瑞鶴?航海日誌 (ブッキー1107)
しおりを挟む

第1話 瑞鶴?爆誕!

作者の性癖の坩堝に近い物語です、男性艦娘時空というもの等を見て艦これのts物を書きたくなったので衝動的に書きました。
世界観は男女問わず志願して適性があれば、契約書にサインして艦娘になれてしまう、という感じ、世界観も主人公についても後々深堀出来ればなと思います。ということで初投稿の作品ですが楽しんで読んでもらえれば嬉しいです。


現在人類は戦時下にある、それもどっかの国が紛争している、という程度の物でなく、全世界が…だ。今から20年以上も前、最初は漁船が行方不明になるところから始まった、最初は単なる事故かと思われたが、次には世界各国の軍の船が失踪、そして…最初の漁船が行方不明になって、ちょうど1週間…遂に”深海棲艦”が現れた。

 

人類は奮戦したが、奴らに通常兵器は効果が薄く、最早足止め程度…遂には人類史上最悪の兵器、核爆弾すら利用されたが…そもそもあのような存在に利用する前提でもない上に、上位の深海棲艦には効果がなかったのだ、人類は終わりかと思われたその時に現れたのが…”艦娘”、既に沈んだ、過去の艦の魂を宿した少女達、そして、それらを助ける技術を持った”妖精さん”、と呼ばれる不思議な存在。

追い詰められた人類はそれらの力を借り、何とか近海を奪い返し、母港となる場所、そして設備を整え、共に戦い、人類の中の1国…日本は今の今まで繋いできた。

だが…天然の艦娘だけでは、広がった領海を守りきれない、そして…その状況下で反撃にも転じることができず、一進一退の状況の中、研究の末に男女問わずに人間を艦娘にする技術を開発、個人個人の適性はあるものの…反対運動などもある中、12年程前に、実際に元自衛隊…今は海軍にて、正式に技術利用ができるよう、法律が改正されたのだ。

 

というのは、最早学校で誰でも習う話、とはいえ志願者は少なく、艦娘となることは、今までの人生、身体を捨て別人になるようなもの、中学の頃の僕の周りでも艦娘志望はいなかった。

 

だが……25歳の今、僕、鶴田和正(つるたかずまさ)は鎮守府の門前に立っている、艦娘志望として…適性検査を済まし、契約書にもサインをした。

 

「やばい、めっちゃ緊張する!まってまって…落ち着け僕、深呼吸…深呼吸っ、と。」

自分に言い聞かせるように独り言…契約書にサインした時点で後戻りはできない…親にも相談すればよかった!なんて思いつつ、僕は、門の中に1歩を踏み出した。

 

「あ、艦娘志望の鶴田さんですね!私は大淀と申します…適性は…ふむ、航空母艦と、ちょうど不足していた戦力……って、今はそれどころじゃないですね、此方ですよ!」

すぐに案内人と思われる、大淀…と名乗る女性がやってきて、僕を手招きしてきた…綺麗だなぁ、と正直感じてしまった、髪はサラサラしていてとてもいい匂いがする。

 

「は、はい…鶴田和正です…本日はよろしくお願いします…。」

正直、少し怖い、連れてかれた先に一体何があるのか…中に入り、綺麗な廊下を歩いていく…その先に”工廠”と書かれた鉄製の大きな扉があった、この先に何があるのか…好奇心2割、恐怖5割、不安3割と言った中、大淀さんが開けた扉に入る、鉄の匂いが鼻にはいる中、先に案内され、硬い椅子が置かれている、こじんまりとした個室のような場所。

「こちらです!中にお入りください、そしたらすぐですからご心配なく。」

と、此方の不安を見透かしているように言われ、軽くお辞儀して中に入り…硬い椅子に座る、ひんやりとした感覚に襲われた次の瞬間……プシュー、という音と共に中に催涙ガスのような物が部屋の中に散布され、僕の意識は闇の中に沈んだ。

 

……僕は、闇の中で浮かんでいた…どこかも分からない海、自分の身体を見ると、まるで全裸で宙に浮いているようだった…しかし不思議と気持ちいい、突如目の前に映画のような映像が映し出される、それは多くの人に見守られながら、大海原に出港……いや、進水した大きな空母、何故か頭に一瞬で名前が浮かぶ…”瑞鶴”と。

次に、似たような艦と並んで航空する様子、その様子に不思議な幸福感に満たされていく…。

その後は激しい戦いの様子、それを見る度に、それがなにか理解していく…もう1隻の艦、”翔鶴”と2隻でずっと戦ってきたことを理解、いや…思い出していくのだ。

 

…そして、マリアナ沖で翔鶴姉を失ったこと、その後のレイテで、後を追うように、瑞鶴……いや、”自分”が沈んだこと、

 

『翔鶴姉……いやよ!わたし!今度こそは!!!』

 

悲しい気持ちが湧き上がってくる、涙が止まらない…感情的に叫びながら、咄嗟に涙を拭おうとした。その、涙を拭おうとした自分の手は、まるで女の子のような、毛ひとつ生えていない綺麗な手に思えた…。

 

「あ、あれ……僕…?」

夢かと思い、出してみた声は…妙に高い、サラり、と茶色い髪が目にかかる…部屋の中に鏡があることに気づき、見てみると…そこに居たのは、ツインテールに、茶髪の可愛い美少女だった、服は弓道着に似た衣装…胸当てには大きく、ス、と書かれていて、赤色のスカートは結構短い。心做しか股間がスースーとする。これが艦娘の艤装…と言われるものの1部なのだろう。

 

「ふぇ、えぇぇぇぇぇぇ?!?!」

こうなることはわかっていたものの…最近まで25歳の男性…しかも小太りで顔も普通…寧ろ悪い方だった自分とのあまりの違いに動揺してしまう…動揺のあまり後ろに倒れるように尻もちを着いて、柔らかいおしりに伝わるひんやりとした床の感覚を感じたところに…

 

「お疲れ様です…新しい自分はどうでしょう?体調悪かったりしますか?…鶴田さん、いえ…瑞鶴さん」

瑞鶴……と今までとは違う名前で呼ばれた、でも何故か違和感はない、寧ろ此方の方が馴染むというか、自分が瑞鶴という自覚がある、なんだか不思議な気分だった。

 

