平凡な場所からこんにちは (べーニッツ)
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ロイヤル
プロローグ


Pixivで他の二次創作投稿してるものです。
ぶっちゃけるとリハビリ作なのでPixivの方に復帰したら投稿なくなるかもしれません。
そこのところはご了承ください。


その日、俺はいつもと変わらずに過ごしていた。

朝起きて、飯食って、身だしなみを整え、玄関を開けた…

それだけだった。

俺は意識を失った。

自分でも何が起きたのかは分からない。

俺が覚えているのはただ、扉を開けて意識が消えた、これだけである。

 

 

並木 哲人(なみき てつひと)

中学3年生の15歳。

凡人な親から生まれた凡人の子の名前だ。

個性はほどほど、周りと変わらない。

少し戦時中の艦船の名前を知っているだけのにわかだ。

そんな俺は暗い部屋なのかも分からない場所にいる。

 

「どこだよ、ここ…」

 

これ位しか言葉が出なかった。

辺りを見渡しても真っ暗で、何もない空間で無重力で漂っている感じだ。

 

「誰かいないのか?」

 

どうせ返事も聞こえないだろうにそう聞いてみる。

 

「…誰もいないか。」

 

「君の後ろにいるけど?」

 

「え?」

 

声が聞こえたので急いで振り返ろうとするが…

 

「あ~だめだめ。こっちを向かないで。」

 

頭を手と思われるもので固定され、振り向けない。

 

「急で悪いんだけど今からいうことをよく聞いてね。」

 

「は?え?」

 

状況がよく分かっていないのにこの人は勝手にしゃべりだした。

 

「君には今からとある場所に行って戦ってもらいまーす。もちろん戦うんだから最悪死ぬこともあるかもだから気を付けてね。」

 

「???」

 

さらに分からなくなった。

戦う?どこで?

俺は紛争地域にでも連れて行かれるのだろうか?

いろんな疑問が俺の頭の中で飛び交っているとさらにその人は続けて言った。

 

「時間もないから早速行って来てもらうね。」

 

「へ?」

 

「こっちにもこっちなりの都合があるんだ、ごめんね。」

 

考える間のなく、俺の体は徐々に透明になっていく。

いきなり変な空間に連れてこられ、戦闘地域に飛ばされるなんて普通あり得るか!?

てか、どんな都合だよ。

 

「ちなみに君がこれから行く世界は君も知っている世界だよ。」

 

俺が知っている世界?

そんなの日本や他の国々しかないのだが…

 

「1つだけなら答えれるから質問を受け入れるよ、どうぞ!」

 

「え、は、ちょ!?」

 

急に話を投げかけられ、どうしようか分からない。

質問ならまずこの人は何者か聞いた方がいいか?

それともこれから行く世界についての方がいいのか?

 

「5…4…」

 

時間制限あるの!?

ちょっと待って!

5秒は短いだろ!

 

「3…2…1…」

 

「拒否権は!?」

 

「ない♡」

 

「あんまりだぁぁぁ…」

 

これが俺が最後に発した断末魔だった。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

世界は大混乱に陥っている。

それは侵略者、セイレーンによってもたらされた。

セイレーンの圧倒的な力の前ではその団結も無力に等しかった。

次第に少しずつ、人類はセイレーンから制海権を奪われ、陸地へと追い込まれていった。

しかし人類は陣営を超えた団結をする。

その陣営名は「アズールレーン」。

「ユニオン」、「ロイヤル」、「鉄血」、「重桜」の4つの陣営を中心に結成した。

人類の団結によりセイレーンは少しずつ撤退をし始めていた。

しかし、「アズールレーン」より「鉄血」、「重桜」が脱退し、新たなる陣営「レッドアクシズ」を結成した。

これはそんな混沌とした世界に連れてこられた一人の少年のお話。

 

 

 



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いや一般人(?)です。

さっきの人がまた俺をどこかに移動させたのか、景色が少し変わった気がする。

と言ってもさっきと同じで目の前は真っ黒だし、身動きがそもそも取れななっている。

少し違うのは立っているという感覚がある感じだ。

ついでになんか体の周りがごついような気もする。

気のせいかもしれないが。

窮屈な感じもする。

いったいどう事なのだろうか?

試しに声を出そうと思っても口が動かない。

ただ感覚だけはある。

おそらく痛覚もあるだろう。

…音が聞こえる。

何かを削っているかのような音だ。

五感はおそらくだが働いていると思う。

今はただ待っていればいいのか?

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「はぁ…」

 

「だらしないですよ、ご主人様。」

 

「はいはい、分かってますよ。」

 

「はいは1回でよろしいのです。」

 

退屈だ。

私はここで指揮を執っている指揮官だ。

階級は20歳で少佐。

はっきり言ってエリートの分類だ。

母親がもともと軍で高い地位にいたからか娘の私も軍に入ることになり、士官学校を首席で卒業した。

根っからの軍人だろう。

それにしても退屈だ(大事な事なので2回言いました)。

 

「なんで軍には男がいないんだろうねぇ…」

 

「何をおっしゃているのですか、そんな夢見てないで早く執務を終わらせてください。」

 

「でも男に会えないなら軍にいる意味なんてなくない?」

 

「ご主人様、その発言が上層部の方々にバレたら軍法裁判行きですよ?」

 

「そんな事分かってますよーだ。」

 

正直な話、軍とかじゃなくて普通の高校や大学に行って男と付き合ったりとかしたかった。

でもそんな事母親に言ったら叱られるだけで意味がない。

 

「母親がお見合いの話でもつけてくれたらいいのに…」

 

「いくらご主人様のお母様が高い地位にいようともご主人様がこのようでは到底お見合いの話なんかは来ませんよ?」

 

「ベルはいつもそんな感じだなぁ…」

 

私の隣にいるのはエディンバラ級軽巡洋艦2番艦であるベルファストだ。

 

「ベルももうちょっと夢見ようよ~」

 

「夢を見るのは執務を終わらせからです。」

 

「もお~堅いなぁ~」

 

まぁいつも通りにちゃちゃっと終わらせてエリザベスに誘われてたお茶会にでも行くとしよう。

 

コンコン

 

誰かがノックをした。

 

「どうぞ。」

 

「し、失礼します。」

 

ノックをして入ってきたのはシリアスだった。

 

「何をしに来たのですか?シリアス。」

 

少しベルが不機嫌になる。

シリアスはドジっ子だからか失敗することが多く、完璧なベルからしたら邪険にしてしまうのだろう。

 

「け、建造が終わったので報告しに来ました。」

 

「そっか、ありがとうシリアス。じゃあ見に行こうかベル。」

 

「はっ。」

 

 

 

~~~~~

 

「今回のは戦艦かな?」

 

「時間的にそうかと。」

 

「うち戦艦結構多いんだよな~」

 

ロイヤルであるうちはエリザベスやフッド、ウェールズなどの歴戦の戦艦が多数いるのだ。

 

「でもまあできたのは仕方がないし、あとはフッドとかに任せよ。」

 

(ああ、可哀想なフッド様。)

 

さっさと終わらせて帰ろ。

 

 

~~~~~

 

先ほどと比べたら静かにはなった。

…足音が聞こえる。

しかも1人ではない。

どうやら話し声も聞こえる。

 

「…は…艦…?」

 

「…に…と。」

 

何を話しているのかは分からないが、動けない俺からしたらどうしようもない。

運よく俺に気づいてくれないかな。

(ま、そんなわけないか。)

 

ガチャァァァ…

 

「う…まぶしい…」

 

 

~~~~~

 

「じゃあ開けるね。」

 

私はコンテナを開けるために取っ手を掴んで引いた。

新しい戦艦の子が来る…

そう思っていたのだが…

 

「う…まぶしい…」

 

聞こえた声は明らかに女の子のとは思えず、低い声だった。

そして顔を見るとそこにいたのは…紛れもない“男とは”だった。

 

「え?お…男?」

 

誰がどう見ても男としか見て取れない人がそこに立っていた。

そして背中にはKAN-SEN特有の砲塔や機銃などの武装が付いていた。

その武装は明らかにエリザベス達とは違い、もう少し古い物であった。

主砲は三連装砲ではあるが、口径が一回り小さかった。

私が考え込んでいると彼が話しかけてきた。

 

「あの、ここはどこですか?」

 

「え?ああ!こ、ここはロイヤル陣営の鎮守府だよ!」

 

男性に対しての免疫があまりない私は挙動不審になっているとベルが動いた。

 

「あなたは誰ですか?」

 

「ちょっと!?ベル!?」

 

ベルは主砲を彼に向けていて、殺意MAXだというのは分かった。

手厚く守られている男性に対してするようなことではなく、危険行為そのものであった。

 

「え?え?」

 

彼は主砲を向けられていることに大分動揺しており、手を両手とも上に挙げている。

降参のポーズである。

 

「えっと…俺の名前は並木 哲人…」

 

彼がそういった瞬間ベルは私を突き飛ばして叫んだ。

 

「突然の無礼をお許しください、ご主人様。」

 

「え?」

 

私はベルに突き飛ばされて近くのドラム缶の山に突っ込んでった。

 

ドガーン!

 

「いったぁ!?」

 

痛みのあまり私は叫んだ。

ベルは彼に対して詰め寄っていた。

 

「重桜の者がどうやってロイヤルに侵入したのですか?」

 

「じゅ、重桜?ロイヤル?あなたは何を言って…」

 

「とぼけても無駄です。」

 

ベル…少しくらいは話を聞いてあげてもいいんじゃないかと思うんだけど…

立ち上がろうにもまだ体中が痛いから立ち上がれず、ただただ見ていることしかできなかった。

 

「俺は日本出身です。重桜やロイヤルなんて知りません。」

 

「ふざけたことを…」

 

私はたまたま近くで尻もちをついていたサフォークに頼んでベルを止めるように言ったが…

 

「無理です、無理です、無理です!」

 

って言っていたけど指揮官命令で行かせた。

うん、私って最低だわ。

 

「お、お二人ともやめてくださーいぃぃぃ!」(涙目)

 

「止めないでくださいサフォーク、今からスパイを粛清するだけですから。」

 

「スパイって、俺はただの一般人(?)ですよ!」

 

「背中のそれを見てもまだ一般人だとおっしゃりますか?」

 

「え?」

 

彼は背中についている武装に気が付いていなく、今頃気づいたようだった。

ベルはスパイとか言っているけど、そしたらうちで重桜のスパイ建造したことになるんだよね。

 

「なんか変なのついてますけど、一般人(?)です!」

 

「…分かりました。」

 

ベルはどうやら理解してくれたのか彼に向けていた主砲を下げる。

こちらに歩いてきた。

 

「突然のことでしたので申し訳ございませんでしたご主人様。どこかおケガはされていませんか?」

 

「ケガというよりは全身打撲だと思うけど…大丈夫だよ。」

 

ベルが手を差し出してきたので手を取り立ち上がらせてもらう。

ベルも母港の危機だからこのようなことをしたのだろう。

ベルがこの後、罰を受けに来たと言えば軽めのにしよう。

無しだとベルが納得しないだろうから。

私は立ち上がったら彼に向かった。

 

「私の部下が失礼したね。君は大丈夫?どこかケガしてない?」

 

これで彼の中で私の評価は爆上がり間違いなし。

顔に出ていたのかベルが露骨に引いた顔をする。

 

「俺は大丈夫ですけど…あなたは大丈夫ですか?さっき思いっきりドラム缶にぶつかってましたけど…」

 

ああ…心配してくれるなんて…彼は優しいな…

よく見たら少し子供っぽいから彼よりは男の子の方が似合うのかな?

 

「少しよろしいでしょうか?」

 

ベルが男の子に近づいて話しかける。

 

「日本とはどこの国ですか?」

 

「え?」

 

男の子は驚いた顔をする。

 

「日本を知らないのですか?」

 

「はい。恐れながら…」

 

「ではアメリカは…」

 

「存じ上げておりません。」

 

「…イギリスとドイツは?」

 

「先ほどと同様に存じ上げません。」

 

私もその4か国は聞いたことがない国だ。

この子は一体どこから来たのだろうか?

 

「取り敢えずさ、そういう話は執務室でしない?」

 

「仰せのままに。」

 

ベルはそう言って男の子と共に私の後ろを歩いてついてきた。

 

 

~~~~~

 

俺は今すっごい困惑している。

いきなり目の前が明るくなったと思ったら人が蹴り飛ばされて大砲みたいなの向けられるし、背中には変な兵器が付いてるし、その兵器もなんか急に消えたしで色々な情報がこの短時間で俺の頭の中に入ってきていた。

頭の中の情報を整理していると目の前を歩いていた女の人がいきなりしゃべりかけてきた。

 

「ところでえ~と…」

 

「並木 哲人です。」

 

俺の名前が分からなかったのか俺はとっさに自分の名前を出した。

 

「そうそう並木 哲人君ね。出身は本当に日本という国なの?」

 

「そうですけど…」

 

女の人は立ち止まったかと思うと隣にある部屋の扉を開けてこう言った。

 

「もう少し詳しい話はこの中でしようか。」

 

 

~~~~~

 

執務室に男の子を入れてから彼の方を向いて私はこう言い放った。

 

「よかったら私の元で戦わない?」

 



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男女比がありえん数値になっとる

ベルファストの口調の表現が難しい。
これでもベルファスト第一艦隊で使っているんだけどなぁ。
ちなみんな今年はどうだった?
こっちは散々だったけどな。


 

「…はい?」

 

俺は目の前の軍服姿の人に一緒に戦わないか誘われて戸惑っている。

第一、戦うとはどういうことだ?

ここに来る前に変な空間で戦うことを言われたが来て早々そう言われるとは思わなかった。

それに戦うというのはやっぱり戦争なのだろうか?

あまりそういうことには巻き込まれたくはなかったのだが…

 

「ご主人様、いくら何でも急すぎるかと…」

 

先ほど俺に大砲らしきものを向けていた女性の方が目の前の人にしゃべりかけていた。

やはりここはどこかの軍隊の港なのだろうか?

それなら一般人(?)の俺がいるのはおかしいと言えるだろう。

流石にスパイ扱いされたのには驚いたが。

 

「いやぁでも、並木君のさっきの姿はKAN-SENに似ていたじゃん?」

 

「確かに同じ気配は感じ取ってはいましたが…」

 

よく分からない言葉が聞こえてくる。

確信した。

ここはとある国の軍隊で、それは日本やアメリカが存在する世界ではないこと。

でもなんで日本語が通じるのだろうか?

 

「…男だし。」ボソッ

 

「それが目的ですよね?」

 

「私はあまり賛成ではありません。いきなり表れては重桜の名前を名乗りますし、どこの国に住んでいたのかも分からないのですよ?」

 

「それもそうだけどさ~」

 

俺に敵対的な方の人は俺が一緒に戦うことに反対的らしい。

そりゃコンテナの中に俺みたいなのがいたらスパイと疑うのも無理はないか。

 

「それ以前に、男性は保護される立場にあるのです。ここは政府が対応することだと思います。」

 

「政府なんて信用がない奴らでしょ?三枚舌外交なんてしているし。」

 

「それは…まあそういう方たちですから。」

 

ここの国の政府は三枚舌外交とかイギリスみたいなことをしている奴ららしい。

それよりも男性が保護される立場にあるとはどういうことなんだ?

それに目の前の人たちも女性だ。

差別をするわけではないが、男が軍隊に所属するものではないのか?

 

「あの、男性が保護されるとはどういうことなのでしょうか?」

 

「「え?」」

 

俺が疑問に思ったことを口に出して言ってみると驚いたような顔で見つめられた。

 

「男性が保護されるのは陣営問わず、世界中の常識だよ?」

 

「どうして保護されるんですか?」

 

「まさか…」

 

元居た世界とは違う世界だというのは分かってはいるが男性の保護はどういう意味なのか分からない。

何を目的に男性なんて保護するのだろうか?

 

「もう一度聞くよ?出身は日本だよね?」

 

「そうです。」

 

「…もしかしたら君ここの世界の住民じゃないね。」

 

「…はい。」

 

この人は俺がこの世界で生まれていないのを見抜いたみたいだ。

情報が明らかに少ないのによく分かったものだ。

 

「取り合えず…ベル!この子にここの常識を教えておいてくれない?」

 

「了解いたしました。」

 

メイド姿の女の人が軍服の女の人に頭を下げたらこっちへ来て俺に話しかけた。

 

「それでは説明をさせてもらいます。」

 

「えっと、お願いします。」

 

説明を聞いてみたところ、ここの世界はセイレーンと呼ばれる外からの侵略者が攻めてきたらしく、最初は劣勢だったものの、団結したら押し返すことに成功したとのことだ。

けどその後に分裂して今に至るとのことだ。

男性の保護に関しては、セイレーンが攻めてくる前からあるものらしく、度重なる戦争で男性の数が減少し、男性の出生率も低下していったからできたみたいだ。

元の世界で例えるなら国際条約で男性が保護されているようなものだ。

男性と女性の数の比率を聞いてみたら

 

「1:100です。」

 

とかありえない数値を言われたときは一瞬思考を放棄した。

それはともかく、俺の今後について話すそうだ。

 

「君はどうしたいの?」

 

「こういう場合って、どうするのが普通なんですか?」

 

「そうだね~、政府に保護を頼んで内地で保証を受けながら生活することが普通だと思うよ。」

 

普通ならそうするのがいいんだろう。

俺も今までは普通に生活していたのだから。

でも俺は名前も知らない人にここに連れてこられて戦うように言われた。

別に従うつもりはないが、このまま待っているだけでいいのか?

俺は元の世界に戻りたい。

だからじっとしているわけにはいかないのではないだろうか?

 

「俺は…」

 

「…今じゃなくてもいいよ。」

 

「いや…今決めました。」

 

「ほう?」

 

やっぱりこのままじゃダメだよな。

俺はやるぞ。

 

「俺は元の世界に戻りたいです。だからこのままじっとしているのはダメなんです。だから…俺は…

 

 

 

 

 

 

あなたと戦いたい。」

 

「…それが君の答えだね?」

 

「はい。」

 

「…分かった。それなら私は歓迎しよう。君を!」

 

 

~~~~~

 

「案内をしてきました。」

 

「お疲れ~、ベル。」

 

ベルは並木君を来客用の部屋に案内してきたみたいだ。

今はまだロイヤルに所属しているわけじゃないから来客として扱う。

今日の執務はあと少しで終わるからついでに並木君の書類も用意しよう。

 

「ちなみにベルは謝っておいた?」

 

「はい、誠心誠意、並木様に謝罪いたしました。」

 

「それよりも上層部の方々にはどう説明するのでしょうか?」

 

男性が軍に属するなんて男性保護という条約ができて以来、初だろう。

おそらく並木君は戦艦と同じ艤装なのだろうが、さっき少し見た感じ、お世辞身も最新鋭のとは言えないだろう。

むしろエリザベス達よりも古い可能性がある。

 

「上層部の奴らには適当に説明しておくよ。」

 

「では政府の方々へはどう対応いたしましょうか?」

 

「政府かぁ…」

 

政府の奴ははっきり言って一部を除いて屑だ。

三枚舌外交などクソみたいな外交をして他国を困惑させるような奴らだ。

内部の状態は私はそこまで詳しいわけではないから分からないが、政府に男性を預けるよりは軍の方で対処しておいた方がいいだろう。

 

「適当に言って何とかしてみるよ。」

 

「分かりました。」

 

「それとベル、並木君がロイヤルに所属できるように書類作成しといてくれない?」

 

「了解いたしました。」

 

「では失礼いたします。」ガチャ

 

ベルはそう言って部屋から出て行った。

上層部やら政府やらめんどくさい相手が多いが私は並木君を…いや哲人を手放さない。

絶対にだ。

 

 

~~~~~

 

並木様を来客用の部屋へ案内し、謝罪をする。

 

「先ほどの愚行、申し訳ございませんでした。」

 

いきなりの謝罪で並木様は困惑しておられました。

 

「えっと、どうしたんですか?」

 

「いえ、先ほど並木様をスパイと疑ったことと、主砲を向けたことの謝罪です。」

 

並木様は私が何に対して謝罪しているのか理解できていないご様子でしたので私の方から説明いたしました。

 

「それなら別に気にしていませんよ、コンテナから知らない人が出てきたら誰でも警戒はしますよ。それにここは軍の基地ですからスパイだと疑うのも無理はありません。俺は気にしていないので大丈夫です。」

 

並木様はこのような私にも優しくしてくれ、擁護するような発言もしてくれました。

 

「ありがたきお言葉。」

 

並木様はロイヤル式の会話に慣れておられないのか終始困惑したような感じでした。

 

「並木様のご洋服等は私達の方で用意させておきますのでご安心を。」

 

「ありがとうございます。えっと…」

 

私としたことが不覚で、自己紹介を忘れていました。

 

「エディンバラ級二番艦、ベルファストでございます。」

 

「ありがとうございます。ベルファストさん。」

 

「そしてこれからよろしくお願いします。」

 

「こちらこそよろしくお願いいたします。並木様。」

 

並木様からのご挨拶をいただいたので私の方でも挨拶を返しておきました。

 

「その、ベルファストさん。様付けをやめてもらいたいのですが…」

 

並木様は私の呼び方に慣れておられないのか、様付けをやめるように言われました。

 

「何故でしょうか?」

 

「俺は様付けされるよな立ち位置でもないですし、それほどの偉業も達成していないただの人なんです。あまりそういうのには慣れていなくて…すみません。」

 

「並木様は男性なのです。殿方に対しては当然のことかと。」

 

「それでもなぁ…」

 

中々諦めてくれないので、私の方から一つの提案をさせてもらいました。

 

「では私が並木様の呼び方を改めますので、並木様も私をベルと呼んでもらってよろしいでしょうか?」

 

「…分かりました。ベルさん…でいいですかね?」

 

「構いません。哲人様。ふふ。」

 

「ちょっと!?変わってませんよベルさん?」

 

「私は様付けをやめるとは一言も言っておりませんよ?」

 

「はめられた…」

 

哲人様を少しからかってみました。

私達メイド隊はどのようなお方であれ、敬意をもって接さなければならないので仕方がないことだと哲人様に理解してもらうにはまだ時間が必要みたいです。

 

「それでは失礼いたします。」ガチャ

 

私はそう言い、部屋から出て行きました。

哲人様がどのような実力をお持ちであるか私はまだ理解ができておりませんが、私は哲人様の身の回りの世話をしていきたい所存です。

ご主人様の奉仕もございますが、今回はご主人様からなんとしても許可をいただかなくては…




流石に強引すぎたかな?


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俺の新しい名前

あけおめ。
元旦でも書くよ。


ベルファストさんことベルさんに部屋に案内され、部屋の中のソファに座っていた。

部屋はとんでもない位豪華で、来客用のものとは思えないほどだった。

ソファから立ち上がり、部屋の中を歩いていると扉が叩かれた。

 

コンコン

 

「どうぞ。」

 

「し、失礼しますぅ~」

 

入ってきたのはさっきベルさんを止めたピンク髪の女の子だった。

 

「昼食を持ってきましたー」

 

「ありがとうございます。えっと、すみませんが名前を聞いてもいいですか?」

 

これからここに入るわけだから名前を最初に覚えておこうと思い、名前を聞いてみる。

 

「はいー、私は…え?男の人?」

 

彼女が自己紹介しようとして俺の顔を見ると固まってしまった。

男の人とか言っているけどさっきあなた俺とベルさんの間に立っていましたよね?

気づいてなかったのあれ?

 

「お、男の人だぁ~!」

 

「いやちょ、落ち着いてください!」

 

俺はピンク髪の子を落ち着かせるために声をかけ続けたが、ほとんど無意味だったみたいだ。

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

「落ち着きました?」

 

「は、はい~、いきなり取り乱しちゃってすすみません…」

 

ピンク髪の子は落ち着いたみたいだがひどく落胆していた。

 

「大丈夫ですよ。」

 

なんとかするために取り合えず一言言ってみる。

 

「あ、あの!私、ケント級五番艦のサフォークと言います!」

 

何故かいきなり元気を取り戻して自己紹介をしたが知りたい名前は知れたのでよしとしよう。

 

「サフォークさんね、俺は並木 哲人っていうからね、よろしくね。」

 

「よ、よろしくお願いします。」

 

ベルさんにもサフォークさんにも言えることだけど、名前の前に付いているエディンバラ級とかケント級ってどういう意味なのだろうか?

このことを事情を知らないサフォークさんに聞いても余計に困惑するだけだろうし、次ベルさんに会った時に聞こう。

 

「ちなみにサフォークさん、昼食を届けに来たことでいいんだよね?」

 

「え?ああ!忘れていました!すぐに準備します!」

 

サフォークさんはそう言って大急ぎで机の上にフォークやらスプーンやら用意していた。

配膳代には何個か料理が乗っていたし、他にも来客がいるのだろう。

そう考えているとサフォークさんは準備と配膳を終えたらしい。

 

「私は他にもすることがありますので!失礼いたします!」ガチャ

 

慌てながら部屋を出て行った。

きっと他の部屋に料理を配りに行ったのだろう。

机の上を見ると料理はアニメやドラマでしか見たことがない蓋をしており、開けてみるとうまそうな料理がそこにはあった。

色々とありすぎて時間などは気にしてはいなかったのだが、時計を見るとすでに正午を過ぎており、俺の腹の虫も泣きそうになっていた。

 

「そんじゃあ、いただきますか。」

 

食事のマナーとかは最低限学んではいたが、実際に実行しようとすると案外難しいものである。

複数のフォークやナイフを使うなどのことは日本ではあまりなかったのでまずは持ち方が変になってしまった。

何とか頑張ってこの持ち方で食べてみる。

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

真っ先にマナーから勉強しよう。

俺はそう決心した。

食べ終わった後の皿に再び蓋をかぶせ、外の方を見る。

ベルさんと同じような大砲なんかが乗った兵器を背負っている人たちがたくさんいる。

背負っている兵器もそれぞれ違う。

ある者はでかい大砲がいくつもついている。

またある者は大砲は小さいが、魚雷らしきものをつけている。

多種多様である。

俺にも似たようなものはさっき確認したが、よく見えていなかったので、どのようなものなのかは自分でも分からない。

 

コンコン

 

また扉がノックされた。

サフォークさんが食器の回収にでも来たのだろう。

 

「どうぞ。」

 

「食器をお片付けに来ました。」ガチャ

 

入ってきたのはベルさんだった。

ついでに何やら大量の本らしきものも持っている。

 

「ベルさんが手に持っている本は何ですか?」

 

疑問に思ったので聞いてみる。

 

「哲人様がこの世界のことをよく知ることができるために先ほど私が作って参りました。」

 

その本はどうやらベルさんが俺のために作ってくれた本みたいだ。

さっきから小一時間ほどしか経っていないのにそれだけ分厚い本って作れるの?

 

「食器はこちらでお下げしておきます。」

 

「それと、再び呼びに来るまではこちらの本の内容を熟知してください。」

 

済ました笑顔で俺にめちゃくちゃ分厚い本を渡してくるベルさん。

俺はただ苦笑いでそれを受け取ることしかできなかった。

 

「では失礼いたします。」バタン

 

食器を片付けてベルさんは部屋を出て行った。

 

 

~~~~~

 

「う~ん…」

 

哲人君の書類登録はほとんど完成してはいたが、問題があった。

 

「艦名と兵装か…」

 

悲しいことに我が港には従軍している男がいないので男の子である哲人君の兵装チェックなどは女である私達でするしかない。

艦名に関しては哲人君に考えてもらおう。

 

「まあ異世界から来ているんだし、女が触っても大丈夫か。」

 

女と積極的に関わりを持つ男なんてこの世界には存在しない。

哲人君はどうやら男女比1:1の世界からきたみたいだし、大丈夫だと信じたい。

 

「ベル~、いる~?」

 

「ここに。」

 

私が呼ぶとすぐにベルは来た。

 

「哲人君の兵装の確認したいからドックに呼んでおいてくれない?」

 

「了解いたしました。」

 

本人が嫌がらなければいいんだけどなぁ…

大丈夫かな?

 

 

~~~~~

 

コンコン

 

ベルさんからもらった本を読んでいると、またノックされた。

恐らくベルさんがまた来たのだろう。

 

「どうぞー」

 

本を読みながら答える。

当然のようにベルさんが入ってきた。

 

「ご主人様からドックへお連れするよう、命令されましたので哲人様をお迎えに参りました。」

 

「分かりました。」

 

読んでいた本を閉じ、ベルさんに向かって歩いていく。

 

「では、行きましょうか。」

 

ベルさんの後ろをついて行く。

ドックはさっき読んだ本ではKAN-SENと呼ばれる、ベルさんやサフォークさんみたいな人達を建造や修理、保留したりするための場所だ。

 

「俺はどういったことで呼ばれたんですか?」

 

ドックへ行って俺は何をするのか分からなかったからベルさんに聞いてみる。

 

「兵装の確認とのことです。」

 

兵装とはさっき俺が背負っていた大砲などのことだ。

食事か終わった後に見ていた人達にもあるもので、主砲や魚雷が主な兵器となっている。

俺はまだ自分の艦種も分かっていないので、それも含めた確認だと思う。

 

「着きました。」

 

思ったよりも早くドックへ着いたらしく、ベルさんが足を止める。

 

「お~、来た来た。」

 

さっきの軍服の人が俺たちに近づいてくる。

 

「待ってたよ~、じゃあ早速で悪いんだけど兵装出してくれる?」

 

兵装を出すように言われても、どうやって出せばいいか分からず、ベルさんに助けを求めてみる。

 

「兵装はどうやって出すんですか?」

 

「申し訳ございません、あまりそういったことに意識をしたことがなく、どう説明すればいいのやら…」

 

ベルさんが申し訳なさそうに頭を下げる。

特に悪いことをしたわけでもないのに罪悪感がしてきた。

 

「大丈夫ですよ頭なんか下げなくて…」

 

「…って言うかもう兵装出てるよ。」

 

「え?」

 

気が付かない内に俺の兵装は出ていたらしく、自分でも驚いてしまった。

 

「まあ出たんだしいいか、じゃあこっち来て。」

 

手招きされ、ヒヨコ(?)達の方へと歩いていく。

 

 

~~~~~

 

哲人君が来たことで、私は饅頭達の近くへと連れて行く。

 

「じゃあお願いね。」

 

私は饅頭達に哲人君の兵装の確認を頼み、少し離れた場所へ行く。

最初は女だからとか不安に感じていたが、よく考えたら饅頭達がいたため、お願いして確認してもらっている。

饅頭達はテキパキと兵装の確認をし紙に書いた報告書を私に渡してきた。

 

「え~と?30.5cmの主砲が三連装砲4基、15cmの単装砲12基、6.6cmの単装砲が18基、そんで53.3cmの水中魚雷発射管4基か。」

 

はっきり言って戦艦としては弱い。

だからと言って重巡洋艦にしてはでかすぎる。

それに対空砲がない?

果たしてそれは戦艦として数えてもいいのだろうか?

悩んでいるともう一つの報告書を饅頭達が渡してくれた。

…艦名が発覚したみたいだ。

それもエリザベス達よりも前の大戦で使われた戦艦。

脚光は浴びてこなかったが、今ここで姿を現すか。

哲人君の艦名、それは…

 

 

 

 

 

戦艦・テゲトフ。

テゲトフ級二番艦、テゲトフである。

エリザベス達よりも前の時代に作られた艦艇であるため、ここまで兵装が弱いのだろう。

恐らく最大速も遅い。

排水量も少ないことだろう。

さてどうしたことか。

このことを哲人君に直接伝えるべきか、否か。

艦名は決まった。

後はこのことだけだが…

 

 

~~~~~

 

俺の兵装の確認は終わったらしく、饅頭と呼ばれる子たちは軍服の人の元へと行った。

関わりは多いはずなのだが、俺はまだあの人の名前を知らない。

どうしてだろうか?

遠目で見ていると、少し難しい顔をしている。

どこか問題でもあったのだろうか?

自分の兵装を見てみる。

艦種までは分からなくとも、主砲の大きさくらいは分かる。

30cmくらいだろうか?

戦艦にしては小さすぎるが、重巡洋艦と比べては大きすぎる主砲。

他の兵装も見て、気が付いたことがある。

対空砲がないのだ。

第二次世界大戦で対空砲がない艦なんて聞いたことがない。

となれば俺はそれ以前の艦となるのか?

第一次世界大戦の艦。

俺はそれを知らない。

兵装を見終わると目の前に軍服のあの人がいた。

 

「少し言いにくいだけどいいかな?」

 

「もしかして主砲が小さすぎることや対空砲がないことですか?」

 

「まあ…そうだけど…」

 

後ろの方にいるベルさんに目を向ける。

ベルさんも兵装を出しており、それには対空砲や機銃なんかがついていた。

 

「となれば俺は結構前の艦となるんですね?」

 

「そうだよ。」

 

この世界の歴史は第二次世界大戦近くまではほぼ俺の元いた世界と同じだった。

 

「はっきり言うよ。君はこの装備で戦ってもすぐに沈んでしまうよ。もう生き返れないかもしれないよ?ここはアズールレーンでも屈指の実力を持ったKAN-SENがたくさんいる。甘いところじゃないんだ。もう一度聞く。これでも私と一緒に戦うの?」

 

 

~~~~~

 

私は自分でも分かってはいるが、変な発言をしている。

自分から哲人君を誘ったくせに、今こうやって問うているからだ。

正直、彼には諦めて内地で暮らしてほしい。

もう元の場所には帰れないかもしれないが、リスクを冒してまでするようなことじゃない。

セイレーンとの戦いが終わるまでじっと待っていればいいのではと思う。

私は哲人君に諦めてほしい。

 

 

~~~~~

 

自分が弱いと言われ、死ぬかもしてないと考えた。

元の世界に帰れるのか定かではないのに、セイレーンと戦うといったのだ。

おかしな話だ。

しかし、大人しくしていても何も変わらないだろう。

いきなり連れ出され、この世界に来た。

俺は勝手に使命感のようなものを感じている。

誰からも命令されたわけでもないのにだ。

だから俺はこう答える。

 

「俺は…

 

 

 

 

 

 

戦います。この世界に招かれた男として。」

 

「そうか、分かった。」

 

「改めて歓迎するよ、哲人君…いや、戦艦テゲトフ級二番艦・テゲトフ。」

 

「よろしくお願いします!」




テゲトフって対空砲とか機銃あるのかな?
調べても分からなかったので知っている人、誰か教えてください。
この作品ではないことにしますけど。


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顔合わせ

俺の名前はテゲトフということになり、今はさっきいた部屋で再び呼ばれるまで待機している。

 

「大丈夫かなぁ…」

 

自分の兵装を見たとき、主砲などは新品そのものであまり不安などは無かったが、指揮官の話を聞いた後は少しではあるが不安になった。

指揮官とは軍服のあの人で、意外と高い立場いる人みたいだ。

名前を聞く時間がなかったから名前は知らないが…

 

「テゲトフ…か。」

 

少しだけ自分の名前に関して考えてみる。

ミリオタの友達から聞いたことがあるが、テゲトフは二重帝国の戦艦で、戦後にイタリアに賠償艦として引き渡されたとしか知らない。

 

「それにしては何故、俺はロイヤルに来たのか?」

 

ロイヤルは元の世界で例えるのならイギリスと同じ立ち位置だ。

イタリアに引き渡された艦なのだから、イタリアと同じ立ち位置のサディアに連れて行くのが普通ではないのか?

 

 

「考えれば考えるほど分からなくなる…」

 

なんで俺は戦艦テゲトフとしてユニオンに来たのか。

関連性が見いだせない。

 

「…まだ読み終わってなかったな。」

 

机の上に放置されていた本を手に取り、また読み始める。

 

 

~~~~~

 

「テゲトフの登録書類送っておいた?」

 

「はい、完了いたしました。」

 

後は受理されるまで待つだけだ。

視察のために上層部から人が送りこまれてくるだろうが、私の母親の部下の人達なら大丈夫だろう。

 

「他の皆様方へはどう対応いたしましょうか?」

 

「エリザベス達への説明か~」

 

エリザベス達はテゲトフのことを拒んだりしないだろう。

むしろ…

 

「そろそろ来るんじゃないの?」

 

バァーン!

