三つの選択肢 (新人作家)
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アストレア・レコード
IF アストレア・レコード 


ネタが思い付かないのでこちらに。


 

 血尿(失禁)しながら白目を剥いて胃酸を吐くような、とある大派閥との【戦争遊戯(ウォーゲーム)】を控えた今日この頃。

 作戦会議と自身の修行を交互に繰り返し気絶、そして起きる。そんなブラック企業勤めの社畜みたいな生活を送っていた。

 色々ヤベェ恋人(エリス)ですらナニもしてこないのは時間が合わない、という理由もあるが一番の理由は疲れからである。ベル同様成長補正スキル持ちの彼女を遊ばせる余裕はない。スパルタ妖精と化したフィルヴィス・シャリアとのマンツーマンで修行をしてもらっている。涙目でダンジョンへ行っていたエリス。お疲れ様ですホントに。

 そして俺、アラン・スミシーは何度目かの気絶からの覚醒し、違和感を覚えていた。

 

 「ここは······城壁か? え?なんで?」

 

 【ヘスティア・ファミリア】の本拠地(ホーム)気絶した(就寝した)はずなのだが······とうとう夢遊病になったか、と背中に嫌な汗をかくがそうじゃないっぽい。

 オラリオを見れば、破壊されて修復すら忘れられたような建物がチラホラ確認できる。ついでに爆発して火災が発生した。

 俺の知らない間に世紀末?それとも、美の女神の指示で奴らが暴れだした······いや、それはないか。うん、ない。

 俺がここにいる理由は分からないが、取り敢えずオラリオへ向かおう。そしてベル達と合流だな。アイツらはダンジョンへ行ってないし。

 

 ······なんか身体と足取りが遅い気がする···寝すぎかな?

 

 体に鞭打って大通り(メイン・ストリート)へと走った。

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 

 「はぁ···はぁ···おぇ。おいおい、なんだこりゃ···」

 

 建物だけじゃない。露店の天幕もビリビリに引き裂かれ、売り物がぐちゃぐちゃにされていた。通行人の数が少なく、道行く人も元気がない。なんだろ、何かに怯えてる?好奇心の権化である神々が絶対に居るはずなのに、姿が見えない。

 情報収集するために人に尋ね···ゲホッ、ちょ待って、急に走ったから吐き気がするオェ。

 あんな距離、前世ならともかく今は第二級冒険者ぞ。なのにこんなに疲れるなんて···戦争前に不調ですか?嘘だろオイ。

 肩で息しつつ心の中で悪態を吐く器用な真似をしてたら、絶叫が聞こえた。そして耳を疑った。

 

 「()()()()()()()()()()!!」

 

 「え? うわあああああ!!」

 

 「きゃあああああ!!」

 

 は?

 

 「死に晒せェ、冒険者ァ!」

 

 「我が同士よ、一人でも多く道連れにしろォ!」

 

 え?

 

 逃げ惑う住民の背には、ギンギンに血走った目をして迫る全身白ローブの男達。

 以前見たことがある。呪いを振り撒き【ロキ・ファミリア】に刃を向け、そして、邪神が【穢れた妖精】の栄養として生け贄にした(壊滅させた)邪教徒ども。

 救いを求める者、大切な人を失った者、強い復讐心を抱く者。そこに娯楽に餓えた神々がいる限り再び現れるだろう、とラクシュミーから聞いたけど、()()()()()()()()()()()

 奴らの本拠地はもう潰された。だから潜める場所なんてもう無いだろ!?

 

 「!? お、おい!そっちは逆方向だぞ!?」

 

 誰かの静止が聞こえたけど、俺は無視して走り出す。人殺しはキツイけど、それは悪逆を無視する理由にはならない。

 俺は自分の愛剣(レイピア)を虚空から取り出し、て······うぇっ!?

 

 「()()()()()()()()()()()······」

 

 それだけじゃない。二つ目の武器である槍も、使用用途が未だにあやふやなバンダナも、魔法の【癒光の羽衣】もスキルの【気配察知】ですら。

 ああそうか。ようやく気づいた。気づきたくなかった不調の原因。それは、

 

 

 ───【恩恵】の剥奪

 

 

 それが意味することとは。

 

 

 「ラクシュミー······!」

 

   

 もっとも最悪な想像が、神の送還。

 確認できない。する余裕がない!

 

 「死ねぇえええええ!!」

 

 「───」

 

 あっという間に凶刃が迫る。

 頭上から振り落とされるソレに、今の俺じゃあ反応すらできない。

 ラクシュミーが送還されたのなら、ダンジョンにいるエリスの生存は絶望的。フィルヴィスが居るならと考えたけど、極論を言えば俺のスキルの一部だ。剥奪されてるのなら一緒に消滅しているはず。

 

 ハハ、アハハ、アハハハハハハハハ!見てみろ!動きがゆっくりだ!そして思考が加速する!死ぬ直前のアレじゃん!やべぇ、ハイになる!

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめん、守れなくって。

 

 

 目を瞑る。

 俺もそっちに逝くよ、と思いながら。

 

  

 「させません!」

 

 知ってる声が聴こえた気がしたけど、確認できず意識が遠退いた。

 




オリ主は現実だと思ってる。
時系列は原作より七年前。つまり暗黒であり、最終決戦が起こる年。
ラクシュミー→まだ天界。
エリス→まだ冒険者じゃない。
フィルヴィス→まだ健在。なお一年後。


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IF 事情聴取

ダンメモやってないので、当然アストレアレコードはやってない。だってオリ主が知ってる原作知識は異端児編(11巻)までだし。当時ダンメモはリリースしてなかったQED.

 ···········矛盾が怖いよぉぉぉぉぉ!!

 難産です。


 

 男子禁制というわけではないが、女性だけで構成されたとある派閥の本拠地。今日も今日もとて報告会が開催された。

 内容は闇派閥(イヴィルス)について。

 無視されがちな軽犯罪とは違い、闇派閥による犯行はどれも重罪であり無差別殺人がメインときた。さらに厄介なのは徒党を組んで地上(オラリオ)地下(ダンジョン)に現れるという点だろうか。この時代、他派閥だろうが何だろうが、冒険者総出で闇派閥掃討に当たらなければならなかった。

 特に彼女達──【アストレア・ファミリア】は治安維持を生業としているので、闇派閥との激突は免れない。本日の報告会だって戦闘帰りに行われたものだった。

 報告会の目的は情報共有。

 それを取り仕切るのは、真っ赤な髪をポニーテールに纏めた女性──アリーゼ・ローヴェル、二つ名は【紅の正花(スカーレット・ハーネル)】で役職は団長に当たる。いつもの戯れ?(ジョーク?)をかまして場を苛つかせた後、少々真面目な口調に変わった。

 

 「で、どうだった?」

 

 「闇派閥(イヴィルス)に遭遇したけど、近くにいた【ガネーシャ・ファミリア】と共闘して何とか対処できたよ。そのお陰で死者は無しなんだけど···」

 

 「スピー、スピー」

 

 「ああ、数が多すぎる。今日だけで五ヶ所だぞ、五ヶ所。しかもだ。あちこちで暴れ回るせいで被害は増える一方だ」

 

 それでも死者が出なかったのは本当に幸運だった、と語る。

 だがしかし、闇派閥の襲撃がこうも続くと明日以降には再び死者が出る。誰も何も言わずとも各々が察していた。

 そんな深刻な空気でも、彼女(アリーゼ)は変わらない。

 

 「でも、私達は間に合ったわ!怪我人は出しちゃったけど、それでも最悪な結果にはならなかった。これはすっごくすごいことよ!」

 

 「ぐー、すー」

 

 「アリーゼの言う通りね。襲撃が激化する一方で貴女達は正義を貫いた。胸を張って誇っていいわよ」

 

 アリーゼが重い空気を変え、主神であるアストレアが慈愛に満ちた笑みを浮かべて続ける。

 全員の表情が和らいだ。

 

 「それよりも団長様?」

 

 「さっきからずっと気になってたんだけどよ···」

  

 「? どうしたの輝夜、ライラ?」

 

 ある一点に、二人はチラリと視線を移す。

 事情を知る者以外の全員が気になっていたのだが、触れていいのかどうか迷っていた。輝夜もライラも例外ではなかったのだが、しびれを切らして切り出した。

 ことの顛末を知っているアリーゼの顔はドヤ顔に変わる。うーん、ムカつく。

 

 「「ソファーでぐーすか眠ってるコイツ/この男は誰だ」」

 

 「(。-ω-)zzz」

 

 「あ、私がここに運びました」

 

 「「「「「リオンが!?」」」」」

 

 「ヽ(; ゚д゚)ノ ビクッ!?」

 

 「あ、起きた」

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 おっすおっす、アラン・スミシーだお!

 知らぬ間に恩恵も家族も失くしただけでなく、あの闇派閥が復活を果たしていた!···が、実はそうでもないようだ。あくまで予想の範疇だけど。

 まあそれは置いといて、襲い掛かる闇派閥の凶刃によって討たれたはずの俺は現在、

 

 「さて、要望通り個室を用意したわ。部屋の作りで外には聴かれないようになってるから安心してね」

 

 「ありがとうございます」

 

 アストレア様と二人っきりになっていた。別にイヤらしい展開など起きない。起きたりしたら愚息と即グッパイで死ぬ。

 命の恩人とはいえ、あまり大勢の人達に話したくない。それでも話さないといけないので、彼女達の主神であり善神のアストレア様ならと判断してお願いした。

 

 『ダメですアストレア様!(得たいの知れない)男と二人きりになるなど!』

 

 『大丈夫よ。悪い子じゃないから』

 

 『アストレア様···』

 

 個室に二人だけは女神様は大丈夫と言っても、眷属は違う。当然反対されたが、装備を置いておくこと、鍵を開けておくことをせめてもの条件に二人になることを許した。

 まあ、戦闘衣(バトルクロス)を着てたけど、レイピアや槍があるから武器の類いは持ってきてないので、置いていく装備は無いに等しいのだが。

 丸腰でふらついていたのかコイツ、と警戒心が無いマヌケを見るような視線が俺をぶっ刺した。

 個室に入って俺は喋る。()()()()()()()()()()()。予想外だったのか、アストレア様の顔は盛大に引きつった。

 

 「それで今、世界最速兎(レコードホルダー)を巡って【フレイヤ・ファミリア】と【戦争遊戯】が──」

 

 「ま、待ちなさい、もういいわ。貴方の潔白は証明されたから」

 

 受け入れられる許容量を超えたのか、あまりの情報量にアストレア様は切り上げる(根を上げる)。俺はついつい喋ってしまったことを反省した(※内容はプロローグ以降)。信用できる神に、未来から来た俺の身の上話しができることが嬉しかったんだろうな。悩みを一人で溜め込むのはダメだね。

 ちなみに闇派閥じゃないことは初っ端に言った。

 

 「······信じられないことばかりね。冒険者になって1ヶ月の子がランクアップして、たった五人で百人いる派閥に勝利して、初めての遠征で深層に行くなんて···。貴方も貴方で負けず劣らずの速さでランクアップして、たった一人で階層主に勝っちゃうなんて······。未来は魔境ね」

 

 頭を抱えて独り言を呟く女神に、恐る恐る尋ねる。

 

 「······えと、俺はこれからどうすれば···」

 

 「え?ああ、貴方のことは私が責任を持って保護するわ。この家に居るのもいい、都市外に逃げてもいい、何をするにも貴方の自由よ」

 

 悪に荷担することはやめてね、と付け加えた。

 ···この女神は、俺を守ることを前提で選択肢をくれる。身の潔白を証明しただけでこうもしてくれるのか。もしくは、俺──アラン・スミシーがもてる情報をほとんど話したからか。

 何にせよ、この女神は善性であることを再確認した。

 

 「······一緒に、戦うって選択肢は、ありますか?」

 

 「······本気?」

 

 アストレア様の口調が変わる。

 冒険者となってモンスターと戦うのとは訳が違う。一緒になって戦うというのはつまり、極論を言えば人と人、悪と定めた者を殺すということだ。

 俺とて人殺しに抵抗はあるし、正義の味方を気取るつもりはない。しかしここは俺がいた“ダンまち”世界の過去に当たるのなら。それならば、未来で不幸な目に遭う死亡してしまうキャラを救えるのではないか。

 殺し合いで精神が病むとしても、バタフライなんちゃらで恋人(エリス)に会えなくなるとしても、薄っすら存在する最高の未来にしてみたい。

 ······あ、でも。

 

 「? どうしたの?」

 

 「あはは、恩恵(ファルナ)授かってもLv.1スタートだから足を引っ張りますね」

 

 下界にはまだラクシュミーがいない。

 過去に俺は戦闘経験を積んでいない。

 彼女達と一緒に戦うのは土台無理な話しだった。おとなしく都市外にでも逃げるか。

 ああくそっ、元のレベルだったらなぁ──!!

 

 「それなら大丈夫よ、多分」

 

 「うえっ?」

 

 「確かにラクシュミーはまだ降りてない。でもね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 「······それって」

 

 「()()()()()()()()()()()。戻らなくても、魔法かスキルに反映されると思う」

 

 おお、なんかイケる気がしてきた···!

 

 「本当にいいのね?」

 

 「そうですね。でも助けたい人がいる。俺はそのためだけに戦います」

 

 そう、とアストレア様は小さく答えた。

 恩恵授かったら情報収集をしたい。

 ······ところで、俺が裏切るとは思わないのだろうか。潔白が証明されたとしても、こんな不気味な男を眷属と行動させるか?警戒心がないのかな?

 

 「ふふふ、貴方なら大丈夫よ。あの子達の助けになってくれるから」

 

 心読まれてた。分かりやすい性格なんかな、俺は。

 

 「それじゃあ背中を見せて。」

 

 アストレア様は頭を痛めることになる。

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 「──と、言うわけです」

 

 リューは経緯を話した。

 それと自分が触れられたのは恐らく父とか兄とか、そんな風に頼れる存在だと思ったからじゃないか、と予想した。

 恋?恋したの?ねえねえ?とか囁いてくる仲間は放置した。

 

 「武器が無い状態で突貫したの?」

 

 「ええ。拳闘士(インファイター)でしょうか?」

 

 「いや、あの男は剣士だろう。掌には剣ダコがあって拳は綺麗過ぎだった」

 

 拳で戦う者なら皮が剥がれてゴツくなる。あの男にはそれらしき痕跡がなかった。

 

 「···剣士が、剣を忘れるかな···?」

 

 「ああ。修理に出していた、なら一応の説明になるが···。このご時世に武器は忘れないだろうな、普通は」

 

 う~ん、と頭を悩ませる。

 

 「闇派閥に立ち向かったのはいいものの、剣を持ってないことを忘れて殺されかけた···てこと?」

 

 「とんだマヌケだなと、さきほどまで思っていたが···」

 

 マヌケで片付けられたらどんなに楽か。冷静に考えて、あの男は重要な何かを隠している。それが何かが掴めないでいた。

 戦闘衣を見ていたライラが呟いた。

 

 「おいこの戦闘衣に使われている素材、もしかしてゴライアスじゃねぇか?」

 

 「「「「「!?」」」」」

 

 本当に、掴めない。  




 アラン「現世のような襲撃は無くなくなって、引き籠っていた闇派閥は全部壊滅しました」
 アストレア「そう···よかった、本当によかった···」

 ディオニュソスとフィルヴィスのこと、それとリューさん以外全滅したことは話しませんでした。リューさんに関しては誤魔化したけど多分バレた。
 
 
 


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IF 工場見学

一ヶ月前に書いて放ったらかしにしてたやつです。編集とか当然してないです。

編集しました。


 

 アストレア様による事情聴取から一週間が経過した。

 男と暮らすことに当然反対はあったが、アストレア様、アリーゼ、それと以外にもリューさんが賛成したことで、彼女達との共同生活を実現できた。

 

 『まずはパトロールから始めましょ。私とリオンのチームに入って!』

 

 アリーゼの言う通り、一週間の仕事は街中を見て回るパトロールだった。未来とは違い、闇派閥による襲撃が頻繁に起こる。敵は······弱かったと言っておこう。恐らくLv.1~2が中心で、戦力を温存したいけどそれでもオラリオを攻撃したい、敵の目論見はそんなところだろうか?

 俺からしたら有象無象だとしても、市民にとっては命に関わるほどの脅威だ。決して油断はしない。

 これは余談だが、俺のスキル【気配察知】。なんと敵の判別ができるようになったのだ! 

 ······判別とはいっても、特定の個人を追跡できるとか破格(チート)な性能でなく、気配の種類を探れるだけ。ランクアップによって感覚が強化されたためだと思われる。

 悪意ギンギンの冒険者を尾行したら、実は闇派閥でしたー、なんて笑えないオチを見せられた。

 

 そして現在、

 

 「前から三人!左右に二人づつ隠れてる!奇襲だ!」

 

 「それなら前方は私がやるわ!」

 

 「ならば左は私達が請け負おう!右はお前(アラン)に任せる!」

 

 「了解!」

 

 魔石工場を襲撃していた闇派閥を叩いていた。

 【気配察知】のスキルが奴らの居場所を暴く。だから奇襲される前に攻勢に出れている。

 

 「アリーゼ、三番倉庫押さえた!アランの言う通りの数だったぜ!」

 

 「そのまま四番まで制圧!イスカとマリューに指示!ライラは先の区画も押さえて!!」

 

 「数は九人だ!頑張って!」

 

 「おう!」

 

 次々と制圧していった。

 

 「私、索敵担当の獣人なのに···」

 

 「アランを見てると自信を失くすわ···」

 

 ごめんっ!

   

 「くっ、なぜバレた!?」

 

 「気配も臭いだって消したはずだッ!」

 

 「俺のスキルが以下略」

 

 「「な、なんだそれ···ぎゃああああああ!?」」

 

 ふぅーっ、制圧完了。

 アリーゼ達も奇襲される前に制圧し、合流した······お?

 

 「お、おのr」

 

 「せい☆」

 

 「ぐぶぅう!?」

 

 伏兵の存在に気付いたので、現れると同時に顔面グーパンチ。壁までぶっ飛んだ。手に持っていた武器に視線を落として冷や汗が出た。

 炎の魔剣じゃねーか。工場で爆撃とか危ないからやめろよな。

 

 『──言うじゃないかぁ、糞雑魚妖精ぇ~~~!』

 

 『──くそざこなどと呼ぶなぁぁ!』

 

 「お、またやってら」

 

 手足を縛ってると、ゴジョウノ・輝夜とリュー・リオンの口喧嘩が聴こえてきた。恐らくランクアップしてない以前の自分でも聴こえるような、そんなバカデカイ声で。

 一週間過ごしてきて最初こそ驚いたものの(輝夜をおとなしい人、リューさんは未来と変わらない人だと思ってた)、今ではすっかり慣れた。だって毎日(いつも)やってるんだもん。あの二人。

 まあ、リューさんが言い合いであんなに声を荒げるのは珍しいと思うし、何より······いや、いいや。俺が言えた義理じゃないし。

 他の仲間達はそれを見てるだけだった。···苦笑いで。

 

 あっ、やべ。この気配は!

 

 遅れてやってきた【ガネーシャ・ファミリア】に身柄を引き渡し、俺達はホームに帰っ──

 

 「アリーゼ。私を見るや否やこそこそ帰ろうとするアランを借りてもいいか?」

 

 「え、そんなの

 

 『ここんとこ働き詰めなんです、過労でぶっ倒れますのでご容赦を!』

 

 と、懇願する視線をアリーゼに向ける。アリーゼは俺の気持ちが通じたのかニコッと微笑み、

 

 ───いいわよ!」

 

 アリーゼさぁぁぁん!!わざとですか、俺のこと嫌いなんですか!?

 

 「よし。アーディ、連れていけ」

 

 「はいは~い、さあ行こっかアラン。平和のために身を削ろう(頑張ろう)!」

 

 「なんかおかしくなかったか、そのセリフ!?てか、引っ張るな!サービス残業で労基に訴えてやるぅ!」

 

 「さーびすざんぎょう?ろーき?なにそれ?ささっ、行こうアラン」

 

 連れ去られるアランを見送り、後にうわああああああん、という断末魔(泣き声)が反響する。残された者達は彼に同情した。

 

 「しっかり働いてくるのよ、アラン!」

 

 アリーゼには鬼かコイツ、という視線を送った。

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 工場からパトロールに連れていかれ、その帰り道。

 エレンを名乗る男神に絡まれていた。

 

 「問おう、若き英雄候補。正義とはなんだ?」

 

 「······ベル?」

 

 「ん?べ、ベル?あ、おい、ちょっ──···行ったか。ふーむ、ベルって言ったよな?何かのキーワード···いや名前か?それも、あの男の根幹にある大切な者の?少し調べてみる必要があるか」

 

 背後からブツブツ独り言が聴こえたが無視した。眠たいので。

 

 「······」

 

 そんなおかしなやり取りを、屋根から見下ろす影が一つ。

 

 「······ヨビダシテソウソウ(呼び出して早々)アレコレタノンデオイテワスレテナイカ(あれこれ頼んでおいて忘れてないか)ワタシノコト(私のこと)···?」

 

 仮面の下にある顔は、果たしてどんな顔をしているのだろうか?予想はできるが、きっと本人にしか分からない。

 

 




アストレア、アリーゼ、リューのお陰で何とか住まわせてもらえました。ステータスを公開しました。

 ①コカ・コーラ(缶)
 ②扇風機
 ③米

 コーラにしました。徹夜明けのコーラは最高に美味しくて、日本を思い出して感動しました。by.アラン

 闇派閥を特定できる→ふむ、地上に居る闇派閥を一掃できるかもな、と目を付けられる→パトロール&パトロール。帰りは深夜を過ぎることも→見逃すことなく成果を挙げるのでさらに目を付けられる。

 アランは短時間だけ寝れる。エインさん、寝れない。地上と地下を行ったり来たりの繰り返し。



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IF 【平和の象徴】オー○マイト

また順番間違えてましたので直しました!

感想、評価ありがとうございます!更新頻度を上げていこうと思います!


 

 【アストレア・ファミリア】の一員として、闇派閥と戦闘を繰り返すうちにある変化が起きた。

 闇派閥による襲撃頻度が目に見えて減少したのだ。

 俺のスキル、【気配探知】は生物を特定するだけでなく、悪意やら殺意やらの感情までも察知する。だからか、パトロールで街を歩いてると偵察中、もしくはこれから騒ぎを起こす闇派閥の人間と遭遇するのだ。

 

 「て、てめぇ!俺が闇派閥だっていう証拠があるのかよ!」

 

 「逆に、それで闇派閥じゃないってんなら驚きだよ。それと、神に嘘は吐けないのは分かってるよな?」

 

 「──ッ!?」

 

 このように、片っ端から制圧しているうちに俺が闇派閥の人間を特定できると敵に伝わり、不要な外出を避けるようになったし、それとは別に、俺の仲間であるフィルヴィスの存在が大きいと考えている。

 知っての通りフィルヴィスは俺のスキルで手に入れるまでは、元々闇派閥側の人間。全部を把握しているわけではないが当然、奴らが拠点にしている【人造迷宮】に通ずる出入り口の位置を把握しており、俺が出した命令は『奇襲』。

 巣から出てきた敵、巣に戻ろうとする敵を待ち伏せにして徹底的に排除する。フィルヴィス曰くそれで一度、敵幹部を一人半殺しにしたそうだ。ソイツは現在、【ガネーシャ・ファミリア】で服役中。『影が来る···影が来る···ひぃぃぃぃ!?』と、うわ言を呟きながら発狂し、フィルヴィスの存在がしっかりトラウマとして刻まれた。

 

 また、オラリオで冒険者をしているファミリアが、実は闇派閥だったと言うのはこのご時世有り得ない話じゃない。

 

 「コイツら全員闇派閥側の人間なら、主神であるお前は必然的に邪神になる」

 

 「ひひひ、神をお前呼ばわりとは、不敬なガキが痛だだだだだ!?腕はそっちに曲がらないからヤメテェ!?」

 

 例の如くこれを検挙して、邪神を捕まえるという大捕物をした。

 これが決め手になったようで、闇派閥は戦力を減らすような真似を止め、闇派閥側のファミリアがオラリオから姿を消した。

 

 オラリオは少しづつ活気を取り戻し、俺を【平和の象徴】として英雄視する者が出始めた。

 

 

 

 ······まあ、何事も上手くいかないのが世の常である。

 

 「【福音(ゴスペル)】」

 

 「───ッッ!!」

 

 「「「「うわぁあああああ!!」」」」

 

 鐘の音が一度だけ鳴る。それだけで、俺以外の仲間が床にひれ伏した。

 

 「ほう。目に見えて満身創痍とはいえ、これを喰らって尚も立っていられるか。魔法に耐えられるほどの装備を持っていたか。或いは、場所が場所だから手加減してしまった私の落ち度か······お前はどう思う」

 

 「ハァ、ハァ······なら、三つ目だ。俺のアビリティが凄かった」

 

 間違えではないと信じたい。俺はLv.5で今のシャクティよりもレベルも耐久も高いし、それでも骨にまで響いた魔法を、咄嗟に【癒光の羽衣】を発動したことでダウンを防いだ。

 

 「つまらん受け答えをするな。私が提示した中から答えろ、面倒くさい」

 

 この人は多分、自分の指針で動くタイプ。それも、気に入らなかったら老若男女問わず容赦なく殴り飛ばすヤバい人。

 この時の俺はそう思った。

 

 「まあいい。お前『は』奴らよりも見応えがある。今回はそれで良しとしよう───今は眠れ、英雄候補」

 

 「ッ!」

 

 (この人の魔法に当たればもうお仕舞いだ!だから──)

 

 「速さで決める!」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()、先ほど見せた魔法、それと手ぶらの装備。魔法がメインの後衛だと推測できる。

 正面から行けば魔法の餌食。だから女の背後に回る。いくら強かろうが、前衛として戦ってきた俺の方が速──

 

 「遅い」

 

 「グガァ!?」

 

 レイピアによる攻撃をヒラリと躱し、脇腹に蹴りが入る。内臓が飛び出るほどの衝撃をその身に喰らい、

 

 「【眠れ(ゴスペル)】」

 

 再び鐘の音が鳴る。

 【ガネーシャ・ファミリア】を堕とした初手の全体攻撃ではなく、一点に集中させた魔法が突き刺さった。

 

 「······読みが悪い。場数はそれなりに踏んでいるようだが······まだ若い」

 

 その呟きが耳に残る。俺は意識を手放した。

 

 

 

 「······っ、ここは······」

 

 目が覚めると、何やら慌ただしく動く人影が見えた。続いて誰かのうめき声のようなものも。

 体を触ると、いつもの装備が脱がされており代わりに包帯が巻かれていた。鈍い痛みが走る。

 

 「! 目が覚めましたか?」

 

 「ああ、お陰様で」  

 

 「······まだ安静にしてください。傷は全て治しましたが、痛みまでは消せませんから」

 

 上半身を起こす時に制止の声が掛かるが、あえて無視する。

 

 「他のみんなは······無事、みたいだな」

 

 【ガネーシャ・ファミリア】の団員が寝ている。起きている者のほとんどが上級冒険者のようだが、あの魔法が相当堪えたようで痛みに苦しんでいた。シャクティ、アーディの二人は立ち上がって仲間を献身していた。

 

 「貴方が一番重症でした。肋骨が折られるほどの衝撃が内臓にまで達したせいか、血管が破れて吐血を繰り返し、あと僅かでも治療が遅れたら後遺症が残るレベルでした」

 

 脇腹への蹴りと、【ゴスペル】って魔法だな。多分意識を失った時に【癒光の羽衣】は消えたけど······あれを喰らって後遺症が残るレベルで済むのは【恩恵】様々だな。

 高いステータスを持つ俺を倒すとか、恐ろしい女。

 

 目が覚めたことに気が付いたのか、シャクティとアーディがやってきた。その後、俺がやられたことを聞き付けたアリーゼ達が見舞いに来たが、騒がしくしたことで出禁にされた。

 




 地上は襲撃が減りましたが、ダンジョンにまで手が届かないと分かり、以前続いている。地上から姿を消したファミリア(闇派閥側)が主に襲撃している。
 それでも以前のような苛烈な襲撃が減ったことで怪我人が減少し、治療施設には余裕が生まれました。


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IF コヒュ

羽休め回。


 

 体が回復した翌日、俺は久方ぶりの休みを言い渡された。みんなはパトロールだとか他派閥との会議だとか女神同士の井戸端会議だとかで留守。家には俺一人。ボッチである。

 だから、街を散策することにする。ここはオラリオだけど、俺が知るオラリオではない。地理や情勢を把握しておきたい······てのが建前で、本音を言えば暇潰しだ。このご時世呑気だと思うが······。

 

 「することないもんなぁ~」

 

 だってこの世界、娯楽が少ないしスマホが無いし。一日を消化できるゲーム機があればいいのに。【万能者】のアスえもんが開発してくれんかな。  

 などと、下らないことを考えつつ街をぶらつくと、

 

 「んぉ?」

 

 服を引っ張られる。まるで離さないと言わんばかりにギュッと強く引っ張られた方を振り向くと、幼女が見上げる形で立っていた。

 機緑色の髪に同じ色の瞳に犬耳犬尻尾。種族は犬人だろうか。ケモナーのワイ、大歓喜。

 

 じゃなくて。

 

 「どうした、もしかして迷子?」

 

 とりあえず同じ高さに合わせるよう膝をつく。怖がらせないよう優しめな口調で。

 闇派閥による襲撃が鳴りを潜めてきたとはいえ、幼女が一人迷子なのは危ないから保護しなきゃ。いかがわしいことはしない。

 でも······なんだろ、この娘に逆らえそうにない。逆らったらダメだって脳が警鐘を鳴らしている。あっれー、なんだか誰かさんと似てるぞぉ?

 

 幼女は首を横に振る。

 

 「···お礼が、いいたくて······」

 

 「お礼?」

 

 「うん」 

 

 コクリと頷く。

 お礼をされるようなことをした心当たりがない。

 

 「お父さんを、悪い人から助けてくれたお礼」

 

 はっはーん、闇派閥を倒したことでこの子のお父さんは救われたのか。

 

 「あー···、でもなー意図して助けたわけじゃないからなー。お礼をされるのは」

 

 「ありがと!」

 

 おっほほ、問答無用ですか。

 

 「! あっ、エリス!一人で彷徨いたらダメじゃない!」

 

 黄緑色の髪と瞳、そして犬耳犬尻尾。母親っぽいってか、母親似だね。

 

 ······君、エリスって言うのね。

 

 「ごめんなさい、この子が何かご迷惑を···って、貴方は確か」

 

 「アランです。迷惑だなんてとんでもないです、はい」

 

 自己紹介を簡潔に済ませる。未来で出会うエリスと、ここで変なフラグを立てる前に逃げるが吉。あばよ、とっつぁ~アレェ!?

 

 「夫を助けていただき、ありがとうございます!」

 

 子は親に似る。

 腕をガシイ!と掴まれ、礼を言われた。この強引さ、エリスはまさしくこの人に似たんだ。間違いない。

 いつの間にかエリスちゃんは、然り気無くもう一つの手を繋いでいる。気付かなかった。

 

 「あらあら、この子がここまで懐くなんて······。家族以外だと一線を置くような、人見知りなんですよ。まあ、心を許せる相手にはベッタリなんですけどね」

 

 ははは、身を持って知ってます。

 

 「······する」

 

 「「ん?」」

 

 「アランお兄ちゃんと、結婚する!」

 

 「あらあら、まあまあ♪」

 

 「んふふ♪」

 

 「コヒュ」

 

 フラグが立った。まあ、すでにアレコレしてるから原作に響いているけど、これはどうしたものか。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーー

 

 未来の恋人である幼女エリスと、エリスのお母様を送り届けた帰り道。「泊まっていかないの···?」と涙ながらに言われたが、丁重に断った。これ以上はなんだか不味い気がするからだ。 

 そそくさと退散し、ある人物と出会う。

 

 『あんたが噂の英雄様だろ?ちょっといいか?』

 

 話掛けたのは同年代くらいの男。恩恵の影響で若く見えてるだけかもしれないが。話掛けた理由は知らないが、気配に悪意は感じられない。

 まだ昼前で暇潰しになるから大丈夫だろう。俺は男の後ろを着いていった。

 

 「ここって確か······」

 

 「おう。ヘファイストス様の眷属になった時に貸し出してくれた俺の工房だ。俺はロディ・ハンナ、ロディでいいぞ」 

 

 「俺はアラン・スミシーだ。英雄様じゃなくてアランで頼む」

 

 「分かった。よろしくな、アラン!」

 

 自己紹介を互いに終え、改めて今いる場所を考える。案内された場所はオラリオにある工業区。ロディの言うように【ヘファイストス・ファミリア】の団員達の工房が多数あり、暗黒期である今も鎚を打つ音が聞こえる。

 それよりもロディの工房。この工房は確か······アイツの家名も──。

 

 「おーう、シトリー!帰ったぞぉ~!」

 

 おっふ。

 

 「······誰?」

 

 わあ、似てる~(遠い目)

 

 「紹介するぜ。コイツは妹のシトリー。俺の助手として住まわせてもらってるんだ」

 

 「······」

 

 「······えと、俺はアラン。よろしく···ね?」

 

 「······」

 

 無言で見られるのはしんどいッス。

 

 「あ~、コイツは人見知りなんだ。まあ気にしないでくれや」

 

 「お、おう。じゃそうする」

 

 中に案内される。ベッドが無かった。

 

 「いきなりなんだがその装備、見せてもらっていいか?」

 

 「装備?これのことか?」

 

 「おう。ちょっと脱いで貸してくれ」

 

 言われるがまま、俺は装備を脱ぐ。あの魔導士との戦闘のせいで、戦闘衣も革鎧もボロボロになっている。正直防具として機能するのか不明だが、いつ襲撃されるか分からないこのご時世、無防備なまま外出はできない。

 はぁ~、ゴライアス製の戦闘衣は特にお気に入りだったのになぁ。

 渡した装備をロディ、隣に座るシトリーもジー···と見る。恥ずかしいな。

 

 「···似てる」

 

 「お前もそう思うか」

 

 「?」

 

 似てる?何が?

 

 「全部ってわけじゃねぇけど、俺の装備と造りが似てる。これをどこで手に入れたんだ?」

 

 未来の妹さんからです。兄貴をよく見てたんだなぁ。

 

 「たまたま売り物をな。似てるのは珍しいことなのか?」

 

 なんて、言えるわけないから誤魔化す。

 

 「ああ。鍛冶士一人一人には癖がある。ここまで似てるのは、普通なら有り得ねぇんだが···」

 

 未来から来たよー!なんて、言えるわけない。悪いが迷宮入りな。

 話をそらしてみるか。

 

 「これ、直せるか?お気に入りなんだ」

 

 「ん? ああ、時間は掛かるが······大丈夫だろ」

 

 「助かる」

 

 他人にやらせるのは気が引けるが、シトリーの兄貴なら大丈夫だろう。ロディに会えたのは嬉しい誤算なのかもしれない。

 ···と、シトリーが袖を引っ張る。もじもじしてる。可愛い。

 

 「······また、会える?」

 

 「会えるよ。装備を預けるからね」

 

 頭を撫でると、嬉しそうに目を細めた。

 

 「っし、三日後に来てくれ。完璧に仕立てるからな!」

 

 「ありがとう。バイバイ」

 

 「ん!」

 

 工房を後にする。エリスみたいに穏便に済んでよかった、よかった。ハハハ!腹減ったなぁ。なんか食って帰るか。

 

 

 

 

 工房にて。

 

 「気の良い奴だったなぁ、アランは」

 

 「······」

 

 「? どうした?」

 

 「アランって······好きな人、いるのかな···?」

 

 「えっ」

 




エリス
 父親が闇派閥の襲撃で死亡。母親は娘を養うために必死に働くが体を壊す。そして、あれよあれよと【ソーマ・ファミリア】の一員となり金品を搾取される生活を送る羽目になる。その数年後、アランと出会い恋に落ちる······が、過去に逆行したアランによって父親が救われたことで、冒険者になる未来が潰える(かもしれない)。

シトリー
 ヴァレッタに兄を殺される。復讐心を募らせるが二十七階層の悪夢、【疾風】の暴走で闇派閥が壊滅されたと聞いてやるせないまま諦める。その後は惰性で生きていたがアランに出会い、(怠け癖が残ってるが)仕事を熱心に取り組むようになる。将来の夢はアラン専属鍛冶士。ライバルは兄貴。




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原作の少し前
始まり 前編


書き方変えよ。
編集しました。誤字訂正です。


 

 えっと、ここどこ···?

 キョロキョロと辺りを見渡せば、自然豊かな原っぱに立っていた。暖かく心地のいい風が肌を撫でる。それが困惑を助長させる。

 さっきまで俺は野原にいなかった。こんな環境のいい場所にもいなかった。なんなら外出もしていない。もっと空気が濁っている都会の、それも安さが取り柄の狭いアパートの一室にいたはずだ。

 

 「・・・なんで?」

 

 こういう時は、自室にいた数秒前を思い出そう。見えてくるはずだ。

 

 『・・・もう朝か。寝よ』

 

 うん、寝たね。

 レポートやらゲームやらお勉強やらで夜更かしして、気付けば眩い太陽が差し込む朝方で。

 俺は寝たのだ。んで、

 

 「目が覚めれば知らない土地にいた───・・・などと言ってる場合かぁ!?誘拐されたんか俺は!!」

 

 あの時笑ってごめん。気持ちが分かった気がする。某賢王様に謝罪した。

 俺は死んだのかな?死んで転生して(もしくは転移)、ここに迷い込んだ。あの世、冥府、地獄に煉獄。はたまた天国か。何に当て嵌めるのだろうか。

 

 「これからどないしよ・・・」

 

 えーと、まずは情報収集が先だね。半分思考放棄して軽い足取りで前に進んだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 「ここに来た目的は?」

 

 「えと、なんとなく・・・?」

 

 「なんとなく?もしかして旅人か?それにしては軽装だし・・・」

 

 門番に怪しまれてら。

 

 

―――――――――――――――――

 

 歩き進めること二時間半(体感で)。でっかい門が見えたので、そこまでダッシュで向かった。距離が離れているのにも関わらず、息切れが起きるどころかあっという間に辿り着いてしまった。 

 俺はいつから運動出来るようになったんだ?

 向上した自身の運動神経に驚きつつ、ふと下を見ると。

 

 「・・・は?」

 

 服装が違う。ダボダボで清潔さがない寝間着じゃない。異世界でよく見るあの服装だ。顔をペタペタ触る。骨格からして違う。体をまさぐる。見慣れた不健康な体じゃなくて筋肉のある細マッチョに。俺の手はズボンのポケットの中に侵入し、愚息に触れると。

 

 ───衝撃が走った。

 

 日本人男性の平均よりやや小さい旧愚息は、新たに生え変わり大物へとなっていた。

 なんか感動。

 ・・・てか、はよ気付けよ俺。

 

 「次の者!」

 

 「あ、俺か」

 

 そして上部に移行する。

 この世界は恐らくあの世とかそういう類いのものじゃない。神話とか宗教の世界とか知らんけど、獣耳とかエルフ耳とかいないでしょ?そんな世界に。

 だからここは異世界と見て間違いない。この世界が物語の世界かオリジナルかは分からんが。

 

 「えーと、この国でしばらく働いてみようと思います・・・」

 

 なんとなく。理由も宛もなくこの国に来た俺は、少々テンパっていたのか、気付けばそう言っていた。門番は犯罪者かどうかを探るように俺を見てるし、このままだんまりを決め込むのも違う。

 だからまず働こう。無一文だから金銭も必要だし、なんか情報も手に入るだろうし。

 コンビニから配達まで。バイト戦士の俺なら大丈夫だ!HAHAHAHA !!

 

 「大方畑仕事で生涯を終えるのが嫌で飛び出した。なるほど、若気の至りか。よし、通っていいぞ!」

 

 「あざます!」

 

 なんか盛大に勘違いしてらっしゃるけど、通れたんならいいや。俺は新しい人生の第一歩を踏み込んだ───

 

 「あ、その前に背中見せて。決まりだから」

 

 「あ、はい」

 

 出鼻を挫かれた。

 

 ・・・背中?

 

――――――――――――――――――

 

 門をくぐり抜け、中世風の大きな建物が並ぶ街に入ると、数多の人でごった返していた。ごっつい鎧を身に付けた男に、ワンピース姿の少女。そして多種族。それだけではなく、上を見上げると長細い塔。倒れてきたら国も人も潰れるね。

 ここで情報を纏めよう。

 

 ・中世風

 ・異種族

 ・塔

 

 「()()()()()()いかがっすかー!」「小豆クリーム味と新作を一つづつ」「また散財したろ()()の糞野郎!!」「だって十万払えば好きだって言ってだぶぎゃ!?」「あんたチョロ過ぎんだろォォォォ!!」

 

 時折聞こえてくる声。

 はい、それだけで特定可能ですわ。

 

 「ダンまちですね、分かります」

 

 だとすれば俺のすることは一つ。

 主神となる神を探して冒険者になることだ。

 

 「本日はどのようなご用件でしょうか?」

 

 「冒険者になりたくて。現在募集しているファミリアはありますか?」

 

 「分かりました。では候補を絞らせていただきますね。何か希望とかありますか?」

 

 「じゃあ零細でお願いします。我が儘を言えば、出来れば眷属は誰一人としていない所で」

 

 「かしこまりました。しばらくお待ちください」

 

 エルフ耳の綺麗な受付嬢は、そう言って下がった。何やら書類を持ってくるのだとか。

 

 待っている間、この世界の情報を思い出そう。

 この国の名は迷宮都市オラリオ。世界に一つだけしかないダンジョンで数多の英雄が生まれる土地である。そこで出会いと英雄に憧れた主人公ベル・クラネルは、メインヒロインのアイズ・ヴァレンシュタインに窮地を助けられ一目惚れ。発現したチートスキルで成長し立ち塞がる困難を乗り越える話だ。

 時系列は恐らく原作開始前。道行く人が何やら、【ロキ・ファミリア】の遠征がどうのこうのとか言ってたし。だからヘスティアはいるとしても、ベルはまだ来てないのかな?と予想している。

 チラッと横を見れば、ピンク髪の女性が受付している。この人はミイシャさん・・・だっけ?彼女がここで働いているということはそういうことだ(?)

 原作で有名なキャラがいる所より、名前が載ってない所がいいので(原作に下手に関わらないようにするため)零細を希望した。

 

 「お待たせしました。リストになります。それと住所も書いておきましたよ」

 

 「ありがとうございます。助かりました」

 

 「いえいえ。ファミリアに入団した際は是非いらしてくださいね」

 

 「はい、失礼しました」

 

 俺はお辞儀をしてこの場を後にした。どうせなら女神様がいいなと邪な願望を抱きながら。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 「ごめんくださーい!誰かいませんかー?」

 

 日本でいう、なんか昭和溢れる感じの空き家っぽい建物あるじゃん?こう屋根に瓦積んでるあれ。

 俺はリストに記されていた住所を辿ってここに来た。

 所有者の名はラクシュミー。確か豊穣と運を司る神様だっけか?を選んだ。リストに書いてある神々はどれも聞き覚えがなく、唯一分かったのはこの神様だからというのが理由の一つ。

 扉の前で呼ぶこと数分。

 

 「はいはい、元気があってよろしいが新聞ならいらぬよ」

 

 「違います。新聞の勧誘じゃないです」

 

 「新聞の勧誘じゃない?ならそなたは何しに来たのだ?」

 

 目の前の女神様は可愛らしく首を傾げる。

 ・・・改めて見ると綺麗だな。背は低めで顔は幼さがやや残る大人な感じ。古風な喋り方。何より褐色肌に豊かな胸。豊穣を司るだけある。土いじりをしてたのか、土の匂いがかすかに漂い、手を見れば少し汚れていた。

 

 「眷属になりたくて来ました」

 

 まあ、俺の感想はどうでもよくてね。

 

 「・・・私の?」

 

 「貴女の」

 

 「・・・嫌がらせ?」

 

 「ちゃう」

 

 「・・・マジ?」

 

 「マジ」

 

 目の前の女神様は目を見開く。信じられないと思ってるのだろうか?

 

 「えと、俺は眷属になれるんでしょうか?」

 

 沈黙を破る。心臓に悪いからね。

 

 「! あ、あぁそうだな。そうだのぉ!そなたを私の眷属として歓迎しようぞ!」

 

 「本当っすか?ありがとうございます!」

 

 晴れて冒険者になった。

 

 




後編に続く。
 


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始まり 後編

なんか某闘国の女神とキャラ被ってんなラクシュミー。ま、いいか。似たやつがいても。


 感想お待ちしてます!


 

 「そうと決まればまずは恩恵じゃな!おっと、手を洗わねば。私としたことがかなり浮かれとるのぉ!」

 

 あ、そなたは私の寝室で服を脱いでて。

 

 そう言い残し、女神様、改めてラクシュミーは、テンション上げたまま洗面台に向かった。

 本人曰く、

 

 「敬語も敬称も不要じゃ!何せ初めての眷属なんじゃからのぉ、堅苦しいのはお互い無しにしようぞ!ガハハハ!」

 

 とのこと。

 俺は言われた通り寝室・・・てか、リビングじゃねーか。布団敷いてるだけだろこれ。部屋と呼べねーよラクシュミー。と内心で思いつつ、脱いだ。

 

 「・・・すっごいな」

 

 俺は自分の体を見る。力を入れずとも筋肉が浮いており。ふっ!と腹に力を入れれば見事なシックスパック。前世では全く筋肉無かったからなんか嬉しい。友人に自慢したいし、なんならこれで外に行って見せびらかしたい。もう本当にありがとう、神様」

 

 「? どういたしまして?」

 

 「はぅわ!?」

 

 うっわ、変な声でた。え、独り言呟いてた?

