【三次創作】迎えに来たミサトをシンジ君が好きになってしまうお話 (朝陽晴空)
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世紀末エヴァンゲリオン第1話『暴漢、襲来』

モヒカン男の群れを登場させるためなどの目的で、世界観を変更しています。
厳密な三次創作では御座いませんが、リビルド版としてご理解お願いします。


西暦1999年。

『世も末だ』と言う言葉もあるが、今の地球はそうであった。

 

1990年代に勃発した核戦争。

美しかった青空に核物質を含んだ黒い雲が浮かぶようになった。

 

一部の富裕層だけが、宇宙に建造されたコロニーに移り住む事が出来た。

取り残された大部分の人類はけがれた土塊となった地球で暮らさざるをえない…。

 

 

「本当にこの場所であっているのかな…。」

 

 

駅のホームへと降り立ったシンジは、不安げに辺りを見回してつぶやいた。

この駅で降りた乗客は自分一人。

 

床におちた駅のプレートを見ると。

かつては『八王子』だったのだろう。

文字の部分が欠け、さらに心無い落書きもされて『ノ玉子』となっていた。

 

シンジが乗って来た蒸気機関車はもくもくと煙を上げて彼方へと行ってしまった。

待ち合わせ場所が間違っていたとしたら、次の汽車まで何時間も待たなくてはいけない。

 

 

「僕が早く来すぎちゃったか…。」

 

 

古びた腕時計を見たシンジ。

これは10年前に父が買い与えてくれた物らしい。

当時4歳だったシンジが覚えているはずもない。

 

約束の時間まで1時間もある。

すっかり変色したプラスチックのベンチに腰掛けて、シンジは封筒の中身を見た。

 

八王子の駅へ来いと言う父直筆と思われる文字が書かれた素っ気ない手紙。

もう1つは、20歳前後のビキニの水着を着た女性の写真だった。

 

『わたしが迎えに行くから待っててね。胸の谷間に注目』

 

とはしゃいでいる感じの字体で赤いサインペンで書かれている。

 

写真に映る女性の背後の空は青い。

10年以上前に撮った写真に文字を書いて送ったのだろう。

やって来るのはどんなに若くてもアラサーか。

いや、アラフォー、アラフィフってこともあり得る。

 

 

「どんなおばさんが来ても、向こうが僕の顔を知って居るんだから問題無いよね。」

 

 

それよりも先ほどから駅員らしい人がシンジの方を見て、

 

 

「はい、間違いありません。」

 

 

と電話で話しているのが彼は気になっていた。

 

 

 

 

それから30分ほど過ぎたころ…。

静かだった駅のホームにバイクの爆音が鳴り響いた。

そして、この駅の前で止まった。

 

汽車に乗りに来たのかな、とシンジは思った。

ガソリンの値段も10年前に比べて10倍になっていると伯父さんが話しているのを聞いたから。

 

ドカドカと足音を立てながら駅の改札口から入ってきたのは、モヒカン頭に金属バット、パンクスーツを着た、いかにも半グレですと主張しているような集団だった。

 

シンジは恐怖を感じた。

しかし、警戒はしていなかった。

地元でも警察の目の届かない薄暗い路地に踏み込めば、そんな連中の姿は見かけた。

 

 

「お前、碇シンジだな?」

 

「はい。」

 

 

リーダー格の緑髪の屈強な男に尋ねられたシンジは返事をしてしまった。

 

 

「うっ…。」

 

 

逃げなかったことをシンジが後悔したのは、テーザーガン(電気銃)で撃たれて地面に倒れ伏した瞬間だった。

 

緑髪の男は気絶したシンジを軽く持ち上げると、手慣れた手つきでバイク便の荷物のように載せた。

たった数分の出来事だった。

 

 

 

 

 

「シンジ君?」

 

 

ネルフの作戦部長、葛城ミサト一尉が八王子の駅に真っ赤なバイクで到着したのはシンジが連れ去られてから10分後のことだった。

 

『使徒』が出現した場合、どう戦うかについて戦略自衛隊の幹部との会議が長引き、出発の時間が待ち合わせの時間ギリギリとなってしまった。

どうして作戦部長が迎えに行くことになったのか。

 

技術部を含めネルフは慢性的な人手不足。

シンジが本部に到着して自己紹介する時間も惜しい。

駅から本部までの移動時間も有効に使いたかった。

 

 

「この少年が来ませんでしたか?」

 

「知りませんね。」

 

 