 

噂をすればきたみたいだ。

“エリザベス”が。

 

「ちょっと下僕!新しい子が来たらしいじゃない!どこにいるのよ!」

 

「エリザベス様、ドアはノックをしてから…」

 

「今はそんなことはいいのよ!説教なら後で聞くわ!」

 

エリザベスは少し自己中心的なところがあるのだが、ここまで来るとは思わなかった。

 

「サフォークから聞いたわよ!今回の下僕は中々面白いらしいじゃない!」

 

何やってんだサフォーク…

ていうか会ってもいないのに既に下僕扱いかよ…

 

「何をやっているのですかサフォーク…」

 

「わ、私はエリザベス様に何も言っていないです~…」

 

近くで聞き耳でも立ててたのだろう。

それで興味を持ったエリザベスが来たと。

 

「それでどこにいるのよ?このエリザベス様に挨拶もしないなんて不敬罪だわ!」

 

あたかも自分が地球の中心であるような発言をしているが、エリザベスはいつもこんな感じだ。

もはやエリザベスの下僕扱いにも慣れた。

 

「陛下、いきなり部屋に入るのは失礼かと…」

 

「ウォースパイト!あんたの説教も後でいいのよ!」

 

ウォースパイトの言葉も聞かないでエリザベスは執務室の周りを見渡す。

 

「そ・れ・で、どこにいるのよ、その新しい下僕は!」

 

「はぁ…テゲトフなら来客用の部屋で待機してもらっているよ。」

 

私は諦めて、テゲトフの名前と場所をエリザベスに伝える。

 

 

「新しい下僕はテゲトフというのね?少し高貴が感じれないけどいいわ!私が直々に会いに行ってやるわ!」

 

そういってエリザベスは執務室から出て行った。

 

「陛下!もう…それよりテゲトフって…」

 

ウォースパイトもエリザベスについて行くような形で執務室を後にした。

止めてもエリザベスは強硬手段に出るだろう。

しかし、テゲトフは男だからなぁ…

エリザベスとウォースパイトだけでは不安だ。

 

「ベル。」

 

「かしこまりました。」

 

私が何も言わなくてもベルは理解してくれたようで、ドアの方まで歩いて行った。

 

「サフォーク、後のことは頼みました。」

 

「え?は、はい!」

 

「では、失礼いたします。」

 

バタン

 

乱暴に開けられたドアをベルは丁寧に閉じて、執務室を出た。

 

 

~~~~~

 

廊下の方から荒々しく足音が聞こえる。

めちゃくちゃドスドス聞こえるのだ。

今、集中して本を読んでいるからやめてほしいものだ。

俺の願いが通じたのか、足音は聞こえなくなった。

代わりに話し声が聞こえる。

 

「ここ…?ベル…」

 

「さ……ます。」

 

「じゃ…く…わよ!」

 

次の瞬間、扉が思いっきり開けられた。

 

 

~~~~~

 

ご主人様に命令され、エリザベス様とウォースパイト様をテゲトフ様のお部屋の前まで案内いたします。

 

「こちらです。」

 

「ここであっているのよね?ベル?」

 

「左様でございます。」

 

「じゃあさっそく入るわよ!」

 

エリザベス様は勢いよくドアを開けられ、テゲトフ様のお部屋へ入っていかれました。

 

 

~~~~~

 

部屋の中に知らない人が二人入ってきた。

その後ろにはベルさんもいる。

 

「光栄に思いなさい!この私、エリザベスが直々に…」

 

王冠を被った方の子は俺の顔を見て固まっていた。

 

「え?」

 

ケモミミが付いた方の子は驚いたような顔をして、口を押えていた。

 

「やはりこうなられましたか…」

 

ベルさんは何か呆れたような表情をしていた。

 

「えっと…男?」

 

先に動いたのはケモミミが付いた方の子だった。

下を穿いているのかギリギリなラインの服装の子だ。

元居た世界では痴女扱い確定だろう。

 

「そうですけど…あなたは?」

 

このままだと俺の中でこの人のイメージが変になりそうだから名前を聞いて紛らわそうとする。

 

「わ、私はク、クイーンエリザベス級高速戦艦ウォースパイト…そ、その…よろしく頼む。」

 

ケモミミの子の名前はウォースパイトさんというらしい。

ようやく俺と同じ艦種である戦艦の人に出会えた。

けど…

 

「…」

 

軽巡洋艦のベルさんと比べるとなんだか小さく見えてしまう。

もう一人の子の方もウォースパイトさんと同じ身長で、姉妹かと思えるほどだった。

 

「あなたの名前は?」

 

「あ…が…」

 

王冠を被った方の子は突っ立ったまま目を点にしている。

痺れを切らしたのか、ベルさんが割って入ってくる。

 

「こちらのお方はエリザベス級戦艦一番艦のエリザベス様です。ウォースパイト様とは同じ級ですが、姉妹関係はございません。」

 

丁寧にベルさんが教えてくれる。

 

「テゲトフ様のお名前は事前に執務室の方でご主人様からお二方へと伝えられておりますので、テゲトフ様自身の紹介は不要だと存じます。」

 

俺も自己紹介をしようとするが、ベルさんが止めてくれる。

 

「そういえばウォースパイトさんとエリザベスさんは何をしに?」

 

いきなり入ってきたから何事かと思ったが、実際は何をしに来たのか分からない。

 

「わ、私はただ陛下についてきているだけなので…」

 

ウォースパイトさんはエリザベスさんについてきているだけで、目的などはないようだった。

となればエリザベスさんに聞くのがいいんだろうけど…

 

「あ…あ…」

 

ショートしたみたいに動かないので聞きようがない。

 

「ここまで男性に対しての免疫がないとは思いもしませんでした。」

 

ベルさんはさらに呆れた表情をしていた。

男性に対しての免疫がないだけでここまでなるものかと思うが、1:100ならありえる…のか?

それにしてはベルさんは男性に対しての免疫が結構ある方なのだろう。

 

「自己紹介も終わったことですので、戻られてはいかがでしょうか?」

 

ベルさんがウォースパイトさんとエリザベスさんに提案をしているようだった。

 

「そ、そうさせてもらうわ…陛下、一旦戻りましょう。」

 

ウォースパイトさんは動かないエリザベスさんを引っ張って部屋から出て行った。

 

「失礼いたしました。」

 

ベルさんは最後に出て行った。

艦種によって身長などが変わると本には書いてあったが、あの二人は例外なのだろうか?

一応二人とも戦艦らしいし。

他の人達はどうだろうか?

もう少しで読み終わるから、俺は再び本に目を落とした。

 

 

~~~~~

 

「久しぶりの歓迎会だね~」

 

大広間の中ではロイヤルメイド隊が歓迎会の準備をしている。

厨房で料理をしている者もいれば、長机の準備をしている者もいる。

KAN-SENの建造なんて滅多にできるものではない。

大体のKAN-SENは他の港などから移籍してきた者が多い。

時々セイレーンから取り返した海域などから拾われてくる者もいる。

 

「ほとんど終わりましたぁ~」

 

私に設営の状況を報告しに来たサフォークはセイレーンから取り返した海域で拾われた子だ。

他にも何人かいるが、建造で来た子は両手で数えられるくらいしかいない。

 

「おっけー、じゃあ終わった人は他の人の手伝いでもしていて。」

 

一人一人が大切だから毎回新しい子が来るたびに歓迎会などを開いている。

今は戦時中なのだからこんなことをするのは咎められるのかもしれないが、こうでもしないと絆ははぐくまれないのだ。

それに夜にするわけでもないのだから多少はいいだろう。

 

「ベル。」

 

「はっ。」

 

いつの間にか戻ってきていたベルにまたお願いをする。

 

「もう少しで15時だし、テゲトフ呼んできておいて。」

 

「承知いたしました。」

 

「お願いね~」

 

今はテゲトフが強い弱いとか関係なく、歓迎会を楽しめるようにしよう。



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やはり大波乱

15時となった。

ベルさんからもらった本は既に読み終わっており、ベットに寝ころんでいた。

あんなにあった騒がしさもなくなっていた。

 

コンコン

 

「どうぞー」

 

暇にしているとまた扉がノックされた。

今度は誰だろうか?

 

「失礼いたします。」ガチャ

 

入ってきたのはまたベルさん。

今度は何も持ってはいない。

 

「また呼び出しっていう感じ?」

 

「左様でございます。」

 

さっきの兵装の確認と同じ様に指揮官に呼ばれたみたいだ。

ベットから起き上がり、扉の方へと歩いていく。

 

「では、行きましょうか。」

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

ベルさんの後ろをドックに行くときと同じようについて行く。

ドックへ行く時とは反対の方向へと進んで行く。

段々と話し声が聞こえてくる。

 

「あの、これってどこに向けて歩いているんですか?」

 

明らかに何をしようとしているのか分からず、咄嗟にベルさんに聞いてみる。

 

「ふふ、秘密です。」

 

先ほどとは違い、笑いながらそう返すベルさん。

どこへ連れて行かれるのが分からない恐怖をあなたは知っていますか?

悲しいかな、そんな俺の嘆きもベルさんには届かず、どんどん前へと進んで行く。

 

「こちらです。」

 

薄暗いような場所へと連れてこられ、困惑する。

何の目的なのかすら分からず、おどおどしている。

 

「後は呼ばれるまでこちらで待機しておいてください。」

 

「え?いや、これ何をやるんですか?」

 

「…大丈夫です。…多分。」ボソッ

 

「聞こえてますからね?」

 

ベルさんがさらに不安になる発言をする。

カーテンみたいなものの向こう側がさらに騒がしくなる。

 

「カーテンの向こう側はどうなっているんですか?」ふるふる…

 

震えながらベルさんに聞いてみる。

 

「…秘密でございます♪」

 

またもや突き放された。

救いはどこにもないのだろう。

 

「テゲトフ様、落ち着いてくださいませ。問題がございましたら、我々ロイヤルメイド隊がすぐに駆け付けます。」

 

ロイヤルメイド隊って何?

なんかさっき読んだ本の中に書いてあったような気がするが緊張してしまって忘れてしまった。

ロイヤルのメイドの部隊とかそんなだった気がするが、今は目の前のことで頭がいっぱいだ。

 

「お~い、そろそろ出てもらえるかな?」

 

「時間のようです。」

 

「え?どゆこと?」

 

指揮官がカーテンから顔を覗かせる。

ベルさんもそれに答え、一歩、後ろへと下がる。

俺が道の中央に立っている。

 

「そのままカーテンをくぐって前へとお進みください。」

 

ベルさんにそう告げらる。

俺は未だに戸惑いを見せている。

 

「…テゲトフ様、失礼をお許しください。」

 

しどろもどろしている俺の腕をつかんだかと思うとベルさんは思いっきり引っ張ってカーテンの外側へと押し出した。

 

「うぇぇぇ~!?」

 

急に投げ飛ばされて、素っ頓狂な声をあげてしまった。

狙ったのかはどうか知らないが、奇麗に両足で着地することができた。

 

シーン

 

俺が登場してからか周りは急に静まり返ってしまった。

見渡すと俺はステージの上に立っており、まるでパーティーのように全員が料理を手に取っていた。

そして全員俺の方を見ていた。

 

「…あ、男だと伝えるの忘れてたわ。」

 

マイクから指揮官の声が聞こえた瞬間…

 

「「「ええー!!!???」」」

 

大量の叫び声が聞こえた。

 

 

~~~~~

 

「…あ、男だと伝えるの忘れてたわ。」

 

マイクがこの音声を拾った瞬間、叫び声が聞こえた。

 

「「「ええー!!!???」」」

 

大量の叫び声の後、会場は大慌てとなった。

 

「え?え?だ、だ、だ、男性!?」

 

「どうしよう!?どうしよう!?」

 

「こここここういうときでもゆゆゆゆ優雅にふふふふふるまうものですわわわわ。」

 

「まずは落ち着きなさい。」

 

反応は多種多様で、大半がパニックになっていた。

 

「あー、事前に言っといた方がよかったのかな~?」

 

事前に言っておいても今と同じような反応になっているだろうからサプライズで言わなかったけども。

 

「ちょっと指揮官!?お、お、男の人ってどういうことなの!?」

 

目の前にいるジャベリンはうちの古巣で、一番初めにここに来た子だ。

流石に経験が一番あるジャベリンですら、この驚きようだ。

 

「いや~、建造したらコンテナの中から出てきた。」

 

「なにそれ!?」

 

建造したら男が出てきたなんてすべての陣営を探してもうちだけだろう。

 

「一応、兵装ついているから今後うちから出撃するからね。」

 

「ああ…」バタン

 

急なカミングアウトでジャベリンの脳はショートしたのか、ジャベリンは倒れ込んでしまった。

近くにいたベルが受け止めたおかげで頭は打たずに済んだ。

 

「ちゃんと説明しておられなかったのですか?」

 

「事前に言ってもこうなると思って…サプライズってことにならない?」

 

「なりません。」

 

きっぱりと否定された。

 

「私はジャベリン様を休ませて来られますので、それまでに皆様方を落ち着かせてください。」

 

「んな無茶な。」

 

「十分な説明をしておられないご主人様の自業自得でございます。」

 

ベルはそれだけ言ってジャベリンを抱えてこの場を後にした。

私はマイクのスイッチをつけてからこう言った。

 

「取り敢えずみんな落ち着いて~、落ち着けないかもしれないけど落ち着いて~」

 

 

~~~~~

 

「取り敢えずみんな落ち着いて~、落ち着けないかもしれないけど落ち着いて~」

 

再びマイクから指揮官の声が聞こえる。

混乱に陥った会場を落ち着かせるには物足りなかったのか、そこまで効果は無いように感じられた。

指揮官の顔を見てみるとのほほんとした顔で、ドックで見たような威圧感は無かった。

しかし、とある人が指揮官からマイクを取り上げ、俺のいるステージに上がってきた。

その人はエリザベスさんだった。

さっきまで見ていたエリザベスさんとは違い、堂々としていた。

 

「全員よく聞きなさい!」

 

エリザベスさんが声をあげると、あんなに混乱していた会場は嘘みたいに静まり返った。

続けてエリザベスさんは喋る。

 

「これから我が艦隊には男が入ってくる。それでもロイヤルの強さと高貴なる艦隊は変わらないわ。」

 

「盛大に歓迎してやるわよ!」

 

その声と同時に歓声が沸き上がった。

 

「「「わー!!!」」」

 

初めて見たときはギャグキャラみたいな感じだと思っていたが、俺の予想は180度いい意味で裏切られた。

 

「じゃあこれからよろしく頼むわよ!」

 

俺はエリザベスさんからマイクをもらい、前へ歩き出す。

ベルさんに投げ飛ばされるまでは緊張していたが、まさかこんな事態になるとは思いもしなかった。

でも、エリザベスさんやベルさんのおかげで自身が付いた。

 

「戦艦テゲトフ級二番艦、テゲトフです。いきなりのことですが、この艦隊へ所属することとなりました。」

 

「自分は経験もなく、兵装も戦艦では弱く、必ず足を引っ張ってしまいます。」

 

「ですが、居場所が分からない自分に居場所を与えてくれた指揮官に感謝しています。必ず強くなります。だから、よろしくお願いします!」

 

俺は自己紹介と意気込みを言い終わると、再び歓声が沸き上がった。

 

「よくできたじゃないの!」

 

後ろにいたエリザベスさんが声をかけてくれる。

 

「エリザベスさんも最初に会った時とは思えないくらいたくましかったです。」

 

「ちょっと!そのことは忘れなさい!」

 

少しからかってみてみると、あれほどたくましかったエリザベスさんは急に可愛らしくなった。

俺はステージの裏側へと戻って行く。

 

「完璧でございました。」

 

ベルさんが待ってたとばかりに声をかけてきた。

 

「ベルさんが投げ飛ばしてくれたおかげですよ。」

 

「私はただテゲトフ様を支えているだけですので。」

 

「そこまで謙遜しなくとも…」

 

ベルさんは職業柄か、謙遜した言い方が多い。

今日からは一緒に戦って行く仲になるのだ。

 

「改めて、よろしくお願いします。」

 



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初めての練習

丁寧な言葉ってめっちゃ難しい。


俺の歓迎会を終え、メイド隊の人達が片づけをしている。

俺はその中に混じって装飾をはがしたりしている。

ベルさんから、

 

「これらは私達、メイド隊の仕事なのでお休みになってください。」

 

って言われたけど、無理を言ってやらせてもらっている。

これからお世話になるし、こういうところで恩返しとかしていかないといけないからね。

時々、他のメイド隊の子達からの視線を感じるが、こういう世界では仕方のないことかもしれない。

少し恥ずかしいから片付ける手を早める。

気が付けば日も沈みかけている。

 

「ありがとうございますテゲトフ様。」

 

ベルさんが俺に近づいてきて言う。

 

「いえいえ、これからお世話になりますし、このくらいはやっておかないと…」

 

適当に答え、近くの段ボールに手を伸ばす。

しかし、その時に態勢を崩してしまい、俺が乗っている脚立が倒れてしまう。

 

「うわ!?」

 

「よっと。」

 

地面にあたる寸前で、ベルさんが俺のことをキャッチする。

 

「どこかおケガはございませんでしょうか?」

 

ベルさんにお姫様抱っこされた状態で、ベルさんにそう聞かれる。

 

「あ、いえ、大丈夫です。ありがとうございます。」

 

ベルさんに感謝を伝え、ベルさんの腕の中から降りようとする。

 

「あ、あれ?」

 

降りようとするが、ベルさんががっちり俺の片腕を掴んでいるので降りられない。

 

「あの~ベルさん?なんで俺の腕を掴んでいるのですか?」

 

「…」

 

声をかけても無反応だ。

それになんかベルさんの目が少し怖いような感じもする。

 

「…どうやらテゲトフ様はお背中に腫れが少しあるようです。」

 

「え?そんなはずは…」

 

「至急、病室へと連れて行きます。」

 

「いやそこまでしなくとも…」

 

ベルさんは俺の言うことも聞かずに、そのままの状態で病室まで連れて行かれた。

道中にいた人達の視線がとても俺に刺さっていたとは言わなくても分かるものだろう。

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

病室に着くと、ベルさんは優しく俺をベットに座らせ、近くの棚を開ける。

その間に俺は自分の背中に手を当ててみる。

少し探ってみると、一部腫れあがっているところがあった。

ドックで兵装を出した時に砲塔が背中にでもあたったのだろう。

 

「腫れに効く塗り薬を用意しました。」

 

ベルさんの手の中には棚から出したであろう薬があった。

 

「すみませんこんなことまで面倒を見てもらうような感じで。」

 

「それがメイドの仕事ですから。」

 

俺はベルさんから薬をもらい、服を脱ぐ。

 

「…///!?」

 

「どうかしました?」

 

ベルさんの顔が一気に真っ赤になっていた。

 

「テゲトフ様は男性なのですからそう易々と女性の前でお召し物を脱がないでください///」

 

ベルさんが手で顔を覆いながらそう言う。

…あの、ベルさん。

その覆っている手の隙間から俺の上半身をチラチラと見ないでもらえます?

 

「ああ、すみません。まだ癖が抜けてなくて。」

 

「私はこれにて失礼させてもらいます///」

 

ベルさんはそう言い、足早に病室から出て行った。

男性に対しては比較的免疫があると思っていたベルさんでも流石に裸(上半身だけだが)には免疫がなかったようだ。

ベルさんからもらった薬を背中に塗り終え、服を着る。

 

「さてと、指揮官のところへと行くとするか。」

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

「俺の今後についてなんですが、どうする気ですか?」

 

俺は今、執務室で指揮官と俺の今後の扱いについて話している。

ロイヤルに所属することになったとは言え、異例中の異例なのでどういう扱いとなるのか分からない。

 

「実力と兵装で考えたらまだ出撃させることはできないからまずは他の子との演習かな。」

 

「明日の朝早くから演習だからね。」

 

「さっそく明日からなんですね。」

 

「戦時中でゆっくりしていられないからね~」

 

明日から演習をするらしく、休んでいる暇はもう無いだろう。

 

「まあ今日はもう部屋に戻って休んだら?」

 

「そうさせてもらいます。」

 

指揮官からの提案もあり、俺は部屋に戻ろうとする。

 

「んじゃおやすみ~」

 

最後に指揮官から声を掛けられ、執務室を後にする。

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

部屋に戻ると疲れが押し寄せ、ベットへと倒れ込む。

今日は色々とあったのだ。

きっとそれで疲労が溜まったのだろう。

なんとか体を起こし、部屋の風呂場へと歩いていく。

来客用の部屋だからか風呂場にはシャワーしかなく、仕方なくシャワーだけ浴びる。

 

 

 

シャワーを浴び、風呂場からタオルを巻いて出ると、パジャマが置いてあった。

手に取り決めてるとちょうどぴったしのサイズだった。

改めてロイヤルはすごいところだなと思った。

時計はいつの間にか22時近くを差しており、月が昇っていた。

 

「…もう寝るか。」

 

電気を消し、ベットに入り、目を閉じた。

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

目が覚めると日は昇っており、時計を見ると6時30分となっていた。

ベットから起き上がり、扉を開けてみると服が置いてあった。

気が利くなと思いながら服を取り、部屋の中へと入って行く。

服は軍服を少しアレンジしたかのようなものであり、少々独特だ。

取り敢えずそれに着替え、部屋を出る。

待っていたのかと思うようにベルさんが扉の前に立っていた。

 

「おはようございます、ベルさん。」

 

「おはようございます。テゲトフ様。」

 

挨拶をし、要件を聞こうとする。

 

「本日はテゲトフ様の演習でございますので、演習場までの案内をさせてもらいます。」

 

その前にベルさんは要件を俺に伝える。

演習場への案内を担当してくれるそうだ。

 

「ちなみに俺の演習相手って誰?」

 

「私でございます。」

 

俺の演習相手はベルさんらしく、どこかベルさんは嬉しそうだった。

演習場は港近くらしく、目視で港が確認できるほどだった。

 

「では行きましょうか。」

 

兵装を出してベルさんが先に海へと出ていく。

続けて俺も兵装をだし、海へと進む。

海の上に立つという感覚は今まで経験したことがないことだった。

 

「ちなみに砲弾ってどうやって撃つんですか?」

 

「では演習の前に基礎的な事をしておきましょう。」

 

ベルさんは海を進みながらこちらを向くと遠くにある的を指さした。

 

「あの的に向かって砲を向け、攻撃してみてください。」

 

ベルさんが指さした方向にある的はそこまで離れているわけでもなかった。

 

「あの…攻撃ってどうやるんですか?」

 

砲塔を的の方向に向けることはできたのだが、どうやって砲撃をするのか分からなかった。

 

「攻撃をするイメージであります。」

 

そういって、ベルさんは的に向かって砲撃をし、見事に的に当てた。

当たった的はこっちにも聞こえるくらいの着弾音がした。

 

「どうぞ。」

 

「う~ん…こう?」

 

砲撃をすることはできたが、的には届かず、手前で落ちてしまった。

 

「少しイメージが弱いです。」

 

ベルさんに指摘され、もう一度砲撃をしてみる。

今度は的を超えてしまい、遠くの方に着弾した。

 

「今のはイメージが強かったのです。」

 

何度も砲撃をしていき、ようやく的の隣に着弾した。

それでも的にはまだ当たらず、試行錯誤の末、的をカスった程度しかなかった。

 

「主砲が的をちゃんと捉えておりません。少し下げて砲撃してみてはいかがでしょうか?」

 

ベルさんの言うとおりに砲塔を少し下げて砲撃してみる。

ベルさんと違って的のど真ん中ではなかったものの、的に命中させることができた。

 

「テゲトフ様のを見させてもらいましたが、まだ演習するには足りないものが多すぎます。本日は演習を取りやめて砲撃の練習といたしましょう。」

 

朝食の時間までの間、俺はベルさんに指導されながらずっと的に向かって砲撃をし続けていた。



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躊躇がない…

朝食を取るために、一旦ベルさんとの練習は休憩となった。

的のど真ん中には結局一発も当たらず、ほとんどの弾は目の前で落ちるかギリギリ的に当たるものだけだった。

食堂に入ると、食堂にいた人達の視線が痛いほど刺さる。

ロイヤルに所属することになってからは今の所、喋ったことがあるのは指揮官とベルさん、サフォークにエリザベスさんとウォースパイトさんの5人だけである。

朝食をもらい、席を探す。

食堂の席はほとんど満席で空席を見つけられなかった。

 

「こちら空いておりますわよ?」

 

空いている席を探していると近くにいた人に声を掛けられ、手招きされる。

 

「あ…お邪魔します…」

 

手招きした人は知らない人ではあったが、厚意に甘えてお邪魔させてもらう。

 

「ふふ、そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ?」

 

声をかけてくれた人は白髪に白いドレスと白い帽子をかぶっており、その…すごく…大きいです…(どこがとは言わない。)

 

「私は装甲空母、イラストリアスです。よろしくお願いしますわ♪」

 

「ああ、よろしくお願いします。」

 

多少の困惑はあれど、席に着く。

席は4人席であり、イラストリアスさんの他にもう一人いた。

もう一人の子は紫髪で、イラストリアスさんと同じ白いドレスを着ており、ぬいぐるみを抱いていた。

…なんか動いている気がするが気のせいか?

 

「あ…わたし…ユニコーン…あのぉ…お兄ちゃんって呼んでも…いい?」

 

…?

なんだこの子、可愛すぎだろ!

 

「別にいいよ。」

 

ユニコーンちゃんの隣に座り、食事をとろうとする。

昨日の時に一応全員に自己紹介はしたはずだし、名前は知っているだろう。

 

「ちなみにテゲトフさまはお付き合いしているお方っています?」

 

「ごほっ!?」

 

いきなりのことで食事が喉に詰まってしまう。

 

「い、いないですけど…」

 

なんとか水を流し込み、事なきを得る。

 

「ふふ、そうなんですね♪」

 

笑顔を浮かべながら俺のことを見るイラストリアスさん。

どこか狙われている感じがする…

 

「ね、ねぇ…お兄ちゃん…そのぉ…あーん…してくれない…かな?」

 

ユニコーンちゃんが甘えてくる。

初対面なのにここまで甘えてくるのっておかしな気もするが、気のせいか?

 

「それくらいだったら…はい、あーん。」

 

「あーん…」

 

ユニコーンちゃんにあーんをして食べさせる。

 

「…」もぐもぐ

 

「おいしい?」

 

「うん…」

 

ユニコーンちゃんは満足そうな顔を浮かべている。

笑顔が可愛い。

 

「テゲトフさま、よければイラストリアスにも…」

 

「何をしていらっしゃるのですか?」

 

「あ…」

 

隣でベルさんがものすごい形相でイラストリアスさんを睨んでいた。

 

「まだまだテゲトフ様はKAN-SENとしては弱いのです。このようなことに時間をかけないでくださいませ。」

 

「すいません…」

 

「食事を終えたら朝と同じ場所へと“すぐ”にいらっしゃってくださいませ。」

 

ベルさんの声には少し怒気がこもっていた。

 

「イラストリアス様もテゲトフ様をあまり誘惑しないでください。」

 

「私はそんな事考えてはいませんよ♪」

 

「では私はこれで…」

 

ベルさんはそう言い残し、どこかへ行ってしまった。

 

「…流石にバレちゃったかな?」

 

イラストリアスさんはよく分からないことを言っているが、俺には関係ない話だろう。

ゆっくり食べているとまたベルさんになんて言われるか分からないから急いで口ののかに放り込む。

ユニコーンちゃんは終始、俺にくっついて自分の食事を食べていた。

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

朝食を食べ終え、急いで朝ベルさんと砲撃の練習をした場所まで行く。

ベルさんは先にその場所で待っていたのか、すでに的に砲撃をしていた。

 

「ようやく来られましたか。」

 

ベルさんは少し怒ったような顔でこちらを見る。

 

「すいません、遅れました。」

 

「大丈夫です。時間的にはぴったりですから。」

 

ベルさんは持っていた時計を見る。

 

「ほんとは砲撃の練習の予定でしたが、変更いたしましょう。」

 

「私との演習に変更します。」

 

「え?」

 

ベルさんは俺との演習をすると言い出した。

 

「ちょっと待ってください!俺まだまともに砲撃できてないですよ!?」

 

「実戦形式で学べるはずです。」

 

「回避行動は?」

 

「先ほどと同様です。」

 

ベルさんに抗議してみるが、ダメそうだ。

俺は諦めてベルさんとの演習を受け入れる。

 

「お手柔らかにお願いします。」

 

ベルさんに向けて一礼し、兵装を構える。

 

「ベルファスト、行かせてもらいます。」

 

ベルさんは開幕主砲での砲撃をしてくる。

 

「うわっと!?」

 

ベルさんの砲撃をギリギリで避ける。

足元に着弾し、水しぶきが服にかかる。

 

「…ん?」

 

よく考えると演習弾ではこんなでかい水しぶきは上がらない。

つまり…

 

「ベルさん?これ実弾なんですけど?」フルフル…

 

震えながらベルさんに言う。

帰ってきた答えは…

 

「承知しております。」

 

地獄だった。

 

「沈みますよ!?殺す気ですか!?」

 

「最初に言ったと思いますが、実戦形式でございます。」

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

結果から言おう。

敗北である。

ベルさんに一方的に撃たれ、俺はただ避けていた。

俺に当たった砲弾は3発くらいで、それ以外は外れた。

当たった砲弾も主砲ではなく全部副砲だったので損傷はそこまでない。

一度だけベルさんに反撃したが、避けながらの砲撃はしたことがないので明後日の方向へと飛んで行った。

終わった後、ベルさんは…

 

「明日は動きながらの砲撃でございます。」

 

って満面の笑みで言われたのが一番怖かった。

昼食の時間になるまでずっと演習をしていたのでへとへとである。

昼食後は自由時間らしいので部屋の中で休もうと思う。

 

 

~~~~~

 

朝食をテゲトフ様と一緒に取ろうと思い、広い食堂の中でテゲトフ様を探す。

見つけたテゲトフ様はイラストリアス様とユニコーン様と一緒にお食事を取られていました。

お二人は肉食獣のような目でテゲトフ様を見ており、テゲトフ様を狙っていると一目見るだけで分かります。

ユニコーン様がテゲトフ様からあーんをされており、羨ま…ではなく、淑女としてはしたないことをされておりました。

私は見かねてテゲトフ様へ苦言を言いに行きました。

 

「何をしていらっしゃるのですか?」

 

「あ…」

 

テゲトフ様は驚かれたような顔をしてこちらを見てくれました。

 

「まだまだテゲトフ様はKAN-SENとしては弱いのです。このようなことに時間をかけないでくださいませ。」

 

「すいません…」

 

「食事を終えたら朝と同じ場所へと“すぐ”にいらっしゃってくださいませ。」

 

私は一部の言葉を強調し、今度はイラストリアス様の方を向きます。

 

「イラストリアス様もテゲトフ様をあまり誘惑しないでください。」

 

「私はそんな事考えてはいませんよ♪」

 

「では私はこれで…」

 

イラストリアス様に釘をさし、朝食を取りに行きます。

朝食を取り終わった後はすぐさま朝の場所へと行き、テゲトフ様より先に砲撃の練習をします。

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

少し遅れて、テゲトフ様がご到着しました。

 

「ようやく来られましたか。」

 

嬉しさを抑えながら、冷たげにそう告げます。

 

「すいません、遅れました。」

 

「大丈夫です。時間的にはぴったりですから。」

 

手元の時計を見ながら少しのフォローをします。

実際、今の時刻は8時前で朝食からはそこまで時間が経ってはいません。

テゲトフ様も来られたことですので、砲撃の練習をするはずですが、先ほどの光景を見せられては少し躾けをしたくなります。

 

「ほんとは砲撃の練習の予定でしたが、変更いたしましょう。」

 

「私との演習に変更します。」

 

「え?」

 

困惑した顔でテゲトフ様は聞き返してきます。

 

「ちょっと待ってください!俺まだまともに砲撃できてないですよ!?」

 

「実戦形式で学べるはずです。」

 

「回避行動は?」

 

「先ほどと同様です。」

 

テゲトフ様が渋々離れていきます。

 

「お手柔らかにお願いします。」

 

一礼をし、兵装をこちらへ構えます。

 

「ベルファスト、行かせてもらいます。」

 

走りだした瞬間、主砲をテゲトフ様へ当たらぬように撃ちます。

 

「うわっと!?」

 

「…ん?」

 

テゲトフ様はとあることに気が付かれたようです。

 

「ベルさん?これ実弾なんですけど?」フルフル…

 

私が装填している弾薬は演習弾ではなく、実弾であることを指摘してくださいます。

 

「承知しております。」

 

私はついに抑えきれなくなった嬉しさが顔に出てしまいました。

 

「沈みますよ!?殺す気ですか!?」

 

テゲトフ様は反論を続けますが、すでに始まったことですので止めることはできません。

 

「最初に言ったと思いますが、実戦形式でございます。」

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

結果は私の勝利でございました。

実弾ということもありましたのでテゲトフ様に当てぬように砲撃をし、判定勝ちにするために副砲を数発だけ問題にならないところへと撃ちました。

副砲は実弾ではなく、演習弾だったのでテゲトフ様には入浴などの必要性は無いと思われます。

しかし、何故かテゲトフ様との演習は気分が高揚します…

もう、逃がしませんよ?

 

 

 

 

 

テゲトフ様♡



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なんか思ってたのと違う

やっぱタグにヤンデレ追加するかも。


ベルさんとの演習と昼食を終え、今は部屋の中でベットに寝っ転がっている。

ベルさんはどうやら主砲だけが実弾で、演習弾は副砲に装填していたらしい。

遠くで見ていた指揮官からすれ違う時に教えてもらった。

見ていたなら止めてほしかったもんだ。

 

「しっかし、やることねぇな。」

 

昼食以降は自由時間と言われたが、特に娯楽があるわけでもないので、寝るということしかない。

寝すぎるのもあれなもんで、ベットから起き上がって執務室へ行く。

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

「…というわけでなんか無いですか?」

 

「暇…ということでいい?」

 

「まあ、そうですね。」

 

指揮官に話をして何かしらの仕事をもらおうとする。

じっとしているのは性に合わない。

 

「と言っても新人という立場のテゲトフに任せられることって大分限りがあるんだよねー」

 

「そこは…ほら、書類運びとか…」

 

「ベルがやってくれるね。」

 

「…物資の確認は…」

 

「ベルがやってくれるね。」

 

「……お茶だしh…」

 

「ベルがやってくれるね。」

 

もはや何でもできるだろあの人。

 

「ベルが優秀過ぎるからねー、仕方がないことだ。」

 

「はぁ…じゃあ諦めてじっとしていますわ。」

 

「まあ待ってよ。頼みたいことが一つだけあるんだ。」

 

「それは?」

 

何もすることがないと思って執務室から出ようとした矢先、指揮官に呼び止められる。

 

「実はエリザベス達にお茶会に誘われているんだけど、今日の書類の量が多すぎてね、ぶっちゃけると行けそうにないから代わりにテゲトフが行っといてくれない?」

 

「それもはや私情では?」

 

「そこを頼むよー、テゲトフだってまだそこまで人脈ないでしょ?」

 

「じゃあ、ありがたく行かせてもらいますね。」

 

「うん、じゃあねー」

 

執務室を出て、エリザベスさん達のところへと歩いてく。

 

 

~~~~~

 

「ふぅ…行ったか。」

 

テゲトフはまだKAN-SENになったばかりで兵装の扱いにも慣れていないため、今日一日中演習させてもよかったんだが、今日のベルとの演習を見た感じ、飲み込みは早いようだ。

 

「これなら艦隊に編成する頃にはなかなか強くなるんじゃないかな?」

 

今日一日中演習して明日動けなくなるのを防ぐ為に休憩を与えなくてはならない。

まさか自分から何かをしようとすることには驚いたが。

エリザベス達とのお茶会までにはこの書類の山を終えることは私にとっては容易いことだ。

しかし、テゲトフは今のところ関わりがある子達が少ないからこのお茶会で関わりを増やしてほしいかな。

 

