英雄伝説〜八幡のレクイエム〜 (慢次郎)
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設定・国家等の説明。

これからも情報などは追加されていきます。

2023年2月2日、2月8日情報を更新。2023年7月20日情報修正&更新。2023年10月22日更新。







英雄伝説〜八幡のレクイエム〜

 

ー登場人物及び世界状況など。

 

①ーエレボニア帝国

 

ゼムリア大陸西部に位置する君主制国家。大陸で最大規模の大国であり、カルバード共和国と共に大陸西部における二大国として国際的に認識されている。カルバードと覇権を争ってるため、最近もリベールと紛争や同盟国日本を救援するためという名実で中央ゼムリアの新ソヴィエトや東ゼムリアの大亜連合とも紛争している。

 

東ゼムリアに東ゼムリア共和国という傀儡国家がある。

 

内政面では、宰相オズボーン率いる革新派が急速な近代化を進めるため、貴族派と軋轢が生じ益々対立を深めていっている。貴族派に対抗するため、正規軍の軍の機甲化を進めている。

 

貴族派も正規軍に対抗するため、自らの軍隊である領邦軍を増強し、領民に対し税金等を上げている。

 

 

②ーカルバード共和国

 

ゼムリア大陸西部で帝国と二分する大国で共和制国家である。一世紀前に王政だったカルバードに民主による革命が起き、王政が倒され共和制が敷かれた。大統領と議会制民主主義の下で発展してきた。経済面だけで見ると、共和国が帝国よりも凌駕している可能性もある。

 

古くから移民政策を積極的に受け入れていたが、元からの市民と移民との対立が深まり、移民推進派と反対派という勢力も生み出された。今では移民反対派がテロ活動など行わっており、増々対立が激化していっている。

 

東ゼムリアに南中華国という傀儡国家がある。

 

 

③ークロスベル自治州

 

帝国と共和国に挟まれた自治州。帝国と共和国の影響が強く独自の政策が出来ない状況にある。学園都市とは強い結びつけがある。

 

④ーリベール王国

 

ゼムリア大陸の西部に位置する小国。シンボルマークは白ハヤブサ。 王制国家だが現在は王族以外の身分制度がほとんど形骸化している。 大国であるエレボニア帝国やカルバード共和国が隣接しており、周辺諸国が帝国に取り込まれている中、現トップを務めるアリシア女王の政治手腕や導力関連の技術力などにより大国とも渡り合えている。

 

三高弟の一人であったA・ラッセル博士が創設したZCF【ツァイス中央工房】により技術開発の先進国である。 中でも飛行艇の技術力は大陸でも群を抜いており、百日戦役の際には、当時最新鋭だった飛行艇での電撃作戦により国力で勝っていたエレボニア帝国に一矢報いた程である。 現在でも飛行艇の技術性能は大陸内でもトップクラスであり、他国では列車や自動車が普及されている中、リベールでは飛行艇がメインの乗り物として普及されている。

 

 

⑤ー学園都市

 

カルバード共和国とエルザイム公国の間にある都市国家である。統括理事会が学園都市の政治を行っている。統括理事会の統括理事長が国家元首であり、治安維持を風紀委員(ジャッジメント)が国防は警備員(アンチスキル)が担っている。

 

かつてD∴G教団が秘密基地として使っていたが、とある人物達により教団関係者は一掃された。クロスベルとは強い結びつきがあり、クロスベル警備隊やクロスベル警察は、学園都市の風紀委員(ジャッジメント)警備員(アンチスキル)に研修しに行くこともある。

 

レミフェミアやクロスベルと医療技術関連の協力的な条約を締結。リベール王国とは、飛行船関連の技術協力的な条約も締結。

 

ローザンブリアとは、移民を受け入れる代わりに支援物資や経済援助をする条約を締結。しかしこれが帝国は不満に思い始める。

 

新ソヴィエトとは、学園都市が移民を受け入れる代わりに、砂漠化を防ぐ技術協力と経済援助をするという条約を締結。

 

ローザンブリアの塩の杭事件の後、国を追われた彼らを積極的にを受け入れている。条約が締結され新ソヴィエトからの移民も受け入れ始めている。

 

⑥ー東ゼムリア共和国

 

東ゼムリアにあるエレボニア帝国の傀儡国家である。ここの首都がペキンである。旧満州系の民族が国民の主体である。

 

政治体制は、今の台湾みたいな感じ。議会制民主主義を取っている。大統領と首相を兼任した総統が国家元首。

 

移民については、旧満州系、旧漢民族系の移民は受け入れている。

 

⑦ー日本

 

東ゼムリアの大国である日本。150年前までは、サムライの長である徳川幕府が日本を統治していたが、十師族、百家がその幕府を倒し自分達の支配体制を確立し今に至る。敗れた徳川幕府の将軍家、要人やその他の人間達は、カルバード王国へ亡命。

 

その後は十師族百家体制の下、目覚ましい経済発展を成し遂げる。そのため大亜連合や新ソヴィエトに目をつけられ何度も侵攻を受けるが全部阻止している。

 

発展の中、十師族の中でも四葉家と七草家が力があるのは明白であり、四葉家は帝国の革新派と七草家は共和国のロックスミス派と協力関係を結んでいる。

 

四葉家は帝国の革新派と同盟関係、ラインフォルト社とは技術提携。リベール王国とも技術関連で協力。

 

 

⑧ー大亜連合

 

かつての東ゼムリアの大国だった国。大帝国が崩壊し大亜がほとんど勢力化に置かれた。日本も徳川幕府が倒れたあと、大亜は何度も日本に侵攻している。一時期は四国や北陸が占領されだが、十師族や百家によって追い出された。

 

その後、帝国や共和国の圧力で大亜連合内で内戦が勃発、帝国の支援を受けた東ゼムリア共和国、共和国の支援を受けた南中華国と分かれ、領土の大部分を失った。

 

⑨ー南中華国

 

大亜連合の内戦で共和国の支援で建国された国家。共和国の傀儡国家とも揶揄される。旧大亜連合の南部に住んでいる人間達が中心になっている。首都はナンキンからカイナン市へ遷都している。

 

主に南部出身者で成り立っているが、旧漢民族が主体となっている。カルバードもモデルにして、大統領制を取り入れている。

 

 

⑩ー新ソヴィエト連邦

 

大帝国が崩壊しその後、ロシア帝国として独立。しかし帝国の圧政や他国から干渉を受け、ロシア帝国は崩壊。その後、エドワード主義といわれるものが誕生。国の主となるものは、国王でも皇帝でも大統領でもない、国民だという主義が生まれ、労働者階級がトップだとした。金持ちは許さないみたいになり、みんな稼いだミラは国が預り、それを国民に分配するみたいなった。これにて共産主義が生まれた。

 

自分の手足となる政党ーソヴィエト共産党を作り、議会を開き、国のトップはソヴィエト連邦共産党書記長がなった。

 

しかし2代目ソヴィエト連邦共産党書記長、スターウルフになると、エドワード時代と異なり、内政よりも軍隊を強化や領土的野心が鮮明になり、諸外国と戦争を繰り返していた。

 

それから時は経ち、今では先代の連邦共産党書記長、アルゼイが日本に侵攻し敗戦した責任を取り辞職。それもローザンブリアの塩の杭や国内の砂漠化で国内が混乱や疲弊し経済が衰退し始めたので、大亜連合と共に日本侵攻する戦争を起こした。だが日本軍や日本救援部隊の帝国軍、帝国の影響力を広げたくない共和国軍が新ソヴィエト軍を東西で撃滅、撃破された。

 

今は和平派のニコラスが関係国との講和条約に皮切りに国家の立て直しをやっている。急速に砂漠化する問題にも直面している。スターウルフ時代にエイドスを信仰するのは禁止にされたが、ニコラスがエイドスを解禁。アルテリア法国と国交を樹立。

 

カルバード共和国や学園都市、クロスベルとの関係強化を今ははかっている。

 

 

 

 

【トールズ士官学院の体操服】ートールズ士官学院の体操服は、男子生徒は上着とハーフパンツ。女子生徒は、上着にブルマ。今年(七耀暦1204年度)の1年は紺のブルマ。ちなみに2年生は赤のブルマである。

 



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登場人物等の説明。

登場人物説明です。


〜英雄伝説・八幡のレクイエム〜の登場人物。

 

 

ー登場人物

 

【主人公】

 

【名前】ーアンネリーゼ・ライノ・アルノール

 

【偽名】ーリーゼ・レンハイム

 

【誕生日】ー七耀暦1186年8月8日

 

【年齢】ー17歳→18歳(物語の中で)

 

【容姿】ー全体的にアルフィンを大人っぽくした感じ。髪は皇女スタイルの場合はそのままであるが、リーゼの状態は、ポニーテールにしている。

 

【スリーサイズ】ーB87・W60・H88

 

①ー皇帝ユーゲント3世とプリシラ皇妃の第1子の娘。小さい頃から異母兄であるオリヴァルトの後ろをついて回る女の子であった。

 

②ー前世は、比企谷八幡という男子であり、恋人の香織や多くの親友達に囲まれて、幸せであったが、京都医療少年院から脱走してきた月城健也に殺される。

 

③ー

 

【得物】ー太刀

 

【マスタークオーツー】ー

 

 

【名前】ーカズマ・サトゥー

 

【誕生日】ー七耀暦1186年5月29日

 

【年齢】ー17歳→18歳(物語の中で)

 

【容姿】ー容姿は全体的に佐藤和真(このすば)と何なかわりはない。ちょっと背丈が少し高い。

 

①ー両親はノーザンブリア自治州出身だとオルディスの下町のシスターレイチェルがそう言っていたことを覚えているだけ。巡回神父であるアイザックがノーザンブリアで、カズマの両親を探すが、まだ分かってはいない。

 

②ー

 

【得物】ー双剣

 

【マスタークオーツ】ー

 

 

【名前】ーカーティナ・アルムホルム

 

【年齢】ー17歳→18歳(物語の中で)

 

【誕生日】ー七耀暦1186年10月15日

 

【容姿】ーエメラルドグリーンの髪の色のロングヘアーで、紫の瞳である。顔はちゃんと整っている。

 

【スリーサイズ】ーB84・W61・H86

 

①ー帝国正規軍の父親と専業主婦の間に生まれたカーティナ。父親は、第4機甲師団に所属している。カーティナ自身は、日曜学校でも優秀な成績を納めている。

 

②ーカーティナの前世は白崎香織という女の子であり、恋人の八幡と幸せに暮らしていたが、京都への修学旅行にて月城健也に八幡が殺される。そして香織達も千葉村へ向かう途中でロシア軍の攻撃で死んでしまう。

 

③ー

 

【得物】ー

 

【マスタークオーツ】ー

 

 

【名前】ースハルト・オルランド

 

【年齢】ー17歳→18歳(物語中に)

 

【誕生日】ー七耀暦1186年5月5日

 

【容姿】ー赤髪のロン毛の中肉中背の身体付きをしている。ランディをちょっと幼くしたような感じである。

 

①ー

 

【得物】ー警棒型変形型CAD

 

【マスタークオーツ】ー

 

 

【名前】ーアンジェリナ・ログナー

 

【年齢】ー17歳→18歳(物語中に)

 

【誕生日】ー七耀暦1186年12月12日

 

【容姿】ー髪の色は紫でお尻のあたりまでありロングヘアーである。姉であるアンゼリカを女性らしくした感じである。

 

【スリーサイズ】ーB86・W61・H85

 

①ー

 

【得物】ー大剣

 

【マスタークオーツ】ー

 

 

他のⅦ組メンバーは、原作の通り。

 

 

 

Ⅶ組メンバー関係者

 

【名前】ーアクアイア・ヴァンダール

 

【誕生日】ー1186年7月26日

 

【年齢】ー17歳→18歳(物語上に)

 

【容姿】ー青髪(クルトの髪の色)ロングでポニーテールをしている。つまりクルトの髪の色の八重樫雫である。

 

【スリーサイズ】B88・W59・H88

 

【得物】ー双剣

 

①ーヴァンダール家の長女として生まれる。幼き頃からヴァンダール流を叩き込まれながら幼少期を過ごす。そしてある時、自身の能力の停滞期に入り、実家を出て諸国を旅していたこともある。

 

②ーリベールの異変より帰国後にアンネリーゼの護衛に就任する。

 

 

【名前】ーシズカ・ヒラツカ

 

【誕生日】ー1176年5月17日

 

【年齢】ー26歳→27歳(物語中に)

 

【容姿】ー黒髪ロングでスタイルは抜群。(やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。の平塚静よりも良くなっている)それは容姿のこと。

 

【スリーサイズ】B88・W61・H88

 

【得物】ー籠手

 

①ー彼女はノーザンブリア出身であり、先祖は、日本人である。つまり幕末の動乱にてノーザンブリアに移民したってことになる。猟兵として活動していたが、とあるきっかけで、同じ同郷のサラと出会い猟兵から遊撃士に転職したのだ。前世の記憶は蘇っていない。前世は平塚静、現国教師であり奉仕部顧問。

 

②ーサラに誘われトールズ士官学院の教官に就職。帝国語と戦術。Ⅶ組の副教官。

 

 

 

【名前】ーマイン・サルナード

 

【誕生日】七耀暦ー1185年9月1日

 

【年齢】ー18歳→19歳(物語中に)

 

【容姿】ー容姿はとあるの雲川芹亜のような感じである。

 

【スリーサイズ】B90・H61・H90

 

【得物】ー導力銃、ひそか格闘術も。

 

 

①ークラスは、2ー4組。平民のクラスである。彼女は男女共に人気があり、一部の人間達には、アンゼリカと双璧だとも言われている。彼女はそんなことは気にしてはいない。

 

②ー水泳部副部長

 

 

【名前】ーシェルファニール・イーグレット

 

【誕生日】ー1185年7月14日

 

【年齢】ー18歳→19歳へ(物語中に)

 

【容姿】

 

ミュゼを大人っぽく髪を長くしたような感じ。髪の毛の色はパープル。

 

【スリーサイズ】B88・W58・H89

 

【得物】ー貴族の剣  

 

①ーイーグレット伯爵の娘。クラスは2ー1組。

 

②ー

 

 

名前ー司波深夏

 

【誕生日】七耀暦ー1189年3月25日

 

【年齢】ー14歳→15歳

 

【容姿】

 

魔法科高校の劣等生の司波深雪のような感じで、髪には焔の髪飾りを付けている。目は緋色である。

 

【スリーサイズ】B83・W56・H84

 

【得物】二刀銃(緋色の銃と銀色の銃)

 

①ー司波達朗と司波深夜との間に生まれた双子姉妹の姉である。妹は深雪であり兄は達也。

 

②ー四葉家の次期当主候補の1人でエージェントでもある。今現在はリベール王国のジェニス王立学院に留学中。

 

③ー

 

 

【名前】ー達也・ラインフォルト【旧名ー司波達也】

 

【誕生日】ー七耀暦1187年4月24日

 

【年齢】ー16歳→17歳

 

【容姿】

 

原作の達也とは違って、少し笑顔がある。それ以外は原作と変わらない。

 

【得物】2刀銃(白の銃と銀の銃(CAD))

 

①ー司波達朗と司波深夜の間に生まれた嫡男だった。深夏や深雪の兄。幼き頃から機械を扱うのが得意だった。それが幸いしてか、帝国の大企業であるRFから養子として迎えたいとされ、四葉家はそれに応じる。その際にRFと四葉家(FLT社)は提携を締結。もちろん帝国(革新派)と日本も同盟を締結。

 

②ーRFの養子になった後は、RFで次々と新作を取り上げ、RFをさらに成長させている。今では技術研究員兼開発責任者という役職もついている。

 

【名前】ーアルフィン・ライゼ・アルノール

 

【誕生日】七耀暦ー1188年7月7日

 

【年齢】ー15歳→16歳

 

【容姿】

 

原作のアルフィンのような容姿だが、活発であり小悪魔さや色気も増している。髪には焔の髪飾りを付けている(深夏からプレゼントされた髪飾り)

 

【スリーサイズ】B85・W57・H85

 

【得物】籠手(原作と違い籠手であるが、他の武器がつかえないわけではない)

 

①ー生まれつき謎の力を秘めており、その力を使って色々と活動している。

 

②ー

 

ーーーー

 

 

【名前】ー明智吾郎

 

【誕生日】ー1185年6月2日

 

【年齢】ー17歳→18歳

 

【容姿】

 

ペルソナ5の明智吾郎の容姿であり、裏の顔と表の顔を使い分けている。

 

 

ただし裏の顔の時は、無慈悲な鉄槌を簡単に下す。

 

【得物】ー??の剣

 

①ー日本やカルバードに置いては、名探偵明智として、事件解決をしている。日本やカルバードのマスコミや国民の間では、探偵王子だと言われている。だが自分達がやらかしている事件を操作して己の手柄にしているに過ぎないエセ探偵である。

 

【名前】ー通称・般若の面【(本名不明)】

 

【年齢】ー20歳→21歳

 

【誕生日】ー1183年8月8日

 

【容姿】ー般若の面を被っており、どんな容姿が分からない。

 

【得物】ー??の剣

 



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プロローグ〜転生前〜
プロローグー悲しみの修学旅行。


プロローグです。


八幡はずっと修学旅行中も悩んでいた。それは依頼のことである。

 

戸部の依頼。

 

海老名の依頼。

 

葉山の依頼。

 

これを3つとも成功させることなど不可能である。戸部の依頼は、海老名との恋の成就であり、海老名の依頼は、告白の阻止みたいなものであり、葉山の依頼は、グループを壊したくないというものだ。

 

はっきり言えば、告白してフラれて一緒のグループにいるのは気まずいし周りにも変な気持ちをかけることにもなる。だからグループとして壊れていくのも仕方がないのだ。

 

だが八幡や雅史や光輝が一緒にいるのは、綾音の件で2人が悪役を買って出ただけである。それは八幡に本気の気持ちになってほしくて、自分自身の気持ちに気がついてくれって意味も含んでいたからである。

 

だから八幡達グループは、壊れなかった。より強固なモノになったが、葉山グループはどうなるかはわならない。もしかすると壊れるかもしれない。だがそれには葉山は決心や気持ちが足りない。

 

 

ただ1つ八幡には気になることがある。

 

「人知れず八幡達の方に殺気がある目を向けている輩がいる」

 

八幡は、恋人である香織や雪乃、結衣達奉仕部面々と戸塚や陽介達の方を見渡しながら様子を探る。だが知った顔しかいない。

 

 

戸部が勇気を振り絞って、海老名に告白をしようとして言葉を放つ。しかし海老名は沈黙のままである。

 

八幡は心で、例えグループが壊れたとしても、何とか修復案を考え出してなんとかしてやろうと考え出したときに、戸部と海老名がいる向こうからフードを被った何者かが2人へ向かって、包丁を取り出して向かってくる。周りの人間達はパニック状態に。

 

そんな中八幡は、走り出す。もちろん戸部達のために。

 

戸部は包丁男に気が付き、海老名の盾になるような格好になる。包丁男は包丁を振りかざし

 

「しねぇ!!」

 

戸部の腕を包丁が掠り、そこから真っ赤な血が滲み出てくる。

 

「戸部っち、大丈夫!」

 

「か、掠っただけ、だよ」

 

包丁男は、再び戸部達に襲いかかる。戸部は海老名を守るように抱え込む。

 

「させるかよっ!!…ごふっ!!…」

 

戸部と海老名は、目の前に包丁が刺さった男子生徒がいる。それは八幡だと認識するまで時間が少し掛かった。そして八幡は2人に

 

「戸部ェ!はや…く、海老名さんを連れて逃げろォ…」

 

「ヒ、ヒキタニ君!キミは…」

 

「イヤぁー比企谷君!!」

 

「はや…くしろ!!戸部ェ!海老名さんを守れ!」

 

言われるままに、戸部は海老名を連れて走り出す。

 

パニック状態になっていた一行も八幡が刺されたことがわかり、向かって来ようとするが、包丁男が喋りだす。

 

「やっと会えたな、比企谷八幡!」

 

「お、お前は、月城健也!お前は京都の医療少年院に…」

 

月城は、突き刺した包丁を抜いて、再び八幡に右足に突き刺した。

 

「がはっ……くっ、そうか、修学旅行前のニュース、京都の医療少年院の脱獄の少年ってお前だったわけか!」

 

腹部と右足が鮮血に滲む中、八幡はよろよろと立ち上がり月城を見据える。そんな八幡に対して月城はどす黒い表情で

 

「俺は貴様に復讐するためにやって来たんだ。貴様の大切なモノを殺して貴様の悲しむ顔をみたいからな!」

 

「復讐…お前まだ綾音のときの…」

 

「うるさいっ!貴様が彼女の名前を口にするんじゃねーよ!」

 

八幡の顔面を蹴りを入れて吹き飛ばす。

 

「てめぇは、綾音を襲った犯人じゃねーか!」

 

八幡は、痛みで身体が痛いが、それでも立ち上がって月城に顔面に一撃を加える。 一撃を食らった月城は真後ろへ吹き飛びそれと同時に包丁も吹き飛んだ。

 

八幡がヨロヨロしながらみんなのところに向かおうとしたら、背中から包丁で月城から刺された。

 

「比企谷八幡!」

 

「月城健也…てめぇは…」

 

しかし八幡は、肘打ちを顔面に直撃させて、真後ろへ吹き飛ばす。今度こそ、月城を倒した。

 

だが後ろから悲鳴が上がっているが、それと同時にサイレンが鳴り響いていて、警察や救急車がやってきたことにみんなは気がつくのであった。

 

八幡は京都の病院に運ばれたが、そのまま帰らぬ人になってしまった。

 




次は女神との対峙ですね。あと香織達のその後もあります。


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プロローグー生まれ変わり。

プロローグです。


八幡はふと目を開けると、真っ白な部屋の中にいて椅子に座っている。部屋の中には、小さな事務机と椅子があり、その椅子には誰かが座っている。

 

もし女神がいるとしたらこんな女性ではないかと八幡は考えていた。銀髪のロングの髪に自分達の世界では、コスプレになるような服装である。

 

「比企谷八幡さん、貴方は亡くなりました。ようこそ死後の世界へ。比企谷八幡さん、包丁男こと、月城健也との件で」

 

「そうですか…俺は死んだんですが…」

 

「ええ」

 

八幡は、香織達のことを思い出していた。前恋人であり、亡くなってしまった綾音のことで、ショックを受けていた八幡に希望と生きる意味を与えてくれた現恋人の香織。小さい頃から八幡の友で有り続けた雅史。姉、綾音の死を乗り越えて、健気にやっていっていた綾香。八幡と綾音の命の恩人である雪ノ下陽乃と城廻めぐり。奉仕部の同じ部員であり、部長の雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣。1年2年同じクラスだった吹寄制理。八幡に助けてもらった花村陽介、巽完二、材木座義輝。八幡のライバルで友の天之河光輝、香織と八幡の親友の雫とかおり。綾音と八幡の親友の緑子と七海。高校からの友である戸塚彩加、戸部翔、葉山隼人。月城の件で陽乃以外の協力者だった白鐘直斗。新聞配達の先輩の山本先輩、現国の教師で奉仕部の顧問みたいな平塚静。

 

 

色んなことが走馬灯のように蘇ってきた。

 

そして香織のことばかり気になり始める。

 

「俺は香織を幸せに出来たのか…」

 

八幡は、そんなことばかり考えていたが、やがて目の前の女神に問う。

 

「あのあと、俺が死んだあとのあいつらはどうしてますか?」

 

「賢明に生きてますよ。特に貴方の恋人だった香織さん、妹さんの小町さん、貴方の前恋人の綾音さんの妹の綾香さんの落ち込みようは酷いものだったようです。それと貴方が助けた戸部さんと海老名さんの落ち込みようもですが」

 

「そうですか…」

 

女神の話によれば、香織、小町、綾香の3人は修学旅行の後、学校を不登校になり、拒食症を発症したという。雪乃、結衣、吹寄の3人も香織達のようになってはいないが、彼女達からも笑顔が消え生きる屍のようになっている。

 

雅史、光輝、陽介、完二、葉山は、八幡が好きだったサッカーに打ち込むことで、彼を喪った悲しみを打ち消していると。もちろん戸部も。

 

戸部と海老名も付き合うことは無かったが葉山グループは、八幡の死により、より強固な感じに結びついた。

 

戸塚は、八幡との練習を思い出しながら、ひたすら練習をしている。

 

材木座は、八幡との思い出を小説をするためにひたすら文章を書いている。

 

雫、緑子、七海、かおりは、八幡の死にショックを受け、機能停止状態になったが、八幡の言葉を胸に必死に立ち上がり生きている。

 

八幡と綾音の命の恩人である陽乃、めぐりは、一時期は悲しみに沈んだが、彼と彼女の意志を受け継ぐために、歩みだした。

 

川崎も家計の事で助けてもらったこともあり、感謝の気持ちを忘れないようにしている。

 

平塚先生も八幡を喪ったことは、かなりショックだった。一時期は酒に頼っていたが、夢に現れた八幡にカツを入れられ、立ち直ったようだ。

 

 

八幡の目からは、涙が溢れてきていた。拭っても拭っても涙が溢れてくる。彼は自分がいかに果報者だったかを思い知らされた。

 

「俺は、俺は、香織!小町!綾香!雅史!…」

 

八幡はただ恋人や妹達の名前をただ叫んでいた。女神もその様子を見て、心を痛めていた。しかし女神もこれからのことを伝えなければならない。いつまでも彼をここに置いとく訳にはいかないのだから。

 

「自己紹介がまだでしたね。私の名前はエリス。本来なら別の世界線の女神ですが、ここの女神である先代のアクアは、事情により退席、私が代理を務めています」

 

「諸事情ですか…女神様にもそういうことがあるんですね」

 

「ええ、誠ながらにイレギュラーが発生しまして」

 

女神エリスは、申し訳ない気持ちでいっぱいで八幡を見ている。

 

「比企谷八幡さん、貴方は若くして相応しい功績を残していらっしゃいます。そんな貴方には、2つの選択肢がございます」

 

「功績ってあれはみんなとやり遂げだけで…えーと2つの選択肢ですか?」

 

「はい、1つは人間として生まれ変わり、新たなる人生を歩むか。もう1つは、天国的な、ところでお爺ちゃんみたいに暮らすの2つですね」

 

八幡は2つめが気になりエリスに聞いてみる。

 

「爺さんみたいな生活とは?」

 

エリスの説明によれば、八幡達が想像するような世界ではないようだ。食べ物な必要無し、物も生まれない、作る材料も無し。何も無い尽くしの世界が天国のようだ。

 

「それは暇そうな世界ですね…なら生まれ変わって新たなる人生を歩むしか選べないじゃないですか」

 

エリスは、ちょっと複雑そうな表情をしている。そしてそちらの世界も問題だらけであることを告げられる。

 

生まれ変われる世界は、ランダムであり無事に平和の日本の世界に生まれ変われる確率は少ないという事。世界のほとんどがドラクエ、FF、テイルズのようなファンタジー世界である。女神協会から平和の世界に転生させるより、死人が多い世界に転生させる方針であると説明を受けた。

 

「それってほとんど選択肢は無いのと同じでは?」

 

「はい、そうですね。私の一存ではどうにもできません。すいません」

 

エリスは深々と頭を下げる。八幡は慌てて

 

「エリスさんは悪くありませんよ、俺のことも心配してくれてるわけだし」

 

「ふふっ、八幡さんって以前ここにいらっしゃった綾音さんが言われたとおりの方ですね」

 

「綾音が!?エリスさんっ綾音はここに来たんですか?」

 

八幡はエリスを肩を掴んでそう聞いた。まさかここに来て綾音の話を聞くとは思わなかったからだ。綾音から八幡のことを聞いていたのだ。まさか八幡自身が来るとは思ってはいなかったが。

 

「綾音は、綾音はどんな選択肢を?」

 

「綾音さんですか、本来なら機密事項ですが、八幡さんだから特別ですよ、彼女は異世界転生を望み、転生していきました。彼女は分けれ際に今度は元気な身体で生まれ変わりたいって言われてました」

 

「ふっ、綾音らしいな。さてと俺も覚悟を決めるか、やってくれエリス」

 

「はい、わかりました」

 

エリスは転生の門を開く術式を唱える。すると転生の門が開く。

 

「比企谷八幡さん、貴方はこれから異世界の世界に転生します。その世界で無事に寿命を全うしてくださいね。自己犠牲も程々に」

 

八幡の身体は、宙に浮き上がり転生の門に吸い込まれていく。八幡は、みんなの幸せを願いながら転生の門の中に吸い込まれて、再び門が閉まる。

 

「比企谷八幡さん、転生先でお幸せに」

 

エリスは、再び事務机の椅子に座る。机の上にある転生帳を見てみる。

 

比企谷八幡の転生先は、【女神エイドスの世界のゼムリア世界】

 

【女性として生まれ変わる】

 

 

 

エリスは、クスッと笑い

 

「比企谷八幡さん、雪柳綾音さん、あなた達は、よほど運命に引き寄せられる星にあるようです」

 

雪柳綾音の転生先も【女神エイドスの世界のゼムリア世界】

 

【男性として生まれ変わる】

 

「八幡さん、綾音さんが再び出会いますように」

 

エリスは手を合わせて2人の幸せを祈った。

 

「ゼムリア世界は、一癖も二癖もある世界です、だから気をつけてください」

 

 

そして残された香織達の未来を覗いてみる。すると驚きの未来を見ることになる。

 

「これって、まさか!」

 

エリスは深刻な表情で現世を見つめることしか出来なかった。

 

 

八幡が居なくなった世界で何か起こるのは明白であった。

 

 

 

 

ーーゼムリア世界

 

女神エイドスを崇める世界であり、数十年前の導力革命以降目覚ましく発展してきた世界である。しかし発展の裏側では、どれだけの涙が流れたのか分からない。

 

発展した国々は、巨大な富を得る。しかしそうではない国々は、貧困が広がり格差を広げる。

 

そういうことで爭いが絶えなくなった西ゼムリアであった。

 

七耀暦1187・08・08日

 

1人の女の子がとある両親のもとに誕生する。




アンケートを取りますので、お願いします。


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プロローグー八幡亡き世界。

プロローグ3話です。


八幡がこの世を去り、2ヶ月が過ぎ季節は秋から冬へと変わっていく。しかし変わらないものもあった。それは八幡が死んだという事実。

 

その事実を受け入れて、前へ進みだした者。

 

その事実をまだ受け入れずに立ち止まってしまっている者。

 

大切な人間を喪って落ち込まない人間なんかいないだろう。それでいても必ず人は、前へ進まなきゃならない時が来る。その時に大切なのは、当事者をいかに支えてくれる人間も大切なことである。

 

それがあるかないかで、当事者の運命が180度全然違う道を歩むことにも成りかねないのだ。

 

だからあの時、みんなで楽しめたイベント。その千葉村にみんなで行くことに。

 

 

初めは平塚先生の策略で始まった千葉村での奉仕部合宿イベントであったが、そこで知り合った小学生の団体と交流を深めていった。その中の一部の小学生達が八幡達のとこにやってきて、あのときのお兄さんお姉さんグループだと言ったことで、2年前の小学生グループだと気づく。

 

あの時は、雅史達のサッカー部の励ましの意味と綾音の励ましの意味だけだったが、小学生達の誕生日を祝う意味にも変わっていったのだ。

 

八幡はギター&ボーカル、陽介はベース、雅史はキーボード、完二がドラムというにバンドで小学生達を祝ったのだ。

 

FUNKY MONKEY BABYSの【あと一つ】

 

DEENの【夢であるように】

 

HAPPY BIRTHDAYの歌

 

を歌い小学生グループは大いに楽しんでくれたのだ。その時の小学生グループが再びやって来てるのだから、八幡や香織や陽介や完二は驚いていた。

 

小学生のグループと八幡達は2年ぶりの交流会になり、飯盒炊爨や肝試しなどをやって交流を深めるのだが、その中で鶴見留美という子が孤立していることに八幡は気づく。留美は昔の綾音と重なる部分があり、積極的に留美に話しかけ何とか仲間に入れるように動く。

 

たまに1人でいることは別に悪いことではない。それが好きでいるのなら。だがそれが悪意の中でそうされてるのなら、それは許されたものではない。

 

だから八幡は動く、悪意で誰かが泣いてしまうのを止めるために。かつて綾音を悲しみの中から救い上げた八幡だから。

 

雅史も光輝も出来なかった。もちろん葉山も八幡のようなことは出来ないと思っている。

 

そして合宿の後半に留美が川沿いの花を取ろうとして、足を滑らせて川に落ちた。その場にいた小学生グループは、パニック状態になり、右往左往していた時、八幡が川に飛び込み何とか留美を救い出し、彼女の命を救った。

 

生への執着があまり無かった留美を泣きながら怒り、そして諭した。彼女にそこまで言ってくれる人間がいた事に気づき、彼女も泣き出した。

 

その後は、合宿が解散し帰るときまで、八幡に懐いていた留美。もちろん嫉妬心を出す香織と綾香。

 

 

そんな思い出も過去の話。

 

今はその中心にいた人物

 

比企谷八幡がいない。

 

京都への修学旅行に行った際に京都医療少年院からの脱獄してきた月城健也に殺された。

 

彼は戸部と海老名を守ろうとして殺されたのだ。

 

月城健也、香織達にとっては憎い存在、八幡の仇とも言える存在。

 

その月城健也は、比企谷八幡に対する殺人容疑で警察に逮捕されるが、留置所にて自殺する。

 

怨みの対象、仇の死は、もっと認めたくない。

 

 

それが世界の歪みを広げてしまった。

 

世界に憎しみと悲しみを広げてしまった。

 

それが誰かの銃の引き金を引かせることになってしまった。

 

現実世界では、ロシアはウクライナに侵攻し戦争に発展する。

 

それが全ての人間に苦しみや絶望を浸食してくる。

 

この八幡達の世界では、露国が日本に侵攻し全てを奪う。人々の幸せも富も全て。

 

千葉村へ向かっていた香織達は、露国が放ったミサイルが近くに着弾、走っていたバスを衝撃波で吹き飛ばされ、谷底にバスは落下してしまう。

 

香織達の意識は、落下の衝撃により自然と消えていく。

 

 

 

「山岸緑子さん、高橋七海さん、高山雅史さん、ようこそ死後の世界へ」

 

緑子、七海、雅史は、真っ白な部屋の中にいて椅子に座っている。部屋の中には、小さな事務机と椅子があり、その椅子には誰かが座っている。3人は互いに顔を見合わせながら座っている誰かに目線を合わせる。そして座っている誰かが喋りだす。

 

「貴方がたは、バスの転落事故で亡くなりました。原因は某国のミサイル攻撃ですが…」

 

「わ、私達は死んだの?」

 

「ええ、申し訳ないないですが、貴方がたは亡くなったからここに来たのです」

 

「あのとき、バスが転落する前、近くにミサイルが着弾したんだよね?」

 

「ああ、あれはミサイルだ。おそらくは露国のだろうが」

 

「なんで露国ってわかるの?」

 

雅史が露国だと言ったあとに緑子がなぜわかるのと聞く。すると七海が

 

「ニュースで言ってたよ。ウクライナか日本かって」

 

「うーん、今はあまりニュースを見てないんだ。殺人事件とかあると思い出しちゃうから」

 

緑子は、苦笑いをしながら雅史と七海にそう言ったのだ。もちろん雅史や七海だって殺人事件のニュースを見るのは辛い。辛いと言っていつまでも目を背けるわけにはいかない。でも背けるだけではダメだと行動に移したのだ。座っている誰かがが再び話し出す。

 

「私の名前は、エリス。女神のエリスと申します。貴方がたは、あの比企谷八幡さんと深い縁で結ばれた方々ですね」

 

緑子、七海、雅史は、八幡の名前を聞いて驚く。まさかここで八幡の名前を聞くことになるとは思わなかったからだ。雅史はエリスに聞く。

 

「エリスさん、ここに八幡が来たんですか!」

 

「ええ、貴方がたの縁で言えば、最初に綾音さん、そしてその後八幡さんがここを訪れました」

 

緑子達は、八幡と綾音の名前を聞いて驚くのであった。そして

 

「ええ、お2人ともお話をしました。綾音さんも八幡さんも貴方がたのことを心配されてましたから」

 

「ふっ、八幡と綾音らしいな。死んでもなお他人の心配をするんだからな」

 

「そうね」

 

「そうだね」

 

エリスは、しばらくそんなやり取りを聞いていたが、平和の日本からの異常状態が始まっており、女神協会からは日本からの死者は、異世界転生をするように言われている。

 

