完全に彼の虜になっていた。

 私を呼んでくれる声が好き。安心さてくれる匂いが好き。

 私に触れてくれる手、そこに居るって感じさせてくれる体温、そして何より君の暖かい心が好き。

 

 いつでも何処でも君の事で頭がいっぱいで

 休みの日は会えないから寂しくなる。

 でも月曜日になったらまた会えるから頑張れる。

 

 君が他に女の子と話してるのを見ると胸が苦しくて

 つい睨んでしまう。私が居るんだからそんなに親しくしちゃダメだよね?

 私わかるよ?君が相手の体見てる事に。触りたいなら言ってくれれば良いのに。

 

 君との毎日が楽しくてたくさん笑顔になれた。私には仮面の外し方はわからないけど

 本当の自分として生きていると思えた。

 君から接してくれる様になった時は嬉しくて舞い上がったりもした。

 

じゃあなんで私を捨てたの……

 

 

◆◆◆

 

「それじゃあホームルーム終わるぞ」

 

 いつもの様な呑気な声でホームルームが終わる。

 だが歩希の心は穏やかではなかった。

 

「先生、新太は今日も休みなんですか?」

 

「なんだ、聞いてないのか。

 確かにここ二日は休んでるが病気って訳じゃないからな心配はしなくて良いぞ」

 

「よかったぁ…じゃあなんで休んでるんですか?」

 

「ああ、所用あるから暫く登校はできないらしい」

 

 新太が病気ではない事に安心はしたが、「暫く登校できない」と言うところに疑問が出る。

 歩希の知る新太は黙って何処かへ行く様な性格では無いはずだ。

 だったら何故、どうして……

 

(しばらく学校に来ない?会えないって事?な、なんで言ってくれなかったの。

もしかして会いたくないって事?)

 

 彼は今何処にいて、何をして、あとどれ程で帰ってくるのだろう。

 そして気付いた。自分と彼の繋がりはここ(学校)しかない事に。

 歩希は新太の家も知らなければ連絡先さえ知らない。

 歩希にとってスマホは薄い言葉が永遠に送られてくるだけの板であり、持っているだけで

 大して使うこともないので忘れていた。

 そして何より慢心していた。学校では絶対会えるから、と。

 

 歩希はどうすれば良いかわからなくって俯いてしまった。

 もう歩希には何もできない。連絡手段もなければ家の場所もわからない。

 

 

「あ〜……そうだな。そう言えば今日はプリントが多かったな〜

 そこら辺に届けてくれそうな人居ないかな〜」

 

「……ぇ?先生?」

 

 突然、わざとらしく声を上げた先生に面をくらってしまう歩希。

 

「おっと、そこにいるのは今日休みの犬飼と仲のいい春園じゃないか

 申し訳ないんだがこのプリント届けてくれないかな〜」

 

 先生の手には一枚のプリントが握られていて間違っても多いとは言えない量だ。

 だが歩希は段々と先生の意を察してきた。

 

「先生!私がプリント持って行きます……あっ。でも場所が…」

 

「大丈夫だ。学校には生徒の情報がプロファイルして置いてあるからな。

 ただし、俺に教えられた事は絶対に言うなよ。一発でアウトだからな。」

 

 歩希は初めて先生が頼れると思った。

 そしてすぐに職員室へ行き住所を教えてもらった。

 

「先生、ありがとうございました。早速行ってきます!」

 

 先生に感謝を伝えるや否や歩希は急いで新太の家へと向かった。

 

「あ、おい!せめて放課後に……行っちゃった。

 ったく、暫くって言っても一週間ないのになぁ」

 

◆◆◆

 

「はぁ、はぁ…ここが新太の家……」

 

 十数分後、歩希は新太の家の前に立っていた。

 誰か中にいないか確認してみるが電気は付いていなかった。

 念の為にインターホンも鳴らしてみるが待ってみても返事は無かった。

 