 

~~~~~

 

「え…な…」

 

「えっとぉ…やっぱりまずかったかな?」

 

今はエリザベスさんのところにいるが、俺が指揮官の代わりと言ったら固まってしまった。

昨日はあんなにもたくましかったのに今は最初に出会った時と同じである。

 

「陛下…リラックスです。」

 

「そ、そうよね!こんなときはお、おち、落ち着くのがいちばばばんよね!」

 

「陛下、深呼吸した方が落ち着きます。」

 

ウォースパイトさんがエリザベスさんの緊張を解そうとしているが、あまりにも動揺しているため、意味を成していない。

 

「あ~…やっぱ俺いない方がスムーズに進むと思うので俺は帰り…」

 

「待ちなさい!」

 

帰ろうとするとエリザベスさんが俺のことを呼び止めた。

…足ガクブル何ですけど、ほんとに大丈夫ですか?

 

「それに私はロイヤルのトップなのよ!こんなことでがっがりさせたりなんてしないわ!」

 

「さあ、行くわよ!」

 

エリザベスさんは玉座から立ち上がったかと思うと、自信満々に俺の手を引っ張って部屋を出ていった。

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

エリザベスさんは俺を園庭に連れて行ってくれた。

園庭の真ん中に机と椅子があり、数人の人が座って紅茶とお菓子を食べていた。

 

「ちょっと!何勝手に始めてるのよ!」

 

「あまりにもエリザベス様が遅かったものですから、フッド様が代わりに開始を宣誓しました。」

 

「フッド!」

 

「陛下が指揮官様を自らお誘いに行かれたからでしょう。」

 

「私はロイヤルのトップなのよ!勝手なことは許さないわよ!」

 

エリザベスさんはフッドさんという人に対して勝手に自分の代わりをされたことに怒っていたが、フッドさんとやらは適当に聞き流している感じだった。

 

「それにフッド、指揮官の代わりに来たのはテゲトフよ。」

 

「え!?」

 

ウォースパイトさんがフッドさんに指揮官の代わりに俺が来たこと説明する。

するとフッドさんが持っていたカップを落として驚いた声を上げる。

 

「て、て、テゲトフ様が来られるの?」

 

「ええ…というよりもう来ているわ。」

 

「ど、どこにいらしているの!?」

 

「陛下の後ろよ。」

 

ウォースパイトさんがエリザべスさんの後ろにいる俺を見る。

瞬間、フッドさんが俺の目の前に移動する。

 

「初めましてテゲトフ様、私は巡洋戦艦のフッドですわ。お見知りおきを。」

 

「あ…はい。テゲトフ級二番艦のテゲトフです…その…よろしく。」

 

急なことで言葉が詰まったが、何とか言葉を捻りだせた。

なんかイラストリアスさんと同じような目…いやそれよりも変な感じがする目で俺のことを見ている。

 

「また会えましたわね、テゲトフさま♪」

 

他の椅子にはイアストリアスさんとユニコーンちゃんも座っていた。

相変わらずユニコーンちゃんはぬいぐるみを抱いていた。

カワイイ!

 

「こちらのお席へどうぞ。」

 

メイド隊の一人が俺を椅子に案内する。

見たことがないメイドの人だったが、なんていうか…なんで今まであったメイドの人達は全員でかいんですかね?

案内された椅子に座る。

俺の隣にフッドさんが座る。

その反対側にイラストリアスさんが座る。

 

「あら~?フッド、あなたさっきまでそこの席じゃなかったですわよ?」

 

「そういうあなただってここではないはずよ?」

 

お二方が机と俺を挟んで言い争いをする。

どうすればいいか分からないため、静かに見守る。

 

「紅茶をお入れいたします。」

 

先ほどのメイドさんが紅茶が入ったであろうポッドを持ってきて紅茶を注いでくれる。

だが何故かそのポットを持っている手先が少し不安定だ。

メイドさんの手先が狂い、俺の腹筋辺りに紅茶が当たる。

 

「あっつぅー!?」

 

熱々の紅茶がかかったので思わず叫んでしまう。

その時に俺は体制を崩し、後ろに倒れ込んでしまう。

 

「ひぃぃぃ!も、申し訳ございません!」

 

メイドさんが俺の服に付いた紅茶をハンカチで拭こうとすると、またもや手を滑らし、俺の腹筋の辺りに顔をぶつけてしまった。

 

「!!!???///」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

直ぐに起き上がり、紅茶を拭き始める。

俺は立ち上がろうと手を地面につけるが、腰に激痛が走り、立ち上がるのをやめてしまう。

 

「いてっ…」

 

「ど、どこかおケガはないですか!?」

 

「いや、大丈夫です…」

 

無理に立ち上がろうとするが、エリザベスさんに止められる。

 

「腰を手で抑えながら大丈夫だといっても信用できないわよ。」

 

「あはは…」

 

「さっき倒れた衝撃で腰でも打ったんでしょ。」

 

的確に当てられ、乾いた苦笑いしか出なかった。

 

「この卑しきメイドにどうか罰を与えてください!」

 

俺に紅茶をかけたメイドさんは必死に頭を下げ、罰を求める。

 

「いや流石にそんなことは…」

 

「じゃあシリアス、罰としてテゲトフを病室まで運んで手当てをしなさい。」

 

「え?」

 

エリザベスさんが勝手に罰を決めたため、俺は困惑した。

確かに腰が痛くてまともに動けない。

だからと言って運ばせるのは…(昨日の記憶フラッシュバック)

 

「分かりました。シリアス、この身を投じてでもテゲトフ様を安全に病室まで運びます。」

 

「えちょ、俺は別に…」

 

「では、早く行きましょう!」

 

俺はシリアスさんというメイドに昨日と同じお姫様抱っこをされ、シリアスさんは俺の言葉を聞く前に病室に向けて走り出してしまった。

 

「…やっぱり誰かついて行かせた方がよかったわね。」

 

「それより陛下、あのお二人を止めるのを手伝ってくれませんか?」

 

「ほっときなさい。いずれ静かになるでしょ。」

 

フッドさんとイラストリアスさんは俺が倒れたのにも気が付かず、まだ言い争いをしていたらしい。




フッドのキャラ難しすぎだろ!
っていうかロイヤルのキャラのほとんどが難しい…


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ちゃうんすよ

正月休みも終わったし、投稿頻度低くなっちゃうかも。


シリアスさんに病室まで連れてこられ、ベットの上に寝かされた。

シリアスさんが走って俺のことを運んだため、腰の痛みはさっきより悪化している。

 

「…」(痛くて声もでない)

 

「え~と、確か包帯と塗り薬はこちらに…」

 

シリアスさんは腰に巻くための包帯と腰痛に効く薬を探しているみたいだ。

 

「あ!ありました!」

 

どうやら見つけたみたいだ。

 

「どうぞ使ってくださいませ。」

 

シリアスさんに包帯と小瓶に入れられた薬を渡される。

 

「あの…これ火傷用の薬なんですけど…」

 

シリアスさんから渡された小瓶のラベルには火傷用と書かれていた。

 

「あっ…す、すみません!腰痛のを探して来ます!」

 

「いえいえ。」

 

紅茶がかかった腹筋も実は軽い火傷をしている。

服を胸の部分までめくり、薬を塗る。

少しだけ痛みは引いた気がする。

 

「ありました!こちらが…」

 

シリアスさんが腰痛用の薬を見つけ、こちらに戻ってくる。

俺は服をめくっているのを忘れ、シリアスさんから薬をもらおうとする。

 

「あ、ありがとうシリアスさん。」

 

手を伸ばして薬をもらおうとするが、シリアスさんはずっと固まったままである。

シリアスさんの目は俺の腹筋に釘付けである。

俺は今頃、服をめくっていることに気がつき、急いで元に戻す。

 

「すいません、あまり意識してなくて…」

 

シリアスさんに平謝りをしておく。

 

「あ…///、あ…///」

 

シリアスさんは目が点になった状態で、頬が赤くなっていた。

放心状態なのか、止まった様に動かない。

 

「やっべー…どうしよこれ。」

 

ギリギリ手が届かないところにいるのでシリアスさんが持っている腰痛用の薬がずっとシリアスさんが持っているのである。

何とか薬をもらおうと無理矢理ベットから飛び上がってシリアスさんの手にある薬を取ろうとする。

しかし勢い余ってシリアスさんの肩に手が当たり、シリアスさんも倒れてしまう。

 

「やべっ!?」

 

幸いなことにシリアスさんが倒れた先には毛布がしいてあったので鈍い音はしなかった…が、

シリアスさんの肩に手を当てて倒したから俺も次いでに倒れてしまい、俺がシリアスさんを押し倒しているような体勢になってしまった。

傍から見たらとんでもないだろう。

 

「…え?///」

 

「わぁぁぁ!?すみませんすみません!」

 

俺は急いで退いて土下座をする。

ちなみにこの時は腰痛を感じなかった。

シリアスさんは意識が戻ったのか、顔全体が赤くなっていた。

 

「テゲトフ様がそこまでいたすなんて…シリアス、惚れてしまいました///」

 

なんかシリアスさんが俺自身のせいで壮大な勘違いをしていた。

 

「シリアスがテゲトフ様に変わって包帯を巻きます///」

 

シリアスさんは俺をまたお姫様抱っこし、ベットに戻して俺のズボンに手をかけた。

 

「あのシリアスさん?」

 

「恥ずかしがらないでくださいませ///」

 

シリアスさんは見た目の割には力がとんでもなく強く、徐々にズボンは下がっている。

 

「待って!俺が悪かったから!」

 

もう終わったと思った時、病室の扉が開かれた。

病室に入ってきた人がシリアスさんを止めてくれるのを願った。

 

「…何をしているのですか?シリアス。」ハイライトオフ

 

叶った。

というより、この声って…

 

「メ、メイド長…!」

 

ベルさんだった。

シリアスさんで隠れて顔はよく見えないが、演習の時とは比べ物にならないほどのオーラを放っていた。

 

「こ、これは違くて…」

 

「どこが違うと言うのですか?」ハイライトオフ

 

シリアスさんが立ち上がったことで、俺の目の前からはシリアスさんが退いた。

扉付近に立っているベルさんの顔を見てみるが、目が笑っていなく、光が無かった。

 

「ではテゲトフ様に聞いてみましょう。何があったのですか?」ハイライトオフ

 

ベルさんが俺の方を向き、倒れている俺を見下ろしながら聞いてくる。

 

「いや…まあ…これに関しては俺が悪いからさ…シリアスさんは何も悪くないですよ。」

 

「…分かりました。今回はそういうことにしておきます。」

 

表情が戻ったベルさんが俺に手を差し伸べ、俺がそれをとって立とうするが、忘れていた腰の痛みが襲ってきた。

 

「いっって!?」

 

「どうされました?」

 

「実はお茶会で紅茶をかけられた時に倒れて腰を打っちゃいまして…」

 

「ん?紅茶をかけられた…」

 

ベルさんの表情がさっきと同じようになる。

 

「シリアス…まさかあなた…」

 

「ひ、ひぃぃぃ!て、テゲトフ様!」

 

シリアスさんが怯えた顔で俺に助けを求める目を向けるが、事実なので助けようがない。

 

「あー…そのー…頑張って。」

 

「では行きましょうか。シリアス。」

 

「助けてくださぁぁぁいぃぃぃ!!!」

 

「…どうしようもないんだが。」

 

ベルさんがシリアスさんの首元を掴んで病室から出ていった。

最後に不気味な笑みを浮かべながらベルさんは出ていったのが怖かった。

 

「よいしょっと…」

 

這いつくばってベットの側まで行き、シリアスさんが持っていた薬を腰に塗って包帯を巻き、立ち上がる。

 

「少しは楽になったな…」

 

まだ痛みは残るが、耐えられないほどでも無いため、歩いて病室から出ていき、部屋を目指す。

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

部屋までもう少しのところで、一人の子に会う。

 

「お兄ちゃん…大丈夫だった…?」

 

ユニコーンちゃんだ。

俺のことを心配してくれてたみたい。

 

「大丈夫だよユニコーンちゃん。」

 

返事をし、部屋に入ろうとするがユニコーンちゃんに呼び止められる。

 

「待って…お兄ちゃん…その…ユニコーンも一緒に…いていいかな?」

 

「別にいいけど…どうしたの?」

 

ユニコーンちゃんの突然の申し出で何がしたいのか分からず、聞き返してしまう。

 

「お兄ちゃんは…怪我しているから…少しは助けられたらと思って…」

 

ユニコーンちゃんは優しい子だった。

まるで自分に妹が出来たみたいな気持ちになる。

 

「ユニコーンちゃんは優しいね、じゃあお願いしようか。」

 

部屋の扉を開け、ユニコーンちゃんを部屋に入れる。

部屋に入ると俺はベットに腰かける。

 

「ユニコーンちゃんも立ってないで座りな。」

 

「じゃあ…お邪魔します。」

 

ユニコーンちゃんはそう言い、俺の隣に腰かける。

 

「そういやユニコーンちゃんの艦種って何?」

 

「ユニコーンは…空母だよ…お兄ちゃん。」

 

ユニコーンちゃんが空母だとしり、少し驚く。

エリザベスさんやウォースパイトさんも戦艦なのにフッドさんと比べたら小さいが、イラストリアスさんと同じ空母とは思いもしなかった。

 

「へぇ~、空母なのか…もしよかったら今度、俺の演習相手になってくれない?」

 

「え?」

 

俺の兵装は戦艦にしては弱く、対空砲もないために艦載機からの爆撃を避けるしかないのだ。

爆撃を避けるための演習相手になってくれたらラッキー位に考えていた。

 

「ユニコーンは別にいいけど…お兄ちゃんはいいの?」

 

「俺から言う出したことだしいいよ。むしろ俺の我儘を聞いてくれたから感謝したいくらいだよ。」

 

ユニコーンちゃんは俺とは違い、艦隊の主力として戦地に赴いているのだろう。

こんな幼い子供でもKANーSENならばセイレーンとの戦いに使われるとは残酷なものだ。

 

「じゃあ…ユニコーンもわがままを言っていい?」

 

「いいぞー、なんでも言ってね。」

 

「なんでも…」ボソッ

 

ユニコーンちゃんが何やら言っているが、小さくて声が聞きとれなかった。

 

「なんでもいいなら…お兄ちゃん…一緒にお昼寝しよ?」

 

「いいよー」

 

俺は後ろに倒れ、ベットに寝転がる。

続けてユニコーンちゃんも俺の隣に倒れてくる。

 

「しかし、今日は意外と寒いねー」

 

「こうすると…暖かいよ、お兄ちゃん。」

 

俺が話しかけると、ユニコーンちゃんは俺の胸元に抱きついてきた。

ユニコーンちゃんはどことなく嬉しそうな顔をしていた。

 

「確かに暖かいね。」

 

俺はお返しとばかりにユニコーンちゃんの頭を抱え、更に胸元にたぐりよせる。

 

「お、お兄ちゃん…破廉恥だよぉ…」ボソッ

 

最後の方がうまく聞き取れなかったが気にせず俺は目を閉じて眠る。



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幸せな夕食

今回ちょっと短め。


目を覚ますと、時計の時刻は17時30分となっていた。

ユニコーンちゃんと昼寝をし始めた時の時刻が14時なので、3時間以上も寝ていたことになるのだ。

 

「やっべーな…流石に寝すぎた…」

 

「Zzz…Zzz…」

 

俺に抱き着きながらユニコーンちゃんは可愛い寝顔で寝ていた。

でもなんか掴んでいる力がとんでもなく強くて痛い。

 

「夕食の時間まで後少しか…」

 

夕食の時間は18時と決まっており、少しでも遅れたら席が埋まって今日の朝と同じ様に座りにくくなるかもしれない。

 

「お~い、ユニコーンちゃん?もうちょっとで夕食だから起きよ?」

 

ユニコーンちゃんをゆすって起こす。

 

「う~ん、むにゃむにゃ…」

 

ユニコーンちゃんが目をこすりながら気だるそうに起き上がる

 

「おはようユニコーンちゃん、さっそく食堂にいくよ。」

 

「おはようお兄ちゃん…でもまだ30分くらいあるよ?」

 

ユニコーンちゃんは眠たそうにしながら時計を見て言う。

しかし、ここから食堂まで歩いて10分以上はかかるのである。

この建物は大分広く、ベルさんに渡された館内の地図を見ながらじゃないと迷子になってしまうくらいには広いのだ。

 

「確かに少しだけ早いけど、ここから食堂までに少しだけ時間かかるし、それに早く行った方が席も選べていいんじゃないかな?」

 

とはいえ、今から部屋を出て食堂に向かっても、20分近く余るのだ。

10分前ならともかく、20分前に食堂にいるのは早いだろう。

 

「ゆっくりおしゃべりでもしながら食堂に行こうよ。」

 

「うん…お兄ちゃん。」

 

ベットの枕とシーツを整え、ユニコーンちゃんチ一緒に食堂まで歩き続けながら

世間話をしながら食堂まで向かう。

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

食堂に着き、空いている席に座る。

 

「少し早くこれたからまだまだ空いてるね。」

 

周りで食事をとっている人はあまりいなく、おそらくこれから増えていくだろうとは予想できた。

 

「ユニコーンちゃん何食べる?」

 

「ユニコーンは…フィッシュアンドチップス…かな。」

 

「オッケー、じゃあ取ってくるね。」

 

俺は席にユニコーンちゃんを残し、食事を取りに行く。

ユニコーンちゃんはフィッシュアンドチップスと言っていたな。

確か魚を揚げたものだったはずだ。

朝はパンにスクランブルエッグと簡単なもので、昼食も同じものだったから夕食は違うのを食べい。

 

「すみません、フィッシュアンドチップスと…この“スターゲイジーパイ”をください。」

 

 

~~~~~

 

お兄ちゃんはユニコーンに食べたいものを聞くとカウンターに行って注文をしていた。

こういうことは女の人がやるものだとイラストイアスお姉ちゃんに教わったことがあるけど、お兄ちゃんは男の人なのに女の人がやるようなことを自分からするいわば変人?だと思う。

お兄ちゃんが絶望したような顔でお料理を持って来てくれた。

ユニコーンの目の前にはフィッシュアンドチップスが置かれたけど、お兄ちゃんはパイからおさかなさんが飛び出しているお料理を自分の前に置いた。

もしかしてお兄ちゃんは間違って注文しちゃったのかな?

それならユニコーンのお料理を分けてあげたいけど…

 

「ねえ…お兄ちゃん…よかったら…ユニコーンとお兄ちゃんのお料理食べ合いっこしない?」

 

 

~~~~~

 

やった。

完全にやらかした。

半分好奇心でスターゲイジーパイというものを選んだが、まさかパイ生地に魚がぶっ刺さってる料理だとは思わなかった。

やはりイギリスと似た国だ。

まさかこんな料理が出されるとは思わなかったよ。

落ち込んだ気持ちでユニコーンちゃんのフィッシュアンドチップスとスターゲイジーパイをユニコーンちゃんのいる席まで運ぶ。

ユニコーンちゃんの前にフィッシュアンドチップスを置いて、俺の場所にはスターゲイジーパイを置く。

スプーンを手に取って食べようとすると、ユニコーンちゃんからしゃべりかけられた。

 

「ねえ…お兄ちゃん…よかったら…ユニコーンとお兄ちゃんのお料理食べ合いっこしない?」

 

…え?

気は確かか、ユニコーンちゃん。

魚をぶっ刺したパイだよ?

もしかしてユニコーンちゃんも好奇心で食べようとか思っている?

 

「と、取り敢えずさ、一応自分のを食べてからにしようか。」

 

俺はユニコーンちゃんを止め、スプーンに魚とパイを乗せ、口の中に入れる。

どんな味かと覚悟したが、味はそこら辺の料理と変わらないくらいで、意外と好きそうな味だった。

ユニコーンちゃんはフィッシュアンドチップスを美味しそうに食べていた。

ユニコーンちゃんがこちらにフィッシュアンドチップスが刺さったフォークを差し出してくる。

 

「お兄ちゃんも…食べてみて?」

 

「はは、じゃあもらおうかな。」

 

ユニコーンちゃんが差し出したフォークに刺さったフィッシュアンドチップスを食べる。

少し脂っこいが、美味しかった。

 

「あのね…お兄ちゃんのお料理も…ユニコーン食べていいかな?」

 

「いいぞ。」

 

スプーンにスターゲイジーパイを乗せ、ユニコーンちゃんの口に入れる。

もごもごと口を動かしてスターゲイジーパイを食べるユニコーンちゃん。

 

「おいしい…」

 

ユニコーンちゃんはスターゲイジーパイを飲み込んでそう呟いた。

見た目の割には意外といけるスターゲイジーパイを食べ終え、ユニコーンちゃんと別れて部屋に戻る。

時刻は18時30分、起きた時から一時間ほどしか経っておらず、そこまで時間が経過していなかった。

部屋に戻り、椅子に座る。

また明日の朝からベルさんとの練習だが、シリアスさん件で腰を怪我しているので緩くしてほしいものだ。

ベルさんに連れて行かれたシリアスさんって今頃どうなっているんだろな。

 

「二日しか経っていないのにいろんな出来事があったな。」

 

昨日、いきなりここに連れてこられ、KAN-SENとして戦うことを選んだ。

二日だけで強くなれるとは思わないが、地道に強くなっていくしかない。

 

「ベルさんからもらったこの本…セイレーンの写真と一緒に各陣営の代表の写真も載っていたけど…」

 

日本と同じ立ち位置にいる重桜。

その代表、戦艦「長門」。

重桜のKAN-SENにはケモミミなどが付いている子がほとんどらしい。

ウォースパイトさんもケモミミみたいなのがあるが、あれはケモミミでいいのだろうか?

 

「…今はロイヤルにいるけどいつかは重桜にも行ってみたいな。」

 

現在、ロイヤルが所属している「アズールレーン」と重桜が所属している「レッドアクシズ」は関係がよくないらしく、戦争に発展する可能性もある。

 

「戦いたくはねえな。」

 

ユニオンや鉄血のこともあるが、ロイヤルは今のところユニオンと協力関係にある。

鉄血に関してはベルさんでも情報収集が難しいのか機密情報で伝えることができないのか知らないが、四つの国家の中では情報が一番少なかった。

 

「さてと、そろそろシャワー浴びて寝るか。」

 

椅子から立ち上がり、風呂場へ向かう。

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

「ふぅ~、温めるね~」

 

またいつの間にか用意されていた包帯と腰痛用の塗り薬を塗って包帯を巻く。

ベルさんが気を利かせてくれたのだろう。

遠慮したくなるほどありがたいが、ほんとに休んでいるんだろうか?

 

「今度聞いてみるか。」

 

窓から見える月が奇麗なので窓辺に肘をついて外へ顔を出す。

 

「こうやって景色を楽しむのは初めてだ。」




イギリスの人達ごめんなさい。


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急激な成長

ロイヤルに来ての3日目の朝が訪れる。

窓から差し込む太陽光で俺は目が覚める。

 

「うわっ…眩し…」

 

今日は快晴で、雲がほとんどなかった。

ベットから起き上がってパジャマから制服に着替える。

 

「さっさと練習場所に行かないとまた何か言われるし、早めに行こう。」

 

昨日の演習でのベルさんにボコボコにされたため、また何かの拍子に演習をさせられたらたまったものじゃないため、昨日より早く部屋を出る。

 

「おはようございます、テゲトフ様。本日の朝の練習は動きながらの砲撃となっております。」

 

「…へ?」

 

ドアを開けると部屋の前にはベルさんが昨日と同じように立っていた。

 

 

「あの~…なんで部屋の前にいるんですか?」

 

「本日の練習メニューと、シリアスによってお怪我をなされたテゲトフ様を支えるために来た所存でございます。」

 

「はぁ…」

 

練習については昨日の演習の後に言われたし、腰の痛みに関しては昨日もらった薬がよかったのかほとんど感じてなく、問題なく動き回れるくらいである。

 

「怪我に関してはほとんど治っているようなものなんですが…」

 

「万が一のことを考え、私が完治と判断するまでお傍にいるよう、ご主人様に命令されただけでございます。」

 

「そこまでするくらいだったら今日の練習なしにした方がいいんじゃ…」

 

「テゲトフ様は基礎的なこともままならないのです。このような状態で休むなど言語道断です。」

 

もはや鬼教育かというくらいなことを言われ、ぐうの音も出なかった。

確かにベルさんの言っていることは正しい。

戦時中で少し怪我したから練習休むと言うのは舐め腐っているだろう。

元居たところとは根本的な考え方が違うのだ。

 

「分かりました、じゃあさっそく行きましょうか。」

 

「はい。」

 

ベルさんと共に昨日来た練習場所まで歩いていく。

途中何度か視線を感じたが、練習場所まで行く途中で誰ともすれ違ってはいない。

多分俺の気のせいだろう。

練習場所に着き、艤装を出す。

昨日の的は少し変わっており、二種類あった。

一つ目は昨日と同じ止まっているものだが、二つ目は動いていた。

 

「では私が初めにお見せいたしますので、同じようにテゲトフ様は続けて撃ってみてくださいませ。」

 

ベルさんが動き出し、止まっている的に砲弾を見事に当てる。

続けて俺が動き出して的に向けて射撃する。

弾は的には当たらなかったが、的の近くに落ちた。

 

「少し惜しいかったな。」

 

昨日のと比べると練習の難易度は変わってはいるが、今日中にできないことではないと思った。

 

「もう一度行きましょう。」

 

ベルさんに促され、再び動いて的へ射撃した。

今度はしっかりと命中させることができた。

 

「お見事でございます、テゲトフ様。お次は動いている的にも同じように射撃をします。」

 

ベルさんが近寄ってきて褒めてくれる。

次はあの動いている的だが、こっちは骨が折れると思う。

何故ならあの的は左右に動いているだけじゃなく、前後にも動いているのだ。

 

「どうぞ。」

 

今回はベルさんのお手本は無いらしい。

また動いて的を狙う。

俺と的、どっちも動いているから狙うのは難しかったが、あの的は向きを変える時に少し止まる。

その隙をついて撃つ。

運がいいのか知らないか、まさかの一発で当たった。

ベルさんの方を見ると、一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに元の表情に戻った。

 

「実にお見事でございます。」

 

ベルさんにまた褒められ、照れてしまう。

その後も何度か撃った結果…

何発かは外れてしまったが、六、七割くらいの砲弾が的に当たった。

昨日はあんなにも散々だったのに今日は調子がいい。

 

「本日はこれ位にいたしましょう。」

 

ベルさんと一緒に切り上げる。

ちょうど腰にも違和感を感じ始めた頃だから助かった。

朝食を食べる前に部屋に戻って薬を塗ろう。

 

 

~~~~~

 

今回のテゲトフ様の成長には驚きを隠せませんでした。

昨日はあまり芳しくないものでしたから不安でしたが、本日の結果から考えればセイレーンとの戦いには後数週間程度でお行きになるでしょう。

 

「しかし、ここまでの急成長もこちらとしては予想外…」

 

テゲトフ様に元々戦闘に関しての才能が有り、開花したか、はたまた飲み込みが早いのか…

 

「わざわざご主人様に無理を言ってテゲトフ様の教育担当にさせてもらいましたのに…」

 

ご主人様が多大な配慮によりテゲトフ様のお傍に入れることとなりましたが、それも後少しで解かれるのが和み惜しいので朝早くからテゲトフ様のお部屋の前で待機しておられましたが、テゲトフ様を驚かせてしまわれたでしょうか?

 

「ここはもう一度テゲトフ様に演習を申し込み大破させて戦線に行くのを遅れさせることにすれば…」

 

周りから見たら異常者と思われるはずですが、私はそれでもテゲトフ様のお傍にいたい。

あわよくば私自身に依存させたいくらいでございます。

ああ…テゲトフ様…

ご安心してください。

テゲトフ様に近づく雌はこのベルファストが…

 

 

 

 

 

「本気をもってお相手いたします♡」

 

 

~~~~~

 

朝食を食べ終え、今は執務室へと歩いて行ってる。

朝食の時はまたユニコーンちゃんと一緒に食べていたが、近くにいたイラストリアスさんが割って入ろうとしてエリザベスさんに止められていたのは実に修羅場だった。

執務室の前に着き、ノックをして入る。

 

「テゲトフです。」ガチャ

 

「すまないね~、わざわざ来てもらっちゃって。」

 

「いえ、こちらはもう指揮官の部下ですから。」

 

今回は暇だから指揮官に任務とかもらいに行ったわけじゃなく、指揮官から呼び出されたので来た。

 

「それで、何故呼び出しをしたんですか?」

 

「実は今日の朝の演習見ていてさ。」

 

昨日のベルさんとの演習の時も見ていたが、今回のも見ていたそうだ。

 

「昨日と比べて結構上手になったね~」

 

「はは、うれしい限りです。」

 

指揮官に褒められ、頭をかく。

 

「それで今回の呼び出しについてはね、私の隣にいるんだけどさ…」

 

指揮官の隣を見ると、金髪の赤い上着を羽織った人がいた。

その人が一歩前へ出て、俺にしゃべりかける。

 

「ジョージ五世二番艦プリンス・オブ・ウェールズだ。テゲトフ、よろしく頼む。」

 

「テゲトフ級二番艦のテゲトフです。こちらこそよろしくお願いします。ウェールズさん。」

 

ウェールズさんが手を差し出してきたので握り返して握手をする。

 

「自己紹介も終わったところで、本題に行くけど、いいかな?」

 

「いいぞ。」

 

「大丈夫です。」

 

ウェールズさんと共に答え、指揮官が本題を話始める。

 

「今朝のテゲトフの成長ぶりを踏まて、午後からの練習はウェールズがテゲトフに教えることにした。」

 

「俺の演習担当はベルさんじゃなかったんですか?」

 

「ベルはテゲトフの教育担当ではあるんだけど、流石に軽巡に戦艦の相手をさせてもね~、だから同じ艦種の戦艦のウェールズを選んだ。」

 

「私からも質問をするが、いいか?指揮官。」

 

「いいよ~」

 

俺の質問に答えると次はウェールズさんが指揮官に質問をする。

 

「戦艦を選というのは分かったが、何故私になったんだ?戦艦ならフッドとかウォースパイトもいるはずだ。」

 

「それに関してはテゲトフはフッド達とすでに関わりがあるからね。まだ関わりがないウェールズを選んだのがその理由だよ~」

 

「そうか、分かった。ありがとう、指揮官。」

 

ウェールズさんは満足したのか一歩下がった。

 

「じゃあゆっくりでもいいから演習場に行って来てね。今はセイレーンの侵攻があまりないけど、テゲトフを早いとこ主力として艦隊に編成したいからね。」

 

「了解!」

 

「じゃあね~」

 

ウェールズさんが指揮官に返事をし、執務室から出ていく。

ウェールズさんの後に続いて俺も執務室から出ていく。

 

「失礼しました。」

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

「それで、何故テゲトフはKAN-SENになったんだ?」

 

演習場に向けて歩いているとウェールズさんが俺にKAN-SENになった理由を聞いてきた。

ベルさんと指揮官だけが今のところ俺がどうやってKAN-SENとなり、ロイヤルに所属することになった経緯はこの二人しか知らない。

ウェールズさんや他の人達も悪い人ではないだろうが、まだあまり彼女らのことを知らないのでしゃべらない方がいいだろう。

 

「いや~、なんか朝起きたら艤装が出ていたんですよ。」

 

「そんなことあるか?」

 

「自分でもいまだ信じられないですよ。」

 

「お前がKAN-SENになったのはまだいいが、どうしてロイヤルに?男性は基本、政府の元で暮らしていると思うのだが…」

 

朝起きて艤装が出ているのがまだいいって…

 

「正直、俺はセイレーンと戦っているのが女性であるKAN-SENだけというのがおかしいと思うんですよ。軍隊に所属している人もほとんどが女性。そんなの可哀想じゃないですか。男もこうやって戦いに出れるようにした方が俺はいいと思っているのでここに来ました。」

 

「ふむ、珍しいな。男性でこんな考え方をしているのは世界中どこを見てもお前だけだろうな。」

 

「自分でもおかしいとは分かってますよ。」

 

「私はおかしいとは思わないぞ。」

 

「そう言ってもらえるとありがたいです。」

 

演習場に着くまでウェールズさんと話しながら歩いて行った。



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演習と事件

若干原作崩壊しているよ。


演習所に着き、艤装を展開し、海へと出ていく。

ベルさんと朝にした練習の場所とは違う景色が見れて面白いなと感じる。

 

「じゃあまずはお手並み拝見と行こうか。」

 

ウェールズさんが距離を取って主砲を構える。

 

「お願いします。」

 

俺も主砲を構え、腰を低くする。

 

「いつでもかかってこい。」

 

ウェールズさんに言われ、俺は駆け出して、一斉射撃をする。

三発は外れたが、一発がウェールズさんの主砲のひとつに当たる。

 

「初めてにしては中々じゃないか。」

 

ウェールズさんも俺に主砲を向けて撃ち、少し距離を縮めてくる。

ウェールズさんの放った砲弾は俺の隣と目の前に落ち、水しぶきが俺の視界を遮る。

 

「見えねぇ…」

 

距離を縮めてくるウェールズさんから少しでも離れるため、後退をする。

けれど馬力の出力が違い過ぎるため、視界が晴れるとさっきよりも近い距離にウェールズさんはいた。

 

「接近戦にも慣れないとな。」

 

ウェールズさんが副砲を全てこちらに向け、撃ってくる。

さっきと数が比べられないほど多い。

何発か装甲部分に当たる。

幸い、兵装には当たっておらず、主砲副砲ともに使える判定だった。

 

「くそ…!」

 

主砲の装填がまだ終わっていないので副砲で反撃をするが、ウェールズさんの攻撃を避けるために態勢を少し崩しており、副砲はすべて外れた。

 

「まだまだ終わらないぞ。」

 

俺の主砲の装填が終わったとき、ウェールズさんの主砲の装填も終わったのか、続けて主砲で追い打ちをしてくる。

ウェールズさんの主砲一つは使えない判定だったが、残った主砲がこちらに飛んでくる。

避けることに専念したが、砲弾の一つが機関部分に当たってしまう。

 

「うぐっ…!?」

 

ただでさえ遅いのにさらに遅くなってしまった。

これではウェールズさんの攻撃を避けるのが難しくなる。

 

「こうなったら…」

 

なんとしてでも勝とうと思い、一か八かの賭けに出る。

俺はウェールズさんの方へと全速力で突進する。

 

「賭けに出てきたわね。」

 

ウェールズさんは迎え撃つために副砲を構える。

俺は臆せず、速度を緩めない。

 

「くらえ!」

 

ウェールズさんが副砲を撃ち、ほとんどが俺に当たる。

しかし、俺は止まらず突っ込み続ける。

 

「何を考えているんだ!?」

 

ウェールズさんとぶつかる一歩手前まで俺は進む。

そのぶつかる寸前で俺はターンをする。

 

「何!?」

 

ウェールズさんは驚き、装填が終わってあるはずの主砲を向けるのが遅れてしまう。

俺は一種の隙を突き、主砲と副砲を一斉に撃つ。

 

「く…!」

 

至近距離での砲撃だったからか、ウェールズさんは大破判定となった。

俺はギリギリ中波判定だったから、最終的に俺の勝利である。

 

「驚いたわ。まさか私が負けるとは…」

 

ウェールズさんは演習が終わると俺に近づいてくる。

自分でも正直驚いている。

突っ込んでいる途中に大破判定となると思っていたが、あんなめちゃくちゃな行動がまさか成功するとは思いもよらなかった。

 

「いえいえ、ウェールズさんも強かったですよ。」

 

「“さん”付けはしなくていい。他人行儀みたいであまり好きじゃないからね。」

 

「じゃあそうさせてもらいます。ウェールズ。」

 

「敬語はやめないんだな。」

 

「そこだけは崩しちゃいけないかなと思って…」

 

「後輩ができたみたいだな。」

 

いや、ウェールズ達の後に入ってきたから後輩です。

っていうか先輩を呼び捨てってまあまあえぐいことだからね?

 

「私は帰って報告をしてこよう。テゲトフはその間に遠距離での砲撃の訓練をしておいた方がいい。近距離での精度は中々いいが、遠距離での精度が不安定だからな。」

 

「分かりました。」

 

ウェールズは港の方へと帰っていき、ここには俺一人だけが残された。

 

「…よくあんな短い間で見抜くことができたな。」

 

ウェールズとの演習は短い時間で終わっており、俺は戦うことにだけ集中していたためウェールズの戦い方をあまり考えていなかった。

 

「戦うことじゃなくて俺の分析もあの短いにしていたのか…」

 

もしウェールズが戦うことだけに集中していたらきっと負けていただろう。

今度は本気でウェールズと戦ってもらおう。

 

 

~~~~~

 

「…以上がテゲトフとの演習の結果だ。」

 

「ほ~ん、意外だね~」

 

執務室でテゲトフとの演習の結果を指揮官に報告する。

指揮官としては私が勝つと思っていたのだろう。

 

「いいところまでいって最後はウェールズが勝つと思ってたんだけどテゲトフが勝っちゃったのか~」

 

「少し嬉しそうだな指揮官。」

 

「別にそんなことないよ~」

 

指揮官の顔が少しだけにやけており、テゲトフが勝ったのが嬉しそうだった。

 

「ウェールズだってテゲトフの分析に集中して負けちゃったんでしょ~?」

 

「そうだが、負けた言い訳にはできない。」

 

「そういうところはしっかりしているんだからさ~」

 

テゲトフの戦い方の分析に集中してはいたが、戦うことに集中していないわけではない。

自惚れではないが、私も数々の修羅場をくぐってきたKAN-SENだ。

今回の敗北には衝撃を受けた。

が、何故か悔しくない。

 

「ウェールズにやけちゃっているじゃ~ん。」

 

「なっ…!?そ、そんなことは無いぞ!?」

 

「うっそだ~」

 

いつの間にか私もにやけてしまっていたみたいだ。

指揮官に指摘されていなかったら自分でも気が付かなかったわ。

 

「こほん…報告は以上だ。私はテゲトフの面倒を見てくるわよ。」

 

「報告お疲れ~、頑張ってね~」

 

執務室を出て、テゲトフのいる演習場へと向かう。

 

 

~~~~~

 

かなりの砲弾を使い、遠距離での砲撃の精度を高めている。

的は訓練用に使われているのがあるのでそれを使った。

 

「ふぅ…ここらで休憩するか…」

 

積んである砲弾を撃ち終わり、港へと帰る。

港に着き、艤装を解除して入る。

ウェールズさんが指揮官への報告をし終わっている頃だろうし、それまでに倉庫に行って砲弾を積んでこよう。

 

「演習弾は別の場所に保管されているし、少し手間がかかるんだよな。」

 

実弾はもっと厳重に管理されているが、演習弾も倉庫の奥の方に保管されている。

 

「積むのは饅頭達がやってくれるからいいんだけどさ…」

 

倉庫に入り、奥の方へと進む。

ちらほら饅頭達が整備をしているのを見かける。

奥にある扉を開け、中に入る。

 

「あれ?」

 

中には饅頭達がいると思っていたが、饅頭はいなく、箱に詰められいる演習弾が大量にあるだけだった。

不思議に思い、さらに中に入って行くと扉が閉められた。

 

「誰だ!?」

 

素早く振り返るが、暗闇で扉がどこにあるのかも分からない。

 

「電源は…!」

 

電源のある場所を手探りに壁に手を当て探す。

電源と思われるスイッチを見つけ、押そうとする。

その瞬間、扉を閉めたであろう者に押し倒される。

 

「いてっ!」

 

倒れた時、さっきの演習で無理な態勢をしていたのもあってか怪我をしている腰に激痛が走る。

 

押し倒した奴は俺に馬乗りになり、手を抑えてくる。

 

「離せ!」

 

必死に抵抗をすると、抑えられている手を解放させることができた。

手を解放しても腰を痛めて立つことができないので地べたを這いずりながら近くの

箱に手を置き、何とか電源をつけようと試みた。

 

「…!」

 

そうはさせまいとこちらに走ってくる足音が聞こえ、大急ぎでスイッチを探す。

見つけた。

スイッチを押すと同時に俺は吹き飛ばされ、演習弾のある箱に突っ込む。

演習弾は爆発はしないが、尖っているため、そこが刺さってさらに怪我を負う。

 

「ぐはっ!?」

 

そこで俺は気を失ってしまった。

 

 

~~~~~

 

テゲトフのところへ行く前に少し減った砲弾を補充しに倉庫へと入る。

演習弾のあるところまで歩き、扉を開けようとする。

 

「あれ?なんで鍵がかかっているんだ?」

 

扉は引いても開かなかった。

 

「すまないがこちらも人を待たせているんだ。開けさせてもらうぞ。」

 

予め持っていたマスターキーで扉を開ける。

 

「誰だ?鍵をかけたのは……!?」

 

中に入るとテゲトフが箱に倒れ込んでおり、その近くには顔を隠した人物がいた。

 

「何者だ!」

 

私はそう叫び、艤装を展開して主砲を構える。

 

「…ちっ!」

 

テゲトフを襲ったであろう人物はダストに入って逃走した。

 

「待て!…逃げられたか…」

 

「そんなことよりテゲトフ!大丈夫か!?」

 

急いでテゲトフに駆け寄り、抱き上げる。

所々流血しているが、気を失っているだけだった。

 

「急いで病室に行かなければ…!」

 

倉庫を出で、病室まで駆けだす。

 



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決断

貞操観念逆転の要素あんま書けてないなー。
多分、一話から書き換えるかもしれん。
次話からギャグ要素多めにするかも。


気を失ってから何時間経ったのだろうか。

目が覚める。

身体を動かそうと起き上がる。

瞬間、背中から痛みがする。

服をめくり胴体を見ると、包帯でぐるぐる巻きにさせてる。

 

「確か…吹き飛ばされて意識が飛んだんだっけか?」

 

今の状況を整理しようと頭を働かせる。

その時、カーテンが開けられウェールズが顔を出す。

 

「無事だったかテゲトフ!?」

 

ウェールズが飛びついて俺に抱き着く。

 

「いて…」

 

よく見ると身体の所々に包帯を巻いている。

何故ここまで包帯を巻いているのだ?