「これから貴方がたを異世界へ転生させます。綾音さんも八幡さんも異世界転生されました」

 

「それって、生まれ変わった八幡や綾音に再び会えるってこと?」

 

「ええ、絶対とは言えませんが、会える可能性はあるでしょうね」

 

「なら、エリスさんお願いします」

 

「私も覚悟は決めたわ」

 

「あの2人に会えるのなら私も」

 

「わかりました」

 

 

エリスは転生の門を開く術式を唱える。すると転生の門が開く。

 

「山岸緑子さん、高梨七海さん、高山雅史さん、貴方がたはこれから異世界の世界に転生します。その世界で無事に寿命を全うしてくださいね」

 

3人の身体は、宙に浮き上がり転生の門に吸い込まれていく。3人は、再び八幡と綾音に会えるのを願いながら転生の門の中に吸い込まれて、再び門が閉まる。

 

「3人とも、転生先でお幸せに」

 

エリスは、再び事務机の椅子に座る。机の上にある転生帳を見てみる。

 

山岸緑子の転生先は、【女神エイドスの世界のゼムリア世界】

 

再び山岸緑子としてカルバード共和国にて生を受ける。

 

高梨七海の転生先は、【女神エイドスの世界のゼムリア世界】

 

再び高梨七海としてカルバード共和国にて生を受ける。

 

高山雅史の転生先は、【女神エイドスの世界のゼムリア世界】

 

再び高山雅史としてカルバード共和国にて生を受ける。

 

エリスはそれを見て、驚いていた。

 

「みなさん、八幡さんと綾音さんと会いたいという気持ちが強い意志を生み出すということでしょうか」

 

そして再びエリスは来訪者に同じ説明をするのであった。

 



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プロローグー香織達4人は。

プロローグの最終話です。


真っ白な部屋の中にいて小さな事務机と椅子に座って作業をしている女性がいる。

 

その女性は、女神であり名前をエリスという。これまで綾音や八幡、雅史、緑子、七海と転生に関わった女神である。八幡達だけではなく、日本からの死者を全て彼女が1人で執務をこなしている。

 

日本と露国の戦争になっており、民間人の犠牲者がどんどんと出ている。八幡達の縁者の者達も何人もやって来ていて、みんなゼムリア世界へ送った。

 

そしてまた八幡達の縁者がやって来た。

 

その4人は椅子に座っている。その4人とは、香織、雪乃、結衣、葉山である。4人は、女神エリスの方を見ている。それを見たエリスはいつもの言葉を言う。

 

「白崎香織さん、雪ノ下雪乃さん、由比ヶ浜結衣さん、葉山隼人さん、ようこそ死後の世界へ。貴方がたはあのバスの転落事故にて、生涯を閉じたのです」

 

「ゆきのん、かおりん、やっぱりあたし達、死んじゃったんだ…」

 

「あの落下事故なら、間違いなく私達は助かる可能性は低かった…から」

 

「バスの近くにミサイルが着弾したから、その衝撃波からは逃げられる方法は無かったと思う」

 

「あの〜雪乃、結衣、葉山君、状況分析してる場合なの!?目の前に女神様がいることに驚かないの?」

 

香織は状況分析をしている雪乃と葉山と結衣にツッコミを入れる。

 

「あっ!?そうだよっゆきのん、隼人君、あたし達女神様の前にいるんだった!」

 

「落ち着きなさい、結衣、それに香織。私だって本当は驚いているのよ」

 

「僕もだよ。本当は驚いているよ。まさか女神様なんか現れるんだからね」

 

「女神様、あたし達は天国に行くんですか?」

 

「まあ、天国にも行けなくはないのですが、今は非常事態ですのでそちらにはいけません」

 

「どういう事ですか?」

 

葉山がエリスにそう聞いた。するとエリスが説明する。

 

今は日本がある世界は、平和世界と言われており、本人が望めば、天国に行けるのだが、戦乱世界の人口が減る一方であるため、少し前から平和世界がある日本の死者を戦乱世界の住民として転生させるのが女神協会が決定したのである。

 

 

そして日本と露国の戦争で罪もない民間人が死んでいく。

 

女神が直接その世界の出来事に関与は出来ない。

 

だからどうすることも出来ない。ただ見守るだけ。そして死者に新たなる転生先を導くだけ。それでもエリスは、

 

「貴方がたも比企谷八幡さんと強い縁で結ばれてるようですね」

 

「ヒッキー!?女神様、ヒッキーを知ってるの!?」

 

「ええ、彼もここに来て新たなる世界に転生していきました。みなさんのことを心配されてましたよ」

 

「比企谷君らしいな」

 

「ヒッキー…」

 

「比企谷君、貴方という人は…」

 

「コホン、これまで、比企谷八幡さん、雪柳綾音さんとの結びつきが強い方々が、私のもとにやって来ました。やはり貴方がたは、絆という力が余程結びつけてるということですかね」

 

香織、雪乃、結衣、葉山は、それぞれを顔を見合わせて、それぞれの覚悟を決めた表情をして決意する。

 

「エリスさん、僕達を比企谷君達が転生したという世界に転生させてください」

 

「エリス様、お願いしますっ!」

 

「私からもお願いします」

 

「私も八幡君にもう一度会いたい、会って話がしたいから」

 

「みなさん、必ずしも同じ世界に転生しても、八幡さんに出会える可能性は低いですよ。それでも同じ世界に?」

 

【「はい」】

 

エリスの再度の問に香織達は迷いなく返事をやった。

 

「わかりました、もう問いません」

 

エリスは転生の門を開く術式を唱える。すると転生の門が開く。

 

「白崎香織さん、雪ノ下雪乃さん、由比ヶ浜結衣さん、葉山隼人さん、貴方がたはこれから異世界の世界に転生します。その世界で無事に寿命を全うしてくださいね」

 

4人の身体は、宙に浮き上がり転生の門に吸い込まれていく。4人は、再び八幡と綾音に会えるのを願いながら転生の門の中に吸い込まれて、再び門が閉まる。

 

「4人とも、転生先でお幸せに、どうか転生先にて八幡さんに出会える事を祈ってますね」

 

エリスは、再び事務机の椅子に座る。机の上にある転生帳を見てみる。

 

白崎香織の転生先は、【女神エイドスの世界のゼムリア世界】

 

カーティナとしてエレボニア帝国にて生を受ける。

 

雪ノ下雪乃の転生先は、【女神エイドスの世界のゼムリア世界】

 

再び雪ノ下雪乃としてカルバード共和国にて生を受ける。

 

由比ヶ浜結衣の転生先は、【女神エイドスの世界のゼムリア世界】

 

再び由比ヶ浜結衣としてカルバード共和国にて生を受ける。

 

エリスはそれを見て、驚いていた。

 

「みなさん、八幡さん達と会いたいという気持ちが強い意志を生み出すということでしょうか」

 

前に訪れた方々を含め、再び同じ人格と姿で生まれ変われるのが多いのが気になったエリス。しかし八幡や綾音、香織さん達のように違う人格、姿で生まれ変わることもある。追われる者、追う者の違いがあるのだろうか?

 

エリスはそんな事を考えていたのだった。

 




アンケートの結果、女の子(八幡)の転生先は皇族(アルノール家)に決まりました。

皆様ご協力ありがとうございました。


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プロローグートールズ士官学院へ。

プロローグ最後です。


 

西ゼムリア、2つの大国が互いに競い合いいがみ合い、たまには大きな戦いまでが起きてしまった。

 

2つの大国、1つは、西側に位置する立憲君主制国家であるエレボニア帝国。今では軍事大国としても君臨している。

 

もう1つ大国、帝国よりも東側に位置するカルバード共和国。共和制国家。元々は王政だったが、革命より王政が倒され共和制と移行した経緯がある。

 

 

この他には、帝国と共和国の間には、クロスベル自治州という火種がくすぶり続けている。互いに領有権を主張し紛争を何度も繰り返し悲劇を起こした哀しき場所である。

 

エレボニア帝国の真南にはリベール王国があり、ちょっと前に両国間で戦争が起き、帝国軍がリベール王国軍を追い込むが、とある人物の登場により、王国軍が帝国軍を撃破し国境の外まで追い返した。そんな歴史を持つ国でもある。

 

 

周りの国々の紹介はこれくらいにして、八幡はどうなったのか。彼は彼女として七耀暦1187年8月8日にエレボニア帝国皇帝ユーゲント3世とプリシラ皇妃との長女、アンネリーゼ皇女として生まれ変わる。

 

 

アンネリーゼとして生まれた八幡は、自分が女の子で生まれ変わったことにビックリした。当たり前だろう仮にも前世で17年間男であったため、戸惑いもあった。だがそんなことを抱いても赤ん坊であるアンネリーゼ自身には何も出来なかった。

 

プリシラ皇妃や異母兄であるオリヴァルト、お手伝いの人達に支えられ育っていくアンネリーゼ。小さい時には、前世の男の時のクセがあり、喋り方が俺とか、座り方が男座りだったため、お手伝いさんやプリシラ皇妃に女の子として、教育もされたのだ。

 

その後、双子の妹弟(アルフィンとセドリック)ができ、姉としての自覚も目覚め、女の子としてより育ち始める。

 

異母兄であるオリヴァルトに強い憧れを持つようになり、彼の後ろをついて回るようになる。

 

それは、オリヴァルトのように何かに囚われることなく自由に飛び回り、何かを成す、かつての、前世の自分のようになりたいと思い始める。

 

アンネリーゼは、武芸を習うべく、バルフレイム宮の近衛兵の将兵である太刀使いで八葉一刀流のムラクモ・ヤンに弟子入りする。

 

太刀の素質に気がついたムラクモは、師匠であるユン・カーファイにアンネリーゼを紹介する。まあアンネリーゼ自身の頼みでもあったのだが。

 

アンネリーゼは、父と母に許可をもらいユミルの山奥でユン・カーファイと同じくユミルの領地のシュバルツァー男爵のご子息のリィンと修行をやった。

 

 

そしてアンネリーゼは、オリヴァルトの旅に同行することに。それは自身の見聞を広げるためと、転生前に誓った綾音を探し出すためでもあった。

 

こうしてリベールの異変に巻き込まれていき、オリヴァルトと共にリベールで色んな人と出合ったのだったのだが、綾音の生まれ変わりに出会いことは出来なった。

 

 

リベールからの帰国後、オリヴァルトがとある計画を立て、それを実行に移す。

 

そのとある計画とは、士官学院であるトールズ士官学院にある改革をやりたいのだ。

 

現行だと、貴族クラスと平民クラスが分かれているのだが、それを一緒にした混成クラスを設立したいと考え出したのだ。

 

リベール冒険時、カルバード共和国の知り合いができ、共和国の有名学院であるアラミス高等学院の実情を教えてもらったのだ。

 

これからの時代を考え、オリヴァルトは激動を乗り越えられる人材の育成に力を入れたいと、学院の3理事と理事長に説明し納得させる。

 

こうして、トールズ士官学院特科クラスⅦ組の設立へ動いていく。

 

 

ー七耀暦1204・2月05日・バルフレイム宮・オリヴァルトの執務室。

 

綺麗な緋系で統一された色で、高価な装飾品が飾られており、絨毯も緋系で統一されている。

 

ここはオリヴァルト皇子の執務室である。

 

ここで執務を行なう場所であり、要人ともここで会ったりするのだ。そんなところに妹であるアンネリーゼが訪れる。16歳になった彼女は、妹であるアルフィンを大人っぽくした感じで、少女から大人の中間にいる感じに成長している。

 

「お兄様、何かわたくしに御用でございますか?」

 

「リーゼ、来てくれたのはありがたいのだが、敬語はいらないんだが」

 

「お兄様、ここは公の場ですので、敬語は必至ですわ」

 

「そう言わずにリーゼ、いつものように」

 

オリヴァルトがリーゼにそんなことを話していると、ドアがノックされる。ドアの外から声がする。

 

「オリヴァルト皇子、お呼びでしょうか?」

 

「ああ、シズク、ドアは空いてるから入って来てくれ」

 

「はい、入ります」

 

そう言いって入ってくる人物、黒髪にポニーテールに結んでいて、女性騎士らしい格好をした女性であり、もちろんアンネリーゼの護衛である。名前はアクアイア・ヴァンダール。名前がアクアイアなのにシズクと呼ばれているのは、意味があるのだがそれについては後程。

 

オリヴァルトの護衛であるミュラー・ヴァンダールの妹である人物である。

 

「リーゼ、いえ、アンネリーゼ皇女殿下もいらっしゃいましたか」

 

「わたくしもいますが、シズクも呼ばれたのですね」

 

「ということは、アンネリーゼ皇女殿下も」

 

「そうですわね。それでお兄様は、わたくしやシズクをお呼びになって何をされるんですか?」

 

「リーゼもシズクも私がトールズ士官学院にあるクラスを設立したいことは分かってるよね?」

 

「もちろんですわ」

 

「ええ、存じ上げています」

 

「多方面との交渉していたおかけで、トールズ士官学院に1クラスだが、私の夢が叶ったクラスが設立される。そのクラスの名は、特科クラスⅦ組に決まったよ」

 

「特科クラスⅦ組ですか」

 

「それがオリヴァルト皇子の意志が組まれた、貴族と平民の混成クラス」

 

「リーゼもシズクも、肌で感じてるだろう、今の帝国がどんな状況に置かれ、どこに歩んで行こうとしてるのかを」

 

今の帝国の現状、貴族派と革新派の対立は年々と激しさを増している。革新派が主体である宰相オズボーン派は、着々と帝国正規軍の増強に舵をきり、貴族派もカイエン公を中心に己の軍隊である領邦軍の戦力増強に務め、民衆に増税を打ち出している州もあるときている。

 

こんなことの行き先はどこに行くのか、誰にでもわかる回答しかない。

 

最悪、帝国内の内戦ってことも考えれるのだ。

 

そんな状態に風穴を開けたいのが、オリヴァルト皇子。貴族派、革新派の二大勢力に新しい風、第三勢力を巻き起こしたいからだ。

 

「貴族派は、革新派がやることを一々反対をする」

 

「革新派も貴族を旧体制の遺物だと述べて対立を煽っている節々も感じますが」

 

「私やリーゼ、外国を旅していたシズクのような感性を持つ若者を育てたいのだよ」

 

「それで、お兄様、わたくしやシズクにクラスの設立の件でご報告に?」

 

アンネリーゼは、オリヴァルト皇子にそれだけなのか聞いてみたが、彼はニコニコしながら彼女を方を見て答える。

 

「それだけじゃないんだよ。本題はここからなんだ。先程のⅦ組の件だが、リーゼにもⅦ組に参加してもらうことになった」

 

オリヴァルトの発言にアンネリーゼとアクアイアは、顔を見合わせながら驚く。まさかアンネリーゼにトールズ士官学院、それも自らが設立したクラスであるⅦ組に妹であるアンネリーゼを入れるのは、色々と訳があるのだ。

 

「わたくしがですか?」

 

「トールズ士官学院は、皇族男子しか行けないのでは?」

 

「もちろんそうだ。でもそのあたりからも変えていく必要があると思う。これからの時代を乗り越えていくのならなおさらね」

 

「…お兄様、わかりましたわ。Ⅶ組に、トールズに行きます。わたくしは、お兄様の背中を見て育ってきたのですから」

 

「リーゼ…立派な兄の背中だったかは自分ではわからないけどね」

 

こうしてアンネリーゼがトールズ士官学院に受けることになり、見事に合格するのであった。

 




これにて、プロローグは最後になります。次回からは、入学編です。


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第1章ー入学編〜新たな出会い〜
第1章ー入学編ー6ー1話ー入学。


第1章入学編1話です。


ー七耀暦1204・3月31日・06:45・帝都ヘイムダル・バルフレイム宮・アンネリーゼの部屋。

 

今日はトールズ士官学院の入学式があり、この部屋にいるのも今朝が最後である。トールズ士官学院は、全寮制で2年間学院生活を送ることになるのだ。だから2年間に必要な荷物は先に送っている。

 

当のアンネリーゼは、真紅の制服を着て姿見の鏡で身嗜みのチェックをやっていた。そこにアクアイアがやって来て

 

「リーゼ、身嗜みのチェックしてるの?」

 

「ええ、確かめていますわ」

 

アクアイアは、そんなアンネリーゼを見て苦笑する。

 

「シ、シズク、なに笑ってるのよっ!?」

 

「クスッだって笑いたくもなるでしょう。()()()()()()()()()()()()()()()()笑いたくもなるでしょ?」

 

「わたくしも最初は驚きましたわ。男性言葉や男性の仕草などは、お母様やお付のメイドさん達から直されましたわ。それにしてもシズクは、アクアイアとして女性に生まれ変わったようですし」

 

アンネリーゼとアクアイア。お互いが前世の八幡と雫だとわかったのは、出合ったあとである。アンネリーゼとオリヴァルトが、リベールのエステル達と異変に立ち向かっている最中に武者修行の旅をしていたアクアイアと出会う。出合った時には、わからなったが、アンネリーゼとアクアイアが剣を交えて戦った時に初めて前世の互いの気配を感じたのだった。それからは、互いにこの世界での報告を受けたり、前世の自分達の死因などを話した。

 

アンネリーゼは、雫だけではなく香織達もこの世界に、来ていることを悟った。

 

だからこそのトールズ士官学院の意味合いも強くなるのだ。生まれ変わった年代が同じならアンネリーゼ世代だという可能性も高い。

 

「私も生まれた家系にビックリしたわよ。まさか皇族を守護する家系とは思わなかったから」

 

「ヴァンダール家で驚くなら、わたくしなんて、アルノール家ですわよ?」

 

「そうね、香織や光輝、雅史君達が見たら驚くよね」

 

「そうですわね」

 

そんな話をしていたら、時間が着々と過ぎていく。アクアイアもそれに気づき

 

「ほらっリーゼ、もう時間よ。入学式に遅刻なんてしたら、面目が立たないわよ」

 

「わかってるわよ」

 

アンネリーゼは、自分の荷物のアタッシュケースを持ち、学院から送られてきたリベールでお世話になったエニグマのようなオーブメントが入っているショルダーを身に着け、学院の入学式のパンフレットを手提げ鞄に入れる。

 

「これで完璧ですわね」

 

「リーゼ、無理はせずに頑張って」

 

「無理はしないわ。ちゃんと休息だって取りますから」

 

アンネリーゼは、自身の得物、太刀をちゃんと装備する。

 

「それでは、シズク、行ってまいりますわ」

 

「リーゼ、お気をつけて。何事もなく2年間をお過ごしください」

 

アンネリーゼは、自室を出て非常用の出入り口を目指す。ここは名前の通りで、万が一のための非常用の出入り口。過去に一度使われた事があるが、それ以降は使われてはいない。だからかび臭くジメジメとしている場所である。

 

なぜこんなところを通るのかと言えば、正面から出ると、目立ってしまい色々と面倒である。目立って行くより静かに最寄りの駅であるヘイムダル中央駅に向かうのがよいからだ。

 

だが、アンネリーゼが頻繁に使うのがわかってアクアイアや他の協力者と協力して、綺麗な通り道にやった経緯がある。

 

「シズク、気を利かせてこんなに綺麗にして」

 

アクアイア達が奇麗にした非常用の出入り口からバルフレイム宮の外へ出た。朝日がアンネリーゼの入学を祝福しているように当たっている。

 

通勤通学の時間帯よりも前であるが、モタモタしていたら、通勤通学の波に巻き込まれてしまう。そうなる前にヘイムダル中央駅にたどり着く必要がある。

 

「さてと、ヘイムダル中央駅に向かうとしますか」

 

アンネリーゼは、アタッシュケースを持ちながら、ヘイムダル中央駅へ歩いていく。

 




アンネリーゼの相手についてアンケートを取ってます。


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第1章ー入学編ー7ー2話ートールズへ。

第1章入学編2話です。


カズマSIDE

 

七耀暦1204・3・31・07:20・帝都ヘイムダルのとあるビジネスホテル。

 

とある部屋に男子が1人、トールズ士官学院に向かうために準備をしている。その男子は、真紅の制服を着ていて、トランクケースを持って来ている。

 

その男子の名前は、カズマ・サトゥー、ラマール州の州都オルディス出身である。出身と言っても下町の方ではあるが。

 

オルディスは、四大名門の筆頭であるカイエン公の都であり居城がある。

 

「まさか、あのトールズ士官学院に入学できるとは思わなかったが」

 

カズマは、本当は学院に行くつもりは無かったが、下町の礼拝堂にやって来る巡回神父のアイザックから、彼の能力を見抜いて、知り合いの遊撃士のサラに相談し彼をトールズ士官学院の入学に取り付けられたものだから、断れなかった。

 

能力、カズマは不思議な力を持っている。当たり前だろう、彼は前にエリスが言っていたイレギュラーと言われた佐藤和真である。何故佐藤和真がこのゼムリア世界にいるのかと言うと、前々回アクアという女神と一緒に別世界に転生したがとある戦いで死去。

 

女神協会からアクア諸共にゼムリア世界へ転生させられたのだ。とある世界を冒険していた記憶などは消されているが、その世界で覚えた能力は、覚えたままである。

 

「アイザックさんは、俺を買ってくれてるけど盗む(スチール)は、野郎なら武器を奪うことは出来ても、女の子に使ったらパンツを盗む(スチール)になってしまうんだよな」

 

カズマは、自分の右手を見ながらそう言った。アイザックは、カズマが持っているのは、先天的な能力。ちなみにカズマの得物は双剣。

 

昔、先天的な能力者を狙ってある教団が世界中の子供達を連れ去り、実験をしていた。己の目的のために。

 

「まあ、勉強は不得意でもないし、何とかなるだろうしな」

 

カズマは、別に頭が悪い訳では無い。ただアニメオタクってだけなんだか。

 

あの女神はどうなったのかは、アクアも女神から降格し人間からのやり直しになり、どこかの両親のもとから生まれている。そして七耀教会のシスターになっているとか。

 

「さてと、そろそろ行かないとまずいな」

 

そう言ってカズマは、ホテルの一室から出発することにした。

 

 

 

カーティアSIDE

 

七耀暦1204 ・3・31・07:55・ヘイムダル中央駅にて。

 

ヘイムダル中央駅に1人の女子がいて、クロスベル行きの列車を待っている。その女子が着ている制服は、真紅の色をしている。もちろん彼女もトールズ士官学院の入学式へ向かう途中である。

 

カーティナ・アルムホルム。父親は帝国正規軍の軍人であり、母親は専業主婦である。そんな中で生まれたカーティナ。彼女は、日曜学校で優秀な成績を納めており、その日曜学校の講師により、トールズ士官学院へ勧めれ、入学試験を受けて無事に合格をした。

 

「お父さんも、お母さんも快く送り出してくれた。あとは私がその思いに答えるだけ」

 

トランクケースを持っていない手でガッツポーズをやるカーティナ。そんな彼女の前世は、白崎香織。そう八幡の恋人であり、雫の大の親友であった人物。香織ことカーティナは、アンネリーゼやアクアイアとは会っていないため、前世の記憶はまだ復活していない。アクアイアも雫としての記憶を取り戻したのは、一度戦ったからだ。それまでは、記憶は無かったままだった。前世の記憶を赤ん坊の時から持ててたのは、アンネリーゼが特別であるためだろう。

 

「それにしても、トールズ士官学院の制服って貴族生徒の白か平民生徒の緑しか無いってパンフレットに書かれていたよね。でも私に送られてきたのは真紅の制服…それに一緒に送られてきた導力器はなんなのかしら?」

 

カーティナは、導力器が入ったホルダーを見て少し考えたが、分らないので考えるのをやめた。

 

「入学終えたら何の部活に入ろうかな」

 

トールズ士官学院は、部活動も盛んでかなりの生徒がなんなかの部活に入るのだからすごいのかもしれない。それにちらほらと真紅の制服を着た生徒達が目に入り始めたので、カーティナも一安心する。

 

「私と同じ制服着てる人いるし少しは安心したかな」

 

もうすぐヘイムダル中央駅に列車が入って来るので、慌ただしくなる。どうやらトリスタを目指しているトールズ士官学院の学院生がたくさんいるからだろう。

 

これから自分達が激動を駆け抜ける中心になろうとは、このときの誰もが思わなかっただろう。

 

そう終焉という黄昏に向かって進み始めたのだ。

 




Ⅶ組の仲間になるアンネリーゼ、カズマ、カーティナの3人です。


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第1章ー入学式ー8ー3話ー入学式。

入学編3話です。


七耀暦1204・3・31・08:05・ヘイムダル中央駅内

 

アンネリーゼは、ヘイムダル中央駅に足を踏み入れた。いつもとは違う風景がそこにはある。

 

 

帝都ヘイムダル発バリアハート着の旅客鉄道の列車が、春に染まりかけている風景の中を駆け抜けていく。今、この貨客列車には、学生が多く乗っている。学生が列車に乗ることは別に珍しいことではない。ただ、帝都から東側へ向かう学生はいない。学校があるわけでもない。

 

 

普通なら、帝都の東に向かう学生はいない。だがこの日のヘイムダル中央駅から東へ向かう学生で駅は混雑していた。 白の制服を着ている者達。 緑の制服を着ている者達。 真紅の制服を着ている者達。 白と緑の制服を着ている者達は、同じくらいである。

 

だが、真紅のを着ている者達は明らかに少ない。白や緑の制服を着ている者達から、ある意味注目されていた。

 

「いつもの見慣れた駅ですのに違う風景に見えますわね」

 

そう言ってアンネリーゼは、ヘイムダル中央駅の中を歩いて、トールズ士官学院がある近郊都市トリスタ行きの列車が到着しているので、それに乗り込む。

 

 

緑の制服を着た2人組の男子生徒達がとある緑の髪に真紅の制服を着たメガネをはめた男子生徒に

 

「おい、あの制服見たことないぞ」

 

「ああ、でもさあの紋章?俺らと同じだよな?」

 

そんなことをヒソヒソと話している

 

 

そんな話を不快に思った、緑の髪の真紅の制服にメガネをはめた生徒が

 

「僕は…僕は見せ物じゃないんだぞ」

 

緑の髪のメガネをかけた真紅の制服を着た生徒はそう言って、列車に乗り込んでいく。しかし列車の座席はどこも埋まっている。緑色の髪でメガネをかけていて真紅の制服を着た生徒は、キョロキョロと探していると、アンネリーゼが話しかける。彼女からすれば、助け舟を出すくらいなんともないのだ。

 

「あの…もしかしたらお席をお探しでしょうか?よろしければ、ここにどうぞ」

 

「え!?」

 

アンネリーゼから思いもよらない申し入れに緑の髪のメガネをかけた真紅の制服を着た生徒は驚いた。

 

「どうしたんですの?」

 

「あ、ありがとうございます」

 

そう言って緑の髪のメガネをかけた真紅の制服を着た生徒は、荷物を荷物入れに置き、アンネリーゼの横に座る。

 

 

なんて綺麗な方だと、緑の髪のメガネをかけた真紅の制服を着た生徒は、何処かで見たような感じになり、ついつい見とれてしまう。すぐに我に返り、窓の外を見ながら

 

「この女性どこかで見たはずなんだか?」

 

と思いながら 女性を直視出来ない 。2人の間に妙な間が開くのである。

 

緑の髪のメガネをかけて真紅の制服の制服を着た制服は、金髪の少女を直視できないが、アンネリーゼの匂いや2つの膨らみを見ていた。

 

「あの~貴方も同じ制服ですわね」

 

アンネリーゼの問いに少年はビクッとして声が出なかったが、すぐに答えた。

 

「そういえば君も同じ色の制服ですよね?」

 

話すことにより、少し落ち着いたようだ。

 

 

緑の髪のメガネをはめた真紅の制服を着た生徒は、白や緑を着た人間達のかっこうの的になっていたが、目の前のアンネリーゼも同じ真紅の色の制服を着てるのを見て、ちょっと安心した。 緑の髪のメガネをかけた真紅の制服を着た生徒は、これから通うトールズ士官学院のことはちゃんと調べたはずだと思った。パンフレットも何度も隅々まで見た。

 

なのに、真紅の制服のことはどこにも書いてはいなかった。緑の髪のメガネをかけた制服を着た生徒は、トールズ士官学院に問い合わせしてみようとも思った。制服が今年から変わったのではないかと、思ったりもしたが帝都ヘイムダル中央駅でその思い込みも崩れさった。だが今、微かな希望を持ち始めた。

 

 

横に座っているアンネリーゼは、自分と同じ真紅の制服を着ていると。自分だけの仲間外れではないのだと少し安堵した緑の髪をメガネをかけた真紅の制服を着た生徒。すると横に座っているアンネリーゼが、彼に話しかける。

 

 

「帝都ヘイムダル中央駅の混雑は凄かったですわね」

 

「確かに…いつもならこんなんじゃないんだが」

 

「確かにそうですわね」

 

「今日は特別じゃないかな。この列車に乗ってるほとんどがトールズ士官学院行きだと思うし」

 

「ええ、そうですわね。今の時間は通勤通学の時間に重なりますからね」

 

「ええ」

 

緑の髪のメガネをかけた真紅の制服を着た生徒の言ったことにアンネリーゼは納得したようだった。改めて彼女は、緑の髪のメガネのかけた生徒を見据えて

 

 

「自己紹介がまだでしたわ。わたくしの名前は、リーゼ・レンハイムと申しますわ」

 

「ぼ、僕の名前はマキアス・レーグニッツだ」

 

アンネリーゼは、レーグニッツと聞いて驚いた。カール・レーグニッツ、帝都で彼の名前を聞いたことはいないほどの人物である。

 

 

 

カール・レーグニッツ帝都知事。革新派の有力人物である人物である。ギリアス・オズボーン宰相と共に帝都ヘイムダル改革を推し進めてきた実績がある。アンネリーゼもそんな彼とこんなところで会うとは思わなかった。

 

 

そして列車のアナウンスが流れる。

 

 

斜体本日は、帝都発、ケルディック経由、バリアハート行き旅客列車をご利用頂きありがとうございます。次はトリスタ、トリスタ。1分程の停車となりますので、お降りになる方は、お忘れのないようご注意ください

 

 

 

アナウンスが鳴り終えると、列車に乗っている学生達がそわそわガヤガヤとしはじめた。トールズ士官学院があるトリスタ駅はすぐそこまで来ている。 マキアスもリーゼも緊張感が出てきた。

 

 

「なんだか、緊張してきましたね」

 

「これから学院生活が始まると思うと緊張してくるな」

「そうですわね。あ、あのマキアスさん」

 

マキアス「リーゼさん、何かな?」

 

リーゼは、少しモジモジしながらマキアスにこう頼んだ。やはりこう言うのは、なれないものである。同性のアクアイアや異母兄のオリヴァルト、弟のセドリックを誘うのは違うからだ。家族と赤の他人とは違う。

 

 

「あ、あのマキアスさん。宜しければ、わたくしと入学式がとり行われる講堂まで御一緒にいきませんか?せっかくこうして知り合えたのですから」

 

「ご、御一緒にですか!?」

 

「あのー御迷惑なら…わたくし1人で…」

 

「御迷惑なんかじゃない。むしろ…僕は…」

 

マキアスは、リーゼを見据えてそう言った。マキアス自身もなぜそう言ったのかは、自分自身でも分からなかった。ただマキアスの中で何かが目覚めたのは言うまでもない。

 

 

リーゼとマキアスは、列車から降りて、トリスタの地に下り立った。 帝都近郊都市トリスタ、かの獅子心皇帝ドライゲルスが晩年にこの地で教鞭をとっていた。その学院こそが、トールズ士官学院である。トールズ士官学院は、彼が設立した学院なのである。

 

 

トリスタ駅から出ると、ライノの花が2人の入学を祝ってるかの如く花びらが舞っている。リーゼとマキアスはその光景を見て感動する。

 

「ライノの花が綺麗に舞っているな」

 

「そうですわね」

 

 

リーゼは、ライノの花は、前世の日本で咲いているサクラと同じようなもので春の風物詩だなと思っている。

 

緑の制服を着た学生は足を止めて、ライノの花を見ているが、白の制服を着た学生達は見向きもせずに通り過ぎていく。

 

「貴族生徒の方々は、ライノの花が興味がないのでしょうか?」

 

貴族生徒はライノの花どころか、平民だって興味が無いのだろう

 

「そうですか…」

 

リーゼがマキアスの言葉を聞いて表情を曇らせる。それを見たマキアスは

 

「どうかしたのかい?」

 

「い、いえなんでもないですわ」

 

リーゼは思った 。自分も貴族以上の身分になる 。身分を隠して入学シているのだから。

 

しかしマキアスを見ててその事を閉ざすのであった。

 

 

しばらく、ライノの花を見ていた2人は、トールズ士官学院がある方向へ歩き出す。トリスタの街には、最低限度のお店があるし、住民もトリスタの街に住んでいる。トリスタの住民は、温かな目で学院生を見ていた。

 

 

リーゼが教会でお祈りをしたいとマキアスに言って、2人トリスタ礼拝堂でお祈りをやった。 お祈りを上げた後、トールズ士官学院の方へ歩いて門をくぐったところで、リーゼとマキアスは不意に言葉をかけられた。

 

 

小柄な緑の制服を着た女子生徒と、黄色い作業着を着たふくよかな男子生徒がリーゼとマキアスに話しかけてきた。

 

「ご入学おめでとうございます。うんうん君たちが最後みたいだね、リーゼ・レンハイムさんとマキアス・レーグニッツ君でいいんだよね?」

 

「は、はい、合ってますわ」

 

「ええ、合ってますが、しかし何故僕達の名前を?」

 

 

マキアスがそう尋ねたら、小柄な緑の制服を着た女子生徒は、今は話せないと言った。今度は黄色い作業着をきたふくよかな男子生徒がリーゼとマキアスに話しかけてきた。

 

 

 

「これが2人の申請した品かい?」

 

「ええ。パンフレット通りですね」

 

「はい、わたくしのはこれですね」

 

マキアスとリーゼは、己の得物をふくよかな男子生徒に預けた。

 

 

「それじゃ二人とも 体育館へ急いでね」

 

緑の制服の少女は微笑んで2人に言った。

 

 

リーゼとマキアスは、自分達が最後だと聞いたから急いで講堂まで来たが、緑の制服を着た生徒や白の制服を着た生徒達が来てるのを見て

 

「さっきの方、わたくし達が最後だと仰られましたよね?」

 

「ああ、確かにそう聞いた。何が最後なのか…」

 

リーゼとマキアスは、何が最後なのか分からないまま、入学式がとり行われている講堂へ足を踏み入れるのだった。

 




アンネリーゼの相手は、Ⅶ組のメンバーから選ぶに決まりました。みなさん、ご協力ありがとうございました。


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第1章ー入学編ー9ー4話ーオリエンテーション①

入学編4話です。


ー七耀暦1204・3月31日・08:55・講堂内

講堂の中は、結構の人数が集まっており、緑と白の制服を着た生徒がほとんどだった。だがちらほらと真紅の制服を着た生徒達もいた。リーゼとマキアスは、互いに安堵した。

 

安堵した後は、2つ席が空いてるところに座る。

 

「それにしても、この制服が僕達だけじゃなくてよかった」

 

「そうですわね」

 

リーゼとマキアスがしゃべっていると、トールズ士官学院の教官とおぼしき人物達が講堂の前に集まってくる。

 

 

教官の中にヴァンダイク学院長がいる。教頭が入学式の進行役を努める。そして、今年のトールズ士官学院の入学式が始まった。 新入生の学生達は、緊張の表情をしている。そしてヴァンダイク学院長が

 

 

オリヴァルト理事長からの祝電なのが読み上げられる。リーゼはちょっと嬉しい気持ちになる。形式な祝電であっても、妹の立場ならではの嬉しさがあるのだろう。 そしてヴァンダイク学院長が、ある言葉から力をいれ始める。

 

 

 

「ーー最後に君たちに1つの言葉を贈らせてもらおう。本学院が設立されたのは、およそ220年前のことである。創立者はかの、【ドライケルス大帝】ー【獅子戦役】を終結させた、エレボニア帝国、中興の祖である。即位から30年あまり、晩年の大帝は、帝都から程近いこの地に兵学や砲術を教える士官学校を開いた。近年軍の機甲化と共に本学校の役割りも大きく変わっており、軍以外の道に進む者も多くなったが…それでも大帝が遺した“ある言葉”は今でも学院の理念として息づいておる」

 

【若者よ、ーーー世の礎たれ】

 

若者よ、ーーー世の礎たれ

 

