フォドラに生まれたので三国共存ルート目指すで(元社畜OLより、愛を込めて) (ストレスたまるん)
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1.私、フォドラに産まれ落ちたようですね(白目)

 リメイク品。前のあれとは違った内容があるのでたぶん新鮮(当社比)


 

 

 

 

 

 

 生まれてこの方30年超え。

 男女の営みも、恋愛も経験し、それなりに普通の人生を送っていた私に待っていたのは過労死という素晴らしくクソな三文字だった。

 残業は当たり前。朝が早く、終電逃しなんてよくあること。

会社に寝泊まりなんてことも普通のことで、よく警備員の方と苦笑いしてお互い大変ですねなんて愚痴を言い合ったものだ。

 唯一の救いは給料が高いことと日曜日だけはなんとか休みになるということだけ。

 だが業務は激務で、外回りに現場にPCにとまさに隙のない三段構え。

 そんな激務と日々に追われた私に待っていたのは、さっきも言った過労死。

 

 あっけないもんだった。

朝起きて、歯磨きを終えて、さぁ行こうとして、意識が飛んで…そこからの記憶は一切ない。

 

 そして気がつけば私は…

 

「母さん、おはよう」

「あら、おはようアルディア」

 

 フォドラ大陸のアドラステア帝国の一商人の娘として生まれ変わっていた。

 

 初めは小説やアニメとかでよくある前世の記憶、というものは一切なかった。

 まさに記憶もないピッカピカの白紙の状態で、アルディアという娘として母から産まれ、育ってきた。

 

 だが4歳くらいの頃。

どういう意図があったのか、唐突に書いた平仮名の、あ、という文字を見て記憶が蘇った。

 正直今でも思う。

何故記憶復活のトリガーがひらがなのあ、なのかと。

 もう少しこう、あっただろう!?

 

 だがそんなこともあって、今では前世の記憶を持つアルディアとして生活している。

 もちろん両親には内緒だ。

そんな事を言えばあたおか認定されてもおかしくないからね。

 まぁあの優しい両親の事だ。あたおか認定はしないだろう。困惑はするだろうけど。

 

 そうして生まれ変わり記憶が戻ってからはとある目的の為に剣豪だったらしい母に戦闘技術と知識を、商人である父には勉学を教えてもらっている。

 そのとある目的が何なのかだが…。

 

三国平和エンドって見たくない?(理想論的目的)

 

 というのも、記憶を思い出した当初は『私』に戻ったこともあってか、うっへぇ! ここ風花雪月の世界かぁ! と今更ながら謎に感動し、間抜け面を晒すように喜んでいた。

 そりゃそうだ。

今まで何気なく生活していたこのフォドラが、まさかの好きなゲームの一つであるFE風花雪月の世界だったということを思い出したんだからね。ある意味当然といえば当然だと思うよ。

 まぁ、流石に今まで生活してきたっていうのあるから少し感動は薄かったけど。

でもそれでも感動しちゃったよ。

 だけどそんな感動も、風花雪月のあれについても思い出したせいで、まるでシャボン玉の如く消し飛んだ。

 あれ。

それは風花雪月をプレイしたユーザーならご存知のあれであり、私の顔がNOOBNOOBピングー顔になって母と父に勉強と武術を教えてくださいと歳ながら素晴らしく綺麗な土下座をかます原因になったあれ。

 

 エガちゃんの宣戦布告による戦乱の世の幕開け。

 

 これである。

 

 地獄のフォドラ大戦争。

道徳0点とか言われたり、慈悲とか血は無いんか? とプレイヤーに言わせるほど凶悪な激重ストーリー。

 主人公が選んだクラスや、スカウトした人を除けば大半が殺されたりするやっべぇあれ。

 思い出した直後の私は、あ、これ死んだか、と死んだ魚の眼で嘆いたものだ。

 そりゃまあそうだよね。

戦争だもの。どこが戦場になるかも分からないし、いつ飛び火が飛んでくるかも分からないからね。

 せっかく2度目の人生を歩めるのに、わざわざ死にたくないよね

 だから当初はいやぁ無理ゲー過ぎるわぁ。なんとか生き延びれるようにしなくちゃ、と使命感にも似た考えで居た。

 だけどさっきも言ったように、三国が平和に手を取り合うルート見てぇなぁ、とかあわよくばベレトス達を拝みたい、なんて愚かにもふと思ってしまったもんだから後の祭り。

 無駄に元気に決心し、わざわざ自分で地獄へ続く道の舗装をし始めた私は両親へご教授してもらえるようにお願いしたというわけだ。

 

 おかげで今の私は毎日訓練だわ勉強だわで女の子らしい平和でお花ぁ、な時間は一切存在しない日々を送っている。

 そうなるように両親を説得した自分のせいなんだけどね。

 

これからの毎日がどう転んで、私の目指すゴールに影響を与えるのかわからないけど、それでもやると決めたからにはやる。

 もちろん地獄続きかもしれないし、死ぬかもしれない。

でも見てみたいじゃん? 三国が平和に手を取り合うルート。

 無双のようなまだまだ続く! でもなく、原作のような一部以外死にます! でもない、和平ルート。

 なので今日も今日とて頑張ります! 元社畜OL、今は4歳の女の子、アルディア。

 

 さぁ、やってやんで!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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2.お母さん、貴女はやばいです()

 


とりあえず出来てる分を投下爆撃。

来年エンゲージだね! やったねたえt(ry


 

 

 

 

 

 

 英才教育、というものをご存知だろうか。

早期教育、とも言われるもので、いわゆる幼少期の頃からスポーツや習い事をして早い段階から教育をして能力をいち早く伸ばし、周りとの差をつけようみたいな、そういうやつだ。

 そんな早期教育もとい、英才教育。

私は質、やり方、そして子供へのメンタルケアが出来て初めて成り立つものだと思っている。

 いきなり言われて何言ってんのこの幼女()? と思った人が多数だろう。

 かくいう私ももし自分が当事者でなく、無関係の人であれば同じ意見を出していただろう。何言ってんのこいつあたおかじゃね? と。 

 だが今回は私自身がある種の被害者なので聞いてほしい。というか聞け。

 

 先程も述べた通り、私は英才教育とは質、やり方、子供へのメンタルケアが出来て初めて成り立つものだと思っている。

 質が悪ければ当然伸びる能力も伸びないし、やり方を間違えれば勘違いしたまま成長し、自滅する可能性もある。

 そしてメンタルケア。

早期教育というだけあり、早い段階から子供にスポーツや習い事をさせるこの教育。

 当然周りの子供が遊んでるのに何故自分は…? と思うようになる可能性もある。そしてそれが元に多大なストレスになり、望まない結果に、なんてこともありうる。

だからこそメンタルケアもとても大切であり、重要度は極めて高いものだと私は考えている。

 

 さて、私がこの英才教育という言葉を使ったことには理由がある。

 まず1つ。

私は今、ほぼ毎日両親からこの英才教育をびっしりと受けている状態だ。

もちろんこれは前にも語った通り、自分で考え、自分で選んだ結果だから不満なんて無い。

 両親は本当に愛情込めて私を育ててくれるし、怒るべき時は叱り、そして何が間違いかを考えさせてくれる、それはもう絵に描いたような立派な人達だ。

 だがそれでも…私は両親に言いたい。主に母に。

 

 母さん。

 

 

 

 

 もう少し手加減してください。

 

 

 

 

 私は今、少しばかり後悔しております。

 

 土下座をキめ、両親からの英才教育を受け始めてから早半年。

今や草木も寒さに凍え、姿を見せなくなり、代わりに白い銀世界が辺りを覆う冬の季節。

月で言うなら12月。

 冬の象徴とも言える雪が今にも振りそうな雲に覆われた早朝に、私は必死にブンブンと訓練用にと渡された棒を何度も振るい、基本的な太刀筋を徹底的に叩き込まれていた。

 

 振っても振っても熱くならない体。

それどころか、逆に消えていく体温。

それに反し、笑顔で涼しげに隣で私の太刀筋を見てる母。

 

 何者なの、この人…。

 

 素振りをする中、自身の母親に対して化け物を見たような気持ちになる。

 私は一応これでもかなり厚手のものを着せてもらっている。

母さん曰く、いきなり薄手で振るうのは厳しすぎるでしょ、とのこと。

 いやそれならまず外で振るうことを止めていただきたいですはい。いや本当に。死ぬって!

 

 だがそんな私に対し母はと言えば、凶悪なお山2つが押し上げるぴっちりとした薄手の服に、ふともも丸出しの大胆なスリットの入ったチャイナドレスっぽい服。

 聖戦の系譜やリンみたいなソードマスター衣装と言えば分かりやすいかな。

私も歳をとったわねぇ、なんていつも笑顔で言うけど、はっきり言ってドスケベですはい。

 何あのムチムチ太もも。くっそエッッッ――

 

「はい雑念。後50回追加ね~」

「あぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 雑念とはかくも恐ろしい…母さんにはモロバレだったようだ…。

 私は気分がガタ落ちするが、罰は罰、致し方なしと気持ちを切り替えると再び素振りを始める。

 

 集中、集中…。

風が少し吹く中、ひたすら無言で振り続ける。

母は相変わらずにこにこと柔らかく笑みを浮かべながら私の素振りを見続けるだけ。

 どうしてこんな寒い中そんな平然としていられるのか、私はアマゾn―― 

 

「気が乱れてるわ~。ほら、もう少しだから頑張って」

 

 おっといかんいかん。

母の言葉に軽く頭を振るい、再び素振りに集中する。 

 

 ……あ~…手がつめt―――

 

「はい雑念~。さらに50回追加~」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 お、鬼ぃぃ……。

そ、そんな感度3000倍近い敏感センサーで私をいたぶり回すのはやめてくだs――

 

「はい50~」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛!゛」

 

 鬼! 悪魔! キチガイ!

ナンナンダヨコノアクマ! イカれてんのか!

こちとら寒いんやぞ!? 我4歳ぞ!? ピチピチのクソガキぞ!? これ虐待ぞ!?

 聞こえんのかぁぁ!?(発狂)

 

「聞こえな~い」

「聞こえてますよね母さん!?」

 

 知らないわ~、とひらひらと手を振る母。

鬼ぃぃ…あぁ、手が、足が、顔面が、冷えるぅぅ…。

 

 気持ち指先の感覚が無くなりかけている中、心で母への怨嗟をミニガンの如く発射しながら追加分も終えるまでひたすら振り回し続けるのだった。

 

 やばい、もう心が折れそうだよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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3.母親の恐ろしい何か()

 

 

 

 

 

 寒さも少しずつ引いてき始める3月。

アドラステアの地に僅かながらの土色が見え始め、今日も青空晴天でピーチクパーチク鳥が空を飛ぶ中、私は母に必死に打ち込みをしていた。

 

「ずれてるわ。太刀筋を崩さないように意識して、力で打とうとしちゃだめ」

「はい、母さん!」

 

 

 素振りから打ち込みへと訓練を切り替えて早2ヶ月。

 バシンバシンと打ち込むたびに手のひらに響く衝撃にも慣れたものだ。

 

 やり始めた時は酷いものだった。

最初の頃はようやく次の練習だ! なんて息巻いて、ガンガン打ち込んでいた。

 だがそれも初めのうちだけ。

次第に手のひらが痛くなり始め、終いには力が入らなくなってしまったのだ。

 その時は母がライブや軽いマッサージみたいなもの、父は貿易で得た何かの薬を飲ませてくれたりと、両親のおかげでなんとかなっていた。

 だがそれでも特訓を続けていけば何度も発症するわけで。

頻度も減らず、痛みも徐々に増していく状況に元ゆとり世代の私は泣きそうになり、母に、きついです、と情けなくも弱音を吐いてしまった。

 だが母の、何かを成し遂げたいからしようと思ったんでしょ? だったらこの程度で折れてはダメよ、とまさに根性論を言われてしまった。

 だけど、せ、せやな、ここで折れたら何も出来へんわな! と奮起し、今では毎日意気揚々と打ち込みを続けれるようになった。

 というか慣れって怖いな。

今では全然痛みもしんどさも気にならなくなってきたぞ。

 これが体がドM化してるって、こと? いやぁ、きついっすよ。

 

 まぁそんなわけで毎日打ち込んではあれこれアドバイスを受ける毎日を過ごしています。

 さて、そうこうしているうちに太陽も真上に到着したようで、母は両手を合わせると、はい、お昼にしましょう、と言い、持っていた木刀をズドンと野太い音を発して地面に突き刺し、どこからともかく弁当箱を持ち出してきた。

 ていうか木刀って刀身部分まで地面に刺さるもんなのか…? 

打ち込みを初めて2ヶ月という時間が過ぎた中で母が今みたいに地面深く木刀をぶっ刺したシーンを何度か見てきたけど、未だに理解が追いつかない。

 何度が私も試してみたけど、は~~い♪ みたいな軽い感じで、サクッと軽く刺さった試しがない。

それ以前にふんぬ!! と全力で刺しても半分にいかないところで止まってしまうことがほとんどだ。

 

 母さんって…馬鹿力の持ち主?

 

「ふ~んふ~ん」

 

 楽しそうに弁当を広げていく母を見て、見に覚えのない寒気が背中を襲ってきたので考えるのを止めることにした。

たぶんあれだ、今はこれ以上踏み込んではいけない、というやつだ。

 早々に頭からその危険な何かを全力で排除すると、私は母の用意の手伝いをすることにした。

考えてはいけない。今は。うん。

 

「母さんってどこかの名家の血でも引いてるの?」

「あら、どうして?」

「い、いえ、なんとなくそうなのかなぁと思って」

 

 私の質問に母はう~ん、と顎に指をやり考える。

え、まさかのどこかの血筋なの?

うっそ! もしかして私もそういう血筋なの!?