「え、ええ…私、じゃなくて…えっと…僕は平気です!」

無意識的に、私…と女口調が出てしまった、咄嗟に訂正したものの、意識していなければやばいかもしれない。

「無理に変えなくてもよろしいのですよ?新しい自分に慣れないとですし…」

と大淀さんに言われたが…女口調はさすがに恥ずかしい…ので、僕は首を横に振った…ツインテールが左右に揺れる感覚…ツインテールの女子って、こんな感じなんだな〜…なんて考えていたら。

 

「さて、と、早速提督への挨拶をお願いします。やり方は………思うように言ってください、きっと分かりますから。」

新しい身体を確認する暇もなく、正直意味がわからない事を言われ、鎮守府内の部屋割りが書かれている地図を渡された。

「それでは…また、会いましょう。」と言われたので「はい、本日はありがとうございました…」

そう言って軽くお辞儀し、大淀さんと別れて地図に印が着いた部屋に向かう。

 

広いなー、と考えつつ…廊下を歩く時に周りを見ていて気付いたが、背も小さくなった為か、視線が前より低い…、そして、スカートの感覚にもまだまだ慣れない…、そう思いながら内股気味に歩いていく…いつか、これが当たり前と感じるようになると思うとものすごく変な気分だ。歩いていくうちに提督室と書かれた看板がある大きな扉の前にたどり着き。

「し、失礼します!」

緊張しながら慣れない高い声をはりあげ、ガチャり、と扉を開けた…。これが、僕の新しい人生?いや、艦娘生の幕開けとなる…そういう実感ができた気がする。ここから、瑞鶴としての新たな生活が幕を開けるのだ!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話 新たな出会い。

第2話です、筆が乗ってしまいました。
R18になりそうな話の構想もあるので、その辺は番外編として投稿しようと思います。


扉を開けた先の素朴な提督室、そこに座った比較的若く、おそらく自分と同年代くらいの提督を深呼吸して見据え、僕はゆっくり口を開いた

「翔鶴型航空母艦2番艦、妹の瑞鶴です。

幸運の空母ですって?そうじゃないの、一生懸命やってるだけ…よ。艦載機がある限り、負けないわ!」

…と言い、キリッとした敬礼…あれ?なんで僕いきなりこうやってるの?ちょっと?あ、えっ……

「あの…提督さん、ですよね、すみません…」

ハッ、と正気に戻った、無意識的に身体と口が動いたのだ、だから大淀さんは特に何も言わなかったのか…。瑞鶴としての自分に引っ張られてしまうものなのだろう。

 

此方がオドオドしてるうちに、正に好青年と言った出で立ちの提督さんは僕に敬礼を返し、穏やかな笑顔で口を開いた。

「問題ない…人間から転化した子は誰でも最初はそんな感じだ、どうぞよろしく。まだ艦娘としての自分をまだ自分と認識しきれてないんだ…その辺のズレはいつか直るよ。」

「おっと、自己紹介がまだだったね…私は日下部達也(くさかべたつや)、日下部提督でもなんでも…呼び方は好きにするといい。」

とオドオドする僕を励ますように言いながら、軽めの自己紹介をしてくれた…前の僕よりも背が高い上に、爽やかで整った顔…インタビュー記事などで存在は知っていたが、正直少し嫉妬してしまう。まあ…艦娘になった今、そう思っても後の祭りだ。

 

「じゃあ、先ずこれが君の身分証みたいなもの、皇軍手帳というのだが、色々書いてあるから、1度目を通して欲しい。証明写真は明日撮影になる。

 

……そして、着任おめでとう、翔鶴型航空母艦、瑞鶴…これからの活躍に期待する。」

提督さんに皇軍手帳と呼ばれた、錨のマークが着いた手帳を手渡され、祝いの言葉を言われた…ま、これから頑張るか、と思いつつ、まるで学生時代に使ってた学生証のような手帳をしっかり手に持つ。

「ありがとうございます…えっと、私……じゃなくて僕はこれからどうすれば?」

「ああ、今日はその身体に…新しい自分に慣れてくれ、大丈夫…空母寮の寮部屋で君を待ってる者が居るから…はやく顔を見せてあげたらいい、きっと仲良くなれるさ。」

と急かすように言われたので

「し、失礼しました!」

軽く頭を下げ急いで部屋を出る…本来ならもう少し場所を聞いたりするべきだろうが、何故か急ぐ気持ちが勝ってしまった。

 

とにかくその待ち人に早く会いたいと、地図を見ながら…廊下を小走りで進んでいく途中で背の小さな4人とすれ違った…髪の色等は違ったが、おそらく姉妹艦というやつだろう。

「初めまして!暁よ!」

などと聞こえた気がするが、焦るあまりに軽い敬礼で返し、寮の方に向かう。

 

空母寮…と看板が掛けられた廊下を進む途中に並ぶ寮室への扉、”加賀、赤城” ”飛龍、蒼龍”等と、部屋に割り振られた艦娘の名前が書かれた板が扉の横にかけられている…音は聞こえずに静かだ、何処かに出かけているのだろう。そして遂に見つけた”瑞鶴、翔鶴”と名前がかけられている部屋を。

 

「ここに僕の姉妹艦……いや、翔鶴姉が居るんだ…早く会わないと…!」と、独り言を呟きながら、深く深呼吸…そして、コンコンと軽く部屋をノックして、ゆっくり戸を開けた。ガチャっ…と、静かな空間に扉が開く音だけが響く…。

「えっと……あの…」

広い部屋に置かれた2人分のベット、他には最低限の机と椅子…あとは僕が先に自宅だったアパートから持ってくように手配していたゲーム機、本などが入ったダンボール…。直ぐに背を向け、ベットの上で待つように座る白髪の長い髪の女性を見つけると…本能的に自分の姉だとわかった、緊張しながらもゆっくりと…

「し、翔鶴姉……?は、初めましてかな?いや…それとも久しぶり?」

頭の中にふと浮かんだ言葉を艦娘としての自分…瑞鶴のそのまま口に出す。

「ふふ…そうね、初めまして。そして…久しぶりね、瑞鶴。会いたかった…。」

ゆっくりこちらを振り返り、嬉しそうな穏やかな笑みを浮かべた、多少差があるとはいえ、自分と似たような服装をした女性…翔鶴姉は優しく僕に語りかけ…ゆっくり両手を広げた。

「翔鶴姉!……私も…会いたかった!」

もう艦娘としての自分に抵抗はしない、素直に受け入れ…咄嗟に叫びながら抱きついた、互いの身体をしっかり密着させ翔鶴姉の温もりを感じる…自分は元々瑞鶴でもなく、今も僕…という自覚はあるけれど、今はこうしていたい…翔鶴姉と初めて会ったとも言える、この再会を喜びたい、その一心だ。

「ふふ、やっと会えた、初めましての筈なのに、なんだか不思議ね…」

「でも…いいの?僕……瑞鶴だけど元々男で…」

不安げにそう聞いたが…帰ってきたのは衝撃的な答えだった。

 

「ああ、平気よ……私…俺も元々男だったから、ね。」

え?ちょっと待って、僕達って…2人とも、元男?