 

 「安心せい。友人に自慢したい、の所からしか聞いておらんわ」

 

 「聞かれたくない所じゃないすか。恥ずかしーなもう!」

 

 ま、まあ前世のことを知られたわけじゃないしぃ?べべべ別にいいよね!

 

 「ところで・・・」

 

 まずい、感づかれたか・・・?

 

 「そなたに友達がいたのか?」

 

 「いたよ!」

 

 三人ほどね!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 恩恵。それは神々から与えられる力であり、その力を使って冒険者はモンスターを倒すのだ。ダンジョンは深く潜るにつれモンスターも強くなる。だから冒険者に恩恵は必須。また、何かしらの方法で経験値を集めることで、冒険者も強くなる。成長には個人差がある。

 

 Lv.1

 力:I0

 耐久:I0

 器用:I0

 敏捷:I0

 魔力:I0

 

 "魔法"

 "スキル"

 【言語理解(コミュニケーション)

 ・会話や文字の自動翻訳

 

 【三択からどうぞ(サード・ワン)

 ・三つの中の一つから獲得

 ・選んだモノの貯蓄と引出し

 ・一週間後に再選択

 ・貯蓄(0)

 

 「これがそなたのステータスじゃよ」

 

 「ありがとうございます・・・あれ?」

 

 スキルがある。それも二つも。俺は羊皮紙に書かれているスキルを見る。

 【言語理解】・・・まんまだね。文字も言葉も分かってたからこれはいいや。スキップスキップと。

 【三択からどうぞ】・・・知らん。どこに三択あるんだよ。選択肢を見せてよ。名称もルビもいとおかし。

 

 すると

 

 ①剣(鉄製)

 ②篭手(革製)

 ③タワシ

 

 「いやタワシて!」

 

 「!? ど、どうしたのだ大声出して!それにタワシとはなんじゃ!?」

 

 目の前に三択現れる。念じたからかな?

 

 「タワシとは主に清掃目的で「知っとるわ!」ですよねー」

 

 テンパってて草。

 

 「ごほん。まあよいわ。スキルが二つもあるのは稀じゃからのぉ。内容はともかく、恵まれておるよそなたは」

 

 「そっすかね」

 

 そう言われると嬉しいな。内容はともかく。

 

 「で、何か分かったのか?」

 

 俺は話した。

 

 「なるほど・・・ならば篭手を選べ」

 

 「それはなぜ?」

 

 「武器はギルドから支給されるからじゃ。剣の性能が良すぎると成長に悪い。優先すべきは命を守る装備だと私は思うよ」

 

 なるほど、よく考えてるし一理ある。

 

 「篭手にしようかな」

 

 「うむ」

 

 俺は②の篭手を選び、何もない所から篭手が落ちてきた。なんかシュール。

 てか、タワシて(二度目)。モノの範囲広いな。

 

 「あ、俺はどこで寝ればいい?空いてる部屋無いよね」

 

 「? そんなもん、ここでよかろうて」

 

 なにキョトンとしてんの?危機感天界に置いてきたの?

 俺は(現実から)逃げるようにギルドに向かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 「恩恵授かったので冒険者登録をしにきました」

 

 「え、もうですか?まだ三時間ほどですよ?」

 

 ギルドに到着。受付嬢はさっきのエルフさん。一日も経過してないことに驚いているようだ。そんな貴方も綺麗だな(キモい)

 

 「早くに決まって早くに授かって早くに登録したかったんで」

 

 「はぁ、そうですか・・・」

 

 早くに、と言いすぎてわけわからんくなってる。

 

 「では主神とご自身のお名前をお願いします。それと文字を書けますか?」

 

 「(文字書けないから)代筆で。主神はラクシュミーで、俺は───あれ?」

 

 「?」

 

 俺の名前ってなに?前世の名前?それとも生まれ変わったから違う名前?

 

 やべ、どうしよ平八郎の乱。

 

 「・・・あの?」

 

 「あ、アラン!アラン・スミシーでお願いしやす!」

 

 「は、はい」

 

 アラン・スミシー。確か架空の名前だった気がする。この世界(ダンまち)に登場しない自分。うん、ぴったりだ。

 

 「以上で登録は完了です。武器はあちらで受け取れます。他に何かお聞きしたいことはありますか?」

 

 「ダンジョンについて詳しく知りたいんですが、大丈夫ですか?」

 

 これは必須だ。既存の知識と擦り合わせ、理解を深める。それは命を守ることに繋がるので学べられるのなら学んでおくべきだ。

 ・・・なんか周りが目を見開いて驚いてるけど。

 

 「なんなら本か何か貸してくれませんか?自分でやるんで」

 

 「で、では空き部屋へどうぞ。後で私が持ってきますので」

 

 「どうも」

 

 案内された空き部屋で待つと、すぐに沢山の本と紙を用意された。自習してくれだそうだ。俺はお礼をいい、上に積まれた本から読み始めた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 「ふぃー、疲れた・・・」

 

 勉強が一段落して外を見ると、真っ赤な夕日が差し込んでいた。

 以前の俺はここまで頑張れなかっただろう。でも、好きな作品であるダンまちのダンジョン事情を知れるのは楽しい。だから集中できた。

 

 「お疲れ様ですスミシー氏。こんなに読んだんですか?」

 

 「ええ。とは言っても上層だけですよ」

 

 Lv.1ならそれで充分だろうよと、セルフツッコミ。

 

 「スゴいですねぇ、スミシー氏は」

 

 「? ああ、やっぱ冒険者って座学が苦手なんですかね?」

 

 やはり小説を読むと、基本的に座学に弱いイメージがある。ベルもそんな感じだったと・・・いや、エイナさんのスパルタ授業のせいか。

 

 「基本的に苦手と嫌いの両方です」

 

 「最悪じゃないすか」

 

 俺は苦手かな。別に嫌いではないんだよなぁ。

 エルフさんは沢山文字が書かれた紙を見ると、

 

 「字は読めませんが、これなら大丈夫そうですね。明日からダンジョンへ?」

 

 字は日本語だし仕方ないね!

 

 「取り敢えず一階層を中心に活動してみます」

 

 「分かりました。それと担当は私が務めさせていただきます、名はソフィと申します」

 

 エルフさん→ソフィさんか。これからよろしくお願いします。

 

 「相談事や階層の更新の際はお申し付けくださ・・・あー、敬語じゃなくていいよね?」

 

 いや、急っすね。

 晴れて冒険者になった。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 冒険者になって後日。

 俺は朝早くからダンジョンに来ていた。理由はもちろん好奇心から。次いで生活費のため。

 ラクシュミーから頑張れと言われ、ソフィさんから油断しないでねと言われた。

 だからダンジョンに入って気持ちを切り替える。油断慢心ダメ絶対。ヨシ!

 

 「ほぇー、明るいな・・・」

 

 一階層。

 薄暗い感じをイメージしていたのだが、そんなこともなく。鉱石か苔でも光っているのだろうか?別に見えづらいこともなかった。

 目指す場所は小さなルーム。休憩に使えるし、沢山産まれても囲まれない限り逃げられる。ここを中心に活動しよう。

 

 「お、あれがゴブリンか」

 

 目の前には一体のゴブリン。緑色の体に尖った耳。そして鋭い目。初見だと少し怖いな。

 

 「だが、ここでビビるようなら・・・」

 

 冒険者に向いていない。

 ふぅーと息を吐き出し、俺は一気に駆け出した。

 

 「!?」

 「遅い!」

 

 奴がこちらに気付き、振り向くと同時に斬った。支給品の剣は劣悪なものと聞いたのだが、そうでもなかった。頭が体から離れた死体を見て思った。

 ・・・それよりも。

 

 「やっぱスゴいわ、この体」

 

 恩恵授かる以前も思ったが、この体は運動神経がとても優れてる。下手したらオリンピック選手になれるくらいに。それに恩恵が加わるのだ。もしかしたら五、六階層に通じるレベルかも───

 

 「油断も慢心もダメ絶対って決めたろさっき。しばらくこの階層だ」

 

 うんうん。いきなり破るのはダメだよね。ベル君でももう少し慎みを持ってる・・・よね?

 

 「魔法撃ちまくってたわそう言えば」

 

 俺もそうなるのだろうか?なるんだろうな。日本人たるもの魔法に憧れを抱いて当然だ。夜中にダンジョンに向かわないものの、調子に乗って精神枯渇を起こすと予想できる。

 

 「気を付けないとなぁ・・・」

 

 魔法に思いを馳せつつ、探索に集中した。

   

 

 

 




アラン・スミシー
 ダンまち世界に転生しラクシュミーの眷属に。初めての戦闘で戦えたのはこの体のおかげ。流れに身を任せた。今のところ原作に関わる気はない。

ラクシュミー
 アランの主神でインドにおける豊穣の女神。アランが来る前は一人寂しく生活しており、趣味の家庭菜園を生きる理由としていた。眷属ができて内心狂喜乱舞。某女神とキャラが被ってる困ったさん。

スキル
 レアルスキルに該当するのでもちろん口止めしてます。

 文才を鍛えるために書いてます。飛ばしでいくかも。





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原作開始
ミノタウロス


アラン→茶髪黒目、178c、16歳。顔立ちと体格は良い。


 

 あれから一週間が経過した。変わったことと言えば、一階層から三階層へと足を進めたことだ。コボルトとの初戦闘は特に苦戦することもなく呆気なく終わった。

 日常生活では変わりなく、主神であるラクシュミーと楽しくやってます。

 そして、一週間が経つと待ってるのはあのスキルだ。

 

 ①乾電池(単三)

 ②羊皮紙

 ③レイピア(鉄製)

 

 ラクシュミーと相談することなく③を選んだ。てか地球のモノもでるんすね。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 それから一週間。今日も今日とて探索で稼いでます。お金は少しづつ増加傾向にあるが、それでも雀の涙。ラクシュミーに贅沢させたいので頑張ろう!

 ソフィさんの紹介で、エイナさんの座学を受けました。舐めてかかると死にます。マジで。

 一週間が経ったので例のスキルっす。

 

 ①包帯

 ②ポーチ

 ③調合書(薬)

 

 「どれがいいと思う?俺的には①②③」

 

 「それ全部じゃよ。まあ、好きなの選ぶがよい。あって困るものじゃなし」

  

 「りょ」

 

 ・・・決められなかった。じゃあクジ引きで。

 選ばれたのは③でした。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 さらに一週間。変わったことと言えば、五階層へと進出したぐらいか。新たに手に入れたレイピアは大変素晴らしく、ここの階層のモンスターにも通じた。それとフロッグ・シューターのベロ攻撃を鳩尾に喰らいました(;>_<;)

 誤ってラクシュミーの尻を触った後、とても気まずい空気になっちゃった。それプラス、酒場の街娘と遭遇し勧誘されました。それからというもの、バベル上部から視線を感じるようになった。・・・やべ、武者震いがががが。

 一週間に以下略。

  

 ①ファイアアロー(魔法)

 ②刀剣乱舞(スキル)

 ③座薬

 

 やば。

 

 「ラクシュミー今回ヤバいよ、どうしよう?」

 

 「ああ、そのようじゃな。③の落差がヤバいな、うん」

 

 俺はともかく、ラクシュミーは珍しく落ち着きがないように見える。モノとは魔法とスキルも例外ではなかったようだ。今回は大当たりだな。

 

 「好きなの選ぶがよいぞ。痔なら③じゃろうて」

 

 「ラクシュミーも痔になるのか?」

 

 「ハハハ、はっ倒すぞ?」

 

 ぴえん。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 「ほれ、お前のステータスじゃ」

 

 「どれどれ・・・」

 

 アラン・スミシー

 

 力:G230

 耐久:H101

 器用:H144

 敏捷:G223

 魔力:I0

 

 "魔法"

 "スキル"

 【言語理解】

 ・会話や文字の自動翻訳

 

 【三択からどうぞ】

 ・三つの中から一つ獲得

 ・選んだモノの貯蓄と引出し

 ・一週間後に再選択

 ・貯蓄(1.篭手 2.レイピア 3.調合書  4.【刀剣乱舞】)

 

 (【刀剣乱舞】)

 ・剣での戦闘時、必要なアビリティに補正

 ・剣術の最適化

 

 こんな感じ。

 私見だが、アビリティの伸びは速いほうだと思う。この体の可能性と言うべきか、化け物染みた才能が時折垣間見れる。嬉しいと思う反面、それが少し怖かったりする。

 

 そしてスキルにある貯蓄はいつでも取り出すことが可能なので、ダンジョンに行かない日は全て収納しているが、やはりお金やポーションなどの類いは無理だった。あくまでもスキル入手物のみ。スキル【刀剣乱舞】も貯蓄でき、好きな時に使用できる。もはや任意のスキルと変わらないような・・・。

 

 魔法ではなく【刀剣乱舞】を選んだ。理由としては出費を抑えるためである。確かに魔法があれば手札が増え、決定打になるだろう。でも、俺は貧乏の零細派閥。精神力回復薬なんて買ったら、今よりもっと手取りが減る。ならば戦闘向きのスキルの方が良い。自分でも最善の判断だと思う。

 

 「じゃあ、おやすみ」

 

 「ああ」

 

 俺は寝た。隣にはラクシュミー。一緒に寝たいのじゃと言われたらねぇ?しょーがないよなぁ?(ゲス顔)

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 時系列はそろそろ原作開始に差し掛かろうとしていた。【ロキ・ファミリア】が遠征から帰ってくると専らの噂だし、この前コート?を着た白髪頭を見かけたし。ならばあのイベントが始まる。

 どうしようか?出現するのが一体だけなら放置。襲ってくるようなら逃亡するし・・・。

 まあ、遭遇なんかしないか(笑)

 

 「ヴモォォ・・・ヴモ?」

 

 「あ」

  

 ふと、思い浮かんだ言葉は"フラグ回収"。

 

  

 

 逃げた。

 

 「なんでフラグ建てるんだ俺のアホォ!!」

 

 「ヴモォォォォ!!」

 

 「こっちだ【ロキ・ファミリアァァァ】!!ミノタウロスはここだよぉ!だから助けてお願いします!!」

 

 迫り来るミノタウロスから逃げる。逃げつつ救援を呼ぶ。戦う?多分勝てん。戦闘スキルがあるっても、補正スキルやし・・・ん?

  

 【刀剣乱舞】

 ・剣での戦闘時、必要なアビリティに補正

 ・剣術の最適化

 

 ・()()()()()()

 

 いけるかこれ?

 倒すまでとはいかなくとも最適化された剣術で補正付きなら数秒間なら渡り合える。

 俺はレイピアを出してミノタウロスと向き合う。支給品よりも上等なこれなら多少はいけるはずだ。なにより上質な経験値となる。リスキーだが逃す手はない。賭けに出る。

 

 「ヴモォァ!」

 

 「っ! ハァァァ!!」

 

 繰り出されたのは右の掌。勢いがいいものの、後先考えず狙いが丸分かりの雑な大振り。なので充分避けられる速度だ。

 俺は右前下辺りに躱しながら脇腹を斬った。その際重たい反動がミシミシと両腕に伝わるが、なんとか斬り抜けられた。

 損傷部位を確認すると、浅く血が垂れる。切っ先だけだ。切っ先部分で斬っただけで、こちらの腕が折れるかと思った。

 

 「・・・うん、勝てる気がしない」

 

 「ヴモ?ヴ、ヴモォァッ!?」

 

 こんなん無理ゲーだ無理ゲー。絶対に勝てないし。二度目の逃走を図ろうと思ったら、牛の断末魔が響いた。

 

 「・・・」

 

 「うっす、ありがとうございます。助かりました」

 

 目の前にいるのは灰髪の狼人。無言でこちらを見ないでくれませんかね。あなたの顔すげぇ恐いっす。

 【凶狼】ベート・ローガ。Lv.5にして、かの派閥の幹部を務める敏捷特化の冒険者。ロキ曰く、性格はツンデレのこと。

 

 「・・・せめてもの詫びだ。魔石はくれてやる」

 

 そう言って去っていった。本当になんだったの?あ、魔石助かります。

 あ~、ベルはどうなったんだろ。原作通りになったよね?原作崩壊とかやだよ、マジ勘弁。

 

 「だぁぁぁぁぁ!!」

 

 どうやら杞憂のようだ。

 俺は足早にダンジョンから立ち去り、換金すべくギルドへと向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 「ミノタウロスと戦った!?何やってるの貴方は!」

 

 「はい、すみません」

 

 不可抗力なんです。

 原作知識があったとはいえ、遭遇するとは思わな・・・いや、よく考えればミノタウロスにバッタリ出くわすと分かるはずだ。

 

 「それにしても、よく無事だったね・・・」

 

 「一太刀入れた後に【凶狼】に助けてもらったんです」

 

 「一太刀って・・・」

  

 ソフィさんは驚くどころか呆れているように見える。

 普通は冒険者になっておよそ一ヶ月の新人に、ミノタウロスに攻撃すること事態無理なのだ。

 ホントこの体様々。

 

 「分かったわ。それとどうする?【ロキ・ファミリア】を訴えられるけど」

 

 今回の件は明らかに【ロキ・ファミリア】の過失となる。上層にまで追いやったのだ。ソフィさんの言う通り、訴えて慰謝料を請求できる。

 

 「やめときます。それと換金お願いします」

 

 「そう?分かったわ。ちょっと待ってて」

 

 これ以上原作と関わるのはゴメンだし。ミノタウロスの魔石貰ったから別にいいや。

 お金受け取ったらとっとと帰ろ。眠たいや。

 

 「はい、お待ちどうさま」

 

 「ありがとうございます」

 

 いつもよりズッシリした財布に、少しばかり嬉しくなった。

 

 



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テンション上げてけ!ケモ耳だぞオラ!

誤字報告ありがとうございます!


 

 「ほれ、更新終わったぞ」

 

 「ど~も」

 

 「どうしたのじゃ。そんな腑抜けた声を出して」

 

 「どっと疲れが来たんよ。ミノタウロスと戦ったから」

 

 俺は敷かれた布団に寝っ転がりながら答える。ご飯食べて風呂入った後はまだ元気があった。でも布団にうつ伏せなった瞬間これだ。これが布団の魔力。恐るべし。

 

 「ふむ。口で簡単に伝えた方がよいか?」

 

 「サンクス」

 

 ラクシュミーは俺の状態を察したのか、要所要所を分かりやすく伝え始める。まあ、魔法もスキルも発現してないからアビリティだけだが。

 

 「ミノタウロスに一太刀入れたから力が伸びておるな。次いで耐久。最後に敏捷かの」

 

 ん?

 

 「敏捷より耐久が上がったのか?」

 

 俺の予想だと、力と敏捷が同じくらい伸びていたかと思ってた。だって全力で逃げたし。

 

 「それほど奴の体が硬かったようじゃな。腕を持ってかれそうになったんじゃろ?私は納得しとるよ」

 

 「あ~」

 

 ラクシュミーの意見に納得した。てか、もう考えるのも面倒だ。眠くて意識がZZZ

  

 「寝たのか?全くこやつは・・・今日はしっかり寝て、明日も頑張るのじゃよ。そして───」

 

 「───生きて帰ってこい」

 

 一番最初の眷属アランを見るラクシュミーの目は、呆れから慈愛の眼差しへと変わる。優しく撫でながら眠った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 そして後日。

 なんでかラクシュミーを抱いて(意味深)寝てた俺は、疲れが綺麗さっぱり消えてすこぶる快調だった。筋肉痛覚悟してたけどそんなこともなく。むしろいつもより元気だった。

 俺はダンジョンの出入り口であるバベルへと向かう。最初は道に迷って、恥ずかしながらラクシュミーに付き添ってもらったが、今では慣れたものだ。スイスイ進めちゃう。

 

 「はい、到着と」

 

 辿り着きましたね。途中道行く冒険者と肩などが当たっちゃうと、高確率でバトルイベントが発生するので注意を払いましょう。また、バトルを回避するには大声で「犯されるー!!」と叫べば逃げ出せます。敵はホモ疑惑、自分はその敵から狙われちゃうかも。そんなことにならないよう気を付けましょうね。

 

 「・・・何考えてんだ俺は」

 

 気分が上がってるのだろうか。快眠だっただけで、舞い上がりやがって。俺は俺に呆れた。

 今日も今日とてダンジョンで稼ごうとしたら。

 

 「あの~。そこのお兄さん」

 

 「ん?」

 

 後ろから声が掛けられ、条件反射でくるりと振り向く。これで俺じゃなかったら恥ずかしいね(笑)

 まあ、自意識が過剰になったわけでなく、声を掛けられたのは本当に俺だったようだが。

 目の前に立っていたのは黄緑色の髪と瞳。そして犬耳から察するに種族:犬人族。敏捷重視なのか上下軽装に揃えられており、所々にほつれと汚れが見られるくらい年季が入った服装。年齢は同じくらいかな?綺麗より可愛らしい女の子だ。

 

 「なんですか?」

 

 本当になんですか?客引き?美人局?怖いよぉ。

 

 「えと、あの、パーティを募集とかしてたりとか・・・」

 

 「? え~と?」

 

 「わ、私は別に怪しい者じゃなくてですね!昨日ギルドに立ち寄った時に、偶然聞いちゃいましてね!強い貴方とならもっと稼げると思った次第です、はい!・・・あとイケメンだし

 

 最後が小声で聞こえなかったが、簡単にまとめるとどうやらお金が欲しいみたいだ。犯罪とか何か悪いことに俺を陥れようとしているのか。それとも俺みたいに貧乏な零細派閥なのか。多分前者はない。緊張しているのか、顔を真っ赤にしている女の子から悪意は感じられない。なら後者?

 それと関係ないが、知らない人と喋ると早口になるよね。分かるよホント。

 

 「まあ、金がいるのも俺も同じだしなぁ」

 

 「! じゃ、じゃあ!」

 

 ソフィさんからパーティ組んだら到達階層進めてもいいと言われている。この先組めるか分からないので、ここで組んどくのも有りだろう。

 

 「取り敢えず三日間だけ組んでみて、それから決めていいですか?」

 

 「はい!それで構いませんよ!」

 

 やったー!!と喜びを露にする女の子。可愛いから、なーんて邪な考えで組んだわけじゃないから。あわよくば、なんて思ってないから。

 

 「あ、そう言えば名前を教えてませんよね!」

 

 「え?・・・ああ、そうですね」

 

 「私はエリス・キャルロ、()()()()()()()()()()()所属の冒険者です!あと敬語じゃなくても大丈夫ですよ!」

 

 先ほどとはうってかわり元気に自己紹介を決める。なるほどなるほど。エリス・キャルロね。そして所属は・・・え?

 

 「()()()()()()()()()()()?」

 

 「そうですそうです、【ソーマ・ファミリ・・・あ」

 

 「「・・・」」

 

 お互い無言になる。

 俺は知っている。金のためなら奴らは犯罪を平気で犯すことを。主人公ベルのサポーター、リリルカ・アーデもそこの派閥出身で、金が欲しいために同じ派閥の奴らから殺されかけたくらいだ。だとしたらエリスはどうなのだろうか。ザニスとかカヌゥとかと同じ下衆・・・ないな。これでそうだったらとんだ策略家だ。

 彼らの悪評は広く知れ渡っているので、好んで組む人はいない。それを知ってるエリスは口が滑ったと言わんばかりに俯いている。

 

 「俺はアラン・スミシーだ。最近新興した【ラクシュミー・ファミリア】所属で、同じく敬語とか別にいらないよ」

 

 「え?あの、知ってますよね?その・・・」

 

 ええ、知ってますよお姉さん。原作読みましたからね(ニッコリ)。

 

 「()()()()()()?」

 

 「よ、酔ってない!酔いが解けたから、真面目に働いて抜け出そうとしてるんだよ!」

 

 「なら大丈夫だよ。で?組むの?組ま「組む!」おおう」

 

 まだ途中なんだが。

 それと酔ってると本当に危ないので、冒険者の皆さんお気を付けて。

 

 「ほいじゃあ、改めてよろしく」

 

 「こちらこそよろしく!」

 

 当面は資金集めか。

 頑張っていこー!

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 エリスと組んで思ったことは、ダンジョン探索が効率的になったことだ。獣人の嗅覚と聴覚を最大限利用する索敵は、モンスターの位置を的確に補足した。また、エリス指導のもと、階層を五階層から七階層まで上げられた。キラーアントを倒せるか不安だったが、自慢のレイピアは通じてひとまず安堵した。

 

 「しっかし、本当にスムーズになったよ」

 

 「そうかな?」

 

 「うん。なんか無駄がないっていうか。援護も的確だし」

 

 休憩時間中に思ったことを口に出す。彼女の戦闘スタイルは短剣による速さ重視の剣術。そして、ここぞとばかりに繰り出されるボーガン。探索もそうだが、彼女自身からも無駄が省かれている。

 組んで分かった性格は、(仲間には)元気で時折呑気な姿を振る舞う感じだが、意外と現実主義者な側面を持っており、戦闘の際には油断が一切感じられない。失礼な話だが、調子に乗るタイプだと思ってた。

 

 「一時サポーター組んだ子から()()()()()()()。これ私に向いてるんじゃないか!?ってね」

 

 「待った、()()()()()()()()()()()()()()()学んだの?」

 

 「? そうだけど」

 

 まじかこいつ。こんな奴が【ソーマ・ファミリア】で埋もれていたのかよ。

 実際見たら分かる。見ただけでものにする(努力したのだろうが)こいつは、間違いなく天才だ。【ロキ・ファミリア】にいたら頭角を表していただろう。

 正直もったいないと思うが、気になる点は他にもある。

 

 「そのサポーターってのは同じファミリア?」

 

 「そーだよ。名前はリリ・・・ルカだっけ?だいぶ昔に組んだ子だから忘れちゃった」

 

 エリスはてへっ、てな感じで笑った。可愛いなくそっ。

 そのサポーターってのは、十中八九リリルカ・アーデだな。取り敢えず主人公と近しいネームドキャラとは関わりたくないなぁ。

 てか、忘れるなよ。影響受けたんなら。

 

 ・・・それにしても。

 

 「そんなことよりそろそろ行こ!たくさん稼がなきゃ」

 

 「うっす」

 

 呑気なのか現実的なのか、本当に分からねぇな。

 




エリス・キャルロ  
 16歳。数年前酔いが覚めたことで、現派閥から脱退を決意。以降は真面目に金銭を集める毎日を送る。本当は元気かつ呑気な性格だったが、環境が環境のせいで冷静かつ現実主義者の一面を持つように。適正があるものならすぐ習得できる天才肌。イケメンの主人公と組めて嬉しい。本当なら十階層へと進出できるが、更新には金がいるため現在足止めをくらっている。


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呆気ない終わり

タイトル通り呆気ないです。

 ごもっともな意見をいただいたので編集させていただきます。


 

 「回復薬を三つください」

 

 「はいどうぞ。アラン、いつもありがとね」

 

 俺は今、【青の薬舗】という店でポーションを購入した。この店は【ミアハ・ファミリア】が経営しており、主人公馴染みの店でもある。とある事情で借金生活を余儀なくされており、それに少しでも貢献したいと考えた俺は、足繁く通って常連となった。あとナァーザさん結構好きだし(本音)

 それとエリスと組むにあたって、資金に余裕が生まれ始めたので、いつも買う本数より多くしてみた。どっちかが怪我してもこれで平気だし。

 

 「いえいえ、何か困ったことがあれば言ってください。それじゃ俺はこれで」

 

 「またね」

 

 原作では新薬完成させて持ち直してたけど、今はまだ開発段階なのかな?素材がいるんなら取ってきますよ!

 

 「あ、そういえば・・・」

 

 スキル【三択からどうぞ(サード・ワン)】で選んだ中に調合書なるものがあったはず。あれは使えるのだろうか?ほら、あのスキルは地球のものも出るから、向こうの薬の場合作れないじゃん。一回も目を通してないから分からないけど、使えないのなら辞書の方がまだ役立つよ。

 

 俺はう~んと考えながら帰路に着いた。一回読んでみようかと思うが、明日からまた探索開始だ・・・し?

 

 「おや?そなたはラクシュミーのところのアランではないか」

 

 「あ、ミアハ様こんばんは」

 

 「うむ、こんばんは。何やら下向いて顎を触っているが、悩み事でもあるのか?よければ聞くぞ」

 

 おぉ、これが善神か。善意かつ無条件で悩みを聞いてくれるとは。他の神様も見習ってどうぞ。

 悩み事・・・までとはいかないが、今考えているのは使い道のない調合書のことだ。あっても使わないので押しt・・・ゲフンゲフン、差し上げよう。

 

 「実はですね・・・」

 

 「なるほどな。使い道のない本ではあるが、なかなかもったいなくて捨てられずにいると。確かに探索系には使い道はないな」

 

 「ええ。ですからミアハ様が貰ってくれませんか?」

 

 「よいのか?こちらからあげられる物はないが・・・」

 

 「よくポーション貰ってるので、それでチャラにしてくれるとありがたいっす」

 

 通い始めたのだってポーション貰ったからだし。

 

 「そういうことなら。うむ、承った」

 

 「ありがとうございます」

 

 俺は調合書を手渡した。ミアハ様から別れ際、こんな分厚い本をいつも持ち歩いてたのか?と言われた。いっけね。

 本を断捨離できたのでルンルン気分。もうすぐ()()()りが始まるね。行こっかなぁ。行くまいかなぁ。どうしようかなぁ~。

 

 「・・・ま、ダンジョンで金稼ぎだな。んで、ラクシュミーに誘われたら祭りに行く。うん、そうしよう」

 

 今日の晩飯なーにかなぁ♪ハンバーグがいーなぁ♪なんて、呑気に歌う俺だった。

 

 

 

 この時の俺はことの重大さに気が付いてなかった。あの調合書を巡って、ポーション革命が起きることを俺はまだ知る由もなかったのだ・・・。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 ちなみに【豊穣の女主人】に行きました。案の定ベルは飛び出し、俺にもとばっちりが来るかなぁなんて、思ってたけど全然だった。

 リューさんきれい。シルさんこわい。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 「しゃあ!一週間経過でスキルの時間だぜ!」

 

 待ちに待った一週間。例の三択が今表示される。俺的にはそろそろ魔法を獲得してもいいと思ってる。パーティ最高。

 ちなみにラクシュミーは朝イチから留守にしている。神々が集いし宴の準備があるのだとか。本人は別に行かなくていいと言っていたが、こういう時にはしっかり美味しいものを食べてくれ。俺の言葉で渋々了承した。

 

 「本当はラクシュミーの意見を聞きたいけど、別にいいよね!一週間くらい!」

 

 我慢できない俺を許したまえ。優雅にティータイム(特売茶)を極め込んだ。

 

 ①ヒール(回復魔法)  

 ②成長補正(スキル)

 ③魔導書

 

 「ぶふぅっ!?」

 

 ゲホッゲホッ!?・・・は!?

 

 「なんだこのラインナップは!?イカれてんのか!」

 

 魔法にスキルに魔導書。しかもスキルに関しては例のあれ。いつかは現れるとは思ったが、今来るのか!これが!?

 

 「こんなん②一択だろ・・・」

 

 強くなれるのなら②を即効で選ぶ。成長補正なんて喉から手が出るくらい魅力的だし、俺は②を・・・待てよ?

 俺の頭には獣人の女の子が映る。③なら解放できるのではないか。魔導書と言えば魔法を強制発現させるための本。それ故に高額で取引される代物だ。ならば取れる手は一つ。

 

 「俺は───」

 

 

 

 

 「お疲れさん。どうだった?」

 

 【ソーマ・ファミリア】がある屋敷前。その屋敷から出てきた女の子に、俺は声を掛けた。

 

 「ザニスが、『本当は一千万ヴァリスだが、この魔導書一冊と取引しようじゃないか。なに、仲間に対する恩情というものだ』だってさ」

 

 ちなみに魔導書は一千万ヴァリスを軽く超える値段。このセリフからザニスがどんな奴かが分かる。

 ま、そんなことはどうでもよくて。

 

 「脱退おめでとうがいい?それとも、今までご苦労様のがいi『ガバッ!』うおっと!?」

 

 俺の言葉に我慢できなかったのか、エリスは俺に飛び付いた。俺の胸に顔を埋めて表情が分からないが、その体は小刻みに震えていた。

 成長補正のスキルは正直もったいないと思うが、まあこれはこれで良かったのかもしれない。

 

 「よしよし。これからもよろしくな」

 

 「うん!アランに報いるよ、この命に代えてもね!」

 

 こうして、エリスが仲間に加わった。長年派閥に拘束されていた彼女の顔はとても嬉しそうだった。

 




オリ主的には最高の判断ではないが、最善の判断だと思ってる。
調合書を一回も読んでいないことにします。読んでも専門的なので分からないと思うが。


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お酒の恐怖 ※神酒ではない

高評価&感想ありがとうございます!それと誤字脱字も助かってます!これからよろしくお願いします。


 

 エリスが無事脱退したので、我ら【ラクシュミー・ファミリア】に入団させるためホームに連れてきた。ウチは少しボロいけど大丈夫か?と聞いたら、ソーマよりマシだと笑顔で言ってくれた。

 家主であり主神であるラクシュミーが帰ってくるまで待つこと数時間。ようやく帰ってきたと思ったら・・・。

 

 「ほ~う?私が留守にしている間に女を連れてくるとはのぉ?お楽しみか?お楽しみなんじゃろこれから」

 

 「いや違いますよ」

 

 「何が違うのじゃ?言うてみろ」

 

 ほら早く、とせかすラクシュミーから、若干の苛立ちが感じられる。まあ、同じ立場なら俺も腹立つが。

 取り敢えず誤解を解くことから始めないと。

 

 「あ、あの!」

 

 「?」

 

 このギスギスした空気の中、隣にいたエリスが口を開く。

 

 「私はエリス・キャルロと言います!【ソーマ・ファミリア】から解放してくれたアランのためなら何でもやります!だから私を【ラクシュミー・ファミリア】に入団させてください!」

 

 勇気を振り絞ったエリスは、最後にお願いします!と言い頭を下げた。これにはラクシュミーも驚くが、

 

 「・・・ふむ。エリスと言ったか?お主の覚悟は充分過ぎるほど伝わった。入団を許可してもよい」

 

 「な、なら!」

 

 ラクシュミーはエリスを認めたようだ。暗かった顔がパアッと明るくなる。

 

 しかーし!

 

 「ただし条件がある」

 

 「じょ、条件・・・?」

 

 「おいおい、俺の時は条件なんて「シャラァァップ」ええ・・・」

 

 「ゴホン。ああ、これを聞き届けてくれるのなら正式に許可するのじゃ!」

 

 ビシィ!という効果音を叩き付ける。それにエリスは唾を飲み込んだ。

 

 「その条件とは──」

 

 

 

 

 「それでなそれでな!アランのやつ、私の留守の間に畑の雑草を取り除いてくれるのじゃ!アイツは知らん顔しとったがバレバレなんじゃよ、誰が土いじりしとると思っとるんじゃ全くぅ!」

 

 「アランやさし~い、でもでもまだありますよ!アランは探索帰りにお腹空いたらジャガ丸くん奢ってくれるんれすよぉ~?私は毎回断るんれすけど、間違えて多くかったから貰ってくれ(キラーン☆)って言うんれすよ~!」

 

 「アランカッコい~い!」

 

 「優しくてカッコいいのが、アランなんれすよ~~?」

 

 「「アハハハハハハハッ!!」」

 

 「なんじゃこりゃ」

 

 ラクシュミーが出した条件とは、俺のことを喋れというもの。必要最低限のことしか報告しない俺について、探索中どんなことしているのかとかを知りたいのだとか。それを肴に、同郷であるガネーシャから強奪・・・譲り受けたお酒を飲みながら喋ってたら二人ともこうなった。

 俺?この二人のテンションに引いてる。てか恥ずかしいし、キラーン☆とか言ってねぇわ!

 

 「おいアラン!酒が足らんぞぉ、もっともってこぉ~い」

 

 「もうないよ」

 

 「なら買ってくるのじゃ!ほらお駄賃上げるから!余ったお釣りはくれてやるのじゃ!」

 

 「子供か俺は!それにこんな夜更けに店は空いてないぞ」

 

 「あ、それなら私が行きますよぉ?子供時代はよくパシられてましたから、足の速さには自信ありますのです!」

 

 「行くな行くな酔っ払い!てか反応しづらいな!」

 

 コイツらは本当に・・・!

 酔っ払い共のダル絡みは、およそ二時間後に寝落ちするまで続いた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 そして翌朝。

 

 エリス・キャルロ(16)

 力:E→B766

 耐久:E→B720

 器用:C→A801

 敏捷:C→A847  

 魔力:E→C642

 

 “魔法”

 "速度増加(速まれ)"【加速(アクセル)

 

 “スキル”

 【犬人咆哮】

 ・獣化

 ・全能力値に高補正

 

 「これで契約完了じゃ。存分に励むがよい」

 

 「ありがとうございます!」

 

 エリスはラクシュミーに礼を述べた。彼女は獣人特有のスキルである獣化に加え、超短文詠唱で速度を上げる魔法を所有していた。正直羨ましいが、

 

 「それにしても凄い伸びだな。どれだけ更新してなかったんだ?」

 

 俺は気になったことを尋ねる。上がり幅が凄いので誰でも気になるだろう。

 エリスはスッと指で数字を表す。指は2本・・・2!?

 

 「お前2年も上げてなかったのか!?」

 

 「う、だって更新にはお金が掛かるから・・・。それに更新しに行ってもコイツは金を持ってるってカモだと思われるし・・・」

 

 「「うわぁ・・・」」

 

 改めて【ソーマ・ファミリア】の闇を垣間見た。味方から狙われるとかどんだけだよ。俺もラクシュミーも実情にドン引きである。

 

 「まあなんじゃ。これからはどんどん更新してやるし、アビリティも充分高い。それならば、もうすぐ()()()()()()するのではないか?」 

 

 「ですかね・・・」

 

 ランクアップとは、神々が認める偉業を成し遂げることで恩恵を更なる高みに昇華させること。数値は一旦リセットされるが、積み重ねたものは器に貯金される。その他の条件としてアビリティのどれかがD評価以上である必要がある。

 確かこんな感じだった。エリスはどれもD評価を超えている。ならば可能性は大いにある。

 

 「Lv.2になればもっと先の階層に行けるから、俺も頑張らなきゃな」

 

 アラン・スミシー(16)

 

 力:E530

 耐久:E512

 器用:F420

 敏捷:E501

 魔力:I0

 

 “魔法”

 “スキル”

 【言語理解(コミュニケーション)

 ・会話や文字の自動翻訳

 

 【三択からどうぞ(サード・ワン)

 ・三つの中から一つ獲得

 ・選んだモノの貯蓄と引出し

 ・一週間後に再選択

 ・貯蓄(1.篭手2.レイピア3.【刀剣乱舞】)

 

 (【刀剣乱舞(ソード・ダンス)】)

 ・剣での戦闘時、必要なアビリティに補正

 ・剣術の最適化

 

 そう、俺だって伸び率は(異常なくらい)速いのだ。今はエリスの後ろを着いていく形になるが、それでももっと成長できるはずだ。目指せ半年ランクアップ!

 

 「それより気になったんじゃが・・・」

 

 「え?」

  

 「なんで顔に手形があるのじゃ?」

 

 「ああこれ?」

 

 酔い潰れたラクシュミーとエリスを、適当に寝かせて俺も寝ようとしたら、

 

 『えへへ~、あらんもいっしょに寝よ~』

 

 『え、あ、ちょっ』

 

 エリスに引っ張られて寝かされたのだ。離れようとしても、コイツの力が強すぎて離れられずそのままダウンした。そいでエリスが朝起きた時に、

 

 「叩かれましたね。正直首が捥げるかと思った」

 

 「~~~~~っ!!」

 

 未だヒリヒリする俺の頬、羞恥でカッと赤くなるエリスの顔。面白いもの見たと綻ぶラクシュミーの口元。

 

 「本当にお楽しみじゃったわけか」

 

 「どこがよ」

 

 あ、でも抱き着かれた時はスゲェいい匂いがして何がとは言わないけど柔ら・・・とイカンイカン。

 

 「じゃあダンジョンに行ってくるよ」

  

 「あ、待って。私も行くよ!」

 

 「ああ、気を付けるようにな」

  

 気持ちを切り替えてホームを出た。仲間がいるってのはいいものだ。テンションが上がるわ。

 




祭りはスキップしようかな。
 ベル>>>アラン>>>>>その他。美の女神にとってアランとは、万が一の保険程度にしか考えてない。だから視線は飛ばすが介入はしてこないと思う。


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金ならある!装備を新調しようぜ!(尚、仲間のお金)

高評価&感想ありがとうございます!ランキングに乗ってた!イェーイ!!引き続きよろしくお願いします!
 
 時系列は祭りの前。


 

 「私の装備を新調するついでに、アランも装備を新調しない?」

 

 エリスの恩恵を刻み終え、ラクシュミー見送りのもとホームを出た後にエリスが提案した。なんでも、脱退のために用意していたお金が余り余ってるそうだ。

 俺は当然断った。同じ派閥の一員とはいえ、エリスの私財を使うのは気が引けるから。

 その旨を説明しても、頑なに首を縦に振らない。

 

 「だって私のアビリティなら、今より深く潜れるんでしょ?私がメインで戦うとしても、今の装備でアランは大丈夫なの?」

 

 そう言われて改めて装備を確認する。スキルで獲得したレイピアと篭手。さらに支給品でギルドから貰った壊れかけの剣と胸当て。

 心もとないばかりか、今までよく無事だったな俺は。

 

 「それにさ、アランにはずっと元気でいてほしいんだ。このまま遠慮されて大怪我でもされたら、嫌だよ私・・・」

  

 「エリス・・・分かった、それならお言葉に甘えるよ」

  

 俯くエリスを見て決心を固める。俺には危機感というものが欠如していた。そうだよな。エリスやラクシュミーのことを考えてなかった。

 “ダンまち”の世界は過酷で、特に冒険者という職業は群を抜いて危険だ。今のままではいつか必ず死ぬか、仲間を失うだろう。

 しっかりしろ、アラン・スミシー!一人の時間が多かった前世とは違うんだぞ!

 

 「本当に?」

 

 「おう!オススメはやっぱり【ヘファイストス・ファミリア】か?」

 

 「! うん!バベルには掘り出し物がたくさんあるからそこに行こう!ピッタリのものがきっと見つかるよ!」

 

 「よし、決まりだな。案内頼むよ」

 

 明るく前を歩くエリスの背を追い掛けた。いい防具があるといいなと思いながら。

 

 ーーーーーーーーーーーーーー

 

 「ほえ~、色々あるんだなぁ・・・」

 

 「でしょう?私は自分の選ぶから、アランも選んでおいてね!金銭的なことは気にしなくていいから!」

 

 お姉さんに任せなさい!と胸を張るエリスに自然と笑みが溢れる。姉弟よりも幼馴染くらいが合ってるのかな?・・・そんなものと縁がなかったけど。

 待ち合わせの時間を決めて、別行動となった。俺はまず防具から揃えようと防具のコーナーへと足を運んだ。

 

 「鉄製の鎧」

 

 これは重そうだなぁ。俺の戦闘スタイルと合ってない・・・って、これドワーフ用じゃねぇか。別のものを見ても似たようなものだった。ヴェル吉のがあったけど、ピンとこなかったのでパス。

 

 「盾」

 

 これは普通に有りだ。だが、不意打ちに対応出来なかった場合危ない。頑丈そうな物がそれなりにあるので、一応候補として考えておこう。

 

 「革製の鎧」

 

 先程より軽く、着ている服の上から装備できる。戦闘衣などと組み合わせることで、防御力の底上げが可能・・・これじゃね?

 

 「決まったな」

 

 俺は革製の鎧をメインに探す。俺のサイズと合ってるのはどれだろ。これはデカイ。これは小さい。うーん、中途半端。あれも違う、これも違う。どこだどこだ~と・・・おや?

