浦原喜助の兄に転生して夜一の許嫁にされた俺の話 (ちーむ)
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可愛い弟ができたのと夜一さんとの出会いの話

漫画パラ読みした程度の男が転生したら。
あのある意味黒幕の浦原喜助の兄となり、
気づいたら。あの___四楓院夜一と許嫁になっていた。
そんな男の死神&日常生活。


 

 

 

 

俺は()()維助(いすけ)

 

普通の専門学生として自分の好きなことを仕事にしたくて

そろそろインターンや就職活動が始まるという時期に____

 

俺は死んだ。死んだ理由は覚えてない。ただただ病院で家族に見送られたことは覚えてる。事故か病気か……まぁこの際どうでもいい

 

気づいたら死後___というか小さな男の子に転生した。

前世とは面影もなく、名前も変わった。髪はミルクティー色だし、目は青色で。髪は母親譲り、目は父親譲り。

 

そして弟の名を聞いて頭にひとつの漫画が思い浮かんだ

 

弟の名は浦原喜助。

 

浦原……喜助??BLEACH……の?あの変な帽子の店主の??

 

俺は小学生の頃にBLEACHのアニメをちろっと見たりする程度だったけど、さすがに覚えてる。死神、尸魂界、浦原喜助。いやこれ間違いなくBLEACHの世界だ。

 

どうやら俺はBLEACHの世界に浦原喜助の兄として転生したらしい。

 

弟は俺と3歳ほど離れている。まぁ、死神にあんま年齢関係ないけども。

 

こんなんになるならもっと漫画とか読むべきだったなと後悔。

さすがに主人公とヒロインは覚えてるけど。俺の知識中途半端で__っと前世を少し後悔する。

 

でも、弟は可愛い。前世は兄弟いなかったから嬉しいわ。

弟は俺と同じ髪で、目は母親譲りの色素の薄い色を遺伝したようだ。

俺と似た猫っ毛で、兄サン、兄サンと付いてくるのは可愛い。もう可愛い。

 

俺の家、浦原家は上級貴族に位置する。

使用人は多いし、毎回お偉いさんが父上と話し込んでるのをよく見る。

そして家庭教師がついている。

霊圧制御の稽古、剣術の稽古、歴史、そして一般的な教養、芸やマナーなど。本当に幼子にやらせていいものなのか?ってぐらい詰め込んである。

 

 

 

 

「維助兄サン。またサボったんスか」

 

「だって、だるいもん」

 

また怒られるッスよ?っとため息を吐く喜助。

俺と喜助は人間でいう13と10程に成長した。

 

俺は詰め込んだ教育に耐えきれずサボり魔として興味のない稽古は全てバックれるという問題児に成長している

 

「まぁ……維助は馬力はあるのにねぇ」

っと、頬に手を添えた母上が困ったように眉を下げてた。申し訳ない。

三味線の稽古はいいけど、横笛は嫌だとか。

体術はいいけど剣術はめんどいとか。選り好みしてる俺に困ってるようだ。

 

弟と言えば上がちゃらんぽらん下がしっかり効果が本当なのかは知らないけど、苦手分野はあれどちゃんと授業を受けてちゃんと結果を出してる。

 

喜助は興味あることはとことんやり尽くすタイプで、少し疑問に思ったことがあれば3日書斎に籠って調べたり研究したりとクリエーター気質だった。

まぁ、俺も俺でガラクタ集めてくっつけてロボット作ったり、機械作って配線ミスって爆発させたりと好き勝手してるんだけどね。

 

そして俺の家、さっきも言ったけど上級貴族なんだけど。

なにやらあの四大貴族の四楓院家と親しい関係らしい。

祖父、曽祖父よりも前からの付き合いらしく___

 

 

俺らも大きくなったし、粗相しないだろうと正式に四楓院家の集まりに参加することになった。

 

「うわぁ……喜助みろよ、人多いな。死神も多いし」

 

「維助兄サン。あんまりジロジロみると失礼ッスよ。」

 

四楓院家はすげー貴族なだけあって、護衛の死神や他の家柄のお偉いさんたちが集まっていた。

よく話聞いてなかったけど、なんか14歳になった四楓院の姫さんの成人祝いだとか。

なんだっけ、名前……

 

「夜一様ッスよ、四楓院夜一様。ちゃんとご挨拶する時無礼のないようにするんスよ?いつも使用人と話すみたいに、可愛いとか綺麗ッスね〜なんて言った日には父上に殺されますからね?」

 

っと念押しされた。さすがに分かってるって。

 

父上に呼ばれて2人で寄るとそこには、褐色の肌の女の子とスラリとしたイケメン男性。

「この子が維助、こっちが喜助。俺の可愛い息子らです」

っと父がそれぞれ俺ら頭に手を乗せて、紹介する

 

「浦原維助です。」

「浦原喜助です。初めまして夕寝(ユウネ)様、夜一様」

 

男の人は夕寝、女の子の父親らしい。

うーん夜一……夜一なんか聞いたことあんだよな……。

それに見た事あるような……引っかかるということはまぁBLEACH関連で出てくる人なんだろうな。

 

「それで、この前の話なんですけど、どうでしょ?」

っと父上、何の話だ?っと喜助と目が合ってお互い首を傾げる

 

「はは、則祐(のりすけ)に似て本当にいい男に育ちそうだな。髪は2人とも母親譲りなのか。ほうほう。幼いながらに霊圧も高いし、ふむ、」

 

っと何故か俺を見て何やら品定めしてるようだ。則祐とは俺の父上の名である。

 

「よいよい、小生(しょうせい)も気に入った。よし、いいだろう。上はたしか13だったか、15になったら縁を組ませよう」

 

「はは、こんな美人な子を貰えるだなんて良かったな維助」

 

……ん?本当に何の話だ???

 

本当に何がなにやら分からないまま、後は大人の話してるからどこか行ってなさいと開放された俺ら。

 

「え、喜助、さっきのなんの話だった?」

 

「縁談ッスよ縁談。つまり維助兄サンと夜一様が許嫁になるんスよ」

って呆れたように俺を見る。え、そんな話だったの?

 

「えぇ?いきなりじゃね?」

 

「貴族はそんなもんス」っと本当に10歳か?こいつ、

実は身体は子供頭脳は大人の名探偵だったりしないか??

 

 

暇なので庭に来た俺ら。

四楓院家はバカ広いな。大きな池、俺の家の倍あるぞ?

しかも高価な立派な鯉が泳いでやがる。

俺も育てたいな鯉。

なんて池を覗いてると、チョイチョイっと裾を引っ張られる

 

「んだよ、喜助」

っと振り向くと、遠くからこちらに向かって、

あの女の子。夜一、あー夜一様が歩いてきてた。

 

目の前まで来ると、何故かムスッとしてる彼女

「お主、維助と言ったな?」

 

「あぁ、はい」

横から兄サン!っと俺の態度が悪いらしくそう注意された。

 

「お主との縁談、儂と主の親が決めた話。じゃが儂はそちに嫁ぐつもりは無い!」

っと宣言した彼女

 

「はぁ……」

 

「儂は四楓院家、初の女当主になるんじゃ!女が当主などできぬなどという常識を儂が塗り替える!!なので、主も立場上縁談は断れないであろうが、表向きには保留って事にしておいてほしい」

 

「はぁ……わかりました」

 

何かすごいな、幼いながらに強い意気込みを感じる。

 

「じゃが、せっかくの縁じゃ、その……儂と友達になってはくれぬか?」

っとさっきの威勢はどこへやら。モジモジしだした。

うん、俺は子供趣味じゃないけど。可愛いな、

 

「俺も急な縁談でちぃと戸惑ってたとこなんスよ、友達なら〜ぜひっ。グハッいった、なにすんだよ喜助

いきなり横腹小突かれたと思ったら

「敬語!」っと怒られた。細かいなぁ

 

「よいよい、儂は堅苦しいのは苦手でな、そのような態度でよい。維助のような者は初めてじゃ!」っと楽しそうだ

 

「まぁ、そういうことなら」っと、納得したような喜助。

 

「改めて、俺は維助。こっちは弟の喜助だ。弟共々よろしく」

「あぁ、儂は四楓院夜一。よろしく頼む」

 

「よろしく夜一さん」

 

これが俺と夜一の出会いだった。

 

_______________

それからたまに遊んだり稽古したりと仲良くして

 

人間で言うところの俺が15、喜助が12となり、俺が成人した。

 

「維助兄サン。元服の日ぐらいきちんとしてもらわないと」

元服とは成人の儀の話である。

長々しいものに飽きて俺は抜け出してきたんだが、さすが俺の弟。一瞬で見付かって捕まえられた。

 

「喜助は死神になるのか?」

 

「なんスか急に、そうッスねぇ〜鬼道衆でもいいんスけど、維助兄サンもスよね?」

 

「まぁ、可愛い子と出会いあるし。金も貰えるだろ?」

 

「はぁ、全く……維助兄サンはもう成人、いいっスか?その女にだらしない生活いい加減改めましょ?兄サンのせいでもう何人使用人入れ替わってると思ってんスか」

 

「いやぁ、だって可愛い子多いんだもん、そりゃちょっかいかけないわけなくない?お前も男ならわかるだろ?」

 

「興味ないっス」

っとバッサリ。

 

俺は両親が中々の美形なのもあり。ミルクティー色の髪に淡い青色の瞳。

そして美形に上級貴族。

15となって普通に人間で言う高校生ぐらいに成長した俺はまぁモテるモテる。色男の優男として人気だった。自分で言うけど事実である。

 

いや、遊ばないわけないよね!!

 

弟といえば、イケメンでしっかり美青年なのに、身嗜みは適当で女には全然興味無し。あっても遊ぼうなんて考えにはならないタイプ。

 

可愛い使用人が世話役なんかになって、一人口説いて遊んでみたいの繰り返したら。他の使用人からの嫌がらせやら何やらで消えてく人多数、続かないんだよなぁ。

 

 

 

 

「えっ、夜一さんと一緒に真央霊術院に入学?」

 

「あぁ、もうお前も成人したし、通うといい。霜月(11月)にある試験受けてお前も入学しちゃいなさい」

 

喜助とガラクタいじってたら突然来た父上にそう告げられた。

 

「急だな、霜月(11月)ってあと2ヶ月じゃん」

 

「お前なら落ちることないだろう?やる気はないけど、才能はある。いやありすぎる。霊圧ももう既に隊長格はあるだろう?」

 

「いやそれは大袈裟。あ、ならついでに喜助も入学させようよ」

 

「ついでって……」っとジトーっとこっちをみてくる喜助

 

「ほら、喜助兄さんと離れて寂しいだろうし?ほら、一緒に入学しちゃった方が楽だよ、成人してから〜ってか規則もないし。どう?父上」

 

「いや、ボクは別に「そうだな!そうしよう、喜助も受けなさい」えぇ」

 

っと半ば無理やり、俺らは突然ではあるけど試験を受けることになった。

 

2ヶ月とはあっという間で、まぁ試験は余裕。

元々一般教育+αで色々仕込まれてたのもあって、余裕で合格した。

 

ちなみに夜一さんは試験にはいなかった、もうなんか決まってたらしい。推薦?AO的な?

 

喜助と俺でそれぞれの項目の首席争いをする感じになった。

座学は全体的に負けたけど、剣術、体術系は俺の圧勝。喜助は鬼道がめちゃくちゃ得意だな。俺は普通。

 

そのうち浅打という死神が使う斬魄刀の元となる刀を貰って、

斬術の訓練も入ってくるようになるらしい。

まぁ、大丈夫っしょ。

 

 

 

 

 

 

 



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得意な話

 

男勝りな夜一さん、たまに稽古やらなにやらで仲良くなったって話はしたと思う。

そんな夜一さんと出会ってかれこれもう数十年

 

彼女は人間でいう16程になりどんどん身体が成長し、普通の女性のようになって行った。

女の子大好きな俺だけど、夜一さんが男勝りな性格なせいか絡みすぎて慣れたのか。

全然そう言う欲はわかず。

好きと言っても全く恋愛的な意味は持たないし。

相手も全くない。まぁ仲良い異性、親友みたいな関係だ。

喜助とも仲良くしてくれてるし、いい人だとは思う。

 

 

 

「どうじゃ、維助、喜助。調子は」

 

「まぁまぁっスねー」「まぁーまぁーだなぁ」

 

「全くお主らはそっくりじゃの」

 

「維助兄さんと一緒にしないで欲しいんスけど」

「おいこらまて、喜助どういう事だ」

最近喜助が反抗期かもしれない。

 

それより、調子というのは浅打、斬魄刀との対話で喜助は順調、俺も順調に対話してなんとかそろそろ始解できそうな段階まで行ってる。

斬魄刀の能力何かなー楽しみ

 

 

 

「あ、それより維助兄サン、次の休み部屋片しに行くんで」

 

「あー頼むわ」

 

「まてまてまて、維助。喜助に部屋を片付けさせておるのか??」

っと驚いた表情。

 

「いや、俺からは頼んでねぇよ??なんかこの前。俺の部屋見て掃除し始めてさ、ゴミ屋敷っスか??なんてすごい剣幕で言うもんだから」

 

「いや、ボクも人のこと言えない部屋なんスけど兄サンのはもう、散らかってるとかそういう次元じゃないんス。寝る場所ないんスよ??」

 

「実家は全部使用人がやってたからなぁ〜」

後でやろう後でやろうってやってたら、本は出しっぱなし、

機械類は放置、ガラクタ部品は床に散らばり大惨事だ。

 

「適当さは相変わらずじゃの……」

 

するとそこへ

 

「あ、維助さーん!またお昼作りに行きますね〜♡」

 

「ありがとう〜」っとすれ違ってそう言った女の子に手を振る

 

そして別の女の子も来て

「維助さん、これこの前部屋に忘れてったやつ」

「あーそうだった、わざわざありがとうな」

 

「いえっ!いいんですよ」

なんて顔を赤くした可愛い子から俺が忘れてった上着を受け取る

 

「なんじゃ、お主入学して日が経っておらんのに友が多いの?」

っと、去っていく女の子の後ろを見ながら首を傾げる夜一さん

 

「そうなんだよねぇ〜交友関係が広いと色々助かるからいいよ」

 

「ふむ、儂もお主を見習わないとな」

 

「いや、兄サンのは真似しない方が……」

 

まぁ夜一さんは遊びとかしないタイプなのであの女の子達が俺に恋愛的な好意を持ってるとかは考えてはいないらしい。

普通に友達多いやつ認識である。そして喜助余計なことを言うな

 

喜助を小突いて黙らせる

 

話は変わるが俺ら3人は特進学級

試験において優秀な成績を収めたものは特進クラスである一組に集められていて

入試試験は俺ら兄弟で争ってたけど、普通の院の成績では3人が争い合うというかたちになっている 。

 

座学は喜助に勝てないんですけどね〜。

夜一さんといえば、「拳(白打)」「走(歩法)」が得意らしく、白打は俺の方が勝ってるけど瞬歩は負ける。

 

 

「怪力女」

なんて零すと

「なんじゃと?もういっぺん言ってみろ、ん???」

っと〆あげられた

 

「うそ、しまってる!首首!!ごめんつい心の声が出ただけだから!!」

って言ったらヒートアップした夜一さんに意識落とされかけた

 

「はぁ……擁護できないっス」

 

 

 

 

 

俺は「拳」と「斬」を得意とし、あんなに家庭教師でめんどくさかったのに、今では斬魄刀を手にしてから特技と言えるぐらいまでに成長していた。

得意なのは抜刀術。一歩も動いてないように見える早業で切りつける。

そして元の鞘に戻す。喜助でさえ刀身が見えないと言わせるほどにまで俺は極め抜いた。

 

いやこれ男のロマンでしょ。

 

白打は男だからか怪力女と夜一さんをバカにしながらも俺の方が強い。

さすがに女の子相手に殴りつけるのは躊躇してしまうので男女別にしてくんないかな。

 

__________

 

そして研究熱心気質の喜助はというと、霊子分析して新たな鬼道を作ったり、論文書き上げたりとなんかガチ研究者ぽい。

 

俺はと言うと喜助が考え作った仕様書通りに機械を作る役目を担っている。

なかなかどうしてこれが楽しい、喜助も作りがいのある仕様を細かく作ってくるもんで、試作品作っては兄弟で試して、たまに大爆発起こしてなんか楽しくやっている。

 

 

そして次の休み喜助が部屋を掃除しに来たついでにまたメカ作り。

 

「あの、鋼を手で曲げるのどうなんスか」

 

っと呆れたように言う喜助

 

「え?なんで?」

俺の手元には鍛え上げた()()()()()()鋼。

機械作るのに必要なんだ。

 

「いや、金槌あるでしょ。」

 

「いや、隣に迷惑じゃん」

 

「嫌だからって手で曲げて、鋼鉄ワイヤー引きちぎって手で捻りあげるとか……原始人じゃないんだから道具使いましょうよ道具」

 

「いや、道具ぐらいつかうわ、バカにしてんのか。長さとかちゃんと測る測り使ってるし、重さもさ。」

 

「いや、そういう道具じゃなくて……ってかなんで鋼鉄なはずの金属素手で曲げれるんスか?なんかこっちからみるとアルミみたいに見えるんスけど」

 

「なわけないだろ、ほら硬いぞ」

ゴンゴンっと叩いて硬さを確かめてみせる、あ、ちょっと凹んだ

 

いやでも、金槌まじうるさくて最初となりに注意されたもん。

だから手で曲げて手で引き裂いて、ってやってる

あと、ワイヤーペンチでやるとたまにどっか細かいの飛んでっちゃうんだよね。それ足に刺さるとまじ痛いから。ほんと。

だから手で引きちぎってる。普通に粘土ちぎるみたいにできるからペンチ要らん。

 

 

なんか天を仰ぎ始めた喜助。悩みあるなら聞くぞ

 

「女の子が足りないんだよ女の子」

 

「は?何がどうなってそんな話になったんスか?」

ガチトーンのは?でお兄ちゃん心に傷入った

 

「いや、喜助さ〜俺に顔似てるんだし、まぁ俺の方がかっこいいけどな??ちょっと身だしなみ整えろよ、なんだよそのボサボサ。」

 

「いや、わざわざ兄サンの部屋行くぐらいで髪整えませんて」

 

「そんなこと言って次は外出るぐらいだし、とか学校行くぐらいで〜なんて言って一生整えないんだよ」

 

「まぁ、それは……」

なんて口篭る、

 

 

「あ、ほら出来たぞ。さすがに素材がな、重いけど耐久性は保証するよ。」

 

なんか特殊な霊子に耐えてそれを分析する機械を作って欲しいみたいな依頼で、さっさと作ったものだ。

 

「いや、耐久性って……さっきグネグネ曲げてるの見て信用ならないんスけど。」

 

「大丈夫、大丈夫。感想は使ってからな」

 

「また爆発しませんよね?」

「あー……」

 

っと言った俺にさっさとその場で機械を動かし始める、おいこら俺の部屋で爆発したらどーすんだ

 

って思ったけど成功したようで

「さすがっスね兄サン」っと喜んだ表情。

 

「はいはい。じゃまた後でメンテナンスしに行くから」

 

喜助の部屋にある機械道具類はほとんど俺が作ったもので、俺が定期的にメンテナンスして確認している。まぁ喜助の研究の手助けになるならって事で無償にしている。楽しいし、喜んでくれるしね

 

次はドローンとか作ってみようかな。流魂街の被害とか多いし、死神の手の回らないところの監視なんか出来たらいいものになりそう。

喜助に相談したら仕様は考えてくれるだろうし。

まぁ今は材料資材が足りないから、死神になってお金沢山持ってからになるかな……ふは楽しみ。

 

 

「んじゃ俺湯浴みしたら出かけてくるから」

「まーた女性と逢い引き(デート)っスか?夜一さんにバレたら怒られますよ?」

 

「いや、夜一さん俺に男としての興味ないじゃん。」

「いや、それはそうとも言えないんじゃないっスか?」

 

「今日は、なにちゃんだっけなー、名前忘れたけど可愛い子なんだよ〜」

 

話聞いてないし、なんてため息はいた喜助。そんなにため息吐くと幸せ逃げるけど。

 

湯浴みして服をビシッと着替えた俺。

いやさすがに制服はないわ、ダサいし

 

__________

 

「えっと、また遊んでくれる?かな」

 

っとモジモジした可愛い子。ふわふわした黒髪にクリンっとしたおめ目。うん可愛い。

 

「当たり前だよ〜また遊ぼ。でも俺帰りたくないな……」

 

「えっ。」

っと顔が赤いまま俺の方を見上げる

 

「これから飲みに行かない?もう少し話したいな。どう?」

 

そしてコクンっと頷く女の子____。

 

__イケメンは全てを解決させると言っても過言では無い。

ギャルゲーか?これは天国か?って感じ。

 

 

 

 

まぁその後普通に、まぁ寝て__、疲れて眠った子のそばに置き手紙してさっさと帰ってる所だ。

リピはないかな〜なんかヤンデレぽい。途中怖かった

 

 

「なんじゃ維助、今から帰りか?ん?」

 

っと声が聞こえたと思ったら、塀の屋根の上に真っ黒な装束を着た夜一さんが立っていた。

 

隠密機動の任務の帰りらしい。隠密機動っと言っても家業の手伝い程度でまだ、正式なものでは無いらしいけど

 

「こんばんは夜一さん。任務すか〜お疲れ様〜」

 

「あぁ、今日は大分手こずっての。こんなに時間がかかるとは思っとらんかったわ」

っとぐるぐる肩をまわしてる夜一さん

隠密機動の任務に院と忙しい人だな。

 

ふわりと塀から降り立ち隣にならんで寮へ向う俺ら

 

「のう、維助、なぜ白打の授業の場で儂に手加減をする?」

 

なんで突然言い出した。なんか気づいていたらしい

おれはこめかみをポリポリかいて正直に言うことにした。

 

「怪我させたくないから」

 

「……??怪我ぐらい、何度もしとるわ今更怪我がなんだと言うんじゃ?」

っと首を傾げる

 

「いや……夜一さんに怪我して欲しくないんだよ。

女の子だからって言われるの嫌いかもだけど。なんか自然に手加減しちゃうんだよね、ごめん。

でも俺特に夜一さんは大切だし俺のせいで痛がってる姿とか見たくないんだ」

 

舐めとるのか!!なんて怒られると思ったが

 

「そ、そうか……お、お主なりの気遣いだったんじゃな。えっと、その礼を言うぞ維助。」

っと顔を赤くして視線をそらされた。

 

なんで照れるんだ??

まぁ夜一さんはこうやって面とむかって言ってくれる人居ないからな。

 

「ごめんな、許して欲しい。ほら女子寮ついたぞ」

 

「いつのまに……」

って着いてることすら気づいてなかったのか。

 

「じゃ、おやすみ夜一さん」

 

「あぁ、おやすみ維助」



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剣の天才と京楽隊長がきた話

喜助side

 

 

「君、君が浦原くん?」

 

「はい?」

授業終わりに突然呼ばれ後ろを振り向く喜助

 

声をかけてきたのは三度笠(さんどがさ)を被り女物の羽織を羽織った___

 

「あっ、無礼をお許しください。()()()()

なぜこんな所になんてそんな疑問は口にする前に謝罪が出た。

 

「いやいや、いいんだよ、君が浦原維助くんかな?」

あぁ、兄に用だったのか。

それにしてもなにか兄サンなにかやらかしてしまったのかと、冷や汗が出る

 

「ボクは浦原喜助。維助の弟です」

 

「そうかそうか、弟くんか、ごめんね〜じゃぁ維助くんどこにいるか分かる?ちょっと用があってさ」

 

「あぁ、兄ならすぐ……「おーい喜助、教本わすれてるぞ」」

後ろから自分の教本片手に走ってきた兄が、隊長をみて首を傾げる

頼むから粗相はしないでくれと心の中で願うが。

「あ?んだあんた」

 

っという開口一言目にて無礼なセリフを吐いた兄に膝から崩れ落ちそうになるがグッとこらえ、兄の耳を引っ張り

 

「京楽隊長っスよ維助兄サン。兄サンに用があるとかで……流石に無礼はやばいんで……ね?」

っと察しさせると、面倒くさそうに頭をかく

 

「あー、京楽隊長?俺になんか御用でしょうか」

っと渋々っていうようなあからさまな態度で、

隊長も苦笑いをこぼす。

 

「ごめんね急に、講師が噂する千年に一度の剣の天才って聞いてさ。見に来たんだよ」

 

「はぁ……千年に一度……?」

っと首を傾げる兄。

 

兄は自覚は無いが刀を握って5年かそこらで引退した元死神の家庭教師や、現役で戦場を走り回る死神ですら舌を巻くほどの剣の天才。

1000年に1度は大袈裟に言い過ぎだろうが、天才であることには間違いなかった。

 

 

「まぁ次の講義斬術の講義なんで、隊長さんもきたらどうでしょ。」

っとスタスタと歩き出す。

 

それにしても今日は兄の機嫌があまり良くないようだ。

態度に出やすく、イライラしている時の癖なんかも出ている。

きっと昨日あたりメカの不調で寝れてないとかそんな感じだろうな。

これはボクがフォローするしかないようだ

 

「すみません、兄の無礼をボクが代わりに謝罪します」

 

すると、首を横に振る隊長

 

「いやいや、いいんだよ。ああいう子が意外と上に立つもんさ」

っと、色々意味が含まれるであろう言葉を零して兄と後を追う京楽隊長に続く

 

_________

 

京楽side

 

「こりゃなかなか、金の卵……だねぇ、どうも」

 

斬魄刀を使った実践のような講義。

初めて刀を振るうもの、そうでないものも斬魄刀の使い方、そして刀を振るう覚悟や意味を学ぶ場で、彼は特殊だった

 

僕の何十分の1しか生きてない彼は。現役で隊長をしている僕ですら

 

 

___刀身が見えない抜刀術を披露した

 

いつ抜いたのかも分からない。

気づいた時には刀が鞘に収まる音が響き、

巻藁を綺麗にスッパリと切って見せた。

 

 

「君、維助君。是非卒業したら僕の隊にこない?」

 

そう汗ひとつ流してない彼に話しかける

 

「貴方の……京楽隊長の隊にですか?」

 

「そうそう、君なら卒業してすぐに席が貰えるほどの実力あるし。どうかな?」

 

「いえ。すみません御遠慮します」

そうまっすぐと目を向けて断った彼に驚く。

 

「えぇ、先約があるとか?」

 

「まぁ、家柄上、四楓院家との絡みとかそんなんで二番隊に入る予定なんです。」

 

途中で説明めんどくさくなったなこの子、っと感じて笑いそうになる。

 

「四楓院家か〜四大貴族様が絡んでくるなら仕方ない。

でも他の隊に移ることだってできるから僕は諦めないよ?

ぜひ今度手合わせも願いたいものだし、また遊びに来るよ」

 

_____________

 

ニコリと笑って去ってった隊長。

なんだったんだ、本当に見に来ただけなんだなっと感じた。

 

「兄サン」

 

そう背後から聞こえて、振り向かなくてもわかる。

喜助の声。それは怒りが含まれていて

 

「あーえっと〜」っと、言い訳を考えながら振り向く

 

「兄サンいいっスか??自由なのはボクも一緒なんで文句は言わないんスけど、態度!態度をちゃんとしましょ??夜一サンとか京楽隊長みたいに心広い人だからまだ良かったものの!!」

っと肩を揺さぶられながら喜助の小言が始まる。

 

ヘラりとしてるのは喜助も一緒なのに。何が違うというのだ。

 

「わーったわーった気おつけマース!」

 

「そこ!!浦原兄弟!!講義はまだ終わってないぞ!!」

 

っと講師から怒号が聞こえてくる

 

「ほらみた、怒られてやんのー」

 

「それは維助兄サンもっス」

 

喜助の成長は早い。まるでスポンジのようで俺が教えたことをきちんと理解し噛み砕きそ咀嚼して自分のものとしている。

 

上段の構えは様になっている。

俺は感覚でやってるのであまり真似はしないで欲しくはなかったんだけど、喜助は喜助なりに自分に合った型をみつけたらしい。

 

さすが俺の弟!!!

 

まぁしかし___俺には勝てない

 

バシッっと音を立て斬魄刀が壁に突き刺さる

おれが喜助の斬魄刀を飛ばした

 

「はい、俺の勝ち〜峰打ちじゃなかったら腕チョンパだぞ喜助」

 

俺が喜助の小手を払ったら斬魄刀が喜助の手から離れすっぽ抜けたんだ

 

「痛いんスけど」

っと赤くなった手をさする喜助。

 

「ごめーん」

っと軽く謝ればジトーっと見られた。許せ喜助。

 

抜刀術は実践向きで、本気で弟を斬る訳には行かないので抜刀以外の技も身につけているのだが、なかなか楽しい。

っというより、俺は力でゴリ推してる感じだ。上段から打ち付ければ力に負けて相手の体制が必ず崩れるし。床もヒビが入る。

 

いやー楽しい。愉快愉快。

 

「機嫌治ったんスね」

「機嫌?俺はいつも機嫌いいよ」

 

「んなわけないでしょ、さっきまで不機嫌でイライラしてたじゃないっスか。」

「えぇーまぁ少しイライラしてたかも……??でも不機嫌ってほどでは〜」

 

「似たようなもんス。」っと両断

 

 

「いやぁ……実は自動で清掃してくれるメカ作ってたんだけど。動くし指定の場所まで捨てたりとかちゃんとできるんだけど。誤作動すごくてさぁ〜たまに俺の首根っこ掴んでゴミ箱に捨てようとすんだよね」

 

「それ機械に遠回しにゴミって言われてません?」

「しっっっつれいだな、喜助!そんなわけないだろ。それと、霊力なくても使えるようにしたいんだけどなぁ」

 

「なんでっスか?動力は霊力でしょう?それなければ動かないじゃないっスか」

 

「だって、めんどくさいじゃんいちいち霊力込めるの。」

 

「えぇ……?」っと困惑した様子

 

「めんどくさいのを更にめんどくさい工程を得て「楽」を手に入れる!そうだとは思わない?喜助!」

 

「ま、まぁ言わんとしてることはわかるんスけど……はぁ、まぁいいっス、動力どうこうは置いといて、とりあえず誤作動を何とかしましょ、ボクも原因見てみますから」

 

っと喜助。

喜助は機械類の事は詳しい、ちゃんと配線や電気……っても代わりに電力化した霊力だけど、その性質も理解している。

なのになんで喜助が機械作らないのかって言うと、技術がないからだ。

 

筆の使い方、絵の具を混ぜてどの色が作れるかはわかる。

けどそれだけで画家のように綺麗な神秘的な絵が描けるか?

答えは否だ。

それと一緒で機械も作るには技術力って物がいる。

だから喜助は俺に頼んでるんだ。

 

逆に俺は薬品とかだいたい分かるけどそれを作る技術がない。

なんか混ぜると煙立つし、こぼすし、もう触るなと言われたことがある。

 

 

その後喜助と一緒に機械を見直したら、

俺自身がゴミとしてaiプログラムに何故か認識されてたのが原因だった。

なんでや。

 

 

_____________

別の日。

 

「え?明日?」

 

「そうなの、お願い〜明日出かけない?」

 

っと教室に入ろうとしたら女の子に引き止められた。

誰だったかなこの子。見たことあるけど〜

いつ遊んだかも何したのかも覚えてない。もちろん名前も。

 

「明日か〜うーん」

 

「何か予定ある……?」

俺は日付をまたぐ遊ぶ約束が苦手だ。忘れるから

だから直近とか数時間前とかにして欲しい。

 

「明日分かんないんだよね〜今日は無理なの?」

 

「今日はぁ〜床屋に行くからだめなの。」

っと腕にすり寄ってくる。うん。おっぱいでかい

 

廊下で荷物もって俺の事を待ってる喜助から冷たい目が飛んでくる。

 

「維助君は短いのと長いのどっちが好き?」

「えっ、でかいのかな」

 

「え?」

お胸のことを考えてたせいで、そのまま出てきてしまったがすぐに修正する。

 

「いやなんでも、うーん長い方かな。短いのも似合ってたら好きで嫌いってわけじゃないんだけど、長い髪が揺れるとあー可愛いなぁ綺麗だな〜って思うことが多いんだよね」

 

「えぇ!そうなの?あー床屋別の日だったかも〜今日遊ばない?どう?」

 

「今日〜もちろんいーよ〜今日なら空いてる空いてる。買い物する?呑みに行く?」

 

「買い物して〜呑みに行きたいなぁ」

 

「わかった〜じゃぁ酉の刻(18時)ぐらいに寮の前きて、まってるね」

 

「うん!楽しみ〜」

そう言って離れてった女の子。あー胸離れちゃった

 

 

「なにデレデレしてるんスか」

っと荷物を押し付けてきた喜助

 

「ごめーんごめん。いや〜胸デカイなぁって。」

「あの子知り合いっスか?」

 

「いや、見たことあるけど名前も何も知らないけど」

「はぁ……そのうち刺されても知らないっスよ」

 

 

 

 

 

 

「なにが、胸デカイじゃって?」

 

っと背後から聞こえた声に。ゲッっと声が漏れる

 

「あー、いやー……夜一さんの胸がでかいなぁ……って」

 

「この助平が!!」「鼻が痛いっ!!」

振り向いた瞬間。

顔面に蹴りが飛んできた、踵が鼻に……痛い……!!

 

「鼻血、床が汚れるんで」っと手拭いを渡してくる喜助。

ちょっと、床の心配しないで俺の心配しろや。

 

「ふん、」

っと仁王立ちしてふんぞりがえった夜一さん

最近、性とか胸とかそういうのに理解が出てきて。

恥ずかしい事とか分かるようになってきたらしい。いや遅いって……

 

 

「その、さっきのおなごと出かけるのか……?」

っと鼻血が落ち着いて立ち上がった俺にそう言った夜一さん。

さっきと違い目は合わない

 

「え?うん、出かけよーって言われたし。ちょうど買いたい部品あったし。」

 

「そ、そうか……約束しているなら仕方あるまい。の、のぅ今度儂とも出かけぬか?」

 

「え?夜一さんと?珍しい。隠密の仕事は?」

 

「その隠密の仕事が休みになった時に遊ばぬかということじゃ!何度も言わせるな!」っと怒る。

いや何度も言ってないけど……

 

「うーん、そうだな、休みになった日に言ってくれればいいよ、俺日を跨ぐと忘れちゃうからさ。」

 

「!!本当か!ならばよい!儂とも出かけよう」

 

「にしても久しぶりだなぁ!3()()()出かけるの、入学後以来か?」

「えっ」

っと横から喜助の声が聞こえた。

 

何故か夜一は俺の隣の喜助をギロッっと睨んでおり。

喜助はぶんぶんぶんっと青い顔をしながら首を振っていた。

 

「え?ふたり喧嘩でもしてんの?仲良くしようよ〜。ほらその日俺奢るし。楽しみだなぁ!3人だと楽しくて仕方なんだよ俺。あ、その日写真取りに行こうぜ!写真、ほら記録残したいし」

 

っと言うと、喜助が手で顔を覆ってため息を吐いた

 

「ま、まぁ……お主がそこまで楽しみにしているなら仕方あるまい」

 

「おう!写真撮ろうな」



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将来の夢と始解の話

将来の夢___

小学生中学高校と、そんな目標や将来の夢なんか書かされた事がある人が大半であろう。

 

俺は小学の頃は低学年で《サッカー選手になりたい。》から

中学で《金持ちになりたい》

高校《赤点回避出来ればなんでもいい。ニート希望。》

専門では自分の学んでる系に携われる専門系の会社に行きたいな、なんて目標や将来の自分が見えてきた頃だった。

 

そして今世もそう言った時期になって来たようだ。

今回このまま死なずに院を卒業すれば死神となる訳だが。

 

「維助君は死神を目指すんだろう?」

 

「まぁ……はい、そうですね」

 

何か紙に書いている講師。

いわゆる面談だ、鬼道衆を目指すか死神を目指すか、その他か。

確定では無いけど生徒の進路を確認しておきたい。みたいな感じだろうか。

 

「君はやる気ないけど、それでも優秀だからね。どこの隊に入っても何しても上手くいくと思うよ。」

なんて笑う。

 

その後困った事や相談しにくいことなんかも聞かれたけど特になしと、言って相談室から出る。

 

「あれ喜助、待ってたの?別に待ってなくていいのに」

生徒が沢山いるので、同時進行で喜助も別の部屋で行われていたんだが、先に終わったら先に帰ってていいって言ってたのに部屋の前には喜助がいた。

 

「ボク、鬼道衆もどうかと言われたんス。」

 

突然そう言った喜助。とりあえず帰りながら話そうとゆっくり足を進める。

「それで?なんて返したの?」

 

「鬼道衆には鉄斎サンもいるし上手くやれるとは思うんスけど。ボクは死神になりたい」

 

「へぇ、まぁいいんじゃない?何でも」

 

「なんでも……って少しは相談乗ってくれても」

 

「それ相談だったの?死神になりたいならなればいいじゃん鬼道は死神も使えるじゃん。」

 

「いやそうなんスけど…… 。」

何かしっくり来てないような喜助。

 

「まどろっこしー。何に悩んでんの?」

 

「兄サンは剣を極め、現段階でこの院内で右に出る生徒・講師はいないっスよね」

 

「え、まぁ……そりゃ全員と戦ってみないとわかんないけど」

「かっこいいと思ったんス。1つの事を極めて全てを圧倒する力……ボクは兄サンにはきっと一生剣は勝てないでしょう。ボクも兄サンのようになるなら鬼道を極めた鬼道衆に__なんて。考えたんスけど」

 

喜助の話をきくと、それは俺に相談と言うより、自分自身の中で整理している口調のようにも聞こえた。

きっと喜助の中でどうしようか迷っているのだろうな。

 

「でも俺、オールマイティな死神怖いよ。刀も上手く扱えて鬼道も使える死神。俺そっちの方がかっこいいな、何気に戦闘中鬼道飛んでくんのめんどいし」

っと思った事を言うと。

しばらくして考え込んでたように俯いていたが、ふと顔を上げる。

グラグラしてた喜助の中でハッキリ進路が決まったようだ。

 

「うん、そうっスね。うん……ボク死神目指します。死神になって維助兄サンを支える……いや抜かします。」

 

「おっ、言うじゃん喜助〜!」

肩を組んでワシワシと片手でその頭を撫でると、重いっスって言われた。酷いなぁ

 

「ねぇ、喜助、喜助は将来の夢ある?」

 

「はい?死神……って答えは求めてないんスよね。将来の夢……ねぇ」

「そうそう、死神になったとしてその先の話だよ。例えば総隊長を超える強さを手に入れるだとか。世界を変える伝説になりたいだとか」

 

「そういう兄サンは?」

 

「俺?おれは__尸魂界で伝説になるよ。

二番煎じじゃない、俺だけの俺にしか作れない機械を作って、あの伝説の浦原維助ですか!!なんて知らない人はいないぐらいに有名になってキャッキャウフフされたい」

 

「なんスか、最後の方もうただの願望じゃないっスか」

「いいんだよ、願望でそれが将来の夢だろ?たとえ実現しようのないものでもいい。こうありたいという思いを残すって大切だと思うんだよね」

 

「ボクは……そうっスねぇ……好きな事を好きなだけ研究できる研究者になりたいっス。未知の物を全て知り尽くしソレを扱えるぐらいの」

 

「おっ、いいねぇ!そうでなきゃ。

兄が尸魂界で一番の剣の達人で機械技術士!

弟が鬼道、剣、なんでも出来るオールマイティの科学者!

いいじゃん、俺ら兄弟最強だな」

 

少しスッキリしたような喜助の顔。

実際口に出したこと以外にも悩みはあったんだろうな。

喜助に悩みなんてあるのかなんて失礼な事を考えてたが流石に口には出さなかった。

 

「あ、喜助明日休みじゃん?なにか予定ある?まぁ無いと思うんだけどさ。明日斬魄刀と対話しよ。」

 

「えぇ?なんスかそんな人を暇人みたいに」

「実際暇だろ」っと言うと黙ってしまった。

 

「はぁ……まぁいいっスけどなんで急に?」

「いや、ほらかっこよくない?それに俺らと夜一さん来週3回生に混じって特別に現世の魂葬の授業混じれる事になったろ?

その時に始解できてた方がもし何かあった時とか……ね?」

 

「兄サン、説明面倒くさくなって途中で投げ出す癖なんとかしてくんないっスか?まぁ……そうっスね、兄サンがそこまでやる気になってるなら付き合ってあげてもいいっス」

 

そう、来週講師に呼ばれて優秀な3人だし早く卒業させてあげたいから、特別に3回生が現世に行く授業でお前らも混じって行ってこいと。

経験をより積ませてあげたいという講師の思いの元、現世行きが決まっていた。

現世は瀞霊廷と違って、虚がバンバンでると聞いてるし。

念には念を、俺の剣で倒せない虚もいるかもしれない。

始解出来ていた方が身の安全も守れるというものだ。

 

あとかっこいいし

 

 

______________

 

結果から言うと、喜助が先に始解出来てしまった。

 

「なんでだよぉおおお!!!!」

 

「お先に〜」っと、ヘラリと笑う喜助。

「にしてもかっけー。」

喜助は刀から出る血の様なものを自在にあやつる斬魄刀のようだ。実際よくわかんないけど多分そう?

喜助は喜助で嬉しそうにしてる。

 

俺も負けてられないな……って思って意気込むものの

もうその日を迎えた

 

「はぁ……結局始解出来ないまま魂葬の講義に入った……」

「ずっと言っておるの」

っと隣の夜一さんがやれやれとでも言いたそうに見てくる

夜一さんもなんだかんだ始解出来てるからいいよなぁ、斬魄刀使ってないけど。

 

対話上手くいってるはずなんだけどなぁ。

俺の斬魄刀なんかプンプンしてて名前教えてくれないんだよね。

 

「おーい、一回生こちらへ。」

っと六回生によばれ、俺ら3人は並び、三回生と向き合う形になる

 

「こちら、一回生の優秀な生徒で今回は特例で参加することになった。お前らも先輩だし、もしこの子らが困ってたりしたら色々指南してあげてくれ」

っと言って、魂葬の講義が始まる

 

 

「むっず……」

魂葬自体は簡単柄尻の部分を死者の額に押し付けるだけなんだが

 

 

ギャァァァ!!!!

 

っと(プラス)が断末魔を上げてしまう

 

「力入れすぎなんスよ……」

っと言われるがそんなに入れてるつもりは無い。

 

「地獄の茹釜に溺れてるような声じゃったの」

「どんな声……?」

喜助や夜一さんは案外直ぐに出来ていて、六回生もウンウンって頷くぐらいだが、俺は上手くいかない。

 

そーっと……そーっとってやってると時間かかるし。それでも少しは痛がってしまう。

「はぁ……」

 

 

溜息を吐いていると……

 

 

「「「!!」」」俺らは同じ方向を見る

重い重い霊圧……

 

 

空間を割くようにして出てきたのは__

 

虚__

 

でかいものを想像していたが案外小さい……?それでも俺の数倍はあるけど。

でもなんだ、この押しつぶされるような霊圧は。これ本当にただの虚?

 

「う、うそだろ!!なんで中級大虚(アジューカス)が!!」

っと六回生が霊圧に耐えれず尻もちを着いた。

 

「アジューカス?」

「ギリアンより知能も戦闘力も数倍強いやつっスよ、でも数も少なく……こんな所に現れるなんて___」

 

刀を構えた喜助が俺の疑問に答える。

 

「えっ」

あれか?ギリアンってバカでかいやつだろ?それの数倍強い……?

 

すると、その虚は男の六回生の方を見てくるニヤリと笑った瞬間___

 

 

______赤い鮮血が舞った。

 

「ヒィ!!」

っと悲鳴をあげるもう1人の女六回生。

 

男の六回生は、ふらりと、その場に倒れて地面が赤く染まっていく。

 

早い、強い。しかも無駄な動きもない。これが中級?

門を開いてる暇もないだろう。このままじゃ……

 

 

「喜助、夜一さん。俺の後ろにいて。」

 

「じゃが!!」

 

「前に出ちゃダメだ、あの六回生みただろ。俺の間合いにいてくれれば大丈夫。早かったけど反応できない速さじゃない。多分きっと恐らく!」

 

怖い。命の危機が迫ってる。

あんなにギャーギャーしてたのに突然こんなんになったら怖いに決まってる。

 

そして、こちらを見て笑った中級が接近し長く鋭い爪が振り下ろされる

 

キィンッ_____

 

っと甲高い音と共に火花が散る。

斬魄刀に重い爪が金切りの音を出しながら乗りかかる。

獣のような形をしてる虚はニヤリと笑った。

 

「私の爪を止めるとは……ふはは、美味しそうな匂いにつられてきたがお前か。」

こいつ話せるのかよ!!!っと突っ込みたいが、そんな暇無い

 

「匂い?俺そんないい匂いしてるかね」

 

「あぁ、美味そうな匂いだ。」

 

受け答えもしっかりしてる。中級ってのはこんなんばっかなのか?

喜助は夜一さんを守るように固まってくれてて助かる。

 

弟に、夜一さんに大切な人達は必ず守る

俺に倒せるのかなんて考えるな。

やるんだよ。それしか道はないだろう?

 

「俺は浦原維助!!弟を守り親友を守る俺の名を覚えて死んでけ!」

 

「ははは、死神でもないやつが何を」

 

”私の名を……呼んで讖句ァォ

 

声が聞こえる。俺の斬魄刀から……おれの精神世界から

名は聞こえない。まるでノイズまみれのラジオのように。

 

一撃一撃が重く、俺じゃなかったら潰れてるぞ!!

高速で近寄るそいつの爪を抜刀術で腕ごと切り落とす

 

 

直ぐにもう片方の手で薙ぎ払うようにして横からくる虚の腕を斬魄刀で止めるが。

受け止めきれず俺の肩に大きな爪が深く刺さってしまった。

 

「威勢がいいだけか?」

 

本当に知能が高いし、腕を切り落とされても断末魔すらあげない。

なんなら面白そうに笑ってる

 

「兄サン!!」「維助!!」

 

大丈夫。ここで俺が諦めたら!!ここで俺が倒れたら!!

2人はどうなる。2人は__!

 

「離しやがれくそ野郎」

 

斬魄刀で爪を上に弾きその手を蹴り付けると大きく地面を削りながら壁に激突した虚。土煙が当たりを包む

むりに弾いたせいで爪が肩を抉る形になり、さらに痛い。馬鹿か俺は。

 

 

 

 

俺の斬魄刀。応えてくれ__2人を守らなくてはならないんだ

 

ふと、見えないはずなのに、精神世界で女の笑った顔が思い浮かんだ

 

 

 

 

 

 

”その意思が、その強い思いがあれぼ聞き取れるはず___

 

私の名は___”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恨め___」

 

 

 

橋 姫

 

 

 

 

 

その瞬間、急接近してきた虚と俺の間に。

霊圧が固まって()()された盾のようなものが出現し虚の爪を弾いた。

 

「なにっ__?」

 

弾かれてすぐ威力は出せまい。

その隙を逃すな俺、震えるな俺!!!!

 

 

よく、死に際や戦闘中スローモーションに見えるだなんてよく言ったものだけど。

 

それが俺に起きた。

ゆっくりにみえる、確実に確実にその頭を狙え_!

肉を斬る感触、音が耳と手に伝わった次の瞬間には___

 

 

 

____虚の首が飛んでいた

 

塵になって消えた虚。

 

かった……?倒した?死んだ?

 

刀が戻りソレを鞘に収め、バクバクと鳴る心臓を収める

 

「兄サン!!!」

「維助〜!!無事か!」

っと聞こえたと同時に。

後ろからものすごい衝撃が走り俺は地面に強く顎を打ち付けた

 

「いっっ___!!!てめぇら!何しやがる!俺重症!怪我人!!」

2人が俺に抱きつくようにしてタックルしてきたんだ。

 

夜一さんは涙を流して、喜助も泣きそうになっていた。

「無事でよかったぞ……維助……!!」

 

「今顎の方が痛てぇよ……。離れろ離れろ。重いって、あーよしよし泣くなって」

 

無理やり起き上がって喜助と夜一さんの頭をポンポンっと撫でる。

「ないておらん……」っと強がる夜一さん

 

その場から逃げ出したい恐怖だっただろう。

2人ともまだ少し震えている。

俺を信じていてきちんと間合いにいてくれた。

 

安心したのか……肩から血を流しすぎたのか。

俺の記憶はそこで途切れている__

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、起きましたか?」

 

 

「はぁ。」

次に見た景色は、黒髪の美人。

見たことあるってことは多分原作の人……?

 

「ここは四番隊。重症だったので運ばれてきたんですよ。覚えていますか?」

優しい物言いと顔だけど、ふわふわしてる訳ではないなんかオーラがある。

怒ったら怖そうだななんて呑気だった。

 

 

 

 

(アゴ)が粉砕骨折してたらしい。

 

顎__???



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進級とマッドサイエンティストの喜助の話

 

顎粉砕骨折……

思い当たるのは戦闘後の2人のタックルにより地面に叩きつけられた顎。

 

粉砕骨折する勢いって何???

 

もう怪我も治って、退院していいと言われたので服に袖を通す。

顎も治ってるようだ、よかったトンガリ顎のハンサムになる所だった。

 

 

「それにしても……あの中級大虚(アジューカス)を実戦を1度も体験したことのなかった卵がたった一人で倒してしまうなんて」

っと、俺の荷物を渡してくる女性。

 

「あの……」

やべぇ、名前なんだっけ……喜助ー!っと心の中で叫ぶが来るはずもなく。

そこで、喜助が俺に教えた取っておきの技を使う

 

「俺は、浦原維助です。治療ありがとうございました」

 

「私は4番隊隊長、卯ノ花です。治療は我々の仕事、これからも遠慮なさらないで怪我をしたら来てくださいね」

 

そう、それは___先に名乗る!!

大体の人がそれで名乗ってくれるから、名前忘れたら、誰でしたっけ?なんて聞かないで、その技を使いましょ、って喜助に教えられた。

さすが喜助!!!

 

 

「あなたは…そう、いい死神になりそうですね。楽しみにしていますよ」

そういって出ていった卯ノ花隊長

 

一瞬開いた目が、ものすごく怖かったのは気のせいだろうか・・・・

 

 

 

_________

 

瞬歩で寮の前に行くとバッタリと夜一さんと出くわした。

と、言うより待ってたようだった。

 

「維助、もう大丈夫なのか?」

 

「もうバッチリ、四番隊ってのはすごいな。後遺症もなく直してくれるなんて」

 

すると夜一さんの様子がおかしいことに気づく。

なんかいつもの元気は何処へやら俯いてモジモジしてる。

 

しばらくするとおもむろに俺の裾を控え気味に引っ張った

 

 

「儂をおいてどこにも行くでないぞ・・・・?」

 

そう呟くぐらい小さな声が確かに俺の耳には届いた。

 

そんなことかっと笑い声が出る。

「ふはっ!大丈夫ですって、お転婆夜一さんと馬鹿喜助を置いてどこかに行くわけないじゃんか!」

 

っていうと、だれがお転婆じゃ!っと腹をけられた。

「ぐ・・・・俺元怪我人なんですけど・・・・」

 

鳩尾にくらってうずくまる。本気だったろこれ___

それから夜一さんが暇だったらしく喜助を呼んで約束してた写真を撮りに行った

 

「よう撮れておる!」っとニコニコ顔の夜一さんの手には写真が。

3人の写真と、俺と夜一さん、夜一さんと喜助、喜助と俺

の計4枚の写真を撮ってきたんだ。

 

「俺も部屋に帰ったら飾ろ」

俺もなんだかんだ嬉しい。

 

_______________

 

そうしてあっという間にそんな一年が過ぎた。

中級と出会い、死にかけた俺らは、優秀なのもあり1回生から6回生にまで飛び級した。

俺は功績もあって1年で卒業できるがどうするかと言われたが、みんなと一緒に卒業したかったので断った。

 

うん、飛び級しても可愛い子多い!!!!

 

 

 

「みて喜助、あの子胸でかいぞ」

 

「はいはい、わかったッスから早くいきましょ」

 

俺の首根っこを引っ張ってズルズル引きずる喜助

それが実の兄の扱いか???

 

最近喜助が冷たいよう・・・・

 

そして夜一さんといえば___

 

「よっ!ダイナマイト、ボデぐはっ!

俺の鳩尾に強烈な右ストレートが入る。

 

ボッキュポンのボディに成長していて、髪も伸びてきたようで、女らしさが出てきている。夜一さん。

 

「まったく・・・・!おぬしは全く成長しないのう」

っと腕を組んだ

 

「いやぁ、そういう夜一さんは至る所が成長しゴフッ

 

「(なんで学ばないんスかねぇ……)」

 

そして俺たちが変わった事がひとつある。

というより喜助が変わった。

 

「えぇ……これ飲まなきゃだめ?」

 

「はい」

ニッッッコリっと笑う喜助。

俺の目の前には青い液体がビーカーに入っている。

飲めと言うのだ。

逃がしてくれそうもなく、恐る恐る……いや、一気に口に流し込む

 

味なんか感じる暇もなく喉奥に流すと

喜助はメモを取り出した

「どうです?なにか動悸がするとか。痺れとかあります?」

 

「いや、特に……」

 

「うーん……失敗っスね」っと何かを書いている喜助

 

「ねぇ、喜助、この液体何?」

 

「それは__まぁ知らない方がいいっス」

「おいこら待て、そんなやばい薬なのか?」

おれは喜助の胸ぐらを掴む

 

「まぁまぁ、次はこれ、」っと懐から出した注射器。

 

「今度は大丈夫なんだろうな」

「はい、大丈夫っス」

っと容赦なく俺の腕に差し込み液体が流れ込む。

 

「多分」

 

っと付け足した喜助。

 

「おいこら待て!!てめぇ……」

 

「はいはい、次はどうっスか?痺れとか……」

 

「あ、……なんか唇が痺れてきた……あ、手も……」

俺は手足が痺れて動けなくなっていく……

するとまたプスッと俺の腕に刺す喜助。

すると、途端に動くようになった。

 

「神経毒と、解毒薬は成功みたいっスね〜、あーよかったっス」

なんて呑気にメモに続きを書いていく。

 

 

 

 

 

 

「まてまてまて!神経毒!?!?

お前なんつーもんお兄ちゃんに打ってるの!?

ねぇ、さっきの液体もヤバいやつなんじゃねぇのか!ゴラ!!」

 

「文句言える立場っスか〜?()()()するって言ったじゃないっスか」

 

そう、おれは何でもすると言ったのだ……

何故かってそれは喜助に

【借金】をしているから。

 

積み重なるメカの失敗で素材や部品が足りずに喜助に借りたはいいものの返せなくなり。

何でもするからチャラに!って言って今実験台になっているところだ。

どうせ危ない薬は打たないだろうと。安心してた俺。

 

戻れ俺!過去の俺逃げてくれ!!!

 

実の兄に毒やら謎の薬飲ませるなんて誰が思うか???

兄は被検体だった……?(混乱)

兄を容赦なく被検体にする喜助。俺お前に何かした……???

 

 

 

「だぁぁって、ここら辺ネズミとか居ないんスもん」

「だからって俺で試すか普通!?自分でやれよ」

 

それは怖いんで嫌っスっと言い放つ。

てめぇコノヤロウ……!!!

 

 

なんとか、しばらく血液抜かれたりしたけど無事(?)に開放された。

俺虚とかよりも先に弟に殺されそうなんだけど?

______________

 

そんなマッドサイエンティストみが出てきた喜助や

女性らしくなった夜一さん

 

俺が変わったことと言えば___

 

 

 

気になる女の子ができたことだ

 

その子はクリっとした目で、いわゆるお姫様カットした女の子。

六回生の特進学級で席が隣になった。

 

何か無性にその子を目で追ってしまう。

恋かは分からない、

ドキドキと胸は高ぶらないし、赤面することも無い。

 

ただただ、傍にいたい。触れていたい。そう強く思うようになっていく。

それは喜助が呼ぶ声も夜一さんが呼ぶ声も、講師が俺を呼ぶ声も聞こえないほどに夢中に__

 

 

 

 

「維助君」

そう笑顔で俺の手に触れる女の子。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうすぐ私のモノになるね」

 

 

 



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気になる子の話

※ヤンデレ要素オリキャラが登場します。
苦手な方は閲覧を御遠慮ください。


 

俺がその子を気になりだしたのはいつだったか。

隣になって最初はうわぁ〜可愛い子だなぁ〜なんて思ってたけど。

俺から話しかけることもなかった。

 

でもある日。

 

「維助君、少し相談したいことがあって……喜助君のことなんだけど」

 

っと、話しかけて来た。

チラチラと喜助の方を見てるから、喜助がなにかやらかしたのか。恋をしてるのかわからないけど、相談に乗ることにした。

 

「ごめん夜一さん、喜助。あの子とちょっと色々話し込んじゃって、お昼今日は二人で食べてくれ!」

っと言って、2人はまぁ、仕方ないっと言う感じだった。

 

 

__________

 

「ありがとう、維助君。」

その子の名前は__うん。ごめん忘れたけど。

 

一つ一つの仕草が上品で、多分どっかの貴族の出なのは分かった。

 

「それで、相談って?」

喜助特性ただ米を丸めただけおむすびを食べながら話を聞く。

 

「あのね……恥ずかしいんだけど。維助君と喜助君の区別つかなくて……。ほら、六回生って隊の入隊に備えて集団行動や連携を重視して実戦に似た講義も入ってくるから。区別つかないと不便だなぁって」

 

そう、六回生は一般的な教養というより、入隊に向けた講義が中心となる。

班が適当に作られ、連携やきちんとコミニュケーションが取れるか等を

入隊した時に困らないように講義に組み込まれていく。

 

それはそうと、喜助と俺はたまの行動・言動は似てるって言われた事あるけど、ヘラヘラしてるところとかね?

顔は似てるけどソックリでもなく、髪型も違うし目の色も違う。

つり目とかタレ目でも区別あるし、俺泣きボクロもあるし。

つまりは、区別つかなくなるぐらいソックリかと言われたら【否】だ。

あー兄弟でしょ?っては言われるぐらい

 

「恥ずかしいけど顔を覚えるのが苦手で……言動と雰囲気で何となくわかるんだけど……」

 

俺が人の名前を覚えないのと似たようなものだろうか。

まぁ俺は興味無いから覚えないだけなんだけど。

 

でもまぁどうすればいいんだろ、っと喜助みたいに飛び抜けて頭が言い訳でもないので2人して首を捻らせる

 

「兄弟が一緒にクラスに来ること無かったから……ごめんね維助君。でも班行動とかで区別つかなくなるのは致命的になるし……どうしようか」

 

そこでひとつの疑問。

「なんで俺だけ呼んだの?喜助も呼べば良かったんじゃ?」

っと言うと

 

「それは嫌」

っと今までのふわりとした言動とは一変ピシャリと言い放つ。

なんか、相談内容に違和感を感じる。

なにか矛盾や、疑問が出てくるし。なんかこの子……少し_

 

って違和感を感じていると、

その顔からまた花のような笑顔に変わった

 

「ごめんね、維助君。私頑張って区別つけるよ。これ、金平糖あげるね」

っと数粒の金平糖が俺の手のひらの上に転がる

 

「へぇ、金平糖か」

なんか女の子らしいななんて思って金平糖を口に入れる。

ザラザラとした砂糖と、甘みが口の中に広がる。

 

すると、なにか流れ込むような感覚__じわっと指先から頭にかけて熱を帯びる…かと思ったらすぐに引いていく。

なんだ?っと違和感を感じて首を傾げると

 

「どうしたの?大丈夫?」

っと声が聞こえた。

 

「いや、大丈夫…だと思う。疲れたのかな」

 

「そっかぁ、維助君急に飛び級して大変そうだもんね。私維助くんと仲良くなりたいな。好きな食べ物は?」

 

好きな食べ物、嫌いなもの、趣味。

聞き上手なのか、深堀をしてくれたり納得した様子を見せたりと

話してて楽しくなる。

こういう人は久しぶりで珍しいなっと思った。

 

それからだ、何かと俺に構って分からないところ教えてとか。些細な事から。お昼食べよう、班を組もう、一緒に帰ろう、買い物に行こうなど。

友人のように一緒にいるようになった。

 

流石に俺でも名前を覚える。千寿 菊(センジュ キク)

という、千寿家の下級と上級のどちらとも言えない家柄らしい。

 

「最近千寿サンと仲良いんスね」

 

っと、斬術の講義で次の試合を待ってる時に喜助に言われた。

 

「そう?うーん…なんか違和感を覚えるというか。

気になるんだよねあの子」

 

「気になる…?兄サンが人のことを…?」

っとありえないとでも言いたそうな顔。

「お前俺の事なんだと思ってるの…?」

 

それからは普通に友人のようで、

千寿ちゃんとは、

喜助に被検体にされてる!って泣きつくぐらいには仲良くなった。

 

 

「維助、聞いておるのか維助」

 

グイッと耳を引っ張られ、そこでようやく夜一さんに話しかけられた事に気づく。

あれ、なんか記憶飛んでるな

 

「何の話だっけ」

 

あーそうだ。

夜一さんと喜助が来たんだった。

 

「ぼーっとしているようじゃの?」

 

「うーん、最近疲れてるのかも」

なんかたまに視界がぼやけるし、機械の弄りすぎで目が疲れたのか、それとも普通に疲労か。

 

「なんか最近おかしいッスよ、維助兄サン」

 

「おかしい?例えば?」

 

「ぼーっとする事多くなったし、まぁ設計図考えてる時とかはぼーっとしてても珍しくないんスけど、それにしてはその設計図を書き起こそうともしないし。

今日の白打の講義もいつも力加減してるのに、相手に大怪我負わせたりと。なんか抜けてるというかなんというか」

 

「え、俺怪我させたっけ」

 

「なんじゃ、覚えておらんのか??あんなに騒ぎになっておったろ」

 

「はぁ…今日?それほんとに?」

本当にそんなことあったか。全然覚えていない。

 

「兄サン本当に一体どうしたんスか「おーい!維助君」」

っと声が聞こえる

 

「あ、千寿ちゃん〜」

 

「帰ろ!あ…ども浦原くん、四楓院さん」

っと二人がいる事に気づいたのかぺこりと会釈する千寿ちゃん。

 

浦原くんだなんて、前は喜助君って言ってたのに仲悪いのか?って思った。

「ごめん、千寿ちゃん待たせたかな。帰ろうか」

俺は自然と千寿ちゃんの手に触れ指を絡ませる

 

「「!!」」

夜一さんと喜助の驚いたような顔を見てハッとする。

 

俺が自分から女の子の手を繋いだ…?

自分が女の子と遊ぶ時や接する時に気をつけてたこと。

それは自分から触れない。だ、

 

その自分の行動にハッとした俺は手を離そうとするがギュッと握り返されそれは叶わない。手を振って離す訳にも行かずに戸惑っていると

 

「じゃ、いこうか維助君」

っと、引っ張られ連れていかれた

 

 

 

 

「あんな、不潔でだらしない弟と、下品な女と一緒にいちゃダメよ」

 

___________

 

それからだ、その子が本気で気になるようになったのは。

 

喜助に呼ばれ被検体にされたりって時にはまだそんなんじゃなかったけど。

 

段々と段々と目が逸らせなく、触れたくなる

 

「いいよ、可愛い可愛い私の維助君」

 

連れてこられた部屋で2人きり、変なお香が炊かれて目の前がクラクラする。

俺の本能が言ってるこの女は危険だと。

ここで女を抱いたらもう戻れなくなる気がして。

 

バッっと触れてくる女の手を払い除けると、

目が一瞬にしてつり上がってこちらを睨みつける

 

「なによ、効き目が悪いわね…いつもならもう3日で私の()()になるのに」

 

人形だって?

お香を吸わないように袖で鼻を抑える。

 

「俺に何をしたんだ」

 

「私の家の秘伝の花を食べさせたの。金平糖にまぶしてね」

 

「花?」

1歩1歩近寄ってくる女に対して俺も1歩1歩後退りする

 

「そうよ。それには依存するという力があってね…本当は食べさせたりなんかしちゃダメなんだけど。ふふ、どう?私しか見れないでしょう?

私ずっと維助君の事が好きだったの」

 

ドンッと俺の背中は壁にぶつかりこれ以上下がれない

 

ずっと

ずっと

ずっと

ずっと___

 

その目は焦点が合っているようで合っていなくて。

ニンマリと笑った顔は俺を見上げて、離したいのに目を逸らせない。

 

「他の女と話すだけで気が狂いそうなの。男と話すのもダメ。

なんで私だけを見てくれないの?どうしてあの四楓院のお姫さんと弟ばっかり構うの?

どうして私以外に可愛いっていうの。

でも大丈夫。あんな人達より私が1番の理解者になるの。

さぁひとつになろう?

 

あぁ、私裁縫が得意でさ、そう、約束の指。小指を交換しようよ。

大丈夫、私の指と維助君の指サイズ合わないかもだけど。

そんなの気にしないよね?私の手に維助君の指がくっ付くだなんて、あぁ、考えただけで…」

 

冗談じゃない、この女本気だ。

手には斬魄刀があって、スッと抜いた女は俺の手を手に取る

 

「少し痛いけど…安心して?」

 

「やめろ!!」

 

払い除けたいのにできない。

やめてくれ____

 

 

 

 

 

 

 

 

「縛道の六十一 六杖光牢(りくじょうこうろう)

 

 

 

 

その声が聞こえた瞬間6つの光が女を捕らえる

 

「な、なに!!」

 

 

「ダメッスよ〜千寿サン。ボクらの維助兄サンを好き勝手してもらっちゃ。夜一サンがブチ切れますよ」

 

「そこで儂に振るな喜助」

 

「喜助…夜一さん…」

 

扉を蹴破ったのだろうか、ボロボロになった扉の前に2人が立っていた。

力が抜けてその場に座ると、夜一さんが駆け寄ってくる

 

「大丈夫か、維助。これ飲めるか」

っと、液体を差し出してくる。青い液体…

 

「これ…」

 

「そうッス。あの時飲ませた液体の完成品ッス」

 

そう、その液体は被検体にされた時に最初に飲まされた液体で。

 

「何よあんたら!!いつからなの。いつから私が__!」

っと暴れようとしても暴れられない女が叫ぶ

 

「ボクは兄サンと違って変な所で鈍感じゃないんス。流石に怪しすぎましたね。さっさと自分のものにしてしまおうと考えていたんだろうけどそれは無理ってもんス。

ボクがもうその花の解毒薬を開発したんで」

 

っとニンマリ。

 

「兄サンに最初に飲ませたのは、効果を遅らせる薬。流石に開発が間に合わなくてそれしか作れませんでしたが。 夜一サンが持ってるのは完成品。あなたの洗脳もなにも解くことが出来ます。」

 

「嫌!ダメよ!!飲まないで維助君」

その言葉に俺の意思じゃないのに夜一さんの押しのけてしまう。

 

「維助、ダメじゃ飲め」

っと、だけど身体が思うように動かない。

 

「仕方あるまい」

そう言った夜一さんは青い液体を自分の口に含むと俺の口を開かせるように手を突っ込んだ___かと思えば

 

ゴクンッと、夜一さんが俺に口移した液体が嚥下する

 

「イヤァァァァ!!!」っと女の悲鳴が聞こえる。

 

段々と視界がハッキリしてきて、

 

「ごめん、夜一さん、ありがとう喜助。」

 

即効薬だなんて、喜助はやっぱすげーわ。

 

「ごめん。千寿ちゃん。俺お前とは一緒になれんよ」

 

「嫌だ嫌だ聞きたくない!!」

 

「悪いな、おれ弟と親友をバカにされるの嫌いなんだわ。

お前の気持ちには答えられん。じゃぁな」

 

そう言って、夜一さんに肩を担がれながらも部屋を出る。

最後の最後まで女の悲鳴が耳に届く。

 

部屋に出て夜一さんが片手を上げて合図すると、隠密機動が中に入って行った

 

 

「ごめん、迷惑かけて夜一さん。喜助。」

 

「いーんスよ、迷惑だなんて今更ッス」

 

「そうじゃの」

 

「はっ、言うじゃん」

 

______________

 

そして、俺が変わった事気になる子が居る現象は終わった。

 

けど____

 

 

「女怖い_____」

 

人の好意に素直に従えなくなってしまった。

貰ったものは分解してなにか無いか確認するし。

食べ物や飲み物もそいつが口にしないとしない、など。

ホント無意識下で警戒するようになってしまった。

 

「遊びまくってた罰ッスよ」

 

「そりゃ俺が悪いんだけど…。あの子は絶対遊んでても遊んでなくてもやってただろこれ…」

 

しばらく部屋で塞ぎ込んでた俺の検査に来た喜助が、自業自得とでも言うようにため息を吐く。

 

「ってか、あの被検体の時に気づいてたなら教えてくれても良かったじゃねーか」

 

「いいましたよ、ボク。多分花の効果で都合の悪い事は記憶から消えてたんでしょーね。だからほぼ無理やり飲ませたんス。」

 

「えぇ…怖。」

記憶に無いことってこんなに怖いものなのか。

 

「もうしばらく女は懲り懲り…」

 

あの後、現行犯ともあり、危険分子として千寿家もろとも霊力と財産没収の元、流魂街に追放になったらしい。

蛆虫の巣に連れていかれないだけマシか。死神だったらあそこに連れていかれてただろうな,

 

 

「じゃぁ、あの時俺の腕に打った神経毒は、もしかしてこれ関連の薬だった…?」

「いやあれは本当に神経毒ッス」

「おいコラ、ざけんな、少し感動してた俺を返せ」

 

 

それから俺の女とは遊びに行ったり話しても、

寝ることとか軽率なことは控えるようになった___



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剣の天才と贈り物の話

 

俺は浦原維助

 

もう六回生になってあっという間に時間が過ぎた。

もう冬である。来年になったら卒業し、入隊式も待っている。早いものだ。

 

俺は始解を喜助にこされたが、()()は俺の方が習得が早かった。

橋姫を屈服させ卍解を習得した俺。

ただこれは内緒にしてる。なんでかってその方がめんどくさくないから。

だって今でさえめんどくさいのに。

 

 

「いやぁ〜流石剣の天才。相変わらず見えなかったよ」

 

「あの、もういいっスか?それと、授業中に俺の事呼び出すのやめてもらっても?」

 

あれから手合わせという名目で、院の訓練所を貸切にして京楽隊長にお呼ばれされることが多くなった。

 

「なんで始解しないの?出来ると聞いたけども」

 

「さぁ…まぁ始解しないほうが強いからですかね」

これはまぁ嘘である。

なんで俺が始解せずに戦ってるかって____

 

 

その方がかっこいいから!!!

 

 

刀身を見せない抜刀術。それを極め、さらに極め抜いた俺は、

六回生になり虚討伐の実践も全て抜刀術で全てを切り伏せる。

 

いやかっこよくない???

 

もちろん白打もつかえるし、始解と卍解を使った方が強いであろう。

でもそれじゃ面白くない!!!

 

せっかく前世から今世になってめちゃくちゃかっこいい事できるのにさ!!

 

抜刀しての攻撃が一撃から三擊に増え、隊長格ですら見えない死神見習い。

ヒュー!!ロマン!かっこいいねぇ

 

 

「うーん、居合の間合いに入るのは危険だし、かと言って遠距離も切り伏せられるし…うんうん、本当に僕の隊に入る気ない?」

 

「それ会う度に言われてますけど、ないっス。」

 

「ありゃ、残念。楽しみだね、あと少しすれば君が死神になる…いやはや。どうも、時代が変わるかもねぇ__

それにしても治ると言っても僕の花天狂骨を切り落としてしまうなんて。

機嫌直すの大変なんだよぉ?」

 

 

スっ__っと()()()()()()()()()()()()()をなぞる京楽隊長。

俺の剣術、霊力は隊長格のそれを超えた。

 

ちなみに斬魄刀は持ち主の霊力が回復すると斬魄刀も回復するらしいので、折れてもそのうち治る。

 

その後帰って行った隊長

 

「兄サン」

 

「喜助、どうした」

喜助が訓練所の入口に立っていた

 

「始解と卍解しないんスか。」

 

「しないよ、その方がかっこいいじゃん」

俺は喜助の手元にある手拭いを受け取る

 

「……それもあるでしょうけどもう一つ、理由があるんでしょう?」

 

「…さぁないよ、俺はロマンで生きるんだ」

 

「夜一サンを当主にするため…ッスか?」

 

「…」

そう言った喜助は俺を真っ直ぐ見ていて

俺が先に目を逸らした

「敵わないな、喜助には」

 

「当主になる条件として、夜一サンの父上の夕寝さんが夜一サンに出した条件は、()()()()()になる事。

隠密機動の総司令官兼、二番隊隊長となれば、四楓院家の当主とするとね。

自分が彼女の心を折らないために、彼女を隊長にするために兄サンは手を抜いているんでしょう?」

 

「そう、だな。半分はそれが理由だ。半分はかっこいいからってね、

夜一さんは幼い頃_出会った頃から初の女当主になることに憧れ、あれこれ毎日鍛錬に鍛錬を重ねてる。俺は夜一さんの夢叶えさせて上げたいんだ。俺は彼女の下で彼女を支える役になりたい。

だから喜助。」

っと名を呼ぶと遮られる。

 

「分かってますって、黙っていろ…ッスよね?」

 

「あぁ、よろしくな」

____________________

 

あっという間に時が過ぎた。

俺の女の子恐怖症は治ったが、安易に寝ないようにはしてる。

胸はまだ好きである。

 

入隊式____

 

俺らは無事卒業し入隊式を迎えた

 

初めての死覇装に身を包み、俺は祝いにと夜一さんから貰った髪紐で髪を上に結ぶ。

 

「なんか兄サン胡散臭いッス」

「胡散臭い!?」

 

死覇装着た俺への言葉がそれか…!?

 

「あ、そうだ夜一さんにはこれ、卒業の時渡せなくてすまん。」

 

夜一さんには、立派な紅い(かんざし)大きすぎず派手すぎず、普段使いにはいい代物だ。

髪も伸びてきたし使えるだろう

 

「よいのか…もらっても」

 

「あぁ、俺も髪紐もらったし。」

 

するとその簪を大切そうにして手の平につつんだ夜一さんが、

見たこともないぐらい綺麗に笑った。

 

「っ…大切にする」

 

「あ、あぁ、」

 

俺は喜助のところに戻ると耳打ちされた

 

「兄サン、簪贈る意味知ってます?」

 

「え?簪に意味何かあったの?」

 

「はぁ…キザな事するからおかしいなぁとは思ったんスけど。

ベタっスこんの女たらし」

っと顔を片手で覆ってため息を吐く喜助

今最後悪口言わなかったか?

 

「いいッスか、知らなかったなんて夜一サンに言わないでくださいよ?絶対ッスよ?」

 

「わかった、分かったって。ほら、喜助にも贈り物だ」

 

っと喜助の耳を引っ張り__耳たぶに__

 

 

 

「イッッッタイ!!痛いっス!!!何するんスか!!

 

「暴れんなよ、外れるだろ」

 

「だからっていきなり耳たぶに穴開けます!?普通!!」

 

「声でっか、」

こんな大声出した喜助初めてかも。俺は片耳塞ぐ

 

「しかも、直接耳飾りで穴開けましたね!?痛いんスけど!!」

 

「だって、そうでもしないと嫌がるだろお前。」

 

そう、俺は喜助の耳に直接ピアスで穴開けて一瞬でキャッチをつけてあげたのだ。

 

「まぁまぁ、贈りもんだ。吉祥結び(きちじょうむすび)の耳飾りだ、立派に育ったお前が、これからも安らかに育ち健康で居られますように…ってな」

 

「その意味は知ってんのになんで簪しらないんスか…はぁ、まぁもう付けられたものは仕方ないし貰っておきますよん」

 

っとなんだかんだ嬉しそうだ。

 

そんなこんなで色々あった院生生活は終わりを告げ____

 

死神としての物語が始まる。

 

 

_____________

 

入隊は院の成績と関係なく、二番隊は仕事を学ぶためにどれだけ成績良くても、席間は貰えない。

つまり俺らは新人ほやほや下っ端ちゃんって訳。

 

二番隊隊舎に引っ越してきたは言いものの。

「6畳かよ…せっっっま」

 

「文句言わないんスよ」

俺と喜助は隣の部屋になったが、1部屋6畳という狭さだ。

 

「席官になったら広くなるらしいッス」

「へぇ、」

 

夜一さん追い抜かない程度に早めに出世するか…

 

 

 

 




見なくてもOK設定まとめ

名前:浦原 維助
男のロマンを優先する男
斬魄刀:橋姫
解号:恨め
詳細:不明
卍解:不明
趣味:メカ作り,道具を治したり分解したり作ったり工作系

夜一曰くヘラヘラしてる所は喜助そっくり。

・イケメンだけど好き放題してたら痛い目にあった。
・抜刀術を極める者として今の所負けた事はない。
・鍛え抜かれた鋼をも曲げる怪力を持ってるが、
白打より剣のほうがかっこいいと思ってる。
・鬼道は喜助より使えないけど、一応使える。
本人いわく、唱えてる暇あったら斬りに行った方が早いらしい。

おっぱいは巨乳派




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死神になった俺の話
死神になった俺の話と白哉坊ちゃんの話


 

現在の二番隊隊長は隠密機動の総司令官を兼任している、

夜一さんの実の父親。夕寝さんだ。

 

彼は夜一さんが未だ21代続く四楓院家、

そして隠密機動初の女当主になる条件として、自分自身を抜かすほどの実力になり、二番隊隊長を奪い取れという何とも大きな課題を課した。

 

そして____

 

「あの、もう出来たんスけど。これでいいわけ?」

 

「うむ!よいよい。立派なもんじゃな」

 

「そりゃ俺が3徹で作ったものですからね。」

 

ここは双極の丘、半径100メートルの大きさの空間を地下の深い深い場所に3日で掘ったんだ。感謝してほしいものだ。

 

「ぜェ…ぜェ…兄サン。ちょっとなんでそんな疲れてないんスか」

 

「あんなもので疲れるかよ」

 

3日を二人で掘るのは無理だ。もちろん俺の機械を使った、自動で掘ってくれる優れもの。

その間に二人で空調やら強化や振動を抑える結界やらを貼りまくって、更には

機械動かすには膨大な霊圧を定期的に注がないといけないので、それも相まって疲れ切っているのだろうな。

 

 

そして夜一さんが頼み込んできて作ったこの空間。

作った理由はよりお互いを高め合うため。

 

名は”勉強部屋”'

 

 

_____________

 

「甘いぞ喜助!んなんで俺が倒せるか!!!」

 

「倒せるわけ…!ないでしょ!」

 

顔近くに飛んでくる喜助の回し蹴りを腕で受け止め足首を掴んで岩に投げるが、身体を回転させ着地する喜助

 

夜一さんは、自分の力をより強くするため。

喜助はオールマイティになるために逃げてた白打を。

 

俺はその指南役として買って出た。

 

最初は投げ飛ばされまくってた喜助だけど、受け身と身体の使い方が上手くなった。

お兄ちゃん嬉しい…!!

 

俺は俺できちんと鍛錬している。

抜刀術だけでは勝てない敵が現れてもいいように。きちんと基礎から応用までを毎日繰り返している。

 

上段の構えってかっこいいよね…!

 

 

「啼け__紅姫!!」

喜助の紅姫から赤い斬撃が飛んでくるが

 

「せいっ!」

俺はその斬撃を()()()()で受け止める

 

「はぁ…ダメっスか…」

っと肩を落とす喜助

 

俺に傷をつけるのを目標に

喜助の白打、斬魄刀も鬼道も全て使っての模擬戦。

 

俺の霊圧は日を増す事に上がりつつある。

幼き頃から霊圧制御の訓練を受けていて苦手なはずはないのに。

それでも抑えきれないほどには大きくなってしまった。

そのせいで生半可な霊圧の持ち主は俺に傷をつけることすら敵わない。

 

なんで上がり続けてるのかは分からない。喜助が調べてもダメだった。

だから俺は霊力の排出口となっている手首に霊圧を吸い取る機械を取り付けている。

その状態でさえ、喜助が傷をつけれない程。

 

よく良く考えれば卍解を習得した時からこんな感じだな…

 

「維助、話がある」

 

「はい?」

 

喜助とそんなことしてたら、夜一さんかちょいちょいと手を招いたので瞬歩で向かう。

 

「お主に会わせたい奴がおる」

 

「?」

 

 

____________

 

「あの、貴方が浦原維助様ですよね!尸魂界一の剣術の使い手と聞きました!!!」

 

そう慣れないであろう敬語で話し出したのは幼い12かそこらの男の子。

 

ここは___四大貴族の一つ

 

-朽木家-

 

目の前にいるキラキラした目を向ける彼は朽木白哉。

うん、聞いた事あるぞ?

 

夜一さんどんな吹聴したんだ…とりあえずは__

「あの、あんた…貴方の方が身分は上です。俺に敬称はいりませんよ、白哉坊ちゃん」

 

彼は朽木家の次期当主らしい。夜一さんとは貴族関係で一方的に絡んでるらしいけど。何をどうしてどう説明したのか、剣を教えて欲しいと…

 

「えぇ、俺…型とか自己流だからあんま真似すると身体に負担あるし…」

 

「お願いします!それでも維助殿の技術をそばで見て身につけたいのです!!」

 

「白哉坊は、お主の噂を聞いて会いたい会いたいと言っておってのぉ、感謝するんだぞ白哉坊!」

 

「ぐぐぐっ」

白哉坊ちゃんは夜一さんをギロリっと睨んでいて、はは、なんか関係性わかったぞ、白哉坊ちゃん夜一さんにいいように遊ばれてるなこりゃ

 

「お願いします!!!!

師匠!!

 

 

師匠__

師匠____

 

その言葉が俺の頭の中でぐるぐると回る___

 

___________

 

「俺の抜刀術は確実に間合いに入ったものを切り、鞘に収める事。

まずは鞘に収める工程は飛ばして、自分の間合いを確実に把握しておく事。とにかく真っ直ぐ、獲物を捕える」

 

俺は説明しながら、刀を抜いて間合いの説明やら何やらを始める。

目が取れそうなほど目を見開きながらこちらを凝視する白哉坊。怖い。

 

なんだかんだ俺は断りきれずに承諾してしまった。

いや?べつに?嬉しかったとかじゃないから!!

四大貴族様のお願い断るの怖かっただけで〜そう!師匠なんて言われて浮かれてないから!!!

 

そして、模造刀らしきもので俺の動きを真似する。

 

「居合の一つ抜き打ち。右上から左下にかけて斬る袈裟(げさ)

左下から右上に斬りあげる逆袈裟(ぎゃくげさ)。そして真っ直ぐ切り落とす水平。」

なるべく見える速度でゆっくりと巻藁を斬ってみせる。

 

「こうでしょうか」

 

「それは…片手斬りだね。鞘離れしてから手首を返してるけど、抜き打ちは鞘離れする瞬間に斬りつける。そうそう上手い」

 

剣の心得があるからか、教えたことをすぐに学んでくれる。

うん、楽しい

 

「師匠!本気の抜刀術見せてはくれませぬか!!」

 

っと言い出した白哉坊ちゃん。

「えぇ、」

 

「お願いします!!師匠!!」

「わかった。やります」

師匠だもんね!!

 

新しい藁包を、

 

一瞬______

 

で斬る。

ただ鞘に刀が収まった音だけが響く。

 

「えっ…?」

っと首を傾げる白哉坊ちゃんに

 

後ろで黙って見てた夜一さんが

「ふはは!白哉坊でも見えんかったか!」

っと笑い声を上げ近寄ってくる

 

「えっ、斬れてるのですか!?えっ、」

 

っと俺と藁包を交互に見ている

夜一さんが藁包をつんつんっとつつくと、

ドサッと音を立て、切れた3つの残骸が地面に落ちた

 

「斬れてないように錯覚させるほどの太刀筋____見事です師匠!!」

 

かっこいいよねこれ、俺この声を聞きたくて極めてたのかもしれない。

ロマンです

 

 

________________

 

「維助楽しそうじゃったの、お主のそんな活き活きとした顔カラクリを弄り回してる時以外に初めて見たぞ」

 

夕方になり、帰ってる途中で夜一さんがそう言って愉快そうに笑う。

 

「最初はめんどくさい話持ってきたと思ったけど、楽しいもんだね。あんなに素直に聞いてくれるとは思わなかったよ。」

 

「儂にもああ素直だといいんじゃが」

 

「ふは、だって夜一さん定期的に白哉坊ちゃんに意地悪してるんだもん」

 

休憩中刀を木刀に交換したり、素振りしてる白哉坊ちゃんの回りぐるぐるしてみたり。

 

「構ってちゃんな夜一さん可愛いな、白哉坊ちゃんも多分なんだかんだ夜一さんの事好きなんだと思うよ」

って言ったら突然足を止めた夜一さん

 

「?どうしたんだ」

 

「か、かわっ…かわい…」

っと顔を赤くした夜一さん。どうしたんだ…

 

「な、何でもないぞ!そうだ、なんでもない!!」

っと詰め寄られる。

 

「お、おう、なんだ。うん…情緒不安定なんだな」

ずんずんと俺を抜かして歩き出したと思ったら。

 

「の、のう、少し腹が空かぬか?」

 

「腹?まぁ、もうすぐ夕餉だけど」

 

「す、少しあそこによって行かぬか?」っと指さした場所は甘味処。

 

「確かに、身体動かしたからか小腹すいたし。いいぞ、寄っていこうか」

 

と、言うと本当か!!よし()くぞ維助!!っとルンルンでステップ踏みそうな足取りで甘味に向けて歩き出す。

そんなに甘い物食べたかったのか…

 

 

 

「うむ…白玉ぜんざいもよいが、この団子も…」

っと品書きを凝視する夜一さん

 

「なんだ、いつもなら好きな物片っ端から食べるじゃんか。」

 

「い、いや少しその減量中でな!!」

 

「へぇ…減量中。」

 

夜一さんがダイエット…?

 

「夜一さんが食べ物を我慢するだなんて___

なにか病気なら四番隊か喜助を頼るといいぞ?大丈夫か?」

 

「失礼じゃな維助!!!儂が病なんぞに負けるわけなかろう!」

 

「じゃーなんだよ、減量中じゃないんだろ?朝バクバク食ってたし」

 

「うっ…実は…(ちまた)では少食でちびちびと食べるおなごが殿方にモテる!というのを聞いてな…」

っとモジモジし出す。

モテたいのか夜一さん。

 

意外な一面にクスッと笑うと顔を赤くした

 

「なんじゃ!悪かったか!」

 

「いやいや、夜一さんがそんな理由で食べないのかと笑っちゃっただけだよ。いいんじゃない。夜一さんは夜一さんらしく食べれば。」

 

「そ、そうかお主がそこまで言うなら…」

っと店員を呼ぶ

 

「この杏仁2つと草団子、みたらし、白玉ぜんざい2つに。あ、やはりみたらしは3本にしてくれ!それからこの限定とやらも!2つじゃ!」

 

っと頼み出す。

 

運ばれてきた大量の甘味をバクバクと美味しそうに口に頬張る夜一さん。見てるだけでお腹いっぱいだ。

 

すると手を止めてこちらを見て首を傾げた夜一さん

「なんじゃ、食べんのか?」

 

「いや、見てるだけでお腹いっぱいというか。 それに美味しそうに食べてる夜一さん見てるの好きだからさ。やっぱり我慢しないで好きな物を好きなだけ食べてるのが夜一さんらしくていいよ」

 

「そ、そうかの?」

 

うんうんっと頷くとそうか…!っと言って笑う

 

 

「はい、これもあげるよ羊羹だけど」

切り分けた羊羹を竹楊枝で刺してそれを差し出すと

 

「じ、じゃが…」

と言って何か戸惑ってる様子

 

「なんだよ?嫌いだっけ羊羹。」

 

「い、いや…その…ええい!」と言ってパクっと食べる

 

「美味しい?」

 

「なかなか美味いぞ、」

と言って頬に手を添えて咀嚼する夜一さん。

 

「じゃ、俺も」

うん。たしかに美味しいなここ。正解だったまた来ようかな

 

って思ってると.固まってる夜一さん

 

「かん…かんせつ…き…」

っとなんか壊れたラジオのようだ。

 

__________

「はー、美味かった美味かった」

っと、お腹をさする夜一さん

 

「たしかに美味しかったなここ。喜助にも教えてやるか。」

 

「そ、そのまた一緒に行かぬか?」

 

「?うん、もちろん」

何を当たり前のことをと思って首を傾げるが。

 

グッと拳を握った夜一さん、なんか嬉しそうだからまぁいいか



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闇商人みたいな事してたら、にわかでも知ってた人が来た話。

 

隠密機動は

情報伝達や諜報・暗殺など、いわゆる「裏の仕事」を担当する部隊。

 

脱走者や裏切り者、罪を犯した死神の調査及び拘束等々。

 

また、特殊な虚や流魂街に出現した虚の特徴や、

戦闘に参加している隊士の情報をまとめ情報伝達を行うなどの仕事もある

 

それぞれ五部隊に別れていてそれぞれの部隊長は席官が務めている。

 

俺ら三人は、裏切り者、罪を犯した死神の監視・捕縛・始末を行う第三分隊に所属した。

あっという間に夜一さんは古株の班員よりも功績を上げもう十四席に上がった。

俺と喜助はそれぞれ十ハと十九の席をいただいた。

上がったといっても、実力だけではなく、上の席間が戦死しすぎて繰り上げされているってのもあるかもね。

 

戦死するのも無理は無い。

相当危険な仕事だ、相手は死神だったり。

なんなら虚より厄介かもしれない。

昨日話してた隊士や、隣で飯食ってた隊士が次の日死んでるなんてもう日常茶飯事。

 

俺はそんな憂鬱な日々を晴らすために機械制作に精を出しつづけ、数々の作品、中には危ないものまで作り…

 

6畳という狭さの部屋はあっという間に埋もれてしまった。

そして給金も尽きてしまう______

そこで俺の頭にはひとつの名案が浮び上がる。

 

売ればいいのでは…??

 

 

やってきたのは流魂街 西地区の65区画の 八代 (ヤシロ)

元々闇市場で盗品や女、臓器や武器や呪物が流通している場所で。

適当な空き家で商売を始めた。

 

初めは10日間水が湧き続けるアイテムを売りつけた。

仕組みは蒸気をや空気中の水分を集める特殊な石を加工して作った簡単なもの。

なんと1万(かん)で売れた、大体1万円ぐらい。

 

それから定期的に現れる俺に流魂街の住人はこぞって買いに来る。

八代の駄菓子屋さんって名前がついた。俺がそう名乗っただけだけど。

 

もちろんやってる事はちょっと危ないし俺の出世にも関わってきては困るので、服も変えて身分も隠し髪色も変えている。簡易的なウィッグだけどね。

念の為に霊圧遮断のマントも身につけてる。

勝手に喜助の部屋から持ってきたものだけど。

 

そしてそのうちお金によって依頼も受ける事にした。

直すものや作って欲しいものを要望と金額に沿って話し合う。

もちろん客は選んでる。

 

水が湧く壺は人気で、水を売り買いしてる流魂街にとっては転売目的としても人気が出るのは頷ける。だから俺は10日間とか期間を決めて効果が無くなるようにしてる。無限にしたら俺が損じゃん。搾り取るだけ搾り取るぜ。

あとは、軽い怪我をさせてやりたい藁人形。

相手の嘘を1度だけ見抜ける石や、

虚から身を守るアイテムなんかもある

 

そんな闇商人みたいなことをしてたある日____ほんの少し強い霊圧を感じた。

流魂街で霊圧を感じることはないので驚いた。

 

「あァ、ここですよね。八代の駄菓子屋」

 

そうニッコリと笑って、俺が見つけたボロい蔵を開けた男。

編笠を被っているので口元しか見えないが。

その声はどこかで______

 

「今日は依頼したいものが」

 

っと、目の前の座布団に座る。

流魂街の住人とは思えない姿勢、仕草。

そして手は武士の手で刀を握っている事がわかる手だった。

 

 

 

 

 

そこで、ほんの少し見える髪と声でピンッときた

さすがに俺知ってるぞ?BLEACHにわかの俺でさえも。

 

 

 

この人____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

藍染惣右介じゃない?

 

 



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取引した話

 

藍染惣右介じゃないか?って思ったあたりからどんどんと口調やら何やらでアニメと似通ったものを感じ、確信に近いものになっていく。

 

「なにか?」

っと、俺を見る藍染惣右介。

 

「いいえ〜。ようこそ駄菓子屋さんへ今日は何をお求めで?水が湧く壺?呪いたい人が?虚から守るものを?それとも直したいものが?何でも承りますよ」

 

ヘラりと、商人ぽいいつも客に向かって言ってるセリフを吐く

闇商人なんて、あのアニメの喜助みたいだなんてやってて思った。

印刷機やた特殊な3dプリンターみたいなものもあるので大量生産は余裕だ。

なんでもドンとこい!

 

「ここは金によっては要望の物を作ってくれると聞いたんですけど…」

っと、猫かぶりしてる時の藍染惣右介だ、懐かしいなこの時アニメで見たんだよなぁ〜

って思ってるが、商売中だと、頭から懐かしい記憶を飛ばして咳払いする

 

「はい、お客さんのご要望に沿ったものを”何でも”ね。」

 

「何でも…ね。今まで頼まれて作ったものを聞いても?」

 

「えぇ、とある女性は絶対に汚れない上等な着物を。とある男性は絶対に棘が丸まらなく自分だけが持ち上げられる金棒を、”血判契約”で作らせていた頂いてます」

 

血判契約(けっぱんけいやく)とは?」

っと、先を話そうとした俺を遮る。

よし、食いついた!

 

「契約ですよ、血判契約は別料金っスけど。特別な契約で

【お互いの正体、及び取引内容を”絶対”口外しない】という契約です。」

 

「その口ぶりだと口約束じゃないんだね」

 

「そう!試してみます?」

 

っと特別性の紙を取り出すとコクリと頷く。

 

俺は紙の上の空欄を指さす

「ここに、契約内容を記載します。

そして、この下にそれぞれの血判を押す。

それで契約が完了。

内容は血判を押した人にしか見えなくなります。

その瞬間、

1.契約に関する事を他人に伝える事が出来なくなる。

2.取引した相手の正体を伝える事が出来なくなる

3.たとえ穴を突いたとして他人の耳に目にその情報が入った瞬間、記憶が消える。

悪いことする人バレたくない人なんかはみんなこれを使いますよん」

っと指を立てて説明した

 

「それはまたすごい技術だね。」

 

なんで俺がこれを作ったって、俺の自分自身の身を守る為と、

かっこいいから!!!いやぁ〜契約とかやってみたかったんだよね。

 

「試しにやってみましょうか。例えば俺がジャンケンで貴方に負けた。と、その事象を空欄に書き」

おれは、針で指に穴を開け、血判を押す。

ちなみに内容はなんでもいい。

その紙を藍染に差し出すと、俺が手渡した新しい針で同じく血判を押した。

 

「これで契約完了。さぁさっき取引した内容を口に出してみてくださいな」

 

 

 

「…!!!」

口がパクパクとして声は出ていない彼から驚いた様子が伺える。

 

「ね?声が出ないでしょ?似たようなことを言ってもそれが声に出ないんスよ、書こうとしても、脳がそれを許さず書けないし、暗号もむりなんスよ!

いやぁ、我ながら自分の技術が怖い!」

っと、血判契約のセールストークを終わらせると。

 

「これで安心して取引が出来そうだ。では____」

 

っとニヤリと口角を上げた彼___

 

 

 

 

 

「毎度あり」

 

______________________

 

 

しばらくして帰っていった藍染惣右介。

 

彼が頼んだのは霊圧を極限まで制御するメガネを希望した。

破格の高額な値段で取引してくれたのでいい客だ。

 

また次取りに来るだろう。

血判した紙を仕舞う

 

別にメガネぐらいなら別に構わないと思って取引に承諾した。

なんか、弱そうに見せてたみたいな話聞いたことあったようなないような気がするし。

もしかしたら俺の技術を盗もうとしてるのかもしれないけど。

 

俺の技術を舐めてもらっては困る。

真似できるようなものを作ったら商売にならない、

例えメガネを調べようとしてもそれはただの伊達メガネにしか見えないだろう。本人がかけてようやく本領発揮する。

 

俺の霊力があって初めて造れて初めて構造がわかる優れものだ。

調べようとしても円周率の最後をみつけるようにほぼ無理に近い。

 

でも俺の知識途中で終わってるし飛んでるから、

藍染惣右介が倒されたのかとか全然分からないんだよなぁ…。

俺が知ってるのはなんか女の子の胸に龍の手を突っ込んでるシーンぐらいで、俺が天に立つぜって言って天に旅立った?藍染の姿だ。

 

何年前だよ、俺小学生ぐらいじゃね…その時。

今世で時が経って益々薄れてるって言うのに。

 

まぁいいか。っと次の客を迎える

 

 

____________________

 

「さすがだね。」

そう言って俺を褒める藍染惣右介。

 

手にはご希望のメガネと藍染用の血判契約書。

早速翌日同じ時間に来店してきたのだ。

 

「君の名前を聞いても?」

 

っと言われるが

 

「それは内緒ってもんスよ。こんな商売してるんでね。」

 

「…まぁいいさ、それもお互いのためだろう。契約書があったとしても警戒して損は無いからね。」

 

受け取ったメガネを懐にしまって踵を返した。

 

はずだが。こちらを見てにこりと笑った

 

 

 

「また機会があったら頼むよ

 

 

 

 

 

 

 

浦原維助」

 

 

 

ヒューっと、彼がいなくなった後ボロボロの蔵に風が吹き抜ける音が聞こえ

おれは座卓机にガンッと頭をうちつける

 

 

なんでバレた!

 

いつからだよ…まぁ血判契約で絶対に口外できないし、バラされないしもし伝えられたとしても記憶から消えるから絶対安心なんだけどさぁ…

 

はぁ…

 

 

____________________

 

 

「兄サン?ボクの外套かってに持ってきましたよね?」

 

二ッッッコリっと笑って仁王立ちする喜助が

一変ジッ__っと薄く目を開いて俺を睨みつける

あ、怒ってる。

 

「てへ、あいたたた!鼻!鼻ちぎれるって!鼻!」

 

ぐぃぃいっと鼻を引っ張られる俺

 

「前も勝手に机持ってったり座布団持ってったりと!!兄サン、ボクのもの勝手に持ち出すのやめてとあれほど…!」

 

「ごめん!ごめんって〜!!許して〜」

 

「じゃぁ新しい薬の被検体で許してあげますよん」

っとパッと俺の鼻を離した

 

「はぁ、やだよ!また痺れたり、この前なんて失神したじゃん俺!三途の川見るって!」

 

「死神が何言ってるんスか……大丈夫ッス!安全な薬なんで!!多分」

 

「喜助の多分はダメなんだって!あ、おいこらどっから出した注射器!!!」

 

おれはしばらく逃げ回る羽目になった。

 

 



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改めた婚約の話

闇商売ってのはリスクを伴うけどお金がウハウハになった。

 

血判契約書を生成するための印刷機も進化出来るし。

それから〜っとバージョンアップさせたい物や

組み込みたいもので頬は緩みまくってた

 

「なんだか兄サンいつもよりご機嫌ッスね?」

っと飯を食いながら横の俺を見る喜助。

 

「聞きたい?聞きたい?そう聞きたい?」

 

「いやいいっs「そう?やっぱり聞きたいかぁ」はぁ」

 

はぁ…なんてため息吐いてる喜助

しばらく買った物やバージョンアップした機械とかの説明をべらべらと話してる。

上の空で返事してるけど聞いてるよな!?な!?

 

飯食い終わって席官とはいえ下っ端は下っ端なので、当番の俺らは皿洗いをする。

すると思い出したかのように口を開いた喜助

 

「そういえば知ってます?最近流魂街の住人に特殊な道具やら機械やらを販売してる闇商人がいるみたいッスよ」

 

「へー」

 

「なんでも、性能が良くいまの尸魂界の技術じゃ作れないようなものなんかも…水が湧いたり綺麗に濾過したりする壺や特殊な織り方をした着物とか。手彫りでは作れない様な細かい装飾がされた石なんかも

 

 

すごいッスね流石兄サン」

 

「だろー?やっぱり兄ちゃん凄いだ………ろ」

って言って喜助を見るとやっぱりか、みたいな顔をしてた

 

「い、いつから!?」

 

「噂を聞いた時からそうじゃないかな〜って思ったんス。」

 

どうやら喜助はカマかけて確信したらしい。上機嫌な俺は凄いと言われて素直に返事してしまったのを悔やむ。

 

「だってこの前部屋に機織り機(はたおりき)あるの見たんスもん。特殊な霊子加工してあって不思議に思ってたんスよね〜。それに非番の日に限って兄サンどこか行っているみたいですし。外套勝手に持ってく理由もそれで辻褄合いますし?」

 

「あは…は」

なんて目を逸らしながら皿を拭いてると

グイッと耳を引っ張られる

 

「アイタタタ!ごめんごめんって!」

 

「いいッスか?流魂街の住人なら足は付きにくいし調査の対象外でしょうけど、死神に売ってその道具が問題になったら調査が入る羽目になるんスからね!?

絶ッ対死神には売らないでくださいよ?いいっスね?

売るなら瀞霊廷内で真っ当な道具にしてくださいよ?」

 

っとすごい剣幕で言う喜助。

「はい」としかいえなかったが。

 

藍染惣右介にはもう売ったんだよなぁ…

なんて言った日には鬼の形相になるのが目に見えてる。

まぁ藍染なら今のところメガネぐらいでヘマしないだろうし大丈夫だろう。制御装置は真っ当…だしね?多分バレても大丈夫だと思いたい

 

 

メカの説明やら道具の作り方やらオタクぽい話になって

俺のメカ自慢が始まろうとしたところで

 

 

 

「維助、こんなとこにおったか」

っと洗い場の入口から声が聞こえた

 

「あれ?夜一さん?どうかした?」

任務帰りの夜一さんがいて、3日は帰れないとは聞いてたのに随分早いなって思ってると察したのか

 

「早めに対象のしっぽが掴めてな、早くに終わったんじゃ」

っと説明してくれた

 

 

「それより、父上が呼んでおる」

 

____________________

 

やってきたのは隊首室。

夜一さんの父親夕寝隊長と、何故か俺の父上まで…

 

「浦原維助、参りました」

 

「よいよい、楽にせい、今回は隊とはあまり関係の無い話だ」

っと言った夕寝隊長がそう言うので頭をあげる

 

「お前らも死神になった事で少しハッキリさせたくてなぁ。ごめんな維助、夜一様まで呼んじゃって」

 

「それは構いませぬが、一体儂と維助まで呼んで何用じゃ?」

っと夜一さんも用は聞かされてはいないらしい。

 

「お前らの婚約の話しだ」

そういった父上。そういえばそんな話あったな。

 

夜一さんと出会いのきっかけにもなった話。

すっっかり忘れていた。

 

「もう結婚してもいい時期だが、どうするんだ?お互いはそのつもりは無いようだけども維助も夜一様も」

 

すると夜一さんが一歩前にでて口を開く

「元々維助との約束で保留…という形になっておる」

 

「ほう、保留とな?その理由は?」

っと顎に手を当てた夕寝隊長

 

「儂が当主になるからじゃ!当主になるから結婚し他所の家に嫁ぐなどは儂はせん!」

っと言い張る

 

「維助くんもそれには同意を?」

 

「はい。同意しております」

っとおれは頷く

 

「そうかそうか、小生(しょうせい)らで2人を見ててそうではないかと思っていたんだ。夜一は意思が強いからなぁ。」

 

「そういう事は早く言いなさい維助」

っと父上に少し怒られてしまった。

 

「夜一がもし小生の後釜に入り当主となるとなるならば。

長男で浦原家の当主となる維助君は婿入りは出来ぬなぁ…。

まぁ小生の娘の話は置いといて、維助君。縁談の話が来ている」

 

「はぁ……縁談」

見合いの話か。ってかそれを用意してるってことは2人とも大体婚約の話しとか俺らの保留してたこと何となく確信してたんじゃん。

 

「縁談っ!?」

っと夜一さんがびっくりして声を上げていて

 

「そりゃそうだろう夜一、維助君は浦原家の長男で次期当主。お嫁さんを迎えないといけないんだから。維助君はとっても人気であっちやこっちから縁談の話が来ているというしね」

 

「ってことだから維助。見合いを近々行うので、ある程度相手方の顔を覚えておきなさい」

 

そう言って父上から見合い写真やらプロフィール詳細やらの書類を大量に渡される

 

「えぇ?これ全部?」

「文句言わない」

「はぁーい」

 

その場で解散し夜一さんと部屋に帰ろうと廊下を歩くと、何故かぼーっとしてる夜一さん

 

「けっ……こん、維助が……?じゃが……」

っとブツブツ言っている

 

ぼーっとしてるまま夜一さんとは部屋離れてるので曲がり角で、

「じゃ俺こっちなので〜」

って言うがぼーっとしたまま歩いて行ってしまった。

 

おれは部屋に帰りパラパラと書類に目を通す

上級や下級貴族

 

「はえぇ、可愛い」

可愛い子や美人さんおっぱいでかい人まで___

 

「鼻の下、伸びまくりッスよ」

 

「あれ喜助どしたん」

 

「いや帰ってきた気配したんで」っと俺の部屋にズカズカ入って勝手に座布団敷いてお茶を汲み始める

 

「やっぱり縁談の話だったんスね〜」

 

「なんだ喜助気づいてたの」

俺の持ってる見合い写真を見てやっぱりと言う喜助。

 

「そりゃ、保留にしてるの御二方にはもうバレてるみたいでしたし、

兄サンそんなんでも見た目はいいんで。

昔から夜一サンと婚約してるって言っても見合い話が入ってきてたんスよ」

 

「へぇー。ってそんなんでもってなんだよ。見た目”は”!って”は”!って

失礼だな喜助。見た目もの間違いだろ。

にしても色んなところから来てんな。四楓院関係ない貴族からも来てるし。でもこれは四楓院関係あるな。

ん?

