ポケットモンスターエレメント (辰ノ命)
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設定集

活動報告だとめちゃくちゃ増えてしまうので、こちらに設定集記載致します。

1.世界観
2.登場人物
3.ポケモン(フィーリス限定)
4.ジムリーダー
5.用語

※チャンピオンと四天王は現在調整中。


1.世界観

【フィーリス地方】

今作の舞台となるフィーリス地方は他の地方と比べても圧倒的に広く、フィールド内も4つのエリアに分けられる。

その広さと相まって様々な環境が存在し、例外(伝説等)を除いた全てのポケモンが生息します。そこで新たな姿(フィーリスの姿)や新たな進化先に発展するポケモンも多く生息する。

又、フィーリス地方には上記の通り、4つのエリアに分かれており、「ターコイズ・トパーズ・アメジスト・エメラルドエリア」がある。

過去にはエリアごとに「嵐・地震・戦争・病」に見舞われ、フィーリスが滅びかけた事もあったが、各エリアには1匹ずつ厄災を止めた伝説のポケモンたちがおり、彼らのお陰で今の平和がある。

 

*****

 

2.登場人物

【オリジナル主人公&ライバル】

名前:ジャケ

年齢:10代

出身地:フィーリス地方ターコイズエリア「ターコイズシティ」

目標:チャンピオンになる事

 

「概要」

本作の主人公。正義感が強く、優しさを持ち、夢に向かって全力で進む熱い部分も持ち合わせている。

家族はママとジャケの2人暮らしで、父親はだいぶ前に事故で他界している。

幼い頃からテレビに映るチャンピオンの姿や四天王やジムリーダー、バトルが盛んな地域である為、環境的にそれを見る事が多く、次第に自信も最強のトレーナーになりたいと考えるようになる。

その頃から通常とは異なるキバゴが連れて来られており、彼とは兄弟の様に育ち、現在では共にフィーリスチャンピオンになる為に、相棒として旅に連れ出している。

 

「現在の手持ち」

・キバゴ♂

タイプ:ドラゴン

特性:かたやぶり

技:ひっかく・にらみつける・かみつく・きりさく

 

・ポッポ(フィーリスの姿)♂

タイプ:ノーマル・ひこう

特性:するどいめ

技:たいあたり・かぜおこし・でんこうせっか

 

・メラルバ

タイプ:むし・こおり

特性:もふもふ

技:???

--------------------------------------------------------------------------------

名前:アユ

年齢:10代

出身地:フィーリス地方ターコイズエリア「ターコイズシティ」

目標:チャンピオンになる事・姉を超える事

 

「概要」

本作のライバルにしてヒロイン。ジャケとは幼馴染。好奇心旺盛、声量バクオング、いつでも全力ノンストップガール。

家族は父母と姉とアユの4人家族。

代々からジムリーダーや四天王に選ばれる程の実力者揃いで、現在父母は引退してしまっているが、代わりに姉が四天王の座についており、今尚不敗記録を叩き出している。

そんな姉を超えるため、彼女は旅に出た。

 

「現在の手持ち」

・アシマリ♀[みず]

特性:げきりゅう

技:はたく・みずでっぽう・なきごえ

 

・ミガルーサ♂「みず・エスパー」

特性:きれあじ

技:???

 

*****

 

3.ポケモン(※種族値は関係ないので掲載なし)

【フィーリスのすがた】

名前:ポッポ

タイプ:ノーマル・ひこう

分類:ことりポケモン

特性:するどいめ・ちどりあし

隠れ特性:はとむね

 

「概要」

頭の毛が伸びて聖職者の帽子の様で、羽にはそれぞれトの字の模様があり、羽を合わせると十字ができる。

原種と違い獲物を素早く捕らえる為に、防御を犠牲として素早さが格段に上昇している。他にも特攻の方がやや高いのは、態々近づいて捕らえるより安全に遠距離から仕留めた方がいいと気づいたからとか。

 

 

*****

 

【ジムリーダー】

ターコイズエリア

・マタイ♂→水タイプ

・カサギ♂→氷タイプ

トパーズエリア

・ホタテ♀→炎タイプ

・ナポレオ♀→鋼タイプ

アメジストエリア

・シャアク♂→格闘タイプ

・グッピー♀→霊タイプ

エメラルドエリア

・エンゼル♂→毒タイプ

・タチ♀→妖精タイプ

※詳細は暫しお待ちを

 

 

【挿絵表示】

 

 

【挿絵表示】

 

 

*****

 

5.用語

【Vバースト】

今作の新要素Vバーストは全てのポケモンに使用できる。

ポケモン達の得意な部位を大きく強化し、その際はその部位にオーラを纏ってアーマーの様な形が取られる。

尚、部位のみなので浮遊する液体や、身体から放出される気体などには作用しない。

喉を強化してエコーボイスの威力が上がる。口を強化してかえんほうしゃの威力が上がる等、間接的に作用する部位であるなら液体でも気体でも強化される。

当然ながら変化技には作用しない。

【Vバースト(完成)】

Vバーストの完成系。今までは「アーマーの様な」と表現していたが、文字通りアーマー化し、威力が上がる鎧を纏った状態。初期Vバーストでは全く歯が立たない。

初期Vバーストと弱点は同じであり、強化された部位以外はアーマー化されていない為、普通に攻撃が通ってしまうという所。

 

【Vバングル】

Vバーストを使用する為のアイテム。Vエナジーを収集する役割を持つ。

 

【Vエナジー】

Vバーストを使用する為のエネルギー。フィーリスのそこら辺に存在するらしい。



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旅の始まり編
第1話「キミに決めた」


皆さんご無沙汰しております。
まず初めにポケットモンスターエレメントの世界へようこそ!!
今回は読者参加型という初の形式でやっていきます。ゲームの様にはできませんが、皆さんには読んで楽しんでもらえたらなと思います。

まずは世界観と主人公等の紹介でございます。
それではどうぞご覧ください。


 かつて、このフィーリス地方に突如として災厄が訪れた。

 どこから発生したかわからないそれを、人々は「負の事象」と言い、恐れ、屈し、誰も抗おうとする者はいなかった。厳密に言うならば抗う事ができなかった。

 災厄は「嵐、地震、戦争、病」。これは必然か、それともナニカによるものなのか。いつしか人々は空を見上げ、神に祈る様になった。

 

 そんなある時、人々の声は神々に届いた。4体の神々は長年この世界を苦しめ続けてきた「負の事象」を止めたのだ。

 しかし、いくら神とは言えど大規模なそれを完全に止めることはできなかった。神々は全ての事象を止める為、フィーリス地方を4つのエリアに分断し、それぞれそのエリアを守る守護神として君臨する。

 これを「四神」といい、四神は長い歳月を掛け、フィーリスに平和と自由の鐘を鳴らしたのだった────。

 

 ──── 時は流れて現在、この世界では平和の中で生まれた文化、ポケモンバトルが盛んに行われる様になった。

 フィーリス地方には全てのポケモンが生息すると言われ、その生態もまた大きく変わった種もいるという。

 そして全てのポケモンが集う場所には、彼らと共に生きる人、ポケモントレーナーの存在もある。ポケモントレーナーたちは誰もが憧れ、最終目標であるチャンピオンを目指し旅に出る。

 この世界でとある1人の少年もまた、チャンピオンを目指して旅に出ようとするのであった────。

 

 

 *****

 

 

「うーん…… これだと普通過ぎるんだよなぁ……」

 

 鏡の前で黒髪に赤のメッシュが入った髪を弄りながら唸っている少年の名は「ジャケ」。黒いパーカーに白めのスキニーパンツを履いており、鏡の横にはハット帽とリュックが置いてある。今から何処かへ出掛けると言った雰囲気だ。

 

「ちょっとー! いつまで掛かってるの!?」

 

 部屋のドアが開いていたので、下から叫ぶママの声がよく聞こえる。

 

「今時の男の子にはオシャレも必要なんだよ!!」

 

 ジャケは髪の毛を弄り終わると、リュックを片手で持ち上げ、急足で階段をドタドタと下がる。

 そしてリビングに行くと、ママが既にテーブルに料理を並べて待っていた。テーブルの上に置かれた豪華な料理。朝ごはんとは思えない量だが、それもそのはずだ。

 今日、ジャケは旅立つのだ。

 

「時間が掛かったわりには、いつもと変わらないじゃない」

「変わってるし」

 

 ママにそう言われムッとなりながら、席に着いて料理を食べようとする。が、ジャケはそこに1匹足りないことに気づく。

 

「あ、そうだ。『キバゴー!!』ご飯だぞー!!」

「── バゴッ!」

 

 ジャケが呼ぶと、キバゴは別の部屋からドタドタと走ってきてジャケに思いっきり飛びついた。

 彼の相棒であるキバゴは、彼が幼い時からずっと一緒にいる。

 

「それじゃあいただきましょっか」

「いただきまーす!」

「バゴッ!」

 

 ── 2人と1匹はご飯を食べ終えたちょうどその時、扉を叩く音が聞こえた。

 ママは食器を片付けている最中であった為、ジャケは「俺が出るよ」と言い、急いで扉を開けると、そこにいたのはジャケと同じくらいの年齢の少女であった。

 

「おぉ『アユ』。もう来たのか」

「当たり前よ! だって今日はあの日なんだから!」

 

 彼女の名はアユ。ジャケと同じくこれから旅に出ようとする女の子だ。黒いキャスケットと青いカーディガンに白いタンクトップを着ており、下はガウチョパンツを履いている。

 性格上、非常に活発に動き回る為、服装と全く見合わないのが彼女の良いところであり、悪い所でもある。

 

「ジャケはポケモン貰うの?」

「あー… いや、俺はキバゴで十分。なんか貰っちゃうとずるいって言うかさ」

「別に気にしなくてもいいのに…… あ、そうだ! ポケモン貰ったら…!?」

「バトルでしょ。わかってるよ」

「よーし! じゃあさっそく研究所に集合ね! 私、先に行って待ってるからッ!!!」

 

「お邪魔しました!!」とドゴームもびっくりな大きさで挨拶し、研究所へと向かって行ってしまった。

 それからママは洗い物を途中でやめ、ジャケの元へとやってくる。

 

「行くんでしょ?」

「うん」

「怪我しない様にね?」

「うん」

「…… あなたならきっとなれるから。胸張っていきなさい!」

「うん! 行ってくる!」

 

 ジャケはそう言うと、キバゴと共にフィーリス地方へと駆け出していくのであった─────。

 

 

 *****

 

 

 ここはフィーリス地方で4つのエリアのうち、最も平和であり、最も自由である「ターコイズエリア」だ。

 ジャケとアユが住むここは首都の「ターコイズシティ」。ヨーロッパ風な家が並び、多種多様な店が並ぶ。中でもターコイズエリア限定のタコイズウマシというたこ焼きは絶品だ。

 そのターコイズシティの端の方にひっそりと立っているのが「ターコイズ研究所」である。

 

「さて、と」

 

 ターコイズ研究所の前に着いたジャケは、アユが来ていないか辺りを見渡す。が、彼女の姿は全く見えない。

 

「あ、あれ…?」

 

 いつもなら早々に着いている筈なのだが…。

 仕方がないと先に研究所に入ろうとすると、後ろからバクオングの様な声で話しかけてくる。

 

「待たせちゃった!!!?」

「うわぁぁぁあぁあぁぁぁぁ!!?」

 

 アユはいつもこうなのだ。本人はニコニコしているがジャケからしたらたまったものではない。

 一度深呼吸をして落ち着きを取り戻し、アユに研究所に入る様に言う。

 

「さっさと入るぞ…… 全くお前といると寿命が縮まりそうだ」

「えーーーーなんで?」

「なんでってお前な…… まぁいいか。そういえば研究所か… 久しぶりに来た』

「ジャケはいつぶり?」

「うーん、ママがキバゴを貰ってきた時くらいかな。俺の相棒は普通のキバゴと違ってたから気になってさ」

 

 本来のキバゴの牙は乳歯であり、折れたりしても何度も生え変わってより強靭になっていく。

 だが、ジャケのキバゴは牙が元より発達しており、その強度は同種と比べ物にならない。今ままでずっとこの牙を維持し続け、一度たりとも欠けたりなどしていないのだ。牙の色も形状も最終的な進化先であるオノノクスに近い。

 

「ほら、さっさと選ぼうぜ」

「あ、そうだった! それじゃあ行こっか!」

 

 研究所の中は色々な機械があり、研究員たちがその機械を操作したり、ガラス張りのケースの中なものをレポートの記入したりと忙しなく動いていた。

 その奥の方に研究員と話している人物。ポケモン博士こと「ライキョウ」がいた。博士は白衣を着ており、髭を蓄えているのですぐにわかる。

 アユは大きな声で博士を呼ぶ。

 

「ライキョウ博士ー!!!」

「─── おぉ、アユか。それにジャケも…… という事は2人ともポケモンを貰いに来たようじゃな?」

「俺は違うよ」

 

 ジャケがそう言ってモンスターボールを見せると、ライキョウはすぐに理解し、近くの研究員にポケモンを連れてくる様に伝える。

 しばらくすると、先ほどの研究員がモンスターボールを3つ持ってきて、ライキョウはそれを手に取ると、3つともヒョイっと投げる。

 そこから3匹フシギダネ・アシマリ・ヒコザルが出てきた。

 

「今日はこの子たちじゃが… 誰を選ぶ?」

 

 フィーリス地方は全てのポケモンが揃うが、最初に選べる3匹は確定ではなく、誰になるかわからない。

 今回、ライキョウの手元にいたのはこの3匹だったようだ。

 アユは暫く唸りながら頭を抱えていた。が、どうやら答えは出た様で、そのポケモンに指を差す。

 

「この子に決めた!!」

「ほう── みずタイプのアシマリか。あしかポケモンのアシマリの特徴はなんと言っても水のバルーンじゃな。このバルーンを使って──」

「今日からよろしくね!! アシマリ!!」

 

 アシマリは元気よく「アシャマ!」と返事をする。アユはこの子を抱き抱えて頬擦りをした後、ジャケを見て目で合図する。

 

「わかってるよね!?」

「あぁ、いいよ」

「それじゃあ早速バトルコートにレッツゴー!!… あ! あと博士ポケモンありがとぉぉぉぉぉ───」

 

 そう言ってアユは凄まじい速度で研究所から出ていった。

 ジャケはやれやれと思いながら彼女の後を着いていこうとすると、そこで、ライキョウに止められる。

 

「ジャケ。ちょっといいかの?」

「ん? なに博士?」

「キバゴの様子はどうじゃ?」

「どうって…… いや別に何も」

「… それならいいんじゃよ。引き止めて悪かったの。良き旅路になる事を祈っとるぞ」

「うん、ありがとう。それじゃあ」

 

 ライキョウは何か言いたそうにはしてたが、ジャケはそれについて問う事はせず、アユの向かったバトルコートへと移動する。




以上です。
次回の第2話はバトルパートになりますが、第2話投稿後に募集を行いたいと思います。
これからの「ポケットモンスターエレメント」をどうぞよろしくお願いします。

次回、第2話「初めてのバトル」

次回もよろしくお願いします!!


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第2話「初めてのバトル」

皆さんご無沙汰しております。今回バトります。
それではどうぞご覧ください。


 ジャケとアユはターコイズ研究所の隣にあるバトルコートへとやってきた。

 バトルコート内は一般的な真砂土であり、その周りを白い線で囲っており、真ん中にはモンスターボールの形が引かれている。

 2人はそれぞれ向かい合う様にして離れ、白い線で囲われた立ち位置へと移動する。

 

「さてさて、審判が居ないけどしょうがない!! 私が決めるね!!」

「いいよ」

「じゃあ使用ポケモンは1体! どちらかのポケモンが戦闘不能になったら負け!! おけ!!?」

「おけだよ」

「よーし行くぞー!!」

 

 ポケモントレーナーのアユが勝負をしかけてきた!▼

 ポケモントレーナーのアユはアシマリをくりだした!▼

 

「アシャマ!」

「頑張ろうねアシマリ!」

 

 アシマリとアイコンタクトをするアユに対し、ジャケもモンスターボールをグッと握り、相棒の名を大きな声で呼びながらボールを投げる。

 

「行くぞ!! キバゴッ!!」

「キバァッ!!」

 

 互いのポケモンが場に出揃い、少しピリついた空気を肌で感じながら、バトルの始まりという事で先に指示を出したのはアユだった。

 

「じゃあ早速行くよ! アシマリ、みずでっぽう!」

「アシー…… マッ!!」

 

 アシマリの勢いよく放ったみずでっぽうがキバゴを捉える。

 直撃を受けたキバゴは後方にゴロゴロと転がってしまい、ジャケの足元で静止する。

 

「だ、大丈夫かキバゴ!?」

「キッ…… バァッ!!」

「大丈夫そうだな… よし、反撃だ!! かみつく攻撃!!」

「キバァッ!!」

 

 そう指示すると、キバゴは短い足を一生懸命動かして、アシマリの方へと近づき、その鼻先に噛みついた。

 鼻というのは人間でも急所と言われてる部位。当然アシマリは悲鳴を上げる。

 

「アシマァァァァァァァァッ!!!?」

「アシマリィィィィィ!!?」

 

 悲鳴を上げるアシマリにアユは焦りを見せ、次の指示が飛んでしまっているようだ。

 ジャケはこれを好機と見て、次の指示をキバゴに出す。

 

「キバゴ!! そのままアシマリを地面に叩きつけろ!!」

 

 キバゴはその指示通りアシマリを顎の力で持ち上げると、そのまま地面へと思いっきり叩きつけた。

 

「今だ!! ひっかく攻撃!!」

「キバッ!!」

 

 アシマリの身体にキバゴの鋭利な爪が食い込む。

 が、その瞬間、アユはアシマリに向けて指示を出す。

 

「アシマリはたく!!」

「アシマッ!!」

「かーらーのー…… みずでっぽう!!」

 

 攻撃を受けて怯んだアシマリだが、アユによる指示ですぐさまキバゴの頬をはたき、怯んだ隙をついてみずでっぽうを炸裂させる。

 

「キバゴッ!!」

 

 近距離でみずでっぽうを食らった為、吹き飛ばされたキバゴだったが、フラフラとしながらも立ち上がる。

 ジャケはキバゴを心配そうに見るが、大丈夫だという風に爪を立てる。

 

「ふぅ…… やるな、アユ」

「まぁね!! これでも私は四天王の妹だから!!」

 

 アユはジャケの幼馴染である。彼女の家は代々からの名家であり、父と母は元ジムリーダーだ。四天王にも推薦されたことがあり、その祖父母もそのまた前もと、彼女の家の血筋を聞けば誰しもが驚き、誰しもがそれを知っている事だろう。

 そしてアユには姉がおり、その姉は現在「四天王」の地位に着き、歴代最強と言われ、今のところ誰も彼女を突破したものはいないという。

 

「相手にとって不足なしって事だな」

「お話はおしまい!! 次で決めちゃうから!!」

 

 次の指示を出そうとするジャケとアユだったが、その時、2人の名前を呼ぶ声が聞こえ一旦戦闘体制を解く。

 バトルコートにやってきたのは博士のライキョウだった。ライキョウは2人を手招きして呼ぶ。

 

「なんですか? 博士」

「ジャケ。アユ。2人にこれを渡すのを忘れてた」

「これって……!」

 

 2人に渡されたのは真ん中にコンパスの針の様な形をした模様と、その両隣に【】が付いたバングルだった。

 ライキョウはそれを腕にはめる様に言い、このバングルについて説明を始める。

 

「これは『アイビス財団』が発明したものでの。お前たちも知っての通りフィーリス地方のバトルにおいての必須と言っていいアイテムじゃ。その名も───」

「『Vバングル!!』」

「うん…… そうとも! Vバングルを使えば、ポケモンたちの得意とする部位が強化され、あらゆる攻撃が強力になるというわけじゃ! その名も──」

「『Vバースト!!』」

「あ…… そうじゃよ!! 偉い!!」

「じゃあ早速……」

 

 それから2人はバトルコートに戻ると、早速Vバングルを使用する。

 

「行くぞキバゴッ!!」

「行くよアシマリッ!!」

 

 Vバングルを掲げてから、そのポケモンが入っていたモンスターボールを真ん中のスイッチ部分に押し当てる。【】になっていた部分が開き、横にしたVの形に変形する。

 Xとも見える形に変化したそれを互いのポケモンに向けて突き出すと、2体の身体が光出し、キバゴは口元と牙に藍色のオーラを纏い、それが寄せ集まってクリスタルの様な色艶に変わった装甲を纏う。アシマリも同様には鼻全体に青色の装甲が出現する。

 

「す、すげぇ……」

「凄いかっこいい!!!!!」

「あぁ、これなら…!!」

「最高の一撃喰らわせちゃうよ!!」

 

 ジャケとアユはニヤリと笑う。

 キバゴとアシマリの身体からオーラが噴出する。

 

「キバゴ!!」

「アシマリ!!」

「きりさく!!」「みずでっぽう!!」

 

 その指示を受けたキバゴは目をぎらつかせて走り出す。アシマリは鼻先に水のエネルギーを集中させ、向かってくるキバゴに勢いよく発射した。

 まるでハイドロポンプかと思うほど、巨大なみずでっぽうはまっすぐ飛んでキバゴを捉えようとした。

 

「そこだ!! 飛べ!!」

「バゴッ!!」

「牙を使え!! 身体を回転させろ!!」

 

 キバゴはその通りにジャンプをし、水の勢いに任せて身体を大きく回転させる。

 すると川に石を投げて遊ぶ水切りの様に、みずでっぽうの上を跳ねながらアシマリの方へと飛んでいく。

 

「え、えぇぇぇぇぇぇ!!? そんなアリ!!?」

「行けぇ!! キバゴォォォォ!!」

 

 そしてキバゴのより鋭くなった牙がアシマリを一刀両断する。

 アシマリは目をグルグルさせ、地面へと倒れた。

 

 アユとの勝負に勝った▼

「アシマリィィィィィィィィィィいやぁァァァァァァァァァァ!!!」

 ジャケは賞金の代わりに勝利を手に入れた▼

 

 

 *****

 

 

「ジャケ本当に初めてなの!!?」

「初めてだったよ… ホント偶々思いついたんだ」

「嘘だァァァァァァァァ!!」

 

 勝負を終えたアユは負けた悔しさにより、いつも以上にうるさくなっていた。

 ジャケはそんな彼女を宥めるのに精一杯だった。

 

「2人ともいいバトルじゃったよ」

 

 2人の勝負を最後まで見ていたライキョウは拍手をしながら近づいてきた。

 

「博士これ…」

「Vバングルじゃろ? もちろん2人の物じゃよ!」

「やったぜ! ありがとう博士!」

「ありがとぉぉぉぉ!!」

 

 ジャケとアユは互いに礼を言うと、博士をニコッと笑った後、懐から10個ボールを取り出すと、それぞれに5個ずつ渡す。

 

「フィーリス地方には全てのポケモンが集う。そしてそこで進化を遂げ、新たな姿となったポケモンもいる。お前たち2人がこれから何を見て、何を感じるのか。世界は不思議なことでいっぱいじゃ。自分たちのやりたいことを全力でやるんじゃよ」

 

 ライキョウはそう言うと2人に手を振って研究所へと戻っていった。

 そしてアユは興奮しながらジャケに言う。

 

「ジャケ! 私たちの夢はわかってるよね!?」

「『チャンピオンになる』…… だろ?

「絶対ぜーったい!! 最後に会おうね!! それから勝負してぜーーーーーったいに勝つから!!」

「うん、もちろん。その時はどっちが勝っても恨みっこなしだ!!」

「うん!!」

 

 互いに拳をコツンと合わせると、アユは走り出し、もう一度振り返って全身を使って別れの挨拶をすると、ターコイズシティの外へと出ていった。

 

「… さて、俺も行くか!!」

 

 そう言って気合いを入れるジャケもターコイズシティの外へと歩き出した───。




以上です。今作の団はこちら。
アイビス財団……フィーリス地方はバトルが盛んな地方なので、それを更に盛り上げる為に設立された組織。今作の新要素である「Vバースト」を使用する為の「Vバングル」を開発した。ポケモンリーグと協力関係。

あんまり長過ぎても私の気力が持つかわからないので、登場人物やら世界観やらの説明は数話使うつもりで頑張ります。(まだまだ書き切れてない…)

という事で今回から募集を始めようと思います。2話だけですので世界観わからんよという方も多い事かと思いますが、追加ある場合はもちろん受け付けます。補足なども細かく書きますので不明な点は質問くださいませ。

では次回、第3話「仲間をゲット」

次回もよろしくお願いします!!


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第3話「仲間をゲット」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


 ジャケはスマホロトムでマップを開き、現在地を確認していた。

 当然のことながら、ターコイズシティを出た所なので入り口付近なのはわかってはいるのだが、スマホロトムに表示されるマップには、ついでにポケモンの情報が載っている。

 ターコイズエリアには「ひこう・ノーマル・みず・ゴースト・こおりタイプ」が主に生息しており、ターコイズ出身のジャケが目星をつけているのは「ポッポ」だ。

 

「最初はこいつって決めてたんだ…」

 

 ジャケがポッポを狙う理由は、彼の住むターコイズエリアは四神の1匹、風の神「フォーゲイル」を祀っている為である。

 神もまたひこうタイプであり、このエリアはひこうタイプが多く生息することから、ジャケは最初の仲間をポッポだと決めていたのだ。

 

「お、もう飛んでるな」

 

 どこまでも広がる野原。空には鳥ポケモン達が羽ばたき、近くにある川には水棲ポケモン達が優雅に泳いでいる。奥の方には雪山があり、ターコイズエリアで最も目を引く所である。

 ジャケは早速鳥ポケモンの群れを発見し、彼らの向かう場所へと走り出す。

 さぁ、どんな出会いが待ってるだろう───。

 

 

 *****

 

 

 それからジャケは鳥ポケモンが多く集う場所へと辿り着く。

 そこは風が気持ちよく吹いており、野原の草を優しく撫でている。

 

「ポッポが集まってるな。誰をゲットしてやろうか─── な?」

 

 ジャケは目を疑った。ポッポの群れがまるで山のように積み重なっているのだ。

 その光景は異常も異常。生態系からというか、そもそも温厚で人が近づけば逃げるようなポッポが、こんな寄り固まっている状態では身動きが取れない。

 

「な、な、なんだ!?」

 

 そのポッポの群れは動き始めた。

 正確にはポッポ達はその場から移動していないのだが、その中心にいる何かが動いているようだ。

 

「やられる前にやるしかない! 行くぞキバゴッ!」

 

 と、言ってキバゴをモンスターボールから出そうとすると、鳥の群れは一気に飛び立った。

 そして1匹だけ残り、ジャケを威嚇し始めた。その1匹は誰かを守ろうとしているようだ。

 

「警戒しないで」

「え?」

 

 突如現れた少女がそういうとポッポは警戒を解く。

 先ほどのポッポの群れの中にいたのだろう。羽根が身体中に付いている。

 その少女は淡い水色の髪で、一瞬男の子と見間違うほどの顔面600族の美形であった。ジャケより少し上の年齢だろうか。

 

「君は一体……」

「『リタ』」

「リタ… あ、俺はジャケ! さっきのポッポの群れは君が集めたの?」

 

 それにリタは首を横に振るう。

 

「ここに来たら集まってきた」

「そうなんだ。そこにいるのはリタのポケモン?」

「違う。偶々残った。あなたを警戒してる」

 

 そのポッポは他の種と見た目が違っていた。頭の毛は縦に大きく伸び、両翼の表面に模様がついている。合わせると十の形になるようだ。

 ジャケはリタにそのポッポを捕まえたい事を告げる。

 

「リタのポケモンじゃないなら捕まえていいよな!」

「構わない」

 

 野生のポッポ(フィーリスのすがた)があらわれた!▼

 

「ポッ!」

「行くぞキバゴッ!!」

 

 ジャケはモンスターボールを投げてキバゴを繰り出した。

 

「キバゴ! きりさく攻撃だッ!!」

「キバッ!!」

 

 キバゴの鋭利な牙がポッポを切り裂いた。

 それにポッポは怯むも翼をはためかせて空へと舞い上がる。

 

「クルッポ!」

 

 上空へと舞ったポッポは翼を更にはためかせ強風を引き起こす。

 

「『かぜおこし』か! 耐えろキバゴッ!」

「キィ…… バァァ…!!」

 

 強風に耐えるキバゴであったが、足が地面からふわりと持ち上がり、後方へ大きく吹き飛ばされてしまう。

 そのまま続けてポッポは「でんこうせっか」を繰り出した。

 

「避けろ!!」

 

 キバゴは身をくるりと回転させて体勢を立て直し、指示通りにポッポの攻撃を躱す。

 しかし、ポッポは空中で旋回し、もう一度でんこうせっかでキバゴの背中を捉える。

 

「キバゴッ!?」

「……」

 

 リタはこの戦い無理だと判断した。

 見たところキバゴには空中への対処技がない。しかもこのポッポは戦闘慣れをしている。温厚なはずのポッポの中、たった1匹だけやたら好戦的だったのはそれだろう。

 

「それならキバゴ!! 降りてきたタイミングに合わせて『きりさく』だッ!!」

「え?」

 

 いや無理だろう。

 思った通りキバゴはでんこうせっかを何度も何度もその身に受けている。

 

「ちょっと───」

 

 流石のリタも口を挟もうとしたその時だった。

 

