ドラゴンクエスト~ヴァルレシアの英雄~ (ハチミツボーヤ)
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~世界~

 

・地球

主人公が住む世界。機械が発達しており、インフラストラクチャー(インフラ)が進んでいる。

家電製品や自動車やスマートフォンなどが当たり前に普及しており、飛行船など空を飛ぶ乗り物や、高速で飛行する飛行機なども存在する。

軍事関連では、銃火器やミサイルなどその他兵器、戦車や戦闘機などが当たり前に存在する。

王国や帝国、共和国など数多くの異なる国家があり、特に大国との間でゼロサムゲームが繰り広げられている。

世界地図は、我々が住む世界とほぼ一緒。地球に存在する大国と位置は以下のとおり。

 

オーディン帝国:北南のアメリカ大陸全土

ユーロピア連邦:ヨーロッパ全土

ヴェルナ聖王国:ロシア連邦全土

ケンナード共和国:中華人民共和国、モンゴル、インド、朝鮮半島、東南アジア一部

 

余談だが、ケンナード共和国は人口約20億人以上を抱える。

エルフなどの種族がいるのだが、人魚はいない。前にいたが、とある事情でいなくなった。絶滅したわけではない。

これだけ近代化が進んだ世界に冒険者はいないが、ハンターと呼ばれる職業が存在する。ハンターは冒険者に近いが、危険な地域でのアイテム採取や、犯罪者の摘発や討伐などを中心に活動する。

 

・ヴァルレシア

地球とは別の異世界で、文明レベルが中世に相当する。この世界は魔王軍の脅威に晒されており、その影響で。龍脈と呼ばれるヴァルレシアを支える生命エネルギーも不安定な状態なっている。このままでは作物が育たず、緑豊かな自然と海が死に絶えてしまう。人々は不安を抱き、神に祈り、伝説の勇者の誕生を待ち望んでいる。

ヴァルレシアには3つの国が存在する。

 

エリヴァン王国

マールバラ王国

カイヴァーラ王国

 

もともとバーンスタイン王国とアルトマイア王国も存在していたのだが、十数年前に魔王軍の侵攻で滅ぼされている。だけど、残存勢力が存在し、魔王軍に対抗している。

エルフや人魚などの種族が住んでいる。

 

・魔界

魔族が住む世界。不毛の大地、燃えたぎるマグマ、凍てつく氷河などが存在する地獄のような世界というイメージが強いが、実際は地球とほとんど変わらない世界。日光はないが、人工的な日光によって作物が育ち、龍脈の良い影響もあり、安定した食糧供給を可能とする。

インフラが進んでおり、機械もある。地下資源が地球やヴァルレシアより遥かに豊富で、レアアースやレアメタルと言った貴重な資源がある。その資源で地球各国と取引し、外貨を獲得している

魔界は4人の魔王が統治しており、秩序が保たれている。また、比較的穏健派でもあるのだが、人間と取引していること自体に快く思わない魔族もいる。

 

・天界

神々と竜族とエルフが住まう天上の世界。天界を統治する神々が、地球とヴァルレシアの世界を創造したとされている。緑豊かな自然に恵まれた世界で、そこに住まう者達は平和に暮らしている。

 

~種族~

 

・人間

説明するまでもない。

 

・魔族

姿と肌の色が人間と変わらないが、持っている魔力が強力である。

 

・エルフ

姿と肌の色が人間と変わらないが、耳が尖っているという特徴を持つ。魔力も魔族に匹敵するが、ハイエルフとなれば、神々に匹敵する力を持つ。ハイエルフは人間世界で言う王族で、エルフにとっても神聖視されている。美男美女が多く、グラマーな美女も多い。

 

・竜族

ドラゴンそのもの、と言いたいが普段は人型で日常生活を送っている。もちろん、自らの意思でドラゴンになれる。魔族やエルフを圧倒する実力を持つ。

 

・人魚

おとぎ話などに登場する、上半身が人間で下半身が魚。主に海底世界に住む。海底世界に住んでいるので普通の人間が近づくことはできないのだが、人魚は女性しか存在しないため、少子化に直面している。

普段は人魚の女性が人間に姿を変えて、男性と交わって妊娠して子どもを身篭って海底世界に帰るのだが、相手が見つからずに悩んでいるという。人魚の寿命は500年とされている。

余談だが、人魚が陸に上がって再び海に戻ると泡になるという掟があるのだが、人魚の女王の許可が降りれば、再び海に戻っても泡になることはない。

 

~職業~

本作はダーマ神殿が存在しない。

 

・勇者

説明するまでもない。魔を払い、世界の平和のために戦う特別な存在。ヴァルレシアの言い伝えによれば「世界が闇に包まれようとしているとき、闇を払い、光をもたらすために勇者が現れる」とのこと。魔王の脅威を晒されているヴァルレシアにとって、勇者の誕生を待ち望んでいる。

 

・ゴッドハンド

武道を極めたときに行き着く特別な存在。戦いの神とも呼ばれており、勇者と同等の存在として、ヴァルレシアは神聖視されている。戦いだけでなく、癒す力も持つ。

 

・天地雷鳴士

魔道を極めたときに行き着く特別な存在。魔法の神と呼ばれており、勇者と同等の存在として、ヴァルレシアは神聖視されている。賢者を超えた存在であり、魔法だけでなく自然そのものすら操る、神がかり的な力を持つ。

 

・竜の騎士(ドラゴンのきし)

竜の力を持つ存在。その力は勇者、ゴッドハンド、天地雷鳴士を圧倒するとされる。ヴァルレシアの人々に神として崇められており、魔王と戦う勇者達をサポートしたとか、神が創造した存在だとも伝えられている。

ヴァルレシアに竜の騎士は存在しないが、地球には竜の騎士が複数存在する。猟兵団シュテルネンリヒトに所属する猟兵フロルは過去に竜の騎士と戦い、打ち倒したことがあるのだが、竜の騎士でも負けている部分が多々ある。

 

~用語~

 

・猟兵団

戦争の代行を中心に活動する武装勢力。いわゆる傭兵団でもあるが、戦争関連の依頼を中心に請け負う傭兵団のことを猟兵団と呼ぶ。各地で戦乱が渦巻いているので、猟兵団の需要は高い。また、軍隊に代わって危険な任務を実行し、時として汚れ仕事も請け負う。

取るに足らない低ランクの雑魚猟兵団があれば、大国の軍隊に匹敵する強大な戦力を持つ高ランクの猟兵団も存在する。高ランクの猟兵団を雇う場合は多額のお金が必要だが、どんなに厳しい任務をこなすという高い信頼性もあるので、多額のお金を出し惜しみしないクライアントがほとんど。

高ランクの猟兵団の多くは、戦争以外のシノギを多く持っており、国家予算並の資金力を持つトップクラスの猟兵団も存在する。

猟兵団は地球のみに存在する勢力であり、ヴァルレシアには存在しない。傭兵なら多くいる。

 

・ルイーダの酒場

ヴァルレシア各地に存在する冒険者の斡旋所もしくはハローワーク。冒険者を斡旋してくれる場所であると同時に、ギルドとして人々からの依頼を請け負う場所でもある。ルイーダの酒場でもあるので、本物の酒場として経営している一面を持ち、各地から得た情報も集まってくる。

ルイーダの酒場を経由して、魔王軍と戦うための傭兵を各国から募集されており、多くの冒険者は魔王軍との戦いに参加している。ほとんどの動機が富と名声である。

 

・龍脈

ヴァルレシアを支える世界の生命エネルギー。龍脈が安定していれば、緑豊かな自然が保たれ、常に豊作と豊漁が続くとされる。逆に龍脈が乱れて不安定な状態が続くことになれば、自然が荒らされ、凶作と不漁が続き、食糧難に陥る。龍脈が完全になくなれば、ヴァレルシアの死を意味する。

龍脈は、ある場所に安地された4つのドラゴンオーブによって安定供給されて、ヴァルレシアに恵みを与えているとされる。ドラゴンオーブがなくなっても龍脈がしばらく安定するが、数年は持たない。ヴァルレシアに脅威をもたらす魔王軍はドラゴンオーブを求め、強奪したとされる。

地球にも龍脈があるのだが、魔王軍に襲われることなく安定している。それだけでなく、人類の遺産として、何らかの国際条約がある様子。

 

・魔王軍

魔王ゼーゲルが率いる魔物の軍隊で、ヴァルレシアに脅威をもたらす存在としている。ヴァルレシアを支配するのが目的でヴァレルシア各地に魔物を送ったりしている。ヴァルレシア各国は力を合わせて魔王軍に立ち向かいつつも、魔王軍を退ける力を持つ勇者の誕生を待っていた。

ちなみに魔王軍とは、ヴァルレシアの人々から呼ばれている軍隊に過ぎない。

 

・四大魔王

魔界を統治する4人の魔族。魔王の称号を持つ魔族は魔界に多くいるが、四大魔王は別格と言っても過言ではない。その力は神に匹敵する絶大的な力を持ち、幹部クラスの魔族でも勇者以上の力を持つとされている。

 

 



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主要キャラクター

フロル・レイヴァール

出身:地球 ※どの国かは不明

年齢:16歳

性別:男

身長:168cm

体重:165kg

姿:黒い短髪、顔立ちが整い、容姿端麗。

武器:太刀

本作の主人公で、猟兵団シュテルネンリヒト参謀にして3番隊隊長。竜の騎士であり、力を引き出すと右手の甲に竜の紋章が出てくる。両親はおらず、シュテルネンリヒト団長フラディ・レイヴァールに拾われて、現在に至る。数多くの戦場と修羅場を潜り抜けてきたため、竜の騎士の力を使いこなし、闘気を扱うに至った。竜の騎士の力がなくてもかなり強く、戦場では一騎当千と言わんばかりの強さを振るう。非常に頭が良く、突出した戦略を発案し、戦場で数多くの勝利を収めている。

義父フラディから「仁義に重んじて人々のために働き、女を幸せにせよ。仁義に外れてカタギに迷惑をかけ、女を泣かすやつは外道である」という教えを受け、仁義に重んじた性格を持つようになっている。弱き者が強き者を助けるのが役目であると信じているが、外道には容赦ない。

美貌と容姿端麗、外見と内面がイケメン、圧倒的な強さを兼ね備えているとして、女の子からモテモテである。

とある事情でヴァルレシアにやってくるが、とある事情で竜の騎士の力を失う。竜の騎士の力を失っても、実力は健在。

その正体は、ヴァルレシアに存在したアルトマイア王国王子。母親がアルトマイア王妃エストリア。ヴァルレシアに生まれ、地球で育った。猟兵として多くの敵を殺してきた彼だが、その技術が活かされ、魔王軍を圧倒した。獣王軍団との戦いでアンチレベルを喰らったが、数日のうちに解除することに成功している。

 

アイシス・バーンスタイン

出身:ヴァルレシア・バーンスタイン王国

年齢:17歳

性別:女

身長:165cm

体重:60kg

姿:茶髪のショートヘアー。美しい顔立ちと、容姿が豊満かつ端麗。スリーサイズは、B90・W58・H91

武器:剣

バーンスタイン王国第2王女。物語開始から約10年前、魔王軍に故郷を滅ぼされ、両親を失うも姉ロクシーヌと一緒にどこかに落ち延びる。そして現在、バーンスタインの残存勢力を束ね、魔王軍に抵抗する。

彼女こそが、ヴァルレシアに誕生した真の勇者。魔王軍との決戦で覚醒し、魔王ゼーゲルを討ち、英雄となる。

 

クロウ・アルセイ

出身:ヴァルレシア・エリヴァン王国

年齢:17歳

性別:男

身長:170cm

体重:68kg

姿:赤い短髪で顔立ちと容姿は普通。

武器:短剣

エリヴァン王国王都バルダにあるルイーダの酒場を出入りしている冒険者。冒険者としての実力が高く、他の冒険者やエリヴァン軍から一目置かれている。面倒臭がり屋な部分はあるが、やると言ったら必ずやり通すという信念を持つ。

 

クルス・アルセイ

出身:ヴァルレシア・エリヴァン王国

年齢:12歳

性別:男

身長:150cm

体重:48kg

姿:赤い短髪で顔立ちと容姿は普通。美少女と間違えるくらいの美少年である。

武器:ブーメラン

クロウの弟で、冒険者としてのクロウをサポートする。経理を担当しており、クロウの財布を管理している。加えて、自分自身の鍛錬を怠らず、心身ともに鍛えている。性格はワンパクかつ無垢であり、外見は美少女と間違えるくらいのイケメン美少年。そのためなのか、悪いお姉さんにセクハラされたり、拉致されそうになったりすることが多い。

運に恵まれているのか、メタルスライムやはぐれメタルなどメタル系モンスターとの遭遇率が高い。頭も良いため、勉強もできたりする。

 

アイーダ・マールバラ

出身:マールバラ王国王都ラージェ

年齢:18歳

性別:女

身長:166cm

体重:62kg

姿:銀色の髪をして、美貌と豊満な容姿を兼ね備える。スリーサイズは、B92・W60・H89

武器:剣または杖

マールバラ王国第3王女にしてマールバラ王国軍魔法師団の団長。マールバラ王国魔法学校を首席で卒業。人望は厚く、民からも慕われており、次期女王としての呼び声が上がっている。

 

エストリア・アルトマイア

出身:ヴァルレシア・アルトマイア王国

年齢:40歳

性別:女

身長:170cm

体重:66kg

姿:黒いロングヘアー。美貌と豊満な容姿を兼ね備える絶世の美女で、外見年齢は30代前半と若く、妖艶な雰囲気を漂わせる。スリーサイズは、B100・W67・H98

武器:大剣

アルトマイア王国王妃。アルトマイア王との間に生まれた男の子がいたのだが、物語開始から15年ほど前に魔王軍の襲来を受けて故郷が滅亡し、アルトマイア王は命を落とす。男の子と生き別れ、自身は落ち延びる。現在、アルトマイア王国の残存勢力を率いて魔王軍に抵抗する。

フロルの実の母親である。魔王軍の襲撃からフロルと一緒に逃げてきたが、当時ヴァルレシアに訪れたアンジェラに助けられ、両方助かるためにアンジェラにフロルを託す。フロルと再会を果たしたのだが、自身の子どもが戦場を駆け巡る猟兵団の幹部で、多くの者を殺してきたことを知り悲しむ場面もあった。それでも、フロルのことを深く愛する。

 

ルグレン・フランベール

出身:ヴァルレシア・アルトマイア王国

年齢:70歳

性別:男

身長:155cm

体重:55kg

姿:白髭を生やした老人

武器:槍

アルトマイア王国大臣。魔王軍によりアルトマイアが滅亡するも、王妃エストリアに仕えつつ、アルトマイア残存勢力の幹部にして参謀を務める。若い頃は優れた軍師としてアルトマイア軍を統率しており、大臣に出世した後は一線を退く。槍と魔法の達人であり、大臣を務めながら教官として若い騎士達を指導してきた。

 

リーゼル・カイヴァーラ

出身:ヴァルレシア・カイヴァーラ王国

年齢:18歳

性別:女

身長:168cm

体重:67kg

姿:エメラルドグリーンの短髪。美貌と容姿端麗を兼ね備える。スリーサイズは、B97・W63・H95

武器:ツメ

カイヴァーラ王国第2王女。カイヴァーラ王国首都カイラムのロイゼ闘技場の花型拳闘士であり、その実力はフロルに匹敵する。とにかく体を動かすのが好きで戦いを好む。姉であるカイヴァーラ第1王女ゾーエはカイヴァーラ騎士団団長の身分でありながら、鍛錬という名目で闘技場の武闘大会に参加することがある。



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序章
01 フロル・レイヴァール


 地球・マグナート大陸…。マグナート大陸はルシアーラ大陸南西に位置する。大陸北部は砂漠地帯に覆われているものの、地下資源が豊富である。

 どのような地下資源があるのかと言うと、石油・天然ガスや石炭、鉄鉱石や銀や金や銅、レアメタルやレアアースなどが挙げられる。この大陸の資源だけで半導体を大量生産できる。

 半導体とは、電気を通す金属などの「導体」と、電気をほとんど通さないゴムなどの「絶縁体」の中間に位置する材料である。半導体がないと家電製品はもちろん、自動車や飛行船など様々な機械が作れないと言っても過言ではない。

 だけど、このマグナート大陸は戦乱が渦巻いている。大国や他の国々が介入し、資源の利権の奪い合いとなっている。時として大規模な戦争になることもあるが、エルメインと呼ばれるマグナート大陸北部の地域で大規模な戦争が今でも続いている。

 ところが、ある武装勢力の出現によって、エルメイン地域の状況が一変した。その武装勢力とは、猟兵団シュテルネンリヒト。メンバーの数は100人も満たないが、メンバー一人一人の練度が高く、一騎当千と言っても過言ではない。約100人で1万の軍隊と戦えるとも言われている。

 

兵士「シュテルネンリヒトだと!?」

兵士「大陸最強の猟兵団をやつらは雇ったのか!?」

兵士「くそ!!」

 

 兵士達は猟兵団シュテルネンリヒトの存在に驚いている。

 猟兵団とは、戦争などを代行する武装勢力にして傭兵団。多額のお金をもらって、クライアントに代わって戦争に参加する。戦争だけでなく、軍隊に代わって危険な任務や汚れ仕事などを請け負う。

 

兵士達「うわあああああ!!!」

 

 爆発が起きて兵士達が倒れた。

 

女猟兵「はーい♪」

 

 黒髪の猟兵の美女が現れた。手にはアサルトマシンガンがある。

 

兵士「あ…あれは…シュテルネンリヒトの副団長…」

兵士「…アンジェラ・プロフェット…!?」

 

 アンジェラという女が敵に向かって突撃する。

 

兵士「撃て撃て!撃ちまくれ!」

 

 兵士達はアンジェラに向かって、アサルトライフルで撃ちまくるが、全てかわされる。

 

アンジェラ「銃の扱いがなってないじゃない」

兵士達「うわあああああ!!!」

 

 アンジェラは兵士にアサルトライフルを発砲し続けて殲滅する。正確な射撃である。さらにグレネードを持って、ピンを抜いて敵がいる方に投げる。爆発して敵は倒れる。

 それだけじゃなかった。

 

アンジェラ「右手にメラ、左手にヒャド。同調させて対消滅の力を引き出す」

 

 アンジェラは右手にメラ、左手にヒャドをそれぞれ出して、メラとヒャドを同調させる。光が増して、弓矢の形になり、アンジェラは弓矢を構える体勢になる。

 アンジェラの目の前に4台の戦車があり、戦車の傍にアサルトライフルを装備した兵士達がいる。

 

アンジェラ「じゃあね…。メドローア!」

 

 お構いなく、アンジェラはメドローアを撃った。メドローアを受けた兵士と戦車4台は消滅した。

 メドローアとは、極大消滅呪文。メラとヒャドを合わせることで対消滅を発生させ、その力を利用して攻撃に転用するという。あまりにも威力が高い上に難易度も非常に高く、メドローアを使えるのは現時点でアンジェラしかいない。

 

<チュドーン!!>

 

 そのとき、別方向から爆発音が響いた。

 

アンジェラ「おっ、あっちは盛り上がっているな」

 

 アンジェラは笑みを浮かべた。

 

兵士「シュテルネンリヒトの副団長だ!」

兵士「あの魔女をやれば名を挙げられる!」

 

 新たな兵士が現れた。

 

アンジェラ「いいよ。ガチでやってやるよ」

 

 アンジェラは背負っている剣を抜いて、敵に接近して次々と切り伏せていく。呪文だけでなく剣術も達人クラス。

 

兵士「つ、強い!?」

兵士「まるで…魔王…!?」

 

 アンジェラの強さに畏怖する敵である。

 

 

 

 その頃、爆破した方…。その場所はアルムス砦と呼ばれる軍事要塞である。敵の司令部でもあるのだが、シュテルネンリヒトが堂々と攻め込んできた。

 

?「お前ら、派手に暴れるぞ」

猟兵達「ヤー!」

?「フェイル、リアルド。後れを取るんじゃねえぞ」

フェイル&リアルド「おう!!」

 

 シュテルネンリヒトを指揮しているのは、フラディ・レイヴァールという男。猟兵団シュテルネンリヒトの団長であり「混沌の巨神」という異名を持つ。

 フェイルとリアルドの男2人はシュテルネンリヒトの創設時のメンバーにして上級幹部。フェイルは1番隊隊長、リアルドは2番隊隊長の地位にある。

 シュテルネンリヒトと敵軍の間で銃撃戦が始まった。激しい銃撃戦が繰り広げられる中…。

 

フラディ「そろそろだな」

 

 フラディは笑みを浮かべると…。

 

<チュドーン!!>

 

 砦のほうで爆発音が響いた。

 

兵士「なにが起こった!?」

 

 兵士は動揺する。

 

フェイル「どうやらフロルが砦に侵入したようですね」

リアルド「ありゃフロルしかできないな」

 

 フェイルとリアルドが嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

アンジェラ「あたしも参加していいかい?」

 

 アンジェラが現れた。

 

フラディ「アンジェラじゃないか。そっちは終わったのかい?」

アンジェラ「ああ。全滅させたよ。だけどこの状況、参加するまでもないか」

フラディ「今回だけは勘弁してくれ。部下の手柄を横取りしたくないんだ」

アンジェラ「OK。そういえばフラディ、フロルは?」

フラディ「たった今、砦に突入したぞ」

アンジェラ「ニヤッ」

 

 状況を聞いたアンジェラは笑みを浮かべた。

 

 

 

 その頃、アルムス砦内部…。

 

<チュドーン!!>

兵士達「うわああああああ!!!」

 

 爆発と同時に断末魔の叫びが響いた。

 

兵士「くそ!」

兵士「構え!」

 

 兵士6人はアサルトライフルの銃口を構える。

 そのとき、銃口の先に、太刀を右手に持った1人の少年が現れた。

 

兵士「撃て!」

 

 兵士達は発砲するが、少年は飛んでかわし、同時に敵に接近。少年は太刀を降るって敵を一瞬にして切り伏せた。

 

兵士「バケモノが!?」

少年「遅い…袈裟斬りだ!」

兵士「ぐわあ!!」

 

 少年は袈裟斬りで敵を屠った。

 少年の名はフロル・レイヴァール。シュテルネンリヒト団長フラディ・レイヴァールの息子であると同時に、シュテルネンリヒト参謀にして3番隊隊長。その強さは誰よりも圧倒する。

 美貌と容姿端麗を併せ持つが、戦場における冷徹さを兼ね備える猟兵という一面を持つ。

 それからフロルは砦内を進み、敵を屠りながら司令室の中枢にたどり着く。

 

フロル「どうも、今日が君達の寿命です!」

 

 扉を蹴破って突撃。中にいたのは、上層部の連中。

 

敵上層部「うわあああああ!!!」

 

 フロルは敵上層部全員を一掃する。

 

?「フロル!」

 

 そのとき、1人の美少女が現れた。

 

フロル「こっちは終わったよ。キャシー、そっちは?」

キャシー「扉を開けて団を突入させたわ」

フロル「わかった。3番隊の任務は終了。砦内の制圧を図る」

キャシー「ええ」

 

 キャシー・レインヴォーク…。年齢は16歳。シュテルネンリヒト3番隊副隊長を務める美少女で、隊長であるフロルに従う。彼女自身、フロルに好意を抱いている。

 その後、フロルとキャシーは3番隊を率いて砦内の制圧を図る。同時にフラディ達が砦内に突入。

 

 

 

 それから時間が経過。シュテルネンリヒトはアルムス砦の制圧に成功し、敵対勢力を壊滅させた。

 シュテルネンリヒトが戦っていた敵対勢力とは、中東国家カイラール共和国の正規軍。

 カイラール共和国とは、マグナート大陸北東部を領土に持つ中東国家。戦場の地となったエルメイン地域はカイラール共和国の領土であり、資源採掘地域でもあった。カイラール共和国北部は地中海に面しており、同時に石油などの天然資源が抱負に採れる。

 地中海の向こうには、ルシアーラ大陸と呼ばれる、地球でもっとも広大な大陸が存在する。西部はユーロピア連邦、北部はヴェルナ聖王国、南東部はケンナード共和国と、3つの大国が存在する。

 猟兵団シュテルネンリヒトを雇ったのは、ユーロピア連邦。依頼金は2億ユーロ。ユーロピア連邦は1ヶ月も前からシュテルネンリヒトを雇ったのだが、ユーロピアとカイラールの戦争は2年も続いている。カイラールが持つ天然資源の利権を獲得するために、ユーロピアから仕掛けた戦争である。

 ユーロピア連邦とカイラール共和国の戦争が始まって5年近く経っており、膠着状態が続いていた。だけど、ユーロピア連邦がシュテルネンリヒトに依頼して雇ったきっかけで、膠着状態が壊れて今に至る。

 シュテルネンリヒトの活躍により、ユーロピア軍はエルメイン地域の制圧に成功した。

 

 

 

 アルムス砦の会議室…。そこにはフロルなどを含むシュテルネンリヒトの幹部が集まっている。フラディとアンジェラが共に現れ、みんなの前に立つ。

 

フラディ「ユーロピア連邦からの依頼、エルメイン地域制圧を達成したことで、2億ユーロの報酬を得た。すでに口座に振り込まれている」

アンジェラ「さらに、首都エジラーマ制圧作戦に参加してくれたら、追加で3億ユーロやるって言われてね…。わたしとフラディはそれに承諾した」

フラディ「次の戦場は首都エジラーマだ。次の戦いに備えて休んでくれ。幸いにも、このアラムス砦を拠点にして良いとのことだ」

アンジェラ「なにか質問は…ないね」

フラディ「解散」

 

 会議が終わって幹部達は解散。

 その頃、アルムス砦のある一室…。そこには、フロルとキャシーがいる。このとき、フロルは自分の太刀を手入れしている。

 

キャシー「次の戦場は首都エジラーマね。次々とこき使ってくれるわね」

フロル「3億ユーロだからね。とっとと制圧してノルマを果たせば3億ユーロいただきってわけだ」

キャシー「そうね。早く帰って遊びたいわ」

 

 ユーロとは、ユーロピア連邦の法定通貨。1ゴールド=1ユーロの相場である。

 地球の大国は独自の法定通貨を持っている。各国の法定通貨のレートは常に変動しており、変動による利益を狙うFXが存在する。

 

キャシー「今日はどうする?」

フロル「メシ食って、シャワー浴びて寝るかな」

キャシー「わたしも一緒に寝ていい?」

フロル「いいけど」

キャシー「やったー!」

 

 キャシーは嬉しそうだったが…。

 

キャシー(フロルの童貞奪える!フロルの童貞奪える!そして…結婚…)

 

 なにか黒い野心が芽生えていた。

 ちなみにフロル、童貞である。

 

「フロル」

 

 アンジェラが現れた。

 

フロル「アンジェラ姉さん、どうしたの?」

アンジェラ「あんた、16歳だよね?」

フロル「うん、それがなにか?」

アンジェラ「まだ童貞なの?」

フロル「ど…ど…」

アンジェラ「はっきり言いなさい」

フロル「童貞です…」

アンジェラ「よろしい。あたしが奪ってあげるわ」

フロル&キャシー「はい!?」

 

 アンジェラの突然の発言にフロルとキャシーは動揺する。そのとき、アンジェラはベッドに腰を下ろす。

 

アンジェラ「いつ死ぬかわからない状況だからね。16歳の男の子が経験ないまま死ぬのは残酷なこと。だから、わたしがあんたの童貞を奪ってあげるわ」

 

 と、アンジェラは誘惑するような雰囲気を漂わせ始めるが…。

 ついでに言うが、アンジェラの年齢は明らかにされていない。本人は30代前半と言っているが、30代前半のとおり若々しく、絶世の美女と言っても過言ではない。

 

キャシー「それ、わたしの役目です!」

アンジェラ「あらそうなの?というかキャシーって処女だっけ?」

キャシー「処女です」

アンジェラ「そうなんだ。だったら、フロルに女の喜ばせ方を教えないとね」

キャシー「アンジェラ姉さんがやりたいだけなのでは?」

アンジェラ「どうかしら?」

 

 実はアンジェラ、フロルとやりたがっているだけである。

 

 

 

 それから時間が経過。夕食を終えた後、フロルはアルムス砦の外にいる。外の空は夕焼けとなっている。外で何をしているのかというと、ただ単に外で空気を吸っている。

 

フラディ「フロルじゃねえか」

フロル「親父」

 

 フラディが現れた。

 

フロル「たまに夢に出てくるんだ。魔物の群れに襲われ、ある女性とはぐれたという夢を…」

フラディ「そうか…。その夢、もしかしたら過去の出来事かもしれねえな」

フロル「過去の出来事…」

フラディ「お前を拾って15年経つな…。当時1歳だったお前はボロボロになって倒れていた。魔物に襲われたような感じだった。そのときにお前は俺達に拾われたってわけだ」

フロル「うん、親父に感謝している。だから必死に働き、気がついたときには幹部になっているしね」

フラディ「俺の教えがよかっただけだ。話しを戻すが、お前の本当の両親の手掛かりになるものは2つ。1つはお前が身につけている首飾り。もうひとつは手紙。フロルという名前は、その手紙に書いてあったものだからな。本当の両親、探してみるか?」

フロル「いや…。両親は探さない。それに名を挙げれば、本当の両親が気づくかもしれないしね」

フラディ「なるほど…。しかしフロル、お前は頭が良いよな。新たなシノギを次々と開拓したり、突発した戦略を発案して俺達を効率の良い勝利に導いたり…」

フロル「いやそんな…」

フラディ「あと10年したら、お前にシュテルネンリヒトの団長を任せられる。それまでは死ぬんじゃねえぞ」

フロル「死にはしないさ。死にたくないから強くなるんだ」

フラディ「なるほどな」

 

 フラディは安心した表情になる。

 

フロル「それじゃ俺はこれで」

 

 フロルは去っていった。

 

フラディ「エストリアという名前だったな…。アルトマイア王国王妃…。そもそもアルトマイア王国という国は存在しない。もしかしたら…別世界の国家なのかもな」

 

 フラディは口にする。

 

 

 

 それから時間が経過。就寝の時間。フロルの寝室…。そのベッドの上でフロル、キャシーとアンジェラを相手に営んでいる。このとき3人は裸である。

 フロルの童貞を奪ったのはキャシーで、キャシーの処女を奪ったのもフロル。フロルとやっているキャシーは幸せそうな表情になっている。

 キャシーの相手が終わった後、次はアンジェラ。経験豊富なアンジェラに手玉を取られるフロル。だが、心地が良かった。

 2時間が経過した後、営みが終わった。

 

キャシー「フロル〜♪」

 

 嬉しさを隠せずにフロルに抱きつくキャシー。

 

アンジェラ「最高だったわフロル。顔に似合わず、立派なもんを持っているとはね」

フロル「そうなの?」

アンジェラ「ええ。子宮にも余裕で届くしね。女をイカせる方法、わかったかしら?」

フロル「まだそれは…」

アンジェラ「回数を重ねればわかってくるわ」

 

 アンジェラは笑みを浮かべる。

 この寝室にベッドが2つある。フロルとキャシーが1つのベッドを使用し、もうひとつのベッドはアンジェラが使用する。

 

アンジェラ「さあ、寝るよ」

フロル「うん。おやすみ」

 

 みんなは眠りに入った。

 

 

 

 翌日…アルムス砦の会議室。フラディとアンジェラを筆頭とした幹部達がいる。ユーロピア連邦の軍上層部の人間達がやってきて、首都エジラーマの攻略について話し合っている。

 

ユーロピア軍人「カイラール共和国は悪名高き猟兵団オルゴマを雇ったという情報がある」

フラディ「オルゴマと言えば、高ランクの猟兵団だが、その実体は略奪と虐殺を好む仁義外れな集団。それだけでなく、女子供を拉致して人身売買している」

アンジェラ「団長ヴェスターも相当な外道だが…外道だけならよかった。その正体は、竜の騎士だ」

ユーロピア軍人「竜の騎士…あの伝説の…」

フラディ「やるしかねえさ。こっちも竜の騎士を出す。なあフロル」

 

 フラディはフロルのほうを見る。

 

ユーロピア軍人「まさか、その子どもも竜の騎士か?」

フラディ「ああ」

ユーロピア軍人「大丈夫なのか?」

フロル「問題はない。俺はこれまで竜の騎士3人と戦い、しかもタイマンで倒してきたから」

ユーロピア軍人「そうなのか?」

フロル「ヴェスターを倒せば4人になる」

アンジェラ「そういうことだよ。今後のため、オルゴマの猟兵達を殲滅する。それでいつ始める?うちらはすぐに出れるけど?」

ユーロピア軍人「今すぐ始めたい。こっちも準備完了している」

フラディ「OKだ」

 

 話しがまとまった。

 ユーロピア連邦軍は5万の軍勢を持って、首都エジラーマに侵攻する。だけど、それを阻むのは、猟兵団オルゴマ。ただの高ランク猟兵団ならまだ良いが、その団長ヴェスターは竜の騎士(ドラゴンのきし)。

 竜の騎士の全貌は不明だが、伝説によれば、竜の戦闘力、魔族の魔力、人間の姿と心を併せ持った戦神と言われている。右手または左手に竜の紋章のアザがある者が、竜の騎士と言われている。

 フロルの右手に竜の紋章のアザがある。力を発揮すると竜の紋章が輝き出し、竜闘気(ドラゴニックオーラ)と呼ばれる、闘気のエネルギーを纏う。竜闘気が高まると、あらゆる物理攻撃と魔法攻撃を防ぐ。同時に攻撃にも転用できて、竜闘気を利用した呪文や特技を使う。

 他にも、勇者しか使えないとされるデイン系の呪文やその他上級魔法や特技などを使う。

 猟兵として様々な戦場や修羅場を潜り抜けてきたフロルはすでに竜の騎士の力を覚醒させている。だけど、強大な力であるという理由で使う機会が少ない。

 

 

 

 それから時間が経過。ユーロピア連邦軍は総兵力5万を持って、カイラール共和国首都エジラーマに侵攻を開始した。

 上空には、ユーロピア軍の飛行戦艦が数多く確認された。巡洋艦や駆逐艦や航空母艦のタイプがあり、飛行戦闘機までもが導入されている。

 一方、地上にはユーロピア軍の戦車や装甲車、歩兵部隊などが数多く見られた。

 だけど、カイラール共和国も黙って見ているわけではない。強固な対空システム、徹底した防衛線、ありったけの地上戦力と航空戦力を投入した結果、総兵力20万となっている。

 1隻のユーロピア軍飛行巡洋艦のブリッジ…。

 

女艦長「全軍、進軍停止」

 

 女艦長が指示を出すと、ユーロピア軍全部隊が進軍を停止。

 女艦長の名はディアーナ・グラーディス。ユーロピア軍の軍人で階級は准将。しかも年齢が23歳の美女で、超が付くほどのエリートである。

 ディアーナはユーロピア連邦軍カイバール共和国侵攻軍の司令官であり、猟兵団シュテルネンリヒトを雇った人物。彼女自身の実力は高く、アンジェラに匹敵する。

 

士官「これ以上進軍すると対空システムが起動しますな」

ディアーナ「うむ。地上部隊の攻撃準備は整っているか?」

士官「すでに整っています。命令があり次第、攻撃を開始できるとのこと」

ディアーナ「よし、攻撃開始。派手にやってくれ」

士官「了解。地上部隊、攻撃開始。派手に攻撃し続けるのだ」

 

 ディアーナの号令により、地上部隊は攻撃が始まった。

 

ディアーナ「航空部隊、ミサイルなどで地上部隊を援護せよ。ただし、対空システムの有効範囲の中に入るなよ」

 

 ディアーナは航空部隊に対して指示を出す。

 

 

 

 一方、猟兵団シュテルネンリヒト…。首都エジラーマに潜入し、大統領府や国会議事堂などの政府機関を襲撃している。首都内を展開しているカイラール軍の地上部隊は応戦するも、歴戦の猛者であるシュテルネンリヒトの猟兵達に歯が立たなかった。

 シュテルネンリヒトの猟兵達は対空システムを次々と破壊。国会議事堂も…。

 

アンジェラ「ビッグバン」

 

 究極爆発呪文ビッグバンを使用。国会議事堂にいたカイラール軍は全滅。

 

フェイル「アンジェラやり過ぎた!?」

リアルド「制圧すべき場所が木っ端微塵になったらどうするんだよ!?」

アンジェラ「大丈夫だよ。威力10%に抑えたから」

フェイル「あれで…」

リアルド「10%…」

 

 フェイルとリアルドは唖然としている。

 アンジェラが放ったビッグバンの威力が10%ほど抑えられているというが、あれで10%である。本気を出したら、首都エジラーマが木っ端微塵になるだろう。

 

 その頃、フラディはというと…。猟兵達を率いて、大統領府前に展開している猟兵団オルゴマと交戦している。フロルやキャシーはフラディの傍にいる。

 

フロル「ギガデイン!!」

オルゴマ猟兵達「うわあああ!!!」

 

 フロルはギガデインを放つ。ギガデインの強烈な雷が、オルゴマの猟兵達を一掃するが…。

 

?「ジゴデイン!!」

フロル「!?」

 

 そのとき、黒い雷がフロル達のほうを襲ってきた。フロル達はそれをかわす。

 

?「シュテルネンリヒト3番隊隊長フロル・レイヴァール…。その正体が竜の騎士とは…相手にとって不足なし!」

フロル「オルゴマの団長ヴェスター…」

 

 ヴェスターという男が出てきた。この男が猟兵団オルゴマの団長であり、フロルと同じ竜の騎士である。

 

ヴェスター「まさかガキが竜の騎士の力を完全に使いこなすとはな。ならば、容赦せん!はああああ!!!」

 

 そのとき、ヴェスターに雷が落ちた。すると、ヴェスターの姿を変わり始めた。その姿は人型であることに変わりないが、全身が竜のウロコに覆われ、背中から巨大な翼が生えた。額に竜の紋章が現れ、紋章が大きくなった。

 

フロル「竜魔人か…!?」

 

 フロルは驚くが、冷静になり、太刀を構える。

 

フラディ「フロル、やっぱり俺がやるわ」

フロル「親父?」

フラディ「相手は猟兵団オルゴマの団長。俺はシュテルネンリヒトの団長。団長同士戦うのが筋ってもんだ」

フロル「わかった。邪魔はしないし、邪魔もさせない」

フラディ「ありがとよ」

 

 フロルはキャシーと一緒にこの場を離れる。

 

フラディ「というわけだ。俺が相手だ」

ヴェスター「なるほど…。それなら筋が通る。だが、竜魔人化した俺に勝てると思ったか!?」

 

 ヴェスターは剣を構えて突撃するが…。

 フラディは両手剣を振るってヴェスターの剣をはたきおとしたと同時に、右手に闘気を込めて、ヴェスターに右ボディブローを放つ。

 

ヴェスター「がはっ!?竜闘気(ドラゴニックオーラ)を纏っているのに…なぜ…!?」

フラディ「竜闘気を突破するためには、竜闘気以上の攻撃力が必要。単純に俺の闘気がお前の竜闘気を上回っただけだ」

ヴェスター「な…!?」

フラディ「終わりだ」

 

 フラディは両手剣に強力な闘気を込めて…

 

フラディ「アルテマソード!!」

ヴェスター「ちぃ!!」

 

 アルテマソードを放った。ヴェスターはそれをかわすも、アルテマソードの衝撃波により大きなダメージを受けた。

 

ヴェスター「ただの人間が竜の騎士と互角に渡り合えるなど…」

フラディ「狂人揃いのシュテルネンリヒトをまとめているんだ。そのくらいの力があって当然」

 

 こうして、ヴェスターとフラディの壮絶な戦いが始まった。



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02 猟兵団シュテルネンリヒト

 ユーロピア連邦軍がカイラール共和国首都エジラーマに攻撃してから時間が経過。首都エジラーマに潜入して暴れている猟兵団シュテルネンリヒトのおかげで、対空システムの破壊に成功。これにより、ユーロピア軍は首都エジラーマの制空権を確保した。

 フロルとキャシーは3番隊の猟兵達を率いて、各地に展開している猟兵団オルゴマとカイラール軍を撃破するが…。

 

ヒドラ「ギャアアアア!!!」

ドラゴン「グワアアアア!!!」

 

 ヒドラとドラゴンの魔物が現れた。ヒドラは1体しかいないが、ドラゴンのほうが数多くいる。

 

フロル「ドラゴンか!?」

キャシー「応戦して!!」

 

 フロルとキャシー、他の猟兵達はアサルトライフルを構えて銃撃を行う。ドラゴン達はアサルトライフルの銃弾を受けて次々と倒れるが、ヒドラだけは違った。ヒドラの鱗は非常に硬く、銃弾でさえ貫くことが難しい。

 

キャシー「こういう敵には、これが1番。ピオラを自分にかけて…トベルーラで飛んで…」

 

 キャシーはカタールと呼ばれる剣を右腕に装備。ジャマダハルというタイプの剣で、手に持つのではなく腕に装着するタイプの武器。わかりやすく例えるなら、ドラゴンキラーという武器に似ている。

 キャシーはピオラという呪文を自分にかけて素早さを向上させ、さらにトベルーラという呪文を用いて空を飛ぶ。そして、カタールに闘気を込める。闘気を込めたカタールと圧倒的なスピードでヒドラの首を全て落とし、最後に胴体を貫く。

 これでヒドラは倒れた。

 

フロル「お…俺の出番が…」

 

 出番を奪われたフロルは唖然とする。これでもキャシーは猟兵団シュテルネンリヒト3番隊副隊長で幹部に当たる存在。実力もフロルに匹敵する。

 

フロル「まあいいか」

 

 フロルは右手の甲にある竜の紋章を輝かせ、両手を組んで前に突き出し、指先を上下に揃えて開いた。

 

フロル「ドルオーラ!!」

 

 ドルオーラと呼ばれる呪文を放った。ドルオーラは竜闘気を一点に集中して圧縮し、解放して撃ち出す呪文。竜の騎士しか使えない呪文であると同時に、マホカンタと呼ばれる魔法を反射する呪文でも防げない。