蜂 梢綾(フォン シャオリン)?」

 

っと首を傾げる俺に書類を覗く喜助

「名前消されてますね、砕蜂。あぁ、四楓院家に奉公してる蜂家ッスね。最近入団した子の恐らく末っ子ッスね」

確かにその名前は二本線が入っていて砕蜂と記載されていた。

 

「へぇ、よく知ってんな喜助」

 

「兄サンが貴族に興味無さすぎなんス。名前覚えないじゃないッスか……ボクがどれだけフォローしてるか……」

まぁそりゃそうだな。

 

 

ん……砕蜂?

なんか、聞いたことあるなやっぱ。

二激必殺なんちゃらーみたいな攻撃アニメで見たような……

その子と髪型は合わないけど……記憶の中のその人と顔似てる……?

原作の子だなこりゃ。

 

「気になるんスか?」

 

「えー、まぁ可愛い子だよな」

 

「はぁ、相変わらずッスね。まぁこの書類の娘さんたちと片っ端から見合いする羽目になると思うんで頑張ってください」

 

「喜助は?喜助も見合いしたら」

 

「こういう時次男でよかったって心底思うッス。結婚しなくても別にとやかく言われないんスもん」

 

っと、まぁ喜助なら面倒くさがるだろうな結婚とか。

俺も正直めんどくさい。

 

 



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お見合いとベタな交換条件の話

 

お見合いが早速始まった。

なんでせっかくの非番を……っとぶつくさ言うが仕方ない。

父上にニッコリ顔で言われたら行くしかない。

 

 

「えっと……維助様の事が……」

ある日は可愛い小動物みたいな子

 

「維助様はどんな趣味を……?」

ある日はプライド高そうなThe令嬢

 

「維助様!私とー!」

おっぱいでかい子

 

数々の貴族令嬢達の見合い。

下級貴族なんかは玉の輿になるから必死だ。

 

昔ならうへへへしてただろうけど大人になって

死神、しかも貴族の結婚は結構めんどくさいと分かる。

 

俺は身軽がいいし、子供が……子孫が欲しいとは思ってない。

可愛いし美人に迫られるのは嬉しいけど。結婚となれば話は別である。

 

「へ、へぇ、カラクリ……あはは」

カラクリ弄り回す変人。なんて噂がそのうち流れるかもしれんな……

 

そしてまた今日も見合い。

「砕蜂、で、でふ」

 

座っての開口一言目がそれだった。

 

「ぶふっ」

俺が吹き出してしまって、令嬢さんは恥ずかしさからか顔を赤くしてしまった。

 

あとはおふたりで……というテンプレ通りに、砕蜂と2人きりになる。

ちなみに名前を覚えないと父上に殺されるので本気で令嬢の名前は覚えた。

 

「あ、あの!!!大変恐縮なのですが。私は蜂家の末っ子で……蜂家のただ1人の女ですが。

四楓院家に生涯を捧げる為に産まれ四楓院家の為に死ぬ。私は軍団長閣下に……」

 

っと自分で話して少し混乱しているようだが大体伝わった。

 

「つまり結婚するつもりは無いと」

 

「ひゃ、ひゃい!たとえ貴方様の浦原家に嫁ぐことになり一族から抜けたとしても……私は軍団長閣下に全てを捧げるために生きてきたので。今更結婚などと……」

 

下級貴族で上級貴族に入るのは相当な玉の輿でしかも死神ともなれば将来は安泰。

なのに夕寝様に命を捧げると。自分の安泰よりも四楓院家に命を捧げる

 

「君……強い子だね、それなら俺と取引しない?」

 

「へ?取引……?」

 

 

「そう、砕蜂ちゃんも、俺も結婚する気は無い」

 

「貴方も……?」

 

「うん、俺は身軽でいたいし子供が欲しいとも思ってない。

自由でいたいから。君も色々見合い話を断られると困る立場でしょう?

まぁベタな話だけど、表向き……って事にしよ

夜一さんともそうだったしね。

で、俺らのどちらかが第五分隊までの部隊長になればその見合い話も正式に断れる。

 

まぁつまりは、出世するまで表向きは婚約者……って事にしよ」

 

「……分かりました」

 

「契約成立。よろしく」

 

俺と砕蜂は握手した。

これで暫く結婚話も落ち着くだろう

 

中世ヨーロッパの恋愛漫画のベタな展開!

ロマンです。

 

_____________

 

 

「はぁ……なんでボクまで」

 

「うるさいぞ喜助!!!!し、静かにするんじゃ」

 

見合い会場の少し離れたところから霊圧遮断外套を来て気配を消す

喜助と夜一。

 

 

 

 

何故こうなったかは数日前に遡る__

 

「ど、どうじゃ喜助!!やま、病かもしれぬ」

 

「はぁ……ですからそれは病じゃないんですって」

 

ここは喜助の部屋。維助が見合い話で出かけてる時に。夜一が訪ねてきていた。

 

「じ、じゃが心臓が!維助といるとキュッって!キュッて!!痛くて……そ、その。一緒にいたいという思いが強くなるんじゃ!!

お、おかしくは無いか!?」

 

「(夜一サンは自分自身で気づいてると思ってたんスけど。今まで無自覚だったんスか……)それは恋ッス」

 

「恋!?わ、儂が!?」

 

「そうッス。夜一サンは維助兄サンの事が好きなんですよ」

 

「す、すき……維助……の事が……!」

ボボボ!っと顔を真っ赤にする夜一

 

「はぁ……」

ようやく気づいたのかとため息を吐く

 

 

「喜助!こうはしてられぬ!!見合い会場に()くぞー!!」

 

「は、えぇ?なんでッスか?そんなわざわざ」

 

「だって気になるであろう!?維助が結婚なんぞ……」

 

「まぁ……(兄サンは結婚する気なさそうなんスけど……面白いから黙ってましょうかね)」

 

そして外套を着るまでの用意周到さで見合い会場に乗り込んでいた。

遠くからだが、机を挟んで女性と向き合ってる維助の姿が見える。

 

「き、今日も見合いは断るのだろうな!」

 

「さぁ……それはどうっスかね。好みの女性がいたら__」

 

「ぬぉおお!辞めるんじゃ喜助!心臓が痛いぞ!」

ギュッと外套を握りしめる夜一。

 

しばらく見ていると2人が庭に出た

 

「あれ、珍しいッスね。兄サンが午後になってもまだ会場に残って……しかも、園庭を散歩してますよ」

 

「だ、誰じゃ!相手は!!」

 

「(あれは……蜂家の……)さぁ、そこまでは兄サンの好みの女性ですかねぇ〜」

 

「ぐぬぬぬ……ここからじゃよく見えぬ……!」

 

 

すると、ピタリと足を止めた維助

 

「なにしてんの夜一さん。喜助」

 

「ありゃ、バレちゃいました?」

 

 

_____________

 

どれだけ喜助といると思ってるんだ喜助の消しても消しきれない僅かな気配を感じれる。

そしてよくよく探ると夜一さんもいた。

2人はバレたからだろうか茂みから出てきた。

霊圧遮断マントまで来てやがる。

 

 

砕蜂は夜一さんを見た瞬間に膝を着く

「ん?お主蜂家の……なるほど、よいよい、楽にせい」

 

っと夜一さんが言うとハッ!っと言って立ち上がる

 

「んで?なんで見に来たんだよ、喜助興味なーいっていってたじゃん」

 

「いやぁ、そうだったんスけど夜一サンが……痛いっ!

 

うわ、喜助の顔面に夜一さんの裏拳が入った。痛いぞあれ。

 

「な、なんでもないぞ!!また維助が女子(おなご)に粗相をしないか見に来ただけじゃ!」

「夜一さん俺の事なんだと思ってるんです?

さすがに家が絡む見合いに変なことしませんよ

俺が父上に殺されるんで。

砕蜂、こっちの鼻抑えてうずくまってるのは浦原喜助。俺の弟だ、

夜一さんは説明要らないな。俺の正式な婚約者で。夜一さんが当主になったら解消されることになっている」

 

「は、はい!」

 

「維介兄サン、それを話すのは……」

っと懸念する喜助に、まぁ待てと遮る

 

「実は__」

 

俺らは結婚する気は無いが、見合い話は面倒なので表向き__という話をした。

 

「なるほど、それなら納得ッス。」

 

「そ、そ、そうじゃったか!!うむ!維助に結婚は無理であろうな!!!」

「なんでそんな失礼な事を大声で言うんだ夜一さん。」

 

さっきの暗い表情から一変活き活きとした顔で仁王立ちした夜一さん。

本当に俺が女の子に変なことしてないか気にしてたんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

ただ、お互い興味無い見合い話で、

表向きの話だったのに…胸なんかは好みじゃない子だったはずなのに___

 

「喜助、どうしよう砕蜂可愛いかも」

 

「……は?」



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砕蜂の話

 

表向きには仲睦(なかむつ)まじい関係に見せないといけないので、任務帰りにデートに誘ったりしている

 

「はう……お、美味しい……!!」

初めて食べたというたい焼き。

頬を押えてその美味さに感動しているようだ。

 

身長がとても小さい砕蜂。

まだ顔も幼さが残っていて暗殺の一族とは思えないほど表情豊かだ。

うん……可愛い……な

なんてこのデートで何度思っただろう。

妹ができたみたいで心がほっこりする。

 

「維助様!次っ次はあれを買いに行きましょう!」

っと子供のようにはしゃぐ彼女。

 

今までは胸性性!のピンクで埋め尽くされた関係しか持ったことなかったからか、表向きとはいえこんな普通に楽しめるデートは初めてかもしれない。

 

「砕蜂は可愛いなぁ、もっと食え?ほらこれとか」

 

っと片手で頭を撫でて新しく買った団子を差し出すと

ムスッと頬をふくらませた彼女は

「お戯れはご無用に維助様!!で、でも貰っておきます」

 

と言って団子を頬張った。

可愛い……。

 

________

 

「へぇ?魚の方が好きなんだ」

 

「はい!大好物です!」

 

しばらく団子屋で話してるとお互いの話になった。

 

「じゃぁ今度美味しい海鮮丼食える場所連れてってやるよ、びっくりするぐらい美味いんだ」

 

「本当ですか!楽しみです」

っと長い髪を揺らして笑う。

 

「えっと……その維助様の好きな食べ物はなんですか?」

 

「俺?うーん。強いて言うなら……辛いものかな。あー甘いものも好きだし……。あ、唐揚げが好きだ!」

 

「ふふ、色んなものがお好きなんですね」

って手で口を隠して笑う砕蜂

あの記憶の砕蜂と比べたら本当に表情豊かだな。

 

__________

 

そしてデートも終え砕蜂の部屋に送り届ける

 

「あ、あの……今日はとても充実した時間を過ごせました……。」

 

「そりゃよかった。また出かけよう」

って砕蜂の頭を撫でると顔が赤く染る。

 

そして

「はい!!」

っとニパッとでも効果音がつきそうな笑顔……

 

眩しい……

 

___________

 

部屋に戻ろうとすると喜助の部屋が開た

喜助が障子から顔を出していた

 

「どうでした?逢い引きは」

 

「いやぁ、砕蜂……可愛いよ」

 

「へぇ…………はい???」

へぇっと流そうとした喜助が、固まった

 

「砕蜂サン兄サンのタイプでしたっけ……-」

 

「いやまぁ違うんだけど、本当に可愛いんだよ。なんか心が浄化されるというか……癒されるというか……」

っと、あの幼い笑顔を見て笑う俺を見て

頭を抱えてしまった喜助。んでや

 

「好きなんスか?」

 

「え?うん、好きだよ可愛いし。」

 

「夜一サンは?」

 

「え?うんそりゃもちろん好きだけど?」

 

「あっなるほど」っと言って納得した喜助。

何に納得してんだよ

 

「そうッスよね、維助兄サンはそういう人でした」

あはーっと首に手を当てて笑う喜助の耳を引っ張る

 

「よくわかんないけどディスられたのはわかった」

 

「あいたたた!痛い!痛いっス!耳飾り!耳飾りで耳たぶちぎれちゃうッス〜!!」

って涙目の喜助を離す。

 

「あ、明日非番じゃん?俺ちょっと出かけてくるからお願い!外套貸して」

 

「えぇ、またっスか……?ってかあんまりひょひょい外でてると怪しまれますよ?」

 

「俺がそんなヘマするかよ。大丈夫大丈夫。明日ちょっと約束あって絶対行かないと行けなくてさ。」

 

「はぁ……仕方ないッスね」

部屋に戻った喜助が直ぐに戻ってきて片手には霊圧遮断マント

 

「ありがとう〜助かる〜」

 

「んじゃ、また薬の被検体としてお願いしますねん」っとニッコリ

 

俺喜助のせいでなんか薬効きにくくなった気がするんだけど。

 

 

 

明日は……あの藍染に呼び出されてるので絶対行かないと……。

にしても、バカ広い瀞霊廷で出会って。

すれ違いざまに紙を懐に入れられるなんて思わなかったな。

 

多分俺が来ると確信してわざとすれ違ったんだと思うんだけど。



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藍染と闘うことになった話

 

非番の日。

 

八代の駄菓子屋を定期的に開いてる場所に来た。

すると待ってた藍染はいつもより浅い笠を被っていて顔が丸見えだった。

 

「やはり、僕を見ても驚かない。僕の正体に気づいていたんだね?それも最初から」

 

っとニッコリ

 

「あー……まぁ」

 

っと歯切れの悪い返事をする俺に。

商売道具をそんなに簡単に説明はしないか。と言った

なんか俺の機械で正体暴いたみたいになってるけど。

違うんだよなぁ……

 

まぁわざわざ説明してやるぎりもない

 

「んで、何?また特注品?それなら昨日紙で「違うよ」」

途中で否定される

 

いやマジで何用だ?俺機械作る以外に何も出来ないし。

もしかして消しに来た……?

っと少し警戒を見せた俺を見て察したのか両手をあげる藍染

 

「消しに来たんじゃない。君は……浦原維助に聞きたいことと少し頼みがあってね」

 

「……聞きたいこと?」

 

「君はどうして出世をおくらせているんだい?」

 

「……」

んでその話が出るんだと俺は頭を搔く

続けて話す藍染

 

「君は院では引退した死神も現役の死神をも舌を巻く尸魂界一の剣術使いと聞いたよ。なんでも

 

()()()()()()()()()()()()()()()とか」

 

んでそんな話が回ってるんだ。京楽隊長自分で話したな……??

話すか普通。自分が院生に負けたなんて。

いや……違うかも。この人ならどこからかで情報を得てもおかしくない。

というか見てた可能性すら出てきそう。

 

「始解も、卍解も使わない……。何か理由でも?」

 

うん、卍解の話知ってるなら、見てたなこの人。

もしかして元々唾つけてて……

商売始めた俺に初めまして風を装って接触してきたのか……?

 

「はぁ……最初から見てて他所から聞いた風に言うのやめてもらっても?

始解も卍解も使わない方が強いから使わない。

出世おくらせてるのは下か中間で適当にやってるのが楽だから」

 

それっぽい理由を付け足しては見るも

 

「嘘はもういいさ。その無理やりに押えてる霊圧も、

始解も卍解も全て()()()()()

使わない方が強いだなんてそんなわけないだろう?」

 

もしかして……

 

藍染はストーカーだった……?

 

いやガチめに怖いんだけど鳥肌立ったんだけど?

なんで卍解の能力分かるの?ハッたり?

違うよね?なに?怖い怖い怖い怖い!!

 

もう隠せそうにもないので。

「出世を遅らせてる理由だっけ?それはある人を隊長にしたいから。

それに適当にやってるのが楽なのは本当。」

 

「四楓院夜一四楓院家の令嬢、二番隊隊長の四楓院夕寝の実の娘で君とは同期で許嫁の関係だったね」

 

はぁーそこまで調べたの?もしかして俺が漫画読んでないから知らないだけで、藍染は相当なストーカー気質の変態だった……?

 

なんだっけ……鏡花水月だっけ?めっさかっこいい名前のやつ。

あれ見なきゃいいことは覚えてるけど、見たことないし近くの人間に成り代わってたみたいのは無いはず……多分。

 

まじでがっちり読んどけばよかった……パラ読みだからあんまし覚えてないしアニメなんて流し見だよ……。

 

黙ってる俺に、無言は肯定と見なすよと言われた。

 

「まあ、その通りだけど。別にあんたみたいに何か悪いこと考えてるとかじゃないから」

 

なんてつい、口を滑らせてしまった。

けど、驚いた様子は見えない。それも予想のうちなのだろうか

 

「んで、聞きたいことは答えた。次お願いって何?」

 

「僕と戦って欲しい」

 

「…………は?」

 

 

_____________

 

俺は簡易的な空間凍結の機械を4カ所に設置する。

流石に流魂街の住人がいるので78区画ぐらいまで離して

誰も近くに居ない場所まで来た。

 

「ほう、空間凍結」

 

「そ、戦ったら被害出るし、もし霊圧が漏れ出てもしたら瀞霊廷側にバレるかもだし、痕跡を消せるけど念には念を……ね。

外からは誰も入って来れないよ」

 

4カ所に設置すれば空間凍結の結界が作動し、

霊圧が漏れてほかの魂魄に影響を及ぼす事も邪魔が入ることもないし、

特性なので霊圧の痕跡も残すこともない。

俺はマントを脱いで木に引っ掛けると藍染も笠を取った

 

________

 

「戦う?何バカを」

 

「馬鹿じゃないさ……君の剣術の腕を見込んでの話だ」

 

_________

 

っと言われて、この装置を設置する羽目になった。

 

「ルールを決めよう、斬術……始解をしての戦いはなし。

白打はあり。鬼道どうせ俺使えねえからなんでもいいよ。」

 

っと斬魄刀を抜いていつでもどうぞというアピールをする

 

「そうか、斬魄刀の能力ではなくただの力での戦いを……

舐められているのかな」

 

「舐めてはないよ。その方が相手の実力も分かるってもんさ」

 

「いいだろう」

 

藍染も刀を抜いた。

 

合図は分からない、ほぼ同時とも言っていい程に俺ら2人は地面から足を離していた。

藍染が上段から振り落とす刀を下から弾き腹に向かって蹴りを飛ばすが身体を後ろに曲げて避けられる。

 

反射いいなこいつ。

 

何度か刀を合わすうちに様子見から本気になっていくのがわかる。

 

「抜刀術は見せてはくれないのかな」

 

「鞘に収める隙を与えないくせに?」

 

鬼道も惜しみなく使ってくる。

雷吼炮、鎖条鎖縛、

 

「縛道の六十二 百歩欄刊(ひゃっぽらんかん)

 

光の捕縛する光の棒が無数に飛んでくるが……

 

「ほう……全て斬るとは。避けると思ったが」

 

避けることを見越してなにかする予定だったらしい。甘いな

喜助にどれだけ鬼道ぶち込まれたと思ってんだ。

 

「そら!!連続技の出しすぎで隙ができてるぞ!」

 

黄火閃を飛ばしてきた瞬間避けその光に紛れて

俺は藍染の後ろから刀を振るう

 

「わざと隙を作ったのさ」

「知ってるよ、よく喜助も使う」

 

「!!」

藍染が避けた先には俺。

喜助がよくわざと隙をみせ俺を誘導する技。

 

回し蹴りをすると、咄嗟に防ぐが勢いに負け藍染が吹き飛ぶ

 

「ほう、力も相当なものだ」

 

「ありゃやりすぎちゃった?」

 

「いいや、そんなことは無いさ」

 

土煙の中ふらりと立ち上がった藍染は口元の血を拭う。

そのうち鍔迫り合いになる。

なにか藍染の表情は少しずつ変化し、

焦るのでも無い、恐怖でもない

 

なぜか____楽しそうに笑っている。

 

俺もきっと同じ表情をしているかもしれない。

手を抜いているとはいえここまで俺と刀を交わせる人はどれだけいたのだろうか。

俺の行動を知り尽くし錯誤を繰り返す喜助以来ではないか。

 

だが、勝負は直ぐに終わった

 

一瞬、一瞬の隙で居合の型に入り__

パキッ__っと音を立てて

藍染の刀が折れ刀身が地面に刺さる

俺は藍染の首筋に刀を添えた

 

「参った」

 

その言葉で斬魄刀を鞘に収める

 

「まさか僕が負けるなんて……ね」

 

彼はまだ笑ったままだ

折れた刀身を拾って物珍しそうに見ている

 

「まだまだ余力もあるとみた。これが敗北……か」

 

彼はそのまま笠を被り踵を返した,

本当に戦いに来ただけなのか。

 

「まてよ、藍染」

 

振り向いた藍染に近寄り、肩に手を置く

 

「よし、飯くいにいこう」

 

 

 

「……は?」

 

 

_______________

 

 

「へぇ、藍染五番隊七席なんだ」

 

「あぁ、そうだよ」

 

最初はなんで君と……?と言われたけど、負けたんだから文句ないだろって言ったら渋々着いてきた。

 

ここは個室の居酒屋。

浦原家とか貴族がよく使うお高い居酒屋だ。

酒を飲んで刺身を食ってる俺に対してそんな箸が進んでないようの藍染。

 

「俺は九〜この前上がった。お前こそすぐ上がれるだろ?なんで上がんないんだよ」

 

「僕も早々に上がると面倒なんでね……()()()に目をつけられているし」

 

へぇーっと言ってサーモンを食べる。あ、美味しいわこれ

 

「聞かないのかい?僕が何をしようとしてるのか、目的を」

 

「興味無いね、俺に関係しないなら。俺()に迷惑かけないなら好きにすればいいさ。話したいなら話してもいいけど」

 

「ふ、君の剣の腕も技術者としての腕も買っている、迷惑はかけないようにするとするさ」

 

「どうだか」

そういえば藍染の目的ってなんだったかな〜。

多分全く記憶にないということはその時の漫画読んでないんだろうな俺。

 

「まぁ、金と血判契約さえ貰えればある程度作ってやるよ」

 

「あぁ、それはもちろんこれからも頼むつもりさ」

 

「にしても、ある人って誰?お前みたいな猫かぶりを見抜けるってすごい人なんだな」

 

答えないと思っていたが、すんなりと答えてくれた

 

()()()()知らないかい?今は五番隊副隊長をしている男だ。」

 

「へーしらなーい」

聞いたこと……あるようなないような……見ればわかるかも。

 

「君は人にあまり関心がないんだね。それなのに何故僕を食事に誘ったのかな。大切な話がある訳でもないだろうに」

 

「え?そりゃ戦って動いたら腹すくじゃん。1人より2人、人と飯食った方が美味いだろ。それに人に対して無関心なわけじゃないさ」

 

「そんな感情によって味が変わると思ってるのかい?君程の人が本当に」

「いやいや、気持ちの問題って大事よ、絶望に打ちひしがれながら食べる飯って絶対味感じないじゃん」

 

「はぁ……」っとよく分からないという返事。

 

「あんたは俺を信用してないかもだけど、仲間になるわけじゃないから裏切るとかそういうんはなしだ。

 

つまりは俺と友人関係になろう

 

するとこめかみを抑える藍染

 

「君はよく突拍子もないとか、よく分からないとか予想できないだとか言われたことはあるかい?」

 

「んーあるね、喜助によく、ほらよく言うだろ馬鹿と天才は紙一重だって」

「君は今馬鹿だけどね」

「おいこらそんなストレートに言うことあるかよ」

 

俺はビールを一気飲みしてジョッキをゴンッと机に置いた

 

「あンンンなに楽しい戦いは久しぶりだっんだ!これからもたまに剣を合わせよう。お前も楽しそうだっし、飯も美味くなるしいいだろう?」

 

「まぁ……戦いであんなに楽しかったのは初めてかもしれない。それは肯定しよう。食事に関してはよく分からないな」

 

「なんだよ、お前寂しいやつだなぁ……大丈夫!これからも飯誘ってやるから!」

 

「はぁ……」

そう肩を叩く俺に対してため息をはいた

 

 

 

 

新たな友人を手に入れた



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弟子の成長と友人と平子副隊長の話

 

「維助師匠!お久しゅうございます!」

 

俺が朽木家に来た瞬間瞬歩で目の前に現れた白哉坊ちゃん。

いや早くなったなぁ……夜一さんが闘争心を燃やしたせいだろうけど。

 

キラキラした目を向ける白哉坊ちゃん。

腕の筋肉も着いて少し大きくなった気もする

 

「久しぶり白哉坊ちゃん」

 

俺が忙しいせいで全然指導できなかったけど

白哉坊ちゃんは白哉坊ちゃんで頑張っているようだ。

早速抜刀術を見せてもらうと。

 

一瞬にして巻藁が半分に切れた。

ど素人からしたら太刀筋は見えないだろう。成長したなぁ〜

 

「どうですか師匠!!師匠みたいに鞘に収めるのはまだ出来ないんですけど……いつか……いつか師匠のようになるのが私めの夢!

そしてあの化け猫に。あっ!といわせるのだ……!!」

 

っと拳をギリギリにぎりしめる。

夜一さん一体白哉坊ちゃんに何したんだ……。

 

そういえば、る……る……なんだっけ。

主人公に死神の力与えたやつ。

その人の兄だったよね確か白哉坊ちゃん。

それで確か主人公と戦った気がするけど……

まぁ俺の抜刀術ぐらいで原作変わんないよな!多分大丈夫!

 

白哉坊ちゃんの成長を見れたところで帰宅しようと瀞霊廷内を歩くと。

 

 

昨日見た顔が___

大きく手を振って声を張り上げる

「あっっつれぇ〜!おぉい惣右介〜」

 

一瞬顔を顰められたけど、直ぐにニッコリと猫かぶり表情になった。

 

「やぁ、維助君。仕事はどうしたんだい」

 

「そんなの終わらせてきたんに決まってるじゃん〜

任務終えればあとは自由だし。呑み行こ呑み奢るからさぁ〜」

っと肩を組む

 

「昨日呑んだじゃないか」

 

「お前呑んでないじゃん。いこーぜー暇だろ」

 

「いや……今は……「おーい、何しとん惣右介」平子副隊長」

 

っと、関西弁が聞こえると。

副官章を腕に着けたポニテ金髪ロングが。

 

「ん?誰や、惣右介の知り合いか?」

 

「いや彼は……「惣右介の友達の維助で〜す!」」

っと惣右介の声を遮ると小さくため息が聞こえた。

 

「ほん、惣右介友達居たんやな……。」

 

「失礼ですね平子副隊長、僕にも友達ぐらいいますよ」

もう開き直ったらしい、

思ってはなさそうだけど、友達と言ってくれた〜わーい

 

「ん?自分.浦原維助って()うた?二番隊か?」

どうやら俺のことを知っているらしい

 

「そうだよ……いや、そうです二番隊第九席でーす」

 

「あんたがあの剣術の……」

 

上から下までじろりと定めるように見てくる

 

「なんやホワホワしててそうは見えへんけどなぁ」

 

「人のこと言えないですよ平子副隊長」

 

「んや、呑み行こ聞こえたけど約束しとったん?」

 

「いや、たまたま惣右介見つけたんで誘ったんですよ〜」

 

すると何か考えたような表情をする平子副隊長さん

「ほーん……なら惣右介今日はもう上がってええで、俺の買い物の付き添いやし。いってき」

 

「いやでも……」

 

「おーやっさしい副隊長さん〜じゃ行こうぜ惣右介〜」

 

ってかこの人か、惣右介の猫かぶり見抜いたの。

 

__________

 

「どういうつもりだい?呑みにいこうだなんて」

っと眉を顰める惣右介

 

「いや、意味も何もそのままの意味だけど。」

 

「何か用はないと?」

 

惣右介は熱燗(あつかん)俺はビールを呑んで向かい合っておつまみをつまむ。

 

「友達なんだから出かけたり遊ぶぐらい普通だろ?」

 

「……本当に君の考えていることはよく分からないな」

 

「褒め言葉として受け取っとくよ。それにしてもあの人が昨日言ってた人か……なんか派手な髪色の人だね」

 

「それを君が言うんだね……?」

 

俺そんなに明るいパツキンじゃないもーん。

あんなロングの髪は漫画見たことないなぁ。多分。

 

「あ、そういえばそのメガネ調子どう?メンテナンスは無料だからいつでもどーぞ」

 

「昨日君の蹴りを食らってもヒビひとつ、歪みすらなかったよ」

っと眼鏡の縁をなぞる惣右介

 

いやぁ、さすが俺

 

「だろ?そんな壊れるような物作んないって、それ惣右介がかけないと霊圧制御しないから。もし落としたとしても霊圧制御装置だと分からないと思うよ。」

 

「へぇ、それは気が利くね」

 

思ってもなさそうに棒読みで刺身をつまむ惣右介

にしても箸の使い方綺麗だな

 

「だろ?俺は気が利く良い男だから!」

 

「気が利くなら僕にダル絡みしないで欲しいんだけれど」

っと少しジト目

 

「え〜いいじゃん」

 

そこで少し知ってる霊圧を感じてお互い口を噤む

惣右介と目が合うと、小さくコクンと頷いた。

 

 

「いやぁ、維助君はやっぱり凄いなぁ。僕も抜刀術見習いたいよ」

 

「えぇ?やだなぁ、惣右介も凄いじゃん〜そういえば五番隊給料どう?高い?」

 

「いやぁ、あんまり話せないよそれは、はは」

 

っとたわいも無い会話。

猫かぶりモード惣右介とそれに合わせる俺。

 

感じた霊圧はさっき出会った___

 

「よー惣右介、維助、こんな所で呑んどったんやな」

 

っと平子副隊長さんの声。

気配を消して俺らの会話を聞いてたらしいけど

俺らはそれに気づかないほど雑魚くない

 

「平子副隊長もどーです?呑みません?」

っと言うとガンッ!っと惣右介に(スネ)を蹴られた

 

「いっ……」

 

お前……!っと言う目で見るとスッと視線を外された。

おいこら!こっち見ろ!

おーい!!視線逸らすな!惣右介!

 

戦闘中じゃないから霊圧硬度あげてないせいでまともに食らった。

脛はダメだって……!!

 

「ん?どしたん?」

っと、涙目になってる俺に首を傾げる平子副隊長さん

 

「いやぁ、舌噛んじゃって、」

 

「あーそりゃ痛いやつやな、」

 

「まぁ、とりあえず座ってくださいよ、俺平子副隊長とも仲良くなりたくて」

 

っと言うと遠慮なく〜と惣右介の隣に座った。

 

「おねぇちゃん〜俺もビール!キンキンのな」

っと頼む。

 

しばらくたわいもない話をする

そのうち酒が入ってお互いにテンションが上がって

趣味なんかの話をし始めた

 

「へぇ、なんでも直せるん」

 

「なんでも直せますよ〜」

 

「現世の物も直せるんか?」

っと趣味関連でカラクリの修理の話になった。

 

「現世の?まぁ見ないとわかんないんスけど〜直せなかったことないんで!」

 

「へぇ!なら今度もってくわ」

 

「平子副隊長。流石に他の隊の者にそれは……」

 

「いーんよ惣右介〜俺も現世のカラクリ気になるし。」

 

「ほうら惣右介!お前堅いねん!」

っとバシバシっと惣右介の背中を叩く平子副隊長さん

 

「はぁ……維助君。もし副隊長が何かしでかしたら呼んでくれて構わないから」

 

「んやねん!俺が何かすると思っとんのか!」

 

こうしてみると仲良い上司と部下に見えるけど、

たまに見える平子副隊長の警戒の色。

 

なにか心を許してそうで許してない関係にも見える。

俺が惣右介から聞いてたから益々そう見えるのかもしれないけど。

 

__________

 

そして数日後の任務帰りに隊舎に帰ると、門の前に金髪が

 

「あれ、平子副隊長さん?」

 

「おー、維助、この前ゆーとったやつ持ってきたで」

 

「あー二番隊はちょっと今重要な任務あって入れたら殺されるんで、ここで直しちゃいますね」

 

っと懐から道具を取り出すと

 

「あんたいつも持ち歩いとんの……?」

っと有り得ないという顔。

 

「いやぁ、いつなんどき必要になるかわかんないスからねぇ〜」

 

「ほーん本当にカラクリ好きなんやな」

なんて、信じてなかったのだろうか。

 

平子副隊長さんに渡された風呂敷の中を見ると、高価なオルゴール

相当古い型で、まぁ江戸の世にはもうオルゴールは日本に渡ってたし持っててもおかしくないけど。相当高かったんじゃないだろうか。

 

副隊長って結構お金もらえるんだなぁ〜っと、

その場で胡座かいて分解する

 

相当大切に使われてるのか、錆は無く。

綺麗に拭かれた跡もある

 

しゃがんで俺の手元を覗く平子副隊長

 

「なんか途中で音が止まるねん。」

っと、

 

「なるほど」

 

音の発生源を見るとすぐに原因がわかった。

歯車の噛み合いがズレて、回らないようになっているだけだった。

細い工具でその噛み合いを直すと

 

すぐに___

 

「おぉ!!音が出よった!!もう直ったん!?すごいなぁ!」

っと嬉しそうに音が鳴り始めたオルゴールを俺から受け取る。

 

「喜んでもらえてよかった良かった。」

 

「見直したわ〜、いい趣味もっとんな!また壊れたら頼むわ!」

見直されるほど下に見られてたのか俺……?っと思ったけと言わなかった、きっと深い意味は無いだろう。

 

すると、周りをキョロキョロと見渡した後

俺に向き直りスッ__っと目を細めた平子副隊長

 

雰囲気がガラリと変わる

 

「なぁ、惣右介とはいつから友達なん?」

 

「数日前ですね、俺が飯に誘って」

 

「いきなり飯に誘ったんかいな、あんたのコミュ力どうなっとん」

 

っと俺が嘘ついてないことがわかったのか、眉を顰める

 

「悪い事はいわん。けんど惣右介にはきーつけ、あんま心開くなや、

あんたは二番隊、裏の情報やら大切な情報を持っとる。

惣右介から維助に絡んだのかと思ったけんど、違かったんやな」

 

「惣右介が俺から情報を引き出すために友達になったと?」

 

「……いや、変なこと()うたわ、忘れてくれや。

あんた良い奴そうやし、俺見る目はあるんや。

__ただ、あんまベラベラ情報話さんようにな」

 

「そんな事したら俺が夕寝隊長にぶち殺されますよ。

弟にでも任務内容一緒にならない限り仕事の話しないんで。大丈夫です」

 

「へぇ!維助、弟おるんや!今度紹介してや」

 

っと、そのまま帰って行った。

まぁあの人はあの人で多分いい人なんだろうな。

 

 

わざわざ俺に忠告するあたりとか__

っと見えなくなっても平子副隊長が歩いていった方を見ていると

 

 

 

門から喜助の声が聞こえた。

 

「兄サン……母上が」

 

「?」

 

門を開けた喜助は俯いていて。

 

「母上になんかあったのか?」

っと寄るとすこし涙目になっていた。

 

 

 



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微シリアス注 母上と隊長の話

 

死神が遺影に向かって悲しむだなんて変な話だ

とは思う__

 

死神は死という概念に近すぎて

死というものを軽く考えている節がある

とはいえ____悲しいには違いない。

 

「母上……」

 

ギュッと袴を握りしめる喜助。

目の前には母の遺影

 

気配を感じ振り向くと襖から顔を出す夜一さんと目が会い

喜助の頭を撫でると外に出た。

 

「維助は大丈夫なのか」

 

「それは夜一さんの方でしょうに」

 

母上だけじゃない

死んだのは

夜一さんの父親。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

そして俺の父上も右腕を切断し

その他の重症の怪我で意識不明と重体だ。

 

四楓院家の集まっていた3人は

使用人に紛れた刺客に毒を盛られ耐性のない母は死に

耐性があれど万全の状態じゃなくなった夕寝隊長もやられた。

という事が現場検証と遺体から発見された毒物によってわかった。

 

「夕四郎君は大丈夫でしたか」

 

「あぁ、ちょうど稽古に出ていてな。不在だったようじゃ」

 

弟君は大丈夫だったらしい。

それにしても

 

「万全の状態でないにしろ父上に怪我をさせ隊長を殺すとは、相当の手練」

 

相手が何者かも分からない霊圧の残滓(ざんし)は綺麗に消され

目撃者も全員殺されている。

唯一の生き残りの父上も意識不明、起きるかも分からない状態。

 

「則祐殿は四番隊、それに護衛もつけておる」

 

「ありがとうございます。ですが、恐らく狙われたのは浦原家ではなく」

 

「あぁ……儂の家じゃろうな。復讐か、天賜兵装番を探しに来たか……」

 

「夜一さんも気をつけてください、あなたも狙われているかもしれない。

しばらくは1人行動せず必ず護衛をつけること、食事も毒味役をつけてください」

 

「じゃが儂は……」

 

「いいですか、負け無いとか、死なないとかそういう事を言ってるんじゃないんだ。いつ何があるか分からない。貴方が死んだら貴族のバランスも隊もどうなるかは分かるでしょう?

 

砕蜂」

 

直属の部下になった砕蜂を呼ぶと

 

「ハッ!」

っと膝を着いた砕蜂が現れた

 

「お前を夜一さんの護衛役に任命する。同性なのもあり、より傍で護れるだろう。何かあったら戦闘ではなく夜一さんを連れて逃げる事。

情報を取りに行こうだなんて思うな、命最優先。」

 

「はっ!拝命しました」

 

「はぁ……仕方ないのう、頼んだぞ砕蜂」っと夜一さんが言うと

 

「はい!」っとお傍で護れることに喜んでいるのだろうか、

緊張と喜びが伝わってきた。

 

かと言え、他の仕事もある中で人数を裂き続けるのは痛手だ。

いつ来るか分からない刺し客に怯え続けるのも。夕四郎君の所にも、

宝具の所にも精鋭の護衛が着いている。

 

早々に何者かをつきとめないと行けない。

 

それに喜助も精神状態が悪く

夜一さんも強がってはいるが……。

 

 

__________

 

「さて、どうしたものか」

 

四楓院家で調査に来たもののやはり微量の霊子も残されていない。

残ってるのは血痕と、零したであろう料理のシミが畳や壁に跳ねているぐらいか。

 

一応毒は検出され、喜助が解毒薬を作っているが

同じ毒を使うとは限らない。

 

_______

そしてすぐに四楓院夕寝さんの隊長らによる弔いと

貴族との弔いが行われた。

 

何百年も二番隊と四楓院家を支えた夕寝さん。

沢山の人に見送られていった

 

「夜一さん」

 

「……」

 

葬式が終わってもまだ残る炎の煙を見上げてる夜一さん

 

実の父親が死んだ事。

そして彼を越すと努力してた彼女は

越す前に死んでしまったいう事にやるせない気持ちでいっぱいであろう。

 

彼女の頭を撫でると、バッと振り向いた夜一さんは

俺の裾を掴んで肩に頭をうずめた

 

背中に手を回しポンポンと優しく叩くと、俺の装束が濡れていくのを感じる。

「うっ……ぐぅ……っ……」

悔しいのだろう悲しいのだろう、奥歯を噛み締める音が聞こえる。

 

いつも男勝りで無鉄砲で自由人の彼女も、

こうして見れば父を思い涙を流す1人の女の子。

 

「よしよし」っと撫でると、

子供扱いするでない……っとか細い声が聞こえた。

 

目元の赤い喜助と目が合い、ちょいちょいと手で招く。

 

「ほら、お前も泣けるうちに泣いておけ」

もう片方の腕で喜助を寄せると俺の背中に手を回しでうぅっと鳴き始めた。

 

大好きな母上と懐いて尊敬してた幼き頃からの

夕寝隊長の2人をいっぺんに亡くした喜助も悲しいだろう。

 

両腕でそれぞれの背中をしばらく撫でつづけた。

 

 

_________

 

あれから1週間、父上は命を取りとめたが起きる様子はなく。

また進展もないままだ。

 

過去の経歴や逃した脱走者を洗い出してみるも、

これといった物は見当たらない。

 

砕蜂から聞いた話でも怪しいヤツも見えないという。

 

ため息を吐きながら1人で居酒屋の個室で頭の中で情報を整理してると

 

「浦原様。浦原様のお知り合いという方が御来店なされています」

という女将の声が。

 

「知り合い……?いいぞ入れて」

しばらくすると、個室の扉が開く

 

「惣右介……??」

 

やってきたのは惣右介で俺の前の席に座った

 

「難航しているようだね」

 

「まぁね。ってか俺が調査してるって知ってるんだ」

 

「……僕だとは思わなかったのかい?」

 

「…………?」

いきなり突拍子もなくそういう惣右介に俺は首を傾げる

 

「僕が君の母親と、四楓院夕寝を殺したとは思わなかったのかい」

「いや、思わなかったけど?」

 

そう即答した瞬間に惣右介は目を見開く

 

「なぜ?」

 

「なぜ……って、理由がない。宝具盗むのにわざわざ夕寝隊長を殺しに行く理由も無いし、毒なんて使わなくても何とかなるだろお前なら。

四楓院に復讐する理由も多分無いと思うし、あったとして動くならもっと慎重にすると思う。」

 

「……君は僕を信用しているのかい」

 

「そうだね。惣右介が軽率な行動をしない人物だと思ってるよ。」

 

するとため息を吐いた惣右介。

 

「相変わらず君はよく分からないね。

……僕は四楓院家を襲った軍勢を知っている」

 

「本当か!」

大きくなった声を咄嗟に口を押えて、こらえ、

もう一度聞き直すと、コクンっと頷いた

 

「なんで知ってるかは聞かないでおくよ。軍勢って?」

 

惣右介が話した内容は。

四楓院家に奉公していた一族が悪事を働き追放され。

その一族が軍勢となって勢力を上げ四楓院家に

 

「復讐した……ってわけか。七々扇(ななおうぎ)家ね。聞いたことないわ……調べてみるか」

 

「まぁ君の場合聞いても興味なくて覚えてないんだろうけど」

 

「よく知ってんじゃん惣右介。それで、なんで俺に教えてくれたの?」

 

「…………恩を売っても損は無いからね」

 

っと猫かぶりの笑顔で笑う。

 

「そっかそっかぁ!友達を助けたかったのか!ありがとうな惣右介!」

 

「聞いていたかい???」

 

「ありがとう!この恩は絶対返すよ!」

 

俺は名前を忘れないうちに二番隊に帰還した。

 

 

__________

 

「喜助!手伝え!図書館いくぞ!」

 

「えぇ、ちょ!待ってください!!」

 

エプロン姿で薬品いじってる喜助を担いで、瞬歩で図書館に向かった

 

 

 

 

 

「七々扇……うーんボクも聞いたことないっスね」

 

連れてきたのはいいものの怒られたので

草履と紅姫ちゃんを持ってってあげた。

 

喜助と手分けして図書館の除隊追放履歴やら歴史やらを漁る

 

4時間ほどたっただろうか、

本に埋もれた喜助があっ!!と声を上げた

 

「ありましたよん〜兄サン」

 

「おっ、どれどれ」

 

そこには四楓院家の家系図と分家、

奉公している家の詳細が書かれていた……

 

「っておいこら、これ機密重要書斎じゃねーか、お前地下入ったろ」

 

「そりゃ、そっちの方が手早いじゃないっスか」

 

「おまえ……バレたら除隊じゃすまねーぞ……」

 

尸魂界中の全ての歴史や事象が記録された地下の書斎所。

入れる人は片手で数えれる程度。

それでも安易に入ることの出来ない場所なはずなのに。

 

「お前まさかだと思うけど俺の結界の機械使って入っただろ」

 

「……」

フィッと視線を逸らす喜助の顎を掴む

 

「あいたた!顎!顎潰れる!!グェ」

 

俺の結界機器とは色々あるのだが、空間凍結もそのひとつで、

きっと喜助が使ったのは、俺が隠密で使ってる使用者の事象を消すという装置。

まぁ難しい話を全て飛ばして簡単に説明すると。

装置を起動して侵入して部屋に入ってAさんを殺したとして。

装置を切断すると、その殺した事象も侵入した事象も無くなり

()()()()()()という事と記憶だけが残る優れもの。

 

つまり喜助が起動して侵入して本を持ち出して。

機械を切れば、侵入した事象も本を持ち出した事象も無くなるという訳だ。

膨大な霊圧が必要になるし、時間制限もある。

多分普通の死神が使ったら1分で霊力空になると思う。

 

それに理に干渉するものなのでバレたらやばいと思う。

 

とりあえず喜助の霊圧が空っぽになる前に全て書き写して

機械を止めるとポンッと本が手元から消える。

本が元に戻ったのだ。

 

「我ながら俺すげー」

 

「そこは尊敬してるっス」

 

「そこはってなんだよ殴るぞ」

 

「イタイっ!!殴ってから言わないでくださいよ」

頭を小突くと大袈裟に痛がる喜助。

これだけふざけれるなら精神状態も.もう大丈夫だろう。

 

________

 

「はぁ……なるほど流魂街の80区画に追放されてたのか。そこでまだ生き延びてるって相当だよな……」

 

流魂街は東西南北更に1〜80区画に別れていて、数字が大きくなるほど治安が悪い。

79.80なんて死体ゴロゴロ、流血沙汰が絶えなく死神も安易に近寄らない。

 

そこに移住して生き延びてるってことはまぁ、察し

相当強い毒プラス戦闘力で

夕寝隊長がやられたのも頷けるかもしれない。

 

「よし、夜一さんに報告しに行くか」

 

 

_________

 

 

「七々扇家……か」

夜一さんも知らないらしく頭を捻らせていた。

 

「それにしてもその一族が犯人だとどうしてわかったんじゃ?」

 

「そりゃ聞き込みですよ聞き込み、最近入った四楓院家の使用人を屋敷におらず生き延びていた使用人や夕四郎君に聞いて、

死体になっていなくて生存者の中にもいなく行方不明になった人から

……洗い出した!って訳です」

 

「お主途中説明めんどくさくなったじゃろ、変わらぬの……

まぁよい、それがわかったのなら部隊編成をし向かわせよう」

 

惣右介から聞いたことは言わなかった。

言ってもお互いいことないし。

それっぽい事言っといたわ

 

二番隊隊長ではなく隠密機動総司令官として夜一さんは部隊編成を行い。

七々扇家が居るとされる場所にまずは確認のために

5人の編成部隊が送られて行った

 

 

 

 

けれど__

 

「帰ってこないね」

 

「…………これはやられたッスね多分」

 

3日経っても帰ってこず、また連絡も来ていない。

1人も生き延びずに殺れたのなら。

まぁ七々扇家で間違いないのかもしれない。

 

「夜一さん俺に行かせてください。さっさと終わらせてきます」

 

「……そうじゃの。相当の手練油断はするでないぞ。喜助、お主も行け」

 

「はい。夜一サン」

 

「じゃ、砕蜂。留守は頼んだ」

 

「ハッ!必ずや御守りいたします」

 

砕蜂の頭を撫でると少し顔を赤くする。

 

「なんじゃ、儂は撫でてくれぬのか?」

っとちょいちょいとその裾を引っ張ってくる夜一さん。

 

「なんだよ、撫でて欲しかったのか?」

って言ってる間に俺の左腕を自分の頭の上に乗せてスリスリする。

猫みたいだ。

 

「わ、私めも、もっと撫でてください!」

っと負けずに俺の手にすり寄る砕蜂。

 

2人とも可愛いなぁー

 

「喜助も撫でてやろうか」

 

「嫌っス」

冷たい



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まずい状況の話

 

 

80区画なんて

瀞霊廷自体端から端まで歩いたら10日ぐらいかかるつーのに、

80区画は瞬歩でも相当時間かかる。

喜助と俺、部下を3人ほど連れて向かってるからかさらに遅い。

 

そしてようやく追放されたとされる場所まできた。

 

「確かに強い霊圧をかんじるな」

 

50メートルほど離れた高台から5つの連なったオンボロの家を望遠鏡で覗き喜助に望遠鏡を渡す。

けれどこれぐらいの霊圧なら三席ぐらいだよなぁ。

 

「こちらの事はもうバレてるようッスね。この霊圧も威嚇でしょう」

 

「さて…」

俺らはまだしも部下達は不意打ち暗殺はお手の物でも、

正面からの戦闘はまだ不慣れだろう。

 

俺一人行くにしても何人いるかも分からないし。

奥の手やら何やら残ってるかも…

それに部隊の生き残りがいるかもしれない。

 

うーん…

よし!難しい作戦とかは俺には無理だ!(諦め)

 

「とりあえず俺が連中を外におびき出す。

部下の指揮権は喜助に譲渡するから、

タイミングを見て前来たであろう部隊の捜索を優先に。

それが終わったらとりあえず援護してくれ。あとは喜助の判断に任せる」

 

「分かりました。お気をつけて」

 

 

俺は瞬歩でオンボロの前に立つ。

 

「また来やがったのか。」

 

ドスンドスンっと、オンボロが崩れるのではと言うほどの足音を鳴らして出てきた、大男。

こいつボスじゃないな。身体付きだけいいタイプの雑魚。

テンプレか??

 

とりあえず

 

「俺の可愛い部下の場所は?」

 

「あ……?」

 

一瞬のことで見えなかったのだろう。

自分の右腕をみた大男は、顔を真っ青にすると、悲鳴をあげた

 

斬られた事にも気づかない早業。

右腕がゴロンっと地面に転がり、男も痛みで右腕を押えながら地面に這い蹲る。

雑魚の下っ端って言ったところか。

 

それから悲鳴に呼びおせられてか、10人ほどの男や女が出てくる。

どれもこれもボロボロだが、霊圧も戦闘慣れもしているように感じる。

まぁ80区画だからかもしれないけど

 

「へへ、男にしちゃ可愛い顔してんじゃねーか」

 

「やだぁーかっこいい。」

なんて、余裕そうな声。

 

俺は刀を構えた。

 

 

 

_________

 

 

「なんだ、どいつもこいつも、雑魚、チンピラ。

強いと思われるやつもそうでも無いし。

本当にこいつらにやられたんか隊長…」

 

そんなわけないよな。

っと、気絶した七々扇家の奴らを蹴る

文字通り瞬殺で終わったわけだが。

 

「大変ッス!!兄サン!」

 

「?」

慌てたような喜助が駆け寄ってきた。

 

話を聞いた瞬間。俺は瀞霊廷に向かう

 

 

__________

「…嘘だろ。間に合うか…?」

 

”「生き残った隊士が見つかったんスけど…

 

頭領とその他の幹部が()()()()向かった…と!!」”

 

と、喜助から伝えられた。

入れ違いになるとは思わなかった。

おかしいとは思ったが…

間に合うか?いや、間に合わせる。

 

 

────休み無しでようやくたどり着く。

あちこちで霊圧の衝突を感じられる。

全く、どうやって瀞霊廷に侵入したんやら。

 

とりあえずは夜一さんの安全の確保。

すぐに二番隊隊舎にむかった

 

___________

 

砕蜂side

 

維助様が向かってしばらくして

 

「侵入者!緊急招集!___!」

っと侵入者を知らせる鐘が鳴り響く

 

「夜一様!屋敷の奥へ__!」

と、護衛のひとりが襖を閉めようとすると

 

「そうはさせねぇよ」

と、聞いた事のない男の声が響く。

目の前で襖の前に立っていた護衛が血飛沫を散らし地面に倒れる。

 

いつから…?いつから居た?

こんなに…重くのしかかるような霊圧をしていたのに。

声がするまで気配を、霊圧を感じられなかった…

 

まさか一瞬で入ってきたとでも言うのだろうか。

大太刀を背負った長身の男はニヤリと笑った

 

 

「褐色肌が四楓院夜一?あってるよね。」

 

「夜一様お下がりください」

 

維助様から命じられたのは戦闘ではなく逃走。

私の命を掛けて夜一様をここから逃がさなくては。

だが出口も塞がれ、行き止まりに逃げ失せるのは危険である。

 

「夜一様、隙を見て外へお逃げ下さい!」

 

「じゃが砕蜂!お主らを置いては…!」

 

「我らの命は夜一様と天秤にかけるものでは無いのです!夜一様!!」

 

だが、夜一様は逃げようとはせず。足を下げて戦闘の構えをとる

 

「夜一様!!」

 

「砕蜂。儂はお主らを見捨てて逃げるほど落ちぶれてはおらぬ。

自分の身ぐらい自分で守るわ!」

 

その背中は大きく、立派で、一寸の迷いも恐怖も感じなかった。

あぁ、私はこの人のようになれるのだろうか。

 

男も隙を見せない。

あっという間に部屋には私と夜一様だけが残ってしまう。

「似てるね、あの褐色の男も同じように右腕を切り落とした男を守っていた」

 

っと、男が口にした。

 

褐色の男__?もしかして…っと前軍団長閣下を殺したのは。

維助様の母君らを襲ったのは___。

 

その瞬間。隣から物凄い殺気を感じた

 

「お主が…お主がやったのか?」

 

「え?あの男?父親でしょー、殺したよ、馬鹿だよねぇ」」

 

「夜一様。冷静になってくださいませ夜一様!」

そう隣の夜一様に声をかけるも

彼女は冷静さを失いかけて、握りしめた手から血が滴り落ちる。

 

それをわかっているのか、男も夜一様を煽る

 

次の瞬間、クナイが男から飛んでくるが、それを弾こうとするも

 

「ぐっ…!!」

頬にクナイが掠る

 

「砕蜂!!」

 

「そら!がら空きだぜ!」

気を取られた夜一様も腕にクナイを食らう

 

「こんなもので!なっ…」

ガクッと足から力が抜け膝を着く

何故?足が痺れるように…!感覚が抜け、唇も痺れて行く

 

「毒か…っ!」

と、夜一様が腕を抑える。

 

「せいかーい!隠密機動ってめんどくさいよね。毒にならされてるの?

普通少し掠っただけで泡吹いて倒れるのに。

じゃ、このまま時間かけると面倒な奴ら来るだろうし…終わらせるね」

 

クナイを構えた男が夜一様にむけて大きく腕を振り上げる

 

 

 

「維助…様…」

 

ごめんなさい。夜一様を守れず。

逆に守られ…私は…。私は…

拝命された任務もこなすことが出来ないのか…

あんなに、よろしく頼むと、維助様に言われたのに…!

 

 

 

 

 

 

 

「夜一様ぁああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅くなっちゃった」

 

 

 

 

静かに_だが確かに耳に届く低い声。

 

__あぁ、この背中は。

この心強い声を私はきっと一生忘れないだろう

 

 

「維助…様」

 

 

____________

 

男が夜一さんに向けてクナイを振り上げていた。

 

その手を切り落とそうとするが。

咄嗟に手首を返しクナイで刀を受け止められた。

クソ、狭い部屋のせいで勢いが出なかった。

 

「あんた強いでしょ?分かるよ。でも残念もう毒が回ってそのうち死ぬよそいつら」

 

「…」

 

ちらりと後ろをみると腕を押えた夜一さんと、意識が残ってるものの、床に倒れてる砕蜂。

 

「夜一さん動けるか。」

 

「…っ…なんとかの」

 

俺は男のクナイを弾き腹に蹴りを食らわして距離を取らせる

 

「これを、ちょうど二本ある。解毒剤だ、喜助の話なら多分効く!砕蜂を連れて危なくない場所に下がってくれ。

下がりすぎはダメだまだ仲間がいると思うから」

 

俺は注射器を二本夜一さんに投げる。

 

「…っ、わかった維助、気をつけるんじゃぞ」

 

「誰にいってんのさ。大丈夫」

 

 

 

 

「あいたた、そんな細身なのにどっからそんな力出てるの」

 

受身を取ったらしい。そうダメージはあまり入っていないようだ。

男は背中の大太刀を取りだした。

 

「こんな狭い中で大太刀を振るうって?」

 

「関係ないね、全部切っちゃえばいい」

その瞬間に横に大きく刀を振るう男。

ガガガガ!っと音を立て柱も屋根も崩れてしまう。

 

咄嗟に夜一さんと砕蜂を横に担ぎ外に出る。

 

なんつー無茶苦茶な…!!

それに…

「誰が直すと思ってんだ!!俺だぞ俺!!」

 

夜一さんと砕蜂を壁に寄りかからせる。

解毒剤はきいているようで、顔色は良くなっている。

 

「そぉら!!」

大きく開けた場所に来たからか、容赦なく大太刀を振るってくる。

抜刀をしようとするが、俺の間合い寸前のところで刀が離れた

 

「なんか嫌な予感。」と、男が呟くように言った

 

こいつ、勘がいいのか?第六感ってやつなのだろうか。

刀を引っ込めて次はクナイを投げてくる。

 

全て弾いて寄るも距離を取られてしまう。

あまり離れると夜一さん達を守れない。

 

一定距離から攻撃してくるのがウザったい…!!!

 

少しだけ離れてしまった瞬間に。

石燕(せきえん!)

っと男が名前らしきものを呼んだ

 

__瞬間。どこからともなく。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

「嘘だろ?」

すぐに瞬歩で夜一さんと砕蜂の前で矢を全て弾こうとするも、

なにせん量が多い。

 

 

1本も逃さず弾く。

 

けれど

「そら!!!矢に気を取られすぎだ!!」

急接近してきた男の大太刀が俺を捉え___

 

 

()()()()俺の胴体は真っ二つになっているはずだった。

 

「俺の…大太刀を片腕で…!!」 男の驚いた声が聞こえる

俺は左手で大太刀の刃を受け止めた。

だが、少し手先が斬れてしまった

__っと言っても紙で切った程度の浅さ。

 

喜助でも傷をつけられなかった俺の霊圧硬度を突き抜けてくるということはそれなりに強い。隊長格はあるだろうな。

 

と、安心していた所だが。

「なつ…」

少し掠っただけなはずなのに、

まるで蕁麻疹(じんましん)のように、ブツブツとした物が腕に出来て熱を帯びて行く。

 

「はは、俺の刀の毒は超強力!

普通はそれだけでも死ぬんだけど

…なんで立ってられるの?おかしいなぁ…」

 

すぐに足を振り上げ踵を落とすもヒョイッと避けられてしまう。

 

毒を抜こうと、自分の刀で腕を切りつけ血を流し毒を外に排出しようとするが、蕁麻疹は止まらなく顔にまで蕁麻疹が走ってるのがわかる。

 

「はは…もうすぐ死ぬよ。残念残念…楽しかったのになぁ。

もう毒で動けないでしょ?」

っと1歩1歩寄ってくる男

 

「維助…!逃げろ!逃げるんじゃ…!」

 

そんな声が後ろから聞こえてくる。

 

「逃げる…?俺が…?はっ馬鹿いっちゃいけない

俺が逃げるのはめんどくさい講義だけだ!!ばーか!!」

 

 

 

 

 

抜刀術__

 

 

 

 

 

 

「なん…で?」と、掠れた声が聞こえる。

 

第六感だなんて、そんな嫌な予感を感じさせ無いほど早く__

間合いに入った瞬間に予備動作すら見せないほどに早く刀を抜いた。

 

俺の刀は確実に男に一太刀を浴びせ

次に足を切り落とす。

 

次の瞬間には血飛沫が宙に舞って男は地面に倒れた。

何が起きたか分からないというような顔で男は俺を見上げる

 

「なんでだよ…!俺の毒は…!特別性なんだ…!

クナイに着いた毒は薄めたやつで…俺の刃の毒は原液…!!

本来なら!本来なら!死ぬんだぞ!!」

 

俺は男の前でしゃがむ

きっとクナイに薄めたやつを仕込んだのは、クナイが傷むからだろうな。

 

「知ってるか?俺の弟天才で毒の解毒薬作るぐらいすげーんだわ。

でも解毒薬完成できたかどうかってどうやって分かると思う?

 

 

__それは実験に成功してから。

もう原液は喜助が検出された成分から分析し作り上げて。

その毒を俺で試し解毒剤の実験をしたんだわ。

 

わかんない?つまり俺にはその耐性ができてるわけ。

実の兄を実験台にするって、イカれてるだろ?

 

お前は、母を夕寝隊長を部下を殺し父上を傷つけた。

そして大切な人達も___

 

毒よりも死ぬよりも辛い思いをこれから味わうんだ。

今のうちに空を拝んどくんだな」

 

 

抜刀術名前つけようかな__

 

 

___________

 

「兄サン無事っスか」

 

あの後すぐに喜助が部下を引連れて戻ってきた

 

 

「すぐに四番隊を、夜一さんと砕蜂。そしてやられた部下を運んでやれ」

手を上げるとすぐに部下が皆を連れて四番隊に向かったのが見える。

流石優秀だな。

 

「矢を放ったのはそいつか」

 

喜助が倒れた男の隣に弓を背負って気絶してる男を放り投げた。

雑だなおい。

 

「他の連中も、他の隊の人達に倒されてるのを確認したっス。」

 

「そうか、ならよかった」

 

よかった、それは良かったけれども___

「気が晴れないものだな。」

母を殺した、父を傷つけた。優しくしてくれた夕寝隊長を殺した。

そんなやつを倒したのに。

 

気は晴れない___

 

「帰ってなんか。来ないのにな」

 

「兄サン」

 

「喜助がやりたかったか?この男」

っというも、静かに首を左右に振って続けた。

 

「兄サンならこういうでしょう?気は晴れないって」

 

「そうだな…気は晴れないよ」

 

 

 

復讐というより仇討ちは終えた。

 

 

 

母上、夕寝隊長。どうか安らかに__。

 

 

__________

 

まさか紙で切った程度で毒が回るなんて。

これが他の人だと思うとゾッとする。

ちなみに俺の毒はトイレ行ったら流れてった。

 

 

夜一さんも砕蜂も家系上毒にはならされて免疫があったから身体が持った,

毒抜きも終えて後遺症も残らなかった。安心安心

 

そして七々扇家は捕まり追放も危険ということで地下深い牢に入れられる事に。

解決した__のだが

 

「申し訳ございません。維助様…夜一様をお守りするという役を承っていたのに…っ」

 

砕蜂はあれからずっと俺と夜一さんに謝り続けている。

土下座して、グッと握りしめた手は爪がくい込み血が滲んでいる。

 

「大丈夫だって、砕蜂。お前は俺が来るまでちゃんと夜一さん優先で頑張ってくれただろ?夜一さんだけだったら無謀にあの男に突撃してたかもしれない。」

 

「うっ、流石に一人では突っ込まないぞ維助!じゃがまぁ砕蜂。お主はよくやってくれたとは思うぞ」

なんて、ツンデレか夜一さん。

 

「ほら、そんな握りしめたら痛いだろ。」

 

土下座してる砕蜂を起き上がらせて手を開かせる

あーあー、手に爪の跡がくっきり

 

袴に付けてるポシェットから包帯を取りだしてその手に巻く

 

「こ、このぐらい自分でできます!」

 

「いーからいーから、よくやったよ砕蜂。ありがとうな」

 

「はいっ…」

そっと頭を撫でると顔を赤くした砕蜂がニヘラっと笑った。

 

可愛いなぁ

 

_________

 

 

 

「むっ…」

っと維助と砕蜂を見て口を尖らせる夜一に

横に控えていた喜助が維助の方を指さす

 

「夜一サン混ざってきたらどうッスか、そんなブスくれてないで」

 

「ブスくれてなどおらん!別に心臓が痛くなったりなどせぬ…!

 

 

 

あー…!ダメじゃダメじゃ!維助!!儂も撫でるんじゃ!」

 

「えっ、ちょその勢いできたらグエッ」

 

耐えきれなくなった夜一が維助に飛びついて

維助がひっくり返る光景をみて喜助は、はぁっとため息を吐いた。

 

「まぁ、いつも通りで何より…って感じッスね」



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隊長になった夜一さんの話

 

あれから夜一さんは。白哉坊ちゃんの祖父にあたる朽木銀嶺(くちきぎんれい)隊長の推薦により無事隊首試験をクリアし2番隊隊長に任命された。

 

そうして、夜一さんは不本意というか不服そうだったが正式に四楓院家の当主となった。

 

俺も俺で昇進し。

第一分隊・刑軍予備指揮官___

まぁ業務内容ぶっ飛ばして肩書だけ説明すると

隠密機動の夜一さんの総司令官の次に偉い副司令官と

二番隊第四席で第四部隊・特攻隊の部隊長も兼任している。

 

本当は三席、三部隊長をやるはずだったが、監理隊はつまらなそうだからと、喜助に譲った。

そして砕蜂は俺が第一部隊の刑軍に任命しておいた。

数々の死者や負傷者で穴だらけの隊だし色々ごたごたと忙しいが、あと少しすれば落ち着いてくるだろう。

 

「え?ウジ虫の家の強化?」

 

喜助が俺の部屋に訪ねてきて、門の強化を頼んできた

喜助が担当してる監理隊。

地下特別監理棟(ちかとくべつかんりとう)、通称蛆虫の巣、俺はウジ虫の家って呼んでる。

何か巣とか禍々しいというかキモそうだから.....家にしたら気持ち悪さなくなるかなって。

 

まぁ名称はどうでもいいとして、喜助は喜助で問題解決に向けて頑張っているようだ、

仕様書や、問題点を事細かに書かれた書類に目を通す。

 

「なるほど.....岩を掘って脱走とか。よくやるなぁ」

脱獄の映画かな・・・・?と思えるぐらいに

関節を外して窓代わりの柵をすり抜けたとか、スプーン.....匙で岩を掘って穴開けたとか。

 

「度々起こってたんスけど、ボクには権限がなかったもんで」

 

「なるほどね、正式に部隊長になったからどうにかしたい.....と」

 

まず問題のの一つ、門。

入り口であるが、度々門番が襲われてしまうといった問題や、力の強いものならこじ開けられてしまう。

など、色々問題がある。

 

そして仕様書をみると・・・

 

「マジ??」

 

喜助の仕様書は、まぁ原理とかを端折って簡単に説明すると。

目の角膜と霊圧の検出による門の開閉。

登録者以外が認知なく通ろうとすれば結界が展開され。はじかれて出入ができなくなる。

 

セキュリティの問題と、脱走の問題、門番の仕事量削減が見込められる仕様。

 

 

「まぁ兄サンならできますよね」

 

と笑う喜助・・・

 

 

 

ふぅ____

 

 

「いいじゃん、やってやるよ」

 

サイバー感あっていいな、ロマンです。

 

 

_________________

 

あれから一週間で完成させた。

喜助にも手伝わせ、工事用のロボも全投入!

 

異例の速さで大工事を終わらせた、もちろん手抜きはしてない!

洞窟の安全と、空気の確保。

火災時のシステムなんかも全て見直し改善した。

そして喜助の想定するありとあらゆる対応装置も作り。

 

そして肝心の門だが喜助が手を添えて霊力を注ぐと開き。

隠しカメラにより本人確認。

もし霊力、霊子の構造に合わない何かがあれば角膜での再認証が行われる

なりすまし防止システム!うーん!!かっこいい!!!

 

天晴(アッパレ)!さすがっス兄サン」

問題解決に喜助は喜んでいるようだ。

 

俺は技術的な面と少し案だししたぐらい。

喜助は原理と仕様を考えたから実質喜助の作ったものでもある。

喜助も喜助ですごいと思うわ。

 

 

 

「うわ、化粧お化け」

 

「失礼なやつだネ。その胡散臭い顔、浦原喜助の血縁に見えるが」

 

地下にも機械を付けようと行ったら白い妖怪.....いや涅マユリという人物が牢にいた。

うーん見たことあるから多分原作の人かな.....?

 

「浦原維助、ボクの兄にあたるっス」

 

「ホウ、兄・・・気の抜けるような間抜け顔がそっくりだヨ」

 

と、ため息を吐かれた

 

「兄サンは()()()()()()()()でして、外に出る機会があればきっと驚きますよ?」

 

何て喜助が言った瞬間に興味を示したらしい。

 

「嘘.....とは思えないが、君がそこまで評価するのなら本当なのだろうネ

私より優れているのか.....それを試せないのが残念だヨ」

 

何かに火をつけた気がするけど.....まぁいいか

 

 

 

 

 

っと、仕事も楽しく、順調に進んでいた。

そして場所は変わり四番隊。

 

 

「父上」

 

「…維助。迷惑をかけたな」

やつれた顔の父上。

 

右腕の負傷に、親友であると思われる夕寝隊長。母上の死。

それを伝えられた時の父上は絶望で心が壊れかけていただろう。

 

本来は父上はとっくに起きていたんだが。

俺らが父上の精神状態が落ち着くまでと、面会はしなかったのだ。

父上もそれがわかったからか、謝ってくる

 

「父上だけでも無事でよかった。」

 

「あぁ…だがもう当主として威厳もなければ力も不足してる。

だから・・・」

 

 

するとさっきのゲッソリ顔はどこへやら、喜助とそっくりな笑顔を向ける

 

 

 

 

 

「維助___()()()()()となれ」

 

 

 

 

 

 

「……はい??」

 

 

 

_______

 

ってことで浦原維助。自称尸魂界一の技術者で

上級貴族の浦原家の長男にして

隠密機動副司令官兼、二番隊第四席、四部隊特攻隊隊長。

 

 

そして、浦原家の当主という肩書きが追加された____。

 

 

「喜助!頼む変わってくれ!!」

 

「嫌っす♪」なんて、にっこりと楽しそうに笑う喜助。

 

「薄情者ぉぉおー!!あんなに色々作ってやったろ!?」

 

「それとこれは話別ッス。嫌っスもん当主なんて〜」

っと煎餅をバリムシャァ。

 

「俺だってやだよ!俺過労死するけど!?ねぇ!ちょっと!」

 

フィッと目を逸らして鼻歌を歌い出す喜助。殴ってやろうかテメェ

 

 

 

そして、部隊長には世話役がついていたりいなかったり、喜助はいないみたいだけど、

俺は、補佐的な人も欲しくて世話役を希望したら。

大前田副隊長さんが、なぜか砕蜂を俺の世話役にした。

 

「砕蜂、刑軍に俺の世話役だなんて大変だろ?断ってもよかったんだぞ?」

と、せっせと俺の部屋を片す砕蜂に問うと

 

「いいえ!私が副隊長殿にお頼み申したのです!

夜一様が維助様はからくりをいじり始めるとお食事もとらずに部屋も散らかすと聞きました!!私がお役に立ちたいのです!掃除洗濯、何でもお任せください!」

 

と声を上げながら詰め寄るものだから断れなかった。

 

いいタイミングでお茶やをくれたり、時間を教えてくれたり、邪魔もしないのでまぁ助かっている。

俺の部屋の隅で控えてる砕蜂をちょいちょいと招いてちゃぶ台で休憩をする

 

「砕蜂は働き者だな」

 

「そ、そんな滅相もございません・・・維助様のお役に立てるなら.....」

 

と顔を赤くして俯く。

かわいいなぁ

 

 

 

砕蜂の頭を撫でていると、スパァン!!!!と開いた襖

こんな乱雑に俺の襖開ける人は一人しかいない。

 

「夜一さん、襖壊れるんですけど?」

 

「維助!!鍛錬に()くぞ!暇でかなわぬ!」

 

「話聞け!!あんた大前田副隊長から逃げて来たろ!暇なわけあるか!!そもそもおれだって.....グエッ!!」

 

遠慮なく部屋に入ってきたかと思うと、俺の首根っこをつかんだ夜一さんは俺を引きずるようにして歩きだす

 

 

「締まる!締まってる首!!おいゴラァ喜助!てめぇも道連れだ!!」

 

引きずられている途中で喜助とすれ違ったので喜助の足をつかむと勢いよく顔面からすっころんだ喜助。

ガフッ何するんスか兄さん!ちょ、足離してください!!」

と鼻を抑えながら引きずられる喜助。

 

「ははは!お主ら重いのぉ!よいよいいい運動じゃ」

 

「お、お待ちください夜一様!維助様!」

 

夜一さんに首根っこ掴まれて引きずられる俺

そんな俺に足首掴まれて引きずられる喜助に

それを追いかける砕蜂という構図である。

 

 

_________________

 

「そうそう、砕蜂は物覚えいいなぁ」

 

砕蜂が剣術を学びたいというので、基本的な物だけ

俺の型は自己流すぎるし体を痛めるのでマネはするなと言ってるけど、

バリバリ真似してくる、こりゃ喜助に教わらせた方がいいかな.....

 

 

「維助!儂と組み手するぞ!準備せい!」

 

 

まぁそんな喜助は夜一さんにのされて地面に転がってるんだけど、

 

 

「はいはい、今行きますよお姫様」

 

 

 

 

 

 





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感想ありがとうございます。
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恋愛話と技名の話

 

「俺の昇進と、惣右介の昇進に!!かんぱぁぁぁい!!!」

っと、騒がしい居酒屋でさらに騒がしい俺の声が響く。

 

「はぁ」

ため息を吐きながらも他の人の目があるからか一応乾杯してくれる惣右介

半猫被りモードである。

今日は騒ぎたいからお高い系じゃない居酒屋でーす

 

「にしても副隊長か〜、一気に昇進したな」

 

五番隊隊長はなんか、この前の七々扇家の事件で亡くなったらしい。

全然知らんかったわ…

それで、京楽隊長が平子副隊長さんを推薦し、夜一さんと同じタイミングで五番隊隊長に昇進。

そして平子副隊長…じゃなかった平子隊長の命により惣右介は副隊長に任命されたという。

 

猫かぶりを見抜いた平子隊長さん、警戒してて俺にまで忠告するのになんで惣右介を副隊長に任命したんだろうか。

警戒してるからこそ傍におきたい的な…?

 

でも惣右介を見た感じ、嫌だとか困るとかいう感じはしないけど…。

想定内というか計画通りなんだろうな。

 

「部隊長になると給料上がるんだろ?いいなぁ、でかい部屋貰えるらしいし12畳だっけ?俺も俺で広くなったけど全然足りん…!」

 

「そんな12畳全部使わないよ。本を少し置くぐらいかな」

 

「へぇ、勿体ない…欲しい家具があったら言えよ!

お友達割引で安く便利な家具作ってやるよ!

音の立たないスムーズに開けれるストレス0引き出しとか。

斬魄刀も喜ぶ!快適な刀掛け!とか_

重要な書類にいかが!?本人の霊力でしか開けれない引き出し!とか」

 

「段々と興味引きそうな商品紹介をするようになったね。瀞霊廷で真っ当な方の商売でもしたらどうだい」

 

「いや…」

席も離れてるし周りの客は酔ってるけど一応声を小さくする。

 

「隊長でもない限りあんまり変なの作って広まるとさ。四十六室が俺を危険分子とみなす可能性あるんだよね。修理屋とか家具屋とかそういうのは出来るかもだけど何があるかわかんないからさ…知り合いにだけこっそり商売してるわけ。」

 

「へぇ、君にも苦労する事なんてあるんだね。それにそういうのを気にするとは思わなかった」

っとサラッと毒吐く惣右介

 

「失礼だなぁ、俺だって苦労ぐらいするさ、給料上がったけど仕事増えたし。それに俺から機械類をいじり回すの取り上げたらきっと俺は生きていけないから」

 

給料は9席の時の倍は貰えるし、隠密で使える機械・道具類なんかは経費で落とせるようになった、けど九席の倍仕事増えた。

 

「二番隊、第四部隊の特攻隊だったかな」

 

「へぇ、機密じゃないにしろよく知ってたね普通他の隊の構成とか知らないだろ」

 

「それは君が他の隊にあまり興味無いだけじゃないかい?君と一緒にしないで欲しいな。特攻隊とは主に何をするんだい?」

 

「まぁ、バリバリの戦闘部隊さ、戦闘して情報を集めて5部隊に引渡し。

虚から犯罪者、脱走者から何まで全て戦闘で解決させる部隊って感じ。色々端折(はしょ)ったけど…まぁそんな感じ

特に二番隊の席間の中で殉職率の高い部隊に俺は志願したんだ、監理隊はつまらなそうだし。」

 

「まぁ君にはピッタリの業務かもしれないな」

ほかの部隊も戦ったりするけど、あまりに凶暴すぎるとか危険すぎとか言った虚や犯罪者に対して先行し前線で戦うのが目的だ。

他の部隊と合同になることが多いかな?

 

1番殉職率の高い部隊だが、俺の部下は俺自ら鍛えた精鋭達で構成してるから殉職率は下がるだろうよ。

 

「あれぇ〜こんな所で呑んでたのかい。」

 

しばらく他愛もない話…と言っても俺がベラベラ話してるだけだったが。

そんな時.気が緩くなるような声が聞こえそちらに目を向けると

そこには片手を上げた京楽隊長がヘラッと笑って立っていた。

 

「おー!京楽隊長じゃないスか〜お久しぶり」

 

「京楽隊長。こんばんは」

 

姿勢を正してペコッとお辞儀をする惣右介。

こうしてみるとまじで真面目な優等生って感じに見える

何かすげーわ、うん…

 

「いーのいーの惣右介君。今は業務中じゃないしさ気を楽にしてよ僕も一緒していいかな?席空いてなくてさー」

 

「いいですよー!ぜーんぜん構いません」

惣右介の隣に座って日本酒を頼む京楽隊長。

 

「2人とも昇進おめでとう。いやぁ早いもんだね」

 

「まぁ、もう何年も経ってますしねぇ〜」

 

本当に時が経つのは早いものだなんて爺臭いことを考える。

もう人間で言えばもう寿命の1.5倍は生きてるから爺である事には間違いないんだろうけど。

 

しばらく呑んでたら突然

「そういえば維助君はどっちと結婚するんだい?」

と酒で酔って顔を少し赤くした京楽隊長が言い出す。

 

「ブッ!ゴホッゴホッ」

吹き出しそうになってこらえたせいで酒が変なところに入って噎せる俺

 

「な、なんですか、いきなり」

 

「いやぁねぇ?僕も一応貴族だからそういう話は入ってくるのよ、何でも下級貴族令嬢とあの四楓院夜一の2人と婚約してるって」

 

ほんと、どこからその噂流出したんだ…

 

「どちらも実質解消したみたいなもんスよ、幼い頃親が決めたのが夜一さんで、夜一さんが当主になると決めたから。

長男で次期当主だった俺は…まぁまた見合い話が来て…みたいな」

 

「でも正式に解消した訳じゃないんだろう?もしかしたらあちらさんは結婚を申し込まれるの待ってるのかもよ?」

 

俺は少し考える。

「うーん…それは無いんじゃないスか?」

 

「おや、それはどうして?」

と、お猪口(ちょこ)を傾ける

 

「夜一さんは嫁入りする気ないから婚約保留してた訳ですし、俺も俺で当主になったから婿入りもしないし。

砕蜂とはまぁここだけの話ですけど。

表向きで婚約者を演じるって同意の元って話し合っての事ですし」

 

「ふぅーん、でもぶっちゃけるとどっちが好きなの?演じてたとしても保留にしてたにしても、そういう気ぐらい出てくるんじゃない?」

 

「好き…うーん…。二人とも可愛いとは思いますけど。好き…好きねぇ。

友人的に部下的には大好きですよ二人とも。でもそういう好きかと言われたら…ちょっとわかんないかなぁ…」

 

「僕から見ると、まるでその気持ちに気づかないようにしている…ようにみえるんだよね、どうも」

っと、まるで確信してるかのような口調

 

「さぁ…それはどうですかね。もう二人とも長年一緒にいるわけなんでドキドキとかキュンキュンとかもないですよ。

可愛いなぁとは思う時ありますけど、でもそれは他の女の子にも思うことですし。

それに俺少々トラウマがあってそういうの無意識に避けてるのかも。

なんか女の子から告白されたりすると嬉しい半面怖くなっちゃうし」

 

他の隊の女の子に告白されたけど院生時代の事があって、丁寧にきちんと断ったなぁ〜。

トラウマなかったら、今でも女の子と遊んでただろう。

 

「へぇ…まぁ楽しみにしてるよ。よっ!モテモテ優男〜」

と、笑う京楽隊長。

何を楽しみにしてるんだ?

 

質問攻めをのらりくらりと適当に流して

それから惣右介も巻き込んでタイプの女の子の話をしたりして皆酔っ払って帰った。

まぁ惣右介は酔ったフリだろうけど。

 

___________

 

 

「もう!維助様!こんな夜遅くに…ってお酒臭い」

っと鼻を摘む砕蜂に出迎えられた

 

「あれー砕蜂。こんな遅くまでどうしたのさ」

 

「維助様がおかえりにならないから待っていたのです!夜一様より重要書類をお預かりしていて。期限は明後日でいいそうです」

 

砕蜂が差し出した紙を受け取る

 

「わざわざ待ってたのか、悪かった」

頭をポンポンと撫でると顔を赤くする。可愛いなぁ

 

好き…好きねぇ…

確かに砕蜂は好きだし可愛いけど、そういう好きかと言われたら、マジでわかんない。

 

どう違うんだろうか…

 

それに俺は身軽がいいし子供も欲しいと思ってない。

それに機械弄る暇を他に当てるのも少し迷ってしまう俺だし、

それはそれで女の子に失礼だしいい気分では無いと思う。

 

だから院生の時代適当に遊んで適当に関係が切れてみたいなのにハマったんだろうな…。

 

恋愛ってのは難しいもんだな

 

「んで、なんでそれをボクに話すんスか?」

 

っと眠そうな喜助。

砕蜂を帰らせたあと俺は喜助の部屋に行って喜助を叩き起して話し始めたのだ。

 

「ってか酒臭い。兄サン酔ってますね?」

なんだかんだ話を聞いてくれる喜助は優しい!

やっぱこういうのは俺を知り尽くした喜助に相談するのがいいよな

 

「ボクも身軽なのは賛成ッス。そういう責任とか負いたくないスもん」

 

「だよなぁ…。ってかそもそも1人の女の子にしか目を向けないとか俺無理かも…最低だけど、爆乳見たらそっち見ちゃうもん絶対。

あと、世に聞く嫉妬束縛とか俺無理だわ…

機械と私どっちが好き!?って聞かれたら機械って答えて殺されそうな未来見えるし」

 

「それは…まぁ、正直すぎますけど、それをわかってて人に身を寄せないのは兄サンの良心の部分っスよね」

 

「なんだよ、良心全然無いみたいな言い方しやがって」

 

「ボクと似たようなもんじゃないスか。良心はあるけども機械のためなら手段も選ばない技術者」

 

「お前が俺に似たんだよ。お前も研究心を満たすためなら手段選ばねぇだろ特に実の兄を実験台にするぐらいには」

 

「あは?褒められちゃいました?」

「褒めてねぇよどこが褒めてんだ」

どこをどうしたら褒めてるように聞こえたのか。

 

(ことわり)に干渉して、危険であるとわかってるのに危ない装置を作ったりするぐらいには俺も喜助もそういうのは欠けてるんだろうな。

さすがは兄弟と言ったところか。

 

それはそうと___

「あのトラウマさえなければなぁ」

 

トラウマはまぁ…洗脳されかけ事件の話である

 

「いやでも、あの事件のおかげで兄サンは相手女性の気持ちを考えるようになってそういうのを避けたり、遊んでも付き合うとかいう行為には至らなくなった訳ですし。」

 

「まぁ、それもそうだよなぁ…感謝してるにはしてるよ、もう名前も忘れたあの子。」

 

「相変わらずッスね普通名前わすれませんよ」

 

「俺だって最近は覚える努力してるよ。成長したもんだよ俺。人の名前覚えれるようになったんだから」

 

「そこ威張れるとこじゃないッス」

 

 

_________

喜助side

 

いびきをかきながらボクの部屋で爆睡する兄。

 

顔を赤くして酒のアルコール臭を漂わせて入って来たかと思えば

悩みや考えをベラベラ話す、酔った時の癖は変わらぬまま。

「まぁ、明日には話したこと忘れてるんでしょうけど」

 

悩みやら考えを話して満足しても明日には忘れてるので意味無いようなものだが、まぁ気持ち的な問題なのかもしれない。

 

兄は千寿サンの件から女性に対して億劫になってそういう話をされると避ける節がある。そういうのを本気で話始めるのは酔った時ぐらいなものだ。

 

弟であるボクの目から見ても無意識というか本能的に夜一サンの好意や砕蜂サンの好意を避けているような気もする。

恐らく本当に気づいていないんだろう。

 

夜一サンらが好意を伝えた時、兄はどんな反応をするだろうかと考える、

人の気持ちってのは研究しても正解も規則性もないから面白い反面。めんどくさい。

けれど___

 

第三者から見ているのは面白い。

 

 

 

____________

 

頭痛と共に起き上がる。頭いてぇ…

呑んで帰ってからの記憶が無い。

んでおれきすけの部屋にいんだよ。

座布団を枕にしてたからか首痛いし

 

フラフラと喜助を起こさないように部屋に戻り、

自分の部屋に取り付けた洗面所で顔を洗う。

 

そして無造作に置かれた橋姫に謝りながら刀掛けに起き直す。

そういえば抜刀術の名前付けないとなぁ…

 

かっこいい技名がいいな…。

始解した時の能力じゃないので言霊関係ないから別に技名叫ばなくてもいいわけだけど…

 

いや。でも技名声に出すのってかっこいいじゃん!?前世だと厨二とか思われるけどこっちの世界からしたら普通みたいな感じだし??

 

抜刀術…うーん。

俺ネーミングセンスないんだよなぁ…

昔飼ってたペットもわんちゃんとか猫ちゃんとか。トカゲちゃんとか

金魚なんて(ぎょ)ちゃんって名前付けてたし…

 

機械も1号機2号機だしなぁ…

 

夜一さんは瞬神ってついてたよな。2つ名だけど

早業__瞬…瞬抜刀?

 

瞬刀(しゅんとう)…うん!瞬刀にしよう!!

わかりやすいしなにより俺が忘れない!!

 

瞬刀抜刀術(しゅんとうばっとうじゅつ)_三連撃__!!うん、我ながら厨二感あっていいな。

 

技名叫ぶのはロマンです。

 

橋姫がダッッサって言ったけど気にしない



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猿柿ひよ里と戦った話

 

フラフラと瀞霊廷内を練り歩く俺。

俺の手には新しい工具。と部品とガラクタ。

力で色々ねじ曲げられても。小さなネジとかは流石に工具使わないと無理だし、分解にも必要だ。

ガラクタはいつも粗大ゴミが廃棄されている所から漁ってきた。

たまに掘り出し物あるんだよね…

 

風呂敷に包んでルンルン気分の俺は、なんとベタな事に___

 

曲がり角で女の子とぶつかってしまった。

それも小さな___

 

「っっ__!!なんやねんボケ!」

 

「あ、すまん」

 

ドスッとぶつかった女の子は勢いよく尻餅を着いてしまって。

起き上がらせようと手を差し伸べるも

バシッ!!っと払われ、

立ち上がった女の子はぶつけたであろう鼻を赤くして俺を睨みつけていた。

 

「きぃつけや!!このハゲ!!」

っとブチ切れ?ている。

 

「ほんとごめん〜。大丈夫、お嬢ちゃん」

「おじょ…!?!?オマエ失礼なやっちゃな!!!お嬢ちゃんやないわ!!!」

 

よくよく見ると、怒って顔歪んでるけど…

可愛いな。うん。

 

「俺は浦原維助。お嬢ちゃんは?」

「だーっ!!お嬢ちゃんちゃう()うてんねん!!ウチは猿柿ひよ里。

オマエ、ウチの事知らんて新人やろ!この副官章が見えへんのか、ハゲ!」

っと腕をグイッと捻らせ見せつける副官章

 

まぁ新人じゃないけども。

 

「へぇ…副隊長なんだ〜よろしく〜」

 

「ダァァァ!!なんでそんなヘラヘラしとんねん!!そこはもう、スミマセンでしたっ!って頭下げるとこやろ!!」

 

っとァ”ァ”ァ!!っと言いながら頭を掻きむしる

うん。この子面白いな!!!

 

「えーと、ひよ…ひよこちゃん?何が落ちてるけど、君のじゃない?」

 

「ひ!!よ!!り!!ひよ里()うとるやろ!あんた耳ないんか!!!」

そばで落ちてる何かを拾い上げる

 

「からくり人形か」

ボロボロのからくり人形で、ゼンマイを巻くと鼓を叩く人形だった。

 

「!!!触んなや!ハゲ!」っと言って俺の手から奪い返す。

 

「それ、壊れてるよな」

 

「…せや。ウチが壊したちゃうねんぞ。急に動かなくなったんや」

 

「へぇ。何でそれを外に持ってきたんだ?」

 

「修理や修理!修理に出してんねんけど…無理って言われたんや!

ボケ!普通わかるやろ!」

 

いや分からんって…

 

「壊れてんのか。俺直そうか?」

 

「ハァ!?アンタが直せるわけないやろ!寝言は寝ていい!」

 

「まぁまぁ、俺これでもメカ…カラクリには詳しい質なんだ。ほら貸して」

そう言って手を差し出すと、疑い半分っと言った感じだが渡してくれた。

俺は地面にに胡座をかいて、懐から工具を取りだして分解する

 

「おい!バラバラになったやんけ!」

 

「中を見ないとわかんないだろ?あー…大丈夫、これなら治るよ。」

複雑な歯車だからか、修理屋は直せなかったんだろうな。

それともそもそも分解できる技術持ってないとか有り得るかも。

これ現世の人形だなぁ多分。

歯車のかみ合わせを直して。他の緩んだ所や曲がったところを治して

ゼンマイを巻くと

 

ポンッ!

 

っと人形が鼓を叩いた

 

「っ〜!!!うせやろ!?全然動かんかったのに、数秒かそこらで直ったんか!?」

っと人形を上に掲げてキラキラした目を向ける

 

「良かった良かった。それ結構な高級品だよね。」

 

「せや…ウチの隊長に貰ってん。」

ぎゅっと人形を抱きしめる。

相当大切にしてたんだな。

 

「俺は自称機械技師だから…あーカラクリ技師?壊れたものとかカラクリ以外に簪でも櫛でも何でも直すし作れるから困ったことあれば二番隊に来なよ」

 

「二番隊ィ!?あんな裏でコソコソしてる奴がカラクリ作れんのか!二番隊なにしとん!」

「いや、カラクリは二番隊関係ないっていうか…俺の趣味だから。」

 

「ほん!なんでも直せるんやな!」

 

「全く同じには復元できないものや、物によっては日を取るけと、一通りなんでも」

 

「ゆうたな!今度もってってやるわ!」

ふんっ!と言って帰っていったひよ里ちゃん。今までにない面白い子だ

 

 

____________

 

「あー大量だね」

 

「どや、これでも治せるんか!」

 

後日、風呂敷に包まれた大量の荷物を持ってきたひよ里ちゃん

 

「へぇ、火縄銃か古いな・・・・

それと、歪んだ煙管…うん全部治せるよ、大体・・半刻(一時間)ぐらい待ってて。」

 

風呂敷を持って俺は、隊舎に戻る。

 

 

まずは分解、どこが壊れてるのか、不調なのか…うん錆びてるな。

でも部品の破損はなし、錆のせいだろうな。

火縄銃の紐を新しくして錆も落とす。

接着剤で櫛は直し、欠けて復元できないものは、似た物資やパーツできれいに継ぎ合わせ、やすりと塗装、

ついでに磨いて、ちょうど1時間。

6個ぐらいの破損したり故障したり、割れてたものをきれいに直した。

うん、楽勝楽勝

 

門を開いて出ると、仁王立ちしてるひよ里ちゃんと、金髪のサラサラヘアーを下ろした平子隊長がいた

 

「なんや、まさか直す()うーといてやっぱり直せまセンデシターなんて()うんやないやろな!」

 

「まぁ見てみて」

 

俺は風呂敷を差し出すと、バッと開いた。

 

「うせやろ........?」

 

「おー!俺の飾りの銃綺麗になっとるやんけ」

そう言って銃を手に取る平子隊長

 

ぐぬぬぬっとなぜか怒っているひよ里ちゃん

 

「ほら、ひよ里。礼がさきやろ、曳舟隊長さんからもろた人形直してもろたんやろ」

 

「っつーー!!!わぁとるわ!!ぼけ!・・・・おーきに」

そう言ってそっぽ向いたひよ里ちゃん。うんかわいいなぁ

 

「俺の銃も直してくれてあんがとさん、ひよ里がきゅーに壊れたものあらへんかって騒ぐもんでな」

 

「いいえ、いいんスよ。」

 

「んや禿げしんじ、こんな胡散臭いやつと知り合いなんか!」

胡散臭いって…

 

「んや、名前知っとるやろ?浦原維助。アレや、剣の天才」

 

「はぁ⁉剣の天才だぁ!?こんのひょろ長の胡散臭いハゲが剣の天才やと!!ホラ吹いてんちゃうぞ!」

ビシっ!っと俺に向かって指さす

 

「いやいや、ホラちゃうで。アレや院生の時に中級大虚を一人で倒したつー化けもんやで」

 

バケモンって…。

 

「アジューカス…を…?認めへん!こんなヒョロ長がそんなん認めへんぞウチは!!なんなら今から戦えや!ホラ吹いてるって認めるまでボコしたる!!」

 

「そらええなぁ!俺のとこの訓練所つかい」

 

「えぇ…?」

俺を置いて勝手にどんどんと話広がってるんだが…?

 

 

_____________

 

「どっからでもかかってきー!!」

 

結局ほぼ無理やりに五番隊に連れてかれて

ひよ里ちゃんと向き合う。

 

致し方なく斬魄刀を抜くと、合図もなしに突っ込んできた

 

上にとんで振り下ろすようにした刀を下から受け止め

 

キィンッと耳をつんざくような金属音が響く

 

「へぇ、やるやんけ」

意外そうな顔をした後、ニヤリと笑って俺から距離を取るひよ里ちゃん

 

あんな小さい体でも結構力もあるし

今弾いただけで結構距離をとるほどには俺の実力がそこら辺の雑魚と違うと見抜いた。

さすがは副隊長と言ったところか。

 

「ほら、ボコすんでしょ、来なよ」

っと指をクイッと曲げて煽る。

 

「っ…!ナメてんちゃうぞ!このハゲ!」

 

今までの言動通り、彼女は熱くなりやすいというか煽られやすい性格のようで、無鉄砲に正面から突っ込んできた。

 

俺は間合いに入った瞬間彼女の攻撃を避けて足を払い転ばせると首筋に斬魄刀を滑らせた。もちろん峰で

 

「なっ…」

っと、首筋の斬魄刀に冷や汗をかくひよ里ちゃん

 

「何が起きたかわかんなかった?もういいッスか」

っと、手を離すと、ペタンっと座り込んだひよ里ちゃん

 

「っ〜〜!!!認めへん!今のはまぐれや!!まぐれ!!」

 

もう一度や!!っと立ち上がってまた突っ込んでくる。

これ終わるのか?

 

かと言って戦闘不能になるまで女の子をボコボコにする訳にも行かないので、なるべく傷つけないようにして参りましたと言わせようとするも認めてくれない。

 

「はい、また死んだ」

切っ先を心臓部分に当てて。何度目かの詰み。

 

「っー!まだや!!」

そして何度目かの再戦

そしていつの間にか始解までしてきてるし。

 

 

だが、それを止めたのは___

 

「ようやく止めるの…??」

遅くない??平子隊長。

 

ガシッとひよ里ちゃんの首根っこ掴んでとめた平子隊長

 

「んやねんシンジ!まだ終わってへんぞ!!」

 

「終わっとるやろ、ひよ里実戦なら何回死んどるんや」

 

「それは…っ油断や!油断!!」

 

「油断してないんは自分がよーわかっとるやろ。維助は汗ひとつ傷1つおうてへんぞ。負けを認めるのも大人になる1歩やで」

 

「んや……」

何かを言おうとしてるひよ里ちゃんに俺と平子隊長は首をかじける

 

「ウチがガキみたいに言うなや!! !禿げシンジ!」

 

「ゴフッ!!」

下からのものすごい勢いのアッパーが平子隊長の顎に直撃して吹っ飛ぶ平子隊長

 

うわ、痛そ

 

「認めへんからな!!ボケ!!首洗って待っとけや!!」

なに、俺殺される…??

 

そのまま地団駄をふんだひよ里ちゃんは訓練所を出ていった。

 

「あのアホ…!舌噛んだやんけ…!!」

 

いなくなったひよ里ちゃんの方向をギリッと睨む平子隊長。

 

「大丈夫ッスか?」

 

「いつもの事や、いつもの、すまんなぁ…ひよ里あぁ言い出したら聞かへんくて。俺もあんたの剣術見たくて止めんかったのも悪いんやけどな」

 

やっぱり故意的に止めなかったのかと、小さくため息を吐く

 

「んで、始解せんかったん?ひよ里が始解した時点で始解すれば良かったやんけ。出来へんわけちゃうやろ?」

 

「まぁ、剣術での戦いで俺が始解したら能力が強いから!って言われて長引かれても困るので」

 

「あんたええ性格しとんな…だから最後まで始解せんかったんやな。剣術でって言われたから剣術でノシたんか…」

 

事実半分、始解はしなくても勝てるという余裕半分。

認めてもらいたかった訳では無いけど。俺も俺で熱くなって意地になってたのもあるのだろう。

 

 

それからというもの_______

 

 

「ハゲ維助!!今日もやるど!」

 

「えぇ、俺暇じゃ「あん?」はいはい…」

 

二番隊に押しかけて俺を呼び出したかと思うと

毎日のように命狙いに来てる並の戦いを挑んでくるようになって

 

毎日のように砕蜂が呼んでくれた平子隊長の制止が入り毎回ボコボコにされてる平子隊長。

 

そしてひよ里ちゃんの

 

「このハゲ!」

っていう捨て台詞から

 

「殺したるからな!!」

に変わってマジで殺意マシマシ。

俺特に何もしてないんだけどなぁ…

 

まぁストレートな正直な性格は嫌いじゃない。

 

猿柿ひよ里との出会い



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惣右介に相談されたのと増えた弟子の話

 

惣右介とは知り合って約十年も経った。

あの闇商売してた頃が懐かしい。

 

定期的に流魂街の誰にもみられない場所+俺の機械フル活用で俺と惣右介は剣を交わしていた。

惣右介はここ数年遠慮なしに全力で鬼道ぶっぱなしてくるし、急所をガチで狙いに来ていて少しヒヤッとする時もある。

俺で黒棺を試そうとするのはやめて欲しい、今のところ失敗で終わってるけど。

 

俺はまだ剣と白打だけで霊圧すら解放していないけど。それでも、この状態で渡り合える人がいてくれて楽しい日々を過ごしていた。

 

今日もお互いボロボロで、俺は大の字になって地面に転がる。

惣右介は膝を立てて木に寄りかかるようにして座っていた。

 

 

すると突然

「──はははっ…」

っと聞いた事のないような笑い声。

 

楽しそうな笑い声が聞こえてそちらに目を向けると。

惣右介が天を仰ぎながら笑みを浮かべていた。

 

「んだよ。いきなり笑って怖」

 

って言うと、俺の声には返答せずまるで独り言のように呟いた。

 

「君ともう少し早く…出会っていれば変わっていたかもしれないな」

 

っと、なんの事か分からない。俺は首を傾げる

 

「だが…もう遅い。()は…アレを殺さなくては」

 

アレとはなんだろうか…聞いても多分こたえてくれないだろう。

するとスタッと立ち上がった惣右介が、俺の傍によった

 

俺も身体を起こして立ち上がる

 

「…世界を作りかえる気はないかい?」

 

「──はい??」

そうすごい間抜けな声が出た。

 

「…いや、なんでもないさ。君はきっとこんな話をしても断るだろう。この言葉は()()()まで取っておくよ」

 

本当に何を言ってるんだ…?(大混乱)

 

「私は君を信用していないが実力と技術力は信用している」

 

「知ってるよ、何度も聞いた」

 

何度も何年も聞いた言葉。

 

「………なぜ君は他人を信用出来る?下級の者ですら、自分と肩を並べられない者ですら…なぜ他人に背中を預けれる」

 

「ほんっっっとうに今日どうしたんだよ。

 

でもまぁ____

完全に心の奥まで信用できるだなんて、無理かもしれない。

 

でも俺は裏切られてもどうにかできる力を持ってるから。

自分を信用できるのは自分だけだろ?俺は自分の力を信用してる。

どうにかできる力があるなら他人を信じても損は無いと思うんだよ。

だから俺は他人に背中を任せ、任務も任せれる。

 

あ'''ぁぁ俺説明とかそういうの苦手だけどよ。

 

例え一人でどうにかできる力を持ってたとしても、1人って寂しいんだよ。

ご飯も楽しいも、他人と共有する方がいいだろ?

前々から言ってるじゃん一人で飯食うより二人で食った方が、皆で食った方が美味いって。」

 

「君はいつもそれを言うね」

 

「1人で剣を振り回すより2人で振り回した方がいいだろ?って言った方が良かったか?

一人で素振りして楽しかったか?俺と剣を交えてお前楽しいって言ったよな。

俺はそれをご飯で例えたんだよ」

 

 

「…そうか」

 

説明下手くそだから抽象的になった部分あるけど。惣右介には何となく伝わったらしい。

 

本当に今日はどうしたんだか。

 

惣右介はここ数年で一人称をたまに変える時がある。

きっとそれが彼の素なのだろう

あのラスボスかは分からないけど。BLEACHの敵キャラであった彼は警戒心が高く何も信用しないという印象を受けていたが。

 

素を出しているということは、少しは信用して貰えているという事なのでは…?

っと思ったけど口には出さなかった。

 

「──そうだ。新たに作って欲しい道具があってね」

 

「おー、どんな仕様?」

 

_________

 

惣右介から頼まれたのは魂魄を()()()()ことが出来る道具。

身体は傷つけず、また自覚もないように削り取れるようにして欲しいというなんとも無茶苦茶なものだったが。

 

おれは七々扇家の囚人で実験して成功させ。

1週間で作り上げた。

 

「ほう…これが」

 

見た目は銀で出来た匙のように見えるけど。

魂魄を削り取れる代物

 

「いやぁ、小型化と軽量化が大変だったわ」

 

使い方を説明していつも通り大金を貰って。

惣右介はなにか企んでいるようにニヤリと笑ってそのまま去っていった。

もちろん血判契約はしてる。

 

にしても…魂魄を削り取るなんて何をするんやら。

まぁ魂魄とか鬼道とかそういう系は喜助専門だし、俺が聞いてもよくわかんないだろうけどね。

 

惣右介が敵なるとわかってても手伝う理由。

俺と喜助はその研究が、その技術が(ことわり)に干渉してても非人道的であったとしても。

作ってみたいという強い欲求がある。

 

──分かっているのにやめられない。

 

俺が引き金でもしかしたら原作が

世界が本当に滅んでしまうとしても…

 

まぁ、俺はほぼ原作覚えてないから惣右介がどうやって倒されたのかも知らないしその流れも断片的だし…。

原作が変わってしまった!って考えるほど知識ないのが悔やまれる。

 

いや…別に原作沿いにこだわる必要ないか…?

俺がもうイレギュラーなわけだし…そうだよ、もし俺の機械のせいで世界滅びそうになったら俺が何とかすればいいよな…??

 

そうだ、自分で責任取ればよし。

うん!後のことは後で考えよ

 

 

そう決心して俺は帰路につく

 

________

 

「おや?」

 

二番隊隊舎に向かうと何やら騒がしい。

人集りが出来ていて、俺らの隊士と違う隊士で何やら口論…?

よくわかんないけどとりあえず。

 

「砕蜂」

 

そう呼ぶとスタッと瞬歩で膝をついた砕蜂が現れる。

 

「これ、どういう状況?なんか騒がしいけどよ」

 

「それが…十番隊の隊士が維助様をだせと…」

 

「十番隊の隊士…??」

 

十番隊に誰か知り合いいたっけか…。

それとも俺なんかしたか…?

すると──

 

「浦原維助を出してくれ!!」

 

「ですから!浦原四席はご不在で__!」

っと離れたここまで聞こえる。

 

「声でっっっか」

 

よく見ると人混みの中心に羽交い締め(はがいじめ)された少し若い青年がいるのが見えた。

そいつは見たことないしあれが十番隊の隊士か…本当に記憶にないな。

 

俺が近寄ろうとすると砕蜂に止められた。

「おやめ下さい維助様!!あのような者…!もし維助様に何かあれば…」

 

「いやいや大丈夫だって、ここで大騒ぎする方があれだろ?話ぐらい聞かなきゃ

 

はーい、解散解散」

 

俺が割り込むようにして散らすと、2番隊の隊士はすぐに離れていく。

 

「あんた……!!」

っと、羽交い締めにされてた青年が落ち着きを取り戻す。

 

「俺が浦原維助、あんまり騒ぐなよ話ぐらい聞いてやるさ」

 

とりあえず人数を散らして。静かな店で話を聞くことに

なんか怪我人も居るっぽいから砕蜂に任せた。

 

_________

 

 

「んで、俺に用だっけ」

 

若い新人ホヤホヤって感じの青年。

まぁ死神は成長速度まちまちだから一概に若いとは言えないかもだけど。

 

 

「俺は二番隊四席浦原維助。はい、俺は紹介したぜ。そっちは?」

 

「……俺は志波一心十番隊所属でまだ席は貰ってない」

 

 

「志波…あぁ、あんた空鶴ちゃんとこの?」

 

五大貴族が1つ志波家。

だが流魂街に拠点を構えるなど貴族からしてみれば自由奔放で、

没落しつつあり貴族の間ではもう既に四大貴族なんて呼び方されてる。

 

俺もそう覚えてたんだよな。死神になって初めて五大だったっての知ったな…まぁ俺の場合興味なかったからなんだろうけど。

 

夜一さんがよく喜助と志波家に遊びに行ってるらしく話は聞いてたので名前を聞いてピンと来た。写真も見してもらってたけど…

 

こんな青年いたかな__

 

「俺は分家で知らねぇのも無理ねぇよ。俺は貴族関係できたんじゃない……です」

 

「ふーん。そうかそりゃ悪かった。それで何用?」

 

すると、バッ!!と机に両手をついて頭を下げた

 

「俺を弟子にしてください!!」

 

「えぇ……」

 

()()弟子の志願か……っとため息出そうになるのをこらえる。

 

「ミシンくんだっけ……いや俺弟子はもう取らないって決めてて……」

 

とりあえず頭を上げてもらうが。

 

「一心です。お願いします!!俺を強くしてくれ!