 

「あ…すまない!つい…」

 

「いえ、大丈夫です。」

 

ウェールズが謝ってくる。

 

「はしたないことをしてしまった。その…テゲトフは女性に触れられるのとかは大丈夫なのか?」

 

「俺はそういうのはあんまり気にしてませんよ。」

 

「それより、何があったんですか?」

 

俺がこうなった理由をウェールズに聞く。

 

「そうだな、簡単に言うとテゲトフ。お前は襲われたわ。」

 

「それは覚えているんだ。なんで俺がここまで怪我をしているのか聞きたい。」

 

襲われたのは記憶にあるが、電気をつけた瞬間に吹き飛ばさせて顔も見ていない。

 

「私が砲弾の補充に倉庫にきた時に扉を開けたらお前が演習弾が詰まった箱に倒れ込んで尖っている弾が刺さった…と言えば分かるか?」

 

「あの時に刺さったのか。」

 

傷口を見ようと包帯を取ろうとするが、ウェールズに手を掴まれ止められる。

 

「何をしようとしていのテゲトフ?傷口の確認はしなくていいわ。」ハイライトオフ

 

その目には光が宿っていなかった。

ベルさんの時と同じく恐怖を感じてしまった。

 

「いやでもどれくらい深く刺さったか見ておかないと…」

 

「悪化するわよ?」ハイライトオフ

 

「…分かった。」

 

俺が折れる形となり、包帯を元のように巻き直す。

少し血がガーゼに滲み込んでいるのは見えた。

これは相当深く刺さっている。

 

「ところで指揮官にこのことは?」

 

「既に報告してあるわ。もうすぐで指揮官もこっちにくるはず…」

 

「おっすー、テゲトフ大丈夫かー?」

 

指揮官は変わらず緩かった。

そんな指揮官に慣れているのかウェールズは気にせず指揮官と話す。

 

「指揮官、犯人は?」

 

「そんなすぐには分からないよ~」

 

「仲間が襲われたのよ!早く探さないと遠くまで逃げてしまうわ!」

 

ウェールズの発言には少し怒気を含んでた。

犯人がすぐに分からないのは仕方がないが、ここまでゆっくりしていて大丈夫なのだろうか?

 

「そうそう、これからテゲトフと話したいからウェールズは少しの間出ていってもらえるかな?」

 

「それは私がいると話せない内容なのか?」

 

「そうだね~」

 

「…分かった。その間に私は倉庫の方を見てくるわ。」

 

ウェールズが病室から出ていき、ここには俺と指揮官しかいなくなった。

 

「さて…まさかここまで怪我するとはね。」

 

「普通この位はするんじゃ?」

 

「いや、KANーSENって基本はセイレーンとか同じKANーSENの攻撃しか食らわないんだよ。」

 

「ということは…」

 

「テゲトフはKANーSENとしては未完成っていうところかな?」

 

未完成と言われるのは少し腹が立つが、ここでこんなことを聞くとは思ってもなかった。

 

「襲ってきた相手がセイレーンやKANーSENだった可能性は?」

 

「それもあるけど、艤装を展開した状態じゃなきゃKANーSENは傷を負わないよ。」

 

「ウェールズから聞いた話でも襲った相手は艤装も無かったらしいし。」

 

「そうか…」

 

真剣な顔で指揮官は続けて話す。

 

「もうさ…普通の人として生活した方がいい。」

 

「…」

 

「まだ三日目だ。今なら遅くはない。」

 

「…」

 

言い返すことが出来ず、ただ黙って指揮官の話を聞く。

 

「テゲトフほどの伸びしろがあるKANーSENを手放すのは惜しいけど、そんなことよりテゲトフの安全のほうだ大事だ。」

 

「…つまり俺の安全の方が優先れると?」

 

「そうだね。テゲトフはKANーSENでもある前に男性。戦場で戦って沈んだりでもしたら各方面から批難が飛んでくる。」

 

「…そうした方がいいのでしょうか?」

 

内地での生活をしていた方が俺とみんなにとってもいいんじゃないかと思ってしまう。

あまり迷惑は掛けたくない。

 

「じゃあ俺は…」

 

ここを辞めると言おうとする。

 

「いたっ…!」

 

顎が痛み出す。

 

「どうかしたか?」

 

「いえ、何でもありません。」

 

もう一度口を動かそうとする。

また顎が痛む。

何度も何度も繰り返して言おうとするが、そのたびに顎が痛くなる。

 

(何故だ…?)

 

頭を抱え、考える。

顎に怪我はない。

それどころか首から上は傷ひとつない。

 

「返事は夕食の後に聞きに来るよ。それまで答えを出しておいてね。」

 

「はい…」

 

指揮官は病室から出ていく。

それを見守っているだけだった。

 

「どうしてだ…」

 

顎に手を当て、触ってみる。

痛くもない。

 

「辞めるのが一番の得策だろ…」

 

一言辞めると言えばいいのに言えない。

再び頭を抱える。

 

「なんで言えないんだよ…」

 

「お困りのようだね。」

 

「え?」

 

背後から声が聞こえ、振り返ろうとするが頭をがっちりホールドさせて動かせない。

 

「君からしたら三日振りかな?」

 

「そこ声…あの時の…」

 

声を聞いた感じ、この世界に来る前にいた変な空間で聞いた声だ。

 

「正解!ここに来てからの三日間どうだった?」

 

「波乱ばっかだよこの野郎。」

 

「もお~、そんなに怒らないでよ~」

 

まるで悪気がないような声に苛立つ。

 

「まあ私も見ているけどねw」

 

もうプライベートの侵害じゃん。

 

「あの時は急いでいたけど今は少し余裕ができたからここについての説明をしに来たよ。」

 

「といっても君はベルファストから渡された本で大体のことは知っているだろうけどね。」

 

「どこまで見ているんだよ…」

 

もはやストーカーと思えるくらいにバレている。

 

「君にここで戦いに来させた理由だけでも言っておこうかな。」

 

「何?」

 

いままで謎に思っていたことを本人が直接言いに来てくれるとは好都合だ。

ここだけは苛立ちを抑える。

 

「君をここに連れてきた理由は…」

 

 

 

 

 

「重桜に君のオトモダチがいるからだよ。」

 

「…え?」

 

「じゃあ伝えたいことは伝えられたからまたね♪」

 

「おい待て…!」

 

呼び止める間もなく、そいつは消えてしまった。

重桜に俺の友達がいる?

この世界には俺以外にも元の世界から来た奴がいることなのか…

 

「友達ねぇ…」

 

学校の友達の顔を思い浮かべる。

高校受験に向けて一緒に図書室で勉強をしていた高橋…

スポーツ馬鹿の岡山…

学級委員長の斎藤…

同じ小学校の佐藤…

皆同じ中学で切磋琢磨した仲だ。

そしてもう一人、忘れてはいけない人がいる。

 

「行方不明になっている幼馴染の大山…」

 

中学に入る前に急に行方不明となり、テレビでも報道されたほどだった。

 

「もしかして大山が重桜に…?」

 

大切な幼馴染である大山。

一時は心配で夜も眠れなかった。

 

「…行ってみるしかない。」

 

俺は重桜に行くことを決心する。

 

「そのためには…」

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

夕食を食べ終え、指揮官が来るのを待っていた。

 

「よっ!来たよ~」

 

指揮官が病室に入ってくる。

さっきまで真剣だった指揮官が緩くなるのはまだ慣れてはいないが、気にしないでおく。

 

「そ・れ・で、答えはでた?」

 

病室の中に誰もいないのを確認して指揮官は近くの椅子に座る。

 

「俺は…やっぱりここにいたいです。」

 

「こんな怪我をしたのに?」

 

「確かにそうですけど…」

 

指揮官が胴体を指さす。

 

「じゃあ少しだけ話はずれますが、指揮官。指揮官には目的がありますか?」

 

「目的?あるにはあるけど…」

 

「それは何ですか?」

 

指揮官に目的を聞く。

普通ならおかしな行動だが指揮官は応じてくれた。

 

「私の目的…というよりかはここにいるみんなの目的にもなるんだけどセイレーンをこの世から追い出し、海を取り返すこと…かな?私個人の目的は別にあるけど…」

 

「そうなんですね。」

 

「それで、目的とこれになんの関係が?」

 

目的の話との関連性を問われ、ゆっくりと話し始める。

 

「俺にも目的ができたんですよ。俺個人の目的となってしまいますけど。」

 

「ほう。」

 

「俺の目的は重桜に行くことです。」

 

「それなら軍に入っていなくてもいけるはずだけど…」

 

「指揮官の言う通り、別に軍隊に入っている必要性は無いです。でも今は仲が悪い国家に政府が男を旅行に行かせると思います?」

 

「思わないよ。そもそも男性の入国や出国って検査とか厳しいからね。」

 

目的は重桜へと行くこと、それに時間はかけたくない。

 

「ロイヤルって重桜と合同演習とかしたことありますか?」

 

「重桜と鉄血が分離する前は頻繁にやってたよ。分離してからは一度もないけど。」

 

ビンゴだ。

悪化している関係性はいつか元に戻る。

その時に一番早く重桜に行けるのは合同での演習とかだ。

 

「ああ…そういうことね。」

 

指揮官は俺のしたいことが分かったみたいでうなずいていた。

 

「でもなんで重桜に行くことが目的なんだ?」

 

「それは…まだ言えないです。」

 

幼馴染が重桜にいるとも確信ができてないのに重桜に行くのは今は危ない。

そのためにはここで力を蓄えて自分の身を守れるようにしておかなければ駄目だ。

 

「…分かったけど、テゲトフの目的よりも私達の目的優先となるよ?」

 

「構いません。」

 

「それがテゲトフの意思なら私は否定しない。」

 

指揮官は立ち上がり、声を張り上げる。

 

「テゲトフ級二番艦テゲトフ!怪我が治り次第、他KAN-SENとの演習を通じて自身を強化せよ!」

 

「了解!」

 

指揮官からの命令を聞き、元気よく返事をする。

 

「…ふぅ~、これ意外と疲れるんだよね~」

 

急にいつもの感じに戻り、緩くなる指揮官。

 

「その場のノリに合わせるのって大変だね~」

 

「ノリでやってたんですか…」

 

さっきまでのことがノリと知り、呆れる。

 

「そういや指揮官個人の目的って?」

 

「ああ私?結婚すること。」

 

「…マジすか。」

 

「マジだよ。何ならテゲトフが私のこともらってくれる?」

 

まさかの指揮官の目的結婚という。

さらっと俺にプロポーズ(?)しないでください。

 

「嫌ですよ。」

 

「あ゛?犯すぞお前。」

 

「脅迫しないでください。」



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近代化改修への道は遠い

しばらくたって倉庫での事件の怪我が治り、指揮官の命令通りに演習をしていた。

指揮官がローテーションを作ったのか、月曜日は駆逐艦、火曜日は軽巡洋艦、という風にしてくれ、土日は休みになった。

今日は木曜日なので空母との演習となる。

 

「今日はよろしくね…お兄ちゃん。」

 

今週はユニコーンちゃんが相手をしてくれるらしい。

 

「こっちこそよろしく。」

 

大分離れたところへ行き、通信機で確認をする。

 

「準備できた?」

 

『大丈夫だよ…お兄ちゃん。』

 

ユニコーンちゃんは準備が終わっているらしいので開始の合図を送る。

 

「よし!スタート!」

 

『がんばるぞ…』

 

開始と同時に通信機を切り、前進する。

俺の兵装には対空砲が無いから撃ちあいというよりかはいかに爆撃機の攻撃を避けながら相手の空母に接近できるかを俺は重要視している。

 

「早速来たか!」

 

上空には爆撃機が編隊を組んで多数こちらへと飛んできていた。

ジグザグに進みながらなんとか避けようと試みる。

 

ドーン!

 

海面に爆弾が落ちる。

…これ演習用か?

爆発はしてはいないものの、轟音が鳴る。

 

「当たったらやばい奴じゃん!」

 

必死に落ちてくる爆弾を避ける。

何とか躱しきり、そのまま前進を続ける。

爆撃機隊はユニコーンちゃんの方へと帰って行った。

 

「ユニコーンちゃんが射程圏内に入るまであと何回来るんだろうか?」

 

流石にすべてを避けることはできない。

さっきの爆弾だってすれすれで避けることができたのだ。

演習用のとしてもあれには当たりたくはない。

 

「言っているうちにまた来たし…」

 

再び爆撃隊がこちらに来る。

さっきと同じ様にジグザグに動いて避けようとする。

 

ヒュゥゥゥ…

 

爆弾が落ちる音が聞こえる。

 

ドカン!

 

その爆弾は俺の頭上に落ち、鈍い音がする。

 

「うわっ!」

 

痛みは少しだけして、爆弾は海に落ちて行った。

今ので中破判定となってしまい、全速力での航行ができなくなった。

 

「これだと射程圏内に入れる前に大破判定になってしまうか。」

 

一旦進むのを止め、迂回して進むことにする。

進路を変え、横へと進む。

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

迂回をして進んだのが功をなしたのか、突然発生した霧で爆撃機は俺の位置を見失っているらしい。

慎重に進むながらユニコーンちゃんに近寄る。

霧が晴れたのか急に辺りが見えるようになり、ユニコーンちゃんが射程圏内に入っているのに気が付く。

俺が気が付くのと同時にユニコーンちゃんも俺に気が付いたのか急いで爆撃機を発艦させるが俺は狙いを定めて主砲を一斉に撃つ。

 

「きゃー!」

 

何発かはユニコーンちゃんに当たり、中破判定が出る。

 

「よし!このまま押し込めれば…」

 

主砲の装填の間に副砲で追撃をしようとするが、爆弾がまた俺の頭上に落ちる。

 

「あいて!」

 

これにより俺は大破判定となり、敗北した。

どうやら俺を探していた爆撃隊が帰ってきていたらしい。

それに気が付かずそのまま攻撃を受けてしまったのが敗因だった。

 

「勝ったと思ったんだけどなー」

 

「お兄ちゃんも…中々強かったよ?」

 

「あははっ、ありがとうね。」

 

港に帰り、艤装を解除する。

 

「明日はエリザベスさんとの演習か…」

 

明日の予定の確認をして余った演習弾を倉庫に戻していると指揮官が近づいてきていた。

 

「あれ?どうして指揮官が?」

 

「今日はちょっとテゲトフに報告があってね。まあここで話すのもなんだし、作業が終わったら執務室まで来てね~」

 

「了解。」

 

返事をし、そのまま演習弾を戻す。

またお茶会のことではないだろうか?

あれ以降も何回かエリザベスさんのお茶会に行っているけどほとんどが修羅場になるんだよな。(主にフッドとイラストリアスのせいです)

作業を終え、倉庫を後にする。

 

 

~~~~~

 

執務室に戻ってきて、椅子にドスンと座る。

ベルが見たらはしたないと言うかもしれないが今は私一人なのでいい。

 

「それにしてもようやくか…」

 

とある書類を持ち上げ、呟く。

 

〈戦艦テゲトフの近代化改修について〉

 

ようやく待ちわびたものだ。

テゲトフの練度は高く、他のKAN-SENにも劣らないレベルにまで成長した。

ただ兵装が古く、装甲も他の戦艦と比べると一回り薄い。

これまで何回か本部に近代化改修の要請を送っていたが、見送られ続けてきた。

今回ようやく受理させたみたいだ。

 

「それにしてもまさか条件付きとは…」

 

テゲトフが近代化改修するための条件も一緒に送られてきており、それは6対6の演習でテゲトフがいる艦隊が勝つことである。

勝つだけならいいのだが、編成も指定されている。

 

〈演習艦隊の編成〉

 

【第一艦隊】      【第二艦隊】

旗艦・エリザベス    旗艦・ウェールズ

  ・ウォースパイト    ・テゲトフ

  ・イラストリアス    ・ユニコーン

  ・ベルファスト     ・ジャベリン

  ・シリアス       ・サフォーク

  ・シェフィールド    ・エディンバラ

 

「これは少し厳しいかもね。」

 

エリザベスやウォースパイトなどロイヤルでも最強と言われる戦艦がテゲトフの相手となるのが痛いところだ。

イラストリアスとユニコーンにも実力に差がある。

ベルとエディンバラに関しては…ベルが戦闘面でも優秀過ぎるだけだから…

 

「でも勝たせる気が無いのならなんでジャベリンを入れたんだろう?」

 

ジャベリンは古巣でロイヤルの中でもトップクラスに強い。

エリザベスやウォースパイトには少しひけをとるがそれでも駆逐艦なのに戦艦に対抗できるほど強い。

 

「サフォークを入れたのはよく分からないな…」

 

そもそもサフォークとテゲトフって関わりあったっけ?

でもテゲトフに初めて会った時に一緒にいたか。

 

「勝たせる気があるのかないのか…」

 

 

~~~~~

 

コンコン

 

『いいよ~』

 

ガチャ

 

「少し遅れました?」

 

「そこまで時間は経ってないから大丈夫だよ。」

 

執務室に入り、指揮官の前に机越しに立つ。

相変わらず書類の山が机の上にある。

 

「それで報告とは?」

 

「それはね~…じゃーん!」

 

指揮官が書類の一枚を俺に見せる。

それには〈戦艦テゲトフの近代化改修について〉と書かれていた。

俺の近代化改修?

 

「これって?」

 

「書かれている通りだよ。テゲトフの近代化改修が認められたんだ。」

 

「まじすか!?」

 

これでようやく俺の弱い兵装が改善される。

これならセイレーンとの戦いに行くのももう少しかな。

 

「まあ条件があるけどね。」

 

「その条件って?」

 

「演習らしい。」

 

「誰とですか?」

 

演習での勝利が条件と思って相手を聞く。

知り合いなら説明をすれば少しは手加減をしてくれるだろう。

 

「誰とっていうか…6対6での演習。」

 

「…え?」

 

まさかのチーム戦だった。

俺まだ馴染めてないのにチーム戦やんの?

 

「それと編成も決まっているからね。」

 

「ええ…」

 

しかも勝手に組む人決められてるし…

なんでこうも勝手に決めちゃうんだろうなー、上の人は。

 

「はい。これが編成。」

 

「うわぁ…」

 

編成を見ると、相手のエリザベスさん達の第一艦隊は強い人達が集まっていた。

ベルさんとイラストリアスさんは一度演習をしたとがあるがまるで手が出なかった。

エリザベスさんとウォースパイトさんはまだ演習はしたことがないがロイヤル最強と呼ばれる二人だから不安だ。

シリアスさんとシェフィールドさんには勝ったとこがあるがシェフィールドさんに、

 

『戦艦が軽巡洋艦に勝ってうれしいのでしたらテゲトフ様は戦艦の中の害虫でございますね。』

 

って言われて精神的にきつかったのは覚えている。

っていうか俺のいる第二艦隊…

ウェールズとユニコーンちゃんはいい。

サフォークさんとジャベリンさんはしゃべったことあるけどよく分からん。

エディンバラさんは…演習をしたこともあるけど…ベルさんに対しては対抗心が強かったのしか記憶にない。

 

「よく分からないですね。」

 

「私もよく分かんない。勝たせる気があるのかないのか…」

 

「ちなみにこの演習っていつですか?」

 

「明日。」

 

「は?」

 

「明日。」

 

「…急すぎますよ。」

 

明日はエリザベスさんとの演習でエリザベスさんの対策を考えれると思っていたのに消されたよ希望。

こんなチームワークあるかどうかな艦隊で勝てるのか?

 

「でも勝ったら近代化改修だから…」

 

「無理っす。」

 

「「…」」

 

沈黙が俺と指揮官の間で流れる。

もう近代化改修の喜びより不安の方がでかい。

 

「…取り敢えず第二艦隊となっている子達呼んでおくね。」

 

「お願いします。」

 

「演習場に集合にしておくから砲弾とか積んでおいてね。」

 

「分かりました。」

 

「じゃあまた演習場でね。」

 

「はい。」

 

先ほど倉庫で降ろしてきたばかりなのにまた倉庫に行き、砲弾を積みに行く。



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作戦会議

書き方変えたいけどどういう風に変えた方がいいのか誰か教えてくれませんか?


砲弾を積み終え、演習場で待っていると港の方からウェールズが来た。

 

「あら、私が一番先だと思ってたのに。」

 

「最初に指揮官から呼ばれたのでね。」

 

旗艦はウェールズなので心配はない。

あの中では一番しっかりしている人だし、実力もロイヤルでは上の方だ。

 

「しかし急に演習をするとは何かあったのだ?」

 

「まあなんというか…俺が悪い…わけじゃねえな。」

 

素直に近代化改修の許可を出せばいいだけなのになんで演習するんだか…

そこまで男を信じていないのか、新人だから演習で実力を確認したいのか。

 

「テゲトフが関わっているのか?」

 

「近代化改修…」ボソッ

 

「あ…」

 

ウェールズは察したのかそれ以上は聞いてこなかった。

多分過去にも近代化改修とかをするための条件に演習があったのだろう。

 

「お待たせしました~」

 

サフォークさんもやってきて、次いでジャベリンさん、ユニコーンちゃんと到着し、最後にエディンバラさんが着いて全員集合した。

 

「全員揃ったようなので明日の演習に向けて確認を行う!」

 

旗艦であるウェールズが声を張り上げ、全員がウェールズの方を向く。

 

「はいはい!質問いいですか?」

 

ジャベリンさんが手を上げる。

最初に話した時は明るい子だなと思ってたけど少し肩が触れただけで鼻血を出してぶっ倒れたのはやべえ奴だと思った。

男性に対しての免疫…以上に低すぎるな。

というか今まで出会った人たちが免疫あり過ぎただけなのか?

 

「構わない。」

 

「どうして急に明日演習することになったんですか?大規模な作戦はこの前終えたばかりですし…」

 

「それは…テゲトフ!お前が説明した方が早い。」

 

「了解。」

 

ウェールズの隣にいた俺は一歩前へ出る。

ジャベリンさんとユニコーンちゃんの無垢な目がこちらを見る。

もう俺のことに巻き込むのに罪悪感が出てくる。

 

「明日急に演習することになったのは俺の近代化改修の条件となっているからだ。」

 

「迷惑を掛けるようで申し訳ない。」

 

頭を下げ、先に謝る。

 

「頭を上げて…お兄ちゃん。誰も迷惑だと思ってないから。」

 

ユニコーンちゃんが近づいて俺の頭をなでる。

顔を上げると誰も嫌そうな顔をしておらず、むしろ励ましてくれた。

 

「テゲトフ様のために頑張ります~」

 

「ジャベリンもこうやって演習に勝って改造することができたのでテゲトフさんが強くなれるのなら喜んで協力します!」

 

「サフォークさん…ジャベリンさん…、ありがとう。」

 

一か月くらいしかここにいないのにここまでしてくれることに感謝する。

感激しているところ、ウェールズが咳払いをした。

 

「こほん…そろそろ陣形の説明をしていいかしら?」

 

「ごめん、じゃあお願い。」

 

「別にいいわ、じゃあ陣形を発表するわ。前衛艦隊はジャベリンを先頭としてエディンバラ、サフォークという順番にする。主力艦隊は私を中央として右にユニコーン、左にテゲトフの配置でいく。」

 

当然ながら戦艦の俺は主力艦隊として後ろから砲撃をすることとなっている。

…兵装的に今まで接近してから砲撃してたんだが?

ウェールズと同じ位置からの砲撃なんて相手の前衛艦隊にすら届かんぞ。

 

「ちなみにお相手は誰ですか?」

 

サフォークさんが相手の編成を聞いてくる。

これ知ったら戦意喪失したりしないかな…

サフォークからの質問でウェールズは少し苦い顔をする。

 

「相手は陛下とウォースパイト、イラストリアスが主力艦隊。前衛艦隊はベルファスト、シリアス、シェフィールドだ。相当な手練れだが勝ち筋はある。」

 

相手の編成を知りサフォークは不安そうな顔をする。

ジャベリンさんは顎に手を当てて何かを考えている。

エディンバラさんは…

 

「ふふ…まさかベルが相手になるとは…」

 

「あの、エディンバラさん?」

 

不気味な笑いをしてエディンバラさんは続けた。

 

「安心してください!私は今までベルと比べられて負けていますが、今回の演習で勝ってみせますよ!」

 

「なのでベルの相手は任せてください!」

 

エディンバラさんがベルさんの相手をしてくれるみたいだが…大丈夫だろうか?

 

「あわよくば今までの仕返しを…」

 

本音漏れてるやん。

もう復讐のことしか考えていないじゃん。

 

「じゃあベルファストはエディンバラに任せようか。」

 

「それならジャベリンはシェフィールドさんの相手をします!」

 

「残った私はシリアスとですか?」

 

「まあ、そうなるな。」

 

ジャベリンさんはシェフィールドさんと、サフォークさんはシリアスさんと戦うこととなった。

となれば後は主力艦隊をどうするかだが、俺は誰とも張り合えないんだが?

 

「イラストリアスお姉ちゃんはユニコーンが…何とかしてみる。」

 

「じゃあ私は陛下のお相手をしよう。ウォースパイトは任せたぞ、テゲトフ。」

 

「兵装的に近づかないと射程圏内に入らないんですけど?」

 

「それは…少し作戦を建てようか。」

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

ウェールズが建てた作戦はこうだ。

ユニコーンちゃんに偵察機を出して相手の位置を把握したら前衛艦隊が戦闘を挑みに行き、俺がその後について行く。

爆撃機からの空襲から守るためにユニコーンちゃんから戦闘機を前衛艦隊と俺の護衛に半分使う。

相手の前衛艦隊と接敵したらこっちの前衛艦隊は先制攻撃が可能であればする。

無理だったら散らばってさっき言ったようにそれぞれの担当と戦う。

その間に俺は前衛艦隊から離れて主砲が届く距離まで近づき、砲撃をする。

ウェールズとユニコーンちゃんは変わらずエリザベスさん達の相手をする。

 

「これなら勝てるのではないか?」

 

「相手がどういう作戦でくるかによるけどもね。」

 

「試しに作戦通りに動いてみよう。」

 

立案された作戦通りに動く。

ユニコーンちゃんが偵察機を出し、敵を発見。

前衛艦隊と俺がそれに向かう。

前衛艦隊が戦闘に入ったら俺は離れて主力艦隊に近づく。

ウェールズとユニコーンちゃんも主力艦隊に向け攻撃。

問題はなかった。

 

「大丈夫だな。」

 

「相手を聞いた時は不安になったけどこの艦隊でもエリザベスさん達に勝てる…はず。」」

 

「やはり不安はまだあるか。」

 

「まあ…性能的にね?」

 

俺の兵装では経験が多い軽巡洋艦のベルさんにすら勝てない。

ましてや同じ戦艦でベルさんより強いとされるエリザベスさんとウォースパイトさんの足元に及ぶのかすら分からない。

 

「性能だけが勝敗の決め手じゃない…と言いたいがテゲトフではやっぱり厳しいかもね。」

 

「そうなりますよね。」

 

「最悪、旗艦の陛下だけでも集中砲火で倒せたら判定勝ちにはなる。」

 

「途中で作戦が失敗したらそうしますか。」

 

「みんなには私から伝えておく。テゲトフは午前中も演習をしていたしもう帰って休んだらどうだ?」

 

午前中にユニコーンちゃんとの演習、午後には艦隊での演習。

今日は気づかぬうちにハードスケジュールに変わっていた。

 

「言葉に甘えさせてもらえますよ。後はお願いします。」

 

「任せておきなさい。」

 

みんなより一足先に港へと帰る。

陸地に上がって倉庫に余った砲弾をまたしまう。

作業が終わって部屋へと帰る途中にベルさんと会う。

 

「お久しぶりです、テゲトフ様。」

 

「久しぶりベルさん。」

 

倉庫での怪我以来まったくベルさんとは話しておらず、半月ぶりにしゃべったものだ。

 

「ベルさんも指揮官から話は聞いている?」

 

「はい、ご主人様からは既にご説明を受けております。」

 

「明日は一緒に頑張りましょうね!」

 

「そのことについてですが…」

 

ベルさんの表情が暗くなる。

ベルさんと話始めた時も嫌な予感は感じていたがあまり気にしてはいなかった。

まさか予感が的中するとは思ってないからだ。

 

「テゲトフ様は演習、近代化改修ともに辞退し、普通の一般人として過ごされた方が安全と進言いたします。」

 

「…へ?」

 

ベルさんが言ったことが斜め上過ぎることで一瞬、考えることを止めてしまった。

もしかして近代化改修のことって相手にも知らされるの?

 

「え~と…急になんでそんな進言を?」

 

「テゲトフ様の身を考慮した結果の進言でございます。」

 

「いや、俺の決意ベルさんも聞いてなかったけ?」

 

ドックで指揮官に聞かれた時にベルさんもその場にいたはずだ。

 

「いえ、しかと聞いておりました。」

 

「なら何故そういうことを俺に言うのですか?」

 

「…この前のテゲトフ様への襲撃によるお怪我の話を聞いた際にKAN-SENとして守るべきお方をこれ以上危険にさらさないためにこのようなことを言わせてもらいました。」

 

俺が怪我をした時にベルさんも当然ながら怪我していたことを聞いていたらしく、俺を守るために言った…か。

指揮官にしか俺の目的は言っていないし仕方ないとは思うが、まさか直接言ってくるか…

 

「悪いですけど、何度言われてもやめませんよ。最悪沈むまで戦う覚悟はできてます。」

 

「はぁ…仕方がありません。明日の演習は容赦いたしません。」

 

「望むところですよ。」



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演習本番

こちらの都合で投稿頻度落ちるかもです。


翌日、午前7時30分。

演習場には第一艦隊と第二艦隊の面々が集まってた。

エリザベスさんは目をこすりながらあくびをしていた。

 

「ふぁぁぁ…なんでこんな朝早くから演習なのよ!」

 

「陛下、今回の演習はテゲトフにとっては大事な演習なので…」

 

「なら何で私が演習のメンバーになっているのよ!」

 

「まぁ、上からの指示だしね~」

 

エリザベスさんは朝からの演習に怒っているようだが、どうやらこういう系の演習は朝早くからやるのが普通らしい。

毎日朝早くから練習をしている俺からはどうでもいいことだが。

 

「そういえばまだシリアスが来てないね。」

 

「砲弾積むのに手間取っているんでしょ。」

 

ここにいるメンバーはシリアスさんを除いて全員いる。

 

「私が様子をみてきましょうか?」

 

「いや、待っていたら来るだろうしそれまで各艦隊で作戦の再確認でもしておいて。」

 

サフォークさんはシリアスさんのところに行こうとするけど、指揮官が止めてこちらへと来た。

 

「こっちは全員そろっているから作戦の再確認だ。」

 

ウェールズが仕切って作戦の再確認を行う。

変更点は特に無い。

後はどこに偵察機を飛ばすかユニコーンちゃんとウェールズが話すだけだった。

 

「そういやベルが部屋を出るときに殺気立っていたんだけどテゲトフ何か知っています?」

 

「あー…」

 

多分昨日の演習終わりのことだろう。

本気で俺のことを辞めさせる気だ。

 

「まあ、大丈夫でしょう。」

 

「なんですかその曖昧な答えは…」

 

エディンバラさんは呆れているが、ベルさんと戦うことになるのはエディンバラさんだから後々大変になるだろう。

 

「遅れて申し訳ございません!」

 

「大丈夫だよぉ~、時間もそこまで経っていないし。」

 

「ご主人様、ご主人様はシリアスに甘すぎるかと。」

 

シリアスさんが遅れて演習場に着く。

指揮官は許してはいるが、ベルさんは指揮官に苦言を言っていた。

 

「そんじゃあ全員そろったし、始めるか~」

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

第一艦隊、第二艦隊ともに指定の位置に着き、指揮官から開始の合図が送られるまで待機している。

ウェールズが時計を見ながら空を見上げる。

 

「少し怪しいな…」

 

「どうかしました?」

 

「ああ、今日は雨が降るかもしれないから少し心配なんだ。」

 

空は曇っていて、いつ雨が降ってもおかしくない状態だった。

 

「雨が降るとユニコーンが戦えなくなるだけじゃなく、テゲトフ達の護衛に付ける戦闘機も出せなくなる。」

 

「相手もイラストリアスさんが無力化できるから悪いことばかりじゃないと思うけどね。」

 

「そうだが…護衛ができないとなると少し不利になるからな。」

 

ユニコーンちゃんは不安そうな顔をしてぬいぐるみを強く抱きしめていた。

 

「ごめんねお兄ちゃん…ユニコーンが役に立てなくなるかもしれなくて…」

 

「別にユニコーンちゃんが悪いことじゃないから謝らなくていいよ。」

 

少し待つと指揮官から無線で連絡が送られてきた。

 

『天気がちょっとよくないけど開始の合図を出すね~、3…2…1…始め!』

 

指揮官との無線を切って、ウェールズが叫ぶ。

 

「戦いは始まった!全艦、心せよ!」

 

ウェールズの叫びに合わせるようにユニコーンちゃんが偵察機を発艦させ、索敵を開始する。

南の方向へと飛んで行った偵察機はすぐに影も見えなくなった。

ユニコーンちゃんから報告が来るまで待つ。

 

「南東の方向にお相手さんを発見…!」

 

「よ~し!みんな、南東へと前進してくださ~い!」

 

ユニコーンちゃんの報告を聞き、ジャベリンさんに続いてサフォークさんとエディンバラさんが進む。

ユニコーンちゃんが戦闘機と爆撃機をジャべリンさんの方へと飛ばす。

俺も続けてジャべリンさん達の後を追って進む。

後ろから戦闘機のプロペラ音がしてくる。

 

「ここまでは順調だが…」

 

やはり不安が残る。

昨日のベルさんの発言が頭の中から出て行かない。

 

「そろそろ接敵する頃合いだろうな。」

 

少し離れたところから砲撃の音がする。

接敵したようだ。

俺は少し進路をずらし、相手の主力艦隊に近づく。

相手の方からもこっちに爆撃機と護衛の戦闘機が飛んでくる。

ユニコーンちゃんの戦闘機がイラストリアスさんの戦闘機と戦闘を始める。

残った爆撃機が突っ込んでくるが、冷静に投下される爆弾を避ける。

爆撃機が母艦へと帰っていくと戦闘をしていた戦闘機も同時に帰っていく。

何機か護衛の戦闘機は撃墜判定が出て脱落してしまったが、相手も同じだ。

 

「もう少し…」

 

後少しでエリザベスさん達が射程圏内に入るところだった。

横から砲弾が飛んでくる。

 

「うわっ!」

 

当たるすれすれのところで避け、砲弾が飛んできた方を見る。

そこには俺に主砲を向けているベルさんがいた。

 

「もしかして…」

 

「姉さんは早めに倒させてもらいました。後はテゲトフ様を倒せば私の役目は終わりです。」

 

エディンバラさんはベルさんに敗れてしまったらしく、遠くに悔しがっているように見える人影が見えた。

 

「他の二人は…!」

 

無線で連絡する前にベルさんが答える。

 

「他のお二方でしたらまだ戦闘中でございます。」

 

参ったな、護衛の戦闘機だって爆撃機じゃないからベルさんに攻撃ができなし、上空を飛び回っているだけしかできていない。

ウェールズもエリザベスさんとの撃ち合いの途中で助けは求めれないだろう。

ユニコーンちゃんの爆撃機だてここに到着するまでに時間がかかるはず。

 

「まさか直々に来るとは思いもしませんでしたけどね。」

 

「私では不満がございますか?」

 

「いや、十分だ。」

 

主砲を向け撃つが、やはり避けられてしまう。

 

「ならこっちはどうだ。」

 

副砲を一斉射撃する。

何発かは当たったが、小破判定だった。

 

「初日よりかはご成長したようですが、それでは私にはまだ敵いません。」

 

ベルさんが主砲で再び射撃をし、二発当たる。

副砲も続けて撃たれ、ほとんど当たってしまうが、小破判定だ。

 

「よし!」

 

主砲の装填を終え、ベルさんに向けるが、足元で水しぶきが起きる。

ベルさんは主砲と副砲の砲撃と共に魚雷も発射していたようだ。

この魚雷で中破判定となってしまい、不利に立たされる。

お返しに主砲と副砲を一斉射撃するが、副砲が数発当たった程度で小破判定であることに変わりはなかった。

 

「お分かりいただけましたでしょうか?」

 

ベルさんが一歩一歩近づいてくる。

俺とベルさんでは実力の差があり過ぎて一対一では勝てないと分かってはいたが、成長してもここまで実力に差があるとは思わなかった。

 

「やっぱ俺だとベルさんに勝てませんよね…」

 

「でしたら早くここを…」

 

「やあぁぁぁ!」

 

叫ぶ声が聞こえると、ベルさんは背後に攻撃を喰らった。

 

「っ!?」

 

ベルさんは油断していたのか、倒れそうになる。

何とか態勢を戻し、後ろを振り返ったベルさんの後ろにはジャベリンさんがいた。

 

「シェフィールドさんを早めに倒せてよかったです。」

 

「これはメイドとして不覚です…」

 

この攻撃でベルさんは中破判定となったが、ジャベリンさんに反撃しようと主砲を向けるとまた攻撃を喰らう。

今度はユニコーンちゃんの爆撃機によるものだ。

この攻撃でべルさんは撃沈判定となり、脱落した。

 

「まさかこのような形で敗れるとは…」

 

ベルさんは少し悔しそうだったが、これで一人だけこちらが多く撃破したことになる。

 

「テゲトフさんは作戦通りに主力艦隊を狙ってください!私はサフォークさんに助太刀しに行きます!」

 

「分かった。」

 

来た方向へジャベリンさんが戻って行き、俺は主砲を構える。

エリザベスさん達のいるところは俺の射程圏内に入っており、狙うことはできた。

イラストリアスさんを先に倒そうとしたが、雨が降り出してきた。

これならイラストリアスさんは後回しでいいだろう。

 

「なら狙うはウォースパイトさん!」

 

視界が雨で悪くなったのであちらはこっちを発見するまで時間がかかるはず。

こっちはもう相手の場所が分かっているからバレるまでに何発か主砲を当てることができればいいと思う。

 

「いけ!」

 

ドゴォォォン!