 

 「これかな?」

 

 俺は箱の中に置いてあった防具に手を伸ばした。実際にサイズを確認してみると、存外悪くなかった。

 

 「これを作成した素晴らしい鍛冶士の名前はなんだろな・・・」

 

 シトリー・ハンナ。近くにいた店員に詳しく聞けば、最近Lv.2になった女性冒険者で、ランクアップ前に鍛えた最後の防具なのだとか。機会があれば会ってみるのもいいだろう。

 よしよし、防具は決定だね。次は武器だ。これは支給品の剣を代えよう。レイピアはまだ使えるし、なんなら刃こぼれしてない。不思議だね。

 

 「ここだな」

 

 武器専門コーナーに辿り着いた。遠くでエリスが集中して吟味していた。後で声掛けよ。

 

 性能重視。オークみたいなデカイ敵と戦うのだ。防御は最低限にして、ズバッと斬れるのがいいよね。

 防具みたいに合うものを探し、

 

 「・・・これがいいかな」

 

 サーベル状の剣。切れ味も良さそうで耐久面も申し分ない。鍛冶士も案の定シトリー・ハンナ。もはや運命だろ。

 全部決まったので、エリスのもとへ向かった。彼女も丁度終わったらしく、一緒に会計へと進んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 十階層。

 そこは霧が立ち込めるエリアであり、そのせいか常時視界不良に陥る。加えてオークという大型モンスターも新たに出現し、この階層に来た冒険者は苦労を強いられる。

 

 「アラン前方に二体!」

 

 「了解!一体任せる!」

 

 だがしかし、俺にはエリスという獣人の仲間がいる。彼女の聴覚嗅覚ならば即座に発見できるのだ。例え迷子になってもエリスがいれば安心だ。頼りきりにするのは心苦しいが、慣れるまでの辛抱だ。

 

 「よし、倒した!」

 

 「こっちもだよ!」

 

 先程購入した剣で戦ったが、充分過ぎるほど通じた。防具だって動きを阻害されることなく効果を発揮している。エリスの言う通り、買ってよかった。

 彼女も新調しており、年季が入ったボロボロだった服から新品に取っ替え、簡単に胸当てを装備している。武器も中層にも通じる短剣にしているのだとか。以前と同じく敏捷重視の装備。

 

 「じゃあ今日は撤退しようか。目的は様子見だし」

 

 「そうだね。私も充分確かめられたし満足だよ」

 

 俺達は十階層を後にする。オークもシルバーバックもインプも倒した。一日の稼ぎとしてはこれでいい。

 

 「私は換金してくるね」

 

 「ん。ありがとな」

 

 ギルドに入っていったエリスを見送った俺は、近くの椅子に腰掛ける。バベルではギルド職員が忙しそうに動き回っていた。その中にはソフィさんの姿もあったので挨拶をと思ったのだが、そんな空気じゃなかったので断念する。籠があったので祭りが近いのだろう。ならば忙しくて仕方ない。

 時刻は夕方。俺達と同じように帰宅する冒険者でいっぱいだ・・・時折女性冒険者から視線が飛んでくるが気のせいだろう。俺がモテるわけない。

 

 「お兄さん、お兄さん。イケメンのお兄さん」

 

 「えあ?」

 

 いきなり声を掛けられたことにより、間抜けな声が出る。待った、イケメンのお兄さんと言ったか?ヤベェ、反応しちまった。

 

 「貴方で合ってますよ、お兄さん」

 

 俺の視線は斜め下。目の前には俺に声を掛けたであろう女の子が。てか、お兄さん連呼すな。

 ・・・じゃなくて。アニメを見た俺なら分かる。この服装でこの声の主は絶対。

 

 「はじめまして!私は()()()()()()()()と申します!お兄さん、サポーターをお探しではないですか?」

 

 「ぐはぁっ!?」

 

 「お、お兄さん!?」

 

 俺は吐血する。このままだと原作ががががが。とりあえず仲間と相談して決めたいと答えておいた。

 




オリ主イケメン。
 リリルカはどうしようか?アンケートは二日ぐらい様子を見ます。


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価値を知っておけば億万長者だったのに・・・

アンケートの中間結果。オリ主、ベル、放置の順です!少し見ない間に三桁突破してビックリしました。ご協力感謝します!
 やばい、文章が難しいよう・・・。


 

 【怪物祭】とは、客の前でモンスターをテイムする催しで、都市の治安を守る【ガネーシャ・ファミリア】が主導で行っている。

 モンスターを地上に出すのはどうかと思うが、意外にもあのギルドが協力し、神々の楽しければそれでよし!というスタンスがあるだけで、別に反対意見はなかった。

 

 「まあ、どうでもいいけどね」

 

 「? 何か言ったアラン?」

 

 「いいや、それより今日も稼ごうか」

 

 そう、俺ことアラン・スミシーは祭りとは無縁のダンジョン・・・少しはあるかな?稼ぐためにそこに来ており、人混みが少なくなるであろう夕方、そこでラクシュミーと合流して祭りに参加することになった。

 

 「ええ、いっぱい稼ぎましょう!今日は冒険者は少ないのでモンスターが狩り放題ですよ!」

 

 変わったことと言えば、サポーターとしてリリルカ・アーデとパーティを組んだことだ。とはいえ、現時点では仮契約期間の様子見と言ったところ。そうなった理由としては、役に立つと思ったら採用してほしいと彼女から懇願されたため。

 原作主人公と関わるのは祭りの後。だからまだ原作崩壊しないはず!・・・隙を見せて盗まれてみるか?

 

 「うん!私もアビリティ伸ばしたいし、今日も元気に頑張ろー!」

 

 エリスの掛け声で出発した。

 ちなみに、リリルカとエリスは面識がある。エリスにとってリリルカは同じ派閥だった同胞で、だから【ソーマ・ファミリア】の現状を知っているエリスは、稼ぎの七割を提供すると言い出した。これには俺もリリルカも驚いた。そしてリリルカは反対したが、脱退したいのなら受け取ってほしいと説得した。

 リリルカは覚えてないが、エリスは昔彼女と組んだことがある。ボウガンを使用した戦い方もリリルカから見て覚えた方法だ。恩返しって意味もあると思う。

 

 「・・・金で本当に脱退できるのか分からんがなぁ」

 

 【ソーマ・ファミリア】を仕切るザニスは、悪人気質で根っからの守銭奴。更にいえば、リリルカの変身魔法を使って()()()()()()()()()と接近して誘拐と密売をし、金稼ぎを企んでいたほどに。なので易々と手放すとは思えない。関係ないが、末端の団員のエリスはよく抜けられたな・・・てっきり足元見られると予想していた。

 リリルカの脱退に関しては、スキルでもう一冊魔導書が出れば大丈夫だと思うが、都合よく現れるものじゃない。リリルカには我慢させるようで悪いが、原作通りにベルに頼るしかないと思う。

 俺は流れに身を任せることにした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 日時は祭り終了の数日後。

 二人のエルフがオラリオにある建物に入る。そこは魔導士が使う杖など、魔法に関わる魔道具を専門に扱うお店で、レノアという老齢の女性が経営していた。

 入店したのは【九魔姫(ナインヘル)】リヴェリア・リヨス・アールヴと、弟子の【千の妖精(サウザンド・エルフ)】レフィーヤ・ウィリディス。どちらも()()()()()()()を扱う規格外の魔導士。この店に訪れた理由は、遠征後に修理に出した杖を受け取るため。レフィーヤはリヴェリアの連れ添いである。

 

 「魔導士の杖は魔力を高め魔法の威力を変えちまう。魔法石はその要であたしら魔術師にしか作り出せない貴重品なんだよ」

 

 「分かってる。無下に扱ったりしないさ」

 

 どうやら修理とは魔法石の交換らしい。リヴェリアは店主から忠告を聞き入れた。

 

 「えっ!あれって魔導書(グリモア)ですよね!?」

 

 「まさかレノア、お前が作ったのか?」

 

 「いひひっ、あたしがそんな大それた魔術師(メイジ)かい?魔法大国(アルテラ)に知り合いがいてね。よしみで一冊分けて貰ったのさ」

 

 「す、すごい値段ですね・・・」

 

 レフィーヤは驚きで口が開く。魔導書とは魔法の強制発動書。高額で取引されても仕方のない代物なのだ。店に置いてあった魔導書は、競売に出されて現在億を超えていた。

 

 「あれ?これも魔導書ですよね?これは売らないんですか?」

 

 競売品のすぐ隣。もう一冊の魔導書に気が付いたレフィーヤは、店主のレノアに質問する。先ほどの物より厳重に保管されているので、信じがたいが億単位で取引される物より更に高価な物・・・なんですかね?

 

 「いひ、いひひ!いひひひひひひっ!それは非売品さ!そこに置いてある競売品の物よりも、()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 「「!?」」 

 

 突如笑いだし熱弁するレノア。これにはレフィーヤだけでなく、リヴェリアまでもが驚いた。それに、魔法大国を凌ぐほどの魔導書?ならば同じ魔法大国の──。

 

 「違うさ!ああ、違うとも!何せその魔導書を作成できる魔術師なんて、魔法大国にだっていやしないさ!」

 

 「馬鹿な・・・!では何故ここにある?かの魔法大国の魔術師にも作れない逸品なのだろう?」

 

 リヴェリアの指摘は至極もっともな意見。魔術師の中でも高名の者でしか作れない代物で、レノアほどの人脈ならば宛ぐらいあるだろう。でも彼女は分からないと言った。ここに置いてあるのはおかしい。

 その答えにレノアは、

 

 「()()()()()

 

 「え?」

 

 「これを売ってきた若僧は価値を知らぬ愚か者。その者に聞けば、団員が脱退のために用意してきた物らしい。だから、どこから入手したのか不明なのさ」

 

 ちなみに、買取価格は六千万さ。とレノアは付け加えた。金額の多さに驚くが、億を超えた競売品の値段を優に超えるから安い買い物じゃ。とも言った。レノアの言う愚か者がこの魔導書の価値を知っていたならば、たかが六千万で買えなかっただろう。眼鏡を掛けたあの愚か者にマジ感謝。

 疑問が残るが、用が済んだので店を出た。毎度ありと言ったレノアの喜色を含んだ声を残しながら。

 




愚か者。
 酒神の眷属にして団長。トレードマークの眼鏡を着用している。本来ならば、脱退した団員に難癖付けようとしていたのだが、六千万というあまりの金額に驚き見逃してやった。価値を知ってれば億単位で取引できたのに・・・まあ、価値を知れるのは魔術師だけだから仕方ない。


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世の中金が全てなんじゃぁぁぁぁい!!

アンケートの放置は外します。放置出来なくなったので!ベルかオリ主のどちらかに投票してください。今夜0時に締め切らせていただきます。現在リリルカはベルヒロインです。
 

外伝のあのキャラが不憫なので救います。かなり強引ですけどね(笑)


 

 祭りから二週間が経過した。バベルにいる美の女神は、俺にも視線を飛ばされていたから何かしら干渉してくると踏んでいたのだが、特になかった。てか最近、視線が飛んでくることが極度に少なくなった。よっぽどベルにお熱らしい。

 そうそうベルといえば、

 

 「今日もよろしくお願いします!」

 

 俺達とパーティを組むことになった。エイナさんが彼と組んでくれと頼んで来たからだ。まあ、ソロより複数人で行動した方が安心だしね。

 原作崩壊を防ぐため断ろうと思ったが、リリルカは現在こちらと組んでいる。だから断った場合、主人公はソロになりどこかで・・・いかん。それこそ原作崩壊で世界が終わる。

 仲間達には俺の説得で了承してもらった。ベルの成長速度はスキルの効果で俺より速い。足手まといになるのはむしろ俺じゃね?

 

 「今日はどうする?ベルがいるから下の階層?」 

   

 「ん~、様子を見ながら上げていこうかな。リリはどう思う?」

 

 「数日組んで分かりましたが、ベル様の成長速度は異常です。それこそ十階層に通じるほどです」

 

 だから大丈夫では?と言った。装備はヘスティア・ナイフとあの兎鎧。()()()()も使えていたから、素人目線でも大丈夫だと思う。

 

 「うん。なら前衛がエリス、中衛が俺とベル、その中衛を援護する形でリリ。これのフォーメーションで行ってみようか」

 

 俺達よりアビリティが高いエリスがメイン。取り零したモンスターを俺とベルが倒す。不意打ちなどをリリルカがカバー。完璧じゃね?

 俺の提案で全員が了承した。

 それとリリと言えば、何か盗まれると思ったけどそんなこともなく。エリスとベルの人柄に絆されているように感じた。俺は二週間も経ったのだ。脱退のための作戦を思い付いた。後は、もしものための軍資金が必要であることだけだ。

 現在のステータスは、

 

 アラン・スミシー(16) Lv.1

 力:(エリス入団時)E530→(二週間後の現在)D611

 耐久:(以下同文)E512→(以下同文)D601

 器用:F420→E503

 敏捷:E501→D610

 魔力:I0

 

 “魔法”

 

 “スキル”

 【言語理解(コミュニケーション)

 ・会話や文字の自動翻訳

 

 【三択からどうぞ(サード・ワン)

 ・三つの中から一つ獲得

 ・選んだモノの貯蓄と引出し

 ・一週間後に再選択

 ・貯蓄(1.篭手2.レイピア3.【刀剣乱舞】4.湿布(New)5.バンダナ(New))

 

 

 エリス・キャルロ(16) Lv.1

 力:(エリス入団時)B766→(二週間後の現在)B781

 耐久:B720→B739

 器用:A801→A830

 敏捷:A847→A865

 魔力:C642→C677

 

 “魔法”

 “速度増加(速まれ)”【加速(アクセル)

 

 “スキル”

 【犬人咆哮】

 ・獣化

 ・全能力値に高補正

 

 

 こんな感じだ。二週間あったとはいえ、エリスを見比べて、俺のアビリティはやっぱ伸びすぎだと思う。それとなくラクシュミーに聞いたけど、魔法はおろかスキルも発現してないという。この体スゲーってことで納得している。

 それとスキルで獲得した二つの湿布とバンダナ。この二週間は外れの選択肢で、以前より落差が激しい。もうすぐ一週間が経過する。何がでるんだろ。魔法が欲しいと常々思う俺だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 時刻はダンジョンから帰った夕方に移る。消費した回復薬を買おうと、ナァーザさんがいる【青の薬舗】に行ったのだが・・・。

 

 「おい小僧!金ならやるからこの調合書を儂等に寄越せ!」

 

 「これディアン。アランが困っているだろう」

 

 「ジジイ、いい度胸してる・・・!」

 

 老人の男神に詰め寄られていた。内容は例の調合書について。隣に控える小柄の少女はディアンケヒトを止めているが、視線はこちらに向いている。可愛いこの人がアミッドさん?聖女属性とか唆るぜこれは(某科学者風)

 

 「取り敢えず落ち着いて話をしましょう。丁度主神団長当事者も揃っているみたいだし・・・?」

 

 「うむ、そういうことなら・・・」

 

 「ああ、そうだな」

 

 ディアンケヒトは俺から離れる。爺さんに詰め寄られるなんて誰得だよ。

 

 「これは確認なんですが、欲しいのは調合書ですよね。何か凄いもんなんすか?」

 

 「凄いも何もあれがあれば従来の回復薬より遥かに優れた物が作れるのだ!」

 

 「更に言えば不治の病に対する特効薬も調合可能です」

 

 「うそん」

 

 「嘘じゃない・・・私も嘘だと思ったけど、実際作ったら本当だった」

 

 「アランよ。あの調合書はどこで手に入ったのだ?」

 

 うわぁ、どうしよ。スキルで手に入りましたー!なんて答えられるわけがない。神は嘘を見破れるとはいえ、簡単に話していいものじゃない。

 だから、

 

 「()()()()()

 

 「っ!!話せないだと!それは何故だ!」

 

 「話せば絶対に自身のステータスを明かすことに繋がるからです」

 

 「あの調合書は、そなたのステータスに関係してるのか?」

 

 「まあ、はい」

 

 やべぇ、アドリブだけどダメだろ。四人とも疑ってるよ。  

 まあ、疑いだけでも晴らそうか。

 

 「調合書は俺のです。決して悪事に手を染めて手に入れた物ではありません」

 

 「ふむ、嘘ではないな」

 

 「うむぅ・・・」

 

 俺の言葉に嘘はなかった。ミアハ様はいつものように善意の顔を浮かべる。いや善意の顔ってなんだよ。ディアンケヒトは眉間に皺を寄せて険しい顔をしている。

 

 「話を戻しましょう。あの調合書を譲ってくれませんか?もちろんそれなりの礼をします」

 

 「っ!アミッド、あれはアランがくれた物。もう私達【ミアハ・ファミリア】の所有「待った」ミアハ様?」

 

 「我らが作れる数なんてたかが知れてる。なのでディアンの所の方が相応しいと思っている自分がいるのだ。しかしな、私もこの店を経営する身。私の一存で決められない」

 

 だからアランが決めてくれ。善神ならではの葛藤がそこにあるのだろう。ミアハ様から決定権を譲られた。

 

 「・・・どんな結末になっても恨みませんか?」

 

 「約束する。この名に誓って。ナァーザも納得できないと思うが頼む」

  

 「ミアハ様・・・」

 

 ミアハ様は誓いを立てた。それなら俺の答えは決まっている。

 

 「分かりました。お譲りします」

 

 「クハッハッハ!小僧、人を見る目はあるようだな!」

 

 高笑いするディアンケヒトと、信じられないという視線を送るナァーザさん。普通に考えればどっちがいいのか決まってることだ。

 ま、俺には関係ない話だがな。

 

 「ただし条件があります」

 

 「ハッハッハ!何だ言ってみろアランとやら!」

 

 「ええ───十億ヴァリスで売りましょう」

 

 「「「「!?!?」」」」

 

 あまりの金額に四人は目を開いてこちらを見る。思わず笑い声を止めるほどに。

 

 「じゅ、十億だと?貴様、ふざけているのか・・・!」

 

 「いえいえ、大真面目ですよ」

 

 ハッハッハと俺は笑う。ディアンケヒトには悪魔に見えてるのではないだろうか?

 

 「それはいくらなんでも高過ぎです!せめて七割、いえ半額にしてくれませんか・・・?」

 

 五億ヴァリスとな?それはポンッと出せるものではないので分割払いになりそうだ。

 

 「お断りです。聞けば回復薬の常識を変える代物なんですよね?貴方達にとって、これは半額で見合う物なんですか?」

 

 「そ、それは・・・しかし、この調合書があれば救える命だってあります!」

 

 「でしょうね。でもそれって──()()()()()()()()()?」

  

 「なっ!」

 

 「き、貴様ぁ・・・!」

 

 アミッドの顔が怒りで赤くなる。金の亡者であるディアンケヒトと違って、アミッドは人命優先。彼女にとって許せない言葉のはずだ。

 ・・・よし、俺のターンはまだ続いている!

 

 「だから代替案を提案します」

 

 「「!!」」

  

 「啓示する案は──」

 

 ①作成可能な薬は【ミアハ・ファミリア】が独占する。

 

 ②【ミアハ・ファミリア】の借金を帳消しにする。

 

 ③【ミアハ・ファミリア】と俺にそれぞれ一千万ヴァリスを支払う。

 

 ④俺のファミリアを優先して治療する(もちろん治療費は支払う)。

 

 内容の説明

 

 ①の場合、上層で採れる素材や店で販売している素材など、簡単に手に入る素材で作れる薬ならば【ミアハ・ファミリア】だけで作成するというもの。つまり独占販売。

 

 ②の場合、言わずもがな。抱えている借金を消す。

 

 ③の場合、俺と【ミアハ・ファミリア】にお金を差し出すこと。一千万もあればたくさん素材を買えるだろう。

 

 ④の場合、【ラクシュミー・ファミリア】は探索系。これから深く潜れば潜るほど怪我だってする。その時は優先してね。

 

 「この四つを誓ってくれるのなら俺は差し上げますよ。もちろん変える気はないです」

 

 そう、タダではあげない。三者三様得する方法で解決しなければ。とはいっても【ディアンケヒト・ファミリア】の損が多いけど。

  

 「うぐぅ・・・!」

  

 「受け入れないのならこの提案は無かったことに──」

 

 「分かりました。その条件を呑みます」

 

 「アミッドォ!?」

 

 「ディアンケヒト様、仕方ないかと」

 

 うん、仕方ないね。ここで駄々こねられて断られたら本当に利益無しで損することに繋がる。それでも聖女様の英断だと思う。

 俺は最初に無茶苦茶な要求をして、次にハードルを下げるという交渉術を使った。

 【ディアンケヒト・ファミリア】に恨まれるだろうが、

 

 

 

 

 

 

 ───これで軍資金は手に入った。奴らが罠に掛かればいつでも仕掛けられる。

 




今日の0時にアンケートを締め切ります。それによってルートを決定します!


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大切なもの

アンケートの結果、ベルのヒロインとなりました。リリルカはこれよりベルルートに移行します。
時系列はリリルカが裏切るところです。


 

 「おい」

 

 「「?」」

  

 俺とベルは後ろから声を掛けられる。声の主はヒューマンの男。何の用・・・ああ。

 

 「お前らあのチビと連んでいるだろ?」

 

 「だからどうした?あんたに関係ないだろ」

 

 「バァカ、分かってねぇな。あのガキを嵌めるんだよ。協力してくれたら金をやるからよ」

 

 「なっ・・・」

 

 俺が少し強めに言い放つが、この男はそれを流し誘い、ベルは信じられないという顔をする。

 

 「な、何でそんなこと言うんですか?」

 

 「あ?てめえはただ頷いてればいいんだよ。それによぉ」

 

 「?」

 

 ベルを見ていた男は俺を見る。下卑た笑みを浮かべて、

 

 「あのガキと仲が良いキャルロを説得してくれよ。その方が幾分か楽になる」

 

 「──」

 

 こいつ何て言った?キャルロ・・・エリスを利用するだと?それはつまり、【ソーマ・ファミリア】と同じことをしろと俺の口からエリスに言うのか?

 

 「()()()

 

 「あ?」

 

 「失せろって言ったんだクソ野郎。エリスはもう、てめえらみたいなクズ共と縁を切ったんだ。それと、エリスに手を出してみろ。その時は──

 

 ──使える手を何でも使っててめえらを潰す

 

 「ひぃっ!?」

 

 底冷えするドスの効いた声に、男は間抜けな声を出して後退った。そして正気にかえった俺は、こんな声を出せたことに自分に驚いた。

 

 「で、でもよ!アーデは役立たずの能無しだぜ!?搾れるだけ搾って捨てちまえばいいじゃねぇか!」

 

 こいつはまだ言うかと思い、今度は殴ってやろうかと手が出そうになるが、

 

 「絶対に嫌だ・・・!リリは、僕達の仲間だ!」

 

 「そういうことだ。ほれ、さっさと失せろクソ野郎」

 

 「・・・ちっ!」

 

 男は俺達の言葉に去っていった。あいつの目を見れば分かる。絶対に何かしらの形で干渉してくるだろう。

 

 「・・・ベル様?」

  

 「リリっ、ああいや、ちょっとイチャモン付けられただけというか、僕達は大丈夫だよ」

 

 リリルカに誤魔化すが、彼女の顔色は優れない。そう言えばエリスはどこだ?

 

 「ア~ラ~ン♪」

 

 「そこか・・・て、どうしたやけにテンション高いなおい」

 

 顔がニヨニヨしている。正直不気味だ。

 

 「獣人の私にははっきりくっきり聞こえたよ~?」

 

 なんだろ、嫌な予感がする。

 

 「俺のエリスに手を出して見ろ。その時は──潰すぞ(キリッ)。いや~、か・な・り・愛されてますなぁ私!」

 

 「待て待て待て!いつ“俺の”何て付けた!?意味が変わってくるだろぉぉぉぉ!!」

 

 キャイキャイはしゃぐエリスに反論する。仲間だから手を出すなって意味で言ったのに、これじゃあまるで、どどど、独占欲が強いみたいじゃねぇか!?

 

 「え~、じゃあさっきのセリフは嘘なの?私って、いらない子なの・・・?」

 

 「っ!?いやそんなことないぞ・・・」

 

 「ん~?聞こえないなぁ?」

 

 こいつうっぜぇ・・・!

 

 「じゃあ行こうかベルとリリ。エリスは使い物にならなくなっちまった」

 

 「ハハハ。そうみたいですね」

 

 「フフ。ええ、三人で頑張りましょうか」

 

 「ちょっ、置いてかないで!ごめん、本当にごめんなさーい!」

 

 俺達はダンジョンへ向かった。原作通りだとこれから奴らが待ち構えている。それと同じならば、()()()()()()()()

 もう原作崩壊は恐いけど、仲間のためならとことんぶっ壊すと今決心を固めた。

 

 「リリ」

 

 「? はい?」

 

 「派閥を脱退させる策があるって言ったら、お前はどうする?」

 

 「「!?」」

 

 ベルとエリスが驚く。エリスはまさかあの手をと思っているようだがそれは違う。

 

 「文句なら後で聞く。お前には辛い思いをさせるぞ」

 

 リリルカと向き合い言い放つ。

 

 「──()()()()()()

 

 ーーーーーーーーーーーーーー

 

 ハッ、ハッ、ハッ。

 

 息を切らしながら迷宮を駆け抜ける。モンスターが比較的少ない場所を狙ったので、戦闘の手間は省かれる。これなら、安全に帰還できる。

 必要もない変身魔法を解除する。あの人の作戦通りならばこの辺りで───。

 

 「あ」

 

 何かに躓き転んでしまう。録に受け身を取れず激痛が走った。

 

 「嬉しいねぇ。狙い通りだ」

 

 足を掛けられたのだ。ベルとアランを誘った男。その男は詫び入れるぜと言いながら胸倉を持ち上げ、リリルカを思いっきり地面に叩き付けた。そして二回、三回と蹴りを入れる。

 

 「ハハハ!言い様じゃねぇか!そろそろ裏切る頃だと思ったぜぇ?」

 

 目論見通りだと言わんばかりに笑い、ペラペラ喋り出す。白髪と茶髪のガキがどうとか、偉そうに断りやがってとか。

 

 「まあいい。それよりも」

 

 男はリリルカのローブを剥ぐ。腕を踏み付けボウガンを回収し、魔石と金時計、高額の魔剣を強奪した。

 

 「また派手にやってんなぁ、ゲドの旦那ぁ」

 

 「おおー、早かったなカヌゥ」

 

 「・・・っ!?(【ソーマ・ファミリア】!?)」

 

 カヌゥと呼ばれた獣人と更に複数人がゾロゾロとやって来る。男・・・ゲドの協力者のようだ。

 

 「それよりもゲドの旦那。魔剣を譲ってくれないかい?」

 

 「ああ?これくらいの得があってもいいじゃねぇか」

 

 ゲドは断った。魔剣は残り数回で壊れるとしても、高額で取引される代物で、当然金が欲しいゲドは受け入れられなかった。

 それを見越してカヌゥは何かを投げる。

 

 「キ、キラーアント・・・!?」

 

 「て、てめぇ!嵌めやがったのか!?」

 

 「助けて欲しければ、魔剣だけでなく全部落としてくれませんかねぇ?」

 

 「~~~っ!!クソがぁ!!」

 

 ゲドは強奪した装備を投げ捨てた。それをカヌゥは確認して、リリルカに近付く。

 

 「助かりたいのなら、することは分かるよな?」

 

 「な、何を・・・!」

 

 「貸金庫に金を置いてあることぐらい知ってんだ!それを寄越しやがれ!」

 

 「うあ・・・!?」

 

 強引に鍵を奪ったカヌゥは、

 

 「じゃあなアーデ。最後くらい役に立てよ?」

 

 「な、何を」

 

 「俺達の囮になれ、サポーター?」

 

 キラーアントの群れにリリルカを投げ捨てた。

 リリルカは思う。冒険者は大嫌いだと。そんな冒険者から金品を奪って、脱退という自身の救済に使用する。モンスターに食べられるのが因果応報なら、別にこれでいいのかもしれない。優しく気遣ってくれたベル。いつも明るく引っ張ってくれたエリス。そして───

 仲間に優しいが、私でも引いてしまう作戦を提案する()()()()。いや、感謝しますよ?でも本当に脱退できるの?これ死んじゃわない?

 

 「作戦はもういいでしょう!?早く助けてください鬼畜のアラン様ぁーー!!」

 

 「了解って、酷い言い草だなおい」

 

 「これはアランさんが悪いですよ」

 

 「全部終わったら説教だからね」

 

 「・・・はい、すみませんでした」

 

 キラーアントの群れからリリルカを助け出し、俺達はダンジョンから脱出した。作戦はまだ継続中。だから終わりまで気は抜けられない。

 はりきっていこうか。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 「アーデよ、ダンジョンでは散々な目にあったらしいな。して、何か用か?」 

  

 目の前に居るのは【ソーマ・ファミリア】団長ザニス。生で見るのは初めてだが、雰囲気から悪人だと分かる。そして、

 

 「・・・」

 

 隣に居るのが酒神のソーマだろう。何やらぶつぶつと聞こえる。独り言が激しいな、おい。

 

 「ソーマ様!脱退を許可してください!()()()()()()()()()()()()ですから!」

 

 「ソーマ様に代わり答えよう。本当に用意したのか?」

 

 「はい!私の言葉に嘘はありません!貸金庫の鍵です!」

 

 ソーマに確認を取り、嘘を付いてないとザニスに伝えた。脱退に必要な金は一千万。嘘ではないならそれが手に入るということだ。

 

 「しかしだなぁアーデ?最近一人失って人手が足りないのだよ。だから、な?」

 

 「そんな・・・!?」

 

 つまり脱退は認められないという。一人失って、というのはエリスのことだろうな。

 

 「どうしてもと言うのなら・・・その倍を用意すれば考えてやろうじゃないか。ハッハッハ!!」

 

 どうしようもないクソ野郎だな本当に。反吐が出る。

 

 「行きましょうソーマ様。アーデ、分かったのならさっさと「待てよ」あ?」

 

 俺はソーマを連れて出ていこうとするザニスを引き留める。ザニスの許可をえられないのなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だからソーマに、

 

 「いいのか?そのまま退出して。酒が作れなくなるぞ?」

 

 「・・・なんだと?」

 

 俺の言葉に足を止める。ボサボサの長い髪から覗いている目は鋭い。腐っても神。思わず怯みそうだ。

 

 「あんたのファミリアは悪評だらけでな。そのせいでギルドからも目を付けられているんだ」

 

 「っ!耳を貸す必要はありま「うるさい」ソ、ソーマ様!?」

 

 ザニスの言葉を遮るのは意外にもソーマだった。いや、酒が関わってるのだ。意外でもなんでもなく、ザニスを煩わしいと感じたからだろう。

 

 「それがどうした?酒造りに関係ない」

 

 「分からないか?ならば言おう。

 ───()()()()()()()

 

 「「・・・は?」」

 

 二人の声が重なる。見に覚えのないことを言われたのだ。当然そうなる。

 

 「リリルカの持ち物全て貰ったんだ。でも多すぎてな。一人で持ちきれなかったんだ」

 

 「何が言いたい」

 

 「さっきお前の眷属から盗まれた。だから返せって言ってるんだ」

 

 ほら早くと急かす。ソーマはザニスに返してやれと言うが当たり前だが返せない。だって持ってないし。

 

 「あれれ~持ってないのぉ~?ならこれは窃盗に当たるよなぁ。それならよぉ、ギルドに報告するしかないよなぁ~!」

 

 「・・・それが酒造りになにか「分からないか?」」

 

 「お前らはギルドから目を付けられているんだ。元凶が神酒にあると知れば、真っ先にそれを差し押さえる。お前らは俺の物を奪った」

 

 だからギルドに報告したらどうなる?と、俺は不敬にも神を脅す。こんな神、最初から敬ってないけどな。

 ソーマは考える素振りを見せず、

 

 「お前の要望を聞こう」

 

 「んじゃ、リリルカの退団な」

 

 「分かった」

 

 即決した。ふぅ、酒を優先する神でよかった。ザニスは顔を赤くしてプルプルしている。まだいたの?

 

 「ザニス、退室しろ」

 

 「!? し、しかし「ザニス」わ、分かりました・・・」

 

 ザニスは命令通り部屋から退室した。ここに居るのは俺とリリルカ、そしてソーマだ。

 リリルカは服を脱ぎ、俺は後ろを向く。ソーマは改宗の手続きをしながら口を開いた。

 

 「・・・私は、どうすればいいのだ?」

 

 「あ?」

 

 「お前の言葉に嘘はなかった。ならば、遅かれ早かれ酒造りは禁止されるのだろう。簡単に酔ってしまう眷属に対して、どうすればよかったんだ?」

 

 「ソーマ様・・・」

 

 懺悔とも言える独白に俺は──。

 

 「知るかそんなもん」

 

 「「!?」」

 

 ぶっきらぼうに答えた。いや眷属野放しにしたのはソーマの自業自得だし、ぶっちゃけどうでもいいし。酒が造れない?訴えられる?ザマーみろ。

 

 「俺から言えることは、完成品という危険物を二度と造るな。そして───もう一度やり直せ、大馬鹿野郎が」

 

 「・・・」

 

 「もう終わったか?なら帰るぞ」

 

 「は、はい!」

 

 こんな所に長居したくないし。

 

 「アーデ。こんなこと言う資格はないが、体に気を付けなさい」

 

 「っ!!ありがとう、ございました・・・!」

 

 主神と眷属最後の言葉を交わした。リリルカは込み上げてくるものを必死に押さえていた。

 扉を開けてすぐ近くにザニスが居た。え?そこで待機してたのお前?

   

 「貴様ぁ、私を愚弄したこと覚えておけよ・・・!」

 

 今にも武器を抜くんじゃないかってぐらい殺気立っているが、

 

 「俺達が時間までに戻らなかった場合、仲間がギルドに駆け込むぜ?さっさとそこを退けろよクズ野郎」

 

 「~~~っ!!」

 

 晴れて【ソーマ・ファミリア】を退団したリリルカの顔は、とても明るかった。以前のような暗さはどこにもない。前へと向いたのだ。

 気になる改宗先はというと・・・

 

 「よろしくお願いします、ベル様!」

 

 「うん!よろしくね、リリ!」

 

 【ヘスティア・ファミリア】に入団した。ベルは危なっかしいから一人にしておけないという理由と、

 

 「アラン様には感謝してるんですけど、その・・・」

 

 「? その、なんだ?」

 

 「貴方と居たら鬼畜が移ります!それと、ベル様の教育に悪いです!」

 

 「ハハハ、はっ倒すぞクソガキ」

 

 うーむ、あの作戦で思ったよりもリリルカの株を落としたみたいだ。

 

 「ですが・・・」

 

 「?」

 

 「脱退させてくれたことには心から感謝してます。ありがとうございました」

 

 「ふっ、そうかい」

  

 ま、いいか。

 




リリルカ
 すんなり改宗できた。アランを心の底から感謝しており必ず恩返ししようと思っている。恋愛感情?ないよそんなもん。だって死にかけるぐらいヤバい作戦立てやがったし。それよりもベルという、冒険者らしくない冒険者が気になるようだ。

ソーマ 
 原作より早い段階で変わりつつある。まずは眷属をどうにかしよう。
ザニス
 あの男は絶対殺す。しかし、恩恵を剥奪される日は近い。


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少年は悩む

少ないかもです


 

 リリルカが【ヘスティア・ファミリア】に入団して数日後。ベルがボロボロになって現れるようになった。リリルカが理由を聞いてもはぐらかす一方で、

 

 「(修行が始まったな・・・)」

 

 俺は原作を思い出す。この時期ベルがボロボロになる理由は、【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインとの修行以外他にない。

 ということは、もうすぐミノタウロスと戦闘が始まり、ランクアップを果たすということだ。俺は追い抜かされた時のことを思い、少しばかり焦燥心に駆られる。

 俺もランクアップしてぇなぁ!!

 

 アラン・スミシー(16) Lv.1

 力:D611→D634

 耐久:D601→D622

 器用:E503→E540

 敏捷:D610→D630

 魔力:I0

 

 “魔法”

 “スキル”

 【言語理解】

 ・会話や文字の自動翻訳

 

 【三択からどうぞ】

 ・三つの中から一つ獲得

 ・選んだモノの貯蓄と引出し

 ・一週間後に再選択

 ・貯蓄(1.篭手2.レイピア3.【刀剣乱舞】4.湿布5.バンダナ)

 

 エリス・キャルロ(16) Lv.1

 力:B781→B786

 耐久:B739→B742

 器用:A830→A836

 敏捷:A865→A870

 魔力:C677→C680

 

 “魔法”

 “速度増加”【加速】

 

 “スキル”

 【犬人咆哮】

 ・獣化

 ・全能力値に高補正

 

 相変わらずの伸び率だ。きっかけさえあれば半年以内にランクアップできるんじゃないかな。ベルと組んだら向こうからトラブル来るし。まあ、下手したら死にかけるんですが。

 エリスの場合は伸びにくくなった。理由としてはここらが打ち止め、つまり成長限界だとラクシュミーが言っていたのだ。その事にショックを受けていたようだが、ランクアップが近付いている励まされ、むしろモチベーションが向上した。

 エリスがランクアップしたら、原作で見せたあの地獄のような中層探索も楽になるのではないかと思う。まあ、分断されたら終わりなのだが。

 

 「アランー出発するよー!」

 

 「え、ああ分かった!今行くよ」

 

 おっといけね。考えすぎてた。取り敢えず今日を生き抜くことに集中しないと。俺は仲間のもとへ向かった。

 

 

 

 ───だんだんと、その日が訪れようとしていた。

 

 ーーーーーーーーーーーーーー

 

 【豊穣の女主人】にて。

 

 「なんで皿洗いさせられてるんですか!?」

 

 「あーあ、まんまと引っ掛かったなぁ」

 

 「ごめんなさーい、私の仕事を手伝わせちゃって!」

 

 街中で偶然?出会ったシル・フローヴァに、俺とベルは仲良く皿洗いをさせられていた。助けてくださいって言葉にベルが釣られた形で。

 ・・・なんで俺まで?別に用事なんてなかったけどさ。

 

 「おら、とっとと働くニャ白髪頭、茶髪頭」

 

 「少年達はシルに売られたニャ、観念するニャ」

 

 アニャクロコンビにちょっかい出されつつも、仕事をテキパキこなす。こちとらホームで皿洗い担当なんだよ!WEB予告の出番盗むぞオラ!

 

 「二人とはいえ、この量は凶悪だ。私も手伝います」

 

 「どうもありがとう。え~と?」

 

 知っているが知らないふりを決め込む。そういえばベルは初対面なのかな?ナイフ盗まれてないし。てことは、リリルカはシルから脅されてないのか。

 

 「リュー・リオンといいます。うちのシルが申し訳ありません」

 

 「俺はアラン・スミシー。困った時はお互い様ってことで」

 

 「ありがとうございます」

 

 リューが加わり三人による皿洗いが始まった。俺とリューが洗って、ベルが水気を拭き取って片付ける。二人で行うより効率的だった。

 そんな折り、

 

 「クラネルさん、悩み事ですか?私でよければ聞きますよ」

 

 「え?」

 

 「この際だから喋っておけよ。この先ズルズルと引きずるよりはマシだろ」

 

 そうは言うが、理由は恐らく・・・

 

 「ランクアップって、どうやったら出来るんですか?」

 

 「・・・偉業を成し遂げればいい。人も神々さえも讃える功績の達成を」

 

 ベルの質問にリューが答える。こんなことを聞いた理由はただ一つ。【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインがLv.6に到達したからだ。憧憬に追い付けない焦りから、ランクアップの方法を知りたがっていたのだろう。

 

 「己自身より強大な相手の打破し、上位の経験値を獲得する。これがランクアップの条件です」

 

 ランクアップとは心身の強化で器の昇華と等しく、神々の恩恵は難関な試練を乗り越えた者にしか資格を与えられない。

 

 「でも、強敵と戦ったら普通は負けちゃうんじゃ・・・」

  

 「それを埋め合わせるのが技と駆け引きです。また、パーティを組んで自分達を補完します」

 

 もちろん時間は掛かる。パーティ戦の場合、経験値は分散される。一人で得られたはずの経験値が、人数によって半分、また半分と減っていく。

 

 「貴方が本当に強くなろうとしているのなら、今のパーティを大事になさい」

 

 「はい」

 

 リューは老婆心ですがと付け加え、

 

 「貴方は冒険者だ。貴方が望むものは恐らくその先でしか手に入らないと思います」   

 

 「は、はぁ・・・」

 

 「あまり気にしないでください。私の勘はよく外れる」

 

 そのセリフを最後に、俺達は黙々と作業に取り掛かった。そして、

 

 「ベルさんは冒険しなくていいんじゃないでしょうか。無理はなさらないでください。それだけは伝えたくて」

 

 「・・・」

 

 「すみません。今さら怖気付いちゃって」

 

 『貴方は冒険者だ』『冒険者は冒険しちゃいけない』それはきっと、矛盾の意味を持っている。二人の店員の言葉はしっかりと、ベルの心に刻まれたのだった。

 

 

 

 

 ──以上、途中から蚊帳の外だったアラン・スミシーがお送りしました。

 




次回、シン・ヒロイン


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シン・ヒロイン

誤字脱字報告ありがとうございました!感想と高評価ありがとうございます!
読み応えがないですけど、そこは脳内補完でお願いします!


 

 ①【癒光の羽衣】(回復魔法)

 ②タオル

 ③スマートフォン(iPhone)

 

 久し振りのスキルに、久し振りの登場(メタい)のラクシュミー。

 ラインナップが豪華である。

 

 「すまーとふぉんが何なのかは知らぬが、①を選べ。私の勘がそう囁いておるのじゃ」

 

 「最初からそのつもりだけど・・・」

 

 神の勘は超高確率で当たる。無視してたら痛い目に遭うので、真面目に聞き入れるようにしている。

 ラクシュミーが①を選べということは、この魔法が鍵になるということなのだろうか。回復魔法だから、誰かが瀕死の重症を負うとかか?

 俺は最悪の想定をして①を選んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 バベルにて。

 

 「───私に貴方の輝きを見せなさい」

 

 妖艶な女神が見据えるのは、白い輝きを放つ兎の少年。眷属から報告が届き、見定めるために今日仕掛けるのだ。

 そして。

 

 「あの子と行動を共にするなら、貴方にも試練が必要よね」

 

 隣にいる、()()()()()()()()()()()()()()()()()。少年と会うまでは、狙いを定めていた第一候補。

 新たに第一候補になった少年と、第二候補になった彼。その二人が今後どんな化学反応を示すのか。

 

 「ウフフ、私って案外欲張りなのね」

 

 女神は美しく微笑んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 そんな女神の思惑は露知らず。

 

 いつだ?いつなんだ?いつ来る?俺は周囲を警戒していた。あの【ロキ・ファミリア】が今日遠征に出発した。遠目で見ても女性陣は綺麗だった・・・じゃなくて!

 今日あのイベントが始まる。ベルが因縁の相手と出会い冒険を果たすあれが。それなのに・・・

 

 「今何階層だっけ?」

 

 「? もう十階層に到達しますよ」

 

 リリルカに、こいつ頭大丈夫か?という視線を送られる。最近、俺に対する攻撃力が増してきた。

 原作だと九階層、正規ルートのE-16。それを()()()()()()()()

 どうなってる?俺の存在で原作が崩壊してる?それとも───。

 

 「何かおかしくない・・・?」

 

 「ですよね。モンスターが異常に少ないですし」

 

 違和感を感じ取ったのはエリスとベル。獣人故に感覚が鋭いエリスと、不躾な視線のせいで視線に敏感なベルが、モンスターの少なさに苦言を切り出した。

 

 「言われてみれば・・・」

 

 リリルカも二人の意見に賛同し、辺りの警戒をし始める。俺はというと、

 

 「・・・ここで始めるのか」

 

 誰にも聞こえない声量で呟いた。十階層の広いエリア。出入り口は十一階層へ続く正面と、九階層へ戻る背後の二つだけ。

 気付けば俺達は背中合わせになっていた。

 

 「・・・匂いが近付いてくる」

 

 「・・・ちなみにどこから?」

 

 「()()

 

 ギャオァァァァッ!!

 

 ヴゥモァァァァッ!!

 

 「「「「!!」」」」

 

 遠くから鳴り響く二体の咆哮。一体は絶対ミノタウロスだ。聞いたことがあるからまず間違いない。もう一体はなんだ?

 

 「ベル」

 

 「は、はい」

 

 「もうすぐ【ロキ・ファミリア】が来る。憧れにもう一度守られ命を助けられるのと、己を賭して立ち向かうのとどっちがいい?」

 

 発破を掛けた。原作だと恐怖で立ちすくみ、リリルカが怪我を負う。不安定な状況の中、それだけは避けたかった。

 

 「ぼ、僕は・・・!」

 

 「【剣姫】に憧れたんだろ?冒険しようぜ」

 

 「!!」

 

 ベルは覚悟を決めた。ミノタウロスはベルに任せるとして・・・。

 

 「私達は前方の敵だよね」

 

 「ちょっ、皆さん正気ですか!?」

 

 「正気も正気。すでに囲まれてるから逃げ場はない。隙を作るから、リリは念のため【ロキ・ファミリア】を呼んで来てくれ」

 

 「っ!!あーもう!分かりましたよ!また貴方に乗せられますよ!」

 

 よしよし士気は充分だな。

 足音はすぐ近くまで迫り、霧の向こうには巨大なシルエットが映し出される。

 

 ───俺達は冒険をする。

 

 ーーーーーーーーーーーーーー

 

 「【加速(アクセル)】!!」

 

 「【ファイアボルト】!!」

 

 初手はエリスとベルの魔法で始まった。速攻で繰り出される魔法を囮に、リリルカを逃がし自分達は確実に攻撃を当てる方法を取ったのだ。青白く光るエリスに続いて、俺も走り出す。彼女は一瞬で到達していた。

 

 「インファントドラゴンか。面倒な相手を連れて来やがって!」

 

 シルエットでなんとなく気付いていたが、やっぱり迫力が違う。一瞬でも臆したら奴に呑まれそうになる。

 

 「ハァッ!!って、硬ぁっ!?」

 

 「オマケに強化種かよ!なに考えてんだあの女神は!!」

 

 それとも眷属か?どちらにせよ頭がおかしい。

 

 「ギャオァッ!!」

 

 「っ!! ぶねぇ!」

 

 前足での踏み込みを躱す。重量のせいか地面が陥没していた。それにより生じた隙を俺は逃さない。

 

 「よし、通じた!」

 

 エリスの斬撃はかすり傷が出来るだけで録に入らなかったが、俺のレイピアは致命傷に至らないものの、硬い皮膚を深く切り裂いた。

 

 「ハァ、ハァ、ハァ・・・くそ」

 

 「アラン大丈夫?」

 

 「大丈夫だとカッコつけたいけど・・・正直キツイ」

  

 攻撃を当てるだけでこんなに疲れるのか。いや、【刀剣乱舞(ソード・ダンス)】を常時発動しているからか。例えるなら全力疾走を維持している状態。

 インファントドラゴンは、俺のレイピアを警戒して動こうとしない。無駄に動き回らず反撃を狙っているのだろうか。モンスターのくせに嫌らしく小賢しい。

 

 「私がレイピアを使う?アランよりアビリティが高いし」

 

 「いやそれよりも──」

 

 俺はエリスに耳打ちした。この作戦が成功すれば勝てる。

 

 「ゥゥゥ・・・!」

 

 「【癒光の羽衣】」

 

 新たに獲得した魔法を使用する。効果は常時回復の付与魔法。精神力が尽きるまで、身を包む癒しの羽衣は消滅しない。

 今俺はレイピアを持っていない。俺は決定打を作るための囮。本命は───。

 

 「グァァ!!」

 

 「っ! うわっ!?」

 

 危ない危ない、集中しろ!姿を隠しているエリスに繋げるために!