 

「え、あ……そうだったの?!…でも、なんだか不思議だね、元々全く面識も無いのに…頭の中で姉妹って思ってる自分が居て…」

正直混乱する、お互い男だったはずなのにこの感じは不思議と嫌では無い。

「ちょっとさっきまでのイメージと違うかもだけど…これからよろしく、私…じゃなくて俺も頑張るから…なんというか、先ずは女の子の身体……慣れないとな、実は昨日処置を受けたばかりで………服の脱ぎ方とか、女の子の身体についてとか……分からん!」

先程までとは違い、砕けた口調で話す翔鶴姉…向こうも艦娘としての自分に少なからず引っ張られているのかと思った。

 

「ま、まあ……お互い頑張ろ…翔鶴姉!…この呼び方で大丈夫?」

「平気……なんというか、そう呼んでくれたら嬉しいな…瑞鶴。」

少し恥ずかしそうに目を逸らしながらも、翔鶴姉はそう言ってくれた、まだ緊張はするものの…提督さんの言った通り仲良くなれそうだ。

 

「さ、てと…感動の再会兼、初めましての挨拶を済ませた訳だ…あれ、2人で準備しようか、これから住む部屋だし、色々なものの置き場所考えなきゃね。」

ヘラ、と気楽に笑いながらそう言う翔鶴姉、よく部屋を見渡すと、自分の荷物以外にも翔鶴姉のものと思われる漫画やらが入ったダンボールが会った…鎮守府には危険物以外に持ち込み物に制限は無く、部屋におけるのなら趣味の道具やらもOKと言う自由な感じらしい。これは少し苦労しそう、そう思いながら。

「さ、やろっか翔鶴姉…初めての共同作業、なんてね」

艦としてでなければ初めてとなる共同作業、引越し作業に近い限りなく地味な作業だが不思議と心が踊る。

 

「さ、まずは1番重そうなこれか………軽い?!」

先ずはテレビから持ち上げて設置するか、と思い軽く持ち上げようとしてみた…軽い!軽すぎる!艦娘は人間ではない…身体能力も高いと聞いてはいたが想像以上。

「翔鶴姉!やばい…すっごい軽いよ!」

興奮気味にそう言ってしまう、それほどの衝撃だった。

「へぇ…やっぱり艦娘である以上力は強いのか…こりゃ、思ったより楽?」

そう言いながら棚にダンボールから取り出した漫画を並べている翔鶴姉…かなり数がある上、1巻から揃っている…好きなのかな?なんて思いながらゲーム機とテレビをしっかりコンセントに繋げ動くようにする。

「お、ゲームじゃん…俺も好きだよ、暇つぶしになるしな〜…非番の日とか、一緒にやっちゃう?」

フランクに話しかけられ、反射的にこくりと頷いた…姉妹という認識があるとはいえ、まだ緊張するのだ…趣味が合うなら尚更仲を深めていきたい。

「あ、うんっ…やろ!…なんというか、瑞鶴としてじゃなくて、僕達個人としても仲良く出来たら嬉しいし…。」

やはり僕個人となると緊張してしまう…今は姉でも元は赤の他人、当然のことだろうか。

「ふふ…それもそうだな、私……俺個人としてもよろしく、なんというか…誰かと最後にゲームやったのなんてかなり昔だな…友達いなくて。」

と、寂しそうに俯く翔鶴姉…うん!めっちゃ気持ち分かる!友達とも兄弟とも両親とも連絡とってないし…今更とる気にもならない、久しぶりに連絡を取ってきた家族が別人になっているなんて混乱を招くだろう…。

 

「ははは…実は僕も、誰かと仲良く…なんてのは久しぶり。オンラインで知らない人とやったことあるけどさ。」

「へぇ…お互い陰キャかも?…どうも人と話せなくてさ…ま、仲良くしようじゃん。」

ニコニコと笑いながら細く白い手を差し伸べてきた、握手ってことかなと思い僕もその手を握る。

「僕個人としても、色々よろしくね…翔鶴姉。」

「宜しく、瑞鶴…2人で頑張ろうな。俺の中の翔鶴もそう言ってる気がする…多分。」

此方の出した手もこう見ると随分変わったものだ…細くしなやかな手、互いのそれが触れ合い、柔らかい感触と体温を感じる。

ふと窓の外を見るともう空が暗くなっていた、もうこんな時間、と思っていたら、コンコン…と、部屋がノックされ。

「お2人ともいらっしゃいます?施設の案内をしますので、出てきていただけないでしょうか?」

大淀さんの声が聞こえる、そういえば何も細かい案内はなかったなと思い少し楽しみだ…まだ作業の途中だったが新しい生活の場、しっかり知っておいた方が良いだろう。

「へぇ、案内…行こっか翔鶴姉。」

「そうだなぁ…学校に入学したての時みたい、こういう案内はさ。」

そう言い、ベッドから立ち上がると…2人で無意識に手をギュッと繋ぎながら、ゆっくり扉を開けた…。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話 案内、そして…

性癖が爆発するのは次回にお預けになってしまいました、すみません。


「おや、お2人とも随分と仲良くなれたようでよかったです。もう手まで繋いじゃって…♪」

ドアを開けた先の大淀さんは微笑みながらそう言った。

「あ、ちょっ…瑞鶴?!」

慌てて翔鶴姉が繋がれていた手を振り解いた…僕も咄嗟に手を離した…

「えっと…これはぁ…」

気まずそうに僕は大淀さんから目をそらす…多分翔鶴姉も逸らしていることだろう。特に何か言う訳でもなく、ニコニコ笑いながら此方を見てくるのが逆に辛い…。

「ふふ、それでは鎮守府の施設の案内をさせていただきますね、こちらです…所属している艦娘達への紹介は明日ですから…自己紹介を考えといてください。」

と笑顔のまま言われ、ハッと我に返った…自己紹介?そういえばそうだ、それなりに大きな鎮守府、所属している艦娘もかなりの数。ほとんど会っていないのは、ちょうど出撃中か演習でもしているのだろうか…寧ろ今会ってもオドオドして大変だったから助かる。