「今だッ!!」

「キバッ!!」

 

 ポッポがキバゴに当たる直前、鋭利な牙がポッポの顔面を捉えた。

 タイミング良く?ではない。これは偶々当たっただけに過ぎない。

 

「かみついて地面に叩きつけろ!! それからひっかく攻撃だッ!!」

 

 急停止したポッポをすかさずキバゴは噛みつき、そのまま地面に叩きつけ、腹部に向かって爪を突き立てた。

 

「クック〜…」

 

 ポッポは目をクルクルとさせて地面に倒れる。

 そこはすかさずジャケはモンスターボールを投げ、ボールはポッポに当たると収納し地面に落ちる。

 

「………」

 

 1回……2回……と揺れるモンスターボールに息を呑む。

 そしてついに3回目に大きく揺れるとモンスターボールが静かになる───。

 

 やったー!ポッポを捕まえた!▼

 

「よっっっっっしゃァァァァァァァァ!!」

「バゴバゴッ!!」

 

 リタはその光景に唖然としていた。なんて無茶苦茶な戦い方だろうかと。

 だが、それでも勝ってしまった。これは事実だ。

 

「おめでとう」

「…ん? あぁ、ありがとう」

「ジャケ。バトルは初めて?」

「いや、2回目かな」

「2回目…… いいと思う。センス」

「ありがとう。なんか照れるな〜…… あ、そうだ。俺、この後もう少し周ったらジムに行くんだけど、リタはジムとか行くの?」

「いや私は…… でも」

「ん?」

「空を飛びたい。ポケモンと」

「それはリタの夢?」

 

 そう聞くと彼女は首を縦に振る。

 

「いいと思う!! 俺は応援するよ!!」

「ありがとう」

「それじゃあ俺は行くから! また会おうな!」

 

 そう言って立ち去ろうとしたジャケであったが「あっ」と言って、彼女の元へと戻ってきた。

 

「なに?」

「連絡先交換しようよ。ここで出会ったのも何かの縁だしさ!」

「…… いいよ」

「ありがとう! それじゃあ───」

 

 2人はスマホロトムで連絡先を交換する。

 

「よし… っと。じゃあまた!」

「ジム、頑張って」

「うん! リタも頑張って!」

 

 ジャケは手を振って別れを告げると、ターコイズエリアの奥へと進んでいった。

 リタが彼を見届けた後、ボールからタツベイが飛び出てきた。

 

「タツベイ?」

「タッベ!」

「そう…… 次、会う時はやろ」

「ベイッ!」

 

 そう言ってリタもターコイズエリアの野原を歩き始める────。

 

 

 *****

 

 

「そういえばジムって最低3匹いないと受け付けてもらえないんだよなぁ…」

「バゴ?」

 

 フィーリス地方のポケモンジムは他地方と同じで8つ存在し、それらを突破した証として貰えるジムバッジを集めると、最終目標であるチャンピオンリーグに挑戦することができる。

 そしてフィーリスではバトルが盛んである為か、ジム1つ1つが巨大なスタジアムとなっており、ガラル地方と同じくジム戦を始める時はスタジアムに多くの観客が集う。

 ここからが違うのだが、ジムを受けるには手持ちが最低でも3匹必要なのだ。

 これはジムリーダーも同じであり、観客達を楽しませる為、少しでも戦いを長く続ける為の配慮らしい。

 

「うーん…… どうしよう」

 

 そんなジャケは3匹目のポケモンを決めてない。

 最初に仲間にする1匹目は決めていたのだが、2匹目はそこら辺で捕まえればいいかと単純な考えで外に出てきた。

 が、この様な大自然と様々なポケモン達を見てしまうと、()()()()と適当に決めるのも心残りしそうだ。

 

「どうするかキバゴ?」

「キバァ…」

 

 肩に乗っているキバゴにそう言うが、「キバ」か「バゴ」しか言わないのでどうにもならない。

 そんな彼らは一先ず休憩しようと、近くにあった平くて座り心地良さそうな岩に腰掛ける。

 その時、彼らの前にヌッと怪しい人影が現れる。

 

「そのキバゴ。少し触らせてもらってもいいだろうか?」

「えっ」

 

 そこには目をぎらつかせた男が立っていた。

 

「あ、あのなんですか…」

「いいから見せるんだ!!」

 

 その圧に負けたジャケは仕方なくキバゴを見せることにした───。




今回の登場キャラ
大ちゃんネオさんより「リタ」でした!
まだまだ世界観説明やらなんやら終わってないので皆さんちょい役となってしまう恐れがありますが、安定してきたらバリバリ出していきますのでご了承くださいませ。それとお待ちくださいませ……。

では次回、第4話「ナゾの個体」

次回もよろしくお願いします!!


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第4話「ナゾの個体」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


 その男はどうやらポケモン博士との事だった。フィーリス地方のライキョウ博士とは面識がない様だ。

 眼鏡を掛け、目に正気がない為、なんとも不気味な見た目である。白衣はボロボロで無駄に筋肉質なのも不気味ポイントが高い。

 一先ずジャケはキバゴを見せる前に自己紹介をする。

 

「お、俺、ジャケって言います。こいつは相棒のキバゴです」

「キバッ!」

「ん? あぁ、そうだ。名乗っていなかったな。私は『シュロ』。ホウエン地方にてポケモン博士をやっていた」

「そうなんですか…」

「で、だ」

「はい」

「触ってみてもいいかな?」

「はい」

 

 シュロという人物の凄まじい圧に負け、恐る恐るキバゴを差し出す。キバゴも抵抗していたが、すぐにおとなしくなった。圧に負けたのか、それとも諦めたのか定かではないが。

 それからシュロはキバゴを撫で回す様に見たり、触ったりすると、満足したのかジャケにソッと返し、腕を組んで考え事を始めた。

 

「通常のキバゴとは異なる姿…… リージョンフォーム… いや、違う。リージョンフォームは見た目の変化こそ激しくはないが、明確な違いは必ずある。しかしこのキバゴは牙のみが発達している… そもそも─────」

「あ、あの〜…」

「──── 何かね。私は今考察をしているのだが?」

「いやその… 俺のキバゴ他とは違いますよね」

「違うな。貴様のキバゴの牙。通常種よりも遥かに高い硬度を誇っている。少し触れただけで、こちらの手が切れてしまいそうな鋭さ。まるでオノノクス…… いや、私もドラゴンタイプ使いでキバゴについてよく知っているが、これほど硬い牙を有したキバゴは今まで会ったことすらないし、その前例すら知らない」

「ライキョウ博士も言ってました。俺のキバゴは特別なんだって……」

「……… ふむ、良ければその経緯を話してくれないかね? 君がどうやってこの個体と出会ったのか」

「あ、はい。隠すほどのものじゃないですので… えっとあれは─────」

 

 

 *****

 

 

 あれは数年前、俺が物心ついた頃、ママがこのキバゴを連れてきた。

 ママは元アイビス財団の研究員で、同じ研究員の仲間から貰ってきたらしい。俺が寂しくない様にって。

 家族は俺とママの2人だけだったから気を利かせてくれたんだろう。

 その時からもうキバゴの牙はこんな形だった。まだ小さかった俺はそんな細かい事を気にすることなかった。

 会った瞬間から運命を感じたよ。すぐに意気投合したしね。それからずっと一緒に遊んでた。

 そこから何ヶ月か経った頃、俺は純粋にママにこう聞いた。

 

「ママ、パパは帰って来ないの?」

 

 パパもママと一緒に研究員の仕事をしていた。出会いも当然そこだった。

 ママはその言葉に言葉を詰まらせたけど、笑顔で俺にこう返した。

 

「パパはね。今ものすっごく難しい研究をしてるの。だから帰るまで少し遅れちゃう」

「うん」

「………… そのキバゴはパパからの贈り物よ。ジャケが将来かっこいいポケモントレーナーになれる様にって渡してくれたのよ」

「僕、ポケモントレーナーになる!」

「そうよね。あなたの将来の夢だものね」

「それからチャンピオンになるんだ!」

「そう…… ね」

「ママ?」

 

 ママの目から涙が溢れてた。俺はその時、なんでママが泣いているのか、なんでパパがずっと帰ってこないのか、全く何もわかってなかった。

 それから数年が経ち、10歳くらいになった時、ママにもう一度聞いたんだ。

 

「パパが帰ってこない本当の理由を教えて」

「……… えぇ、いいわ」

 

 パパは死んでた。

 アイビス財団の中にある研究室で、キバゴについて調べてた時、突然の爆発に巻き込まれたらしい。

 あれから色々あったけど、特にアイビス財団の代表が俺に向けて、地面に頭を付けて謝っていたのは印象的だった。

 不思議と涙は出なかったけど、心の中に表現しようもない嫌な気持ちが膨らんできたのは確かだった────。

 

 

 *****

 

 

「─── とまぁこんな感じですね。すみません。俺の身の上話までしちゃって……」

「ふむ…… その話が本当なら貴様はあの『サモン』の子供になるのか」

「はい、そうですね」

「… ならば、その爆発事件も知っている。あれは確かVバーストの実験最中に起きたものらしいな」

 

 Vバーストは遥か昔から存在する技術ではなく、意外な事につい最近作られたばかりなのである。

 数年前にフィーリス地方の各地で「Vエナジー」というVバーストに必要不可欠な源がアイビス財団の職員によって発見され、それを研究員たちの手によってポケモンに用いられる様に調整され、作られたのが「Vバングル」なのである。

 Vエナジーはポケモンの本能的な力を活性化させる効果があるらしく、Vバーストは謂わば拘束具の様なもので、内側から溢れ出る力を抑えるものだという。

 

「なるほど。当初はまだ不安定で不明な点が多いVバースト。貴様の父親はどうやら、そのキバゴとVバーストの関係を調べたかった様だな」

「はい、ライキョウ博士もそう言ってました。Vバーストによる影響もあるんじゃないかって……」

「本来ならばここで貴様のキバゴの力を見てやりたかった所だが…… この状態では碌に戦えないだろう。次回また会う時に実力を見せるといい」

「あ、はい…」

「貴様たちにはこれ以上にないほどの興味を抱いた! すぐに纏めなければ────」

 

 シュロはそうしてブツブツいいながらその場を立ち去っていった。

 ジャケとキバゴは顔を見合わせる。

 

「なんだったんだろうな…… キバゴ?」

「キバァ?」

 

 それから暫くすると、スマホロトムから着信音が鳴り始める。

 ジャケはポケットから出てきたスマホロトムの画面を見ると、電話の相手がアユだとわかり、その電話に出る。

 電話に出るとすぐにバクオングが現れた。

 

「ジャケ元気ぃぃぃぃぃぃ!!!!!?」

「あぁ、元気だよ。俺の鼓膜以外はな」

「そっちポケモン何匹捕まえた!?」

「俺? 俺は…… 2匹」

「私もう3匹!!! 私の勝ちだね!!!」

「お、という事はもうジムチャレンジできるのか」

「そうだよ! でももう少しターコイズエリアにいるつもりだけど、ジャケの方はこれからどうするの?」

「俺は3匹目捕まえに行く前に一旦シティに戻ろうかな。なんか今日は…… 気分が」

「え? もう気分悪くなっちゃった? 船酔い?」

「どこに船があるんだよ。まぁいいや。アユの方は順調そうでよかったよ」

「うん! それじゃあジム1個目突破目指してお互い頑張ろうね!」

「おう! それじゃ」

「バイバーイ!!────」

 

 電話が切れた。彼女は相変わらずの様だ。

 

 ─── それからジャケはターコイズシティに戻った。

 キバゴと先ほど捕まえたポッポの傷を回復させる為と、気持ちを一旦リセットする為だ。

 ポケモンセンターは歩みを進めるジャケだったが、どこからか笑い声が聞こえふと横を見ると、シティにある公園内で何かがジャケくらいの子供達に虐められているのを見つける。

 ジャケは急いで彼らの元へ向かい、その何かを庇う様に前に立つ。

 

「なんだお前ッ!!」

 

 いじめっ子の1人がジャケに対して怒号を飛ばす。

 

「お前たちこんな事をしていいと思ってるのか!?」

 

 ジャケは横目で後ろを見ると、その何かはポケモンであり、たいまつポケモンのメラルバであった。が、通常種とは異なり、5本の角の部分は氷が生え、毛が全体的にもっさりとしている。

 そのメラルバは震えており、叩かれたりした様だが毛のおかげかあまりダメージはない様子だった。

 しかし、暴力は何があっても許すことはできない。

 

「この子から離れろ!」

「あ? なんだとやるのかぁ!!?」

 

 いじめっ子たちがズイズイと近づいてくると、その後ろから彼らを静止する声が聞こえた。

 その後ろから同じ10代とは思えないほど身体が大きい子供が現れた。

 

「俺はこいつら仕切ってる通称デリバリー『ワル』だ。お前、舐めてんじゃねーぞ」

「お前たちが虐めるのが悪いんだろ! 舐めるもこうもない!」

「あーあ、お前さぁ…… どうやら泣かされたいらしいな」

 

 そう言ってワルはモンスターボールを投げて「デルビル」を繰り出す。

 悪が合図すると、その側近のやつなのかマントを付けており、同じくボールを投げて「ポチエナ」を繰り出した。

 

「さぁダブルバトルといこうやぁ…」

「ボッコボコにしてやるぜ!」

 

 ジャケは呆れてため息を吐く。

 そして後ろを振り向いてメラルバに言う。

 

「大丈夫だ! 俺が守るから!」

 

 そう言ってジャケはモンスターボールを2個取り出して前方へ投げる。

 

「初めてのダブルバトルだけど…… メラルバを守るぞ! キバゴ! ポッポ!」

 

 ターコイズシティの公園内。1匹のポケモンを守る為の戦いが始まる────。




以上です。
雪兎の手さんの「シュロ」でした!また次回も誰か登場するのでしょうか?

次回、第5話「守る為のダブルバトル」

次回もよろしくお願いします!!


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第5話「守る為のダブルバトル」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


 不良のワルたちが勝負をしかけてきた!▼

 不良のワルたちはデルビルとポチエナをくりだした!▼

 

「行くぞ、ソッキン」

「わかりましたぜワル!!」

 

 ジャケはキバゴとポッポをくりだした!▼

 

「頼むぞ、キバゴ!! ポッポ!!」

「………」

「ポッポ…?」

 

 キバゴは後ろを振り向いてジャケに合図を送る。自分はいつでも行けるぞと。

 一方のポッポはジャケの顔すら見ず、今にも飛び立ちそうな雰囲気だ。

 

「と、とりあえず! キバゴ、にらみつける! ポッポはでんこうせっか!」

「キバァァァ……」

「………」

 

 キバゴが睨みつけると相手のポケモンはビクリと身体を震わせる。

 その隙にポッポが飛び掛かればいいのだが、当の本人は全く動こうとはしないし、それどころか翼を広げて上空を旋回し始めた。

 

「お、おいポッポ!!」

 

 主人であるジャケが呼んでも反応する事はなく、指示を無視して翼を強くはためかせ「かぜおこし」を行う。

 相手ポケモンは吹き飛ばされる。と、同時にキバゴも吹き飛ばされた。

 

「キバゴォ!?」

 

 ジャケがまた「ポッポ!!」と呼ぶが、今度は顔すら合わせてくれない。

 そうしてポッポに気を取られていると、不良のワルたちがデルビルに指示を出す。

 

「デルビル! ひのこ!」

「ポチエナ! かみつく!」

 

 デルビルは口からひのこを吐くと、キバゴに直撃し身体が燃え上がる。

 身体を地面に擦りつけて火を消そうとするキバゴだが、火が消えたと同時にポチエナに噛みつかれる。

 

「キバァッ…!!」

「まずい!! キバゴ、振り解け!!」

 

 そしてキバゴが懸命に振り解こうとするも、ポチエナの強力な顎で噛みつかれて全く外れない。

 ポッポに指示を仰ぎたいところだが、彼は下を見ながら飛び続けている。

 

「くそっ…!!」

「デルビル! もう一度ひのこぉ!!」

 

 小さい火ながらもレベルの差があるからか、くらったキバゴは悲鳴を上げて地面を転がる。

 ひのこが飛んでくる直前に、ポチエナはタイミングよく離れるとソッキンから「どろかけ!」という指示を受け、地面を掘り返してぬかるんだ土をキバゴに浴びせる。

 前が見えないキバゴ。燃える身体。

 

「どうする…!!」

 

 ポッポさえ動いてくれればいいのだが、ジャケの指示を聞いてはくれない。

 キバゴに指示を出そうにも、2体を相手にしている状況では指示通りの動きはできない。

 

「あれあれ? もう終わりか?」

「…っ!」

「口だけの能無しがぁ…… 調子こいてんじゃねーよ!! デルビル!! やれぇ!!」

 

 ワルがデルビルに指示を出そうとした瞬間であった。

 デルビルが凄まじい威力の水流に飲み込まれたかと思うと、デルビルは目を回して倒れていた。

 

「な、なんだ…!?」

「あーあ… 全く面倒臭いことしやがって」

「誰だぁ…… お前?」

「俺は『ヨーク』。ポケモンレンジャーをやってる」

「ポケモンレンジャー…?」

「とりあえず状況は把握した。そこの少年トレーナーとメラルバを救助すればいいって事だな」

 

 ヨークと名乗るその男と、先ほどハイドロポンプを繰り出したエンペルトがジャケの前に立つ。

 ここは俺に任せろと言った感じだが、ジャケはその隣に立った。

 

「ん?」

「俺もやります」

「君…… いや、やめておけ。君のレベルじゃ勝つ事は困難だ。そもそも俺が見ている限り、君はあのポッポを操れていない。そんな君が彼らに勝てるわけない」

 

 わかっている。

 だけど……。

 

「でも… でも、俺はメラルバに助けるって言いました。約束は─── 守りたい…!!」

「……… 全く… ダブルバトルだよな。とりあえずポッポしまえ。俺が援護してやるから全力で戦いな!!」

「…っ! はい!!」

 

 ジャケは頷き、モンスターボールを天に掲げてポッポを戻す。

 それからキバゴを呼ぶと、キバゴはブルブルと身体を震わせて再び戦闘態勢に入った。

 そしてワルは倒れたデルビルをモンスターボールに戻すと、次のボールを取り出して前方に勢いよく投げる。

 

 不良のワルはグレッグルをくりだした!▼

 

「グゥ…」

「グレッグル!! どくばり!!」

「ポチエナ!! かみつく!!」

 

 グレッグルは右手に毒のエネルギーを溜めて走ってきた。ポチエナも口を大きく開けて飛びかかる。

 

「君はグレッグルを倒せ。俺はポチエナを抑える─── エンペルト、アクアジェットで回り込め!!」

「エンペェ!!」

 

 エンペルトは身体中に水を纏い、ジェット機のように凄まじいスピードでポチエナの背後を取る。

 

「ガウッ!?」

「エンペッ!」

 

 続いてヨークはエンペルトに「腕で地面に叩きつける」という指示を出す。

 言ってしまえばただのはたくも同然なのだが、その威力はキバゴのきりさくやデルビルのひのこ何かとは比べ物にならない。

 ポチエナはピクピクとして動かない。

 

「ポチエナァァァ!!?」

 

 ソッキンは天に向かって叫ぶ。

 そんなソッキンにワルは「煩い」と一言だけ言い、グレッグルの方を見ると、キバゴの牙がオーラを纏っている事に気がついた。

 少し気を取られた隙にジャケはキバゴにVバーストを発動させていた。

 

「キバゴッ!!」

「キバァァァァッ!!」

「きりさくッ!!!」

 

 強化された牙による重い一撃がどくばりを跳ね除けてグレッグルに直撃する。

 グレッグルは怯む。

 その隙をついてキバゴはもう一方の刃で切り上げた。

 

「グレッグゥゥ…!!」

「バゴッ!!」

 

 すると、キバゴは指示を出す前に藍色のオーラを纏った爪でグレッグルを追撃する。

 

「こ、これは…!?」

「あれは『ドラゴンクロー』だ。どうやら君のキバゴ、この戦いの中で少しだけだが成長したようだ」

「キバゴ…… よしっ!! ポチエナと纏めてドラゴンクローだッ!!」

 

 キバゴはフラフラなグレッグルをVバーストした牙で切り飛ばし、ポチエナの隣まで追い込むと、ドラゴンの力を纏った爪で纏めて抉るように切り裂いた。

 

「ガフゥ…!!!」

「グレッ…!!!

 

 その強烈な一撃を喰らった2体は、目を回して地面に倒れてしまい動かなくなった。

 

 ワルたちとの勝負に勝った!▼

「うっそだろおい…… 笑っちまうぜ……」

「ひぃ!!」

 ジャケは賞金の代わりに勝利を手に入れた!▼

 

 

 *****

 

 

「─── それじゃあこの子たちは連れて行くからね。協力ありがとう!」

 

 彼は「ロドン」。このターコイズシティで警察をやっている人だ。

 彼らの様な人がいるからポケモンバトルを安全に行えるし、この街は平和であり続けられるのだ。

 

「全く迷惑しか掛けない悪い奴らだ」

「離しやがれ…… いいのか? 俺たちのバックには『バジル団』が付いてるんだぜ?」

「バジル団か…… 全く君たちみたいな連中がいるから僕たちの仕事が増えるんだよ。その話、しっかり署で聞かせてもらうから」

 

 そう言って彼らは車に乗せられて行った────。

 それを見届けたジャケはメラルバに近づき、傷がないかと全身をくまなく見る。

 幸いこの毛量のお陰で軽傷で済んだ様だ。だが、傷があることに変わりないのでポケモンセンターに連れて行かなければならない。

 

「メラルバの様子はどうだ?」

 

 ヨークは尋ねる。

 

「大丈夫そうです。でも、キバゴもボロボロだから結局ポケモンセンター行きですけどね」

「そうか…… それじゃあ俺はこの辺で」

「待って!!」

 

 ジャケは咄嗟に彼を引き留めた。

 

「ん? どうした?」

「ありがとうございました。お陰でメラルバを救えました」

「……… 人命救助にポケモン救助。それをやるのがポケモンレンジャーの仕事だ。当たり前のことをしたまでだ。それにメラルバを救ったのは君自身。俺はそれの手助けをしたまで」

「だからこそです。俺はまだ全然弱いからキバゴをあんなに傷つけてしまった…… ポッポにも指示を出せない。あなたがいなかったら俺は誰1人も守れなかった」

「…… はぁ、そうか。なら、次に会う時はポケモン達をもっと強くしておくんだな。その時、君の強さを見せてほしい。俺は変わったんだって所を…… 期待している」

「…… はいっ!!」

 

 そうしてヨークは去り際に少し手を振って去って行った。

 それからジャケはメラルバを力一杯に持ち上げてポケモンセンターへと運ぶ。

 

 ─── ポケモンセンターの中は広く、ポケモン達が回復している間に待機してられる様に何個か横長の椅子が設置され、両脇にフレンドリーショップや休憩所が設けられている。

 ジャケはキバゴ達を預け、椅子に座って1時間くらい待っていると、ジョーイさんが出てきてジャケの名を呼ぶ。

 

「ジャケさーん! ポケモン達が元気になりましたよー!」

「はーい!」

 

 ジョーイさんが持ってきた最大で6つモンスターボールが置ける土台の上に、ジャケの手持ち2つと隣に1匹が置かれた。

 ジャケはボールを腰に付けると、ジョーイさんにお礼を言ってメラルバを抱き抱えて外に出る。

 

「よしっ……と。じゃあ今からお前を森に帰してやるからな…… あ、いや、フィーリス地方のメラルバだからブリーズタウンとかの方が───」

「ルバァ……」

「なんだ? そんなに悲しい顔してどうした?」

「メラ……」

「……… お前もしかして迷子か?」

「メラメラ……」

 

 メラルバは首を横に振る。

 その悲しそうな表情を見て、迷子でもなさそうだと察した。

 

「誰かの手持ちってわけでもないよな?」

 

 メラルバは再び首を振る。

 実は先ほど待ち時間の間にスマホロトムでポケモンの迷子情報を見ていた。

 だが、そこには1つもメラルバについて書かれている記事はなかった。そして今、誰かの手持ちでもないとわかった。

 つまり、このメラルバは野生で群れを追い出された可能性がある。

 

「行く所ある?」

「………」

「一緒に来るか?」

「…ッ!」

「俺は夢があるんだ。フィーリス地方のチャンピオンになるって言う。その為にはお前の力が必要なんだ…… どうだ?

「…… メラ!」

「決まりだな! これからよろしく!」

 

 ジャケは空のモンスターボールを取り出し、メラルバの頭にコツンと優しく当てると、ボールにメラルバ吸い込まれる。

 ゆらゆらと動くボールはポコンという音を立てて静かになった。

 

 やったー!メラルバを捕まえた!▼

 

「これでついに挑めるな…… 頼んだぞ、みんな!」

 

 これでジャケの手持ちは3体。

 ジムに挑む準備は整った────── のだが。

 この凸凹なパーティがジム戦始まって以来の酷い有様になるなんて誰が予想しただろう。

 というのはまた少し先の話────。




人見知りさん「ヨーク」・神谷主水さん「ロドン」でした!!

そしてバジル団…… 本作の団もう一つあります。
とりあえずかなりやべー奴らです()

次回、第6話「色んな地方からウェルカム」
アユちゃんパート+応募者様ワラワラ。

次回もよろしくお願いします!!


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第6話「色んな地方からウェルカム」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


「1・2・3でなんじゃも〜♪ いつかなんだかそうだな〜ふふふ〜ん♪」

 

 アユは歌をうたいながら、ターコイズシティから少し離れた所にある森にやってきていた。

 そこは奥に進むと大きな湖があり、湖付近にはみずタイプポケモンが多く生息している。

 四天王である姉がこおりタイプを好んで使うのに対し、彼女はみずタイプのポケモンが昔から好きで、小さ頃から将来はみずタイプ使いのトレーナーになることを夢見ていた。

 アユがここに来たのも、この理由からみずタイプが多く生息している湖で2体目のポケモンを捕まえる為だ。

 

「…… おぉ? おぉぉぉぉぉ!?」

 

 そんなこんなで湖にやってきたアユは、目の前の光景を見て目を輝かせた。

 自らが想像していた通り水棲ポケモンたちが元気よく泳いでおり、流石フィーリスとあってか多種多様な生物に恵まれている。

 

「早速捕まえるぞぉぉぉぉぉ!!!」

 

 と、言っていつも通り何も考えず駆け出したアユだったが、湖の周りの土が緩んでおり、足が滑って受け身も取れないまま湖に着水する。

 

「─── あれ?」

「大丈夫か!?」

 

 湖に入ってびしょ濡れになる筈だったアユだが、誰かに腕を掴まれて着水する事を免れたようだ。

 

「よい…… っしょっと!!」

 

 アユは見知らぬ男に腕を引っ張られなんとか地面に戻ってきた。

 その男の方を見ると、彼はオレンジ髪のツンツン頭で、空手道着に黒帯をしている。隣にリオルが立っており、見た目からポケモントレーナーのようだ。

 どでかい声で礼を言うアユに対し、男も自分が何者であるか答える。

 

「ありがとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!…… で、だれ?」

「…… え、あぁ、押忍! 俺は『パンク』ってんだ! 偶々ここの森に入ったら相棒が駆け出してよ。急いで後を追いかけたらあんたがいたってわけだ!」

「そうなんだ助かったぁ…… 私はアユ!! 助けてくれてありがと!!!」

「いやいや俺はただリオルの後を追っただけだ。礼ならこいつに言ってやってくれ」

 

 パンクは隣に立っていたリオルの頭をポンポンする。

 そのリオルは手を腰に当てドヤ顔をして見せる。

 

「あなたもありがとう、リオル」

「オルッ!」

 

 そう言ってアユはリオルの頭を撫でる。

 

「…… あぁ、そうだ。アユは現地のやつか?」

「ん? うん、そうだよ」

「実は道に迷っててさ。案内して貰えればいいんだけど……」

「いいよ!!! だけどちょっと待ってね」

「あ? 別に構わないけどなんだ?」

「私、ここでポケモンを捕まえる予定だったの! 私の相棒はアシマリなんだけど、ジムって3匹最低でも必要でしょ? だから記念すべき2匹目をここで手に入れるんだ!!」

「そ、そうなのか……」(やべぇ知らなかった……)

 

 そうしてパンクは森を出るまでの間、アユと行動を共にする事となった。

 アユはポケモンをゲットする為、湖の周りを手当たり次第に周り、自分好みのポケモンを探す。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「ア、アユ!! そんな走ってもポケモンなんか手に入んねーぞ!?」

「確かに!!!」

 

 パンクは自分でも少し頭が悪いとは思っているが、目の前いる彼女を見ていると自分は頭がいいのではないか?と、そんな風に思えてしまう。

 時間が経つにつれ、元気だった彼女も体力が尽き、そこらにあった岩に腰掛けて休憩を取る。

 

「大丈夫か?」

「う、うん……」

「アユはなんのポケモンが欲しいんだよ?」

「みずタイプ……」

「みずタイプならその辺にいたろ? なんか違うのか?」

「違くないよ。ボールいっぱい投げたいくらいだけど…… ボール5個しかないんだよね……」

「そうだったのか。だから選んでるのか?」

「うん。色んなエリアに行って、色んなポケモンを捕まえたいから取っておきたい。今回は2匹、ここで手に入れたい!」

「そういえばジム行くって言ってたもんな……」

「パンクはジム行かないの?」

 

 アユがそう言うとパンクは少し考えてから発言する。

 

「俺は昔、デルビルの群れに襲われたことがあってな」

「えぇ!!? 大丈夫だったの!!?」

「まぁ俺自身というより、この相棒のリオルがデルビルに襲われてたんだ。俺はそれを助けようとして群れん中に突っ込んでったんだけどさ…… ポケモンになんて勝てるわけなくてボロボロにされた」

「でも、助けに行くってかっこいいよ!!!」

「お、押忍、ありがとな」

「それでどうしちゃったの…?」

「あぁ、その時、カロス地方のジムリーダーのコルニさんに助けられた。あ、あと言い忘れてたが俺はカロス地方出身」

「ジムリーダー……」

「あの時のコルニとルカリオ。今でも忘れられない…… 俺はいつか彼女たちを超えて、最強のかくとうタイプジムリーダーになるのが夢なんだ」

「いいねいいね!! 応援するよ!!」

「ありがとな! まぁだからまずは色んなトレーナーとバトルしたいし、ジムバトルは地盤が整ってからって感じかな?」

 

 そうして暫く話していたら湖の方が騒がしくなってきているのに気づく。

 2人は顔を見合わせ、急いでその声のする方へと駆け出した。

 

 

 *****

 

 

「なんなんだてめぇらはよぉ!!」

「お前こそその態度…… 腹ぁ立つな!!」

 

 アユ達がその場所に辿り着くと、そこでは3人の男達に鬼の形相で威嚇する青年がいた。

 アユとパンクは互いにその青年の近くに行き、モンスターボールを構える。

 

「な、なんだお前ら」

「私はアユだよ!!」

「俺はパンクだ!!」

 

 2人が勢いのままに名前のみ伝えると、その青年も勢いに身を任せて自らの名前を言う。

 

「俺は『オコゼ』だ。色々と事情説明したい所だが、とりあえず目の前にいるこいつらどうにかしねーといけねぇ」

 

 その男3人組は自らをバジル団と名乗った。

 バジル団は今を騒がしている連中であり、その犯罪数や構成員は数知れず、尚も大きくなり続けているかなり危ない組織だ。

 

「なんだ嬢ちゃんらは? まさか俺たちに喧嘩売ってるわけじゃないよなぁ?」

「ポケモン勝負で決めよう!!!」

「そうかそうか…… え、あ、はい?」

「トレーナーならポケモン勝負!! 負けたら謝って!! 理由はわかんないけど!!」

「は、はぁ? まぁ…… いいか。いいぜ、俺たちの強さで泣かしてやるよ嬢ちゃんら」

 

 バジル団のしたっぱたちが勝負を仕掛けてきた!▼

 バジル団のしたっぱたちはヤトウモリ3匹をくりだした!▼

 

「私たちも行こっ!!」

「押忍!!」

「…ったく、考えても仕方ねぇな!! 行くぜぇ!!」

 

 ポケモントレーナーのアユはアシマリをくりだした!▼

 ポケモントレーナーのパンクはリオルをくりだした!▼

 ポケモントレーナーのオコゼはオニスズメをくりだした!▼

 

 ターコイズエリアの湖で大乱闘が始まる───!!