“世”という言葉をどう捉えるのか。何を持って“礎”たる資格を持つのか。これからの2年間で自分なりに考え、切磋琢磨する手ががりにして欲しい。ワシの方からは以上である」

 

ヴァンダイク学院長のお言葉が終わり、盛大な拍手が鳴り響くなか入学式は終わった。

 

ヴァンダイク学院長が壇上から去り、教頭が変わりにしゃべり始める。

 

「これから、各自記されたクラスへと移動してもらう。クラスにて、オリエンテーションを行う。では解散」

 

 

教頭の解散の合図で、緑の制服を着た生徒、白の制服を着た生徒は次々と立ちあがり、自分達のクラスへと歩きだした。

 

 

「クラスを記したものなんか無かったぞ!?」

 

「……確かに書いては無かったですわね」

 

リーゼは、ある程度は知っている。自分達のクラスが書かれていないのも異母兄のオリヴァルトが急遽作り上げたクラスであり、クラスの発表も入学式の時になるものだと思っていたが、あてが外れたのだ。

 

マキアス、リーゼ以外の真紅の制服を着た生徒も文句を言い出した。

 

 

「ハイハイ!!静かに。赤の制服の皆はここに残ってね」

 

と大きな声が響きわたった

 

 

リーゼやマキアス、その他の真紅の制服の着た学生達は、声を発した教官の方へ視線を向けた。その女性教官は、とても士官学院の教官とは思えない格好をしていた。

 

 

「リーゼさん、あれは!?教官なのか?格好から見てそんな風には見えないな」

 

マキアスは疑問を持ちながら周りを見渡したのだ。

 

マキアスの問いにリーゼは

 

「変わった格好の教官さんですね」

 

「変わった格好って問題だけじゃないだろ…」

 

 

マキアスは、リーゼの答えに戸惑いながらも、女性教官の話を聞いていた。

 

 

「どうやらクラスが分からなくて、戸惑ってるみたいね。実はちょっと事情があってね。君達にはこれから【特別オリエンテーリング】に参加してもらいます」

 

 

「へぇ?」

 

「特別オリエンテーリング?」

 

「ふむ…?」

 

「ちぃ…また厄介な事を……」

 

「面倒な事を捺せられるのか?」

 

真紅の制服を着た生徒達はそれぞれの反応を見せた。それは当然の反応であろう。パンフレットに書かれていないことをさせられそうになっているのだから。

 

 

そして女性教官は、リーゼ達についてくるように言った。真紅の制服を着た生徒達は戸惑いながらも彼女に付いていく。

 

「わたくし達も参りましょうか」

 

「そうだな。いちいち考えていても仕方がない」

 

リーゼとマキアスは、最後尾から付いていくことした。

 

 

 

リーゼとマキアスや他の者達がたどり着いた先は、随分と古びた校舎があるところだった。女性教官は、その古びた校舎の扉を鍵で開けると中へ入っていく。 真紅の制服を着た生徒達は、渋々と文句を言いながら入っていく。リーゼとマキアスも古びた校舎へ足を踏み入れる。

 

 

古びた校舎の中はカビ臭く、長年使っていないことがわかるような状態の有様だった。真紅を着た生徒達は、ますます怪訝な表情になっていく。一体こんなところで何をさせられるのかと。 すると女性教官が1つの柱の場所に移動した。

 

 

「ふふん、まぁあんた達なら大丈夫だとは思うけど気を抜かないでね」

 

女性教官はそっとボタンを押したのである

 

 

すると床が突然傾き地下へ真っ逆さまな状態になる。不意を疲れた生徒達は下へ落ちていった。リーゼは武道の心得があるから、何とか踏ん張ろうとしたが、女の教官からの妨害に合い地下へと落ちていった。

 



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第1章ー入学編ー10ー5話ーオリエンテーション。②

第1章入学編5話です。


 

ー七耀暦1204・3・31・09:10・トールズ士官学院・旧校舎が見下ろせる丘。

 

リーゼ達がサラ教官によって旧校舎の地下に落とされた同じ頃。

 

 

旧校舎を見下ろせる場所に5人の男女と1人の女性教官がいた。そのうち2人は士官学院正門にいた小柄の茶色の女子生徒と作業着姿の男子生徒だった。彼らもこれから【真紅】の生徒達に大きく関わっていくとはまだリーゼ達にはわからない。

 

ライダースーツの女子生徒とバンダナをまいた男子生徒は何かを言い合っているが、女性教官があの中の誰かに気になるようで。

 

「ふむ、リーゼ・レンハイム…どこかで…」

 

「ヒラツカ教官、あの金髪ポニーテールの女子生徒ですわね。私もどこかで会ったような〜」

 

「そうなのですか、ヒラツカ教官?シェルちゃん?」

 

茶色の髪の女子生徒からシェルと言われた女子生徒。名前は、シェルファニール・イーグレット。パープルの色の髪のストレートで、イメージはとあるのインデックスみたいな感じ。そして緑の制服を着ている。ヒラツカ教官と呼ばれた教官は、もちろん八幡達の現国教師であった平塚静であった。彼女は、この世界でもシズカ・ヒラツカとして生まれていた。彼女もノーザンブリア出身であり、猟兵であったが、とあることで遊撃士になった経緯があった。サラ教官とも親交があったため、トールズ士官学院の戦術教官と帝国語教官として担当としている。

 

「ええ、どこかであの娘と出会ってないかそればっかだ」

 

「ヒラツカ教官、そんなことばかり考えてるんですか?」

 

「ヒラツカ教官、変態にしか見えないですよ。アンさんと同じ属性ですか?」

 

「ヒラツカ教官、あの金髪ポニーテールの娘に…」

 

「私は至って普通だ!アンゼリカ、君と一緒にしないでもらおうか!」

 

そんな事を言い合っていたのだが、トワが話を元に戻させた。だがアンゼリカは

 

 

「しかしあのクラスの女の子達、くぅぅ!私好みだ!」

 

「あ~あ、また始まりましたわ、ゼリカさんの病気が…」

 

「シェル、ほっとけ、さてそろそろ歓迎会が始まるころだな。せいぜい頑張ってくれよな、新入生諸君」

 

5人と1人の教官は、リーゼ達が入った旧校舎を見据えていた。

 

 

 

ー七耀暦1204・3・31・09:30・旧校舎の地下。

 

旧校舎の地下が斜めになり地下へ落とされたⅦ組メンバー。

 

だがそんなに落とされたわけではなく、怪我などしていなかった。倒れていたメンバー達はすぐに立ち上がる。カズマと彼の隣に降りてきた長身の男子生徒は、旧校舎の地下構造を見てみる。それだけではなく床の傾斜角度も見る。

 

この傾斜はⅦ組メンバー達が怪我をしないように仕掛けがほどこされていることにカズマは気づく。そんな彼は長身の男子生徒は

 

「キミは大丈夫なのか?」

 

「俺は大丈夫だが、そっちはどうだ?」

 

「問題無い」

 

「いや…しかしこの旧校舎…本当に旧校舎なのか?」

 

「どういうことだ?」

 

「校舎として使っていた事があるのかって思ったのだが」

 

他のⅦ組メンバーもなにやら喋り始めた。

 

「……クッ……何が起きたんだよ?」

 

「いきなり床が傾いて……」

 

「やれやれ不覚を取ってしまったな」

 

「ここは……先ほどの建物の地下か」

 

「フン……下らん真似を!」

 

「イタタ、まさかあんなかたちで落とされるなんて…」

 

「はぁぁ…~……心臓が飛び出るかと思ったよ、リィン…大丈夫?というかこっちも!!」

 

 

 

赤毛の髪の男子生徒が見たのは、リィンと金髪の女子生徒とリーゼとマキアス。

 

リィンは、なんと金髪の女子生徒にダメージが無いように自らを下にして守っていた。だが顔が彼女の胸辺りにあり、誤解が生まれかねない状況でもあった。一方のリーゼとマキアスは、彼女のスカートの中に頭を突っ込んでいる状況だった。

 

 

金髪の女子生徒が目を覚め、状況に気がつき慌てて起き上がり、リィンもその事で目を覚めて忙しで飛び起きた。

 

 

マキアスは、ふと目を開けると暗闇に包まれた場所だった。

 

さっきまで薄暗いとはいえ旧校舎にいたのだ。そして地下に落とされたとしても真っ暗になることがあるのかと考えていた。

 

そして無意識に鼻を突き出した。すると

 

「あ、アン……や、やめてください…!」

 

マキアスは、気づいてはいないのだが、彼がいる場所はリーゼのスカートの中。そして鼻を突き出した場所は、リーゼの大事な場所。

 

 

あろうことかマキアスは、さらに突き出す。

 

「、ア、アン、い、いい加減にやめてください!!!」

 

リーゼは、スカートの中からマキアスの顔を引っ張り出してから、往復ビンタをやった。

 

バチン!!バチン!!

 

 

何が何だかわからないマキアスは、往復ビンタをくらい尻もちをついた。リーゼが真っ赤にしてスカートを押さえる姿を見て、マキアスはようやく自分が何をやったのか気づいた。

 

一気にマキアスは青ざめた表情になる。そしてリーゼに

 

「…あ、あれはわざとじゃないんだ。信じてくれ、リーゼさん!」

 

「…………」

 

リーゼは、ジト目でマキアスを見て、プイと反対方向を向いた。

 

女子生徒達からは、リーゼと同じジト目で見られ、男子生徒達(リィン、ガイウスを除く)からは、憐れんだ目で見られた。

 

リィンも言い訳もせずに金髪の女子生徒からおもいっきり叩かれた。先にマキアスが叩かれたので、自分も覚悟を決めてアリサに言ったのだ。

 

「随分と殊勝な心構えね。なら遠慮無く」

 

バチン!!

 

リィンも思い切りアリサに叩かれたのだった。

 

 

マキアスとリィン?がリーゼとアリサにラッキースケベなイベントを起こし、女性陣から冷ややかな目と男性陣からは、複雑な視線を受けていた。

 

 

男子の不運、ラッキースケベイベントなどは、例え男側に問題が無くとも叩かれる。これはもう致し方がない。マキアスとリィン以外の男子生徒達も致し方がないようにしている。

 

 

そしてみんなは一応自己紹介をやり始めた。リーゼやマキアスもふられたので一応自己紹介やったのだった。

 

 

 

自己紹介後も微妙な空気が流れた後、リーゼもちょっとマキアスに対する仕打ちに後悔の念もあった。なにも往復ビンタをする必要はなかったのではないかと。せっかくマキアスと出会えたのに、これで疎遠になるんじゃないかと。

 

 

リーゼがそう悩んでいたら、突然サラ教官の聞こえた。

 

「マキアス…ちょっと問題を起こさないでくれる?」

 

「ぼ、僕は別に問題は起こしてないですよ!」

 

マキアスは必死に違うと弁明したが聞き入れてはもらえなかった。 そんな中で、入学案内書、パンフレットや制服以外に贈られてきたもの、エニグマにそっくりなソレから聞こえてきたのだった。リーゼやマキアスや他の者達はそれを手に取る。

 

「それは特注の《戦術オーブメント》よ」

 

それからサラ教官による《戦術オーブメント》の説明があり、これはエプスタイン財団とラインフォルト社とその他の1社が共同で開発した次世代の戦術オーブメントの1つ。第5世代戦術オーブメント、【ARCUS】というようだ。

 

「ARCUS……」

 

「戦術オーブメント……魔法(アーツ)が使えるいう特別な導力器のことですね」

 

アリサとエマがそう答えた。

 

「そう結晶回路(クオーツ)をセットすることで魔法(アーツ)が使えるようになるわ。というわけで各自受け取りなさい」

 

サラ教官が例の渡しものをリーゼ達に受け取るように促す。

 

みんな自分の物がどこにあるか確かめラウラが先に台座へと歩き出した。

 

「まったく……一体なんのつもりだ……」

 

「俺のはどこにあるのかね」

 

ユーシスとカズマも自分の物が置いてある台座の所へ歩き出した。

 

「僕のは…あれか…」

 

「……わたくしのはあそこにありますわ」

 

マキアスのはアリサの隣でリーゼのはリィンの隣の台場に置いてある。

 

「さて行くしかないよな」

 

リィンがそう言って移動する。リーゼとマキアスも自分達の台場までやってきた。

 




リーゼの恋人候補、今のところはリィンが一歩リード。

追伸ーアンネリーゼの恋人候補、リィンに決定しました。


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第1章ー入学編ー11ー6話ーオリエンテーション。③

入学編6話です。


リーゼやリィン達は、自分達の得物が置かれてる台座の場所までやってきた。得物と色んな色に輝くクオーツがそこにあった。みんな、クオーツを手に取りARCUSの中心に、はめ込んだその瞬間に輝き出した。

 

 

「君たち自身とARCUSが共鳴・同期した証拠よ。これでめでたく魔法(アーツ)が使用可能になったわ。他にも面白い機能が隠されているんだけど、まっそれは追々って所ね。それじゃあさっそく始めるとしますか」

 

ここから奥にダンジョンが広がっている。

 

「そこから先のエリアはダンジョン区画になってるわ。割と広めで入り組んでいるから少し迷うかもしれないけど無事、終点までたどり着けたら旧校舎1階に戻ることが出来るわ。まっちよっとした魔獣なんかも徘徊してるんだけどね」

 

サラ教官がそう言った後、みんなからの批判が言葉が飛びまくることなる。

 

 

「……みんなで協力しあって進めば何とかなるはずよ。まずは行動するのみよ」

 

サラ教官は批判の言葉をかえし、リーゼ達にそう言った。 互いに協力しあえば、おのずと道は開けるとサラ教官は言いたかったのだろう。こんな話を聞いて、リーゼは昔、前世の平塚先生を思い出していた。彼女がこんな世界にいれば、輝くのではないかと。

 

 

サラ教官に言われたとおり、リーゼ達は地下通路の奥の方を見据える。その中でユーシスが1人で先に歩き出す。

 

「待ちたまえ、君は1人で行くつもりか?」

 

ユーシスはマキアスの方を向き

 

 

「馴れ合うつもりはない。それでも()()()()と連れ立って歩きたいのか?」

 

「ぐぅ………」

 

「まぁ魔獣が怖いのであれば同行を認めなくもないが。武を尊ぶ帝国貴族としてそれなりに剣は使えるつもりだ。貴族の義務(ノブレス・オブリージュ)として、力なき民草を保護してやってもいいが?」

 

 

貴族の義務(ノブレス・オブリージュ)は間違ってはいないが、今のマキアスなら激昂させかねない状況になってしまうだろう。やはり…マキアスの表情はみるみるうちに怒りに染まり

 

「だ、誰が貴族ごときの助けを借りるものか!だったら先に行くまでだ!旧態依然とした貴族などより上であることを証明してある!」

 

そう言ってマキアスは先に歩いて行ってしまった。リーゼはそれを見て、マキアスの後を追うことにした。

 

 

ユフィは、みんなが何か言っているのを気にしながらマキアスの後を追う。ほとんど使われた形跡が無い中、マキアスの足跡を見て

 

「マキアスさん、そんなに急がなくても…」

 

リーゼは、マキアスに追い付くため走り出す。

 

コツコツコツコツ

 

リーゼの足音が地下に響く中、ひたすら走る。

 

 

旧校舎の地下迷宮は、楽々なものではなかった。すぐに分かれ道が現れる。リーゼは2つの分かれ道の真ん中で

 

「マキアスさんは、どちらの道にいかれたのでしょう?」

 

リーゼは2つの分かれ道を交互に見て

 

「こちらですわ」

 

リーゼは、そう言って左の方へ走って行く。

 

リーゼは、中々追い付けないので、五感の神経を全集中させた。

 

「き、君も1人で来てたのか?」

 

 

リーゼは、マキアスから話しかけられたが、気づかなかった。彼女は神経を全集中させると周りが見えなくなる場合がある。だからマキアスから話しかけられてもわからなかったのだ。

 

 

マキアスは、リーゼの肩に手を置いた途端、刀で斬られそうになり、後ろに後退しながら尻もちを付く。

 

「……!あ、危ないじゃないか!」

 

「…!!マキアスさん!」

 

リーゼは慌てて刀を鞘に直しマキアスに駆け寄る。

 

「ぼ、僕は君に話しかけようとしただけだ!」

 

「マキアスさん、ごめんなさい」

 

 

リーゼは、マキアスに謝罪をする。先程の往復ビンタのことも謝罪する。マキアスは、往復ビンタの件は申し訳ない気持ちだったが、一度深呼吸をしてから

 

「不意に話しかけた事は謝るよ」

 

「ごめんなさい、マキアスさん。わたくし、集中すると周りが見えなくなるんですわ」

 

「まあ、僕も集中したら周りが見えなくなるかな」

 

マキアスは、何気にリーゼにフォローを入れた。マキアスも勉強に集中しすぎて、飲みかけのコーヒーに入ったコップをこぼしたことも多々あるのだ。

 

「マキアスさんもそうなのですか?」

 

「うん、まあね」

 

マキアスの答えにリーゼはクスクスと笑った。ユーシスと対峙していた時のマキアスの表情は、なんだか怖いと思っていたが、こうやって冗談を言うマキアスの表情は怖くないと感じていた。

 

「それじゃあ、探索を再開しましょうか、マキアスさん」

 

「そうだな」

 

リーゼとマキアスは、そう言うと探索を再開した。 歩き出して、すぐにわかったことだが、この辺りに人の出入りはほとんど無いくらいに埃やカビが舞っていた。

 

「しかし学院にこのような場所があるとは」

 

マキアスは辺りを見ながら 呟いた

 

「トールズ士官学院の旧校舎にこのような場所があるなんて聞いてませんわ」

 

「本当にここは旧校舎なのか?」

 

リーゼは内心驚きを隠せないでいた。父親、異母兄オリヴァルトからトールズ士官学院の旧校舎の事は聞かされてはいた。

 

 

だが今いるような場所は聞いたことがない。

 

 

リーゼは戸惑いながらも、探索をすることを決意し

 

「マキアスさん、ここは進むしかないですわ」

 

「リーゼさん、君はこういうところは平気なのかい?」

 

「わたくしは平気ですわ」

 

「(この娘 は 一体何者なんだ?普通ならこのような場所慣れてるとは言わないだろう)」

 

マキアスは、疑問に思いながらも前に進むのであった。

 

 

しばらく進んでいくと、魔物が徘徊しているので、リーゼは太刀で、マキアスは導力銃で応戦する。

 

「たぁ!!」

 

「紅葉斬り!!」

 

マキアスの援護射撃で魔物がひるんでいるうちに、リーゼは太刀で仕留める。

 

 

「お疲れ リーゼさん。しかし君のその武器は東方の物なのかい?」

 

「ええ、そうですわ。帝国では珍しい武器になりますわね」

 

ふと微笑んでいた。

 

 

東方の武器、主に昔は大亜や日本あたりを指していた。今の時代では日本系の刀が東方の武器の主流になっていた。 エレボニア帝国では珍しい武器だが、カルバード共和国より東の国々では、有名な武器の1つと数えられている。

 

 

太刀を一躍有名にしたのは、ユン・カーファイ。彼は大亜の国の人間だったが、日本に亡命し八葉一刀流の道場を日本に開く。カシウスや九島烈など弟子などに恵まれる。

 

 

そこから色々と派生した流儀も存在する。例えば日本の千葉家も八葉の流れを組み込んだ一族でもある。

 

 

リーゼは、自らの太刀をマキアスに見せる。

 

「帝国の剣より小さいが、重さは…ある!」

 

「初心者では、太刀を持ち上げることも出来ませんわ」

 

「…そ、そうなのか!?」

 

 

そんなことを喋りながら、2人は歩みだした。そして地下迷宮を歩いて進んでいると、

 

カタカタカタカタ

 

 

どこからかカタカタと音がしてくる。

 

「何の音だ?」

 

「近づいてきますね」

 

2人は背中合わせでお互いの得物に手をおく。

 

カタカタカタカタ

 

カタカタ、カタカタどこからか近づいているのは間違いない。距離が縮まってるのは確かなのだ。

 

 

お互い気を配りながら警戒していると、マキアスの肩にポタッと何かが落ちてくる。

 

「つ、つめたっ!何だ?

 

ポタ…ポタ…ポタ…ポタ…ポタ…

 

マキアスが真上を見上げると、何かが落ちてくる。それもマキアスをめがけて。リーゼはそれに気付き太刀を振るう。 しかし肝心なところでかわされる。

 

「は、早い!」

 

マキアスを襲おうとした何かは、次なる目標をリーゼに定めていた。マキアスは導力銃で、何かを狙い撃つ。しかし寸前のところでかわされる。

 

「スピードが早い。何なんだアレは…リーゼさん!君にさっきのが…」

 

 

「ええ、わたくし達の背後の天井から近づいてきた魔物だと思いますわ!」

 

「な、なんであんな魔物が旧校舎に!?」

 

魔物の姿は、蜘蛛の巨大化したようなものだ。リーゼは、太刀で巨大蜘蛛に斬りかかるが前脚で弾かれる。

 

 

マキアスもリーゼの援護射撃を行い、なんとかしようとしたが、弾は硬い皮膚にはばかれる。

 

「何だ、あの巨大蜘蛛の硬い皮膚は!」

 

「…通常の攻撃は…おそらく効かないでしょうね…」

 

「通常の攻撃が効かないならどうすれば…?」

 

「…やるしかないですわね」

 

「リーゼさん…!?」

 

リーゼはそう言うと太刀を鞘にしまう。しまったことにマキアスが驚く。 リーゼは巨大蜘蛛を見据えながら呼吸を整える。太刀の鞘を左手に太刀を右手に持つ。

 

ユフィ「八葉一刀流…弐の型…裏疾風…焔!」

 

高速なスピードで巨大蜘蛛を斬り付けて背後に回って螺旋擊のような攻撃を加えた。

 

 

高速なスピードで巨大蜘蛛を斬り付けて背後に回って螺旋擊のような攻撃を加えた。

 

 

リーゼの攻撃を食らった巨大蜘蛛は、よろめきその場に倒れ込んでパチパチと燃えて異様な匂いを発していた。マキアスはリーゼの攻撃を見て腰を抜かしそうになったが、何とか踏ん張っていた。

 

 

「…?マキアスさん大丈夫ですか?」

 

「だ、大丈夫だ…」

 

「…さっきのアレを見て驚かれているんですよね」

 

リーゼはパチパチと燃えている巨大蜘蛛を見ながらそう言った。 リーゼは、マキアスに自分が怖いイメージを印象付けてしまったと思ってしまった。

 

たがリーゼの思いとは逆にマキアスは

 

「正直言えば驚いたさ。でも恐怖とかの気持ちではないんだ。そ、そのなんと言うか、カッコいいと言うかなんと言うか」

 

マキアスは、ちょっと自分で何を言ってるのかわからない状態になっていた。そんなマキアスを見てリーゼは

 

「……カッコいいですか……ウフフ、初めてそんなこと言われましたわ…」

 

「そ、そうなのかい?」

 

「そうですわ」

 

過去、異母兄であるオリヴァルトと冒険してるときは、可憐だとか綺麗だとか、凄いとは言われてきたが、カッコいいとは言われた事がないのだ。だからマキアスから言われたことは新鮮味であった。

 

「…巨大蜘蛛は倒しましたが、ここは早く抜けることが先決ですわね」

 

「そうだな。こんな巨大蜘蛛に何回も襲われていては、身が持たないからな」

 

マキアスがそう言うと、こちらへ向かってくる足音が聞こえてきた。

 



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第1章ー入学編ー12ー7話ーオリエンテーション。④

第1章入学編7話です。


「あら?貴女達」

 

「そなたらか、ここで戦闘をやってたのは?」

 

足音の正体は、アリサ達であった。

 

「ええ、巨大蜘蛛に襲われて、戦闘になってしまいましたわね」

 

「巨大蜘蛛?アレかな?」

 

「巨大蜘蛛?巨大蜘蛛と言うのは、アレのことですか?」

 

カティーナとエマが燃えている巨大蜘蛛の残骸の方を指で指した。ラウラが興味ありの表情で

 

「…そなた、八葉の者か?」

 

「ラウラさん、八葉をご存知で?」

 

「ああ、父上から聞かされていた。いずれ八葉の者と出会うだろうと」

 

ヴィクター S アルゼイド

 

ヴィクターとは、ラウラの父親であり、アルゼイド流を極めた者であり、光の剣匠と呼ばれる人物である。

 

「ラウラさんのお父様が!?」

 

「ああ。まさか、こんなに早く会えるとは思わなかったが…」

 

「わたくしも、女性のアルゼイド流の方と出会えて嬉しいですわ」

 

リーゼとラウラは、お互いに手を出し合って、宜しくと声をかけた。

 

「なんだか、私達にはわからないわね、エマ、カティーナ?」

 

「そうですね」

 

「そうだよね、剣術とかはわからないし」

 

「そうだな、僕達にはわからない、剣術家同士の何かなのか…」

 

グォォォォォォ!!!!

 

リーゼ達がいる地下迷宮の床が雄叫びや地響きで揺れる。それもリーゼ達が目指す方の方角から聞こえてきた。

 

「さっきの雄叫びといいこの地響き…この先にいるのか!?」

 

「そのようですね」

 

「もしかすると、他の方々達が戦ってらっしゃるのでは?」

 

「凄い地響きだよ」

 

「…おそらく他のみんなが戦ってるんじゃないかな…」

 

「僕達も急いだ方がいいんじゃないか?」

 

リーゼ達が話してる最中でも雄叫びや地響きが続いていた。だがリーゼは、奥の方を見つめて

 

「わたくしも行きましょう。どのみちこの通路しかありませんし……」

 

「そうだな。君が覚悟を決めてるのに、僕が覚悟を決めないわけにはいかないだろ」

 

アリサとエマ、カティーナは、リーゼとマキアス事を気にしてるようだが、ラウラは気にしてはいない。

 

「アルゼイド流の人間として逃げるわけにはいかない」

 

「アリサさんもエマさん、カティーナさんも準備は、宜しいですか?」

 

「…わ、私は準備出来てるわ!」

 

「私もです」

 

「私も準備は、出来てるよ」

 

「それではいきましょうか」

 

リーゼがそう言うと先に走り出した。そのあとをマキアス、ラウラ、アリサ、エマ、カティーナの順番に雄叫びと地響きがする中心地へ走り出したのだった。

 

 

雄叫びと地響きに足を取られながらもその元凶まで走る。

 

リーゼは、少しばかり不安もあった。

 

リベールの異変を乗り越えてきたとはいえ、ここにはオリヴァルトやアクアイア、エステル達はいない。

 

自分達でなんとかしないといけないという気持ちがはやり始めていた。

 

そんなリーゼに気づいたのかマキアスが

 

「リーゼさん、どうかしたのか?さっきから険しい表情になってるが?」

 

「……え!?わたくし、そんな表情をしてましたか?」

 

「してたわよ」

 

「リーゼちゃん、険しい表情してたよ」

 

「…正直言えば…僕も不安さ。こんな雄叫びや地響きを聞いていると」

 

「私だって不安ね」

 

「私だって不安でいっぱいだよ、でもみんなでいるとなんだか怖くないって」

 

「私も不安です。でも…不思議とみなさんとなら…何だかやれる気がするんです」

 

「…ふむ、そうだな。不安や焦りよりも何だか不思議と力が湧いてくるようだな」

 

リーゼも感じていた。うちなる力が湧いてくるのを。リーゼにはわかる。

 

 

リーゼは、リベールの異変で何度もこの経験をしている。

 

リベールでの苦難を潜り抜いてきたあの力だとわかった。

 

オリヴァルトやケビンからは、リーゼが持つ天性

 

繋がる力、絆の力

 

そう名付けられたもの。そして前世の比企谷八幡としてあった

 

 

指し手

 

としての能力も継承しているのだ。

 

リベールの異変で、エステル達はリーゼの力で何度も危機を救われている。

 

「みなさん、行きましょう!この先、何があってもみなさんとならやれそうですわ!」

 

「そうだな。君の言葉は不思議と不安な自分を奮い立たせてくれる」

 

「私はいつでもoKよ」

 

「リーゼちゃん、今日会ったばかりなのに何だか安心できるのよね」

 

「私もだ」

 

「ええ、行きましょう!」

 

リーゼ達は、再び駆け出した。地響きと雄叫びの元凶がいる場所へと。

 




リーゼの騎神は、テスタ=ロッサに決まるかな。


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第1章ー入学編ー13ー8話ーオリエンテーション。⑤

第1章入学編8話です。


剣のぶつかる音、銃の弾の破裂音や導力魔法を使用している様々な音が聞こえる。リーゼ達が向かっている先で別のみんなが戦ってるのは間違いない。

 

リーゼ達が広々とした空間に出た時は、リィン達が石の像(ガーゴイル)と戦っていた。

 

マキアスとアリサ、エマとカティーナは、リーゼとラウラの攻撃をしやすくするために援護射撃をやる。アリサは導力弓、マキアスは、導力銃、エマとカティーナは魔導杖を使い援護射撃をやる。しかしマキアスの導力銃、アリサの導力弓は硬い皮膚によって弾かれる。

 

「なっ!!」

 

「なんて硬さなの!」

 

「ああ、俺の太刀も簡単に弾かれた!」

 

ラウラが勢いよく大剣を石の塊のガーゴイルに振り下ろした。ダメージは与えたようだが、すぐに再生する。

 

「な、なんだと!」

 

「何度斬り付けても導力魔法で砕いてもすぐに再生するぞ!」

 

「しぶとさだけは、一人前だな…」

 

ラウラ、カズマ、ユーシスがそう言ったとおり斬っても、叩きつけも、魔法で砕いても、復活する石の像(ガーゴイル)。するとリィンが走り出して

 

「紅葉斬り!」

 

正面から切り裂かれた石の像(ガーゴイル)はよろめきながらもなんとか持ち直す。

 

「やっぱりダメか?」

 

「いや…ダメではなさそうだな。あと一押し二押し…あればいけるか!」

 

カズマはずっと石の塊のガーゴイルの復活具合を見ていた。最初に攻撃して再生した速度よりも遅くなってるのを気づいた。そしてもう1人気づいているものがいた。

 

それはリーゼである。リーゼもマキアスやアリサ、エマやカティーナ、ラウラの攻撃、先程のリィンの攻撃から再生スピードを割り出していた。そしてリーゼはみんなに

 

「みなさん、これから石の像(ガーゴイル)に総攻撃を仕掛けます!エマさん、カティーナさん、エリオットさんは導力魔法(アーツ)石の像(ガーゴイル)を!」

 

「わかりました」

 

「うん、やってみる」

 

「リーゼちゃん、やってみるよ」

 

「フィーさんとカズマさんは、ガーゴイルをお二人の動きで振り回してください!」

 

「ん、わかった」

 

「わかったぜ」

 

「マキアスさん、アリサさんは、遠距離からの牽制をお願いしますわ!」

 

「リーゼさん!任せたまえ!」

 

「わかったわ」

 

「ユーシスさんとラウラさんは、側面からの攻撃をお願いしますわ!」

 

「承知!」

 

「わかった!」

 

「リィンさん、貴方は八葉の使い手ですよね」

 

「ああ、そうだな。リーゼ、君も太刀…それじゃあ」

 

「そうですわ。リィンには、紅葉斬りを石の像(ガーゴイル)に!」

 

「わかった!けど君は?」

 

「まあ、見ててくださいな!」

 

ユフィの指示通りにみんなは所定の位置に移動してからの総攻撃が始まった。凄まじい音が鳴り響く中、リィンは、駆け出していく。リーゼはそっと太刀を鞘に直し一点を見つめる。

 

リーゼとリィンのARCUSが光だしていた。

 

そしてその光は、すべてのメンバーのARCUSが光で結ばれていく。

 

リィンの紅葉斬りが石の塊のガーゴイルをよろめかせる。そしてそこにリーゼの攻撃が炸裂する。

 

「紅葉斬り!!」

 

リーゼの紅葉斬りで、石の像(ガーゴイル)の首が空中に舞う。リーゼはラウラに

 

「ラウラさん!最後はお任せします!」

 

「任せろ!」

 

ラウラは、床を思い切り蹴り飛ばして高くジャンプして、空中に舞う石の像(ガーゴイル)の首を大剣で振り下ろした。

 

 

石の像(ガーゴイル)の首は真っ二つに割れながら消えていく。首が斬られて消滅と同時に石の像(ガーゴイル)の身体も徐々に消えていき、最後には何も残らなかった。

 

 

倒した瞬間、エマとエリオットとカティーナがその場に座り込んだ。リィンはリーゼのところに来た。そしてハイタッチを交わしたのだった。

 

「リィンさん、何とかなりましたね」

 

「まあ、同じ太刀だからかな」

 

「それと戦いの最後のあたりで、みなさん淡い光みたいのに包まれましたよね?」

 

「そういえば、何かに包まれたような」

 

「ああ、僕を含めた全員が淡い光に包まれていたな」

 

「なんだと………?」

 

「マキアスのいう通りになんかに包まれたな」

 

「ふむ、気のせいか──皆の動きが手に取るように視えた気がしたが……」

 

「多分気のせいじゃないよ。ねぇリィン?」

 

「そうだな、そのおかげでヤツの弱点が視えたわけだからな。もしかしたらさっきの力が」

 

 

すると階段の上の方からサラ教官が喋りながら降りてくる。

 

「まあそうね、それがARCUSの真価ってワケね。いや~やっぱり友情とチームワークの勝利よね。うんうんお姉さん感動しちゃったわ」

 

サラ教官は全て見てたようなことを言った。カズマやフィーは、こんなタイミングで来るなんてと言った。他のみんなもそれには同意であった。

 

そしてサラ教官がオリエンテーリングについて話すようだ。

 

「…これにて入学式の特別オリエンテーリングは全て終了何だけど……何よ君達、もっと喜んでもいいんじゃない」

 

 

マキアスは、サラ教官に喜べないと怒り、アリサは疑問と不信感しか湧いてこないと、言っている横でカズマがため息をはいている。でもリーゼは、この疲れさえも気持ち良いものに思えるのは何故?と思っていた。やはりリベールの旅のことを思い出したからのか?それとも別の意味なのか?今のリーゼにはわからなかった。

 

今サラ教官が、1人1人の疑問や疑念に答えている。【Ⅶ組】がなんの目的に作られ、なぜ身分や出身が関係なく集められたのか、なぜリーゼ達がなぜ選ばれたのかを。

 

「一番判りやすい理由はその《ARCUS》にあるわ」

 

「この戦術オーブメントに?」

 

「エプスタイン財団とラインフォルト社と日本のFLT社が共開発した最新鋭の戦術オーブメント。様々な魔法(アーツ)が使えたり、通信機能を持ってたりと多彩な機能を秘めてるけど……その真価は【戦術リンク】なのよ」

 

「さっき、みんながそれぞれつながっていたような感覚」

 

サラ教官は続けて、戦場に置ける実用性をを話した。ARCUSが戦場に置ける革命だといい、理想的でもあった。しかし現時点ではARCUSに個人差があり、新入生の中でリーゼ達12人は、とにかく高い数値を示した。そして身分や出身も関係なく選ばれた理由でもある。

 

つまり能力第一を取ったってことだろう。

 

「なるほど」

 

「な、なんて偶然だ」

 

「偶然ねえ、何かありそうな感じはするけどな」

 

ラウラとマキアスとカズマが声に出して言う。

 

「さて─約束通りに文句の方を受け付けてあげる」

 

サラ教官は約束の文句の受付をやってるみたいだがどうなることやら。

 

「──トールズ士官学院はこのARCUSの適合者として君たち12名を見出した。でもやる気の無い者や気の進まない者に参加させるほど予算的な余裕があるわけじゃないわ。それと、本来所属するはずだったクラスよりもハードなカリキュラムになるはずよ。それを覚悟してもらった上で【Ⅶ組】に参加するかどうか─改めて聞かせてもらいましょうか?」

 

 

 

ちなみに辞退者は、本来所属クラスに戻れるようだ。だがリーゼやリィンは答えはもう決まってる。それは誰かに言われたからではない。リーゼは、異母兄であるオリヴァルトから言われただけではなく、自分自身の見聞を広げるためだけではなく、帝国を帝国の今の現状を自分の目で確かめたいからである。

 

リィンは育ての親からの自立をするために。心で決めてきたのだから。…自分には退路はないのだから。リィンがいざ行こうと思ったらリーゼが先に

 

「リーゼ・レンハイム、是非、参加させてもらいますわ」

 

「やっぱり一番乗りは貴女ね。まぁ予想通りだけど」

 

「色々と学ぶべきことがあって入学させてもらえたのですから。だからわたくしを高められるところならどこでも構いませんわ」

 

己を高められる場所という言葉に反応するリィン。どうやら自立の他に以外にもあるのが、己を高められる場所だったのだ。リィンは同じく前へ出て

 

「リィン・シュバルツァー、同じく特科Ⅶ組に参加します」

 

「なるほどなるほど……。男子はあんた達が一番か。まあ予想はついたけど」

 

サラ教官が何かを言ってるが、リーゼにはうまく聞き取れなかった。リィンの宣言後は、みんなが参加表明をされていきアリサが

 

「──私も参加します」

 

「あら意外ね、てっきり貴女は反発して辞退するかと思ったんだけど?」

 

「─確かにテスト段階のARCUSが使われてるのは個人的には気になりますけど……この程度で腹を立てていたらキリがありませんから。それに達也が参加してるのに、私が参加しないわけにはいかないから」

 

アリサは、母親への反発心からトールズを受けだが、RF社がARCUSの開発に関わっていたことに驚いたし、まあそれだけではないのだが。

 

 

なんだかんだで、カズマ、エリオット、ガイウス、カティーナと参加表明をやっていった。

 

フィーが参加表明が終わったところで、マキアスとユーシスが再びケンカを始める。

 

ユーシスはマキアスを尻目に…前に出てきて

 

「ユーシス・アルバレア《Ⅶ組》への参加を宣言する!」

 

マキアスとユーシスはまたもめ始め…散々言い合った後に

 

マキアス・レーグニッツ!特科クラスⅦ組に参加する!古ぼけた特権にしがみつく、時代に取り残された貴族風情にどっちが上か思いしらせてやる!」

 

面白い!