(どうしよう…家にいない。でも車はあるって事は歩きとかって事だよね。

すぐに帰ってくるって事だよね………待たなくちゃ)

 

 歩希はドアのすぐ側で腰を下ろした。

 時折り顔を出して誰か来ないかと見て誰も来てなくて

 足音がしてバッと顔を上げても全然違う人で落胆して。

 そんなこんなで夕方になってしまった。

 

 それでも歩希は待っていた。

 きっと、きっとすぐ帰ってくるから。

 

 だが当然の如く新太は帰ってこない。

 歩希はもう道路を覗く事すらやめてしまった。

 ただぼんやりと時間が過ぎていった。

 

「へくちっ………?」

 

 唐突に出たくしゃみと共に歩希は顔を上げた。眩い光に目を細める。

 どうやらいつの間にか寝てしまっていたらしい。体は芯まで冷え切っている。

 風邪を引く事は間違いないだろう

 

(結局帰ってこなかったんだ……)

 

 しかしこのまま凍えている訳にもいかない。

 立ってそこら辺でも歩こうか。

 歩希は重い身体を持ち上げ歩みだ……せなかった。

 

「っ!!」

 

 立つ所までは上手く行った。ただ、一歩目から崩れる様に倒れてしまった。

 もう一度立とうとするが足に力が入らない。次第に視界が白く染まってきた。

 息が荒くなってやけにそれが耳に響く。心なしか頭も回らない。

 

「うわっ!ちょっと、大丈夫ですか!?」

 

「今すぐ救急車を......」

 

◆◆◆

 

「お大事に~」

 

「で、どういうことなのか説明してくれる?」

 

「………」ぐうううぅぅ

 

「はぁ、まずは家でご飯ね。話はそこで聞くから」

 

 簡単に言うと私は貧血と約一日飲まず食わずだったせいで倒れた。

 ずっと座ってたのにいきなり立ったから頭に血が行かなかったのだ。

 そこを通りがかった人が助けてくれたというわけだ。

 車の中で気まずい時間をしばし過ごして家に着いた。

 

 

「はい、食べなさい」

 

 出されたのは食べやすい雑炊。仄かな塩味が体に染みる。

 

「で、何があったの」

 

「っ………」

 

 正直言いたくなかった。お母さんには今まで新太の事を話したことがない。

 何より新太が居なくなったという事実を受け入れたくなかった。

 食べ終わっても私には俯くことしかできなかった。

 

「はぁ、黙ってても何もわからないんだけど。

 昨日帰って来なかった時は先生に聞いて友達の家にいったのまではわかったわ。

 正直この時点でも連絡して欲しかったけど歩希はあまりスマホを使わないし。

 それでさっき病院から電話が来た時の私の気持ちわかる?

 人の家の前で飲まず食わずで居座ってたら倒れたですって」

 

 お母さんは改めて私の目を見た。

 

「何を考えてるの!その家の人にも、私達にも迷惑かけて!

 どうするの?あの子が小学校で『あの子の姉は人の家の前に居座るらしい』

 なんて言われたら。そもそもね一日中なにも飲まない、食べないなんて

 死にたいの!?ってちょっと!!どこに行くの歩希!」

 

 目から流れる雫をそのままに私は自分の部屋のドアを叩く様に閉めた。

 

(結局私を見てくれるのは新太だけ…。でも新太いなくなちゃった。

死にたいの?…か。新太が居ない世界で生きている意味ってあるのかな)

 

 

 

◆◆◆

 

「フ〜〜〜!久しぶり!ニッポン!」

 

「いやー楽しかったわね。あぁ、このお菓子友達の分まで残せるかしら…」

 

 太陽が輝き、カモメの声が心地よく耳に届く港で犬飼一家は一週間振りに

 日本の地に足をつけた。

 両手にはスーツケースとお土産を握りしめている。

 

「二人ともはしゃいでるとこ悪いけど、お母さんたち早くタクシーで休みたいわ」

 