 フロルはドルオーラを放つと、目の前のオルゴマとカイラール軍の部隊が一掃される。

 その瞬間、ユーロピア軍の戦車部隊と歩兵部隊が現れた。これを見たフロルはキャシーのもとに駆け寄る。

 

フロル「ノルマ達成したよ。親父と合流するよ」

キャシー「わかったわ」

 

 フロルとキャシーは3番隊の猟兵達を連れて、この場を後にする。

 

 

 

 一方、フラディと竜魔人化したヴェスター…。壮絶な戦いを繰り広げられているが…。

 

ヴェスター「ドルオーラ!!」

 

 ヴェスターはドルオーラを放つが、

 

フラディ「受けて立つ!!」

 

 フラディは闘気を身に纏い、ドルオーラを受け止めた。だけど、フラディは受け切った。

 

ヴェスター「バカな!?」

フラディ「とどめだ!渾身の一撃を受けろ!アルテマソード!!」

ヴェスター「ぐわあああああ!!!」

 

 フラディはアルテマソードを放った。ヴェスターは直撃を受けたと同時に竜魔人化が解け、戦死した。

 

フロル「親父」

 

 フロルとキャシーが現れた。

 

フラディ「フロルにキャシーちゃんじゃないか」

フロル「どうやら終わったようだね」

フラディ「ああ。ユーロピア軍もなだれ込んだことだし、ノルマは達成だ」

 

 笑みを浮かべるフラディ。

 

 

 

 それから時間が経過。カイラール共和国首都エジラーマはユーロピア軍によって完全制圧された。エジラーマに展開するカイラール軍の総兵力は約20万人だったのだが、兵士達の練度が低い上に士気が低く、烏合の衆でしかなかった。そのため、ユーロピア軍約5万と百数人の猟兵団シュテルネンリヒトの戦力によって、カイラール軍は敗北したのであった。

 制圧した首都エジラーマ・大統領府の建物内に、ユーロピア軍はカイラール駐留軍司令部を設置。その司令官であるディアーナは大統領府にて、フラディとアンジェラと面談する。

 

ディアーナ「契約通り、報酬3億ユーロは指定の口座に振り込んだ。反映されるまでに時間かかるかもしれないが」

フラディ「すぐに反映されたよ。すごいね、今の銀行のシステムは」

ディアーナ「それはよかった。時としてフラディ殿、我が軍に来ないか?フラディ殿とアンジェラ殿を将官待遇で迎えたい」

フラディ「せっかくの誘いで悪いんだが、断らせてもらうよ」

アンジェラ「猟兵のほうが儲かるし、自由だし。ディアーナこそ、うちに来ないかい?」

ディアーナ「遠慮するよ」

 

 お互いを勧誘し合う3人である。

 

 

 

 それから時間が経過。猟兵団シュテルネンリヒトはカイラール共和国から離れ、本拠地に帰還する。

 シュテルネンリヒトの本拠地はマグナート大陸最南端に位置する南マグナート共和国の首都ノーゼルシティ。

 南マグナート共和国は世界屈指の資源国家。ダイヤモンドやプラチナやパラジウム、石油や天然ガス、金や銅や鉄鉱石、レアメタルやレアアースなどが豊富にある。

 南マグナート共和国はもともと無政府状態にあった。長引いた内戦のせいで政府機能が崩壊し、人々は貧しい生活を強いられた。

 だけど5年前、猟兵団シュテルネンリヒトがやってきた。圧倒的な武力を持って、内戦を引き起こした武装勢力を全滅させて、南マグナート共和国を制圧。実効支配した。

 当時、シュテルネンリヒトは本拠地となる場所を探していた。無政府状態の南マグナート共和国に目をつけ、南マグナート共和国そのものを拠点にしたという。加えて、南マグナート共和国にある豊富な資源の利権全てをシュテルネンリヒトは得た。

 シュテルネンリヒトは南マグナート共和国を乗っ取り、その国に住む人々のために経済と福祉の政策を打ち出した。資源を活用した政策なので、外貨を得て国民に還元する。インフラ整備も行う。

 さらに、資源に頼らない経済政策を取った。金融業や貿易業や製造業を一次産業のひとつとして力を入れた。その他に二次産業として、IT業界や観光業、建設業や流通業などの経済分野にも力を入れた結果、南マグナート共和国はかなり豊かとなった。

 軍事と政治はシュテルネンリヒト主体となっており、南マグナート共和国の大統領を務めているのは、フラディの父にしてフロルの祖父、ゲラルト・レイヴァールである。先代のシュテルネンリヒト団長である。

 実はシュテルネンリヒトは非戦闘員合わせて約15万の総兵力を誇り、そのうち5万人が戦闘員。数多くある猟兵団の中でもシュテルネンリヒトは強大な軍事力を誇る。猟兵の練度もかなり高く、並の兵士では歯が立たないとされている。

 それだけでなく、ユーロピア軍から輸入された飛行巡洋艦5隻もあるし、数多くの飛行艇もある。

 

 

 

 夕方…。任務を終えた猟兵団シュテルネンリヒトが帰ってきた。そして解散して、それぞれの自宅に戻る。

 フロルの自宅は、首都ノーゼルシティ郊外にある一戸建てで、延床面積70坪の総二階建て6LDKとなっている。1階に水洗トイレとバスルーム、2階にも水洗トイレがある。そんな家でフロルは一人暮らししているのだが…。

 

キャシー「わたしも住む」

フロル「マイアさんはどうするの?」

キャシー「うーん…」

 

 キャシーにはマイアという母親がいるのだが、その母親はキャシーを産んだとは思えないくらいに若々しく綺麗で絶世の美女と言っても過言ではない。だが、その本質はシュテルネンリヒト4番隊隊長。戦闘力はアンジェラに匹敵する。

 今回のカイラール共和国の件で、マイアは南マグナート共和国で待機していた。

 そのとき、キャシーはスマートフォンと呼ばれる通信端末を持って、母親のマイアに電話をかけた。

 

キャシー「もしもしお母さん、今帰ったわ」

マイア『お帰りキャシー。今どこにいるの?』

キャシー「フロルの家。今日からわたし、フロルの家に住みたいんだけどいい?」

マイア『いいけど、フロルの家に行くわ』

キャシー「うん、待ってる」

マイア『それじゃ』

 

 マイアとの電話が終わった。

 それから十数分経過。フロルの家にマイアが現れた。

 

マイア「ああフロル、よく無事で帰ってきたわね」

キャシー「ちょっとお母さん!なんでフロルに抱き着くの!?」

 

 マイアはキャシーを置いてフロルに抱き着く。

 

フロル「やあマイアさん」

マイア「フロル、さっそくだけど、あなたの童貞をいただくわ」

フロル&キャシー「はい?」

マイア「16歳はもう大人なんだから、わたしを抱いて大人の階段を登りましょう。もちろん、生で♪」

 

 マイアはフロルを誘惑するが…。

 

キャシー「フロルに童貞はわたしがもらいましたー」

マイア「え?」

キャシー「わたしの処女もフロルに捧げましたー」

マイア「この小娘!わたしのフロルに手を出しやがって!」

キャシー&マイア「うぅ〜」

 

 自分の娘にフロルの童貞を奪われたと知って激怒。本性を表す。このときのキャシーは黒い笑みを浮かべて勝ち誇っている。結局はフロルを巡って睨み合いを始める。

 そして夕食の時間。3人はリビングで焼肉を食べている。テレビを付けてニュースを見ながらである。

 

キャシー「オーディン帝国…。相変わらず話題が絶えないわね」

フロル「今度はテロか…」

 

 オーディン帝国…。北オーディン大陸と南オーディン大陸の両方を全土統治している世界の超大国。首都は帝都ペンドラゴン。人口3億5000万人。世界最高峰かつ強大な軍事力と経済力を誇る。

 皇帝を頂点とした絶対君主制国家で、厳しい身分制度が敷かれた階級社会を維持しながら、徹底した実力主義を掲げる。とはいえ、貴族主義の部分も強く出ている。実力主義と貴族主義は決して相容れず、それが原因で不安定な部分もある。

 オーディン帝国もシュテルネンリヒトの大口顧客のひとつである。

 

 フロル達3人が見ているテレビは、オーディン帝国の国内で起きた爆破テロ事件。反皇帝勢力によるものだが、あのオーディン帝国にテロを仕掛けるなど、組織力が大きいかもしれない。

 

マイア「オーディン帝国と言えば、皇帝直属のナイトオブラウンズがいたわね。世界最強の12騎士、一人ひとりの実力が魔王に勝るとも劣らないとか…」

キャシー「だけど、ラウンズが出てきたというニュースが出ないわね。どこでなにをしているのかしら?」

フロル「ラウンズが出てきて、あまり良いことないしね」

 

 ナイトオブラウンズという皇帝直属の騎士団、普段は表舞台に出ないようだ。

 

マイア「そういえばフロル、ある戦場でラウンズと戦ったことがあったわね?」

フロル「あれは…ね…。二度と戦いたくない」

 

 良い思い出はない様子のフロルである。

 

 

 

 それから翌日…。フロルの寝室…。

 

フロル「うぅ〜…」

 

 目を覚めたフロル。両脇には、スヤスヤと眠っているキャシーとマイアがおり、3人は全裸。フロルはキャシーとマイアを相手に親子丼プレイをしてしまった。美女と美少女を相手に営んだフロルだが、2人の強い性欲により、極度の疲労困憊に陥ったという代償を得る。

 

マイア「おはようフロル、素敵だったわ♪」

フロル「あ、ありがとうございます」

マイア「さっそくだけど、朝の運動しよっか」

 

 マイアはフロルの下半身に跨るが…。

 

キャシー「お母さん…なにフロルとやろうとしてんの…」

マイア「朝の運動よ」

キャシー「思い切り子作りじゃん!」

 

 キャシーが目覚めてマイアに突っかかる。

 それから時間が経過。リビングで朝食を取り始める3人。

 

キャシー「ところでフロル、今日は何するの?」

フロル「うーん…工房に寄ろうと思っている」

キャシー「その後は暇?」

フロル「暇だけど、キャシーはどうするの?」

キャシー「1日中、フロルとエッチする」

フロル「ぶふっ!」

 

 キャシーの発言にフロルは驚いて吹いた。

 

マイア「さすがにそれはどうかと思うわ」

キャシー「お母さん?」

マイア「フロルの相手はわたしがするから」

キャシー「ただフロルとやりたいだけでしょ!」

 

 マイアはフロルとやりたがっているという本音を抱いている。

 

 

 

 それから時間が経過。フロルは工房と呼ばれる場所にいる。工房とはツヴァル工房のことを指し、シュテルネンリヒトの銃火器やその他兵器などの製造を行う、シュテルネンリヒトお抱えの組織。場所は南マグナート共和国首都ノーゼルシティの郊外にある広々とした土地と大きな建物。兵器工場である。

 フロルはツヴァル工房でなにをしているのかというと、ツヴァル工房の射撃場でハンドガンを使用して射撃している。

 

?「おっ、やっているな」

フロル「やあフェイル」

 

 フェイルが現れた。

 

フロル「フェイルも?」

フェイル「まあな。それよりフロル、今度の戦場が決まりそうだ」

フロル「戦場?」

フェイル「ルマーサ島だ」

フロル「ルマーサ島?ケンナード共和国の領土じゃないか」

 

 フロルは疑問を抱いた。

 ケンナード共和国とは、ルシアーラ大陸南東部に存在する共和制国家。首都はオケアーノス。人口は約15億人。ユーロピア連邦とオーディン帝国と並びし大国に位置付けられている。

 

フロル「あの島になにもないはずだけど、どうして戦場に?」

フェイル「俺も詳しく知らんが、あの島で金鉱が発見されたらしい。その利権を獲得するためにレプブリク諸島共和国が領有権を主張し、ルマーサ島に侵攻して不法占拠を実行したそうだ」

フロル「マジか…」

 

 レプブリク諸島共和国とは、ケンナード共和国の南に位置する諸島。ルマーサ諸島はケンナード共和国の領土であるが、レプブリク諸島共和国と近い。

 

フロル「ケンナードとレプブリク、どっちに付くか決まってるの?」

フェイル「そこまではわからん。それにケンナード、内戦状態に陥っているしな。その隙を突いてレプブリクは攻め込んだのだろうな」

 

 ケンナード共和国は現在、内戦状態に陥っている。内戦中なために外国に目を向ける余裕がなく、レプブリク諸島共和国はその隙を突いて、ルマーサ島に攻め込んだのだという。

 

<ピピピッ!>

 

 スマートフォンの着信音が鳴り響いた。フロルのである。フロルは電話に出ると、フラディだった。

 

フラディ『よう、暇か?』

フロル「まあ、工房で射撃訓練しているよ」

フラディ『ならちょうどいい。次の戦場が決まった』

フロル「ルマーサ島?」

フラディ『ああ。なんだ、知ってたのか?』

フロル「フェイルが言っていたんだ。決まりそうだとかなんとかと」

フラディ『なら話しが早い。さっそく本部に来てくれ』

フロル「わかった。フェイルが傍にいるんだけど、俺だけで良いのかい?」

フラディ『ああ。フェイルは待機だ』

フロル「了解。今すぐ行くよ」

 

 フロルは電話を終えて、スマートフォンをしまう。

 

フロル「というわけだよ」

フェイル「まあ、行ってみるといいよ」

 

 フロルはフェイルを残して、この場を後にする。

 それから時間が経過。南マグナート共和国の首都ノーゼルシティにある猟兵団シュテルネンリヒト本部の軍事基地。

 シュテルネンリヒト本部軍事基地の規模は広く、多数の戦車や装甲車があり、飛行艇から飛行戦艦なども数多くある。シュテルネンリヒトの猟兵達はそこで厳しい訓練を行っている場所のひとつでもある。

 シュテルネンリヒト本部軍事基地に現れたフロルは司令室に向かうと、そこにはフラディがいる。

 

フラディ「すまんな、いきなり呼び出して」

フロル「いや、ルマーサ島についてだろう?」

フラディ「ああ」

 

 フロルは資料に目を通し始める。

 

フロル「クライアントはレプブリク諸島共和国。ルマーサ島にいるケンナード共和国を撃退、ルマーサ島を制圧すること。依頼料は金2t。法定通貨じゃないんだ」

フラディ「レプブリク諸島共和国の法定通貨はペソ。価値が低いから、金にした」

フロル「確かにそうだね。ところで親父、俺だけを呼び出したのは、3番隊がルマーサ島に行けというのかい?」

フラディ「おう。話しが早いじゃないか」

 

 金の相場は、1gで60ユーロ。単純計算だと2tで1億2000万ユーロである。

 フロルはさらに資料を目に通すと、ルマーサ諸島についての情報が記載された。

 

フロル「金鉱が発見されたというが、その埋蔵量は約2000t!?めっちゃくちゃ金が取れるじゃないか」

フラディ「金2tの依頼料はやつらにとって痛くも痒くもないというわけだ」

フロル「なるほどね。いつルマーサ諸島に到着すればいい?」

フラディ「予定では1週間後だ」

フロル「わかった。高速巡洋艦ヴァゼルを使わせてもらうよ」

フラディ「おう」

 

 高速巡洋艦ヴァゼルとは、猟兵団シュテルネンリヒトが保有する飛行戦艦。全長110m。機動性と輸送能力と居住性を重視した結果、小型の巡洋艦になったという。

 このタイプの高速巡洋艦をシュテルネンリヒトは12隻保有する。

 

 

 

 それから時間が経過。フロルは自宅に帰る。自宅のリビングにキャシーとマイアの母娘がおり、フロルはフラディとの会話の内容をそのまま話す。

 

マイア「ルマーサ島…クライアントがレプブリク諸島共和国か…。確かにルマーサ島に金鉱が発見されたというけど、その埋蔵量が世界トップクラスと言われているわ」

フロル「もともとはケンナード共和国の領土だけど、レプブリクが金鉱の利権欲しさにルマーサ島に攻め込んだというわけ。俺達がレプブリクによるルマーサ島侵攻に手を貸すことになるとはね」

キャシー「3番隊だけルマーナ島に行くのね」

フロル「そういうことだよ。2t分の金塊を手に入れたら帰還する」

キャシー「そうだね。出発はいつになるの?」

フロル「一週間後だよ。高速巡洋艦ヴァゼルを使う。その一週間後までに食糧や弾薬などの補給物資を積まないとね」

マイア「わたしもついていきたいけどね」

フロル「大丈夫ですよ。3番隊単独での任務も何度かやっていますし」

 

 フロルやキャシーのことを心配するマイアであった。

 

 

 

 それから、何事もなく一週間が経過した。

 シュテルネンリヒト3番隊が搭乗した高速巡洋艦ヴァゼルが出発し、ルマーサ島に向けて飛んでいった。

 さらに時間が経過。高速巡洋艦ヴァゼルのブリッジ…。艦長席に座るフロルは通信で、レプブリク軍上層部と会議している。ビデオ通信で、モニターにレプブリク軍士官の男性が映っている。フロルの傍にキャシーがいる。

 

フロル「では、当初の予定通り、指定のポイントを全て制圧します」

レプブリク軍士官『うむ。噂の3番隊、期待している』

フロル「ありがとうございます。制圧後に連絡します」

 

 会議と言っても確認だけである。

 会議が終わった後、通信回線を切った。同時にフロルはマイクを手に取って、艦内放送を行う。

 

フロル「こちら3番隊隊長フロル。空挺部隊、パラシュート降下準備に入ってくれ。一気に奇襲して制圧をかける。武器の準備に怠るなよ」

 

 フロルは事前に戦略を練っていた。その中でも有効的となったのが、空挺部隊のパラシュート降下による奇襲攻撃である。

 指定された制圧ポイントは3ヶ所ある。

 

猟兵「こちら第1空挺部隊、準備完了」

猟兵「第2空挺部隊、準備完了」

猟兵「第3空挺部隊、準備よし。いつでも出撃できます」

 

 各空挺部隊の隊長は準備完了の報告をする。

 ブリッジ…。

 

管制官「第1ポイントのエリアに入ります」

フロル「第1空挺部隊、降下開始。敵を殲滅して制圧せよ」

 

 フロルが号令を出すと、第1空挺部隊の猟兵達が次々と高速巡洋艦ヴァゼルから飛び降り、パラシュート降下し始める。

 

ケンナード軍兵士「レプブリク軍の降下部隊!?」

ケンナード軍兵士「いや違う…あれは…!?」

ケンナード軍兵士「猟兵団シュテルネンリヒト!?」

 

 ケンナード軍は、あれがシュテルネンリヒトであると知って迎撃をかけようとするが、時はすでに遅し。

 猟兵達は降下終了直後にアサルトライフルで銃撃し、ケンナード軍を一掃する。

 

隊長「さすが我らが3番隊隊長にして参謀。戦略は完璧だ。制圧するぞ!」

猟兵達「ヤー!!」

 

 第1空挺部隊の隊長はフロルを高く評価しつつ猟兵達を率いて、ポイントの制圧にかかった。

 その後、第2空挺部隊と第3空挺部隊もそれぞれの制圧ポイントにパラシュート降下し、奇襲してケンナード軍に攻撃を開始する。

 

 

 

 それから時間が経過して夕方となった。

 高速巡洋艦ヴァゼルのブリッジ…。艦長席に座るフロルは通信で、レプブリク軍上層部と会話している。モニターにはレプブリク軍士官が映っている。

 

フロル「全ポイント、制圧完了しました」

レプブリク軍士官『確認したよ。あっという間に制圧するとは思わなかった。これで金鉱の利権は我が国のものとなった』

フロル「ケンナード軍は内戦中なため、こちらに向ける余裕はないでしょう。これで我らのノルマは終了。報酬の金2tいただきます」

レプブリク軍士官『わかった。ご苦労。金はすでに用意してある』

フロル「ありがとうございます」

 

 レプブリク軍士官との通信が終わった。

 その後、高速巡洋艦ヴァゼルはルマーサ島の小規模空港に着陸。レプブリク軍は10kgの金塊200個を用意。シュテルネンリヒト3番隊は金塊を受け取って、ヴァゼルに積み込んだ。ちなみに言うが、本物である。

 金塊の積み込みを終えた後、高速巡洋艦ヴァゼルはルマーサ島から離陸し、この場を後にする。

 

 

 

 高速巡洋艦ヴァゼル・ブリッジ…。そこでフロルは通信で、南マグナート共和国のシュテルネンリヒト本部軍事基地にいるフラディと連絡している。

 このとき、フロルの傍にキャシーがいる。

 

フロル「雑魚ばっかで、俺とキャシーが出るまでもなかったよ。ちゃんと報酬はもらった。2t分の金塊をね」

フラディ『もう少し時間かかると思っていたが、早かったな』

フロル「まあね。戦死者どころか負傷者なしだよ」

フラディ『当然の結果だな』

フロル「カイラール共和国との戦いが1番楽しかったな。歯応えがあってね」

フラディ『うちらは戦って金を儲けてなんぼだ。同時に戦闘狂の集まりだ。そう思うのも無理はない』

 

 フロルの心情を理解するフラディである。

 今回戦ったケンナード軍の部隊は歯応えが無さすぎて、前線に出た空挺部隊だけで終わった。フロルとキャシーの出番はない。

 こういうケースも珍しくないので、良い金稼ぎにもなることがある。

 

 

 

 それから時間が経過。夜になった。

 南マグナート共和国シュテルネンリヒト本部軍事基地に高速巡洋艦ヴァゼルが到着、着陸する。

 ヴァゼルから3番隊の猟兵達が次々と降りてきて整列。そしてフロルとキャシーが出てきて、地面に降り立つ。

 

フロル「今日はご苦労。歯応えのない相手だったとはいえ、戦場から生きて帰れるのは喜ばしいことだ。それぞれの場所に帰宅し、休むように。解散」

 

 猟兵達は解散して、それぞれの場所に帰っていった。

 それから、フロルとキャシーは基地内に入り、司令室にいるフラディとアンジェラと面談する。

 

フラディ「たった1日で帰ってくるとはな。さすがフロルだ」

フロル「まあ、もうちょっとサービスして報酬を割増してもよかったんだけどね」

フラディ「ノルマ果たしたからいいじゃねえか」

アンジェラ「しかも相手の戦力は約1000人、こっちは3番隊の戦力は戦闘員だけで100人程度。レプブリク軍も加わったとはいえ、やるじゃない」

フロル「おそらくだけど、ルマーサ島はケンナードに制圧されるだろうね。こっちは制圧を依頼されただけで、戦線の維持までは依頼されていない。だから、欲張らずに帰ってきたってわけさ」

アンジェラ「その判断は正しいさ」

 

 フラディとアンジェラは、フロルの判断は正しいと肯定する。

 

フラディ「それとフロル。次の戦場が決まった。今度はでかいぞ」

フロル「詳しく聞かせてくれ」

 

 みんなは真剣な表情になる。

 

アンジェラ「次の戦場は中東地域。クライアントはユーロピア連邦。指定された各地を制圧、戦線を維持するのが任務。期間は1年。依頼料は10億ユーロ。毎月の分割払いとなった」

フラディ「俺達はそれを受諾した。1番隊〜8番隊を投入する予定だ。もちろん、俺とアンジェラも出る」

フロル「おいしい話しだね。やっとまともに戦える」

アンジェラ「だけど、ある組織と共闘することになってんだよ」

キャシー「どんな組織ですか?」

フラディ「セキレイさ」

 

 セキレイ…。侍と忍者を中心に構成されたトップクラスの猟兵団で、その戦力はシュテルネンリヒトに勝るとも劣らない。和風要素が強いという特徴を持つ。団長はユヅキ・イカルガという美女。

 シュテルネンリヒトと対立することがあれば、飲んで楽しむということもある。プライベートでは仲が良いが、仕事となると別となる。

 

キャシー「シズネというクソ女がいる組織ですね」

 

 キャシーが突如、ムッとした表情になる。

 

アンジェラ「あの子ね。フロルのことが大好きでたまらないヤンデレ女」

フラディ「勇者の激強な女の子だな」

フロル「二度と戦いたくない…」

 

 それぞれの反応を見せる3人。

 

フラディ「セキレイと共同作業だ。逆に言えば、セキレイと組まなければ厳しいということだ」

アンジェラ「出発は1ヶ月後だ。準備は怠らないようにね」

フロル&キャシー「はい」

 

 だけどこのとき、フロルの身に何かが起こることを誰も知る良しもなかった。



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03 中東地域に魔王が現る!

 それから1ヶ月経過。ルシアーラ大陸中東地域…。

 中東地域は砂漠地帯であるが、これでもかというくらいのマナクリスタルの資源と石油資源が豊富に埋蔵されている。1000年採掘しても枯渇は有り得ないと言っても過言なくらい…。

 

 マナクリスタルとは、鉱山などから採掘できる天然資源の結晶体で、魔力を持つ。しかも、時間が経過すれば消費された魔力が自然に充填されるため、燃料の補給が必要のない、半永久的と言っても過言ではない。

 マナクリスタルの用途は主に、車や飛行船など乗り物全般の動力機関、暖房、証明、通信、兵器、その他機械などが上げられ、インフラストラクチャーの整備に欠かせない。マナクリスタル発電所というのもある。

 マナクリスタルが採掘できる場所は限られているし、相場も上昇している。現在の相場は1g=70ユーロとなっており、金の相場を上回っている。理由は主に、乗り物の大量生産にある。マナクリスタルの動力源を一度作ってしまえば半永久的になるし、燃料の補給も必要ない。他の機械もそう。現在、各国の間でマナクリスタルの奪い合いの状況になっているという。

 

 石油資源も需要が高くなっている。石油の原油価格が上昇しており、今では1バレル=50ユーロである。原油価格上昇の理由は主に、需要に供給が追いつかないことにある。確かに石油の用途は非常に多い。火力発電所、プラスチックなど石油製品、その他燃料など…。

 

 莫大な資源の利権欲しさに、ルシアーラ大陸の大国であるユーロピア連邦とヴェルナ聖王国とケンナード共和国、その他の国々が介入しているという。

 幸いなことに、超大国のオーディン帝国の介入はない。オーディン帝国はマナクリスタルと石油の産出国であり、中東ほどではないが、それなりに豊富に採れるため、中東に介入する理由がない。

 

 

 

 そして現在、ルシアーラ大陸中東西アジアのスレイマ共和国…。スレイマ共和国は、中東諸国連合のひとつにして中東最大の軍事国家。地中海に面しており、石油資源やマナクリスタルもそれなりに恵まれている。

 ユーロピア連邦とシュテルネンリヒトとセキレイはスレイマ共和国制圧のため、スレイマ共和国に対する大々的な軍事攻撃を始めた。攻撃の名目は、ユーロピア連邦に対するテロ行為。実際に起きた出来事であるが、何年も前の話し。

 テロを行ったのはスレイマ共和国によるものであるが、ユーロピア連邦はあえて報復しなかった。なぜなら、この日のために備えていたからである。もっとも、本音はスレイマ共和国やその他中東各地にあるマナクリスタルと石油の資源の利権を獲得したいがため。

 中東には数多くの国が存在するのだが、無政府状態の国があれば、政府が機能している国もある。滅亡と建国の繰り返しという暗い歴史が中東にある。だから中東に住む国民は貧しい生活を強いられる。他国が介入してもしなくても、状況は変わらない。

 話しを戻すが、スレイマ共和国の首都ダルザーにシュテルネンリヒトが侵入。スレイマ軍との交戦に入るが、戦況は厳しくなっている。軍事国家だけあって、相手の練度も高い。

 だけど、スレイマ軍が相手しているのは、シュテルネンリヒトという歴戦の猟兵が集まった組織である。

 

スレイマ軍兵士「くそ!異教徒め!」

スレイマ軍兵士「我が国から出ていけ!」

 

 スレイマ軍はアサルトライフルで発砲し続けて抗うも…。

 

フロル「甘いよ」

スレイマ軍兵士達「うわあああああ!!!」

 

 突然現れたフロルからアサルトライフルの銃撃を受ける。

 

スレイマ軍兵士「フロル・レイヴァール…」

スレイマ軍兵士「ベルセルクと呼ばれた…シュテルネンリヒト3番隊隊長…」

スレイマ軍兵士達「うわあああああ!!!」

 

 周辺にいたスレイマ軍兵士達はフロルの圧倒的かつ狂人的な強さの餌食となった。

 

スレイマ軍兵士「バ…バカな…ここにいる兵士だけでも100人は超えているんだぞ…それを…たった1人で…」

 

 実はこのエリアにスレイマ軍兵士が100人以上いた。だけど、フロルがたった1人で、100人を超える兵士達を蹂躙したという。

 生き残った兵士はアサルトライフルを構え、その銃口をフロルに向けるが…。

 

スレイマ軍兵士「がはっ!!」

 

 後ろから攻撃を受けた。背中から刃を貫かれ、兵士は絶命する。やったのは、1人の美少女である。

 

?「やっほーフロル、久しぶり」

フロル「やあシズネ。もう来たのかい?」

 

 シズネ・イカルガ…。猟兵団セキレイの女団長ユヅキ・イカルガの長女にしてセキレイの副長を務める、18歳の美少女。銀髪のロングヘアーにして美貌と豊満なスタイルを誇る。性格は明るい。得物は太刀で、同じ太刀の使い手であるフロルより剣術が上で達人クラス。

 だけど、その本質は勇者。勇者として既に完全覚醒しており、勇者しか扱えない呪文や特技などもある。竜の騎士とは異なり、闇を払う力を持つ。

 

シズネ「ええ。あっちのエリアはすでに制圧しているわ」

フロル「こっちもだよ。とはいえ、生き残りがいたのは俺のミスかな?助けてくれてありがとう」

シズネ「どういたしまして。お礼にわたしとラブラブすること♪」

フロル「え?」

 

 そのときだった。

 

キャシー「フロルから離れて!」

 

 キャシーがカタールを装備して、シズネに強襲。シズネは余裕な表情で太刀を構えて、キャシーの攻撃を防ぐ。

 

シズネ「あらキャシーちゃん、わたし敵じゃないわよ♪」

キャシー「わたしにとっては恋敵よ!」

シズネ「恋敵ねぇ~。それじゃわたしにとってもキャシーちゃんは恋敵ね♪」

キャシー「だけどわたし、フロルに抱かれたわ」

シズネ「なんですって?」

キャシー「フロルに処女を捧げ、フロルの童貞をもらったわ。それ以来は毎晩ベッドの上でハッスルしているわ♪」

シズネ「それじゃわたしもフロルに処女を捧げるわ。そして結婚♪」

キャシー「フロルと結婚するのはわたしよ!」

キャシー&シズネ「うぅ~」

 

 フロルを巡ってにらみ合いをするキャシーとシズネ。

 

フロル「増援きたよ」

 

 そのとき、スレイマ軍の部隊が増援として現れた。

 

スレイマ軍兵士「異教徒め!よくも神の国を!」

スレイマ軍兵士「侵攻者どもに鉄槌を!」

 

 兵士達がアサルトライフルを構えると、

 

フロル「ジゴスパーク!」

シズネ「ビックバン!」

キャシー「グランドクロス!」

スレイマ軍兵士達「うわあああああ!!!」

 

 フロルとシズネとキャシーが放った特技により、兵士達が一掃されたという。

 余談だけど、キャシーはパラディンタイプ。グランドクロスだけでなくバギクロスやベホマラーやザオリクなど、攻撃とサポートに特化している。

 

 

 

 その後、首都ダルザーの各エリアを制圧したシュテルネンリヒトとセキレイ。ユーロピア軍が首都ダルザーの8割近くを制圧。戦いが落ち着いた頃、スレイマ共和国首都ダルザーにあるダスラム宮殿…。

 ダスラム宮殿はスレイマ共和国政府の建物。宮殿の規模が非常に大きく、砂漠の国でありながら庭園が緑豊か。共和制の大統領でありながら、貧しく暮らしている民を放っておいて豪勢な暮らしをしていたことがわかる。

 そのダスラム宮殿はシュテルネンリヒトとセキレイの連合が完全制圧し、捕らえた大統領はユーロピア連邦軍に引き渡したという。

 フロルとキャシーとシズネなど他の猟兵達はダスラム宮殿に入る。その宮殿の会議室で、フラディとアンジェラ、セキレイの団長ユヅキ、ユーロピア連邦軍准将にして中東方面軍司令官ディアーナ・グラーディスがおり、会議している。

 

ディアーナ「スレイマ共和国にある資源の確保が目的というのもあるが、サラビア諸国連合侵攻の橋頭堡にするのが本当の目的だ」

 

 ユーロピア連邦の目的は、スレイマ共和国を制圧すること。スレイマ共和国にある石油やマナクリスタルなどの天然資源を確保するという理由もあるが、最大の目的は、スレイマ共和国そのものをサラビア諸国連合侵攻の橋頭堡にすることである。

 

アンジェラ「サラビア諸国連合ね…。確かにあそこはこれでもかというくらいの石油やマナクリスタルが埋蔵されている。埋蔵量だけでもトップクラスなんじゃないかな?」

ディアーナ「ああ。ユーロピア連邦政府は当初、サラビア諸国連合から石油やマナクリスタルを購入していた。だけど、サラビアは次第に石油とマナクリスタルの価格を上昇させて、無茶な条件を突き付けられることもあった」

アンジェラ「無茶な条件とは?」

ディアーナ「わたしが知るかぎり、地中海の海洋権益譲渡、領土割譲など」

アンジェラ「傲慢だね~。それで政府がブチギレたってわけか」

ディアーナ「それもあるがな。ヴェルナ聖王国やケンナード共和国の動きも目立ってきた。他の大国より先手を打たなければならない」

 

 サラビア諸国連合とは、スレイマ共和国の南に位置する中東最大の国家。サラビア諸国連合には、石油やマナクリスタルなどが豊富に埋蔵されている。埋蔵量だけでも世界トップクラスとのこと。これらの資源によってサラビア諸国連合は巨万の富を得たが、各国に対して次第に傲慢になってきた。

 ユーロピア連邦はこれを名目に、サラビア諸国連合への軍事侵攻を決断したという。

 

ユヅキ「しかし、うちらをこき使いますなぁ。うちらとしては全然OKやけど、ユーロピアの兵士達を死なせたくないんどすか?」

ディアーナ「いや、むしろ武功を上げる機会として志願者が多い。だけど近々、大統領選挙があるのだ。ユーロピア軍兵士が戦死したら支持率が下がるとして、なかなか許可されない」

ユヅキ「ああ〜なるほどなぁ〜」

 

 ディアーナの話によれば、ユーロピア連邦は近いうちに大統領選挙が行われる。現大統領の支持率は横ばいになっており、高くないし低くもない。

 ユーロピア連邦現大統領は、ユーロピア軍の兵士が1人でも戦死したら支持率が下がることを恐れている。だけど、資源の利権が欲しい。そのため、シュテルネンリヒトやセキレイなど猟兵団を高値で雇う。

 

フラディ「軍上層部も事なかれ主義か?」

ディアーナ「否定はしないさ」

 

 ディアーナは、トップクラスの猟兵団の幹部と同等かそれ以上の実力を持つ。誉れ高いオーディン帝国のナイトオブラウンズとまともに戦えるユーロピア軍と言えば、ディアーナしか思い浮かばないほど。

 

ディアーナ「サラビア諸国連合の侵攻は我々だけでやってみようと思う。猟兵に頼らないと戦えない軍隊と見られたくないしね」

アンジェラ「大丈夫なの?」

ディアーナ「成果を出せば我が軍の威信を示せるし、大統領の支持率が上がるからな」

 

 とのことである。

 

 

 

 それから時間が経過。ディアーナ率いるユーロピア連邦軍は、制圧した首都ダルザーを平定するために、住民全員を首都ダルザーから避難させる。追い出すという表現のほうが正しい。だけど、抵抗する住民を射殺など容赦しない。

 フロルはというと、割り当てられたダスラム宮殿の広々とした寝室にいる。その寝室はトイレルームとバスルームそれぞれ付いている。その他にセミダブルベッドやソファーやテーブルなど、基本的な家具が備えられている。

 現在、フロルはベッドの上で、ある物を見ていた。紋章が刻まれたペンダントと手紙である。常に持ち歩いている物だが、手紙の場合は持ち歩く際、防水性の袋に入れている。

 手紙には、こう書かれている。

 

『フロルへ…。もし、この手紙を読んでいるのがわたしの息子フロルなら、わたしはこの世にいないでしょう。あなたが生まれてから1年後、アルトマイア王国が魔王軍に襲われました。目的は、勇者として生まれたあなたの命を奪うため。わたしはあなたを逃がすために精一杯でした。もし、あなたが心ある人に拾われ、成長したら、エリヴァン王マーティンに頼るのです。マーティン王はわたしの父で、あなたの孫に当たります。わたしはもともとエリヴァン王女であり、アルトマイア王国に嫁いだのです。そして、あなたは誇りあるアルトマイア王国の王子であり、ヴァルレシアを救う大きな使命を持った勇者。勇者とは、大いなる闇を打ち払う者。なぜあなたが勇者として生まれたのか、いずれわかることでしょう。フロル、我が愛する息子、一緒にいられなくてごめんなさい…。アルトマイア王妃エストリア』

 

 思いが伝わった手紙の内容であるが…。

 

フロル「俺…勇者じゃなくて竜の騎士だけど…。どこかで狂ったのかな?ヴァルレシア…。地球にないということは異世界なのか…?魔界や天界もあるんだから、異世界があっても不思議じゃない…」

 

 フロルは疑問を抱く。

 

フロル「だとしても、俺は猟兵だ。戦場で何万の命を奪ってきた、魔王よりタチの悪い狂人だ。…ヴァルレシアってどう行くんだ?アンジェラ姉さんならわかるんじゃないのか?」

アンジェラ「呼んだか?」

フロル「姉さん!?」

 

 アンジェラが現れた。

 フロルは手紙の内容をアンジェラに見せる。

 

アンジェラ「まだ持ってたんだ。そりゃそうだよね。あんたの母親と故郷の手がかりだから」

フロル「ヴァルレシアって知っている?」

アンジェラ「ああ。地球とは別の世界だよ。かつて創世三大女神が地球を作ったという神話がある。だけど保険として 、もうひとつの世界を救った。それがヴァルレシアさ」

フロル「ヴァルレシアか…。どういうところなの?」

アンジェラ「さあね」

 

 アンジェラにはぐらかされるフロル。

 

アンジェラ「この仕事が終わったら、わたしの故郷エリンシアの里に連れて行ってやるよ。そこの長老に聞けば、ヴァルレシアについてわかるかもしれないよ」

フロル「ありがとう」

 

 素直に前向きになるフロル。

 

 

 

 それから1ヶ月が経過。ユーロピア軍はシュテルネンリヒトとセキレイと共同で、スレイマ共和国各地を制圧して平定し始める。

 それと同時に、ユーロピア軍本隊はサラビア諸国連合への侵攻を開始。と言いたいのだが、サラビア諸国連合に異変が起きていた。サラビア諸国連合の首都アリヤードと各地に魔物が大量発生しているのである。

 

ディアーナ「制圧すべきポイントを蹂躙されてたまるか。各部隊、魔物を殲滅せよ!」

 

 飛行巡洋艦のブリッジでユーロピア軍の指揮を執るディアーナは、各部隊に魔物の殲滅を指示。

 ユーロピア軍兵士は、アサルトライフルはもちろん、戦車やロケット砲など近代兵器を駆使。戦闘機まで投入し、上空にいる魔物を蹴散らしている。

 それからユーロピア軍は、大軍をもって襲撃する魔物を全て葬り去った。

 

?「地球の人間は、このような強力な兵器を使うのか…」

?「ヴァルレシアの連中と違ってかなり手強いですな」

?「行くぞザイード。ヴァルレシアを完全支配するために、あの勇者を始末しなければならない」

?「はっ、ゼーゲル様。六軍団長筆頭、超竜軍団長ザイードがお供します」

 

 ある上空には、2つの存在があった。

 どうやら魔物を放ったのは連中であるが、ユーロピア軍の力を試したのが目的だったようだ。

 

 

 それから時間が経過。フロルはシュテルネンリヒト3番隊を率いて、スレイマ共和国のシャーウイン鉱山に攻撃を開始する。

 シャーウイン鉱山にはスレイマ軍兵士達が立てこもっており、その兵士達を一掃するのがフロル達の役目。加えて、シャーウイン鉱山はマナクリスタルが豊富に埋蔵されている。その利権をユーロピア連邦にもたらすことも目的とする。

 

キャシー「敵の殲滅の完了を確認したわ」

フロル「ああ。だが…他の連中もここを欲しているようだ」

 

 フロルは後ろを振り向くと、そこには2つの存在があった。禍々しい雰囲気を持つ。

 

ゼーゲル「我が名はゼーゲル。ヴァルレシアという世界を支配する魔王だ」

フロル「魔王だと?それにヴァルレシア…。どうして俺の前に現れた?」

ゼーゲル「ヴァルレシアの完全なる支配のために、勇者であるお前の命を奪うためだ」

フロル「勇者?俺は勇者じゃなくて竜の騎士だ」

ゼーゲル「なに?」

フロル「ヴァルレシアか…。どうやら俺はその異世界に縁があるようだ。悪いが、そのヴァルレシアのために、死んでもらう。ドルオーラ!?」

ゼーゲル「くっ!?」

 

 フロルは竜闘気(ドラゴニックオーラ)をまとい、ドルオーラを放った。ゼーゲルは防ぐが、ダメージが大きかった。

 

ゼーゲル「くそ!勇者と思って、総力を持ってアルトマイア王国を滅ぼしたというのに!」

フロル「魔王だがなんだか知らんが、戦争代行者である猟兵団の幹部にケンカを売ったんだ。ただじゃすまんよ」

 

 フロルは太刀を持ってゼーゲルに強襲する。ゼーゲルは魔剣を持って応戦する。

 

フロル「斬り合おうか」

ゼーゲル「なめるなー!!」

 

 フロルとゼーゲルは激しい攻防戦を繰り広げた。

 その頃、キャシーはザイードと交戦。

 

ザイード「手強い!」

キャシー「魔族だよね?どのような理由であれフロルの命を狙ったんだ。ただじゃすまないよ」

ザイード「まだまだ!喰らえ!」

 

 ザイードはれんごく火炎を放った。

 

キャシー「しんくうは!!」

 

 キャシーはしんくうはを放って、れんごく火炎を防いだ。

 

ザイード(なめてた…。六軍団長を全員連れてくればよかった…!)