今回出ててきたのは鎧大河さんから「パンク」正気山脈さんから「オコゼ」でした!
まぁまだ次回も出番有りです!!

では次回、第7話「湖のランセン」

次回もよろしくお願いします!!


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第7話「湖のランセン」

皆さんご無沙汰してます。
それではどうぞご覧ください。


「行くよアシマリ! みずでっぽう!」

「リオル! グロウパンチだ!」

「オニスズメ! つばめがえし!」

 

 アユ、パンク、オコゼが同時に指示をし、ポケモンたちは一斉にしたっぱたちのヤトウモリ目掛けて攻撃を行う。

 だが、3匹とも別々に狙う事をせず運悪く同じポケモンを狙ってしまい、リオルとオニスズメは互いにぶつかり、アシマリの放ったみずでっぽうに巻き込まれてしまった。

 

「「………………」」

「 ごめ"んね"ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 別にアユだけが悪い訳でない。即興で組んだこのパーティで、まず最初からうまくやれるはずもない。

 オコゼはため息をついて頭を掻き、それから2人に指示を出す。

 

「いいかお前ら! 俺のオニスズメが前に出て真ん中のヤトウモリをやる。あとは邪魔な2匹を片付けろ!」

「よしっ!… って、なんで俺に命令してるんだ!?」

「いいから! 今は俺のいう事を聞け」

「なんだよお前!?」

「トリプルバトルってのはそういうもんなんだよ!」

「あぁん!?」

 

「2人とも喧嘩はやめよ〜!」と、アユが2人を止めようとしてると、その隙にしたっぱ達がヤトウモリに指示を出す。

 

「ヤトウモリ! スモッグだ!」

 

 ヤトウモリたちが一斉に口からスモッグを吐き出した。

 この毒ガスを吸い込めば、忽ちどく状態となってバトルが不利になる。

 そして3匹が四方八方から放つものだから、スモッグに囲まれて逃げ道を塞がれてしまった。

 

「…… ちっ」

 

 オコゼはオニスズメに翼を羽ばたかせてスモッグを払う様に命令したかったが、この量を1匹では捌き切ることはできないと考えた。

 逆にスモッグを撒き散らせる事となり、却って逆効果となってしまう。

 

「リオル! グロウパンチでスモッグを払えるか!?」

「待ちやがれ! 状態異常になるぞっ!」

「くっ…」

 

 オコゼとパンク、2人は頭をフル回転させ、この状況を打破する案を考えた。

 しかし、考える時間はほんの数秒しかない。

 そんな少ない時間で答えなんて出せるはずもない。

 

「だァァァァァァァァッ!! もう考えるのもめんどくせぇ!! どうせ状態異常になるんだったらァ…… オニスズメ!! はがねのつば────!!」

「アシマリ!! なきごえ!!」

「「は?????」」

 

 その瞬間、アシマリは天高くなきごえを放つ。

 湖にアシマリの声が響き渡る。

 

「…………???」

 

 したっぱたちもゲヘゲヘと笑っていたが、突然の行動にみんは真顔となり、顔を見合わせて頭の上に?が飛び交っている。

 

「アシマリ!! もっともっと叫んじゃえ!!」

「アシャマッ!!」

 

 アシマリはなきごえを放ち続ける。

 流石の行動に呆れたオコゼは彼女を止めようとした。

 が、その時、なきごえが可愛らしい声に変わっていき、その声はスモッグを突き抜け、ヤトウモリたちの耳へと直撃した。

 ヤトウモリは思わず身体を震わせる。

 

「な、なんだ!?」

「ヤトウモリ!?」

 

 アユたちからはスモッグでは見えないが、どうやらアシマリは新技「チャームボイス」を覚えた様だ。

 だが、ヤトウモリに対してのフェアリータイプのタイプ相性は最悪。

 全くもって効いているとは言い難い。

 

「いや、それでいいッ!! オニスズメ!! はがねのつばさァッ!!」

 

 それからオニスズメは両翼に鋼を纏い、空中を旋回し始める。

 この時、オニスズメの身体にスモッグが纏わりつき、当然だが彼はどく状態となってしまう。

 しかし、これでいい。

 スモッグに少しだけだが穴が空いた。

 

「今だリオル!! グロウパンチだッ!!」

「オルッ!!」

 

 今も身体を震わせいるヤトウモリたちに向けて、3連続のグロウパンチが飛んでいく。

 ヤトウモリは全員吹っ飛ばされ、3匹とも地面を転がる。

 

「ヤトウモリ……!! クソガキどもめぇ……」

 

 アユはアシマリに鳴くのを止める様に言い、Vバーストを放つ準備をし始める。

 

「Vバーストか…… そりゃいい」

「押忍!!」

 

 2人もVバングルに各々のポケモンが入っていたボールを充てがう。

 そしてVバーストを発動しようとした際、したっぱ達がとんでもない事を言い出した。

 

「クソがぁ!! ヤトウモリ、トレーナー共に向かって『ひのこ』だ!!」

 

 したっぱ達は禁止以前の問題、人への攻撃を始めたのだ。

 3匹のひのこは束となり、大きな火炎球となってアユ達に向かって飛んできた。

 

「オニスズメ!!」

「リオル!!」

 

 オニスズメはどく状態で苦しみながらもオコゼの前に、リオルはパンクの前でいつでも迎撃できる姿勢を取る。

 これではVバーストは間に合わない。

 3匹の力で火炎球を受けるしかないと、思った矢先アユはアシマリに「みずでっぽう」の指示を出した。

 

「なにっ!?」

 

 オコゼ達がアユの方を見ると、既にVバーストを発動させており、アシマリはVバーストで強化された口からハイドロポンプの様なみずでっぽうを放ち、見事に火炎球を蒸発させた。

 そしてその隙をつき、オコゼとパンクは顔を見合わせ、互いに頷き、Vバーストを発動させる。

 

「行くぜオニスズメェッ!!! Vバァァァストォォォォッ!!!」

「轟け! 勝利の雄叫び! Vバースト!!」

 

 Vバースト発動により、オニスズメは翼と嘴部分が強化され、リオルは両手が強化される。

 その威力が跳ね上がった強化部位から強力な技が放たれる。

 

「オニスズメ!! つばめがえしィ!!」

「オォ!!」

 

 オニスズメは気合いを入れて空へと飛び立ち、上空で大きく旋回し、ヤトウモリの1体に突撃する。

 その1体を捉えたまま、2体目を巻き込んで前進。

 そのまま後ろにあった木へと激突させ、2体とも戦闘不能てしまった。

 

「嘘だろおい…!!?」

「こっちも忘れるなよな!! リオル!! はっけい!!」

 

 そしてリオルは素早くヤトウモリの懐に入ると、胸に向かってはっけいを繰り出す。

 はっけいを受けてしまったヤトウモリは苦しそうに地面に這いつくばる。

 

「ヤトウモリ…?」

 

 どうやらはっけいの追加効果で「まひ状態」にされてしまったらしく、身動きが思う様に取れないらしい。

 その隙を突かれ、リオルの最後の一撃を喰らう羽目になった───。

 

「リオルッ!! 最後のグロウパンチィ!!!」

「リオォォォォッ!!」

 

 先ほどヤトウモリに3度の拳を喰らわせた。

 その拳はグロウパンチによって鍛えられ、Vバーストによって更に威力を増している。

 その一撃を最後のヤトウモリに浴びせる。

 

「イタイモリィィィィィ……!!」

「ヤ、ヤトウモリが…!!!」

 

 したっぱたちとの勝負に勝った!▼

「た、退散するぞ!!」

 アユ達は賞金の代わりに勝利を手に入れた!▼

 

 

 *****

 

 

「くそっ!! 覚えてやがれー!!!────」

「へっ、おとといきやがれってんだ」

 

 オコゼはオニスズメを戻し、したっぱ達の後ろ姿を見ながら手を払う。

 アユとパンクは互いにハイタッチを決め、この勝利を共に喜んだ。

 

「今回は助かったぜ。ありがとよ…… えっと」

「アユだよ!! 気にしないで!!」

「おぉ… お前も… 悪かったな」

「押忍! 気にしてないぜ!」

 

 ─── それから3人は暫く話した後、互いの健闘を祈り、それぞれ別々の方向へと歩みを進める。

 その道中、オコゼはアユの事を思い出す。

 彼は元エリートトレーナーの母親と博士の父親の元で育った。その為かポケモンバトルや育成についてなどにとても詳しく、手持ちのポケモン達も少々鍛えられており、トレーナーとしてもそれなりの実力を持つ。

 

「………」

 

 だからこそわからなかった。

 アユと名乗るあの少女のデタラメのような技選びから、意図してない勝利への突破口。

 今まで教えられたもの、どれひとつも当てはまらない奇想天外なバトルセンス。

 

「ふっ…… おもしれぇ。次に会う時はもっと成長してんだろうな。あいつら」

 

 彼の中で何かが燃える。

 彼はバトルに対する高まりを感じた────。

 

 

 *****

 

 

「ポケモン捕まえてないや」

 

 一方その頃、アユは湖に来た理由をすっかり忘れており、出口まできてしまった。

 

「早く戻ってポケモンを捕まえないと!!」

 

 そしてアユは回れ右をして再び湖へ行こうとした。

 が、その時、草むらからヒョコッと何かが飛び出してきた。

 

「あっ」

「コソッ…!!?」

 

 草むらから飛び出してきたのはコソクムシ。

 アユは瞬間的にボールを投げた。

 ボールはゆらゆらと揺れ、暫くするとその場でピタリと止まる。

 

「…… 捕まえちゃった─────────……… やっっっっっっっっったあァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

 森を揺るがす雄叫びがこだまする。

 

 やったー!コソクムシを捕まえた!▼

 

 アユは新たな仲間を手に入れた。

 彼女の破天荒な冒険はまだまだ続く────。




以上です。展開が早いのは申し訳ないです。
登場させるキャラが多いのです………。

という事で鎧大河さん、正気山脈さんありがとうございました!!
まだまだ先で登場致します!!

次回、第8話「出会いはいつもトツゼンに」

アユ回まだまだ続きます。
次回もよろしくお願いします!!


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第8話「出会いはいつもトツゼンに」

皆さんご無沙汰してます。お待たせです。
それではどうぞご覧ください。


 アユは湖の周りを駆け巡った。

 そして、みずタイプのポケモンたちは彼女から逃げた。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!!」

 

 オコゼとパンクの2人と別れ、新たな仲間コソクムシを手に入れ、彼女はジム戦を行う為に必要な3匹目を捕まえようと1日中走り回る。

 だが、この勢いに湖に住まうポケモンたちは恐怖し、皆草むらや水底に逃げてしまう。

 彼女はそれをわかっておらず、時間が無駄に過ぎていく。

 そして力尽きた。

 

「ぜひゅー……ぜひゅー………」

 

 本当に何がしたかったのだろう。

 陰に隠れたポケモン達は心配になってアユを見に行く。

 

「んん……?」

 

 ポケモン達は倒れているアユの横にそっときのみを置く。

 それから肩をポンと叩き、無理の中へと消えていった。

 

「あ…… あぁ……」

 

 ようやく何が悪いのか気づいたアユは「ありがとぉぉぉぉぉぉぉぉ」と、馬鹿でかい声でお礼を言い、気を取り直して、今度は先ほどの半分以下のスピードで丁寧に探索を始める。

 

「みずタイプぅ! みずタイプぅっ!!」

 

 やはり、アユは静かにするという事が不可能なのだ。

 楽しいという感情を何よりも大事にする彼女にとって、静寂とは楽しいを半減してしまっている無駄な時間。

 つまり、先ほどのゆっくりとしたスピードや疲労は全て帳消しとなり、再び自分のペースに戻った。なんという精神力と体力であろうか。

 そして気づけば辺りは暗くなり、流石のアユも野宿をする準備に取り掛かる。

 

「ふんふんふ〜ん♪」

 

 アユは意外にも慣れた手つきで簡単なテントを作る。

 ボールからアシマリを出すと、木を集める様にお願いし、アユは水を汲みに行った。

 テキパキと作業をこなし、辺りが完全に真っ暗になる頃には、携帯していた食料で簡単に調理をして夕飯が出来上がっていた。

 

「はい、お手を拝借!!」

「アシャマ」

「コソ……」

「いただきますっっっ!!!」

 

 アユは先ほど捕まえたコソクムシもボールから出し、皆んなで焚き火を囲んでご飯を食べ始めた。

 

「ジャケはもうジム戦やってたのかなぁ…… 連絡来てないからまだ3匹目ゲットしてないのかなぁ……」

 

 幼馴染のジャケの事をふと思い出し、スマホロトムで連絡を取る為、ポケットからスマホを取り出すと、スマホ越しに何かが浮遊しているのに気がついた。

 

「ん……?」

 

 スマホロトムをスーッと横に移動させると、その浮遊する何かもスーッとアユの方に向かってきているのがわかる。

 

「え、あれって…… まさかっ…!!!」

 

 アユはその浮遊する何かに飛ぶように近づいて大声で叫んだ。

 

「ゴーストタイプだァァァァァァァァッッッ!!!!!」

「ぎゃぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁッッッ!!!!!!???」

「あ………」

 

 そして後に気がついた事だが、気絶してしまったその何かとは、車椅子に乗った少女であった─────。

 

 

 *****

 

 

「──── う、うーん……」

「あ、気がついた?」

 

 少女が目を覚ますと、辺りはすっかり明るくなっていた。

 テントの中で一夜明け、その隣に自分に対して叫んだ謎の爆音少女が座っていた。

 

「ひぃぃぃぃぃぃ!! た、食べないでくださいぃぃぃぃぃぃ!!!」

「場合による!!」

「ひゃぁ!!?」

「あと…… ごめんね。私、ポケモンだと思って喜んじゃって…… びっくりしたよね?」

「へ? あ、その……」

「そうだそうだ!! 私はアユ!! ターコイズエリア出身のポケモントレーナーだよ!!」

 

 なんと自由奔放で凄まじい勢い重視なのだろうかと、少女は戸惑って情報を整理する為に暫く黙っていた。

 そして落ち着きを取り戻すと、声を震わせながら自らも名を名乗る。

 

「わ、私は『メザシ』、です。エ、エメラルドシティから来ました……」

「エメラルドシティ!!? という事はフィーリス出身なんだ!! ターコイズとお隣さんだね!!」

「は、はいぃ……」

「メザシもポケモントレーナーだよね! だってニャスパー連れてるもん!」

 

 先ほどからメザシの隣で彼女を心配そうに見つめるポケモンはニャスパー。

 昨日車椅子に乗っていたメザシが浮遊していたのも、彼女の膝に座っていたニャスパーによるサイコパワーが原因であった。

 

「そ、そうです…… けど、私、なんかはトレーナーを名乗れるほど、つ、強くないです。ふひひ… お、落ちこぼれ… だから……」

「んん? そんなの気にしないよ! トレーナー同士競い合って仲良くしようよ!」

「私、こ、こんなだから気持ち悪いし、な、仲良くしなくても、いい、です…」

「えぇー? 気持ち悪い?」

「え、えと…… こんな感じだから気持ち悪いでしょう……?」

「全然ッッッ!!!!!」

「へぇ?」

「むしろ私は可愛いと思うよ!!! 好きッッッ!!!」

「へぇぇぇぇぇぇっ!!?」

 

 アユの押しの強さに戸惑うメザシであったが、内心とても嬉しかった。

 これにより少しばかりではあるが、メザシとの距離が縮まり、暫く2人でそれぞれのエリアについて話をした。

 それから一頻り話をすると、アユはテントを片づけ、メザシもそれを手伝い、少しの間だが道中を共にする事にした。

 

「ア、アユは3匹目のポケモン、ど、どこで捕まえるの……?」

「え? この湖だよ」

「え?」

「え?」

「何かおかしい?」

「えと、その…… 私なんかが余計なお世話だと思うけど、う、海とかどうかな?」

「海かぁ……………」

「ど、どう?」

「いいねッ!!!!! 行こうッ!!!!!」

 

 それからアユはメザシの乗る車椅子のハンドルを握り、凄まじいスピードで森を抜ける。

 サイコパワーで浮かせていたニャスパーも何かを察したのか、サイコパワーの使用を止め、死んだ様な顔になって無となり、アユに操縦の全てを任せた。

 

「ここから遠くないッ!!! 暗くなる前に捕まえるぞーーーー!!!」

「と、遠い!! あと速いッ!! あわわ、あわわわわっ!!」

 

 アユに会ったが運の尽き。

 メザシは彼女に連れられ、海へと出向くのであった────。

 

 

 *****

 

 

「メザシ、着いたよ!!」

「わぁ〜……」

 

 フィーリス地方は他の地方と比較しても圧倒的広さを誇る為、砂浜もかなり広く、ターコイズエリア内と言えど、端から端まで行くにはそれなりの体力を使う事となるだろう。

 そんな場所でアユはメザシの車椅子を押そうとするが、タイヤが砂に埋まってしまい、どんなに押しても動かすことができなくなった。

 メザシのニャスパーはそれを見て、サイコパワーによって車椅子を浮かせて一旦岸まで避難する。

 

「ご、ごめんね…… 私の足が悪くて……」

「いいよ! いいよ! 気にしないで! ニャスパーがいるんだから浮かせてもらって海に行こうよ!」

「う、うん」

 

 それからアユとメザシは海に近づき、海に住むポケモンたちを見た。

 湖の時とは違い、水棲ポケモンたちの種類が多く、又大きな個体も数多く見受けられる。

 

「どの子捕まえようかなぁ〜」

「ゆ、ゆっくり選ぶといいよ──── ん?」

 

 メザシは遠くの方から走ってきた何かに気づく。

 白いワンピースに長い金髪、その頭にスポーツキャップを被っており、見た目の綺麗さからお嬢様と思える少女が満面の笑みを浮かべながら、全速力で「ミガルーサ」から逃げている。

 

「─── っ! そこのトレーナーの方々! お下がりくださいまし! ミガルーサ様がお怒りになってますわ〜!!」

「凄い楽しそうだね!!!」

「えっ、いや、そ、その…… 結構危ないと思うぅ… よ?」

 

 野生のミガルーサが襲いかかってきた!!▼

 アユはアシマリを繰り出した!▼

 

「よーしアシマリ!ミガルーサに向かってみずでっぽう!」

「アシャマッ!」

 

 アスモはミガルーサに向かってみずでっぽうを勢いよく発射する。

 だが、タイプ相性的に全く効いておらず、レベル差もあるのか全く怯みもしない。

 そしてミガルーサは自らの鋭いヒレの部分を使い、きりさく攻撃を放ってきた。

 

「アシャッ……!!」

「ア、アシマリィィィィィィィッッ!!」

 

 アシマリはミガルーサのきりさくが直撃し、なんとたったの一撃でダウンしてしまった。

 

「ちょちょちょちょっと1発!!? どうしよっ!!?」

「こ、このミガルーサ、サイコパワーが強いね…… 砂場なのに、う、浮いてる……」

 

 先ほどからミガルーサは海に戻る事なく、サイコパワーによって浮いたままの状態で砂浜を移動している。

 このお嬢様を追っている時も浮いたままの状態であった。

 

「こ、こうなったら…… わたくしに任せてくださいまし!!」

 

 そう言うと少女はミガルーサの前に出て真剣に謝った。

 

「あなた様の縄張りだと知らずに土足で踏み入れた事、誠に申し訳ございません!! これ以上この方達を襲うのはやめてくださいませ!!」

 

 しかし、本人はこう主張しているが、元はと言えば彼女がしでかした事なのだ。

 ミガルーサも標的を変えて少女に突っ込んできた。

 

「あぁ、ホントにまずいですわぁ〜!!」

「─── アユタックル!!!」

 

 その時、ミガルーサが吹っ飛んだ。

 アユはいつの間にか後ろに下がり、助走をつけて強烈なタックルを喰らわせた。

 当然ミガルーサはタックルをした本人に対して、強烈な怒りを露わにする。

 

「いてて……」

 

 アユの肩にはミガルーサの鋭利な身体により、傷ができていた。

 これだけで済んで良かったが、一歩間違えれば深い傷となっていた事だろう。

 

「………ッ!!」

 

 そしてそれを見たミガルーサは困惑していた。

 何故この人間はこのような事をしたのだろうか。見ず知らずの人間を肩に傷を作りながらも助けた。何故。

 

「あ、ミガルーサもごめんね…… 痛かった?」

「…………」

 

 これはミガルーサのサイコパワーによるものなのだろうか。

 冷静になってアユを見ていると何か運命的なものを感じ取れた。

 ミガルーサは彼女を見ながら徐々に近づいていく。

 

「えいっ」

「ミガッ!?────」

 

 次の瞬間、アユはモンスターボールをミガルーサに頭にポンッと当たると、ミガルーサはボールの中へと吸い込まれる。

 やがて、ボールは動きを止めて停止した。

 

 やったー!ミガルーサを捕まえた!▼

 

「えへへっ、ゲットできた」

「「え、えぇ〜〜〜!!?」」

 

 2人が驚くのも無理はない。こんなゲットの仕方は初めて見たからだ。

 暫くして落ち着きを取り戻した彼女たちは互いに自己紹介を済ませる。

 

「わたくしはスチル。自由気ままに旅をしておりますの!」

「ふひっ、ふひひっ、わ、私はメザシ…… よろしくね」

「私はアユだよ!! チャンピオンになる為に頑張ってるんだ!!」

 

 3人の出身地はフィーリス地方であり、それぞれエリアも違うにしろ同じ地方という事ですぐに仲良くなった。

 そしてアユは手持ちが3体となり、ようやくジムに挑戦できるということで、2人にも見にきて欲しいとお願いする。

 

「もちろん行きますわよ! 頑張ってくださいませ!」

「わ、私も応援するよ……」

 

 ─── 様々なポケモンとの出会い、そして遂にジムへの挑戦権を獲得したジャケとアユ。

 彼らは夢へ一歩近づく。初めてのジムチャレンジ。果たして─────。




という事で今回は春風れっさーさんから「メザシ」と暁の教徒さんから「スチル」を使わせていただきました!!
まだまだ出ますしちょい役で終わらせないのでご安心。まだ序盤も序盤ですからね……。
ジム戦はジャケ主体で行うので、アユちゃんパートはないです()

次回、第9話「始まりのジムチャレンジ」

次回もよろしくお願いします!!