「はーい、じゃあ早く乗り場行こ」

 

 早速タクシーを捕まえて乗り込んだ。

 新太の膝には大量のお土産とは別の小さな紙袋が置いてある。

 彼女は気に入ってくれるだろうか。

 今はそんな事を気にしても仕方がない。

 先にトランクにある大量の荷物を気にするべきだ。

 

 今日は日曜。明日には学校へ行くから一日で終わらせなきゃ。   

 


 

 久しぶりに校舎を見る。そして何故か周りから見られる。

 いや、おそらくあれだろう。一週間丸々居なかったんだ不思議がられてもおかしくない。

 俺と歩希はセットみたいに思われてるから、今日までは歩希一人だったからな。

 

 …早く教室へ行くか。

 なんとなくで早歩きをして教室へ行く。扉を開ければいつも見る面々が。

 

「おはよ。お前ら久しぶりだな!」

 

「あ、犬飼!今まで何してたんだよ!」

 

「聞いて驚け、ちょっと船で優雅に旅を、な」

 

「お前何やってんだ!」

 

 そんなに羨ましいか、と思ったら何か違う様だ。

 むしろ何か、切羽詰まっている様な気迫を感じる。

 

「お前、春園さんはどうした」

 

 歩希?教室を見渡してみると…確かに居ないな。

 いつもなら一番に学校へ来て待ってましたと言わんばかりに俺の所へ来るのに。

 

「歩希居ないじゃん。休みか?」

 

「ああ、そうだよ居ないんだよ!お前のとこ行くって学校抜けてそれっきり!!」

 

「え?どういう事だ」

 

「数日前に先生が春園さんはお前のとこに行くって言ってたんだよ。

 でも次の日には春園さんも来なくなっちゃって先生に聞いてもなんでかはぐらかすし」

 

 旅行に行っている間に歩希が俺の家に来た?

 何でそんな事を……

 

 その瞬間、俺は走り出していた。

 

「おい、何処行くんだ!?」

 

「歩希の家だ!いかなきゃ!!」

 

 全速力で廊下を走る。歩希は俺の家の場所を知らないはずだ。

 ならば誰かに聞いたはずだ。それは…

 

「先生!歩希の家教えてください!」 

 

「おわっ!犬飼、久しぶりに来ていきなりだな」

 

「いいから教えてください。今すぐ行きたいんです」

 

「はぁ、お前もかよ。一応言うがこれ、個人情報の流出と大差ないからな。

 まぁ、もう一回やっちゃってるけど」

 

 先生は渋々デスクからファイルを取り出してパラパラめくりだした。

 とあるページで手を止めてメモ用紙に素早く書き写していく。

 

「ほれ、これが住所だ。行きながらでもスマホで調べれば出てくるだろ」

 

「ありがとうございます!」

 

 俺は先生からメモを受け取ると直ぐに駆け出した。

 

「お前は今日はサボり扱いだからな。これぐらい受け入れろ。

 あと事故だけは……っていないし」

 

◆◆◆

 

 市街地を駆け抜ける。偶に歩いている人を避けて、スマホで現在地を確認する。

 手に握る荷物が煩わしくて置いてこなかった事を後悔する。

 

「ハァ、ハァ……クソッ」

 

 ああ、なんで忘れていたんだ。春園歩希という少女について自分はよく知っていただろ。

 歩希のあの陰を忘れていたわけではない。それを消し飛ばせるくらい楽しませようとしていた。

 でも油断していた。今の歩希なら俺がいなくても周りの人と過ごせると思っていた。

 

「こ、この辺りに…」

 

 スマホを見るにこの辺りのはずだ。表札を手前から順番に見ていく。

 

(浅木、前田、これも違う……久遠、春園!あった)

 

 春園と書かれた家の前に立った。おそらく歩希はここに居るはずだ。

 一度だけ深呼吸して呼び鈴を押した。

 

「すみません、春園歩希さんのお宅で間違い無いですか?