<ダンッ!!>

ザイード「な…」

 

 ザイードの隙を突いたキャシーは、懐から拳銃を手に取って発砲。拳銃から発砲された弾丸がザイードの左肩に命中。ザイードは地面に膝が着いた。

 

キャシー「これでもわたしは猟兵団シュテルネンリヒト3番隊副隊長。あなたごときに遅れを取るわけがない。グランドクロス!!」

ザイード「うおおおおお!!!」

 

 キャシーはグランドクロスを放って、ザイードを追い詰めた。

 

ザイード「まだまだ!!」

キャシー「周り」

ザイード「あ…」

 

 キャシーとザイードの周りに、アサルトライフルまたは大剣をそれぞれ構えるシュテルネンリヒトの猟兵達がいた。3番隊の猟兵達である。

 

ゼーゲル「喰らえ!メラガイアー!!」

 

 ゼーゲルはメラガイアーを放つが、フロルは太刀を振るってかき消す。

 

フロル「終わりだ。風の型「疾風」!!」

ゼーゲル「ぐおおお!!!」

 

 フロルは太刀を利用した秘奥義を放った。敵に接近して無数の太刀筋を入れるという秘奥義である。この秘奥義を受けたゼーゲルは倒れた。

 

フロル「あんたは強かったよ。ちなみに言うが、俺は竜闘気を纏っていない。最初のドルオーラだけさ」

ゼーゲル「ば…バカな…」

フロル「こっちはあんた以上の狂人達と戦ってきたんだ。これまでタイマンで、竜の騎士を3人も仕留めている。だけど、よく俺を見つけたな」

ゼーゲル「ずっと探していたからな。だが、まさか地球にいるとは…。道理で見つからないはずだ。お前が地球にいるのを知ったのは、つい最近のことだ。勇者の力を持つ圧倒的に強い猟兵がいるという情報。アルトマイア王国王子の名はフロル。だが、竜の騎士とはな…」

フロル「あんまり竜の騎士の力を使っていないからな。使っていたのは、デイン系など勇者が使う呪文や特技だけだから、俺が勇者と言われても無理ない」

ゼーゲル「だが、俺の目に狂いはなかった。竜の騎士なら…なおさら…消さなければならない!!相打ちになろうともな!!」

フロル「悪いが、1人で死んでくれ!」

ゼーゲル「相打ちと言った!」

 

 ゼーゲルはフロルに接近して、フロルを掴んだ。

 

ゼーゲル「ぐははは!もらった!…うっ!!」

 

 ゼーゲルは気づいた。後ろに、強い殺気を放っている、太刀を構えたシズネがいたことを…。

 

シズネ「フロルになにしてるの?」

 

 それだけじゃなかった。

 

ユヅキ「うちが気に入っているフロルを狙うなんて、どう落とし前つけるん?」

フラディ「魔王だって?ラミレスと同格の四大魔王か?」

アンジェラ「まあいいさ。うちの子に手を出したんだ。簡単に死ねると思うなよ」

マイア「久々の強敵だけど、すぐに終わりそう」

フラディ「手を貸すぜ、フロル」

 

 セキレイの団長ユヅキが現れた。さらにシュテルネンリヒトの団長フラディとその副団長アンジェラ、幹部のマイアとフラディまで現れた。

 このとき、彼らは武装している。同時にフロルはゼーゲルを振り払って離れる。

 

ザイード(なんということだ!?これほど強大な力を持つ人間がこんなにいるとは!?ヴァルレシアの人間どもと格が違う!甘かった…。ヴァルレシアの完全支配を目的に勇者フロルの命を狙ったが…。ゼーゲル様を死なせはしない!!)

 

 ザイードは決意する。

 

ザイード「ゼーゲル様!!」

 

 フロルに向かってれんごく火炎を放つが、アンジェラが前に出て、闘気を込めて剣を振るった。

 

アンジェラ「カラミティウォール!!」

 

 カラミティウォールと呼ばれる、闘気の壁を放つ特技を放った。ザイードが放ったれんごく火炎がカラミティウォールに阻まれ、カラミティウォールがザイードのほうに迫っていく。

 

ザイード「まだまだ!」

 

 ザイードは根性でカラミティウォールを受け止め、かき消すが、アンジェラはメドローアを放つ体勢に入っていた。

 

ザイード「あれはメドローア…人間ごときが…極大消滅呪文を…」

アンジェラ「わたし、四大魔王より強いと言われているらしいよ。じゃあね」

 

 アンジェラはメドローアを放った。だが、ザイードはそれをかわす。

 

アンジェラ「よくかわすね。じゃあこれはどうだい?」

 

 アンジェラは右手に魔力を込めて…。

 

アンジェラ「カイザーフェニックス!!」

 

 炎の鳥を模したメラ系の技を放った。

 

ザイード「ぐわあああ!!!」

 

 ザイードはまともに喰らって倒れた。

 

ザイード「く…くそ…我は魔王軍六軍団長筆頭…超竜軍団の…がはっ!!」

アンジェラ「なにボヤいているのかわからんけど、とどめ刺すわ」

 

 アンジェラに右足で、頭を強く踏みつけられるザイード。

 

ザイード(ち…力の差があり過ぎる…!せめて…せめて…!)

 

 ザイードはアンジェラに勝てないと確信する。そして決意する。

 

ザイード「アルトマイア王子フロル!道連れだー!!」

フロル&ゼーゲル「!?」

 

 ザイードが根性でアンジェラを振り切ってフロルに接近し、フロルを羽交い締めにする。

 

フロル「まさか、メガンテか!?」

キャシー「撃て!!」

<ダダダン!!>

ザイード「うぅ!!」

 

 キャシーは猟兵に指示し、ザイードに向けて発砲させる。猟兵達の撃った弾丸がザイードの背中に次々と命中。だが、ザイードはひるまなかった。

 

フロル「くそ!せめてあの魔王だけでも…!!」

ザイード「させん!我がメガンテで道連れにしてくれるわ!」

アンジェラ「マホトーン」

ザイード「しまった!?」

 

 だが、アンジェラのマホトーンによりザイードは呪文を唱えることができなくなった。メガンテの使用を封じた。

 

フロル「はあああ!!!」

<ダダダン!!>

 

 フロルはザイードを振り払い、さらに地面に落ちてたアサルトライフルを持って、ゼーゲルに向けて連射する。

 

ゼーゲル「うおおおおお!!!」

 

 ゼーゲルは銃弾を浴びる。もはや立っているのがやっとの状態だ。

 

フロル「これで、終わりだ!」

 

 フロルは太刀を持ってゼーゲルに接近。その太刀でゼーゲルの胸部を貫いた。貫いた太刀を抜いて、フロルは距離を取る。

 これで、ヴァルレシアという世界に脅威をもたらす魔王が潰えたと思われたが…。

 

ゼーゲル「ぐふっ!!…だが…」

 

 まだ息があった。

 

ゼーゲル「…せめて…せめてお前だけでも…!お前をやつらから引き離し…今度こそ…お前を仕留める!」

フロル「なに!?」

 

 ゼーゲルはフロルの後ろ付近の空間に、大きな穴を開ける。

 

ゼーゲル「うおおおおお!!!」

ザイード「はあああああ!!!」

フロル「しまった!?」

 

 渾身の力を振り絞ったゼーゲルと、それに加わったザイードはフロルを掴んだ状態で、空間にできた大きな穴の中に飛び込んだ。直後、穴は閉じた。

 

フラディ「くそ…なんてこった…!」

アンジェラ「そういえばあいつら、フロルのことアルトマイア王子とか言っていたな」

キャシー「ヴァルレシアとかどうのこうのとか言っていました」

アンジェラ「それじゃフロルは…ヴァルレシアに連れていかれたのか…」

シズネ「フロルを探す?」

アンジェラ「そうしたいが仕事優先だ」

フラディ「いやアンジェラ、フロルを捜索してくれ」

アンジェラ「良いのかい?確かにわたしであればヴァルレシアに行けるけど」

フラディ「構わねえ。見つけたら知らせてくれ」

アンジェラ「わかったよ。ルーラ」

 

 アンジェラはルーラで飛んでいった。

 

ユヅキ「フロルは強い子やで。うちは信じとるさかい」

 

 ユヅキの言葉を受けて、みんなは頷く。



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第一章 世界ヴァルレシア
04 エルフの里ミーミルとドラゴンオーブ


 それから時間が経過…。フロルはというと…。なぜかベッドの上で寝ていた。

 

フロル「ここは…俺はいったい…」

?「気が付かれましたか?」

 

 フロルが目を覚ますと、傍には1人の女性がいる。

 どうやらここは、建物の中のようだ。

 

フロル「き…君が助けてくれたのか…?」

?「はい…まさか人間が浮島で倒れていたので…」

フロル「浮島?え?中東じゃないのか?」

?「ちゅうとう?なんですのそれ?」

 

 状況が掴めないフロルは建物から外に出る。

 すると、フロルの目に映ったのは、複数の大きな島が浮いている光景である。もっと驚いたのは、島の住民の耳が長く尖っているというところ。

 

フロル「まさかここ…エルフの島…というか里?」

?「そうです。ここは我らエルフの里ミーミルです」

フロル「そういうことだったのか…。ああそうだ。俺はフロル。フロル・レイヴァール」

オルハ「この家に住むオルハと申します。最後に人間を見たのは200年くらい前なので、みんな人間を珍しがっています」

フロル「そうだったのか…。助けてくれてありがとう。まずは状況を整理したい。俺は地球という世界からやってきたんだ。この世界はなんて呼ばれている?」

オルハ「ヴァルレシアです。まさか、異世界の人間なのですか?」

フロル「ああ。いきなり魔王ゼーゲルと、ザイードという側近が現れたんだ」

オルハ「魔王ゼーゲルですって!?ザイードとは、超竜軍団の軍団長にして六軍団長筆頭の…」

フロル「重傷を負わせたんだが、仕留め損なってね…。致命傷を負わせたから、もう死んでいると思うけど…。ていうかオルハ、知っているのかい?」

オルハ「知っているもなにも、このヴァルレシアを支配しようとしている魔王軍です」

フロル「そういうことだったのか…」

オルハ「それよりも右手のあざ…。フロル様は勇者様でしょうか?」

フロル「いや、竜の騎士だよ。確かに勇者の力を使えるけど…」

オルハ「竜の騎士様でしたか!よかった…。このヴァルレシアが救われる…」

 

 オルハは嬉しさを隠せずに涙を流した。

 

?「目が覚めていたのですね」

オルハ「お母様」

 

 そのとき、1人の絶世の美女のエルフが現れた。

 

フロル「あなたは?」

リーファ「エルフの里ミーミルの族長リーファと申します」

フロル「フロルです。人間である俺を介抱してくれて、ありがとうございます」

 

 オルハの母親にしてエルフの里ミーミルの族長である。

 

オルハ「お母様、フロル様は竜の騎士です。しかも異世界で、ヴァルレシアに脅威をもたらした魔王ゼーゲルとその側近ザイードに重傷を負わせたそうです」

リーファ「そうだったのですね。ヴァルレシアを救う希望が出てきました」

 

 感涙するリーファ。

 

 

 

 落ち着いた頃、フロルはオルハとリーファの家のリビングにいる。家は3LDKの平屋で、広々としている。

 その家でなにをしているのかというと、ヴァルレシアに関する情報収集。ヴァルレシアの世界地図を見ているが、オルハが言うには、最新の地図である。

 

オルハ「15年前に魔王軍によってアルトマイア王国が滅び、10年前にバーンスタイン王国が滅びました。今では、エリヴァン王国とマールバラ王国とカイヴァーラ王国が力を合わせて、魔王軍に対抗しています」

フロル「浮島なのに、地上の情報は得ているんだね」

リーファ「はい。鳥系の魔物などが新聞などを持ってきてくれるので」

フロル「なるほど…。実はヴァルレシアに思い当たることがあって…」

 

 フロルは、常に身につけている首飾りと、手紙を見せた。

 

フロル「これは俺が、物心がついたときから身につけていたものです。この手紙もそうです。母からの手紙で、内容にはヴァルレシアとかアルトマイアの名前がありました」

リーファ「この首飾りに付いている宝石…この紋章…アルトマイア王家の紋章ではありませんか!?」

オルハ「異世界の人間なのにどうして…」

フロル「おそらく…何らかの理由で俺は地球に来たのでしょう」

リーファ「…今までなにをしていたのですか?」

フロル「シュテルネンリヒトという猟兵団に拾われました」

オルハ&リーファ「猟兵団?」

フロル「戦争代行者と言えばイメージできるでしょうか?お金をもらって、正規軍に代わって、戦争に参加するという。気がついた俺は戦場にいました。毎日のような地獄だけど居心地良くて…。気がついたときに幹部になっていましたが…。こういった修羅場を潜り抜けてきたおかげで、魔王と戦うことができたのかもしれませんね」

 

 悲しそうな表情になるフロルだが、リーファとオルハも悲しそうな表情になる。ヴァルレシアに救いをもたらす勇者が、実は人殺しに手を染めた戦争代行者であることを…。

 

オルハ「フロル様…異世界に帰ったら…戦場に戻るのですか?」

フロル「まあ、そうなるね。食べていくためには、仕方のないことだから」

オルハ「そんなのダメです!ヴァルレシアが平和になったら、ここで暮らしましょう」

 

 オルハは訴える。

 

<チュドーン!!>

 

 そのとき、爆発音が響いた。

 

エルフ女「リーファ様、オルハ姫様、大変です!魔王軍の襲撃です!」

 

 エルフの女性が現れ、2人に報告。

 

リーファ「ついにここまで…。迎撃してください」

エルフ女「はい!」

 

 リーファは指示を出すと、エルフの女性は後にする。

 

フロル「まさか、魔王ゼーゲルの魔王軍ですか?」

リーファ「そのようですね」

フロル「あの様子だと、ゼーゲルの身に起きたことを知らない、もしくは隠蔽している可能性もありますね」

 

 フロルはそこにあった自分の太刀を手に持つ。

 

フロル「助けてくれた恩返しです。俺も戦います」

リーファ「はい!」

 

 フロルの決意にリーファとオルハは希望に満ち溢れた。

 それから、フロルとオルハとリーファはそれぞれの武器を持って外に出る。オルハとリーファの武器は杖で、魔法を中心に戦う。

 外は、飛行系の魔物が大量発生しており、エルフの里ミーミルを襲っている。エルフは魔法だけでなく、弓矢や剣を持って戦う。

 

フロル「ライデイン!!」

 

 フロルはライデインを放って、飛行系の魔物を一掃する。

 

エルフ男「あれは…勇者!?」

エルフ男「勇者様!」

エルフ女「オルハ様とリーファ様が拾った人間が勇者だったのね」

 

 エルフ達はフロルを勇者と呼ぶが…。

 

フロル「いやその、俺は勇者ではなく竜の騎士だから」

エルフ男「竜の騎士様だったのか!?」

エルフ女「本当なのですか?」

 

 一部、疑っているエルフがいるのだが…。

 

フロル「ドルオーラ!!」

 

 フロルはあえて竜闘気を纏い、ドルオーラを放った。ドルオーラにより、他の魔物も一掃するが…。

 

リーファ「本当に竜の騎士様だったのですね!」

オルハ「素敵です、フロル様!」

 

 リーファとオルハにも疑われたが、これでフロルが竜の騎士であることが証明された。

 

?「竜の騎士だと!?なるほど…。ヴァルレシアの勇者が、実は竜の騎士だとはな!」

 

 そのとき、ガルーダと呼ばれる鳥系の魔物の背に乗った1人の魔族が現れた。筋骨隆々の魔族の男である。

 

?「我が名はアリゲイル!魔王ゼーゲル様配下、六軍団がひとつ、百獣軍団を統べる軍団長なり!」

 

 魔王ゼーゲルの幹部である。

 

フロル「魔王軍の幹部か?それじゃ魔王とザイードの身に起きたことを知っているか?例えばそう、死んだとか」

アリゲイル「死んではおらん!魔王様とザイードは意識不明の状態になっているだけ……はっ!」

フロル「ありがとう。教えてくれて。俺は猟兵団シュテルネンリヒト3番隊隊長フロル・レイヴァール」

アリゲイル「貴様だったのか!?魔王様とザイードをやったのは!?」

フロル「その様子だと、幹部しか知らないようだな」

アリゲイル「くぅ…。だが、貴様を倒せば脅威は取り除かれる。うおおお!!!」

 

 アリゲイルは斧を持ってフロルに立ち向かうが、フロルは素早く接近して、右手に闘気を込めて、右ボディーブローを放った。

 

アリゲイル「がはっ!!」

フロル「俺は猟兵団の幹部だぞ。戦争代行者をなめるな!」

 

 アリゲイルはダメージを受けて地面に膝が着いた。

 

フロル「どういう理由でエルフの里を襲うのかは知らんが、俺を救ってくれた恩人達を傷つけさせない!」

アリゲイル「くぅ…」

フロル「恩人達を襲った仁義外れの外道め…。簡単に死ねると思うなよ」

アリゲイル「まだだ!」

 

 フロルとアリゲイルの間で激しい攻防戦が繰り広げられる。

 

アリゲイル「喰らえ!」

 

 アリゲイルの右腕に強い闘気が込められ始めた。そして、放つ。

 

アリゲイル「獣王痛恨撃!!」

 

 獣王痛恨撃…。闘気を竜巻のように放ち、これを受けた者はズタズタにされる、強力な技である。だが、フロルは構えた。

 

フロル「ギガスラッシュ!!」

 

 フロルはギガスラッシュを放った。獣王痛恨撃とギガスラッシュが激突。

 

アリゲイル「バカな!?」

 

 ギガスラッシュが獣王痛恨撃をかき消し、アリゲイルに命中。アリゲイルは大きなダメージを受けて地面に膝が着いた。

 それだけでなく、フロルの太刀の刃部分にアリゲイルの首筋に当てられた。直後、アリゲイル配下の魔物の攻撃が止まった。フロルはアリゲイルの生け捕りに成功する。

 

アリゲイル「こ、殺せ!」

フロル「殺さんよ。色々聞きたいことがあってね。俺はゼーゲルとザイードによって、ヴァルレシアの世界に放り込まれたんだ」

アリゲイル「そ、そうだったのか!?」

フロル「確かに、俺は生まれがヴァルレシアかもしれない。だけど育ちは地球という世界なんだ。俺は猟兵団シュテルネンリヒトに拾われ、戦場を駆け巡った。これまで、何万人の命を奪ってきた。3人の竜の騎士を仕留めてきたこともある」

 

 フロルはそう語る。

 

フロル「ゼーゲルとザイードの容態はどうだろうか?ザイードはシュテルネンリヒトの副団長に蹂躙され、多くの銃弾を浴びた。俺はゼーゲルに銃弾を浴びせ、この太刀で胸部を貫いた。ザオリクでも生き返るのが厳しいくらいにね」

アリゲイル「…お前の言うとおり…2人は酷く重体だ…。現在は治療中で意識不明の状態だ。この事実を知るのは、俺達幹部とお前だけだ…。徹底した隠蔽を行っている。そうでもしないと、他の魔王達に隙を見せてしまう結果となる」

フロル「ヴァルレシアを狙う目的は?」

アリゲイル「新たな領地の確保だと聞いた。俺も詳しく知らんが、魔王様はヴァルレシアの豊かな自然を求めた。ヴァルレシアという領地を確保できれば、俺達の生活も豊かになるかもしれない」

フロル「なるほど」

 

 フロルは理解する。

 

リーファ「いいえ…。ヴァルレシアの自然は徐々に死んでいます」

 

 リーファが現れた。

 

リーファ「龍脈を安定させるためのドラゴンオーブが失ったのです。200年以上も前に…」

フロル「龍脈と言えば、世界の生命エネルギー。世界は龍脈によって支えられている。龍脈が安定すれば自然は常に豊かで、豊作と豊漁が期待できるという」

リーファ「逆に龍脈が不安定になって途絶えたら、世界は死に絶えます」

フロル「俺の知るかぎり、ドラゴンオーブがなければ龍脈にエネルギーを安定供給できない。そのドラゴンオーブを失った場合、龍脈は既存のエネルギーで安定しなければならず、そのエネルギーを失えば、ヴァルレシアは死ぬ」

リーファ「ええ。ドラゴンオーブを失って以来、わたし達の魔力で龍脈を供給してきましたが、このままの状態が続くと10年は持たないでしょう」

アリゲイル「バカな!支配すべき土地が死んでは意味がない!ドラゴンオーブを安置する場所はここにあるのか?」

リーファ「ええ」

アリゲイル「俺は…なにも知らずにここを襲ったのか…」

 

 アリゲイルは後悔するが…。

 

アリゲイル「俺はまだ死ねん!」

フロル「むっ!!」

 

 フロルを振り払って、この浮島から飛び降りる。同時に飛行系魔物のガルーダが飛んできた。アリゲイルはガルーダを掴んで、この場を後にする。他の飛行系魔物もアリゲイルと同様に、この場から去る。

 

 

 

 戦いが終わった後、エルフの里ミーミルの中央にある大きな神殿…。そこには、フロルとオルハとリーファがいる。

 

リーファ「ドラゴンオーブは4つありましたが、その4つ全て失っています」

 

 目の前にある祭壇には、ドラゴンオーブ4つをそれぞれ安置するところがある。

 

フロル「俺がいた地球にもエルフがいて、そのエルフがドラゴンオーブで龍脈を安定させています。エルフに知り合いがいましてね」

リーファ「そうだったのですね。道理で詳しいと思いましたわ」

フロル「俺が竜の騎士の力を手放して安置できれば、ドラゴンオーブの代用になるでしょう」

 

 フロルは両手をかざして集中すると、小さいエネルギー体が現れた。そして4つに分散して、ドラゴンオーブの安置場所に置かれたという。

 

リーファ「ああ…龍脈が…。これなら5年は龍脈が安定するでしょう。だけど、それだとあなたは竜の騎士の力を失うことになります」

フロル「大丈夫ですよ。あんまり使わなかった力ですし。それに、ドラゴンオーブを見つけて安置すれば良いだけですしね」

リーファ「本当にありがとうございます」

フロル「いえ…。助けてくれた恩を返しただけです。あとは望みませんよ」

オルハ「そんな…。なにかお礼をさせてください」

 

 そのときだった。

 

<グ~>

 

 空腹音が鳴り響いた。フロルのである。

 

フロル「ごはん…食べさせてください」

オルハ&リーファ「はい♪」

 

 食欲に負けたフロルであったという。

 

 

 

 それから時間が経過。夕方になると、フロルはオルハとリーファの家の寝室にいる。割り当てられた部屋であるが、ヴァルレシアを把握するために滞在することを決めた。

 

フロル(この世界に持ち込めた武器は、拳銃にアサルトライフル、拳銃のマガジン3つ、アサルトライフルのマガジン5つ、手榴弾3つ…。銃火器は万が一に備えて封印する)

 

 フロルは道具を整理する。

 

フロル(その他にスマートフォン、ペンとメモ帳、腕時計、サバイバルナイフ、マルチツール、懐中電灯、レーション…。スマートフォンの場合は電話・インターネットできないけど、カメラ撮影に使える。レーションなぁ…)

 

 考えるフロルであった。

 

オルハ「フロル様」

 

 オルハが現れた。

 

フロル「やあオルハ。道具を整理していたんだ」

オルハ「そうなのですね」

フロル「神殿に金庫みたいなのあるかい?物騒なものを保管したいんだけど」

オルハ「ええ。ありますよ」

 

 その後、オルハはフロルを神殿の地下室に案内。フロルは地下室に、拳銃とアサルトライフルと手榴弾とマガジン全てをここに置く。

 

フロル「みんな火薬類だからね」

オルハ「そうなのですね。必要があればわたしに言ってくださいね」

フロル「うん」

 

 それから2人は家に戻る。

 そして夜…。夕食の時間。

 

リーファ「しばらくここに滞在するのですね」

フロル「ええ。迷惑ならすぐに出ていきますけど」

リーファ「迷惑だなんてとんでもありません。1ヶ月でも我が家と思って滞在してもいいですわよ」

フロル「ありがとうございます。まずはドラゴンオーブの手掛かりを探すことから始めなければなりませんね。どこから手をつければいいのかと迷っています」

リーファ「う~ん…そのために地上に降りなければなりませんね」

フロル「幸いにもトベルーラ使えますから、トベルーラで地上に降ります。ルーラも使えるので、帰ろうと思えば帰ってこれますしね」

オルハ「そうなのですね。わたし達もトベルーラとルーラを使えますが、人間達は空を飛ぶ術を持っていないようですね」

フロル「ルーラもトベルーラは高難易度の呪文だから」

 

 ルーラとトベルーラは誰でも扱える呪文ではない。これでも、高難易度の呪文でもある。

 

 それから翌日の朝…。家のリビングで、フロルとオルハとリーファは朝食を取っている。

 

フロル「まずは地上に降りてみようと思います。ここからだと、エリヴァン王国が近いですね」

リーファ「わかりました。気をつけてください」

オルハ「いつでも帰ってきてくださいね」

 

 オルハとリーファはフロルの決意を尊重するのであった。

 

 

 

 その後、フロルはトベルーラで、浮島のエルフの里ミーミルから地上に降り立つ。降りた先はエリヴァン王国の首都、王都バルダの近くである。王都に直接降りられるが、さすがに目立つので無しにした。

 それから進んで、王都バルダに入る。

 

フロル「さて、どこから手をつければ…。そもそもユーロ使えないでしょ。まずは金だ。どっかその辺の盗賊から強盗するかな?」

 

 フロルは物騒なことを考える。

 その後、王都バルダを散策していると、大きな城が目に映った。間違いなく、エリヴァン王国の王様が住む城である。

 

?「君、ボーっとしていると不審者として捕まえるぞ」

 

 城の兵士に声をかけられた。

 

フロル「すみません。初めてきたところなので、迷ってしまって」

兵士「観光客か?」

フロル「ええ。路銀がなくなってしまって、仕事を探しているということもありまして」

兵士「う~ん…。だったらちょうどいい。実は傭兵を募集しているんだ」

フロル「傭兵?」

兵士「うむ。我が国は百獣軍団と交戦しているのだ。百獣軍団とは、魔王軍配下の六軍団のひとつ。その軍団長の名は獣王アリゲイル」

フロル「え?あのアリゲイル?」

兵士「知っているのか?」

フロル「まあ…。まさか、本格的に侵攻するんじゃ?」

兵士「そうなる前に、獣王アリゲイルを仕留めたいというのが、我が王の本音だ。君はどのくらい戦える?」

フロル「バリバリ戦える。報酬はどのくらい?」

兵士「1000ゴールドからだよ。活躍すれば報酬が上がる」

フロル「ゴールド…わかりました…。参加するにはどうすればいいですか?」

兵士「あっちで受付しているから。案内するよ」

 

 フロルは兵士に案内され、傭兵参加の受け付けを行った。

 

受付「確かに…。西のダルセ平原に向かってほしい」

兵士「あそこって激戦区じゃ…」

兵士「ディオン王子様は優秀な兵を要望されているからな。今ならまだ戻れるぞ」

フロル「いえ、そこに行かせてください」

兵士「わかった。案内しよう」

フロル「助かります」

 

 流れで応募したフロル。お金がないとなにもできないという万国共通の部分がある。

 

 

 

 それから時間が経過。西のダルセ平原…。フロルが目に映ったのは、厳しい戦場だった。野戦病院で治療を受け続ける者、最前線で動物系魔物と戦う者。兵士と傭兵ばかりである。

 

フロル「なるほど…。頭をやれば戦いが終わるね」

兵士「それはそうだが、やれる者がいない」

フロル「俺ならやれる。それに、活躍すればするほど、王様にお目通りできる機会もある」

兵士「確かに、この戦場を収めれば、王様にお目通りできるかもしれない。どうしてだ?」

フロル「色々と目的があるんだけど、ひとつは俺の出自。俺が何者なのかをはっきりと知りたいんだ。あとお金」

兵士「まあ…俺もついていくよ。俺はビップス。よろしくな」

 

 ビップスという兵士もついていく。

 それから最前線に入る。アームライオンという魔物が襲ってきたのだが…。

 

フロル「ふっ」

 

 太刀を抜刀してアームライオンを撃破する。

 

兵士「つよ…」

 

 フロルの強さに驚くビップス。

 それからフロルは動物系魔物を次々と蹴散らしていく。

 

ビップス「どうしてこんなに強いんだ?」

フロル「信じてもらえないと思うけど、俺はこの世界の人間じゃない。異世界の人間で、猟兵という戦争代行者として戦場を回っていたから」

ビップス「まあ…うん…」

フロル「だけど、俺の出自がヴァルレシアにあると知ってね。それも目的のひとつ」

ビップス「よくわからんけど…」

フロル「はいきた」

 

 フロルとビップスの目の前に、リカントという魔物が現れた。だが、他のリカントとは違う。黒い毛に大きな剣を持っている。

 

?「まさかここを突破するとはな」

フロル「百獣軍団アリゲイルの幹部か?」

?「我が名はリンカウス。アリゲイル様の側近中の側近だ。人間よ、よくぞここまできた」

フロル「悪いが、仕留めさせてもらうよ」

リンカウス「人間ごときに後れを取る俺ではない」

 

 リンカウスはフロルに向かって剣を振るった。だが、フロルは太刀を勢いよく抜刀して、リンカウスの剣を破壊する。

 

リンカウス「バカな!?なぜ…」

フロル「俺は異世界で猟兵として、戦争代行者をやっていたんだ。数多くの狂人を相手にしてきた俺にとって、お前は敵じゃない」

リンカウス「その右手のアザ…まさか…勇者!?」

フロル「みんな俺のこと勇者と呼ぶんだな?まあ否定はしないけど、俺は竜の騎士だ」

リンカウス「竜の騎士だと!?そんなバカな!?」

フロル「もっとも、ある事情で竜の騎士の力を失っているけど…。強さは変わらんぞ。袈裟斬りだ!」

リンカウス「うわあああああ!!!」

フロル「ついでに言っておくぞ。アリゲイルは傷を負っている。やったのは俺だ」

リンカウス「そんな…バカな…」

 

 リンカウスはフロルの袈裟斬り攻撃を受けて絶命。それと同時に、ダルセ平原の魔物達が引いて散っていった。戦いはエリヴァン王国の勝利だ。

 

ビップス「すげえぞフロル!あんたは大したものだ!さすが勇者様!竜の騎士だったか?どっちでもいい!あんたは英雄だ!!」

フロル「それほどでも。さて、帰ろうか」

ビップス「ああ!今日は俺のおごりだ!」

 

 ビップスはフロルと組んで意気揚々と去っていくが…。

 

?「君達だったのか?百獣軍団の幹部リンカウスをやったのは…」

 

 そのとき、1人の美青年が現れた。美青年の周りに4人の兵士がいた。

 

ビップス「ディラン王子様ではありませんか?」

ディラン「うむ。突然、魔物達が引いたので、もしやと思ってきてみれば…」

ビップス「はい!やったのはフロルという少年です!」

ディラン「フロル?フロルだと?」

ビップス「はい…この者ですが?」

 

 ビップスはディランにフロルを紹介する。

 

ディラン「君はフロルというのか?」

フロル「はい、そうですが?」

ディラン「わたしはエルヴァン王国王子ディランという。わたしの知っているフロルであれば、右手にアザがあるはずだ」

フロル「アザ?これですか?」

 

 フロルは右手の甲をディランに見せる。すると、ディランの顔色が変わった。

 

ディラン「君の母親の名前はわかるかい?」

フロル「はい。エストリアという名前でした」

ディラン「なんと…」

フロル「母からの手紙で、エルヴァン王マーティンに頼るようにと言われて…」

ディラン「お爺様のことか?」

フロル「お爺様?」

ディラン「マーティンは我が祖父にして先王陛下。今は我が父オーダンがエルヴァン王だ。物心ついたときから、なにか持っていないかい?手紙以外に」

フロル「この首飾りですね」

 

 フロルは首飾りをディランに見せた。それを見たディランは驚愕する。

 

ディラン「間違いない!まさか…生きていたとは…」

フロル「あの…ディラン王子?」

ディラン「フロル、我が父と会ってくれないか?」

 

 ディランの行動にフロルは疑問を抱く。

 

 

 

 それから時間が経過。王都バルダ・エルヴァン城・謁見の間…。玉座が2つあり、ひとつはオーダンという男性が腰を下ろしている。もうひとつは、セレストという女性が座っている。王様と王妃である。

 ディランはフロルを連れて両親を紹介し、フロルが持っているエストリアの手紙を見せる。手紙はオーダンが読んでいる。

 

オーダン「確かに、我が妹エストリアのだ。その首飾り、右手のアザ、間違いない。死んだと思われていたアルトマイア王子フロル。まさか、生きていたとは…」

フロル「俺は地球という世界で育ちました。どういうわけか、地球にいました」

オーダン「地球とな。どのようなお方に拾われたのだ?」

フロル「フラディという養父です。シュテルネンリヒトという猟兵団に拾われました」

オーダン「猟兵団?なんだそれは?」

フロル「傭兵団ですが、その本質は戦争代行者。正規軍に代わって、お金をもらって戦争するというものです。俺は猟兵団の一員として長く戦場を駆け巡りました。だけど居心地が良くて、気が付いたときには幹部になっていましたね」

オーダン「なんと…。では、どのような方法でこの世界に?」

 

 フロルは真剣な眼差しになる。

 

フロル「信じてもらえないかもしれませんが…。地球に魔王ゼーゲルと超竜軍団の軍団長ザイードが現れました」

オーダン「なんと!?」

フロル「ゼーゲルとザイードに致命傷を負わせたのですが、道連れにされて、この世界に飛ばされました。飛ばされた直後にアリゲイルが現れて、戦って傷を負わせたのですが、逃げられてしまって…」

オーダン「信じられん!では、勇者の力は完全に覚醒しているのか?」

フロル「あの俺、勇者ではなく、竜の騎士なんですが…。だけど、とある事情で竜の騎士の力を失っています」

ディラン「力を失ってもリンカウスを圧倒したのに?」

フロル「まあ、竜の騎士の力はあまり使っていませんし、影響はないですよ」

 

 ポジティブになるフロルである。

 

フロル「とはいえ、アリゲイルや他の六団長はしばらく動けないでしょう。ゼーゲルとザイードは意識不明の重体で生死を彷徨っている。ゼーゲルと同格の魔王の存在もあります。もっとも、2人の状態を六団長達は隠蔽していますがね」

オーダン「そういうことがあったのか…。あのときの子がここまで成長していたとは…」

フロル「王様?」

オーダン「単刀直入に言う」

 

 オーダンは真剣な表情になる。

 

オーダン「フロル。そなたの母エストリアは我が妹。わたしは、そなたの伯父でもある」

フロル「……………」

ディラン「わたしも、小さかった君を見たことがある。わたしだけじゃない。王女オリアーナもだ。君にとって、わたしは兄でもある。そして、エストリア様も生きておられる」

フロル「マジですか?」

オーダン「うむ。手紙には、この世にいないと言っているが、実際はアルトマイアの残存勢力を束ねて魔王軍と戦っている」

ディラン「良い方向に狂ったようだけど、会う気はあるかい?」

フロル「生きているなら今は良いです。あと…報酬をもらいたいのですが…」

オーダン「おお!そうじゃった!5万ゴールドを差し上げよう」

フロル「え?こんなにもらっていいんですか?」

ディラン「敵将を討ったんだ。それくらい当然」

オーダン「それと、この城に出入り、住むことを許そう。そなたはエストリアの息子であり、わたしとセレストの甥だ。ああそれと、地球についても知りたい」

フロル「ありがとうございます。えっと…これを見ていただければ…」

 

 フロルはスマートフォンを手に取った。電源を入れて操作し、スマートフォンに入っている写真データをみんなに見せる。

 

セレスト「これで遠くにいる人と連絡取れるのですね」

フロル「この世界では使えませんがね」

ディラン「これはすごい。この方がフラディ殿か…。なんというたくましい」

フロル「そしてこの人がアンジェラ。ザイードをフルボッコにした人です」

オーダン「六軍団長筆頭のザイードを…。いやはや、ここまで充実しているとは思わなかったなぁ」

フロル「戦争以外にも仁義外れの外道どもを倒したり、強盗やったりもしましたね」

オーダン&セレスト&ディラン「強盗!!?」

フロル「あ、あくまで盗賊など悪いやつらを対象にした強盗ですよ」

ディラン「強盗も十分仁義外れだと思うんだけどね…」

 

 最後はこんなコミカルな感じとなったという。 



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05 百獣軍団の襲撃!フロルの弱体化

 とある場所…。そこにはアリゲイルがいる。

 

アリゲイル「リンカウスがやられたのか!?」

?「はい…。百獣軍団四天王筆頭のリンカウス様をやったのは、フロルというものでした」

アリゲイル「フロルだと…!?まさか地上に下りたのか…」

?「いかがいたします?」

アリゲイル「まずはフロルの情報収集を行う。敵を知らなければならない」

 

 配下の動物系魔物と話していたとき…。

 

?「なにか困っているようだな」

アリゲイル「ダース」

 

 魔族の若い男が現れた。武人のような雰囲気を漂わせている。

 

アリゲイル「魔王様とザイードの容態はどうだ?」

ダース「ザイードの意識が戻ったが、魔王様は…」

アリゲイル「意識が戻らないのか?」

ダース「…亡くなられた…」

アリゲイル「な、なんということだ!?この事実を知るのは…」

ダース「俺達、六軍団長だけだ。混乱を避けるために、魔王様の死を伏せっている。地球でどんな敵と戦ったというのだ?」

アリゲイル「それついて心当たりがある。魔王様とザイードをやったのは、フロルという竜の騎士だ。だが、俺はあいつのこと、全く知らん。だから、フロルに関する情報収集をやっている」

ダース「くそ…。魔王様とザイード、どうして俺達を連れていかなかったのだ…」

アリゲイル「全くだ…」

 

 2人は後悔の念を隠せなかった。

 そんなときだった。

 

?「今のお前達にフロルはやれんな」

 

 異様な雰囲気を漂わせる魔族が現れた。

 

アリゲイル「あなたは…」

ダース「四大魔王が一角…メギドラ様…」

 

 四大魔王メギドラという男である。強大な力を持つ存在で、魔王ゼーゲルを圧倒するという。

 

メギドラ「ゼーゲルが戦死したそうだな?友人として、とても残念に思う」

アリゲイル「あなたには隠せませんか…。ゼーゲル様をやったのは、フロルです」

メギドラ「フロル…。フロル・レイヴァールか?」

アリゲイル「はい」

メギドラ「ゼーゲルがやられるのも無理はない。猟兵団シュテルネンリヒト参謀にして3番隊隊長。ベルセルクとして多くの敵から畏怖されている。だがその本質は竜の騎士。六軍団長が全員かかっても、太刀打ちできんぞ」

ダース「詳しいですね」

メギドラ「数年前に俺は地球という世界で、フロルと戦ったことがある。竜の騎士として完全覚醒し、やられそうになったよ」

ダース「四大魔王の一角であるあなたが…」

アリゲイル「しかし、このままだと他の魔王達に野心を抱かれます。ゼーゲル様の死を隠し切れません」

メギドラ「うむ…。俺の配下になるという選択肢はあるか?」

アリゲイル「確かに、魔王軍がメギドラ様の配下になれば、幹部や部下達が安心でしょう。しかし…我々だけでやってみたい。仮にゼーゲル様の死を人間達が知っても、我々は健在であることを人間達に知らしめたい。そのために、エリヴァン王国を落とさなければならない」

メギドラ「アリゲイル…。武人としての覚悟を見受けた。ときにアリゲイルよ、エルフの里ミーミルを襲ったそうだな?」

アリゲイル「はい。だけど、龍脈を供給するところだと知って驚きました」

メギドラ「それがわかったのなら話しが早い。絶対に手を出すな。支配すべき土地が死んでしまっては意味がない」

アリゲイル「はい。しかし、200年以上前にドラゴンオーブを全て失っているとのことで…」

メギドラ「ドラゴンオーブを失っている?何らかのトラブルで無くしたのか?…だが逆に言えば…ドラゴンオーブをこちら側が手に入れれば…」

 

 メギドラは考えた。

 

メギドラ「ダース、六軍団長を集められるか?」

ダース「可能ですが?」

メギドラ「本拠地に集めてくれ」

アリゲイル「俺も行きますか?」

メギドラ「いや、お前はエリヴァン王国攻略に力を入れてくれ」

アリゲイル「わかりました」

 

 なにかメギドラに考えがあるようだ。

 

 

 

 それから夕方…エルヴァン城の庭園。そこにはオーダンとセレストとディラン、オリアーナという美しきエルヴァン王国王女がいる。その他に、王子レムス、王女タリスという少年と少女がいる。

 

?「オーダン!フロルが生きているのは本当か!?」

 

 1人の老人が現れた。エルヴァン先王マーティンである。

 

オーダン「父上?」

マーティン「フロルが生きていると聞いた。まことか?」

オーダン「はい。それだけでなく、リンカウスという百獣軍団の幹部を仕留め、このエリヴァンを救ってくれました」

マーティン「なんと…。フロルはどこにおるか?」

オーダン「図書室でドラゴンオーブについて調べています」

マーティン「今すぐ案内してくれ。わしの孫…わしの孫が生きていたのだ…」

 

 マーティンは感涙する。

 それからしばらくして、フロルはエリヴァン城の図書室にいる。ドラゴンオーブの手がかりを探している。

 

フロル(珍しいオーブを運んでいた船が沈没した…。これしかわからんが、海の中か…。潜水艦があれば良いんだけど、絶対にないでしょう)