……じゃなくてください!!」

 

「いや……うーん」

 

俺が四席に上がってから中級を倒した剣の達人だとか何とか出処は京楽隊長以外にも色々広まって、こうやってたまに弟子入りとか鍛えてくれって希望してくる人が多く訪れるようになっていた。

 

「お願いします!!」

 

「いや俺1人もう既に弟子いるけどそっちにもあまり構ってあげれないぐらい忙しいし……増えるとなるとちょっと……」

 

浦原家の当主としての引き継ぎやら何やらもまだ残ってるし。

機械いじり回す時間も減ってたりするし……

四席部隊長の仕事も……

白哉坊ちゃんの指導も定期的にしてるし。

弟子が増えるとなるとまた別で時間を作らないといけないからめんどくさくて。

 

「お願いします!!そこをなんとか!!」

 

「何とかって言われても……剣の心得無いわけじゃないんだろ?

何を学びたいんだよ。俺の型は自己流で決して褒められた構え方してないから身体痛めるし癖がつくと良くないんだよ。

それにギリも無い。十番隊だろ?なんで俺が十番隊のほぼ無関係の隊士に教えないといけない」

 

「……確かにそうかもしれねぇ……。けど……俺はあんたの戦う姿に惚れたんだ!!」

 

「惚れ……っ!?いや俺そういう趣味は……」

「ちげぇよ!!んな事言ってねぇ」

 

っと全力否定。少し冗談言っただけなのに

 

「覚えてないかもしれないけど……俺あんたに助けられたんだ。

俺は斬魄刀の能力が強いからって過信して虚討伐に志願したのに

…その虚に手も足も出なかった…!

 

 

 

──悔しかったっ…」

 

ぎゅっと机の上に乗せられた手を握りしめる一心君

確かに覚えてないな……

 

「そしてもうダメかと思った時あんたが簡単に

数十人の隊士の命を奪い傷1つ付けられなかった虚を一刀両断したんだ……!

──かっこよかった、刀の能力なんて関係ない剣術。

始解がいくら強くてもそれを扱える剣術が!力が!

足りないって思い知らされて……。」

 

その目は真っ直ぐで俺を貫く

 

「──確かにあんたにはギリもねぇかもしれない。

だがあんたにしか頼めないんだ!!

お願いします!!俺を強くしてくれ…ください!!」

 

机にゴンッ!!っと頭がぶつかる音がするけど。

そんな事お構い無しにまた頭を下げた一心

 

「さっきも言った通り___

弟子志願を辞めさせるために言った訳じゃなくて

俺のやり方は癖がありすぎて俺はもう慣れてるけど

身体の負担が凄くて痛めるし、型は教えることはできない。

 

俺との鍛錬って言っても白打と()()()()()()を目的とした戦闘慣れする模擬戦をしこたま続けるぐらいで……。

俺が得意とする抜刀も合う合わないあるし」

 

まぁ実際模擬戦をし続けて

喜助も受け身とか避けるのとかバチくそ成長したわけだし。

白哉坊ちゃんの指導も抜刀術のやり方と実践に備えた模擬戦だし……。

 

「ならその模擬戦!俺とやってください!

直接指導してくれなくてもいい!

俺が勝手にあんたと戦って経験値を得る!」

 

「うーん……」

 

模擬戦だけならまぁ2番隊の指導に混ぜればいいけど……。

 

「いや、俺やっぱり時間ないし……模擬戦ぐらいなら他の連中でも」

「お願いします!そこをなんとか!!」

 

食い気味に遮られてしまう。

 

とりあえずまだ仕事残ってるからと

無理やり惣右介と会うためにほっぽった仕事を片すために解散したはいいものの。

 

「おはようございます!浦原さん!!」

 

「今日はどこ行かれるのですか!」

 

「浦原さん!お願いします!ご指導を……!」

っと俺が外出る度に待ち伏せている。

 

「おい、十番隊の仕事どうしたよ」

 

「そりゃもう終わらせてきました!!仕事が残ってたら浦原さんに頼めないじゃないですか!!」

 

もう1週間。こんな感じだ、諦める気はなくずっとついてくるし

頭を下げつづけるから周りの目も痛くなってきた。

それをわかっててやってるのかもしれないけど

ここまで折れなかったのは初めてだな。

 

俺はガシガシと頭をかいて一息ついて一心と向き合う

 

「分かった。お前が満足するまで付き合ってやるけど、俺は言った通りあんまり時間がない半分は弟が相手すると思うけどそれでいいな?幼い頃から俺と戦ってる弟だから弱くはないよ」

 

「本当ですか!!ありがとうございます師範(しはん)!!」

 

「ただ自分も教えてくれ!って他の人が来るとめんどい。今回は特別だから他の人を誘ったりとかはするなよ」

 

「もちろんです師範!!ありがとうございます!!」

っと勢いよく頭を下げた。一心

 

──不本意だけどまた弟子が増えた。

 



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潜在能力の鬼の話

 

あれから隙間時間に稽古をすることになった。

確かに始解は強いかもしれないけど、扱い方がなっていないのが俺からしてもわかる。

型や癖は喜助に直してもらった。

 

ちなみに勝手に一心をちょっと任せる事になったって話を喜助にしたら

 

「何勝手に決めてるんスか????」

って静かに怒られた。

 

しばらく実験台になるから許せって言ったら

──まぁ……それなら

という事で渋々承諾してくれたので結果オーライ

 

一心は物覚えは良いらしく、喜助が直したらそのままの形を意識している。

さて、癖もなおったところで……

 

「一心、俺は鬼道は教えられない。鬼道系は喜助に任せとけ」

 

すると喜助から何を勝手に……っという目を向けられる

 

「俺が教えるのは『受け身』『避け方』『攻撃』『反撃』

全て模擬戦で叩き込む。後は適当に必殺技作ろう」

 

「お願いします……!!」

 

少し緊張しているようでこちらに斬魄刀を向ける。

俺は完全手加減で木刀を使わせてもらってる。

 

_________

「ほらほら、もう何度死んでるんだ?遅い遅い!」

ガッ!

 

俺が下から顎を蹴りあげると勢いで仰け反るが

ひっくり返らずに寸前で耐えた一心。うんうん体幹はいいな。

 

「はぁぁぁー!!!」

 

勢いよく上段から切りつけてくるがそれを霊圧を収束させ硬度を上げた木刀で受け止める。

 

「はい、いちいち驚かないー!隙あり!」

驚いて動揺してる一心の刀を弾き軽く腹を蹴りを飛ばすと

ようやく吹き飛んで行った

 

霊圧はデカいし力はあるし物覚えもいいけど、正直すぎる単純な剣。

短期決戦がいい所か……。

 

「はい、死んだー」

起き上がろうとした一心の首元に木刀を添えると

ふぅー……っと一息ついた一心。

 

「強すぎです…。」

 

「疲れた?」

 

「いや、まだ行けます」

 

っと起き上がる。受け身をちゃんと取ったらしい傷はあるけど身体は痛めてないようだ。この分だと受け身は完全に身に付くな。

 

あれから時間の許す限り打ち合ったり殴りあったりして、

一心は驚く程に成長した。うん才能の塊だな……。

 

あれから何か必殺技を作れって言った。

始解以外にも特化したものを___。

瞬歩、鬼道、白打、剣術なんでもいい。

 

俺は馬鹿力と抜刀術。

喜助は霊力操作に長けた鬼道。

夜一さんは瞬歩。

 

一心は白打と剣術を選んだが、とりあえず白打を教えることにした。

教えるって言っても単純な殴り合い。

 

避け方反射を鍛え、どこをどう拳を振るえば有効打になるのか。

実際に経験を咀嚼(そしゃく)してもらう。

 

しばらく殴りあってコツを掴んだらしい一心が拳を振るい俺は手で受け止めるが。

 

バジッ!!

「およっ?」

 

俺の手が勢いよく弾き返された。

その隙に俺の腹に右ストレートがはいるが……

 

「っ〜〜!!!」

一心が右手を押えて声にならない悲鳴を上げて涙目になっていた。

ふははは!俺の筋肉の硬さ+霊圧硬度爆上げした腹筋はどうだ!

 

「大人げないッス……」

っと喜助から聞こえたけど知らん知らん!

 

「鉄かよ……っ!!」

 

どうやらさっきのパンチは拳に霊圧を収束させたものを貯めて殴るのと同時に解放したらしい。

 

 

 

__________

そして一心の必殺技が決まった……

 

バチンッ!!!っと音を立ててへし折れる木。

一心が()()()()()木をへし折った。

ただの物理攻撃ではなく、霊圧を収束してデコピンと一緒に放つ__

 

霊圧の収束と解放が上手い一心だからなせる技。

 

手に収束させるのは簡単だが、指先となると難しくなる。

勢いが出なかったり、解放タイミングをミスって爆発したり指が吹き飛んだりと

色々リスクを負うのでわざわざやろうとは思わないが。

一心の操作能力があるから才能があるから出来る。

敵もまさかデコピンがこの威力になるなんて!ってなる不意打ち技。

 

ちなみに俺も食らってみたけどちょっと痛かった。

鍛え上げれは凄いものになりそうだな。

 

─────────

 

「___兄サン」

 

「なんだよ」

 

壊した訓練場を修理してる俺に話しかける喜助。

ちなみに一心はボロボロのまま帰って行った。

 

「あの必殺(ひっさつ) 鬼痛(おにいた)デコピンってネーミングセンスどーにかなんないんスか……」

 

必殺 鬼痛デコピンとはあの一心が使ったデコピンの名前である。

 

「えぇ?分かりやすくない?ガチで痛いデコピンだよ。わかりやすいだろ?」

 

「……いや分かりやすいッスけど、その……ダサい」

 

「ダサい!?!?」

 

「志波サンと盛り上がってたんで言えなかったんスけど、2人して名前付けるセンス0ッス。ダサい、恥ずかしい」

っとピシャリと言い放つ喜助

 

「そ、そこまで言うか!?だって俺名前付けてもつけた名前忘れるし……」

 

犬をわんちゃん、猫を猫ちゃんってわかりやすいだろ……?

 

「それから、その維助兄サンの抜刀術名。それもダサいッス」

 

「うっ……確かに橋姫にも言われてたけと」

 

橋姫を使って瞬刀抜刀術(しゅんとうばっとうじゅつ)って言うと、

『やめて!恥ずかしいわ……!!』って顔を抑えて顔を真っ赤にして否定される。

 

そんなにダサいか…?

 

 

________

 

 

 

 

 

───必殺(ひっさつ)  

 

          鬼痛(おにいた)デコピン

 

 

 

 

ガッシャァァァン!っと音を立てて大穴が空く訓練場

 

「あーあー、また直さなきゃ」

っと、俺は大穴を見てため息を吐く。

 

俺二人分ぐらいのデカ穴は

()()()()()()()によって作られた。

 

「うん、やばいな」

たった1ヶ月でこの威力までに成長した一心。

最初は指を痛めてしまったりしたが今は霊圧収束解放に慣れたのか完璧なものだった。

 

「よっし」

穴を見てガッツポーズする一心。

俺は防いでダメージ0だとしても、吹き飛びはするかもしれないな……

 

本来は他の隊の隊士を勝手に虚退治に連れて行ってはダメなのだが。

虚任務に連れていってみた。

一瞬で虚に急接近してデコピンを虚の仮面に向かってデコピンをぶっぱなし。顔面から上半身まで吹き飛んだ虚をみて少し引く。

 

我が弟子ながらちょっと引くよ……。

 

「こりゃ大物になるかもしれないッスねぇ〜」

 

っと一緒に見に来た喜助が苦笑いする。

あんなにくそざこで癖つきまくりの一心がこんないい能力持ってるなんてなぁ……。

 

まぁデコピンはそう何度も効く技じゃないので、他にもいろいろ教えなければ。

 

そして一心は完全物理型の脳筋に成長した____

 

 

 

 

そしてもう1人の弟子。第一の弟子である朽木白哉坊ちゃん。

 

「ハァッ!!」

 

彼は俺よりも遅いけど、隊長、副隊長格でもなければ目に負えない程の速さで、巻藁(まきわら)を一刀両断。

 

まだ連撃は出来ないけど、白哉坊ちゃんは俺の抜刀の速さを劣化ながら受け継いでくれた。

力は無いけど速さで何とかできるだろう。

こっちもこっちで化け物に成長するかもなぁ……。

 

___________

 

そしていきなりだが隊首室に呼ばれた俺。

 

「はっ、浦原維助参りました」

 

「よいよい、維助儂らの仲じゃろ」

 

「やってみたかっただけだよ」

って俺は下げてた頭をあげる

 

豪華な座椅子に座った夜一さんと横には大前田副隊長さんが控えていた。

 

「んで、何用で?またなんかありました?」

また4部隊を出陣させる程の何かあったのかと思ったが……

 

口を開いたのは大前田副隊長さんだった

 

「いやぁ……俺引退しようと思ってて」

 

 

「……はぁ……はっ!?副隊長さん引退!?」

つい聞き返してしまった。

 

「そう、俺の息子がさぁ__

ちゃらんぽらんでこのままじゃ院も卒業できないかもしれん。

俺がほっぽってたのが悪いんだがな?

次男も産まれたし、教育に専念しようと思ってな。

そこで隊長に相談したら__

 

────俺の代わりの穴埋めは維助がいいんじゃないかって」

 

 

「…………はぁ……えっ?」

 

おれが代わりに……???

 

「いや待っっって!夜一さんの脱走サボり癖!あんたにしか止めれないだろ!?俺鬼道使えねぇし」

 

「大丈夫だ!お前なら何とかなる」

っと俺の肩にポンっと手をのせる

 

どっからその自信でてるんだ……??

 

「俺ですら働き者じゃないのに……なんならサボってバックれたいぐらいなのに……!!二番隊は終わりだっ……!」

 

俺は頭を抱えてしゃがみこむ

 

「そこまで言うか?ぶっちゃけすぎだろ」

 

「ははは!相変わらずじゃの維助!大丈夫じゃお主ならなんとかなる」

 

だからその自信はどこから……?

 

「じゃ、手配はしておく、大前田希ノ進!今まで大儀であった」

 

そして俺は__隠密機動副司令官兼、二番隊()()()になった。

 

二部隊の 警邏隊(けいらたい)兼、部隊補佐として一部隊から五部隊までの補佐もする事になって___

 

更に当主の土地の管理に、弟子2人の鍛錬。

定期的な喜助の所の機械のメンテナンス。

 

俺……過労死しないかな……?

 

 

最後の最後まで行かないで!!って大前田さんに言ったけど、

「がんばれよ〜」って手を振られるだけでダメだった……

 

夜一さんを拘束するために極めてた大前田さんの縛道……!!

あれがなきゃ絶っっったい逃げる!!無理!

 

俺このままやって行けるのかな……

 

 

 

 

 



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副隊長時代
副隊長になったのと最新機器の話


 

副隊長の就任は一応拒否権がある。

だから俺も拒否しようとした……

 

したんだが____

 

「なんじゃ……儂の補佐はいやか……?」

っと夜一さんにシュンっとした顔で言われるもんだから……

 

「あぁぁ……はぁ……分かった分かったけど、約束してください」

って俺が即折れた

 

「ん?なんじゃ約束とは」

っと首を傾げる夜一さんにむけて俺は指を2本立てる

 

「1つ、1日最低一刻半(さんじかん)は必ず事務仕事すること。

2つ、隊士から重要書類は必ず受け取りその場で終わらす。また確認書類は確認すること。」

 

「一刻半も……か!?」

3時間って少ないからな!?

 

「あんたがずっと同じ場所にじっとしてられないのは分かってます……分かってますけど!!大前田さんがいなくなった今……!

夜一さんが好き勝手にサボり始めると二番隊は崩壊するんだ!!」

 

多分恐らくこのままでは夜一さんはサボるだろう。

だが、しなければ罰を与える系で言う事聞かせるのは逆効果

罰を与える系は1回の約束程度なら効果的だろうが

持続的な約束事の話だとあまりよくない。

 

しないと罰が待ってる……!という緊張感と仕事への嫌悪が募ってしまう可能性もある。

 

夜一さんには緊張感と苦痛はあまり与えたくない。

仕事をなるべく楽しいもの……っと感じさせたい。

 

「もし!約束を守ってくれたのなら。1日ひとつ、俺に出来ることなら何でもしますよ。鍛錬、お出かけ、なんでも」

 

「な、なんでも……」

 

キラキラとした目になる夜一さん。

 

「どうします?やってくれますか?」

 

「もちろんじゃ!一刻半ぐらいドーンッと……!」

 

って事でやる気になってくれたらしい。

良かった良かった。

__________

 

「そういえばなんで俺なんです?繰り上げなら三席の喜助が適任でしょうに。」

 

「それは喜助が拒否したからじゃ」

っと、言い放ちお茶を飲む夜一さん

 

「俺は!?!?俺の拒否権は!?!?」

 

「まあそう怒るな維助!もう決まったものじゃしな」

っと笑う

 

はぁ……。心の底からのため息が出た

 

また仕事が増えて四席が空くけど、四席の部隊はとても危険だ。

まだ育成も終わっていないから後任を任せられるのも居ないので俺がしばらく兼任することになりそうだ……。

 

 

 

 

 

「ならば私が!」

 

っと部屋掃除をしてた砕蜂に愚痴を零すとそう力強く言った。

 

「いやいや。刑軍と俺の世話係と四部隊長はキツいよ、さすがにお前の身体が心配だから却下」

 

「そ、そんな……」

っと明らかに落ち込んでる砕蜂。

 

「俺の世話係無くしたとしても、四部隊は相当危険で相当な重任務。他の隊で倒せなかった虚の討伐だったり相手は死神だったり。

わかるだろ?お前の実力を下に見てる訳じゃないがお前はまだ経験が足りない。わかってくれるな?」

 

「はい……お任せしてくれるようになるまでこの砕蜂頑張ります!!」

 

っと意気込む。うんうん、前向きだ

 

 

_______________

 

場所は変わりその夜とある居酒屋

 

「維助の〜昇進にかんぱぁーい!」

 

カランッっと4つのグラスがぶつかり合う

 

声を上げたのは平子隊長。

俺の昇進を聞きつけた平子隊長が暇な人を引っ張って居酒屋に来たのだ。

 

もう呑み仲間になりつつある__

京楽隊長に、平子隊長、そして惣右介は俺が無理やり連れてきた。

 

「いやぁ、早いものだね……数十年が一瞬に感じるよ」

 

「んやねん、ジジくさいで京楽さん。」

 

「いやぁ、僕は維助君が院生の頃から見てきたからねぇ……」

 

っと、しみじみし始める京楽隊長

 

「まぁ、副隊長にはなりたくなかったんですけど」

 

「ありゃ、そりゃまたどうして?」

っと首を傾げる京楽隊長

 

「いやだって、サボり魔が隊長で副隊長もサボり魔ですよ?二番隊崩壊しますって」

 

「ははは!僕も人の事言えないけれど……まぁ君はやる時はやるから心配ないんじゃないかな。色々仕事任されてるみたいだけど何だかんだやり遂げているんだろう?」

っと、笑う。

 

「まぁ……そりゃ、サボりたいけどせっかく任せてくれた仕事は最後まで終わらせたいから。責任と信用ってそう言うもんでしょう?」

 

「んや、真面目なやっちゃなー維助」

っともう酔ってるのかバシバシ俺の背中を叩く平子隊長。

いたい

 

「平子隊長も見習ってください」

っとお茶を啜る惣右介……

 

飲めないアピールなのかお前!全然酔わないの知ってるからな!

って俺の目線に気づいたのか、つま先を机の下で踏んできた。

クソてめぇ!

 

 

 

さすがは隊長、副隊長。色々不安がってる俺にアドバイスをくれたりなんかした。

 

「へぇ、流れで書類を……なるほど!」

惣右介も惣右介で猫被りモードだけど、ちゃんとしたアドバイスをくれた。

メモっとこ。

 

「惣右介はそういうとこ上手いんよなぁ……気分いい時に書類渡されると、ついついやってまうわ」

 

「書類やることは普通なんですよ隊長。」

 

 

 

「うちのリサちゃんも何だかんだ仕事してくれるしねぇ〜真面目だよ彼女。しかも早いし効率的」

「へぇ、八番隊の副隊長さんか」

 

見た事ないけどまぁそのうち副隊長なら顔を合わせることになるだろうな。

 

平子隊長と京楽隊長が酔ってべろんべろんになって帰って行ったあと。

 

残った惣右介から「はい」っと渡されたa4用紙ぐらいの紙。

 

「君との剣を交わす時間が減ったらかなわないから」

そう言うだけ言うと俺に紙を押し付けて帰っていった惣右介。

 

「おぉ」

そこにはびっしりと、副隊長の仕事や、あらゆる問題とその対処法、集まり時の待機場所、等々など事細かに書いてあった。

字めっちゃ綺麗だなおい。

 

それは新しいものではなく紙の端が傷んでたりしたので、惣右介が副隊長になった時に書いたものなんだろう。

 

ありがたく貰っておこう___

俺はそれを懐にしまった。

 

_________

 

ただ、副隊長は悪いことめんどくさい事だけじゃなかった__

 

「部屋が広いっ!!!」

 

十二畳、中庭直通縁側付きの副隊長専用部屋!!!

しかも夜一さんからの許可を得て改造も可に!!

 

「まずは防音でしょ、防壁もやって……それから配線も……へへ。改造しがいあるわ!」

 

新しい部屋ってドキドキするよねぇ……!

 

喜助を引っ張ってきて手伝わせた。

「ボクも暇じゃないんスけど……」

 

「お前が俺に副隊長押し付けたんだから。手伝うぐらいいいだろ?」

 

「はぁ……あれ?これなんスか見ない機械ッスけど」

 

箱に入れた機械を指さす喜助。

箱の中には__

 

「あぁ、偵察用無人機(ていさつようドローン)か。いや見回りとかあるだろ?前々から機械使って監視すれば見回り人数も減らせるし、偵察にももってこいだから潜入にも使えそうだなーって。院生の時代から考えてたのをようやく手をつけたんだよ」

 

「へぇ……」

物珍しそうに俺の試作品ドローンを見る喜助。

 

「なるほど、霊力とこの操作機器(リモコン)で無人機と繋いで遠くに行っても操作できるようになってるんスね。それで問題は遅延と音___」

 

「お前も機械詳しくなったよな……」

 

見ただけで問題を見抜ける喜助も喜助だわ

 

「長年見てるんスから知識ぐらいつきますって。それに改良の痕もみれば……ねぇ?まぁ兄サンみたいに作れる技術はないんスけど」

っと箱を指定の位置に移動する喜助。

 

「まぁ、音は何とか出来そうなんだけどなぁ……それでも無音とはいかなくて。あと少し改良したら何とかなりそうなんだが次は重量と耐久性に問題が出るから、新しい素材とか探して色々試そうかと」

 

「楽しそうッスね兄サン。最近忙しくて機械弄ってるの全然見てなかったんで心配だったんスけど。良かったッス」

 

って、なんか嬉しそうな声色

 

「なに、ご飯抜いた時みたいなこと言って……。機械弄ってなくても仕事中はちゃんと設計図とか改善点とか頭の中で書き起こしたりしてるし」

 

()()()()ってなんスか……」

っと呆れた様子で振り向く

 

「お前だってボーッとしてる時の半分は研究の事だろ?」

 

「まぁそりゃそうなんスけど」

 

「新しい環境ってのは不安で大変そうだと思うけと……その反面楽しそうだと思うよ。()()()()ってのは俺らにとったら花の蜜のように魅力的に見える。」

 

「そうッスねぇ……」

 

あっ!っと思い出した事があり声を上げて喜助に振り向くと、

俺の声に驚いたのか少し肩をビクつかせる喜助。

 

「副隊長就任でしばらくバタバタするし、時間も取れるわかんないんだけど。

ずっと考えてた()()()機械作ろうと思ってて。喜助の知恵も借りたい」

 

「へぇ……そりゃ面白そうっスね。その機械はどんなのッスか?」

 

そう、俺がずっと考えてて。原作にもあった機械

ずっと名前思い出せなかったけどようやく思い出して、

この今の時代に無いことも確認した……

 

もう作るしかないよね。

最初は俺の時代にあったものと同じものは作れないと思うけど

 

 

 

「遠くの場所でも連絡を取り合えて……情報戦が有利になる。虚も緊急事態も通知が来る

 

 

 

 

 

 

名を___」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─── 伝令神機(スマートフォン) ───

 

 

 

 



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スマホの話

 

俺の前世が現代に生きる学生だったからか

初めから物足りなく感じていた。

 

あぁ、待ち合わせに時間がかかる……

あぁ……こういう時に連携取れれば……

こういう時スマホがあればな……っと何度考えたか。

 

連携報告、状況が遅延ほぼ0で伝えれる便利な機械。

スマホがほしい……!!

 

それか小型の通信インカム。

それがあれば2番隊の隠密も有利になるし、状況把握もしやすい。

 

ドローンを作るにあたって、電波の代わりになる霊子構成は開発済み。

ただ、電波塔となる施設・設備が必要になる。

またどこまで小型化出来るか、どこまで通じるのかという問題、現世にも通じるようにもしないといけない。

 

それで、施設だが浦原家が所有しているバカでかい土地があるそこに施設を作ればいいのでは……?っと考えている。

そして小型化、現世は隠密で試験的な運用をすれば、そのうち事業として……っと先のことまで考えてみる。

 

尸魂界は現世の道具や知識、化学や道具を尸魂界で使えるように改造したものが多く

1から作ることがほぼないからか科学者はいても、俺みたいな機械系の技術者がいない。

恐らく原作の伝令神機も現世の携帯をパクって作られたものだろう

 

それで携帯……つまりは黒電話や小型機器のガラケーみたいなのが出るのは今から150〜200年後。

そんなに待てるか?いや!待てない!!

俺は作るぞ……!!!!

 

 

尸魂界でスマホを!!!

 

 

─────────────

 

っと言っても仕事は次から次へと舞い込む。

大前田さんの引き継ぎからまだ荷物の移動も終わってないし。

 

最初にいきなりスマホを作り上げるのは無理だからまずは通信機器であるインカム系を作ろうかな……。

 

とりあえず目標はできた……!

 

新しい事は本当にワクワクする。

きっと俺の顔はだらしなくしまらない変な顔をしてるのだろう。

 

「なんじゃ、維助ご機嫌じゃの」

夜一さんの食事を毒味してる俺の顔を見て首を傾げる。

毒味は七々扇家の問題があってから護衛がやってた毒味を副隊長になって俺が引き受けた。

 

「あ、やっぱ分かっちゃう?いやぁ、毎日同じ日々を過ごすのもいいけど、新しい事があると新鮮でいいなって感じで」

 

「ほう……まぁ数十年も同じ日々を過ごすと飽きるもんじゃしの。

維助が楽しそうでなによりじゃ」

 

「まぁ、それもあるけど夜一さんが隊長、俺が四席になってから暇が少なくなって一緒にいる時間も減ってただろ?

こういうゆっくり朝話すのなんて久しぶりだなーって感じてさ。」

 

「そ、それもそうじゃの……」

っと顔を赤くする夜一さん。

 

毒味を終えたお膳を渡す。

 

「約束しただろ?業務をきちんと終えたらなんでもひとつ叶えるって。

夜一さんはいきなり隊長になって色々不安で大変だったと思う。

隊士のゴタゴタもあったし、それでもめげずに真っ直ぐ頑張る夜一さんに少しでもご褒美あげたいし……

ってのは半分、もう半分は夜一さんと少しでも一緒に居たかったからなんだ。」

 

「っっ……!」

っと、さらに林檎のように赤くなる顔。

まぁ夜一さんは面と向かって言われる事少ないだろうから照れるのもわかるけど、そこまで顔を赤くされるとこっちまで移りそうだ__。

 

 

それから夜一さんはビックリするぐらいに真剣に執務室で書類を書きあげる

やっぱモチベーションって大事なんだな……。

 

「よし!!今日の仕事は終わったぞ維助!!甘いものを食べに()こう」

 

「えっ、ちょ俺まだ仕事終わってな__」

 

言い終わるか否や俺の襟首(えりくび)を引っ張り瞬歩で走り出す夜一さん

 

ギャァ!!首!首しまる!!」

 

咄嗟に気道を確保する。

死ぬ死ぬ!っと思っているとあっという間についた甘味処。

瞬歩更に早くなったなぁ夜一さん。

 

早速大量の団子を頼む夜一さんを見て懐かしい気持ちになった。

前にもこんな事あったな……。

 

 

口にみたらしをつけて幸せそうに食べる夜一さんを見ながら頬杖をつく。

 

少し小さな幸せでも、行動を制限された当主であり隊長の夜一さんにとってはその小さな幸せはとても大切で貴重なものだ。

 

彼女の幸せが続くといいな。

 

____________

 

 

なんて業務後に鍛錬や甘味処に行く日々を過ごしつつ、例の伝令神機の件を進めている。

 

まずはインカムを作ろうとしたがお金が足りない……!

夜一さんに二番隊のためになるし尸魂界が変わるかもしれないことをプレゼンしたら

なんと__!!予算を使っていいことに!

 

 

「理屈はよう分からぬが、維助と喜助がそこまでやる気になっておるなら許可するぞ」

 

っと(こころよ)く承諾してくれた。

 

早速喜助は機械と機械を繋げる電波霊子の安定とそれの隠蔽。

霊子で居場所を辿られてしまう等の問題を解決するための隠蔽だ。

 

俺はその繋げるための装置を作る。

まぁ難しい話は置いといて簡単に説明すると__

 

声を霊子に変換。電波霊子でそれをもうひとつの機械に送り込み変換したものを元に戻す。

つまりまた声に変換させることで聞こえるようになるというもの。

 

 

それを発信受け取りと両方の機械つけて混線も防ぐ、それにより同時に話せるし同時に聞きとる事も。

また音質もいいし声のみを霊子に変換するので雑音などの音は変換されないのでうるさい場所でも使える……!

 

 

雑音を拾わないインカムの完成だ。まぁ形はワイヤレスイヤホン。

落ちないように固定もできるようになってる。

 

また、付けてる隊士が殺されたり奪われたりしてインカムが敵の手に渡ってもそいつは使えない。

何故なら事前に使用者の霊力を記録しておいてその記録した霊力を持つものしか使えないようになっているからだ。

 

現代でこんなことすると馬鹿でかい装置になりそうだが、霊力や霊子という色んな性質を持つものがあるからなせる技だ。

 

 

そして試験運用として、実際に夜一さんと俺と維助で使うことに。

元々目をつけていた謀反のアジトを見つけたからそこで使おうということになったのだ。

 

 

''『あーあー。聞こえます?』''

っと耳元のインカムから喜助の声が聞こえる。

 

「よし、聞こえる」

俺はついガッツポーズしてしまう。

 

100メール離れてても聞こえる。これは成功だな……霊子の残滓(ざんし)も残ってない。さすがは喜助!

 

''『本当に耳元から声が……すこしむず痒いな』''

っと夜一さんの声も聞こえる

 

「まずは遅延確認だ。はいっ!と合図したら同時に聞こえたって言ってくれ

 

───はいっ!」

''『聞こえたぞ!』'' ''『聞こえたっス』''

 

ほぼ同時に話した瞬間に聞こえたと応答がある。

うん、遅延も無さそうだ。

完璧……ッ!!

 

それでインカムとか想像しにくい名前は良くないとのことで。

伝声神機(でんせいしんき)という名にした。

単純わかりやすい!俺が覚えやすい……!

 

伝令神機と似てる名前だけどまぁ、いいだろう!統一感あるし。

 

「さぁ、早速だけど、任務の確認だ、

謀反衆は一番隊の機密文書を盗んだ疑いがかかっている_っていうかほぼ確定。

文書の在処を吐かせるために捕縛するのが目的。

誰が情報を持ってるかも分からないから一人も逃さず1人も殺さずに捕縛する。

喜助の待機位置には大量の捕縛装置がある。

敵は全て15人。

夜一さんが喜助の待機所まで敵を追い詰め、夜一さんの合図とともに喜助が装置を起動。

喜助は人数確認!逃れた奴がいたなら夜一さんと俺がそいつを捕縛するから報告忘れずに。」

 

追い込んで合図とともに捕縛装置起動させましょうね!の簡単な任務。

大声で合図する必要も無いので悟られる確率も下がるだろう。

 

早速夜一さんが戦闘を開始し謀反衆を外に出す事に成功との報告を受ける。

 

直ぐに俺も取り逃しが出ないように動くが、そんな心配はなかったようだ、喜助の縛り紅姫で取り逃しは防がれていた。

 

そして、インカムを渡した部下に報告して引き取ってもらう。

よし…とりあえず運用試験は合格。

 

完璧___!!

 

 

ってことで伝声神機(インカム)は二番隊で大活躍。

本格的に導入の流れになった。

 

 

 

そしてその装置を伝令神機となる箱に取り付け、また虚が空間を裂いて出てくるのを感知する装置も作りそこから近くにある伝令神機に自動で通達を送るという装置を作った。

ちなみに現世で実験済み

 

「はぁ…伝令神機で報告とかできればいいんだけど…」

報告はできるがそれを取仕切る受け取り側が居ない、情報をまとめる機関とか作りたいけど…

 

「そうッスねぇ…そういう()()いつか作りたいッスね」

 

まぁしばらくは扱える奴いないから無理だろうなぁ。

 

───────────

 

そしてついに───

 

液晶も完成させた。この時代にこの世界ではまだ作られていない、ガチスマホ液晶!まぁ霊子で構成されてるしちょっと俺のいた世界とは構造異なるけど…

 

もう何年かかった?文では簡単だけどガチで色々大変だった。

 

 

現世尸魂界関わらず通信ができて。

電話もメールもできる

写真も撮れるし

虚襲来も緊急速報も通知が来る___。

 

 

──伝令神機(スマートフォン)──

 

が完成した───。

 

ちなみに見た目はバチバチiPhone12である。

液晶の半分ガラケーのキーボードが付いているver(バージョン)も作った

 

 

───────────

 

 

 

 

そして今日────

 

「よっしゃー!!!」

 

俺は四十六室の為の居住区域(きょじゅうくいき)である

清浄塔居林(せいじょうとうきょりん)から出てガッツポーズをする

 

正式に四十六室の元へ行ってプレゼンテーションし

 

伝令神機を尸魂界で使用する()()()()()

隠密機動が元は四十六室直属の組織だったこともあるだろうけど…

それに四楓院家と浦原家の名も決断の一つになったと思う。

 

四十六室が伝令神機は危険ではなくこれから尸魂界で有効的に活用できる物だと理解し気に入ってくれたのだ。

そして俺の許可無しに勝手な製造改造も禁じてもらったので──つまりは()()()()()()()

 

 

 

──そして浦原神機(うらはらしんき)という携帯の会社を立ち上げた。

会社経営系は俺は全くダメだったのでそこは喜助に丸投げしておいた。

 

夜一さんがなんと!スポンサーになってくれることになり。

つまりは、五大貴族のうちの一つ四楓院家の後ろ盾と広告塔となり信用ができる会社になった。

 

早速、喜助と俺の合同で技術を集結させて、通信をより安定させるための電波塔とそれらの通信をまとめる地下施設を作った。

 

場所は浦原家が所有している土地。

喜助の作った結界と俺がウジ虫の家で作ったあのサイバー感溢れるセキュリティで情報を盗むとか壊すとか遮断すると言ったものも出来なくした完璧なエリア。

 

─この開発から許可を得て会社を作るまでの間約5年

 

ありえないほど爆速である。

しかも機械技術者俺1人。と科学者喜助1人の計2人。

 

いやぁー短いようで長い濃い期間だった────

 

 

 

ちなみに浦原神機(うらはらしんき)って会社の命名俺な!

 

 

 

 

 



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歴史は__と新たな技術者の話

 

ちなみに尸魂界で死神に伝令を行う地獄蝶。

最重要な機密情報などは伝令神機ではなく蝶で行われてる。

俺がそうするように指示した、もし万が一伝令神機が使えなくなった時に蝶はちゃんと稼働させておいたほうがいいし。

 

それに蝶は案内役だったり蝶は蝶の良い所があるしね。

──それに通達、呼び出し系はスマホでも重要な報告はこういう機関を使わない方が絶対いいと思ってる。作ってなんだけどね。

まぁ虚襲来通知が主な使い方だから伝令神機は伝令神機のいい所があるって事で___

 

 

 

直ぐに尸魂界内でスマホ型伝令神機は公式に使用されることになった。

 

虚が空を割いて現世に現れる瞬間を記録し発信。

完全に出現する前に自動的に近くの死神に報告される事で現世の魂魄の被害がだいぶ減った。

 

そして伝令神機は特に若い女性陣には大人気で見た目が可愛いらしい。

見た目が可愛い…??

可愛いというのは初めて聞いたけどまぁ、人気になるなら良かった。

 

浦原神機(うらはらしんき)から護廷十三隊に所属しているもの全てに伝令神機が配布されて霊力記録をして他人に使えないようにもしてある。

後色とかカスタムは別料金だよみたいな感じで予算とは別で金稼ぎしてる。

 

そして浦原神機で現世の死神助けますよ系の道具で

霊力ある人間に万が一見られた場合による記憶置換装置も作っておいた。

これ原作で聞いたことあるんだよなぁって思いながら作ってたわ。

 

まぁ稼げるからいいんだけど。

 

そして隠密機動に2番隊に会社_当然喜助と俺じゃ手が回らないわけで…。

二部隊の警邏隊(けいらたい)の信用できる部下数人に置換装置の販売などは任せておいた。

そのうち自販機とか作ろうかな…自動販売所みたいな。

 

───────────

 

「いやぁ、維助大功績やなぁ!」

っと笑ってグラスを掲げる平子隊長。

 

副隊長を祝ってくれたあの4人でまた呑みに来ていた。

 

「いやぁ、弟の手伝いあってこそですよ、弟がいなかったら完成しなかったかもしれないし何十年とかかってたかも…」

 

「んでも5年は早すぎやろ…。まぁ飲みの誘いにいちいち出向かなくていいのは楽でええな」

 

「いきなり鬼電かけます?普通」

 

そう、平子隊長から鬼電が来ててマジでびっくりした。

何事かと思ってでたら

 

''『お、よーやっと出た、維助〜呑みにいこやー!俺今現世から帰るねん。帰ったら呑もな』''

だけ言って切られたのだ、有効活用しすぎでしょ平子隊長。

 

 

「それじゃぁこのまま君が色々なものを開発すれば。()()()()呼ばれてもおかしくないかもねぇ」

 

っと、独り言のように呟いた京楽隊長。

 

「あっち?」

俺は首を傾げる。

 

「尸魂界100万年の歴史が詰まった…尸魂界歴史そのものと言ってもいい。王属特務零番隊さ

君は尸魂界に大きな影響を与える()()()()()()となってもおかしくないからね」

 

その言葉に少し惣右介が反応した。

そういえばこの前惣右介が零番隊がどうとかって独り言、言ってたな…

 

「王属特務…?」

だが惣右介は知らないフリをするようだ。

 

「へぇ…呼ばれたらどうなるんですか」

 

 

「さぁ…歴史の一つとなった方々は王を守り歴史を守り続ける…なんて昔は教えられたもんだけど今は教えてないみたいだね。

僕もあの人たちに会ったのは1()()()()だからねぇ…」

 

すごく簡単にだが話を聞いた。

 

「歴史を守る…ねぇ」

守り続けるってのに少し違和感…まぁ俺は興味無いけど。

 

「もし俺が新たな開発を続けて歴史を作り、その何とか特務に呼ばれたとしても俺は行かない」

 

「えっ、行かないのかい?昇進だよ?」

っと首を傾げる京楽隊長

 

 

「1つ2つ歴史を作っただけで俺が満足するわけないじゃないですか。

 

俺は俺が満足するまで開発を続ける。

俺が作る歴史はそんな一つや二つで終わらせない…。

何でまだまだ進む事ができるのに守りに徹しないといけないんです?」

 

っと、ビールを流し込む

 

俺は伝令神機だけで終わらない、まだまだ作り足りないんだ。

 

___________

 

 

京楽side

 

飲み会が早めに終わって帰路につく、あんなに高かった太陽ももう落ちて代わりに月が輝いている。

 

 

「あぁ、懐かしい気持ちになったねぇどうも」

笠を上げて月を見上げる

 

始解をしない戦い方をする維助君に()を思い出す。

そして理由は違えど王属特務の勧誘も断ろうとする所も__

 

維助君はきっと現役だった頃の()()()()確実に強い。

2人と戦ったことのある僕だから分かる…。

 

想像する力、作り出す力、前に進む力に行動力と度胸もある。

 

懐に入った支給された伝令神機を取り出す。

院生で剣が強いと言われた彼がこんな能力があるとは…。

 

 

 

「どうも若いってのは怖いね_そうは思わないかい」

 

 

 

 

 

 

刳屋敷(くるやしき)

 

 

 

()()()()()()()()()院生からの同期を思い出す。

 

「まぁ……維助君があの子(惣右介くん)に呑まれないといいけど」

 

 

 

 

_______________

 

 

 

 

嫌な予感がして飲み会から早めに帰ってきたら。

 

 

パキッと音を立てて俺の腕に着いていた(かせ)が地面に落ちる

 

「また、ダメか」

 

全ての死神についている霊力の排出口である手首につけていた霊圧制御装置_死神になってから時が経つ事に謎に増えて溢れていく霊圧。

 

死神になって勉強部屋で喜助と鍛錬してる時にはもうつけてたが、その機械も早めの寿命を迎えひび割れて落ちてしまった。

 

新しく作ったものを装着するが今度はいつまでもつか分からない。

 

喜助が定期的に俺の検査をしてるが未だに原因不明。

俺の魂魄が丈夫すぎるのか、霊圧が溢れ出るぐらいで特に支障はないけど…他人に迷惑がかかるのは何とかしないとな…。

 

ジャラッとまるで囚人のようについた鎖を見てため息を吐く。

 

 

 

 

「ただいま帰りました」

 

 

 

そう幼い男の子の声が聞こえて俺は振り向く

 

「おかえり阿近(あこん)

 

ひよりちゃんよりも幼く小さい阿近。

つい3年前ぐらいに流魂街で虚に襲われてるところを助けて拾った子供。

 

霊力があり死神になる才能もあるしと院に通わせてる。

走拳斬鬼(そうけんざんき)の才能は一般的だけどね。

 

そして阿近は死神の才能ともうひとつ()()()()()()があった。

 

これはいい拾い物をした…っと思ったね。

早速俺の技術力を仕込むと喜助並のスピードで機械を理解してった。

 

1から作ることはまだ出来てないが、今や俺の作った機械のメンテナンスと修理ができるぐらいにはなっている。

 

会社を作る際も色々手伝ってくれて助かったな

俺の後任として任せれるぐらいには育てたいものだ___。

 

 

「ありゃ、阿近サンまた身長伸びました?」

っとニコニコした顔の喜助が廊下から顔を出す。

 

「伸びてません。つぅーかあんたさっき砕蜂さんが書類どうこうって言って探してたぞ」

 

「そーなんスよねぇ〜だから逃げてきたんス」

 

「ここに逃げてくるなよ」

 

っとジト目の阿近を撫でる喜助。

 

2人は仲良くなって、喜助が薬品系の知識を阿近に教えこんでるらしい。

仲良いようで何より。

 

「兄サン、また霊圧漏れてたっスけど」

 

「あぁ、さっき壊れて変えたところだよ、迷惑かけた」

 

手首についた真新しい制御装置を見せる。

「小型化が好きな兄サンにしたら珍しいッスねぇ」

 

まぁそこそこでかいからな…分厚い鉄をつけてるようなものだし。

「あんまり薄いと壊れるんだよ…他も考えないとな…」

 

霊圧を押しこめるじゃなくて吸収でもいいけど耐えられるかどうか…うーん。

っと頭をひねらせていると

 

「あの…もし俺が…。」

そう少し緊張した様子の阿近が口を開いた

 

「もし俺が、貴方と浦原喜助の技術を吸収して…まぁ、アンタらみたいには行かないとは思うけど……

でもいつか、俺が貴方に完璧な制御装置を作る…から…そしたらつけてくれます…か?」

 

っと声が突っかかりながらも、ハッキリと言ってくれた阿近の頭を撫でる

喜助がフルネームで呼ばれてるのは笑っちゃうけど。

 

「当たり前だろ技術者の弟子が俺のために作ってくれたものをつけないわけないだろ」

 

 

「っー!」

嬉しそうに笑う阿近。

 

待ってるぞ阿近。

 

 

 

 

 

 

 

 





見なくてもおkまとめ浦原維助の弟子一覧

朽木白哉
・主に抜刀術を教えてる
・最近は全然構ってあげれてないので悪いと思ってる

志波一心
・白打と剣術と死なないための戦い方
・才能の塊、鬼痛デコピンは少し痛かった

【new】阿近
・3年前に虚に襲われてるところを助けた子供。
・霊力があり死神の才能があるので院に通わせている。
・走拳斬鬼は一般。
・技術者としての才能がある。


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身体壊した話

 

伝令神機が浸透して1年弱

 

休みない開発、会社経営、機械のメンテナンス、隠密副司令官の仕事に、二番隊副隊長の仕事、2,4の部隊長に1~5部隊の補佐、弟子の指導に惣右介との剣を交わし、定期的に来るひよ里ちゃんの相手もして・・・・

 

最初は眠れなくなって、疲れが取れなくなった、目を閉じると目の中で眼球はグルグルと回る感覚に陥り(おちいり)目が回って、さらに耳鳴りまで___

 

 

____そう

 

 

過労で体を壊しました・・・・

 

 

 

「阿近ごめん.....」

 

「いいから、休んでください」

 

布団で横になってる俺の頭に濡れタオルを乗せる阿近。

 

ぶっ倒れた俺に気づいたのは同室に住まわせてる阿近で、阿近がいなかったらやばかったかもしれない。

 

卯ノ花隊長がわざわざ診に来てくれて、副隊長になってから5,6年休まなかった疲労が蓄積されついに身体の方が耐えられなくて悲鳴を上げたからつまりは休んどけとの診断を受けた。

 

 

しばらくのお暇をいただけることになり、こうして阿近に看病されている。

ついでに喜助も___

 

その喜助は俺が倒れたと聞くなり、部屋に来て「無理しすぎッス」って言ったかと思うと

俺が効率化のために作った機械・・・・元の時代でいうパソコンをカタカタし始めて恐らく自分の書類をやり始めやがった。

 

眩暈する_確かに少し働きすぎたかもしれない.....

ここ最近は書類の効率化とタスク管理をわかりやすくするためにPC作ったりしてますます休む暇もなかったし…

 

「なんか一瞬で体回復してすべての疲労吹き飛ばす薬とかねぇの…」

っていったら呆れたように振り向いた喜助

 

「それただの怪しい薬じゃないッスか。そんなのあっても所詮元気になったと脳を騙しただけで、身体は壊れたまま。そもそもそんな倒れるぐらいまで行くと薬を頼っても身体の機能なんてそんなすぐに回復しないッス。」

 

と言われた・・・・まぁそりゃそうだよなぁ

 

「そもそも、本質はめんどくさがりでサボリ症のくせして、死神になってから、仕事は必ずこなさなきゃいけないみたいな責任感を無駄に負いすぎたせいッス。」

 

「だってそれが責任と信用で…」

 

「はいはい、それはも何度も聞いたッスよ」

っとあしらわれる。

「あれ、俺が兄だよな…???」

 

「それに、4部隊なら砕蜂サンに任せてはどうなんスか?5,6年前は経験不足って言って断ってましたけど、彼女もう十分実力上げましたよ??」

 

「あーー・・・・すっかり忘れてた、4部隊は俺がやらなきゃみたいな感覚抜け切れてなくて」

 

「頼ることを忘れていた…と、馬鹿ッスね」

「バカはねぇだろバカは・・・・」

 

「維助さん。これお粥もらってきました」

っといつの間にかどこかに行ってたらしい阿近がお膳を持って入ってくる

 

「卵粥です。曳舟(ひきふね)隊長が、『ひよりちゃんがお世話になっているから。』__と」

 

「あぁ…あのおっぱい美人の隊長か・・・・」

 

「そんな口聞けるまで回復したならよかったです。」

 

「いつもこんなんだろ」

 

「いえ、最近の維助さんは返答が日本語じゃなかったり、いきなり笑いだしたり、花瓶をみて『美人さんだー』とか言い出したり…」

 

「何それ怖い」

「こっちのセリフですけど」

 

まじ??そんなことしてたの...こわい記憶ない

 

起こしてもらって、匙で粥を口に運ぶ

 

あーーおいし…おい…し

 

「くない…あれ?」

 

おっぱい隊長の料理は何回か食べたことあるけど、味がなかったなんてのは一度も…

 

「そりゃそうでしょう、この1年ぐらいごはん食べる時間も惜しいとか言って携帯食ばっか口にくわえて作業してましたし、身体弱って味感じないんですよ」

 

と、いわれる、阿近なんかその冷静な感じ昔の喜助っぽいな…。

 

ドロドロの味のしない米を食べてる感じですごい…うん、身体ここまで弱ってたのか

 

「物理攻撃は大丈夫だったんだけど、中身がだめになってたか……疲労が物理的に攻撃してくれれば耐えれたのに…内側となると…」

 

「浦原さんあれは…?」

「あのたまにアホな事言うのは兄サンの通常運転ッス」

 

「おいこら、そこ聞こえてるぞ!でもこれでも書類は減ったんだよ、そのパソコン作ったおかげで…それに休ませてもらうって言っても期限近い物とかあるし…ちょっとやんなきゃ」

 

「大丈夫ッスよ〜代わりにやってるんで」

っとニッコリな喜助、どうやら俺のパソコンでやってたのは喜助の書類ではなく俺がやるはずだった書類やらをこなしてくれてたらしい。

 

ガガガっと、印刷される紙を見て流石喜助…っと感謝しながら粥を食べ終えて俺は横になった。

 

 

 

 

 

──────────

 

「休息って大切なんだなって…」

 

「はぁ…?」っと俺のセリフに首を傾げる阿近。

 

俺はなんと1週間ほどで復帰出来た。

卯ノ花隊長からも無理せぬ程度に…と、実質復帰許可も貰えた。

 

あれから溜まりに溜まった書類を、休息前だったらふらついたり目眩したりとかで時間かかってた書類もあっという間にぱぱっと片付けることが出来た。

正常なからだって…いいな…!うん!

 

それから、わざわざ刑軍の仕事を停止させてまで2部隊と4部隊の代理部隊長を1週間務めてくれた砕蜂にお礼しに行った

 

「元気になられて何よりです!倒れたと聞いてどれだけ心配したことか…」

っとすこし泣かれてしまった。

 

「ご、ごめんな?これからは適度に休憩するから…な?それに2部隊と4部隊ありがと」

 

っと頭を撫でる

 

「あの…この砕蜂に是非4部隊をお任せしては貰えませんでしょうか…私はあの頃の維助様に守られるだけの女ではございません!ここ5年ほど任務失敗率も0ですし…その…」

っと言って俯く。

 

「たしかに、砕蜂の働きはとてもいい。ただ刑軍である1部隊に務めるのはお前の夢みたいなものだろ?それなのに4部隊を兼任するとなると刑軍の活動も疎かになってしまうし」

 

「いいえ!それは大丈夫です!仕事にも慣れましたし夜一様にも許可を得ております!!」

 

なるほど、そう来たか…先に夜一さんに許可を得てくるとは…

 

「はぁ…よし、分かった。無理そうだったら何時でも言ってくれて構わないからな?今度引き継ぎの書類を渡す。今日より4部隊の部隊長を砕蜂に任命する」

 

 

「っー!ありがとうございます!」

っと花のような笑顔になった砕蜂。

 

そういうことで俺の仕事も少し減った。

 

_____________

 

「よ、夜一さん??」

 

執務室でずっとしょんぼりしている夜一さん

 

「お主を無理させてしまった…本当にすまぬ...」

 

「なんで夜一さんがあやまるのさ?夜一さんは夜一さんの仕事をちゃんとやってたから俺が困ることもなかったよ?俺が体壊したのは自分の限界を知らないで不摂生な生活してたせいだから。」

 

まさかここまで夜一さんが落ち込むとは…悪いことしたなぁ

 

「で、でも夜一さんとのお出かけで結構体が休まってたよ?気分転換にもなったし、夜一さんが仕事ちゃんと終わらせて、ちゃんと俺との約束をずっと守っていてくれたから…な?」

 

上手いこと言えない自分を恨む…けれど

 

「ま、まぁ儂もお主がいないと仕事がまともにできないからの…その…元気になってよかったぞ維助」

 

とようやく笑顔を見せてくれた

 

「今日も早く仕事終わったら甘味処いこうか」

 

「うむ!今日は三色団子の気分じゃ!さぁ早く終わらせるぞ維助!!」

 

 

_____________

 

日付が変わるか変わらないかぐらいの夜遅く

 

「わり、惣右介身体壊しちゃってさー」

 

「あぁ、何となく分かってたよ」

 

ここ数ヶ月全然剣を交わしてなかった惣右介と久しぶりに流魂街のいつもの場所に来ていた。

 

「わかってたんだ」

 

「あぁ、だから誘わなかった」

 

「へぇ?身体壊してる時に挑んだら勝てたんじゃない?」

 

「……それは本当の勝利では無いからね。それで勝てても嬉しくないさ」

っと、惣右介は惣右介なりに心配してくれた…?のかな。本音かどうかは知らないし俺の勝手な解釈

 

「でもまぁ、もう完全復活、倦怠感もないし睡眠もちゃんと取った。さぁ1週間休んだリハビリに手伝ってくれよ?」

 

「いいだろう」

っとお互いに剣を構える。

 

 

いつも通りお互いボロボロになるまで戦うのかと思ったら、一戦してスっと刀を鞘に納めた惣右介

 

「??もう終わりなのか?用事?」

 

「いいや、また身体を壊したら意味ないだろう?リハビリならこのぐらいで十分さ」

 

と、まだやってたいけど、まぁそれもそうかと俺も鞘に納めた

 

ちなみに惣右介の鏡花水月(斬魄刀)だけど、始解を見たものの五感を支配する完全催眠。

俺はあんまうろ覚えで正確じゃないかなって思ってたけど、あってた

あってたっていうのは惣右介自身から斬魄刀の能力を開示してきたのだ。

 

他の人には言うなって言われた。

俺に催眠かけてくるかと思ったけど、そんなことはなく、始解は一度も見た事が無い。

 

本気で最近惣右介の考えていることがわからないときがある・・・・・

多分試されているのだろうって感じはする。

 

まぁ俺はガチ友人と思ってるから、せっかく秘密教えてくれたのに、それをバラすような真似しないけどな。

 

 

なんて考えていると口角を上げた惣右介

 

「そういえば君に会わせたい子がいてね」

 

「へぇ惣右介が?珍しい」

 

「君にはどう見えるか見てほしいんだ」

 

「え、師匠てきな?俺無理だから、また体壊すよ??」

っと言うと首を横に振る

よかったこれ以上弟子増えるのは勘弁だったし。

 

「面白い子でね...面白い君と顔合わせさせてみようかと」

 

「へぇ…」

面白い君って何だよ…

 

「でも惣右介がそこまで言うのは珍しいし、顔合わせぐらいなら__

一応忘れたらごめんだけどその子の名前は?」

 

 

 

()()名は__」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──市丸ギン──

 



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市丸ギンと隊長推挙の話

 

初めは不思議な見えない壁にぶつかったのが始まりだった。

「…なんやろ…これ」

 

触れても優しく弾き返される。

音も__風も__何も感じない

 

何も感じないのに中で男2人が刀を交えているのが見える。

 

草むらの中でその不定期に行われてる光景を見るのが楽しみになっていた。

見えない刀捌きに憧れまで抱いていた。

 

「かっこええなぁ」

服は違うけど、身なりは綺麗だ、きっと死神なのだろうなんて想像がついた。

毎回毎回、あのくすんだ金髪の男が勝っていて。

 

「なんで負けたんに笑っとるのやろ」

 

負けてるのに口元は歪んでいる黒髪の男。

刀を交わしている時も2人してずっと笑ってる狂気と思えるほどに__

 

またある日、今日もいたらええなと思いまた向かうと。

「なんやろ…(さじ)か…?」

 

銀色の匙のようなものを金髪の男が黒髪の男に手渡していた。

ニヤリと笑って去っていった男。

 

遠くからよく見えなかったけど、なんで匙なんか…?

 

____________

 

いつも通り帰ると____

 

乱菊が倒れていた。頬には殴られたような跡__

 

「へへ…これで金貰えるんだろ?無駄に暴れるから時間かかったな」

「なんだろうなこれ」

「知らねぇよ、変に詮索すると消されるかもだぞ?」

 

その男らの手に持ってるものを見て目を見開いた。

何故、あの日金髪の男が渡した匙を持っている?

 

なにかキラキラしたものが匙から溢れていて。

 

乱菊から何かを取った_____?

 

ボクは男達を追いかける。

 

すると、その場で膝を着いた男が匙を____

あの金髪と戦っていた黒髪の男に渡した。

 

サラサラと砂のようなものが匙から零れていくのが見える。

 

 

あぁ…こいつや…こいつが親玉や

コイツ(黒髪)アイツ(金髪)も乱菊を泣かせた___。

 

 

 

 

───こいつ()はボクが───

 

 

 

 

直ぐに乱菊に触れた2人は殺せた。

1人は見つからなかった__。

 

あの男達に勝てるか…?いや今のボクには無理や

刀を目で負えなかった、あんな戦い今のボクには__

 

「ギン!どこいってたのよもう!って…血?それにそれ死神の__」

 

「乱菊、ボク死神になる」

 

「は…何言って…」

「死神になって__乱菊を泣かせない世界を作ったる」

 

恨み憎しみ__今すぐにでも殺しに行きたい。

けどダメやそれじゃぁ、今のボクには無理やいつか…いつか

殺して取り返したる___。

 

 

───────────

 

別れて6年以上たった、乱菊に触れたもう一人の男を探し続けている。

そうしてようやく見つけた、フラフラと酒を持った男が千鳥足で歩いている。

 

躊躇いなんてなかった、躊躇ったらこっちが死ぬ。

盗んだ刀で心臓を一突き。

 

「がっ…」っと手を伸ばしてくる男

 

「まだ生きとんの…?今楽にしたるよ」

 

伸ばしてきた手に刀を突き刺して縫い付け、短刀で首を切り裂いた

 

瞬間___

 

パチパチパチっと手を叩く音が聞こえた。

 

「!!」

 

あの男や、黒髪の__!

初めて目が合うその男に恐怖した。

こわい、こいつは無理や勝てない奴やっと本能が叫ぶ__

──だけど平常心を保って顔には出さんかった。

 

「僕が始末しようとしてたんだけどね。君__名前は?」

「___市丸ギン、市丸ギンや」

 

「そうか」

 

それがこの男とあの男への復讐の始まりだった___。

 

死神になるための学校に通わせてもろて、3ヶ月

乱菊は元気しとるのやろか。

そんなことを考えてるとあの男に呼ばれた。

 

「ギン、君に会わせたい人がいてね」

 

「へぇ、どないな奴なんですの?」

 

「この伝令神機を作り上げる天才、剣術の達人で停滞を嫌い_常に進化を求める男さ」

その笑みは、あの戦いの時に浮かべていた笑みと一緒で__

 

あぁ、あの男(金髪)かと、察しがついた

 

 

 

「君が〜えっとー…何とかギン?」

藍染副隊長と違ってこっちの男はぽやぽやして毒気が抜けそうになる。

 

一言で言えば優男。

ヘラヘラしててずっと笑ってる。

 

─────けど、隙は無い。

 

「市丸ギン、市丸ギンや、覚えておいてください。よろしゅう浦原維助サン」

 

 

___________

 

市丸ギン…市丸ギン…聞いたことあるんだよなぁ…って事は原作かぁ…

こんな小さな子…うーん…うーん…

 

 

あ、あれか!なんか刀伸びるやつ!!

あぁ!DSのゲームで使った覚えあるわ…!!

懐かしい〜小学生のころかなぁ…

 

なんて懐かしさにひたってると

 

「ギン、君の目には浦原維助はどう見える?」

 

「……アホ…?」

「殺すぞ」

っと反射的に返してしまった。

 

あれ?俺ら初対面だよな?

初対面のやつになんでアホなんて言われなきゃ行けないんだ??

 

「いやだなぁ冗談やないですか、ほんま見たまんま面白い兄さんやなぁと」

 

「それ結局褒めてないよな…?」

 

それからしばらく話したら、少しだけ警戒気味だったけど慣れてくれたらしい。

 

「へぇ…今院生なんだ、一回生?」

 

「そうなんですわ、でも来年にはもう卒業です」

 

「へぇ、1年で卒業かー優秀だな!

じゃぁもうすぐ死神かぁ〜うんうん、優秀な人が来て嬉しいよ。」

 

「君も1年で卒業するはずだったのにあの四楓院と浦原喜助に合わせて2年で卒業したじゃないか」

 

っと惣右介が言った…ってあれ?

「えっ、ちょっとなんでそれを知ってるの…???」

 

あれ、それ先生しか知らないはずだよな…??

 

「知る方法などいくらでもあるさ」

久しぶりに恐怖を感じた…。

 

──────────────

 

しばらく日を置いて夜一さんに呼び出された俺と喜助。

 

「……え?もう一度言ってください」

 

「じゃから、維助か喜助。お主らのどちらかを隊長に推挙(すいきょ)しようと思ってな」

 

「へぇ…あれ、空きがありましたっけ?」

隊長全部埋まってた気がする…?

 

「兄サンが身体壊した時に10番隊の隊長サンが殉職したんス」

 

「へぇー」

 

「それから内密じゃが、12番隊の隊長もこの度昇進することになってな、2枠空きがあるが2人は推挙できん。2番隊の穴も大きくなるしの」

 

「隊長になるのって試験あるよね?夜一さんのその言い方だと、絶対受かるみたいな言い方じゃない?」

 

「ん?お主らが落ちるわけなかろう」

マジでどっから来るんだその自信。信用とも言っていいか…?

 

「まぁ俺はパス!引き継ぎ多すぎるし。隊長だるいから」

 

「最後のが本音ッスよね…?でもまぁいいッスよボクがやります」

っと承諾した喜助にびっくりする

 

「えっ、意外!めんどくさいとか言いそうなのに」

「いや、めんどくさいんスけど…隊長になると色々自由が効くって聞いたんで…この際に新たな()()を作ろうかと」

 

「へぇ…!」

何となく喜助と話した内容を思い出す。

伝令神機で死神からの報告をまとめる機関や、新しい実験や研究ができる場所と人数揃えれたらいいなみたいな事を話してたなぁ。

 

喜助は喜助なりに考えてたのか。

 

「ま、喜助なら大丈夫だな。卍解も会社経営しながらさっさと習得してたし」

 

喜助が忙しすぎて卍解習得出来ないって言うから俺の技術と喜助の技術を合わせて、まぁ…卍解を簡単に習得できる人形を作ったのだ!

説明めんどくさくなんかないよ?

まぁ半分以上喜助の研究だし俺は外側作ったぐらいだしな。

 

「ふむ、じゃぁ推挙しておこう、数ヶ月以内に隊首試験があるはずじゃ」

 

「頑張れ喜助!」

 

「はいっス」

 

その夜に喜助が俺の部屋に来た。

阿近が茶を出す

 

「ありがとッス阿近サン。それで兄サン、隊首試験までに片しておきたい案件が。」

 

「また脱走者?」

って言うとコクンと頷いた。

喜助から貰った書類をパラ読みする。

 

「そうだな…喜助が居なくなる前には終わらせないといけない案件だな…。居場所もわかってないのか…」

 

「そうなんスよ。複数の脱走者と固まってなにか企んでいるらしくて…」

 

「あの…」

っとお膳を持った阿近が口を開いた。

 

「ん?どうした?」

 

「お仕事の話中すみません…その脱走者ってなんですか?囚人…?」

 

「あぁ、色々意味はあるけど今回俺らが話してるのは瀞霊廷からの脱走者。つまり隊から逃げた人達だ、

死神は()退()というものはなく、何かしらの正式な理由での引退。まぁ基本貴族である事。それか命に関わる損傷、病を患ってるぐらいしか認められてないけど…そういう引退でしか抜けることが出来ないんだ。」

 

「そう…なんですか」

 

「例外もあるけど_まぁそれは置いといて、抜けようとすると色々情報も持ってるし、危険分子になるかもしれないから表向きは除隊とし、そいつらを隔離しておくんだよ。それが嫌な人達や気づいた人達が瀞霊廷から逃げ出してしまう…それが脱走者」

 

「情報を持っているし、危険分子になるかもしれないから…捕まえる…と?」

阿近は説明が軽くても伝わるから助かる。

 

「そうだな、今回はもう何かしら企んでる連中がつるんでるらしいんで早々に捕まえないといけない。

 

今回のやつらは霊圧も高く席官だし、隠れるのが上手い。

それにめんどくさい能力をもってる__。

地道に聞き込みするしかないかぁ…」

 

書類に記されたそれぞれの斬魄刀の能力をみてため息を吐く。

 

「えぇ、部下にもあたらせてはいるんスけど…」

 

「夜一さんはなんて?」

 

「夜一サンも早々に片付けないと面倒になると。隊首試験は遅らせられませんし、そういう能力なんで…まぁボクが抜ける前には終わらせないと」

 

「…わかった、2部隊も動かして情報を集める。」

 

「ありがとうございます兄サン。」

 

さて、喜助が気持ちよく隊首試験受けれるように俺も一肌脱ぎますかね。

 



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調査と脱走者の話

 

 

「こんな顔のやつ、いませんでした?」

「いやぁ?知らないねぇ」

 

俺はいま流魂街にいる。

 

脱走者の調査だ、刑事のような感じで入隊時に撮った脱走者の写真を持って目撃者を探している。

霊圧の高いやつってのはそれを隠すのが上手い。

そいつらの霊圧を知ってたら話は別かもしれんが、俺は知らん。

 

伝令神機の霊力は記録してあるけどそっからは追えない。

まぁ指紋認証から人探しするようなもんって考えてくれればいい、まぁ第三者に使われないようにするための機能だしな霊力記録は。

 

 

というわけで喜助の部下と俺の部下総動員であっちこっち探していると

そこでブーブーっと懐の伝令神機が揺れた。

 

浦原喜助と表示されていて電話に出る。

「あ、もしもーし、喜助?どうそっちは」

 

''『西にはいないようッスねぇ〜兄サンは?』''

 

それと同時に俺の前に現れた部下の顔を見ると、部下は首を横に振った。

 

「うん、北もダメだ。」

流魂街はバカ広い。ドローンも部下もフル活用で捜索してるけど──

 

そこで、ピピピっと音が鳴った。

「あ、阿近から電話だ。喜助一緒に繋げるけどいい?」

''『大丈夫ッスよ』''

 

ちなみに阿近は俺の部屋でドローンのモニター監視と1部を操作してもらってる。

ボタンを押して阿近の電話に出ると自動的にグループ通話に切り替わる。

 

''『あ、維助さん。見つかりましたよ』''

 

「あーやっぱだめか…ん?見つかった!?」

 

''『うるさっ』''っと阿近がそこでビデオ通話に切替える

 

''『近寄るとバレるので今上空から拡大してます。』''

外カメで映し出されたモニターには確かに脱走者の1人がフラフラと流魂街を歩いる姿が映し出されていた。

 

「よくやった阿近!!そのまま追跡してほしい、拠点を見つけたい」

 

''『でも、ここから先は森なので、見失うかも…』''

 

「行けるところまででいい、任せたぞ」

 

''『はい』''

そこで阿近の通話が切れる。

 

「喜助、一旦戻ろう、ちょっとドローン改造するから手を貸してくれ」

 

''『分かりました、部下も引き上げさせますね』''

 

まさかこんなに早く見つけられるとは…。

 

────────

 

部屋に戻ると阿近がちゃんと録画していてくれて、森に入ってから見失うまでの動画が撮られていた。

 

「恐らく森のどこかに拠点があるのかと…森の周りを無人機に監視させてたんですけど出てくる様子はありませんでした。」

 

「さすが阿近ー!よくやった」

 

わしゃわしゃと撫でると、髪ボサボサになる!っと手を押しのけられた。

全く可愛いなー!

 

「前々からの問題点。遅延はどうにかなったんでしたっけ?」

っと、戻させたドローンの一つを喜助が分解する。

おいこら勝手に分解すんな

 

「あぁ、もう遅延は大丈夫だけど、やっぱ音がなぁ…ほんの少し聞こえるんだよなぁ…」

 

「…維助さん。小型化ってできるんですよね?」

 

「ん?あぁ、小型化は俺の専売特許!耐久性とかちょっとの性能不足を全然気にしないならマイクロまで行ける…はず。やったことないけど」

 

マイクロ…?っと首を傾げる阿近。後で教えるよ

 

「小さくできて、音が出るなら…もう堂々と音出しちゃっていいんじゃないですか」

 

「…???」

 

「なるほど」

喜助は理解したらしい。ちょっとまって俺が理解できない…

 

「音を隠さず出すんスよ。」

音を隠さない…かくさな…い

 

「…あっ」

そこで俺らの思考はようやく一致した

 

 

────────────

 

モニターに映るの例の脱走者。

同じ場所を通って毎日水を汲みに行ってるらしい。

 

堂々とその背中にひっつく無人機 。

 

''「ん?なんだよ.()()()()うるせぇなぁ、そろそろ湯浴みしないとやべぇか…?」''

 

っと、性質の悪いマイクから拾った声がモニターから響く。

 

「大成功ッスねぇー!無人機を()()に改造!」

 

「いやぁ〜小型化最高!」

 

「ここのネジ…なるほどこうやって出来てるのか」

阿近が超倍率虫眼鏡で()()()()()()()の予備を観察している。

 

そう、音を消せないなら音が出るハエにしちゃえば?ってことで戻ってきたドローンを早速ハエ型に改造したのだ。

 

ハエの目はカメラで倍率は20倍まで、マイクもついてるけど音質が悪い。まぁこれは仕方ない。

 

耐久性は全然なくガチのハエを退治する並に脆いけど、これはもう便利すぎて__なんで今まで音を消すことしか考えなかったのだろうと、自分の頭の硬さに泣きそうになるわ。

 

 

「ここっスね」

 

ようやくついたのは木々に隠されるようにして建っているボロ屋

 

「維助さん、霊力充電もう切れそうです。」

 

「わかった、じゃぁ位置を記録して戻そう」

 

ドローンを動かすにあたって___まぁいわゆる充電が切れてしまうので戻すことに

もうちょっと見たかったけど、致し方(いたしかた)ない

 

そこで喜助と作戦会議

 

「脱走者全員の確認と、行動パターンを確認して逃さずにとらえましょう。」

「そうだな」

 

ハエ型のバッテリーを性能アップしながら話を聞く

 

「あの...斬魄刀の能力がどうとかって...そんなにやばい能力なんですか?」

「うーん・・・まぁ厄介だよな」

 

本当は見せちゃダメなんだけど、阿近に斬魄刀の能力が記された書類を渡す

 

言霊(ことだま)??」

 

「そう、鬼道でも使われる言霊…言葉に宿った霊力が力をなす。

こいつの斬魄刀はいわゆる使用者の言霊の強制発動、斬魄刀に言霊を乗せて放つって言ったらわかりやすいかな…制限はあるみたいだけど、厄介。止まれって言ったら動けなくなるみたいな、直接相手を傷つける言霊は使えないみたいだけど、鬼道の威力増幅なんかはできるみたい。」

 

「…どうしてこんな強い人が隊から脱走するんでしょう」

っと、しばらく書類を見ていた阿近が疑問の声を上げる。

俺はその頭を優しく撫でた

 

「集団行動が苦手とか、隊に合わないものを感じた…とか想像と違ったなんてよくある事さ。集団行動系は6回生で学ぶから大丈夫なはずなんだけど、まぁそれは本人にしかわからないものがあるんだろうよ…

相談所とか作ればいいとか思ったけど__人員裂く暇ないか...

まぁ阿近、もし死神になって困ったことがあれば俺に何でも相談しな、権力と職権乱用してやるよ」

 

「…それ最後の方言わなかったらかっこよかったです」

 

どれだけできた人間…じゃないや、できた死神でも恨みや憎しみ嫌がらせなんかよくある事だ、

それが嫌になって逃げた奴らをこの数十年でどれだけ捕まえたことか、

できてもできなくても、憧れが荷になってつぶされたり、恨まれ憎まれたり、難儀なものだ。

 

_____________

 

「え?喜助が?」

 

しばらくしたある日俺と喜助と夜一さんが隊首室で雑談してると砕蜂が分厚い文書を俺に手渡す。

同じものを夜一さんに渡したようだった。

 

 

目を通すと事細かに喜助の行動の悪いところが書き綴ってあり__

 

「このようなものに隊長など無理です!維助様と違い任務をサボリ、維助様を困らせる!経費乱用から__」

と、説明し始める、それを本人の前でやるのすごいな。

 

「おお、細かいッスね」

 

「お前他人事かよ、お前の事だぞお前の」

他人事のように書類を覗く喜助に思わずつっこむ

 

「いやぁ全部本当のことなんで」

 

「相変わらずじゃの」

なんて呆れた様子の夜一さん

 

「維助様はお身体を壊すほどに働き者なのにどうして弟君はこうなんですか!!二番隊の顔にまでじゃなく維助様の顔にまで泥を…!」

 

「まぁ言い変えれば体の自己管理できないって事だけど、ってか昔は俺の方がサボリ魔だったんだぜ?」

というと有り得ない!という顔をする砕蜂

 

「あり得ません!そんな弟君を守るために…」

 

「いやいやほんとほんと」

 

「そうッスよー兄サンは興味ある事をやってるだけッス、あとは任された仕事を責任もってやり遂げる。」

 

「喜助が俺に似てきちゃったんだよ...ごめんな砕蜂こんなへなちょこ弟だけどやる時はやるから…多分」

っと喜助の頭をガシガシなでる

 

「最後に下げるのなんなんスか??」

うざそうに俺の腕を抑える喜助。いやぁ昔が懐かしいよ

 

──なんて思い出に浸ってたら

 

「失礼します。」

っと俺の部下が報告に来てくれた。

 

「お、もう固めたか?」

「はい」

部下に指示しておいた、例の脱走者を捕まえる手配が整ったらしい。

 

「さて、行きますか」

 

「明日は隊首試験じゃ、それまでに戻るんじゃぞ」

 

「ええ、もちろん、ギリギリの時間まで長引いたら最悪喜助を戻らせますよ、行くぞ喜助」

 

「はいっス」

 

──────────

「どう?」

「目標も気づいて警戒してきてます」

「まぁ逃げれないから潜伏するしかないよねぇ…」

部下の報告を聞く。

 

半径50メートルには捕縛用の機械を部下に設置させ、また部下も周りを囲っている。

どうあがいても逃げれないだろう

 

「じゃぁ作戦通りに俺と喜助が...って」

知った霊圧を感じて振り向く

 

「砕蜂…着いてきたのか」

「よ、夜一様が気になるなら行けば()いと…」

 

まったく、夜一さんは何を考えてるんだか…まぁ喜助の活躍を見させて喜助は意外と出来るやつだぜみたいな事を見させたいのかもしれないけど…

いや夜一さんはそんな深く考えてないな、多分面白がってるだけだあの人。

 

「まぁいいや、砕蜂見学ならここから動くなよ?」

 

「はい、承知しました。浦原3席、維助様の足を引っ張らないよう。」

 

「はは、わかってますって〜」

なんで喜助そんなに砕蜂に邪険にされてるんだ??

何したんだ喜助──。

 

「さ、行きますかね、喜助の2番隊最後の仕事のお手伝い」

 

俺らはボロ屋の前に立つ。

 

「さぁ出て来い!もう逃げられないことはわかってるだろ!神妙に縄につけ!さすれば怪我はさせないぞ」

 

なんて言ってみたものの──ガンッ!!と扉が開いたかと思うと。

 

「破道の七十三 双連蒼火墜(そうれんそうかつい)!」

威力増大の詠唱破棄した──いや、これは事前に詠唱したな?

 

俺はそれを斬り軌道を変えた。

交渉決裂__か

 

全部で5人、全て脱走者で元席官の奴がゾロゾロと出てきた。

 

 

───(さけ)べ──言之袮(ことのね)

 

          静止せよ

 

 

「うっ…」

これが言霊か、ビックリするぐらい指一本動けなくなる…が!

 

「なっ、一瞬で!」

1秒ぐらいかかるけど一瞬の霊圧解放で跳ね返せるな…!

 

喜助も少し時間かかったけど跳ね返せたらしい…けどその1秒がちょっと厄介だな…。

 

そう、厄介。

斬魄刀で抜刀しようとした瞬間また───

 

───静止せよ!

 

っと頭に直接響くような感覚に襲われ、脳の信号に反して身体が停止する。

その瞬間に別のやつが俺に斬り掛かる─が

 

「なっ…」

驚いた様子の脱走者の声──。

「驚いた?そんなやわな剣じゃ──俺の霊圧硬度は抜けれない」

首に刀が触れているが俺は薄皮ひとつ斬れてない。

 

動揺は隙!刀を掴んで引っ張り、膝で顎を蹴りあげ、その頭をつかみ

 

ガッ!

霊圧で硬化させたカチカチの頭突きを食らわせると白目を向いた

うわ、自分でやっときながら痛そう。

 

俺が二人倒したところで喜助の方を向くと喜助の周りにも2人が地面に倒れていた。

 

残ったのは言霊の斬魄刀を持った男。

「さ、もうお仲間は使えない。どうする?」

 

「っ…!なんでだよ!見逃してくれよ!!俺はただ…自由に…っ」

っと柄をギチギチと硬く握りしめる音が響く。

 

「ならなんで死神になったんだよ。自由が少し制限されるのは仕方ないだろ?仕事なんだし、みんな自由奔放にやってたら崩壊する」

 

「こんな地獄だなんて!思ってもみなかったんだ!!新人が席官になれば先輩から恨まれ指さされ笑われる。上からは期待の目…!!分からない訳ないだろう?あんたらも席官ならわかるはずだ!!」

 

「まぁ…そりゃ俺にだってあるさ、イケメンだし昇進早かったし?

元々上司だったやつの上に立つと気まずいよなぁ、でもそんなん関係ない。なんで俺が人の目を気にしてウジウジしないといけねぇんだって感じ」

 

そこで、はっとしてこっちを見る男

 

「俺は全て実力で捩じ伏せてきた、下がどうこう言ってるのは所詮戯言、妬みだよ、俺はこう言うね、悔しいなら抜かしてみろよって。

お前は人の目を気にしすぎた、優秀だが心が弱かった。

───後退じゃなく前進を選ぶべきだった。」

 

「そう強く生きられたら…!俺には無理なんだよ!!」

錯乱した男が喜助の方に目を向けて喜助の方に斬り掛かる

喜助なら倒せると思ったのだろうか。

─────おれは鞘に刀を収めた。

 

───静止せよ!

 

喜助の首筋に刀が──だが喜助がそれを紅姫で防いだ

「なっ、まだ数秒も経ってないのに…!」

 

相殺させてもらいましたァ。何度も食らってればその霊子構成も攻撃も読めるってもんス。食らう前に逆の霊圧をぶつけて相殺したんス」

 

「っ…!!」

絶句する男

 

「期待される重み──わかるッスよ。

兄サンは天才的な技術者で剣の天才で強くて、それと同じぐらいにボクにも期待の目が向けられる。

 

弟なんだから___なんて何度言われたことか、一度は嫌になって兄とは違う鬼道衆の道にも行こうとした。

けれど、そんな重みに耐えながらも兄サンの隣に立てるようになってボクはボク自身が誇らしい。期待されるって、想われてる証拠なんス、ボクは『どうせお前には無理だよな』なんて期待されなくなる方が怖いッスね

期待されるために頑張るって案外悪いことじゃないって最近思えるようになったんス」

 

ガクッと男が膝をついた。

言葉で言えば簡単に聞こえるかもしれないが、実際に俺らが体験し実際に思ってる事だ。それがこの男には響いたのだろう。

 

喜助の2番隊の最後任務が終わったのだ────。

 

 

 

 



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ずるい俺の話

 

隊首試験当日、夜一さんと喜助が出てもう数時間。

 

 

おれは執務室で部屋でウロウロしてしまう。

落ち着かない…喜助なら大丈夫だと分かってるけど…。

 

すると襖が開いて夜一さんが顔を出した

 

夜一さんは俺と目が合うとグッと親指を立てた

 

「よ、良かったァァ…」

俺は畳に寝そべるほどに安堵した。

それを見下ろしてため息を吐く夜一さん

 

「弟バカは相変わらずじゃの維助。喜助が落ちるわけなかろうに」

 

「それでも心配だったんです〜。でもよかった」

 

「のう、維助」

畳にねそべる俺のそばで座った夜一さんが、ちょいっと袖を引っ張った

 

「ん?」

 

「維助…は本当は隊長になりたかったんじゃないのか?上に上にと…上を目指しておっただろう?もし儂が足枷になっているのな…」

そこで夜一さんの言葉が止まる。

おれが夜一さん手を握ってその言葉を制止させたからだ

 

「夜一さん、俺は院生の時からあんたの下につくって決めてたんだよ。夜一さんを一人にさせたら誰も止めれる奴いないだろ?当主になるのを見守るって決めて、夜一さんがつくる二番隊と隠密を見守るってのももう決めてたこと、それとも俺はもう用無し?」

って意地悪すると、ブンブンと横に首を振る

 

「正直…儂の元から離れていくのはみんな…悲しいし寂しい。あんなに幼き頃から一緒にいた維助と喜助が…いつの間にか儂を超える程の力を持ち、どんどんと前に進む…儂は置いてかれそうで…っ」

 

「大丈夫、夜一さんの傍から離れたって夜一さんを大切に思う気持ちは俺も喜助も一緒さ、俺だって喜助が離れてくと思うと寂しい、そりゃ喜助が生まれたときからずっと一緒なわけだしな。でも、大丈夫。俺はそばに居るよ」

 

()()じゃぞ、維助。ずっと、ずっと一緒じゃ」

 

「あぁ…()()()()()()()()()

 

院生の頃、京楽隊長に8番隊に誘われて、即答した答え。

俺は夜一さんを支えて生きていく。

彼女は1人にしたらダメだから、彼女は貴族の中でも上位5本指で数えれる知らない人はいない貴族当主で、本来なら俺もここでこうべを垂れなきゃ行けない身だ。

でも夜一さんはそんな一線を嫌う、貴族だからと姫だからともてはやされているのが気に入らないんだ。

 

強がりな彼女を()()()()()()支えようと誓う

 

────────────

 

「おめでとう喜助。」

 

「なんか、違和感ありますねぇ」

隊長羽織りに腕を通して照れる喜助。

正式に隊長になる式典の日を迎えたのだ

 

「はい、これ俺からの昇進祝い」

 

少し古びた箱に入った扇子と綺麗な箱に入った下駄を手渡す

 

「この家紋___」

喜助が扇子を取り出して彫ってある家紋を見て目を見開く

 

「そう、母上の形見で俺が継いだやつだ。喜助は俺らから離れてくからなせめて母上に見守っててもらおうかと、大切にしろよ。

それは母上からの昇進祝いで、この下駄は俺から、隠密だから苦手な草履無理やり履いてただろ?もう昇進したからいいかなと」

 

「大切に…大切にします」

ギュッと大切そうに握って笑う喜助。うん、本当にあっという間に成長して…

 

「兄ちゃん嬉しい…っ!!」

喜助に思いっきり飛びかかるように泣きながら抱きつくと全力で押し返される。

「なんで泣くんスか!?ちょ、羽織り汚れる!あぁぁー!」

 

っと叫び声と夜一さんの愉快そうな笑い声が響いた___。

 

──────────

 

「ったく、夜一さんが取りに行った方が早いだろうに、面倒くさがったなあの人」

 

一番隊隊舎についたら夜一さんがいきなり喜助の昇進についての大切な書類を忘れたというもんだから取りに戻ったのだ。

まったく…

 

「すみませーん、二番隊副隊長、浦原維助です〜開けて欲しいんスけど〜」

っと、でっっかい門の前で叫ぶ。

 

ギギギギっと音を立て開いたかと思うと───

 

「うるさいわボケ!」

 

ガブッ

小さな足の裏が俺の顔面にめり込んだ

 

「顔が痛いっ!!なにすんだひよりちゃん!!このイケメンフェイス(へこ)んだらどーすんだ!」

 

「あん!うっさいわボケ!グエッ

 

「うっさいのはお前やひより!」

 

ぷらーんっとひよ里ちゃんが持ち上がったかと思うとひよ里ちゃんの首根っこを掴んで持ち上げた平子隊長とその横に控えた惣右介

 

「おーす、惣右介おはよ」

 

「おはよう」

 

「おいこら、維助!助けてやった俺に挨拶は!?」

 

「おはよーございます平子隊長!相変わらず派手な髪で」

「アンタに言われたかないわ」

 

お前瞳までギラギラやんけって言われたけど知らぬ。

 

「維助君、君のところの隊長は?一緒じゃないのかい?」

っと首を傾げる惣右介

「さぁ、先に行ったと思うけど…俺はパシられただけだし」

 

来たかどうか確認する札が表になってるから来てはいるんだろうな、まったくフラフラしやがって…。

 

「相変わらず十一番隊は自由やな」

っと裏返しになった札をみてため息を吐く平子隊長。

 

「十一番隊ってだれだっけ」

 

「豚や豚、なんであないなやつ隊長になったんやろな」

っと俺の疑問に答える、いや答えてないな、結局誰だよ

 

「おやぁ〜人の悪口は感心しないよ、平子君」

 

「おー京楽さん、おはようさん、珍しく早いやん」

 

っと後ろから京楽隊長と浮竹隊長が来た、あの人体調すこぶる悪いって言ってたけど今日は顔色いいみたいだ、良かった良かった

 

「あたしがケツひっぱたいて起こしたんや…ってなんやねん」

京楽隊長の影に隠れてて見えなかったが、姿が見えた瞬間、すこぶる美人のおっぱい美人の手を握って跪く(ひざまずく)

「貴方がリサちゃん!?可愛いなぁ!どう今度俺とデートゴブァ!なにすんだよひよ里ちゃん!」

 

「うっさいわ!アンタウチには何も言わへんよなぁ!胸か!胸なんか!!」

いきなり後頭部に蹴りが飛んできて前のめりになるがリサちゃんがヒョイッと避けたせいで俺の顔面は地面にたたきつけられた。

 

「んやねん、この助平は」

っと俺を指さすリサちゃん。

「ほら、この前十番隊さんとこのお見送り(葬式)で休んでた、剣の天才浦原維助君だよ。二番隊副隊長さ」

 

「浦原…!あぁ、伝令神機作った頭イカれとるやつか」

「リサちゃんいいすぎ」

 

っと京楽隊長のツッコミがはいる。

身体壊したのとか色々あって結局今回が初めてのご対面だ。

 

いやぁー美人!

 

「ははは、維助君はいつも楽しそうだなぁ、伝令神機のおかげで部下が色々な場所の写真撮って見せてくれるんだよ、君には感謝してる」

っと浮竹隊長が優しく笑う。

 

「お役に立ててるなら良かったです」

 

 

─────────

部屋までの長い廊下でゆっくりと歩く俺ら

 

「今日隊長になるん十二番隊やっけ?」

「ふん、うちは認めへんぞ」 ってブスくれるひよりちゃん

 

「ってか維助やないんやな?なんか浦原がどうのこうのって聞いたからてっきり維助かと思ったわ」

っと平子隊長が振り向いた。

「あれ?会ったこと無かったでしたっけ?ほら初めてお会いした時ぐらいに言ったじゃないですか()()()()って」

 

「ってことは…弟が隊長かいな!」

 

「弟くんには何度か会ってるけど、彼も凄いよ、面白くなりそうだねぇどうも」

っと笑う京楽隊長。

 

「あんたら兄弟どうなっとん…」

なんでそこで呆れるんだ…??

 

──────────

 

もう部屋にいた夜一さんが俺を見るなり開口一番。

 

「遅いぞ維助!」

「おいこら、夜一さんが取ってこいって言ったんじゃん」

 

はい、っと渡すと書類を受け取る夜一さん。

 

「維助はー!どっかの八番隊のリサに鼻の下伸ばしてたら遅くなったんやでー!」

っと反対側の平子隊長から野次が飛んでくる

 

「ばっ!ばっかお前!」

 

ってかもう名前言ってんじゃん!

それにそんなこと言ったら…

 

「ほう…?他のおなごに鼻の下を…」

アイタタタ!耳!耳引きちぎれる!

引っ張られた耳をようやく離されると

平子隊長が面白そうにゲラゲラ笑っていた。

───後で覚えとけよ。

 

「んで喜助は?まだ来てないんですか?」

「ん?儂は朝から見とらんが」

 

「俺も見てないですよ朝から…」

どっかでのんびりしてんのかあいつ…一緒に連れてくれば良かったかな。

 

「ありゃ、遅れちゃいました〜」

噂をすればなんとやら、呑気な声が聞こえた。

 

「遅いわ喜助!どこで道草くってたんだよ」

 

喜助があはは、と言いながら頬をかいていた

 

「いやぁ〜ちよっとのんびりしちゃって」

「やっぱりな」

 

「んや、ヘラヘラした笑い方維助ににとんなぁ…ほんまに兄弟だったんか」

なんて平子隊長の呟きが聞こえる、疑ってたの…??

 

─────────

 

「これより、新任の儀を執り行う。」

 

元の隊長が異動したことや、推薦により浦原喜助が隊長になったことが説明された

 

「…よって、ここに元二番隊第三席浦原喜助を十二番隊新隊長と任ずるものとする」

 

 

解散になってバラバラと隊長副隊長が帰っていく。

 

暗い顔をしているひよ里ちゃんに近寄る。

「俺の弟をよろしくね」

 

「…認めへん」

そうブスッと口を尖らせているひよ里ちゃん

 

「うーん…頼りないところあるかもだけど大丈夫、そのうち打ち解けるよ」

 

「そんなん決めるのはウチや」

そう言ってスタスタと帰って行った。

 

さて、俺は残りの喜助の荷物を整理するかね…。

 

──────────

 

「そうそう、そこの配線はこの防水の袋被せて縛っといてほしい。」

 

「はい。」

 

隊舎に戻り院が休みの阿近にも手伝わせて喜助の部屋を整理する。

ある程度持ってったとはいえ、でかい器具は持っていけてないので、そのうち運ぶための準備を2人でしてる。

 

「喜助も…独り立ちかぁ…」

 

「なんですか、急に」

っとジト目で俺の顔を見る阿近。

 

「いや、喜助が産まれた時から見ててずっと一緒だったからさ、あっという間に成人して…院も卒業して、色々あったなぁ…ずっと二番隊で一緒に成長してって…寂しくなるなぁ」

 

「死ぬわけじゃないんだから会いに行けばいいでしょうに」

 

「そうだなぁ…阿近も…あ、そうだ、」

阿近に聞きたいことがあったんだった。

 

「なぁ阿近」

 

「なんですか?」

荷物を置いた阿近が俺と向き合う。

 

「喜助から聞いたんだけど、喜助は技術開発局っていう新しい機関を作るんだ、()()()()()()()新たなものを生み出す機関さ。

曳舟隊長から義魂(ぎこん)の概念っていう論文を貰ってさ、それから色々研究して仮の肉体に魂を宿す道具を作るって喜助が息巻いてて。

まぁそれはいいとして、俺の作った伝令神機の緊急報告の受け取り側になる情報機関プラス他にもいろいろな研究とかする機関を作るんだよ。」

 

「…それで俺がそこに?」

 

「話が早くて助かる。そう、お前はまだ死神じゃないけど、俺と喜助の権力で死神見習いとして雇えるようになった、特別だけどな?お前は俺の技術と喜助の技術どっちも近くで見てきて受け継いでる。喜助も技術者が一人でもいれば頼りになるだろうよ、どう?」

 

「……行きます」

 

「分かった、お前は俺の子供みたいなもんだ、もし何か困った事があったらなんでも言ってくれ。お前の力になる」

 

寝床は俺の場所だが、通いとして喜助の隊に見習いとして働く事になった阿近。

 

断界の研究とか虚の研究とかしたいって言ってたし、俺はそう言うのは向いてないから、阿近にとって技術開発局ってのはいい経験になる事だろう。

 

「見ず知らずの俺を助けて拾ってくれて育ててくれて…死神にしたら少しの時間かもしれないけど…俺は感謝してる。絶対に維助さんの霊圧上昇の原因を突き止めて…絶対に最高の霊圧制御装置をつくる。」

 

っと意気込む阿近。やる気があって実によろしい!

 

 

その日の夜、何故か喜助が部屋に来た

 

「おいこら、もうお前は12番隊だろ?そう他の隊にひょいひょい入っちゃダメだろ…」

そんな呆れた俺の声を無視して歩き出した喜助。着いてこいと言うことだろう。

 

阿近は寝てるけど一応聞かれたら困る話なのかと、おれは無言で歩き出す喜助について行く。

 

やってきたのは勉強部屋。

光を放つ特殊な生物が天井にいるので外とは違い明るい

 

「兄サン。維助兄サンはこの先どうするんですか」

「この先って?そりゃ喜助の局を手伝うよ、浦原神機の社長としてな、仕様書を貰って作るエンジニアみたいな…」

 

「分かってるでしょ?そういう話じゃない事を、兄サンは院生の頃から夜一サンを抜かさないように卍解を隠し実力も抑えて、定期的にやらかして問題児のフリして…。そして()()()()()()()()気づかないフリをしてる。」

 

「…」

振り向いた喜助は真剣な目をしていた。

 

「人の色恋にどうこう口出すのは不躾ですけど、兄サン。砕蜂サンと夜一サン。そろそろ真剣に向き合う時じゃないんスか?」

 

「俺は結婚する気はない、それは直接本人らにも言ったこともある。甘味処行った時とかにな。砕蜂とはそもそも席官になるまでの見合い話の延長線だし、その時に結婚はしないとも言った。夜一さんと俺は当主同士だから、籍を入れるのにも色々問題あって難しいものだし。」

 

「いいんスか。」

 

「あぁ、俺は人を幸せにするのに向いていないから、夜一さんの部下で砕蜂の上司。」

 

もう悪い事にも足を踏み入れた。

惣右介がなにか未来でしでかすって知ってたのに手を貸した。

────けれど彼女らは巻き込みたくない。

わがままで機械ばっかで友人も愛しい人も選べない俺には幸せにするとかそういうんは向いてない。

 

 

「そうッスか、兄サンがそこまで言うなら。卍解はいつまで隠し続けるんすか?夜一さんを抜かさないようにって言ってましたけどもう彼女は当主だ」

 

「なんだよ今日は質問攻めだな?」

 

「京楽隊長や平子隊長は気づいてますよきっと夜一サンもね」

 

「あぁ、()()()()()()()()()()()()()()()夜一さんには感謝してるよ」

 

隊長になるために必要なうちの1つの条件それは

 

()()()()()()()

 

夜一さんは俺か喜助を推挙しようとしてた。

俺は夜一さんに()()()()()()()を話していない。

なのに俺を推挙しようと候補に入れていた___。

 

知ってたんだなぁ…いつからだろうか、流石に能力までは知らないだろうが、

 

「でも俺はこれからも多分命の危険がない限り始解もしないし卍解もしないと思う…多分な?剣術と白打を極めし死神──かっこいいだろ?」

 

「ふっ…兄サンらしいッスね」

 

俺は好きな事をしてロマンで生きる。

いいとこ取りのずるい俺

 



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魂魄に何かを埋め込まれた話

いきなり呼ばれたと思ったら隊首室の大改造するから手伝えとの事で喜助に朝から呼ばれて配線や喜助の荷物を運び込んだ。

 

「いやぁ、助かりましたぁ〜」

っと嬉しそうに笑う喜助。

 

余程正式に研究ができることが嬉しいんだろうな…

 

俺は浦原神機として技術開発局の依頼を受けて機械を作る役を担う(になう)ことになった。

 

それはいいんだけど────

 

「えぇ?ウジ虫の(いえ)*1の連中を隊士として受け入れる…??」

 

「えぇ、前々からもったいないなぁ〜って思ってたんス」

 

喜助が抜けた今、俺が3部隊長代理となっているので喜助が担当者である俺に頼み込んできたのだ。

 

「何考えてるんだか…思想行動が危険視された連中だぞ?」

 

「大丈夫ッス、ボクが全て責任を取ります」

 

「……わかった、除隊から復帰の手続きはしておく」

 

死神として復帰した中には───

 

「化粧お化けも?」

 

「相変わらず失礼な奴だヨ、浦原維助」

その中には化粧お化けこと涅マユリもいて──

配布された伝令神機を見て製作者を聞くなり顔に青筋を立て

「こんなもの使わないヨ」

って壁にぶん投げたはいいものの跳ね返って鼻血を出していた。

 

なるほど…伝令神機を武器として使う手も____。

ちなみに伝令神機は擦り傷は出来たものの割れてもないし壊れてもない。

 

そうして形になって行った技術開発局。

前々から欲しかった問合せ所なんかも作ってくれて、現世の死神が困ったら伝令神機に問い合わせを送ることで技術開発局に通達が行くようになった。

特殊な虚の研究、曳舟元隊長からの論文を元にした義魂丸の開発、新たな物質の発見など様々な研究をしている。

 

毎日帰ってくる阿近が楽しそうに研究の話をしてくれた。

阿近ももうすぐ卒業、卒業したら入隊は12番隊になるだろう、そうしたら俺の部屋ともおさらば…あぁ、弟離れと子離れ…また寂しくなるなぁ…

 

そしてもう1つ変わった事が

 

「おめでとう!一心!!大出世じゃねーか!」

「いやぁはは、師範のおかげですよ」

 

あの二番弟子の一心が10番隊副隊長に昇進した、まだ隊長ではないけど代理として10番隊を仕切ることになった一心。

始解の能力でゴリ推してた頃とは違いちゃんと筋肉も着いて喜助から学んだ鬼道や俺から学んだデコピンと剣術で──実力で副隊長にまで這い上がった。良くぞここまで…!!

 

そんな感動してる中女の子の声が聞こえた。

「ちょっと志波副隊長!こんな所にいた!」

 

「おぉ、乱菊」

 

トタトタと走ってきた子供…?いや死覇装来てるから死神だな

子供なのに胸がデカイな!将来が楽しみだ…なんて変なこと考えてると俺と目が合う

 

「この人は…?あっ、副官章!す、すみません」

っと俺の腕の副官章をみて頭を下げる

 

「この人は俺の師範で浦原維助。伝令神機を作った人だ」

 

「えっ、これをですか?」 っと懐から取り出す伝令神機。

 

「浦原維助、二番隊副隊長だ。もし伝令神機で改善して欲しい点とかあったら検討するから教えてくれな。」

 

「いやいや、すごく便利ですよこれ!写真撮れるし…隊に設置された印刷機…?ってので写真を印刷して書類に貼れて…!全然満足してます!!」

っとキラキラした目で見つめる

 

「乱菊は今年に入った新人なんですよ、たまにサボるけどやる時はやるやつです」

 

「ちょっと副隊長!副隊長のほうがサボってるでしょう?」

 

「えぇ、俺はちゃんとやってるだろ??」

 

仲良い事で何より何より。

同じくギンも5番隊の席官として入隊したらしいし、色々変わり時って感じだなぁ…

 

そういえば___喜助と夜一さんはどうして原作で現世にいたんだろうか──。

 

現世配属…?いや…ないな、なんでだ…?

そういえばなんか砕蜂と夜一さんが戦ってたような…

 

あぁ…もっと漫画ちゃんと読んどけばなぁ…。

そもそもゲームでは確か…涅が羽織を着てたような…。

いや、気のせい…?エプロンと見間違えた?

うーん…こんなんなるならちゃんとメモでも取っておくんだったな。

 

_________

 

そんな喜助が隊長になって早2年。

早いものだ、阿近も飛び級して死神になり正式に12番隊隊士になり

ひよ里ちゃんもなんだかんだ12番隊として喜助の元で働いていて___。

 

ある日また喜助が相談に来た。

 

「は?()()()()()()()()()()()()()()その被検体になれって?」

 

「はいっス、やっぱ実験しないと」

 

「おい、だからって俺を被検体にしていいと思ってんのか。なにを埋め込むんだよ?」

 

「……それは内緒ッス!大丈夫ッスよ〜多分死なないんで」

 

「多分!?死ぬ可能性あるって事かよ…!虚で試せよ」

 

「いやぁ、もう試したんスけど、死神にも試してみようかと」

「自分でやれよ自分で」

 

「嫌ッス!怖いじゃないッスか〜死んだらどーすんスか」

無理無理っと扇子を扇ぐ喜助

「てめぇ、俺はいいってことか!?埋め込むものを言わねぇとヤダね」

 

「……()()()()()()()()()()()()()()使()()道具ッス!」

 

「…はぁ?」

喜助が良くわかんないことを言うのはいつもの事だけど、今日は更によくわからない。

 

「つまり、ちょっと()()()()()を作っちゃいまして、そのヤバい物のあらゆる想定をした中で必要になる道具を埋め込ませて頂きたいなーって」

 

「…………はぁ、いつもやばいもの作ってる喜助が、自分からやばいものって言うなんて…相当だな。まぁ分かった、いいぞ」

って言った瞬間に()()()()()が走った。

──俺の身体の中心には穴が空いていて、喜助が手を突っ込んでいた。

 

「成功ッスねー」なんて、言って手を抜く喜助

 

「いきなりやるか!?!?普通!!!」

 

「いやぁ、だって心の準備してもやること一緒なんスから早い方がいいかなーって」

「野郎…っ」

 

マジで喜助…兄ちゃんの扱い酷すぎないか…?

「ちょっとまて、これ取れるのか?」

 

「え?取れないっスよ?」

 

「はぁ!?」

取れないって…何か変なのが俺の中に残ったまま!?

 

「いやぁ!言ったじゃないッスか!埋め込む実験だって!埋め込んで摘出する実験だなんて言ってないじゃないですか〜」

 

「てめぇ…!最初からそのつもりだったな!?」

 

痛みはもう何も無いし、何も感じない…本当に埋め込まれたのかって感じだけど…。

 

 

「そう、()()()()()()()()()使()()()()()()…そうならないといいんスけどねぇ」

 

何を埋め込んだかは喜助のみぞ知る

*1
維助のウジ虫の巣の呼び方



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子供は可愛い話と俺の変化の話

 

俺の手首には複数のブレスレットや紐、縄みたいだったり手錠のようなものだったりが取り付けられていた。

 

「これもダメか…」

ため息を吐きながら肩を落とす阿近。

阿近は見習い時代からずっと俺の霊圧上昇の解明と並行して霊圧制御装置も作ってくれている。

もう試作品は何個目かも分からない。

俺の霊圧に耐えれずひび割れていく霊圧制御装置、見た目に凝り始めたな…?なんかオシャレになってるし

 

パソコンに研究結果を記載する阿近は何度かのため息を吐いた

 

「霊力を吸収する石を使ったのに…吸収するキャパがオーバーして限界を迎えた…うーん。」

 

俺は元の霊圧制御装置を付け直す。

この2年の間にも霊圧は上昇し続けている。

そろそろ俺の魂魄に影響が出てきてもおかしくないほどに__。

まぁまだ元気なんですけどね、ただ制御出来ないとなると他の奴には迷惑かかる。

 

「昔からそうなんですか?霊圧の上昇」

っとカタカタとキーボードの音が響く。

 

「うーん。昔からだよ」

 

正確には卍解を習得してからだけど。

始解は確かに俺の霊力を使うけど…始解や卍解で霊圧が上昇し続けてしまうなんてあるのだろうか。

卍解は溜め込むみたいな能力じゃないし…なんだろうなぁ

 

「また違う物質試してみます。ありがとうございました」

 

「阿近は阿近で研究したいことあるんじゃないのか?ほら、断界とか研究してみたいとか言ってたじゃん」

 

「たしかに色々研究したい事はありますけど、死神には途方もない長い時間があります。それに…恩返ししたい」

 

「別にそんな重く考えなくてもいいのに」

っというと首を横に振る阿近

 

「維助さんにとっては当たり前のことだったかもしれないし、たまたまだったかもしれない。けれど、俺はあそこで死を覚悟した。生きるのを諦めてしまった…維助さんは見ず知らずの俺を助けて拾って色々教えてくれて、近くで歴史が作られる瞬間も見た。俺はそんなすごい人に拾われた事に感謝してるし、一生かけても返せないほど恩を貰った…」

 

パソコンをシャットダウンした阿近と目が合う

 

「少しでも、少しでもあんたの役に立ちたい。少しでも、少しずつでも…俺に出来ることで恩を返していきたい」

 

「…そっかぁ」

そこまで強い意思があるならこれ以上謙遜するのは阿近の覚悟に失礼だな。

阿近の頭をそっと撫でる、阿近も少し大きくなったなぁ

 

「息抜きも大切だぞ阿近。」

 

あっという間に夜遅くなってのんびりと二番隊まで歩く。

瞬歩ならすぐだろうけど、こうやってのんびり歩くってのもいいもんだ、月も綺麗だし久しぶりに酒持ってきて1人で酒盛りでもしようかな…

 

__ふと、視線を感じて振り向く

 

木の影、塀、屋根、地面、空

何もいない。

 

気のせいか…?