だったら是非ともしりt――

 

「知る限りだと一般家庭出身よ?」

「あ、そうなんですね」

 

 どっかのエリートの血筋だったら良いな~なんて…夢とは儚いものだな…。

 

 無惨にも儚い希望が消え散り、母こわ~…と親の恐ろしさを改めて身に染み込ませると、母と共に青空広がる最高のシチェーションでお昼ご飯を堪能したのだった。

 

 

 

 

「うっま~!! うまうま!! むっふーー!」

「いっぱい食べなさいね~…いつか知りたくなったら教えてあげるわ」

「んふっ…んえ? 母さん、何か言いました?」

「いいえ、なんでも無いわ。ほら、これも美味しそうでしょ、どうぞ」

「んますぎるぅ!!」

「ふふ…たんとお食べ」

 

 

 

 

 



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4.我が家は大きい

 

 

 

 

 

 

 すっかり緑が辺りを染める5月、竪琴の節。

 

 打ち込みの内容も徐々に防御のやり方まで含み始めだし、本格的とは言わずとも訓練内容がさらに面白みを増してきたと思い始めてきたとある日の事。

 いつも通り訓練を終え、夕方になり、自宅へ帰宅した私と母の目の前にえらくデカいおっさんが突っ立ていた。

 いや、突っ立っていたというのはおかしいか。

父さんと談笑をしていたというのが正確かな。

 

 背中でしか見えないけどデカい背中に高い身長。

そしてなんか見覚えのある服装。

背中からでも分かる程感じる頼もしさというか、そういうオーラみたいな気配。

 ていうかこれ、あの人なのでは?

 

 私は父さんにただいま戻りました! と子供っぽく振る舞い、わざとらしく抱きつく。

 すると父は、はは、おかえりアルディア、と朗らかに笑顔を浮かべると私を抱き上げた。

 

「今日も訓練お疲れ様。どうだった?」

「うん、相変わらず母さんはすごかったよ!」

「そうかそうか! 母さんは相変わらず強いか」

「まぁ、アルディアったら」

「へへ! それより父さん、この人は?」

 

 親子の平和な会話もそこそこに、私は失礼ながらも件の男を指差し、父に聞く。

 というか、顔見て分かったけどさ――

 

「ん? ああ、この人はね、父さんの知り合いなんだ。ジェラルトって言ってね、すごく強いんだよ」

 

 

ジェラルトその人だわ。

 

 まさかの出会いに内心えぇ、うっそだろおい…と呆れ半分驚愕半分という状態になる。

 

 父さん、まさかジェラルトさんと知り合っていたなんて…。

 私は顔に出さないようにして父との会話を続ける。

 

 

「へぇ! そうなんだ! こんにちわ、ジェラルトさん!」

「ほう、こりゃあんたの嫁さんに似てえらく可愛いじゃないか」

 

 ジェラルトはゲーム内でも見たこと無いようなくらい良い笑顔で私の頭を撫でる。

 大塚ボイスにこの渋いミドルガイ…なんて豪華な組み合わせなんだ…現世でこんなんみたら脳汁ドッバドバやな。

 

 ジェラルトのでかい手を堪能し終えると、父さんは私を下ろす。

 

「アルディア、すまないが少しだけあの子達と遊んであげてくれないか? 私達はジェラルトと話があるんだ」

 

 父が指差す方向を見るとジェラルトから少し離れた所に二人の子供がぽつんと立っていた。

 

 ん? あれは…!(某元ヤクザが天啓を得た風)

ろ、ロリベレスとショタベレト…! あ、可愛い…尊い…(灰化)

 

 ぽつんと立つその二人の原作では見られないそのおっふ(尊死)な姿に思わず飛び掛けたがそこはそこ。

外見こそクソガキなれど、心は成人済みのおばさん。尊死しそうな衝動をふふ、運が良かったな。今日の俺は機嫌が良いんだ、と右手が疼く痛い子のように心で振る舞い抑えつけると、父にはーい、と告、その二人の元に駆け寄る。

 

 近くで見て改めて思う。

尊い。

その姿まさに歩くザラキーマ。

よし、これを死のたこつぼ(オタク限定効果)と名付けよう。

 

「ん、んんっふんっ!」

 

 いけないいけない。

またあらぬものを出してしまうところだった。

全く、これだから私の右手(オタク心)は節操がないんだから…。

 

 一呼吸置いて、改めて声を掛ける。

 

「私はアルディア。貴女達の名前は?」

「ぼくはベレト」

「わたしはベレス」

 

 声で死ねる(確信)

 

良い感じに声がぶっ刺さり気味な私は一瞬くらっとなるが、そこはそれ。

さっきも言った通り、おばさん魂を発揮して我エベレストぞ、と心を山の如く大きく、そして不動のものにすると彼らの手を取る。

 

あーーー…可愛いんじゃ~~~~。

 

「アルディア、顔変」

「さーせん」

「さー…せん?」

 

 おっといかんいかん、また出ちまったよ。

今日の私は(オタク心的な意味で)ビンビンだな。

 

 思わぬ攻撃()に防御をごったごったに潰された私はこれ以上の恥晒すべからずとばかりに彼らの手を引き、自分の部屋に連れ込む事にした。

 なぁに安心しろ。

今の私は子供。

親の合意もある。

犯罪ではありません。

 

「何して遊ぶ?」

 

 合法です。

 

 その後、父さん達が話を終わらせるまで抱きしめたり、撫で回したりと欲望のままに彼らと遊び尽くしたのは言うまでもない。

 

 なお、その日彼らがお泊りすることになり私のテンションが吹き飛んで危うく見せられない何かを見せそうになったのは、まぁ、ある意味当然の結果だったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方。良いの? 言い出しっぺの私が言うのもあれだけど、あの子との時間が減ることになるわよ?」

「良いさ。いずれ子供は巣立ち、外を知る。それが早いか遅いだけの話だ」

「…」

「あの子が私達に武術と勉強を教えてくれと言ってきた時のことを覚えているかい?」

「えぇ、もちろんよ。それがどうしたの?」

「その時のあの子の眼がね。子供と言うにはこう、大人びたものだったというかなんというかね。そういう何かを感じたんだよ」

「あの子が…」

「君のように武術はないけど、商人として培ってきた経験と目には自信があるからね。だからこそ、今回の話は必要だと思ったんだ」

「貴方…」

「何、あの子は聡い。今回の話が自分にどれだけ必要かすぐに理解できるさ」

「…」

「それに何も私達がその話を決断するわけじゃないんだ。あの子が受けるかもしれないし、受けないかもしれない。そうだろ?」

「…」

「受けないなら今まで通り、私達と一緒にあの子の進む道を出来る範囲で示してあげればいいだけだ。な?」

「…えぇ、そうよね。ごめんなさい、貴方。私、どうしても寂しくて…」

「はは、私達はあの子の両親なんだ。寂しくて当たり前さ。でもだからといって子の成長や将来を潰してはいけない。だろ?」

「えぇ、そうね」

「だから見守ろう。あの子がどんな決断を下すのかを」

 

 



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5.貴女が選ぶのは家ですか、外ですか?

今年初投稿。

今年はこれを完成させることを目標に生活する(ちっさいとか言ってはいけない(戒め))

新年一発目がこの長さとかお前何考えてんのかな?

あ、エンゲージ、楽しみっす。(なお現状買う予定が諸事情により消えかけています。クソが)


 

 

 

 

 

 

 

 ジェラルト親子がしばらく滞在することになった翌日。

 相変わらず父さん達がジェラルトと部屋に籠もって会談をしている中、私はと言うと…

 

「アルディア、て」

「おっほ、ぷにぷになお手々だ~」

「ん」

「おっと、ベレスちゃんもだね? いいよ~」

 

 自室でベレトスと楽しくお遊戯(堪能)をして過ごしていた。

 元々ゲーム内でもイケメン、又は美女と言えるくらい良い顔をお持ちの二人のロリショタ時代の可愛さといったらなんのその。

 ベレスのくりくりのお目々! ベレトの無垢な表情! なんだこの天国…! 

ちんまりとしたこの二人はまさに極上! A5ランクなんて安いぜ! もっと高いのつけよう!

 

 あっと、いかんいかん。こんな汚らしい欲を無垢()なこの体から出してはいけない。

ビークール。OK? 私。

 

 子供らしい柔らかお手々を堪能するように握りつつ、私は何をするべきかと考える。

 とは言っても私自身、あのマゾ歓喜なスパルタトレーニングを始めてからこれといった年頃の遊びを一切と言っていい程していないからなぁ。

というか欲という欲が少ないこのベレトスが喜ぶ遊びって何なんよ。そこいらの子供と遊ぶのと違ってすごく見つけにくそうな感じがするんだが。

 

 両手でベレトスの手を握りしめたまま、自室内を見渡す。

訓練用の木刀。

ふかふかベット。

姿見の鏡。

椅子とテーブル。

 

「うわ…私の部屋…質素過ぎ……?」

 

 意識せずに過ごしてきたので気にすることなんてなかったけど、いざしっかりと見始めると質素すぎるわね…。

何この部屋、これが女の子()の部屋かよ。

お人形さんは? 

お花は? 

女の子らしいアイテムは?

 

 はい、どれも物置部屋にブチ込んでましたね(白目)。

 訓練始めるから女の子を捨てるとかうんたらかんたら考えたからだったかしら。

とは言えだ…これはぁ、ちょっと殺風景すぎる。

少なくとも同い年の子供や、ベレトスみたいな子達との交流の際にはどう見てもよろしくない。というかつまらんだろう。

 

「ごめんね、何にもなくて」

「だいじょうぶ」

「うん」

 

 優しい子や。

思わず頭を撫でる。

くすぐったそうに微笑む姿、いと最高。

もし前世のOLのままだったら灰となって死んでたね。

 

 さてさて、とりあえずどうするかだ。

現状遊べるような用具はない。

我が家の楽しいメイドさん達にお助けを求めれば何かしらしてくれるかもしれないけど、仕事の邪魔になるのはいただけない。

 となると…

 

「今までどんなところ旅してたの?」

 

 お話しか出来ないじゃないか。

ベットにベレトスを座らせると、椅子を持ってきて座る。

 

「たび?」

「うん。どんなところ行った~、とかそういうの」

「……いろいろ。ね、ベレト」

「うん、そうだね」 

 

 淡々と答えるベレトス。

やっぱりジェラルトの仕事柄、あちこち飛び回っているみたいだ。

 ただそれが旅行ではなく仕事故に、ていうのはちょっと残念だけど。

 

「ベレトは旅で楽しかったこととかってあるの?」

「……ない。ね、ベレス」

「うん。父さん、いつもけんをもってようへいのひとたちといっしょにたたかってるから」

「あ~…」

 

 まぁ、これも仕方なしと言えば仕方なしだなぁ。

子供だけでなく傭兵団のメンバーの生活も維持させなければならない団長という立場にある以上、どうしてもプライベートとの両立と言うのは難しいのだろう。

 実際ゲーム内でも途中からソロで傭兵家業を営むことになったシェズが、日々食いつなぐので精一杯って言ってたし。

 

 そう考えると、名を挙げて各地にその名を広め、傭兵団を支え続けてきたジェラルトってやばいな。

 流石ベレトスの親父。すげぇ。

 

「でもさびしいなんておもったことはない。ね、ベレス」

「うん」

「そっかぁ」

 

 なんというか、流石ベレトス。

親があれだけ凄いと子供も自然とすごくなるのだろうか。

 ただこれが本当に精神的に強いのかは分からないから正直安心は出来ない。

けど今のところ大丈夫そうだと思える。

 

 私は軽くベレトスの頭を同時に撫でる。

うーん、サラサラ。

 

 あ、そういえばこの二人、どっちが長男、もしくは長女なんだ?