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第9話「始まりのジムチャレンジ」

皆さんご無沙汰してます。
それではどうぞご覧ください。


「ジャケ〜〜〜〜!!!!!」

「来たなバクオング」

「褒められた〜」

「いや褒めてないんだが」

 

 ジャケはターコイズシティにてジム戦の前に休息を取り、ジムにエントリーするや否や、その情報がスマホロトムにて大勢に発信される。

 フィーリス地方はガラル地方の様にスタジアムとなっており、誰かがジムにエントリーすれば地方内の全ての端末にその情報が送られる事となる。

 つまりそれを見たアユはターコイズシティまで飛んできたという訳だ。

 

「先越されちゃった」

「お先にね」

「じゃあ私ジャケの後にやるから絶対に見に来てね!!」

「わかったよ」

「あ、あと頑張ってね!! ジムチャレンジ!!」

「ジムチャレンジか。確かここのは──── で、その人たちは?」

 

 ジャケがアユの後ろを指さすと、そこにはアユが出会った少女2人が並んでいた。

 

「ふひひっ、わ、わたしは、メ、メザシ、です…… よろしくお願いします……」

「初めましてですわね! わたくしはスチル。あなた様のことはアユから聞いておりますわ!!」

「俺はジャケ。アユの幼馴染だ。よろしく」

 

 3人が自己紹介を終えた後、アユがいきなり「おーい!!!!!」と、叫んだので後ろを振り向くと、そこには男2人が肩を組んで歩いてきていた。

 

「おぉー! さっきぶりだなぁ! アユ! がっはっはっはっはっ!」

「押忍!! 順調かアユ!?」

 

 彼らはオコゼとパンク。何があったか仲良くなったらしい。

 

「アユ…… お前この短期間に色んな人と会ったんだな」

「うん!! みんないい人だよ!! 友達!!」

「ははっ、俺なんてそんなに…… おっ」

 

 ジャケが彼らに挨拶をしようとすると、また知った顔のトレーナーがこちらに向かって歩いてきていた。

 

「リタ! 来てくれたのか!」

「久しぶり? かな。ジム戦って聞いたよ」

「あぁ、頑張ってくるよ」

「ポッポはどう?」

「…………… うん」

「わかった。大丈夫じゃないみたい」

 

 これは何かの偶然か。はたまた必然か。ここに集ったトレーナー達は何かを感じ取っていた。

 同じ場所に集い、互いに目を合わせると胸に込み上げる熱い気持ち。

 ジャケはアユと目を合わせる。彼女はそれに応える様にニコッと笑い頷く。

 

「えっと…… ここにいる皆んな、いつになるかはわからないけど、絶対バトルしよう! 必ず!」

 

 ジャケがそう言うとトレーナー達はニカッと笑いながら頷き、彼にエールを送ると、ジムチャレンジが行われる会場へと移動する。

 

「それじゃあ私たち先行くね! 頑張ってジャケ!」

「あぁ!」

 

 それからアユ達に手を振って別れると、ジャケは空を見上げ、 深呼吸をする。

 

「よし」

 

 そう呟き、ジムチャレンジの会場へと足を運ぶ─────。

 

 

 *****

 

 

 ジムチャレンジ会場はジムのすぐ横にあり、そこには水の張った大きなプールがあった。

 おそらくスタート地点であろう場所には赤いラインが引かれており、奥の方にも見え辛いが赤いラインが引かれ、両脇に旗が立てられている。

 多分アレがゴールなのだが、プール内は2箇所広い足場があり、そこにジムトレーナー達が挑戦者を今かと今かと待ち構えている。

 

「─── 聞こえるかいチャレンジャー君」

「え?」

 

 プールを囲んでいる角の方に4ヶ所スピーカーが設置されており、そこから誰かの声が聞こえてきた。

 

「あなたは?」

「僕は『マタイ』。このジムで最も美しいジムリーダーさ」

「…………」

「それよりチャレンジャー、目の前のプールを見てごらん」

「あ、はい」

「もう勘付いているとは思うけど、目の前の赤いラインがスタートラインだ。君は今からそこにいるジムトレーナーを倒して、奥の方にあるゴールラインを目指すんだ。簡単だろ?」

「そ、そうですね」

「ただしそこまで行くには……… 後ろを見て」

 

 ジャケは言われた通り後ろを振り向くと、そこには人が1人入れるくらいの「たらい」があった。

 

「『たらい舟』。それを使って彼らの元へ漕いでいってもらうよ。幸い波はないから漕ぎやすいはずさ。落ちたら最初からやり直し。とにかく頑張ってくれたまえ。この僕からのエールを波に乗せて君に届けよう─────」

 

 スピーカーから音がなくなり、入り口からジムのスタッフが中へと入ってきて、たらい舟を水に浮かせる手伝いをする。

 そして準備が整うと、ホイッスルを持ち、ジャケに合図を送る。

 

「─── では、ジムチャレンジ…… スタートッ!!」

 ピーーーーーーーッ

 

 ジャケはホイッスルの音を聞き、たらい舟を必死に漕ぐ。

 思っていたより簡単に進まず、力をそれなりに入れなければならない。

 ジムトレーナーのいる場所は見える位置で、地上なら走らずともすぐに行ける距離だ。

 だが、水の上だとやはりバランスも操作も難しく、なかなか前に進めない。

 

「ジャケ頑張れー!!」

「ジャケさ〜ん……」

 

 アユを含めたトレーナー達が外から声援を送ってくれる。

 これにより俄然やる気が出たジャケはなんとかしてジムトレーナーのいる足場へと辿り着いた。

 

「ぜはー!ぜはー!」

「だ、大丈夫かい?」

「も、問題な……ごほっ!」

「マタイさんこれホント10代の子にはキツいって…… やれそう?」

「はい!!」

「そ、そっか… 僕はショウダイだよ〜。君の実力見せてもらうからね」

「お願いします!」

 

 ジムトレーナーのショウダイが勝負を仕掛けてきた!▼

 ジムトレーナーのショウダイはヘイガニを繰り出した!▼

 ジャケはキバゴを繰り出した!▼

 

「行くぜキバゴッ!!」

「キバッ!!」

「キバゴ! きりさくだ!」

 

 キバゴは発達した鋭利な牙をヘイガニに浴びせる。

 一撃を喰らったヘイガニだったが、すぐに体勢を立て直し、ハサミを開いて照準をキバゴに合わせる。

 

「やるね! ヘイガニ、バブルこうせん!」

「ヘイヘイッ!」

 

「避けろキバゴ!」という掛け声と共に、キバゴはバブルこうせんを何とか避けていく。

 だが、このバブルこうせんは誘導する為に放ったもの。キバゴはまんまと端まで追い詰められた。

 

「ま、まずい!」

「今だ! かわらわり!」

「ドラゴンクローで迎え撃て!」

 

 ヘイガニのかわらわりとキバゴのドラゴンクローが衝突する。

 その衝撃でキバゴは水の中へと落ちてしまった。

 

「キバゴッ!?」

「あらら〜…… 落っこちちゃったら追いかけるしかないでしょ!」

 

 そしてヘイガニは水の中へと潜り、キバゴの元へと泳いでいく。

 

「キバゴ! ギリギリまで耐えるぞ!」

「何をするかは知らないけど、バブルこうせん!」

 

 特性「てきおうりょく」によって威力を増したバブルこうせんがキバゴを捉える。

 しかし、キバゴは全く怯まずバブルこうせんを受け切った。

 

「え、えぇ!?」

「今だキバゴッ!! ドラゴンクロー!!」

 

 キバゴはまるでアッパーをする様に、下からヘイガニの顔面に鋭い爪を食い込ませて切り裂いた。

 

「へ、ヘイガニ!!」

「……… へーイ…」

 

 目を回して浮かび上がってきたヘイガニ。それと同時にキバゴも陸に上がってくる。

 ショウダイはヘイガニをボールに戻すと次のポケモンを繰り出す。

 

 ジムトレーナーのショウダイはキバニアを繰り出した!▼

 

「キバハハハッ!」

「また水中戦になるかな?」

 

 キバニアは水から顔を出して牙をガチガチと鳴らして牙がを誘っている。

 

「どうする? 今ならポケモンを変えてもいいよ」

「……… いや、このままで行きます」

 

 ジムトレーナー及びジムリーダーのポケモンの交代は認められておらず、チャレンジャーのみバトルの合間の交代を許されている。

 しかし、ジャケはそれを断り、キバゴのまま戦うつもりである。

 

「その選択も悪くないよ」

「よし……… キバゴ! 水の中へ!」

「えっ!?」

 

 キバゴは水の中へと飛び込んだ。

 ショウダイはこの行為を自分のことの様に思い焦りを感じる。

 みずタイプのポケモン。よりにもよって水の世界で凶暴とされるキバニア相手にだ。

 

「一体何を……」

「キバゴ動くなよ!」

「はぁっ!?」

 

 キバニアはぐるぐるとキバゴの周りを旋回する。

 何か言いたげなショウダイではあるが、チャレンジャーに助言をするのはどうなのかと葛藤し、キバニアに指示を出す。

 

「キバニア! こおりのきば!」

「キバァァァァァァッ!!」

 

 ドラゴンタイプのキバゴに相性最悪なこおりタイプの攻撃。

 直撃すれば瀕死にならずとも相当追い込まれるだろう。

 

「まだだキバゴ…… まだ」

 

 キバニアの牙が近づく。

 氷を纏った牙がキバゴに突き刺さるその瞬間であった。

 

「今だ!! ドラゴンクロー!!」

「キバッ!!」

 

 本当にギリギリの所でキバゴのドラゴンクローがキバニアの頬に直撃した。

 それから怯んだキバニアをすかさずキバゴは噛みつき、そのまま陸へと上がってきた。

 

「よくやったキバゴ! そのまま戻ってこい!」

「ははっ! 君面白いね! キバニア、いやなおと!」

 

 キバニアは歯を軋ませ、耳がおかしくなる様な音を響かせる。

 口を外したキバゴを見たショウダイは次の指示を出そうとした。

 

「─── キバゴ! キバニアの口にかみつく!」

「な、なにっ!?」

 

 そしてキバゴはキバニアの口に思いっきり噛み付くと、噛みついたまま足場まで上がってきて、上空へと投げ捨てる。

 

「これなら身動き取れないよね!」

「キ、キバニア!! アクアジェット!!」

「きりさけぇッ!!」

 

 上空で体勢を立て直したキバニアは落下の勢いを利用してアクアジェットを放つ。

 キバゴは地上で足に力を溜めてキバニアが来るの待った。

 それから互いの技がぶつかり合うが、キバゴは少し身体を逸らして攻撃を流すと、そのままキバニアの身体を牙で切り裂いた。

 キバニアは強烈な一撃を喰らい、地上で数回跳ねた後、目を回して倒れてしまった。

 

 ジムトレーナーのショウダイとの勝負に勝った!▼

 ジャケは賞金の代わりにジム戦に一歩近づいた!▼

 

「あちゃ〜、君強いね」

「いえまだまだです!」

「次で最後だね。頑張りなよ!」

「はい!」

 

 ジャケは再びたらい舟に乗り、次のジムトレーナーの元へと向かう。

 これで勝てば晴れてジム戦。果たして────。




遅れてます()
ジムトレーナーさんは出来る限りぽんぽん倒していきます。

次回、第10話「始まりのジムチャレンジ その2」

次回もよろしくお願いします!!


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第10話「始まりのジムチャレンジ その2」

皆さんご無沙汰してます。
それではどうぞご覧下さい。


「ぜーーーーはーーーー………」

「お、お疲れ様」

 

 たらい舟を使用して、ようやく第二のジムトレーナーの元へと辿り着いた。

 

「ちょ、ちょっと休憩してからバトルお願いします……」

「あははっ、なかなか辛かったよね。あなたも回復させてあげたいのは山々なんだけど……」

 

 フィーリス地方のジムチャレンジはバトルに勝利後、公平にバトルを行う為、ジムトレーナーが手持ちのポケモン達を回復させてくれるのだ。

 ただし、どれほど辛い道のりがあったとしても、ポケモン達以外トレーナーを回復するサポートはない。

 何が公平だと数多のトレーナーはそう思うことだろう。

 

「───……スゥー… では、よろしくお願いします」

「おっけー! 私はジムトレーナーのニシキ! 私を倒せばサイコーにビューティフルでスペクタクルなジムリーダー、マタイさんはもうすぐだ! 頑張れ!」

「はい!」

「バトルスタート!!」

 

 ジムトレーナーのニシキが勝負を仕掛けてきた!▼

 ジムトレーナーのニシキはキャモメを繰り出した!▼

 ジャケはキバゴを繰り出した!▼

 

「あれ? またキバゴなんだね!」

「えぇ、まぁ、その……」

「いいよいいよ! バトルは人それぞれだからね!」

「…… じゃあ早速、キバゴ! きりさく攻撃!」

 

 指示を受けたキバゴはキャモメに向かって走り出す。

 キャモメは空を舞い上がり、キバゴの攻撃をヒラリと躱す。

 

「やっぱり飛んでるポケモンは厄介だな……」

「ほら行くわよ! キャモメ! あまごい!───」

 

 

 *****

 

 

 プールの周りは特に椅子などは設置されていない為、立ち見席となるのだが、そこで各トレーナーたちがジャケのバトルを傍観していた。

 が、アユはそこでずっと叫んでいた。

 

「ジャケはなんでポッポ使わないのー!!!」

「多分使()()()()じゃなくて使()()()()だと思う」

「え?」

 

 叫ぶアユに割って入り、リタが言う。

 

「あのポッポ、私と出会った時から好戦的で、きっと群れの中にも馴染めてないんだろなってすぐにわかったわ。ジャケにゲットされてからも言う事聞かないみたいだし、逆に不利になりそう

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! キバゴがいくら回復しても、体力がもたないよぉぉぉぉぉぉ!!!」

「でも…… ジャケの戦闘スタイルならもしかしたら────」

 

 *****

 

 

 ジャケはキバゴを一度ボールに戻すと、腰に付けてあるモンスターボールを手に取って、別のポケモンを繰り出した。

 

「行けっ! ポッポ!」

「ポッポー!」

 

 会場は「あまごい」により悪天候。

 相手はキャモメで空を飛び、今のキバゴでは対抗手段がない。

 無理やりバトルをしてもいいが、流石の連戦でキバゴにも疲れがある事を察し、今唯一空を飛ぶポケモンに対抗でき、尚且つ好戦的なポケモンがいるならば出すしかないだろう────。

 

「頼むから言うことを聞いてくれよ!」

「……… ポッ」

「目を合わせてくれ!!」

「………」

 

 ポッポはフイッと首を横に向ける。

 これにはニシキも苦笑いをするが、今はバトル中であり、圧倒的なチャンス。

 

「指示を聞かないからって手を抜くと思わないで! キャモメ! みずでっぽう!」

「キャモッ!」

 

 そしてキャモメはあまごいにより威力の上がったみずでっぽうを放つ。

 そっぽを向いていたポッポは反応ができず、まともにみずでっぽうを喰らってしまった。

 

「おいおい……!!」

「ポッ!!」

 

 すぐにポッポは体勢を立て直し、空中を素早く移動してキャモメにでんこうせっかを浴びせる。

 もちろんそんな指示はしていないが、うまくいったのでよしとしよう。

 

「ポッポ…… まぁとりあえず『かぜおこし』だ!」

「………」

 

 ポッポは指示通り「かげおこし」をキャモメに向かって放つ。

 これにはジャケは驚いた。そして喜んだ。自分の指示を聞いてくれたんだと。

 だが、それは偶々起こしたものであり、次の瞬間別の技を繰り出してキャモメを追い込んでいた。

 

「お前なぁ……」

「くぅ…! このまま押し負けてちゃダメよ! つばさでうつ!」

 

 キャモメは翼を広げ、鞭の様にしならせてポッポに打撃を与える。

 それを喰らったポッポは地面に打ち付けられそうになったが、なんとか持ち堪えて空へと再び舞い上がる。

 

「ポッポ」

「………」

「お前のしたい様にしろ」

「……?」

「言う事を聞かなくたっていい…… だけど絶対に負けるな!」

「………」

「お前の全部を出して勝とう! ポッポ!」

「…… ポッ」

 

 その時、ポッポは少しだけ返事をした様に聞こえた。

 ポッポはすぐにキャモメへと向かっていく。

 

「今まで色んなトレーナー見てきたけど、まさかポケモンに全部任せるってやり方…… あははっ! 君凄いよ! なら、私たちはジムトレーナーとして対応するのみ! キャモメ! みずでっぽう!」

「キャモォッ!!」

 

 再びキャモメの強力なみずでっぽうが飛んでくる。

 それにポッポは全く動じずに一直線にキャモメへ突撃する。

 

「ポッポ……!!」

 

 当然、ポッポにみずでっぽうが炸裂し、確実に撃墜されたかに見えたが、直後キャモメが地面へと落下する。

 

「えっ!?」

「まさかポッポ…… お前ッ!!」

 

 ポッポは新たに「かげぶんしん」を覚えた。

 それによりみずでっぽうはポッポ残した分身に当たり、当の本人は安全にキャモメの元へと辿り着き、背後から一撃を喰らわせたのである。

 

「キャモメ! まだやれるよね!」

「キャモォ……」

 

 そしてポッポは間髪入れずに上空から真っ直ぐにキャモメへと突進し、急降下によって更に加速したでんこうせっかを浴びせた。

 キャモメもこれには耐えられず目を回して倒れてしまった。

 

「キャモメ……!!?」

「やったぜポッポ! よくやった!」

 

 ポッポはそっぽを向く。

 が、ジャケはポッポがそうして油断している隙にボールに戻し、再びキバゴを繰り出した。

 ニシキはハハッと笑い、今までにないタイプのトレーナーに闘争心が湧き上がってきていた。

 

「じゃあ次で最後のポケモン。覚悟してよ!」

「はい! お願いします!」

 

 ジムトレーナーのニシキはオタマロを繰り出した!▼

 

「タマ」

「いきなりで悪いんだけど、オタマロ! ようかいえき!」

 

 ニシキのオタマロは水中から口をゴボゴボとさせながら、キバゴに近づいてきた。

 

「キバゴ! 今回は水中に降りるなよ! 雨はまだ止んでないから、みずタイプの攻撃はかなり痛い!」

「水に降りなくてもこっちから仕掛けちゃうからね!」

「えっ……!!」

 

 オタマロはその見た目に似合わず、かなりのスピードで地上へと移動し、キバゴにようかいえきを浴びせる。

 ジャケはキバゴにすぐ目の前にいるから「きりさく」様に指示を出すが、その頃には水の中に消えてしまい、また振り出しに戻ってしまった。

 

「なんだこのスピード……… 雨……… あっ!!」

「気付いたみたいね! そう、これは特性『すいすい』。ポケモンの特性を引き出して戦うのは私の得意分野よ!」

「くっ……!」

 

 これに関しては対応のしようがない。

 地上でもかなり厄介な「すいすい」ではあるが、水中に居られるとなると対処が難しい。

 そしてジャケの手持ちには天候を変えるポケモンがいない。

 

「このまま雨が止むのを待つか…… いや、相手はそんな事させてくれる訳ないし…… どうする……!!」

「オタマロ! みずのはどう!」

 

 水中から飛び上がってきたオタマロの口から水のリングが放たれる。

 素早い攻撃にキバゴも対応できず、まともに喰らってしまった。

 

「大丈夫かキバゴ!?」

「キバァ……!!」

 

 苦しそうなキバゴ。心配している暇はない。

 オタマロの追撃は止まらず、続いて繰り出してきたのは「エコーボイス」だった。

 

「バゴォォォォ……!!!」

「キバゴッ!!」

 

 このままではキバゴの身が持たない。

 あの雨が止まないままでは、オタマロの攻撃は素早い動きから放たれ、体力が削られ続けてなおのこと不利になる。

 

「………」

「それじゃあオタマロ! みずのはどうでフィニッシュ!」

 

 再び水中からオタマロが現れた。

 ── その瞬間であった。

 

「今だキバゴッ!! 近づけ!!」

 

 ジャケの指示で素早くオタマロの方へと移動するキバゴ。

 

「な、何をする気!?」

「そこだ!! ドラゴンクローッ!!!」

 

 みずのはどうを口から放とうとした瞬間、オタマロの頬にドラゴンクローが炸裂する。

 まんまと地面に打ち上げられてしまったオタマロ。

 そして空はあまごいが収まり、天気は晴れへと変わる。

 

「オタマロは必ず攻撃する際に外に飛び出なきゃいけない。俺のキバゴは真ん中から動かなかったから尚更当て難い。だとしたら狙うのはそこだと思ったんです」

「しかも晴れになる事まで見越して?」

「それは…… ははっ、偶々です」

「君は運にも恵まれてるのね! なら、オタマロ! これが最後よ! みずのはどう!」

「キバゴッ!! ドラゴンクローで押し切るぞ!!」

 

 オタマロが放つみずのはどうを放つと、それにキバゴはドラゴンクローで応戦する。

 それからキバゴは力を最大限に出し切り、みずのはどうを破壊し、ドラゴンクローをオタマロに喰らわせる。

 これによりオタマロは地面をゴロゴロと転がってニシキの足元まで行くと、目を回して戦闘不能となってしまった。

 

 ジムトレーナーのニシキとの勝負に勝った!▼

 ジャケは勝利の代わりにジムリーダーへの挑戦を認められた!▼

「あははっ! 君の強さな飲み込まれちゃった!」

 

 

 *****

 

 

 ジャケはニシキとの勝負に勝ち、たらい舟にてゴールに辿り着いた。

 これによりジャケはジム戦への挑戦権を手に入れた。

 

「ふぅ………」

「ジャケェェェェェェェェ!!! やったねぇぇぇぇぇぇ!!!」

「おぉ、アユ」

 

 アユが嬉しそうに跳ねている。

 その後ろをリタが付いてきて、ジャケに拍手を送る。

 

「おめでとう」

「ありがとうリタ」

「ポッポ、あなたの事を少しは認めてくれたかな」

「ホントッ!!?」

「うん…… まぁそれなりかな?」

「そうだよね……」

「でもきっと指示を聞く様になるわ。私も経験あるし」

「うん、頑張るよ」

 

 そしてそこにジムのスタッフがやってきて、ジャケに今日はもう帰るように言い渡す。

 バトルを何よりも重視するフィーリス地方は、ジムチャンレンジとジム戦は別として分けられている為、万全の状態で戦える様に次の日に行うのだ。

 

「それじゃあ今日はこの辺で」

「頑張ってよジャケ!!!」

「うん、アユも俺の後に頑張るんだぞ」

「わかってるよ! 明日は頑張るぞー!! おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

「おー!!」

 

 いざ、ジム戦へ─────!!!




ようやくジム戦です!!

次回、第11話「水のジム」

次回もよろしくお願いします!!


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第11話「水のジム」

皆さんご無沙汰してます。
それではどうぞご覧ください。


 次の日、ジャケとポケモン達は万全な状態でジムのロッカールームで待機していた。

 夢にまでみた初めてのジム戦。不安と緊張、期待と喜び。

「出番です」とスタッフに呼ばれ、胸の鼓動が更に大きく鳴り響く。

 

「行くぞ───」

 

 ロッカールームから出ると、眩しい光と共に観客達の声が割れんばかりに響き渡る。

 巨大なスタジアムに相応な広さのバトルコート。それを囲う様にスタンドには、大勢の観客が隙間なく並び、1人の少年のバトルを待ち望んでいた。

 ジャケが周りを見渡すと、手をブンブンと振るうアユを見つける。その隣に見知ったトレーナー達がジャケに期待の眼差しを送る。

 

「やぁやぁチャレンジャージャケくん。ジムチャレンジクリアおめでとう」

 

 彼に近づいてきた男はジムリーダー「マタイ」。

 彼がこの場に現れたということはいよいよバトルが始まる合図。周りもざわつき始めた。

 

「ありがとうございます」

「君のバトルは見させてもらったけど、正直言って───」

「………」

「─── 美しい。側から見れば中々に強引な戦法とも取れるが、君のバトルスタイルやトレーナーとしてのポケモンを信頼するという点で言ったら、まさに清らかな水。天然水。ミネラルウォーターとでも言うべきかな」

「??????」

「とにかく君は今まで会ってきたトレーナーの中でも違うってことさ。さ、そろそろ始めようか」

「あ、はい! お願いします…… 絶対に僕が勝ちますから!」

「はははっ! いいね。君のその自信、僕ほどではないが美しい……… では、見せてあげるよ。僕は水の様に変幻自在。この波を乗りこなせるかな?」

 

 両者互いに健闘を祈ると、立ち位置に戻り、モンスターボールを構える。

 使用ポケモンは3体。チャレンジャーのみ交代が許され、どちらか手持ちが全員戦闘不能になった時点で終了。

 そして始まる──── 最初のジム戦。

 

 ジムリーダーのマタイが勝負を仕掛けてきた!▼

 ジムリーダーのマタイはシェルダーを繰り出した!▼

 ジャケはキバゴを繰り出した!▼

 

「そのキバゴ気になっていたんだけど、通常とは異なるようだね」

「はい、昔から牙の部分が違ってて…」

「リージョンフォームとは違う新たな固体か…?…… なんだかより楽しみになってきたよ。急に悪かったね。さ、いつでも来てくれ」

「…… よしっ! キバゴ、きりさく!!」

 

 キバゴは鋭い爪を立てて、シェルダーに向かって走り出す。

 

「シェルダー! からにこもる!」

「シェッ!」

 

 シェルダーは指示の通り殻の中に閉じこもって身を固める。

 そしてキバゴの爪は硬い殻に当たり、キーンと全身に痺れる様な痛みが走った手をバタバタとさせてとても痛そうにしている。

 

「キ、キバァァァァァァァァァ!!!」

「わかるぞキバゴッ! 凄い痛いよな! 爪引っかかった時のグッてなるアレ痛いよな! でも頑張って耐えてくれ!!」

 

 痛みに耐えるキバゴの隙をつき、シェルダーが殻を開いて照準を合わせる。

 

「今だシェルダー! みずでっぽう!」

 

 勢いよく放たれたみずでっぽうはキバゴを捉え、大きく後退させる。

 更に体勢が立て直せないままのキバゴに、マタイは続け様に指示を出す。

 

「こおりのつぶて!」

 

 すぐに「こおりのつぶて」が放たれる。

 避けられる筈もなく、キバゴは弱点であるこおりタイプの技を受けてしまった。

 

「キ、キバァ……」

「これがジムリーダーか……!!」

 

 バトルを楽しみながらやる─── そう単純に思っていた。

 ただ改めて理解させられた。これがチャンピオンまでの壁である事を。

 

「…… 集中しろ」

「キバ?」

「今、俺は一歩踏み出したんだ。どういう立場でどこに立ってるのか……… ごめん、キバゴ。ここから本気で行くぞ!!」

「キバッ!!」

「キバゴッ! 地面に向かってドラゴンクロー!」

 

 キバゴは地面にドラゴンクローを浴びせる。

 辺りに砂埃が立ち、キバゴとジャケの姿が見えなくなった。

 

「ほう、目眩しかい? 美しい戦法だが、そこからどうする気だい? シェルダー! こおりのつぶてを3方向に飛ばすんだ!」

 

 こおりのつぶてが前方3方向に飛んでいく。

 マタイは耳を澄ませて集中する。

 

「……… キッ……」

「─── そこだな」

 

 僅かに掠めたのだろうか。キバゴの声が少しだけ漏れてしまう。

 マタイはその方角に指を刺し、美しく決めようと指示を出す。

 

「まずはこれで1WAVE終了かな? こおりのつぶて────」

「ドラゴンクロー!!」

「なにっ……!!?」

 

「こおりのつぶて」はキバゴを通り過ぎ、シェルダーの中身にドラゴンクローが捩じ込まれる。

 キバゴは砂埃と砂の落ちる音の中、ジャケの指示を聞こえ辛いながらもしっかりと聞き取った。

 声を出したのは敢えてそうするという指示。

 そして必ずマタイはキバゴに向けて 「こおりのつぶて」を放つ。

 その時、キバゴはジャンプしてそれを避け、ドラゴンクローを浴びせる。そういう作戦だった。

 

「…… ははっ、これはやられた」

 

 シェルダーは当たり所が悪かったのか、その一撃だけで戦闘不能となってしまう。

 湧き上がる歓声。キバゴとジャケは親指を突き立てて、まずは1度の目の勝利を喜び合う。

 マタイはシェルダーを戻すと、やれやれと首を振るう。

 

「参ったな。まさかシェルダーが一撃で流されてしまうとは…… いい作戦だったよ」

「ありがとうございます!!」

「さ、次のバトルだ。流れを変えよう、ウデッポウ!!」

 

 ジムリーダーのマタイはウデッポウを繰り出した!▼

 

「ウデッッッポォォォォォォォォォォォォ……… オォォォォォォォォ!!!」

 

 凄まじいほどやる気に満ちたウデッポウが繰り出される。

 それを見たジャケはキバゴを一度ボールに戻す。

 

「おや? チャレンジャーは交代可能だけど…… 一体誰を出すのかな?」

「こいつです! 行けっ! メラルバ!」

 

 ジャケはメラルバを繰り出した!▼

 

「メラルバ…… フィーリスのメラルバだね。この個体はブリーズタウン方面で捕まえることができる筈だけど…… 君はあの雪山に行ったのかい?」

「いえ、ターコイズシティで迷っていたところを捕まえたんです」

「まさか下山して来るとは…… 珍しい個体だ。どうやら君には美しい幸運の女神がついている様だ。僕ほどではないにしろ」

「あ、え、はい。じゃ、じゃあ行きますよ!! メラルバ、つららばり!」

 

 メラルバは「つららばり」をしなかった。

 

「メ、メラルバ?」

「メメメメメメメメメ……」

 

 ガタガタガタガタガタガタ。

 メラルバは身体を小刻みに揺らして前に一歩も進まない。

 

「お、おい! メラルバどうしたんだよ!」

「メラァァァァァァァァッ!!」

「うおぉ!?」

 

 そしてメラルバは涙を滝の様に流してジャケの胸へと飛び込んだ。

 

「おやおや…… もしかしてその子はバトル初めてかい?」

「そ、そうです」

 

 マタイは苦笑いをする。

 話によるとジム戦に来るトレーナーは大体最初にマタイの所に来る。

 それでバトルをあまりやったことのないポケモンは、怯えて戦わないことがある事を何度も見ているらしい。

 

「そのメラルバもバトルがあまり得意ではない様だね」

「そうなのかメラルバ?」

 

 メラルバは泣いている。流石に戦わせるのはまずいか。

 

「えっとこれ失格になります……?」

「いや、ジム戦の条件は3()()()()()()()()()。今ここで戦わなかったとしても条件は満たしているから戦闘不能扱いということになるかな」

「………」

 

 ジャケがメラルバを見ると、彼はとても悲しげな表情で見つめている。

 ポケモントレーナーとしてこの判断をするしかない。

 

「─── メラルバを戦闘不能でお願いします」

「いいのかい?」

「はい」

 

 この判断にメラルバは申し訳なさそうに俯いてしまうが、ジャケはメラルバを持ち上げて目線を合わせる。

 

「大丈夫だメラルバ。これから一緒に強くなってこうな!」

「メラァ……」

 

 ジャケはポッポを繰り出した!▼

 

 メラルバをモンスターボールに戻し、代わりにポッポを繰り出すジャケ。

 これで2vs2のバトル。数は同じだがポッポは指示通りに動かない。

 

「さぁここからが問題だぞ……」

 

 ジャケのジム戦の行方は─────。




続きます!!

次回、第12話「波乱のジム」

次回もよろしくお願いします!!