 

 反撃姿勢を解いて巨体を縦横無尽に動かす。あまりにも激しい動きに地面が抉れる。俺の体にもかすり傷が無数に生まれるが、

 

 「・・・すげぇなこの魔法」

 

 一瞬で治る。破格の効果を誇る【癒光の羽衣】は絶対当たりだ。恵まれた幸運に感謝。

 躱す躱す防御躱す躱す躱す躱す防御。これを繰り返し、

 

 ───そして。

 

 「グギャァッ!?」

 

 「あれだけ暴れ回ったんだから、そうなるに決まってんだろ」

 

 インファントドラゴンの後ろ足が、罅が入った地面に深く沈み込んだ。

 これが俺の考えた作戦。

 

 『暴れさせて床を踏み抜かせる』という作戦と言えないような至ってシンプルなもの。それでも効果あったようだ。

 ドラゴンは前足に力を入れて起き上がろうとするが、

 

 「【加速(アクセル)】!!」

 

 エリスの魔法を乗せた全力が、前足の腱を削ぎ落とした。

 

 「グギャァァァ・・・」

 

 「さーて覚悟は出来てんだろうなぁ、トカゲ野郎」 

 

 「・・・アラン動けるの?」

 

 「無理。だからエリスに任せる!」

 

 あれだけ動いたんだ。疲労のせいで体力も限界で、初めての魔法で精神力が底を尽く寸前だ。

 最後の力を振り絞り、

 

 「ギャア!?」

 

 魔石があるであろう胸部に投擲した。投擲武器?もちろん収納していたレイピアさ。時間稼ぎにあれは邪魔だもん。

 

 「【加速(アクセル)】!!ヤァァァッ!!」

 

 加速されたエリスは突き刺さったレイピアを蹴り飛ばし、インファントドラゴンの魔石ごと穿った。

 

 

 

 

 

 




戦闘描写難しいよぉぉぉぉぉぉ!!コツを教えてくださぁぁぁい!!(全力土下座)

 【癒光の羽衣】
 ・回復付与魔法
 ・精神力が尽きるまで、傷・体力・毒・呪詛を癒し続ける 

 デメリットとは、速攻で癒せない。魔力に依存するため現段階の効果はショボい。聖女みたいに複数同時は無理。今後に期待。
   
 


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バーニング・ファイティング・ファイター

前回の戦闘シーンは修正入るかもしれません。その場合は報告いたします。


 

 「ただいまなのじゃー」

 

 「お帰りラクシュミー」

 

 「お帰りなさいラクシュミー様・・・どうでした?」

 

 ぐったりと元気を失くしたラクシュミーが、我らがホームに戻ってきた。理由は明白、今日開催された【神会(デナトゥス)】での二つ名命名式である。

 本来ならば、上級冒険者を眷属に持つ神にしか参加権は与えられないのだが、先の戦いでエリスがランクアップを果たしたことで認められたのだ。

 

 「うむ、今から追って話すのじゃ」

 

 

 

 回想

 

 堂々と優雅に道を歩く女神がいた。その振る舞いは神々さえ目を奪われるほどに。瑞々しい褐色肌。衣装越しでも分かる柔らかな肢体。顔からにじみ出る余裕の表情。

 そう、眷属二名の新興にして零細派閥の主神、女神ラクシュミーである!

 

 「(・・・ヤバい、吐き気がする。ストレスで胃が痛い。待って私死ぬの?天界逝き?原因は二つ名命名式のストレスで?そんな理由で死にたくないよぉぉぉ!助けてマイ・アラン!!)」

 

 内心エグいことになってるラクシュミーだが、下界の子達よりも策略に長けている神だけあって、見事な鉄仮面(ポーカーフェイス)を決める。事実ここまで誰にも感づかれていない。

 ラクシュミーは適当な席に座り、神々に社交辞令の微笑みを送る。それだけでアホ共(男神達)は歓喜した。

 それから次々と神が席に座り、

 

 「第ン千回【神会】を開かせて頂きます。今回の司会進行役はうちことロキや!よろしくなー!」

 

 「「「「イェーイ!!」」」」

 

 ロキと言えば、フレイヤと双璧を成す最大派閥の一角。隣の神に聞けば、遠征で眷属がいなくて暇だから請け負ったとか。

 そのロキの進行により、まずは情報交換が始まり、意外な神物が挙手をした。

 

 「いいだろうか?」

 

 「んー?・・・て、()()()かいな!?」

 

 「「「「なぁぁぁぁにぃぃぃぃ!?!?」」」」

 

 誰だあの神?と疑問を抱いていた多くの神々が思う中、ロキはソーマだと特定した。無類の酒好きのロキは完成品が飲みたいがために、無用心にも一度ソーマのホームに侵入している。その時顔を知ったのだ。

 ソーマは立ち上がり、

 

 「ロキの言う通り俺がソーマだ。俺は己の趣味のために交流を断ち、派閥経営を全て眷属に任せていた。しかし、()()()と出会ったことで自分を見つめ直しこれまでの考えを改めた。今は生産系から探索系へとシフトして頑張っている。主神としても探索系としても初心者だが、ご指導ご鞭撻のほどよろしく頼む」

 

 「お、お~。そうかそうか。それで?()()()とやらは誰なん?」

 

 「内緒だ」

 

 ソーマは言いたいことだけ言って席に座った。神々は当然置いてけぼりになった。

 

 「(アラン、じゃよなぁ・・・)」

 

 ラクシュミーはソーマが変わったことに検討が付いていた。だってソーマと接近した男って、最近だとアランぐらいだし。

 

 「私もいいだろうか」

 

 「んぉ?なんや、これまた珍しい神やないか」

 

 ソーマに続いて挙手をしたのは、薬を販売する生産派閥のミアハ。経営で忙しいのと、眷属が一人だけしかいないので長らく参加してなかったのだ。

  

 「私からはちょっとした宣伝だ。()()()からの贈り物である調合書にあった薬の量産及び販売の目処が付いた。明日から店頭に並ぶのでぜひ訪ねて欲しい」

 

 「ある男?調合書?それになんや、薬って?」

 

 「なに、()()()()()()()()だ。従来の回復薬の三倍を引き上げる効力がある。値段はなんと・・・」

 

 「「「「なんと・・・?」」」」

 

 神々はごくりと喉を鳴らす。いやミアハよ。ノリがいいなあんた。

 

 「上級回復薬と同じだ!」

 

 「「「「安っしぃーーーー!!」」」」

 

 「まとめ買いでさらに300ヴァリス値引きだ!」

 

 「「「「お買い得ぅーーーー!!」」」」

 

 盛り上がりを見せた。

 

 「結局、ある男って誰なん?」

  

 「内緒だ」

 

 「お前もかいぃぃぃぃ!!」

 

 ミアハもミアハで、言いたいことだけ言って席に座った。

 

 「(これもアランじゃなぁ・・・)」

 

 スキル【三択からどうぞ(サード・ワン)】によって、確か何でもいいと自分が言って、アランは調合書を召喚させていた。とんでもないなあいつ。

 

 「いいだろうか」

 

 「な、なんや?」

 

 眼鏡を掛けた無駄にダンディな男神が立ち上がる。ロキと、ついでにラクシュミーは警戒する。

 

 「ラキアがまた攻めてくるらしい。オラリオに攻め込む準備が完了したと眷属が言っていた」

 

 以上だという言葉で占めた。

 

 「・・・へ?終わり?」

 

 「終わりだ」

 

 「そ、そか。それは・・・   

 

 

 例の男は絡んでないんかぁぁぁぁぁぁぁい!!

 

 ロキはあらんかぎりの声量でツッコミを入れ、ラクシュミーはゴツンと机に頭をぶつけていた。

 

 

 

 色々あった情報交換は筒がなく終わり、【神会】の醍醐味である命名式が開催された。

 【美尾爛手(ビオランテ)】【絶†影(ぜつえい)】【神々の嫁(俺達の嫁)】など。最後は普通に却下された。

 

 「んじゃ、次は・・・ラクシュミーのところか」

 

 「(き、来た・・・!)」

 

 エリス・キャルロ。元【ソーマ・ファミリア】団員で改宗。ランクアップにおける所要期間は六年。

 

 「か、可愛い顔だな・・・」「犬耳がよく似合ってる」「この表情、とてもいじらしい」「彼女を躾たい」「むしろ躾られたい!」「ならばこの娘の二つ名は・・・」

 

 「「「「【神々の犬(俺達のいぬ)】」」」」

 

 「駄目に決まっとるじゃろがぁぁぁぁ!!」

 

 鉄仮面(ポーカーフェイス)、ここに崩れる。

 急に声を荒げたことで、某幼神のツインテールが激しく揺れた。

 

 「そうだぞ。流石におふざけが過ぎる」

 

 「同じく」

 

 ミアハとソーマが反対し、

 

 「せやなぁ、こんな可愛い娘をお前らにやりとうないわ」

 

 ロキも反対することで、ようやく神々は渋々引き下がった。ロキの場合は下心で助けたのだが、ラクシュミーは変えられたことに安堵した。

 それでも大喜利大会が続けられる気配を感じたラクシュミーは、

 

 「こ、この通りなのじゃ・・・」

 

 自慢の胸を強調させながら頭を下げた。実をいうと、こういう仕草に慣れてない。自身の褐色肌をトマトのように真っ赤に染め上げた。

 神々の反応はというと・・・

 

 「「「「ま、まぁ?そこまで言うなら?」」」」

 

 彼女に影響されて、思春期ならではのピュアな反応を見せた。そんなアホ共に永久凍土もかくやの視線を送る女神達であった。

 

 

 

 「んじゃ、この娘の二つ名は【豊犬(ほうけん)】で決まりや!」

 

 「「「「異議なし!!」」」」

 

 その後はヘスティアがロキに弄られ、フレイヤが助けるという珍事が起きた。ヘスティアより勘のいいラクシュミーは、ベル・クラネルがフレイヤに狙われていることを察した。

 フレイヤは一瞬だけラクシュミーの方を向き、僅かに微笑んだ気がした。 

 

 

 

 回想終了

  

 「これが【神会】の出来事じゃ」

  

 「お、【神々の犬】・・・?」

 

 「か、神々やべぇ・・・」

 

 俺とエリスは戦慄した。

 

 ソーマを改心させ、ミアハに知恵を授けた「あの男」はオラリオ七不思議となった。

 

 

 




ステータスは次回書きます。

ソーマ
 生産系から探索系となった理由は、ギルドの指示によるもの。酒を当分造らない?ならば働け。

ミアハ
 回復薬の上位互換を作成。販売に時間が掛かったのは、品質及び安全かどうかを確かめる治験などをしていたから。


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くんかくんか

あんまり深くないので、読んでも読まなくてもどちらでもいいです。
 


 

 日時としてはベルとエリスのランクアップのお祝いでの話。宴会中、ベルはシルとリューから褒められて喜び、リリルカは私も早くしたいと羨ましがっていた。俺もリリルカと同じ気持ちだ。それを察したのか、隣のエリスによしよしされた。お酒に酔っていたのかな。

 ちなみに俺とエリスのステータスはこんな感じだ。

 

 アラン・スミシー(16) Lv.1

 力:D634→D688

 耐久:D622→D671

 器用:E540→E597

 敏捷:D630→C700

 魔力:I0→H105

 

 “魔法”

 

 スキル

 【言語理解(コミュニケーション)

 ・会話や文字の自動翻訳

 

 【三択からどうぞ(サード・ワン)

 ・三つの中から一つ獲得

 ・選んだモノの貯蓄と引出し

 ・一週間後に再選択

 ・貯蓄(1.篭手2.レイピア3.【刀剣乱舞】4.湿布5.バンダナ6.【癒光の羽衣】)

 

 【断捨離還元(リサイクル)

 ・スキルによって入手したモノを捨て自身の能力値に還元する

 ・価値によって変動

 

 

 

 エリス・キャルロ(16) Lv.2

 力:B786→I0

 耐久:B742→I0

 器用:A836→I0

 敏捷:A870→I0

 魔力:C680→I0

 

 “発展アビリティ”

 狩人:I

 

 “魔法”

 “速度増加(速まれ)”【加速(アクセル)

 

 “スキル”

 【犬人咆哮】

 ・獣化

 ・全能力値に高補正

 

 【貴方想奏(フォーユー)】  

 ・ーーーー

 ・特定の人物を想うほど効果上昇

 ・魅力無効

 

 ステータスはランクアップしなかったものの、かなり上昇した。さらに【三択からどうぞ】と連動するスキルも(今更)手に入れたので満足だ。効果の程はまた今度。

 また、エリスの場合はランクアップを遂げたので、発展アビリティである【狩人】を手に入れ、更に謎のスキルまで手に入れていた。ーーーーって意図的に隠してるの何?ラクシュミーよ、早熟じゃないよね?なんか最近エリスの雰囲気変わった気がする。大人っぽい余裕が生まれたみたいな。スキル名から察するにあいつ恋でもしてるんか?

 それとどうでもいい話だが、原作通りモルドさんはリューさん達にしばかれていた。ミア母さんのお叱りに内心ビクッとしたのは内緒だ。

 

 話しは変わる。

 

 【ヘファイストス・ファミリア】とは、鍛冶を司る女神ヘファイストスを主神として構成される生産系派閥。鍛冶の腕もさることながら、団長の椿・コルブランド筆頭に実力も折り紙つきだ。

 都市内外問わず有名な【ヘファイストス・ファミリア】に、俺はインファントドラゴンとの激闘により損傷した武器と防具を買いに来た。

 

 「すいません。この武器と防具って、同じのが他にありますか?」

 

 「少々お待ちください。製作者は・・・あ~あの子か、これはもうありませんね」

 

 やっぱりか。前買った時も店員が似たような反応してたから察していたが、正直これ以外使いたくないんだよなぁ。かなりしっくりくるし。

 

 「じゃあ他のを探してみます」

 

 俺は武具コーナーへと足を運ぼうとしたのだが、

 

 「・・・もしよければ、製作者に会ってみませんか?」

 

 「え?」

 

 「もしかしたら同じのを作ってもらえるかもしれませんので」

 

 「いいんですか?俺としては嬉しいけど・・・」

 

 本当に大丈夫か?俺が悪人だったらヤバいぞ。向こうはLv.2みたいだから返り討ちにあうけどさ。

 

 「アハハ、大丈夫ですよ!お客さんはイケメンですから!」

 

 「え、何その判断基準」

 

 イケメンなら許されるあれか?

 

 「冗談は置いておいて、私の名前を出せばいけますよ」

 

 店員曰く、この製作者は友人なのだとか。謎の信頼を得たことにより、製作者と場所を教えてもらった。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーー

 

 「ごめんくださーい!貴方のご友人の紹介で来ましたー!」

 

 工房の扉をノックする。鍛治場特有の武具を造る金属音がしないので、作業中という訳ではないと思うが・・・。

 主は留守にしてるのかな・・・おや?

 

 「眠りを妨げる無礼者は誰?」

 

 「俺です」

 

 「本当に誰?」

 

 ごもっとも。

 現れたのは長い黒髪に本来のものなのか、単に寝不足なのか分からない目元の隈。小動物っぽい小柄なヒューマン。少々無防備じゃないかと不安になるタンクトップと短パンの服装。

 この人が俺の使用した武具を造った鍛冶士シトリー・ハンナなのだろうか。

 

 「俺はアラン・スミシーと言います。貴方の武具が損傷したので修理して欲しいんですが・・・」

 

 「私の武具・・・?」

 

 「これですね」

 

 俺は横に置いていた箱を持ち上げた。シトリーはその箱を覗き込む。

 

 「・・・かなり損傷してるね。何と戦ったの?」

 

 「強化種のインファントドラゴンと少々」

 

 「よく勝てたね」

 

 「仲間が居たので」

 

 あれは死ぬほど大変だったなぁ。あの後、二人とも精神枯渇で倒れそうな所に【ロキ・ファミリア】に助けてもらった。生ヒリュテ姉妹にテンション上がったね。

 

 話しは戻る。

 

 「修理・・・いや、新調しようか」

 

 「やっぱ無理っすかね」

 

 「うん。こんなにボロボロならね」

 

 着いて来てと言われ、工房の中に入る。足場には沢山の物で溢れており、隅っこに小さなベッドがポツンと置かれていた。片付けが苦手なタイプか。

 

 「採寸する。上着脱いで」

 

 「あ、はい」

 

 指示通り上着を脱いでシャツ一枚になる。地面に投げ捨てていたであろうメジャーで測った。

 

 「ガッシリしてるね」

 

 「鍛えてますから」

 

 これ本当。朝早く起きて運動してるんだ。恩恵に頼りきりになるのもアレだし。

 測定終わった後、シトリーは興味深そうに俺の体を触る。あ、やめ、ちょっとくすぐったい。

 

 「すんすん」

 

 「!? シ、シトリーさん!?」

 

 「・・・落ち着く。あと呼び捨てでいい」

 

 いきなり匂いを嗅ぐな!あと抱き付くな!それに落ち着くってなんだよ。

 

 「だめ?」

 

 「ぐっ」

 

 上目遣いやめて。理性が飛んじゃう。

 

 「専属契約結ぶ?」

 

 「いきなりだな。理由を聞いても?」

 

 「友達が紹介したのと、お兄ちゃんに似てて落ち着くから。次も抱かせて」

 

 言い方よ。途端にいかがわしくなっちゃうからやめよ?友達とはあの店員のことか。

 

 「装備は二日後にできるから、その時に」

 

 「分かった。だから離れて?」

 

 「あと、いちじ、かん・・・ZZZ」

 

 「え?もしかして立ったまま寝たの?流石鍛冶士器用だねぇ」

 

 呑気なこと言いながらシトリーをベッドに投げた。彼女は寝不足だったようだ。

 欲を言うなら、ヴェルフみたいに熱い思いを語ってほしかった。そうすればマイペースな性格の他、シトリー・ハンナという鍛冶士の人となりを知れたのに。

 




シトリー・ハンナ(18)
 ランクアップを果たして半分引きこもり生活をしており、客を選ぶ性格。これでも警戒心が強く身持ちが固い。オリ主を昔亡くした兄と重ねているので(オリ主限定で)ガードが緩くなった。過去はもっと仲良くなってから。別に同行しない。

次回中層探索


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絶望から希望へ 鍵は【鼻】

 誤字脱字報告&高評価&感想ありがとうございます!
 評価はかなり下がりましたが、これからも投稿を続けます!文章を鍛えるためですから。




 

 「確認します」  

 

 中層手前の十二階層で、リリルカは仲間達に作戦の確認をする。俺の装備は一新されてはいるが、デザインは変わらなかった。その代わり性能は上がっているとのこと。

 ちなみに全員サラマンダー・ウールを着用している。

 

 「まずは前衛にヴェルフ様とアラン様。中衛にベル様とエリス様。後衛にリリが担当します」

 

 「前は俺達でいいのか?」

 

 ベルと専属契約を結び、新たに仲間になったヴェルフ・クロッゾが質問する。Lv.1二人で大丈夫なのかと。

 

 「問題ありません。もしもの時は中衛のベル様とエリス様が対応してもらいますから」

 

 「うん」

 

 「分かった」

 

 やる気は充分。二人は意気込んだ。

 二人で頑張ろうぜとヴェルフは俺の背中をバシバシ叩いた。痛い痛い、やめい。

 確認が終わったあと、俺達はいざ十三階層へ。

 当然この後起こる出来事ははっきりと覚えている。強臭袋(モルブル)なる物を一応二つ用意してもらい、遭難した場合は十八階層を目指す取り決めだ。遠征帰りの【ロキ・ファミリア】に助けてもらえるかもしれないから。

 中層は上層とは違い、担当のソフィさんから過酷だと聞いた。回復薬も多めに購入した。ベルと座学を受けた。油断するつもりは毛頭ない。

 今一度気合いを入れ直して十三階層へ行った。

 

 

 ーーーーーーーーーーー

 

 「「「ガァァァ!!」」」

 

 「! 後方から三体!」

 

 「あれはヘルハウンドです!並みの防具なら炎で簡単に溶けます!」

 

 【放火魔】の異名を持つヘルハウンドと、いきなりの遭遇。現れるよりエリスの索敵の方が速かったので、

 

 「ハァ!」

  

 「フッ!」

 

 俺とヴェルフの二人で危なげなく倒し、残った一体はベルが速やかに討伐した。いいなLv.2。凄い速かった。

 

 「それにしても凄いな、サラマンダー・ウールってのは」

 

 「ああ、流石精霊由来の装備だな。・・・値段はかなりしたけど」

 

 「・・・ちなみにいくらだ?」

 

 「ゼロが五つ」

 

 俺とヴェルフが感心し、その高額な値段にげんなりする。まあ、それ相応の額だからお互い文句はないけど。

 

 「でもこれで全滅の憂いがぐっと少くなったからね」

 

 「うん。正直ありがたいよ」

 

 ベルとエリスが思ったことを口にだす。それには激しく同意する。

 

 「! また来たよ!今度は五体!」

 

 エリスの聴覚がモンスターを捉えた。ランクアップしてからは索敵範囲がより広まり、感覚が鋭敏に強化されていた。うちのパーティにおける要はエリスだな。不意打ちに強くなったし。

 兎のモンスター、アルミラージと遭遇しこれも難なく撃破し、ベルに似てたことを弄られていた。俺?当選俺もエリスも弄ったよ。

 おっと、そろそろか。

 

 「!! 大多数のモンスターが急接近してる!それと・・・人?」

 

 「沢山のモンスターと人だと?・・・まさか!」

 

 「【怪物進呈(バス・パレード)】です!急いで撤退しましょう!」

 

 「駄目!後ろからも沢山来た!」

 

 「挟まれた!?」

 

 「構えろ!迎撃して薄い方に一点突破だ!」

 

 困惑するなか、俺の指示ですぐさま態勢を整える。一体一体が弱くても、数の暴力で全滅する。それが中層の恐ろしさだ。

 それにダンジョンは生きている。焦燥感に駆られる冒険者をここぞとばかりに追い討ちを掛け、まったくもって嫌らしい存在だ。

 モンスターを引き付けて来たのは案の定【タケミカヅチ・ファミリア】で、

 

 「・・・ごめん!」

 

 ヤマト・命が謝罪の言葉を落とした。

 善戦していたのだがヘルハウンドによる一斉放火により、迎撃戦は原作通りの結末を迎えた。

 

 ーーーーーーーーーー

 

 「・・・ヤバい」

 

 「・・・うん」

 

 結論から言うと、立っていた場所がいけなかったのか、ベル達とはぐれてしまった。

 当たり前だが階層は不明。近くにベル達の気配はしない。不幸中の幸いなのは、Lv.2のエリスと一緒だということだろう。

 強臭袋?二つともリリルカに持たせたよ。

 

 「・・・」

 

 「アラン・・・?」

 

 取り決めは十八階層に行くこと。しかしそれは、ベル達が居ること前提の話。分断された場合の作戦はない。こっちにはエリスが居るとはいえ、この先ミノタウロスが集団で現れる。最初のうちは大丈夫でも、数に押し潰されておしまいだ。もし十八階層にもベル達の元にも辿り着けなかったら・・・俺達は、いや()()()()()───。

 

 「大丈夫だよ、アラン。俺のせいで、なんて考えなくていいよ」

 

 「!? エ、エリス・・・?」

 

 突然エリスに抱き締められ、彼女は落ち着かせるように囁いた。

 

 「アランは強くて頭が良い。私はLv.2の獣人。私達二人に出来ないことはないよ」

 

 「っ・・・俺は強くないよ。それに判断だって誤った。迷惑「思ってないよ」!?」

 

 エリスは両手で俺の顔を挟む。顔が近い!

 

 「アランは私を助けてくれたよ?だから迷惑に思うんじゃなくて、今から恩返ししよう!って思ってる」

 

 「エリス・・・」

 

 「だから作戦考えて!私こういうの苦手だし!」

 

 「ふっ、結局人任せかよ」

 

 えへへと笑うエリスを見て、今一度頭を回す。元気もやる気も湧き出てきた。虚勢でもいい!絶望するな!二人で助かるために頭を回せ!

 

 「エリス、まずは装備の確認をしよう」

 

 「うん!」

 

 俺達はお互いの装備を確認する。多めに回復薬を用意したので、怪我と体力は癒せる。ただし精神回復薬の数は少ないので魔法は節約しよう。

 武器と防具。俺は全部無事だったが、エリスのボウガンが壊れてしまった。あれは牽制として役立つのだがまあいい。サラマンダー・ウールと防具は壊れてない。

 

 「十八階層までどう行くの?」

 

 「それは縦穴を使う。短縮になるからな」

 

 頭が回るリリルカが居るんだ。それならあいつらもそうするだろう。そのあいつらは強臭袋を使いながら縦穴を利用してベルとヴェルフの魔法で進んでいた。そこにヒントがあるはず・・・あ。

 

 「エリス()()()()()()()()()()?」

 

 「え?」

 

 「()()()だよ。あいつらは絶対それを使う」

 

 「あ、そっか。それの匂いを嗅げれば」

 

 「「合流できる!」」

 

 そうと決まれば前進だ。当面の目的は縦穴の捜索と強臭袋の匂い。どちらにせよ十八階層に行けるだろう。

 

 「絶対生きるぞエリス。生きてラクシュミーのもとへ帰ろう」

 

 「うん!」

 

 絶望を希望に変えて足を進めた。生きて帰るために。

 



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悪臭と迷子と尻尾

少ないです。


 

 「強臭袋の効果が切れました・・・」

 

 「「!?」」

 

 リリルカの突然告げられた言葉に、ベルとヴェルフの顔に緊張感が増す。

 アラン達と分断された後、取り決め通りに十八階層を目指していた一向は、強臭袋というアイテムの効果でモンスターという脅威から難を逃れていたのだ。怪我人はヴェルフ。落下時にリリルカはバッグを失い、回復薬の残量はポーチに入れている物だけとなった。強臭袋はバッグに一つ、リリルカの懐に忍ばせていた物が一つ、計二つ。つまり、もう無いということだ。

 現在十六階層。ゴールはまだまだ長い。

 

 「まあ、なんとかなりますね」

 

 「へ?」

 

 そんな緊張感の欠片もないことを言ったのは意外にもリリルカ。だからこそベルは間抜けな声が出た。

 

 「だって、パーティにはアラン様が居ますし」

 

 「アランさんが?」

 

 「ええ。あのアラン様です」

 

 「おいおい、リリ助。それはいくら何でも楽観的じゃないか?アラン達が落下したのを横目で見たし、俺達と同じ、いや俺達以上に窮地に陥っているんだぜ?」

 

 自信満々な顔をするリリルカに、ヴェルフはツッコミを入れた。Lv.2のエリスが居るとしても、向こうに強臭袋が無いことは知っている。何処にいるか分からないアラン達に期待する余裕がなかった。

 しかもヴェルフはアランと知り合ってから日が浅いが、悪い奴じゃないことは分かっている。しかし、こんな状況でどうにかしてくれるとはどうしても思えなかった。

 

 「アラン様は認めるのは癪ですが、あの人は頭が回ります。少しでも手掛かりがあれば正解を手繰りよせる。それがアラン様です」

 

 「・・・そうだったね。ヴェルフも分かるよ。あの人の凄さが」

 

 「おいおい、リリ助もベルも信頼し過ぎじゃないか?」

 

 「「体感したら分かるよ(分かりますよ)」」

 

 「なんだそりゃ」

 

 にわかに信じられないヴェルフであったが、この二人を見て微かに希望を抱いていた。

 

 ーーーーーーーーーー

 

 ベル達が強臭袋の効果を切らしたのと同時刻。

 

 「臭っ!この近くだな」

 

 「臭い!?これがあのアイテムの臭いならそうだよ!臭くて鼻が曲がるよぉ、うわーん」

 

 エリスは泣きながら答えた。そっか、獣人だもんな。俺よりかなりキツイわな。

 

 「バンダナあげるから、これで鼻を覆ってくれ」

 

 「うう、ありがとう・・・スキルで捨てなかったんだね」

 

 「湿布で耐久に+3だけだったからなぁ」

 

 スキル【三択からどうぞ】により手に入れたモノは【断捨離還元】というスキルで捨てられる。捨てたモノは経験値としてアビリティに還元できる。

 試しに湿布を捨てたらショボかった。バンダナを残していたのもそれが理由だ。明らかに低そうだもん。

 

 「鼻使えないから耳で頑張るね!」

 

 「おう。ベル達は近くに居るか?」

 

 「いや気配がない。もしかしたら縦穴を使ったのかも」

 

 なら急ごうか。ダンジョンはすぐさま修復を始めるので縦穴は時間経過で塞がるはずだ。強烈な匂いが残っているのを見るに、まだ塞がってないと思う。

 

 「ベル達大丈夫かなぁ」

 

 「ベルはLv.2だし、ヴェルフが怪我してなかったら生存率は上がる。それに向こうにはリリが居るんだ。むしろ俺達より安全かもな」

 

 そうだ。あいつらは強い。

 ヴェルフは前衛張れる力と、魔法だろうが放火だろうが無効化できる対魔法封じの魔法。

 リリルカはサポーターとして積み重ねてきた経験。周りの状況を把握し指示を出す頭脳。

 ベルはというと、詠唱破棄による速攻魔法。蓄力による強力な一撃を放てるスキル。限界突破したアビリティ。

 あれ?俺の付け入る隙がない?

 

 「むー」

 

 「? ど、どうしたんだよエリス」

 

 「べっつにー。リリを随分信頼してるんだなぁと思っただけだよーだ」

 

 え?な、なに言ってんの。こんな時に。

 何故か機嫌が悪いエリスに疑問を抱く。当然リリルカを信頼してるし、指揮官としての能力を羨むことだって正直沢山あった。でも、

 

 「エリスはエリスの良さがあるだろ。俺がこうして立ってられるのもお前のお陰だし」

 

 うんうん。エリスの前向きな性格に助けられた。リリルカとは違う良さがこいつにはあるのだ。

 

 「そっか」

 

 「? 尻尾ブンブンしてるぞ?」

 

 「っ!? エッチ!」

 

 「エッッッ!?」

 

 痛い痛い、バシバシ叩かないで。ヴェルフかお前は。

 そんなこんなで俺達は縦穴を目指した。

 




合流は次回かな。


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黒くて硬くて大きなアレ

仕事休みなったぜオラッ!!
今回は無理矢理な回。頭を空っぽにして見てね!


 

 

 「ふざけろっ・・・!」

 

 少年は二人を抱えて走る。

 現在十七階層に到達し、一直線に進めば目的地の十八階層へたどり着けるのだ。

 では少年が走る理由は何か?モンスターから?それとも地獄みたいな場所から離れたいから?どちらも正解であるが、()()()()

     

 「ガアァァァァァッ!!」

 

 鼓膜を破り地面を揺るがすかのような咆哮が一面に響き渡る。

 少年が走る理由であり、十七階層に出現する超大型モンスターにして【迷宮の孤王(モンスターレックス)】ゴライアス。俗にいう()()()である。

 ゴライアスは絶望に呑まれ掛ける少年の姿を確認し、潰さんと拳を握る。

 まさしく絶対絶命。十八階層までもう少しだというのに永遠を錯覚するほど先が長い。

 忍び寄る絶望に沈むと思ったその時、

 

 「倒れろオラァッ!!」

 

 希望(アラン)がやって来た。

 

 ーーーーーーーーーー

 

 「倒れろオラァッ!!」

 

 俺はレイピアで脚の腱を削いだ。ゴライアスの態勢が大きく崩れ、襲われていたベル達は危機を回避したようだ。

 このレイピア強すぎじゃね?【ヘファイストス・ファミリア】の団長殿に見てもらうか。

 

 「エリスはベル達を!」

 

 「分かった!アランは!?」

 

 「死なない程度に、本当に怖いから死なない程度に殿(しんがり)を務める!」

 

 「了解!(恐怖でビビる)レアなアランを見れて私は嬉しいです!」

 

 「状況分かってる!?」

 

 エリスはベルが担いでいるリリルカを受け取り、ベルの口の中に体力回復薬を突っ込んだ。

 俺?ゴライアスを見ながら全力避難!・・・てあれ?

 

 「ガアァッッ!!」

 

 ゴライアスは口の中で何かを貯めて・・・一気に発射!!目標は俺達ではなく・・・天井か!?

 

 「やべぇ!!」

 

 「キャ!?」

 

 「うわっ!?」

 

 俺は二人の背中を強引に突き飛ばした。階層主の放つ咆哮(ハウル)は、怯ませる程度のミノタウロスの比ではなく、魔導士の砲撃レベルでヤバい。

 数多の岩が天井から降り注ぎ───・・・、

 

 「・・・詰んだ」

 

 俺とエリス達の間に落ちた。つまり、完全に分断されて孤立した。相手は推定Lv.4の化物。俺はLv.1の新人冒険者。成長速度?そんなん関係ないね。

 目の前の化物は俺を見て嗤った気がした。

 

 ーーーーーーーーーー

 

 「ほあぁぁぁぁ!?」

 

 「グルアァァァァ!!

 

 何時間、何分、何秒経過しただろうか。時の流れが速いように感じるし、逆に遅くも感じる。外には異変を察知した【剣姫】がベル達を保護した頃だろう。ならばあの瓦礫の山の傍に居るのだろうか?

 俺は一縷の望みに賭けて絶賛シャトルラン。高校時代の記録は確か67。今の俺なら100以上は余裕でいけるぜ!

 ()()()()()()()()()()()()ゴライアスは、左右に動き回る俺に攻撃を仕掛け回る。だいたい当てずっぽうだが効果は覿面。俺の足場が悪くなってスピードが落ちる一方だ。

 

 「あ」

 

 限界はすぐやって来た。足が縺れた。階層主という化物が近くにいる。プレッシャーは半端なく、思ったより体力がゴリゴリ消耗していたようだ。

 ゴライアスの掌が俺を潰さんと迫る。両手両足を地面に着いている状態で前方に進む。ハイハイだね。

 そのかいあって、直撃は避けられたが、

 

 「のあぁぁぁぁッ!! ぶべらっ!?」

 

 まあ、風圧でぶっ飛んで壁に叩き付けられたけどね。

 

 「ゴホゴホッ、【癒光の羽衣】フゥー」

 

 魔法で治療する。全身の痛みが消え、体力が戻ってくる。代わりに精神力(マインド)が失っていき頭が痛み出す。

 くそっ、これでお仕舞いか?まだ完結まで見届けてないんだぞ!

 

 「ガァァァァァ」

 

 迫るゴライアスを睨み付ける。ここまで来れば最早恐怖を感じない。むしろ一矢報いるための戦意が滾る。

 

 唯一攻撃が通じるレイピアで攻撃するか?ダメだ。奴に攻撃が当たっても切り傷。現実的じゃない。目を刺す?これもダメだ。奴が混乱して暴れでもしたら潰される。それに届かない。

 あーでもない、こーでもない。正解が見つからない。感覚のズレを直して今日まで約一週間か。もっと上手く立ち回れたら状況は違ったのかな?

 ・・・ん?一週間?

 

 「()()()

 

 一瞬、勘違いかもしれないが恩恵に熱が灯る。そう言えばまだ一週間経過していない。もし、もしも、今日がリセットされる日であるならば・・・!

 

 ①パンツ(トランクス)

 ②コタツ

 ③全力投擲

 

 しゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!!

 

 「③に決まってるだろうが畜生め!!」

 

 俺は③を選び、

 

 「死ねぇぇぇぇデカブツゥゥゥゥゥ!!」

 

 レイピアを全力で投擲した。 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 うーん、うーん。なんか鈍くて重くて怠い。腕に自由がなく拘束されてるような・・・。あとは温かくていい匂い?

 

 「・・・知らない天井だ」

 

 重たい瞼を開き焦点の合わない目を動かす。なんか気持ち悪くて吐き気がするが、それを軽減する何かが近くにある。

 俺はモゾモゾと動いてみる。右左と寝返りしようにも動けない。いや動かせない。

 あ、ちょっとくすぐったい。フサフサした何かが顔に当たってるようだ。

 

 「・・・アラン?」

 

 あらん、アラン、ああ俺の名前か。じゃあ名前を呼んだのは一体・・・。

 

 「目を覚ましたの!?アラン!アラン!」

 

 「あうあう、そんなユサユサしないでよ・・・」

 

 激しく揺らされたら胃の中の吐瀉物が姿を現すから。

 

 「アラン、私のこと分かる?」

 

 「もちろん。エリス・キャルロだろ?俺の大切な存在だ・・・」

 

 「~~~~っ!!」

 

 主神のラクシュミーも仲間のベルもリリルカもヴェルフもみーんな大切な存在だ。そう、大切な・・・まて。

 半ば眠っていた意識が覚醒する。

 

 「待った!大切な存在っていうのはファミリアとして!仲間だから大切ということだから!決して告白とかじゃないから!」

 

 「あーはいはい、分かってますよ分かってますよ・・・ムフフ」

 

 「投げやり!?」

 

 顔が赤いぞお前。いや多分俺もか。

 

 「お二人とも目が覚めましたか?」

 

 「「うひゃあ!?」」

 

 俺達はテントに入って来たリリルカに驚いた。

 

 「節度を守ってください。イチャイチャしてるのが外まで聞こえましたよ」

 

 「イチャイチャしてねぇよ!」

 

 「あ、はい。では外に来れますか?これから晩御飯らしいので」

 

 「信じてないな、お前。・・・晩御飯?」

 

 【ロキ・ファミリア】のテントか。そうじゃなきゃおかしいけどさ。

 

 「アラン大丈夫?」

 

 「大丈夫かな。今から行くよ」

 

 「では行きましょうか。皆さんが待ってますよ」

 

 リリルカに案内され行ってみると、ベルとヴェルフはもちろん、多種多様な人達で溢れかえっていた。こちらに向ける視線は様々だ。

 俺達はベル達の横に座った。

 

 「皆聞いてくれ。彼らは仲間のためにここまで辿り着いた勇気ある冒険者だ。仲良くしろとまで言うつもりはない。けれど同じ冒険者として欠片でもいいから敬意を持って接してくれ」

 

 仕切り直して乾杯!という小人族の男性。あれが【勇者】フィン・ディムナなのだろう。貫禄があった。

 今更ながら気付いたギブスで固定された右腕のせいで、食事がままならなかったけど、エリスが食べさせてくれた。チラチラと男女問わない視線がこちらに向いた。

 

 そんな宴会も中盤に差し掛かり、

 

 「あの・・・」

 

 「?」

 

 「ゴライアスを、どうやって倒したんですか?」

 

 「・・・は?」

 

 




【剣姫】が遅れた理由、魔法で退かすと瓦礫のすぐ近くにアランが居た場合巻き添え食らう。だから手作業で撤去を進めました。
【全力投擲】
 文字通り全力で投擲する。その際、体力も精神力も全て消費し、投げる時に使った腕にもかなりの負担が掛かる。
 


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イケメン死すべし慈悲はない

題名は毎回関係ないようで、薄ーくあります。


 

 決死の中層探索から【ロキ・ファミリア】によって保護された俺達は、彼らの晩御飯?宴会?に参加していた。それが中盤に差し掛かり、金髪美女に問われた内容に耳を疑った。

 

 「・・・は?」

 

 この人は何を言った?()()()()()()()()()?誰が?俺が?

 

 「はいはい!あたしも聞きたーい!」

 

 「そうね。Lv.1の貴方がどうやってゴライアスを倒したのか聞きたいわね」

 

 元気のいい少女と落ち着きのある女性も知りたがっているようだ。褐色肌で細い体と同じく褐色肌ではあるが一部ご立派な物をお持ちの女性。うむ。ヒリュテ姉妹ですね、分かります。

 てことは、隣に居る金髪美女は【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインか。やっべ、ドキドキする。

 

 「その話、僕も聞きたいね。差し支えなければ教えてくれないか?」

 

 前方からトコトコ歩いて来たのは団長にして【勇者】フィン・ディムナ。隣のティオネが好意を寄せている男性。ちなみにアラフォー。

 気になっているのは【勇者】だけでなく、ベル達含め周りの団員もこちらに視線が向いている。俺はその視線に気まずくなる。

 正直、記憶が曖昧で全然覚えてない。土壇場で獲得した【全力投擲】を使用したのは覚えてるんだけど・・・それのせい?

 

 今は誤魔化すか。

 

 「・・・ちなみに、ゴライアスの魔石はどこにありますか?」

 

 「それなら僕達が持っているよ。魔石とドロップアイテムは後で君に返すから安心してくれ」

 

 よかった。置き去りにしてこの人達ならともかく、リヴィラの連中にでも盗られでもしたら腹が立ってた。何もしてない奴らが横取りするのはムカつくよなぁ?

 それはそれとして。

 

 「()()()()()()()()()()()

 

 「「「「「!?」」」」」

 

 「・・・それはなぜ?」

 

 俺の言葉に全員が目を見開いて驚愕の表情を浮かべているのは、階層主の魔石の価値を知っているからだろう。俺達のパーティで一番驚いているのは案の定、リリルカ。

 

 「滞在費と治療費です。少ないかもしれませんが貰ってください」

 

 「いいのかい?それらに関しては僕達は気にしないよ?」

 

 「いいんです。ドロップアイテムがあるんですよね?俺はそれを貰えれば結構ですから」

 

 ドロップアイテムはシトリーの土産にしよう。どうせまたゴライアスと戦うことになるし。

 

 「・・・分かった。それならお言葉に甘えるとしよう」

 

 「ありがとうございます」

 

 【勇者】は俺の意見を聞き入れてくれた。やっぱりタダで施されるのは違うよね。

 

 「いいのアラン?せっかく倒したのに」

 

 「そうですよアラン様。階層主の魔石ならかなりの額で取引されます。全額と言わず何割か貰っておけば」

 

 「いいんだよ。何も返さないのは俺が嫌だから」

 

 それにどうやってゴライアスを倒したのか、もう聞かれるこたはあるまい!ハッハッハ!

 

 「あの」

 

 「?」

 

 「ゴライアスを、どうやって倒したんですか?」

 

 カハッ。

 振り出しに戻った。

 

 「・・・エリス」

 

 「ん?」

 

 「発見当時の俺と周りの状態は?」

 

 「えーと、右腕が曲がり曲がってたあげく、血塗れのズタボロ状態。それに比べて他はビックリするくらい軽症だった。周りはゴライアスの魔石とドロップアイテムが落ちてたくらいかな。他のモンスターはいなかったよ」

 

 右腕そんなグロいことになってたの?軽症だったのは魔法のお陰か。他のモンスターがいなかったのはゴライアスの攻撃に巻き込まれて潰されたから。誕生しなかったのは、ダンジョンが修復を優先したからだな。

 俺は包帯とかで固定された右腕を優しく触る。なんだろ、傷が疼く。俺は中二になったのか?

 

 それにしても・・・。

 

 「(ひぃー視線が痛いよぉ~!)」

 

 「(アランなら大丈夫だよ。何とか切り抜けて!)」

 

 無責任な。

 ()()()()()()()()()

 

 「俺がゴライアスをどうやって倒したかを、貴方達は知りたいんですよね?」

 

 コクリ。

 

 「倒した方法は・・・」

 

 「倒した方法は・・・?」

 

 ゴクリ。

 

 溜めて溜めて溜めて溜めて────

 

 「───超頑張った!!」

 

 ・・・

 

 「「「「「「はぁ~~~~!?」」」」」」

 

 「あれだけ溜めてそれかよ!」「無駄に緊張したじゃねぇか!?」「もっとこう、具体的な理由があると思ったわ!」「これだからイケメンは」「羨ましい!」「カッコいい!」

 

 ワー、ワーと騒ぐ【ロキ・ファミリア】の面々。隣の【剣姫】はポカーンとしている。俺達の仲間は・・・呆れているのか?

 

 「! アラン」

 

 「んー?」

 

 「ラクシュミー様が居るんだけど・・・」

 

 獣人のエリスの聴覚が主神の気配を捉えたようだ。てか、お前の感覚優れすぎじゃね?