 

「君達ってどっちが上なの?」

 

 私の質問に頭の上にはてなマークを浮かべるベレトス。

 いくらなんでも難しすぎたか。

 

「えっと…どっちが年上なのかなぁって――」

「ベレトが兄、ベレスが妹の双子だぜ、嬢ちゃん」

 

 突然の後ろからの声。

思わずブンっ! と声の発信源である扉に顔を向けると、件の男、ジェラルトが愉快そうな笑みを浮かべて立っていた。

 で、でけぇな。

 

「ふ、双子なんだ」

「おうよ。似てるだろ?」

「うん」

 

 私の頭にぽんと手を載せるジェラルト。

父とは違うごつく大きな手に、父の持つ何かとは違うものを感じつつ、話を続ける。

 

「お母さんは?」

「あー…ちょっと事情があってな。今は遠い所に居るんだ」

 

 私の質問にどこか遠いものを見るような目で答えるジェラルト。

私はそんな彼の反応に、そっかーと子供らしく答える。

 うーん、やっぱりシトリーは原作同様にもう亡くなってるのか。

まぁ私が生まれたくらいでどうこうなるとはおもっては居なかったけど、ちょっと残念だ。

出来ることならあって喋ってみたかったなぁ。

 

 少しだけ残念に思いつつ、ベレトスを見る。

ジェラルトの、迷惑掛けてないか? と言う言葉に

大丈夫だよ、楽しかった、と答えるベレス。

 

 親子だなぁ。

私に笑顔を向ける父のように、ベレトスに笑顔を向けるジェラルト。

無表情ながらもこの部屋で過ごしたことを多分楽しげに答えているベレトス。

 仕事等で親子の時間が取れていないとは思うけど、やっぱりジェラルトは彼らを大切にしているんだろう。

険悪な雰囲気はなく、信頼関係もバッチリで、とても仲が良さそうだ。

 

「おっと、そうだ。忘れてたぜ。嬢ちゃん、話良いか?」

「?」

 

 なんだろうか。

接点が全く構築出来てない私に何かあるのかと思い、ジェラルトに近づく。

 

「後で両親から話があると思うが、先に言っとくぜ」

「?」

「お前、俺達と一緒に来ることになりそうだぜ」

「ふぁっ!?」

 

 じゃ、後でな。

そう言い、ジェラルトはベレトス達と一緒に退室した。

 

 え? 待って、どういうこと? 一緒? 傭兵団と共に? ん? ちょっと理解が追いつかないぞ? 素数を考えよう。

1,2,3,4,5…あれ? 素数って何?(大混乱)

 

 突然のそれに頭がこんがらがる私。

意味を理解し、とりあえずジェラルト! と行動に移したときには既にジェラルト達が所用で館を出たあとだった。

 

 

 

 

 

 

「父さん、少し聞きたいことがあるんですけど」

 

 メイドさんに父の場所を聞き、応接室前に到着した私は静かに言う。

 すると間髪入れず、入りなさい、と父の声が部屋から聞こえ、私は、失礼します、と扉を開け、入室する。

 革で出来たソファにリラックスしながら座っている父と母。

だけど私の要件がどういったものか理解しているのだろう。どこか緊張した雰囲気が室内に漂っている。

 

「掛けなさい、アルディア」

 

 父の言葉に、私は失礼します、とまるで面接でもするかのように返すとソファに掛ける。

 

「さて、私に聞きたいことがあるんだね?」

「はい。父さん」

「……」

 

 いつもの笑顔ではなく、真剣な表情でこちらを見る父。

視線もまるで矢の如く真っすぐこちらを貫き、思わず目を背けたくなる程鋭い。

だがこっちも聞きたいことがあって来たんだ。

今は子供なれど中身はおばさん。前世で幾度と強烈な視線は浴びてきたんだ。この程度ではへこたれないわよ。

 

 私は父の視線に真っ向から睨むように見つめ返す。

 父の隣に座る母はどこか他人事のようにお茶を啜っているが関係なし。

 

 そうして、睨み合いが続き、母が何杯目かのお茶を飲み終えた時だった。 

 

 父は目を閉じ、ふぅ、とため息をつくと母にゆっくりと手を伸ばす。

 母はその手の意図を理解していたのか、手を付けずに置いてあったティーカップをその手に手渡す。

父は受け取ると、ゆっくりと口を付け、飲み始めた。

 

「ん…ふぅ、やはりレーラの淹れてくれるお茶は美味いな」

「ふふ、いつもそう言いますね、貴方は」

 

 事実だからな、と父はいつものように朗らかな笑みを母に向けると手に持っていたカップをテーブルに置く。

 

「アルディア、まずは睨むように見たことを謝ろう。すまないね」

「い、いえ! 私こそ、父親に対してあのように睨んでしまって、申し訳ありません!」

「はは、何。お前を試すためにしたことだ。むしろあんなに強い目を見られて父としてとても嬉しく、誇らしいよ」

 

 テーブル越しに手を伸ばし頭を撫でてくれる父さん。

 暖かくて、大きな手だ…とても安心できる。

 

 私が父の温かみを感じる中、何度か撫でると父は頭から手を離す。

 うーん、軽い喪失感。

 

「さてアルディア。ジェラルトから簡単に聞いているとは思うが、改めて話を聞かせよう」

「はい」

 

 先程までの朗らかさから打って変わり、真顔になる父。

 私も背筋を一度伸ばし直し、話をちゃんと聞くためにしっかりと父の顔を見る。

 

「アルディア。お前は今の世の中をどう見る」

「世の中、ですか?」

「あぁ。この広大な大地、フォドラ。お前にはどう見える」

 

 父の言葉。

その言葉にどういう意味があるんだろうか。

正直今のフォドラ云々聞かれても答えられないというのが本音だ。

訓練の合間に調査なんて出来るわけもないし、何より年齢的にも動ける範囲が狭すぎる。

 

 だからここは素直に――

 

「正直、わかりません」

「はは、正直でよろしい」

 

 どうやら正解みたいなものらしい。

父は優しく微笑むと、ソファから立ち上がり、日が照らす窓際に歩いて向かう。

 

「良いかいアルディア。このフォドラは今、あまり良くない状態にある」

「そうなのですか?」

「うむ。まぁ正確には、そういう状態になっているように私は見える、というのが正しいけどね」

「?」

 

 父は日が照らす窓の外を見たまま言葉を続ける。

 

「アルディアはこの家がアドラステア国内でどういう立ち位置に居るか、知っているかい?」

「…いえ」

 

 正直全く知らない。

アドラステア内に居る商家の一つ、くらいにしか認識していなかったし、訓練漬けでそれどころじゃなかったから。

 

「私達ヘブリディーズ家はね…認知されていないんだ」

「…え?」

 

 思わぬ言葉に私の目は点になる。

ど、どういうこと? 認知されていない? 意味が分からない。

 

 私の困惑する様子を見てか、父は無理もない、と苦笑いを浮かべると再びソファに座り、言葉を続けた。

 

「認知されていないというのは変な意味ではないぞ。そのまま、存在を知られていない、という意味だ」

「え、あ、うえっ、んん!? そ、それって、ええ!?」

 

 突然のカミングアウト。

頭が一瞬でパニック。

 

 え、どういうことよそれ! 認知されていない商家ってあるの!? 

聞いたこと無いよそんなの! いやそういう闇っぽい家庭とかあったのかもしれないけど! いやいや待って!? それならそれでどうやって商売を!? 

 

 色んな疑問が頭を駆け巡り、思わずその場に頭を抱え、うずめてしまう。

 

「流石に混乱しているみたいだな、アルディア」

「ふふ、貴方ったら。いくら聡明なあの子でもいきなりそんな事言われたら混乱するわよ」

「ううむ…流石に難しかったか」

 

 両親がなんか言ってるみたいだけど今はそれどころではない!

 

 ウッソだろお前! まさかの認知されていない違法(?)商家なのかよ!

 ん? てことは…今父がやっている商売って…

 

「父さん、つまり今父さんがしている商売って…」

「簡単に言えば闇商人みたいなものだ。少なくとも、セイロス教辺りにバレでもしたら即刻重罪判決が下されるだろう」

 

 こともなげに軽く重罪判決が落ちるなんて言う父に思わず天を仰ぐ。

 子供らしさとか言ってられんわ!

なんて恐ろしい家系に産まれたんだよ私! 

めちゃくちゃやばいじゃんか!

 

「理由はあるんだよ」

「…理由?」

「あぁ。元々このフォドラが鎖国的な大陸だということは知っているね?」

「え、えぇ。父さんが教えてくれましたから」

「私の祖父はそんなフォドラを見て危機感を覚えたらしくてね。鎖国的な国はいずれ周辺国家に遅れを取って消えるか、誰かが内側からこじ開けようとするだろうと考えたらしくてね」

 

 なんだうちの先祖。先見の明とかってレベルじゃねえぞ。占い師かよ。

 

「そこで中央の連中やアドラステア帝国の目に決して触れぬよう、下の下から動き始めたんだそうだ。そして今私にそれが受け継がれているという訳なんだよ」

「…」

「私は祖父や父よりも商売の才覚が有るわけではないけどね、その祖父や、それを引き継いできた父が成してきたそれらが意味の無いものとは思えなくてね。今までこうして誰の目にも映らないように影みたいに外との貿易を続けてきたんだ」

 

えぇ…そんな仕事してたの、この人…。

 

 初めて聞いた父の仕事の詳細、そして先見の明がすごい爺さん。

大きな2つのカミングアウトにもはや反応すらまともに出来なかった私はぽかんと間抜けズラを晒すように父を見る。

 

「さて、私が何故こんな話をしたのか、分かるかい?」

「え、あ、あぁ、い、いえ、全く検討つきません」

 

 今のこの頭じゃどう頑張ったって分かんないっす…。

 

 父はふふ、そう戸惑うな、と私の頭を撫でると、言葉を続ける。

 

「お前が何かを成そうと必死に努力している姿を見てな。親だからなのかは分からんが、お前がこの大陸に違った風を運んでくれるような気がしてね。それで私達の仕事のこと、そして君の将来の必要だと思ったからジェラルト傭兵団について行かせようと考えたんだ」

 

 真面目な表情を浮かべて話す父。

本当にそう考えて話してくれたんだと分かる程真っすぐこちらを見る父に私の中で暴れていた不安や混乱といったネガティブなものがすぅっと消えていく。

 

「ここでレーラや私の元で学び続けても確かに経験も、知識も付くだろう。だが、外から得られる知識、経験にはどうしたって勝てない。外はすぐに姿を変えるからな。だからこそ、お前には外を見て、体で経験し、目で見て、それを糧にして欲しいと思ったんだ。アルディア」

 

 父はゆっくりと目を閉じ、少し間を置く。

そして自身の胸に手を当て、再度呼吸する。

 母はその父の手を支えるようにゆっくりと包むように握ると、父と同じように目を閉じ、静かに下を向く。

 そして何かをこらえるように、ぎゅっと唇を噛む。

 

 父はそんな母に顔を向けることもせず、目を開けるとこちらを真っ直ぐと見て、口を開いた。

 

「さぁ、お前はどうする」

 

 まるで別れを告げるように

 

「外に出て、過酷さと現実を見て、己を鍛え上げるか」

 

 ゆっくりと言葉を続け

 

「内で今まで通り、訓練と勉学を続けるか」

 

 私に選択肢を迫ってきた。

 

「選びなさい。私達はお前がどちらを選ぼうが、背中を押してあげるから」

 

 

 

 

 

 

私は…どっちを選ぶべきなんだろうか…

 

 

 



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6.旅、始めました(命がけ)



寒い日々が続く…北海道とか大丈夫だろうか…
そういえばエンゲージまでもうすぐですね…わし? はは、予定変更で買わないことになったよ(半ギレ)






 

 

 

 

 

 

青い空、白い雲。

晴天広がる最高の日の下、私の門出の為に我が家のデカい庭の中に数多の人々が集まってくれていた。

 

 結局昨日の父の言葉に、私は旅に出ます、とまるでマサラタウンにさよならバイバイしそうな勢いで答えた私は、しばしのお別れになるからと両親とその日は共に過ごし、目一杯の親子の時間を過ごした。

 そして今日。

私の答えを既に予想していた父と母、そしてジェラルトのお陰で、私はこれといった準備をすることもなくスムーズに門出の準備を終え、今に至っている。

 

 早いものだわ。

訓練してくださいお願いしますなんでも以下略、とお願いしてから数ヶ月という短いスパンで決定した今回の見聞(死と隣合わせ)の旅。

地獄だった母との訓練から、実践も兼ねた訓練へのステップアップ。

フォドラの地を曇りなき眼()で見て、体験して、考えて、自分を磨く。

 だけど、今回の旅が自分の為の旅と言えど、怖いかどうか聞かれると、素直に怖いと言いたい。 

 正直今でもなんで平和を捨てて、あんなイノシシみたいに何も考えずに、たかが三国が手を取り合っているところが見たいから、なんてくっそくだらない理由のために自分を鍛えてほしい、なんてことが言えたのか今でも不思議に思っている。

 

 4年という歳月でフォドラという大地に愛着でも湧いたのか、それともこの『アルディア』という聞いたこともないキャラがそういう人間だったのか。

はたまたそれ以外のなにかが原因か。

 

 まあでも、結局のところ何かしらの影響でそんな事を考える人間になったんだろうなとは思ってる。

 夏休み明けに学校で会って、友人の雰囲気とかが変わった、みたいな。多分そんな感じと同じ。

 育ちというかなんというか…何が原因か知らないけど、人間ってのは案外良くも悪くも簡単に変わるものってことなんだろうなぁ。

 

「アルディア」

「え、あ、はい、父さん」

 

 ぼうっとしていたせいか、突然の父の言葉に思わずどもったような返事を返してしまった。

 

 父さんも、おやおや、緊張しているのかな? といつもの朗らかに笑みを浮かべると、私の頭を撫でてくれた。

 

「す、すみません」

「なに、気にするな。これだけの人数、そして行事。緊張しないほうが珍しいさ」

 

 だから気にするな、と父さんは私の頭をポンポンと撫でる。

 そして少しの間だけ続けていると、父さんの雰囲気がすっと硬く厳格なものに変わり、表情も真剣なものに変わる。

 

「いいかいアルディア。これから君は長い間ジェラルト達と一緒にフォドラ中を旅することになるだろう。当然残酷なものや、どうしようもないことを見ることになると思う。だが自分を見失ってはだめだよ」

「見失う?」

「あぁ。人間とは見た目以上に脆い生き物だ。突きつけられた事実を見て、心が折れてしまう事が多い。そして歩めたかもしれない人生を棒に振ることもある。良いかい? これだけは覚えておいてくれ」

 

 父さんは私の肩に手を置くと同時に、さっきまでの厳格な雰囲気が霧散し、じっと、子を心配するように、どこか不安げに私を見る。

 

「お前がどんな思いで、どんな考えで、何を成そうとしているのかは私達にも分からない。だがな、決して死ぬようなことだけはしないでくれ」

「父さん…」

「親として、子の成長を見て、感じて、自身の足で巣立っていく姿を見る事が出来ることは幸せなことだ。だが、子の成長を見ることも出来ず、先に逝かれてしまう事程不幸で、生きる活力を失くす事はない。分かるね?」

「…はい」

 

 親不孝なことになってはならない。

そう思えるほどに、父さんの言葉は重く私の心に刺さった。

 

「私だけじゃない。レーラも、ここの使用人達もそうだ。お前の帰還を、私達は待っている」

「…はい」

「だから…ちゃんと帰ってくるんだぞ」

「……はい」

 

 じわじわとこみ上げる何か。

いかんいかん。精神年齢30代が今更泣いてたまることか。

 ごまかすようにぐっと拳に力を込め、抑え込むと、父さんの目をじっと見つめる。

 