 

使える主砲でウォースパイトさん目掛けて撃ち、見事に命中した。

判定は…中破判定。

あともう一押し。

今の砲撃でウォースパイトさんもこちらに気が付いたのか、砲塔を全てこちらに向ける。

 

「まさか不意を突かれるとは…中々やるじゃないの。」

 

俺はさらに接近し、副砲で追い打ちをかける。

雨で視界が悪く、俺も動いていたからか、ウォースパイトさんの放った砲弾はすべて外れた。

主砲の装填が終わった俺はまた砲撃をし、当てることができた。

 

「申し訳ありません、陛下…」

 

これでウォースパイトさんは撃沈判定となり、後はエリザベスさんとイラストリアスさん、シリアスさんだった。

撃沈判定となたtウォースパイトさんは少し悲しそうだったけど、こっちも本気だから仕方ないと割り切る。

 

「イラストリアスさんは無力化されたから残りは二人だけ…!」

 

エリザベスさんを探していると、遠くから砲弾が飛んでいくのが見えた。

ウェールズとエリザベスさんが戦っているみたいだ。

 

『シリアスさんを撃破することができました!』

 

無線からジャベリンさんの声が聞こえる。

シリアスさんも撃破できたのなら、後はエリザベスさんくらいとなる。

 

「頼む…ウェールズ…!」

 

ウェールズもエリザベスさんどちらも旗艦なため、ウェールズがやられてしまうと逆転負けをしてしまう。

俺はウェールズが勝てるように願った。

 

『演習、そこまで!』

 

指揮官の声が無線を通して聞こえ、決着がついたと分かった。

後は結果がどうなるかだ。

 

『結果としてなんだけど第一艦隊テゲトフとサフォーク中破判定、ジャベリンとユニコーン小破判定、エディンバラ撃沈判定。第二艦隊シェフィールドとベルファスト、シリアス、ウォースパイト撃沈判定。』

 

『旗艦同士の撃ち合いを制したのは…』

 

ゴクリ…

 

『第二艦隊ウェールズ!』

 

「よっしゃぁぁぁ!」

 

嬉しさのあまり叫んでしまう。

だが今くらいはいいだろう。

 

『各自、開始前のところまで集合するように。』

 

軽い足取りで元の場所に戻る。




第一艦隊の面々まったくしゃべってないね(他人事)
文章へたくそでごめんなさい。


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楽しい食事?

演習が始まる前のところに戻ると、俺以外すでに揃っていた。

俺が来たのを確認した指揮官は拍手をする。

 

「おめでと~、これでテゲトフはうちの艦隊に編成出来るね~」

 

「まあ近代化改修が終わったあとになるんだけど。」

 

近代化改修の後、俺は艦隊に編成されるらしい。

どんだけ時間がかかるか分からないが、これで俺の目標に向けて一歩だけ進んだと思う。

 

「ともあれみんなお疲れ様~、午後は休みでいいからね~」

 

時刻はちょうど12時頃だからここにいるほとんどの人が昼食を食べに行くはず。

俺も腹の虫が鳴いていた。

 

「テゲトフさん!一緒にご飯食べに行きません?」

 

「別にいいけど…」

 

「やった!」

 

ジャベリンさんがご飯に誘ってくれたのでのることにする。

 

「ユニコーンもお兄ちゃんと…一緒に食べていいい?」

 

「全然いいぞ。」

 

「なら私も同席していいかしら?」

 

「構わないですよ。」

 

ユニコーンちゃんとウェールズも一緒にご飯を食べる事になりそうだ。

ジャべリンさんが少し不満そうにほっぺを膨らませている。

 

「…」ぷに

 

「えっ!?///」

 

もちもちそうだったから無意識でジャベリンさんのほっぺを触る。

…これ普通にセクハラだよな?

いや、貞操観念逆転しているし逆セクハラか。

って今はそんなのどうでもいいわ!

 

「ご、ごめんジャベリンさん!」

 

手を引っ込めてすぐに謝る。

ジャベリンさんの頬は真っ赤になり、顔を手で覆い隠して座り込んでしまった。

 

「うわ~、テゲトフがジャベリンにセクハラして泣かせた~」

 

「茶化そうとすんのやめてください。」

 

けらけら笑いながら指揮官が指を差して言ってくる。

やめてください。(切実な願い)

 

「うぅぅぅ…ジャベリン初めて男の人に触られました~///」

 

「いやその…ほんとにごめんねジャベリンさん?」

 

「まさかテゲトフは痴男なのか?」

 

なんだよ痴男って。

痴女かよ。

 

「その…よければジャベリンって呼んでください…///」

 

めちゃくちゃ恥ずかしそうにしながらジャベリンさんが頼み事(?)をしてくる。

これで許してもらえるのか?

もらえるんだな?(食い気味)

 

「…ジャベリン。…これでいい?」

 

「はうっ!///」

 

ジャベリンの顔が真っ赤になり過ぎたのか、ジャベリンは倒れてしまった。

俺が困惑していると続けてサフォークさんも話かてくる。

 

「私のこともサフォークと呼んでくださいテゲトフ様!」

 

「???」

 

「さ…サフォーク?」

 

「はい!願い事を聞いてくれてありがとうございますテゲトフ様!」

 

サフォークは満足したのかそのまま港まで帰っていった。

 

「まさか私の他にも呼び捨てされる子が出てくるとはね。」

 

「実際は抵抗感ありますよ?」

 

「はは、やはりテゲトフは面白い奴だな。」

 

ウェールズは少し笑みを見せる。

可愛いと思ったが声に出すともっと大変なことになりそうなので口を閉じる。

 

「敬語は使わなくていい。堅苦しいからな。」

 

「話聞いてました?」

 

「じゃあまた食堂でな。」

 

ウェールズも港へと帰っていく。

途中にエリザベスさんに絡まれていたけど…

 

「仕方ない…」

 

倒れているジャベリンさんを抱き上げ、港に帰ろうとする。

 

「お待ち下しさいテゲトフ様。ジャベリン様は私が責任を持ってお運びいたします。」

 

ベルさんが近寄ってきてジャベリンを運んでくれるそうだが、俺が悪いし断っておこう。

 

「いやこれは俺の責任なので俺が病室までジャベリンを連れて行きます。」

 

「このようなことはメイドの仕事です。テゲトフ様はご休息くださいませ。」

 

「ベルさんも疲れているでしょ?俺はまだ余力があるから大丈夫…」

 

「ございません。」

 

中々引き下がらないベルさんに俺もう甘えてしまおうかなと思ってしまったがエディンバラさんが口を出す。

 

「もしかしてベル、最近テゲトフに構ってもらいたいから自分から進んで絡んでいる~?」

 

演習で勝てたことで調子に乗っているのかエディンバラさんはベルさんにうざ絡みをする。

すごい煽っている感じがする。

 

「そんなことはありません姉さん。私はただメイドとしての仕事をしているだけです。」

 

「じゃあ何でこの前ダストからでできたの?私びっくりしちゃったよ~?」

 

流石に少し怒ったのかベルさんの目から光が消える。

煽るエディンバラさんが悪いし先に帰っておこう。

 

「姉さん、少しオハナシをしましょうか…」

 

「どうしたのベル~w、いつもは自分が勝っているのに今回は負けちゃったから怒って…待ってベル、私が悪かったから助けて…」

 

最後に泣きそうなエディンバラさんの声が聞こえたが聞こえないふりをして港へと帰る。

 

 

~~~~~

 

「まさか姉さんに見られていましたとは…」

 

姉さんとオハナシをした後、私も戻ってきてご主人様や陛下のお食事を用意しています。

倉庫へと赴いたテゲトフ様を怪我させてここを辞めさせる計画でしたが、あそこでウェールズ様に邪魔されるとは予想外でした。

念のために用意した逃げ口で素顔を見られず逃走することには出来ましたが、あれだけの怪我を負っても辞めず、あそこまで強くなられると感心してしまいます。

 

「ですが、私は諦めが悪い女でございます。テゲトフ様。」

 

「必ず私もろともここを辞め、一緒に…」

 

 

~~~~~

 

ジャベリンを病室まで運ぶ道中、ジャベリンが目を覚ました。

 

「ううん…」

 

「あ、起きた?」

 

「あれ?テゲトフさん…どうしてジャベリンの前に…」

 

まだ頭の中で整理がついていないのか、少し困惑していた。

 

「…え?テゲトフさんジャベリンを…///」

 

ここまで来るのにジャベリンをお姫様抱っこで運んでいたので視線が痛かった。

羨ましそうに見る人もいたが、目を充血させてこちらを見ていた人が一番怖かった。

 

「降ろすから気を付けてね。」

 

「え、あ、はい///」

 

ジャベリンも意識が戻ったから一度、地面へと立たせる。

 

「ふらついたりはしない?」

 

「はい!大丈夫です!」

 

「一応、部屋で休んできな。」

 

体に異常はなさそうだが、部屋で休むように促す。

 

「いや、ジャベリンは大丈夫ですから早くご飯食べに行きましょう!」

 

「でも危ないし…」

 

「大丈夫ですから!さあ、行きましょう!」

 

手を引っ張られ、食堂の方まで連れて行かれる。

駆逐艦なのに意外と力強かった。

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

「少し遅かったな。」

 

「まあジャベリンを運んでいたもんで…」

 

食堂ではウェールズが先に席を取っておいてくれたのか、ユニコーンちゃんも座って先に食べていた。

四人席だから俺とジャベリンを入れてちょうどだ。

 

「先にテゲトフ達の分も取っておいたから早く食べようか。」

 

「ありがとう。」

 

ユニコーンちゃんの隣に座って食べようとする。

 

「テゲトフさんこっちに座りません?」

 

座ろうとするが、ジャべリンに止められ、右腕を引っ張られ反対側の座席に座らせられそうになる。

 

「ダメ…お兄ちゃんはこっち。」

 

ユニコーンちゃんも負けじと左腕を引っ張り、ジャベリンとユニコーンちゃんが俺で綱引きしているような構図になった。

 

「待って待って、痛い痛い!」

 

KAN-SENになったとは言え、所詮は人間である。

元からKAN-SENである二人に引っ張られる痛みは想像をはるかに超えるだろう。

 

「助けてウェールズ!」

 

ウェールズに助けを求める。

しかしウェールズは助けるどころ俺の首元に顔を近づけ匂いを嗅いできた。

 

「くんくん…これが男性の匂いか。」

 

「ちょっと!?何やってんの!?」

 

「私も少し男性に興味があってな。今だけは黙認してくれ。」

 

人に痴男と言ってきやがったのに言った本人が変態だったとは…

もう出会った頃のウェールズのキャラが崩れていることに悲観する。

 

「さて、いつまでもこうするのもなんだし、早く食べるか。」

 

ウェールズは二人から俺を引きはがして席に座らせ、しれっと隣に座ってくる。

 

「ウェールズさんだけずるい~!」

 

「お兄ちゃん…」

 

ジャベリンが文句を言うが、ウェールズは適当に流し、食事を始める。

 

「二人とも早く食べないと冷めるわよ。」

 

「ぶ~」

 

ジャベリンは最後まで不服そうだったが、ユニコーンちゃんは大人しくしていた。



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近代化改修

ウェールズ達と食事を楽しみ、執務室へと行く。

近代化改修を受ける条件は達成したが、いつするのかは聞いていない。

 

コンコン

 

「失礼しまーす。」

 

「今度はどうしたの~?」

 

何回も入っているからか指揮官の仕事の量の多さにも驚かなくなっている。

 

「近代化改修の日程についてなんですが、いつになりそうです?」

 

「う~ん、今日とか?」

 

「今日ですね、分かりました………え?」

 

今日?

今日って言ったよね?

早くない?

 

「設計図とかはあるんですか?」

 

「まあね~、演習始まる前から本部から送られてきてたし。」

 

「…俺が勝つ前提だったんですね。」

 

「結局なんであの編成にしたんだろうね~」

 

本部がどのような考えを持っているのかは分からないが、今日中にできるのならいいだろう。

 

「それで、近代化改修にはどれくらい時間がかかるんですか?」

 

「通常なら夕方には終わるんだけど、テゲトフは改造するところがあまりにも多いから明日の朝まで続くと思うよ。」

 

「そこまで続くんですか…」

 

「別に今日じゃなくてもいいからね。」

 

「いや…今すぐでお願いします。」

 

近代化改修した体にも慣れなくてはいけないのでなるべく早くにしておいた方がいいだろう。

 

「じゃあドックに行こうか。」

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

「確か…おっ!あったあった。」

 

「それは?」

 

指揮官が段ボールの山から何か一枚の紙を取り出し、埃を払っていた。

 

「テゲトフの設計図だよ~、どこに置いていたか忘れていたから出てきて助かったよ~」

 

「なんでそんな大切なものの置き場所を忘れるんですか。」

 

「まあまあ、見つかったならいいじゃん。」

 

饅頭達に俺の設計図を渡し、指揮官は伸びをする。

「んん~、後はこの子達がテゲトフの近代化改修をしてくれるから。私はこれでね。」

 

「あんまり無理はしないでくださいよ。」

 

「分かってるって。」

 

ドックから出ていく指揮官を背後に、饅頭達へとついて行く。

饅頭達に造船所とかで見るような場所に案内される。

 

「ここで俺の近代化改修すんの?」

 

「…」こくこく

 

「へ~」

 

真ん中には赤のバッテンマークがあり、この中では一番目立っていた。

 

「あそこに立っていればいい?」

 

「…!」ぐっ!

 

マークの上まで歩いて行き、その上に立つ。

饅頭達がぞろぞろと工具を持ってくる。

 

「艤装を展開しておくか…」

 

 

~~~~~

 

「ふぁ~、眠い。」

 

夕食も食べて、まだ残っている書類を片付けている。

日も沈んで月が空に浮かんでいた。

 

「テゲトフはまだ改造中か…」

 

改造が終わったからってすぐには出撃をさせない。

一週間ほどの間を空ける。

 

「編成はどうしようかな?」

 

演習時の第二艦隊の主力艦隊は非常によかったが、前衛艦隊がジャべリンくらいしか活躍していなかった。

 

「でもジャベリンって第一艦隊でテゲトフのところには編成できないしな。」

 

エリザベスやイラストリアスだって本気を出して相手をしているわけではない。

本気を出せば第一艦隊が勝っていただろう。

 

「となればテゲトフは第三艦隊への編成とするか。」

 

第三艦隊にはウェールズもいるし、打ち解けやすいだろう。

ただ前衛艦隊がテゲトフとは関わりが無い子達なんだよな~…

 

〈第三艦隊〉

【主力艦隊】

旗艦・ウェールズ

  ・フォーミダブル

  ・テゲトフ

 

 

【前衛艦隊】

・アマゾン

・ダイドー

・グロスター

 

「…まあ旗艦であるウェールズが何とかしてくれるでしょ。」

 

「もう寝よ。」

 

書類を整え、執務室から出ていく。

今日は特に何もないのに疲れちゃった。

珍しいこともあるんだね。

 

 

~~~~~

 

「Zzz…Zzz…」

 

「…!」ぴょんぴょん

 

「Zzz…んぁ?」

 

「もしかして寝ていた?」

 

「…」こくこく

 

近代化改修の途中で眠っていたらしく、立ったまま寝るという変なことをしていた。

展開している艤装を見ると前のとは比べられないくらい兵装が増えていいた。

 

「もう終わったのか…」

 

変わった自分の艤装を見ていると扉が開く。

 

「おはよ~テゲトフ。」

 

「おはようございます指揮官。」

 

朝早いからか、指揮官は手で口を隠しながらあくびをしていた。

俺もつられてあくびをする。

 

「さてさて、艤装はどうなったのかな?」

 

俺の周りを一周して艤装を見る指揮官。

元のとは変更点が多く、改造というよりかは新たに建造したと言った方が納得できるほどだ。

 

「ようやく対空砲が装備されたか~」

 

「これで爆撃機にも対抗できる手段ができました。」

 

俺にとっては一番うれしいかったのは対空砲がついたこと。

空中からの攻撃を迎撃できるのは何ともありがたい。

 

「主砲も少し大きくなったかな?」

 

主砲はエリザベスさんやウォースパイトさんと同じくらいの大きさになっている。

恐らくだが、早さも早くなっていると思う。

 

「試しに演習場で動いてみる?」

 

「いいんですか?」

 

「うん、テゲトフも今の艤装の扱い方に慣れた方がいいしね。」

 

演習場での練習を勧められる。

眠気もまだ残っているから眠気覚ましにでも動いてこよう。

 

「じゃあ行ってきますね。」

 

「いってらっしゃーい。」

 

ドックを出て演習場に行く。

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

さっそく艤装を展開して演習場で海上を進む。

思っていたように早くなっていて、他の戦艦の人達にも劣らないくらい。

 

「けどちょっと重いな…」

 

対空砲や主砲の変更などをしたから艤装も重たくなっている。

元のはあまり重さを感じていなかったから急に重くなったと感じてしまう。

 

「砲撃もしてみるか。」

 

毎朝の砲撃の練習をするのと同じように角度を変えて砲撃をしてみた。

いつもよりも砲撃後の反動が強く、少し後ろに下がる。

 

「これにも慣れなければいけないのか…」

 

「まあいい。これでセイレーンにも互角に戦えるはず。」

 

「でも聞いた話だと最近はセイレーンを押し返すことに成功して付近は安全らしいし、少し遠出になるのかな?」

 

ここら辺のセイレーンは撤退をしており、制海権は完全にロイヤルが握っている。

ユニオンの方にはまだ少しいるみたいだが、わざわざロイヤルが手を出すまでもないみたいだ。

 

「それまでに慣れておこうか。」

 

いつもの日課の練習を始める。

 

 

~~~~~

 

「じゃあそういうことになっているからよろしく~」

 

「テゲトフもようやく私達と同じ舞台に立つことができたか。」

 

「嬉しそうだね。」

 

「ああ、テゲトフと一緒に戦えることが楽しみで仕方がない位にわね。」

 

私は指揮官に呼ばれ、執務室で第三艦隊の新たな編成を伝えられた。

変わったところと言えばテゲトフが入ることだけだ。

 

「今までフォーミダブルと二人だけで主力艦隊を任せられていたから少しは楽にはなると思うよ。」

 

「多大な配慮に感謝する、指揮官。」

 

「感謝なんていいよ~、今まで主力艦隊を二人に任せていた私が悪いんだし。」

 

指揮官のおかげで第三艦隊全体の負担も減るだろう。

けど、ロイヤル近くのセイレーンはほとんど壊滅させているからテゲトフの出番はまだまだ来なさそうだ。

 

「取り敢えず旗艦として第三艦隊のみんなにテゲトフの編成のことは伝えといて。」

 

「了解した。」

 

執務室を出て、第三艦隊のみんなへ早く吉報を伝えよう。

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

「すまない、少々用事があって遅れてしまった。」

 

「別に構いませんわ。それで、用事とはどのようなもので?」

 

「指揮官に呼ばれていたのだ。それで話の内容だが…」

 

私は指揮官から伝えられたことを言おうとするが、話を遮るようにダイドーが転ぶ。

 

「うわぁ!」

 

「大丈夫か?」

 

「ダイドーなら大丈夫でしょう。」

 

ダイドーはシリアスと比べたらそこまでドジではないのだが、それでも転んだりすることがある。

 

「申し訳ございません…」

 

「謝るようなことではない。それで続きだが、この第三艦隊に新たに入ってくる子がいる。」

 

新たに人が入ってくる。

そういうと全員がこちらを見る。

 

「それで誰が入ることとなるのでしょうか?」

 

「テゲトフだな。」

 

名前を聞いた瞬間、この場の時間が止まる。

少しするとフォーミダブルが聞き直す。

 

「テゲトフって、男性KAN-SENのテゲトフさんのことでよろしくて?」

 

「そうだ。」

 

少しの間を置き、部屋が急に騒がしくなる。

 

「て、テゲトフ様がダイドー達のところへ!?」

 

「落ち着きなさいダイドー。」

 

「どうしましょう…テゲトフさんって体重を気にするお方なのでしょうか?」

 

反応は様々で、ダイドーは驚いている。

グロスターは驚いた顔をしていたが、すぐにダイドーを落ち着かせる。

フォーミダブルは自身の体重を気にしている。

 

「それで今日はテゲトフを迎え入れる準備をしておこうと思う。」

 



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配属と作戦

 

「テゲトフは第三艦隊に配属だからね~」

 

「第三艦隊ですか?」

 

改造した艤装に少し慣れ、部屋へ戻る途中に放送で指揮官にまた呼ばれたので今は執務室いる。

 

「そ、今まで主力艦隊はウェールズとフォーミダブルだけだったからちょうどいいかなって。」

 

「逆になんで今まで二人だったんですか。」

 

「いや~、あの二人って結構強いし他の艦隊に人員を割り振った方がそれぞれの強さが均等になるからさ~」

 

「そのフォーミダブルさんってウェールズと同じくらいの実力者なんですか?」

 

「そうだよ~、ちなみにフォーミはイラストリアスの妹だからテゲトフなら仲良くなれるはずだよ~」

 

「イラストリアスさんの妹か~…」

 

時々ご飯を食べている時に絡んでくるが、フッドさんが止めて騒がしくなる。

フッドさんもフッドさんで優雅を意識しているらしいが、全然優雅に見えない。

 

「…大丈夫なんですよね?」

 

「フォーミはイラストリアスと違ってちゃんとしているから大丈夫だよ~…多分。」

 

「おいコラ。」

 

最後の最後に不安になりそうなことを言わないでほしかった。

とにもかくにもウェールズがいるのであれば不安要素は…

 

…あるわ。

 

「前衛艦隊の子はどんな人達ですか?」

 

話題を変えようと話を主力艦隊から前衛艦隊のことにする。

前衛艦隊の子ではジャベリンがいてほしいな。

 

「前衛艦隊の子?アマゾンにダイドーとグロスターだよ。」

 

全員初耳の名前だったわ。

マジか~…

前衛艦隊に知り合いがいねぇ。

 

「どう?誰か知っている?」

 

「全員知らないです。」

 

「そっか~、でもダイドーはシリアスの姉だからテゲトフのこと知っているかもね。」

 

知り合いの姉妹が二人もいるのなら話のネタはできるだろう。

シリアスさんの姉であるダイドーさんはシリアスさんと同じじゃないよね?

 

「ウェールズにもテゲトフが配属されることは伝えてあるし、そろそろ向かったらどう?」

 

「挨拶ぐらいはしておいた方がいいですからね。」

 

「ちなみに第三艦隊のみんなは食堂の近くの部屋によく集まるからそこら辺探していると見つけることができるからね~」

 

「ありがとうございます。」

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

執務室を出た後、指揮官の情報通りに食堂付近の部屋を探している。

そこにネームプレートが掲げられている部屋が一つだけあるのを見つけた。

 

『第三艦隊』

 

 

「ここでいいのかな?」

 

コンコン

 

ノックをし、返事を待つ。

数秒後に声が聞こえる。

 

「どうぞ。」

 

「失礼します。」ガチャ

 

ドアを開けて中に入るとみんな席について何やら作戦会議でもしているような雰囲気だった。

もしかして最悪なタイミングで入っちゃた?

 

「…後に来た方がいい?」

 

「いや、テゲトフから来てくれてちょうどよかった。まあ立ち話もなんだ、そこにでも座ってくれ。」

 

ウェールズに座席に案内されて着く。

今は俺を含めてこの部屋に五人しかいない。

 

「本人もきたところだ。すまないが自己紹介してもらえないだろうか?」

 

「いいぞ。テゲトフ級二番艦テゲトフです。近代化改修が終わったので今日からこちらの第三艦隊配属となります。どうぞ、よろしくお願いします。」

 

立ち上がって自己紹介し、一礼をしてから座る。

みんな拍手する。

 

「私のことは知っているだろうから他のみんなの名前でも紹介しようか。」

 

「では私からいかせてもらいますわ。」

 

ツインテールの人が立ち上がってこちらを向く。

 

「はじめましてテゲトフさん、私はフォーミダブル、イラストリアスの3番艦ですわ。お見知りおきくださいませ。」

 

この人がイラストリアスさんの妹のフォーミダブルさんか。

イラストリアスさんと違って主張してこないから助かる。

 

「こちらこそよろしくお願いします。フォーミダブルさん。」

 

「イラストリアス姉さんから何度かテゲトフさんの話は聞いたことがございます。随分と熱心に演習を頑張られているそうですね。」

 

「いち早くみんなと同じ実力にならないといけないと思っているので。」

 

「向上心があっていいですわね。」

 

「あ~、しゃべるのは別にいいのだがまだ全員終わってないから後にしてくれないか?」

 

ウェールズの隣に座っている二人組のメイドの人達がこちらを見つめてくる。

フォーミダブルは物足りなさそうにして座った。

 

「ダイドー級のネームシップ、ダイドーです。…あの、シリアスが迷惑をかけていないでしょうか…?」

 

「よろしくお願いしますダイドーさん。シリアスさんには…まあ、色々とありました。」

 

どことなくシリアスさんと似たような雰囲気だからか少し不安だが、ああいうことするような人ではないと信じている。

 

「申し訳ございません!シリアスには後で注意をしますので…!」

 

「もう過ぎたことですし、それに俺が悪かったことですから。」

 

注意よりもきつそうなことをベルさんにされているからね。

 

「申し訳ありません…」

 

「次は私の番ですからダイドーは少し黙っていてください。」

 

棘のある言葉がダイドーさんに刺さり、ダイドーさんがダウンした。

この紫髪の人がグロスターさんかアマゾンさんのどっちかなんだろう。

 

「ロイヤルメイド隊、軽巡洋艦グロスターです。ベルファストとは違って男性だからと甘やかしたりはしませんのでご了承を。」

 

「よろしくね、グロスターさん。」

 

ベルさんも演習の時は厳しいけどね。

これで今ここにいる全員の名前は憶えれた。

 

「全員自己紹介が終わったなら今後について話そうと思うが。」

 

「話遮るようで申し訳なんけど一人足りなくない?」

 

「アマゾンか?アマゾンなら委託任務の子が一人休んでしまって手が空いていたから委託完了するまでは帰ってこれないぞ。」

 

「じゃあアマゾンさんはまた後日ということか。」

 

「そうだな。じゃあ話を戻すが、知っての通りロイヤルの近海ではセイレーンを撤退させることができ、我々は制海権を取り戻した。」

 

「セイレーンも大打撃を受け、しばらくは攻勢に出てこれない。そこでユニオンへの連絡船の航路の制海権を安定させるためにユニオン方面のセイレーンを攻めるそうだ。」

 

「この作戦はユニオンからの援軍も来るため私達、第三艦隊だけでの出撃となる。」

 

ウェールズからの作戦内容の説明を受ける。

要はユニオンとの連絡船が時々セイレーンの襲撃を受け、沈んでしまうためその海域の制海権をユニオンと共同で取り返すそうだ。

初出撃が他陣営との共同作戦だとは思いもしなかったが、フォーミダブルさんが俺のサポートをしてくれることとなった。

 

「以上で作戦内容の説明は以上だ。質問などはあるか?」

 

「はい。ユニオンからくる援軍の方々の編成はどうなっているのでしょうか?」

 

ダイドーさんが初めに質問をする。

ユニオンのKAN-SENの名前は代表の人しか知らないから援軍の人の名前を言われても俺は分からない。

 

「ユニオンからの援軍の説明は今のところない。ただ、明日連絡船が無事来れたら分かるだろう。」

 

「空母を援軍に編成するようにユニオンに要求することは可能なのでしょうか?」

 

「指揮官に頼んでみよう。」

 

フォーミダブルさんが空母の編成を頼んだところで質問は終わった。

 

「最後になるが、この作戦は来週に行う。」

 

「それまで各自で体を休めるように。」

 

「アマゾンには私から作戦の説明をしておく。」

 

ウェールズは部屋から出ていき、俺と他三人が部屋に残っている形となった。

俺も自分の部屋に帰ろうとするがフォーミダブルさんに呼び止められる。

 

「テゲトフさん、ご趣味は無いでしょうか?」

 

「趣味ですか?」

 

ここに来てから砲撃の練習ばっかで趣味に時間なんて使っていなかった。

そもそも俺の趣味ってゲームとかなんだよな。

この世界にゲームがあるかどうかは知らんが。

 

「ゲームですね。」

 

「あら、ゲームですの?」

 

意外なことにこの世界にもゲームはあるそうだ。

チェスとかオセロじゃないよね?

 

「音楽とかはお聞きになられません?」

 

「音楽か~」

 

「あんまりかな~」

 

「そうですの…」

 

「じゃあね。フォーミダブルさん。」

 

部屋を出ようとするが、扉の隣に積み上げられた段ボールにつまずいて倒れた段ボールに押しつぶされる。

 

「うわぁ!?」

 

「テゲトフ様!?」

 

段ボールの中はたくさんのものが詰まっていて倒れた衝撃と段ボールの直撃で俺は気を失った。



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問題あり過ぎ

 

「う、う~ん…」

 

「おっ!起きた?」

 

「指揮官?」

 

段ボールの下敷きになってから記憶がない。

けど今は病室で寝ているのは分かる。

 

「なんか背中が冷たいんですけど。」

 

「さっきまで氷で冷やしていたからね。」

 

「背中の打撲らしいよ。」

 

背中から倒れたからこうなったのだろう。

 

「テゲトフ流石に怪我しすぎだよ。」

 

「不可抗力です。」

 

「それは不運すぎじゃない?」

 

冷やしてくれたからかそんな痛くない。

でも誰が冷やしてくれた?

 

「背中冷やしてくれた人って誰ですか?」

 

「ベル。」

 

ベルさんかい。

そりゃ完璧に冷やしてくれるでしょうね。

 

「大変だったらしいよ。ダイドーが鼻血垂れ流してテゲトフの服めくっていたのをベルが見つけて(強制的に)変わったって。」

 

「変態かな?」

 

「男に免疫ない奴はほとんどそうだよ~」

 

「その割にはベルさんとか指揮官って結構免疫ありますよね。」

 

初めて出会った時も他の人と違って焦ってない。

他にもそういう人はいるが。

 

「まあ私の家が中々の権力があってね。何度か男とは関わっているんだよ~」

 

「ベルさんは?」

 

「ベルか~、ベルは本部からここにきたからな~。」

 

「あんまりよく知らないや。」

 

本部から来たKAN-SENは何名かいると聞いたことがある。

その内の一人がベルさんだというのは初めて知ったが。

 

「じゃあベルさんに感謝しないとですね。」

 

「そうだね~」

 

ふと思い、ウェールズから聞いた作戦について聞く。

 

「来週のユニオンとの合同作戦って連絡船以外の目的ってあるんですか?」

 

「まあ~、あるっちゃある。」

 

「それは?」

 

「ここだけの話、この作戦が成功したらユニオンの基地に戦力を集結させるため。」

 

ユニオンとロイヤル近辺のセイレーンは撃退したらしいから合同で遠くまでセイレーンと戦いに行くのか?

 

「セイレーンの主力でも見つけたんですか?」

 

「テゲトフはあんまり知らないだろうけれど、これはセイレーン以外にもあるよ。」

 

「?」

 

「レッドアクシズにバレないようにするためだよ。」

 

セイレーンではなく、レッドアクシズにバレないようにする?

元とは言え同じアズールレーンだったからそこまでしなくていいものじゃないのか?

 

「あいつらはセイレーンの技術も使うような奴らでね、私はセイレーンと関わっているんじゃないかと疑っている。」

 

「敵同士なのにですか?」

 

「あくまでも私個人の疑いだよ。」

 

レッドアクシズも表立ってはセイレーンの敵だが、裏では何かあると指揮官は思っているのか。

俺はレッドアクシズの重桜にも鉄血にも詳しくないからそんなことをする人達かどうか判別できない。

話が暗い方向にいっているから少し元に戻そう。

 

「話は変わるんですけど、俺って来週の作戦に参加できますよね?」

 

「背中の打撲だって軽度らしいからそれまでには治るはずだよ。」

 

「怪我の問題というよりかは練度の方です。」

 

「ウォースパイトを撃破できたんだし、そこまで低くないんじゃない?」

 

確かに指揮官の言う通り、俺はウェールズとウォースパイトさんを倒すことはできた。

でもロイヤルトップの実力者が入りたての新人にこうも簡単に負けるとは思えない。

どこか手加減されていたような気がする。

 

「ロイヤルの実力者が俺みたいな兵装も少ない新人に負けますか?」

 

「…負けないだろうね。」

 

やっぱりだ。

改めて手加減さえていると知っていると悲しくなる。

 

「新人だからって手加減してたんですか?」

 

「多分そうじゃないよ。」

 

「男性だから手加減したって感じだと思う。」

 

「それでですか…」

 

だからベルさんが俺のことを辞めさせようとしていたのか。

女性ばっかのところに男がいきなり入れば誰もが遠慮してしまうだろう。

ベルさんには悪いことをしたと思う。

背中も冷やしてもらって迷惑ばかりかけている。

 

「テゲトフは男性だからと守られるのが嫌いみたいな性格だからみんな口には出していないけど、本気で男性を傷つけようとする子はいない。」

 

「躊躇してしまうと。」

 

「そうだね。」

 

これが作戦に支障をきたすようであれば、俺はロイヤルを辞めた方がみんなのためだろう。

久しぶりに頭を抱え込んで悩む。

 

「…作戦に支障をきたす前にテゲトフに命令を出そうか。」

 

「え?」

 

「一週間後の合同作戦までに第三艦隊の全員に男性に対する免疫力を付けさせろ!」

 

「りょ、了解!」

 

「じゃあお大事にね~」

 

指揮官は命令を下し、部屋を出て行った。

 

「…期間短くくね?」

 

 

~~~~~

 

「テゲトフも気づいていたか…」

 

執務室までに戻っている最中、独り言をつぶやく。

初の男性KAN-SENだから私もどうやって対応すればいいか手探り状態だ。

 

「男を傷つけさせないのは女としての本能だから仕方がないと思うんだけどな~…」

 

ここで男性との関わりがあるのはメイド隊の一部だけだ。

 

「あんな命令でよかったのかな?」

 

同じ第三艦隊のウェールズはテゲトフと組むことが多いから元からついている免疫はさらに上がっているだろう。

ダイドーが一番の問題だ。

もしこの変態行為がバレれば一発で解体だろう。

 

私も仲間は失いたくないからしないけど。

テゲトフも普通の男とは違うし、多少のセクハラは許してくれる…はず。

 

「さてどうしたものか。」

 

テゲトフのことだからぶっ飛んだ案で免疫をつけさせたりはしない。

例えばテゲトフから抱き着いたりとか。

…最終手段としてやってもらうかもしれないが。

 

「これはテゲトフにすべて任せよう。」

 

私がテゲトフに出した命令だけど、達成できなかったら第三艦隊の代わりで第二艦隊に行ってもらおう。

 

「でもあの時のベル…」

 

テゲトフが初めて演習をした相手。

ベルファスト。

あの時は手加減しているように見えた。

今思い返してみると本気だったのだろう。

 

ベルよりも強いはずのウェールズとウォースパイトが負けたのだ。

そこまで手加減していなかったかもしれない。

しかし、演習相手で一番テゲトフに損傷を与えたのはベルだ。

 

「他の子と違って実弾使っているからな~…」

 

もし私が見ていることに気が付いてなかったら…

 

 

 

 

テゲトフにそのまま当てていたんじゃないのか?