 

 手がかりを掴んだフロルだが、海の中である時点で頓挫する。

 

マーティン「フロル!」

 

 マーティンが現れた。

 

フロル「え?どちら様?」

マーティン「そなたは?」

フロル「俺がフロルですが…」

マーティン「おお!右手のアザ、アルトマイア王国の紋章の首飾り…。間違いない…わしの孫じゃ」

フロル「あの…」

マーティン「これは失礼。わしはマーティン。エリヴァン先王であり、そなたの母エストリアの父親じゃ。よくぞ生きてくれた…」

フロル「俺の…おじいさんでしょうか?」

マーティン「そうじゃ。おじいちゃんと呼ぶがいい」

フロル「恥ずかしいので却下」

マーティン「ガーン!!」

フロル「それよりおじいさん、聞きたいことが…」

 

 フロルは、自分はドラゴンオーブを探していることをマーティンに話す。

 

マーティン「ドラゴンオーブか…。すまんがわしもわからん。だが、オーブに関することであれば、何点か心当たりがある。なぜドラゴンオーブにこだわるのじゃ?」

フロル「このままだとヴァルレシアが死にますから」

 

 フロルはドラゴンオーブと龍脈について話す。

 

マーティン「むぅ〜…200年以上前にそういうことが…」

フロル「ドラゴンオーブの安置場所は話せませんがね。それが終わった後、地球に戻る予定です」

マーティン「…エストリアは生きておるぞ…。母親と一緒に暮らしたほうがいい」

フロル「俺は地球で、猟兵団の幹部として戦場にいました。これまで、何万人の命を奪ってきましたから、今の俺は母と会えません」

マーティン「なんと…」

 

 マーティンは落胆する。せっかく再会できたフロルは猟兵団の幹部として戦場を渡り、多くの命を奪ってきたことに…。

 

フロル「まあ、こういった経験があるのだから、守りたいものも守れますしね」

 

 ポジティブになるフロル。

 それから時間が経過。エリヴァン城の食堂…。そこには、エリヴァン王族全員とフロルがいる。

 

フロル「うわ…豪華…」

オーダン「はははっ。アルトマイア王子が生きていたと同時にエリヴァン王国を救った英雄としての祝いでもある」

マーティン「遠慮するな」

フロル「いただきます」

 

 フロルは、テーブルに並べられている料理を一口食べると、

 

フロル「うまい!!」

 

 美味しかったようだ。

 

フロル「こんなにうまい料理食べたの初めてです。今までは自分で作ったり、店で食べたりもしていましたから。ヴァルレシアに飛ばされる前は砂漠地帯で1ヶ月くらい戦争していましたからね」

ディラン「とんでもない修羅場にいたもんだね…」

フロル「ああそうだ。これ、レーションと言って、地球で作った戦闘食です」

 

 フロルはレーションを取り出して、テーブルの上に並べて、みんなに見せる。クッキーのような感じである。

 

マーティン「どれどれ…」

 

 マーティンは一口食べると…。

 

マーティン「まずい…」

 

 まずかった。

 

フロル「そりゃ、まずいですよ。味より栄養バランスを重視した食べ物ですから。だけど、こいつに何度も助けられましたね。3ヶ月間、森の中で戦闘したことありましたから」

レムス「え?そうなのですか?」

フロル「まあね。マジでやばかったのは、敵が広範囲に毒ガス攻撃をしてきたことです。毒ガスを撒いた敵を仕留めて、命からがら逃げましたから」

レムス「うわ〜…」

 

 レムスはフロルの話しを聞いて引いた表情になる。

 

フロル「できればさっさと帰って戦場に戻りたい。なにせ…20億ゴールド相当の仕事だから」

エリヴァン王族「20億ゴールド相当!?」

マーティン「我が国の国家予算の20倍じゃないか…」

フロル「戦争代行者だから、それくらい当然」

 

 ニヤけるフロルである。

 

オリアーナ「フロル、これからどうするの?」

フロル「しばらく滞在して、ドラゴンオーブを探そうと思っています。海の中という手がかりを見つけたのですが…無理なので他の手がかりを探しているところです」

オリアーナ「そうなのね」

フロル「とはいえ、傭兵として活動しますよ。働かざる者食うべからずってね。ヒモになりたくありませんしね」

マーティン「うんうん。それがよかろう」

 

 マーティンは肯定する。

 

 

 

 それから翌日…。エリヴァン王国王都バルタ…。フロルはドラゴンオーブに関する情報収集を行っている。

 フロルはもともと情報収集能力や諜報能力が圧倒的に高く、わずかな情報や手がかりを元に、知りたい情報にまでたどり着けるという。

 シュテルネンリヒト3番隊は情報関連に特化した部隊で、その隊長にして参謀であるフロルは、その能力をフル活用。結果、ドラゴンオーブに関する手がかりを全て掴むことができた。

 

フロル「地球に戻る手段がない以上、この世界を平和にしないとね」

 

 フロルは口にする。

 

?「ちょっと良いか?」

 

 1人の男が話しかけてきた。

 

?「あんた、フロル・レイヴァールかい?」

フロル「そうだけど、あんたは?」

クロウ「俺の名はクロウ、クロウ・アルセイ。王都にあるルイーダの酒場に出入りしている冒険者さ。単刀直入に言う。フロル、俺と組まないか?」

フロル「どうして?」

クロウ「儲けたいからだよ。あんたの傍にいれば儲け話が舞い込んでくると思ってね」

フロル「素直だね。俺は好きだよ。最初から金儲けの話しをしてくるやつは。本音を隠して近づくやつは信用できない」

クロウ「おっ、わかってんじゃないか。もちろん、横取りはなしだ。分け前は事前に決めるというのはどうだ?」

フロル「それがいいね。だけど、なんで俺に声をかけたんだ?」

クロウ「金のにおいがするのと、獣王軍団の幹部を仕留めたという、2つの理由さ」

フロル「そうは言ってもな…。普段はどこにいる?」

クロウ「ルイーダの酒場だよ。普段、俺はそこにいる。いない場合もあるがね」

フロル「わかった。あと、俺と試合してもらえないか?実力が知りたい」

クロウ「OK」

 

 2人は迷惑がかからない場所に移動。フロルは太刀を抜き、クロウは短剣を抜く。そして試合が始まった。

 数分後…。

 

クロウ「強すぎだろう!」

 

 クロウは地面に膝がついた。

 

フロル「あんた、かなり強いぞ。どこで鍛えているんだ?」

クロウ「色々だけど、最近はメタルスライムを狩っててね。それで鍛えているんだ」

フロル「うわ…道理で…。というか、よく狩れるね」

クロウ「弟がいるんだが、その弟はなぜかメタル系魔物の遭遇率が高いんだ」

フロル「だけど、逃げられてるでしょ?」

クロウ「まあな。フロルはメタル系魔物を倒したことあるかい?」

フロル「メタルキングなら倒したことあるね。それ以外だと、はぐれメタルとかメタルハンドとか…」

クロウ「ワオ、だな。はぐれメタルと遭遇したことあるけど、やっぱり逃げられるな。会心の一撃を加えないと倒せないね」

フロル「俺は会心の一撃を与える特技を使えるから、楽に倒せる」

 

 メタル系魔物…。レアなモンスターで、経験値が豊富。倒せば強くなるけど、逃げられるのがほとんど。

 

フロル「メタル系だけじゃない。相当な修羅場を潜り抜けているとみた。クロウ、冒険者を始めてどのくらい経つ?」

クロウ「2年は経つな。食べていくためにやっているというのもある。お前はどうなんだ?」

フロル「う~ん…。俺はあちこちで傭兵をやっている。5年は経つかな?」

クロウ「へぇ~…」

 

 と、フロルは言うが…。

 

フロル(バカ正直に言ったって信じてもらえないからな)

 

 という。

 

 

 

 それからしばらくして…。ヴァルレシアのどこかにある魔王軍本拠地・魔王城…。魔王ゼーゲルの最高幹部六軍団長のうち5人が集まっている。

 

・超竜軍団の軍団長ザイード

・不死騎団の軍団長ダース

・氷炎魔団の軍団長シェイラ

・妖魔師団の軍団長サフィール

・魔影軍団の軍団長ラムパルド

 

 5人の前にメギドラが現れた。

 

ダース「メギドラ様、アリゲイルを除き、六軍団長を集めました」

メギドラ「うむ。だがザイード、無理してここに来なくてもよかったのだぞ?」

ザイード「なにをおっしゃいますか…。魔王ゼーゲル様の死により、ヴァルレシアの支配は頓挫しました…。フロル…あの男に一矢報わねば…死ぬに死にきれません!」

メギドラ「わかった。だが、皆の者を集めたのには訳がある」

 

 メギドラは説明する。

 

メギドラ「ヴァルレシアは今、龍脈が不安定な状態だ。なぜなら、200年以上前からドラゴンオーブを紛失しているからだ。それも全て…。全部で4つある。ドラゴンオーブを見つけだし、我が手中に収めれば、我々自身が龍脈を操ることができて、真の意味でヴァルレシアを支配できるだろう」

ダース「メギドラ様、我々はドラゴンオーブを集めればよろしいのでしょうか?」

メギドラ「うむ。そうしてほしいのは山々だが、そなた達の仕事もあるのだろう」

 

 メギドラは六軍団長の立場を理解する。

 

ダース「確かに、わたしが率いる不死騎団はバーンスタインの残存勢力と交戦しています。小さな力が大きな力になる前にと…」

メギドラ「うむ」

 

 情報をまとめると、バーンスタイン王国の残存勢力は、ダース率いる不死騎団と交戦している。

 

メギドラ「ドラゴンオーブの確保も優先事項に入れてほしい。各々の役目を果たしつつ、ドラゴンオーブを見つけたら確保してほしい。そしてしばらくの間、この俺が見届け役を務める。ゼーゲルは武人として誇り高き魔王だ。四大魔王である俺はゼーゲルを尊敬する。ゼーゲルの名に恥じぬ、働きと矜恃を見せてほしい」

六軍団長「はっ」

 

 メギドラは六軍団長達に指令を下す。

 

 

 

 翌日…。フロルは王都バルダにあるルイーダの酒場で、クロウとその弟クルスと会っている。

 

フロル「南のジオーガ遺跡の探索してみるかい?俺はそこに眠るとされるオーブがほしい。他の宝は全部譲る」

クルス「ジオーガ遺跡ですね。魔物の巣窟になって、他の冒険者でも近づけません。だけど僕達ならやれるでしょう」

クロウ「交渉成立だ。今すぐ行くかい?」

フロル「ああ。そっちは?」

クロウ「俺とクルスは問題ない」

フロル「決定だね」

 

 話しが纏まった。

 それから時間が経過。ジオーガ遺跡の中に入る、フロルとクロウとクルスの3人。中は魔物で溢れているが、3人の敵ではない。

 

クルス「メタルスライムです!」

クロウ「しかも3匹」

フロル「よし!狩るぞ!」

 

 メタルスライムと遭遇。メタルスライムは逃げようとするが…。

 

クルス「逃がしません!メタルウィング!」

 

 クルスの武器はブーメラン。メタルウィングという特技でメタルスライムにダメージを与える。

 

フロル&クロウ「もらったー!!」

 

 フロルとクロウは強襲。メタルスライムを蹴散らす。クロウとクルスはレベルアップ。フロルはレベルアップなし。上限に達しているかもしれない。

 それから探索して、メタルスライム、またメタルスライム、さらにメタルスライム。

 

フロル「メタルスライムの巣窟なの?」

クロウ「わからんが、クルスの場合、メタルの遭遇率が高いんだ。昨日話したと思うけど」

フロル「運がいいなぁ」

クルス「ふふーん♪」

 

 鼻を高くするクルスである。

 それからしばらくして、最深部にたどり着く。最深部の祭壇には、光り輝く丸い球体が展示されている。

 フロルは手に触れるなどして調べると…。

 

フロル「ドラゴンオーブだ…」

クロウ「それが目的か」

フロル「ああ。約束どおり。オーブ以外の宝はクロウ達のものだ」

クロウ「確かに。良いアイテムや1万ゴールドなど色々見つけたのは大きい」

クルス「しばらく余裕で暮らせますね。メタルスライムのおかげで強くなれましたし」

 

 クロウとクルスは機嫌が良かった。

 

フロル「リレミト」

 

 リレミトで遺跡から出る3人。

 

クルス「兄さん、フロルさん!王都が!」

フロル&クロウ「なっ!!」

 

 3人は驚いた。王都バルダが動物系魔物の大軍の襲撃を受けている。

 

フロル「百獣軍団か!?クロウ、クルス、ルーラで行く!」

 

 フロルはクロウとクルスと一緒に、王都バルダに向かってルーラで飛んでいった。

 

 

 

 王都バルダ・エリヴァン城の前…。フロルとクロウとクルスは到着する。王都は動物系魔物の襲撃で被害を受けているが、

 

フロル「!?」

 

 フロルは気づいた。城門の前に魔物が押し寄せているところを…。

 

フロル「しんくうは!!」

 

 フロルはしんくうはを放ち、魔物達を一掃する。

 

フロル「大丈夫か!?」

ビップス「フロル!?おかげで助かったよ」

フロル「襲撃を受けてどのくらい経つ?俺、王都から離れていたから」

ビップス「ついさっきだよ」

フロル「鳥系の魔物が城を直接襲撃してくるはずだ」

ビップス「なら、王様を守ってくれ!ここを死守する!」

フロル「大丈夫か?」

ビップス「俺達は誇り高きエリヴァン王国の兵士!魔物如きに後れを取るわけがない!」

フロル「よく言った!ここを頼む。クロウ、クルス。来てくれ!俺が敵のトップなら、王様を直接狙う」

クロウ「だな」

クルス「ええ」

 

 フロルとクロウとクルスは城の中に入る。奥に進むと、魔物で溢れている。魔物と交戦している兵士がいれば、倒れている兵士もいる。

 謁見の間に向かうと、アリゲイルと3人の幹部がいる。アリゲイル達の前に、オーダン王とセレスト王妃がおり、剣を装備するディラン王子とオリアーナ王女がいる。

 

フロル「アリゲイル!ここまで来たか!」

アリゲイル「ついに来たかフロル!魔王様の仇、ここで討たせてもらう!」

フロル「ゼーゲルが死んだのか?」

アリゲイル「そうだ。だが、魔王様に代わって、四大魔王が一角メギドラ様が魔王軍を指揮しておられる」

フロル「メギドラだって!?ヴァルレシアにいるのか!?」

アリゲイル「一騎打ちだ!勝負だフロル!」

 

 アリゲイルはフロルに一騎打ちの勝負を持ち込んだ。

 

フロル「いいだろう。クロウ、クルス」

クロウ「俺達はあの3人をやる」

クルス「幹部っぽいですね。連中とアリゲイルを倒せば、全てが終わります」

 

 クロウとクルスは離れ、幹部3人に挑む。

 幹部とは、格闘使いのマンドリル属のエンブス、槍使いの魔鳥属のバーナド、斧使いの大角属のトームス。トームスの場合、まるでケンタウロスのような感じがする。マッドオックス属でもある。

 戦闘が始まった。フロルとアリゲイル…。

 

アリゲイル「竜の騎士の力は使わないのか?」

フロル「使いたくても使えないんだ。ドラゴンオーブの代わりにしている」

アリゲイル「ならば好都合!獣王痛恨撃!」

 

 アリゲイルは獣王痛恨撃を放ったが、フロルは太刀を振るって、獣王痛恨撃の闘気技をかき消す。同時に斬撃波を放った。

 

アリゲイル「くっ!!」

 

 アリゲイルはダメージを受けた。

 

フロル「はあああ!!」

 

 フロルは太刀を振り下ろすが、アリゲイルは斧で防いだ。だが…。

 

アリゲイル「なんてパワーだ!?」

フロル「あんた、上半身動くけど、下半身は動かないんだな」

アリゲイル「なっ!!」

 

 フロルはアリゲイルの足を踏みつけ、怯んだ瞬間に斧をはたきおとし、

 

フロル「正拳突き!!」

アリゲイル「がはっ!!」

 

 左手に闘気を込めて、アリゲイルの腹部に左拳を入れた。アリゲイルは後方に吹っ飛んだ。

 

アリゲイル(つ、強すぎる!竜の騎士の力がなくても、十分強いではないか!いったいやつは今までどういう敵と戦ってきたのだ!?)

 

 アリゲイルはフロルの圧倒的な強さに畏怖し始める。

 

 

 一方、クロウとクルスは、ディランとオリアーナを援護しつつ、エンブスとバーナドとトームスと戦っている。

 

クルス「こっちはメタルスライムを狩って強くなったのです!シャインスコール!」

 

 クルスはブーメランのスキル技シャインスコールを発動。3人にダメージを与える。

 

クロウ「もらった!」

バーナド「ぐわあああ!!!」

 

 クロウはバーナドを仕留める。

 

エンブス「バーナド!?」

ディラン&オリアーナ「隙あり!!」

エンブス「ぐはっ!!」

 

 ディランとオリアーナの連携攻撃によりバーナドが倒れた。

 

トームス「お前達の死は無駄にしない!」

 

 トームスはフロルのほうに振り向いた。そして突撃する。

 

アリゲイル「よせトームス!」

トームス「我ら死しても誇り高き獣王軍団!このアンチレベルを喰らえ!」

フロル「アンチレベル!?」

 

 フロルは驚いた。トームスは懐から取り出したキューブ状のアイテムをフロルに向かって投げた。

 隙を突かれたフロルは、アンチレベルから発する光を浴びた。

 

トームス「こいつはアンチレベルと言って、相手を弱体化させるアイテム。かなり貴重なアイテムで製造するのに莫大なコストがかかる。いくら四大魔王でも、これを喰らえばイチコロだ」

フロル「なるほどね」

トームス「これで…」

フロル「アンチレベル…受けたのはこれで2回目か」

トームス「2回目!?」

 

 その瞬間、トームスはフロルの袈裟斬り攻撃を受けて倒れた。

 

フロル「アンチレベルを受けたのは初めてじゃないんだ。解呪するのに時間はかかるが、2週間もあれば解呪できるよ」

トームス「そんな…」

 

 あまりの予想外にトームスは驚きつつ絶命する。

 

アリゲイル「トームス、お前の死は無駄にしない!弱体化した今こそ、お前を倒せる!」

フロル「ちぃ…相変わらず厄介なアイテムを…」

アリゲイル「終わりだ!」

 

 アリゲイルはフロルを追い詰め、そしてとどめを刺しに出た。

 

アリゲイル「獣王痛恨撃!!」

フロル「抜刀術…時雨!!」

 

 フロルは抜刀術を使用。だが、獣王痛恨撃のエネルギーを受けるも、アリゲイルに強烈な一撃を浴びせた。アリゲイルは倒れる。

 

アリゲイル「み、見事!さすが魔王ゼーゲル様の命を奪っただけのことはある…。だが忘れるな。メギドラ様がいるかぎり…魔王軍は負けん…。ぐはっ!!」

 

 アリゲイルは、絶命する。

 その瞬間、王都バルダを襲っている動物系魔物達は退散して、王都バルダから去っていく。百獣軍団のアリゲイルと幹部達がやられたことを知ったからである。

 同時にフロルは仰向けになって倒れる。獣王痛恨撃をまともに喰らって大きなダメージを受けたのが原因である。

 

オーダン「フロル!!」

 

 オーダンは駆け寄る。

 

オーダン「よくやった!よくぞ軍団長を仕留めてくれた!圧倒的だった!」

フロル「王様達こそ、幹部2人を仕留めましたね」

オーダン「うむ。それより、大丈夫か?」

フロル「アンチレベルを受けたのはまずかった。力をうまく引き出せないし、体が重い」

オーダン「解呪できるか?」

フロル「2週間もあれば…。喰らったのは2回目ですから」

オーダン「そうか」

フロル「あっ…伯父上、おじいさんとレムスとタリス」

マーティン「ここじゃよ」

 

 マーティンがレムスとタリスを連れて現れた。

 戦いの状況をオーダンは説明する。

 

マーティン「アリゲイルと幹部を全滅させたが、フロルがアンチレベルというアイテムを受けて弱体化してしまったとな」

フロル「まあ、解呪はできますよ。2週間あれば。それより…休ませてください…」

オリアーナ「わたしが寝室に連れていきますわ」

 

 オリアーナはフロルを抱え、寝室に向かった。

 

オーダン「そなた達2人もよくやった」

クロウ「いえ、そんな」

クルス「守り切れてよかったです」

 

 クロウとクルスに礼を述べるオーダン。

 

クロウ「それにしても、すごいなフロル。アリゲイル相手に圧倒していたぞ」

クルス「ええ。それと、魔王ゼーゲルが命を落としたそうなんですけど、フロルさんがやったのですね。すごいです」

マーティン「さすが我が孫。このヴァルレシアを救う勇者にして竜の騎士じゃわい」

オーダン「いえ、父上。フロルは竜の騎士の力を失っているようです」

マーティン「なんじゃと!?」

オーダン「それでも、あのアリゲイルを圧倒していたのだから、フロルの強さは底知れません。だけど、アンチレベルと言いましたか。あれで弱体化されています」

ディラン「弱体化されたにも関わらず、仕留めたのですから」

クロウ「いったいどうしたら、あんな鬼のように強くなるんだ?」

クルス「メタルキングを狩りまくっていたとか、ですかね?」

みんな「う~ん」

 

 フロルの驚異的な強さにみんなは考えている。



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06 魔法大国マールバラ王国

 百獣軍団との戦いに勝利したフロルとクロウとクルス、エリヴァン王国軍。戦いから時間が経過し、エリヴァンの民は百獣軍団の勝利に酔いしれている。夕方になっているので、復興作業は明日からとなる予定。

 

 フロルはというと、寝室のベッドで仰向けになって寝ている。アンチレベルによって弱体化され、獣王痛恨撃をまともに受けているので、ダメージは大きかった。

 フロルがいる寝室なのだが、非常に広々としている。寝ているベッドのサイズが大きく、天蓋カーテン付きである。ソファーとテーブル、化粧台なども備えている。

 

フロル「う…ここは…」

オリアーナ「気がついた?」

フロル「オリアーナ姉さん?ここはいったい…」

オリアーナ「わたしの部屋よ」

フロル「はい?」

 

 実はフロルがいる部屋は、オリアーナの部屋である。ダメージが蓄積して倒れているフロルをオリアーナは自分の部屋に連れ込んだのである。

 

フロル「道理でいい匂いすると…」

オリアーナ「ありがとう♪」

フロル「いえいえ、そんな意味で言ったわけじゃ…」

 

 慌てるフロル。

 

オリアーナ「しばらく、ここを自分の部屋と思って寛いでね♪」

フロル「お言葉に甘えて…」

 

 フロルは眠る。だが…。

 

オリアーナ(かわいい~!15年前にアルトマイアが魔物の襲撃で滅んでフロルと行き別れて悲しんだけど…。まさかこんな美少年になって成長していたとは…。外見と中身は美少年…勇者…軍団長を圧倒するくらいの強さ…。わたしのものにしなきゃ…他の女に取られてしまう前に…!)

 

 オリアーナはフロルに対して興奮し始める。さらに、衣服と下着を脱いで美しい裸体を晒す。美貌と無駄のないスタイル、胸とお尻が大きいのが魅力。

 全裸の状態でフロルが寝ているベッドの中に入ろうとしていたとき…。

 

メイド「姫様、王様がお呼びで……って、なにしてるのですか!?」

オリアーナ「これはその…ノックもせずに入らないで!」

 

 メイドが現れ、オリアーナは慌てる。

 

メイド「いえ、ノックしたのですが反応がなくて…勝手に入ってすみません…」

オリアーナ「そ…そうなのね…」

メイド「だけどわかります。フロル様、美少年でカッコよくて激ツヨで、しかもアルトマイア王国の王子様…。襲いたくなるのも無理ありません。このことは黙っていますので」

オリアーナ「あ、ありがとう」

 

 嬉しさと笑みが零れそうなメイドである。

 それから、衣服と下着を着用するオリアーナ。

 

オリアーナ「お父様がお呼びなのね?」

メイド「はい。祝勝パーティーを開くとのことです。できればフロル様も出席していただきたいのですが…」

オリアーナ「フロルは眠っているわ」

フロル「メシ…」

オリアーナ&メイド「起きた…」

 

 フロルが起きた。

 

フロル「祝勝パーティーということは、料理が出てくるんですね?」

オリアーナ「ええ。いっぱいご馳走が出てくるわ」

フロル「参加したい…お腹空いた…いっぱい食べたい…」

 

 食に関しては貪欲である。

 

フロル「あっ、そうだ!すっかり忘れてた!オリアーナ姉さん、1時間ぐらい離れます。ルーラ!」

オリアーナ「フロル?」

 

 フロルはルーラで窓から飛び出す。

 

 

 

 それから数分、浮島のエルフの里ミーミルに到着するフロル。ミーミルの神殿に入ると、

 

オルハ「フロル様?」

リーファ「フロルさん?」

 

 そこには、オルハとリーファの母娘がいる。

 

エルフ女「あの、儀式中なので、しばらく出入りは控えていただきたいのですは…」

フロル「え?儀式?」

エルフ女「はい。週に1度、ヴァルレシアの平和を願うための儀式です」

フロル「そうなんだ。申し訳ない…。というか、これだけは優先させてくれ」

 

 フロルはドラゴンオーブを取り出す。

 

エルフ女「ドラゴンオーブではありませんか!?」

フロル「間違いない?」

エルフ女「はい!オーブから放たれる生命エネルギー…。間違いございません」

フロル「これを祭壇に…」

エルフ女「はい」

 

 エルフの女性はフロルからドラゴンオーブを受け取り、そのドラゴンオーブをリーファに手渡し、リーファは祭壇に安置する。

 するとドラゴンオーブが光り輝き始める。

 

リーファ「龍脈に流れる魔力を確認しました。少しですが、龍脈が安定しています」

フロル「それじゃ…」

 

 フロルは手をかざした。竜の騎士の力がフロルのもとに戻った。と言っても、4分の1だが…。

 

オルハ「フロル様、あなたの力、封じられていますか?」

フロル「わかるかい?アンチレベルと呼ばれる封印のアイテムを受けて、力を封じられたんだ。体が重く、魔力や闘気をうまく操れない。ルーラを扱えるのが救いだね」

オルハ「そうなのですね。封印を解くことはできますか?」

フロル「2週間あれば…。ドラゴンオーブはあと3つですが、手がかり全部掴んでいる。それじゃ俺はこれで…」

 

 フロルは外に出て、ルーラで王都バルダに飛んでいった。

 

オルハ「もう…泊まっていけばいいのに…」

 

 不満を抱くオルハであった。

 

 

 

 王都バルダ…。魔王軍が一角、百獣軍団を壊滅して勝利を得たエリヴァン王国。王都バルダでは、祝勝パーティーで賑わっている。

 

オーダン「各国の王に手紙を贈るのだ。頼んだぞ」

兵士達「「「はっ!」」」

 

 オーダンは外に出て、兵士3人に命じた。兵士3人はそれぞれの馬に乗って、この場を後にする。

 

フロル「伯父上」

オーダン「おおフロル。そなたのおかげで百獣軍団に勝利できた。これからどうするのかね?」

フロル「ドラゴンオーブを探します。そのうちひとつ見つけ、ある場所に届けています」

オーダン「ある場所とな」

フロル「ある事情で詳しいことは言えませんが…」

オーダン「まあ良い。主役はそなただぞ。たっぷり食べてくれ」

フロル「はい!」

 

 フロルは祝勝パーティーに参加する。

 現在、そのフロルはというと…。

 

若い女性「フロル様と寝るのはわたしよ!」

若い女性「いいえ、わたしよ!」

若い女性達「うぅ~」

 

 肉を食べながら若い女性達の取り合いとなっている。

 

 

 

 一方、魔王軍本拠地・魔王城…。獣王軍団の壊滅とアリゲイルの訃報に六軍団長が驚愕している。

 

ザイード「まさか…アリゲイルが死ぬとは…」

ダース「だが、アリゲイルの部下がアンチレベルを使ってフロルを弱体化させたようだ。これによって、フロルをやれる。武人として不名誉なことだが…」

シェイラ「仕方ないわ。あれほどの強さよ。だけどザイード、あんたは大丈夫なの?」

 

 シェイラはザイードを心配する。

 

?「アンジェラに酷くやられたそうだね」

ザイード「バルフォア様!?」

 

 新たな魔族の男性が現れた。ザイードはそんな魔族に跪く。

 

バルフォア「いや、そのままで結構」

ザイード「バルフォア様、なぜここに?」

バルフォア「メギドラ様から、魔軍司令として君達魔王軍を統率するように命じられた。アリゲイルの戦死はとても残念だ。だが、彼の死は無駄にできない。時にザイード、アンジェラにやられたと聞いたが、まことか?」

ザイード「はい…手も足も出ませんでした…。六軍団長筆頭でありながらゼーゲル様を守ることができず…」

バルフォア「悔やむな。アンジェラが相手なら仕方のないこと。ゼーゲルのことを思うのなら、自害ではなく役目を果たすように」

ザイード「はっ」

 

 バルフォアはザイードを気遣う。

 

ダース「バルフォア様、メギドラ様はどちらに?」

バルフォア「メギドラ様は魔界におられる。いつまでも領地を留守にするわけにはいかないからな」

ダース「なにか我らに指示されていますか?」

バルフォア「いや、特にない。メギドラ様から全権を委任されている。まずは人間の国々を滅ぼそう。ダースは引き続き、バーンスタインの残存勢力と交戦せよ。あまり急がなくていい」

ダース「了解しました」

バルフォア「まずはフロルの行動を探りつつ、魔王軍の再編を図る。ああそれと、ゼーゲルの復活の目途がある。世界樹の葉だ」

サフィール「どんな死者をもリスクなしで蘇らせるというものですか?」

バルフォア「肉体があるのが前提だがね。そのために、ゼーゲルの遺体を保管してある。ザオリクよりかなり強力だから、世界樹の葉さえあれば復活できる。世界樹の葉は、この世界のどこかにある世界樹にある」

サフィール「わかりました。この役目、わたしにやらせてください」

バルフォア「うむ。世界樹はエルフが管理しているかもしれない。エルフの存在が確認したら、交渉してみてくれ」

サフィール「はい」

 

 サフィールはこの場を去る。

 

 

 

 それから、何事もなく翌日を迎えた。

 フロルは王都バルダを後にしようとするが…。

 

クロウ「待ってくれ!」

 

 クロウとクルスが現れた。

 

フロル「2人とも、どうしたの?」

クロウ「俺達をつれていってくれ。お宝のためというのもあるが、あんたと一緒なら、良い夢を見られそうだ」

クルス「新しい世界を見てみたいです」

フロル「良いのか?魔王軍の軍団長と戦うかもしれないぞ?」

クロウ「望むところだ。強くなれば、魔王にだって負けないさ」

クルス「うん」

フロル「良いだろう。よろしくな、2人とも」

 

 2人はフロルの仲間になった。

 

クロウ「ところで、どこにいく?」

フロル「マールバラ王国に行こうと思っている。そこには、俺が探しているドラゴンオーブがある可能性もあるからね」

クルス「マールバラ王国は魔法大国。あそこなら、ドラゴンオーブがあるかもしれませんね。大きな手掛かりがあると良いのですが」

フロル「まあ、行ってみようか」

クロウ「ところでフロル、アンチレベルを解呪できそうか?」

フロル「1段階解呪できたところ。全部で10段階ある。2週間以上時間かかるかも」

クロウ「その間に俺達のほうが強くなってるぜ?」

フロル「それはそれでOK」

 

 3人は話しながら南に進む。南方面にマールバラ王国があるからだ。

 

 

 

 それからしばらくすると、3人は一休みする。

 

フロル「俺は地球という異世界からきた人間なんだ。ヴァルレシアに脅威をもたらしていた魔王ゼーゲルとは、とある砂漠地帯で戦ったんだ」

クルス「そうだったのですね」

フロル「今まで話さなかったのは、信じてもらえないと判断したんだ。俺は地球で、猟兵をやっているんだ。ほとんど傭兵と変わらないんだけど、その本質は戦争代行者なんだ」

クロウ「戦争代行者?」

フロル「クライアントからの依頼で、正規軍やその他組織に代わって、戦争に参加して前線で戦うというもの。俺は5年ぐらい、前線で戦っていたんだ」

クルス「だけど、フロルさんの生まれはヴァルレシアでしょ?どうして地球に?」

フロル「どういうわけか知らないけど、地球に流れ着いたようだね。なんかこう、突然できたゲートのような穴を潜り抜けてきたという…。真相はわからないけど…。話しを戻すけど、ゼーゲルとザイードの道連れで、ヴァルレシアに飛ばされたってわけさ。ドラゴンオーブを探すきっかけは、エルフの里に流れ着いて、ヴァルレシアの事情を知って、今に至る」

クロウ「そうだったんだな…」

フロル「もっとも、ゼーゲルは致命傷を受けて死んだようだ。だが、ゼーゲルより上、四大魔王のメギドラが関わってきたのは予想外だな」

クルス「四大魔王…なんか強そうですね」

フロル「ゼーゲルとは話しにならないくらいの強さを持っている。俺は何年か前にメギドラとタイマンを張ったことがあるけど、ボコボコにやられたよ。一矢は報いたけど…」

 

 フロルは四大魔王について話し始める。

 

フロル「良いかい?四大魔王とは、魔界を統べる4人の魔族を意味する。その4人とは、メギドラ・ベルゼブブ、ラミレス・ルシファー、ミューゼリア・レヴィアタン、リリーゼ・アスモデウス。ラミレスとミューゼリアとリリーゼは比較的温厚と言われているけど、メギドラは超武闘派の魔族。どういう理由でゼーゲル配下の魔王軍を束ねているのかは知らんが…」

 

 ゼーゲルより上の魔王がいることに、クロウとクルスは驚愕している。

 

フロル「別の視点を見れば、連中はヴァルレシアと地球を行き来できる方法があるということだよ」

 

 と、付け加える。

 

クロウ「連中と戦うことになったら、どうする?」

フロル「逃げるわ」

クルス「うん、そうですね」

 

 今の段階で四大魔王と戦うのは自殺行為である。

 

 

 

 それからしばらく時間が経過。マールバラ王国領に入る関所に到着。どうやら検問が行われているようだ。しかも、大勢の人達が集まっている。とりあえず、人に声をかけてみる。

 

クロウ「なにがあったんだ?」

男性「大きなドラゴンが現れて、安全のためにしばらく通れないそうだ」

クロウ「ドラゴン?」

 

 話しを聞くと、関所を通ったさきに大きなドラゴンがいるという。

 

フロル「なるほど…。倒す?」

クルス「倒すしかないですね」

 

 話しがまとまった。

 関所のマールバラ軍兵士に話しかけた。

 

クロウ「よう。俺達は冒険者だ。話しを聞いた。俺達がドラゴンを倒す」

マールバラ軍兵士「本当に倒せるのかい?」

クロウ「俺とクルスとフロル。俺達3人はエリヴァン王国に攻め込んだ獣王軍団のトップと幹部達を倒した。だから、ドラゴンを倒せる力はある」

マールバラ軍兵士「あの獣王軍団を!?わかった…。倒したらまたここにきてほしい。王都ラージェに向かう途中にある広々とした場所に出てくる」

クロウ「OK」

 

 その後、クロウとクルスとフロルは関所を通った。歩いて数十分が経過すると、

 

?「グワアアア!!!」

 

 スカイドラゴンが現れた。

 

フロル「ああこれは…並の人間じゃ倒せないね」

クロウ「だな。どうする?」

クルス「呪文で遠距離攻撃するしかありませんね」

フロル「ライデインを撃ってみよう」

 

 戦闘が始まった。

 

フロル「ライデイン!!」

 

 フロルは攻撃呪文を唱えると、スカイドラゴンに命中。スカイドラゴンはダメージを受けて地面に落下。

 

クルス「よし!デュアルカッター!!」

 

 クルスはブーメランを投げてデュアルカッターの技を放った。スカイドラゴンは攻撃を受けるも、クルスに向かって火炎の息を吹いた。

 フロルは前に出て太刀を振るって、火炎の息を振り払った。

 

フロル「今だ!」

クロウ「よっしゃー!」

 

 クロウは短剣を構え、スカイドラゴンの脳天に短剣を突き刺した。

 スカイドラゴンは息絶え、霧散する。スカイドラゴンは倒した。

 

フロル「スカイドラゴンだよな?この辺にいる魔物なのか?」

クルス「いえ…。マールバラ王国にはスカイドラゴンどころか、ドラゴンすら生息していません」

クロウ「どういうことだ?」

 

 3人は疑問を抱くが…。

 

マールバラ軍兵士「おーい!」

 

 関所にいたマールバラ軍兵士が現れた。

 

マールバラ軍兵士「心配になってきてみたんだけど、杞憂だったな」

クロウ「おう」

フロル「大したことはないよ」

クルス「獣王軍団の幹部のほうがはるかに強かったです」

マールバラ軍兵士「ありがとう。このあと、どちらに向かう?」

フロル「王都ラージェに向かうよ」

マールバラ軍兵士「そうか。お礼はできないけど、マールバラ王国では傭兵を募っている」

クロウ「傭兵?」

マールバラ軍兵士「ああ。女王様は魔王軍との戦いに臨むことを決心したんだ」

クルス「どんな魔王軍と戦っているのですか?」

マールバラ軍兵士「妖魔師団だ。魔法を使う魔物を中心の軍隊だよ。ヴァルレシアを脅かしていた魔王ゼーゲルが死んだと聞いたときは驚いたけど、まだ幹部連中が残っている。やっぱり、幹部も倒さないと平和はこないな」

クロウ「安心しな。俺達も参加する。でないと、かわいい女の子達が連中に殺されてしまうからな」

フロル「だね」

マールバラ軍兵士「ありがとう。獣王軍団を倒したあんたらなら、絶対にやれる。それに、報酬も出るしな。それじゃ」

 

 マールバラ軍兵士はこの場を後にする。

 

フロル「マールバラ王国にオーブがあると聞いた。しかもそのオーブが国宝とされ、マールバラ王家が持っている。それがドラゴンオーブなら、妖魔師団を壊滅させて、褒美としてドラゴンオーブを譲ってもらうようお願いしてみよう」

クルス「近道があるとすれば、そうですね」

クロウ「エレーナ女王様とも謁見もできる。3人の娘を産んだにもかかわらず、すげえ美人だと聞いているから、楽しみだな」

クルス「兄さん?」

 

 クルスに釘を刺されるクロウである。

 

フロル「報酬は全部クロウとクルスに譲るよ。と言いたいけど、メシ代と宿代だけは譲ってくれ」

クロウ「それは問題ない」

クルス「大丈夫ですよ。パーティーの金銭管理は僕が徹底しています。食事代と宿代は経費にしても問題ありません」

フロル「経理できるのか?すげえな、クロウの弟は」

クロウ「まあね」

フロル「ならば、メシ代と宿代は俺が受け取る必要ないね。旅先で得たゴールドをクルスに渡すよ」

クロウ「それがいい」

クルス「任せてください。無駄遣いはさせませんから」

 

 鼻を高くするクロウとクルスである。

 

 

 

 それから時間が経過。マールバラ王国王都ラージェに到着。

 マールバラ王国は魔法大国としてヴァルレシア全土に名を轟かせている。他の国々より豊かで、民の生活水準も高い。

 魔法使いや僧侶を育成するための魔法学校と、騎士を育成するための騎士学校があり、自国民だけでなく、各国の留学生も通っている。

 マールバラ王国を統治しているのは、女王エレーナである。

 

クルス「王都ラージェは湾岸都市でもあり、貿易で大きな富を得ています。それだけでなく、領内に金鉱があり、金が豊富に取れています」

フロル「ヴァルレシアの金の相場はどのくらいなの?」

クルス「1gで30ゴールドですね。フロルさんがいた世界では、相場はどのくらいですか?」

フロル「1gで60ユーロ」

クルス&クロウ「ユーロ?」

フロル「地球の大国ユーロピア連邦の法定通貨さ。相場では1ユーロ=1ゴールドだと思っていい。これがユーロさ」

 

 フロルはユーロのお金を出すと…。

 

クロウ「これがフロルがいた世界のお金か…」

クルス「興味深いですね」

 

 クロウとクルスは興味を抱く。

 フロルは100ユーロ札5枚、50ユーロ札3枚、20ユーロ札3枚、その他コインを出す。

 

フロル「もっとも、この世界じゃ使えないからね」

 

 と、フロルは言う。

 

クルス「地球では金の相場が値上がりしているんですね」

フロル「装飾品だけでなく、工業用にも使われているからね」

クロウ「行ってみたいなぁ、その地球っていう世界」

クルス「僕も行ってみたいですね」

 

 クロウとクルスは地球に興味を抱く。

 それからしばらく、王都ラージェを歩き回った後、魔王軍妖魔師団との戦いに参加する傭兵の募集窓口に足を運んだ。だけど、よく見ると、ほとんどが自国民だ。それも男子学生ばかり。20代から40代も男性もいる。

 

クルス「なるほど…。活躍すれば、マールバラ王女と結婚することができるそうですね」

クロウ「お姫様との結婚か…。そりゃ野郎どもも参加したくなるわな」

クルス「王女様は3人。第1王女アメリア姫様、第2王女ジーナ姫様、第3王女アイーダ姫様。みんな独身ですが、特にアイーダ姫様は人気が高いそうです」

クロウ「美人だからか?」

クルス「それもありますが、次期女王に近いお方であるのが最大の理由です。アイーダ姫様は魔法学校を首席で卒業して、女王様直属の精鋭部隊、魔法師団の団長を務めています。人望は厚く、民から支持されています」

フロル「よくこんな短期間で情報を集められるね。すごいよ」

クルス「へへ…」

 

 実はクルス、王都ラージェを回っている最中に情報収集をしていた。これだけの情報を集められることにフロルは驚いた。

 それから、フロル達3人は受け付けを済ませ、そこから離れてレストランで食事をする。

 