 

 「じゃあ我らが主神をお迎えに行きましょうかね」

   

 「え、軽くない?」

 

 予定通り。俺は立ち上がりエリス案内のもと主神と思わしき神物がいる場所へ。

 

 「アランにエリス、お主ら大丈夫じゃったか?」 

 

 「まあね」

  

 「驚かないんじゃな。つまらん」

 

 「まあね」

 

 ラクシュミーだけでなく、ベルの主神ヘスティアと俺達に【怪物進呈(バス・パレード)】を仕掛けた【タケミカヅチ・ファミリア】の面々。それと・・・。

 

 「ハッハッハ。ゴライアスが居なくて助かったね!」

 

 「ええ、そうですね」

 

 【ヘルメス・ファミリア】の主神ヘルメスと、【万能者(ペルセウス)】の二つ名を持つアスフィ・アル・アンドロメダがいた。

 

 ーーーーーーーーーー

 

 「・・・君はいったい何者なんだい?」

 

 「知るか。ダンジョンで言うイレギュラーじゃないか?」

 

 俺は軽薄そうな羽根つき帽子の男の首に剣を向ける。彼の隣の居た【万能者】はどう動くか迷ってるようだ。

  

 ーーーーーーーーーー

 

 宴会が終了し、休んでいたテントに戻る。中層でのこと、右腕のこと、全てラクシュミーに話した。

  

 「更新しよう」

 

 「うん。俺もお願いしようと思ってた」

 

 数秒何かを考えたラクシュミーは恩恵の更新を提案する。俺は服を脱ぎ捨て背中を見せた。

 

 「・・・ランクアップ出来るんじゃが、どうする?」

 

 「お願いするよ」

 

 この後は冒険者によるリンチに遭うし、漆黒のゴライアスとも戦わなくちゃいけない。正直もったいないと思うが、アビリティの数値は気にしないさ。

 

 「最終値は平均Bじゃ。その中でも飛び抜けているのが、敏捷と力じゃな」

 

 「おお随分伸びたな!まあ、逃げ回って、硬い脚を削いで、全力で投擲したから当たり前と言えば当たり前かぁ・・・」

 

 「発展アビリティは、【剣士】【耐異常】【狩人】【幸運】の四つじゃ」

 

 「四つもか。それに・・・【幸運】?」

 

 これってベルと同じだよな?何でこれが発現したんだろ。

 

 「効果は知らぬ。アランは大概じゃな」

 

 「・・・【幸運】にします」

 

 無論、選ばない手はないか。

 

 アラン・スミシー(16)Lv.2

 

 力:I0

 耐久:I0

 器用:I0

 敏捷:I0

 魔力:I0

 

 “発展アビリティ”

 幸運I

 

 “魔法”

 “スキル”

 【言語理解(コミュニケーション)

 

 【三択からどうぞ(サード・ワン)

 

 【断捨離還元(リサイクル)

 

 冒険者になっておよそ三ヶ月か。成長補正もないのにこれは速すぎじゃね?

 

 「さて。更新終わったから寝るぞ。右腕は速攻で癒すのじゃ」

 

 「わ、分かったよ・・・」

 

 俺は言われるがまま、魔法を発動させる。右腕がどんどん癒えていく感覚がある。待つこと数分。完全に治ったと判断して、固定されている包帯を剥ぎ取った。

 

 「アラン、終わった?」

 

 「終わったよ」

 

 ひょっこり顔を出したのはエリス。更新が終わるのを外で待っていたらしい。ちなみにエリスの更新を先に終えていた。

 

 「ちょうど良かった。エリスは左側に来るのじゃ」

 

 「ひ、左側?」

 

 「えへへ。お邪魔しまーす」

 

 「私は右側じゃな」

 

 「み、右側?」

 

 待て待て。布団ならまだあるだろ!やめ、一緒のに入るな入るな。

 

 「・・・女の子になっちゃう」

 

 「「オセロか」」

 

 余談だが、これを目撃したヘスティアが僕もベル君と!と意気込み突入したとか。

 

 




 幸運にしたのはレア度が高いモノの排出率を上げるため。幸運しか思い付かなかったのは内緒だ。

ランクアップしたお陰で魔法の効果が高まり、回復速度などが上昇した。

一緒に寝た理由は、顔には出さないが自分の眷属が心配だったから。それが着いてきた理由でもある。

覗きとか、ヘルメスとの絡みとか、外伝とかは次回かな。


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男の浪漫

原作キャラの心情が一番苦手です。苦手だから練習のために頑張りました。暖かい目で見てください。


 

 「・・・治りましたね」

 

 「そ、そうみたいだな・・・」

 

 俺は長い緑髪の王族妖精こと、【九魔姫(ナインヘル)】リヴェリア・リヨス・アールヴ立ち会いのもと回復魔法を行使した。対象は【ロキ・ファミリア】で、ポイズンウェルミスの猛毒を喰らった人達に。

 ポイズンウェルミスは、ダンジョンで確認されている中でも強力な猛毒であり、治療するには専用の解毒薬を服用するか、都市最高と名高い【戦場の聖女】の魔法だけである。

 その猛毒を二時間懸けて治した。一回目で五人治療。精神回復薬は二つ使用した。

  

 「・・・二回目行きます」

 

 「・・・ああ、助かる」

 

 困惑する彼女を他所に俺は作業に移った。

 

 ーーーーーーーーーー

 

 「で?どうだったんだい彼は」

 

 「右腕を治して現れた時は驚いたが・・・あの猛毒までは癒せまい。せいぜい症状を幾分か軽くするだけじゃろう」

 

 「・・・した」

 

 「? なんだい?」

 

 「? 聞こえんぞリヴェリア」

 

 執務室を兼ねる天幕へと戻ってきたリヴェリアに、フィンとガレスは尋ねた。

 

 『俺の回復魔法なら何でも治せます』

 

 底知れない実力者である彼の手腕。何故か抱いていた期待感。その二つを合わせてフィンは頼んだ。   

 

 『君は、ポイズンウェルミスの毒を治せるのかい?』

 

 『()()()()()()

 

 『ほう?』

 

 フィンは思考する。

 治せない、じゃなくて、分からない。ポイズンウェルミスを知っているのなら、誰だって治せないと言う。なのに彼は分からないと言った。()()()()()()()()()()。知らないという雰囲気ではないからだ。ならば少なからず、

 

 『俺の魔法は毒を含めて回復させます。アビリティ貫通の猛毒だろうと、可能性は充分あるかと』

 

 自分の魔法を信頼しているということだ。

 

 『挑戦する価値はありそうだね。リヴェリア』

 

 『分かった。来てくれ』

 

 リヴェリアに彼を任せた。この時点では正直不可能だと思っていた。思っていたのだが、彼に希望を抱いている自分がいるのも事実。

 だから君を見定めよう、アラン・スミシー。ベル・クラネルと同じように僕達を驚かせてくれ。

  

 まあ、数時間も経過するとは思わなかったが。

 

 「流石の彼も「違う!」は?」

 

 「アラン・スミシーは!確かに数時間経過させたが!一回の魔法行使で五人も治した!私の前で治して見せたのだあいつは!」   

 

 「「!!」」

 

 声を荒げて喋るリヴェリアに驚いた?確かにそれにも驚いた。だが違う。本当に驚いたのは───、

 

 「それは、本当かい・・・?」

 

 「ああ本当だ」

 

 「ありえん・・・」

  

 「事実だ。私はこの目で見た」

 

 アラン・スミシー。Lv.1で在りながら階層主を討伐するという大判狂わせ(ジャイアントキリング)を実行しただけでなく、(聞く限りでは)前衛にも関わらず、あの猛毒を癒す優れた回復魔法の使い手。

 そんな彼に一同は戦慄した。

 

 「幸いなのが敵対心が無いことだね」

 

 「全くじゃ。あの小僧が()()()()()なら、洒落にならんぐらい厄介じゃぞ」

 

 間違いなく重宝されるだろう。こんな逸材、【ロキ・ファミリア】に欲しいくらいだ。

 ・・・奴らの仲間か。

 

 「いっそのこと、協力者として依頼してみようか」

 

 「正気か?」

 

 「無関係な彼を、それも恩人に当たる人物を巻き込むのか?」

 

 信じられないという目でフィンを見るが、当の本人は至って真面目だ。

  

 「まあ、選択肢の一つだと思ってくれ。彼は必ず必要になる」

 

 勘だけどね。最後にそう締め括った。お前の勘は外れないだろうと、リヴェリアとガレスは思った。

 

 「しばらくしたら休憩させようか」

 

 今も頑張っているのだろう。労わらねば。

 

 ーーーーーーーーーー

  

 「あ!アランさんお疲れ様です」

 

 「・・・ベルか」

 

 「本当に疲れてますね」

 

 「まあな。ちょっと顔洗ってくるわ」

 

 治療も一段落したし、スッキリしたいから水場へ行こっと。頭がボーとする。精神力(マインド)を消耗させ過ぎたか。

 

 「ベル君。それにアラン君も」

 

 「「?」」

 

 「付き合ってくれ」

 

 思考が定まらない頭で、ヘルメスの付き添いに了承してしまった。それがいけなかったのだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 「私らでは満足出来なかったのか?そなたは欲張りな奴じゃのう」

 

 「・・・アラン?何か言い訳ある?」

 

 ──申し訳ありません。実行犯に唆されたんです。しかし安心してください。犯人は捕まえてバンダナ巻いて目隠ししました。なのでお二人の柔肌は見られてません。

 

 「恐ろしく早口じゃが・・・嘘は付いてないな」

 

 「遺言はそれ?」

 

 ──フッ、

 

 ──皆さん大変お綺麗でした(ニコッ

 

 俺の意識はそこで途切れた。

 

 ーーーーーーーーーー 

  

 「ア、アランさん」

 

 「んー?なんだー?」

 

 「えと、その・・・大丈夫ですか?」

 

 「この顔見て大丈夫だと思うか?」

 

 「思いません。決して」

 

 痛てて。やりすぎだろエリス。もう少し加減しろよ・・・俺が悪いけどさ。

 

 「あ、ヘルメス様・・・ヒイッ!?」

 

 「ひゃあ!?」

 

 あん?

 

 「貴方って人は~~~!」

 

 「ごごごごめんなさい!つい驚いてしまって」

 

 はっはーん。またトラブったなこいつ。この主人公め!

 

 「それに貴方も!アイズさんの裸を見ましたよね!?」

 

 「え?いや俺は別に──」

 

 見てない、と言えなかった。だって見たし。大変ご立派でし

 

 「やっぱり見たんですかぁ!?見たんですよね!見たのはお仲間だけだと思い見逃しましたがぁ・・・!」

 

 これは凄まじい魔力・・・!

 

 「お、おいベル」

 

 「な、なんですか?」

 

 「俺も巻き込まれてる感じ?」

 

 「そんな感じです」

 

 ハハハ、クソッタレめ。

 

 「やっぱり許しませーーん!!」

 

 「さーせんしたぁーー!!」

 

 「ごめんなさぁーーい!!」

 

 俺とベルは山吹色の妖精に追い掛け回され───、

 

 「「「迷った・・・」」」

 

 仲良く遭難した。

 

 

 




原作だとアイズ達の裸見てリューの裸を見るベルですが、オリ主がそれを阻止したので一人も見れてません。それなのに怒られた幸運持ちの不幸キャラ。
逆にオリ主は見れるだけのキャラの裸を見ました。エリスに気絶するほどボコボコにされたが。  
ヘルメス?目隠しされたあげく溺死しかけた。
 
 次回は外伝の内容です。やっばい全然進まぬ。


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今日からお前はリーダーな!!

二話連続投稿です。


 

 追い掛けられ迷い込んだ先は、モンスターが跋扈する暗闇の森林。いくらモンスターが誕生しない階層だからといって長居はよろしくない。上や下の階層から来るモンスターもいるからだ。極力静かに行動した方がいいのだが・・・。

 

 「人として恥ずかしくないんですか!?もう最低です貴方は!!最低のヒューマンですっ!!」

 

 「ごごごごめんなさいぃぃっ!!」

 

 隣でベルと【千の妖精】レフィーヤ・ウィリディスがワイワイ騒いでいた。俺も罵倒されたけど、ベルの方がヘイトを集めていたのですぐ終わった。だから見張りをしつつ外伝の内容を思い出していた。

 

 外伝“ソード・オラトリア”の主人公はアイズ・ヴァレンシュタイン。そして主役ばりに出番がある【千の妖精】レフィーヤ・ウィリディス。敵は怪人と呼ばれる強力な存在に、オラリオ転覆を目論む闇派閥の残党達。そいつらが拠点としている人工迷宮に、闇落ちしたヤバい精霊。

 正直原作よりハードモードだと思う。【勇者】や【剣姫】もそうだが、目の前の【千の妖精】も大概化物だ。

 

 まあ、今はそんなことより・・・

 

 「()()()()

 

 「なんですか!今取り込み中ですのでお静かに!・・・り、リーダー!?」

 

 面白いなこいつ。

 

 「俺とベルより経験あってレベルが高く、何より【ロキ・ファミリア】のメンバーだ。優秀な貴方の指揮下に入り行動したいと思ってね」

 

 「わ、私は別に優秀では・・・でもそうですね!貴方達より経験もレベルも優れている私がリーダーに相応しいですね!いいでしょう!必ず送り届けますよ!」

 

 フフンと胸を張る【千の妖精】に、前世の自分に懐いていた幼い従姉妹を幻視する。元気にしてるかなぁあの子は。

 おや?感傷に浸っている間にさっそく指示を出すようだ。

 

 「まずは!」

 

 どんな指示だろうな。外伝ではどんな指示だったけ?

 

 「魔石灯を貸してください。暗くて進めません」

 

 「・・・はい」

 

 「・・・」

 

 間違ってないんだけど、少々残念な気持ちになった。

 

 ーーーーーーーーーー

 

 リーダーの指示で戦闘することなくスムーズに進んだ。後衛なのに行動力は探索者のそれに、俺もベルも感嘆する。

 リーダーは大樹に登り──

 

 「灯りを消してください!」

 

 上から何かを見つけたのか、魔石灯を持つベルに消灯するように指示を出した。

 発見したのは恐らく、

 

 「誰なんですか、あの人達は?」

 

 「・・・簡単に言ってしまうと、私達と敵対している組織です」

 

 この時期に敵対している組織は闇派閥。彼らについて知っていれば特徴的な服装から容易に特定できる。

 闇派閥の後にコッソリと忍びより、

 

 地面が割れた。

 

 「「うわぁぁぁぁ!!」」

 

 「意外と深い──!?」

  

 何とか着地できたが、足が焼けるように熱い。暗闇に目が慣れ始めて気付く。剣や防具、冒険者達の亡骸を。

 

 「まさかこれ溶解液ですか・・・!?」

 

 「リーダー。それだけじゃない」

 

 「・・・上」

 

 「え?」

 

 天井に根を張る極彩色のモンスターが、獲物である俺達を物色していた。

 

 「リーダー!新種について知っているのなら情報を!」

 

 「個体によって特徴は様々です!しかし、共通して魔力に反応します!」

 

 もちろん知っているが、新種について知らないはずのお前が知っているのかを、【ロキ・ファミリア】であるこの人に疑問を抱かせたくない。ならば全力で無知を装おう。

 

 「どうも!三人で互いを守りながら陽動しよう!」

 

 「っ!!なんで貴方が指示を「ベル!」無視ですか!」

 

 「は、はい!」

 

 「敵の武器はあの鞭だ!しかも単調で離れていれば避けられるし、視線の先に飛んでくる!」

 

 「(わ、私より先に気付いた!?)」

 

 「ほ、本当だ!これなら避けられる!」

 

 「リーダー!」

 

 「は、はい!」

 

 「詠唱を頼む!【癒光の羽衣】」

 

 俺とベルに回復魔法を付与して動き回る。回避に徹していればまず避けられるし、リーダーの詠唱に感付かれることはない。

 【全力投擲】を考えたが、彼女の砲撃で味方の援軍がやって来る。地上にも敵が居るのに、派手さが少ない俺のは駄目だ。

 俺の回復魔法は溶解液にも効果あったみたいで、皮膚が爛れたり治ったりを繰り返していた。ランクアップを果たした今の俺なら、精神力(マインド)に余裕が生まれる。

 

 「っ!!不味い!」

 

 リーダーの莫大な魔力に気付いた新種が俺達を無視して襲うが、

 

 「【ファイアボルト】!!」

 

 ベルの速攻魔法が刺さる。

 

 「作戦変更!リーダーの並行詠唱で敵を誘導!ベルは攻撃を逸らしてくれ!」

 

 「分かりました!アランさんは!?」

 

 「ぶっちゃけお前らの連携に合わせられん!適当に武器を投げてみる!」

 

 それにコクリと頷いた。いきなり囮にされたリーダーは、納得してない表情を浮かべるが、それが妥当だと分かっているようなので渋々納得した。

 ベルもリーダーも【剣姫】(憧憬)から指導を受けており、あの人ならどうするかを想定して動ける。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ベルの拾い物である大戦斧が折れ、投擲する武器も無くなった。それでも、

 

 「「防ぎきった!」」

 

 「【アルクス・レイ】!!」

 

 天井に向かって一筋の閃光が走る。リーダー自慢の砲撃魔法をガードする新種だったが、

 

 「二十秒チャージ・・・【ファイアボルト】!!」

 

 【英雄願望】を発動させた(鈴の音を鳴らし終えた)ベルの魔法が組合わさり、魔石ごと消滅させた。

 

 脱出後に闇派閥と新種がこちらに襲撃するが、リューさんが現れ事なきを得た。平行詠唱を完璧なまでに組み合わせた戦闘はまさに圧巻の一言だった。

 

 「さて改めて治療をっ!? ば、バンダナあげる!」

 

 「え?」

 

 「同胞の人。まずは隠した方がいいのでは?」

 

 「~~~~!!」

 

 傷は治せても服までは直せない。俺は視線を逸らしバンダナをあげた。ごめんなさい。

 

ーーーーーーーーーー

 

 あの騒動から帰還後のこと。

 

 「お主がアラン・スミシーか?」

 

 「はい、そうですが」

 

 「手前は【ヘファイストス・ファミリア】団長、椿・コルブランドだ。お主のことはヴェル吉から聞いたが、

 

 ───何やら()()()()()を持っているようだな?」

 

 彼女の鋭い目が俺に刺さった。

 




回復魔法もそうだけど、色んな場面で役立つバンダナも最強。
 【千の妖精】→リーダー呼びに変更。


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脅迫は不敬?そりゃ失敬

タイトル思い付かなかったので、適当に置いておきます。


 

 「ほうほうこれが・・・」

 

 例の騒動から帰還してすぐ、椿・コルブランドに捕獲された。

 俺はさりげなぁ~く逃亡を試みたが、首もとをガッシリ捕まれ野営地から遠く離れた岩場に連れ込まれた。無力ながら抵抗はしたが、努力虚しく徒労に終わった。(豊かなお胸を堪能したとかそんなんじゃないよ)

 遠く離れたのはエリスみたいな獣人の索敵を躱すためだろうか。もしくは誰にも聞かれたくないとか?はたまた何も考えてないのか。

 考えても分からないので、俺は要望通り彼女にレイピアと篭手を渡した。バンダナはリーダーが持っている。

 

 「・・・」

 

 「ふむふむ」

 

 「・・・」

 

 「なんとまぁ・・・」

 

 声を掛けようか?でも黙れとか言われたら悲しいしなぁ。無言で待つか。

 

 待つこと三十分。

 

 「これをどこで入手した?」

 

 「ふぇっ!? どこでって言われても・・・」

 

 いきなり声を掛けるなよ、ビビったろうが。スキルで手に入れました!とか馬鹿正直に言うわけにいかんしなぁ。適当に誤魔化すか!

 

 「なんか凄いもんなんすか?」

 

 「凄い、たしかに凄い代物ではある。しかし手前が思うにこれは───

 

 ───()()()()()()()()

 

 決して冗談ではないことを、真剣な眼差しから読み取った。武装する冒険者として、武具を鍛錬する鍛冶士としての言葉。返す言葉が思い付かないけど。

 まあ、話半分に聞いとくか。

 

 「それよりお主」

 

 「?」

 

 「シトリーの装備を使っておるのか?」

 

 レイピアから話しはそちらに移った。

 あの娘の興味を引いた相手。遠征に参加した【ヘファイストス・ファミリア】の間で少しばかり噂になっていたそうな。

 ヴェルフ?シトリーの名前しか知らないんだと。

 

 「それどころか専属契約も結びました。結ばされたの間違いか?」

 

 「ハッハッハ!そうかそうか!あの娘が特定の誰かに造るとはなぁ!で?シトリーは同行しなかったのか?」

 

 「『面倒くs・・・コホン。仕事が立て込んでいるから無理』と言ってましたね」

  

 「本音が漏れておるぞ。全く」

 

 まあ、本来の仕事をするようになったのは良いことかと椿は付け加えた。

 後から聞いた話だと現在は衣服や包丁など、生活に関わる日常品を造っているらしく、武具などはしばらく携わってないらしい。

 

 「それには()が関わっているのだが・・・よそう。機会があれば本人から聞いてみるといい」

 

 「そうします」

 

 「では戻ろう・・・深くは聞かんが、それと似た武具を手に入れたら手前に見せろ」

 

 「こ、断ったら・・・?」

 

 「お主のホームに居座る」

 

 「やめろやめろやめろ!」

 

 冗談じゃとゲラゲラ笑う椿だが、

 

 「・・・冗談に聞こえねぇよ

 

 「? 何か言ったか?」

 

 「戻りましょう。みんな心配してると思います」

 

 俺達は野営地に戻ると、待っていたのはリヴェリアさんによる説教だった。椿さんによる犯行だとすぐ分かったので、解放されるのに時間は掛からなかった。

 

 「なんじゃ逢引(デート)か?隅に置けん奴じゃな」

 

 「へぇ~、いいご身分だねアラン?」

 

 からかう主神と、怒気を滲ませる犬人。今宵の夜は長い。

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 原作開始。

 【ロキ・ファミリア】が地上に向かって出発した後、案の定ヘスティア様が誘拐され、モルド達冒険者にリンチされたベルだったが、流れが変わった。もうすぐ反撃するだろう。

 んで、俺はというと・・・

 

 「君は何者なんだい?」

  

 「知るか。ダンジョンでいうイレギュラーなんじゃないか?」

 

 リンチを仕掛けた主犯の後ろを取った。隣には【万能者】がどう動くか決めかねているようで、その気になれば無力化されるだろうから一気に決める。

 

 「神殺しをすれば・・・なんて、つまらない脅し文句が通じる相手ではなさそうだ」

 

 「人殺しは出来そうにないが、あんたは送還されるだけだ。殺したわけじゃない」

 

 「んー・・・。じゃあこれはどうだい?神殺しをすればダンジョンが気付いて「モンスターが生まれる」知っているのか」

 

 驚く素振りを見せるだけでヘルメスの表情は曇らない。お気に入り(ベル・クラネル)を曇らせるぞオラ。

 

 「こちらの要求を呑んでもらおうか」

 

 「その脅しが通じるとでも?」

 

 「レベルを詐称しているよね」

 

 「・・・何か証拠でも?」

 

 「【泥犬(マドル)】が言ってた」

 

 「・・・嘘じゃないな」

 

 「ルルネェ・・・!」

 

 外伝で言ってたよ(ニッコリ

 

 俺の提示した内容は、ヘスティア及びラクシュミーの派閥が負うペナルティの肩代わり。それと()()()()()。覗きに使わないよ決して。

 当然交渉に持ってこようとしたのだが、

 

 「これからもベルを巻き込むんだろ?それならこれくらい何とかしろよ」

 

 強引に黙らせた。【万能者】の答えは主神に払わせますだってさ。流石に顔色が蒼白になってた。ヘルメスざまぁ。

 

 「「!?」」

 

 「あちゃー・・・神威を発動させたかヘスティア」

 

 ヘスティアパワーがここまで飛んできたぞ。神の存在感マジヤバいな。

 そしてダンジョンが揺れて───

 

 「漆黒のゴライアス・・・!?」

 

 「恨んでいるのさ神を。あれは俺達を抹殺するために送られた使徒。アスフィ、アラン君頼んでいいかい?」

 

 「~~~っ!!行きますよ!」

 

 「言われなくても。どうせベル達も行くしな」

 

 俺はお姫様抱っこで運ばれた。大勢の冒険者に目撃された時は恥ずかしかった。

 そして戦闘が始まり、

 

 「アスフィさん!」

 

 「何ですか!?後にしてください!」

 

 「本当は【泥犬】から聞いてないよ!騙してごめんね!」

 

 「はぁ!?ちょ危なっっ!!」

 

 さて、モンスター退治に励もうか。ゴライアス?取り敢えず放置。前半はベル達が頑張るから大丈夫でしょ。ピンチの時にでしゃばろう。そうしよう。

 

 「す、すまねぇ」

 

 「態勢を整えたらモンスターを頼む。俺はなるべく数を減らす!」

 

 「了解だ!仲間を呼んで来るまで持ち応えてくれ!」

 

 アヒャヒャヒャ!経験値置いてけモンスターども!Lv.2やぞこっちは!

 

 「よっと【癒光の羽衣】!」

 

 「こ、これは傷が治ってるのか・・・?」

 

 「まさかあいつがやったのか・・・?」

 

 ついでに負傷した冒険者を治療しとこ。恩を感じてくれよ?この借りはいつか返してもらうからな冒険者ども。

 

 「アラン発見!目を離したらすーぐ居なくなるんだから!」

 

 「あ、エリス」

 

 「ラクシュミー様は避難させたから大丈夫だよ。私はモンスター倒してるけど・・・」

 

 「全然大丈夫だよ。俺もそうしてるから」

 

 「よかった。アランのことだからゴライアスに立ち向かうのかと思ってた」

 

 そう言って胸を撫で下ろし安堵するエリスに、俺は戦闘狂かと心の中で呟いた。まあ、否定出来ないけどさ。

 

 あ、魔導士部隊が一斉に放って、ベルの魔法が頭を貫いた。




ゴライアス戦は略しながら書くかも。特にイレギュラーとか起きんし。

時間が許す限り毒にやられた【ロキ・ファミリア】を治療しました。まあ、特効薬のが速かったね。


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強気な少女を見ると・・・ゲヘヘ


本当は前話の続きに書こうとしてた話。投稿時間が何故か朝の七時になって驚いた。だから少ないです。


新章突入!


 

 アラン・スミシー(16)Lv.2

 

 力:H149

 耐久:H163

 器用:H127

 敏捷:G208

 魔力:G250

 

 “発展アビリティ”

 幸運I

 

 “魔法”

 “スキル”

 【言語理解(コミュニケーション)

 ・会話や文字の自動翻訳

 

 【三択からどうぞ(サード・ワン)

 ・三つの中から一つ獲得

 ・選んだモノの貯蓄と引出し

 ・一週間後に再選択

 ・貯蓄(1.篭手2.レイピア3.【刀剣乱舞】4.バンダナ5.【癒光の羽衣】6.【全力投擲】)

 

 【断捨離還元(リサイクル)

 ・スキルによって入手したモノを捨て自身の能力値に還元する。

 ・価値によって変動

 

 

 エリス・キャルロ(16)Lv.2

 力:G213

 耐久:G226

 器用:F310

 敏捷:F367

 魔力:H140

 

 “発展アビリティ”

 狩人:I

 

 “魔法”

 “速度増加(速まれ)”【加速(アクセル)

 

 “スキル”

 【犬人咆哮】  

 ・獣化

 ・全能力値に高補正

 

 【貴方想奏(フォーユー)

 ・───

 ・特定の人物を想うほど効果向上

 ・魅了無効

 

 

 あの地獄のような中層探索から帰宅し、現在に至るまでのステータスである。結論から言うと、俺もエリスもかなり伸びた。客観的に見れば異常とも呼べるものかもしれないが、これが当たり前になっているので特に驚きはしなかった。

 まあ、エリスの方が俺より高いことに若干の不満はあるし、これからどんどん切り離されると考えたら尚更だ。()()()()()()()()()()だと分かっているので、俺も欲しいなぁとつくづく思う。

 そんなことを考えつつ、

 

 「スキル」

 

 本日は【三択からどうぞ】が使用出来る日だ。成長補正が獲得できるのはこのスキルしかない。それに俺には幸運があるのだ!勝利の女神は俺に微笑んでいる!

 ちなみにリーダーに貸したバンダナは洗濯されて返却された。菓子折りを持参して現れた時は律儀だねと思いました。

 

 ①婚姻届

 ②【気配察知】(スキル)

 ③トランプ

 

 ②だオラァァァァァァァァ!!

 

 ーーーーーーーーーー

 

 「作戦のおさらいをしよう。索敵は獣人のエリスとスキルを持つ俺が交互に行って、近くの小部屋を起点に探索をする。何か質問は?」

 

 「はい先生」

 

 「どうぞエリス君」

 

 エリスが挙手をしたので、発言の許可を出す。

 

 「()()()()()()()()()()()()()()か?」

 

 「いい質問だ。Lv.2が二人居るとはいえ、危険であることには変わりない。ベル達が居てあれだったからな」

 

 思い返すは前回の探索。【怪物進呈(バスパレード)】によってモンスターの大群に囲まれ命懸けの探索が始まったあれ。絶望に呑まれかけ、分断され、一人ゴライアスと戦闘したのは苦い思い出だ。

 それにベル達が一緒じゃないのは、一時的にパーティを解消したからである。ベルに頼らず自分達の力を磨くためにそうした方がいいと思ったから。いつ組み直すかは未定だ。

 話しは戻る。

 

 「でも少人数だから助かる場合もある」

 

 「・・・機動力?」

 

 「ザッツライト」

   

 「なにそれ?」

 

 囲まれても俺達二人の足なら切り抜けられるし、いくらでも連携が取れる。そもそも囲まれる前に逃げられる。

 

 「それに二人が索敵できるのはかなりデカイ」

 

 「交代で出来るから常時集中しなくていいもんね」

 

 どうしてもエリスに負担を掛けることになるが、新たに獲得したスキルで役割分担が可能になった。肉体的な疲労は薬で何とか出来るが、どうにもならない精神的な疲労は避けたいね。

 

 「強臭袋(モルブル)は俺が持ってるし、【青の薬舗】で回復薬も買っておいた。俺が思うに万全の状態だよ」

 

 それでも気が抜けないけどねと付け加えた。

 

 「その戦闘衣(バトルクロス)ってゴライアスの?」

 

 「まあね。俺が倒したゴライアスの剛皮を加工した装備で、軽くて耐久性に優れているシトリー自慢の一品なんだぜ」

 

 黒いような灰色っぽいような上着。その下にはお馴染み革鎧で、十八階層での決戦時に落ちてたドロップアイテムが使われており、武器のサーベルも同じで俺の装備は間違いなく強化されていた。

 シトリーは元気そうだった。俺のことを聞いたんだろう、出会い頭に心配したよと抱き着かれた。久し振りのシトリーに庇護欲掻き立てられた。

 

 エリスもエリスで装備に変化が見られる。以前の動きを重視した服装ではあるが、武器のバリエーションが増えている。腰辺りに投げナイフを数本携帯していた。

 表情は・・・微笑んでいた。それが怖かった。

 

 「その鍛冶士、今度私に紹介してよ」

 

 ・・・大丈夫?後ろから刺されない?

 

 背中を警戒するようになった。

 

 ーーーーーーーーーー

 

 ギルドにて。

 ベル達が酒場で喧嘩したという報告があった。下手人は【アポロン・ファミリア】という比較的規模が大きい中堅派閥。きっかけは主神の悪口を言われたかららしい。

 君も気を付けなよとソフィさんから進言された。これに関しては介入してもしなくてもどっちでもいい。この先の原作に何ら影響ないし、参加するにしても経験値を獲得できる。参加しないのなら賭博で荒稼ぎできる。それが俺の見解である。

 

 「ちょっと」

 

 「?」

 

 声のする方に振り返ってみれば、例の二人がそこに立っていた。強気な少女と弱気な少女。とりまお告げプリース。

 

 「宴の招待状?」

 

 「うん。確かに渡したから・・・()()()()

 

 そう言って二人は立ち去って行った。御愁傷様ってことは戦争ルートに突入?ちょっ勘弁してよ。

 

 帰宅して主神に報告。渋るだろうなと予想していたけど意外にも参加すると即決した。その理由が自分の子にエスコートしてもらえるからなんて、俺は知る由もなかった。

 

 

 




一日一話!


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二人は英雄候補

誤字報告ありがとうございます!感想と評価のほうも助かります!
 少ないです。


 

 

 ベルの魔法が漆黒のゴライアスの頭部をぶち抜いた。魔石を狙ったつもりがややズレて頭にいったらしいが、それでも頭部を失って生きられるモンスターは事実上存在しない。

 

 「やったか!」

 

 近くに居た冒険者が叫ぶ。その声色には喜びが多分に含まれていた。

 しかーし!そのセリフはやってないんです!失敗フラグなんですそれ!

 

 ゴライアスは逆再生のように元通り、冒険者に再び、いやそれ以上の絶望を与えた。

 

 そして・・・

 

 「ベル様ぁぁぁっ!!」

 

 「桜花ぁぁぁっ!!」

 

 ベルを庇おうと桜花が盾を持って立ち塞がるが、ゴライアスによる無慈悲な一撃で二人は沈んだ。

 

 「【癒光の羽衣】!」

 

 「アラン君!」

 

 「アランさん!」

 

 俺は倒れるベルと桜花に魔法を施す。エリスには一応モンスターが来たら倒すように伝えている。簡単に言えば見張りだね。

 

 「もし英雄と呼ばれる資格があるとするならば───」

 

 ヘルメスの口から紡がれる英雄の資格。このシーンは割りと好きだったりする。

 

 「──それが一番格好のいい英雄だ」

 

 未完の英雄は立ち上がる。主神の呼び声?仲間の魔法?男神の発破?どれも違う。

 

 無数にある分岐点の一つ。

 

 純粋無垢なこの男にとっての。

 

 己を賭す大一番だから立ち上がるのだ。

 

 憧憬を燃やし、願いを吠える。

 

 リィンリィンと鳴る鈴の音は、ゴォォォン!!ゴォォォン!!と鳴り響く鐘の音に変わる。

 

 その音に触発されたように、荒くれ者ども、鍛冶士、くノ一、妖精が奮起する。

 

 「ハアァァァァァァッ!!」

 

 限界まで溜められた白い閃光が、ゴライアスの上半身を吹き飛ばした。

 

 ーーーーーーーーーー

 

 「見たぞしかとこの目で見届けたぞ!ゼウスの置き土産を!動く動くぞ時代が動く!このオラリオの地で時代を動かす何かが起きる!」

 

 ヘルメスは興奮しながら語る。

 

 「大神が遺した英雄候補(ベル・クラネル)、そして・・・」

 

 見据える先に居るのは、

 

 「突如現れた枠外の英雄候補(アラン・スミシー)

 

 神の手を借りず英雄候補を導くその手腕。自分相手にも一歩も退かず逆に脅すというその姿勢。いっそのこと清々しいまである。

 

 「見届けるぞ。歴史に名を刻むであろう大事を!英雄達の行く末をその生と死を!親愛なる彼らが紡ぐ【眷属冒険譚】を!」

 

 ハハハッ!!と男神の笑い声が木霊した。

 

 ーーーーーーーーーー

 

 漆黒のゴライアス討伐から三日後。

 

 「アランアラン!」

 

 「んー?」

 

 ホームでのんびり読書していた俺に、元気のいいエリスが詰め寄る。迷宮探索?装備も修理に出してるしちょっとお休み。これが燃え尽き症候群なのかもしれない。

 エリスは片手に持つ手紙を要約して読んだ。

 

 「ペナルティはヘルメス様が肩代わりしたんだって。覗き魔なのに意外と優しい所があるんだね」

 

 「そだねー」

  

 この子ちょっと(トゲ)ない?

 俺と同じく読書していたラクシュミーが喋る。興味が湧いたのかな?

 

 「もしかしたら、()()()()()()()()がそうさせたんじゃろうて」

 

 「?」

 

 「例えば、仲間がヤられるきっかけになったからとかかのぅ」

  

 「仲間がですか?」

 

 おいおい、ひょっとしてバレてんじゃねぇか?逆にエリスにはバレてなさそうだな。

 エリスはんー、と考えて、

 

 「その人はきっと、アランと同じお人好しなのかもしれませんね!」

 

 「ハハハ!お人好しか。それは違いないのぉ!」

 

 女二人の笑い声が響く。笑えねぇよこっちは。

 

 まあ何にせよ、いつもの日常が戻ってきたのは良いことだ。これから先も困難が待ち構えているが、ラクシュミーとエリスで頑張っていこうと思う。

 

 今よりもっと強くならねば。

 

 

 



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オギャー!オギャー!

感想欄が婚姻届に侵食されて吹いた。正直に言えば思い付きです(笑)


 

 神々とその眷属が一堂に会しての宴が始まる。主催者は【アポロン・ファミリア】で、趣向を凝らして神々だけでなく眷属も参加可能にしたらしい。なので神々だけでなく、代表として相応しいように眷属も皆着飾っていた。

 それは主神のラクシュミーも眷属の俺も例外ではなかった。新品のドレスにタキシード。着慣れない衣装ではあるが、堂々としていればそれなりに似合うはず。購入した服屋の店員さんの太鼓判だからね。

 ちなみにエリスはお留守番である。

 

 「よく似合っておるぞアランよ」

 

 「ナチュラルに心読むのやめてくれます?」

 

 神ってのはこういうことがあるからな、マジ勘弁。

 

 「私はどうじゃ似合っておるか?」

 

 「いつもよりセクシーです」

 

 「ハハハ。めかし込んだ甲斐があったのう」

 

 上品に笑うラクシュミーを横目で見る。

 肩らへんと胸元は隠されているが、綺麗な鎖骨と腕は惜しみ無く晒し、足首まで伸びた裾には切れ目があり、それが膝上部まで伸びていた。チラリと見える太ももが何ともエロイ!  

 誰も家庭菜園が趣味とは思わない魅力が、女神ラクシュミーにあった。

 

 辺りを見渡してみれば、女神が主神の殆どが腕に手を添われて歩いている。対する俺はただ隣で歩くだけ。やべっ、世間知らずがバレる!

 

 「・・・ちゃんとエスコートした方がいいよね?」

 

 「よいよい。気負わず自分のペースでな」

 

 「すげぇ、大人の対応だ」

 

 「? 私はいつだって立派な大人じゃろて」 

 

 立派な大人は胡座をかいて座らないし、風呂上がりは下着姿で出歩かないし、お酒飲む時は爺臭くなりませぬ。

 

 そんなことを考えつつ歩く数分後。

 ヘスティア、タケミカヅチ、ミアハ、ヘファイストス、それとヘルメスが談笑していた。俺達の姿を見つけた全員が挨拶をしてくれた。

 

 「やあラクシュミー!アラン君!中層ではお世話になったね!」

 

 「こちらこそ、じゃな。そなたの眷属達が居なかったらアランとエリスは大事になってただろう。ヘスティアだけでなく、そなたらに感謝するのじゃ」

 

 「ありがとうございました」

 

 俺とラクシュミーは頭を下げて礼をした。これに対する対応はそれぞれで違った。

 

 「それじゃあ中に入ろう」

 

 「そうだな」

 

 俺達一行は会場に入場した。

 優雅な音楽に美味しそうな食事。雰囲気的にもオシャレと感じるか、

 

 「・・・胃が痛い」

 

 この後のことを考えたら純粋に楽しめそうになかった。そんな俺を見兼ねたのか、

 

 「もう少しリラックスしなさい。それと、こういう場では顔に出さない方がいいわよ」

 

 「あ、すみません・・・」

 

 真っ赤な赤髪の女神から忠告を貰う。このお方はさっき一緒にいたヘファイストス様だ。

 

 「椿から聞いたわよ。貴方、異質な装備を持っているんだってね」

 

 「ええ、まあ」

 

 「()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()い。一人の鍛冶士として気になるわね」

 

 女神様の目付きが変わった。職人だから気になるんだろうね。

 ・・・いや待て。あれ不壊属性(デュランダル)付いてたの?だから壊れなかったのか。

 

 「今度椿さんに見せると思うので、その時に見てみますか?」

 

 「いいの?じゃあお言葉に甘えるわ」

 

 ここで見せる訳にいかないよな。驚かせるし、最悪締め出される。

 

 「──今宵は新しい出会いの予感すらある。今日の夜は長い。楽しんでくれたまえ」

 

 いつの間にか挨拶をしていたアポロンに、男神と視線があったのかビクッとなるベル。

 

 「アポロンも面白い計らいをするなぁ」

 

 「今日は普段と随分勝手が違うわね」

 

 呑気に感心してる場合じゃないですよ、ヘスティア様。お宅のお子様狙われてますぜ。

 

 「今夜私に夢を見せてくれるかしら?」

 

 「っ!」

 

 ハハハ、狙われているのはアポロンからだけじゃなかったね。

 それにしても、すごい筋肉だな。鍛えに鍛えたんだろうなぁ。

 

 「何か場違いなこと考えとるじゃろ」

 

 「滅相もない」

 

 「くれぐれもフレイヤを見るなよ。エリスと違って、そなたは魅了が通じるんじゃから」

 

 「うっす」

 

 だから【猛者】に視線を飛ばしてるんです。視界の隅に捉えただけで美しさが伝わったんでね。

 

 「──妬けるわね。熱い視線を飛ばすのはオッタルだけかしら?」

 

 「うひゃあ!?」

 

 い、いつの間に・・・!音もなく近寄るな!ほ、本当にビビったんだからな!?(泣)

 

 「あらあら、驚かせたみたいね──お詫びに私の寝室に「そこまでにするのじゃ」残念ね」

 

 間に割って入ったラクシュミーによって、フレイヤは残念そうに退散した。こっっっわ。あの女神こっっっっわ!

 

 「何だったんだいったむぎゅ!?」

 

 「よしよし、怖かったねぇ。もう大丈夫じゃからなぁ」

  

 セリフの途中だったんですが、あの。まあ、正直今も怖いからお胸に頭を埋められると安心します。もっとこのままでおなしゃす!やべぇラクシュミーの母性があっあっあっ!(性癖が歪む音)

 冗談はさておき、フレイヤに骨抜きにされなくて本当によかった。

 

 去り際に【猛者】から何やら見られた気がした。期待でもされたのかな?

 

 ~♪

  

 おや、これは何のBGMだ?

 

 「これはダンスのやつじゃな。見てみぃ、皆踊っておるじゃろ」

  

 本当だ。全員が全員、綺麗に踊ってるね。

 

 「そうじゃな。私らも踊ってみるか?」

 

 上手く踊れるかなぁ。

 

 「アランは冒険者じゃろ?並外れた動体視力で私の動きを捉えてみせよ」

 

 それは無茶振りというやつっす。 

 

 「・・・私はそなたと踊りたい。何たってアランは初めての眷属じゃからな」

 

 ───レディ、一曲どうですか?

 

 「フフ、喜んで」

 

 ラクシュミーと踊った。プロが見たら下手だと言われそうだが、俺もラクシュミーも楽しかったので別にね。

 チラッと横目で見ると、ミアハ様、タケミカヅチ様そして。

 

 「ベルくぅぅん!!」

 

 「アイズたぁぁん!!」

 

 二柱の悲痛な叫びを物とはせず、ベルと【剣姫】は踊っていた。【剣姫】の美しさにある意味魅了されギャ!?

 

 「目の前に私が居るのに・・・随分な仕打ちじゃな?」

 

 「す、すいやせん女神様・・・」

 

 「全く、私がエリスだったら朝までコースじゃったぞ?」

 

 え、なんでここでエリスが出てくるんだ?

 

 「そなたというやつは・・・」

 

 頭痛がするんすか?

 

 「刺されぬよう、背中に気を付けるじゃよ」

 

 えぇ・・・。

 

 「ヘスティア、この前は世話になったな」

 

 「あ、アポロン・・・」

 

 躍りは終わり、ベル達のもとへアポロンが歩いてきた。そして───。

 

 「──愛しい我が眷属にこんなことをしておいて、シラを切る気かい?」

 

 「──あくまで自分達が悪くないと言い張るか!」

 

 「──君に、()()()()()戦争遊戯(ウォーゲーム)】を申し込む!!」

 

 流れるように宣戦布告をした。それに君に、ではなく君達に、か。ダフネだったか?あいつは御愁傷様と去り際に言った。分かっていたけど、特に何もされなかったぞ。

 

 「ラクシュミー、久しいな」

 

 「・・・ああ、そうだな」

 

 アポロンはベル達から視線を外して俺達を見る。知り合いなのかな。

 おっとあまり近付くなよ?用があるならそこで言えぃ!

 

 「世間話はほどほどにして、君にも【戦争遊戯】を申し込むって言えば分かるかい?」

 

 「・・・私らはそなたから嫌がらせを受けとらんぞ?」

 

 「嫌がらせ?まさかルアンのことを言っているのかい?ハハハ!それはヘスティアの眷属が仕出かしたこと。つまらない言い掛かりはやめてもらおうか」

 

 おいおい、いっそのこと清々しいなこやつ。

 

 「正確に言うならば、用があるのはアラン・スミシー君個人だ」

 

 俺?

 

 「()()()()()()()僕の眷属が君に因縁があってね。それに決着を着けたいと言ってきたのさ」

 

 つまり、狙っているのはアポロンではなくこいつの眷属か。その眷属はどういう立場なんだ?

 

 「分かってないようだな。ならば紹介しよう。来たまえ愛しの眷属よ」

 

 カツカツと靴音立てながら近付いてきたのは、

 

 「久し振りだな。貴様に嵌められて全てを失ったこの私を憶えているか?」

 

 眼鏡の奥にある目元には隈が浮き出ており、頬の肉がげっそり落ち、とても弱々しい印象を与えるが、その目にあるのは紛れもない殺気。気付けばラクシュミーの前に立ち身構えるほどだ。

 男は不気味な笑みを浮かべる。俺はこいつを知っている。知っているのだが・・・。

 

 「お、お前は────・・・誰だっけ?」

 

 俺の返答に神々は盛大にズッコけた。

 

 




ヒント、眼鏡がトレードマークのあの人です。


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そんなのあり?

感想ありがとうございます!


 

 「・・・何て言った?」

 

 目の前に立つ男の目付きがさらに鋭くなった。殺気と怒気、それに悪意まで滲ませる。関係のない周りの冒険者が主神を庇うぐらいだ。

 

 「ちょっと待って。・・・ラクシュミー、あの人知ってる?