…少しだけベルについて調べてみよう。

 

「忠誠は誓っていてくれているから悪いんだけどね。」

 

ここにはいないベルに悪気を感じながら執務室へと帰る。

 

 

~~~~~

 

「困ったな…」

 

男性の免疫をつけさせるって…

どうやれと?

今まで男と関わらなかった人が一週間で免疫が付くのは無理だろう。

 

「これ失敗したら除隊?」

 

俺一人のせいで艦隊が崩壊したら元も子もない。

何とかしていい案を出さないと…

 

「ウェールズは問題ない。」

 

今日の昼食の時にセクハラしてくるくらいだしな。

なら一番の問題は…

 

「ダイドーさんか…」

 

鼻血が垂れていたであろう床を見る。

ベルさんが掃除したのだろう。

シミなどは残っておらず、言われなければただの奇麗な床だ。

 

「鼻血が出るほどなんだから相当だよな。」

 

免疫をつけさせるなら何度か関わっていたら自然と付く。

だが期限が一週間だけ。

 

「フォーミダブルさんとアマゾンさんもあるしな。」

 

残る二人にも悩む。

今のところ免疫がないとは知らないが、多分ない。

グロスターさんはありそうだから大丈夫。

 

「…よし!これで行こう!」

 

俺の中ではいい案が思いついたからある人のところへ向かう。

 

 

~~~~~

 

~~~~~

 

「はぁ?ダイドーを一週間貸してほしい?」

 

「はい。」

 

エリザベスさんにそう頼む。

俺の考えた案はこう。

一週間の間ダイドーさんと一緒に過ごす。

その間にアマゾンさんとフォーミダブルさんとも関わる。

 

「なんでそんな事しなくちゃいけないのよ。」

 

「諸事情と言いますかね…」

 

ダイドーさんもメイド隊の一人。

普段メイド隊は指揮官やエリザベスさん、ロイヤルの貴族階級のKAN-SENの皆さんの世話をする。

他にもロイヤル全体の掃除もある。

 

俺の服とかもベルさんが用意してくれている。

掃除もだ。

 

「ふ~ん…秘密ってわけね。」

 

「…はい。」

 

空気が重たくなる。

自分の世話をしてくれる人を減らしてまで俺に貸す理由がない。

駄目そうだ。

 

「いいわよ。」

 

「そこを何とか…」

 

「…え?」

 

「いいわ、ダイドーを一週間貸すわ!」

 

「ええ?」(困惑)

 

まさかの許可が出た。

なんで?

 

「理由を聞いても?」

 

「面白そうだからよ!」

 

私情かよ。

メイド隊のみんないつもこんな人に振り回されているの?

 

とにかく許可はもらえた。

後はダイドーさんによるけど。

 

「ありがとうございます。」

 

「別にいいわ、何かあったらベルがどうにかしてくれるだろうし。」

 

人使い荒いなこの人。



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やはり駄目か…

 

「そういう訳なのでよろしくお願いしますね。」

 

「え…ええ~!?」

 

ダイドーさんが驚くのも無理ない。

俺の無茶苦茶な案にエリザベスさんが許可を出したからな。

 

「後はダイドーさんによるけども…」

 

別に嫌ならやらせない。

本人の意思は尊重する。

 

「ほ、本当にダイドーがそのような役目をしてもよろしいのでしょうか?」

 

「なんて言うかな…ダイドーさんじゃないと駄目というか…」

 

「え!?///」

 

ダイドーさんが第三艦隊の中で一番免疫なさそうだからダイドーさんと過ごす時間を多めにしないと一週間で慣れなさそうだし。

 

「分かりました。ダイドーは誠心誠意をもってテゲトフ様に仕えさせてもらいます///」

 

「仕えるというかただ一緒に生活してもらうだけなんだけどね。」

 

これから一週間ダイドーさんとの生活…いや同棲か。

………同棲?

もしかしてこれ結構やばi…

 

 

~初日~

 

「もう朝か…」

 

昨日の夕食の時は大変だった。

いつも飯時は大変だけど。

 

「ダイドーさんに少し触れただけで鼻血を出すとは思わんやろ…」

 

話す分には問題はない。

だが触れると鼻血が出るのは分からん。

俺の肌なんか見たらどうなるか…

 

「そんな逆ラッキースケベなんて起こらないだろ。」

 

クローゼットから服を出し、パジャマを脱ぐ。

パジャマを畳んでから服を着ようとする。

 

「おはようございますテゲトフ様。」ガチャ

 

「あ…」

 

さっき建てたフラグをわずか一分未満で回収するぅ!

おかしいだろおい。(切れ気味)

 

「も、申し訳ございません!はぁはぁ…///」バタン

 

ダイドーさんはすぐにドアを閉めたが、鼻血が垂れていた。

やっぱ無理かもしれない。(諦め)

最後に興奮してるし。

 

「…指揮官に助けを求めるか。」

 

 

~~~~~

 

「という訳で助けてください。」

 

「無理。」

 

テゲトフが朝から執務室に来たら昨日のことについてだ。

あんな命令出すんじゃなかった。

昨日の自分をぶん殴りたい気分だ。

 

「そんな無茶苦茶なことで免疫をつけさせようと?」

 

「一週間しか期間が無かったらこうするしかないかなと…」

 

馬鹿だ。

こいつ馬鹿だ。

ちゃんとしているから大丈夫だろうと思ってたのに…

 

「君ほんとに分かってる?ここのみんなは抑えているだけでテゲトフのこと襲おうと思っているからね?」

 

私もだけどね。

 

「そんなこと急に言われてもなんて反応すればいいのやら…」

 

「てか皆さん真面目ですしそんなこと考えてないでしょ。」

 

「何言ってんの?」

 

もう駄目だこいつ…早く何とかしないと…

無防備すぎるんだよな。

 

「ダイドーの方には私から言っておくからテゲトフはいつもの練習でもしておいで。」

 

「じゃあ作戦は…」

 

「第二艦隊に任せる。」

 

このままだと第三艦隊が崩壊しかねない。

テゲトフには悪いが、実戦にはまだ出せそうにない。

許可出すエリザベスも大概だけどね。

 

「何とかして見せますのでそれだけは…!」

 

「…はぁ、作戦まで様子だけ見よう。」

 

「ほんとですか!?」

 

「ほんとだからさっさと朝飯食ってこい。」

 

テゲトフ一人で海域に突っ込ませて分からせてやろうかな。

 

 

~~~~~

 

さてどうしたものか。

ダイドーさんに何かするたびに鼻血を出すものだから対策できない。

指揮官に助けを求めたら作戦から外されかける。

 

「俺が悪いのは分かっているんだけどさ…」

 

でも鼻血が出る人に免疫つけるならこういう強硬策しか俺には思いつかない。

朝はメイド隊が全員分の服を集めて洗濯するらしいからダイドーさんは今はいない。

 

…ダイドーさんが俺のパジャマ持ってく時に顔に当ててたのは忘れたいが。

 

「暗い顔をしてどうしたんだ?」

 

「ウェールズか…おはよう。」

 

「おはようテゲトフ。」

 

しれっと俺の隣に座って食べ始めるウェールズ。

この前の逆セクハラのことを考えると指揮官の言っていることも正しいのかもしれない。

最悪俺が艦隊を崩壊させるまでもある。

 

「実は第三艦隊の全員に男性に対しての免疫をつけさせるように言われてさ、今ダイドーさんをどうしようか悩んでいる。」

 

「男性に対しての免疫?それはまた唐突だな。」

 

「作戦に支障をきたすだろうし仕方がないと思うよ。」

 

今だけは男であることを恨んでいる。

 

「そうか…なあテゲトフ。お前はまだ幼い。」

 

「幼いって…」

 

これでも15歳だわ。

まだ学生だけど。

…よく考えたら学生が戦うのってやばいな。

 

「女性との接し方もあまり分からないだろう。それなら私が…」

 

「ウェールズ様?」ハイライトオフ

 

ウェールズが何か言いかけていたが、何故かいたベルさんによって遮られる。

いつからいたんですか?

 

「ベルファストか。」

 

「はい、テゲトフ様に所用がございまして。」

 

「俺に?」

 

「ですのでお時間を少々いただきます。」

 

「分かった。」

 

ちょうど食べ終わっていたからタイミングが良かった。

 

「ちょっと待っていてくださいね。」

 

トレーを返しにカウンターまで行く。

 

 

~~~~~

 

「…目的はなんだ?」

 

「先ほども言いましたが、テゲトフ様への所用です。ウェールズ様にお答えする必要はございません。」

 

テゲトフが来てから一部のKAN-SENではいがみ合いが起きているとの話を聞いたことがあるが、まさにこの事だろう。

 

「テゲトフは第三艦隊配属となった。結果は覆らない。」

 

「…」

 

図星か。

テゲトフの人気は凄まじい。

本人の知らぬところで盗撮などが起きるほどに。

 

「私はこれで失礼しよう。」

 

男に飢えた檻に男を放り込めば、その男は滅茶苦茶にされる。

こことて例外ではない。

みな、チャンスを伺っている。

 

…もちろん私もな。

 

 

~~~~~

 

「お待たせしました…あれ?ウェールズさんは?」

 

「お帰りになられました。」

 

俺がトレーを返している間に食事を済ませて帰ってしまったのか。

なんか話かけていたが、大丈夫かな?

 

「では行きましょうか。」

 

「ここじゃあダメなんですか?」

 

「なるべく誰もいらっしゃらない場所がいいので。」

 

そこまで大切な話なのか?

前回の件もあってできればベルさんと二人っきりにはなりたくない。

けどな~…

そう思いながらベルさんについて行って人気がないところに着いた。

 

「それで、用事とは?」

 

「ご主人様にテゲトフ様の艦隊の配属変更をテゲトフ様からも申し出で欲しいのです。」

 

「配属の変更ですか…」

 

第三艦隊で出撃もしたことないのに配属変更って駄目でしょ。

せめて相性が悪かったとか判明してから変更するもんですよ。

 

「何故ですか?」

 

「恐れながらテゲトフ様はまだ実戦が未経験でございます。」

 

「初めての出撃が他陣営との合同作戦ではユニオンにも迷惑を掛けてしまうこととなります。」

 

「だから研修みたいなのを他の艦隊で受けてからにした方がいいと。」

 

「左様です。」

 

実際自分でもユニオンに迷惑を掛けてしまうのではないかと感じる。

会ったこともない人達には迷惑を掛けたくない。

しかし、それだと俺の実戦配備が遅れてしまう。

その間にレッドアクシズと戦争でも起きてしまったら終わる。

 

「俺は大丈夫です。だからベルさんは…」

 

「艦隊崩壊の問題があるのにですか?」

 

やはりバレていたか。

ただでさえベルさんが俺のことを辞めさせようとしているのだ。

こういうことは見逃さないはずだ。

 

「作戦開始の一週間まで何とかします。」

 

「不可能です。」

 

ばっさり否定するやん。

ちょっと涙出てきたんだが。

悲しい。

 

「じゃあ何とか出来たら俺の言うこと聞いてくださいよ?」

 

「私には何もないのですか?」

 

「できなければ俺がベルさんの言うことを聞いてここを辞めます。」

 

「それでいいですね?」

 

「構いません。」

 

俺はまた自分の存続が危うくなる。

…みんな俺のこと嫌いなのかな?

 

 

~~~~~

 

「まさかあのような事をおっしゃられるとは…」

 

テゲトフ様を見送ったのちに、そう呟いてしまう。

はっきり言えば不可能に等しいことをテゲトフ様は実行する。

 

「ですが、私からすればおいしい話です。」

 

テゲトフ様を辞めさせ、一緒に暮らすのが私の目的。

しかし、テゲトフ様をここに縛り付けて私に世話されるのもいいことでしょう。

 

「ここまで私を狂わせてしまうテゲトフ様…やはりあなた様は罪なお方です♡」

 



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諦めてぇ…

 

 

「やべぇよ…できる確証もないのに何でもするって言っちゃた…」

 

「終わった…」(絶望)

 

さっきの発言を後悔し、絶望感が漂う。

発言の撤回って聞き入れてくれるかな…

 

「…無理そうだよな。」

 

残り一週間未満。

ダイドーさん以外にもアマゾンさんとフォーミダブルさん、グロスターさんまでいる。

一部の人はまあまあ免疫ありそうだけど。

 

「よく分かんねぇな。」

 

「取り敢えず手始めにダイドーさん中心になんとかしていこう。」

 

ダイドーさんは今どこにいるのか分からないけど第三艦隊の部屋に行けば誰かしらいるだろう。

 

~~~~~~~~~~

 

「さっきぶりだなテゲトフ。」

 

「ウェールズ!それにグロスターさんも。」

 

第三艦隊の部屋にはウェールズとグロスターさんがいた。

机にはお菓子と紅茶が置いてあるし、ちょうどティータイムなんだろう。

 

「テゲトフも一緒にどうだ?」

 

「それなら失礼させてもらうよ。」

 

「テゲトフ様の分を用意します。」

 

椅子に座って少し待つとグロスターさんが俺の分のコップを持って来てくれた。

 

「ありがとうございますグロスターさん。」

 

取り敢えずグロスターさんがどれくらいの免疫力を持っているか調べるためにコップを受け取る際にグロスターさんの手に触れる。

 

「…」

 

…あ、あれ?

無表情?

この世界でこんなことある?

 

「ウェールズ様とのティータイムをお楽しみください。」

 

グロスターさんはそのまま部屋へと行ってしまった。

この分にはグロスターさんは大丈夫だ。

残るはアマゾンさんとフォーミダブルさんがどうなのかだ。

 

「…珍しいな。」

 

「どうかした?」

 

「なんでもない。こっちの話だ。」

 

ウェールズが奥の方を見ながらつぶやく。

反応してしまったが俺に関係ないなら気にしなくていいや。

 

「それで食堂の話の続きなんだけど。」

 

「第三艦隊のみんなに免疫をつける話か?」

 

「そうそれ。」

 

ウェールズがこの中では一番免疫がある。

それなら手助けもしてくれるだろう。

 

「ウェールズなら一番俺との関わりが多いし、助けてくれないかな?」

 

「それは構わないが…一週間でできることなのか?」

 

痛いところを突かれる。

一か月とかもらえたらできるだろうが、流石に一週間という短さはウェールズも首を傾げる。

 

「…頑張れば。」

 

「はぁ…指揮官のことだ。第三艦隊が使えなかったら別の艦隊を使う。」

 

「そこまで焦らなくていいんじゃないのか?」

 

「失敗したら追い出すとも言わないはずだ。」

 

指揮官からは失敗した時のことは聞かされていないが、すでに三回決断をしている。

四回目は無いだろう。

けどベルさんがな…

 

「それはそうだけども…ちょっと別の方で問題が…」

 

「?」

 

「これ一週間でできなかったらベルさんの言うことを俺が聞くことになっちゃた。」

 

「?!」

 

どちらにしろ俺の自業自得だから俺が悪いのだけども。

畜生…あの時に戻りたい。

 

「そういうことか。…私の方からベルファストに何か言っておこうか?」

 

「出来たらお願い。」

 

「でも今のところ第三艦隊で免疫がある人はウェールズとグロスターさんで二人いるからグロスターさんにも助けを求めたらいいんじゃないかな?」

 

「私とグロスターがか?」

 

「うん。俺とも普通に話せるし触ってもそんな気にしてないじゃん。」

 

「気にしないわけではないぞ?」

 

「そうなの?」

 

この前に食堂で堂々とセクハラしてきたのに気にしないとは?

もう触るの定義が分からなくなってくる。

 

「やはりテゲトフは痴男か…」

 

「なんだよ痴男って!」

 

「安心してくれテゲトフ。私は気にしない。」

 

「俺が気になるわ。」

 

演習の時も言われたけども。

誰が変態じゃ。

やけになって紅茶を一気に飲み干す。

あ、これめっちゃうまい。

 

「大分話が逸れてしまったが、要は私とグロスター以外の免疫を確認してから慣れさせようということでいいか?」

 

「そうだね。」

 

「それならちょうどいい。昨日いなかったアマゾンが今日は委託任務を終えて帰ってくる頃だ。」

 

「私もアマゾンにテゲトフのことを伝えなくてはならないし、テゲトフもついてくるか?」

 

「そうしよう。」

 

「私は少し紅茶が残っているからテゲトフは先に部屋の前で待っていてくれないか?」

 

「オッケー」

 

立ち上がって部屋を出て前で待機しておく。

 

「…グロスターに免疫があると勘違いしている方がいいだろう。」

 

~~~~~~~~~~

 

「まさかテゲトフ様の手が触れるとは…」

 

テゲトフ様に触れられた右手を見つめる。

いつもの私の手であることは変わらない。

 

「…」

 

いつもご主人様や他のメイド隊の子たちに厳しくしており、男性としゃべることなど一度もなかった。

KAN-SENとして誕生した以上、責務を全うするのが一番だと思っていた。

 

テゲトフ様がこの艦隊に配属となることを聞いた時、他のみんなにいつものように接しておけばいいと思っていた。

けど、テゲトフ様の手が私の手に触れた瞬間、何も考えられなかった。

それでもいつもの表情を崩さず、速やかに奥へと逃げて来た。

 

「…もう一度テゲトフ様に触れることができるのならば…」

 

そう口に出てしまうが、グッとこらえ、ポッドやらの片づけをする。

 

~~~~~~~~~~

 

「みんなお疲れ様~」

 

委託任務から帰ってくる子たちを指揮官とウェールズで迎える。

委託任務は特定の艦種じゃないとできないところや、ある程度の経験がないと任されることは無いそうだ。

今回の委託は駆逐艦のみだけだったらしく、帰ってくる子はみんなジャベリンと同じくらいの身長だ。

 

「アマゾンもお疲れ様~、急でごめんね。」

 

「フン!今回はどうしようもなかっただけだからな!」

 

「分かってるよ~」

 

指揮官がアマゾンさんと話をしているのを見ている。

…金髪の幼女。

なんか指揮官との会話を聞いている感じ反抗期の娘みたい。

 

「そういやウェールズがアマゾンに用事あるらしいよ~」

 

「ウェールズが?」

 

「帰って来たばかりなのにすまないなアマゾン。」

 

「別にいいわ。」

 

ウェールズと共にアマゾンさんへ向かう。

ちょうど俺がウェールズの背後にいたからかアマゾンさんは俺のことが見えていない。

 

「実は第三艦隊にもう一人配属が決まってな、昨日のうちに他のみんなには紹介したんだがアマゾンだけまだなんだ。」

 

「ふ~ん、でどこにいるのよそいつは。」

 

「私のすぐ後ろよ。」

 

ウェールズは横に移動して俺とアマゾンさんが対面で話せるようにしてくれた。

いや、“してくれやがった”。

 

「どうもテゲトフです。」

 

「…え、ちょ、は!?」

 

やっぱり取り乱した。

なんとなくそんな予感してたよこの野郎!

おい何にやにやしてんだウェールズ。

 

「お、男が第三艦隊に…?」

 

頭を抱えるアマゾンさん。

 

「お、落ち着け私…平常運転だ…」ぶつぶつ

 

自己暗示をかけてこちらを見る。

まだ落ち着いていないのか心臓の辺りを手で押えている。

 

「わ、私はアマゾンだ!せ、せいぜい足を引っ張らないように頑張るんだな!」

 

全然落ち着いてねぇ…

指揮官もほっこりした顔で見守ってるし。

 

「頑張らせてもらいます。」

 

傍から見たら中学生が幼女に頭下げている変な光景が出来上がる。

 

パシャ

 

…ん?

今パシャって…

 

「待ち受けにしとこ。」

 

指揮官がスマホで今の光景を撮ったらしく、アマゾンさんが詰め寄る。

 

「早く消せ!今すぐ消せ!」

 

「え~、もったいないよ~」

 

「そんなの知るか!」

 

指揮官をポコポコ殴るながら涙目で怒ってる。

というよりこの世界ってスマホあるんかい。

ないもんだと思ってたわ。

 

「あ、後でテゲトフにもこれ支給しとくよ~」

 

「ありがとうございます。」

 

俺もスマホがもらえるらしい。

これで少しは暇つぶしもできるだろう。

 

「これで第三艦隊は全員だ。」

 

「楽しそうですね。」

 

「ああ、飽きないぞ。」

 

「でもこれもう一つ問題あるんですわ。」

 

「なんだ?」

 

気づいてしまったことを言う。

 

「ダイドーさんと同じくらいアマゾンさんも男に免疫がない。」

 

「あ…」

 

一週間でダイドーさん一人に免疫をつけるだけでも大変なのにアマゾンさんも同じくらいない。

作戦参加は絶望どころか不可能になった。

 

「…計画を立てよう。」

 

 



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気がつかぬ間に変態がいる

 

俺の部屋でウェールズと一緒に考え込む。

アマゾンさんはダイドーさん程ではないが、免疫は無い。

 

「はぁ…」

 

思わずため息を吐く。

もう泣きたいほどだ。

 

「…仕方がない。アマゾンは私が何とかしよう。」

 

「ダイドーはテゲトフが担当するんだ。」

 

「それは別にいいけど…ウェールズの方は大丈夫なの?」

 

男の免疫をつけさせるのが目的なのに女性のウェールズがどうやってアマゾンさんに男に対しての免疫をつけさせれるのか。

 

「大丈夫だ。策がある。」

 

「それってダイドーさんにもできない?」

 

「元々はテゲトフが指揮官から受けた命令だ。ある程度の手助けはするが、テゲトフが中心となって解決していかないと駄目よ?」

 

「そうだけどさ…」

 

貞操観念が逆転した世界でそれがどれほど難しいのかウェールズには分からないだろう。

知っている人が少ないのもなんだけど。

 

「じゃあ俺ダイドーさん探しに行ってくるからウェールズはアマゾンさんをお願いね。」

 

肩を落としながら部屋から出ていく。

ウェールズが部屋にまだ残っているが勝手に帰っていくだろう。

 

「…」

 

~~~~~~~~~~

 

「…すまない、テゲトフ。」

 

テゲトフが部屋から出て行ってから数秒後、私はクローゼットを開ける。

少し漁ってみると目当てのものはすぐに出てきた。

 

「これが…男性の…」

 

私が手に取ったのは男性用の下着。

テゲトフが使ったであろう物だ。

 

「すまないテゲトフ…これを使わないとどうしようもないんだ…」

 

数着手に持ち、懐に隠す。

 

「さて、私もアマゾンのところへと行こうか。」

 

~~~~~~~~~~

 

「どこにもいねぇ…」

 

メイド隊の人たちは役割が割り当てられているらしいが、エリザベスさんに聞いても、

 

『知らないわよ、そんなの。ベルなら知っているんじゃない?』

 

って言われてダイドーさんと同時にベルさんも探しているが、さっきの一件で助けてくれなさそうな気がする。

 

「他に知っている人も少ないし…」

 

メイド隊での知り合いは他にサフォークさんとグロスターさん、シリアスさんくらいしか…

悩んで歩いていると窓を掃除している人が目に入る。

 

「シェフィールドさんか…」

 

そういや一回演習を一緒にしたことあったな。

他の人の個性強すぎて印象薄かったわ。

 

「うん?何をしてらっしゃるのですかテゲトフ様。」

 

「あ、いや…なんでもないです。」

 

「そうですか、ソウジの邪魔ですので早くどこかへ行ってください。」

 

シェフィールドさんと話すのは初めてではないが、初対面の時も冷たかったのは覚えている。

ずっとここにいるとさらに嫌われそうだからさっさとここから退散する。

 

「あ…」

 

シェフィールドさんの後ろを通り抜けようとするが、床に置いてあったバケツにつまずく。

バケツが倒れて床が水で浸ってしまう。

 

「うわっ!?」

 

つまずいた拍子に俺も水が浸った床に倒れてしまい、全身が水で濡れる。

 

「何をしているのか…」

 

顔を上げるとシェフィールドさんの足元も水で濡れてた。

 

「ソウジの邪魔に限らず、靴まで汚すとはどうしようもないですね。」

 

「すみませんすみませんすみません!」

 

急いで土下座をする。

今顔を上げたらゴミを見るような目で見られるんだろうな…

 

「どうしようもない害虫ですね。」

 

ゴミじゃなかった。

害虫だった。

 

「早く立ってください。みっともないです。」

 

「まじですみません…」

 

立ち上げるが、服が濡れているせいで水が垂れてくる。

幸か不幸か自分の部屋からそこまで離れていないのでバケツに水を絞ろうとする。

 

「待ちなさい。」

 

バケツを真下に持って来て服を絞ろうとしたが、シェフィールドさんに止められる。

 

「そのバケツに水を絞られると今後使えなくなるのでやめてくださいませ。」

 

さっきの言葉だけでもメンタルがやられまくったのに、この一言でとどめを刺された。

 

「それだとみんな困ってしまわれるのでこれで拭きなさい。」

 

シェフィールドさんがポッケからハンカチを出す。

濡れている俺の腹筋にハンカチを押し付け、擦ってくる。

 

「痛い痛い痛い!」

 

「静かにしてくださいませ。」

 

押し付ける力が強く、擦る速度が速いので火傷するほど痛い。

痛みのあまりシェフィールドさんの手を掴んで止めようとするが、さらに速くなる。

 

「ごめんなさい!痛いですから止めてください!」

 

「…」

 

全身擦られるまでこの拷問(?)は続いた。

 

~~~~~~~~~~

 

「いてぇ…」

 

シェフィールドさんから解放されて部屋に戻るが、擦られた跡がまだ熱を帯びていて痛い。

 

「シャワー浴びるかぁ…」

 

シェフィールドさんが拭いて(?)くれたが、完全に綺麗にはならないのでシャワーを浴びてから着替えよう。

マジでいてぇ…

紅茶の火傷の時の塗り薬って効くかな…

 

~~~~~~~~~~

 

床の水を拭きとりながら自分のハンカチを握りしめる。

男性にしてはたくましい身体つきで時々他の子から話は聞いていた。

私も興味が少し出て、テゲトフ様が通るであろうところでソウジをしながら待っていました。

 

「男性の体に初めて触れましたが…」

 

ハンカチ越しとはいえ、初めて触れた男性の体。

セクハラかもしれませんが、ウェールズ様がテゲトフ様のことを痴男とおっしゃってましたので大丈夫でしょう。

 

「このハンカチ…どうしましょうか。」

 

テゲトフ様の体を拭いたハンカチ。

変態なシリアスなら匂いを嗅いでいるのでしょうが、生憎私にそのような趣味は無いので普通に洗いましょう。

 

「しかし先ほどテゲトフ様の部屋からウェールズ様が出てきたのは何故でしょうか?」

 

テゲトフ様は気づかれてないようでしたが、こっそりと部屋からウェールズ様が出てきたのを私は見逃してはいません。

 

「テゲトフ様も大変なのでしょう。」

 

~~~~~~~~~~

 

「しかし、ここまで服が用意できるってすごいなロイヤル。」

 

改めてクローゼットの中を見るが、すごい数の服が用意されている。

挙句の果てには私服までも。

けど、下着を入れているところが少し乱れている。

 

「急いでたのかな?」

 

俺の部屋の掃除は誰がやっているかなどは知らないが、メイド隊の人であるのは知っている。

まあそんなの気にしても意味がないが。

着替え終わったので再びダイドーさんを探しに行く。

 

「シェフィールドさんまだそこにいるかな…」

 

シェフィールドさんに聞こうとしたが、すでにいなかったので諦めた。

 

「第三艦隊の部屋にいるかな?」

 

さっそく第三艦隊の部屋へと行く。

 

 

「失礼します。」

 

「あら?テゲトフさん。」

 

部屋にはフォーミダブルさんしかいなく、何か書類を読んでいた。

 

「ダイドーさんってどこにいるか分かりますフォーミダブルさん?」

 

「さあ…私には分かりませんわ。」

 

聞いてみたが知らないみたい。

邪魔するのも悪いし、静かに部屋から出ようとするが呼び止められる。

 

「たった今ユニオンの艦隊の編成が届きましたの。テゲトフさんもご覧になります?」

 

「無事に届いたんですね。」

 

ドアノブにかけていた手を戻し、フォーミダブルさんが持っている書類をのぞき込む。

 

 

〈ユニオン第二艦隊編成〉

 

【第二艦隊】

旗艦・ホーネット(空母)

  ・ロング・アイランド(空母)

  ・アリゾナ(戦艦)

  ・ラフィ(駆逐艦)

  ・ハムマン(駆逐艦)

  ・サンディエゴ(軽巡洋艦)

 

 

名前を見ても誰が誰か分からないからどうしようもないが、隣に艦種を書いてくれているのはありがたい。

フォーミダブルさんの希望通りに空母の人が多めに編成されている。

 

「バランスは取れていますわ。」

 

こちらは戦艦二人、空母一人、駆逐艦一人、軽巡洋艦二人。

合わせたら重巡洋艦以外は三人揃っている。

 

「前衛艦隊の火力足りますかね?」

 

「そこは空母や戦艦の砲撃で支援するしかないですわ。」

 

重巡洋艦がいないから前衛艦隊の人達がセイレーンを押し切れるか不安になる。

 

「最悪ユニオンに援軍を要求することもできますので心配には値しないですわ。」

 

「じゃあ…大丈夫ですね。」

 

今のところユニオンの強さを俺は知らない。

けどアメリカと同じ立ち位置なら任せても大丈夫なはずだ。

 

「よっと。」

 

フォーミダブルさんが立ち上がるが、後ろに背中が逸れている。

俺は後ろからフォーミダブルさんの手元の書類をのぞき込んでいる状態だ。

さて、言いたいことが分かるかな?

 

 

 

 

 

こういうことだよ(涙目)

 

「うわぁ!?」

 

「え?」

 

俺はフォーミダブルさんに押しつぶされた。

 



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お茶会(二回目)

 

フォーミダブルさんの下敷きになった。

けどそこまで痛くはない。

 

「いたぁ…」

 

手を抑え込んで痛がっているみたい。

でも俺も痛くないわけじゃないんですけど。

 

「あの~、俺が潰されているんですが。」

 

「え?」

 

今気付いたのかよ。

 

「わぁぁぁ!?申し訳ございません!」

 

顔が青ざめたフォーミダブルさんが謝ってくれる。

でも俺の上から退いてない。

頼む、退いてくれ。

 

「取り敢えず退いてくれません?」

 

早く立ちたかったのもあるが、フォーミダブルさんが段々と重たく感じてきたから早めに退いて欲しかった。

 

「は、はい。」

 

慎重にゆっくりと退いてくれるフォーミダブルさん。

それに合わせて俺も立とうとする…が、

 

「うわ!」

 

フォーミダブルさんが手を滑らせてまた尻餅をつく。

そして俺の右手も潰される。

 

「いってぇ!?」

 

流石にこれは痛く、右手を引っ張り出そうとするが、ビクともしない。

 

「も、申し訳ございません!」

 

これにはすぐに気づいてくれて、腰を上げてくれたから手を戻す。

手がズキズキして痛い。

 

「フォーミダブルさんは大丈夫ですか?」

 

「私は大丈夫なのですけど…」

 

めっちゃ申し訳なさそうにするフォーミダブルさん。

もう怪我なんて俺からしたら日常茶飯事だからいいけども。

 

「俺は慣れているので大丈夫ですよ。」

 

「慣れている…?」

 

今日も病室のお世話になっているし。

常人からしたらマジでおかしなことは言っている。

 

「じゃあ俺は手を冷やしてきますね。」

 

「あ、待ってくださいませ!」

 

「どうかしました?」

 

「やっぱどこが怪我してました?」

 

KAN-SENの人達は俺とは違って日常生活では怪我しないって指揮官が言ってたと思うんだけどな。

 

「私の責任ですし、私もついて行きますわ。」

 

「まあ、フォーミダブルさんも怪我してないか診てもらうために一緒に行きますか。」

 

~~~~~~~~~~

 

「テゲトフ様?またお怪我をなされたのですか?」

 

「はは…そうですね。」

 

病室ではシリアスさんが棚の中を掃除していた。

…大丈夫かな。

 

「氷ってどこにあるかな?」

 

「氷でしたらこちらに。」

 

部屋の隅っこの方に置かれたクーラーボックスを持ってくる。

クーラーボックスを開けて袋に氷を詰めて渡してくれる。

 

「ありがとうシリアスさん。」

 

「この卑しきメイドにはもったいないお言葉…」

 

卑しい…わ。

薬のことまだ記憶に残ってるわ。

 

「それとフォーミダブルさんがどこか怪我してないか診てくれない?」

 

「フォーミダブル様ですか?」

 

「うん。ちょうどそこに…ってあれ?」

 

後ろを振り返るがフォーミダブルさんはどこにもいなかった。

 

「お疲れでしたらシリアスが膝枕でも…」

 

「失礼しました。」

 

急いで病室から出る。

ベルさんに説教されたはずなのに反省しているのかなあの人?

 

「随分とお早いですわね。」

 

病室のドアの隣でフォーミダブルさんは待っていたらしい。

中にシリアスさんいるの確認して入るのやめたな。

 

「適当なところで休みますか。」

 

「なら私、いいところを知っていますわ。」

 

今も右手に氷を当てて冷やしているが、休める場所があるのなら案内をお願いしよう。

 

「じゃあ案内をお願いします。」

 

~~~~~~~~~~

 

フォーミダブルさんに案内された場所はエリザベスさんが毎回お茶会とかしている庭だった。

…少し風景が寂しいけど。

 

「よっこいしょ。」

 

お茶会で使われてる椅子に座る。

背もたれに所々穴が開いているから背中が痛い。

座る部分も小さいから俺からしたら痛い。

 

氷で冷やしている右手を机の上に置く。

マナーが悪いと思われそうだけど、今は俺とフォーミダブルさんしかいないし大丈夫か。

 

「テゲトフさん…怪我をさせた私が言うのもですがマナーが悪いですわ。」

 

「ごめん。でも今だけは見逃してくれない?」

 

「仕方がないですわ。」

 

日差しが強くなる。

机には傘が差されているのであまり変わらないが。

 

「お久しぶりですわ~テゲトフさま♪」

 

「イラストリアスさん…」

 

ぼーっとしてたが、イラストリアスさんが声をかけてくる。

 

「昨日か一昨日くらいに見てませんでしたか?」

 

「見ただけでお話はしておられませんよ~?」

 

「そう…ですね。」

 

演習で顔合わせくらいはしてたが、話してはいなかった。

まあ話しかけづらいのもあるんだが…

 

「三人もいるのですからお茶会をいませんか~?」

 

「私は構わないわ。」

 

「俺も別にいいんですけど…」

 

前回のお茶会はあんまりいい思い出ができなかったのもあってお茶会に少し抵抗感がある。

こんな偏見はすぐにでも直したいものだが、いかんせん戻らない。

今回のお茶会で慣れていけばいいか。

 

「じゃあ準備をお願いしますわ~」

 

「かしこまりました。」

 

イラストリアスさんが連れて来たのか、グロスターさんがコップとかポッドを運んでくる。

アニメや漫画でよく見るお菓子が置いてあるのもあった。

 

「失礼いたします。」

 

机の上に次々とお茶会のセットを並べていくグロスターさん。

手際がいい。

時々こっちを見てくるが、やはりマナーについてかな?

 

「完了いたしました。」

 

並べ終わったのか後ろに下がっていく。

早いなー

 

「してテゲトフさま、その右手はどうしました?」

 

「あ、これですか?」

 

「それなら私が説明するわ。」

 

「フォーミダブルさん?」

 

説明しようとしたが、フォーミダブルさんが割って入ってくる。

でもまあ…いいか。

 

「私が不甲斐ないことにテゲトフさんの右手を押しつぶしてしまったのですわ。」

 

「あら~、申し訳ございませんテゲトフさま。」

 

「気にしていないから大丈夫ですよ。」

 

ペコリと頭をイラストリアスさんが下げる。

事故だったし責める気もないからいいのだが…

目線に困る。

 

「せっかく注いでくれた紅茶も冷めてしまいますし、お茶会を始めません?」

 

「テゲトフさまはお優しいのですね~」

 

「そうでもないですよ。」

 

イラストリアスさんも椅子に座って紅茶を飲む。

こんな暑い中よく飲めますね。

フォーミダブルさんも紅茶を飲む。

 

…熱くないの?

もしかしてロイヤルの人たちってそういうの気にしない?

あっ、フォーミダブルさんが少し悶えている。

やっぱ熱いんだ。

 

ちょっと試しに飲んでみるか。

 

「…」

 

…利き手冷やしているからカップが持てねえ。

左手で持とうとしたが、持ち上げる時にちょっとこぼれて不安定だったからやめといた。

 

「どうかしましたか?」

 

「利き手が使えないので飲めないです。」

 

「なら私が飲ませて差し上げますわ~」

 

「え?」

 

イラストリアスさんが椅子から立ってこっちに来る。

カップを持って俺の口に当てて傾ける。

 

「…」ぐびっ

 

…あっつ!?

舌火傷するわ!

イラストリアスさんがまた飲ませようと口にカップを近づける。

 

「ちょ、ちょっと待ってイラストリアスさん!?」

 

「どうしました~?」

 

止まってくれたようでよかった…

口の中ヒリヒリする。

 

「一度そのカップを置きません?」

 

「どうしてですか~?それだとテゲトフさまに紅茶を飲ませることができませんわ~」

 

その飲んでいる紅茶が熱くて死にそうなんですよ。

右手以外にも段ボールで全身やられているんですよ。

口まで終わったら慢心用意なんだわ。

 

「ていうかその…当たってるんですが…」

 

「当てているのですよ~?」

 

悪質過ぎるだろ!

男子中学生の俺には耐えるのがきついのでやめてください。

 

「取り敢えず離れてください。」

 

「仕方がないですわ~」

 

イラストリアスさんは俺から離れてくれた。

離れてくれたけど…

なんで俺のカップの紅茶を飲んでいるの?

 

「おいしいですわ~」

 

天然なのかマイペースなのか…

もしかして気をひこうとしてる?

…流石に自意識過剰か。

 

「イラストリアス姉さん…それって間接キス…」

 

「何のことでしょうか~?」

 

確信犯じゃねぇか。

イラストリアスさんって肉食系なの?

もう突っ込み疲れたよ俺?

 

「続けてお菓子も…」

 

「それくらいは左手でも食えますので大丈夫です。」

 



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調査結果

 

ちなみにイラストリアスさんは乱入してきたフッドさんに連れて行かれた。

フォーミダブルさんもその後をついて行ったから庭には俺とグロスターさんしかいない。

 

無事(?)何とかお茶会を終えた俺は、片づけをしているグロスターさんに聞く。

 

「ダイドーさんって今どこにいます?」

 

「ダイドーでしたら今は倉庫の方で整備をしています。」

 

ようやくダイドーさんがどこにいるのか分かった。

この情報にたどり着くまでにめっちゃ時間かかった気がする。

 

「そっか、ありがとうねグロスターさん!」

 

一言感謝を言い、倉庫の方へ走ってく。

また何かあったらたまったもんじゃない。

 

「…」

 

「…何故ダイドー?」

 

~~~~~~~~~~

 

倉庫に着いたから、中に入る。

いつも通り饅頭達がせっせと働く。

それに混じって何人かのKAN-SENも手伝っているみたい。

 

「あ、いた。」

 

隅の方で艦載機の手入れをしているダイドーさんを見つけた。

隣には見知った人がダイドーさんと一緒に手入れをしている。

 

「ん?テゲトフじゃないですかー、どうしたんですか?」

 

「どうもエディンバラさん。ちゃんと仕事してください。」

 

「失敬な!これでもいつもよりかは真面目にやっています!」

 

「いつも真面目にしてください。」

 

シリアスさんと同じくベルさんに説教されたはずなのに変わらないなこの人。

でもエディンバラさんに用事があるわけじゃないんですよ、その隣のダイドーさんの方に用事があるんですよ。

 

「ダイドーさんって何時くらいに仕事が終わりそう?」

 

「だ、ダイドーですか!?」

 

「うん。」

 

持っていた艦載機を落としそうになるがギリギリのところでキャッチするダイドーさん。

急に話しかけられることにも慣れてないのか。

 

「18時には終わると思います…///」

 

「じゃあ一緒に夕飯食べない?」

 

「よ、よろしいのですか?///」

 

「うん。」

 

「…テゲトフって女たらしだよね。」

 

「よしこっちこい。」

 

ダイドーさんと少しいい感じだったのに盛大にぶち壊しやがって…

許さんぞお前。

 

「いやだって本当じゃないですか!ベルだってテゲトフに惚れている…」

 

「姉さん?」

 

「あっ…」

 

エディンバラさんの真後ろにはベルさんがいつの間にかいる。

ベルさんから放たれる殺気がこっちまで伝わってくる。

 

「どうやらまだ説教が足りないようですね。」

 

「違うから!助けてテゲトフ!」

 

俺は笑顔で親指を立てた。

 

「薄情者ぉ!」

 

断末魔が倉庫全体に響き渡るが、誰も見向きもしない。

多分日常的によくあることなんだろう。

 

「じゃあまた後でねダイドーさん。」

 

「え?あ、はい!」

 

18時まで後数時間あるし、どっかで暇つぶししてよ。

 

~~~~~~~~~~

 

「それで私のところに来たと…」

 

「いえす。」

 

「はぁ…でも書類仕事だけで飽きてたから話し相手にでもなってもらおうか。」

 

いつもの緩い感じはなくなって今日の指揮官は真剣だな。

仕事中とかは真面目になるタイプか?