「えっと…俺たちは明日自己紹介…?ってことですね…あの…どんな感じにやれば?」

心配そうに尋ねる翔鶴姉…

 

翔鶴…彼女は内心心配していた…そう、何年も前のクラスでの自己紹介、その時を思い出す…仲良くなりたいばかりにネタに走り、盛大に滑った自己紹介を。その後の肩身の狭さ…それを思い出し、彼女はかなり焦っていた。

「ご心配なく…別に元の名前を名乗れという訳でも無いです。単純に艦としての名前と…後は趣味とか好きなことを、落ち着いて言えば大丈夫です。」

その様子を見て安心させるように大淀さんが言った…彼女もそれなりに長く務め、多くの艦娘を見てきたのだ、その程度の不安お見通しである。

 

翔鶴姉が大淀さんに聞くのを見て、なんとなく僕は察した…過去に自己紹介でやらかしたのだろう、なんだかシンパシーを感じる。

「あはは……頑張ろうね…翔鶴姉…。」

僕が乾いた笑いをしながら言うと、同士よ…と言いたげに、にこりと微笑みを返された。

 

「さて、此方です…とりあえず今後使う施設を案内しますね。此方ですよ。」

にこりと笑いながら手招きする大淀さん…黙って僕達はついていく、空母寮の構造は複雑でもなく階段とエレベーターを除けば一本道、迷うことはなさそうと思いつつ…進んでいくと”食堂”と書かれた広い部屋に案内された。

「ここは食堂となります…今は閉まってますが、ご飯の時間には空くので食事は此処で食べるってことです、メニューはたくさんありますからお好きに選んでください。

ほかの艦種とも共有なので、空いていない時も憩いの場として使われていたりしますね♪」

上機嫌に案内する大淀さん…バーカウンター等もあり、中々新鮮な気分だ、卓球台等も置かれてるため、娯楽施設でもあるのだろう。

「へぇ…中々広いなー。」

と周りを見渡している翔鶴姉…少し楽しそうに見える。

 

そこから僕達は大淀さんに連れられ、色んな場所を案内された…大きな演習場、出撃用のレール、そして装備、艤装の整備、修理、改装を行う工廠…僕達が添加処置を受けたのも此処だ。

「初めまして、明石です!修理ならお任せ下さいね。」

と、挨拶してきた工房の担当、工作艦明石という艦娘…工房を取り仕切っているようで、強化なども彼女の専門と言われた。その後はまた廊下を歩いたがさっきまでと違い。

「あ、初めまして!」

「ちーすっ、新しい子じゃんっ!よろしくー。」

「へぇ…五航戦、ね。精々頑張りなさい。」

「よろしくお願いね!同じ空母同士。」

等と演習を終え戻ってきた多くの艦娘に話しかけられたが

「よ、よろしくお願いします……」

「よろしく……」

と言う感じに2人とも緊張してしまい、軽い挨拶だけで済ませてしまった…名前くらい聞いておけばと後悔している。何故か1人だけ冷たいこと言ってくるのが居た…格好からして同じ空母のようだが、空母と言えばもう1人オレンジ色のにも会った、そっちは良い人そうだ。

 

「さ、此処が最後ですね。」

案内された先にあるのは銭湯のマークが書かれた暖簾が扉にかかった部屋の入口……というか銭湯の入口。

 

「……えっと、あの、温泉?」

「温泉だな……コレ。」

僕と翔鶴姉は正直困惑していた…大浴場はあると思っていたが、思った以上に本格的な入口を見てちょっと引いている。

 

「ここはドック、入渠に使います…分かりやすく言えば、修理ですね。艦娘である以上敵の攻撃への被弾は免れません、でも大丈夫…ここに浸かれば時間はかかりますが元通りです!後は入浴施設も兼ねています。」

と説明してくれる大淀さん、怪我した艦娘は病院か医務室で治療するものかと思っていたが違ったようだ…民間には知られていないことだろう、こういうのを知れるのもまた面白い。

「ということで、お2人には今から1回入浴してもらいますので♪清潔感は大事ですから。」

 

「「え……………」」

僕達2人は…笑顔で放たれたその言葉を聞いて仲良くフリーズしてしまった。

 




はてさて、次回はお風呂回ですね!お楽しみに!
今後の展開も偶に性癖爆発回が挟まりそうです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話 (艦娘として)初めてのお風呂!(前編)

お風呂回です!少々忙しい故に、前後編に分けたいと思います、此処からの描写も懲りたいので。


風呂に入る、それはこの新しい自分では初めてのこと……即ち、このハイパー美少女ボディの裸体を見ることになるということ。

「「えっと……その、2人で?!」」

瑞鶴と翔鶴の考えることは同じだった、思わず出た言葉が綺麗にハモる。

「はい、お2人です…髪の洗い方とかは、これ、どうぞ。服の脱ぎ方なんかも書いていますので、参考にしてください。」

と言い、渡されたのは”艦娘の手引き”と書かれた冊子…中を見てみると、髪の洗い方や下着の付け方…などが書いてある。

 

「え、と…大淀さんは?教えてくれないんです?」

見るのと実際にやるのとでは難易度が違いすぎる、思わず聞いてみたら

「私の案内はここまでですから…お風呂が終われば今日は何もありませんし、寝てしまって構いませんよ。」

それだけ言って、大淀さんは廊下を歩いていってしまった…唖然とする僕達を置いて。

 

「おい……どうするんだ、これ。」

焦ったような表情で聞いてきた翔鶴姉…よく考えたらドックも共用、早めに済ませなければ誰か入ってくるかもしれない。

「だ、誰か来る前に入ろう!急がないと他の人来ちゃう…」

「そうだな……急ぐか…」

他の人が来ちゃう、と聞いた翔鶴姉は焦りながらドックの中に入っていった、僕もあとに続く。

 

「えっと……服、脱がないとね。こうやって……」

なんとか胸当てを外した…外してみるとスっ、と肩が軽くなったように感じる、結構重かったらしい。

「翔鶴姉は…あ、できてた。」

同じく胸当てを外した翔鶴…彼女も胸当てを脱いだ服を入れるカゴに放り込み、肩が軽くなった為ぐっと腕を伸ばしていた。

 