「父さん。私、頑張ってきます」

「うむ」

「そして、力を付けて帰ってきます」

「うむ」

「なので、待っていてください」

「うむ。しっかりな」

 

 私の言葉に満足したのか、父さんは再び朗らかに笑みを浮かべ、私の頭をポンポンと撫でると、レーラ、君は何か言うことはないのか、と母さんを呼ぶ。

 母さんは優しく小さな笑みを浮かべたまま首を横に振る。

そしてゆっくりと私の視線に合わせるように屈み、私の手を握ると、いつものようにほっこりとした笑顔で私を見つめてきた。

 

「貴女がどんな風に成長して帰ってくるのか楽しみにしているわ~」

「母さん、軽いね」

「ふふ、私達の自慢の娘よ~? 簡単に死ぬなんて思わないわ~」

「あ、あははは…」

 

 父さんとのあまりにも大きな温度差に思わず苦笑いが出てしまうが、まぁ母さんだしなぁ、なんて納得すると、父さんにしたように、しっかりと母さんの目を見る。

 

「しっかり鍛えて、強くなって帰ってきます」

「えぇ、楽しみにしているわ~」

 

 じゃあ、そろそろね~、と母さんは立ち上がると、父さんの斜め後ろに戻っていく。

 

「これで私達の言葉は送った。アルディア、大丈夫かい?」

「はい。大丈夫です」

「よし。では…皆の者、娘の見送りをするぞ!」

 

 父さんの言葉に、使用人の人達はざっ! と左右に綺麗に別れ、門までの道を作ると、笑顔で私を見てくる。

 か、金持ちの感覚って、不思議というか、やりすぎだよなぁ…慣れねぇ。

 今だに一般市民の感覚が残っている私はこの状況に多少引きつつも、行くぞ、と言う父さんや母さんと共に歩き始める。

 そして左右に広がったメイドや執事達から

、お嬢様、ご帰宅をお待ちしております! とか、あぁ、決して死なないでくださいねお嬢様! とか、祝いの言葉と見送りの言葉をまるで卒業する子供を見送るじいちゃんみたいな感覚でガンガンぶん投げられ、おおぅ、と内心ドン引きしつつも少し嬉しく思いながら門まで歩き続けた。

 

 そして出口の前まで到達すると、外で待機していたジェラルト達が、おお、終わったか、とこちらに歩いてきた。

 

「ジェラルト、娘をよろしく頼むよ」

「あぁ、まぁ任されたからにはしっかり見てやるさね。じゃあ、行くか、嬢ちゃん」

 

 すんなりと歩き始めるジェラルト。

私もそれに続くように歩き始めようとして、一度後ろを振り返り、父さんと母さんを見る。

 そして勢いよく上半身を前に倒す。そして――

 

「行ってきます!」

 

 父さんと母さんに挨拶をすると、走ってジェラルトの後を追いかけ、我が家を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嬢ちゃん、一応確認させてもらうぞ?」

「はい」

「話は昨日の段階で聞いてると思うが、訳があってお前の家には決められた歳になるまで帰ってこれない事になってる。大丈夫なんだな?」

「もちろんです」

 

 歩きながら話すジェラルトにはっきりと返す。

そんなもの、覚悟の上だ。

 

 我が家は父さんが言っていたようにアドラステア帝国はおろか、他国にも認知されていない。

どうして認知されないように動いているのか詳しくは聞いてないけど、先祖の考えでそうなっている以上、バレてはいけない都合上、長期休暇で故郷へ変えるような感覚で帰ることは出来ない。

 たぶんジェラルトは私の年齢的に大丈夫なのかを知るために聞いてきたんだろう。

でもこちとら外見と現状の実年齢はともかく、精神年齢30代なのだ。問題ねぇわ!

 

「そうか。なら良いんだ」

 

 ジェラルトも私の言葉にとりあえず大丈夫と判断したのか、特に言葉は続くことはなかった。

 

 そしてしばらく歩き続けると、森を抜け、その先に多数の人影が見えてきた。

 

「ジェラルトさん、あれは?」

「ん? あぁ、俺の部下達だ。これから世話になるから、仲良くしろよ」

 

 ジェラルトが言い終えると、こちらに気づいた団員の人達がぞろぞろと集まってきた。

 

 す、すげぇ人数だ…何人居るんだよこれ。

 

 使い込まれた武器を持つ傭兵、馬に騎乗している傭兵、鎧を着込んだ傭兵と様々な傭兵が居て、思わずポカンとアホ面を晒してしまった。

 

「あ、団長、この子が例の?」

「おう。お前ら、仲良くしてやれよ」

 

 うぇ~い、とまるで工事現場のおっちゃんみたいなノリで返事を返す団員の皆様方。

軽いというかなんというか…緊張感が無いな。

 

 原作ではそこまで描写の無かった人達。

ジェラルトがこんな感じだから、決めないと駄目な場面以外割りと緩いのかなぁと予想していたところ、その通りだったみたいで、むしろ早く馴染めそうで少しと安心した。

 

 職場を快適に過ごしたくばコミュニケーションも必須。ふふ、まずは出だしヨシ! 現場猫もこれにはにっこりだ!

 

「アルディア」

「あ、ベレス、ベレト!」

 

 そしてこれから共に旅する仲間にして、これからフォドラの戦乱で大暴れすることに鳴るであろうベレトス兄妹!

 二人を見つけた私はギュッと二人を抱きしめ、色々と堪能する。

 

 あ~~~~たまらん! 可愛すぎる!!

 

私のそれに周りの傭兵団員からは、仲睦まじいなぁ、と笑い声。

 

 ん~~~! カワイイィィ!

 

 抱きしめられている本人達はあいもかわらず無表情だけど、そんなの気にしない。

 私が良ければそれで良いのだよ!(自己中)

 

「仲が良いのは構わないがさっさと動くぞ。ほら、お前らもさっさと動け」

 

 うぇ~い、と返事を返すと各々準備を始める団員達。

 私も渋々彼らから離れると、自分の荷物を担ぐ。

服と鍛錬用の木刀だけの少ない荷物。

そして背中に背負うように担ぎ上げると、突然両脇に手をツッコまれ、足が地面から離れる。

 

「な、なんです?」

「馬鹿野郎。いくらなんでもまだ子供のお前らを歩かせるかよ。ほら」

 

 突然の事に焦る私をよそに、持ち上げた犯人だったジェラルトは私を抱き上げたまま騎乗している団員の方に自分が乗っている馬を近づけると、ほら、こいつに乗せてもらえ、と鎧を着込んだ女性の傭兵に渡される。

 

「ふふ、よろしくねぇ、アルディアちゃん」

「は、はい。よろしくお願いします」

 

 色気のある声で私を受け取った色気のある黒髪ショートのお姉さんは私を腕の間に挟んだまま、手綱を握り、馬を動かし始めた。

 そしてそれと同時に頭に当たり始める柔らかい感触。

 

 おおう、頭に当たるおぱーい…お姉さん、めちゃデカいもの持ってますねぇ…。

 

 思春期男子なら興奮待ったなしのそのブツを頭に感じつつ、年齢と精神年齢が一致していない私ことアルディアという幼女は旅の一歩を踏み始めた。

 

「でっっっ…」

「自慢なのよ、これ」

「!!?」

 

 よ、読まれてる…!?

 



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7.鍛錬娘と静音娘




さっむ…どうしてこんなに寒いんや()


エンゲージ楽しんでます?
私は楽しめてません(憤怒)


最後辺り失速してもうたけど、まぁ、バレへんやろ…()


 

 

 

 

 

自身の欲まみれの願いを叶えるために両親の鍛錬を受けてきたアルディア。

 様々な形と縁から、凄腕の傭兵、懐刃ジェラルトと呼ばれる男が団長を務めるジェラルト傭兵団に世話になることとなった。

 初めは慣れないサバイバル生活や、長距離の移動、そして荒くれ者が多い傭兵団の団員達やベレス、ベレトとのコミュニケーションに四苦八苦するも、意外と人が良い団員や、前世で培ったコミュニケーション力もあってか、無事良好な関係の構築に成功する。

 鍛錬もまた前世で培った社畜精神が功を奏したのか、母レーラとの鍛錬よりもより厳しくなったジェラルトとの鍛錬も、自身の糧にすべく貪欲に教えを請い続け、大きく成長をし続けた。

 そして時は流れ、1167年。

 花冠の節のある日、次の仕事を求め、移動を続けるジェラルト傭兵団は休息の為にアドラステア内のとある森に立ち寄る。

 各々が疲れを癒やすためにゆったりと過ごす中、アルディアは木刀を手に、鍛錬をしようとしていた時のだが…

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 団が休憩をする為に行進を止めた事のより、少し時間が出来た私は使い慣れた木刀を片手に、一時的な拠点から少し離れたところに向かって移動していた。

 もちろんジェラルトには報告済みだ。

無断単独行動は危険だし、めちゃくちゃ迷惑を掛けるからね。ワンマンショー程戦場どころか、職場で邪魔になる行為は無い。

 

 それにしても、最高に良い環境ね~。目を閉じたら即爆睡出来そうな状況だわ~。

しっかりと光るお天道様!

まるで絵に描かれたかのように木々の間から注ぐ太陽の光!

火照った体をゆっくりと冷ましてくれそうな、涼しい風!

木々から発せられるマイナスイオン!

どれを取っても爆睡確実な要素しか無いこの環境、寝転べば間違いなく、夜まで眠れるわ! FOOO!! ハンモックとか用意して寝たいぜ!!

 

 だが! だがなのよ…残念な事にこちとら鍛錬の為に木刀持ってるんだわ。

 体を休めるには最適と言えど我未熟者ぞ。修行優先ぞ。

そんな甘ちゃんめ、ぺっ! なことなんて出来んのよ。

自身への甘ちゃんは明日の死ってじっちゃん(団長)が言ってたから、やるしかないのよ(血涙)

 

「へぁ~…やるか」

 

 間抜けなため息を吐いた私は、脳内を支配しようとする休憩を満喫したい欲を抑えるために深呼吸をする。

 

「すぅ……ふぅ……よし」

 

よ~し、生き返った(冷静さ的な意味で)

 

 切り替えを終えると、背筋を伸ばす。

 次にしっかりと木刀を握る。

手に伝わる握り慣れた持ちての感触。

ゆっくりと、力まないように力を込めていく。

力みすぎると余計な体力使うから駄目だとじっちゃん(団長)にも母さんにも言われたからね、仕方ないね。

 

 そして程よい力加減で握ると、次は前を見る。

視界に広がるのは当然数多の木。人なんて居ないし、ましてや鉄拳の木人も居ない。

でも大丈夫だ、問題ない。

集中力を上げるためにしてきた瞑想。

そして、もうs、じゃなくて、イメトレ(どやっ)

 これらの経験を活かすのだ。

 

 目を閉じる。

イメージする容姿は鎧を着込んだ一般兵士。

顔は…まぁ見えなくて良いか。

色はとりあえず灰色を…あかん、やめとこ。

 この世界で灰色をイメージすると確実にアッシュデーモンこと、ベレスかベレトが寸分違わずイメージされて瞬殺される結末が見える見える…(敗北の未来線が)太いぜ…。

エガちゃんには悪いがここは赤色にさせてもらおう。許してエガちゃん。

 

 ん~…おぉ、出てきたぞぉ。

赤い鎧を着込んだ一般兵士が出来てきた。

後は足とか具体的な部分を――

 

「ねぇ」

「おっほぃ!?」

 

 背後から聞こえる声。

完全に自分の世界にININININININININ(F1無線)していた私はその不意打ちに心臓が跳ね上がると、間髪入れずに前に全力ローリングをかます。

 

「おいおいおいおいおいおい、なんだ君私を殺す気かね!?」

「そんなつもりはないよ?」

 

 心臓バックバクの私とは対照的に、不思議そうにキョトンと首をかしげる女の子。

ええい、相変わらず君は静かに登場するねぇ!!(憤怒)

 

「ねぇ! いつも言ってるけど、せめてもう少し前に声を掛けて――」

「掛けたよ? でも貴女はいつも通り反応してくれなかった」

「……」

 

すぅぅぅぅぅぅぅぅ……

 

「すみません」

「構わない」

 

 声の主であり、歴代でやっべぇ強さを誇るやっべぇ主人公にして、現在では私の愛しい妹分であるベレスに、限界まで誠意を込めた渾身の土下座をして謝罪するのだった。

 

 なおこのやり取り、既に20回以上している事を追記しておく。

 

 

 

 


 

 

 

 

 ベレスの奇襲を受けた私は完全に集中力を霧散し、鍛錬どころではないと判断。そのままベレスと雑談モードに突入したほうが良いと思い、私は地面に、彼女は切り株に座り、楽しい楽しい会話タイムを楽しんでいた。

 

 ベレス。

風花雪月をした人なら絶対に分かるその人で、女を選んだ場合の主人公。

先生として教壇に立っても、指揮官として戦場に立っても生徒を導き、成長させる恐ろしい人。

芯も強く、必要とあらばたとえ知っている人であろうとも倒して前に進む姿はまさに悪魔とも言えるし、英雄とも言える。

もちろん無双の方ではその圧倒的な力を序盤で発揮してくれましたね()、

後家族への愛もしっかりありましたね。ジェラルトを倒した場合のそれを見て私は思わず、おぉ、あのベレスが…なんて思ったもんだよ。

 

 そんなベレスが今ではこんなに小さく、そして私の妹分みたいな関係になってるんだから、転生ってやべぇわ(戦慄)

原作よりは短いが見覚えのある髪型。

大人の女性にはまだまだ程遠くとも、その原型がしっかりと出始めているクッソかわいいぃ!(デビルマ-ン)顔。

 あぁ、たまんねぇぜこの顔!