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第12話「波乱のジム」

皆さんご無沙汰してます。
それではどうぞご覧ください。


「ポッポ! 俺が援護するからな!」

「ポ」

「わかったって事でいいんだよなぁ!!?」

 

 相変わらずジャケのポッポはそっぽを向く。

 ジャケは彼が指示を聞かない事は重々承知しているので、指示ではなく援護という形でサポートに徹することにした。

 そしてポッポは空へと舞い上がり「でんこうせっか」でウデッポウに突撃していく。

 

「ウデッポウ、避けるんだ!」

 

 ウデッポウはマタイの指示通りに、ポッポの「でんこうせっか」をヒラリとかわす。

 次にポッポは「かげぶんしん」をし、自らの分身を数体作り出して、再びウデッポウの元へと突撃する。

 

「美しい小波…… だけどそんな小さな波じゃ僕は沈まないよ。ウデッポウ! 右から2番目! うちおとす!」

「ウデッポーーッ!!」

 

 見事に的中。

 本体のポッポに「うちおとす」が決まった。

 

「ポッ……!!」

「しまった! ポッポ!」

 

 ウデッポウの大きな爪は今尚ポッポを捉えている。

 照準があったままマタイは次の指示を出す。

 

「マッドショット!!」

 

 本来地面タイプの技は飛んでいるひこうタイプのポケモンには効果がない。

 だが、「うちおとす」を食らったポケモンは身体に岩が付着し、自重を支え切れなくなって落ちてしまうのだ。

 このお陰で地面タイプの技「マッドショット」をヒットさせることができた。更にこのマッドショットは食らった相手のスピードを殺すことができる。

 

「これで君のポッポの得意な空中戦は封じたよ」

「くっ……!!」

 

 こうもあっさりとポッポがやられてしまった。

 今の状態ではとても危険だ。ポッポに指示を出せなくとも、ポッポに注意するくらいはできる。

 サポートに徹しろ。

 

「ポッポ! お前ならまだ飛べるはずだ!」

「………」

「また攻撃が飛んでくる! その前に避けるんだ!」

「………」

 

 そしてポッポは「かげぶんしん」を行い、自分の分身を増やし始める。

 

「さっきと同じ戦法かな? トレーナーの指示がなければこういう事になってしまうんだよ。ウデッポウ! みずのはどう!」

「……ッポウ!!」

 

 ウデッポウの特性は「メガランチャー」。波動系の技の威力が上がるという特性だ。

 今のポッポがまともに食らえば大ダメージは避けられないだろう。

 威力の上がった「みずのはどう」が勢いよく放たれ、ポッポの分身が段々と飲み込まれていく。

 

「─── そうだ、ポッポ! 真ん中だ! 波動の真ん中を見ろ!」

「……」

「行くかどうかは…… お前に任せる!」

「………ポッ」

 

 それからポッポは翼をなんとか広げて飛び立ち、みずのはどうに勢いよく突っ込んでいった。

 

「これは中々予想外だ!」

 

「みずのはどう」はリング上に飛び出す技。リングは当然真ん中が開いており、通り抜けができる。ただ通り抜けると言ってもリングは回転しながら飛んでいく為、真ん中から侵入しようものなら巻き込まれて結局ダメージを受けてしまう。

 だが、このポッポはジャケの指示を聞いた訳ではないが、その賭けに乗ってみた。

「でんこうせっか」でリングの真ん中を引っ張られながらもギリギリで通り抜け、見事でんこうせっかをウデッポウに食らわせた。

 

「ウデッポォォォォ…!!」

「やるね…… ジャケ君」

 

 ウデッポウはすぐに体勢を立て直し、鋏を大きく開いて構える。

 

「ウデッポウ! みずのはどう!」

 

 再び「みずのはどう」を放つウデッポウ。

 ポッポはその攻撃を大きく旋回してかわし、翼で強い風を起こす「かぜおこし」を行う。

 ウデッポウは吹き飛びそうになるのを踏ん張って耐え続ける間にも、照準は決してポッポから外す事はない。

 

「ポッポ、気をつけろ! また飛んでくるぞ!」

「その通りだジャケ君! 『うちおとす』!!」

 

「うちおとす」の岩の塊がポッポ目掛けて放たれた。

 これは見事命中し、ポッポは空中から落下してしまう。

 

「ポッポ!!」

「ポッ…… ポッッ!!」

 

 すると、落下してる最中に突如ポッポの目が怪しく光出す。

 その瞬間、ウデッポウの身体は宙へと浮かび、ポッポが地面に落ちると同時にウデッポウも叩きつけられた。

 

「これは『ねんりき』…!」

「ポッポ! お前『ねんりき』も使える様になったのか!…… ポッポ?」

 

 ポッポは目を回して地面へと倒れていた。同じくウデッポウも目を回し、2匹共々戦闘不能となった。

 これによりスタジアムは更にヒートアップ。お互いの手持ちは1対1。最後のバトルだ。

 

「今までいなかったよ。ここまで美しく流れていない様で、しっかりと流れに身を投じているチャレンジャーは……」

「……? よくわかりませんけど、これが最後です! 全力でやりますよ!───」

 

 

 *****

 

 

「そういやポッポって『ねんりき』なんか使えたのか?」

「本来は使えない…… けど、あのポッポはフィーリスのポッポだから」

 

 観客席にてジョウト出身のオコゼは、自分の知るポッポとは違う技に驚いていた。

 そんな彼にリタはリージョンフォームのポッポについて説明をしている。

 

「ふ、ふえぇ…… ジャケさん、す、凄いね…… 私だったらこんなバトルで、できないよ……」

「ピンチをチャンスに変える…… 素晴らしいトレーナーさんですこと! さすがアユの幼馴染ですわね!」

「お、幼馴染関係あるのかな……?」

 

 メザシとスチルがそう話している横でアユは珍しく黙り、ジャケの戦いをじっと見つめていた。

 

「どうしたんですの? アユ?」

「……… え、うん!! どうしたのスチル!!」

「先ほどから静かになってましたので…… やはりご心配なられて?」

「ううん、そんなんじゃないよ!! ただ…… ジャケって凄いなって。私も負けてられないって思ったんだ」

 

 アユの目は輝いていた。幼馴染としてではなく、ライバルとして彼を見る目。

 そんな彼は相棒のポケモンを繰り出す───。

 

 

 *****

 

 

 ジャケはキバゴを繰り出した!▼

 ジムリーダーのマタイはガマガルを繰り出した!▼

 

「最後だキバゴ!! 全力のVバーストォッ!!!」

「キッッ─── バァァァァァァァァァァッッッ!!!」

 

 キバゴはVバングルから放たれたVエナジーを取り込み、その鋭利な牙にVバーストを発現させてオーラを纏う。

 

「…… やはりまだVバーストは()()()()のままだね」

「え?」

「おや? ジャケ君。君はVバーストの真の美しさを知らないのかい?」

「Vバーストの真の美しさ……?」

「無理もないよ。別に煽っているわけではないさ。ただ今から苦労すると思うよ。Vバーストの()()()…… 君は僕の荒波を乗りこなせるかな? ガマガル、Vバーストッ!!」

 

 マタイは髪をフサァッと靡かせると、Vバングルにモンスターボールを当ててチャージし、ガマガルにVバーストを発動させる。

 すると、ガマガルの口元に青色のがま口の形状をしたアーマーが形成される。キバゴの牙に纏うオーラとは違い、ハッキリとこれは武装していると言える。

 

「こ、これは……!!」

「これがVバースト本来の形さ。最初は皆、勘違いをするんだ。Vバーストは威力の塊、それを更に1箇所に凝縮し、より強固にする事ができれば、Vバーストはアーマー化する」

「アーマー化……」

「まぁでもこれは第1段階さ。更に美しさを極めることができれば……… おっと、話しはここまでにしよう。さぁ! 君の力を僕に見せてくれ!!」

「はい!! やってやろう、キバゴ!! きりさく!!」

 

 キバゴは牙にエネルギーを溜めて、強力なVバーストをガマガルに浴びせる。

 だが、ガマガルはアーマー化した口元でそれを容易に受け止めてしまった。

 

「えっ…!!?」

 

 ガキーン。

 という音が聞こえた。キバゴの牙は金属の様である為、この音がするのは別に不思議というわけではない。

 しかし、ガマガルの様なポケモンが硬い部分を有している訳がない。

 つまり本当にVバーストはアーマーとして機能しているという事になる。

 

「ガマガル! バブルこうせん!!」

「ガマッ!!」

 

 避ける間もなく、キバゴはVバーストによる威力が上がったバブルこうせんを食らってしまった。

 

「キバゴッ!!」

「バゴバゴッ!!」

「大丈夫そうだな…… よしっ! かみつく攻撃だ!!」

 

 キバゴはすぐにガマガルに飛びかかって噛みついた。

 ギリギリと音を出す程強く噛みついているが、ガマガルには全くと言っていいほど効いていない。

 やはりアーマーの部分は今のキバゴの力ではどうにもならないらしい。

 

「エコーボイス!!」

 

 耳が痛いほどの音量が至近距離でキバゴを襲った。

 それでもキバゴは怯まずガマガルから離れない。

 

「美しい……… だが、僕のガマガルはもっと美しいよ。エコーボイス!!」

「キバゴッ!! 一旦離れるんだ!!」

 

「エコーボイス」を食らうキバゴ。それでも尚も噛みつき続ける。

 ジャケはこの状況をどうにかしようとするが焦りを見せ、キバゴをただ見つめるばかり。

 そんなキバゴは彼に目を合わせ、自分は大丈夫だと言う様に瞬きをする。

 

「キバゴ……… ごめんな。お前を信じなきゃトレーナー失格だ──── やってやれキバゴッ!! ドラゴンクロー!!」

 

 キバゴはドラゴンクローをガマガルに何度も叩き込んだ。

 当然アーマー化しているので全くもって効いていない。

 

「何度やってもそれは壊れないよ。ガマガル、みずのはどう!!」

 

 ガマガルが口を開けた瞬間、キバゴはふわりと持ち上げられ、ちょうどガマガルの背後に移動した。

 そのままドラゴンクローをガマガルの背中に浴びせて見せた。

 すると、ガマガルは「みずのはどう」を放たず、背中の痛みで地面を転がる。

 

「えっ…… そうか!」

 

 焦ってこんな簡単なことも気づかなかった。

 勝ち筋が見えた───!!

 

「キバゴ!! かみつく!!」

 

 ガマガルは立ち上がり、キバゴの方を向くと同時に噛みつかれる。

 キバゴは飛びついた勢いを利用し、アーマーを噛みつきながら位置を調整する。

 

「ガマガルの腹にドラゴンクロー!!」

「キバァッ!!」

 

 Vバーストをしていないが、それは相手も同じこと。

 アーマー化もしていない隙だらけの腹をドラゴンクローが直撃した。

 

「ガマァッ!!」

「ガマガル!! そのままバブルこうせん!!」

 

 吹き飛んだ勢いを利用して、ガマガルは「バブルこうせん」を回転しながら放つ。

 1つ1つの泡が大きく、それが辺りに散らばってしまえば、避ける事は非常に困難だ。

 

「キバゴ!! 切り裂き続けろ!!」

「バゴバゴッ!!」

 

 キバゴは「バブルこうせん」をVバーストした牙で切り裂き続けて身を守る。

 その隙をついてガマガルはマタイの指示で「マッドショット」を放つ。

 

「しゃがめ!!」

「キバッ!!」

「今だ!! 突っ込めキバゴッ!!」

 

 マッドショットをかわしてガマガルに突撃するキバゴ。

 ガマガルはそれを迎え撃とうと構える。

 

「こちらに来させないよ!! ガマガル、一点集中でみずのはどう!!」

「ガマァッ!!!」

 

 今度の「みずのはどう」はリング上ではあるが、全体的に広がらずに最小限の大きさを保っている。

 このリングの穴はキバゴくらいのサイズではあるが、真ん中を通る事はまず不可能である。

 そのせいで大きく避けなければならない為、中々ガマガルの元へと進めない。

 

「まだだキバゴ!! お前ならやれる!!」

「キバッ!!」

「お前なら絶対に勝てる!!!」

「キバァッ!!!」

「勝つぞッ!!! キバゴォッッッ!!!」

「キバァァァァァァァァァッッッ!!!!!」

 

 すると、キバゴの牙のオーラは段々と形を変え、より大きく、より鋭利な形状へと変化し、遂にはアーマー化する。

 

「そんな… 美しい……!! 君は最高に美しいよッ!!!」

「キバゴッ!! 切り裂けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!」

 

 キバゴの牙は「みずのはどう」とぶつかり合った。

 みずのはどうの威力はやはりアーマー化したてのキバゴでは押されてしまう。

 だが──── キバゴの目は燃え上がり、アーマー化した牙は更にその上にオーラを纏う。

 

「こ、これは……!!!」

 

「アクスブレイク」

 キバゴの鋭利な牙から放たれる一撃はガマガルをアーマーごと切り裂いた。

 

「………」

「………」

「ガッ……マァァ……────」

 

 相手のガマガルは倒れた▼

 ジムリーダーマタイとの勝負に勝った!▼

「最高に美しいッ!!!!!」

 ジャケは賞金の代わりに勝利を手に入れた!▼

 

 スタジアムは湧き上がる歓声と拍手に包まれた─────。




以上です。
新技やVバーストが発展途上である等、これからの展開を期待させる様なお話しができたと思われます。
そして次回、めっちゃ怪しまれているアイビス財団接触致します。

次回、第13話「頂点からのタノミごと」

次回もよろしくお願いします!!

追記:新技アクスブレイク
ドラゴンタイプの技でオノノクス専用の技。なのだがジャケのキバゴは特殊なので初期段階から覚えることができる。相当な威力があり、確定で急所を狙えるが、牙の部分での直接攻撃なので、射程距離が短く範囲攻撃でもない為、命中率は低め。


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ヌシ編
第13話「頂点からのタノミごと」


皆さんご無沙汰してます。
それではどうぞご覧ください。


 湧き上がる歓声。止まらない拍手。

 ジャケとマタイはコート内の真ん中で互いに握手を交わすと、より一層スタジアム内にいる人々の熱が上がる。

 

「ジャケ君、ジム突破おめでとう」

「ありがとうございます。マタイさん」

「これはミズバッジだ。受け取ってくれ」

 

 ジャケはミズバッジを手に入れた!▼

 ポケモンリーグ挑戦まであと──── 7つ▼

 

「次のジムはトパーズエリアかな?」

「あ、はい。そうです!」

「…… という事はフィーリス地方を2周する予定なんだね。かなりの長旅じゃないか」

「俺はまだポケモン達と完全に心を通じ合わせてはいません。だから、この旅で少しでも仲良くなれればなって思ったんです。どんなに道が長くても、最後は必ずあの場所に辿り着きますから」

「あの場所─── ポケモンリーグの事だね。不思議と君なら成し遂げられると思ってしまうよ。君とポケモン。水の流れは一定ではなく、常に変化していくもの。君が彼らと心を通わせ、自らの思い描く姿に変化していく事を期待しているよ。改めておめでとう」

「はい! ありがとうございます!」

 

 再びスタジアムは歓声と拍手に包まれた─────。

 

 

 *****

 

 

「ジャゲェ"おべでどぉぉぉぉぉぉ"ぉ"ぉ"ぉ"………… おぉぉぉぉおぉぉぉぉんッッッ!!!!!」

「うるさいうるさい!!……でも、ありがとう!!」

 

 ジャケとトレーナーの一行は外も暗くなってきたので、ジャケのジム突破とトレーナー同士の親交も兼ねて、近くの広い宿にて大きなテーブルを囲んで皆で食事会をしていた。

 自分のことの様に大泣きするアユを宥めつつ、温かい食事を摂るジャケ達。

 アユが落ち着いた後、ジャケは今後について話し始める。

 

「アユは明日にはジムチャレンジか?」

「うん、そうだよ!! それでね!! その後はメザシとスチルと一緒にフィーリスを周る事にしたんだ!!」

「えっ、そうなんだ。でも、お前とじゃ2人は振り回されそうだなぁ……」

「ジャケは誰かと一緒に行くの?」

「パンクやオコゼはそういうのは性に合わないらしいし、リタも自由にやりたいって言うし…… まぁ俺も1人の方がいいかなって」

「えぇー!!! 絶対誰かと一緒に行った方が楽しいでしょ!!!?」

「前にも言ったけど、俺はポケモン達との仲を深めたいんだよ。そりゃ皆んなで旅するのは楽しいだろうけどさ…… アユの時だって断っただろう? 誘い」

「断れた……………」

 

 旅に出る前の前、アユはジャケと一緒に旅がしたいと叫び続けたが、ジャケは頑なに断り続けた。

 理由は彼の言った通りであるのだが、暫くの間は彼女のアプローチが凄まじかったという。

 

「で」

「で?」

「ジャケはどこ行くの?」

「俺もアユと同じでフィーリスを周るつもり。だから次に行くのはトパーズエリア」

「じゃあ!!! 2つ目のジム終わったらバトルしよ!!! 次は負けないから!!!」

「なら、マタイさんに勝ってくれよ。トパーズエリアで待ってるからな!」

「うん!!!」

 

 2人はそう約束を交わし、暫しトレーナー達と食事を楽しんだ後、気持ちの良いまま床に着く──────。

 

 

 *****

 

 

 朝。既に他のトレーナー達は身支度を済ませて出て行った後だった。

 スマホロトムにはメッセージが送られており、全員揃いも揃って「気持ちよさそうだったから起こさなかった」と入っていた。

 それほど疲れていたという事だろう。初めてのジム戦と様々なトラブル。疲労がない方がおかしいか。

 ジャケはバッグを背負い、帽子を被り、宿から出て眩しい日差しを身体全体に浴びる。

 

「───……ッッと… ふぅ」

 

 大きく背伸びをして、いざトパーズエリアへと向かおうとすると、男が1人ジャケに近づいてきた。

 その男はニコニコしながら「おいしいみず」を渡してきた。

 凄まじく怪しいし、少し怖い。

 そんなジャケの表情を察してか、懐から名刺を取り出してそれを見せてきた。

 

「私はポケモンリーグ監査役の『カイズ』と申します。いきなりで大変も申し訳ないのですが、一緒に来ていただく事は可能でしょうか?」

「ジャケです…… え、今からですか?」

「はい、今からでございます」

「…………」

「安心してください。私は別に怪しいものではございません」

「……………… ちなみにどこへ?」

「『アイビス財団』でございます─────」

 

 ─── 色々と怪しい男ではあったが、ジャケもかなり説明を受けてようやく聞き入れ、ターコイズエリアのマップ上の北側に存在する大きな建物「アイビス財団」に訪れる。

 アイビス財団はポケモンリーグと連動、協力関係にあり、この地方にVバーストを広めた。今ではフィーリス地方で2番目に地位の高い組織であろう。いや、1番と言っても差し支えはない。

 それ程までの権力と地位を有するアイビス財団。誰しもがそこへと就職しようと毎年何万と応募があるらしいが、ジャケからしたらあまり良い印象を受けない組織だ。

 

「………… ここか」

 

 タワー。フィーリス中が見渡せる程の大きな建物、アイビス財団。

 そう、アイビス財団はジャケの父親が勤めていた場所。そして、彼が亡くなった場所。

 母親がキバゴを連れてきたのもここからだった。何かと縁がある。因縁とも言った方がいいのか。

 そしてそれがなんの因果か、ジャケだけがここへと呼び出された。

 ジャケはカイズの後をついていき、エレベーターで最上階まで上がる。

 

「お連れしました」

「─── ご苦労様」

「それでは私は失礼します」

 

 そう言ってカイズは部屋を出て行った。

 部屋はかなり広く、周りはガラス張りで外が丸見え、ポツンと机と椅子、必要最低限のものが置かれている。

 その椅子に座る男。彼がアイビス財団の代表「ジマス」。

 

「よく来てくれた。私は君を歓迎するジャケ君」

「お久しぶりです…… あまり覚えてないですけど」

 

 ジマスは本当に若い。実年齢は本人曰く40代半ばとの事なのだが、誰がどう見ても20代前半にしか見えない。

 白いスーツを見に纏い、黄色の眼を光らせてジャケを歓迎した。

 とても清潔そうでかなり顔立ちが整っているが、ジャケはこの人物をあまり好いていない。

 

「……… わかっているさ。私たちが犯した罪は決して償えるものではない事。いくら謝っても謝りきれない」

「その件はもう大丈夫です。それより俺をここに呼んだのは何故ですか?」

「そうだね…… 率直に言わせて貰おう。君にはフィーリス地方存在する『ヌシ』を倒してほしいんだ」

「ヌシ……? ヌシってあのアローラとかにいる?」

「よく知っているね。そうだ。あのヌシポケモンの事だよ」

 

 ヌシポケモンは本に載っていたので、ジャケはその種類については知っていた。

 だが、アイビス財団からの頼み事を素直に聞けるはずもない。

 

「…… まず倒す以前にどうして俺なんですか?」

「君が適任だと思ったからだよ。この地方には己を高める為に別地方から訪れるトレーナー達が数多くいる。もしトレーナー達にこのヌシの存在を公表しては混乱を招く恐れがある。中でも信用をおけるのが、私たちアイビス財団に最も近く、最も関係性のある君だ。ジャケ君が1番適しているんだ」

「…… 他にも気になる点がいくつかあるんですけど……」

「─── ヌシは各エリアに4匹存在する。確認されたのはちょうどVエナジーが発見された頃だ。君も伝説のポケモン達については知っているだろう? ヌシ達は彼らの代わりをしていると言っても過言ではない。各エリアのポケモン達を鎮め、安寧を保つ為の… 謂わば生態系を守る為に必要なポケモンなんだ」

「そんなヌシ達をどうして……」

「突然、暴走を始めた」

「え?」

「理由はわからない…… だからこそ調査をしてもらいたいんだ」

「だったらもっと強いトレーナーがいるはずです。俺よりふさわしい人たちが……」

「先ほど私は理由はわからない…… と、言ったけど、不確定ながらも誰が犯人なのか目星はついているんだ」

「それって一体……」

「『バジル団』だよ。最近、世間を騒がせているね」

 

 ジマスはそう言うとワナワナと拳に力を込め始める。

 

「私はね、ジャケ君。ポケモン達を道具のように扱う彼らが大嫌いだ。彼らは財団職員達の調べによれば、非人道的な機械を用いてポケモン達を改造しているらしい。今回この様なことが起こったのも全て奴らの仕業だと私は睨んでいる」

「…………」

「わかっているさ。かなり危険なことくらいね。他のトレーナー達に頼みたいところだが、これでもし混乱を招けば事態はより一層悪化する。頼むジャケ君!! 私たちアイビス財団が全力でサポートし、君の安全は必ず保証する!! だからッ……… 救ってやってほしい… ポケモン達を……!!!」

 

 すると、ジマスは床に膝をつき、ジャケの前で深く沈んで頭を床に当てる。

 この人はこういう人だ。父の時もこの様にして謝っていた。好きではないが、この人は信用できる人なんだ。

 どんな立場であれ、どんなに恥だとしてもジマスは絶対に頭を並べない。

 

「私はポケモンを救える為ならばプライド、地位なんてどうでもいいんだ!! 頼む!! ポケモン達をどうかッッッ!!!」

「…………… わかりました。やっぱりジマスさんはいい人です。でも、俺はまだまだ未熟者です。勝てる保証はないですよ」

「ジャケ君の安全は必ず私たちが守り抜く」

「なら、少しだけ時間をもらえますか? 流石にこの状態ではあまりに無謀過ぎかなって……」

「それなら私たちはヌシ達に動きがあればジャケ君に伝えることにしよう。それまでジャケ君はジムを周ってくれて構わない。時が来たら君に連絡を入れる。時が来たらヌシの捕獲又は戦闘不能してもらう事。頼めるかい?」

「わかりました。それではよろしくお願いします。ジマスさん」

 

 ジャケは手を出す。

 ジマスはそれに気づいて立ち上がり、2人は固い握手を交わす。

 

「では、よろしく頼むよジャケ君……… あ、それとジム突破おめでとう。次のジムも頑張ってくれ。陰ながらだが応援させてもらうよ」

「はい、ありがとうございます」

 

 それからジャケが部屋から出ていくと、ジマスはため息を吐き、椅子に腰掛けてガラス張りの部屋から外を見る。

 そして手を組んで空へ願う。

 

「バジル団…… ヌシ…… 彼が強くなるまで待ってくれ─────」

 

 

 *****

 

 

「トパーズエリアは洞窟通らなきゃいけないんだよなぁ……」

 

 ジャケはターコイズエリアの雪山、ブリーズタウンがある場所に来ていた。

 流石に山の中は今では太刀打ちできないポケモン達がわんさかいる為、入る事はできないが、その近くに洞窟がある。

 そこを抜ければ隣のトパーズエリア及びマウントタウンが見えてくるはずだ。

 

「…… さて、色々やること増えそうだけど、その為にももっと強くなるぞ」

 

 気持ちを新たにジャケは新たなエリアへと向かう────。




人見知りさんから「カイズ」登場させて頂きました!!
長ーーーーーくお話ししましたが、要はヌシポケモン暴れてるので止めろってことです。また詳しい事はヌシポケモン戦時に!!
次回はまたジャケ君ですが新キャラ+新ポケモン追加の予定です。
安心してください。この次の次がアユちゃんです(?)

次回、第14話「僕らはカセキ堀りだ」

次回もよろしくお願いします!!


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第14話「僕らはカセキ堀りだ」

皆さんご無沙汰してます。
それではどうぞご覧ください。


 ターコイズエリアからトパーズエリアに続く洞窟内。トパーズエリアに行く為の唯一の道であり、他に侵入経路があるとするなら、山を登るか海を渡るかという中々厳しい手段を強いられる。

 ジャケの様にこうして洞窟内を通って目的地であるトパーズエリア、そのすぐ近くにあるマウントタウンを目指す事がほとんどだ。

 洞窟内は明るく、人がしっかり迷わないように矢印が描かれた標識が置いてある。ジャケは標識を頼りに洞窟を進む。

 

「よいしょっと……」

 

 暫く進んだジャケは一先ず休憩をしようと近くにあった岩に座り、リュックを下ろし、その中から携帯食料を取り出して食べ始めた。

 カ○リーメイトの様なもので味はフルーツ味である。頭の中で美味しいと4.5回くらいエコーが掛かった声が聞こえてくる、気がした。

 そうしていると目の前にあった池がブグブクと泡が立つ。

 

「ん…?」

 

 水から出てきたのはヒポポタスだった。

 ヒポポタスが水に入るなんて通常ならば自殺行為ではあるが、当然リージョンフォームのヒポポタスであるので水は平気だ。

 フィーリス地方のヒポポタスはみずタイプ。主に水辺に生息しており、鼻と目を水面から出し、外敵が近づいてきたら背中から水を勢いよく発射して撃退する。肌は乾燥しない様に陸地に上がると表面から水が分泌され、基本的にいつも湿った状態である。

 

「………」

「…………」

 

 互いに沈黙が続く。

 ジャケがゆっくりと携帯食料を口に運ぼうとした時、ヒポポタスはその食料をじっと見つめていた。

 

「もしかして、これ欲しいの?」

「ヒポッ!」

「じゃあ…… ほら、まだあるから食べな」

「ヒポポッ!」

 

 幸いこの携帯食料はポケモンも食べやすい様に工夫されている為、特に食べても害はない。

 リュックの中にあった食べ物はすっかりなくなってしまったが、ヒポポタスが喜んでいるのなら良しとしよう。

 ジャケは休憩を終えて立ち上がり、手を振ってヒポポタスに別れを告げようとした。

 が、ヒポポタスはジャケの後ろを付いて行き、全く離れようとしない。

 

「何だ? 俺と一緒に来たいとか?」

「ヒポタ!」

「えっ…… ホントに!? いいのか!?」

「ヒポォ!」

「じゃあこれからよろしく頼むよ、ヒポポタス!」

 

 ジャケはボールをヒポポタスに当てると、すんなりと入って、そのままボールはポコンという音と共に静かになる。

 

 やったー!ヒポポタスを捕まえた!▼

 

 新たな仲間を手に入れ洞窟を抜けようとしたその時、洞窟の壁をじっと見つめる20代くらいの女性がいた。

 すると、女性はリュックからハンマーとタガネという先が平べったい道具を取り出し、壁にタガネを当てて底をハンマーで叩き始めた。

 

「な、何してるんですか……?」

「………… あ、はい?」

 

 ジャケがそう問いかけると、女性は一旦を手を止めてジャケの方を向く。

 

「そこの壁に何かあるのかなって……」

「もちろんありますとも!!」

「うおっ!?」

「おぉっと失礼しました…… ここから化石の匂いがした為、今頑張って掘っていました!!」

「化石!? この洞窟にあるんですか!?」

「はい、そうですよ! この探索機を使って見つけたんです!」

 

 そう言って彼女は小型の化石探索機を見せてくれた。

 

「化石かぁ…… ロマンありますね」

「…っ!!! でしょう!!? ロマンありますよね!!?」

「えっ、は、はい……」

「化石は昔から今へのメッセージ! それを読み取ると心の中の何かが最高潮に昂るんです!…… いやぁ本当…… 化石はいいものですねぇ…!!」

「え、え〜と……」

「ここで出会ったのも何かの縁! わたくしはシーラ。トパーズシティから来たんですよ!」

「俺はジャケって言います。ターコイズシティでジム戦が終わって、今トパーズエリアに向かっていたんです」

「お、という事はあのバトルをした方ですよね!」

「見てくれてたんですか!?」

「ポッポが言う事聞かなかった方ですよね!?」

「あ、はい……………」

 

 何とも言えない認知のされ方だが、自分のバトルを観ている人がいるというだけでも嬉しい限りだ。

 ジャケが心の中でそう喜んでいると、急にシーラは探索機を凝視し、洞窟の壁を思いっきり叩き始めた。

 

「ここです!!ここぉ!!!」

「ちょ、ちょっと!?」

 

 こんなに荒ぶっていて大丈夫なのかと思ったが、そこは流石に化石好きと言った所か。表面だけは粗く削り、その後は慎重に丁寧に掘り進めていった。

 ゆっくりと過ぎる時間にジャケが少々あくびをしていると、シーラは「ありました!」と大きな声で、それでいて嬉しそうに壁から何かを取り出す。

 

「見てください、これ!!」

「これが化石ですか……?」

「はいはい!!」

「まるでキバゴ…… あぁ、いや、オノノクスの牙みたいな……」

 

 その化石はオノノクスの牙のように、斧の形をしており、今まで見たこともないタイプの化石であった。

 

「これあなたにあげますよ」

「あぁ、どうも………… えぇっ!? いいんですか!?」

「ここであったが何かの縁です! 是非是非もらってください!」

「ありがとうございます! それでこの化石は────」

「ロ・マ・ンですよ! ロマン! 今聞いてしまったらトパーズシティに着いた時の楽しみがなくなってしまいます!」

「そうですね……」

「本当は復元装置なるものを持って来たかったのですが、居ても立っても居られず家に置いてきてしまったというのもありまして…… まぁ、とにかく! またいずれお会いしましょう! 今度はライバルとして!」

「え? あ、はい!!」

 

 そう言って彼女は頭を下げて洞窟の外へと出ていった。

 ジャケも仮名で「おののかせき」という化石をリュックにしまい、洞窟の外へと出る。

 空は快晴。眩しい光がジャケを包む。

 

「ここがトパーズエリアか……」

 

 ジャケが洞窟を通って出た場所は少し高めの山であり、そこからトパーズエリア全体が見渡せる。

 ターコイズエリアとは違い、岩山が多く、全体的にオレンジ色っぽい風景で、奥の方にそれとは別の大きな街が見える。あれがトパーズシティだろう。

 あそこに行くまでに、今いる場所から見下ろした所にあるマウントタウンが1番近い。

 そろそろ日が暮れてる頃合いなので、そこで一旦宿に泊まり、色々買い揃えてトパーズシティに向かう予定だ。

 

「アユも後から来るだろうな……」

 

 アユのジム戦の心配をしつつ、ジャケは山を降りる─────。

 

 

 *****

 

 

「がっだぁぁぁあ"ぁ"ぁ"ぁお"ぉ"ぉ"ぉ"…!!!!!」

「やりましたわね!」

「す、凄かったよ……」

 

 ジャケ同様に大勢の観客から拍手や歓声が湧き上がり、アユも何とかジムを突破し、バッジを獲得したのであった。

 その後、アユはメザシとスチルの2人と共に旅を始める。向かうのはトパーズエリアだ。

 

「今度行くトパーズエリアはスチルのお家だね!!!」

「……」

「どうしたの?」

「……… あ、いえいえ、何でもございませんわ」

「んんー?」

「えっと、そ、そうですわ! これから3人の旅始めという事で少しお茶でもいかがかと!」

「いいね!!!!!」

 

 外も暗くなってきているので、トパーズに続く洞窟前ではあるが野宿する事にし、テキパキと皆で力を合わせてテントを建て始める。

 ようやくひと段落し、焚き火の準備をしようとする─────。

 

 ビュオオオオオオオオオ…………。

 

 突然、強風が吹く。危うく物が飛ばされるところであった。

 

「な、何かな…… いぃ、今のって……」

「あれ…………」

 

 アユだけが()()を見た。

 雲の隙間からちらりと見えた巨大な鳥。それはどのポケモンとも似つかない姿をしている。

 図鑑で見たことがある。それも古めの図鑑。

 

「フォーゲイル……?」

 

 それはすぐに見えなくなった。

 アユはターコイズを救ったとされる伝説のポケモン「フォーゲイル」の姿を見たのだった。

 最近、やたらと風が強まってきている気がした。気のせいであればいいのだが。

 

「アユ?」

「…… うん!! 何でもないよ!! スチルもメザシも早くご飯作ろう!!!!」

 

 何か不吉な予感を感じつつも、アユはスチルとメザシと共に夕食を食べ始めた────。




煎緑茶さんから「シーラ」でした!
次の回はアユパートです。
もう少し長めの尺を取りたいところですが、時間ないので今回短めに終わってしまいました。
次回は長めにやれたらいいなと思いました(コナミ)

次回、第15話「カップルなのかそうなのか?」

次回もよろしくお願いします!!