「お、2人とも居るじゃん、さっきぶりだね」

………いきなり後ろから響く声、僕達はその声を知っている、案内中にすれ違った艦娘の中で「よろしくお願いね!同じ空母同士!」とか言っていた…あのオレンジ色の人がいつの間にか僕達の後ろに居た。

 

「ごめんごめん、いきなりすぎたね?私、航空母艦飛龍です、改めてよろしくね?」

「えっとー…君たち2人の教官っていうべきかな?ま、畏まらなくていいよ!…本当はもうちょい早めに合流する筈だったんだけど、ど忘れしちゃてて。」

あははー、と頭を書きながら笑う飛龍さん。そういえば、何故態々こんなタイミングで…と思った矢先。

「ま、まずはお風呂だね!女の子の髪の洗い方とか…分からないでしょ?大丈夫だって、私も一緒に入るから。」

 

「は………?」

「え……………?」

僕と翔鶴姉はまた硬直していた、まて…ただでさえ自分の身体をろくに見てないのに、この人のも居るのかと。

 

「へぇ…やっぱり緊張しちゃう?大丈夫大丈夫…すぐ慣れるから、今まで来た子もみんなそうだったよ、今は女の子同士なんだからさ、気にしないで。」

と、ニコニコしながら言われると、僕にゆっくりと近付き…

「はい!一気に脱いじゃおうね!」

と、一気に弓道着に似た服を強引に脱がされ、サラシを巻いた小ぶりな胸を顕にされた。

「ひゃい?!」

と、甲高い声を出してしまった……ひんやりとした空気の寒さが、直に肌に伝わる。

 

「はーい、間髪入れずに次だよ!」

飛龍さんがしゃがんだかと思うと、ずるっ…という音と共に、下半身がすーっ、とひんやりとした空気に襲われる。その感覚で理解した…僕は今スカートを下に脱がされた。

「ま、まって…心の準備がまだ…!」

なんて言ってももう遅い、下を見たら…そこまでではないがむっちりした太もも…更に白い紐パンが目にはいる、僕こんなの履いてたんだとも思ったが…最早言葉が出ない、人生で初めて見た美少女の下着姿…それも学年1可愛いってレベルの…本来なら喜ぶべきだろう。

 

だが、全く嬉しくない………目の前の鏡に映る姿、それは自分のものでもあるのだから。

「あはは…は…」

苦笑いするしかない。

 

「きゃぁぁぁ?!」

と響く情けない翔鶴姉の悲鳴、姿を見てないが僕と同じことをされているのだろう、見る勇気は無い。

鏡を見てより実感が湧いた、もうかつての僕は居ないのだ、居るのは瑞鶴としての僕だけだと。

 

「さすがに下着は自分で脱いでよー、これ以上脱がせたら私が変態みたいじゃん。」

と、笑いながら言う飛龍さん、最早僕から見た評価はろくなものでは無いが、流石に下着くらいは自分で脱ぎたい…そう思い、極力見ないように目を細めながらサラシを解いて、紐パンをゆっくりと脱いだ…分かってはいたがもう我が息子はさようならしてしまったらしい。

 

「さらば我が息子よ…永遠に…」

ボソリと囁くと、恥ずかしそうに胸と股を手で隠した翔鶴姉が目にはいる。

「み、見るな!瑞鶴!というかお前も隠せよ!」

と、顔を真っ赤にしながら言ってきた翔鶴姉

「あ?!!まって?!見ないで!」

と、やばい!と思いながら咄嗟に手で胸元と息子が居たはずの股を隠した…

 

「先に入ってねー、私も早めに脱いじゃうからさ、ちゃんと流すんだよ?」

と言われ、僕達はそそくさとドックの中に入る、中には入渠用、と看板がある、壁にタイマーが着いた4つの個人風呂のような風呂と、大きな共用のお風呂があった、入渠では無いのでおそらく共用のだろうと思いまずは身体を流そうとかけ湯をしておそるおそる風呂に足を近づける…まずは温度確認だ。

 

「湯加減は……普通?」

「そう…みたいだな?」

しっかり温度を確認し、互いに慣れていない女体を見ないように目を逸らしつつ、ゆっくり湯船に浸かった。




実は飛龍は天然の艦娘です、天然でも人間が転化した艦娘でも同じ艦の艦娘は同時に存在します。
また、ベースが同じでも天然艦娘なら微妙な個体差、転化した艦娘は人間としての経験と人格、更にそこからの経験の積み重ねにより似ている部分はありますがそれぞれ別人となります。転化した艦娘なら尚更です。

ちなみに大淀さんは男性から転化した艦娘の反応を楽しんでいる節が…ずっと案内を務めている鎮守府の古参であり、密かな楽しみだったり…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

(艦娘として)初めてのお風呂!(後編)

お風呂回後編です。
今回はちょっと百合を…(BLに近い何か)


「ふぅ〜…」

「はぁ〜…」

と、おっさんのように息を吐く僕達、翔鶴型航空母艦の2人…自分で言うのも変だが、見た目こそ美少女でも細かい仕草だけ見ればおっさんみたいだ。

「……なんか僕達おっさんみたいだねー、こんな身体になってもさ。」

「へー、おっさんはこんなの浮かべてないぞー?」

ある程度余裕ができたのか、僕の水に半分ほど出ていた小ぶりな胸をツン、とつついてきた

「ちょ?!やめてよ翔鶴姉!…というか翔鶴姉の方がデカいじゃん!」

僕も少し余裕ができてきたので、お返しに翔鶴姉の私よりあきらかにデカい胸をつついてやった。

 

「ひゃんっ…!」

……と言う女の子らしい声を上げる翔鶴姉…一瞬でその場に静寂が訪れた。翔鶴姉は顔を真っ赤にして全力で目を逸らしている。

「あ、えっと……ごめん。」

咄嗟に謝る、この空気に長くは耐えられない…

「瑞鶴…わ、私…じゃなくて俺こそごめんな……今のは聞かなかったことに。」

顔を真っ赤にしたまま謝り返す翔鶴……しかし、彼女は内心ドキドキしてしまっていた、”やば……今の、気持ちよかった”と、思ってしまいながら、しかし正直に言えるわけも無い。

 