ミサトは目を見て答えない駅員の態度で、ウソを見抜いた。

銃口を駅員に向け、険しい表情で再度尋ねる。

 

 

「この子はどこに?」

 

「川田中組の子飼いの半グレ達がバイクで連れ去って行ったよ!」

 

 

思わずミサトは舌打ちした。

この忙しい時に、面倒なことになった。

もう少し自分が早く本部を出ていれば、シンジがさらわれることも無かった。

 

あの半グレ集団のアジトなら目星が付いている。

駅を出ようとしたミサトを駅員が呼び止めた。

 

 

「なあ、あっさりと口を割ったことがバレたら確実に消されちまう。だから…。」

 

「自業自得よ。」

 

 

ミサトはライダージャケットのポケットに入れていた、中身の入った缶コーヒーを駅員の顔に向かって勢い良く投げ付ける。

凶器となった缶であごを砕かれて気絶した駅員はわずかに感謝の表情を浮かべているように見えた。

 

 

 

 

「うっ…。」

 

「気が付いたか、小僧。」

 

 

シンジは自分が縄でグルグル巻きにされてクレーン車に吊るされていることに気が付いた。

自分の体重を支えているのはロープ一本。

切れたらシンジは真っ逆さまに落ちて死んでしまうだろう。

 

 

「うわああっ!」

 

 

パニックになったせいで余計にシンジの身体が揺れる。

パンクスーツの男達の笑い声が倉庫に響く。

 

 

 

「大人しくしていれば、とりあえず死ぬことはない。」

 

 

そう話す緑髪のモヒカン男の目には狂気が宿っていた。

 

 

 

「大児嶋の兄貴、このガキは確実に始末するように戦自の御蒲田さんに言われてるんじゃないですかい?」

 

「こいつを1億円で買うって客が現れた。上手く行けば、川田中組の子飼いから抜け出せる契約よ。」

 

 

 

アジトとなった倉庫に、パンクスーツの男達の再び笑い声が響き渡る。

この半グレ集団のリーダーは、シンジの命を天秤に賭けた。

 

 

「悪いけど、シンジ君は返してもらうわ」

 

 

ハイヒールの音を鳴らしながら倉庫の入口から入ってきたのは、シンジが写真で見た色気のある女性だった。

 

 

「何だ、手前は?見張りはどうした?」

 

「悪人に名乗る名前はない、と言いたいところだけど、シンジ君がいるから自己紹介するわ。ネルフ作戦部長、葛城ミサト一尉。」

 

「ネルフだと?撃てーっ!蜂の巣にしてやる!」

 

 

大児嶋の号令により、アジトに居たモヒカン男達が一斉に発砲した。

雨のように鳴りやまない銃声。

シンジは血を流して倒れているミサトを見たくないと、思わず目を閉じた。

 

 

「どうだ…。な、何だとっ!」

 

 

弾幕が収まった後。

大児嶋の驚く声を聞いて、シンジは目を開けた。

 

 

「リツコお手製のバブル型バリアー発生装置。そんなへなちょこな銃弾、通用しないわ。私を倒したかったら直接掛かって来なさい。」

 

 

中指を突き立てて挑発するミサト。

傷一つ無いミサトの姿に、シンジはほっとため息を吐いた。

それどころかミサトのきれいな顔に見とれてしまっていた。

 

しかし次の瞬間シンジは浮遊感を覚えた。

大児嶋がシンジの命綱のロープを打ち抜いたのだ。

 

 

「シンジ君!」

 

 

真っ白なハイヒールを脱ぎ捨て、ライダージャケットをひるがえして走るミサト。

墜落死を覚悟していたシンジはミサトの豊かな胸に受け止められた。

そしてミサトはシンジを抱いたまま周囲を取り囲む男達を睨みつける。

 

 

「あんた達、覚悟はいいかしら?」

 

「兄貴、ネルフもやって来たんじゃ面倒ですぜ!」

 

「取引は中止だ、引き上げるぞ!」

 

「大児嶋、逃げるって言うの?」

 

「金にならん仕事はしない主義でな」

 

 

ミサトに背を向けて、高い位置にある裏口から倉庫を出ようとした大児嶋と腰巾着の男達は、ドアから差し込んできた光線によって消し炭となってしまった。

 

それを見て恐怖を覚えた男達は悲鳴を上げて我先にと、倉庫の表口から逃げ出した。

もうミサトとシンジに構う者は居なかった。

 

腰が抜けていたシンジはミサトに肩を借りて倉庫の外に出る。

時刻は夜だと言うのに周囲は明るかった。

 