 

マキアス・ユーシスが参加した時点で、全員の参加表明となり、笑顔でサラ教官が

 

 

サラ「これで12名─全員参加ってことね!──それではこの場をもって特科クラス

 

 

《Ⅶ組》の発足を宣言する。この1年ビシバシしごいてあげるから楽しみにしてなさい──!」

 

 

 

ここにトールズ士官学院特科クラスⅦ組が発足した。後々に帝国史に名を刻むことになる。いや帝国史だけではなく、ゼムリア史の中に名前を刻まれることになっていく。

 

 

 

リーゼ達が知らない所で入り口付近に3人が会話をしていた。1人は金髪ロングで、容姿がとあるの食蜂操祈な感じである。名前は、ミサキ・カミジョウである。2人目は、入学式の挨拶もやったこの士官学院の学院長であるヴァンダイクであり、3人目はリーゼの異母兄であるオリヴァルトである。

 

そんなミサキは、クロスベルでロイドと会ってすぐに列車でトリスタまで駆け付けてきた。自身も発足に携わったⅦ組を見るために。

 

「やれやれまさかここまで異色の顔ぶれが集まるとはのう。君の妹君(アンネリーゼ)も含めて。これは色々大変かもしれんな」

 

「確かに。──でもこれも女神の巡り合わせというものでしょう」

 

「ほう─?」

 

「ひょっとしたら、彼らこそが“光”となるかもしれません。動乱の足音が聞こえる帝国において対立を乗り越えられる唯一の光に─」

 

「私も、オリビエさんの言ってることに賛成ですね。オリビエさんの妹君、リーゼさんですか。あの子からは何か特別な何かを感じるんですよ。あの子がⅦ組を、そして国家…エレボニアを…そしてクロスベルを……正しい何かに導いてくれるんじゃないかと思えるんです。かつて私を導いてくれたあの人みたいに…」

 

「君もクロスベルでは、そう言われてるんじゃないのかい?」

 

「私は、鉄血の子供達の一員になってしまいました。もう半分は汚れてしまいましたから。そう言われてるのは……ロイドです」

 

「ミサキ君、君は汚れてはいないよ。君の心は綺麗なものだって、エステル君やヨシュア君が言っていたからね。綺麗な心だからこそ、君は僕のⅦ組構想に協力してくれたのだろう?」

 

「………私ができるのはこれくらいですから…。クロスベルでは、特務支援課という部署が希望の光になりつつあります。帝国でも希望の光をってオリビエさんの考えに共感したんです」

 

「こちらこそ、ミサキ君。これからもよろしく頼むよ」

 

「はい」

 

第1章ートールズ士官学院入学編終了。

 

第2章ー初めての特別実習編~闇は動き出す編~

 




これで第1章入学編は終わりです。次回からは第2章初めての実習編です。

リーゼの騎神は、緋の騎神で決まりかな。セドリックの騎神をオリジナルにしないといけないな。


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第2章ー初めての実習編〜動き出す者達〜
第2章ー初めての実習編ー14ー1話ー入学式から2週間。


第2章初めての実習編1話です。


ーー

 

正式にⅦ組が発足することになった。12人の男女がⅦ組参加を表明したのだ。Ⅶ組は、オリヴァルトの想いと志が形になったクラスなのだから。リーゼは、それがわかっているから、気が引き締まる想いである。

 

オリエンテーリングが終わった後、Ⅶ組12名は自分達の学生寮である第3学生寮に行くことに。

 

第3学生寮は、貴族達の第1学生寮、平民達の第2学生寮と違い普通の屋敷だったようだ。Ⅶ組設立と共に学生寮として買い取られたものであった。だから寮というより一軒の屋敷であった。

 

そこから、Ⅶ組の12名の部屋決めや2階、3階の男女の取り決めなどを話し合った。

 

2階が、男子エリア、3階が女子エリアと決めたのだった。

 

そこから男子間、女子間で話し合って部屋決めをした。

 

決まったⅦ組メンバーの部屋の番号はこうなったのである。

 

【2階ー男子】ーリィン【201】・エリオット【202】・ユーシス・【203】・ガイウス【204】・マキアス【205】・カズマ【206】

 

【3階ー女子】ーアリサ【302】・ラウラ【303】・フィー【304】・エマ【305】・リーゼ【306】・カティーナ【307】

 

【サラ教官の部屋】ーサラ【301】・シズカ【308】

 

お風呂などの設備が未完成のためにしばらく、第2学生寮のお風呂場を借りることになっている。リーゼ達は、お風呂に入る前に、自分の部屋に届いている荷物の荷を解くことにしたのだ。それと夜になってからⅦ組の副教官のシズカ・ヒラツカの紹介があったのだった。ただリーゼだけは、びっくりしていた。前世の平塚先生にあまりにも酷似していたからだ。

 

アクアイア(シズク)から香織達はみんな死んだことを告げられていたので、全くの無知では無かったのだが、まさか同じ姿で生まれ変わったなんて思わなかったからだ。それに前世の記憶があるようにはみえなかったので、様子を見ることにした。

 

こんな感じで入学式の初日は終わりを迎える。

 

 

七耀暦1204・4・01・09:30・本校舎・1ーⅦ組教室

 

入学式の次の日、初めてのクラスへの登校である。Ⅶ組以外は、昨日の時点でクラスに入っているが、Ⅶ組は今日が初めである。席の順番は、予めに名前が張られているので、自分の名前が書いてあるところにみんなは座る。サラ教官が入ってきたので、挨拶をかわす。

 

今日の朝一で決めるのは、クラス委員長と副委員長をまず決めることである。サラ教官はそれを決めるために話し出す。

 

「まずは、クラスの委員長と副委員長を決めるけど、立候補する人いる?」

 

サラ教官がそう問いかけるが、誰も手を挙げない。まあこれが普通の反応だろう。誰が面倒な役目をするかってことになる。

 

「誰もいないの?なら成績順に…エマ、貴女委員長をやってちょうだい」

 

「…はい、わかりました」

 

成績順、誰も立候補も推薦もない場合はこうなることが多い。エマ自身もなんとなくわかっていたようで、覚悟していたのかあっさり引き受けた。

 

成績順って言葉にマキアスが反応している。次は副委員長を決めるようだ。

 

「副委員長は、成績順に言えば、マキアスとリーゼが同率2位なんだけど、どっちがやる?」

 

リーゼはすぐさまに右隣のマキアスの方を向いて答える。

 

「わたくしはマキアスさんで良いと思います」

 

「リーゼ君、ぼ、僕なんかより君の方が…」

 

マキアスは、リーゼをさん付けから君付けに変えている。それは前日にリーゼからさん付けじゃなく、呼び捨てでも構わないと言ったのだが、彼は何故か君に変えただけだったのだ。

 

「マキアスさん、わたくしはマキアスさんが副委員長で良いと思いますわ」

 

マキアスは慌てた表情で反論する。

 

「僕は、リーゼ君が適任だと判断します。オリエンテーションの時の的確な判断と指揮…僕には真似できない」

 

マキアスはオリエンテーションの時、石の像(ガーゴイル)との戦いのことを言っている。あの時はリーゼの判断と指揮で勝てたものだと、Ⅶ組メンバーは口を揃えているのだ。ただリーゼも引き下がらない。

 

「マキアスさん、わたくしよりも貴方が相応しいと思いますわ」

 

「ふっ、レーグニッツ、リーゼがそんなに頼んでるのだ。副委員長くらい引き受けたらどうだ?」

 

「なんだとユーシス・アルバレア!ああ、引き受けようじゃないか、貴族なんかよりも上であることを証明しないといけないしな!」

 

「……くだらん」

 

「…じゃあ、マキアス、副委員長になってくれるのね?」

 

「やります、やらせてもらいます!」

 

「委員長はエマ、副委員長はマキアスに決まったわ」

 

サラ教官は、何やらニヤニヤしながら次の事を話し出した。どうやら教卓の横に置かれているものを見ながら言っている。

 

「ほら、あなた達の士官学院で使う教科書よ。Ⅶ組は他クラスの教科書とはちょっと違って、ハイレベルになってるわね。まあ習う中身は一緒なんだけど、より難しくなってるから」

 

サラ教官の話をⅦ組メンバー達は、黙って聞いている。無駄口を叩けるほどの余裕は、今のメンバーには無い。

 

「とにかく、あなた達は、Ⅶ組で頑張ると宣言した以上頑張ってもらうから」

 

そんな感じで士官学院での日常が始まるのであった。

 

 

七耀暦1204・4・17ー朝ー第3学生寮ー306号室ーリーゼの部屋

 

激動の2週間が過ぎようとしている。その2週間の内には色々とあった。リーゼ達が第3学生寮に来た頃は、とても学生寮として、生活を出来るものではなかった。あのオリエンテーリングが終わった後にリーゼ達は簡単な掃除を全員で疲れた身体にムチを打ってやっていたのだ。

 

それだけではなく、第3学生寮には、お風呂がなくリーゼ達は、第2学生寮に行ってお風呂を借りなくてはならない始末だった。そして昨日やっと急ピッチで作れた第3学生寮のお風呂が完成したのだった。お風呂は男女にちゃんと分かれてるみたいだし、簡素の作りではなかった。

 

流石は、ユーシスやリーゼがいる手前、本当の簡素のお風呂には出来なかったのだろう。まあ学院のトップは知っていても当然だろう。

 

 

そんな中リーゼは机の方へ行き、帝国時報を手に取り、気になる事がないか見てみる。

 

【クロスベル警備隊の一部、暴走しクロスベル市内を一時占拠】

 

【クロスベル警察特務支援課とクロスベル遊撃士支部の協力により解決される】

 

暴走の原因は、ウルスラ病院のヨアヒム・ギュンター教授が深く関与しており、クロスベル警察捜査一課は慎重に捜査を進めている。

 

 

マクダエル市長から、ロイド・バニングス、ミサキ・カミジョウの2人は表彰される。

 

帝国時報・クロスベルタイムズのページの真ん中にロイドと嬉しそうにとなりに写るミサキの姿が写真があった。

 

「ミサキさん…良かったですわね」

 

リーゼは、ミサキの事は知っている。オリヴァルトが前に連れて来たことがあるのだ。

 

 

ミサキは、自分の素性をリーゼにも話したのだ。包み隠さず全てを彼女に。

 

リーゼは、大粒の涙を流しながらミサキの話を聞いていた。そしてミサキの身体を抱き寄せてたのだ。力強く抱きしめたのだ。

 

ミサキは、自然と涙が零れた。強く抱きしめられたのは、ガイとオリビエに抱きしめられた以来だったからだ。

 

少しでもオリヴァルトの力になってあげたいと心に決めていた。そこにリーゼ抱きしめてくれたから、この兄妹は偉大だなと心に思った。

 

もちろんリーゼも同じ気持ちであるのは変わらない。ミサキの力になってあげたいと思っている。ただ皇女である以上、表だって手助けが出来ないのが、歯痒いところでもある。

 

リーゼは、部屋の窓を開ける。するとトリスタの街を包むひんやりした風が部屋を吹き抜ける。

 

「春先のひんやりした風が気持ちいいですわ」

 

今の彼女の姿は、下着姿である。シルクの白の花柄が入ったブラとブラと同じ模様のパンツである。

 

彼女の好みの色は白だが、別に色モノを持ってないわけない。青や緑、ピンク系なども持っているのだ。それとアクアイアからもらったみっしぃ柄の下着とかも。

 

それとミサキからのプレゼントで貰った赤と黒の下着もあるが一度も身に付けたことはない。

 

今年でアンネリーゼとして生まれて、17年である。前世の八幡として生きた17年間に追いついたのだ。すでに八幡のとしてのやつは、記憶の中でしかない。

 

自身の下着姿にも戸惑った時期もあったが、今では普通になっている。過去の男であった上に今の女であるものが、上塗りしているのだから。

 

「ふふっ、わたくしにもミサキさんみたいに、素晴らしい殿方と巡り会えるのでしょうか」

 

リーゼは、ルンルン気持ちで身支度を始めた。

 



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第2章ー初めての実習編ー15ー2話ー新しい仲間。

第2章2話です。


リーゼ達が第3学生寮で、学院へ行く準備を整えている頃、学院の方ではサラ教官とシズカ教官とヴァンダイク学院長と通信でオリヴァルト皇子が話していた。

 

トールズ士官学院ー学院長室

 

「……ということだ。サラ教官、シズカ教官、引き受けてくれるかい?」

 

「皇子殿下からの提案ならば、断れないでしょう」

 

「私からも断われません」

 

「突然の言い出しですまないのぉ、サラ教官、シズカ教官」

 

「ええ、あたしもうすうすとは感じてはいましたから」

 

「確かにあの2人は他のクラスの者達よりも頭一つ抜けてましたから」

 

サラ教官、シズカ教官、オリヴァルト皇子、ヴァンダイク学院長が話しているのは、1ー1組 アンジェリナ・ログナー、1ー3組 スハルト・オルランド。

 

アンジェリナとスハルトは、入学試験の時は、ARCUS適性検査で数値が離れていたものの、ここ2週間でⅦ組と同じ数値まで伸ばしてきた。

 

今のクラスにいるより、Ⅶ組に編入させて伸ばした方が良いと、緊急リモート理事会が開かれ、全会一致で2人のⅦ組への編入が認められていた。

 

すでにアンジェリナ、スハルトの両名には、Ⅶ組編入の話が担任教官からされている。両名とも編入の意思を示したようだ。

 

「Ⅶ組運営が上手くいってるということで、日本のFLT社が出資を増額してくれるそうだ」

 

「日本のFLT社がですか。まあARCUS開発に携わっていますが」

 

「サラ教官達の疑問は、何故FLT社が出資を増額してきたのかってとこかな?」

 

「まあ、簡潔に言えばそうですね」

 

「説明をもらえるんでしょうか?」

 

「RF社の会長からの直々の連絡でね。4月から学院に対する新たな出資社が決まったって。他の理事からも了承を得たと言われてしまったからね」

 

帝国のRF社と日本のFLT社が提携を結んだ事は、業界人でもなければ一般的な人間には知られていない。

 

「今年になってから、FLT社製の戦車や装甲車などが、正規軍に大量に導入されてますよね」

 

「四大名門の中でもラマールとクロイツェンの2州が軍拡が著しいな」

 

「そうじゃな。ワシの軍の古き知り合いからの話なんじゃが、どうやら帝国政府の意向らしいんじゃ」

 

「革新派…オズボーン宰相の意向ってのが本当なんだろうがね」

 

「シズカ教官の指摘どおり、今年になってから、カイエン公、アルバレア公は、正規軍に対抗して領邦軍の軍拡を推進しているようじゃからな」

 

領邦軍とは、貴族の軍隊のようなものである。主に四大名門が保持する領邦軍は、正規軍の数には届かないが実力者が揃っていると言われている。その領邦軍も正規軍に対抗して、軍拡を行っている。

 

さっきもシズカ教官が言ったとおり、領邦軍の軍拡を唱えてるのは、四大名門の筆頭であるカイエン公である。

 

カイエン公は、革新派が推し進める政策を否定し古き帝国へ戻そうとしている。カイエン公を支持して集まる集団を貴族派と呼び、オズボーン宰相を筆頭に改革を推し進めている政策集団を改革派と世間一般では呼ばれいる。

 

その貴族派と改革派と対立が今年になって激しさを増している。その1つが軍拡である。そしてその2つめが軍拡を推し進めるために、四大名門は各地で税金を高くしている。

 

これが帝国の現状であり、個人的にどうこう出来るような状態でないことは、サラ教官、シズカ教官、オリヴァルト、ヴァンダイクもわかっているのであった。

 

そのための光となりうるのがトールズ士官学院、【特科クラスⅦ組】である。

 

すると学院長のドアがノックされる音が聞こえてから男子生徒と女子生徒の声が聞こえてきた。

 

「1ー3組 スハルト・オルランド、入ります」

 

「1ー1組 アンジェリナ・ログナー、入ります」

 

「スハルト君、アンジェリナ君、ようこそ学院長室へ。そして彼女が編入先のⅦ組の担任教官のサラ・バレスタイン教官と副担任のシズカ・ヒラツカ教官じゃ」

 

「学院長の紹介もあったけど、貴方達が編入するⅦ組の担任教官、サラ・バレスタインよ、これからよろしくね」

 

「よろしくな、2人共」

 

「よろしくお願いしますね」

 

「よろしく」

 

 

 

リィンは、いつもの朝練を西トリスタ街道までやっている。

 

たまにそこにリーゼとラウラも加わることもあるが、今日は早めに切り上げていた。リィンもだが。

 

サラ教官から、Ⅶ組はいつもより早く登校して頂戴と言われたためである。

 

リィンとリーゼとラウラも、何故Ⅶ組だけだと考えていたが、わからなかった。

 

もちろんリーゼ達だけではなく、アリサ達も疑問がわかるわけでもなく、Ⅶ組はまだ誰も登校していない時間に登校することになる。

 

ーー1204・4・17・早朝・07:20・Ⅶ組教室

 

まだベッドで寝ていたいという雰囲気が漂うⅦ組内。リーゼ達は朝練で、とっくに目は覚めてるけどこんなに早く学院に来ることはないから戸惑いもある。するとサラ教官とシズカ教官が教室へ入ってきた。

 

「グッドモーニング!ほらっそこ!眠そうな顔をしない!」

 

「というかカズマ、フィー、お前達も、だぞ」

 

サラ教官から注意を受けたのは、マキアス、エリオット、ユーシス辺りであたりでシズカ教官に怒られたのは、カズマとフィーである。まあ、マキアスのあくびで、エリオットとユーシスやカズマ達も巻添えをこうむった形になった。エリオットは笑い、ユーシスはしかめ面になった。カズマとフィーは苦笑いをしマキアスは恥ずかしさをごまかすために

 

「一体何ですか!サラ教官?僕達をこんな早く呼び出して?」

 

「そうですよ。朝方に急にⅦ組全員を起こして早く登校するようにって…。何かあったのでしょうか?」

 

「まあ、学院にもあたしやシズカにも事情があるのよ。まあ、あんた達を呼び出したのは他でもない。Ⅶ組に新たな仲間が加わる事になったのよ。それも2人ね」

 

サラ教官の話を聞いて、Ⅶ組内が騒ぎ出す。入学式のオリエンテーションで11名で、Ⅶ組を発足させたから、人数は増えるとは考えてはいなかったのだ。サラ教官とシズカ教官は、例外の説明を行う。

 

「まあ、他のクラスでその2人は一つ飛び抜けているのよ。ARCUSの適性検査でもあなた達と変わらない数値になってるしね。話が長引いたわね、2人共入って来て」

 

サラ教官の呼び掛けで、Ⅶ組のクラスの中に2人の生徒が入ってきた。1人は男子生徒で、赤髪のロン毛の中肉中背の身体付きをしている。もう1人は女子生徒で髪の色は紫でお尻のあたりまである。2人共に元のクラスの制服を着ている。男子生徒は緑を。女子生徒は白の制服を。

 

 

男子生徒の姿を見るなり、リーゼとアリサが声を上げる。

 

「貴方は…!?」

 

「3組のスハルト・オルランド!」

 

「ああ!白とシマの女か」

 

スハルトの言った事にマキアスとエリオットが反応する。

 

「白?」

 

「シマ?」

 

リーゼとアリサが顔を真っ赤にしながらマキアスやエリオットに

 

「マ・キ・ア・スさん…!白とか忘れてくださいね?」

 

「ひぃ!?」

 

「エリオットもよ?」

 

「うんうん!」

 

マキアスは、リーゼの優しい笑顔の中の笑ってない目を見てビビり、アリサの笑顔の怒りにエリオットも聞かなかった事にした。

 

まずリーゼは、Ⅶ組に向かってる途中にスハルトにスカートをめくられた。ただ幸いに彼以外には誰もいなかった。

 

アリサは、カティーナがいる図書館へ向かう途中にスカートをめくられた。しかしリーゼの時と違い、他クラスの男子生徒が2人いたのだ。アリサはすぐにひっぱたいてやろうと追っかけたが追い付けなかった。サラ教官とシズカ教官は呆れている。

 

「スハルト、あんたね!なに問題を起こしてるのよ!ったくそんなことをしてたからなのね。スハルトがⅦ組に加入するって聞いた3組の女子生徒達が嬉しそうにしてたのが、わかったわ」

 

「スハルト、全くお前というヤツは…」

 

「あいつらにしたら問題児が消えて、さぞや嬉しいだろうな」

 

「ただ、Ⅶ組に問題を移しただけでしょ?」

 

「…スハルトとか言ったな。Ⅶ組でそのような事をしないでもらおうか!」

 

 

スハルトははぁ~とため息をはいて

 

「なんだよ、ムッツリスケベメガネ。説教から間に合ってるぜ」

 

「な、な、な、ムッツリ…」

 

「フッ」

 

「ぷっ、ムッツリスケベメガネ…ぷっ、アハハ!」

 

「き、君達、何がおかしいんだ?」

 

「な~に、アイツの言葉が言い当てているなと感心しただけだ」

 

「アハハ…確かにユーシス、そうだよな」

 

「なんだと…!」

 

「やめないか、3人共!」

 

リィンに宥められて、渋々ユーシス、カズマ、マキアスはケンカをやめた。サラ教官やシズカ教官もため息をはいて、スハルトに自己紹介を促した。

 

「えー一部の女子から紹介がありましたが、1ー3組から編入してきたした、スハルト・オルランドだ。まあ、よろしく!」

 

スハルトのせいで戸惑っていた女子生徒も自己紹介をやり始める。

 

「1ー1組、貴族クラスから参りました、アンジェリナ・ログナーと申します。今後ともよろしくお願いしますね」

 

スハルトとは違い深々と頭を下げてお辞儀をしたアンジェリナ。そしてカズマの方を見てにこやかに微笑んだ。アリサはすぐに

 

「アンジェリナさん!」

 

「アリサさん、よろしくですね。それとカズマさんも」

 

「まさか、一緒のクラスになるなんてな」

 

アリサとアンジェリナが知り合いなのは、RF社の本社があるルーレは、ログナー侯爵の足下である。アンジェリナはログナー侯爵の次女である。

 

つまりRF社関係で、ログナー侯爵家とは付き合いがあるというわけだが。カズマがアンジェリナと知り合いなのは、貴族生徒達に絡まれていたのを助けたのが出会いであった。

 

「Ⅶ組に編入は少し不安でしたたけど、カズマさんやアリサさんがいるのは正直助かりました」

 

「そうか?アンジェリナなら貴族クラスでもやっていけると思ったが?」

 

「カズマったらそこは喜びなさいよ」

 

「カズマは俺と違って顔が広いな。まさかログナー侯爵家のお嬢様と知り合いだったとはな」

 

カズマはリィンを見ながら

 

「あのなリィン、前にアンジェリナの事は話したぞ。お前が忘れただけだろ?」

 

「そうだっけ?」

 

「俺は話したぞ」

 

リィンはあくまでも始めて聞いた表情をしている。カズマはまたもやため息をはいた。するとスハルトがアンジェリナの背後に回り、スカートをめくり上げた。

 

カズマ、リィン、ユーシス、ガイウス、マキアス、エリオット、男性陣は、アンジェリナのオーシャンブルーのパンツを目撃することになる。

 

それと同時にアンジェリナの悲鳴も早朝の本校舎にこだましたのだった。

 



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第2章ー初めての実習編ー16ー3話ー放課後にて。①

第2章3話です。


スハルトとアンジェリナの2人を新たに加えた特科クラスⅦ組。

 

スハルトという大問題児を抱えたⅦ組は、この先どうなっていくのか。

 

まだリーゼ達にわかるハズはなかった。

 

嵐のような朝のホームルームが過ぎ去り、授業に入っていくのであった。

 

 

 

そして──この時間はトマス教官の帝国史である。《獅子戦役》についての授業である。リーゼは小さい頃から、皇帝である父親や皇妃である母親、異母兄であるオリヴァルト、護衛で親友のアクアイアからずっと聞いていた話しであるため、復習みたいなものになってるのだ。

 

「…………ある1人の流浪の皇子が辺境の地立ち上がったのです。ドライケルス・ライゼ・アルノール、第73代エレボニア皇帝にして【獅子心皇帝】と呼ばれる中興の祖である」

 

ドライケルス軍は最初は少数だった。しかし帝国の各地で人心をつかみ、心ある有力者を得ることで、一大勢力になった。リーゼは大帝を尊敬している。小さいときは、大帝みたいになりたいと思っていたほどだ。それで父親やオリヴァルトに、リーゼは、やんちゃだな~と言われていた。

 

「そのドライケルス皇子が最初に挙兵した辺境の地ですが──リィン・シュバルツァー君、その地がどこかご存知ですか?」

 

リィンがトマス教官に指名された。リィンが席から立ち上がり

 

「ノルド高原です。帝国北東部に広がる高原地帯です」

 

「おお、知っていましたね。当時ドライケルス皇子は放浪の果てに異郷の地ノルドで遊牧民たちと暮らしていました。そして帝国本土での内戦を聞き遊牧民の協力を得て挙兵したのです」

 

ノルド高原。ガイウスの故郷である。リーゼは、ノルド高原に行ってみたいなと内心思っている。アルノール家とノルドの民は不思議な力で繋がっていると父親やオリヴァルトに言われていた。リーゼもガイウスとは、不思議な縁で繋がってるような気がしたのだった。

 

 

今日も一通りの授業が終わって、そして放課後──

 

 

「─お疲れ様。今日の授業も一通り終わりね。前にも伝えたと思うけど、明日は《自由行動日》になるわ。厳密に言うと休日じゃないけど。授業はないし、何をするのも生徒たちの自由に任せてるわ」

 

トールズ士官学院の教育精神は、生徒たちの自主性を育成するのが目的である。サラ教官の例は参考にならないなとⅦ組の誰もが思っていた。学院の施設は開放されてるようなので、部活動も自由行動日にやってるのだ。リーゼも何か部活動をやってみようかと思っていた。リベールで旅をしていた頃、クローゼの学校生活や部活動や生徒会の話を聞いていたから、前世の記憶と共に興味が湧いて出てきたのだ。

 

「それと来週の水曜日に実力テストがあるから」

 

「それは一体どういう………?」

 

「サラ教官、実力テストと言うのはなんでしょうか?」

 

アリサとカティーナが疑問に思ったことを聞いている。

 

「ま、ちょっとした戦闘訓練の一貫ってところね。一応評価対象のテストだから体調には気をつけておきなさい。なまらない程度に身体を鍛えておくのもいいかかもね」

 

「…フン面白い」

 

「めんどくせーことやるのかよ!」

 

「ううっ、何か嫌な予感がするな」

 

「そうだよな、嫌な予感しかしないぞ」

 

「ふぁぁ………」

 

サラ教官の話しを聞いたユーシスは面白がり、スハルトは、めんどくさいと言い、エリオットとカズマは不安感を抱き、フィーは相変わらずのマイペースだ。サラ教官の話しはまだ続く。

 

「そして─実技テストの後なんだけど改めて【Ⅶ組】ならではの重要なカリキュラムを説明するわ」

 

「そ、それは……」

 

重要なカリキュラム。一体何を【Ⅶ組】させる気だとみんなが思っていた。ただ何が来ようが不安はないとリーゼだけは思っていた。

 

「ま、そう言う意味でも明日の自由行動日は、有意義に過ごすことをお勧めするわ。HRは以上…副委員長、あいさつして」

 

「は、はい。起立─礼」

 

Ⅶ組の面々は、部活動見学に行くようだ。リーゼもアリサ達と見学しに行くことにした。身体を動かす部活動を選ぶことを考えていた。ただパンフレットで部活動紹介を見ただけでは分からなかったので、実際に見てから決めることにした。

 



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第2章ー初めての実習編ー17ー4話ー放課後にて。② 4月の夕暮れ。

第2章4話です。


Ⅶ組の教室からいち早く出たスハルトは、本校舎の屋上に来ていた。そして北の空を眺めていた。

 

「フッ、変態大魔王か…。今の俺にピッタリの徒名じゃないか」

 

スハルトは、自分の懐から何かを取り出す。それは家族のように写っているスハルトとその他の人間達。そして小言で喋り出す。

 

「…団長…副団長…団のみんな、なんで俺も一緒に逝かせてくれなかったんですか…何故俺だけ、生かせたんですか!俺には……この世に未練なんかもうないんです。赤い星座を出てから行くとこがなかった俺を拾ってくれた団長と団と最期まで共に…」

 

スハルトは崩れ去るように屋上の床に座り込んだ。

 

「…赤い星座の連隊長時代には、大切な恋人のソフィアを亡くし…虹の旅団時代では…団長、副団長、団のみんなを失ってしまった…俺は…死神だな…。ははっ、死神は、ランディ兄貴の徒名だったな……」

 

ソフィア・クロサバード。スハルトの赤い星座の連隊長時代の恋人。スハルトは猟兵、ソフィアは、遊撃士という異色のカップルであった。

 

初めて出会ったのは、どこかの戦場の近くであった。

 

戦場に迷いこんできた民間人を守るために、スハルトは身を挺して守り、崖の下に落ちたが運良く川に落ちた。

 

川で流されているスハルトを助けたのが、後々恋人になるソフィアだ。

 

 

ここまで語ったが、これ以上は本人の口から語られる日がくるだろう。そのときまで待つとしようか。

 

屋上の片隅で、スハルトが座り込んで泣いているところに、誰かがやってきた。スハルトはすぐに写真を懐になおして、平常心を取り戻した。

 

「うーん、先客がいたのか?」

 

「あ、あんたは、2年の変態大魔王先輩じゃないですか」

 

誰が変態大魔王先輩か!誰だそんな噂を流してるヤツは……って変態大魔王後輩じゃないかよ」

 

「変態大魔王後輩ですが、先輩は何の用で屋上に?」

 

「それはだな、屋上に女子がいないからなってな。夕方の屋上って北風が強くなってな…それを知らずに屋上に出てくる女子のスカートがまい上って…な!」

 

「なるほど…」

 

スハルトはこの先輩の話を聞いていた。それとなんだか自分と同じような匂いがするなとも感じた。

 

「おっと、自己紹介がまだだったな。俺の名前はクロウ・アームブラストだ」

 

「俺は、スハルト・オルランド。1ー3からⅦ組へ編入した」

 

「お前もか~」

 

クロウを急にニヤニヤとしながらスハルトに

 

「な、何だよ、クロウ先輩?」

 

「Ⅶ組って、女子のレベルみんな高いだろ。他のクラスの連中が羨ましがってたぜ」

 

「確かにレベルは高いと思うぜ。だがそれだけと思うが?」

 

クロウは呆れた表情をしながらスハルトを見る。お前は何もわかってはいないと。これだからおこちゃまは困る的なことを言われる。

 

「はぁ~それだからおこちゃまなんだよ」

 

「クロウ先輩、あんたはどう思ってんだよ?」

 

クロウ「俺か…。Ⅶ組の女子は他のクラスよりもレベルは高いと思うがな。貧乳から巨乳、色とりどりの下着…」

 

「…あんたもスカートめくりとかしてんのかよ?」

 

「誰がそんな幼稚な事をするかよ!」

 

「悪かったな、幼稚でよ…」

 

クロウは馴れ馴れしくスハルトと肩を組み

 

「そうイジけんなよ。そんなお前にとっておきのネタを教えてやるからよ。とにかく耳貸せ」

 

「な、なんだよ」

 

スハルトはおとなしくクロウの言うことを聞いた。それは本校舎階段下のあるエリアやトールズ士官学院を東西に流れる川の橋のところ、学生会館の階段下など教えた。

 

「なるほどね……」

 

「フッ、これが先輩ってやつさ。ところで、お前のクラスに金髪の女子がいるだろ?」

 

「金髪?アリサの事か?それともリーゼの事か?」

 

「あっ、そのリーゼって女子の方だ」

 

「ふーん、名前はリーゼ・レンハイム。平民出身らしいけど、雰囲気とかしゃべり方がどうも貴族のような感じがしないでもないんだが」

 

「なるほどな。あの子はリーゼっていうのか、そうか、そうか」

 

スハルトは、変態大魔王な表情をしているクロウを見てちょっと引き気味になりながらも

 

「あんた、あのリーゼをナンパでもするのかよ?」

 

「さーな。お前はまあ…Ⅶ組で頑張りな」

 

クロウはスハルトにそう言って、屋上から去っていった。

 

「……。あの先輩…一体なんだったんだ?」

 

茜色に染まる空の下で、スハルトは複雑な気持ちで屋上にいたのだった。

 

 

スハルトが屋上で語り合っている頃、ユフィ達一向はグラウンドからギムナジウムへ向かう。

 

ギムナジウムでの部活動は、フェンシング部と水泳部の2つしかない。

 

アリサとアンジェリナは、すでにラクロス部に決めており、カティーナは、園芸部に決めている。リーゼとエマとラウラの付き添いでついてきていた。

 

リーゼとラウラは、水泳部を見学していた。もちろん水泳部が活動するのはプールである。

 

ラウラはリーゼを水泳部に誘ったのだ。水泳は、剣を振るう人間には良き鍛錬だと教えたのだ。リーゼもラウラがそう言うならとやって来たのだ。

 

プールサイドに集まった2人男女はユフィ達を見て

 

「俺は、水泳部部長のクラインだ。新入生のみんなはゆっくり見学していってくれ」

 

「わたしは副部長のマインよ、新入生のみんな、よろしくね」

 

部長からの自己紹介と副部長の自己紹介があり、水泳部の人数は部長と副部長が2人だけである。そこにリーゼ、ラウラと男子生徒が加わるので、5人となる。

 

「水練、ふむ、いい鍛練になりそうだな」

 

「確かに、ラウラさんの仰ったとおりにいい鍛練になりそうですわ」

 

リーゼもラウラも純粋に水泳を楽しむと言うよりも鍛練のためにやるような感じか。エマは水泳部、もちろんフェンシング部でもなかった。

 

そんなエマのため、アリサとアンジェリナとカティーナは、エマの部活動探しを手伝うみたいで、ギムナジウムから出ていった。

 

リーゼとラウラは、引き続き水泳部の施設を見せてもらう。見せてもらうといってもギムナジウム内のものである。施設といったが、更衣室、更衣室の中にあるシャワールーム、2階にあるくつろぎスペースの休憩ルームぐらいしかない。見せてもらっている途中にリーゼのARCUSの着信がなる。クライン部長の許可をもらいリーゼは出る。

 

「良かった、出たわね、リーゼ」

 

声の主は、サラ教官だった。

 

「あの、サラ教官?わたくし部活動見学の途中なんですが?」

 

「わかってるわよそんなこと。大事な話があるからARCUSで連絡してんでしょうが!」

 

「大事な話ですか?一体何の話でしょうか?」

 

「とにかく、学生会館の2階の奥の部屋に行きなさい。絶対よ、リーゼ!行きなさいよ!」

 

「はい、わかりましたわ」

 

「それじゃーね」

 

サラ教官は、そう言うとARCUSの通話を切った。側でラウラが心配そうに見ていた。

 