 

 そしてベレトも言わずもがな。

この世界ではどういう訳か双子で兄という立ち位置にいる彼。

ベレスと同じで、イケメンの原型が出始めているショタ顔に、原作通りの性格。

 なんだこの双子!(尊死)

 

 だけどその反面、問題もある。

ベレスが意外といたずら好きという点だ。

性格自体は原作と同じようなタイプみたいだけど、今みたいに静かに近寄ってきて声を掛けるなんてことは割りとあるし、何なら膝枕を要求してくることも多々ある。

ベレトはその辺りは真面目なのか、そういった事をしてきたことはない。

 双子なのに意外と違いがあるんだなぁ。

まぁ膝枕は役得なんですけどね、初見さん(恍惚)

 

 さて、そんなベレスとの雑談。

果たしてどんな会話をしているかというと――

 

「ジェラルトが次はレスターに向かうって」

「え、レスター? 今あそこ仕事薄かったよね」

「うん。でも貴族から仕事の依頼が――」

 

 誠に遺憾ながら、女子トークとは真反対のトークをしていた。

これも致し方ないと言えばそうなんだよなぁ。

 

 町や村に住んでいる子供達とは違い、私達は仕事の為にフォドラのあちこちを歩き続ける傭兵団。

資金のやりくりや、生存のための利便性を優先する都合上、どうしてもそういった子供向けの娯楽から離れていってしまう。

娯楽と言ってもそれは大人の娯楽であって子供に受けるかと言えばそうでもないし。

それにこの傭兵団自体子供が少ない。というか私含めてベレスとベレトの3人のみだ。

まぁ酷い話、戦闘を生業とする傭兵家業にとって子供を抱えるというのはお荷物以外の何者でもないからね。

 ジェラルト自身もその辺りは結構気にしているらしく、おっぱいの大きいお姉さんことダイナさんや女性団員とかに相談している姿を度々目撃する。

子を持つ親とは大変なものだ。

まあその問題を解決するために私を利用しているという点についてはジェラルトを恨みつつも、めちゃくちゃ感謝している(2度めの恍惚)

お陰でこの数年でめちゃくちゃ仲良くなれたしな!(どやっ)

 

「アルディア?」

「ん…どうしたの?」

「私の顔をじっと見て固まるからどうしたのかと思って」

「ごめんごめん、ちょっとね」

 

 いかんいかん。

こんな幸せな時間に考え事なんてもったいない。

 

私は謝罪の意味も込めて彼女の頭を軽く撫でる。

相変わらず無表情だけど、少しだけ嬉しそうに見えるのは気のせいか。

 

結局その後、ダイナさんが迎えに来るまでひたすら子供()トークをし、有意義に時間を過ごすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルディア」

「何?」

「膝枕」

「…」

「ん…」

 

おっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!(脳内大乱舞)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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8.元現代人故の悩み




エンゲージ。
なんか動画見てるとシリーズを詰め込んだハッピーセットみたいに感じたんやが…






 

 

 

 

ジェラルト傭兵団と共に旅して早8年たった1170年。

未だ実戦経験を積んだことは無いものの、そんなことは関係なしとばかりに日々鍛錬に励む少女、アルディア。

 ダイナやジェラルトなどの強者達から手ほどきを受け、彼らの厳しい鍛錬を物ともせずに食らいつく彼女はいつしか団員達が感嘆の声が上げるほどの実力を示すようになっていた。

 そしてそんな彼女を見て、誰かが言った。

そろそろ戦場に出てもいいのでは? と。

 

 初めはダイナを中心に、もう少し待った方が良い(ダイナに関しては過保護とも言える取れる理由を述べていた様子)という声が挙がり、どうするべきかと話し合いになった。

 

 これほどの逸材をこのまま鍛錬漬けにしても成長は薄い。実践を経験させるべき

 

という声と

 

 こんな可愛い子を実践とか頭おかしいのかしら(発言者はダイナ)

 

という声が挙がり、両者一歩も譲らない展開となり、挙げ句には殴り合いに発展してしまったこともあった(大体がダイナによる一方的なフルボッコ劇場)

 

 団員同士の愛のある喧嘩を見てジェラルトは頭を抱えると、そろそろ結論を出すべきかと考える。

 そして青海の節のある日。

結論を出したジェラルトはアルディアを呼び出すと今節引き受けた盗賊の討伐依頼をアルディアの初陣にすると告げる。 

 突然の初陣決定に、いよいと実践なのかと覚悟を決めるアルディア。

 

今の自分が実践でどれだけそれを通用するのか。

 

実践の空気とはどういうものなのか。

 

盗賊との戦闘を前に、彼女は前哨陣地で淡々と準備を始めていくのだが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 太陽が真上に上り、頭上からサンサンと日光をぶつけてくる真っ昼間の中、平原に臨時で設立された前哨陣地内を慌ただしく駆け回る団員達。

 初陣が決まり戦闘に参加する事が決まった私も例に漏れず、武器の点検や、道具、物資の確認等で大忙しで、せっせと準備を急ぐ。

 

 今回の依頼は盗賊討伐。

戦闘地区はファーガス王国内の小さな平原。

 

 交渉をしていたジェラルト曰く、今回の目標である盗賊共は元々少数の烏合の衆で、早々に潰す予定だったのだが、逃げ足が早かったせいもあり中々殲滅は愚か、補足も困難だったそうだ。

 で、手こずっている内に盗賊達の規模がどんどん大きくなっていき、いくつかの村が壊滅寸前までに追い込まれてしまったそうだ。

 

 相当苛ついていたんだろうね。

完全に堪忍袋の緒が切れた依頼主は、完膚無きまでに殲滅することを決意し、自身の持つ兵に他に傭兵を使うことを決断。

 そしてその傭兵を探す過程でジェラルト傭兵団の話を聞き、私達に話が来たそうだ。

 

 本気で潰す気でいるせいか、報酬は少しお高いらしく、団員達はやんややんやと喜んでいた。

 近頃は仕事の量が少なく、取れても報酬が少なかったりして狩りで食料を調達して過ごすことも少なくなかったからだろう。

 中には女と遊べるぞぉ! と叫んでた人が居たが笑顔()を顔に張りつけたダイナさんの無言の渾身の腹パンで沈んでいた。

 馬鹿なのかな?(辛辣)

 

 ともかく、そういったこともあってか団員達の士気が割と高い。

しかしそれに反して、私の士気はそこまで高くない。

 理由は簡単。

今回が初陣です()

ええ、初陣ですとも、初の陣と書いて初陣ですよ。

 今日の明け方、寝てる私を叩き起こして告げられました。

 

今回の依頼がお前の初陣だ。覚悟しとけ。って

 

 正直に言いましょう。

すごく…怖いです(顔面蒼白)

 

 一応それなりにきつい鍛錬はしてきたよ?

 例えばジェラルトやダイナさんとの真剣を使った鍛錬。

めちゃくちゃ怖いよぉ? 真剣だから、一つの油断で簡単に体の何処かが欠損するし、何なら簡単に死ねるし。

 

 他にも盗賊に襲われたのか、死人しか転がっていない壊滅状態の村も見たし、嬲れられ後に殺されたのか自害したのか分からないけど、裸のまま放置された女性の死体も見たし、腹を斧か何かで斬られ、体の中身をぶちまけたまま死んでいた子供の遺体も見たし、それ以外の放送出来ないような数々の遺体も見てきた。

 もちろん吐いた。盛大に。

見る度に何回も吐いた。

 狩りとかで見る獣達の死体を見慣れたからある程度大丈夫だと思ったんだけど、盛大に吐いてた。

 

 だから初の実践でも、それなりに大丈夫だろうと思ってたし、ある程度覚悟もしていた。

 自分の実力がどの程度なのか知りたいとか思ったりして、多少舐めてた部分もあった。今までの経験だってあるし、って。

でも結果は――

 

「やっべ…手が震えてきたで」

 

 これである。

点検作業を続けながら自分の手を見るとどこか動きが硬いし、無駄に力が入っている感覚もある。

 

 もちろんそんな状態になってるのは手だけではない。

心なしか呼吸は早いし、心臓の鼓動も、これから来るであろう初陣から逃げたいって言いたいのか普段よりも暴れ始めてる。

 今でこれなら戦闘になればどうなるかなんてアホでも分かる。

 

 よくそんな状態でここに居られるなぁって自分でも思う。

はっきり言ってこんな状態で戦闘になれば間違いなく誰かの足を引っ張り、下手すれば自分が死ぬか誰かが死ぬことになる可能性もある。

 ジェラルトにも言われたけど、体が硬くなると戦闘時の影響は悪い意味で大きくなる。

 剣の持ち方、力加減、足さばき、判断力。

挙げればキリが無いよ全く。

 

 やっぱり実践と見てるだけとか、鍛錬するだけっていうのは色々と違いすぎるってことなんだろうね。

 でもこの震えの原因はそれだけじゃないんだと思う。

 

 人を殺す。人に殺される。

私の予想だと、原因はこの2つだと思う。

 

 そりゃそうだわ。

前世では人殺しとか、人の殺されるなんて無縁。

喧嘩はともかく、人同士の争いでの生き死になんてニュースくらいでしか見聞きしなかった。

 そんな奴が、戦争が主な題材であるこのファイアーエムブレムシリーズの世界に来て、理由はともかく戦場に立とうとしてるんだ。

ビビるわ、んなもん。

 

 いやー逃げたいわ。

マジ逃げたい。

怖すぎるわ。

死にたくない、人を殺したくない、そんな気持ちが溢れてくる。

 

 自分のそんな状態を考えると、言い方は酷いけど、敵と言えど人間を容易く殺せる人って怖いと思っちゃう。

これを言うとジェラルト達に対しても失礼だとは思うんだけどね。

 

「はぁ…」

 

 溜息が出る。

重い溜息だ。

 

 分かってはいるんだ。

自分で選んだんだから、やらないと駄目だってことは。

 

 でもやっぱり、殺すも殺されるも、辛いし怖いし、考えたくない。

 

 私……戦えるのだろうか……



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9.外伝・ジェラルトの日記




日記系って案外書くのムズいんすね(白目)


花粉シーズンが到来していますが、今のところ私は大盾(マスク)でなんとかしています。
そのうち止め()さされてくしゃみを流星剣の如く連発するんでしょうね()









 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は知り合いから変わった依頼を受けた。

内容はそいつの娘であるアルディアを連れて行ってほしいというもの。

理由は一人娘であるアルディアを強くするためらしい。

 

正直な所受ける気なんて毛頭もなかった。

理由は色々と有るが、その中で挙げるなら俺達の仕事故に子守なんて出来ないってのが理由の一つだ。

死ぬ危険性が高い傭兵家業の最中で、死なれちゃ後味が悪い。

ましてや相手は知ってるやつの子供。そんな奴に死なれちゃこれ以上無いくらい後味が悪い。

ただ一人の娘をわざわざ人殺しの世界に来させる必要性だってない。

どこかの貴族と婚姻でも結んだほうがよっぽど平和だ。

 

だがまだ安全であるそれらの選択を捨て、危険を承知の上で真剣に頼み込んでくる知人であり依頼主でもあるローマンを見て、俺は負けたんだろうな。

結局受けることになった。

 

自分の子供以外の子供が一人増えちまうが、なんとかするしかないだろう。

団長っていうのも面倒なものだ。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 アルディアを預かってから幾日か経った。

レーラから聞いていたが基本は抑えているようだ。

まだまだ年齢が故に動きが甘かったりするものの、将来を感じさせる何かを感じた。

それと嬉しい誤算として、ベレトとベレスの面倒を自身から見るようになっていた。

鍛錬も有る上に仕事のための移動もある。

初めはダイナのやつも居たし、そこまでしなくても良いんだぞと言ったんだが本人がむしろやらせてくれと言ってきたのでそのまま任せることにした。

親としては情けない話だが、団長としてはとても助かっている。

だがこのままあいつらに任せっぱなしっていうのもどこか釈然としないので俺も少しでも良いから自分の子供達との時間を取れるようにしようと思う。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 アルディアを預かってからどれくらい経っただろうか。

何度も冬を越し、春を迎え、夏を過ごして、秋を迎えてきた。

その中であいつは必死に成長しようと努力を怠ること無く続けてきた。そして今日も夜遅くまで剣を振っていた。

 

 動きも大分洗練されてきた。

まだまだ甘い部分は目立つが、相変わらず将来性はかなりのものだと感じた。

もっと詰めていけばそれこそ国お抱えの騎士になれるだろうし、部隊の隊長にも就けるようになるだろう。

これからの鍛錬が楽しみだ。

 

それと一つ、複雑な誤算があった。

どういう訳か、ベレトが俺にも武術を教えてほしいと言ってきたのだ。

正直な所、気持ちは嬉しさ半分、悲しさ半分ってところだ。

嬉しい理由は単純に強くなろうとする息子を見て、親として嬉しく、そして頼もしく感じた事。

悲しい理由は将来出なくてもいい戦場に出ることになるのかもしれないという事。

自分の子供に死なれるなんて事になれば俺は死んだあいつに顔向け出来ないし、親としても終わっちまう。

 

 だがあのベレトが何かを考えて俺に言いに来たんだ。

こんな俺に出来ることは団長として、そして親として子供の要望に応えてやることぐらいだ。

明日から教え子が一人増える。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 なんてことだ。

気がつけばベレスまで鍛錬に参加してやがった。

理由を聞けば、アルディアを見てやりたくなったから、だと。

 

あいつは本当に人とのつながりを持つのが上手い。

訳ありが多い傭兵団の奴らとも気がつけば仲良くなっていたし、一部の奴らに関してはまるで義理の親にでもなったかのように振る舞いやがる。

 その中でも一番のやばいのはダイナだ

あいつ、過保護と言える程アルディアにひっついて世話を焼こうとする。

何かがあってそうなってるんだろうが、変に肩入れしすぎて怪我でもしなけりゃ良いが。

 