黒い怪獣のような巨大生物が輝く光線を連発していたからだった。

 

 

「あれは…。」

 

「使徒よ。三体目のね。」

 

 

 

一刻も早くネルフ本部へと帰らなければ、と倉庫前に止めようとしたバイクの元へと戻ったミサト。

すると、目の前の地面が大きく盛り上がり、地中から拳を突き上げ、紫色の巨大ロボットが姿を現わした。

 

 

「ああ、私のハーレーちゃんが…。」

 

 

穴に吸い込まれる愛車(バイク)を見て、ミサトは落胆の声を上げる。

しかし直ぐに気持ちを切り替えて、目の前に現れたロボット…エヴァンゲリオン初号機を見る。

 

 

「無人のエバーが勝手に動くなんて、今までにあり得ないことだわ」

 

 

エントリープラグが開いているのを見て、ミサトは初号機の心の声を感じた。

理屈では説明できないが、初号機はシンジ君をずっと待っていた。

 

 

「シンジ君。あなたがあれに乗って使徒と戦うのよ。」

 

「えっ、そんなの無理ですよ!」

 

「お父さんはそのためにシンジ君を呼んだの。」

 

 

使徒が現れてしまった以上、細かく事情を話して説得している時間はない。

ミサトはシンジを背負うと、ロッククライミングの要領で初号機の装甲版を登り始めた。

まさに底なしの体力だ。

 

 

「シンジ君、手を離さないでね。」

 

「ここまで来ておいて、ズルいですよ。」

 

 

真っ逆さまに落ちて大怪我をしてしまう高さに達してから、ミサトはシンジに声をかけた。

初号機のエントリープラグまで、あと少しだ。

 

 

「さあ着いたわ。ここからはあなたが頑張るのよ。」

 

「あの…葛城さんも一緒に乗ってくれませんか?」

 

 

シンジはそう言ってミサトの服をつかんで放そうとしない。

このままシンジを一人で行かせるのは不安でもある。

しばらく考えを巡らせた後、決意を固めたミサトはシンジを抱きかかえて初号機のエントリープラグの中へと飛び込んだ。

 

 

「神経パルスに異常発生!」

 

「異物をプラグの中に入れるからよ。」

 

 

地下にある発令所に居るリツコ達から怒号が上がるが、ミサトは無視することにした。

エントリープラグのシートにシンジを座らせ、ミサトはシンジの肩を抱く。

 

 

「シンジ君、まずは歩くことだけを考えて。大丈夫、私がそばにいるから」

 

 

ミサトはシンジの手を優しく握り、耳元で優しくささやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「シンジ君、私のこと、怖いと思った?」

 

 

使徒を倒した後、同居することになったミサトは、二人の夕食の席でシンジにそう尋ねた。

 

 

「最初は怖い人だと思いました。でも、僕のことを体を張って守ってくれて嬉しかったです」

 

 

シンジはミサトに抱き締めてもらった感触を思い出したのか、顔を赤らめてそう答えた。

女性の胸は加齢と共に脇へ贅肉としてと流れて行ってしまう。

シンジが顔で感じた張りのある大胸筋はミサトが鍛えている証拠だった。

 

思春期であるシンジがミサトに恋心と少しの下心を感じるのは自然な流れだった。

後にミサトのだらしなさに幻滅を覚えることになるが、奉仕する喜びも芽生えることになる。

 

廃墟となった八王子の町のがれきを隠れみのにして、地下につくられたネルフ本部。

その一角である宿舎で始まったミサトとシンジの同居生活は良いスタートを切れたようだ。

 

 

 

 

その頃…。

地球からはるか離れた宇宙コロニーで使徒と初号機の戦いを観測していた白衣の男の姿があった。

 

 

「いいぞ、いいぞ…この調子で使徒が倒されれば、救いの女神は降臨なされる…。」

 

 

恍惚とした表情を浮かべた男のかみ殺すような笑い声は、誰にも聞かれることはなかった。




『モヒカン男の集団をミサトさんがボコボコにする話』が原点です。
読んで頂けるか自信がありませんが、短編なら書けそうなので書いてみました。

続編のプロットがありそうな感じですが、久しぶりの小説なので短編に止めておきます。
感想を頂いたりして、何かの拍子で連載作品になるかもしれません。
文体は二次創作元の方を真似いたしました。

ミサトが下っ端の駅員を倒すシーンは何とか書けましたが、
リーダーの大児嶋とミサトの格闘シーンが描けなくて、それが残念です。
ご期待に沿えず申し訳ございません。


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