クロウ「俺達を集めたのは、ここから東に位置する都市オービエンスを奪還するためか…。もともとはマールバラ王国の都市だったが、妖魔師団に奪われたとか」

クルス「マールバラ軍と傭兵軍団が協力して都市オービエンスを取り戻すんですね」

フロル「……………」

クルス「フロルさん?」

フロル「偵察に行かないか?」

クロウ「そうだな」

フロル「俺達は都市オービエンスの構造を知らないし、そこを統率している妖魔師団の幹部も知らない」

クルス「軍団長はいないのですか?」

フロル「いない可能性のほうが高い。この偵察で、できれば幹部を暗殺したい」

クロウ「俺もそう思っている。敵の頭をやれば指揮系統が乱れ、楽に制圧できる」

 

 話しがまとまった。3人は妖魔師団に制圧された都市オービエンスに向かう。

 

 

 

 それから時間が経過…。王都ラージェにあるマールバラ宮殿…。その謁見の間の玉座に、エレーナという女王がいる。絶世の美女と言っても過言ではないくらいの美しさを持つ。

 エレーナは資料に目を通している。今日、参加した傭兵達の資料である。

 

エレーナ「フロル…フロル・レイヴァール…!アルトマイア王ヴィンセントとエストリア王妃の息子がここに来たのですか…!?」

大臣「なんと!エリヴァン王国からの知らせにあった、あの勇者様ですか!?魔王ゼーゲルを殺害し、獣王軍団のアリゲイルを打ち倒したという…アルトマイア王子様…。それが事実であれば、妖魔師団に勝利できましょう!」

エリーナ「急いでフロル・レイヴァールを探し、ここに連れてきてください」

大臣「わかりました」

 

 大臣はこの場を後にした。

 

 

 

 その頃、フロルとクロウとクルス…。都市オービエンスの入口前に到着する。

 

フロル「…魔物だらけだな…」

クロウ「どうする?」

フロル「できれば侵入して様子を確かめたい」

クルス「ちょっとあれを…」

フロル&クロウ「?」

 

 クルスは気づいた。一台の大きな馬車が通ることを…。3人は物陰に隠れて様子を見る。

 馬車の中を確認すると、手錠と首輪をかけられた若い女性達の姿があった。

 

クロウ「おいおいマジかよ…」

フロル「まさか…人身売買がここで行われているのか…」

クルス「ちょっと待ってください。人間達が素通りしてますよ」

 

 富裕層と思われる人間の男性達が、門番の魔物がいるにも関わらず、素通りしている。

 

クロウ「どうなってやがる?」

フロル「……………」

クルス「フロルさん?」

フロル「俺達が都市オービエンスに攻め込むという情報が漏れているかもしれない」

クロウ「なんだと?」

フロル「よく考えてみろ。魔王軍がその気になれば、マールバラ王国に大規模な侵攻ができる。魔物どもを使って…。獣王軍団が良い例だ」

クルス「確かにそうですね」

クロウ「人間が素通りできるなら、俺達も素通りできるんじゃないか?」

フロル「確かに…。やってみよう」

 

 フロルとクロウとクルスは堂々と都市オービエンスに入ろうとし始める。

 

魔物「ようこそ、都市オービエンスへ…」

フロル「俺達、初めてここにきたんだけど、ここになにがあるのかい?」

魔物「ええ。都市オービエンスに奴隷市場があります」

フロル「奴隷市場?」

魔物「我ら妖魔師団の軍団長サフィールが人間達のために奴隷市場を運営しています。人間達が奴隷を買うために、または売るために、ここに来るのですよ」

フロル「そうなんだ」

魔物「ここでの争いは法度。奴隷を売り買いして楽しむのが、この都市のルールです」

フロル「ああ。今日は見せてもらいにきただけで、買うかどうかは後で決める」

魔物「それがよろしかろう。どうぞ」

 

 フロルとクロウとクルスは都市オービエンスの中に入る。

 都市オービエンスは人間と魔物で溢れかえっているが、平和的である。

 それから3人は都市オービエンスを歩き回り、情報を集めたところで、人気のないところで雑談する。

 

フロル「こんな胸糞の悪いところはないよ。俺的には、今すぐ潰したい。ここのトップを暗殺する」

クロウ「同感だ。今でも怒り狂ってきそうだ」

クルス「そのほうが良いですね。魔物の数は少ない。この奴隷市場を取り仕切っているのが、妖魔師団幹部ブギーマであることがわかりました」

フロル「やるか?」

クロウ&クルス「うん」

 

 フロル達は実行に移す。

 そして、しばらくして…。

 

フロル「どうも!社会のゴミ清掃業者です!」

クロウ「今日が君達の寿命です!」

クルス「外道のみなさん、覚悟してください!」

 

 都市オービエンスにある大きな城、オービエンス城にカチコミをし始めた。



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07 マールバラ王国第3王女アイーダ

 フロル達が城に徘徊する魔物達を一掃して進むと、そこには1人の魔族がいた。顔が醜く太っている。まるで、私腹を肥やしている人間である。

 

?「ブヒー!なんだお前達は!?」

フロル「外道どもを粛清する悪魔だよ。間違って人間界に生まれちゃいました」

クロウ「女を食い物にする外道を粛清しにきたぜ」

クルス「覚悟してください。妖魔師団幹部ブギーマ」

 

 この魔族がブギーマのようだが…。

 

ブギーマ「たかが人間がボクちんに勝てると思っているのか!?」

フロル「思っているから、ここにきたんだよ」

ブギーマ「調子に乗ってろ!ベタン!!」

 

 ブギーマは呪文を唱えた。ベタンという呪文で、重力を操る呪文である。これを受けたフロル達は重力に押しつぶされそうになり、身動きが取れない状態となる。

 

ブギーマ「ボクちんは、サフィール様にここを任された妖魔師団幹部ブギーマ。サフィール様に愛されるために、ボクちんはお金を稼ぐのさ。人間を奴隷にして売り買いするだけで簡単に儲かるとは…。面白いよね、人間って」

クロウ「外道めが!」

ブギーマ「よく見たら君達、アリゲイル様達獣王軍団を壊滅させた勇者とその仲間か…。サフィール様に差し出せば、どんなに褒めてくれるのか…。君達は殺さないよ。ボクちんの出世のために、生かしておいてやる」

フロル「その必要はないさ」

ブギーマ「あ~?」

フロル「なぜなら、お前はここで死ぬからさ」

ブギーマ「ふん。メラミ!」

 

 ブギーマはメラミを放って、フロルが装備している太刀をはたきおとす。

 

クルス「フロルさん!?」

ブギーマ「お前は簡単に殺さんぞ!ベギラゴン!!」

 

 ブギーマはフロルに向かってベギラゴンを放つが、

 

フロル「ライデイン!!」

ブギーマ「なに!?」

 

 フロルはライデインを放った。ベギラゴンと激突するも、ライデインのほうがかき消され、フロルは受けた。だが、ベギラゴンの威力がライデインのおかげで弱くなり、フロルへのダメージは最小限に抑えられた。

 さらにフロルは懐からサバイバルナイフを取り出して、ブギーマの腹部に突き刺し、

 

ブギーマ「ブギャーーー!!!」

 

 切り裂いた。

 

ブギーマ「そ…しょんな…」

フロル「てめえの私欲で多くの人が死に、奴隷にされた。その罪、地獄で償うがいい」

 

 これによって、ブギーマは死に絶えた。

 すると、人間の男性達と魔物がぞろぞろと現れた。

 

魔物「なっ、ブギーマ様が…」

人間「よくもオーナーを…何者だ!?」

フロル「お前ら外道というゴミを清掃する業者だよ」

クロウ「ゴミを掃除してキレイにするのが俺らの仕事だよ」

人間&魔物「ひぃぃぃ!!!」

 

 フロルとクロウは怒りを露わにして、人間と魔物を次々と粛清していった。

 

クルス「やっぱりお宝溜め込んでいたんだね。いただき~♪」

 

 しかもクルス、どさくさに紛れてブギーマのお宝やゴールドを次々と懐に入れ始めている。

 

フロル「すまんなクロウ。お前に人殺しさせて」

クロウ「気にすんな。人を殺したのは初めてじゃない。それに、ダチだけ汚れ仕事させてたまるものか」

フロル「ありがとう」

 

 残党勢力を狩り始めるが、狩る対象が人間も含まれている。

 

?「そこまでよ、外道ども!」

 

 そんなとき、1人の美女が兵士達を引き連れて現れた。

 

兵士「姫様、あの3人は…」

?「敵じゃないわ。あの3人はわたしに任せて」

兵士「はい」

 

 兵士達は散開し、城の制圧に取り掛かった。

 美女がフロル達3人に近づいた。

 

?「フロル・レイヴァールね?」

フロル「ああ、そうだ。あんたは?」

アイーダ「マールバラ王国第3王女にして魔法師団団長アイーダ・マールバラよ。2人は、クロウ・アルセイとクルス・アルセイね」

クロウ「ああ。俺がクロウだ」

クルス「クルスです」

 

 彼女が噂のアイーダ・マールバラである。

 

フロル「どうしてここに?というか、俺達のこと、よくわかったね」

アイーダ「我が母にして女王エレーナ様に命じられ、あなたを迎えにきたんだけど、まさかこんなことになっているとは…」

フロル「俺達はもともと偵察しにやってきたんだけど、気がついたときにはこうなったさ」

アイーダ「それについては感謝しているわ。わたし達も都市オービエンスをどう攻略するか悩んでいたから」

 

 アイーダは都市オービエンスの攻略に手間取っていた様子。

 

フロル「まさか、幹部のブギーマがベタンを使うとはね」

クロウ「こればかりは予想外だよ。まあ、獣王軍団の幹部連中のほうがよっぽど強かったよ」

フロル「あいつら、信念が強かったからな。おかげで俺は弱体化されてしまうし」

クロウ「そうだな。マジで強敵だったよ」

 

 獣王軍団の強さを評価するフロルとクロウである。確かに、ブギーマと違って、獣王軍団は信念が強かった。

 

フロル「アイーダ姫、女王様は俺達に何の用なの?」

アイーダ「それは詳しくわからないけど、エリヴァン王国からの知らせが届いたの。死んだと思われたアルトマイア王国王子フロルが生きており、獣王軍団の軍団長アリゲイルを討ち取り、その前は魔王ゼーゲルを討ち取った…。もし、フロルが各々の国に訪れるようならば、力を貸してやってほしい、とね。たぶん、その件だと思う」

フロル「なるほど…」

アイーダ「右手の甲にあるそのアザ、それが勇者の証なのね」

フロル「一応、俺は勇者ではなく竜の騎士なんだけどね。訳あって、一部の力を失っているし、アンチレベルという敵が放ったアイテムを喰らって、力も封印されている」

アイーダ「だ、大丈夫なの?」

フロル「なんとかね…。ある程度、封印を解除することができている」

 

 アイーダはフロルを気遣う。

 

クルス「フロルさーん、兄さーん」

 

 クルスが現れた。バッグにお宝を詰め込んだ状態で…。

 

クロウ「俺の弟だ。強いぞ。俺達パーティーの財布を任せている」

アイーダ「へぇ〜」

 

 クロウはクルスにアイーダを紹介する。

 

フロル「結構詰め込んだね」

クルス「全部持っていきたかったのですが、持ち切れないので、一部だけいただきました」

クロウ「よっしゃ。これでしばらくは優雅に暮らせるぞ」

アイーダ「そのお宝って、ブギーマが集めたもの?」

クルス「はい。まだあちらにたくさんありますので」

アイーダ「わかったわ。フロル、クロウ、クルス君、これからわたしと一緒に宮殿に来てください」

フロル「わかったよ」

 

 アイーダは兵士達にこの場を任せる。

 

フロル「ルーラ」

 

 フロルはルーラを唱え、クロウとクルスとアイーダと一緒に王都ラージェに飛んでいった。

 

 

 

 それから、王都ラージェ・マールバラ宮殿の謁見の間…。そこには、玉座に腰を下ろしている女王エレーナの姿があった。アイーダはエレーナの傍に歩み寄る。

 

アイーダ「お母様、例の者達です。成り行きですが、妖魔師団幹部ブギーマを討ち取り、都市オービエンスの奪還、奴隷となっていた人達の解放などに力を貸してくれました」

エレーナ「そうですか…。あなたがフロルですね」

フロル「はい。フロル・レイヴァールと申します」

エレーナ「ようこそ、我がマールバラ王国へ…。エリヴァン王国からの知らせを受け、あなたが生きていることを知って驚きました」

フロル「え?そうなのですか?」

エレーナ「はい。今から16年前のことです。アルトマイア王国に1人の王子が生まれました。その王子が勇者の力を持っているとして、世界中の人達は喜びに満ち溢れました。その王子とは、フロル、あなたのことです」

 

 フロルは真剣にエレーナの話しを聞いている。

 

エレーナ「その1年後、アルトマイア王国で、各国の王が集まった五大国会議が行われ、勇者であるフロルの扱いについて話し合いました。マールバラ王国の学校に入学させるとか、各国の王女の中から許嫁を選ぶなど…。だけど、魔王軍の襲来を受けて、あなたの父ヴィンセント王が命を落とし、フロルは行方不明。大切な人を失い、生き残ったエストリア王妃は嘆き悲しみ、それを糧にするかのように魔王軍と戦っています」

フロル「だけど、俺はこうして生きています。もっとも、育ちは地球という異世界ですがね」

エレーナ「異世界ですって?どおりで見つからないはず」

フロル「俺がこのヴァルレシアに来たきっかけは、魔王軍のトップであるゼーゲルと、軍団長筆頭のザイードが現れたことです。だけど2人は俺を道連れにして、俺はこのヴァルレシアに流れ着きました。流れ着いた場所は、エルフの里ミーミルです」

エレーナ「そうだったのですね。魔王ゼーゲルが命を落としたとエリヴァン王国からの知らせを受けましたが、まことですか?」

フロル「魔王軍の獣王軍団の軍団長アリゲイルがそう言っていました。間違いないでしょう」

エレーナ「そうですか…。魔王ゼーゲルは死んだ…。それだけでも、我々は大きな希望を持つことができました」

フロル「けど、厄介な魔族が魔王軍を統率しています」

エレーナ「なんですって?」

フロル「魔王ゼーゲルより格上の存在、魔界を統治する四大魔王の1人、メギドラ・ベルゼブブです。地球にいた頃、やつと戦ったのですが、かないませんでしたね」

エレーナ「まだ上がいるということですね。フロルは地球でなにをしていたのですか?」

 

 フロルは深刻な表情になる。

 

フロル「猟兵団の一員として、戦場で戦っていました」

エレーナ「猟兵団?」

フロル「傭兵団でもあるのですが、猟兵団は戦争関連の依頼を中心に請け負う団体です。お金をもらって、正規軍に代わって前線に出て戦うという…。地獄のような毎日だけど居心地が良かったし、気がついたら幹部になっていましたね。ある砂漠地帯にゼーゲルとザイードが現れたのですが、あとはさっき話したとおり」

 

 フロルの話しを聞いたとき、エレーナとアイーダは思った。苦労したんだなと…。

 

フロル「まあ、そういった経験があるから、守りたい人を守れますしね」

 

 ポジティブになるフロルである。

 

エレーナ「ああそうでした。各国の王女の中から許嫁を選ぶという話しについてです。アルトマイアがもし魔王軍の襲撃を受けず、平和が続いていたら、フロルはアイーダの許嫁になっていたでしょう」

フロル「そ、そうなのですか?」

エレーナ「はい。だけど、あなたがこんなにたくましく、強く育つとは思わなかったです。顔立ちもよく容姿が良い…。アイーダではもったいないので、わたしがあなたの妻になりますわ♪」

フロル&クロウ&クルス&アイーダ「ええええぇぇぇ!!!!!」

 

 4人は驚きの叫びを上げた。

 

クルス「あの…旦那様は…?」

エレーナ「病気で命を落としました」

クロウ「フロル…16歳なのですが…?」

エレーナ「問題ないですわ。わたしは46歳なのですが、マールバラ王族はエルフの血を少し引いているので、200年くらいは若いままですわ」

アイーダ「本音はなんでしょうか?」

エレーナ「かわいいフロルを独占したいがためですわ♪」

 

 エレーナは3人の王女を産んでいるが、それでも若々しくいるのは、エルフの血を引いているため。外見年齢が20代後半30代前半と言ったところである。

 エルフの血の影響なのか、マールバラ王族は非常に強力な魔力を持つ。

 

アイーダ「冗談じゃないです!年増女にわたしのフロルを奪われてなるものですか!」

エレーナ「誰が年増女ですって!」

 

 フロルを巡って争い始めるアイーダとエレーナである。

 

フロル「ああそうでした。女王様、マールバラ王国の国宝のひとつがオーブであることを知り、お目通りしようと思ったのですが」

エレーナ「オーブ?アクアオーブのことですか?」

フロル「アクアオーブ?」

エレーナ「はい。我が国の至宝で、神聖なる水を永遠に生み出すという。まさか、欲しいのですか?」

フロル「いえ…。俺が欲しいのはドラゴンオーブです」

エレーナ&アイーダ「ドラゴンオーブ?」

 

 フロルは、ヴァルレシアの龍脈を安定させるためにドラゴンオーブを探していることを伝える。

 

エレーナ「龍脈はヴァルレシアの生命エネルギーです。それが無くなったとなれば、ヴァルレシアは死に絶えるでしょう」

フロル「現在、ドラゴンオーブをひとつ見つけて、エルフの里に安置しています。残り3つを探しており、ドラゴンオーブがない間だけ、竜の騎士の力で龍脈を安定させています」

エレーナ「竜の騎士?」

フロル「俺は勇者ではなく竜の騎士です。俺が竜の騎士なら、ヴァルレシアのどこかに、もう1人の勇者がいるということでしょう」

アイーダ「なるほど…」

 

 フロルの言葉にみんなは興味を抱く。

 

エレーナ「今日はもう遅いです。この城にお泊まりください」

 

 エレーナの言葉にみんなは頷く。

 

 

 

 夕方…。アルトマイア王国領内のどこかにある場所…。

 

?「……………」

 

 1人の美女が手紙を持ちながら涙を流している。

 

?「王妃様…」

 

 1人の老人が現れた。

 

?「息子が…わたしの息子が生きていたのです…。わたしの息子が…」

?「エリヴァン王国からの知らせを受けたとき、目を疑いました。エリヴァン王国を襲った獣王軍団を打ち破った英雄…。その方こそが…フロル王子様…。生きておられたのですね…。これでアルトマイア王国は再興できます…」

 

 彼女の名はエストリア・アルトマイア…。アルトナイア王妃であり、魔王軍に滅ぼされたアルトマイアの残存勢力を束ね、魔王軍に抵抗している。

 彼女こそが、フロルの実の母親である。

 

 

 

 15年前の出来事だった。エストリアは1人の赤子を抱えて、城から逃亡している。アルトマイア王国はゼーゲル率いる魔王軍によって滅ぼされた。目的は、勇者である赤子フロルの命を奪うため。

 

魔物「その赤子は勇者だ!殺せ!」

魔物「皆殺しにしろ!」

 

 エストリアは赤子を守りながら、剣を持って魔物と戦っている。エストリア自身の実力はアルトマイア王国一番である。

 

エストリア「せめてこの子だけでも…」

 

 赤子を守りながら戦うのはエストリア自身もつらい。

 

エストリア「…そこまで我が子の命が欲しいの…?」

 

 魔物達がエストリアと赤子を襲撃したそのとき…。

 

?「イオグランデ」

魔物達「ぎゃあああああ!!!」

 

 どこからか強力な呪文が放たれた。魔物は全滅した。

 

エストリア「な…何者…?」

 

 エストリアは動揺する。すると、呪文を唱えた者が目の前に現れた。その者は女性である。

 

?「やれやれ…。新しい資源を求めて地球からわざわざやってきたんだけど、とんだ騒ぎに巻き込まれたもんだねぇ」

エストリア「あ…あなたはいったい…?」

?「その子、勇者だね?」

エストリア「!?」

?「いや、竜の騎士か」

エストリア「竜の騎士?」

?「まあ、どっちだっていい。わたしは天地雷鳴士のアンジェラだ。なにが望みだ?」

エストリア「どこか安全な場所に連れて行ってください。せめてこの子だけでも…」

アンジェラ「あんたが望むなら、この子を地球に連れていってもいい。ただし、あんたはダメだ。ヴァルレシアの人間を地球に連れていくわけにはいかない」

エストリア「この子は魔王軍に狙われています。魔王軍が狙われない場所に連れていきたいのです」

アンジェラ「つまり、わたしにその子を預けるということだね?」

エストリア「できれば…」

アンジェラ「わかった…。もう一度、この子に会いたいと願うなら…名前…なんだっけ?」

エストリア「アルトマイア王妃エストリアと申します。この子はフロルと言います」

アンジェラ「エストリア、天地雷鳴士の名において約束する。この子はわたしが育てる。もう一度、この子フロルに会いたくば、生き続けろ。なにがあろうと」

エストリア「はい」

 

 エストリアは決心してアンジェラに赤子を預ける。

 

魔物「いたぞー!」

魔物「あそこだー!」

 

 再び魔物が現れた。

 

アンジェラ「特別サービスだよ」

 

 アンジェラは手をかざすと、地面に魔方陣が顕現される。

 

「汝、その諷意なる封印の中で安息を得るだろう、永遠に儚く…。セレスティアルスター!!」

 

 空から数多くの光が魔物達に向かって降り注いだ。魔物達はそれを受けて消滅する。

 

エストリア「すごい…。あなたなら…あなたなら…」

アンジェラ「その願い、確かに聞き届けた。じゃあな」

 

 アンジェラは赤子のフロルを連れて、空間転移する。

 

 

 

 そして現在…。

 

エストリア「ああフロル…信じていました…。あなたに会えるなら、わたしは戦い続けます」

 

 エストリアはフロルとの再会に胸を踊らせている。

 実はエストリアがフロルに預けたアンジェラとは、猟兵団シュテルネンリヒト副団長アンジェラ・プロフェット本人である。

 アンジェラは何らかの形でヴァルレシアに訪れた。資源を確保するためとのことだが、実際はどうかはわからない。だけど、アンジェラのおかげで、エストリアとフロルが救われたのは事実。

 

 

 

 夜…。マールバラ王国王都ラージェ・マールバラ宮殿…。その客室にフロルとクロウとクルスがいる。

 

フロル「マールバラ王国が国宝としているオーブはドラゴンオーブじゃなかった。俺はそれを知って、王都ラージェで情報を集めた。その結果、目星が2つ付いた」

クルス「ここから北東にあるウグラ山脈と、東にあるワグナー遺跡ですね」

クロウ「ウグラ山脈はモンスターの巣窟。あるモンスターがお宝集めしているという」

クルス「僕としても、ウグラ山脈に行くべきですね。ワグナー遺跡はマールバラ王家の許可がないと入れません」

クロウ「だな」

フロル「決まりだね」

 

 今後の方針が決まった。

 

フロル「それと、ウグラ山脈の近くに妖魔師団の拠点がある。連中が気づく前に手に入れよう」

 

 とのことである。

 

 

 

 それから翌日…。フロルとクロウとクルスはマールバラ宮殿を後にする。

 

クルス「こっそり出ていって大丈夫なのですか?」

フロル「問題ないよ」

クロウ「俺達のお宝探しを邪魔されたくないしな」

 

 とのことである。

 それから時間が経過。ウグラ山脈に到着。

 

フロル「この奥だな。しかも、魔物達が教えてくれる」

クロウ「どんなお宝なのだろうかね?」

クルス「銀行に預けたので、手持ちに余裕があります」

フロル「ふふっ…。楽しみだなぁ」

 

 3人の目は獲物を狙う目だったとか…。

 

クルス「ああ!はぐれメタルです!しかも3体!」

フロル&クロウ「倒せー!!」

 

 しかも、3体のはぐれメタルが現れた。

 

フロル「うおりゃー!」

 

 フロルははぐれメタルに会心の一撃を与えて倒す。

 はぐれメタルは逃げようとするが、

 

クルス「逃がしません!メタルウィング!」

 

 クルスはブーメランを投げて、足止めをする。

 

クロウ「もらった!」

 

 クロウははぐれメタルを強襲。しかし、ダメージは今ひとつ。

 

はぐれメタル「ニヤッ」

 

 はぐれメタルはギラを放つ。しかも、攻撃的に出た。

 

フロル「やべえ!はぐれメタルがブチギレた!」

クロウ「むしろ好都合!クルス!」

クルス「ア、アームライオン!?」

フロル&クロウ「マジか!?」

 

 アームライオンも現れた。

 

フロル「クルス、お前ははぐれメタルを!こいつは俺とクロウでやる!」

クルス「わかりました」

 

 はぐれメタルに確実にダメージを与えられるのは、クルスただ一人。

 

クロウ「はぐれメタルを守る守護神ってか?」

フロル「上等」

 

 フロルとクロウはアームライオンと戦う準備に入ろうとしたが…。

 

?「かえんぎり!!」

アームライオン「ぎゃあああ!!」

 

 そのとき、誰かが割って入り、アームライオンを倒した。

 

フロル「アイーダ姫!?」

クロウ「お姫さんじゃないか」

 

 剣を装備したアイーダである。

 

アイーダ「わたし達に黙って出ていくなんて、お母様とわたしは怒っているわよ」

フロル「いやその、それは悪かったけど…」

クロウ「よくここに俺達がいるのがわかったな」

アイーダ「あなた達が言ってたじゃない。ウグラ山脈に行くって」

フロル「昨日、こっそり聞いていたな?」

アイーダ「バレた?」

 

 実はアイーダ、マールバラ宮殿にあるフロルとクロウとクルスが使っていた客室の扉から盗み聞きしていた。

 

アイーダ「フロルのところに遊びに行こうとしたんだけど、話し声が聞こえちゃってね。それで…」

クルス「わあああ!!!」

 

 クルスの悲鳴が響いた。クルスがはぐれメタル2体の猛攻を受けている。

 

アイーダ「はぐれメタルじゃない!あなた達、はぐれメタルと戦っていたの?わたしも一緒に戦うわ。あっという間に強くなれるし…ふふふっ」

クロウ「姫さん、顔がやばいって」

 

 アイーダははぐれメタルとの戦いにやる気を見せる。

 それから、はぐれメタルを倒した4人。4人ははぐれメタルから出てきた大量の経験値を手に入れ、一気にレベルが上がった。

 

クロウ「よっしゃー!」

クルス「強くなりました!」

フロル「アンチレベルの封印が一気に解除されたー!」

アイーダ「やったわ!」

 

 4人ははぐれメタルに勝利したことで喜びを隠せなかった。

 それからというもの…。

 

アイーダ「わたしもついていくわ。未来の旦那様のことを知る良い機会だし」

フロル「未来の旦那様?」

アイーダ「ふふっ」

 

 アイーダはフロルにくっついた。

 

クロウ「モテモテだな…」

フロル「そうは言っても…恋人いるし」

アイーダ「どこのクソ女なのよ!!?」

 

 フロルはそう話すと、アイーダは激情する。

 その後、フロルはスマートフォンを取り出して、自分と恋人の画像をみんなに見せる。

 フロルの恋人とは、キャシー・レインヴォークと言って、猟兵団シュテルネンリヒト3番隊副隊長である。

 

アイーダ「こ…この子が…」

クロウ「めっちゃかわいいじゃん」

クルス「わお、ですね」

 

 キャシーに興味を抱くみんなだが…。

 

アイーダ「その子よりわたしのほうが良いわよ」

フロル「アイーダ姫、目がやばいよ!」

 

 フロルに詰め寄るアイーダである。

 それから、アイーダを仲間にして先に進む。だけど…はぐれメタル2体とメタルスライム5体が現れた。

 

フロル「メタル系魔物の巣窟なの?」

クロウ「クルスの運だな」

アイーダ「え?そうなの?」

クルス「メタルウィング!」

 

 その後、戦闘が始まった。はぐれメタル1体とメタルスライム2体を仕留めたが、他は逃げられてしまった。

 それから先に進むと、奥地へとたどり着いた。

 

フロル「あれは…ビンゴ!ドラゴンオーブだ!」

クロウ「お宝もたくさんだな」

アイーダ「すごいわね」

クルス「お宝ー♪」

 

 クルスはお宝がある方に走ると、

 

?「キエー!!!」

フロル「クルス!」

 

 魔物が襲ってきた。マッドファルコン系の魔物である。

 フロルは太刀で魔物の攻撃を防ぎ、クルスを救い出す。

 

マッドファルコン「キー!俺達の宝に手を出す者は誰であろうと殺す!!」

 

 直後、ガルーダの鳥系魔物が大量に現れた。

 

フロル「ライデイン!!」

 

 フロルはライデインを放ち、マッドファルコンを除いた魔物達を一掃する。

 

アイーダ「やっぱり勇者…。だけど、負けないわ。メラゾーマ!!」

 

 アイーダは関心しつつ、マッドファルコンにメラゾーマを放った。だが、マッドファルコンは振り払い、かえんのいきを放った。

 

アイーダ「はあ!!」

 

 アイーダは振り払った。

 

クロウ「もらった!」

マッドファルコン「ぎゃあああああ!!!」

 

 クロウはマッドファルコンを仕留めた。

 それから落ち着いた頃、

 

フロル「間違いなくドラゴンオーブだ。まさかこんなに早く見つかるとは」

クルス「けんじゃのいしです!こんな貴重なアイテムがあるとは驚きです!」

アイーダ「すごいわ!けんじゃのいしなんて滅多に見られるもんじゃないわよ」

クロウ「これで戦いが楽になる」

 

 4人は喜んだ。

 

フロル「妖魔師団の本拠地と近い場所だ。帰ろう」

 

 その後、フロルはルーラを唱え、マールバラ王国の王都ラージェに帰っていった。



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08 マールバラ王国に潜む背後の憂い

 マールバラ王国王都ラージェ・マールバラ宮殿…。

 

フロル「すまんな、クロウ、クルス。エルフの里に寄ってドラゴンオーブを安置しなければならないから」

クロウ「それはかまわんが、俺達を連れていかないのか?」

フロル「エルフの里だからね。あんまり、人間を入れたくないんだ」

クルス「そうですね。いつ戻りますか?」

フロル「2時間もかからないと思う。それじゃ」

 

 フロルはルーラを唱え、エルフの里ミーミルに向かった。ミーミルは浮島でもあるので、空を飛ばないかぎり、行くことは不可能。

 

 

 

 エルフの里ミーミルの中央にある神殿の入口前…。そこに、フロルが現れた。神殿に入ろうとすると…。

 

オルハ「フロル様」

 

 オルハが現れた。

 

フロル「やあオルハ。2つ目のドラゴンオーブを手に入れたよ」

オルハ「それはホントですか!?」

フロル「さっそくなんだけど、ドラゴンオーブを安置したい」

オルハ「はい」

 

 オルハはフロルを神殿内に案内。フロルからドラゴンオーブを受け取り、祭壇の場所にドラゴンオーブを安置。同時にフロルは、4つに分散された竜の騎士の力のひとつが元に戻り、竜闘気(ドラゴニックオーラ)を扱えるようになった。

 ドラゴンオーブが設置された後、ドラゴンオーブは光り輝き始めた。ドラゴンオーブから放出される魔力が龍脈に流れ始めた。これにより、龍脈は安定し始める。

 

フロル「2つあるだけで龍脈が安定するとは…。この力を知れば悪用できるかもしれないね」

オルハ「はい。だからこそ、厳重に管理しなければなりません。フロル様、お時間ありますか?」

フロル「少しなら」

オルハ「では、わたし達の家に来てください」

 

 その後、2人はオルハの家に行く。家に入ると、リーファがいる。2つ目のドラゴンオーブを手に入れ、神殿に安置したことを話した。

 

リーファ「そうなのですね。フロルさん、ありがとうございます」

フロル「どういたしまして」

リーファ「なにかお礼をしてあげたいのですが…」

フロル「いえいえ…。単なる恩返しと義理人情ですから」

リーファ「いいえ…。お礼しないとわたしの気が収まりません。そうですね…。わたしの体でどうでしょうか?」

フロル「はい?」

 

 リーファは嬉しそうに赤らめ始める。

 

オルハ「いいえ。お礼として、わたしの純潔をあなたに捧げます。そして、竜の騎士の血筋を持つ子どもをわたしに産ませてください」

 

 オルハの場合は時めいた表情になる。

 

フロル「それは勘弁を…恋人がいるので」

リーファ「恋人ですって!?」

オルハ「どこのクソ女ですか!?」

 

 リーファとオルハは過剰に反応する。

 それから時間が経過して落ち着いた頃…。雑談し始める。

 

フロル「とはいえ、魔王軍が襲撃してドラゴンオーブを奪う可能性も否定できませんね」

リーファ「わたしはそれを危惧しています。それにしても、魔王ゼーゲルを超える四大魔王…」

フロル「魔界にも色んな国がありますからね」

オルハ「不安です」

 

 リーファとオルハは不安を抱いている。魔王軍がドラゴンオーブを奪いにくるんじゃないかと…。

 

?「へぇー、ここにいたのか」

 

 1人の女性が現れた。

 

フロル「アンジェラ姉さん!?」

リーファ&オルハ「アンジェラ様!?」

3人「え?」

 

 猟兵団シュテルネンリヒト副団長アンジェラ・プロフェットである。

 だけど、フロルとリーファとオルハはお互いに驚いた。アンジェラの知り合いだとは思わなかったのである。

 それからしばらく…。

 

リーファ「アンジェラ様は時の魔女で、時おりわたし達のことを案じて、様子を見に来られてきたのです。最後に来たのは15年前ですね」

フロル「なるほど…」

アンジェラ「忙しくなってね。大丈夫かと思って、ヴァルレシアに来なくなったんだよ」

フロル「姉さん、どうやって地球からここに?」

アンジェラ「わたしの故郷エリンシアの里を経由してヴァルレシアに来たんだ。まあ、今はとある方法でヴァルレシアを行き来できるんだけど、随分とヴァルレシアを充実してんじゃないの」

フロル「ヴァルレシアからドラゴンオーブを失って…。今は2つ見つけたところだけど…。ヴァルレシアに脅威を与える魔王軍なんだけど、今はメギドラが指揮している」

アンジェラ「メギドラだって!?なんであいつが魔王軍を…」

フロル「わからない。ゼーゲルが死んだのは確かだけど…。幹部が言っていたんだ」

アンジェラ「メギドラだったらやりかねないわね…」

 

 アンジェラは頭を抱える。

 

フロル「中東地域はどうなっているの?」

アンジェラ「スレイマ共和国を完全平定し、ユーロピア連邦軍とシュテルネンリヒトとセキレイと一緒にサラビア諸国連合に侵攻している」

フロル「くっ…俺も早く帰らないと…」

アンジェラ「別にのんびりしていいんじゃないの?」

フロル「良いの?」

アンジェラ「戦況は有利だからね。それにメギドラの存在もある。フロルはわたしになにをしてほしい?」

フロル「ドラゴンオーブを見つけるまでの間、このエルフの里を守ってほしい。幸いにも残り2つのドラゴンオーブのありかを掴んでいる」

アンジェラ「わかったよ」

 

 アンジェラは納得する。

 

アンジェラ「そういえばフロル、キャシーが心配していたよ」

フロル「そうなんだ。キャシーにはさみしい思いをさせてしまったようだ」

アンジェラ「シズネもね」

フロル「う…」

オルハ「アンジェラ様、そのキャシーさんにお伝えください。フロルはオルハと結婚して幸せに暮らしていると」

アンジェラ「キャシー暴れるわね」

 

 ムッとした表情になるオルハはフロルにくっつく。

 

フロル「それじゃ俺は地上に戻るよ。3つ目のドラゴンオーブを探さないと…。それじゃ」

オルハ「ムーッ!!」

 

 フロルは家を出て、ルーラでマールバラ王国王都ラージェに向かった。オルハはそれに激怒したとか…。

 

 

 

 その頃、魔王城…。

 

ゼーゲル「むぅ…ここは…」

 

 死んだはずの魔王ゼーゲルが蘇った。

 

メギドラ「気がついたか」

ゼーゲル「これは、メギドラ様!」

 

 ゼーゲルは慌ててメギドラに跪く。

 

メギドラ「お前は死んでいたが、せかいじゅの葉で蘇ったのだ」

ゼーゲル「そうだったのですか…」

メギドラ「地球まで来てフロルを始末しようとしたそうだが、無謀だったな。シュテルネンリヒトだけでなくセキレイというトップクラスの猟兵団がいた。しかも狂人の集まりだからな」

ゼーゲル「ヴァルレシアの完全なる支配のために、勇者であるフロルを始末しなければならなかったのです。竜の騎士であることが判明したのですが、それこそ放ってはおけませんでした」

メギドラ「なるほど…。お前が死んでいる間、俺とバルフォアが魔王軍を指揮している。それと、アリゲイルがフロルによって殺された」

ゼーゲル「なんと…アリゲイル…」

メギドラ「武人に恥じぬ戦いぶりだった。幹部達もだ。特にトームスはアンチレベルを使い、フロルの弱体化に成功した」

ゼーゲル「くぅ…惜しい人材を亡くしてしまった…。今すぐ六軍団長に会いたいです」

メギドラ「うむ」

 

 ゼーゲルはメギドラに案内され、広間に向かった。広間には、六軍団長5人とバルフォアがいる。

 

バルフォア「ゼーゲル、大丈夫か?」

ゼーゲル「ああ…。それより…」

 

 すると、ゼーゲルはみんなの前に土下座した。これにはみんなも驚く。

 

ゼーゲル「俺の不甲斐なさ故に、我が部下にして友であるアリゲイルを失った。そして、お前達に迷惑をかけた。すまぬ!だが、俺の決意は揺るがない。ヴァルレシアを支配し、我らの第二の故郷にすることを俺は約束する!」

 

 ゼーゲルは謝罪をする。

 

ダース「お顔をお上げください。わたし達はあなたに忠誠を誓う者。あなたのことを慕っているから、あなたについてきたのです」

サフィール「ええ」

シェイラ「今のわたし達があるのは、あなたのおかげなのです」

ラムパルド「このご恩を返せずにはいられません」

ザイード「荒くれ者で盗賊だったわたしを拾ってくださった恩を返させてください!」

 

 5人の軍団長は改めてゼーゲルに忠誠を誓う。

 

バルフォア「ゼーゲル、お前はしばらく休み、リハビリして調子を取り戻すのだ。俺は魔軍司令として、魔王軍を再編する」

ゼーゲル「すまぬ。お前にまで苦労をかけて…」

バルフォア「親友である俺を頼れ」

 

 バルフォアはゼーゲルを気遣う。

 

バルフォア「サフィール、妖魔師団をマールバラ王国から撤退してくれ」

サフィール「え?よろしいのですか?」

バルフォア「我々の目的はフロルの命を奪うこと。フロルさえ始末すれば、ヴァルレシアの支配は容易となる」

サフィール「わかりました」

バルフォア「ダースは引き続き、バーンスタインの残存勢力と戦ってくれ。ラムパルドも引き続き、アルトマイアの残存勢力と戦ってくれ。フロルがいずれ、どちらかの勢力と合流することになるだろう」

シェイラ「わたしの氷炎魔団とザイードの超竜軍団、サフィールの妖魔師団はどうしますか?」

バルフォア「待機だ。戦力を温存する。フロルという餌が釣れるまでな」

 

 バルフォアはそれぞれの軍団長に指示を出す。

 

ゼーゲル「さすがメギドラ様の側近にして参謀だな」

メギドラ「大したやつだろ?」

バルフォア「ふふっ」

 

 嬉しそうに微笑むバルフォアであった。

 

 

 

 それから時間が経過。夜、マールバラ王国王都ラージェ・マールバラ宮殿・謁見の間…。

 

エレーナ「妖魔師団がマールバラ王国から姿を消したですって?」

兵士「はい。本拠地を探ったのですが、間違いありません」

エレーナ「どういうことでしょうか?」

 

 エレーナは疑問を抱く。

 

エレーナ「フロルをここに呼んでください」

兵士「はっ」

 

 エレーナは兵士にフロルを呼ぶよう兵士に命じた。兵士はこの場を後にする。

 それからしばらくして、フロルが現れた。

 

エレーナ「フロル、妖魔師団がマールバラ王国からいなくなりました。これについて、どう思われますか?」

フロル「恐らくですが、撤退して魔王軍の本拠地に帰ったのでしょう。俺が魔王軍のトップなら、戦力を温存して部隊を再編成するでしょう。また、各個撃破のためにどこかの勢力や国を滅ぼすためとか…。俺の考えが正しいなら、危ないですね」

エレーナ「なるほど…。危ないといえば、バーンスタイン王国とアルトマイア王国の残存勢力ですね。この2つの勢力は今でも魔王軍と交戦しています」

フロル「確かに…。アルトマイア王国はわかるとして、バーンスタイン王国はなぜ魔王軍によって滅ぼされたのでしょうか?俺が聞いた話しによれば、ヴァルレシア五大国の中でも軍事大国であるとのことですが」

エレーナ「はい。その強大な軍事力を持って、魔王軍の攻撃を尽く退けたとされています」

フロル「そういうことですか…。上層部の腐敗…」

エレーナ「詳しくはわかりませんが、わたしもそう思っています。バーンスタイン王国はもともと、大臣や役人や軍上層部などの腐敗が有名でした。バーンスタイン王は聡明な方ですが、王妃様も腐敗した上層部の1人でもありました。バーンスタインが完全に弱体化し切ったところで、魔王軍は総力を持って侵攻。王都シュタルクを陥落させ、バーンスタイン王国は滅亡しました。今はバーンスタイン王国第2王女アイシス姫が残存勢力をまとめて、魔王軍と戦っています」

フロル「なるほど…。腐敗が原因で衰退するのは、地球の国家でもよくあることです」

エレーナ「だからこそ、汚職などをやる者に容赦はしません」

 

 エレーナは決意した目でそう話す。

 

フロル「今後の方針が決まりました。バーンスタイン王国に行きます。幸いにもあっちのほうにドラゴンオーブがあるという情報ですので」

エレーナ「わかりました。だけど、ちょうど良かったです」

フロル「?」

エレーナ「実は3日後に、バーンスタインに向けて大量の物資を送る予定があるのですが、途中で魔王軍に襲われないかと不安を抱いていたのです。よければ、護衛も兼ねて、一緒に同行してもらいたいのですが、大丈夫でしょうか?」

フロル「それは問題ありません。むしろ、同行させてくださいと言いたいところです」

エレーナ「ありがとうございます」

 

 フロルはエレーナの要望を受け入れた。

 

フロル(まあ、こっちも色々と準備があるしね)

 

 と、フロルは話す。

 

 

 

 翌日の朝、フロルとクロウとクルスは、武器屋に寄っている。武器を購入するためなのだが…。

 

フロル「太刀がない…」

 

 フロルが好んで使う得物の太刀が売っていない。

 

店主「へぇー、客人はそういう武器を使うのか?変わった武器だな」

フロル「そうだね。だけど、研げばピカピカになるし。店主、工房貸してもらえるかな?」

店主「ああ、いいぜ」

 

 話しはまとまった。

 

フロル「というわけだ」

クルス「了解です。その間に僕達は色々な店を回ってみます」

クロウ「おう」

フロル「すまんね」

 

 フロル達パーティーは一時的に解散。

 フロルはここで自らの太刀を研ぎ始める。フロルの太刀は刃こぼれし始め、ボロボロになっていた。ここで研いで切れ味を蘇られると同時に耐久性を高める。

 そしてクロウとクルスは買い出し。ここで新しい武器を購入し、道具屋を回るなどしている。

 3日後には、アイーダと一緒にバーンスタイン王国行きの船に乗り、バーンスタインの残存勢力を指揮しているアイシスに大量の補給物資を送るという。もちろん、フロルはクロウとクルスに話し、了解を得ている。

 

 

 

 それからしばらくして、フロルの太刀が仕上がった。前と違って、できたてホヤホヤな感じとなり、切れ味も回復した。

 フロルは武器屋を出て王都を出歩く。すると、こういった話しが聞こえた。

 

女性住民「都市オービエンスが解放されたそうだけど、姫様の結婚の話しはどうなったの?活躍すれば姫様と結婚できるという話しだけど」

男性住民「なかったことになったそうだ。なんでも、マールバラ王国に訪れた勇者様一行が解決したとか」

男性住民「15年前に魔王軍の襲撃で亡くなられたはずのアルトマイア王国の王子様が実は生きて、獣王軍団を壊滅させてエリヴァン王国を救ったそうだよ」

女性住民「魔王もすでに倒されたと聞いたんだけど、まだ幹部が残っているって話しよ」

 

 勇者についての話題である。というよりフロルの話題である。

 

フロル「どこまで話題が広がっているのだろうか…。新聞でもあれば良いんだけど…」

 

 ヴァルレシアに新聞があるのかさえ疑問だ。

 

フロル(マールバラ王国にまだ問題があるようだ。都市オービエンスの一件で人間も多く関わっている。そもそも、どういう経緯で人間はブギーマ達と関わっていたのだろうか?)