 

突き抜けるような視線を一瞬感じた気がするけど、まぁ瀞霊廷で俺は有名人だし見られててもおかしくないか……。

 

「あれ?惣右介?」

 

「……」正面から来てた惣右介。違うことを考えたせいか惣右介がいることに気づかなかった。

 

惣右介は黙って俺を見る……というより俺の後ろを見ている。

振り向いて確かめるが何もいない

 

「どうしたんだよ惣右介」

 

「…………いやなんでもないさ。それよりこんな遅くに何をしてたんだい?」

 

「いや、こっちのセリフな?俺は12番隊に行ってたの」

 

「夜はあまり出歩かぬよう指令がでてたはずだけど?」

 

「……えっそうなの?」

なにそれ初耳なんだけど

 

「はぁ……」

っとこめかみを押えた惣右介

 

「2番隊の隊長はろくに指令を伝えれないんだね」

っと呆れてる様子。

 

「まぁ、夜一さんの事だから忘れてたんだろうな。教えてくれてありがとうな。ってかそれなら惣右介もじゃない?」

 

「僕は少し用があってね」

 

「へぇ」

自分が何してたかは言わないのね、まぁ深堀はしないけども。

 

「ってかなんでそんな指令が出てるんだ?」

 

「知らないのかい……?ここ最近隊士が()()()()を遂げてるからだよ」

 

「不審死……?」

 

「不審な事件と言ってもいい。最初は1年前、夜道を歩いていた隊士が何者かに殺害されたのが始まり

2件目3件目はそれぞれの隊舎、しかも自室で。4件目は現世滞在中の死神が──現在25件目。

死因や場所、階級、院生時代のも遡っても全てに当てはまる有力なものは無かった──ただし。被害者の首元には必ずバツ印が刃物のようなもので刻まれているようだ。

ここ1年でこれだけの事件が起きている瀞霊廷は本格的に調査に乗り出したよ。本当に知らなかったのかい?」

 

「あー…………なんかチラッと砕蜂から聞いたような……。」

 

「君警邏隊の部隊長だろう……??」

 

「いま警邏隊は部下に任せてるもん」

 

あははーっと頭をかくと調子が狂うと言って眼鏡を上げた惣右介。

 

「夜道には気をつけるんだね」

 

「あぁ、そうだな」

 

___________

 

鎧を付けた数人の男が蝋燭(ろうそく)に火を灯す

 

蝋燭の光が揺らめく部屋で1枚の紙が燃えていく

その紙には箇条書きのように文字の羅列が並んでいた___

 

 

【調査記録・指令書】

浦原維助

 

上級貴族の浦原家の長男で現当主

始解・解号・能力、共に不明。

 

一回生の現世の魂葬実技により中級大虚(アジューカス)と対峙し重症を負いながらも討伐に成功した。

剣術の天才とうたわれるようになる、抜刀術を得意としている

その後真央霊術院を2年で卒業

 

 

二番隊副隊長に就任後浦原神機(うらはらしんき)を設立、伝令神機を開発し多大なる功績を上げる。

他にも──××××.××××.××××.

 

《中略》

 

×××──等の開発に成功。

 

戦闘時は膨大な霊圧を圧縮して全身を硬化させており、70番代の鬼道を素手で防ぐのを確認。正面戦闘の勝率は100%。毒物にも耐性があると見られる。

 

 

 

────以上のことから

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

【指令】

 

 

 

───浦原維助の

 

          抹殺を命じる

 

 

 



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事件の話

維助の作った制御装置。銀だと目立つから黒に染めている
手錠のようにも見える、結構重い。
ひび割れる度に交換している、寿命はせいぜい1週間


【挿絵表示】



 

惣右介が言ってた25件の謎の事件。

遺体の首に刃物でつけたようなバツ印が刻まれているのが特徴。

そしてついに───

 

「……夜一さん」

 

「儂の責任じゃ」

 

頭を片手で抱え込む夜一さん。

 

26件目。ついに二番隊の隊士が犠牲になった。

夜一さんの一部隊刑軍の1人

刑軍は夜一さんの護衛兼虚や危険な任務などが多いため弱い奴は配属させていない。俺が選び俺が実力を認めた隠密達がほとんどだ。

 

「……」

刑軍の奴がやられるって相当強いのでは……?そもそも1人か?複数の可能性もある。

でも、1人も目撃者がいないというのも……

 

とりあえず喜助の所の12番隊が事件の証拠や犯人の調査をしていると言うので向かうことに。

 

「砕蜂、夜一さんを任せた」

 

「はっ」

 

一度に2人以上死んでいない、目撃者もいないということは、1人になった時に襲われたのだろう、2人以上傍にいれば多分大丈夫。

 

瀞霊廷内は見回りや監視が強化されている、夜も朝も、その中で誰にもみられず……?

 

───────────

 

「たのもうー!!」

 

「ゴルァ!扉壊れるやろ!普通に開けられんのかボケ!」

 

12番隊の研究所の扉を開くと第一声にひよ里ちゃんの怒号。

 

「喜助ェ!!ボンクラ兄貴来たど!ゴルァ!」っと、仮眠室♡っと書かれた扉に向かって叫ぶっとしばらくして扉が開いた

 

「クマやば!」

 

ボサボサの髪に髭が伸びた喜助。

何より目の下のクマがやばい真っ黒なんだけど?

 

「そんな叫ばないでくださいよ.…頭に響く……いらっしゃいませ兄サン」

 

欠伸をひとつ漏らした喜助がキャスター付きの椅子に座った

 

「阿近さーん、二番隊の調査結果の資料持ってきてください〜」

っと、奥に叫ぶと阿近がトタトタと資料を抱えて来た。

 

俺はそれを受け取る

事件の詳細、死亡推定、また死因や戦闘痕の調査や毛髪など事細かに調べてあるらしい。

 

「一昨日の夜、死因は失血死。背中からの一太刀から胸を一突き……ね、慣れてんな。」

 

まるで隠密のやり方だ。

 

「25件目は戦闘痕があったんスけど、今回は完全に背後を取られての暗殺。隠密がそうそう背後を取られることはない……というのに、相手は少なくとも副隊長以上の実力でしょうね」

 

「……死神だと思うか?」

 

「そうッスねぇ……院は出てるでしょうね。鬼道を使用した痕跡がありましたし。斬魄刀の使用形跡もある」

鬼道は知識と技術がいる、死神でもない、鬼道衆や隠密でもないやつが使える技じゃない。そりゃそうか

 

「…………」

結局犯人と直接繋がる情報は……なし

 

「ありがとう。」

 

書類を阿近に返し俺は踵を返す。

喜助はずっと調べてまとめてたらしい、椅子の上で寝こけてた。

 

「さて、帰るか……」

 

夜一さんが傷心中だし、何か買ってすぐ帰るか……

甘味処は事件があったからか客は居なくてガラガラだった

 

三色団子とみたらし団子を包んでもらって帰ろうと歩く。

一日が早く感じるなぁ……もう夕方か俺も.もうジジイの気分だよ

人間で言うと人生3回ぐらいは生きてるしな。

 

いつも賑わっているのに事件があるからか静かだ__

早く事件解決するといいけど。

 

なんて思ってるとガツン──と、重い鉄が擦れるような音が聞こえて振り向く。

 

 

その瞬間───

振り向いた瞬間に見慣れた銀色の切っ先が───

 

「あっ……ぶな」

音を斬り裂くように目の前に振り下ろされ咄嗟に身を後ろに引いて間一髪避ける

俺がこんな近くまで来て気づかなかった……?殺気すらも?

 

そこには死覇装のうえに甲冑(かっちゅう)を着た恐らく男が。

(かぶと)をかぶり鬼面をつけている

 

「いきなり斬りかかってくるなんて、マナーがなってないなぁ。俺は二番隊副隊長浦原維助、そっちは?」

 

っというと、刀を構え直す兜男

 

「お前を殺しに来た」

そう面のせいか籠った声が聞こえた。名乗らないかそりゃ

なんて思ってると___また目の前に切先が。

 

「っは……!」

顔に触れるか触れないかの瞬間に草履の裏でそれを止め、弾き飛ばし距離をとる。

早い──?いや、俺が目に追えないわけない。

刀の振りは見えてた……いつ俺の目の前に来た……?

地面から足が離れる瞬間見えたか?

───いや、()()()()()()()()()()()

 

「そうか……そうか、事件の犯人はお前か、そしてその斬魄刀の能力厄介だな」

 

 

──時を止める能力──

 

生物に触れる瞬間に無効になるんだろう。

それか時を止めると攻撃できないから解除したか___。

どちらにしろ移動は時間を止めているらしく見えない。

 

「クソ厄介だなそりゃ!」

0.1秒にも満たない時間で刀を捌くか避けないといけない。

霊圧硬化してるとはいえ、隊長格の実力だった場合霊圧制御してる今は突き抜けて来る可能性がある。また七々扇家みたいな毒だったら死なないにしろ動きが鈍くなる。

だから避けるか捌くかしないといけないんだけど___!

 

「きっっっついな」

バク転して距離を取るが俺が刀を抜く前にまた詰め寄られてしまう。

抜刀の構えすらさせてくれないらしい。

 

ただ、ここは瀞霊廷、時間をかければ音と霊圧の衝突に反応したやつが来るだろう。ここは時間を稼いで__っと思ってると気づく。

 

俺の買った団子の包が()()()()()()()

 

「教えてやろう、ここは時間の止まった空間。止まった空間の中に何が起きようと周りは気づかない。生物の時間は止めれないがな俺の卍解の力だ」

 

ボロボロになった草履を脱いで裸足になる

 

「卍解ねぇ……。めんどくさい事で、でもその感じだと長く持たないんだろう?そんな強い卍解霊力が持つはずない。それに色々制限があるんだろ?」

 

「ふっ、その通り……!」

また消えた──っと思ったが目の前に出現しない……

 

「後ろか!」

「遅い!!」

 

左後方から斬りかかってくる__右なら刀で防げるから、こいつ対死神戦にでも慣れてるな?

咄嗟に腕で受け止めるがそいつが狙ったのは腕ではなく……

 

「ぐっ……」

俺付けてた制御装置が半分に斬られ地面に落ちる

 

まずい、いきなり制御装置を取られると__

 

「最初っから狙ってやがったな……っ!」

片手とはいえ溢れ出る霊圧。お風呂のお湯は溢れないように制御できるが、海は?津波は?制御できるものでは無い──

荒れ狂う(霊圧)を抑えてた防波堤(制御装置)がぶち壊されたんだ、抑えようとしても溢れ出てくるっ……!

 

「その硬い霊圧硬化も霊圧を制御できてたから成せた技だ!これなら……っ」

 

「ガッ……ッ……」

 

咄嗟に身体を捻らせ急所から外すが刀が脇腹を貫通した──

 

「はっ!やっぱりな」

 

っと笑い声が聞こえる

 

「はは……お前焦りすぎだ、そんなに時間ないか……?ふっ……よく言うだろ?」

 

「なっ……うごかない」

俺はそいつの刀を握りしめ動かせないようにする

 

「肉を切らせて骨を断つ──ってな。わざと斬らせたのさ、ばーか!さぁその面見せろや」

 

思いっきり身体を反って勢いをつけ、そして__

─溢れ出た霊圧の全てを収束させ頭突きをくらわせた

 

「ガッ!」

 

バキッっと音がして鬼の面にヒビが入りポロッと地面に落ちる

目を見開いた男と目が合う、だが男が短刀を懐から取りだし俺の目を狙う__

 

────「破道の八十八 飛竜撃賊震天雷炮(ひりゅうげきぞくしんてんらいほう)

 

背後から聞こえたその声に咄嗟に刀を離し飛び退く

「ばっ!ばっ!ばっかお前!!俺まで巻き添えになる所だったろ!

 

 

惣右介!!!

 

「チッ……」

舌打ちした男は刀振る───次の瞬間にはその場から消えていた

 

ドシャッっと浮いていた団子が地面に落ち、能力が消えたことを証明する。

ため息を吐いて惣右介の方を振り向く

「助かったよ惣右介。ってか、惣右介入れたのか?」

 

「変な空間の事ならついさっき入れるようになったよ」

「なるほど」

ついさっき……俺があいつの刀に触れた時かな……?

 

「あー久しぶりに痛かった」

脇腹をすりすりと撫でる。

 

「その霊圧早く収めないと__」

人が来るよ……惣右介が言った瞬間には

 

「兄サン!兄サン!霊圧!霊圧を抑えて!ボクの所の隊士倒れてるんで!」っと、声を上げながら喜助が走ってきた。起きたのか……

 

「いや、これでも壊された時よりは抑えてるんだけど……」

 

「ってなんで制御装置が壊れて……それにその傷!」っと俺の足元に伝う血を見て慌てる喜助

 

「大丈夫、傷はなんか治った。浅かったし」

 

「えぇ……っ?あ、本当にふさがってる……一体何が……?」

だからって傷口触るか普通。

すぐに阿近が持ってきた制御装置を付ける。

 

少しひび割れるが壊れはしなかった。まぁ長くは持たないだろうな。

霊圧が溢れ出たせいでもう片方の無事だった方もひび割れてるし……

 

事件現場を調査する12番隊を横目に簡単に説明する。

恐らく事件の犯人と接触したこと等。

 

─────────

「はぁ……とりあえず俺重症って言っといて……」

「ダメだよ、総隊長がお呼びだ」

「はぁ……」

 

俺と惣右介は隊首会に呼ばれてしまった。

 

 

でもあの男__どこかで見たな、原作じゃない……

 

だれだ……?いつ見た__?

 

 

 

 



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男の娘と霊圧制御の話

 

隊首会に呼ばれた俺と惣右介

主に俺が当初の状況を説明する。

 

「浦原維助、貴様を狙ったということか?」

っとある程度状況説明をした後に聞き返された。

 

「はい、お前を殺しに来た_と、理由は分かりません。たまたま一人でいたからって可能性もありますので」

 

「それで、その男の顔を見たのだな」

 

「ええ……焦げた茶色の髪に黒い瞳_あー、左頬と左目付近に火傷のような痕が」

「ほんまか……?」

っと声を出したのは平子隊長だった。

並んでた平子隊長はそのままつかつかと歩くと俺の胸ぐらをつかみあげる

 

「平子隊長!」

猫かぶりモードの惣右介が平子隊長を止めようとするがそれを振り払う

 

「ほんまに()うてんねんか?斬魄刀の能力は?」

 

「……恐らく……時を止める能力」

 

「っ……」

平子隊長は顔を歪めるとパッと、胸ぐらを掴んでた手を離す

俺は卍解の能力で時の止まった空間内で戦闘にあった事を話し、生物には無効と己が話していたとか分かっていること全てを話した。

 

「一定時間時を止める空間……なるほど、それは目撃者が居ないはずだ、25件目は戦闘痕もあったのに誰も来ないなんておかしいなぁーって思ったんスよ」

っと納得した様子の喜助

 

「……帯志土(おしど)さん……生きてたんやな」

 

っと言って、俯く平子隊長

帯志土(おしど)って誰だ……?っと首を傾げてると惣右介が耳打ちしてきた

「平子隊長が副隊長時代、君と僕が出会った頃の隊長さんさ、帯志土隊長。ある日突然断界内で姿を消したんだ、拘突(こうとつ)に飲み込まれたって言われてる」

拘突に飲み込まれた……つまりそれは死を意味している。

今は十二番隊が誰がどこを通ったかいつ通ったかの通過記録を取っているが当時は無い。予測でしかないが死んでいたはずの元隊長が……なるほど、だから見た事あったのか。

 

「でもなんでや帯志土(おしど)さん……生きとったんならなんで会いに来てくれへんかったん……」

 

「浦原維助、藍染惣右介、ご苦労じゃった下がってよい」

っと総隊長が杖を鳴らす。

 

俺らは頭を下げ隊首室を後にした。

 

「顔を見た時からもしかして__とは思ってたんだけどね、霊圧が変わっているのが不可解だけど」

「霊圧が変わってた……?へぇ……そんな事あるんだ」

「能力でもない限り普通はないだろうね」

 

平子隊長のあの感じだと相当(した)しい間柄にみえる。

……目的はなんだろうか、1人でいるのを狙ってたと思ったけど思い返せば俺の霊圧制御装置を狙ってたようにも見える。わざと腕を切り落とさず腕輪を切り落とした。

 

制御装置だと見抜いたって可能性もあるけど__。

霊圧硬化も知ってたし、俺の戦い方なんかも知ってるように思えた。

辻斬りみたいに適当な相手ではなく俺を標的としていた……?

 

俺は見たことあるけど帯志土って人と話したこともないだろうし、俺のことは知らないはずだ、当時九席の雑魚だったし隊長格がいちいち席官全て覚えてるとは思えない。

 

「あーわかんねぇ、なんかややこしいなぁ……まぁ確かにあの強さと能力で隊長格なのは頷けるけど……」

けれど霊圧硬化は抜け出てなかったなぁ……霊圧は俺の方が圧倒的に上ってことだ。けれど能力は相当厄介。時を停めている間に動くんだ、目で追うとかそういうのが通じるものでは無い。

 

「時間系のメカ作りたいけど、バレたらウジ虫行きだしなぁ……」

 

それに制御装置がひび割れてる今……戦闘になったら確実に壊れる。

阿近の実験でも外す時は大量の霊力を吸い取る石で囲って行ってたし。

 

少しずつ制御できる霊圧は増えたはずなんだけどそれでも抑えきれなかった……。

本格的に制御装置作らないとダメだな、次狙われたら大変な事になる。

 

惣右介と別れた俺は自室に籠る。

作っては見たけどやっぱりごついし見た目以上に重い。小さくはなってるけどこれで15キロ以上ある、両腕だから倍か。

殴る時は強いんだけどな、ただデカすぎてたまに戦闘に支障をきたすし普通に邪魔。

 

 

「帯志土……か」

俺は0.1秒にも満たない時間で刀を捌いてたが……速さになれてない普通の隊士なら無理だろうな、隊長格なのも頷ける

霊力消費的に短期決戦がいい所だけど、それで済むぐらいには強い。

 

普通は、「気づいたら斬られて死んでました」みたいな感じだろうな……でも不可解なのが25件目で戦闘があった事。

それほど25件目の被害者が強いのかと思ったらそうでも無い。

度々戦闘になってるぽいし……。

 

俺は死覇装のまま疲れて布団の上に寝る、しばらく眠気が襲って来たが

俺は何か嫌な予感がして目覚める

目を開けた瞬間__目の前の刀が振り下ろされた

反射的に頭をずらすと耳を掠り枕に穴が空く

 

「また会ったな鬼面野郎」

 

身体を弾くように起き上がらせ橋姫を探すがない。

男の手元には俺の橋姫が……くっそ、取られた!

おそらく時間を止めて入ってきたのだろう。益々厄介な能力だ

 

音を切り裂くように刀を振るう、おいおい俺の部屋がっ……

物を壊されちゃたまらないので俺は足裏に霊圧を収束させ勢いで男に蹴りを食らわせ外に吹き飛ばす。

 

それと一緒に外に出るが男の姿は見えない。

「もうその手は食らったわ!」

 

また背後に出現し刀を振るうがその刀を霊圧硬化した手で掴む

「あんた帯志土(おしど)ってやつだろう?元五番隊の」

 

「……帯志土…………帯志土……」

男が呟くように繰り返す名前。

なんだ違うのか……?っと思ってると

 

「俺は……おれは……誰だ?」

 

「は?」

俺は誰だって……それはまるで記憶が__。

 

そう考えてると空からブンブンと円を書きながら飛んで来る刀が見えた。

咄嗟にそれが紅姫だと理解すると男の刀を押しのけそれを掴む。

 

「ありがとうな喜助!」

 

男の卍解の空間はやっぱり刀に触れていると入れるようになるらしい。喜助が駆けつけて状況を理解すると俺に己の刀を渡してきたのだ

 

「援護はします」

っと鬼道の構えをとる喜助。

 

男は先程の動揺はなかったかのようにまた消え目の前に現れる

 

「その0.1秒も慣れたもんさ」

生物にも無効なら触れてしまえば恐らく時間を停めれない。

俺は斬りかかって来たそういつの腕を掴み相手の勢いと力を利用して合気道のように捻りあげ、腕から斬魄刀が落ちる。

 

地に伏せた帯志土の上に乗っかり紅姫を首筋に当てる

 

「……殺せよ」

「それは出来ない、お前には色々聞きたいことがあるからな」

 

橋姫を奪え返すが、男は何も言わない。

 

「…………」

「帯志土さん!!」

 

っと平子隊長の声が聞こえた、髪は乱れていて息も上がっていた。俺が刀に触れた時に空間から漏れ出た霊圧に気づいて来たんだろう喜助みたいに。

 

俺は男の面を弾いて飛ばすと、平子隊長が目を見開いた

 

「やっぱ帯志土さんやな……なんで……なんでや。なんでこないなこと……それに霊圧も……」

 

「帯志土…………おれは__帯志土……?」

 

「は……帯志土さん……まさか……そんな冗談つまらへんで…?」

っと乾いた笑いをこぼす。

 

 

 

 

「何失敗してんの」

っと、ハスキーボイスが聞こえ視線を向けると、月を背景に塀の上に座ってる若い女……いや男?中性的な顔立ちだ。

 

【挿絵表示】

 

 

「……使えない」

一瞬__声が聞こえた瞬間に移動するのが見えたが、避けるよりも先に俺の頬に拳がめり込んだ

 

「ぐっ……!」

咄嗟に避けるが頬がピッと切れて血が流れ落ちる

こいつ俺の霊圧硬化を抜けた……!

 

「はっ、可愛い顔して強いんだな」

 

「硬いなぁ……もう」っと手を痛いと言いながら降る

 

「あんた名前は?誰だよ」

「僕はうーん、ミト!ミトでいいよ!納豆が好物だからね。ミトにしよう」

バリバリ偽名かよ。

 

「まぁ、ボクはこのボンクラを回収しに来ただけ」

っと小さい身体でデカい帯志土を持ち上げる

 

「逃がす思っとんのか」

 

「なに、関係ないでしょこれは僕が拾って僕が改造したの、僕の玩具をどこに持っていこうと僕の勝手でしょ」

 

「改造……?」

 

「そ!僕は()()を改造できるの!凄い?すごいでしょ?」

 

っとまるで子供が親に褒めてもらうかのように意気揚々と自慢する。

死体を改造__やっぱり、拘突で呑まれてって話は本当かもしれないな。本来は死んでいるはずのやつってことが?

死体を改造……その言葉を聞いて目を見開く平子隊長が見えた

 

「んや……それ気色悪いで」

 

「肉を人形のように動かすだけなんだけどね?本来は……でも突然変異か知らないけど意思があるんだよね!!へへ、可愛がってるの。良いでしょ?

他にも突然変異個体はいるんだよ!

でも脳内の記憶が戻ろうとすると大変なんだよねー

あと100年は整備に時間費やさなきゃ……じゃぁね!

100年後___生きてたら会おう」

 

そう言って逃げようとするミト

 

「逃がすと思ってんのか!」

俺はすぐに橋姫を抜刀しようと構えようと手を添えるがその前に鍔を足で抑えられ抜けなくなる。

夜一さん並に早い……!

 

「ダメだよ、君は厄介。計画の邪魔になるし殺して僕の人形にしようとしたけど、無理みたいだ。今日はこれで勘弁」

 

また帯志土を抱えた逆の腕で拳を振り上げるのが見え避けるが

 

パキッっとヒビが広がる制御装置。

拳は触れてない……風圧で制御装置が限界に達した__?

 

ヒビは徐々に広がり音を立てて崩れる

 

「あは、やっぱりすごい霊圧……じゃボクはこれで」

 

「まてや!!帯志土さんを返し!!」っと平子隊長の怒号が響くも

その場からミトと帯志土は忽然と姿を消した。

 

「兄サン!!抑えて!抑えてください……!平子隊長、すみませんあとは任せました!」

そう言うと喜助が俺を抱えて瞬歩で遠く離れた場所に運んだ。

確かにここなら霊圧の影響を受けるやつが居ない……。

喜助は恐らく俺の部屋に制御装置の予備を取りに行った

 

「がっ……ぐ……」

抑えろ、抑えろ、抑えろ……

出てくるな……言うことを聞け……

自身の霊圧だと言うのに抑えきれずに溢れ出る。

 

バケツ(身体)から溢れないように調節(制御)していたのに水は(霊圧)はMAXで噴射されバケツから水が溢れ出る……

 

急激に霊圧が溢れ出ると苦しくなる。

なんとか抑えて、抑えて、極限まで押えた時

 

 

 

「なんできた……阿近!

阿近が大量の汗をながし身体は震え意識を飛ばしそうになりながら、1歩1歩足を進め近寄ってくる

 

このままじゃ阿近が霊圧に押しつぶされてしまう。

俺は離れようとするが、動いたら制御がぶれる……

 

「俺は……あんたに救われた命……この命をあんたのために使うって決めたんだ。俺はあんたの力になるなら何でもする、なんだって……!」

 

阿近はそのうち倒れ、だが地面に這いながらも俺の傍に来た。

 

「やめろ阿近!はなれろ……潰されるぞ!」

 

阿近は震える手で懐から何かを取りだし俺の腕にまきつけた

 

「ぐっ……」

シュウゥゥっと音を立て身体の内の霊力が飲み込まれて行くのを感じ、暴走した霊圧が収まる

 

「っ……はぁ……はぁ……なにした?」

制御装置をつけた時のように収まった霊圧。

 

「っ……はぁ……霊力を吸収する石は溜め込むから限界がある、けれど俺が作って完成させたこの生物()()()()()()()()()()()

 

「へぇ……そりゃ便……利、生物!?!?

生物って言ったか!?

 

っと聞き返すとコクンっと頷くと予備らしき同じものを取り出した。

 

「これは霊力を食べ続ける生物で、原理的には亜空間に霊子として分解して流し込んでるんです。こいつの口で分解し、それを飲み込み亜空間に繋げる……って聞いてます?」

 

「いや……気持ち悪いんだけどそれ!!

 

1つ目の怪物がギザギザの歯をカチカチと鳴らしているのが布一面に__。

それが俺の腕に……?

 

 

 

 

 

「__取っていい……?」

「俺を殺す気ですか」

 



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魂魄消失事件
魂魄消失事件の始まりの話


 

腕の布の位置を調節することによって霊圧の制御が細かくできるようになった。幸い、変な生物の歯音はしない……してたら外してたかも。

 

細かくできるようになったおかげで制御ギリギリを保ち身体が慣れての繰り返して少しずつ制御できる霊圧が増えて行った。

 

霊圧硬化も更に硬くなり惣右介に全力で斬ってもらったんだが薄皮が少し斬れる程度にまで硬くなる事が出来るようになった。

「腕を落としたつもりだったけど」って言われたのは少し怖かったな。

ガチの目だったぞあいつ。

 

そしてバカ重い両腕30キロ以上にまで増えてた制御装置の重さは数gにまで軽くなったおかげで、抜刀の速さも戻ったし動きも軽くなった……

 

うん、阿近すごいな!!

 

惣右介に聞いたところ平子隊長はあれからずっと落ち込んでるらしい。相当仲良かったんだな……

実はどこかで生きていたなんて希望を持たされて、死体を操ってましたーなんてカミングアウトされたらそりゃ落ち込むよね。

 

「───惣右介、何用?」

 

「……あの時の''恩''返してもらおう」

 

ある日惣右介に呼び出されたと思ったらそう言われた。

恩を返せ……?そうだそういえば。

 

─────────

 

『それで、なんで俺に教えてくれたの?』

『………恩を売っても損は無いからね』

 

『そっかそっかぁ!友達を助けたかったのか!ありがとうな惣右介』

『聞いていたかい???』

 

『ありがとう!この恩は絶対返すよ!

───────────

七々扇家の時に恩を返すって言ったな……そういえば

 

「なに?俺に何をして欲しいんだ」

 

「これから先起きるであろう1()()()()()、君は手出しをしないで欲しい、全く動かないというのは無理だろうから、率先して解決しようとしなければいい」

 

「なにか起こすって?」

 

「……」

ニッコリと笑う惣右介。

 

「前も言ったけど俺はお前が何しようとしてるのかは無理に聞かない。けれど、夜一さんと喜助に何かしてみろ、お前とは絶交。つまり敵になるからな」

 

「それは約束するよ、あの二人には何もしないさ、他の二番隊にも手をださない」

 

「…………わかった、首は突っ込まない、これでチャラだからな」

 

「あぁ、助かるよ」

俺はチラッと茂みに視線を移し、踵を返した___

 

──────────

 

「ええんですの藍染副隊長、あの人邪魔してきそうやけど」

 

「……大丈夫さこっちがあの二人に手を出さなければ邪魔はしてこない。」

 

「言い切るんです?随分信用しとるんですね」

 

茂みに隠れてたギンが藍染に話しかける。

おそらく維助は気づいて居ただろうが

 

「罪をでっち上げて牢に入れといた方が安全なんちゃいます?」

 

「そうだね、浦原維助の動きを止める事など造作もない。けれどそれじゃ僕が後々困るんだ、彼は今回の実験に首を突っ込まないでいてくれればそれでいい。それに僕は彼がこの先どのような歴史を作るのか楽しみでね。敵に回したくはない」

 

「…………」

ギンは不思議でたまらない、確かに伝令神機や記憶置換装置、虚の予測出現警報等、多大なる功績を上げる伝説になるであろう死神。

剣術においても負けたという話は聞いたこともない。

 

最初は仲間なのかと思ったらそうでも無い、実験内容も知らないようだし、何を待っているのか何を期待してるのか、ギンにはそれが分からなかった。

 

──────────

 

「魂魄……?なんだって?」

 

「魂魄消失じゃ、()()()()()()()()()()()()()()()()が増えてるとな」

っと夜一さんが現世から取り寄せたアイスティーをグルグルと回す。

 

「服のみ……」

本来死んで消えたのなら服ごと霊子となるのが普通。

服だけを残してどこかに消えた……?

 

「それで二番隊の俺の2部隊が警戒にあたれと、分かりました。各地配置につかせておきます」

 

各地配置につかせて書類をまとめてると。

スマホが揺れて通知が来た事を知らせる。

 

《よろしくね》

っと猫かぶりモードの惣右介の笑顔が脳内に浮かぶ。

あぁ、この消失事件……惣右介の仕業か。

これにあまり首を突っ込むなってことね……。はいはい

 

全く本当に何をしようとしてるんだか……

 

その時俺は軽く考えてた、惣右介が変なこと企んでるのはいつもの事で結界の機械を貸せだの、死神の記憶を一定時間消して欲しいだの。

またそんな感じで何かやろうとしてるのか……って。

 

 

ただ、これが俺の人生、()()()()()を変えるものとなるとは……

この時はまだ思っていなかった

 

 

 

 



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夜一さんのヤキモチと心の内の話

 

あれから魂魄が消失するという話は瀞霊廷中に広まり噂となった。

原因は不明。俺も惣右介が絡んでることは分かるが何をしようとしてるのか何をやってるのかは知らん。

ただ、本当に二番隊には何もする気はないらしく被害は二番隊に全くない。

 

 

「二番隊第二部隊、警邏隊。瀞霊廷内の警邏(パトロール)が仕事……。何も情報は無いのかい?」

 

その日、情報が欲しいと京楽隊長が直々に二番隊に来た。

専用の応接室に案内して資料を机に広げる

 

「今のところは何も、朝夜交代できちんと見回っていますよ。これが巡回ルートです。1週間に一回変えてます。こっちが無人機(ドローン)のルートです。

主に流魂街の決まったルートをグルグル回ってます。定期的に充電が必要なんで戻ってきますけど半刻(1時間)も空けません」

 

「うーん……」

首を傾げる京楽隊長。

 

京楽隊長が来たのは8番隊の席官が行方不明になったらしく、調査に(おもむ)いたと言うわけだ。

 

服が置かれていたという場所を渡したピンで刺す。

「巡回ルートもっと変えた方がいいかもね。ちょうど穴をつかれている。」

 

瀞霊廷はバカ広い。本当に、歩いて端から端まで10日かかるぐらいには

 

「流石に全ての死角を埋めるというのは……。隊員も人数が限られてますし、十二番隊に監視カメラもあるのでそちらを見てもらった方が何か情報を得られるかも知れませんよ」

 

「うーん、そっか、わかった喜助君の所で聞いてくるよ」

 

そう言って立ち上がった京楽隊長が部屋から出ていく時

 

「あ、そうだ」っといって振り返った

 

「はい、なんですか?」

 

()()惣右介君とは呑みに行ってないんだね?いつも何かと絡んでるところを見てるけど、ここ最近みないなと」

 

「はは、平子隊長が()()()()ですから惣右介が五番隊を支えなきゃいけないと思うんで、遠慮してるんですよ。俺も事件のせいで少し忙しくなっちゃいましたし。」

 

「……そっかぁ、また僕とも呑もうね」

そう片手降って踵を返した。

 

多分俺の予想だけど京楽隊長がわざわざうちに来たのは俺の様子とか見に来たんじゃないかな、妙に鋭いしあの人。

 

で、惣右介と呑まないって……

─────いや誘えるわけないじゃん!!

 

だって……!惣右介がハゲ坊主と入れ替わってんだもん!

誰あれ!白目むいてて怖いし……。

平然と5番隊の副官章つけて歩いてるから何!?って思ったけど。

鏡花水月で周りはアレが惣右介に見えているという事に気づいた。

いや、あの白目ハゲと呑み交わせって?なんの拷問だよ。

 

 

ってことで最近は可愛い女の子と飲んでる遊楽って店。現世で言うキャバクラ!!

相手はプロだし、そう言う愉快な気分になるだけで夜の関係とかは無いし安心だ。

 

でも……

 

「維助……!」っと頬を膨らませた夜一さん

 

「あーあはは」

香水の匂いを付けて帰ってきた俺に拗ねたらしい。

 

「儂と出かける時は……髪なんぞ適当に結っておるくせに……。」

っと、俺が出かける時に髪を整えるのにもモヤッとしているようだ

 

「あーごめんね?いやぁ……ついついここ最近忙しかったから……息抜きに……ね?ゴブァ!い、いたい」

 

鳩尾に右ストレートがめり込んだ。腕を怪我させないように硬化全くしてなかったせいで、内臓に響く痛み。

 

蹲ってる俺に

「維助なんぞもうしらん!」っと腕を組んでそっぽ向かれてしまう

 

「機嫌直してよ、夜一さんね?ね?ほら、あーえっと……そう!今度一緒にキャバクラ行kゴフッ!

 

今度は脳天にかかと落としが入って俺は畳にめり込んだ……

 

「今のは擁護できませぬ、維助様。」っと呆れた砕蜂の声。

 

夜一さんはどっか行っちゃったらしい。もう部屋にはいなかった。

 

「あーいててて」

()()()()夜一さんは表情豊かにどストレートにヤキモチを焼くようになった

 

あれからというのは……まぁ霊圧暴走時にまで遡るけど。

_______________

 

「維助!維助無事か?」

 

っと阿近に制御装置をつけられた俺が帰宅すると夜一さんが駆け寄ってきた。

あちこちぺたぺたと触り怪我を確認してくる

 

「だ、大丈夫だって、頬が少し切れた程度だし。ほらこれ阿近が作ってくれたんだぜ?凄いよな。これで俺のあのバカ重い制御装置ともおさらばだし……ってなんで泣いてる!?」

制御装置を見せて笑うとポロポロと金色の瞳から大粒の涙が溢れていく。

 

「え、ちょ俺より夜一さんの方が怪我してない!?ちょ、あの、泣かないで」

指で涙を拭うもどんどんと出てきて止められない。

何も言わないで泣いているので俺は慌ててどうしようと周りを見渡すも誰もいなくなってる、おいまてさっき喜助も着いてきてたよな?あいつ帰りやがった!

 

「ずっと……」

っとしゃっくりを上げながら言葉を繋ぐ夜一さん。

 

「ずっと、一緒におるって……言ったのに……!約束したじゃろ、勝手にいなくなるでない……」

俺に抱きついてすりすりと頭を胸板に擦り付ける。

 

「心配かけてごめん夜一さん。勝手に居なくなんないよ、大丈夫俺は夜一さんを守って支え続けるって言っただろ?」

 

優しく撫でるとまた「うぅ……」っと言って服が濡れていくのがわかる。

 

「よしよし」

 

しばらくすると夜一さんが突然俺の背中に回って飛び乗ってきた

 

「うわ、何!?」

 

「おんぶじゃ!さぁ維助おぶれ!」

 

気分屋で唐突になにかするのはいつもの事だけど今!?

って思いながら橋姫を壁に立てかけ、夜一さんの足に腕を回す。

 

「高いの〜」っと俺の肩から顔をのぞかせる夜一さん。

俺はのんびりと二番隊隊舎にある林を歩く

 

「だいたい六十二寸(187センチ)ぐらいあるからね〜」

「昔は儂より少し高いぐらいじゃったのに」

「それいつの話?だいぶ昔じゃん、それこそ出会った時ぐらい」

 

「そうじゃの……あの時は胡散臭くて態度の悪い貴族の男って感じじゃったの」

「ふは、たしかにあの時の俺だいぶ態度悪かったなぁ〜」

 

京楽隊長にタメ口聞いたり(今もたまにやってる)今となったらヒェエエってなるような事をしてた。

 

「儂が当主になるのを応援してくれた」

「うん、そうだね」

 

「儂を怪我させまいと白打の講義で手を抜いとった」

「はは、懐かしい」

 

女子(おなご)に洗脳されかけとった」

「うっ…俺の黒歴史…!」

 

っと言うと、ははは!っと楽しそうに笑う夜一さん

プラプラと足を揺らして鼻歌を歌い出す。

すると、段々と静かになっていく

 

「夜一さん?」

俺は立ち止まって名を呼ぶと、肩の布をギュッと握られる

 

「儂のことは大切か?」

「え?そりゃもちろん大切だよ」

 

「1番か…?」

「喜助と夜一さんどっちも1番だよ」

 

っと言うとふっと零すように笑う

「儂も維助が1番大切で、大切で…大好きじゃ」

 

足元を風がなぞる。

夜一さんは俺の肩に顔を埋めていて、俺が口を開こうとすると遮られた。

 

「お主が結婚を望んでいないのは知っておる、昔から言っておったしの。身軽でその日限りの女子(おなご)と遊んでいたのも知っておる」

 

バレてたか、と苦笑いをうかべる

 

「儂はきっと…昔からお主のことが好きじゃった。気づいたのはずっとあとじゃが…。儂とお主は正式に結婚ができぬ。だから婚約は破談になる…。でも嫌なんじゃ…儂はお主を離しとうない。」

 

「…俺はきっと人を幸せにはできない。自分勝手で最低な事をしてきた自覚はあるし、これからもすると思う。機械ばっかだし好きな事を好きなだけして生きていきたいし…だから身軽が良かった。夜一さんはこれからも大切な人なのは変わらないよ。」

 

「…そ…うか。」

 

俺の肩が湿って行って、泣いていることが分かる。

ごめん、夜一さん。

 

───しばらく落ち着いた夜一さんは俺の背中から降りると

伸びた髪に俺の卒業祝いにあげた簪を揺らして笑った。

 

「じゃが、儂の気持ちはかわらん!儂はお主を好いておる。」

 

__________

 

そして現在に至ると言うわけだ。

正直可愛かった__というのは俺の中に秘めておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本当にごめんな、夜一さん

 

 



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魂魄消失事件の話

しばらくしたある日。

 

 

夜中__

 

 

 

''『ビービービービー』''

 

「うるっっっさ!」

 

机の上に置いといた伝令神機がいきなり大きな音を出した

 

''『緊急招集!緊急招集!』''

俺はすぐに支度を整え夜一さんの部屋に向かう

 

'『各隊長は一番隊に集合願います』'

 

''『九番隊に異常事態!』''

 

走りながらも伝令神機は鳴り続ける。異常事態?一体何が…

 

「夜一さん!」

「維助、支度…はできとるな、()くぞ」

 

夜一さんの羽織を渡し、一番隊隊舎へ到着し俺は門の外で待機する

続々と隊長らが隊首室へ入っていく、急ぎだから副隊長も来ている隊と来ていない隊が多い。

 

「って、リサちゃん?」

「しー、静かにしいやバレるやろ」

 

リサちゃんがコソコソと隊舎の中に入ろうとする

 

「おいおい。怒られるぞ?」

「うっさいわ、バレるゆーとるやろ、黙ってついてき」

何故か口を塞がれ俺は無理やり連れていかれる、なんで俺まで…

 

隊首室の外の庭で耳を澄ます

 

「前線の九番隊の待機陣営からの報告によれば、野営中六車拳西、久南白両名の霊圧が消失!原因は不明」

 

っと、総隊長殿の声がきこえる。

 

「九番隊の待機陣営…?」

 

「またあの魂魄消失が起きたんや、やから9番隊が偵察に行ってん」

俺の疑問にリサちゃんがそう答える。

「へぇ〜」

 

じゃぁ魂魄消失事件、あれか…霊圧が消失したってのは…惣右介が

「ボクに行かせてください!ボクの副官が現地に向かってるんス!」

 

っと喜助の声。

こんなに慌てる喜助は久しぶりだな。

 

それにひよ里ちゃんが…?

 

「…」

「んや、暗い顔して、辛気臭いで」

 

「いや…」

なにか、すごい嫌な予感がする…惣右介。一体___

 

「おぉ〜いリサちゃん」

 

っと京楽隊長の声。

「なんや!」

 

ガシッと格子を掴んだリサちゃんが隊首室に顔を出す

 

「隊首会のぞきみしちゃダメって言ったでしょ」

 

「しょうがないやろ、隠されると見たくなるもんや」

いつもやってんのか…

 

「話は?」

「きぃとった」

 

「頼める?」

「当たり前」

 

スタッと、地面に降りたリサちゃん。

「リサちゃん。」

 

「んや」

「お気をつけて」

 

「はっ、さっさと片してきたるわ」

 

猛スピードで塀を乗り上げて見えなくなったリサちゃん。

今日は…嫌な月だ。

 

_____________

 

西方郛外区(せいほうぶがいく)第六区

 

隊長格副隊長格が血濡れで倒れる。

半分の仮面を纏った平子が藍染を睨みつける

 

──終わりにしましょう        

   平子隊長

 

「貴方達は…いい実験材料だった…」

 

月に反射した斬魄刀が振り下ろされる

 

「くっ…クッソオォオオオ!!!

 

──だが

 

キィンっと火花を散らしその刀を弾く__

「…ほぅ、これは面白いお客様だ。浦原喜助

黒い外套を纏った浦原喜助と、鬼道衆の握菱 鉄裁。

 

「き、喜助…なんで来たんや…」

 

「なんスか?その気色悪い仮面は」

っとおどけて言った喜助に

 

「言うやんけ…」っと、笑みを浮かべた平子。

 

喜助は藍染に向き直る

「藍染副隊長…一体何を?」

 

「ご覧の通り、偶然にも戦闘で負傷した、魂魄消失事件の始末特務部隊の方々を発見し、救助を試みていただけのこと」

 

「嘘っスね、負傷した?ちがう、これは虚化だ

 

「なるほど…やっぱり君は思った通りの男だ。」

っと、ニヤリとわらった藍染

鳥肌が立つような霊圧が地を這い喜助の背筋に走る

 

()()()には大変()()()()()()()よ」

そう言った藍染に目を見開く

 

「…兄サンに、維助兄サンに何をしたんスか」

酷く低い声が喜助から放たれる

 

「何をしたか…ね、心外だな…僕が少し頼んで…何がとは()()()()が手伝ってもらったのさ、彼のおかげで僕は__」

 

藍染の目の前で火花が散る

東仙が斬りかかった喜助の刀を止めたのだ。

 

「兄サンに漬け込んだんスね…!貴方のことを本気で…本気で友人だと…」

「君は実の弟なのに知らないのかい?彼の心の内にある野心すらも?彼は僕が何かをやると()()()()()()協力してくれたのさ」

 

「…そんな、そんなはずは」

「本当に?」

 

そう動揺した喜助に聞き返す。

「本当に彼は良心のみで機械を作っていたと思っているのかい?本当に?」

 

たしかに、思い返せば兄は自分の欲のままに(ことわり)を歪める機械を作ったり、それこそバレたら極刑になるほどの機械も作っていた。

自分の欲に忠実で作りたいものは作る、戸惑いもない。

──例えそれで誰かが死のうとも。

 

「心当たりがあるようだね。」

 

東仙が喜助の刀を弾いて距離を取らせる

 

「ここまで来てくれて良かった、退くよ」

 

「まっ…!」

 

「お避け下され!浦原殿!」

鉄斎が鬼道の構えをする

 

──破道の八十八飛竜撃賊震天雷炮──

 

───破道の八十一 断空───

 

鬼道の衝突により土煙が舞う

「なっ…詠唱破棄した断空で…」

 

忽然と姿を消した3人、兄よりも、藍染よりも、今は_みんなを

 

────────────

 

 

「京楽隊長…?」

何故か俺のところ来た京楽隊長。

 

「……いや、思い込みがすぎたかなと」

そう言って笠を下げる

 

なんだ???

 

「リサちゃん大丈夫でしょうか」

 

「大丈夫…彼女は強いからね。明け方には戻ってくるさ」

 

明け方…ね。

 

─────────

 

明け方近く、京楽隊長と長話をしてた俺は隊舎に戻る

 

「浦原副隊長」

 

「どうした」

慌てた様子の部下が膝をついて現れた。

 

「ご報告します!十二番隊隊長浦原喜助と、大鬼道長握菱鉄斎が、虚化禁忌事象研究の容疑で現在四十六室に__」

 

「……夜一さんは?」

 

「それが、隊長のお姿はどこにも…」

 

惣右介…っ…お前___。

約束の穴をついたな、手を出さないって約束。

自分自ら手は出さない。ただ容疑がかかっちゃいました…僕は関係ないってシラを切るに決まってる。ちゃんと言っておけばよかった…

 

首を突っ込むな…ね、そっちが約束の穴をつくならおれもつくさ。

 

「俺は夜一さんを探してくる。隊舎は頼んだ」

 

「はっ!」

 

俺は__。

 

 

────────────

 

「賊だ!逃げたぞ!探せ!!」

 

四十六室に向かったが、やっぱり夜一さんが喜助らを逃がしたらしい。

大騒ぎになってる。

ふぅ…さて、隠れる場所と言えば___。

 

 

 

 

 

「やっぱここだよな」

 

「…兄サン」

 

───俺らが死神になって、作った勉強部屋

何故か警戒している様子の喜助。

…惣右介まさか変なこと言ったのか?

 

脇には八人が虚のようになりかけていた。これが部下の言ってた虚化…ね。

 

「…喜助。夜一さんは?」

 

「…ボクは止めたんスけど、兄サンを呼びに」

 

「…入れ違いか」

入れ違いになったらしい。夜一さんの姿は見えなかったがちょうどいい。

 

「お前らは現世に行くんだろう、ほれ」

ひょいっと懐から出したものを投げると受け取った喜助。

 

「これ…」

 

「俺専用の伝令神機。分かるだろ?12番隊に情報が流れない試作品。電波霊子も俺にしか分からない。もってけ」

 

「…ありがとうございます。兄サン。兄サンは()()()()ッスか?」

 

「…俺はお前ら側だよ、ただ…ただ友人の頼みは断れなくてね。何の頼みだったかは()()()()()

俺は苦笑いをうかべる。

 

「…そうっスか」

やっぱり惣右介と接触したらしい。警戒してた理由はやっぱりそれか。

 

「喜助」

俺は喜助に近寄って__

 

イッタ!!なんスか!?」

 

ザクっと喜助の指を軽く斬って()()()()()()()()

 

「鉄斎さんも捕まったって聞いたけどそういえば」

 

「上で結界貼ってもらってます」

 

「…そうか、俺は違う入口から来たから会わなかったのか、益々都合がいい」

 

「それ、血判契約*1ッスよね…一体何を?」

 

「契約内容を話さない契約書。取引も話せない、取引した相手の正体、つまり誰と契約しかたも話さなくさせる契約…それを使った理由。お前に大切な頼みがある。」

 

「……その言い方だと、現世には行かないんスか?夜一さんも現世に行くんスよ?彼女は四十六室に侵入した、いずれバレる。」

 

「……俺は何もしてないからな、()()()()()()()

 

「まだそんなこと言ってるんスか!兄サン!貴方がここに残ったら…きっと藍染副隊長に…」

 

「いや、多分大丈夫さ。俺はまだ使い道があるから今回捨てられなかった…って感じかね。まぁ俺は現世よりこっちで色々やりたいからさ。だから…夜一さんを頼むよ。俺からのお願いだ、夜一さんには俺と連絡取れることは言わないで欲しい。俺は影から応援しとく」

 

「…兄サン。」

眉を下げる喜助。

「…頼むよ」

 

「……分かりました」

 

──俺は喜助を優しく抱きしめる。

「大きくなったな、喜助。」

「っ…」

ギリッと奥歯を噛み締める音が聞こえる

 

「大丈夫、喜助ならやれる。責任重大だけど…やれるさ、大丈夫。お兄ちゃんが保証するから…色々現世で不安もあるだろう。俺が助けてやる、しばらく…きっと会えないだろうけど。」

 

「兄サン…兄サン…本当に…本当に行かないんスか…」

 

「ふは、俺がどっか行ったら惣右介を止めるヤツどこにいるよ、それに…夕寝さんと夜一さんが守り継いできた隊を、そこら辺のやつにやれるかよ」

 

俺は優しく喜助の背中を撫でる。

猫背でなで肩で、いつか俺の身長を抜かすって言って抜かせなかった喜助。

 

──あぁ、本当に大きくなったな_喜助

 

俺はそっと離すと、喜助はゴシッと裾で顔を拭った

 

 

 

 

 

「維助!ここにおったか!維助!!」

 

 

タイミングのいい事に夜一さんが駆けつけた

 

「夜一さん」

 

「維助、話は聞いておるか?今から…維助?」

俺は夜一さんに近寄る

「俺は実は惣右介に頼まれてたんだ」

「お主…藍染と組んでおったのか?まさかそんなはず」

 

「そんなはずあるさ、俺はずっとずっと昔からあいつの友人で仲間さ」

 

「っ__!」

絶望したように顔が青ざめていく。

 

「ずっと夜一さんを騙してたのさ、悪いね」

 

「維助……嘘じゃろ?」

 

「…本当だよ」

 

「なら…なんで…そんな顔をしておる。」

あぁ、俺は今どんな顔をしてるのだろうか。

 

夜一さんが俺の裾を掴む。まるで行くなとでも言うように

 

「儂は…信じておる。お主の事じゃ…儂に嫌われようとしておるんじゃろ…」

 

「…」

 

「お主の嘘ぐらい。わかるわ、マヌケめ…どのぐらい一緒におると思っている。なぁ…維助。ここに残るんじゃろ」

「夜一さんにはかなわないな…うん、ここに残るよ」

 

喜助の血判契約、無駄になるかな…?いや、連絡取れることは内緒にしておいて欲しいし、まぁいいか。

 

「…夜一さん。」

 

「なんじゃ維助。」

 

「俺の事は忘れて幸せになって欲しい」

 

「……」

途端にポロポロと目から涙を流す夜一さん

 

「…いやじゃ…お主も。お主も一緒に」

 

「分かってるだろ?俺は行けない。俺が撒いてしまったかもしれない種だ、自分の後始末ぐらいしなきゃ」

 

「……いやじゃ、いやじゃ…」

いやいやと、子供のように俺に縋り付く。

 

「な、いい子だから。夜一さん。」

 

「うっ…う…っ」

 

「さよなら…夜一さん」

 

「っっ…!!」

 

嫌だと顔を上げた夜一さんの唇に口付けをする。

口を離すと顔を赤くする

 

俺は夜一さんを優しく抱きしめた。

 

あぁ、優しい匂いだ__

猫のように自由気ままで気分屋で__団子屋で笑う夜一さんを思い出す。

 

猫型になって俺の書類に墨を飛ばして俺に怒られてしょんぼりしてたっけ。

砕蜂と張り合って楽しそうにしてたな、白哉坊ちゃんに絡んで追いかけ回されて。

 

あぁ…楽しかったな、幸せだった…立派になった弟と可愛い婚約者に囲まれて__

 

 

──俺は幸せだったよ。

 

 

 

 

──さようなら        

   俺の大切な…愛しい人

 

 

「い…すけ…」

ふらりと倒れる夜一を抱き上げる。

 

「喜助、夜一さんを頼む。夜一さん専用の睡眠薬だ。3日は起きない」

 

「…兄サン。」

何か言いたげな喜助に笑いかけ口を開く

 

 

 

 

 

───愛してるよ   

 

          俺らの大切な人達

 

 

 

*1
お互いの正体、及び取引内容を”絶対”口外しない契約



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100年間のお話編
隊長になった俺の話


 

「夜一…様。」

 

浦原喜助らが現世に逃亡した事が公になった。

すぐさま砕蜂は隊首室に走り襖を開き

 

ガラッとした部屋を見てペタンっと膝を着いた。

 

「いす…維助様は…?維助様も…?」

ポロッと…目から涙がこぼれ落ちる。

 

「砕蜂」

聞きなれた低く心地よい声に振り向く

そこには眉を下げた維助が立っていた

「っ…!維助様!!夜一様が…」

 

「大丈夫、大丈夫だから」

優しく砕蜂を抱きしめあやすように頭を撫でる

 

「維助様、維助様…」

 

「俺は大丈夫、何処にも行かない。」

 

 

──────────

 

俺が尸魂界に残った理由の一つ、砕蜂が壊れると思ったから。

砕蜂は夕寝さんが亡くなった時も酷く傷心していたし、また召使えてる夜一さんが居なくなって、俺まで居なくなったら___っと考えたからだ。

 

夕寝さんや夜一さんが守って歴史を作ってきた隊。

まだ夜一さんの弟の夕四郎君は幼く隠密機動は任せることが出来ない。

俺が全て責任をもって継ぐ___。

 

ちなみに弟だから副隊長だからという理由で疑われたりはしなかった、そこは京楽隊長が俺のアリバイを証明してくれたから。

 

 

「え、俺が…」

 

「そう、隊長に。どうかな?実力も十分だし、穴が大きくてね。総隊長も二つ返事だったよ」

 

そう俺に話したのは京楽隊長、なんでも

2番隊、3番隊、5番隊、7番隊、9番隊、10番隊、12番隊っと隊首が居ない。たしかに穴が大きすぎる。10番隊は殉職してから隊長いないしな…

 

「それで早急に隊長を補充しないといけなくてね。まずは君を__と」

 

「……俺卍解は__」

 

「何言ってるの〜使えるでしょ?」

 

そう笠の下から見る顔は見透かしてるように笑っていて。

まぁそうか…

 

「わかりました…うけます」

 

 

 

───浦原維助 

 隠密機動総司令官 兼

護廷十三隊二番隊隊長

 

隊首試験では本来数人の隊長格が同席するのだが総隊長しかいなかった。

致し方なく卍解を披露し、俺の元々の功績もありすぐに隊長になることに。

やはりガタガタになった護廷十三隊は大変だな。

 

「ねぇ、これ着ないとだめ…?」

 

「ダメです!仕来り(しきたり)なので」

 

「えぇ…」

無事に二番隊隊長として就任したのはいいが、袖のない死覇装。

刑軍装束だ、夕寝さんと夜一さんと一緒でノースリーブで流石に背中は開けるなと言って閉じたものにしてもらった。

袴は脚絆(きゃはん)で止めている。

 

これ夜一さんとか夕寝さんが使ってた…瞬何とかって技のための服じゃないの…俺使えないけど?

 

「あの…本当に着ないとだめ?」

 

「お似合いです維助様!」

キャッキャと俺の姿を見て喜ぶ砕蜂。

ちなみに隊長羽織は袖なしにした。裏面がオレンジだ、なんか夜一さんを思い出すな。

 

ちなみに刑軍軍団長の抜刀は処刑演武(しょけいえんぶ)を表し…まぁ標的を一網打尽にする命令的な?になるから、斬魄刀とは別に脇差を背中の腰の辺りにさしておいた。まぁ抜くことはないだろうけど多分。

 

 

俺にはまだ仕事が沢山ある。引き継ぎはまぁ副隊長をやってたからだいたい大丈夫だとして、

他は十二番隊の事だ、喜助の後釜は多分涅になるけど、まだ実力は無い。

 

それに四十六室により虚化の禁忌研究を行ったことにより技術開発局が潰されかけていた。

早速俺は四十六室に掛け合い長い口論の末、プレゼン能力と俺の功績によって技術開発局は続行する事になった。

良かった良かった。

 

早速阿近らに知らせると

 

「本当ですか…!よかった…」

っとホッと胸を撫で下ろしていた。

 

「ふん、仕方ないネ…」って何が仕方ないのかわかんないが涅も喜んでいる。

技術開発局、局長は涅が引き継ぎ、12番隊隊長・副隊長はまだ居ないが総隊長に掛け合い、涅マユリを副隊長に、特殊な隊なので勝手がわかる涅マユリをいずれは隊長に……っと進言しておいた。

 

これで12番隊は大丈夫。

あとは10番隊は元々一心が隊長代わりを務めているし卍解を習得したら俺が推薦しておこうかな。

 

 

ガラガラの中新任の義が終わった。

 

喜助の式典を見守ってた俺が、される側になるとは……わからないものだな。

 

そして___。

 

「てめぇは殴ると決めてたぞ惣右介」

 

「おや、これはこれは浦原()()お元気そうですね」

 

っとニッコリと笑う惣右介。

 

「維助でいいわ!アホ!ったく……。まぁいいや、殴るのは今後に取っておく」

「なんや荒れてますなぁ」

っと笑うギン

 

「何が荒れてるだ、荒れないわけないだろ」

「アイタタ!なにするん」

グリグリとこめかみを拳で捻ると涙目になったギン。

どうしようも無い怒りだ。

 

「手は出てないだろう?約束通り。どういう訳か疑いがかかってしまったようだけど__」

 

「…………言うと思った。いいよ、怪我させなかったのなら。許してやる。」

するとパチクリと驚いたように瞬きする惣右介。

 

「なんだよ、そんな驚いた顔して」

「いや、斬られるかと思ってね」

 

「俺をなんだと思ってんの?」

ムカついたからって斬らないわ。

 

ってか…喜助と夜一さんが現世に行った理由これだったのか……

結局止めたら止めたで、主人公が困ることになるんだろう。多分?

惣右介は計算高い、俺が惣右介の悪巧みを暴こうとしても喜助みたいに冤罪をかけるように準備してたかもな…。

 

それに俺は友達を売れなかった。

___________

 

────30年後

30年で変わったことを簡単に言うと

弟子1号白哉坊ちゃんが護廷十三隊に入隊、2年で卒業してきやがった

弟子2号一心。俺が推薦して10番隊隊長に

それと同じくして涅も12番隊隊長に。

そして惣右介、誰の推薦かは知らないけど5番隊隊長になった。

 

護廷十三隊はフレンドリーな隊長格がほとんど居なくなったせいで隊同士の関わりは薄れてしまった。

関わりまくってるのは俺ぐらいか…?

惣右介の所に遊びに行ってるし、白哉坊ちゃんの所にも一心の所にも行ってる、京楽隊長とも浮竹隊長ともたまに呑むし。

 

段々と形になってきた護廷十三隊__時代の移り変わりって感じがするな。

俺は功績を挙げ続け、伝令神機、誰でも簡単簡易結界装置、また鬼道が苦手な方へ、鬼道補助装置。まぁ簡単に説明すると補助輪みたいなので自転車走れるように練習する装置的な…?等々を作り上げ、コピー機も実用化し、pcも各隊に備え付けた。

 

それで___

 

「なんで俺が真央霊術院の講師に?

 

「いやぁ、君が1番適任だと僕が推薦しておいたんだよ」

 

「はぁ…京楽隊長、俺の隊長推薦と言いなんか俺を過大評価してません?」

「いいやぁ?正当な評価だと思うけどね」

 

京楽隊長が総隊長に実力不足の死神が多い問題を解決するために俺を講師にと、勝手に勝手に!!推薦したのだ。それを総隊長が承諾、俺に知らされた時にはもう確定してた。

 

「はぁ…そういうの本人に聞いてからでしょ」

「いやぁ〜だって断るじゃない〜」

 

「断るわ!俺が先生とか無理だろ」

「いやいや、伝令神機やその他すごいもの作っといて教える頭がないなんて言わせないよ?大丈夫大丈夫、座学の一部と剣術と斬術の講義だけさ。それに特別講義だから毎日じゃなくていい」

 

「そりゃ毎日だったら隊長としての仕事回んなくなるし、そうじゃないと困る」

 

「ってことはやってくれるんだ?」

っと笑う京楽隊長。

俺は心の底から出るような深いため息をはいた

 

「わかった、わかりました〜やればいいんでしょやれば?」

両手を上げて降参ポーズをとると

ふふっと笑う京楽隊長。

 

「ふふ、ありがとう、維助君。」

 

ってことで俺が院の特別講師になった。

 

 

 

 



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白哉坊ちゃんと緋真ちゃんの話

 

あれから更に数年経った。

 

「おーす、白哉坊ちゃん元気?」

「お師匠…坊ちゃん呼びはあれほど……」

 

「いや、ごめんごめん。」

素振りしてた白哉坊ちゃんが俺に気づいてムッとした表情をする、坊ちゃん呼びはお気に召さないらしい。

 

白哉坊ちゃんの父親が殉職し、彼が現当主となり副隊長になった。

あんなに小さかった白哉坊ちゃんも今ではこんな青年に。

 

熱くなりやすい性格は変わらないが、彼の父親が死んでからあまり表情を表に出さなくなったような気もする。

 

「お師匠。少し相談が…」

 

「……?」

 

相談とは珍しい…俺は坊ちゃんの後をついていき。着たのは朽木家。

 

「こちら、私の婚約者の……」

っと女の子の肩に手を乗せる坊ちゃん。

「ひ、 緋真(ひさな)です!あっ…えっと…その、婚約者です…?」

っと顔を赤くする緋真ちゃん

 

「こ……婚約者ァァ!?

 

つい大きな声を出してしまい咄嗟に自分の口を塞ぐ

 

い、いつの間に婚約者なんて…!?

2人寄り添ってそりゃお似合いだけども…!

 

「そ、それで相談って…?」

 

って切り出すと、眉を下げた緋真ちゃんがおずおずと言った感じで。

「じ、実は私は…流魂街出身で…その…お師匠様はどう思われますか…?」

っと不安そうな顔。

 

白哉坊ちゃんが俺に耳打ちしてきた

「実は、お師匠様が特別講師として忙しくしていらしたので中々お話できなく…」

つまり、まとめると俺が講師して忙しくしてる間に白哉坊ちゃんは流魂街で緋真ちゃんと出会い一目惚れ、是非妻へ!っと求婚し婚約して…。

だがお遊びではなく本気でしかも五大貴族の朽木家の妻となる。

周りの貴族からは「流魂街の住民など…」っと険悪な目で見られているという。

 

それで自信がなくなってしまった緋真ちゃんを心配した坊ちゃんは上級貴族であって信用ができる俺に話し意見を聞いてみようと。

 

「なるほどね、確かに貴族ってそういうのめんどくさいよな。白哉坊ちゃんは当主になったばかりだし、いきなり流魂街の婚約者連れてきましたーって言ったら周りも困惑する。」

 

「そう…ですよね」

っと悲しそうな顔をする緋真ちゃん

 

「あぁ、勘違いしないで?俺は反対側じゃないから。俺は信用と気持ちがあれば結婚出来ると思うよ」

 

「信用……」

「気持ち」

っと繰り返す緋真ちゃんと坊ちゃん。

 

「そう、昔から育ってきたとはいえ当主になったばっかりの白哉坊ちゃんはまだ貴族らに信用があまりない、まずは信用を作る。

そして同じく結婚の意思も伝え続ける。必ず反対派ってのはどこにもいるものなんだ。まずは周りを納得させる、無理に結婚したとして緋真ちゃんへの当たりは変わらないと思う、それか益々強くなる。うーん…ちょっと結婚とは違う例え話だけど。」

 

っと言うと2人して首を傾げる

 

「こういうの俺説明苦手だけど…ぽっと出のヒョロ細の死神がいきなり隊長やります!しかもそいつは呑んでばっかで遊び歩いてます!って言われていい印象ないだろ?

でも実は実力があって仕事もちゃんとやってから遊んでる。

そういうのって話だけ聞くと印象悪いけど、きちんと絡んできちんと相手を知ってさ。

あぁ、この人なら仕事なんでも任せれるし遊んでてもちゃんとしてる人だから大丈夫って周りから信用ができるんだ。

だからそうやって白哉坊ちゃんも緋真ちゃんも認めさせてあげなよ。

流魂街出身が嫌われる理由って学が無いって言われてるのと常識がないと思われてるのもあって良い印象が無いからなんだ」

 

まぁ霊力うんぬんもあるけど…

 

「だから緋真ちゃんはそこら辺の奴らとは違うってのを見せつけてあげな、白哉坊ちゃんは当主として周りの外堀を埋めていく。そうして結婚すればいいんじゃないかな。」

 

っと励まして上げると、パァァァっと顔を明るくした2人

 

「わ、わかりました…私頑張ります…!」

っと拳を握って意気込む緋真ちゃん。

 

「もし朽木家の使用人が嫌がらせしてくるとかそういうのあったら俺が信用してる家庭教師がいるから、その人から芸や作法を学ぶといいよ。俺が紹介してやる」

 

「ほ、本当ですか?」

その感じだと嫌がらせされてるのか。

 

「お師匠、是非お願いいたします」

っと、白哉坊ちゃんと緋真ちゃんが外堀を埋めていくのを見守ることになった。

 

 

あれから数ヶ月、緋真ちゃんはあまり体が強い方じゃないけど自分の体に相談しながら作法や貴族の常識を学んだ、挨拶は誰からするとか、箸の使い方とか姿勢とか。

白哉坊ちゃんは白哉坊ちゃんで父親の仕事をきちんと引き継ぎ周りの貴族からは賞賛の声が上がるぐらいに当主らしくなった。

 

 

「白哉様と緋真様がいれば安泰だな…… 蒼純様*1が亡くなった時はどうなる事かと……」

「そうだよな、わけも分からない女を連れて結婚すると言った時はもう終わりか……と思ったが、緋真様も貴族じゃないのがおかしいぐらいに良いお方だ」

 

という、朽木家に献上している貴族からの声が多くなった。

何より何より。

 

 

───そして今日また遊びに来た時に別の相談があると呼ばれたのだ。

「あ、あの浦原様が指揮する隊は流魂街にも行く事があると伺いました」

 

「うん、そうだな俺の隊は流魂街の虚討伐もやってるし」

 

「実は……」

 

緋真ちゃんが話した訳は、数年前に貧しさから赤ん坊であった実の妹を置き去りしていて、たまに探しに行ってるのだが見つからないという。

もし見かけたら教えて欲しいという話だった。

 

「うん、わかった見つけたら報告する。それに探しに行ってるって……流魂街は虚が出やすい、霊力のあるあんたは格好の餌だろうよ。不安なのはわかるが命を大切に。」っと軽く注意する。

 

あまり期待はしないようにと前置きして、教えてくれた場所にドローンを多く導入した。

 

 

そして___

 

「おめでとう、緋真ちゃん、白哉坊ちゃん」

 

「ありがとうございます、浦原様……!」

 

「お師匠のおかげです」

───2人はついに結婚した。

 

周りも厳しい声から祝福する声に変わり、白哉坊ちゃんと緋真ちゃんはちゃんと外堀を埋めることに成功したのだ。

 

 

夫婦の誓いを意味する 三献の儀(さんこんのぎ)が行われてるのを会場から離れた場所で見守る俺。

 

白哉坊ちゃんも緋真ちゃんも幸せそうだ。

 

俺はついつい伝令神機を取りだしてある場所に掛けた

 

プルルル

ピッ

 

つい、無意識というか、掛けちゃってなんだけどワン切りみたいに切ってしまった……

その瞬間__

 

プルルル

っと折り返し電話がかかってきて頭を抱えた。

仕方なく出る

ピッ

 

「あー、もしもし?あー……その間違えたというか」

 

”『んなわけないでしょう、何用ッスか?兄サン』”

っと、数十年会っていないが定期的に連絡してる喜助

 

「いやぁ……白哉坊ちゃん今日結婚したんだよ」

 

”『そうなんスか?朽木サンが……いやぁ夜一サン驚かれるでしょうね』”

 

「あぁ……あんなに小さかったのにな…んで…その」

 

”『……夜一サンは元気ッスよ』”

っと俺の聞きたいことを先に言ってしまった喜助につい苦笑いしてしまう。

分かってたのか

 

「よかった、夜一さんは相変わらず散歩か?」

 

”『えぇ、最近は現世の街並みを見るのが好きみたいで1度出かけたら数日は帰ってきませんよ、よっぽど楽しいんでしょうね』”

 

「はは、自由で夜一さんらしいや。喜助も元気か?無茶してないか?」

 

”『大丈夫ッスよ、あの件もなんとかなりましたし、店も構えられて兄サンの仕送りのおかげで生活も安定してきましたし』”

 

「そりゃよかった、また何か欲しいもんあったら言えよ。」

 

そう言って切る。

元気なら何よりだ。

 

*1
白哉の父親



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改造魂魄の話と緋真ちゃんの話

 

「砕蜂」

 

必死に刀を振るう彼女に話しかける。

だが、気づかない。

 

ガッっと音を立てて的が半分に切れる。

 

「だめだ……これでは……これでは……」

っと一人で呟く

 

彼女は副隊長に昇進させた。

だがそれから責任感なのか、何かほかにあるのか一人で鍛錬し続け顔はやつれてきている。

 

「砕蜂」

もう一度声をかけるとようやくこちらを振り向いて慌ただしく姿勢を正す。

 

「もう夜遅い、明日も早いだろう?」

 

「そう……ですね。」

 

っと視線を逸らす彼女。

 

「…………」

 

「…………」

しばらく無言の時間が続いたが、砕蜂が口を開いた

 

「……維助様は……どうして夜一様…、いいえ、元軍団長を許せるのですか?」

 

「許す?」

 

「維助様を……地位を捨て逃げた方です」

「いやそれは……」

違うと言おうとしたが砕蜂が遮った

「違わないです!維助様が……幼い頃から維助様が元軍団長の為に当主となるのを応援し続け、夕寝様がお亡くなりになった時も支え……。なのに、その地位を維助様の弟君のために簡単に捨て去った!!維助様の気持ちも知らずに……!!!」

 

「違う、違うんだよ……砕蜂。」

違うんだと、全てを話してしまいたかった。

 

けれどそれは出来ない。

俺は泣き崩れる砕蜂を抱きしめることしか出来なかった__。

 

 

───────────

 

「ダメだな……俺」

 

精神的には強い方だが、たまに寂しく思う

自分で突き放しといて女々しいやつだ……俺は。

砕蜂も砕蜂で可哀想だ、俺がいなかったら彼女はどうしていただろうか……でも彼女は心の芯は強い。きっと傷は残れど立ち直ると思う。

 

俺がしっかりしないと__部下が、彼女が道に迷ってしまう。

 

「よし、こういうどんよりした気分の時は機械いじるに限る」

 

伝令神機の新しい機種と、新しい機械の制作に取り掛かる。

 

 

「……様」

 

……

 

「維助様!」

 

「うわっ!」

大きな声が聞こえて振り向くと砕蜂が頬を膨らませて仁王立ちしてた。

 

「なんだよ砕蜂か、驚かすなよ……」

 

「驚かしてなどおりませぬ!何度お声掛けしても反応がないのでどうなされたのかと……!」

 

「なんだ、何か用か?今日は全て仕事終わらせたはずだけど」

 

「十二番隊阿近殿が維助様をお呼びです」

 

「えぇ?阿近が?伝令神機で呼べばよかったの……に」

って思って伝令神機を取り出すとすごい着信の数だった。

時計を見るといじり回してから8時間ぐらい経ってて。痺れを切らしてわざわざ来てくれたのかと申し訳なく思いながら席を立つ。

 

 

「行ってくるわ〜遅くなるようだったら先にみんなで食べてて。」

 

「はい、行ってらっしゃいませ」

 

すぐに門の前に行くと阿近が立っていた

 

「ごめん、阿近〜機械いじってたらさ」

 

「はぁ、だろうなとは思ってました」

さすが一緒に住んでたことはある。呆れたようにため息をはいた。

阿近も白哉と同じぐらいに成長して青年になった。

うんうん、みんな大きくなったなぁ……

 

「それで?なんだっけ」

 

改造魂魄(モッド・ソウル)の事で、生成する機械が少し故障してしまったようで、俺が見たんですが俺ではまだどこが壊れているのか分からなくて……」

改造魂魄。曳舟さんの義魂という概念から作られた義魂丸、

それを死者の肉体に強化された改造魂魄を入れて戦力として虚と戦わせる尖兵計画(スピアヘッド)計画。十二番隊が考え俺に必要な仕様をまとめ俺に依頼してきた機械。その機械が壊れたらしい。

 

 

「いや蒸し暑……」

 

水溶液が入ったカプセルが並ぶ部屋。

ひとつの機械が開かれていて修理しようとしてた様子が伺える。

 

「浦原隊長。」

 

「おー由嶌(ゆしま)

俺は挨拶してきた由嶌に片手をあげる。

由嶌は改造魂魄の開発者で責任者だ。

 

「壊れた時の状況を教えて貰っても?」

 

「はい、改造魂魄の霊子をインポートした所急に煙が__」

 

俺は話を聞きながら機械を点検する

「あぁ……やっぱりか、誰かここにぶつかっただろ。パイプが曲がって根元の線が切れてんな……誰か外した後に適当に直しただろ」

 

っと言うと見守ってた何人かの隊士がビクッと肩を上げて、それを見た阿近が鬼の形相で怒鳴った

 

「てめぇらここに寄りかかって談笑するなって何度いえばわかんだ!」

 

「ひぃ!すみません」

っと研究員の悲鳴を聞きながら少し笑う。上司らしくなったな阿近

 

線を新しく取り替えパイプを治す。

「はい、多分これで大丈夫。」

 

ポチッと中止されてた機能を開始させると、水溶液がちゃんとカプセル内に流れ、インポート状況を知らせるバーが動き出した。

 

「ありがとうございます。浦原隊長」

 

嬉しそうに笑う由嶌。

 

「改造魂魄……ね」

 

「気になることでも?」

 

「……いや、なんでもないけど、バックアップは定期的に取っておけよ」

肩を叩いて帰ろうと出口に向かうと阿近が俺の横に着いた

 

「改造魂魄、何かありました?」

 

「……いーや、何かあったわけじゃないけど……四十六室のヤツらが嫌いそうな話だなと」

 

「…………四十六室が?」

 

「アイツら()()だからさ」

 

「そんな事言って、聞かれたら大変ですよ」

「だーいじょうぶ大丈夫、あいつら俺に頭上げれないから」

「はは、そりゃ言えてますね。」

 

四十六室はウジ虫の家*1に使われてるセキュリティを彼らの居住区にも設置しろと言ってきて設置してやったのだ。隊長格と承諾したものしか入れないようにして四十六室は安心だ!っと大喜び。

 

ま、媚は売っといて損は無いし。別にいいけど

 

阿近に見送られ二番隊に帰ってきた俺は部屋に戻り続きを作り始める。

 

白哉坊ちゃんの妻、緋真ちゃんは身体が弱い、咳き込むのも見ていた。

俺が頼んで四番隊にも見てもらったがだいぶ進行した病らしく完全な完治は見込めないそう。

俺も医療に通じてるわけじゃないしなんなら全く知識がない。

治すことは出来なくとも進行を遅らせることは出来る。

 

理に反するが、体内の病の時間を遅らせるというもの。

肺炎だかなんだか知らないが、異物質を検知しその時間を操作する。

消滅はさせれないがきっとこれが完成すれば病を遅らせることができるだろう。

初めは体内の時間を遅らせるものを作ろうとしたが、ほかの細胞にも作用してしまい怪我が治らなかったりと色々問題が起きたので改善したのだ。

 

そして数日して完成し緋真ちゃんの腕に埋め込んだ。

咳き込んだりは治らないがこれ以上悪くなる事は無い。

 

「身体を強くしたりとかは無理なんだ、ごめんな」

 

「いいえ、ありがとうございます。」

っと嬉しそうに笑う緋真ちゃん。

 

病弱を完全に治すってなると、一部サイボーグ化するとかになるけど多分誰にも受け入れられないし、やろうとも思わない。

 

──そんなことしたら白哉坊ちゃんに命狙われるな__。

 

 

 

*1
維助のウジ虫の巣の呼び方





喜助に電話した後の維助。
自己責任で閲覧ください。想像が崩れる可能性があります

【挿絵表示】


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講師の仕事の話

 

俺は座学は苦手なのだが、歴史と虚や隊の話をする特別講師と剣術、斬術を教える講師になった。まぁもう10年ぐらい経ったし慣れたもんさ。

 

今年新たに新入生が来るとの事で毎度の恒例、担任が俺を紹介する

 

「こちら二番隊隊長にして隠密機動最高司令官。伝令神機を作ったすごいお方だ!三回生になったら伝令神機が配られるから楽しみにしとけよ!」

 

っと担任が紹介すると。

 

「隊長?まじ?」

 

「やっば……!霊圧が違うわ……」

っと生徒の声が聞こえる。うん、悪い気はしない。

功績を褒められるのっていいよな!少し恥ずかしいけど。

 

担任が出ていき俺の講義となった。

 

「えー、初めまして浦原維助、さっき紹介された通りです。俺の講義では道具の使い方、使う意味、また歴史や虚の話、隠密機動や鬼道衆、死神の隊の話なんかをします、実技は剣術、斬術の講義な。隊長兼任してるもんでたまにしか来ないけどよろしく。もし質問があったらその都度手を上げてくれ」

 

っと言うと早速1人の女子が手を挙げた。

「はい、そこの子」

 

っと指さすと「はい!!」っと言って立ち上がる子

 

「ひ、雛森桃です!えっと……、浦原先生はそんなすごい方でお忙しいのにどうして講師をなさっているのですか?」

 

緊張した様子だけどハッキリと質問してくれた。

桃ちゃん……?うーん……なんか聞いたことあるような………。

 

「先生……?」っと言った声で現実にもどる。

「ごめんごめん、頼まれたってのもあるんだけど………。こういうの新入生に言う話じゃないけど、今弱すぎるんだ」

 

「よわ……すぎる?それは霊力が弱い子供が多いということですか?でもそれは__」

 

「そう、霊力うんぬんなら貴族が有利だ、霊力の高いもの同士が結婚して子供を産んだら霊力が強い子供が生まれる。そりゃ霊力強ければ強いよ。でもそういうのだけじゃない、霊力強くても死ぬ時は死ぬ。

要は経験不足なんだよ、そこら辺の雑魚い虚にやられてるようじゃ隊ではやって行けない。俺は現実を教え生き抜く(すべ)を身につけてもらう……そのために俺は講師を続けてるのさ」

 

すると、息を飲む音がする。

 

「死なないために死ぬほど努力する。死にたくないなら真面目に講義受けろよ」

 

っというと、ありがとうございます。っと頭を下げて座った。

 

「はい、質問はもうないかな?じゃー始めるぞ、教本を開け〜まず護廷十三隊について___」

 

────────

講義が終わり休み時間になる。

 

「なぁ、浦原先生かっこよかったよな。俺憧れなんだよ」

 

「え、あ、そ、そうだね?」

「俺は阿散井恋次、そっちは?」

「吉良イヅル……阿散井君は浦原先生の事知ってたんだね」

 

「浦原先生の話?」っと一人の女の子が話に入ってきた。

 

「あ、さっき質問してた……」

 

「雛森、雛森桃!浦原先生かっこよかったよね、死なないための術って……ちょっと緊張感あってドキドキしちゃった」

「来週、浦原先生の剣術の講義だよな、うわぁ……本物の剣術……楽しみだなぁ」

っとキラキラした目をする2人に吉良は苦笑いをうかべた

________

 

数日新入生を見て素直に賞賛する。

突発的な才能があるものってのは稀にいるもんだ。

 

雛森桃、彼女の鬼道は喜助と似通ったものを感じる。喜助は院に入る前から家庭教師により鬼道を学んでいたが、雛森桃は流魂街出身。

下の番号の鬼道とはいえきちんと発動できる彼女をみて将来は喜助のようになりそうだと笑みを浮かべた。

 

それから阿散井恋次、あの特徴的な赤い髪……少し聞いたことがある見たことある気がすると思うってことは多分原作で出てきてたんだろう。

うーん……確かにいたような……

 

「先生、」

 

「うお、なんだ?恋次」

 

竹刀(しない)を持った恋次が俺を呼びに来た

 

「あの……もうみんな準備出来ました」

 

周りを見渡すと竹刀と面をつけた生徒たち。

 

「いや、おれの剣術の授業では竹刀は使わねぇよ、皆浅打貰ったろ用意しな」

 

「えっ……でも……」っと雛森が戸惑った様子を見せる

 

「竹刀での打ち合いなんて俺じゃない講師が教えてるだろ?」

俺が再度来るまでの時間割にも何コマかあったからやってるはず。

 

「俺は死なない為の術。剣を恐れず剣を交わしてもらう、斬るとはどういうものなのか、死とはなんなのか。死なないためにどうするのか。いいから浅打を持ってこい」

 

っというと慌ただしく浅打を取りに行った。

 

しばらくしてみんなして刀を持ってきたのを確認して頷く

 

「そもそも俺は型が我流だから斬り方を教えるとかは向いてないんだよ。死なないために死ぬほど剣を交わして貰う。2人1組を作れ。阿散井恋次お前は俺とだ」

 

「えっ!あっ……俺と!?」

いきなり呼ばれた恋次は驚いたように自分を指さした。

おれは頷くと、おずおずと言った感じで寄ってくる。

 

「一般の講師からお前は剣術が上手いと聞いた。上のやつと剣を交わせばそれが経験値となる、どうだ?隊長と経験を積む機会ってのはそうそうないぞ」

俺が京楽隊長と剣を交わした時みたいだな、っと思い出す。

 

「!よ、よろしくお願いします!!」

「声でか……」

 

────────

 

「……」

 

あの尸魂界一の剣の使い手と言わる浦原維助と向き合っている……

ただ強いだけではなく、尸魂界の連絡手段を変えるほどの功績がある伝説とも言っていい人、教本にだって度々名前が出てくる人だ。

正直この人が目の前にいることが未だに信じられない。

 

それに__

 

「(す、隙がねぇ)」

剣先を下に下げて隙をわざと作ってみても用意に突っ込んでこない。

やはり普通の奴相手とは違う

 

「うーん……」っと唸ったと思ったら浦原先生は斬魄刀を鞘に収めた

 

「え、えっ?」

困惑する俺。

 

「いや、いいよさぁ斬りに来な」

ほらほらっと言いながら手招きする

今なら隙だらけだ……

 

「うぉおおお……っ!!」

怪我しても文句は言わせねぇ!思いっきり上から刀を振り落とうとする

……が、

 

──俺は 

   一歩も動けなくなった

 

息もできない、脳と反して身体が動けなくなる……

俺の頭が警告を発してる

 

──このまま振り下ろせば()()()()……

 

確かな__()()()()

 

霊圧…?ちがう

 

 

 

 

───動けばお前を殺すという   

 

          確かな殺気だ

 

 

 

ガタッと、刀が手から滑り落ち地面に刺さる

 

柄から手を離した浦原先生。

 

「っ……はぁ……はぁ……っ」

地面に手を着いて息を整える、今まで無意識に息を止めてたことに気づく。

 

大きく息を吸って、浦原先生を見上げる

 

これが___上ってやつか

打ち合ってすらいない、交わしてもいないのに俺は剣術に負けた……。

──いや恐怖に負けた。

 

────────

「阿散井くん!?」

 

桃が恋次に駆け寄り立ち上がらせる。

息を整えた恋次が俺の方を向いて頭を下げた。

 

阿散井恋次。剣術の講師から潜在能力の高いやつがいると聞いてたから楽しみにしてたけど、やはり凄いな。

普通人に刀を向けると恐怖を感じるものだがそれはなかった。

 

そして俺の間合いに入る瞬間に殺気を感じ取り立ち止まった。

 

「うんうん、天晴(あっぱれ)!期待してるよ阿散井恋次!」

 

「あ、ありがとうございます」

周りの生徒はわけも分からず首を傾げる

 

────────

 

「どうだい、新入生は」

 

「あやぁ、()()()()

 

「いやだなぁ、維助君」

っと優しそうな顔で笑う惣右介。

たまたま会った風を装い院の門の前にいるが待ってたな?

 

惣右介も座学の講義で月一程度に院に顔を出してるらしい。

まぁ鏡花水月を見せつけるためだろうな。

隊同士の関わりが薄れた護廷十三隊の隊士に鏡花水月の催眠をかけることは難しくなる。だから隊に入隊する前の新人たちに「これが始解さ」、っとでも言いながら催眠をかける。

 

「どうだった、特進学級の子達は君の担当だろう?」

 

「ん?まぁさすがは特進学級に選ばれた奴らだなって感じ、霊力だけじゃなくてちゃんと潜在能力、才能がある」

 

 

「そうか……()()()()

 



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ルキアと言う少女

 

特進学級が中心だったが、ほかの組もたまに講義することになったというか頼んだ。贔屓(ひいき)する理由は無いし。

 

そこで講義が終わり解散し__。

 

見知った顔を見つけて足を止める

止まった俺に気づいた()()()振り向いて俺に首を傾げる

 

「お前……!!名前は!?」

 

「ひゃ!ひ!え……っ!?」

ガバッと、肩を掴んで揺さぶる

 

「いいから!名前!」

ザワザワと騒がしくなる廊下。

 

「る、ルキアです……浦原先生」

 

「やっぱりか………………お前これから空いてるか?」

 

「はい?」

 

「う、浦原先生!!」

っと恋次の声が聞こえ、人混みをかき分けて焦ったような恋次が俺の前に来た

 

「あ、あのルキアが何かしました?すみません、こいつその……常識がなってなくて」

「たわけ!それは恋次貴様の方だろう!?」

っと痴話喧嘩を始めてしまう。

 

「ごめんごめん、焦っちゃった……ルキア。お前を探してるやつがいるんだ、会ってやって欲しい」

 

「私の……知り合い…ですか」

 

──────────

 

「ルキア……?ルキアなのですね?」

 

「わたし……と同じ顔……?」

 

ギュッとルキアを抱きしめる緋真ちゃん。

 

すぐに承諾を得た俺はルキアを抱き抱えて落ちる落ちる!と悲鳴をあげられながら朽木家に来たのだ。

本当はダメだけどね。

 

再会を果たす__ルキアの方は赤ん坊だったからか覚えてないらしかったけど。

白哉坊ちゃんも遅れてやってきた

 

「私が……私が貴方を捨ててしまったの。私は緋真。貴方の実の姉です」

「私の……姉?捨てた……?」

 

お互いの話をし合う姉妹、顔が似ているからかルキアも信じたようだ。

 

姉様(ねえさま)私は怒ってなどおりませぬ、良い友人にも出会い良い経験もできた、こうしてまた会うことが出来たのです。どうか泣かないで…」

 

「っ……ありがとう……ルキア……ありがとう」

 

っと泣き崩れる緋真ちゃん

 

そこで白哉坊ちゃんが入っていった

 

「白哉様……ルキア、実はこのお方と私は結婚しているのです。もしあなたが見つかったら……私達はそばにいれなくなる、白哉様と一緒に今度こそ守ると決めたの……どうかお願い。朽木家と養子縁組をしませんか?」

 

「養子縁組……」

 

流魂街で散々苦労をしてきたルキアに、もう苦労はかけさせまいと白哉坊ちゃんと緋真ちゃんが考えた話。

 

まぁ、色々思うところはあるけど人の家庭の話だから俺は見守る。

決めるのはルキアだしな。

 

「……分かりました。その話受けます」

 

「っ〜!ルキア!嬉しいです……ルキア。」

 

白哉坊ちゃんも黙ったままだけど、少し嬉しそうだ。

 

─────────

ひゃぁぁぁ!落ちる!落ちる!!」

 

っとまた叫ぶルキア

 

寮の前に下ろすと、ゼェゼェっと息を整えていた。

 

「さぁ、荷物用意しな!」

っと尻を叩くとひぇ!っと叫ぶ、元気だなぁ

 

浦原先生!!

っと涙目で詰め寄ってくる

 

「ごめんごめん!怖かったよね!漏らしちゃった?ゴフッ!顔が痛いっ……!

 

勢いよく顔をぶん殴られその場に踞る

「あっ!いやすみません先生……!」

 

暗い顔だったが何とか元に戻ったようだ、まぁ姉とか養子縁組とか言われたら困惑するよな。

 

こうしてルキアは朽木ルキアとなった。

 

─────────

 

「……」

 

「なんだい、静かだね維助君」

 

居酒屋のカウンターで飲んでると隣に惣右介が座った。

隊長になってから益々猫かぶりが極められてるようだ

 

「なんだよ1人で騒いでたらおかしい奴だろ」

「えっ……いつも一人で騒いでるじゃないか」

 

「どつき回すぞ?……いや、ルキアの事を考えててさ」

 

「……さすがに生徒に手を出すのは」

「お前なぁ……」

わざとらしく引くような態度を見せる惣右介をぶん殴りたくなる。

 

「冗談さ、あれだろう朽木家に養子縁組で朽木家に入ったお嬢さん。」

 

「……あぁ。惣右介って兄弟いたっけ」

「いや、いないけども」

 

「……もし姉がいたとして、過去に自分を捨てました、でもそれは覚えてない。大きくなっていきなり実の姉です。って言われたらどう思う?」

 

「さぁ、あれだろう?浦原喜助のことを思い出したんだろう?」

 

「……よく分かったな?兄弟を捨てる時ってどんな気持ちだったのかなって。きっと長年すごい罪悪感もあったし生きていくならそれが最善だったのかもしれない。第三者がどうこう言うつもりは無いけど、ルキアはどういう気持ちなのかなって……、先生として支えられるなら支えてあげたい。白哉坊ちゃんは口下手だし上手くやれるかな。」

 

 

「……君は変なところがあるよね」

「褒めてる?貶してる?」

って聞くも無視された。

 

────────

2ヶ月ほど経って1回生の特進学級の恋次らが現世で大量の虚に襲われたらしい。

 

「先生の稽古より怖くありませんでした」っと桃に言われた時は頭抱えた。

なんでも一人で突っ込んでそれをみた2人が遅れてカバーに入り虚を倒した後、残りは助けに来たギンと惣右介が片した__って聞いた。

 

「でも、先生!先生はあの中級大虚を倒したんですよね!!院生の時に倒したって五番隊の藍染隊長が仰っていました!」

 

そして俺はまた頭を抱える。惣右介ぇぇぇ!

 

「俺、あの時動かなきゃ死ぬと思ったんです。多分浦原先生の講義受けてなかったら戸惑って焦って何も出来なかった。死なない為の講義って……ようやくなんか実感出来ました」

 

「僕も……。浦原先生のおかげです」

 

っと恋次とイヅルも……

 

俺は3人の頭をそれぞれ撫でる

 

「まぁ、無事で何よりだ……今度は自分の力を過信しないようにする訓練しないとな。」

 

「えぇ、これ以上浦原先生のスパルタ講義うけたら死にますって」

 

「あ?恋次そんなに受けたいって?いいぞいいぞ」

「ちげぇ!話聞けって」

 

「あはは、阿散井君おかしい」

頭をうりうりっと撫でられて照れてる恋次を笑う桃。

この3人は立派になりそうだな、将来が楽しみだ。

 

 

「二番隊って隠密機動……ですよね」

っとイヅル。俺はそれに首を横に振る

 

「二番隊イコール隠密機動ってわけじゃないよ。本来、隠密機動は隠密機動、二番隊は二番隊だったけど、俺が総司令官を兼任してるからその隠密機動の色合いが強いんだ。俺が総司令官を()()()()()()二番隊はただの死神の隊だったさ」

 

っというとみんなして首を傾げる

 

「ま、難しい話はいいよ。」

 

「その総司令官って強かったらなれるんすか!?」っと恋次が詰め寄ってくる

 

「お?俺を抜かす気か?あはは、隊長は強かったらなれるかもしれないけど隠密機動はそうはいかない。中央四十六室直属の組織だからな、信用が大事なのさ。信用と強さがあればなれるかもな?」

 

「信用かぁ……」

 

「それに恋次は隠密とか無理だろ」

 

「うっ……俺浦原先生みたいになんでも出来る人になりたいんです。霊圧は勝てるものじゃないけど……」

っと俯く恋次

 

「俺は霊圧関係ないけどね。」

 

「え?」

ポカンっとした顔が笑える

 

「俺は剣術の達人。俺が今まで教えた剣術に霊力使ってたか?」

 

っというと首を横に振る

 

「だろ?俺の剣術は霊力関係ない。だから俺は霊力が少ししかないやつでも虚は倒せると思うんだよ。まぁ弊害も多いけど__

貴族の俺が言うのもどうかと思うけど__流魂街のやつでも貴族のやつでも強い方が強い。霊圧じゃない_心と剣の強さ、それがあれば上に立てるんだと俺は思うな。」

 

そもそも剣術と斬術は別だし…。補助できる機会作れば霊力弱いやつでも雑魚虚倒せるんじゃないか…?

霊力多くても戦闘力なければ弱いやつは弱いし。

 

 

「か、かっけぇ!浦原先生やっぱかっけーな!なっイヅル」

 

「そうだね……」

 

「お?だろだろ?かっこいいだろ!」

 

「先生台無しですっ!」

っと笑う桃。

 

かっこよさとロマンだよなぁ!やっぱり!

 

霊力が少ししかなくても虚を倒せる機械……面白そうだな

 

__________

ニャア

 

っと鳴き声が聞こえる

 

「よぉ、(ぬこ)ちゃん。今日も来たんだな。」

 

夜、襖を開けて作業をしてるとその隙間から入ってくる黒猫。

珍しい目で俺みたいな淡い青い目をしている。

時々俺のところに来ては擦り寄ってくる

 

「よしよし、可愛いなぁお前は」

 

ワシワシと撫でてやるとゴロゴロっと喉がなる

 

ひょいっと抱き上げて寝っ転がると俺の腕から抜けてお腹の上で丸くなる猫ちゃん

 

「……」

 

今頃夜一さんは何してるかな。

この猫のように自由気ままに生きてるんだろうな

 

襖から入る月明かりを見てるとヒョイッと起き上がった猫はスタッと俺の上から降りた

 

トテトテと襖に向かって歩き出す猫

 

───俺は無意識に手を伸ばしていた。

 

「っ……はぁぁぁ……何してんだ俺」

ギュッとその手を握り天井を見上げる

 

俺の使ってるタンスの上には、3人で撮った写真があって、まだ幼さが残った喜助と夜一さんが映っている。

きっと今日、俺らと似た桃達をみて思い出しちゃったんだろうな昔の気持ち、昔の思い出を……。

2人を守らなきゃって思ってその時初めて始解したんだっけか。

あの時は無我夢中だったな……

 

『あの時動かなきゃ死ぬと思ったんです』っと言った恋次。

 

俺もあの時、動かなきゃ俺が何とかしなきゃ死ぬ。大切な人達が死ぬって思ったんだったな……。そっからだ、死なない為に死なせない為に死ぬほど努力するようになったのは。

 

 

 

 

 

猫は去っていった__

 

 

 

 

 

廊下の角で蹲る女

「…………維助様……」

 

___________

 

現世で月を見上げる女

「維助__」

 

 

 

 

想い想われ___届かない




次回曇らせの匂い


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俺だって息抜きが必要だって話

ちょいギャグより。曇らせられなかった話


朝___ふと目が覚めた。

 

いつもは砕蜂の声が廊下から聞こえて俺が目覚めるってのがいつもの朝だったんだが、砕蜂の声はせずまた時計もいつもの起床時間で、

何かあったのか?っとさっさと支度をする。

 

襖を開くとそれと同時にドタドタと走る音が聞こえて

 

ギギギィ!!っとブレーキ音が聞こえて曲がり角から現れた砕蜂。

「い、維助様!」

 

「うお、なんだ砕蜂珍しいな?」

 

「す、すみません。寝坊してしまって……」

っと膝を着く砕蜂。いいと言っているのに硬いものだ。

 

「にしても砕蜂が寝坊だなんて珍しいな?ってなんで前髪そんなに目にかけてるんだ?目悪くなるぞ?」

 

まるで顔を隠すように髪を下ろしている砕蜂は前髪を目にかけるようにして俯く。

 

「い、いえ!?なんでも……!そ、それより朝餉(あさげ)のお時間です!ささ、早く行きましょう」

そして俺の前を歩く砕蜂。

 

なんか空元気(からげんき)というか……。

 

「砕蜂」

 

「っ……!」

振り向いた砕蜂が逃げないように後頭部を押え、前髪を書き上げると、クリッとした瞳と目が合う。

 

目元は赤くなっていて

 

「……泣いたのか?誰に泣かされた?何をされた?」

「い、いえ!その……えっと……」

 

っと視線を逸らす砕蜂

 

「か、かふ「花粉症だなんて言わせねぇからな?」うっ……」

 

手を離すと。グッと拳を握って俯く砕蜂

 

「私の……私の問題なのです。もう解決したので大丈夫です、ご心配をお掛けしました維助様。」

 

「……そうか、ごめんな人の問題にズケズケと。もし何かあったら必ず俺に相談してくれ。」

 

っというと

 

「はい!」っと笑う。

いつもの笑顔に戻った砕蜂にほっとする。

 

人を覚えない名前も覚えない、人のことをどうでもいいと思っていた俺はいつからこう人に情を抱くようになったんやら。

 

 

____________

 

「浮竹隊長は奥さんとか居ないの?」

 

「ゴホッゴホッ……な、なんだい維助君急に」

お茶を蒸せた浮竹隊長が机を拭く。

 

書類を届けに行ったらついでにお茶をしていかないかと言われてお茶してるのだ。何故か京楽隊長もいた、サボりに来たな?

 

「浮竹は女の子に奥手だからいないんだよ〜あっちからグイグイくるのにねぇ?」

っとお猪口をゆらす、朝から酒かよ

 

「維助君はどうなの〜?砕蜂ちゃん?それともあの姫さん?それともあの遊楽(ゆうらく)*1の女の子?維助君のお気に入りの子いたよねぇ」

 

「こら、京楽その話は……」

 

「あぁ気にしないで、夜一さんも砕蜂も可愛いよなぁ。あのキャバ……遊楽の女の子俺好みでさぁ、ボッキュッポンって感じが」

 

「あぁ、わかるよわかる。脚もいいよねぇ……あのラインが」

 

「こらこら、ここでそういう談笑をするんじゃない」

 

「なんだよ、浮竹隊長〜俺とは別のイケメンのくせに。女の子にチヤホヤされてるんだから流されてチヤホヤされればいいんだよ。勿体ないなぁ」

 

「そうだよ、浮竹。勿体ない勿体ない!」

 

「はぁ……なんで俺に流れが来るんだ」っと頭を抱える浮竹隊長。

 

「浮竹隊長の好みは?胸?尻?脚?無難に顔?」

 

「いや……俺は」

 

「いやいや浮竹はきっとクビレだよクビレ。」

 

「あぁ〜クビレか!俺も好きだなぁ」

 

「2人とも!勝手に決めるんじゃない……!俺は……」

 

「俺は?」

 

「い、言わないからな?ゴホッゴホッ」っと咳をし始める浮竹隊長。

からかいがいがあるな。

 

「あ、そうだじゃぁ今日遊楽いこうか!」

 

「おっ、いいねぇ京楽隊長!行こう行こう、楽しみだなぁ浮竹隊長、おすすめの子紹介してやるよ」

 

「えぇ!?俺もか!?いやおれは「じゃ!また夜に〜」あっちょ維助君!?」

 

 

 

 

「なんで俺まで……」

っと顔を覆う浮竹隊長の両端には露出(ろしゅつ)の高い女の子達

 

「浮竹隊長さんいけめーん!かっこいい!」

 

「維助様と違うかんじの優男〜浮竹様ってよんでいー?」

っとキャッキャウフフしてる

 

「ほらほら、浮竹隊長、せっかくなんだから楽しまなきゃ」

っと、両端の女の子に肩を回す俺

 

「きゃー維助様。今日も相変わらずかっこいい〜」

「あ、ずるーい私も私も」っと寄ってくる女の子達。

 

うん……ハーレム最高……っ……!!

 

________

 

酔っ払った京楽隊長を浮竹隊長が送っていくことに。俺は隊舎が離れてるから別方向だ。

 

うん、いい気分だったな〜って思いながら踵を返すと

 

「あ、あのー!維助様!!」

っと女の子の声。

 

「ん?」

トタトタと俺の元に走ってきた女の子は店の子で、なんか忘れ物したかなと懐をまさぐるも、思い当たるものがない。

 

すると__俺の腕に抱きついて上目遣い

 

「あの……お店には内緒で。2()()()一緒に呑みませんか?」

 

うーん……これは夜のお誘いか……。

新人だしプロ意識がないのはしかたないけど……

 

「ごめんね?そういうつもりでキャバ……じゃないや遊楽行ってるわけじゃないんだ、一線はこえないよ」

 

「い、いいんです!お願いします!私あなたの一番になりたいんです!お願いします。あなたの一番に……一緒にいたいだけなの」

っと胸を押し付けてくる。

 

困ったなぁ……

 

っと思ってると

 

「維助様……?」

 

「あ、砕蜂。乱菊ちゃんも、どしたの?」

 

「ど、ど、どうしたの?じゃないですよ!浦原隊長、その子は……?」

っと指を指す乱菊。

あ……そういえば抱きつかれてたままだったな。

 

「なんですかぁ維助様。この()()()は」

 

乱菊からカッチーンっという効果音が聞こえてきそうなほど顔が歪む。

乱菊はまだしも砕蜂は大人だろう……身長でそう言ってるだけかもな。

 

「はいはい、そこまで。んでなんで2人はここに?」

睨み合ってるのを制して聞く。

 

「女死神協会の集まりなんです!!!ほら、前に伝令神機に改善点があったらって言ってくれって言ってたので、女の子同士で話してたらそういう集まり作ったらどう?みたいな話になって〜!砕蜂副隊長は浦原隊長の近くにいるから機械くわしいかなーって話してたら仲良くなって!」

っと楽しそうに笑う乱菊ちゃん

 

「それでいまはその帰りに砕蜂副隊長と買い物に…そしたら…」

「あはは…」

俺と出くわした…っと

 

「副隊長ぉぉ?このちんちくりんがですか?」

っと笑うキャバの子

 

さすがに失礼だぞ、っと言ったらごめんなさぁーいと軽い返事。

 

勘違いしないで欲しいんだが、遊楽の子はいい子ばかりでこういった女の子は少ない。多分この子がちょっと…

とか俺の方が失礼なことを考えてると

 

プルプルと震え出した砕蜂

ばっ!っと顔を上げたかと思うと俺に詰め寄り__

「わ、私だって胸あります!!」

 

「どうした砕蜂!?」

 

「維助様は胸が好きですけど!!私だって大きくなりました!!!!!」っと大声をだす砕蜂。本当にどうした!?

 

「うわぁ、浦原隊長胸なんだァ…」っとジト目の乱菊ちゃんと

睨み合い始めた2人

 

それに___

 

「おい、あれ二番隊の…」

「胸?胸とか聞こえなかったか?」

っと通りがかった死神や住民の声がきこえてきて。

 

「いや!!俺はちが、違うぞ!?胸だけじゃない!そう!そうだよ!脚…脚も好きだ!!」

「えぇ…」

 

ちっがぁぁあう!これが言いたかったわけじゃない!

 

「と、とにかくこの話は終わり!はい、遊楽の子ははやく店戻る!!オーナーにチクるぞ?はいはい」っと背中を押して帰らせる

 

10番隊隊舎に乱菊ちゃんを送り、砕蜂と2人になる

 

「あ、あのー砕蜂さん…?」

ずっとむすっとしてる砕蜂。

 

「……胸なのですか?やはり夜一様のような…」っと胸に手を当てる砕蜂

 

「いや、うーん。いや…あは…は」

どうしよう俺、どうしよう!どう答えても角たつぞ…?

胸にしか興味無い浦原維助隊長なんて噂が立ったらこまるし…!

 

「お、俺は砕蜂の身体がすきだな」

 

____ん?

 

ボボッと、顔を赤くする砕蜂をみて冷静になる。

まて、俺すごいセクハラまがいな事言わなかったか?