 とりあえずベレスに対しても明日から正式に鍛錬をしていくことになった。

 あの二人が自分の意志でやりたいと言ってくれたことに関しては嬉しいが親としてはどこか釈然としない。

何故かアルディアに負けたよう気がして仕方ない。

今日は酒でも飲んで寝ることにする。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 今日はアルディアが無事に初陣を飾った。

初の盗賊討伐戦ということでかなり緊張していたが、戦場に出てみればどうということはなかった。

 体の動かし方に硬さやぎこちなさはあったものの、8人の盗賊を倒すことに成功していた。

俺達もそれなりに実力がある傭兵団だ。

そこいらの盗賊に負けるような軟な軍団ではないし、実際仕事自体はあっという間に終えた。

だがそんな中でも初陣で8人も倒すことが出来たのは称賛に値する活躍と言えるだろう。

初陣でうまく活躍することが出来るやつのほうが少ないからな。

 

 だが仕事を終え、引き上げて作業の最中に人知れずに吐いている姿を見た。

 相当我慢していたのだろう、何度も吐いてやがった。

人を殺すことの重みを知ったというわけだ。

だがこれもあいつが選んだ道。乗り越えてもらうしか無い。

 

 けど、様子を見ることくらいはしてやろうと思う。

後で見に行ってみるとしよう。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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10.いや~、(人を殺すって)きついでしょ

時間開けすぎてて、申し訳ない(土下座)

真面目な話、お金で余裕ができた分を将来のために投資に回そうと考えたがために勉強に励んだ結果気がつけばかなり間が空いてしまいました。
マルチタスクは、苦手なんすよ(白目)

一応ちまちまっと手を加えてたりはしてたんですけ…
長いしなんか文の構成がグッチャグチャかもしれませんが、許してください、なんでもしますかr()


あと文字数見て引いた。長すぎな、俺ちゃん反省しろ。


 

 

 

 

 

 初の討伐戦、歴戦の傭兵が集うジェラルト傭兵団が嵐の如く戦場で暴れまわる中、果敢に前に出て必死に戦い、見事戦果を挙げ、初陣を華々しく飾ることに成功した少女アルディア。

 しかし初めて自身の手で人を殺したという事実に彼女の心は大きな傷を負ってしまう。

団員達の助けもあり、一応持ち直したアルディアだったが脳裏に焼き付いてしまった様々な重みは彼女の中から消えることはなく、今も心を蝕み続けていた。

 

 そして初陣を飾ったその日の夜。

野営地内で団員達が各々自由に眠りにつき、辺りが静まり返る中、未だ人を殺めた事実に悩まされ続けていた彼女は、一人眠ることが出来ずに居た…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふくろうが鳴き、空には月が浮かび上がる真夜中の森の中。

団員達が野営地内で各々好き勝手に眠る中、私は一人、野営地のすぐ傍にあった切り株に座り、ぼうっと夜空を眺めていた。

 

 理由はシンプルに、眠気が全く来ないから。

 

 疲れ自体はある。

冷蔵庫でも背中に担いでるのかとブチギレたいほど重い体。

剣を握る事はおろか、歩くことすらも拒否したい程の酷い倦怠感。

 経験上、これだけのお疲れ様セットが揃っていれば酒なんて無くとも目を瞑ればそのまま死んだように眠ることなんて簡単なはずの状態なのだが…目は24時間営業のコンビニのごとく、冴えに冴えて全く眠れない。

 

 ならそれだけアンハッピーセットの如く疲れが溜まっているのに何故眠れないのか、と聞かれれば、私はこう応えるだろう。

 初陣が原因だと。

さらに細分化して原因を言うならば、人を殺したこと、だろう。

 

 正直、戦闘で人を殺す事によって発生する自分の精神に対しての負荷はある程度想定はしていた。

前世で得たネット知識やテレビとかで、軍人が戦争や凄惨な何かを目の当たりにして帰還後に精神疾患を患う事が有ると知っていたし、これから生きていく世界が世界なだけに、そういったものとは切っても切れないと思っていたから。

 そしてそれは想通りだったし、お陰でまだ軽症で済んだ、と思う。

初陣にも関わらずそれなりの人数を斬り伏せる事は出来たし、戦闘中においても変に緊張

し、動きを鈍らせるということもなかった。

これはジェラルトやダイナさんによる真剣を使った上での極限まで危険な状況下を想定した訓練のおかげだと思う。あの二人には頭が上がらない。

だけど、ある程度被害を軽減出来たと言っても、何も影響が出なかったわけでもなかった。

むしろそんな低レベルの予防線を張っても全く無駄だと言わんばかりに私の精神をぶち壊そうと負の感情が次々と襲ってきた。

 まず手始めに現れた影響は初陣からの帰還後の嘔吐。

戦闘中に見てしまった様々なシーンが、まるでこれがお前の罪だと言わんばかりにスライドショーと化して何度も何度も場面を切り替え、脳内に出力される。それは、まさに地獄としか言いようがなかった。

お陰で木の陰で何度も吐くことになった。

 次に出てきた影響は手の震え。

まるで自分がやった事の大きさを示すように、その時の私の手は酷く震えていた。まるで痙攣してるのかとか、別の生き物かって勘違いするほどにね。

結局姿を消した私を探しに来てくれたダイナさんがその手を握ってくれるまで止まることはなかったわ。

 そして最後に現在進行系で起きているこれ。

不眠症だ。睡眠障害とも言うのかな。

不眠症なんて前世でも無理やりねじ伏せ、仕事のためにと爆睡してきたのに、今はこれのせいで地獄を見ている。

 

 当然と言えば当然なのかもしれない。

元を辿れば私はテレビのニュースやサスペンスくらいでしか殺人なんて言葉を聞かないような一般人。

そんな人間が、この血も涙も無い道徳0点を地で行く世界に産まれ、目標を建て、前世でも出すことのなかった一所懸命さと根性を発揮し、訓練の虫と化したからと言って果たして人を殺すという最大の禁忌を犯して、平然としていられる精神力を得られると思うだろうか。

 間違いなくそれは無理だと思う。

もし平然としていられる事が出来る人間が居たとしたら、人への害を及ぼすことに何かを感じる根本がヤバい人間か、目的の為ならば自身の命を消し飛ばしても構わないと言える程己を殺すことが出来る覇王のように固い意志を持っている人間くらいだと私は思う。

 

「はぁ…」 

 

 溜息とともに星が煌めく空を見る。

私は宝石の如く輝く星々で埋め尽くされている夜空を見て、あ~…あの星やマリオのスター状態みたいにアホみたいに輝いて無敵になれればいいのに、なんて嫌な現実から逃げるかのように、小学生染みたことを考える。

 初陣を飾ったはずなのに、酷いもんだわ。

 

「…?」

 

 その時、ふと背後の方から覚えの有る気配を感じた。

感じは…少し小さめという感じだろうか。

なんとなく気配を隠しているような…あれ? この気配、覚えというか、めちゃくちゃ分かりやすいというか。

 

 私はそれが何かを察すると呆れや億劫さを混ぜたような溜息を吐き、念のための安全確保の為に警戒も兼ねてその覚えの有る気配がする方へ顔を向ける。

 

「ほほぉ、良いカンしてるじゃねぇか」

「団長…」

 

 するとそこにはやはりというか、案の定、団長ことジェラルトが少しだけしたり顔みたいな笑みを浮かべて私を見下ろしていた。

 

 何でわざわざ気配を殺すんですかねぇこの人。

しかもわざとらしく微妙に残り香の如く気配を漏らし続けやがって。

ぶちころすぞ(明確なる殺意)

こちとら今ダウナーなんやぞ? おお? しばくぞゴラァぁ!?(情緒不安定)

 

「どうした、こんな夜更けにいっちょ前に一人で黄昏れやがって」

「クソガキの背伸びみたいなもんですよ」

 

 ガキらしく、小さな意趣返しも込めて返すが、ジェラルトはそうか、いいじゃねぇか、と、軽く受け流すといつもするように私の頭を撫でた。

 

 ええい、やめんかおっさん!

こちとらおばさんやぞ!(精神年齢的に)

 

 思春期の子供のように、ジェラルトの硬い手を退かそうと彼の手を掴む。

だけど、そこは子供と大人。

両手で掴んで引き離そうとするも、びくともせず、そのまま撫でられ続けた。

 

「はは、ボサボサだな」

「誰のせいですか」

 

 無駄な抵抗を続けながら撫でられること少しして、地獄の撫で撫でから開放された私の髪の毛はものの見事にボッサボサヘアーに早変わりしていた。

 

 セミロングなのでボサると素直にうぜぇ! 毎朝大変なんだぞゴラァ!

 

 その髪型も悪くねぇと子供を弄る親のように笑うジェラルトに、若干の苛立ちを感じた私はムッとした表情で睨み返すと、ボサボサヘアーを直そうと必死に手櫛で髪を梳き始めた。

 

「少しは気が紛れたか?」

「……」

 

 ふと聞こえたジェラルトの言葉に私は手櫛を止める。

 

「お前の様子が変だったのは知ってたからな。少し手荒な事をしちまった」

 

 悪いな、と人差し指で自身の頬を掻きながら少しだけバツが悪そうに視線と顔をこちらから逸らす。

どうやらさっきのあれは不器用な彼ながらの慰めだったようだ。

 

 彼のそんな不器用だけど、しっかり人を見ていたらしいジェラルトの観察力と、大人としてのレベルの高さに素直に感服すると、ゆっくりと手櫛をしていた手を下ろす。

 そしてゆっくりと、言葉を吐き始めた。

 

「正直、人を殺すことはいずれ通る道だから覚悟さえしていればなんとかなるだろうって思ってたんですよ。だからある程度は覚悟していたんですよ。でも実際剣を手にとって、戦場に立って、盗賊と言えども同じ人を殺して…」

「……」

「想像を超えてましたよ。すごく、心に来ました。まるでドラゴンがのしかかってきたみたいに」

 

 私は情けない表情を浮かべながら続ける。

まるで吐き出すように。

 

「ついさっきのことだから、忘れられないってこともあるんでしょうけど…それを抜きにしても、今はすごくしんどいです。あんなに持ち慣れた木刀すらも、持ちたくないと思えるほどに」

 

 そして膝を抱え込み、顔を埋めるように膝に額を押し当てながら言葉を漏らし続ける。

 

「ジェラルトさん、教えてください。私はどうすれば良いんですか?」

「……」

「人を殺すことに慣れるなんて、したくないです。でもだからといって、逃げたくもないんですよ」

 

 逃げることは今までの自分がやってきたことを否定することになる。

オタクが妄想するかのように願っていた三国共存というIFが、いつの間にか否定したくないレベルまで大きな願いになっていた私には、それがとても許せなかった。

 

 私が話を終えると、ジェラルトは腕を組み、目を瞑る。

馬鹿にする素振りを見せることもなければ感じさせることもなく、ただ黙り込んだジェラルトを見て、私は何か助言か、欲を言えば答えを教えてくれるかもと淡い期待を込めながら、彼を見続ける。

 

「踏ん切りをつけろ、としか言えねぇな」

 

 だが返ってきた言葉は何とも言えない中途半端なものだった。

踏ん切りをつけろ? それが出来ないからこっちは困ってるっつってんのに。

 

 思わず内心で舌打ちする。

もちろん理不尽なことだって分かってる。

自分で勝手に期待して、勝手に自爆してるだけなんだから。

だけど今の私にはその理不尽な感情を制御する術はなんて無く、ただわがままな子供のように感情ををぶつけることしか出来なかった。

まだ心の内で留めるだけマシ、と言えるのかもしれないけど。

 

「技術的な部分は簡単に教えてやれるんだよ。実演して、基礎を教えりゃ誰だって身に付くもんだからな。だがな、心ってのはどれ程の手練が師匠であっても、簡単にどうこう出来るもんじゃねんだよ。何故か分かるか?」

「……いえ」

「鍛える為に使えるものが言葉しかねぇんだ。実演して見せれるものがねぇんだよ。こうすれば気持ちが安定するだとか、ああすれば恐怖は薄れるとか、その程度しか言ってやれることがねぇんだ」

「……」

「だからこそ、心の問題ってのは、自分でどうにかして踏ん切りをつけるしかねぇんだよ」

 

 厳しいけど、納得するには十分な言葉だと思う。

体は怠ること無く毎日鍛えればどうとでもなる。

技術も、人から学び、体と頭に叩き込めば問題無い。

だけど心は、心だけは鍛え方が分からない。

原始的な方法だけど、ひたすら滝に打たれれば良いのか、それとも親や生活が厳しい環境に身を置けば良いのか。考えてもどれが効果があるのかも分からないし、必要なことなのかも分からない。

 

「まぁ、とは言ってもお前はまだまだガキだ。泣きたくなったり、どうしようもなくなったりしたら俺達大人を頼れば良い。今の間くらいならある程度は助けてやれるからよ」

 

 私の頭を軽く撫でると、よっこらせっ、っとおっさんくさい掛け声と共に、ジェラルトは腰を上げた。

そしてわざとらしいくらい大きなあくびをすると、間を置いて柔らかな笑顔を浮かべ、こちらを見下ろす。

 

「ともかく、どうしたいかは自分で考えてみろ。初めて戦場で人を殺して辛いってのはあるだろうが、お前ならなんとかなるだろうさ」

 

 言いたいことは言い終えたのか、ジェラルトは早く寝ろよ。明日も早いからな、と言葉を残し、手を振りながらのんびりとした歩調で野営地に帰っていってしまった。

 

「踏ん切り、ねぇ」

 