「うん……今のは聞かなかったことに。」

何故だろう……何故僕はこんなにもドキドキしているのか、今の翔鶴姉はとても可愛かった。

僕は……いや、私は気付いたら翔鶴姉に近づいて、ぎゅっ…と身体を密着させて抱きしめていた。

 

「な、何?!瑞鶴……?」

俺は困惑してしまった、いきなりぎゅぅ…と抱きしめられ、身体を密着させられる…恥ずかしい上に顔も近い、だが…とても愛おしく思えてしまう、目に映るその顔が。

いや、思えば簡単な話だ…瑞鶴は俺の…私の妹、大切な姉妹艦、愛おしくて当然だ。

「いや…やっぱりいいわ、今はこうしていたいもの。」

優しくそう言ってあげた、きっとこれで良いのだから。

 

「お、2人ともなんか良い雰囲気ー?私来ない方が良かったかなぁ。」

音もなく入ってきた侵入者…飛龍、その顔は2人の仲睦まじい様子を見てただニヤニヤと笑っていた。

それにより、艦娘としての自分に寄っていた2人の意識は一気に元の自分に引き戻された。

 

「はぇ……?!」

「あ……。」

僕はハッとした、今自分は何をしていた?翔鶴姉に抱きついて…なんでこんなことをしてしまった?と思い、咄嗟に離れた、翔鶴姉の顔も真っ赤だったが、少し残念そうに見えた気がする…多分気の所為だと思い、飛龍さんの方を見ると……

 

「んぇ?どうしたの?そんなに私の胸元見てさ。」

そう、全裸だったのだ…僕達より肉付きの良い体、さらにかなりでかい胸を見せつけるように胸を張って立っている。

 

「ちょちょ、もう少しちゃんと隠してよ?!」

「俺たち元は男だぞ?!」

全力で目をそらす、見ていたらダメだ!釘付けにされてしまう!と直感的に感じた。

 

「まあまあ、今は女の子同士でしょー?明日からは他の子も来るんだから!慣れよ!」

バシャーン、と勢いよく風呂に入ってきた飛龍さん、目を開けられない、開ける勇気が無い。

 

「ほら、身体の洗いかたとか、髪の洗いかたとかも教えるんだからさ!頑張って!」

 

 

………それからは地獄だった、短かったはずなのに、とても長い時間に感じた。

髪の洗い方、身体の洗い方、この身体をケアする上で必要なことを翔鶴姉と一緒に徹底的に叩き込まれた。最後に寝間着の着方を教わったが、制服の着方は心配しなくて良いと言われた…なんでも”身体が覚えている”とか、脱いだ制服はほっといて良いらしい、あとは妖精さんが汚れていたら掃除したり、破けてるなら修繕もやってくれると聞いた、随分便利な物だ。

 

 

「ふぅ……」

「はぁぁ…」

2人でぐったりしながら寝間着を着て廊下を歩く、なぜ初日の疲れを取る為の風呂でこんなに疲れてしまったのだろうか。

だが、初日は、もう少し続くことになる…。




次回で初日編は終わりかもです、とはいえ長い生活の初日が終わるだけ、まだまだ続きますよ。
感想なり評価なりして頂けたら励みになります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話 食堂にて

遅れました!(土下座)


「よいしょっと…おつかれ翔鶴姉〜。」

「おつかれ〜、瑞鶴。お前が俺の胸デカいって言ったこと忘れないからなー…ほれほれ、姉のおっパイはどうだ?」

完全に余裕ができてからかってくる翔鶴姉、その胸を押し付けるのは辞めて欲しい…失った息子が疼いてしまう気がした。

「翔鶴姉…まさか自分の身体見せつけて興奮してるの?」

と、我慢できなくなってしまう前にニヤニヤ笑みを浮かべながらからかってみた。

 

「い、いや?!違うからな!……ちょっとやりすぎた。」

そうは思われたくないのか、すぐに辞めてくれた翔鶴姉、いくら何でも刺激が強すぎた…今は女の子とはいえ多少なりとも性的な目で見てしまいそうだ。

 

「ならいいんだけど……あ、そういえば僕達ご飯食べてないけど、どうすれば良いんだろ…」

そう言えば、艦娘になってから何も飲んでいないし食べていない、腹が減っては戦はできぬ、ご飯は食堂で食べれそうだが…行くのか?本当に?

「食堂………行くか?……うぐぐ、なんだかやけにお腹空くんだよ、この身体になってからさ。」

ぐー…と翔鶴姉のお腹がなった、からかってやっても良いかな…と思ったが、僕のお腹も反応するように、ぐー…と音を立てる。

 

「………あー、うん……行かないと結構キツイかも…すっごいお腹空いた」

「行くかぁ……あんまり人いないと良いな、多分居るだろうけど…。」

行くしかない、妙に堪えがたい空腹だ、前はここまでお腹空くほど食欲旺盛でもなかった気がする。何故だろうか…。そう思いながらも、僕達は2人で食堂に向かった。

 

「賑やかだな……」

「僕達かなり気不味いね…」

食堂に向かうと、そこにはたくさんの艦娘が居た、しかし耐えよう、皆もう同じ鎮守府の仲間だ…明日からは協力していく事にもなるだろう。

 

「ふふ〜、初めましてにゃしぃ…!貴女達が新人さんかにゃ?」

「あら、よろしくね〜…」

と、いきなり睦月改二、如月改二と書かれたそっくりのパーカを着た、2人の駆逐艦っぽい人に挨拶された。姉妹艦みたいだ.。

「お、おう……」

「はい…新人の者ですが、よろしくお願いします…」

やっぱり緊張してしまう、なんというか…今のところみんな良い人な感じもするから悪い気はしないのだが。

 

「緊張しなくていいにゃしぃ…睦月、元々貴女達と同じなのです!如月ちゃんもね!」

「そうね〜…私たちも元々同じよ、って、意外?」

ニコニコ笑いながらそう言ってくる2人、僕は困惑していた…あまりにも艦娘が板についているからだ…,。

 

「えっと…ホントですか?」

と聞いてみたが…

「なんというか馴染んじゃったにゃしぃ…別に洗脳とかはされてないよ?」

「うーん、そうねぇ…昔は私もこんなんじゃなかったんだけど、それなりに長くいるからね。」

「あ、私が睦月で…こっちが如月ちゃんにゃ!どうぞよろしくね!」

と頭を下げてきた、馴染むと何れこうなるのだろうか…とはいえ偶に意識が艦娘側に寄ることはあった、そういうものなのだろう…考え方によってはどっかの呪術みたいに受肉させられたとも考えれるものだが。そう思うと少し怖いかもしれない。