 

 

「わ、私の身体が…」

っと自分を抱きしめるように腕を組む砕蜂。

 

「い、いや!ごめん!ちが、くはないかもしれないけど!違う!誤解というか…!」

 

「い、いいんですよ維助様…!維助様の本音聞けてよかったです。おやすみなさいませ」

 

っとルンルンで去っていく砕蜂。

いつの間にか隊舎についてたのか…俺は門のまえで蹲る。

 

セクハラだと言われなかったのは良かったけど…やべぇ…

乱菊ちゃんにもあの遊楽の子にも誤解を解かないといけないし…

あぁ…いや誤解ではない…?うん?

 

酒のせいか頭が痛くなり

 

 

____俺は考える事を諦めた。

 

 

 

*1
尸魂界のキャバクラの店の名前



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霊刀の話と流魂街の天才児の話

 

「白哉坊ちゃんもついに隊長かぁ…!」

五番隊副隊長市丸ギンと、六番隊副隊長白哉坊ちゃんが隊長に就任した。

ギンは三番隊、坊ちゃんは引退した祖父を継いで六番隊に

 

「大きくなったなぁ白哉坊ちゃん」

っと袖で目を覆い泣いたふりをすると

 

「はは、相変わらず弟子愛がすごいね維助君。」

っと笑う惣右介。

 

今は式典帰りなのだ。

 

「ギンも出世早いよなぁもう隊長か、大きくなりやがって!」

っと脇を肘でつつく

 

「あいたぁ…なにするんですかぁ浦原隊長。にしても白哉坊ちゃんって可愛い名前やなぁ」

 

「……師匠」

「ごめんって」

 

低い声で白哉が威圧してくる。だーぁってもう定着しちゃったんだもん。

 

 

「とにかくおめでとう、ギン、白哉坊ちy…白哉」

 

いやぁ…時が経つのって早いもんだ。

__________

 

 

 

あれからまた時がたった。

 

霊力が全然ないやつでも扱えるようになる斬魄刀もどきを作れるのでは…?っと思って今試作品を何個か作っている。

 

 

「あの…俺も忙しんですけど」

っと頭を搔く阿近

 

「いーじゃん、いーじゃん休憩だろ?少し手伝えよ」

「休憩の意味…」

っと呟く阿近に刀を渡す

 

「斬魄刀…じゃないですね。普通の刀…?」

 

「そう、日本刀すこし改造したやつな。中は機械がはいってる、柄のスイッチ押してみろ」

 

っと言うとカチッっと音がして刀に霊子が集まり始める

段々と青白くなっていく刀

 

「霊力を吸収する鉱石と、精霊邸の建物みたいに霊子を分散させずに維持する力を参考にした機械を合わせて、刀に霊子を集結させ流し纏わせる。これで体内の霊力を使って戦う死神じゃなくても雑魚虚ぐらいは斬れるようになるはずだ。ちゃんと魂葬できるかも実験済み!斬魄刀は魂魄を循環させる装置みたいな感じじゃん?柄の魂葬印の原理を少しパクって虚の罪を洗い流して魂葬できるようにしたんだ」

 

俺の技術様々だなぁ!

 

「…これ、()()に似てません?」

 

「アレって?」

しばらくブゥンっと刀を振るっていた阿近が俺の方を向いた

 

「大気中の霊子を集めて戦う__それはまるで「阿近なにしているんだネ!サボってないで285番の容器を取ってきたまえ!!」」

 

っと涅の大きな声が研究室内から聞こえてきた。

 

「はぁ、休憩が…じゃ俺はこれで。」

っとフラフラと去っていった阿近。

 

うーん。ただこれは対死神に対しては魂魄が霊圧に耐えれないとかいう問題とかあるからそういうのは向いてない。

使えても流魂街の住人が自分の身を守る為に…って所かな。まだ改良必要な所もあるし。

 

「ただ、問題なのが大気中だけじゃなくて建物の霊子も吸い取るから建物が崩れるんだよなぁ」

 

ボロボロになった塀を撫でる。

使いすぎると大気中だけじゃなく壁の霊子まで削り集まり始めるのだ。

なんか成分とかあんのかな…?大気中限定に絞るにはそういうのを調べないといけない。だか成分とかそういうのは俺わかんないし…

 

「よし、こういう時は喜助だよな」

 

_______

 

 

”『兄サン…なんでそんなもん作ったんスか…』”

 

説明を静かに聞いていた喜助がため息を吐く。

 

「え?なんかおかしい?」

 

”『いや…おかしくはないんスけど…いや。やっぱりおかしいッス』”

 

「えぇ?そうかなぁ、刀に霊子を集めて流すだろ?それで密に耐えきれなくなった霊子がギチギチとひしめき合い振動するだろ?その振動部分に触れるとスパッ!っと斬れるわけだよ、斬魄刀より耐久度の劣るただの刀でも__」

”『いやそういう原理とかの話じゃなくて…大気中の霊子を集める機械を作ったんスか?』”

 

「だからそうだって、集めて刀の周りに流してるの。虚もスパーンよスパーン!」

 

”『……それ滅却師じゃないッスか?』”

 

「え?滅却師?あぁ…そういえば、似てるな__でも違うだろ細かく操れる訳じゃないし、飛ばせる訳じゃないし…あっ飛ばせたらいいなぁ…確かに!うんうん。霊子を斬撃として飛ばせたらかっこいいよな。ありがとう喜助!」

 

”『いやアドバイスした訳じゃないんスけど?』”

 

滅却師__ねぇ?

 

 

「斬撃として飛ばせるようにしても、魂葬ができるかわかんないんだよなぁ…。刀自体に斬魄刀と似たものをつけてるから、それと離れてしまった斬撃は…うーん…均衡が崩れるよなぁ…。

そしたら弓も似た感じか…やっぱ仕様書きちんと作ってから取り掛かればよかったなぁ」

 

”『はぁ…こりゃしばらく話聞かないッスね』”

 

ってかこれ色とか変えたらかっこよくない?

眩しいし…明かりになるなこれ。明かりとしても応用可能。でも触れるだけで怪我する。だめだな、うん。

 

ただ、この機械をちゃんとしたものにすれば色々と応用できる気がするんだよなぁ…。力ない死神でも使えば簡単に切り刻めるようになるわけだしそういう力を利用して__とか。まぁとりあえず仕様書作るか

 

 

この霊刀が数十年後活躍するとは__思いもよらなかった。

______________

 

 

 

「へえ、流魂街の天才児?」

 

「そうなんです!!私がスカウトしたんですけど〜これが生意気で生意気で!」

 

 

美味しい茶菓子があると言うのでお邪魔している俺。

そういえば乱菊もあんなに幼かったのに大きくなったなぁ今ではちゃんと女性だ。

 

「乱菊、お前流魂街にサボりに行ってたのかぁ?」

っと呆れた様子の一心。

 

「サボってません!たまたま!たまたまなんです!!全く!隊長と一緒にしないでください」

 

「おいおい、でもそれ聞いたことあるなぁ…なんでも初日に決闘を申し込んできた六回生を一瞬で倒したんだろう?」

 

「えぇ?そりゃすごい」

 

「でも生意気なんです!生意気!!ずーっとしかめっ面だし!」

こうですよ!こう!!なんて言って指を目にあててつり目にしてみせる

 

 

「そういえば師範、講師の仕事は?」

 

「おー、ここら辺バタバタしてたからなぁ…来週辺りにあるな。」

伝令神機のカレンダーで予定を確認する。ここら辺ちょっと霊刀とか作ろうと試作してたりして忙しいから断ってたんだよなぁ

 

すると両手を合わせて笑った乱菊

「あっ!じゃあーその時にその生意気なガキ紹介してあげますよ!!」

 

「おっ!面白そうだなぁ俺も見に行く」

っと乗り気の一心

 

「うーん、まぁ俺も気になるし……んでお前らその日の仕事は?」

っと言うと2人して視線を逸らした

 

おいこら…

 

 

 




霊刀(れいとう) 命名維助
本人に霊力が全然なくても虚を切れる機械を作ろうとしたのが始まり。
流魂街の住人が自分で身を守れるようになればいいな…って考え始めた。

大気中の霊子を収束させ刀に流し纏わせる。集まりすぎることにより霊子と霊子がひしめき合い大渋滞を起こす。その振動は少し触れるだけでもものが切り刻める、というより削り取る武器となる。
魂葬問題に1番時間がかかったが何とかなった。

ただ集めすぎると壁の霊子まで削ってしまうので試行錯誤中。
対死神用としてはあまり向いていない。


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日番谷冬獅郎の話

 

今日は午前中で終わる日。

稽古でもするかと浅打を背負い立ち上がったところで__

 

”『ピンポンパンポーン』”

 

っと、教室に着いている虚の仮面のような置物の口が動き始める。

 

”『一回生、特進学級、日番谷冬獅郎さん』”

 

周りの生徒の目が一斉にこちらに向けられる

 

”『至急、特別訓練場にお越しください繰り返します_』”

 

「はぁ…」

痛々しい程の視線を避けながら特別訓練所へ向かう。

 

通常の訓練場とはちがい、特別な申請書がないと入れない特別訓練場。

壱の扉は開いており、そのまま入る

 

「失礼しま…」

その瞬間顔を柔らかいものがつつんだ

 

「隊長〜!この子ですよこの子!生意気なガキ!」

 

「離せ!!てめぇが呼んだのか松本!」

 

「松本副隊長でしょー!この前昇進したって言ったじゃない!」

 

「ふんっ」

「もう!生意気ー!!」

 

顔を背けた先には羽織を着た2人の男がいた。

 

「おっ、その子が乱菊のお気に入りか?ほー」

黒髪の男は俺の事を見ると感心したように頷いた

 

師範どう思います?」

 

師匠と言われた男は俺と目が合うとニコリと笑って近寄ってきた__

っと思えば腕を握られ持ち上げられる

 

「なっ…!」

暴れようにも動かせない。なんつー力だ__

 

「へぇ、うんうん。君毎日稽古してるんだ」

 

「…!」

腕を見ただけで分かるとでも言うのだろうか

男は先程とは違い優しく腕を離す

 

「自己紹介が先だったな。俺は浦原維助、二番隊隊長でたまに講師として院の先生をしてる。そのうち俺の講義を受けることになると思うけど、よろしくな?こっちが」

っと黒髪の男を指さす

 

「俺は志波一心。十番隊隊長で乱菊の上司だな」

 

「……んで隊長ら2人が俺に何の用ですか」

 

「乱菊ちゃんがすごい生意気で凄い強いやつがいるって言ってたんで気になって呼んだんだ」

 

「生意気とは言ったけど強いだなんて私は言ってませんからね!浦原隊長!!」

 

「…浦原…浦原?」

浦原維助、流して聞いていたが教本に名前が__。

 

「浦原隊長は伝令神機と流魂街の偵察無人機を作った人よ?その他にも数え切れないほどすごいの作ってるんだから!ほら流魂街でふよふよ浮いてる機械見たことない?」

 

確かに、ばあちゃんがアレは死神様が見守ってくれている証だとか言ってたような。それ作った?

 

「………本当に見に来ただけなんですか」

 

「うん、そうだよそれと勧誘に」

 

「…勧誘?」

 

「そう!せっかく優秀な逸材がいるんだから唾付けとかないとって感じで乱菊ちゃんも気に入ってるし一心も気に入ったようだし、良かったら院卒業したら十番隊に行かない?」

 

「…」

志波隊長の方に目を向けるとニコリと笑った。

 

「…考えます」

 

「十番隊に入ったら私が上司だからね!冬獅郎!」

 

「…やめようかな」

 

「なんですって!?」

 

「はは、2人は仲いいなぁ。冬獅郎。なぜ院に入ろうと思ったの?」

っと首を傾げる浦原隊長

 

「…力の扱い方を学ぶため…っす」

 

「ふーん…そっか…なるほどね、うんうん確かに」

 

またペタペタと身体中を触り始める、この男読めないというかマイペースというか__

 

そのうち頭を撫でられる

 

「二番隊でもいいなぁ!君なら大歓迎だよ」

 

「ちょちょ、師範!そりゃダメだって!ただでさえ最近二番隊志望する隊士多いのに!隠密も隊士ももう要らないでしょう!?」

 

「えぇ!?部下はいてなんぼだろ〜」

 

「…考えます」

 

「うんうん。もし何か困ったことあれば言えよ。放課後も講義で質問あったら聞いてるし鍛錬も付き合ってるし」

 

「鍛錬も…?ですか」

 

「おう!俺が教えるのは死なないための技術。打ち合って打ち合って自分自身を向上してもらう。受け身、防御術、反撃もちろんただの攻撃も。俺の鍛錬で使うのは竹刀じゃない本物の刀だ。実戦と似たような感じで鍛錬するからいい経験になるぞ」

 

「…今からお願いって出来ますか?」

 

「なっ、冬獅郎!」

っと言う松本を浦原隊長が腕で制す

 

 

「いいぞ、死なない覚悟があるなら

 

「…あります」

 

「よし!」

っとまたポンポンと頭を軽くなでられた

 

───────────

 

 

「師範もいやらしい人だ。わざと仕向けたな」

「…全くですね。はぁぁ、心折れないといいけど冬獅郎」

スタスタと訓練場に作られた広場に向かう2人を設置された観戦席に座る

 

「いーや、ああいうタイプは逆に燃えるんじゃねぇか?」

 

「私、隊違うし講義も見たことないんです。師範って言ってるぐらいだから志波隊長よりも強いってのは分かるんですけど、実際浦原隊長どうなんです?尸魂界一の剣術使いって本当なんですか?」

 

「…うーん、師範が四席の時に俺が2番目の弟子になったんだよ。その時から強かったぞ?そもそも尸魂界一の剣術使いって言われるようになったのは師範が護廷十三隊に入隊した時からだしな」

 

「えっ、そんなに前から?へぇ…じゃあ中級大虚を倒したってのも本当なんですか?」

 

「そう聞いてるぞ、それを一回生で倒したって言うんだからそりゃ称号ぐらいつくわな。実際強いぞ、当時は何十キロっていう重さの制御装置をつけてて動きも制限されてたらしいんだがそれでも__刀身は見えなかった」

 

「へえ…」

 

「へぇって聞いといて反応薄すぎねぇ?」

 

「だって見ないとわかんないじゃないですか」

 

「だから見えねぇんだって、ほら始まるぞ」

 

冬獅郎と維助が向き合い、維助は柄にすら触れていない状態で、冬獅郎が刀を抜いても変わらず棒立ちだった

 

「はぁぁぁー!!っ」

 

上から容赦なく真っ直ぐに斬り下ろす__が、

 

それを柄頭(つかがしら)で受け止めた維助

一瞬驚いたような顔をする冬獅郎が1歩下がり斬り込む___が片手で刀を抜いた維助が軽く弾く。

 

──軽く、そう軽くまるで道の蜘蛛の糸を退かすように軽く。

動きは柔らかくゆっくりに見えるのにそれに反して音は大きく火花が散る。

 

「がっ…!!」

何度か弾いた時に勢いに負けて冬獅郎が尻餅をつく。

 

早業でもない、的確に連撃がしづらくなるように弾く技術力。

大きく振っている訳でもないのに片手で握った刀で相手を弾く力。

 

「私見えますよ」

「ありゃ冬獅郎の実力を計ってんだ。それに見えないのは師範の抜刀術、抜刀術は見せつけにはなるが鍛錬にはなんねぇだろ。師範自身も抜刀術は鍛錬向きじゃねぇっていってたぞ」

 

すぐに立ち上がった冬獅郎がまた斬り込みに行くがまた飛ばされ尻餅を着く。

それでも諦めずに何度も立ち上がる

 

 

何度も

 

何度も何度も___

 

砂を蹴りあげ維助の目を潰そうとする冬獅郎

だが、目を閉じた維助は冬獅郎の突きを避け懐に入り込むと刀身を首筋に添えた

 

「…参りました」

っとか細い声を出した冬獅郎

 

「うんうん、本当に一回生か?こりゃ一心なみに化けるなぁ」

っと笑い声が聞こえる。

 

 

「決して…決して雑な攻撃でも弱い攻撃でもないのに。」

 

「赤子を相手しているようにみえたか?」

っと一心が驚いている乱菊に聞くと小さく頷く

 

天才と言われるだけはある、頭も使い的確な攻撃、力もあるし技術もある。

6回生でも、死神でも負けるかもしれない程の実力を持っている冬獅郎だが、維助の前では赤子同然だった。

 

力も技術力も余裕も全てが上の存在。

見ているだけで、刀を交わしてもいないのに分かる。

 

「今ので自分の何が悪かったか分かったか?」

維助の問に頷く冬獅郎

 

躊躇い(ためらい)と、刀の受け流し」

 

「そうだな、竹刀とは違うだろう?躊躇いは初めは仕方ない。人に刀を向けて本気で斬るのなんて躊躇って当然だ。まぁたまに躊躇いもなく斬る奴いるけど__まぁ慣れだ慣れ、受け流しも一人でできるものじゃないだろ?こうやって打ち合って学んでけ。経験値を積めば強くなる」

 

「はい」

 

「浦原隊長…ちゃんと講師してる」

「お前師範の事なんだと思ってんだよ…まぁ師範は口より身体で教え込むタイプだからなぁ。感覚型?ってやつだな、俺の時もひたすら殴り合い斬り合いだったし。あの人説明自体は下手だぞ」

 

階段を上がってくる2人。

 

「始解したら楽しみだな。大きくなるぞ〜こりゃ一心超えるかもな?」

っと笑う維助がワシワシと冬獅郎を撫でる

 

「やめてくださいよ〜縁起でもない、まだまだ現役ですよ俺」

 

 

─────────

 

「…うーん。なんだろうな、なんか違和感。冷たい霊圧…か。」

 

握って開いて手を確かめる。

戦ってる途中から冷たい冷気のようなものが空間を包んでいた。

 

 

「こりゃ始解喜助よりも早いかもな」

 

 

将来が楽しみだ

 

 

 



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剣八という男の話

 

 

フラフラと砕蜂を連れて歩いていると

 

嫌な奴とすれ違う。

視線を逸らしてなるべく目を合わせないようにするが──

 

ブゥンっと風を切り裂く音と共に

 

俺は砕蜂の首元にある刀を素手で抑える

たらりっと砕蜂が冷や汗を流すのが見えた。

 

「へっ、俺の刀を素手で抑えるか、そうじゃねぇとなぁ?」

 

「…なんのつもりだ更木剣八。俺の部下に手を出すなんざ。その命いらないって?」

 

「こうでもしねぇとてめぇは俺と戦わねぇだろ」

 

「そこまで落ちたか?してもしなくてもお前とは()()()()

更木剣八。俺と会うやいなやいきなり刀を振り回してきたイカれたやつ

 

会う度に刀を抜いてくるし予定とか全部パーになるから嫌いなんだこいつ。

 

「いいか?次俺の部下になにかしてみろ。お前じゃねぇお前の部下を殺してやるからな」

 

こいつは脳筋に見えてそうでもない、きちんと部下思いだし

こういった脅しは効く

 

「チッ」っと大きな舌打ちをした更木は刀を鞘に収めた。

 

「てめぇ尸魂界一の剣術使いなんだろ、戦えよ。減るもんじゃねぇしいいだろうが」

 

「てめぇと違って忙しいんだよばぁーか」

 

「なっ、隊長に何言ってやがんだ!それとも何か?俺らの隊長に負けるからって「やめとけ」」

 

ハゲが俺に掴みかかろうとしたとこをハゲの襟首を掴んだ更木

 

「それ以上行くと()()()()()

 

俺が刀に手を添えていたことに気づいていたらしい。

 

「はっ、隊長。そんな噂どうせこいつが作ったホラですよ。霊圧全然感じないし雑魚じゃないっすか。雑魚」

 

「よーくみろ、てめぇあの腕についてんの見えねぇのか」

 

 

「……」

ハゲは俺の腕__手首を凝視する。

 

「あれ隊長の…」

 

「はっ、俺のやつはこいつの霊圧制御装置を改善して作ったやつなんだよ、そう技術開発局のやつが言ってたの覚えてねぇのか」

 

「…チッ」

 

「もういいか?俺忙しんだ」

っと踵を返そうとすると俺の前に立ち塞がる。

 

「そうはいかねぇ、今日こそ斬り合ってもらうぜ」

 

「はぁ…」

また話が振り出しに戻る。だから嫌なんだこいつ…

 

「砕蜂わるい、先に行って説明してきてくれねぇか」

 

「ですが維助様!このような者共は無視してよろしいかと…!」っと砕蜂は砕蜂で熱くなっている

 

「大丈夫大丈夫、いやこいつらどこまでも着いてくるから…たのむわ」

 

「…」砕蜂はハゲをギロッっと睨むと瞬歩で先に行った。

 

「いいか?前忘れたのか。お前が一方的に暴れて始末書騒ぎになっただろ?てめぇ学ばねぇのか」

 

「始末書がなんだってんだ、戦えるなら何枚でも書いてやるよ」

 

「はぁぁぁ…」ここまで話が通じないやつだとはと俺は顔を手で覆う。

 

「俺は正当な許可ってのはそれなりの価値と訳があると思うんだよ」

 

「はぁ?んだよいきなり」

 

「つまり、正当に総隊長に隊長同士の決闘許可を得てきたらいいって言ってんだ。許可を得てちゃんとした場所を用意してくるんだったら斬り合ってやるよ。話はそれからだ」

 

どうせ無理だろ、なんて思って俺はそのまま立ち去る__だが

 

 

 

 

 

 

「許可する」

 

「はっ…?えっ、総隊長…いまなんと?」

 

俺は呼ばれて一番隊へそしたら、総隊長がそう俺に言った

 

 

 

 

「許可すると言ったのじゃ。更木剣八及び浦原維助の隊首決闘を許可する」

 

「まてまてまて!総隊長!そりゃないって!普通断るだろ!この前の暴れよう覚えてねぇのか?一番隊ボロッボロになったろ!?俺がどれだけ神経すり減らしてあいつを避けてたと思ってんだ!?」

 

「無論。被害を出したら相応の処罰をする」

「んな無茶な!!何を考えているんですか総隊長…!」

 

「大丈夫じゃ、勝ったからと言って剣八になる訳でもない。負けても地位を剥奪することも無い」

 

「そういう問題じゃないって!はぁぁぁ…」

 

っと俺が項垂れてるとポンッと俺の肩に手を置く京楽隊長。

 

「楽しみにしてるよ〜。大丈夫大丈夫、院生の時に僕の斬魄刀切り落としたんだから。戦闘不能にすればいいんだよ?維助君なら大丈夫さ、被害を出さずに終わらせてきなさい」

 

「京楽隊長…あんた楽しんでねぇ?」

 

「いいやぁ?」

そう言った京楽隊長だが笑っている。

 

「はぁ…」

 

 

____________

 

 

「いいか?更木剣八。勝ち負けはしっかり決めよう。ルールを決めるんだ分かったか?」

 

「てめぇ、その話何度目だ」

 

もう3回ぐらいかな?

俺と更木剣八は瀞霊廷端にあるバカ広い荒野で向かい合っている。

 

少し離れた崖上には数十人の隊士。何故か隊長も混じってる

惣右介とギンは暇なんか???

 

そして何故か卯ノ花隊長と京楽隊長、浮竹隊長まで。

 

 

「斬り合ってやるからには条件がある。許可は得てきちゃったからそれはまぁいい。お前は戦いを楽しむだろ?俺はそうでも無い!だから俺にメリットがないわけだ」

「あ?あぁ…」

 

「だから、もし俺が勝ったら1年間の十一番隊の予算の半分を二番隊が貰い受ける」

 

そう言った瞬間十一番隊のやつらからヤジが飛んでくる。

 

「あぁ、いいぜ、いくらでもくれてやる」

 

「隊長!!!」

 

っとハゲが叫ぶ

 

「うるせぇぞ、勝てばいいんだろ」

 

「ふっ、みんな聞いたよな?後でやっぱ無理とかはなしだからな」

 

「あぁ、二言はねぇよ」

 

「よし、じゃールールだが決着がつかないことが一番問題だ。時間は今日の戌の刻(20時)まで、決着つかなかったら終わりな。斬魄刀が折れるか瀕死の状態になったら負け。それでどうだ?ちょうど卯ノ花隊長もいる事だしギリギリまでは大丈夫だろ」

 

「はっ、いいぜそれでとっとと始めようぜ!!」

 

俺の部下が開始の花火を上げる。

 

その瞬間__迷いもなく更木が急接近し俺に向かって刀を振り下ろす。

容赦ないなこいつ。瀕死ってわかってんのか。普通のやつなら今ので真っ二つだぞ。

 

「チッ」

俺が半分刀身を抜いた状態でそれを止めたからか舌打ちをする更木。

 

「さっさと終わらせねぇと明日に響くんでね!仕事が!!」

 

また斬りかかってくる更木。

だが俺は1歩足を下げ身をかがめ___

 

──音を切り裂き誰も見えない刀身が

確かに更木の腹部を切り裂く…

 

 

だが、鮮血が舞うだけで更木は倒れない。

 

「およ、胴体を切り離したはずだったけど…一歩後ろに避けたな」

 

「はっ……やるじゃねぇか。何が瀕死だ?」

 

「その言葉そのまま返すぜ」

 

__________

 

 

「あの子ら決闘って分かってるのかねぇ。浮竹」

 

「はぁ、京楽なんで止めなかったんだ。総隊長に話を通したのお前だろう?」

 

崖の上で斬り合う彼らを見守る観戦者達

 

「だぁーってずっと見たかったんだもん。更木剣八と浦原維助の決闘を…ねぇ?卯ノ花隊長」

 

「はて、どうして私に振るのでしょうか。私は怪我人が出る事には賛成しておりませんよ」

 

「まぁ()()()()()()()()()はそうだよねぇ」

 

含むような言い方に苦笑いをうかべる浮竹。

 

「にしても、維助君もなんだかんだ楽しんでるね。ほら薄ら笑いうかべてるよ」

 

「あの子はいつもああじゃないか?それにしても…ここにまで霊圧のぶつかる振動が響いてくるとは…」

 

剣を交わす度に、音と霊圧同士がぶつかり合うその余波が崖上まで響いていた。

 

耐えきれずに十一番隊隊士の何人かが泡を吹き倒れてるのが見える。

 

「にしても、維助君は全然傷が見当たらないな」

 

「霊圧硬化ってやつかね。霊圧の押し合いもそうだけど、彼は漏れ出る霊圧を自身に纏い鎧のように固めている、不意打ちでもない限りそうそう怪我しないよ。ここ数十年で更に硬度も上がってるらしいしね」

 

「おいおい、それじゃぁ更木剣八は維助君を切れないってことか?」

 

「そうだね。()()()()()()()()__無理だろうね。どうも、維助君も酷いことをする。十一番隊の予算の半分だなんて、それにほら最初に腹部を切ったの、大量の出血を狙ってのことだろうし」

 

指を指す京楽、その瞬間ふらりと更木剣八が地面に倒れた。

腹部が開いた状態で動き回っていたのだ、貧血になってもおかしくは無い。なんなら重症である。

それを狙ってやったと京楽は確信していた

 

「卯ノ花隊長〜!!」っと維助が手を振る

 

「院の時から思っていましたが、彼は面白い方ですね」

 

そう言って駆け寄る卯ノ花隊長をみて京楽は地面に座る

 

「計算高いというか、なんというか。彼は昔から怖いねぇどうも、そうは思わないかい?惣右介くん」

 

じっと決闘を見ていた惣右介に話をふる京楽

 

「はは、そうですね。十一番隊の牽制にもなり、予算も手に入る。はは彼は怖いより、面白いと僕は思いますけどね。」

 

ぺこりと頭を下げて踵を返す藍染とギン。

 

「どうも、これでまた維助君の()()()()()()()()()()()()()()ね…」

 

笠を深くかぶり立ち上がる京楽

十一番隊が崖から降りて駆け寄るのを横目にその場を去った__



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入隊の話

 

「うはは、本当に予算が上乗せされてる」

 

俺は、Excel(エクセル)もどきで予算の数字を見てテンションが上がっていた。

 

「維助様!あのような者共無視すれば宜しかったのに…!」

っと、怒ってる砕蜂に振り返る

 

「無視しても着いてくんだって、あいつがいつの間にか隊長になってた頃から絡まれてただろ?避け続けてるって言っても限度があった、そろそろ何とかしないとな〜とは思ってたんだけど。まさか総隊長が決闘を許可するなんてなぁ〜まぁ俺は金が手に入ってうはうはだし」

 

「それでも維助様「失礼します!!」何用だ」

 

隊首室に現れた部下。

「はい、二番隊隊舎の門の前で十一番隊の隊士が暴れていまして…浦原維助をだせ!と…」

 

「はぁ…何用かねぇ…更木剣八はまだ卯ノ花隊長のとこで療養中&監視で出れないはずだし…俺は用ないんだけど」

 

「私が行ってきましょうか」

 

「いや、いいよ。俺が行く」

俺は適当に羽織を肩にかけて立ち上がる。

 

全く、敵討ち(かたきうち)かなにかか?

 

門の方に行くとギャーギャーと騒ぐ声が聞こえる

 

「いいからだせ!浦原維助をよオォォ!!」

 

「なりません。勝手に入らないでください」

っと冷静な俺の部下の声。

 

この声__

 

「あぁ、やっぱりハゲか。」

 

「…あ”?」

ビキッと、血管が切れる音が聞こえそうなほど青筋を立てた顔がこちらに向けられる。

暴れてるのはハゲで、俺の部下に抑えられ、その後ろにはオカッパ黒髪頭が

「君は?」

 

「僕は綾瀬川弓親は第五席。うちの一角がどうしてもって言うからついてきたのさ」

 

「ふぅーん…とりあえず落ち着きなよ。なに?仇討ち?」

 

部下が手を離すと、俺の方を真っ直ぐみるハゲ

 

「ちげぇよ、そういうんはうちの隊長が望むことでもねぇし。男同士の正当な決闘だ、文句言うつもりもねぇ」

 

へぇ、意外だ。よくも隊長を!!みたいな感じで襲ってくると思ったんだけど。

 

すると、バッっと頭を下げたハゲに驚く

 

「見た目と霊圧で判断して雑魚なんて言ってすんませんした浦原隊長。それを謝りに来たんだ。実際あんたは講師をしてる時から知ってて強い事も分かってた。分かってたのにうちの隊長よりは弱い、俺より弱いだなんて勝手に想像してたんだ。だから、あの決闘を見て実感した、実力も隠してた霊圧も何一つ敵わねぇって。」

 

顔を上げたハゲ、なんというか真っ直ぐと言うか…

俺ですら忘れてたのにこいつは気にしてたらしい。

 

「いーよいーよ、別に。案外真面目だねぇ〜君」

 

しばらく軽く話して帰って行った2人。

十一番隊は更木がいたから徹底的に避けてたけど、案外ちゃんとしてるんだな。

 

──────────

 

「卒業おめでとう!いやぁ嬉しいよ」

 

「ありがとうございます!先生!!」

 

この度桃達の学年が卒業式を迎えた。

 

「いやぁ…俺入隊試験落ちるかも…」っと不安そうにしてた恋次も、2次試験そして最終まで無事に合格してちゃんと卒業できた。

 

特に特進学級の中でも、特に桃、恋次、イヅルは放課後も勉強教えてとか、鍛錬をとやる気満々だったので俺も気にかけていたのだ。

うんうん、おめでとう!

 

「入隊は3人とも惣右介の所だっけ?」

 

「はい!私はずっと憧れてて…!浦原先生の所も迷ったんですけど…!」

 

「いーんだよ気を使うなって」

って頭を撫でると本当ですよ!って笑う桃。

 

「俺は隠密かっけーって思ってたんスけど。二番隊は倍率高すぎて落ちちゃいました。」

って頬をかく恋次。

 

「まぁ、教え子だからって贔屓(ひいき)には出来ねぇからなぁ、そういうんは部下に任せてるんだ、悪いな」

 

「…それに阿散井くんは隠密には向いていないと思う」っと呟くイヅルに、なんだと!っとキレる恋次。

「まぁまぁ、異動もできるからねぇ。とりあえず惣右介の所でもまれてきなさいな」

 

それにしても惣右介が直々に生徒を隊に引き入れるなんて、珍しい事もあるもんだ。ここ数年で初めてじゃないか?

 

────────

 

「ルキアは十三番隊の浮竹隊長の所だっけ?」

 

「はい、浦原先生。」

朽木家の養子となったルキア。

ここ数年気にかけてはいたけど、クラスの友人関係や周りの視線が少し痛かったようだ。

まぁ俺は貴族生まれ貴族育ちってのもあるから慣れてるもんだけど、ルキアからしたら周りの目が冷たくなってることに敏感で対応の差なんかも違和感を感じるだろうな。

 

流魂街出身の自分ならこういう対応をされただろうか…なんて。

 

ルキアの頭を撫でると首を傾げる

「まぁ、大丈夫さ俺は話したことないけど、十三番隊副隊長はいいやつだって聞くし」

弟と一心からだけどな。

「浮竹隊長も優しくていい人だから安心しな」

「はい…」

 

「どう、白哉坊ちゃんはお前の兄をやれてるか?」

 

「えぇ、このような私を気にかけてくださいます」

 

「そうか、ならいいんだけど。白哉坊ちゃん口下手な所あるからさぁ〜」

 

「誰が口下手か、師匠」

っと後ろから声が聞こえた。

 

「やべ」

そこには白哉坊ちゃんが冷たい目をして立っていた

 

「あれほど坊ちゃん呼びは__」

 

「わかった!わかったってごめん!」

小言が始まる前に手を合わせて謝ると小さくため息を吐かれた

 

「そ、そういえば浦原先生。あの十一番隊と決闘をしたと耳にしたのですが、お怪我はないのですか?」

空気を変えようとしたルキアの話題。

「んでそんな情報入ったんだ…、ないよ怪我なんて」

なんで卒業生のルキアにそんな話入ったんだ?まじで疑問なんだが

 

「それは、兄様が…」

 

「えっ、お前見に来てなかったのに?」

 

俺はついつい白哉坊ちゃんを見てしまう

 

「見に行く必要はあるまい。勝敗は既に決まっているようなものだった、師匠が負けるはずなどないのだから」

 

っとキッパリ言い放つ白哉坊ちゃん。

 

「はぁ、信頼というかプレッシャーというか…まぁいいや。怪我もなしで普通に勝てたよ。予算の半分もゲットしたし」

 

予算…?っと首を傾げたルキア。まぁ汚い話だから黙っておこ

 

その後入隊式も終えて無事に教え子達は護廷十三隊入りを果たした。

 

「こうして話すのも久しぶりだな惣右介。」

 

「いつもギンがついてまわっていたからね」

 

「そういうギンは?」

 

「あの子はもう隊長だ、僕にいつも付いて回る事など出来はしないさ」

 

っとお猪口を傾ける惣右介。

久しぶりに俺の贔屓(ひいき)にしてる個室居酒屋で呑んでいるのだ。

もちろん盗聴防止の機械は取り付け済み。

 

「なぁ惣右介、なんであの3人をお前(みずか)ら引き入れたんだ?」

 

「やっぱりそこに突っかってくると思ったよ」

 

「いや、まぁ別に反対してる訳でもないけどただただ疑問」

 

使()()()そう思ったからさ」

 

「ふぅーん」

 

「おや、怒ると思ったんだが」と、こちらを見る惣右介。

惣右介がなにか企んでるのは知ってるし、それに巻き込まれようとしてる桃達だと、察しはついたけど。

 

「もうあの子らは卒業して生徒じゃない。もう立派な死神__一人前さ、俺が首を突っ込むことじゃない。自分の身は自分で守らなきゃな」

 

「へぇ、1人前だった浦原喜助と四楓院夜一を気にかけていた君は他の人には冷たいんだね」

 

「それはそれ、これはこれ。弟と親友を思うのは当然だろう?もちろん桃達の心配を全くしてないわけじゃないさ。惣右介が何をしようとしてるのか知らんけど、桃達はもう俺が気遣う必要は無くなったってだけ。死神になる生徒をいちいち気にかけてたら俺がもたん」

 

「やはり君は君だったな、心の底では他人なんてどうでもいいだなんて考えているんだろう?」

 

「俺をなんだと思ってんだ…そんなことねぇよ、ちゃんと部下は思ってるし。ただ優先順位があるだけだ」

俺をそんな冷血なやつだと思わないで欲しいんだが?

 

「ふっ…まぁいいさ、君には頼みたいことがあってね」

 

「なに?またモニター作れって?あれも()()貴族さんの目を盗んで__「いやちがうさ、今回は監視用のものじゃない」」

 

スっ__っと惣右介の目が細められた

 

 

「大気中の霊子を収束させ__刀に纏う」

 

「まて…それは…」

嘘だろ?これは阿近と喜助しか__。

 

「実に面白いものを作る。君の作った霊刀(れいとう)僕にくれないか」

 

「嘘だろ__」

 



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頭を抱えた話

 

俺は自室に入るなり頭を抱えた

 

「惣右介ぇえ…」

 

あいつ、本当俺の卍解といい霊刀といい…!どっからその情報を手に入れてんだ!

マジでストーカーじゃないかって疑うわ…

 

_________

少し遡り__

 

 

「いやいや、霊刀はあれはまだ実験段階で__」

 

「あぁ、完成したらでいい。完成までの費用はこちらが持とう。」

 

「いや、でもあれ相当危険だし__」

 

()()()()()()()()()()()()()()作っておいて、何を今更…?それに今も破壊しようとせずに試作品を作り続けているじゃないか」

 

「はぁ…」

図星をつかれて俺は机に伏せった

 

「死神にも有効打になるあの刀。欲しい輩が多いだろう?それに作った表向きの理由として流魂街の住民に__「まて!なんでそれを知ってる?」」

 

そこまで知ってるなんて流石に__っと思ったところでハッとして顔を上げる。

 

もしかして___

 

「お前!大霊書回廊(だいれいしょかいろう)にはいったな!?」

 

「ご名答。尸魂界の全ての事象・情報が強制集積される地下議事堂。君の試作品から完成品までの制作資料全て見させてもらったよ、実に興味深い」

 

俺は深くため息を吐く。

俺の資料に書いた流魂街の住民の為にって書いた企画資料も読んだわけね。だから理由も、霊刀のことも詳しく知ってた…と。

マジでバレたらやばいのによくやるわ…

 

 

「恐ろしい技術だ、本当に__。君の考えた設計図を元に作ってみたんだが失敗ばかりで成功品はひとつも作ることが出来なかった。」

 

「ふっ、そりゃ絵の書き方の本をみたって芸術家のように描けないのと一緒で設計図があっても技術がない。」

 

「そうだね、だから僕は君の技術をかっている。君のその創造欲を満たすために僕が手伝ってあげよう。」

 

__で、何も言えなくなり冒頭に戻る。

 

いやその通りなんだよなぁ…企画書作って見たけど、どう考えても四十六室共が喜ぶようなものじゃないし…。

それはもうとっくの昔から思ってたけど、俺は作ってみたい完成させたいという気持ちでいっぱいだった…それを惣右介に見抜かれたんだ。

 

作る__か。いやでも流石に危険なものを…直接人に被害をもたらすものを惣右介に渡すのはちょっと__。

今まではスプーンとかメガネとかモニターとかだったからまだ日用品じゃん??(表向きは)

 

武器はなぁァ…

 

とりあえず保留にするとは言ってきたはいいものの…。

よし、作ってから考えよう。…一応こちらで制御できるように設定するか…。

 

__________

 

また数年が経った

 

「入隊おめでとうー!冬獅郎!」

 

「…ありがとうございます、浦原先…浦原隊長」

 

っと身長はあまり伸びていない冬獅郎の頭を撫で回す。

ブスッとしながら俺の手を払う冬獅郎。

いやはや、あっという間に卒業してきやがった。

 

俺の予想通り始解をすぐに習得し、なんと最近は卍解を習得したというのだ。才能だなぁ…

冬獅郎は俺が講義に来ると違う学年の担当だったとしてもどこからかその話を聞き付けて待ち伏せして毎回のように稽古を頼んできた。

やる気があって大変よろしい!

 

そうしてその実力があるから10番隊の席官として入隊する事になった。

 

「おー!冬獅郎!お前が来てくれて嬉しいぜぇ」

っと冬獅郎を高い高いする一心。

 

もちろん二番隊なら大歓迎とも言ったわけだけど、

 

「俺は隠密には向いていない」

っと言うことで断られてしまった。残念

 

桃達も惣右介のところで実力を上げて席官になっているし。

 

_________

 

「ない!ないないない…!ない!!!!」

 

「い、維助様?」

俺は部屋中を漁りまくり部屋はぐちゃぐちゃに。

 

俺の声を聞いてか砕蜂が駆けつけてきた。

 

「こ、ここに置いた刀知らないか?なんか、青い柄の…」

 

「青い柄…いいえ存じておりません」

っと首を横に振る

 

たしかに一昨日までここの壁に立てかけてあって__

隊首室を勝手に入る奴はいないはず。砕蜂も嘘つくようなやつじゃないし…。

 

しかも霊刀だけ…?

そう…一昨日脱走者の捕縛任務で離れてて。今日戻ってきたら…無くなっていたのだ。

 

すると砕蜂が口を開いた

「あの…昨夜維助様どうして突然戻ってらしたのですか??」

 

「えっ?」

その言葉に振り向く。いや昨日は_

 

「昨日()()()()()()()すぐに出ていってしまったので、なにか任務でのお忘れ物ならこの砕蜂に任せてくだされば宜しかったのに」

 

昨日戻ってきてなどいない…。まさか…まさか!

 

「ちょっとごめんな砕蜂!」

俺は誰にも聞こえないであろう場所に向かい電話をかける

 

プルルルル

 

プルルルル

 

”『はい、なにかな維助君』”

 

っと優しい声__だが

 

「てめぇ…惣右介俺の霊刀取ったろ」

 

”『さて、分からないな…僕にそんなこと言われても…どこかになくしたんじゃないのかい?』”

 

「てめぇしらばっくれるのか?はぁ…お前。斬魄刀の能力使って俺に見せ掛けただろ?わざと俺に分かるようなやり方しやがって…」

 

”『ふっ。仕方ないさ、君は僕にくれる気はないのだろう?それは僕が悪用し、その道具が君のものだと分かったら()()()()()()()()』”

 

「…だから盗んであげたって?」

 

”『ふふ、そうしてくれば君は動きやすい。盗まれたのだから仕方ない…ってね。』”

 

「…」

”『大丈夫さ、少し性能を確認したら返してあげよう』”

 

そう言って電話が切られた。

 

はァァァ…

 

 



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志波一心にとっての師範と消えた霊刀の話

 

俺は志波一心。

 

十番隊の末席に入隊した。

院の頃から始解が出来たということで人目置かれていて。

 

「一心はもう席官になれるなぁ!それだけ実力あるんだからいけるだろ!」

 

「はは!なってやるさ」

 

貴族の名しか見ない連中と違いちゃんとした同期や友人に恵まれてた__

 

そう…恵まれてたんだ。

自惚(うぬぼ)れてた、始解も強くて鬼道もある程度できる。霊力にも自信あるし医療の心得もあるし…いつか上に立てる人間に__なんて…

 

 

「おい、起きろよ…!」

友人が血濡れて倒れる。雨のせいか血がぬかるんだ地面に広がっていく

周りには先輩や__席官までも…

俺らは虚討伐の班に配属されて、虚を倒す予定だった…予定だったのに。

 

「なんで…こんな強えんだよ!」

 

虚はケラケラ笑いながら俺の斬魄刀を避ける。

ようやく隙を狙い腕を切り落とす__はずだった

 

キィン

甲高い音が響いて俺の刀が弾き返される。

 

ドシャッ…っと、ぬかるんだ地面にしりをつく…斬魄刀は飛ばされ後ろの木に刺さった。

ダメだ…だめだ、背中を向けたら死ぬ…

 

死ぬ…??

こんなに__俺は弱かったのか…手も足も出ずに、自分の力を過信して…。

 

 

───あぁ、俺死ぬのか

 

 

 

「待たせたね」

 

 

 

 

 

ザンッっという斬撃音と共に

───空が晴れた

 

 

珍しい髪色の男が俺の方を振り返り

淡い空色の瞳が細められ、男の背後で虚が塵になって消えていく

 

かっこいい…素直にそう思った。

誰も手も足も出ずに傷1つ付けられなかった虚を一刀両断し天をも切り裂いた。

 

俺に手を差し伸べる男。

俺は咄嗟に聞いてしまった。

 

「あんたの…名は?」

キョトンっと首を傾げた男はふっと笑った

 

「俺は浦原__浦原維助」

 

「うらはら…いすけ」

 

 

 

幸い死人はおらず、四番隊で治療を受けた俺ら

俺はあれから1週間検査をされて退院できることになった。

 

「うらはら…いすけ」

忘れぬように口で呟くと。

 

「あら、浦原維助がどうかしましたか?」

っと優しい声で問われた。この人は確か…四番隊隊長の卯ノ花隊長。

 

「いえ…、助けられて…」

 

「あら、そうでしたか…ならば二番隊に行くといいですよ。彼は二番隊第四席ですから」

 

「二番隊…」

二番隊はたしか隠密機動の隊だった…よな?

 

「よし!」

 

「あら、どこに行くのですか?」

 

「弟子入りしてきます!!」

俺は走って二番隊に向かった

 

 

「あらあら…」

っと言う声は聞こえなかった

 

───────────

 

二番隊の門…

 

1歩踏み出した瞬間に首筋に刀が添えられる

 

「一般隊士が何用ですか」

 

「門番か…」

そりゃ情報機密を扱ってる所だ、そりゃいるよな

 

「頼みます、俺は浦原維助に用があって来た」

 

「今浦原四席は不在です。お引き取りください」

 

「お願いします!浦原維助を出してください!」

 

「ですから浦原四席は不在で…」

 

 

「お願いします!!浦原維助をだしてください!!」

 

暴れる俺を羽交い締めにする、だが俺は諦めない─!絶対に弟子入りする!!

って興奮状態になっていると

 

「はーい、解散解散」

っと…声がした、あの時の声。間違いない。

 

隊士をかき分けて来たのはやはりあの男で。

 

 

「んで何用だっけ」

っと俺のことは忘れているようだった。

 

「弟子にしてください!!」

 

「えぇ」

っと、あからさまに嫌そうな顔で後頭部を掻く

 

それから断られても1週間待ち伏せして、その度に

 

「お願いします!弟子にしてください!!」

っと懇願しまくった。

 

ため息を吐いた浦原維助は

 

「分かった。お前が満足するまで付き合ってやるけど、俺は言った通りあんまり時間がない半分は弟が相手すると思うけどそれでいいな?幼い頃から俺と戦ってる弟だから弱くはないよ」

 

っと…ようやく承諾してくれたのだ。

嬉しかった…心の底から

 

「本当ですか!!ありがとうございます師範!!」

 

それからは弟という浦原喜助。彼に俺の癖を直してもらった。

刀が振りやすく軽い力で斬れる形に直して貰いその型を崩さぬように素振りをする。

 

 

 

「俺が教えるのは『受け身』『避け方』『攻撃』『反撃』

全て模擬戦で叩き込む。後は適当に必殺技作ろう」

 

「はい!!」

俺は斬魄刀、対して師範は木刀。

最初は戸惑ったし躊躇した。けれど彼なら大丈夫だろうという何かそういう確信があった。

 

それからは地獄だった、打ち合って打ち合って打ち合って、

殴られ殴られ、吹き飛ばされて

 

身体中が痛かった。胃の中がからになるほどに吐くほどに体力は限界を迎えて次の日もまたその繰り返し。

 

「はい、しんだー」

っと何度目かの宣告。

首筋には木刀が添えられている

 

「もう一度!」

 

「そうこなくちゃ」

本当にその細身のどこから力が出ているのか不思議なぐらいに強かった、型は確かに自己流だけど、それが更に厄介だった。

読めない太刀筋、たまにフェイントも入れてくるし少しでも思考がそれに引っ張られると腹に蹴りが入る。

 

だが続けているうちに受け身からの立て直しが早くなるのを感じる。

あぁ、こうすれば痛くないしすぐに反撃できる。

 

思考を逸らすな、真っ直ぐ敵を___。

剣術の他に白打を学んだ、っと言っても殴り合い蹴り合い。

俺は全然当てられなく逆に俺の顔は痣だらけ

 

「せい!!」

全身全霊を込めた拳もパシッと受け止められたかと思うと、

腕を引っ張られて足を引っかけ腕を捻じ上げられて俺は地面に沈む。

相手の勢いと力を利用して沈める技。俺もできるようになりたいな…

 

 

 

「鬼痛デコピン…!!いいですね師範!かっこよくてわかりやすい!」

 

「だろだろ?」

必殺技を作れと言われて考えて末に、霊圧を一点に収束させ手放つデコピンの技を作った。

不意打ちとして有効で虚を倒すことも出来た。

 

鬼道も浦原喜助から学び、俺は確実に強くなった。

だが過信はしない…俺はまだまだ、そう思うよ

 

あの天を割くような彼のようになりたいと。

 

そういう俺も末席から副隊長、隊長に昇進した。

師範は隊長になっていた。

 

 

 

「死なない為に死ぬほど努力する。」

 

「死なない為に死ぬほど準備する」

 

そう浦原維助と浦原喜助は俺にそう言っていた。

さすがは兄弟だ…って思ったね。

 

特に維助師範は口癖のように言っていた。

 

汗ひとつ流さずにまたいつものように俺をのした師範は口を開く

「死なない為に死なないように努力する。俺が大切な人を守れなかった時、きっと後悔する。あの時俺が__ってな、そんなのは嫌なんだよ」

 

強く木刀を握りしめる師範。

部下からの信頼は高くおちゃらけている時もあるがやる時はやる男。

あぁ、かっこいい。

 

いつも思う、この人の弟子になれて俺は幸せだ。

 

─────────

 

浦原喜助から聞いた話だと、師範は昔からガラクタ集めるのが好きでそれを合体させて動くカラクリを作ったりしてたそうだ。何でもロボット?って物が部屋の中のゴミを自動で片付けてくれるらしい。

 

そんな師範が作った伝令神機。副隊長時代に作ったそのカラクリは目を張るものだった。

どうして触れてるだけなのに中の映像が動くのだろうか…。

 

配られた時は正直扱いに困ったが使い続ければなれるもので今では院でも扱い方を学ぶ講義があるそうだ。

 

 

「隊長は浦原維助隊長の事をどう思ってるんですか?」

 

そう冬獅郎に聞かれた

 

「そりゃ尊敬するすげぇお方だよ。俺は死ぬほど彼に鍛えられて俺は強くなった。これからも強くなれると思う。師範のようになりてぇっていつも思ってるよ。ってあれ!?俺の饅頭は!?」

 

棚にしまっていたはずの饅頭がなく慌ててると

 

「饅頭なんてどうでもいいでしょう?ご馳走様でしたよ」

「お前かよ!!やっぱりな!!」

 

「それより2ヶ月前の鳴木市の担当死神が事故死した件で__先月分の担当死神も死亡しています」

 

「…!」

流石に偶然とは考えにくい。なにか起きている…?

 

縁側から飛び降りると師範が歩いてきた

 

「師範」

 

「ん?どうした慌てて…」

 

「…いいえ、少し出てきます!明後日ぐらいには戻ってきますー!」

っと冬獅郎と乱菊に仕事を押付け師範と別れて現世に向かった。

 

────────

 

「雨の日がやばいのかぁ〜」

 

っと現世の担当死神に呑気に話して安心させる。

 

雨___。

死神自体が標的か、はたまた霊圧に寄せられてるのか

 

試しにっと、抑えてた霊圧を解放する。

 

「ぐぁぁぁ!!!」

 

「っ!」

くそ…!霊圧のデカさに反応したのか?

悲鳴とともに下では無惨に殺された隊士が。

 

いつの間にか真っ黒な虚が俺の前にいた。

穴はふさがっているが霊圧は虚で間違いない

 

ただなんだ…?この妙な感じ…

 

それに__。

っとなにか引っかかる違和感に眉をひそめていると

 

青い刀と俺の斬魄刀が甲高い音を響かせる

 

「……!!!なんだ…その刀!!」

 

青い霊子がグルグルと刀を纏っている。

俺の漏れ出る霊圧を吸収している…?

 

ずくに刀を弾いて距離をとると吸収はされなかった。触れると吸収するのか?

なんだあの刀は…!

 

「それにその鍔…!!!」

 

違和感の正体がわかった。

 

その鍔の形は__師範の斬魄刀と同じ形をしていた

 

─────────────

 

女の子が俺を助けた。

だが弓のようなものを消した彼女に虚は向かっていく

 

「ばつ…なにを!!」

 

まるで誘い込むようにして手を伸ばした彼女に虚は歯を肩に食い込ませ、青い刀を彼女の腕に突き刺した。

その瞬間彼女は

 

「捕まえた」

そう言って虚の脳天を貫く…

 

だが自爆しそうな虚が膨らみ、まずいと思った俺はそれを防ぐ

俺は地面で血濡れになっていた

 

「私は…黒崎真咲…滅却師です」

 

「そうか…滅却師か、はじめてみたなぁ」

 

「ぐっ…」

彼女は刀を腕から抜こうとするが

 

「ばっ、そんな無茶に抜いたら…!」

って思ってると刀がまるで今までそこになかったかのように

 

───消滅した

 

消滅…?いや…?ちがう吸収された…?

でも彼女から何も感じないし…

 

俺はそのまま尸魂界に帰還した。

 

────────

 

「報告は以上です」

 

「あいわかった、無断出撃は罪なれど、即断速攻は隊士の犠牲は最小限に収められた、よって、こたびの隊規違反は不問とする」

 

俺は謎の虚のみの報告をした。

滅却師の事も、師範のにた刀のことも言わなかった。

 

「…」

滅却師の生き残りがいるって本当だったんだな。

 

「さて、礼にでも行ってくるかね」

 

────────

 

 

ぽっかり胸に穴が空いて、それはまるで虚のようになった彼女をみた…白髪の男に抱えられて__

言い争っていると

 

「やめましょう、ここで争ってる時間は無い」

 

懐かしい声がした

 

「あんた…」

だいぶ老けているがあの髪と雰囲気は__。

「話は後ッスよ志波サン」

 

ぐちゃぐちゃと長ったらしい説明がされた。

 

虚化とかよくわかんねぇ…!

 

特殊義骸に入れば死神と人間の中間の存在になれ、彼女の相反するものになる

 

半分以上頭に入らなかったが。

つまりは___

「俺が傍でずっと守ってればいいんだろ?やるよ!やるってんだ!」

 

「未練は…ないんスね?」

 

「未練ないわけないだろ!タラタラよ!師範を超える夢だってあった、けどそれがなんだってんだ。未練に足を引っ張られ恩人を見殺しにした俺を明日の俺は笑うだろうぜ」

 

─────────

 

「ふへへへ」

なんだかふわふわと笑う彼女。

 

「おふたりの魂魄の結合に成功しました、もう大丈夫ッス」

 

っと浦原が言った。

良かった、良かった───。

 

「あっ、そうだ、あんたの斬魄刀。見せてくれねぇか?」

 

「…なんスか急に」

っと言いつつ始解斬魄刀を渡してもらい受け取る

 

「うーん」

やっぱり似てるけど、違うな。やっぱり浦原喜助の鍔じゃない

 

「なぁ、滅却師って刀を使うのか?」

 

「なんなんスか?本当に…アタシの知る限り弓しか知らないですねぇ」

 

「そうだよなぁ…なんか霊圧を吸い取る…いや霊子を吸い取ったような刀を使ってたんだよ虚が、その性質が滅却師ににててよ」

 

「虚が…?それどんな刀でした?」

 

「刀自体は直刃(すぐは)の平巻の打刀で…鍔は───師範のものと似ていた」

 

「…」

スッっと目を細める浦原に首を傾げる

 

「そうッスか、多分見間違いでしょう、兄サンの刀は乱刃模様ですし」

 

「うーん、そうか、そうだよなぁ」

 

「……その刀はどこに?」

 

「いや、この子の腕に刺さったと思ったら消えちまったんだよ。何も残らずに」

 

「……」

顎に手を当てて考え込む浦原。

 

「まっ、とりあえず今日はここで休んでください。刀の件はアタシが調べておきます」

 

「お、おう」

 

────────

 

「…」

 

2人が寝静まったのを確認して僕 ボクは電話をかけた

 

 

ワンコールで出た__兄

 

”『なんだよ、喜助からなんて珍しいな?』”

 

「兄サン。あの刀…藍染サンにあげたんスか」

 

”『…』”

兄は黙ったままだった

 

「兄サン。今回一心サンは死神じゃなくなりました。そっちでも恐らく事故という形で処理されることでしょう。」

 

”『それどういう事だ?』”

ボクは詳細を話す。

すると兄サンの事情も話してくれた。

 

「って…事です。兄サンの霊刀を持っていた…と、それが消えたと言うんス」

 

”『…消える?消えるだって?そんな機能つけた覚えねぇよ?』”

 

「そうなんスか…藍染サンが改造した可能性も…」

 

”『消えるね…うーん…証拠を残さないため…とか…?』”

 

「あるいは…虚の力と結合した__

 

ため息が電話越しに聞こえた

 

”『わりぃ…俺、やべぇもん作ったかも。』”

「何を今更」

 

今更だ、(ことわり)に干渉するものを作ったりしておいて__。

 

”『喜助。俺最近やべぇんだよ』”

 

「はい?」

 

”『作りたくて…作りたくて仕方ねぇんだ。理に干渉するものも作れる、魂魄に干渉できる物も__俺は__』”

 

「兄サン…いいんス。ボクも似たようなもんスから…」

 

”『今回、盗まれた霊刀、取り返そうとすれば取り返せた…けれど、俺はそうしなかった…きっと俺は藍染よりも黒い。よっぽどどす黒い…俺の機械で、誰かがどうなるのか見たかったんだ___そういう気持ちがあったから取り返さなかった…俺はきっと心の底では藍染に期待してたんだ。だからあいつを止めれないし…お前らを助けられなかった。』”

 

「兄サン。今回一心サンが死神じゃなくなったのは兄サンのせいではなく虚化のせい。でも…次は__」

 

”『あぁ、次は俺が…誰かを殺すかもしれない。

なぁ…喜助、俺はもしかしたら敵になるかもしれない

 

 

 

 

喜助、もしそういうことになれば___』”

 

 

 

 

 

 

「…無理ッスよ…兄さん」

 

切れた伝令神機を持つ手の力が抜ける

 

 

 

 

 

 

 

───もしそういうことがあれば

 

          俺を殺せ喜助




崩玉が危険なものと知っていながら先を見たいという
研究欲が抑えられずに作ってしまった浦原喜助。

「ただ新しい何かを造りたかった
新しい扉を開きたかった」


つくる機械がどれも危ないものだとわかっていながら
己の創造欲を満たすために作ってしまった浦原維助。

「俺の機械で世界がどうなるのか見たかった
誰かがどう使うのかを見たかった」




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浦原維助という男の話

 

 

「あれから110年ぐらい…か?」

 

夜一さんが居なくなってからもうそんな経つのか。

 

夜一さん、尸魂界は変わったよ。

伝令神機械で決済できるようになったんだぜ?ついに

たまにちょっと変な機械作って四十六室に怒られる時もあるけど…

 

喜助から元気だとは聞いてるよ。けど__って俺が突き放しといて何言ってんだかって感じだよな。

 

俺は歴史を作ってるよ、涅にぶつくさ言われてるけど。

あいつらは義骸とか同調剤とかそういう薬系が凄いんだよ。俺は無理。

機械系は任せてもらってるけどな。

 

あ、それで俺が作ったのは

新型伝令神機に虚探知機だろ、記憶置換装置に簡易結界装置、鬼道砲に、

って説明してたら日が暮れるな…

 

俺はあんたの跡を継いで忙しい中頑張ってるよ。

いつかまたここに来ることがあったら驚くぞぉ?

 

なぁ夜一さん。あんたは今__何してるんだろうな

 

 

───────────

───名は浦原維助

 

そこら辺の隊士は

「浦原維助?知らんやつはおらんよ先生の事だろ?」

 

───霊術院特別講師

 

副官は

「維助様は聡明な方だ、あぁ維助様この砕蜂一生ついていきます」

 

───二番隊隊長

隠密機動総司令官

 

 

五番隊副隊長は

「先生?先生はとっても凄い人だよ

伝令神機を作ったんだから、他にも_」

 

───機械技師

 

 

五番隊隊長は

「浦原維助?あぁ、僕の大切な友人さ気さくでいい奴だよ」

 

───交友関係も広い

 

八番隊隊長は

「彼はどうもお酒が強いからねぇ、一度倒れるぐらい呑ませてあげたいな。女の趣味もいいよォ」

 

 

───巨乳好き

 

十番隊隊長は

「俺はあの人に勝てたことがない。尸魂界一の__」

 

 

───剣の達人

 

────────────────

「んで、何書いてんだよ恋次」

 

「うわっ!」

 

「うわじゃねぇよ」

 

一生懸命伝令神機に打ち込んでいるのを後ろから覗き込むと

そこにはびっしりと俺の事について書かれていた。

 

「恋次おまえ…」

 

「いや違うんすよ!!これは…その、実は…頼まれて」

 

「頼まれたァ?誰に」

 

「その… 檜佐木さんに…」

 

「はぁ…察したわ」

 

胡散臭い!?あの浦原維助に迫る

 

「んだよ、このタイトルぶち殺すぞ」

 

「俺に言われても…」

 

瀞霊廷通信、檜佐木が編集している通信簿みたいなやつ。

デジタル(伝令神機)アナログ(冊子)で読める

 

「うれしいっていうか恥ずかしいけど、俺これでも隠密機動なんだぜ?隠密。あんま情報が乗るのはなぁ…」

「何いってんすか…瀞霊廷であんたの名前知らない奴いないですよ」

っと呆れたような目を向けられる。

 

「あ、そうそう、そういえばおめでとう恋次副隊長!ようやくだなぁ」

 

「あざっす!」

 

「桃達が先に副隊長になった時焦ってたもんなぁ」

 

「これも先生と隊長のおかげです!!いやぁ俺いつか先生みたいになりてぇなぁ!剣一つで全てをぶった斬る!かぁぁー!男って感じ!」

 

「それ拳ひとつじゃねぇ…?まぁいいやそれより…ルキアが現世任務になったぞ?連絡しなくていいのか、馴染みだろ?」

 

「ふっ、いいんですよ、帰ってきたら驚かせてやるんで!」

 

「ふっ、そうじゃなきゃなー!ルキア早く帰ってくるといいな。俺白哉坊ちゃんに頼まれてさ、門まで送ってやったんだけど緋真ちゃんが泣いて泣いて…たった1ヶ月なのにな」

 

「朽木隊長の奥さんでしたよね、はは、相変わらずっすねー」

 

 

──現世──

 

春の気持ちいい風が頬を撫でる

真っ白なシーツ

ひらりと桜の花がシーツの上に舞い落ちた

 

「おふくろ、今日もいい天気だぜ」

 

近くのパイプ椅子に座ったオレンジ髪の男

近くの花瓶には新しい花が生けられている

 

「明日入学式なんだ、俺ももう高校生…早いな…ってなんかおじさんみてぇだ。」

ベットの上で眠った女性は固く目を閉ざしているが、ふと笑ったような気もした。

 

「おーい、一護帰るぞ〜」

っと顔をのぞかせた髭親父

 

「んだよ親父。もうちょっと話させてくれよ」

 

「寿司屋予約してんだよ寿司屋!」

 

「あ?珍しいな寿司なんて…回転寿司か?」

バックを手にして立ち上がる一護

 

「んなわけねぇだろ!お前の入学祝いにある()()が無料券をくれたのよ」

 

「あぁ、俺の中学の時もあったな…俺会ったことねぇけど」

 

「遠いとこに住んでんだよ、()()()()()()()()、早くしろよ遊子も夏梨も先車乗ってるぞ。

行ってくるねぇ〜!!真咲ぃいいー!」

 

「早くしろよ!さっきも2時間ぐらいおふくろと話してたろ」

グイグイっと肩を押して扉からどかす一護

 

「あっ、ちょ押すなって!!」

 

パタンッと静かに扉が閉まった___

 

 

「なるほど…強い魄動(はくどう)を感じられる」

 

ふわりと現世に降り立つ死神───名を朽木ルキア

 

───現世編(死神代行編)始動────

 

• ───── ✾ ───── •

「なんだよ、その…伝令神機っての。携帯に似てるけど…なんだすげぇな」

 

「ふん一護のくせにこれの凄さがわかるのか!これは写真が撮れてなんと壁に映像を映す事もできるのだ!!」

 

• ───── ✾ ───── •

 

霊刀…それは貴方の魂と統合した力。少し性能は変わってるようッスけど」

 

「霊刀…それってなんだよ、斬魄刀とはちげぇのかよ」

 

• ───── ✾ ───── •

 

「のう喜助、維助は…今頃どうしてるんじゃろうな」

 

「さて…兄サンの事です上手くやってるでしょう」

 

• ───── ✾ ───── •

 

「はは!御用改である!言ってみたかったんだよなぁ!!脱走者共お縄につきやがれ」

 

「維助様!!流石です!!」

 

「二番隊はバカの集まりだヨ…」

 

• ───── ✾ ───── •

 

「こら、紫流(しりゅう)。白哉様を困らせてはダメよ?」

 

「もう俺そんな歳じゃねぇってもう死神だぜ?」

 

• ───── ✾ ───── •

 

「いいッスか、黒崎サン。浦原維助、彼には気をつけてください。もし出会うことがあれば逃亡一択。決して戦おうとしないように」

 

「浦原…それって…!」

 

「彼は尸魂界一の技術者で剣の達人。

そしてアタシの実の兄ッス」

 

• ───── ✾ ───── •

 

 

「さぁ答えを聞こう浦原維助_私の友人」

 

「俺は_」




次回 死神代行編始動

夜一さんと維助は_?
敵なのか味方なのか__はたまた__。

朽木家の息子_?

黒崎真咲は一体__?

魂に宿った霊刀__?

原作開始


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原作開始
紫流という子供の話


 

───身長152cm

 

生を受けて約17年。死神ではまだまだ成長途中の子供。

 

名は___

 

 

朽木紫流(くちきしりゅう)

 

2年という速さで院を卒業し六番隊に入隊

 

「なぁ、お師匠さん。うちのとーちゃんをアッ!!っと言わせるような物ねぇの?ほらヘビとかびっくり箱とか」

「子供か」

 

っと突っ込むと違ぇ!っとムキになる紫流

 

白哉坊ちゃんと緋真ちゃんの実の息子である。

それはそれは大変だった、緋真ちゃんは身体が弱いためもしかしたら__っとやばい状況にもなったが何とか無事に産まれてくれた紫流。

すくすく育ちルキアも甥っ子が出来たと喜んでいた。

 

そんな紫流は反抗期真っ盛り、白哉坊ちゃんに反抗しまくりで他の隊士にも反抗しまくってる。

 

「あと、お前の師匠じゃねぇのにお師匠さん呼びすんな、浦原隊長だろ?」

 

「いーんだよお師匠さんはお師匠さんで。昔からそう聞いてたからなんか浦原ってしっくり来ねぇんだよ」

 

「なんだよその理屈…あっほら迎えに来たぞ」

 

「ったく、紫流てめぇ朽木隊長を困らせんな。」

やってきたのは恋次で、俺が内緒でメールを送っておいた。

 

恋次は紫流の世話係みたいな感じで口下手の坊ちゃんの代わりに心の内を通訳したり、暴れる紫流を止めたりとかまぁ…苦労してるみたい。

 

「うるせぇ恋次!いいか!俺は次期隊長だぞ!紫流様と呼べ!」

 

「誰が呼ぶか。いいか死神になって席官になったらもう貴族とか関係ねぇ、上は上なんだよ敬語を使え敬語を!!特に先生になんつー口聞いてんだ!」

ポカっ!っと頭を叩く恋次

 

いっってぇえええ!何すんだよ!あっおい!離せ!!ばーか!」

 

「クソガキ!!髪引っ張んな!」

 

米担ぎした恋次と暴れる紫流。

 

「ばいばーい」

 

「世話になりました。先生」

 

一礼して去っていく恋次。

まぁ反抗期過ぎるのは白哉坊ちゃんの口下手が原因なのかも。

白哉坊ちゃんは隊長&当主として忙しくあまり紫流に構ってあげてなかったらしい。

 

「父ちゃんは、俺が入隊しても早く卒業しても当たり前だって言うように褒めてくんねぇんだ。『そうか』の一言だぜ?俺いつか見返してやる」

っと言っていた紫流。

 

まぁ人の家庭にズカズカと土足で入り込む訳にも行かないから見守るしかないんだけど、白哉坊ちゃんは少し言い方考えればなぁ。

 

プルルルルっと電話が鳴って懐から取り出す。

 

ピッ

 

”『あっ、兄サン〜ちょっと仕入れたいものがありまして』”

 

「あー、なに?注文入ったの?」

 

通話先は俺の弟、闇商人みたいな事をし始めて弟ながらちょっとよくわかんないけど兄をこき使うあたりはさすがと言える。

 

”『記換神機と、伝令神機の予備バッテリー。それからソウル*キャンディと__』”

 

「はいはい、分かった。AIロボに送らせるわ。んで伝令神機の予備バッテリーが必要なんだ?伝令神機の充電は霊力だから要らねぇだろ。」

 

”『いやぁちょっと霊力回復中の死神がいましてぇ〜』”

 

「あー、なるほどね。分かったすぐに送らせる」

 

”『兄サン1つお願いが』”

 

「なんだよ」

 

”『朽木ルキア。彼女の伝令神機追尾機能を消してくれませんか?』”

 

「…………お前」

 

”『よろしくお願いしますねー』”

っと言って切られる。

 

霊力の無い死神……伝令神機追尾機能*1を消せだって?

何を考えてるんだ……それにルキアが……?

 

喜助には何か考えがあるのか。俺に訳を話さないなら止められると思ったのか……。

仕方ない、何か問題起きたら俺が対処するか

 

_____________

 

「朽木ルキアが行方不明?」

 

「はっ、四十六室と映像庁*2より。朽木ルキアの消息と連絡が途絶えたとの事で、伝令神機追尾の捜索依頼と隠密機動での捜索を……とのお達しが」

っと部下からの報告を受ける。

 

…………朽木ルキアが行方不明。

死神が補足できなくなるとは……死んだ訳では無いな死んだら死んだで映像庁が死神ひとりに動くことは無い。

急に補足できなくなったから隠密に依頼した……。

 

そして喜助も絡んでいる__。

霊圧遮断型義骸(れいあつしゃだんがぎがい)……か?

霊子を含まない喜助が作った義骸。それなら補足できない理由も分かる。

 

喜助も喜助で説明しない時はしないで察してくれスタンスだからめんどい所あるよなぁ……。

いざ説明すると長いし。

 

つまり喜助はルキアに何かしたから、GPSを切ってしばらく匿えるように何とかしとけって事なんだろうな。

 

「軍団長閣下?」

っと部下の声で思考から現実世界に戻される

 

「あぁ、分かった。その件は俺がやる。指示があるまで待機するように」

 

……喜助。何するか知らんがあまり時間は取れないぞ

 

_____現世____

 

アギャァァァアギャァァァ

 

「ぬわァァァー!!うるせぇ!」

 

叫び声のような悲鳴にバッ!!っと起き上がる一護

 

スパンっ!!っと襖が開くとルキアが手袋のようなもので一護の魂を抜く

 

「一護虚だ!()くぞ」

 

黒崎一護。朽木ルキアにより死神の力を授けられた

死神代行__。

 

夜中の街を死神の姿で走りながら文句を垂れる

 

「大体!うるせぇんだよそれ!んだよその鳴き声!」

 

「虚感知機能だ!虚が出現する前の魄動を感じ取り事前に知らせてくれる機能だ!この機能のおかげでどれほどの死神と魂魄が助かったと思っておる!」

 

「ちげーよそういうん言ってんじゃねぇ!うるせえってんだ!音量!音量何とか出来ねぇのか!」

 

虚を倒した後馬鹿でかい刀を背中に背負う一護は一息ついた

 

「大体、その板どうなってんだ?」

 

「ふふん。凄いであろう?ほら」

ドヤッとでも効果音がつきそうな顔をしたルキアは一護にカメラを向け

 

パシャッ

 

っと写真を撮った

 

「すげえな、写真撮れんのか板で……ってなんか出てきたぞ?」

ウィーンっと音がしたと思えば

画面が浮き上がりそれは紙のような質感になった。

それを慣れたように捲り取り出すルキア

 

「ほれ、こうやって印刷ができるのだ!」

っと写真を手渡したルキア。

高画質の写真でまるで空間をそのまま切り取ったかのようで、

暗いはずなのにフラッシュも炊いていないのに明るく仕上がっていた。

 

「なっ……」

あまりの未来感に驚愕する一護。

一体どうなっているのか…。それに尸魂界ってのはそんなに未来感溢れる世界なのかと少し少年心がドキッと高鳴る。

 

 

「そ、尸魂界ってのはすげぇんだな……あれか?空を飛ぶ車があるのか……?」

 

「車……あの走っている鉄の塊か!いや…ああいう人が乗るようなものはないな。なにかふよふよした箱のようなものが空を飛んでおるぞ、偵察用無人機という名だ!」

 

「箱が空を……???」

?マークが頭に浮かぶ一護。

箱が空を飛ぶとは全然想像がつかない。

 

───翌朝、ルキアは浦原商店に来ていた

 

 

「浦原はおるか」

玄関口を勝手に開けてそう問えば

 

「はぁぁい、いらっしゃい朽木サン」

欠伸をしながら下駄を履く浦原喜助。

 

「……」

ジッっと浦原の顔を見つめるルキア

 

「やはり先生に似ておるな……本当に血縁じゃないのか?」

 

「そうッスよ〜よく間違えられるんスよねぇ〜!苗字も一緒だなんて偶然偶然」

っと言いながら箱を取り出す

 

「ふむ……まぁ血縁者がおるとは聞いたことが…ないな。まぁ私が聞かなかっただけかもしれぬが、あの方の血縁者がこんな貧相な場所で商売しているはずはないしな」

 

「はは、貧相って……その人はどんな方なんです?」

 

「先生はすごいお方だ、隊同士の関わりは無いが面倒を見てもらっておる。」

 

「へぇ、すごい人なんスね」

当然とでも言うようにふふんっと鼻を鳴らす。

 

「それより、注文してたものはまだか」

 

「はいはい、ちょうど昨日届きましたよん」

 

______________

 

また一方その頃。

 

「はぁぁぁ!?紫流が行方不明!?」

 

白哉坊ちゃんが俺のところに来て伝令神機の追跡機能を使って探して欲しいと依頼が来て。

 

「うーん、尸魂界内にいるけどなぁ……でも……ん?」

 

モニターに映し出された位置情報は段々こちらに近寄ってきていて

 

「隊長ー!これ紫流の伝令神機!!」

っと恋次が紫の伝令神機片手に走ってきて俺は頭を抱えた

 

「あいつ、置いてきやがったな……ちょっと待ってろ」

俺は直ぐに阿近に電話をかける

 

”『はい、阿近です』”

 

「隠密機動総司令官権限で、断界通行記録を今すぐ調べろ、名は朽木紫流」

 

”『分かりました、少々お待ちください。おい!因幡(いなば)!すぐに__』”っと電話越しで阿近の指示する声が聞こえる。

 

”『お電話変わりました、因幡です。えー。朽木紫流の断界通行記録が見つかりました。昨日の正午に通行したという記録が残っています。』”

 

断界の専門らしい因幡の話を聞く。

やっぱ俺の想像通り断界通ったらしい

 

「場所は?」

 

 

 

 

”『空座町二丁目の上空です』”

 

 

 

 

 

 

「あんのやんちゃ坊主……!!」

 

*1
持っている死神が何処にいるか感知するいわゆるGPS機能

*2
綱彌代家が取り仕切る監視機関



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逃亡した紫流の話

 

また虚を片付けた時()()()()がして咄嗟に頭を下げると

真上をブゥン!!っと風を斬る音を立てて何かが通り過ぎる。

 

パラパラと自分のオレンジ髪が地面に落ちたのを見て冷や汗が流れる

 

「何すんだ!!てめぇ!」

咄嗟に振り向くと

 

「ありゃ?」っと首を傾げた子供

 

「お前……死覇装!?」

意外と身長が低くて驚くが、キョトンとしたその子供の服は確かに死覇装を着ていた

 

「そーだよ、今更?ってか誰?」

 

「こっちのセリフだ!!!」

 

「うるさ」

っとわざとらしく耳を塞ぐのをみてイラッっとする

 

「なんなんだてめぇはいきなり!名も名乗らずに刀振り回しやがってあぶねぇだろ!」

 

「あん?てめぇ俺の事知らねぇのか!泣く子も黙る俺は護廷十三隊六番隊、次期隊長!!朽木紫流だ!!」

 

「朽木……!?」

 

「はん!やっぱり朽木の名を聞いて怖気付いたか!謝るなら今だぞ!」

 

「んだよ、ルキアの兄弟かなにかかよ、んなら最初からそう言えよ」

頭をかいた一護はため息を吐く

「んでルキアおばさんを呼び捨て……っておい!持ち上げるな! ギャァァー!!

ひょいっと肩に担いで猛スピードで走る。一護に悲鳴を上げる紫流。

 

あっという間に家に着き、

 

「あっもう帰ってきたのかよ」

っと自分の体が起き上がる。

名はコン。改造魂魄で色々事件はあったものの、なんだかんだ住まわせてる住人。

普段はぬいぐるみに入れている。

 

「どひゃぁ!」

ポイッとベッドに下ろすと顎からベッドに落ちた紫流

 

「何しやがる!派手髪野郎!」

 

「おいルキア!お前の知り合いが来たぞ!」

 

スパンっ!っと襖が開きルキアが顔を出すと目を見開く

 

「なっ、紫流?何故ここ(現世)に!」

 

「ルキア叔母さん!んでこんな派手髪の所に……もしかして彼s「断じて違う!」なんだよ」

っとルキアに遮られてつまらそうにした紫流は足を組む

 

「叔母さん……?甥っ子か?」

 

「あぁ、兄様と姉様の息子だ」

 

近親婚……?っと思ったがさすがに口にはしなかった。

 

「んでその甥っ子がなんでこんなとこにいんだよ、そもそもなんでおれに刀振った!」

 

「いやだって珍しい髪を見たら斬りかかりたくなるじゃん」

何を当たり前なというように首を傾げる

「なんねぇよどんな教育してんだ」

っとすかさず突っ込む。

 

「ズラかなって思ってさ」

 

「ちげぇよ地毛だよ地毛!」

グイッと自分の髪を引っ張り見せるが、ふーんっと今度は興味無さそうに鼻を鳴らす

マイペースにも程がある

 

「紫流、そもそもどうしたのだ貴様はまだ現世任務に配属されておらぬだろう」

 

「勝手に来た!」

「馬鹿者!兄様と姉様に心配をかけるな!」

 

「んでだよ!俺だってもう一人前の死神だぞ!それに父ちゃんが俺の心配なんかするかよ」

つーんっとそっぽを向く紫流

 

「いいか、紫流はまだ知らぬかもしれぬが無断で現世に来た場合隠密機動が動く。紫流伝令神機は持ってきたのか?」

 

「持ってくるわけないじゃん追尾機能ついてるから置いてきた」

って言った紫流に顔を真っ青にする

 

「貴様……!本当に違反者になるぞ!兄様にどれだけの__」

 

「みんなして!父ちゃん父ちゃんうるせぇ!俺は俺だ!!俺だって1人でなんでも出来るんだ!それを証明しに来たんだよ!!」

っと怒鳴る紫流に言葉がつっかえたルキア

 

「俺自身を見てくれるのは……お師匠さんだけだ……。みんな迷惑をかけるなとか……。もううんざりなんだよ!!」

 

「……先生が何番隊かわすれたのか紫流」

「っ……お、お師匠は……」

その言葉にハッとする紫流

 

たまにルキアの口から出る先生という言葉。

伝令神機を作ったのも先生だと自慢していた。

話の内容からお師匠と先生というのが同一人物だろう

 

「今戻ればまだ許されるぞ紫流!今すぐ戻るのだ」

「いやだ!戻んないぞ俺は!」

っとまた口論になりそうなところで

 

ふと、春の暖かい風が窓から流れると同時に

「ありゃ、修羅場?」

っと声がした

 

一護は咄嗟に振り返る

いつから?いつから居た__?

気配も感じない、虚のような霊圧も

窓枠に膝を立てて座っている男__

 

バチッっと目が合うと男は目を見開いた

 

「あは、大きくなったな」

っと意味のわからないことを言われて思考が停止する

 

まるで昔から知ってるかのような口ぶり

 

すると、目を細めた男はギンッっと紫流を睨みつけ

紫流は肩を跳ね上がらせる

 

「せ、先生」

ルキアは顔を真っ青にしていて

 

「大丈夫。ルキアのことは知っている尸魂界に報告はしないさ安心しな。今回は紫流を捕まえに来たんだ」

 

「お、お師匠!!俺は帰らねぇぜ!」

 

「何故?」

 

「お、おれは父ちゃんを見返すんだ!1人で虚退治もできる……!

覚悟だってある!死ぬ覚悟で任務を遂行するんだ!!」

 

っと言った瞬間空気が冷たくなった

 

「死ぬ覚悟……?」

 

「そ、そうだぜお師匠!俺は……」

その言葉は続かなかった

 

紫流の首筋に銀の刃

 

「(いつ抜いた……?)」

瞬きをしていないはずなのに、まるで映画のカットのように気づいたら紫流の首筋に斬魄刀が添えられていた

 

「死ぬ覚悟……?俺その言葉大嫌いなんだよね。やる気を表す表現かもしれないけど、死んだら意味ないじゃん。その言葉軽く感じる。死なないために死なないように鍛錬して生きているのにそんな言葉を使ったら……ねぇ?

紫流、戻るよ」

説明がめんどくさくなったのか途中で言葉を濁した男は

斬魄刀を鞘に収め手を差し伸べた

 

 

────が、それを勢いよく払った紫流

 

ポロポロと涙を流す紫流だが、それを乱雑に拭って鼻声で言い放つ

「いやだ!俺は!!戻らねぇ!!!」

 

すると。

「そうか……」

っと低く呟いた男

 

「お、お待ちください先生!!紫流の無礼は私がお詫びします!」

っと紫流を庇うように手を広げたルキア

 

「ルキア叔母さん……」

 

すると、冷たい空気は何処へやら

花が咲きそうな程に二パーっと笑った男

 

「何もしないって〜紫流の覚悟はわかったよ。俺の殺気を感じながらも自分の意思を伝えた……うんうん、大きくなったなぁ!こりゃ白哉坊ちゃんも喜ぶぞ」

 

ポカン……っとする3人とコン

 

かァァァ!っと言ったコンは男に飛び蹴りを食らわす

「あいたぁ!」

「なんなんだテメェ!驚かせやがって!!」

 

っとコンがブチギレる

 

「まぁまぁ、」

足を掴んでコンを軽く抑えると男は紫流の方に向いた

 

「現世任務がしたいんだな?」

「あぁ!俺は現世で虚を退治して父ちゃんを見返してやるんだ!」

 

「わかった、わかったけど内緒で行くのはどうなんだ?」

っというと

 

「うっ…それは……」

 

「人に迷惑をかけたら?それにいきなり人に刀を振るっちゃダメって言っただろ?なんて言うんだっけ」

 

って言ったところで最初から見てたのかよっと、一護は心の中で突っ込む

 

「ごめん……なさい。内緒で出てきて……」

 

そして一護のほうに向くと不服そうな顔をしながらも頭を下げた

 

「いきなり刀を振ってごめんなさい」 っと謝った

 

「あぁ……まぁ怪我してねぇしいいぞ、つーかなんか先生みたいだな」

 

「だから先生だと言っておろう!」

 

 

____________

 

机の上に座った男。

 

「俺の名は浦原維助、よろしく。黒崎一護」

 

「お、おぉう」

 

「とりあえず、紫流がこっちで働く為に色々手続きはやってやる。あと白哉坊ちゃんも説得してやるよ」

 

「本当かお師匠!」

 

「ただ、その代わり」

っとルキアの方にむくと。ルキアは俯いた

 

「……私の事を話せと言うことですね」

こくんっと維助は頷いた

 

ルキアは紫流に死神の力を失ったこと、一護が代行として虚を退治していることを伝えた

 

「死神の力を分ける……?それって違反だろ?」

 

「あぁ……」

っとつぶやくルキアに顔を青くする

 

「……なるほどな、だからか。父ちゃんが最近ピリピリしてるわけだ……んで隠密機動のお師匠は捕まえないのか?」

 

「捕まえない捕まえない、確かにそういう任務は来てるけど俺はしばらく手を出さない……けれどあいつらはせっかちだそのうち追っ手を放つぞルキア」

 

「……分かっております先生」

 

「ならよし、とりあえず紫流の現世滞在の手続きをやってくるわ」

 

「お師匠珍しいよな、現世嫌いなのに直接来るなんて、それに霊圧も気配も感じないし……新しい機械?」

 

「そっ、大正解。霊圧、霊力、気配を感知させない遮断結界機を俺の肉体に纏わせてるんだよ。それなりに制御難しいけどな」

 

 

「んで現世が嫌なんだ?」っと一護が疑問をなげかける

 

「そりゃまぁ、会いたくないやつとか会っちゃいけないやつとかいるからなぁ、ほら俺隠密機動だし!」

 

「その、隠密……なんとかってなんなんだよ」

 

「うーん、言うなれば裏組織?違反者の捕縛投獄監視から暗殺まで、虚退治から死神侵入者までなんでも担当する組織さ。簡単に言うとね」

っと笑う男にどこか下駄帽子に似た何かを感じる。

 

髪色が似てるからだろうか、それとも胡散臭い雰囲気を感じるからだろうか。

 

 

「とりあえず一旦戻るわ、紫流はルキア捜索兼、ルキアの引き継ぎの虚退治って任務担当にしとくからよろしく〜」

 

ふと窓枠に足をかけたと思えばそのまま飛び降りた。

下を覗くも誰もいない

 

「なんだったんだ……つーかお前ここに住むのかよ」

 

「あぁ!住まわせろ!」

 

「嘘だろ__」

一護は頭を抱えた

 

___________________

 

俺は断界内をゆっくり歩く。

 

よりによって紫流の逃げた場所が空座町とは_

喜助が居る場所もたしか空座町だったからまぁ遮断装置をつけてきたのは正解だな。

 

腕から装置を外し懐にしまう。

黒崎一護、一心の息子がいるというのは昔から知っていた。

 

お祝いにと匿名でプレゼントを送ったがきっと一心は俺からだとわかっているだろうな。

 

帰ったら坊ちゃんの説得に手続きに__あぁ、大変だ。

 

その後白哉坊ちゃんを無理やりに説得させて手続きをおわらせた。

 

__________

 

 

”『兄サン町に来てたんスか、穿界門開いたのに何も感じないからおかしいなぁーとは思ってたんスけど……なら会いに来てくれればいいのに』”

 

「仕方ねぇだろ、察知されたら困るだろ俺もお前も。」

 

俺は紫流の補助を頼むために喜助に電話していた。

 

”『朽木サンの息子さんねぇ……話には聞いていましたけどまあ黒崎サン並に霊圧ダダ漏れッスね』”

 

「はは、まぁ発展途上だよな。とりあえず制服用意してやってくれ」

 

”『えっ、学校に通わせる気ッスか?』”

 

「そりゃその方が面白いだろ?」

 

”『……はぁ、分かりました手続きしときます』”

 

「助かる、あと紫流はそこそこ鋭いからお前は会うな、会うなら夜一さんか鉄斎さんを通しな。俺とお前が兄弟だってバレる」

 

”『さすがにダメっスか〜叔母の方は鈍かったんスけどねぇ』”

 

「お前そもそもなんで浦原で商売してんだよ、俺が困るだろ」

 

”『大丈夫ッスよ〜商売相手はきちんと選んでますし』”

 

「まぁ、もう今更か……黒崎一護……ね」

 

”『黒崎サンがどうかしました?』”

 

「……喜助。ルキアになにかしたんだろ」

 

”『そうッスね……』”

 

「……ルキアが罪人として捕まったら俺は規定側に着くと思う。」

 

”『わかってます』”

 

「……ならいい。なるべく時間は稼ぐが……まぁあまり期待はするなよ」

 

”『……はい』”

 

ツーツーつと音を立てて電話は切れる

 

さて、めんどくさい事になるのは確実だな……



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黒崎真咲の話

 

黒崎一護の部屋に居候するのもなれた紫流。

 

「なぁ、一護んで土日何してんだ、どこいってんだ?ガッコーは休みだろ?」

 

ルキアを通じて浦原喜助から制服を貰った紫流が机の上に乗っかる

 

「だから机に座るなつーの。見舞いだよ見舞い」

 

「見舞い……?」

っと首を傾げる

 

「おふくろのだよ。」

 

「おふくろ……母ちゃんいたのかおまえ」

 

「お前デリカシーつーのねぇのか……」

 

「すまん一護……」

っと片手で顔を抑えるルキア。

 

「……おふくろはずっと寝たきりなんだ。」

つと窓の外を見ながらつぶやく一護

 

「俺のせいなんだ」

っと静かに目を閉じた。

 

───────────

 

大好きなおふくろは笑っていて、泣いたところなんか見た事ない。

 

「なぁ真咲。」

 

「大丈夫よ」

 

俺は廊下からリビングを覗く

泣いてはいないけどたまに辛そうな顔をする時がある。

腕を押えていて、それを親父がよく心配そうにしていた。

 

それは段々と酷くなり

 

「っ……!!!」

 

「母ちゃん……?」

酷い雨の日だった。毎日毎日雨が降って

おふくろは腕を押えて蹲る

 

傘がひらりと地面落ちてしまって頑張って拾って立てたのを覚えている

 

「……大丈夫よなんでもないわ」

そうやって作ったように笑うんだ。

 

どうしてなのかは分からないおふくろにも親父にも聞いてもなんでもないって言うだけ。

 

聞いたらダメなんだと幼いながらにそう思った。

 

その日増水した川の近くで女の子がフラフラと歩いていて

 

「あぶない!!」

柵を乗り越えて落ちそうな女の子に向かって走る

 

「ダメよ一護……!!」

母親の声が聞こえた瞬間___

 

 

 

───鬼痛(おにいた)   

 

          デコピン

 

「俺の宝もんに気安くさわるな」

 

そう、確かに聞こえた気がした。

 

それから俺の記憶は無い。

気づいたら母親は集中治療室で寝ていて。泣きじゃくる俺を親父が抱きしめてたのを思い出す。

 

何がどうなったのかは分からない、ただ俺のせいだということは分かる

 

 

──────────────

 

「……真咲。夏梨も遊子もでかくなったぞ」

花瓶の水を入れ替える一心

 

ベッドの上には真咲が寝ていた。

 

「俺がもう少し早く来れればなぁ」

なんて、弱音を吐くきっと真咲が起きてたらそんな事ないって説教されるんだろうな

 

「俺もまだまだだな、数十年鈍ってたとはいえ威力を出し切れなかった……逃がしちまうし。はっ、師範に怒られるな」

 

真咲の腕に刺さって消えた刀。いや吸収された__が正しいな。

浦原喜助の話によるとあれは霊刀と言って霊子を吸い取り纏う刀だそうだ。夏梨や遊子が産まれてしばらくしてから真咲は腕を気にするようになった。

 

「なにかが暴れてる。何かは分からないけど」って言っていたのを覚えている。

 

俺は特殊な義骸に入っているせいか何も感じないし、霊すら見えない。

それがもどかしかった

 

6月17日__

 

その日は雨でもうすぐで一護と真咲が帰ってくるなんて思ってたら。

ドクンッっと胸がなったんだ。

 

同時にキィンンンっと頭に響くような耳鳴りが

 

「霊力……が、戻っている?」

おかしい。霊力は戻らなはずなのに自分自身の霊力が戻っていて服が死覇装に変わっていく。義骸はいつの間にか脱げていて地面に転がる

 

───|死なない為に死なせないために   

 

          力を使え

 

そう、師匠の声を思い出す。

嫌な予感、そうだ虫の知らせとでも言うのだろうか。

感じるのは真咲と一護、と虚の霊圧

 

純血の滅却師である真咲、虚に負けるはずは無い。

のに__嫌な予感がした。

 

「真咲……!!一護!!」

何故かなんて二の次でそんな事より虚と2人の霊圧の元に走った。

 

たどり着いた時真咲は動揺していて、虚が腕を振り上げた

 

──触んな

 

触んなよ

 

死なない為に死なせない為に__。

もう誰も傷つけてたまるかってんだ

 

───鬼痛(おにいた)   

 

          デコピン

 

「俺の宝もんに気安くさわるな」

 

 

 

デコピンの威力は落ちていて、やはりブランクがあると心の底でため息をはいた。

いつもなら一瞬で木っ端微塵にするのだが1部を吹き飛ばしただけで虚は生きていた

 

「くそ……死神かぁ!!」

 

「まてごら!!」

 

「うっ……」

 

逃げようとした虚を追いかけようとした所真咲が唸りその場に蹲った

すぐに真咲に駆け寄ると虚は逃げ失せた。

 

「真咲!大丈夫か、真咲!!」

 

「っ……腕が……なにか……うっ!!!」

 

すると真咲の腕から青白い光が溢れ出る

 

「霊力……??」

それは霊子の塊のようで、なぜ腕から……っと思ったが思い当たるのは霊刀しかない。

 

するとまるで水が流れるように地面に流れていく霊子の塊

その先は……

 

「一護!」

一護は気絶して倒れていてすぐに抱きあげようとするとその霊力の塊が一護の中に消えていく。

 

「なんなんだ一体……!!」

一護を抱き上げた俺は塊を水を払うように触ろうとすると

 

「なっ……!」

霊力が吸い取られて、死覇装から死装束(しにしょうぞく)にかわり、死神の力が失われていく。

霊子を吸い取るとは聞いていたが人の霊力まで吸い取るとは……。

 

 

 

すぐに2人を家に戻し、真咲の虚が呼び起こされる前に義骸に入った。

勝手に脱げた時は心臓が止まるかと思ったが繋がりは消えていなく真咲にも一護にも何も影響は見受けられない。

 

すぐに浦原を呼んで説明すると首を傾げた

 

「うーん……霊刀が溶けてお子さんに流れ込んだ……。それに勝手に義骸が脱げるとは……」

しばらくブツブツ言っていた浦原

 

「まぁ見た感じ何も影響はなさそうッスけど。奥サンの霊刀の気配はまだ残ってます半分……いやそれ以上がお子サンに移ったようッスね__これは仮説なんスけど

 

志波サン、貴方昔戦った時霊力を吸い取られたって言いましたよね」

 

「あ、あぁ、あの変な真っ黒な虚と戦った時に」

 

「……もしかしたら霊刀がその時吸収した霊力をあなたに戻し、奥サンの危機を知らせ、そのおかげで貴方は一時的に死神に戻れた__。そしてその後何らかの理由で奥サンから霊刀が自分の意思でお子サンに移った……って考えるとどうッスかね」

 

「自分の意思でって……なんだよそれ。生き物かなにかなのか?」

 

っと問いただすと首を横に振る

 

「いや、そんなはずはないッス。ただアタシが知っているものとは性能が変わっている可能性もあるんでまぁなんとも__

でも意思があるからこそ住処であった奥サンの危機を察知し貴方に霊力を戻し助けさせた__。それはもう意思があると結論づけてもいいと思いますけどね」

「…………一護は大丈夫なのか?」

ジッっと一護を見つめる浦原

 

「魂魄に影響はなさそうッスね。ただ奥サンの魂魄はとても不安定、きっと貴方の義骸が脱げた事による魂魄の結合が不安定になったせいかもしれません。それか霊刀が急に抜けたから。もしくはどちらも」

魂魄が回復するまでしばらく時間がかかると言われて。

 

一護はすぐに目覚めたが真咲は寝たきりだった。

そして現在に至る

 

──────────────

 

「奇跡、アタシはそういう言葉好きじゃないんスけどね」

 

奇跡としか言えなかった。

義骸が脱げても霊子の紐付けが切れなかったことも。

刀から一心サンの死神の力が戻った事も。

 

 

意思がある霊刀。一心サンに真咲サンの危機を知らせ霊刀を戻し助けさせた__。そして何故か霊刀は2つに別れて息子サンに入り込んだ……。

 

調べてしまいたい今すぐに解明してしまいたい研究欲が心の中からじわじわと湧き上がってくるが抑える

 

さすがに人をバラす訳にはいかない

 

もし仮説を立てるとすれば

───もしかしたら霊刀は虚の力を抑える能力がある。

だから義骸が脱げてもリンクは切れることなくお二人の力を抑えてた?

もし霊刀にそういう力があるとすれば……

 

 

 

 

求めていたものと違うものが出来上がるのは歴史上稀にあることだが、これは……

 

「…………兄サン、なんていうものを作ったんスか」

 

もし自分の仮説があっているとすれば__

薬にも毒にもなる危険な___

 

 

 

 







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朽木ルキアの話と修行開始の話

 

「浦原維助、六番隊朽木紫流の現世滞在を承認したと聞いたが誠か」

 

「はい、朽木紫流を空座町重霊地(じゅうれいち)に配属させました」

 

「それは何故か、朽木ルキアの捜索と関係が?」

 

「そりゃありますよ、朽木紫流は将来優秀な死神になりますし、朽木ルキアとも血縁です、霊圧の感知や捜索なら知り尽くした血縁者が有効だと俺が判断しました、経験を積ませるついでに捜索。ほら一石二鳥でしょう?」

 

隊首会、俺は真ん中に立って総隊長に言い訳をする。

 

「隠密機動を動かせばすぐなのではないか?」

 

「言ったでしょう?経験を積ませるのも大切だって、優秀なものばかりに頼るといざその柱がいなくなった時バラバラに崩れ落ちる__。いい経験になると思ったんですけどね。大丈夫もし大事になったら隠密と偵察ドローンを動かしますよ」

 

「……あいわかった、この件は主に一任する」

 

「ありがとうございます、総隊長」

 

「ふん、甘いネ。重喎違反者(じゅうかいはんしゃ)などとっとと捕まえてしまえばいいのだヨ。席官にすらなってもいない子供にそんな事出来ると思ってるのかネ。だいたい君の管理下である伝令神機の追尾機能が動作しないなんて怪しいネ」

 

っと涅がグチグチ言い始める

 

「だからそう焦る必要は無いだろう?逃げられるものでもないし、逃走脱走違反者は俺の隊の仕事だ指図しないで欲しいな。それに六番隊からは許可を正式に得ている、死んだら死んだで朽木紫流の能力不足。だが俺はやれると判断した。それに伝令神機の追尾機能は伝令神機が壊れたり落としたりして中の充電が切れたら機能しなくなる。

あんたのような人が少し考えれば分かることをいちいち聞いてくるなんて……疲れているのか?」

 

っと言うと顔を真っ赤にして怒り出す

 

「まぁまぁ、喧嘩しなさんな。僕も維助君には賛成だね、優秀な逸材に任せるのもいいけど、こういう機会はほとんどない。精神面や実力の向上にも繋がる。いいと思うけどねぇ」

っと笠を上げた京楽隊長が笑う

 

ふんっと、そっぽを向いた涅

隊首会が終わって解散になり、数週間は隠密機動を待機させる状態が続いたものの__まぁ、そうそう上手くいくはずはなく

 

 

────────────────

 

「浦原維助、お主の功績は瀞霊廷内で群を抜いておる頭もキレるし我々も信用を置いている」

 

「はい、光栄です」

 

ここは

 

──中央四十六室──

 

「だがしかし、重喎違反者(じゅうかいはんしゃ)を泳がせておくのは何か理由が?山本元柳斎重國から話は聞いておるが、流石に長すぎではないか」

 

「すみませんねぇ、少々手間取っているようで」

 

「やはり朽木家といえど子供に任せること自体……」っと不満の声が聞こえてくる。

 

 

「浦原維助、偵察用小型無人機を導入せよ。朽木紫流の現世虚殲滅は続行してよし、ただし朽木ルキアの捜索については隠密機動を始動させよ」

 

「はい。わかりました」

 

しかたない……か、これでも随分伸ばせた方だし。

 

前に作ったハエ型ドローンと小型ドローンを導入し、すぐの事

 

「なに?空座町重霊地で多数の虚出現と大虚(メノスグランデ)が?そして撃退を確認した__と。誰だ?」

 

「はっ、こちらです」

 

モニターに映し出されたのはオレンジ髪 の__黒崎一護。

そして朽木ルキアが映し出されていた。

 

なんと間の悪い……いや、どうしてこのタイミングで大虚が……?

しかたない__か。

 

すぐに隊首会が開かれた

 

「隠密機動より中央四十六室に連絡が入った、行方不明及び重喎違反者(じゅうかいはんしゃ)朽木ルキアの消息を確認。また大虚に太刀傷を負わせ虚圏に帰らせた所属不明の死神、朽木ルキアと関連があるとみて良い

 

よって隊長格を向かわせる、六番隊朽木白哉及び副隊長阿散井恋次は現地に向かってもらう。浦原維助は別命があるまで待機せよ」

 

 

待機_ねぇ。

 

現世へ続く穿界門の前に立つ2人に声をかけた俺

 

「白哉坊ちゃん。」

 

「……師匠」

 

「オレンジ髪の男、もし接敵したら生かしてあげて欲しい」

 

「なっ。どういうことっすか!」っと恋次がくってかかる

 

「何故でしょうか私めには訳を理解できませぬ」

 

「俺が見込んだから……じゃダメか?」

 

「…………」

 

「どういうことですか先生!それじゃ……」

「違反にはならない、そのオレンジ髪男の死神の力がルキアのものだった場合それを没収すればいいだけだ。相手はおそらく人間、死神が人間に手出しするのは基本ご法度。殺さなくてもいいはずだ」

 

「………………わかりました」

 

「なっ、隊長!!」

 

「行くぞ恋次。」

 

恋次は渋々と言った様子で穿界門をくぐった。

 

「……んでいいのか惣右介」

 

「ああ」

木の影から出てきた惣右介はニヤリと笑った

 

「僕が言うと怪しまれるからね。」

 

「ったく、だからって俺を使うなよ」

 

「君も同じ意見だったのだろう?()()を殺すには勿体ないってね」

 

「……そうだな」

黒崎一護、滅却師と死神とのハーフ。

一心の霊力を受け継いで……いやそれ以上の霊圧の持ち主

そして何より___霊刀の気配

 

惣右介は気づいてないかもだけど俺は会った時に気づいた、あれは俺が作って惣右介に盗まれた霊刀。

どうしてあの男の中にあるのかは分からない。

喜助に聞いてもそうなんスか?って言うだけ。

 

 

「……」

やっぱり俺も惣右介と変わらないな

 

惣右介が四十六室を皆殺しにしたと知ったのはすぐ後だった。

 

───────────────────

ちょっとここら辺は微原作沿い

___________________

 

 

俺は弱い……

白い羽織を着た男__斬魄刀を切り落とされた、見えなかった_

そしてまた__護られた

 

ルキアが消えて雨が降ってくる。

 

あぁ、弱い……おれは……おれは……

 

 

 

「あんまり動くと死にますよん」

 

起きた時、身体中が悲鳴をあげた

俺は知らない和室にいて男は襖から入ってきていた。

 

やっぱ下駄帽子。どこかあの男に似ている気がした

 

 

「あんたが……俺を助けたのか」

 

「おや?心外ッスねぇ、その言い方。それにあなたはどっちにしろ死ななかったッスよ。霊力は奪われてますけど。」

 

「どういう事だ……?」

 

「急所を綺麗に外されている、あの人がそんなヘマをするわけは無い。」

 

頭をよぎったのはあの黒髪の羽織を着た男。

助けられた……?

 

「まぁあの人はそんな人じゃないんで第三者から頼まれた……って感じでしょうね」

下駄帽子はまるで全てを知っているように含んだような言い方をする。

 

「それに、ここに直接あなたを運んだのは紫流サンッス」

 

「紫流が?そうだ……!あいつは今どこに?あいつの父親なんだろ?あの羽織男」

 

「無事ッスよ。ただ、一旦帰るそうで尸魂界にむかいました」

 

「そう……か石田、石田は斬られてたろ?石田は無事なのか?」

 

「ええ、彼の血は沢山出てましたけど大したものじゃなかった。

 

朽木さんを救えるのは彼だけだ__そう言ってましたよ」

 

「どうしろってんだよ……俺に……ルキアは尸魂界に帰っちまったどうやって助けろって……」

 

「本当に無いと思いますか?尸魂界へ行く方法」

 

俺はその言葉に顔を上げる

 

「あるのか!尸魂界に行く方法!!どうやるんだ!!教えてくれ!!」

 

「もちろん!教えますよただ()()()()()()これから十日間アタシと戦い方の勉強をしましょ」

 

「何言ってんだよ!そんな事__!!修行でもしろって?」

 

「分からない人だな」

 

一瞬でおれは地面に倒された

 

杖の先が向けられる。まるで……切っ先をむけられてるかのよう

 

「言ってるんスよ、今の君じゃ死ぬ……と。勝てますか?今の君が彼らと戦って」

 

手も足も出なかった……あの男に

 

「今の実力じゃ尸魂界で戦うには力不足、何の役にも立たないんスよ、弱者が乗り込むそれはもう自殺だ、朽木サンを救うため?甘ったれちゃいけない。」

 

────死にに行く理由に他人を使うなよ

 

それから俺の地獄は始まった

 

_______________

 

死神の力も戻り、おれは浦原さんにしばかれ続けている

 

そしてしばらくの休憩でリンゴを出された

 

なんでリンゴ……

腹も減ってるので遠慮なくかぶりつく

 

そこで疑問に思ってたことを口にした

 

「なぁ……浦原さん。」

 

「なんスか?」

 

「斬魄刀って二本あるのか?」

 

「……はい??」

首を傾げる浦原さん

 

「俺が、あの時精神世界みたいな所に行った時に……死神の力を見つけだせっていわれて……その時斬魄刀の柄を引き抜いたんだ。そしたら、青い刀が一緒に出てきて」

 

そこで浦原さんがピクっと、反応した

 

「何か知ってるんだな?」

 

「青い刀、鍔はこれに似た物ッスか?」

紅姫と呼ばれた浦原さんの斬魄刀。

珍しい鍔の形をしているがたしかに……

 

「そう……だな、なんかそんな模様が刀身に刻まれてた

鍔はあったんだけどよ……」

 

「……その刀の名は霊刀(れいとう)。貴方の魂と融合した刀ッス。」

 

「霊刀……?斬魄刀とはちげえのか?」

 

「うーん……似て非なるものッスね。アタシの知るものとだいぶ性能が変わってますけど。」

 

訳が分からなく頭を傾げる似て非なるもの……?