 自分の口から漏れた言葉。

結局ジェラルトは自分でなんとかするしかないとしか言ってくれなかった。

だけど、彼と話したことで少しは気が晴れたのか、幾分気分がマシになっていた。

 

 空を見上げる。

先程と変わらない、星だらけの綺麗な空。

だけど少しだけ、本当に気持ち程度だけ、さっきより綺麗に見えた気がした。

 

 

 


 

 

 

 次の日の朝。

結局気がつけば切り株の傍でそのまま眠っていた私は、起きて早々野営地内に戻ると既に起きて野営地の撤収作業を始めていたジェラルトを見つけ、その場で、頑張ってみます、と宣言みたいな形で告げた。

 ジェラルトからの返答は作業中もあってか、短く、そうか、とだけ告げると、どこか満足そうな表情を浮かべて作業に戻っていった。

 

 正直まだ尾は引いている。

まだはっきりと前に進んだわけではないし、なんなら今もまだ倦怠感が残っている。

それにこれから出撃の機会は増えるだろうし、その度に、虹色を放出することになるかもしれない。

だけど自分で決めたことだから、きっちりと前に進もうと思う。

かなりしんどい道だけどね。

 

 さて、とりあえずの一歩前進となったわけなんだが…今、私は重い装備を背中に付けている。

いや、付けている、と言うより、憑いている、と言ったほうが良いのかもしれない。

一応誤解のないように言っておくと、生きてる人が憑いているので霊ではない。

そして生霊でもない。

普通に実体を持った、よく知ってる人が私の背中に張り付いているのだ。

正確には、抱きしめられている、というのが正しいかな。

 

 首辺りに感じる安心感を大いに煽り、そして男子であるならば大いなる夢の塊と呼べる、乳。

あいにく私は前世も含めて女性なので男子諸君に比べるとそこまでだが、はっきり言おう。

 

最高っす(恍惚の笑み)

 

 そして私の頭の上に顎を乗せ、楽しげに鼻歌を歌う乳の持ち主。名を、ダイナと呼ぶ。

そう、あの人に私は今、後ろから乳を感じながらハグされているのである。

 

 なんで?(疑問)

 

 朝からだ。

ジェラルトに報告を終え、すぐにこうなった。

とりあえず作業しないとねぇ、と動き始めたところに、突然やってきたかと思えば、この状況である。

もう一度言おう。

 

 なんで?(二度目の疑問)

 

 いや、良いんですよ? 大きなおっぺぇを首に感じ、幸せの悦に浸れる。

これは男子でなくとも、オタク女子であるならば分かると思うんだ…分かれ(脅迫)

 一応何度か、今は作業中なので、と遠回しに今はやめときましょうよと告げても、のらりくらりと躱され、まるで磁石の如く離れないのだ。

 

 正直なところこうなる覚えがない。

一応該当するものがあるとすれば昨日の戦闘の後くらうだろうけど、いくらダイナさんが心配症と言えどここまで引っ付くもんだろうかと疑問に思っている。

 

 いや本当になしてこうなった?

今も鼻歌を歌い、たぶん笑顔を浮かべて楽しそうにしているんだろうということは分かる。

それはいいんだけど…あの、作業、させてください。

 ほら、見て。団員達がお前またかよ、とか呆れた顔してますし。

ね? ダイナさん! お願いしますなんでもいた…しませんので、お願いします。

 

「前に進めそう?」

「へい?」

 

 どうやって脱出しようかと考えているところに突然ダイナさんの声が聞こえ、何とも言えない返事を返してしまった。

いや、あの、前に進めそう? ってどういう…?

 

 質問の意図が見えない私は多少混乱しながらも、とりあえず黙ってダイナさんが動くのを待つことにした。

 

 そうして周りの団員達が撤収作業を続ける中しばらくして。

ダイナさんは満足がいったのか、前触れもなくハグを解くと私の前に回り込むと、笑みを崩さないままじっと私の顔を見続け始めた。

 

 いや、あの、そんなじーっと見つめられると、照れるといいますか…

 

 美人に見つめられ続けることで変に気恥ずかしさというのか、恥ずかしさを感じ、顔が熱くなってくる中、逃げるように顔を逸らす。

ダイナさんは私の行動に何か不満を感じた様子もなく、ただ微笑ましいものを見るように見続けてくると、よし、と小さく声を出し、私の頭をなでてきた。

 

「うん、大丈夫そうね」

 

 そしてまた彼女だけ何かに納得したのか、最後に私の髪の毛を整えるように手櫛で梳くと、そのまま何の言葉もなく作業に加わり始めた。

 

 突然の発言と、突然の放置。

まるで絵に描いたようにポカーンと口を開け、ボッチと化した私は、しばらくどうすることも出来ず、団員の一人がぼさっとするなよ、と背中を叩いてくれるまでその場で呆然と過ごすことになった。

 

 なんやねん、さっきの……大人って不思議~~~()

 

 


 

 

「どうだった、アルディアの様子は」

「えぇ。あれなら大丈夫よ。しっかりと前に進んでいくわ」

「そうか」

「ふふ」

「なんだ?」

「いいえ。ただもう少し何か言ってあげればよかったのにって思って」

「……俺には無理な話だ。気恥ずかしくてたまらん」

「ふふ、そういう割にはあの子の事をしっかりと見てるくせに。相変わらず不器用な人ね、団長」

「ちっ…ここの撤収作業を終わらせといてくれ。俺は別のところを見てくる」

「は~い。ふふ」

 

 

 

 

 

 

 

 



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11.親の嫉妬ほどみn(ここで途切れているようだ)

ジェラルトには隠れ子煩悩であってほしい…なれ(脅迫)


花粉シーズンは鼻に来るから本当に苦手…鼻詰まりはないけど、くしゃみの回数が馬鹿みたいに増える…









 

 

 

 

 

 

 

 

「起きろアルディア」

「んあ…?」

 

 朝一番。

睡眠の過程にあった私は、彼――ジェラルトの声と共に叩き起こされてしまった。

 レスター内で起きた盗賊討伐戦へ参戦し、疲労により頭が全く機能していない状態の私は突然の出来事にどうすることも出来ず、毛布に包まった状態で頭上に多数のはてなマークを飛び交わせる。

 

 一体何が起きたんです?

 

 瞼が未だ重い中、上体を起こし、状況を確認する。

就寝のために使わせてもらったオンボロの空き家。

勝手に使っている持ち主の居ない薄汚れた毛布とベッド。

壊れた屋根の一部から注ぐ朝日。

外から聞こえる団員達の声。

空き家の扉付近で腕を組んで立っているジェラルト。

 

 なるほど…どうやら朝らしい。

状況から見て既に団員達が移動のために準備を初めている様子。

ということは私は寝坊したというわけか。

 

 ジェラルトのわざわざ私を起こしに来た原因が分かり、これはちょっとお小言かな、なんて思いながら、おはようございます、と朝の挨拶をしてゆっくりとベッドから降りる。

 

「おはようさん。突然で悪いんだが、面貸せ」

「…はい?」

 

 ……どうもお小言、というには生ぬるい何かが待っているようだ。

僅かながら苛立ちの含んだジェラルトの声に、私の頭から眠気が吹き飛ぶと、入れ替わるように冷や汗が背中を伝い始める。

 

 私…何かしましたか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 重苦しいオーラを発するジェラルトに連れられてきたのは、野営地から少し離れた、小さな泉があるところ。

森の中にあるということで、ついFE繋がりでレックスのイベントが頭に過る。

 

「ここに座れ」

 

 ジェラルトは泉を見ていた私に、切り株の上を指差す。

言われるままに私はその切り株に座ると、ジェラルトは地面にどかっとあぐらをかいて座った。

 

 さてさてぇ…一体何をやらかした~私。

 

 重苦しい雰囲気はそのままに、ジェラルトが顔を下げた状態で微動だにしない中、私はやらかしに思い当たるものは無いか思い返す。

 

 

 昨日は依頼で受けた盗賊討伐戦に参加して、夜にはいつものごとく軽い祝勝会みたいなことをしていて、特に問題はなかったはず。

戦闘も、前に出すぎず、後ろに下がりすぎず。自分でいうのもあれだけど、バランスのいい動きをしていたはずだ。

 なら夜の祝勝会で何かやらかした?

いやいや、こっちにきてから酒を飲んでいないのに何をやらかす要素があるんだよ。

少なくとも、私が誰かに対してどうこうしたなんてことはなかったはずだ。

ダイナさんが団員の一人に笑顔の腹パンを放っているシーンは見たけど、あれに関しても私は無関係だったし。 

 なら今週のどれかの日にやらかしたか…?

寝坊…は稀にするが、呆れられることはあれど、怒られるなんてことはなかった。

鍛錬系統に関するお咎め? う~ん。可能性が無いとは言い切れないが、少なくとも、初陣での出来事以降、さらに力を入れて臨んでいるから、それも無いと思う。

となれば…何が原因?

 

 思い当たる節が全く見当たらない私の頭上にはてなマークが溢れる。

某検索サイトの、一致する情報がございません、とはまさにこのことだ。

 

 困ったなぁ…。

やらかしに対して謝罪をしようにも、これではどうしようも出来ないじゃないk―――。

 

「お前、ベレト達に何言ったんだ?」

「…はい?」

 

 思考を遮るように、突然口を開くジェラルト。

何を言った? 一体何のこと?

言葉の意味が分からない私は、再び頭上にはてなマークを浮かべる。

 ジェラルトは私の反応を見てか、溜息をつく。

そして数秒ほどして、ジェラルトは、本当に知らないんだな、とどこか疲れを含んだ声音で言うと、言葉を続けた。

 

「ベレト達が俺達も戦いに出たいと言ってきやがったんだよ」

「………え?」

 

 ちょっと待ってほしい。

どういうことそれ。戦いに出たい? ……ちょっと何言ってるのかわかんないっす。

 思わぬ言葉と、どうしてそれが私のせいなのか、という感情が入り混じり、思わずしかめっ面をしてしまう。

 

「原因は? 何で彼らはそんな事を?」

「……」

 

 私の疑問にジェラルトは頭に手をやり、くたびれた表情を浮かべ、溜息をつくとゆっくりと腕を挙げ私に指さし、お前が原因だ、と言った。

 

「どういうことですかそれ」

 

 団員達みたいに二人に悪知恵を入れようなんて気は微塵も無い私からしたら、原因となった意味が全く理解できなかった。

いや、本当にどういうことよ。

 

「お前、初陣の時の事は覚えてるか?」

「初陣? え、えぇ、まぁ」

 

 つい最近のことだ。時間的にも、インパクト的にも忘れるはずがない。

 

「あの時のお前を見て、そう考えたらしい」

「……え?」

 

 えっと…どういうこと?

話のつながりが理解できなかった私は、またも頭上にはてなマークを浮かべ、追加でひよこマークまで浮かべ始めた。

 

「えっと…あの初陣の時の私と彼らにどのような関係が…?」

「……」

 

 ピクリと眉を動かすジェラルト。

どうやらこの言葉はまずかったようだ。

 ジェラルトは、お前まじかよ…と、信じられないものを見るような目で私を見てきた。

だがそれもつかの間、まぁお前からすればあれくらいはして当然か、とすぐに自己解決し、勝手に納得すると、今度は大きく溜息をついた。

 

「懐かれてるってことだよ」

「懐かれてる? 誰にです?」

「………」

 

 今度は馬鹿を見るような目だ。

 

「お前が、あいつらに懐かれてんだよ。ようは心配だから一緒に戦いたいって言いたいんだよ、あいつらは」

「……はぇ~」

 

 そうだったんだ…私懐かれてて、心配されてるんだ………懐かれてた……懐かれてた…? ……懐かれてた!?

 

 言葉の意味をようやく認識した私は感動のあまり思わず手で口を抑える。

私、懐かれてる…! 好かれてる…!

 

「さいっこう!!」

「うるせぇよ…」

 

 暴走しそうなレベルの素晴らしい吉報に、気分は天井を突き抜け、天をも超える勢いで跳ね上がった私は両手を挙げて喜びを露わにした。

 いやだってよ! いくらこっちから大好きだからと愛でていても、相手からすれば迷惑極まりない行為だったなんてことがあるんだぞ!? それが…それが…! ひゃぁぁぁぁぁぁぁ!! たまんねぇぇぇぇぇ!!!

 いや最高だろお前!! 今ならF1の某ドライバーのように良い声でYes!! と言えそうだ!

 

「そういうわけだ。今から鍛錬始めるぞ」

「え?」

 

 だが無情かな。

ジェラルトの口から出た死刑宣告に等しい言葉が耳に入ると、私は両手を挙げたまま固まり、油の切れたロボットのように発言者であるジェラルトに顔を向ける。

 

「たん…れん?」

「おうそうだ。今からな」

「いや、そこはまず親としてどうやったら彼らが戦いに出ずにすm――」

「今のお前を見てるとどうでも良くなった。むしろ苛立ちすら感じる」

「いや待ってください団長。親としてまず考えるべk――」

「お前が強くなれば問題ない話だ」

「いや待ってそろそろ野営地の撤収にもどr――」

「そうと決まれば時は金なりだ。さっさと始めるぞ」

 

 私の言葉を容赦なく切り捨てるジェラルト。

彼は私の服の襟をぐっと掴むと、ドシドシと非常に重い足音を奏でながら私を引きずる形で移動を始めた。

 

 あ、これが俗にいうドナドナってやつだ。

 

 自身の未来が見えた私は引きずられる中、空を見る。

ふふ、空が遠いぜ……。

 

 その後、団員の一人が撤収を終えたと報告が来るまでの間、体術の応用をうんたらかんたらとよく分からない項目を盾に、ひたすらボコられる羽目になったのは言うまでもない。

 

 



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12. 団員達は見た・とある団員の話

 

おまたせ()

ちょっと忙しさが天元突破したためかなり間が空きました。

許して…



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

団長がガキを預かった。

誰がそんな嘘八百言ったんだよ、なんて思ってたんだが、蓋を開けてみりゃまじでガキを預かってやがって俺は驚いたよ。

 あれだけ厳しくてよ、下手な仕事は受けないとか言ってやがった団長がだぜ? まさか子供を預かるなんてトンチンカンな仕事を受けるなんて誰が想像したよ。少なくとも俺は微塵も想像しなかったね。

 いやでもよ、あの時は真面目に団長が報酬の金額に目がくらんだんじゃねぇかって団内で噂になったもんだぜ。

 なんていったって相手はそれなりに大きな訳ありの商人家族。かなりの額を提示されたはずだ。

 実際渡された報酬金はかなりのものだったしな。お陰で装備の新調も簡単に出来たもんだ。

 お前もそうだろ? はは、あの槍な。良い感じしてたぜ。

 

 で、なんだっけ…あ、そうだ、アルディアの話だったな。

その後どんな感じだったけな…あ、そうそう、それだよ。お前記憶力いいな~。え? 俺が忘れすぎ? はは、酒と死んだ女房くらいは覚えてるって!