「リーゼ、どうしたのだ?」

 

「サラ教官に学生会館の2階の奥の部屋に行けって言われましたわ」

 

「学生会館か…。まだ行ってはいなかった場所だな」

 

「学生会館には、食堂や購買部、部活動エリアなどありまして、4階には貴族専用カフェがありますわ」

 

「ふむ…」

 

「サラ教官に呼ばれたのか?」

 

「はい。正式には学生会館の2階の奥の部屋にですが」

 

「学生会館の2階の奥の部屋かぁ…生徒会室に呼ばれたんだな」

 

「せ、生徒会室にですか?」

 

「とにかく、行ってみるといい。今日は部活動はしないから安心してくれ」

 

「活動は明日からだからね」

 

「水泳部の今後のことは私が聞いておく」

 

「ラウラさんに、クライン部長、マイン副部長、すいません。わたくしはこれで失礼しますわ」

 

リーゼはみんなに一礼すると、水泳部が活動するプールから出ていくのあった。

 

 

ギムナジウムから出たリーゼは、西日に照らされてた。風も昼間とは違い冷たい風が北から吹いていた。

 

「学生会館は確か…ギムナジウムから南に向かったところ、マキアスさんさんがいつも行く図書館の北側だったはずですわ」

 

リーゼは前世の記憶を思い出していた。生徒会室にて、生徒会長である城廻めぐりの執務の一部、目安箱の依頼の一部をこなしていた。もちろん奉仕部部員として、八幡個人としても。

 

 

リーゼはそんなことを思い出し、ギムナジウムから技術棟の前を通りすぎて、すぐに学生会館の建物が現れる。

 

「ここが学生会館のはずですわ」

 

そう言ってリーゼは、学生会館へ入ろうとしたら誰かに話しかけられた。

 

 

「お勤めゴクローさん。入学して半月になるが調子の方はどうよ」

 

リーゼは、話しかけられた相手を見て、すぐに同級生ではないことに気が付き

 

「あ、えぇまぁ、正直、大変ですけど今は何とかやっている状況ですわね。授業やカリキュラムが本格的に始まったら目が回りそうな気がしますけど」

 

「はは、わかってるじゃん。特にお前たちさんには色々てんこ盛りだろうだからな。ま─せいぜい肩の力を抜くんだな」

 

「は、はぁ……えっと先輩ですよね?名前を伺っても構いませんでしょか?」

 

「まぁまぁ、そう焦るなってまずはお近付きの印に面白い手品を見せてやるよ」

 

「手品ですか………?」

 

「ん─そうだな。ちょいと50ミラコイン貸してくれねえか?」

 

「50ミラコインですか?はい、わかりましたわ」

 

リーゼは財布を上着のポケットから取り出し、50ミラコインを探し始めたとき、ふと横から誰かがやってきた。

 

「またやってるのですか。はい、50ミラ、クロウ先輩。今度は俺のクラスメイトから借りるんですか?」

 

「リィンさん!」

 

「ちげーよ、後輩にちょっと手品を見せるだけだから…よ…そんじゃよーく見とけよ」

 

50ミラコインが空を舞いクロウの手元に落ちてくる。

 

「さて問題、右手と左手、どっちにコインがある?」

 

「それは──右手でしょうか?」

 

「前、これでやられたからな。でも今回は分かったぞ」

 

「はぁ…リィンのやつには流石にバレたか…」

 

「リィンさん…どういうことですの?」

 

「リーゼ、まぁ俺のもよく見ていてくれ」

 

リィンが、再び取り出した50ミラコインを空に放ち、コインが舞ながら手に落ちてくる。そして

 

「リーゼ、コインはどちらにあるかな?」

 

リーゼは、ずっと見ていてあることに気がついた。さっきも今回も真下に巾着袋があった事に。そこから導き出された答えは

 

「右にも左にも入ってないですわ。あるのは巾着袋ですね?」

 

「正解だ。右手にも左手にもない、答えはこの巾着袋の中だ」

 

「ぐぬぬ……全く可愛げのない後輩くん達だよ。リィンも()()()も。まぁその調子で精進しろってことだ。せいぜいサラのしごきにも踏ん張って耐えて行くんだな。そうそう生徒会室なら2階の奥だぜ。そんじゃよい週末を」

 

クロウ先輩は、そう言って正門の方へ歩いて行った。リーゼは、クロウ先輩がただ者ではないと己の血が騒いでるのがわかった。リィンがここに来たことも疑問がついた。

 

「サラ教官に頼まれたんだ。リーゼが生徒会の方から学院生活に必要な物を持ってくるみたいだから、君も手伝ってほしいとARCUSから連絡を受けたんだ」

 

「サラ教官にですか?」

 

「まあね、付け足すとシズカ教官にも頼まれたかな。とにかく生徒会室まで行くか」

 

「そうですわね」

 

リーゼはふと不思議に思った。さっきのクロウ先輩は、なぜ自分達が生徒会室にようがあると思ったのか。するとリィンが

 

「さっきのクロウ先輩の事か?」

 

「ええ」

 

「まあ、一言で言えば、ふざけた先輩だな。ただ、底知れぬ感じもする一面を持っていると思う」

 

「底知れぬ感じですか、確かにわたくしもそれは思いましたわ」

 

「まあ、気にしないでくれ。俺のただの勘だから」

 

「そうですか」

 

リィンの言った底知れぬ何かは、リーゼも感じとってはいたのだ。だがどう説明していいのか分からなかったから言わなかっただけだ。

 

リーゼとリィンは、2階奥の生徒会室に目を向ける。生徒会室って普段なら絶対こないとリーゼとリィンは思った。生徒会室の扉の前に立った2人は、コンコンと扉をたたいた。



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第2章ー初めての実習編ー18ー5話ー生徒会室にて。

第2章5話です。


「はいはーい鍵はかかってないからどーぞ」

 

リーゼとリィンは、声の主をどっかで聞いたことあると思いながらも、生徒会室のドアを開けて中に入る。

 

「失礼致します」

 

「失礼致しますわ」

 

「えへへ…2週間ぶりですね。生徒会室へようこそ。リィン・シュバルツァー君とリーゼ・レンハイムさん。サラ教官の用事で来たんでしょ?」

 

「え、ええ、入学式以来ですわね。なるほど生徒会の方だったというわけでしたか」

 

その後、この小柄の緑の制服を着た女子生徒が2年生で生徒会長だと知って2人は驚いた。彼女の名前はトワ・ハーシェル。困ってることや相談したいことがあったら生徒会まできていいと言われた。なんて優しい方だとリーゼは感動した。

 

リィンが、サラ教官からの用事の事を言い出した。

 

「あ、うんうん、これなんだけど……はいどうぞ。一番上がリィン君で二番目がリーゼさんのはずだよ」

 

リーゼはリィンから受け取り

 

「これは学生手帳じゃないですか。そう言えばまだもらってなかったな」

 

「後は残りのⅦ組メンバーに渡せばいいわけですね」

 

「本当に遅れてごめんね」

 

トワ会長は、遅れた原因を話してくれた。リーゼ達【Ⅶ組】はちょっとしたカリキュラムが、他のクラスと違うらしく《戦術オーブメント》も通常とは違うタイプだから別の発注になったようだ。

 

「うん、学生手帳には戦術オーブメントの説明書も載っているんだけど他の1年生は今までと同じ標準タイプだから同じレイアウトに仕えるんだ。でも君たちのは特注品で操作説明違うから少し時間が掛かっちゃったの」

 

「そうだったのですか……。!?もしかしてそういった編集までトワ会長がなされてると?」

 

「うん、サラ教官に頼まれて─ごめんね、こんなに遅れてちゃって」

 

リーゼとリィンは、サラ教官は何やってるのかって思った。明らかに生徒会長の権限を超えた仕事をトワ会長にさせてるとしか思えないと。…これは明らかにサラ教官自身の仕事だと、リーゼが考えていたら、リィンがトワ生徒会長に

 

「トワ生徒会長!」

 

「え!?、何かな?」

 

「本来ならサラ教官がやるべきことを、トワ会長に押し付けてるみたいですのでので」

 

リィンの言葉に対してトワ生徒会長は、サラ教官はいっつも忙しそうだし、他の教官の仕事を手伝うことも多いから、今さらだってだと。リーゼとリィンはなんて健気な女性なんだと感心してたら、サラ教官から何でも生徒会の仕事を手伝うとかのお話しになっていたのだ。

 

「うんうんさすがは新生【Ⅶ組】だね」

 

「その……一体何の話しですか?」

 

「ちょっとそんなことはきいていないのですが」

 

リィンとリーゼがトワ生徒会長に何のことなのか尋ねた。サラ教官やシズカ教官からも何も聞いていないのだからわかるはずもない。

 

 

話を聞いていくうちにリィンもわかったのだ。リーゼもわかったようでサラ教官は確実に生徒会の処理しきれない仕事を【Ⅶ組】に回すつもりだらしいと。トワ生徒会長が説明によれば、「自分たちが【特科クラス】の名に相応しい生徒として自らを高めよう」って、みんな張り切っているから、生徒会の仕事を回してあげてって。【Ⅶ組】のみんなが聞いたらどう反応するか。リーゼとリィンは顔を見合せながら、ため息をはいた。ユーシスやフィー、カズマ、スハルトは絶対にやらないだろうと。

 

「………」

 

「……………」

 

2人が黙り込んでしまったため、それを見たトワ生徒会長が

 

 

「ひょっとしてわたし何か勘違いしちゃってた?入学したての子たちに無理難題を押し付けようとしてたとか?」

 

 

トワ会長が悲しそうな顔をしたため、リーゼとリィンは心を痛めた。Ⅶ組じゃなく、自分が生徒会の仕事を手伝えば良いだけの話だと結論づけた。そしてリィンは生徒会の仕事を手伝うことに決めた。

 

「トワ生徒会長、サラ教官の言ったとおりです。トワ生徒会長は随分お忙しそうですし、遠慮なく仕事を回して下さい」

 

「リィンさん?貴方だって好きなクラブに入りたいんじゃないんですの?」

 

「一応全部回ったけど、どれもピンとこなかったからな。だから生徒会の仕事をやっても良いかなって思ったかな」

 

リィンはリーゼにそう言って説明した。その表情には迷いとかなく、本当にやるという感じであった。その表情でリーゼ自身もやる気を出して

 

「リィンさん、わたくしもやりますわ」

 

「リーゼは、水泳部に決めたって言わなかったか?」

 

「確かに水泳部に決めましたわ、それでも生徒会の仕事と両立したいって部長と副部長に話をしますわ。トワ生徒会長の頑張りを見ていましたら、なんだか生徒会の仕事をやりたくなったんですわ」

 

リーゼは、オリヴァルトから困ってる人がいれば、助けてあげるのがでは皇族の勤めだと聞かされている。だから苦には決してない。

 

そしてリィンも生徒会に協力するのは、自身の将来の役に立つと思ってやろうとしている。なんとしても士官学院に在学中に見出そうとしている。だからそんなリィンを見たトワ生徒会長が

 

 

「どうしたの?リィン君顔色悪いよ?」

 

トワ生徒会長が、リィンの顔をのぞきこむように心配していた。リーゼもそのことを心配していた。

 

「すいません…ここ何日か遅くまで勉強や鍛錬をやってまして」

 

「リィンさん、頑張りすきじゃないんですの?」

 

「頑張りすぎか…まあ、カズマ達にも言われてるが」

 

「リィンさん、わたくしから見ても頑張り過ぎだと思いますわ」

 

「自分ではそんなにやってるつもりはないんだか?」

 

「あのね、リィン君、あまり頑張りすぎるのも良くないと思うの。頑張り過ぎて、倒れてしまったら何にもならなくなってしまうから。もし困ったことがあるなら相談にのるからね」

 

「あ、ありがとうございます、トワ生徒会長」

 

「わたくしもあまり良いアドバイスは出来ないかもしれないですけど、相談にはちゃんと乗りますわ」

 

「ありがとう……リーゼ」

 

 

そしてトワ生徒会長が、仕事の依頼について話してくれたのだ。主に仕事は士官学院と、トリスタの町の人たちの【依頼】をこなしていくものである。

 

 

「今日中にまとめで、朝までに寮の郵便受けに入れておくから。リィン君かリーゼさんのポストのどちらかに入れてもいいかな?」

 

「構いませんよ」

 

「ええ、お願いしますわ」

 

この後、リーゼとリィンは、学生会館の食堂で夕御飯を奢ってもらうことに。2人は最初は断っていたが、トワ生徒会長が生徒会の仕事をやってもらうから、それのお礼として、奢らせて欲しいと言われたのだ。リーゼもリィンもそう言われると、断ることができなかった。

 

そのまま、リーゼとリィンはお世話になることを決めた。

 

 

 

リーゼとリィンが、トワ生徒会長に奢ってもらってから学生会館から出ると既に陽が沈み暗闇に空は染まり始めていた。

 

 

「もう夕方か、時間が経つのは早いな」

 

「はぁ……そうですわね。結局、学食でトワ生徒会長に夕食まで奢ってもらいましたし、本人はまだ生徒会のお仕事があるっておっしゃっていましたから、本当に頭があがらりませんね」

 

「トワ会長には何から何まで感謝だな。だから力になってあげたいなって改めて思ったよ」

 

「リィンさん、わたくしもですわ」

 

 

そんな話をしていたら、達也のARCUSの着信音がなり

 

「リィン・シュバルツァーですが、えーとサラ教官ですか」

 

サラ「グーテンターク。わが愛しの教え子よ。どうやらあんたたち2人トワ会長に夕食をおごってもらったみたいね」

 

「俺はともかく、リーゼには…その愛しの教え子を騙し討ちしてくれましたね。どういうつもりでしょうか?」

 

サラ「──詳しくは言えないけど来週伝える“カリキュラム”にもちょっと関係してるのよ。確かリハーサルをやってもらおうと思ってね。生徒会が忙しすぎるのも確かにだし。一石二鳥の采配だと思わない?」

 

 

「トワ生徒会長の仕事を増やしてるのはサラ達教官達のせいだと思いますが、まぁ趣旨はわかりました。明日の自由行動日は生徒会の手伝いをすればいいんですね?」

 

「あくまで君たちの判断に任せるわ。特定のクラブに入るなら無理にとは言わないわよ」

 

「俺は、ピンとくる部活がまだないので問題はないですね」

 

「わたくしも手伝うことにしましたわ。水泳部と両立になりますが」

 

サラ「リーゼ、あんたまで手伝ってくれるとは思わなかったけど、とにかく助かったわね」

 

リーゼは、昔から誰かの手伝いをするのが好きだった。だが皇女の身分のため、手伝うどころか、周りがみんなやってしまうのだ。だからリーゼ・レンハイムとして初めて感謝されたとき、すごく嬉しかったのだ。リーゼがそんなことを考えていたら、リィンがサラ教官に肝心な部分を聞いている。

 

「サラ教官…1つ聞いて良いですか?どうして俺やリーゼなんですか?」

 

「……………」

 

「クラス委員長はエマで、副委員長はマキアスだぞ。真っ当な身分ならユーシスやラウラ、アンジェリナもいる。なのに“俺ら”なんでしょうか?」

 

「ふふっ……それはあんたたちはあのクラスの”重心“とでも言えるからよ」

 

「え?」

 

リーゼとリィンの2人は驚いていた。自分達が重心なりうる?どういうことだ?リィンは、どういう意味ですかとサラ教官に詰め寄る。

 

「中心じゃないわ、あくまでも“重心”よ。対立する貴族生徒と平民生徒、留学生までいるこの状況において君たちの存在はある意味“特別”だわ。それは否定しないわよね?」

 

 

ある意味特別か。リーゼは、オリヴァルトを除けば、この帝国の皇帝と皇妃の間に出来た娘である。特別か特別ではないかと言われれば特別であろう。だがその特別の中にも何かを秘めているのも確かなのだ。それは兄、オリヴァルトも述べていた絆を結ぶ力なのかも知れない。ただそれだけではないのは、リィンにも言えることなのだ。

 

サラ教官の話は続く。

 

「そしてあたしは、その“重心”にまずは働かけることにした。《Ⅶ組》というはじめての試みが今後どうなるのかを見極めるために。それが理由よ」

 

リィンは長い溜め息を吐き、アルコールを摂取していないか尋ねた。案の定、サラ教官はアルコールを摂取していたのだ。

 

「はぁ〜やっぱり飲んでいたんですね」

 

リィンは呆れたような表情になりながらもサラ教官の話を聞いている。リーゼは、なんだかサラ教官は、前世の平塚先生みたいだなと改めて思ったのだ。

 

その間もサラ教官の話は続いていた。

 

サラ「ま、まぁ深く考えずにやってみたら?君たちは他の生徒より焦りが見えるわ。まずは飛び込んでみないと立ち位置も見いだせないわよ。それじゃあね。寮の門限までにはちゃんと帰ってくるのよ~。間違っても不埒な行為はしちゃダメよ」

 

「しませんが」

 

「しませんわ!」

 

リーゼとリィンは、声を揃えて反論した。そして2人はクスッと笑った。

 

 

立ち位置、サラ教官の言うとおりに動くしかないかと。こんなところで立ち止まっていたら、いつまで経ってもオリヴァルトやユン老師に追いつけないと、リーゼと達也は考えていた。

 

 

ーー

 

リーゼとリィンが第3学生寮に戻ると、2人以外は自分の自室にいるようだった。明日は初めての自由行動日で、部活動解禁でもある。

 

「俺達もいったん部屋に戻ろう。生徒手帳はゆっくりしてから配ろう」

 

「そうですわね。その方がよろしいでしょうし」

 

2階のところでリィンとリーゼは分かれる。前も言ったとおりに2階が男子寮エリア、3階が女子寮エリアである。クラスの男子の生徒手帳は、リィンが配ることに。女子の分は、リーゼが配ることになった。

 

 

 

リーゼは自分の部屋に戻ると、Ⅶ組女子の生徒手帳を机の上に置いた。

 

「それにしても、今日は色々なことがありましたわね」

 

朝早くサラ教官に呼ばれてクラスに行ってみれば、Ⅶ組に新たな仲間が増えるイベントがあった。それも2人も増えることに。

 

1人目は男子生徒であり、スハルト・オルランド。

 

2人目は女子生徒で、アンジェリナ・ログナー。

 

スハルトは、1ー3組からⅦ組へ編入。

 

アンジェリナは、1ー1組からⅦ組へ編入。

 

2人共、ARCUSの適正能力が入学式の時よりもかなり上がっており、Ⅶ組の平均値と同じであった。元のクラスで能力を伸ばすのではなく、Ⅶ組に編入させて切磋琢磨させた方がよいと、緊急理事会でも決まったのだ。最終的には、オリヴァルトやヴァンダイクも了承し、スハルトもアンジェリナも納得したの編入である。

 

ただリーゼは、スハルトには幾分の不安があるのだ。

 

ユフィはとある日、職員室からⅦ組に戻る途中にスカートをめくられたのだ。そのときは、スハルト以外誰もいなかったのが幸いだった。

 

しかしリーゼは、スハルトに白のシルクの花の柄が入ったパンツを見られたことは恥ずかしいことなのだ。

 

好きな殿方に見られるのと意味が違う。

 

もやもやとしてしまうリーゼであった。

 

 

 

そしてしばらくして、ずいぶんと遅くなった生徒手帳を配るため、持ち主の部屋を訪ね回る。リーゼは、アリサ・ラウラ・エマ・フィー・カティーナ・アンジェリナの順番で届けた。リィンは、エリオット・ユーシス・マキアス・ガイウス・カズマ・スハルトと配っていく。

 

リーゼは、アリサ、ラウラとカティーナ・アンジェリナとは話し込んでしまった。ラウラから、入部届けの紙を受け取った。どうやらクライン部長とマイン副部長から頼まれたようだ。

 

リーゼはラウラに生徒会の仕事を終わらせたら水泳部に行くと伝えた。

 

アリサとは、スハルト問題を少し話した。アンジェリナとは、スハルト問題と達也のことについて話した。

 

女子全員に生徒手帳を渡し終えたリーゼは、明日は生徒会の手伝いをしないといけないから早く寝ることにした。

 

そしてリーゼは就寝の床についた。



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第2章ー初めての実習編ー19ー6話ー初めての自由行動日。

第2章6話です。


まだリーゼ達、他のみんながまだ寝静まってる頃から起き始める人物がいた。

 

マイン・サルナード。

 

リーゼ達の水泳部の先輩で部の副部長である。容姿はとあるの雲川芹亜のような感じである。

 

クラスは、2ー4組。平民のクラスである。彼女は男女共に人気があり、一部の人間達には、アンゼリカと双璧だとも言われている。彼女はそんなことは気にしてはいない。

 

第2学生寮(4階建て)の部屋(1階と2階は、今年度は1年生の男女)の一室、405号室がマイン・サルナードに割り与えた部屋である。

 

そんな彼女の部屋は、身体作りの器具や健康器具なんかもある。

 

彼女は、下着姿でいる。これは彼女が昔からしていた習慣である。本当は真っ裸でやりたかったが、実家の両親からせめて下着ぐらいは身につけてくれと言われてから、下着姿でいるようにした。

 

「今日も水泳部に行く前に、いつもの日課をやっておきましょう」

 

タンスから体操服を取り出す。上着と緑のブルマを取り出した。

 

上着を着て、ブルマを穿く。

 

マインは姿見の鏡でハミパンが無いか確かめる。

 

マインでもハミパンは、恥ずかしいのだ。水着の食い込みは気にしないのだが、ハミパンは恥ずかしい。そんなマインであった。

 

「さてと、今日は後輩達も初めての自由行動日だし、先輩としてちゃんとしないとね」

 

マインは、405号室から出て、第2学生寮から出る。トリスタの街の外、東トリスタ街道へ出る。

 

まだ陽が登らぬ東の空を正面にマインは、ケルディックに向けて走る。

 

軍人はまず基礎体力作りからだと父親に教えられている。その父親も生粋の帝国軍人であった。

 

マインもそんな父親を見て育ったので、帝国軍人に道に進むこと決めていた。だが父親は、帝国軍人に娘をしたくはなかった。

 

軍人とは、どんなに奇麗事を言っても人殺しをするのに変わらない。それが守るための戦いであっても。そんな役目は、父親が全て受けるという意気込みがあったのだ。

 

父親の名前は、カイン・サルナード。帝国軍第3機甲師団所属、隻眼のゼクスの副官だったのだ。第3機甲師団にカインありと言われたゼクスの片腕だった。

 

何故過去形なのかと言うと、カインは、帝国の第2次東方戦役(七耀暦1203年・7月)にて大亜の地にて戦死してしまったのだ。

 

帝国軍第3機甲師団は、東方遠征軍として大亜に派遣されたのだ。大亜国内では、ゼクスの本隊とカイン分隊に分かれて戦っていたのだ。

 

そんな中、大亜軍が自国民を虐殺してる現場に遭遇したカイン大隊は、民間人を守るために戦った。

 

そして、民間人の子供を庇って命を落としてしまう。

 

マインが知ったのは、トールズ士官学院で授業を受けてる時だった。

 

カインは、マインのトールズ士官学院行きは渋々認めたのだ。トールズは、卒業後も軍人になる以外の職業に付いた卒業生も沢山いる。それで認めたのだ。マインも軍人じゃない道も模索して入学した。

 

だが東方戦役にて、父親のカインの戦死は、マインの中で何かが弾けた。それはずっと心に封じていた父親と同じ軍人になることの想いが溢れてきた。

 

細々と執り行われたカインの葬儀の後、母親のリリアは、マインに対して

 

「マイン、貴女の好きにやりなさい。そのかわり後悔するような決断だけはしないこと、良いわね?」

 

「ありがとう、お母さん。私は帝国軍人になるわ。お父さんと同じ道を歩むことにする」

 

母親のリリアは少しの沈黙の後

 

「ふふっ、あの人の血を引いてるものね。マイン、頑張って帝国軍人になりなさい。あの人を唸らせるような軍人に」

 

「うん、約束するよお母さん!」

 

マインは、カインの墓前と母親リリアに立派な帝国軍人になることを決意したのだった。

 

 

そして今に至る。

 

トリスタとケルディックの中間地点から再びトリスタへ向けて走る。

 

マインは、まだ何もかも発展途上に過ぎない。まだ父親のカインの足元にすら追い付いていない。だけど一度足りとも諦めたつもりはない。

 

ちゃんと親友でライバルでもある水泳部部長のクラインやラクロス部のテレジアとエミリー、後輩のラウラやリーゼもいる。

 

みんなと競って高めれば、自ずと道は見えてくると思って頑張っているのだ。

 

東トリスタ街道をトリスタまで走り抜けたマインは、第2学生寮へ戻る。

 

ようやく東の空から太陽が登り始め、トリスタの街に光を差しこみ始めていた。第2学生寮の平民生徒達が徐々に起き始めている。そんな中、マインはシャワーを浴びて、自室で水泳部副部長としての準備をしていた。もちろん下着姿である。

 

「水泳部の準備は、こんなものでしょうね」

 

プールの使用許可書を教頭に出さないといけない。マインはちょっと苦笑いをしながら

 

「教頭に出さないといけないんだよね」

 

学院長は良って言われているが、しかし教頭は、平民生徒を馬鹿にしてるんじゃないのかと思われているが、マインは別にそうではないと思っている。

 

教頭は、口は悪いが生徒達をちゃんと考えてるのだ。

 

準備を終えたマインは、今は亡きカインの写真を見て

 

「お父さん、行ってきます。必ず私は立派な軍人になって見せるわ。だから見守っていてね」

 

そう言うと彼女は、自室から出ていった。

 

2年生になり最初の自由行動日。悔いのないように過ごして行こうと思って。

 

 

 

ーー1204・4・18ー朝ー第3学生寮ー306号室ーリーゼの部屋ー

 

リーゼはいつもよりも早く起きて、鍛練を済ませて、お風呂で汗を落としから、自分の部屋で支度をしている。

 

トワ生徒会長の仕事を手伝うのだから、ミスなんかは許されないと意気込む、ユリーゼ。トワ会長なら許してくれそうだが、甘えてはならない。これからは、厳しい時代にもなりそうだし、そんなことでは生き残れないだろうと、決意を新たにした。

 

リーゼは自分の得物である太刀を見ながらそう思った。

 

机に置かれている水泳部の入部届けの紙を見ている。そこにはちゃんと自分の名前は書いている。見落としはないようだ。リーゼは、それと学院指定の水着を取り出さないといけないことに気づく。水着は、確かクローゼットにしまいこんでいた。

 

クローゼットの中から、学院指定の水着を取り出して、改めて見てみる。普通に学校指定のスクール水着である。別にエロエロのスクール水着ではない。

 

「確か、水着を入れる袋がありましたよね?」

 

リーゼは水着を入れる袋に水着を入れて、身体を拭くバスタオルも袋に入れ、変えの下着類も入れ、入部届けも懐に入れた。

 

準備も万端にしてから、最後の身だしなみを確認してから

 

「さてと、参りましょうか」

 

リーゼは、自分の部屋を出て、1階へ向かうことにした。

 

 

 

確かトワ生徒会長は、依頼書はポストに入れるって言ってた。リーゼはポストの方へ行くと、そこには達也が先に来ていた。リィンが早く来ていることは、予想の範囲内だ。彼は時間を指定されたりすると約束の時間より絶対早く来る。

 

その事がこの2週間でわかった事だ。リーゼはリィンに挨拶をする。

 

「お待たせしましたわ、リィンさん」

 

「リーゼ、おはよう。俺も今さっき来て、ポストに入っていた依頼書を見てるだけだ。これが依頼書のようだね」

 

 

リーゼはリィンから封筒の中身を受け取り、依頼が書かれた依頼書を見た。そこにはこう書かれていた。

 

【・旧校舎地下の調査《必至》】

【・導力器の配達《必至》】

【・落とした生徒手帳】

 

【学院の裏手にある《旧校舎》の地下での不思議な現象が起こってるらしい。そこで腕のたつ生徒に調査を頼みたい、詳しくは学園長室まで聞きにきてくれたまえ。(ヴァンダイク学院長)】

 

 

【技術部の方で修理した各種導力器製品をそれぞれの持ち主配達してほしい。(2ーⅢ組・ジョルジュ)】

 

【学生手帳をどこかに落としてしまい、いまだに見つからない状況です。どうか捜索に協力してもらえませんか?先に学生会館の1階を探しているので時間があれば話を聞きに来て下さい。(1ーⅣ組・コレット)】

 

リーゼは、ふと止まる。まるで遊撃士がこなす依頼ではないかと彼女は思った。トワ生徒会長達、遊撃士の仕事みたいのをやってたのかと感心してしまった。

 

 

「なるほど、学院長や技術部や新入生からの依頼ですわね。ふむふむなるほど、なんだかが燃えてきましたわ!」

 

リーゼはやる気十分になり、リィンからその事で聞かれる。

 

「ずいぶんと張り切ってるな」

 

「そうですわね。わたくし遊撃士のお友達がいて、その人達がカッコいいって思ったんですわ」

 

リーゼの脳裏には、オリヴァルト、エステル、ヨシュアやアガット、クローゼ達とそしてアクアイアと冒険していたリベールの思い出が浮かんでいた。彼らのようになりたいとも思ったこともある。リベールの思い出に浸っていた時に、達也の声で現実に引き戻される。

 

「リーゼには、遊撃士の知り合いがいるのか?」

 

「ええ、その方々は、わたくしに勇気を与えてくれたのです。前に進めなかったわたくしの背中を押してくださった最高の友達ですわ」

 

「そうか、最高の友達か…」

 

「リィンさんには、そんな方々のはいらっしゃいませんの?」

 

「俺に?……うーん…。郷のみんなかな」

 

リィンは、郷のみんなと答えた。それもありだろう。これからリィンは、最高の友達ができる可能性もあるのだから。リィンは苦笑いをしながら

 

「コホン、そうだ…リーゼには、コレットさんの依頼をやってほしいんだが?」

 

「え!?まあ構わないのですが?」 

 

「まぁ簡単に言ってしまえば、学院長の依頼は2人で行くとして、コレットさんからの依頼と技術部の配達、コレットさんの依頼は同じ女子が行く方が安心できると思うのだが?それに技術部のジョルジュ先輩は、ちょっと前に出会ったし。配達はやはり男が行くべきかなって」

 

「わかりましたわ、リィンさん。女の子の依頼はやはり女がやらなくてはという理由は無いですが、技術部の先輩がリィンさんの御知り合いならそれも仕方がないですわ」

 

「済まないな、リーゼ」

 

「別に構いませんわ。遊撃士のお仕事に憧れを持ってたのは事実ですし」

 

遊撃士は、支える籠手の紋章を旗印に民間人の保護するのを誇りに思っている人達ばかりだとリーゼは思ってるし、誇りに思っている。

 

エステル達は、リーゼをリーゼと認めてくれて、リーゼを誇りだと思ってくれるのだから、彼女もエステル達を誇りだと思っている。

 

「とにかくよろしくな、リーゼ」

 

「こちらこそ、よろしくお願いしますわ、リィンさん」

 

リィンとリーゼは固く握手を交わした。

 

「コレットさんは、学生会館の1階にいるようだ。頑張ってくれ、リーゼ」

 

「ええ、リィンさんもがんばって下さいね」

 

「それと、リーゼは水泳部に入部したんだろ?」

 

「ええ、どうしてそれを?」

 

「朝一にサラ教官から聞いたんだ。言っておくけど、俺から聞いたわけじゃないから。サラ教官がペラペラと話しただけだから」

 

「ふふっ、わかってますよ」

 

「それでは始めようか」

 

「はい」

 

 

リーゼとリィンは、第3学生寮からそれぞれの依頼者の下へ進行方向を向ける。達也は技術部がある技術棟へ、リーゼはコレットが待つ学生会館に向かって歩き出した。

 

 

第3学生寮から、学生会館へ目指す途中のトリスタの街にあるライノの花がほとんど散り、緑色の匂いが漂う季節になってきた。

 

トールズ士官学院の1年生にとっては、初めての自由行動日である。部活動にせいを出すもよし、勉強にせいを出すのもよし、遊ぶのもよし、なんでもできるのが、トールズ士官学院である。だが無計画な事をすれば、身を破滅してまうだろう。

 

まあそんなアホみたいな事をする生徒はいない。

 

リーゼがトールズ士官学院の方を歩いて行ってると、シスターロジーヌが礼拝堂前を掃除していた。

 

「ロジーヌさん、おはようございますわ」

 

「リーゼさん、おはようございます。今日から自由行動日ですね。何か部活に入られたのですか?」

 

「水泳部に入ったのですが、生徒会のお仕事もありますわ」

 

「えっ!?リーゼさん生徒会のお仕事もされるのですか!?」

 

「はい、まあなんと言いますか、成り行きの部分もありますけど、わたくし1人ではなく、リィンさんも手伝ってらっしゃるので」

 

「リィンさんもですか…。そんなお二人共にエイドスの御加護がありますように」

 

「ロジーヌさん、ありがとうございます」

 

リーゼはロジーヌに一礼した後、トールズ士官学院の方へ歩いていく。

 

トールズ士官学院の方から結構な声が聞こえてくる。トールズ士官学院の部活動は大変盛んに行われてるのがわかる。

 

「わたくしも楽しみですわ」

 

リーゼはそう言ってトールズ士官学院の方へ歩いていった。

 

まずは、依頼をする前に、水着等が入っている袋をギムナジウム内の女子更衣室に置いてくることにしたのだ。袋を持って依頼をこなすには邪魔になるからだ。

 

女子更衣室に入ると、マイン副部長がいて着替え中だった。

 

「あらっ?リーゼさんは、生徒会にお仕事を済ませてからじゃなかったかしら?」

 

「はい。水着の入った袋を更衣室のロッカーに預けに来たんですの。それと入部届けを書いて持って来ましたわ」

 

リーゼは、水着の袋の中に入れていた入部届けの紙をマインに渡す。

 

「確かに受け取りました。後でクライン君に渡しておくわ」

 

「お願いしますわ」

 

「リーゼさんのロッカーは、壁側のロッカーの列の3番目ね。2番目はラウラさんだから」

 

「わかりましたわ」

 

リーゼは壁側の3番目のロッカーの扉を開けて、水着等の入った袋を置く。

 

そして出ようとしたリーゼだったが、マインの2つの膨らみを見て驚いてしまう。

 

マスクメロンが2つ…

 

そうリーゼは頭の中で思い付いた。それに競泳水着が何だか食い込んでるようにも思えたが、マインはリーゼに挨拶してそのまま出ていった。

 

「マイン先輩…大胆な方ですわ…」

 

リーゼも感心しながら女子更衣室から出てギムナジウムから出た。

 

 

 

ギムナジウムからコレットが待つ学生会館に向かって歩き出した。ギムナジウムに来た頃は、まだ空気がひんやりと冷たかったが、陽に温められてポカポカ陽気な感じになっている。リーゼは、こんな時に野原で寝転んだら気持ち良さそうと考えていた。

 

 

そんなことを考えながら、学生会館の1階にやって来た。この1階にいるコレットを探しだした。何かを探してるような女子生徒が1人いたからすぐにわかったのだ。

 

「貴女が1年Ⅳ組のコレットさんでしょうか?生徒会に依頼を出されていませんでした?」

 

「え~とそうだけど…あなたってⅦ組の人だよね?もしかして生徒会に入ったの?」

 

「い、いえ、わたくしは、生徒会には入っていませんわ。ただお友達が、生徒会のお手伝いをやってらっしゃいますからお手伝いをやらせてもらってるだけですの」

 

「へぇ…そうなんだ~同じ1年なのに…やはり特科クラスの人達てやっぱりすごいんだね」

 

自分はそんなに凄くないと、リーゼは思っている。凄いと言われたらリィンやマキアス達だと思っている。リーゼは、別に謙遜して言ってるわけではない。

 

「そんなにわたくしは凄くないですわ。確かに凄い人もいらっしゃいます。それよりも、コレットさんは学生手帳をさがしているんですよね?」

 

コレットの話だと朝から心当たりがあるところを探していたようだ。けど未だに見つからないようだ。

 

「今すぐ依頼を受けてくれると嬉しいけど…都合の方はいいかな?えーとリーゼさんだっけ?」

 

うん?リーゼは疑問に思った。…コレットに、自己紹介をしたのか?いや名乗っていない、なのにどうしてと?