すると浦原さんは指を立てた

 

「斬魄刀は自身の魂の力を使って作り出した霊力を刀として具現化していますが、それは全く違う物質からつくられています。性質も異なり周りの霊子を集め収束させることで戦うことが出来る刀」

 

「なんでそれが俺の所にあるんだ?死神はみんな持ってるもんなのか?

それになんか石田の力に似てるような」

っと問いに浦原さんは扇子を開いた

 

「まぁ似てますよねぇ、アタシも実際よくわからないんスよ。

ただ、それは貴方を助ける土台になるでしょう。貴方の斬魄刀を見た感じ霊刀は貴方の斬魄刀と結合した」

 

「俺の斬魄刀に……?」

 

「そうッス!いやぁこれ以上はなんとも。何せ事例なんて無いもんで」

 

「……そうか、浦原さん。なんで事例がないのにそんなことを知ってんだ?」

っと言うと目を細めた

 

「……いいッスか、黒崎サン。あの日朽木サンが連れていかれた時羽織を着た男、貴方を斬った男は朽木白哉。」

 

「お、おう?」

いきなり話が変わった。

 

「彼の剣見えました?」

 

「……見えなかった」

 

「そうッスねぇ。彼は護廷十三隊の六番隊隊長、隊長格なんス」

 

「隊長……」

 

「そして隊長格にも実力の差はある。彼も上の方ですがさらに上がいます」指を天井に向けた浦原さん

 

「あれより……上だって?」

見えないし、実力も分からない。あいつよりも上が……?

 

「まぁわかりやすい例を出しましょうかね。君も会ったことあるはずッスよ、浦原維助___彼は朽木白哉の師匠にあたる」

 

『先生!』

『お師匠』

と呼んでいたルキアと紫流を思い出す

 

あの日、紫流が来た日に来た男。

浦原維助……たしかにそう名乗った。

 

あいつが……??

 

 

「いいッスか、黒崎サン。浦原維助、彼には気をつけてください。もし出会うことがあれば逃亡一択。決して戦おうとしないように」

 

「そう……だよ、浦原……浦原って……!」

 

「もう分かっちゃいました?彼は尸魂界一の技術者で剣の達人。そしてアタシの実の兄ッス。そして霊刀の開発者でもある」

 

衝撃の事実に思考が停止する。

 

「そ、そうだよ兄なら助けは求められねぇのか!」

と言うと目を閉じて首を横に振る

 

「無理っスね、彼はあれでも表向きは護廷十三隊の隊長。規定側ッス」

 

「そう……か」

 

「アタシでも勝てるかは分からない。いや、今の彼とアタシでは実力差がありすぎる。おそらく負けるでしょうね」

 

「そ、そんなにかよ」

 

「ありゃビビっちゃいました?」

っと俺の顔を覗き込むようにして見下ろしてくる

 

「ビビってねぇよ!」

 

「まぁ、彼と対峙しようとせずに逃げ出せば見逃してくれるかもしれませんし。ささ、修行再開しますよん。早くあの一撃を出してもらわなきゃ」

 

指さした場所は俺が放ったとされる斬撃の跡。

 

「っても、いっぱいいっぱいで覚えてねぇんだよなぁ……」

 

「大丈夫ッスよ。いっぱいいっぱい追い込んであげるんで」

 

赤い耳飾りを揺らしながら愉快そうに笑った浦原さんにため息を吐く。

楽しんでねぇか?

「はぁ……」

 

______________

 

「うぉ!アブねぇ!」

と避ける黒崎サンをみて違和感を覚える

 

ボクの斬撃はいずれ霊子として分解され空中に溶けるが……

その瞬間、黒崎サンの斬魄刀が光るような気がする。

 

彼の斬魄刀の能力はおそらく

持ち主の霊力を喰らい、斬撃そのものを巨大化して飛ばす力

 

「黒崎サン。1度アタシの斬撃を斬魄刀で受けてみてください」

 

「は?」

っとぽかんとした彼に

 

───啼け 紅姫 ───

 

斬撃が地面を抉りながら彼の方に向かっていく

 

「なっ、いきなりかよ!!仕方ねぇ」

彼は刀を盾のようにして受け止め___

 

そして赤い斬撃は一瞬で刀に吸い込まれるようにして()()()()()

 

「なっ……なんだよこれ」

 

斬魄刀は青い霊子を纏う

 

「……元の性能は変わってないようッスね。黒崎サン、それは霊刀の力っスよ。言ったでしょう?貴方の斬魄刀と結合したと」

 

「いや、そんなこと言われてもよ……どうなるんだよこれ」

 

「さぁ」

 

「さぁって……」

 

「言ったでしょう?事例があまりないんス。限界も分からないし、ただ切れ味が良くなるのは確かっスよ〜」

「切れ味ったってよぉ……」

 

試しにコツンっと軽く岩を叩いてみせる黒崎サン。

 

─────スパンッ

 

「うぉおお!」

 

「おやぁ」

岩は一刀両断し地面に深い亀裂が走った。

 

「いやぁ中々便利なもんスねぇ!」

 

「呑気か!!あぶねぇだろこれ!ってあれ、さっきみてぇに斬れねぇ」

 

またコツンっと岩に切っ先が触れるが先程のようには斬れない

 

「うーん、吸い取った霊子の分だけ斬れ味が良くなり、それはリセットされる……って感じッスかね」

 

「……よくわかんねぇな」

「まっ!とにかく貴方の力には間違いないんで、伸ばせるものは伸ばしましょ」

 

あれから色々試して分かったこと。

黒崎サンの霊刀の能力は霊力、つまり鬼道系のものを吸い取りその威力の分だけ斬れ味が増す。ただ鬼道の力が強すぎると吸収しきれずに吹っ飛ばされる__。

 

「いやぁ、面白いもんスね!わかりやすい名前でわかりやすい能力!いやはや……」

 

「面白いわけあるか!しかも霊刀って今更ながらダセェ!なんなんだよ」

瓦礫の中から出てきた黒崎サン。元気ッスねぇ!

 

「それはアタシに言わないでくださいな、命名は兄サンなんで」

 

そしていずれ貴方の虚の力は……

さて、霊刀がどういう動きをするのか……

楽しみッスね

 

────────────

 

 

 

「父ちゃん!!本当にルキア叔母さんを極刑にすんのかよ!死ぬんだぞ!!」

 

 

父ちゃんは何も言わずに書類に目を通す。

 

「なぁ!!父ちゃん!!」

 

「尸魂界の最終決定だ」

 

「何とか出来ねぇのかよ!!いいのかよ……!!母ちゃんの妹で、あんたの妹でもあるんだろ!!」

 

「それがなんだと言うのだ」

 

「なっ」

 

1度も俺の方をむくことなく、そう言い放つ父親。

 

「なんだよ……それ……なんでだよ……」

 

「紫流。お前にも私にも最終決定を覆す力など持ってはおらぬ」

そこではっとする、力。そうだよ権力……!

 

「お師匠に頼めば!!あの人四十六室の直属の部隊なんだろ!!あの人に頼めばきっと……」

 

「やめろ」

 

「なんで……だよ」

 

「師匠に迷惑をかけるな」

 

ずっと書類を見たままの父親……

 

なんでだよ……なんで……

 

「お前もお師匠のおかげで罪は免れた。今回は不問とするがこれ以上迷惑をかけるな」

 

「ぐっ」

俺は悔しくて悔しくて、走った。

 

家族ってなんだよ……家族って。そんな……そんな!

もし俺が……俺がルキア叔母さんの立場だったら……

父ちゃんは俺を殺したのか?見殺しに___!!!

 

 

 

 

 

 

「朽木紫流……ね。」

 

「おや、藍染隊長どうなさったんです?」

 

「いいや、ギンなんでもないさ……すこし面白くなりそうだと思ってね」



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職権乱用と旅禍の話

 

「ふぅん……極刑ねぇ」

 

四十六室は惣右介によって殺され催眠をかけられている。

四十六室から極刑という達しが来るはずは無い。

 

何を企んでいる惣右介……。

 

「おや、浦原隊長さんは悩んでないんやなぁ、六番隊長さんも冷たいもんやったわ」

ふわりと、塀の上に座って俺を見下ろすギン

 

「俺に何か用か?ギン」

 

「おーこわ、そんな睨まんでもええやろ。」

っと両手をあげるギン

 

「俺忙しいんだ、何か用ならメールでも入れといてくれ」

 

「全くつれないなぁ、そういわんでも遊びに来ただけやよ」

 

「ふぅん……遊びに来たね」

 

「それなんなん?」

俺の持っている包みを指さすギン

 

「これは義骸だよ。朽木ルキアが使ってた、隠密機動に調査依頼が入ってね。今から12番隊に送るんだ」

 

「……ふぅーん」

聞いといて興味無いんか、そのままどっかに去っていった。

人の顔見に来ただけだな、白哉坊ちゃんの方にも言ったのか趣味が悪い。

 

義骸を送ってから思い出す。

十二番隊に言うの忘れてた事があったな……

 

「砕蜂、少し離れる。後は頼んだ」

 

「はっ、かしこまりました」

 

 

___________

 

十二番隊が少し騒がしい

 

「おっほぉ!ようやく届いたか……へへ!俺が先に見るぜ」

 

「これはなるほど、凄いねぇ」

 

っと声が聞こえる。廊下の先に開いた扉から光が漏れる

部屋に向かうとさらに騒がしい声が聞こえてくる

にしても、廊下の電気ぐらいつけたらどうなんだ……

 

「おいこれ……みろよ……」

「なんだ……こりゃ!」

 

「なんです?」

阿近と女の子の声。

 

「こいつは局長でも、誰の作品でもねぇ……!出来るやつがいるはずねぇんだ」

 

あぁ、まずい

 

「いるはずないって……現に」

 

「どういう訳がしらねぇが尸魂界にあっちゃいけねぇもんがある!

一つだけ言えるのはこれを作った奴がもう尸魂界にいねぇことだ!もしそんな技術を持っていたら

 

─────尸魂界を永久追放されるからだ

 

「ご名答」

 

ヒュッ……

誰かが悲鳴をあげかけた。

 

「……浦原維助?」

 

変な図体でかいヤツが俺の方に向いた。

局員達は義骸を囲んでいた

 

「なんで二番隊が……!困るぜ勝手に!勝手に入るのはご法度……」

っと局員が俺につめよろうとしたのをその肩を掴み阿近が止める

 

「ご法度?違うね、隠密機動総司令官である俺は一番隊以外の隊舎に隊首の許可なくとも入れることが許されている。」

 

「だからって一言声をかけてもらわなきゃ困りますよ」

そう言った阿近は冷や汗をかいていた

 

「そりゃ悪かった。誰もいないもんでねぇ……。阿近」

 

「なんだよ、知り合いかよ」っと言いながらデカブツが阿近の方にむく

 

「ばっか、てめぇ二番隊隊長をしらねぇのか、伝令神機の開発者で浦原神機の社長だよ、俺らが使ってる機械もこいつが作ったもんだろ」

 

「こいつって……はは」

別の局員にこいつ呼ばわりされてる俺って。

 

「黙っとけてめぇら、維助さんすみませんね、こいつらが」

 

「いーよ、それで本題だけど。その義骸今日の夜までには返してもらうから」

 

「なっ!そりゃ勝手だぜ!!!そんな短時間じゃ俺ら何も出来ねぇじゃねぇか!」

っと俺に詰め寄ってくる男

 

「バカやめろ!」

阿近の制止も聞かずに俺の胸ぐらを掴む

 

「隠密機動だか先生だかしらんが勝手すぎだ!!俺らの研究は自由だ、その権限は局長にある!!」

 

「やめろ!!」

「だがよ!」

阿近が俺から男を引き剥がす。

 

全く、ここはここで熱い連中だ

「研究が自由……ね。それは違う、俺の許可があって初めて研究が許されてるんだよここは。隠密機動総司令官の俺が四十六室の代わりに監督する立場にある。」

 

「なっ」

 

「そうだ、落ち着け……!この人の言ってることは間違いねぇ。俺らの研究も局長がこの人に申請し問題がないか審査してから許可を得て初めて研究ができるんだよ」

 

「そして、それは大切な証拠品。少し見るぐらいなら許可してやるがばらされるのはちょっとねぇ」

 

「……なにか理由でも?放任するあなたらしくもない」

っと俺の方にむく阿近。流石俺が育てただけはある勘が鋭い

 

コンコンっと義骸が乗った台をノックする阿近

 

「義骸……()()()()()()に何か?」

阿近は多分察してたんだろうな

 

「あぁ、それは今回の事件と110年前の事件の証拠品だ、もう一度言うぞバラされちゃ困るんだ。俺が見てる間に研究とやらはさっさと済ませて夜までに返してもらおう」

 

「……」

 

 

「阿近なんだよ、こいつを作ったやつ知ってんのかよ」

 

「あぁ」

 

「誰だよ!勿体ぶるなよ」

阿近は俺から目を逸らした

 

「浦原喜助」

 

その瞬間、部屋に緊張が走る

 

「今の局長が二代目なのは知ってるよな、これの開発者は……

浦原喜助。技術開発局を作った初代局長だ。あの人が居なくなった今この開発局があるのもこの人が当時頑張ってくれたおかげだ」

 

─────────────

 

チラチラと視線を感じるが用意された机、そして椅子に座って働いてるのを見守る

ルキアの義骸をスケッチしたり成分を調べたりちゃんとやってはいるな

 

「……維助さん」

 

「ん?どうした阿近」

 

阿近か俺の前に座った

 

「義骸を取り戻しに来た……って感じですか」

 

「そりゃね、作らなくても、その技術を研究すること自体本来は違反にあたる、気持ちを少しくんであげただけでもありがたいと思って欲しいよ」

 

「それは感謝しています、ですが俺が言ってるのはそういうことじゃない。弟さんのものだから……」

 

「さて、それを聞いてどうする?」

 

「……そうですね、()()()()()()ものでしたね」

俺が職権乱用してるのを知ってて言ってるんだ、全く阿近は……誰に似たんやら

 

 

「んじゃ帰るわ〜急に悪いね」

阿近が見送りに来てくれて俺は包に包んだ義骸片手に十二番隊を後にした。

 

さて、後で喜助に送るかね

 

────────────

 

頭を下げた阿近は消えた維助をみて深いため息を吐いた

 

「ったく、あの野郎本当に持ってきやがった。」

っと鵯州(ひよす)が残念そうにボヤく

 

「お前なら止めれたんじゃねぇのか?ほらなんか仲良いんだろ。友達みたいな」

 

「友達じゃねぇよ、恩師だ。二番隊……いや浦原家と隠密機動の後ろ盾があって十二番隊がこうして研究できていることも間違いねぇ。敵には回すな……実際、数十年前に1人の局員が捕まってる」

「捕まってる!?」

 

その言葉にコクンっと頷く

 

「中央四十六室から正式に判決が下された研究があって、研究成果・研究過程の破棄を拒否した職員が__な。

あの人が笑ってるうちは大目に見てもらってるが、あの人はいつでもこの局を潰せるんだ。あまり反発すんな__あの人ガチで機嫌を損ねたらめんどくさいんだからな」

 

 

──────────────

 

「維助様」

 

「うん、聞こえてるよ」

 

壁に取り付けられた拡声器が瀞霊廷中に響き渡る

 

 

”『西方郛外区(せいほうぶがいく)歪面反応(わいめんはんのう)』”

 

警戒令が発動された。

うんうん、あいつら来たな。

 

「砕蜂二部隊と四部隊を瀞霊廷防衛陣地に配置、指揮は砕蜂に一任する」

 

「はっ、行ってまいります」

 

そう言って消えた砕蜂。

 

───そして次の日

 

 

”『隊長各位に通達!只今より緊急隊首会を招集!』”

 

伝令神機が鳴り響く──

 

「めんどくさいな」

 

 

─────────────────

○隊首室

 

「きたか!さぁ今回の行動について弁明を貰おうか3番隊隊長市丸ギン」

 

隊首会では何故かギンが真ん中に立たされていた。

 

「卯ノ花隊長、ギンなにしたん」

っとこそっと隣の卯ノ花隊長に聞くと

「あら、聞いていなかったのですか?」

っと言われる、みんな知ってる感じか?

 

「なんですの、いきなり呼び出された思うたら来ない大袈裟な……」

っと頭を搔くギン

 

「大袈裟?ふざけてんなよ」

ズカズカと列からはみ出た更木がギンにつめよる

 

「てめぇ、一人で勝手に旅禍と遊んできたそうじゃねぇか、しかも殺し損ねたってどういう事だ?」

 

「ありゃ、死んでへんかってんねや?アレいやぁーてっきり死んだかと思うてんけどなぁ」

 

「クックック、猿芝居はやめたまえよ、我ら隊長格が相手の魄動が消えたかなんて察知出来ないはずないだろう」

っと、ギンを指さす涅。

 

「またジジイ共の喧嘩が始まったよ」

っと冬獅郎が呆れたようにため息をはいた

 

「ふぅん、なるほどギンが旅禍を逃がしたから会議してんのね」

 

 

「いややなぁ、まるでボクがわざと逃がしたみたいな言い方やんな」

 

「そう言ってるんだヨ」

「うるせぇぞ涅!今は俺がコイツと話してるんだ!すっこんでろ」

 

っと口論は激しさを増す。

 

「ぺいっ!!やめんかみっともない!」

っと総隊長がどなり3人は黙った

 

「じゃがまぁ、今のでおぬしが呼ばれた理由がわかったかの、今回お主の命令なしの単独行動。それについておぬしからの説明を貰おうと思っての!そのための隊首会じゃ」

 

「ありません!」

 

「なんじゃと?」

ギンはヘラりと笑ってそう答えた。

 

「弁明なんてありません。ボクの凡ミス、言い訳のしようもないですわ」

 

「ちょっと市丸──」

惣右介が何か言いかけた瞬間

 

”『緊急速報!瀞霊廷内に侵入者あり!』”

 

っと、スピーカーから速報が流れる

 

ダッっと、更木がいち早くかけ出す

 

「仕方ないの……」

更木をみてため息を吐く総隊長

 

「隊首会はひとまず解散じゃ!各隊守護配置につけ」

みんなが一斉に隊首室をでていき

 

さて、俺も戻るかと廊下を歩いていると後ろから話しかけられ足を止めた

 

「浦原隊長」

 

「ん?どうした冬獅郎」

 

「……貴方市丸ギンと仲良かったでしたっけ」

 

「は?いやそんなことないけど……?たまに話す程度かな」

 

「…………そうか、あいつどう思いますか」

 

「どう思うって言われてもなぁ……」

何故冬獅郎がこんなことを聞いてきたかは分からない。

なにか怪しんでいるのか……

 

「まぁ、俺はどうも思わないよ。好きにやってくれって感じ。みんながみんな癖強いのは知ってるだろ?いちいち気にしてたらやってられんよ」

 

「はぁ、予想通りの答えだった」っとため息をはかれた

 

 

隊舎を出た瞬間目の前に砕蜂が膝をついて現れる

 

「維助様、旅禍は瀞霊廷の上空を覆う霊力を遮断する遮魂膜(しゃこんまく)を突き破り瀞霊廷内に侵入。それぞれ四方に別れたとの事」

 

「へぇ、」

話を聞く限り本当に入ってきたみたいだな。

 

「とりあえず砕蜂、昨日と同じで二部隊四部隊を配置につかせろ五部隊は情報管理報連相忘れんな、三部隊は動かさなくていい。お前の判断で刑軍は動かせ」

 

「はっ、承知しました」

 

シュッっと瞬歩で消えた砕蜂をみて、俺の隣の冬獅郎が口を開いた

 

「相変わらずだな、二番隊も」

 

その言葉にどういう意味が含められてるのかはまぁ聞かないでおこうか。

瀞霊廷内のあちこちで霊圧の衝突が感じられる。

 

「どうするんですか、あんたは」

 

「うーん、見学?面白そうだからちょっかいはかけたいなぁ」

 

「はぁ、相変わらずですね」

踵を返して歩いていく冬獅郎

 

「あんまり変なことしてるとまた総隊長におこられますよ」

って言って片手を振って帰って行った

 

クールだねぇ冬獅郎。

 

さて__おれは1番近くのところにでも行くか。

おそらくこれが原作開始の大事件の話だった気がする。

 

あぁ、もう数百年前の前世のことなんで全く覚えてないよ。

歳は嫌だなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

_________________

 

 

「飛び道具に関しては僕の方が上らしい。鎌鼬雨竜だなんて名前かっこいいとは思わないけどね、それに女性から狙うだなんてまともな誇りをもっていたらとてもできない戦い方だよ。お見事

 

────さようなら」

 

石田雨竜と井上織姫はみんなと別れてしまった後、七番隊四席と接敵していた。

 

だが、それももう終わり。

 

弓を引いた瞬間────

 

重く重く酷く()()()()がした。

悪寒とでも言っていい。

 

「やぁ、メガネくん君滅却師?あっおっぱい美人はっけーん!」

 

「っ……!!!(いつの間に……?僕が霊圧を感じとれなかった?)」

 

のほほんとした戦場では考えられないような呑気な声。

振り向いた場所には片膝立てて座っている青い瞳をニコリと細めた男が───

 

 



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ちょっかいかけた話と紫流の話

 

「やぁ、元気そうだね」

 

呑気そうに笑うこの男

「…」

なんだ…この違和感。

霊圧が感じないだけじゃない…

気配も、現れる風すら…音すらも何も感じなかった____。

 

「う、浦原隊長…!」

 

「隊長だって…?」

この人が隊長…?

それに浦原って___。

 

「うわ、左手撃ち抜かれたの?いったそー…早く卯ノ花隊長のとこ行ってきな」

 

「で、ですが!!まだ私は!私はやれます!」

っと懇願する男。僕が撃ち抜いた手からはまだ血が溢れるように流れていく

 

スッ__と目を細めた

 

「なら戦う?」

 

「えっ。いや…その」

 

「ハッキリする」

 

「す、すみません!!四番隊行ってきます」

 

「行ってらっしゃい〜応援呼ぶとかはいいからね」

 

「は、はいい!」

這いつくばるようにしながらも逃げ失せた男…まぁいいかと思い。

隊長と呼ばれた男と向き合う

 

「随分仲間思いなんだね、死神というのは」

 

「仲間思い?違うよ邪魔だからさ。どうせあの傷じゃまともに戦えないし」

 

よいしょっと言って立ち上がった男はニコリと笑う

 

「はじめまして、俺は浦原維助。弟がお世話になったようで」

 

「おとうと…!」

っと、びっくりしたような声を上げる井上さん

 

「やはりな…」

このマイペースさといい、どこか読めない雰囲気もそっくりだ。

 

「さっ、俺は名乗ったよ」

 

「僕は石田雨竜」

 

「あ、あたしは井上織ひ…め」

 

一瞬___

 

目を離したわけでも、警戒を怠ったわけでも、瞬きすらしていないのに

───()()()()()()()()()()

 

そっかぁ〜!織姫ちゃんか〜かわいいなぁ

 

いつの間にか後ろにいたはずの井上さんの手を握って握手していた

 

「浦原さんの兄…と言っても味方には見えないが」

 

「正解。味方じゃないよ、俺はあくまで規定側旅禍は捕まえないといけない…」

 

「まずは井上さんから離れてもらおうか、それとも人質のつもりかい?」

 

「人質?なんで?人質にされるほど弱いの君」

っと井上さんの顔をのぞき込むように近寄る

 

「あ、あたしは…」

 

「君たちは朽木ルキアを助けるために来たんだよね?きっと恐らく喜助か夜一さんに鍛えられた…って感じかな」

 

「僕は違うけどね」

井上さんから離すように弓を放つとヒョイっと避けられる

 

「おいおい、織姫ちゃんに当たったらどーすんの」

 

「僕はそんなヘマをしない、井上さん。逃げるんだ」

 

「いやだよ!あたしも戦える!」

 

「でも…」

 

「そうそう、それに逃げられると思うの?俺から。」

 

「君は強そうには見えないけどね。霊圧も感じないし」

 

「そりゃそうだよ、隠してるもの、霊圧も気配も__」

 

 

 

 

───ねっ?

 

耳元で囁かれた。まただ、また…消えるように__!

 

飛廉脚で直ぐに距離をとる

 

「怖い?怖かった?わからないもの(未知)って怖いよね。そもそも俺は職業上霊圧、気配ダダ漏れはまずいんだよね」

 

「職業?死神は死神だろう」

っと僕の言葉に首を横に振って指を立てる

 

「死神は死神でも色々あるんだよ、例えば医療専門とか研究専門。人間にも色々いるだろ?警備する警察とか、開発する研究職についてるやつとか」

 

「…気配と霊圧を気づかれたらまずい…つまり暗殺とかそういう関連って事だね」

っと言うと手を叩く

 

「頭の回転早いねぇ。正解。俺は隠密機動、犯罪者の拘束や監視監督、まぁお掃除屋さん?」

 

「…分からないな、君からは敵意を感じない、捕まえようと思えばいつでも捕まえられるのに行動を起こそうとしない…時間でも稼いでいるのかい?」

 

「時間?いや別に俺はちょっかいかけに来ただけだよ」

 

「はっ?」

 

「だから、気になるものってちょっかいかけたくなるでしょ?旅禍だなんてそうそう来ないからさ、ちょっかいかけに来たの」

 

「…付き合いきれないな」

 

「そう?でも君達このまま行くと死ぬけど…。本当にルキアを助けに来たんだよね」

 

「弱いって言いたいのかい?」

すると、うんっと頷いて笑う

 

「舐めるなよ」

弓を放つ、避けれないように四方に放った。

 

男は動かず笑い続ける

男に触れるか触れないか___僕の矢は()()()()()

 

「うーん…これが()()()滅却師の力ね。周りの霊子を収束させ操作する」

 

「物知りだね」

何をした?なにがおきた?どうして消え失せたのか…斬魄刀の能力か?

 

「んで、織姫ちゃんはメガネくんに任せっきりかい?」

 

「っ…!」

 

「井上さんは関係ないだろう、君と僕の戦いだ。それに名乗ったはずだが」

 

「ごめん、俺人の名前覚えるの苦手でさ、うりゅーちゃん?」

「雨竜だ!!」

 

ヘラヘラと笑うところは浦原さんを連想させてやりずらい

 

「君と僕…ね。じゃぁ織姫ちゃんは何?医療係?後衛ですらないの?」

 

「あた、あたしも戦えます!」

 

「井上さん!!」

 

「石田雨竜。ダメだよ自分で戦うって意思表示したんだ戦わせなきゃ、それとも何?女は戦わせられないって?それとも…邪魔?」

 

「そんな事言っていないだろう!」

 

「ああー熱くなるなって。じゃぁ戦わせればいいだろ?わっかんないなぁ…守るとかフォローするとかなら分かるけど、戦力外で逃げろとか戦うなとか…。戦う意思があるなら戦おう。さぁ来なよ」

 

─────────────────

 

椿鬼(つばき)孤天斬盾(こてんざんしゅん)

 

──────私は拒絶する

 

変な盾みたいなのを回るように避けて勢いよく織姫ちゃんの腹に軽く蹴りを食らわす

カハッ…!

 

「井上さん!!」

直ぐに雨竜の顔面に拳を振るう

「心配してる暇…ある?」

グッ…!

顔を逸らして避ける雨竜だが、頬に亀裂が走った

すぐに飛廉脚で距離を取り弓矢が飛んでくる

 

「ほらほら、そんなんじゃ近距離どうすんの」

 

「っ…!」

全ての矢を切り伏せて首筋に刀を添える

 

「見えなかった?でしょうね。人間の動体視力に追えるほど俺の刀は遅くないよ」

 

「女性に容赦なく暴力を振るえるなんて、誇りはないのか」

 

「誇り?誇りねぇ…顔は狙ってないんだけど。それに」

 

─────甘いこと言ってんなよ

 

_________________

 

重く苦しい霊圧

バキッ…っと音を立てて維助の足元の瓦がひび割れ砕けていく

 

「くっ…」

 

「井上さん…!」

霊圧に魂が押しつぶされそうになっているのをみて距離を取ろうとするが…動かない

 

「(足が…まるで縫い付けられてるように…動けない…!!)」

 

「いいか?自分で戦うって言ったんだ。戦う意思も(すべ)もない女.子供をいじめるのはそりゃ言われて仕方ねぇかもしれねぇけど、戦うって言ったんだろ?

 

ルキアを助けるために死なせないために、死なないために鍛錬してきたんじゃねぇのか?

織姫、戦えるのか?口先だけで軽い気持ちで尸魂界に来たのか?」

 

 

「あたしは…!!!」

重い霊圧を受けながらも、膝を立て、足に力を入れて立ち上がろうとする

 

「井上さん!!それ以上無理すると…魂魄に影響が…!!」

 

「あたしは…守られるだけじゃない!!戦えます!そして朽木さんを助ける!!」

 

っと、しっかり維助の方を見て立ち上がった__。

 

 

 

 

 

「ごーかく!」

 

 

 

 

 

今までの霊圧がなんだったのかと、ふと空気が軽くなり

維助の顔はニッコリと何事も無かったかのように笑顔になった。

 

「は…?」

ポカンっと、口を開けた雨竜

 

「だから合格だって。覚悟あるのかなーって思ってさ」

 

「はぁぁ!?いや!今完全に殺し合う雰囲気だったろ!」

 

「いやいや殺し合う?誰がそんなこと言ったの…俺言ったじゃん

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

──────────────

 

「はぁぁぁ!?!?」

っと心底呆れたような、イライラしたような大声を出す雨竜

 

いや声でっっつか!

ペタンっと座り込んでしまった織姫ちゃん

 

「ほら、本気で危ない時に本音って出やすいでしょ?追い込んじゃってごめーん。でも君らの戦う覚悟は伝わったよ。」

 

「君さっき規定側って…」

 

「そうだね、規定側、だからルキアを助けることは出来ないけど、君達を見逃すことはできる。」

 

「君無茶苦茶だと言われないかい!?」

っと半ギレの雨竜

 

「よく言われる〜。ほらほら早く行かんと俺の霊圧で誰かがよってきちゃうよ」

 

「君のせいじゃないか!!!!」

っとぶつくさ言いながら去っていった。

 

あー面白かった

───────────────────

また緊急の隊首会が開かれた。

 

「ついに護廷十三隊の副官の一人を欠く事態となった

 

副隊長を含む上位席官の邸内での斬魄刀の常時携帯及び戦時全面解放を許可する」

 

恋次がやられたらしい。一護に

 

へぇ、やるじゃんそっち行けばよかったかなぁ…

 

____________________

 

これは、1回目の隊首会が行われる前に遡る

 

「藍染隊長…本当に…本当に?」

 

「あぁ、おかしいとは思わないかい?急な処刑、期日も早くなっている」

 

「たしかに…」

 

紫流と藍染は向き合って話していた

 

「朽木白哉…僕も信じたくは無いが、朽木隊長は手段を選ばない人だ、君の母も流魂街出身なのに貴族の掟を破り無理やりに結婚した、手段を選ばない人なのに愛する妻の妹、自分の妹でもある朽木ルキアの極刑に反対しないのか…。

期限を早めるのも止めないのも…

 

()()()()()()()()()()()

 

「そん…な」

 

 

「さぁ…これを君に、止めれるのは君しかいない」

 

藍染は青い鍔も柄もない刀を紫流に手渡した

 

「これは…?」

 

「それは()()

君を助ける刀さ、霊力の高い四大貴族にしか扱えない刀だ。それは君の力になる。」

 

「…なに…を」

 

紫流の胸元に藍染が霊刀を突き立てる

 

 

ドロッと、黒く変色し胸に飲まれていく霊刀

 

スッ__っと瞳からハイライトが消えていき

そのまま紫流はフラフラと去っていく

 

 

 

 

 

 

「霊子を溜め込んだ霊刀…あれほどの高濃度の霊子体を体内に宿しても魂魄が消滅しないとは、さすがは四大貴族…」

 

1人残った藍染はメガネに触れ口角は上がっている

 

「(霊刀の性質は実に面白い。霊子を吸収するだけでは無い…意志を持った者から膨大な霊力を吸収すると霊刀に意思が宿る。そして宿り主の強い感情を増加させる力をもち、宿り主の魂魄や感情によって変化し動き始める、進化と言い換えてもいい。)」

 

「(今の朽木紫流の感情は朽木白哉への嫌悪と憎悪_,

 

大抵の魂魄は耐えきれない、耐えれたとしても霊刀が内側から魂魄を傷つけ飲み込んでいく。浦原維助のようには行かないな、まだ実験が足りない、今回はどうなるか__)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁ…面白いものを見せてくれ朽木紫流

 

 

 

 

 



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藍染死す?と、合わせる顔がない話

 

「藍染隊長!藍染隊長…!!」

 

集会のために赴いたら桃の悲鳴。

 

()()が惣右介だって…?

みんなが唖然として、壁を見上げている。

血柱の上には遺体がある__が、あれは惣右介じゃない。

だがみんなは惣右介だと思い込んでいる…

 

惣右介の鏡花水月で間違いないな。

自分の死体を偽装…そして隊長の座を捨てる事を意味している。

惣右介…本当に何をする気だ…?

 

 

「何や朝っぱらから騒々しいことやなぁ」

 

っと呑気な声が聞こえた。ギンが、ニコリっと笑いかける

 

「お前か!!!」

 

桃は斬魄刀を抜刀しギンに振り上げた。

殺し方とかギンの斬魄刀のやり方に見せ掛けてるし_

いや、あの遺体はガチでギンが死神を殺して惣右介が鏡花水月かけたのかな。

 

「あーあ…」

 

「吉良くん…!!どうして!!」

 

ギンの副官、イヅルがそれを受け止めた

 

「維助様。止めましょうか」っと砕蜂が腰の刀を抜こうとするのを止める

 

「いいよ、好きにやらせとけば」

 

そのうち始解した桃。

あーあー…床誰が治すと思ってんだ。

 

「敵として…君を処理する!!」

 

(おもて)を上げろ

 

───侘助(わびすけ)

 

 

だが──それを止めたのは

 

「動くなよ。どっちも、捕らえろ2人ともだ」

 

冬獅郎が2人を刀と足で斬魄刀をあしらい止める

 

「総隊長の報告は俺がする!そいつらは拘置だ連れて行け、

それに浦原隊長、傍観しないで止めたらどうなんだ」

っとこっちまで流れ弾が飛んできた

 

「いやぁごめんごめん」

 

「いやぁすんまへんな、十番隊長さん」

 

「市丸…てめぇ雛森を殺そうとしたな…

雛森に血ィ流させたら俺がてめぇを殺すぞ」

 

「そら怖い、悪いやつが近づかんよう、よう見張っとかなあきまへんな」

ギリッと冬獅郎がギンを睨みつけた

 

桃とイヅルは連れていかれ、惣右介は下ろされ四番隊に運ばれていく。

砕蜂に四番隊に説明しておいてほしいと伝えて置いた。

 

「お友達が死んだんによう()()()()できますなぁ」

「そんな顔?悲しいよ()()()()()()()()

 

「ふぅん…気づいてませんの?何が起きるか()()()()()()()()()()()しとるよ」

そう言って去っていく

 

ワクワク…ねぇ…。

そんな顔してるつもりはないけど、危機感ないんだろうな俺。

その日の集会はなくなった

 

あちこちで霊圧の衝突を感じる…

 

更木と…一護か?

 

しばらく屋根の上でボーっとしてると砕蜂が現れた

 

「ご報告します、維助様、懺罪宮(せんざいきゅう)にて六番隊朽木白哉と旅禍との戦闘が行われた模様」

 

「へぇ…白哉坊ちゃんとねぇ…オレンジ髪?」

「はい…ですが」

 

言いにくそうに口篭る砕蜂に振り返る

 

「どうしたの?死んだ?」

 

「いえ、どちらも死んではおりませぬ…ですが」

 

 

「四楓院夜一が旅禍をつれて逃亡。」

 

 

「はっ…はは」

俺はつい、笑い声が口からこぼれ落ちる

 

「維助様…?」

 

「夜一さん、何らかの方法で霊圧隠してんな…そりゃ気づかんわ、なるほど夜一さんがねぇ…」

 

「如何なさいますか、警邏隊を動かし。「いや、待機だ」ですが!」

 

「他になんか言ってたか?」

 

「あっ、逃走する際に、3日で朽木白哉より強くする…っと言っていたようです」

 

「へぇ…なるほど…ね。さっきの命令はそのままだ、二部隊は待機。砕蜂もそっちについてくれ」

 

俺は土をろはらって立ち上がる

 

「維助様はどちらに?」

 

 

「二番隊隊舎に───ね」

 

__________________

 

「どうして!!どうしてだよ!俺だけ連れ帰った!!」

 

一護は夜一の胸ぐらをつかみあげた

 

「あそこに残されて生き残れる可能性が高いのは俺だ!これじゃ岩鷲も花太郎もルキアもみんな殺されちまう!」

 

「自惚れるな、おぬしとて可能性は低い、あそこにおった誰1人白哉を相手に生き残れるものなどおらぬ」

 

「てめぇ…!!」

怒りに満ちている一護を投げ飛ばす夜一

 

「騒ぐな、せっかく閉じた傷をまた開ける気か」

 

「それならどうしてルキアじゃなくて俺を…!」

 

「確かに、あの時あそこにおった者の中で白哉を倒せる可能性のあるものなど皆無じゃった、じゃが3日あればお主だけはその可能性が見えてくる。そう思うたから儂はお主を連れ帰った」

 

夜一は斬魄刀について説明をし始めた

 

「1つ目の解放を始解、2つ目は…卍解。始解状態と卍解状態での同じ斬魄刀の戦闘力は一般的に5倍から10倍と考えて良い」

 

「10倍…?」

 

「始解も卍解も習得せずに隊長になったのは更木剣八ぐらいじゃな」

 

「あとは浦原さんの兄貴だろ?」

 

「なんじゃ、維助の話を知ってるのか」

っと驚いた様子の夜一

 

「花太郎から聞いた、始解も卍解も見たことがない隊長_刀一本で全てを制する力をもつ、尸魂界一の剣術の天才…って言ってたぜ、浦原さんの兄貴も使えねぇんじゃないのか」

 

それに首を横に振る夜一

 

「あやつは始解も卍解も習得しておる。使わないのは…まぁあやつのこだわりというものか」

 

「なんだ、夜一さんあの人と仲いいのか」

 

「まぁの。それより、かなりの危険が付きまとうがお主には全く別のやり方で…卍解を習得してもらう

 

ただ、問題があってのう」

っと悩んだように顎に手を添える夜一

 

「なんだよ、問題って?」

 

「お主の卍解を習得するには転神体(てんしんたい)という斬魄刀の本体を強制的に具現化する道具が必要なんじゃが…」

 

「…よくわかんねぇけどその道具があれば卍解習得できんだな?どこにあるんだ」

 

「転神体は隠密機動の最重要特殊霊具(さいじゅうようとくしゅれいぐ)の一つ。普通の霊具と違い隠密機動が命をかけて守っておる。」

 

「まて…隠密機動って」

 

──────────────── 

『んで現世が嫌なんだ?』

 

『そりゃまぁ、会いたくないやつとか会っちゃいけないやつとかいるからなぁ、ほら俺隠密機動だし!』

─────────────────

 

っと、現世にきた維助が話してたのを思い出した。

 

「浦原維助…浦原さんの兄貴の所か!」

 

コクンっと頷いた

 

「あやつは二番隊隊長兼、隠密機動総司令官、重要霊具を開くための鍵はあやつが持っている」

 

「つまり、浦原さんの兄貴から貰えばいいんだろ?」

 

「そう簡単に言うでない、あやつは規定側、恐らくは敵じゃ」

 

「…ってそんな始解も卍解も使わねぇ様な化け物から鍵を奪えってことかよ!!」

っと頭をガシガシと掻きむしる一護

 

「儂は霊具の隠し場所を探してくる、儂のいた頃よりだいぶ変わっておるようだしの。お主は二番隊へ向かい鍵を盗め。常に持っているとは限らん恐らくどこかに仕舞ってあるはずじゃ」

 

「んな無茶な、夜一さんがいけばいいだろ?」

 

「儂は…」

っと目を伏せる夜一

 

「あやつに合わせる顔がない。」

 

「……」

 

一護が去った後…夜一は天井を見上げた

「(お主は儂が当主になるまで幼き頃から支えてくれた。じゃが儂はそれを…その地位を簡単に捨て去ってしまった___。どんな顔をして会えばいいと言うのじゃ)」

 

 

────────────

○二番隊隊舎

 

二番隊正門と書かれた場所まで来たは言いものの

一護は困惑していた

 

「(ここだけ世界観違くねぇか?)」

 

江戸や城がある和風の風景なのに、周りにはロボットや上空には謎の浮遊物。SFと和風が合わさった謎の空間が広がっていた

 

ロボットはガシャンガシャンっと音を立てて一定の場所を徘徊している。

門の前にもロボットが銃口を光らせ門番のように立ちはだかっていた

 

「(見つかったら絶対ヤバいやつだ)」

 

ロボットには銃火器が搭載されていて、それを見て冷や汗を流す。

 

「(ここ本当に尸魂界だよな??こっから侵入して遠くに見える江戸城みたいな所に向かって…浦原さんの兄貴から鍵を奪う…と)」

 

 

 

「できるかっ!!!蜂の巣なるわ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

つい大声を出してしまった__その瞬間に

ウィンっと、こちらに向けて銃口が向けられる

 

「げっ」

 

ズドドドド

 

「ギヤァァァ!聞こえてんのかよォ!!!」

 

ガトリングが一斉に放たれ頬にかする

「くそ、仕方ねぇ強行突破だ!」

 

塀が崩れたのをいいことに土煙の中走り門へ向かう…が

 

ウィィィイン

 

っと音がして上をむくと、目の前に門番のロボットがこちらに銃口を向けていた

 

「見えるのかよ!!!!!」

 

 

────────────

 

ギャァァァァァア!!!!

 

っと外から悲鳴が聞こえる

 

「やっぱり来たか…さっ、俺のからくり屋敷へようこそ。一護」

 

俺は隊首室でモニターを見ながら茶を飲む。

 

3日で強くする…ね。卍解を習得しないと白哉坊ちゃんには勝てないと踏んだんだろう、だから具現化をすっ飛ばす道具を取りに来ると読んでた。

夜一さんじゃなく一護が来るともね。

 

たどり着けるかな…?

 

”『うぉおおおおー!!!』”

 

「あいつ脳筋かよ」

ロボットとロボットの間をすり抜けるようにして無理やり門に侵入

 

ビーム

”『ギヤァァァ!!』”

 

転がってくる玉

”『ぅおおおおー!!』”

 

落とし穴

”『ドヒャァァ!!!!!』”

 

光線を避けて玉を避けて

情けない叫び声を上げながら地下に落ちていった。

最近技術から古典的なものまで盛りだくさんだよ。

 

「はは!愉快愉快!」

 

いやぁ、こうでなきゃ。

 

「さて、新作の機械も試したいし…」

俺の横には数々の仕掛け作動のボタンが。

試作品処分にもなるしどんどん出しちゃおう!

 

多分死なないでしょ、生命力高いみたいだし。

白哉坊ちゃんから生き延びたもんね〜。

 

多分___大丈夫だよね?

 

 




次回 維助vs一護 夜一と維助の再開__?の話


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黒崎vs維助、夜一との再開…?の話

 

”『うぉおおお!!!』”

 

「あいつ、やばいな」

 

かれこれ1時間走り回ってる一護。

 

「おーい、もう早く来てくれよ〜おっそいなぁ」

 

”『てめぇ!!それなら早くこの機械を止めやがれ!!』”

っと俺が映っているであろうモニターに向かって怒鳴る

 

「あーはいはい」

 

”『てめぇ!おちょくりやがって…!!』”

 

俺は飽きて現世の雑誌を電子化したものを読み漁る

 

”『本当にここどうなってんだよ!!和風にするかSFにするかどっちかにしろ!!』”

 

「いやぁ、少し中を改造したらこうなったんだよね」

 

”『()()!?どこがだ!って、 うおぉぉぉ!!』”

 

一護の後ろにいたメカがロケットを飛ばし一護は間一髪避け

その先が大爆発を起こしカメラが煙に包まれる

 

「お、大丈夫そ?」

 

”『大丈夫なわけあるかぁ!!』”

っと、シャチホコのようにひっくり返った一護が起き上がる

ずっと怒鳴りぱなしだなあいつ。ってかタフすぎだろ

 

「いやぁ、色々試したいからさ。そんなにタフなら大丈夫だよね」

 

俺は起き上がってボタンを押す

 

”『うぉおおー!!!!なんか出て来やがった!』”

 

その名も…まぁ。ちょっと名前出せないけど。

前世に部屋に飾ってたおもちゃを作ってみた。

まぁコックピットは誰も乗ってないけど

 

【挿絵表示】

 

 

 

しばらく爆発音と悲鳴が響き渡った__

 

 

─────さらに一時間後

 

ドガァァアンっと、壁を突き抜けてきた一護

全部なぎ倒してきたらしいな。

 

「ぜぇぇぇえ…!ぜぇぇぇえ!ようやく…!ついた!!」

 

俺は機械を停止させる

「ようこそ、俺の部屋へ、会うのは2回目かな?一護」

 

「ふぅ…さぁ、鍵を渡してもらうぜ」

 

汗を拭った一護が俺の前に立つ

 

「俺の隊舎はどう?楽しかったでしょ。あと男の子なら機械好きでしょ?」

 

「そんなん見てる暇なかったわ!!あんたほんと浦原さんにそっくりだな!!」

っと俺に向かってビシッ!!っと指を指してきた

 

「俺が喜助に似たんじゃない。喜助が俺に似たの」

「どっちでもいいわ!」

っとガラクタになったメカの腕をぶん投げてくる。

 

「ただ遊んでたわけじゃない。ほら傷もうないでしょ?」

 

「っ…!」

一護はハッっとしたように自分の体を見る

 

「ね?霊力の回復を促進させる機械に細胞に働きかける音波があってー」

 

「ぁぁぁ!よくわかんねぇよ!!あんた浦原さんと一緒で話長ぇな!」

 

「なんだよ、釣れないなぁ…じゃぁ傷も治った事だし」

 

 

「っ…!!」

 

俺は一護に急接近し首筋に刀を滑らせ____

 

 

斬り落とした

 

 

 

──────────────────

 

「俺…?死んで…ない?」

 

唖然として固まっている黒崎に維助は肩を優しくたたくと

全身の汗を吹き出した黒崎は後ろに飛び距離を離した

 

「死んだと思った…?まぁ死んだよ。さっきね」

 

「どういう…事だよ…ガッ!!

 

心臓に痛みが走る。

胸から斬魄刀が生えていて、維助がグリッっとねじ込むように刀を突き立てる

 

斬魄刀を抜いた維助、バタッっとその場に黒崎が倒れ

 

また、起き上がる

 

()()()()()()()()

 

幻覚…?ちがう、痛みは…今日は体に残ってる

震える手でギュッっと胸元を握りしめ維助に振り返る

 

「また死んだね。」

 

「なに…した」

 

「これだよ」

懐から取り出したのは腕時計のような形の機械

 

「これは結界機器(けっかいきき)*1。空間凍結もこの原理を使って行われてるんだ。これは俺が百年ぐらい前に開発した機械。

まぁ簡単に説明すると…膨大な霊力と引き換えにボタンを押してもう一度押すまで、または時間が切れる霊力が切れるまでに行った使ったやつの()()()()()()()()()にする機械。」

 

一歩一歩と、黒崎に近寄る維助。

 

「ボタン押して万引きして飯食ったとしても、もう一度ボタン押したら万引きしたことも飯食ったことも無かったことにできる。

昔は自分以外の記憶も消えるようにしてたんだけど、これは

()()()残してる。死んだ恐怖も記憶も…残るでしょ?」

 

あの時───浦原喜助が黒崎の斬魄刀の名を聞くために行ったように、本物の殺気。

 

「(ころされる!!殺されちまう!!!!)」

 

「逃げるの?いいのそれで」

 

また、何度も__何度も

 

___死を経験する

 

「うわぁぁぁ!!!!!」

 

己の腕が切り落とされ、地面に転がるが、次の瞬間には何事も無かったかのように腕は戻り痛みも血も残っていない

 

「死なない為に努力してきたんでしょ?人間ってのは1度トラウマを抱えるとまた同じことが起こらないように警戒心が上がり、また防衛本能も…ね」

 

ゴンッっと音を立てて維助の拳を受けた一護が壁に埋まる…が

「ほら、今度は大丈夫だったね。胸に穴あかなくて良かった良かった」

 

「てめぇ…」

汗を流した黒崎が斬魄刀で受け止めていたのだ。

 

「死なないために死なないように、努力する。死ってのを間近で感じれるこの機械、重宝(ちょうほう)してるんだよね。まぁあんまり使いすぎると精神壊す人が現れるからあんまりポンポン使えないけど」

 

イカれている。修行で本気で刺しにかかってくる浦原喜助なんぞ優しく感じるほどに。イカれている。そう思った

 

傷は治るにしろ記憶はのこる、腕が足がなくなって、胸の痛みも、首も___

 

反射に首に添えられた刀を弾き返す。

刀だけではない、拳や足も致命傷になる威力を持っている。

精神を研ぎ澄ませ、隙を見せるな、

隙を見せた瞬間には___

 

「がはっ…!!」

 

 

───()()っている

 

 

ぜぇ…っと、浅い呼吸を繰り返す一護、考えるよりも先に身体が動くようになる。

 

避けて弾いて転がって___

 

死にたくないという強い思いが__

 

─────────────

 

「うん、さすがだ」

さすが才能マンの一心の息子。

 

息子の一護も才能がある、無意識下の警戒や反射も早くなっている。

この機械は向いているやつと向いていない奴がいる。

向いていないやつは精神が弱いやつ。

 

戦いが怖くなり社会復帰が望めない状態にまでなってしまうことも。

逆に向いてるやつの力の向上はすごい

 

死にたくないという強い思いが、自分自身をも強くする

 

「はい。おしまい、もういいよ」

 

「はっ…?」

警戒からか俺にまだ斬魄刀を向ける一護

 

「もう何もしないって。ほら本当に捕まえる気なら機械なんか使わないからさ。俺はさ強いやつをどうこうするのって好きじゃないんだよね。強いやつは俺とまともに戦える相手になってくれるかもしれないし…ほらほら、もう何もしないって」

斬魄刀を手放して両手を上げると

 

ため息を吐いてその場に蹲った一護

 

「ごめんねー、怖かったね。はいこれ鍵。卍解習得するんでしょ」

しゃがんで一護の前に鍵を置くと、顔を上げた

 

「…いいのかよ」

 

「いいって何が?」

 

「お前は…規定側ってやつじゃないのか」

 

「うーん、そうだね規定側だけど、夜一さんが尸魂界に来ていて、そっち側にいるんなら俺もそっち側だ」

 

訳わかんねぇ…っと言いながら立ち上がって鍵を受け取った一護

 

「じゃ()()()()()

 

 

───────────────

 

 

卍解一日目が終わって温泉に入っている一護

 

「あちこち身体がギシギシいってる…はぁぁあ…」

 

短い時間だったとはいえ、訓練が役に立ったのか、危機察知能力とそれを避けるまたは受ける能力が上がった一護。

 

黒猫の状態で一緒に温泉に入っていた夜一が口を開いた

 

「それにしても維助も無茶な修行をする」

 

身体よりも精神に来る修行…

 

「もう、浦原さんとの修行のほうがよっぽどマシだったぜ…」

 

「どっちも浦原じゃが「つっこむなよ」」

 

「夜一さん、維助さんが死神ってことはやっぱり浦原さんも死神なのか」

 

「ん?なんじゃ喜助のやつ言っておらんかったのか…

 

先代護廷十三隊 十二番隊隊長___そして技術開発局創設者にして初代局長を務めた男じゃ。」

 

「浦原兄弟ってなんなんだよ…」

 

「あやつらは似たもの同士じゃからのう」

 

っと懐かしむように天井を見上げる

風呂にあがり、一護は一日の疲れからか爆睡をかましていた

 

 

 

「……維助」

 

 

 

 

 

 

 

「呼んだ?」

 

ビクッ!!!っと肩が上がる

 

懐かしい気持ちになり名を呼んだだけなのに…

ゆっくりと後ろを向くと目が合う

 

 

「いす…け」

 

100年前と違い、袖のない羽織を着た維助

 

「久しぶり夜一さん、勉強部屋は俺と喜助が作ったんだよ?俺が来てもおかしくないでしよ?」

 

「儂は…」

先に目を逸らしたのは夜一で維助に背を向ける

 

 

「夜一さん」

優しい声。100年前に聞いた__声。

 

ぐっと涙が出そうになるのをこらえる

 

「夜一さん」

 

もう一度声をかけると震える拳を握りしめた夜一

 

「お主は、自分を忘れて幸せになってくれと言うておった。じゃが儂は維助の事を忘れたことなど1度もない」

 

振り返って維助の方を向いた夜一は目に涙をためていた。

 

「俺は最低なやつなんだよ。やりたいことがあるからここ(尸魂界)に残った。夜一さんは地位を捨ててまで現世に行ったのに俺は、やりたい事のために残ってしまった。こんな最低なやつ忘れてくれていい」

 

夜一はむつとした表情をして___

 

バシッっと維助の頬を叩いた

 

唖然としたように己の頬を抑える維助

 

「儂も!儂のしたいようにする!!儂はお主を忘れない!!例えお主が儂以外を見ようとも、儂は忘れぬ!」

 

ポロッっと涙を流す夜一は、維助に強く訴えかけた

 

「付いてこなかったからと喜助も儂も恨んでおらぬ。お主が好きなように自由にしている時の姿が好きじゃからの。儂の方こそ、お主が支えてくれて手に入れた当主と隊長、総司令官の座を捨て去った事の方が心残りじゃった!」

 

「そんなこと気にしなくてよかったのに。俺はなんとも思ってないよ。なんなら夜一さんの後を継げたことを誇りに思ってる。

じゃあお互いに悪かったってことで…仲直りしよ」

 

っと、優しく夜一が握りしめていた拳を開くように触れると

 

ギュッっと、夜一が維助の首に腕を回した

身を少し屈めて維助もまた夜一の背中に手を回した

 

「ずっと…ずっと…お主の事ばかり考えておった」

 

肩に顔を埋めて羽織が涙で濡れていく

 

「俺も…黒猫見ると夜一さんを連想しちゃって」

 

なんじゃそれはっと呆れたような顔をして…

ふはっ!っと吹き出すように笑った

 

「久しぶり、夜一さん。元気そうでよかった」

 

「お主も…元気そうでよかったぞ」

 

 

 

────────────

 

「ってことで、俺も卍解の習得手伝いに来たよん、俺霊力沢山あるからさ〜休まずにできるね」

 

転神体の維持に必要な霊力を俺が肩代わりする事になった。

 

「嘘だろ…」

っとげっそりしたような一護。

 

「んで、夜一さんとそんな近いんだよ」

と、指摘される

 

「えぇ?そうかな」

夜一さんは俺の腕に絡むようにしてくっついている。

 

「儂と維助は許嫁じゃからのう。近くても問題あるまい」

 

「へぇ…いいなず…け?」

嘘だろ?っというようにこちらを見てくる

 

「いやぁ、婚約者っての元…じゃないですね。はい。」

元っと言おうとしたらギロッっと睨まれた。

 

 

 

*1
16話で喜助か勝手に使ったもの



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応えを聞こうかの話

 

 

「応えを聞こうか…浦原維助」

 

「はっ、引きこもりはもう終わり?惣右介」

 

俺が居なくなると騒ぎになるので(特に砕蜂)

1時間2時間ぐらい勉強部屋をあけて歩いてたら。

霊圧を感じて振り返る

 

「見られたらどーすんの」

 

「大丈夫さ、僕の姿は君の部下に見えているからね」

 

っと不敵に笑う

 

「惣右介、隊長の座まで捨てて…どっか行くつもりか?」

 

「そうだね、新たな世界を生みだす為に必要な場所を用意しておいたんだ、もちろん君用にもね」

 

「ふぅん。そりゃ残念」

 

「…と、言うことは来てはくれないのかい」

 

「そうだね、現状を捨ててまでそっちに行くメリットが見当たらない。」

 

すると分かってたように口角を上げた惣右介

 

「そうだね、100年前から薄々と感じてたさ。君の内側の黒さは__ね。でもいいのかい?私が居なくなったら君の機械を試してくれる奴は居なくなってしまうよ」

 

「うーん、それはそれで困るんだよなぁ」

危ない機械は惣右介に試させてたけど、他の人にはなぁ、密告されたり見られたりしたら嫌だし。

 

「ふっ…君は私とは違うやり方で世界を変えようとしてる。君と私は一緒だ、違うのかい?」

 

「何言ってるかわかんないなぁ、含んだ言い方はまどろっこしいよ。」

俺は説明は苦手だけどっと前置きして惣右介の目を見た

 

「俺は世界を変えようだなんて思ってない。俺は俺の好きなようにやってる、その副産物として少し世界が変わってしまうだけ。より良い世界にしたいとか、そんなことはこれっぽっちも思ってないよ。ドローンだって表向きは流魂街偵察用とかだけど俺がかっこいいって思ったから作っただけだしね。俺は歴史を作り歴史になる。悪いけどそっちに行ったら俺はこっちで進化が出来なくなる。って事でその誘いは丁重にお断りするよ」

 

「そうか…残念だ。まぁ君の力がなくてもやり遂げてみせるさ…、もし私が天に立った時__君は必然的に私のものとなる。君を超える力を得てこよう」

 

「はっ、そういうのは女の子に言われたいものだね。俺に今度こそ勝てるといいな、惣右介。俺は楽しみにしてるよ」

 

踵を返した惣右介が帰っていく。

 

めんどくさい工程を得て「楽」を手に入れる

機械とは進化とはそういうものだろう?

 

めんどくさい工程(信用と信頼)___この百年の工程を無駄にしてまで俺はそっちには行かないよ。

 

俺は俺の好きなように出来れば__それでいい。

 

 

__________________

 

「およ、恋次?」

 

「先生!?」

 

っと驚いたような表情でこっちを見る恋次、いや驚いたのは俺だが?

勉強部屋に戻ると恋次と鉢合わせしたのだ。

 

「維助!」

っと、崖の上で夜一さんが声をかける。

 

「はいはい、変わるよ」

 

「悪いの」

転神体の手網を変わる

 

「なるほどな、先生も絡んでたのか」

っと、納得したような恋次

 

「言っとくけど最初からじゃないからな」

 

斬月と戦っている一護を見ながら恋次に訂正しておいた。

 

「どっちも同じだろ」っというつぶやきが聞こえたけど無視しといた。

 

「そうじゃ維助、朽木ルキアの処刑が明日(あす)になった」

 

「そりゃ急だね。俺蝶連れてないから知らんかったわ」

 

「じゃろうと思ってな」

 

「紫流もどっか行くし…ったく、」

 

っと頭を搔く恋次

 

「へぇ、紫流どっか行ってんのか」

 

「あぁ、一護達が来てから見当たんねぇんだ。まぁ勝手にどっか行くのはいつもの事だが…あいつルキアの事心配してたから暴れたり早とちりすると思ったんだけどな…」

 

「まぁ紫流なら大丈夫でしょ。」

紫流は熱くなる性格だけどそこまで馬鹿じゃない。

多分

 

恋次は斬魄刀の具現化には成功しているがまだ屈服出来てないらしく、端の方で斬魄刀とやり合い始めた、騒がしいな。

 

─────────────

 

しばらくして伝令神機が鳴る

 

「はい、維助でーす」

 

”『維助様!!どこにおられるのですか!もうお時間でございます!双極へ出立のご用意を!!』”

 

「うわ、もうそんな時間?わかった。そろそろ行くわ」

 

もう朝になってたらしい、やっぱり勉強部屋は時間が分かりにくいからいけない。

 

「じゃあ俺はそろそろ行くわ、夜一さん()()()()()

爆睡している一護を一目見て夜一さんに頼んでおく

 

「よいのか、お主から砕蜂に説明した方が早いじゃろうに」

俺が夜一さんに頼んだこと、それは砕蜂を止めて欲しいという話だ。

 

「いや、砕蜂は勘違いしてそれを訂正し続けても今だにあんなかんじで、夜一さんと喜助を恨んでる。ちゃんと当人同士が話した方がいいだろう」

 

「仕方ないのう…」

っと言いながら俺を見送ってくれた

 

「じゃ俺も行きます」

 

「恋次…。白哉坊ちゃんは強いぞ」

っと言うとハッっと笑う

 

「知ってますよ先生の弟子ですからね。でも…だからって臆する理由にはなんねぇ、俺が隊長を止めます」

 

っと別方角に走って行った。

 

「さてと、さっさと行くかね」

 

_______________

瞬歩で目の前から消えた維助

 

「……あやつ百年前の儂と同じぐらいの速さになったの…それにしてもこの儂をこき使うのは維助と喜助ぐらいじゃの」

 

”『兄サンは人を動かすのが上手いんスよ。さらっとね。普通の人からすれば操られてるのも分からないほど__自然にね。それっぽい理由をつけるからタチが悪いんス』”

 

100年前そう言っていた喜助の言葉を思い出す。

 

「全くじゃの…維助。」

 

────────────

 

閃花(せんか)__回転をかけた特殊な瞬歩で相手の背後を取り刺突で鎖結(さけつ)魄睡(はくすい)を破壊する…あんたの得意技だ」

 

阿散井恋次は、朽木白哉と対峙していた

 

「先生のおかげでようやく体が慣れるまで追いついた、朽木隊長…!その剣で俺は殺せねぇ」

 

恋次のその言葉にふっと笑いをこぼす白哉

 

「滑稽だな、師匠に少々指南(しなん)を受けただけでこの私の剣を凌いだつもりか…私が得意としているものは閃花だけではない」

 

「っ…!!」

殺気と霊圧に身の毛が逆立つ感覚に襲われる

 

 

 

───受けるが良い   

 

          これが師匠から受け継ぐ抜刀術、

 

 

一瞬…()()()と同じ感覚。

強い強い殺気、初めて院生の頃。維助に刀を向けた講義、手も足も出なかった。

剣すら交わしていないのに殺気だけで負けた。

 

あの時なら動けなかったであろう。

 

俺は___死なない為に。ルキアを死なせない為に…!!!

 

「先生よりも遅せぇ!!!」

 

副隊長として白哉の刀を見続けた恋次だからこそ出来る受け技。

足の踏み込み方も刀の振りのくせも__

 

隣で見続けていた__!

 

「(絶対に__左下から右上に斬り上げる_逆袈裟(ぎゃくげさ))」

 

キィンっと甲高い金属音が響く

酷く重い、霊圧の衝突で恋次の手に亀裂が入り血が流れ出す

だが斬魄刀から手は離れない。

 

 

 

「なに…?名前を呼ばずに斬魄刀を__」

 

始解している蛇尾丸で抜刀術を受け止めた。

見えてはいない、だが来る場所に斬魄刀を構えただけ__。

 

 

「あんたを超えるぜ、朽木白哉!」

 

 

 

__

 

_____

 

狒狒王蛇尾丸(ひひおうざびまる)

 

 

「もう一度言うぜ__おれはルキアを助けに行く」

 

卍解した恋次の刀が白哉に向かっていく

 

「卍解というだけの圧はある。だが__幕引きだ」

 

散れ__千本桜

 

白哉が千本桜で蛇尾丸をバラバラにする__

いや、したはずだった。

 

バラバラになった骨は結合し元の形に戻る

 

狒狒王蛇尾丸(こいつ)刃節(じんぜつ)は俺の霊圧で繋いでる。

何を驚いてんだ?千本桜を全て(かわ)しただけのこと…

全て見えてる…!幕を引こうぜ俺と…あんたの戦いにな」

 

片膝をついた白哉は立ち上がりふとわらう

 

「卍解の欠点は霊圧に比例したその巨大さにある。刀剣としての常識を超えた形状と巨大さゆえにその動きの全てを完全に把握するためには卍解を会得してなお、何十年もの鍛錬が必要だ。恋次、貴様には卍解は早すぎる。

 

手加減は終いだ___恋次」

 

斬魄刀を下に向けて呟く

 

「っ…!」

 

「私にも卍解があるということを忘れてはいまいか?」

 

 

 

 

__

 

_____

 

散れ千本桜景厳(せんぼんざくらかげよし)

 

 

 



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処刑が始まる話

途中までダイジェスト


 

双極に着いたとき、強い霊圧の衝突を感じとった

 

恋次と…白哉坊ちゃん。

あぁ、卍解を使ったのか。

 

さて__

 

「維助様」

俺の隣に立つ砕蜂1人で待たせてたようで悪い事をした。

 

「まだルキア来てないのか。ってか集まり悪いな」

 

何人かの隊長格が見当たらない。

冬獅郎まで居ないのは珍しいな

 

そのうち、見知った霊圧に振り返る

 

「坊ちゃん」

 

「…」

俺をじっと見たあと、処刑台を見上げた

 

「緋真にも止められた」

 

「…そうか、お前はどうしたいんだ」

 

「……」

白哉坊ちゃんは何も答えなかった。

恋次の霊圧はまだ残ってる。殺しはしなかったようだな。

 

「お前の好きなようにすればいい」

 

ルキアが連れられ鎖に繋がれる

 

「最後に言い残すことは?」

俯いていたルキアが顔を上げた

 

「…ならば…一つだけ

 

一護達を無事に現世に返してあげて欲しいのです。」

 

すると総隊長が頷いた

 

「お主の願い通り処刑が終わったアカツキには、旅禍どもを無傷で帰らせてやろう」

 

「あ・・・ありがとうございます」

 

卯ノ花隊長が話してるのが聞こえた

 

慈悲___ね。

 

双極を解放せよ

 

膨大な霊圧が解放され双極の矛が変化していく

 

ルキアは抑えられ浮き上がる

 

白哉坊ちゃんは目を伏せていた

 

燬鷇王(きこうおう)双極の真の姿

彼がルキアを貫く___

 

はずだった

 

「一護・・・?」

っと、ルキアの声が聞こえた

 

双極の霊圧に隠れて来たのは一護

斬魄刀1本で止めた__。

 

そして、浮竹隊長と京楽隊長が四楓院家に伝わる道具を使用する

夜一さんあんなのいつの間に渡してたんだ。

 

そして一護が双極を真っ二つにしてルキアを小脇に抱えていた

 

ふは…っ…ここまで成長が早いとは。

成長速度に関しては俺より上かな

 

刀を握って一年未満……さすが__。

っと考えていると

「維助様!!」

止めろと言うのか、砕蜂が俺に向かって叫ぶ

 

がっ…!!

 

だが、砕蜂は首根っこを捕まれ吹っ飛ばされる

吹っ飛ばしたのは夜一さん

 

任せたよ夜一さん。

 

「ふは、傍観かい?維助君」っと、笑いを零し俺に振り返る京楽隊長

 

「さて、どっちに肩入れしようかなってね」

っと肩を竦めると、笠を上げてこちらに向けて笑いかける

相変わらずだという呟きが聞こえた

 

「浦原維助、ここで待機せよ」

 

ドンッっと重い霊圧

 

待機命令を出したのは総隊長で、京楽隊長と浮竹隊長は遠くに離れた

 

さて…一護と白哉坊ちゃんが戦っているし。

夜一さんと砕蜂…

 

しばらく傍観するか。

 

________________

 

「おやめ下さい!白哉様!!」

 

「緋真」

 

「ゴホッゴホッ…」

咳き込む緋真に寄り添う白哉

 

「お願いします…ルキアを…ルキアを。」

 

首を横にふる白哉

「ならぬ、掟は掟、死神となった以上掟を破れば罰せられる」

 

「…ても…っ」

ぎゅっと拳を握る緋真

 

「当主様、お時間ですご出立の用意を」

と使用人が呼びに来たのを聞いて立ち上がる。

「あぁ」

 

緋真を一見し踵を返す白哉

 

「お願い…どうか…どうか…」

悲痛な声を背に__

 

______________

 

天鎖斬月(てんさざんげつ)

 

卍解した一護と卍解した白哉。

一護に虚の仮面が現れるが青い光に包まれ消え去った。

 

破道の六十三雷吼炮(らいこうほう)

 

黄色い光線が一護に向かっていく

「効かねぇよ!」

刀でそれを受止め__閃光は消え去る

 

 

「私の鬼道を斬った……?いや違うな()()したのか」

卍解した一護の細身の斬月にはバチッっと雷のようなものがまとっていた

 

素早い動きの一護が白哉の後ろに回る

 

「その手はもう見たぞ、小僧」

刀を受け止めた白哉に、一護はニヤリと笑う

「見てねぇよ」

 

「なにっ……」

 

バチッっと雷電が走り白哉が一護から離れる

 

一護がそれを逃さず黄色い雷の斬撃を放つ。

「ぐっ……」

袖布を掠め避ける白哉はふと思考を回す

 

「(卍解としての戦力全てを小さな刀に凝縮することで超速戦闘を可能にした卍解ではないのか……?さっきの斬撃は霊圧__いや違う。

()()()()()。吸収した鬼道を斬撃として放つ__)

 

それが貴様の全てか__小僧」

 

何度も通じる技じゃない、得意の鬼道も使わずして白哉は戦える。

傷が増えたのは一護の方だった。

血を流し息が絶え絶えの一護。

 

一護と対峙していた白哉は手を止めた

それに眉をひそめる

 

「もうしめぇかよ」

 

「なぜ…何故貴様はルキアを助けようとする」

 

「はぁ?」

いきなりなんだと眉間にシワがよる

 

「逆になんで助けねぇんだよ」

 

「罪があるものは裁かなければならぬ、それがだからだ。我ら朽木家は四大貴族の一つ、我らが守らず誰が掟を守る」

 

「知ってるぜ、ルキアの実の姉であんたの奥さん」

その言葉にピクっと白哉の指先が動く

 

「あんた、そのすげーお貴族様と流魂街の住民との結婚はご法度なんだろ。その掟を破って無理やり結婚した。あんたも守ってねぇじゃねぇか、掟を。

俺はいいと思うぜそういうの、俺は掟と戦う。恩人が殺されるのに黙って見てられるかよ。あんたも…掟と戦えよ1度や2度破っても一緒だろ」

 

深く息を吸った一護

 

「死ってのは本当にあるんだ、消えちまうんだよ。あんたら死神は死んだ奴らばっか見てるから感覚薄いかも知んねぇけど。

死ぬと___後悔するんだ、何も残んねぇんだ」

 

 

その言葉に、ふっと笑った白哉

初めて見る笑顔、それは優しい顔をしていた

 

「私はもうルキアを追わぬ。この勝負兄の勝ちだ。黒崎一護」

 

「っ…!!俺の勝ち?」

一護は勝利を噛み締める

 

────────────────

 

白哉坊ちゃんが去って一護がふらりと倒れた

 

「わぁぁあ!黒崎くん!?って浦原さん?」

この声は__

 

織姫ちゃ〜ん

 

織姫ちゃんに抱きつこうとしたらスッと横から腕で制される

 

「なんだよ雨竜ちゃん、邪魔すんなよ〜」

 

「ちゃん付けはやめないか。それに女性にそうベタベタするのはどうかと思うが」

 

雨竜ちゃんのせいで倒れた一護の元に行ってしまった織姫ちゃん

まだベタベタしてないつーの

 

その瞬間頭に響き渡る声

 

───天挺空羅(てんていくうら)

 

『護廷十三隊各隊長及び副隊長、副隊長代理各位。緊急伝心です』

 

伝令神機は音にかき消されるけどこれは脳内に直接伝える鬼道。

卯ノ花隊長の所の副隊長さんか。

 

 

そして藍染の事が伝えられた、四十六室の皆殺しも__

さて、藍染。きっとここに来る

 

だが…それよりも先に知らない霊圧を感じとった

 

『それからもうひとつ!!双極の丘に__青い刀を携えた……』

そこで声は聞こえなくなる……

──瞬間上から重い霊圧が降ってきた

落下地点は織姫ちゃんと一護の所

 

 

すぐに駆け寄り斬魄刀で弾き返す。

 

「嘘だろ…?」

っとその霊圧の正体を見た恋次の絶望したような声が聞こえる

 

 

 

 

 

 

俺の目の前に立つ。青い刀__

 

大太刀のようなデカい()()を構えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────(ヴァ)

______(スト)

________(ロー)

_________()

___________

 

 

「うらはら…さん」

重い霊圧に顔を歪ませる織姫ちゃん

 

「大丈夫、俺が守るからさ一護のそばにいてあげて。俺の間合いにいれば大丈夫」

 

俺はそいつに切っ先を向けた

 

「俺の名は浦原維助、俺の相手をよろしくな」

 

 

※維助描写注意

 

【挿絵表示】

 



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ヴァストローデの話

 

「俺は浦原維助、よろしく」

我流の構えをした維助がニヤリと笑う

 

ヴァストローデとは、虚の中で1番上に位置する虚の呼び名である。

 

大太刀を構えた少し小さなヴァストローデ。

ボサボサの白髪に目元には目隠しがされていて顔はよく分からない

 

「まっ……先生!」

何かを言いかけた恋次は次の瞬間の轟音によりかき消された

 

霊圧同士の衝突__

地が割れヒビが入っていく

 

「織姫ちゃん、なんか守系の技使えるんでしょ?悪いけど皆のことよろしく」

「は……はい!」

押しつぶされるような霊圧に本来なら怯えるはずなのに何故か維助の後ろは安心感があった。

 

「うらは……らさん……俺も加勢を……っ」

地面に這いつくばっている一護、白哉との戦闘で疲弊している

 

「ばーか、その状態で戦えるかよ。援護はいらない休んどけ」

 

次の瞬間地面を蹴りあげた維助は空中で刀を軸に回転し上から叩きつけるように振り落とした

それを大太刀で受け止めるが、地面が耐えきれずに割れる

 

「なっ……崖が……!!」

 

足元ギリギリで崩れた崖に青ざめる雨竜

維助は被害を考えヴァストローデの腹に膝を入れ空中に吹き飛ばす

 

「あんた戦闘慣れしてないだろ中級より弱いぞ」

斬魄刀を肩に背負いトントンっと叩く維助。

 

 

違和感__そう、違和感を覚える。

小さな人のような体に収束した霊圧は底知れず。

力はただのヴァストローデに類似しているが、知能が見当たらない。

本能のままに暴れる下級の虚のよう

 

 

それに死覇装を着ていて___まるで死神のような__。

 

虚が死神化したもの……か?

それとも平子隊長……平子さんと同じ死神が虚化したものだろうか。

 

「まぁ、それ(霊刀)を持ってるってことは惣右介関連だろうなぁ。

でも相手が悪かったな。さようなーら〜」

刀を振り下ろす_

 

──瞬間ピタリと手が止まった

 

「どうしたの恋次」

恋次の眉間スレスレで止まった斬魄刀に恋次は冷や汗を流す。

 

恋次が虚の前に手を広げて維助を止めたのだ。

 

「先生!こいつ……ただの虚じゃない!!こいつは……」

 

ハッっとした維助が恋次の胸ぐらをつかみ後ろに引っ張り硬化した足で虚の刀を止めた。

すぐに距離を置いて恋次を立たせる

 

「なんだ、あいつ知ってんのか…?」

 

「一瞬しか見えなかったんスけど……あいつの手甲に__

 

 

朽木家の紋様が

 

「…………まじ?」

コクンっと頷く恋次。

 

そんなの全然気にしていなかった、維助はふと__ひとつの可能性が頭を()ぎる

 

「あの身長……紫流と同じぐらいだよな。」

「えっ?」

恋次は虚を見つめる

 

 

「紫流から連絡は?」

 

「ない……です」

 

「まさかあれが紫流だったりする?」

 

「……」

黙りこくった恋次。

 

髪色も霊圧も別物……紫流には見えない。だが__

 

「仕方ねぇ目隠しとるか」

 

「なっ……無茶ですよ!って早!」

 

維助は刀を仕舞うとヴァストローデに向かう、

大太刀を薙ぎ払うようにして横に振ったヴァストローデ。

だがその刀を腕1本で止める

 

ギチギチっと筋肉が軋む音がヴァストローデから聞こえてくるがお構い無しに維助は顔を鷲掴みするように握ると目隠しを剥ぎ取った。

 

「……」

拳を振るわれその手を離し恋次の隣に戻る

 

「おいおい……まじかよ紫流」

緋真ちゃんにも白哉坊ちゃんにも似た目。間違いない紫流がそこにいた。

焦点は合っておらず、まさに死人の目

 

───────────────

その瞬間パチパチパチっと拍手が聞こえた

 

「…惣右介」

 

「さすがだよ、最上位大虚の斬撃を腕1本無傷で止めるなんてね」

 

俺の方を見上げる惣右介はニヤリと笑う。

 

「なっ……ルキア!」

そう声を上げたのは恋次で

惣右介の傍にはルキアがへたり込んでいて、惣右介の霊圧に当てられていた。

 

「恋次。ルキアをよろしく俺はこっち何とかするから」

 

向かってくる紫流を吹き飛ばす。

っと、ぐっと、紫流を見たあとルキアをみて恋次はルキアの方へ飛んでいく。

 

さて……どうするか。殺す訳にも行かない。

これが平子隊長と一緒のやり方で虚化したなら俺はお手上げ、喜助に聞かなきゃわかんねぇ。

 

仕方ねぇ──()()()()()

 

俺は向かってくる紫流の霊刀を抑え引っ張りながら俺は相手をひっくり返し腕を足で押さえつけて首に腕を回す。

首の骨を砕かないように気をつけながら締め続けると暴れる暴れる。

だが赤子のように軽く抑え続けるとふっと力が抜けた。

 

あれ、死んでないよな?って思ったけど大丈夫だったらしい。

 

紫流を俺の帯で縛り付ける、まぁこんなの蜘蛛の糸のようにちぎられるだろうけど念の為念の為。

織姫ちゃんの隣に下ろす。

 

「いやぁ手こずった手こずった」

 

「君……尸魂界一の剣術使いなんだよな……?ほぼ力でのゴリ押しじゃないか」

っと呆れたような顔をする雨竜ちゃん

 

「いやぁだって斬ったら傷ついちゃうじゃん。切り傷ってお風呂入る時痛いんだよ」

 

「そういう問題なの……か……?」っと頭を抱えた雨竜

 

「さて、惣右介。ルキアを離しなよ」

 

「ふっ……いいさ離してあげよう」

首輪を掴んでいた手を離すと、ルキアの()()()()()()()

 

惣右介の手には__なるほどな

 

「それが崩玉……ね。喜助の」

 

「そうさ、君は初めて見るのかな」

 

地面に這いつくばっていた一護が唸る

 

「浦原さんの……?」

うわ、腹パカってきれてるじゃん瞬殺されたのか。痛そうあれ風呂しみるよ

 

「死神の虚化……限界を超える力を手に入れることが出来る。浦原喜助が作ったのは瞬時に虚と死神の境界を取り払う物質。名は__崩玉。彼も危険なものだと判断したんだろう。破壊を試みたが失敗した__いずれ彼が考えた方法。崩玉そのものに防壁をかけ他の魂魄の奥底に埋め込んで隠すという方法だ」

 

ふと、ルキアに目を向ける

 

「もう分かるだろう?その隠し場所に見つけたのが朽木ルキア……君さ。」

 

すると俺の方を見た惣右介

 

「最初は()を隠し場所にしようとしたんだが、それでは()()()()()()()()。そう考え浦原喜助は霊力を分解し続ける義骸を朽木ルキアに与え人間の魂魄に成り下げて崩玉の行方を永遠にくらませようとしていた」

 

リスク……ねぇ、俺が悪用すると思ったのか。それとも……まぁ喜助の考えることは何となくわかる、恐らく色々考え想定できる全てをリスクと考えたんだろうな。

あと俺が崩玉を生産し始めないかとか考えたのかな。さすがにしないって。多分

 

「魂魄に直接埋め込まれた異物質を取り出す方法は二つしかない。双極のように熱破壊能力で外殻である魂魄を蒸発させて取り出すか、()()()()()()魂魄組成(こんぱくそせい)に直接介入して分離させるか」

 

そういえば俺に喜助が埋め込んだのはなんだったんだ……?*1

 

「これは君にあげよう、もう用済みだからね」っと投げられたものをキャッチする。

 

ふぅん、あいつ(喜助)魂魄に埋め込んだの取り出せないとか言いつつ作ってたんか。

 

「どーも、それで。紫流に何したんお前」っと親指で紫流のほうを指す

 

「まさか最上位大虚が失神するなんてね。私は君の研究から疑似的な霊刀を生み出した。周りの霊子を吸い取り溜め込む……だが、意思のある生物から溢れる霊子を吸い取ると霊刀に意思が宿るという性質を見つけたのさ。やはり君のように霊刀は上手く作れず魂魄の方が耐えきれなくなってしまうけどね」

 

 

「勝手に人の道具パクるのやめてもらっても??」

 

「意志を持った霊刀……それを魂魄に埋め込むと宿り主の力の魂魄環境と感情により変化する……!そう。そして朽木紫流は進化に成功したのだ」

 

「……へぇ進化ねぇ」

 

楽しそうに笑う惣右介

 

「そう、進化……彼の強さへの執着、強い憎しみに霊刀が共鳴し、魂魄が虚のように変化した_だがそれは虚であり虚てはない、死神であって死神でもない存在……まったく()()()()へと進化したのだ」

 

「とどのつまり、霊刀を埋め込んで実験したのね」

 

「ただ、成功したと言っても知性の問題や制御の問題なんかもあるからね、まだまだ試作段階……第1歩ってところかな」

 

シュッ__っと惣右介が消えすぐに現れる

 

気絶した紫流の襟を持って__

失神している紫流はダランっと力が抜けた状態で引きずられていた

 

 

「だが、調整するにも、もう霊刀は浦原喜助の技術を持ってしても外せないようだ。もう用済みだ、ギン」

 

ギンが脇差を構えた

なるほどね、道具は使えないから俺に渡したのか。

 

「紫流を殺すって?させると思うの」

 

「君は人に執着しない、利用する為に己のためだけに動く。助けられたから、恩があるから、瀞霊廷の為にという戯言を吐きながら腹の中は真っ黒……この私ですら利用する。私利私欲の為なら手段を選ばない君に__朽木紫流を助ける意味が?弟子の子だからなんて偽りの理由はいらないよ」

 

「はっ、俺をなんだと思ってんの?それに少し言葉が足りなかったな。紫流を殺すなんて_」

 

 

ふわりと桜が舞う__。

 

 

 

 

「白哉がさせると思ってんの?」

 

惣右介が片手に持っていた紫流は消える

 

「驚いたな__。私が斬られるとは……ね。朽木隊長」

 

己の手首に浅く皮膚が裂け血が流れるのを興味深く眺める惣右介。

 

少し離れた場所には紫流を抱えた坊ちゃんが立っていた。

 

「さすがは浦原維助の一番弟子。先程の阿散井くんとの戦闘は手を抜いてたようだね。」

 

「なんや、早いやん。見えんかったわァ〜」

っと呑気に目を擦る振りをするギン

 

スッっと自分の柄に手をかけた惣右介。だが__

 

「動くな、筋一本でも動かせば」

 

「即座に首を跳ねる」

 

夜一さんと砕蜂。お互いボロボロだが戻ってきたようだ。

惣右介の首筋に刀を添えていた

 

「そこまでよ、動かない事ねギン」

乱菊ちゃんも駆けつけ、ギンの首筋に刀を添える

 

そして総隊長や浮竹隊長京楽隊長も戻ってくる。

 

「終わりじゃ、藍染」

っと夜一さんが惣右介を睨みつけると

 

「終わり……ねぇ」

っと口角を上げる惣右介

 

その時__俺の伝令神機が震える

 

「空間裂决反応?」

 

近くで虚出現時にしか鳴らない反応が起きる

 

「!!離れろ砕蜂!」

 

上からの光線が惣右介らを包む。

なるほどね_もうすでに虚側についてたわけか。

 

上空の空には大きな亀裂が入り

そこからおびただしい数の大虚が顔をのぞかせていた

光線は反膜(ネガシオン)、外と中は干渉不能の世界。

つまりは何も出来ない。

 

「地に堕ちたか……藍染!」

 

一歩踏み出しギリッと惣右介を睨みつける浮竹隊長。

 

(おご)りが過ぎるぞ……、君達は()()()()()()。進もうとしない、現状に満足し進もうとしない。最初から誰も天になど立ってはいないのさ。

 

この停滞した世界の針を動かすには誰かが天に立たなければならない」

 

惣右介は髪をかきあげ、メガネを外しメガネを見つめた。

ギュッと、メガネを握る惣右介は口角を上げる

 

「そう……進もうとしない、歴史に名を刻み続ける__1人を除いて

 

そして下を見下ろし_俺と目が合うとふっと笑った

 

「しばらくの分かれだ。さようなら死神諸君、旅禍の少年__」

 

そうして空間は消え慌ただしく死神が動き始めた

 

「けが人を__!」

っとあっちこっち走る死神をかき分けて歩く

 

「坊ちゃん」

 

「師匠」

 

応急処置をされている坊ちゃんの腕の中には紫流が目を閉じていた。

 

「……特殊な睡眠薬を入れておくから暫くは大丈夫。紫流は俺が何とかする。しばらく任せてくれないか?」

 

「……」

坊ちゃんは名残惜しそうに俺に紫流を渡し、フラフラと4番隊に連れられて行った。

 

「京楽隊長」

 

「ん?どうしたんだい維助君」

事の顛末(紫流の状況)をだいたい分かってる近くにいた京楽隊長に話しかけた。

 

「しばらく俺10日ぐらい現世に行ってくる。総隊長に適当に言っといてほしい」

 

「えぇ、僕が怒られちゃうじゃないの……それに紫流くんのことでかい?」

 

おれはコクンつと頷く。

「このまま12番隊にバラされるのも阻止したいし。四十六室が殺され機能してないけど、そのうち復活したら紫流が処されるかもしれない。体制が全然整ってない今、何とかしてくるよ」

 

「そう,わかった君と僕の仲だしね。山爺には適当に言っておくよ」

 

「ありがとう、京楽隊長」

 

________________

 

一護以来だろうか現世に来るのは……

 

紫流は眠ったまま。一応他の魂魄に影響が出ないように霊圧遮断マントを被せている。

 

俺はそのままひとつの場所に降り立った

 

「ボロくさ……」

 

ボロボロの店の前。

玄関を軽く叩く____

 

*1
30話にて



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浦原喜助との再会の話

 

扉をコンコンっと軽く叩くと

 

「はぁい、今行きます」っと女の子の声が聞こえた

すぐに玄関が開き黒髪の女の子が顔を出す。

 

「どちら様ですか……?」っと首を傾げる。

 

この子……なんだろう人間じゃないな。

死神でもない……

 

「お父さんいる?お父さんじゃないか、なんか男の人」

 

「えっ……と……大きい人と。大きい人がいます」

 

「どっちもでかいのか、じゃぁ俺と()()()の方を呼んできて」っと言うと、コクンっと頷いて奥に行ったかと思うと

 

「はぁ〜い。どちらさん……で……すか」

っと、目を見開いた___

 

「よっ!喜助」

喜助と目が合う。

 

「兄サン??」

 

「なんだよ、そんな幽霊見るような顔して〜ほーらお兄ちゃんだよー!」

っと思いっきり抱きつこうと飛びつくと、ヒョイと横にズレて俺の顔面が柱に衝突した。

 

「本物だった」

っと、聞こえた。

 

俺は鼻を押えながら喜助に振り向く

 

「ばっかやろう、お兄ちゃんの抱擁避けるとか!」

 

「いや、その勢いで来られるとボクの背骨が折れるんス」っと静かに突っ込む

 

「久しぶり喜助。元気そうだな」

 

「兄サンは相変わらず胡散臭いっすね」

「馬鹿野郎、今のお前の方が胡散臭いわ」

 

下駄に甚平とか現代に浮きすぎだろ。

 

「まぁいいや、喜助早速で悪いけど__手伝ってくれや」

 

___________

 

地下の研究室みたいな所に寝かせた紫流。

両手両足を繋ぎなんか色々器具を持ってきた喜助。

 

「来て早々面倒事を持ってこないで欲しいんスけど……だいたいボク紫流サンと面識ないんスけど」

 

「学校とかの手続きした仲だろ?」

 

「どんな仲ッスか……直接会ってるのは夜一サンぐらいッスよ」

 

喜助が紫流から血液を採取する。

そして俺は喜助が作業してる間に事の顛末を話す。

 

 

 

 

「なるほど。霊刀はただ虚を抑える力ではなく。宿り主の状態や感情で変化していた……宿り主が虚の力を抑えようとしていた為。結果として真咲サンの虚化も黒崎サンの虚化も抑えられている……っと。んでなんで兄サンはあんまり興味なさそうなんスか?自分で作ったものでしょ?」

 

後ろ向いてるのになんで俺のことがわかるのか不思議である。

「ありゃ、分かっちゃった?」

 

っと言うと呆れたように振り返った。

「見なくても分かりますよ、何年いると思ってんスか」

 

そりゃ生まれた時からだもんなぁ

 

「興味が全く無いわけじゃないけど。そういう魂魄どうこうは喜助の得意分野だろ?魂魄を進化とかはなぁ……機械を取り付けてオンオフのスイッチ付けるならまだしも」

 

「相変わらず選り好み凄いっスね……」

 

「それに同じものは惣右介には作れない。あいつは頭はあるし鬼道系のものの操作は長けてるけど、機械は無理っぽいし。」

 

「へぇ……」

 

「紫流の持っていた大太刀の霊刀。あれは機械で霊子を集めてる訳じゃなく。霊圧吸収石を付けて俺の霊子収束機の代用として使ってる。それに纏わせるのも俺は機械で自動一定のスピードで威力でってきちんと調節できるけど、あいつのは無理だから、あんなに馬鹿デカい大太刀になってた。霊子の集結もまばらなせいで威力が出ない。」

 

「いやまぁ、そんな話されてもボク実際に見たわけじゃないんでよくわかんないんスけど」

 

相変わらず説明下手っすねぇ……っと言われてお前もなって言っておいた。

 

「いや、ボクは説明長いだけなんで」

 

「同じだろ、まっ結論から言うならあいつは俺と同じ霊刀は作れないし多分操れない。出来たとしてもただ似てるだけで穴はあるし量産はできない。俺は量産ができる機械を作れて全く同じに1mmのズレもなくできるがあいつは手作業。時間もかかるし埋め込んだものを取り出せないとなるとさらに時間がかかる……1年以内に作れても1本や2本__そんな脅威なものじゃないね」

 

「最上位大虚級を脅威じゃないって言えるの兄サンぐらいなんスけど」

 

足を組んでその上に頬杖をついた俺に眉を顰める喜助。

 

「正直残念なんだよね」

 

そういった俺に機械に向かって作業を再開した喜助。

愚痴を聞いてやるぞっていう喜助の体制だ。

 

「俺は講師として強いやつを作るために頑張って来たつもりなんだよ。俺が講師初めてから死神の死亡率も下がった。二番隊の危険だった四部隊の死亡率も下がりに下がった。院で始解が出来るやつも増えてきたし優秀な人材はどんどん成長して行ってる。けど__弱いんだ」

 

俺はため息を吐いて天井を見上げる

ゴウゴウっと換気扇の音と喜助の作業音が響く

 

「死ななくなったし少しずつ。少しずつ少しずつ成長はしてる、教え子は席官になってるし隊長格にも、大虚の討伐報告もあるし。殺気の耐性も受け身も防御術も反撃も、戦闘能力も上がってるのに……どうして弱いんだろ。

 

俺さ惣右介の霊刀の使い方見て……別にいいんじゃないかって思ったんだよね」

 

「……」

喜助は何も言わずに作業をする

 

俺は続けた

 

「皆の反応みてると、倫理に反してるみたいな顔するけど、まぁ今回の紫流みたいに無理やりやるのはちょっとあれだけど……。虚の力を抑えるどうこうみたいに利もあるし。それに目には目をって言うじゃん?もし惣右介が霊刀作ってきて紫流みたいにやばいことするならこっちも俺の霊刀使って対抗すればいいと思うんだよね。力ないやつでも技術ないやつでもスパスパ斬れるし。」

 

肺の中の空気をすべて吐き出すように深いため息が出た。

 

「でもまぁ、長年の勘だけど。みんな抵抗するんだよね、未知のものって怖いし惣右介のを見たら危険じゃないかとかリスク考えて使わないだろうな。

相手が拳銃を使ってきたらこっちはロケットランチャーで対抗……みたいにすればいいのになぁ〜」

 

「あまり力を持ちすぎると上の人がそれを制御出来ずに色々問題が起きるからッスよ。あまりある力は破滅をもたらしますし」

 

「まぁ……大地が滅ぶのが先かもな。」

 

「んで、話変わりますけど兄サン。尸魂界帰ったらどうなるか予想ついてんスよね?」

 

「まぁ……何らかの罰か尋問はされるかもな。けど今四十六室も居ないし。追放は出来ないと思うよ。()()()()()()()()尸魂界に不利益しかないしね」

 

「あっ、いいきるんスね」

 

「当たり前じゃん、俺がどれだけ外堀埋めたと思ってんの?伝令神機の改造生産の技術の権利は俺が全て握ってる。俺がもし尸魂界から追放されるとしたら俺はそれを全て消すか持ち去るわ。そうしたらどうなると思う?」

 

「そうッスねぇ……伝令神機という情報機関という便利なものが整ってる今、それが途端に無くなれば大混乱が予想されるでしょうね……便利なものに頼りすぎるとこうなるぞっていう本の1ページが作れそうッスね」

 

「いいように使われるだけは嫌だからね。ちゃんと設置式の機械にも俺の細工が施されてるし。阿近にも作れないと思うし……そういうリスクを考えたら多分謹慎ぐらいで済むんじゃないかな。外面はいいから俺。」

 

「自分で言うもんじゃないッスよそれ……」

 

「それに、惣右介という強大な敵ができた今。戦力を削る意味が無い。人工とはいえ最上位大虚を制圧したわけだし。

それに悪用されるものを作ったとか言われるのはちょっと無理があるよね」

 

「霊刀ッスか?」

 

「そ〜。ただ霊力ないやつでも戦える武器、かっこいい強い武器が作れないかなって思って作ったんだけど。

惣右介が改造するなんてねぇ〜でも、それは使用者がどうこうしただけで、製作者責められるのあんまりじゃね?」

 

俺は現世の文献を思い出した。

 

「現世で有名なノーベル。彼はダイナマイトを作ってお互いが滅亡する危険な兵器を作り。それを圧力として戦争を起こさせないようにした。

国を守る軍事力がお互いにあれば抑止力として働いて__ってね。

 

簡単に言えば殺傷能力を持つものを作ってしまえばそれは使用者によって使い道が変わるんだよ。

野菜を切る包丁で人を刺すのと同じ、野菜()を斬るために作ったのに、犯罪者(惣右介)が人を殺すのに使う。

 

それで生産メーカー側が怒られるのっておかしいよねぇ」

 

「まぁ、それとこれとは話は別って言われて終わりでしょうね。」

 

「言い訳考えなきゃなぁ〜」

 

「まぁ頑張ってくださいな」

っと、他人事のように言う。まぁ他人事なんだけど

 

「惣右介が黒幕だってわかってもう喜助の冤罪も解けたんじゃないの?いいじゃん戻ってくれば」

 

っと言うと呆れたような顔を向ける

 

「戻りませんし、戻れませんよ。ボクは虚化の研究だけじゃなく、追放される理由としては霊圧を遮断する義骸を作ってしまったせいなんスから。禁忌事象研究の罪でね。それに涅サンが上手くやってるようですし。ボクが行ったら彼激怒するでしょ?」

 

「そっかぁ……綱彌代がうるさいかぁ。まぁ涅が喜助に局長の座を譲り渡すわけないもんな」

 

「兄サンが追放される事になったらここに匿ってあげるんで大丈夫ッスよ〜」

 

 

「そーだな……そしたら現世と尸魂界の境界を無くす機械でも作るか」

っと言うと

 

「兄サンがそれを言うとシャレにならないんでやめてください」

ってガチで怒られた。

 

紫流を何とかして……尸魂界に戻るのかァ〜なんかめんどくさいな

まぁ反省してるフリでもすれば大丈夫でしょ。



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共同作業の話

 

「紫流はどんな感じ?」

 

「うーん……魂魄に霊刀が寄生してますね。根が張ってると言えばわかりやすいッスかね……無理に引き剥がそうとすれば魂魄が傷つきますし、恐らく無理でしょう」

 

っと、pcに資料まとめてる喜助

惣右介の言った通りだったな。

 

「さて__喜助久しぶりに共同作業といこうじゃん」

 

 

「懐かしいッスね」

 

ふっと、帽子を深く被って笑を零した喜助。

やっぱりお前の方が胡散臭いよ

 

───────────

 

「ん……ここは?」

 

「あっ、おきたー?紫流おはよん」

 

「あれ……お師匠さん?」

目を擦りながら起き上がる紫流

 

「あれ……お師匠がふたり……」

ぽやーっと俺らを見てそういった。

寝ぼけてんなっと言ってデコピンすると

 

イッタァァ!!お師匠さん!なにすんだよ」

っとおでこを抑えて涙目に

 

紫流の髪色は白のままだけど、それ以外は大丈夫そうだ。

 

制御装置大丈夫そうだね」

 

「そうッスね〜」

 

???っと頭の上にハテナを浮かべてる紫流に説明

 

 

 

「つまり俺の魂魄に制御装置を埋め込んだ……?」

 

「そっ!魂魄の維持と安定。つまり感情をむき出しにしても霊刀に飲まれないようにしたわけ!喜助が原理と仕様を考えて俺が作った。」

 

っというと自分の胸に手を添えてふぅーんっと言った実感無いんだろうな

 

「藍染隊長に呼ばれたのは知ってるけど、あとは全然記憶が無い。俺死神でも虚でもないの?」

 

っと言うと喜助が口を開く

 

()()()()()()()といいうより()()()()()()()の存在と、言ったほうがいいっスかね。ただの虚化だけでは話が済まないほどに__普通なら魂魄が耐えきれず消滅してもおかしくないんスけど……まぁ膨大な霊圧量とその耐久性はさすがは四大貴族ッスかね。崩玉の虚化ではなく、霊刀が宿り主の意志を尊重した結果、魂魄自体が虚と死神の境界を破り混ざりあう魂魄に進化した__って感じですかね」

ざっくり簡単に説明したんスけど。っと笑う喜助

 

「まだまだ未解明なことがあるので朽木サンの為に色々定期的に調べさせてもらいますよん。大丈夫大丈夫アタシ涅サンと違ってバラバラにせずとも調べられますんで」

 

「バラッ……!?つまり崩玉とやらも霊刀とやらも……あんたら浦原兄弟が一枚噛んでるってことか?」

 

俺と喜助は顔を見合せた

 

「「そー/だな/ッスね」」

 

「あんたら刺されても知らねぇからな!?」

っと怒り出す。

 

「大丈夫大丈夫、刺される前に殺すから〜」

「そういう問題じゃねぇ!つーか俺尸魂界帰れんのかよ」

 

「まぁ、紫流が望むなら俺が何とかするよ。権力あるし」

 

「いや、何とかしてくんねぇと困るからな!何とかしろよ!だいたいあんたらのせいなんだから!!」

 

「ごめーん」

「軽い!!」

 

「じやぁそろそろ俺戻るから。悪いけど喜助。紫流をよろしく」

 

「「ええ〜」」っと2人の声がハモる

 

「なんだよ……」

「こんなボロ屋に住むの?嫌なんだけど」

 

「ボロっ……!?アタシだって生活費かかるから嫌っす!」

まぁ夜一さんらの最低限の資金だけだもんな…

 

「はぁ?俺が住んでやるんだぞ?それがスイーツホテルでも取れや。」

 

「スイートホテルな。生活費は俺がだすからしばらくここに住んでくれ。一護が戻ってきたら相談していいから」

 

「はぁ、お師匠がそこまで言うなら……。喜助おじちゃん。住んでやるからにはいい部屋よこせよ」

 

「おじっ……!?なんでアタシだけおじちゃんなんスか!!兄サンの方が年上ですからね!?」

っとギャーギャー騒ぎ出す

 

「お師匠の方が若く見える。髭だよお前髭!髭剃れよ!あっ腹減った喜助おじちゃんなんかくれ」

 

っと言いながら勝手に出ていって恐らく飯を漁りに行った

 

はぁ……っと頭を抱える喜助

 

「夜一サンといい……四大貴族ってなんでこう自由なんスかね……」

 

「まぁまぁ、いいじゃんいいじゃん。喜助おじちゃん」

 

「殴りますよ」

ギロっと睨まれた。

 

「それに、なにあの女の子。趣味?」

玄関で出迎えてくれた女の子の話を聞く

「そんな人を幼女趣味みたいに……」

 

「いや、お前女の子にあんまり興味なかったじゃん?幼女趣味なら納得だな〜って。」

 

「ボクだって女性に興味ぐらいありますよ。失礼な」

 

「へぇ……じゃぁ彼女とか奥さんとかは?」っと言うと視線を逸らす。居ねえんだな。

 

「でもまぁハンサムエロ店主として通してるんで現世の女性(奥様)からは人気でしてぇ〜」

 

「人妻じゃねぇか。それにあれだろ子供の担任がカッコイイ〜っていうような感覚だろ?もしかして喜助お前童……「悪いっスか????」

 

まじかよ……夜一さんとかに手出さなかったのか」

 

「ほんっっっと失礼ッスね!!手なんかだすわけないじゃないッスか。流石にそこまで落ちぶれていませんよ。」

 

「それこそ聞くヤツ聞いたら夜一さんに失礼だからな??」

 

「人の愛する人にって意味っす!!」

 

「だがら拗らせて幼女趣味に_ゴフッ!