 

 ふと、フロルは疑問を抱いた。

 

フロル「調べてみるか」

 

 フロルは都市オービエンスを支配していたブギーマに関わったと思われる人間について調べ始めた。貴族や商人を中心に少し調査しただけで、色々な情報が出てきた。

 ブギーマと取引して、都市オービエンスで奴隷市場を開拓させていたのは、伯爵という爵位を持つマールバラ貴族であることが判明。しかも、別のところで奴隷市場を開拓しているという。

 だけど、それだけならよかった。一味だった盗賊の連中を締めている。

 

フロル「クーデターだと?」

盗賊「ゴーラム伯爵は前々から魔王軍と繋がって、魔王軍の力を借りてクーデターを起こすつもりだ」

フロル「目的は?」

盗賊「わからんが、女王様と姫様のお体、マールバラ王家が持つ利権を奪うことだと思う」

フロル「そういうお前もゴーラム伯爵に不満を抱いているな?」

盗賊「ああ。全然報酬を支払ってくれないからな」

フロル「1000ゴールドで情報を買ってやる」

盗賊「え?ホントに?」

フロル「現在、どこで奴隷市場が行われているのだ?」

盗賊「東にあるワグナー遺跡さ。ゴーラム伯爵が私兵達を集めている場所でもある」

フロル「間違いないな?」

盗賊「最新の情報だ」

フロル「ありがとう。1000ゴールドだ」

盗賊「確かに…」

 

 盗賊は行ってしまった。

 

アイーダ「こんなところでなにしているの?」

 

 アイーダが現れた。

 

フロル「ああ姫。実は」

 

 フロルはゴーラム伯爵がクーデターを起こそうとしていることを話す。

 

アイーダ「なるほどね。わたしもそれを思って探りを入れたんだけど…。証拠が欲しいわね」

フロル「現行犯逮捕できたらいい」

 

 と、話していると…。

 

クロウ「おっ、姫さんじゃないか」

 

 クロウとクルスが現れる。2人にゴーラム伯爵について話すと…。

 

クルス「そうですね。背後の憂いを排除しないと」

クロウ「だな」

 

 2人は同意する。

 

アイーダ「動かせる部隊を連れてくるわ」

 

 アイーダは一度離れる。

 

クロウ「万が一、伯爵がワグナー遺跡にいなかったらどうする?」

フロル「いないだろうね。連中は部隊を分散させて、守りが薄い状態のマールバラ宮殿に強襲を仕掛ける可能性もある」

クルス「僕もそう思っています。ワグナー遺跡にゴーラム伯爵がいれば幸い。そうではないなら、宮殿か王都のどこかに潜んでいるとみて間違いないでしょう。加えて、情報が簡単に入り過ぎます」

フロル「だからこそ、この罠に引っかかってみようと思う」

クロウ「だな」

 

 作戦が決まった。その後、アイーダがマールバラ軍魔法師団の部隊を引き連れてきた。

 

アイーダ「ええ。罠に引っかかってみましょう」

 

 アイーダは同意する。

 

クルス「フロルさん、宮殿に残ってもらえないでしょうか?」

 

 クルスは提案する。

 

フロル「俺もそれを考えていたんだが、俺がいなくても大丈夫かい?」

クロウ「問題ないさ」

クルス「ええ」

アイーダ「わたし達だけでもやれるわ」

フロル「OK」

 

 フロルは一時的にここを離れる。

 そして、フロルを除くみんなはワグナー遺跡に向かう。

 

 

 

 それから時間が経過。

 

アイーダ「大人しくしろ、外道どもが!!」

クロウ「今日がお前達の命日だ!」

クルス「最後の人生を楽しんでください!」

 

 アイーダ達はワグナー遺跡に乗り込んだ。

 

男「マールバラ軍だ!!」

男「なぜここが!?」

 

 ワグナー遺跡では、奴隷市場が開催されていた。情報通りである。

 

アイーダ「制圧せよ!」

 

 アイーダは魔法師団の部隊に制圧を命じた。

 それから間もまく、ワグナー遺跡は完全に制圧され、奴隷となった者達は解放された。

 ここを取り仕切る支配人の男は捕縛。男はこう話す。

 

支配人「ゴーラム伯爵は自らの私兵達を率いて、宮殿を制圧するだろう」

アイーダ「ゴーラム伯爵の目的はなんなの?」

支配人「マールバラ王国の王になることだ。王になって魔王軍と同盟を結び、このヴァルレシアを支配することが、ゴーラム伯爵の望みなのだ」

アイーダ「その望みはかなわないわ」

クロウ「俺らパーティーの最高戦力が宮殿に残っている」

クルス「フロルさんと言って、その人は勇者でありますから」

支配人「そ…そんなバカな…」

 

 支配人は、アイーダ達の中にフロルがいないことを知った。

 

クロウ「フロルは読んでいたぜ。だから俺達はお前達の罠に敢えて引っかかったんだ」

アイーダ「あんたは生かしてはおけない。ここで死になさい」

支配人「がはっ!!」

 

 アイーダは持っていた剣で支配人の体を突き刺した。支配人はここで息絶えた。

 

クロウ「いつまでもここにいられない」

アイーダ「ええ。あなた達、ここを頼むわ」

魔法師団の団員「はっ」

 

 アイーダは魔法師団に命じた。そして、アイーダとクロウとクルスはワグナー遺跡の外に出る。そして、アイーダはルーラを唱えて、マールバラ宮殿に戻っていった。

 

 

 

 その頃、フロルはというと、マールバラ宮殿の謁見の間にて、ゴーラム伯爵率いる私兵達と対峙している。

 

フロル「ここにいれば、来ると思っていたけど、本当に来たね」

 

 謁見の間にある玉座の傍に、女王エリーナがいる。他にも、第1王女アメリアと第2王女ジーナというアイーダの姉がいる。エリーナの娘にしてアイーダの姉ということもあって、非常に美しい。

 

フロル「どのような理由でクーデターを起こす?」

ゴーラム「決まっている。わたしがマールバラ王国の王になるためだ。マールバラ王になって魔王軍と同盟を結び、その力を持ってヴァルレシアを支配する」

フロル「なんのために?」

ゴーラム「それ以上の理由はないだろう」

フロル「本音を言えば、富と権力を自分のほうに集中するためだろう?そんな人間を俺は何万も見てきたんだ」

ゴーラム「だまれ!エルフの血を引く者がマールバラ王族であること自体が間違いなのだ!女王達を我が奴隷にする!かかれ!!」

 

 ゴーラムは私兵に突撃を命じた。フロルは鞘から太刀を抜いて、太刀を振るった。気がついたときには、私兵達が倒れている。

 

フロル「さて…次に切られたいのは誰だい…?」

ゴーラム「くっ…」

フロル「ついでに言うが、俺は地球という異世界の人間なんだけど、地球の国家のひとつ、ヴェルナ聖王国という大国がある。ヴェルナ聖王国の現女王は、ハーフエルフだ」

ゴーラム「な…なんだと…!?」

フロル「国民は女王様がハーフエルフであることを知っているけど、何の不満もない。統治者として優れており、国民の生活を第一としている」

 

 フロルは地球の大国ヴェルナ聖王国について話すと、ゴーラムは驚愕する。

 

フロル「エリーナ女王様の場合、国民の支持を得て、現在に至る。あんたはどうだろうか?」

ゴーラム「くっ…」

 

 フロルは指摘すると、ゴーラムはなにも言い返せなかった。

 

ゴーラム「だ、だまれ!女王さえ排除すれば、わたしはマールバラ王になれるのだ!」

フロル「……………」

 

 するとフロルはゴーラムに向かって闘気を放つと、ゴーラムの周りの私兵達がプレッシャーによって倒れ、気絶した。

 

ゴーラム「そ…そんな…」

フロル「うん。アンチレベルによって封じられた闘気も戻ってきたね」

ゴーラム「お、お前は何者だ!?」

フロル「俺はフロル。みんなは俺のこと勇者と呼んでいるんだけどね」

ゴーラム「勇者!?」

フロル「とりあえず、顔面陥没してくれ」

ゴーラム「ぶはあああ!!!」

 

 フロルの強烈な右ストレートパンチを受けたゴーラムは倒れ、顔面陥没状態になったという。

 

 

 

 それから、アイーダ達が合流。合流する頃には、宮殿内の騒動は終わっている。フロルがほとんど1人で収めたという。

 そして落ち着いた頃、マールバラ宮殿の謁見の間…。

 

エリーナ「あなた達のおかげで、わたし達とマールバラは救われました。特にフロル、本当にありがとうございます」

フロル「いえ、そんな…。背後の憂いを取り除いただけに過ぎません」

エリーナ「だけど、マールバラ王国とわたし達を救ってくれたのは事実です。お礼に、わたしか娘との結婚はどうでしょうか?」

フロル「え?」

 

 フロルは王女達を見た。アイーダは嬉しそうだが、その姉である第1王女アメリアと第2王女ジーナは満更ではなかった。むしろ、嬉しそうな感じである。

 

フロル「いえその…お礼は良いです。それに、クロウ達といたほうが楽しいですし」

エリーナ「そっち系でしたか?」

フロル「なわけないでしょ!?」

 

 フロルはエリーナにツッコミを入れるが…。

 

クロウ「フロル、お前そんなに俺のことが…」

フロル「真に受けないで!」

 

 クロウにツッコミを入れるフロルであった。

 

クロウ「まあとにかく、俺達はメイド達と遊びたい。フロル、アルトマイア王国の王族として、女王様達を喜ばせてやれ」

フロル「その親指、折り曲げていい?」

クルス「これも一種の交流です。僕は手に入れたお宝を見ながらムフフッと楽しみます」

フロル「まあ、2人がそう言うなら…」

エリーナ「決まりですね♪」

 

 話しがまとまった。

 

アイーダ「では、フロルはわたしの部屋で」

アメリア「ここは姉に譲りなさいな」

ジーナ「そうよ。勇者様の奉仕はわたしがするんだから」

アイーダ「いくらお姉様でも譲れませんわ」

3姉妹「ぐぬぬ…」

 

 3姉妹睨み合う中…。

 それから落ち着いた頃、みんなは解散。バーンスタイン王国に向けた船の出発は2日後となる。



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09 バーンスタイン王国の姫

 マールバラ王国で、ゴーラム伯爵によるクーデターが起きた。首謀者はゴーラム伯爵で、目的は女王エリーナを排除して自らが王になり、魔王軍の力を借りてヴァルレシアを支配することであった。人間至上主義という一面を持ち、エルフの血を引くマールバラ王族の存在そのものを許さなかった。

 だけど、事前に察知したフロルによってクーデターが阻止され、ゴーラムを捕らえることに成功。ゴーラムを取り調べると、魔王軍妖魔師団と繋がっていたことが判明。

 妖魔師団の軍団長サフィールと密約を交わして、都市オービエンスを妖魔師団に制圧させる。幹部のブギーマに都市オービエンスの統治を任せ、ゴーラムは資金調達などを目的に都市オービエンスに奴隷市場を開いた。

 盗賊達に人間と子どもの男女を拉致させて、欲深い人間の富裕層連中が奴隷を買う。その手数料としてゴーラムの懐に入り、土地の使用料としてブギーマに支払われるという。

 ワグナー遺跡にも奴隷市場が開かれていたのだが、そこは美しい女と子どもの奴隷ばかりで、都市オービエンスの奴隷市場より相場が圧倒的に高い。女性が処女であれば、その価値は跳ね上がる。

 だけど、ワグナー遺跡の奴隷市場は、アイーダ達によって潰され、奴隷にされていた女性と子どもは保護される。

 

 

 

 翌日が経過して現在、マールバラ王国王都ラージェ・ラージェ港…。港には大きな船が数多くあり、同時に大きな倉庫が多く立ち並んでいる。ラージェ港は貿易拠点のひとつで、マールバラ王国の巨大な収益源のひとつとなっている。

 ラージェ港にはフロルとクロウとクルスとアイーダがいる。もう少し具体的に説明すると、4人は大型のガレオン船におり、アイーダは搭乗する船員の指揮を執り、フロルとクロウとクルスは積荷をガレオンに運ぶ作業をしている。この大型ガレオン船は、貨物輸送能力を持った軍艦であると同時に、マールバラ王家が所有する船でもある。ちなみに、船の名前はオベーリア号であり、

 

フロル「働かざる者食うべからずだからね」

クロウ「色んなことを体験できてお金がもらえる」

クルス「実はおいしい仕事なんですよね」

 

 3人はそう話す。

 フロル達が運んでいる積荷の中に食料や武器や防具などの補給物資があり、その数は数え切れないほど。バーンスタイン王国に向けたものである。

 明日にはバーンスタイン王国に向けて出発するのだが、注目していただきたいのは、バーンスタイン王国そのものが激戦区であること。アイシス姫率いるバーンスタイン王国の残存勢力が魔王軍に抵抗している。その残存勢力が戦っている魔王軍は不死騎団で、その不死騎団を率いるのはダースである。

 

 

 

 その頃、魔王城の謁見の間…。そこには、ゼーゲルとバルフォアがいる。

 

バルフォア「フロル一行がバーンスタイン王国に向かうそうだ。マールバラの連中と一緒にな」

ゼーゲル「不死騎団に超竜軍団と妖魔師団を合流させ、魔影軍団に氷炎魔団と合流させる。連中を一気に一網打尽にする」

バルフォア「それが良いだろう」

ゼーゲル「そして、俺もバーンスタインに出る」

バルフォア「だったら俺も出よう。確実にフロルを仕留める」

 

 計画を進めるバルフォアとゼーゲル。

 

ゼーゲル「メギドラ様は何処に?」

バルフォア「魔界の領地に戻られている」

ゼーゲル「ならば、メギドラ様が喜ぶような成果を上げんとな」

 

 ゼーゲルは決意した表情になる。

 

 

 

 夕方…。マールバラ王国王都ラージェ・マールバラ宮殿の会議室…。そこには、フロル達とエリーナやアイーダを含む上層部が集まり、バーンスタイン王国に関して会議をしている。

 

エリーナ「バーンスタイン王国は現在、魔王軍によって占領されています。占領された地域に住まう民達は貧困に喘ぎ、いつ殺されるかわからない状況です。ですが、バーンスタイン王国王女アイシス姫が立ち上がり、魔王軍に抵抗し始めています」

フロル「アイシス姫が立ち上げた残存勢力の状況はわかりますか?」

エリーナ「酷い状況だと聞きました。武器や食料などが尽きかけ、士気も低下しています」

フロル「まずいですね。士気が低下している時点で、その残存勢力は風前の灯火でしょう。俺が魔王軍の参謀なら、食料やるから降伏して姫を差し出せと言うかもしれません」

クロウ「俺もそれを危惧している。追い詰められた連中が何をしでかすかわからないからな」

フロル「だからこそ、俺達が先行して湾岸都市アーバンを制圧し、補給線を確保しなければなりません」

エリーナ「なるほど…。フロル、できますか?」

フロル「できますというか、できなければなりません。幸いにも猟兵団で参謀やりながら部隊の指揮もやっていたので」

エリーナ「わかりました。なにか必要なものはございますか?」

フロル「その前に…バーンスタイン王国に他国の軍隊が入ることになにか問題はありますか?」

エリーナ「それは問題ありません。アイシス姫からの要請ですから」

フロル「了解です。湾岸都市アーバンに潜入して、駐留している魔王軍の上層部を一掃して指揮系統を乱せば、楽に制圧できますね」

アイーダ「簡単なことを言うのね?」

フロル「いくら強力な組織でも、指揮系統を失えばバラバラになるからね。戦争でもこういった作戦を取ることあるしね」

 

 ベテランのフロルが言うのだから、ほとんど間違いがない。

 

フロル「先行するのは、俺とその他精鋭の魔法師団数十名。アイーダ姫、トベルーラを使える魔法師団は何人いる?」

アイーダ「わたしを含めて11人いるわ。フロルは使えるの?」

フロル「問題ない。トベルーラを使える者だけ先行する。アイーダ姫はガレオン船の部隊の指揮を…。クロウとクルスはアイーダ姫のサポートを頼む」

クロウ「あいよ」

クルス「お任せください」

フロル「エリヴァン王国にも協力を仰ぎたいですね」

エリーナ「エリヴァン王国はアルトマイア王国を支援していますので、問題はないかと」

フロル「抜かりないですね」

クロウ「そういえばフロル、お前はエリヴァン王族でもあったな」

クルス「アルトマイア王族でもありますしね」

フロル「う~ん…権力をフル活用してもメリットないしな…。まあ、湾岸都市アーバンを制圧してから考えよう」

 

 話しはまとまり、しばらく会議が続いた。

 バーンスタイン王国は、マールバラ王国があるオブリオン大陸から西、海を越えた先にあるアシーラ大陸南部に存在する国である。軍事大国として名を轟かせていたバーンスタイン王国だが、魔王軍に壊滅されて過去のものとなったという。

 

 

 

 そして翌日…。フロル達とアイーダ率いる魔法師団とマールバラ正規軍の部隊は、ガレオン船オベーリア号に搭乗する。オベーリア号はバーンスタイン王国に向けて出航する。

 出航してから数時間が経過。

 

フロル「ここから先はトベルーラで行く。みんな、頼むよ」

魔法師団の団員「はっ」

 

 フロルは10人の魔法師団の団員を率いて、トベルーラで飛んでいった。向かう先はバーンスタイン王国湾岸都市アーバンである。アーバンに潜入して、駐留する魔王軍の幹部達を一掃するのが主な目的となり。

 それからしばらくして、アーバンへの潜入に成功するフロル達。不死騎団のモンスター達がウヨウヨしているが、魔族もいる。フロルは目の前にいる魔族2人を…。

 

魔族「がはっ!」

魔族「なにも…ぐはっ!」

 

 瞬殺する。1人の魔族の首を折り、もう一人に向かって短剣を投げた。

 

魔法師団の女性隊員「す、すごい!」

フロル「猟兵団で鍛えられた暗殺術だよ。えっと…名前なんだっけ?」

ジェシカ「ジェシカと申します。アイーダ姫様の護衛を務めています」

 

 ジェシカという女性は魔法師団の隊員で、常にアイーダの傍にいる人である。顔立ちが美しく、スタイルも豊満で無駄もない。ちなみに、年齢は22歳である。

 その後、フロルは魔法師団を率いてアーバンに潜入し、邪魔をする魔族やモンスターを排除している。親玉がいる場所も判明。場所は湾岸都市アーバンで一番大きな建物、アーバン城である。アーバン城は湾岸都市アーバンの政庁となっているが、現在はアーバンの駐留軍司令部の重要拠点となっている。

 フロル達はトベルーラで、アーバン城のバルコニーに侵入する。徘徊する魔族やモンスターを一掃して…。

 

フロル「どうも悪魔です!みなさんを地獄に送り届けるためにやってきました!!」

ジェシカ「観念しなさい!」

 

 上層部がいる広々とした部屋にカチコミした。

 

魔族「人間だと!?」

魔族「いつの間に!?」

魔族「ダース様に報告…うわあああ!!」

 

 フロルとジェシカ達は上層部の魔族達を全員一掃。呆気なかった。

 

ジェシカ「アイーダ姫様に報告を…。幹部達をやっつけた。そのまま港を制圧すると」

団員「はっ!」

 

 1人の団員はルーラで、ガレオン船オベーリアに向かった。

 

フロル「本物のトップが来たようだ」

ジェシカ「ですね」

 

 フロルとジェシカは、ある方に視線を向けた。その先には、剣を二刀流に持つガイコツの魔物がいた。

 

ゾーデン「我はゾーデン。魔王軍不死騎団の団長ダース様の側近にして、湾岸都市アーデンの統治を任された者だ。貴様はフロルだな?獣王軍団長アリゲイル様を倒し、魔王ゼーゲル様のお命を奪った、憎き竜の騎士」

フロル「不死騎団…。バーンスタインの残存勢力と交戦している魔王軍か」

ゾーデン「いかにも。そして、妖魔師団と超竜軍団が合流し、ゼーゲル様も出てきて、貴様を始末する」

フロル「ゼーゲル、死んだんじゃなかったのか?まさか、世界樹の葉で蘇ったのか?」

ゾーデン「察しが良いな」

 

 魔王ゼーゲルが蘇った。それを聞いたフロルは冷静になるが、

 

ジェシカ「魔王が蘇ったっていうの!?」

 

 ジェシカのほうは驚いた。

 

ゾーデン「おしゃべりはそこまでだ。アリゲイル様の仇を討たせてもらう」

フロル「アリゲイルに随分と思い入れがあるな」

ゾーデン「ダース様の親友で、我も恩義がある。行くぞ」

 

 ゾーデンが先制攻撃を仕掛ける。ゾーデンは剣を持ってフロルに攻撃を仕掛けるが、フロルは太刀を持って攻撃を防ぐ。

 

フロル「ジェシカ、あんたは魔法師団を率いて港を制圧してくれ。こいつは俺がやる」

ジェシカ「わかりました。ご武運を」

 

 ジェシカはこの場をフロルに託し、魔法師団を率いて港のほうに向かう。

 フロルとゾーデンのタイマンが始まった。ゾーデンは二刀流でフロルを攻めていく。

 

ゾーデン「ドルクマ!!」

フロル「ぬぅ!」

 

 ゾーデンはドルクマの呪文を放つが、フロルは防ぐ。だが、フロルにとって予想外の展開が起きた。後ろから突然、ゾーデンが現れ、フロルを強襲する。フロルはかわす。

 

ゾーデン「パープルシャドー…。自らの分身を作る、我の奥義である。よくかわしたな」

フロル「なるほどね」

ゾーデン「むっ」

 

 フロルは広報に下がって、さらに太刀を鞘に収めて抜刀術の体勢に入る。だが、ゾーデンは仕掛けようとしなかった。

 

ゾーデン「抜刀術か…」

フロル「正解だ。さすが魔王軍の幹部だけのことはある。だけど、終わりだ」

ゾーデン「なに!?」

 

 フロルは抜刀術を構えた状態で…。

 

フロル「森羅万象…我が太刀は烈風…。見えた!うおお!!!」

ゾーデン「なに!!?」

 

 2つの分身を出しながら見えない動きと速さでゾーデンを切り刻んでいく。そして…。

 

フロル「終の太刀・黒旋風!!」

ゾーデン「ぐわああああ!!!」

 

 奥義を放った。奥義をまともに受けたゾーデンは倒れ、そこで果てた。

 

フロル「うん、闘気も安定してきたね」

 

 フロルは、自分自身にかけられたアンチレベルの封印を解いてきた。完全に封印が解けるまで、あと半分のところである。あと半分でこの強さ、フロルはもともと底知れぬ強さを持っている。

 

フロル「さて…」

 

 その後、フロルはアーバン城の外に出て、港に向かってジェシカ達と合流。ジェシカの傍にアイーダがいる。

 

ジェシカ「フロルさん。フロルさんがここにいるということは…」

フロル「敵のボスを討ち取ったよ」

アイーダ「さすがフロルね。お疲れ様。あとはわたし達に任せて」

フロル「了解」

 

 すでにガレオン船オベーリア号が入港しており、オベーリア号からマールバラ軍の部隊が続々と出てきて、アーバンを制圧し始めている。

 それから2時間が経過。湾岸都市アーバンの制圧が完了する。アーバン城にマールバラ軍司令部を設置して、マールバラ王国とアーバン城の補給線を維持することになった。

 

 

 

 現在、アーバン城の広間…。そこには、アイーダとジェシカがいる。

 

?「自分はバーンスタイン王女ロクシーヌ姫様とアイシス姫様が率いるレジスタンス、バーンスタイン解放戦線の騎士ハミルダと申します」

 

 1人の女性騎士がアイーダに跪いて謁見をする。

 

アイーダ「ロクシーヌ姫様とアイシスは無事ですか?」

ハミルダ「はい」

アイーダ「解放戦線に補給物資を届けに参りました」

ハミルダ「ありがとうございます!これで我が軍の士気が上がるでしょう!」

アイーダ「戦況はどうなの?」

ハミルダ「我が軍の優勢です。勇者様が憎き魔王ゼーゲルと獣王軍団長アリゲイルを討ったのが大きな要因でしょう」

アイーダ「いえ…。最悪な事態になりそうです」

ハミルダ「え?」

 

 ハミルダはキョトンとした表情になる。

 

ジェシカ「ゾーデンという不死騎団の幹部から得た情報です。魔王ゼーゲルは世界樹の葉で復活を果たし、妖魔師団と超竜軍団が不死騎団と合流すると…」

ハミルダ「なんですって!?」

アイーダ「全ての解放戦線を湾岸都市アーデンに移動してください。この手紙をアイシスかロクシーヌ姫様に渡してください。全ての情報をこの手紙にまとめています」

ハミルダ「はい!」

 

 ハミルダはアイーダから手紙を受け取り、馬に乗ってバーンスタイン解放戦線の拠点に向かったのであった。

 

フロル「姫、ジェシカさん」

 

 フロルが現れた。

 

フロル「少し心配だ。解放戦線の本拠地に行きたい」

アイーダ「ならば、わたしも行く?」

フロル「いや…。姫はアーバンで部隊の編成と補給線の維持をお願いしたい。それに、俺1人だけで十分」

アイーダ「クロウとクルスに声をかけないの?」

フロル「ああ。2人にはアーバンにいてもらわないと、俺は安心できないからね」

アイーダ「わかったわ。お願いフロル。わたしにとって、ロクシーヌ姫様とアイシスは姉妹同然。必ず救って」

フロル「任されました」

 

 フロルはこの場を後にする。

 

 

 

 それから時間が経過。旧バーンスタイン王国領のとある砦…。この砦の名はルシロック砦で、バーンスタイン王国解放戦線の本拠地である。

 バーンスタイン王国解放戦線は、魔王軍に滅ぼされたバーンスタイン王国の残存勢力が集結したレジスタンスの組織。バーンスタイン王国を魔王軍から取り戻すまで抵抗している。軍事大国だっただけにあり、練度の高さは健在である。

 ルシロック砦内に、美しき美女が2人いた。バーンスタイン王国第1王女ロクシーヌと、第2王女アイシスである。

 2人の目の前にハミルダがいる。ハミルダはアイーダから渡された手紙をアイシスに渡し、アイシスは手紙を読む。

 

アイシス「妖魔師団と超竜軍団が不死騎団と合流するですって…?」

ハミルダ「不死騎団の幹部ゾーデンから得た情報とのことです。これを機に、本拠地を湾岸都市アーバンに移されてはどうでしょうか?アイーダ姫様がお待ちです」

アイシス「うん。背に腹は変えられないわ。お姉様」

ロクシーヌ「ええ。行きましょう」

 

 バーンスタイン王国解放戦線は、湾岸都市アーバンに本拠地を移すことを決意する。

 それから、必要な荷物を馬車に積み始める。積み終わったときには夜となった。だけど…。

 

兵士「敵襲です!!」

 

 ルシロック砦が敵襲を受けた。ルシロック砦を襲撃しているのは、不死騎団と妖魔師団と超竜軍団の魔物達である。

 

ハミルダ「姫様!!」

アイシス「脱出するわよ!お姉様!」

ロクシーヌ「はい!」

 

 アイシスとロクシーヌはハミルダの護衛を受けながら、ルシロック砦から脱出する。

 

 

 

 その頃、ルシロック砦から少し離れたところにある高台…。そこには、不死騎団の軍団長ダースがいる。

 

?「ダース様」

ダース「来たか、竜騎衆」

 

 3人の魔族が現れた。陸戦騎レイグ、空戦騎ガーランド、海戦騎ボージャック。超竜軍団の幹部にして、その軍団長ザイードの側近である。

 

ダース「ザイードからなにか指示されているか?」

レイグ「ダース様の指揮下に入るようにと命じられました。それ以外の指示はありません」

ダース「わかった」

ガーランド「バーンスタイン王国解放戦線のリーダーを狙った襲撃ですな」

ボージャック「俺達も出ますか?」

ダース「それはありがたいが、良いのか?」

レイグ「ええ。戦いたくてウズウズしていたところです」

ガーランド「訓練ばっかで退屈していましたからね」

ボージャック「久々の実戦だから、楽しみです」

ダース「頼もしいな。わかった。だが、アイシス姫とロクシーヌ姫を生け捕りにしてくれ」

 

 ダースの言葉で竜騎衆は嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

 

 

 それから時間が経過して夜となった。

 アイシスとロクシーヌとハミルダは馬に乗って、湾岸都市アーバンに向かって走っていった。

 

アイシス「まさか、こんなことになるなんて…」

ハミルダ「このままアーバンに向かいましょう!」

 

 護衛していた兵が全て魔物にやられ、3人となった。加えて、他の解放戦線の部隊も散らばってしまった。最悪の状況である。

 そのとき、どこからか呪文メラミが放たれた。アイシス達はメラミに当たらなかったものの、足が止まった。直後、ダースが現れた。

 

ダース「そこまでだ。バーンスタインの姫君よ」

 

 アンデット系魔物達を率いてきた。

 

アイシス「不死騎団の軍団長ダース!?」

ダース「降伏すれば命は取らない」

アイシス「黙れ!!」

 

 アイシスは剣を2本抜いて二刀流を構えた。アイシスの剣技は二刀流である。

 対するダースは槍を得物とする。

 アイシスはダースと戦いが始まった。剣と槍がぶつかり合う音が響く。

 

ダース「さすが解放戦線を率いるリーダーだ。だが、俺には勝てん」

アイシス「きゃあ!!」

 

 ダースは槍を振るってアイシスをふっ飛ばす。アイシスは地面に腰が着く。

 

ガーランド「終わったようですな」

 

 ロクシーヌとハミルダの後ろから竜騎衆が現れた。

 

ダース「ご苦労。そのまま捕縛してくれ」

レイグ「了解しました」

 

 竜騎衆はロクシーヌとハミルダを捕らえようとするが…。

 

ロクシーヌ「離しなさい!無礼者!!」

 

 ロクシーヌは抵抗してボージャックを振り払う。

 

ボージャック「このアマ!!」

ロクシーヌ「きゃあ!!」

ハミルダ「姫様!!」

 

 だが、ボージャックはロクシーヌを殴り飛ばした。

 

ボージャック「ダース様!俺はもう我慢できません!この女を陵辱して連中の見せしめにします!」

ダース「それはダメだ。魔王軍の名誉に傷をつけることになる」

ボージャック「ですが…」

ダース「魔王軍と無関係の人間達に引き渡せば良い。名誉も傷つかん。それに欲深い連中は姫のお体を欲している」

ボージャック「わかりました」

 

 ダースはボージャックを諌める。ボージャックはロクシーヌを捕まえるが…。

 

ダース「ボージャック!」

ガーランド「なっ…」

レイグ「後ろだ!」

 

 3人は驚愕した。なぜなら…。

 

?「どうも悪魔です。絶望というものを教えに来ました」

ボージャック「がっ!」

 

 ボージャックの後ろには、フロルがいたからである。しかもフロル、ボージャックの体を太刀で貫いていた。フロルがボージャックの体から太刀を引き抜くと、ボージャックは倒れた。同時にロクシーヌを救出してお姫様抱っこするフロルである。

 

フロル「間に合ってよかったかもしれませんね」

ロクシーヌ「……………」

 

 このとき、ロクシーヌはフロルにときめいていた。一目惚れというやつである。フロルはロクシーヌを下ろして、太刀を手に取った。

 同時にダースに向かって太刀を振るって斬撃波を放つ。ダースは斬撃波を槍で受け止めるが、後方に下がってしまった。

 これにより、アイシスの救出に繋げる。

 

ダース「貴様はまさか、フロル!?」

フロル「ああ。フロル・レイヴァール。猟兵団シュテルネンリヒト参謀にして3番隊隊長。世界最高の…戦争代行者だ」

ダース「俺はダース!不死騎団の軍団長である!我が友アリゲイルの仇を討たせてもらう!」

フロル「悪いが、お前達と戦っている暇はないんだ」

ダース「いや、勝負しろ!」

フロル「ライデイン!!」

ダース「ぐぅ!!」

 

 フロルはライデインを放った。ダースはライデインを受ける。

 

レイグ「ダース様!」

ガーランド「人間風情が!!」

 

 レイグは剣を持って、ガーランドはレイピアを持って、フロルに攻撃を仕掛ける。

 

フロル「甘いよ」

レイグ&ガーランド「うわあああああ!!!」

 

 しかし、2人はフロルに切り伏せられる。

 

ボージャック「よくも俺を!!」

フロル「隙だらけだ」

 

 ボージャックが斧を持ってフロルに攻撃を仕掛ける。だが、フロルはかわして懐に入り、左手に闘気を込めて、その左手でボージャックの腹部に正拳突きを放った。

 

ボージャック「があああああ!!!」

 

 ボージャックはふっ飛ばされた。

 

ダース「つ…強すぎる…!ゼーゲル様やアリゲイルがやられたのも納得がいく…!」

 

 ダースはフロルの強さに恐怖を抱く。

 

アイシス「つ…強い…!」

ハミルダ「圧倒的です…!」

ロクシーヌ「素敵…」

 

 3人はフロルについて感想を述べる。

 

フロル「倒しておくか…」

 

 フロルは太刀を構え、闘気を纏った。

 

フロル「森羅万象…我が太刀は烈風…。見えた!うおお!!!」

ダース&竜騎衆「なっ!!」

 

 2つの分身を出しながら見えない動きと速さでダースと竜騎衆を切り刻んでいく。そして…。

 

フロル「終の太刀・黒旋風!!」

 

 奥義を放った。

 

ダース&竜騎衆「ぐわあああああ!!」

 

 4人は倒れた。

 

フロル「こちらへ」

 

 フロルのところにアイシスとハミルダとロクシーヌ、ついでに3人が乗ってきた馬3頭も近づき…。

 

フロル「ルーラ!!」

 

 フロルはルーラを唱える。フロルと3人と馬3頭は消えた。

 

 

 

 それから時間が経過。湾岸都市アーバンのアーバン城の執務室…。そこにはアイーダとジェシカがいる。

 その執務室に、フロルが現れ、アイシスとロクシーヌとハミルダも現れた。

 

アイーダ「アイシス!よくぞ無事で…」

アイシス「ああアイーダ…よく来てくれたわ…」

アイーダ「補給物資を持ってきたわ。加えて、わたし達も参戦するわ」

アイシス「ありがとうアイシス…」

 

 アイーダとアイシスは抱き締め合う。

 

アイーダ「フロル、ありがとう」

フロル「どういたしまして。それと、ダースという不死騎団の軍団長現れたんだけど、手傷を負わせた。見慣れない幹部3人もね」

アイシス「物凄く強かったわ。やはりあなたは勇者なのね。ライデインを使ったところを見たわ」

フロル「ええ。まあ」

アイーダ「フロルは勇者というより竜の騎士なんだけど、実は育ちが地球という異世界で、生まれがヴァルレシア。しかも、アルトマイア王国の王子よ」

アイシス「ええ!?」

ロクシーヌ「まあ…」

ハミルダ「そうだったのですね…」

 

 アイーダはフロルの身分を明かすと、3人は驚いた。

 

アイシス「わたしは、バーンスタイン王国第2王女アイシス・バーンスタイン。こちらは我が姉にして第1王女ロクシーヌ・バーンスタイン。そして、我が護衛騎士ハミルダ。危険を省みず、我らを助けてくださり、ありがとうございます」

 

 アイシスとロクシーヌとハミルダはフロルに感謝の意を述べる。

 

フロル「俺はフロル・レイヴァール。アイーダ姫の言うとおり、生まれがアルトマイア王国で育ちが地球の竜の騎士。地球では猟兵団シュテルネンリヒト参謀にして3番隊の隊長をやっている」

ハミルダ「猟兵団とは?」

フロル「わかりやすくいえば、戦争関連の依頼を請け負う傭兵集団だよ。クライアントからお金をもらって、正規軍に代わって戦争に参加するという。ある砂漠地域でゼーゲルとザイードが現れ、その2人に道連れという形でヴァルレシアに飛ばされたんだ」

ロクシーヌ「そうだったのですね」

 

 フロルはこれまでの経緯を話す。

 

フロル「実はアイシス姫達と合流する前に、敵の情報を集めていたんだ。妖魔師団と超竜軍団が不死騎団と合流している。となると、アルトマイア王国は…どこの魔王軍と戦っている?」

アイシス「魔影軍団よ。軍団長の名はラムパルド」

フロル「獣王軍団は壊滅したから、これは取り除いていい。残り5つの軍団…。あとひとつ、どういった連中だろうか?」

アイシス「それについても情報を得ているわ。軍団長の名前も…。不死騎団の軍団長ダース、妖魔師団の軍団長サフィール、超竜軍団の軍団長ザイード、魔影軍団の軍団長ラムパルド、氷炎魔団の軍団長シェイラ」

フロル「氷炎魔団?その軍団長、メラ系とヒャド系を使う?」

アイシス「ええ」

フロル「メドローアを使う?」

アイシス「メドローア?」

 

 メドローアという言葉に反応するアイシス。

 

アイーダ「メドローアとは、極大消滅呪文。数多くある呪文の中でも非常に難しいとされている。ヴァルレシアでは、この呪文を使う者はいないの。どうしてフロルはメドローアのことを知っているの?」

フロル「シュテルネンリヒトの副団長アンジェラがメドローアの使い手でもあるんだ」

アイーダ「…マジ?」

フロル「しかも本人、ヴァルレシアのエルフのところにいるんだけど、訳あって離れられない」

アイーダ「どういった人なの?強い?」

フロル「ザイードを弱い者いじめのようにフルボッコにしたことがある」

アイーダ「その人と会える?」

フロル「会おうと思えば会えるよ。だけどさっきも言ったように、エルフの里にいるんだ。他の人間を近づけたくない」

アイーダ「それじゃ、シュテルネンリヒトでしたっけ?その猟兵団の力を借りられないのかしら?」

フロル「確かに、シュテルネンリヒトであれば魔王軍の壊滅は容易いけど、それは厳しい。大国の依頼を受けて、大規模な戦争に参加しているから。兵力を割く余裕はないよ。それに、俺達だけでやってみたいと思う。俺自身はヴァルレシアの生まれだしね」

 

 と、フロルは言う。フロルの言葉にみんなは同意する。自分達の世界は自分達の手で取り戻さなければならないから。



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10 母エストリアと子フロルの再会

 アイーダ率いるマールバラ王国軍は旧バーンスタイン王国領湾岸都市アーバンを制圧。しかし、ロクシーヌとアイシスが率いるバーンスタイン王国解放戦線は、不死騎団と妖魔師団と超竜軍団の連合によって壊滅。ロクシーヌとアイシスは逃亡するが、フロルに救出される。

 

 

 

 それから翌日が経過し、散り散りになったバーンスタイン王国解放戦線の兵士達と協力する民達が湾岸都市アーバンに押し寄せる。どうやらバーンスタイン王国解放戦線の被害は最小限に留まった様子。