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第15話「カップルなのかそうなのか?」

皆さんご無沙汰してます。
それではどうぞご覧ください。


 一生元気なアユ。と、彼女の介護に追われる仲間2人スチルとメザシ。

 彼女たちは今日も愉快に旅をする。

 

「トパーズエリアまだッ!!!!!??」

「この洞窟を潜ればすぐですわ」

「ジャケはもうここ通ったのかな?」

「えぇ、もうそろそろトパーズシティに着く頃ではないかと思いますわ」

 

 アユに振り回されながら洞窟を抜け、トパーズエリアに着くと、そこから1番近くにあるマウントタウンに降りる。

 そこで買い物を行い、そのままトパーズシティに向かうか、ここで一旦宿を取ってからゆっくりと進む事にするか話し合っていた。

 すると、近くで怒号が聞こえ始め、アユ達は驚きつつもそこへ向かう。

 

「……ったく!! しつこいんだよお前ら!!」

「そっちの嬢ちゃんに用があるんだ。彼氏は黙って失せな!!」

「か、彼氏じゃねぇよ!! 失せるのはお前らだ!!」

 

 どうやらチンピラに絡まれているようで、チンピラと言い争う少年の後ろに、とても可愛らしい少女がアワアワとして彼らを止めようとしていた。

 その間にいきなりアユが腕を交差させて飛び込んだ。

 当然、スチルとメザシ、それから少年少女チンピラまでも驚いて目を丸くする。

 

「な、何だテメェ!!?」

「私はアユ!!」

「知らねーよ!! 俺はこいつの後ろにいる嬢ちゃんに用があるんだ」

「私も嬢ちゃんだよ!!」

「だからなんだよ!!」

「なんだよ!!!!!」

「いや、本当になんだよ!!!!?」

 

 アユがチンピラと言い争いをしていると、先ほど少年の後ろにいた少女が話しかけてきた。

 

「あの〜…… すみませ〜ん…」

「大丈夫!! 私が守ってあげる!!」

「あ、ありがとうございます。助かりま────」

「そんなこの子が欲しいならポケモンバトルだ!!!!! 負けたら貰っていけッ!!!!!」

「私の事を勝手に賭けないでもらえます!!!?」

 

 何だかよくわからない少女に絡まれ、一瞬気が抜けそうになったチンピラだが、彼は仲間を4人呼び、モンスターボールを取り出した。

 

「よーし、スチル!! メザシ!! 行くよ!!」

「えっ!? わ、わかりましたわ!!」

「い、いきなりが、す、すすす過ぎるよ〜〜〜!!!」

 

 チンピラが勝負を仕掛けてきた!!▼

 チンピラはホルビーを繰り出した!!▼

 アユはコソクムシを繰り出した!!▼

 

「コソクムシ頑張るぞ────」

「コソッ!!」

「───── ぐはっ!!!」(ぐはっ(ぐはっ(ぐはっ(ぐはっ

 

 突然コソクムシがアユの懐に飛び込んできて、アユの声にエコーが掛かり、くの字に曲がって吹っ飛ばされる。

 チンピラも唖然とし、アユは腹を押さえながらゆらゆらと立ち上がる。

 

「何するのコソクムシ!!」

「コソク!!」

「まさか……… 気合いを入れてくれたの?」

「コソッ!!

「コソクムシッ…!!」

 

 アユとコソクムシは抱き合い、互いに涙を流す。

 

「あ、え、は?????」

「よしっ!! 気合いバッチリ!! あいつを倒すよコソクムシ!! むしのていこう!!」

 

 コソクムシの「むしのていこう」。虫タイプの力が放射され、ホルビーの全身にヒットにする。

 が、ホルビーは全く動じずに立っていた。

 

「………………」

「コソクムシ効いてるよ!!!!!」

「ホルビー!! マッドショット!!」

 

 そしてホルビーはスコップの様な耳を使って地面を掘って泥団子を作ると、それをコソクムシに向かって思いっきり投げてきた。

 マッドショットの速さに対応できず、コソクムシは避ける間もなく喰らってしまう。

 コソクムシは─────倒れた。

 

「コソクムシィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!」

「えぇ……」

 

 アユはコソクムシをボールに戻し、次のポケモンを繰り出す。

 そのポケモンはミガルーサ。アユのタックルによりゲットされたポケモンである。

 

「ミガルーサか…… へっ、そんな魚なんて俺のホルビーで1発だぜ!!」

「ミガルーサ!! アクアカッター!!」

 

 指示を受けたミガルーサは凄まじいスピードでホルビーに近づくと、鋭いヒレに水エネルギーを纏い、重い斬撃をホルビーに浴びせる。

 その一撃にホルビーは吹っ飛ばされ、一撃でダウンしてしまった。

 

「ば、バカなッ!!?」

「やったねミガルーサ!!」

 

 このミガルーサ。本来ならばあの時点で入手する事は不可能なレベルであった。マタイ戦でも彼女のミガルーサは、その圧倒的力を見せつけて勝ったと言ってもいいだろう。

 更に隠れ特性である「きれあじ」を有している為、今の様な斬撃系の技の威力を大幅に上げることができる。

 なら何故このミガルーサは彼女の言う事を素直に聞くのか。それはミガルーサ自身強者である為、自分より強者であるアユ、つまり彼女を認めた事によってレベル差があれど指示を聞くのだ。

 認めたというよりも、彼女の何かが恐ろしい為、仕方なく指示を聞いているという部分もある様だ。

 

「な、なんて強さだ…… だが、次のポケモンはどうかなぁ!!?」

 

 チンピラはホルビーを戻す。

 チンピラはハスブレロを繰り出した!!▼

 

「タイプ相性はこっちの方が有利だぜ!! ハスブレロ!! はっぱカッター!!」

「ハブッ!!」

 

 ミガルーサにハスブレロの「はっぱカッター」が飛んでいく。

 しかし、アユはいつもより真面目な表情をして指示をし、ミガルーサはそれによって的確に避ける。

 

「な、なにぃ!!?」

「ふっ…… まだまだだね」

「こいつぅ…!!!」

「ミガルーサ!! みをけずる!!」

 

「みをけずる」とは文字通り身を削る事。体力を半分捨てる事になるが、代わりに攻撃力や素早さを大きく上げられる諸刃の剣。

 ミガルーサは己の肉を外し、サイコパワーと骨だけの身体となる。

 

「痩せちゃったよお"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ"!!!」

「刺身にしてやれ、ハスブレロ!! グラススライダー!!」

 

 くさタイプのエネルギーを固めて、まるでサーフボードの様な形状にし、その上に乗ってサーフィンをするが如くミガルーサの元へと突撃する。

 

「あのボードに『つじぎり』!!」

「ガルーサ!!」

 

 ミガルーサはハスブレロが突撃してくるタイミングに合わせ、草のボードを切り裂いた。

 バランスを崩すハスブレロ。ミガルーサは既に攻撃体制をキープしている。

 

「決めるよ!! きりさくッ!!」

 

 凄まじい速度と攻撃力。単純だが今のミガルーサから放たれればその威力は効果抜群。

 縦にバッサリとハスブレロは切り裂かれる。

 ハスブレロは目を回して倒れてしまった。

 

「ば、バカなァァァァァァァァ…………」

 チンピラとの勝負に勝った!!▼

 アユはドヤ顔をした!!▼

 

 

 *****

 

 

「─── 助かった。俺は『ノボリ』だ…… ま、よろしく」

「ノボリさん! 助けてもらったんですからもうちょっと…… あ、私は『ヤマメ』です。よろしくお願いします」

 

 先ほどチンピラに絡まれていた彼らはノボリとヤマメという名前らしい。

 2人はそれぞれカントーとイッシュ地方から訪れたようで、フィーリスに着いた時に先ほど同様にチンピラに絡まれていたヤマメを、ノボリが助けてくれたことをきっかけに旅を共にするようになったという。

 互いに自己紹介を終えた5人。ヤマメは見た目通りしっかりもので言葉遣いも綺麗であるのに対し、ノボリという少年は目つきが鋭く、態度もあまり良いとは言えない。

 

「ノボリさん、少々目つきが悪いのであの様に絡まれたりするんです…… 今回は私が要因でそうなったのですが……」

「ふん、まぁ1人でもやれたけど、とにかくお前たちがいて助かったのは事実だ。ありがとよ」

「素直になってくださいよ! 全く……」

 

 その時、アユの目はヤマメを捉えていた。

 彼女がノボリを見る目。少し赤みがかった頬。なんだかんだとわかっている感じの対応。

 これはまさしくそうだと、アユの脳はフル回転をし始める。

 

「ヤマメってさぁ!!!!!」

「はい?」

「ノボリの事が好───────」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」とスチルとメザシが同時に、まるで打ち合わせをしたが如くアユの口を塞いだ。

 ノボリは気づいていないようで、頭の上に?が出ているが、一方のヤマメは顔を真っ赤にしてアワアワと狼狽えていた。

 

「ダメですわ、アユッ!!!!!」

「こ、こういうのは、く、くくく空気を読まなきゃッ…!!!!!」

 

 2人が血相変えて話すもので、流石のアユも自らの口を塞いで喋らないようにした。

 

「んもっふふもももぐも!! んんんもふはもん!!」

「え……???」

「─── ぷはぁっ! とにかく私は察したよ!! 頑張れっ!!!」

「そ、それはぁ……」

 

 再び顔を赤らめるヤマメ。

 これ以上はまずいとスチルとメザシに抱えられ、アユは引き摺られていく。

 

「また会おうねっ!!!!!」

 

 アユは引き摺られながらも手を振って彼らと別れた。

 

「……… な、何だったんだあいつら」

「愉快な人たちでしたね…… あ、そういえば連絡先聞くの忘れてました!」

「別にいいだろ? またどうせどっかで会うかもしれないしよ」

「多分一緒の宿を予約しているはずですので、そこでもし会えたら交換という事にしましょう!」

「…… はぁ、わかったよ。お前がそういうなら任せる」

「ふふっ」

 

 2人もそれに続くように宿を目指す─────。

 

 

 *****

 

 

「ありがとうございます。こんな頂いちゃって」

「いや〜、気にしなくていいんだよ〜。共に旅するもの同士。助け合うのが普通さ〜」

 

 ジャケはマウントタウンを出た後、道中でキャンパーの男性と出会った。髪が長く、一見女性のように見え、名前も「ミズハ」であるから余計そう見える。

 偶々出会って話をする中で、ジャケがジムチャレンジャーという事もあってたか励ましも込めてこうしてキャンプを共にやらせてもらっている。

 

「これからトパーズシティだろ〜? あそこのジムリーダーは聞いたところによると攻撃力が凄まじいらしいよ〜」

「攻撃力?」

「あぁ、防御なんて捨ててるようなもんさ〜。攻撃は最大の防御を体現しているジムリーダーだね〜」

「……… これはまた苦労しそうだけど────」

 

 今回はフィーリスの姿のヒポポタスという強い味方を手に入れた。次のジムはほのおタイプ、みずタイプのヒポポタスなら優勢にバトルを進めることができるはずだ。

 ジャケが次のジム戦に向けてワクワクしていると、スマホロトムに着信音が鳴り響く。

 急いで電話に出てみると、ビデオ通話のようで画面にはライキョウ博士が映し出されていた。

 

「ラ、ライキョウ博士!? 久しぶり!」

「あぁ、久しぶりじゃな。ジャケ」

「急にどうしたの?」

「ジマスから話は聞いてるな?」

「あっ───── 例のヌシの件?」

「そうじゃ、ちょうどお前さんの近くに反応が出た。座標はこちらから送る。すぐにでも向かってほしいんじゃが…… 今は大丈夫かの?」

「大丈夫! 行けるよ!」

「そうか、頼むぞジャケ! ポケモンたちを救ってやってくれ」

「うん、それじゃあ切るよ」

 

 ジャケはリュックにテキパキと物をしまい、ミズハにお礼を言う。

 

「ありがとうございました! 俺、急用できちゃって……」

「いいよいいよ〜。僕は自分ペースがあるからね〜。君にも君のペースがある。止めやしないさ〜。行ってきな〜」

「はい、それじゃあ失礼します!」

 

 

 *****

 

 

 そしてジャケが向かう先は、トパーズシティから少し離れた場所にある洞窟。

 その奥地にヌシが潜んでいるらしいが───────。

 

「ん?」

「これがフィーリスの伝統なのね…!!!」

 

 見ると、少女が突起した岩から、綺麗な噴水のように噴き出しいるそれを見て、何か感動しているようである。

 

「君、ここの地方じゃないよね?」

 

 少女の服は和服と言った方がいいのだろう。現代のものではないのは確かである。

 

「うん、私はシンオウ地方から来たの!」

「俺、ジャケって言うんだ。ここの地方出身だよ。君は……」

「私は『ミナミ』! よろしくね!」

「……… そうだ。ここであったのも何かの縁だし、暫く俺と行動しない? ここら辺結構危ないしさ」

「いいよ! 私も村を初めて出たものだから、右も左もわからないくって全部新鮮で……」

「村を初めて出た……? ちょっと詳しく聞かせてよ」

「もちろん! 私はね─────」

 

 本来ヌシは極秘なのだが、ヌシが近くにいる以上彼女が危険に晒されてしまうため、ジャケは独断でミナミと行動することを決めた────。




LEGION ONEさんから「ノボリ」&「ヤマメ」でした!
一般通過案山子さんから「ミズハ」でした!!
tamu9673さんから「ミナミ」でした!
何度も言って申し訳ないんですが、2周目(ジム戦4つ終わって5つ目突入辺り)から活躍致しますので首をリキキリン以上に長くして待っていて貰えればと思います!!

次回、第16話「ヌシの脅威」

次回もよろしくお願いします!!


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第16話「ヌシの脅威」

皆さんご無沙汰してます。
それではどうぞご覧ください。


 ジャケはミナミと共に洞窟の中へと入っていく。

 中は意外にも人間の手が加えられており、至る所に灯りが設置されている。そのお陰で比較的視界は良好で、少しばかり広くてもまともに歩くことができる。

 道中、ジャケはミナミと自らの出身について話していた。

 

「─── タウンマップに存在しない森…… ミナミは凄いところから来たんだね」

「シンオウ地方は昔ヒスイ地方って呼ばれてて、私は村でヒスイの歴史について学んでたんだ。その村はね。ヒスイ地方と大きな関わりがあるから、私のポケモン達はみんな村の近くで捕まえたの!」

「そんな昔のポケモンがいるのか…… なら、その村の事って人に話しちゃダメなんじゃ……」

「本当はダメだよね…… でも君ならいいかなって! それにフィーリス地方から来た博士も村のこと知ってたし、君がその博士と知り合いなら尚更大丈夫だよ!」

(ライキョウ博士…… なんで博士がその村に……)

 

 ミナミが外に出てきたのも、ライキョウ博士が村を訪れ、外の世界について聞いた事がきっかけになったという。

 しかし何故、フィーリス地方のライキョウ博士が村の存在を知っており、その村を訪れたのか。それについてミナミに聞いたが、彼女は「見聞を広める為」と言っていた。

 何か重要な事でもあったことは間違いないが、それについては直接ライキョウ博士に聞くことにしよう。ジャケはそう思った。

 

「それじゃあミナミ。本題に入るんだけど、今から俺、この洞窟の奥にいるポケモンと戦わなきゃならないんだ」

「え?」

「……… ミナミに色々と聞いておいて内緒にしててくれって言うのも勝手なんだけどさ……」

「いいよ全然!」

「あ、いやまだ何も……」

「話したくないならいいよ! こんな所に来るなんてきっと事情があるんでしょ? それも人には言えないような…… なら、無理に聞く必要もないし、私がそれについて聞くことの方が勝手でしょ!」

「ミナミ…… うん、ありがとう………」

 

 ジャケはミナミを途中まで一緒に連れて行き、何かあればすぐにでも引き返そうと思っていた。

 だが、彼女はジャケが何かをする事について咎めるどころか、納得して聞かずにいてくれるというのだ。

 秘密すらも話すミナミと秘密を守ろうとするジャケ。

 ジャケは少し考えた後、ミナミに今自分が置かれている状況について話した。

 

「─── という事なんだ。ごめん。これ以上、ミナミを危険に晒すことはできない。だからすぐ戻って───」

「そのヌシっていうのは1人で勝てるの?」

「うーん……」

「なら、私も一緒に行くよ! 秘密を話した仲なんだから、君が1人で抱え込む必要ないって!」

「女神か?」

「ミナミだよ?」

「そういう事ではないけど…… ははっ、ありがとう。じゃあ一緒に戦ってくれ、ミナミ」

「任せておいて! バトルはまあまあ得意な方だから!」

 

 それからジャケ達は洞窟の奥へと迷う事なく歩みを進める────。

 

 

 *****

 

 

 暫くして洞窟の奥へ辿り着くと、そこには大きな空間が広がっており、洞窟内にないはずの草木が生い茂っていた。

 不思議な事にポケモンが1匹もおらず、静かな空間があるだけだった。

 

「ここが奥地……」

「…… ジャケ、なんだかここ怖いよ」

 

 逆にその静かさが不気味だった。

 ジャケとミナミが草木を掻き分けて奥へと進んでいくと、また空間があり、そこだけ地面に草が少しだけ生え、周りとは違って整っており丸く区切られている。

 そこはまるでバトルコートの様だった。

 

「ミナミ、構えて」

「え?」

 

 すると急に洞窟内が揺れ出した。

 奥からズシンズシンと音を立てて、草木を踏みつけ、大樹がゆらゆら揺れながらこちらに近づいてきている。

 明らかに通常種よりひと回りもふた回りも大きい。

 これがヌシか─────!!

 

「ドダァァァァァァァァァァァァイッッッ!!!!!」

 

 ヌシポケモンのドダイトスが勝負を仕掛けてきた!!▼

 ジャケはキバゴを繰り出した!!▼

 ミナミはヒメグマを繰り出した!!▼

 

「デカいな…… 勝てる気がしないや」

「私も今まで見たドダイトスで、こんな大きいの初めてだよ」

「………」

 

 ドダイトスの目が赤く光、血走っている。

「突然、暴走を始めた」とアイビス財団の代表ジマスがそう言っていたが、確かにこのドダイトスは先ほどから叫んでいる。それも苦しそうに。

 

「とにかく今は弱らせよう!」

「う、うん!」

「キバゴ、きりさく!」

「ヒメグマ、みだれひっかき!」

 

 2人のポケモンの技をドダイトスに食らわせる。

 だが、ドダイトスは全く怯む様子を見せず、地面を踏み鳴らし、「じしん」を起こす。

 キバゴとヒメグマは必死にそれを躱すも、広範囲の攻撃を躱し続けられるはずもなく、地面が形を変えて彼らに襲い掛かった。

 

「キバゴッ…!!」

「ヒメグマ!!」

 

 2匹とも弱点ではないが、あまりにも強烈な攻撃に既に「ひんし」間近と言った所か。

 これがヌシポケモンとの戦力差。

 

「たったの一撃で……」

「思っていたよりまずいかも」

「持っているポケモンを全部出そう!!……… それでも勝てるとは思わないけど」

「やってみるしかないよね! いいよ!」

「よしっ! みんな出てこいッ!!」

 

 ジャケはポッポ、メラルバ、ヒポポタスを繰り出した!!▼

 ミナミはアヤシシ、バサギリ、バスラオ、ワシボン、ガーディを繰り出した!!▼

 

「ポッポ!!…… は、空を頼んだ!! メラルバぁ…… は、つららばり!! ヒポポタスはみずでっぽう!! キバゴはアクスブレイク!!」

「えっ、なんか指示が……… とりあえず私たちも────!!

 

 互いのポケモン達が総動員してヌシドダイトスに技をぶつける。

 流石のヌシドダイトスも数で押される事には対応できず、反撃の隙を与えないまま攻撃を喰らい続ける。

 

 プルルルルルルッ。

「─── ん?」

 

 スマホロトムに着信が入る。この状況で出るのは難しい所だが、ロトムが状況を把握してくれて目の前に出てきた。

 電話の相手はジマスだった。

 

「ジマスさん!?」

「どうやらもうヌシの所にいる様だね。今そっちに強力な助っ人を送った」

「強力な助っ人……?」

「あぁ…… ん? 待ってくれ、その隣にいる子は……」

「これには深いわけがありまして……」

「いや、そんな事は気にしないよ。元々1人でやろうなんて事が無理難題な訳だ。だからこそ君が成長する為、そして君自身に新たな可能性を見てもらう為、私は彼を呼んだ」

「彼?」

 

 バサリとジャケの後ろから何かがはためいた音が聞こえる。

 振り返るとそこには仮面をつけた男が立っていた。

 それはジャケの憧れであり、夢でもある存在。会うのはこれが初めてだ。まさか会えるなんて思いもしなかった。

 

「待たせたジャケ君!! もう安心したまえ!!」

「あなたは……… まさかっ!!?」

「実名、実年齢、素性を後悔したくないから全く公開しない、通称仮面のチャンピオンッ!!! 見参ッ!!!」

「チャ、チャンピオン!!!!??」

 

 フィーリス地方で圧倒的強さを誇り、四天王でも太刀打ちができないと言われているフィーリス地方のリーグチャンピオン。「仮面のチャンピオン」。

 名前を一切公開しない為、いつも仮面をつけているからと仮面マンとか名前を付けられる始末。

 実際に呼ばれる事が多いのは仮面のチャンピオンである。

 

「まぁここは任せておきなよ。君たちのポケモンは下げてもらって構わない」

 

 ジャケ達は言われた通りポケモンたちを戻した。

 まさか生でチャンピオンの戦いが見れるとは思わなかった。ジマスはその為にも彼を呼び出したのかもしれない。

 ジャケの成長する機会。大きな戦いをその目に焼き付けさせる為に。

 

「さぁドダイトス。大人しくしようか」

 

 仮面のチャンピオンはレントラーを繰り出した!!▼

 

「レントラー!? 相性悪いんじゃ……」

「これがチャンピオンさ。よく見ておくんだ。レントラー─── 『こうそくいどう』

「レェンッ!! 」

 

 その瞬間、まるで雷の様なスピードでレントラーがこの場から消え去った。

 そして次に姿を現した時、あの巨大なヌシドダイトスがひっくり返って倒れていた。

 ヌシドダイトスも何があったのかわからない様子だ。

 

「こうそういどうで脇腹に移動して、つじぎりを浴びせたんだ」

「あの一瞬でッ……!?」

「さぁ次が来るぞ」

 

 ヌシドダイトスはその大きな身体を揺さぶり、その身体に光を溜め始める。

「ソーラービーム」の態勢だ。

 

「あんな巨体がソーラービームなんて撃ったら……!!」

「あぁ、この洞窟の中は崩れ落ちてしまう。そんな事になれば我々も逃げる事が不可能になる」

「じゃあどうするんですか…?」

「こうするんだ…… レントラー、受け止めろ」

 

 この人は何を言っているんだ。真正面から受け止めるだと?

 流石にチャンピオンと言えど、それはあまりにも無謀過ぎる。

 

「ワイルドボルト!!」

 

 レントラーはでんきエネルギーをその身に纏い、バリバリと音を立てながらドダイトスに突っ込んだ。

 その瞬間、ヌシドダイトスの大きな口からソーラービームが放たれる。

 ──── が、ソーラービームは一瞬にして散りとなった。

 

「今だレントラー!! ほのおのキバッ!!!」

「レントラァ!!」

 

 レントラーがヌシドダイトスの口に噛みつき、そのまま身体を捻ると、驚いた事にあの巨体がふわりと浮かんで地面に叩きつけられたのだ。

 

 ヌシドダイトスとの勝負に勝った!!▼

 

 先ほどジャケはヌシとの圧倒的戦力差に驚いたが、今改めて理解した。チャンピオンという存在はヌシよりも遥か先にいるんだと───。

 

「あれが……… 俺の目指す場所か………」

 

 初めてのヌシ戦はまさかの助っ人によって、誰も犠牲が出ることもなく幕を閉じた──────。

 

 

 *****

 

 

 洞窟内は少人数だがヌシドダイトスを回収する為、色々な機械が導入され、なんとか捕獲に成功した。

 その後、洞窟を出たジャケとミナミは互いに秘密を守ることを約束し、連絡先を交換した後に別れた。

 そのやりとりが終わった後、仮面のチャンピオンが近づいてきた。

 

「お疲れ様。どうだったかな?」

「全く歯が立ちませんでした………」

「だよね。ジマスも悪い事するよ」

「俺、あなたみたいになりたいんです。いつかあなたと戦ってチャンピオンになりたい。どうすれば……俺はもっと強くなれますか?」

「簡単さ。ポケモンを信じて突き進む。ジャケ君。ポケモンとトレーナーの作り出す絆は僕たちの想像を遥かに超える。いつか君が僕に挑む時、その絆をどこまで昇華させているか。見させてもらいたい所だよ」

「チャンピオン……」

「それじゃあ僕はこの辺で。仮面のチャンピオンはクールに消えるのさ」

 

 そう言ってチャンピオンは手を振ってその場を後にした。

 

「さて俺も行こうかな───」

 

 そう言って改めてトパーズシティに向かおうとする道中、彼の横を通った女性。目付きが鋭く、身体中に何かの牙がじゃらじゃらとついており、いかにも怪しい見た目をしていた。

 その女は立ち止まると背中越しにこう言ってきた。

 

「あんた今回は助っ人がうまく働いてくれた様だけど、次はないから安心しな」

「あなたは……?」

 

 その女性は鋭い歯を剥き出しにしてニヤッと笑い。

 

「いつかまた会うよ。あたしはバジル団幹部『ピラニ』。今後も噛まれない様に気をつけな」

「なっ……!!?」

 

 ジャケがすぐさま後ろを振り向いたが、そこにはもう誰もいなくなっていた。

「次はないから安心しな」。つまり次は何か仕掛けてくるという事だろう。

 ジャケは気持ちを改める。

 敵は本当に強大な戦力を有している。更に強くならなければならない。今よりももっと。

 ジャケはそうしてトパーズシティに向かう。

 2番目のジムで全力をぶつけて見せよう。強さを手に入れる為に。




お待たせしました()
初めてのヌシ戦。そしてチャンピオンとバジル団……。
久々なのにも関わらず色々登場してしまいましたが、物語が進んだという事でお許しください(?)

次回、第17話「出会い・バトル・仲間」

次回もよろしくお願いします!!