 

「えぇ…俺たちもこうなるのか?」

と困惑した様子の翔鶴姉、まあ今の翔鶴姉を見たら正直想像し難いが……

「そういえばお2人は何故艦娘に?」

なんとなく気になってしまった…何故艦娘になったのか?と。

「知りたいにゃ?……なんというか…私と如月ちゃんは元々親友って間柄だったのです。」

「そうよー、昔から仲良しだったの。」

と、如月さんがつけ加えてきた。

「……あの、民間に艦娘の服を模した洋服ってあるよね?あれを買ったのにゃ、たんなるおふざけだったけど、私が睦月ので、如月ちゃんが如月ちゃんのを買ったのです。」

「でも……なんだか運命感じちゃったのー、変な感じだったわ。」

「その後、なんとなく申請してみたのです…適性検査、そしたら高い適性があるって言われたにゃ。」

「あははー、本当に運命…その後は2人仲良く志願しちゃったわ♪」

と2人で語ってくる、本当に仲がいいみたいだ…。

「あ、初めてならとりあえずカレーがおすすめにゃ、1番人気にゃしぃ!」

と、カレーを勧めてきた。

 

「そうだな、とりあえずカレーにするかぁ…」

「とりあえずそうしようかな…」

2人で食券を買いに行く、ご飯は食券制らしい…普通に外食気分だ。

「カレー……めっちゃ腹減った、俺大盛りにする!」

「あ、なら僕も!」

2人で大盛りカレーの食券を買った…大盛りを食べるなんて何年ぶりだろう、元々少食な方だったが、なんだか今は食べれそうな気もしてしまう。

「はーい、どうぞー。」

食券を厨房に居た食堂のおばちゃんに渡すと、すぐに呼ばれた…見たところスタッフ以外にも、料理が得意な艦娘が手伝っていたりするようだ。

「ふぅ……やっとだな!」

嬉しそうに席にトレーに乗ったカレーを運ぶ翔鶴姉…僕もそれに続いた…思ったより量が多いが、食べ切れるという謎の自信がある。

 

「頂きますっ…」

と僕は手を合わせ、ゆっくりカレーを食べ始める……美味い!なんだこれは、いままで食べた中で1番だ!食べる手が止まらない。ついでに翔鶴姉が持ってきたジュースを飲んだが、なんだか味が変わった気がする…いや、味覚が変わってしまったのかもしれない。

 

「ご馳走様でしたっ、と」

思いのほか早く食べ終わった、自分ってこんな食いしん坊だったか?とも思うが、艦娘になってから変化したのかもしれない。

「美味しかったな?瑞鶴。」

と、言いながらお腹をさする翔鶴姉…向こうも満足出来たようだ。

 

「後は寝るだけだね…」

「そうだな……所で瑞鶴、お前夜更かしできる?夜は長いぞ。」

そう言いながら、翔鶴姉は何故か期待に満ちた目でこっちを見た。




艦娘でいる時間が長いと大抵雌堕ちします、そうなれば最早艦娘としての自分に馴染み切るため、カミングアウトされないと天然との判別も困難です。睦月ちゃんと如月ちゃんは運命を感じて転化した後、かなり早く雌堕ちしてしまいました。
あの二人はこれからどうなるのでしょうね…。

感想、評価、お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

設定集 第1弾

設定集です、他にも質問があれば感想欄にくれたら答えるかもしれません。


(艦娘への転化について)

艦娘になるという事は、呪術廻戦で言う受肉に近く、艦娘の魂を受肉させる形に近いです。尚、艦娘の魂は元の艦の魂の断片に近いです、それが無数にバラけています。

その魂は本来ドロップ以外では建造により肉体を生み出され、艦娘となりますが、転化の場合肉体の建造による資源の消費を0に出来てしまうため、割と便利です。尚、適正というのはその艦娘としての自分との共存が可能か?という観点からのもので、適正無しに転化を行うと、元の人格が艦娘としての意識に殺されてしまいます、そのため人道的な観点から適正無しに転化処置を行うのは法律で禁止となっています。

過去に犯罪者を無理やり艦娘に転化する事も検討されましたが、元の人格を殺した時点で別人の為、何も知らない艦娘に罪を償わせることになる、民間からの志願、天然の艦娘で戦力は足りているという事で却下されました。

 

(ドロップについて)

敵深海棲艦を撃破後、深海棲艦に囚われていた艦娘の魂が、周りの深海棲艦の残骸を利用し肉体を構築する現象です。この世界ではドロップの頻度もそんなに多くない為、艦娘の大半は建造か転化により生み出されたものとなります。

基本的な認識は、ドロップしたらラッキーのような感覚で、基本的に出ないものとされ、期待されていません。尚、利点は資源消費が無いくらいです。

 

(深海棲艦について)

正体不明、生体不明、目的、おそらく人類、その他生命の殲滅。それ以上は何も分からない。知能が高い個体はいるが、意思の疎通は不可能、数十年以上前に出現したらしい。

現状艦娘の攻撃以外効果が薄く、何か関係があると言われているが仮説に過ぎない。ただ…ドロップという現象がある以上何かある。また、深海棲艦の泊地から発生しており、何も無いところからいきなり現れるということはありません。

強力な個体が居たり、数も多い大規模な泊地の周りでは、海が赤く染まり、深海棲艦以外の海洋生物すら生きられず、艦娘も航行しているだけで損傷してしまい長くは留まれない、変色海域という現象が発生しますが、ここ最近は確認されておりません。放置すれば広がってしまうため、発生した場合は最重要殲滅目標となります。

 

 

(現在の戦局)

ここ最近は基本的に優勢に位置しています、稀に深海棲艦の大規模攻勢も行われていますが、迎撃は出来ており、徐々に人類が完全に取り戻している海域も増えているようです。しかしながら守る海域が増えた分、防衛に裂く必要がある戦力も増えており兵力不足、新たな前線基地の必要性、艦隊の編成の見直しが必須になったりと、課題も多くあります。

 

(天然艦娘)

皆様ご存知のゲームで出てくるような子達、普通の艦娘です。過去、人類が追い詰められていた時に、妖精さんと共に現れ、数を増やしていきました。

建造技術により作られます、詳細は妖精さんしか知りません。最初から本能的に戦い方をわかっており、ある程度早めに実戦に出ることができます。この辺りは後日掘り下げるかもです。