右ストレートが俺の鳩尾に入って俺は蹲る

 

いいパンチ入れるようになったな喜助……んで、あの女の子は改造魂魄?」

 

「近いけど違いますよん。あの子は被造魂魄。成長する……ね」

 

「へぇ。涅の所のネムって子みたいな感じか、あの子とはなしたことないけど」

 

「まぁ近からず遠からず……似て非なるものですけどね。」

 

「ふぅん。俺涅から聞いたことあるわ、無から魂を作り出す、夢のような計画……ってな。仮の入れ物に入れるような改造魂魄とは違う()。学び成長し替えがきかない存在。細胞分裂が成功したーとかなんとか阿近が言ってたな。」

 

「涅サンには内緒にしておいて下さいな。彼ボクを殺しに来そうですし」

 

「その口調じゃネムちゃんのこと知ってんのね。なんで尸魂界の事知ってんのかは聞かないでおくけど。そうだな、黙っておくよ。

命ねぇ……創造神みたいだな。もし人工的に人間が作れたら……ってね。」

 

カチャカチャと、紫流に使った器具を片付けている喜助を眺める

 

「俺やっぱりどっか大切な何かが欠けてるんだと思う。危機感とかそういうのじゃなくて。」

 

「なんスか急に」

 

「……多分俺はやろうと思えば()()()()出来る。技術力も、俺と橋姫がいれば__ね。多分尸魂界と現世の境界を無くす機械も作れるし、命を無限に生み出す機械も、霊刀の大量生産すらも、人間を永遠に生き長らえる存在にも改造できるはず。多分夜一さんや喜助が居なかったら俺はやってたと思うよ」

 

っと言うと手を止めた喜助。だが振り向かない

 

「そうッスね。きっとボクも兄サンも……似てるんスよ。ほんの少しの良心で止まってるだけ__でね。」

 

 

「新世界の神になるってか?」

 

「死神違いなんでやめてくださいな。」

っと突っ込まれる。

 

「さて、俺はそろそろ尸魂界戻るかね。逃げたと思われちゃ敵わないし」

 

「そうッスか、では行ってらっしゃい兄サン」

 

「あぁ、会えてよかった。定期的に遊びに来るから今度は現世の美味い飯でも用意しとけ」

 

「はいはい、寿司ッスよね。用意しときますよん」

そう言って笑った喜助の耳に俺が卒業祝いであげた耳飾りが揺れていた。

 

外さなかったんだなぁ。

 

 

──────────────

 

「浦原維助、なぜ朽木紫流を無断で現世に送った」

 

ゴンッっと強く地面に杖を立てる総隊長の前に俺は立つ。

俺が帰ってきて早々に隊首会が開かれた。

 

「紫流を元に戻すため……ですかね?ほら最上位大虚級でしたし。尸魂界に被害被るでしょ?霊刀は霊子が多いと威力増しますから。霊子の塊の尸魂界は危険ですし現世の信用できる人に任せてますから」

 

「浦原喜助……か。ふむ」

っと考え込む総隊長

 

「そういうことは我ら十二番隊に任せればいいのだヨ、君はいつもいつも余計なことを__」

っと手をワキワキさせながら怒る涅

 

「お前紫流の事バラバラにするだろ。ダメダメ。それに霊刀の詳細は知ってる奴が少ない方がいい」

 

「なんだっテ?技術開発局が信用出来ないと聞こえるが?」

っと詰め寄ってくる

 

「そういう作り方とか詳細は知ってる奴が少ない方がいいだろ、第2の惣右介が現れるかもしれねぇし」

 

「ふん」っと、そっぽを向いた涅。

 

「今回の騒動の貢献により浦原維助についての研究は不問とする」

 

「不問だっテ?浦原維助……いや浦原喜助。2人のせいで瀞霊廷は甚大な被害を被ってる。」

 

「言わんとしていることは分かるが、浦原喜助は追放。もう我々がどうこうする事はできぬ、そうして浦原維助。前四十六室の取り決めたにより()()()()()()が浦原維助に許可されておる。霊刀とやらの制作も法の内。咎めれるものでは無い」

 

今は四十六室がいないから総隊長権限で罰せられるかと思ったけど大丈夫らしい。まぁ追放とか言わないのは俺が戦力になるからだろうな。

総隊長も馬鹿じゃない、俺が居なくなるとどうなるかぐらい分かってんだろう。

 

 

ザワザワと隊首室が騒がしくなる。

 

「はは、なるほどね維助君。」

っと笠をあげて俺の方に笑いかける京楽隊長。

 

「なんだって……?()()の開発研究が。その言葉の意味は分かっているのかネ」

 

「そうだよ、涅。四十六室が決めたのさ。あらゆる研究開発を行って良い……ってね、ただし実装するかは四十六室が決める、霊刀は開発途中の物が()()()()しまったのでね。まだ四十六室にも霊刀の事は話していなかった。って感じですよ、まぁ管理不足は俺の責任。なので」

 

 

外堀ってのはこういう事さ。

四十六室に媚びを売り、貢献し俺が四十六室の敵ではなく味方、なんなら幸せに安全に暮らせる四十六室中心の世界にと謳って無理やりに法を作らせた。

 

管理不足で無理やりに咎められるかと思ったけど。多分大丈夫、総隊長も規定側だと分かったし。

 

管理不足については追って連絡するとの事で、一旦解散になった。

まだ被害が多いからそれの修復で隊長格は大忙し。

 

───────────

 

「夜一さんはどうすんだ?現世に戻るのか?」

 

双極のあった場所に座っている夜一さんを見つけて後ろから話しかける

 

「維助か…そうじゃの。今更ここに戻ったとて儂の居場所はもうあるまい」

 

「そんな事ないだろ?二番隊があるじゃないか」

 

っと言ったら呆れた顔をされた

 

()()変貌した二番隊を譲り受けても儂はどうにも出来んぞ、なんじゃあのからくり屋敷は。わしのいた頃の面影がほとんど無いではないか」

 

「いやいや、部屋とかはちゃんとしてるし。俺の部屋はまともだよ。」

 

「まともなものか。それに儂は現世の生活が気に入ってての。自由で面白いぞ、四楓院家も夕四郎のやつがちゃんとやってるようじゃしの」

 

夜一さんの言葉は気を使ってる訳ではなく、本当に現世の生活が気に入っているようだ。

 

藍染の反乱からちょっとして。一護らは現世に帰ることに

 

───────────────

 

 

「さっ、俺は───」

 

「維助様どこへ行くのですか?」

 

っと、なにやら用意してる俺に砕蜂は首を傾げる

 

()()()()()()()()

 



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現世の話 日常&仮面の軍勢
現世の話


 

「全く中央の奴らがこんなに抜けてるとは思わなかったね…どうも」

 

「隊長、浦原維助隊長の事ですか?」

 

「七緒ちゃん」

 

隊首会が終わり屋根の上でくつろいでいると伊勢七緒が書類を持って現れる。

 

思い出すのは先程の隊首会

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

これがどれだけ()()()()()()か恐らく四十六室は分かっていない。

あるいは、分かっていて浦原維助を完全に信用し許したか__。

抜けている前四十六室の奴らはどちらも可能性がある。

 

 

だが

 

「参ったね…どうも」

恐らく法律ができたのは喜助君が追放されたあと__。

 

音も立てずにふわふわと浮いて瀞霊廷内を偵察する、無人機。

荷物を運ぶ無人機、掃除をする機械

 

「ねぇ〜西区の浦原神機の服管機(ふくかんき)買った?」

 

「あー!ボタン一つで亜空間にしまった服を着れるやつ?収納にも困らないし便利そうだよね〜並んでたから買えなかった〜」

っと話す部下の声が聞こえる

 

道行く死神は日常のように受け入れ、道に砂が落ちてるのを当たり前のように気にしない。

しかも十二番隊の開発研究は彼が掌握しているし。

 

伝令神機を作ってから__尸魂界は浦原維助に呑まれていく。

彼無しでは瀞霊廷の首が回らなくなる程に自然に溶け込み__

 

隊首会での彼の顔を思い出す。

口角を上げ、目を細めた彼は__。

 

─────笑っていた

 

 

 

”『まぁ……そりゃ、サボりたいけどせっかく任せてくれた仕事は最後まで終わらせたいから。責任と信用ってそう言うもんでしょう?』”*1

 

副隊長になった彼が言ってた言葉

信用__ね。

 

その頃は惣右介君と仲のいい維助君は誰にでも優しく真面目で…なんて、惣右介君に呑まれてしまうのではと考えていたが…ココ最近違うかもしれないと思い始めた。

 

 

「こりゃ、惣右介くんよりも厄介かもしれないな」

皆口にはしないが疑問に思っている。

 

惣右介くんの手引きは維助くんがしたのでは無いか…?っと

だが、彼は惣右介くんが放った最上位大虚級と成り果てた紫流君をたった一人で止めた。

功績と行動を考え、その説は薄くなった__が、拭いきれない。

無関係と考えるには___

 

 

「歳をとると悪いことばかり考えてしまう…何もおきなければいいけどね、どうも」

 

─────────────────

昔喜助が言ってた。あいつが部隊長になった時かな

 

”『蛆虫の巣の連中は危険分子、いきなり襲いかかってくるし、まともな会話も成り立たない者もいる…けれど、その中でも能力を活かしてあげられる場所さえ与えてあげればその危うさを大きな力に変えれるんじゃないか…っておもうんスよね。』”

 

”『…つまり使えるものは使うと?』”

”『兄サンそれはちょっと直球すぎる』”

 

その案はいいと思ったんだ。

使えるやつは使う__

 

お堅い連中、綱彌代家や四十六室、敵対すれば権力的に厄介。だが、懐に入ればこっちの物。

臆病でいつも脅えている、それに安全性や便利なものを与えたらどう?心強い味方ってのは輝いて見えるものさ…

 

そうしてそれが消えるとなると逃がさないように守り続ける__。

四十六室の居住区である清浄塔居林(せいじょうとうきょりん)にも手は回してる、恐らくだけど俺に噛み付いてくる後任の四十六室はいない。

いたとしても法を作らせた以上何も言えない。

 

綱彌代家が監視してるモニターも機械も全て俺が作ったもの。

そうして俺が消えればメンテナンスも出来ない、いずれにしても俺を守るしかない。

 

俺は貴族の当主技術者先生隊長四十六室の直属の隠密で。

 

権力、技術、信用、貢献、全てを使う。

尸魂界も現世も俺は手を入れてみたい。

 

虚圏には()()()友人がいるし、虚にはあまり興味が湧かないからどうでもいいけど。

 

んで、長くなったけど…

流魂街の連中を動かすと上のやつらは反対しないにしろ少し嫌な顔をする。そうだよ、下克上が起こったら困るかも…って怯え続ける。

──改造魂魄のように。

 

でも現世のヤツらに何をしてもあいつらは怒らない。

流石に無意味に殺せば怒られるかもだけど。

 

()()()()()()()()()()__っとうたえば奴らは俺を信じる。

 

日本列島よりも広い尸魂界で___浸透できたんだ。

現世でできないはずは無い。

何代も入れ替わる人間。

新しいものがその代に一度浸透すれば次世代も──っと考え中に

 

プルルっと懐が震える

 

「はぁい、維助です」

 

”『維助様!朽木紫流の監視など!我ら部下に任せておけば良いのです!なぜ私を頼らなかったのですか!』”

スマホから砕蜂の声が響く

 

 

 

「はは、何言ってんだよ砕蜂。頼ったからこそ、隊を任せたんだろ?大丈夫。隊長の仕事は怠らないよ。砕蜂は代理として適当にやってくれればいいよ。重要なものはこっちにデータ送ってくれればやるからさ。」

 

”『そ…それはそうなのですが…あの…えっと…またお電話してもいいですか?あっ!いや、お忙しいから「いーよ、分かった。またこっちからかけるから。」っ〜!ありがとうございます!!』”

 

っとバカでかいお礼で耳から離す。

そうして切れたスマホを懐にしまった。

 

カチッと左腕に着けた腕時計の横に着いたボタンを押せば。

俺は死覇装から__現世の服に変わり、髪型も変わっていく。

 

向かうは___。

______________

○学校 一年三組

 

 

「夏休みもあっという間だったなー」

 

「それ、いやぁあと1ヶ月欲しい」

 

ザワザワと騒がしい教室。

 

一護は頬杖をついて外を見ていた。

夏休みの出来事があっという間に感じる。

 

 

「おーい、朝のホームルーム始めんぞ、早く席に座れ〜。

うーんと、朽木紫流だけか、休みは。よし、じゃー素敵なお知らせだ」

 

ガラッっと、閉まっていた扉が開く音がして

ふと顔を向ける

 

副担任を紹介すんぞ

 

教室の扉を開けて歩いてきた男。

珍しい髪色に跳ねた髪。

 

「うら…はらさん?」

 

あの帽子を外した浦原さんに見えたがどこか違う。

あんなに身長高かったか?確かに高いが…それ以上に__

 

教卓の前に立って正面を向いてようやく気がつく__!

ガタッと勢いよく立ち上がる

 

「なっ…なんでてめぇが」

 

「ん?どうした黒崎。知り合いか?まぁとにかく座れ」

っと担任に言われ渋々座る

 

「んじゃ、自己紹介どーぞ!」

 

「皆さんおはようございます。初めまして〜本日から一年三組の副担任兼、歴史と物理を担当します〜()()()()です。どうぞ…よろしく」

 

あの特徴的な色の瞳、泣きぼくろ__

ニコッと笑った…浦原維助。

 

 

【挿絵表示】

 

 

__________

 

「んでここにいるんだよ維助さん!」

胸ぐらを掴まれる俺。

 

「きゃー、おそーわーれーる」

っとふざけると、

 

「ちゃかすな!」っと、一護に怒られる。

 

屋上に呼ばれるのは女の子からが良かったな。

ホームルームが終わった瞬間に連れてこられたのだ。

 

後から走ってきた織姫ちゃん達

 

「やっほ、尸魂界ぶり〜」

 

っと手を振ると、ぎこちなくだけど織姫ちゃんだけが手を上げてくれた。

 

「まて、黒崎落ち着くんだ。きっと朽木さんの事だろう?朽木紫流。」

 

「そっ!さすが雨竜ちゃん」

 

「紫流の?」

っとようやく胸ぐらが離される

 

「紫流は今どこにいんだよ」

 

「ありゃ、喜助から話聞いてない?喜助のところで休ませてるよ。制御装置も作ったから大丈夫だとおもう。これまで通り通学できるよ。」

っと言うと、ホッ…っと声が聞こえる。

 

「その、霊刀ってやつか…?俺のと同じやつ」

 

「うーん。同じではないかな?にたもの」

 

「じゃぁなんなんだよ」

 

「それは…秘密」

「なっ」

怒る一護を、茶渡君が止める

 

「紫流の詳細は極秘なの。子供、しかも人間があんまり首突っ込まないの

 

あ、そういえば茶渡君ははじめましてかな話すの。よろしくね〜」

 

「あ、あぁ。浦原さんのお兄さんだったか」

首をかしげられる

 

「そうだよ、最初浦原さんかと思った〜!そっくり!」

 

っと織姫ちゃんがほわほわしてる。どっちも浦原だけどね

 

「まぁ兄弟だしねぇ〜」

 

「義骸って髪型変えれるんだな、便利なもんだな…」

っと俺をジロジロと見る一護、近い近い。

 

「義骸じゃないよ、これは人間に見えるようにまぁ…原理の話をすると話が長くなるから、簡単に人間に見えるように映写してるって感じかな。」

 

ポチッと時計のボタンを押すと一瞬で死覇装に変わり髪型も元に戻る。

 

「「おぉ〜」」

っと一護と織姫ちゃんがびっくりしたような声を上げた。

いやぁ、この声いいよね

 

「どうだー驚いた?驚いた?義骸と違って、いちいち脱ぐ必要ないし、義骸って本来現世に居る死神の霊力回復用だし俺は別に必要ないからいいかなって。まぁ俺まで斬魄刀見えなくなっちゃうから変身戻さないと柄握りにくいんだけど。これを応用して、服なんかもポンポン変えれるよ」

 

「べ、便利なもんだな本当…」

スーツやラフな服に変わった俺を見て呆れたような目を一護に向けられた。

 

「ふふん、でしょうでしょう?これは映像だけど、尸魂界では実際持っている服を亜空間にしまってボタンひとつで着替えられるような道具も販売中だよ」

 

「なんというか…尸魂界は現世より進んでいるんだな。江戸の街並みなのに」

っとメガネをクイッとあげる雨竜ちゃん。あ、そういえば死覇装姿は見えないのか、いや見えてるな…全ての霊力無くなったわけじゃないのか

 

まぁ尸魂界とおれの技術はミスマッチだよね。

 

「まっ、とりあえず霊刀に詳しい俺と喜助で紫流の監視と制御に来たの」

 

「監視って…」

 

「まぁ言い方悪いかもだけど、尸魂界であんだけ暴れたんだ。すぐには尸魂界に戻れないよ。紫流の為だからさ、もう紫流は危なくない安全ですよーって証明のために必要なの。俺が志願したの大丈夫、任せといて。とりあえず戻りなさいな一限始まるよ」

 

背中を押して教室に戻らせた。

 

 

 

 

俺は空を見上げる

「さて…いつまでそこで傍観してんの?平子隊長」

 

「アホ。もう隊長ちゃうわ、維助」

 

朽木紫流やっけ?隠密も大変やなっと。俺の隣に降り立つ

 

「元気そうで何よりッス。禿げました?」

「アホ!ハゲとらんわ、髪切ったんや髪!」

 

っと自分の髪をぐいっと引っ張る平子さん。元気そうだ。

 

「聞いたで、惣右介…いや藍染のこと大変やったな。」

 

「まぁ…。友人がいなくなっちゃったのは寂しいですよね」

 

「呑気か、裏切られたとか思わんかったん?」

 

「うーん。まぁ俺はまだ信じてますからきっと惣右介には何かあったんじゃないかってね」

 

っというと、げっそりしたような顔をする。

 

「相変わらずやな、俺が昔忠告してやったんに*2、まぁ起きたもんはしゃーないな。帯志土(おしど)さん*3の事も全然掴めへんし。もう全部投げ捨てたいわぁ〜」

と、頭をガシガシと掻く。

 

「はは、まぁミトと名乗るやつはあれから情報全くありませんし。もう俺の敵じゃないですね〜。」

 

あんま興味無いし砕蜂に投げてるから情報わかんないんだけどさ。

 

「んで、平子さん。貴方それ制服ですか?」

 

「せや、似合っとるやろ?」っと、ネクタイを閉める。

 

「うーん胡散臭い」

「それあんたに言われたかないわ」

 

「えーしかも生徒側ですか?」

 

「せやで、浦原先生。明日やけどな転入は、喜助に頼んだんよ」

 

「なるほど〜じゃぁこれからは先生としてビシバシ指導できるんですね」

 

「ちゅーか、聞かへんの?俺が…俺()が何をしようと考えとるんか、その感じやと喜助にも聞いてへんのやろ?」

 

「うーん…別に興味無いかなって。崩玉とか虚化関係かなーって予想はしてますけど。虚化も崩玉もあんまり興味無いし。虚化とかは喜助担当だから。まぁなにか欲しい機械があれば言って下さいな、作りますんで」

 

もちろん金は取りますと、付け足すと

 

「抜け目あらへんな〜」っと笑われた。

 

 

_____________

 

「つーことで、しばらく泊めてな!尸魂界に帰る時もあるけど、ほとんど現世だからー」

 

「あの、兄サン。6人、夜一サンも来たら7人ッスよ?そんな部屋ありませんって」

 

「大丈夫大丈夫。押し入れでいいから」

 

「どこぞの青狸ですか??ポケットから機械出す人型の兄サンが押し入れなんか入れるわけないでしょう。身長考えてください」

 

「ほら、現世の金」

っと、分厚い封筒を渡すと中身を見てパチンっと扇子を閉じた喜助

 

「ようこそ、浦原商店へ!!ささ。今からちょっと部屋開けますんで!!!お茶でもどうぞ」

 

 

*1
23話にて

*2
15話にて

*3
33話平子の元上司。謎の男の娘の話



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先生はやっぱり先生の話

 

「えー、じゃぁ授業始めるよ。二学期からは歴史の授業が入ってくる。日本史(いち)赤い教科書の方な、そっちを出してくれ。そしてプリント配るからプリントは学校から事前に配られてるでっかい青いファイルに止めてくれ。学期終わりに出して貰うから無くすなよ〜」

 

プリントを前から回され受け取る

 

「(ちゃんと先生してやがる…!!)」

 

穴埋め式で配られるプリント。分かりやすく裏面には答えと解説が書かれていて。

 

「裏に答えあるが、一応話はきけよ〜。ちなみにそのプリントはテストに出る部分だから。テスト対策はそのプリントをやるように」

 

「(テストにも配慮している…!!)」

 

「寝ててもいいが、見回りの先生が来た時は周りのヤツ起こしてやれ。俺が怒られる」

 

という声に教室が笑いに包まれる。

 

「はいはい、じゃー始めるぞ。」

 

一護は頬杖ついて話を聞く。

 

「なぁ、一護。シャーペンかして」

 

「てめぇまたかよ」

 

後ろの席の紫流が背中をつんつんして話しかけてくる。

紫流の髪色は白だが、人間が見れば黒に見えるらしい。浦原さん(喜助)の薬?みたいなを使ってるって聞いた。よくわかんねぇけど

 

ホロウホロウ

 

っと、カバンの代行証が鳴り響き肩がビクッと揺れる

 

うるせぇ!!

 

「おー、黒崎どうした?便所か?」

っと振り向いて首を傾げる。維助さん

手もあげてないのにそう言ったつーことは、便所行ったって事にしとけって事か。

 

「便所行ってきまーす」

っと教室を出た瞬間、走り誰もいない窓枠を乗り越え飛び降りた

 

 

________________

 

「はい、じゃー続きな。って井上さん、茶渡。まで、悪いけど便所は時間ずらせよ」

 

立ち上がった2人を止める

 

「で、でも…」

織姫ちゃんらは虚の訳を知ってるからついて行こうとしているようだ。

 

悪いけど時間ずらせよ(行くんじゃねぇよ)

 

「チェッ、俺だって行きたいのにお師匠がしばらくやめとけって言うから辞めてるのに。一護のやつ」

 

っと、紫流のボヤキが聞こえる。

 

「す、すみません…」と言って席に座る織姫ちゃんと茶渡。

 

行きたい気持ちは分かるが…一護1人でもなんとかなるだろ。

 

茶渡くんとは戦った事ないけど…織姫と茶渡。

力をなくした雨竜は自分の力を分かっているが。

 

その2人は___正直言って弱い。

行っても三席四席程度___。

 

あぁ、これは…色々試せるのでは無いか…?

 

スッ__っと目を細めた平子さんと目が合う。

笑い返して見たら、目をそらされる。

 

 

______________

 

「はい、担任が遅れてるようなので変わりに帰りのホームルームします。えー、明日避難訓練があるぐらいかな。ほかは…ないね。じゃぁ気をつけて帰るように。井上さんと茶渡は放課後残ってくれ」

 

 

残った2人。と、

 

「なんで一護と紫流と雨竜ちゃんまで?」

 

「なんだよ、居ちゃダメなのかよ」っとブスくれた紫流

 

「いや、ただの連絡事項なんだが…。織姫ちゃんと茶渡くんは家帰って汚れてもいい服着て浦原商店に来てくれ。それだけ」

 

そう言って返答も聞かずに帰る。

少し暗くなった頃。2人と__

 

「だからなんで一護と雨竜ちゃんまで来てんだよ」

 

「君が井上さんと茶渡くんに何がするんじゃないかとね」

 

「うわ、大所帯」

っと、俺の後ろから顔を出した紫流

 

「こらこら、半裸で出てこないの。紫流。さっさと服着てこい」

風呂に入ってた紫流がアイス片手に半裸ででてきいる

外だぞここ。

「まっ、とりあえず入りなよ。勉強部屋においで」

商店の中に入り廊下を進むと。

 

「え、エレベーター…」っと絶句してる雨竜

 

「お師匠さんが作ったんだよ。人間のお前らのためにな」

和風の廊下の壁にあるのは少し異様だけど。

 

「ほら、早くおいで」

 

手招きすると、恐る恐ると言った様子で入り、紫流は慣れたように乗り込む。

10秒ほどでたどり着いた勉強部屋

なぜか、喜助まで着いてきた。

喜助は黙って崖を背にして傍観してる。

 

「早いのに揺れない…し、丈夫だ…一体この短期間で__」っと、ぺたぺたエレベーターを触りだした。

 

そして、事前に用意してあった長テーブルの前に案内する

 

「織姫ちゃん、茶渡、君らは弱い。」

 

っと言うとなにか言いたそうにしてくる一護と雨竜を遮るように被せる

 

「当たり前だよ、仕方ない。なんか特殊な能力を持っていても死神でもない人間。それで俺が武器をさずけようと思って」

 

「「武器…?」」っと首を傾げるふたり

 

「そっ!勇者が拳で魔王とかモンスターに向かわないだろ?武器があれば身の安全も守れると思ってさ。能力だけじゃなくてこういうのに頼るのも一つの手だと思うよ。」

 

机に並べたのは

グローブ、モーニングスター、鞭、ステッキ、斧、銃

 

の計6つ。

 

「まずはこれの説明かな。これは霊刀と似た機械を使ってる。」

 

「なっ」そう言った一護は己の心臓部分に手を添える、まぁ待てって

 

 

「少し違うけどだいたい同じ、大気中の霊子を収束させて放つ。霊刀と違うのは収束の振動を使うわけじゃないから切れ味が良くなるわけじゃない。

まぁ…色々すっ飛ばして離すなら吸い込んだ空気をロケットランチャー並の威力にして放ってるみたいなかんじ。もちろん人間には見えないし、己の身を守るために持っときな。命を守るために他の人を守るために、特に織姫ちゃんは何かしら武器を持っていた方がいい。」

 

すると、

「分からないな」

っと雨竜ちゃんが口を挟む

 

「分からない?」

「そう、なぜ井上さんや茶渡くんに武器を渡すのか__。君にメリットが見当たらない。尸魂界からは朽木さんの監視としてきているんだろう?それにただの武器ではなく君が手を加えた品。本当のことを言ったらどうなんだ、守るためではないんだろう?」

 

そう言った雨竜ちゃんを見たあと、みんなの視線がこちらに向けられる。

俺は背を向けた

 

「うーん…ごめん。本当のことを言うよ、実はさ…知ってる人もいるかもだけど、俺は尸魂界で先生をしているんだ。死神見習いを教育してるって言ったらいいかな?才能ある人もない人も見てきた、死神界ってのはシビアでね、弱いやつは昇進しないし死ぬしかない。俺はもう…教え子が死ぬのを見たくないんだ!!

 

だから、弱くても才能なくても、虚を倒し身を守る武器があればいいんじゃないかって!そう思ったんだ。」

 

俺はグッと拳を握り振り返ると、びっくりしたような顔をしていた。

 

「だからごめん、2人を実験体にしようとしてた。けどこれが成功すれば、死人も減るんだ!もしかしたら流魂街の霊力のない人々も死神を目指すことが出来るかもしれないし、身を守れるようになるかもしれない!俺が使っても俺自身の力が強いから実験にならないんだ、だから流魂街の住民と近い君たちに使ってもらっていつか、死人を減らせる世界を作りたい。

俺はバッと頭を下げると、

 

「浦原先生、顔をあげてください」っと優しい織姫ちゃんの声

 

「浦原先生!あたしやります!!あたし尸魂界で石田くんに頼りきりだったの情けなかった。あたしは何ができるんだろうって、その武器で少しでもあたしが役に立てるようになるなら!」

 

っとグッと拳を握る織姫ちゃんに、茶渡くんが1歩前に出た

 

「浦原さん、俺も流魂街の住民が身を守れれば。その(いしづえ)になれるのであれば手伝います」

 

「ありがとう…!2人とも!こんなに武器があるのはどの種類が有効的か使いやすいかってのを見たくて色々作ってみたんだ。好きなのを持って行ってくれ」

 

織姫ちゃんは鞭と銃を

茶渡くんはグローブを持って行った

 

「持ち手にスイッチがある、それを押すと霊子を収束させ。放つことが出来る、溜め込みすぎると壊れちゃうから青くなったら直ぐに放ってね。霊力は吸い取らないから、大気中の霊子だけね」

 

第二の霊刀もどきが出来ないように調節した品だ。

さて、人間に武器を与えると、どうなるのかな

扱える?身に余る?

俺の道具をどう使うのか、その未来を見てみたい。

ニヤケそうになるのをぐっと抑える

 

 

 

 

 

しばらくして、虚を討伐したという報告が入りはじめる。

 

使いこなしてる映像を見てニヤけが止まらない。

 

映像には鞭で虚を縛り付け銃で虚を吹っ飛ばす織姫ちゃんに

茶渡くんの元の身体能力とプラスして収束霊子を放つグローブ。

 

そうだ、そう。道具に頼れ、頼って頼って__無くてはならない存在へ

 

──────────────

 

モニターをニヤニヤしながら眺めている兄サンをみてため息を吐く。

 

 

兄サンは全く知らない人を助けたいとか、死にゆく人を見たくないとか流魂街の住人を助けたいとか元生徒ですら、どうでもいい人はどうでもいい。行動原理はかっこいい面白そうと、少しの好奇心

今回は弱者に己の機械を持たせて反応をみたいだけ。

 

機械を使ったらどうなるのか、使った先は?どのように変化するのか。

それが楽しくて面白くて仕方ないらしい。

 

1度わざとらしく行動し疑わせ「実は…」っと本当のことであるかのように偽りの理由を述べみんなに信じさせる。

それらしい理由を作るのが得意な兄サンを見抜けるのはボクか夜一サンぐらいなもの。

 

人のこと言えないけれど、兄サンはいい性格をしている。

______________

 

 

「初めまして、かな?黒崎真咲さん」

 

真っ白なシーツ。綺麗な花、毎日誰かしら見舞いに来ていることが分かる。

 

長い髪をシーツに広げて眠る姿、眠り姫だな。

 

「一心の奥さんねぇ…美人さんを貰ったんだな一心のやつ」

 

ほんのり霊刀の力を感じる、魂魄の傷は回復してる。

つまり眠り続けてるのは一護に分けた分の霊刀の分を回復させようとしているから。なんかプラナリアみたいだな。

体の機能より霊刀の回復を優先している、そこまでして何を望んでいるんだろうか。

 

霊子の塊の尸魂界や虚圏と違い現世での回復は全然見込めないだろう。

 

恐らく惣右介は盗んだ霊刀をそのまま使った。

まだ試してもないのに改造するはずは無い。つまり俺が知っている俺の霊刀だ、俺が作ったやつなら___俺が何とかできる。

魂魄関係は喜助に丸投げしてたけど機械関連なら俺が__。

 

 

俺は織姫ちゃんにあげた銃と同じものを取り出す。

セーフティを引くと銃口が青く青く染まっていく。

 

眩しいほど青く輝く瞬間__。

彼女の中心に押し当てた

 

「何年ぶりだろうな橋姫__久しぶりなのが戦闘目的じゃなくて悪いな」

まっ、戦闘には多分使わないと思うけども。

 

俺は橋姫を半分鞘から抜く

 

 

 

恨め   

        橋姫 .



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黒崎真咲の話2

 

 

「なぜ逃げる!!!黒崎一護!!」

 

 

「だから!違ぇんだって!!一護じゃねえって!!」

 

街中を走り抜けるコン。後ろから顔が出た虚が追いかけ回していた

 

「死神になるのを待っておったが…飽きた。しまいじゃ」

 

「(だめた…!間に合わねぇ)」

迫り来る拳に腕を交差し目を閉じる

 

だが、

 

「やれやれだがら言ったろ?オメーが旅行から帰ってきた時に。()()()()()()()()()()()()()っての」

 

そう言い放つ男がコンの前に立った

「なんで…だ?」

 

何故、なぜこの男が

 

「虚さんよ、悪いが一護は留守でね。代わりと言っちゃなんだが、俺と遊ばねぇか?」

 

「おまえは…」

 

虚が訳が分からないという顔をする。

 

「俺は___黒崎一心。よろしくな」

 

 

「黒崎…そうかおまえ黒崎一護の親なら居場所を知っておろう、出せ黒崎一護を」

っと口角を上げる虚

 

それに耳をほじる一心

 

「しらねぇよそんなんいちいち、うちは放任主義だしな」

うそつけ、っとコンが突っ込む

 

「あんたは相手にしなくても俺はお前を斬りにきた()()()()()()()()()

 

「今度はだと…?ふふふ、死神風情が…」

 

メキメキと骨が軋みさらに図体がでかくなる虚

斬魄刀を取り出しニヤリと笑った

 

「斬魄刀のでかさはすなわち霊力のでかさ!そのような細枝の斬魄刀では儂は切れぬ!」

 

「仮面を外し、死神の力を手に入れんとする破面(あらんかる)、悪いな、ちょっと俺肉買いにいかねぇと行けねぇんだ、今日はすき焼きでよ……さっさと終わらせるぜ」

 

ザンッ

 

──音を切り裂き風を切り裂く。

 

風圧を感じコンは腕で顔を覆う

 

「(刀振っただけでこれかよ……!)」

 

半分にわかたれた虚は呆気なく消え去った。

 

「基本から教えといてやろう、隊長クラスの死神は斬魄刀の大きさをコントロールしてんだよ、どいつもこいつもビルみてぇなでかさの斬魄刀を振り回すことになるからな。斬魄刀のデカさで相手ははかれねぇ。死神語るのはそれからだ、

 

 

坊主」

 

カランコロンっと、下駄の音が夜街に響く。

 

「討てました__?仇」

そこには浦原喜助が杖を回し路地裏から現れる

 

「浦原、バカ言ってんじゃねぇよ。勝手に真咲を殺すな、これは俺があの時逃がした分だ。」

 

「そうッスか……」

そういった喜助が、気づいたように一心を見つめた

 

否__その後ろを

 

「お見事」

 

バッっとその声がする方向へ振り向く一心。

 

「師範…」

 

「よぉ、老けたな一心。会えてよかったよ」

懐かしむように笑う浦原維助がそこに立っていた

 

「はは、俺は師範に会いたくなかったね。あんだけ教えこまれたのに真咲1人守れなかった」

 

っと空を見上げる一心

 

「俺の方こそ合わせる顔がなかったよ。霊刀、俺のせいで悪いな。」

 

それに首を横に振る、一心は霊刀の詳細を浦原喜助から聞いていたようだ。

 

「いいや、あの刀があったから俺に霊力が戻り真咲を助けれた。なかったら今頃真咲も一護も__。きっと運命ってやつさ。それに真咲は死んじゃいない、きっとすぐ起きますよ」

 

 

すると、ニコッと笑って両手を合わせた維助

 

「その話なんだけどさ一心に__」

何か言いかけた瞬間。

パキッっと空間に日々が入りが顔をのぞかせた

 

「おいおい、一心の霊圧で寄ってきたじゃん」

 

「俺のせい!?!?」

肉買いに行きてぇのに……と、ボヤく一心は斬魄刀を構えた__

 

瞬間

 

___ 「あら、今日はお肉なの?

__なら早く買いにいきましょう」

 

「嘘だろ……?」

その聞き覚えのある声に手が震えた一心。

後ろを振り向けない

 

固まった一心に虚が腕を振り上げ_____鋭い爪が迫る

 

その時一心の横を青い何かが光の速さで通り過ぎた

 

 

霊刀(アモル・アルマ)

 

青い光に包まれ、虚は両断される

 

スタッ……っと、両断した本人が地面に降り立ち、一心に向き直った

 

「ふふ、待たせたかしら。あなた

 

 

【挿絵表示】

 

 

_______________

 

泣きわめく一心が、抱きつくのは黒崎真咲。

 

「泣き虫になった?」

っと呑気に笑う彼女の目元にも涙が溜まっている。

 

「なにしたんスか?兄サン」

っと俺の横に移動した喜助が真咲ちゃんを見つめる

 

 

「霊刀の復活?見た感じ魂魄はもう傷ついてないし治ってるぽかったから、何が原因かなーって思って、霊刀の半分が一護に流れたなら、霊刀が目覚めを邪魔してるのかなって思って見に行ったら、霊力の回復を待っていたようでさ、現世だと……って聞いてる?」

 

聞いといて全然話を聞いてない様子の喜助の横腹を肘でつくと、アイタァ!っと言って横腹を手で抑える喜助

 

「聞いてます、聞いてますって……んでもあの霊刀なんスか?なんか色々むき出しじゃないッスか」

 

真咲ちゃんの片手に握られた霊刀。

ネジや歯車の部品がまるで装飾のように飾られているように見える刀……いや剣に変化していた。

 

「まぁ……うん。日本刀ではないよな、どちらかと言うと洋風の剣?あれも変異の影響かねぇ……俺はあの子の魂魄にある霊刀に、収束した大気中の霊子を改造して込めただけだから。」

 

「……なるほど確かに兄サンの斬魄刀なら可能ッスね」

 

「それより……はーいはい!一心!再会のところ悪いけど病院抜け出してきてんだ、そろそろ戻さんと、それに長年動かしてないからだを無理やり動かしてるから。とりあえず戻る!」

 

「つーか!師範!なんで真咲をこんな危ないところに連れてきてるんだよ!……ですか!!!」

 

「いや、真咲ちゃんが行きたいって言って聞かないから……」

 

「あら?一護……?」

コンに気づいた様子の真咲ちゃんは、一心から離れると尻もち着いたコンに顔を近づけた

 

「うーん……なんか……そっくりさん?」

 

「驚いた……」

 

元滅却師とはいえ、改造魂魄が入ったやつの違和感を感じとった……?

勘というやつだろうか、鋭い人間だ。

 

 

「お、俺はコンだ。一護の……お袋さん……か?」

っと困惑した様子のコン

 

「そうよ。よろしくねコンちゃん。」っと笑う。

 

「って、早く早く。病院もどらんと大騒ぎになるぞ」

 

「やべぇ、じゃぁ俺送ってくから、後片付けよろしくお願いします〜!」っと言って真咲ちゃんを姫様抱っこすると去ってく一心

 

「あいつ……この片付けやらせる気かよ」

地面が割れ壁にも亀裂が……

 

「任せた喜助」

 

「えぇ!そんな!!復元って大変なんスよ!?!?」

 

「知ってるわそんなん。俺今から焼肉食べに行くもん、肉肉聞いたら食いたくなった」

 

「あっ!ずるい!!1人だけずるい!!ボクも連れてってください」

 

「やだよお前俺に肉焼かせるじゃん、ってか真咲ちゃん初めましてだけど度胸あるなあの子……しかも長年ベッド生活でしかも剣握ったこともない子が虚切り裂くってなに……。それにあの子来る時自分で髪切ったんだぜ?邪魔だからって。髪は女の何とかって言うだろ?」

 

「はは、確かに度胸ありますねぇ、それに兄サンよりネーミングセンスがあるようで」

「うるせ、霊刀(れいとう)の方がわかりやすいだろ??」

 

「うぅん……」

なんでそこで唸るんだよ

 

 

 



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黒崎家

 

 

おかぁぁぁぁさぁぁあん!!!

 

「遊子、夏梨……大きくなったわね」

 

ベッドで上半身を起こした状態の真咲に遊子が抱きつく。

 

「遊子。そんな大声出したら怒られるぞ。一応ここ病院」

 

「がりんじゃん……ヒック、うっ」

ポケットティッシュを遊子に押し付ける夏梨。

 

「あらあら、どっちがお姉ちゃんかわからないわね。ほんと……大きくなって」

 

4つだった、遊子と夏梨が大きく育ったことに嬉しく思う真咲は2人をそっと抱きしめた。

 

「ええ話やぁ」

扉に寄りかかっていた一心が袖で目を覆う

 

「どこの関西人だよ」

っと呆れたようにジトーっと一心をみた一護。

 

すると、ふと顔を上げた真咲が一護と目が合い、一護はスッと、目をそらす。

「遊子、夏梨一緒に車から母さんの荷物運ぶためのカバン取りに行こう」

 

「うん!行こう夏梨ちゃん」

 

「えぇ、ヒゲ1人でやれよ」

「お父さん腰死んじゃう……」

 

パタパタと3人がいなくなり。

一護と真咲が残される

 

「一護」

 

「お……おう」

気まずい雰囲気の中真咲は横の椅子に手を伸ばした

 

「おいで」

そう言われ渋々と椅子に座る一護。

 

「母さんね、びっくりしちゃった。お父さんが老けちゃったし、私も老けてた。夏梨も遊子も大きくなっちゃって__。

そして一護、貴方も大きく育って……母さん嬉しいよ」

 

約10年眠りについていた真咲は、世間からも家族も急に変わってしまったような感覚に陥っていた。

 

「俺があの時__」

そう言いかけた一護の頭を手を伸ばして撫でる真咲

 

「ずっと、ずっと悩んでたんだね。一護、泣き虫なのは変わらないね」

 

「な、泣いてねぇよ」

目元に涙は見えないが、真咲は首を横に振った

 

「泣いてる。母さんわかるもん。」

っと綺麗な笑顔で笑いまた一護の頭を撫でた。

 

「大丈夫、一護のせいじゃない。本当よ?母さんは貴方を守れた事が嬉しいの。私はこうして生きてるし話せる、私の方こそ……遊子や夏梨、一人で家を守ってくれたお父さんに、妹の世話をしてくれていたであろう一護……みんなに申し訳ないよ」

 

「申し訳ないなんて……俺は当たり前のことを」

 

「そう、当たり前、母さんが貴方を守るのも当たり前なの。母さんが好きでやったのよ、それを責めないでちょうだい」

 

「っ……あぁ……お袋……ごめ」

っと、謝ろうとした一護の頬を優しくつねる真咲

 

「こういう時は?」

 

「……起きてくれて、生きててくれて、助けてくれて……

 

ありがとうお袋」

 

 

「ふふ、本当に……大きくなっても泣き虫なのは変わらないわね」

 

しばらくのリハビリと、身体の調子を整え退院することになった真咲

 

「お母さん、本当に大丈夫なの?たった1週間だよ?」

 

「ええ、看護師さんが体を(ほぐ)しててくれてたみたいで、身体は全然固まってないの。流石にいきなり固形物はきついけど……少しずつなら大丈夫よ」

 

夏梨と遊子に挟まれながら歩く真咲は、自分の家に帰ってきて、懐かしむように扉に触れた。

 

「なんだか……私は寝て起きての感覚だったけど。こうしてみると時間が経ったことがわかる。置いていかれちゃったみたい」

 

っと、椅子に座った真咲が呟く。

体力はあまり戻っていないせいでフラフラしていた真咲を夏梨と遊子が無理やりリビングで休ませているのだ。

 

せっせとご飯を作るのを見ている真咲

 

「そっかぁ、遊子が私代わりに頑張ってくれてたのね。そうよねこのヒゲが家事なんて出来ないよね」

 

「ヒゲ!!母さん酷いッ!お、俺だって自分の服を洗濯機入れるぐらいできるし!」

 

「それは家事とは言えません!!また靴下丸めて入れてるんじゃないでしょうね?」

 

「うっ」

 

「入れてるよこのヒゲ。」

っと、遊子と一緒に手伝ってた夏梨が話を聞いてたようでそういい放つ。

 

「ゴミは出さねぇし、掃除もしないし。たまーに食器洗うぐらい」

 

「うっ……夏梨ちゅわん……」

 

「全く……変わらないわね。……そして。あの壁のポスター何!?」

っとでかでかに貼られた真咲の写真を指さす。

 

「あ、あれは寂しくて!!真咲も一緒にご飯食べてる気分になってたし。寂しかったんだもん!!!」

 

「いい歳したおじさんがだもんとか気持ちわり。」

っとお茶を飲んでた一護が突っ込むと

 

「なんだとぉ!俺は真咲に対しては純粋無垢の乙女だぞ!」

 

ダァァ!アブねぇお茶こぼれるだろうが!!純粋無垢とか誰がだよ気持ちわりぃ!」

っと飛び蹴りしてきた一心の足を抑える一護

 

「まったく……」

っと言った真咲がポスターを剥がす

 

「あぁぁ!俺の母さんがァァ!!」

 

「私はここにいるでしょ?私じゃダメ……?」

っと言えばニヘラァっと顔を歪めた一心が

 

「母さんしかいません!!!!母さん〜!」っと抱きつきに行こうとする首根っこを掴む一護

 

グエッ!何しやがるこの野郎!」

 

「こっちのセリフだ!その勢いで抱きついたらお袋が潰れるだろ!病み上がりつーもんを考えろ!」

 

「ぐぬぬ」

っと唸る一心に、クスッと笑う

 

「賑やかになったわね。この家も」

 

______________

 

「うっ……」

 

「どうした〜一護」

 

「いや、なんでも」

 

「そう……か、じゃぁ続きやってくぞ、10ページの__」

 

いつもの教室、いつもの授業時間。

黒崎真咲が退院して普通の日常が戻ってきた、はずだった__

 

 

「(やめろ……もう。

 

白哉との戦いで一瞬でてきたあの変なやつ。

直ぐに消えちまったのに、最近はあいつが俺を呼ぶ声が聞こえる)」

 

チラリと、維助は冷や汗を流す一護を見て。考えるように顎に手を添えた

 

その夜

 

「たーだいま。」

っといつものように浦原商店の玄関を開けて帰る

 

「おかえんなさーい」

っと奥から喜助が出迎えた。

 

「それで兄サン。ちょっとお願いが」

 

懐から取り出したチラシを指さす喜助

 

「この、最新のヒーター乾燥機付きのドラム式洗濯機がほしくてぇ……!少し大きいんスけど。あたしら人数も増えたしどうかなって……!」

 

「あぁ……」

 

「そこをなんと……えっ?兄サン?」

 

「あぁ」

 

「…どうかしました?」

 

何か上の空の維助が、自分のこめかみを人差し指で叩くのを見て、

 

「(あぁ、何か考え込んでる癖ッスねぇ……いつも機械ぐらいしか悩まない兄サンが)」

 

「なぁ喜助。」

 

「はいな」

しばらく黙ってた維助が顔を上げる

 

「霊刀、あれって一護に吸い込まれたって言ったよな真咲ちゃんの半分」

 

「そうッスねぇ」

 

「それで虚化を抑える力があると」

 

「まぁ、ちゃんと調べられてるわけじゃないんスけど。一応」

 

「1つは、霊刀の抑える力より虚の力が(まさ)った……。もうひとつは……。魂が力を欲したため霊刀が虚の力を解放しはじめた……?」

 

虚と死神の境界を無くすことで絶大な力を得ることが出来る。

もしかして__っと考え始めた維助

 

「黒崎サンに何かありました?」

 

「あぁ、息子さんの方でな。たまに虚の気配を感じるんだ。霊刀の力か弱くなったって線も考えられるし、もし魂魄と感情で霊刀が変化するなら、あえてって考えてな」

 

 

「さて……どちらでしょうねぇ……どちらにしても。平子サンらは動くでしょうね。」

 

「だろうな。まぁいいか。」

 

「いいんスね」

 

「あぁ、俺が首突っ込む問題じゃないなーって」

靴を脱いで上がる維助

 

「(考えた末にめんどくさくなっただけだなこの人……)」

 

「それと洗濯機?ヒーター式って……いいよ、俺がヒートポンプ式の洗濯機作るから。それにドラム式って掃除めんどいし、生地が痛みにくいけど洗浄力落ちるしな……後でけぇ」

 

「へぇ、尸魂界で使ってたんスか?」

っとまるで使ってたかのような口ぶりに首を傾げる喜助

 

「まぁな、()()()だよ」

 

「まぁ、兄サンの事だから洗濯機が尸魂界に普及しててもおかしくないッスけど」

 

確かに尸魂界には洗濯機が導入されていた。

 

「俺が作るからいいよ、洗濯機。明日ぐらいでいいか?」

 

「えっ」

 

「とりあえず乾燥機が欲しいんだろ?電気代も全然使わねぇし。縦型の洗浄力プラス容量もあるやつで乾燥付きにしてやるよ、尸魂界の連中は太陽の光の方が〜とか言うからあんまり使ってない様子だけどな」

 

「ほんとッスか!!鉄斎さーん!」

っと喜んだ様子で奥に歩いてく喜助。

 

「虚……ね」

 

ワイシャツを脱いだ維助が呟く。

 

「なんっか。嫌な感じがするんだよな」



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A5ランクの肉の話と、最上位大虚の話

 

「維助〜!」

 

ゴブッ

 

「あーあー……障子が、夜一サン。障子開けることを覚えましょ」

 

「何を言う喜助!!儂だってそのぐらいできるわ!」

 

「あの……離れてほしいんですけど」

 

ひっくり返った維助の上に乗っかっている夜一(全裸)

障子を猫の状態で破り維助に突っ込む瞬間に変身を解いたのだ。

 

「なんじゃ、帰ってるなら帰ってるとそう言えばいいのに、いけずじゃのー維助は!!昨日は尸魂界じゃったろ?今日戻ってくるら……」

 

「ダァァ!!服を着ろ!!痴女!」

 

夜一を押しのけ着ていた羽織をぶん投げる維助。

「ち、痴女じゃと!?!?」

 

服管機(ふくかんき)*1どこ行ったんだ!服を着ろ!!あげただろ!?」

 

 

「それなら、ほれっ」

()()()()服管機を取り出しボタンを押すと一瞬で服を着ている状態になる

 

「ったく……全裸はやめろ全裸は……思春期の男がいるんだから!」

っとチラッと目を移す維助

 

「「こっち見んなよ!!」」っとジン太と紫流が怒鳴った

 

「はいはい。」

 

「兄サン、お肉無くなりますよーん」

 

「おいこら、喜助人の皿から取るんじゃねぇ!」

 

維助の皿からひょいひょいと自分の皿や雨やジン太に分けている喜助

 

「儂の分も持ってこんか!喜助!」

 

「えぇ……!夜一サンの分なんてないッスよ……。貴方6人分一人で食べるでしょ」

 

「儂をなんだと思っとる……」

 

「はいはい。俺のあげるから」

維助が残った肉を差し出すと口を開けて食べる夜一。

 

慣れたような光景に誰も突っ込まない。

維助が伝令神機を操作して3分後コンコンっと扉が叩かれる

 

「まったく、誰ッスかねぇ……」っと箸を置いて立ち上がった喜助がしばらく紙袋を持ってやってきた

 

「兄サン宛ッスよ多分。なんか玄関置いてありましたけど。」

 

紙袋となにか丸い機械を渡すと、維助が機械を懐にいれ紙袋を開けた

 

「ほら、追加の肉だぞ。すき焼きと言えば程よい脂の霜降り肉だろ!」

 

「「「おぉー!!」」」

 

ジン太と雨、紫流の子供組が紙袋を覗き込んで目を輝かせる

 

「A5ランクだぞ。ターンと食え!ここの飯は少ないよなぁ。育ち盛りがいるんだからちゃんと食わせてやれ喜助」

 

「えっ、アタシッスか!?アタシはこれで十分なんスけどねぇ……」

 

「じゃぁ要らねぇか!おーい喜助の分も食えるぞ〜」

 

 

「「「わーい」」」

 

「嘘!嘘ッス!!あー足りないなぁァァ!!!」

 

鉄斎が、夜一の分の皿を持ってきて席に着く

 

「すげぇ……木箱に入ってる肉だ……!」

 

「どうやって買ってきたんじゃ維助」

っと鉄斎が肉を投入するのを見ながら首を傾げる。

 

「まぁ、高級な肉を扱う肉屋で今買ってきたんだよ。」

 

「ほぉ……買ってきた?()

さらに頭にハテナを浮かべる夜一に懐から先程の機械を取り出す。

 

コインのような薄さで丸い機械。

 

「これは自立式映写機。」

 

畳の上に投げて維助が伝令神機を取り出し操作すると。ぷかぷかと浮いた機械から光が放たれ維助が現れた。

 

「掴めるし歩けるし動かせるし話せるAI搭載積み。戦闘とかはさすがに無理だけど、買い物程度なら出来るぞ。さっき金を持たせて買いに行かせたんだよ」

 

「ほぉ……便利なもんじゃな」

 

「便利は機械の代名詞!ははは!味わって食えよ!」

 

「肉が……!とろける!!!やべぇ」

っと口にかき込むジン太

 

「ま、まぁまぁだな!!」

貴族だからか慣れているかもしれないが、あまりの美味しさに箸が止まらない紫流。

 

すき焼きの鍋はあっという間に空になった。

 

お腹をポンポンと抑えながら維助の膝の上に寝っ転がる夜一。

 

「明日俺尸魂界に帰るから、何かあったら連絡してくれ。」

 

「なんじゃ。明日は1日おらんのか」

 

「うん、隊を放置できないし仕事も残ってるし定時連絡もあるからな。」

 

「まぁ兄サンは現世でフラフラしてていい人材じゃないスからねぇ……」

 

トントンっとこめかみを指で叩き続ける維助に、夜一と喜助は顔を見合せた。

 

「いや、ダメだな。分裂する。ならあの鉱石をつかって……」

 

っとブツブツ言い始めた維助に、ため息を吐いた喜助

 

「(まぁ機械の事だろうなぁとは薄々思ってましたけど)」

 

重要な何かかと思ったっと夜一もそんな維助を膝から見上げて同じくため息を吐いた。

 

____________

 

「はい。問題ありませんでした。朽木紫流は通常通りの業務を行っています」

 

「ふむ、そうか」

 

定期的な隊首会、俺は並ぶ隊長達の中心に立ちホログラムで紫流の行動を映し出した。

 

「ここ数週間で虚撃破数50に(プラス)捕食率0。いやはや優秀だね、紫流君」

感心したように頷く京楽隊長。

 

「一護くんも学生ながらちゃんとやっているようだし、安定しているな」

っと浮竹隊長も乗っかった。

 

「あと数週間様子を見て、朽木紫流は隊に戻れるものと考えられます。」

 

「承知した、浦原維助はこれまで通り責任をもって朽木紫流を監視及び報告を忘れぬよう務めよ」

 

俺は元の位置に戻ると更木がボヤいた

 

「はっ、元最上位大虚(ヴァストローデ)だかなんだか知んねぇけど、そんなめんどくせぇやつ拘束するなり殺すなりすりゃいいだろうが」

 

そこで白哉坊ちゃんがギロリと睨みつける

 

「あ?んだよ」

っと詰め寄る更木。

 

「ふんっ、我々に任せておけば第二の朽木紫流が現れたとしても対応できるというのに」

涅も乗っかってくる

 

「また始まったよ」

っとため息混じりの呟きが冬獅郎から聞こえてきた。

 

「だから、お前はバラバラにグチャグチャにするだろ?研究だかなんだか知らんが人の命は大切にしような」

 

「ふんっ、()()()()()()()()

 

「まぁまぁ、よしなさい。維助君が責任持ってやると言ったんだ、それでいいじゃないの」と、笑った京楽隊長

 

「そこまでじゃ、次。日番谷冬獅郎報告せよ」

 

「はい」

今度は真ん中に立った冬獅郎

 

 

「報告します。ここ1ヶ月での死神全隊員の殉職者は63、不審な死はありませんでした。登録された霊力との照合も済んでいます」

 

「そうか」

 

藍染が霊刀をつかって第二第三の紫流を作ると予想され調べ始めたもの。

機械で藍染が居なくなってから護廷十三隊全隊員の霊力を保管し、それを死体の霊子と照合し偽物でないかを確認する。鏡花水月対策。

 

でも惣右介は多分死神を実験するより、虚を実験体にすると思うな、死神と虚は構造が異なる、死神で実験しまくるのは適作とは思えない。

 

だがしかし、惣右介は腹黒いから、仲間の絆とやらで遊んでくる可能性がある、死んだと思われていた友人が敵に__なんてね。

 

どっちも有り得るからめんどくさいな。死体の残らない隊士もたまにいるし

 

その時

 

ウィンウィン

 

っとサイレンがなり始め、俺は壁に着いている受話器を取るとモニターに映し出される

 

 

”『申し上げます!!十二番隊より報告!空座町東部に破面の反応!数は三体!その霊圧濃度、安定性からみて』”

 

成体であると思われます

 

ザワッとザワつく隊首室、ゴン!っと地面に立てた杖の音にざわめきが無くなる

 

「火急である。これより最上位大虚の討伐任務を、二番隊隊長浦原維助に命ずる。現世に行くついでに始末してこい」

 

「ついでって、まぁ分かりました」

 

「納得いかねぇ」

 

そう言って前に出たのは更木

 

「戦いだろ?俺にやらせろよ」

 

「ならぬ、これは命令じゃ」

 

「あ??んでだよ。」

 

「お前が暴れると現世荒れるんだよ。瀞霊廷と違ぇんだ自重しろ」

 

「チッ」

 

「行け浦原維助」

 

「はい……直ちに」

 

ったく、こうなんでタイミング悪いのかね。

それともこっち(瀞霊廷)をどこかで見てる惣右介があえてこのときを狙っているのか……。

 

最上位大虚を倒す任務……いやぁ強いといいなぁ

 

 

____________

○現世

 

ヤミーと呼ばれる最上位大虚が、井上織姫と対峙していた

 

その戦いを見て分析するもう1人の最上位大虚。

 

「(時間回帰か、空間回帰か……どちらにしろ回復とは違う何か、おもしろい能力だ……そしてあの武器)」

 

「いけっ!!」

織姫が銃を構えヤミーに放つ。

 

ヤミーはそれを腕で払うようにして受けるが

 

「あ……?」

焼け焦げたように爛れ一部が抉れていた

 

「痛えじゃねぇか……女!」

 

 

「(ヤミーの鋼皮(イエロ)を破り傷をつけるあの武器。女の能力__いや、違うな)」

 

鋼皮__霊圧による硬度な外皮、

並大抵の攻撃では傷一つつけることは出来ない。

 

はず__なのだが

 

「虚閃に似てんなぁ……!いてぇ、いてぇじゃねぇかよ!!」

 

「(この銃には霊子を収束させる時間が必要……!もう少し長く溜めなきゃ……!でも距離を取りすぎると茶渡くんが……!(むち)の方はまだ精度良くないし……どうしよう!)」

 

茶渡は維助からもらったグローブをはめて戦ったものの、ヤミーの硬化した外皮に耐えきれず、グローブは無傷だが、反動で腕の方が損傷してしまっていた。

 

 

「ねぇ、もう飽きたよ」

頬杖を着いた子供……否。破面が木から降りる

 

白髪の子供はボロボロなヤミーを蹴りつけると

ヤミーは吹っ飛んでいく

 

「何しやがるアマルゴ!!

クァ!っと起き上がったヤミーが怒鳴る

 

「うっさいな、遊ぶのやめなよ。()()()()()()()()藍染様から言われてるでしょ迅速(じんそく)にって」

わざとらしく耳を塞ぐアマルゴと呼ばれた破面

 

「チッ、人工もどきが……」

 

またギロリとアマルゴと呼ばれた破面はヤミーを睨みつけた。

 

「しかたねぇ、さっさと終わらせるか」

っと急接近し織姫に拳を振り上げた

 

───瞬間

 

 

 

 

 

_____()

 

紅葉傘(もみじがさ)

 

 

_____卍解

 

天鎖斬月

 

 

 

 

 

「なんだぁ?」

 

「紫流くん……黒崎くん……!」

 

ヤミーの拳に切っ先を向けた一護と、織姫の前に片手を出して守る紫流。

 

「紫流、井上達を頼む」

 

「おう。任せとけ」

 

「ひゃ」

織姫を横抱きにして離れた紫流

 

「ウルキオラ、こいつ……」

 

「あぁ、お前の無駄な戦いでこうも簡単にあぶりだせるとは、オレンジの髪に黒い卍解。間違いない、こいつが標的だ」

 

「(一護が標的?んだよ、こいつら……それに)」

 

白髪のアマルゴの破面と目が合う紫流

 

ドクンッと心臓が鳴り、冷や汗が流れる

 

「(なんだ、この感じ)」

 

「あぁ……君……」

っと口角が上がったアマルゴ

 

 

()()()()

*1
服を着替えれる機械



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浦原維助参戦の話

 

「おー、やってるやってる」

 

俺は上空から双眼鏡で眺める。

最上位大虚級が三体に、うちの高校のヤツらが数名やられて茶渡が負傷。

そして織姫ちゃんと紫流が一体の最上位大虚と対峙……

 

デカいのは一護……いや、喜助と夜一さんもいるな。

 

もう一体は何もしないんか。

っとか思ってると、ふと喜助が上を見上げ……

 

俺は思わず双眼鏡から目を離した。

何メートル離れてると思ってんだよ__

()()()()()()()()()()()()()

 

嘘だろバレた……?さすが我が弟。

そういえば穿界門開いたら誰が来たか霊圧で探ってんだっけ。

霊圧感じれないから俺だって確信したんだろうな。

 

仕方ない……いくか。

 

─────────────

 

「夜一サン。黒崎サン、アタシの合図でここから距離を取ってください」

 

「何言ってんだよ浦原さん!」

 

喜助の言葉に眉を顰める夜一。

 

「巻き込まれたくなければ離れた方がいいッスよ」

 

「なんだぁ!怖気付いたか!?」

っと愉快そうに笑うヤミー

ヒュウウウっと落下音が聞こえヤミーは上空を見上げる

 

「今っスよ」

喜助が剣を横に払い夜一と一護が後ろに飛び抜く__瞬間

 

「霊刀ぱーんち!」

 

上空から、維助が現れヤミーの脳天に蹴りを食らわせ。

土煙と爆音とともに地が割れクレーターが出来上がる

その惨状にヒクヒクと、目元を動かす一護

 

「おいゴルァ!俺らまで巻き添えになるところだったろ!」

 

っと土煙の中怒鳴ると

 

「えぇ、ごめーん一護」

っと呑気な維助がクレーターから上がってきた

 

 

「それになんスか、霊刀ぱんちって……」

 

「いやぁ、必殺技?ほらバトル漫画において必殺技叫ぶのはロマンだろ?」

っと維助がどうだ!とでも言うように仁王立ちすると顔を片手で抑えてうなだれる喜助が一言__

 

「ダサい」

 

「ダサい!?!?」

 

「しかも、霊刀持ってないし、パンチじゃなくて蹴りでしょう」

 

「あーあー、いいの!そこはノリと勢いなの」

 

「たまにバカ丸出しになるのなんなんスか……弟の肩身狭くなるんでやめてください」

 

なんだと!

っとキレた維助を夜一が宥める

 

「チッ、やっぱ橋姫パンチの方がよかったか、ってタフだなぁ……!普通のやつなら全身粉々になっててもおかしくないんだけど」

 

ふと後ろを振り向くと、クレーターの中から出てくるヤミー。

 

「くそ……クソが!!」

ブチ切れて横腹を抑えていた。

 

横腹は無惨に抉れていて、血がとめどなく流れ地面に大きな水溜りを作っていた。

 

「タフネスってやつ?アドレナリンドバドバで痛み感じない……って夜一さん。その腕」

 

維助を押えていた腕が青く変色しているのを見つけると、夜一はスッと、後ろに手を隠した

 

「いや、バレてるからどーしたんだよ」

 

「な、なにも?別になんでもないぞ」

あからさまに気をそらそうとする夜一にため息を吐く

 

「あいつ?」

っと、親指でヤミーを指すと、目を逸らしながらもコクンっと頷いた

 

「そ、その霊圧硬度が思う以上にあって……の?いや、別に儂が油断したとかそういうんでは……」

 

ヤミーに振り向いた維助は静かに話した

 

「喜助、夜一さんをよろしく。回道かけてやれ」

 

「はいな」

 

 

「フゥーッフゥーッ」と、荒い息を繰り返すヤミー。

 

「悪いな、女の子が怪我してる時に遊ぶのは男が廃るってもんさ!って事で……遊びたかったけどごめんな。いや女の……子?」

 

ゴルァ!維助!!そこを疑問視するな!!!」

 

っと言う怒鳴り声に、ごめーんっと軽く謝る

 

 

──────────────

 

無駄にでかいなぁ、あの分だとちょっと血を流したぐらいじゃ死なないか…、殺すにしても状態は残しておきたい,最上位大虚なんてそうそう出会えないし、喜助が調べたそうだし。

 

「って事で、その腕いただきまーす」

っと刀を振るった瞬間。

 

キィンっと火花を散らし何かに防がれる

 

「およ?」

 

 

「遅ぇぞ!!アマルゴ!!」

 

「うっさいなぁ……!!」

 

っと、振り上げられた足を避け距離をとる

俺の刀を腕で防ぐなんて、相当な筋力か……いや違うな。

 

「威力を相殺(そうさい)したのか」

 

喜助がよく使う相殺の技、反転した鬼道をぶつけたり、威力を反転させた霊圧をぶつける。高等技術だ、初対面のやつが俺の威力を相殺するとは……だが、完全に相殺出来た訳ではなく

 

腕から血飛沫が舞う

 

「およ……」っと、自分の腕を見る子供。

 

俺は違和感に眉を顰める。

こいつ───

 

とか思ってると

 

「おししょう……お師匠……」

 

血濡れで這いつくばってる紫流が織姫ちゃんに治療されていた

 

「大丈夫か?」

 

「そいつ……霊刀を……」

 

「へぇ……なるほど」

 

「俺は藍染様のお気に入り、アマルゴ。よろしく」

 

手が青い光に包まれ、その瞬間には太刀を握っていた。

 

「大分小さくしたみたいだけど、まだまだだな。実験段階ってことか……」

 

「俺を……そこら辺のネズミと一緒にするな!!」

 

何故かブチ切れて向かってきた。

実験動物みたいに言っただけでそんなブチギレるか?

 

「俺は浦原維助。よろしく!」

 

今度は相殺されぬように素早く、まるできゅうりを斬るように__

 

───腕を切り落とす

 

「う、ウァアアア!!うで!腕がァァ!!

 

自分の腕を抑えながら発狂する子供。

惣右介はなんでこう子供で実験するのかね、ショタ好きだったりする?

 

「まぁ霊刀だからなんだって話なんだよね。鬼道使うやつならまだしも、俺と剣で語り合いたいならそれなりのやつ連れてこいや」

 

「まだ、だ……!へへ……」

ヨダレを垂らしながらこちらを向いたアマルゴはメキメキと音を立てて

腕が再生した

 

「気持ち悪っ。涅かよ……」

 

「なんとでもいえ!」

霊刀を橋姫で受け止めると違和感を感じた

 

「ハァ!?まじかよ」

 

みるみるうちに俺の霊圧硬化が……身体に纏った霊力が吸われていく。

 

 

青く青く光るそれを振りかざす

 

「喜助!!」

 

─啼け紅姫

 

俺は橋姫で防ぎ喜助は後ろの子らを守った。

木々がへし折れ地面が浮き上がる斬撃

 

「はっ……はは、ここまでの霊力とは」

っと、霊刀を頬擦りするアマルゴ。

パキッと、音を立て喜助の盾が砕け散る。

 

「人の霊力吸い取って収束したものを放つ……はっなるほどね」

 

「そうさ!!空気を吸うように!ひとの霊力を吸い取れる!!触れたら最後空っぽになって終わりさ!!ハハハ!!己の霊力のデカさが仇となる!!」

っと笑うアマルゴ。なんつーか、子供だな。

 

「新しい玩具を与えられた子供__ 」

 

「んだと……!!」

 

「いいぜ、どんどん吸い取れよ……さぁ!」

 

わざとゆっくり振りかざした刀を霊刀で受け止められ、どんどんと霊力が自分の意思関係なく吸い取られていく

 

「ハハハ!!どうだ!苦しいだろう!ふふふふ」

 

っと可笑しそうに笑うアマルゴの顔が段々と青くなっていく

 

「なぜ……!!もう瀕死になってもおかしくない程に吸い取ったのに……!なぜ立ってられる!!」

 

俺はスルッと左手で右腕の制御装置を取った

 

「覚えとけ、ガキ。吸収する力、溜め込む力ってのは限度があるんだよ。水を吸い取るスポンジも、いずれ漏れ出てくる。」

 

俺の制御しきれていない霊力が溢れどんどんっと霊刀に吸い込まれていく

 

「やめろ……やめろ!!」

 

俺は離れようとするアマルゴの腕をつかむ

霊刀からパキッ___っと音が鳴り響く

 

 

「そら……!!俺の霊圧で吹っ飛べ__」

 

俺は霊刀を太刀取りで奪うとアマルゴに突き刺しアマルゴを上空高く蹴りあげた

 

「やめろぉおお!!!」

空中で為す術なく、アマルゴは____

 

青い光に包まれ吹き飛んだ

 

余波で地震とも言える揺れと突風が吹き荒れる

俺は素早く制御装置をつけ直した。

 

「やっぱり霊刀は不完全。甘いね……」

チラリと、黒髪の破面の方をむくと

 

「想定通りだ」っと言った。

 

つまり実験段階のを殺されるとわかってて俺とぶつけたのか。

「まぁいいや、あんたらもやる?相手するけど」

 

「今回は退く、我々の目的は達成された、全てが想定通りだと

 

そのまま破面は黒腔に入り消えていく

 

全てが想定通り……ね。俺こう言う心理戦ってやつ?嫌いなんだよね。

 

 

「あーあ、霊刀を欠片もなく粉々に爆散させたのは間違いだったか……」

 

 

──────────

 

「はい、あーん」

 

「あ……あーん」

 

「何してるんスか」

呆れたように大きな丼を2つ持ち足で襖を開けた喜助。

 

「いや、何って腕痛いだろうから食わせてあげてんだよ」

 

「でも夜一サンの腕は日常生活には__ ゴブァ

何か言いかけた喜助にすぐさま顎を蹴りあげる夜一さん。

「うわ、痛そう」

 

吹っ飛んだ丼をキャッチして畳の上に置いた

 

「痛いぞ維助、さぁ食わせるんじゃ!はよはよ」っと口を開ける夜一さん。

 

「お、おう……まぁ、そのなんだ、早く来なくて悪かったな」

 

「よいよい、儂が瞬閧状態で戦わなかったのが悪いのじゃから」

 

アイタタ……っと言いながら起き上がった喜助が顎を抑える

「それにしても霊刀、やはり組み込んで来たッスね。」

 

「まぁ、だろうなって感じ……まぁあの感じだと隊長格でも苦戦するだろうな、霊力吸い取られて終わりだ。紫流も似たような感じでやられたんだろ。俺みたいにゴリ押しで霊力注ぎ込めるのは更木ぐらいか……」

 

「まぁ策を講じないといけないッスね……兄サンみたいな力押しは本来通用しませんし……」

 

 

 

 

 




次回 砕蜂 vs 夜一!の……話?


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砕蜂vs夜一??ドタバタ装甲車の話?

ギャグより注意


 

「維助様〜!!!って……夜一様」

 

「なんじゃ砕蜂。儂がいるのがおかしいのか?」

 

たゆんっと揺れる胸を維助の腕に押し付ける。夜一

 

「あの……夜一さん、砕蜂の目が死ぬほど痛いんで離れてもらっても……」

 

「いやじゃ」

ぷいっとそっぽを向いた夜一に頬をかく

 

「あーまぁ、とりあえず客人として入れることになったから……その。なんだ、部屋を」

 

「はっ……ただいま」

 

「あ、アタシのもよろしくお願いします!」

 

ひょこっと維助の背中から顔を出した────

 

「浦原……喜助!!」

 

砕蜂は刀を抜くとそれを躊躇いもなく喜助に向かって振るう

 

カスッ__っと前髪が軽く切れ喜助は顔を青くする

 

「な、なにするんスか!?」

 

「こっちのセリフだ!貴様っ!どの面を下げてここに来たのだ!」

 

「えぇ!ちょ、夜一サンと対応違くないッスか!」

 

────────────

 

「それで、急にいかがなさったのですか?」

 

っと、茶を配った砕蜂がお膳を胸に首を傾げる

 

「いや……実はさ」

 

これは__1日前に遡る

 

 

○浦原商店

 

「ダメじゃ維助!共に風呂に入ろう!!」

 

「イヤイヤ!!1人で入れるだろ!」

 

「う!で!が!!痛くてのぉ……」

っと、擦り寄る夜一。

 

「あの……近所迷惑なので「「喜助!!!」」……なんスか」

心底面倒くさそうな顔をする喜助が下がろうとしたのをガシッと首根っこを掴んで止める維助。

 

「維助を」「夜一さんを」

 

「説得するのじゃ!」「止めて!!」

 

 

「はぁ……何がどうなってそうなったんスか?」

 

「いや夜一さんが、腕痛いから風呂に入れろって」

 

「維助がてつどうてくれんのじゃ!!」

 

「だーっから(ウルル)に入れてもらえよ!」

 

「うっ、昨日も入れて貰ったからのう、流石に悪いと思って!」

 

「だからなんで俺!あっ、そうだ一護の所の妹さんに……」

 

「初めましての儂がそんな事頼めるか!!」

 

「ですよね……あっ!じゃ喜助に!!」

 

「いきなりアタシにフルの辞めてもらっていいッスか!?」

 

______________

 

そして今に至る。

 

「と、言うわけで。夜一さんがきかないから。じゃぁ砕蜂に入れてもらおうと」

 

「わ、私がですか!?」

己を指さして驚いたように飛び上がる

 

 

「同じ女だろ?夜一さんも昔からの知り合いの砕蜂に入れてもらったらいいかなって、手伝ってあげるだけでいいからさ。」

 

「それは分かりましたが……あの、なぜそのものも?」

っとジロッと喜助を睨みつける砕蜂

 

「いやぁ、あはは、ちょっとこちらで兄サンにお話が……アタシが来てることは他に内密に……。特に十二番隊には……」

 

「頼むよ砕蜂。」

 

「…………分かりました。維助様の頼みであれば……」

 

____________

 

ここは二番隊隊舎地下

 

砕蜂と夜一さんは浴場へ向かった。

 

「はぁ……まったく100年でよくここまでやりましたね」っと周りを見渡す喜助。

SF風の風景におぉ。っと色々見回ってる。

 

「いやぁ、1箇所改造したら他も改造したくなって……っておいおい、何勝手に自分の指紋を登録してやがる」

 

勝手に俺の伝令神機で登録し始める喜助。

指紋認証の扉に喜助が手を添えるとウィーンっと扉が開いた。

 

「いやぁ、また来た時開けてもらうのも悪いなーって」

 

「ったく……くれぐれも内緒で侵入すんなよ?」

 

ゴウウンっとエレベーターの音を聞きながらそれに乗り下る俺ら

 

「それにしても珍しいよな、喜助が俺の霊銃(れいがん)(今名ずけた)__銃の使い方を教えて欲しいだなんて」

 

 

「いやぁ、使えるものは使っておこうかなと」

 

織姫ちゃんが使っていた銃を喜助も使ってみたいらしい。

 

「これは、人間がつかう銃とは違う。霊子を吸い取り放つ、また自分の霊力も使うことができるが溜め込みすぎると爆発するから適度にな」

 

「爆発!?」

 

「当たり前だろ、あのアマルゴっていう破面見ただろ?あぁなる。だから収束したら撃つかセーフティつけて収集を停止。撃つの辞めるなら横にボタンついてるから押すと空中に霊子が分解される。改造してもいいけど、壊れても知らないからな、改造したら銃が突然爆発するだなんて人間世界にもある事だし。まぁ、腕が残ればいいな」

 

サァっと少し顔を青くして頷く喜助。改造する気だったか

 

「んで……あの……これは?」

 

「何ってこと?わかんない?ロケットランチャー……RPGだよ」

 

喜助は俺に渡されたロケットランチャーを肩に背負って構えている

 

 

【挿絵表示】

 

 

「いやそれは分かるんスけど。ボクが欲しいのは拳銃みたいなやつでして……」

 

「いいじゃん強いよ、全部吹っ飛ばせるよ」

 

そうッスね!!()()()()吹っ飛ばせますね!!

 

「声でっか。」

 

ほら、っと投げた銃を受け取る喜助

 

「そうそう、これッスよ」

見た目は明らかな拳銃。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「セーフティを外せば霊子が収集され、銃口に霊子が収縮する。もう一度付ければ停止。横のボタンを押せば貯めてた霊子を分解。セーフティを外しぱなしにしとけば、連射出来ると思うぞ、威力は弱いけど……。威力を高めたいなら青く青く眩しいぐらいまで溜めるといい。さっきも言えば溜めすぎると……まぁ、ね?腕が」

 

「わかってますって。ありがとうございます、兄サン」

 

 

銃の撃ち方なんかを指南していた時____

 

プツ__っとマイクか繋がる音が聞こえ。

 

”『閣下ー!!!前総司令官と砕蜂副隊長がー!!』”

 

っと、部下からの内線が入る。

 

「ったく……なんだよ。1回上行くか喜助」

 

「はいな」

そうして俺らはエレベーターに乗って浴場がある場所へ

 

 

んで____

 

「何がどうしてどうなってん?」

 

「そ、それがぁ……急に取っ組み合いを」

 

お互いバスタオル1枚でギャーギャーっと取っ組み合いしてる夜一さんと砕蜂。

 

俺はため息混じりに手を挙げ女の部下に指示し二人を離させる

 

「とりあえず……」

 

「服を着ろ!!」

 

落ち着いた2人に服管機を渡しそれぞれの装束に着替える2人

 

 

「正座!!」

 

「むっ」

 

「はい……」

ムスッとした夜一さんと、しょんぼりした砕蜂が正座する。

 

 

「「……」」

 

「黙ってちゃわかんないよ。何があったの」

 

「砕蜂が……」

 

「夜一様が……」

 

「維助を」「維助様を」

 

「「婚約者だと!!」」

 

 

「あぁ……」

っと、壁によりかかった喜助が扇子を開くと俺に耳打ち

 

「ほうら、言わんこっちゃない……いずれこうなると思ってたんスよ……、うやむやにしようとするから」

 

「うっ……いやそうなんだが……」

俺はため息を吐いて向き合う。

 

「まず……夜一さんとは破談しているはずだし……砕蜂は見かけだけという約束だ。」

 

「「うっ」」

 

「そ、それはそうじゃが……その……えっと……」

 

 

「ちゃんとしなかった俺も悪いが……その……言い辛いが俺は結婚を望んでいない。まだまだ現役だし、子供の世話も……って感じだし。立場上守るべきものが近くにいられると困る。人質とか……な?」

 

「むぅ……話が飛躍しすぎるんじゃ。子供などまだまだ先の話じゃろう?」

 

「まぁ……その、そうなんだが。付き合う=結婚っていうなんか。そういう感じのが……」

 

「なんじゃ維助、最先端を行くお主が、女子(おなご)については大昔の話じゃの」

 

「おおむか……っ!?そん……な」

俺はガクッと畳に倒れ込む

 

「あらら……夜一サン。兄サン凹んでますよ」

 

「なっ。儂のせいか!?」

 

「俺はぁ、女の子大好きだけど!!遊ぶのは好きだけど、その責任ってものを覚えてだなぁ!一夜限りもそういう専門の女の子だけだし……遊びで付き合うってのは……付き合うイコール最後まで責任を……って」

 

「ほほう……()()()()()()

 

「維助様、初耳なのですが」

っと、2人が詰め寄ってくる

 

「し、仕方ねぇだろ!部下に手を出すわけに行かねぇし、他の隊はいざこざが……生徒にも手は出せねぇし……!ほら俺男だし!!言わせんなよ!!」

 

 

「私めを!使ってくださればよろしいのに!!」

 

「何を言ってる砕蜂!!」

 

顔を真っ赤にして片足ついて大声出す砕蜂に突っ込む

 

「そんな事を軽々しく言うんじゃありません!!俺らの前ならまだしも、蜂家の品を疑われるぞ!」

 

「うっ……!ですが……!維助様も立場というものが!」

 

「大丈夫大丈夫、顔も認識阻害の機械つけてるし、身分も隠してるし、髪も瞳の色も変えてるし、出された水も食事も一切口にしてないし」

 

「女性と遊ぶためにそこまでするんスかゴフッ

おれが肘で付くと痛いっと蹲る喜助。

 

 

そこで___

 

「お取り込み中失礼します」

 

刑軍衣装を着た俺の直属の部下が現れた

 

「例の脱走者の潜伏場所を特定しました。証拠も撮影済みです、軍の配置も済んでおります」

 

俺はスマホを取り出す

「何ページのやつだっけ」

 

そこで砕蜂が膝を着く

「シート73ページ、重要脱走者の3人組です。」

 

なるほど、俺が砕蜂に任せておいた奴か。

「前回は8人中5人確保、3人が逃げた__ね」

 

「申し訳ございません」

 

「いいよ、責めてる訳じゃない、逆によく短期間で見つけだした。被害もそうないし……うん」

俺はスマホを懐にしまった

 

「ちょうどいい!せっかくだし久しぶりに共同作戦と行こう!配置した刑軍を下がらせろ」

 

「はっ」

そう言って去っていく部下。

「あの、維助様……なにを?」

 

 

「いったろ……?」

 

ソロッ、っと忍び足で離れようとする喜助の首根っこをつかむ

 

 

「共同作戦__!ってな、行くぞ砕蜂、夜一さん、喜助」

 

 

─────────────────

 

「んで……なんスかこれ」

 

「何って、見ればわかるだろ」

 

バキバギバキっと、木々をなぎ倒し森を駆け抜ける

 

装甲車(そうこうしゃ)

 

 

「ははは!よいよい!もっとスピードを出せ維助!」

 

「はいよ!」

 

「維助様ー!!!」

 

まぁ、乗り心地は良くないけどな!

 

「試作品56号!装甲車56(そうこうしゃコロン)ちゃん!ガソリンは必要なし、操縦者の霊力で走る。木々や岩はなぎ倒せる、最大スピードは普通の死神の瞬歩の数倍の速さ!数百の高さから落ちても無傷!水上走行モードも搭載積み!大荷物運ぶ時なんかに便利だぜ!あっ、ちなみにco2は排出しないぜ!体力温存にぴったし!今回の任務地は遠いしな」

 

 

「って言いながら使いたかっただけでしょうに」

 

「うるさい喜助……さぁ着いたぞ東79の森林。こんな所に小屋なんか作りやがって……まぁ火を使ったからか直ぐに居場所特定出来たみたいだけど」

 

どんどんと距離が近くなる小屋。

 

「あの、兄サン!兄サン!!ちょ……あの!!まさか」

 

50メートル

 

30メートル

 

「維助!?」っと驚く夜一さんの頭と砕蜂の頭を抑える。

 

「頭下げてろよ!突っ込むぞ!!」

 

小屋との距離0メートル

 

 



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装甲車とRPGと記憶の話

 

ドガァァァン

 

 

ものすごい衝撃音とと共に小屋が爆散する

そのまま通り過ぎる装甲車

 

ぶつかる直前に3つの黒い影が小屋から飛び出していたのを見逃さなかった

 

「やっぱり気づいてたし早いな、隠密機動の追っ手から逃げる速さはある」

 

「まぁ、この車の音がうるさいってもあるでしょうけど」

「うるさい喜助」

 

 

「さて、さっさと捕まえるか」

アクセルを踏みしめて装甲車を発進させると

 

「どうわぁ…!」

っと悲鳴の先を見ると夜一さんが上半身を車から投げて落ちかけている

「ちょ、夜一さん!?」

 

「落ちる!!落ちるぞー!!止めぬか!」

 

「夜一様!」

足が離れた夜一さんにしがみつく砕蜂

 

「と、止まるんじゃ維助!」

 

「車はすぐに止まれないの!何キロ出てると思ってんだ!それに急ブレーキ踏んだらそれこそ投げ出されるだろ!?喜助、手伝ってやれ」

 

「えぇ…って兄サン!!前!前!!」

 

「嘘だろ…!?」

 

前方からは大岩が転がってきていて。

装甲車でぶっ飛ばしたら、夜一さんと、掴んでる砕蜂まで吹っ飛ぶ、ハンドルをきる?いや、こんなガタガタの道だ、横転する…!

 

脱走者がなんか仕掛けてたな??

 

「仕方ない…喜助!!後部座席に詰んでる荷物を!早く!!」

 

 

ミラー越しに頷く喜助。

「ってこれ…!!」

 

「撃ち方教えたろ!早く!」

 

「仕方ないッスね…」

 

喜助が後部座席から身体を出して構えたのは

 

 

 

ロケットランチャー

 

 

 

さすがは喜助、慣れない体勢に今日握ったばっかりの重火器。

装甲車が小屋にぶつかった時とは比べ物にならない程の爆散により岩は砕け散った。

 

反動で揺れるも、夜一さんと砕蜂は元の位置に戻った。

さすが体幹ある〜

 

「し、死ぬかと…」

 

「大丈夫かー?全く乗り出すなよ。砕蜂!」

 

「はっ!」

 

砕蜂は慣れたようにモニターを操作する

 

「目標距離1.9、重要脱走者の1人です。斬魄刀の抜刀を確認。能力を使ったものと思われます。」

 

「へぇ、岩を操る…ね。洞窟作り放題じゃん」

モニターに表示された男と、登録された情報と照合する砕蜂。

 

「銃口固定、照準安定、いつでもいけます」

 

「よし、いけー!」

 

「まっ、まさか爆はっ…!?」

っと顔を青くさせる夜一さん

 

「違う違う、そんなことするわけないじゃん。拘束用だって」

 

放った捕縛用のネットが男達を絡めとる

3人捕獲しスピードを緩め装甲車を止める

 

「なん…だこれ!」

っと暴れる男を装甲車から降りて踏みつけると、グエッと鳴いた

 

「うーん。56ちゃんはあとは乗り心地をどうにかしないとなぁ、銃の精度はまぁまぁか…あと音がなあ…」

 

「まとめて資料を作成していきます」

 

「ありがとう砕蜂」

優秀で助かるよ

──────────

少し離れた所にてその様子を見ながら夜一と喜助が話していた。

 

「なんじゃ、砕蜂も維助に染まってるの…いや、二番隊…隠密が…」

 

「はは…まぁ兄サンが上に立てばこうなりますよねぇ…」

 

「お主も大概じゃが」

 

「えぇボクもッスか?あんなのと一緒にしないでくださいよ…」

 

()()()()だと?」

 

振り向いた維助に肩をビクつかせる

 

「「地獄耳」」

 

「てめぇらが声がでけぇんだよ!」

 

維助はポカッと、喜助の頭を殴ると

アイタァ!っと、頭を押えてうずくまる

 

「なんでボクだけ殴るんスか!!ボクに恨みでも!?」

 

っと涙目で見上げる

 

「逆に恨みないと思ったのかよ…俺の体を散々いじくり回しやがって…院生の頃腕の骨折ったの覚えてるからな?っておい、砕蜂

 

なにかに気づいた維助が砕蜂を呼ぶと、

 

「維助様の…身体を…いじくり…」

っと顔を赤くして鼻を押えていた。手の隙間からは血が流れ出る

「おいこら砕蜂、変な事考えるな。思春期の中学生かてめぇ…!」

 

頭を鷲掴みにして揺らす維助。

 

「とりあえず帰ろうか。縛って後ろに…のんねぇな、縛りつけよ」

 

装甲車の後ろに脱走者を縛り付けて走り出す。

行きとは違い今回はゆっくりだ。

 

「尸魂界も交通の便をなんとかすればなぁ…。ほら四番隊とか瞬歩使えねぇやつとかいるし、地下や地上に車とか…まぁ転送装置があればいいんだけど、あれ1回体分解して再構築させるからちょっとミスると腕無くなるとかあるからまだ実装できないんだよなぁ…」

 

「あぁ、作ってはいるスね」

 

「転送とかワープとか夢だろ!人間世界の相対性理論によると__まぁめちゃくちゃ簡単に言うと物質は加速を続けても光速に達することも超えることも出来ねぇんだ。考えてるのは1回分子レベルまで分解して再構築する。人間には無理だが…こっちの世界には時間軸が確立されてる亜空間や断界なんかもある。それを利用すれば出来るはずだよ。ただ計算できないほどの不確定要素も多くデメリットも多い身体の影響も怖いし。って…聞いてるか?」

 

「んー……わからん!!」

っと、腕ん組んで言った夜一に

 

「ですよねー」

っと返すと、後ろから足が飛んできた。

 

グハッ。俺今運転中!」

 

グラッと大きく揺れる車内。

 

「あわわ、兄サンちゃんと運転してください!」

 

「俺のせいか!?」

「貴様!維助様になんという口を!」

 

「なんでボクだけ!」

っと泣いた振りをする喜助。

 

「でもまぁ、空中に霊子の線路なんか作って電車走らせてもいいし、地下でもいいけど崩れたらめんどい。音速レベルの電車とかいいなぁ」

 

そこで思い出したかのように笑顔になる維助

 

「確か昔記事で見たのはチューブ列車って時速1200キロを超えるものなんかを作ろうとしてるところもあったな、真空にしたチューブの中に列車を走らせるんだよ。

空気抵抗と摩擦を極限まで減らす、ただ膨張と気圧の関係で実現は難しいだなんて記事に乗ってたなあ…」

 

「尸魂界で…じゃないッスよね現世でそんな記事ありましたっけ?」

っと考える喜助の声にハッとした様子の維助

 

「…あぁ!チューブ列車。そうそう、俺の夢なんだよ、今の考えた仕様な!音速で瀞霊廷回れるようにしたらいいと思うんだよね」

 

「なんじゃ、夢か…まぁ維助なら出来そうなものだが…はたして瀞霊廷全体の改造を許されるかどうか」

 

「ですよねー…」

 

_________

 

 

「はい。小テスト終了、裏返しにして後ろから回せ〜自分のは一番上に乗せて回すように」

 

「うわぁぁぁ!やべぇぇー!」

 

「はい、啓吾うるさい」

 

叫んだ啓吾を注意すると教室が笑いに包まれる。

 

「はい。じゃー1限目のプリントを委員長配って〜」

 

その間に丸つけをしていると、赤ペンが止まる。

 

「…」

 

50点満点の小テスト

 

25点黒崎一護。

 

途中でペンが歪んでいたり、シャーペンが折れた跡も見える。

最後まで書いていないし

 

「…」

 

 

帰りのホームルームの後みんなが帰る中

「黒崎、ちょっと残れ。委員長教室は俺が閉めるから」

 

みんなが帰ったあと一護は俯いていた。

 

「一護、最近成績が落ちてる。なんかあったか?」

 

「……」

一護は黙ったまま俯いていた。

 

「はぁ…まぁいいか、ルキアちゃーん!ダメだったわ」

 

「ルキ…!?」

びっくりした様子の一護が俺の方を向いたかと思うと、俺が呼びかけた方に目を移した

 

窓辺に立ってるのはルキアで仁王立ちして笑っている

 

 

「久しぶりだな、一護!!」

 

驚いた様子の一護に構わず、ルキアは一護の顔面を殴りつける

 

「ガブァ!」

 

「なにしやが…」

何か言いかけた一護をもう1発ぶん殴るルキア

 

「なんだその!腑抜けた顔は!!来い!!」

 

ルキアは一護の胸ぐらを掴むとそのまま窓の外にぶん投げた。

その後をルキアが追いかける。

あれ生身の身体だけど大丈夫かね…

 

俺は教卓の上に頬杖つく。

 

「人の感情ってのは機械でどうにも出来ないから面倒くさいよね」

 

 

ルキアと冬獅郎、あと恋次に十一番隊連中が現世にきた、というより浦原商店に押しかけて、学校の登録をしろと喜助に頼んでいた。

 

「平子隊長、一護を頼みました」

 

「なんや、気づいとったんか」

 

「生徒が帰ってないことぐらい分かりますって」

 

なんやそれ気持ち悪っと言いながら教室の扉から顔を出す平子さん。

「それに隊長ちゃうわ。」

 

っとボヤく。

 

「ねぇ、平子さん、一護をよろしく。強くしてあげてね」

 

「…それはなんのためや?」

 

「え?なんのためってそりゃもちろん。惣右介を倒すために?」

 

「…」

眉を顰める平子さん。

 

「…あんたと話すと時々()()()()()()()。昔の方が、まだマシやったで」

 

「ほな、帰るわ。センセ」

そう言って踵を返して帰っていく平子さん

 

気持ち悪い…ねぇ。

 

俺も時々気持ち悪くなるよ。前世の記憶が混ざったりして混乱する事もあるし。前世でようやく成人か…とか思ってたのに今は20年とか目を閉じるぐらいに早く感じる。

 

人間の頃は死とか程遠い存在で、でもすぐ側にあって恐ろしいものだったのに。死神になってからは死が近く脆く、何も感じなく。ただ魂魄とは循環をするだけの砂。

 

 

死神は何百年も生きる為なのか飽きるとか進むとか多分人間の時間に帳尻(ちょうじり)を合わせてるかのように酷く遅い。

だから何百年も同じ場所に通っても飽きていないし江戸のような昔の不便性で満足している。

5年で極めれる事も死神は10年も20年もさらにそれ以上かかる。

 

それが死神の感覚。それが普通

だけど俺は前世の記憶を持っているからか時間の感覚的には人間に近い。

人間時代の20歳だなんてめちゃくちゃ長く感じたのにそれの10倍以上も生きてる。正直飽きるし疲れる。

だから俺は新しいものを作りたくて仕方ないのかもしれない。

一護にも惣右介にも期待している。

どちらが勝ってもきっと尸魂界は変わると思う

 

「はぁ、俺も俺で面倒くさ」

 



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破面の話と料理の話

 

ルキアは一護の部屋の扉を思いっきり開いた

 

「っておい!静かに開けろよ!壁に傷つくだろ!」

 

という一護の声も無視して自分の部屋かのようにベッドに座りくつろぐ。

こういう光景も懐かしっ!と思った

 

「ねぇーさぁぁあん!!ゴブァ!!

 

押し入れから飛び出してきたコンはルキアに抱きつこうとして思いっきり踏まれた

 

「あぁ、ひと夏越しの出会いにも関わらず一切の戸惑いもない踏みつけあぁ…最高っす〜ねぇさん!!ブゲェ

 

情けない悲鳴を上げてバタバタと暴れるコン

「しぬ、死んじゃう綿がぁぁ!」

 

という声に離すと

スカートの中を見たコンが一言___

 

「白♡」

 

っと言う声にルキアは窓ガラスの方へコンを蹴り飛ばし

パリーンっと音を立てコンは屋根に転がった。

 

「窓ぉぉおー!!!ルキアてめぇ!何しやがる!!」

 

「仕方なかろう!私のせいだと言うのか!」

 

「てめぇのせいだろ!!」

 

そうしていると__

 

「夏梨ちゃんシー!聞こえちゃう」

 

「いや、一兄に怒られても知らないからね」

 

っと声に、一護がピクッっとこめかみを動かすと思いっきり扉を開いた

 

「うるせぇぞゴルァ!」

 

「「「ごめんなさーーい!!」」」

っと、父親の一心。遊子そして母親までも

 

「お袋!!止めろよ!」

 

「だぁーって、お母さんも気になっちゃって〜きゃー青春ね」

 

「うっせ」

 

そうして階段を降りていったのを確認して部屋の扉を閉めた。

 

「ったく、あいつらは…ヒトを餌に大盛り上がりしやがって」

 

「相変わらず楽しげな家族だな!って、お袋…?母親が起きたのか?」

 

「あぁ、ついこの前な。それでとっとと教えろよ。破面ってのが何なのか!なんで俺らが狙われてるのか!」

 

 

すると、天井からカコンっと音がした

 

「そいつは俺たちが教えてやろう!」

天井から4人がひょこっと顔を出した

 

「うぉおおい!人の電気に何してやがる!!」

 

「んだよ、壊れたら先生にでも直してもらえよ」

「電気治して〜なんて呼べるか!!」

 

面倒くさそうに耳をほじってる恋次に詰め寄った。

「うるせぇなぁ、あの人なら快く直してくれるだろ。なんだっけ、あのぱーてぃ?とかくらぶ?っていう雑誌みたいな派手なやつにしてくれるだろうよ」

 

「いらねぇよ!ミラーボールなんかつけられそうだわ!ってかなんでそんなん知ってんだよ」

 

いや、先生が現世の書物くれるんだよ。っと言う声に、何してんだあの人…っと突っ込む。

 

「とりあえず…」

 

恋次はルキアの取り出したスケッチブックを指さしながら説明を始める。

 

破面(アランカル)とは、仮面を外し虚と死神二つの力を手に入れた虚の1団だ。今まで数も少なく未完成だったが。

そこに崩玉を持った藍染が接触する事で、成体の破面が誕生した。

そいつがこの間の三体だ。

 

「ここまでわかるな?」

 

「いや、スケッチブックがなかったらよく分かったよ。」

 

ルキアの持ったスケッチブックに描かれた下手な絵をみて相変わらずだと、ため息を吐く

 

「当初尸魂界は藍染が直接コトを起こすまでは静観するつもりだったが、十三隊も一気に3人抜けてバタバタしてたし、だが予想以上に早く成体が完成しそいつが現世に送られた事でそうも言ってられなくなった。そこで急遽選抜されたのが俺達だ」

 

選んだのは総隊長だと言う。

 

私もいきたーいと行って乱菊、そして付き添いに冬獅郎が。

 

「いや、ピクニックかよ、ってか浦原先生に頼めば良いじゃねぇか」

 

すると。

「なんで窓ガラス割れてるんだ…?」

 

っと窓側から声が聞こえた

 

「冬獅郎!」

 

「日番谷隊長だ。」

そう言って窓枠を超えると机の上に腰掛けた。

 

「そもそも、浦原隊長は忙しい人だ。尸魂界と現世を頻繁に行き来しているし。前回も浦原隊長が尸魂界に行っている時に狙われた。」

 

「へぇ、そんなに忙しい人なのか」

 

「朽木紫流の監視。尸魂界では霊術院の講師、隠密機動に新四十六室の選抜育成。その他色々と仕事がある。どうしても現世を離れることが多いんだよ」

 

「どっちでも先生してんのかよ」

 

「とにかくてめぇは藍染に狙われてんだよ。黒崎一護。破面は確かに虚の面を剥ぐことで生まれる。だがその辺の虚を仮面を剥いだところで大したもんはできやしねぇ。本気で尸魂界に戦争を仕掛けるつもりなら破面化の対象は自ずと大虚(メノス)以上に限られる」

 

「なんだよ…メノス以上って…まるでメノスより上がいるみてぇじゃねぇか」

 

冬獅郎は説明を始めた

 

大虚の中にさらに3つの階級が存在する

 

1つはギリアン。メノスの中で最下級。似たような見た目をしてる人間に例えるなら雑兵に近い。

2つは中級大虚(アジューカス)、ギリアンよりやや小さく数も少ない知能が高く戦闘力はギリアンの数倍。数の多いギリアンをまとめる存在だ。

そして3つ目は最上位大虚(ヴァストローデ)。大きさは虚としては極めて小さく人間と同じ程度。数は極めて少なく、虚圏に数体しかいないと言われている。

 

「そもそも、アジューカスもヴァストローデも藍染が現れるまで見る事も聞くことすらごく希。数千人いる死神の中でも片手で数える程度しか会ったことがねぇぐらいだ。ハッキリ言う。」

 

一護と目を合わせる冬獅郎

 

「この最上位大虚級の戦闘力は隊長格より上だ。もし現時点で藍染の下にこの最上位大虚級が10人以上いたら尸魂界は終わりだ。」

 

「で、でもよ。浦原先生はその最上位大虚になった?紫流を簡単に倒したし…この前だって…」

 

「いいか。あの人を宛にするな。あの人は始解すらせずにアジューカスもヴァストローデ級も地に伏せて来た。隊長格でも敵うやつはいねぇ。だが…。あの人は少しキナくせぇんだよ」

 

そこで乱菊が口を挟んだ

 

「隊長!だから気のせいですって!あの人はそんな人じゃありませんって何度言ったら…」

 

「分かってる。ただの俺の勘だ。実際尸魂界に数え切れねぇほどの功績を上げてる…ただ…」

 

その鋭い目に一護は息を飲む

 

「まるで尸魂界が、あの人に飲み込まれていくような_。藍染より恐ろしい何かを感じるんだよ」

 

 

─────────────

 

「ヘブシッ…なんだ、噂か?」

 

「女性絡みでしょうね」

 

「殺すぞ喜助」

 

維助は喜助から渡されたテッシュで鼻をかむ。

 

「にしても、紫流は元気だねぇ。帰った途端に虚退治に町を駆け回るとは」

 

「強くなりたいんでしょうよ」

 

相性が悪いとはいえ。コテンパンにやられたのが悔しかったんだろうな、っと考える。

すると部屋から

「維助〜!!はやく氷菓子もってこんか!!」

 

「はいはい、お姫様」

 

維助がアイスを手渡すと食べながら新聞を読む夜一

 

「今日何個目だよ。太っても知らねぇぞ」

 

「あ、腹壊すって事は心配しないんスね」

 

「この人がアイスなんかで腹壊すわけねぇだろ」

 

という謎の信用。

 

「心配いらん!脂肪は全て胸にいくからの」

 

「胸…」

っと呟く喜助の耳を引っ張る維助

「てめぇどこ見てやがる」

 

「痛い!耳飾り引っ張らないでください!!不可抗力ッス!」

 

___________

 

「俺の部屋は無理だからな!!何人いると思ってんだ」

 

「わーってるよ、俺は先生の所にあたってみる。あの人の弟はてめえを鍛えたんだろ?あの人の弟には一度会って見ておきてぇんだ」

 

「なぁ、浦原先生…維助さんは霊刀つーやつで尸魂界側に責められなかったのかよ」

 

「あ?霊刀…あぁ、あれか」

 

っと恋次。見たところあまりよく分かってないようだが、そこで冬獅郎が口を出した

 

「尸魂界側は霊刀の件について浦原隊長を罪に問うことは無い。そういう法律があんだよ」

 

「へぇ…法律。」

 

「言ったろ。あの人にのまれてるような気がするってな」

 

その一言にどれだけの意味が含まれているかは分からない。

 

ルンルンで歩く乱菊の後ろを歩く冬獅郎

 

「(最上位大虚一体の討伐。だがあの人ならもうニ体を逃がすようなヘマはしないはず。しかも一体は霊刀を体内に秘めた最上位大虚だと報告を受けた。わざわざそいつだけを殺した…?深く考えすぎか偶然という可能性があるが…煮え切らない)」

 

───────────

その夜

 

「兄サン。」

 

「あぁ、来たな」

 

ガチャガチャと機械をいじる維助。

地下専用維助部屋。工具や金属片やネジや釘、ボルトなんかも転がっている。

 

知らない人から見ればガラクタの山。

 

ゴーグルをつけて金属を火花を散らしながら溶接している維助に声をかけた喜助

 

「行かないんスか?どうやらこちらを探ってるようっスけど」

 

「そうだな、だが俺目当てじゃないだろ。霊圧を感じ取れないはずだし。」

 

車の骨組みのような物の下に入り込んで作業を始める維助。

 

「行かないんスか。霊圧の衝突…戦ってるようッスけど」

天井を見上げる喜助。

 

破面。想像以上に来るのが早いし数も多い

 

「そーね。まぁ大丈夫だろ。俺がいちいち首突っ込むようなもんじゃないし。」

 

「おや、珍しい。強いものに戦いを挑みまくってるような兄サンが」

 

呆れたように下から顔を出す維助。

「俺はそんな更木みたいなことしねぇって…。俺をなんだと思ってんだ。それに…前回の黒髪の破面みたいな()()()()ならまだしも。今回は…ねぇ。霊刀の反応もなし、実験体送り込んできたわけじゃないらしいし興味無いね」

 

 

「あの、本来は最上位大虚ってだけで強いはずなんスけど…」

 

「俺はいいや。気が乗んない。もしなんか言われたら空間凍結で忙しかったでーすとか言っとくわ。喜助も行く気ないんだろ?」

 

「まぁ…首突っ込む事じゃないッスからねぇ〜」

 

「一緒じゃねーか」

 

「いやいや、ボクはもう護廷十三隊じゃないですし。兄サンとは訳が違う。兄サンには戦う理由があれどボクにはないっスよ」

 

「それに恋次や冬獅郎達がどれだけ成長してるか見たいしな」

 

また天井を見上げる喜助。

「限定解除もされてないようですし…きついんじゃないッスか?」

 

限定霊印(げんていれいいん)

死神の中でも特に強大な霊力を有する護廷十三隊の隊長と副隊長が現世に来る際、現世の霊なるものに不要な影響を及ぼさぬよう体の一部にこの印を打つ。

 

死神の戦闘技術は基本的に自らの霊力を源とするものであり、更に霊力は霊体の運動能力と密接に関係しているため、結果として戦闘能力も大幅に削減される事となる。

 

「まぁ…兄サンは運動能力が少し低下した程度でも倒したんスけど…本当に印押されてるんスかねぇ」

 

「今回来たほとんどの最上位大虚は、弱い。そもそもあいつら最上位大虚でもなければ中級大虚ですらない。体は大人、中身は子供。力はあっても能力がない。そんなやつのために俺がなんで出向かないといけないんだか…給料増えるわけじゃないし。ボーナスよこせってんだ」

 

 

維助が空中に手を添えるとキーボードがバーチャルのように空中に出てくる。それを横にスライドさせれば、破面と戦っている死神の姿が映し出された。

 

「あーあ。皆怪我しちゃって…」

 

「無傷の方がおかしいんスよ…あーあ。布団用意するように言わなきゃ」

 

モニターを眺める喜助。

 

「あっ、限定霊印が解除されましたね」

 

「…そうね」霊圧が上がったのを感じる。

 

「まぁ、なら大丈夫だろうさ」

 

 

しばらくしてモニターをみた喜助が目を見開いた

 

(ウルル)…!!」

 

直ぐに部屋を飛び出していく喜助を見てモニターに目を移し映像を少し巻き戻す維助

そこには雨が破面に攻撃を受けているシーンが映し出されていた

 

「あいつもここ100年で大切なやつらが出来たんだなぁ」

 

───────────

 

朝っぱらからスマホがうるさく響き、スマホを手に取る

 

「はぁーい、なんですか?今日はどちらも非番の浦原維助でーす。またなんの用?モニターは夜そっちに送ったろ」

 

通話先は日番谷冬獅郎だった。

 

”『なぜ参戦しなかったんですか浦原隊長。今日はこっちにいましたよね。モニターの件はうちの松本が受け取りましたよ』”

っとスマホから日番谷冬獅郎の不機嫌そうな声が聞こえた。

 

「いやぁ、気づいてたんだけど、ほら空間凍結に忙しくて。あんたらがバンバン霊圧ぶっぱなして戦うんだ。他の魂魄に影響出ないようにするのも仕事だからさぁ…それに信じてたんだよ。俺が手を出さなくても倒せるって」

 

スピーカーモードにして作業を始める維助。

 

”『それから、今日総隊長と話しました。四十六室の地下議事堂か、大霊書回廊の捜索。中身は見れなかったらしいが恐らく二番隊…あんたの開発資料に、崩玉に付随する資料。そして───王鍵(おうけん)の創成法の資料に藍染の霊圧痕が見つかった』”

 

「王鍵ねぇ…。つまりは藍染は王鍵を使って王を殺そうって?」

 

”『話が早くて助かります。王鍵の創成に必要なのは十万の魂魄と半径一霊里に及ぶ重霊地』”

 

「つまり…ここ、空座町。」

 

”『藍染の持っている崩玉の覚醒は四ヶ月はかかると言われた。そうして、総隊長からの命は決戦は冬各々(おのおの)冬に向けて戦いの準備をせよとのこと。そうして浦原喜助にも総隊長から命が下った』”

 

「うわ、喜助面倒くさがりそ」

 

”『だからですよ、あんたが説得してください。弟でしょ』”

 

「分かった分かった。言うだけ言っとく。」

 

”『それから総隊長があんたの開発資料の閲覧許可を求めてたぞ。』”

 

「あぁ、大霊書回廊の」

 

尸魂界全ての事象・情報が強制集積される場所、つまり維助の開発の歴史も詰まっている。

 

”『大霊書回廊、浦原維助の情報には鍵がかかっていた。鍵をかけたんでしょう?藍染が何を調べたか見たいそうなので閲覧許可をと』”

 

「俺が調べるからいいよ。許可はしないって言っといて」

 

”『また、()()()()()()()()()()()()()()()()()ですか?』”

 

「そうね、いくら隊長格でも総隊長でも、見せられないよ」

 

”『……でもおかしいんですよ、大霊書回廊は四十六室の管理下。藍染が消えた後に付けたとしても、四十六室は全滅してるから鍵はつけられないはず。もしかして───それより前に鍵をつけてたんじゃないですか。』”

 

「へぇ…」

ニヤっとわらった維助が機械をいじってた手を止めた

 

”『藍染にわざと…開発資料を見せていた__訳じゃないですよね?』”

 

「そんな訳ないじゃん。確かに鍵自体は昔からかけてたよ。でもあの藍染だよ?鍵をくぐり抜けて閲覧(えつらん)することなんて可能だろ。現に誰にも気付かれずに大霊書回廊に侵入してたわけだし。だから俺が許可したわけじゃない」

 

”『…そうですか』”

 

「それに、俺の開発権限の法律には開発内容の独占も含まれてる。だから総隊長は俺に命令という形じゃなくお願いという形を取った。命令しても俺にはそれに従う義務がないからだ。」

 

”『………こうなると読んでた訳じゃないですよね』

 

「まっさかぁ!俺はそこまで頭良くないよ」

 

”『どうだか…』”

 

その後通話は切れた。

 

「あーぁ。惣右介が俺の開発資料みたのは自分で言ってたから知ってたけど。見られた後につけたんだよなぁ、まぁ説明したらしたでめんどくさいし。謎の方法で鍵をくぐりぬけたってことにしとくか」

 

藍染に全てを押し付けることに決めた維助だった。

──────────────

 

「んで……なにやってるんスか兄サン」

 

浦原商店と書かれたエプロンをつけて可愛いバンダナを頭に着けた維助が台所にたっていた。

 

「なにって……料理」

 

「兄サンが……??」

 

「何その心底ありえないような顔」

 

グイッとそのほっぺを引っ張る維助。喜助はイタタタ!!!っと涙目になっていた。

 

「なんでまた急に?」

頬を離された喜助が頬に手を当てながら首を傾げる

 

「いや、機械化していいものとしてはダメなものについてちょっと悩んでて」

 

卵を割って溶く維助。

 

「機械化していいものと……ダメなもの?例えば?」

 

「手作業のもの。目で壊れてるか壊れてないかを判別してる物も機械で認識して弾く事もできるし。ごみ捨て掃除洗濯炊事ですらロボットがやってくれる。芸術ですらロボットで作れるけれど、それはどうなんだろうって思って、意味があるのか。って奴を探してる。機械で作った料理と手で作った料理。効率てきには機械で作った方が早い。けれどよく言うだろう?()()がこもった料理だと。愛情って物も機械に作れるのかって。それが分かればロボットに感情と心を……って聞いてる?」

 

ポカーンっと口を開けた喜助に維助が目の前で手を振ると、ハッとした喜助がプッと吹き出した

 

「何を急にと思ったんスけど……やっぱり機械関係でしたか。」

 

「なんだよ……みんなで食べたら美味しいとか。心が籠ってるってのを科学的に解明できないかな……って」

 

「映画とかでも言うだろ?人形や機械に心は作れるのかって。心が籠ってるってのは何となく分かるんだよ?なんとなく。ほらボロボロになってるけど頑張って作ったんだろうなーって思うようなマフラーとか、あぁ、心籠ってるなぁ〜って。

まぁ機械に心を入れるかどうかは後にして、とりあえず機械化するものとしないものを分けようかと……先に言っとくが!俺に心がない〜とか厨二心擽るような事じゃねぇからな?」

っと前置きする維助

 

「似合わないッスねぇ」

 

「お前は言葉足りないんだよ。話突然変えんなよ。この姿がか?」

 

喜助に振り向いた維助が首を傾げる

 

「兄サン家事やんないじゃないッスか。台所に立ってるのが似合わないって事ッス。今までのご飯も二番隊が作ってたでしょうし……作れるんスか?」

 

「俺の器用さをなめんなよ。作れるつーの。多分……」

 

「んで……何でまな板壊してるんスか?」

 

そこには玉ねぎと一緒にまな板を切り刻んでいた維助が。

 

「いやぁ……包丁の切れ味が良くて」

 

「それ百均なんスけど。玉ねぎ切るのすら力入れないと無理なんスけど」

 

「百均かよ、どこでケチってんだ」

 

「まな板は2万円ッス」

 

「たっっっか!!後で弁償しまーす」

 

っと言いながら片付ける。維助

 

「卵溶くのですらめんどい。泡立て器じゃだめか?」

 

「泡立ててどうすんスか……」

 

なんだかんだちゃんとオムライスができ上がる。

 

「ふわふわオムライスのかーんせい。昼飯なこれ。」

お皿に盛られたオムライス、人数分がようやく完成した。

 

「雨達に持ってきますね」

っとお膳に載せたオムライスを運んだ喜助がしばらくして戻ってきた。

 

キッチンに椅子を持ってくる維助と喜助

 

「「いただきます」」

 

「うーん、まぁまぁだな。」

 

「そうッスか?美味しいですけど」

 

「どう?真心ある?」

 

「うーん……兄サンが頑張って作ってくれたものですし。美味しいですよ」

 

「わっかんねぇ……」

 

しばらくしてお膳と空の皿を持ってきた雨とジン太

 

「あの、維助さん……ご馳走様でした」

 

「お粗末さま」

 

「変なの入ってると思ったけど入ってなかったな」

っと言ったジン太に

 

「こらこらジン太〜」

っと軽く注意する喜助。

 

「まじで俺の事なんだと思ってんだ」っと突っ込む

 

「あの……本当に……美味しかったです。また……作ってください」

 

そう言って去っていった雨

その言葉になんとも言えないものが心にジワっと広がる

雨とジン太が出ていった方向を見ながら呟く維助

 

「なんか……今の。俺が機械作ってそれを使った人の感想みたいな……」

 

「本当そういう説明下手ッスねぇ……。」

 

ズズっと食後のお茶を飲む喜助

 

「機械化しようとしまいが、作ったものには心が篭もり。作った人にはそれが帰ってくる。機械化してもしなくてもどちらにもいい所があるんスよ」

 

「そうだなぁ……。機械で作った料理を提供してお礼言われて。今の気持ちを、心の温かさを手に入れれただろうか」

 

っと考えこんでいると……

 

「維助ー!!おかわり!!はよ作らんか!!」

 

っと夜一が空っぽの皿を持って台所の入口から顔を出した

 

「声でか。えぇまた作るの?」

 

「なんじゃ、材料はあるじゃろう?作れ!」

 

「えぇ……仕方ないな。夜一さんも手伝って。喜助も」

 

「むぅ、仕方ないの。」

 

ブツブツ言いながらも冷蔵庫から卵を取り出す夜一を見て立ち上がる喜助。

 

「仕方ないッスねぇ〜ボクのも作ってくださいな兄サン」

 

「珍し、喜助が飯をおかわりすんなんて。お前少食だろ」

 

「人並みって言ってもらっても?夜一サン基準にしないでくださアイタァ!なんで殴るんスか!夜一サン!」

 

ゲンコツを受けた頭を涙目になりながら撫でる喜助。

 

「ったく……まぁ……機械で作るより、手作業によるこういう工程も__いいもんだな」

 

「なんか言ったか維助?」

 

っとエプロン姿の夜一が首を傾げる

 

「なーんも!って夜一さん卵握り潰して入れるのどうなんだよ」

 

「なんじゃどうせ潰すじゃろ」

 

「言い方!!!それに殻入るだろ!?ってセロリ入れるな!!俺セロリだけは食べ物だと認識してねぇから!!」

 

セロリを取り出した夜一に首を全力で横に振る維助

 

「何をネジを食してそうなお主が……そういえば嫌いじゃったな」

 

「だからお前らの中で俺なんだと思ってんだよ。っておいこら喜助!!てめぇ油入れすぎだろ!?揚げ物する気か!?」

 

タプタプっと油をフライパンいっぱいにいれる喜助の手を止めた

 

「えぇ?こんぐらい入れないと焦げないッスか?」

 

「大丈夫だわ!!てめぇは限度ってもんを知れ!お前そういえば料理作ったことねぇな!使用人がやってたもんな!?ここ100年も鉄斎に任せてたんだろ」

 

「あは〜よくお分かりで!」

 

扇子を開いた喜助が笑ったのを見てため息を吐く。

 

「喜助の欠点は一人で生きていけないことでーす」

 

「あっ、なんスかそれ!じゃぁ兄サンの欠点は……欠点……壊滅的音痴」

 

「考えて出たのそれかよ。確かに音痴だけど…そういうお前は琴弾けねぇだろ」

 

「三味線は弾けます〜!琴はいいんス!!」

 

「なんだそれ、あっ芸事といえば夜一さんは()い苦手だよな!」

 

「夜一サンに舞いは似合わないッスよ〜!盆踊りがいいところッス」

っと可笑しそうに扇子を扇ぐ喜助

 

「あっ、それはそう盆踊りは似合うな!」

 

「「あはは!ゴフッ!」」

 

その瞬間に喜助と維助の顔面に夜一の拳がめり込んだ

 

「「顔が痛い!!」」

 

「ふんっ!」

2人が顔を押えて蹲って夜一は頬をふくらませてそっぽを向いていた。

入口で隠れながらその様子を見ているジン太と雨

 

「なんか楽しそうだねジン太君」

 

「けっ。店長達はいつもあんな感じだろ」

 

 




浦原兄弟の挿絵

【挿絵表示】


身体をぶち壊して入院中なので、ゆっくり書いていきます……。
みんなも食事には気をつけて……


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修行の話


毎日投稿していたのに突然止まってすみません。
ぶっ倒れて病院にいました……。
まだ回復はしてないのですが少しずつ無理ない程度に更新していきます。応援してくださると幸いです。

皆さんも体調にお気をつけて特に食事


 

ざっとあらすじ

最上位大虚レベルの到来、3体のうち1体は霊刀の実験体だった、浦原維助は汚い花火をぶちまけて一体の討伐に成功する。

冬獅郎ら隊長各や副隊長各、そして十一番隊も現世に派遣され冬の決戦へむけてそれぞれが準備を始めていた。

 

 

 

 

 

「なんで俺が!?」

 

隣で大声を出すのは阿散井恋次。

声でか。

 

俺は呑気にどら焼きを食べる。

いやぁ甘い物はいいよね。

 

なんで恋次がこう大きな声出してるかと言うと、

喜助に修行を頼んできた茶渡。その修行相手に居候してる恋次をあてがおうとしてるのだ。

 

「あんたに頼みにきてんならあんたがやればいいだろ??」

 

「いやぁ、茶渡サンをあれ以上鍛えるには卍解の力が必要なんス。」

 

「だったら尚更あんたがやりゃいいじゃねぇか!あんただって卍解できんだろ」

 

するとニコーっと笑った喜助

 

「やだなぁ! 一介(いっかい)のハンサムエロ店主のアタシが卍解なんてできるわけないでしょうに!」

 

「あんた今回の事の顛末しんねぇのか!?あんたが昔十二番隊隊長だったことも、崩玉作った張本人だつーのも全部とっくの昔にバレてんだよ!!」

 

だから声デケェって…

 

知ってますよ〜っと軽く返した喜助にキレる恋次を腕で制す

 

「ダメなんスよ、アタシじゃ。アタシの卍解は人に力を貸すとか、鍛えるとかそういうのには向いていない

 

すると、バッとこっちを見る恋次

 

「じゃぁ先生!!先生なら良いじゃねぇか!卍解使えんだろ!」

 

「えぇ、なんでそこで俺に振るんだよ…全くの無関係」

 

っと、残りのどら焼きを口に放り込むと、恋次が首を傾げた

 

「そういや、先生の始解も卍解も見た事も聞いた事もねぇな…隊長になってるつーことは使えないわけないっスよね」

 

「使えるよーん。でも俺は剣一本でやってくつもり〜」

 

「それはなんか理由が…?」

 

「だぁぁぁって!!その方がかっこいいじゃん!