 

 「知らないのじゃ。私は他人とあまり関わりがないし。てか、あんな男、一度見たら忘れないじゃろ

 

 「だよねぇ。あんな不健康で悪人面の男、オラリオでもそういないもんね

 

 「アランに因縁があるように見えるのじゃが・・・

 

 「んー、恋人さんが目移りしちゃったんじゃないかなぁ。ほら俺ってイケメンらしいし?

 

 「罪な男じゃのうそなたは

 

 「いえいえ、それほどでも

 

 「誉めとらんわ

 

 「「アッハッハ!!」」

 

 「全部聞こえてるぞ!一度ならず二度までも愚弄するか貴様ぁ!!」

 

 おおっと。こりゃ失敬。取り敢えず当てずっぽうで言い当てるしかないか。

 

 「冗談だよ冗談。君は裏町のマイケルだ。縄張り争いに負けたと聞いたけど、その後は順調かな?」

 

 「違う!私はマイケルではない!」

 

 やべっ、間違えた。

 

 「じゃあ弟のホイケルだ。欲深い兄貴の面倒は大変でしょ」

 

 「誰だそれは!私はホイケルなどではない!」

 

 ええ、違うのぉ?じゃあ手詰まりだよ。降参だよ。

 

 「貴様ぁ・・・!私を陥れるだけじゃなく、公の場で恥をかかせるとは・・・!」

 

 陥れた?それに恥?あ、神々が肩を震わせてる。必死に笑いを堪えているのか。ごめんね。そんなつもりじゃなかったんだ。

 

 「私は元【ソーマ・ファミリア】団長のザニスだ!貴様が主神を誑かしたせいで全てを失った!私は貴様を許さない!」

 

 「ああ、可哀想で胸が張り裂けそうだ!現主神の私はこの子の気持ちを汲んでやりたい!因縁解消をするならば【戦争遊戯】をするしかあるまい!」

 

 あ~、こいつザニスか。よく見れば面影が・・・ありまくりだわ。本人だわ。てか、そういえばアポロン居たね。ごめん忘れてた。

 いや、それよりさ。

 

 「お前が全てを失ったのは自業自得だろ。神酒で団員酔わせて金儲けするだけじゃなく、悪事にまで手を染めていたんだから。完全に逆恨みじゃねぇか」

 

 「言い掛かりだ!私が悪事を働いた証拠でもあるのか!?」

 

 「俺の言葉に嘘があったか?」

 

 「ないのじゃ」

 

 「ぐぅ・・・!」

 

 言い負かされたザニスは苦虫を噛み殺したような顔になる。周りの人達も、ザニスの悪行に不快感を抱いているようだ。

 

 こいつ、全部失ったのを俺のせいにして、自分の非を認めないつもりかよ。

 

 「その話、詳しく聞かせてもらおうか!この俺!ガネーシャにぃぃぃぃ!!」

 

 え?

 

 「【酒守】、我々に同行してもらおうか」

 

 は?

 

 「待て!この子は私の眷属だ!いくらガネーシャでも勝手は許さ「この男の罪を知って庇うつもりなら、貴方も同行していただきます」ザニスよ、行ってこい」

 

 「アポロン様ぁ!?ちょっやめ、離せ!アラン・スミシーィィィィ!!またしても貴様はぁぁぁぁ!!」

 

 あれれ~?

 

 闇墜ちしたザニスと【戦争遊戯】で決着つける流れじゃいの?なんで連行されてんの?

 

 後から聞いた話だが、復讐を誓ったザニスはランクアップを果たし、強力なスキルまで獲得していたようだ。

 また、【ガネーシャ・ファミリア】の事情聴取で犯罪の数々が山のように暴かれ、恩恵を刻むことを禁じられたのこと。ついでに懲役二十年。牢屋から出た後はオラリオから追放されるらしい。

 

 「・・・俺の派閥も【戦争遊戯】をするんすか?」

 

 アポロンはブンブンと首を横に振った。

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 おまけ

 

 「ただいまー」

 

 「ただいまなのじゃー」

 

 「おかえりなさい!」

 

 ホームに帰りエリスの出迎えを受ける俺達。こいつに宴のことは話さない。俺とラクシュミーの決めごとだ。

 

 「・・・エリス、ちょっと」

 

 「? どうしました?」

 

 「いいからいいから。アランはリビングで待っとれ。着替えるなよ」

 

 「?」

 

 ラクシュミーはエリスを連れて違う部屋に移動した。俺は言われたようにリビングで待った。冷えたお茶が美味しかった。

 

 待つこと三十分。

 

 「アラン、お待たせ・・・」

 

 「随分長かったねぇ。着替えの手伝いでもしてた・・・のか──な?」

 

 振り向けば、普段着からドレスに着替えたエリスが立っていた。恥ずかしがる彼女であったが、あまりの綺麗さに見惚れてしまう。

 ヤバい、なんかドキドキする。

 

 「ど、どうかな・・・?」

 

 「───え?あ、ああ凄く綺麗だよ。ドレス買ってたんだ」

 

 「その、ラクシュミー様がね?用意してくれてたんだ」

  

 へ~ラクシュミーが・・・。本当に頭が上がらないな。いや本当にお世辞抜きですっっっごく綺麗だ。

 スーツの俺とドレスのエリス。取り敢えずヤることは一つだよね。

 

 「───俺・・・じゃなかった。私と一曲踊ってくれませんか?」

 

 「───はい、喜んで」

 

 ~♪

 

 いつから居たか分からないラクシュミーが、あの音楽を鼻唄で再現してくれた。

 エリスとのダンスは気恥ずかしかったが、いつまでも思い出に残るだろう。まあ、こんな狭い部屋じゃなくてもっと広くてきらびやかな場所ならムードがあったんだけど・・・。

 

 「私は嬉しいよ。アランとこうして踊れると思ってなかったから」

 

 「そっか。そうだよな!俺もエリスと踊れて良かったと心から思ってる」

 

 「「フフフ」」

 

 ヤバい、エリスを見てるとドキドキする。

 

 なんだろ、不整脈でもなったのかな?

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 アポロンが宣戦布告した【戦争遊戯】は、見事人数差を覆し【ヘスティア・ファミリア】が勝利を収めた。

 俺達は参加してない。因縁を持っていたザニスが逮捕されちゃったから。

 ザニスというイレギュラーが無くなった今、ほぼほぼベル達が勝つので、

 

 「じゃあ貰ってくね」

 

 「「「「チクショォォォォ!!」」」」

 

 賭博に参加していた。エリスもラクシュミーにも頼んでおいたので決して少なくない金額になったはずだ。

 使い道は新しいホームを手に入れること。いつまでも男女が一つの布団で寝るのはよろしくない。最近は変に意識しちゃうから特にね。

 

 ともかく大金を手に入れたのは事実。酒場からウハウハな状態で出ると、

 

 「やあアラン・スミシー。十八階層ではお世話になったね」

 

 はい?

 

 目の前に立つ男は一族の英雄か、それとも腹黒勇者か、はたまたアラフォーショタか。

 彼の微笑む顔はとても不気味だった。

 




【戦争遊戯】に参加すると思った?参加しましぇーーん!不参加でぇぇぇす!ザニス逮捕ルートに突入しましたからね。

 次回から新章突入!舞台は【人造迷宮】へ!お楽しみに!


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お前が囮になるんだよっ!!

後から入ってきた後輩が、先に入った自分より仕事覚えるのが速かったら気分が滅入る。


 

 それは【戦争遊戯】の賭け事が行われていた酒場を出てすぐのことだった。【勇者】フィン・ディムナから依頼を頼まれたのは。

 

 「ここは単刀直入に言おう。敵対する組織を討ち倒すには君の力が必要だ。僕達に協力してくれないか?」

 

 敵対する組織とは十中八九闇派閥のことだ。一介の冒険者である俺に頼んだのは、猛毒を解毒してみせたあの回復魔法が目当てだろう。

 

 「君の考えている通りだ。ゴライアスを倒せるほどの力を持ち、尚且つあの猛毒を癒せる君に頼みたい」

 

 何?心読むの流行ってるの?最近のトレンドなの?

 

 まあ、それは置いといて。

 

 「幾つか条件があります」

 

 「分かった。明日【黄昏の館】に来てくれ。その時詳しく聞こうじゃないか」

 

 「ありがとうございます」

 

 そう言って【勇者】は帰路に着いた。

 俺はこの依頼を承諾する。闇派閥に関することといえば、あの【人造迷宮(クノッソス)】であり、決して少なくない死者をだす。

 

 だから運命(正史)を変える。

 

 「準備に取り掛かるか」

 

 ますばあそこだな。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 「こんにちは、アラン」

 

 「ああ、こんにちはシトリー。出会い頭にハグするのはやめて欲しいかなぁ」

 

 「アランは、嫌・・・?」

 

 「嫌じゃないけど・・・心臓に悪いっていうか、そのねぇ?」

 

 当たるんですよ。それに匂いに敏感なエリスに問い詰められるんですよ。怖いんですよ。

 

 「今日はどうしたの?」

 

 「お前の話を聞かせてくれないか?」

 

 「私の?」

 

 「うん。出来ればでいいよ。無理矢理聞く気はないから」

 

 死地に赴くんだ。悔いは残したくないし、シトリーの気持ちが幾分か軽くなればいいかなぁ。

  

 「()()()()()()()()()()()()()()

   

 「!」

 

 彼女の顔が強張った。踏み込み過ぎたかもだけど、俺は引き下がらない。

 シトリーの友人である店員から、詳しくは教えて貰えなかったけど、『私には不可能だったけど、貴方ならきっとあの子の闇を払ってあげられる』って言われたのだ。それにシトリーの口からたまに兄の存在を聞く。武器を造らなくなったのはそこからだし。

 知っておきたいな。この先聞く機会なら幾らでもあると思うが、同行する場所が場所だからね。お節介で自己満足かもだけど、可能な範囲で何とかしたい。

 

 「俺に教えてくれないか?お前の過去、そしてお兄さんのこと」

 

 「・・・アランは約束してくれる?」

 

 「ん?誰にも言わないことか?」

 

 その質問に、シトリーは違うと言った。

 

 「多分だけどね?アランは()()()()()()()()()()のもとへ辿り着く。だから約束して?」

 

 あの女?

 

 「─────」

 

 俺は了承した。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 シトリーの過去と、約束をしたあの日から数日後。

 

 「おいフィン!なんでこいつらがここに居る!?」

 

 「僕が依頼した協力者だ。治癒士として・・・()()()()()()()()()()()()()()

 

 「それは・・・」

 

 ここはダイダロス通りにある地下水路。目当ての物を見付けた【ロキ・ファミリア】は、そびえ立つ扉の前に集合していた。  

 【凶狼】が言うように、俺達がここに居ることを知らなかった周りの団員が驚いていた。知っていたのは【勇者】【九魔姫】【重傑】の首脳陣と主神のロキ。他は捜索で忙しくしていたので今の反応だ。

 

 まあ、【戦場の聖女】が来ることに【勇者】は知らなかったみたいだ。

 

 困惑気味のアミッドがチラリとこちらを向いた。

 

 「俺が個人的に依頼したんです。代金は俺が負担するのでご安心を」

 

 「ええ。彼が絶対大怪我するので来てくれと言ったので・・・」

 

 (((((【戦場の聖女】を連れ出せるこいつは何者だ・・・!?)))))

 

 一同は首を傾げた。優秀な治癒士である彼女を、最大派閥でも、なんら権力もないただの冒険者が店から連れ出せるのは不可能に近い。大怪我したのなら店に行けばいいだけだし。

 

 「よくディアンケヒトが許可してくれたなぁ・・・」

 

 「もちろん反対してましたが、彼の一声で・・・」

 

 (((((本当に何者だこいつ・・・?)))))

 

 ディアンケヒトは金の亡者であることは周知の事実。金を持っていなさそうな冒険者に虎の子(お気に入り)を貸すとは思えない。

 疑問が深まる一方だ。

 

 「まあ、君が居てくれるのは心強いよ。アラン、アミッドの配置はどうする気だい?」

 

 「彼女はここで待機させます」

 

 「それはなんでや?」

 

 「このアジトが未だ謎だからです。不明点が多いこの状態で連れて行くのは危険です」

 

 彼女を失うのは痛い。オラリオにとっての損失と言っても過言ではないほどに。

 【勇者】も賛同してくれた。

 

 「アランは僕達と、アミッドはリヴェリア達とここで待機。怪我人が出たら頼むよ」

 

 「「はい」」

 

 そんな話をしていると・・・。

 

 「開いた・・・!?」

 

 それなりの重量がある扉が開いた。奥に誰かいたような・・・?

 偵察を頼まれた【凶狼】とクルスと呼ばれた青年が戻って報告をする。モンスターと人は不在だったけど、この中はまるで迷宮だったと、彼は自身の見解を述べた。

 

 「君の意見を聞きたい。敵の狙いは何だと思う?」

 

 「俺ですか?」

 

 「ああ。君ならどうする?」      

 

 俺ならどうするって?それなら決まってる。

 

 「()()()()()()()

 

 「「「「「!!」」」」」

 

 全員の顔が強張・・・いや怒りか。素直に答えすぎたな。【怒蛇】が今にも飛び付いて来そうだし、何なら剣を抜こうとしている人がチラホラ見える。

 

 誤解を解こうか。うん、解いた方がいいな。まだ死にたくない。

 

 「理由を言えば貴方がこの派閥の頭だからです。敵に回ったら厄介な【勇者】を始末すれば、優秀な指揮官が消えると同時に士気が下落する。絶対的な信頼感が貴方にはある」

 

 「なるほど・・・なら真っ先に狙われる僕はどうするべきかな?」

 

 「そんなの決まってます

 

 ───()()()()()()()()()

 

 俺は微笑んだ。

 悪魔の如し所業に、周りはドン引きした。

 

 絶対に全員を助ける策を思い付いたからね。最悪死ななきゃいいんだ、死ななきゃなぁ?

 

 

 

 

 親指が疼く。

 

 かつてない痛みとなって。

 

 モンスターの波が割れる。

 

 道を作るように、かしずくように。

 

 歩みだすのが。

 

 王の代行者であるかのように。

 

 (赤髪の怪人!?戦闘力が上がっている!あり得ないほどに!!どれほどの魔石を食べれば!?)

 

 「十八階層の借りを返すぞ」

 

 魔法を使わなければ負けるという刹那にも満たぬ迷い。それが決定的致命に

 

 

 ───()()()()()()

 

 

 「強臭袋(モルブル)だオラッ」

 

 「!! ぐぁ!?」

 

 剣は振り下ろされなかった。いつの間にか接近していたアラン・スミシーが阻止したからだ。

 顔面という至近距離から激臭を喰らった怪人は、視覚と嗅覚をヤられた。

 

 「いやー、これって催涙弾みたいに目もヤられるから取り扱いに神経使うんだ。みんなも気を付けてね」

 

 「誰に言ってるんだい?でも助かった──よ!」

 

 「ぐぅ・・・!チッ!」

 

 【勇者】の追撃を躱し、赤髪の怪人は扉の奥へと逃亡した。残されたのは新種と───

 

 「何やってんだよぉぉぉぉ!!作戦が台無しじゃねぇかぁぁぁぁ!!」

 

 【殺帝】ヴァレッタ・グレーデ。かつて暗黒期に暗躍した主要幹部の一人であり、冒険者や一般人問わず殺戮の限りを尽くした最低最悪の悪人。

 

 「てめぇ、何者だ・・・!?」

 

 「ただの冒険者だ。新人のな」

 

 そしてヴァレッタこそ、()()()()()()()()()()()()である。

 

 「これで終わりだよ、ヴァレッタ。大人しく降参してくれないか?」

 

 「糞がぁぁぁぁ!!」

 

 人工迷宮に惨めな女の断末魔が響いた。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 今週の【三択からどうぞ】は、

 ①【限定強化】

 ②雑巾

 ③槍

 

 さて、オリ主は何を選んだでしょーか?

 

 





掲示した条件は三つ
 一つは【ロキ・ファミリア】が得た情報の開示。何で無関係のお前が知ってるんだ?と疑われ、外伝で見ました!なんて言えないからね。

アミッドが来た理由
 いつかの話で優先的にアランを治す権利を獲得しているため。また、呪詛を打ち消す薬を超特急で何本か作ってくれました。アラン、許すまじ。

レヴィスに近付けた理由
 漆黒のゴライアスが現れる前、アスフィからペナルティの肩代わりと透明化の兜を貰い、さらに無臭袋を使用しておいたので難なく近付けました。実は漏らしそうなくらいビビってたのは内緒。


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高み

サクサク行ってみよー!


 

 散らばり砕けちった魔石に、モンスター消滅時に舞う灰が辺り一面に広がっていた。

 そんな場所には、心臓近くに幾つもの剣が突き刺され、倒れている女が一人。神から得た恩恵の力で絶命できず、また治療できないせいで苦しんでいた。

 

 「ガハッ、ゴホッ・・・ハハ、ハハハ、アッハハハハハハハハッ!! てめぇらぁぁぁぁ!!こんなことして只で済むと思ってんのかぁぁぁ!?私を殺した所でてめぇらが死ぬことには代わりないんだぜぇ?フィ~~~~ン?今も苦しんでんだぜお仲間がぁ。助けに行かないのかぁ?優しい優しい勇者様よぉ?」

 

 「こいつ、まだ生きてるのか・・・!?」

 

 誰かが呟いた。その言葉には恐れが含まれていた。だって死ぬ寸前の女が嗤い、怒り、愉しんでいるのだから。

 それでも【勇者】は通常運転だった。

 

 「君の言う通り苦しんでいるのなら助けに行くさ。()()()()()()()()()()からね」

 

 手にはアルファベットのDが刻まれた球状の魔道具が握られていた。これこそが、この迷宮の扉を開く文字通りの鍵である。

 

 「ゲホッ、それがどうしたぁ?この迷宮は馬鹿みたいに広ぇのにどうやって探るつもりだぁ!?まさか、さっきみてぇにその男を頼る腹か?」

 

 その男。つまり俺である。まあ、何にせよ。

 

 「安心しろ。だいたいの位置は()()()で把握してる。鍵がある以上、サクサク進めるからな」

 

 「そういうことだ。全く、嫌になるよ。彼が居なかったら僕達は君の思惑通り死んでいたかもしれないんだからね」

 

 それは【勇者】の心の底からの言葉。事実、俺が不参加だったら、怪人に斬られ分断され死者をだす。今は自分が甘かったと自責の念に囚われてるのかな?

 

 「じゃあねヴァレッタ。あの世で待っていてくれ。最も、すぐには逝けそうにないから気長にね」

 

 「!! フィィィィ「黙れ」ブギャ!?」

 

 名前を呼ぶ前に【凶狼】が頭を踏み潰した。シトリー、お兄さんの仇は討ったよ。それにしても・・・おえぇ、あまりのグロさに吐き気がする。

 

 「ハハ、彼が吐く前に退散しようか」

 

 だからナチュラルに心読むのやめて・・・いや、多分俺の顔色はすっごく悪いと思う。この人じゃなくても察してるね。

 あ、背中撫でてくれるの?ありがとう、気持ち吐き気が治まっオロロロロ!!

 

 「結局吐くのかよ!!」

 

 これはヴァレッタ・グレーデの供え物ってね。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 一方その頃。

 

 「アリア、貴様が来るのを待っていたぞ」

 

 「私はアリアじゃな・・・()()()()()()()()?」

 

 涙目で苦しそうな怪人に、アイズは頭の上に疑問符を浮かべた。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 俺のスキルと鍵の力で次々仲間と合流し、

 

 「チッ、ここまでか・・・!」

 

 「待てやぁぁぁぁ!!なんで充血してんだてめぇぇぇぇ!!」

 

 【剣姫】と怪人が戦っていた場所に辿り着いた。小説だと斬られてなかった?

 

 「よく無事だったね」

 

 「うん、なぜか苦しそうだったからかな・・・?」

 

 「「「「・・・」」」」

 

 「・・・ん?」 

 

 まあ、至近距離で強臭袋(モルブル)を喰らったらね。目に入ったらそりゃ充血するよ。今は怪我人癒してる最中なんで、鬼畜を見るような視線を向けないで。

 それにしても、この呪詛中々強力やね。ランクアップを果たした今の俺でも完全に癒せねぇわ。これ癒せる聖女様すげー!

 

 「俺の魔力じゃここらが限界みたいっす」

 

 「それでも楽になりましたよ!後は止血すればいいだけだし

!」

 

 「精神回復薬を飲んでおいてくれ。君に倒れられたら終わるからね」

 

 そうだねぇ。回復と索敵を担当してるもんね。実質このパーティは俺を中心に回ってるよね。

 

 「じゃあ撤退しましょう。あの方向に最後の一組がいますから」

 

 「お主の索敵は範囲が広いんじゃのう」

 

 「遠く離れていたら大まかな位置しか掴めませんけどね」

 

 「充分過ぎるよ。よし、部隊を引き上げる───」

 

 【勇者】は最後まで言い切る前に止まってしまう。親指が尋常じゃないくらい痛みだしたから。

 それを皮切りに、ドシンドシン!と地面を勢いよく踏み抜く重低音が近付いてくる。それも物凄い速さで。

 

 「これは不味いのぅ・・・!」

 

 「こいつはやべぇ・・・!」

 

 「うわぁ」 

 

 次に【重傑】に【凶狼】、気配を感じられる俺が反応する。尋常じゃないほどの存在感を放つそれは、

 

 「逃げろぉぉぉぉぉ!!」

 

 超硬金属を易々とぶち壊す質量を持つ、【穢れた精霊】と呼ばれる新種のモンスターで天の雄牛。

 

 その特徴は、

 

 『アリアァァァァァ!!私ト一ツ二ナリマショォォォ?』

 

 モンスターの常識を覆すほどの知性を持つ。

 

 「走れぇぇぇっ!!」

 

 「あれは遠征で見た同系統のモンスターっす!今の自分達だと勝ち目が薄い!」

 

 「! 団長!前方から新種の群れです!」

 

 「囲まれたか!不味いねこれは・・・」

 

 後ろには精霊、前には食人花の大群。絶望的な状況に───

 

 「()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 「「「「───!!」」」」

 

 「状況分かってんのかてめぇ!」

 

 勝算が少ないが、今は治療中の怪我人を運んでいる。中には意識が朦朧としている人おり、精霊に割く戦力はない。

 

 「僕達二人だけでできるのかい?」

 

 「正確には貴方だけが戦いますけどね。作戦は───」

 

 「──その提案乗ってあげるよ!僕は君に賭ける。ガレス!部隊を頼んだ!」

 

 「フィン!それでよいのかぁ!!」

 

 「ああ!最後の最後まで彼の思惑通りになるけど・・・僕は今日冒険をする!!」

 

 「ガハハハッ!!ホームに帰ったらお主の冒険を聞かせて貰うからな!」

 

 そう言って部隊は離れた。中には反対する者もいたが、渋々指示に従った。

 ちなみにあの人達の進行方向にリーネさん達がいる。怪我をしているだろうが、ヴァレッタが死んだ今、彼女らを追撃する者はいない。

 

 「“魔槍よ、血を捧げし我が額を穿て”【ヘル・フィネガス】」

 

 フィン・ディムナの魔法。それは能力を大幅に引き上げる強化魔法であり、その代償に判断力を失い()()となる狂化魔法でもある。

 五十九階層と違い仲間もおらず、魔法で敵に隙を見せる愚策。しかしここには、

 

 「【癒光の羽衣】!それとコレあげる!」

 

 「(本当に()()()()()()!!それとこれは()?どこから出した?いやそれよりも───手に馴染む!!)」

 

 後ろには()()()()()()()()()()がおり、狂化も例外ではなかった。この時フィンは知る由もないが、この槍はスキルで獲得したものであり、売り払って新居に必要なお金にするつもりだった。だからこの状況は狙ったわけではない。

 偶然だったにせよ、結果的に繋がったから良しとしよう。

 

 ───金の槍を掲げ。

 ───白光の衣装を纏い。

 ───巨悪を見据えるその姿。

 

 同族がこの場に居たのなら口を揃えてこう言うだろう。

 

 ───一族の光(フィアナ)が居ると。

 

 「これは俺からの八つ当たりだ。死ぬほど恨め。お前にはその権利がある」

 

 フィン・ディムナは(口調は乱暴だが)狂気に呑まれず漲る力だけを纏う。そんなあまりにも強い殺気に、

 

 「!! 生意気生意気生意気生意気生意気生意気生意気生意気ィィィ!!」

 

 壊れたオモチャのように、あるいは恐怖を誤魔化すように精霊は混乱した。

 暴力の化身と化した【勇者】と、力及び機動力に特化した【穢れた精霊】が衝突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日、一つの報せがオラリオを湧かせた。

 

 ───【勇者】フィン・ディムナ、L()v().()7()()()

 

 小人族がどう思ったかは知らないが、少なからず影響されただろう。

 だって、ダンジョンに向かう多くの者がサポーター用のバッグでなく、彼の象徴とも言える武器()を手に持っていたのだから。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 あの侵攻から帰ると待っていたのは、

 

 「アランお帰り。どうだったの?【ロキ・ファミリア】のお手伝いは?」

 

 「お帰りなのじゃ。さぞかし過酷だったじゃろうて。所々服に傷がある」

  

 殺伐とした戦場ではなく、エリスとラクシュミーが居るいつもの日常。それが堪らなく嬉しくて。

 

 「ただいま、二人とも」

 

 「!! や、ヤバい!微笑みの破壊力が・・・!?」

 

 「き、気をしっかり持つのじゃ!油断するとコロッと逝っちゃうぞぅ!?」

 

 何言ってるか分からないが、俺の口元は自然と緩んでいた。

 





正解は槍でした。
ついでに【ロキ・ファミリア】は全員生存。応急手当はアランが、完璧な治癒は聖女様がやってくれました。


後日談的なのやって【異端児編】をやります。
 


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マジ勘弁っす

後日談、なのかなぁ。


 

 原作通り【イシュタル・ファミリア】は崩壊した。【勇者】はイシュタルが闇派閥と繋がり、さらに例の鍵を持っていると予想するが、たしか副団長タンムズからフレイヤに渡っているはず。

 無駄足になるだけだから探さなくていいよ。

 

 アラン・スミシー(16) Lv.2

 

 力:F356

 耐久:G240

 器用:G251

 敏捷:F303

 魔力:E419

 

 “発展アビリティ”

 幸運H

 

 "魔法"

 "スキル”

 【言語理解(コミュニケーション)

 ・会話や文字の自動翻訳

 

 【三択からどうぞ(サード・ワン)

 ・三つの中から一つ獲得

 ・選んだモノの貯蓄と引出し

 ・一週間後に再選択

 ・貯蓄(1.篭手2.レイピア3.【刀剣乱舞】4.バンダナ5.【癒光の羽衣】6.【全力投擲】7.槍(返してもらった))

 

 【断捨離還元(リサイクル)

 ・スキルにより入手したモノを捨て自身の能力値に還元する

 ・価値によって変動

 

 

 エリス・キャルロ(16)Lv.2

 力:D563

 耐久:D520

 器用:B712

 敏捷:B785

 魔力:C635

 

 “発展アビリティ”

 狩人H

 

 “魔法”

 “速度増加(速まれ)”【加速(アクセル)

 

 “スキル”

 【犬人咆哮】

 ・獣化

 ・全能力値に高補正

   

 【貴方想奏(フォー・ユー)

 ・───

 ・特定の人物を想うほど効果向上

 ・魅力無効

 

 

 あの戦場から帰ってから後日。俺達はステータスを更新した。【人工迷宮(クノッソス)】を乗り越えたのにあまり成長してないと思うが、上位の経験値はそれなりに貯まっており、どれか一つでもアビリティD評価にすることと、あと一つ偉業を達成すればランクアップするとラクシュミーは言っていた。

 また、俺とは対照にアビリティがかなり成長しているエリスだが、まだまだ上位の経験値が貯まってないようだ。だから偉業を積まない限りはランクアップができない。

 

 「新居はどうするのじゃ?賭けでそれなりに儲けたじゃろ」

 

 「それが・・・」

 

 俺はありのままを伝えた。賭博で得たお金は全て【ディアンケヒト・ファミリア】に渡したことを。

 

 「仕方なかったんです!秘薬も()()()()も居なかったら死人が出てたんだから!事後報告でホント申し訳ないけど、予想以上にお金が掛かったんですぅぅぅぅ!!」

 

 だから俺は弁明を兼ねて謝罪した。DOGEZAである。全て許されると武神が言った、最終奥義(極東風謝罪)。我ながら綺麗に決まったと思う。

 

 「・・・頭を上げるのじゃ。賭博で溶かしたんじゃなくて、人のために使ったんじゃろ?ならば責める道理はない」

 

 「うん。お金から貯めればいいしね。それにこれからも一緒に寝れるし・・・

 

 「ふ、二人とも・・・!」

 

 女神が、ここに優しい女神達がいる・・・!エリスが小声で何やら言っていたが許されたらしい。俺の心は幾分か軽くなっ──

 

 「アミッドって【戦場の聖女】だよね?いつから下の名前で呼ぶようになったの?」

 

 胃が痛くなった。

 それには事情があってだな・・・

 

 「どんな事情?ねぇ?私に教えて?」

 

 ひぇ。

 た、助けてラクシュミー・・・!

 

 「お茶が美味しいのじゃ」

 

 ラララ、ラクシュミィィィィィッ!!

 

 「ごめんくださーいっす

 

 「だ、誰か来たみたいだなぁ~~!待たせると悪いから行ってくるね!」

 

 俺は逃げるように玄関まで走った。ナイス来客!お前がナンバーワンだ(ベ◯ータ風)

 

 

 

 

 「・・・そんなに嫉妬するなら告白すればよかろうに。好きなんじゃろ?アランのことが」

 

 「・・・はい。私はアランを愛してます。彼が他の女の子と仲良くするのは堪らなく嫌だ。でも、告白して振られたり、強引に迫って今の関係が壊れるのがすっごく怖いんです」

 

 「それは・・・杞憂だと思うんじゃがなぁ。アランはきっと受け入れるぞ?」

 

 アランは自分よりも仲間を優先する。知り合って間もないエリスに魔導書を渡すぐらいだし。

 

 「そこに愛はありませんよ、きっと。心に残るのは虚しさだけです。だから私を好きになってくれるよう彼を振り向かせます!目移りなんかさせませんから!」

 

 こいつはこいつで一途だ。愛なんて恋人になってから育めばよいだろうに。恋は盲目なんじゃろか。

 

 「まあ、励むとよいわ」

 

 「もちろんラクシュミー様は第二婦人です!」

 

 「ぶふぅっーーーーー!?」

 

 飲んだお茶を吹いた。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 「以上で報告は終わりっす。団長から『君のお陰で初心に、いや、目指したいものを再確認できた。心から感謝する』と言っていましたっす!自分も仲間を助けてくれたことに礼を言わせて欲しいっす!」

 

 「いえいえそんな」

 

 そんなに感謝しないで欲しいっす!俺は原作知識をフル活用しただけだから!

 

 「それとこれをどうぞっす」

 

 「バッグ?」

 

 「その中には今回の報酬と、アランさんが【ディアンケヒト・ファミリア】に依頼した分のお金が入ってるっす」

 

 は?待て待て。依頼金を知ってるのか?かなりの額になるぞ?そこに報酬が加わったら・・・やべぇ返さな──

 

 「返品不可なので、自分はそれじゃ!」

 

 「ちょっ待っ・・・速!?流石Lv.4だな!【超凡夫】すげぇ!!」

 

 感心してる場合じゃない。取り敢えずリビングに戻るか。

 

 「ぶふぅっーーーーー!?」

 

 いや何やってん?

 




【人工迷宮】攻略の参加条件 
・情報の開示
・お金
・自分等が敵対してもスルーしてほしい(冒険者及び一般人に手を出したら無効とする)

アミッド
 人命よりお金優先だと思ってましたけど・・・命懸けで他派閥を治療し、自分のお金を使い切ってまで我々に依頼するとは。少々誤解してたかもしれませんね。下の名前で呼ばせたのに他意はありませんから!今後ともご贔屓に!
 
ロキ
 うちに欲しいなぁ。

フィン
 彼のお陰で高みへと至れた。くそ、もう一度会いたいけど書類仕事が・・・。あの槍くれないかな?味方だと頼もしいけど敵になったら厄介。
 
???
 怪人を撃退したり、仲間を助けたり、フィンをランクアップさせたり・・・すごい気になる。一度ホームに訪れようかな。
 










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幕間 数万年後の君へ

幕間の使い方があってるか分かりません。読み飛ばしてくれても構いませぬ。


 

 そこはかつて広大な都市があったとされる古代遺跡。

 雑草が整備されていたであろう道路を突き破り、人が生活していた建物からは蔦が伸びていた。

 建物の中には城と見紛うほどの豪勢なものもあり、その城まで歩き疲れるほどの庭もある。

 そんな都市で一際目を引くのが、半ばからポッキリ折れた“塔”である。その塔が健在ならば現代の物より遥か高く、研究者の見解ではまず再現不可能なのだとか。

 その塔は都市の端から端まで届く勢いで倒れており、数百年前の戦争で折られたとされる。

 その時にはもう都市としての役割を終えていたので、一般人は生活しておらず被害者は当然いない。 

 昔の人がなぜここを襲撃したのか不明である。一説には八つ当たりだとされる。

 

 この都市にはあらゆる説がある。

 曰く、怪物が誕生する洞窟があったとか。

 曰く、そんな怪物と戦う職業があったとか。

 曰く、全ての英雄伝説はここから生まれたとか。

 

 曰く、曰く、曰く。

 昔っからある説は信憑性があるものもあれば、眉唾物であるものまで存在する。

 信憑性があるものは、動物の化石である。人型の化石もあれば、近場の湖で発見された竜型の化石もある。現代ではまず見ない生物なので、ここから───いや、どこかの洞窟で誕生したと考えられている。だってこの都市にそんな洞窟発見されてないし。

 眉唾物のものは、“神”がいた。最近発掘された書物の中には神々から力を授かったと記されていた。人々が作った神話によくある話だし、神を信仰する宗教なんてざらにある。神ではなく、占い師的な存在を信仰してたんじゃないか?いわゆるプラシーボ効果的な?これが有力である。

 この中に正解があるのか、ないのか。それとも全ての説が本物なのか、それとも偽物なのか。

 今になっては不明だが、調査で何か分かるかもしれない。

 

 匙を投げ出した様々な分野の学者に代わり、この俺、()()()()()()()()が見つけてやる!学校に提出する卒論のため───もとい、研究旅行を兼ねてやって来た。

 

 都市の名前は【()()()()】。なんだか懐かしい響きだなぁ、と昔から気になっていた都市。

 史実によればおよそ数万年前に栄え、世界の中心とされた都市国家である。

 

 

 

 

 

 

 

 ───意気込んだはいいが、【白い妖精】と呼ばれるお化けが出現する噂を思い出し、今まさに後悔している。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 これは記録にして、誰かの記憶。

 一人の青年が体験した物語。創作の定番である転生を果たし、神秘的な女神と出会い、恐ろしいモンスターと戦い、生涯の恋人と愛を深めた人生譚。

 物心付いた時から少しずつ、頭がパンクしないように気遣いながら、情報が流れ始めた。

 

 笑って泣いて驚いて。

 アクション、ファンタジー、コメディ、ロマンス、サスペンス。色んなジャンルを詰め込んだような物語に、私はいつもハラハラドキドキしていた。

 その物語はついに佳境へ。主人公が老齢のお爺さんになり、愛した人()は随分前に亡くなっており、自分が寝ている布団の周りにはたくさんの人達に囲まれている。その中には女神様はもちろん、息子夫婦に孫夫婦、幼い曾孫もいる。

 あの息子がこんな大きくなってなぁ~なんて、保護者面している私がいる。

 そうして青年もとい、お爺さんは呟いた。

 

 『()()()

 

 【スキル】という三文字。これは一週間に一回呟く言葉であり、現代ではあり得ない超常的な力を実現するもの。

 その効果は表示される()()()()()()()()()()()()。選んだモノは物体として現れるか、自身の力として反映されるかのどっちかだ。

 今回は何も出てこなかったので、恐らく自身に反映される系のモノ。

 お爺さんはそれに満足したのか、薄っすらと開いていた目が静かに閉じた。

 

 そして───息を引き取った。それがこの物語の完結である。

 私は泣いた。自宅でかなり泣いた。小学校の卒業式でもこんなに泣いたことはなかった。目が腫れてズキズキと痛むまで泣いた。

 泣き止んだ私がとった行動は、

 

 聖地巡礼。調べた限りこの物語はフィクションではない。なぜなら実際に存在するからだ。存在するといっても魔法やスキルではなく、主人公が生きた都市が。

 

 その場所は【()()()()】。今や荒廃した都市国家で、昔は世界の中心だった迷宮都市である。

 

 そう言えば卒論に手を付けてなかったから丁度いいな、なんて打算的なことは考えてないよ?本当だよ?

 私は取り敢えず必要な物をバッグに詰め込んで、出発日を設定する。女一人の旅は無用心が過ぎるけど、テントじゃなく車中泊だから幾分か安全か。

 

 「・・・まあ、頑張るか」

 

 ちなみに私の名前は()()()()()()()()。主人公が愛した女性と容姿も名前も瓜二つである。

 





【白い妖精】にルビを付けるなら、きっとマイナデスにする。

神々はいない。魔法もスキルも存在しない。どれもオカルトと呼ばれるものだ。


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ツンデレの需要

 

 新居に必要な資金が手に入り、どんな場所に住みたいかワイワイ話している時、【凶狼】ことベート・ローガが家に来た。

 

 何でも、闇派閥の手掛かりが欲しいのだとか。敵を知ることはいいことなので、何か喋れることがあるかなぁ、なんて考えて疑問が浮かぶ。

 

 「()()()()()()()()()?」

 

 仲間は一緒じゃない?

 

 「別にいいだろうが、そんなこと・・・」

 

 おや?何この反応?

 確か外伝では亡くなった団員に暴言吐いて追い出されていたはず。

 

 はっはーん。

 

 「もしかして、追い出されました?」

 

 「!?」

 

 ピーンと尻尾が上を向く。顔を見れば図星を突かれた表情をしている。

 

 追い出された理由は恐らく、

 

 「『ハッ!雑魚に助けられて何喜んでんだ。てめぇの身一つ満足に守れねぇなら巣穴から出てくんな!!』とか?」

 

 「ウグッ!?」

 

 当たりかよ。

 俺は目の前で悶える狼に呆れの視線を送った。

 

 ちなみに、

 

 『訳)この先の戦いはもっと過酷になるから、他派閥のあいつに頼ろうとか思うな。上級冒険者だとしても敵は厄介なのでホームに居てください』

 

 これがベート語の翻訳文。

 

 「追い出されたけど何もしないわけにもいかず、手掛かりでも見つけて帰ろうって魂胆か」

 

 「て、てめぇ・・・!」

 

 どこまでお見通しだとか、フィンを相手しているみたいだとか思ってそう。

 

 (こいつ、どこまでも見通してきやがる。クソッ、フィンを相手しているみたいだ・・・!)

 

 貴方が分かりやすいだけです。

 

 「手掛かりは歓楽街か酒場、アマゾネス辺りが持っていますよ」

 

 「それを早く言えぇっ!!・・・それと、ありがとよ」

 

 あばよ、と言いながら帰った。

 分かったことは、ベート・ローガは拗らせツンデレだということだ。

 それはそれとして、教えた手掛かりの先に居るであろう、レナちゃんによろしくな(愉悦)

 

 「あの」

 

 「?」

 

 「ベートさん、ここに来ましたか・・・?」

 

 「ん」

 

 帰った方向に指差した。

 

  ーーーーーーーーーーーー

 

 最近、

 

 「やぁ!」

 

 「「「「「ギャオ!?」」」」」

 

 「とぉ!」

 

 「「「「「グキョ!?」」」」」

 

 「たぁ!」

 

 「「「「「ゲギャ!?」」」」」

 

 エリスがヤバい。

 

 十八階層までほとんど一人で終わらせている。単体だろうが集団だろうが、強化種や異常事態だろうが。たった一人で終わらせており、俺は専らサポーターみたいなことしてる。

 本人曰く、動きが最適化されてすっごい調子がいいのだとか。レイピア貸してと言われて渡したら、

 

 ズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッズバッ!!

 

 断末魔を上げる前にモンスターをみじん切りにしていた。

 

 ・・・あれ?あの動きってもしかして。

 

 「俺の【刀剣乱舞(ソード・ダンス)】か?」

 

 「うんそうだよ。アランの動きを真似してみたら型に嵌まったみたいなんだ。同じようなスキルが欲しいけど中々出ないんだよね」

 

 さらっとヤバいこと言ったぞこいつ。俺はスキルに頼ってんのに、こいつスキル無しかよ。

 ・・・そういえば天才肌だったな。忘れてたわ。

 

 「おいお前ら!」

 

 「「?」」

 

 ダンジョンで冒険者に話し掛けるのは御法度・・・あ、気付けばここリヴィラか。 

 

 「ファイヤーバードが群れで現れやがった!ボールス達の援護に向かってくれ!」

 

 「どうする?行く?」

 

 「・・・行こうか。放っておくわけにはいかんし」

 

 この街の頭領ボールス筆頭に冒険者達との関係が悪化するのは避けたい。

 あ~、でもなぁ~。()()()()()()()()かぁ・・・。

 

 「? アラン?」

 

 「どうした?どこか調子悪いのか?」

 

 「いや、何でもない。俺達もとっとと参加しよう」

 

 行きたくないなぁ。原作史上特大の爆弾(ゼノス)を抱えて胃痛が酷くなるやつだし。ベル達だけじゃダメぇ?

 

 余談だが俺とエリスの前に現れたファイヤーバードは全てエリス一人で屠った。

 

 俺も回復魔法で援護したもん。本当だもん。

 



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“ダンまち”はいつ“このすば”とコラボしたんだ?

ゼルダの伝説(今更)を注文したので、これから忙しくなります。
 所々文がおかしいので訂正します。


 

 「くんくん、アラン」

 

 「ん?」

 

 「あっちにベルがいるよ?でも、モンスターと一緒だ」

 

 ファイヤーバード戦でエリス無双が行われた数分後、彼女の嗅覚がベルを発見した。当然俺もスキルで発見したが、あえて言わなかった。そもそもだいぶ距離離れてるし大丈夫かなって。

 あの距離で匂うなら、至近距離にいる俺も匂っているはず。一応気を遣っているけど・・・やべぇ、臭くないかな。

 

 「アランは大丈夫だよ。それより行こう。久しぶりに会いたいし」

 

 「俺ってそんなに分かりやすい?あ、待って引っ張るなって」

 

 力のアビリティに差が開いているので抗えず、ズルズルと引こずられる形で連行される。

 

 「!? アランさん、エリスさん・・・!」

 

 「・・・よぉ、元気してたか?」

 

 「久しぶりだね、ベル。みんな元気にしてる?」

 

 サラマンダーウールを被されている小さな子を庇うように、ベルは前に出た。少し、いやかなり警戒している。

 俺は知らぬが仏とばかりに話を振らないようにしていたが、それを破るのがエリスクオリティ。

 

 「ねえベル。その後ろのさ、モンスターだよね?」

 

 「!! ち、違います、この子は──」

 

 「獣人の鼻、舐めてる?」

 

 エリスの言葉に鋭さが混じり、そして腰の武器に手を伸ばした。それを見たベルの顔はどんどん曇る。

 

 「モンスターなのに、なんで倒さないの?なんで自分の装備を着させてるの?お姉さんに教え「そこまで」あうっ」

 

 頭を軽く小突いた。全然痛くないよね?俺より耐久高いんだし。だからそんな目で見ないでエリスちゃん。

 いや、そんなことどうでもよくて。

 

 「モンスターを庇うとどうなるか分かってるよな?悪評が広まるならまだいいが、最悪オラリオから追放されるんだぞ」

 

 「っ!!・・・はい」

 

 エリスはわざと悪役になったのだ。誰かに見つかる前にモンスター始末する。例えベルから恨まれたとしても。

 多分、やっと解放されたリリのためなのかな。もう不幸にさせない!的な。

 事の重大さを痛感したベルは俯くが、

 

 「・・・理由を言ってみろよ」

 

 「え?」

 

 「お前のことだ。何かあるんだろ?」

 

 「アラン、さん・・・」

 

 あんなベルを見てられなかったから声掛けたけど・・・何やってんだ俺ぇぇぇぇぇ!!エリスもラクシュミーもいるんだぞ!これに関わるのはマズイだろ!!