 

(転化艦娘)

新たに開発された、人間を艦娘に転化する技術により人間から転化し生まれる艦娘。元の人間をベースに作り出されるので、多少性格は馴染む上で寄ったりするものの。天然艦娘の同型艦と比べると個性が強い傾向があります。ちなみに現状は女性30%、男性70%です、艦娘志望で自衛隊時代からはかなり比率は変わりましたが、それでも軍ですから男性多めですね。

ちなみに天然艦娘と違い、初期のスペックは劣るので、訓練などを中心に行う、訓練期間が存在し、座学等を学び、訓練を行いながら艦娘としての自分に馴染んでいきます。

また、特殊な例として提督から艦娘に転化し、兼任したという例もあり、本人曰く、自分だけが安全な場所で見ているだけなのが辛かったらしいです。また、大本営から見ても、提督自らが前線に立ち、指揮を執る形がどのような影響があるか、という実験も兼ねている節もあります。

ちなみに男性から転化した艦娘は雌堕ちの宿命がありますね。(笑)



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

初日の夜

かなり遅れてしまった続編です!本当に申し訳ない!これからはペースを上げていきたい所……


食堂から出て、僕達は部屋に戻る為に廊下を歩いていた。

「ねぇ、翔鶴姉……改めて宜しくね?これから一応姉妹って訳だしさ…」

「無論、よろしく…なんか不思議だなー、俺に妹かぁ…元々居なかったから、正直不思議だぞ?」

ポンッ、と翔鶴姉に頭を撫でられる、なんだか落ち着く…やっぱり、身体は正直なのだろうか、嬉しい気持ちが湧いてきてしまう。

 

「ん〜、僕も、正直姉なんて居なかったし、弟なら居たけど……実は艦娘になるって家族には伝えてないんだよね。」

それを聞いた瞬間、いきなり翔鶴姉の顔色が変わった。

「なぁ、瑞鶴……多分、これ家族に連絡行くぞ?……不味くね?」

それを聞いて僕も固まった、良く考えればそれもそうだ、なんにも連絡が無いはずがない。利用規約を読み飛ばす感覚で契約書をしっかり読まない僕も馬鹿だった。

「………やばい、それほんとやばい。どうするの??僕でも家族がいつの間にか美少女になってるとか反応に困るよ?」

というか考え無さすぎた、家族の許可なんて無論とっていないし、連絡すら最近していなかったのだから。

「はは……安心しろ瑞鶴、俺も…取っていない!」

死んだ目で言う翔鶴姉……もうダメだ、僕達は2人ともダメなようだ。どうする?

「……今気にしてもしょうがないな!そうだ、瑞鶴、LIONのアカウント、教えてくれよ、持ってるだろ?瑞鶴と俺は同年代位だって提督さんから聞いてるしさ。」

最早開き直るしかない…翔鶴姉がスマホを取りだし弄り始めた、なんでも良いから話題を変えたいのだろう。

 

「あー、持ってるよ……なんというか、家族としか繋いでないから鶴@求職中なんてふざけた名前してるけど。…今は就職したから少し変えとくか。」

「大丈夫大丈夫……まあ俺もそんな感じだし、作り立てだけどな。Twit○erはやっていたけど。こっちはやっていなくて…確かに一応就職はできたな、昔はこんなスーパー美少女になるなんて考えてなかったけど。」

「それもそうだねー……我ながら中々可愛いと思う…。」

正直、今の僕はすごい可愛いと思う、中身こそ男ではあるが、身体は完全に美少女だ……無意識的に女の子らしい仕草も取ってしまうので口調も合わせたらより良いだろう。

「そうだな……後でツーショットでも撮るか?ほら…いいだろ、こんな美少女になったんだしさ…記念撮影ですよ、瑞鶴…なんてな。とりま…先に交換しようぜ。」

そう言われ、qrコードを読み取ってもらいお互いのアカウントを教えあった。翔鶴姉のアカウントはなんというか……翔、@特殊部隊とかいうよく分からない名前だったが、趣味かなんかだろう。

 

なんだかんだ話しているうちに部屋に着いた……新しい家だ、ここにも慣れなくては。

「ふぅ……ゆっくりしよっか、なんだか凄い疲れた…」

「いいや…まだだぞ、瑞鶴…ゲームってのはな、継続しないと腕が落ちるんだ。さあ……始めようか!」

思ったより元気な翔鶴姉…ノリノリで叫びながらゲームの起動ボタンを押していた。

「んぇ……なんのゲーム、それ?」

「CODだぞ、最近人気だろ?」

「あ、それ僕もやってる……一緒にやろうか、と言うか…翔鶴姉最初からそのつもりだよね?」

「正解、やるぞ瑞鶴……俺は今一緒にやれそうな相手が居て最高に嬉しいんだ。」

満面の笑みの翔鶴姉…見ていて癒される、いや、中身は男なのだろうが。

「じゃ、やるかー……僕もそれなりにやってきたし…」

そうして僕達はゲームを始めた……指の感覚もなんだか前と違う気もするが、思いの外苦労はしない、脳がある程度合わせてくれているのだろうか…反射神経が上がったのか調子が良い。

 

「おっ……ここだな!っと。」

「翔鶴姉ナイス!」

 

やはり誰かとやるというのは楽しいものだ…久しぶりにこんなにはしゃいでいる気もする。今はこの時間を楽しんでいたい。

 

「ふぅ………流石に疲れた…そろそろ12時だなぁ。」

「苦情きそうで心配だったけど…防音対策もバッチしみたいだね!」

なんだかんだ数時間以上やってしまった…。

 

「なぁ、瑞鶴、一緒に寝ない?初日の夜なんだからさ、姉妹2人で。」

「んぇ……いいけど、ちょっと緊張する……」

 

なんて言いながらも、僕は素直に布団に入る、なんとなくそうしたい気がした、これは”僕”では無く”瑞鶴”としての気持ちだろうが、なんとなく落ち着くのだ。翔鶴姉もにこりと微笑みながらお互いの体温が感じれるほど近い隣に入ってきた…きっと今夜はよく眠れる、そう確信した。

 




久しぶりでしたが読んで頂きありがとうございます、評価や感想頂けると励みになります!
次回は布団の中で姉妹がイチャつく?予定です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。