 湾岸都市アーバンを拠点に、アイーダ率いるマールバラ王国軍とロクシーヌとアイシスが率いるバーンスタイン王国解放戦線は同盟を結び、魔王軍に奪われたバーンスタイン王国を取り戻す。解放戦線の兵士達の士気は異様なまでに高い。

 まずやるべきは、部隊編成である。部隊編成を行うのはフロル。フロルは猟兵団シュテルネンリヒトの参謀にして3番隊隊長で、多くの戦場を駆け巡ったベテランで、実戦経験は非常に豊富。部隊編成も何度も行っている。

 現在、フロルはアーバン城の会議室で、アイシスと話し合っている。

 

フロル「まずは特殊部隊の編制だ。特殊部隊は、一般の部隊では対応できない厳しい任務をこなす精鋭部隊。敵地に潜入・偵察、破壊工作、人質救出など様々。また、敵幹部やトップなどの暗殺任務もある。厳しい任務をこなせるような高い練度を持つ兵士が必要だけど、いるかい?」

アイシス「ええ。それについて心当たりはあるわ」

フロル「なるほどね。もう少し人員が欲しい。まずは兵士達に、特殊部隊参加の募集をかけてみよう。2週間、この訓練をこなせる兵士達を採用するが、ついてこれなければ脱落だよ」

 

 アイシスはフロルが作った訓練メニューを見た。

 

アイシス「厳しいわね」

フロル「一応、シュテルネンリヒトの特殊部隊の訓練メニューを参考にして作ってみた」

アイシス「やっぱりベテラン…」

フロル「それと、王都バルイアはどのような状況なのか知りたい」

アイシス「ええ。具体的になにが聞きたい?」

フロル「アイシス姫達を裏切った貴族連中の生活状況についてだよ」

アイシス「国を裏切った者達は民に圧政を敷きながら、魔王軍の庇護を受けながら優雅な生活をしている。多くの民達はわたし達に頼り、多くの兵士達もわたし達についた。一部の兵士は王都に残って、わたし達に情報を送っているわ」

フロル「なら、王都を制圧しよう。そして、ロクシーヌ姫とアイシス姫のどちらかが女王として即位する」

アイシス「女王…」

 

 アイシスは心に響いた。女王という言葉に…。

 

フロル「アルトマイアも無視できない。一刻も早く母さんを救わないとね」

アイシス「ええ。わたし達解放戦線は、エストリア様率いる対魔王軍レジスタンスと協力関係にあるの。エストリア様を失えば、わたし達はどうなるかわからないわ」

フロル「それについては、俺が1人で行く」

アイシス「1人で大丈夫なの?わたしも行くわ」

フロル「それはダメだ。アイシス姫は解放戦線の立て直し、戦力増強などの役目もある」

アイシス「けど…」

フロル「大丈夫さ。それに、目的の物もあるしね」

アイシス「いつ出発するの?」

フロル「できれば今日出発するさ。仲間は置いていくし、もうとっくに話してある」

アイシス「わかったわ。気をつけて」

 

 その後、フロルはアーバン城を出て、トベルーラでアシーラ大陸北部に向かった。アシーラ大陸北部は旧アルトマイア王国領。そして、フロルが生まれた場所でもある。

 

 

 

 トベルーラで飛んでから1時間経過したとき…。

 

フロル「マジか…」

 

 フロルはある光景を目の当たりにした。それは、魔影軍団の魔物達が対魔王軍レジスタンスの部隊を襲撃しているというところである。

 

?「くそ!このような魔物に…!?」

 

 1人の老人が槍を持って魔物を倒しながら、部隊を指揮する。

 

?「なっ!?」

 

 1体の魔物が老人に襲撃したが…。魔物が切り裂かれた。直後、ライデインの雷が魔物に降り注いだ。

 

フロル「どうも、悪魔です。間違えて人間界に生まれちゃいました」

魔物「フロル!?」

魔物「勇者がなぜここに!?」

フロル「じゃあね」

魔物達「うわああああ!!」

 

 フロルが介入し、部隊を襲っていた魔物達を一掃する。

 落ち着いたとき…。

 

フロル「おじいさん、大丈夫かい?」

?「すまん…助かった…。もしやそなた、フロルと申すのか?」

フロル「ええ。俺がフロル。援軍のつもりでここに来た」

?「右手の甲を見せてくれぬか?」

フロル「ああ」

 

 フロルは老人に右手の甲を見せた。右手の甲には竜の紋章のアザがある。すると、老人は涙を流し、土下座し始めた。

 

?「わしは、ルグレン・フランベール。アルトマイア王国の大臣で、ヴィンセント王様とエストリア王妃様にお仕えしております。まさか…まさか…ここに…成長されたフロル王子様をこの目で見るとは思いませんでした!」

フロル「いやその、泣くほど?」

ルグレン「お前達!この方はアルトマイア王国のフロル王子様だ!頭が高い!」

 

 ルグレンは兵士達に指示すると、兵士達はフロルにひれ伏した。

 

フロル「俺の身元はエリヴァン王国の王家が証明してくれるし、この首飾りと手紙も証明する物のひとつ」

 

 フロルは身につけている首飾りを見せ、次にエストリアの手紙をルグレンに見せる。ルグレンは手紙の内容を見ると、さらに感涙する。

 

フロル「良い方向に狂ったようだけど、母さんは生きているかい?」

ルグレン「それはもう…。ああ…これでアルトマイア王国再興の希望が満ち溢れました。もう思い残すことは…」

フロル「だからと言って逝かないでくれよ」

ルグレン「逝くもんですか!王子様が再興したアルトマイア王国の国王に即位するまでは…」

フロル「即位する気ないんだけど…。用事が済んだら地球に帰って戦場に出ないとならないしね」

ルグレン「え?戦場?」

 

 フロルはルグレンに、これまでの経緯を話した。地球で猟兵団シュテルネンリヒトの猟兵として戦場を駆け巡り、参謀にして3番隊隊長という幹部になったこと…。ヴァルレシアに来る前は砂漠地帯で戦争していたことも…。

 

ルグレン「なんと…」

フロル「何万の命を奪ってきた俺は母さんに会ってもいいのかと、つい考えてね」

ルグレン「是非会ってください!王妃様は…王妃様は…常に王子様のことを想っていたのです!」

フロル「わ、わかったよ」

 

 結局、フロルはエストリアと会うことを決めた。

 

 

 

 それから時間が経過。フロルとルグレンは、レジスタンスの本拠地であるマルトマ砦に訪れる。

 

ルグレン「王妃様」

エストリア「ルグレン、戻ったのですね」

ルグレン「はい。それと…王子様を連れてきました」

エストリア「え!?」

 

 そこにエストリアがいる。ルグレンはフロルの存在をエストリアに伝えると、エストリアは驚き、フロルの姿を見る。

 

エストリア「フロル…フロルなのね…?」

フロル「うん…」

エストリア「本当に…フロルなのね…?」

フロル「この首飾りと…母さんからの手紙…エリヴァン王家も身元を証明してくれる…」

 

 フロルは、自分が身に着けていた首飾りと、エストリアの手紙を見せる。それを見たエストリアは感涙し…。

 

エストリア「ああ!よくぞ生きて…たくましく成長して…」

 

 思わずフロルに抱き着いた。

 

フロル「聞きたいことがある。どうして俺は地球で育ったんだ?」

エストリア「それは、天地雷鳴士のアンジェラさんにあなたを託したからです」

フロル「天地雷鳴士のアンジェラ?あのアンジェラ姉さんか…」

 

 フロルは驚いた。

 15年前、アルトマイア王国は魔王軍の襲撃を受けた。勇者であるフロルの命を奪うために…。国王ヴィンセントは命を落とし、王妃エストリアはフロルを連れて命からがら逃げ続けた。だけど、アンジェラがいた。

 一時的にアンジェラに助けられたエストリアは、フロルをアンジェラに託して、アンジェラはフロルを連れて地球に帰ったという。

 

フロル「その後、俺はフラディという養父に引き取られ、猟兵として殺しの技術を学び、戦場で生き残る方法などを身につけた。11歳のときは初めて戦場に出て、初めて人を殺した。その後、俺は自分自身を鍛えて竜の騎士として完全覚醒し、これまで竜の騎士3人を仕留めたよ。猟兵団シュテルネンリヒトの幹部として戦場を駆け巡り、何万の命を奪ってきた」

エストリア「そ…そんな…」

フロル「地獄だったけど居心地も良かった。いつか母さんに会えるんじゃないかと期待していたけど、魔王軍の連中がヴァルレシアに導いてくれたことで、母さんに会えた。皮肉にも、人殺しの技術がみんなを守れているよ」

 

 フロルは笑みを浮かべた。フロルが戦場に身を投じていたことにエストリアは悲しんだ。

 

フロル「それに、故郷を滅ぼした魔王軍にケジメをつけないとならないしね」

 

 しかも、深刻な表情になるフロル。

 

エストリア「フロル、この戦いが終わったら一緒に暮らしましょう。母親として手料理を振る舞いたい、一緒にお風呂入りたい、一緒に寝たいのです」

フロル「お風呂はダメでしょ!それに、恋人いるし」

エストリア「恋人ですって!?どこのクソ女なのです!?」

フロル「ちょっと!落ち着いて!」

 

 興奮したエストリアがフロルに掴みかかる。かわいい息子が他の女に汚されたかもしれないという理由で…。

 それから落ち着いた頃…。

 

フロル「アイーダ姫率いるマールバラ軍とアイシス姫とロクシーヌ姫率いる解放戦線が合流して、湾岸都市アーバンを拠点にしている。しかも、魔王軍の六軍団が合流して、連携しているときた。結束力が強いとみて間違いないだろうね。レジスタンスの戦力はどのくらいなの?」

エストリア「今のところ優勢だけど、他の魔王軍と合流するとなると劣勢になるわ」

フロル「エリヴァン王国に援軍を要請してみようか?」

エストリア「すでに援軍を要請しているし、エリヴァン王国から届いた補給物資もあるから、今は保っているという状況よ」

フロル「となると、一刻も早く決着つけなければならないね」

ルグレン「と、言いますと?」

フロル「魔王軍のトップと最高幹部を暗殺する。それで戦いは終わり。俺だったら、特殊部隊を魔王軍の拠点に放つ。だけど、難しいでしょう?」

ルグレン「確かに、そうです。だけど、簡単に言ってくれますね?」

フロル「何年か前に要人達全員を爆破テロで暗殺したことがあるから」

エストリア「…フロル……」

 

 エストリアは悲しんだ。我が子がここまで人殺しをしてきたことに…。

 

フロル「さてと、30分ちょいで戻ってくる。ちょっと本気出す」

エストリア「フロル?」

 

 その後、フロルはマルトマ砦を出てルーラを唱える。

 

 

 

 ルーラを唱えたフロルが向かった先は浮島、エルフの里ミーミル。大きな神殿前にフロルは降り立つ。

 

オルハ「フロル様?」

フロル「オルハ、神殿の地下室を開けてくれ。あれを使うときがやってきた」

オルハ「?」

 

 オルハというエルフの美女が現れた。フロルに言われたとおり、神殿内にある地下室の扉を開ける。

 地下室には、フロルが以前、持参していた拳銃、アサルトライフル、手榴弾、それぞれのマガジンが保管されている。フロルはそれを手に取って武装する。

 

オルハ「なにをなさるのですか?」

フロル「魔王軍の上層部連中を仕留める。母さんに会えたんだけど、アルトマイア王国を滅ぼした魔王軍の連中を許せなくてね」

オルハ「フロル様…」

フロル「ありがとうオルハ。ドラゴンオーブを手に入れたら、また来るから」

 

 フロルは神殿を後にして、ルーラでマルトマ砦に飛んでいった。

 

アンジェラ「母親に会えたんだな」

オルハ「アンジェラ様?」

 

 アンジェラが現れた。

 

アンジェラ「どっちにしたってフロルを放っておけない。それに、連中が到着している」

 

 しかもアンジェラ、黒い笑みを浮かべる。

 

 

 

 それから時間が経過。フロルはマルトマ砦に帰還。ルグレンに会う。

 

ルグレン「王子様!?それはいったい何なんですか!?見るからに物騒ですぞ」

フロル「地球にある武器さ」

 

 黒い笑みを浮かべるフロル。

 

フロル「ルグレンのじいさん。魔影軍団の拠点はわかるかい?」

ルグレン「アルトマイア王国王都アルマートです。アルトマイア宮殿がやつらの根城となっています」

フロル「わかった。今すぐ行こう」

 

 そのとき…。

 

エストリア「フロル!」

 

 エストリアが現れた。

 

フロル「母さん…止めないでくれ…。故郷を取り戻したいんだ」

エストリア「止めないわ。わたしも一緒に行くから」

フロル「うん」

 

 話しはまとまった。

 

兵士「敵襲です!」

 

 さっそく敵が現れた。

 フロル達は砦の屋上に向かって様子を確認すると、魔物達の群れがこちらに向かってきた。

 

ルグレン「魔影軍団!しかもラムパルドもいます!」

フロル「ラムパルド?」

エストリア「魔影軍団の軍団長よ。あの者は暗黒闘気の使い手で、多くの精鋭達がラムパルドの前にやられたの」

フロル「了解」

 

 フロルはアサルトライフルを構えた。スコープを覗き込んで、射撃体勢になった。

 

フロル「地獄へボンボヤージュ♪」

 

 フロルは引き金を引いて発砲。大きな発砲音が響いた。

 

ラムパルド「ぐはっ!!」

 

 ラムパルドに命中。地面に倒れた。命中したところは左肩。

 

ラムパルド「な、なんだ!?」

 

 弾丸が飛んできた方を見ると、マルトマ砦の屋上でアサルトライフルを構えているフロルの姿があった。

 

<ダンダンダン!!>

 

 フロルは連射すると、ラムパルドの周りにいた魔物達に命中。

 

ルグレン「これが、地球の武器ですか!?」

エストリア「長距離から的確に狙えるなんて…すごい…」

フロル「?」

 

 そのとき、フロルは気付いた。砦の上空から新たな魔物が現れたことに…。

 

フロル「氷炎魔団か!?」

 

 フロルはアサルトライフルを連射モードに切り替え、氷炎魔団の魔物達を続々と仕留める。1体の魔物がフロルの背後を取った瞬間…。

 

魔物「がっ!!」

 

 サバイバルナイフで刺された。フロルは懐からサバイバルナイフを取って、魔物に突き刺したのだった。

 

フロル「こいつはおまけだ!」

 

 しかもフロル、懐から手榴弾を手に取り、ピンを抜いて手榴弾を魔物がいる方向に投げた。魔物が密集しているところに手榴弾が投げられた瞬間、手榴弾は爆発。爆発に巻き込まれた魔物の多くが倒れた。

 

?「あんたがフロルね」

フロル「!?」

 

 そのとき、上空から1人の女性魔族が剣を装備してフロルに襲撃した。フロルは太刀を抜いて、女性魔族の剣を防いだ。

 

シェイラ「わたしは魔王軍氷炎魔団軍団長シェイラ。フロル・レイヴァール、その命もらった!」

フロル「少しはできるやつが出てきたね」

?「シェイラ!」

 

 そのとき、ラムパルドが現れた。両手剣を得物にしている。ラムパルドは両手剣を装備してフロルに奇襲。だけど、フロルはラムパルドの奇襲すらも防ぐ。

 ラムパルドはフロルの銃撃を受けたが、魔物からの回復呪文により回復したようだ。

 

ラムパルド「くっ…顔色ひとつも変えないとは…!?」

フロル「戦争代行者をなめるなよ」

ラムパルド&シェイラ「むっ!?」

 

 フロルは太刀を振るって、ラムパルドとシェイラを振り払った。ラムパルドとシェイラはフロルから距離を取る。

 

ラムパルド「強い…シェイラ!」

シェイラ「いきなりだけど…」

 

 シェイラは両手をかざす。右手にメラ、左手にヒャド。それぞれ同調させて、光の弓矢を形成する。

 

シェイラ「メドローア!!」

フロル「マジか!?」

 

 極大消滅呪文メドローアを放った。フロルはかわすが、砦の壁に大きな穴ができた。

 

フロル「メドローアを使えるのか?」

シェイラ「これでも特訓したのよ。あんたに勝つためにね。ラムパルド」

ラムパルド「闘魔傀儡掌!」

フロル「むっ!!」

 

 ラムパルドはフロルに向けて闘魔傀儡掌を放った。闘魔傀儡掌は、暗黒闘気の糸で相手を捕らえ、操るという術。フロルはそれを喰らった。これにより、フロルは動けなくなった。

 

シェイラ「もう一度!メドローア!!」

ラムパルド「これでフロルを仕留めた…!」

 

 シェイラはメドローアを放った。メドローアが決まれば、シェイラとラムパルドの勝ちは決定。だけど、フロルは黒い笑みを浮かべた。突然、フロルの前に光の壁が現れた。

 

ラムパルド「シェイラ!よけろ!マホカンタだ!」

シェイラ「え…!?」

 

 マホカンタの壁である。シェイラが放ったメドローアがマホカンタの壁に当たって跳ね返り、シェイラ自身の法に向かった。

 

フロル「メドローアの弱点はただひとつ、マホカンタだ。強力な呪文が故に諸刃の剣となる」

ラムパルド「闘魔傀儡掌を振り払った!?」

フロル「紋章閃!!」

ラムパルド「ぐはあ!!」

 

 フロルは闘魔傀儡掌を振り払い、右手を振るって紋章閃を放った。ラムパルドは紋章閃を喰らって倒れた。シェイラは絶体絶命で、このままだとメドローアを受けて消滅することになるが…。

 

?「マホステ」

 

 突然、シェイラの周りに霧が漂い始める。同時にメドローアはマホステによって消滅する。

 

シェイラ「た、助かった?」

?「ダメじゃないかフロル。こんなにかわいい子なのに、死んでしまったらかわいそうじゃん」

フロル「アンジェラ姉さん?どうしてここに?」

 

 シェイラの危機を救ったのは、アンジェラである。

 

シェイラ「な…なに…体が…震えて…」

アンジェラ「顔立ちも良いしスタイルも良い。胸とお尻も大きいときた。調教したいなぁ」

シェイラ「あ…あ…」

 

 シェイラはアンジェラに恐怖を抱く。

 

ラムパルド「な、なんだこの女?」

アンジェラ「とりあえずあんた、好みじゃないから死んでくれ」

ラムパルド「舐めるな!闘魔滅砕陣!!」

 

 ラムパルドはアンジェラの狂気を感じて、闘魔滅砕陣を使用しようとした。闘魔滅砕陣は暗黒闘気を利用した技で、地面に蜘蛛の巣状を張り巡らせて、周りの敵全員を捕らえる。

 

アンジェラ「カイザーフェニックス」

ラムパルド「なに!?」

 

 だが、アンジェラには通用しなかった。アンジェラはカイザーフェニックスを放って、ラムパルドに攻撃。ラムパルドは攻撃をまともに受けて倒れる。しかし、立ち上がった。

 

アンジェラ「お~お~、よく立つね~。だけど、終わりだ。フロル」

フロル「あいよ」

ラムパルド「があああ!!!」

 

 フロルはラムパルドに袈裟斬り攻撃を放った。ラムパルドは攻撃を受けて戦死する。

 

シェイラ「あ…あ…」

 

 シェイラは恐怖に怯え、さらにアンジェラの狂気も重なって、失禁してしまった。

 

アンジェラ「ありゃりゃ、お漏らししちゃったねぇ…」

フロル「姉さんの前だと、現実か悪夢かの区別が付かないから」

アンジェラ「そうなの?」

フロル「反応兵器を平然に使う狂人として恐れられていることを自覚してない?」

アンジェラ「さあな」

 

 アンジェラを狂人と平然に口にするフロルである。

 

アンジェラ「とりあえず、気絶させるか」

シェイラ「がっ!」

 

 アンジェラはシェイラのみぞおちに右パンチを入れて気絶させる。

 その後、2人の軍団長を失ったことで、魔物達が散り散りとなった。戦いは勝利に終わった。

 

エストリア「やはり、天地雷鳴士のアンジェラさんなのですね?」

アンジェラ「よく見ると、フロルを託した王妃様じゃないか。15年ぶりだね。よく生きていたな?」

エストリア「はい。今までフロルのお世話をしてくれて、感謝に堪えません」

アンジェラ「あのときの約束を果たしたよ」

エストリア「本当にありがとうございます。こんなにたくましく成長するとは…」

 

 エストリアは、フロルをたくましく育ててくれたアンジェラに感謝に絶えない。

 

フロル「アンジェラ姉さん、どうしてここに?」

アンジェラ「暇だから来たという理由もあるが、ある連中に来てもらった。魔王城の場所も判明している」

フロル「まさか、シュテルネンリヒトがここに?」

アンジェラ「シュテルネンリヒトはわたし直属の娘達だけだ。あとはまあ…お楽しみにとっておくか。さてと…」

 

 アンジェラは気絶したシェイラを担ぐ。

 

エストリア「アンジェラさん、その者をどうするのですか?」

アンジェラ「ちょっと気になることがあってね。調教と拷問しながら知っていることを吐いてもらう。そのまま吐いてくれたら調教だけだ」

エストリア「そ、そうなんですね」

 

 エストリアは引いたような表情になる。

 

 

 

 それから夜、アンジェラはルグレンと共に、シェイラの尋問をしている。

 

アンジェラ「じいさん、当時フロルが勇者だってことは秘密になっていたのか?」

ルグレン「いえ、公表していました。勇者が生まれたことを…」

アンジェラ「じいさん、国家機密になりそうな事実を公表してどうするのさ?勇者という理由だけで、命を狙う連中がたくさんいるんだぞ」

ルグレン「うぅ…」

アンジェラ「それじゃシェイラ、あんたいつから魔王軍にいたの?」

シェイラ「7年ぐらい前よ。15年前にアルトマイア王国を襲撃したのは、ゼーゲル様とザイードの2人だから」

アンジェラ「なぜアルトマイアを襲撃してフロルの命を奪おうとした?」

シェイラ「ヴァルレシアの支配を完全にするためにと言っていたわ」

アンジェラ「それはゼーゲルが言ったのか?」

シェイラ「そうよ」

アンジェラ「ゼーゲルはなぜ、フロルの命を奪うだけでヴァルレシアの支配が完全になると思ったのだろうか?ゼーゲルより上の四大魔王がいて、ゼーゲルの行動を黙認しているのだろうか?」

シェイラ「なにが言いたいの?」

アンジェラ「他に黒幕がいるとしたら?」

 

 アンジェラはそう話すと、ルグレンとシェイラは驚いた。

 

アンジェラ「まあいいわ。ゼーゲル本人に聞くさ」

 

 アンジェラは締めくくる。

 

 

 

 その頃、フロルとエストリア…。マルトマ砦の寝室にいる。エストリアはフロルが携帯しているスマートフォンの写真を見ている。

 

エストリア「このキャシーさんという人がフロルの恋人なのね?」

フロル「うん」

エストリア「それじゃあ、この親しい女の子は?」

フロル「シズネと言って、別の猟兵団に所属する女の子」

エストリア「浮気者!浮気するなら、わたしと浮気しなさい」

フロル「無理!」

 

 ムスコン全開となるエストリアだとか…。

 

フロル「まさか俺がアンジェラ姉さんに地球に連れていかれるとは…。というか、さっさと地球に帰りたい。自宅が気になる」

エストリア「フロルの自宅ですって?」

フロル「2階建ての大きな家だよ。購入して優雅に1人暮らしていたんだけど、キャシーと同棲していてね。だけど、なんでアンジェラ姉さんがヴァルレシアに?アンジェラ姉さんのことだから、アルトマイア王国でなにかやらかそうとしたんじゃないのかな?」

エストリア「アンジェラさんってどういう人なの?」

フロル「猟兵団シュテルネンリヒトの副団長なんだけど、とても面倒見の良い人だよ。あの人には助けられているし、世話になっている。破天荒な性格しているんだけど、カリスマ性が高く、多くの人というか女性からも慕われている。人の下に絶対につく人ではないあの人なんだけどね」

エストリア「そうなんだ。とても良い人でよかったわ」

 

 エストリアは安堵する。

 

フロル「しかし、手紙を見ると母さん死んだのかとばかり思っていたんだけど…」

エストリア「わたしは自分の死を覚悟して、この手紙をフロルに託したの」

フロル「おかげでエリヴァン王国で重要な身分証明書になったよ。よくエリヴァンからアルトマイアに嫁いだね」

エストリア「一種の政略結婚も含まれているけど、ヴィンセントがわたしにプロポーズして、わたしはそれを受けたの」

フロル「そうなんだ」

エストリア「エリヴァン王国からの支援を受けて、わたし達は今まで戦うことができたの。だけど、魔王軍に勝った後、これからのこと考えなければならないわ」

 

 エストリアはそのとき、真剣な表情になる。

 

エストリア「まずはアルトマイアの復興、民の生活を安定化…。そして、あなたが国王になること」

フロル「国王になる気はないよ。それに国王になるだけじゃダメだよ」

エストリア「どうしてですの?」

フロル「国とは、主権・領域・国民という3つの要素で成り立っている。主権とは国家権力、領域とは領土領海領空、国民とはその国に住まう人々。その国を守り、安定化させるためには、経済・軍事・政治の3つが必要。アルトマイアを復興するためには、経済と軍事と政治を回復する必要がある。それで、主権・領域・国民の3つの要素がある」

エストリア「詳しいのですね…」

フロル「独学で勉強したから。まあ、それは置いとくとして…。いつの日か、会えることを心から願っていたよ。母さん」

エストリア「わたしもよ」

 

 お互い嬉しそうに笑みを浮かべるのであった。

 

フロル「ところで、アルトマイアにオーブみたいなのない?ドラゴンオーブと言って、それを探しているんだけど」

エストリア「うーん…。アルトマイアの国宝にオーブがあったわね。それがドラゴンオーブかどうかわからないけど」

フロル「王都アルマートにあるの?」

エストリア「宮殿の地下の金庫室にあると思う」

フロル「王都と宮殿の状況は?」

エストリア「偵察した兵達の報告によれば、酷いという程ではないわ」

フロル「了解。明日向かおう」

エストリア「ええ」

 

 明日の方針が決まった。

 明日、エストリア率いる対魔王軍レジスタンスは王都アルマートに進軍する。



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11 アルトマイア王国奪還

 翌日の朝、マルトマ砦の入口前…。そこには、エストリアを筆頭に、ルグレンとフロルを筆頭とした対魔王軍レジスタンスの兵士達がいる。アンジェラも傍にいるが、ロープで拘束しているシェイラを傍に置いている。

 

エストリア「いよいよ、我らが故郷、王都アルマートに帰ることができます。魔影軍団の軍団長ラムパルドは戦死、氷炎魔団の軍団長シェイラは我らの手に落ちた。王都アルマートを拠点としていた魔影軍団はいない。いたとしても、打ち倒すだけ。そして、王都アルマート奪還した瞬間、アルトマイア王国の再興を宣言します!」

兵士達「おおおおお!!!」

 

 エストリアの演説により兵士達は高揚する。

 そのとき、馬に乗った兵士が現れた。兵士は馬から下りて、エストリアの前に跪いた。

 

兵士「報告します。王都アルマートに魔影軍団の姿がありません。ですが、多くの魔物を見かけました」

エストリア「ご苦労さまです」

 

 この兵士は王都アルマートを偵察していた偵察部隊の一員である。

 

アンジェラ「トップが死んだんだ。幹部もいないとなると、王都アルマートを捨てたってことになるな。シェイラ、どう思う?」

シェイラ「どう思うって言われても、あんたの言うとおりだと思う。だけど、それは一時的だよ。また魔王軍が取り戻すさ」

アンジェラ「なるほどねぇ…。あんた、わたしの部下にならない?」

シェイラ「なんでそうなる!?」

アンジェラ「昨晩の快感、また味わえるわよ?」

シェイラ「う…」

 

 アンジェラは黒い笑みを浮かべた。

 

フロル「アンジェラ姉さん、シェイラになにをしたのさ?」

アンジェラ「調教しかしてないわよ」

フロル「うわ〜…」

 

 引いたような表情になるフロル。

 どうやらアンジェラは昨晩、シェイラを調教していたようだ。そのためなのか、シェイラは恥ずかしそうな表情になる。

 

 

 

 それから時間が経過。王都アルマートに到着。アルトマイア王国は、当時1歳の子どもであったフロルの命を奪うべく魔王軍の襲撃を受けて滅んだ。その後、王都は至るところで壊れており、アルトマイア宮殿もそれなりに壊れている。少し修復すれば2ヶ月程度で元通りとなる見込み。

 王都アルマートは現在、魔影軍団の魔物達が蔓延っている状況にある。だが、魔物達だけであるので、対魔王軍レジスタンスの兵士達だけで何とかなる。

 

エストリア「王都にいる魔物達を全て、討伐してください」

兵士達「はっ」

 

 エストニアの命令を受けた兵士達は散開し、魔物達の討伐に出た。

 そしてエストリア達はアルトマイア宮殿に進軍。アルトマイア宮殿の規模が非常に大きく、内装も豪華絢爛である 

 

ルグレン「各部隊は宮殿の各所を制圧せよ。なにか異変などがあれば報告するように」

兵士達「はっ!」

 

 兵士達は宮殿各所を制圧するために散開する。

 フロル達は宮殿の奥に進んだ。目の前に大きな扉がある。中になにがいるのかわからないので、フロルとアンジェラは拳銃を構えて警戒する。

 

フロル「中に誰もいない…」

 

 人気がないことを感じたフロルは扉を開ける。

 扉のむこうは広々としており、玉座らしき椅子がある。

 

ルグレン「謁見の間ですな」

 

 ルグレンは呟く。

 このエリアは謁見の間である。もぬけの殻のようだ。人の気配もない。警戒を解くみんなである。

 

シェイラ「どうやら魔影軍団はいないようね。ラムパルドが倒されたのが大きな理由ね」

 

 シェイラは話す。そのとき、エストリアは玉座の前に立つ。

 

エストリア「あなた…」

 

 嬉しさと悲しさが混ざったような表情になる。

 

ルグレン「やっと…取り戻すことができました…長かったですな…」

 

 ルグレンでさえ涙を流す。

 

兵士「こちらでしたか」

 

 兵士が現れた。

 

兵士「王都アルマートのうち9割を掌握しました。残り1割はまもなく終わります」

ルグレン「うむ。王都アルマートの各地にアルトマイア王国の国旗を掲げてくれ」

兵士「はい!全ての国旗を掲げます!」

 

 兵士は感涙して、この場を後にする。

 

エストリア「ルグレン、アルトマイア各地にいる民とレジスタンスに早馬を出すなどお知らせください。アルトマイア王国王子フロルが魔影軍団の軍団長ラムパルドを倒し、王都アルマートを取り戻したと…。できればレジスタンスのリーダーと幹部達に王都アルマートの宮殿に来るようにとお伝えください」

ルグレン「わかりました!」

 

 ルグレンはこの場を後にする。どうやらエストリア以外の対魔王軍レジスタンスが各地に存在している。

 

エストリア「レジスタンスはわたし達だけではございませんし、連携を取ってきたのです」

 

 レジスタンス同士連携し、今まで魔王軍に抵抗してきたようだ。

 

エストリア「ああそうでした。フロル、我が国の国宝とされたオーブですね。地下の宝物庫にあります。こちらへ」

 

 エストリアはフロルを宮殿にある地下の宝物庫に案内する。フロルの後にみんなついていく。

 しばらくして、地下の宝物庫にたどり着く。エストリアは、ある鍵を使用して地下宝物庫の扉を開けた。宝物庫内に金銀財宝が山ほどある。

 

アンジェラ「よく取られずに済んだな?」

エストリア「ええ。宝物庫だけは守ることができました。これを開けるためには魔法の鍵が必要なので…」

アンジェラ「魔法の鍵も取られずに済んだよな?」

エストリア「魔王軍の襲撃を受けたとき、たまたま魔法の鍵が手元にあったので…」

 

 エストリアが使ったある鍵とは、魔法の鍵である。魔法の鍵でしか開けられない扉や宝箱があるのだが、それらを開けたり施錠することができるのは、魔法の鍵でしかない。

 宝物庫の奥に進むと、オーブが飾られていた。フロルはオーブを手に取って確かめると…。

 

フロル「間違いない。ドラゴンオーブだ」

 

 ドラゴンオーブであることが判明。

 

エストリア「これをどうするの?」

フロル「ある場所に安置して、龍脈を安定させる。ドラゴンオーブは全部で4つあり、何らかの理由で全てなくなってしまったけど、そのうち2つを見つけたんだ。ドラゴンオーブ無しでしばらく龍脈を安定させるためには、竜の騎士の力で代用するしかなかったんだ」

エストリア「龍脈が乱れ、無くなればヴァルレシアは死んでしまうと言われています。それが重要なものならフロル、ドラゴンオーブを…」

フロル「うん」

 

 フロルはドラゴンオーブを手に入れた。

 

エストリア「安置する場所はどこなのですか?」

フロル「浮島にあるエルフの里。アンジェラ姉さん、ここを頼む。30分くらいで戻る」

アンジェラ「ああ」

 

 フロルはこの場をアンジェラに任せて、自身は宮殿を出てルーラを唱える。

 向かう場所は、浮島にあるエルフの里ミーミル…。

 

 

 

 しばらくして、エルフの里ミーミル…。フロルはルーラで到着して、その大きな神殿に入る。神殿に入ると、エルフ達が集まって祈りを捧げている。

 

リーファ「フロルさんじゃないですか」

オルハ「まあ」

フロル「なんかやってた?」

リーファ「ええ。わたし達エルフは神に祈りを捧げる日課となっております。邪魔されず、ただ祈りと…」

フロル「その祈りを妨げて申し訳ないが、こっちの用事を優先させてくれ。3つのドラゴンオーブだよ」

リーファ「まあ!」

エルフ達「おお!」

 

 フロルは3つ目のドラゴンオーブを出すと、みんなは驚いた。

 その後、ドラゴンオーブをリーファに託し、あるべき場所に安置する。するとドラゴンオーブが輝き始める。同時にフロルは、安置されていた竜の騎士の力の一部が戻り、ギガデインとビッグバンを覚えた。

 

オルハ「龍脈に流れるドラゴンオーブの魔力を確認しました」

リーファ「龍脈がかなり安定しています。3つだけとはいえ、ここまで龍脈が活性化するとは…」

 

 オルハとリーファは感動する。

 

フロル「アンジェラ姉さんがいなくなってから、なにか異常はないかい?」

オルハ「はい。アンジェラ様がここを離れる前に幻魔達を召喚してくださったので」

リーファ「アンジェラ様が召喚した幻魔達がわたし達を守ってくれます」

 

 とのことである。

 幻魔とは、精霊より強大な存在。天地雷鳴士しか呼び出せないのだが、アンジェラは天地雷鳴士なので、呼び出せるという。幻魔は天界にいる魔物とも守護神とも言われている。召喚された幻魔は全部で4体なのだが、非常に強力かつ曲者揃いで、アンジェラのような強力な天地雷鳴士しか従わない。

 これにより、魔王軍は迂闊にエルフ達に手が出せなくなったという。

 

フロル「それともうひとつ、魔王ゼーゲルが世界樹の葉で蘇った」

オルハ「なんですって!?」

リーファ「世界樹の葉…」

フロル「また、倒せばいいだけなので問題はないんだけどね」

 

 ポジティブになるフロル。

 

フロル「それじゃ俺はこれで」

 

 フロルは神殿から出て、ルーラで帰っていった。

 

オルハ「むー!」

 

 フロルがすぐに去ったことにオルハは怒りを露わにしたとか…。

 

 

 

 それからしばらくして、アルトマイア王国王都アルマート・アルトマイア宮殿の謁見の間…。フロルはというと、玉座の椅子に座っている。

 

フロル「やっぱり俺、ここに座るべきではないよ」

ルグレン「なにをおっしゃいますか!あなたはアルトマイア王国王子!そして次期国王!太子殿下であらせますぞ。さあ、兵達にお言葉を…」

 

 目の前に兵士達がいる。

 

フロル「わかったよ。だがルグレンの爺さんには宰相として扱き使わせてもらう」

ルグレン「ははぁ!」

 

 フロルは観念した。

 

フロル「第1部隊は北門、第2部隊は西門、第3部隊は東門、第4部隊は南門の警備と検問の任務に当たってくれ。残りの部隊は王都の治安維持。それとルグレンの爺さん。アルトマイア王国に資源はあるかい?鉄鉱石とか金鉱石とか」

ルグレン「はい。鉄鉱石が豊富に取れる場所があり、金が取れる場所もあります。あとは石炭も…」

フロル「金鉱山から金を採掘し、それを資源として外交の交渉や取引材料とする。鉄鉱石と石炭は自国に使う。農林漁業や軍事に使いたいからね。できれば石油やダイヤモンド、レアアースやレアメタルなどがあれば…」

ルグレン「ダイヤモンド鉱山は我が国にあります。石油?レアアース?レアメタル?」

フロル「石油はまあ、地中などから取れる黒い液体で、燃える液体でもある。レアアースとレアメタルは工業製品の材料に使えるんだけど…。この国の文明レベルでは使いこなせないか…。まあ、石油とレアアースとレアメタルは置いておくとして、手を付けられるところから始める」

 

 フロルは決意する。

 

フロル「アルトマイア王国軍の再編成と、兵士達の練度を高めるための訓練を行う。先ほど各部隊に与えた任務は、あれは一時しのぎしかない。やるべきは、アルトマイアの経済と軍事の回復、エリヴァン王国とマールバラ王国とカイヴァーラ王国との国交再開。色々とやらなければならない。俺が不在の間、母エストリア王妃が王の代理として政務を担当する」

エストリア「ええ」

アンジェラ「これからどうするんだい?」

フロル「俺はこれからバーンスタイン王国湾岸都市アーバンに行かなければならない。バーンスタイン王国解放戦線率いるアイシス姫とロクシーヌ姫に、俺は支援を惜しまない。いいね?」

ルグレン&兵士達「はっ!」

フロル「アンジェラ姉、シェイラをどうするの?」

アンジェラ「そうだね~」

 

 捕虜となっているシェイラの今後の扱いについて。

 

アンジェラ「返すか?」

フロル「うん、返そう」

シェイラ「え?」

フロル「釈放だよ。ゼーゲルのところに帰れるよ」

シェイラ「うぅ~…」

フロル「クビになったらうちに来なよ」

アンジェラ「そうそう。クビになったらわたしの部下になりなよ」

シェイラ「クビっていうな!」

 

 シェイラは釈放となった。釈放されたシェイラはルーラで魔王城に帰ったという。

 

エストリア「よろしいのですか?」

アンジェラ「ああ。シェイラが魔王軍の本拠地に帰った瞬間、楽しみだな」

フロル「アンジェラ姉さん、えげつない」

ルグレン「どういう罠なのでしょうか?」

アンジェラ「なに、大したことないさ」

 

 黒い笑みを浮かべるアンジェラである。その内容をフロルは知っている。

 

フロル「さてと…。あとは俺がいなくても大丈夫だね。さっそくバーンスタイン王国に行ってくるよ。それじゃ」

 

 と、フロルはルーラでバーンスタイン王国湾岸都市アーバンに向かった。

 

 

 

 湾岸都市アーバン…。アーバン城にフロルが現れる。城内に入ると、広々としたエントランスに入った。

 

アイシス「フロル」

フロル「やあアイシス姫」

アイシス「無事だったのね」

フロル「うん。アルトマイア王国は取り戻したよ」

 

 フロルは、エストリアと再開し、アルトマイア王国と交戦していた魔影軍団の軍団長ラムパルドを討ち取ったなど、色々話した。その話しを聞いてアイシスは驚いた。

 

フロル「俺がいない間に大丈夫なのかと心配していたけど、杞憂だったようね」

アイシス「ええ。あなたのおかげよ。ありがとう」

フロル「王都バルイアの攻略はできそうかい?」

アイシス「できるわ。もうすでに、その準備を終えているの」

 

 アイシスは笑顔でこう話す。

 

アイシス「我が国を裏切って優雅に楽しんでいる貴族を全員血祭りにあげるわ。フロルは手を出さないで」

フロル「了解。だけど魔王軍が現れたら参戦するよ。邪魔はしないし、させもしない」

アイシス「ありがとう」

フロル「どういたしまして」

 

 2人が良い雰囲気になったところで…。

 

ロクシーヌ「フロル~」

フロル「おっと」

 

 ロクシーヌが現れた。しかもロクシーヌ、フロルに勢いよく抱き着いた。

 

アイシス「お姉様!なんでフロルに抱き着くのですか!?」

ロクシーヌ「フロルがわたしの運命の人だから。ねえフロル、このあとベッドに…」

フロル「ストップ。落ち着いて」

ロクシーヌ「むぅ~」

 

 フロルはロクシーヌを落ち着かせる。

 

フロル「ところで、アイーダ姫はいるかい?」

アイシス「アイーダは執務室にいるわ」

フロル「わかった」

アイシス「案内するわ」

フロル「アイシス姫?」

アイシス「アイシスで良いわよ」

 

 アイシスはフロルの右腕に抱き着く。

 

ロクシーヌ「ちょっとアイシス!わたしのフロルを姉から奪う気?」

 

 ロクシーヌは嫉妬深い表情になってフロルの左腕に抱き着く。

 

アイシス&ロクシーヌ「うぅ~」

 

 フロルを巡ってにらみ合いをする2人であった。

 

アイシス「ところでフロル、その物騒なものはなに?」

フロル「アサルトライフルで、地球にある銃火器のひとつ。長距離射撃ができるし、連射することもできる」

 

 フロルはアサルトライフルを背中に背負ったまま、ここに来たようである。アサルトライフルだけでなく、拳銃や手榴弾など色々…。

 

 

 

 それから時間が経過。フロルは執務室にいるアイーダと面会。アルトマイア王国で起きた経緯を話す。

 