 

「別に驚かなくてもいいよ。特科クラスの人達みんな注目されてて…有名だから…名前を知っててもおかしくないかな…ハハハ」

 

自分達Ⅶ組はやはり注目されてる。士官学院の中でも異質の存在である特科クラスⅦ組。

 

リィンやカズマみたいに田舎から出てきた人間や、ユーシスやラウラやアンジェリナのような貴族もいる。マキアス達みたいに都会の平民も一緒にいること自体が、周りから見れば異質に見えるのかもしれない。

 

「ハハハ…わたくし達有名なんですね…。えっと今からわたくしも学生手帳の捜索に協力いたしますわ」

 

「ありがとう…リーゼさん」

 

「リーゼで構いませんわ」

 

「じゃあ、私もコレットでいいよ」

 

「わかりましたわ、コレット」

 

「改めてよろしくね。リーゼ」

 

そしてコレットが言うには、昨日の放課後に図書館で本を借りようとして、その時に初めて気付いていたようだ。図書館で本を借りる為には、学生手帳が必要になるからだ。無いと本は借りれない。

 

コレットが最後に学生手帳を確認したのは、放課後が始まったときで、彼女の教室ってことだから、友達としゃべってた時に学生手帳に軽くメモをとったようだ。だからコレットは、覚えてると言った。では図書館までに、立ち寄った場所とかに落としたという可能性が出てくる。

 

「でも学生会館や本校舎と図書館にしか行ってないしな…」

 

「それならかなり絞れますわね。じゃあ手分けして探してみましょうか」

 

「と言うのも実は、今朝のうちに図書館は探したんだ。野外の方も用務員さんに聞いてたからね。そしたら学生手帳なんかは落ちていないと言われたの」

 

「だったら…尚更ですわね。本校舎の方は各教室も当たって見るべきでしょうか?」

 

「ううん…自分達の教室は既に昨日の内に調べたし他の教室には入っていないから」

 

リーゼは、コレットから廊下は休憩スペースを重点的に探してほしいと頼まれた。

 

早速、本校舎2階の休憩スペースに行く事にした。



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第2章ー初めての実習編ー20ー7話ーコレットの依頼。①

第2章7話です。


 

リーゼとリィンは、第3学生寮からそれぞれの依頼者の下へ進行方向を向ける。リィンは技術部がある技術棟へ、リーゼはコレットが待つ学生会館に向かって歩き出した。

 

 

第3学生寮から、学生会館へ目指す途中のトリスタの街にあるライノの花がほとんど散り、緑色の匂いが漂う季節になってきた。

 

トールズ士官学院の1年生にとっては、初めての自由行動日である。部活動にせいを出すもよし、勉強にせいを出すのもよし、遊ぶのもよし、なんでもできるのが、トールズ士官学院である。だが無計画な事をすれば、身を破滅してまうだろう。

 

まあそんなアホみたいな事をする生徒はいない。

 

リーゼがトールズ士官学院の方を歩いて行ってると、シスターロジーヌが礼拝堂前を掃除していた。

 

「ロジーヌさん、おはようございますわ」

 

「リーゼさん、おはようございます。今日から自由行動日ですね。何か部活に入られたのですか?」

 

「水泳部に入ったのですが、生徒会のお仕事もやってますわ」

 

「えっ!?リーゼさん生徒会のお仕事もされるのですか!?」

 

「はい、まあなんと言いますか成り行きの部分もありますけど、わたくし1人ではなく、リィンさんも手伝ってらっしゃるので」

 

「リィンさんもですか…。そんなお二人共にエイドスの御加護がありますように」

 

「ロジーヌさん、ありがとうございますわ」

 

リーゼはロジーヌに一礼した後、トールズ士官学院の方へ歩いていく。

 

トールズ士官学院の方から結構な声が聞こえてくる。トールズ士官学院の部活動は大変盛んに行われてるのがわかる。

 

「わたくしも楽しみですわ」

 

リーゼはそう言ってトールズ士官学院の方へ歩いていった。前世では色々あって部活を楽しめなかったから今世で楽しむことにしているのだ。

 

まずは、依頼をする前に水着等が入っている袋をギムナジウム内の女子更衣室に置いてくることにしたのだ。袋を持って依頼をこなすには邪魔になるからだ。

 

女子更衣室に入ると、マイン副部長がいて着替え中だった。

 

「あらっ?リーゼさんは、生徒会にお仕事を済ませてからじゃなかったかしら?」

 

「はい。水着の入った袋を更衣室のロッカーに預けに来たんですわ。それと入部届けを書いて持って参りました」

 

リーゼは、水着の袋の中に入れていた入部届けの紙をマインに渡す。

 

「確かに受け取りました。後でクライン君に渡しておくわ」

 

「お願いしますわ」

 

「リーゼさんのロッカーは、壁側のロッカーの列の3番目ね。2番目はラウラさんだから」

 

「わかりましたわ」

 

ユフィは壁側の3番目のロッカーの扉を開けて、水着等の入った袋を置く。

 

そして出ようとしたリーゼだったが、マインの2つの膨らみを見て驚いてしまう。

 

マスクメロンが2つ

 

そうリーゼは頭の中で思い付いた。それに競泳水着が何だか食い込んでるようにも思えたが、マインはリーゼに挨拶してそのまま出ていった。

 

「マイン先輩、大胆な方ですわ」

 

リーゼ自身も感心していたが、周りから見れば自分自身も自分が見てたような感じに見えるのだろう。そう思うと何だか恥ずかしくなってきた。こんなことは前世では味わなかった。女の子として生まれ変わって分かったことなのだ。

 

 

リーゼはモヤモヤしながら女子更衣室から出てギムナジウムから出た。

 

 

 

ギムナジウムからコレットが待つ学生会館に向かって歩き出した。ギムナジウムに来た頃は、まだ空気がひんやりと冷たかったが、陽に温められてポカポカ陽気な感じになっている。リーゼは、こんな時に野原で寝転んだら気持ち良さそうと考えていた。

 

 

そんなことを考えながら、学生会館の1階にやって来た。この1階にいるコレットを探しだした。何かを探してるような女子生徒が1人いたからすぐにわかった。

 

「貴女が1年Ⅳ組のコレットさんでしょうか?生徒会に依頼を出されていませんでした?」

 

「え~とそうだけど…あなたってⅦ組の人だよね?もしかして生徒会に入ったの?」

 

「い、いえ、わたくしは、生徒会には入っていませんわ。ただお友達が、生徒会のお手伝いをやってらっしゃいますからお手伝いをやらせてもらってるだけですわ」

 

「へぇ…そうなんだ~同じ1年なのに…やはり特科クラスの人達てやっぱりすごいんだね」

 

自分はそんなに凄くないと、リーゼは思っている。凄いと言われたらリィンやマキアス達だと思っている。リーゼは、別に謙遜して言ってるわけではない。

 

「そんなにわたくしは凄くないですわ。確かに凄い人もいらっしゃいます。それよりも、コレットさんは学生手帳をさがしているんですよね?」

 

コレットの話だと朝から心当たりがあるところを探していたようだ。けど未だに見つからないようだ。

 

「今すぐ依頼を受けてくれると嬉しいけど…都合の方はいいかな?えーとリーゼさんだっけ?」

 

うん?リーゼは疑問に思った。コレットに、自己紹介をしたのか?いや名乗っていない、なのにどうしてと?

 

「別に驚かなくてもいいよ。特科クラスの人達みんな注目されてて…有名だから…名前を知っててもおかしくないかな…ハハハ」

 

自分達Ⅶ組はやはり注目されてる。士官学院の中でも異質の存在である特科クラスⅦ組。

 

リィンやエマみたいな田舎から出てきた人間や、ユーシスやラウラやアンジェリナのような貴族もいる。マキアス達みたいに都会の平民も一緒にいること自体が、周りから見れば異質に見えるのかもしれない。

 

「ハハハ…わたくし達有名なんですね。えっと今からわたくしも学生手帳の捜索に協力いたしますわ」

 

「ありがとう…リーゼさん」

 

「リーゼで構いませんわ」

 

「じゃあ、私もコレットでいいよ」

 

「わかりましたわ、コレット」

 

「改めてよろしくね、リーゼ」

 

そしてコレットが言うには、昨日の放課後に図書館で本を借りようとして、その時に初めて気付いていたようだ。図書館で本を借りる為には、学生手帳が必要になるからだ。無いと本は借りれない。

 

コレットが最後に学生手帳を確認したのは、放課後が始まったときで、彼女の教室ってことだから、友達としゃべってた時に学生手帳に軽くメモをとったようだ。だからコレットは、覚えてると言った。では図書館までに、立ち寄った場所とかに落としたという可能性が出てくる。

 

「でも学生会館や本校舎と図書館にしか行ってないしな…」

 

「それならかなり絞れますわね。じゃあ手分けして探してみましょうか」

 

「と言うのも実は、今朝のうちに図書館は探したんだ。野外の方も用務員さんに聞いてたからね。そしたら学生手帳なんかは落ちていないと言われたの」

 

「だったら…尚更ですわね。本校舎の方は各教室も当たって見るべきでしょうか?」

 

「ううん…自分達の教室は既に昨日の内に調べたし他の教室には入っていないから」

 

リーゼは、コレットから廊下は休憩スペースを重点的に探してほしいと頼まれた。

 

早速、本校舎2階の休憩スペースに行く事にした。



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第2章ー初めての自習編ー21ー8話ーコレットの依頼。②

第2章8話です。


 

学生会館から本校舎に移動するリーゼ。するとブルマ姿でランニングしているアリサとアンジェリナに会う。2人は、ラクロス部に入部している。このトールズ士官学院の女子の体操服は、ブルマである。それも紺の色であるが。

 

「リーゼも生徒会の依頼頑張ってね」

 

「リーゼさん、頑張ってくださいね」

 

「アリサさんもアンジェリナさんも頑張って下さいね」

 

アリサもアンジェリナも手を振りながらグラウンドへ走っていく。リーゼも2人に手を振った。

 

そしてリーゼは本校舎に入り2階へ向かう。本校舎の中は、外より涼しいしひんやりしている。

 

本校舎の方で部活動を行っているのは、吹奏楽部と料理部である。本校舎2階には、料理を作っている匂いが漂っているし、吹奏楽部の優しい音色が鳴っている。

 

コレットが言っていた本校舎2階のある場所に休憩エリアのスペースがとられた場所がある。

 

そこでは雑談をしたり、勉強をしたりして利用している人間は多い。Ⅶ組メンバーでも、カティーナとアリサだけじゃないが、ユーシスとガイウスとカズマともよく勉強をしている。スハルトはここで共和国のアノ本やクロスベルのアノ本を読んでいたり、釣りの本や武器のチラシなども見ている。

 

話がずれてしまったが、依頼者のコレットは、この場所で友達と雑談をしていて、その時に学生手帳をメモ代りに使った。リーゼが休憩エリアまで来て考えていた。

 

「ここで昨日、コレットさんがお友達と雑談をしていらっしゃった」

 

リーゼは、コレットから説明されたとおりに、ソファーに座り雑談をしているていでやってみた。そして上着の内ポケットから学生手帳を取り出した。

 

「それで、学生手帳を取り出してメモを書かれたと仰ってましたね」

 

リーゼは、学生手帳を取り出す時にあることに気がついた。

 

「まさか、そんなこと……」

 

以前学生手帳をスカートのポケットに入れていたことがある。しかしスカートのポケットは落としやすいのだ。まさか入れたつもりになって、ソファーの下とかに落としたのではないかと気づいた。

 

リーゼはソファーの下を見るが落ちてはいない。

 

「あれ…おかしいですわね?」

 

スカートのポケットから落ちるなら、ソファーの下に落ちるはず。ここで落としたのなら、ソファーの下に落ちるはず。もしくはソファーとソファーの間に挟まってる可能性もある。

 

リーゼは、ソファーとソファーの間を見てみる。すると学生手帳らしきものが見えている。

 

「あ、ありましたわ、コレットの学生手帳が!」

 

慌ててソファーの間に手を入れて学生手帳を取り出そうとする。しかし学生手帳を掴むことが出来ず、ソファーの反対側に落としてしまった。

 

 

「反対側に落としてしまいましたわ」

 

困ったリーゼは、誰かに助けを求めようとする。しかし助けを求めることを止めた。この依頼は、自分自身がコレットから引き受けたのだ。他人に助けを求めたら何の意味もないのだ。

 

「コレットはわたくしに依頼してこられたんです。ならわたくしは、最後までやり遂げなきゃならないんです」

 

そう気合いを入れたリーゼは、床によつん這いになりながら、ソファーの反対側に落ちた学生手帳を拾うために手を伸ばした。

 

 

彼女が学生手帳と格闘中と同時刻、Ⅶ組教室では、マキアスが1人で勉強していた。ここで勉強する前はキルシェの方で勉強してたが、休憩中にリーゼと話していたり、紅茶、コーヒーを飲んだりしていた。

 

リーゼが学生会館に向かうと言ったため、マキアスはⅦ組教室の方へ行くことを决めた。キルシェの方も人が増え騒がしくなったからである。

 

第2チェス部の部長のステファンが、教室で2時間程度勉強してから、第2チェス部の活動をやると朝方連絡を受けていたのだ。だからマキアスもキルシェやⅦ組教室で勉強しているのだ。

 

マキアスも静かなⅦ組教室で勉強する方が集中できるのだ。今の第3学生寮では静かに勉強が出来ない。その原因はスハルト・オルランドである。彼が1ー3からⅦ組に編入してくるまでは静かに出来ていた。

 

だが彼が編入してきた後、うるさくて出来なくなった。だからこそキルシェのコーヒーを飲んでリラックスをしているのだ。

 

昨日編入してきたばかりの彼が、マキアスの安息の時間を奪ったのだ。彼はすぐに寮で問題を起こした。

 

今朝も一番にアリサとアンジェリナの朝シャンの邪魔をしたようだ。それで寮は朝からうるさくなってしまった。

 

ちなみにリーゼとリィンが、生徒会の依頼の紙を見始めた頃は、その騒動が収まった後だ。リィンは、一部始終を知っているが、リーゼは知らない。

 

「うん?もう一時間も経っていたのか…。勉強に集中できるのは問題無いが、ステファン部長との約束時間に遅れるのはまずいな」

 

マキアスは、勉強道具を鞄に入れてⅦ組の教室を出る。そして1階に降りる階段のあるところに行こうとしたら、2人組の他のクラスの男子生徒がニヤニヤして何か言っている。Ⅶ組のリーゼ・レンハイムだと。それを聞いたマキアスは黙って近づいていく。

 

「おぉ~アレ、かなりいいんじゃねー」

 

「そうだな。白のパンツ…それにいい具合に食い込んでるな…」

 

「ああ…!オレ…このまま…あのぴー」

 

男子生徒1は、禁止用語を言ったため、セリフをカットします。

 

「…だな!ARCUSで写真でも撮ってみるか」

 

「頼むぜ…」

 

ARCUSで、ユフィのパンツを写真に納めようとした時、マキアスが

 

「君達、それ以上のことをやれば、教官達や生徒会に報告するが?」

 

「げっ…Ⅶ組の!」

 

「ここは、逃げるが勝ち!」

 

2人男子生徒は、マキアスに咎められると、そそくさに1階へ逃げていく。するとよつん這いになりながらパンツを見せていたリーゼが

 

「やっと取れましたわ!」

 

マキアスはユフィに近づき

 

「一応聞くけど、リーゼ君、君は何をやってるんだい?」

 

「コレットの学生手帳を取ってたんですわ」

 

「コレットの学生手帳?」

 

リーゼは、マキアスに生徒会の依頼の中の1つがコレットの学生手帳を探す依頼だと説明した。

 

「なるほど、それでそのコレット君が言っていた休憩エリアに来て、ソファーの間に学生手帳が挟まってるのを見つけた」

 

「そうですわ。挟まってる学生手帳を取ろうとして、反対側に落としてしまいましたわ」

 

マキアスはメガネをくいっと上げながら

 

「なるほど。それでよつん這いになりながら学生手帳を取ろうと…」

 

「そうですわ」

 

マキアスは呆れながらリーゼを見る。彼女とは、入学式の日に出会ってから色々あったが、しっかりした部分と抜けた部分があることにわかった。抜けた部分とはこういうところだ。

 

「男子の僕が言うのは、おかしいが、一言言わせてもらう。リーゼ君、こんな場所でさっきの格好はマズイ。他のクラスの男子生徒達が…君の…」

 

マキアスが言葉を濁した理由をリーゼは気付き顔を真っ赤にする。

 

「マキアスさん、ありがとうございます。わたくし、物事に集中すると回りが見えなくなるんですわ」

 

「…物事に集中するのは、別に悪くはないのだが…」

 

マキアスは、もし自分がⅦ組教室で勉強せずに第3学生寮でやっていたら、目の前の彼女は魔の手に落ちていたかもしれない。そんな彼女は、マキアスに対して安心した笑顔を見せている。

 

「アハハ、マキアスさんがおっしゃった事、よく言われますわ」

 

「それで、その依頼者のコレット君はどこにいるんだい?」

 

「コレットは、学生会館の1階に待ってますわ」

 

「学生会館か。なら僕も途中まで行こう」

 

「マキアスさんも?」

 

「学生会館の2階の一部屋に第2チェス部があるんだ。僕は第2チェス部に入部したんだよ」

 

「第2チェス部ですか…。わたくしは水泳部ですわ」

 

「そうなのか。とにかく学生会館に向かうとしようか」

 

「はい、ありがとうございますわ」

 

リーゼとマキアスは、本校舎2階休憩エリアから学生会館へ向かう。



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第2章ー初めての実習編ー22ー9話ースハルトとアンジェリナ。

第2章9話です。


ちょっと時間は、遡ることなる。スハルトと共にⅦ組に編入してきたアンジェリナである。

 

彼女は、朝早くからラウラと共に第3学生寮前にて素振りをやってからお互いのクラブのための自室で支度をしているのである。

 

「リィンさん…トリスタ街道で素振りを毎日なされてるなんて…。私が剣を取ったのも───」

 

アンジェリナは小さきときから政略結婚の道具のように周りから扱われていたのだ。姉アンゼリカも庇いはしていたのだが、アンゼリカ自身も子供であったためどうすることもできなかった。だがある時…再び政略結婚先を皇帝一家と縁のあり先のことがあるユミルのシュバルツァー男爵家に選ぶのである。

 

しかしその話しも破談になる。シュバルツァー男爵家からの断りだった。いや正式に言えばリィン自身が断ったのだ。

 

「結婚とは…互いに好きな人同士でするものなんだ。君はそうじゃないか?」

 

「私は…所詮…政略結婚の道具にしかなりませんの」

 

「道具って!!君は君なんだ!もっと自分を大切にした方がいい」

 

子供ながらにアンジェリナは思ったのだ。この男の子は自分のために怒ったり笑ったり泣いたり一緒になって。

 

他の貴族の子供とは違うと。どこか平民のような感じもするのだと。

 

「あのとき…私は決意しました。あの方は私の───」

 

アンジェリナはまたあの事を思いだして…顔を赤面させていた。そんなことを言ったリィン自身はアンジェリナのことを覚えてはいなかった。彼女自身は子供の頃の記憶だから忘れていても無理はないと。それでも少しは覚えてほしかったのも事実。

 

そんな彼女は顔をぶいぶいとふり、身支度をすませることにした。

 

第3学生寮を出たアンジェリナは学院の方へ歩いていくとスハルトが何やらトリスタの川で釣り竿をもっているの見る。

 

「スハルトさん…ここで釣りでもされてるんですの?」

 

「……なんだ?アンジェリナか…見てわからないのか?釣りだよ釣り!」

 

「それぐらいわかりますわ」

 

アンジェリナとスハルトはしばらく言い合っていたがスハルトの方が釣りの方に集中したためにだが。たがスハルトは

 

「あまり水面の前に近づかない方がいいぜ…」

 

「あっ……」

 

アンジェリナは気がついて、一歩下がる。

 

「スハルトさん……あなたって人は!!」

 

スハルトが真剣な顔してアンジェリナに

 

「お前!ラクロス部なんだろ?アリサはとっと行ってるぜ。まあもう…みんなグラウンドの方に出てるかもな」

 

「なっ!」

 

アンジェリナは驚いている。この川と学院のグラウンドからは離れているにと。何故、みんなグラウンドに出てることをスハルトはわかってるのかと。

 

「…匂いだよ。遅刻したくなければ早く行きな」

 

「言われなくても行きますわよ!フン」

 

アンジェリナはそう言うとラクロス部が活動しているグラウンドに歩いて行く。途中で何やら荷物を運んでいるリィンを見かけるが、声をかけずにラクロス部へ行ってしまった。

 

「フン…全く……俺に構わずさっさと行けばいいのによ」

 

スハルトはそう言うと、釣りに集中するのだった。

 

 

アンジェリナは、グラウンドの端にある外の女子更衣室へ向かい中へ入る。

 

そして体操服(ブルマ)に着替えてからアリサ達のいるグラウンドの方へ向かう。向かう前にブルマからハミパンをしてないか確かめる。確認してから行く。

 

「アンジェリナ、来たわね」

 

「アリサさん、ごめんなさいね」

 

「良いのよ、本当は待ってても良かったのに…」

 

アリサは申し訳なさそうにアンジェリナに言った。

 

「私のためにアリサさんに迷惑をかけるのは申し訳ないので…」

 

「全く…貴女って人は…」

 

そんな2人を複雑そうに見ている人物があた。

 

フェリス・フロラルド。

 

彼女は、ラマール州のフロラルド伯爵家のご息女である。つまり貴族のお嬢様ってことになる。

 

フェリスは、アンジェリナが、寄せ集め集団のⅦ組に編入したことが信じられないでいる。彼女はましてはそこらの貴族と違う。四大名門のログナー侯爵家のご息女の1人なのだから、あんなⅦ組に自分の方から行くなんておかしいと思っている。

 

何故、平民の生徒と仲良くしているのか…。彼女の中にいろんな葛藤があった。

 

アリサとアンジェリナの姿を見て、エミリーとテレジアもその光景を見て微笑ましいと思っている。そしてフェリスとも仲良くなれると信じている。

 

かつてのエミリーとテレジアもアリサとフェリスのような感じだったのだから。

 

きっと上手く壁を乗り越えて仲良くなれると。

 

より良きライバルとして、仲間として。

 



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第2章ー初めての実習編ー23ー10話ーコレットの依頼。③

第2章10話です。


 

リーゼとマキアスは、学生会館へやって来た。

 

先ほどリーゼが訪れた時よりも、学生が多くなっている。

 

「先ほどより、人が増えてますね」

 

「その学生手帳は、依頼主のコレット君もので良かったんだよな?」

 

「ええ、一応中身の方を確認させてもらいましたわ」

 

リーゼは、学生会館に来る前に先ほどの休憩エリアで、学生手帳の持ち主の名前を確かめた。学生手帳の名前を記載されてるところには

 

【───1年4組─コレット───】

 

だから間違いはないのである。

 

「なら、持ち主のコレット君を探さないとな」

 

「ええ、そうですわね」

 

リーゼとマキアスは、学生が集まってる学生食堂をキョロキョロしていると、とあるテーブルの方から声をかけられる。

 

「リーゼ、ここ、ここだよ!」

 

「コレット、そちらにいらっしゃいましたか」

 

リーゼがマキアスにお礼を言おうとすると、ここまで来たのだから最後まで付き合うと言った。

 

リーゼとマキアスは、コレットの席にまでやって来て、学生手帳を彼女に渡す。

 

 

「間違いない、私の手帳だ!ふっ…本当に良かった。これがないと自分を証明できないからね~本当にありがとうね~ユフィ」

 

「どういたしまして」

 

「え~とリーゼ、それで結局ところで見つけてくれたの?」

 

「学生手帳のあった場所というのは、談話スペースのソファーの継ぎ目と言いますか…溝の部分に挟まってましたわ」

 

「談話スペースのソファー…そっかあそこでみんなで休んだ時に……あっそう言えば前にも座った時にも落としたことがあったんだよね」

 

「コレットは、学生手帳をどこに入れてるのでしょうか?」

 

「え!?そりゃスカートのポケットだけど」

 

やっぱりとリーゼは思った。女子生徒は、学生手帳、メモ帳をスカートのポケットに入れていることが多いのだ。リーゼも以前スカートにメモ帳を入れていて、落としたことがあるのだ。そのときリィンが拾ってくれて、上着のポケットなら座っても落ちないだろうと、教えてもらっている。今のリーゼは、学生手帳を上着のポケットに入れて、メモ帳は貴重品のところに置いている。だからリーゼは、コレットにも上着のポケットに入れることを教えることにした。

 

 

 

「あっ本当だ!ポケットがあるんだ。ここなら滅多なことがない限り落とさないで済みそうね」

 

「ハハハ…わたくしも実は言いますと、上着のポケットの事は同じクラスの男子に教えてもらったんです。わたくしもメモ帳をスカートのポケットに入れていて、落としたみたいで、たまたまそこを通りかかった同じクラス男子に拾われた時に、上着のポケットの事を教えてくれましたわ」

 

「そうだったんだ…その男子君には感謝感謝だね。で、その男子君がそこの彼なんだね!」

 

「ふぇ!?」

 

コレットは、リーゼと一緒にいたマキアスがその拾ってくれた男子だと勘違いしているようだ。コレットはニヤニヤと笑い、マキアスはなんのことやらでわからない表情をしている。リーゼは慌ててコレットに説明をする。

 

「なんだ、違うのか。でも何で一緒にいるのかな?」

 

コレットは、マキアスが何故リーゼと一緒にいるのか気になるようだ。マキアス自身もリーゼのパンチラを見てから一緒にいるなんて答えられるはずもなく。

 

「たまたま、彼女とは一緒になったんだ。ただそれだけだ」

 

とメガネをカチッとやった。まあ、内心はドキドキのマキアスであった、コレットもそれ以上は追及はしてこなかった。

 

「リーゼにはすごくお世話になっちゃったね。お礼の代わりに2人には、ここでコーヒーを奢ってあげるね」

 

「い、良いのですか、コレット?」

 

「ぼ、僕も良いのか?」

 

「良いって。私にはこれくらいしかできないから」

 

「それじゃ、コレットのお言葉に甘えてますわ」

 

「ありがとう、コレット君」

 

リーゼとマキアスは、コレットにコーヒーを奢ってもらった。マキアスは、学生食堂のコーヒーも旨いと太鼓判を押した。リーゼもトリスタの喫茶キルシェのコーヒーとは違う味わいだと感心しながら飲んだのだった。

 

コーヒーを奢ってもらった後、分かれ際にコレットから、アクセサリーをもらった。リーゼは受け取れないと言ったがコレットは

 

 

「別に気にしなくていいよ。というのもそれこないだ間違えて同じ物を2つ買っちゃったんだよね~だから有効活用ってことでというか…親友の証みたいなものかな」

 

「……そうですわね、ありがとうコレット」

 

「今日も本当にありがとうねリーゼ、それにマキアス君」

 

「まあ、僕は何もしてないけどね」

 

リーゼはコレットの依頼を達成したのだった。

 



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第2章ー初めての実習編ー24ー11話ー学院長の依頼。それは旧校舎の探索。

初めての実習編11話です。


 

リーゼとリィンは学院長室前で待ち合わせていた。お互いに依頼を終わらせたから、学院長の依頼をすることになったのだが。

 

学院長室、お偉い方と会うとわかるとなんだか緊張してくる。それは誰とて同じではないだろうか。別に悪いことをしたわけでもないのにドキドキしてくる。それはリーゼやリィンも同じようで。

 

「リィンさん、なんだか緊張してきましたね」

 

「確かにな。あまり学院長室なんてくることなんてないだろうからな」

 

「普通に学院生活を送っていれば、ほとんど来ない場所でしょうし」

 

「ただ、学院長が生徒会に依頼を出すと言うことは、何かあるんだろうな」

 

リーゼは、ヴァンダイク学院長には、別の場所では顔を合わせているのだ。それは、“アンネリーゼ皇女殿下”としてだ。リーゼ・レンハイムとしては、会ったことがない。彼女は緊張しながら、学院長の依頼か一体なんだろうと思っていた。

 

 

2人は学院長室のドアをノックして学院長室に入った。改めて自己紹介をする。

 

「─学院長、失礼します。1年Ⅶ組・リィン・シュバルツァーです」

 

「同じく、リーゼ・レンハイムですわ」

 

「おお、待っておったぞ」

 

ヴァンダイク学院長、2アージュは越えている身体でリーゼとリィンを見ている。普通なら怯むとこだが彼の目は、優しい眼差しで2人を見ている。

 

「─トワ会長から聞いてるよ。君らが引き受けてくれたとな。初めての自由行動日なのに悪いが話しを聞いてもらってもよいかな?」

 

「はい、構いませんよ。そのために来たのですから」

 

「旧校舎の地下の調査ということでしたが」

 

「うむ、入学式の時に君たちが使った場所じゃ。ちなみにあの落とし穴の仕掛けは、サラ君が使うと言い出してな……。まぁちとやりすぎであったのはワシの方からも謝らせてもらおう」

 

「いいえ、学院長に謝れては、俺達も怒るに怒れませんよ」

 

ヴァンダイク学院長からバラされたあの時の真実。それはあの時の地下へ落としたのはサラ教官の独断だった。これを知ったら、ユーシスやマキアス達はなんて言うかわからないと2人は心に思った。

 

 

「──話は戻すがあの旧校舎はずいぶん不思議な逸話があってのう─石の像(ガーゴイル)などもその1つになるじゃろう」

 

「あれは…どう考えでもあれは異常ではない魔獣でした。まるで─」

 

リーゼもあれは魔物って言った方がいいと思った。

 

「うむ、魔獣というよりも魔物といった方がいいじゃろう。しかも放っておけば、いつも間にか元通りの石像へと戻ってしまう」

 

「やはりそうか」

 

「リィンさん?」

 

「いや…そんなことを言ってるジョルジュ先輩達が、いたなって思い出しただけさ」

 

「うむ、ゆえに昔からこの学院では生徒達の修練と腕試しにあの地下が使われてきたのじゃ。─しかしここ一年ほど少しばかり状況が変わってな。無かったはずの扉が現れてたりどからともなく声が聞こえたりと不思議な報告が相次いでいるのじゃ」

 

「………うん大体は聞いてた通りだな。ジョルジュ先輩達も先の先輩達から聞いた話しだから詳しくはわからないって言ってたな」

 

「学院長は、わたくし達にそういう現象の確認をすると言うのが依頼なのでしょうか?」

 

「うむ…そういうことじゃな。頼みたいのは、地下を一巡りして先月末と違った事が起きていないか確認してもらいたいということじゃ。君たちなら適任じゃろう?」

 

「確かに…─承りました。何とかやってみますわ。あの石の像(ガーゴイル)が復活していたら、わたくしとリィンさんだけじゃ厳しいかもしれませんが?」

 

「そのときはとっとと引き返すじゃな。それとこの依頼はⅦ組全員に対する依頼じゃ。他のメンバーについても協力を頼めそうな仲間がいたら声をかけて一緒に入りなさい」

 

「はい。なるべく協力して入ります」

 

学院長から鍵を受け取り、リィンとリーゼは、共に旧校舎に行くことにする。達也はARCUSで協力を求めやすい人物に連絡してみた。結局連絡とれたのはエリオットとガイウスだけだった。

 

リーゼもマキアスに連絡しようと思ったが、コレットの時もあるし第2チェス部に行ったばかりの彼を呼び出すのは気が引けたのだ。結局4人で旧校舎地下探索をやることに。

 

 

リーゼは、4人では心細いかも知れないけどやるしかないと静かに決意した。

 

 

再び4人で旧校舎に入り地下への扉に繋がる階段のところまでやってきた。

 

「うう……またこの場所に来るなんて。ど、どう考えても無謀だと思うんだけど」

 

「まあ確かに。気が進まないなら無理にとは言わないが」

 

「ううん来週は、実技テストなんていうのもあるみたいだし──少しでも魔導杖の扱いには慣れておきたいから。それにリィンやガイウスやリーゼだけだって…3人だけじゃ心配だよ」

 

「ありがとな。エリオット」

 

「そうか……助かる」

 

「ありがとうございますわ、エリオットさん」

 

しかしすぐに異変に気がつくリーゼ達。明らかに先月の入学式でオリエンテーションをやったときの雰囲気はあるものの何かが違うと。

 

「…あれ?………見たところあの化け物は見当たらいね。不気味な石造とかもないからね。どういうことだろうね?……この部屋……?」

 

「いや……何か変だと思っていたが……俺達があのあの化け物と戦った時よりも部屋が小さくなっている」

 

「おそらく…2回り以上──おまけに見覚えのないものまで現れているようだな」

 

「あれって前に来た時には、扉なんて無かったはずですわ」

 

「ああ無かった。──正直、半信半疑だったんだけど、とにかく降りて扉の向こうを調べる必要があるな」

 

リーゼ達は、階段を降り、旧校舎地下1階へと足を踏み入れた。

 

 

ーー旧校舎地下1階ーー内部

 

「こいつは驚いたな」

 

「ってここ完全に別の場所じゃない?ぼくたちこんな場所なんて通らなかったし」

 

「ええ間違いないですわ《どうやら地下の構造が完全に変わった》みたいですね」

 

「そんな…」

 

「徘徊している魔獣の気配も変わっているようだ。──どうする、リィン、リーゼ?」

 

「────学院長は地下の異変の確認だ。こんな状況になっている以上手ぶらで帰れない。行けるところまで言ってみよう」

 

「そうですわ。ヴァンダイク学院長から頼まれましたから、やらないわけにもいけませんわ」

 

「はぁ、仕方がないか」

 

「───女神の加護を。行くとしよう」

 

 

リーゼは上手く【戦術リンク】を使いながら、地下1階の奥地までたどり着くことができたが、奥地では突然現れたミノスデーモンとの戦いになった。

 

リーゼ達の【戦術リンク】を上手く使いながら、リーゼとリィンで、エリオットとガイウスでエリオットで。

 

エリオットはアーツも使いながら、リーゼとリィンの援護をする。

 

ガイウスの一撃で、よろめいたとこに最後はリーゼとリィンの紅葉斬りでけりをつけたのであった。



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第2章ー初めての実習編ー25ー12話ーそれぞれの放課後。

第2章12話です。


「なんとか…倒せたね」

 

「ああ【戦術リンク】もやっと使いこなせてきたな」

 

「【ARCUS】を通じて…呼吸を合わせる感覚みたいだった」

 

「そうですわね。どうやらここで終点みたいですし、みなさん地上に戻りましょうか」

 

リーゼ達は、来た道を引き返し始めたすぐに異変が起きていた。さっきまで光っていなかった何かの装置が光出していた。

 

 

「あの装置…来たときと違って光ってないか?どういうことなんだ?」

 

「そうだよね、あの装置ってあんな風に光ってた?」

 

「いいや…そんなことはなかったはずだ」

 

「とりあえずですけど、調べてみましょうか?」

 

リーゼ達は、謎の装置を調べ始める。装置の周りを調べて見ても変わった部分はない。するとリーゼが何か見つけ装置のある部分を触る。

 

すると4人は、突然光に包まれた。いきなり旧校舎の地下1階の入り口まで戻され、リーゼ達4人は驚いたが、考えても仕方ないので旧校舎から出てきたのだった。

 

 

ーー1204・4・18・夕方・16:00・旧校舎外

 

「そろそろ夕刻か」

 

「は~思った以上に時間がかかったね」

 

「とりあえずですが、ヴァンダイク学院長に、わたくしとリィンさんとで報告に参りますけど、エリオットさんとガイウスさんも来て下さると助かりますけが?無理にとは言えませんが」

 

「無理じゃないよ。僕ももちろん行くよ」

 

「それでは行くとしようか」

 

リーゼ達は、学院長室ㇸ向かうのだった。

 

ーー1204・4・18・夕方・16:20・旧校舎外→本校舎・学院長室にて

 

 

リーゼ達4人で学院長に報告しに行ったが、そこにはサラ教官もいた。リーゼ達の報告を学院長と、サラ教官はやはり予想外の出来事だったようだ。旧校舎自体は士官学院ができる前からずっとあったようだ。それも相当な昔、暗黒時代…それよりも前…歴史の授業で出てくるものみたいなものかもしれない。しかし旧校舎地下が、別物に変わるのは前代未聞なことであり、サラ教官も引き続き調査すると言った。もちろんリーゼ達も学院長から感謝された。

 

 

ーー1204・4・18・夕方・16:50・学院長室→本校舎廊下1階

 

 

学院長室から出てきたリーゼ達はサラ教官に

 

「ふふっなかなか頑張ったじゃない。どうやらARCUSの機能も少しは掴めてきたみたいだし」

 

「【戦術リンク】だな》」

 

「確かに使いこなせればかなりの力になってくれそうな感じはしますわ」

 