 同じクラスの犬飼新太です」

 

 ……反応がないな。もしかしていないのだろうか。

 念の為にもう一度押してみるか。

 

「お待たせしてごめんなさい。もう始業の時間だと思うのだけれど、うちの娘に何か?」

 

 ボタンに手を置いたところで丁度女性が出て来た。

 見たところ歩希の母親だろう。

 

「歩希さんがここ数日休んでるって聞いて…えっと今家にいるんですか?」

 

「ええ、居るには居るんだけど……」

 

 そこから聞いた話によっておおまかな経緯は知ることができた。

 だが歩希の母親から聞こえたのはあまりいい言葉ではなかった。

 聞いている限り少しは歩希の心配をしているのだろう。

 だがどちらかと言えば自分やその周りを気にしているだけに見える。

 

「会わせてもらえませんか?」

 

「構わないけど…あの子、今ちょっと不安定みたいで私にも心を開いてくれないの気をつけてね」

 

(そりゃそうだろうな。だって原因はあんただろ)

 

 内心で悪態をつき、出来るだけ表に出ないように気を張る。

 やがて案内されたのは一つのドア。

 

「ココが歩希の部屋です。さっき犬飼君が来たときに声をかけたんだけど返事がなくて…

 帰る時は一声かけてくれたら嬉しいわ。それじゃあね」

 

 一言だけお礼をつげた。なんていうか直ぐに帰ると思ってそうだな。

 改めてドアを見る。この奥に歩希はいるんだ。

 

「やるか…歩希、聞こえてるか。急に居なくなってゴメンな。話がしたいんだ開けてくれるか?」

 

 …返事がないが微かに物音がした。

 

「今思えばさ、歩希の事を学校以外じゃあまり知らなかったなって。

 だからさ、これからは学校以外でも会わない?

 いっぱい遊ん「やめてよ!」」

 

「私を惑わさせないで!もう私に囁かないでよ。いないってわかってるんだから!!」

 

 やっと聞けたその声はあまりにも悲痛なものだった。

 歩希は俺の事を幻聴か何かだと思っているらしい。

 ここまで追い込まれてしまったのは俺のせいでもあるのだろう。

 

 俺がするべきなのはこの扉を開けてもらうのではなく開ける事なのかもしれない。

 

「歩希、入るぞ」

 

 幸いにも部屋に鍵の類は無い。込めた力はそのままドアを押し開けていく。

 まず目の前に入って来たのはベッドの上で丸くなっている歩希の姿だった。

 それはあまりにも弱々しく必死に身を守ろうとしている子供に見えた。

 

「ぃや、こないで……」

 

 俺は迷わず歩希を抱きしめた。

 歩希は引き剥がそうと抗うがそれも押さえつけるように腕に力を入れる。

 そして優しく背中を叩く。子供をあやす様にトン、トンと。

 

「歩希…歩希、俺はここにいるよ。もう何処にも行かない。こっちを見て」

 

「……あ、れ…あらた?ほんもの??」

 

 歩希は初めて俺の目を見た。戸惑いと迷いを露わにしながら。

 俺は真っ直ぐ歩希の目を見つめた。

 

「本物だよ。ほらこうやってちゃんと触れられる」

 

「うぅぅ、あらた〜〜」

 

 歩希は泣き出して俺に抱きついた。何も言わずに頭を撫でる。

 

「なぁ、歩希。言いたい事があるんだ」

 

 俺のその一言に歩希の体が少し震える。

 だがあえて俺は真面目な雰囲気を出した。

 

「歩希、俺達は学校でずっと一緒にいたよな。めっちゃ楽しかった。

 でもさっき、俺は歩希の事全然知らないって感じた。

 だからお前の事をもっと知りたい。学校以外での歩希を知りたい。

 春園歩希さん、あなたが好きです。付き合ってください」

 