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第17話「出会い・バトル・仲間」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


 初めてヌシを相手にしたジャケ。

 だが、ヌシとジャケの間には圧倒的な力があり、ジャケの手持ちと居合わせたミナミの手持ちを全て繰り出しても、その差は全く埋まらなかった。見上げる程の大木に蟻が1匹挑んでいるようなものだった。

 ジャケ自身も勝てないと悟った。無謀だったと後から考えれば考える程、自分がポケモン達を危険な目に合わせたか気付かされる。

 あの時、チャンピオンが来ていなかったどうなっていただろう。ジマスがこんなに危険なミッションを10代前半のジャケに与えるのは何の意味があるのだろう。

 

「………」

 

 そんなものジャケには関係なかった。どーでもいい話だ。

 肝心なのは勝てなかったという事。ポケモン達の特訓とジャケ自身のトレーナーとしての覚悟と技量。

 現在、ジャケは長い道のりを歩き終え、第2のジムがある「トパーズシティ」にやってきていた。

 しかし、ヌシ戦の時から止まない感情の昂りを、どうにか納めたいが為にジム戦前にバトルの相手を探している状態である。

 

「アユとか先についてないかなぁ…… いや、ないか。誰かいい人いないかなぁ────」

「あれ〜バトルの相手を探してる感じかな〜?」

 

 一瞬バジル団かと思うほどイカついパンクファッションをしており、紫と赤の髪の毛、肩出しヘソ出し、黒マスク。10代後半だろうか。

 ジャケも少し身構えたが話すうちに見た目とは裏腹に優しい人物だということに気づく。

 名前は「ウロコ」と言い、トパーズエリア出身でバッジは既に4個手に入れている実力者のようだ。

 

「─── わかる〜。あそこのジムチャレンジ腕へし折れるかと思ったもんね〜」

「そうなんですよねー……」

「ここのジムチャレンジも腕やばいから気をつけてね〜」

「本当ですか!? 気合い入れ直さなきゃ……」

「ところでジャケ君はバトルの相手探してたんでしょ〜?」

「あ、はい。そうです」

「私が相手仕上げよっか〜?」

「いいんですか!?」

「もちろん〜。まぁ実力差はあれど全力で戦うから覚悟しなよ〜」

「大丈夫です! その方が今の俺には……」

「それじゃあバトルコート行こっか〜」

 

 ジャケとウロコはポケモンセンターの隣にあるバトルコートを借りてポケモンバトルを行う事にした─────。

 

 

 *****

 

 

「トパーズシティだぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁあああああああぁっっっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!!!!」

「やっと着きましたわね!」

「も、もう……… むりぃぃぃぃ…………」

 

 アユ・スチル・メザシの3人はマウントタウンから超特急でトパーズシティへと着いた。

 スチルとメザシは相変わらずのアユに振り回されていたが、無事についたことを何よりも安堵した。

 

「じゃあ…… ポケモンバトルしよっか」

「「はぁっ!!?」」

 

 思わず大きな声が出てしまったスチルとメザシ。あまり休む暇もなく辿り着いたトパーズシティに入った瞬間、バトルしようなどとほざく少女。

 2人は全力でそれを止める。

 

「アユ! それはあまりにも酷というものですわ!」

「そ、そそそうだよ! みんな疲れてるんだから休もうよ!」

「え? 疲れてる……?」

 

 この爆裂少女と共に旅をするのに1番必要なのはスタミナだ。アユの無尽蔵なスタミナについて来られなければ一緒に旅をすることは非常に困難を極める。

 多分、ジャケもそれをわかっていたのかは知らないが、一緒に行くのを断ったのはこれが理由の1つではないだろうか。

 2人は何も言わず、アユの両腕を掴んでズリズリと引き摺って宿に向かう。

 

「ねぇねぇ2人とも… ねぇってば……バトルゥ……」

 

 ここで答えてはいけない。心を鬼にして2人はアユを引き摺った────。

 

 次の日、アユから発せられる声という名の目覚ましでみんな起床する。

 彼女はとっくに支度を終わらせているようで2人が準備し終えるのを犬のように待っていた。

 スチルはチラリと彼女を見ると、まだ髪もボサボサで身嗜みをきちんとしていないのが見てわかった。

 

「アユ。髪の毛寝癖だらけですわよ」

「そうだよ!!!」

「ちょっとこっち来てくださいまし」

 

 スチルはアユを手招きし、椅子に座らせると軽く水を吹きかけて髪をとかしはじめた。

 その時はアユも大人しく、それを見たメザシは思わず声を漏らす。

 

「ア、アユが…… 大人しい……」

「アユも女の子ですわ。こういう時は大人しくするものですの」

「…… ね、ねぇスチル」

「ん? あとでメザシもやってあげますわよ?」

「そ、そうじゃなくて…… あの─── ス、スチルはどうして旅をは、始めたの……? べ、べべべ別に言いたくなかったら、い、いいんだよ!」

「……… そうですわね。私の家は少し裕福な家庭でして、そこで優しい両親と共に暮らしていましたわ。そんなある日、庭先でアオガラスに虐められていた今のパートナー…… カヌチャンと会いまして、それからずっと一緒に暮らしてきましたの。段々とポケモンに興味が湧いてきて、いつかわたくしもカヌチャンと一緒にフィーリスを自由に回ろうと決めましたわ…… でも」

「でも…?」

「わたくしの性格上、ポケモンを傷つける事は苦手でバトルはあまり好んでませんの。それに両親も私が怪我をする事を危惧して中々首を縦に振ってくれませんでしたわ。今こうして旅をしているのも、両親と喧嘩をして家出…… という形になってますの」

「へ、へぇ…… そうなんだ……」

 

 スチルがあまりバトルをしたがらない理由とその旅の理由を聞いたアユとメザシ。静寂に包まれた宿の一室。

 流石のアユも最初のうちは黙って聞いていたが、いつもの如く声を大にしたら状況が変わる。

 

「スチルはフィーリスを周る!! メザシは強くなる!! それでいいんだよ!!!」

「ど、どうしたんですの急に……」

「家系とか家系とか…… えっと… 家系とか関係ないよ!! 私達は旅に出て色んなポケモンやトレーナーと出会ってそれから…… なんか色々やって凄いことにしよう!!! やりたい事全部やろうよ!!! 私たちなら何でもできる!!!!!」

「アユ…… ふふっ、なんだか元気を貰えましたわ。ありがとうございます」

「じゃあバトル」

「もうそれしかありませんのね……… まぁいいですわ。少々苦手ですけど、やりましょう!」

 

 3人は身支度を済ませると早速ポケモンセンターの隣にあるバトルコートへと向かう─────。

 

 

 *****

 

 

 アユ達がバトルコートに行くと、意外なほど人数が集まっており、コートは全て埋まってしまっていた。

 流石フィーリス地方はバトルが盛んな地方と言えるだろうが、これではポケモンバトルが開始できない。

 途方に暮れるアユだったが、ふと視線を横にやると見知った顔を見つけ、声を大にしてその人物に声を掛ける。

 

「ジャケッ!!!!!!」

「うおぉぉぉぉぉぉっ!!?…… なんだアユか……」

 

 その人物はジャケだった。昨日から色んなトレーナーとバトルするうちに、その熱気に当てられた人たちが集まり、バトルコートを埋めてしまったというわけだ。

 ジャケもちょうどバトルが終わったようなので、アユは4人でダブルバトルをしようと提案してきた。

 

「わかった。じゃあ俺は────」

「スチルと組んで!! 私はメザシと組むから!!」

「はえぇ………」

 

 ポケモントレーナーのアユとメザシが勝負を仕掛けてきた!▼

 アユとメザシはアシマリとニャスパーを繰り出した!▼

 ジャケとスチルはヒポポタスとカヌチャンを繰り出した!▼

 

「行くぞヒポポタス! みずでっぽう!」

「カヌチャン! メタルクロー!」

 

 ヒポポタスがみずでっぽうを放つと、それに合わせてカヌチャンも前に出て持っているハンマーで攻撃しようと、アシマリとニャスパーに飛びかかる。

 

「ニャ、ニャスパー! ねこだまし!」

 

 アシマリとニャスパーはみずでっぽうを避け、ニャスパーがカヌチャン目の前で手を叩く。

 怯んだカヌチャンに、アユはすかさずアシマリに指示を出す。

 

「アシマリ! こごえるかぜ!」

 

 カヌチャンは「こごえるかぜ」をまともに受けてしまう。

 タイプ相性は有利と言えど、スチルは自身のポケモンがダメージを受けてしまったことに焦ってしまい次の指示が出てこない。

 そんな彼女をジャケはフォローする為、ヒポポタスに「あくび」を指示し、その後に「うずしお」を行う様に言った。

 

「あ、あれアシマリ…?」

 

 暫くしてアシマリはあくびの効果が現れ、眠りについてしまった。

 それからヒポポタスはうずしおをニャスパーに放った事で、渦の中に閉じ込められたニャスパーはぐるぐるとその中を回転する。

 

「スチル! 気をしっかり持て! スチルの焦りがポケモンに伝わるぞ!」

「え、えぇ、そうですわね…… カヌチャン! ぶんまわす!!」

 

 カヌチャンは寝ているアシマリを引っ掴み、文字通りぶん回してから渦の中に閉じ込められたニャスパー目掛けて投げつける。

 その衝撃でニャスパーは渦の中から抜け出せたものの、ダメージは相当なものだろう。

 

「まだまだここからだよ! ね、メザシ!」

「う、うん…!」

「アシマリ反撃だぁ!! チャームボイス!!」

「ニャスパー! リフレクター!」

 

 ニャスパーはアシマリと自身にリフレクターを貼り、物理耐性を上げてカヌチャンの攻撃を封じる。

 それからアシマリはチャームボイスを放ち、ヒポポタスにダメージを与える。

 どちらも一歩も引かないバトル。しかし悲劇は起きた。

 

「ヒポポタス……?」

 

 ヒポポタスが急に動かなくなってしまったのだ。先ほどのチャームボイスが急所に当たったのかと思ったが、どうやらそういう訳でもないらしい。

 その理由はグルルルルという音でジャケは全てを察し、顔がみるみるうちに青ざめていく。

 

「ま、まさかヒポポタス…!!!」

 

 そう、ヒポポタスはお腹が減って動けなくなったのだ。

 突然の出来事にその場の全員がバトルの手を止めてしまった。

 

「ヒポポタス!! あともうちょっとだから頑張れ!!」

「ヒポォ……」

「ヒポじゃないよ!!」

 

 その後の展開は悲惨なものであった。

 実質1匹になってしまったカヌチャンは、アユとメザシのコンビネーションに為す術なくやられてしまう。

 ヒポポタスは結局戦闘不能という扱いになってしまい、そのバトルはアユメザシチームの勝利に終わった。

 

 ジャケとスチルとの勝負に勝った!▼

 アユとメザシは勝利を手にした!▼

 

 

 *****

 

 

 その後、別れたアユ達と別れたジャケは宿にて頭を抱えることとなった。

 ジムチャレンジが明日の予定だが、実質まとも戦えるポケモンがキバゴだけという状況に立たされていた。

 

「まずポッポは何とか自由にやってもらって…… メラルバは頑張れそうなら頑張ってもらって…… それからヒポポタスにはジムチャレンジ前にご飯いっぱい食べてもらって…… あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! どうしよぉぉぉぉぉぉッッ!!!」

 

 明日はジムチャレンジ。一体どうなるジャケ────?




お待たせしました。以上です。
今回登場した新キャラは大ちゃんさんから「ウロコ」でした!
次回はジムチャレンジなんですが、前にもお話しした通り諸事情によりカット致します。ご了承ください。
ジム戦も一緒にやっちゃう予定なのでよろしくお願いします。

次回、第18話「炎のジム」

次回もよろしくお願いします!!


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第18話「炎のジム」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


 ジムチャレンジ当日。

 ジャケはジムの近くにある会場へと足を運んだ。ターコイズシティでのジムチャレンジとは違い、周りには何やら木材が多く設置されているようだ。

 

「頼むぞみんな…… 俺も頑張るけどさ」

 

 手持ちの問題児という名のポケモン達に若干の不安を抱きつつ、ジャケは気合いを入れ直しジムチャレンジに挑む覚悟を決める。

 するとその時、会場の周りにあるベンチから知った声が聞こえてきた。

 

「ジャケく〜ん。頑張ってね〜」

「ジャケさん!! ジムチャレンジ終わったら化石復元ですからね!!! お忘れなく!!!!!」

 

 あの女性達は昨日戦ったウロコと、トパーズエリアに行く為の洞窟内で出会ったシーラだ。

 そういえば化石復元するつもりだったのに、昨日は何もしてなかったのを思い出した。あとで行こう。

 それからまた少女の声が聞こえてきた。

 

「ジャケー!! あの時は負けちゃったけど、今回のジム戦は期待してるよー!!」

 

 あれはミナミだ。ヌシの時には迷惑を掛けてしまった。

 あの時した約束通り、ヌシのことについては触れていない。ありがたいことだ。

 そしていつものバクオング少女の声もしてきたぞ。

 

「ジャケェェェェェェェ頑張れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

「アユさんはどこからその声が出てくるんですか……」

「…ったく、相変わらずうるさい奴だな…」

「ノボリさん!!!」

 

 アユの隣にいるあの2人をジャケは知らないが、以前アユ達と共にチンピラを倒したノボリとヤマメである。

 他にも見知った顔がおり、手を振ろうとした矢先、周りのスピーカーから女性の声が響く。

 

「─── おうおうおうッ!! チャレンジャー聞こえてるか!?」

「は、はい!! 聞こえてます!!」

「私は『ホタテ』!! このジムのジムリーダーだ!! よろしく!!」

「よろしくお願いします!!」

「元気がいいね!! 最高に燃えてるよ!!──── それじゃあ早速ジムチャレンジの説明するからよく聞いてな!!」

 

 ジムチャレンジ内容。

 ジムチャレンジは単純明快。ポケモンと共に指定した場所にて火を起こす事。

 その為の木材や道具は周りに設置されているが、各場所にはジムトレーナー達が配置されており、ポケモンバトルにて倒さなければ材料を入手する事ができない。

 又、制限時間内に終わらなければ失敗と見なされ、バトルにて敗北した場合もジムチャレンジ失敗となる。

 

「─── わかったかい、チャレンジャー?」

「わかりました!」

「んじゃあ早速始めるよぉ!! ジムチャレンジ開始だッ!!」

 

 ジャケが選んだポケモンはやはりと言っていいのか相棒のキバゴ。

 ただこれにはちゃんとした理由があり、ポッポは翼を使う事で、風を送って素早く火を起こすことも可能でありそうだが、そもそも指示を聞かない。メラルバはバトル以外なら良さそうではあるが、こおりタイプであり、尚且つ特性がもふもふである為、火が大の苦手なのである。更にヒポポタスはみずタイプで四足歩行である為にそもそもの話だ。

 上記の通り手持ちの中でも上手く立ち回れそうなのがキバゴだったというわけだ。

 

「よし、キバゴ。火起こしと言ったらまずは木が必要だ。あそこにいるトレーナーをみんなで倒しそう。俺たちならやれる!」

「キバッ!」

 

 そうしてジャケはジムトレーナーの「カキ」と「ガイ」を倒し、火を起こす為に必要な材料を集め終えた。

 指定されたポイントでいざ火を起こそうとするが、これがたらい舟の時の様にとてつもなくキツかったのだ。

 

「ぜぇ……はぁ……ぜぇ……はぁ……」

「バコバゴッ!」

「わ、わかってるキバゴ。俺、頑張るから…… はぁ……」

 

 原始的な方法で火を起こす。つまり火種を作らなければならない。

 その為の火口や火きり板等用意されているのだが、火きりぎねを板に当て、煙が出るまで摩擦を利用して火種を作る。これが腕をパンパンにさせる。

 キバゴがしっかり板を持ってくれているので、後はジャケの力によるものが全てとなる。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

「キバァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

 激闘の末、板から煙が出始め、ジャケは急いで火口に火種を置き、キバゴと共に息を吹きかける。

 すると煙は更に大きくなり、やがて大きな炎へと変わる。

 

「や、やったぞっ…… あちちっ!」

「キバッ!」

「キバゴッ! そこにある細かい枝を持ってきてくれ!─── よし、いいぞ。あとはこの薪を……」

 

 ジャケとキバゴは力を合わせ、ようやく焚き火を作ることに成功した。

 彼らの頑張りを認めるが如く、炎は天まで登り、赤く揺らめいている。

 

「終了ぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!! お疲れチャレンジャー!!!」

「は、はい…… ありがとうございます!!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!! 私も燃えてきたぁぁぁぁぁぁっ!! 今からバトルおっ始め…… ちょ、皆んな何すんだ!! 離せぇぇぇぇぇぇ────!!!」

 

 何やらスピーカーから出ていた声が遠かったようだ。

 その後すぐにスタッフであろう男性の声が聞こえてきた。

 

「えぇっと、ホタテさんは我々が止めておきますので、チャレンジャーは明日の為に身体をお休めください。ジムチャレンジ成功おめでとうございます」

「は、はぁ…… どうも」

 

 ジャケはジムチャレンジを突破し、ジムリーダーへの挑戦を認められた!!▼

 

 

 *****

 

 

「─── さて、じゃあ化石の復元でもしに行くか」

 

 ジャケはジムチャレンジ終了後、まだまだ時間があったので洞窟内で手に入れた「おののかせき」を復元する為にトパーズシティの博物館を訪れる。

 

「博物館はここかぁ……」

「おっと早速来ましたね!」

「あ、シーラさん!」

「私も喜びとロマンを分かち合いたい所なんですが、先ほどいい感じの化石を見つけてしまったもので少々時間がなくてですね……」

「大丈夫ですよ。シーラさんはそちらの方に。また何かあれば連絡しますので」

「おや、それなら私はこの辺で。一応用があれば近くには居ると思うので…… それでは! 良き化石ライフを!」

「えぇ、それじゃあ」

 

 シーラと別れた後、博物館にいる研究員に化石を見せると、復元する為の装置の元まで案内される。

 それからジャケは身元など調べられた。化石ポケモンはこのフィーリスでは珍しくなく、その辺にいるとまではいかないが、特定の場所でのみ捕まえる事ができる存在だ。

 ただこの化石においては数があまりいない様で、フィーリスでのみ発見されたかなりレアな部類らしい。

 どうりで色々と調べられた訳だ。

 そして化石の状態も良いらしく、復元するのも時間が掛からないようで、装置にセットして数分で復元が完了した。

 

「………」

 

 ジャケは緊張しながら装置から出てくるポケモンを見守る。

 ヌッと現れたそのポケモンは嘴が石斧の様になっている鳥ポケモンであった。

 

「……… えっとこのポケモンは……」

「この子は『ハチェトルス』。見ての通り嘴が斧になっているのが特徴的なポケモンだよ」

 

 研究員がそう言うとジャケはそのポケモンに近づき挨拶をする。

 

「初めましてハチェトルス。俺はジャケ。これから俺が君のトレーナーになるんだよ」

「………」

「ん?」

 

 ハチェトルスは見た目は鳥だが、現実で言う所のダチョウの様な姿で、翼も小さく飛べる様なフォルムはしていない。

 だが、強靭な脚と非常に硬い嘴を有しており、肉食ではなく草食なようで、木の上のフルーツなどをジャンプして摂って食べていたという。

 そんなハチェトルスはジャケにその嘴を振り下ろす。

 

「あ、危なっ!!」

「……… ハチェ」

「ハチェじゃなくて…… うわっ!!?」

 

 ジャケに対してハチェトルスがブンブン首を振り回すので、それを何度も避けて室内の角に追いやられる。

 研究員達はハハハッと笑っているが、ハハハッじゃないよとジャケは心の中で叫んだ。

 

「ちょ、助けてください!」

「ハハハッ! 大丈夫だよ。それはハチェトルスの習性だから」

「習性…?」

「ハチェトルスは仲間や信頼した人に対して嘴を打ち付ける習性があるんだ。どうやらハチェトルスは君が仲間だとしっかり認識している様だよ。だから攻撃している訳じゃないんだ。多分」

「多分ッ!!?」

 

 そして結果、ハチェトルスにゴスッと叩かれたが怪我はしない程度であった。痛かったが。

 それからジャケはハチェトルスをモンスターボールにしまい、博物館から出るとシーラにメールを送る。

 

「さてと、仲間が増えたのは良いけど……」

 

 何か嫌な予感を感じつつジャケは宿へと向かう。

 明日はジム戦。2個目のバッジは手に入るのか────!!?




お久しぶりです。
ジムチャレンジこんな感じでしたけど如何だったでしょうか?省略してしまい申し訳ないです……。
ただこれによりこうして別枠入られる様になったのでお許しください。皆さんの応募は本当に助かってます。ありがとうございます。

次回、第19話「炎のジム その2」

次回もよろしくお願いします!!


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第19話「炎のジム その2」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


「チャレンジャー!! 待ってたぞ!!」

「初めましてジャケって言います…… ホタテさんでしたっけ?」

「そうそう! よろしく頼むッ!!」

 

 ジャケはトパーズジム=バトルスタジアムのコートの真ん中で、ジムリーダー「ホタテ」とのバトル前にジムチャレンジについて話していた。

 スタジアムはターコイズジムの違って、尖った岩場が何個か設置されている。

 彼女は昨日から相当興奮していたらしく、夜は眠れずだったようで、若干寝不足ながらもそのテンションはあのアユと何ら変わらない。

 

「それじゃあ早速始めようか!!」

「はい、負けませんよ!!」

「燃えて燃えて…… 互いに灰になるまで熱く激しいバトルを期待してるからッ!!」

 

 両者互いに健闘を祈ると、立ち位置に戻り、モンスターボールを構える。

 使用ポケモンは3体。チャレンジャーのみ交代が許され、どちらか手持ちが全員戦闘不能になった時点で終了。

 そして始まる──── 第2のジム戦。

 

 ジムリーダーのホタテが勝負を仕掛けてきた!!▼

 ジムリーダーのホタテはドンメルを繰り出した!!▼

 ジャケはヒポポタス(リージョン)を繰り出した!!▼

 

「早速みずタイプのポケモンかー! でも、私の炎はそう簡単には消せないよ──── 来なッ!!!」

「それじゃあヒポポタス!! みずでっぽう!!」

「ヒポッ!」

 

 ヒポポタスは口を大きく開け、みずでっぽうを発射する。

 それに対してホタテはドンメルに「ひのこ」を指示。

 火は水とぶつかって蒸発し、それによって蒸気が発生して目の前が真っ白になる。

 

「今だドンメル! ふみつけ!」

 

 そして視界が悪くなった事を利用され、ドンメルによる「ふみつけ」がヒポポタスを襲った。

 そのまま踏みつけた状態でドンメルに続けて指示を出す。

 

「じならし!」

 

 ドンメルはヒポポタスの上で跳ねて、そのまま地面に向けて両足を着ける。

 すると、地面が揺れてヒポポタスはバランスを崩し、近くにあった岩に何度も打ち付けられる。

「じならし」はバランスを崩させる事で相手の素早さを封じる事が可能だ。

 幸いか元々足の遅いヒポポタスにはこの効果はあまり意味ないだろう。

 

「ヒポポタス大丈夫か!?」

「ヒポォ…」

「頑張れヒポポタス! うずしおで動きを止めるぞ!」

「ヒポヒポ!」

 

 そしてヒポポタスは口を再び大きく開け、渦巻いた水を発射した。

「うずしお」は少しの間ではあるが、継続的に相手を渦の中に閉じ込めることができ、動きを再現させることができる。更に激流の中にいるのだから当然ダメージも入る。

 この隙を突き、ジャケはヒポポタスに指示を出す。

 

「バブルこうせん!!」

 

 ヒポポタスの口から泡が勢いよく吹き出し、渦潮の中に閉じ込められたドンメルを捉える。

 タイプ相性は良し。ドンメルがうずしおから脱した時には既に瀕死していた。

 

「うおぉぉぉぉぉぉっ!! ドンメルゥゥゥゥゥゥゥゥっ!!」

「よしッ! まずは1匹!」

「流石にタイプ相性振りすぎたかぁ…… まぁでも次のポケモンはそう簡単にはいかないよ。行ってこいクイタラン!!」

 

 ジムリーダーのホタテはクイタランを繰り出した!!▼

 

「クイタラァァァン!!」

「さぁさっきのお返しだ!! 焼き尽くせ!! ほのおのうず!!」

 

 クイタランの細い口から渦巻いた炎がヒポポタスを襲う。

 うずしおと同様に「ほのおのうず」は相手を炎の渦の中へと閉じ込める。

 だが、ほのおタイプの技は「じめん」と「みず」の複合タイプであるリージョンヒポポタスには効果が薄い。

 ジャケは当然のそのことに気づいているので、怯まずに冷静に対処する。

 

「みずでっぽうを頭上に放て!!」

「ヒポォ!!」

 

 指示通りにみずでっぽうを頭上に放つヒポポタス。

 すると、ほのおのうずが段々とその威力を弱めていき、気づいた時には鎮火していた。

 炎もなくなったヒポポタスに、ジャケは勢いのまま次の指示を与えようとした。

 

「ヒポポタス!! バブルこうせ──── えっ」

「………」

 

 ヒポポタスは瀕死状態になっていた。

 

「何が起こったんだ…!!?」

 

 

 *****

 

 

 スタジアムの観客席でミナミとウロコは互いに仲良くなったのか、ジャケのバトルを観ながら会話を楽しんでいた。

 

「へぇ〜、ミナミって結構珍しい所から来たんだ〜」

「そうなんだ! あ、えっと場所は秘密だけどね……」

「わかってるよ〜。それよりジャケの様子は〜?」

「あぁ、そうだった! ジャケは……… えっ、ヒポポタスが倒れてる!?」

「へぇ〜、そういう事かぁ〜」

「えっ!? 何がわかったの!?」

 

 ウロコはジャケに何があったのか話す。

 先ほどヒポポタスが「ほのおのうず」によって閉じ込められたところだけは見ていた。その間、ジャケとヒポポタスからは炎によって視界が悪くなっていた。

 ホタテはその時に指示を出していた。

 それは「たくわえる」。エネルギーを貯蓄することによって防御力を上げる技である。

「たくわえる」ことのできる量は3回が限界であり、その3回分防御力を上げられる。

 そして「たくわえる」は次の技に派生させる事ができ、それが「はきだす」と「のみこむ」である。

「はきだす」は蓄えた分だけ威力を増し、「のみこむ」は蓄えた分だけ回復する。

 ヒポポタスが瀕死に追いやられたのは、この限界までエネルギーが溜まった状態の「はきだす」による一撃だ。防御力は元に戻るものの、また蓄えればその分増える。

 

「冷静に対処できたけど、次の攻撃を読んでなかったのはジャケのミスだね〜」

「これを防がないとジャケは負けちゃうってことだよね…」

「ジャケもそれに気づけばね〜。さぁ腕の見せ所だよ〜。私と戦った時のあの子、才能凄かったから〜」

 

 

 *****

 

 

「よくやったヒポポタス。戻ってくれ」

 

 ヒポポタスをモンスターボールに戻すとジャケは少し考える。

 次のポケモンによっては戦況を左右される。今の手持ちで、相手のポケモンに対処可能なポケモン。

 

「相手に読まれない……… あっ! こいつなら!」

 

 ジャケはモンスターボールを持ち、次のポケモンをコート内に向けて勢いよく投げた。

 そのボールから出てきたのはフィーリスでもあまり見ない新たなポケモン。

 

 ジャケはハチェトルスを繰り出した!▼

 

「行くぞハチェトルス! 初めてのジム戦だ!」

「ハチェ」

 

 ハチェトルスはジャケの所へと走っていき、斧の様な嘴を振り下ろす。

 ジャケは咄嗟にそれを躱し、ハチェトルスを捕まえてバトルコートの方に向かせる。

 

「相手はあっちだ!」

「ハチェ」

「こっちを見ないで相手を見て!」

「ハチェ」

「せめて笑顔でいてよ!」

 

 そうしてる間にクイタランは「たくわえる」。

 

「ま、まずい…! ハチェトルス、きりさくだ!」

「ハチェ」

 

 ハチェトルスは素直に言う事を聞き、クイタランに突撃していく。

 だが、最大まで溜めきった「たくわえる」による「はきだす」が繰り出された。これはもう避けることはできないと思われた。

 

「ハチェ」

「な、えっ!?」

 

 なんとハチェトルスは小柄な見た目とは裏腹に、強靭な脚力によってクイタランの身長も遥かに越えるほど、空へ向かってジャンプした。

 それによって吐き出されたエネルギーはハチェトルスの後ろへと飛んでいき、不発に終わってしまった。

 これは「とびはねる」。上空高くに飛び跳ね、降下の勢いを利用して繰り出す物理技だ。

 

「し、しまった…!」

「よし、いけぇ!! ハチェトルス!! とびはねる!!」

 

 技を出したクイタランの防御力は元に戻っている。

 ハチェトルスの頑固な嘴による一撃が、クイタランの脳天を捉えた。

 

「クイタラン、あんたはまだ負けてないだろ!? そうだろう!?」

「クイタ……ラァ………」

「クイタラン!?」

 

 その一撃は急所に命中していた。

 これにはクイタランもまともに立つことはできず、遂には膝からガックリと崩れ落ちてしまった。

 

「やった…… やったぞ! ハチェトル──── あっぶなっ!?」

「ハチェ」

 

 ハチェトルスは飛べない代わりに強靭な脚力を手に入れた。古代からこの脚力を使って、凶暴な肉食ポケモンから難を逃れていた様である。

 ホタテはクイタランをボールに戻し、大声で笑い始めた。

 

「はははははははっ!! あんたホントに強い! 運も!! これはもう熱いだけじゃダメだ!!」

「いやぁ…… ははっ」

「……… 私もそろそろ本気出さないとね。燃えて燃えて、焼き尽くせ!! マグカルゴッ!!」

 

 ジムリーダーのホタテはマグカルゴを繰り出した!▼

 

「これが最後だ!! とことん熱くなるよ!!」

「マグカルゴ……」

 

 まだ対面して間もないが、最後に繰り出されたマグカルゴは異様な気配を纏っていた。

 第2のジム戦、果たして勝つのは……!?