「でもなかなかタイミングが合わせるのが難しいよね?」

 

ガイウス「そうだな、俺は武器柄、リィン、リーゼとは合わせやすいな」

 

「わたくしもリィンさんは別にして、ガイウスさんとは合わせやすいですわね」

 

「リーゼやガイウスとは、朝の鍛練で手合わせさせてもらったことがあるからな」

 

「えっ!?なにそれ!なんか僕だけが仲間外れ感が……」

 

「とにかく……今日は依頼も含めて色々とお疲れ様。特にリィンとリーゼ、また次もこの調子で頼むわよ」

 

「一度乗っかった舟だ。…このまま生徒会の手伝いは続けます。仕事柄俺には一番合ってると思うし」

 

「わたくしもリィンさんと同じ気持ちです。生徒会のお仕事は続けながら水泳部も頑張っていきますわ」

 

「リィンやリーゼなら…あの忙しい生徒会長の力になってくれると信じてたわ」

 

「ええ、トワ生徒会長を見ていたら手伝わなきゃって思いましたからね」

 

「すまないな…リーゼ」

 

「ええ、構いませんから」

 

「トワ会長には伝えておくから。それと旧校舎の方は君たちに鍵を預けおくと学院長が仰っていたからまた気が向いたときにでもみんなで見て来て頂戴。それじゃーね」

 

「えっと…」

 

「いいのか?リィン、リーゼ?」

 

「別に入りたいクラブもなかったからな、それに生徒会の仕事もいいかなって思ったんだ。まあなんとか上手くやってやるさ」

 

「ふふっ、わたくしは兼任ってことで。それに困ってる人がいると、ほっとけないんですわ」

 

「…それと旧校舎に行くときは、また付き合わせてもらうから」

 

「俺も時間があれば手伝うぞ」

 

「エリオット、ガイウス、そのときは任せたぞ」

 

「みなさん、ありがとうございます。それにリィンさんもありがとうございました」

 

リーゼ達4人は、学院長室前で分かれた。エリオットとガイウスは、クラブの方へリィンは、表の方へ出て行った。

 

リーゼは、水泳部へ向かうため、ギムナジウムへ向かうことにしたのだった。



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第2章ー初めての実習編ー26ー13話ーそれぞれの放課後。②

第2章初めての実習編13話です。


ーー1204・4・18・夕方・17:10・本校舎→ギムナジウム

 

 

リーゼは、みんなと分かれてギムナジウムへ向かう。すでに太陽が西に傾き黄昏色に染まり出しているが、部活動はどこもやっていた。

 

ギムナジウムの中へ入ると急いで女子更衣室に入る。

 

彼女のロッカーは、壁側の3番目だった。ロッカーの扉を開けると自分の水着等を入れた袋がある。袋からスクール水着を出した。

 

リーゼは、制服の上着を脱ぎ、ロッカーのハンガーにかける。ブラウスとスカートを脱ぎ、ハンガーにかける。今の彼女は下着姿である。

 

白のシルクに話の柄が入ったブラと同じ色のシルクの花柄が入ったパンツ。パンツはマキアスや他のクラスの男子生徒がガン見していたヤツである。

 

「早く着替えて行かないと、水泳部の活動が終わってしまいますわ」

 

彼女はそう言うと、急いで水着に着替えるのだった。そして着替えた終えてプールサイドへと急いだ。

 

 

プールサイドには、クライン部長とマイン副部長がなにやら話している。リーゼは2人に

 

「すいません、遅れましたわ」

 

「生徒会のお仕事、お疲れ様」

 

「話は、サラ教官とマインから聞いている。お疲れ様、リーゼ君」

 

リーゼは申し訳なさそうに自分の活動時間はあるのか聞いてみた。

 

「ありがとうございます。それでわたくしが活動できる時間は、ありますでしょうか?」

 

「あるとも。時間の延長は、生徒会から認められてるから。リーゼ君が活動できる時間はちゃんとあるからね」

 

「私達は、もう水泳部の仲間なんだから、遠慮なしにいきましょう!」

 

「はい、マイン先輩!」

 

リーゼは、準備運動をやってから、プールに飛び込みそのまま泳ぐ。

 

彼女は泳ぐのは得意なのだ。オリビエと旅をしていた頃、よく川や湖などで泳いでいたのだ。それでよくミュラーを心配させていたのだが。

 

その泳ぐ姿を見て、クラインとマインは、目を驚かせていた。クラインは、自分の目に間違いはなかったと。マインは、自分の後継者が見つかったという目をしていた。ラウラも驚いて

 

「リーゼ、そなた…できるな。ライバルがいてこそ…腕は伸ばせるというもの」

 

すぐにいいライバルが見つかったと誇らしげに見ていた。同じ新入部員のパスカルもユフィに見とれていた。

 

見とれているものの、水中のなにかもも元気になっていた。

 

それはたまたま、パスカルが目を上に向けた時、リーゼがプールから上がっていた。そのときに彼女の食い込み水着を見て、そうなってしまった。

 

その後、彼は無心で泳ぎまくったという。

 

 

ーーリィンSide

 

ーー1204・4・18・夕方・17:15・旧校舎→学院長室→学生会館・生徒会室。

 

リーゼ達と別れたリィンは、生徒会室に来ていた。なんとなく訪れしまったリィンは、トワ生徒会長に先程の報告も兼ねてやっていた。

 

「あっ、リィン君、お疲れ様。今日は生徒会の仕事を手伝ってくれてありがとうね」

 

「いえ、少しでもトワ生徒会長のお力添えできたのなら俺としては光栄です」

 

「えへへ、本当に助かっちゃったよ」

 

「いえ、俺だけではなく、リーゼもやってくれましたし」

 

「リーゼさんにもありがとうって伝えておいてね」

 

「わかりました。本人に伝えておきます」

 

「ジョルジュ君だってとっても感謝してたみたいだし。まさかあの旧校舎の調査まで、成し遂げちゃうなんてね。本当にお疲れ様」

 

「はは…また何かあったらいつでも言って下さい。また来月も力にならせて頂きますよ」

 

「あははありがとう。今日は早めに帰ってゆっくり休んでね」

 

リィンとの話の合間に忙しそうに仕事をしているトワ生徒会長。まだ忙しいくらいに仕事があるのかと考えてたリィン。ここまで来たなら最後まで付き合うことにしたリィンは、トワ生徒会長に

 

達也「トワ生徒会長、もしかしてまだ仕事が残っているんじゃないでしょうか?ついですし最後まで付き合わせてもらいますよ」

 

「えっと…いいのかなぁ?リィン君も疲れてるでしょう?」

 

「いえ大丈夫です。それにトワ生徒会長の笑顔を見れば疲れなんか吹き飛びますよ」

 

「ふふっありがとう。リィン君は優しいんだね。それじゃ、あとちょっとだけ手伝ってもらっちゃおうかなぁ」

 

その後リィンは、トワ生徒会長の事務仕事をできる範囲で引き受け、一通り仕事を終わらせたあと、お茶をご馳走されることになった。ただ予想をしてたよりも、ハードで忙しいことが分かった。こんな大変な事を毎日続けてるなんて、本当に頭があがらないなと思ったリィンであった。

 

「はぁ……ようやく一息ついたね」

 

「はは…トワ生徒会長お疲れ様でした。しかし生徒会っていうのも本当に忙しそうですね」

 

「あはは…まぁねいっつも仕事は持ち帰りだし。でも本当にいいの、リィン君?」

 

「えっと、来月も生徒会の手伝いをするって話しでしょうか?」

 

「教官に言われたからって絶対やらなきゃダメだってことはないと思うけど──」

 

「トワ生徒会長……これは自分で決めたことですから。(わざわざ家を出てこの士官学院まで来たんだ。それにサラ教官に言われた自分の立ち位置を、自分が何者なのか、それを必ず見いだすためにも!)」

 

 

「あのねリィン君。身も蓋もないことをいうかもしれないかもしれないけど、そんなに無茶してがんばらなくてもいいんじゃないかなぁ」

 

「え?」

 

「その、頑張ること自体はわるいことじゃないよ。でも時々は羽を休めることも大切なことだと思うんだ。じゃないと本当に頑張りたいときに頑張れなくなっちゃうから」

 

「………トワ生徒会長のそのお言葉、肝に銘じときます」

 

「はわわっ…ごめんね!リィン君の事情もよく知らないで!で、でもねやっぱり無理をして体をこわしたりしたらよく無いと思うんだ。リィン君もこの学院の大切な生徒の1人なんだから」

 

「トワ生徒会長…ありがとうございます。なんだか肩が軽くなった気がしますよ」

 

「えへへ…そっか。その疲れたらいつでも生徒会を訪ねてきていいからね。こうしてお茶を出してあげるくらいならわたしにもできるからね」

 

「はは…ありがとうございます。(トワ生徒会長、この人といるとなんだかほっとさせてくれるな。リーゼやアリサとは違う何か安心できる、うまく説明出来ない何か、コホン…次からも無理はせずに精一杯がんばるとするか)」

 

しばらくリィンは、トワ生徒会長と雑談をしてから、まだ簡単な仕事が残ってると言うトワ生徒会長に挨拶をして、生徒会室を後にした。

 



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第2章ー初めての実習編ー27ー14話ーそれぞれの放課後。③

第2章初めての実習編14話です。


 

ーリィンSIDE(リィンから見たリーゼ達)

 

ー1204・4・18・夕方・17:55

 

学生会館→ギムナジウム(プール)

 

 

リィンは学生会館から出た後は、ふとギムナジウムの方へ歩いて行った。西からは夕日の光に照らされて校舎のガラスから光が反射していた。

 

ギムナジウムに入ると奥の方からは、水の匂いやすぐ横の練式場からはかけ声が聞こえる。リィンは奥のプールは、水泳部が使っているであろうプールの方へ向かった。

 

水泳部はちゃんと練習をしていた。何故、リィンがここに来たかは、リーゼにもう一度お礼を言うため出もある。彼女はラウラと話しているようだった。

 

「2人共、お疲れ様」

 

「リィンさん?」

 

「リィンではないか?」

 

「リィンさん、また何か頼まれましたか?」

 

リーゼは、また誰かに頼まれものでも引き受けたと思ってるのかもしれない。リィンは、ただもう一度礼を言いに来ただけだから。

 

「リーゼにもう一度礼を言いに来たんだ。水泳部があるのに、俺の生徒会の手伝いをやってくれたことのお礼を言いに来ただけだから」

 

「うふふ、…別に気にしてませんわ。こうして残りの時間で水泳も出来ますし、リィンさんが気にする必要はないですわ。わたくしが自らの意志でやっただけですので」

 

リィンは、そう言ってくれると助かると思うのが、水泳部の方は大丈夫なのかと考えた。だがリーゼは、大丈夫だと言った。

 

「ですからリィンさんが気を病む必要はありませんから」

 

「ああ…分かった」

 

ついついリーゼの返事に頷いてしまったリィンは、彼女に悪い気もするけど、彼女が良いと言ってるから良いのかと思った。しかしラウラの咳払いで我に帰った。

 

「コホン…リィンにリーゼ…何、2人だけで、話を進めている?旧校舎の捜索は来月からは私も参加しよう。良い鍛錬になりそうだからな」

 

ラウラの来月から旧校舎の捜索を手伝うって宣言されてしまったが、ラウラが来てくれるなら心強いと達也はそう思った。リーゼが驚いた声をあげる。

 

「ラウラさんも!?」

 

「旧校舎の依頼はⅦ組全員に対しての依頼なのだろう?ならば私が行くのは問題はないはずだ」

 

「いやそれに関しては問題ではなく、流石に水泳部をわたくしとラウラさんが抜けるのは大丈夫なのかなってことですわ!」

 

リーゼの心配は、水泳部の自分達が2人も抜けて大丈夫かなというのが心配なのだろう。リィンは、クレイン部長やマイン副部長にリーゼやラウラの件を話した。クレイン部長はやマイン副部長は、快くOKしてくれた。リーゼとラウラが感謝の言葉を述べてきた。

 

 

「ありがとうございます、リィンさん、何から何まで」

 

「すまぬな、リィン。そなたには感謝しなくてはな」

 

「別に構わないさ。それが仕事だからな」

 

リィンは、これも生徒会の仕事の一環のだからと思った。リーゼやラウラの水着姿を見れたのだから、少しは喜べと。喜ばなければ、世間の男達がバッシングを受けてしまうだろうと内心で思っていた。しかしラウラには気付かれているようだ。

 

「リィンよ…何をジロジロ見ている?」

 

「ふっ…何でもないさ。やっぱり水泳は、2人共、大の得意なんだな」

 

「私の故郷【レグナム】は湖畔にある町だからな。寒中水泳も鍛錬のために日常的にやっていたから、少しくらいはサマになるだろう」

 

「わたくしの故郷でも良く寒中水泳やってましたわ。わたくしも鍛錬のためにやってましたから。泳ぐことが好きだから楽しめましたね」

 

2人に共通するのは、寒中水泳を故郷でやってて、それを鍛錬のためにでやってるわけだ。

 

リィンは、なんかすごい2人だよと思った。ラウラが真剣な眼差しで話しかけてきた。

 

「以前父上に言われていた言葉がある。【時に剣を手放すごとで得られるものがある】らしい。前々から士官学院に入ったら実践してみようと思っていてな」

 

リィンは、ラウラの父上の【光の剣匠】の言葉に重みを感じると思った。それはもちろんリーゼも同じだった。

 

俺も以前同じ事を言われたことがあるんだ。だからわかる気がするな」

 

「ほう…」

 

「わたくしも言われましたわ」

 

リィンもこれ以上は、水泳部の邪魔になるし、リーゼやラウラの水着姿は目のやり場に困ると判断し立ち去ることにした。

 

「俺はもう行くけど、リーゼにラウラ、クラブの方、頑張ってくれ」

 

「ああこれからもっと精進しなくてはな」

 

「わたくしも精進しなくっちゃ。それとリィンさん、今日は本当にご苦労様でした」

 

「リーゼもお疲れ様」

 

リィンは2人に手を振ると、クライン部長とマイン副部長に軽く頭を下げてから、プールから出る。

 

すぐにギムナジウムから出て、リィンはグラウンドの方から第3学生寮へ帰ることにした。

 

 

ギムナジウム→グラウンド

 

ー1204・4・18・夕方・18:10・グラウンド

 

リィンが西陽を浴びながら帰っていると、グラウンドにポツンと1人が立っているのが見えた。彼は目を凝らして見るとそれがアリサだとすぐにわかる。何故彼女がグラウンドで1人でいるのか分からないが、リィンは話しかけることにした。

 

「アリサ、何をやってるんだ?」

 

「何って、あっ!?フン、別になんでもいいでしょ?貴方には関係のないことでしょ」

 

アリサはそう言って、ラクロス部の道具を1人で片付けている。ただ周りにはラクロス部の部員は1人もいない。ただアリサだけが黙々と片付けているだけだ。

 

「えっと、1人で片付けてるのか?」

 

「フン、まあね。新入部員の仕事だもの」

 

ラクロス部の新入部員は、アリサだけではない。同じⅦ組のアンジェリナや貴族クラスの女子生徒もいる。だが彼女達の姿はない。それが気になったリィンは聞いてみる事にした。

 

「アンジェリナや貴族生徒はどうしたんだ?」

 

「アンジェリナと貴族生徒の子は帰ったわ。まあ貴族生徒に押し付けられた形にはなったけど」

 

「アンジェリナは?」

 

「彼女は手伝ってくれるって言ってくれたんだけど、貴族生徒の子が無理矢理にも連れて行ったの…って貴方には関係ないでしょ!?」

 

リィンは、アリサにどうしたら許してもらえるのか、ずっと考えていた。しかし何か良案が出るわけでも思いつくわけでもない。そんな日が2週間も続いているのだから。彼はラクロス部のゴールネットを見て

 

「アリサ、その良かったら俺も片づけを手伝おうか?さすがに1人で片付けるのは大変だろ?」

 

「勝手にすれば?またいかがわしい真似をするつもりなら、許さないわよ?」

 

「し、しないって」

 

こうして、リィンとアリサはラクロス部の道具を体育倉庫に片付ける。これも剣の鍛練だと思い率先して運ぶリィン。

 

「(彼女達は、ハードな練習の後にも道具を片付けるというハードな事をやってるんだ…それに比べて俺は…)」

 

「……ねえ…」

 

アリサが話しかけても考えに老け込んでいるリィンは気づかない。しかし視線に気づいたリィンは

 

「あ…ゴ、ゴメン。手が止まっていたな」

 

「へぇ?…フン、分かればいいのよ」

 

「ダメだな、こんなことじゃ。もっと頑張って挽回しないと」

 

アリサに許して貰うことを第一に黙々と片付けをこなしたリィンであった。

 

「(よっと、これで全部だな、かなりの重労働だが、鍛練にはなる作業だった。これを1人でやろうとするなんて、アリサも責任感が強いって言うか…)」

 

リィンが体育倉庫の前で考え込んでいると再びアリサが話しかけていた。

 

「…あの…」

 

「っと…すまない。ここに立ってたら邪魔だったな」

 

リィンは邪魔にならない壁際の方へ退いた。アリサもリィンに何か言いたいのだが素直になれないのであった。

 

全てを片付けたリィンとアリサは、彼女の着替えを待ってからギムナジウム前で分かれることに。

 

「はは、とりあえず一段落ついたな。でも部室の方は良かったのか?」

 

「あのね、女子の部活よ?貴方を入れるわけないでしょう」

 

「それもそうか」

 

「でも少しは助かったわ(アリガトウ【チイサナコエデ)】」

 

「えっ?」

 

「な、なんでもないわよ!とにかく、もう用はないから行ってちょうだい!」

 

「わ、分かった。…そうするよ」

 

リィンは、アリサに背を向けグラウンド方面から帰りだした。心の中で、アリサとまたしても謝る事が出来なかった。どうすれば良いのか、正直分からなくなっていた。モヤモヤ感があるが、地道に許してもらえるまで謝罪するしかないとリィンは思った。

 

アリサ自身もリィンに謝りたいが自身の頑固さが仇となり中々謝れないことに自身に腹を立てていたのだった。

 

あと一歩が踏み出せないリィンとアリサであった。

 



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第2章ー初めての実習編ー28ー15話ーそれぞれの放課後。④

第2章15話です。


 

ギムナジウム→学生会館

 

 

ーー1204・4・18・夜・18:45・学生会館

 

 

陽も暮れ、水泳部の活動も終わり、各自更衣室で着替えてから、学生会館へ行くことに。クライン部長とマイン副部長が、リーゼ達新入部員を歓迎会みたいなことをしてくれるようだ。リーゼとパスカルは、クライン部長、マイン副部長にお礼を言う。

 

「ありがとうございますわ、クライン先輩、マイン先輩」

 

「本当にこんなことしてもらって良かったのですか?」

 

「いいのいいの。水泳部の毎年の恒例行事みたいなものだから」

 

「まあ、歓迎会と言っても学食を奢るくらいしかできないからね」

 

「いえいえ、わたくし達はそれでも嬉しいですわ」

 

「ありがとう、リーゼ君、パスカル君…それとラウラ君?」

 

ラウラは、誰かと話している。緑の制服を聞いているので、平民クラスの人間だろう。先程からずっと話しかけられていた。

 

「あの、えと、先輩、私、モニカと言います。水泳部に興味があって色々と教えてほしいんです」

 

「うん、それは構わんが……私は先輩ではないし、先輩は、あそこにいるクライン部長とマイン副部長だ。そこにいるリーゼとカスパルは同じ水泳部の1年だ」

 

「ええ………!?そ、そうなんですか!?」

 

「ああそうだ」

 

「わたくしやパスカルさんも同じ1年ですわ」

 

「そうだよ…モニカさん。敬語は無しでいいよ」

 

「えっと、でも…」

 

彼女はラウラの方を見て…本当に良いのか判断をしかねていた。

 

「そなた、モニカと申したな。パスカルの言うとおりだ。敬語は無しにしよう。もしそなたが私が貴族だからと迷ってるなら心配無用だ。私はそのようことは気にしないからな」

 

「わたくしはリーゼですわ。よろしくお願いします、モニカさん」

 

「俺はカスパルだ。よろしく」

 

「私はラウラだ、改めて宜しく頼む、モニカ」

 

「部長のクラインだ。改めて宜しくな、モニカ」

 

「副部長のマインよ。改めて宜しくね、モニカ」

 

5人は、モニカの入部歓迎会を改めて行ったのである。

 

 

学生会館→各自の学生寮

 

 

ーー1204・4・18・夜・19:15・学生寮への帰り道

 

 

リーゼ達は、モニカの歓迎会を30分くらいやったのだった。クライン部長は、新入生が4人も増えたことに感激していて、

マイン副部長も女子が増えたことに感激していた。

 

帰りも第2学生寮の前までやって来て、クライン部長達、パスカル達と分かれて、リーゼとラウラは第3学生寮へ歩き出す。

 

2人が第3学生寮に帰っていたら、キルシェのマスターのフレッドが何やら困った顔で表に立っていたのだ。リーゼはすぐに何かあったのかと思い、マスターのフレッドに話しかけたのだ。

 

「どうかされたのですの、フレッドさん?」

 

「うん?リーゼか。ちょっとまずっちまったんだよ」

 

「まずったとは?」

 

「いやそれがな、いつもウチで使っているある調味料があるのだが…それをさっき使いきってしまってな」

 

フレッドは調味料を切らしたことで、今から買いに行くことも注文をとることも出来ないでいるようだ。だが調味料は絶対に持っておきたい。何故ならその調味料を使った料理を、楽しみにしている学院生もいるようだ。ラウラが代用はできないかって聞いてるが、フレッドは出来なくもないが、風味が大きく変わるからできない。

 

リーゼは、これも生徒会の依頼の延長だと言ってフレッドに

 

「フレッドさん、その調味料ってどんなものでしょうか?」

 

「ああ、大陸南部が原産の【パッションリーフ】と呼ばれる少し珍しい香辛料だ」

 

パッションリーフ、大陸南部にそう言う香辛料があるって聞いたことあるとリーゼは思った。

 

フレッドはいつもならブランドンのお店で特別に仕入れてもらってる。こまめに在庫チェックしていれば、切らすこともなかったって嘆いている。

 

パッションリーフ、調理部のニコラス部長なら、知ってるかもしれないとリーゼは考えた。

 

「フレッドさん、少し待っててもらえないでしょうか?」

 

「リーゼ、良いのかい、頼んでも?」

 

「構わないですわ。これも生徒会の依頼の一環だと思えば、なんとでもなりますので」

 

生徒会の依頼と思えば筋は通ると心に思った。トワ生徒会長を通さずに、やるのはちょっと引け目を感じるリーゼだが、やるしかないと腹を括る。

 

「それにちょっと心当たりがあるので、なんとかなると思いますわ」

 

「リーゼ、ありがとよ」

 

「フレッドさん、確実な保証ありませんが、よろしいでしょうか?」

 

「ああ、わかってる」

 

ラウラが心配そうにリーゼを見ている。

 

「リーゼ、そなた」

 

「大丈夫ですよ。これでもわたくしは、これでも生徒会の端くれです。ラウラは先に第3学生寮へ帰ってもらって構いませんわ」

 

「リーゼ、良いのか?私も手伝おうか?」

 

「大丈夫ですわ。何かあればラウラに頼りますからね」

 

「…そうか。リーゼ、何かあれば、私も手伝おう。……ではまた後でな」

 

「ラウラ、わたくしの荷物を持って帰って貰えませんか?」

 

「構わないぞ」

 

リーゼは、ラウラに荷物を預ける。彼女は、何か言いたそうだったが、言わずに第3学生寮へ帰って行った。

 

リーゼは、ラウラにごめんと言って、フレッドの依頼を開始する。まずは、ニコラス部長に会ってパッションリーフのことを尋ねてみることした。

 

リーゼは再び本校舎2階の調理部を目指した。

 

 

学生寮への帰り道→本校舎2階・調理部の部屋

 

 

ーー1204・4・18・夜・19:25・本校舎2階・調理部の部屋

 

 

調理部の部室に入ったリーゼはニコラス部長に話しかける前に向こうから話しかけてきた。

 

「やあ、リーゼ君か。調理部に何か用事かい?」

 

「ニコラス部長、少しよろしいでしょうか?」

 

リーゼはニコラス部長に事情を伝えて、【パッションリーフ】をもってないかを尋ねた。

 

「なるほど、そういう事情で【パッションリーフ】を探しているのか…。でもすまないね。僕も使ったことはあるけど、今は持ち合わせていないんだ」

 

「あ…あ、はい。わかりましたわ」

 

リーゼは、やっぱり駄目だったと肩を下ろす。仕方がない、大陸南部原産だから帝国では手に入りにくいからと聞いていたとおりだと思い出した。でもニコラス部長は何かあるようで

 

「ふむ、だが諦めるにはまだ早いよ、リーゼ君」

 

「どういうことですの、ニコラス部長?」

 

ニコラス部長は、調理部には無いが、学生会館の食堂、学生食堂にはあるのではないかと教えてくれた。ニコラス部長が、以前学生食堂で食べた日替り定食から、パッションリーフの風味を微かに感じたみたいだ。それも隠し味に使ってる程度だが。流石ニコラス部長だとリーゼは思った。

 

学生食堂は、ラムゼイさんが仕切って調理をしているようなので、ラムゼイさんに聞いてみることに。

 

「ニコラス部長、どうもありがとうございましたわ」

 

「いや、すまないね、リーゼ君」

 

「いえいえ、これがわたくし達のお仕事ですから」

 

リーゼはニコラス部長に挨拶を済ませてから、本校舎から学生食堂がある学生会館へ歩き始めた。

 

 

本校舎2階・調理部の部屋→学生会館・調理場

 

 

ーー1204・4・18・夜・19:40・学生会館・調理場

 

 

そして学生会館の学生食堂へやって来たリーゼは、調理室へ入った。

 

「うん?何か用か?……もしや、摘み食いにでも来たか?」

 

「違いますわ。わたくしはラムゼイさんに用があって来たんですわ!」

 

リーゼは、つまみ食いをしに来たわけではないと、改めてラムゼイさんに事情を話した。

 

「なるほど。【キルシェ】のために、パッションリーフが欲しいのか?」

 

「はい」

 

「それなら…確かにここにある」

 

「本当ですの!」

 

これでキルシェのマスターのフレッドも、フレッドの料理を食べる学院生も困らなくてすむとリーゼは安堵した。

 

「ああ、これを持っていくといい」

 

リーゼはパッションリーフの束を受け取った。

 

「すいません、ラムゼイさん。あっ、お代金を払わないといけませんわね」

 

「ふむ、そんなものをとるつもりはない。とりあえず…それだけあれば、2週間は凌げるだろう。これで足りないようなら、また来るといい」

 

「分かりました、ラムゼイさん。どうもありがとうございました」

 

リーゼはラムゼイさんにお礼をして、調理室から出た。しかしラムゼイさん優しい人だったと感謝した。そしてキルシェへ向かうことにした。

 

 

 

学生会館・調理場→キルシェ

 

 

ーー1204・4・18・夜・20:05・キルシェ

 

 

キルシェに到着したリーゼは、すぐにマスターのフレッドに話しかける。

 

「もしかして……パッションリーフを持ってきてくれたのか?」

 

「ええ、パッションリーフは持ってきましたわ」

 

リーゼは、パッションリーフの束をフレッドに渡した。

 

「はは、…まさか本当に持ってきてくれるとはな。どうもありがとな、恩に着るぜ、リーゼ」

 

「わたくしは、“承った依頼は必ず達成させる”がモットーですので」

 

「遊撃士に劣らずってとこか」

 

しかしフレッドは、パッションリーフの束を見て、かなり値がはるのではないかと言ってきた。

 

「それなんですが、実は調理部ではなく、学生食堂から貰ったものなんですの」

 

リーゼはフレッドに事情を話した。

 

「なるほど、そんなことが…学生食堂のラムゼイさんか…。改めてお礼を言いにいかないとな」

 

「わたくしからもお礼を致しましたけど、フレッドさんからもお願いしますね」

 

「ああ、そうさせてもらうよ。あと、リーゼにも感謝しないとな。お陰でお客さんをがっかりさせずに済むし。何より、ここまで一生懸命に動いてくれたことが、嬉しかったぜ。つまらないものだけど、是非これを持っていてくれ」

 

リーゼはフレッドから、クリスビーピザを3個受け取った。

 

「こんなに沢山…いいんでしょうか?」

 

「はは、もちろん良いに決まってるさ。生徒会には、いつもこの商店街は、助けられてるからな。今回はリーゼにもな」

 

リーゼは、フレッドと世間話を少ししてから、クリスピーピザを持って第3学生寮へ帰った。

 

クリスピーピザは、Ⅶ組のみんなと分けて美味しく頂きましたとさ。




すいません、リアルが忙しくなったので遅れました。


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第2章ー初めての実習編ー29ー16話ーその日の夜にて。

第2章16話です。


 

ーー1204・4・18・夜・21:15・第3学生寮ー306号室ーリーゼの部屋

 

リーゼが、フレッドさんからもらったクリスピービザをⅦ組全員で食べた。やはりキルシェのフレッドが作ったものであるため、誰も食べ残しは無かった。

 

当然美味いからである。

 

後は、各自自由時間になり、消灯の時間までは、自由に過ごせる。シャワーを浴びる時間は決められている。リーゼはすでにシャワーを浴びている。

 

勉強を教え合うよし、Ⅶ組メンバーと絆を高めるのよし、男女間の部屋を訪れるのもよし、つまり風紀を乱さない限りはOKなのだ。

 

 

そんな中リーゼは、1日の記録を付けていた。その日に起きた出来事、たあいもない事なども記載されている。

 

しかし今日の記録には、いろんな事がかかれている。まずは生徒会の依頼をリィンとこなしたこと。次に水泳部に入部して、クライン部長、マイン副部長やパスカル、モニカとも友達になったこと。3番目に、キルシェのフレッドさんの依頼を引き受けて、解決したことを書いてある。

 

【パーションリーフ】

 

大陸南部が原産であり、主にリベール王国で栽培されている香辛料なのだ。パーションリーフ好きな人間は、それが無いと料理を食べた感じがしないと云わしめる香辛料なのだ。

 

しかし、今では東方から【唐辛子】や【醤油】などの輸入品も多く帝国内に入って来ているため、絶対というほどでは無くなった。

 

むしろ、【唐辛子】や【醤油】などが、【パーションリーフ】よりも価格が安く、帝国企業もリベールから日本からの輸入に切り替えが起きている。

 

 

リーゼの太刀を置いている刀置き台も日本からの輸入品である。

 

今のリーゼは、キャミソールにショートパンツというラフなスタイルで、長い金髪もポニーテールに結んでいる状態である。

 

「ふふっ、今日は色々ありましたわ」

 

依頼の仕事を通じて親友になったコレット。

 

水泳部に入部してきたモニカ。

 

それだけではない。旧校舎地下探索では、前回の入学式のオリエンテーションの時と違い、地下構造が全く異なっていた。

 

「…うん…あの旧校舎の地下がまるっきり構造が変わってましたわね」

 

父や兄、オリヴァルトから聞いていた話とは、全く違う。地下構造が変わることは、2人の話からは聞かされてはいないのだ。

 

トワ生徒会長からも去年までは、こんなことは無かったと聞いている。

 

だが今年になって、旧校舎の構造が変わることが起こるとは誰も説明が出来ない。

 

いくら考えても、リーゼに何か考えが出るわけでもない。ただ分からないがずっと続くだけである。

 

「旧校舎の事は、一端置いときましょう」

 

リーゼは、ふとベッドのところに置いてある自分の洗濯物に気が付く。おそらくエマ当たりが部屋に運んでくれたのである。

 

洗濯物を片付けるために立ち上がる。片付けていると自分のパンツを手に取る。

 

リーゼは、今日の休憩エリアでの一こまを思い出す。男子生徒達に自分のパンツを見せて恥ずかしかったこと。マキアスにも見られたが、彼にだったらと良いかなという自分がいることも。

 

「マキアスさんの好みの色の下着って…何色なんでしょう?」

 

リーゼは、自分がとんでもないことを口にしたことに気がつき、思わず身体中が赤く暑くなる。

 

「わたくしったら、何をいってるんでしょう!」

 

これではまるで、マキアスが意中の男性ってことになってしまうとリーゼは、冷たいベッドにダイブして火照った身体を冷やすのだった。

 

そんな感じで、夜も更けていく。

 

 

 

ーー1204・4・18・夜・21:20・第3学生寮ー302号室ーアリサの部屋

 

 

同時刻、アリサは何をしてたかと言えば、先程までアンジェリナが部屋を訪れていたから彼女とお話をしていた。

 

なぜ彼女がアリサの部屋を訪れたのは、ラクロス部での夕方の片付けの件である。彼女は、アリサの手伝いをするつもりだったが、フェリスによって妨害されてしまったのだ。

 

フェリスの言葉

 

【大貴族である貴女が、平民のやるお片付けをやる必要はないですわ】

 

アンジェリナはそうは思わない。大貴族だからと言ってふんぞり返るつもりはない。

 

アリサもアンジェリナを以前から知っていた。彼女は、よくログナー侯爵家の屋敷を抜け出して、ルーレの礼拝堂で教会のお手伝いをしていた。それをよく見ていたのだ。

 

姉アンゼリカとは、違う意味でアンジェリナはルーレの民から慕われている。

 

そんなアンジェリナを支えてるのは、相手先の貴族の少年であったリィンの言葉であり、彼女が強くなろうとしたのもリィンの言葉からである。でも彼女はリィンが自己紹介の時に❝平民❞だって偽ったのかが引っかかると言っていた。

 

「…アイツがなんで、貴族であることを隠してる理由なんて知るわけ無いし」

 

偽ってるのはリィンだけではなく、アリサ自身も本名も偽っている。本来なら❝アリサ・ラインフォルト❞と名乗らればならないが、事情があってアリサ・R(偽名)で通してるのだ。だからリィンのことに深堀りはしたくはないのだ。ただでさえ入学式の件でギスギスしたままなのにとアリサは思っていた。

 

そんなときに

 

アンジェリナははっきりと気持ちを言ってきたのだ。

 

【私はリィンさんをお慕いしています。アリサさんがリィンさんを気にしてる事も知っています。それでも私の気持ちは変わりません】

 

アリサはふと窓を開けて、トリスタを吹き抜ける風を入れた。火照った身体にはちょうどいい気持ちよさの風だ。

 

「それにしても、アンジェリナは一筋というか…」

 

さっきも言ったようにリィンとの関係は、入学式のアノ事より、ずっと口をまともに聞いていない。仲直りしようと色々と考えてみたが、うまく行かないのが今の現実である。

 

アリサも昔の事を思い出す。

 

昔とある場所で迷子になって泣いた事がある。父親と母親と離れ離れになり、寂しくなって泣いていた。そんな時、ヒーローのように現れた少年がいた。

 

その少年は、泣いていたアリサを寂しくない、寂しくない、必ず父親と母親のもとに連れていってくれると頭を撫でてくれたのだ。

 

泣いていたアリサは、いつの間にか安心していた。少年に引っ張られ父親と母親のもとに連れてきてもらったのだ。

 

アリサは、少年に名前を聞いた。だが少年は

 

「名乗る程の事はしていないから。君もお父さん、お母さんを心配させたらだめだよ」

 

そう言って少年は去って行った。アリサは少年の事は心と身体に焼き付いていた。

 

それから父親が事故で亡くなり、いろんな事が起きる。そんな慌ただしい時に、母親によって日本から達也という少年が連れてこられる。

 

彼は日本の四葉家の人間で、FLT社の技術者でもあった。

 

帝国政府と日本政府に掛け合い、RF社とFLT社の提携により、四葉家からラインフォルト家に達也が養子という形で迎えられた。

 

母親曰く彼の能力は、目を光らせるものがあるから、RF社の技術研究員兼開発責任者という形で入ってもらうことにしたと。

 

アリサは、母親に連れてこられた達也を見て、忘れていたあの時の事を思い出した。

 

そう迷子になり、助けてくれたあの少年だってことを。

 

だが彼自身ではなかった。達也は、迷子のアリサに会ったことはないと言われたのだ。単なる思い違いだったようだ。

 

達也は、アリサと母親が確執があることは分かっており、トールズ士官学院に行くことに背中を押したのだ。それは狭いところから見て判断するのではなく、離れてみて良く考えて判断してみろと。

 

この言葉がアリサに届いているかはまだわからないが。

 

アリサは達也が作業しているところを思い出して

 

「達也、母様と一緒に作業してるのかしら…」

 