アイーダ「魔影軍団の軍団長を倒したのね!だけど、なんで氷炎魔団の軍団長を釈放したのよ?」

フロル「魔王軍にトラップを仕掛けたんだ」

アイーダ「トラップ?」

フロル「魔王軍の拠点はどこ?」

アイーダ「まさか…」

フロル「翌日辺りで、アンジェラ姉さんの餌食になるんじゃないかな?」

アイーダ「強いの?」

フロル「ああ。とっても…。あの人は狂人だ。それに、秘密がある。その秘密を暴露したアンジェラ姉さんに、うちの養父は戦って勝ったんだ。もともと人に従うような人じゃないんだけどね」

アイーダ「へぇ~…」

 

 フロルは微笑み、アイーダはアンジェラに興味を抱く。

 

アイーダ「魔王軍はどう動くと思う?」

フロル「総力を持って俺を潰しにくるだろうね」

アイーダ「そうね」

 

 フロルはそう話す。

 

 

 

 魔王軍の本拠地…魔王城…。その謁見の間にゼーゲルとバルフォアがいる。目の前に、土下座しているシェイラがいる。

 

シェイラ「申し訳ありません…。アンジェラという女に捕虜にされて…」

バルフォア「アンジェラだと!?アンジェラがこの世界にいるというのか!?」

 

 バルフォアは戦慄する。

 

ゼーゲル「あの女か!?ザイードでさえ全く歯が立たなかったほどの女だ。ラムパルドは戦死したようだな」

シェイラ「はい…。手も足も出ませんでした…。あの女はいったい何者でしょうか?シュテルネンリヒトという猟兵団の副団長とか…」

バルフォア「アンジェラ・プロフェットは天界でも危険人物とされている。昔、天界で大暴れしたこともある」

シェイラ「なんですって!!?」

 

 シェイラは驚く。そこまでの人物なのかと驚いた。

 

バルフォア「アンジェラはどこに?」

シェイラ「アルトマイア王国にいます」

バルフォア「これでアルトマイア王国に手出しできなくなった。あれとやれるのは、メギドラ様達四大魔王と天界の神々だけだ。シュテルネンリヒトの団長フラディ・レイヴァール、よくアンジェラを従えられるな」

 

 バルフォアはそう話す。

 そんなときだった。

 

魔族「て、敵襲です!」

バルフォア「なに!?」

魔族「上空に、空を飛ぶ巨大な船が…」

 

 バルフォアとゼーゲルはすぐにバルコニーに出る。すると空には、巨大な飛行船が一隻存在している。

 

バルフォア「あれは……シュテルネンリヒトの巡洋艦!?なぜシュテルネンリヒトがここに!?」

ゼーゲル「く…」

 

 猟兵団シュテルネンリヒトの巡洋艦である。

 そんなときだった。

 

?『お前さん達はわたし達シュテルネンリヒトにケンカを売ったんだ』

ゼーゲル&バルフォア「アンジェラ!?」

 

 アンジェラの声が響いた。

 すぐそこにいる、あくまのめだまという魔物がいる。あくまのめだまは魔王軍の通信の役割を持っており、映像を出して実況中継している。その魔物から映像が出てくると、アンジェラの姿が映し出された。

 

アンジェラ『わたしがシュテルネンリヒトをここに導いた。シェイラにはこっそりと発信機を取り付けているんだ。久しいねバルフォア。メギドラは元気かい?』

バルフォア「アンジェラ…?」

アンジェラ『それよりゼーゲル、あんたに聞きたいことがある。15年前、フロルがいるアルトマイア王国を襲撃したきっかけはなんだ?なぜフロルの命を奪えばヴァルレシアを支配できると思った?』

ゼーゲル「それは…」

アンジェラ『リリーゼ・アスモデウス…。あのクソ女にたぶらかされたのか?』

ゼーゲル「な、なぜそれを!?」

アンジェラ『知り合いの魔族から聞いたんだ。知り合いと言っても、ミューゼリア・レヴィアタンだけどね』

ゼーゲル「ミューゼリア様が!?」

アンジェラ『前に調べてもらったんだよ。そしたっけ、リリーゼが出てきた。お前は知らないうちにリリーゼの思惑通りに動いていただけなんだよ』

ゼーゲル「そんな…バカな…」

アンジェラ『今頃メギドラも、リリーゼの攻撃を受けているだろう。リリーゼの手のひらの上で踊らされていただけのお前に魔王を名乗る資格はない。そこで死んでもらう。ついでに言うが、そこに現れたシュテルネンリヒトは11番隊だ。特に11番隊はシュテルネンリヒトの中でも超が付くほどの武闘派だ。死にたくなかったら、生き残れよ。まあ、戦争代行者であるわたし達にケンカを売って、無事だったやつはいないがな』

 

 通信が切れた。

 

魔族「魔王様!船から次々と敵が…!」

 

 魔族は報告する。

 シュテルネンリヒトの巡洋艦から次々と、猟兵達がパラシュートで降下して魔王城に乗り込む。乗り込んだ直後、猟兵達は内部にいる魔物達をアサルトライフルで仕留めて内部に進む。

 

ゼーゲル「ちくしょうが!我は諦めんぞ!!」

 

 その後、ゼーゲルとバルフォアとシェイラは脱出する。この瞬間、魔王城はシュテルネンリヒトによって制圧されたのであった。

 ついでに、11番隊を指揮するのは…。

 

?「アンジェラ姉さんも扱き使うよね」

 

 シュテルネンリヒト11番隊隊長シャイニー・ティルミーテという女性猟兵である。

 アンジェラを慕っている女性の1人でもある。

 

シャイニー「もうすぐフロルに会えるよ、キャシー」

キャシー「ええ」

 

 シャイニーの傍には、3番隊副隊長キャシー・レインヴォークがいる。フロルの恋人である。

 

 

 

 それから時間が経過。夕方…アーバン城の広々とした寝室…。フロルはスマートフォンを持って、アンジェラと電話している。

 

アンジェラ『というわけだ。魔王城はシャイニーが制圧した。歯応えがなかったそうだよ。ゼーゲルと幹部達に逃げられたとのことだ』

フロル「了解。それにしても、シャイニーが出てくるとはね。11番隊は武闘派中の武闘派だから、魔王軍もタダでは済まないだろうね。姉さんのことだから、カサンドラ達を出すと思ったけど」

アンジェラ『カサンドラとテスラドとウィンディメイは出てくるよ。徹底的に潰す』

フロル「了解。それと、最後のドラゴンオーブのありかなんだけど、場所は海の中なんだよ。潜水艦以外に水中に潜れる方法あるかな?」

アンジェラ『ないなぁ…。マーメイドハープがあれば良いんだけど』

フロル「マーメイドハープか…」

 

 フロルはそう呟く。

 

フロル「それについてはこちらで探すよ」

アンジェラ『了解。なにかあればメールくれ』

フロル「うん。それじゃ」

 

 アンジェラとの電話を終えて、フロルはスマートフォンを懐にしまう。

 

アイーダ「フロル、入るわよ」

 

 アイーダが現れた。

 

アイーダ「アイシスが明日、王都バルイアに総攻撃をかけることを決めたわ」

フロル「そうかい……」

アイーダ「なにか考えているの?」

フロル「王都バルイアに潜入している工作員はどれくらいいる?」

アイーダ「100人は超えているわ」

フロル「貴族は豪遊して民は貧困に苦しんでいる。魔族連中はいないんだね?」

アイーダ「いないわ。それがどうかしたの?」

フロル「俺がアイシスなら、総攻撃ではなく夜襲を仕掛ける」

 

 フロルはこう話すと…。

 

アイシス「フロル、いる?」

 

 アイシスが現れた。

 

アイーダ「あらアイシス」

アイシス「アイーダじゃない。どうしてここにいるの?」

アイーダ「ちょっとした報告よ」

フロル「アイシス、総攻撃ではなく夜襲をやるんだ。潜入している工作員に指示を出して、バルイアの門を制圧するんだ。そして、バーンスタイン城の城門も制圧し、貴族達を捕らえる。それで終わりだ」

アイシス「わかったわ」

フロル「俺も出る。万が一に備える」

 

 話しがまとまった。

 それから時間が経過。アイシスは王都バルイアに潜入している工作部隊に指示を送る。そして、動ける部隊を集めて、王都バルイアに進軍を開始。

 このとき、アイシスの傍にフロルとロクシーヌ、クロウとクルス、アイシスとロクシーヌの側近であるハミルダもいる。みんな馬に乗って進軍している。

 

フロル「クロウとクルスがいるおかげで、俺は安心してアルトマイアを行くことができたよ」

クロウ「どういたしましてだ。こっちはそこら辺のダンジョンを探索して、金目のものを手に入れた。あんたについてきてよかったよ」

クルス「メタルハンド出てきたのには驚きましたね」

フロル「マジで!?倒したの!?」

クロウ「ばっちり」

 

 クロウとクルスは、しばらく見ないうちに強くなったようだ。

 そんなときだった。

 

アイシス「止まれ」

 

 アイシスが進軍を停止。なぜなら、目の前にメタルハンド3体が現れたからである。アイシスは迷わず馬から降りて、剣を二刀流に構える。

 

アイシス「こいつを倒せば強くなる!」

 

 戦闘が始まった。

 メタルハンドはメタル系魔物のひとつで、1体でも倒せば大量の経験値が得られ、すぐに強くなる。

 

クルス「サポートします!メタルウィング!!」

 

 クルスはブーメランを投げてメタルウィングの特技を披露。メタルハンドはダメージを受ける。これでメタルハンドの足が止まった。

 

アイシス「もらった!メタルぎり!!」

 

 アイシスはメタルぎりを放った。しかも、会心の一撃。メタルハンドは倒された。残り2体。

 

クロウ「これは取っておきだ。会心一撃!!」

 

 クロウは会心一撃という特技を放った。必ず会心の一撃が出るという特技。もう1体のメタルハンドはこれを受けて倒された。

 

フロル「まじんぎり!!」

 

 そしてフロルはまじんぎりを放った。これを受けてメタルハンドは倒れた。

 3体のメタルハンドを倒したことで、フロルとアイシスとハミルダ、クロウとクルスは爆発的にレベルアップした。

 

ハミルダ「姫様!わたし達強くなりましたわ!」

アイシス「これで魔王軍に対抗できるわ!」

 

 爆発的にレベルアップしたことを受けて、みんな喜んだという。

 

 

 

 それから時間が経過。夜となった。

 王都バルイアの前に到着したアイシス一行。

 

兵士「姫様」

 

 王都バルイアから1人の兵士が現れ、跪いた。

 

兵士「ご指示通り、王都バルイアの門を制圧しました」

アイシス「ご苦労!」

兵士「それと報告です。貴族どもに不満を抱いていた兵士達が一斉に放棄し、バーンスタイン城を制圧しているところです。指揮しているのは、エックハート伯爵です」

アイシス「エックハート伯爵および一部の貴族は、わたしの指示で敵側に付いた」

兵士「存じております。それでは、自分は持ち場に戻ります」

 

 兵士は王都バルイアのほうに戻っていった。

 

フロル「潜入している工作員だね?」

アイシス「ええ」

フロル「ここから先はアイシスが主役だ。将来の女王様のお手並みを拝見させてもらう」

アイシス「ええ。楽しみにしてね」

 

 その後、アイシスとロクサーヌとハミルダが率いる部隊がバーンスタイン城に向かったという。

 

フロル「魔王軍は俺の命を奪い取るためにバーンスタインに出てくるだろう。すでに俺の動向を監視されているしな」

クロウ「ついに決着か…」

フロル「ここから先は俺一人で行く。みんなが来たら、俺の攻撃の巻き添えを喰らう」

クルス「だとしても、大丈夫ですか?」

フロル「ああ。賞賛あってのことだ。ドラゴンオーブはあとひとつだから、まだ死ぬわけにはいかないんだ。それになクルス」

クルス「?」

フロル「生まれ故郷を滅ぼした魔王軍にケジメをつけなければならないんだ」

クロウ「わかった。俺達は後ろで控えている。合図があれば攻撃を仕掛ける」

フロル「ありがとう。場所はここから先、ユージーン平原だ。そこに魔王軍を誘う」

 

 フロルは騎乗している馬を走らせ、そのままユージーン平原に向かったという。



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12 本物の勇者覚醒!魔王ゼーゲル死して四大魔王リリーゼ現る

 それから、夜が明けた。アイシス達率いるバーンスタイン王国解放戦線は王都バルイアを完全掌握。魔王軍側に付いた貴族達を捕縛して、処分が決まるまで牢屋に入れた。

 バーンスタイン城の謁見の間…。

 

アイシス「ええ!?フロルがたった1人でユージーン平原に!?」

 

 兵士からの報告を受けて、アイシスは驚いた。

 

アイシス「今すぐユージーン平原に向かうわよ!」

兵士達「はっ!!」

アイシス「お姉様、ここをお願いします」

ロクシーヌ「ええ」

 

 アイシスはこの場を姉ロクシーヌに任せ、この場を後にする。

 

 

 

 その頃、ユージーン平原…。フロルは地面に腰を下ろし、太刀を手入れしている。

 

ゼーゲル「まさか、ここにいるとはな」

 

 魔王ゼーゲルが現れた。その後ろに魔王軍のバルフォアがおり、ザイードとダースとサフィールとシェイラの幹部達もいる。

 

フロル「やあゼーゲル。それにみんな。俺の命を奪いにきたのかい?」

ゼーゲル「ああ…」

フロル「まあ、少し話しをしようか。バルフォアは、2年振りかな?」

バルフォア「当時はメギドラ様と戦っていたな」

フロル「ああ、死ぬかと思ったよ。だけど、武器がオリハルコン製であれば、良い勝負できたかもしれないね」

バルフォア「その太刀はオリハルコンでできているんじゃないのか?」

フロル「玉鋼という材質だよ。砂鉄をたたら製鉄で精錬してできる鋼。聞いたことあるでしょ?」

バルフォア「まあ…。人間はこういうものを作るんだなと、つい思ってしまう」

フロル「地球にあるジパングには、ドワーフ顔負けの職人がいる。まあ、あそこは猟兵団セキレイの本拠地でもあるから。俺の太刀はセキレイを経由してジパングから購入したものだよ。サービスしてもらったし、折れたらしばらく手に入らないかな?」

バルフォア「セキレイと言えば、シュテルネンリヒトに匹敵する組織だ」

フロル「今は手を組んで一緒に中東で戦争しているんだ。ゼーゲル、覚えてないかな?中東にいて俺が戦った後、背後を取った女がいる。その女はセキレイの副長であり、地球に誕生した勇者でもある」

ゼーゲル「そうか…あの女か…」

 

 フロルが言っている女とは、猟兵団セキレイの副団長シズネ・イカルガのことである。ゼーゲルとザイードが地球の中東にいた頃、ゼーゲルはフロルと交戦中に、シズネに背後を取られたことがあった。その力は強大で、今でも覚えている。

 

フロル「武器の話しに戻るけど、俺はあまり竜闘気(ドラゴニックオーラ)を使わないんだ。防御するときは使うし、ドルオーラを唱えるときも使うが、頻度はあまりない。かと言って、武器に纏わせると、その武器が壊れてしまう」

シェイラ「そうなのね」

 

 フロルは微笑む。

 

フロル「だけどゼーゲル、あんたは追い詰められていたんだな。リリーゼの甘言に惑わされる前から」

ゼーゲル「お前の言うとおりだ。俺の領地は不毛の大地で資源もない。部下と民達を食わせるために、どうすればいいのかと悩んだ。そのとき、リリーゼ様が現れた。ヴァルレシアは豊かな世界。支配するためには、これから生まれてくるであろう勇者の命を奪えと…。俺はその誘惑に負けて、今に至ったんだ」

フロル「メギドラに相談すれば、なんとかなるかもしれなかったのに…」

ゼーゲル「相談はできなかったんだ…。当時のメギドラ様は天界の敵対勢力と交戦していたからな」

 

 魔王軍にもこういった事情はあるようだ。

 

フロル「どのような事情であれ、こっちは故郷を滅ぼされたんだ。魔王ゼーゲル、お前の命でケジメを取ってくれ。そして幹部達は魔界に帰る。それで戦いはおしまいさ。俺は地球に帰って、中東で戦争しなければならないんだ。家のこともあるしな」

ゼーゲル「ぬぅ…」

フロル「シュテルネンリヒトの力を身を持って知っただろう。地球には、シュテルネンリヒトに匹敵する猟兵団がいるし、オーディン帝国、ユーロピア連邦、ケンナード共和国、ヴェルナ聖王国という4つの大国も台頭している。お前達が想像している以上の力を地球の国々や組織が持っている」

 

 フロルは現実を突き付ける。

 

フロル「答えを、聞かせてくれ」

 

 さらにフロルは圧をかける。

 

ゼーゲル「こっちもまだ死ぬわけにはいかぬ!死んでいった者達のために!民のために!止まるわけにはいかないのだ!」

フロル「わかった…」

 

 ゼーゲルの熱意にフロルは応えるかのように太刀を抜いた。

 

フロル「先制攻撃させてもらう。ギガデイン!!」

 

 フロルはギガデインを放った。

 

バルフォア「マホステ!!」

 

 バルフォアはマホステでギガデインを防いだ。

 

ダース「はあああ!!」

ザイード「そりゃあああ!!」

 

 ダースは槍で、ザイードは両手剣を持ってフロルに攻撃を仕掛ける。フロルは攻撃をかわすが、同時に太刀を振るった。

 

ダース&ザイード「ぐわああああ!!!」

 

 フロルの攻撃を受けてダースとザイードは吹っ飛んだ。

 

サフィール「強い…」

シェイラ「うぅ…」

 

 サフィールとシェイラはフロルの圧倒的な強さに戦慄する。

 

フロル「アンチレベルはすでに完全解除している。もう勝ち目はない。ゼーゲル、あんたに選択肢を与える。俺に殺されるか、ヴァルレシアの勇者に殺されるか」

ゼーゲル「勇者だと?」

フロル「ああ。俺ではない本物な…。もっとも、俺のほうが強いだろうけど」

ゼーゲル「当然だ!勇者よりお前が脅威だ!相打ちになろうと、お前だけは滅ぼす!」

魔物達「ぐおおおおお!!!」

 

 そのとき、魔物達が現れた。六軍団に所属する魔物全て…。

 

ゼーゲル「魔物の数は全部で10万。この数をどう乗り切る?」

フロル「なるほどね」

ゼーゲル「笑いたければ笑うがいい。勝利に変えられ…」

フロル「ビッグバン!!」

ゼーゲル「!?」

 

 フロルは魔物達に向かってビッグバンを放った。ビッグバンを受けた多くの魔物達は倒れた。同時にフロルはアサルトライフルを構え、その銃口をゼーゲル達に向ける。

 

フロル「勝利のためにプライドと全てを捨てる覚悟。見事なり。だが…」

 

 そのとき、フロルはアサルトライフルの銃口を空に向けて、三連射して発砲する。

 

フロル「俺のケジメはすでに済んでいる。ゼーゲル、あんたが一度死んだことでな」

ゼーゲル「なに?」

フロル「魔王軍を裁くのは俺じゃない。彼らだ」

 

 そのときだった。

 

?「おおおおお!!!」

 

 ユージーン平原の向こう側から、クロウとクルス、バーンスタイン王国解放戦線の部隊が現れた。

 

ゼーゲル達「なっ!?」

フロル「気をつけろよ。あいつら、メタルハンドを狩ったから余計に強くなっている」

ゼーゲル達「なにー!?」

 

 メタルハンドを狩ったという言葉を聞いて、ゼーゲル達は驚愕した。

 

フロル「みんなー!ヴァルレシアに脅威をもたらした魔王軍を倒せー!!」

クロウ「よっしゃー!」

クルス「決着をつけますよ!」

 

 クロウとクルス達が合流し、フロルは下がる。

 

ダース「かかれー!!」

 

 ダースの号令で、魔物達がバーンスタイン王国解放戦線の部隊と交戦し始める。

 直後だった。

 

アイシス「魔王軍を倒せー!!」

兵士達「おおおおお!!」

アイーダ「マールバラ王国軍も参戦する!援護せよ!!」

兵士達「おおおおお!!」

 

 アイシス率いる解放戦線と、アイーダ率いるマールバラ軍が現れた。

 それだけではなかった。

 

エストリア「全軍!味方を援護して魔王軍を倒しなさい!」

ルグレン「先陣を切るぞ!我に続けー!!」

兵士達「おおおおお!!」

 

 エストリアとルグレン率いるアルトマイア王国軍も現れた。

 気が付いたときには乱戦状態になっている。

 

 

 

 それから時間が経過。フロルはヴァルレシアの軍隊と魔王軍の乱戦を高台から見ている。ヴァルレシアのほうが優勢である。

 

フロル「こりゃ、シャイニー達が出るまでもないか」

シャイニー「わたしがなんだって?」

フロル「やあシャイニー」

キャシー「フロル~」

 

 シャイニーとキャシーが現れ、キャシーはフロルに抱き着く。

 

フロル「キャシー、すまないね。心配かけて」

キャシー「うん」

シャイニー「せっかく狩れると思ったんだけどねぇ。出るまでもないか」

フロル「一部の部隊がメタルハンドを倒しちゃったからね」

シャイニー「マジか!?」

 

 シャイニーは驚くが…。

 

アンジェラ「メタルハンドを倒したって!?魔王軍詰んだんじゃないの?」

 

 アンジェラが現れた。

 

シャイニー「アンジェラ姉さん?うちらが出なくても良いのですか?」

アンジェラ「ああ、問題ない。リリーゼ来るかな?」

 

 そんなときだった。

 

バルフォア「そこにいたか」

 

 バルフォアが現れた。どうやら戦う気はないようだ。

 

フロル「メギドラ側の魔族とは戦う気はないよ。敵同士じゃないしね」

バルフォア「まあ、そうだな。ゼーゲルがリリーゼ様の手のひらの上で踊らされていたと聞いたときは驚いたな」

アンジェラ「リリーゼとメギドラは戦っているとのことだよ。あんたはここにいていいのかい?」

バルフォア「そうだな…。だが、ゼーゲルの最後を見届ける。それが武人ってものだ。ヴァルレシアの本当の勇者は誰なのだろうか?」

フロル「もうすぐ出てくるよ」

 

 フロルはそう呟いたときだった。

 

?「ライデイン!!」

 

 誰かがライデインを放った。

 

ゼーゲル「ライデイン!?まさかお前が…お前が…!?」

アイシス「バーンスタイン王国第2王女アイシス・バーンスタイン。わたしが本当の勇者だ!!」

 

 アイシスの左手の甲に剣の紋章が現れた。

 そう、彼女こそが、ヴァルレシアの救世主にして勇者である。

 

アイシス「我らが世界を蹂躙したその罪、死を持って償え!」

ゼーゲル「なめるな!」

 

 アイシスとゼーゲルは交戦し始める。

 実はフロルは、アイシスが勇者であることを知っていた。

 

バルフォア「なんと…バーンスタインの姫が…」

フロル「そういうことだよ。アイシスの左手の甲にある剣の紋章を見て気づいたんだ。アイシス自身は自分が本当の勇者であることに驚いたけど…。メタルハンドを倒した時点で覚醒したようだね」

バルフォア「マジか…」

 

 バルフォアは驚愕する。

 

アンジェラ「ちょっと行ってくる」

 

 アンジェラが乱戦状態の戦場に入った。

 

フロル「俺も行く。母さんを援護しなきゃ」

キャシー「フロルのお母さんですって?わたしも行く」

シャイニー「ストレス解消したいからわたしも行こうっと」

 

 フロルとキャシーとシャイニーも参加する。

 

バルフォア「詰んだな」

 

 バルフォアは呟く。

 

 

 

 ユージーン平原の戦場…。

 

兵士達「うわあああ!!」

ザイード「超竜軍団の軍団長にして六軍団長筆頭ザイードを舐めるな!!」

 

 ザイードはドラゴンの魔物を率いて味方の兵士達を圧倒するが…。

 

ザイード「なんだ!?このプレッシャーは…!?」

 

 後ろを振り向くと…。

 

アンジェラ「は~い。君を地獄に案内する閻魔大王の使者で~す♪」

ザイード「アンジェラ!!?」

 

 黒い笑みを浮かべるアンジェラがいた。

 

アンジェラ「あんたはいらない。メドローア!!」

ザイード「うおおおおお!!!」

 

 アンジェラはメドローアを放った。メドローアを受けたザイードは消滅した。

 

エストリア「アンジェラさん!?」

 

 エストリアが現れた。

 

アンジェラ「やあエストリア。本当なら介入するつもりはなかったんだけど、敵にいる人材が欲しくてね。ねえシェイラ」

シェイラ「え…?」

アンジェラ「やっぱりあんた、うちの部下になれ。カイザーフェニックス!」

 

 目の前にいたシェイラに向かってカイザーフェニックスを放った。シェイラは防げず、そのままカイザーフェニックスを喰らって気絶した。

 

サフィール「シェイラ!」

アンジェラ「お~お~。これもまた美人。そして高い魔力。試させてもらうよ。カラミティウォール!!」

 

 アンジェラは右腕を振るってカラミティウォールを放った。

 

サフィール「ちぃ!!」

アンジェラ「お~、トベルーラで飛んでかわすか」

サフィール「ギラグレイド!!」

 

 サフィールはトベルーラでかわして、アンジェラに向かってギラグレイドを放った。だけど、アンジェラはギラグレイドをかわそうとせず、そのまま受けた。

 

サフィール「やった?」

 

 サフィールは倒したと確信するが、アンジェラは無傷で平然と立っていた。

 

サフィール「そんな!?」

アンジェラ「ザラキーマ」

サフィール「ええ!?」

 

 アンジェラは即死呪文ザラキーマを放った。ザラキーマは敵全体に死の言葉を投げかける呪文。

 サフィールは耳を抑えて抵抗するが…。

 

魔物達「ぎゃあああああ!!!」

 

 ザラキーマの呪文を受けた魔物達は次々と絶命していく。

 

サフィール「こ、このままでは…」

 

 サフィールはまだ倒れない。

 

アンジェラ「まあいいわ。生き残ったら部下にしてやる。シェイラはもらっておくよ。じゃあね」

サフィール「ちょっとー!!」

 

 突然、アンジェラはザラキーマを中断。そして気絶したシェイラを抱えて、トベルーラでこの場を立ち去った。

 

アイーダ「なにあの人!?めっちゃすごかったんだけど!?」

 

 この場面を見ていたアイーダは動揺したとか…。

 

魔物達「ぐわあああああ!!!」

 

 魔物達が吹っ飛んだ。やったのは、フロルである。

 

エストリア「フロル?」

フロル「やあ母さん。びっくりしたよ。こんなところに現れるなんて」

エストリア「バ-ンスタイン王国に向かう途中でね。魔王軍がここに集結しているという情報を聞いて、駆けつけたの。気が付いたときには、こんな感じになったわ」

 

 エストリアは両手剣を武器にして魔物達を次々と屠っている。

 そんなときだった。

 

キャシー「グランドクロス!!」

魔物達「ぎゃあああああ!!!」

 

 キャシーがグランドクロスを放って、辺りの魔物を一掃する。

 

キャシー「フロル」

フロル「相変わらずだね。この人、俺の母さん」

キャシー「ええ!?」

エストリア「フロル、その子は?」

フロル「キャシーと言って、同じ猟兵団シュテルネンリヒトに所属する女の子で、俺の恋人」

キャシー「キャシーと申します。よろしくお願いします」

エストリア「エストリアです。いつもフロルがお世話になって…。深い挨拶は、この戦いが終わったらで」

キャシー「はい!」

 

 息子の恋人に興味を抱くエストリアである。

 その頃…。

 

ダース「ちぃ!!」

クロウ「軍団長がどれほどなのかと思えば大したことねえな。アリゲイルのほうがまだ強かったぜ」

ダース「抜かせ!」

 

 ダースとクロウは交戦していた。

 

クロウ「もらった!バンパイアエッジ!!」

ダース「ぐはあああ!!!」

 

 クロウは短剣を持って特技を披露。ダースはバンパイアエッジを喰らい、そのまま倒れて息絶えた。

 

サフィール「ダース!?」

ハミルダ「隙あり!」

ジェシカ「はあああ!!」

サフィール「あああああ!!!」

 

 隙を見せたサフィールはハミルダとジェシカの剣撃を受けて倒れた。

 

ゼーゲル「くそ…我が六軍団長が…」

アイシス「はあああ!!!」

 

 アイシスは、つるぎのまいという特技を披露。ゼーゲルは魔剣で防ぐが、防ぎ切れなかった。

 

アイシス「お前達魔王軍によって、多くの命が奪われた!その命を持って、償え!ライデイン!」

ゼーゲル「ぐぅ!!」

 

 アイシスはライデインを放った。ゼーゲルはダメージを受けるが、決定打までには至っていない。

 

アイシス「はあああ!!!」

ゼーゲル「抜かせー!!」

 

 ゼーゲルは立ち向かうが、アイシスに魔剣を叩き落とされた。そして、アイシスの剣がゼーゲルの体を貫いた。

 

ゼーゲル「ぐふ…見事なり…。だが…俺の他にヴァルレシアを狙う魔王もいる…。リリーゼ・アスモデウスには気をつけるんだな…」

アイシス「ヴァルレシアの平和を乱す敵は全て、わたしが滅ぼす」

 

 ゼーゲルはアイシスに警告し、地面に倒れて息絶える。

 

フロル「アイシス!」

 

 フロルが現れた。

 

アイシス「フロル、やったわ。わたしの手で魔王を倒したわ」

フロル「さすが本物の勇者だ。だけど、黒幕が現れたようだね」

アイシス「え…」

 

 フロルが話すと、アイシスは驚いた。

 

?「せっかくここまでお膳立てしてやったものを…。所詮はただの魔王か…。やはりわらわが出ないとならないか」

 

 目の前に1人の美女が空間転移で現れた。女性の魔族であり、顔立ちが美しく、スタイルも良く豊満で、蠱惑的な雰囲気を漂わせている。露出度の高い衣装を見に纏っている。

 

アイシス「だ、誰?」

フロル「リリーゼ・アスモデウス…。魔界の四大魔王の一角で、魔王軍をヴァルレシアに攻め込ませた、黒幕だよ」

アイシス「なんですって!?」

 

 アイシスは驚いた。

 

リリーゼ「なるほど…。そなたがフロルか?そなたのことはわらわの耳に何度か入っている。美しいしたくましい…。わらわのものになるがよい。そうすれば、わらわを孕ませる権利を与えてやる」

フロル「絶対にいやだ!」

アイシス「そうよ!あなたのようなおばさんにフロルを渡してなるもんか!」

リリーゼ「誰がおばさんだと!?お姉様と呼べ!」

 

 短気な性格をしている。

 

リリーゼ「まあ、小便臭い小娘では、わらわのような魅力的な女に勝てるわけないか」

アイシス「むきぃー!!」

 

 アイシスもである。

 

リリーゼ「さて、お前達がひよっこのうちに始末しとくか。ああフロルは殺さん。わらわの性欲処理を担当してもらうか」

 

 リリーゼは戦闘態勢に入る。同時に魔剣を手に取る。先制攻撃を仕掛ける。フロルは太刀を構えて、リリーゼの魔剣を受け止める。

 

フロル「くっ」

リリーゼ「ほう。わらわの剣を受け止めるか。さすがシュテルネンリヒトの3番隊隊長だけのことはある。だが…」

フロル「なに!?」

 

 フロルはリリーゼに太刀を叩き落とされた。

 

フロル「ギガデイン!!」

 

 だが、ギガデインを放つ。リリーゼは魔剣を上空にかざして、ギガデインを防いだ。

 

フロル「マジか!?」

リリーゼ「知っていると思うが、わらわは竜の騎士じゃ。わらわは15年前、そなたが持つ竜の騎士の力を奪うべく、ゼーゲルを唆し、魔王軍をヴァルレシアに侵略させたのじゃ。だが、失敗した。それから数年が経ち、幸運にも別の竜の騎士と出会い、殺して、その力を奪った。目的は思わぬところで達成したが、そなたを殺さなくてよかったよ。そなたが美しさと逞しさを兼ね備えた、わらわの好みに育ってくれたのじゃからな」

 

 そのとき、リリーゼは手をかざした。

 

リリーゼ「ジゴスパーク」

 

 ジゴスパークを放った。

 

フロル「くっ!」

アイシス「フロル!?」

 

 フロルはアイシスをお姫様抱っこで抱えて、ジゴスパークをかわす。

 

リリーゼ「これで終わりにしようか」

 

 さらにリリーゼは魔力を高めると、地面に魔方陣が顕現され、詠唱を始める。

 

リリーゼ「我招く無音の衝裂に慈悲はなく、汝に普く厄を逃れる術もなし」

フロル「まずい!みんな逃げろ!」

アイシス「フロル、どうしたの!?」

フロル「リリーゼがやろうとしているのは、隕石を降らせる禁術なんだ!それをやってみろ!ここにいるみんながあの世に行くぞ!」

アイシス「なんですって!?」

 

 フロルの話しを聞いてアイシスは驚いた。隕石を降らせる禁術は聞いたことないが、嫌な予感がするのは確か。

 

フロル「え?止まった?」

 

 突然、リリーゼは詠唱を中断。なぜなら、リリーゼの背後にアンジェラがいたからである。

 

アンジェラ「相変わらず、エッチな服を着ているね、リリーゼ」

リリーゼ「わらわはサキュバス系の魔族じゃからな」

アンジェラ「これ以上やると、わたしも黙ってないわよ」

リリーゼ「ならば、決着をつけようか?」

アンジェラ「いいよ!この場で死んでもらう!」

 

 アンジェラとリリーゼの間になにか因縁があるようだ。

 このとき、アンジェラは空間にヒビを入れて、そのヒビの中に右手を入れる。その瞬間、右手に禍々しい魔剣が握られている。

 

リリーゼ「魔剣レヴァンテイン。神話に伝われし伝説の四宝がひとつ。まさかお前が持っていたとは」

アンジェラ「それだけじゃない。はああああ!!!」

 

 同時に、アンジェラの体全体に模様が浮かび上がった。

 

フロル「やべえ…アンジェラ姉さんが本気を出した…」

アイシス「アンジェラ姉さん?」

フロル「シュテルネンリヒトの副団長さ。姉さんが本気を出すと、辺り一帯は消し炭になる」

アイシス「マジで!?」

 

 アイシスは驚く。

 すると、魔物達が突然逃げた。

 

フロル「そりゃそうだ。狂人同士の戦いでもあるから」

 

 フロルはそう話す。

 

リリーゼ「良いだろう!四大魔王の力、とくと味わうがいい!」

 

 リリーゼもとてつもないオーラを放出するが…。

 

<ピピピピッ!!!>

 

 そのとき、着信音が鳴り響いた。リリーゼは懐からスマートフォンを手に取って、電話に出た。

 

リリーゼ「なんじゃ、今良いところなのに」

女性魔族『大変ですリリーゼ様!』

 

 相手は女性魔族である。

 

女性魔族『ヴァンヘルムにヴォルスング竜騎兵団が現れ、攻撃を受けています!』

リリーゼ「なんじゃと!?」

女性魔族『クレイン・ラブロックの姿も確認できました!幹部の方々が防衛に出て、なんとか抑えている状況です!』

リリーゼ「くぅ…」

 

 リリーゼは悔しそうな表情になる。

 

アンジェラ「ヴォルスング竜騎兵団か…。過去にうちと戦争したことがある猟兵団なんだけど、結構強いよ。なにせうちと並ぶトップクラスの猟兵団だからね」

リリーゼ「く…くそ…」

アンジェラ「さあどうする?クレインが出ているようだけど、あいつ強いよ。なにせクレインの正体が、天界の女神様だからね。娘のレジーナとレシエも強大だ」

 

 アンジェラは黒い笑みを浮かべる。

 

リリーゼ「すぐ戻る!」

 

 リリーゼは電話を切った。そして、空間転移して、この場を後にする。

 

フロル「アンジェラ姉さん」

 

 フロルとアイシスが現れた。

 アンジェラはリリーゼが退いた理由を話す。

 

フロル「リリーゼの国がヴォルスング竜騎兵団の攻撃を受けているのか!?」

アンジェラ「あいつら強いからな。リリーゼのやつ、当分は出られないだろう」

 

 ヴォルスング竜騎兵団とは、地球にあるトップクラスの猟兵団。飛竜に騎乗するという特徴を持ち、その戦力は非常に強大。過去にシュテルネンリヒトとの戦争に発展し、両陣営に大規模な損害が出るほどである。

 

フロル「だけどなんでヴォルスングが魔界に?」

アンジェラ「オーディン帝国からの依頼じゃねえの?あいつらはオーディン帝国と契約しているからな」

 

 とのことである。

 ヴァンヘルムとは、魔界に存在する大国でリリーゼが統治している。魔界の地でありながら肥沃な大地に恵まれているという特徴を持つと同時に、地球から持ち込んだ科学技術を駆使してインフラ整備を進めている。

 そのヴァンヘルムがヴォルスング竜騎兵団の攻撃を受けている。リリーゼはその状況を打破するため、戻らざるを得ない。

 アンジェラは力を収めると、模様が消えた。魔剣レヴァンテインを異空間に収納する。

 

アンジェラ「それと…」

 

 アンジェラは近くで倒れているサフィールを見つけた。

 

サフィール「うぅ…」

 

 まだ息がある。

 

アンジェラ「ベホマ」

 

 アンジェラはサフィールにベホマをかけた。サフィールは完全回復する。

 

サフィール「ひぃ!!」

 

 目の前にアンジェラがいたことに驚いたサフィール。

 

アンジェラ「よく生き残ったねぇ〜。あんたはわたしの捕虜だ。逃げても良いけど、帰る場所ないよ」

サフィール「うぅ〜…」

 

 こうしてサフィールはアンジェラの捕虜となったという。

 

シェイラ「サ、サフィール…」

サフィール「シェイラ?」

 

 そのとき、シェイラが現れた。シャイニーによって拘束された状態で…。

 

シャイニー「カサンドラ達が出るまでもなかったね、姉さん」

アンジェラ「ああ。良い人材を手に入れた」

シャイニー「確かに、良い人材ですね」

アンジェラ「調教しがいがあるよ」

シャイニー「女性魔族の調教は初めてだから、楽しみっす」

サフィール&シャイニー「いやあああああ!!!」

 

 アンジェラとシャイニーという狂人のプレッシャーに負けて発狂するサフィールとシャイニーである。

 

アンジェラ「おや、待てなかったかい?カサンドラ、テスラド、ウィンディメイ」

 

 そのとき、3人の美女が現れた。

 

ウィンディメイ「結局、わたしの出番なかったじゃん。中東の戦争に参戦してフラディの手伝いする?お母さん」

アンジェラ「う~ん…フラディから言われているわけじゃないしねぇ…」

シャイニー「大きな仕事だから、無視できないんだよ。ねえウィンディメイ」

ウィンディメイ「うんうん」

 

 シャイニーはウィンディメイを後ろから抱き着く。

 その様子を見ていたフロル達…。アイシスの他にアイーダ達も集まっている。

 

アイーダ「あの人があのアンジェラさん!?」

フロル「ああ。ザイードをメドローアで葬ったり、ザラキーマで魔物を一瞬に葬った人だよ」

アイーダ「すごくない!?あの人から魔法を教わったりできたりする?」

フロル「わからん」

 

 そんなときだった。

 

キャシー「フロル~」

 

 キャシーが現れた。同時にフロルに抱き着く。

 

フロル「ご苦労さん、キャシー」

キャシー「うん♪」

 

 猫のようにフロルに甘えるキャシー。

 

アイーダ「その子誰なの!?」

アイシス「フロルから離れて!」

 

 嫉妬するアイーダとアイシス。

 フロルはキャシーを紹介すると…。

 

アイシス「別れてくれる?」

キャシー「別れないわ」

アイーダ「別れて」

キャシー「別れないって言っているでしょ?」

 

 早くも女の争いが勃発。

 

アイーダ「周りにいる女性達はもしや?」

フロル「シュテルネンリヒトの人間だよ」

アイーダ「オーラが違うわね…」

フロル「狂人だからね」

 

 シュテルネンリヒトの猟兵団はオーラが違うようだ。

 

アンジェラ「それよりフロル。これからどうすんだ?」

 

 アンジェラはフロルに聞いた。

 

フロル「最後のドラゴンオーブを探すよ」

シャイニー「ああ。うちらはしばらくヴァルレシアの拠点にいるよ。魔王城という拠点をね」

フロル「了解。帰るなら、これを渡すよ。さすがに銃火器を持ち歩くのは目立つからね」

 

 フロルはアサルトライフルや拳銃、手榴弾やマガジンなどをシャイニーに手渡す。

 

シャイニー「OK。それじゃわたし達は先に帰ってるよ。ルーラ」

 

 シャイニーはカサンドラとテスラドとウィンディメイ、捕虜となったシェイラとサフィールと一緒にルーラで飛んでいき、この場を後にする。

 

アンジェラ「さてと…」

 

 アンジェラはみんなの前に出る。

 

アンジェラ「もともと介入するつもりはなかったんだけど、とんでもないアクシデントに見舞われたものだね」

エストリア「リリーゼという女性の魔王ですね?」

アンジェラ「ああ。自分の領地が第三の敵対勢力の攻撃を受けているから、しばらくここに現れないし、二度と現れないかもね。バーンスタインとアルトマイア、これからどうする?」

エストリア「それは…」

 

 エストリアは考えた。

 

エストリア「ゆっくり考えますわ。あなたのおかげで生き別れた息子と出会えたわけですし」

アイシス「あの、王妃様はバーンスタイン王国になにか用があってきたのでしょうか?」

エストリア「ええ。アイシス姫と会談するためにね。そしたっけ、こんな状況になって」

アイシス「でしたら、我が城に来てください!みなさんもです!魔王軍に勝利した祝勝パーティーをやりたいです!」

エストリア「そうですね。みなさんもどうでしょうか?」

みんな「おおー!!」

 

 話しがまとまって、みんなは喜びの声を上げた。

 その後、みんなはバーンスタイン王国王都バライア・バーンスタイン城に向かって、凱旋するのであった。



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