 

「話を聞いた限りでは免疫が意外とついている子も多いって初めて知ったわ。」

 

「なんでだろうな?」

 

「でも免疫が多いって子のほとんどが建造とか海域から連れ帰った子がほとんどなのよね。」

 

「へ~」

 

ベルさんとかの本部から来たKAN-SENを除いて確かにそういう人が多い。

最初は緊張してたのに次からは話しやすくなっている。

 

「やっぱ本部から来た子の方が世間を知っているから。」

 

「この基地って何割くらい本部から来ているんですか?」

 

「6、7割くらい?」

 

普通に多いな。

建造もあまりしないって言うから2割連れて帰ってきて、1割建造ってとこか。

 

「よく覚えてますね。」

 

「記憶力は士官学校ではトップだったからね~」

 

ちょっと緩くなってきた?

 

「それ以外も主席だけど。」

 

「意外と頭いいんですね。」

 

「あ゛?馬鹿にしてんのか?犯すぞ。」

 

「前にそれっぽいの聞きましたよ。」

 

指揮官が欲求不満なのかは知らないが、この人士官学校主席か~…

大丈夫か?ロイヤル。

 

「大丈夫だよ~」

 

「さらっと心を読むなや。」

 

「まあまあ減るもんじゃないしいいじゃん。」

 

もうこの人も元より他の基地で戦った方が身のためかな?

異動ってできるかな?

 

「テゲトフどうせ暇だしエリザベスにこの書類届けてきてよ~」

 

「ええ…別にいいけども。」

 

「届けたっていう報告はいらないからね~」

 

「はいはい、失礼しました。」

 

半ば追い出されるような感じで執務室を出たけど、破天荒だな指揮官…

エリザベスさんにこの書類が入った封筒渡せばいいんだな?

あの部屋豪華すぎて入りずらいんだけどな。

 

~~~~~~~~~~

 

「…行ったかな?」

 

テゲトフが部屋から出て行った数十秒後、隣の書類棚から一つのファイルを取り出す。

中には最近のベルの行動の数々が記されている。

 

「やっぱり黒か…」

 

巷ではヤンデレとか言われるらしいが、私はそんなのではない。

仲間を守るために仕方なくやっているのだ…仕方なくね。

 

「数日だけでもこんなに情報が手に入るなんてね。」

 

テゲトフが入ってきて最初の頃は普通だったはずなのに演習をした時から他人のように豹変してしまった。

表は変わってないようにも見えるが、裏がやべぇ。

 

「これがヤンデレってやつか…」

 

テゲトフの衣服の洗濯はベルがしていて、何着かは盗んで新品に変えている。

しかも、ベルが用意した衣服にはGPSもつけている。

 

「ベルも長い間ここを支えてくれたから罰を与える程度にしておきたいんだけど。」

 

「法律が黙っていてくれるかな~?」

 

ここロイヤルの法律では男性に危害を加えるようなことがあれば一発で刑務所行きだ。

無期懲役でね。

前まではKAN-SENには適応されていなかったんだけど、テゲトフが来る少し前に政府で決められたことだしな~

軍部もKAN-SENが男と関わるとは思いもしなかったから反対なんてしてないし。

 

「ゆーてどこの国も同じようなもんか。」

 

ユニオンも自由の国って言われているけど男関係になるとそうではなくなるほどにね。

うちもKAN-SENが民間人と関わることが一部を除いて禁止だし。

 

「ベルはどうしようか?」

 

テゲトフと敢えて同じ艦隊にしなかったのはベルが暴走するのを止めるためだが、テゲトフがベルに無茶苦茶な勝負を吹っ掛けたせいで大変なことになりそうだ。

あの野郎余計なことしやがって…

 

「最悪テゲトフをユニオンに預けておこうかな?」

 

それならベルも頭を冷やすだろう。

 

「まだ猶予はあるしじっくり考えるとしよう。」

 

~~~~~~~~~~

 

「ご苦労様です。」

 

「いえいえ、こちらも暇なものだったので。」

 

エリザベスさんがいつもいるところに来たけどいなかったので扉の前のメイドさんに封筒を渡して帰ろうとする。

 

「あら?テゲトフ?」

 

扉の前から離れようとしたが、扉を開けてウォースパイトさんが出てきた。

演習で撃破してしまって気まずいからなるべく避けてきたのに…

 

「お久しぶりですウォースパイトさん。」

 

「演習のとき以来ね。あのときは見事だったわ。」

 

「恐縮です。」

 

ウォースパイトさんは特に気にしている感じではなかった。

 

「ウォースパイト様、こちらを。」

 

「これは新しい編成か?」

 

メイドさんからもらった封筒を開けて中の書類を見る。

すると俺もウォースパイトさんから書類を渡される。

 

「え?」

 

「第一艦隊の新しい編成よ。今の内に把握しておいた方がいいわよ。」

 

書類に書かれている編成はこうだった。

 

〈第一艦隊〉

【主力艦隊】

旗艦・エリザベス

  ・ウォースパイト

  ・イラストリアス

 

 

【前衛艦隊】

  ・ジャベリン

  ・ベルファスト

  ・ネプチューン

 

見たところ、演習の時の編成が少し変わった程度だった。

というよりあの編成主力部隊全員第一艦隊だったんかい。

手加減ありでもよく勝てたな。

 

「どう?どこか不安なところはあるかしら?」

 

「文句のつけようがない位すごいですよ。」

 

「ただネプチューンさんは知らない方なので分からないですが。」

 

「ネプチューンは大型巡洋艦よ。陛下がよくメイドと間違えるけどメイドではないわ。」

 

「大型巡洋艦ですか。」

 

大型巡洋艦と聞き、少し興味が沸く。

できるなら一度手合わせしたいな。

 

「よければ少し話して行かないか?」

 

ウォースパイトさんと話したこともあまりないし、悪い話ではない。

 

「そうさせてもらいますね。」

 

 



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あれ?

もうギャグ全開だ!



 

「結構話し込んだな。」

 

時刻は17時50分。

ダイドーさんとの約束の時間まで後少し。

ウォースパイトさんに誘われて初めてじっくりと話してみたが、話やすかった。

 

話している途中で何回かウォースパイトさんを可愛いと思ってしまった。

まあ、身長が戦艦の中では小さい方だからかもしれないが…

そのたびにウォースパイトさんから変な圧力を感じるのが怖かった。

 

「ある意味一番の苦労人なのかもな。」

 

聞いた話ではエリザベスさんに何回か振り回されている。

あの人って気分屋だからいかに大変なのかよく分かる。

 

「ウォースパイトさんも免疫があったのは意外だった。」

 

ウォースパイトさんは建造でできたKAN-SENで、男女比が1:100なのを一時期知らなかったらしい。

っていうか俺も指揮官以外との普通の人と話していねぇな。

KAN-SENは人の姿をしているだけで普通の人ではないし。

 

「ダイドーさんも仕事を終えて待っているだろ。」

 

食堂で待っているであろうダイドーさんに会いに行く。

 

~~~~~~~~~~

 

めっちゃ混んでいますねぇ!

予想はできたことだが委託任務から帰ってきた子も合わせて昨日より食堂の人数は多い。

これではダイドーさんを探せねぇ…

 

「一旦外に出るか。」

 

何とか入ってきた扉から廊下に出ることはできた。

…人が集まっていたから仕方ないと思うけど尻とか胸を触られたんだけどわざとじゃないよな?

 

「取り敢えずダイドーさんを探してみるk…」

 

「テゲトフ様はどこにおられるのですか…?」

 

いたー

探そうとした瞬間に見つかるやん。

けどちょっとイタズラしたいよね?

したいよね?(圧力)

 

「だ~れだ?」

 

定番の手で目を隠すのをダイドーさんにしてみる。

免疫つけるためにはこういうことするのも仕方がないよね!

 

「え?え?」

 

ダイドーさんが困っているが、俺は決してやめない(確固たる意志)

 

「え、えと、テゲトフ様でしょうか?」

 

「せいかーい!」

 

流石に当てられたから手を放す。

いって…

今ので右手がまた傷んできたわ←馬鹿

後で冷やしとこ。

 

「その、テゲトフ様はまた何故このようなことをダイドーに?///」

 

「う~ん…秘密。」

 

秘密も何も無鉄砲でやっているだけですけどね。

つまりただの考えなし。

 

「はわわ…///」

 

ダイドーさんの顔が見事な赤色になるほど照れてる(?)

流石に倒れられたら困るのでこれ以上の追い打ちはしない。

 

「しっかし、夕食はどうしようか。食堂も混んでいて当分入れそうにないし。」

 

「で、でしたらダイドーが作ります!///」

 

「ダイドーさんが?」

 

いや仕事が終わった後なのに作らせるのは流石に気が引けるっていうんですかね…

普通にご飯を食べてゆっくりしていてほしいんですわ。

 

「やはりダイドーでは駄目でしょうか…」

 

「そういう訳ではないんですよ。休んではしい…ん?」

 

ポケットに紙切れが入っている?

入れた覚えないぞ俺。

ちょっと見てみよ。

 

『テゲトフへ

ダイドーが自分から何かしようとしたら拒否しないこと。

したらお前どうなるか分かってるよね?

指揮官より』

 

「…」

 

いつの間に入れたんだよこれ。

ていうかこういう事態が想定できる指揮官すげぇな。

 

「ああー!やっぱ夕飯はダイドーさんの手作りが食べたいかなー!」

 

「!分かりました!すぐに作ってお持ちいたします!」

 

ダイドーさんが厨房の方にすっ飛んで行った。

KAN-SENって体力ありますねー

部屋で待ってればいいのかな?

 

~~~~~~~~~~

 

「失礼いたします。」

 

 

 

部屋に帰ってから少し待つとダイドーさんが料理を持って来てくれた。

豪華そうな料理がたくさん並んでる。

 

「すごいですね。これ全部ダイドーさんが?」

 

「はい///」

 

そこまで時間は経っていないのにここまで作れるのか。

俺も少しは料理できるけど今度ダイドーさんから習おうかな?

 

「じゃあさっそくいただきますね。」

 

「どうぞお召し上がりくださいませ。」

 

「…」

 

そういや右手使えないんだった…

幸いフォークとスプーンのどっちかは左手で持てるけど食べづらい。

 

「どうされましたでしょうか?やはりダイドーの料理なんて食べたくなかったのですよね…」

 

「違うから!右手痛めてて食べにくいだけだから安心して!」

 

「右手をですか?」

 

冷やしている右手を見せる。

そういや氷もなくなりそうだ。

後でもらいに行くか。

 

「ちょっと色々あってね。」

 

「大丈夫でしょうか!?」

 

「冷やしているから痛くないよ。」

 

ダイドーさんってもしかして…重い方?

 

「でしたらダイドーが食べさせます///」

 

「そ…れじゃあお願い。」

 

断ろうとしたが、指揮官の手紙とダイドーさんの重さからやめといた。

今日は既にイラストリアスさんに紅茶を飲まされているんだけどな。

 

「どうぞ。」

 

「あーん。」

 

スプーンに乗せた料理が口に運ばれてくる。

これ恥ずかしいんだけど。

 

「…」もぐもぐ

 

「い、いかがですか?」

 

「おいしいよ。」

 

「ほんとですか!」ぱぁ

 

うまい。

うまいんだけどさぁ…

 

 

これまだまだ残っているんだよね。

KAN-SENが食べる料理って人間が食べれるものもあるんだけど、一部明らかに人間用じゃないの入っているのよ。

それが大量にある。

 

食べきれるかな…

 

「テゲトフ様!お次をどうぞ!」

 

…頑張ってみよ。

 

~~~~~~~~~~

 

疲れたよ〇トラッシュ…

でも俺は食い切ったぞー!

…つまり俺の体が徐々にKAN-SENになっていること?

急なホラー展開やめません?

 

「まあ大丈夫でしょ。」

 

客観的に考えてたら楽なこともあるもんだ。

 

これが後にとんでもないことになるのを彼はまだ知らない。

 

「ダイドーさんも食器の片づけをしている最中だしな…」

 

腹がいっぱいになったから眠い。

でもなー

まだ寝たくねぇ

ていうか俺なんか目的忘れてない?

 

……………あ!

ダイドーさんに免疫をつけさせることだ!

完全に頭から消えてたわ!

どうしよ。

 

「ダイドーさんが来るまでに策を建てておかなきゃ…」

 

でもダイドーさん積極的に俺の手伝いしようとしてたよね?

もう免疫ついてない?

 

「…シャワー浴びよ。」

 

 

【男性の免疫をつけさせる命令】まさかの初日で終了。

 

~~~~~~~~~~

 

一方ウェールズとアマゾンは…

 

「う、ウェールズ!?どこでそんなものを!?」

 

「…許してくれ、アマゾン。」

 

「それを近づけるなぁ!」

 

何かと大変なことになっているみたいですね。

 

~~~~~~~~~~

 

「あ~、気持ちいぃ!」

 

風呂に入れないのが残念だが、シャワーもいいものだな。

…って着替えベッドに置いてたわ。

 

「まあ俺しかいないしなんてことないか。」ガチャ

 

バスタオル一枚でシャワー室を出る。

 

「「あ…」」

 

ちょうど片づけを終えて戻ってきたであろうダイドーさん。

 

「…ダイドーは…卑しいメイドです…」ばたん

 

「…なんでいるんだよ。」

 

【男性の免疫をつけさせる命令】再開!

 

ベッドはダイドーさんの鼻血で血まみれになりました。

シーツの替えがあって良かったわ。

 

「よいしょ。」

 

倒れたダイドーさんをソファーに寝かせてからシーツを取り換え、ベッドに寝かす。

 

「洗濯しに来るベルさんになんて言えばいいんだか…」

 

これが後一週間近く続くのか…

胃薬ってある?←自業自得

 

「俺はソファーで寝るか。」

 

~初日終了~

 

 

~二日目開始~

 

「ふぁぁぁ………?」

 

目が覚めて最初に気が付いたのは俺がベッドで寝ていること。

 

「俺ソファーで寝たんだが。」

 

胴体の方にも違和感があるからシーツをめくって確認する。

 

「…え?」

 

ダイドーさんが抱き着いて寝いている。

なんかいい香りしてきた。

 

「………?」

 

戸惑っていると後ろから殺気。

恐る恐る振り返る。

 

「おはようございますテゲトフ様。」

 

「お、おはようございますベルさん。」

 

「早朝から申し訳ございませんが、私の質問にご回答してもらってもよろしいでしょうか?」

 

「答えられる範囲であればどうぞ。」ふるふる…

 

その前にどうしてベルさんは俺の部屋の中に入っているのでしょうか。

 

「では何故ダイドーと一緒に寝ておられるのでしょうか?」

 

「分かりません…」

 

俺が知りたいくらいです。

 

「そうですか、ではもう一つ。」

 

「この血が付いたシーツは何でしょうか?」ハイライトオフ

 

「違うんです…それはベルさんの勘違いっていうかなんて言うか…」

 

「テゲトフ様には矯正が必要なようですね。」

 

誤解を解くのに1時間かかった。



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や っ た ぜ

流石にすべての日数は書けんわ。


 

~最終日~

 

なんだかんだハプニングはあったけど一週間を乗り越えたぜ。

 

「Zzz…Zzz…」

 

ダイドーさんもなんか俺のベッドで寝ることに慣れているようだし、日常生活に必要なくらいの免疫は付いた…はず。

 

「明日から作戦か。」

 

まあ指揮官に許可もらってからじゃないといけないみたいだが。

流石に大丈夫でしょ(フラグ)

 

~~~~~~~~~~

 

「ダメです。」

 

「は?」

 

「…厳密に言うとまだ終わってないよね?」

 

「いやだってダイドーさんに免疫付いたじゃないですか(怒)」

 

「第三艦隊全員にだよ。」

 

「あ~…」

 

そういやそうだったわ。

でもフォーミダブルさんとグロスターさんは元々慣れている感じだし、ウェールズに関しては問題ない。

 

「アマゾンさんですか?」

 

「そう。」

 

でも初めて会った日から一回もあってないんだよな。

ウェールズとも一週間あってないし。

 

「フォーミダブルとグロスターは…及第点だね。」

 

「でも俺この一週間でアマゾンさんの姿見てないんですが…」

 

「私も見てないんだよね。」

 

なんかあったのだろうか?

ちょっと心配だ。

 

コンコン

 

「どうぞー」

 

「失礼する指揮官。」ガチャ

 

部屋に入ってきたのはウェールズ。

 

「ウェールズ?最近見ていなかったけどなんかあった?」

 

「実はテゲトフの手伝いをしていてな。」

 

「俺の?」

 

確かに助力を頼んだらアマゾンさんは何とかするって言ってくれたけど。

それと一週間にどんな関係がある?

 

「アマゾンの免疫は何とかなった。」

 

「何とかなったんだ。」

 

大丈夫だよね?

信じていいんだよね?

 

「失礼する!」

 

「おお~、久しぶりアマゾン~」

 

「頭を撫でようとするな!」

 

指揮官が俺にだけ当たりが強いように感じる今日この頃。

 

「お久しぶりですアマゾンさん。」

 

「久しぶりねテゲトフ!」

 

…あれ?

人変わった?

なんか最初会った時と印象が…

 

「ウェールズ?いったい何をしたの?」

 

「私は特に何もしてはいないわよ」

 

絶対嘘だ。

目とか泳いでるもん。

ともかく、これで作戦許可が…

 

「う~ん…ほんとに大丈夫なの?」

 

ちょっと難しい顔してますね~

無理そう。

 

「大丈夫だ指揮官。問題が起きたら私がなんとかするわ。」

 

「ウェールズがそこまで言うんだったら…」

 

なんやかんやで指揮官に信頼されてるねウェールズ。

急展開過ぎるけど作戦に参加できるのならいいや。

 

~~~~~~~~~~

 

「やっぱ第二艦隊に任せた方がいいんじゃないのかな?」

 

騒がしかった執務室から私以外いなくなった後、独り言をつぶやく。

もう第三艦隊の存在が何なのか指揮官なのに分からなくなっている。

 

「テゲトフ入ってから狂うな~」

 

免疫つけさせたのも艦隊内で男の取り合いでの仲間割れをさせないためだ。

まあ、あの子達が男で取り合いをする姿は想像できないが。

現にまだテゲトフと話したことが無いKAN-SENのほとんどは遠慮しているからだしな。

 

「あ~、やっぱりテゲトフのことユニオンにもバラしたくねぇ~」

 

「やり取りは前衛艦隊と無線だけにしてもらおうかな?」

 

男のKAN-SENということがバレたら鉄血に何されるか分からない。

 

「なんでロイヤル以外は欲求不満の奴ばかりなんだよ。」

 

~~~~~~~~~~

 

「それでは明日の作戦内容をいう。」

 

「明日は知っての通りユニオンとの合同でのセイレーン撃滅作戦だ。」

 

「ユニオンとの合流地点はユニオン寄りの海域、合流後は南下してセイレーンを各個撃破する。」

 

ウェールズは昨日ユニオンから送られてきた作戦を全員に説明している。

俺はちょうど執務室で指揮官と話していたこともあって一足先に読ませてもらった。

 

「作戦の説明はこれで終わりだ。質問はあるか?」

 

「ほい。」

 

ちょっと気になることがあるからウェールズに聞いてみよう。

 

「合流地点まで行く間にセイレーンと会敵してしまった場合はどうするんだ?」

 

「無論、撃破する。」

 

「ただ、誰かが損傷大となってしまったら撤退する。」

 

「そうなってしまったら作戦は…」

 

「中止だ。」

 

一人でも沈みそうになったら撤退。

誰一人も沈ませないんだな。

 

「分かった。ありがとう。」

 

「他にはいないか?」

 

俺以外に質問する人はいないみたい。

 

「いないようだな。」

 

「なら解散とする。明日に備え休憩を各自取るように!」

 

解散した後、俺はダイドーさんのところへ行く。

 

「ダイドーさん少しいいかな?」

 

「どうされましたでしょうか?」

 

「やはり朝食がお口に合わなかったのですか…?」

 

「違う違う。」

 

一週間一緒に生活して免疫は付いたのに重さは変わらなかったんだよな。

 

「昼食でしたらメイド隊の仕事の休憩に…」

 

「いや今後についてなんだけどさ。」

 

「今後でしょうか?」

 

一週間終わったからこれからは無理してご飯作らなくていいんですよ。

でもなんか重い方だからな…

 

「一週間っていう期限で俺とダイドーさんが一緒に生活するっていうことだからさ、ダイドーさんは元の生活に戻ることになります。」

 

「え…」

 

「ダイドーを捨てないでください…些細なことでも任せてください…だからダイドーを捨てないでください…」

 

「捨てているんじゃなくて元の場所に戻ってもらうことなんですよ!」

 

「テゲトフ様から離れることはダイドーからしたら捨てられるも同然な事です…」

 

重症ですね、これは。

離れたくないのか力いっぱい俺のことを抱きしめるし。

今はやめてほしかったかな。

フォーミダブルさんとかグロスターさんが見てくる。

 

「今日までっていう約束ですから!まだ時間は残ってますから!」

 

「うう…」

 

そんな顔されるとこっちが申し訳なくなるからやめてほしかった。

罪悪感で心がえぐられる。

 

「今日は俺が料理しますから。」

 

「テゲトフ様がですか?」

 

「俺も簡単な料理はできるからね。」

 

納得してくれたのか少しずつ抱きしめる力が弱まる。

最終的には解放してくれた。

 

「別に料理くらいなら時間があればいつでも振る舞うよ。」

 

「卑しいメイドのダイドーにそこまでしてくださるなんて…」

 

「気にしなくていいからね?」

 

なんか忠誠を誓ってそうな予感がしたからさっさと部屋から出ようとしたけどウェールズに肩を掴まれる。

 

「ど、どうしたのウェールズ?」

 

「今回の命令、私も手伝ったんだ。」

 

「それはありがとうね。」

 

「だからそれ相応の報酬も必要よ?」

 

「…料理でいいですか?」

 

「では昼食の時間にテゲトフの部屋に邪魔させてもらおうか。」

 

そういやウェールズが協力をしてくれるのも謎だったね。

こ れ が 目 的 か 貴 様 。

 

これ以上ここにいるともっと嫌なことが起こりそうだから光の速度で部屋から出る。

 

~~~~~~~~~~

 

「ゆっくりしていたいんだけどな…」

 

作戦のために体を休めたいのに今日は休めそうにないな。

 

「少々よろしいでしょうかテゲトフ様。」

 

「ベルさん…」

 

一週間前にベルさんとした勝負。

負けた方が勝った方の言うことを聞く決まりだったと思う。

 

「この度の勝負、私の負けでございます。」

 

「それでいうことを聞きに来たの?」

 

「はい。」

 

「今は明日の作戦に集中したいからまた後日でいい?」

 

「承知いたしました。」

 

まあこれだけ伝えに来ただけなら…

 

「それと、陛下がお呼びでございます。」

 

「エリザベスさんが俺を?」

 

「ありがとうベルさん。」

 

「お気をつけて。」

 

~~~~~~~~~~

 

「お見事ですテゲトフ様。」

 

流石はご主人様が所属を認めたほどの御方です。

テゲトフ様をロイヤルから追い出すということはやめにしましょう。

ですが、テゲトフ様はいつか私、ベルファストのものに…

 

~~~~~~~~~~

 

「来たわね!この一週間で起きたこと全部話させてもらうわよ!」

 

「面白そうって言ってましたもんね。」

 

この一週間で起きたこと?

あり過ぎて何言えばいいか困るわ。

ていうかなんで一週間にこれだけの出来事が起きるのかな~?

 

「…まあ一応時間かかりますけど全部話しておきますね。」

 

~オハナシ中~

 

「へ…あ…///」

 

「やっぱこうなったか…」

 

カリスマではあるんだけね~

 

「陛下、しっかりしてください。」

 

「ああ…」

 

ウォースパイトさんに肩を揺らされているけど一向に戻らないエリザベスさん。

 

「…手伝います?」

 

「頼む。」

 

エリザベスさんが座っている玉座に続いている階段を上る。

なんでこんなに長いんだよ(切れ気味)

 

「エリザベスさ~ん?大丈夫ですか~?」

 

耳元の近くで囁く。

瞬間、エリザベスさんの顔が赤くなる。

ちょっと触ってみたけど熱すぎて手が火傷するほどだ。

 

「げげげ下僕の分際で何をするのよ!///」

 

「下僕!?」

 

〈悲報〉俺、まさかの下僕。

 

「この罪は償ってもらうわよ!///」

 

「陛下、そこまでにしておいて…」

 

「知らないわよ!///」

 

強引すぎるなこの人。

 



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他の艦隊の演習みるぞー…自重してくれ

 

「なんで私の他にもいるのよ!」

 

「どうして陛下がここに…」

 

「落ち着いてください陛下。」

 

結局三人まで増えた。

それにしては意外なメンツになったな。

ともかく何にしよう。

 

食材は色々とあるから困りはしないんだけど…

無難にカレーでいいか。

多めに作ってもこの三人なら食べきれるでしょ。

 

~テゲトフさん調理中~

 

「それでダイドー、テゲトフとの一週間はどうだった?」

 

「すごく幸せでした。」

 

「そうか。(羨ましいな)」

 

「陛下、延長は…」

 

「ダメよ。」

 

ばっさりエリザベスさんに切り捨てられてる。

あ、ダイドーさんめっちゃ絶望している。

 

まあそんなのお構いなしにカレーを並べますけど。

 

「あら、おいしそう。」

 

「ほんとにダイドーがいただいていいのでしょうか…?」

 

ダイドーさん立ち直るの早くない?

 

「ありがたくいただかせてもらおうか。」

 

ウェールズに続いてダイドーさん、エリザベスさんがカレーを食べる。

 

「おいしい…」

 

「ベルと比べたらあれだけどいいじゃない。」

 

余計な一言さえなければうれしかった。

さて、俺も腹減っているし、食うとするか。

 

~~~~~~~~~~

 

「普通に余った…」

 

いや何回かおかわりしてくれたんだけど少しだけ残った。

俺の夕食用にしても後一人分余る。

 

「どっかにまだ昼飯食べてないような人が一人だけい…るわ。」

 

タッパーカレーを入れてあるところに向かう。

 

 

~執務室~

 

「指揮官いるー?」ガチャ

 

「いるよ~」

 

毎度のごとく書類と向き合っている指揮官。

今回はそんな指揮官に俺からの労り…になればいいかな。

 

「飯食った?」

 

「まだ~」

 

「じゃあこれあげるわ。」

 

「カレー?」

 

「さっきエリザベスさん達に作ったのが余ったんだよね。」

 

「おお~、それはありがたい。」

 

「じゃあね。」

 

用事も済ましたし帰るか。

 

バタン

 

「…もしかして私のこと便利屋って勘違いしている?」

 

~~~~~~~~~~

 

執務室から出た俺はドッグにいる。

部屋に帰る途中に饅頭達に連れてこられた。

兵装の手入れだと。

まあ近代化してから一回もしてなかったし仕方ない。

 

「どこか問題はあります?」

 

「…!」ぶんぶん

 

ないみたい。

作戦への参加には今のところ問題はない。

直前で機関が止まったとかもやめてね?

 

「…」こくこく

 

「終わりましたか。」

 

兵装をしまってドッグから出る。

 

「暇だな。」

 

また執務室に行ったら指揮官に怒られるし。

部屋でゴロゴロするのもなんかな~

 

「基地の周辺で散歩でもするか。」

 

ロイヤルの基地周辺は海岸と山くらいしかない。

人が住んでいるところまでは車で一時間近くはかかる。

そもそもそんなところ指揮官くらいしか行かない。

 

「やっぱ海の近くは怖くて住めないのか?」

 

演習海域が見える海岸まで歩いて行く。

指揮官も演習の時はここにいる。

 

「…見やすいな。」

 

今は第一艦隊と第四艦隊が演習をしている時間帯だ。

少しすれば基地の方から出てくるかな?

第四艦隊で名前知っている人いるか指揮官からもらったスマホっぽいので見てみよ。

 

〈第四艦隊〉

【主力艦隊】

旗艦・ネルソン

  ・ロドニー

  ・アークロイヤル

 

 

【前衛艦隊】

  ・ハンター

  ・エディンバラ

  ・サフォーク

 

前衛艦隊の人しか知っている人いねぇ…

でもエリザベスさんが俺のカレー食っている時に、

 

『アークロイヤルの変態はどうにかならないわけ?』

 

って愚痴っていたし多分アークロイヤルさんはやべー奴。

まあここから見ているだけだし何ともないだろ。

 

スマホをしまうと基地の方からタイミングよく艦隊が出てきた。

あれは…第一艦隊か。

じゃあベルさんの隣にいるあの人が前に聞いたネプチューンさんだろう。

 

あ、ジャべリンが気づいてこっちに来ている。

 

「こんにちはテゲトフさん!どうしたんですかこんなところで?」

 

「こんにちは。暇だっかから演習でも見ていようとしているんだよ。」

 

「それなら私の活躍を見ていてくださいね!」

 

「はいはい、頑張ってね。。」

 

艦隊に帰っていくジャベリン。

振り返りながら手を振ってくるので振り返しておこう。

 

「お、始まるか?」

 

配置に着いたのか全員構えた。

明日の作戦に向けて戦艦の人を特に見ておこう。

今のところ一番参考にできそうなのはエリザベスさんとウォースパイトさんかな?

 

「開始!」

 

始まった。

さてどうなるかな?

 

「先制攻撃はどっちになるんだろうな。」

 

先に動いたのは第四艦隊だ。

ジャベリン達のところに挟み込むような形で仕掛けた。

 

…ジャベリンが全員返り討ちにしたんだけど。

ベルさんもなんか引いている気がする。

 

こっちに手振ってきたんだが。

振り返した方がいいのこれ?

普通に怖いぞ。

 

あ、辛うじてエディンバラさんが生きてる。

全力で後退してる。

 

追撃の爆撃でやられたみたい。

 

前衛艦隊全滅したからこれは第一艦隊の勝ち…でいいのこれ?

戦艦の方々を参考にしようとしていたのに出る幕なかったじゃん。

 

またジャベリンがこっちに来てるんだけど。

逃げてぇ…

 

「見てましたテゲトフさん?ジャベリンがMVPですよ!」

 

「ああ…おめでとう。」

 

もっと迫力あるもんだと思っていたんだけどな。

こうもあっさりと終わる?

 

「ところで今日一緒に夕食食べません?」

 

「まあ…いいよ。」

 

「やったー!」

 

喜んでいるところは可愛いんだけどね。

やっていることはえげつないんだな。

 

「また食堂で会いましょうね!」

 

「またね。」

 

艦隊の方に帰ってったジャベリン。

…部屋で大人しくしておこ。

 

~~~~~~~~~~

 

「今日はそんなに混んでいないな。」

 

毎日のように混んでいる食堂がまあまあ空いていた。

多分委託任務でもあったんだろ(適当)

 

「テゲトフさ~ん!」

 

俺が見つけるよりも先にジャベリンに見つけられた。

 

「さっきぶりだな。」

 

「はい!もう私お腹ペコペコなので早く食べましょう!」

 

「席は確保しておくね。」

 

ジャベリンが料理を取りに行った。

壁側の席に座っておく。

数分したらジャベリンが帰ってくるだろうし、なに頼むか考えとこ。

 

 

~数分後~

 

「お待たせしました!」

 

店員かな?

 

「ついでにテゲトフさんの分も持ってきました!」

 

いや~…ありがたいけどさ。

 

「ありがとうね。」

 

「どうぞ!こちらです!」

 

目の前に出されたのはトラウマの王家グルメ。

なんでこれをチョイスした?

 

「私も同じものです!」

 

何考えてんだお前。

味はいいけど見た目考えろよ。

 

「…いただきます。」

 

 

~お食事中~

 

「テゲトフさんは明日の作戦に参加するんですか?」

 

「ああ、初めての作戦だから緊張しちゃうかもね。」

 

「大丈夫です!テゲトフさんならすぐに慣れちゃいますよ!」

 

「はは、ありがとう。」

 

王家グルメも残すところ2、3割くらいのところでジャベリンとの会話に花を咲かしている。

根はいい子なんだよな。

 

「ジャベリンも演習お疲れ様。すごかったね。」

 

「テゲトフさんが見ていたので張り切っちゃいました!」

 

別のところにそのやる気を使った方がジャベリンのためなんだろうけど、本人がそれでいいなら言わないでおくか。

 

「ジャベリンは他の国で知っている子とかはいるか?」

 

「他の国でですか?う~ん、いないですね。ごめんなさい。」

 

「謝らなくていいよ。俺から聞いたことだし。」

 

他の国のKAN-SENとも仲良くできそうなのに以外にいないんだな。

 

「ごちそうさま。」

 

食べ終わったので片づけをしてジャベリンも食べ終わるのを待とうとしたが…

 

「テゲトフさんは先に帰っちゃっても大丈夫です!」

 

「じゃあそうさせてもらおうかな。」

 

作戦内容の予習もしておきたいから早めに部屋に帰った。

ちなみにカレーがあったの忘れてたから明日の朝飯にする…多分。

 

~~~~~~~~~~

 

「…大体は頭に入ったからいいかな。」

 

机に書類を置き、シャワーを浴びてくる。

 

 

~少年シャワー中~

 

「ってまたパジャマをベッドに置いてきてしまったよ。」

 

「ダイドーさんいないよな?…よし!」

 

ベッドからパジャマを持ってシャワー室で着替えようとするが、運悪くダイドーさんが帰ってくる。

 

「あ…も、申し訳ありません!」

 

…鼻血が出てない?

めっちゃ免疫付いたんだなダイドーさん。

こんな滅茶苦茶なことに巻き込んですみませんでした。

 

ダイドーさんに迷惑が掛からないように早く着替える。

 

「もう大丈夫ですよダイドーさん。」

 

「先ほどは大変失礼いたしました。」ガチャ

 

「いいよ俺が悪いし。」

 

「…一日目もこのようなことがありましたね。」

 

「偶然かな?はは。」

 

少し寂しそうにするダイドーさん。

 

「テゲトフ様、私のわがままを聞いてはくださりませんでしょうか?」

 

「可能な範囲ならいいよ。」

 

ダイドーさんがこうやって来るの初めてだな。

なんか新鮮。

 

「私のことをダイドーと呼んでください。」

 

「…分かったよ、ダイドー。」

 




感動シーン?
そんなの書けるわけないじゃん(俺の文章力的に)


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初めての戦闘

 

「いよいよか。」

 

今日は俺にとっては初めての作戦参加だ。

不安はあるものの調子は悪くない。

 

「緊張してしまうな…」

 

いつもは慣れている兵装の展開に手間取ってしまう。

饅頭達の助けを借りて何とか無事にできた。

 

「落ち着きがないね~」

 

「指揮官…」

 

「リラックスリラックス。」

 

指揮官が来たことで第三艦隊のみんなが整列をする。

少し遅れて俺もそれに加わる。

 

「みんな揃ってるね~?」

 

「ああ、いつでもいいぞ指揮官。」

 

「お~け~」

 

表情を変え、真剣な顔になる。

 

「今回の作戦は極めて重要なものだ!成功以外は許されない。」

 

「だが、私としては失敗してもいいから誰一人も欠けずに帰還してほしい。」

 

「第三艦隊!出撃せよ!」

 

「「「はっ!」」」

 

全員で返事をし、ユニオン方面に舵を取る。

 

「全艦、進め!」

 

ウェールズの号令で動き出す。

徐々にスピードを上げていきウェールズに合わせる。

基地が見えなくなるところまで進んだところで無線から声が聞こえる。

 

『今のところ大丈夫そ?』

 

「指揮官、まだ出撃して数分しか経っていないぞ。」

 

『私は心配性だからね~』

 

「自分で言うそれ?」

 

さっきのとは違い、指揮官はいつも通りに戻ってた

 

『ユニオンの方も後少ししたら出撃してくるだろうから、合流地点付近の索敵をしておいてね。』

 

「了解。」

 

合流地点を目指し、隊列を組みながら進む。

 

~~~~~~~~~~

 

「後どれくらいだ?」

 

「もう数分進んだら到着する。」

 

ウェールズに確認をし、息を吸う。

その時、フォーミダブルさんが叫んだ。

 

「11時の方向、敵を発見しましたわ!」

 

「残党がいたか…」

 

「方向転換!」

 

全員セイレーンがいる向きへ砲塔を構える。

 

「前衛艦隊、進みます!」

 

ダイドーさんを先頭にセイレーンに向かって進む。

数十秒後、声が聞こえる。

 

「接敵しました!」

 

「テゲトフ!砲撃用意だ!」

 

「おし!」

 

主砲をセイレーンの方に向け、狙う。

セイレーンはKAN-SENと同じような人型ではなく、黒くて所々光っている船だった。

 

「あれがセイレーン…」

 

「…全艦、撃て!」

 

ウェールズの声の直後、砲撃をかます。

弾は山なりに飛んでセイレーンに命中した。

 

弾が当たったセイレーンは数秒後に爆発しながら沈んでいった。

 

「自爆ボートに突破させました!」

 

前衛艦隊が撃ち漏らしたセイレーンが突っ込んでくる。

爆弾をボートに乗せた名前通りの見た目だ。

…饅頭が操縦してる?