 歩希は大きく目を見開き、息を飲んだ。

 たった今告げられた言葉を理解しようと思わず固まってしまう。

 その静かな時間はとても長かった。でも新太はそれすら大事に噛み締めていた。

 やがて歩希はゆっくりと口を開いた。目にはいっぱいの涙を浮かべて歓喜に身を震わせながら。

 

 

 

「うん、私も新太の、事が、大好きです、愛してます。

 こちらこそ、よろしくお願いします……!!」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 愛する彼を抱いていた腕をゆっくりと離した。

 さっきまで胸に渦巻いていた不安も絶望も今はどこにも無い。

 あるのは唯、目の前にいる大切な人に対する愛と依存心だけだ。

 

「歩希、落ち着いたか?」

 

「うん、ありがと」

 

 彼の声が私の心を暖めてくれる。

 さっきまで泣いていた事を考えると変な顔をしていなかったか、

 恥ずかしい姿を見せてしまった。と顔が赤くなるが微かに歓喜も感じていた。

 「私の事がもっと知りたい」そう言ってくれた。

 こういう情けない姿を見せるのも少し、ほんの少しは悪くない。

 

「……///」

 

 まぁそれでも恥ずかしい事に変わりはないが。

 

「…?ねえ、あの袋って何?」

 

 ふと目を逸らすと扉のそばに学校のバックとは別に小さな紙袋が置いてあった。

 

「ああ、実はここ一週間は旅行に行ってたんだ」

 

 初めて知った真実に少しだけムカッとしてしまう。

 

「へー、私が悲しんでる間にそんな事してたん………だ」

 

 新太が紙袋から小さな長方形の箱と正方形の箱を出して来た。

 

「実は学校で渡そうと思ってたんだけど……こんな形になっちゃった。

 開けてみて」

 

 彼から箱を手渡された。簡素な装飾だがむしろそれが高級感を引き出している箱だ。

 私は少し困惑しつつも箱を開いた。

 

「わぁ……綺麗」

 

 中身は可愛らしいヘアピンとネックレス。

 彼自身が選んでくれたのだろうか。

 こういったプレゼントを貰うのは初めてだ。

 目を輝かせていると彼が心配そうに聞いて来た。

 

「あーその、気に入ってくれたかな」

 

 こちらを伺う様な顔に少し笑ってしまう。返事は一つしかない。

 大事な大事な装飾品を身に付けながら言う。

 

「当たり前じゃん。だって彼氏からの初めてのプレゼントだよ!

 どう?似合ってる?」

 

 彼は聞き返されると思ってなかったのか豆鉄砲をくらってしまった。

 でもすぐに気を取り直して答えた。

 

「当たり前じゃん。可愛い彼女が身につけてくれたんだぞ」

 

 答えはひとつしかなかった。

 




主人公 犬飼 新太(いぬかい あらた)
天才的な推理力で女の子を一人救ってしまった。
いい男すぎる。

ヤンデレ娘 春園 歩希(はるぞの ふき)
家庭環境(主に母親)のせいで生まれたヤンデレ娘。
どこかの天才的推理力のおかげで闇を暴かれ依存心をこれでもかと
持ってかれた。交際する様になった事で闇は大体消し飛んだ。
尚、依存心と独占欲は置き土産。
犬→歩くの大好き=嬉しい→歩喜→歩希

姉 (A級戦犯)
姉、名前などない。豪運の持ち主。
その豪運によって商店街の福引で一山当ててしまった。
結果的には良くなってるので、二人のキューピッドと言えなくもない。

以下後書き

皆様お久しぶりです。実は去年の12月21日に1周年を迎えています。
4ヶ月と長い期間が空いても書こうと思えるのは皆様のお気に入り等で目に見える応援があるからです。
ありがとうございます。
次の話に関してはかなり頭の中ではできているのですぐ投稿できるかと思います。
これからもこの作品をよろしくお願いします。続きは活動報告で。

お気に入りと感想、評価をしてくれると次は4ヶ月も間が開かないぞ!!
ついでにアンケート答えて(はーと)


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