 

「はぁ!?!?そんな理由で使わなかったんですか!」

 

っと、バンっと机を叩いた恋次の顔をおしのける、近い近い。

 

「そうだよ、それでやってけてるんだからいいだろ〜」

 

「うっ…言い返せねぇ…じゃなくて!鍛えるなら先生の専売特許なんだろ!?ほら、俺にだって殴る蹴るの暴力振舞ってたじゃないっすか!」

 

「言い方!!でも喜助が卍解の力が必要って言ったんだろ?俺茶渡と戦ったことないから知らないし、喜助がそう言ったならそれに従うべき。喜助が俺じゃなく恋次に頼んだんだ。恋次の方が適任なんだろ?」

 

「うっ…」

すると、バッと、扇子を開く音が聞こえた

 

「じゃぁ、阿散井サン!こうしましょう!三ヶ月うちで雑用をしてくれたらどんな質問にもお答えしましょ!訊きたいことあるんスよね」

 

「修行の相手は雑用じゃねぇだろ!?」

 

「雑用ッスよ〜!手間も命もかけるものは同じでしょう?…それとも訊きたい事聞くのやめますか?」

 

「つ〜!!わーった!やってやる!!」

 

っと意気込んだ恋次。

ききたいことって何なのかねぇ…。

早速修行部屋に降りてった恋次を横目に次のどら焼きを開ける

 

「そういけば一護も石田も学校休んでたな昨日」

 

「あれッスよ兄サン。黒崎サンは例の軍勢の所へ。石田さんは…まぁ涅サンとの戦いで失った滅却師の力を取り戻してる所ッス。色々大変そうでしたよ」

 

その言い方じゃ見に行ったんだな。

 

「ふぅん…一護と平子さんついに動いたのね。斬魄刀と一体化した霊刀は虚の力を使うことを望んでいる。一護が虚化を習得したらこりゃ凄い物が出来上がりそうだけど」

 

「そうっスねぇ…滅却師に似た霊刀、死神の力、虚化。今までそんな事例はありませんから、ボクも何かどうなるのか楽しみッスよ」

 

隣に座った喜助がどら焼きに手を伸ばし、袋をあける

 

「でもまぁ…最近増えてきましたね。実験体

 

「そうねぇ…」

 

実験体。藍染が霊刀の完成のために虚を使い実験をしている。

一度埋め込んだ霊刀は取り出すことが出来ないので使い捨てである、完成までは程遠いが段々と形を成してきていて、この前襲撃してきたような最上位大虚に似た軍団を度々俺に送り込んでくるようになった。

 

わざわざ俺に送り込むのは宣戦布告か、それとも別の何かか。ただの処分の為に送り込んだのか、よく分からないけど。

 

だが、第一実験体の大太刀から、汚い霊刀花火をぶちまけた太刀の虚。段々と普通の斬魄刀のように小さく硬く丈夫になっている。

 

ガチの実験体過ぎて、戦ってる途中に使用者本人の霊力を吸い取られて勝手に死んでくやつとかもいた。

 

あいつもあいつで俺対策にこうじてるわけだ

 

「黒崎真咲、彼女には見張りをつけてるんスよね」

 

「そうね。一心にも言ってあるし二番隊刑軍の見張りをつけてる」

 

黒崎真咲。俺の霊刀による魂魄結合に成功した一号。

惣右介が狙ってくる可能性を考え護衛をつけていた。まぁ総隊長からの命だけど

 

 

「紫流は坊ちゃんの所で修行してるんだっけか」

 

「そうッスねぇ……商店も静かになりました」

 

紫流はもう暴走することは無いので大丈夫だと俺が上に進言し、無事正式に隊復帰。

尸魂界に帰還して行った。

 

「みーんな冬の決戦に向けて頑張ってんな。」

 

 

 

一ヶ月後、勉強部屋から飛び出していく織姫ちゃんをみた。

 

「なんだあれ。」

 

「喜助が戦線外通告を言い渡したんじゃ」

 

っと、勉強部屋から上がってきた夜一さんがそう言った。

 

「ふぅん、まぁ喜助がそう言うならなんか訳あんだろうな」

 

「相変わらず変な信用じゃの」

 

「そうか?喜助は無意味なことはしないからなにか訳があるんだろ。聞いてもわかんないし興味無いからいいや」

 

喜助は天才だ。

興味あることはとことんやり尽くし、幼い頃の家庭教師にすら分からないことは書斎や図書館に閉じこもり調べ尽くす。

そして物質などその時代不確定要素の塊だった物を己自身で確立させ、1人で薬品を作り上げたり霊子を操り新たなものを生成したりする、類まれなる才能と頭脳。

 

マジでよく分からない計算羅列でびっしり埋まったA4用紙見た時は鳥肌立ったね。

 

俺は前世のある程度の知識があるからできる物も喜助は己の考えと好奇心と行動力でそれをこなした。

そしてあの日俺が剣の天才と言われるようになった事件、中級大虚の出没。その日から喜助は備えを重要視するようになり、あらゆる可能性を考えあらゆる対処法を備える。

 

織姫ちゃんに戦線外通告を言い渡したということは単純に女だから心配だからとかじゃない。ってかそんなやつじゃないしな喜助は(失礼)

 

つまり戦場に出られちゃ困る…つまりは()()()と簡単に予想がついた。

回復ポジは前に出るべきじゃないし、もし惣右介が()()()()()…狙っている…?

その可能性に備えたという事かも…?

 

「まっ、いいか。考えてもわかんないし」

 

 

────────────

 

数体の成体の反応に伝令神機が鳴り響く

出現の合図だ

 

「およ……早いな」

 

「おやまぁ……大量ッスね」

 

恋次と茶渡の修行を見守っていた俺らはいっせいに上を見上げる

しかも、ただの破面に紛れて実験体と似た気配も感じる。

 

「ダメだってんだろ!!てめぇはここで休んでろ!!」

 

そう大きな声が聞こえ視線を移すと

 

「し、しかし……!」

ボロボロで立つこともままならない茶渡とそれを押え付ける恋次

 

それに近寄った俺は恋次の肩を軽く押すと__

 

いってぇぇぇぇ!!

っと肩を押えてバタバタと地面をころげ回る

 

「ほら、恋次も怪我してるじゃん。お前もダメだよ」

 

「先生!!いや今の怪我してるところさらに押されてあんたのせいで悪化したんすけど!?!?」

 

「声でっか」

 

恋次は先程の修行で茶渡の攻撃を肩にまともにくらいそこからそれを庇うようにして戦っているし脂汗も流していたのを見逃さなかった

 

「後で鉄斎にでも直してもらえ。にしても__」

 

俺が尸魂界に行っている時に攻めてくると思ったが、違うようだ。

何か__()()()()()

 

「とりあえず俺と喜助で行くお前らはここで待機。さぁ喜助__久方ぶりに組もうか」

 

「仕方ないッスねぇ」

 

 

喜助は天才という話をしたと思う。

あらゆる想定に備えて__ってね。

 

でも喜助は俺に似た。

俺があげた周りの霊子を吸い取り放つ霊銃を懐にしまったのを見た。

 

今の喜助の顔、俺は長年見てるからわかる。新しいものを早く試してみたいという顔をしている。

 

己の発明品や新しい武器をしかも出来損ないとはいえ最上位大虚級に相当する敵との戦闘で使って試そうとは___さすが俺の弟。俺の方がよく変に見られることも多いが、お前もお前でやばいな喜助。

 

 

___________

「なんだそれは……!」

 

虚閃の二十倍の速さの攻撃__虚弾(バラ)だと自慢げに話すデブ成体。

だが喜助はやられた振りをして攻撃の癖を見切り相殺して見せた

 

「もう効かないッスよ。いやぁ!()()()()ッスねぇ?」

 

相殺できぬように今度は最大威力の虚閃を放つが喜助はそれを片手で止める

 

 

その片手に握られていたものは__

 

「これは霊銃。名前はダサいッスけど凄い機械でしてねぇ……霊子で構成された攻撃はほぼ確実に吸収でき___弾丸以上の速さで放出する」

 

喜助は銃を構え銃口からは吸い取った霊子が固まり膨らんでいく

 

「虚閃__お返ししますよ」

 

ものすごい音と共に煙に包まれ落下していく成体を見ながら口笛を吹く

 

ただ霊銃で吸い取ったとしても全て吸い取れるわけじゃないしタイミングも合わせないといけない。

しかも普通の銃と似てしっかり構えないと肩が外れたりする。いつも同じ反動ではなく吸い取った量によって反動も変わるが喜助は肩を外すこともなく平然と反動を殺した。

ミスなくこなす喜助、流石かっこいいねぇ

 

 

 

 

「さて______俺もやるか」

 

俺は傍観していたが実は二十体程の成体、しかも霊刀を持ったやつらに囲まれていた。

 

ただ出来損ないだけどこの数は___

 

 

「俺は浦原維助__弟に負けたくないんでね。いい見世物になってもらおうじゃん。よろしく」

 



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藍染の笑い の話

 

「なんでせっかく作った戦力あっちに送っちゃんです?藍染隊長」

 

虚圏(ウェコムンド)

 

宙に映し出された現世の映像を足を組み頬杖をつきながら眺める藍染惣右介

 

霊刀の実験体を作っては現世に送っている事に疑問を持ったギンがそう藍染に問う。

実験体としても十分な戦力、3席4席程度、人数が揃えば副隊長格や中には隊長格にも匹敵する戦闘力がある。

それをわざわざゴミを捨てるかのように現世に送っていることが不思議で仕方なかった。

 

「ギン、君の目から浦原維助はどう見える」

 

「はい?あぁ……」

 

いきなり何の話かと思ったが映像には浦原維助が映し出されており、霊刀の実験体と戦っていた

 

「まぁ、昔からえらい強いと思っとりますよ。剣術も__まぁ発明家にしてはなんや脳筋みたいな戦い方しとりますけど」

 

「ふっ……。頭がいいと普通は現状に満足し保持し続ける、だが彼は違う。ここ100年__いやそれから前から彼は進化し続けた。剣術の天才では終わらず伝令神機では終わらず__彼は歴史を作り続けている

 

確かに浦原維助の発明は止まることをしらない。

伝令神機からコピー機、家電や体を蝕む病を止める機械。

改造魂魄を生成する機械。記憶置換装置からエレベーターやエスカレーター。現世にそういったものが発明される前から彼が1人で開発したもの。

技術開発局がつくる機械は現世の道具や機械を真似て作ったいわゆる粗悪品。とてもじゃないが不便で使えない。

 

だが彼が作るものは違う。最先端も最先端。伝令神機なんて現世が追いつけるのか分からないほど未来をいく機械だ

 

 

チラリと藍染の顔を見たギン、藍染の顔はとても面白いものを見ているような顔。

そう__ワクワク……しているような表情

 

「でもあの人剣術以外で藍染隊長に勝てるんです?ほら、鬼道も使えないし。霊圧の制御装置つーもの使わないと自分の霊力操作すらままならないじゃないですか」

 

ギンの言葉にふっ__と零すように笑う

 

「彼が本当に霊力操作が苦手だとでも?鬼道を使わないのは彼なりのこだわりさ。彼はきっと鬼道を使える、知識も技術もある、でなければ電気の霊子を作り出し操る事はどう理由つける」

 

そこではっとするギン

 

確かに尸魂界で電気という概念を作り出したのは彼だった。

現世とは違う構造で似て非なるものだが。

 

自分が小さい頃から現世よりも発達している瀞霊廷、流魂街とは全く違う世界で、電気や伝令神機を確実に遅延なく伝える電波の霊子も発明したのは彼だ。それを応用し現世のような家電なんかも()()()どこにでも生活に馴染んでいた。

 

そんな彼が霊力や霊子に無知で技術がない__?それはおかしな話

 

「こだわり、こだわりなぁ」

 

こだわり__誰にでもあるこだわり。

一対一の戦闘を守るもの、手助けはしないと決めたもの

誇りを守る、ルールは絶対__等々あるが浦原維助は特にそのこだわりがつよいように見えた

 

「鬼道を使わないし始解も卍解もしない。まぁ卍解を使わへん隊長もいてはりますけど……藍染隊長は能力しってるんです?」

 

「さぁ……どうだろうね」

 

曖昧な返事の藍染

 

本当に知らないのか知っているのかは分からないが。

答えるつもりはないようだ。

 

「(なんや、能力が知れれば少しでも対策を練れる思ったんやけど)」

 

魂魄を削り取る機械。その詳細を知ったのは藍染が大霊書回廊(だいれいしょかいろう)に入った20年前。

霊刀の技術を盗み見した時*1。チラリと彼の制作物の話を見た時だった。さすがに量が多すぎて全ては見れなかったが。たまたまみた記録がその魂魄を削り取る機械の資料。

 

 

あの日維助が渡したスプーン。*2

あれは魂魄を削り取る機械。

ただのスプーンにみえてきちんとした機械。

乱菊に使用したあれは藍染に頼まれて維助が作ったもの。

 

藍染なら自慢げに、「私が彼に頼んで作らせたものだ」なんて言うのかと思えばそうじゃない。

 

藍染と維助は血判契約という取引した相手の正体をばらさないのと取引内容を話さないという契約により、藍染はいつも維助は__技術が、力がと話すのに機械のことをあまり話さないのはそういう訳らしい。

 

ただ、当事者が話さなければいいわけで、その取引と資料を見た自分はあまり関係ないらしい。

 

機械の詳細を内緒にする訳じゃない。きっと恐らく悪いことをしようとしている商売の客を安心させ顧客を手に入れるためのただの道具。

 

その技術が藍染の気を引いたわけだが。

 

部屋を出て白く長い長い廊下を歩くギンがつぶやく

 

「でもそれだけや。例え頼まれたとしても__」

 

例え頼まれて作ったものだとしても、脅されて作ったとしても魂魄を削り取る機械を作った事実には変わりない

 

復讐相手には変わりないのだ__100年前から

 

「でも、そこまであの人にこだわる理由はなんやろ」

 

藍染が維助にこだわる理由。

計算高く腹黒く、2手も3手も、王手すらも予想する藍染が維助にこだわるのは何故か、どうしてもギンには理解できなかった。

 

 

『俺は友人だと思ってるよ』

 

数十年前そう言っていた浦原維助を思い出す

 

「まさか…藍染隊長も()()だなんて言わへんよな…?」

 

 

 

_________________

 

「君は本当に私を楽しませ飽きさせない」

 

1人になった部屋で映画を見るかのように眺め続ける藍染

数十もの霊刀の実験体を圧倒する維助。

 

霊刀の実験体は出来損ないの破面を使い能力を底上げ、しかも相手の霊力や己の霊力を奪い力にする。その刀は相性が良ければ隊長格をもしのぐ。

 

正直浦原維助とは相性が悪いだろう。

始解もせず鬼道も使わない彼は、霊圧硬化の霊力を吸い取り防御を崩したとしても彼には敵わない。圧倒的な力。

 

だが浦原維助に実験体が送ることをやめないのはきっと。彼の戦いを見たいという思いか、あるいは己の実験の成長を発明者に見せつけたいがためか、だがそれは藍染の心の内を見ないと分からないであろう

 

 

________________

 

「ウジのように湧いてきやがる…」

 

二十かそこらだけかと思ったが黒腔からワラワラと湧いてくる

 

「我ながらめんどくさいものを作ったな…」

 

霊刀。霊子を吸い取る__。

 

霊子の集まりの霊力も例外じゃない。近寄れば俺の霊力で固めた霊圧硬化が剥ぎ取られる。

普通の刀ならまだしも、切れ味が良くなった霊刀を皮膚で筋肉で受け止めるのは少し怖い、腕が飛ばされる可能性もある

 

まぁ血濡れで戦うのもかっこいいかもしれないが無傷で制圧する方がかっこいいと俺が判断した。

 

 

すると__

 

「兄サン!ちょっと兄さーーん」

 

っと喜助の呼ぶ大きな声に振り向くと

少し下の方で俺が吹き飛ばした霊刀の実験体、気絶した破面の首根っこを掴んでる喜助が俺に向かって呼びかけていた

 

「なんだよ!俺!!今戦闘中!!」

 

ただでさえ防御力がほぼ0の俺vs多数で戦って集中してるって言うのになんだと言うんだ

 

「あんま暴れると町が壊れるんで!!ちょっと抑えてください」

 

どうやら破面を掴んでたのは住宅地に飛んでったかららしい。

「建物まで気を使えって!?この状況で!?」

 

「いやぁ、後処理考えたら今気をつけた方が楽ッスよ?」

なんて呑気な声が聞こえる

 

後片付けまで俺にやらせるつもりだったのか??

 

確かに年末死ぬほど大掃除するよりこまめに綺麗にしてた方が楽だけども!

 

状況を考えろ喜助。俺には無理だ。

 

____________

 

「隊長!加勢しなくていいんですか」

 

破面を凍らせた後、松本が冬獅郎に問う。

 

加勢とは少し上の方で戦っている浦原維助、二十体__いや、黒腔から出てくる破面。どれも似たような刀を持っていてあれが報告にある霊刀。

死神の力を手に入れた虚、破面は斬魄刀のような刀を持ち更には霊刀と結合しさらなる力を手に入れている。

 

その人数をまるで雑魚を蹴散らすかのように戦っている

 

「いや、俺らが加勢したら邪魔になる。それより町の被害を抑えることに手足を動かせ。」

 

浦原維助に吹き飛ばされた破面が町にクレーターを作っている。

「ですが…あの人数はさすがに…!」

 

「あの(霊刀)は霊力、霊圧を吸い取る。鬼道も始解の能力も使えねぇ___それなのに戦えるか?」

 

そう松本の方に振り返ると、確かに──っと呟く。

卍解をフルで使ってやっとの破面を数十体剣術と体術のみで戦うことが出来るなんて維助ぐらいなもの。

 

「ほうら!日番谷サンも手伝ってくださいよ」

っと気絶した破面を放り投げる浦原喜助が声をかけた

 

兄があの状態だと言うのに町の方を気遣っている所で維助の信用と信頼が見える。

 

「浦原さん!あれいいんですか放置して!」

っと指さす松本

 

「あそこに混ざったら死にますよん。まぁ行きたいのであれば止めませんけれど」

 

確かに上ではバチバチにやり合っていて混ざったら無傷では帰れないだろう。

 

「どうしてあの人達は私達に見向きもしないんですか?」

 

「藍染サンの指示でしょうね。普通の破面はアタシら相手。霊刀の破面は兄サンを牽制__まぁ普通逆の方が有効的な気がするんスけどねぇ」

 

っと上を見上げる喜助

 

そう、確かに霊刀の破面を他の死神に向けた方がいいだろう

実質鬼道も始解も卍解も封じられるようなものなのだから。

 

喜助はずっとそれに違和感を感じていた。

 

「まぁ__いつこちらに牙を向いてくるかわからないんで警戒はしといてください」

 

──────────

 

俺が必死こいて戦ってるって言うのに後始末に取り掛かるとは薄情な奴らだ。

 

「まじで!!虫かよ!!」

文字通り四方八方から向かってくる切っ先。

飛び上がり身体を回転させ一人の頭を掴み集団にぶん投げる

ボーリングのように吹き飛んで地面に落下していく。

無傷のノルマがある以上これで街の被害を考えろとか無理がある

 

斬魄刀のようなものと霊刀が結合したものだから当然能力らしきものも飛んできて、風や炎なんかが飛び交う。本当に厄介、霊刀の性能が上がっているらしくあのアマルゴ*3とか言うやつみたいにありったけの霊力を込めても全てすいとってしまう。

というか一本の霊刀に負担がかからぬように周りのやつも吸い取り始める。俺の霊力がほぼ尽きないと言ってもこれは有効打になり得ないだろう

 

 

「しゃーなし!喜助ぇー!!!!

 

下にいる喜助に聞こえるように叫ぶと呼ばれると思っていなかったのかギョッとした顔が見える

 

 

「お前の紅姫ちゃん貸せや!」

 

するとえぇ…っと心底嫌そうな声がかすかに聞こえてくる

 

「よそ見すんじゃねぇ!!」

っとキレた破面が水平に刀を振るうのが横目で見え咄嗟に床の霊子を崩し体を反らせ避ける

 

あぶねぇ__!前髪切れるところだった。

 

するとブゥン!!っと下から風を切る音が聞こえ咄嗟に左手を開け

 

()()()()()()()()()()

 

「ありがとう、喜助!」

 

始解した紅姫___喜助の斬魄刀を左手に握りしめる

 

「少しの間よろしく、紅姫ちゃん」

 

さすがに声は聞こえないが少しカタッと揺れた気がした__。

俺は破面の軍団に向き直る

 

「惣右介の命令だかなんだか知らんが。キリがないんでね早めに終わらせる。

 

改めて二番隊隊長、隠密機動総司令官、尸魂界一の剣術使いにして発明家。一刀も二刀もお手の物__かっこよさとロマンを追い求める男だ、よぉおおく覚えて死んでけ」

 

 

─────────────

 

「うし、刃こぼれなし」

俺は橋姫を鞘に収め、喜助の紅姫の刀身を見る

 

結果から言えば圧勝。やっぱ雑魚と集団は攻撃の打数増やさんと終わらんよな。

黒腔からはもうでてこなくて地面に転がった破面達。

殺しては無い、気絶はしてるけれど__。

死んでけって言ったのにこれはどうかと思うか喜助に止められちゃったから仕方ない

俺は喜助の前に降り立ち紅姫ちゃんを差し出す

 

 

「はい。喜助あんがとさん」

 

「まったく__いきなり無茶言うんスから。」

 

「無茶はこっちのセリフだ。あの状況で町に被害出すなとか__」

 

そこで俺らはハッとする

 

反膜(ネガシオン)が現れ喜助が相手してボロボロに倒れているデカブツと俺が倒した奴らが包まれる

 

 

「しまった___」

 

そう開いた黒腔をみて呟く喜助

 

黒腔からはあのウルキオラと呼ばれた破面が俺らを見下ろしていた

 

 

()()()()()

 

任務__?一体。

 

────────────

 

勉強部屋にて怪我をした奴らが治療されているのをぼーっとみている俺。

 

ギャーギャーっと一角が騒いでいた。うわ、いったそ

 

「浦原隊長。」

 

「なぁに冬獅郎」

 

そう俺の後ろから呼びかける冬獅郎

 

「尸魂界との連絡がつかない、電波障害か?」

 

「さてねぇ__あっちに行かないとわかんないかな。まぁ現世での連絡は問題ないから。尸魂界と現世との()()何かしら起きたんだろう。そういうのに弱いからな。」

 

亜空間を通して通信しているからかたまに不調がでる。これでも改善された方でここ数年電波障害なんてものは起きていなかったんだが__

 

「技術開発局に一任してるからな…とりあえずモニターあったろ。それで無理やり繋げてみるわ」

 

その後___電波障害を取り除き通信が整って浮竹隊長が話す内容_

 

「へぇ、織姫ちゃんが__」

 

そこで全て繋がる。

喜助が織姫ちゃんを戦場から遠ざけようとした理由も

 

破面側に拉致、殺害されたか。

だが一護は織姫ちゃんの霊圧が手首に残っているという、その襲撃の後に

 

___つまり

 

自分で着いて行ったと

 

破面側の襲撃準備が整ってるということで冬獅郎達は強制帰還、尸魂界の守護につく。

白哉坊ちゃんと更木が穿界門からルキア達を連れ戻した。

 

モニターに向き直る俺

 

「浦原維助、そなたも尸魂界に帰還せよ。元々現世に派遣したのは朽木紫流の監視のため。その任も先日解いたはずじゃ」

 

「そーっすね。んじゃ仕方ない、一旦戻りましょうか、まぁモニターとか設備とか色々やる事あるから遅れて帰ります」

説明を端折ったが総隊長は頷きプツリとモニターの画面が切れる。

 

「あの霊刀の破面は俺が尸魂界に向かわないようにするための囮か__」

 

前は俺が尸魂界にいた時に襲撃にあったから、次も尸魂界に行ってる時に起きるのかと思っていたが、これで引っかかっていたものが取れる。

 

俺が喜助の店で借りてる部屋で荷物を片してると

 

「兄サン。ちゃんと訳を話してたほうが良かったッスね」

っと襖を開けた喜助

 

「お前の事だから不確定要素だと思って言わなかったんだろ。推測に過ぎないからって。」

 

「はは、相変わらずで」

 

「何年お前の兄してると思ってんだよ」

 

「じゃぁボクのしようとしてること__わかってます?」

 

俺は荷物を片してる手を止め喜助に向き直る

 

「さてねぇ__。俺はお前の頭にはついていけないからな。まぁ()()()()()

 

そういえばふっと笑って帽子を下げる喜助

 

「いいんスか。兄サンは規定側。あっち(尸魂界)から待機せよ、手を出すなと命令が出た以上従わないといけない」

 

「そうだな、待機と尸魂界の守護をする命令は出たけど__勝手に動く奴らを止めろという命令はされてない」

 

「やっぱり兄サンは兄サンっすね」

 

きっと一護は動く。

それを喜助は手助けするつもりだ。

 

尸魂界に帰って1日も経たず、一護が虚圏に乗り込んだことが知れ渡る

 

─────────────

○虚圏

 

コツコツと音を鳴らせ階段を降りる藍染

 

「侵入者は3名___」

 

長い長いテーブルには十刃が座りその机からは石田、黒崎、茶渡が走る姿が映し出されている。

 

「敵襲だなんて言うから…ガキじゃないか」

 

「ちっ」

 

残念そうに頬杖をつくもの、見知った顔をみて舌打ちをするもの。

 

「侮りは禁物さ、彼らは旅禍と呼ばれたった四人で尸魂界に乗り込み護廷十三隊に戦いを挑んだ人間だ、侮りは不要だが。各自自宮にもどり平時と同じ行動してくれ__」

 

するとふと一人の十刃が呟く

 

「あのと戦えると思ったんだけどなぁ」

 

それに反応する各々。

映像は切り替わり、数日前に数十体もの霊刀の破面を無傷で倒した維助が映し出されていた

 

「大丈夫さ__私の予想が正しければ()()()()()()()

 

目を細めニヤリと笑った藍染。

 

 

 

 

*1
47話より

*2
21話と27話

*3
67話に登場68話で花火を散らした破面



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これだから___の話

 

「いやいや、本当に知らないですって自分。」

 

怪しんだ様子でギロっと睨まれる俺。

 

現在隊首会の最中。議題は黒崎一護一行が虚圏に乗り込んだ件について。

 

そしてそのついでに俺が倒した霊刀破面の話と、その後に通信…つまり電波障害が起きて井上織姫が行方不明になった時の話について。

 

遠回しに電波障害はお前がやったのでは?って総隊長に疑われてるのだ。

 

真ん中に立って必死に弁解している俺…ってことで冒頭に戻る

 

 

「本当ですって。ずっと戦ってたんですよ?最上位大虚級に霊圧高い化け物共を数十体!感謝されても疑われるなんて心外ッスね〜」

なんて言えば

 

「ふん、君の日頃の行いのせいじゃないかネ」

っと呟く涅

 

「おいおい、俺が何したって?あの霊刀の化け物共倒せんのかよお前。」

 

「その霊刀の破面が現れたのもそもそも貴様のセイだろう?おかしなことを言うネ君は」

 

っと指をさされる

 

ド正論すぎて何も言えん。

 

「はぁ__」

っと深い深いため息を吐いた総隊長。

 

「まぁ、それよりも。今は黒崎一行をどうするかじゃないですか?」

 

するとそこへ砕蜂が現れた

「隊首会の最中失礼します。」

 

「なんだ?」

俺が振り向けば顔を上げた砕蜂。

 

「六番隊副隊長、阿散井恋次。六番隊朽木紫流、及び十三番隊朽木ルキア。三名の霊圧が隊舎から消えた模様です。我が隠密機動警邏隊が瀞霊廷全域に捜査範囲を広げ___そして伝令神機の追尾情報から…三名は虚圏に向かった模様」

 

 

「あヤツらめ___」

総隊長の低い声が響く。

 

俺が手を上げれば下がる砕蜂。

 

「自体は急を要しますよ総隊長。霊刀の破面はまだ虚圏にいると思われる。一護や紫流はまだしも。滅却師や人間。そしてルキアと恋次には荷が重いでしょう」

 

「ならばどうする」っと、片目を開けた総隊長。

 

「俺に行かせてください」

「ならぬ」

すぐさま提案は却下され

 

「わかっておるだろう。【罠】だと」

 

そう、総隊長の声が響く__そう。これは確かに罠だ

 

「けれど、虚圏に向かったのは十分な戦力。無駄死にさせる訳には行かない。喜助には連絡して黒膣を安定化させましたし。十二番隊の仕事も終わっていると連絡が来ています。きっと惣右介は隊長格が虚圏に乗り込んでくることを読み__その隙に__って感じでしょう?」

 

 

「分かっておるなら言うでない。浦原維助。お主一人でも藍染惣右介と渡り合える十分な戦力。それを罠とわかっている場所に放り出すことが出来ようか」

 

俺は息を吸い、総隊長の目をまっすぐ見た

 

「俺はきっと__この隊首会にいるメンバーの中でいちばん強い」

 

そう言えば横目で京楽隊長が笠を下げて笑うのが見える。

 

 

「俺は惣右介に勝てる切り札になりうるだろう。けれどそれは一護達も一緒。きっと恐らくこの後に大きな戦いが現世で起きる。ならばやることはひとつ。黒崎一護一行を連れ戻し、戦いが始まる前に戻る___!例え始まってしまったとしても。絶対に間に合わせます。俺はスピードにもパワーゴリ押しも得意なんすよ。ほら総隊長もご存知でしょ?」

 

 

そう笑えば。ふむ__頷く総隊長

 

「お主は言い出したら聞かん。昔からの…ここで止めても無理に行くであろう、ならば仕方あるまい…」

っとようやく許可がでた。

 

 

 

 

 

「砕蜂、現世で俺が行くまでの隊長代理を任せる。部下に指示を出してやれ。」

 

「はい__」っと少し暗い表情の砕蜂の頭に手を置く

 

「大丈夫だ、俺が現世に行ってる間砕蜂は隊長代理として上手くやっていると報告を受けている。お前なら大丈夫だ、俺が一番信用を置いている部下だからな」

 

っと言えば

 

「はい。この砕蜂__必ずや維助様の期待に応えます」

相変わらずお固いことで。

真面目な砕蜂だから俺の隊はやって行けるのかもしれないな

 

そうして時間との勝負なため、数人の隊長格を連れ現世に。

 

「よぉ、数日ぶり喜助」

 

「待ってましたよん。もう入口は開いてあります__んでそれは?」

 

 

俺がダンボールサイズの箱を開けて出てきたのは小さな、と言ってもラジコンサイズの車

 

「これはあれだよ。お前も乗ったろ__?装甲車

 

そういえばびっくりした様子の喜助

 

「そ、それがっすか!?」

 

「おう!装甲車の何が悪いって持ち運べない所だろ?だから、霊力を込める事で元の形に戻るように設計したんだ。まぁ例えるならビニールの浮き輪?」

 

「はは…」っと乾いた笑いをする喜助と、そっぽを向く着いてきた涅。

なんでも虚圏が気になるよう、いや虚圏よりも破面のほうかな

 

「んで白哉坊ちゃんまで?あぁ…紫流とルキアか」

 

「緋真に怒られた」

 

そう表情は変わらずも纏う雰囲気は少し悲しそうな白哉坊ちゃん。

緋真ちゃんはいいお母さんしてるな。

 

そして「戦いてぇ」と名乗り出た更木と卯ノ花隊長及び副隊長。

 

「さ、とりあえず虚圏に行くぞ!!喜助、後は任せたからな」

 

「はい。ご武運を」

 

そう帽子を下げた喜助を横目に俺らは穴に飛び込んだ_

 

 

___________________

これは少し前に遡る

 

 

カポン──っと桶が地面に滑り落ちる音が響く

 

「はぁ___久しぶりの大浴場」

 

腰にタオルを巻き桶を持った維助がさっさと中に入る

ここは人気(ひとけ)のない銭湯

 

あっちでも大浴場あったでしょうに」

 

「あんなむさ苦しい場所に行くかよ俺が。そもそも入った途端囲まれるわ」

 

野郎に囲まれる趣味は無いとシャワーを捻る

 

たしかに浦原維助は強くなろうとするものなら1度は話してみたいという人気があり、歩くだけでもそこらの隊士に話しかけられる

 

「だから隊長専用の風呂使ってるけど狭くてな…広くしてもいいんだがめんどくさくて」

 

後回しにしてたら時間たちすぎた

 

と、喜助の隣でシャンプーで泡立てる維助

 

「混浴なら別だけど」

呟く維助。相変わらずである

 

「まぁ、ここはだぁーれも来ないんで。穴場でしょう?ボクもたまに来るんスよ」

 

昔ながらの銭湯。設備はリホームされているものの、所々古臭い感じが味を出している

 

「じゃぁ久しぶりに背中流せや」

っとゴシゴシタオルを投げられる

 

「はぁ、仕方ないッスね」

 

兄の背中は傷一つない。

ただ、兄の体に傷があるのは肩だけ。

 

院生時代___兄が初めて始解した日。

中級大虚に傷をつけられた肩、ボクらを守った勲章。

 

怪我はするが跡をのこるほど怪我をしたのはこれが最後だったなと思い出す。

 

「なんだよ、そんなに気になるか」

 

鏡越しに目が合う、兄はふっとわらい肩の傷を撫でる

 

「これよりお前らに突き飛ばされた時にぶつけた顎の方が重症だったんだぜ?」

 

そういえばそんな話もしていた

 

「まぁ、夜一さんの体にも、お前の体にも傷がなくて良かったよ」

 

そう言ってニカッとわらう

 

いつも助けられ___救われ。

ボクは、ボクらは__彼に何をできるだろうか

 

「さ、次は兄ちゃんが背中流してやるから」

 

「ええ、いいッスよ!そんなん…ぐえっ」

 

無理やり回転させられ背中を流される

 

「本当に大きくなったなぁ喜助」

 

いつも、兄はそう言う。

ボクが成人の義を終えた時も、院生になった頃も卒業した時も。

 

ボクが現世に追放された時も

 

成長した、大きくなった…

それは兄と言うよりもはや親が子供の成長を見守るように、しみじみと口に出すのだ

 

 

「悪かったな。俺のせいで迷惑かけて」

 

()()()()。その一言にどれほどの意味が、数が含まれているのだろうか

 

「兄サン。きっと生きて__その時はちゃんと謝ってください。全て」

 

吹き出すような笑いが背中から聞こえてくる

 

「ふはっ…そうだな!でもそれ死亡フラグって言うんだぜ。まぁ俺はそれをへし折るけどな!」

 

っとまたよく分からない事を言い出す。相変わらず変わらない

 

そう…変わらない

 

彼が新しいものを作る。

四十六室に入れ込み新しい法を作った時も、先生を始めた時も。

 

夜一サンはありえない__と言ってたがボクは納得ができた。

外堀を埋めるのが上手い兄サン。

 

自分の欲のためなら何でもする。

兄サンは幼い頃は反抗的で何かと反抗しサボり反感を買ってきた。

だがボクの外面の上手い使い方を見て学んだのだ

 

「あぁ、喜助みたいにすればいいのか」

 

そうして出来上がったねじ曲がった兄

ボクら兄弟はお互いに影響しあい…黒いものとなった

 

ボクからすれば()()()()()()

 

 

崩玉を作ったボク。

霊刀を作った兄サン。

 

現世に追放され、崩玉の事が(おおやけ)になった今、あちらからなにも罰がないのはきっと兄サンが手を回してくれたおかげ。

 

兄サンも兄サンで己で作った法で守られ。

先生という立場から信用もそれほど崩れていない

 

ぐーっと足を伸ばして湯船に浸かる兄サン

これ程緩んだ顔、これ程警戒しないのはボクと夜一サンの前ぐらいか

 

「きっと俺はあの黒髪破面にも、惣右介にも勝てる。俺を倒せるのは条件が悪い時ぐらいか」

 

っと両腕を縁に天井を見上げる

 

兄は本気を出さずとも恐らく剣の腕と身体能力だけで全ての破面を圧倒できるだろう。兄の言った通り条件を揃えなければ兄と対等には渡り会えない

 

「霊刀のように防御力をほぼ0にしてくるか、俺から橋姫をとりあげるか。まぁ考えればいくらでも出てくるな」

 

霊刀の破面に余裕で勝ったのに何を言ってるんだと言いたくなるが口を噤む

 

「きっと_____俺を殺せるのはお前ぐらいだろうな」

 

そう言ってこちらを向いて笑う兄が自分の胸板をトントンと()()()

 

いつもの癖で帽子を下げようとしてないことに気づき行き場の無くなった手は頭を搔く

 

「そうッスねぇ__兄サンを止めれる(殺せる)のはボクぐらいッスね」

 

 

 

 

 

 

誰もいなくなった、勉強部屋。

 

 

「兄サン…ご武運を。さて、ボクも準備しますかね」

 

 

 

決戦の___準備を。

 

勉強部屋から地上に上がると、キュッと腰紐を縛る音が聞こえる

 

「おや、もう準備万端ッスか?」

 

「バカ言っちゃいけねぇよ、もう準備なんて何年も前から出来てる」

 

胸を張った黒崎一心___死覇装に身を包み斬魄刀を腰にさす

 

「どわぁ!!」

っといきなり前のめりに倒れ込む。

 

「動かないでって言ったでしょ」

そう頬をふくらませ一心の背中を叩いたのは黒崎真咲。

彼女の背中には小柄な彼女には少し大きな霊刀が背負われている

 

「いいんスか」

 

()()って?死んでしまうかもしれないってこと?この人にも止められたわ……でも」

 

きっと鋭い目

 

「息子とこの人が戦ってんのに、私がのうのうと寝てられますか。もう寝るだけ寝たんだから、寝るのはもう沢山。やらなきゃ」

 

 

黒崎一家は__強いッスねぇ

 

 

「さて____いきましょ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─── 決戦へ

 

 



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ザエルアポロの話

 

ドガァァン!!

 

「さっさとしたまえヨ」

 

「うるせぇ…」

 

壁を突き破り最短距離で霊圧の衝突場に向かう装甲車

 

「んで俺が送迎しないといけないんだ」

 

「うるさいヨ!ブツブツ…。黙って運転できないのかネ」

「へいへい」

 

助手席でふんぞりがえってる涅。

卯ノ花隊長も更木も近場まで送った。

バカ広い虚圏、しかも更木は方向音痴と来た。

 

まさかここまでパシリに使われるとは___。

 

「へぇ__面白そうだネ」

頭をコンコンっとノックしながら何かをつぶやく涅。

何かを見ているのだろう

 

すると___

 

「ネム、メス」

 

「はい、マユリ様」

 

っとなんと自分の腹を切り始める

「うそだろ…」

もうこの車乗れねぇ。

 

「手がブレるだろう、しっかり運転したまえ」

「無茶言うな」

何をしてるか知らんがとりあえず新車を汚さないで欲しいんだが__?

まぁ、何か策があるんだろう

「おっ…そろそろ着くぞ」

 

 

 

立派な建物が建っているが、ここだけ何故か瓦礫の山____

瓦礫に乗り上げ車体が浮き上がりブレーキをかける

 

 

「あぶな!ごめーん轢くところだった」

 

タイヤギリギリ、なぜかボロボロで寝そべってる恋次の顔面近くに停車した。

 

顔を真っ青にした恋次が

「せ、せんせい…」っとか細い声を上げた。ごめんて

 

 

「誰だい。君達は」

 

そう振り返る破面___

なんか派手な格好だな。

 

「くっくく…私が誰かその質問に答える意味はあるのかネ」

 

スタスタと車をおりた涅と、ネムちゃん

俺はボンネットに座った

 

「2人ともボロボロじゃん。なしたん」

 

「かハッ__先生…なぜ」

 

べシャツと血を吐いた雨竜ちゃん。内蔵がやられてるらしい

 

「まぁ、簡単に言えばあんたらを連れ戻しに?ついでにぶっ潰しに」

 

「はは、先生が来てくれりゃ百人力だぜ」

っと口元の血を拭う恋次

 

「まぁ俺は霊刀の破面相手だが__なーぜか、どこにも見当たらんのよな」

 

「確かに__僕ら相手に仕向けた方が何倍も効果的なのに」

 

なにか胸騒ぎがする__もしかして入れ違いになったか?

いや、惣右介ならきっと俺がこっちに来ることを読んでいるはず。

今まで通り俺に仕向けるはず。紫流と合流してあっちに戻らせるか?いや、白哉坊ちゃんがあっちにいる、心配は無用か…?

 

霊圧を感知するが、どこにも──霊刀の気配が感じられない

 

そういえば待て──あの時、霊刀の実験をしていたのはなんのためか。

最強の破面を作るため──?いや。それもあるだろうが違う。

 

霊刀は1度埋め込んだら取り返しがつかない。

安定した霊刀が完成したら惣右介は何をする?

 

 

崩玉__霊刀__まさか

 

そこで声をかけられふと現実に戻る

 

「残念だよ…とても。それで?君は何かな?」

 

首を傾げてこちらを見る破面。

近くには涅が血を吐いて倒れていた

 

「いったそ。」

 

ボンネットから体を起こし声をかける

「涅〜助けいる?」

 

そう言うが返答は無い

 

「あぁ__君知ってるよ。浦原維助__だったかな。あの霊刀の開発者だろう?」

 

「おや、俺の事ご存知で?」

 

名乗るつもりのない破面に俺は雨竜にあいつ誰?っと聞く

 

「破面の連中が…ザエルアポロと言っていました…っ」

 

「へぇ、ザエル君って言うんだ、よろしく。」

 

「ははっ、人の名を略すなんてなっていないね。君には興味があるんだ。脳を置いてってくれないかい」

 

っと生々しい事を言ってくるザエル君にあーあーっと手で扇ぐ

 

「そーゆ、生々しいの俺好きじゃないんだよね。飯食えなくなる。内蔵やら首やら…グロいったらありゃしない」

 

「はは、思ってもみない事を。苦手ならば躊躇するのが普通だ、楽しそうにしてたじゃないか…霊刀の実験体。僕はそれに関与していてね。見れば見るほど実に面白い__ソソるよ…」

 

両手を広げニヤァっと口が裂けそうな程に笑みを浮かべる

 

「そう、あんたが破面の中の研究職って感じ?ふぅん。涅〜戦う?戦わない?戦わないんなら俺が相手しますが」

 

そう言えばさっきの辛い表情はどこへやらニヤッと笑った涅。

 

「馬鹿いうんじゃないヨ。勝手に手を出さないでもらおうか、君が相手をすると、実験体が細切れになるじゃないか」

 

そうペラペラと話し始める涅にザエルアポロは

 

「はぁ!?なぜ話せる__なぜ!」

っと振り返る

 

涅そっくりの人形の中。

ブチブチっと内蔵の名前が書かれたものを潰すが

涅はケロッとしている

 

「うるさいヤツだネ。なんの能力でもないヨ」

 

涅は雨竜に監視する細菌を感染させていたらしい。それを通して状況把握。俺の車の中でダミーの内蔵を作り入れ替えた。

だがら雨竜や恋次がやられたみたいに人形で内蔵を潰されても無事だったわけだ。

 

ってか、状況わかってんなら俺に報告しろよあいつ…

 

「僕がこの能力を見せてから1時間も経っていない!!ありえない…!!そんなはず…!出来るはずがない!

 

「出来るからここにいる訳だが」

 

流石は涅。

言ったら怒られる(殺される)だろうが、喜助の弟子。

 

備えあれば憂いなし。備えてなんぼのやつだな。

 

「まて!いつの間にそんなのつけた!!あの戦いの最中にか!?普段の生活も監視してるんじゃないだろうな!?」

 

雨竜お前本当は元気だろ??

ギャーギャーっとブチ切れながら雨竜が涅に怒鳴る

 

「黙れ外道」

 

「先に言われたァァァ!!!外道はお前だろう!!!」

 

やっぱお前元気だろ本当は???

ネムちゃんが触手みたいなのに縛り上げられる

 

なんだあれ、同人誌かよ

 

「まったく…どいつもこいつも…ピィピィうるさいことだヨ」

 

斬魄刀を鞘から抜いた涅

 

 

卍解 金色疋殺地蔵

 

 

土埃のようにボワっと膨らむ毒霧が津波のように広がる

そして疋殺地蔵はザエル君をゴクンっと飲み込んでしまった

 

「喰われた──。ゴフッ」

 

涅の毒に犯された恋次は血を吐く

 

「阿散井!君も毒にやられてるぞ!!」

 

「ぐっ…なんでてめぇは平気なんだ」

 

「僕はあの霧に1度やられている!おそらく抗体ができ…ゴフッ

っと、雨竜も血を吐いた

 

「何を呑気なことを言ってるんだネ、毒の配合は1回ごとに変えるのが普通だヨ」

 

「この野郎…って先生はなんで無事なんだ!」

 

っと俺を指さす

 

「さぁ?俺はなんかまぁ…色々(喜助の実験体)あって。毒も効かないんだよね。麻酔もあと薬も。」

 

だから病気になったらオワコンかもーっと言ったら

 

「なんでもありかよ…」っと恋次が吐血した。もう喋んなって

 

「ふん。この配合じゃダメか、もっと殺傷能力をあげるべきだネ」

っと涅が()()()()()()呟く

 

あれ?どさくさに紛れて俺を殺す気だった?俺お前の味方だよな??

 

「はぁ、俺もう行ってい?ここに霊刀の破面がいないならここ(虚圏)来た意味ほとんどないし」

 

 

「待ちたまえ。誰がソレ(装甲車)を運転すると思ってるんだネ」

 

「いや俺お前の専属送迎じゃねぇし。つーか送ってたのはついでだし。何先輩をコキ使おうとしてんだ」

 

「フン。センパイィ?何をバカな事を。」

 

やれやれとでも言うように肩をすくめる

その時___

 

 

「僕を殺したと思ったか?」

 

グアッ

触手のようなもので縛られていたネムからギシギシと身体が軋むような音が聞こえる

 

「教えよう邪淫妃(フォルニカラス)の最も誇るべき能力の名は受胎告知(ガブリエール)。敵に僕自身を__」

 

孕ませる能力だ

 

 

(ヘソ)から体内に侵入し内蔵に卵を産みつける。産み付けた卵は母体の全てを奪って急速に進化しやがて母体を死に至らしめ生誕の時を迎える

 

ベチャッ__っと、粘液が地面に滴り落ち

ニヤッとわらったザエルアポロがドレスのような服をなびかせ

四本の羽を広げる

 

「面白い能力だネ!で…それだけかネ?」

 

そう言った涅に、疋殺地蔵が襲いかかる…が、直前で破裂した

 

「万一私に噛み付いたら自滅するように改造してあるんだヨ」

 

すると、涅がスタスタとネムのほうに歩いていく

 

「もう飽きたヨ。浦原維助、後は君がやっていいヨ」

 

「ここで俺に投げんのかよ」

 

致し方ない__と橋姫を抜く

 

「はは…。君は…!!」

ザエルアポロが涅にキレるが、涅は振り向かない。本当に興味が無くなったようだ。

 

「さて…ザエル君。霊刀の破面がいない以上俺はさっさとここから出ないとならんくてね。ってことで___さっさと死んでくれるかい」

 

「はは…浦原維助、君はどうして霊刀を作ったんだい?」

 

「んでここで霊刀の話…?そりゃ…何となく?」

 

「はは!!ははは…!何となく!そうか…!何となく…!!そんな軽い気持ちであんなものを…あんなものを作るなんて__!ははは!」

 

っと片手で顔を覆い全身を震わせるようにして笑い出す

 

「なんだよ。なんか文句あんの、お前は科学者みたいなもんなんだろ?便利なものを作る、興味があるから作る。作る動機なんてそんなもんだろう?」

 

喜助だって、新しいものを作ってみたいから〜っていう軽い気持ちで崩玉作ったわけだし。

 

「君は__製作者でありながらアノ恐ろしさをしらない。霊子を吸い取る__なら霊子で構成された僕達は?死神は…?存在そのものを無に変える__!簡単に…!意志を持ち暴走したら…あぁ、恐ろしい…!」

 

恐ろしいと言いながら顔を紅潮させる

 

「滅却師と似た者だが性質は全く違う、意志を持ち死神や虚の体も吸い取る…!はは…はは!それを簡単に…?おかしい…おかしい

 

 

は__?」

 

ザエルアポロの腕が吹き飛ぶ

 

「何が言いたいのか全く分からない。霊刀は使い用によっちゃ脅威だよ。そりゃ馬鹿でも分かる。」

 

スタスタとザエルアポロの方に歩けばザエルアポロは腕を押え、1歩、1歩と後ずさりする

 

「俺が尸魂界で法を作ってなきゃ俺は責任を問われて極刑だったろうな。俺は作りたくて作った。世界を滅ぼす脅威?大歓迎。俺に敵う相手に霊刀一本でなれるのならば__な。俺は歴史を作るんだよ、伝令神機、記憶置換装置、結界装置、霊刀。まだまだ足りない。なぁ?足りないだろう?悪名でもなんでも歴史に刻み続けなきゃ…まだまだ俺は進み続けられる。」

 

「そうか…!!それが君の素か!!はは!藍染様よりも君の方が恐ろしいじゃないか…!!なぜ、君は進み続ける?」

 

「それが____かっこいいから

 

ザエルアポロはグシャッと音を立て地面に倒れる

 

「何投与したの、涅」

 

「ふんっ…君には教えないヨ」

そう言ってヌチヌチといやらしい音を鳴らす涅

 

そしてネムが復活した

 

「「なんでだ!?今の何をして治した!?」」

っと恋次と雨竜が突っ込む

 

俺はザエルに振り返る

頭身が二つに分かれた遺体。

俺が斬る直前、こいつ止まったように見えた__動きを停止させる薬?それとも__?

とりあえず涅が何かを投与したのは間違いないだろう。

 

「ゴフッ…先生」

 

「恋次。元気そうだな」

「これのどこを見て言ってんだあんたは!!」

 

内蔵を潰され、毒に犯されでもそれだけ話せるなら元気と一緒だろ。

 

「先生、俺はあんたが恐ろしいよ」

 

「なんで?」

 

「…なぁ先生。俺らを裏切らないですよね」

 

そう直球で聞いてくる恋次

 

「尸魂界の敵になるって事?なんないなんない。なったら製作続けられなくなるじゃん」

 

「動機がソレかよ。」っと視線を逸らす恋次

 

「お金が貰えるから働く、安定した生活を送れるから働く、人を助けたいから働く。みんなの動機はこんなもんだろう?それが脅かされるから敵にはならない。おれは好きなものを好きなだけ正当に作れるこの環境。捨てないよ。逆に敵になるメリットがない。俺の今の環境以上にメリットが見込めるなら、俺は喜んであんたらの敵になるよ」

 

頬杖をついて笑えば__ふっと笑う

 

「よく言うぜ」

 

───────────

 

「…浦原維助、なにぼさっとしてるんだネ。分かっているだろう」

 

「なんでお前はそう上からなんだよ」

 

惣右介の霊圧が___消えた。つまり虚圏から出ていった

そして喜助からワン切り着信。

惣右介が現れた合図

 

俺は屈伸する

 

「装甲車、その死体とか運ぶのに使うだろ。自由に使ってくれ、後でクリーニングして返せよ?」

 

「先生…!どこに」

 

「一護と合流して___惣右介んとこ

 

一護の所の霊圧──破面が一体。あの黒髪かな

 

 

_________________

 

一瞬、瞬きの一瞬でその場から消えた浦原維助。

 

「相変わらずはええな、先生は…」

 

「本当にあの人味方なんだろうな!?」

っと恋次にキレる雨竜

 

「あの人にはあの人なりの正義つーもんがあるんだろ。」

 

もし、もし浦原維助が敵になったら?

 

殺気だけで浅打を落とした俺___。

始解も不明卍解も不明、分かるのはありえないものを創り出す技術力と機動力、そして圧倒する力と霊圧。

 

総隊長が浦原維助に少しばかり甘い理由がわかる

 

 

敵になって勝てるビジョンが見えない

 

 



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ウルキオラの話と惣右介の話

 

神などいない

願えば手を差し伸べる

 

そんな都合のいい物はいない

神がいたならば私はここにいない

 

神がもしいるのであれば何を求め何を願う

私は___

 

「願わない、もしやりたいことしたいことがあるなら自分が動けばいい!そうだろう?惣右介」

 

───そうだ

立ち止まることで何が生まれる?否、何も生み出しはしない

混沌の中で立ち止まり飲み込まれ死を待つのみ。そんなもの私は望んではいない

 

変えなければ私を

 

変えなければ世界を

 

願っても力は手に入らない。

 

動かなければ

 

君と対等の場に立つために

 

 

「終わりだ___」

 

ボロボロになった隊長格が地面にたたきつけられるのが見える

 

副隊長も何人かがやられ治療されている

虚閃により空が光る

 

 

絶望。

 

白い服に身を包んだ藍染惣右介が空から光景を見下ろす

 

「終わりだ、本当に」

 

十刃__

強く恐ろしい霊圧、一般隊士は恐怖し戦く(おののく)

 

霊圧だけで魂が押しつぶされてしまいそうだ。

十刃を従え長に立つ藍染惣右介に誰がかなうものか。

 

絶望な表情をうかべる隊士。

隣で仲間が倒れ行く

 

「終わりだ」

また__そう呟く

 

 

 

「藍染、お前…本当に()()()()()()

かつての隊長、平子真子が刀を肩に背負う

 

「やめた__ね…。進化と言って欲しいな」

 

藍染の霊圧は以前のものとは違い禍々しく黒く重い。

一言で表現するのであれば【化け物】

 

「立ち止まり、気を伺うだけの偽物(破面モドキ)。」

 

猿柿ひよ里の指がピクリと動く

 

「ひよ里」

 

「わーっとるわ」

そう言ったひよ里の手は震える

恐怖からじゃない。怒りだ

 

「私は未来をゆく、進化し続ける。君達とは関係ない話だ__君達には未来も、ましてや終焉も訪れない。なぜなら終焉は過去の話__なぜなら君たちは百年前のあの夜。」

 

「死んでいるのだから」

 

その瞬間、血飛沫が舞う

 

「一人、おーしまい」

蛇のように目を細めニヤリと笑う市丸ギンが、藍染に刀を振り上げた猿柿ひよ里を切り裂いたのだ

 

「ひよ里!!」

 

それを無表情で見下ろす藍染惣右介

 

ほら____変わらない。

 

百年で、何も。何も変わってはいない

 

 

霊刀──月牙天衝

霊刀で収束させた霊子と、月牙天衝を合わせた技を藍染に向ける

「やはり…君は、君たちは___」

 

オレンジ色の髪が靡くと同時に、黒と青の閃光が藍染惣右介に降り注ぐ

 

────────────────────

 

少し前に遡る

 

ウルキオラは黒崎一護と対峙していたが、ウルキオラがその手を止める

 

「石田…!」

 

ヤミーを吹き飛ばした石田雨竜。

 

「浦原さんはどうした。浦原先生は__」

 

「はぁ?来てねぇよ」

 

いきなり何の話だと、一護は困惑する。

浦原維助、一護と合流すると言って先に向かったはず

 

そのことを伝えるが一護は来ていないという

そんなはずは___

 

浦原維助の霊圧は例えるなら無

霊圧を極限まで押え気配すらも感じさせない。

霊圧感知が得意な石田雨竜でさえ、その霊圧を感じることは出来なかった。

 

「まぁいい、井上さんは任せてくれ」

それに頷く

 

「待たせたな___ウルキオラ」

 

ウルキオラは強い

 

虚化した一護を圧倒し、霊刀と結合した一護の斬魄刀を熟知し的確な攻撃を加える

速さもちからも___

 

第4(クアトロ)以上の十刃の解放」

 

 

───鎖せ   

 

          黒翼大魔

 

刀剣を解放したウルキオラの姿

正しく___悪魔。

 

黒い羽が開き異質な霊圧

虚化の状態の一護に一撃を放つ

 

間一髪月牙を放ち軌道を逸らす

もし、間に合っていなければ、きっと___

 

 

「人間や死神が力を得ようと虚を真似るのは妥当な道筋__だが、それで人間と虚が並ぶことなど永久アリはしない」

 

虚化の全力の月牙天衝。

何をしても相手は無傷対して一護はボロボロ。

 

それでも__それでも一護は瓦礫から立ち上がる

投げ飛ばされ地面を半壊しながら飛ぶ一護、それでも立ち上がり、剣を握り続ける

 

「黒崎一護、真の絶望を知らない。知らぬなら__教えてやろう真の絶望を」

 

刀剣解放(レスレクシオン) 第二階層(セグンダ エスパーダ)

 

一瞬、目を閉じていたわけでも油断していた訳でもない

一護は吹き飛び地面を割る

 

駆け寄る織姫

 

「来たか_女」

 

手も足も出ない、それを表した現状。

一護は血を流し

 

胸に___孔を開ける

 

「いやぁぁああ!!!黒崎くん!!」

 

投げ落とされた黒崎一護に駆け寄る

 

どうしよう

 

どうしよう

 

どうしよう

 

心臓部を貫かれ倒れる一護に己の力を施す織姫

 

「俺変わっていい?」

 

押しつぶさそうなウルキオラの霊圧。

孔を開けた一護に呆然とする織姫

 

敵わないと分かっていながら震える足を立たせる石田の前。

その声は、その状況とは反しにつかわない

 

「浦原維助__か」

 

浦原維助

 

「先生…いままで…どこに」

 

「見ていたのだろう。ずっと」

 

「なっ___」

 

ウルキオラが維助の方を見るとニコッと笑う維助が石田に振り返る

 

「そんなわけないじゃん。大切な生徒が痛めつけられるとこなんて__眺めるはずないでしょ。さすがに俺でもしないって。ちょっと色々あってさ」

 

そんな状況で雨竜の頭をポンポンと撫でる維助。

暖かく優しい手。まるで子供をあやすように

 

「麻酔も…止血剤も打ちました。戦えます」

 

「その腕で?無理でしょ」

そう言い放つ維助。維助は一瞬で下にいる織姫の隣に雨竜を抱えて降り立つ

 

「織姫ちゃん悪いね。雨竜ちゃんよろしく」

 

返答も聞かずにウルキオラの前に再び現れた

 

「なぜ、手出しもせず傍観した」

 

「気になったから。まぁ一護は死なないっしょ」

 

下から維助を見上げる雨竜。

治療する織姫。

 

おそらく会話は聞こえていないだろう

 

「死ぬはずがない?()()()?」

 

霊圧も、鼓動も感じぬというのに

 

「とりあえず、俺と戦わない?絶望さんよ。」

 

────────────────

 

やはり__浦原維助は強い。

そう雨竜は呟く。

 

一護を圧倒する異質な霊圧に加えありえない脅威ともいえる戦闘力。虚化しても無傷で立っていたあのウルキオラに浦原維助は始解も卍解もせずに一撃を加えた。

 

その一撃でさえ、目には追えない

 

「虚の力を得てもない死神が、何故そこまでの力を持っている」

 

ウルキオラは自身の腕を吹き飛ばした浦原維助に問いかける

時間稼ぎでも、恐怖からでもない、単純な疑問

 

「さぁ__俺はロマンを求めた結果だよ。全てを圧倒する力ってのはかっこいいものだろう?」

 

「理解できない」

かっこいい、ロマンだから

 

そんな事の為だけに始解も卍解もせず剣術と体術のみで戦うというのか

ウルキオラにはどうしても理解できなかった

 

ビキッと音を立て、腕を再生させる

 

「俺の能力の最たるものは攻撃性能じゃない、再生だ。腕一本もいだ所で俺は止まらない」

 

極大な力と引き換えに超再生能力の大半を失う破面の中でウルキオラだけが、脳と臓器以外の全ての体構造を超再生できる

 

「いいね、かっこいいよ。ロマンだねぇ___回復し続けようやく切り落とした腕も簡単に復活させる。まさに()()

 

突如として、衝撃波を伴う大音響が響き渡る。

轟々と耳をつんざくような破壊音とと共に地面をえぐり何本もの柱をなぎ倒す。

 

ウルキオラの黒い虚閃を剣一本__一太刀で切り裂き距離を詰め

腕を、脚を切り落とす

 

瞬間的に再生するがウルキオラもわざと斬らせている訳では無い。

「舐めるな」

 

雷霆の槍(ランサ・デル・レランパーゴ)

 

風を斬り音を置き去りにし急接近する維助に向け

右手に構成した霊子で出来た槍を向ける

 

コンマ単位の時間。避けれるはずもない

維助自身のスピードと威力により維助の体は貫かれるはずだった

 

だが、それをも斬り裂いた

 

「な…」

 

ありえない

死神とはいえこの速さに対応できるはずがない。

読んでいた?

 

いや__違う。見えていた

動体視力のみで浦原維助は対応したのだ

 

胴に一太刀を入れるが浅い。

維助の刀は伸びる訳では無い、確実に間合いと太刀筋を読み避けたはず。それでも浅いとはいえ身体に傷をつける。

あの、全力の月牙天衝ですら傷のひとつもつかなかった身体に

 

「やはり、藍染様が言うだけはある」

 

そこでウルキオラの気配が霊圧が変わる

 

「使いたくは___なかったのだが」

そのつぶやきは維助には聞こえなかった

 

瞬間バキッと音を立て体が変化する

 

「これは___!」

身体から突き抜けるように現れた柄を握りしめ自身から引き抜く

 

「霊刀___そんな所に」

 

霊刀の気配。何故ここまで巧妙に隠していたのか維助には理解出来なかったが。事実として悪魔のような戦闘力に霊刀が追加された

 

「はっ!!やるじゃん」

 

霊圧硬化は無効化され頬に傷がつく。

 

「まさか余波だけでこれ程とは」

ぐいっと頬を拭う維助。油断していたとはいえ当たってもいない、風圧だけで頬に亀裂が入るとは

その頬は拭うだけで血が止まり傷はもう見えない

 

立ち上がり正面を見すえる

 

「霊圧硬化も無効、そして自身や周りの霊子で一護の月牙天衝並…いやそれ以上の斬撃まで…はは!やべぇなおい」

 

向かい狂う真っ黒な、そう、真っ黒な光を飲み込み境目も波も見えないような斬撃が地を抉り向かい狂う

 

「ぐっ__」

斬魄刀で受け止めた維助だが、あまりの重さにザッと一歩後ろに押される

 

「はっ!!こんなんでやられるかよ。俺のお得意は霊圧硬化だけじゃない」

 

己自身の霊圧を放出しウルキオラの斬撃を相殺させる

 

だが斬撃に隠れてウルキオラが霊刀を振りかざし漏れ出た維助の霊圧を収束していた。

 

 

「喰らえ」

 

食事を終えた霊刀は青く光り輝く

先程の斬撃なんて比にならない程に霊圧濃度は濃く濃くあがる

 

 

その瞬間耳をおかしくするほどの轟音と振動

 

まるで幾千の爆弾を一斉に起爆させたが如き轟音が周囲一帯に降り注ぎ、豆粒ぐらいに離れていたはずの織姫や雨竜の所にまで余波が届き織姫の体がうきあがる。

間一髪雨竜が片手で止めるが、その耳から血が流れ落ちる

 

 

あまりの霊圧に煙や炎が地面から立ちのぼりウルキオラの一振で霧を晴らすように視界が明るくなる

 

 

「なっ____」

ウルキオラは絶句した。

 

先程まで彼らが立っていた地点は放射状に抉れ弾け飛び地面は深く抉れているのにも関わらず、維助の間合い範囲だけが()()()()()()()()()

 

「何したか見えなかった?俺の自慢は剣の中でも見えない抜刀術なんだよ」

 

ありえない。その言葉で埋め尽くされる脳内

斬撃を飛ばした時、剣は上に伸ばしていたはず。

一瞬で鞘に収め再び抜いたとでも言うのか

 

「がっ___」

ウルキオラの様子が変化し維助は眉を顰める

 

「なんだ?」

手に握っていた霊刀はカタカタと震え始め__そしてスライムのように溶けた霊刀はウルキオラを包み込む。

 

「はっ__!」

 

なにかに気づいた維助は間一髪身を後ろによじり()()

遥か彼方で爆音が響きわたり斬撃が爆発したことを余波で知らせる。

見えないほど遥かまで

 

避けたのは見えていたわけじゃない、ただの勘

姿が変わったことにより動揺をしていた維助だが数百年も戦場で立っている勘は鈍ってはいなかった。それを感じ脳で処理し身を動かす技術は一朝一夕ではいかないだろう

 

「あぶな…」

その一言で済ますのもどうかとは思うが身をよじった反動のまま後ろに飛び抜き再びウルキオラを見すえる

 

ウルキオラの目は月のような黄色で埋め尽くされ瞳孔も見当たらない。

まるで宝石の結晶が埋め込まれたかのように全身に青い結晶が飛び出していた。

だが、その結晶から霊圧が放たれている。

 

「触れたら死ぬ…ね。」

瓦礫が結晶に触れた瞬間にスパンっと瓦礫が砂に()()()

目にも見えない高速の振動で瓦礫が切り刻まれたのだ。

 

維助は脳を回転させる

橋姫で受け止めたとして橋姫は耐えれるのだろうか

霊圧硬化ができない以上、刃こぼれをするかもしれない。

そして霊力を吸われすぎると今度は橋姫の復活が出来なくなり今後の戦いに影響を及ぼすだろう。

 

「ならやることはひとつ___!結晶に触れないようにぶん殴る」

 

ヒールのように踵についた結晶が甲高い悲鳴をあげたかと思えばウルキオラは維助に飛びかかっていた

 

「はっ…やべぇな」

 

その目からも理性は見当たらない。

触れただけで体内からじわじわと霊力を吸われていくのを感じる。

 

「っしゃオラァ!!」

 

ガン!!維助は結晶に触れないようにウルキオラの腕を掴み引っ張ると思いっきり頭突きを食らわせる

 

ウルキオラは吹き飛び柱を貫通させても止まらない

 

「ふんっ__!理性戻んねぇと何がどうなるかわかんねぇだろ!起きろ」

そのウルキオラに追いつき上空から蹴りを食らわす

 

くの字に曲がったウルキオラが地面に穴を開け爆心地のように地面が割れる。

 

「がはっ__!」

ようやく肺から空気を吐き出す声が聞こえ維助は降り立つ。

衝撃のせいか霊刀の結晶と思われるものは粉々に砕け散り空気中に分解され、ダイヤモンドダストのように虚圏とはにつかわない景色に変わる

 

 

もはや回復もままならないウルキオラが目を覚ます

その目は呑まれていなく以前のウルキオラだった。

 

そう、これこそが圧倒的な力

地面に倒れるウルキオラは維助を見上げた

 

「お前は本当に死神か?」

 

「そうだよ」

 

現世でみせた、実験段階とはいえ霊刀の破面を爆発させる霊力。

そして剣術

隊長格とはいえ、所詮は死神。

虚でもなければ破面でも、ましてや虚化の力を手に入れても、未来を予知する能力もないと言うのに。

 

「俺がただの死神に負けるとは__滑稽な話だ」

 

死の時を待っていたウルキオラ、だが

 

「なっ___一護!」

ハッとした維助が全力で霊圧を硬化させ全身を固める

 

横からの衝撃波。

 

「お前は__何だ」

ほぼ不意打ちという形で維助が吹き飛ばされる

宙で回転した維助が地面に降り立つ

 

正しく虚。

全身を虚化させ孔を開けた一護がウルキオラの前に立つ

 

「はっ…生きているとは」

あの状態で生きているとは_____

 

すると一護は頭の角に霊力を収束しはじめる

虚閃__

 

「なるほどな、容赦は無しか。もはや敗北した俺に意味は無い。やれ」

 

放たれるその瞬間

 

「一護、邪魔だ」

 

今度は一護が吹き飛ぶ番だった。

 

放たれるはずだった虚閃は一護が吹き飛んだことによりあらぬ方向に飛び

轟音と共に大爆発。その衝撃波で近くの柱が崩れ落ちた

 

「なぜ助けた」

 

倒れたままのウルキオラの前に維助が剣を肩に背負い立っている

 

「いやさ、俺はお前殺す気ねぇし」

 

「なに?」

情けをかけるとでも言うのか?そうウルキオラは眉を顰める

 

「違う違う。そういうのじゃないけど。お前根っからの悪人じゃないだろ?それに、敗北したんなら殺されようが生かされようが文句ないだろ」

 

「…そうだな」

 

正しくその通り、敗北した自分は焼かれようが射抜かれようが四肢をもがれようが文句は無い

 

ホロウのような雄叫びを上げた一護が刀を振るう

それは、虚化した状態の一護の何倍、そうウルキオラの何倍もの速さと威力

 

 

だが維助はまるで犬を宥めるかのように剣を硬化した指で挟むようにして止めた

 

「おー、よしよし一護。暴れんなって。死にかけて暴走したのかは知らんけど俺お前の敵じゃないし。」

だが、一護には理性が残っていないその言葉で止まるはずは無かった

 

「黒崎くん!!!」

 

織姫の叫びと共に、背を向けた一護に衝撃を食らわせる

織姫の持っている霊銃が放たれたのだ

 

けして傷をつけるものでは無いが、織姫は一護に一発喰らわせたのだ。

 

その一発。その一発で__否。織姫の声で一護の仮面が割れる

 

パキパキと、劣化した壁が剥がれるように全身の虚化が溶けていく

 

「俺__なんで、維助さんを。おれが…」

 

孔が塞がった。超再生能力___。

 

「おー、大丈夫!無傷」

ぐっと親指を立てる維助にほっ…と息を吐いた。

少し砂で汚れているものの傷は見当たらなかった

 

「黒崎くん!」

すぐに駆け寄る織姫

 

「さて、勝負は終わった。一護も元気。目的の織姫ちゃんも奪還成功!」

刀を鞘に収めぐーっと両手を上にのばし伸びる維助

 

「殺せ、なぜ生かす」

 

「いやいや、もう勝負ついたろ。な?一護いいよな別に」

 

「あ、あぁ…。その通りだ、勝負は着いた。俺は__負けたけどな」

なんてボロボロの体で頬をかく

 

「織姫ちゃん、時間が許す限り一護を全力で治してくれ。これから__最後の戦いが待ってるから。」

 

「は、はい!」

すぐに治療をはじめる織姫にウルキオラは問いかける

 

「女__俺が怖いか」

 

織姫は振り返り笑う

 

「怖くないよ」

 

「___そうか」

 

 

[newpage]

 

 

「あっれー!一護!お師匠さんは?」

虚圏で合流した紫流はキョロキョロと辺りを見渡すと。

「あ、あぁ。なんかウルキオラと話があるからって俺だけ。なんか投げ飛ばされた」

 

「投げ飛ばされた?」

 

その言葉に首を傾げる

 

『よーし!ある程度治療終わったな。じゃ今から投げるから〜』

 

『はっ!?ちょ、維助さん!?!?ブベラッ

 

時間の短縮だと言ってぶん投げられたのだ。

そのおかげで早く合流できた訳だが、半分地面に埋まる状態で着地したことは言わなかった。

 

そして、涅マユリが黒膣を開け

同じく合流した卯ノ花と共に穴に入ることになる。

 

「なんだネ」

 

じっと、涅を見上げる一護

 

「いやさ、浦原さんも俺たちを見送る時ちょっと高いとこ立って喋ってたなぁと、あんた技術開発局の二代目ってことは浦原さんの弟子かなんかだろ?似たことあるよ。やっぱり!つーか、浦原兄弟ってすげぇよな。白哉の師匠でもあんだろ?維助さん。」

 

そう言って笑顔で穴に飛び込む

 

「成程…面白いネ!面白い男だよ黒崎一護!閉じ込めるのも面白いと思ったが辞めだ!!じっくりと恐怖に落としれてやるヨ!」

 

それを横目に白哉は遠くを見る

 

「お師匠、何をしている」

維助の姿は見えなかった。

 

[newpage]

 

虚圏の砂浜の上で、傷が治ったのにまだ地面に伏せっているウルキオラに維助がしゃがみこむ

 

「なぁ、ウルキオラ。であってるよな?あんた、霊刀の話知ってるだろ?」

使ってたんだからと、付け足す維助

「あぁ」

 

維助の方を見ずにずっと上空を見上げるウルキオラ

 

「てっきり全員の十刃に霊刀埋め込むと思ったんだが…霊刀の実験体も見当たらないし。何したかわかるか?情報が欲しい」

 

「負けた俺がもはや隠すまい。藍染様により彼の理想の霊刀が生み出された。俺は理想の1歩手前の霊刀を埋め込まれた。」

 

「一歩手前だって?」

 

ふっと笑うウルキオラ

 

「使いたくは無かったが」

なぜ、最初から霊刀を使わなかったのか、はじめから霊刀を使えば俺の霊圧硬化も抜けれるはず、少しでも勝機を見いだせたはずなのに

 

「あれは__恐ろしいものだ。俺は霊刀に意識を呑み込まれた」

ウルキオラがこうまで言う霊刀

 

本当に俺と同じ霊刀なのか?

否___恐らく違うだろう。

 

「霊刀は意志を持ち魂魄に埋め込まれ融合する。俺の埋め込まれた不完全な霊刀は、俺自身を乗っ取りありとあらゆる霊子を吸い取り暴走させ体を破滅へともたらす。全てを呑み込み灰とするまで__な。霊刀を埋め込まれたのは4人。俺__そして」

 

俺はその言葉を聞いて走り出した。

 

「はっ…やっぱりな!!」

 

 

 

霊刀を体内に埋め込み融合したのは

 

ザエルアポロ・グランツ

 

市丸ギン

 

そして___

 

藍染惣右介

 

 




次回

理想の霊刀と初代の霊刀の話


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理想の霊刀と初代霊刀の話

 

浦原維助、弟子である朽木白哉が隊長になった少し後。

 

彼は霊刀(れいとう)という刀を作り出した。

見た目は日本刀、だが内部には精密にまた頑丈な機械が付けられており、待機中の霊子を吸収し刀身に収束、またその霊子のひしめき合いにより斬れ味が増すという、霊力を持っていなくても戦えるような代物。

 

言葉で言えば簡単だが、弊害が多い。

霊子を収束し、またそれを維持する。半端な機械設計では空気中に散開、または暴発(ぼうはつ)してしまう。

 

最初に盗み出した藍染惣右介は、まず霊刀に似た物を作ることにした。

だが、その結果は失敗続き、ネジやマイクロ単位に及ぶ歯車。とてもでもないが真似もできない。形どったところで金属加工も彼の得意とするところ、特殊な鉱石を精密な単位で混ぜて作る金属。

 

その技術も(すべ)も藍染惣右介には持ち合わせていなかった。

だから浦原維助は天才だと言うのだ。

 

そして藍染惣右介はコピーするのを辞めた。

そう、藍染は藍染なりに考え別の方法で作ったのだ

それが疑似的な霊刀。霊刀の性質は変わらないが、鬼道や術、結界類を無理に使ったもの。

 

意思のある生物から溢れる霊子を吸い取ると霊刀に意思が宿るという性質を見つけた。

 

そうして要らなくなった盗み出した霊刀をホワイトという虚と混ぜ合わせ戦わせ

黒崎真咲の魂魄に溶け込んだ霊刀はかつて志波一心の霊力を吸い取っていた。それを霊刀の意思で黒崎真咲の危機を知らせ一時的に霊力を一心に戻した。

 

そして霊刀は回復のためか、はたまた別の理由があってか半分に別れ、黒崎一護に溶け込んだ。

 

そう、魂魄に結合するのは霊刀に意思があるからこそなのだ

 

だが、それにも壁があった。

魂魄が先に耐えられない、暴走、異物質と魂魄が結合することにより崩壊する体。

霊力の吸い取る力を強くしすぎると、意識が呑まれる。また自身が分解される等々リスクもどうしても越えられない壁もある。

 

数多くの破面で実験し、浦原維助と戦わせた。

そして___ようやく生まれた。

 

理想の霊刀

 

「崩玉に霊刀。私の敵など___もう居ない」

 

崩玉を持っていない時でも、隊長格を凌ぐ強さを持っていた藍染惣右介。

崩玉により更にパワーアップ。そして霊刀により鬼道類の攻撃を無効化した。

 

未だ、藍染惣右介の理想とは何なのか。それは分からないが、とても良くないことだということは…誰にも分かった

 

「久しぶりだね、旅禍の少年」

 

虚圏で貯めた霊力と天鎖斬月の力。

だが藍染惣右介はただの結界の防御のみで受け止めた。

 

「だが、霊刀を使ったのはいい判断だ。霊刀と戦えるのは単純な暴力か、霊刀同士のみ…」

 

霊刀に霊刀をぶつける__

霊刀と戦う術は例外を除き3つ

 

1つ浦原維助のように単純な己自身の力で戦う。

 

2つ霊刀が吸収する霊子の時間、それは一瞬では無い。

一瞬で掃除機が部屋全ての埃を残らず吸い取ることが出来ぬように。限界値も吸収時間も存在する。

つまり、1度に吸収できる量以上のものをぶつければ威力は半減するが届くと言うこと。だがこれは未知数、また失敗すればそれ以上のものが跳ね返ってくる危険もある。

 

3つ霊刀に収束された霊子や放たれた霊子は霊刀では吸収できない。お互いに意思があるからか混ざり合うことが無く相殺してしまう。

 

だからと言ってなんだ。

藍染惣右介は強かった

 

隊長格や仮面の軍勢総出で藍染惣右介の隙を作るも傷は付けられない。

そして鏡花水月により味方である雛森桃を傷つけてしまった。

 

霊刀の対処法2つめ───一か八かノ賭けに出たものがいた

 

流刃若火

 

轟々と燃え盛る炎。

身も魂も燃やすほどの圧倒的な霊圧

 

 

「ようやく総隊長のおでましか、君が倒れれば護廷十三隊は文字通り崩壊する。後任の総隊長として育てればよかったものを」

 

そう、現れた山本元柳斎重國に目を細める

 

「浦原維助か、(おごる)なよ小童。貴様程度の力でこの儂を斬れると思うてか。」

 

「ふっ__霊刀の事は理解していないのかい?」

っと笑う

 

「舐めるな、そのような刀一本で儂の霊圧を封じ込めれるとでも」

 

 

「ほらね」

そう言った藍染はいつの間にか、元柳斎の腹に刀を突き立てていた__だが、

 

「藍染惣右介捕えたり」

 

突き立てられた腕ごと握りしめる元柳斎

 

「なるほど、面白いね。君の掴んだその腕は本当に私の腕なのかい?」

 

「目で見るだけ、肌で感じるだけならそれもあろう、じゃが腹に刺さった斬魄刀の霊圧を読み違うことは無い」

 

 

 

焱熱地獄

 

轟々と燃え盛る炎柱が藍染達を包み込む。

大規模の炎柱────

 

「皆覚悟は出来ておる、一死似(いっしもつ)て大悪を(ちゅう)す。それこそが護廷十三隊の意気と知れ!この霊圧ならばその霊刀とやらにすぐに吸われはせぬだろう!」

 

 

その目は、その覚悟は、その霊圧は惜しみなく広がっていく

霊刀に炎が取り込まれる前により膨大なものをぶつける───だが

 

 

白煙と共に炎が一瞬にして無にかえる

 

「__私がそれを考えないわけは無いだろう?」

 

山本元柳斎重國が放つ技は、滅火皇子(エスティンデル)の能力により消されたのだ。

 

だが一瞬にして衝撃音と共に破面は遥か彼方に飛んでいく

 

「あまい…甘いわい。流刃若火を封じれば儂を討てると思うてか、なぜワシが護廷十三隊の総隊長を務めてると思うておる。()()()にも、貴様にも負けはせぬ!」

 

 

 

────────────

 

藍染惣右介は無傷でそこに立っていた。

 

「ぐぅ__っ」

クレーターの中心にひれ伏す山本元柳斎、

 

「山本元柳斎、尸魂界の歴史そのものである君は、せめて私の剣でトドメを刺そう」

 

刀を抜いた藍染が山本元柳斎へ刀を振り下ろそうとする──が

 

「舐めるなよ__小童」

 

 

 

焼き焦がした我が身を触媒としてのみ発動できる禁術

 

 

 

禁術 破道の九十六──

 

 

一刀火葬

 

反射的に霊刀により吸収するが、藍染の足を掴んで直接発動された破道ダメージは0ではない。

 

月牙天衝

 

 

一護が藍染を吹き飛ばし下がらせる

 

一護の斬魄刀に霊刀が宿っているせいか、一護は藍染に一太刀をいれる__が。

 

シュウゥっと音をたて、体の傷が治っていく

 

「超速再生…!」

 

「ふっ──私が虚化などすると思うか?これは主に対する防衛本能…」

 

藍染の胸には崩玉が埋め込まれていた。

 

 

「君は私の探究の最高の素材だ。君は朽木ルキアと出会い、石田雨竜との戦いを経て死神としての力に目覚めた、浦原喜助との修行で霊刀の力を知り、阿散井恋次との戦いで自らの斬魄刀の力を知り、更木剣八との戦いで卍解への足がかりを、朽木白哉との戦いで虚化へと踏み出した。」

 

「全て私の掌の上だ」

 

 

ドクン___

心臓の音が聞こえた気がした。

 

藍染は続ける

 

「1度もおかしいとは思わなかったのかい?出会いは運命だとでも思ったかい?出会いは偶然だとでも?襲撃も偶然だとでも思ったのかい?」

 

 

それ以上聞きたくはないとでも言うように一護は藍染に斬りかかる

 

「こんなものじゃないはずだ、君の今の力は__さぁ、霊刀の力を見せてくれ。初代の__破片を」

 

 

「あんたさっき言ったよな。あんたの探究の素材だ…って。なんでだ、何を根拠に確信した?」

 

 

一護の体は震え、冷や汗が肌に流れる

 

「最初からだよ、私は()()()()()()()()()()()()()()

君は産まれた瞬間から特別な存在、そしてあの日()()()()()()()()。なぜ、君が霊刀をなぜ君が死神の力を__何故ならば君は、死神と___ 」

 

 

爆音と共に現れた

 

 

「喋りすぎだぜ、藍染」

 

黒崎一心

 

すぐに一護を頭突きして蹴り飛ばし距離を取った一心

 

「距離を取ったか、聡明な判断だ、浦原維助の弟子なだけはある」

 

藍染は黒崎一護に興味を持っていた、虚の力。死神の力。

そして、黒崎真咲が虚に襲われた日に一護に半分移った霊刀

 

そんな存在、興味を示さないわけが無い。

 

再び一心は藍染の元へ、一護はギンとそれぞれ戦闘を始める

 

 

藍染の胸元の崩玉から、何かが溢れでる

 

 

「物を考えず直感で名ずける兄とは違い__崩玉とはよく名付けたものだ、正しくこれは神なるものと神ならざるものとの交わらざる地平を凌ぐ打ち崩す力だ!!」

 

 

だが、その胸を貫通する青い光__

 

「やはり、崩玉と霊刀のバランスは崩れるようッスね。」

 

「来たか____浦原喜助」

 

崩れたビルの上で帽子を押えた喜助が霊銃片手に藍染を見下ろす

 

「お久しぶりッス。藍染サン、随分__珍しい格好ッスね」

 

「何事も進化の途中というものは醜いものだ」

 

崩玉と融合した藍染の姿が変わっていく

 

「融合ではなく、従えた__と言ってもらおうか、君が御しれなかった崩玉を…ね」

 

「御しきれなかった、そうッスね…当時は」

 

「当時?実に明確な負け惜しみだ。いや、それが負け惜しみかどうかはどちらでもいいこと。君は崩玉を御する機会を___永遠に失うのだから」

 

藍染が刀で喜助の胸を貫いた__かと思えば。

 

「甘いッスね」

パァンっと破裂する喜助、携帯用義骸と入れ替わっていたのだ。

 

六杖光牢

 

藍染を六つの光が拘束する。

 

「この程度の縛道で私を縛ってどういうつもりだい、それに霊刀…崩玉と融合し不安定とはいえ能力は変わっていない。こんなもの…」

 

だが、鬼道は消えず目を見開く

 

「あら…鬼道が消えなくて驚いちゃったのかしら」

 

「ふっ___黒崎真咲…」

 

藍染の胸を貫く青く光る剣。

髪をなびかせる黒崎真咲がふと笑う

 

「その不安定な霊刀、私の霊刀で簡単に抑え込める、甘いんではなくて?」

 

 

 

そして喜助の鎖状鎖縛と九曜縛に藍染は固められる

 

 

喜助は目を鋭くさせ杖を向ける

 

「千手の涯 届かざる闇の御手 映らざる天の射手 光を落とす道 火種を煽る風 集いて惑うな我が指を見よ 光弾・八身・九条・天経・疾宝・大輪・灰色の砲塔 弓引く彼方 皎皎として消ゆ」

 

その詠唱に目を見開く

 

「甘いッスね…鬼道は兄サンに勝てる唯一の得意技でして」

 

破道の九十一

 

千手皎天汰炮

 

真咲はその瞬間に剣を抜き飛び退き

赤い光が藍染の元へ降り注ぐ____

 

轟々と大爆発が空中で巻き起こり、残っていたビルのガラスが衝撃波で砕け散る

 

 

「藍染サン、貴方は本当に…崩玉の力を取り込んだことで油断したんスね。霊刀も未完成のようだ」

 

 

 

「違うね___霊刀は()()()()()()()()()

 

喜助の体から鮮血が舞う

 

「九十番台の鬼道ですら、躱すに値しない。」

 

 

「違いますよ、鬼道を躱さなかったことが油断だと言っているんじゃない。昔のあなたなら、なんの策も無く僕に2度も触れさせることは無かった」

 

藍染の手首から光が溢れ出る

 

「これは__!」

 

「封ッス。すべての死神の両手首にある霊圧の排出口を塞ぎました。貴方の霊刀は貴方の斬魄刀ではなく体と融合した。つまり霊子を吸い取り己の霊圧へと変換しそれは己の霊圧と合わさり膨大なエネルギーとなる。

 

排出口が塞がり__貴方は己自身の霊圧で内側から焼き尽くされる」

 

 

次の瞬間雲が吹き飛び流れるほどに、轟音と光が辺り一体を包み込む

 

「倒した…のか?それにお袋…!その刀」

っとその光景を見て一護がこぼす

 

「いいえ、あれで死ぬんならただのバケモノですむ話ッス」

 

「一護、話は後よ__きっと出てくる」

 

「その通りだ」

目を離してもいないのに気配も感じていないのに。

藍染は白で全身を埋めつくした姿で真咲らの間に現れた

 

その場の全員がその姿にハッといきをのみこむ

「自ら開発した鬼道で内側からやく__私が相手じゃなければ、否__。崩玉を捉えた私じゃなければ、勝負は終わっていただろう。残念ながら君が作った崩玉も浦原維助が作った霊刀も理解を超えているものとなった

 

私の霊刀は斬魄刀ではなく魂と、体と融合した。己の意思で霊子を吸い取り己の力に変換。それは正解だ流石は浦原維助の弟なだけはある。不安定なのも肯定しよう」

 

胸元の崩玉に触れる藍染

 

「この子らは仲が悪いようでね、だがそのうち完璧に融合するだろう。そうすれば別の霊刀ですら抑え込めるようになり、霊子で形作った攻撃や防御の完全無効化、霊子を己の霊力に変換しただの攻撃を数段の力に変換し放出__黒崎真咲、君の霊刀…いいや浦原維助が作った霊刀など、とうに超えているのだ。完全に支配し飲み込まれることもない、意思があるからこそ理想の形に進化する。」

 

そう、別な霊刀で対処する、そして吸収を上回る膨大なエネルギーをぶつける事、その二つの弱点が無くなるというのだ。

 

斬魄刀の鞘を抜いた浦原喜助

 

 

「ふっ…聡明な判断だ。術が効かぬなら力で。だが浦原維助の弟とはいえ__」

 

「甘い、何度言わせるんスか。ボクが何度あの人の剣をみて、刀を交わしたと?貴方よりも何倍も彼を見てきた」

 

「ふっ___確かに私は君を甘く見ていたようだ」

 

腕が痺れるような痛みを感じ

片手で喜助の刀を受け止めた藍染が笑いを零す

 

 

後ろから一心が襲い、腕と足に鎖を繋ぐ

 

「なんのつもりだ__こんなもの……!なっ四楓院夜一」

 

先程まで藍染がいた場所は土煙で覆われた、上空から夜一が藍染に攻撃を食らわせたからである

 

「どうじゃ…少しは____」

「っ…!夜一サン!避けてください!!!」

 

夜一のつけていた片足の鉄甲が砕け散り咄嗟に距離をとる

 

立ち上がった藍染は無傷であった___。

 

対鋼皮用(たいいえろよう)に作った特性の鉄甲だったんスけどねぇ…こんな簡単に壊されるとは」

 

「なんじゃ!儂が気を抜いたせいだとでもいいたいのか?ん?」

 

「いやーそんなんじゃないんスけど…」

 

「作り込みが甘かったせいじゃろ!!」

 

夜一の足に目を向けた藍染

 

「成程、確かに特別なもののようだ、私の一撃で足が無傷というのは、浦原維助の弟なだけはある」

 

「儂の足が特別なんじゃ」

 

「…藍染サン。1ついいっスか」

 

そんな藍染に喜助は鋭い目を向ける

 

「ずっと疑問だったんスよねぇ。どうして兄サンにそこまで執着するんスか」

 

浦原維助の弟なだけはある

浦原維助の弟子だな

浦原維助の___

確かに藍染は浦原維助のことばかりを口にしていた。

 

「彼は特別だからだ」

 

「特別?」

 

「初めて()を聞いた時から、初めて会った時から初めて彼の技術を見てから。私は特別なものだと理解した。あらゆるものを手がけ、あらゆるものを生み出し、あらゆる歴史を形作り、あらゆるものを力でねじふせる。これぞ強者である特別なものだと。

私は彼を理解し彼の思想を肯定し、彼と渡り合える力をようやく手に入れた。特別な死神を特別視するのは当たり前のことだろう?」

 

すると、喜助に問うように首を傾げる藍染

 

「なぜ、私ばかりを敵視するのか理解できないな。私は崩玉と霊刀を使い君達の敵となった…が、内側にいる浦原維助はどうだと思う。切っても切れない尸魂界の一部となり、法を作り味方を作り、思想を作り、外堀を埋めた彼は…敵では無い。そう言い切れるのか」

 

その言葉に目を見開く一護

 

霊刀を作った維助。藍染と知り合いの維助。

外堀を埋めている、内側から呑まれる。

 

確かに___そう思えば…っと一護は思考をめぐらせる。

 

「私と彼はやり方が違うだけ___そうは思わないのかい」

 

 

「弟であるボクが…兄の行動に気を使わないとでも?知ってますよォ。貴方が兄サンを知るずっと前から…ね。それを対策しないボクじゃない。あらゆる未来を想定している、兄を止めるのは弟であるボクの役目ッスから」

 

「_____成程」

 

一護はなんの話をしているのかは理解できなかった。

そう…だが、藍染と喜助は話が噛み合い自分の知らない何かを話している、それは理解できた。

 

 

 

 

「なぁに、面白そうな話してんじゃん。俺の事大好きかよ2人とも」

 

その雰囲気に合わない呑気な声が上空から聞こえる

 

「いやぁ、弟と男に言われてもねぇ…女の子に言われるならまだしも…」

 

よっとでも言いたげに片手を上げた浦原維助が現れたのだ。

 

「ようやくお出ましか___随分と遅かったじゃないか」

 

「本当に惣右介…?だよな、なんか姿変わったなイメチェン?いやぁ、ちょっと黒膣走ってたら落ちちゃって!」

 

落ちれば虚圏と現世のどこともしれぬ空間に落ちて帰ってこられなくなる__はずなのだが

 

「いやなんでそれで戻ってこれたんスか。」

 

「いやぁ、頑張った」

 

「頑張ったってお主…」っと呆れたような目を向ける。

 

スタッと夜一の隣に立った維助

 

「とりあえず久しぶりだな、惣右介。いやぁ、過大評価してるところ悪いし俺が敵とか何とか言ってるけど…夜一さんと喜助がいる限り。俺はこっち側だよ」

 

「へぇ___」

 

2人の後ろに周り肩を組む維助

 

「まぁ、やろうと思えば頂点にたてるだろうね。俺強いし、もう最強ってかんじ?まぁ、全てを手に入れたら面白そうだな〜って思ったことあるよ?そりゃ男は勇者だけじゃなく魔王にも憧れるもんだろ?」

 

惣右介はゲームわかんないか、っと零す維助が心底楽しそうに笑う。

 

「でも俺2人のこと大好きだからさぁ。こっち側にこの2人がいる限りおれはこっち側、もし2人が世界の敵になるなら俺は喜んで2人につくよ。

そして喜助が俺に埋め込んだもんはいわゆる保険だよ。とっくに気づいてるさ、そういう喜助だーいすきだぜ。」

 

それに、敵に回すと俺の技術見てもらう人減っちゃう。なんて言って2人に体重かける維助

 

「重いっス。」

うりうりと、頭を撫でる維助に心底ウザそうな顔を向ける喜助

 

「て、照れるじゃろ…」

大好きなんて…っと口をとがらせてそっぽを向く夜一

 

 

 

「そうか____なら。その手網を斬ってしまおう」

 

理想の霊刀____それは対維助の為に。

 

崩玉との融合で反発し不安定とはいえ

判明している能力だけでも___

鬼道系の攻撃の無効化、更に意識を呑まれず、霊子を確実に操り、吸収し霊力に変換し、攻撃力を上げ放出、崩玉と融合したことにより限界値は無いに等しく____。

 

自分で自在に操れる霊刀、オンオフも自由。意志を持っているため不意打ちすら無効化し、並の死神なら霊力を全て吸われ消滅する。

 

───そして維助の全てを防御する霊圧硬化も剥ぎ取る。

 

 

「はは、全力バフをかけたお前を倒す俺、かっこいいだろうなぁ、そうだろう?久しぶりに___剣を交わそうか」

 



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