 

「危ないテゲトフ!」

 

「え?」

 

回避行動をとるのを忘れてボートがぶつかる…

 

と思ったけどギリギリで避けた。

 

「あっぶね!」

 

倒れそうになったが、バランスを何とか戻す。

 

「ここは戦場だ、油断するんじゃない!」

 

「す、すまないウェールズ。」

 

「それにテゲトフが損傷をしたら悲しいし…」ボソッ

 

ウェールズが最後なんか言っていたけど聞き取れなかった。

また主砲を構えて狙う。

 

「爆撃機が来ますわ!」

 

今度は上空から爆撃機が飛んできた。

機関銃と対空砲で数機は撃ち落とせたが残った機体が爆弾を投下した。

 

「うわぁ!」

 

周りに水しぶきが立つ。

幸い当たったのはわずか一発のみで、被害は少ない。

 

「大丈夫かウェールズ!」

 

「私とフォーミダブルは大丈夫だ。」

 

「よかった…」

 

ほっと胸をなでおろす。

戦闘を終えたのか前衛艦隊のダイドーさん達も帰ってきた。

 

「敵を殲滅しました。」

 

「ご苦労だったな。しかしここまで多いとは…」

 

「残党同士で集まったんじゃないか?」

 

「それにしては多すぎる気がするな。」

 

「とにかくまずは合流地点に行った方がよいと思いますわ。」

 

フォーミダブルさんの一言で艦隊は元の配置に戻る。

 

「悩んでいても仕方がない。合流地点に行ってから考えるか。」

 

艦隊は再び進軍し、合流地点へと向かう。

 

~~~~~~~~~~

 

「やはり何かがおかしい…」

 

合流地点に着き周辺の警戒をしているとウェールズが呟いた。

 

「本当にここが合流地点なのか指揮官?」

 

『そうなんだけど…何かあった?』

 

「ユニオンの艦隊がいない。」

 

合流地点に到着してから数十分経過ているのに艦隊は見つからない。

 

『時間もあっているはずなんだけど…」

 

「もう少し待ってみるが、何もなかったら帰還する。」

 

『分かった。』

 

指揮官との通信を終えたウェールズに近寄る。

 

「ユニオンの方でトラブルでもあったんじゃない?」

 

「いやユニオンは自由なKAN-SENが多いからそれで遅れているんだろう。」

 

ウェールズが冗談で返し、少し笑ってしまった。

フォーミダブルさんも偵察機を飛ばしているが情報は無い。

 

「前衛艦隊は特に被害なしで今のところ問題点は無いんだけど。」

 

ユニオンも同じくセイレーンと遭遇して戦闘中かもしれない。

けどいつまで経ってもユニオンの艦隊は来ない。

 

 

~もう数十分後~

 

「…仕方がない。帰還することにするわ。」

 

「了解。」

 

第三艦隊の全員が来た方向を戻る。

 

 

…はずだった。

 

「!?」

 

どこからかセイレーンが突然現れ進路を塞がれる。

 

「この…!」

 

主砲で撃破しようとした刹那、上空から話しかけられる。

 

「その砲塔を下げなさい。」

 

「誰だ!」

 

「下げなさいと言ったはずだ。」

 

攻撃をされる。

が、わざと外したのか、その攻撃は当たらなかった。

 

「だ、誰よ!」

 

「我々は取引をしに来た。」

 

「何が目的だ!」

 

「うるさい。黙れ。」

 

「…っ!」

 

今度は撃つとばかりに主砲みたいなものを向けられる。

これにはウェールズも大人しく従うしかなかった。

 

「率直に言おうか。その男をよこせ。」

 

「俺か?」

 

指を差され驚く。

 

「素直にこちらに来たらここら辺の海域からは撤退しよう。」

 

つまり、俺と海域の取引。

一体何が目的だ?

 

「…ません。」

 

「ん?」

 

「テゲトフ様は渡しません!」

 

「ダイドーさん!?」

 

声を荒げたのはダイドーさん。

そいつに主砲を向け、威嚇する。

 

「テゲトフ様は私…いいえ、ロイヤルにとっての大切な仲間です!渡すわけにはいきません!」

 

「その通りですわ。テゲトフさんとの付き合いはまだ短いですがそれでも大切な仲間なんですの。」

 

「ここはお引き取り願えませんこと?」

 

「それが回答か?」

 

奴は砲塔を上に向けたかと思うと

 

「ならば沈め。」

 

空に向けて砲撃をした。

瞬間、セイレーンが大量に出現。

一瞬にして俺たちは囲まれてしまった。

 

「畜生ッ!」

 

「やらせはしません。」

 

必死に攻撃をするが数隻沈めるたびにまた数隻現れるの繰り返し。

 

「くっ…!」

 

次第に損傷が増えていく。

ユニオンの艦隊が来ないのもあいつが手を打っていたのだろう。

 

「喰らえ!」

 

空中にいるあいつに向け砲撃する。

数発の命中が確認できた。

 

「無駄だ。」

 

「なっ…」

 

攻撃が当たっても動じずに奴は余裕の笑みを浮かべていた。

成すすべがない。

 

「何とか穴さえ作ることができれば…!」

 

ウェールズはこの囲いに穴を空けてそこから脱出させるつもりだろう。

だがここまで敵の数が多いとそれも無理がある。

弾薬も底をつきかけている。

 

「くたばれ!」

 

量産型の船も爆弾ボートも何隻沈めたか覚えれなくなった時、

奴が攻撃をやめさせまた話しかけてくる。

 

「勝てないのは分かっただろう?」

 

「…」

 

「今ならまだ他の奴らは見逃してやろう。こちらに来い。」

 

「…俺は、どうすれば…」

 

仲間だとダイドーさんに言われ、うれしかった。

でも俺が奴の元に行かないとウェールズもダイドーさんも、みんな助けられなくなるかもしれない。

 

『私としては失敗してもいいから誰一人も欠けずに帰還してほしい。』

 

指揮官の言葉を思い出す。

二つの思いがぶつかり合う。

その結果俺が出した答えは…

 

「俺は…」

 

「そこまでよ!」

 

「何?」

 

横から砲撃音が聞こえ、振り返るとエリザベスさん率いる第一艦隊がいた。

 

「グロスターのSOS信号を受けて来たわ。感謝しなさい。」

 

奴と話していた時、グロスターさんだけ静かだったのはSOS信号を発信していたからなのか。

 

「ロイヤルの第一艦隊か…これでは分が悪いな。」

 

「覚えておいた方がいい。我々はまだ貴様、テゲトフを諦めていない。」

 

「待ちなさいよ!」

 

追撃にエリザベスさんが一斉射撃をするが、躱される。

奴が消えると周りにいたセイレーンも消えて行った。

 

「ふん!腰抜けね!」

 

「ありがとうございますエリザベスさん。」

 

「構わないわ。仲間を守るのはロイヤルの女王としての責務なのだからね!」

 

仲間…ね。

 

他の第一艦隊の人達はウェールズ達の救護をしていた。

俺とダイドーさんはまだ進むくらいはできるが、アマゾンさんやグロスターさんにはそれもきつそうだった。

フォーミダブルさんも艦載機の発艦ができない状態だ。

でもウェールズが一番ひどかった。

 

砲塔の先は壊れ、体のところどころからは血が流れ落ち、立っているのが不思議なくらいだ。

 

「ウェールズ、大丈夫か?」

 

「大丈夫に見える…?」

 

「見えないよ…」

 

肩を貸してウェールズを支える。

 

「私もお手伝いいたします。」

 

反対側からもベルさんが肩を貸し、二人で基地までウェールズを連れて行った。

 

~~~~~~~~~~

「報告は以上だ。」

 

「まさかそんなことが起きていたとはね。」

 

執務室で起きたことをありのまま報告した。

突然現れ、交渉を仕掛けられ、ボロボロになるまで戦い、今に至る。

 

「しかし、何故そいつはテゲトフを欲したんだ?」

 

「そこまでは分からない。男のが目的なのか、男のKAN-SENが目的なのか…」

 

「まあ、テゲトフも休んできたら?損傷が少ない方だったとはいえ怪我をしていないわけではないんだから。」

 

「そうだが…」

 

「ウェールズ達のお見舞いでもしてきな。多分治療は終わっている頃だろうし。」

 

「…そうさせてもらうよ。」

 

執務室を出て病室へと向かう。

 

「…しゃべるセイレーン…」

 

「ユニオンの方にも聞いておこう。」

 

 

~病室~

 

「体は痛くないウェールズ?」

 

「ああ、大丈夫だ。」

 

さっきまであった傷は消えている。

他の人達もそうだ。

 

「グロスターさん。ありがとうございます。」

 

「何がでしょうか?」

 

「エリザベスさん達を呼んでくれたのはグロスターさんですよね?これで俺たちは助かったんですよ。」

 

「私はただ当然のことをしたまでです。」

 

俺から目を背ける。

もしかしてこの前手に触れたことで嫌われている?

 

「アマゾンさんは?」

 

「先に戻って行ったわ。」

 

アマゾンさんも結構損傷があったはずなんだけどな。

流石だな。

 

「私もそろそろ部屋に戻ろうかしら。」

 

「あんまり無理はしないでくれよ?」

 

「それはテゲトフね。」

 

「はは、そうかもね。」

 

俺も部屋へ帰ろうか。

 




詰め込み過ぎたわ。


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恋人(?)が出来たって言えばいいの?

もう無理矢理な展開にしてやるわ。


 

「また何かあったんですか?」

 

「別に悪いことではないよ。」

 

放送で指揮官に呼ばれたので、執務室で第三艦隊の全員が並んでいる。

 

「作戦は失敗したけど、目的は成功したらしい。」

 

「?それはどういうことですか?」

 

「まあ簡単に言うと…ユニオンとの連絡船の航路からセイレーンの撤退が確認されたみたい。」

 

作戦の目的は連絡船の安全を確保することだったからか。

つかなんで撤退した?

 

「撤退した理由は?」

 

「不明らしい。」

 

「ユニオンのレーダーで索敵してもセイレーンの反応が無かったとのこと。」

 

気がつかぬ間にそんなことが起きていたのか。

 

「どうもユニオンの方にもセイレーンが現れて、合流するはずだった艦隊が対応に追われていたんだと。」

 

「あっちもあっちで災難ですわね。」

 

合流地点にいつまで経っても現れなかったのはそれか。

 

「とにかく、お疲れ様。」

 

「君たち第三艦隊には休みを与えるから。」

 

「作戦に失敗したのにですか?」

 

「大目に見たら成功してるからいいんだよ。」

 

そんなもんかな。

まあいいや。

 

「頑張ったんだから遠慮はしなくていいよ~」

 

「ありがとう指揮官。」

 

続々と部屋からウェールズ達が出ていき、最後に俺が出た。

 

「…さてと。」

 

「ベルはどうしようか?」

 

~~~~~~~~~~

 

「な~んでこんなことしちゃうんだよ~…」

 

ベルがテゲトフに危害を加えた事件の処罰が未だ決められない。

テゲトフにも犯人はベルだと伝えれないし…

ベルにも直接いえないよね。

 

「どうしろと?」

 

最初は軽い罰に出来ないかと思ったが、よく考えなくても外部にバレたら解体以外は免れない。

 

「多分このことは私しか知らないからな~」

 

「…取り敢えず書類上は謹慎処分で処理はしておこう。」

 

「ほんとの罰は後からにしよう。」

 

~~~~~~~~~~

 

「てか休みもらってもいつもと変わらんな。」

 

演習くらいしかやることなかったからな。

委託任務も任せられないだろうし。

 

「あっ!テゲトフさ~ん!」

 

「よっすジャベリン。」

 

俺を見つけたジャベリンが走ってくる。

なんか手に持ってるな。

弁当箱みたい。

 

「どうした?」

 

「これから外でピクニックしようとしてたんです!テゲトフさんも来ます?」

 

「俺が行ってもいいもんなの?」

 

「大丈夫です!私しかいないので!」

 

「ジャベリン…」

 

それはピクニックと言えるのか?

でもジャベリンが可哀想に見えてきたから行こう。

 

「私この前綺麗な景色が見れる場所見つけたんです!」

 

「じゃあ案内よろしく。」

 

ジャベリンの後をついて行く。

昨日きた場所を通過して丘の上で止まった。

 

「ここ?」

 

「はい!」

 

確かに、ここから見える海の景色が綺麗だ。

今はまだ日が昇っているけど、日の出とか日没をここで見ると更に綺麗だろうな。

 

「シートを敷くか。」

 

「手伝います!」

 

ジャベリンから手渡されたシートは一人用の大きさのものだ。

…一人用?

 

結果 、こうなる。

 

「…///」

 

「なんでもう少し大きいのを用意しないのかね。」

 

俺がシートの上に座り、俺の膝にジャベリンが座る。

ジャベリンは恥ずかしいのか手で顔を覆ってる。

 

「ごめんなさい…///」プシュー

 

「別にいいよ。」

 

なんかジャベリンの頭から湯気が出ている。

まあ一人で行こうとしていたからな。

シートの大きさはどうしようもない。

 

「おおおお弁当食べましょう!///」

 

「落ち着け。」

 

テンパっているジャベリンを落ち着かせる。

ジャベリンがとり出した弁当箱の中身は全部サンドイッチだった。

 

「美味しそうだな。」

 

「頑張って作りました!」

 

KANーSENにも女子力っていう概念はあるのか?

料理できるならあるか。

 

「いただきます。」

 

中から一つ取り出して口に放り投げる。

サンドイッチに挟まれていたのはハム。

普通においしい。

 

「どうですか?」

 

「美味しいよ。」

 

「やったー!」

 

喜ぶジャベリンが可愛い。

でも膝の上で喜ばれると顔に手とか当たりそうで怖いんだ。

 

「今日はありがとうな、ジャベリン。」

 

「ふぇ?」

 

「助けに来てくれてなかったら俺は今頃ここにいないよ。」

 

あの時にジャベリン達が来てくれなかったら奴に連れて行かれただろう。

 

「そんな悲しいことは言わないで欲しいです…」

 

「ごめん。」

 

「でもテゲトフさんが無事で良かったです!」

 

無事とはいえKANーSENとは少し違う俺は包帯とか巻いているけどね。

 

「優しいね。」

 

ジャベリンの頭を撫でて答えた。

 

「て、テゲトフさん…///」

 

「嫌だった?」

 

「嫌じゃないです///」

 

照れているジャベリンも可愛い。

…思考がどんどん犯罪者みたくなっている。

でも俺まだ15歳だし後輩可愛がっているだけにならんかな。

 

「こ、これって付き合っていることになりますよね!///」

 

「ん?」

 

「テゲトフさんは私のこと好きですか?///」

 

「(仲間としては)大切だと思っているよ。」

 

なんか変だな。

勘違いされているというか…

 

「私もテゲトフさんが大好きですー!///」

 

?????

ジャベリンに抱きつかれた。

もしかして頭を撫でたことで俺がジャベリンのことを好きだと思われ、大切と言ってしまって更に勘違いが進んでしまったというのか?

 

でもここで否定をしてしまったらジャベリンが恥ずかしい思いをして話し辛くなってしまう。

ならばここは穏便にそういうことにしておけばいい。

未来の俺が後のことはなんとかしてくれるはず(諦め)

 

「はは…」

 

「私、幸せです!///」

 

なんか…もう…

貞操観念逆転してるとこういうこともあり得るんかな…

指揮官になんて話せばいいんだよ…

 

~~~~~~~~~~

 

「てことがあったんですけど…」

 

「ふざけんなお前。」

 

やっぱ怒られるよなー

覚悟は出来てはいる。

 

「私だってテゲトフみたいな彼氏ほしいわ!」

 

「指揮官?」

 

「じゃなくてお前自分の立場本当に理解している?」

 

「面目もございません。」

 

「はぁ…ジャベリンを呼ぶか。」

 

 

~呼び出し中~

 

「どうしました指揮官?」

 

「テゲトフと付き合っているってマジ?」

 

「はい!テゲトフさんとは恋人になりました!」

 

元気よく返事をしているけどこの後、悲惨なことになりそう。

 

「そのことについてなんだけど…」

 

「はい!」

 

「そのことについて…」

 

「…」ニコニコ

 

「ついて…」

 

「…」ニコニコ

 

「…健全な付き合いをしてね(涙目)」

 

指揮官!?

諦めないでくださいよ。

 

「分かりました!」

 

ジャベリンは帰っていった。

 

「…何してんすか。」

 

「無理だよぉ…今まで娘みたいに思ってたから無理だよぉ…」

 

なら仕方ない。

…指揮官それで彼氏欲しいと思ってたん?

犯罪者予備ぐn…

 

「それ以上いったら犯すぞ。」

 

「心を読まないでください。」

 

~~~~~~~~~~

 

「これダイドーさんにバレたらやばそう。」

 

今日でダイドーさんとの生活も終わりだが、タイミング悪く俺がジャベリンと付き合う(?)ことになったからな。

 

「不安過ぎる。」

 

あの人重い人だからな。

バレたら、

 

『やはりダイドーは捨てられるのですね…』

 

とか言いかねない。

 

「今後のロイヤルでの立場に影響しかねないのが笑えないんだよな…」

 

さてどうする愚か者テゲトフ。

 

こうなったらもうどうしようもない気がしないでもないが、どうしよう。

 

「殴られる覚悟で別れを切りだすか?」

 

でも価値観とか全く違うから必死で止められそう。

そうなると申し訳がなさ過ぎる。

 

「でもジャベリン可愛いしもういいんじゃないかな…」

 

「少々よろしいでしょうかテゲトフ様。」コンコン

 

「ベルさん?」

 

「失礼いたします。」ガチャ

 

何故ベルさん?

また何かあったのかな。

 

「どうしました。」

 

「小耳に挟んだ事なのですが、ジャベリンさんとお付き合いを始めたのは事実でしょうか?」

 

「そうですけど…」

 

もうバレたのか。

でもベルさんなら黙っていてくれるだろう。

 

「すまないけどそのことは黙っていてくれない?」

 

「言いふらしたりする気はございません。」

 

良かった。

今ならまだなんとか防げる…

 

「テゲトフ様に所用がございます。」

 

「?」

 

「私に…

 

 

襲われてもらいます♡」

 

「…え?」

 

瞬間、ベルさんに押し倒される。

 



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え…ナニコレ?

詰め込み過ぎた(三回目)
ちなみにアンケートします。


 

「は?え?は?」

 

状況の理解で出来ず、そのまま手を押さえられる。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!何をしようとしているんですか!?」

 

「テゲトフ様との既成事実を作ろうとしているのですが…問題でもございましたでしょうか?」

 

「マズイですよ!」

 

どうしてこんなことをしようとなったのかは分からんが、まずは暴走(?)しているベルさんを止めないと…

 

「やめましょうよこんなこと!」

 

押さえられている手を解放してベルさんを押し返す。

よし!(盛大なフラグ)

 

「抵抗をしない方が身のためですよ?」

 

「ぐはぁ!?」

 

横腹に激痛が走った。

え?殴られた?

 

「あまり手荒な真似はしたく無かったのですが…」

 

手をまた押さえられ手錠を付けられる。

しかも普通の手錠よりも分厚い。

 

「こちらは対KANーSEN用の手錠ですので破壊することは容易ではありません。」

 

うっそだろ。

なんでそんなに用意周到なのかな。

もっと他のことに時間使った方が身のためだろ(怒)

 

「なんでこんなことしようとするんですか!そんなにも俺のこと嫌いだったんですか!?」

 

「嫌いではございません。むしろ、好意を抱いております。」

 

「え?」

 

ってきり俺のこと嫌いすぎてロイヤルから無理矢理な手段で追い出そうとしているのかと…

でも好きな相手にすることではないよな?

 

「じゃあ外してください。」

 

「それは聞けない願いでございます。」

 

なんでや!

一応ジャベリンと付き合っていることにはなっているんやぞ。

 

「では、失礼いたします。」

 

「ヤメロー(社会的に)シニタクナイ、シニタクナイ!」

 

「テゲトフ様、いらっしゃるでしょうか?」コンコン

 

「!?」

 

今の声…ダイドーさんか!

よかった、これで助けを求めれb…

 

「むぐっ!?」

 

「少しお静かにお願いします。」

 

口の中にタオルを詰められる。

手も拘束されているからまじで何もできない。

ついでにベッドに縄で縛られてる。

 

ほんとに準備がいいですね(涙目)

 

「どうしましたかダイドー?」ガチャ

 

「め、メイド長!?」

 

「どうしてメイド長がテゲトフ様の部屋に…」

 

「掃除中です。ダイドー、あなたの仕事はどうなったのですか?」

 

「終わったのでテゲトフ様の元に行こうと…」

 

「終わったのでしたら新しく仕事を与えます。」

 

「は、はい…」

 

唯一の希望がベルさんによって打ち壊されていく。

もう狂人にしか見えなくなったよ…

 

「では失礼します。」

 

足音が部屋から遠ざかっていく。

ああ…行ってしまった…

 

「邪魔が入ってしまいましたが…続きをいたしましょう。」

 

「嫌です(断固拒否)」

 

「これでテゲトフ様も私もロイヤルをやめることになりますね。」

 

「無視かよ。」

 

俺の言うことなんか耳に入らないのだろう。

もうこのまま諦めて犯されるのか…

 

「テゲトフいる~?」コンコン

 

「…またですか。」

 

今度は指揮官が来た。

けどまたベルさんが上手いこと帰させるんだろ(諦め)

 

「どういたしましたでしょうかご主人様?」ガチャ

 

「げっ…ベル…」

 

~~~~~~~~~~

 

テゲトフに取り敢えずベルのことを忠告しようとテゲトフの部屋に行く。

放送で呼び出してもよかったのだが、さっき呼び出したばかりで悪い気がしたから直接部屋に行くことにした。

 

「テゲトフいる~?」コンコン

 

テゲトフなら対してやることないし今の時間なら部屋にいるでしょ。

 

「どうしましたでしょうかご主人様?」ガチャ

 

「げっ…ベル…」

 

なんでテゲトフの部屋からベルが出てくるの!?

 

「テゲトフはいない?」

 

「テゲトフ様でしたら留守にしておられます。」

 

ベルが言うことじゃないでしょそれ。

 

「ちなみにベルは何をしているのかな~?」

 

「掃除でございます。」

 

「ほ~ん…」

 

多分嘘だろう。

視線が少し私の目からずれているし、手もなんだか少し震えている。

テゲトフが危ない。

助けなきゃ(使命感)

 

「私も入っていいよね~?」

 

「ご主人様、仮にも男性の部屋に目的もなく入られるのはどうかと思われます。」

 

「え~、別にいいじゃん。減るもんじゃないんだからさ。」

 

「プライバシーの侵害になります。」

 

それ以上にとんでもねぇこと既にベルはやってしまっているけどね。

 

「…そこだ!」

 

「させません。」

 

ドアとベルの隙間から部屋に入ろうとしたが、止められてしまう。

一筋縄ではいかないか…

 

「うぉぉぉ!」

 

「ご主人様…」

 

試しにベルを押してみるけどビクともしない。

人間がKANーSENに勝つなんて無理でしょうね。

 

~~~~~~~~~~

 

指揮官がドアでベルさんと話しているけど、なんとか助けてをこの状態から求れないかな?

 

手•拘束されている

口•タオルで塞がれている

胴体•ベッドに縛りつけられている

 

…詰みって言うんですかね、これ。

どうあがいても絶望やん。

 

…靴紐もさっきベルさんが踏んだから解けてしまったし。

靴?

そういや足だけは動かせるな。

 

そうだ!これで靴を飛ばせば…

オラァ!

 

靴は勢いよくベルさんの横の壁にぶつかる。

パーンという音が響き渡る。

 

「!?」

 

ベルさんが驚いて後ろを振り向いた瞬間に指揮官が部屋の中に入りこむ。

 

「て、テゲトフ!?」

 

~~~~~~~~~~

 

まさかここまでし貼り付けられているとは思わなかった。

タオルを取って、

急いで縄を解く。

 

「ありがとう指揮官。」

 

「礼は後にしてね~」

 

解けた縄を床に置いてテゲトフを立たせる。

 

「さてと、ベル。何か言うことはある。」

 

「…失敗しました。」

 

「倉庫での事件もバレているからね。」

 

「…」

 

黙り込んでいるベルに近づく。

ベルに触れようとしたら…

 

「…っ!」

 

横を通り抜けられ、テゲトフに近づかせてしまう。

 

「危ない!」

 

「こい!」

 

テゲトフが身構える。

ベルが突っ込む。

そしてジャベリンがベルを倒す。

 

…え?

なんでジャベリンがここに?

 

「大丈夫ですかテゲトフさん!?」

 

「だ、大丈夫だけども…」

 

テゲトフは拍子抜けしている。

まあ、仕方ないか。

 

~~~~~~~~~~

 

「あ、ありがとうね。」

 

「テゲトフさんの為なら何処でも駆けつけます!」

 

ベルさんから救ってくれたのは有難いんだけど…なんか、自分より小さい女の子に救われたって考えると心が虚しくなる。

 

いやまぁ、女が男を助けるのが普通と言われるような世界だから当たり前のことなんだろうけど…

プライドが…

俺ってこんな弱かったのかよ…

 

「(俺って)弱いなぁ…」ボソッ

 

「!?」

 

「て、テゲトフさん…」

 

演習の数を増やしてなんとか強化できるようにしよう。

 

「…私、テゲトフさんを守れるほど強くなります。」

 

「ん?」

 

急にどうしたジャベリン?

 

「だからその時まで恋人はお預けにしていいですか?」

 

「え?いいけど…(理解できてない)」

 

「必ず強くなるので待っていてください!」

 

部屋から出ていったジャベリンを見守る。

…何がしたかったんだ?

 

「いい方向で片付いてくれてよかったね。」

 

「どういうことがです?」

 

「テゲトフとジャベリンとの恋人関係は一旦中止ってこと。」

 

「?」

 

「簡単に言おう。お前は振られた。」

 

へぇ…

嫌われている訳ではなさそうだからいいのか?

でも悩みはなんとかなったな。

 

「…」

 

「…ベルさんどうします?」

 

「私の方で何とかしておくよ。」

 

「分かりました。」

 

倒れているベルさんを抱え上げ、病室まで歩いていく。

 

「気が利くね。」

 

「指揮官じゃ運べないでしょう?」

 

「あはは、そうだね。」

 

~~~~~~~~~~

 

「よいしょ。」

 

ベルさんを病室に運んだ後、散らかった部屋の掃除をする。

 

「ベルさんはどういう扱いになってしまうんだ?」

 

指揮官から聞いた話。

倉庫で俺を襲ったのはベルさん。

 

俺はそこまで怒っている訳ではないし、そんなに厳しくしないでほしい。

 

「最悪解体か…」

 

懐かしのベルさんから貰った本を手に取る。

いろんなことが書いてあるこの本。

当然ながら、このような場合の処遇も記載されている。

 

「皮肉なもんだ。」

 

俺もベルさんにある程度の好感を持ってたのに…

でも一部俺が悪いな。

 

「…指揮官に聞いてみるか。」

 

 

~執務室~

 

「ベルさんはどうなります?」

 

「そのことね…」

 

いざ来てみると心臓がドキドキしてしまう。

 

「ベルはね…」

 

「…」ドキドキ

 

「…」

 

「…どうなったんですか?」

 

「…一週間の謹慎処分。」

 

ズッコケた。

けど少し安心した。

 

「まあテゲトフもご飯食べてきたら?」

 

時刻は18時30分。

夕食を食べ始める頃だろう。

 

「そうさせてもらいます。」

 



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ユニオン
新設基地ですと?


休んでてすみません。
大事な用事があったもんで…



 

ロイヤルに来て数か月…

ロイヤル全員の名前も覚えた。

これは完全に慣れたと言っていいでしょう(ドヤ顔)

 

「さ~て、久々に指揮官から呼び出しか~」

 

作戦にも何回か参加して戦いにも慣れたのだ。

多分また作戦関係だろう。

 

「開けろ!デトロイト市警だ!」バァーン!

 

「落ち着け。」

 

「で、どうしました?」

 

「お前数日見ない内にキャラ変わった?」

 

メタい話をすると止まらなくなるからここまでにして、指揮官の話を聞くとしようか。

 

「テゲトフに伝えなくてはならないことがあるんだ。」

 

「愛の告白ですか?」

 

「していいの?」

 

「やめてください。」

 

「こほん…さて、テゲトフにはまたユニオンと協力してもらおう。」

 

ユニオンと協力?

今度はなんだよ。

 

「ていくか前回協力できていなかったはず…」

 

「そんなことはどうでもいい。」

 

アッ、ハイ。

 

「アズールレーンについては知っているよね?」

 

「全陣営が参加していた組織ですね。」

 

「まあ、今は主要国家がロイヤルとユニオンしかいないけど。」

 

指揮官は引き出しの中から一つの書類を取り出し、俺に差し出す。

 

「アズールレーン新設基地?」

 

「そう。」

 

「新しく基地ができたからロイヤルとユニオンの主力KAN-SENをまた集合させるんだ。」

 

「へ~」

 

俺って主力だったんだ。。

内容を読んだ限りでは、セイレーンというよりかはレッドアクシズに圧力をかけるためなのかな?

最近セイレーンも少なくなったしそっちに手を付けるのか。

 

「ロイヤルからは俺をそこに出そうということ…ですか。」

 

「うん。」

 

「分かりました。それで出発はいつですか?」

 

「明日。」

 

「は?」

 

なんで今日に伝えるんだよ。

もっと前もって伝達してくれません?

 

「はぁ…もっと早く言ってくださいよ。」

 

「忘れてたわ。」

 

「キレそう。」

 

文句を垂れ流しながら執務室を出た。

 

 

~テゲトフの部屋~

 

「ていうかなんで書類に持ち物とか書いているんだよ…」

 

しおりかよ。

それでアズールレーン基地には何か月か滞在することになるらしいので服とかをバッグに詰めている。

 

「俺の他には誰が行くんだ?」

 

ロイヤルとユニオンで合同の艦隊とかも編成するだろうし、あらかじめ知っておいた方がいいよな。

 

「…指揮官のことだし俺の知っている人とか入れているでしょ。」

 

ウェールズ辺りとか絶対に入っているじゃん。

まあありがたいからいいんだけど。

 

「これバックに全部入るかな?」

 

服の他にも歯ブラシとかの日常生活用品を入れるからバックがパンパンだ。

でも何とか全部入ったぞ。

 

「よし!」

 

「もう寝る!じゃあな!」

 

盛大にベッドにダイブし、眠りにつく。

夕食の時間には起きるだろう。

お や す み 。

 

 

~早朝(!?)~

 

「…やっべ。」

 

寝過ごしたなんてレベルじゃないくらい寝てたわ。

最後に寝たのが16時で今5時だから…13時間寝てたのか…

人として大丈夫なのか自分を疑うわ(こいつは今KAN-SENです)。

 

「テゲトフ?いるか?」コンコン

 

「ウェールズ?どうしたの?」

 

「おはようテゲトフ。もう全員揃っているぞ。」

 

「おはよウェールズ…ん?」

 

俺だけ遅れているのかよ。

結構恥ずかしいじゃん。

どうしてくれんねん(自業自得)。

 

「準備は終わっているようだな。」

 

「荷物は私が運んでおこう。テゲトフは着替えてドックに来てくれ。」

 

「俺の荷物だから流石に俺が…」

 

「またね。」

 

バックを抱えて早々に部屋から出て行きやがった。

もうすでにちゃんとした服だけど…シャワー浴びてくるか。

 

 

~高速シャワー・着替え中~

 

 

爆速で終わらせたぜ☆

10分未満で終わったのはよかったぜ。

待たせるのも悪いし、さっそくドックに行こう。

 

 

~ドック~

 

「もう少し時間がかかると思っていたのに案外早かったね。」

 

「そうかな?」

 

「男の身支度の時間って長いからさ。」

 

それはこの世界の男だけです。

…俺の方でもそうなのかな?(オシャレとかしない)

 

「まあ全員いるからテゲトフも早く船に乗りなよ。」

 

「はいは…船?」

 

顔を上げてみたら軍艦が停泊していた。

艦橋には見知った人影も見える。

 

「どうやって用意したんですか?」

 

「え?兵装を出したらこうなるんじゃないの?」

 

KAN-SENってこういうことできたんだね…

どうやらまだ俺も知らないKAN-SENの秘密(?)があるみたい。

 

「テゲトフさ~ん!」

 

ジャベリンが体を乗り出して出して手を振ってきた。

落ちそうで怖いのでやめてください。

 

 

「ジャベリンも行くんですね。」

 

「テゲトフと仲がいい子はほとんどいると思うよ。」

 

気でも利かせたのかな。

ありがたいからいいんだけども。

 

「じゃーねテゲトフ!」

 

「指揮官も元気でな。」

 

出港を知らせる汽笛が鳴り渡り、船がロイヤルの基地から離れていく。

 

「あっ、後ユニオンのKAN-SENにも気を付けてねー!あいつら狼だから。」

 

「はいh…ちょっと待て?」

 

なんでそういうこと今になっていうんですかね?

前もって言ってや(二回目)

でも指揮官はいつもこんな感じだし、どうでもいいか。

 

「ここでもまた一緒に行動ができてうれしいわ。」

 

「ウェールズ。」

 

後ろにいるウェールズに向きを変える。

ウェールズは俺とは関わりが多いし、いるのは当然か。

 

「俺もうれしいよ。」

 

「テゲトフに言われるとドキドキしてしまうな。」

 

「そうかい。」

 

一つ忘れていたことを思い出す。

 

「そういやウェールズ。俺の荷物は?」

 

「…テゲトフの部屋に置いておいたぞ。」

 

変な間があったのは気のせいか?

 

「じゃあその部屋の場所を教えてくれな…」

 

「テゲトフもこれに乗るのは初めてだろう?私が船内を案内するからついてきてくれ。」

 

そこまで船内に興味はないんだけどなー

まあ案内してくれるならせっかくだし行こうかな。

 

「この船ってさ、俺にも出せるの?」

 

「ああ、KAN-SENなら陣営関係なくできるはずだ。」

 

「ほぉ~、ちなみにこれって誰のになるの?」

 

「私だ。」

 

となれば俺が今乗っているのは戦艦プリンス・オブ・ウェールズになるのか。

 

「…駆逐艦でよくない?」

 

「駆逐艦の子はまだ幼い子が多いから私になった。」

 

戦艦だから新設基地に着くまで時間がかかりそうだ。

 

 

~部屋~

 

「ここがテゲトフの部屋になる。」

 

「おおー」

 

船内を案内してもらい、最後に俺の部屋に到着した。

同室の子とかいると思っていたけど俺一人見たい。

 

「予想よりも広いね。」

 

「テゲトフは男性だからな。みんなと同じようにはできない。」

 

「そういう贔屓はやめてほしんだけどね。」

 

そういうこと嫌いなんだよな。

 

「…襲られるわよ?」

 

「そういうことするような人…いなくない?」

 

一人を除いて。

 

「やはり危ないな…」ボソッ

 

「?」

 

最近みんな俺に聞こえないくらいの声量でなんか言っているんだよな。

 

「基地に着くまでまだまだ時間があるからな。テゲトフは自由にしてくれ。」

 

「ほーい。」

 

部屋からウェールズが出て行った後、ベッドに寝っ転がった。

 

「…俺の荷物どこだよ。」

 

ウェールズにパクられた…

 

「はぁ…やることない。」

 

めっちゃ寝たからそこまで眠たくもないし。

かといって暇つぶし用に買っておいた本もバッグの中に入っている。

 

「ユニオンのKAN-SENってどんな人が多いんだろう。」

 

ロイヤルは大人しい(?)人とか優雅(?)な人が多いけど、ユニオンはアメリカみたいな印象(偏見)

…何考えているんだ、俺。

 

 

~~~~~~~~~~

 

「…外の空気を吸いに行こう。」

 

この部屋の中に何時間いるのかすらも分からない程、頭がやられている。

一旦外に出て頭の中を整理しよう。

 

「よいっしょ。」

 

部屋を出て外に向かう。

 

 

~お外~

 

「わー、一面海だな。」

 

基地まで後どれくらいだろうか。

ぶらぶら歩いていると前からウェールズが走ってくる。

 

「なんで今ここにいるんだテゲトフ!?」

 

「え?どうしたの?なんかあった?」

 

「ユニオンの船が近づいてきている。」

 

「それは別によくない?」

 

「ああ…タイミングが悪すぎる…」

 

ウェールズは慌てて俺を船内に入れようとしてきた。

 

「ちょ…何すんだよウェールズ!」

 

「頼むから今だけは大人しく中で待機してくれ!」

 

俺とウェールズで押し問答していると近くにユニオンのKAN-SENと思われる人が飛んできて着地した。

その人は俺とウェールズの方を見てきた。

 

「久しぶりだな!ウェールズ!」

 

この人はウェールズの知り合いか?

 

「ええ…久しぶりねクリーブランド…」

 

ウェールズの顔が焦った顔から絶望した顔に変わった。

久しぶりに会う人ならもう少しうれしくしろや。

 

「ん?そこの人は…」

 

クリーブランドさんが俺の方に目を向けてきたからウェールズを押しのける。

 

「初めまして、戦艦テゲトフです。」

 

名前だけ言っておけばいいだろう。

 

「…へ?」

 

…そんな考えが俺にもありました。

 

「お、お、お…」

 

「お?」

 

「男ぉぉぉぉぉ!!??」

 




文章へたくそでごめんなさい。


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