そんなことを考えながら週末の実技テストや特別実習の事を考えるアリサであった。

 

 

 

ーー1204・4・18・夜・22:15・帝都ヘイムダル・バルフレイム宮・アルフィンの部屋。

 

緋で基調された部屋であり、天蓋ベッド、ソファ、テーブル等が綺麗に置かれている。

 

この部屋の主であるアルフィンは、窓の外を見ながら誰かと話している。格好はすでに緋のネグリジェを着ている。

 

その彼女の手には最新のARCUSが握られている。

 

「こうやってお話をするのもリベールの異変以来ですわね」

 

【そうですね。あの時は殿下と言いますか変身されていたので】

 

アルフィンと話しているのは、現在リベール王国のジェニス王立学院に留学中の司波深夏という女の子である。彼女は日本人であり、四葉家の長女で四葉家のエージェントでもある。ちなみに双子の妹は深雪。彼女も諸外国に留学中。

 

「ふふっ、あの時はお兄様とお姉様がいらっしゃたので、私のままで伺うのはまずいと思いまして」

 

【オリビエさんとリーゼさんですよね。何だか仲の良い兄妹のように見えましたね】

 

「本当に仲の良いお二人ですわ。ボケとツッコミも冴えてますし」

 

【アハハ、漫才兄妹ですか】

 

冗談や雑談を話していたアルフィンと深夏。アルフィンの表情が鋭くなり、深夏の声色も真剣なものになる。

 

「深夏さんもこのようなお話をするために連絡をしたのではなくて?」

 

【当たり前ですよ。これからが本番なので。帝国にいる私の仲間からの情報ですが、どうやら傭兵崩れ達が結成した猟兵団が帝国領内に入り込んだと】

 

「猟兵崩れの猟兵団…ちょっと厄介そうな話ですわね」

 

【私の仲間達が、帝国政府、帝国軍情報局に情報提供、関係各局が網を張っていたようですが、それをすり抜けて貴族領に入り込んだらしいのです】

 

「貴族領…つまり厄介な人達は厄介な場所に入り込んだというわけですか…」

 

アルフィンは外を眺めるのをやめてから、ソファに腰掛けて座る。

 

「私もこれからサーチをかけてみますが、直接介入は避けたいですので」

 

【帝国内からですか?】

 

「それもありますが、ちょっと色々とありまして…」

 

アルフィンと深夏の会話はしばらく続くのであった。アルフィン自身が色々とありましての後の言葉は、特別実習の時にわかるのである。

 



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第2章ー初めての実習編ー30ー17話ー帝国の隣国にて。

第2章17話です。


 

七耀暦1204・4・20・カルバード共和国・首都イーディス

 

少し話は帝国から共和国へ飛ぶ。カルバード共和国は、エレボニア帝国と並び西ゼムリアで2大大国である。

 

過去に幾度無く戦争、紛争を繰り返してきた歴史を持つ。帝国と違う点は選挙があり議会制民主主義で、大統領制であること。昔は王政だっだが、革命により倒され民主主義国家に。

 

 

貴族制は廃止になってる。積極的に移民を受け入れているが…。

 

だがそんな共和国にも不平不満は存在する。膨れ上がる東方系移民に元からの共和国民が抗議の声を上げる。それが手段はバラバラでテロ行為など発生し始めていた。

 

 

そんな中、共和国でも名門校でもあるアラミス高等学校にとある人物達が揃っていた。

 

雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣、葉山隼人、他に総武高校で一緒だった生徒、海浜総合高校の生徒、八幡の親友達が一同に揃っていた。

 

みんなアラミスに入学し集まったのだ。

 

雪乃、結衣、葉山は、生まれた日は違えど、親同士が中がよくカルバート内でも名門の家系である。

 

雪ノ下家は、共和国の有力議員一族。元々幕府の要人だったため、将軍家と共にカルバードへ亡命。革命時は、革命側に付く。

 

由比ヶ浜家は共和国内の軍や警察にOBが多く退職後の天下り先の職の企業も管理。元々は、十師族百家の家系だったが権力闘争に負けカルバードへ亡命。一族は軍や警察へ入り財を手にした。

 

葉山家は、共和国内の司法、弁護士会の重鎮。雪ノ下家や由比ヶ浜家に顧問弁護士を派遣。

 

他のみんなは普通の家庭に生まれていて、前世と変わらない人もいるようだ。

 

 

ーー1204・4・20・夕方・16:20・カルバード共和国・首都イーディス・アラミス高等学校・生徒会室兼奉仕部

 

雪乃達は、入学してすぐに奉仕部を設立する。先生達は、反対するかと思いきや生徒会からすぐに承認がおり、先生達は自習性に任せており生徒達に任せるということだった。

 

何と生徒会の生徒会長は、城廻めぐりであり、副会長が比企谷小町であった。彼女らは生徒達に人気があり、支持を得て生徒会長と副会長になったのだ。

 

2人は中学の時に再会しそれから共に歩んできた。アラミスで生徒会長と副会長に就任してから、雪乃達が入学してくることがわかり、色々と根回しをしていたのだ。

 

「まさか、城廻先輩と小町さんとアラミスで再会するとは思わなかったわ」

 

「私もよ、生徒会長に就任して新入生の名簿を見て貴女達だって分かったから」

 

「そうですね〜まさか雪乃さん達が後輩として入学してくるってことに驚いてますけど…」

 

「ヒッキーはいないんだよね?」

 

小町は表情を暗くしながら結衣を見て

 

「ええ、比企谷家にはお兄ちゃんはいません。親戚筋も調べましたけど、お兄ちゃんの名前は無かった」

 

「比企谷君とは、僕達が死んだ日と違うんだし…違う場所で生まれてる可能性もあるんじゃないかな?」

 

「確かにそれは言えてるかもしれないわね。ほぼ同じ時間だったにも関わらず私達より小町さんがこの世界では先に誕生してる」

 

「もしかすると、歳下のヒッキーや年上のヒッキーがいたりするのかな」

 

「アハハ、お兄ちゃんが歳下だと何か見てみたい気もしますね」

 

八幡の話を繰り広げながらこの世界の事を話し合った。自分達のネットワークであの時亡くなった人間達がこの世界に転生してるのは把握済。戸塚は女性に転生し、戸塚彩加として生まれ変わっている。それ以外の人間は、前世のままだ。だが八幡、香織、雫の転生は確認できていない。あの時女神のエリスは、八幡もこの世界に転生してることは教えられたし、香織と雫も同じバスに乗り合わせていたのだ。悩んでいるみんなを前にめぐりが

 

「みんな、そんなに焦られないの。八幡君や香織さん、雫さんがいないわけでは無いんでしょ?」

 

「城廻先輩、そうですよね、あたし達まだカルバードでしか調べてないんだよ」

 

「そうね、❝平塚先生❞はローザンブリアにいて今は帝国にいるんだったわね?」

 

「雪乃ちゃん、ああ、僕の知り合いが帝国で遊撃士をしていると聞いたからね」

 

「トヴァルさんとジンさんだっけ?」

 

結衣が顎に指を置きながらそう言った。隼人はそのまま続ける。

 

「トヴァルさんやジンさんから聞いた話だと、❝平塚先生❞は元々猟兵をしていたみたいだね。同じノーザンブリアの出身で同じく猟兵をやっていて、今では最年少でA級遊撃士にもなったサラ・バレスタインに誘われて、❝平塚先生❞も遊撃士になり、それでいて帝国では名門の士官学院、トールズ士官学院の教官になってるそうだよ」

 

「❝平塚先生❞らしいと言えばそうなるわね。かといって❝平塚先生❞に会うために帝国に簡単には行けないわ」

 

「ゆきのん、どうして?」

 

結衣はどうしてという表情で雪乃を見る。隼人や小町、めぐりも苦笑いするしかない。雪乃もため息をつきそれから結衣に説明する。

 

「結衣、共和国と帝国の関係はわかるかしら?」

 

「まあ、一応は…えへへ」

 

「私達共和国は、帝国と長い間戦争や紛争を繰り返してきた。長年の事案であるクロスベル問題を筆頭にずっと対立してるわ。去年、帝国は共和国の人間が帝国領に入ることを規制し始めた。まあ貿易関係は別みたいだけど」

 

「ようは、簡単には会いに行けないって事かな?」

 

「完結に言えばそうね」

 

話の頃合いを見て、めぐりは手をパンパンと叩く。

 

「雪乃ちゃんも結衣ちゃんも、隼人君も慌てない慌てない。まずは私達がおかれている状況、目安箱の中に入ってる生徒からの依頼をかたしていきましょうか」

 

「そうですね、生徒会と奉仕部の協力体制を気づいたわけですし、雪乃さん達に頑張ってもらわないと」

 

小町は雪乃達にウインクをしてそういったのだ。前世では小町は八幡の妹であり後輩でもあった。しかしこの世界では先に小町が生まれ、雪乃達は後から生まれた。先輩後輩の入れ替わりでもある。

 

「小町さん、貴女、言うようになったわね」

 

「ええ、この世界に生まれて色々ありましまからね。お兄ちゃんがいない分、こ、私1人でやってきましたから」

 

「そうだったわね、私は前世と同じく姉さんがいるけど、前世と変わらない人だわ」

 

雪乃がそう言うと完全下校時刻の17:00の予鈴が学校内に響き渡る。

 

今の時刻は、16:50分。めぐりは雪乃達に

 

「完全下校時刻まであと10分も無いわ。今日のところはこれでおしまい。続きは明日にしましょう」

 

こうしてこの日はこれにて終了する。

 

だが雪乃、結衣、隼人は、西ゼムリアの激動の時代に巻き込まれていくのである。

 

 

 

1204・4・21・午前・06:40・第3学生寮・306号室・リーゼの部屋。

 

リーゼは、早く起きて西トリスタ街道に出て軽くジョギングをやってから太刀の素振りをやったのだ。別に今日ある実技テストのためにやってるわけではない。

 

リーゼは夢を見たのだ。夢と言っても悪夢ではない。

 

その夢とは前世の夢、まだ前世で比企谷八幡であった時の夢である。この夢は、小さい頃は良く見ていたが、成長するにつれ見なくなっていた。

 

だが、リベールでアクアイア(雫)と会う前に見たのが最近である。つまりそれ以来である。

 

 

見た後に前世の繋がりのある人物が、リーゼに近づけば見るのかはわからないが。

 

リーゼは身支度をしながら考える。

 

「ヒラツカ教官は、わたくしが前世で知っている❝平塚先生❞では無いってことですよね…」

 

リーゼが以前ある言葉を言ったことがある。

 

【奉仕部】【総武高校】【雪ノ下雪乃】

 

この3種類の単語を言ったが、ヒラツカ教官は何を言ってるんだといわんばかりの表情をしていたのだ。だからリーゼは、自分達の知ってる❝平塚先生❞とは違うと判断した。

 

ただ…

 

「前世の記憶が消されてるって可能性も捨てきれないのですけど…」

 

アクアイア(雫)のときのように真っ向から戦ってみたら戻る可能性もあるかもしれないが。

 

「ヒラツカ教官と真っ向から戦ったりしたら、わたくしが持ちませんわ」

 

リーゼは太刀を持ちながら、ヒラツカ教官とは戦いたくはない。彼女のあだ名はかつて【ローザンブリアの戦姫】と呼ばれていた。

 

今でも戦姫(ヴァルキュリア)と呼ばれている。

 

己の実力と相手の実力を見誤るようなことはしない。それは前世からは変わらない。

 

「それはそうと今日の実技テストは頑張らないと」

 

そんな感じでリーゼは、今日の実技テスト、初めてでもある実技テストを受けることに。

 



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第2章ー初めての実習編ー31ー18話ー初めての実技テスト。

第2章18話です。


1204・4・21・午前・10:25・ドールズ士官学院・グラウンド。

 

Ⅶ組全員とサラ教官とシズカ教官が対面になって揃っている。

 

今日は念願の初めての実技テストがⅦ組で行われる。前々から予告されていたわけだからいきなりというわけでもない。

 

実技テストと言っても難しい事をやるわけではない。だがⅦ組はこれから毎月1回は実技テストが行われる。

 

実技テストというのは、ちょっと実戦形式のテストをやってもらうだけだ。

 

 

Ⅶ組のメンバーは、それを乗りきって行くしかないのだ。

 

さてさて、グラウンドに立っている姿は体操着姿である。

 

男子は上着に短パンに、女子は上着にブルマである。女子は男子の視線がどうしても気になるものである。フィーがマキアスに対して

 

 

「サラ、マキアスがリーゼのブルマ姿をガン見してる」

 

「えっ!?」

 

「こ、こら、フィー君…君は何を言ってるんだ!?」

 

「目線でわかるから」

 

「……!?」

 

男子達からもマキアスは

 

「ふっ、破廉恥なヤツめ」

 

「見たいなら、バレないようにしようぜ、マキアスよ」

 

「スハルトの言うとおりだぜ、マキアス」

 

リーゼは、カーティナやアリサによってマキアスから見えない位置に連れてこられた。マキアスは、再び女子にジトメで見られた。スハルトやカズマにそう言われて彼はため息をはきながら

 

「……僕が何をしたって言うんだ…」

 

「ドンマイ、マキアス!」

 

「今日は悪い風が吹いたのかもしれない。必ず良い風も吹く。だから落ち込むな、マキアス」

 

「…それって慰められているのか?」

 

マキアスは、リィンとガイウスの励ましてくれたが、励まされた気がしないマキアスはへこんでいた。

 

そんな光景を見ていたサラ教官から、いつまで続けるのかと怒られたリーゼ達。

 

「ーーじゃあ予告通り《実技テスト》を始めましょう。前もって言っておくけど、このテストは単純な戦闘力を測るものじゃないわ。『状況に応じた適切な行動』を取れるかを見るためのものよ。その意味で、なんの工夫もしなかったら、短時間で相手を倒せたとしても評点は辛くなるでしょうね」

 

ユーシスやアリサ、スハルトがその評価に対して

 

「フン…面白い」

 

「単純な力押しじゃ評価に結び付かないわけね」

 

「なるほど、頭を使いながら戦えってことか」

 

 

サラ教官は、4月の最初の実技テストを開始することを宣言する。第1試合はリーゼ、リィン、エリオット、ガイウスが指名された。リーゼとエリオットはいきなりだと緊張し、リィンは深呼吸をして心を落ち着かせ、ガイウスは普通どおりな表情をしていた。

 

「緊張しますわね」

 

「いつもとおりにやるだけだ」

 

「承知」

 

「うん、出来るだけやってみるね」

 

リーゼ達はサラ教官に言われた通りに前へ出る。

 

「ふふ、よろしい。それじゃあ、とっとと呼ぶとしますか」

 

サラ教官は、指をパチンとした後に、近くに謎の物体が出てくる。リーゼ達はみな驚く。

 

「サラ教官、それはまさか…!?」

 

「これは…」

 

「ま、魔獣!?」

 

「いや、命の息吹を感じない!」

 

「ええ、そいつは作り物の❝動くカカシ❞

みたいなもんよ。そこそこ強めに設定してあるけど、決して勝てない相手ではないわ。…わかってるでしょうけど、力押しで倒しても意味はないから。ちゃんとARCUSの戦術リンクを活用しなさい」

 

 

「ARCUSを活用ですか。はい、やってますわ」

 

リーゼはそう言って、リィン達と調査で入った旧校舎でのことを思い出す。旧校舎の調査時に戦術リンクの組み合わせも色々試してみた。それはリーゼもリィンもエリオットもガイウスも経験済みである。

 

おそらくサラ教官は、リーゼ達4人を選んだのもそのためである。実戦経験があるものと、無いものを選んだのもある。

 

それはちゃんと経験してない人間がしている人間を見て成長してほしいのもあるのだ。

 

ただ1人だけ、違うことを考えている人間がいる。

 

アリサである。

 

サラ教官が出した❝動くカカシ❞を見て前に達也が❝動くカカシ❞を整備していたのを思い出していた。

 

【まさか、アレって達也が作ったモノなの!?】

 

今のアリサ自身には分からない。いろんな事を考えてる中、リーゼ達は各々の武器を取りだし、❝動くカカシ❞と対峙する。

 

「それじゃ、第1試合、リィン班…始め!!」

 

試合のゴングがなった。リーゼとガイウス、リィンとエリオットで戦術リンクを繋いだ。

 

エリオットは、まず自身のクラフト【エコーズビート】で俺達のDF力をupさせる。そしてガイウスがクラフト【ゲイルスティング】を放つ。渦巻く風は❝動くカカシ❞に向かって一直線に当たるが、あまり効いているようには見えない。リィンが激励を飛ばす。

 

「みんな、よーし一気に行くぞ」

 

リーゼ達のステータスがupした。そしてステータスupしたリーゼが❝動くカカシ❞に向かって

 

「これはどうですの!弧影斬!」

 

弧影斬が動くカカシに命中するがビクともしない。

 

「か、硬いですわ!」

 

「硬いか…別の戦い方をする必要があるな」

 

「どうするの、2人共?」

 

「リィンさんの言う通りですわ、効かないのであれば、別の戦い方をするまでです。ガイウスさんさっきのをお願いしますわ!」

 

「承知!」

 

「エリオットさんは後方からアーツで援護をお願いしますわ!」

 

「うん、わかった」

 

「リィンさん、アレでいきましょう!」

 

「アレか、わかった。リーゼを信じよう」

 

リーゼに指示された通りに2人が、それぞれに動き出す。まずは、エリオットがアーツで牽制をかけ、ガイウスがゲイルスティングを放つ。リーゼとリィンはすぐさまに

 

「弧影斬、弧影斬」

 

 

リーゼの弧影斬が両サイドから❝動くカカシ❞を捉えて、空中に浮き上がる。そこにリィンが

 

「紅葉切り!」

 

紅葉切りで❝動くカカシ❞に、大ダメージを与えたようだ。❝動くカカシ❞はピクリとも動かなくなった。

 

勝負は、リーゼ達が勝ったのだった。

 

それも連携攻撃による勝利である。

 

リーゼとリィンは、朝の鍛錬などで息を合わせる練習をしてたりしたから、今回の連携攻撃も上手くいったのだ。

 

リーゼとリィンは太刀を鞘に直し、エリオットもガイウスも魔導杖と槍をしまう。

 

 

今のところは評価は、リーゼ達4人がこの中ではおそらくずば抜けていると思われる。ガイウスとエリオットが疲れた表情で声をあげた。リィンは何事もなかったようにいるし、リーゼも疲れるほどではない表情をしていた。

 

「ふっ、これぐらいか」

 

「うまくいったな」

 

「何とか勝てたぁ…」

 

「戦術リンク、旧校舎の調査の時でもそうだったですけど、上手く活用出来れば何とかなりそうですね、みなさん?」

 

サラ「そうね。リーゼの言うとおりに、あなた達は戦術リンクも使えていたようだし、やはり旧校舎地下での実戦が効いているじゃないの?」

 

「ははは…そうかもしれませんわね」

 

「やはり…リーゼの言った通りだな。旧校舎は鍛錬の場所のようだ」

 

「なるほどな」

 

「やはり、あのときリーゼ君と一緒に行けば…」

 

やはり旧校舎地下で実戦を積んだリーゼ達と、それ以外の人間の戦術リンクの差は今の時点では、ついているだろうと思われる。ただ埋められないものではない。彼らとて、旧校舎で実戦を経験すれば、リーゼ達を追いつけない距離ではない。それどころか、リーゼ達を追い抜く事さえあるかもしれないのだから。そしてサラ教官は第2戦目のメンバーの名をあげた。

 

「──それじゃ次!ラウラ、エマ、アンジェリナ、マキアス、前に出なさい」

 

 

ラウラ達は返事をして、リーゼ達の前に出て先ほどの戦術αと戦闘に入った。やはりリーゼ達とは違い、上手く自分達の戦闘スタイルに持っていけていない。やはり【戦術リンク】が上手く使えるか使えないかで、大きく違うようだとリィンは感じていた。

 

苦労の末にラウラ達は❝動くカカシ❞を倒した。やはりリィンが予測した通りに苦戦を強いられてしまっていた。ラウラとアンジェリナは、善戦していたように見えたが、やはり戦術リンクが上手く活用しきれていないようだ。あの場合は、ラウラとマキアス、又はラウラとエマ、アンジェリナとマキアスかエマと組んでた方が良かったように見えた。そして最後に残りのメンバーがサラ教官により名を呼ばれた。

 

「残りの全員はまとめてかかってきなさい!!」

 

「サラ、最後は適当かよっ?!」

 

「適当すぎだろ!」

 

「サラ、怠慢…」

 

「つべこべ言わずにやる!」

 

「チッ、めんどくさいことを」

 

「なんで、私がこのチームに…」

 

「がんばろ、アリサ」

 

「うん…カーティナがいるだけでも違うか…」

 

残りのユーシス、アリサ、カーティナ、フィー、スハルト、カズマの6人は一斉に❝動くカカシ❞に立ち向かった。明らかにさっきのラウラ組と違っていて、さらに戦術がバラバラだ。ユーシスとスハルトはバラバラに行動し、アリサとカーティナ、カズマとフィーは、合わせようとやっているが、なかなか合わないようだ。

 

最後にアリサとカーティナ、カズマとフィーの連携プレーにより❝動くカカシ❞はガクガクいいながら崩れていった。

 

 

「なんとか、なったわね…カーティナ…それにカズマにフィー」

 

「ほらっ私達できたでしょ?」

 

「何とかな、まあアリサもカーティナも戦いのすじはあるんじゃないか」

 

「カズマの言うとおりだね」

 

アリサとカーティナとカズマとフィーが4人で握手をかわしている。そんな傍らでエマやラウラやユーシスが話している。

 

「はぁはぁ……」

 

「なかなかなか苦戦させられたものだ」

 

「やっぱり【戦術リンク】が鍵になるみたいですね──」

 

「チッ、面倒なものを!!」

 

ユーシス達は色々言ってるみたいだが、【戦術リンク】は慣れていくしかないだろう。リーゼ達は、旧校舎地下で慣れて今回があるわけだから。他の者達も旧校舎で特訓と言うか調査をしていくうちに慣れていくものだから。そしてサラ教官が実技テストの終了を告げる。

 

「これにて4月の実技テストは終了ね」

 

これにて、4月の最初の実技テストが終わった。面倒な事が起きなくて良かったが、ユーシスとマキアスが事が問題がまだ残ってるのである。ラウラがサラ教官に疑問を聞いた。

 

 

「──しかしサラ教官、先ほどの傀儡めいたものはいったい何だったのだ?」

 

「そ、そう言えば………!」

 

「機械……?見たことないかも」

 

分かっていないⅦ組のメンバーの中、アリサはさっきの戦闘で❝動くカカシ❞の事を思い出した。

 

【やっぱり、達也が自分の研究室で作っていた❝モノ❞に似ている…まだアレが達也が作ったとは確証はないけど…】

 

アリサがそんなことを考えて、リーゼとスハルトは別の方面を考えていた。

 

【サラ教官のあの❝動くカカシ❞リベール❞で戦った結社の人形兵器に似てる気がしますわ。まさか結社が横流しをしてるとか?】

 

【…アレは結社の人形兵器。サラのヤツ、結社の人形兵器をどこかの組織が拾って再利用したヤツを押し付けられたのか…遊撃士のクセに何やってんだよ…】

 

スハルトは赤い正座の連隊長時代に何度も交戦がある。

 

 

ラウラ達の疑問に対してサラ教官は

 

「んーとある筋から押し付けられちゃった物でね。あんまり使いたくないんだけど、色々設定できて便利なのよねー。まぁテストの役に立ったし結果オーライということで」

 

 

ただみんなそんな解答じゃ納得しないだろう。サラ教官はこれから本題を話そうとしていた。

 

「──さて【実技テスト】はさっきも言った通りここまでよ。先日話した通りここからはかなり重要な伝達事項があるわ。君達【Ⅶ組】ならではの特別なカリキュラムに関するね」

 

この特別なカリキュラムが今後のⅦ組の運命を加速させていくものになる。

 

サラ教官が特別実習の説明を始める。

 

「ふふ、流石にみんな気になってたみたいね。それじゃ説明させて貰うわ」

 

サラ教官の話しに、みんな釘付けになっている。確かに聞くだけなら、興奮するかもしれない。サラ教官は話しを続けている。

 

「──君たちに課せられた特別なカリキュラム──それはズバリ【特別実習】よ!」

 

「【特別実習】ですか……?」

 

「………何だか嫌な予感しかしないんだが………」

 

「特別実習、聞くだけでも楽しくなさそう」 

 

「そうだな、カズマ…」

 

サラ教官は気にせずに話し続ける。

 

「君たちにはA班、B班に分かれて指定した実習先に行ってもらうわ。そこで期間中、用意された課題をやってもらうことになる。まさに特別な実習なわけね」

 

特別実習、普通なら社会科見学みたいなものを想像するかもしれない。リーゼ達も甘い考えを持っていたかもしれない。

 

だがそんな甘いことがあるわけがない。そんな甘いものなど無いことを後々に気づかされることになる。エリオットが不安そうに

 

「学院に入ったばかりに、いきなり他の場所へ?」

 

「その仰り方だと、サラ教官やシズカ教官が引率されるわけではないのですね」

 

アンジェリナがサラ教官やシズカ教官が引率しないのか聞いている。

 

「ええ、あたしが付いていったら修業にならないでしょう?獅子は我が子を千尋の谷にってね」

 

「私は、Ⅶ組の副教官でもあるが、他のクラスの戦術教官でもあるから行けない」

 

「はぁ……」

 

「ふむ、修業ならばむしろ望むところではあるが……」

 

「──バレスタイン教官、ヒラツカ教官。結局、俺達に何時、どこでどこへ行けと言うんだ?」

 

「オーケー、話をすすめましょう。さっきも言った通り君たちはA班、B班に分かれてもらうわ。さぁ受けなさい」

 

リーゼ達全員1枚の紙を受け取った。その紙には、各自どの班に割り振られたのか、行き先はどこなのか、誰が一緒の班なのかすべて書かれていた。

 

【A班・リィン・リーゼ・アリサ・エリオット・ラウラ・スハルト→(実習地─交易地ケルディック)】

 

【B班・マキアス・ユーシス・エマ・カズマ・カーティナ・ガイウス・フィー→(実習地─紡績町パルム)】

 

 

A班7名、B班6名。ちゃんと均等に班分けされてる。行き先の距離に違いはあるが。

 

A班リーゼ達が行く実習先であるケルディックである。

 

正式名称クロイツェン州交易地ケルディックである。交易地ケルディックは帝国東部にあるクロイツェン州にある、昔から交易が盛んな町。帝都と大都市バリアハート、更には貿易都市クロスベルを結ぶ中継地点として知られている場所だ。そしてこのあたりは大穀倉地帯として有名だ。【帝国の台所】や【帝国の食料庫】と呼ばれることもある場所だ。

 

そして大市というのが有名であり、今では外国からも商人達が訪れ、観光客もやって来るようになった。

 

B班エマ達が行く実習先は、帝国南部にある紡績街パルムである。

 

 

正式には帝国南部のサザーラント州南部に位置する小都市で、古くから紡績業で栄える町として知られている。

 

導力革命を経た現在においても、水車を動力とした紡績機による伝統的な手法を用いて紡績を行っており、市内に引かれた水路には何台もの水車が連なっている。紡績の原料となる生糸は近隣の養蚕農家から供給されている。

 

繊維製品を製造する上で重要な染色も盛んであり、毎年4月には【春の染上げ】という行事が存在し、毎年染色に携わる職人達がその腕を競い合う。

パルム産の繊維製品の品質は高く評価されており、帝国各地の高級店で取り扱われている他、国外へも輸出されている。

 

 

白亜の旧都セントアーク方面とクロイツェン州方面、リベール王国方面の街道の合流地点でもあり、交易で訪れる商人等の街道の行き来は昔から多い。近年は、パルム郊外に日本からの移住者が増え日本人居住エリアも出来ている。日本企業も多数進出しており、日本人居住エリアの近くに工場エリアも多く出来ている。

 

パルムは、南の隣国リベール王国に最も近い帝国の都市でもある。

 

班分けと行き先が決まったⅦ組の全員の温度差は違った。明らかにA班とB班の雰囲気の違いは明らかだ。リィンやリーゼは

 

「俺は、A班だな、リーゼは?」

 

「わたくしも、リィンさんと一緒ですわ」

 

「ほう……興味深い班分けだ」

 

ラウラがそんなことを言い、ガイウスはケルディックとパルムのことを聞きたいみたいだ。

 

「ケルディックとパルム……どちらも帝国なのか?」

 

この疑問に対してエリオットとエマが答える。

 

「う、うん。ケルディックは東にある交易が盛んな場所だけど」

 

「パルムは帝国南部にある紡績で有名な場所ですね」

 

リィンやリーゼが話している横で、スハルトやマキアス達が騒ぎ出した。

 

「ケルディックか……。場所的には悪くないのだが」

 

「ば、場所はともかくB班の顔ぶれは………!?」

 

「あり得んな」

 

「ありえんのこっちなんだかな」

 

【「何だとカズマ!/なんだと!」】

 

「この際だから、2人共仲良くなりなさいよ、息はピッタリなんだから」

 

【「ピッタリじゃない!/不愉快だな」】

 

サラ教官の問いにマキアスとユーシスは、嫌だと表情をしている。ヒラツカ教官にも

 

「私に言っても無駄だからな。私には決定権も変更権もない。お前達はサラが決めたとおりだってことだ」

 

「はぁ~とにかく日時は今週末、実習期間は2日くらいになるわ。A班、B班共に鉄道を使って実習地まで行くことになるわね。各自、それまでに準備を整えて英気を養っておきなさい。───!」

 

 

そして特別実習日の4月24日まで日が進むことになる。

 



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第2章ー始めての実習編ー32ー19話ー暗躍、闇に蠢く者達。

第2章19話です。


1204・4・22・午前・01:25・エレボニア帝国・サザーラント州パルム郊外

 

深夜、サザーラント州紡績街パルムの近郊にある、とある工場に数台のトラックが運び込まれてきた。

 

工場内にトラックが運び込まれたのを確認すると、工場の主である工場長が姿を表す。ただ工場長は、不満げな表情をして運び屋に

 

「今回は、納品が遅れているようだが?」

 

「すいません、クロスベル経由の仲間がクロスベル警察に捕まりまして…それで迂回ルートを使って来たんですよ」

 

「クロスベル警察に捕まっただと?」

 

「ええ、そう情報が入って来たんで迂回をしたんですよ」

 

「クロスベル警察の署長やクロスベル警備隊のあの司令に賄賂を渡してるはず…まさか裏切るつもりじゃないだろうな」

 

工場長と運び屋が慌てていると、1人の少年がやってきた。どす黒い雰囲気を醸し出した黒々しいスーツを着た男である。

 

「別に裏切ったわけじゃないみたいだけどね」

 

「あ、明智さん。裏切ったわけじゃないとは、どういう?」

 

彼の名前は明智吾郎。日本やカルバードに置いては、名探偵明智として、事件解決をしている。日本やカルバードのマスコミや国民の間では、探偵王子だと言われている。だが自分達がやらかしている事件を操作して己の手柄にしているに過ぎないエセ探偵である。裏の仕事を請け負うのが、本来の姿である。

 

彼の拠点は日本にある。

 

そんな明智が日本からわざわざ遠い帝国までやって来たのは、日本のとある人物に頼まれたからである。

 

「君達は馬鹿なのかい?」

 

明智に馬鹿と言われて運び屋の男はすぐに気がつく。

 

「まさか…特務支援課の連中が!?クロスベル騒乱は鎮圧されたとは聞いてましたが…まさかあの2人が…」

 

「御明察…あの2人は逮捕され、特務支援課がとあるアジトに踏み込んだんだ。そこにいた連中はみんな逮捕されたわけだ。とっくにクロスベル騒乱も終わったんだ。まあ、あの連中が捕まるのも想定内さ。まあいずれはまたクロスベルは騒乱となる」

 

ニヤリと悪党の笑みを浮かべる。

 

「クロスベルの騒乱は終わったばかりですよ。終わってすぐに騒乱になるとは思えませんよ?」

 

「今は仮初めの平和に過ぎない。仮にだクロスベルが混乱に陥れば、帝国、共和国に入り込みやすくなる。やつらは、国境に目を向けなくてはならなくなる。通常よりも人員を増やさなくてはならないこれ以上は言わなくてもわかるだろう?」

 

「なるほど」

 

「流石は明智さんですね」

 

明智の言い分はこうだ。クロスベルが混乱に陥ることによって、帝国も共和国も互いに国境の門の方へ目を向ける。国境の門に集中が向き、隙が出来る場所が出来ると。

 

「それと君達が活動しやすいように帝国の貴族や領邦軍のトップの連中には、買収しておいた」

 

「ありがとうございます、明智さん」

 

「…安心はするな、油断もするな…。日本の行方不明事件、帝国軍情報局、鉄道憲兵隊、遊撃士、他の連中もかぎ回っている。金城やあの方も気をつけろと言われているからな」

 

「はっ」

 

「はっ」

 

「お前達、吟味をしろ!上玉は貴族への贈り物だ。そうでは無いものは、この工場の労働力にする。男達は、猟兵団に売却する」

 

工場長の発令と共に、工場から人員が出動し、荷物を確認し始めた。

 

 

ーーパルム郊外の丘

 

パルム郊外の丘から、とある工場の内部を見ていた人物がいた。緋色の帝国の婦人服を身に纏った女性である。P5Rの登場人物である芳澤かすみのような女性である。

 

彼女の説明は追々するにして、彼女は何故こんな場所にいるのかと言えば、明智吾郎を追ってたに過ぎない。追ってはいたが、行方は掴めてはいなかったのだ。

 

「まさか…匿名の通信が、明智吾郎の居場所を?それに帝国で新開発された戦術オーブメントが私に送られて来たんだろ」

 

彼女はホルダーからARCUSを取り出して見る。普段の彼女は、ENIGMAを使っている。

 

ちなみに通信で送られたメールの内容。

 

【Wenn Sie Informationen über Gorou Akechi erfahren möchten, besuchen Sie Palm, die südliche Stadt des Reiches. Kommen wir der Wahrheit näher.】

 

【ゴロウ・アケチの情報が知りたければ、帝国の南部都市パルムを訪れよ。さすれば真実に近づけましょう。】

 

 

「このメールや戦術オーブメントを送りつけてきた相手はだれなんでしょうか…少なくとも相手は私を知っている」

 

彼女は、周りを警戒しなから、パルムの丘を下って行くように見えたが途中から消えた。

 

 

1204・4・24・午前・00:25・エレボニア帝国・クロイツェン州・何処かの外れ。

 

そこには、普通に旅行者とは思えないような格好な人間が複数人いる。

 

人間の数で言えば、5〜6人のグループ。格好は旅行者ではなく、猟兵の服を着ている。元々は旅行者の格好で帝国へ侵入し、クロイツェン州のここまでやってきてるのだ。

 

この猟兵団はまだ出来て日が経っていない。他の猟兵団の落ちこぼれが集まって出来た新しい猟兵団。そんな猟兵団に別の人物がいる。その人物は全身黒の服装で固めており、顔の部分も仮面をつけている。ちなみにその仮面は般若の面である。

 

仮面の男の得物は、大剣である。その般若の面の男は猟兵団の連中に向かって

 

「お前達に初の指令を出す」

 

「やっと我々にも指令を与えてもらえるのですか?」

 

猟兵団のリーダーがそう答える。

 

「ああ、とある人からの指令だ」

 

この猟兵団に与えられる指令とは、クロイツェン州の街、ケルディックにて、大市にてとある露店同士を争わせ大市を混乱させる。とある露店の品物を盗み出し闇に流すために協力しろと。

 

猟兵団のリーダーは

 

「分かりました、要は大市を混乱させることが目的ということですね」

 

「ああ、そういうことだ。【まあ、本当の理由は、大市の商人達が売上分の貴族に支払う分の値上げを嫌がっているから、少し商人達を痛い目にあわせろってとこだが…Cからはそこまでする必要はないと言われている】」

 

般若の面の男は、Cという人物を上げた。とある人物とCは別人ということか。

 

「くれぐれも失敗はしないようにな」

 

「【(ヤァー)】」

 

般若の面の男は、闇夜の中を歩きながら南の方向の空を見ながら

 

【パルムの方は❝探偵王子❞がやるんだったな。ヤツの場合は、やりすぎないかが心配だが…】

 

般若の面の男は、そんな心配をしながら漆黒の闇に消え、猟兵団達は準備に取り掛かるのだった。

 



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