 

 「実は──」

 

 

 

 

 「モ、モンスターが喋った!?」

 

 「おいおい、どうなってんだこりゃ・・・」

 

 あの後、リリルカ達と再会した俺達は、モンスターが喋ったことに驚いた。あ、春姫さんチッス。エリスさん、俺を睨まないで怖いっす。

 俺は原作で知っているが、こう目の前で喋られると知ってても驚く。ヤバいねこりゃ。  

 

 「・・・これについて、どうお考えですか?久しぶりのアラン様は?」

 

 「どうってお前な・・・イレギュラーだろ」

 

 「分かりやすくて説得力あるお言葉をどうもありがとうございます!」

 

 まだ怒ってます?いや、こんな状況だから腹が立っても仕方ないか。

 

 「取り敢えず帰ろう。留まるわけにはいかないだろ?」

 

 「そ、そうですね!みんなもそれでいいかな?」

 

 ベルの言葉に全員同意し、俺達はこれから一緒のパーティとして同行することになった。

 ちなみに、原作通り名前をウィーネにしたそうな。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 「むんっ!俺が、ガネーシャだぁぁぁぁ!!」

 

 「あ、そっすか」

 

 「おい、うるさいのじゃ」

 

 「冷たい!?塩対応に俺、悲しい・・・」

 

 【ガネーシャ・ファミリア】に俺とラクシュミーは訪れた。もちろん情報収集のためである。

 

 「単刀直入に言います。喋るモンスターとか見たことありますか?」

 

 確信めいた発言を繰り出した。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 「ヒヒ、おいお前ら」

 

 「?」

  

 「(うっわ)」

 

 アクセルの冒険者カ◯マさん、もといジャージ姿の男神が現れた。そういえば原作でも出くわしてたな。

 

 「喋るモンスターを知ってるか?」

 

 「!?」

 

 「・・・逆に聞きますけど、貴方はあるんですか?あるからその質問をしたんですよね?」

 

 「ヒヒ、それはどうかなぁ?」

 

 ここまでくれば気色悪いなこいつ。

 

 「質問を変えるぜ?」

 

 「これ以上イカれた神に付き合いたくないんですが」

 

 「フヒヒヒ!面白いなぁお前。俺好みだ」

 

 やっべ、つい悪態付いちまった。それにしてもきめぇこいつ。

 

 「じゃあ「やあベル君、アラン君」ちっ」

 

 遮る形で現れたのは男神ヘルメス。何でだろう、こいつが神に見える。

 ヘルメスは君たちは行きたまえ、と帰宅を促し、俺とベルは当然長居したくなかったのでササッと撤収した。

 

 「どうしましょう?」

 

 「時の流れに身を任す」

 

 ギルドからもうじきクエストだか、ミッションだかがあるはずだ。それしかない。まあ、その時は頑張ってね。

 

 後日。

 

 『【ラクシュミー・ファミリア】及び【ヘスティア・ファミリア】両派閥は二十一階層へ目指せ』   

 

 なんで俺達もだぁぁぁぁぁ!!

 

 




アランの心情。
 ウィーネを助けたいのと、ファミリアを巻き込むわけにはいかない・・・。どうしよう?

イケロスの心情
 神を敬わないのかよ・・・ヒヒヒヒ!!俺好みの面白い奴が現れた!!楽しませろよぉ~?


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君が一番綺麗だよ

平日は仕事が忙しいので文字数少ないです。


 

 「リリスケ、確かにここなのか?」

 

 

 「ええ。目的地に辿り着きましたが・・・」

 

 ギルドからの命令により、俺達は二十一階層へとやって来た。俺達両派閥は未到達ではあるが、Lv.3のベルを始め、Lv.2の俺、エリス、ヴェルフ、命が四人もいる。それに、春姫の魔法で底上げ出来る。正直、過剰戦力だと思う。

 そんなこんなで地図が示している場所に来たものの、周りには人間より大きな水晶があるだけで、それ以外何らかの痕跡一つなかった。

 もう一度と、リリルカは二十一階層を見回ろうと提案したが、

 

 「ここで合ってるよ。ヴェルフ、()()()()()

 

 「水晶って、これのことか?」

 

 「そうそう。ドカンと一発頼むよ」

 

 ヴェルフは背中に仕舞っていた大剣を構え、上段から振り落とした。

 水晶は勢いよく破壊され、

 

 「こいつは・・・!」

 

 「まさか、()()()()()ですか・・・?」

 

 奥へと繋がる通路が姿を現した。未開拓領域とはダンジョンの中で未だ発見されていないエリアのことであり、それをギルドに伝えると報酬を貰えるとか。

 未開拓領域は発見が困難だからこそ、こんな場所に何かを隠すのに打ってつけなのだ。

 

 「凄いよアラン!よく分かったね!」

 

 「隠したい物をバレる所に置かないよね」

 

 みんなが感心して俺を褒める。スキルにたくさんのモンスターの反応があったし、何より原作知識によるところが大きい。

 チヤホヤされるのって正直気持ちいいよね。完全に癖になってるわ。

 

 「んじゃ、気を引き締めて行くよ。何があるか分からないからな」

 

 キリッとキメ顔を作り、おう!はい!とみんな言って俺の後に続いた。もうやめて、気持ちよくなってくるのぉぉぉぉ!!(キモい)

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 「久しぶりの客人だぜみんな!宴の準備をしろ!」

 

 赤い鱗を纏うリザードマンの声掛けで、多種多様なモンスター達が一斉に準備をしだす。

 ベル達はポカーンとした表情になる。当然である。さっきまで本気のバトルを繰り広げていたのだから。

 

 「あの・・・」

 

 「ん?」

 

 俺に話し掛けて来たのはセイレーンのモンスター。この人はさっき、俺とエリスの二人掛かりで相手した。流石Lv.5相当。かなり強くて、こちらの攻撃らしい攻撃といえばエリスがかすり傷を付けただけだった。

 名前は確かレイだっけ?容姿が人に近くてセイレーンの異端児だからそうだと思う。

 そして何より・・・

 

 「デッk・・・ごほんごほん、えっと、何か用?」

 

 「私達を恐がらないんですか?貴方だけ他の方達と反応が違いますから・・・」

 

 言われてみんなを見る。今のところ友好的な反応を見せる人はおらず、少し警戒しているっぽい。

 俺がそんな反応をしないのは、ある程度知っていたからだし、この世界の住民ではないことが大きいだろう。某スライムが主人公のアニメを見てたし。

 

 「俺は差別とかしませんし、それに貴方みたいな綺麗な()を恐がる人はいませんよ」

 

 前世では女性と縁が無さすぎて恐れの対象だった。だが今世では身近にラクシュミーとエリス、シトリーという美女、美少女が居る。そのうちの二人と一緒に寝てるんだぜ?信じられるか?

 おい、リリルカ。小声で変人って言うな。聞こえたぞ。

 

 「き、綺麗・・・!?わ、私がですか?」

 

 「そうですけど・・・」

 

 え、なんで赤く・・・やべっ、目の前の相手を綺麗って言っちまった!絶対キモがられるやつ!

 

 「ふ~ん?」

 

 「ど、どうしたエリスさん?」

 

 いつの間に横に居たんだよ!環境に溶け込みすぎだろ!

  

 「私には綺麗って言ってくれたこと・・・あるね。でも一回だけだよね?今の私には言ってくれないの?」

 

 「だって、お前は綺麗って言うより可愛いの部類じゃん。あの時はドレス姿がよく似合ってたから綺麗だと言ったんだよ」

 

 「!! ふ、ふ~ん。そうなんだ。・・・私って可愛いんだ

 

 やべっ、またやっちまった!気まずいなぁもう!

 

 「ねえリリ、あれなんだろ」

 

 「アラン様は思ったことを素直に言い過ぎたことに悶えて、エリス様は他の女性を褒められて不機嫌になったけど、その後不意打ちで褒められて照れたのでしょう」

 

 「なるほど」

 

 「「冷静に分析するな(しないで)!!それと納得するな(しないで)!!」」

 

 「お~!あの二人息が合ってるな!」

 

 「お二方は好き合ってるとか、そういうことでしょうか?」

 

 「へぇ~!ロマンティックだねぇ!」

 

 「「~~~~っ!!」」

 

 やめて!俺達のライフはもうゼロよ!

 

 「初めまして・・・いや、何だこれは?」

 

 黒衣を纏う謎の人物が来るまで弄られた。

 

 

 

 



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お、お前!

小説が中途半端で投稿されていてビックリしました。
誤字脱字報告ありがとうございます!


 

 黒衣の人物もとい、愚者(フェルズ)と名乗る人物が登場したことにより、宴は終了した。彼?彼女?から一通りの説明をしてもらうためだ。

 知性のあるモンスターを【異端児(ゼノス)】といい、ギルドの創設神ウラノスはフェルズやその他の協力者と共に彼らを保護しているとのことだ。その協力者とはあのガネーシャ。都市の治安維持を担当し、前回開催された【怪物祭】は、彼らとの共存を目的としているらしい。俺やラクシュミーはあの神から教えてもらった。

 

 「ギ、ギルドが!?」

 

 「ガ、【ガネーシャ・ファミリア】もでございますか・・・?」

 

 これにはベル達は驚いた。

 まさかギルド(厳密にはウラノス)と【ガネーシャ・ファミリア】がこんな秘密を抱えているとは思わなかったからだ。もしバレたら組織の信用が急降下し、民衆の不満が一気に爆発するだろう。改めて聞くと、とんだリスクを抱えてんな、神ウラノスとガネーシャよ。

 

 「モンスターを倒すことに躊躇わないでくれ」

 

 リザードマンの【異端児】リドが全員に告げる。その中で特に、躊躇の色を見せていたベルの心に刻まれた。これからはもう大丈夫だろう。

 全ての話を聞き終わり、その帰りの際にウィーネが離れ離れになることを嫌がったが、俺達はまた会うことを約束し、一応は納得してくれたみたいだ。

 

 「フェルズ、相談があるんだが・・・」

 

 「? なんだアラン・スミシー」

 

 まさかウィーネとは()()()()()の仕方をするとは誰も思っていないだろう。原作を知っているが、俺には【イケロス・ファミリア】をどうにかすることが出来ない。せめて助言だけでもと思い、フェルズに相談した。何にも出来ないことがもどかしいし、見捨てる形になるのが悔しい。

 せめて、日時をずらすことって出来ないかな?

 

 「・・・君の言うことは分かった。しかしまだ君を信用していない。それが本当かどうかも不明だからな」

 

 まあ、そうだな。こんなこといきなり言われても信用しない。俺だってそうかも。

 

 「だから【異端児】最強の()を呼び戻す。幾分かマシになるだろう」

 

 「最強が来るんなら安心だ。ちなみに実力はどのくらい?」

 

 「流石に【猛者】よりかは下だろうが・・・それでもL()v().()7()()()()

 

 「・・・マジ?」

 

 「マジだ。深層域のモンスターを喰らっているからな」

 

 やっぱやべぇよメインヒロインは。あれとまた戦うことを約束したベルも大概だけどさ。

 

 「それならマシになるね。でも一応警戒させておいてくれ。安全とは言えないから」

 

 「任せろ」

 

 「アランー?もう出発するよー」

 

 「分かった、今行く!・・・じゃあ、みんなによろしく」

     

 俺はベル達の後を追った。不安は消えないが、あれが原作より早く来るんならまあ大丈夫だろう。

 あー、でもでも。【ロキ・ファミリア】の連中と和解して外伝で協力するんだよね確か。変えたら変えたで絶対影響するよなぁ。最悪ゲームオーバーだよぁ。慎重に動くか。目標はベルとの再戦。そして【異端児】と協力関係になってもらうこと。頑張ろ。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 「糞がっ!!ここは中層だぞ!?なんで()()()()()がいやがる!!」

 

 男はあらゆる箇所から血を流し、折れた足を引き釣りながら悪態を付いた。

 男とその仲間達は移動中の知性あるモンスターを捕獲するため張っていたら、そのモンスターは姿を現した。男達は何とか制圧していたのだが、突如として現れたモンスターに滅茶苦茶にされてしまった。

 その結果、この男を除く仲間達が皆殺しにされたのだ。

 

 「俺の()()を使えれば何とかなったんだが・・・」

 

 彼の呪詛は狂乱。簡単言えば対象を狂わせ、狂った生物は近場の生物を襲うというものだ。あのモンスターの近くにいたのは自分だった。

 重症を負いながらも、仲間を囮にすることで命からがら逃げ出せた男は嗤った。

 

 「一匹捕まえられたのは運が良かった。こいつを利用してあの牛野郎に復讐してやる・・・!」

 

 男の名前はディックス・ペルディクス。【イケロス・ファミリア】所属で【人造迷宮(クノッソス)】創設者ダイダロスの直系の子孫及び、ダイダロスが遺した呪いに狂わされた狂人である。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 「やったー!()()()()()()だよ!」

 

 帰宅後のこと。

 ラクシュミーに恩恵の更新を頼んだ俺達は、順番にやってエリスの番で発覚した事実。

 

 「おいおいマジかよ・・・」

 

 「早すぎじゃろ、流石に・・・」

 

 ラクシュミーはいつもの余裕が消え去る。例のスキルも当然知ってるし、更新の度に早いことだって分かってる。でもランクアップは別。偉業を達成しないと不可能だもん。

 

 「やっぱあれかなー。私の攻撃がレイに当たったことだよね。あれしか考えられないもん」

 

 「あの時か。なら俺だって」

 

 「アビリティはよく伸びたが、アランは上位の経験値が足らんのじゃよ」 

 

 ぐぬぬ。

 

 エリス・キャルロ(16)Lv.3

 力:I0

 耐久:I0

 敏捷:I0

 器用:I0

 魔力:I0

 

 発展アビリティ

 狩人H

 剣士I

 

 魔法

 “速度増加(速まれ)”【加速(アクセル)

 

 スキル

 【犬人咆哮】

 ・獣化

 ・全能力値に高補正

 

 【貴方追奏(フォー・ユー)

 ・───

 ・特定の人物を想うほど効果向上

 ・魅了無効

  



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女子会に男が混ざるな

創作系に携わる人すげぇと思う今日この頃。
やっべぇ、うろ覚え知識でこれからどう書けばいいんや。


 

 「これより十八階層へ出発する!」

 

 シャクティ・ヴァルマの号令で、彼女が団長を勤める【ガネーシャ・ファミリア】の一団はダンジョンへと向かった。その中に俺も居てベルも混じっていた。

 

 十八階層に向かう理由は、リヴィラで起きた大規模な【怪物の宴(モンスターパーティ)】を調査するである。そのためか、この件が解決されるまでダンジョンは封鎖、冒険者はホームで待機命令がギルドによって下された。

 この命令に安堵する者もいれば、不満を溢す者もいる。前者は中層探索に不馴れな派閥が多く、後者は血気盛んな冒険者が多い。反応は様々である。

 話は戻るが、この調査を任されたのが【ガネーシャ・ファミリア】だ。この派閥には第一級冒険者が多数存在する強豪でテイムの技術を有しているため、この件を鎮めるのに向いていると言えるだろう。この判断には誰も疑わない。神々や一部の策略に長けた者以外は。

 

 「()()()()()()()()()()()()()

 

 【ロキ・ファミリア】のホームで待機していた【勇者】フィン・ディムナは、ギルドの命令を無視する前提でことを進め始める。これに至った理由については、彼の神掛かった頭のキレによるものだと言っておこう。

 部隊は【ダイダロス通り】へと進み始めた。

 

 ーーーーーーーーーーー

 

 「武装したモンスターです!」

 

 十八階層に到達し、団員の一人が対象を発見した。

 

 「部隊を二手に分ける。モモンガ、リヴィラへ向かい生存者がいないか確認しろ!」

 

 「はい団長!あと自分はモダーカです!」

 

 「「「「ウオオオオオオオオ!!」」」」

 

 「!! 総員戦闘開始!テイムを施すことを忘れるな!!」

 

 「「「「了解!!」」」」

 

 モンスターの咆哮を聞いたシャクティは迅速に指示を出す。人と怪物、二つの影が激突した。

 俺とベルは何もすることなくその様を眺めていたが、

 

 「こっちだベル!リドがいる!」

 

 「リドさんが!?」

 

 スキルで気配を感じ取った俺はベルを連れて走る。リドは戦闘中の【異端児(ゼノス)】と一緒ではなく、離れた場所に一人だけ立っていた。

 ・・・いや、立っているよりも待っている?

 

 「お二方、止まりなさい」

 

 「リュ、リューさん・・・」

 

 「それに【万能者】と・・・えと、【麗傑】だったけか?」

 

 「! 我々は透明になっていたと思うのですが」

 

 「驚いたね。そういうスキルかい?」

 

 リューさんの他に気配が二つあることは知っていた。リヴィラの冒険者と【ガネーシャ・ファミリア】以外の冒険者が居るとすれば、絶対この人達だ。

 

 「クラネルさん、スミシーさん。私達も同行してもよろしいでしょうか?」

 

 「リューさん達もですか!?」

 

 「いや、それは・・・」

 

 それは非常にまずい。この先にはリドが居るし、何ならモンスターが喋ることがバレる。現段階でそれはまずい・・・のか?案外大丈夫なのか?

 でもあっれぇ?アステリオスさんにボコられてなかった?ヤバい、頭の中の原作知識があやふやになってる。

 

 「ベル。この先に居るから取り敢えず先に行け」

 

 「アランさんは?」

 

 「俺はすこぉぉぉし時間を置いて向かうから。先に行って」

 

 「分かりました!」

 

 脱兎の如くこの場を去った。脚速いな、流石Lv.4間近の敏捷だわ。

 

 「ちょっと雑談しません?特に【万能者】にとっては・・・いやヘルメスにとって耳寄りの話だと思いますよ」

 

 「・・・それはなんですか?」

 

 「──────」

 

 【万能者】は一瞬考えた末に、

 

 「分かりました。聞きましょう」

 

 「どうもありがとう」

 

 時間稼ぎの雑談が始まった。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 「こっちだ、ベル・クラネル。欲を言えばアラン・スミシーも同行してもらいたかったのだが・・・まあ、足止めをしているのだ。文句は言うまい」

 

 「この先にウィーネが居るんですよね?」

 

 「ああ。彼が言うにはな」

 

 フェルズの案内のもと、ベルは【人造迷宮(クノッソス)】を進む。不幸中の幸いは闇派閥が姿を見せないことだろう。負傷や疲労した状態でウィーネ救出作戦の成功率は下がる。闇派閥との戦闘は避けたいところだ。

 ちなみにリドはここに居ない。一人【人造迷宮】へ進んだ仲間からベルを案内するよう頼まれていたのだ。ベルと再会を果たした後、意味深なことを呟いてグロス達のもとへと戻った。今【ガネーシャ・ファミリア】と戦闘中。

 

 「着いたぞ」

 

 「ウィーネ!!」

 

 「! ベル!!」

  

 自分の腕の中でワンワン泣くウィーネに安堵した。どこにも怪我が見つからないから。

 ドスンドスン!と音を立てながら近付いて来た影にベルは警戒の色を見せた。

 

 「()()()()()()・・・?」

 

 目の前に立つミノタウロスは、ベルが知るミノタウロスではない。肌の色が黒く変色し、体格が何倍も優れている。即座に強化種だと断定した。

 

 「()()()()()()

 

 「え?」

 

 「彼は「言わなくていい」分かったよ」

 

 (喋った・・・?フェルズさんがアステリオスと言ってたし、このミノタウロスも【異端児】なのか・・・?)

 

 「名は?」

 

 「え?」

 

 「名を知りたい」

  

 「ベル。ベル・クラネル・・・」

 

 「ずっと、自分はずっと夢を見ていた。たった一人の人間と戦う夢。()()()()()()()()がここに居る」

 

 「ま、まさか貴方は・・・!」

 

 ベルは気付いた。目の前のミノタウロスの正体に。

 

 「自分はアステリオス。最高の好敵手、ベル・クラネルよ」

 

 「ベル・・・?」

 

 ベルはウィーネの前に出てナイフを抜く。ミノタウロスもといアステリオスが言わんとすることが分かったから。

 

 「再戦を

 

 その言葉を聞き終わり、ベルはナイフを構えた。それを見てニィッと口元を緩めた。

 

 そして───、

 

 「うぉおおおおおお!!」

 

 「ヴゥモオオオオオオオオ!!」

 

 薄暗い迷宮で、あの戦いが再び始まった。

 




アステリオス、腕有り魔剣有りの万全の状態。最初っから【人造迷宮】に来たので十八階層でリューさん達を襲わない。
ウィーネ、死なない。
ディックス、死んだ。完全に回復する前にアステリオスが来たのでウィーネを人質として使えず殺された。
フェルズ、ディックスの死体を漁り中。
アラン、ベルの英雄伝説を作るためアスフィ達と取引中。
アスフィ、取り敢えず乗る。失敗した場合、責任はアランに取らせよう。


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うわぁぁぁん、ママァァァァ(泣)

誤字脱字報告ありがとうございます!
自分好みの展開にしました。よろしくお願いします。


 

 「何これ、地震かな?」

 

 「これは・・・」

 

 「戦闘音だね。地下で、【人造迷宮(クノッソス)】で誰かが戦っているみたいだ」

 

 小さく揺れる地面を踏み締めながら、フィンは推察する。ここは【ダイダロス通り】。彼の読み通り、ここに現在進行形で何かがある。

 

 「まさか【穢れた精霊】か?」

 

 「規模が小さいからその可能性はないだろう。いくらアダマンタイトで固められているにしては、振動が届かなすぎる」

 

 それに()()()()であのモンスターが動けば、この比ではない振動と音が響く。フィンは最後にそう付け加えた。

 

 「お主、耳が良すぎないか・・・?音だけでは距離を測れんぞ」

 

 「種族差と言いたいけど・・・これはランクアップされて五感が強化されたみたいだ」

 

 フィンはあははと苦笑いした。

 仕切り直して調査を開始しようとした時、

 

 「『ギルドから通達します。これより災害を想定した()()()()を開始します。災害場所は【ダイダロス通り】です。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()の指示に従って避難を開始してください。繰り返します───』」

 

 アナウンスが都市中を駆け巡った。これには困惑の色を隠せない。

 

 「ちょっ、なんで私達!?」

 

 「私達がここに居るの知ってるわけ!?ギルドに立ち寄ってないし、そもそも誰とも遭遇してないわよ!」

 

 「どうなってやがる・・・!」

 

 「フィン」

 

 「んー。これは・・・」

 

 (冒険者ではなく、僕達を特定し指名した。いや、何故避難訓練をする?ロイマンの指示か?いや、あの男がこんなことしない。なら考えられるのは・・・)

 

 (ウラノスか?確かにあの男神ならロイマンを動かせるんやが、なーんかまどろっこしいんよなぁ・・・)

 

 (いまいち神意が分からない。本当にウラノスの指示なのか?)

 

 上から、フィン、ロキ、ヘルメスが別の場所で考察する。ギルドの意図が見えない。

 

 「取り敢えず指示に従おう。避難場所は大通りまででいい。念のため闇派閥に気を付けろ!」

 

 「「「「了解!」」」」

 

 ゾロゾロと家から出てきた住民の避難を進めた。親指の疼きが止まらない。

 

 「【ロキ・ファミリア】は指示に従うみたいだな」

 

 ヘルメスは屋根から動向を確認する。誰かがこの盤面を操っている。フィンやロキ、フレイヤではなく自分達の思惑の外に居る誰か──まさか!

 

 「ヘルメス様!」

 

 「アスフィ!アイシャちゃん!それにリューちゃんまで」

 

 肩で息をする自分の眷属を労おうと思ったが、それは止めた。猛ダッシュで戻って来た理由があるみたいだから。

 

 「()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 「やはりアラン君が絡んでいたか・・・よし、伝言を聞かせてくれ」

 

 「『ベル・クラネルを英雄にする。手伝え』です」

 

 「・・・それだけ?」

 

 「それだけです。恐らくこの振動と、避難訓練が関係しているのかと」

 

 アスフィは伝えた。これがアラン・スミシーの雑談内容だ。ヘルメスは少しだけ考え答えに辿り着いた。

 

 「アハハハハハ!!」

 

 「へ、ヘルメス様・・・?」

 

 「ああいや、悪いな。アラン君がここまでとは思わなかったんだ。当然返答は了承だ。このヘルメスが手伝おうじゃないか!」

 

 ヘルメスは己の眷属を使い走りにした。露骨に嫌な顔するが、無茶振りに慣れているアスフィは従った。

 向かう場所は当然。

 

 「【勇者】!」

 

 「ん?【万能者】じゃないか。何か用かい?」

 

 「実は───」

  

 「それは本当かい?」

 

 「ええ。ヘルメス様もアラン・スミシーも貴方達に信頼を寄せています。だから───」

 

 「ヴゥモオオオオォォォォォォォ!!

 

 「!! 君は戻ってくれ!」

 

 「分かりました!」

 

 地上に一体のミノタウロス。そして───、

 

 「【リトル・ルーキー】!?なんであの男が戦っているんだ!?」

 

 「それにあの光はアラン・スミシーの魔法じゃないか!?」

 

 光る羽衣を纏うベルが現れた。

 

 「フィンさん!」

 

 「君がここに誘導したのかい?」

 

 言葉がキツイ。それはそのはず、地上を戦場に変えようとしているのだから。

 

 「イケロスが地上に通じる扉を開けた」

 

 アランはウィーネやリド達が地上に現れない今、【ロキ・ファミリア】が【人造迷宮】に攻め込むと推理して、彼らだけに観戦させようとしていたのだ。

 しかし、何処からともなく現れたイケロスが扉を開け、あの二人がそっちに流れていった。

 

 イケロスの顔面を殴った。男神の鼻が曲がった気がするがそれは気のせいだ。

 

 「協力者に頼んで避難訓練という形で離そうとしたんですが・・・」

 

 「んー、ギリギリ間に合ってない、かな?」

 

 「これから俺はあの二人の近くを走り回ります。フィンさん達は今までのように避難を。それとリヴェリアさんと、リーダーに()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 「分かったよ。詳しい話は後で聞いていいかな?」

 

 「もちろん。こうなったら全て話します」

 

 失礼します。と言いながら走り去った。彼は逃げ遅れた住民を守るように動くらしい。

 

 「僕も頑張らないとね・・・ところでリーダーって誰だ?」

 

 フィンは残りの部隊を率いて進軍した。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 ヤバいヤバいヤバい!

 

 「『アラン・スミシー!今地上はどうなっている!』」

 

 「『二人の戦闘のせいで一部の住人が逃げ遅れてパニックになってるけど、それ以外は大丈夫!【ロキ・ファミリア】が避難を進めてる!』」

 

 それでもヤバいのは変わらない。    

 

 「ふんぬっ!!」

 

 瓦礫が飛んで来るが根性で受け止める。  

 

 「うわぁぁぁぁ!?」

 

 「よっと!!」

 

 人の上に屋根が落ちてくるが一緒に躱す。

 

 「ル、ルゥ!」

 

 「なんのぉ!!」

 

 巻き込まれそうになっていた子供を庇う。

 

 万全のアステリオス相手に、今のベルだと簡単にやられてしまう。だから常時魔法を発動させている。これがキツイ!

 

 あいつら場所を考えずに戦うから、こっちの負担が重いぃ!?

 

 「アラン・スミシーだな」

 

 「おいおい、なんでこのタイミングで・・・」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()!?

 

 それだけではなく、

 

 「なんで俺達がこんな愚図なんかに・・・」

  

 「言いたいことは分かるが、女神の神意に従え愚猫」

 

 「(中二発言省略)」

 

 「ベル・クラネルだけでなくこの男もか」

 

 「まあ、あの男よりマシだな」

 

 「それでもギリギリだがな」

 

 「羨ましい。殺すか」

 

 【フレイヤ・ファミリア】の幹部勢揃いじゃないっすかー。いや、なんでぇぇぇぇ!?ほんで最後物騒だしよぉぉぉ!!

 もうヤダァァァァ!ラクシュミィィィィィ!!

 

 「あの、俺は今暇じゃなくて・・・」

 

 キッ!

 

 ヒェ!

 

 「フレイヤ様の神意だ。我々はお前に従えと命令された」

 

 「つまり・・・分かるな?」

 

 いや、分かりません。何故俺に?【勇者】かヘルメスだろそこは。

 

 「・・・女神の神意を背く指示を出したら?」

 

 「殺す」

 

 だよねぇ。この人達本気でしそうだわ。ここは無難に、

 

 「じゃあフィ「よし、殺すか」移動しながら指示を出します!」

 

 【勇者】フィン・ディムナに頼むのダメなんですか?そんなに仲がよくない、わな。うん。仲がいいはずがなかった。

 

 「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 「それは悪くないが───」

 

 「おい愚図野郎。女神に当てる気か?」

 

 殺気立つな怖ぇよ。

 

 「リヴェリアさんとリーダーに、結界を展開させます。だからエルフ二人は伝言頼まれてくれませんか?」

 

 「それなら任されよう」

 

 「(コクリ)」

 

 すんませんエルフ呼びして。名前ド忘れしちゃったんです。

 

 「【女神の戦車】と四ツ子さん達は、これに便乗する闇派閥を撃退してください」

 

 「ちっ」

  

 「避難誘導よりいいな」

 

 五人は離れた。一番怖い人と別れたのでホッと一安心。

 

 「俺はどうする」

   

 「脳k・・・じゃなかった、【猛者】は戦いの余波を消しつつ、ベルにその大剣を渡してください」

 

 「心得た。・・・ところで今、脳k「ああーー!!あそこに逃げ遅れた人がいるぅぅぅぅ!!」・・・」

 

 全力で逃げた。前世で俺が思っていた【猛者】オッタルの蔑称だ。それがポロッと出掛けた。【女神の戦車】を蔑称で呼ばなくてよかった。

 

 よしよし、さっきより楽になってきたな。

 

 「おい!」

 

 「どぅえ!?」

 

 「てめえ、あの猪野郎とはどういう関係だ?」

 

 急に現れんなビビったろぅが。ベートさんや。

 

 「女神に気に入られてるみたいっす」

 

 「女神・・・ちっ」

 

 「ベートさん、仲間の人達に誘導を優先させてください」

 

 「ああ?なんで俺が」

 

 「闇派閥は【女神の戦車】達が抑えてくれてます。だから「てめえ!あの猫野郎にも頼んだのか!?」ううう、うっす!」

 

 ワナワナと震えてる。あっれー?何が気にくわなかったんですか。

 

 「俺が全部片付けてやる!!おい、リーネ!他の奴らに伝えろ!」

 

 「は、はい!」

 

 「ちょ、ベートさん!?」

 

 そう言ってベートさんは走り去った。

 

 「・・・もういいや」

 

 俺は元の作業に戻ったその数分後、

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───大鐘楼が響いた。

 




フレイヤ。ウフフ、楽しませてちょうだいね?
オッタル。ほう?我々相手に臆さないか。でも脳筋って言ったよね?奴を処していいですか、我が女神。
アレン。ちっ、なんで俺がこんな愚図に。女神は言わずもがな、避難誘導に回したら半殺しにしてた。
ヘディン。ふむ、悪くない指示だ。あの方にの伝言役に頼んだのはグッド。
ヘグニ。優しそう。仲良くしたい。
ガリバー兄弟。【勇者】の指揮下よりマシだ。弟達は辛辣だが、我々相手によくやってるよ(By長男)



 


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よっしゃ!ランクアップだぜぇぇぇ!!

誤字脱字報告ありがとうございます!
久し振りの投稿なので、矛盾点が発生すると思います。その時は感想欄にてお願いします!



 

 ゴォォン!!ゴォォン!!

 

 「! ベルのスキルか!」

 

 鐘の音が鳴り響く。安全圏で観戦していた冒険者や神々、それに一般人が音のする方向へと視線を向ける。

 現在、ベル達の場所は【ダイダロス通り】を抜けた先にある大通り。フィンさんからの指示でそこに誘導したのだ。また、その大通りを進んだ先にあるのは、

 

 「そのまま押し込め!」

 

 アステリオスはベルに突進し、目的地であるバベルまで押し込んだ。

 

 「「【ヴィア・シルヘイム】!!」」

 

 【ロキ・ファミリア】の師弟コンビ、リヴェリアとレフィーヤの障壁魔法が二人を包み込んだ。

 ベルとアステリオスは睨み合う。

 その光景を、ただただ見守っていた。

 

 「───動く」

 

 誰かが呟きと同時に、

 

 「はぁぁぁぁぁ!!」

 

 「ヴモォァァァ!!」

 

 スキルが発生させた極光と、魔剣が発生させた雷光が激突した。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 ベルとアステリオスの再戦は、結論を言えばベルが負けた。原作では片腕と疲労というハンデを背負った相手に負けた。しかし、今回は両腕で体力が有り余っている万全の状態。当然と言えば当然である。  

 アステリオスは次で決着を決めようと約束し、再びダンジョンへ消えた。ベルはこの戦闘を通して、強くなりたいという気持ちが一層高まり、再戦を強く望んでいた。

 俺はそれを見て羨ましい気持ちになった。好敵手という存在は、更なる高みへと至らせるらしいから。

 

 事態が終息に向かった後で、俺はフィンさんを連れて十八階層へと足を運んだ。確か【ガネーシャ・ファミリア】が居て、【異端児】達をテイムという建前で保護してくれてるはずだから。

 そうして街へと辿り着いたら───

 

 「ボールス、この資材はどこに置いたらいーい?」

 

 「向こうに置いてくれー!グロス、それはあっちだ」

 

 「おーい!追加で肉果実採って来たぞー!」

 

 「よっしゃ、休憩しようぜ!いい酒があるんだ!」

 

 「レイちゃん!一曲頼むぜ!」

 

 「ウィーネたん、ハァハァ・・・」

 

 「「なんだこれ・・・?」」

 

 俺とフィンさんは街の光景に唖然となる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 「【勇者】、アラン・スミシー」

 

 「シャクティじゃないか。すまないが挨拶抜きにして、取り敢えず説明してくれないか?絶賛混乱中でね」

 

 「実は───」

 

 彼女の説明を要約するとこうだ。

 【異端児(ゼノス)】を全員抑え込んだ【ガネーシャ・ファミリア】は、ボールスを筆頭とした冒険者に感謝されると同時に街の復興の手伝いを頼まれた。

 幸い死者は居なかったが、普通のモンスターより強くて厄介な【異端児】によって負傷者はかなり出た。それでも派閥の指針で無下に出来ないので手伝おうとしたら───

 

 「『ならばテイムしたモンスターを使うのだ!・・・え?魔道具越しで誰か分からないって? ゴホンッ、俺は!ガネーシャだぁぁぁぁ!!』」

 

 モンスターが所持していた水晶から、自分達の主神であるガネーシャの声が聞こえた。周りを見るに幻聴ではなかった。

 突然の指示。これだけでも混乱するのに、

 

 「そういうことなら、俺達に任せろ!」

 

 「「「「「モモモ、モンスターが喋ったぁぁぁぁ!?」」」」」

 

 「なんてことを・・・」

 

 モンスターが喋るなんて事案、極々少数の人間にしか伝わっていない。冒険者達に知られれば、大混乱を巻き起こすことが目に見えているからだ。だから黙っていたのに・・・。

 

 リヴィラの冒険者達は、モンスターに敵意がなくて、自分達より数段強い【ガネーシャ・ファミリア】が監視しているから大丈夫かと、警戒しながら作業を進めた。

 進めた結果、彼らの事情を知り打ち解けた。そこに納得していない者もいたが、稀少なドロップアイテムの提供に野良のモンスターの撃退を約束され、レイを始めとした美女美少女【異端児】の登場で、「たく、しゃあねーな・・・」と引き下がった。受け入れられる要因となったのは後者だろう。男のほとんどは下心ある目で見てるから。

 

 「なるほどね、アラン。君はこれを伝えるためにここに呼んだのかい?」

 

 「ええまあ。でも、俺が伝えたかったのは知性を持っていることだけです。こんなに仲良くなっているとは思わなかった」

 

 「そうか・・・」

 

 もしかして、原作超えた?あ、でもウィーネと【剣姫】の絡みをやっていない。やっべぇ、原作崩壊じゃん。

 

 「アラン」

 

 「え?」

 

 「()()()()()()()()()()()()()?」

 

 フィンさんの言う作戦とは、【人造迷宮(クノッソス)】攻略を指しているのだろう。 

 【異端児】はアステリオス以外も知性があって強い。多くの者が混乱するだろうが、

 

 「可能です」

 

 「そうか」

  

 ギルド創設の神、ウラノスの私兵としての側面を持っている。冒険者が地上から、【異端児】が迷宮から攻めるなら充分可能だ。フェルズもいるし、なんなら俺がこっちに着くし。

 

 「・・・よし、アラン付き合ってもらうよ」

 

 「付き合うって、どこに・・・?」

 

 「そんなの決まってるじゃないか!」

 

 ───【人造迷宮】さ。

 

 ヒェ。

 

 ーーーーーーーーーーーー  

 

 「おめでとうアラン、ランクアップじゃ」

 

 「マジか!」

 

 「【リトル・ルーキー】を支援しながら、逃げ遅れた一般人を守った。それと同時に、ロキとフレイヤの派閥を巧みに操ったのが決め手になったようじゃな」

  

 「指示しただけだぞ?」

 

 「我々からしてみれば充分過ぎる偉業じゃぞ」

 

 そうなのか。

 これは伝えてないが、その後で【人造迷宮】へ行ったことも含まれてるよね。絶対。

 

 アラン・スミシー(16) Lv.3 

 

 力:I0 

 耐久:I0 

 器用:I0

 敏捷:I0

 魔力:I0

 

 “発展アビリティ”

 幸運H

 剣士I

 

 “魔法”

 “我が第三の手をここに”【見えざる手】

 ・拘束魔法

 ・拘束は力、距離は魔力に依存

  

 “スキル”

 【言語理解(コミュニケーション)

 ・会話や文字の自動翻訳

  

 【三択からどうぞ(サード・ワン)

 ・三つの中から一つ獲得

 ・選んだモノの貯蓄と引出し

 ・一週間後に再選択

 ・貯蓄(1.篭手2.レイピア3.【刀剣乱舞】4.バンダナ5.【癒光の羽衣】6.【全力投擲】7.【気配察知】8.槍)

 

 【断捨離還元(リサイクル)

 ・スキルにより入手したモノを捨て自身の能力値に還元する

 ・価値によって変動

 

 これがランクアップした俺のステータスだ。

 Lv.2時点のアビリティ平均はおよそC。その中でも魔力がA、力がギリギリBだった。本来なら見送るべきだが、これからのことを考えたら今からでも強くなるしかない。アビリティの貯金は惜しいけどね。

 【見えざる手】という魔法だが、これはフレイヤから御褒美として貰った【魔導書(グリモア)】で発現したもの。人手が足りないと常々思ってるからね。それで手が増えたらしい。ベルみたいに速攻魔法が良かったなぁなんて考えてる。効果は後程。

 

 「じゃあランクアップもしたし、引っ越ししようか」

 

 お金が貯まりに貯まって、この世界における不動産で良物件を見つけたのですぐに決めた。ちゃんと三人の要望に応えた住居である。

 俺の要望は当然自室。今のホームは、自室が無いからプライバシーも当然ない。だからリビングで女二人に囲まれて寝てるんだけど・・・新居はちゃんと部屋があるから気を遣う必要なんてないからとっても嬉しい。

 俺達は必要な荷物だけ持って旧ホームを後にした。

 

 「・・・なんか、視線を感じるんだけど」

 

 大通りを歩くと、全方位から熱烈な視線を肌で感じる。主に女性が多くかった。真相を知りたいから隣のエリスに聞いたのだが・・・

 

 「ふんっ」

 

 「アランよ、エリスの口から言わすのは少々酷じゃよ」

 

 えー。

 

 後から聞いた話だが、身を粉にして人々を守った俺を英雄視しているらしい。なんか女性中心のファンクラブも創設されたとか。神々の戯れと、外見の良さがそれを後押ししているのだとか。

 俺は頬を引きつらせた。・・・正直、嬉しい気持ちもある。

 

 「・・・アランのバカ」

 

 聞こえるように小声で呟いた。心が痛い。

 そんな俺達を、ラクシュミーが愛おしそうに見つめていた。

 




【フレイヤ・ファミリア】は全て終わるのを見届けた後、何も言わず立ち去った。
アランとフィンは、二人で【人造迷宮】の探索をした。道中で赤髪の怪人が現れたが、地上から攻めてきたリヴェリア筆頭のエルフ集団により撃退した。新種のプラントを幾つか燃やした。
 
 次回、派閥同盟結成と遠征。


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知識が尽きた

久しぶりの投稿です。抜歯した親知らずが痛い・・・。


 

 俺達は今、一つの方向に目が釘付けになっている。

 視線の先は、机の上に置いてあるギルドから渡させれた羊皮紙に行っている。その内容を簡単に要約すると、

 

 『【ヘスティア・ファミリア】と共に、下層に向かえ。尚、これは遠征であり、拒否権は無いものとする』

 

 内容を見るにただの冒険者依頼ではなく、ギルドから課せられる強制任務(ミッション)。普通は遠征は等級がD以上の探索系に求められるのだが・・・。

 

 「私達って等級いくつ?」

 

 「えっと、等級は確かI~Sに分けられるから・・・」

 

 こういうのってレベルの平均で表されるんだっけ?俺とエリスはLv.3だから、3+3=6、6÷2=3。つまり、

 

 G・・・なのか?

 

 あれ?でも、【ヘスティア・ファミリア】は、Lv.4が一人。Lv.2が二人にLv.1が二人。4+2+2+1+1=10。10÷2=5。あれれ?

 

 「Gであっとるぞ。ちなみに【ヘスティア・ファミリア】の等級はCじゃ。計算式は4+2+1。レベルで分けて計算するのじゃよ」

 

 なるほど、4÷1+(2+2)÷2+(1+1)÷2=7 か。

 

 「でもなんで私達も遠征に?」

 

 エリスが最もらしい質問をする。冒険者依頼として発令されるのは分かる。しかし、強制任務として出される理由が分からない。創設神ウラノスか、高確率でヘルメス辺りの思惑が働いているとみて間違いないだろう。

 

 「まあ、準備を進めるか・・・」

 

 理由を突き止めても何も変えられないから、考えても仕方ない。【ヘスティア・ファミリア】と下層に向かう準備を進めよう。

 

 あ、虎の子の強臭袋(モルブル)を用意せねば。

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 「あ、遠征に【ヘスティア・ファミリア】が関わってるってことは、原作ってことじゃんか」

 

 俺の知識は【異端児(ゼノス)】編で終わっている。主人公ベル・クラネルが居るのなら、絶対に何かある。最悪命を失うような危機的状況が。

 

 「・・・ま、まあ、どうせ階層主が出現時期より早く産まれるだけだろ。ベルのスキルがあれば何とかなるよな!最悪、俺の【全力投擲】もあるから大丈夫だよな!」

 

 あのチャージは強化ゴライアスを吹き飛ばした。俺の【全力投擲】も通常種のゴライアスを穿った。エリスも居るし、ヴェルフの魔剣もある。下層の階層主が現れても大丈夫だろ!

 

 「勝ったな」

 

 俺は勝利を確信して眠った。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 遠征には【ヘスティア・ファミリア】だけでなく、【ミアハ・ファミリア】と【タケミカヅチ・ファミリア】の面々が参加していた。ヘスティア様が同盟を組もうと呼び掛けたらしい。また、【ヘルメス・ファミリア】に改宗した春姫の姉貴分のアイシャも同行するとのこと。彼女は下層探索の経験者だけでなくベルと同じLv.4。心強いと同時に、これだけ集まれば過剰戦力だと思う。

 

 「お告げが・・・どうしよう

 「?」

 

 カサンドラの顔が青ざめている。どうしたんだろ。

 

 「行きましょう、遠征へ!」

 

 ベルの音頭で俺達はダンジョンに足を踏み入れた。

 下層は中層よりモンスターの出現頻度が増えたが、アイシャの知恵もあって難なく遠征は進められた。その矢先でのことだった。

 主人公が居るのに都合よく進められるはずがなく。俺達を待ち受けていたのは、強化種のモスヒュージだった。通常種とは違い苔を纒い更には知性があり、奴が飛ばしてきた種子に千草がやられ、そのモンスターがベルと一緒に河川に流され分断された。

 

 「【癒光の羽衣】」

 

 「な、治った・・・」

 

 「マジでか・・・」

 

 厄介にも種子は植え付けられた人の体力を吸って成長し、カサンドラの回復魔法が効かなかった。治療には【戦場の聖女】じゃないと不可能だって結論が出たのだが、俺の回復魔法で何とか治療できた。

 皆が皆驚いていたが、正直ランクアップしてなかったら治せなかったと思う。精神力(マインド)が半分ほどごっそり持っていかれたから。

 道中で同じくモスヒュージにやられたドワーフのドルムル、エルフのルヴィスと遭遇。遠征途中で襲われたらしく、種子が植え付けられていた。

 

 「【癒光の羽衣】」

 

 「「な、治った、だと・・・!?」」

 

 彼らは同じ反応を示す。追加で彼らの仲間を治療して勝負を仕掛けた。リリルカの指示で俺は待機。俺はこのパーティの生命線だってさ。精神力回復薬をがぶ飲みして後方に控えている。

 モスヒュージが集めた蟹型のモンスターに囲まれたが、アイシャのステータス、エリスの加速、ヴェルフの魔剣、春姫の魔法。そして・・・。

 

 「【聖火の英斬(アルゴ・ウェスタ)】!!」

 

 「グギャアアアアッ!!」

 

 河川に流され下に落ちたベルが合流して、モンスターは無事倒された。皆は(特にリリルカ)ベルが来た時に喜びを見せた。これが主人公か。絶望が一瞬で希望に変わった。

 

 「この後どうする?」

 

 「撤退です。余裕はありますが、遠征を進めるのは危険です」

 

 「同感だね。中層ならともかく、ここは下層だ。同じようなイレギュラーに遭っちまったら、たまったもんじゃないよ」

 

 こうして俺達の遠征は終了した。帰り道も特に何も起こらず十八階層へ辿り着いた。

 おろ?なんかアッサリ終了したね。俺とエリスが居たからか?

 この後何か起こるとか?でも下層から帰ってまた下層だなんて無茶はしないよな・・・?

 

 「ん~?あれ~?」

 

 「? どうしたの?」

 

 「いやぁ、何でもない・・・」

 

 まあいいや、今日はもう寝るか。なんかエリスが隣で寝てるけど気にしない気にしない。

 明日にはホームに帰れるし、スキルの選択日だったよな。地上の光が楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 「ひ、ひひひ、覚悟しろよ()()()・・・」

 

 薄暗い地下で笑みを浮かべる者が居た。人波乱起きることをアランはまだ知らない。

 




等級の決め方は作者の解釈です。だって調べても出てこなかったし。


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なんだかんだ言って長生きがしたいっす

このままだとエタリそうなのでサクサク行きます!題名書き忘れたので追加です!