お待たせしました()
もう少し早く更新できる様に頑張ります。

次回、第20話「炎のジム その3」

次回もよろしくお願いします!!


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第20話「炎のジム その3」

皆さんご無沙汰してます。
それではどうぞご覧ください。


 それは一瞬の出来事であった。

 クイタランを見事に倒したハチェトルス。最後に繰り出されたマグカルゴと相対していた。

 今、流れが来ている。ジャケもこのまま一気に押し切ろうと思っていたが、ホタテのパートナーポケモンであるマグカルゴには、ハチェトルスの実力ではまるで歯が立たなかった。

 

「─── ハチェトルス…」

 

「やきつくす」というほのおタイプの技で、同タイプの中では特段威力が高いわけでもないが、彼女のマグカルゴのやきつくすは通常の威力とは桁違いである。

 攻撃特化のジムとは聞いていたが、まさかここまで一瞬にしてしまう程の激しさだとは思わなかった。

 

「もう終わりかい? チャレンジャー?」

 

 ホタテは煽るように、ジャケを見据えてニヤリと笑う。

 それに対してジャケは腹立たしいとか悔しいとか黒い感情ではなく、寧ろ胸の中から熱い想いが込み上げてきた。

 それを解き放つように新たなボールをギュッと握り、思いっきり空へと投げた────。

 

 ジャケはキバゴを繰り出した!▼

 

「やっぱりお前だよな…… 頼むぞ!」

「キバッ!」

 

 最後はやはり頼れる相棒のキバゴに全てを託す。

 

「キバゴッ!! ドラゴンクロー!!」

 

 キバゴは爪を立て、その爪にドラゴンのエネルギーを纏い、マグカルゴに向かって突進する。

 そしてホタテはマグカルゴに「スモッグ」を指示する。

 

「かわせ、キバゴ!!」

 

 スモッグは毒タイプの技。ノロノロとしているが当たれば毒状態となり、ジャケ側は不利となってしまう。それだけは避けたい。

 指示通りスモッグをかわすキバゴ。だが、それは囮だった。

 

「マグカルゴ!! いわおとし!!」

 

 マグカルゴの周りに岩が飛び交い、それをギバゴに向かって投げつける。

 スモッグを躱し、岩を躱す。キバゴに全く休む暇を与えない。

 

「相手のペースに乗せられちゃダメだ…… なら、こっちも岩を投げつけてやれ!! 地面に向かってアクスブレイク!!」

「キバッ!!」

 

 そしてキバゴは岩を避けながら、地面を強靭な牙で抉る様に切り裂いた。

 すると、当然地面は抉れ、その抉れた部分をマグカルゴにお返しとばかりに飛ばし始める。

 砂や石など細かい粒子が飛び、偶然マグカルゴの目に入ると、相手は少しだが怯んだ。

 すかさず、この隙を逃す事なく追撃する。

 

「行け、キバゴ!! きりさけ!!」

 

 きりさく攻撃がマグカルゴにヒット。

 今の怯み方からして偶然急所を攻撃できた様で、戦いの流れはジャケ側にあると、自分自身もそう思っていた矢先。

 突如、ギバゴが苦しみ始めた。

 

「キバゴッ……!?」

「キバァ……」

 

 これは状態異常「やけど」。

 どうやら相手のマグカルゴの特性は「ほのおのからだ」の様だ。この特性を持つポケモンに直接攻撃を加えてしまうと、やけどが発生する。

 更にやけど状態になってしまうと、身体の感覚が鈍り、物理系の技の威力が大幅に下がってしまう。

 キバゴは基本物理技を主体に戦う。一気に不利な状況に追い込まれた。

 

「どうだい? 私のマグカルゴは?」

「…… ホタテさんのジムは攻撃特化のジムだって聞きました。こうして攻め続けられるのも、このマグカルゴの特性があるから…… やけどの状態異常に持ち込みやすい様に、攻める事で必然的に相手に攻撃させる…… ですよね?」

「はははっ!! わかってるじゃないか。そうだ。攻撃特化に見えるだけで、実際はカウンター型。相手にやるだけやらせて、ずっとその機会を狙うのさ。一撃で持っていけるその時をッ!!」

 

 多分、普通にやっててもこちらが不利になるだけ。

 ならば、やられる前にやるだけ。自分の全力を相棒に全て捧げる。

 

「行くぞ、キバゴッ!!──── Vバーストォォォォォォッ!!!」

 

 ジャケは右腕に装着しているVバングルにモンスターボールを押し当て、それをキバゴに向かって掲げる。

 すると、キバゴの牙にVエナジーが集約され、強靭な牙の上に更にアーマーの頑丈さが加わる。

 

「やけどなんて関係ない!! キバゴ、俺たちの全力をホタテさんにぶつけてやるんだ!!」

「キバキバァ!!」

 

 それを見たホタテも同じ様にVバングルを掲げ、マグカルゴをVバーストさせる。Vバーストはアーマー化し、マグカルゴの背中の甲羅から頭に掛けてアーマーが装着される。

 

「熱くなって来たァ!! 燃えていくぞ、チャレンジャージャケ!!」

「はい!!──── キバゴッ!! かみつく!!」

 

 キバゴは強化された牙を使い、マグカルゴに噛みつこうとした。

 だが、ホタテの指示によりマグカルゴは頑丈な甲羅をキバゴの方に向け、それを噛み付かせたのだ。

 ガキンッと金属同士がぶつかったかの様な音を立てる。

 そしてジャケはキバゴに噛み付かせたまま、次の指示を出す。

 

「ドラゴンクロー!!」

 

 硬い甲羅に対して、ドラゴンクローを浴びせるキバゴ。

 その無意味と言える行動に、流石のホタテも唖然とした。

 

「な、なぜVバーストしている甲羅を……」

 

 何か意味があるのだろうか。ホタテはそう考えつつ、マグカルゴに「げんしのちから」を指示した。

 マグカルゴの身体の周りを、岩が浮遊し、それらは一斉にキバゴの元へと飛んでいく。

 

「─── 今だッ!! かわせ!!」

 

 ジャケの指示通りキバゴは、げんしのちからが当たるギリギリで、素早く甲羅から離れる。

 すると、げんしのちからは見事にマグカルゴに直撃し、弱点有利で大ダメージを叩き出した。

 

「やった!! ナイスだキバゴ!!」

「キバキバ!」

 

 なるほど、とホタテは思う。

 今度は自分の作戦を逆に利用されたらしい。今年のチャレンジャーは面白い戦い方をする。熱さが、心に熱さが込み上げる。

 

「…… 喜ぶのは早いぞ、チャレンジャー」

「え?」

「『げんしのちから』はただ岩を飛ばす技じゃないってことさ」

 

 その言葉通り、マグカルゴの様子が変わった。

 まるで今までの戦いが練習であったかの様に、気迫が一変した。

 

「こ、これは……」

「『げんしのちから』は、たま〜にだけど使用したポケモンに力を与える。私はその偶々を引いた。つまり今のマグカルゴはさっきまでとは打って変わって強化された状態。第二ラウンド開始ってわけだ」

 

 攻撃から防御、特殊耐性と素早さまで上げてしまう『げんしのちから』。

 本当に偶々発動する追加効果ではあるが、この状況にてマグカルゴは引いてしまった。

 Vバーストした状態でフィジカルが強化される。状況は悪化したかに思えた。

 

「いや、大丈夫だ。キバゴ」

「キバッ!」

「俺とお前なら突破できる! 頑張ってくれたヒポポタスやハチェトルスの分まで全力を出すんだ!!」

 

 その言葉にキバゴへVエナジーが一気に集約する。

 この一撃に全てを賭けるというのか。

 

「はははっ!! 面白い!! なら、私も限界突破ッ、正々堂々真正面から燃やし尽くすッ!!」

「キバゴッ!! 全力のアクスブレイクッ!!!」

「マグカルゴッ!! やきつくすッ!!!」

 

 マグカルゴからVバーストで強化された火炎が放射される。

 火炎の中をキバゴは躱し、躱し、そして躱し、マグカルゴまでの距離を一気に縮めた。

 

「……っ!!」

 

 ホタテはニヤリとした。

 こんな楽しいジムバトルは久々だったと。

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇっっっ!!! キバゴッッッ!!!」

「キィィィィィッ───── バァッ!!!」

 

 そしてキバゴのアクスブレイクがマグカルゴを一刀両断する。

 先のダメージもあったマグカルゴ。確実に急所に当たるこの技に耐え切れるはずもなく、Vバーストが弾け飛び、目を回して地面へと倒れてしまった。

 

「やった……… やったぞ、キバゴッ!!!」

「キバキバァ!!!」

 

 相手のマグカルゴは倒れた▼

 ジムリーダーホタテとの勝負に勝った!▼

「ははっ、あんたの方が熱かったみたいだッ!! 」

 ジャケは賞金の代わりに勝利を手に入れた!▼

 

 

 *****

 

 ジャケとホタテは歓声の中、コートの真ん中に集まる。

 

「これがジムバッジだ。チャレンジャージャケ」

「ありがとうございます!」

 

 ジャケはホノオバッジを手に入れた!▼

 ポケモンリーグ挑戦まであと──── 6つ▼

 

「次のジムはどこに向かうんだ?」

「次はアメジストエリアのアメジストジムに挑もうと思ってます」

「へー、あそこか。あそこのエリアのクライミング施設は何度か行った事あるなぁ…」

 

 実はホタテ、ジムリーダーの他にプロフリークライマーである。

 度々施設が整っているアメジストエリアには足を運んでいる様だ。

 

「まぁとにかくジム突破おめでとッ! あんたの今後のジム戦が熱くなれる様に、裏から熱く応援してるよ!!」

「はい、ありがとうございました!!」

 

 2人は熱い、熱い、熱い握手を交わすと、歓声は更に大きく鳴り響いた────。

 

 

 *****

 

 

 一方のアユ達はトパーズシティに着き、ジャケのジム戦をスマホで観戦し終わった。

 

「うぉっしゃぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!! ジャケよくやった!!!」

 

 多分、スチルとメザシはビクゥッとなるくらい驚いた事だろう。

 擬似的な爆音波がトパーズシティに響く。

 

「─── ん?」

 

 山の方で何かが蠢いた。

 山に囲まれているトパーズエリアだが、この距離からでも見える()()は相当な大きさであることがわかる。

 

「何あれ…?」

「どうしましたの?」

「な、何かあった……? アユ?」

 

 アユは「なんでもないよ!!!!!」と大声で返す。

 アユが見たそれはトパーズエリアの伝説のポケモン「ユエニウ」だったという事は、まだまだ先になる事だろう────。




お待たせしましたごめんなさい!!
別で書いております、オリ仮面ライダー進めてました!!

次回、第21話「ソシテ進化」

次回もよろしくお願いします。


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第21話「ソシテ進化」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


 第2のジム戦、トパーズジムにて見事ホノオバッジを獲得したジャケは、新たなバッジを求めてアメジストエリアへと向かっていた。

 その道中、何やら1匹のポケモンが襲われているのが目に入り、ジャケは急いでそこへと向かう。

 

「やめろ!」

「あぁ? なんだ?」

 

 その男はやはりと言っていいのかバジル団と名乗った。

 ヌシポケモン討伐の時、バジル団の幹部ピラニと名乗る女性に出会ったことがある。

 最近こうしてバジル団の下っ端達を見るのは、奴らの動きが活発になってきているからだろうか。

 

「そこにいるポケモンが可哀想だろ!」

「この『カルボウ』がか? せっかく俺のポケモンにしてやるって言ってるのに、めちゃくちゃ嫌がるからイライラしてよ。痛みで教えてやってるんだよ!」

 

 カルボウはジャケが見つかるまでかなり痛めつけられたらしく、所々に傷が見える。

 ジャケはそれを見た瞬間、萎えたがる様な怒りが込み上げてきた。

 

「許せない……!!」

「許せない? なら、どうするつもりだ?」

「ここはフィーリス。ポケモンバトル方を付ける…!!」

「おもしれぇ!! やってみな!!」

 

 バジル団の下っ端が勝負を仕掛けてきた!▼

 バジル団の下っ端はピカチュウを繰り出した!▼

 

「ピカッ!」

「ピカチュウ…… ふふっ、可愛いなぁ……」

 

 ジャケは一瞬だがスッと目的を忘れて思った。この人そんな悪い人ではないんじゃないかと。

 

 ジャケはキバゴを繰り出した!▼

 

「行くぞ、キバゴ! アクスブレイク!」

「ピカチュウちゃん! でんきショック!──────」

 

 ──── 下っ端は負けた。

 この間にだいぶ成長を遂げたジャケのポケモン達には歯が立たなかった。

 

「お、覚えておけこんちくしょう!!」

「まぁ頭の片隅には残るだろうね〜」

 

 逃げる下っ端の背中に手を振り、怪我をしたカルボウの元へと駆け寄る。

 バッグからきずぐすりを取り出してカルボウの傷を癒してやる。

 しっかり回復させてやりたいが、トパーズエリアを出てちょうどアメジストエリアとの間くらい。まだ先はあるし、後に戻るのも同じである。

 

「カルボォ……」

「大丈夫だカルボウ。必ず助けてやるからな」

 

 ジャケのその優しい言葉にカルボウはコクリと頷く。

 そしてジャケが急いでポケモンセンターに向かおうとした時だった。

 その時、後ろから「ジャケ」と呼ぶ声が聞こえて振り向いた。

 

「─── リタッ!? えっと久しぶり」

「久しぶり。それよりカルボウは大丈夫?」

「いや、大丈夫じゃないよ。俺の持ってるきずぐすりじゃ、その場しのぎにしかならなくて……」

「私、良いやつ持ってるから分けてあげるけど」

「本当にっ!? ありがとうリタ!」

「気にしないで」

 

 カルボウを木の陰に連れて行き、そこで治療する事にした───。

 

 

 *****

 

 

「カルボッ!」

「おぉ、元気になったかカルボウ!」

 

 暫くしてカルボウは元気になった。

 これもリタの治療のおかげである。

 

「あ、そうだ。カルボウ。俺と一緒に来ないか?」

「…… カル?」

 

 ジャケはモンスターボールを取り出す。

 

「ここで出会ったのも何かの縁だと思うんだ。俺はお前とチャンピオンを目指したい…… どうだ?」

「カルゥ」

「ん?」

 

 カルボウはなぜか照れている。一体どういう事だ。

 そして暫く説得してみると、カルボウはそっぽを向きながらモンスターボールの真ん中のボタンを押し、自らボールの中へと入っていった。

 

 1、2の……… ポカン!▼

 やったー!カルボウを捕まえた!▼

 

「……… やった。カルボウゲットだ!!」

「おめでと、ジャケ」

「ありがとうリタ」

 

 そしてリタはジャケにグイッと近づき、モンスターボールを取り出す。

 

「な、なに…?」

「バトル、しよ」

「バトル? 別にいいけど……」

「ジャケがどのくらい成長したか。見てみたい」

「…… わかった。俺も全力で相手する!」

 

 カルボウのこともあってか、時間を遅くなってしまうので、使用ポケモンは1体での試合をすることになった。

 2人は少し距離を取り、お互いにモンスターボールを取り出して構える。

 

 ポケモントレーナーのリタが勝負を仕掛けてきた!▼

 ポケモントレーナーのリタはムクバードを繰り出した!▼

 

「ムクバードか。なら、ここはいっぱい食べさせて、満腹状態のヒポポタスで────」

 

 と、ジャケがヒポポタスを繰り出そうとした時、別のボールからポッポが飛び出してきた。

 そしてポッポはそのままリタの方に飛んでいき、顔面に張り付いたのだ。

 

「ポッポ!?」

「おー、ポッポも久しぶり」

「ご、ごめんすぐに戻すよ……」

「……… このまま戦っちゃえば?」

「え、でも……」

「この子はこうだからって尊重するのも大事だけど、そういう所も扱えてこそのトレーナーだと思う」

 

 リタにそう言われてハッとなったジャケ。

 それからジャケはポッポで戦う事を決め、いざ、ポケモンバトルの幕開けである。

 

「ポッポ! ねんりき!」

 

 しかし、ポッポは「かげぶんしん」を使う。

 思わずジャケも「でしょうね!」と叫んでしまう。

 

「ムクバード。こっちもかげぶんしん」

「ムクッ!」

 

 分身vs分身の形となり、どれが本体だかトレーナー達自身もわからなくなってしまう。

 あまりにもごちゃごちゃとしているが、先に指示を出したのはやはりリタ。

 

「でんこうせっか」

 

 無数にいるムクバードが放つでんこうせっか。

 目にも止まらぬ体当たりの連続。ポッポの分身が徐々に消えていく。

 

「おい、ポッポ! そのままだとまずい! こっちも反撃するんだ!」

「ポッ」

 

 まぁ待てと言わんばかりな顔をし、ポッポも「でんこうせっか」を行う。

 本体はどのポッポかもうわかっている。だが、ポッポはそのままでんこうせっかでムクバードに体当たりをする。

 

「─── 外れ」

「ポッ───!!」

 

 そしてポッポにでんこうせっかの一撃が入った。

 この勝負はムクバードが優勢。モロにくらったポッポは地面に落下する。

 

「ポッポ!」

「ポッ……」

 

 やはり実力差はかなり開いている。だけどそれが原因なのだろうか。

 ジャケはポッポに声を掛ける。

 

「ポッポ! 俺の指示は聞かなくても構わない!」

「ポッ……?」

「だけど、俺はお前が負ける姿は見たくない! ポッポ、お前が1人でもやれるんだって姿! 見せてみろ!」

「………」

「やってやれ! ポッポ!」

 

 ポッポは立ち上がり、再び翼を広げて空へと羽ばたく。

 ムクバードがそれの後をついていき、翼を広げて迎撃体制に入る。

 

「ムクバード、つばさでうつ」

「ムクッ!」

 

 その指示にムクバードは、発達した翼でポッポを叩く。

 強烈な一撃で終わらない。何度も翼を叩きつける。

 

「………っ! ポッポ!」

「ポォ……!」

「この距離だ! この距離なら──── ねんりきッ!!」

 

 そう指示をしたジャケ。

 その一瞬。一瞬だけだ。

 

「えっ」

 

 ムクバードの動きがピタリと止まり、その後、後方へと吹っ飛んだ。

 なんとポッポは偶々か、ジャケの指示を聞いたのだ。

 

「ポッポお前……!!」

「………」

「いいぞポッポ! ここから逆転しよう!」

「…………」

 

 こいつは馬鹿なのか。なぜ、こうまでして俺を信じられる。

 ポッポがフッと少し笑った様な気がした。

 その時だった──────。

 

「うわっ…!!」

 

 ポッポの身体が光を放ち、徐々に小さかった身体が大きく強靭になっていく。

 これはそう──── 進化だ。

 

「ポッポ……?」

「ピジョォォォォォッ!!!」

「これは進化か…? 進化したのか、ピジョンにッ!」

 

 ピジョン(フィーリスの姿)。

 ポッポ(フィーリスの姿)が進化した事で、ノーマルタイプはエスパータイプとなり、素早さと遠距離からの攻撃が得意となった。

 その目はどんなに小さな獲物も逃さない。

 

「よしっ! 反撃だ! ねんりき!」

「ピジョ」

 

 そう、進化しても言う事を聞くわけがなかった。

 ねんりきを指示したはずが、別の技を繰り出した─── しかしこの技、見たことがない技だ。

 

「これは───!」

 

 ピジョンは新技「サイケこうせん」を放った。

 サイケこうせんは不思議な光線を相手に浴びせるというもの。

 そして────。

 

「ムクゥ……?」

「あれ、『こんらん』しちゃったか」

 

 サイケこつせんはたまにではあるが、相手をこんらん状態にさせることができる。

 ムクバードはこれを引いてしまい、ふらふらと空中をあっちこっちと飛び回る。

 

「形勢逆転ってやつだな! リタ!」

「…… さぁ、どうかな」

 

 このまま逆転して勝利かに思えた。

 ピジョンはでんこうせっかで一気に畳みかけにいったが、リタはフラフラとするムクバードに指示を出す。

 

「かげぶんしん」

 

 その指示に対し、ムクバードはギリギリでかげぶんしんを発動し、でんこうせっかを見事にかわす。

 

「そんな…!!」

「今、つばさでうつ」

 

 もう混乱が解けていたムクバード。既にピジョンの背後に回り込んでいた。

 それからピジョンの首筋向けて、強靭な翼を叩きつける。

 

「ピジョン!!」

 

 名を叫んだ時には、ピジョンは地面に落下し、目を回して倒れていた。

 

 ピジョンは倒れた▼

 ジャケの手元には戦えるポケモンはいない▼

 …… …… ……▼

 ジャケは目の前が真っ暗になった!▼

 

 この勝負、ジャケの敗北。

 リタの勝利に終わる──────。




お久しぶりです!いつもの如くライダー書いてます……ごめんなさい。
3週間に1回のペースは遅いですかね…?もっと読みたいとのお声があればペース上げます!お気軽に!
ピジョンに進化したのに負けてしまいました。やはりリタは強い()

次回、第22話「到着アメジスト」

次回もよろしくお願いします!!


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第22話「到着アメジスト」

皆さんご無沙汰しております。
それではどうぞご覧ください。


 アユはジム戦終了後、道中でたまたま手に入れた化石を復元し、新たな仲間を手に入れたのだった。

 

「これからよろしくね! プロトーガ!」

「トガッ!」

 

 プロトーガは非常に硬い甲羅を持つ亀の様なポケモンで、特性も相まってその防御力は目を見張るものがある。

 新たなポケモンを手に入れたアユは喜びのあまりいつも以上にはしゃいでおり、高低差が激しいトパーズエリアの道中危うく落ちかけてしまう。

 

「あわわっ!?」

「「アユッ!!」」

 

 スチルとメザシが咄嗟に手を出す。と、その瞬間もう一本手が伸びてきて、その手が彼女を掴み、危機一髪で助かった。

 

「あはははっ!! 危なかったよ!!」

「─── 笑い事では済まないぞ馬鹿者!!」

 

 流石のアユも驚き、スッと笑顔が消えて静かになった。

 助けてくれたのは男性であり、アユを助ける時に持っていたのか薬草やらが散らばっていた。

 

「ごめんなさい」

「全く…… ここは高低差が激しく、道中は危険なのだから、しっかり足元を見なければ危ないのですよ?」

「気をつけます!!!!!」

「うおっ…… 元気がいいですね。まぁわかればいいんですよ」

「私はアユって言います!! 助けてくれたのはちゃんにぃのお名前はッ!!?」

「え、あ、私はロズ。薬学者を目指しているものです」

「へぇー! 学者さんなんだ!!」

「目指している、ですよ。ちょうどここら辺には普通では取れない薬草が生えています。たまたま通りかかったらあなたが落ちかけていたのですよ」

 

 ロズはそう言うと、懐から手に入れた薬草を調合した薬をアユ達に持たせてくれた。

 

「あなた方2人も大変でしょう」

「「はい」」

 

 即答するスチルとメザシ。

 

「とにかくその薬はポケモン達に使ってあげなさい。怪我や病気は命に関わる。アユさんだけではなく、お2人もこれらを軽視しない様に気をつけてくださいね」

 

 そう言ってロズは頭を下げ、彼女達の元から離れていった。

 

「アユ、嬉しいのはわかりますけど、足元はしっかり見てくださいまし」

「そ、そうだよアユ。あ、危ないからちゃんとした見ようよ」

「はい」

 

 2人から怒られ、素直に返事をするアユ。

 さぁ彼女達も次はアメジストエリア。先に到着したのは─────。

 

 

 *****

 

 

「ここがアメジストシティかぁー……」

 

 ジャケはその光景に驚いた。

 目の前にはキラキラ光る高い建物が立ち並び、巨大なモニター、長いレール、高度に発展した文明が広がっていたのだから。

 実はジャケ、アメジストシティをテレビでは見たことあるが、実際に来てみるのは初めてである。

 だから内心ワクワクしていた。新たなポケモンとの出会いもきっとある。

 

「さて、今日は一旦宿でも取ろうかな……」

 

 そう思っていると、近くから怒声が聞こえ、気になったジャケはその方向へと足を運ぶ。

 

「はっきり喋れよ!」

「あ、いやぁ…… スゥ─────」

 

 なんかとても暗そうな表情をした人が、とても怖そうな男の人に怒られている。

 ジャケはそんな状況を見るや否や、彼らの間に割って入る。

 

「まぁまぁ落ち着いて!」

「あぁん!?」

「とにかく何があったんです!?」

「こいつが俺が先に並んでたのに横入りしたんだよ!」

「え、そうなんです?」

 

 そう言われ、暗そうな雰囲気の男にジャケは声をかける。

 

「えっと…… あなたはなにが?」

「いや、そのぉ…… 入ってないって言うか、逆に入られてぇ……」

「…… って言ってますけど?」

 

 男はそれに対して更に怒りを露わにした。

 

「そんな事はねぇ!! このやろう俺が入ってやるってんだから素直に聞いとけ!! 仕方ねぇ、俺のポケモンでわからせてやるよ!!」

「やっぱりそっちが悪いじゃん!! なら、俺が相手してやる!!」

 

 街中ではあるが、ポケモンバトルが始まった─────。

 

 ──── 勝利したのはジャケ。実に呆気のない勝負であった。

 

「覚えてやがれ!!」

「覚えておけるなら」

 

 ジャケはその後ろ姿に手を振ると、暗い男に声を掛け直す。

 

「俺はジャケ。いちゃもんつけられて大変だったな」

「あざっす」

「えっとぉー…… とりあえず連絡先交換する? 俺、ターコイズエリア出身なんだけど、ここら辺来た事なくてさ」

「…… あ、僕も元々ターコイズ出身っすよ」

「え、ほんとっ!? じゃあ尚更仲良くしようよ。ちょっと色々聞きたくて」

「は、え、あ、はい……」

「名前は?」

「ジョドーっす」

 

 半ば無理やりな様な気がするが、ジョドーから連絡先を貰い、元々同じ出身地だと言う事も相まってなんだかんだで仲良くはなれた、と思われる。

 暫く話をしていい時間になってきたので別れる事はした。

 

「じゃあまた。ジム戦頑張るから観に来てよ!」

「……… ジム戦すか……」

「ん? どうしたの?」

「あ、いや、別に…… とりあえずまぁ頑張ってもらって」

「ありがとう! それじゃ」

 

 ジャケはジョドーと別れを告げ、今日泊まるホテルを探し始める。

 比較的安そうなホテルに見つけ、そこに泊まろうかと一歩踏み出した瞬間、急におじさんに声を掛けられる。

 あまりに急であった為、ジャケは身構えてしまう。

 

「おぉー! 心配せんでも大丈夫! 私は怪しいものではございません!」

「怪しいです!」

「これはこれは申し訳ない! 今、私はキャンペーンをしていてですね。あなたジム戦されるでしょ?」

「ど、どうしてそれを……」

「長年やってたらわかりますぞ! Vバングルを貸していただいてよろしいかな?」

「いやです」

「そう言わずに!」

「いやです」

「そう言わずに!」

「いやで……… わかりました」

「ほい、きた!」

 

 その押しの強さに思わずおじさんにVバングルを渡してしまうジャケ。

 心配そうに見ていると、何事もなくVバングルは帰ってきた。

 

「えっと…… 何されたんです?」

「Vバングルにボックス機能を追加したよ!」

「ボックス機能?」

「普通手持ちって6体までと決まっているだろ? しかし、この機能があれば、溢れた最大3体までのポケモンをいつでもどこでも好きに交換できるんだ!」

「つまり9体手持ちにいる感じって思えば?」

「そうそう! だけど、交換できるのはこういう何もない時やバトルの前だけ。バトル中なんかは変えられないから、事前に手持ちをしっかりと見て挑む様にね!」

「は、はぁ…… ありがとうございます」

「それはおじさんの発明だからね!? おじさんの発明だからね!? きちんと広めといてくれ! それじゃ!」

 

 そう言っておじさんは華麗に消えていった。

 

「ボックス機能か。そういえばもう手持ちが6体。これから増える事も考えると、嬉しい機能だな」

 

 新機能を搭載したVバングルを手に入れた。

 明日は伝説が祀られていると言われているバリタウンに行ってみようかな。

 そう決めて、ジャケはホテル内に入っていく。




団子狐さんから「ロズ」、ジャニ・Kさんから「ジョドー」でした!
毎度毎度新キャラ短い登場ですが、大ちゃんさんのリタの様に再登場するのでご心配なく()
今回短めですが、アメジストエリアでは新たなキャラ達が続々登場予定。
正直大変でございますが頑張ります。

次回、第23話「フィーリスの伝説」

次回もよろしくお願いします!!


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