 

 アイツ、今もそうだけど来たときからずっと鍛錬一筋だったよな。

暇さえあればひたすら木刀振ってよ、こう、今どきの貴族令嬢には全く似合わないくらい活発的だったよな。今も変わらんけど。

 ただ謎なのが、アイツがどうしてそんなに鍛錬一筋なのか、なんだけどよ、お前知ってるか? あ、やっぱり知らねぇのか。謎だよなぁあれ。

団長にも聞いてみたんだが、団長自体もあまりはっきりとは分かってないみたいでよ、何かしらの目的が有るんだろう~とか言ってたぜ。軽いもんだぜ、ったく。

 

 あ~、酒うめぇ…お、見ろよ。アルディアが団長の娘を膝枕してやがるぜ。

似てないのにまるで姉妹みたいだな。アルディアが姉でベレスが妹。ぴったりじゃねぇか。

 おお、アイツら見て思い出したけど、結構前だったかな、ほら、あのアルディア轟沈事件。

そうそうそう! それだよそれ! あれやばかったよな! あいつには悪いけど、俺は腹抱えて笑ったぜ!

 あれどういう経緯でああなったんだっけ? 

確か、アルディアがベレスの頬を弄くり回してたからベレスが嫌がって嫌いって言ったんだっけ? お、合ってるか。

 あの時の落ち込みようったら、もうな、本人はきついかもしれねぇけど、俺からしたら本気で笑い死ぬかと思えるくらいの落ち込みようだったよ。

あの、なんだ…なんかこう、猫が口を開けて空を見上げてるような…え? 例えがわかりにくい? うっせ。こちとらおつむが弱いんだよ。察しろ馬鹿野郎。

 まぁともかく、あの後数日間くらい鍛錬に身が入らないほど死んでたよな。

後は…そうそう、ベレトのやつもアイツの心にぶっ刺したんだっけ。

確か、一緒に寝るのはもう嫌だ事件だったか。

あれも…ぷっ、くく…いや、すまねぇ、思い出し笑いがな。ひどい? お前も笑ってるじゃねぇか!

 あ~くそ、笑いがこみ上げてくるぜ、ったく。

いやだって思い出してみろ。ベレトのやつに朝一番、もう一緒に寝るのはやめるって言われた時のあいつをよ。

 なんかこう、雷に打たれたっていうのか?  立ったまま気絶してやがったんだぜ? あれは一生物のネタだろ!

 いやぁ、あの時程勢いよく口から酒を噴射した事はなかったぜ。

まさかあの一言で気絶するほどの傷を負うなんて誰が考えたよ! ダイナは苦笑い浮かべながら介護してたけど、しばらくその時の光景がこびり付いてウンウン唸ってたらしいぜ?

笑っちまうぜ。

 

 まぁでも、アイツが来てからはほんと、笑いが絶えないぜ。

いやそうだと思うぜ? なんかよ、こう、どっか別のところから来たって言われても納得できるほど染まってないっていうか、考えというか、人間性が違うっていうか、なんていうかな…あ? 何処から来たって? んなもん知るかよ! 例えだよ、例え!。

ただなんとなくアイツがこのフォドラみたいな面倒な所で育った人間じゃないんじゃないかって思っただけだ! くそっ、変につついてきやがって。

 とにかくだ、俺らとは違う何かが有る気がするんだよ。

何だ、お前もそう思うのか? だよな。こう、なんていうか…何かしそうな、やらかしそうな、やっちゃいそうな…あ? それだと罰をくらいそうな言い方だって? うるせぇ、おつむが弱いんだよ、察しろ! って、これ二回目じゃねぇか。

 は~でも…なんかこう、見てて飽きないやつだよあいつ。

初めはなんだこのクソガキって思ってたのに、案外世渡りが上手いっていうのか、馴染むのも早かったし、見てて笑えるし…あ~、ったく、年甲斐も無く変な気分だぜ。

 こういう時はアイツを出汁に話をし直すか! どの話をするよ! お、良いねソレ! 

確かそれってアルディアが馬に初めて乗った時だったか。あん時も笑えたよな! だってアイツ、馬に…あ? どうしたんだよ、そんなにブルブル震えてよ。あ? 後ろ? 後ろがどうしt―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルディア」

「はい? どうしました団長」

「いや、一つ聞きたいんだが良いか?」

「はい、良いですよ」

「あいつがお前に対して妙に気を使うようになったんだが、何かあったのか?」

「え? あの人ですか?」

「あぁ」

「特には何も…」

「そうか。まぁよく分からんが、何かされたなら俺に言え。いいな?」

「はい、分かりました」

「じゃあな」

「はい…ふぅ…流石にお話(スレッジハンマー)はやりすぎたかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







なおこの後アルディアを見る度に反射的に芸術と言えるほどの綺麗な最敬礼をするようになった団員が居たとか。


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13.ベレスと鍛錬したら不幸が舞い降りた(迫真)

なんてことはない日常だ。味わえアルディアさんや。

どうせ、地獄を見るんやし(予定)


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木々に囲まれる森の中。

木々の隙間から太陽の光が降り注ぎ、鳥の鳴き声と共に心地よい風が吹く中、私とベレスは木刀を手に向かい合っている。

 

 お互い構えはなし。

私は腕を下ろし、自然体のままベレスを見つめ、彼女は木刀を肩に乗せ、じっとこちらを見つめる。

そしてじっと、ただじっと待つ。お互い一歩も動かず、来るその瞬間に備えて。

 

 時間にして数秒程度経った頃か。

先程まで聞こえていたはずの鳥の鳴き声も、風の音も一切聞こえない。

まるで聴覚を失ったのかと思えるほどに静かで、音という音が聞こえない。

 感じるのは心臓の音のみ。

リズムよく、一定の間隔で動き続ける。

 

「…っ!!」

 

 こっ。

そんな文字にも表現出来ない小さな音が私と彼女の耳に届くと同時に、ベレスが動いた。

 低い姿勢だ。

まるで地を這っているのではないと思えるくらい、低い姿勢でこちらに突っ込んでくる。

私はじっと待つ。彼女がどう刃を振るうのかを見極めるために。

 

 動き始めて2秒も経たずにして斬撃が届く範囲まで到達したベレス。

ここまで突っ込んできた姿勢から下から来るかと私は身構える。

そして身構えた直後、下から突き上げるような衝撃が手に伝わる。

 

 相変わらず初っ端からギア全開だな! 

 

 唸るような音と共に来たソレを反射的に防ぎつつも、思わず冷や汗と苦笑いが出る。

恐ろしい速さだ。まだ少女の粋から出てないのに、それを感じさせないえぐさと重さがあった。

 これも悪魔と呼ばれる由縁の一つなのかな。

ゲームでは感じられない彼女の強さ。それをリアルかつ身近に感じられる事に不思議と幸運だと感じつつも、今は模擬戦中だからと気持ちを切り替える。

 

 下からの切り上げを防いだ私はそのまま後ろに飛び下がる。

体勢的にも追撃に入れる体勢ではないはずだから大丈夫なはず。

 

「流石だね。これでも本気だったんだけどな」

 

 予想は正しく、彼女はふっと、小さく満足気に笑みを浮かべると、切り上げてそのままだった体勢をゆっくりと自然体へと戻す。

 

 あれが本気なら成長度合いがやばすぎるわ。

 

「これでもベレスよりは先輩だからね。あれを防げないようじゃ団長やダイナさんに顔向けできないよ」

 

 実際彼らとの模擬戦はこれ以上に苛烈で容赦がない。

武器を吹き飛ばされる、蹴り飛ばされる、殴り飛ばされるなんていつものことだ。

もちろんそれは私が容赦なくしてくれて構わないと言ったからこそのハードトレーニング。

決して虐待だとか、現代の闇だとかではない。

それにしっかりと技や立ち回り、流し方だって教えてくれている。

厳しくもしっかりと成長の為に手を尽くしてくれているのだ。

 

「ふふ、そうだね。君は先輩だ」

「そうだよ」

 

 お互い朗らかに笑みを浮かべる。

だがそれも束の間。

ベレスも私も即座に笑みを消すと、再び戦闘態勢に移る。

 

「まだまだかかっておいで。先輩が受けてあげるから」

「なら、遠慮なく行くよ」

 

 再びベレスが動くと、私も構える。

さて、どうやって勝とうかな。

私は笑みを浮かべると、模擬戦に意識を集中した。

 

 

 


 

 

 

「ん…流石に少し痛かったな…」

「大丈夫?」

 

 模擬戦の後、毎度のように勝利を収めた私は砂だらけのベレスの背中を擦る。

結構豪快に叩きつけたからなぁ…大丈夫だろうか。

 

「大丈夫だよ。貴女の戦い方は相変わらず豪快だね」

「はは…まぁ…うん」

 

 豪快…まぁ、豪快だよねぇ。

さっきの模擬戦を思い出し、気まずげに頬を掻く。

 

 模擬戦の最後辺り。何度目かの鍔迫り合いの最中、そろそろ時間かなと思った私はトドメを刺すために力を抜いて彼女の押し込もうとする力を受け流し彼女の不意をついたのだ。

当然力の行き場をなくした彼女は突然の事に驚いた表情と共にたたらを踏むと、背中をガラ空きに。

私はそのまま彼女の背中をぐっと掴むとその…叩きつけたのよ、思いっきり胴体から。

 もうね、音がすごかった。

ズドン、というか、ぐしゃぁ! というか。

もちろん私は大慌て。流石にやりすぎたか!? って慌てて彼女に声を掛けたわ。

結果は痛みはあったようだけど、骨に異常もなく、起き上がった彼女から痛かったよという言葉だけが返ってきた。

 一応言っておくけど、ベレスは相変わらず豪快だねとか言ってたけど、普段はあんな事してないよ!? してないからね!? …実践ではしてますけど。他のやり方で。

 

 まぁともかく…自分で言うのもあれだけど、意外と力がついてたんだね私。

筋トレも素振りも必死にしてた甲斐があったね! 代償に乙女度が消し飛んでいったけど…。

 私はベレスの体についた砂埃などを落とし終えると、さっきの叩きつけの謝罪も込めて彼女の頭を撫でる。

撫でられた本人は一瞬キョトンとすると、目を閉じ黙ってそれを受け入れた。

 

「貴女のそれ、癖になりそうだよ」

「そうかな? その割にはベレトは早々に嫌がるようになったけど」

「ベレトは恥ずかしやがりなんだよきっと」

「かもねぇ」

 

 そうかもしれないなと思いながら彼女の頭をなで続ける。

あの年頃なら思春期的な事があってもおかしくないだろうし。

むしろ原作では見られない幼少期と原作では見られないツンな部分を見れて私はハッピーです。

 

「アルディア、手」

「おっと、ごめんね」

 

 どうやら思考回路が馬鹿になったせいで手が止まっていたらしい。

ベレスの不満げな声に私は再び手を動かし始めた。

 

 役得といえばこの子もそうだなぁ。

意外と感情豊かだし。今みたいに時折拗ねたり不満げな声をあげることもあるし。

そういう点では危険極まりないこの世界に産まれてきて良かったと思っている。

くっそ可愛いし。

なお私のいくつかある目標の一つに、無双の方で見せてくれた赤面ベレスを見るというものがある。やりますやらせます断らせません(鋼の意思)

 

「……」

「眠い?」

 

 そうこうしてる間に、ベレスが船を漕ぎ始めた。

相変わらずこの子は模擬戦の後は決まっておネムになるなぁ。

まぁ毎度激しいといえばそうだけどさ…そんなに眠くなるほど激しいのだろうか。

確かに何度か木刀がへし折れたりしたことはあったけど。だからといって激しいとは思えないんだけど。

 

 船を漕ぎ続ける彼女の頭を撫でながら考えこむも、結局まぁ可愛いから良し、と結論づけた私。

そのまま彼女の頭を優しく掴むと、そのまま私の膝へ乗せる。

抵抗なくさせるがままに私の膝へ頭を乗せた彼女はそのまま就寝。夢の中へ出かけてしまった。

 

 妹とか、自分の子供を撫でる親ってこんな気持なんかねぇ、なんて思いながら撫で続ける。

まだまだあどけなさが残るが、将来美人に育つことが約束された彼女の顔は何処か幸せそうに見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人を探しに来たジェラルトの反応

 

 

 

 

 

 

 

「お前…」

「なんですか団長?」

「………次の鍛錬が楽しみだなアルディア」

「へあっ!? ジェラシーですか!? 団長! ちょ、まっ!! あかん、ベレスが寝てるから動けねぇ!! 待ってください! 団長ぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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