 

 「仲間が【疾風】に殺されたんだよっ!!」

 

 リヴィラの街が喧騒に包まれる。血気盛んな冒険者の街だから当然といえば当然なのだが、いつもの日常とは違っていた。

 殺しがあった。これはリヴィラを中心とする冒険者にとっては見過ごせないものだ。上級冒険者を殺害するほどの殺人鬼が彷徨いているのはたまったもんじゃないから。

 

 「本当に【疾風】だったのか?確か復讐後にどこかでくたばったって噂だったが・・・」

 

 「俺は本当に見たんだ!あのエルフが俺達の仲間を殺したところをな!」

 

 旗頭のボールスが質問し、猫人の男が詳しい事情を話しつつその質問に答えた。更には【疾風】を殺しに行こうと提案する。目的地は下層である。

 端から見ていたベルは、信じられないと言うような表情を浮かべ、俺はあの猫人を見やる。最近まで戦っていた()()()()と既視感があるからだ。

 

 「アラン様はどう思いますか?」

 

 遠征パーティが集まる天幕で、リリルカが俺に尋ねる。

 あの後、【疾風】討伐をするか迷っていたボールスだが、多額の懸賞金が懸けられていると知って討伐が決定した。

 今は俺達だけで情報を精査している。推測の域しかでないが。

 

 「怪しいね」

 

 「怪しい、ですか?」

 

 「どういう意味だい?」

 

 「()()()()()()

 

 俺はアイシャに間髪入れずに答える。あの猫人は仲間を殺されたから敵討ちに行こうと言っているんじゃなくて、俺達冒険者を一つの場所に誘導しているように感じられる。

 

 「それに、【疾風】だと特定出来るか?俺やベルが知るあの人は頭と顔を隠している。状況から察するに殺人は夜間に行われたんだよな?だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 「「「「!!」」」」

 

 まあ、正面から見たら別だけどねと、俺は付け加えた。それに、五~六年経過すれば服装くらい変えるだろ。生きていることがバレないように。

 

 「じゃ、じゃああの人達は・・・」

 

 「これは予想だが、あの冒険者達は恐らく───」

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 「しゃあ!行くぞてめぇらぁぁぁぁ!!」

 

 「「「「おおおおおおお!!」」」」

 

 ボールスの指揮で【疾風】討伐隊は下層へ向けて進軍した。ベルはボールスと同じ前線に居る。俺やエリス、リリルカ達は後衛寄りの中衛。【ロキ・ファミリア】より劣るものの、大規模な人数での進軍となっている。

 

 「【豊穣の畑番(フィールド・キーパー)】!回復頼む!」

 

 「了解!」

 

 俺は負傷した冒険者に回復魔法を大人数に使用する。怪我がみるみる治る様に、初めての者は驚きを見せた。

 ちなみに【豊穣の畑番】は、俺の二つ名である。あのダイダロス通りでの勇姿を見ていた神々がそう名付けた。少しこそばゆいが、痛々しくないので良しとしている。

 

 「あ、あの・・・」

 

 「ん?」

 

 「夢を信じてくれて、ありがとうございます・・・」

 

 進軍中、カサンドラが礼を言う。原作だとこの人は予知夢が見える。その内容は百発百中なのだが、(ベル以外)誰も信じない。親友であるダフネさえ信じないのは、謎の運命力が働いているのだろうか?

 

 「もちろん信じるさ。だから安心しなよ。どうにかして運命を変えるから」

 

 「!」

 

 青ざめていたカサンドラの顔が晴れる。ベル以外の人間が信じるとは思っていなかったからだろう。俺は微笑んだ。

 本当は俺はベルと一緒に行動する予定だった。主人公を補佐すれば、原作を良い方向へと変えられるだろうと考えたから。しかし、夢の内容を聞いて即座に辞めた。だってさ、

 

 「腹を貫かれて死ぬって言うんだもん・・・」 

 

 俺の戦闘衣はあのゴライアスの素材を使われてんだよ?それを貫くって何やねん。そんなモンスター、下層に居るんか?深層から流れて来たのか?

 一応、ベルには篭手を貸した。ゴライアスマフラーなる物を渡されていたけど、何故か心細いと思ってしまった。その篭手は彼の()()に装着された。

 

 一向は下層へ到着し、そして────

 

 「うわっ!?」

 

 「なんだ、地震か!?」

 

 どこかで爆発音が響き、下層全域が揺れた。

 俺達は猫人を監視しつつ行動していたのだが、いつの間にか見失った。地震が起きたのはその直後である。

 これだけでは当然終わらない。

 

 『アアアアアァァァァァ』

 

 ダンジョンが哭いた、のか・・・?

 俺達がそれに呆気に取られていると、

 

 「これは、何かの冗談かい・・・?」

 

 誕生する時期を無視して絶望が誕生した。ここは二十五階層。二十七階層へ向かったベルを救出するため俺達に立ち塞がったその名は────

 

 「アンフィス・バエナ・・・!?」

 

 それぞれ違う能力を有する二つの頭を持つ竜種。階層無視して滝の激流を泳ぐ怪物。 

 

 

 

 

 俺達は今日、主人公抜きで冒険をする。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 「アラン様!?」

 

 「アラン!?」

 

 俺はカサンドラとリリルカを庇った春姫を突き飛ばした。目の前には蒼い炎を溜めるアンフィス・バエナが居る。回避しようにも精神力(マインド)が枯渇気味でもう動けない。こちらに向かおうとエリスが向かおうとするが、彼女の脚には小型のモンスターに咬まれた傷がある。そのせいで上手く走れないらしい。

 精神力枯渇で治せなくて良かった。治していたら躊躇わずこちらに来ていたから。一緒に死ぬことはない。ラクシュミーによろしく言っておいて。ああ、声が届かないか。

 いやー、ベル抜きで我ながら善戦したと思うよ、ホント。階層主をここまで相手取るパーティは中堅派閥でもいないだろ。このパーティは個々の能力が尖っているからね。まあ、善戦出来たのは、やる時はやる人達が多いからだろうけど。

 あ、そう言えばスキルの選択日は今日だよな。最後に選んでおくか。消えない炎が迫ってるし。

  

 「スキル・・・は?」

  

 選択画面に俺は間抜けな声を出す。

 

 【三択からどうぞ】

 ・三つの中から一つ獲得

 ・選んだモノの貯蓄と引出し

 ・一週間後に再選択

 ・貯蓄

 

 これがスキルの詳細だ。今回も例の如く武器とか魔法とかスキルとかが出るかと思ったのだが・・・。

 

 「・・・③を選ぶ」

 

 どうやら俺は思い違いをしていたらしい。モノは、『物』という字が全てではない。だからもうちょっと長生きできそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「────“盾となれ、破邪の盃”」

 




これがやりたかったんです!!許してくれメンス。


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敵か味方か (外伝のネタバレ含みます)

外伝のネタバレ含みます。


 

 「【ディオ・グレイル】!!」

 

 円環が前方に展開され、燃え尽きたとしても消えることのない蒼炎を遮った。

 俺の目の前には、黒いローブを全身に纏う人物が一人。この魔法の持ち主は、オラリオを含め、全世界を探しても一人しかいない。

 

 「()()()()()()()()()()()・・・」

 

 神々から【白巫女(マイナデス)】の二つ名を授かり、闇派閥が引き起こした六年前の大事件の唯一の生き残り。その後、この人とパーティを組んだ者は死ぬと噂され【死妖精(バンシー)】と呼ばれるようになる。

 また、彼女の服装は白を基調とした格好だ。こんな黒色ではないし、そもそも外伝で見たことがある。

 

 「フィルヴィス・シャリア・・・マチガッテイナイガ、イマハ【エイン】トヨベ」

 

 「お前は闇派閥側だろ?俺達の味方なのか?」

 

 「オマエタチヲタスケルキハナイガ(お前達を助ける気はないが)キサマノ(貴様の)『モノ』ニナッタ(になった)サカラウコトガデキナイノデ(逆らうことが出来ないので)ゾンブンニツカエ(存分に使え)

 

 「分かった。じゃあ、アンフィス・バエナを倒して俺の仲間達を守れ」

 

 「リョウカイシタ(了解した)

 

 そう言って、エインは勢いよく飛び出した。本来の魔法から変質した黒い雷が、階層主を焼き焦がす。ステータスは恐らく第一級冒険者と同等以上。相手は階層主だが、下層のモンスターは彼女に太刀打ちできない。

 

 「アラン!」

 

 「あ、エリスどわっ!?」

 

 交代するようにエリスが登場。ガバリと抱き着いてきた。涙を流しながら俺の肩に頭を乗せた。

 

 「悪かったよ、心配掛けた」

 

 「本当だよ、アランのバカ!なんで犠牲になろうとするの!やだ、やだよぉ、居なくならないでよぉ・・・!」

 

 「ごめん」

 

 こんなことしてる場合じゃないけど、エリスの頭を撫でる。慰めは重要だからな。

 

 「アラン様、その・・・ありがとうございました」

 

 「すみません!私が惚けたばっかりに・・・!」

 

 「いいよ、無事ならそれで」

 

 俺が庇った春姫とカサンドラが謝罪する。二人とも申し訳なさそうだ。

 

 「アラン様」

 

 「ん?」

 

 「あのお方はどちら様なんですか・・・?リリの目が確かなら、何もない所から突然現れたような気が・・・」

 

 スキルで喚びました、なんて言えないよなぁ。

 

 「援軍だよ。ちょっとだけ、ホントちょぉぉぉっとだけ訳ありだけどね」

 

 「は、はぁ・・・」

 

 もはや何も聞くまいとリリルカは視線をアンフィス・バエナに戻した。彼が言う援軍は目を疑うほど強力で、あの階層主の頭を一つ消滅させていた。

 

 「ヤレ(やれ)

 

 「【ウチデノコヅチ】!」

 

 「いつの間に・・・」

 

 隣で春姫が魔法を発動させる。更にはアンフィス・バエナの動きが結界で封じられている。あれは重力魔法。使用者はヤマト・命。

 春姫が魔法を掛ける対象は、

 

 「【ヘル・カイオス】!!」

 

 アイシャ・ベルカ。擬似的に昇華されたステータスは、第一級冒険者であるLv.5に至る。

 最後の首が斬られ、残る魔石を【タケミカヅチ・ファミリア】団長の桜花が砕いた。

 

 「どうなるかと思ったが・・・」

 

 「ええ。援軍の手を借りましたが、ベル様抜きで階層主を撃破しましたね・・・」

 

 この戦いで全員一皮抜けただろう。ランクアップする人が多いのでは?

 

 「アラン・・・」

 

 「エリス?」

 

 「例のスキルだよね?あの人誰なの?」

 

 「いや、それは・・・」

 

 「あたしも聞きたいね。あんな冒険者、オラリオにはまず居ないからね」

 

 闇派閥だよ!とは言えないよなぁ。全員気になってるみたいだ。

 

 「・・・エイン、正体を明かせるか?出来れば元の姿になって欲しいんだけど・・・」

 

 「カマワン(構わん)キサマノモノ(貴様のモノ)だからな」

 

 「「「「!?」」」」

 

 彼女は仮面とローブを脱ぎ捨てた。露になるのはモンスターと人が融合する姿。アイシャとエリス、そして桜花とヴェルフは武器を構え、リリルカ達後衛組は衝撃的な姿に後退する。 

 息ができない。そんな重苦しい状況で言葉を発するのは、

 

 「フィルヴィス、深層に行けるか?」 

 

 「可能だ」

 

 「その触手?みたいなのを引っ込めるか?」

 

 「可能だ」

  

 ニュルニュルと触手を引っ込める。皆が俺に何か言いたげに視線を送るが、フィルヴィスが遮る。

 

 「アラン・スミシー。すまないが頼みを聞いてくれないだろうか」

 

 「なんだ」

 

 「呪縛から解き放たれた今、レフィーヤに・・・友に謝罪をしたい。戦力は半減するが、頼む。分身の許可を」

 

 頭を下げる。半減するってことは、Lv.2~3ぐらいに落ちるってことだよな。そうなると深層行きは困難になるんだが・・・。

 

 「こいつは・・・人では無さそうだが、本当に味方なのか?」

 

 「味方ってよりも、手綱を握ってる状態かな」

 

 「この女を信じた結果、殺させるなんて笑い話にならないよ・・・まあ、判断はお前に任せるさ」

 

 「リリルカはどう思う?」

 

 俺はこいつを信じる。今は人手が欲しいし。

 

 「正直理解が追い付きません。ですが!ベル様を救出できる可能性があるなら、例えモンスターの手でも借りたいです!」

 

 「決まりだな。フィルヴィス、頼んだ」

 

 「了解した。私の力が半減しても、このメンツなら戦力的に大丈夫だろう。“────”【エインセル】 ヨシ(よし)ワタシガキサマラノタテトナロウ(私が貴様らの盾となろう)

 

 片言に戻った。黒い方がエイン、白い方がフィルヴィス・シャリアか。

 リリルカの指揮で一行は深層へ向かった。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 フィルヴィスさんが消えた。

 

 エインと名乗る怪人も消えた。

 

 フィルヴィスさんは先ほどまで隣で戦っていた。その人が、敵として目の前に立ち塞がった怪人と一緒に姿を消した。

 透明になったわけではない。本当に、存在ごと消えたように彼女は消えたのだ。

 

 そして───

 

 「!? 撤退!急いで【人造迷宮(クノッソス)】から抜け出すわ!」

 

 迷宮が揺れると同時に、同行していた【ディオニュソス・ファミリア】の恩恵が消滅した。それを意味するのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。混乱が伝播する。

 アキさんの焦燥めいた指示で撤退が決まる。いくつもの方向から、以前の【食料庫(バントリー)】で見た緑色の肉が押し寄せ、力を剥奪された酒神の眷属達を無情にも呑み込んだ。

 

 無力にも何もできなかった私は、自分の感情を血が滲みでる下唇と一緒に噛み締めながら撤退した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「────すまなかった」

 

 「────え?」

 

 地獄のような撤退から次の日のことだった。

 消えたフィルヴィスさんが目の前に現れ、自分に謝罪したのは。

 




フィルヴィスは、アランの所有物になりました。アランの支配下にあるので命令無視は出来ないし、所有者を傷付けられない。
 また、スキルと言えど普通なら人を召喚できません。しかし、彼女の場合は一度死んで生き返った。だから『生者』と『死者』の側面を持ちます。簡単に言えば『物』『者』の境界が曖昧になった感じです。バグですね、はい。
 読みづらいのでルビを振りました。エインは片言で口調も若干悪くなります。



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プロポーズ

 

 「エイン、今いいか?」

 

 「・・・ナンダ。テミジカニイエ」

 

 「おい今はそんな時じゃ「黙りな」グエッ!?」

 

 現在、二十七階層の小さなルームに籠城している。通路は一本。モンスターが大量に入り込めば間違いなくこのパーティは崩壊する。

 リリルカも俺もそんな危険なことはしない。しないのだが、敢えて籠城を選んだのには理由がある。【ヘスティア・ファミリア】唯一の鍛冶士が己を賭けたからだ。

 カツーン、カツーンと鉄を打つ音が響く。そして、鍛治場の熱気か、それともヴェルフの心の熱か、その両方かもしない。背中に熱が伝わってくる。

 

 通路からモンスターが押し寄せ、【タケミカヅチ・ファミリア】の桜花、ここまで来る道中で救出したリヴィラの旗頭ボールスが前衛で盾を張り行く手を阻む。

 中衛に俺、エリス、アイシャ、フィルヴィス、命、ダフネの六人で溢れたモンスターを殲滅する。

 そして後衛には、リリルカが指揮を取り、千草が矢を放つ。春姫の魔法で一斉に昇華させ、カサンドラの回復魔法で前衛の二人を癒した。

 

 これでも依然足りない。

 

 ダンジョンは狡猾で嫌らしい。フィルヴィスやボールスが参戦しても、その戦力を上回るようにモンスターを排出させる。

 

 余裕などない。でもここで言う必要があると思った。

 

 「生きる価値なんてない、そう思っているか?」

 

 「・・・アア(ああ)ワタシモ(私も)フィルヴィスモソウオモッテイル(フィルヴィスもそう思っている)

 

 一度死んで、そしてモンスターと融合して甦った(穢れた)。その後、主神ディオニュソスの謀略に勘づいた仲間を自分の手で始末した。ダンジョンで他派閥さえも同様に。一度や二度ではなく、スキルで召喚される前に何度も何度も手を汚した。

 こんな自分に生きる価値なんて皆無だ。レフィーヤと出会ったフィルヴィスは、精神を病み掛けるほど苦しんだ。

 

 「そうか。でも敢えて言うぞ。『生きろ』」

 

 アラン・スミシーは、目の前のモンスターを駆逐しながら真っ直ぐ言い放った。それに言葉が詰まる。

 

 「お前がどんな経緯でそうなったか知らないし、どれだけ手を汚したかは知らない。それでも生きろ」

 

 「───」

 

 「穢れていても」

 

 狐人は目を瞑る。

 

 「手が汚れていても」

 

 女戦士は大剣に力を込める。

 

 「後ろめたいことがあっても」

 

 小人は前を見る。

 

 「()()()()()()()()

 

 「!!」

 

 「そして、お前は俺のモノだ。生きる価値なんてないなら、俺がお前にとっての生きる理由になってやる」

 

 「・・・ソノコトバニウソハナイナ(その言葉に嘘はないな)?」

 

 「ない」

 

 俺は即答する。

 こいつを推し量ることなんて無理だし、何も知らないのに同情なんて出来ない。

 

 でも、

 

 それでも、

 

 所有者(仲間)として、フィルヴィス・シャリアとエインの生きていいと思える理由になれる。

 

 「ケッ、ダンジョンでイチャ付きやがって」

 

 「ハッ、常に大人で冷静に、なんて思っていたが、あの坊やと同じとんだお人好しだったね」

 

 それぞれがそれぞれの反応を見せる。アイシャとボールスは悪態?を吐き、桜花は男・・・いや、漢だ!と感心する。残りの女性陣は、

 

 「ちょっ、こんな状況でプロポーズしないでよ・・・」

 

 「お、『お前は俺のモノだ』って・・・」

 

 「おおお『お前にとっての生きる理由になってやる』ですか・・・」

 

 「アラン様は、なんて大胆な御方なんでしょう・・・」

 

 赤面する。まあ、勘違いさせる言い方したアランのせいだ。

 

 「でも意外ですね。アラン様はてっきりエリs───ヒイッ!?」

 

 リリルカは隣のエリスをちらりと見やり、悲鳴を上げた。般若が居るからだ。

 

 「私が甘かったんだ一緒に寝たくらいじゃ意識しないそれなら日頃から胸やお尻を当てていやもうこうなったら押し倒して既成事実を作るしかないよね一度そういう関係になったらアランは責任感じるから目移りしないはず「逃げてアラン様ぁ!!」」

 

 ブツブツと恐ろしいことを口走るエリスは、もう手遅れかもしれない。何かがプッツン切れたから。

 アラン様の貞操はもうダメだ。リリルカは両手を合わせてお祈りした。

 

 「完成したぞお前らぁ!!・・・え、何やってんだ?何があったんだ?」

 

 みんなの様子がおかしいことに疑問を浮かべ、なんか一人だけ疎外感を味わったヴェルフであった。

 

 

 

 




次回で遠征を終了させます。そして、外伝十二巻を始めます。


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NTRと卒業式

タイトル通りです。NTRがあります。苦手な方はブラウザバックを推奨します。


 

 信じられない。

 

 信じられるか。 

 

 信じてたまるか。

 

 私は神だ。

 

 例え謀略策略戦略に長けていない神だとしても、あのロキやヘルメス、天界では常に計画の邪魔をしたウラノスにだって出し抜けた。

 

 私の計画は完璧だ。穴などあるはずがない。いや、あったとしても最早関係ないのだ。   

 

 オラリオを物理的に吹き飛ばす。その準備は完了に向かっている。例え【フレイヤ・ファミリア】が来たとしても間に合わない。

 

 それなのに何故だ!

 

 何故、今になって胸騒ぎがする!?   

 

 私は───

 

 「()()()()

 

 ああ、そうだ。私は都市の破壊者(エニュオ)。そして、目の前の女こそが、私の信頼する手足───は?

 

 「イェーイ! エニュオ君見てるぅ?お宅のエインちゃん、俺がいただきましたぁーー!!」

 

 目を疑った。

 いや、だって・・・は?なんでお前がここに居る?なんでお前はエインの肩を寄せている?それにいただいただと?何を言っているこの男は。

 

 おいこら、ロキ。ゲラゲラ笑うんじゃない。てか、いつからそこに居た?

 

 「なぁ、エニュオ。今どんな気分なんや?お気にの娘が他の男に寝取られるのは」

 

 「・・・お前はアラン・スミシー、ロキ達と協力関係にある【豊穣の畑番(フィールド・キーパー)】アラン・スミシーだ。ただそれだけのはず。それが何故だ。何故お前は・・・クソ、クソが、胸騒ぎの正体は・・・お前かぁ!!」

 

 「うわ、怖っ。いきなり声荒げんなよ」

 

 エニュオを名乗る全ての黒幕は、フゥー、フゥーと息を荒げた。これじゃあラスボスじゃなくて、ただの小物だな。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 ベル救出に向かう一行は、ヴェルフが新たに製作した()()()()()()で探索速度が増した。魔力を糧にする魔剣は、魔力に秀でたエインによって威力が増す。だから下層のモンスターを悉く焼き払った。

 追加でリド率いる【異端児(ゼノス)】と、【ヘファイストス・ファミリア】団長椿・コルブランドに加え、リュー・リオンが働く【豊穣の女主人】の同僚達が援軍として参加したので、俺達はサクサクと進んだ。

 目指す場所は深層の三十七階層。リドが言うにはベル達はそこまで落ちたとフェルズから言われたらしい。  

 深層はかなり広くて凶悪なモンスターが多数出現し、第一級冒険者と同等の力を誇るリドでさえ敬遠する。そんな場所に俺達は向かう。

 

 「(まあ、俺達だけじゃなさそうだけど・・・)」

 

 ギリギリエリスの索敵に引っ掛からない後方から強力な気配。

 これはモンスターではない。それに、この()()()()()()()()()()()

 

 都市最大派閥の一角、【フレイヤ・ファミリア】だ。

 遠征が始まる前、ベルがLv.4に到達する要因となったダイダロス通りでの攻防。女神フレイヤの指示で彼らの指揮を務めた俺だから分かったことだ。

 そんな人達が陰ながら援護してくれているので、進行速度が速い速い。

 

 俺達は無事、深層まで辿り着き、

 

 「! 居ました、ベル様ぁ!!」

 

 「ち、治療を早く!二人とも酷いケガだから!」

 

 俺とカサンドラは急いで回復魔法を使用した。ズタズタのボロボロのままここまで辿り着いたベル達は、合流した俺達を見て安心したのか、意識を失った。

 俺達は地上を目指し、地獄のような遠征は終了した。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 【戦場の聖女】ことアミッド・テアサナーレの頼みを受け、ベルとリューさんの治療のため【ディアンケヒト・ファミリア】に通った帰りの晩のこと。

 

 「アランがイケないんだよ?アランが私の気持ちを無視するから・・・」

 

 「ちょっ、エリスさん!?何してらっしゃるんですか!?」

 

 なんかベッドがモゾモゾするなぁ、と思って目を開けたらエリスが居たんだよね。あれれー?おかしいなぁ?戸締まりちゃんとしたよねぇ?

  

 「大丈夫だよ。すぐ終わるから・・・ハァハァ」

 

 「あっ、ちょ、待っ──あっーーーーーーー!!」

 

 獲物を狙う獣のようなエリスに逆らうことが出来ず。彼女とはそういう関係になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぴえん

 




 ベルの右腕は、アランが貸した篭手のお陰で原作同様の怪我をしませんでした。それでも切り傷ではなく、衝撃によって骨にヒビが入りましたが。アランに感謝。
 椿はエインを見て即座斬りかかろうとしましたが、事情を話して止めてもらいました。かなり警戒しています。
 


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昨夜はお楽しみでしたね

久々の投稿。矛盾がある?無視してそのまま押し通る!


 

 アラン・スミシー(16) Lv.3

 

 力:D634

 耐久:C712

 器用:D610  

 敏捷:C723 

 魔力:B802

 

 発展アビリティ

 幸運H

 剣士H

 

 魔法

 “我が第三の手をここに”【見えざる手】

 ・拘束魔法

 ・拘束は力、距離は魔力に依存

 

 スキル

 【言語理解(コミュニケーション)

 ・会話や文字の自動翻訳

 

 【三択からどうぞ(サード・ワン)

 ・三つの中から一つ獲得

 ・選んだモノの貯蓄と引出し

 ・一週間後に再選択

 ・貯蓄(1.篭手 2.レイピア 3.【刀剣乱舞】 4.バンダナ 5.【癒光の羽衣】 6.【全力投擲】 7.【気配察知】 8.槍 9.フィルヴィス・シャリア(外出中))

 

 【断捨離還元(リサイクル)

 ・スキルにより入手したモノを捨て自身の能力値に還元する

 ・価値によって変動

 

 

 あの下層遠征が終了し、ベルと【疾風】リュー・リオンを【ディアンケヒト・ファミリア】で治療した帰り、ホームで俺のステータスを更新した結果である。

 アビリティの伸びが異常なのは、もうお約束・・・いや、おかしいね。遠征前はランクアップしたのもあって全部初期値(I0)だった。それが何でD以上になってんの?魔力に至ってはBだし・・・。俺は考えるのをやめた。

 【三択からどうぞ】により、新たにフィルヴィス・シャリアが仲間になった。今は敵の本拠地である【人造迷宮(クノッソス)】に潜んでいる。明日辺りに神ロキかフィンさんが来るだろう。レフィーヤさんを通して事情を知っただろうからね。包み隠さず吐こう。それがいいや。ちなみにラクシュミーは遠い目をしてた。ごめんね!

 一瞬だが、フィルヴィスは俺のモノという言葉に反応してしまい、エッチな妄想をしてしまったが、その刹那をエリスが感じ取った。彼女の微笑み(睨み)は怖かった。

 他には特に無い。全然使用しなかった拘束魔法に、スキルの【断捨離還元】は置物と化しているから。だって【癒光の羽衣】の方が便利だし。貯蓄から中々捨てられないし。

 

 エリス・キャルロ (16) Lv.3(4に可能)

 

 力B805

 耐久C754

 器用B835

 敏捷SS1100

 魔力B840

 

 発展アビリティ

 狩人G

 剣士H

 

 魔法

 “速まれ”【加速(アクセル)

 

 スキル

 【犬人咆哮】

 ・獣化

 ・全能力値に高補正

 

 【貴方追奏(フォー・ユー)

 ・───

 ・特定の人物を想うほど効果向上  

 ・魅了無効

 

 いや、おかしいだろぉぉぉぉぉ!!どんだけ冒険したんだお前はぁぁぁぁぁ!!

 ・・・いや、スキル無しの俺でアレだったのだ。成長補正スキルを持つエリスなら当然か。それにしてもさ。ランクアップ可能ってマジ?敏捷SSになっちゃってるし。君はベル君(主人公)目指すのかい?

 おいおい、エリス。さっきから熱っぽいような目でチラチラこっちを見るんじゃない。野生の本能?お前より弱い俺は狩られるの?・・・と、イカンイカン。卑屈になってる。俺より凄いなら純粋に褒めるべきだろ。仲間を疑うのは駄目だ!

 

 エリスが俺を襲うわけないし、もう寝よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あぁーーーーーーー!!」

 

 エリスに喰われた。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 「やあ、アラン。遠征帰りでお疲れのところすまない。君に用があって・・・やつれすぎじゃないか?疲れが抜けてなかったのかい?」

 

 「いやー、ハハハ」

   

 予想通り、フィンさんと神ロキがここに来た。警戒してると思ったけど、そんな素振りは見せなかった。信用されてると考えていいのかな?

 今はエリスは外出中。遠征の後処理に追われている。いや、ただ単純に昨夜のことで気まずいだけだ。顔を赤くしながら早々に出てったし。

 昨晩はエリスに失神する一歩手前まで絞り取られた。だからフィンさんの言う通りやつれているのだ。反対にエリスは艶々してた。ラクシュミーは避妊は大丈夫かとか、少々声を抑えろとそれとなくやんわり注意した。それがかえって俺達の気まずさを助長させた。

 

 今は話し合いだ。昨夜のお楽しみは忘れろ!集中だ、集中!

 

 「エリスちゃんとお楽しみだったと見た!」

 

 「ロキ、彼らに失礼だよ。違うよね・・・アラン?」

 

 「アハッ、アハハ、違うに決まってるじゃないすか!ただ遠征の疲れが酷いだけですから!?お楽しみとかっ、そんなんあるわけないじゃないですか!」

 

 「「・・・」」

 

 こんな苦し紛れの言い訳で騙せると思った俺はバカヤローである。

 

 「あー・・・君に聞きたいことがある」

 

 「せ、せや。レフィーヤから聞いたと言えば分かるよな?」

  

 お二方の気遣いが痛いっす。

 

 「フィルヴィス・シャリアの件ですよね?それについてはスキルが関係してまして───」

 

 「そんなスキルがあるのか。じゃあ害意はないんだね?」

 

 「ありません」

 

 「ほんなら、敵の裏を掛けるんやな?例えば───」

 

 「名案ですね。それに加えてこれとか」

    

 「ハハハ。中々えげつない作戦だね」

 

 「敵に情けは無用ですから」

 

 こんな風に作戦会議が始まった。策略に長けた神ロキとフィンさんが居るのだ。エニュオを陥れる作戦はどんどん決まる。

 

 そして、

 

 「イェーイ!エニュオ君見てるぅ?お宅のエインちゃん、俺がいただきましたぁーー!!」

 

 侵攻決行時に、フィルヴィスのNTRが完遂された。薄い本待ってます。

 




あのスキルを伝えた。それで闇派閥関与の疑いは晴れると思ったから。まあ、フィンとロキはそもそも疑ってないし、なんなら薄々勘づいてた。


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俺必要ですかね!?

超久方ぶりの投稿です!


 

 「アアアアァァァァッ!!」

 

 クノッソスにおける、闇派閥との最終決戦は佳境に入る。一度有るか無いかの前代未聞の派閥連合は、【穢れた精霊】と決戦を行っていた。

 集団で挑む中、なんと俺達はたったの四人編成。リーダーを任された俺が、ベル、レフィーヤ、フィルヴィス三人を指揮していた。あの腹黒勇者こと、フィン・ディムナに厄介ごとを押し付けられたと言っても過言ではない。恨むぞ、ホント。

 最初は原作知識もなくて不安だったものの、この三人が本当に優秀過ぎた。

 迫り来る触手をベルが切り落とし、敵の魔法をフィルヴィスが守る。守りきれなくても、急所さえ無事ならいくらでも再生できるチートぶりを発揮した。そして、隙を見計らってレフィーヤの広範囲魔法。()()()()()()()()()()とかヤバいだろ。

 フィンさんでさえ予想外の七体目。そんな相手を即席パーティの連携で相手取っていた。

 

 「蓄力(チャージ)するので、守ってください!」

 

 「私も最大出力の魔法をお見舞いします!陽動お願いします!」

 

 「分かった!アラン、前に出るぞ!」

 

 「うぇええええッ!?俺も!?嘘だろ!」

 

 後衛で援護(ヒーラー)に徹していた俺が、強制的に前に出された。触手攻撃の大部分はフィルヴィスが請け負ってくれるが、俺にだって迫りくる。捌ききれずに負傷する。

 

 痛い!痛だだだだ!?【癒光の羽衣】が無かったら死んでるよコレェ!?

 

 ゴォーン、ゴォォォォン!!

 腹の底に響くような大鐘楼(鐘の音)は、【人造迷宮(クノッソス)】に居る冒険者、あるいはオラリオに住まう一般人にも聞こえているのだろう。絶望を切り裂く希望の音、と言ったところか。

 

 ・・・流石英雄。俺とは違って、皆に希望と勇気を与えてる。

 そんなことを考えつつ、ベル達の蓄力(チャージ)及び詠唱はついに完成する。フィルヴィスも防御から攻撃に移った。

 

 「【ファイア・ボルト】!!

 

 「【レア・ラーヴァテイン】!!

    

 「【ディオ・トュルソス】!!

 

 「ぜぜぜ、【全力投擲】!!・・・・・・あ」

 

 俺はブチブチ音を鳴らして捻曲がる右腕を横目に気絶した。

 ・・・いいね、三人とも。立派な魔法があって。俺のは自滅技だもん。釣られて使うもんじゃなかったわ。

 

 

 ーーーーーーーーーーー

 

 

 「アランー、いい加減起きなよ。冒険の時間だよー?」

 

 「やだ、動く気力がない」

 

 「もう・・・」

 

 【穢れた精霊】との戦いで犠牲者は出たものの、冒険者側の勝利に終わった。赤髪の怪人(クリーチャー)は【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインが討ち取ったらしい。

 そんな奴らを率いてオラリオ転覆を企てた【都市の破壊者(エニュオ)】こと、男神ディオニュソスは自らの手で送還(自殺)した。最後の眷属たるフィルヴィスは、彼の幕引き(終わり)に何も言うことなく、そっと静かに目を閉じたそうだ。

 表向きでは善神ぶっていたディオニュソスが、実は黒幕だったと世間が知れば混乱は必死。それを見越したのかギルド長ロイマンは、敵の手によって命を落としたと報道した。その際、涙を流して泣いてたらしい。あの人が?嘘だよね?

 

 俺は精神枯渇(マインドダウン)やら右腕ぐっちゃぐちゃやらで意識を失っていたので、この戦いの結末をかなり後に聞いた。

 これはエリスから聞いたけど、【フレイヤ・ファミリア】が来たってマジ?もしかして、美味しいところをかっさらおうとしてたの?なんかウケる(笑)

 

 意識が回復し、無茶したことに怒り心頭の視線を浴びせてくるアミッドをよそに、エリスがベッタリくっついていたのは言うまでもない。

 あの激闘から数日が経過した今、燃え尽き症候群に襲われてエリスの太股に顔を埋めている。太股はほのかに温かく、いい匂いがする。素肌なので寝心地抜群・・・いや、艶かしい。

 エリスは仕方ないね、と言わんばかりに俺の頭を撫でた。心地いいよすぎて幼児化注意。エリスママァ・・・。

 

 主神であるラクシュミーは、豊穣が何とかで外出中。デメテル様の代わりにこの先の祭りに協力するんだと。

 

 「まだ寝てるのかアランにエリス・・・て、何をしてる?」

 

 「あ、フィルヴィス。おはよー」

 

 「おはよう、フィルヴィス」

 

 「ああ、おはよう。出来れば質問に答えてくると助かる」

 

 フィルヴィスは現在、俺達の本拠地(ホームに住んでいる。戦闘(黒モード)日常(白モード)で切り替え可能らしい。敵だった彼女の扱いは現在監視対象として経過観察中。誰がするって?もちろん俺だよ。

 

 「まあ、いい。お前らダンジョンへ行くぞ」

 

 「なんでさ?」

 

 「レフィーヤとの修行ついでに鍛えてやる。下層に行くから着いてこい」

 

 「なんでさ・・・」

  

 このレフィーヤガチ勢の百合妖精め。

 




17巻によるとリヴェリアは、ダンジョンに居たから魅了されなかったらしんです。だからアラン達も動向させます。


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フィルヴィス・ブートキャンプ

連休なので更新頻度が上がります!



 

 「ちょっと待って!()()怪物の宴(モンスターパーティー)】とかマジィ!?」

 

 「これで何回目!?少しは手加減してよっ!」

 

 「ひぃぃ、スパルタ過ぎませんかね!?」

  

 下層にて。

 俺達は現在、フィルヴィス指導のもと地獄の特訓を行っていた。下層には前の遠征で痛い目にあったから、あの滝の音には心底嫌悪感を抱いた。

 そんな中で行われる特訓は苛烈を極めた。内容は至って単純で、襲い掛かってくるモンスターを倒していくだけだ。技とかを教えるとか、そうゆーんじゃなくて、ただただモンスターとぶつかっていくスタイル。

 何度も繰り返してくるフィルヴィスの【怪物の宴(モンスター・パーティー)】───【怪物進呈(バス・パレード)】か?に、ついに泣き言を漏らした。忌々しい滝の音はもはや気にならなくなった。

 

 食事はリヴェリアさんとフィルヴィス、十八階層に待機していた【異端児(ゼノス)】達が用意してくれた。感謝の言葉をレイさんに述べたら、それはもう喜んだお顔を浮かべて・・・ヒェ。就寝は下層の小部屋(ルーム)でフィルヴィスが見張り、それ以外の魔石やドロップアイテムの換金とかはリヴィラを活用した。日に日にボロボロになっていく俺達に冒険者は引いていた。

 

 戦闘時の立ち回りはこうだ。

 俺は回復魔法を活用しながらレイピアで切り裂く。【刀剣乱舞(スキル)】のおかげで剣術に磨きがかかる。そのため、多くの敵と戦う前衛を担当していた。

 エリスは速度を活かした遊撃。速度を上げる魔法は単純(シンプル)に強い。モンスターは人間同様大量出血で死ぬので、大量出血を狙う感じで喉を刈り取っていた。浮気しようものなら俺も刈り取られるのだろうか。

 レフィーヤは自分の十八番(オハコ)である召喚魔法を行使していた。短文から長文、さらに()()()()()()()()()()()()()()()で蹂躙していた。どの魔法をどんなタイミングで使うか。判断力に関しては、俺やエリスより成長したと思う。

 

 「お前達はこの先、あらゆる危機を乗り越えなければならない。だから学べ。そして必要な経験を積みながらステータスを上げていけ」

 

 フィルヴィスの言いたいことは分かる。主人公(ベル)と今後も付き合っていくのなら、必然的に危険が付きまとう。だから最低でも恋人(エリス)を守れるくらい強くなりたい。

 まあ、エリスのがレベルが高くて強いけど。

 

 「後ろには私が控えているのだ。死ぬ前には助けてやる」

 

 顧問として同行してきたのはリヴェリアさん。・・・いやあのね?安心しろみたいに言うけどさ。つまり死ぬ直前まで助けてくれないってことですやん。今助けてくださいっす。お願いします。

 ・・・そんな願いは届かず、

 

 「ほれ追加だ」

 

 「「「うわぁああああ!?」」」

 

 オラリオに労基ってあったっけ?無いのなら、今からでも入れる保険を紹介してください。

 

 

 ーーーーーーーーーーー

 

 

 「死ぬかと思った・・・」

 

 「もうくたくただよぉ・・・」

 

 「うう、しばらくダンジョンに行きたくないです・・・」

 

 一週間以上に及ぶ【怪物の宴(モンスター・パーティー)】の繰り返しはまさに地獄。時間感覚を忘れるぐらいに渡って開催されたフィルヴィス・ブートキャンプは()()()()()()()()(強化種)の討伐を皮切りに終了し、《昇華の手応えを感じつつ》帰路に着いていた。十八階層(リヴィラ)で一晩寝たけど疲労は消えなかった。体がダルい。

 最後の【怪物の宴(モンスター・パーティー)】で入手した魔石とドロップアイテムは、上層までフィルヴィスが運ぶ手筈になっている。リヴィラでする手もあるけど、適正価格よりも安くなるしなぁ・・・。

 地上から俺達が運ぶのは、彼女をあまり人目につかせたくないからである。フィルヴィスの事情を知る者は確かに居るが、それは限りなく少ない。

 【都市の破壊者(エニュオ)】こと、邪神ディオニュソスは敵に破れて眷属ごと送還されたということになっており、その中には当然団長(フィルヴィス)も含まれている。彼女が生きていたと知られたのなら、絶対に都市中が混乱(パニック)になるだろうし、神々が動き出すのが目に見えている。地上に辿り着く前には俺の中(意味深)に入ってもらおう。

 余談だが溢れて運べなくなった魔石は、彼女が美味しくいただいた。おま、さりげなく強くなってんじゃねッ!

 

 一週間経過したからアレがある。

 

 三択から選んだのは、【吸収(ドレイン)】という魔法だ。これは読んで字のごとく、相手の体力・魔力・精神力という体内に存在するエネルギーを吸収して自身に還元するという破格の魔法。デメリットが自分だけにしか使えないことと、相手に触れる必要があることだが、それを差し引いても中々使える。

 体力や精神力(マインド)を回復しながら戦えることに、エリスもレフィーヤも羨ましがっていた。

 まあしかし、あの自然回復を速めるのが【精癒】なら、【吸収(ドレイン)】は薬を使ったような即効性がある。ある意味チートだな。

 

 モンスターに使ったら、突撃の勢いが無くなってへにゃへにゃになった。

 馬鹿みたいに精神力(マインド)を消費する【癒光の羽衣】と相性が抜群。修行中は継続的に使用できた。

 

 「私はアランの中に戻る。用があれば召喚しろ。またな、レフィーヤ。失礼します、リヴェリア様」

 

 「またご指導よろしくお願いします!」

 

 「ああ。レフィーヤを見てくれて感謝する」

 

 「ああ、お疲れ様───て重たぁっ!?」

 

 「アラン大丈夫!?」

 

 バッグを俺に手渡したのと、フィルヴィスが消えるほぼほぼ同時だった。どんだけ入ってるんだよ、腕が持ってかれそうになったぞ・・・。

 

 地上に通じる螺旋状の長い階段を、一歩一歩ゆっくり上がっていく。なんでこんな長いんだよ、エレベーターを設置しろよツライしキツイから。

 そんなことを切実に思いつつ、あることに気づいた。

 

 「? なんか騒がしくないか?」

 

 「あ、本当だ。───えと、炎?魅了?それに・・・()()()()?」

 

 エリスは獣人特有の聴力で、聞き取れたことを反芻する。フレイヤと聞いて、嫌な予感しかしない。

 

 「フレイヤ・・・て、ええ!?あの女神フレイヤですか!?」

 

 「民衆が騒いでいるということは、派閥総出で何かを仕出かしたのか?何にせよ急ぐぞ。私達のファミリアも、無関係ではなさそうだからな」

 

 俺達はリヴェリアさんと共に走り出す。

 フレイヤは何をやらかした?まさか、ベルを手に入れるためにオラリオ中に魅了をしたとか?いやでも、いくらフレイヤでもそんな無茶苦茶なことができるはずが───

 

 「アラン、エリス!それにお主らも帰ってきたか!留守の間に色々あったんじゃぞ!まったく、あのアバズレ糞女神(フレイヤ)め・・・!」

 

 「久しぶりだなラクシュミー!早速なんだけど、どういう状況なんだ?」

 

 バベル前で待っていたラクシュミーに、再会を喜ぶより今の状況を問い詰めた。地上の情報が全く届かない下層に居たのだ。俺達四人には、聞きたいことがたくさんあった。

 

 ラクシュミー曰く、フレイヤが街中で【ヘスティア・ファミリア】を襲撃し、ベル・クラネルを強奪したとのこと。しかし、公式の【戦争遊戯(ウォー・ゲーム)】じゃなく非公式の強奪ときた。許させることじゃない。

 

 「なるほど。それを良しとする方法が───」

 

 「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ヘスティアの眷属ではなく、元からフレイヤの眷属だったことにしたのじゃよ」

 

 「えげつねぇ」

 

 「魅了された人達はどうなってるんですか?」

 

 「ヘスティアの権能で解放されて、ほとんどの冒険者はフレイヤの本拠地(ホーム)を襲撃している」

 

 俺達が居ない間に目まぐるしく変化してんな、おい。でもまー、これで【フレイヤ・ファミリア】の天下はこれで見納めか。フレイヤの反感を買ってオッタル達にメッされなくて済む。良かった良かった。

 

 リヴェリアさんとレフィーヤは、フレイヤの本拠地(ホーム)に向けて走り出した。自分の仲間達も戦闘に加わっているからだ。

 

 「あ、ラクシュミーも魅了されたのか?」

 

 「うむ。しかも、魅了された時にフレイヤの奴が私のもとへ訪ねて来おってな?あの糞女がなんて言ったと思う?」

 

 『アラン・スミシーはどこ?』

 

 「アランを警戒しとったわ!隠しきれておらんあやつの必死さは傑作じゃたわ!」

 

 アッハハハ!と豪快に笑った。してやられたことに腹を立ててつつ、フレイヤを馬鹿にする。我が主神ながら、すげぇ器用な女神だ。

 ・・・わざわざ俺を探してたの?警戒する価値は無いと思うけどなぁ。

 

 「まさに盛者必衰。ゼウスヘラ同様に、フレイヤも例外ではなかったか・・・」

 

 笑い疲れて落ち着いたラクシュミーは、騒ぎの中心を見ながら呟いた。

 【フレイヤ・ファミリア】がいかに強大な存在といえど、オラリオのほとんどを敵に回したのだ。積み上げてきた権威は当然失墜し、彼ら彼女らの居場所はもはや無くなったと言える。

 俺達は崩壊していく派閥の最後を見ないまま、久方ぶりのの本拠地(ホーム)に帰ることにした。

 

 その翌日に流れたニュースに驚くことになる。

 

 『【ヘスティア・ファミリア】VS【フレイヤ・ファミリア】による【戦争遊戯】が決定!開催日時や勝負内容はおいおい決定する模様』

 

 ・・・マジっすか?

 




18巻に突入します!
題名の元ネタはビリーズブートキャンプ。


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